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1974-03-06 第72回国会 衆議院 商工委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月六日(水曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 濱野 清吾君    理事稻村左近四郎君 理事 左藤  恵君    理事 塩川正十郎君 理事 田中 六助君    理事 武藤 嘉文君 理事 板川 正吾君    理事 中村 重光君 理事 神崎 敏雄君       稲村 利幸君    浦野 幸男君       小川 平二君    越智 伊平君       粕谷  茂君    木部 佳昭君       近藤 鉄雄君    塩崎  潤君       八田 貞義君    松永  光君       保岡 興治君    岡田 哲児君       加藤 清政君    加藤 清二君       上坂  昇君    佐野  進君       渡辺 三郎君    野間 友一君       松尾 信人君  出席政府委員         通商産業政務次         官       森下 元晴君         通商産業省生活         産業局長    橋本 利一君  委員外出席者         議     員 左藤  恵君         議     員 板川 正吾君         議     員 野間 友一君         公正取引委員会         事務局取引部景         品表示指導課長 利部 脩二君         大蔵大臣官房審         議官      旦  弘昌君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  伝統的工芸品産業振興に関する法律案(佐藤  恵君外八名提出、第七十一回国会衆法第六五  号)      ————◇—————
  2. 濱野清吾

    濱野委員長 これより会議を開きます。  第七十一回国会左藤恵君外八名提出の自由民主党、日本社会党日本共産党革新共同、公明党及び民社党の共同提案にかかる伝統的工芸品産業振興に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。岡田哲児君。
  3. 岡田哲児

    岡田(哲)委員 この法案国民からも非常に期待をされているものだというふうに考えまして、まず全面的に賛意を申し上げておきたいと思うのであります。しかも、各党共同提案という形になりましたことについてたいへん御苦労された点について心から敬意を表したいと思うのであります。  まず、この共同提案に至るまでの間、基本的立場に立って、その発想、いかなる点からこの法案の立案にかかり、その後どういうような経緯で進んできたかという今日までの発想経緯というようなものについて、一度ここで明らかにしておいていただきたい、こういうふうに思います。
  4. 板川正吾

    板川議員 岡田委員にお答えいたします。  この伝統的工芸品産業振興に関する法律案発想動機、その経過というただいまの御質問でありましたが、実はこの法案発想された動機というのは、京都市や奄美大島などで伝統的な工芸産業といわれるものが後継者難あるいは材料難、そういうもので非常に危機に瀕しておる。しかも、こういう伝統的工芸産業というものは、いわば手づくり的な産業でありますから、中小企業近代化促進法とうい政府の政策に乗らない、だから、ぜひひとつ何とかして国の施策でこうした伝統工芸産業振興してほしい、こういう要望があったわけであります。確かに私ども考えてみますに、戦後物資が不足しておった時代は、大量生産大量消費、こういうパターンはそれなりに国民需要を満たしてまいったと思うのであります。しかし、戦後二十数年たちまして、経済も回復をしてまいりますと、大量生産、いわゆる使い捨て、こういう生活構造というものは何か単調で味わいがない、潤いがない、こういう感じ国民が持ってきたと思うのであります。それに反しまして、この伝統的な工芸産業工芸品といわれるものは、これは手づくりであって、使えば使うほど愛着が増す、生活潤いと豊かさを増す、こういうものが国民の中から再認識をされてまいったと思います。そしてこの伝統的工芸品に対する国民需要というのが非常に高まってまいったのであります。  この伝統的工芸品産業というのは、公害もありませんし、付加価値も高い、しかも零細な企業の集団である、こういうことでありますから、何とか新しい法律をもってこういう人たち産業振興していくことが必要である、こういうふうに考えたわけであります。そして伝統工芸産業というものを洗い直して、みがき直して次の世代に伝承させていこう、こういう趣旨からこの法案発想するに至ったのであります。  また、その後の経過というのは岡田委員も御承知と思いますが、七十一国会社会党案として出され、相次いで自民党案として同趣旨のものが提案をされ、各党協議した結果、これは非常にいい法案であるからわれわれも賛成しよう、こういうことで各党合意を得て今日共同提案となってまいったのであります。  以上、発想動機経過についてお答えをいたしました。
  5. 岡田哲児

    岡田(哲)委員 いまのお話で非常によくわかるのでありますが、この第二条でいいます日常生活に主として供されるもの、それから主要部分が手工業的であること、さらに伝統的な技術または技法により製造されるもの、伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられる、こういうふうにいわれているわけであります。  その中で、さらにここで明らかにしておくべきだと思いますのは、「日常生活の用に供される」という点と、それから「伝統的」といわれておりますこの「伝統的」という、この二点についてもう少し細部にわたって明らかにしていただきたい、こういうふうに思います。
  6. 板川正吾

    板川議員 この「伝統的」とは年代的にどう考えているかという質問であろうかと思いますが、「伝統的な」ということについていわば確定した解釈もないのでありますが、しかし、この伝統的工芸品産業振興に関する法律対象に考えておりますものは、少なくとも明治初年、徳川時代から伝承されてきた工芸品産業、こういうふうにお考えおきいただきたい、こう思います。  それから「主として日常生活の用に供される」というのはどういうことだろうか、私はこれは広く解釈をすべきだと思います。たとえば大島つむぎや京都の友禅や西陣の織物は、毎日着ているわけじゃないから日常生活の用に供されないんだ、こういう解釈は実は成り立たないと思います。あるいはひな人形とかいうのも、これも一年じゅう飾っておくわけじゃない。しかし、そういうものが使用されるときには日常生活の用だ供される、こういう意味解釈をすべきだろう、こう思うわけであります。日常生活の用に供するというのは、そういう意味で広く解釈をすべきだ、こう考えております。
  7. 岡田哲児

    岡田(哲)委員 いま明治というよりは徳川時代から、少なくとも明治前というような話がありましたが、言うならば、ここで百年以前とか、あるいはいつからどこで境がきちっとする、そういうものではないというふうに理解をしておいてよろしいのでしょうか。これは日用品と同じように、ある程度の幅を持たせながら十分審議会などで検討する、こういうふうに考えておけばよろしいのでしょうか。
  8. 板川正吾

    板川議員 これは川上と川下のどこできめるかというような意味でぴしゃっときめるものではないと思います。これは具体的には審議会がこの実態調査しながらきめてまいる、こういうことになろうかと思います。
  9. 岡田哲児

    岡田(哲)委員 次に、「一定地域において少なくない数の」というふうにあげられておるのでありますが、この「一定地域」というのは寸市町村単位のようなもので考えられているのか、この「一定地域」ということの考え方と、それから「少なくない」というのは一体どのような定義を持たれておるのか。「少なくない」というあまり聞いたことのないことばですが、「少なくない」ということばが使われております意味するところを明らかにしておいていただきたい。
  10. 板川正吾

    板川議員 お答えいたします。  「一定地域」とは、原則として市町村単位地域である、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。  それから「少なくない数の者がその製造を行ない、」という点に対する御質疑でありますが、この伝統的工芸品産業振興をする場合に主体となるものは事業協同組合等中心でありますが、この事業協同組合協同組合法等によりますと、発起人が四人以上という規定があるのであります。そういう点からも考えて、非常に人数が少なくてもいいだろう。ここで予定しておりますのは、一定地域において少なくとも十企業従業員企業三人くらいとして三十人くらい以上が産業としての本法振興対象になり得る最低のところじゃないだろうか。しかし、これはまあ二十九人だったらだめかという議論になろうかと思いますが、その辺は通産大臣なりあるいはこの審議会等においてそうきびしく解釈をすべきではないだろう、こういうように考えます。
  11. 岡田哲児

    岡田(哲)委員 いま言われました中で、事業協同組合協同組合連合会あるいは商工会という法人の点が触れられました。私ここでちょっと考え方を聞いておきたいと思いますのは、これは例を出しますが、たとえば全国書道用具生産連盟という中央組織がございます。この組織には各地域支部がございます。その組織支部の中に豊橋に毛筆組合という組合がございます。それが支部に加盟しているのです。販売をする側と生産する側と一緒になって、用具の中に、全国組織に加盟をしておるという形になっているのですが、これは中央組織地方組織任意法人でありまして、法でいう法人になっていないわけです。こういう場合、あくまで法に基づく協同組合あるいは商工組合というような形がとられなければこれはだめということになるかどうか。しかも、これは長い間、明治中期ぐらいからずっと特殊事情がありまして、いま申し上げた毛筆組合というのができてきているのですが、あくまでこの規定でいきますと、いまのところ任意法人になっておる。こういうものは認められないということになるのかどうか、その辺についてお伺いしておきます。
  12. 板川正吾

    板川議員 お答えいたします。  この法律振興対象になるものは、地域的ないわば生産活動をしておる協同組合なりの法人を主といたしておるわけであります。この流通関係の横断的な団体は、直接この法律対象にはなりがたいものがあるという感じがいたしますが、しかし、この事業協同組合なりが流通関係も含めてどうしても振興計画を立てる必要があるということになれば、これは一緒にまとめて振興計画対象になるというふうに考えるわけです。  それから、いま任意団体はこの法律対象になるかということでありますが、たとえばそれが必要であれば事業協同組合というものにいつでも切りかえ得るのでありますから、こういう法人格をとった上でこの法律対象になるというふうにしたらいいのではないだろうか。法人格を持たないと任意団体にはならないというふうに私は解釈をいたしております。
  13. 岡田哲児

    岡田(哲)委員 いま板川議員の言われた点は、大体政府側もよろしいのでしょうか。
  14. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま板川先生から御指摘になったようにわれわれ理解しております。と申しますのは、この法律の第三条に「振興計画作成等」という条項がございまして、これの作成をする人といたしましては、協同組合等ということで法人格を予定して表現いたしております。かたがた、振興計画作成もさることながら、いろいろな補助金等をもって助成いたすわけでございます。そういった場合には、やはり法人格を持っていただかないと助成対象として困難な場合もあるんじゃなかろうか、かように考えております。
  15. 岡田哲児

