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1974-04-04 第72回国会 衆議院 社会労働委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月四日(木曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 斉藤滋与史君 理事 葉梨 信行君    理事 山口 敏夫君 理事 山下 徳夫君    理事 枝村 要作君 理事 川俣健二郎君    理事 石母田 達君       大橋 武夫君    加藤 紘一君       瓦   力君    小林 正巳君       住  栄作君    田中  覚君       戸井田三郎君    登坂重次郎君       羽生田 進君    橋本龍太郎君       粟山 ひで君    大原  亨君       金子 みつ君    島本 虎三君       田口 一男君    田邊  誠君       村山 富市君    森井 忠良君       八木 一男君    山本 政弘君       大橋 敏雄君    坂口  力君       小宮 武喜君    和田 耕作君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君  出席政府委員         厚生大臣官房審         議官      三浦 英夫君         厚生省社会局長 高木  玄君         厚生省児童家庭         局長      翁 久次郎君         厚生省年金局長 横田 陽吉君         厚生省援護局長 八木 哲夫君         社会保険庁年金         保険部長    出原 孝夫君         郵政省人事局長 北 雄一郎君  委員外出席者         議     員 大原  亨君         議     員 石母田 達君         議     員 大橋 敏雄君         議     員 和田 耕作君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ――――――――――――― 委員の異動 四月四日  辞任         補欠選任   山本 政弘君     八木 一男君   小宮 武喜君     神田 大作君   和田 耕作君     塚本 三郎君 同日  辞任         補欠選任   八木 一男君     山本 政弘君   神田 大作君     小宮 武喜君   塚本 三郎君     和田 耕作君     ――――――――――――― 四月二日  作業環境測定法案内閣提出第八八号) 同日  失業対策事業就労者に年度末手当支給に関する  請願瀬野栄次郎紹介)(第三一九〇号)  同(堂森芳夫紹介)(第三一九一号)  同(不破哲三紹介)(第三一九二号)  同(村山喜一紹介)(第三一九三号)  同(下平正一紹介)(第三二八〇号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第三二八一号)  同外一件(土井たか子紹介)(第三二八二  号)  同(吉田法晴紹介)(第三三三〇号)  同(田中美智子紹介)(第三三八九号)  同(土井たか子紹介)(第三三九〇号)  同(細谷治嘉紹介)(第三三九一号)  同(米田東吾紹介)(第三三九二号)  建設国民健康保険組合に対する国庫補助増額に  関する請願瀬野栄次郎紹介)(第三一九四  号)  同(寺前巖紹介)(第三二八三号)  同(村山富市紹介)(第三二八四号)  同(石母田達紹介)(第三三九五号)  同外三件(枝村要作紹介)(第三三九六号)  同(金子みつ紹介)(第三三九七号)  同(田口一男紹介)(第三三九八号)  同(寺前巖紹介)(第三三九九号)  同(林孝矩紹介)(第三四〇〇号)  消費生活協同組合育成等に関する請願外一件  (有島重武君紹介)(第三一九五号)  同(近江巳記夫紹介)(第三一九六号)  全国産業一律最低賃金制法制化に関する請  願(竹村幸雄紹介)(第三一九七号)  国民生活を守るための福祉政策推進に関する請  願(塚田庄平紹介)(第三一九八号)  同(辻原弘市君紹介)(第三一九九号)  同(原茂紹介)(第三二〇〇号)  同(堂森芳夫紹介)(第三二九八号)  同(長谷川正三紹介)(第三三九三号)  同(細谷治嘉紹介)(第三三九四号)  療術制度化に関する請願外一件(阿部昭吾君  紹介)(第三二〇一号)  同外一件(石原慎太郎紹介)(第三二〇二  号)  同(稲村利幸紹介)(第三二〇三号)  同(植木庚子郎君紹介)(第三二〇四号)  同外二件臼井莊一郎紹介)(第三二〇五  号)  同(大柴滋夫紹介)(第三二〇六号)  同外四件(越智伊平紹介)(第三二〇七号)  同外一件(大石千八紹介)(第三二〇八号)  同外一件(大野明紹介)(第三二〇九号)  同外一件(奥田敬和紹介)(第三二一〇号)  同外一件(鯨岡兵輔紹介)(第三二一一号)  同(小平久雄紹介)(第三二一二号)  同外二件小山省二紹介)(第三二一三号)  同(椎名悦三郎紹介)(第三二一四号)  同外一件(塩川正十郎紹介)(第三二一五  号)  同(塩谷一夫紹介)(第三二一六号)  同(島村一郎紹介)(第三二一七号)  同外一件(高見三郎紹介)(第三二一八号)  同外一件(竹内黎一君紹介)(第三二一九号)  同外二件坪川信三紹介)(第三二二〇号)  同外三件(中尾栄一紹介)(第三二二一号)  同(永山忠則紹介)(第三二二二号)  同(丹羽喬四郎紹介)(第三二二三号)  同(西村英一紹介)(第三二二四号)  同外二件長谷川四郎紹介)(第三二二五  号)  同(八田貞義紹介)(第三二二六号)  同(浜田幸一紹介)(第三二二七号)  同外一件(林大幹君紹介)(第三二二八号)  同(原健三郎紹介)(第三二二九号)  同(福田一紹介)(第三二三〇号)  同外二件福永健司紹介)(第三二三一号)  同(藤尾正行紹介)(第三二三二号)  同外一件(船田中紹介)(第三二三三号)  同(山田久就君紹介)(第三二三四号)  同(山村新治郎君紹介)(第三二三五号)  同(綿貫民輔紹介)(第三二三六号)  同外一件(渡辺美智雄紹介)(第三二三七  号)  同外一件(阿部昭吾紹介)(第三二八五号)  同外一件(稲葉誠一紹介)(第三二八六号)  同外一件(大柴滋夫紹介)(第三二八七号)  同外一件(金瀬俊雄紹介)(第三二八八号)  同(勝澤芳雄紹介)(第三二八九号)  同外一件(木原実紹介)(第三二九〇号)  同外一件(小林信一紹介)(第三二九一号)  同(小島徹三紹介)(第三二九二号)  同外一件(土井たか子紹介)(第三二九三  号)  同(堂森芳夫紹介)(第三二九四号)  同(長谷川正三紹介)(第三二九五号)  同外一件(広瀬秀吉紹介)(第三二九六号)  同(武藤山治紹介)(第三二九七号)  同(伊東正義紹介)(第三三三三号)  同(大柴滋夫紹介)(第三三三四号)  同外一件(勝澤芳雄紹介)(第三三三五号)  同(金瀬俊雄紹介)(第三三三六号)  同外三件(小林正巳紹介)(第三三三七号)  同外二件瀬戸山三男紹介)(第三三三八  号)  同外二件田中武夫紹介)(第三三三九号)  同(長谷川正三紹介)(第三三四〇号)  同外五件(石井一紹介)(第三四〇一号)  同外一件(石野久男紹介)(第三四〇二号)  同外一件(八百板正紹介)(第三四〇三号)  同外一件(越智伊平紹介)(第三四〇四号)  同(越智通雄紹介)(第三四〇五号)  同外七件(梶山静六紹介)(第三四〇六号)  同(金丸信紹介)(第三四〇七号)  同(戸井田三郎紹介)(第三四〇八号)  同外四件(渡海元三郎紹介)(第三四〇九  号)  同外十三件(松本十郎紹介)(第三四一〇  号)  同(米田東吾紹介)(第三四一一号)  生活保護基準及び失業対策事業賃金引上げに  関する請願堂森芳夫紹介)(第三二三八  号)  同(正森成二君紹介)(第三二三九号)  同(村山喜一紹介)(第三二四〇号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第三二九九号)  同(楯兼次郎紹介)(第三三〇〇号)  同(松浦利尚君紹介)(第三三四一号)  同(吉田法晴紹介)(第三三四二号)  同(枝村要作紹介)(第三四二一号)  同(岡田哲児紹介)(第三四二二号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第三四二三号)  同(田中美智子紹介)(第三四二四号)  同(土井たか子紹介)(第三四二五号)  同(細谷治嘉紹介)(第三四二六号)  同(米田東吾紹介)(第三四二七号)  身体障害者生活保障等に関する請願坂本恭  一君紹介)(第三二四一号)  父子家庭援護に関する請願石井一紹介)  (第三二四二号)  農林水産業雇用者等失業保険制度に関する請  願(小沢辰男紹介)(第三二四三号)  福祉対策改善に関する請願小沢辰男君紹  介)(第三二四四号)  全国一律最低賃金制確立等に関する請願(村  上弘紹介)(第三二七五号)  生活保護費等引上げに関する請願荒木宏君  紹介)(第三二七六号)  全国産業一律最低賃金制確立に関する請願  (瀬長亀次郎紹介)(第三二七七号)  同(楯兼次郎紹介)(第三二七八号)  同(村山喜一紹介)(第三三三一号)  同(山本弥之助紹介)(第三四一九号)  生活保護基準引上げ等に関する請願金子満広  君紹介)(第三二七九号)  漢方医療健康保険法適用に関する請願(正森  成二君紹介)(第三三〇一号)  歯科技工士の免許に関する請願伊東正義君紹  介)(第三三三二号)  失業保険制度改悪反対に関する請願(米内山  義一郎紹介)(第三四一二号)  原爆被爆者援護法制定に関する請願外四件(加  藤陽三紹介)(第三四一三号)  同(紺野与次郎紹介)(第三四一四号)  同(斉藤滋与史君紹介)(第三四一五号)  同(灘尾弘吉紹介)(第三四一六号)  同(松本忠助紹介)(第三四一七号)  同(宮澤喜一紹介)(第三四一八号)  戦時災害援護法制定に関する請願金子みつ君  紹介)(第三四二〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月三日  福祉行政の拡充に関する陳情書  (第三八五号)  社会福祉施設職員処遇改善に関する陳情書外  一件(第三  八六号)  社会福祉施設措置費等増額に関する陳情書  (第三八七号)  社会福祉施設給食費等増額に関する陳情書  (第三八八号)  福祉活動専門員充実強化に関する陳情書外一  件(第三八  九号)  原子爆弾被爆者援護法制定に関する陳情書外二  件  (第三九〇号)  森永ミルクヒ素中毒被害者救済対策確立等に  関する陳情書(第  三九一号)  簡易水道国庫補助率引上げ等に関する陳情書  (第三九三号)  観光地のごみ、し尿、汚水処理及び水道施設整  備に関する陳情書  (第  三九四号)  医療給付改善に関する陳情書  (第三九五号)  診療報酬の是正に関する陳情書  (第三九六号)  乳児医療費公費負担制度確立に関する陳情書  (第三九七号)  妊婦、乳児健康診査無料化等に関する陳情書  (第三九八  号)  療術制度化に関する陳情書外七件  (第三九九号)  保健所の増設に関する陳情書  (第四〇〇号)  重度心身障害者(児)医療費国庫補助制度確  立に関する陳情書  (第四〇一  号)  高齢者雇用安定対策に関する陳情書外一件  (第四〇二  号)  失業対策労務者賃金及び生活保護費引上げ等  に関する陳情書外一件  (第四〇三号)  雇用保険法案に関する陳情書外三件  (第四〇四号)  勤労者財産形成政策推進に関する陳情書  (第四〇五号)  日雇労働者健康保険法給付改善に関する陳情  書  (第四〇六号)  国民健康保険事業財政援助等に関する陳情書  外一件(第  四〇七号)  優生保護法の一部を改正する法律案成立促進に  関する陳情書  (第四〇八号)  戦没者遺族年金増額に関する陳情書  (第四〇  九号)  失業保険制度改正反対に関する陳情書外四件  (第四一〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す  る法律案内閣提出第三一号)  原子爆弾被爆者医療等に関する法律及び原子  爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出第二四号)  原子爆弾被爆者援護法案大原亨君外十三名提  出、衆法第一四号)  国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提  出第四七号)  児童手当法等の一部を改正する法律案内閣提  出第五四号)      ――――◇―――――
  2. 野原正勝

    野原委員長 これより会議を開きます。  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案議題といたします。  これにて本案についての質疑は終了いたしました。  —————————————
  3. 野原正勝

    野原委員長 ただいままでに委員長手元に、山口敏夫君、川俣健二郎君、石母田達君、大橋敏雄君及び和田耕作君より本案に対する修正案提出されておりますので、その趣旨説明を聴取いたします。山口敏夫君。
  4. 山口敏夫

    山口(敏)委員 ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党日本社会党日本共産党革新共同公明党及び民社党を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  修正の要旨は、本法律案昭和四十九年四月一日施行となっております未帰還者留守家族等援護法による葬祭料改正規定並びに戦傷病者特別援護法による療養手当及び葬祭費改正規定につきましては、これを公布の日から施行し、昭和四十九年四月一日から適用することとするものであります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  5. 野原正勝

    野原委員長 修正案について御発言はありませんか。——発言もありませんので、これより戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案を一括して討論に付するのでありますが、別に申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  まず山口敏夫君外四名提出修正案について採決いたします。  本修正案賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  6. 野原正勝

    野原委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  7. 野原正勝

    野原委員長 起立総員。よって、本案修正議決すべきものと決しました。(拍手)     —————————————
  8. 野原正勝

    野原委員長 この際、山口敏夫君、川俣健二郎君、石母田達君、大橋敏雄君及び和田耕作君より、本案に対して附帯決議を付すべしとの動議提出されております。  その趣旨説明を聴取いたします。山口敏夫君。
  9. 山口敏夫

    山口(敏)委員 私は、自由民主党日本社会党日本共産党革新共同公明党及び民社党を代表いたしまして本動議について御説明を申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。    戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議  政府は、次の事項につき、格段の努力を払うべきである。 一 太平洋戦争末期における閣議決定に基づく国民義勇隊組織及び活動状況、旧義勇兵役法実施状況を明確にし、適切妥当な援護措置がとりうるよう検討すること。   なお、旧防空法による組織及び活動状況についてもあわせて明確にすること。 一 一般戦災者に対し、戦時災害によつて、身体障害を受けた者及び死亡した者の実態調査を行い、当時の救済状況を明らかにすること。 一 警防団員等に対する援護法上の取扱いについては、戦後相当期間経過していることにかんがみ、その認定方法等について弾力的に運用するよう配慮すること。 一 最近の急激な物価の上昇及び国民生活水準の著しい向上にみあつて、援護水準を更に引き上げ、公平な援護措置が行われるよう努めること。   なお、戦没者遺族等老齢化の現状にかんがみ、一層の優遇措置を講ずること。 一 戦傷病者に対する障害年金等処遇及び原爆症等内科的疾患認定基準については、更にその改善に努めること。 一 戦後三十年近くも経過した今日、なお残されている未処遇者について早急に具体的な解決策を講ずること。 一 生存未帰還者調査については、更に関係方面との連絡を密にし、調査及び救出に万全を期すること。 一 戦没者等の遺骨の収集については、更に積極的に推進すること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  10. 野原正勝

    野原委員長 本動議について御発言はありませんか。——川俣健二郎君。
  11. 川俣健二郎

    川俣委員 本動議採決を行なうにあたりまして、一点だけ質問いたします。  すなわち、ただいまの附帯決議の六項目に「戦後三十年近くも経過した今日、なお残されている未処遇者について早急に具体的な解決策を講ずること。」とありますが、これに関連しまして、去る三月二十八日の本委員会森井忠良君から指摘した旧逓信省関係者の問題について石本政務次官から答弁がありまして、大臣帰国後御相談の上善処することとありましたので、ここで確認しておきたいと思います。  すなわち、郵政省所管官庁としてこの問題をどのようにされるのか、明確な御答弁をいただきたいと存じます。
  12. 北雄一郎

    北政府委員 旧逓信雇用人遺族に関する措置につきましては、むずかしい問題ではございますが、関係の向きとも連絡をとりながら研究したいと思っております。
  13. 川俣健二郎

    川俣委員 了解いたしました。     —————————————
  14. 野原正勝

    野原委員長 本動議について採決いたします。  本動議のごとく決するに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  15. 野原正勝

    野原委員長 起立総員。よって、本案については、山口敏夫君外四名提出動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。厚生大臣齋藤邦吉君。
  16. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして努力をいたす所存でございます。
  17. 野原正勝

    野原委員長 なお、本案に関する委員会報告書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 野原正勝

    野原委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  19. 野原正勝

    野原委員長 次に、内閣提出原子爆弾被爆者医療等に関する法律及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案議題とし、その提案理由説明を聴取いたします。厚生大臣齋藤邦吉君。
  20. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 ただいま議題となりました原子爆弾被爆者医療等に関する法律及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由を御説明申し上げます。  昭和二十年八月広島市及び長崎市に投下された原子爆弾被爆者につきましては、原子爆弾被爆者医療等に関する法律により、健康診断及び医療給付を行なうほか、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律により、特別手当健康管理手当その他の手当等支給を行ない、被爆者の健康の保持向上によりその生活の安定をはかってまいったところであります。  今回の改正案の第一は、原子爆弾被爆者医療等に関する法律の一部改正についてでありますが、その内容について申し上げます。  まず、従来の一般被爆者及び特別被爆者の区分を廃止し、被爆者健康手帳の一本化をはかり、従来の特別被爆者以外の被爆者にも一般疾病医療費支給を行なうことができるようにするとともに、新たに、健康診断を受けることができる者を定めることとしております。  そのほか、医療に関する給付にかかる診療報酬の審査及び支払いに関する事務を、新たに、国民健康保険団体連合会等にも委託することができるようにし、診療報酬請求事務簡素化をはかることとしております。  次に、改正案の第二の原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部改正について申し上げます。  まず、原子爆弾被爆者医療等に関する法律に基づき、いわゆる原爆症であるとして厚生大臣が認定した被爆者に対して支給されている特別手当について、その支給額現行月額一万一千円から一万五千円に引き上げるとともに、新たに、当該認定にかかる負傷または疾病状態に該当しなくなった者に対しても特別手当支給することとし、その額を月額七千五百円とするものであります。  次に、原子爆弾放射能の影響を受け、造血機能障害等の一定の疾病状態にある被爆者に対して支給されている健康管理手当について、その支給要件の年齢を五十歳以上から四十五歳以上とし、支給対象を拡大するとともに、その支給額現行月額五千円から七千五百円に引き上げるものであります。  これらの改正を通じまして、被爆者福祉を一そう増進しようとするものであります。  以上が、この法律案提出する理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。      ————◇—————
  21. 野原正勝

    野原委員長 大原亨君外十三名提出原子爆弾被爆者援護法案議題とし、その趣旨説明を聴取いたします。大原亨君。
  22. 大原亨

    大原議員 お手元に配付いたしましたプリントの一部修正がありますが、これは私がここで申し上げるのが正文でございます。  私は、ただいま議題となりました原子爆弾被爆者援護法案につきまして、日本社会党日本共産党革新共同公明党民社党を代表いたしまして、その提案理由を御説明申し上げます。  昭和二十年八月六日、続いて九日、広島長崎に投下された人類史上最初原子爆弾は、一瞬にして三十万人余の生命を奪い、両市を焦土と化したのであります。  この原爆による被害は、放射能熱線と爆風によるものであって、たとえ一命を取りとめた人たちも、この世のできごととは思われない焦熱地獄を身をもって体験し、生涯消えることのない傷痕と、原爆後遺症に苦しみ、病苦、貧困、孤独の三重苦にさいなまされながら今日まで生き続けてきたのであります。  わが国の戦争犠牲者に対する援護は、軍人、公務員のほか、軍属、準軍属など国との雇用関係または一部特別権力関係にあるものに限定されてきたのであります。  しかし原爆の投下された昭和二十年八月のいわゆる本土決戦の段階で非戦闘員戦闘員を区別して処遇し、原爆による被害について国家責任を放棄する根拠があるでありましょうか。  被爆後二十九年間、生き続けてこられた三十余万人の被爆者死没者遺族がもうこれ以上待ち切れないという心情を思うとき、国家補償の精神による被爆者援護法をつくることは、われわれの当然の責務といわなければなりません。  国家補償の原則に立つ、援護法立法の第一の理由は、アメリカの原爆投下国際法で禁止された毒ガス、生物化学兵器以上の非人道的兵器による無差別爆撃であって、国際法違反犯罪行為であり、たとえサンフランシスコ条約日本が対米請求権を放棄したものであっても、被爆者の立場からすれば、請求権を放棄した日本国政府に対して国家補償を要求する当然の権利のあることは明白であります。  まして、われわれがこの史上最初核爆発熱線放射能による、はかり知れない人命と健康被害に目をつぶることは、世界唯一被爆国としての日本が恒久平和を口にする資格なしといわねばなりません。  第二の理由は、今次太平洋戦争を開始し、この人類史上曽有の惨禍をもたらした一切の責任が、日本国政府にあったことは明白であるからであります。  特にサイパン、沖繩陥落後の本土空襲、本土決戦の段階では、旧国家総動員法は言うまでもなく、旧防空法国民義勇隊による動員体制の強化にみられるように、六十五才以下の男子、四十五才以下の女子——すなわち、全国民は国家権力によってその任務につくことを強制されていたことはまぎれもない事実であります。  私どもは以上のような理由から、全被爆者とその遺族に対し、放射能被害の特殊性を考慮しつつ、現行軍属、準軍属に対する援護法に準じて、原爆被爆者援護法提案することといたしたのであります。  次に、この法律の内容の概要を御説明申し上げます。  第一は、健康管理及び医療給付であります。健康管理のため定期年二回、随時二回以上の健康診断や成人病検査、精密検査を行なうことや、被爆者の負傷または疾病について医療給付を行ない、その医療費は全額国庫負担とすることにいたしたのであります。  なお治療並びに施術に際しては、放射能後遺症の特殊性を考え、はり、きゅう、マッサージをもあわせ行ない得るよう別途指針をつくることといたしました。  第二は、医療手当及び介護手当の支給であります。被爆者の入院、通院、在宅療養を対象として、月額二万円の範囲内で医療手当を支給する。また、被爆者が、安んじて医療を受けることができるよう月額六万円の範囲内で介護手当を支給し、家族介護についても給付するよう措置いたしたのであります。  第三は、被爆二世または三世に対する措置であります。被爆者の子または孫で希望者には健康診断の機会を与え、さらに放射能の影響により生ずる疑いがある疾病にかかった者に対して、被爆者とみなし、健康診断医療給付及び医療手当・介護手当の支給を行なうことにしたのであります。  第四は、被爆者年金の支給であります。全被爆者に対して、政令で定める障害の程度に応じて、年額、最低二十四万円から最高二百万円までの範囲内で年金を支給することにいたしました。障害の程度を定めるにあたっては、被爆者原爆放射能を受けたことによる疾病の特殊性を特に考慮すべきものといたしたのであります。  第五は、遺族年金の支給であります。被爆者遺族に対して、年額三十六万円の遺族年金を支給することにいたしたのであります。  第六は、被爆者年金等の年金額の自動的改定措置、すなわち賃金自動スライド制を採用いたしました。  第七は、弔慰金の支給であります。被爆者遺族に対して弔慰のため、昭和二十年八月六日にさかのぼって、五十万円の弔慰金を支給することにしたのであります。  第八は、被爆者が死亡した場合は、五万円の葬祭料を、その葬祭を行なう者に対して支給することといたしたのであります。  第九は、被爆者健康診断や治療のため国鉄を利用する場合は、本人及びその介護者の国鉄運賃は無料とすることといたしました。  第十は、原爆孤老、病弱者、小頭症等、その他保護、治療を必要とするもののために、国の責任で、収容、保護施設を設置すること。被爆者のための相談所を都道府県が設置し、国は施設の設置、運営の補助をすることにいたしました。  第十一は、厚生大臣の諮問機関として原爆被爆者援護審議会を設け、その審議会に、被爆者の代表を委員に加えることといたしましたのであります。  第十二は、沖繩における被爆者に対して、昭和三十二年四月から昭和四十一年六月三十日までの間に、原爆に関連する負傷、疾病につき医療を受けた沖繩居住者に対して、十万円を限度とする見舞い金を支給することといたしたのであります。  第十三は、日本に居住する外国人被爆者に対しましては本法を適用することにいたしたのであります。  なお、この法律の施行は、昭和四十九年十月一日であります。  以上がこの法律提案理由及び内容であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに可決せられるようお願い申し上げます。(拍手)      ————◇—————
  23. 野原正勝

