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1974-04-05 第72回国会 衆議院 社会労働委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月五日(金曜日)     午前十時十八分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 斉藤滋与史君 理事 葉梨 信行君    理事 山口 敏夫君 理事 枝村 要作君    理事 川俣健二郎君 理事 石母田 達君       加藤 紘一君    粕谷  茂君       瓦   力君    住  栄作君       田川 誠一君    田中  覚君       戸井田三郎君    羽生田 進君       粟山 ひで君    阿部喜男君       大原  亨君    島本 虎三君       田口 一男君    田邊  誠君       村山 富市君    山本 政弘君       大橋 敏雄君    坂口  力君       小宮 武喜君  出席国務大臣         労 働 大 臣 長谷川 峻君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      茂串  俊君         人事院事務総局         任用局長    大塚 順七君         人事院事務総局         給与局長    茨木  広君         人事院事務総局         職員局長    中村  博君         総理府人事局長 皆川 迪夫君         労働政務次官  菅波  茂君         労働省労政局長 道正 邦彦君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省労働基準         局賃金福祉部長 大坪健一郎君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         労働省職業安定         局失業対策部長 佐藤 嘉一君         建設大臣官房長 高橋 弘篤君  委員外出席者         経済企画庁長官         官房参事官   佐々木孝男君         大蔵省主計局主         計官      梅澤 節男君         大蔵省主税局税         制第一課長   伊豫田敏雄君         大蔵省銀行局銀         行課長     清水  汪君         通商産業省産業         政策局企業行動         課長      児玉 幸治君         郵政省郵務局次         長       守住 有信君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 四月五日  辞任         補欠選任   大原  亨君     阿部喜男君 同日  辞任         補欠選任   阿部喜男君     大原  亨君     ————————————— 四月四日  労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律  案(内閣提出第五八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案  (内閣提出第七三号)  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 野原正勝

    野原委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阿部喜男君。
  3. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 郵政省お見えになっていますね。お伺いしますが、私の記憶に間違いがなければ、たしか昭和二十四年にいわゆるドッジ・プランというものが日本に勧告をされまして、これに基づいて日本の経済安定九原則というものをつくって、そして均衡予算をつくらなければならないということから行政機関職員定員法というものを設けて、大幅な行政整理が行なわれました。それに引き続いて、昭和二十七年だったと思いますけれども、第二回目の行政整理が行なわれまして、実はこのときに郵政省が、この行政機関職員定員法による定員の削減のために、いわゆる郵便物運送委託法を悪用してというと語弊がありますが、これを悪用して、当時辺陬の地にあって郵便集配人駐在させておった、そういう区域請負に切りかえてしまった。したがって郵政職員であって、そういう辺陬の地で駐在郵便集配に携わっておった職員方々は、この切りかえによって請負人にされて、そして郵便配達、取り集めの業務に携わることになっていた。このためにこの方々が今日非常に劣悪な労働条件のもとに苦しんでおる。そういうふうに聞いておりますが、お伺いしたいのは、当時請負集配区に切りかえられた者は全国にどのくらいあったのかお伺いしたいのです。
  4. 守住有信

    守住説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、昭和二十七年の第二次行政整理で行なわれました請負区は、約千区足らずと記憶いたしております。したがいまして千人足らずでございます。
  5. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 ところで、この昭和二十八年七月三十日に法律第九十四号をもって郵便物運送委託法の一部が改正をせられました。このときに附帯決議がつけられまして、その第二項には、「郵便業務国家専掌とする本旨にかんがみ、委託業務は漸次出来得る限り縮少すること。就中通常郵便物の取集、配達等請負とすることは、特例の場合を除き避くべきこと」という決議が付されております。したがって、あれから二十数年、相当数のものが縮小されたものと判断をされますが、今日なお請負集配区になっておる数は幾らぐらいございますか。
  6. 守住有信

    守住説明員 昭和二十七年に約千人足らずの方が、請負集配になられた方が出たわけでございますが、それを俗称切りかえ者というふうに称しておりますが、その切りかえ者の方で現在もなお請負集配区に担当していただいておる方々は百十九人と記憶いたしております。  なお、この切りかえ者の問題だけでなくて、この請負集配区のシステムの問題は、まず明治三十三年ごろに発生がさかのぼるのではないかと思います。「逓信事業史」によりますと、日清戦争後国力が充実してまいりまして、通信力がふえて、それまでいわゆる郵便あて所配達というものがなかなか山間僻地までに及ばなかった、それを普及させるということで、三十三年ごろから非常に僻遠の地におきまして、まるまる本務者と申しますか、郵便局員を一人配置することが経済的でないとか、あるいは効率的でないというふうな非常に僻遠の地あるいはまた集配郵便局から非常に離れておりまして、郵便局まで郵便物を取りにきて、あるいは持ち戻り郵便物郵便局まで届けるというふうな条件が整わないような、郵便局から非常に離れた地域駐在請負区というふうな形で明治以降なされておりまして、先生指摘のとおり、さらにそれが昭和二十七年に約千区足らず拡大させたわけでございます。
  7. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 二十数年たっておりますから、身分上当時郵政職員から請負人に切りかえられた方々の数が減ってくるのはこれは当然ですけれども、この附帯決議趣旨はそうではなくて、もう一ぺん読みますよ。「郵便業務国家専掌とする本旨にかんがみ、」これは縮小していきなさい、こう規定してある。特に通常郵便物の取り集めや配達請負とすることは、特例の場合を除いては避けなさい、こういう決議になっておるわけです。したがって私がお伺いしたいのは、その区の数が減ったかどうかなんです。
  8. 守住有信

    守住説明員 大体横ばいでございまして、約百区足らずぐらいは減っておりますが、大体横ばいでございます。
  9. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 これは大体附帯決議趣旨に十分沿い得ておるとは思えないのですが、現行、切りかえた者が約千足らずですね。それから切りかえる以前のものからずっとあったはずですから、現在全部で幾つありますか。
  10. 守住有信

    守住説明員 現在ちょうど千五百程度でございます。
  11. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そうすると総計千五百、特にそのうちで二十七年に切りかえたものが一千、しかもその数はほとんど横ばいである。そうすれば一体、この昭和二十八年の附帯決議について郵政省はどういう理解を持っておるのか承りたいのです。
  12. 守住有信

    守住説明員 特に問題になっておりましたその切りかえ者につきまして、これを近隣の郵便局等に欠員が出た場合採用するというふうなやり方は逐次とってまいりましたが、やはり請負区といたしましてはそういう経済性効率性等の問題もございますので、ただし附帯決議もあるのでこれを拡大はしない、いろいろくふう、努力をしながら、漸次ではございますけれども、多少の数ではございましたけれども機会あるたびに縮小のほうに持っていくということでございます。
  13. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 守住次長は熊本においでになりましたから事情ば詳しいと思うのですが、私は一つ実例をあげます。  私のところの別府郵便局というのがございますが、ここに駐在集配区があって請負に切りかえられました。これは集配区が三つあります。したがって、三人の郵政職員が当時行政機関職員定員法関係から郵政当局に、私は内容を知っていますが、泣く泣くだまされたのです。いまやめれば退職手当を上げます、請負料はいまの給料とほとんど変わりませんというようなことでだまされて、それぞれが請負集配人にかわったわけです。この区域別府郵便局から九・八キロの地域です。当時は自動車が、一日に三回ぐらいしかバスが通っていなかったけれども、いまこの付近は別府観光地のメッカとして有名な城島高原ホテルとかあるいは志高高原ホテルとか、たくさんのレジャー施設ができ上がって、十分ごとバスが発着をしておるのです。しかも、郵便局からバイクに乗って、九・八キロですから、時速三十キロでバイクで行っても二十分あればここは行き着くのです。ここに三つの請負区があるのです。これは一つの例ですよ。一例ですが、この附帯決議趣旨からするならば、かかるところは当然もとの直配の、直配達郵便区に切りかえられてしかるべきものであるのに、二十数年もたった今日なおこの附帯決議趣旨が生がされていない。これは単に切りかえられた人たち身分だけじゃないのですよ、その地域郵便を享便しておる方々にとってもこれは問題のある点なんですが、なぜそんなに怠っておるのですか。いま一例をあげましたが、どうですか。
  14. 守住有信

    守住説明員 御承知のとおり郵便事業は、集配に関しましては全国に、交通困難な地域で、いわゆる郵便規則でいう八十五条適用地域、これが約一万世帯ございますが、それを除きましては、あらゆる地域に点在しますところの人家に対しまして、あて所配達ということでくまなくサービスをやっておるわけでございますが、なお御承知のとおり最近の大都市への人口、労働集中とか近郊発展地問題等で、きびしい定員事情の中で実はそれに最大の重点を置いておるというのが実情でございまして、非常に先生指摘のとおりの問題もあるというふうに十分理解しておるわけでございます。もっと個別の把握、認識もしなければいかぬと思っておりますけれども、なかなか大都市では東京周辺とか首都圏近畿圏中部圏その他のところに重点を置かざるを得ないというのが実は実情であったわけでございます。
  15. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 その点はよくわかりました。したがって、いま私が申し上げましたようなところも現実に存在をするわけですから、まずこの請負区を直轄の郵便局事業区域に編入していくような努力をひとつお願いをしたいと思います。  いまの次長お話の中では、やはりこれは定員事情で非常に困難なのだ、そういうようなおことばがございましたが、第一点目の将来に向けてこの請負区をなお直配達区域にかえていくということと、二点目に定員事情がやっぱりきびしいのかどうか、その点を御説明願いたいのです。
  16. 守住有信

    守住説明員 別増定員といたしまして、四十八年度も郵便関係で千名ちょっとだったと思います。それももっぱら大都市を持ちますところの普通局のほうの外務員職員の増員に充てられておるのが実情でございます。なおまた私どもといたしましては、労働時間短縮だとか週休二日制の導入、交代制勤務郵便事業でございますので、その中でどうやって効率的にしてかつ労働条件を向上させていくかということをくふうをいたしておりますが、そういう問題も実は控えておるという次第でございます。
  17. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 さらに重ねて伺いますけれども、結局この請負集配区というものを置かなければならない一つ事情定員事情にある、そう理解してよろしゅうございますね。
  18. 守住有信

    守住説明員 実はそれだけではございませんで、その請負区の状況と申しますか、たとえば世帯数が二十世帯とか三十世帯とかいうふうな通信力の低い、かつ地形で申しましても一つ山を越して向こうの一つの集落と申しますか、そういう地形によりますところの部分もまだ残っておりますわけで、さらにはまた郵便局駐在請負と申しますか、その特定地域の中に居住する方に請負をお願いいたしまして、離れたような山奥だとか離島とかいろいろあるわけでございますので、そういう客観的な状況の中での経済的効率性、まるまる一人の定員といいますか、を置くほどはないというふうな状況のところもございますわけでございます。
  19. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 いろいろなケースがあると思うのです。しかしいま私が例をあげました別府請負区の場合には、当時請負区にしなければならなかったときの情勢に比較をすれば、格段の郊外の発展のために、もはやこういうところが集配請負区であるなんというようなばかなことはあり得ないという状況になっておるが、なおかつ請負区にしておかなければならないというのは定員事情があるのですか、こうお伺いしておるわけです。
  20. 守住有信

    守住説明員 そういう面も、もちろんございます。
  21. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 次に伺いますが、いわゆる郵便集配請負人と申しましょうか、この請負をなさりている方々業務内容について大綱をお知らせ願いたいのです。
  22. 守住有信

    守住説明員 その名の示すとおり、郵便物の取り集めと配達特定受け持ち地域について行なっております。
  23. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 郵便物配達と取り集めを特定地域について行なっておるということは、その業務内容一般郵政職員郵便配達業務に携わる方々とほとんど変わりはない、こう理解してよろしゅうございますね。
  24. 守住有信

    守住説明員 一般郵便局局員といたしましては、特に特定局の場合、単にその郵便物の取り集め、配達を受理するだけでなくて、管理者側指揮命令によりまして郵便運送あるいは駅との郵便物の授受を行ないましたり、また場合によっては貯金、保険業務ども総合服務の中で行なっておるわけでございます。またこの請負人方々はいわゆる雇用関係ではございませんで、自分都合が悪くて休まなければならぬ場合は代人を立てることもございますし、そういう点で違っておるというふうに見ております。
  25. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 これは雇用関係であるかないかはあとで少し議論をさしてもらいたいと思っておりますけれども、少なくとも携わっておる仕事内容は、たとえば一つ郵便局の第何区かの郵便配達をするという任務を与えられて、八時間なら八時間の間その仕事をする郵政職員の行なう仕事と、この請負集配人の行なう仕事内容に変わりがあるかないか、こう伺っておるのです。
  26. 守住有信

    守住説明員 これは個別の作業ということにつきましては同じ面があるというふうに思っておりますが、ただ、いま申し上げましたような時間の拘束性がないとか、あるいは特定の区だけを担当いたしまして、他の区とか他の仕事をやることもないという点では違っております。
  27. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 続いて伺いますが、この郵便集配請負人労働条件と申しますか、おたくのほうでそういうふうに言っていなければほかのことばを使ってもけっこうですが、まず賃金は、いわゆる請負料はどういう基準によってきめられておるのですか。
  28. 守住有信

    守住説明員 請負料はまず基本料がございまして、そのほかに特別加算料、それから特にこの請負者方々は非常に積雪の多い山奥のほうが多いわけでございますので、そういう冬の問題もいろいろ考えまして、そういう冬の対策といたしましての付加料的なものを加えております。
  29. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 その特別加算額ですか、これは期末手当に該当するものだと思いますが、寒冷地手当に該当するものもあるようですが、そうでなくてあなたのほうでいう請負契約基本料と申しますか、この算定は何を基準にして行なわれておりますか。
  30. 守住有信

    守住説明員 大体それを受け持ちますところの郵便局のほうで、その作業時間がどれくらいかかるであろうかというふうなことも考慮に置きまして、なるべく条件のいいというふうな考慮のもとにきめております。
  31. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 あなたは郵務局次長さんだからあまり詳しくないようですから私が教えてあげますが、この算定は一日八時間、一カ月三十日間働くことを基準にして算定しておるはずですが、どうですか。
  32. 守住有信

    守住説明員 そのとおりでございます。時間が短い日については別でございます。
  33. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 したがって、一日八時間を基準にしておるから、八時間以上のときには当然それよりも高くなる。八時間以下の場合には、その時間に応じて請負料は安くなる。結局時間によって労働力の対価としての契約料が定められておる。そのことは間違いがないでしょう。
  34. 守住有信

    守住説明員 その作業時間を一つのものさしとしてきめております。
  35. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そこで請負料は、いま私が申し上げました一日八時間、一カ月三十日働くとして、月額幾らになっておりますか。
  36. 守住有信

    守住説明員 基本料は現在の状況で六万七千三百円、年間のものを平均いたしますと、大体八万円であります。
  37. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 基本料現行、四十八年にきめたものが大体そういうことですね。七万何ぼになっていますね。これを普通の同じような仕事をしておる郵便局職員賃金、一日七時間二十分、一カ月二十六日に換算をしてみますと、これは大体五万二千円ぐらいにしかならないのですね。どうですか。
  38. 守住有信

    守住説明員 たしかそのようだと思っております。
  39. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 この請負集配区に働いておる方々平均勤続年数平均年齢幾らになりますか。
  40. 守住有信

    守住説明員 非常に長い方で三十年というような方もあるようでございますが、平均いたしますと、十年から十五年の間ぐらいではなかろうかと思います。
  41. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 大体正確なお答えのようで、十年以上が大体平均になるようでございます。そうすると十年以上勤続しておるのと同じ条件にありながら、請負料が五万二千円にしかならないということは、中学校を卒業してすぐ郵政職員になった方々の、本俸と調整額を含めた初任給と同じなんです。一番安い給料で十年以上も経験のある方々を使っておる、こういう理屈になるから、これは非常に条件が悪いということについて、理解がいきますか。
  42. 守住有信

    守住説明員 国家公務員ではございませんけれども、それと比較いたしまして、さらに私どもも広く労働市場と申しますか、たとえば運輸、建設業の屋外軽作業等労働省の御調査等によりましてデータを横でながめておるわけでございますが、なおいろいろ今後ともさらに努力していかなければならぬというふうに痛感いたしております。
  43. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 いま基本料について、いわゆる一般労働者の場合の給与月額みたいなものをお伺いしたのですが、その次、さっき次長がおっしゃいましたが、特別加算、これは期末手当に該当するものだと思いますが、一般職員の場合は年間何カ月分か、この集配請負人の場合の特別加算は何カ月分を支給しておるか、お伺いしたい。
  44. 守住有信

    守住説明員 国家公務員郵便局員の場合は五・二カ月、それからこの場合は二カ月でございます。
  45. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 これも五・二カ月と二カ月ですから、非常に低いということが明らかになりました。しかも請負料そのものが非常に安いわけですから、絶対額はなお低いという理屈になります。これでさえ五・二カ月分と二カ月分という差があるわけですね。  次に、寒冷地手当、これは一般職員比較してどのくらい出しておりますか。
  46. 守住有信

    守住説明員 これはほぼ見合ったものだというふうに見ております。
  47. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 その次に、退職手当、これはいまは解約一時金というようなことばが使われておるようですけれども、どういう条件のときに、どれほどの額を出しておりますか。
  48. 守住有信

    守住説明員 請負契約でございますので、退職手当という制度はございませんわけですけれども郵政省都合による解約の場合に限って、いろいろ段階がございますが、最高四カ月分でございます。
  49. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 これも私、職員の場合と比較したいのですけれども、時間の都合もありますから比較はいたしませんが、まずこれは郵政省都合によって解約したときに限って若干の解約一時金を出しておるのであって、本人が死亡した場合とか、あるいは本人都合退職をするというような場合には、全然支給はしていないということになりますか。
  50. 守住有信

    守住説明員 この請負契約のあれが一年間でございまして、その後双方に異議がなければ自動的に三年間継続するという契約になっております。なおそのほかに、業務上の災害によりまして病気にかかったり、あるいはその結果おなくなりになったりというふうな者に対しまして、一時金の制度を設けております。
  51. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 いま私は退職手当に相当するものをお伺いしておるわけですが、いわゆる郵政省都合によって解約した者以外は、本人都合退職したり、本人が死亡した場合には、退職手当と見合うようなものは一切出していないと理解していいのですかと聞いているのです。
  52. 守住有信

    守住説明員 そのとおりでございます。
  53. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 これも事例を申し上げておきますが、宮崎では、十五年間にわたってこの集配請負人としてお働きになった方が、病気でなくなられた。何の補償もないのです。何の補償もないから、翌日から家族が路頭に迷う。何のために十数年間集配請負人として郵政事業に貢献してきたのか、全く気の毒で、やむを得ず同僚が集まって、広く一般職員に呼びかけて資金カンパをしなければならない。北海道でも同じように集配請負人の方が、これは火災で焼け死にされました。残された遺族には一銭の金もないわけです。これは非常に残酷な取り扱いだと思いますが、どうでしょうか。これはひとつ労働大臣、こういうことがあっていいと思いますか。どうお考えですか。
  54. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 阿部先生の御質問をお伺いするうちに、自分の地方の山の中で、雪の中を歩いている、こういう人々をいま思い出しておるわけです。そして、その中には、何と二十年、三十年やって、まじめにやっておるということで県の表彰を受けている方もあります。そういう方々の、法律上というか給与上の実態というものをただいまお伺いして、胸を打たれているものであります。
  55. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 郵務局次長もいまの労働大臣お話をよく耳にとめておいていただきたいと思います。  次に、各種の休暇はどういうふうになっておりますか。簡単に説明してください。
  56. 守住有信

    守住説明員 いわゆる週休に当たるようなものでございますけれども、月のうちに四日はそれぞれの指定する日に休める。多少減額はございますけれども、休めるということに相なっております。ほかの労働者的な年次有給休暇というふうなものはございません。
  57. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そのほかに特別休暇というのがございますね。たとえばおとうさんがなくなったとか、それから祖先の法要を営むとか、特別休暇という制度がございますね。この制度はこれらの集配請負人方々にも適用はされておるようですね。ただ契約基本料が、さっき申し上げましたように一日八時間、一カ月三十日働くという基本によって契約されておるから、そういう制度があって休んでも、休んだらその日の契約金は全部減額される。したがって、これは名目上あるけれども、実質的には有給休暇はゼロである、そういうことになるでしょう。
  58. 守住有信

    守住説明員 お話しのとおりでございます。
  59. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 これは労働大臣、どうお考えになりますか。確かに制度としては休んでもようございますとなっておるのです。しかし、契約金が三十日働いたときの契約金になっておるから、一日でも休めばそれだけ減額されていくから五万二千円はさらに少ないものになってくる。こういう非人道的な取り扱いが許されるものでしょうか。どうお考えですか。
  60. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 実情についてはただいま先生の質疑を通じてわかったわけであります。私としますと、ほんとうに一生懸命、しかも大事な郵便物——私のうちは貧乏でしたから、私のおやじも請負をやったのです。ことに電報は、夜中にちょうちんをさげて大きな山を越えて、朝帰ってきてから、私のうちのおやじはとうふをひいたのです。そういう実態の中からあなたのお話をお伺いし、そして山の中にいて、途中で町から用も頼まれ、郵便物配達のほかに相談にあずかるという人たちの生活実態をいまここでお伺いして、実は胸を熱くしておるわけであります。
  61. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 労働大臣、非常に理解のあるおことばをいただきまして恐縮しておりますが、その次に、公務災害補償というのは、さっきあった見舞い金という制度で、これは御本人が公務上負傷された場合、疾病の場合等には見舞い金を出しておる。この内容国家公務員災害補償と大体似たようなものだと思いますが、そういうことですね。
  62. 守住有信

    守住説明員 年金の関係はございませんけれども、一時金としては大体同じであります。
  63. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 被服、郵便集配の器具は貸与されておりますかおりませんか。
  64. 守住有信

    守住説明員 やはり郵便物配達でございますので、そういう被服とか自転車を使用させております。
  65. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 被服、器具は貸与しておる、こういうことでございますね。  その次にお伺いしますが、これは駐在しておるわけですから、郵便物を受け渡ししなければなりませんね。郵便局から、あるいは委託を受けた運送会社、バス会社等がそこまで郵便物を持っていく、そこで受け取らなければならない、その受け渡しの時間はあらかじめ定められているのですか、いないのですか。
  66. 守住有信

    守住説明員 駐在請負の場合、やはり郵便局員とどこで接点を結ぶかという関係がございますものですから、それが非常に時間が乱れて区々にわたっておってはお互いに困ることになりますので、大体そういう標準的なものはきめております。
  67. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 その集配区の中に郵便ポストがある場合には、当然取り集めを行なわなければなりません。取り集めた郵便物をまた取り扱う局に送らなければならない。その授受の時間も定められておりますか。
  68. 守住有信

    守住説明員 やはり、何時ごろというふうな形で標準をきめております。
  69. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 もう一つ、委託契約の中に、郵便物が著しく遅延するような場合にはこういう措置をとれと、幾つかの項目がありますね。郵便物配達について著しく遅延とは、どういうものをさして著しく遅延というのですか。
  70. 守住有信

    守住説明員 何らか不測の事故が起こりまして、その郵便物が翌日とかそれ以降になってしまうというふうな場合には、郵便局のほうへ連絡するわけです。
  71. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そうしますと、まず郵便を受け取る時間がきまっておる。取り集めた郵便を渡す時間がきまっておる。翌日にわたって配達をしてはならないから、その日のうちに配達をしなければならない。おのずから勤務する時間というものは限定されてきますね。どうですか。
  72. 守住有信