    岡田(哲)委員 さらにくどいようでございますが、もう六十年以上の長い歴史を持った組合なんですが、いろいろ事情がありまして、たとえば任意法人でいままでずっときて協同組合にできなかった、こういう経緯があるのですが、地域ではこの組織は厳然としてあるし、長い伝統を持っている。こういう場合でもあくまで法人にしなければこの法律適用にはならぬ、こういうふうに受け取らなければいかぬのでしょうか。
  16. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 結論的には、やはり法人格を持っていただきたいということでございます。
  17. 岡田哲児

    岡田(哲)委員 ただ、私が考えることでございますが、直ちに法人格が持てない、しかし、いろいろこの法律適用その他の問題が起こってぐる、地域においては、ある程度長い伝統を認められた、これはもう必要だというふうに出た場合には、一時的な措置としては大体やっていってもいいのではないか、こういうふうに考えるのですか、その辺はどんなものでしょうか。
  18. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 先生指摘の御趣旨はよくわかるわけでございますが、法律上もやはり法人格を持ったものを対象といたして考えておるということ、指定にあたりましては、ある程度振興計画内容というものを固めて、事前に指定の前に大体どういったことをやろうかといったことも固まっておる、あるいは地方公共団体もこれをバックアップするといったような態勢も確認した上でないと、第二条での指定というものは実現しないかと思います。したがいまして、私たちといたしましては、そういった準備過程の間にも法人化準備をしておいていただく、指定までにそういった法人格を備えていただくということでお願いいたしたいと考えます。
  19. 岡田哲児

    岡田(哲)委員 次に、後継者育成の問題についてお聞きいたしたいと思うのであります。  これはいま申し上げた筆の関係ばかりでもないと思うのでありますが、一つ養成所のようなものをつくってそこで大量に教育していくというようなことはなかなか困難でありまして、ほんとうに一対一の指導の中で、しかも三年ぐらいかからないと商品としてものにならぬ、大体四年目ぐらいから独立した生産技術者になってくるように聞いておるのでありますが、その三年間は、大体この方々の話を総合いたしますと、言うならば月に七十万ぐらいの養成費といいますか経費がかかる、それがいまのところ負担になってきておるという点からなかなか困難があると思うのであります。これはこういう業態だけでなしに、ほかにもたくさんあるのじゃないかと思うのでありますが、そういう高度の技術を要する場合と、そうでない、一カ月か二カ月の訓練で身についてくるというものは伝統工芸の中にはあまりないかもしれませんが、期間が相当かかり、しかもその費用がかかるというような点にかんがみますと、助成のしかたについて私は非常に格差が生じてくるのではないかという気もするわけであります。これはあくまで事業計画に基づいて審査をする、事業計画が通ればそれに基づいての援助策というものが出てくるのか、あるいはそういう細部にわたっての点については十分実情に沿ったところのものが考えられるのか、その辺について、後継者養成全般についての措置、そういうものについてお伺いしておきたいと思います。
  20. 板川正吾

    板川議員 この後継者養成の問題ですが、この法案趣旨を御理解いただければおわかりになるわけですが、伝統工芸産業というものを振興していこう、そのためにはまず協同組合等でみずから振興計画をつくりなさい、その振興計画に対して地方の都道府県でもこれを大いに援助しよう、それを通産大臣の認可を受けて行なう、こういうたてまえになっておりますから、事業協同組合がまずこういう後継者対策を行なうんだというものを出して、それに対して国なり県なりの援助措置がある、こういう形になっておるわけであります。したがって、そういう後継者対策が必要だから、これはすべて国で負担してやってほしい、こういうことにはなっていない。また、すべて国の負担なりでやっていこうということでは、伝統工芸産業というものが民衆の生活の中にさらにはぐくまれ、受け継がれていくような状態にはならない、こういう感じもするわけであります。ですから、主体となる協同組合がみずからもやります、県も国もこれに応分の援助をいたします、こういう形になっておることを御理解いただきたいと思います。  後継者育成事業といたしましては、この法案の一番大きい柱でありまして、政府補助等も、たとえば研修をする講師謝金、これは二分の一を国が補助いたしますし、研修教材準備費といたしましてその三分の一を補助いたします。さらにこれに県等補助が加わり、協同組合のみずからの支出も加わって後継者育成事業を行なっていこうという形になっておるわけであります。  そのほか技術保存とか、研修事業とか、いろいろありますが、そういう形の中で後継者育成事業というものがお互いの協力の中で行なわれていくというふうに御理解いただきたいと思います。
  21. 岡田哲児

    岡田(哲)委員 最後にお伺いしておきたいと思いますのは、第十二条でいっております伝統的工芸品産業振興協会をつくる、これは全国を通じて一個の民法の規定による法人を設立する、こういうふうにうたわれているわけでありますが、これはどこへどういう形でどのようなものででき上がるのかということについてのもし腹案なり計画なりというものがおありになりましたら明らかにしておいていただきたいと思うのであります。
  22. 板川正吾

    板川委員 お答えいたします。  伝統的工芸品産業振興協会をどこにつくるのかという御質問でありますが、どこにつくるかということは、まだ実はきまっておりませんが、いずれにしましても、置くところは伝統工芸産業のメッカでなければならぬと思います。また、伝統工芸産業振興に非常に熱意を持ったところが希望するだろうという感じがいたしますが、いずれにしましても、きまってはおらない、これはいずれ政府のほうできめるのではないだろうか、こう思います。
  23. 岡田哲児

    岡田(哲)委員 いま板川議員のほうから政府のほうできめるのでありましょうというふうに言われたのですが、政府側はある程度の構想といいますか、腹案といいますか、そういうものをお持ちでしょうか。
  24. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 まだここで申し上げるほど腹案といったようなものは持っておりませんが、ただこの協会は、この法律実施するにあたって非常に重要なファンクションをつとめることに相なります。一方、全国一本での協会でございますので、全国ベースではたして合意に達するかどうか、特に業種なり地域によっていろいろな特殊事情もございます。まず大前提として関係業界が完全なるコンセンサスに到達する必要がある。その次には本法案の十三条に規定しておりますいろんな業務を円滑に適切に実施し得る人材が得られるかどうか、あるいは資金面の見通しを十分立て得るかどうかといったようなことも勘案してやらなくちゃならないかと思いますので、やはり若干の時間が必要かと考えております。
  25. 岡田哲児

    岡田(哲)委員 施行期日が四十九年四月一日からというふうになっておりますが、四月一日から施行されて、いま申し上げたこれが大体スムーズに軌道に乗るという準備期間、私が聞きたいのは想定される準備期間というものをどのくらい考えられておって、実際にどの時分から発動していくのか、この点だけ最後にお伺いをして終わりたいと思います。
  26. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 政府といたしましては、関係政省令準備という点においては四月一日から可能でございます。ただ、具体的な指定なりあるいは各地域における振興計画の策定といったものはむしろ四月一日に施行になってから始めてもよろしいかと思いますので、期日としてはこれで十分かと考えております。
  27. 岡田哲児

    岡田(哲)委員 私の言ったのはそういうことでなしに、準備期間といいますか、四月一日から発動して、いろいろ手続をとって、この法律に基づくものが実際的に動くという時期はどのくらいと想定されているかということをお伺いしているのです。
  28. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 要は業界でのいろんな振興計画等の検討の進捗状況によるかと思いますが、早い地域にあっては二、三カ月後にはそういった具体的なアクションがとれるようになるかと考えております。
  29. 岡田哲児