    野原委員長 次に、国民年金法等の一部を改正する法律案及び児童手当法等の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田邊誠君。
  24. 田邊誠

    ○田邊委員 わが国の社会保障の中で重要な部面を占めるのは所得保障の中核をなす年金制度で、この年金制度を軸としたいわゆる所得保障は医療保障と並んで社会保障の二大柱でありまするから、この充実強化が政治に課せられた重大な任務であるとわれわれは考えてまいりました。形の上ではいま皆保険、皆年金といわれる時代に到達をいたしまして、年金制度も逐次改善がはかられてきたというふうにいわれております。特に昨年の厚生年金、国民年金等の改正によって、スライド制の実施等一定の前進を見たことも事実であります。しかし私は、まだまだその内容から言い、その基本的なものから推して、これで十分であるとは断じて言いがたいと思うのであります。  最近、厚生省のそれぞれのポストの人たちがいろいろな機会に言っている話を聞きますというと、年金制度は昨年大改革をやった。これによってもういわば一つの形ができ、基礎ができた。言うなればこれから先はこれにどういう肉をつけるか、あるいはどういう形でもってその中の是正等をはかっていくかということであるという発言をいたしておるのでありまするが、私は、これは非常に不遜な発言であると思うのであります。  昨年の改正は確かに一定の前進はありましたけれども、いわば年金制度をこれからどうやってほんとうに国民のものにするかという起点に立ったものであるとわれわれは思っておるのであります。これによってもうすべてが卒業されて、あとはその手直しだけでよろしいような感覚でもってものを処せられるとすれば、これは国民にとって大きな不幸であります。この考え方はまず改めていかなければならないと思っております。  さて、昨年いろいろと論議がありまして、われわれの主張も申し述べておりまするし、また、政府側の考え方も一応出ておるわけでありますが、したがって、これをどうやってこれから決意させるかという観点でわれわれはものを考えていかなければならないと思います。  私は実は、まずもってきわめて原則的なことについてお伺いしたいと思うのでありますが、年金といわれるものについては厚生年金、国民年金あるいは各種共済等がございます。特にその基本的なもの、中軸的なものは一つは国民年金であり、一つは厚生年金であると思います。このよって立つところの法律は、この二つの国民年金と厚生年金については、一体基本的には制度上、法制上はたてまえとして一致しておるのかどうか、あるいはよって立つところの考え方というものの性格が、一体この二つの法律は違っているのかどうか、この点に対しては政府は一体どうお考えでございましょうか。
  25. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 いろいろお述べになりましたように、わが国の社会保障は所得保障、医療保障、二つになるわけでございまして、年金制度はまさしく所得保障の中核をなすものであります。昨年、皆さん方の非常な御協力によりまして、五万円年金制度という画期的な法の改正が行なわれたことに、私は皆さま方の御労苦にも深く敬意を表しておるわけでございますが、私はこれで厚生年金なり国民年金なりの所得保障というものが非常に大きなレールは敷かれたと思いますが、これで満足しているものではありません。したがって、今後この大きなレールを手直しさえしていけばいいんだという考えであってはならぬと思います。やはり国民の年金に対する期待ということを十分頭に描きながら、よりよき制度にするために、その線路をもっともっと幅の広い線路にしていくという努力を続けていかなければならぬであろう、私はこういうふうに考えておるわけでございまして、手直し程度を繰り返していけばそれでもう日本の所得保障はいいんだ、こういうことで満足するような態度は私はとりたくありません。したがって、たびたび申し上げておりますように、賦課方式の問題とかいろいろな問題があるわけでございますので、私は今後ともこのレールをもっともっと広いレールにするように、皆さん方の御協力もいただきながら努力をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。  そこで問題は、年金については国民年金と厚生年金と二つあるわけでございますが、やはり日本の国は、健康保険等で御承知のように、被用者と被用者でない者、こういうふうに分ける一つの慣行みたいなものがあるわけでございますので、そうした二つの大筋に分けていくということが日本的な慣行、慣習というものになじんでいるのではないか、こういうふうに考えます。  しかしながら考えてみますと、厚生年金のほうは歴史が非常に古いために、これは相当な成熟を示しております。しかし、国民年金は何しろ十何年前につくったばかりでございますので、ある意味から言うと、私は厚生年金よりも国民年金というものが多少劣っているような感じがするわけでございます。と申しますのは、国民年金も御承知のように保険主義をとりましたために、その当時資格のある者を中心にして出発して、それがたった十三年きりたっていない、成熟が非常におくれている。そこで補完的な意味で福祉年金という制度が一部あるわけでございますが、全般的に考えてみて、だんだん老齢福祉年金その他の福祉年金というものはこれからなくなって、拠出制一本の国民年金に何年か先にはなっていくわけでございます。財政的にも非常に苦しい年金の財政ではございますけれども、私どもはやはり厚生年金、国民年金は一応被用者としからざる者とに分けて進んでいって、そして中身については均衡のとれたようなものにしていかなければならぬ、こういうような考えで努力をしていくべきではないだろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  26. 田邊誠

    ○田邊委員 そこで、これは言わずもがなですけれども、社会保障制度の中でもって、いわゆる保険主義をとってきた部面が非常に多いので、特にこの年金の制度を見ますると、いま大臣が言われましたように、厚生年金保険はいわば戦前からの労働者年金保険等の歴史を経ながら体系づけられてきたという経緯がある。言うなれば、これは戦争政策の一環として長期の積み立てを財政的にも必要としたというそういう時期にもございましたから、私は戦前の性格をそのまま戦後は踏襲していることはないと思う。またそうあってはならないと思うのですが、しかし一貫して言えることは、何といってもこの法律に規定をいたしておりますごとく、保険給付を行なって、それによって生活の安定をするというのが基礎であります。いわゆる保険主義といいましょうか、保険制度というものをむき出しにしているという形であります。大臣が言われたように、国民年金のほうは昭和三十四年から制定をされて以来の、いわばこれは戦後の一つの所産であります。そういった点で、この国民年金は国民年金保険法という法律の形をとらない、そして憲法第二十五条の規定にのっとって、その理念に基づいて生活の安定を国民の共同連帯で行なうという、こういうような形、そしてそのために必要な給付をやるんだ、こういうような規定づけをしておると思います。私は、これはやはり一つの大きな歴史的な面もありましょうけれども、違いがあると思うのであります。もちろんこの中に、国民年金はいわゆる福祉年金等の要素がございますから、全的に保険主義を貫くことはできないということもありましょうけれども、これはあとからの問題、あとから出てきた問題であります。  いずれにいたしましても、そういった点から見ますと、戦後われわれが言ってまいりましたこのいわゆる社会保障の原則という点から見ますならば、この国民年金がとっておるところの憲法規定に基づくいわゆる社会の共同責任、そしてそれを国が最終的に責任を負うという立場に立ったこの年金制度、これが私はこれから先のあるべき姿としては、まずわれわれは根底に置かなければならないことではないかというふうに思っておるのでありまして、そういった点に立ってものを見ていかないと、今後の施策というものがただ単に小手先、技術的なものに終わってしまうのではないかという観点で実は私はお聞きしたかったのでありますが、大臣、その点に対するところの御答弁がちょっと不足をしておったと思いますが、いかがですか。
  27. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 仰せのごとく、国民年金あるいは厚生年金は法律の字句等については多少違いがあり、それから厚生年金は戦前からできた法律であるということで多少字句の相違はありますけれども、私は、やはり二つとも基本的には新しい憲法に基づく社会保障の理想というものを貫く制度として育てていくということが非常に必要であろう、かように考えております。したがって、ややともしますと、保険主義というものをとっておりますと、保険主義のためにゆがめられる、制限を非常に厚く受ける、こういう傾きが出てくることは避けられないわけでございますが、できるだけ、やはりそういうことの制限、ワクを多少なりとも考えて、社会保障の色彩を強く出す、憲法の精神を強く出す、こういう方向で運営をしていかなければならぬだろう、私はかように考えておる次第でございます。
  28. 田邊誠

    ○田邊委員 いわゆる社会保険というものの概念と社会保障の理念というものはもちろん完全に相反するというような、そういう立場をとるべきではないと思うのです。  実は、最近、社会保障制度審議会の大河内さんが講演等でしばしば言っておるのを聞いたのでありますけれども、社会保険のかすが残っておれば、社会保障制度というのは確立しないんだということを言っている人がいるけれども、これは誤りであるというふうに大河内さんは言っておるのですね。私は、このことばを全部いわば反駁しようとは思いません。しかし、言うなれば、われわれは社会保険のワク組みの中で全部ものを考えていくことにいわば大きな誤りをおかすという考え方があることは疑いない事実であります。したがって、社会保険の制度というものがありますけれども、これをだんだんと改善しようとするならば、これはやはり社会保障にだんだん移行すべきものであると思います。そしてまた一つは、社会保険の中におけるいろんな矛盾点を止揚して、そのワク組みをある程度乗り越えても社会保障という理念に近づくということが必要であるというように私は思うのであります。大臣は大体そのような考え方をいま述べられたと思うのですが、といって私は、いまの保険主義をとっていることがすべて誤りだとは思いません。保険主義の中においてもだんだんに改善をし、改良をしていく部面も出てくるというように思うのです。そうすれば必然的に社会保障になると思います。ただ、何でもいわば国庫負担で全部いけばいいというのがこれが社会保障だという考え方は私はもちろんとりません。とりませんけれども、現在のいわば税によってまかなっておる部面、そしてまたその税によって成り立っておる要素が非常に多い一般会計の予算、こういったものが一体どういうふうに使われておるのかということもにらみませんと、これは国の負担でもってやることを何でもかんでも強要することはいかぬのだという反発が一面にあると同時に、これは何といってもわれわれは社会保障に対するところの国全体の気がまえと、それに対するところのいわば金の使い方が少ない、これに思いをいたさなければならない。もう一つは、税の取り方が非常にこれは大衆課税である、もっといわば所得の多い者からどんどんと税を取るべきだという形を考えなければならない。つい最近制定をされました会社特別税のごとき、まことに自民党が大法人に対する利益を擁護するような、いわばこういう形をとっておることは、この社会保障の原理からいいまするならば、全くこれは相反する措置であるというふうに糾弾しなければならぬと思うのですけれども、そういった点からわれわれはものを見ていかなければならぬ。したがって、特別税だとかあるいは保険料によっていろいろな給付をするとか、いろいろな形がありまするけれども、しかし基本は、いま言ったような形でもって保険主義をだんだんと脱却するという方向が基本的にとられなければならぬというように私は思うのです。  その観点でこの制度を見てまいりますると、いろいろな点でもって不十分な点、矛盾が出ておるのじゃないかと思うのです。  あとで時間があれば質問をいたしまするけれども、各種の年金制度の統合等の問題についても、年金局長はいささか後退的な発言を何か全国の課長を集めた会議等でもやっておるように見受けますので、もってのほかの発言であるとわれわれは思っておるのでありまするけれども、そういううしろ向きのような論議を役所がしておる限りは、前進はしないことをこの際私は特に注意を喚起しておきたいというふうに思っております。  そこで、いま申し上げたような観点で、今度の改正はいろいろありましょうけれども、私はまず考えられるのは、国民から一つのものを保険料という形で取る、それからいろいろな給付をする、これはあくまでもやはり所得再配分に基づいた形でもってこれが行なわれるというのが当然の考え方だろうと思いますが、その点は大臣も同意でしょうね。
  29. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 お述べになりましたように、日本の社会保障制度は保険主義をとっておりますけれども、保険主義であるから憲法の定めるような社会連帯の社会保障というものが完全にりっぱに実現できない、こういうような考えは私はあくまでもとるべきではない。保険主義にとらわれることなく、国民の世論というものを背景として、りっぱな社会保障を打ち立てるような内容に持っていかなければならぬという点につきましては、田邊委員の御意見と私も同意見でございます。  そこで保険料の問題でございますが、保険料は仰せのごとく、所得再配分という考え方であるべきことは私は当然だと思います。所得の多い者からはできるだけ多く保険料をもらう、低所得からは保険料は少ない、こういうふうな形でいくべきであろうと考えております。  そういうようなわけで、私もよくわかりませんが、この保険料徴収について、よく上限とか何かいろいろありますが、この上限制限なんというものを一々やるということはどうであろうか、こういうことこそむしろ弾力的にやっていくというくらいのことをほんとうはやるべきではないかというような考えを持っているのです。でございますから、所得再配分的な考えを持ち、国も応分の補助負担をする、こういう形で、やはり保険主義のみではないという姿をはっきりさせていく必要があるのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  30. 田邊誠

    ○田邊委員 いま大臣言われた中の、たとえば厚生年金の掛け金については、私も実はでき得れば累進的な料率をとるべきだとすら思っておる。ましてや上限の規定というものがきわめて弾力性を欠いておるということについては私も一つの主張を持っているものであります。なお技術的にいえば、たとえ大体の平均標準報酬の倍ぐらいのところまであまり保険料率を料率として増加することは、これはもちろんいかがかという気もいたしますけれども、しかしいずれにいたしましても上限の規定なり、料率のいわばいまの同一料率をとっているようなそういう事態については、私は将来についていろいろと理論的には解明していかなければならない問題があると思うのです。しかしそれは一応おきますが、いま大臣の言われた点を実は私率直に受けますと、今度の改正にもありますけれども、国民年金については保険料を九百円取っておる、今度千百円取るという、これは二百円上げることももちろん実は重大な問題でありますけれども、そもそもこういういわば定額の保険料を取るという思想、これは私はいま言った原理からいいますならばいかがか、こう思うのです。もしいわゆる率でもって取ることができないとしても、私は所得等に応じてこれはいろいろと段階制をとるというようなことも考えられるというふうに思うのです。免除規定等もありましょうけれども、いずれにいたしましてもそういう実は考え方、しかも年金額は同一のものを徴収するという考え方は、この国民年金の崇高な第一条の精神からいいますならば、私は現実はまことにかけ離れたものであるというふうに思っておるのですが、この点はどうでしょう。
  31. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 御承知のように、昨年法改正をいたしましたときに、保険料というのは段階的に上げていきましょう。去年あれだけの改正をいたしたので、実はもっと大幅な保険料ということを予想しておったのでございますが、一挙に上げるというのもどうであろうか、まあやはり段階的に上げていく、こういうふうなことが望ましいと考えまして、それに類した規定もたしか挿入をいたしておったはずでございます。御承知のように、全般的に見ますと国民年金というのは、長期的に見ますと、これはもう田邊委員は専門家でございますから十分御承知のとおりだと思うのです、非常に財政窮屈なんです、ほんとう言うと。窮屈なんでございますが、やはり五万円年金という国民の世論のために——世論に押されてというのはどうかと思いますが、やはりこういうことを実現することが日本の所得保障を実現する上においては望ましい、こう考えたわけで、まあ率直にいいますと、将来の財政の苦しいことも考えながら国民の要望にこたえたというふうなことで実はいたしたわけでございまして、国民年金の保険料というのは、やはり段階的に上げていくということが望ましいことではないか、かように私は考えております。  そこでこれについては、御承知のように国民年金に入っておられる方々は被用者でございませんので、その所得を押えるということはなかなか困難な問題でございます。そこで定額の保険料ということにいたしたわけでございますから、その点は十分ひとつ、国民年金の財政というものは非常に苦しい、しかしながらそれを一挙に上げるということもこれは非常にむずかしい問題である、段階的に上げていきたい。昨年以来の法改正の精神にのっとって、本年度もある程度の保険料の増徴ということをお願いいたしたような次第でございますから、どうかその点は専門家である田邊委員が十分御承知のとおりでございますから御理解いただける、かように考えておる次第でございます。
  32. 田邊誠