    守住説明員 大体そういう傾向はございます。
  73. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それは原則として、何時におまえは郵便を取りに来い、何時には集めた郵便をここに持ってこい、郵便はその日のうちに配達をしてしまいなさいというならば、勤務時間の指定はないというけれども、おのずから勤務時間はきめられたと同じでしょう。  そこでもう一つ、そこのところでお伺いしたいのですが、契約書によりますと、こういうことがありますね。請負者みずからがこれを行なわなければならないとなっております。これも間違いありませんか。
  74. 守住有信

    守住説明員 以前はバス会社等に委託をしまして、そのバス会社などが人を雇いましてやっておったという時代がございまして、それを全部やめましたので、みずから行なう。そして行なえないときには代人を立てまして、そして郵便局のほうへ連絡する、こういうことになっております。
  75. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 請負契約では代人を立てるとなっていないのですよ。みずから行なう。病気その他やむを得ない事由がある場合、これはもう法律以前の問題で、病気をした者を使うわけにいかぬですから、そのときは届け出て、そこを管轄しておる郵便局長が代人を使うのです。ただその場合にも、代人ができるように協力をしてくれという条項がある。協力をしてもらいたいという条項はあるが、その人本人が休むときには必ず代人を立てねばならぬという契約にはなってないはずですよ。どうですか。
  76. 守住有信

    守住説明員 間違っておりました。そのとおりでございます。
  77. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そうするとこれは、この形においては、一般労働者と勤務時間の形から、賃金算定基準から、ほとんど変わらないわけですね。  次に指揮命令関係について。これはいま申し上げた、郵便物の受け渡しの時間がきまっておる。遅滞なく配達せよということがきまっておる。事故があるときには郵便局長に報告をして指示を受けよときまっておる。これは明らかに指揮命令、いわゆる使用従属の関係だと私は思うのですが、これはあなたよりも労働省のほうでしょうね。労働省の方、どうでしょうか。
  78. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 私ども集配請負人の実態、あまり詳しく存じておりませんので、ただいま御質疑を聞いておりまして、それだけで指揮命令、使用従属と言えるかどうか、その点はもう少し実態をよく検討してみたいと考えております。
  79. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 労働省の編さんになる「労働基準法」という本がございますけれども、その労働基準法の第九条の解説がございますがね。もうおわかりと思いますが、大臣もお見えになりますから参考のためにちょっと読み上げますが、いわゆる労働基準法第九条にいう基準法上の労働者という定義についてですけれども、その中の解説の(イ)の項に、「請負労働」という項があります。「民法によれば、請負とは「当事者ノ一方方或仕事ヲ完成スルコトヲ約シ相手方カ其仕事ノ結果ニ対シテ之ニ報酬ヲ与フル」ものであり、それは、労働の給付そのものを契約内容とする雇用——「当事者ノ一方カ相手方ニ対シテ労務ニ服スルコト」——ないし本法にいう労働契約と異なるものとされている。」これはこのとおりでしょう。「したがって、請負契約による下請負人は、たとえ労務に従事することがあっても、本条の労働者となることはない。また、農家又は工場がその事業経営上必要な建物その他の施設を大工に修理させる場合は、一般には請負契約によるので、大工が本条の労働者になることはないが、請負契約によらず、雇用契約によりその事業主と大工との間に使用従属関係があると認められる場合は、第九条の労働者である。」ここからですよ。「また、形式上は請負のような形をとっていても、その実体において使用従属関係が認められるときは、当該関係労働関係であり、当該請負人は本条の労働者であることになる。このような問題は、」云々とありまして、そして「請負労働者供給事業かの区別の基準を具体的に示しており、この場合にも参考になると考えられる。結局、その判断にあたっては、当該請負人が独立の事業主として、事業計画、損益計算、危険負担の主体となっているか、作業遂行にあたって他から指揮監督を受けないか又は器具資材等の調達は誰が当っているか等を検討せねばならず、更に当該事業に関する沿革的又は社会経済的検討により、当該請負人と他との使用従属関係があるかどうかが検討されなければならないであろう。請負の場合で報酬が定められている場合にそれが賃金の性格をもっているかどうかという点も、当該関係請負関係労働関係かを判断する場合の一要素たりうるものではあるが、当該報酬が出来高払になっているということは、必ずしも、当該関係労働関係でないとする理由にはならない。たとえば、新聞配給所と配達人との関係について判断した例規において「配達部数に応じて報酬を与えているのは、単に賃金の支払形態が請負制となっているだけであって、一般に配給所と配達人との間には、使用従属関係が存在する場合が通例である」」というふうにずっと解説をされております。  そのほかに、もう一つ最高裁の判例が出ておりますね。この最高裁の判例では、「労働者として労基法の保護を受けうるか否かは、その契約の名目に限らず、労務提供の形態を実質的に観察して決しなければならない。」こういうふうに最高裁の判例は出ておるようでございます。  そこで本件を考えてみますのに、まず私は、郵政省指揮命令、使用従属の関係を結んでおるというふうにこれは認めなければならない。その賃金の形態においても、請負という名目は使っているが、これは明らかにこの算出の基準等からして賃金の性格を持つものである。器具は郵政省が提供しておる。勤務時間についても、先ほど来論議しましたように、かなり制約をされた勤務時間になっておる。このようになってきますと、これは最高裁の判例あるいは労働省が提起をしておる労働基準法の解説からながめてみましても、これは明らかに私は労働基準法上の労働者である、こう考えるべきだ、そう理解すべきだと思うんですが、その点は大臣いかがでしょうか。
  80. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 ちょっと技術的なこととあれですから、どうぞひとつ政府委員のほうに……。   〔委員長退席、斉藤(滋)委員長代理着席〕
  81. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 労働基準法で労働者といいますものは、先生もいまお述べになりましたように第九条によりまして、第八条の「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」ということに相なっております。この解釈につきましては、契約の形式等だけではなくて、実体によって判断すべきであるということ、それから、実体判断のいろいろな基準等につきましては、いま先生がお読みになりました内容のような解釈を私どもとっておりますことは、御指摘のとおりでございます。  それで、ただいま問題になっておりますこの郵便配達集配請負人の方でございますが、確かに、仕事内容等、労働者と同様な仕事内容をしている面もあるわけでございますが、先ほどお読みになりました労働者かどうかの認定の幾つかの基準のうち、私どもも詳細は必ずしも存じておりませんが、郵政省等からいままで聞いておりましたところによりますと、勤務時間等について拘束がないといったような問題、あるいは業務についての指揮命令というようなものが直接の職員と同じようにはないというような問題あるいは代替性の問題についても、ただいまの御質疑を聞いておりまして、かなりいままで郵政省から聞いておりましたことと違う実体があるような気がいたしましたが、従来は代替性があるんだというふうに聞いておったわけでございます。そういうような点は、労働関係にあまりなじまない特徴もあるかと思いますが、実体的にそれがどうであるかという点は、ただいまの御質疑等も伺っておりましたので、さらに私どものほうで実体をよく調べましてこれは判断すべきものであろう、かように考えるわけでございます。
  82. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 大体大きく分けて、大臣、労働基準法上の労働者であるかどうかという認定にあたっては、まずその沿革というものが一つありますね。沿革は、先ほど申し上げましたように、本来同じ仕事をしておった郵政職員が、行政機関職員定員法というものが出てきたために請負人に切りかえられたというのが、沿革になるわけだと思います  次に、報酬の性格が二点目になると思いますが、確かに名目上は基本契約料というようなことばを使っておりますけれども、それは先ほど来申し上げましたように、いわゆる一日八時間、一カ月三十日働くということによって算定をされておるということになれば、これは明らかに労働の対価だということにならざるを得ないと思います。  その次に、指揮命令関係ですけれども、これはもう請負契約を申し上げればたくさんあるわけですが、何かがあった場合にはほとんどすべて所属をするその郵便局長の指示を受けなければならない。たとえば休暇一日もらうのでも、届け出て、そして指揮を受けて、承認を得なければ休まれない。もちろん休めば給料をくれませんが、それでさえなおかつその指示に従わなければ休めない、こういう契約内容になっております。  事業計画については、何ら本人が自主的に計画するものは一切ない、全部郵便局の指示によって運行されておる、こういうことになります。  それから損益計算は、これは全然ありません。これは郵政省の立場だけで、本人に損益計算などということはあり得ないわけです。  その次に、危険負担ですが、労働者の場合の危険負担の一番大きいのは、さっき言った公務上の災害等が一番大きい危険になると思うのです。これは見舞い金という制度郵政省が負担することになっている。ここに私はいささか郵政省の善意の片りんを見るわけですけれども、やはりあまりむごいことはせられぬという気があるんだろうと思うのですが、これから見ても、危険負担を本人がしていないんですね。一番大きい危険負担を本人がしていないということは、逆に言えば、労働者であるということになってくるわけだと思うのです。  次に、器具、資材の関係がありますが、これも全部、被服から集配のかばん、自転車に至るまで郵政省が貸与をしている。こうなってきますと、これが基準法上の労働者でないと言い得る根拠はまずないと申し上げていいのではないか。  そこで、実はきょうは法制局のほうにも御出席願っているわけですが、いままでの議論を聞いて、法制局はどういう見解をおとりになりましょうか。
  83. 茂串俊

    ○茂串政府委員 このいわゆる郵便集配請負人労働基準法上の労働者に当たるかどうかという非常にむずかしい問題でございまして、私ども実は実体を最近になって初めて伺ったわけでありますし、また、きょうの先生の御質問あるいはまた政府委員の答弁を通じまして、おぼろげながらその実体がわかってきたわけでございますが、なお法律的に由しますると、先ほど労働基準局長からも御答弁がありましたように、まず第一には、契約の名目にとらわれなくてもよろしい、その実体によって判定すべきであるということは、これはもう間違いないと思います。  それから第二には、先生も言われました、いわゆる八条事業との関係におきまして使用従属関係に立っておるかどうかという点でございますが、この点につきましては、いろいろと先例もございますし、また、労働省のほうの従来の判定のケースもいろいろあろうかと思うのでございます。そういった点とのかね合いもあろうかと思いますので、なお労働省のほうでよく実体を見きわめていただきました上で、そういった先例等も勘案しながら結論を出すべきものであるというふうに私ども考えておりまして、この席上でイエスかノーかという御返事はちょっとしかねますので、御了承願いたいと思います。
  84. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そういう点で私、政府の立場もわからないわけではありませんから……。  ただ、しかし、こういう事例について、たとえば九州電力の電気の針を調べる検針の請負人たちが、これは今度はやはり労働組合法上の労働者であるという地方労働委員会の幾つかの認定が出ております。これはもう労働省は御承知と思いますけれども。それから、東北のほう、福島だったと思いますが、NHKの集金請負人方々、これも労働組合法上の労働者であるという労働委員会の決定がなされておるところでございますが、これはもう基準法上の労働者ということになれば当然労働組合法上の労働者であることは、疑義を持たないと思うのです。前段はありますが、この点は労働省、どうでしょうかね。
  85. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 基準法上の労働者労働組合法上の労働者、これはそれぞれ、基準法は第九条できまっておりますし、労働組合法上は第三条できまっておりまして、必ずしも法の目的からいって同じでないわけでございます。たとえて申しますと、失業者のような場合には、労働組合法上の労働者にはなりますが、基準法は直接の使用従属関係がないということで、基準法上の労働者ではないというような問題もございまして、これはまた別個のそれぞれの法の関係から判断されるべきものであると考えております。
  86. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 理論上はあなたのおっしゃるように、別個の立場から判断をすべき性格の問題です。それは私はわかります。しかし、原則的にいいますと、労働組合法上の労働者というほうが、ある意味では非常に範囲が広いし、たとえばいまでもこの集配請負人方々が全逓信労働組合という組合に労働者として加盟しておるという実態があるわけですよ。そういう意味ではかなりゆるやかなものであるということも言えると思いますから、それは当然いろいろな違う立場から——法が違うわけですからね。労働組合法三条と基準法九条とは、これは違うわけです。それはわかりますけれども、常識的に考えて当然、労働基準法上の労働者であり、現にその方々の何人かの集団があって、同じような仕事をしておるとするならば、これは当然労組法上の労働者たり得ると思いますけれども、これは労働省に直接見解を承ってもしかたがない。おそらく実際問題としては労働委員会の場でこれを議論しなければならない問題だと思いますから、それ以上聞きませんが、大体私はそう理解をしております。そういう理解でいいですか。
  87. 道正邦彦

    ○道正政府委員 組合法上の労働者基本的には基準法上の労働者でございまして、先生も御案内のとおり、それに失業者が加わるということが違うわけでございます。
  88. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それで、もう時間がなくなりましたからまず郵政省のお考えを承りたいのですが、行政の手続、いろいろございますから、いま直ちに、これは基準法上の労働者であり労組法上の労働者だからそういう手続をせよとか、そういうことが困難なことは私は十分承知しております。しかし、いままでの議論の中から、これはやはり基準法上の労働者であり労働組合法上の労働者に該当するものだという理解に立って、ひとつこの方々の処遇の改善について——承ればせっかく全逓信労働組合との間でいろいろお話し合いもあるようでございますから、この話し合いを積み重ねながら、こういう困難な仕事に携わっている方々の処遇の改善、特に身分上の問題について、早い時期に結論を出していただくような努力をお願いしたいと思いますが、郵政当局のお考え、どうでしょうか。
  89. 守住有信

    守住説明員 私どもも、そういう僻遠の地でいろいろと郵便集配仕事に御苦労をいただいておる方々ばかりでございますので、特にこの処遇と申しますか、待遇につきましては、最近、仲裁裁定のべースアップ率よりも高い二〇数%ということで上げてまいりましたが、なおこの処遇全体につきましていろいろ積極的に努力してまいりたい、こう思っております。(「身分」と呼ぶ者あり)  身分の問題はちょっとこの席で明確に御答弁しかねますけれども、いずれにいたしましても、その待遇につきまして増額をはかっていきたいと思っております。
  90. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 身分関係については郵政省だけで直接直ちに回答はできにくい問題もあろうと思いますけれども、これはいままでの議論を通じて当然労働省等と話し合いがあるものと思われますので、特に大臣、いままでの議論を聞いて御理解いただけたと思いますから、十分前向きでこれらの方々身分基準法上、労働法上の労働者として確立をされるように、労働省も前向きの検討と協議における指導といいましょうか、そういうものについて格段の配意を願いたいと思いますので、大臣の所信を承って質問を終わりたいと思います。   〔斉藤(滋)委員長代理退席、委員長着席〕
  91. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 実態並びに法律関係、そういうものをここでお伺いしたことでございますけれども、私もそういう人々を知っております。これは、全人格的に郵政事業に協力し、また全人格的にその歩く地方の方々に御信用いただいておる。尊敬され、その上に責任を遂行されている。しかも長いことその人の実績というものが地方の方々におわかりいただいておる。この方々の処遇の問題は、先生が御指摘になり、また私のほうの役所の者が御答弁したようなことがございますので、これはまさにお互いの問題として郵政省ともお話などを申し上げ、できる限りの善処をしたいという気持ちだけ御理解いただきたいと思います。
  92. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 終わります。
  93. 野原正勝

    野原委員長 山本政弘君。
  94. 山本政弘

    ○山本(政)委員 きょうは、政府の完全週休二日制に対する基本的な姿勢というものを実はお伺いしたいわけでありますけれども、最近、週休二日制について関心がとみに高まっております。GNP世界第二位、経済大国、そういう発展の過程の中で労働者の低賃金、長時間労働、そういうものがあるだろうし、そして合理化というものが進行している。あるいはノルマの割り当てがあるだろうし、売り上げ競争やそういうものもあるだろうと思うのですね。週休二日制というのは、労働省のほうでこれを言っているわけでありますけれども労働者の福祉の向上については、所得の面が一つあるだろうと思います。もう一つ労働時間の問題があるだろうと思います。その中で休日とかあるいは生活時間といいますか、その他労働者全般の改善というものが必要である、こういうことも言われておると思うのですね。そして田中総理が、四十七年の当時の円切り上げ対策の十二項目の中に、重点的に週休二日制というものを取り上げてきておる。しかも、四十七年末の選挙公約においても週休二日制を言明されておる。しかし、現実に見ますと、いまやっている週休二日制については経営主導型といいますか、政府主導型ではないと私は思うのですね。いま私が申し上げる必要もないと思いますが、造船とか電機、鉄鋼、自動車の一部、その中で週休二日制が行なわれておる。しかし多くは交代制、しかも月一回、二回、そして平日の時間延長を伴っておる。あるいは産業のあるいは業種の、企業の格差が大きい、こういう問題があるだろうと思います。特に第三次産業で問題があるのじゃないだろうか、こう思うわけでありますけれども、そういう意味で、どういうふうなお考えをお持ちになっているのか。先般、基準局の賃金福祉部の賃金課長も、積極的に週休二日制については進めていきたいというようなことを日本経済新聞にお書きになっておる。しかし実態は、少なくとも私が先ほど申し上げたように、政府主導型ではないと思うような感じがするのです。そういう意味で、ひとつ基本的にどうお考えになっておるのか、その点をまずお伺いしたいと思うのです。
  95. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 いきさつについては、山本委員のおっしゃるようないきさつなどもございましたけれども週休二日制はこういう時代であるにもかかわらず非常に推進されているところに私たちは歓迎しているものでありまして、ぜひひとつ当初の目的の期間までにこれが実現するように、いろいろな働きかけをやっているわけであります。労働省としては、とにかく産業、企業の実態に応じた労使の話し合いにおいてこれができるように指導、援助につとめているところでありまして、最近特に新聞などもこれに非常に注目されて、いろいろなやり方、実態等々を御推進してもらっていることが、さらにこれを推進するのに役立っているもの、こう思って、将来ともに一そう努力をしてまいりたい、こう思っています。
  96. 山本政弘

    ○山本(政)委員 大臣の御答弁がありましたから申し上げますけれども、ことしの三月一日の「フォト」に労働大臣の対談が出ておりますね。「働きすぎといわれる日本人にも、週休二日制が始まって、全企業の十三%ぐらいに普及してきました。これからは、離職者を出さないためにも、さらに必要になりますね。」というのが大臣のおことばであります。行政指導という話がありましたけれども、ここまで高まっておる週休二日制に対する関心というものを、一体行政指導だけでいいのかどうかという問題が一つあると思うのですね。しかも、私、そういうことを言うことは言い過ぎかもわかりませんけれども、いまの状況から考えれば、労働省週休二日制というものをやったところに対してそれを追認しているという形でしかないと思うのですよ。積極的に一体どう行政指導をなすっているのか、なすっているならばどういうふうになすっているのかということを具体的にお示し願いたいと思うのです。
  97. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 数字のお話がありましたが、だれかと対談したときの私の気分と申しますか、感じ方を申し上げたのですが、あらためて数字を申し上げますと、私のほうの役所で、週休二日制の普及率、規模三十人以上、四十八年、企業数の割合にしますと三〇%となっております。一千人以上のところでは七〇・四%、百人から九百九十九人のところでは四一・三%、三十人から九十九人のところが二四・二%。労働者の数の割合でまいりますと、四十八年五四・七%。その中に、山本先生指摘のように鉄鋼とかそういう大企業の場合ですと、千人以上のところでは八〇・二%、百人から九百九十九人のところでは四六・二%、三十人から九十九人のところは二五・一%、こういうことで、直接指導と行政指導という点についてはいろいろお考えの違いはございますけれども、労使の中に話をさせてこれまでやってもらっている姿、さらにいまから先は、中小企業の場合にはなかなかむずかしゅうございますから、そういうものに対しましては四十九年度の予算で推進するような予算を計上しております。これはひとつ政府委員から答弁させます。
  98. 山本政弘

    ○山本(政)委員 昨年の八月十四日だと思いますが、労働省賃金福祉部の小村専門官というのですが、「週休二日制は総論の段階を終っていまや各論の段階だという認識にあるといえよう。」、こうおっしゃっているのですよ。おっしゃった中身についてはこういうようにちゃんと書いてある、速記をとっているのです。だから、各論に入っているならばもう少し具体的に指導をなすっていいんだろうと思うのですけれども、具体的な指導ということになりますと、労働大臣いまさっきお話がありましたけれども、四十九年度の予算の中に三十一億四千百万円という週休二日制の普及促進と余暇対策ということで予算をおとりになっている。そのうちに助成金として週休二日制についての中小企業集団の自主的な努力に対してやるんだ、こういうことで一億八千三百五十四万円、一集団三十五万円ですか。それじゃお伺いいたしましょう。一集団というのは一体どれぐらいな労働者を対象にしておるのでしょうか。
  99. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 別に労働者幾らというようなことで考えておらないわけでありますが、それぞれの地方によりまして、一つの産地であるとか、あるいは一つ地域の業種集団などによりまして労務改善事業を共同でやって、その中で労働条件の改善をはかっていこうというような事業集団、こういうものをそれぞれの地方の状況に応じまして選定をいたしておるわけでございます。
  100. 山本政弘

    ○山本(政)委員 通産省の方おられますか。——通産省も、ここにあるのですけれども週休二日制には関心をお持ちのようだし、そしてそのことに対して、私は、前向きな考え方をお持ちになっているようだと思うのですけれども、その点についてのお考えをひとつ聞かしていただきたい。
  101. 児玉幸治

    ○児玉説明員 週休二日制の問題につきましては、ただいま先生おっしゃいましたように、私どもたいへんその推進に前向きでございます。  若干古くなりますが、昭和四十六年の五月に、新しい七〇年代の通商産業政策につきまして産業構造審議会の答申をいただきましたが、その中でも、週休二日制の普及ということが大事な課題の一つになっておりまして、自来、私どもはそれが円滑にできるだけ早く普及いたしますようにいろいろ努力をいたしておるわけでございます。
  102. 山本政弘

    ○山本(政)委員 経済企画庁の方おられますか。——来てない。私が申し上げたいのは、三十五万円ということで、一集団に出している。そしてそれを五百集団設定をしたということが、具体的に一体どれだけの成果があがっているんだろうかということを実は聞きたいのですよ。つまり、予算をお組みになったそのことについて、労働省の指導によって一体どういう実績があがっているのかどうか、それを聞かしてほしいのです。
  103. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 この集団につきましては、各県におきまして県の労働部あるいは基準局その他関係労働行政機関が連絡協議会を持ちまして、その選定等につきましてはどういう地域あるいけどういう職種がいいかというようなことを検討いたしまして、それに基づいて業種を選定し、あるいはその他一般に呼びかけまして、週休二日制の普及その他を含めました労務改善をはかっておるわけでございますが、まだそれぞれの集団についてどれだけ進んだか、その中の企業がどれだけ進んだかというようなことを把握しておりませんけれども、主としてそれら集団が対象といたしております中小企業について申しますと、四十七年当時は週休二日制をやっておりますものば全企業の一三%でございましたのが、四十八年には先ほど大臣が申されましたように三〇%まで上がっております。特に中小企業におきましては、四十七年に三十人ないし九十九人で八・八%でありましたものが、四十八年には二四%、労働者の数にいたしますと、三十人ないし九十九人のところで四十七年九・六%であったものが二五%というように、中小企業にも急速に週休二日制が普及しつつある、こういう状況にあるわけでございまして、直接間接そういうような行政指導もこれにあずかって貢献しておるのではないか、かように考えておりますので、今後とも一そうこういうような行政指導を強めたいと思っております。
  104. 山本政弘