    岡田(哲)委員 終わります。
  30. 濱野清吾

  31. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 いま岡田委員のほうからも大体の質問がありまして私のほうでも解明された点がたくさんありますから、できる、だけ重複しないように御質問申し上げたいと思います。それから本来、通産省あるいは中小企業庁中心にしてお聞きしたいわけですが、一、二の点については提案者のほうにも御質問を申し上げますので、まず最初によろしくお願いしたいと思います。  最初中小企業庁のほうにお伺いをしたいわけですが、いわゆる日本国内における地場産業というものの実態について、中小企業庁としてしっかり調査をなさっておるかどうか。たとえば産地の数あるいはその内容、それから企業数従業者数生産額、こういったものや全国各県の分布状況というふうなものを定期的に中小企業庁のほうでは調査をなさっておるのかどうか。その点をまず最初にお伺いをしたいと思います。
  32. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 本件の調査につきましては生活産業局のほうで実施いたしましたので、私からお答え申し上げたいと思います。  昨年調査いたしましたところでは、企業の数は約一万七千、生産額は四十七年ベースで約四千五百億、従業員の数は約八万七千人となっております。ただ、この調査にあたりましては、陶磁器、漆器等七品目に限定して調査したということと、回収率が必ずしも一〇〇%でなかったといったところから十分に実態をつかみ得てないうらみがございます。ただ、少なくとも今度の調査結果からいたしますと、一企業当たり生産額は二百七十万、従業員の数は五・二ということで、こういった産業零細性というのは今回の調査でも十分確認できたかと考えておりますが、さらに詳細な調査を引き続き実施してまいりたいと考えております。
  33. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 もちろんこれは地場産業といえば非常に広い範囲が入るわけでして、本法のいわゆる伝統的な工芸産業、こういうふうに限定されておらないわけですから、いまおっしゃった数が直ちにこの対象になり得る要件を備えているというふうにはもちろん思いませんけれども、やはり本法案を今後実施するにあたってはしっかりした地場産業実態ということが前提にならなければならぬと思いますので、さらにいまおっしゃったような形での詳細な調査をやっていただく必要があるのではないか、こういうふうに思うわけてす。  それから本法案関係につきまして、これはやはり通産省のほうからお聞きをしなければならぬと思いますが、第五条と第六条の関係といいますか、第五条の場合には認定振興計画実施に要する経費補助の問題が記載されておりますし、第六条の場合には計画実施に要する資金確保、それぞれ裏づけが法文上なされておるわけであります。これは相当力を入れておやりいただかぬと、先ほど岡田委員からも若干関連する話がありましたけれども、実質的な意味が非常に薄くなってしまうのではないか、こういうふうに考えるわけです。したがって、これについて通産省としてはどのような基本的な考え方を持っておられるのか、あるいは具体的な考え方があればなおさらけっこうでありますけれども、ここでお示しをいただきたいと思います。
  34. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 五条の経費補助に関連いたしましては、一般会計予算で約一億二千万円の予算を計上いたしております。この対象といたしましては、先ほどもお話が出ましたように主として後継者確保育成事業に重点を置いておりまして、一つには講師謝金あるいは研修教材費補助ということで三千二百万円、それから伝統工芸品技術保存あるいは研修事業補助として七千万円。この約一億二千万円のうち一億二百万円を後継者補助対策事業として考えております。これは補助率等を勘案いたしますと約三億四、五千万円の事業量になるかと考えておるわけでございます。  それから資金確保につきましては、財政投融資計画の中に四十億円の資金準備いたしております。国民金融公庫で三十億、中小企業金融公庫で十億、金利はいずれも八%を予定いたしておるわけでございます。初年度といたしましては、諸般の準備等も勘案いたしますと大体この程度でやっていけるのではなかろうかと考えてはおりますが、四十九年度、初年度における実施状況等を勘案し、さらに増額が必要となれば五十年度以降対処してまいりたい、かように考えております。
  35. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 次に第七条の税制上の必要な措置でありますが、これは大蔵省の関係だと思いますけれども、通産省としては本法案を今後施行していくにあたってどのような措置を基本的に考えておられるのか、その点についてもあわせてお伺いをしたいと思います。
  36. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 税制につきましても、先生方の御支援と大蔵当局の御理解によりまして伝統的工芸品産業振興準備金といういわゆる準備金制度と、それから共同施設に対する特別償却制度を創設するということで大体了解がついております。  準備金制度といたしましてはこれはいずれも法第三条にいうところの通産大臣の承認のあった計画実施する場合ということになるわけでございますが、組合員が一定の賦課金と申しますか、納付金を組合に納めた場合には、これを損金に算入する、あるいは組合がそれを受け取って積み立て金とした場合には、これまた損金として算入するといったような措置でございます。それから、その金を取りくずして共同施設をつくった場合には特別償却を認める、こういった内容の税制を準備いたしております。
  37. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 次に、先ほど提案者のほうとそれから通産と両方から答弁があったようでありますけれども、私も、指定要件の問題や、それから振興計画内容、こういうものにかかわって若干これは通産省にお伺いしたいと思うわけです。  指定要件については、この法案でいきますと第二条の第一項の一号から五号まであるわけです。それから振興計画内容が第四条に定められております。この場合に、伝統的工芸品指定対象、これは基本的にはあくまで第二条の要件を満たす伝統的工芸品そのものであると思います。それと振興計画とのかかわり合いでありますけれども、振興計画の認定を受けなければ伝統的工芸品指定そのものが受けられなくなるのかどうか、それと直接かかわりがないのかどうか、その点の解釈をまず一点お伺いして、それから質問を進めたいと思います。
  38. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 本法案の第二条の指定があった後、第三条の振興計画作成という手順になるかと思います。
  39. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 そうしますと、これは伝統的工芸品ですよという指定だけはやる、しかし、振興計画提出されて、そしてそれが認定をされて初めて本法案にいう恩恵を受けられるということになると思うのですけれども、その最初伝統的工芸品という指定そのものは、三条あるいは四条の振興計画とかかわりなく指定を受けることができるのかどうか、その点なんです。
  40. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 法律論といたしましては、ただいま先生おっしゃったようなことにもなるわけでございます。たとえば、指定をして、そのあとで計画準備するということになるかと思います。ただ、実際問題といたしましては、その当該産地の組合が熱意を持っていかなる内容振興をはかろうと考えておるかということがまず大前提になります。また、地方公共団体がこれを積極的に助成しようとする立場をやはり明らかにいたしませんと、現実に審議会の意見を聞く場合にも、十分提案理由の説明もできませんし、その会の判断もできませんので、指定する段階にはあらかたその振興計画内容、方向といったものが固まっていないと実際問題としては指定は困難かと考えます。
  41. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 そこでお伺いをしてまいりますが、第四条のこの振興計画内容一つに、製品の共同販売、こういうものがございます。これは通産省も、最初質問申し上げました地場産業実態調査なさる中で具体的につかんでおられると思うのですが、業種や、それからそれぞれの地場産業のおい立ち、形態、これによってきわめて内容が多様になっておると思います。そういう違いがあると思われますから、この運用にあたってはその点を十分に配慮しないと実態に即した法の運営ということになっていかないのじゃないか、こういう危惧の念を私は持っておるわけです。  たとえば具体的な例を私も一つあげたいのです。私のほうの地方ですけれども、天童市に将棋のこまの生産地があります。これは全国の総生産の九五%をこの天童市の地場産業がかかえておるわけでありますけれども、しかし企業はいずれも零細です。株式会社がわずかに三軒、それから個人業者が六十軒というふうな内容で、それでも年産、こまにして大体四百万組、二億弱の生産量を持っておると思うのです。しかし、これを調べてみますと、製造販売の形態を見てまいりますと、原材料の購入からいわば一定の作業工程を経て製品をつくり上げる、これまでで産地組合はほとんど終わりです。いま任意の組合をつくっておりますけれども、ここには共同販売という名目はあるのですけれども、実際は販売はされておらない。六十三軒のうちわずか三軒だけが問屋を兼ねておる、こういうふうな状況で、もうほとんど全部といってもいいほど生産どまりであって、あとこの製品の販売はゲーム問屋で価格もきめられて、そしてこのゲーム問屋を起点として一定のルートに乗って卸売り、小売り、それから消費者、こういうふうになっていくわけですね。むしろ製造をやっておるものよりも、多くの場合そういう形態があるのじゃないかと思いますけれども、販売のほうが非常に大きな力を持っておる。こういう当然伝統的な工芸品指定をされ得る要件を備えた、いま申し上げましたような例が、販売面については販売権を完全に別な組織に握られてしまっておるという実態が、全国的にも非常に例が多いのじゃないかと思う。その場合に、この振興計画内容として、製品の共同販売というものがきわめてシビアな形で絶対的な条件になりますと、せっかくのこの法案趣旨というものは生かされていかないのではないか。もちろんそれは不合理性を内包しているわけですから、逐次改善はしなければならぬとは思いますけれども、一気にそこまではなかなかいかないだろう、そういうふうに考えますので、そのような場合の法の解釈あるいは運用、これについてお考えがあれば、最初通産省からお聞きをして、それからできれば提案者側からも一言お答えをいただきたい、こういうふうに思います。
  42. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 伝統的工芸品産業ということは、裏を返しますとそれだけ歴史が長い、歴史が長ければそれだけ業種なり地域によって事情が千差万別であろうということは、私たち、この法案提案いただきまして後、運用の段階では十分配慮しなければならない問題点かと思います。特に実情に即してやっていくということになるかと思います。  それから流通の問題につきましては、これは積極、消極、両面があるかと思います。一つは、やはり需要の開拓と申しますか、市場の開拓といった積極的な面での流通対策と、いま一つは、先生指摘のありましたような経済的な力量のアンバランスをどう排除していくかという問題があります。本法案の共同販売あるいは共同購入といったものは、むしろ後者の対策として意識された事項かと思いますが、いずれにいたしましても、それぞれの産地の実情に即した形を可能な限りとってまいりたい、かように考えております。
  43. 板川正吾

    板川議員 この法律は、御承知のように伝統的工芸品産業振興に関する法律ということでありますから、生産者である集団、産業振興というところに主点があります。しかしながら、この第四条で、振興計画の中に共同販売、共同購入等というものも、あくまでも生産の振興上必要ということの場合には当然同様に扱われるものというふうに考えていいんじゃないかと思います。
  44. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 それではもう二つほど簡単なことをお聞きして終わりたいと思いますが、一つは、これも先ほどちょっと答弁がありましたが、指定要件の中で「主として日常生活の用に供されるものであること。」というのがあるわけです。この解釈ですけれども、これは提案者のほうからお伺いをしたいわけですが、「日常生活の用に供される」というのは、どの範囲に限定するというふうな問題、これはこの法案をまとめていく過程でもいろいろ議論のあった点だと思いますので、ここで正式に確かめておきたいわけです。たとえば装飾的な調度品であるとか、それから娯楽品であるとか、あるいはそれぞれの地方の民芸品であるとか、これは日常生活に現に供されておるものではありますけれども、いわば狭い意味での必需品——必ずしも必需品ではありません。そういうふうに解釈そのものが非常にどっちにも解釈されるというふうになると思うのであります。したがって、いま二、三申し上げました装飾的な調度品であるとか、あるいは娯楽品または地方の民芸品、こういうふうなものも、他の指定要件を備えておれば伝統的工芸品として指定を受けられるのかどうか、この点ひとつお伺いします。
  45. 板川正吾

    板川議員 お答えをいたします。  先ほど岡田委員からも同様な趣旨質問があったのですが、この「主として日常生活の用に供される」というのは、生活に毎日使うものでなければおかしいという狭い意味解釈すべきではないというふうに考えております。立案の過程でいろいろ議論になったのですが、大島つむぎや京都の友禅なりを毎日着て歩くか、これは日常生活の用に供されていないじゃないか、こういう議論もあったのでありますが、そうじゃなくて、その品物が使われる場合には、日常生活の田川に供されるというものであれば当然この指定要件の中に入るものと思います。お話のありました置きものとか飾りもの、こういうものでも、その使われ方が日常生活の中に使われておれば、他の要件が満たされれば当然この中に入るもの、こう解釈していいと思います。
  46. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 最後一つだけお伺いをしたいと思いますが、これは本法案の中でも明らかになっておりますとおり、対象地方のたとえば市町村単位、こういうふうな地域の中である一定の規模を持つようなものが対象になると思いますけれども、当然伝統的工芸品として、たとえば代表的にある一定地域がそれを取り扱っている、産地になっておる、そういうふうな場合には当然対象になるわけですけれども、しかしその代表的な工芸品の銘柄をつけてはおりますけれども、実際はいろいろな形態で、たとえば下請なら下請という方法もありましょうし、そういうふうな形態でもって指定産地以外で製造している場合が案外少なくないのじゃないかと思うのですね。その場合には、やはり非常に散在していますから零細です。その場合対象になるのは、いわばその中心になっている、何といいますか、指定産地を対象にするのか、あるいは散在をしておる零細なものもここにあるような要件を備えていれば当然対象になる、独立して対象になる、こういうふうにお考えなのかどうか、その点最後一つだけお伺いしたいと思います。
  47. 板川正吾