    ○田邊委員 何かあなたはいま二百円上げたことについて、われわれは納得をいたしませんけれども、財政は苦しいようなことを盛んにおっしゃっておるのですけれども、これは大臣はよく御承知のとおりでありまして、厚生年金については四十九年度の収支残高は一兆六千億、一四%のスライドとしてのものですがね。四十九年度末の累積積み立て金は九兆七千五百二十六億円、国民年金については四十九年度の収支残高は二千三百五十九億、さらに累積積み立て金は一兆七千五十六億円であります。しかも注目しなければならぬことは、この厚生年金にいたしましても国民年金にいたしましても、いわゆる被保険者と受給者の大きなアンバランスがあるということであります。先ほども盛んに五万円年金のことをおっしゃっていましたけれども、あの実態は五万円でないことは、これは先刻御承知のとおりですが、将来に向けてこれはいろいろとわれわれとしては考えなければならない点はあります。しかしいま、いわゆる掛け金と給付というのは相対的なものでありますからね、保険主義をわれわれが一応認めた前提に立っても。そういった点から見ても、まずもってこの改正案でもって二百円の引き上げをしたなんというのは、ことし具体的な改善策が盛られていない状況の中でもって一方的に掛け金を上げるというようなこと、国民に負担増をしいるということ、しかも最も悪い物価高のときにあえてこういったことを強行しようとする、こういったことは、私は国民のコンセンサスを得ることにならない、こういうふうに思うのであります。  さらに私は、いろいろくふうをすればこの同額制ということについてもこれは当然所得の捕捉はできるはずでありまして、そういった点から見ても、将来あるべき姿としての保険料は、これは均一制をとることについて再考慮しなければならないというふうに思うのです。もしこれが小刻みのことはできないにしても、いわゆる大づかみな形でもって二段階なり三段階なりの程度のこともできるし、そうしてまた給付の面についても、たとえば同額制をとれば給付の面について考える、いわばそういう相対的にものを考えてくれば、この問題に対しては措置ができるものでありまして、そういった点に対するところの政府の考え方がまだ非常に未熟であると思うと同時に、何か盛んに、いま言った財政が窮乏しているがごとき錯覚を持った発言を大臣はしておりますけれども、これは私はまことに誤った考え方であると思うのです。そんなにあなた、金を積み立てなければならぬ、そういう金の亡者みたいな考え方というものは、この際捨ててもらいたい。現代的に見て、いま国民が要望しているものは一体何か、まずこれだ。それから保険のも、あとでもってこれも実は時間があれば申し上げたいのですけれども、財政方式の問題にからめて、一体どこまで将来を見越せば済むのかということを考えてまいりますると、この経済が高度成長をやってきた、しかも物価がどんどん上がっていく、金の価値はどんどん下がっていく、減価してくるという状態の中でもって、ただ老齢人口がまだどんどんふえるだろうというようなことでもって、これから三十年も五十年も百年も先のことを考えるなんということは、これは人間の英知ということを考えてみた場合には、私はそうとらわれるべきでないというように思うのですよ。そういった点から見て、いわばこの財政状態はまずまずもってこれは非常に裕福といいましょうか、あるいは健全といいましょうか、という形でもって推移をしておるというふうに見なければならぬのでありまして、それだからこそスライド制の実施等についても政府は踏み切ったというふうに私は思っておるわけでありますから、これらのことを考慮したときには、いまあなたの言われたような、この際ひとつ保険料をよけい取って財政の安定化をはかっていこう、これは年金局長、あなたもひとつ言い分があったら言ってもらいたい、あなたもそんなことを、何か安定化をはかっていくなんということを盛んに吹聴しているようだけれども、そんな考え方であなたこれから何年生きるかしらぬけれども、いま一九七〇年代であります。二〇〇〇年以上の先まで見越すようなことはだれもできないはずなんですよ。そういった点から見て、私はこの考え方についてもう少し有効な手段を用いるべきであるということを考えておる。もうこれから先はあまり私のほうからはしゃべりませんから、端的に聞きますから、ちょっとそこのところだけ答えてください。
  33. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私も端的に答えておるわけでございますが、やはり年金というのは長期的な財政ということの安定が一番大事なんですね。なるほどいまの時点において考えてみれば、それは窮屈でないと仰せになることはまさしくそのとおりでございます。しかしながら、やはり被保険者の中の受給者というものは年々どんどんふえていく、これは必至の状況にあるわけでございます。国としてはやはり一度こういう制度をつくった以上は、確実に給付が行なわれるという体制を整備することが基本でございます。ただ問題は、賦課方式といったふうな御意見もあるわけでございますが、大体いままでの考え方からいうと、その受給者の人口が定常化した段階において、こういっておるわけでありますが、それは何も百年、二百年先を私は言っているのじゃないのです。大ざっぱにいうと、大体三十年くらい先だろう、こういうわけですが、私はこの三十年に流るるごとく賦課方式に変わっていくという考え方はとるべきじゃないと思っているのです。三十年後に人口が定常化したときにそういうふうな形にしたい、こういうわけですが、その三十年を二十年なり十五年なり十年に縮めていくという努力は、私はすべきじゃないかと思っているのです。ほんとうをいうと、私はそう思っているのです。あくまでも修正積み立て方式を三十年も続けていかなければならぬ、正式にはそういうことになるかもしれませんが、そういうことでは政治の力というものは私は発揮されないと思うのです。三十年後に定常化するにしましても、ある一定の時期が来れば、これを促進させるようなやり方を政治の力において解決していく、これが私は必要だと考えておるわけでございます。それが今後皆さん方といろいろ相談をしながら考えていかなければならぬ問題だと私は思っておるわけでございます。  そこで、いま当面の問題としては苦しくない。それはそのとおりです。しかし、厚生年金と国民年金と現在のような方式のもとにおいて将来を考えたときに、どっちが苦しいかといえば、国民年金はほんとうをいうと苦しいんです。厚生年金のほうは国民年金よりはまだ楽な面がある。そこで、昨年の改正の際に、ことしの保険料の値上げの分も書こうか、こういう考えもあったのですが、そういうことを書くよりも、将来そういうことを考えなければならぬといったふうな規定だけでことしは足りるのじゃないかということで、スライド制も加味したことでもありますから、まあ二年計画で保険料をある程度上げていくというふうな考え方で規定をいたしたわけでございます。その辺はどうか御理解をいただきたいと思います。
  34. 田邊誠

    ○田邊委員 将来の問題についての論争は、いずれまた私はあらためてしたいと思うのです。ただ、たとえば二〇〇〇年までの間の三十年間を見ましても、確かに六十五歳以上が七・一%から一三・四%まで上がるという説を大体とる。そしてまた、これによっていわばかなり給付人口がふえるという説もある。しかし一方において子供が減ってまいるのでありまして、十四歳以下の子供は大体二四%から二一%に減る、こういう説も一緒にある。問題なのは、その事態の中で、いわば保険料の負担をしてくれる世代、生産人口というのでしょうが、これはどのくらいかといいますと、いまのような自民党政府のような間違った政治をやっておれば別ですけれども、もう少しこれが改まったいい政治が行なわれますると、かなりお年寄りになってきてもまた就業している人口は非常にふえてまいります。生産人口はふえてまいります。こういう形になってまいるのでありまして、いわばいまの体制の中においても生産人口は一九六〇年の六四%から二〇〇〇年には六六%にふえるであろうといっていますから、もっといい政治をやればもっとふえてまいるのであります。そういう相対的なものもあるわけでありますから、ただ単に老齢人口がふえてくる、受給者がふえてくる、したがって賦課方式をとることは危険だという論理は成り立たないと思う。しかし単純に一足飛びに、何か積み立て方式から賦課方式へというふうな形でもってものが律しられるというふうには考えておりません。しかし、いま大臣が言われたように、そのタイムラグを縮めていく努力というのは当然やるべきであるというふうに私は思っておるわけでありまして、そういった点から見て、政府がその考え方をあくまでも固執される立場でなく、今後国民がほんとうに安心して暮らせるような状態というものを、憲法規定と年金の目的にかなったような状態というものをつくってもらいたいということを私は強く要求しておきたいと思うのであります。その点では大臣の考え方も、いままでよりはやや少し前進したような発言をしておりまするから、またそれ以上発言して後退してもいかぬから、その程度にとどめておきたいと思いますけれども、ぜひそういうふうにやってもらいたいと思います。  そこで、この二百円問題で私は細部にわたっての質問があるわけですけれども、これは一体どの程度の価値判断をするかについてはいろいろと意見があると思うのです。まず大まかにいって、福祉年金なり拠出制国民年金なり厚生年金なり、いまの目的意識からいいまして、これが一体現状にかなっているかどうか。これは毎度言っておることでありまして、去年われわれが一生懸命でもって努力して、たとえば厚生年金の定額部分を千円まで上げた。もっと上げるべきだという立場に立っておったのですが、わずかに上げた。そういう事態でありましたけれども、まだまだ実は国民の要望に沿ってないのです。まして福祉年金は、これはもう法律の精神はもちろん、現在の状況から見て、全く国民の期待にこたえてないというふうに思うのです。これは敬老的な意味があると言っておりましたけれども、しかしそういった考え方自身も私は誤りであると思う。と同時に、だんだんと社会保障的な形、生活を安定させる、そういう重要な要素になってきておる、またそうしなければならないというふうに思っておるわけであります。敬老年金的な存在ではなくて、老後のささえの期待が大きくなってきているという国民年金審議会の意見なり社会保障制度審議会の答申なり、これをわれわれはまず考えなければならぬというふうに思うのであります。   〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕 現状というものはもう御承知のとおりの状態でありまして、この福祉年金の状態、そしてまた、現在実施をされつつあるところの、いわゆる十年年金の状態というものをひとつ改善をする立場というものを、政府がまずもって頭に入れてかからなければならぬというふうにわれわれは思うのであります。  きょう社会局長が来ていませんけれども、生活保護の基準を私はこの前予算委員会でもっていろいろと申し上げましたけれども、生活保護基準すらも下回っている状態というものは、これは全く現状にそぐわない状態であるというふうに考えざるを得ないわけです。これに対してはおそらく大臣もいなと言うことはできないと私は思うが、あなたは何か現状を反省して、さらにひとつ国民のこの要望にこたえ、制度審議会等がいっておるそういった意見に対しても即応できるような体制づくりのために、全力を尽くすお気持ちがありますかどうか、お伺いしたいと思います。
  35. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 確かに福祉年金というのは、年金法制定の際に国民年金にはいれない方々がおりましたので、そういう御老人の方々に敬老的な、補完的な制度として出発したわけでございますが、しかし田中内閣が成立いたしましてから、三千三百円を五千円にする、五千円を七千五百円にする、さらに昭和五十年度においては一万円にする、こういうふうに段階的に福祉年金の額を高めるという政策を打ち出してきたわけでございます。そのことはまた、五万円年金を力強くプッシュした原因でもあったと私は思うのです。そこで、こういうふうに五千円から今回の改正では七千五百円にというふうなことになりまして、さらに来年は一万円ということになりますと夫婦二万円、十年年金はその当時二万五千円でございますが、物価スライドがありますから三万円くらいになるでしょう。そういうふうなことで見合ってまいりますと、福祉年金が夫婦で二万円、十年年金が夫婦で三万円ぐらいになるでしょう。そういうふうなことになってまいりますというと、やはりいままでのような敬老的な補完的な年金でございますと、こう押し切れることができるかどうか。いな、むしろやはり社会保障としての老後の生活をささえるに足るような年金にまで持ち上げていくという努力を、私はもうすべき段階だと思うのです。段階だと思います。来年もう夫婦で二万円ということになりますと、これはたいへんなやはり額でございます、国民のこれ全額税金でございますから。この点については、私は必ずや社会保障的な性格をさらに強化していく、濃くしていく時期にもう近づきつつあると思います。今後とも私はそういう方向で努力をしていくべきではないか、かように考えておる次第でございます。  といいますのは、最近の物価スライドによりまして、これは物価がどの程度になりますか、かりに二〇%物価が上がるとなると、五万円年金が六万円年金に上がっていくわけでございます。そうなったときに、十年年金が夫婦で二万五千円が三万円ぐらいになって、これで十分かという議論が出てきましょう。それからさらにまた、福祉年金は夫婦で二万円、これではたして十分か、こういうふうな相関関係において、お互いに社会保障的な性格にみんな持ち上げていく空気が強くなると思うのです。そういう意味においても、私は福祉年金というものは敬老年金的なものであると割り切らないで、やはり老後の生活をささえるに足るような社会保障的年金の方向に努力をしていく時期が近づきつつある。私もまたそういう時期の早からんように最大の努力をすべきときではないか、こういうふうに考えておる次第でございまして、田邊委員の御意見と私は全く同感でございます。
  36. 田邊誠

    ○田邊委員 ことばとしてはかなり私は前進のことばをいただいたと思うのです。その言たるや壮でありまするけれども、しかし、実際はあなたの言のように実はなっておらない。ですから、その意気込みでもって、そういうひとつ決意でもってやられるというならば、これは私はぜひそれを具体化してもらいたいというように思います。現実に具体化してもらいたいと思うのです。  いま、福祉年金五千円のことについて言及されました。あと一つ福祉年金に限って申し上げてみたいと思うのですが、今度は七千五百円。それから田中総理は、さらに来年は一万円だと、こう言っておる。一万円になれば夫婦二万円だ、こう言っておるのですね。十年年金はそのときに三万円で済むかどうかは、それは私はわかりませんけれども……。しかし、それは何か額が一万円だとか夫婦で二万円だとかいうことになったら、これはやはり非常にふえたように思っていますけれども、問題は、それはどのくらいの価値を持っておるかということになるわけであります。いま、五千円をあなたは支給していますね。どんなぐあいに使われていますか、これは、福祉年金五千円は。ほんとうにあなたのおっしゃるように、いわば生活の一助として毎日毎日の生活の足しになるような、そういう形でもってほんとうに使われているのでしょうか。この実際について、一体厚生省は調査したことがございますか。どんなぐあいに使われておりますか。
  37. 横田陽吉

    ○横田政府委員 いまここに具体的な数字は持っておりませんけれども、使われ方は実にまちまちでございます。特に農村部等におきましては、非常に大きな生活のてこになっておるということもございましていろいろでございますが、ただ福祉年金の性格は、ただいま大臣からもお話がございましたように、逐次これを引き上げて生活保障的なものにしなければならないという問題意識を持ち、そのように私どももいたしておるわけですが、同時に、これのみによって生活を維持する、そういうふうな性格づけをすること自体に非常に困難があるわけでございます。したがいまして、現在は御承知のように、たとえば最低生活ぎりぎりの方につきましては、生活扶助の老齢加算という形で上積みをするとか、そのほかいろいろな社会福祉政策等組み合わせまして、そのそれぞれを組み合わせた結果によってできるだけ豊かな生活を実現していただく、そういうふうなことになっておるわけです。あといろいろ調べたものもございますから、その点につきましては詳細、後刻御報告をいたします。
  38. 田邊誠

    ○田邊委員 きわめて認識が足らない。私は、何もいま福祉年金が生活の全部になっておるなんて、そんな大それたことを考えていない、またそんな質問もしていませんよ。そんな五千円でもって、いまのこの物価高でもって、生活がささえられるはずがないのです。ですから、そういう観念的なことを私は言っているのではない。しかし、そういう方向に行くべきだという大臣の話もあり、私もそういった点でもってこれは考えなければならぬと言っておるのです。農村でもって生活の足しになっておるなんということを一体どこでいえるのですか。役所がそんな考え方で立っているから、ものごとは進まない。  私が調べたところでも、たとえば年金局長、いま福祉施設の入所者の抽出調査をいたしましたところが、老齢福祉年金が一体どういうものに使われているかという順位をつけましたところが、第一にたばこ、第二に菓子を買う金、第三にちり紙などの日用品を買う金、第四番目に酒を飲む、第五番目に下着類を買う、こういう順序になるのですよ。ですから、あなたが農村でもって生活の足しになっておるというのだったら、ひとつ示してもらいましょう。少なくともそういったことについて、役所がある程度のいわばものを調べて、それでもって的確な考え方に立ってもらわなければ、これはあなた、とてもじゃないけれどもこれから先いろいろな作業を役所に頼むなんということはできませんよ、これ。ですから、そういった点で、いわば小づかいの一部になっておるというのが現状だよ、これは。いいおじいちゃん、おばあちゃんになりつつあるという点については、私は実は意味があると思っていますよ、これは。孫に小づかいをやる、それもいわば一つのこれから先の社会体制の中では決して無意味じゃないと思いますよ。たばこを買う一助になっておるという点についても、私は決してそれが意味のないことじゃないというように思っている。  私は、たとえば福祉施設に入っている年寄りにいろいろ意見を聞いていますけれども、これはいつかも私は委員会で言ったことがある。五千円なんというのはちょうど中途はんぱなんですね。非常に中途はんぱな金です、これは。これは一般の生活保護世帯その他を聞いてみてもそうですけれども、これがいまの現状でもってたとえば一万円以上のものが出ておるとすれば、私はある程度まとまった感じを持つと思うのですよ。大臣がいま吸っていらっしゃるたばこは、私は幾らであるか存じませんけれども、言うならば、いまあめ玉年金からたばこ年金、こういうことを言われるのが実際の実情というように思うのですね。一面において、私は、これは余分な話ですけれども、たとえば老人ホーム等で、従前福祉年金がないときは小づかいをつくるために、ある程度いろいろな内職といいましょうかやっておったのですね。くつ下をこしらえたり造花をやったり手袋をやったりしておったのですね。それが一つの勤労意欲という形になって、また生きがいを感じるということになった。ところが、いま福祉年金が支給されるようになってからある程度小づかいができてきた。それ以上のものではないわけだから、その程度の、小づかい程度という形なもんですから、そういったことに対する意欲もなくなってきた。これがいわば非常に老人の家庭なり施設なりを暗くし、これはまた非常にいわば進歩性を失わせる。またこれが一つの長生きをすることに対する障害にもなっておるということもあるのですね、ゼロよりいいですけれども。そういうことを考えたときに、五千円というのはいわば非常に中途はんぱな金であると思っているのです。この点、ひとつ認識を新たにしてもらいたいと思うのです。あとで資料を出してください、そういう調べたものがあるなら。また、それは調べてもらわなければいかぬというふうに思うのでありまして、そういった点でひとつ要望しておきたいと思います。  そこで大臣、五千円を七千五百円にしたのはえらいほめられていいような話をしておりますけれども、これは一体、どのくらいの価値があるのでしょうか。昨年の十月に五千円になりました。ことしの十月から七千五百円になる。これは五千円のときの当時の物価の状態から見て、七千五百円というのは一体、どのくらいの価値があるのでしょうか。これは当然調べておられましょうから、これはいまのところ物価は全国でもって消費者物価が約二五%増、ことしは昨年二月に比べてそういう状態ということになっております。これは物価が下がれば別ですけれども、これから先、先行き下がるという見込みがあるわけではございません。石油は上がりました。電力も上がるようです。もう私鉄、バス等も上がるという状態を考えてくれば、一体、この価値というものはどうなるのか。十月現在を予測することはできないから、現状でもって一体、どうか。
  39. 横田陽吉

    ○横田政府委員 七千五百円は五千円に対して五割アップでございます。物価上昇が——はっきりした数字、私ここに持っておりませんが、もしかりに一五%であるといたしますと、差し引き三五%の実質価値の引き上げ、こういうふうになります。
  40. 田邊誠

    ○田邊委員 大体人をそういうばかにしたような答弁をしては困る。もうちょっときちんと調べてきてもらいたい。一年間大体二五%物価が上がっている、こういうことならば、貨幣価値の引き下げによってどのくらいに減価しているのだ。一体、七千五百円というのは幾らに当たるのだというくらいのことは、実際にこれは調べてもらいたい。昨年の十月の三千三百円が五千円になるということでもって、物価上昇が一体幾らあって、これは金の価値が幾らになったかというぐらいのことは、われわれが調べているのだから、役所は調べていないはずはない。それによって一体、どのくらいの引き上げの価値があったのか。引き上げというものに対してどのくらいの重みがあったのかということに対して、国民にはっきりしたものを示さなければ、ただ五千円が七千五百円に上がりました、五〇%増でございます、喜んでくださいと言ったって、使う価値がなくなるのですから、そんなわけにいきませんよ。そういったことに対して、大臣がこれは選挙向けにあなたが言っている限りはいいけれども、国会の論議としてはもうちょっと正確に、どのくらいの価値があるのかということについての判断をするような材料を出してもらいたいというように思います。
  41. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 これは福祉年金について、私は現在、老後の生活をささえるような年金になっておるということは、申し上げたことはございません。まだそこまでいっていないのです。それは五千円でこれで生活をささえるなんということは、全然私も考えを持っておりません。お述べになりましたような、生活の足しにしている方もあるいはあるかもしれませんけれども、やはりこづかい、敬老的なものである、まだその段階であると私は思います。でございますから、将来は社会保障的な方向に持っていかなければならない、こう申し上げておるわけですから、その点は田邊委員とごうも変わりはないと思います。  そこで、物価の関係から申しますと、昨年十—四月が大体前年度比一四・二%アップ、東京だけが出ておりますが、さらに二月は二四%でございますから、一応一〇%上がっているというのが数字でございます。しかし、この物価による減価は、今後またかりに上がっていくとして十月になるまで、十月分が七千五百円ですから、さらに一〇%上がる。ここからまた一〇%上がり、二〇%。中身は五〇%上げても三〇%じゃないか、こういう数字になると思いますが、それはそれの議論といたしまして、やはり五割引き上げたというところを——田邊委員はけしからぬけしからぬとおっしゃるけれども、これはやはり政府としても相当の金の出し前だと思うのです。といいますのは、二千五百円上げた金が、一年間の平年度にどのくらいになるかというと、千三百億くらいになるのですね。これはやっぱり相当な金です。国民の税金千三百億、それが五千円から七千五百円になった二千五百円分が平年度において千三百億、これは相当な金じゃないかと思うのです。そういう意味で私はこれで十分だと率直にいって申しません。こういうふうに、かりに去年の十月から最近まで一〇%物価がこう上がっています。またことしの十月までかりに一〇%上がるとすれば、二〇%ですから、おまえ五〇%上がったといっても実質三〇%ぐらいじゃないか、こうおっしゃられればそのとおりでございますが、やはり国費を、こういう財政の苦しい中で平年度にすれば千三百億投入したという、この田中内閣の福祉に対する熱意だけは買っていただきたい、こう思うのです。そういう点で御理解いただければ非常にしあわせだと私は思うのです。いま私ははっきり言うておるのです。これは老後の生活をするに足るような年金ではない。現に私そう思っております。まだ敬老的な色彩が非常に強いのですから、その点は今後、来年度は一万円にしよう、こういうわけでございますから、お互いに協力し合ってよりよき制度をつくるために政府努力をしているのだ、この熱意だけはぜひ御理解をして買っていただきたいものだ、こう思うわけでございます。
  42. 田邊誠