    ○山本(政)委員 つまりパーセンテージがふえたというだけではなくて、一体どういう実効があったかということをひとつ具体的に御調査になって私は知らしていただきたいと思うのです。これをひとつお願いしたいと思います。  それから、これはせんだっての新聞でしたね、四十八年一月に発表した外務省の各国における週休二日制と就業時間調査、八十五カ国の調査の中で、国民所得が一人当たり一千ドル以上の国で週休二日制を実施していないのはイスラエル、クウェート、日本の三カ国だけである、こういう話がありました。国際的に見ても、そういう意味では週休二日制というのはもはやほとんどの国が実施をしているといっていい。しかも国内的には、進んでおらないと思われる中小企業が一三%から三〇%に上がってきている。こういうことになりますと、労働省の行政指導ということでなくて——私は決して行政指導がいかぬと言うわけじゃありませんが、内外のそういう情勢に対して一体政府として週休二日制導入についての具体的なスケジュールをお持ちでないのかあるのか、ないというのだったらたいへんおかしな話になると思うのですよ。関心を持ち、そして必要なんだというお話がある、そして行政指導もしているというわけですから。問題は、要するに恵まれた産業とか企業に週休二日制は導入されているけれども、中小企業とかあるいは第三次産業、そういうところはなかなか進んでいかない。逆に言えば、労使の関係の中ではそれをやりましょうと言っているけれども、政府のほうが動かないわけですよ。政府のほうではっきりしないから、労使のほうである程度合意ができておっても、それが前進できないという面があるだろう。しかもたまたまやらなければいかぬというときには、石油危機だとかなんとかいう条件が起きたときには一斉にやらなければいかぬ、こう言うわけですね。政府は声を大きくしてこう言っている。しかしそれがひとつほとぼりがさめてくると、旧態依然としてもとのほうへ戻る、こういうことになっているのじゃないかという気がしてならないわけであります。したがって目下体的なスケジュールを一体どうなさるつもりなんだろうか。公務員あるいは銀行とか証券とか保険、小売りのサービス、そういう点について一体どういうふうにおやりになるのか。行政指導でやりますと言ったって、きわめて抽象的ですよ。ですから具体的なスケジュールというものをひとつお示しをいただきたい。端的に申し上げますと、銀行では合意ができております。「全銀協としては、今般の石油危機を乗り切るため、石油・電力の節約に協力するとともに、完全週休二日制に移行する準備段階として土曜日の集金など外訪活動の廃止、手形の土曜日期日指定回避等、土曜日業務を圧縮する方向で、従来のペースを早め早急に具体的検討に入りたいと考えます。この点については市銀連よりの、かねてからの強い要請とも合致する」、こう言っておるのです。やりたいのだけれども、しかしそれをプッシュする政府のほうが進んでおらぬ、進んでおらぬというよりか、むしろ行政指導という形でお逃げになっておるような気がしてならぬのです。逃げておらぬとおっしゃるのだったら、具体的なスケジュールというものを、いま申し上げた公務員とか、あるいは銀行とか証券とか保険とか、あるいは小売り、サービス、いろいろそれぞれ問題をかかえておるわけでありますから、一体どういうふうにやって具体化をするのかということを、私はやはり聞かせていただきたいと思います。いかがでしょうか。
  105. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 政府全体の計画といたしましては、先生も御承知のように、昨年閣議決定をいたしました経済社会基本計画の中で週休二日制の目標を掲げておるわけでございまして、その中におきましては、計画期間中に大企業の大部分が完全週休二日制に到達する、中小零細企業においてもかなりの程度週休二日制が一般化するようにつとめる、こういうふうになっておるわけでございまして、政府全体としてはそういう目標を掲げて進めておるところでございます。先生指摘のような業種別等々の具体的計画ということでございますが、これにつきましては、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、政府といたしましては、労使の産業、企業の実情に応じた話し合いによってこれを推進していく、こういう方法をとっておりますので、業種別にどの産業がいつまでといったような、そういう計画は持っておらないわけでございますが、先生指摘になりました銀行などにつきましても、最初銀行に対して週休二日制を進めたらどうだということを呼びかけましたのは四十七年、労働省が最初に銀行協会にそういう呼びかけをしましたのがきっかけでございまして、政府としては、そういうような方法を通じまして一そうの努力をしておるところであります。
  106. 山本政弘

    ○山本(政)委員 労働省が銀行協会に呼びかけをしたという話ですが、それではお伺いしましょう。今度財産形成法が上程されるというお話、まあ、されるでしょう。これは労働者のためだということで、あなた方は一昨年——私は多くの疑義があるということでお伺いをいたしました。今度また御質問申し上げたいと思いますが、だけれども労働者のためだということであなた方が法案をおつくりになって、そしてお出しになって、そしてこれを通したわけですね。週休二日制というのは、労働者のためになるものですか、ならないものですか。それだけ聞かせてください。
  107. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 労働者の福祉のためになるものと考えております。
  108. 山本政弘

    ○山本(政)委員 なるものだったらば、財産形成法の場合も、なるものだといってあなた方はお出しになった。そして、あの法案については私も多くの疑義を持っておるから御質問いたしました。なぜそれなら、要するに週休二日制に関しては行政指導をやる、私どもが全銀協に話をしたのだということでお済ましになるのか。それでは、法案としてなぜ御提出にならないのか。計画期間というけれども、計画期間というものは、私は、あなた方が設定したよりも実際はもっと進んできておると思うのですよ。もっと進んできておる。それは労働大臣がおっしゃったように、一三%から三〇%に伸びておるのですから、二倍以上ではありませんか。それならば、そういう趨勢に呼応するなら、ぼくは政府の指導だと思うし、そうして、法制定というものに対して、あるいは法の改正というものに対して踏み切るということが、政府のあるべき態度だ、私はこう思うのです。なぜそのことに対して遅疑逡巡なされておるのか、私には理解ができないのです、労働者のためになると言うのだったら。ためになるかならぬかわからぬ、こう言うのだったら、話は別です。はっきりとためになると言うのならば、私はもっと前向きに進むべきだと思うのですね。しかも、実施をされている人たちの七五%ですか、七十数%の人たちがやはり実施をされてよかった、こう言っておるじゃありませんか。ならば、もっと積極的なアクションというものをおとりになるべきだ、こう思うのですが、大臣、どうでしょうか。
  109. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私、気分的に申し上げますと、何でもかんでも法律をつくって、それでやるというのも一つの手でございますが、一方また法律なしで話し合いでものが片づき、そうしてまた、行政指導することによってそれが推進して目的が達せられるというのも一つの方法だろう、こう思うのです。私は一つ一つのケースについては業種別には詳しくありませんが、いつでしたか、銀行関係労働組合の諸君と話をしたときに、やはり週休二日制の話が、立ち話でしたが出ました。そうしてその諸君に、銀行というところはなかなかむずかしいのじゃないだろうかと申し上げたのです。あなたがさっき言うた手形の問題、いろいろな問題があるのでなかなかたいへんじゃないかと言ったら、その方々は、イギリスの場合においてもほかのところよりは九年間実はかかったとか、おくれましたとか、こういう話などが組合の諸君からも出たようなことでございまして、やはりそれぞれの業種が納得するような形を馴致する情勢というのが必要じゃないかという感じを持っておりまして、いずれにいたしましても、こういうお話などをまた胸の中に入れて、効果のあがるような方法をやっていきたい、こう思っております。
  110. 山本政弘

    ○山本(政)委員 大臣のことばじりをとらえるわけじゃありませんが、労働基準法研究会の報告がまとまっているのですよ。そうしてここには労働時間の短縮、週休二日制の実施が要するに急速に進展した、こう言っているのです。そのあとに、労働時間全般の改善の問題週休二日制の普及促進の問題こういうことについてレポートが出ているわけです。そうして少なくともこれを見た範囲では、ぼくはやらなければいかぬという方向になっていると思うのです。  そこで、ことばじりをとらえるわけじゃありませんけれども、馴致をするというのだけれども、もう馴致をされているのですよ、大勢の方向としては。そうして法改正をしないということだったら、かりにある一定期間を経過した後にこれがほとんどの産業に渡ったときには、法改正をやらないのですか。これはたいへんなことですから、ぼくはお伺いします。法改正をやるのですか、やらぬのですか。必ずしも法改正をやらないでいいというのだったら、これから先たいへんな問題が出てくると思うのです。
  111. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 まだ私どもその法改正云々の問題は考えておりませんけれども、諸外国の例を見ましても、フランスやドイツ、西欧諸国などは週休二日制が非常に進んでいることは御承知のとおりでございますが、これも基準法のような最低労働基準によりまして週休二日制そのものが規定されておるわけではございませんので、やはり慣行として、何年間かの間にそういう状況が非常に進んで今日の状況に相なったわけでございます。私どもが数年前調査いたしたところによりますと、フランスのような最も進んだ国ですら、これは一〇〇%週休二日ではないので、九十何%ということで、やはり中には週休二日でない地方もある。これはやはり法律で一律ということではなしに、社会的な慣行としてそういうものが定着をしておる、こういうふうに承知をいたしておりますので、わが国の場合どうするかという点については、法律上の問題は現在のところまだ全体として考えておらない、先ほど申しましたように、行政指導によって当面推進していきたいと考えております。
  112. 山本政弘

    ○山本(政)委員 私は、法改正にしたって一律に法改正をする必要はない、たとえば中小企業の場合だったらば、場合によっては一カ月の間に二回だけは週二日制をやっていく、それに大臣のおっしゃるような馴致をさしていく、つまり消化をさしていくという形だってあり得るだろうと思うのです。ですから必ずしも法を改正したから全産業、全業種がやるということにはならぬし、ぼくは一向差しつかえないと思う。その点はどうですか。
  113. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 御意見のようないろいろなことが考えられると思うのです。現在のところは、別に私どもまだ法改正について具体的な考え方を持っているわけではないわけでございます。
  114. 山本政弘

    ○山本(政)委員 ですから、ある——あるという言い方は語弊がありますけれども、そういうやり得る産業なり業種なりについて法改正というものをやっていくならば、それが一つの牽引力になるというか、プッシュする力になるといいますか、そういうことになり得るだろうと思うのです。ですから一体それじゃいつごろを目途にして大方の産業なりあるいは業種なりというものをおやりになるつもりなんですか。もうこれは行政指導、行政指導ということで、全産業ひとつおやりなさい、そして一三%から三〇%になり、三〇%から五〇%になればけっこう、けっこうということなんですか、たいへんねちっこいような質問ですけれども。そういうことで追認なすって、時代の趨勢の中でパーセンテージが上がっていきました、こういうふうにおっしゃるつもりなのか。
  115. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 せっかく労使の間にこういうものがだんだん定着し、いないな推進されかけておることでございますから、経済発展計画の中にある五十二年度ですか、そこまでにこういう話し合いの中ででも私は実現するように努力していきたい、こう思っております。
  116. 山本政弘

    ○山本(政)委員 だから、先ほど申し上げたように、五十二年度というのは計画期間でしょう、というのですよ。しかし、実態はそれよりか早く進んできているのじゃないかと私は申し上げているのですよ。大臣はそうおっしゃっているのでしょう、一三%からいまや三〇%。これは中小企業ですよ。大企業は違うのですから、もっと進んでいるわけですからね。つまり大臣のおっしゃったのは、中小企業にしてすら一三%から三〇%にもなっております、こういう言い方だというふうに私は理解したのですよ。そうじゃありませんか。そうしたら、五十二年度というのは私は遠い先のことになると思う。計画期間より少なくても実態が進んでいるんなら、その進んだ実態に即してあなた方がやるべきがほんとうじゃないのですか。何を遅疑逡巡されているのか、私はわからないですよ。だから具体的にどんな御指導をなさるつもりなのか、スケジュールを聞かしてほしいということです。それじゃ五十二年度までに一体どういう具体的なスケジュールをなさるつもりなのか。ただ要するに週休二日制を、できたということで追認することだけではないだろうと思うし、抽象的な行政指導ということだけでは私はおかしいだろうと思う。一歩譲りましょう。ぼくはもういまでもやってほしいし、おそくても来年はやるべきだという考えを持っているんだけれども、五十二年度までにやるというのだったら、どんなスケジュールをおやりになるのですか。一歩譲りますよ。具体的なスケジュールを聞かしてください。障害があるはずがないじゃありませんか。  大蔵省の方、お見えになっていますか。——たとえば最近の新聞、三月三十日です。日本経済新聞。キャッシュディスペンサーというのができた。そしてこれが総数すでに一千台になっているというのですよ。あるいはナイトデポジットというのですか、そういう制度もできている。そうすると、預け入れあるいは引き出しというようなことについても非常に省力化されてきているのですよ。だからそういうこととにらみ合わしていけば、私はある程度の目安というものを労働省としてはもう出すべきだと思うのですね。なぜならば、労働者に対していいことだとおっしゃっているのだから。田中総理も、いいことなら何だってやったらいいじゃないかと本会議で言っているじゃありませんか。最も有能な労働大臣がそんなことをなぜ遅疑逡巡されているのか、ぼくはほんとうにわからないのです。どうです。
  117. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 私どもも、五十二年度までの計画ではございますが、でき得る限りこれを早く実現するようにいたしたい、かように考えております。しかしながら、週休二日制の実施は全体としては非常に推進いたしておりますけれども、その推進の形におきましても、先ほど大臣も企業別に申されましたように、大企業、中小企業で推進の状況が違いますし、また地域あるいは業種によっても、詳細は省略いたしますがかなり違います。例を申し上げてみますと、木材だとか家具だとかそういう業種は非常にまだおくれているというように、地域、業種等によっても違いがございますので、やはりそれはなかなか一斉にというわけにはいかない、それぞれの実態に応じまして推進することが効果的に推進するゆえんだろうと考えております。そこで、特に中小企業を中心といたしまして私ども地方、県ごとに、業種、地域の実態に応じて進めるものは進める、なかなか進めがたいものはその条件整備等についていろいろ指導するといったようなことでその推進をはかっておるところでございます。
  118. 山本政弘

    ○山本(政)委員 どうもはっきりとしたことをおっしゃらないのですけれどもね。  それでは観点を変えましょう。  中央労働基準審議会というのがありますね。ここで時短の小委員会をつくらせてそれから調整をする、そしてその結果に基づいて審議を始める、こういうことではないでしょうか、あなた方のお考えは。ですから、そうすると小委員会ができるまでは中央労働基準審議会というのはそのまま開店休業という形になっている、それで、要するに小委員会のそういう作業並びにその結果というものが出るまでは何もしないということになるんじゃないか。事実私はいまそういうふうになっているんじゃないかという感じがするのですね。だから、小委員会は小委員会として作業をやると一緒に、なぜ中央労働基準審議会は審議会として機能をおやりにならないのだろうか。それは結局、五十二年という設定があるからそれに合わせていけばいいというあなた方のお考えでしかないでしょう。つまり、実際には官庁は実態のおくれた取り組みをやっているんです。実態がおくれているんです。それをあとあと、フォローしていっているにすぎないじゃありませんか、そういう行き方だったら。だからぼくは、中央労働基準審議会一つ見ても、つまりあなた方が積極的にアクションをおとりになるということではないと思うのですね。機運というのは熟しているわけですよ。その点はどうなんです、開店休業という実態は。
  119. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 中央労働基準審議会の時間問題の小委員会というのは、もうすでに昨年から発足をいたしておるわけでございます。この小委員会週休二日だけではなしに、時間短縮など時間問題全般の問題を取り上げて従来からもいろいろ検討をしておられるわけでございますが、やはり時間の問題になりますと、中小零細企業を中心とした業種の特殊な問題などもいろいろございますので、そういう実態を特に問題のあるような零細企業あるいは業種などを中心に正確につかむ必要があるということで、昨年秋以来その小委員会で御検討いただきました調査をするということで、現在調査を進めておるところでございまして、小委員会はそれらの調査結果が出ればまたそれをもとに審議を進められることに相なっておるわけでございます。
  120. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それではお伺いしますが、行政指導をやっているとおっしゃるんだったら、どんな通達を出したり、あるいはどんな文書というものがあるのですか。それをちょっと聞かしてください。
  121. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 通達といたしましては、昨年の一月に事務次官通達といたしまして「週休二日制の普及促進について」という通達を全国の都道府県知事と都道府県労働基準局長に通達いたしております。さらにそれを詳細に具体化いたしましたものといたしまして、昨年の三月には私、基準局長の名前で都道府県知事及び都道府県労働基準局長に通達をいたしておりますし、さらに細部的な事務的な問題につきましては、秋には基準局の賃金福祉部長からも都道府県の基準局長及び都道府県の労働主管部長あての通達等もいたしておるところでございまして、それらによりまして地方に対しても具体的な行政指導、推進の指示をいたし、基準局としてそれをやらせておるところでございます。
  122. 山本政弘

    ○山本(政)委員 だから、昨年の十月ごろから情勢も変わってきているし、ことしに入ってもますます情勢というものは変わっておると思うのですよ。そのことに対してもそれでは通達を出しているのですか。私がお伺いした範囲では、何もそういう情勢の変化についてはお出しになっていないと思うのですよ。あったら知らせてください。
  123. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 昨年十月以降は、いままで詳細な通達を出しておりますので、特に通達はいたしておりませんが、その後の全国労働部長あるいは基準局長合同会議その他で、最近の情勢に応じたいろいろな進め方の指示をいたしております。
  124. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それでは一つだけ聞きます。  五十二年にならないとそういうことについて実施をするお考えはないのか、五十二年まで待たなければならぬわけですか、実態が進んでおっても。それだけでいいですよ。
  125. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 私どもは、五十二年までの計画ではあるが、その期間内にもできるだけ早く実現するように、こういうことで指導をいたしております。
  126. 山本政弘

    ○山本(政)委員 大臣、それでいいですね、できるだけ早くということで。場合によれば来年でもいいわけですね。
  127. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私も、気分的には、日本人というのは働き過ぎる。ここへ週休二日、そしてこれが立法とかというきびしい形ではなくて、行政といいますか、そして労使の話し合いでここまで話が進んでいる、こういうところですから——フランクに申し上げますと、私のところにも、もう週休二日制やめてくれ、時限立法でそいつを廃止してくれなんというようなばかなことを言ってくるのがあるのです。そういう者もあるのです。私はそういう人に向かっては、一、二度会いましたが、まあ雑談の間の話でありましたけれども、そういうときじゃないのだ、いかに自分たちが持っている労働力というもの、あるいは働く諸君、自分が使っている諸君、こういうものを大事にしながら、長く働いてもらうために必要なんだという話などもして、私は、よその国でも法律でこれをやっているところはあまりないんじゃないかというふうに聞いているのです。話し合いでできれば一番いい。そして、いまのような話などが出れば、それをチェックしながらやはりいまの情勢というものを推進していく。  それと、もう一つ問題があるのですよ。せっかく週休二日になりましても、一体子供連れで行って遊ぶところはないんじゃないか。あるいはレクリエーションするところがないじゃないか。これは通産省もやっておりますが、私のほうも今度はそういう施設のほうに目を向けていく裏づけというものがますます必要じゃないかということも感じておりまして、先生が御心配いただいている姿を、私のほうは私のほうの形において心配しているというところも御理解いただきたいと思います。
  128. 山本政弘

    ○山本(政)委員 こういうことなんですよ。週休二日制を実施されている労働者のほうで実施をしてよかったという者があるならば、何もそのことに対して私は労働省が御心配なさる必要はないと思うのです。やられているほうが、いいというのですから。そうでしょう。だから、それは先の御心配というのは、ぼくはなさる必要はない。なぜ行政指導がいかぬかということは、つまり、せっかく合意に達しているにもかかわらず、要するに中央の政府の決定待ちだということに籍口してそれが進んでおらぬから、ぼくは行政指導ということに限界があるんじゃないか、もう一歩政府としては進んでいいんじゃないか、こういうことを申し上げているのです。ですから、ある意味では行政指導というのは悪弊を残すことになるのですよ。一つの産業あるいは一つの企業がそういうことによって、いや、政府が踏み切っていないから、私のところはちょっと待ってくれ、こういうことを労使の交渉の中で言っている現実があるのですよ。そうしたら進むべきものが進まぬではないかというのが、私の言いたいことなんです。それを具体的に進めていくということができるならば、それにこしたことはありませんよ。私はそういうことを申し上げているんです。ですから、なるべく早く実施をしたいという大臣のおことばは私はそれなりに理解できますが、同時に、いま申し上げたことについて十分なひとつ配慮というものをやってほしいと思うのですね。そうしないとどうにもなりません。進むべきものがそこでチェックされる、こういうことになると思うのですね。  大蔵省の方、お見えになっていますか。——週休二日制が戸惑っているということについては、一つは銀行法の改正の問題が私はあると思うのですね。その点について、労働大臣のほうは、早くやれる条件ができたなら早くやりたい、こうおっしゃっているんですね。とすると、大蔵省として銀行法の改正について、しかも早期の改正について取り組まれるという用意はあるのかないのか、それをひとつお聞かせいただきたいのです。
  129. 清水汪

    ○清水説明員 銀行の場合で申しますと、やはり銀行業というものを免許企業としてやっておるわけでございまして、その一番大きな意味合いと申しますか、理由として考えられますことは、やはり一般の国民大衆の預金を取り扱うとか、あるいはすべての経済活動の決済機構の中枢を形成していくということ、したがいまして、国民生活及び産業活動の最も根本的なところに関与している業種であるということがあろうかと思います。したがいまして、具体的には、御承知のとおり銀行法におきまして休日はこれこれということを規定し、それ以外にかってに休むということのないように、そのサービスの提供を確保するという趣旨法律ができていると申し上げられるかと思います。そういうことでございますので、この週休二日制の問題に取り組みます場合にも、やはり、かりにそういうような性格の銀行が土曜日を休業いたしましても、国民生活なりあるいは諸般の経済活動に支障を来たさないというようなそういう前提条件がございませんと、いわばばらばらに銀行が土曜日を休むということになりますと、たいへんに混乱を来たす。あるいはまた、銀行の場合にはどうしても非常に多角的に、そういう預金にしましても現在はかなり多角的な出し入れが行なわれるようになっておりますが、その前に、為替の問題ということになりますと、非常に広範囲にわたって多角的に取引きが動いておるわけでございまして、かつ決済日というようなものが非常に深刻な意味合いを持っていると思います。そういうことでございますので、ばらばらにということ自体も、そのものの性質上なかなか考えにくいということもあろうかと思います。したがいまして、やはり経済活動に混乱がないためには、いまお話の出ておりますような実態面の問題、あるいはさらにそれに加えまして、これは私ども所管ではございませんけれども、たとえば手形法とか小切手法というような、そういう決済の債権債務関係のけじめをつけている法律の規定にも、現在休日の定めがあるわけでございます。そういったものもやはり斉一的に結論が出されないといけないのではないか。したがいまして、事柄そのものにつきましては、私どもも方向としてはけっこうなことだという認識はもちろん持っておるわけでございますが、銀行業の特殊性と申しますか、そういう観点から申しまして、現在のところで、銀行法だけを先に直してやれば済むという問題ではやはりないんじゃないかというように考えているわけでございます。
  130. 山本政弘

    ○山本(政)委員 大蔵省のほうから、決済機構の問題がある、こういうお話がありました。決済機構の問題については私は問題ないだろうと思います、国際的な問題として。なぜなれば、八十五カ国が実施をしているということです。しかもその中には主要国が全部入っているわけですから、だから国際的な要するにそういう決済という問題については何も問題がないのではないでしょうか。八十五カ国がやられておるのに、なぜ日本だけやれないのか。なぜクウェートと同じようにやらなければならぬのか。なぜイスラエルと同じようにやらなければならぬのか。私はそれが理解できないのです。ほかの国が全部やっておる。その点私納得いきませんが、決済機構というお話があったわけですけれども、私はそういう意味では全然問題ない、こう思うのですよ。その点どうですか。
  131. 清水汪