    板川議員 御承知のように、本法対象に主としてなるのが協同組合という形でやられるわけであります。その他の法令による法人もありますが、主として協同組合であります。協同組合というのは、協同組合等に関する法律がありますように、地域的な区分がございません。したがって、たとえば特定の市に協同組合の本部が置かれ、その周辺の市町村の同業者がそれに加入することも可能であります。ですから、市町村が違ったといって協同組合を別個につくらなくてもよろしいということになります。ただ、遠隔の地で、一定の規模以上、相当な規模のものが遠隔の市町村であるならば、やはりその地域協同組合をつくって、同じような振興計画作成して、この法の援助を受けるということもあってもいいだろうと思いますが、いずれにしても、協同組合というのは市町村の区分がございませんから、主とした地域にある協同組合に加盟されればその心配はなくなると私は思います。
  48. 渡辺三郎

    渡辺(三)委員 質問は終わりますが、あと二分ぐらいあるようですから、要望の意味で申し上げますけれども、これは申し上げるまでもなく五常提案、こういうふうなかっこうでの議員提案の立法でありますけれども、やはりこれに対する全国的な期待というものは非常に大きいと思うのです。ですから、せっかくこういうものをつくり上げても、ほんとうに実効のあるような運営というものをやっていかなければならないと思いますし、とりわけ政府通産省においては、これをしっかりと裏づけるような施策を強化をしていただきたい、こういうふうに強く考えるわけであります。  たとえば問題は違いますけれども、下請中小企業振興法が昭和四十五年につくられました。これをつくるにあたっては、全国の下請中小企業者が非常に大きな期待を持っておったと思う。しかし、その実施の状況をずっといままで見てまいりますと、わずかに振興計画をもって指定を受けておるのが六件、いままでまる三カ年以上経過しておりながら、そういうふうな状況であります。もちろん下請振興法の場合には元請と下請との間の関係がありますから、いわば相反するような関係があって、なかなかそういう条件を満たしにくいというふうな条件はあるにしても、期待が非常に大きかったわりには、十分な最初期待したような所期の目的をいまの段階ではまだ満たしておるとは言いがたいと思うのであります。同じように、この伝統的工芸品産業振興に関する法律がせっかく多くの方々の期待を持ってでき上がっても、これを裏づける施策が非常に不十分であったり、また運営がうまくいかなかったりすれば期待はずれになるわけでありまして、この点はぜひひとつ、当然業者自体が努力をしなければなりませんけれども、政策としても通産省の強力な施策を強く要望しまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  49. 森下元晴

    ○森下政府委員 御指摘の下請中小企業振興法が必ずしも機能が十分発揮されておらないという点は御指摘のとおりでございまして、今回の法案につきましてもよく法案趣旨を体して最大の効果があがるように努力をしていきたいと思っております。
  50. 濱野清吾

    濱野委員長 保岡興治君。
  51. 保岡興治

    ○保岡委員 法案の第十一条に「伝統的工芸品産業審議会」というものがあるわけでありますけれども、これの第五項に、「委員は、伝統的工芸品産業に関し学識経験のある者のうちから、通商産業大臣が任命する。」という規定がございます。いま渡辺委員のほうから御指摘があったように、この法案の運営については、たいへん地元が、地場産業伝統的工芸品産業をやっておる者が期待をしておるという意味で、この審議会の運営を地元の意向を十分反映したりっぱなものにして法律の適正な運営をはかるために、ぜひ地元の代表を入れてほしいという希望があるのでございますけれども、その点について、提案者側でどのようにお考えか、伺いたいと思います。
  52. 左藤恵

    左藤議員 お答え申し上げます。  審議会の構成につきましては、この法律をいよいよ実施するまでの段階において、その構成が十分検討されてきめられることになろうと思いますが、いまお話しのように、国民や産地の業界の意見が十分反映されなければその設置した意義もないわけでありまして、当然そうしたことでなければならない、そしてその上に深い学識経験に基づいた公正な意見が出されて初めて審議会の使命を果たすことができる、このように考えますので、私は二十五名の中にそうした意見が十分反映できるようにされるべきである、このように考えております。
  53. 保岡興治

    ○保岡委員 この法案については、作成の過程で関与もしておりますし、またさきにお二人の先輩の委員のほうからいろいろ御質問があったようでございますので、法案についての御質問はこれぐらいにして、実は、この法案がおそらく保護の対象とするであろうところの奄美大島のつむぎが、諸状況によって非常に困難な状況に追い込まれておる。そこでこれに関連して若干質問をさせていただきたいと思います。  昨年の二月以来、大島つむぎが急に停滞をいたしまして、御承知のとおり零細な企業が多い産業でございますけれども、資金その他で困窮をきわめ、大島つむぎの破綻になるのではないかというほど心配されているわけであります。そこで、昨年の暮れに年末融資を考えていただいて、二億ほど奄美大島関係のつむぎにも回していただいたのでありますが、年度末に何かそういった特別な手当てをさらにしていただけないかどうか、通産省にお伺いをしたいと思います。
  54. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 大島つむぎにつきましては、ただいま先生指摘になりましたような苦境に立ち至りつつあるということを承知いたしております。幸い、昨日、年度末金融が閣議決定になりましたので、そのワクの中で前向きに対処いたしたいと考えます。
  55. 保岡興治

    ○保岡委員 ぜひよろしくお願いを申し上げます。  それから、いま申し上げた大島つむぎの不況の一つの大きな原因に、韓国で奄美大島のつむぎが織られて輸入をされておる。したがって需給のバランスがくずれて、これが大きな原因になっておるという見方があるわけであります。実際に、ついこの間、京都のほうで韓国つむぎの販売が本場大島つむぎと並べて行なわれておりまして、その関係の広告が去る二月二十一日の京都新聞に出ているわけでありますが、そこの内容として、「日本と韓国の合作」「染め加工・絣のしめ織の工程までは日本で、織りは韓国でいたします。出来ばえをぜひ一度ごらんください。玄人でも判別できない仕上りでございます。」ということで、両方並べまして、韓国つむぎのほうが約半分の値段で売られておる。  そこで、この韓国つむぎの出回りが昨今非常に奄美大島のつむぎに重大な影響を与えておるのでありますが、これは一つには、大島つむぎというのは非常に伝統的工芸品としての特性を備えて、手工芸の、手づくりの工程が非常に多いわけです。したがって、価格の大部分が労務賃に占められておる。そこで、韓国のほうが非常に賃金が安いために安くつくれる、こういうことでございます。  大体大島つむぎというのは、六カ月ぐらい使ってすべての工程をしなければ一反ができ上がらないということで、しめから、染めから、あるいは染めも化染で染めたり、あるいはどろで染めたりそれをかわかしたり、あるいはテーチキという染める染料と一緒に煮たりして、織るのも一カ月ぐらいかかるということで、たいへんな工程があるわけなんです。奄美大島では、御承知のとおり郡民平均所得というものが本土の半分にも満たない四九・一%という状態で、これはいろいろ立地条件その他隔絶外海離島であるということで諸産業が起こりにくいということもありまして、生産性の低い農業とこの大島つむぎでもっておるという状況であります。     〔委員長退席、田中(六)委員長代理着席〕 そこで、この大島つむぎがもし韓国のつむぎに押されて衰退して滅びてしまうと、十六万の人口を奄美大島は持っておるわけでありますが、非常に本土から離れて一種の独立の経済圏を持っておる、したがって、このつむぎがなくなってしまうことによって経済そのものが破綻してしまって、その回復というものが非常にむずかしい状況にあるわけであります。  そこで、私たち奄美大島の地元の者がおそれているのは、ちょうど村山大島が韓国つむぎによって圧倒されまして、産地でもうすでにつくる者がいなくなって完全に消滅してしまったという事実が現実にあるので、それの二の舞いになってはたいへんだということで、たいへん心配しておるわけであります。  そこで、いろいろな施策を今後政府としても考えていただかなければならないわけでありますが、こういった商法がたいへん今後横行してまいりまして過当な販売が行なわれると、国内の一部のそういった貧しい地域の者の生活のかてを奪って一部の者が利益をあげる、きわめて不当な結果になると、地元ではこういった商法に対してたいへん怒りをぶつけておるのでありますが、通産当局として、こういう事態に対してどのように対処していただけるか、その点を伺いたいと思います。
  56. 森下元晴

    ○森下政府委員 この立法の趣旨は、地域経済の発展に寄与する、そしてまた伝統的工芸品産業振興をはかるということを明記されております。  韓国からのまぎらわしい大島つむぎの大量の輸入、これが奄美大島の経済を非常に圧迫しておるということを私も新聞で見まして実は非常に憂慮をしておるわけでございます。  それで、大島つむぎは、これは奄美大島以外にはできない特産品でもございますし、いわゆる民族の魂が込もっておる製品でございまして、それにまぎらわしいような海外からの製品の輸入はたいへんな事態だと私は思っております。その内容につきましては、通関統計においていわゆるつむぎ織物という区別がないために、数字的にどの程度入っておるということのお答えは実はできません。ただ、昭和四十八年度における韓国からの絹織物輸入は約八百七十万平方メートル、前年に比べまして一〇〇に対して一三七という増加率を示しております。そのうち八〇%程度がしぼりの加工の織物であるわけでございまして、そのうちでどの程度いま御指摘のような製品が入っておるのか、これも実態を早急に調べていきたい、このように思っておりまして、御指摘のように、やはり伝統芸術を守るためにも、私はこの法律が必要であろう、通産省としてもこれを守るために全力をあげていきたいと思う次第でございます。
  57. 保岡興治