    ○田邊委員 昨年の三千三百円から五千円にするという時点、この時点のとらえ方は問題ですけれども、予算編成期をとらえる。その間にそれで一応一四%上がっておった。大体三千三百円から五千円という、千七百円上げたというけれども、実際には千百円ぐらいにしかなっていない。ことしの予算編成期における約二〇%物価値上げということをとらえてまいりますると、今度の二千五百円アップというのは、わずか千二、三百円ぐらいにしか上がっていないというように思うのですよ。  ですから、そういった点から見ますると、去年の三千三百円から五千円に上げたのと、物価がこれだけ上がってまいりますると、千七百円上げたのと二千五百円上げたのと、これは大体同じぐらいと見ていいのですよ。ですから、ことしはえらい気ばったような話をしていまするけれども、そういったことはいまの物価上昇の中では、国民に全く錯覚を与えているだけにすぎない、この認識は十分持ってもらいたいと思う。ただ五〇%上げました上げましたというようなことで吹聴されておっても、実際に国民が使うところの価値がそれだけなくなっているという状態です。  しかも田中総理は、昨年の二月に五千円を七千五百円、そしてまた五十年には一万円にすると言っているのですね。そのときの総理の感覚でいいますると、当時五千円を七千五百円にすることはかなり思い切った措置だときっと総理なりあるいは厚生大臣はお考えだったろうと思うのです。しかし、残念ながらその実施がはかられようとしておるところの今日、昨年二月からことしの二月に例をとってみれば、いま申し上げたように、全国でもって二六%の物価の値上げということになってくれば、今日において、その当時五割増しを織り込んだ総理の構想なり、あるいはまたそれを受けた厚生大臣の考え方というものは、昨年の二月から一年間の推移を見れば、当然これは改めるべきである。この七千五百円というこういう考え方を、これは不十分であると認めた。しかしいま言った物価の値上げを考えて、貨幣価値を考えてみまするならば、これはおそらく七千五百円を大体九千円ぐらいにしなければ、約一万円近くにしなければ、実際には当時の考え方というものを貫いているとはいえない、こういうように思うのですよ。これは私は何もこじつけで言っているわけではないのです。事実そういうことになっている。ということになれば、この五千円から七千五百円、そして五十年には一万円といっているけれども、実際には、いわば基礎的な考え方をもし認めたといたしますならば、この七千五百円は今日において九千円から一万円に引き上げてこそ、初めて総理の昨年の政治的な公約というものが果たせる、こういうように思ってしかるべきだというように思うわけでありまして、そういった点からみても、この措置は当然是正をされてしかるべきだというように考えておるわけです。これはこの前もちょっと質問いたしましたけれども、大臣は、この考え方は全く誤りだという反論がございましたら、お受けをいたします。
  43. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 田邊委員のお述べになりました物価との関連においての御意見、私も非常に理解はいたしておるつもりでございます。理解はいたしておりますけれども、先ほど来申し述べましたように、五千円を七千五百円にするということはやはり相当思い切った財政負担であるということを考えてみますれば、現在の段階においては七千五百円にすることが適切であって、それ以上上げるという考えはいまのところ全然持ってないということを申し上げておきたいと思います。
  44. 横田陽吉

    ○横田政府委員 先ほど物価指数の点ではっきり申し上げませんでしたので、申し上げますと、四十八年十月から現在の四十九年二月まで数字が出ておりますが、その間の全国消費者物価指数の上がりぐあいは一二・九%でございます。
  45. 田邊誠

    ○田邊委員 時間があまりございませんから、基本的な論議はいろいろとあるのでございますけれどもこれは一応おきまして、今度の法律改正についてはさらにいろいろと論議をすべき点がたくさんあります。それともう一つは、いわゆる財政方式についてもわれわれとしては当然これから考えていかなければならぬ点が非常に多うございます。しかし、この点についてはあとへ譲りたいと思います。私は、財政方式の問題、特に積み立て金についての若干の論議をまた自後においていたしてまいりたいというように思っておりまするし、それからまた、この保険主義をとっていらっしゃる中でもって、現在は社会保障関係費の中に占める割合というのが半分以上になっているという事態をどう見るかということについてもいろいろとお聞きをしてまいりたいと思いまするが、またあとの機会に譲りまして、当面をする問題についてお伺いしておきたいと思います。  昨年の改正でもっていわゆるスライド制の実施がはかられてまいりました。しかし、このスライド制の実施というのは御承知のとおり、厚生年金今年の十一月、国民年金来年の一月という形でございます。そういった点から見まするならば、このスライド制の実施というのが全く現状と合わないということは、これはしばしば繰り返してきたとおりでございます。それで、その基本になるものは一体何かといいまするならば、物価が五%以上上がった場合にはそれに即応して引き上げをする、こういう考え方でございます。異常な物価高でありまするから、われわれとしては、これに即応して年金のいわば価値を維持するということは当然の成り行きだろうと思うのであります。しかし問題は、いわば年金の額自身が非常に低いというこの現状、しかも労働者の諸君は、毎年の賃金引き上げでもって生活を守るために引き上げを要求し、これが妥結をするということになってまいりますると、いわばいまもう卒業されておる年金受給者は、ますますこれにおくれていくという条件が出てまいるわけでありますから、われわれとしてはこの現状に照らしてみた場合に、この賃金がアップをいたしますならば、それに連れて年金の額もアップをするということは、私は当然国民が要望する点であるというように思っておるわけであります。財政再計算期の問題等ももちろんありまするけれども、当面、この国民的な課題でありまするところの年金のスライドの問題については、基本的にはやはり毎年上がりまするところの賃金の上昇を受けて、これが直ちに年金額に反映をできるという立場をとるべきであるというふうに実は私は思っておるわけであります。  私どもはその点から、たとえば昨年の六月から今年の五月にかけての賃金上昇分を受けて、年金のスライドを本年の四月から行なうべきであるという考え方をまとめました。いまそれぞれ実は相談をいたしておりまして、この考え方をひとつ国会の中に法案として出したいという熱願を持っておるわけでありまするから、そういった点は、大臣も現在の状態というものをよく御存じでありまして、あなたも長いいわば役所の生活を経て、しかも労働行政についても精通をしていらっしゃる。そしてなおかつ、いま社会保障の責任者の立場に立った所管の大臣としていまの現状を踏まえてみたときに、この要求に対しては率直に答える必要があるのじゃないかというように私は思っておりますが、その点はいかがでございますか。
  46. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この年金額のスライド制の採用について賃金上昇分をという御意見でございます。私はこれも一つの意見だと思います。一つの意見だと思いますが、私はやはり賃金の状況等を年金に反映させるということは、法律で定める五年ごとということでございますが、五年ごとはまあ短縮されても私はいいと思って前々から答えているわけですが、そういう財政の再計算期において十分私は反映さしていくということが必要ではないか、こういうふうに私は基本的には考えておるわけでございます。  そこで、やはり年金というのは退職後の問題でございますから、貨幣価値の変動による減価を防ぐということに力を入れるのが本筋ではないか、こういうふうに私は考えているのです。退職後の生活ということでありますれば、物価上昇に見合ってスライドさしていくという、物価スライド方式がやはりいまの時点においては適切ではないか、こういうふうに考えておるわけでございまして、いまにわかに昨年来の賃金上昇分を四月からスライドさしていくという方式には、いま直ちに賛成することはできない、こういうふうに申し上げておきます。私は、あくまでもこういうふうな際には、物価スライドを行なうということでいいのではないか、こういうふうに考えておるような次第でございます。
  47. 田邊誠

    ○田邊委員 あなた、もう少し事態を検討されてしかるべきだと思うのです。ただ単に物価が上がったから金の価値を下げないという形、これだけではいわば人間の生きる要求として、生活向上するという要求から言いまするならば、これはほど遠いわけであります。やはりこれだけいわば福祉国家をつくると言い、そしてまた生産をどんどん上げて経済の高度成長をやってきたというわが国、そういう中でもってやはり生活水準を引き上げるということは、これは私は何も年金受給者ばかりじゃなくて、当然、国民全体に及ぼすべきこれは国の施策であるというように考えるわけです。そういった点から見れば、これは物価でもってやはり貨幣価値の水準を維持するという、そういう消極的な考え方に立っただけでは年金の改善というものは永久に行なわれない、こういうように思うのですよ。スライドというのは、その意味では一定の水準を低下させないというこういう歯どめの意味を持っておるわけでありますから、そういった意味で物価スライドはいわば最低の問題、さらに政府がこの年金受給者を含めて生活向上をはかるというこういった観点から言いますならば、これは私は、当然賃金の上昇についてそれに見合ったものを入れるという考え方に到達するのではないかというように思うのです。私どもも年寄りもおる。ところがせがれは幾ぶん一生懸命努力して賃金が上がってきた。こちらはいわば貨幣価値が下回らない程度の物価のスライドをやる、タイムラグの問題は別として、という形である。これでは私はほんとうにお年寄りの生活向上させるというこの目的、それにそぐわないというように思っておるわけでありまして、この点は大臣も、一つの意見だというふうに言いましたけれども、積極的にそういったことに対する検討をすべきである。  これは昨年の年金法の改正をいたしましたときの本委員会附帯決議にもあるわけでございますから、その趣旨も大臣は尊重されて臨まれるということは当然の責務であると同時に、そういった立場をとってこそ、初めて政府の施策というものがいわば国民に受け入れられるという状態になってくるだろうと私は思うのでありまして、これはひとつ積極的な検討を進めるということについて、さらにあなたが合意をすべきだ、このように私は思うのです。
  48. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先ほど申し述べましたように、賃金動向に即応して年金額をスライドさせる、これは一つの方式だと私は思うのです。私は、あえてこういうことは全然問題にならぬなんということを言うておるわけではありません。ただ問題は、そういうふうな問題は財政再計算期において、たとえばいまの仕組みというのは五万円年金という仕組みで出ておるわけですから、五万円年金の仕組みであるならば、貨幣価値の減価を防いでいけばいいのではないか、こういうことを申し上げておるわけです。したがって、賃金も年金水準の中にどういうふうに加味していくかということは財政再計算期においてこれはやっていく、それは五年ごとにやっていくというのが法律の仕組みでございます。これは御承知のとおり。といいましても、実際は大体四年ごとにやっておるではないか、こういうふうな考え方もありますので、こういうふうな物価動向の際でもあり、賃金上昇もことしは相当大幅になるのではないかという人もおるわけなんです。私はどうなるかこれはわかりませんが、大幅になるのではないかという説もありますから、やはり四年待ってやるというのはおそ過ぎる、二年待ってやるには早過ぎるというので、適当なところでひとつ調整をしていくということが必要ではないかと私は思うのです。  そこで、昨年来申し述べておりますように、財政再計算期はできるだけ縮めて、もう一回その五万円年金というものを見直していく、そういう仕組みを見直していく、その際に賃金の動向等も十分反映させるということでいこうという考えでございます。したがってこういう情勢であれば、さしあたりとしては法律に従って、物価動向に従ってスライドをさしていきながらも、賃金等の生活水準も十分加味した年金という制度をつくっていくという努力をすべきだと私は思うのです。ですから四年待ってやるなということは申しておりません。二年では早かろう、適当なところはその辺の中間くらいかなあと、あるいはまたそれがもっと早くなるかもしれません。早くなるかもしれませんが、私はそういう方向で見ていくというのがむしろ適切ではないか、こういうことを申し上げておるわけでございます。したがって、田邊委員のような御意見については私も十分検討いたします。これは全然問題にならぬなんということを私は言うておるわけではありません。私の考え方は財政再計算期でいいんではないか、それを早めてやるというその方式の中で、田邊委員の意見も十分実現できるような仕組みを考えたらどうか、こういうことを申し上げておるので、基本的にはそう違いはないと思うのです。ただ表向き、賃金とこう言うか、物価と言うか、その辺のニュアンスの差はあろうと思いますけれども、大体方向としてはそう違っているものではないのではないかと思います。しかし賃金を表面に立ててのスライドという問題については、今後とも私どもも十分考えていかなければならぬ問題だと思います。いますぐというわけではありませんが、十分考えていく必要がある、私はさように考えております。
  49. 田邊誠

    ○田邊委員 このことについては、私どもは実はあなた方を助ける立場に立って言っているのですよ。これは財政再計算期を一年と二年と縮めた形でもって昨年法律が出ました。いわばもうその必要に迫られているのですよ。ですから、いわば五年とか四年とかということを言っておったのでは、これはいまもう再計算をやったなんという価値がないという状態ですから、少なくともそれを一番的確にやるのは、やはり賃金によってスライドするという形をとるべきだというのですよ。それは形として、形式としてとれないというのなら、毎年再計算をやられればいいのです。これは方式はいろいろあると私は思うのですよ。ですからそういう形をとらなければ、実際には年金の受給者に対するところの政府の施策は前進をしたということにはならない、現状維持だけにとどまるというように思っておるわけでありますから、あなたは何かえらい中間的なことを言っておるけれども、これはもうちょっとはっきり言ってもらいたいと思うのです。毎年できるというのなら、それは賃金スライドをとっても同じことです。すぐそれができないというならば、隔年やるというなら、これも一つの方法ですよ。しかも私は、あなたの心配していることについては、物価の上昇の動向等もありますし、それから賃金の上昇度合いもありますから、そういった点の意味はわかります。しかし、現在はこれだけ上がっているのですから、また賃金も上がるでしょう。そういう形だから、とりあえず財政再計算は——あなたは落ちついたら三年ごとにやるというふうに言うけれども、この急場をしのぐというならば、少なくとも一年ないし二年ごとにこれをやるという条件をつくらなければならないというように思うのですよ。あなたは実はことしはやるという意思に立っておらなかった。とすれば、この状態ではもう来年は考えざるを得ない。狂乱の物価だから考えざるを得ないということくらいまではやはり決意をしてもらわなければならないと思うのです。これは方式ございませんか。どうですか。
  50. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 来年は必ずと——まあ私もそれまで大臣になっているかどうかわかりませんから、そうはっきりは申せませんが、私はやはり年金の大幅な——大幅というか基本的な改革の時期は非常に近づいていると実は思っているのです。近づいているということだけでひとつ御理解いただきたいと思うのです。それは来年かどうか別といたしまして——まあことしはためてすけれども、来年やるか、要するに非常に近づいてきているということだけははっきり申せると思います。そこで私も、これは多少前向きな答弁になるかどうかわかりませんが、ことしの国会でも済み、さらにことしの賃金上昇の状況等も勘案しながら、こういう基本的な問題については、やはり社会保障制度審議会あるいは社会保険審議会というのですか、そういう方面にも基本的な問題として十分考えてもらいたいと私は思っているのです。でございますから、私の気持ちは、そういう言外に何を言わんとしているか、よくおわかりいただけると思うのです。ですから、今度は、どうも三年まで待つというのはちょっと無理じゃないかなといういま感触でございますから、感触程度できょうのところは御理解いただきたいと思うのです。
  51. 田邊誠

    ○田邊委員 賃金スライドを実施すべきであるというわれわれの主張を、われわれはこれから先も政府に対して強く主張してまいりたいと思っております。  そこで、とりあえずは物価スライドというのを盛んに強調されているのですが、これもやはりいま現在の状況に合わないことは御案内のとおりであります。十一月から一月のそれぞれの実施率、しかも支給はそれの三カ月後というこの状態の中で、現在の物価高に即応することができないということはしばしば言っておるわけです。あなたがコロンボかどこかに行っていらっしゃる間に事態は大きく変わってまいりました。あなたが一週間ばかり日本を留守にしている間に、日本の事態は非常に急速に進展をしているわけであります。この状態の中で、ひとついよいよ決意をすべき段階が近づきつつあると私は認識をいたしております。そういった点で、これに対してかなり内田厚生大臣臨時代理も、前向きの検討をするという御発言をしておられる。タイムラグの問題については実施時期の繰り上げ、そしてまた支給の遡及ないしは現状においても支給時期の繰り上げ等の要素を踏まえて、これに対しては前向きの検討をするということが内外に宣明をされておる。したがって、その検討をもうすでに終えてきているのじゃないかと私は思うのですが、この積極的な検討の結果は一体どういうふうになっているか、きょうはひとつこれをお伺いしたいと思います。
  52. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 だいぶ進展しておるようなお話を承りましたが、私もどういうふうになっているのかよく存じておりません。一昨夜帰ってきたばかりでございまして、内田厚生大臣臨時代理がどういう発言をされたか、速記録をまだ見ておりません。でございますが、これは先般の衆議院の予算委員会でも、私はそのときにお答えいたしましたように、このタイムラグを短縮するということはできないものだろうかということで、実は事務当局に研究さしておるのです。まだ結論は出ておりませんが、さしておるのです。これは先生も、あるいはそういうふうな厚生省のいろいろな事務のやり方等について御研究なさったかと思いますが、たいへんむずかしいもののようでございます。やはり三百万人に及ぶ人に対して、具体的に何万何千何百何十円というところまで全部改定していくわけですから、これはたいへんな作業なんです。これは私も、一万何千人という社会保険事務所の職員の労働というものを考えると、無理やりやれということも非常に言いにくいのです。けれども、何とかならぬかということで研究さしておるのですが、いまの段階では、非常に困難であるという報告ばかり実は聞いているのです。  そこで、結論的にはどういうふうにしたらいいのか、私もいまのところ案は持ち合わせておりません。しかしながら、今後とも、国会の皆さん方の御意見でございますから、これは十分尊重いたしまして、勉強を続けていく。これについては終始一貫、私の態度は変わりはない、こういうふうに御了承願っておきたいと思う次第でございます。
  53. 田邊誠

    ○田邊委員 私は、現在の事態をどう見るかということに対する政府の認識について、きょうはお伺いするつもりはございません。しかし、これは私どもも国会を通じ、あるいはまたあなたに直接、実は野党そろって要請をいたしたことも事実であります。ですから、これに対する具体的な結果というものを出すべきじゃないか、私はこういうふうに思っておるわけでございまして、そういった点から見れば、当然それに対する責任はある。  まず第一に、私どもがあなたにお会いして、いろいろと要求書も政府あてに出しました。官房長官から、具体的には厚生大臣と折衝をしてもらいたい、こういう要望もありました。それを受けて、あなたと接触する立場に立っておるわけですが、しばらく留守にされておりまして、事態は非常に急テンポで進んでおるということでございました。ひとつこれを受けて、これは国会の中における審議とあわせて、われわれと具体的にこの問題に対する折衝を急速にこれはやってもらいたい、やらなければならない事態にある、こういうふうに思っているのですが、その点は当然ですね。よろしゅうございますね。
  54. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この問題につきましては、野党の四党と先般、政府に対する申し入れにつきましてお話し合いをいたしたわけでございます。もうすでに御承知のように、こういう問題については、予算なり、法律なりが関連する問題でございますから、まだ予算も成立していない段階でとやかく申すことはできませんが、やはり国会の審議というものは尊重しなければならぬ、これは当然のことでございます。そういうようなことで、皆さま方の御意見は、この社労の委員会において十分お聞かせをいただいて、そして皆さん方の御意見も承り、また皆さん方といろいろお話し合いをいたす、これはもう当然なことでございますから、お話をいたすことについては、やぶさかでございません。そして最終の段階において、私が政府としていろいろ考えることがあればそれをまた申し上げる、これは当然なことでございますから、皆さん方の御意見も十分承りながら、また皆さん方とも十分話し合いをいたしながら、こういう問題は処理していく必要があるのではないか、こういうふうに私は考えております。虚心たんかい、皆さん方の御意見も承り、皆さん方とお話し合いをいたすということをはっきり申し上げておきたいと思います。
  55. 田邊誠

    ○田邊委員 そこで、政府は、いま国民年金等の改正を国会に提出をされた。そういうことでわれわれは審議をいたしております。これは当然制度上の問題に関連する事柄でありまして、事の成り行きによっては、政府が、これは国会に対して制度の改正を求める必要が出てくるかもしれない、あるいはまた、政府の考え方を受けて、国会自身が処理をしなければならない場面も出てくるかもしれないと思っております。そういったことから見れば、いろいろな国民的な要求がいま出されておることも、これは当然の成り行きであります。そしてまた、そういった面におけるところの事態も緊迫をしております。しかし政府がこれらの事態を正確に認識をする中で、そしてこれはあくまでも制度的な問題を含めての処理をすべきであるという観点に立ちますならば、最終的には、国会に、あるいはまたそれを専門的に行なってきたところの当委員会において、政府の態度を鮮明にすべき事柄ではないかというように私は思っておるわけですから、そういった点で、この審議の経過も踏まえながら——この法律案の熱心な質疑がこれから行なわれるわけでありますから、それらの状況も踏まえながら、政府はこれに対するところの態度を当委員会において明確にすべきであると私は考えておりますが、その御用意がございますか。
  56. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 いま具体的にどうのということはありません。ありませんが、私も動きつつある社会情勢は十分理解をいたしております。さらにまた、最近における物価を中心とした経済情勢の推移も、私は私なりに十分理解をいたしておるわけでございますから、社会労働委員会における皆さん方の御意見も十分承りながら、そしてまた皆さん方の御意見も尊重しながら、虚心たんかいに話し合いをいたす考えでございます。それには政府ばかりではございませんから、与野党の立場の話し合いということもあるいは必要になってくるかもしれません。そういう段階の中で、現在の社会情勢のもとにおいて、経済情勢のもとにおいて、国民の要望するものは何であるかということを、政府責任をもってはっきりつかむことができますならば、はっきりとその態度を明らかにいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  57. 田邊誠

    ○田邊委員 私は、本日は、まだ中身についての質問もかなりございますし、それから現在の状況の中におけるところの緊急の課題についていろいろと詰めたい点もございまするけれども、いまの大臣の話を受けて、われわれはわれわれなりに最大の努力をいたしたいと思います。政府に対する、さらに具体的な折衝もひとつ精力的に行ないたいと思います。これはただ単に年金の問題に限らないと私は思います。いわば国民全体の生活を一体どうするかということにもかかってくるわけでありますから、生活保護家庭をはじめとするところのいわゆる社会的弱者というか、低所得の方々に対しても、当然の成り行きとして、これらの問題を、われわれは、いま政治に投げかけられておる課題としてとらえながら、これに対するところの解明と早急な解決をひとつはかるべきだというように考えております。いま質疑応答を通じて、大臣の言われたことは、年金を含めた政府の施策全般に通ずる問題である、こういうふうに受けとめながら、これに対する誠意ある政府の態度を早急に出してもらうことを強く要求すると同時に、われわれもその点に対する、各政党を通じ、あるいは対政府折衝を通じて、ひとつこれは早急な結論を出すように最大の努力をいたしてまいりたいということを強く発言をしておきまして、とりあえず私のきょうの質問を終わりたいと思います。
  58. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 八木一男君。
  59. 八木一男