    ○清水説明員 ことばが足りませんで申しわけございませんが、具体的に、日本の経済社会とよくいわれますけれども日本の社会におきまして、国民生活なり経済活動の中で、現在でも土曜日に決済をするという現象が非常に多いように聞いております。先ほどもたまたま先生がおっしゃいました、現在、銀行で、たとえば土曜日の外訪活動というのはサービスの一形態でございますけれども、そういったものもとりあえずはもう少し縮小していくということを現実的な一つの積み重ねとしてトライしていくといいますか、そういう努力も行なわれておるわけですけれども、土曜日におきまするそういう活動という意味で申し上げたわけでございます。
  132. 山本政弘

    ○山本(政)委員 そうすると、国際的な問題としての決済機構というものはそんなに支障がないというわけですね。要するに、ぼくの言っているのは、国際関係の問題です。それだけでいいのです。
  133. 清水汪

    ○清水説明員 その点につきましては、実はもう少し問題が別になろうかと思います。いま明確にお答えするだけの用意を持っておりませんが、現在でも日本の場合には日にちがずれておるということが前提になって、外国為替の場合にいろいろの問題が起きておりますけれども、それにいたしましても慣習的に解決されていくことはあり得るかと思いますが、法律的な問題としては、いま先生の御質問にお答えする用意を持ち合わせておりません。
  134. 山本政弘

    ○山本(政)委員 法律的な問題を言っているのではなくて、実際問題として私は言っているわけで、おっしゃるように外国為替関係というのがありますけれども、これは反面に、実は人手が不足になってきて労働強化されておるという実態もあるということを、ひとつ大蔵省のほうで御認識いただきたいわけですが、この点についての解釈は一体どういうふうに御解釈になるのか。と申しますのは、銀行の業界といっていいのでしょうか、業界も実施の条件が熟した。先ほどの労働大臣とのやりとりの中で私ちょっと申し上げたのですけれども、銀行のほうがやってもいいのだ、こう言っているのですね。要するに、銀行のほうがそういう条件が熟してきているということに対して、言明をしておることに対して、政府の決定があればいつでもやれるのです。こういうことに対して、一体大蔵省はどうお考えになっておるか。
  135. 清水汪

    ○清水説明員 先ほど来申し上げましたのは、銀行法でいいますところの銀行業というものについての私ども考え方を御説明申し上げたわけでございます。もちろん、銀行も一つの企業としては労使によって構成されておるわけでございますし、その労使間におけるものの考え方なり相談というものは、それなりに進んでいる面はあろうかと思います。  ただ、最初に申し上げましたように、銀行業というのが特殊な免許のもとで国民一般に対して一定のサービスを確保するという使命で営まれている。その問題をどういうふうに解決するかという点にポイントがあろうかと思います。   〔委員長退席、斉藤(滋)委員長代理着席〕
  136. 山本政弘

    ○山本(政)委員 お客さんの問題についてはあとでちょっと御質問いたしたいと思いますけれども、大蔵省が閣議決定待ちだ、こういう回答をしているわけでしょう。ですから、そこまでは行けるわけです。つまり銀行も条件が熟しておる、こう言っておる。そして、あなた方も閣議決定を待っているのだという御返事をなさっているわけですから、なさってないとは言わせませんよ。あるのです。閣議決定待ちだということになれば、閣議の決定があるならば大蔵省はやれるということじゃないのかと私は言うのです。やる用意があるのだ。つまり銀行の業界が機は熟しているということになれば、それを実施しようと思えば、閣議決定さえあればやれるのではないかということがあなた方のお考えじゃないだろうか、こう言っているのですよ。その点いかがですか。
  137. 清水汪

    ○清水説明員 閣議決定という説明のしかたを別の機会に行なったことがあるという御指摘でございますが、その点に関しましては、おそらくこういう趣旨で申し上げたんだろうと思います。  それは、現在のような日本の実態と、そうした中で週休二日制をどういうふうに推進するかということが問題になっておると思いますけれども、その場合に銀行の立場から見ますと、最初から申し上げておりますように、やはり国民生活ないし経済活動の実態のほうが支障のないという状態でないと、銀行を休みにしてしまうということはできないだろう。そういう支障のない状態がどういうふうに出てくるかということになりますと、その辺で、いろいろ先ほどから労働省のほうで御方針をおっしゃっておられる、そういう問題になるのではなかろうか。そういう観点で申し上げたんだろうと思います。
  138. 山本政弘

    ○山本(政)委員 どうも労働省は抽象的にお逃げになっておるし、大蔵省は労働省に籍口してお逃げになっているような感じがするのですが……。  お客が困るというお話であります。おそらく、そういう意味では特に中小企業の人たちが困るということだろうと思うのですが、私もその点は十分に配慮しなければならぬと思います。しかし預金の支払いというのは、先ほど申し上げたように、キャッシュディスペンサーの開発が出てきている。それが普及すればある程度解決できますね。そうでしょう。それから預金の受け入れというのは、自動預け入れ機の開発ができ、現にナイトデポジットの普及で解決ができるはずじゃありませんか。  もう一つは、土曜日ということをおっしゃいましたけれども、貸し出しについて、ほくは率直にお伺いいたしますけれども、土曜日に銀行は中小企業に貸し出しをしておりますか。いま中小企業というのは、要するに貸し出しがないから倒産が起きたり金融に苦しんだりしているんじゃありませんか。ぼくの言いたいことは、もし中小企業の人たちがお金を借りる、あるいは一般国民でもけっこうですが、借りるということになったら、これは申し込むわけです。申し込んで、銀行としては、そういう条件さえあれば何月何日にお払いしましょうということで、その間に一週間なり十日なり、最低十日ぐらい日にちはあるはずです。そうしたら、土曜日ということに指定しなくても、月、火、水、木、金、この間にやれば問題はないはずでしょう。そうすると、法律は別として、国際的な問題について障害がないということになれば、お客さんについて一体どこに障害があるのですか。  もう一度申します。支払いの場合はキャッシュディスペンサーの開発、普及ができる。預け入れの場合はナイトデポジットの普及で解決できる。あなた方のおっしゃっているように、土曜日の取引とかあるいは貸し出しということについては、現に借りている人に対して土曜日にばかり銀行が貸し出しをしているわけじゃないでしょう。その間には一週間なり十日なり——ぼく自身か金を借りたことがありますが、一週間なんて、そう簡単に借りられません。十日ぐらい必ずあるわけです。そうしたら、土曜日以外の日を指定したら、それで解決できるじゃありませんか。その点どうなんです。
  139. 清水汪

    ○清水説明員 最初のキャッシュディスペンサーの問題でございますが、これは昨年からずいぶん力を入れて普及につとめてはおります。おりますけれども、まだ機械そのものも単に支払い面だけでございまして、もう一つこれの一番の悩みは、率直に申しまして、銀行の本部のコンピューターにつながって動いているということでございます。これをたとえば現在でいえば、土曜日の午後とか日曜日に動かしてサービスすることは考えられないかという点を一つ取ってみましても、そのためには銀行の本部のコンピューターが動かなければならないというような問題もそこにからんでいるわけでございます。したがいまして、この問題は実は将来にわたってたいへん大きな問題で、そのこと自体についても現在検討しておるわけでございますが、そういった問題が一つございまして、直ちにキャッシュディスペンサーには週休二日制のてこになるほどの威力はちょっとないというのが真相であろうと思います。まして預金の問題になりますと、ちょっとこれはそう近い将来に有能な機械が開発されるかどうか、そういった問題も現在のところは全くの未知数と申し上げてよろしいかと思います。  それから土曜日に銀行が実際にどの程度緊急不可欠な取引に応じているかという点の御質問でございますけれども、見込みのついた貸し出し取引というものもございますけれども、やはりその日に回ってきた手形を落とすための緊急の貸し出しなりあるいは一方からの返済、それによって手形を落とすというような現象というものは、これは非常にたくさん現に行なわれておると申し上げてよろしいかと思います。そういった点が、先ほど申しましたそういう取引実態のほうが改まらない  で、銀行のほうだけが土曜日にやらないということになりますと、たとえば手形の期日は現行法のもとでは、やはり土曜日が期日のものはもう土曜日にやらなければならないわけでございます。そういった点の調整をまだ検討する必要があるというふうに申し上げられるかと思います。
  140. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それでは、大臣があれだそうですから大臣にひとつ重ねてお伺いします。  いま大蔵省からいろいろ答弁がありましたが、私はそれに対して反論する余裕をいま持っておりますが、とにかく銀行の場合でも全銀協も大蔵省も、政府が閣議できめればいつでもやります、こう言っておるのですよ。そしてお客さんの問題を大蔵省は盛んに言っておりますけれども、それは私はどこでも一つのことをやるにはある程度のフリクション、摩擦はあるだろうと思うのですね。しかしながら、要するに外国のほうでもそれをあえてやってきたわけですよ。そういうことからいえば、中小企業なんかの場合でも、大企業はもちろんでありますけれども、銀行が土曜日に営業しているから、要するに休業にしないから実は私どもはやっているのだ、そういうことが現実には私はあるのだろうと思うのです。いま調整をしているということですが、調整が進めば大蔵省といえどもそういう条件がなくなったといわざるを得ないのだろう、こう思うのですけれども、体制としては進んでいるわけですよ。  そうすると、これはこんなことを申し上げてなんですけれども、私も何回か労働省に行ったことがあります。たいへん話が進んでいるなと思ったらすっととまった、おかしい、どうしてとまったんだろうと思ったら、石油の問題が出てくると走り出したり、方針としてはたいへん一貫してないような感じがするわけであります。したがってそういう意味で労働省がもう少し主導権をとって可能な範囲で——ことしの四月とは申しません、もうこの段階で。だけれども条件が整えばことしの末だって来年の春だってやれるだろうと思うのですが、そのことについて労働大臣にひとつ腹がまえを聞かせていただきたい。御答弁によっては何回でも質問をいたします。予算委員会が困るからと言ったってやりますよ。だからいい答弁をしてください。
  141. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 それぞれの業種がそれぞれの問題をかかえながら仕事をしているわけでありまして、労使の間でこういう時代に私たちの呼びかけに応じて、先生のおっしゃるように意想外に進んでいるということはありがたいことだと思っております。こういう雰囲気の中にむずかしい業種もあらためて考えるという一つのきっかけというものが出ているのじゃなかろうかと思います。それぞれの企業、それぞれの内部にむずかしい問題がいまのように、ただ労使だけの話にあらず、あるいは法律改正の問題特殊な問題などをかかえていることも理解いたしましたが、傾向としてはこれは賛成することでございますから、問題の所在を、私もよくわかりましたので、よくこれを含みながら研究し推進のほうに向かっていきたい、こう思っております。
  142. 山本政弘

    ○山本(政)委員 可及的に早く推進していただけますね。どうもありがとうございました。  じゃ、次に大蔵省にお伺いします。要するにキャッシュディスペンサーとかあるいはナイトデポジットというものはいわば窓口業務の省力化ですね。ですからそれが徹底をしていけば、現金の預け入れが自動化されるだろうし、あるいは預金の引き出しといいますか、そういうものがだんだんある意味では無人化されるというか、そういうふうになってくるわけですね。いまさっきコンピューターのお話がありましたが、要するに窓口のサービスのコンピューターというものがきちんと整備されれば、即時にそれが処理できるという体制になってくるだろうと思うのです。つまり和の言いたいことは、そういうときに要するにCDというのですか、キャッシュディスペンサーの普及とかあるいは自動預け機の開発というようなことが、銀行の形態を変えていくだろうと思うのですよ。だからその変えていくということが予測されているという段階で、やはりそれに即応した体制というものを、大蔵省としても私はとる必要があるだろうと思うのです。それでいまあなたがお聞きになったように、労働大臣は可及的すみやかにということをお話しになった。そうすると大蔵省もいままでの話では労働省に籍口しておったが、労働省が前向きになってくるのだったら大蔵省としてももう少し前向きになっていただきたいと思うのですが、どうなんです。
  143. 清水汪

    ○清水説明員 私どもの立場といたしましては、基本的な週休二日制の推進の方向には全く異存を持っておるわけではもちろんございません。ただ銀行業の社会に対するサービス提供のあり方の問題といたしまして、支障のないことを見きわめてそういう問題に移っていくことが、どうしても銀行業の場合には要請されているだろうというようなことから考えておるわけでございます。ただ、いま御指摘の省力化のための技術開発のようなものもかなり進んできておりますし、そういうものにつきましては、なお今後一そう進めていくべきであるという考え方をもちろん持っております。ただ、まだ非常に日の浅い経験でございますけれども、たとえばキャッシュディスペンサーのようなものをとってみますと、これを設置いたしますと、ある意味で省力化でございますけれども、他面ではサービスのより拡大という効果を結果としては持っている面があろうかと思います。したがいまして、銀行のいわゆるカウンターで従事する人間のほうはそのままで、その上に銀行の店舗のすみとか、あるいは外壁にキャッシュディスペンサーを設置しておりますけれども、これはそれなりにかなりのフル稼働になっている。言うなればお客さんにとっては預金の払い出しだけでも、サービスそのものが従前に増して質的に拡充されたというような面もあるわけでございます。しかしそれはそれといたしましても、そういう機械化ということも、今後の趨勢として当然だろうと私どもは受けとめております。
  144. 山本政弘

    ○山本(政)委員 銀行のねらいというのは、ぼくは一つは省力化だと思うのですよ。これは間違いない事実ですよ。要するに窓口事務というものを省力化するということが一つのねらいであることは間違いないと思うのですよ。同時に、あなたのおっしゃるように、顧客のサービスという面もあるでしょうけれども、これは省力化でないという議論は、ぼくは成り立たないと思うのですよ。  それからもう一つ、銀行に対して不平とか不満というものがあるとするならば、土曜休日にすると困るという不満じゃないと思うのですよ。それを間違えないでほしいと思うのですね。商社とかなんとかと癒着しているからだ、だから銀行に対する不平不満が出てくるのですよ。だから、ぼくは事柄の本質はそういうところにあるので、取り違えないでほしいと思うのですね。銀行に対する不満というのはそういう不満じゃないのですよ。  それから銀行の片すみでなくて、すでにもうデパートの中に出ているじゃありませんですか、私自身たいへん便利なものだということを見てきましたよ。ですから、そんなこと言われたんじゃ困るので、企業と癒着しているから、企業と癒着をして、そして買い占めとかなんとかいうものに手をかしているというふうに見られているから、銀行に対する不平不満があるのですね。土曜日を休んだからけしからぬという不平不満じゃないのですよ。ぼくは事柄の本質だけはひとつちゃんと認識してほしいと思うのですね。  ひとつ基準局長にお伺いしたいのですけれども週休二日制というものが進んできている、実態はずんずん進んでいる、こういう中で、あなた方の御指導の中に労働条件の改善というものをきちんと頭の中に置かれて指導しているのかどうか。たとえば職業病なんというのが出てくるはずですよ、特に省力化というようなことがあちこちの職場に出てくれば、必ずぼくは出てくると思うのですが、そういうことに対してきちんとおやりになっているのかどうか、この点をひとつ確認をしたいわけであります。
  145. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 労働条件の改善を進めることは私ども基準行政としては当然の任務でございまして、特に先生指摘のような職業病その他労働者の疾病、負傷といったようなものから労働者を守るということは、これは労働者の生命、健康を守るということで私どもの最重点といたしております。一昨年労働安全衛生法を制定していただきましたのもそういう趣旨でございまして、この安全衛生法を中心といたしまして、労働者の健康、生命、身体を守ることには最大の努力をいたしております。また、そのほか労働時間の短縮等々の労働条件の改善につきましても、それぞれのやり方によりまして鋭意、これは週休二日と並行して努力をいたしておるところでございます。
  146. 山本政弘

    ○山本(政)委員 ぼくはほんとうにお願いしたいことは、労働省調査にもありますね、たとえばキーパンチャーのように部分的な筋肉だけ使用するものあるいは精神的な労働というものは、疲労回復というものが全身の肉体的疲労回復よりかはるかに時間がかかる、そういうことをおっしゃっているわけですよ。ですから、その点をひとつきちんと御指導を願いたい。  それからもう一つは、週休二日になれば逆に今度は平日の労働時間が延長するというようなことのないように、これもひとつきちんと私は指導していただきたいと思います。  それで、政務次官にお伺いいたしますけれども、いまや天下の趨勢だ、こういうことを皆さん御認識をしていただいただろうし、そうしてちゃんと発言もあったわけです。政務次官としては一体いつごろひとつ週休二日制を実施したいとお思いになっていますか。大臣がちゃんと言われているが。
  147. 菅波茂

    ○菅波政府委員 先ほどは大臣が、できるだけ早期にと言っております。人事院の勧告にもございますように、五十年を目途としてということでございますので、できるだけ早く実施したほうがいいというふうに私は考えております。
  148. 山本政弘

    ○山本(政)委員 五十年を目途ですね。ことしはだめですか、ことし一ぱいはやれませんか。
  149. 菅波茂

    ○菅波政府委員 どうも、この問題は詰めて私は調べてもおりませんので、非常に山本先生には申しわけない答弁になりますが、先ほどのように、人事院の勧告にもございますように、五十年というものを一応目途としておるようでございますので、できるだけ、大臣の先ほどお答えしたように、早期にこれを実施するように努力してまいりたいと考えております。
  150. 山本政弘

    ○山本(政)委員 終わります。
  151. 斉藤滋与史

    ○斉藤(滋)委員長代理 石母田達君。
  152. 石母田達

    ○石母田委員 私はきょう、国家公務員の待遇について、特に建設省における公務員の昇格、昇給について、不法、不当な差別待遇が行なわれておるという問題について質問したいと思います。  私は、先日やはりこの社労委員会におきまして、大企業において続発している不当な差別について問題にいたしました。そのおり、労働大臣は、大企業あるいは中企業、いかなるところといえども労働基準法やそういう法を踏みにじるようなことは許されないんだ、こういうことについてきびしく処したいということを答弁されました。  初めに私がお伺いしたいのは、国家公務員といえども労働者である、つまり公務員労働者である。基本的人権として、憲法第二十八条に規定されたいわゆる労働基本権、また憲法第二十一条の結社の自由を享有していることは当然のことであります。公務員法によっても、特定の公務員が特定の組合の組合員であったり、あるいはまたは組合役員であること、あるいは特定の団体、政党に参加しているというそのことだけで、行政当局がその公務員をその身分給与の面で一切差別扱いをしてはならないというように思いますけれども、この点についてまず人事院の方に、私の見解でいいのかどうか、お答え願いたいと思います。
  153. 茨木広

    ○茨木政府委員 ほかの局にもまたがりますが、私からまず最初お答えを申し上げたいと思います。  人事の問題につきましては、組合の結成等の関係では、御案内のように、国家公務員法の百八条の七に、「職員団体の構成員であること、これを結成しようとしたこと、若しくはこれに加入しようとしたこと、又はその職員団体における正当な行為をしたことのために不利益な取扱いを受けない。」こういう規定がございます。したがって、給与上の取り扱いにおきましてもそういうものを考えながらやるというたてまえになっております。  それから政党等の問題にお触れになられましたが、この問題はたいへんデリケートな問題が一つあると思います。憲法の十五条のほうにも、全体の奉仕者のたてまえが一つ公務員には課せられております。それを受けてであろうと思いますけれども、百二条等に政治的行為の制限の問題もございます。でありますから、その辺のところは、いろいろ度合いによりまして問題があろうかと思いますが、一般的には、給与上の問題について別にそれぞれの、級別定数上の問題でございますとか、それに必要な資格年限とかいうようなものもございまして、その範囲内におきまして、それぞれの方の勤務成績を見ながら、任命権者がおやりになる、こういうたてまえになっております。
  154. 石母田達

    ○石母田委員 私は、百二条でいう政治的な行為まで触れていません。特定の政党に参加しているかどうかということですから、その点について、できるだけイエスかノーかについて、私のこういった見解でいいと思うけれどもどうかという点について、では、公務員を使用している建設省に聞きたいと思います。
  155. 高橋弘篤

    ○高橋(弘)政府委員 先生の御質問、国家公務員法の規定によりますと、当然差別されてはならないというように考えております。
  156. 石母田達

    ○石母田委員 総理府にも聞きたいけれども、まだおいてになっていないので次に進みます。——来ていますか。では総理府も。
  157. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 ただいま人事院のほうからお答えしたことに尽きると思います。
  158. 石母田達

    ○石母田委員 当然のお答えだと思います。  ところが、ここに、私どものほうの議員団の一員であります田中美智子議員のところに入手した資料がございます。  たとえば「昭和四十五年十月期の昇格調書、行一六等級」というもので、中部地方建設局の人事課長でマル秘扱いになっております。  それから、同じく「昭和四十五年十月期の昇格調書、行一七等級」これも中部地方建設局。  さらに、「昭和四十四年十二月二十三日の代表所長会議議題」ということで、マル秘扱いにして、山田という判が押してあります。  それから、「昭和四十四年四月から四十四年九月までの昇格補助綴、第一種、人事課」というのを含めまして、幾つかの資料があるわけです。  この資料を見ましたところ、建設省は職員が全建労つまり全建設省労働組合の組合役員であること、組合員であること、あるいはまた共産党員あるいは民主青年同盟員であることを理由に昇給、昇格について広範囲に差別扱いをしておる、こういう事実があります。これは一体建設省の方針であるのかどうか。建設省に伺いたいと思います。
  159. 高橋弘篤

    ○高橋(弘)政府委員 私どもといたしましては、そういうさっき申し上げましたような国家公務員法の精神並びにそれに基づきまして、そういう職員団体の構成員であるから、そのために、そういう理由で不利益な取り扱いをする、差別をするということはとっておりません。そういう指導をしたこともございません。
  160. 石母田達

    ○石母田委員 初めに使いたい代表所長会議議題の内容ですが、山田という判が押してあります。これはその当時、昭和四十四年の十一月三十日の職員録によりますと、中部地方建設局の中に山田恭平任用係長としてあります。この任用係長というのは、一体どういう仕事ですか。これは人事院の方に聞きましょうか。そして建設省にこの山田恭平という方が、いまは、この職員録によりますと、建設専門官ということで中部地方建設局にいると思いますけれども、こちらはまとめて、どちらでもいいです、そういうことについてのお答えを願いたいと思います。こういう方がいるかどうか、そしてその任用係長というのはどういう仕事であるかということを答弁願いたいと思います。
  161. 高橋弘篤

    ○高橋(弘)政府委員 ただいま御指摘の点、私も初めて実は聞くことでございまして、その職員の所在も実はいまここで確かめてございません。したがいまして、これはわかりませんが、任用係長というのは、名前のとおり、職員を任免する、その他の人事管理の職務を担当する係でございます。
  162. 石母田達

    ○石母田委員 労務担当の建設専門官になっていますけれども、労務担当の建設専門官という方はおられるという話を聞いていますけれども、これはどうなんですか。
  163. 高橋弘篤

    ○高橋(弘)政府委員 建設専門官はいろいろなところに配置されておりますけれども、人事担当の建設専門官というのもいるようでございます。
  164. 石母田達

    ○石母田委員 それじゃ先へ進みましょう。  人事院の人に、資格十割ということばは、これは普通そういう任用のときに、ある等級から等級という問題で、人事院の規則できめられた年数とか、そういうものに達したものに使われることばだと思いますけれども、これについてお答え願いたいと思います。
  165. 茨木広