    ○保岡委員 実は伝統的工芸品産業振興法案、これは国内の生産体制を強化することによって国際競争力というのでしょうか、外国の製品に対抗できるものに体質をつくっていく、こういうことだろうと思うのですが、実際にいまお話を申し上げましたとおり、半分の値段で売られておる。実際に韓国でしっかりしたものがどんどん大量に生産がなされてくると、結局は大島つむぎはつぶされて、もう再び日本人の手で何千年もかかって築いてきた技術というものが生かされて、品質も保証されて、そしてわが国が管理して、まさにこの法案の目的としているところの日常生活の用に、国民全般がいつまでもこの利益を享受できるという点が確保できない。単なる国内法的な保護では間に合わないのではないかという危機感があるのです。実際に韓国に業者が調べに参りましていろいろ調査した結果によりますと、二、三年たてば大島つむぎが全く壊滅するだけの量が出回るんじゃないだろうか。実際に村山大島つむぎは数年の間に韓国つむぎに圧倒されて、いましぼりの村山などは全部韓国ものでございます。そういった切実な状況になっているので、この伝産法は伝産法でその運用を適正強化しなければならないけれども、なおこういった商法を含めて、韓国つむぎの国内販売については、通産当局としても格別な緊急の御配慮をしていただきたい。そのためには、何といっても実情の把握というのが一番大事だろうと思いますので、地元の実情を調査していただいて、なお韓国の状況等についても十分な調査が必要である。それがこの問題に対処する前提だろうと思うのですが、非常に緊急な課題でございますので、その点を通産当局にもぜひお願いを申し上げておきたいと思います。  そこで、やはり国内的な保護だけではどうにもならないのではないかということから、地元としては貿易上の規制措置を何か考えていかなければ産地の壊滅的な結果を見ることになるのではないか、こういうことを言っておるのでありますが、そういう状態でありますので、緊急関税あるいは相殺関税という国内経済産業が外国の輸入品によって非常に大きな打撃を受ける場合に適用できる関税の制度がある。この点について大蔵省としてこの適用が考えられないか、お伺いをしたいと思います。
  58. 旦弘昌

    ○旦説明員 お答えいたします。  ただいまの大島つむぎの保護に関しまして、緊急関税あるいは相殺関税ができないかという御質問でございますが、緊急関税に関しましては、ガットの関連におきまして、国内法におきましてもいろいろなきびしい条件が付されておるわけでございます。一つは、外国における価格の低落、その他予想されなかった事情によって輸入が増加する。それから二つには、国内の競合産業に重大な損害を与え、または与えるおそれがある。それから三つには、国民経済上緊急に措置する必要があるということでございます。  いまおっしゃいました大島つむぎの業界におきましてこれらの要件に該当しておるかどうか、それらにつきましては十分調査をいたしたいと考えております。  なお、第二点の御指摘のございました相殺関税につきましては、いまの問題になります大島つむぎにつきましては、たとえば外国、つまりこの場合韓国でございますが、その産業政府から奨励金または補助金を得ておるかどうかというふうなことが一つの要件になっております。その点につきましては、われわれいまだつまびらかにしておりませんので、この点につきましても十分調査をいたしたい、かように考えております。  なお、これらの緊急措置につきましては、対外的な問題もございますし、あるいは産業所管の通産省の問題でもございますので、関係各省と十分相談してまいりたいと思っておりますが、まず調査をすることが第一段階ではないか、かように考えておる次第でございます。
  59. 保岡興治

    ○保岡委員 いま大蔵省からお答えいただいたとおり、これは適用をぜひ考えていただくための資料収集というものがやはり緊急に必要ではないかと思うのです。実際にさっきも申し上げましたとおり、数年のうちに壊滅的な打撃を受けるかもしれない、こういう状況でございますので、法文にも損害要件として「重大な損害を与え、又は与えるおそれがある場合に」適用できるということになっておりますので、事前に、そういう結果を招来しないためにも、できるだけ早く韓国における大島つむぎの生産状況の把握等をしていかなければならないと思います。  実は韓国においては和製織物というものを産業振興一つにあげてやっているような話も聞きます。これは大島つむぎだけでなくて、西陣その他の高級織物にも関連してくると思いますけれども、こういった韓国の助成措置、こういったものもまた十分調べて、相殺関税等の要件に該当するか、よくお調べをいただきたい。したがって、何らかの必要な措置を緊急にとっていただけるように要望を申し上げたいと思います。  なお、その調査の結果適用の可能性が出てくる、こういうことになりますと、相手国がある問題でございますし、後進国てございますから——後進国というか発展途上国でございますから、そういった国際的な配慮、外交上の配慮もしなければならないと思うのでありますが、いきなりこの法律適用ということでなくて、何らかの外交上の交渉の余地がないか、その辺のところについて大蔵省に伺いたいと思います。
  60. 旦弘昌

    ○旦説明員 いま御質問ございました点につきましては、いま大島つむぎ類似のものの急増が問題になっておりますので、これは必ずしも大蔵省の所管ではございませんが、外交ルートを通じまして、韓国政府と御協議いただくというようなことも一つの問題ではないかと思います。  先ほど申し落としましたが、絹織物、大島つむぎにかかります関税率は、ガットの協定税率になっておりますので、これに対しまして緊急関税を発動いたしますときには、ガットの規定によりましてその代償を提供しなければならないというような問題もございます。これらにつきましてもまた関係各省と協議する必要があろうかと思います。その点申し加えます。
  61. 保岡興治

    ○保岡委員 従来この制度が適用されるのは非常に特別な場合を予定しておられるだろうと思うのであります。したがって、国際的な関係、その他手続はたいへんなことだろうと思いますが、実際に壊滅してしまってからではおそいので、ぜひよろしくお願い申し上げます。  それから通産当局にお伺いをしたいのでありますが、実際にどの程度韓国つむぎが輸入されているのか、輸入実態がはっきりしないということでございます。そこで、この輸入数量の把握は大蔵省関税局のほうで所管されていると思いますので、大蔵省のほうでこれが把握できないかどうか、お伺いをしたいと思います。
  62. 旦弘昌

    ○旦説明員 私ども大蔵省で作成しております通関統計によりますと、この大島つむぎのたぐいは、絹織物の分類の中に入っておるわけであります。その分類の中に細分がございまして、その中の一つの項目の中に大島つむぎが入っております。したがいまして、統計上はその柱ごとには数量はわかるわけでございますが、その中で大島つむぎの分がどれだけかということは、直ちには明らかでないわけでございます。  私ども韓国産の大島つむぎに関しまして、先生の御指摘のような問題がございましたので、昨年の四月以来各税関に指示をいたしまして、この大島つむぎというような類似の表示をしてきております韓国からのつむぎにつきまして、手集計で集計をいたしてきておるわけでございます。その資料によりますと、昨年の四月から本年の一月まで全部の数量で、単位が平方メートルでございますが、十五万三千百五十四平米の輸入がございます。  なお、先生も御承知のように、昨年の五月と十二月に税関に指示しまして、まぎらわしい表示につきましては、関税法で輸入を許可しないということになっておりますので、その細目をきびしくいたしまして指示いたしたのでございます。その結果であるかどうか、まださだかではございませんが、十二月には一万一千平米入っておりましたのが、一月には三千平米ということで激減をいたしております。ただ、これが一時的な要因によるものか、今後もそれが続くのか、その点についてはなお検討してまいりたい、かように考えております。
  63. 保岡興治

    ○保岡委員 やはり大島つむぎに限らず、こういった伝統的な零細な企業が打撃を受ける輸入というものも今後出てくると思います。したがって、大蔵省当局も、やはりそういったものの個別的な輸入数の確保ということには、今後とも御努力をぜひお願いを申し上げたいと思います。  それから通産当局に、関税その他でもなかなか貿易上規制できないということになりますと、輸入制限ということも考えられるのではないかと思うのですが、そういったことについて対処のしかたがあるかどうか、お伺いをしたいと思います。
  64. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘の輸入制限につきましては、貿易全体からする観点あるいは他製品への波及あるいは資源問題を含めまして、国際協調といったような観点から慎重に検討する必要があるかと思います。ただ、まだわが国は加入を表明いたしておりませんが、昨年末実質的に妥結を見ました繊維の多国間協定の中にも、かなりシビアな要件がついてはおりますが、セーフガード条項も入っております。もちろんいま申し上げたような観点から軽々に発動すべきではないと思います。  いずれにいたしましても、やはり先ほど来お話が出ておりますように、大島つむぎについての内外の実情を十分に把握するということがまず先決だと思います。さような点から、私のほうといたしましては、インボイス統計をことしの一月からつむぎにつきましても細分して、月別に輸入数量が確認できるように手続を改めるべく準備をいたしておりますし、あるいはその間必要とあれば国内の関係業界から事情を聴取するとか、あるいは現地を視察するとか、状況によりまして韓国の大島つむぎの生産状況、こういったものにつきましても精査いたしたい、かように考えております。
  65. 保岡興治

    ○保岡委員 いま局長から御答弁いただいた点、まさに地元が火急のこととして望んでいることであります。ぜひよろしくお願いを申し上げます。  それから公正取引委員会のほうにお伺いをいたしますけれども、韓国つむぎに、本場大島とか、奄美大島つむぎとか、こういう名前を冠して輸入をしてはならないという取り扱いをすることになったという関税当局のお話があったわけでございますけれども、単に大島つむぎと書いてある韓国つむぎについては、何らかの国内販売の点からの規制ができないか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  66. 利部脩二

    ○利部説明員 ただいま御指摘の韓国で製造され、あるいは一部だけ国内で製造されましたものでも、実質的に韓国で製造されました大島つむぎに、韓国で製造された旨が明示されていない場合には、公正取引委員会で所管しております景品表示法に触れることになります。景品表示法第四条第三号の規定に基づきまして、昨年十月十六日に、商品の原産国に関する不当な表示を指定する、そういう措置をとりまして、これが本年の五月一日から施行されることになります。したがいまして、五月一日以後は、御指摘のようなものは景品表示法に触れるものとして取り締まることになります。
  67. 保岡興治

    ○保岡委員 そうすると、もう一点伺いたいと思うのでありますが、韓国つむぎと銘打って販売している韓国で生産されたつむぎについて国内販売の規制ができないかどうか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  68. 利部脩二

    ○利部説明員 いまのような御指摘の点でございますが、韓国産であることが明示されておりまして、それがつむぎというものに値するものである限りは景品表示法には触れないことになります。
  69. 保岡興治