    八木(一)委員 まず最初に、齋藤厚生大臣がエカフェの会議を終えて元気に帰ってこられたことについて祝意を表したいと思います。これは個人的な問題ではなくて、厚生大臣がいま非常に重大な衝に当っておられる、そのときに、元気な厚生大臣でなければ、国民のために対処がしにくいということである。そういう意味で個人も含めて祝意を表するわけであります。  ただ、いま田邊委員との質疑応答を伺っておりますと、御不在中に問題が動いているということについてはまだ聞いておられない。まあ疲れて帰ってこられた方にきょうの質問ですから、齋藤さんにというよりは、その状況の変化を直ちに報告をしない連中に重大な責任があると思う。その点について、今後そのような怠慢な態度を戒めていただきたい。非常に問題が動いていることを答弁責任の衝に当たる人に何をおいても報告をする、何をおいてもすぐ一刻も猶予をしないで、この問題は厚生大臣を先頭として前進をするという体制をつくってもらわなければならないと思う。そういう点でここに私は厚生省関係の全部の人に強い反省を求めたい。  そこで、問題の動いている点についてひとつ私の知っている範囲のことを簡単に申し上げて、それをいますぐ頭にのみ込んでいただいて、今後の質問に対して応答していただきたいと思うわけであります。  先日、暫定予算の予算委員会の審議が終わりました。その暫定予算を提出をしなければならないことについて政府責任が追及をせられました。その第一は、昨年から非常に過剰流動性の問題をほうり出したり、その他の政策のためにインフレが高進をしている。そして石油危機等でいろいろな問題が起こったときにその問題の対処が非常にまずい。悪徳商社の跳梁を許した。そういう問題について、その跳梁をした悪徳商社に対しての追求を、証人として喚問をして徹底的にその害悪を断つための審議をしなければならないのに、それに政府は応じられない。さらにまた四十九年度予算において一月の末に確定をされたときに、その前の十二月末に方針をきめられたものと比較をして、卸売り物価あるいは通関あるいは国際収支等については変更せられたけれども、消費者物価が大きく変動しているのにそれを微細なものとした、そしてそれを考慮に入れて予算編成を基本方針から予算の確定までにこれを変えられなかった。経済の見通しも、そして予算も変えられなかった。そしてそのために非常に不十分な予算になった。そういうことが問題になった。国民の要望にこたえていないということで予算委員会で早く審議が完了しない状況にある。このために暫定予算を組まなければならないことになった。その政府責任はどうするかということについて追及が行なわれました。それに対して総理大臣の田中角榮君やあるいはその他の閣僚から、特に田中総理大臣から、それについての反省を込めて、本予算がほんとうの意味で十分に国民の替同を受けておられなかった点について反省をして、今後の法律審議やあるいは行政運用や財政運用については国民の要望にこたえて、野党の要求をまともに受けとめてそれをやっていく、そういう意思の表示があったわけであります。内閣全体の方針でありますから、どうかその点を厚生大臣に踏んまえていただいて、法律審議についても、行政運用についても、予算の運用についても、今後この問題の反省の上に立って野党の要求する主張、国民の要望に沿った主張を十分に入れてやっていく、そういう内閣の態度になっておられることを——もちろん賢明な方ですから一発でわかると思いますが、確認をして、その上で今後の応答をしていただきたいと思うわけであります。  それと同時に、財政の問題についても審議が行なわれました。そこで会社臨時特別税、この問題については、前といろいろ法案の名前は変わっておりますけれども、その経緯は、このようなインフレの中で大もうけをした人たちから不当の利益を税金として微収をするということであったけれども、そうではなしに、大きな利潤をあげている人たちから徴収するというふうに幾ぶん内容は変わっているけれども、問題は、発足はそうである。そうなれば、悪い行動によってもうけた人はもちろんでございますけれども、このように国民が困っている中で大きな利潤をあげた人たちのそういう利潤に対して課税をされた税収は、当然インフレによって生活を破壊されている人、そのような悪徳な商法によって被害をこうむった人、そういう人たちに還元すべきである。そのような質疑、討論が行なわれました。それについて大蔵大臣は、この法案がまだ完全に通っていないというようなこともあって、答弁のしにくい点がありましたけれども、それは当然そのような精神をくんでやらなければならないという意味の答弁があったわけであります。  さらに昭和四十八年度の自然増収は約二千億円が見越されている。それについても国民から税金の取り過ぎである、また直接にその税金を支払わない人であっても、その財源を利用すれば間接税等が下げられる、あるいは社会保障を進められるという点がある、その見通しが変わっているのであるから、当然この二千億円の財源は、またこのような社会的弱者あるいはインフレの被害者に返すべきであるということは当然のこととして論議されたわけであります。そのような財源は当然四十九年度の補正予算の財源として十分に活用し得る。会社臨時特別税は、前半において九月までには約八百億円から九百億円の税収がある。そういうことになれば、もう一つの四十八年度の自然増収と合わせれば三千億ぐらい、下半期の財源が十分にある。そうなれば四十九年度の予算案はまだ成立をしておりませんけれども、成立必至の状態にある。そこで二千六百億円の予備費がある。この予備費についてはそのときの討論以外に、予算委員会の分科会で私自身も大蔵大臣に詰めましたけれども、この予備費というものは、特に狂乱物価のこの状態を踏んまえて、例年よりたくさん組んだということが明快に答弁されている。その予備費の使用については、そうした狂乱物価の影響を受けた人たちに対する対処として使うのが当然であるという主張に対して、それを理解し、そのとおりだという御答弁をいただいているわけであります。したがってこの予備費というものは年間災害等に使うことのほかに、十二カ月平均して使うというものではなしに、この狂乱物価の被害を受けた人のことを考えれば、四月、五月ごろに集中的に使うべきであるということも、大蔵大臣が総体的に了承せられているところであります。そういうことをぜひ踏んまえていただいて、今後の私の質問にお答えをいただきたい。  大蔵大臣は、厚生大臣がいろいろと国民の要望にこたえようとするときには、全面的に協力をするということを、この国会の中で再三再四明確に答えておる。したがって、厚生大臣が問題に対処をしようとやられたときには、全面的な協力があるわけであります。ただ一つ、厚生大臣国民のために決意を込めていろいろの政策を推進をせられることが、問題を推進する一番の中心点になっておるわけでございまして、どうかそういう田中内閣総理大臣の発言、大蔵大臣の発言を踏んまえられて、あなたが国民のために決意をされたら、内閣は完全にそのとおりあと押しをするのだ、ブレーキをかけないのだという認識のもとに今後の質問について御答弁をいただきたいと思うわけであります。そのことについてひとつ……。
  60. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 国民生活と健康を守るということは厚生行政本来の仕事でございまして、私も大いに責任を感じておるわけでございます。特に最近における異常な物価高、その中に生活をし、苦しんでおられる方々の生活を守っていく、これは私は非常に大きな責任だと思うわけでございまして、今日までもそのつもりで努力をいたしたつもりでございます。さらにまた、来年度の予算においてもすでに、御承知のように、公共事業その他非常に大幅な抑制をしておるにもかかわりませず、厚生省の予算だけはできるだけつぎ込もうではないか、これはやはり田中内閣の姿勢だと思うのです。したがいまして、大蔵大臣も福祉政策については非常に御理解をいただいておりますものですから、私どもの要求については全面的にほんとうに御協力をいただいておるわけで、私は非常に感謝をしておるわけでございます。今後とも福祉政策の充実、発展のためには全力を尽くす覚悟でございます。
  61. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣の全力を尽くすという御発言をいただき、国民のために非常に心強く存じます。  ところで、いま議題になっております国民年金法の問題について、社会保障制度審議会の答申がございます。その中の具体的な内容の問題についてはまた後に時間があったら申し上げますけれども、その中に、昨年十一月十九日に社会保障制度審議会が建議として出された問題について、それをさらに進めなければいけないということが載っております。昨年十一月十九日にインフレに対する建議がございました。この建議については、予算委員会齋藤厚生大臣はじめほかの閣僚に質問をしましたので、十分にその内容を御承知であるはずでございます。時間の関係で一つ一つの文言を全部詰めるわけではございませんけれども、その建議の精神を十分体得されて問題に対処をせられないといけないと思いますが、これについてひとつお答えをいただきたい。
  62. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先般の予算委員会においても、十一月十九日付の答申をおまえ読んだかと、こういうことでございますから、読んでおりますということをお答えもいたしておりますし、内容も熟読いたしております。この趣旨は非常にごもっともなことが一ぱい書いてございますから、この方針を体して努力をしなくちゃならぬだろう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  63. 八木一男

    八木(一)委員 ところで、この建議が出ましたのは十一月の十九日でございます。物価の問題で非常に心配して、社会保障全体について出されている。また、当面の低所得者の生活の圧迫について心配をしておられるわけです。物価の上昇の政府の資料は十月の末に総理府統計局が出した資料です。それの全国平均は、そこに載っているのは九月のしかないわけであります。東京でも十月しかわかっていないわけであります。その当時の上昇率は前年度比大体一四%ぐらいでございました。東京と全国と少し違います。前月比もそれほど急速なものではありませんでした。東京に至っては、東京の十月は前月比は減少というときでした。その事態でこれだけ心配をして書かれているわけであります。したがって、いま、たとえば前年同月比が二六・三%上がったというようなことを考えますと、この社会保障制度審議会の建議をさらに十分に、ここに書かれているより以上に、急速に、十分に政府が対処をしなければならないものであると私は確信をいたしますが、厚生大臣はそれについてひとつ積極的な御見解を示していただきたい。
  64. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 インフレはまさしく社会保障の敵である、こういう考えでございますから、こうした趣旨を生かすように、十分今日まででも考えたつもりでございますし、また努力したつもりでございますが、さらに情勢に応じて強力に施策を講じていく必要がある、こういうふうに考えておる次第でございます。
  65. 八木一男

    八木(一)委員 いま考えたつもりであると申されますのは、二月二十日に実は生活保護の問題を一つの中心点として、措置費の問題や失対労働者の賃金、そういう問題も申し上げましたけれども、それを中心として二月二十日に予算委員会の一般質問で齋藤厚生大臣に御質問いたしました。ところで、二月の末に出る消費者物価指数の統計が出たその直後に対処をするという積極的な御答弁がございました。その後、諸施策を講ぜられましたことについては、ある程度と言いたいのですが、やられたことについてはごくわずか評価をいたしたい。ところが、それがあまりにも少ないので問題にならない。  この三月の末に出ました消費者物価統計で私は計算をいたしてみました。計算をいたしてみますと、昭和四十八年度において消費者物価指数は五・五上がるとしてこの予算が組まれておるわけであります。ところが四月にすでに対前年同月比が、五・五じゃなくて九・四%上がっているわけです。五月には一〇・九%上がっているわけであります。六月には一一・一%というふうに上がっているわけであります。したがって、政府のほうが消費者物価指数が五・五上がるとして、生活保護水準を昨年出されたものが実質的に下がっているわけであります。政府のほうはそれに対処して、十月一日から五%引き上げの措置をとられました。それはしないよりましでございますが、十月にやられた数字は九月二十一日に決定をしたわけでございますから、八月末の消費者物価指数に出た指数をもとにしてやられたわけでございます。これは全国比は七月の末のものしか出ておりません。そのときに一〇・八%というような計算をなさいまして、五・五に対して五%上げたから、両方で一〇・五になる、大体見合うという計算をなさったものであるということであります。ところが、十月の時点ですでに一四・二%上がっておる。したがって、五%上げても、この上げた時点でも、予定の五・五%、それから生活保護水準を五%上げられても、十月の上がった一番よいはずのところでも一四・二%上がっていますから、三・七%の食い込みであります。そういうことをずっと計算をしまして、二月の全国比が、実を言うと二六・三でございますから、これは、五・五と五%上げられたのを引きますと、一五・八%という食い込みがある。そういう点を全部計算をいたしました。三月の分はまだございませんから、二月の分が横すべりをするとして計算をいたしてみますと、この毎月の生活保護費の食い込みは、一カ月分の九九・一%になります。毎月の分のその差額。五%上がったのは五%上がったとして計算をしてあります。九九・一%で計算をしますと、昨年度の生活保護の全国の標準世帯、これが四万四千三百六十四円平均であります。昨年度というのは四十八年度です。九九・一でございますから、それだけ食い込みを計算をしますと、四万三千六百三十四円、それだけ一世帯で生活保護水準の標準家庭の食い込みがあるわけです。それに対して、年末にちょっとやったといわれるだろうと思います。この間、生活保護水準は一級地で一人当たり二千円ずつ、政府のあれで言いましたならば、特別一時金という形で支給されたということになるわけであります。食い込みをカバーするにとってはあまりにも低い金額である。このあまりにも低い金額について質疑応答してもよろしいのですが、大体わかっておりますからあれですが、これは、その財源に当たるものが、生活保護費措置費やあるいは失対の賃金やあるいは福祉年金に対する一人二千五百円の対処や緊急生活資金給付金でございますか、そういう対処を全部総額でやって百三十億くらいになる。予備費が四百何十億残っておりましたが、医療費の増高に対する予備費が必要であるので、残るとこれがぎりぎりであるということで百三十億、こういう対処をされたわけであります。これに間違いございませんね。——そこで予算委員会の各委員の御質問や、私自身も質問さしていただきましたし、またほかでも解明しておられるのは、予備費がぎりぎりだからこれだけしかできませんので、たいへん申しわけないけれどもということが方々の御答弁だった。これは齋藤さんだけではなしに、たとえば大蔵大臣もそのような答弁をしておられる。それは、そういう状態でございましょうし、ほんとうは四十八年度補正予算案を組めば、そのような予備費のワクに限られて、問題は圧縮しなくてもいいわけでございますが、私ども補正予算案を組むべきだと思ったけれども、これはなさらないで、予備費で対処をされるということであります。  ところで生活を圧迫された者は、国会や政府のやり方の年度別というようなことではなしに、国民生活は三月から四月にと有機的に続いているわけです。したがって、圧迫に対する対処がスズメの涙ほどであったという問題。それでは足りないという問題が大きくつながっております。年度は変わってまいりました。四十九年度の予算案も近く成立をするでありましょう。そうなれば、この予備費が少ないという問題は解決をするわけであります。その問題の財源はあるわけでございますから、この緊急生活給付金あるいはまた被保護世帯や施設入所者の特別一時金、あるいは失対労働者の就労増というようなことを、もっと金額を多くして、もっと対象者をふやして、このような対処をされることが当然の帰結であろうと思うわけであります。  このことは、社会保障制度審議会の建議のことも申しました。このような一番最低のものとして、この低所得者階層の実際的な生活を詰めることはいけないということが、一番最後の具体的なところに載っております。最初は、インフレをとめようという大きなところから載っておりました。その低所得者階層が、このインフレによって生活を圧迫される、それだけは食いとめなければならないということは、一番最後に明確に載っているわけであります。その対処を厚生大臣等が御努力になって、幾ぶんされたことは、私どもはある程度評価をしたいと思いますが、そのお気持ちを、政府厚生大臣も持っておられるのなら、財政的な問題が、年度が変わっているのですから、当然その問題について引き続きもっと金額を、対象者をふやして、積極的にこれに対処をされる必要があると思うわけであります。これはぜひ国民のために、その対処をしていただきたいと思うわけであります。それについての厚生大臣の積極的な御答弁を、ぜひお願いをいたしたいと思います。
  66. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 生活保護世帯あるいは福祉施設等に入っておられる方々の生活を守っていかなければならぬ。そこで、物価の動向とにらみ合わせながら、昨年十月扶助基準を引き上げ、さらにまた昨年末にもできるだけの一時金の支給をいたしたわけでございます。大体これでいきますと、昭和四十八年度に関する限りは、物価動向と扶助基準との関係は私は調整とれておったと思うのです。それは八木委員はいろいろな食い込みがあるとかなんとかお話がございます。それは一つの意見として承っておきますが、まあ調整はとれておったと思います。  そこで、いよいよ年度が変わりまして四十九年度になりますと、御承知のように、扶助基準その他は四十八年度の当初に比べまして二〇%のアップをしたわけでございますから、これでさしあたりの問題としては調整がとれている、私はさように考えておりますから、一時金を増額をするとかそういう考えは全然持っておりません。しかしながら、四十九年度におきましては、私どもは今後の物価の動向というものには十分関心を持っておりますから、これを見ながら、将来とも物価動向に応じた扶助の改定が必要ならば改定いたします。一時金ということじゃなしに扶助基準の改定をやる、こういうのが私は筋だと思うのです。年度末だとか年末でありますからああいう一時金という制度が行なわれたわけでございますが、四十九年度においては四月に二〇%上げたわけですから、さしあたりこれでりっぱに物価による圧迫というものを食いとめることができると私は思っております。そこで、今後とも物価の動向というものを十分注視、注目しながら見守ってまいりまして、必要があればそういう改定をするという場合も私はあり得ると思うのです。そういうふうな措置で善処をしてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  67. 八木一男

    八木(一)委員 そういうような御答弁が予測されているので、前段で私は誠心誠意申し上げたわけです。いままであなたがそういう考え方を持っておられることは知っておりました。だけれども、情勢が変わっておるということを単もって申し上げたのは、そういう消極的な御答弁ではなしに、積極的に国民のために対処をしてもらわなければならないということで、前段のことをちゃんと申し上げているのです。厚生大臣として、内閣のやり方でございますから、厚生大臣が一人でそういう財政やいろいろなことに関することを一ぺんにお答えにくいであろう。したがって田中総理大臣はそうではなしに、反省の上に立って、法律の問題あるいはまた行政運営の問題、財政の問題について、国民の要望にこたえて、野党の要求をまともに受けこたえてやっていくということが内閣の方針であります。そしてその財政的な点については、厚生大臣が決意をすれば大蔵大臣は全面的に協力をすると言っている。委員会でぽっと言ってぽっと答えたら、閣議で問題になろうという心配がおありになると思って、そうではないということを、厚生省の官僚が帰られたらすぐ進講しないような怠慢があったので、私はかわりに的確にそれを申し上げている。それを踏んまえて、御答弁をいただきたいということを言っているわけです。このままで行かれるような情勢とは違う。それを考え直して御答弁をいただきたい。いまのそういう考え方はありませんというのは、情勢を踏んまえておられなかった、コロンボに出発をされたときの厚生大臣の消極的な考え方であります。世の中は動いている、そういう観点でこれからお答えにならなければならない。  いま、四十八年度の問題は、まあ、八木委員は違う意見があるかもしれないけれども私は対処したと思う、そんな冷たい厚生大臣がどこにありますか。いま、数字を申し上げているんですよ。こんなものは厚生省の社会局がちゃんとつくって、これだから政府のほうは、内閣はどうあろうと、厚生省として対処をしなければならないということを局長や次官が言わなきゃならない。なまけた連中ばかりだから、そういうことをやっていない。私どもが計算して申し上げなければわからない。こんなことぐらいは、ほんとうは社会局の連中は、出たとたんに計算をしなきゃならない。九九・一%の生活の食い込みがある。これは四万三千円の食い込みであります。四万四千三百六十四円の標準であれば、ほとんど一月分を食い込んでいるわけであります。一番最低の生活しか保障されていない、それも十分に保障されていない。その生活保護家庭が、実質上は一月間食うものも食わないで、着るものも着ないで、ふろも入らないで、当たる火にも当たらないで暮らせということと同じことになっているわけですよ。それは十二カ月にならされている。その人が、からだをやせさせて自分の命を縮めてささえているだけだ。政府は、一月間食わないで、着物を着ないで、火に当たらないで、ふろにも入らないで暮らせということをやっているわけです。そういうことをしっかりと考えていただきたい。生活保護水準は、一月置いたら決着つくというようなことを、この間から反省されて言われなくなりました。社会局の連中がそんなことを言ったら、とんでもないですよ。一月ごとに決着がついているけれども、そのごとにからだは衰弱をして、八十まで生きられる人が七十で死ななきゃならない状態に追い込まれている。行政の怠慢のために、ずばり言えば殺人と同じようなことが行なわれている。  この前、四級地の六十歳以上の女性の場合の食料費の問題が問題になりました。六十六円。あの六十六円という問題は、二〇%上げた四十九年度予算の内容ですよ。四十八年度はもっと少ない。いまこれは計算はしておりませんけれども、二〇%上げたことからすれば一食五十何円台です。その五十何円台の食事をしている人が、一月飲まず食わずでやってということになっている。実際には平均しますでしょう、五十何円台がまたそれで下げられる、四十何円の食事しかとれないということになるわけです。ほんとうにからだが毎月衰弱をしているんですよ。あなた方が四十八年度でこれは決着がつくと思うというようなことを言っている中で、多くの人が命をすり減らしているのですよ。年度が変わってなんていう問題じゃありません。国民生活は一月も二月も三月も四月も続いている。去年から一月、二月までからだが衰弱したならば、四月にすぐ政府の怠慢を恥じて対処をして、栄養分を少しでもとる、八十の寿命の人が七十で死ななきゃならない状態をいまからでもそれを補てんをして、せめて七十九まで命が延びるようにしなければ、厚生省、あなた方は人殺しをしておるのと同じことになる。そういうことになりますよ。ですからそういうことも——齋藤さん、ぼくはいつもあくどいことばかり言って、それは失礼だと思っていますよ。しかし、あなたはある程度熱心な厚生大臣だと思っておる。いろいろな点でワクがあっても、それを乗り越えられる人でなければならないと思っています。少しこの二月の末に乗り越えられました。それは評価をします。しかし、乗り越えたときに、乗り越えようとしたときに、予備費が百三十億しかないからこれでかんべん、これだけでがまんしてもらいたいという気持ちが政府はあるはずだ。そうしたら、年度が変わって金ができたならば、一月おくれだけれどもその少なかった部分を埋めあわせていかなければならない。要求までやっておる。われわれがこんなことを言わなくても、政府みずからそれを考えられなければならないと思う。政府みずから考えられる、その原動力はあなただ。あなたがそんな、四十八年度の問題は片づいたと思う、こんなことではほんとうに国民のために不幸であります。あなたはぼくは善意の積極的な政治家だと思いたい。いままでも思ってきた。しかしいまの、考えておりませんというような発言は、ぜひ取り消していただきたい。即刻いまからでも考えて、それを推進していただきたい。ぜひ積極的な御答弁を願いたいと思う。
  68. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 非常に御熱心な御意見で、私も緊張して承ったわけでございます。  そこで、四十九年度は、先ほども申し上げましたように、扶助基準を二〇%上げたわけでございます。でございますから、普通の情勢であれば、もうそれで済んだ、こう言うのが普通なんです、ほんとういうと。しかし私は、あなたがそういう熱心な御意見をなさるから、私は前向きに積極的に答えているつもりなんですよ、私は。今後とも物価の動向に応じては扶助基準の改定は必要であるならいたします、こんな積極的な発言ないじゃないですか。私はそう思うのです。一時金で一時の生活を補てんするという考え方はとるべきじゃないのです。年度末とか年末であるからこそ、いろいろ処置をとったわけでございまして、今後はあくまでも物価の動向に即して積極的に、積極的にですよ、扶助基準の改定を必要があればいたします、こんな前向きな私答弁ないと思うのですよ。私は、八木委員にうんとほめられると思って答えたのです、思い切って。普通なら言わないです、こういうことを。そうですよ。おわかりになっていただけると思うのですよ。予算が通るか通らぬかわからぬときに——まだ予算は通ってませんよ。予算が通ってないときに、将来必要があれば物価動向を勘案して積極的に扶助基準の改定をいたします、こんな思い切った発言はないじゃないですか。むしろ八木委員にうんとほめられるのじゃないかと思って、私は期待して答えたつもりでございます。こういうわけでございますから、御理解いただけると思います。
  69. 八木一男