    ○茨木政府委員 十割というのは、おそらく人事関係者の間で使われておることばだろうと思いますが、等級別資格基準表にいろいろ年限を定めておりますから、その年限を満たしたものという意味でお使いになっているのだろうと思います。ただ、十割と言われましても、これは任用の最低基準と申しますか、そういう意味でございます。
  166. 石母田達

    ○石母田委員 まあ資格十割というのは最低の基準に達した者ということだと思います。  そこで、「代表所長会議議題」ということで、「昇格」「職転」「退職勧奨」という三つの資料にわたっておりますが、まず「昇格基準」というところに等級七グループ、六グループ、つまり七等級、六等級という問題がありまして、「資格十割の者で1 機関責任者、活動家 原則として八一八」八等級八号でしょうね。「八−八で九月おくれ」「2一般組合員 原則として八−八で六月おくれ」六等級の問題としては「1 役員、活動家は、原則として当面の昇格基準に達してから四−六年おくらす」「2 一般組合員は、原則として当局の昇格基準に達してから二年おくらす」という内容が書いてあります。いわゆる資格十割、そういう基準に達している者でこういう扱いをするということは、組合員であること、役員や活動家であることを理由に明白な不利益扱いをすることを一般的な基準として設けているというふうに思いますけれども、一体こういうことは許されるのかどうか、私は建設省並びに人事院に所見をお伺いしたいと思います。
  167. 高橋弘篤

    ○高橋(弘)政府委員 いまお読みになりましたお手元の文書、実は私ども初めて聞くことでございまして、前に何かそういうような指摘が全建労という組合のほうからあったようでございますけれども、そのときに中部建設局に調べてもらったのですが、その報告によりますと、そういう文書の存在を確認することはできないというふうに聞いておる次第でございます。したがいまして、その内容については私どものほうで申し上げかねる次第でございます。
  168. 茨木広

    ○茨木政府委員 まず、一般的に資格基準表に定める年限がございますが、等級は、職責あるいは職務の種類、複雑困難性というものを考えながらそれぞれの年限を、最低を押えてきめたものだと思います。  そこで、実際の運用上の問題は、それぞれの省庁によりまして運用の実態にある程度差がございます。と申しますのは、わりあい新しい官庁等の場合でございまして人事が詰まっておりません場合と、それから相当古い官庁で人事が詰まっております場合とでは、昇進の速度が多少違うという問題がございます。その辺のところを見まして年年等級別定数等の改定もやっておるわけでございますが、その辺の定数と年限との間は、それぞれ各省庁で運用基準を内規的におきめになっているということもあるようでございます。ただいまお読みになりました中には、それがもし事実であるとしますと、正しくないような内容のものが入っているのではなかろうかという気がいたします。
  169. 石母田達

    ○石母田委員 これは実際に行なわれたかどうかということが問題だと思います。  そこで、この中に一覧表が添付してある。中部地方建設局の人たちの名前でしょう、ずっと書いてある中で「〇印役員」としてあります。そして中倉武夫とか、小幡優とか藤井鉦弘とか、こういう人々の名前が書いてありまして、四十五年一月時点で、役員で九カ月おくれが七人、一年三カ月おくれが二人、一年九カ月おくれが三人。それから一般組合員についても書いてありまして、計二十人について書いてあります。六等級への昇格について、所属、官職、氏名、学歴・資格、号俸・発令月日、昇格該当期、昭和四十五年一月時点の昇格のおくれている期間などを書いた一覧表が添付されております。そして、いま申しましたように、こういうマルじるしは、役員として昇格をおくらされておることは明らかであります。実際こういうことになっておるかどうか。たとえば当時地本の副委員長でありました国井芳夫さんという方は、機関責任者の中に入るわけですが、本来ならば四十四年四月一日七等級一号となるべきものなのに、これ亦四十五年一月一日七等級一号になっている。ちょうど該当しているような方向で、きちんとおくらされているわけであります。こういうふうに人事院の規則できめられている基準に達してもおくらされている、しかもこの一覧表のとおりにされておるということになりますと、これは重大な問題だと私は思うのです。  私どもも、こういう資料をいただいてから一定の調査をいたしました。そして、この中に書いてありますように、現実に展望員は約二年ですね。二年から、多い人で三・六年の人もあります。それから組合役員は、一年の人もありますけれども、多い人は三・六年、約四年ですね。三・六年実際に昇格を延伸させられている。具体的には先ほど国井さんの例もあげました。一体こういうことが許されていいのかどうか。このことについては、私は労働省の政務次官にもお伺いしたい。こういうことが労働組合法の精神あるいは労働基準法の精神からいって許されるのかどうか。こういう点について建設省、人事院並びに労働省に私はお伺いしたいと思います。
  170. 菅波茂

    ○菅波政府委員 いま石母田先生の言われたように、国家公務員法においても、労組法の不利益の取り扱いの禁止規定と同じ趣旨に基づきまして、職員団体が正当な行為をしたこと、これを理由として不利益な取り扱いをすることは禁止しておるわけでございまして、もし建設省にそういう事犯のことがあるとするならばまことに遺憾であります。私どものほうはこれに違反しないように処置しておるつもりでございます。
  171. 高橋弘篤

    ○高橋(弘)政府委員 先生のいま御質問の資料になっておりますものは、先ほど申し上げましたように私どもも知りませんし、また考えられないことだと思います。昇格等につきましては、人事院規則の定めるところによりまして、先ほど人事院からも御答弁がございましたように、等級別の定数の範囲内で職務内容、勤務成績、経験年数等を総合的に勘案してきめておるわけでございます。私ども公正にやっておるつもりでございまして、差別してないというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、同じ年に任用されて、同じ経験年数だけで同じにずっといくというものでは必ずしもないと思います。その人の勤務成績、仕事についてのいろいろな能力というものも勘案しながらこれはきめられるべきものだと思います。しかし、先生の御指摘のような差別というもの、ある職員団体の構成員であるから、活動をしたから、また役員であるから、そういうようなことによって差別をされることばないと私は信じております。あるべきでないというふうに思います。
  172. 石母田達

    ○石母田委員 あんた、社会労働委員会をあまりなめちゃ困る。社会労働委員会というのはこういうことをしょっちゅうやっているんだよ。何だ、信じているとは。いま政務次官でさえ、そういう事実があるならばこれは重大な問題としてやると言っているのですよ。官房長で、人事を通じゃっておる連中がこういう事実を前にしても——そういう事実が指摘されたら当局として重大な問題なんだ、こういう国会の中で出すということは。しかも国会議員の私が出しているんだよ。そういう指摘に対してまず事実を調べて——あなた自身、これはまだ存在を確認していないということを言っているじゃないか。これが全然でっち上げでにせものだとかなんとかというならまた別だ。そういう証拠を出すなら出しなさい。山田という判こは——判こ自身、あんた知りもしないでしょう。山田恭平という人を知らないと言っているんだ。それをあたかも全然ない文書に基づいているかのような発言をしておる。とんでもない。こういう差別問題は税関でもどこでもあったことなんだ。しかしそうしたことがそのときのいろんな事情であったとしても、そういうことがあったら率直に改めていかなければならぬ。そのためにわれわれもこうやって国会で問題にしておる。いまの答弁はきわめて不遜な、国会を侮辱したものである。まずこういう事実があるかないかについて調査をしなさい、名前をちゃんとあげているのですから。もう一回答弁をしてください。建設省の態度はきわめて不遜な態度です。
  173. 高橋弘篤

    ○高橋(弘)政府委員 先ほども、最初のころにたしか御答弁申し上げましたけれども職員団体からもこういう指摘が前にあったようでございます。したがいまして、地方建設局を通じまして調査を求めたわけでございますけれども、その存在は確認できないということを先ほどから申し上げました次第でございます。しかしながら先生からいろいろ御指摘ございますので、さらにその当該地方建設局に調査を指示いたします。
  174. 石母田達

    ○石母田委員 もう一つの資料で見ると、これは昭和四十六年四月十九日から四月二十三日、第二回が同じく四十六年五月十七日から五月二十一日ということで昭和四十六年度管理者(新任係長)研修会が名国の岡崎分室において実施されたということであります。その中で人事課の山田補佐が、「いかに部下を取扱うか。現時点で人事管理はまがり角にきている。その原因は今までの全建労に対してしめつけてきたが、だんだん柔軟な態度でのぞむよう変ってきている。しかし全建労に対する根本的態度は変っていないので気をつけること。」こういう発言をしておるのであります。  また先ほど私が言いました「昭和四十五年十月期 昇格調書 行一七等級」という書類で「八等級全般 資格十割」という見出しです。そこに木曽川上流調査課のだれだれというようにあり、官職、技官、氏名、学歴・資格取得年月、経験年数年月、在級年数年月、そして現等級号俸、発令年月日、新等級号俸、備考というように書いてありますが、赤マルじるしは十月期昇格実施予定者三十六という数字が書いてあります。そしてほとんどの方にマルじるしが書いてありますが、マルじるし以外の方はバツじるしが書いてあります。このバツじるしの人というのはどういう人かということを全部調べてみますと、バツじるし大前浩成、民青と書いてあります。バツ柏野伝一、執行委員、民青。坂口明良、執行委員、これもバツじるしがついています。佐藤憲司、マル共、バツじるし。石川壽、バツじるし、民青。鎌田秋三、バツじるし、民青。山際稔、執行委員、マル共。小崎昭弘、バツじるし、民青。こういうふうに書いてあるわけです。このマルじるしが十月期昇格実施予定者とすれば、これはそうではないということですね。こういう事実が出ているわけですけれども、建設省、それでもまだあなたはさっきのような態度で一言い張るのか、それとも調査をされるのか、こういう事実を認められるのか、この点もう一度聞きたいと思います。
  175. 高橋弘篤

    ○高橋(弘)政府委員 先ほども申し上げましたように、そういうことについて私どももその後指摘を受けたときにも地方建設局に調査を頼んだわけです。その結果が、どうもそういう文書の存在は確認できないというようなことの返事であったわけでございますけれども先生のそういうお話もございますので、あらためて調査いたしたいと思  います。
  176. 石母田達

    ○石母田委員 そういう文書の中にいまの文書も入っていたのですか。さっきの一番最初に示した所長会議ですか、これは言っていたけれども、そのあとの幾つかの文書、人事課山田補佐のやった新任係長への研修内容、みんな入っていますか。
  177. 高橋弘篤

    ○高橋(弘)政府委員 最初に御指摘の文書だけだと思います。あとは全く新しい、いま初めてここでお伺いしたわけでございます。
  178. 石母田達

    ○石母田委員 じゃ答弁、訂正しなさい。そういうというものは最初のでしょう。いま示したのは、いまここで初めて聞いたわけでしょう。訂正しなさい。
  179. 高橋弘篤

    ○高橋(弘)政府委員 最初の先生の御指摘の文書につきましては、その後地方建設局に確認を求めましたところが、そういうものはないということだけで、あらためて、いろいろ新しい、先生いま御指摘の文書につきまして調査を命じたいと思います。
  180. 石母田達

    ○石母田委員 これは中部地方の建設局関係だけじゃないのです。やはりこの文書の中に、所長会議ということで、各地方でどういうことをやっているかという報告がある。東北、関東、北陸、近畿、中国、四国、九州、中部、あと関係付属組織があるかもしれないけれども、地方局としてはこれ全部でしょう。  東北、昇格問題六等級、「組合役員で活動家は対象から除外している。組合員は個々に検討」。関東、七等級について、「組合役員で活動家については十二月及至十八月延伸」。六等級について、「組合役員で活動家は六等級にしない。組合員は七〜十二」、これは七等級十二号俸と読むのですかね、「七〜十二以上は個々に検討する」。北陸、七等級について、「組合役員で活動家については六月至十二月延伸」。六等級については、「組合役員で活動家は原則的には昇格させない。然し作戦的にやる。組合員は個々に検討」。近畿、七等級、「組合役員で活動家については九月延伸」。六等級、マル共はやらない。組合員は七等級十号以上は個々に検討。特別昇給について、マル共は特昇の対象にしない。つまり特別の昇給の対象にしないということです。中国、組合役員で活動家は昇格期をおくらせている。おくらすのは一ないし二年、組合員は個々に検討。四国、組合役員で活動家については、昇格時期をおくらせている。組合員は七等級九号以上は個々に検討。特昇について、組合役員のうち三役は特昇させない。九州、六等級、組合役員で活動家については二回ないし三回おくらせている。特昇について、組合役員については作戦上させる場合がある。中部、六等級については、マル共はやらない、組合役員、活動家おくらす、一般組合員は個々に検討。こういうように全国的に中部地方建設局と同じような、全建労の組合員である、あるいは共産党員である、民青であるということを理由に、このような差別を行なっている。こういうことが所長会議で報告され、またいろいろ討議されているんだと思います。こういうことでは私は、そこの局であったという事件ではなくてまさに建設省としての方針としてやっているんではないか。そうでなければこのような全国的な、各地方が同じようなことをやっているということは常識では考えられない。こういう点について建設省、まだあなたたちはこれを言い張るのか、答弁願いたいと思います。
  181. 高橋弘篤

    ○高橋(弘)政府委員 先生の御指摘のいろいろな事実、文書につきましては、さっきも申し上げましたように調査をいたしたいと思いますが、こちらの方針といたしまして、差別をしない、それぞれ国家公務員法だとか人事院規則にのっとって公正に昇格等を行なうという基本方針であることは、先ほどから申し上げたとおりでございまして、そういう基本方針のもとに各地とも指導してまいりたいというふうに考えております。
  182. 石母田達

    ○石母田委員 じゃ、あなたは個々の文書についても確認もしていなければ、また新しく出されたこともあって、こういう事実を聞いたんだろうから、あなたのその方針でもしこういう事実があったならば、このような差別は一切やめさせる、そしてこういう理由によっておくらされている昇給昇格を一般と同じ基準まで回復する、そしてこのような不当な差別が行なわれたとするならば、不当な差別についての損害補償をきちんとやる、そして今後こういうようなことは絶対にないようにするという点について、ここできっちりと確言していただきたいと思います。
  183. 高橋弘篤

    ○高橋(弘)政府委員 これも先ほど申し上げましたとおり、私どもはとにかくそういう差別ということは今後も絶対にしない、そういう指導を強力にいたします。  それから第二の点ですか、そういうものについてのいろいろな措置、これは一般的に職員のそういういろいろな待遇面についての差異がないように、私ども人事管理に非常に努力しているところでございますし、そういうことのないように、また、そういういろいろな差があったり格差があるということはよくないことでございますので、十分ひとつ是正に努力したいというふうに考えております。
  184. 石母田達

    ○石母田委員 ぜひそうしてもらいたい。これは現実に私などは、横浜税関その他にありまして、税関当局とも話し合って直ちにこれを是正させるということをやっておりますので、あやまちならあやまち、あるいはこういう不当なことについては直ちにそういうふうに改めていただきたいというふうに思います。これは、私は労働省にも先ほどから申しますように、労働基準法のたてまえからいってもこういう不当なことは許されないという点で、十分にこうした点について政府部内でも、たとえ公務員といえどもあなたのほうからきちんとやってほしいし、また人事院、総理府含めてこういう問題について十分調査して、いま建設省が答えた方向での解決をしていただきたいということをそれぞれお願いしたいと思うので、それぞれお答え願いたいと思います。
  185. 菅波茂

    ○菅波政府委員 いま建設当局がお答えしましたように、当然労働基準法は建設省のたとえば職員適用はしておりませんけれども、その法の精神にやはりのっとりまして、そういう差別を一切しないように指導をしてまいりたいと考えております。
  186. 茨木広

    ○茨木政府委員 人事院といたしましても、ただいま御論議がありましたような趣旨で従来からも指導をいたしておるつもりでございますので、任命権者側で先ほど調査をし善処をするように言われておりますので、その報告を待ちたいと思っております。
  187. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 総理府としましては、個々の人事にはもちろん関係してないわけでございますが、人事一般を通じまして法の趣旨にのっとって適正に行なわれるように、これは各省心がけておるところでございます。ただ昇給昇格の問題につきましては、もちろんこれは本人の能力なり成績ということを考慮してまいるのが当然でございますので、差別が無差別というふうには私たちは考えておらない。もちろん組合活動をしたとか職員団体に入っている理由は、これは非常にいかがかと思うのでありますが、無差別という指導は従来からしておらない。やはり本人の能力なり勤務成績に応じた極力適正な人事管理をするようにということを、お互いに力を合わせてそういう努力をしている次第でございます。
  188. 石母田達

    ○石母田委員 いまの総理府、何という人ですか。
  189. 斉藤滋与史

    ○斉藤(滋)委員長代理 皆川人事局長です。
  190. 石母田達

    ○石母田委員 そういう答弁をする、何を聞いていたんだ、いままでの答弁を。だから社会労働委員会で、こういうところできちんとされないと、そういう答弁をいつまでもしているんですよ。いま何も能力の差があったとかなんとか一つも言ってないでしょう。ここで討議していることは、特定の組合員、特定の政党員であるというだけの理由で差別をしているという事実があるから、こういう事実があるならばこれについて十分是正したさいと言って、しましょうと言っているのでしょう。あなただけが急に、能力で差別あるのはあたりまえだ、そんなことはいままで言ってない。私は全部一律にただきめろ、同じにしろなんて、そんなばかなことは言ってないのだ。そういう点については、まさにそういう答弁をはぐらかして、そうして何かこちらの追及している、言っていることがせっかくこういうふうになっているところへ茶々を入れるようなことをやって、もう一回再答弁。とんでもない。
  191. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 一般的な個々の問題、従来の方針ということに関連して申し上げましたので答弁全体がそういう感じを持たせるようになったかもしれませんが、最後に申し上げましたようにそういう、いまここで議題になっておるような単純な行為に基づいて差別をすべきものではないということは当然だと思っております。
  192. 石母田達

    ○石母田委員 あなたたちの方針からいったってあり得べからざることが起きているとすると、しかも事実だとすると、あなたたちは十分これをスムーズにそういう方針どおりやらなければならぬということはあたりまえなんだ。その当時あなたたちがそういう方針だ方針だと国会では何べん答弁しても、こういう事実がある以上、依然としてそういう方針で臨んでいるのだということを私は確信している。そういう点では、私の疑念が晴れるには、こういうものが実際になくなってくるということがない限り、私自身はそれを取り下げることはできないわけですから、今後のそうした点での、先ほどの答弁の方向でやっていただきたいというふうに思います。  それから、まだこれは存在が確認されていない文書の中なんだけれども、厳秘ということばがあるんだけれども、これは建設省の文書の扱いで——これは、あるとすればですよ、そういう扱いというものはあるのですか。
  193. 高橋弘篤

    ○高橋(弘)政府委員 秘密文書の扱いにつきましては、それぞれの省庁で規定に基づいてやっておりますけれども一般論としましては、秘密文書は極秘と秘ということで各省にあります。極秘というものは建設省にはございません。秘の文書はございます。  いまの私の答弁は、いまの文書について申し上げているわけではなく、一般的な秘密文書についてお答え申し上げたわけでございます。
  194. 石母田達

    ○石母田委員 そういうのに厳秘と書いてあるんだけれども、その内容は、いま言ったように、文書は取り扱い規定では厳秘になるものではないわけですね。しかし、事実上こういう、きびしく秘密にするという態度表明で、これも個人の秘密にかかる人事関係文書ではない、事柄の性質上秘密にすべきものではないのだから、これらの文書を厳秘にしているのは、やはり官庁自身がこういう違法的な行為を隠蔽するためのものではないか、こういうふうに考えるわけなんです。そういわざるを得ない。ですから、この点についても厳重に調べていただきたい。こういうことがあったとすれば、これは当局みずからが違法行為、不当な方法をやっている、それを自覚している証拠なんだという点について、この問題については、またあらためてその時点で追及したいというふうに私は思います。そういう意味で、この問題が、この間からこの国会でも問題になっております思想、信条あるいは特定労働組合に参加しているということでの差別が、大企業だけではなくて、こうした国の公務員の中にも行なわれているということはきわめて大事な点だ、重大なことだというふうに思っております。  先ほどの答弁の中で出されたような、明確な、迅速な是正措置、労働者基本権あるいは人権というものを尊重した公正な人事、労務を行なうよう強く要求して、私の質問を終わりたいと思います。
  195. 斉藤滋与史

    ○斉藤(滋)委員長代理 この際、暫時休憩いたします。    午後一時二十三分休憩      ————◇—————    午後四時十分開議
  196. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前の質疑を続けます。坂口力君。
  197. 坂口力

    ○坂口委員 前回身体障害者の雇用問題を少し質問させていただきましたが、続きまして、この問題もう少しきょう質問させていただきたいと思います。  前回にも、民間企業の雇用率の達成状況が一・三%に達していないということ、特に大きい企業においてこの達成率が悪いということなどをあげまして質問したわけであります。また官公庁におきましても達成状況は必ずしもいいことはない。特に政府関係の各省の雇用状況等もお聞きをいたしましたが、省によりましてはかなり落ちているところもあるわけであります。たとえば経済企画庁なんかは〇・九%でございますし、沖繩開発庁はゼロでありますし、環境庁は〇・七三%、公安調査庁は〇・一〇%、こういうふうにかなり悪いところがございます。さすがに労働省基準を上回っておりますが、そのほかにも消防庁なども〇・七一%と、かなり低いところもございます。こういうふうに官民ともに、法律がありながら、この身体障害者に対する雇用問題は依然として進んでいないというのが実情ではないかと思うわけでございます。  そこで、きょうまずお尋ねしたいのは、この心身障害者専門の職業訓練校の問題でございますが、身体障害者に対する職業訓練校というのは、私の知ります限りにおきましては、現在十一校で、ことし四十九年度に一校新設をされるということでございますが、精神薄弱者対象が一校で、重度身体障害者対象が二校にとどまっているようでございます。近年職業訓練を希望する、または訓練を必要とする身体障害者というのは著しく増加をいたしておりますし、少なくとも全県に一カ所ぐらいはこういうふうな訓練校を設置する必要があるのではないか、こう考えるわけでございますが、ひとつ現状についてお聞かせをいただきたいと思います。
  198. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 身体障害者の方の職業訓練の施設につきましては、ただいま先生から御指摘状況のとおりでございます。  最後にお話ございましたように、身体障害者の中で具体的に求職の希望者であり、技能を身につけるために訓練を受けたい、こういう希望者も確かにふえてまいっております。したがいまして、現在国立で十一校、そのほか精神薄弱者専門の訓練校重度身障者のための施設、こういったものもございますが、さらに労働省といたしましては少なくとも各県にこういった身障者のための施設を一校程度は拡充してまいりたいということで、県の受け入れ体制があるものにつきましては逐年一校ないし二校ずつ補助金を設けまして、県営で、県の運用によりまして訓練施設が拡充されるような方針をとってまいっておるわけでございます。
  199. 坂口力

    ○坂口委員 徐々には進めていただいているでしょうが、非常に進歩の程度がおそいために現状になかなか追っつけないというのが実情ではないかと思います。どうしましても現在ぐらいの設置校の数でございますと、三県か四県に一校というような形に数からいきますとなりますので、これではどうしましてもみんなの要望にこたえることはできないと思うわけです。多少小規模の学校であったとしても、やはりもう少し数をふやして、利用する人たちの道を開くべきだと思うわけであります。もう少しひとつ、この設置のスピードか上げてもらいたい。政務次官、ひとつその辺お願いいたします。
  200. 菅波茂