    ○保岡委員 そうすると、もう韓国つむぎと書いてあって、その名のとおりのものであれば、国内法上販売の取り締まりはできない、こういうことになりますと、やはり外国との関係もたいへん大事で慎重にやらなければなりませんが、先ほど申し上げたようなあの隔絶外海離島で十六万も人口のおる大島の経済をささえておる大島つむぎがつぶれてしまう。つぶれてしまっては何にもならないので、やはり水ぎわの規制というものが相当重要で緊急であるということになると思います。そういった意味で、先ほど来熱心な御答弁をいただいて感謝をしているわけでありますが、ぜひよろしくお願いを申し上げます。  なお、先ほどデパートのことをお話ししたわけでございますが、今後こういうことがたびたび出てくると、まがいものを売ったり、あるいは不当に比較をしたりという不正な取引もあるいは予想されるわけであります。そういった意味で、このデパートは藤井大丸という京都のデパートでありますが、このデパートをはじめ、そういった点があれば、そのつど事情を聞いていただいて、その状況の把握をして、適切な指導をしていただきたいと思うのですが、この点について通産当局にお伺いをしたいと思います。
  70. 森下元晴

    ○森下政府委員 この件につきましては早急に調査をいたしたいと思います。よく御趣旨を体しまして、奄美大島における大島つむぎの保護育成のためにつとめていきたいと思っております。
  71. 保岡興治

    ○保岡委員 たいへんありがとうございました。  質問を終わります。
  72. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 関連質疑の申し出がありますので、これを許します。加藤清二君。
  73. 加藤清二

    加藤(清二)委員 お許しを得まして、ただいま保岡さんの質問に関連して、二、三点だけ御質問を申し上げたいと存じます。  保岡さんの伝統工芸を守りたい、郷土の産業を守りたいという切々たる訴え、私、感激して聞いておりましたのですが、実はこのことは、かく申し上げておりまする私が、本委員会で何度申し上げたかわからないことなんです。同時に予算委員会でも、韓国に対して、有償無償八億ドル、プラス四億ドルの補償が行なわれるときに、あの時点において何度もこのことは警告を発しておいたことなんです。同時に、その当時の大臣は、すべて口をそろえて、ごもっともでございまするから、これに対して適当な処置をいたしますとお答えになっている。しかし、その後一度も対策は立てられておりません。  そのゆえにこそ、大島もさることながら、しぼりのごときは、もう全国消費の八割は韓国ものに化けてしまっておる。京都の西陣がまたしかりなんです。つむぎの場合も村山はつぶれたという。田中総理大臣の郷里の十日町のつむぎもそうなんです。結城のつむぎもまたしかりなんです。ほとんど壊滅寸前になっている。したがって、私は要点として、第一、いま保岡さんからも提案がありました関税の問題、第二、数量制限の問題、第三、産出国の明示、この三つについて何度も申し上げたのです。特に数量制限に至っては、アメリカが日本の繊維を制限するということをのまざるを得ないとするならば、その道理がよろしいとするならば、返す刀で発展途上国から追い上げてきている日本への輸入を同じ原理でもって制限をすべきであるということを宮澤通産大臣、田中通産大臣にもちゃんと申し入れがしてある。書面をもって申し入れがしてある。努力いたしますとお答えになっている。いまだにそれが行なわれていない。国籍を明らかにする問題については、もう公取の委員長が何代もかわりました。何代も前から同じことを言われておる。  しからば、せめて日本のしぼりや日本の大島の反末に、これが本物の日本ものであるという表示をしてはいかがかという提案をしたところ、それが独禁法に触れるからいけないということで、名古屋の公取の出張所はこれを禁止した。そういうばかげたことはあり得ないと、この席で再質問に立ちましたところ、ごもっともでございまするから、検討し、努力しというお答えがあったままになっておる。  なぜ私は国籍を明らかにしなければならないかといえば、いま保岡さんからも話がありましたが、デパートではうその表示をしている。公取、よく聞いてもらいたい。その証拠を申し上げましょう。たとえば韓国しぼり、日本オール消費の約八割は韓国ものです。韓国産と表示のしてあるしぼりがデパートで一個でも売られておりますか。私はここへ実物を持ってきて見せて、さあ区別してごらんなさいというところまでやったのです。公取の委員長さえ区別ができない。通産大臣でさえ区別ができない。消費者が区別できるはずがない。うそのものが売られていることは、朝鮮ノリ、これと同じことなんです。日本ものに化けておる。したがって結果はどうか。消費者がにせものをかまされて、質のよろしい日本しぼりや日本つむぎの評判までが悪くなっておる、こういう事実がある。  もう一度念を押しておきます。輸入商だけがもうけて、はっきりいえば、二社五綿、伊藤忠、丸紅、江商、岩井産業等々がもうけて、国民がにせものをかまされて、いまや育てなければならぬといっている日本の伝統産業が壊滅に瀕している。この具体的事実はきのうきょうではございません。しぼりはもう十年も前から始まっている。次が西陣です。次が大島なんです。大島ももう村山はつぶれました。こういう具体的事実をつかんでも、なお政府、公取はそれについて適当な処置ができないとなれば、怠慢以外の何ものでもない。したがって、もう一度申し上げます。関税の問題、数量制限の問題、国籍を明らかにする問題等々について、検討を進めた結果、でき得るならば今国会中に御答弁を願いたい。  以上です。
  74. 森下元晴

    ○森下政府委員 加藤先生からは、十年来たびたびこの点につきましては御指摘いただきました。ただいまの御発言の内容、われわれ意を体しまして、特に奄美大島のつむぎ、その他の繊維製品保護育成のためにつとめていきたい。また、この国会中におきまして、ただいま御発言のありました資料、通産関係必ず整えて御報告させていただきます。
  75. 田中六助

    ○田中(六)委員長代理 野間友一君。
  76. 野間友一

    野間委員 本法案については私も提案者になっておりますので、主として運用等の面について政府にお伺いをしたいと思うのです。  伝統的工芸品産業については、現在きわめて多面的で重要な問題を持っております。先ほどもいろいろ出ておりましたけれども、たとえば労働力の確保の問題、原材料確保の問題、流通過程の整備、大企業等の支配排除の問題、それから外国からの類似した競合商品の流入の問題です。これは単に通産行政にとどまらずに、政府として抜本的にこれらの問題について考え、対処していかなければならない。これらの問題については、現在まで政府の施策はほとんどないにひとしい、そういう状態が続けられてきた。  そこで、議員立法ということで私どもは超党派でこれを提案しておるわけでありますけれども、いま申し上げた幾つかの問題等について、これらを抜本的に検討して解決をはかる方向で積極的に進める、こういう姿勢があるのかないのか、まずお伺いしたいと思います。     〔田中(六)委員長代理退席、委員長着席〕
  77. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま御指摘になりました諸点につきまして、本法案提案ということを契機にいたしまして、前向きに対処いたしたいと考えております。
  78. 野間友一

    野間委員 指定の問題についてお尋ねをしたいと思います。  法案の第二条第一項、通産大臣審議会の意見を聞いて指定する、さらに同条三項において、通産大臣に対して都道府県知事を経由して申し出ることができる、こういうふうにわれわれは仕組みをつくったわけでありますけれども、これについて大臣の指定、それから申し出による指定、これに対しては全く差別をせずにと申しますか、平等に扱う。これは特に予算関係がありますので、抜けたものについて申し出があるといった場合も平等に慎重に扱う、こういう態度で臨むのが当然だと思いますけれども、この点確認しておきたいと思います。
  79. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま御指摘の線で取り扱いたいと考えております。
  80. 野間友一

    野間委員 指定についてあと一点お聞きしますけれども、この指定手続上審議会の果たす役割りが非常に大きい。そこでこの審議会の構成について学識経験者云々の条文があるわけですけれども、業界の代表あるいは実際に生産に携わっている職人の代表の意見、こういうのを広く正確に反映させる、こういうことがどうしても必要になってくるわけであります。そういう意味におきまして審議会の構成メンバー、これらに熟練労働者、職人の代表あるいは業界の代表というものをぜひ加えるべきであると私どもは考えますけれども、これについて政府側ひとつ答弁願いたいと思います。
  81. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 審議会の構成につきましては、本法実施されるまでに十分検討いたしたいと考えておりますが、御指摘のように、一般消費者と申しますか、国民のほかに、産地の業界を代表する人を取り入れたい、また公正中立な意見が出ますように、学識経験者も参加していただきたいと考えております。
  82. 野間友一

    野間委員 現地の熟練した宝のような従業員、これをぜひ加えるべきだということを重ねて要望しておきます。  それからこの審議会に対しまして、個々の事業者からの意見の提出があった場合、これを検討するというような体制も組むべきでないかというふうに考えますけれども、この点について、このような措置をするような審議会にしてほしい、こう思いますけれども、通産省、この点についてお答え願いたいと思います。
  83. 森下元晴

    ○森下政府委員 広く意見を聞くべきであると思っております。ただいま先生指摘のように、そういう方々の御意見が十分反映できるようにいたしたいと思っております。
  84. 野間友一

    野間委員 次に、振興のための施策について若干のお尋ねをするわけですけれども、技能者の確保ですね、これがいまきわめて深刻な事態に立ち至っておる、非常に重要な問題であるということは先ほどからもいろいろと出ておりましたけれども、京都でやられておるように、一定年数以上の熟練労働者、これに対しては国から年に一定額の功労金を出す、こういうようなことをぜひやる必要がある、このように思うのです。この法案作成の過程において、その点についていろいろ論議をいたしました。その結果四条の中で、たとえば一号それから八号、特に八号の場合、「老齢者である従事者、技術に熟練した従事者その他の従事者の福利厚生に関する事項」この中に当然含まれるべきだというふうに私は考えているわけです。四十九年度の予算の中には、残念ながらこれがないようですけれども、ぜひこれを積極的に検討し、取り上げるというような用意があるのかないのか、通産省にお聞きしたいと思います。
  85. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま御指摘になりました老齢で、また熟練の従事者に対する対策をどうするかということは、第四条の八号に、振興計画内容として取り上げられておるわけでございます。この問題は、また一面からいたしますと後継者育成対策にもつながる問題であるかとも私は考えておるわけでございますので、そういった観点から、当方としてもいろいろ調査の上、審議会の場で前向きに検討していただきたい、かように考えております。
  86. 野間友一