    八木(一)委員 おっしゃったあとのことは、ぼくだって聞いていますよ。覚えていますよ。これからだんだんに申し上げますよ。だんだんに申し上げて、まあほめるほどのことはないけれども、少しは何もないよりましだと思います。それは、ぼくは欲ばりみだいですが、ぼくは別にどうなったっていいんですよ。おまえなまいきだから、おまえの言うことは聞かない、しかしおまえの言うことと同じことを田邊さんや大原さんが言ったら全部聞くというなら、ぼくなんかに答弁しなくてもいいです。だれに答弁してもいい。しかし、そういうことで言っているわけで、あなた、この問題をほんとうに真剣に考えていただきたい。四十八年度の生活の落ち込み、それから四十九年度からの生活に対処をしなければならない、この問題は両方やらなければいけないんだ。一つだけで片づく問題じゃない。それを明確にひとつ受けとめていただきたいと思う。  いまの問題についてわれわれは、いまの四十八年度補てんの問題について、当然これは政府の経緯からしたら考えられなければならない。これは齋藤さんだけじゃなくて、田中内閣全体あるいは大自由民主党の恥じですよ。やった、しかし金が百三十億しかない、だから、これでかんべんしてくださいと言ったならば、この次の月に金があるならば当然それに対処をするのが、これは厚生省としても、田中内閣としても、それをささえる自民党としても、当然なさらなければならないことだ。いまないからかんべんしてくれと言って、できたときにそれは知らぬ顔をする、そんなものは世の中に通りませんよ。そういうことで対処をしていただきたい。このことについて、国民の要望を受けてわれわれは委員会でも追及をし、要求をし、話し合いにも参ります。それについてさっき田邊委員にお答えになったように、スライドの問題は当然で、またあなたが積極的におっしゃった今後の生活扶助基準の問題や今後の福祉年金の問題、そういう問題についても全部あなた方と熱心に話し合いをしたいと思う。それは国民の要望を受けて話し合いをいたします。あなた方も国民の要望にこたえる気持ちでおられると思う。そのことを積極的に急速に熱心に推進をしたいと思いますので、それについて積極的に対応をしていただくように強く要請したいと思います。積極的な御答弁をいただきたいと思う。消極的な答弁なら要りません。積極的な答弁を必ずしてもらいたいと思います。
  70. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私は、常に声は低いのですが、積極的に答えておるつもりでございます。生活扶助、生活保護世帯の問題はほんとうに重要な問題です。しかも、国民の最低生活に苦しんでおられる方々の生活を守る、これは非常に大事なことでございます。  昨年の十月などもほんとうに私どもが積極的に、どなたからの要請もないときにぽんと上げたのです、これはほんとうに。これは八木委員御承知でしょう。八木委員御承知のとおりですよ。国会ではどなたからも言われぬでも物価動向ににらみ合わせて五%上げましょう、こんなに積極的に私はやっているのです。したがって、今後とも積極的に努力をいたしますから、八木委員のようなその道の専門家でございますから十分私も御意見を承りまして、誤りなきようにいたしていかなければならぬ、こういうふうに考えておる次第でございます。
  71. 八木一男

    八木(一)委員 いまの御答弁は積極的でございますから、その点でもう急速に熱心に熱意を持って意見を申し上げ、国民のためにみんなでひとつ対処をしたいということを申し上げておきたいと思います。  ところで、次に、インフレ抑止手当と通俗的に言っておりまして、皆さま方は緊急生活資金給付金、被保護世帯、施設入所者についての特別一時金、失対労働者に対する就労費の増というような名目でやっておられます。そこで、これは積極的な話になりますけれども、この問題の中身の中で、実は大原委員がお触れになったことでございますから、お触れになったほうは大原委員が関連でお触れになると思いますので、それ以外の問題について申し上げますが、たとえば二級障害福祉年金をもらっている方についてはこの一時金が出ておりません。これは事務的に三月に捕捉をできなかったというような点であったというふうに伺っております。したがってこの問題の対処は、今後その問題を進めるときに、当然二級障害福祉年金の受給者に対して、このような一時金が支給されなければならないというふうに私は強い意見を持っておるわけで、これは申し上げておきます。  大原委員が触れられた老齢特別給付金に関する問題については、大原委員がまたお触れになると思いますから、それは問題提起だけにいたしておきますが、そういうふうに、たとえば金額の問題のほかに範囲の問題が、ごく少数の範囲でもそういう欠落がある。それだけでなしに、範囲自体が狭いから範囲を広げなければならないという問題があるということを、ひとつ頭のいい厚生大臣ですから頭の中に入れて、これからわれわれのお話し合いのときにひとつ積極的に対処をしていただきたいというふうに思うわけであります。  次に、スライドの問題で先ほど田邊委員が熱心に質問されまして、それに対して、厚生大臣もそれなりにやや積極的に御答弁になりました。その問題の中で、賃金スライドの問題で田邊委員が当然おっしゃる用意をしておられたのですが、時間の関係で省略された点について、少し申し上げておきたいと思います。  その賃金スライドという問題が大事な点は一つこういうことがあると思うのです。  生活——たとえば物価のほうが具体的に保障されるというような意味のことをおっしゃいましたけれども、それでは年とった人が年金法の適用を受けて支給を受ける。それから後はほんとうに物価スライドが、タイムラグが一つもなしに、そして政府の物価指数が、そういう国民に対応していないものであって、たとえばそんな人が使いもしない自動車あるいは電気器具や何かの値上がり、値下がりを要素に入れているというようなことで、実際にぴたっといっているものじゃありませんけれども、ほんとうの意味で、そういう生活に即した物価指数が出て、そしてタイムラグが一つもなしにやられたとしても、その前に退職をしたり、その年齢に達したときの生活が、それが横すべりをするだけであります。経済は発展をする。そしてその経済をになっている働く人々が、いまそれだけの役割りを果たしているだけの賃金や、その他の条件をもらっていない。これは労働運動で当然分配率がふえてこなければならない。そのことがその社会の土台をつくった、前に働いた人たちに影響せなければいかぬという問題があります。年金をもらった時点のものか横すべりで——これも完全に保障されるだけでは、気の毒であります。若い人たちは経済活動をして経済が発展をする、当然自分たちの権利を主張して、搾取の度合いを少なくして賃金がふえる。あるいは農家の人もあるいは中小企業の人も、大企業から圧迫をされるような悪政がだんだんなくなるでしょうから、——なくならなければいけません。ですから、当然働きに見合った、そういうような収入が増大をする。働く年代の人はそういう余裕があるわけです。ところが、先輩は横すべりのままではいけないわけです。そういう点で賃金スライドというものが、いま齋藤さんが考えられているより以上に、重大な問題であるということをひとつ御認識をいただきたいと思います。賃金スライド実現のために、積極的にひとつ前進をしていただきたいと思います。それについての積極的な御答弁をひとつ……。
  72. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この賃金スライド、私は非常に理解しているつもりなんです。ただあなたと多少違うのは、あなたはいきなり賃金スライドによってやっていくという方式を主張し、私のほうはこれは制度の水準の問題であるから、財政再計算期の際にそういう賃金水準なりあるいは生活水準なり、物価の動向なり、そういうものをみんなひっくるめた一つの年金水準をつくっていくようにしようじゃないか、こういう考えなんですね。ですから、考え方にそうたいした違いはないのですよ。あなたは真正面からそれを言うし、私のほうは財政再計算期において、年金水準というものを見直していくという考えなんです。ですから、問題は、国民の要望に即したように、年金水準の改定が適正に行なわれるかどうかというところに問題があると思うのです。  でございますから、法律が五カ年とありましても、情勢によっては縮めていくようにしなければならぬ。去年のような大改正でも、四年でやったではありませんか。二年ではちょっと早いからまあ三年、その辺かなということを申し上げてきているわけです、実際。しかし、そういう問題も、最近の賃金の動向から申し上げて、そういう水準の改定も非常に近づきつつあるのではないか、非常に含蓄のあることばで私は申し上げているのです。ですから、常に政治は進展でありますから、実に積極的に申し上げているので、私は年じゅうあなたにしかられているようですが、ほんとうは少しはほめていただきたいと思うのです。大きな声を出さぬでもわかりますから、低い声でひとつ御質問願うようにお願いをいたします。
  73. 大原亨

    大原委員 関連して。いままでの田邊委員八木委員のこの問題で、昨年の五万円年金の審議をしたときに、厚生大臣提案説明をしたわけです。それは五万円の基礎として、年金での厚生年金は五万円で、国民年金では夫婦単位で計算をする、右へならえと、こういうことだったわけですよ。そこで五万円年金を決定した基礎は、平均標準報酬の八万四千円の六割の保障をその時点でしたわけですよ。それは間違いないですね。
  74. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 五万円水準年金というものを打ち出したときの考え方というものは、標準の賃金報酬というものを八万四千六百円、それの六割ということを水準として五万円年金というものを打ち出そう、こうしたわけでございます。
  75. 大原亨

    大原委員 そこで局長でいいのですがその八万四千円というのはどの時点で——平均標準報酬は上限の十万四千円を二十万円に上げたわけだが、どちらを基礎にしてやったのか。
  76. 横田陽吉

    ○横田政府委員 八万四千六百円は新しい標準報酬で、その時点で二十年以上加入期間を持っておる人の平均が二十七年、そういうことを前提にして計算したモデル計算の数字がおおむね五万円、こういうことでございます。
  77. 大原亨

    大原委員 どの時点で。
  78. 横田陽吉

    ○横田政府委員 この八万四千六百円は去年の十一月から改定ですから、その十一月の時点でのモデルが八万四千六百円、こういうことでございます。
  79. 大原亨

    大原委員 それでその原案をつくったのは、去年の春審議をしておったわけですが、しかし賃金は春に上がるわけですね。そこでこの法律案を出したときには、その後春闘があったわけです。春闘があって、平均標準報酬にまず第一回影響しているわけです。その後、一時金の問題は私はいま議論しないけれども、日本には一時金という賃金あと払い、インフレ手当ての問題が起きてきたわけだ。ことしの春、賃金は二割ないし三割は上がるというのが——政府だって二割以上というように答弁するわけですから、春闘では自主回答やろうという腹がまえをしているようですから、そこで三割、三万円という相場があるわけですね。そこでこのような物価狂乱のときに、しかも賃金は二回にわたって上昇を重ねておるわけですから、五年以内に政策スライドをやるというこの方針は——政策スライドは賃金スライドのことだ。物価については自動スライド、これはタイムラグの問題が一つあるから、あとで議論があるから、私も関連すればやるけれども、賃金については、あの年金の仕組みというものは提案趣旨説明や質疑応答で繰り返しあったように、いま横田年金局長の御答弁のとおりなんです。そういう六割保障、つまり一時金を除いても平均標準報酬の標準的な二十七年の人の八万四千円というものの六割は確保いたします。一時金を入れますと四割幾らになって、しかしILOの基準には——日本かそれではおかしいのですが、最低の保護を必要としておりますという、こういう議論です。私は時間を省略するために、そういう議論をする経過をたどってみるわけですが、そうするとこのような狂乱の物価上昇、インフレのときに、賃金は当然あと追いの形ではあるけれどもどんどん上がって、この法律を議論したときよりも二回目を迎えようとしているわけです、これはすぐ春闘でつくわけですが。そうすると政府がいままで五万円年金の根拠とし、繰り返し主張し、大きな年金の進歩である、生活年金への大きな質的な転換である、厚生年金主導型である、共済年金その他との関係があるが、主導型である。これが中心で国民年金も改善しているのだ、こういう議論をいままでしてきたことから言うなれば、厚生大臣の浪花節のようなそういうことも趣旨はわかるよ。わかるけれども、実際にはこんなときには時間的な差がうんとついて、実際上六割保障の原則がくずれているんですよ。そこで、少なくとも政策スライドの制度が五年を基準にしてあるわけだから、本年の十月からやる分について——これは春闘に繰り上げてやるべきなんですけれども、十月にやるべき問題として四十九年度の改正で、去年やったんだけれども、本年やるということを言ってもおかしくないのですよ。田邊君の質疑応答の中では昭和五十年はどうだというお話があって、五十年を非常にもったいつけて厚生大臣はほのめかしておられるようだけれども、そういういままでの審議の経過や法律の仕組みからいっても、賃金自動スライドをとらなくても、政策スライドをとったにしても、六割保障の原則については政府責任を持って言っているわけだから、四十九年度中にも春闘の経過を見たならば賃金スライドはいたします——年ごとのスライドになりますよ。なりますけれども、これはいまの狂乱の時代だから、当然一般生活水準あるいは物価の問題を含めて年金生活水準を保持する。年金生活の五万円の実質水準政府の立場でも保持しなかったら年金に依存できないから、これは生活保障や老齢年金にならぬわけです。だから、その理屈からいっても、実施の時期は別にいたしましてあとで議論いたしましても、本年度、昭和四十九年度にそういう政府の年金の仕組みから考えて、政策スライドで引き上げて自動的に毎年毎年やれば賃金自動スライドになるのだから、大体われわれと一致しておるわけだ、実施のやり方さえ考えれば。そういう問題は政府の立場に立ってもやるべきじゃないか、やるべきである、そういう見解の上に立って答弁したってひとつも政府の方針を上回った答弁ではないし、当然のことではないか、私はこう思いますが、大臣いかがですか。
  80. 横田陽吉

    ○横田政府委員 昨年の制度改正の内容の問題が中心になっておるようですから、私から一応そのしかけを御説明いたします。  簡単に申し上げますと、標準報酬の六割という水準を維持すべきものである、このとおりでございます。ただ問題は、あらゆる時点をとりました際に、その時点その時点、いずれの時点においても六割、こういうふうなしかけにはなってないわけでございます。したがって、先ほど来大臣がお答えのように、賃金なり生活水準向上というものが非常に急速な場合には、あまり六〇%を割っておる期間の長さがあっては困るから、したがって、そういった場合にはできるだけ早い機会に政策改定をしてその水準に戻す。したがって、この間改正していただきました年金法の法律的な構造といたしましては、どの時点をとっても六割ということではないわけです。多少のタイムラグはある、こういうことです。
  81. 大原亨

    大原委員 私が言うのは政治論なんです。局長答弁としてはそれは一応事務的な答弁ですが、しかし局長答弁からいっても、提案趣旨説明を私読んでみますけれども、厚生年金保険法の一部を改正する法律、これを提案説明したのが四月にあるのですが、「まず、年金額の水準につきましては、厚生年金について最近の被保険者の平均標準報酬の六〇%程度を確保することを目途に、改正後新たに老齢年金を受ける場合の標準的な年金額をおおむね月額五万円に引き上げるものであります。」ということなのですが、そういう説明をやっているわけです。質疑応答でもずっと六割保障は出ているのです。それが、物価がまあ五%、政府の経済基本計画はやはり四%台だった。その前の五カ年計画は二%台だった。それを今度の五カ年計画は四%台にしたわけです。そういうことの考え方で、物価の上昇との関係で賃金が上昇するということも考えて、物価の自動スライドを取り入れたことはいいけれども、さらに政策スライドをやったからいいでしょう、こういう議論ですが、しかしこれはある程度物価上昇が緩慢なときの話なんです。名目賃金上昇が緩慢なときの話なんです。こんなに狂乱の物価上昇で賃金がなった場合には六割保障の原則を保持しなければ、一時金を加えて国際水準を割るわけですから、年金を取るということを目標にして保険金を納めた人の立場に立って見てもおかしいわけです。ですから政策スライドを五年以内というのをどっと一年に縮めてやるということは、政府の仕組みからいっても当然なんですよ。いまのような物価の上昇がどこまで続くかわからぬが、電気料金が上がる、ずっと上がるけれども、これは不況下の物価上昇でスタグフレーションという現象をこれから呈するでしょう、引き締め政策、総需要抑制策だから。そういうことになると、二割程度前年比ずっと上がっていくですよ。いくと、それは計算すると、ある学者が計算しておったが、三年間で半分になるのですよ。五万円は二万五千円の実質になるのですよ。それ以下になるのですよ、それ以上進んでいったら。だから五万円が実質二万五千円のベースであるときのことを基準にして三年なんということは全然問題にならぬ。問題にならぬだけでなしに、その考え方でいくならば、政府の仕組みでいくならば、これは本年やって実施の時期をどうするかということでやむを得ないと、こういう議論は出るかもしれないが、これは政府の年金の仕組みからいって当然なんですよ。だからこれはもったいづけてやろうといたしておりますから、どうぞ私の真意をくんでくださいという浪花節でなしに、政府の出した年金の仕組みというものがそうなっているのだから、政策スライドという立場に立っても、本年賃金スライドをやっても、賃金是正をやってもこれはやることは当然ではないか。これは大臣から答弁してもらいます。
  82. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 大原委員のお述べになりましたこと、私十分理解しておるわけでございます。そういうわけでございますから、年金水準の政策改定というものを五年後にやる、私はそんなことを言ってないのです。そんなことは考えておりません。でございますから、去年は二年じゃ短過ぎる、四年ではおそい、こう申し上げたのですが、きょうはもっと積極的なんですよ。きょうは積極的なんですよ。きょうは、先ほど申し上げているように、去年の春闘それからことしの春闘——今度の春闘どの程度上がるかわかりませんが、こういうふうな賃金上昇があれば、先ほど申し上げましたように平均標準報酬というものの金額というものは非常に変わってくるわけでございますから、三年を待つなんということでは無理ではないか。政策改定をすることは非常に近づいてきているのではありませんかということを私は申し上げているのです。これは、来年の春の国会ということを言えば皆さん方はっきり喜ぶかもしれませんが、私もそのころまで厚生大臣やっているわけでもありませんからそうあまり……。私は正確なことを申し上げているつもりなんですよ、非常に正確に。ですから、そういう政策改定は非常に近づきつつある、こういうことで御理解をいただきたいと、こう申し上げているのです。
  83. 大原亨

    大原委員 それは私も積み上げて話をしたのだけれども、四月に審議をしているときに、春闘があって、ことしは春闘で政府は二割以上回答をするのだから、それをやってみたら六割保障の原則はくずれるのです。だから本年は政府の年金の仕組みに基づいて賃金スライドをする、賃金是正をするということを政府の仕組みの中で考えることは当然ではないか、こういうことを私は申し上げておるのですから、そこに問題があるという点を私のほうでいままでの質疑応答の中で指摘をしておきますから、これはきちっと政府の仕組みの中にあるのだから、   〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕 そのことを私は言って、そして政府委員のほうでその数字を、私が指摘をいたしました点を計数で、どれだけ六割保障の原則を割ることになるか、こういう点について政府は数字を出してもらいたい。政府答弁
  84. 横田陽吉

    ○横田政府委員 物価によって自動スライドを行なう、これは毎年やるわけであります。したがって水準のめり込み云々というのを一応大まかな計算をいたしますと、賃金上昇率とそれから物価の上昇率、その開き部分はその時点においては一般的に目減り、こういうことになるだろうと思います。目減りということばはおかしいのですが、六〇%を割るその要素になると思います。ただしかし、一体労働者全体の賃金水準というものが年金受給者の水準にそのままはね返るべきものなのかどうか、こういった問題もございますので、私の申しましたその議論が一般的に適用するかどうか、これはまた理論的に非常に問題だと思います。
  85. 大原亨