    ○菅波政府委員 坂口先生がおっしゃるように、実は労働省としても、充足の足りない、たとえばいまおっしゃったような省庁に対しても、これか再度ひとつお願いをいたしておるところでございます。それから御承知のようにやはり大企業はどうしても充足率がまずいようでございまして、その点についても関係省庁を通して私どものほうとしてもお願いをいたしておるところでございます。  いまの地方単位にそういう訓練というものの好機会を与えるというそういうことについては、前向きで十二分に検討して進めてまいりたいと考えております。
  201. 坂口力

    ○坂口委員 それはひとつお願いをするといたしまして、次にこれは精神薄弱者も含めての問題でございますが、いわゆる脳性麻痺の方々あるいは精神薄弱者の方々に対する最低賃金の取り扱いの問題がございます。著しく労働能力の低い身体障害者については、不当に賃金を低下させないことを許可条件としまして最低賃金適用が除外できることになっておるわけであります。現状においては精神薄弱者及び脳性麻痺者に対してこの適用除外の例が見られるわけでございますが、この制度労働能力の判定その他の許可の取り扱い等が問題になりますし、労働基準監督機関あるいはまた職業安定機関との連携を強化してこれはどうしても改善をしていくべき点であるというふうに思うわけでございますが、その点についてひとつ御意見をいただきます。
  202. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 先生お話しのように最低賃金法の八条では、精神または身体の障害により著しく労働能力が低い者については、基準局長の許可を受けたときには最低賃金適用しないことができる規定があるわけでございます。これは一応、最低賃金というのは通常の労働能力を前提といたしまして最低賃金が設定されておりますために、あるいは精神薄弱の方などで、これは一律に言えませんで、労働能力が常人に近い方もあられましょうし、労働能力が一般の通常の労働能力よりは非常に低い方もあられるわけでありましょう。そこで基準局長の許可を受けてはずすかどうかということをきめる、これは立法の趣旨であるわけでございます。  そういうことで非常に労働能力が低い方について申しますと、場合によりますと、そういう低いのに一般常人を前提とした最低賃金を払わなければならぬということになると、かえって使用主が雇用をしないということで雇用から排除される危険、おそれもあるわけでございますが、ただ先生おっしゃいましたように、そういう方々につきましてはできるだけあたたかい気持ちでこれはやはり賃金その他の労働条件考えるべきだと思いますので、その辺は都道府県の基準局長が許可をいたします際には十分そういうことを含んで運用をしていくようにすべきものと考えております。
  203. 坂口力

    ○坂口委員 それからもう一点は、非常に雇用の困難な身体障害者に対する援護対策費の問題でございますけれども、障害の程度がかなり強い方、こういう人たちに対しましては一般企業でもいまもお話がございましたとおり、なかなか雇用をしてくれない、非常に困難である。こういうふうな人たちには、これは厚生省関係になるかと思いますが、一応福祉的な意味も含めまして職業更生をはかるという意味から、いわゆる福祉工場というものが設置されていることは御存じのとおりでございます。   〔山口(敏)委員長代理退席、斉藤(滋)委員長代理着席〕 この福祉工場においてかなりの人数の人がいま働いておみえになるわけでございますが、労働行政の分野においてもこの福祉工場等で働いておみえになる方が、でき得れば一般の企業の中で働いていただけるように、移行できるような措置が必要ではないかと思うわけであります。一般企業への雇用に移行ができるように、ひとつ福祉工場等と密接な連携をとって職業訓練を進めていくということが大事ではないかと思うわけです。いつまでも福祉工場の中に押し込んでおくというのでは、これはぐあいが悪い。そこで一定期間働かれた方は、訓練のもとに一般の企業のほうに行けるような道を開らいていくべきではないか、こう思うわけでありますが、この点につきましてもし具体策があればお聞かせをいただきたいと思います。
  204. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 身体障害者の雇用につきましては、ただいま最低賃金の面から御指摘がございましたが、一般の健常者に比較いたしますと、労働能力を何らかの形で欠如するというような状態でありますために、雇用の面につきましてもそれぞれの立場で援護策を講じなければなかなか雇用がむずかしいということは、全く御指摘のとおりでございます。そこで一般的には、雇い入れる事業主に対しまして雇用奨励金を支給してその労働能力の欠如した分を補てんするとか、あるいは訓練によって健常者と同じ水準まで能力を引き上げてやる、こういうことをやっておるわけでございます。同時に、身体障害者を雇い入れるための作業環境の整備あるいは作業施設の改善、そういったことのために低利長期の融資をしてやる、こういういろいろな措置を講じておりますが、同時に雇用奨励金につきましても軽度、重度によりまして差をつけておる。重度の障害者の場合には四十九年度におきましては月額一万一千円の補助金を出す、こういう措置をとっておるわけでございます。福祉工場等で働いておられる方の問題もさることながら、労働省におきまして、重度特に脊損患者が中心でありますが、脊損障害者につきましては全国でいま八カ所、四十九年度も新設が予定されておりますが、いわゆる作業施設をつくっておりまして、そこで働いておられる方がそれぞれの企業の仕事になれていただいた上で、いまお話がございましたように、一定の期間を経て  一般の民間工場に就職をしていく。こういういわゆる回転のための施設として設置されておりますが、現実にはなかなか民間企業の受け入れ体制が整いませんで固定化しやすい傾向にございます。本来のこの施設の設置の目的からいたしましても、いまお話しのように、ある一定期間そこで仕事になれて、一般健常者の中にまじって就職をしていただけるような状態にして逐次就職をはかっていく、こういう所期の目的に向ってこの施設の運用をはかってまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  205. 坂口力

    ○坂口委員 時間がございませんので、それでは次に進ませていただきます。  失業労働者の問題について少し触れさせていただきたいと思います。失対賃金は四十九年度予算におきましては平均しまして千七百二十八円ぐらいになると思いますが、これを二十二日分といたしますと月三万八千円ということになろうかと思います。これを三十日として一日割りにいたしますと、千二百六十六、七円というところになると思います。これは特に昨年後半からのこのきびしい物価情勢の中でございますので、一日千二百六十数円というこの金額は、生活可能な額とはどう考えてもいいがたいと思うわけであります。  ちなみに、最近私の手元に、三重県のおも立った病院五カ所ぐらいの病院食がどれだけかかるかという調査結果が届きまして、それを実は昨日も見ていたわけであります。そういたしますと、昨年十月の三重県下における五つの大きい病院のいわゆる病院給食についての記録でありますが、二千四百カロリーの基準食と申しますか、普通食で一人一日の材料費とそれからいわゆる光熱、消耗品などの諸経費だけをとってみますと、平均いたしまして、一人三百二十二円かかる。これは人件費でございますとか、その他の減価償却というものはみなのけでございます。かなり多くの人の食事をするのですから、これは効率としてはかなりいいと思うわけですね。ところが三百二十二円という材料費と光熱その他諸経費がかかるわけであります。もしも一家四人といたしますと千二百八十八円になるわけなんです。純食費の材料と諸経費だけで、いわゆる失対賃金の一日平均の千二百六十数円というこの額をこえることになるわけです。いろいろ計算方法等はあろうかと思います。これはこの前もお聞かせいただいたことがございます。しかし理由はともあれ、これは理屈じゃなしに現実問題として、どうしてもこれでは生活していけないというのがやはり実情じゃないかと思います。この点につきまして、こういう数値を私は示したわけでございますが、どのようにお考えか、ひとつ承りたい。
  206. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 四十九年度の新単価によります失対の一カ月の平均収入の御指摘がございました。確かに平均単価で二十二日の計算をいたしますとそのとおりでございます。そのほかに毎月のきまった収入として、いわゆる二十二日以外の不就労日に対する失業保険金給付がございます。それを加えますと約四万三千円、それに盆暮れの手当を月間にならしますと——これは地域によって差がございます。と同時に、失対就労者の平均世帯は大体二人世帯でございます。その二人世帯あるいは、もちろんいま御指摘のように四人世帯、五人世帯もございますけれども世帯平均月収は、毎年私のほうで失対就労者の実態調査をいたしておりますが、その結果によりますと、必ずしも御指摘のような数字ではございません。賃金そのものが高い低いということについては、御意見は十分私ども承知いたしております。また今後もこの実態に即して十分検討を進めてまいりたいと思っておりますけれどもいま直ちに家計費から失対賃金を云々するわけにはまいらないのじゃないか、こういうふうに考えております。
  207. 坂口力

    ○坂口委員 たとえ二人平均といたしましても、これで六百五十円ぐらいになりますね。これはもう最低の額であります。先日も私現場を見せていただきましたが、中にはかなりきびしい仕事をなすっておる方もございます。女の方でもつるはしを持って、たいへんきびしい仕事をしておみえになる方もございます。ところによりまして、あるいはまたときによりましてずいぶん違うかとも思いますけれども、しかしこれは政務次官お医者さんでございますが、二千四百カロリーではいかんともしがたい仕事内容ではないかと思って私見せてもらってきたわけでございます。その中でたとえ四万円あったといたしましても、一日平均いたしますと千五百円ぐらい、その中で少なくとも四割ないし五割を食費にとられるということになりますと、そのほかでこれはいろいろまだ着るものも着ていかなければならないし、御近所のつき合いもしてもらっていかなければならないし、いろいろなことに要るわけです。そういうことを考えますと、これはどう考えても生きていける額ではないと私は思うのです。  先日もいろいろ話を聞いておりますと、周囲で鐘が鳴るとびくっとするということです。鐘が鳴るということは私もよくわかりませんで、どういうことかといいましたら、近所でどなたかがおなくなりになったという意味だそうでございまして、もしもなくなられる人があると、このごろいかに少なくてもやはりお悔やみとして千円ぐらいは包んでいかなければならない。もしそれを包んでいけば、その日は、その日の分というのはもう残らない、これはもう事実だろうと思うのです。そういうことを思うと、ほんとうにびくびくしながら毎日を過ごさなければならない、こういうお話もございました。  また、ことし子供がようやく中学を出て高等学校にどうしても行きたいという、親としてはやはりこの中ではどうしても高等学校にはやることはできないので、ひとつ職業訓練所にでも行って、そしてもう一年ぐらいの課程を終わって、ひとつ生計を立ててほしいということを頼むんだけれども、子供はどうしても一ぺん受けたいというので受けさした。そうしたら公立の高校が通った。通ったら子供は何とかして行きたいという。しかし親としてはこの状態ではどうしてもやることができないので、ひとつかわいそうだけれどもやめてほしいということを私どもとしては言わざるを得ない。涙ながらに話しておりましたけれども、しかし現在のこの状況では当然そういうことは起ころうかと思うわけでございます。  今回の春闘は国民春闘ということで、特に社会的な弱い立場の皆さん方をともどもにという意味で、私たちも今回はいままでよりも積極的な姿勢でこの春闘を支持しているわけでございますけれども、四十九年度の予算に盛られましたこの額では、やはりいろいろな事情はあるにしましても、しかし生活できるといいますよりも生物学的に生きていける額ではない、こう私は思うわけであります。物価もどんどんこれからもまた上がっていくだろうと思いますが、この中にあって私は四十九年度の予算を早急にこれは再検討をしていただきたいと思うわけであります。大臣お見えになりましたら、一言だけこの点はまたお聞きをしたいと思います。その点についてひとつお伺いをしたい。
  208. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 先生指摘のとおり、またいろいろな事例をお話しいただいたとおり、確かに失対就労者の諸君の生活は決して容易でないと思います。現実に非常に物価が上昇した中で非常に苦しい生活をされておるということは、私ども仕事柄しょっちゅう接触をいたしておりますので、よく話を聞き、いろいろいたしておるわけでございます。  ただ現実の問題といたしまして、先ほどお話しございました、局長からもお答えいたしましたが、現実の生活保護等の基準と比べてみますと、直接比べることはいかがかと思いますけれども、生活保護は御案内のとおり世帯を単位にして生計費をもとにいたしております。失対の場合は、世帯人員の平均が二・二人でございます。ちなみに二人世帯ということで比べてみますというと、失対の世帯の収入実態は、昨年の十月調査をいたしたものでございますが、六万円というような数値を私ども把握をいたしております。世帯の収入といたしましては六万円でございます。というようなこともございまして、生活保護に比べて決して遜色はないと私ども考えておりますが、いずれにいたしましても現在の賃金で食っていけるかどうかというような声も強く言われておる点でございます。政府といたしましては物価の鎮静に最大の努力をいたしておるところでございますので、今後とも私どもといたしましてはいろいろな情勢の推移を十分見守りながら、将来にわたっても賃金改善には私どもの立場で不十分だとは思いますが、懸命の努力をさしていただきたい、かように考えます。
  209. 坂口力

    ○坂口委員 六万円という話ございましたが、それは計算のしかたによりましてはそういうことも出てくるかもわかりませんけれども、しかし現実問題としましては、一日千五百円になればこれはいいほうでございます。平均二・二人というお話が出ましたけれども、食費等は二人でも三人でもそう変わらないわけですね。少なければ、四人のところが二人だから半分でいくかといえば、そういうわけにはまいりません。何といったって大根一本二百円もする世の中なんですから、これはそんなわけにいかないことは皆さんもよく御存じの上で御答弁をいただいているのだろうと思うのです。いまおっしゃったような皆さん方の御検討の段階ということもよくわかりますけれども、しかし推移を見ていただくのも、現在のように移り変わりが早いと、あまりいつまでも推移を見ていただいておりますと、どんどんどんどん現実のほうがこれはもう進んでいってしまいますので、推移を見ていただくのはひとつ敏速に見ていただかないと、これは実態についていけないと思うのです。政務次官からも少しおことばを賜わっておきたいと思います。大臣お見えになりましたら、この点につきましては、もう一度だけ念を押さしていただきますが、政務次官から明快な御答弁をいただきましたら、もうそれで済みますので、ひとつ医学的見地を踏まえて政務次官から御答弁をいただきます。
  210. 菅波茂

    ○菅波政府委員 医学的な見地というお話でございますけれども、もう先生のおっしゃるとおり、カロリーのほうは私もそのように考えております。ですから、生活の実態といいましょうか ことしはそういう意味で前年対比一九・二%上げておるわけですけれども、しかしそれでもいま聞いておりまして実態がそぐわないということならば、当然考えていかなければならぬ問題だと思っておりますので、できるだけ推移といいましょうか、そういうのを見ながら、実態に即したような処置をしていきたいと考えております。
  211. 坂口力

    ○坂口委員 もう一つ、一歩進めて尋ねさせていただきますと、現在春闘にからめて低所得者の問題が大きな問題にいまなっているわけでございますが、この春闘の中の一つの問題点として、この失対労働者賃金等もお考えいただくかどうか。  これはどれだけふえるとかなんとかということは別にしましても、この中でお考えいただけるかどうか、それをもう一つだけ承っておきます。
  212. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 失対就労者の実態につきましては、もう御指摘のとおりでございます。そういうこともあるからこそ、私どもは実は異例の措置でございますけれども、昨年の十月に年度途中で異例の賃金改定を行ないましたし、昨年末に三日分の増給措置をとった、またさらに本年に入りまして三月に二回目の増給措置をとった、こういうことで今次春闘で弱者救済ということで生活保護、失対就労者の問題が取り上げられておりますが、そういう実態もいろいろ考え合わせた上で三月の増給措置もとった次第でございます。今後のことにつきましては、ただいま来年度予算の審議も行なわれておる段階でございます。ただいま政務次官からお答えいただきましたように、今後十分慎重に配慮いたしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  213. 坂口力

    ○坂口委員 もう少しこれをお聞きしたいのですけれども、時間が十分ぐらいしかなくなってまいりましたので、春闘のお話を伺いたいと思うのです。  先ほども少しお話し申しましたとおり、御存じのように昨年末から異常なインフレ、いわゆる物価狂乱の中でわれわれの生活は続いているわけでございます。こうした中でいわゆる春闘共闘委との再三にわたる政府交渉が行なわれたわけではございますが、残念ながら現在までは決裂した形になっております。この原因については、皆さん方の立場からすればいろいろあろうかと思いますが、しかし政府のはっきりとした回答がなかったことが、まあおもな原因ではなかったかと思うのであります。  今回このような段階で空前のゼネストへ突入しようとしているわけでございます。この際政府は、いま一度労働者の諸要求に対して謙虚に耳を傾けていただいて、再検討をはかってもらいたいと思うわけでございます。特に労働大臣、御出席をいただきましたので、どうしてもこれは労働大臣にリーダーシップをとっていただいて、積極的にお取り組みをいただいて、事態の収拾に当たっていただきたいと思うわけでございます。労働大臣の春闘に対する御決意を伺いたいと思うわけでございますが、お見えいただいたことでございますので、引き続いて申し上げたいと思います。  予定どおりゼネストが決行されるということになりますと、六日から十三日まででございますか、国電をはじめとしまして日本列島は全くの麻痺状態になるわけでございます。中でも十一、十二日というのは国民の足が全くストップするということになりかねない現状でございます。何としてもこの事態を避けるべく努力を願うということが、国民の一番要望するところではなかろうかと思うわけでございます。特に、社会的弱者の人たちの問題をあわせて検討してほしいというのが今回の春闘の大きな特徴でもあるわけでございます。  いま大臣がお見えになります前に、障害者の雇用の問題と、それから失対労働者賃金の問題をやらせていただいたところでございますが、この失対労働者賃金も、いろいろ計算方法によりましては一日幾らぐらいになるかということはそれぞれ違いますが、よく見ても一日千五百円ぐらいになろうかと思います。私のほうの計算でいきますと千二百数十円ということになるわけでございます。この中で生活をしていこうと思いますと、二千四百カロリーのカロリーだけをとっていくとしても、病院食の話を先ほどちょっとしたのですが、二千四百カロリーの基準食に大きい病院ですら大体一人三百二十二円かかる、こういっているわけです。そういたしますと、食費だけで、材料費だけで、もし一家四人ということになればこれをこえてしまう、こういう話をいましたところであります。皆さんの側から、失対労働者の場合にはもう少し少なくて、二・二人が平均だというようなお話もございましたけれども、それにしたところで、生活費というよりも食費だけに非常に多くの金額がとられてしまうというのが実情ではないかと思うわけであります。こういった点も踏まえて、ひとつ大臣から御答弁をいただきたいわけでございます。
  214. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 おくれて参りまして恐縮です。  先生からも予定されているいままでの準ゼネスト、今度のものは本番のゼネストというような話で、しかもお話しのように長い期間。しかも終戦後のような混乱した、人心の退廃したときとわけが違って、ここまでお互いの努力で伸びてきた日本、それが石油危機で非常に心配しながら、物価抑制ということを国民的課題としていまやっている最中にゼネストなどが行なわれたならば、まさに日本を破産に導きはせぬか、民主主義の危機になりはせぬか。こういうことで第二の国難であるから、国民の連帯感でひとつ片づけてもらいたいということでお願いをし、皆さん方にお話も申し上げ、自分のできる範囲において懸命にいままで労組の方々お話し合いをし、閣内においてもスト回避のために御推進申し上げてきたところであります。  いずれにいたしましても、そういう連帯感の中で、全体に与える影響の多いことをお考えいただきながら、何とかお互い良識に立ち戻りながらやってもらいたいというかまえでやっているのであります。  またもう一つは、失対就労者の問題は非常に御熱心にいつも御審議いただくわけでありますが、何さま年輩の方々が多い。これが一つでございましょうね。そして、働くことが健康になるという勤労意識を持っていただくことは、私はたいへんありがたいと思います。ただ国の金で生活をするだけじゃなくして、お働きいただく。でありますから、物価抑制をやりながら年度末に三日間やり、今度はやはり三日間あるいはまた五%上がること、今度は一九・二%というふうなことも考えてやっております。そしてまたそういう気持ちをおわかりいただいて、ときにはお礼状などをたくさんもらいますと、お手伝いしたことがこんなにすなおに喜んでもらえるということになると、またお互いやる気になるわけで、おそらく先生にもそういう感謝の気持ちが反映されて御推進いただける、こう思っておるわけであります。  御要求の一つ一つにすぐに応ずるわけにもいきませんでしょうけれども、こういう気持ちでいままでも対処してきたが、いまから先も対処していく。それは結局平和な日本で、お互いが連帯感の中でそういう方々も一緒に生きていくという姿をいまこそ出すときじゃなかろうかと私は考えており、そういうものがまたストを回避するという気持ちにも通じてもらいたいということでやっているわけであります。
  215. 坂口力

    ○坂口委員 大臣から現状につきましてるる御説明をいただいたわけでございますが、端的に再度御質問をさせていただければ、この失対の問題につきましては、今回の春闘の中の一つの社会的弱者の部類に入る方々ではないかと思うわけでございますが、今回のこの春闘の考え方の中で、失対労働者賃金の問題もあわせて御検討いただけるかどうか、この一点だけ、具体的でなくてもけっこうでございますので、ひとつお答えをいただきたいと思います。それで次に移りたいと思います。
  216. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 今度いろんな要求が出されておりますけれども、この場でも何べんとなく申し上げましたが、私は国会の場で論ずることと外で論ぜられること、これはもう国民の声として、私は重要な参考意見として聞きます。しかしながら、そういう方々に直接お答えするのではなくして、皆さんのようなこういう国会の場で御議論された中で答えていくところに民主主義、議会政治というお互いが擁護すべきものがありはせぬか、こういうかまえであることを申し上げておきたいと思います。
  217. 坂口力

    ○坂口委員 そういうつもりで私もきょうは質問をさせていただいているわけでございますので、いわゆる春闘という場でそれをお答えいただくというよりも、きょうの私のこの質問に対して、現在のこの物価狂乱の背景を踏まえて、この失対労働者賃金というものをいま一度検討していただける段階に来ているのではないか、こういう意味で申し上げているわけでございますので、そういう意味でひとつお答えをいただきたいと思うのです。
  218. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 従来も、御期待どおりでないかもしれませんけれども考えてまいりましたし、いま物価抑制は国民的課題として皆さん一生懸命やっていただいていますが、そういう動向を考えながら諸般の問題に対処していく、こういうことでひとつ御理解をいただきたい、こう思います。
  219. 坂口力

    ○坂口委員 それじゃ、この問題はこれだけにさせていただきます。  次に移らせていただきますが、一昨日でございましたか、労働大臣は、ニジンスキー書記長らの一行と会談されたということが報道されております。その中で、官公労働者のスト権の回復の問題、それから、過酷な処分の救済、スト処分というようなことについて、労働大臣は、あくまで公務員制度審議会の答申と国内事情に沿って解決する、こう述べてお見えになりますが、これはもう間違いございませんね。
  220. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 はい。
  221. 坂口力