    野間委員 ぜひこの点は、地方自治体でもやっておることですから、国としてこの実現のために審議会で積極的にそれを提起してもらって実現できるように強く要望しておきます。  次に、原材料確保の問題についてお聞きします。  近来、生糸あるいは木材、竹材それからウルシ、農産物とかあるいは林産物である原料が異常に不足しておる。このことが伝統的工芸品産業、これの振興にとって大きなネックになっておるということは言うまでもないことであります。特に、たとえば私の出身地である和歌山におきまして、ベラ釣りの釣りざおがあるわけですね。これは橋本市においてあるわけですけれども、ここでは国有林へ入りましてその材料を切ってくるわけですが、林野庁がなかなか——入ることは入れておるわけでありますけれども、いろんな手続を要求しまして、手続してから二カ月も三カ月もかからなければ山に入れない、あるいはこれはかなり精選された原材料ということになりますと、それがだんだん枯渇していく。大体同様のものが、全国にどこにどういうものがあるかというようなことも含めまして、これらう原材料不足、これの原材料確保について、国は積極的にこの法案の意を体してやらなければならない、こういうふうに思うわけです。これについてひとつ前向きの答弁をぜひお願いしたいと思います。
  87. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 伝統工芸産業原材料といたしましては、一般的に天然のものが多いという実情でございます。かような天然原材料につきましては、その円滑な調達をはかる必要がございます。さような観点から、政府といたしましては今後天然原材料の自給状況あるいは賦存状況といったものを調査した上、審議会の場で前向きに検討してまいりたいと考えております。
  88. 野間友一

    野間委員 そこで一つ具体的なお願いなんですが、いま指摘を申し上げた釣りざおのシノダケですね。これについて農林省のほうに、もしそういう障害があるなら、これを積極的に産業振興するという点から、原材料確保の面において支障のないようにしたい、こういう調査をして、要請をしていただきたい、こう思いますけれども、いかがですか。
  89. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいまお答えいたしました作業の一環としてその問題も取り上げたい、必要に応じては関係省庁にも申し入れをいたしたいと思います。
  90. 野間友一

    野間委員 次に、原材料の価格の問題についてお聞きしますけれども、先ほど申し上げたように原材料が非常に不足しておる。同時に価格の値上がりが著しいということは言うまでもないことであります。そこで原材料についての価格の推移、これらを調査して、そして異常な値上がりがあったような場合には、特に念入りの調査をした上で、行政指導等によってその価格の引き下げをはかる、こういう方向をぜひとるべきだというふうに思いますけれども、この点について答弁願いたいと思います。
  91. 森下元晴

    ○森下政府委員 原材料の購入は、コストとまた売り値等で非常に大きな影響を及ぼすものでございます。そういうことで、先ほどお話ございましたシノダケその他木竹、こういうものは、たとえば国有林でございますと地場産業育成のために特売の規定があるように私聞いておりまして、そういう面で特売方法等によって原材料が安く入って、そしてその産業が育成されるように、そういう面でも農林省と相談して、この法の趣旨が十分生かせるように努力をしていきたいと思っております。
  92. 野間友一

    野間委員 特に私の知っている一つの例にジャカード用の紙の値上がりがひどいということを聞いておるわけです。これなど製紙会社のほうを調べてみますと、千載一遇の値上げというようなことも私ども調査では明らかになっているわけです。そこで、これが非常に値上がりしますと、現にいま申し上げたようにやっているわけですが、これによって原材料の入手が非常に困難である、こういう事態が京都では起こっておる。これが織り屋さんにしてもあるいは紋彫り屋さん、これらにしても、いま非常に深刻な事態におとしいれられておるわけです。これらについてぜひ一度現地に当たって調査していただきたい。これは地元と申しますか、京都からの要望もありますので、また私もいろいろ御指示したいと思いますので、ぜひ調査していただきたいと思いますが、いかがですか。
  93. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 実情調査をいたしました上で、必要とあらば行政指導も講じたいと考えます。
  94. 野間友一

    野間委員 次に、基金の問題についてお聞きしたいと思います。  現在、幾つかの事業団体において振興基金を設置し、または設置しようとしていま動いているところがずいぶんあるわけですね。ところがその事業者が、その基金に出損金を出しましても、これは損金勘定にはならない、多大な税金がかかるということで非常に困っておるわけです。不況対策などでこれは個人に還元されるものでありますから、大蔵省のほうではこれはだめなん、だ、こういうことがいわれておるわけです。私たちもこの法案を練る段階で、基金制度の問題についてかなり検討したわけでありますけれども、これについても、その審議会の中で、伝統的工芸産業振興するという観点から、基金制度を積極的に取り上げて、そして税制上の措置がとれるように、ぜひ審議の素材にしていただきたい、このことを要望したいと思いますけれども、これについてお答え願いたいと思います。
  95. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘のように、業界で市況安定のためにそういった基金構想を持っておるということ自体は非常にいいことかと思いますが、ただ税法上の問題になりますといろいろな制約がございまして、ただいま先生が御指摘になりましたように、たとえば積み立て金として出した金を拠出した企業がまた請求することができるというような場合には、税法上いまのところ損金扱いしておらないといったことが実情かと思います。ただ、いろんな具体的な構想、それぞれケースごとに若干の差異があってしかるべきかと思いますし、そういった各般の基金構想を参考にいたしまして、審議会の場で検討することはお約束してもいいかと思います。
  96. 野間友一

    野間委員 次に、大島つむぎの話もございましたけれども、輸入品の問題ですね。私も大島つむぎの場合、これについて業界のいろいろな方に聞いてみますと、最近ずっとこの問題を大々的に取り上げて輸入規制を要求しておる。これは保岡委員のほうからも話がありました。これはまさに業界の危急存亡にかかわる重要な問題であります。このような場合、つまり外国からの酷似、類似した輸入品によって業界の存立が脅かされる、こういう場合には、これらの輸入品に対して輸入の規制とかあるいは関税の問題、こういう手だてをしなければならぬと思うのです。これについてはガットとかいろいろな問題がありまして、非常にむずかしい問題があることは私も承知した上で聞いておるわけですけれども、これらについても審議会の中で積極的に、どうすれば伝統的工芸産業を守れるかという観点から討議し、そしてこれらの明るい展望を出していただきたい、このことも要望したいと思いますけれども、お答え願いたいと思います。
  97. 森下元晴

    ○森下政府委員 外圧によりまして伝統産業が非常に衰退していく、これは憂慮すべき事態でございまして、このためには関税を含めまして税制の問題、また金融の問題、そしてまた今回御提案いただいております伝統的工芸品産業振興に関する法律、こういう立法によって保護していきたい、このように思っております。先ほど渡辺先生からも御指摘ございましたけれども、流通との関係伝統工芸はいわゆる工業でございまして物をつくり出す、その次にはいわゆる商業の流通という点にわたらなければいけない、そういう問題もあると私は思います。だから、この工業から商業にわたる過程において、りっぱにつくられたものができるだけ報われるような価格で消費者の手に渡らなければいけない。そういうような問題と、それからいま申し上げましたような外国からの非常なダンピング的な輸入によってこれが侵されるというような心配もありますので、あわせて保護のためにつとめていきたい、このように思っております。
  98. 野間友一

    野間委員 最後に、自治体に対する援助の問題についてお伺いをしたいと思うのです。  事業団体がこの認定を受けて振興計画を進めようとしても、自治体のほうで何の受け入れ体制、準備もないということでは実効性が乏しいということは申し上げるまでもないことであります。また、この産業がその地方に根づいておる地場産業である、こういう点からしても、自治体の援助とかあるいは指導、この体制がどうしても必要になってくるわけであります。ところが現段階では、この点についても京都府など一部を除いては、ほとんどのところで実のある施策が行なわれていないというのが現状なんです。この点で、自治体で積極的な施策を進めるためには、これらに対する財政的な裏づけ、援助がどうしても必要になってぐる、これは明らかであります。ところが四十九年度の予算を見ましても、産業振興のために自治体へ援助するというものが何もないわけであります。かえって指定された事業団体ができると、自治体における財政の圧迫が生ずる、そういう点から自治体があまり熱を入れない、こういうこともやはり予測しなければならぬと思うのですね。この点において、自治体に対して何らかの形で財源を援助する、こういうことがどうしても必要になってくるわけですけれども、これをぜひ援助をしてほしい、こういう強い要望も自治体では起こっております。これについて通産省考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  99. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘のとおり、現状では地方自治体に対して積極的な援助措置と申しますか、国からの手を差し伸べてはおりませんが、ただ昨今、自治体としても非常に熱心にこの問題に取り組む姿勢を示してきておるというのが実情でございます。ただ、地方自治体に対する財政援助等につきましては、これは大蔵当局との関係もございますので、われわれとしても引き続いて折衝いたしたい、かように考えております。
  100. 野間友一

    野間委員 ぜひこれは必要です。各地方自治体は、いまのお話にもありましたけれども、かなり熱意を示しておるということなんで、この点についてぜひこれが実現するように、われわれ法案をつくった段階でも、そういうことも含めていろいろ討議をしたわけでありますから、ひとつ積極的に大蔵省に働きかけてがんばるということを最後にお答え願って、私の質問を終わりたいと思います。
  101. 森下元晴

    ○森下政府委員 御趣旨を体しまして最大の努力をいたします。
  102. 野間友一

    野間委員 終わります。
  103. 濱野清吾

    濱野委員長 松尾信人君。
  104. 松尾信人

    ○松尾委員 さきに当委員会で伝統工芸産業の現地視察というのを行なったわけであります。県とか業界はこの振興法案に多大の関心を示しまして、一日も早くこの法案の成立を望んでおる、こういう実感を持って私帰ってきたわけであります。それで、この法律実施の前提としまして、法案の要綱というものをわかりやすく周知徹底せしめる必要がある、このように思うのであります。これは地方の都道府県、またあるいは業界に対しましてもそういう必要があると思うのでありますけれども、その点についてどのように考えていらっしゃいますか。
  105. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 法律が成立いたしました暁には、前向きに周知徹底の説明会、あるいはパンフレットの作成等を考えたいと思います。
  106. 松尾信人