    大原委員 数字はいいですね。
  86. 横田陽吉

    ○横田政府委員 数字はいま申しましたように——数字じゃなくて比率の問題、六割をどれくらい割るかということを、片や全般の賃金労働者の賃金の上昇率でスライドをした場合と物価上昇によってスライドをした場合とどれくらいかといえば、その六割に賃金から物価を引きましたその比率をかけ合わせたものが先生のおっしゃる水準よりもめり込んだ割合、こういうことになると思います。
  87. 八木一男

    八木(一)委員 先ほどの田邊委員それから私の質問それから大原委員の質問で、賃金スライドが非常に大事なものであるということは、前からもお考えになっていらっしゃると思いますけれども、さらに認識と決意を強められたと思う。その問題でいろいろニュアンスで言っておられますけれども、ニュアンスというものが積極的なものでそれをすぐに実施をするものという内容でなければならないと思います。前に申し上げましたからそれ以上申し上げませんけれども、賃金スライドの実施について急速に、先ほどのお話にあるように、四十九年度から実施をするという体制をやっていただきたいと思います。  特に物価スライドと賃金スライドの差がございますが、これは政府のほうで調べた数字であります。一番のが昨年の十一月の数字でありますが、物価がずいぶん上がっているときで、物価のほうが一五・九。ところが賃金のほうは定期給与で二〇・四。それから全部を入れた現金給与総額では二四・四上がっているわけです。一月ごろに何か賃金のほうが少なくなって物価のほうが上がったという報道がありますけれども、あれは一月に休みが多いから、それで働いてない部分が多いから、わずかにその時点でそうなっただけであって、実際的に賃金スライドのほうがはるかに高い、はるかに年金生活者の生活を確保するものであるという認識をお互いに固めて、それから先ほどからの質疑応答にあった賃金スライドであるべきであるというその論点を強めて、急速に賃金スライドを四十九年からやるように御推進をいただきたい。強く要求をいたしておきたいと思います。  次に賃金スライドの問題、物価スライドの問題がいろいろ論議になっておりますが、それと同時に大事なのは緊急スライドの問題、われわれは賃金で緊急スライドをすべきだ。あなた方はまだ賃金か物価かちょっと迷っておられるというようなところですが、緊急にスライドをしなければこの物価狂乱事態については対処ができません。ところが前の御質問をしたときには、何か非常に技術的にむずかしいからという年金局の話を受けて厚生大臣が消極的でありました。私はもう怒り心頭に発して、それでは年金局や社会保険庁の人は全部配置転換をしてもらってそれでやってもらわなければ、このような公務員の人たちのサボタージュによって、国民の予定生活を切り下げられておるのを補てんすることができないということであってはならないということを申し上げました。それに対応されたような姿勢を厚生大臣もそれから年金局も少し見せておられる。それの対応のしかたが、この前予算委員会でもいろいろ伺いましたけれども、何か第一案、第二案、第三案と伺いました。何にも考えていないよりはましだけれども、まだまだこれは不十分であります。こんなものではなりません。そういう点で、そのときに臨時代理の内田厚生大臣は、これを詰めて法案にする、そのときには与野党に相談をします、これは明確にお答えになりました。これはいらっしゃっている間の事態の重大な変化でありますから、それを齋藤さんはきちっと踏まえていただきたい。法案を出す、出すときには与野党に相談をするというお話でありました。  それに対して私は、それでは不十分だ、法案を出すまでに、国民の要望にこたえた与野党の——野党の意見を十分取り入れて最もりっぱなものをつくって急速に出さなければならない、そういうことになっている。したがって、これは重大な任務で任務を果たしてこられたその間に、国民と国会を通じての政府の約束はそこまで進んでいるわけでありますから、それを内田さんがまだ消極的で、法案を出します、至急に出します、出すときに御相談します、それではならない。出すまでに急速に野党の意見を入れて、いいものを完ぺきにつくってやらなければならないということになっているわけでございまして、それについて田中内閣総理大臣が確認をされているわけであります。野党の意見を入れる。そういう状態でございますから、先ほど田邊委員の御質問に対してその問題にお答えになっていらっしゃる。積極的なお答えでございますからそれは評価をいたします。いま申し上げたことをひとつ踏みしめていただいて、それが田邊委員の熱心な御質問に対する厚生大臣の熱心な御答弁というだけではなしに、内閣全体の、国の政治全体の問題になっている。急速に熱意を持ってほんとうにりっぱなものをつくらなければならない。それを必ず法案として急速に提出をする、そういう状態になっていることをひとつ踏んまえていただいて、積極的に野党のわれわれの意見、交渉、そういうことに応じていただく。これは先ほど御確認になっていますから、確認をしておくだけであります。そういう意味で、これからお話し合い、交渉あるいは法案の相談等になりますが、積極的にひとつ対処していただくことを、当然のことでございますが、再度明確に確認をしておきたいと思います。  それから次に、先ほどの御答弁に関連してですが、生活保護基準を事態によって上げていく、これはほめてもらいたいと言いますことは、この方向については、考え方はよろしいとおほめを申し上げます。再三要求がありましたから。これをほんとうのものにしてもらわなければ困る。まず四十八年度のものを対処すると同時に、四十九年度の四月、五月、そういうところで対処をしなければなりません。二〇%アップは目玉みたいにおっしゃっているけれども、それは目玉になっていないことは再三の質疑応答であります。これができても五二%くらいしかなってない。一般の生活水準に対してはそれでしかない。社会保障制度審議会の昭和三十七年の大勧告の、昭和四十五年までに生活水準は実質三倍にしろという要請にもこたえていない。二・五倍くらいしかなっていない。ですからこの二〇%アップも非常に程度が低いということを御認識になって、しかも二〇%アップをきめられたとき——その方針は十二月の末にきまっている。十二月の末のときには十一月の末の物価水準、したがって、全国平均十月そのものをもとにして考えられて決定されたものである。それから物価がぐんぐん上がっている。当然この二〇%というものは即刻に大幅に引き上げられなければならない問題であるということで、これは今後の物価の推移を見てというようなことではなしに、断じて引き上げる。四月と私は申し上げたい。どんなにおそくても五月の一日からは引き上げる。予算が通ってないからと言われるでしょうから。どんなにおそくても、政府がほんとうに誠意があったら四月の中旬からでも引き上げる、そういうことでなければならないと思う。そういう点でひとつ積極的な態度を御表明を願いたいと思います。
  88. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 扶助基準の問題につきましては、先ほど来お答えいたしましたように、今後の物価の動向というものをにらみ合わせながら慎重に善処をしてまいる考えでございます。それと同時に、年金スライドのタイムラグの短縮につきましては、同じようなことをまた申し上げますが、これは非常にむずかしいのです。言うほうは簡単に言うかもしれませんが、やるほうになるとなればこれはたいへんなのです。非常にむずかしい問題でありますが、勉強は十分続けてまいります。いまのところ成案は得ておりませんが、先ほど田邊委員に申し上げましたように、皆さん方とはすでにこの前一回お話し合いをいたしましたが、今後とも虚心たんかいにお話し合いはいたしましょう、そして、お話し合いの結果政府の態度がある程度固まれば、皆さん方にその態度も明確にいたしますし、それから法律をつくるということになるかどうか、まあ、これはまだ成案を得てないのですから、十分話し合いをして、法律をつくるということであれば、これは立法府ですから、皆さん方と御相談なしで法律を一方的に通せなんてことを言ったって通るものではないことは御承知のとおりでございます。したがって、この問題については十分研究をいたしておりますが、まだきょうの段階では成案は得ておりません。けれども、十分お話し合いをいたして、この問題の解決をはかりたい、こう考えておる。先ほどお答えいたしましたとおり、きわめて声は低いのですが、前向きに答えておるつもりでございます。
  89. 八木一男

    八木(一)委員 前向きにおっしゃっている気持ちはそのままに前向きにしてもらわなければ困る。いまの生活保護費について今後の物価動向ではいけません、以前の物価動向も勘案して考えなければいけない、そういうことを前段で言っているのですよ。あなた頭がいいからわかるはずだ。それをわざとそらしているとすれば、あなたは国民のほうの厚生大臣ではない。厚生省が当然やらなければならないことを国民の世論に立って言っているわけだ。それを活用して、そのとおりだ、今後の物価動向ではない、前の物価動向も考えて、生活保護水準がその社保審議会の答申に及んでいないことも考えて、即刻四月の中旬から上げる、そういうことでなければならない。タイムラグを少し私は猶予してあげて、少なくとも五月一日からと申し上げたけれども、そういう精神だったら、四月十五日から上げなさいということを言わなければ、ほんとうの姿勢にならない。今後だけではいけません。前の物価動向も考えて、生活保護水準を急速に上げる、そういうことで推進を願いたい。  そしてまた、タイムラグの問題についておっしゃいました。これは技術的にいろいろなことを考えたらと、厚生大臣、自分の部下といいますか、協力者をかばう意味でおっしゃっているのかもしれないが、それはいけません。ほんとうに叱吃激励をして、国民のために公務員が働くようにしなければならない。もし横田君が——ぼくはいい男だと思います、熱心なところもあると思うけれども、そんな個人の私情で横田君をかばうなんていけない。いまの事態は、叱咤激励をして、決断をしてすぐにやるということで、技術的な、不十分な、困難なということは一切口に出してはなりません。国民のためにそれを乗り越えてやっていかなければならない。技術的なやり方の、やりにくいというようなことを彼は言っています。たとえばいろいろなことを、社会保険審議会の厚生年金部会で論議が何とかかんとか言っている。それはそれでやったらいいのだ。四月からすぐスライドをしていけばいい。あとで精算してもかまわない。それで、繰り上げたらその間に死んだ人や就職した人の問題が困るなんてことを言っている。そんなものは困らぬ。いますぐ率をかけてやれば、いまの人には——いまの年金でも、その中で死ぬ人もあれば就職をする人もある。いまの率に一・二なり一・三なり一・五なりかけてやれば、それは死んだ方には遺族年金のほうに移る、就職した人はいまの不十分な条件だけれども退職、老齢のいろいろな適用で移る。同じですよ、いまの金額は。一・五倍しても同じです。そんなものがあるからできないというのは、やる気がないからだ。あらゆる困難を克服をして、このタイムラグを八月なんていうのじゃなしに、もう四月からでも——四十九年度ということになっているから、遡及して二月からやってもらいたい。しかし、最小限四月からの分、それはタイムラグを縮める。理論的にその中から適用するということが必要、そしてまた、実際的に四月にさかのぼって全部金が入るということが必要、そのどっちがいいかなんて迷っている時代ではない。一つが三十点あったら、それに六十点足して、それでどうでしょう、先ほど田邊さんがおっしゃった方法がある。これが百点満点である。この百点満点と厚生省の知恵の限りを尽くした六十点満点を突き合わせて、九十八点にして通そうじゃないか。来週提案をして、来週中に成立をさせようじゃないか、そういう態度がなければならないと思う。技術的な困難だとか、一切言わない。あらゆる困難を克服して、この問題は進めていただかなければならない。もし年金局長やほかの人にそれができないというならば、それはあなた方は直ちに、自分の能力がないからだ、国民の負託にこたえられない、任にたえません、もっと有能な人にやってもらってください、それを公務員としては言うべきだ。どんな困難を乗り越えてもそれはやらなければならないということを深く認識をして推進をし、われわれの意見をできるだけ聞いていただきたいと思います。そういうことを強く要求をいたしておきます。  それでは少し具体的な問題に入ります。  実は通算の問題でありますが、遺族とそして障害の通算について、これを実現をしなければならないから、昨年のこの社会労働委員会厚生大臣は、来年は通算年金通則法の改正案提出する、そこに各官庁と積極的に協議をしてという文言を使っていますが、提出するというお約束がありました。これが提出を見ておりません。この前このことについてさんざん文句を言っておきました。今国会はまだ続いております。三月中に成案を得て、三月末までに提案をしなければ、われわれとしては承服ができないということを申し上げた。その後それがどうなっているか、ひとつ明確に伺いたいと思います。
  90. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先ほどの年金のタイムラグの短縮については、事務当局はいま非常に真剣に勉強しているのです。横田局長は、あなたはいろいろなことを言われますが、厚生省内において最も優秀な局長の一人なんです。しかも年金の非常な権威者なんです。そういうことでございますから、あまりおっしゃらぬようにしていただきたいと思うわけでございます。  そこで、この問題は私どもはいま真剣に勉強中でございますから、まだきょうのところは成案は得ておりませんが、成案を得る場合には皆さん方と十分お話し合いをいたしたい、こう申し上げているわけで、今後は御満足がいただけると思います。
  91. 八木一男

    八木(一)委員 それまでに相談をするのですか。
  92. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 もちろん十分話し合いをいたします、とこう申し上げておるのです。  そこで、最後の遺族年金の通算、これは私もぜひ実現をはかりたいと思っているのです。年金改正をやる場合には、これは一つの大きなテーマだと思って私は考えております。そこで、できるならばこの春の国会に出したいと思って考えておったのですが、御承知のように、まあ言いわけはいたしませんが、年金法が通ったのは昨年の九月の末でしょう。それは役所側が動いてもたいへんなんですよ。そういうわけでございまして、今度の国会には提案をいたしておりません。御承知のとおり提案をいたしておりません。今度の国会に間に合うかどうかということになりますと、いまの時点では、会期ももう短くなってまいりましたし、なかなかむずかしいのじゃないかなと、こういう感じはいたしておりますが、この問題は私は非常に熱意を持っておるのです。これは資格要件がばらばらであって、いまのあれはおかしいです。これはほんとうに、老齢年金と同じように通算していくという制度をつくるのが当然だと思うのです。そういう意味において、今後とも検討を続けてまいりますから、どうかひとつ御安心を願っておきたいと思います。
  93. 八木一男

    八木(一)委員 実は、来年出しますということは、この間予算委員会の分科会であなたは返事をしておるわけです。来年はもう首がちぎれても出しますと、それではまかりならぬと、ことしの約束だからやらなければならないし、そのことを各省に連絡することが、あとで横田君の弁解を聞くと、何度か電話をかけましたとかなんとか言っておるけれども、相手の大蔵省や運輸省や文部省や、あるいは農林省や、その担当者が一つも知らないような、そういうこと、それで一つも各省と相談していないわけです。だから、直ちにやって三月中に提出を要求しておいた。まだしていないようですから。横田君、厚生大臣からばかに信頼を得ているけれども、信頼を得る公務員がいることはいい。しかし、信頼に値しないんじゃしようがない。きょうでも即刻、何とほかの官庁がいっても、全部連れてきて、きょうの晩からでもやる。こんなものは一発できまりますよ。あなた方は通算制度がむずかしいということで、それでごたごた言うんでしょう。通算通則法というのは、あなた方がなまけているときにわれわれが提起をしてできたものです。そのときに、原資移管方式という完ぺきな方式をとれということを言ったのを、あなた方がなまけて、じゅずつなぎ方式という、さいふの中で通算をするというなまけた方式をとった。いま、じゅずつなぎ方式を老齢でやっているのですから、期間だけ通算をすればすぽっと入るわけです。障害遺族について、それぞれの共済組合や厚生年金や国民年金で条件が違いますからというようなことを言いたいのでしょう。条件が違うままでよろしい。期間だけ通算すれば障害遺族が通算になることになれば、おのおの厚年の期間は厚年の条件のものを受ける、国年の期間は国年の条件のものを受ける、共済の期間は共済の条件のものを受ける。根本的に変えるのなら、老齢も含めて、来年度しっかり考えて全部変えてもいいけれども、老齢でやっていることが障害遺族でできないはずはない。それに反対する官庁があるはずはない。無理に反対をするとするならば、その支出が困るからという金銭上の問題だけである。しかし通算年金というのは年金の中で少ないものである。その中の障害遺族も少ないものだ。この金額は非常に少ない。しかも、その対象者は非常に気の毒だ。主人が職業転換をしなければならないというのは気の毒な状況である。その方がなくなった遺族はもっと気の毒だし、その方が障害を受けて障害者になったときはもっと気の毒だ。その一番気の毒な人の問題がほったらかされている。そういうことを考えられて、厚生大臣も年金局長——幾らおこってもちゃんとやってもらえばほめますよ。いまからでもやって、今国会中に必ず提出をする、そうやってもらいたいと思う。そしてわれわれは、それを通すことに協力をします。私はほかの委員に言って土下座をしても即刻通るようにします。だから直ちに提出をするということをやってもらいたいと思う。(発言する者あり)不規則発言があるようですが、賛成の人ですか、反対の人ですか、反対の者があるはずがない。反対の人は問題の中身を知らない。知ったら、どんな党の人でも、どんな委員でも、それは即刻やるべきである。国の代表であるということで認識をしてやってもらいたいと思う。  次に、先ほど田邊委員から言われました、老齢福祉年金について非常に少ない。とんでもない。厚生大臣も総理大臣も昨年の二月に国会で約束をした。自民党では一昨年の暮れに宣伝をされた。昨年の二月に、ことしは五千円、来年は七千五百円、次には一万円とするということを約束されたわけです。その国民に対する約束が物価の狂乱によって実質的に減っているわけです。一つ問題として、こんな三年がかりで一万円という自体が問題にならない。生活を保障する年金にするために、年金法をつくることをなまけた政府の手によって、拠出制年金に入る機会がなかった人に対して、当然それだけの生活を保障するために、福祉年金を、老齢は三万円、あるいはまた遺族及び障害についてはそれに対応した大きな金額にしなければならないということは当然のことであります。そのことを肝に銘じて推進をせられなければならない。それとともに、問題をごちゃごちゃにしないで、あなた方のなまけた最低のものであってもその約束が実質的に守られていない。したがって、あなた方の立場でも、この七千五百円の問題は九千円か一万円にしなければ、国民に対して公約を偽わったことになる。田中角榮君はいろいろな点で評価をされ、批判をされております。どっちにしてもしかし、彼が国民に公約をしたことならば、それを実施したいというのが田中内閣の気持ちでなければならない。それをささえている自民党の気持ちでなければならない。したがって、そうであれば、今度の年金法で九千円なり一万円に上げる法案が提出をされなければならないと思う。それを怠慢なあなた方の手によって実質価値が減ったものを提出している。そのことを反省されて、皆さんの大切な与党である自民党の委員の方々、野党の熱心な委員の方々全部にお願いをして、政府の怠慢であったこの国民年金法を国会のりっぱな意思によって変えていただきたい、われわれの怠慢を国会の審議によって、国会の決議によってぜひ埋めていただきたい、そういう要請をあなたは各党の委員にせられるべきであると思う。その問題が一つ。これは年金全体に関係があります。  それからもう一つ、全体としては小さな一点でありますが、大きな問題がある。老齢特別給付金について、昨年五千円の年金のときに、国会の意思によって四千円ということが実施されておる。われわれは同額でなければならない、六十五歳から老齢福祉年金を適用しなければならぬというのが野党の意思であります。しかしあなた方は、そうではなしに、そういう決定をされた。あなた方の立場でも、この老齢福祉年金一〇に対して八割の比率を変えることは許されない。いま五千五百円の提案をしておられる、六千円の要求をしたかと聞けば、へっぴり腰で、九月の末に一回しただけで何も十分な交渉もしないで下がってしまう、こんなばかな話がありますか。何としてもこれは六千円でなければ筋が通らないという努力をせられなかった。それも反省をされて、これがほんとうのものになるように、厚生省から各委員にりっぱな委員会の審議を要請して、少なくとも年金全体が上がるときには上がる、老齢福祉年金の八割、そういうことになるように要請をせられるべきである。  次に、特別児童手当でとんでもない問題がある。特別児童手当で二重障害の方に福祉手当を加算した。その趣旨はいい。これは一つもほめてないから一回ほめてあげます。しかし、これは金額が少ない。対象者が少ない。国民年金の二級福祉年金ができた場合に、当然二級障害の児童を持つ親たちに対して特別児童手当法を適用しなければならない。これは頭のいい厚生大臣ですから、あまり言わなくても理屈はわかりますでしょう。これは全くの怠慢である。厚生省はその要求もしていない。大蔵大臣に伺ったら、そういう要請があったら受け入れたのにというような表情で答えておられた。もちろん、この修正が与野党の熱心な委員の手によってされたときに、大蔵省は全面的にこれを受け入れる体制にあります。あなた方は、委員会でこの法案がよりよいものになるようにぜひ各委員に積極的に陳情をしていただきたい。私じゃなくてほかの委員の方々に熱心に陳情をしていただきたい。そういう問題があります。  さらに、児童手当の問題で三千円を四千円にされた、それで義務教育終了までされた。これはほんとうに乏しい児童手当の三年目の予定的なものであります。しかし、三千円が四千円になった、昭和四十七年にできたものがこの狂乱物価でそんな四千円では少ない。言わなくてもわかりますでしょう。そういう問題がある。  ただし、それ以上に大切な問題があります。ILO条約の問題で百二号条約の批准ができていない。これは無理やりに批准しようとすれば、その中の重要項目を一つ、そしてその他のものを三つほど内容がすべり込んだら批准できることになっているわけでございますが、経済的に先進をし、福祉国家を唱えている日本がこんなに何年もおくれてすべり込み及第点、五十一点でILOの批准をするというような恥ずかしいことはできません。しかも、年金に対してはILOの百二十八号条約がある。福祉国家であればその百二十八号条約がまっ先に批准できて、さらに百何十号条約を提案するというような積極的な態度でなければならないのに、百二号条約について、欠格条件で何とかすべり込もうというようなことではいけません。条約は批准しなければならない。それとともにりっぱに批准できる体制を急速につくらなければならない。その中で一番おくれているのが児童手当です。健康保険や年金は、健康保険はやや十八歳ぐらいになっているでしょう。年金は十五歳ぐらいになっているでしょう。児童手当はまだ一つか二つです。せめて中学生ぐらいに引き上げなければ、恥ずかしくてそんなものILO条約批准ということになりません。したがって、この児童手当については、来年度にはこのようなことではなしに必ず本格的な提案をする、三人目からというようなあってなきがごとき児童手当ではなしに、われわれの要求のとおりに第一子からの児童手当を必ず提案する、そのために全力を尽くして努力をせられる、そのような積極的な御答弁をぜひいただきたいと思います。
  94. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 たくさんの質問がございましたから、一括して簡単にお答えを申し上げます。  遺族年金の通算については、先ほど来申し上げておりますように、私は非常な熱意を持っておるわけでございます。今度の会期ももう短いですから、今度の会期中に間に合うかどうかこれは疑問ですが、次の改定の際には出せるように十分検討を続けてまいりたいと思います。  それから老齢福祉年金につきましては、いろいろ物価との関連において御意見がございますが、わが田中内閣は三千三百円から五千円、五千円から七千五百円、たいへんなことでございます。というわけでございまして、この金額を修正するという考えは全然持ってないということをはっきり申し上げておきます。  それから特別給付金の問題、これはいろいろ言い方もあると思いますが、まあ大体五千五百円というので提案をいたしておりまして、これも私は適当な金額である、かように考えておりまして、これを修正してくださいとお願いはいたさないつもりでおります。  それから児童扶養手当につきましては、二級障害年金については——しかしこれは八木委員も考え方があると思うのですが、特別児童扶養手当というのは重度の者についての手当でございまして、二級障害年金の受給者にも児童扶養手当を家族に出すということが適当であるかどうか、私は非常に疑問があると思います。疑問があると思いますが、八木委員のような、特に二級障害年金については多年熱心な主張をされた方でございます。そういう方のおっしゃることでございますから、来年度においてもまた十分考えなければならぬだろう、こういうふうに考えております。  それから最後の児童手当、これはなかなかむずかしい問題でございます。ILOの百二号条約の批准というふうなこととは別として、非常にむずかしい問題でございますが、本年度において三年の段階実施が済むわけでございますから、将来はもっと範囲の拡大だとかいろいろな問題が私はあると思います。そういう点についても与野党の意見を十分尊重いたしながら前向きに検討を続けていく、こういうふうに考えておるわけでございます。
  95. 八木一男