    ○坂口委員 続いてお尋ねいたしますが、労働大臣としては、この官公労働者のスト権回復問題に対してどのように現在お考えになっているかということを、ひとつお聞きをしたいと思います。  それから、時間がございませんのでまとめて申し上げますが、やはり三日の日に、自民党の橋本幹事長が、たしか京都だったと思いますけれども、このスト権問題に触れられまして、公共企業体のうち、たばこ、アルコール専売、それから印刷、造幣ですか、このスト権を認めるべきではないか、それで具体的な検討を進めるというようなことを語ってお見えになるわけであります。この点につきましても、労働大臣の御見解をお伺いをしたいと思います。
  222. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 二、三日前に、何とか自由労働組合の——組合の名前はもう忘れましたけれども、ニジンスキーさんという人の名前は覚えています。そういう方々が三名ほど日本に来まして、そして各大臣を表敬したいということだったらしいです。しかしながら、よその国は、労働組合の幹部が来たからといって、なかなか大臣が会わぬのだそうです。しかし、せっかく呼んできたからだれか一人ぐらい会えというふうなことだったらしくて、私がその番に回ったわけです。  そこで私は、お見えになりましたから、おすわりになったとたんに、とにかく、日本に一、二度お見えになった皆さん方、よくいらっしゃいました。それと同時に、労働省によくおいでいただきました、御訪問いただいてありがとうございましたと、こう非常にやわらかく申し上げたとたんに、日本の公務員にスト権をやっていないのはけしからぬ、何がけしからぬ、かにがけしからぬという話になったものですから、私も日本人ですから、思わず、一体それはあなた、ここへ表敬にお見えになったんですか、抗議しにお見えになったんですか。ILOの話をよくあなたがされますけれども、ILOでは、公務員のスト権の問題等々は日本の国内問題として片づけろ、こういうふうな話になっておりますので、私のほうは実は公務員制度審議会をつくってやっているのでございます、こういう話を申し上げたんです。   〔斉藤(滋)委員長代理退席、山口(敏)委員長代理着席〕 それぞれの国はそれぞれの国情に合って仕事をしております、アメリカに行って、あるいは西ドイツに行って、公務員にスト権を与えろというお話をあなたはされたことがありますか、もしそういう話があるなら参考に聞かせてもらいたい、こう私は実は申し上げたんです。ILOは二月二十七日に、スケジュール闘争は違法ストであると勧告をしていただきました、そういうこともあなたはよくおわかりでございましょう、処分の問題についても勧告が出たことは知っております、こういう問題についても、わが国内においてば、いろいろまた話し合いをしているものがございますと言って別れたようなことでございまして、私は、日本は自主独立の国です、参考意見は幾らでも聞きますけれども、そういうふうに、こう世の中ががたがたしているときに来て、抗議のような話というのは、ちょっと私、心にひっかかっているものでございます。こういう気持ちでお別れしたということをお伝え申し上げておきます。  橋本さんの話は、まあこれは党人でございまして、こういう時期に談話を発表されたから、それぞれ受け取り方がだんだんあるかと思います。私なども、影響力のある人であればあるほど、その真意はどういうものか、こう思っているわけでございますが、さて、お互いこういう場所にいる者からしますというと、公務員制度審議会でいろいろ検討し、ILOのいろいろな話なども聞く間に、やはり三公社五現業に——三つ案かあったわけてしょう、三者並列、その中には、できるものからやったらいいんじゃないかという話もあり、そしてILOの結社の自由委員会の中では、専売とかそういうものについては将来検討すべき課題じゃないかという実は勧告をいただいて、私たちがここで御議論していることも御承知のとおり。それらのものを取り上げてお言いになったものであって、制度としてこれをいま徹底的にやるかやらぬかということは、連絡会議において鋭意検討している。何さま長い日本の将来の制度につながることであり、経営につながることであり、あるいはまた国会の審議につながることでありますから、一部の方々には、性急な結論を出さないのはけしからぬと言われながらも、そういう制度問題であるだけに、やはりちょっと慎重を要するというのが今日の段階じゃないか、こう理解しているものであります。
  223. 坂口力

    ○坂口委員 時間がなくなりましたので、私はこれで終わりにさせていただきますが、橋本幹事長のこういうお話もございましたので、ひとつ新しい一歩を踏み出してもらうときではないかとも思うわけであります。こういうふうな考え方もあるということだというふうにいま大臣のお話は承っておきます。  いずれにいたしましても、今回のこの重大なストを前にいたしまして、どうしても労使ともども十分な話し合いのもとに、何とかしてこれを避けられるような方向に大臣にも努力をしていただきたいということをお願いをしまして、終わりにさせていただきます。ありがとうございました。
  224. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員長代理 小宮武喜君。
  225. 小宮武喜

    ○小宮委員 先ほども春闘問題に触れられましたけれども、私も春闘問題について若干質問をしたいと思います。  御承知のように、この春闘は非常に重大な局面を迎えております。もう御存じのように、春闘共闘委員会ではゼネスト宣言を発して、来たる十日ごろからそのゼネストに入るというようになっておるわけですが、こういったゼネストが起きた場合に非常に迷惑するのは国民ですから、政府としても、このゼネストを回避するためにやはり最大の努力をしてもらいたいと思うのですが、いかなる努力をされておられるのか、その点ひとつ大臣からお聞きしたいと思います。
  226. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 御心配のように、国民総ぐるみらしいスローガンを掲げておられますけれども、違法ストに反対な方々もあります。また、それによって国民生活が破壊されるんじゃなかろうかと心配されている方々も大ぜいおられます。私はそういうことからいたしまして、やはり政府としては、あらゆる機会をつかまえて、これの回避のために、ときには自重を申し上げ、そうしてまた、経済要求と別に、制度問題は国会の場があるというけじめだけはよくよくいままで申し上げてきたわけでありまして、具体的な努力と申されれは、おわかりのとおり、その方々の御要求に応じたわけじゃありませんが、重大な参考意見として国会の場で御論議され、政府も考えておった弱者救済とおっしゃるもの、それに対しては年度末にお手当てを申し上げる、あるいはまた、近いうちのこういう賃金改定期にあたりましては、公労協の三公社五現業のこともこれあり、けさ内閣といたしましては有額回答するという姿勢などもきめたりして、こういう一つ一つの問題についてできるだけの努力を払いながら、国民連帯感の中に、何とかひとつ平和なうちにお互いの経済活動をしてやりたい、こういうふうな感じであります。
  227. 小宮武喜

    ○小宮委員 私も最近の傾向は、大臣も言われたように、間接民主主義が直接民主主義に移行しておるということは、これは非常に重要な問題だと思うのです。だからこの意味では、やはり議会制民主主義、つまり間接民主主義というものが尊重されなければならないのにかかわらず、直接民主主義というものが最近非常に激しくなってきたということは、日本の今後の議会制度のあり方、骨幹的には民主主義のあり方にも触れる問題だと私は思う。その意味で、そういうような直接民主主義に移行したという背景には、私はやはり政府にも責任があると思うのです。そういうようなことをいままで容認してきた、そういった空気が助長されてきたということにも問題があると思うのです。しかしそれは時間がありませんから申しません。  そこで、政府として、三公社五現業の賃上げに対して、今夜かどうかはよく知りませんが、三公社五現業平均で一九%とか二〇%とか、金額にして一万九千円程度とか、新聞紙上ではいろいろ報道されているわけですが、これはいつ三公社五現業の組合側に回答されるのですか、その点いかがですか。
  228. 道正邦彦

    ○道正政府委員 先ほど大臣からお答えがございましたように、本日早朝に給与関係閣僚会議が開かれまして、有額回答するという方針がきまったわけでございます。例年でございますと、その際に額もきまるのが例でございますけれども、今回は民間の給与の回答状況がまだ出そろっておらず、なかんずく、従来、三公社五現業の給与の計算にあたりまして、一番大きな影響力を持っておりました私鉄の第一次の回答が出ておりません。そういうことで額は、先生指摘のように、私鉄の回答がおそらく今晩出る見込みでございますので、そういうものも参考にいたしまして、各当局で組合に対する回答額の検討をする。できますならばきょうかあす回答をする。政府としては、当局の回答についての希望を聞きまして、財政上検討いたしまして了承するかしないか、要するに政府と当局で相談の上、組合に回答するという段取りになろうかと思います。
  229. 小宮武喜

    ○小宮委員 これらの回答というのは、本来政府が受けて回答するという立場で、個々には各国鉄なり電電公社なりいろいろ通じてやるでしょうけれども、そこに、むしろ政府自身が当事者能力をなくさせてしまっておるというところに問題がある。だから、その点で私は政府にも言いたいところがたくさんあるわけですけれども、問題は、やはりそういった私鉄の回答がおそらくきょうじゅうでしょうけれども、そのあとを受けてどれくらいの有額回答をするかということは、そこで判断されると思いますけれども、そのような判断をして、やはり各当局を通じて当局から回答するという立場をおとりですね。そういうような態度をとったにしても、今回のゼネストが回避できるのかどうか。  すでに人事院からは昨日、いわゆる期末手当の〇・三カ月分の増額を国会並びに内閣に対して勧告が出されているわけです。この問題については、政府のほうでも尊重をすることは間違いないと思うのですが、そういった期末手当の増額あるいはここで有額回答するというような、こういうような政府の姿勢を示したとしても、はたしてこのゼネストが回避できるかどうかということは私は疑問だと思うのですが、労働大臣の所見をひとつ承りたい。
  230. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 御心配いただいて恐縮です。  いまの時代に、やはり先生が御心配のように、直接民主主義は一番困るわけでして、かりに私たちが幾ら苦労してやっても、自分たちの思ったとおり出てこなければ何でもやるぞというふうな形では、非常に困ると思っているのであります。いずれにしても、政府としては、いまの時代を考えながら、やはりできるだけのことをしながら、そういう気持ちがおわかりいただけるようなことを待ちつつ、またそれをわかっていただく方々が私たちと一緒になってお話ししていただくという、やはり連帯感と申しますか、そういう場面の広くなることが日本人の良識を呼び起こしまして、そして一歩でも二歩でも平和の方向に持っていきたい、こう思っているわけであります。   〔山口(敏)委員長代理退席、葉梨委員長代理着席〕 もうこれで受けないというものはどうにもなりませんので、そこのところにお互いの苦心があるわけであります。
  231. 小宮武喜

    ○小宮委員 今度の春闘要求の項目の一つとして、公務員に対するスト権を与えよという、いわゆるスト権奪還の闘争が組まれているわけですが、この問題について、政府部内でもいろいろ検討はされておるようですけれども、政府として、この公制審の答申を受けて、現在いろいろやられているわけですが、大体いつごろまでにこのスト権問題を結論を出そうとしておられるのか。長くなればなるほど、いつもスト権奪還のストライキをやるわけですから、その意味では政府はすみやかに結論を出すように努力をすべきだと思うのですが、そういうようなスト権の問題についての結論というのは、大体いつごろまでに出そうとしておられるのか、その点を少し明らかにしてもらいたいと思う。
  232. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 御案内のように、公制審の答申を受けたあとで、政府の中に連絡会議というものを事務次官クラス、そしていまのような国会でこの問題を非常に推進される御議論があり、一方ではまたああいうふうな各種団体、組合からの話などもありまして、私とすれば、労働省関係のそういう担当の者、出席する諸君に、これを濃密に会合を開いて——何さま公制審が八年、労働、公益、使用者、こういう方々が八年間、ベテランが集まって結論が出なかったほど、国民生活に関係のある制度の問題でございます。それを事務次官クラスなり課長さんでずっと整理するだけでも、問題の所在を見つけるだけでもたいへん、これをまた一つの方向にそこだけで持っていくのもたいへんなことは、これは御理解いただけると思うのです。  いずれにしても、そういうときでもあるから、私たちとすれば、いまやいろんな方々の——組合の方々も、こういうふうな考え方はどうだという意見などを持って来、またお話も、おしかりなどもいただきます。そういうものも踏まえながら研究しているということでして、さて、いつどうするというところはちょっと私いままだ申し上げるところまできていないということははなはだ遺憾だと思っております。
  233. 小宮武喜

    ○小宮委員 ある労働団体ではいまの連絡会議みたいなところでこの問題を検討するということではなくて、いま電力石炭スート規制法調査会がありますように、何かそういうような審議会か調査会か、そういった何らかの機関を設けて早急に結論を出すように、長ければ長くなるほどこれはまたいろいろ問題を引き起こすわけですから、そういうような意味で、私に言わしめれば一年以内ぐらいにでも一応結論を出すように努力すべきじゃないのか。やはり努力目標をきめてやらないと、だらだらなったらまた問題になってくる。今度の政治ストは違法ストですから、そういった意味では皆さん方おそらく処分をする、また処分反対ストが起きる、また処分する、また処分反対ストが起こる。結局、スト権奪還の問題は常につきまとって動くわけですから、そういう意味では審議会か調査会みたいなものをつくって、そこでひとつ検討をして、一年以内ぐらいをめどにして、早急に結論を出すようにひとつ考えるべきじゃないのかということを私申し上げたいのですが、大臣の所見はいかがですか。
  234. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 貴重な御意見を拝聴さしていただきましてありがとうございました。万々そういうものを参考にして私のほうでも研究してみたいと思います。
  235. 小宮武喜

    ○小宮委員 それから、これは政府部内で三公社五現業の中の専売とかアルコールだとか印刷、造幣、林野あたりについてはスト権を与えてもいいのではないかというような意見があるやに私聞き及んでおりますけれども、その点はいかがですか
  236. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 政府部内でそういう具体的な話が出ているとは私まだ寡聞にして承知しておりません。もしあるとするならば、連絡会議の事務次官クラスなり課長クラスのところで、ILOの結社の自由委員会の中にもそういう意見などがありまして、検討すべき議題じゃないかというふうなことをいわれたことなどもありますので、そういうところでときには議論しているかもしれませんが、まだ政府部内としてはそこまで触れたことはございません。
  237. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは労働大臣のほうはもうこれぐらいにして……。  経済企画庁。最近経済企画庁は春闘の賃上げ試算なるものを、内部資料としてではありますが、出しております。その内容によりますと、賃上げが一五%あれば消費者物価が一三・九%、二〇%ならば一六・二%、二五%ならば一九・四%、三〇%ならば二二・六%物価が上昇するということを試算の中で出しているわけですが、問題は、経済企画庁はあくまで内部的な資料だといいながらも、もうすでに御存じのように一応一部の新聞に発表されております。これを受けて日経連などの経営者団体の中では、賃上げは最高二〇%までに押えるべきだ、二〇%以上上げたらこれはもうインフレを助長してたいへんなことだというキャンペーンをやっているわけですが、なぜ経済企画庁はこの試算を春闘のさなかにわざわざ作成したのか、その意図についてひとつお聞きします。
  238. 佐々木孝男

    ○佐々木説明員 先生も御指摘がありましたように、経済企画庁といたしましてはこの数字は正式に発表したものでもございませんし、それが企画庁の見解として示したものではないわけでございますけれども、私たちの役所といたしましては、日本経済に重要な影響を与えるできごとが将来予想される、たとえば円の切り上げが行なわれるということもございますし、たとえばいまの春闘の場合でも、日本で戦後最大の春闘というような話もあるわけでございますので、それでは日本経済から見た場合にどういうことが起こるだろうかというようなことについて内部で常々検討しておかなければならない、こういう気持ちでやっておったのでございますが、たまたまこの一部の資料が外に漏れまして、それが新聞に載ったという経過でございますので、御指摘のように、何らかの意図があって意図的にしたというものではないのでございます。特に、いろいろな見方があろうかと思いますけれども、ここで問題になっておりますものは、いま申しましたように経済全体の姿がどうなるかということでございまして、いま御指摘のありました賃金と物価の関係というものをそれだけを取り上げているものではございませんし、いま先生が御指摘になりました、たとえば二五%とか一九%、新聞の数字はそうなっておりますが、それは賃金が上がったから上がった、ダイレクトには、直接には結びつかないわけでありまして、その原因といたしましては、すでに大幅に上がった卸売り物価の状況であるとかあるいは生産性の上昇であるとか、これにつきましてそれぞれ仮定を置いて見ておりますから、二五と一九というものが結びつくような性質のものではございません。そういうものでございますので、企画庁の意図を御理解いただきたいと存ずる次第でございます。
  239. 小宮武喜

    ○小宮委員 こうしてわれわれが直接質問をし答弁を聞けば理解するとしても、このような資料が外部に流れた場合、えてしてこういうような資料を自分たちに有利に利用しようとするものが起きるのは当然なんです。したがって私は、それだからといってこういうようなことをやるなとは言いませんけれども、やはりこういうようなことが起こると、結果的には、大幅賃上げをやると物価がまた大幅に上がりますよ、したがって、大幅賃上げに対する労使に対しての牽制的な役割りを結果的には作用する。それとまた、労働者側に対しても、また物価が上がればインフレが起きますよというような牽制的な役割りも果たす。今国会でも所得政策の問題がいろいろ論議をされましたけれども、結局こういうふうに一五%上がればこれぐらい物価が上がりますよ、それはただ単純な物価上昇だけではないとしても、何かそうなると所得政策のガイドラインみたいな形にも受け取れるし、そういうのは非常に誤解を招きますので、その点、私は悪く勘ぐれば、あれだけ衆参両院の予算委員会、本会議等で、政府は所得政策を導入する意図があるのではないかということに対しても、いま所得政策を導入する考えはありません、なかなかこれは国民合意の上でなければそういうことはできませんという答弁をしておるけれども、こういうようなところに所得政策の片りんがあらわれてきたのではないかというような勘ぐりもできるわけですから、その意味ではいまの答弁でいろいろわかりましたけれども、やはり結果的にはいろいろそれぞれの立場から見ればそれぞれの受け取る感じが違うわけですから、そういうような意味では、やはり経済企画庁としても十分にこれは配慮をしてもらいたい。だからそういうような意味では、たとえば大幅賃上げをやると物価が上がりますよ、あたかも大幅賃上げが物価上昇の一因だということではなくて、むしろ政府自身が物価安定をはかるのが先決であって、労働者の賃上げというのは、物価が上がる、上がるから自分たちの生活は苦しい、それでこういうふうにわれわれは賃上げをするんだという、いわば物価のあと追いをいまやっているわけです。そういう意味で、ここらあたりで、労働者が賃上げをした、それが物価上昇の原因だ、そんなことをいつも総理は言っておるわけですけれども、そんなことを言われないようにしてもらいたい。この問題についてはまだありますけれども、時間がございませんからこれぐらいで終わりたいと思います。  大蔵省は来ていますか。——最後に大蔵省にお聞きしたい。最近週休二日制だとかあるいは労働時間の短縮だとか、労働福祉の問題が非常に大きく取り上げられて、それぞれ推進をされておるわけです。しかしながら一方では、業務の性質上どうしても夜勤、交代制勤務というのをやはり余儀なくされているわけですが、交代制勤務に従事する労働者に対して、西ドイツあたりでは税制上の優遇措置がなされているわけですが、西ドイツの税制上の優遇措置がどのように行なわれておるのか、若干御説明を願いたいと思います。
  240. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 お答え申し上げます。  西ドイツの税制上の優遇措置は非常に古くからございまして、これはわれわれが現在承知している段階では世界的に西ドイツだけでございますけれども、一九四〇年ごろからいわば交代制あるいは日曜、祭日の労働に対して特別の扱いをしているという制度ができております。それが次第に、いろいろな経緯がございますけれども、一九七三年の改正によりまして現在は、交代制勤務の、交代制であるがために余分に追加されている付加給付の部分については非課税の扱いとされております。
  241. 小宮武喜

    ○小宮委員 西ドイツで交代制勤務に対して非課税の措置、税制上の優遇措置をされておる例を若干説明してもらいたい。
  242. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 われわれが承知しておりますところでは、西ドイツでは労働時間令というものがございまして、日曜祭日についての労働が原則として禁止されております。そういう意味で、歴史的にも日本と違う経緯をたどってそういう問題が生じてきたものと思いますけれども考え方といたしましては、その賃金を得るのに対して払う犠牲が通常の勤務より多い、したがってその部分について特別の配慮をしたという考え方かと思われます。  ただ、つけ加えさせていただきたいのは、実は西ドイツにもわが国におきます税制調査会と同様のものがございます。一九七一年のそういう調査会で、これについてはいろいろな問題がある、むしろ制度としては課税上の不平等を来たしている問題がある、これは廃止することが適当であろうというふうな意見が出されております。
  243. 小宮武喜

    ○小宮委員 西ドイツの事情もわが国における二交代制勤務事情も、私は異なってはいないと思うのです。したがって、二交代制勤務を余儀なくされておる労働者に対して、西ドイツと同じように、常態的に、恒常的にやられておる二交代制勤務賃金については、わが国でもそういう西ドイツ並みの税制上の優遇措置を行なってもいいのではないかというふうに私は考えるのですが、その点、大蔵省当局の見解はどうですか。
  244. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 社会的に通常、所得税課税の基本考え方と申しますのは、その稼得した所得に応じて、担税力に応じて課税するというたてまえになっておりまして、それがどのような犠牲を払った上で稼得されたかということには関係がなく、一貫してその所得に応じて課税するというたてまえをとっております。これはどういうわけかと申しますと、もしそういうふうなことを一々配慮するということになりますと、たとえば危険手当あるいは人の非常にいやがるような仕事、こういうものについても、すべての職種別にそれぞれ配慮を加えていかなくてはならない。そういうことになりますと、税制上収拾のつかないような事態を生ずる、こういう問題もございまして、現実的な課税の公平を実現するためには現在の制度でやむを得ない。そういう意味で、西ドイツに例があることは十分承知しておりますが、やはりそれをわが国において行なうことはきわめて困難ではないかと考えております。
  245. 小宮武喜

    ○小宮委員 税制上の不公平というのはむしろ勤労者が一番味わっているわけです。よくトーゴーサンとかクロヨンとかということばもあるように、労働者はもう間違いなしに給与からちゃんと源泉徴収で所得税を取られる。その見返りというものは何もない。そこで、現行法では、いま言われておるようなことは理解できたとしても、今後の問題としてはやはり十分大蔵省としては考えていただきたい。特にこの問題は大蔵委員会でも、所得税法の一部改正の際、附帯決議としてつけられておるといういきさつもありますので、大蔵当局に再検討を要望しておきたいと思います。  それから、せっかく大蔵省来ておるから伺うのですが、労働者の最近の預貯金がインフレによって非常に目減りをしておるということで、これはあちらこちらでかなり訴訟問題も起きておるし、またわれわれがいまから審議する財形貯蓄の問題の中にも出てくるわけです。これは大蔵大臣でなければなかなかむずかしいと思うのですが、こういう勤労者の預貯金の問題についても大蔵省としては考えていただかなければいけないし、それにもっともっと日本労働者に対して、大蔵省としてはそれだけの努力に報いるという態度を示してもらいたい。その意味でも、この税制上の問題については、今回いろいろ減税措置もやられでおりますが、こういった小さいことでもやはり一つ一つ労働者の期待にこたえてぜひ考えていただきたい。この点について、梅澤主計官ですか、所見があったらひとつ聞かせてください。
  246. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 いま先生御提起になりました問題でございますが、先般来衆参両予算委員会で内閣総理大臣並びに大蔵大臣が申し上げておりますことは、とにかく現在は異常な物価を押えることだ、それが政府の基本的な姿勢であるということでございます。ただ、具体的に預貯金の目減りを国のサイドでどういうふうに考えるかというのは、いろいろな考え方があると思うのです。  税制の問題につきましては、ここに税制課長もおるわけでございますけれども、一体金利問題で考えるのかどうか。これは御案内のように、かりにそれを保障するような意味で預金金利を上げるというようなことになりますと、これは貸し出し金利に必ずはね返るわけでございます。そういたしますと、コストプュシュ要因と申しますか、そういうことで非常に慎重に考えなければならぬ問題であるというように思います。残る道として、じゃ目減り分を一般租税財源から国が保障するかというそういう考え方もあり得ると思うのです。あり得ると思うのでございますけれども、これについては財政事務当局といたしましては二つの点が問題として考えられる。一つは、やはり預貯金というのは個人の所得から留保して財産を形成するわけでございますから、これに対して一般税財源からリベートと申しますか環元をするというのは、広い意味でやはり所得保障でございますね。私は、社会保障というのは広い意味での所得保障だと思うわけでございますけれども、現在の日本の社会保障の体系の中でそういう新しい制度を組み込むということには非常に問題があるわけです。  第二点は、それと関連があるわけでございますけれども、現在の日本の社会保障というのは西欧の水準から比べまして若干低位にある。ここ一、二年非常なスピードで資源配分を社会保障のほうに投入しておるわけでございますけれども、これは三十七年に社保審の有名な御建議があるわけでございますが、財政資金で社会保障部門への配分についてはまず公的扶助、それから社会福祉、公衆衛生、それから各種年金とか医療保険、そういう順序で優先的に資源を配分していくべきである。預貯金の目減りにいまの段階でそういう所得保障をするということは、先ほど申しました現在の日本の社会保障の体系の中で問題があると同時に、財源的にもはたしてそれが効率的な配分であるのかないのか。当面非常に物価が上がっておることは事実でございますけれども、あくまで問題のポイントはやはり物価を押えることである。それは、財政、金融一体的に総需要抑制をとっておるというのが現在の財政当局の立場でございます。
  247. 小宮武喜