    ○松尾委員 よく教えてあげませんと、これは運営上いろいろ問題が起こります。非常に関心が深いということでありますので、もう自分のところが指定されるのだろうというような気持ちを持っているわけですよ。ですから、非常にそのような期待も大きいということでありますが、伝統工芸産業とは具体的にどんなものか。これは第二条に指定の基準がございます。しかし、もっとわかりやすくというか、くだいた、ぱっとわかるというようなものが必要であろうと思うのでありますけれども、これはいかがでしょう。
  107. 板川正吾

    板川議員 松尾委員にお答えいたしますが、伝統工芸産業というのは、ここの第二条にその指定要件が書かれているとおりでありますが、具体的に申し上げますと、従来伝統工芸産業というものは何かというはっきりした定義というものはないのであります。ただ、それらの産業の持つ歴史や性格から、大体次のような形態であろうというふうにわれわれ考えております。  それは第一は、徳川の末期から明治維新当時に引き継がれておるような歴史的なもの、それから生産は手工業技術が基礎となっているもの、製品は生産地的な特色を強く持っておる、それから日本文化や地域生活に密着した消費財として生産されており、労働集約的な家内工業の生産形態を続けてきておる、また流通関係には保守的な取引経営形態が持続されておって、中小零細経営でなかなか近代化に順応していかない、さらに地縁性が強い、その地域地場産業といいますか、地縁性が強く、しかもそれが全国に散在している、それぞれ産地を形成しておって閉鎖的な傾向を持っておるとともに、内部では分業組織が発達をして、専門化と産地内の総合化が見られる、独自の流通組織と流通業界がある、こういうような特性といいますか、そういうものを持っておるものの中で、二条の指定基準に合うものを審議会の意見を聞いて通産大臣指定をするという形になろうかと思います。  それから、先ほどの野間委員お話の中にもありましたように、この伝統工芸産業というのは、いわばお国自慢の地場産業であります。ですから、これもこの法律が通れば、そういうお国自慢の伝統的な工芸産業をやっている地域では、この法律の成立を歓迎して、そしてなるべく早く認定を受け、振興計画を立て、この法律振興の基準に乗っていこう、こういう形になるだろうと私は期待しておる次第です。
  108. 松尾信人

    ○松尾委員 次は原材料の問題でございますが、どうも現地に参りますると、口をそろえて、原材料がだんだん手に入りにくくなったと言う。原材料の転換のためのいろいろな開発もやっておりますし、成功した事例もありますけれども、どうしてもこれが国内では手に入らないというようなものもあります。たとえば、これは長崎県の例でありますけれども、べっこう材としてのタイマイでございますね、これが資源枯渇を防止する、このような見地から国際条約によりまして、その生体とべっこうの取引が規制されようとしておるわけであります。野生動植物の取引に関する条約、こういうもので規制を受けようとしておるわけでありますけれども、この内容がおわかりであれば簡単に要領よく説明願いたい。これは政府のほうにお願いしたい。
  109. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 野生動植物の取引規制条約につきましては、これが実施に移される場合に、大西洋岸のタイマイの取引につきましては、学術的目的等の例外を除いては実質的に商業的取引は禁止になります。太平洋産のものにつきましては、輸出国の輸出許可があれば商業的取引が認められるということでございまして、本邦のタイマイはいままで過半数を大西洋岸から輸入しておりますので、もしこの条約が実施に移される場合には、太平洋岸から全量輸入するといった仕入れ地域の転換をはかる必要があるかと考えます。
  110. 松尾信人

    ○松尾委員 いまお答えがありましたとおり、キューバ、パナマ、これが主要な供給国でありまして、これが大西洋の地域になるわけですね。でありますから、これをやみくもにとるというようなことはこの条約の規制にかかると思うのでありますけれども、この業界考え方は、それでありますから、むしろ養殖をやろう、タイマイのふ化、養殖技術を開発いたしまして、そして養殖事業及び放流の事業を推進する必要がある、このように考えまして、いまそういう検討の段階に入っているわけであります。それでありますから、こういうふ化を促進する、それで養殖をする、放流をするというような事柄がこの条約の規制に触れるのかどうかということが一点と、やみくもにとるのではなく資源をふやす、そしてこちらで必要とするものは養殖する、これはどうですか。
  111. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 養殖事業は本条約の適用除外対象になっております。
  112. 松尾信人

    ○松尾委員 そうなりますと、これは非常に大々的な調査を必要とするし、この業界だけでそういう事業がはたしてできるかということになりますと、これは非常にむずかしい問題であります。べっこう業界政府指導助成を非常に強く要望をしておるわけであります。そういう点から見ますると、そのような天然の資材、原材料、こういうものに対する研究とか助成予算は、この振興法案の中の予算に組むわけにはまいらないと思うのであります。農林省等の所管庁の予算の中にこれを組んでいかないといけないのではないか、こう思うのでありますけれども、こういう事業に対する政府助成に対する考え方とあわせてやろうとするならば、予算的な問題をどのように今後考えていくか、この点いかがでありますか、政府にお願いいたします。
  113. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 一般的に申しましても、伝統的工芸産業で使用いたします天然の原材料が不足状態にあるということも大きな問題の一つでございます。したがいまして、そういった天然の原材料につきまして実態調査の上、あるいは状況によりましては賦存状況等も調査いたしまして審議会の場で検討いたしたい。先生指摘のタイマイの養殖事業につきましてもそういった検討の一環として研究をいたしたい。また、必要があれば関係省庁とも緊密に連絡をとりながら助成措置も検討いたしたい、かように考えております。
  114. 松尾信人

    ○松尾委員 これは必要があればという段階ではなくて、そのようにしなくてはもう非常に枯渇する、こういうわけでありますから、これはしっかり早急に対策を立てられまして、四十九年度の予算でかりに無理とすれば、来年度の予算できちっと組んでいくというふうになされるように私は強く要請しておきます。  それから助成措置としての伝統的工芸品産業特別貸付制度というような制度をつくろうという考えのようであります。これは認定を受けた振興計画主体——協同組合等及びその構成員である事業者に対し、設備、土地、建物その他の施設等を取得するために必要な設備資金及び運転資金を貸し付ける、このような内容でありまして、それぞれ国民金融公庫、中小企業金融公庫、合計四十億の財投からの貸し付けワクが設けられておるわけであります。それは一応けっこうと思うのでありますが、いま金融情勢が非常にきびしい、そういう中でまた個人の事業者に例をとりますると、同じ事業をやっておってもその中で格差があるといういろいろなことがありまして、はたしてうまく金が借りられるかどうか、協同組合等であれば比較的スムーズに出るのか、個人業者に対しては非常にきびしい条件で選別されていくのではないかという心配をするわけでありますけれども、そういう点に対する政府の配慮はどうなっておりますか。
  115. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 先生がただいま御指摘になった資金の問題は二つの点を含んでおるかと思います。一つは、ここに新しく特別貸付制度を実施したいという四十億の金額の問題と、いま一つは景況の変化に応じましていわゆる年末ないしは年度末金融をどうするか、その二つの問題があるかと存じます。  前者の制度金融につきましては、まず四十九年度は初年度でございますし、それぞれの産地におきまして十全なる振興計画をつくる、あるいは関係の県、市町村が積極的にこれに助成するといったようなことが実を結びまして、いよいよ指定を受け、振興計画実施するという段階において必要とする金をこの四十億から出そうというわけでございますから、初年度といたしましてはまずまずこの程度で何とかなるのじゃなかろうか。ただ年度末金融的なものにつきましては、これとはまた別途に対策を立てると申しますか、資金措置、金融措置を講じていく必要があると考えております。
  116. 松尾信人

    ○松尾委員 まあ年度末は別に考える。それで楽に借りられるかどうか、きびしい選別を受けやしないかということを私は心配しているわけでありますから、その点を一つお答え願うと同時に、この資金ワクの内容を見ますると、それぞれ両金融公庫も構造改善等のワクのうちからというようになっておるわけでありまして、本来の伝統工芸産業に対する投資ワクはないわけですね。ですから、もともとの構造改善等のワクの資金というものがフルに使われてまいりますると、こちらにせっかく設けた資金ワクというものがはたして確保されるのか。もともとの事業ワクでありますから、そっちのほうがフルに使われると、こちらのほうにはもうございませんというようなかっこうになるのじゃないかということを心配するわけでありますけれども、どうですか。
  117. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 まず金融にあたって審査その他が非常にシビアでないかという御趣旨でございますが、これはやはり国の金を貸すわけでございますから、その債権の確保といった立場からの限界は、やはりある程度やむを得ないんじゃないかと思いますが、ただ必要以上に煩瑣な手続をとるとか、あるいは何度も呼び出しをかけるとかいったような点につきましては、関係の金融機関に対してもわれわれは協力を依頼いたしておきたいと思います。  それから第二番目の構造改善等のワクの中であるならばよそで使ってしまうのじゃなかろうかというごもっともな御心配でございますが、こういった点につきましてはわれわれもできるだけ前広に、どの程度の金を必要とするかということを国民金融公庫なり中小企業金融公庫と密接に連絡をとりながら、少なくともわれわれとしてはここにある四十億、三十億と十億でございますが、このワクが他に持っていかれないように、事前によく連絡をとっていきたいと考えております。
  118. 松尾信人

    ○松尾委員 これで終わりでありますけれども、他に持っていかれるというようなものでなくて、もともとよそのものをこちらである程度流用しようというようなそういう観点が、私の思うところでは強いのですよ。ですから、伝統工芸のワクなんだというワクはないから、もともとのワクが全部いったらこちらは心配だ、こう言っているわけですから、これをあなたはこちらをとります、確保しますとおっしゃいますが、そういくかどうかということですね。いけばけっこうですよ。その一言をお答え願って、私の質問を終わりたいと思います。
  119. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘のとおり、広いワクの中でございますから最小限三十億と十億のワクを確保すると同時に、必要とあらばさらにその他のワクから、構造改善等のワクの中ではございますが、その他の部分から活用するように努力いたしたいと考えております。
  120. 松尾信人

    ○松尾委員 質問を終わります。
  121. 濱野清吾

    濱野委員長 次回は、来たる三月十二日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時散会