    ○小宮委員 いろいろまだ反論ありますけれども、時間がありません。これで終わります。      ————◇—————
  248. 葉梨信行

    ○葉梨委員長代理 勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。瓦力君。
  249. 瓦力

    ○瓦委員 戦後わが国は非常に目ざましい経済発展を遂げてまいりまして、自由世界第二位といわれるまでに達しております。このことは、勤労者の不断の努力であったと考えるわけであります。現在すでに全就業者の三分の二が勤労者といわれる時代に入っております。  さらに経済社会基本計画で見ますと、雇用者比率は五十二年には七四%、三千九百六十二万人になる、かように見込んでおります。また先進諸国の状態を見ますと、イギリスでは九二%をこしております。これから勤労者がだんだん日本でもふえるわけであります。勤労者対策は福祉行政の中でも重要な地位を占めるものである、かように考えるわけでございます。政務次官は、今後勤労者福祉対策をどう進めようとお考えでいらっしゃるか、特に勤労者財産形成政策はその中核になるべきものと考えますが、この点につきまして御見解を承りたいと思います。
  250. 菅波茂

    ○菅波政府委員 今後の勤労者の福祉対策をどう進めるかという瓦先生の御質疑でありますが、労働者の生活は、近年、経済成長に伴いまして著しく改善されてきておるわけでありますけれども、その反面、公害とか物価上昇等によりまして労働者の生活が脅かされておるということも、これまた事実であるわけであります。生活の水準や所得水準に比較して、労働者の福祉の立ちおくれが指摘されておることも事実でございます。このような中にありまして、労働者の生活の安定あるいは福祉の向上をはかることが国の基本的な政策課題であることも御承知のとおりであります。今後とも積極的に推進をしてまいりたいとも考えております。  なお、労働者の福祉とは、端的にいえば、働く方々がその生涯を通じて明るく豊かな生活を送れるということがもう基本であるわけでございます。  具体的な施策といたしましては、基礎的な労働条件の維持あるいは確保をはかるということはもとよりでありますけれども、あるいは週休二日制の一そうの普及促進をはかるとか、あるいは定年延長あるいは高齢者に対するところの雇用対策の推進をはかっていくとか、積極的にそういう問題を進めるほか、特に勤労者の生活の経済的基盤を充実するために勤労者の財産形成政策を拡充していきたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  251. 瓦力

    ○瓦委員 今後勤労者の生活の安定をはかっていくためには、社会保障制度の拡充、公共住宅その他生活のための社会資本の充実等種々解決をはかるべき課題が指摘されているわけでありますが、他方、勤労者財産形成政策は、勤労者もより多くの財産を保有することができるよう、勤労者の財産形成のための自主的な努力を積極的に助成していくことを目的とする施策であると考えます。これら勤労者の福祉向上のために必要な諸施策の中にあって勤労者財産形成政策をどのように位置づけ、その推進をはかろうとしておられるか、そのお考えを承りたいと存じます。
  252. 菅波茂

    ○菅波政府委員 いま勤労者の財産形成政策をどのように位置づけていくか、また、どのようにそれを進めていくかという御質疑であるわけでございます。  勤労者が豊かな安定した生活を営むことができるようにするためには、御説のように、やはり労働条件の改善とかあるいは社会保障の充実、さらには生活環境整備、そういうものがあるわけであります。つまり、社会資本の整備ということが必要であることは言を待たないわけでございます。また、これと相まって、個人の資産の充実がはかられることも必要であるわけでございます。しかしながら、われわれの生活のすべてを社会保障とかあるいは社会資本によらしめるということはなかなかむずかしい、不可能だといっても差しつかえないと思います。しかし、人はそれぞれの努力によってみずからの生活の改善と向上をはかることもまた当然のことであるわけでございます。  この勤労者財産形成促進制度というものは、御指摘のとおり、勤労者が、このような趣旨から自主的に行なっている資産保有のための努力を国及び事業主が援助しあるいは促進するというものでございます。これもまた勤労者の福祉向上のためにはなくてはならぬ政策であろうと思います。他の諸施策と相まちまして、調和をはかりながら一そう増進してまいりたいと考えております。
  253. 瓦力

    ○瓦委員 ただいま諸施策の健全なバランスを配慮しながら施策を進めるというお答えがございました。当然である、かように考えます。わが国の社会保障制度や社会資本の充実はまだ不十分であります。それらを充実していくということが急務であるということは私も否定いたしません。  しかしながら、考えてみますと、たとえばイギリスでは住宅政策において公共賃貸住宅中心であり、社会保障では全国民一律保険料、一律給付というような考え方が強いのに対しまして、西ドイツでは社会保障制度においても、本人の社会に対する貢献度に応ずる給付という原則をとっております。また、財産形成政策の推進にも早くから努力をいたしております。資産保有への勤労者の自主的努力を助長する中で、住宅についても持ち家の取得に大幅の援助を行なって配慮を払っているようであります。今日のイギリス経済の停滞に対して、西ドイツ経済は、いまなお着実な前進を続けている背景には、やはり社会的施策に対するこのような考え方の相違も大きく影響をしておる、このように私は考えるわけであります。  私は、もとより国民ないし勤労者の全般の生活に対する最低限の保障は必要でありますが、国民の活力を維持増進するためには、その自助の努力を前提とし、それが有効に結実するように国が援助するという施策が重要であると考えるものであります。その意味におきまして、この財産形成政策、その中での持ち家促進等により多くの重点を置くくらいの気がまえがあってもよいのではないかと考えるのであります。その点についてお答えを伺いたいと思います。
  254. 菅波茂

    ○菅波政府委員 ただいま瓦先生から、財産形成政策にはさらに積極的に取り組む必要があるのではないかという、また持ち家促進ということについては、これまたやはり積極的に取り組んだらどうかというお話でございます。  今日の福祉国家の理念といいましょうか、そういうものにかんがみまして、国民については少なくとも健康で文化的な最低限度の生活を保障しという、社会保障制度の確立というものはぜひとも必要であるわけであります。また、わが国の現状においても、この社会保障制度の充実になお努力をすべき余地がまた残されておるわけでもございます。  しかし同時に、国民ないし勤労者というものは、単に受け身の形でのみそのような社会保障制度にたよるというのではなく、できるならば、みずからの、やはりさっきも言いましたように努力でその生活を向上させていくということが、将来への確固たる生活設計を持って人生を送りたいと願っておることも事実であるわけでございます。先生の御指摘のような見地からも、財産形成政策のようなこのような勤労者の自助の努力が、有効に実を結ぶというものにできるだけの援助を行なう施策が同時に当然必要であるわけでございます。その点については全く先生の御意見に同感であるわけでございます。  しかしながら、わが国の場合、社会保障の充実になお大きな努力すべき余地がある以上、やはりそれらの間におきまして、おのずから調和をはかりながら施策を進めることが必要であるわけでございます。特に持ち家ということについては、すべての勤労者に持ち家を持たせるということは現実的にはなかなか不可能な問題であるわけでございます。また、それ自体がまた適当であるとも必ずしも言えないと考えるのであります。勤労者に対する住宅対策としては、やはり良質な、かつ低廉な、安い家賃で住宅が得られるという、そういうことが基盤にまずなければならぬと思っております。しかし、勤労者の間には、持ち家取得の希望がまた非常に強いことも事実であるわけでございます。持ち家を希望し、そのために努力している勤労者に対しては、その希望や努力ができるだけ容易にかなえられるように援助し、あるいは促進する配慮も当然必要である。その意味からも、持ち家の促進を勤労者財産形成政策という中に特に重要な柱といたして取り上げておるところでございます。
  255. 瓦力

    ○瓦委員 局長に二、三点続けてお答えをいただきたいと思いますが、勤労者の生活の安定をはかるためには、何よりも賃金水準の改善が必要であります。わが国の賃金水準は国際的に見ましてどの程度の水準にあるか、一つずつお尋ねいたしますので、端的に答えていただきたいと思います。
  256. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 わが国の賃金は、ここ十数年にわたりましてわが国が高度経済成長を持続してまいりました結果、きわめて著しい上昇を示しているのでございまして、最近では国際的に見ましても、先進諸国と比較いたしまして遜色のないところまで来ておるわけでございます。  お尋ねの比較の数字でございますが、昭和四十八年、すなわち一九七三年の主要諸外国における製造業の生産労働者の一時間当たりの賃金、これを経企庁調べの推計によって見てみますと、為替レートを考慮して比較いたしてみますと、日本賃金はアメリカの約二分の一、西ドイツの七割でございまして、イギリス、フランスはすでにこれを上回っておりますし、イタリアに対してはかなり日本のほうがすでに高くなっていると存じます。過去に比べましてこのように先進諸国との格差が狭まってまいりましたのは、おもにやはり日本賃金上昇が、主要諸外国に比しまして長期間にわたり比較的高かったためであると存じます。
  257. 瓦力

    ○瓦委員 勤労者の現在の資産保有の状況をお知らせいただきたいと思います。
  258. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 賃金につきましては、ただいま申し上げましたように、順調な上昇を示してまいっておるわけでございますが、わが国の勤出者の資産の保有状況を見てみますと、この面ではまだまだ立ちおくれが目立っておると存じます。すなわち、勤労者の資産は、貯蓄におきましても持ち家の比率におきましても、勤労者以外の他の国民階層に比べて低位にあるわけでございまして、勤労者の貯蓄保有額、これを総理府の貯蓄動向調査昭和四十七年の数字で見てみますと、勤労者世帯平均百七十三万円、かように相なっておりまして、それに対し勤労者以外の一般世帯、これは農林世帯は除かれておりますが、その数字は二百九十八万円、それから農林世帯は二百九十五万円となっておりまして、勤労者世帯は他の一般世帯や農林世帯に比べますと約六割弱となっております。また、年間の貯蓄の増加額も格差がございまして、ただいま申しましたような貯蓄額の格差が縮小するという方向にはないわけでございます。  それから持ち家の状況を見てみますと、勤労者世帯の持ち家比率は四六・二%でございますが、それに対しまして自営業種世帯は八三・七%それから農家世帯は九九・一%、ほとんどの方が持ち家に住んでおられるわけでございます。それからまた住宅難世帯の割合も、勤労者世帯の場合には一九%に達しておりますけれども一般世帯の場合では九%、こういうような統計の調査結果が出ておるわけでございます。
  259. 瓦力

    ○瓦委員 そのような状態の中で勤労者は今日何を一番要望しておるか。ただいま勤労者の所得あるいは保有する資産をお伺いしました。勤労者が今日要望しておるものは一体何だろうかということはいろいろな世論調査等でも見るわけでございますが、労働省のほうで把握をしておる資料から最近のものをお聞かせいただければ幸いだと思います。
  260. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 勤労者の生活につきましての希望につきましては政府のいろいろな調査がございますが、この一、二の例を申し上げてみますと、総理府が四十七年に行ないました国民生活に対する世論調査というものがございますが、その中で見ますると、たくわえのある、ゆとりのある生活を望むというのが第一位でございます。それからその次に希望が多いのは、住生活の面で豊かな生活というように相なっております。それから四十六年に労働省で勤労者生活意識調査というのをやっておりますが、それによりまして、生活の各面につきましての満足度、不満足度等を見てみますると、不満足度が一番高いのが貯蓄ということで六七%、それから賃金が六六%ということでそれに次いでおります。また衣食住生活の面で申しますと、その中では住生活についての不満度が一番高い、これが四五%になっておるわけでございまして、他の食や衣よりも非常に高いわけでございます。その住生活の中でも、これを住生活の態様によって区分してみますると、民間の借家あるいは借間にお住まいの方は、七三%が住生活に対して不満を持っておられるわけでございます。こういった調査結果から見ますると、今日勤労者が最も希望しておられますものは、一つには貯蓄それからさらには住宅、こういった資産保有面の充実があげられると考えております。
  261. 瓦力

    ○瓦委員 ただいまお答えいただいたような数字からも、特に貯蓄や住宅について不満を持っていることがうかがわれるのであります。恒産なければ恒心なしのたとえのように、生活の真の豊かさと安定のためには、単にフローとしての所得が大きいということにとどまらず、その生活がストックとしての資産の保有によってささえられていることが必要なのであります。その意味で、国民の大部分を占める勤労者がこの資産保有の面で著しく立ちおくれていることは、大きな問題でありまして、勤労者の不満がそこに集中するのも当然のことであると考えるのであります。勤労者財産形成促進法は、まさにこのような実情にかんがみ、勤労者の財産保有を促進することにより、勤労者生活を豊かで安定したものにしていこうという趣旨から制定されたものと承知しておりますが、財産形成貯蓄の今日までの成果はどうであるか。それについてどう評価されているか。こういった点についてお答えをいただきたいと思います。
  262. 大坪健一郎

    ○大坪政府委員 御質問の点でございますが、勤労者財産形成貯蓄は昭和四十七年一月一日から実施をされましてすでに二年数カ月を経ております。最近の資料は二月末現在でございまして、労働省関係機関に問い合わせまして把握いたしました状況を申し上げますと、全体として実施をいたしております事業所は十七万二千事業所でございます。それから貯蓄契約をいたしております勤労者は二百八十四万八千人でございます。それから貯蓄の残高は一千七百四十三億三千万ということになっておりまして、二年数カ月たちました現在、三百万人近い勤労者の方々が約一千七百四十億円という高額の貯蓄をされておるということでございます。勤労者の関心が非常に高くこの制度に向かっておるというふうに私ども考えておるわけでございます。
  263. 瓦力

    ○瓦委員 約二年間で二百八十万人にも及ぶ勤労者が財形貯蓄を始めたということは、財産形成に対する勤労者の意欲が強いことのあらわれであろうと思います。野原委員長は、この法律制定の際労働大臣をされておられましたが、財産形成制度については小さく生んで大きく育てると名言を吐いておられます。労働省は、これら勤労者の期待にこたえて、この制度をこれまでどのように改善してきたかを承りたい。
  264. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 勤労者財産形成促進法は、四十六年六月に施行されたのでございまして、その後その法律そのものを改正いたしましたのは、今回御提案申し上げたのが初めてでございますけれども、広い意味の勤労者財産形成促進制度につきましては、四十六年以後も毎年その拡充に努力をし、若干ずつの実現を見てまいっておるわけでございまして、その内容のおもなものをあげてみますると、四十七年度には住宅取得控除制度というものができまして、自分の居住の用に供する住宅を取得した方につきましては、住宅取得費の一定部分の一%、最高二万円を取得後三年間所得税額から控除するという制度を設けております。  それから、住宅貯蓄控除制度というのがそれ以前からあったのでございますが、これも四十七年、八年と若干ずつの改善をいたしてまいったわけでございまして、四十七年には対象となる住宅の床面積等を一そう大きなものまで拡充いたしたのでございますが、四十八年にはその住宅貯蓄控除を従来毎年の貯蓄額の四%、最高二万円でありましたものを六%最高三万円までに引き上げるといった改善もいたしておるわけでございます。さらに四十八年には、財産形成融資によって勤労者が持ち家を取得する場合に、勤労者がその割賦返済金について事業主から利子補給等を受けたり、あるいは事業主団体から持ち家の低額譲渡を受けるというような経済利益がある場合には、それを非課税にするといった措置もとっておるわけでございますし、その他勤労者の住宅取得につきましての関連の登録税、あるいは不動産取得税等の軽減措置等も四十八年にも実現したところでございまして、そういうことで、今日までもいろいろ努力はしてまいったところでございます。
  265. 瓦力

    ○瓦委員 財形制度は出発いたしまして、まだ日も残いわけであります。いろいろの改善を努力を加えてこられ、まだ日も残いわけでございますけれども、これからもそういう努力を積み重ねていかなければならないわけであります。今回の財形法の一部改正、この制度の要点につきまして御説明を賜わりたいと思います。
  266. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 今回の財産形成制度改正の要点を申しますと、まず財形貯蓄制度につきましては、国が援助の改善といたしまして、従来、利子の非課税限度額が百万円でありましたものを五百万円に引き上げますほか、積み立て期間七年以上の長期の財形住宅貯蓄につきましては、税額控除の率を引き上げまして、従来六%、限度三万円でありましたものを、八%、四万円にいたしますというようなことによりまして、国の援助の改善をはかっております。  それからさらに財形貯蓄につきましては、従来は転職をいたしますと財形貯蓄が継続をしなかったのでありますが、その要件を緩和いたしまして継続をするようにいたしましたほか、さらに宅地債券、住宅債券の取得等も住宅貯蓄の範囲に加えるといったような改善をいたしております。  次に、事業主の援助を促進する制度といたしましては、勤労者がみずから行なう財形貯蓄に対しまして、事業主が付加金を出す財形貯蓄付加金制度というものを設けることにいたしておるところでございます。  それからまた、新しく事業主が拠出金を拠出いたしまして、労働者の資産形成の元本を援助するということで、財産形成基金制度というもの。それから中小零細企業などで、基金によらないで同様の効果を有する援助を行なうものといたしまして、財産形成受益金制度というようなものを新たに設けまして、これらにつきましては税制上の優遇措置も講ずることといたしておるわけでございます。  それから、さらに勤労者の持ち家取得を一そう促進いたしますために、七年以上の長期財形貯蓄を行った勤労者につきましては、住宅金融公庫の融資におきまして特別の優遇をいたしまして、通常の貸し付け額の限度額に、それぞれの労働者の財形貯蓄額の二倍に相当する額を加えた割り増しの融資制度を設けることにいたしたわけでございます。
  267. 瓦力

    ○瓦委員 現行制度に比べて相当の前進があるということは評価できるのでありますけれども、このような勤労者財形制度では、これを利用できるのは貯蓄余力のある者や従業員に対して援助できる事業主に限られる。結局は、勤労者にしても事業主にしても、比較的レベルの高いところが主として対象になるというきらいがあるのではないか。財産保有を促進すべき必要の大きいのは、低所得者層や中小企業の勤労者であると考えますが、これらの方々に対する配慮をどのようにしておられるか、お聞かせ願います。
  268. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 日本の勤労者は非常に貯蓄性向が高いわけでございまして、私ども調査いたしておるところによりますと、低所得者層、すなわち第一・五分位の方でも九七%の方が貯蓄をしておられるということでございまして、それらの方々年間貯蓄の純増額が十四万円というふうになっております。したがいまして、こういう低所得者層の方も財形貯蓄の恩典を受け得るものと考えておるわけでございます。  しかしながら、そういう低所得者の方はあまり多くの貯蓄をできないということは事実でございます。そこで、今回の財形法の改正におきましては、財産形成基金制度あるいは財産形成受益金制度を設けまして、事業主が拠出金を出しまして、それによって勤労者の財産形成の促進をはかるというような制度も設けまして、低所得者の方も資産形成ができるように配慮をいたしておるわけでございます。  なお、中小企業の勤労者の財産形成を促進いたしますために、ただいま申しました財産形成受益金契約を締結して、従業員のために拠出金を出されます小規模企業に対しましては、国が助成金を支給する制度昭和五十年の四月以降に発足させたいということで、目下、関係省庁と検討を進めておるわけでございます。
  269. 瓦力

    ○瓦委員 最後に政務次官にお尋ねをいたします。  貯蓄に対する援助と同時に、持ち家取得の促進をはかることも必要であります。勤労者の中には持ち家を希望する者も多いようですが、これら勤労者の持ち家の夢を実現するためには、その前提として、宅地の大量供給等の土地対策あるいは住宅資金の低利融資など、住宅対策一般をもっと強力に進めることが必要であると考えます。  今回の改正案は、制度的には新味が加わりまして前進したものであると考えますが、個々の制度の中身、特に国の援助の内容が必ずしも十分でないと見受けられます。たとえば、財形審議会が強く提案している財形貯蓄に対する割り増し金の支給などはきわめて適切な意見であり、これは、今回の法改正においてぜひとも措置すべき最重点施策であるとさえ私は考えております。勤労者財産形成政策は、わが国においてはまだ発足間もないものであり、直ちに完全なものにすることはむずかしい問題もあろうかと思いますが、西ドイツなどではかなり思い切った施策がとられているようであります。  これまでわが国においては、政策上、国民の貯蓄というものがどのような観点からとらえられてきたかを振り返ってみますと、率直に言って、富国強兵、殖産興業を唱えた明治時代から始まりまして、戦後の高度成長政策の時代まで、産業の振興、そのための投資の必要、その投資原資確保のための貯蓄という考え方、あるいはせいぜい短期的な景気対策として、消費抑制のための貯蓄奨励という観点であったと思うのであります。その貯蓄をしている一人一人の国民が、その生活において、どのような意図と願いを持って貯蓄をしているか、財産の形成の手段としての貯蓄という福祉政策的観点から貯蓄を取り上げるに至ったのは、この財形政策が初めてであり、その意味で私の財形政策に対する期待はきわめて大きいのであります。この貯蓄問題に対する政策理念の基本的な転換が必要であると考えるのであります。この点について与党といたしましても、勤労者の味方である事実を明らかにする意味において、大いに反省し、努力する必要があると考えておりますが、これらの政策を今後どのように拡充し、発展させようとしておられるか、御所見を伺いたい、かように存じます。
  270. 菅波茂

    ○菅波政府委員 勤労者の住宅の問題を解決するためにはいやはり御指摘のように、土地の対策というものを中心に、そうして住宅対策一般を強力に推進することが基本でなければならぬと考えております。  これについては、政府としても宅地供給の拡大等を中心に鋭意努力はいたしておるところでありますが、また特に勤労者に対する住宅対策としては、比較的安い家賃の賃貸の住宅というものを大幅に供給するということが必要であることは、先生の御説のとおりであります。  しかしながら、やはり持ち家を希望するという勤労者も多いわけでありますから、こういう方々に対しては、その希望が実現できるように、援助なりあるいは促進をはかるということも必要であるわけでございます。両々相まってその対策を進めてまいりたいと実は考えております。  また、勤労者財産形成政策というものは、今後の福祉政策において重要な意味を持つという御意見には全く同感であるわけでございます。しかしながら、御指摘のとおり、西ドイツにおいてはきわめて充実した政策が行なわれておることも承知をいたしておりますが、現在の制度に至るまでにはやはり十数年という日月を費やしておるわけであります。  わが国においては、まだこれを制定せられてから新しいわけでございまして、また非常に日が浅いということがございまして、今後さらに先生の御意見のように研究を重ねて制度の充実あるいは改善をはかっていきたいと考えております。そのためにも一歩一歩やはり着実に前進をしていかなければならぬ、こう考えております。わが国の実情に即しつつ、内容の豊かな財形制度というものを樹立してまいりたいと考えておりますので、一そうの御支援を賜わりたいと思います。
  271. 瓦力

    ○瓦委員 じゃ、終わります。
  272. 葉梨信行

    ○葉梨委員長代理 次回は、来たる八日月曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時十二分散会