    八木(一)委員 御答弁四つほどの中で半分ほどまだましなのと、とんでもない答弁とあります。これは言わなくてもどれがとんでもないかわかると思います。とにかく要求をしておきます。通算通則のことについては今国会に急速に提出をして、成立するようにしてもらいたい。そしてもう一つ、児童手当法の抜本的な改正は来年必ず出していただく。次にあとの問題については、私は考えておる、陳情は考えていない。陳情は考えていなくても重大な反省をしてもらいたいと思う。あなた方が陳情をしなくても、自民党や社会党や共産党や公明党民社党のりっぱな委員は、この結果を十分に認識されています。あなた方は陳情してこれをやるというような誠意を示していただきたいけれども、そうでなくても当然この問題は論議になり、改正をされなければならない。そのときにあなた方は、不合理にもそれに抵抗するような態度は一切あってはならないということを申し上げておきたいと思うわけであります。  さらに一つ、時間切れになりましたけれども、この福祉年金について、同じく話し合いの中で、福祉年金の改定という問題と福祉年金のスライドという問題があります。その問題はごたごたにしないで、福祉年金はほんとうに改定をする、福祉年金のスライドをする、そしてその実施時期を早めるということについても、先ほど来申し上げたお話し合いの事項の重大な問題としてお考えをいただいておかなければならないということを申し上げまして、厚生大臣にかなりきびしく申し上げましたけれども、熱心なところのある厚生大臣でございますから、ひとつその点で十二分に国民の要望にこたえていただくように、全面的に努力をお願いしたいと思うのです。抽象的でけっこうですから、いま言った問題全体について、厚生大臣として国民のために全力を尽くして努力するということをひとつおっしゃっていただきたいと思います。
  96. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 最後の老齢福祉年金の問題につきましては、その金額は私は適切なるものであると考えておる次第でございまして、それ以上の増額は全然考えておりません。
  97. 八木一男

    八木(一)委員 答弁になっていない。そんな答弁を求めているんじゃない。いま言った総体の問題について厚生大臣として全力を尽くして努力をする、その総括的な答弁を求めている。部分的な質問をしているんじゃない。ひとつ質問者の意思を尊重していただきたい。総括的に、きょう田邊委員大原委員や私の申し上げたことについて、国民の意図をまともに受けて、各党の熱心な方々の気持ちをほんとうに体得して、全力を尽くして邁進されなければならないと思う。その総体の問題について、全力を尽くして努力することを明確にお誓いをいただきたいと思う。
  98. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 福祉の充実については、いままでお答えをいたしておりますとおり、全力を尽くして努力をいたしておるわけでございます。今後とも大いに努力をいたす考えでございます。
  99. 八木一男

    八木(一)委員 終わります。
  100. 野原正勝

    野原委員長 この際暫時休憩いたします。    午後一時五十七分休憩      ————◇—————    午後三時二十二分開議
  101. 野原正勝

    野原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩時の質疑を続けます。石母田達君。
  102. 石母田達

    石母田委員 私は、いま御承知のように、春闘共闘の中でも大きな要求の一つになっております年金額を一日も早くより多く受給者に渡して、そしてこの減価分の少しでも補いにするということについて、きょう質問をしたいと思います。   〔委員長退席、葉梨委員長代理着席〕  もちろんこの問題は、そういう大衆団体の要求としてありますけれども、非常に国民全体から見ても関心のある問題だと思っております。  この十一日あるいはそれ前後に大きな統一ストライキをやろうというような状況の中で、政府としても特にこの解決について特段の関心と努力を払って、そうした事態を避けるということが私は基本であると思います。  先ほどのいろんな答弁の中からも、いわゆるインフレによる年金の減価の補てんという問題については、政府としても厚生省としてもいろいろの改善策を考えておられるということでありますが、先日大臣がいないときに、私、この点について共産党から緊急の措置としての提案をいたしました。労働大臣がいらしていましたが、労働大臣、厚生大臣が帰ってさましたら十分協議をして検討したいというようなお話でしたが、帰られたばかりですけれども、その話は聞いておりますか。
  103. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 実は私は一昨夜帰ってまいったばかりでございますので、実はまだ詳しく承っておりません。
  104. 石母田達

    石母田委員 このことについては先ほどの社会党の質問の中でもきびしく批判的な意見が出ておりましたが、そういう問題は非常に私は緊急を要する問題なので、ぜひ今後そうした事態について十分に早急な連絡をはかっていただきたい、こういうことを要望した上で、もう一度繰り返すようになりますけれども、私どもの提案を述べたいと思います。  この提案は、私どもが本来主張しております支給月、つまり三カ月ないし四カ月ごとの物価短期スライドあるいはまた一年ごとの賃金スライド、こういう方式を私どもは堅持しておりますけれども、今回は何せ十一月実施というような状況のことでありますので、今年度に限って、何とかしてその年金受給者に一日も早くより多くの収入を得させたい、こういう立場からの緊急の提案になっております。  その第一は、きのうも社会保険庁の業務課に視察に参りまして、いろいろ事務上の問題を見てまいりましたが、いまの状況で、物価上昇率に見合う改定率がきまるのがまあ五月というふうに聞いておる。それで十一月という問題がありますので、それを今年度に限って、いわゆる金額改定を特別緊急立法の形で、政策改定率をきめたらどうかということなんです。そうしてたとえば、二五%なら二五%という率で今年度は計算をしていったらどうかという問題が第一の問題であります。  それから第二の問題は、いわゆる当月払い制の問題であります。これはいま二月、五月、八月、十一月と厚生年金は四回にわたって支給されておりますし、国民年金はそこから二カ月ずつかおくれているわけですね。その支払い月は、たとえば八月でいえば五、六、七ですね。それを当月まで入れますと、どこかでことしの切りかえのときに一カ月分よけいにもらえることになりはしないか、こういうことであります。こういう処置を含めまして私どものこの提案どおりに行なわれますと、ことしじゅうにそういう当月払い制によって一カ月分だけ余分に入る。もう一つは政策改定率がそういう早目にきまって、やり方もきめて、そうして十一月実施を八月にこのアップを実施するならば、この三カ月分だけアップ率が余分に入るわけですから、そういう意味でいろいろ計算しまして、三万六千円の平均の場合、七万七千五百円ほど余分に入る、こういう私どもの計算をしているわけなんです。そういう点でこうした方法が実施できないかどうか、こういう問題をこの間提起したわけであります。こういうことによって、いまの政府も含めて検討されている繰り上げという問題を解決できないかどうかということがおもな内容であります。もちろん国民年金、共済年金については、これに準じて改定していったらどうか、こういうことであります。  そこで、大臣にあるいは関係者に聞きたいのですけれども、この繰り上げの問題で一つの大きな障害になっているといいますか、その問題は、三月二十九日の読売にも書いてありますけれども、やはり一つの大きな障害が実務上でどうしてもできない、これは大臣が再三ここでも言っているわけですけれども、その障害にあるのだということでございますけれども、この点はそうなんですか。
  105. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私もこのタイムラグを短縮するという問題については非常に関心を持っておりまして、できるならもうちょっと短縮することはできないだろうかということで、皆さん方からお話がある前から事務当局に研究をさしておいたのでございます。ところが、なかなかこれはほんとうにたいへんらしいのですね。らしいと言っては失礼ですが、事務当局もやっぱり人間ですから、しかも労働強化なんということになってはこれはたいへんなことでございますから、無理のないところでやれるのかということを申し上げたのですが、問題をつくり、それを一人一人のその年金額を手直ししていくというのは、もう非常にたいへんなことであるということを承りまして、これはなかなか容易ではないのだなということを痛感いたしております。しかし、国民の声の中にはタイムラグを短縮したらどうだという意見もありますので、私は今後とも研究、勉強は続けていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  106. 石母田達

    石母田委員 勉強というと非常にぼくらには緊急性がないみたいに聞こえるのですけれども、たとえば、今年度はだめだけれども来年度というようなものではなくて、緊急にいまの事態を解決し、あるいは狂乱物価といわれておるこのインフレの高進の中で、やはりこの年金受給者に一日も早く支給するという点からいって、勉強するということばは非常に何か私どもには弱く聞こえるのですけれども、すでに新聞なんかにも発表されているように、四月繰り上げについても検討されているのだというふうに新聞発表されておりますけれども、これは大臣に私は聞くのですけれども、こういう問題について一体、各紙全部同じように三つの案というようなもので出ていますので、これは政府部内で検討されているというようなものであるかどうかお答え願いたいと思います。
  107. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 いろいろ新聞には伝えられておりますが、私は最終的に報告を聞いておりません。新聞にいろいろ書いていることについては、私は推測だ、かように考えております。私がいろいろ考えてみると、やはり五つも六つもあるのです。ですから、それはやはり三つくらいのものではないでしょう、考えてみれば幾つもあります。しかし、どれがいいかということになりますと、これはなかなかむずかしい問題でございます。やはりこういう仕事をやる職員の努力、労働というものを考えないで、ただ口だけでやりますというようなわけにはこれはいきません。そういうわけで、新聞に出ております、三つ案があるとか四つ案があるとかいうことは、私も、コロンボに行っている間の記事だと思いますが、全然聞いておりません。したがって、みんなクラブの諸君もやはり賢明でございますから、あちらこちらから取材をして書いたものだと思いまして、私をして言わしむるならば推測的な記事である、かように考えております。
  108. 石母田達

    石母田委員 では局長に私は聞きます。  あなたは、春闘共闘委の代表だと思いますけれども、その総評の代表と会った中で、いま三つの案を検討しつつある——大体これと同じような内容でしたね、十一月実施の場合あるいは繰り上げの場合、三カ月繰り上げ支給の場合と、しかし、いずれも困難であるけれども検討している。そのあとここで私この前聞いたら、事務上非常に困難であるという御返事でしたけれども、大臣は外国へ行って知らなかったけれども、年金局長か年金局の中ではこの三つの案について検討されたことは、これはあなた自身も答えていると思うのですが、どうでしょう。
  109. 横田陽吉

    ○横田政府委員 私が、組合あるいは厚生年金部会の席上でこういう問題について質問を受けたり、あるいは要望を受けました際の私の答えと申しますものは、三つの案ということは一言も言ったことはございません。ただ、やるといたしました場合のいろいろな方法論、方法論というのは、パターンとして考えればおそらく三つなり四つなりのああいう考え方になり得るであろう。それで、そのパターンと申しますのは、第一のパターンは実施時期自体を繰り上げるということ、それから第二番目は、実施時期は繰り上げないがある程度さかのぼるということ、それから、実施時期もさかのぼりもしないが支給月を繰り上げる、パターンとしてはそういうことがあり得るだろう。たとえば第一の案で申しましても、十一月をどこまで繰り上げるか、それから十月十五日まで繰り上げる案もあるでしょうし、十月一日までも繰り上げる案もある、それはもう幾通りにもなるわけです。したがって、私は、いままでも三つの案について検討したことはございません。ただ、いずれの方法論でやった場合にどうなるかということは、いろいろな関係から政治的な決定がなされました場合に、事務的に全くできませんというようなことではいけませんので、それは常時何十通りかの案につきまして検討をいたしております。
  110. 石母田達

    石母田委員 その何十通りあるいは保険審に出されている六つの案とかいうものとか、いま新聞に書かれているような案も含めて、何十通りも検討されたと思いますけれども、その中で、いまもことばの端に出たように、実務、事務ですね。この問題が一番繰り上げの場合は最大の障害であるというふうに大臣も答えていますけれども、やはり年金局でもそうですか。
  111. 横田陽吉

    ○横田政府委員 その実務的にできるかできないかという問題になってまいりますと、一つの非常に大きな前提条件は、どのような内容のスライドを実施するか、こういうことでございます。それで、実施すべきスライドの内容が非常に複雑なものでございますと、おそらく現在法律で定まっております十一月から実施することも不可能になる、そういう問題がございます。したがって、このスライドの内容について、どのような内容にするかという点について、実は昨日も夜、厚生年金部会の御審議をお願いしたわけでございますが、昨日は五回目、また十日の日に六回目をやることになっておりますが、その辺でどのような内容に固まるかによって、さかのぼったりなんかする場合の事務的な難易度というものもまたきまってくる、こういう関係にございます。
  112. 石母田達

    石母田委員 その場合に、私もきのう業務課に行って、なるほどたいへんだということをほんとうに身をもって感じて見てまいりましたし、また組合員の人にも会いましたし、課長さんにもお目にかかりましたが、同様に言っていることは、何とかしてこたえたいと思っている、そういう点で今後ほんとうに、よくこのからだが続くかと思うほど一生懸命やっているということは両方から言っているわけなのですね。その気持ちはあるのだけれども、いまの実情では十一月実施を繰り上げるということは絶対不可能かと言われると、絶対なんていうことは人間だから言えないけれども、まあそれに近いくらいの状況であるというお返事でありました。そこで、そういう中で、ではこのままどうしても解決できないのかということになりますと、やはり十一月に実施されて、支給されるのは来年の二月ですね、厚年の場合。それから国年は三月になるわけですね。そうしますと、先ほど厚生大臣が言っていた損失を何とか補てんしたいという点からいうと、やはり大きな矛盾だ。そこでハムレット的な、繰り上げてやりたいけれども実務上できない、これをどうするかということで、私どもの党のほうもいろいろな検討をして、しぼって出した知恵が先ほどの案なのです。これはもちろん、党の政策的な立場ということから見ると、かなり緊急的な柔軟なものでございますけれども、何とかいまの事態を切り抜ける上でこの案はどうかということなのです。それで、私きのう行って、まあ非常に、専門外の知識なのだけれども、いかにたいへんであるかということで、どういう点がたいへんなのかということを、一定の得た知識の中で申しますと、年金権保有者の年金額をきめる作業とそれから新規裁定作業、これが、新しい人がばらばらでいろいろな条件で入ってくる、これを全部コンピューターを通す作業がたいへんなのです。諸変更支払い作業といういろいろな変更がある。それが四十年度の法律改正、四十四年度、四十六年度、四十八年度と、こういうふうに、今度スライドというふうに五階建てにもなって非常に複雑になってきている。このいわゆるプログラミングというのですかプログラムをつくっていく、これがたいへんな作業が必要なんだ。それで、昨年のこの話を聞きますと、十一月の法改正でそれを二月に支給するというので、この九、十、特に十、十一月のところで、プログラムをつくる点においては残業時間が、聞きますと月平均百八十時間から二百時間、こういうたいへんな作業をやられたわけですね。からだはふらふらだった、もう二度とあれを繰り返したくないというのが、率直にいって、あそこの人たちの全体の気持ちだと思うのです。ですから、国会の中の論議というものは、やはりこういう人たちのことを考えて、それを含めて、実務的にもどうできるかということを考えませんと、やはり政治の段階でただ必要性ということだけから論議をするのは現実的ではないというふうに考えているわけなんです。そこで、先ほど申しましたように、今年度に限ってそういう政策改定率というもので早めて出せないかというのは、いまお伺いしようと思うんだけれども、四十七年度に対比する四十八年度の物価上昇率が、三月末で出たものが確定するのは五月末だ、こう言われるのですが、どういう作業でそうなるのか、少しその点を説明してくれませんか。
  113. 横田陽吉

    ○横田政府委員 総理府で作成いたします消費者物価指数でございますので、総理府の作業の手順がそういうことだというふうに承っております。
  114. 石母田達

    石母田委員 大臣、その総理府の作業というのはぼくはよくわからないけれども、これはやはり検討して早めるというふうなことはできないのですか。
  115. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私もどういうふうにデータを集めてやっていくのかわかりませんが、たくさんの消費者物価指数を出すわけですから、たくさんの品目について、地方的にたくさんの人を置いて、毎月毎月どういうふうに物価が上がっていくかということを調べるわけです。東京都のほうは東京だけですからわりあい早く出るのです。これはたしか日銀でやっているわけですが、全国のものをまとめていくというのはやはりたいへんな作業のようでございます。私どもも、こういう狂乱物価の際ですから、もう少し早く何とかならぬかということを総理府にもお願いしたことがありますが、総理府としても——統計局ですね。これもまたたいへんな作業らしいんでございまして、これを早くわかるということは非常に困難なようでございます。したがって、三月末までの統計が出ますのは五月、それが出まして初めて昭和四十七年度と四十八年度の消費者物価がどういうふうに変わったかということをまず調べるわけでございます。そして今度は、ではその調べましたアップ率を何にかけるんだ。現在もらっている年金額総額にかけるのか。しかしまた、現在の年金額というものも、何しろ全勤労期間中の賃金の平均でとってやっていくわけですから、それでいいのかどうか。全金額にただ十何%をぶっかけて、それで数字を出していいのか。それはわかりませんので、いま年金部会で、どういうふうなやり方でやっていくかということを御審議願う——これは五月までには結論出ますわね。それから今度は統計の数字が出る。それからプログラマーが問題をつくっていくわけですね。そして今度は一人一人やっていく。これだって大ざっぱに一万円だ二万円だとやるのじゃないのですね。十年年金の夫婦二万五千円、これはわりあいにわかりいいのです、定額ですから。一人一万二千五百円ぽっつり。ところが、そうでない方々は何万何千何百何十円——円以下は切り捨てとして、みんな違うのですね。それが約三百万人もおると、こういうわけですから、これはたいへんなことでございます。  そこで私も、予算委員会でも申し上げましたように、人間のやることでございますから絶対できないとは申しません。それから法律というものでおやりになる、法制的にも可能でございましょう。しかし、働く人のことも考えてあげなければと、私はこう申し上げておるわけで、絶対不可能だということは絶対言うておりません。非常に困難でありますということははっきり理解していただきたいということを申し上げておるような次第でございます。
  116. 石母田達

    石母田委員 きのうも聞いたのですけれども、どうしても五月末になるというならば、先ほど私が申し上げたような案なども採用して、これがもし早目に出れば、それだけ作業が楽になるかといったら、難易度というのかな、むずかしい度合いは少しは緩和される。問題は、先ほど局長も言ったそのやり方だというのですね。つまり、これが全部一律に上がる、たとえば厚生年金でいえば定額部分だけにそれをやれば、これは作業も非常に簡単だというのです。ところが、あの保険審で出ているように、報酬部分を基準年度以前と以後に分けて、年度以前だけにやるとかなんとかといいますと、非常に複雑になって、実務上も困難な問題が出てくる。そうすると、多少早めたくらいでは、すぐその複雑さがまた大きな障害になってくるんだ、こういうことなんですね。年金のいろいろな原則からいうたてまえがありまして、定額だけというようなやり方は実務上からはいいかもしれぬけれども、報酬部分の基準年度以前だけかければ、今度は短期で出てくる遺族とか障害年金の人たちは非常に有利になるから、いわゆる不均衡といいますか、そういうものが出てくるんじゃないかということで、保険審でもいろいろの御意見が出ているわけですね。ですから、このやり方といわゆる率というものを一緒に早くきめないと、プログラムをつくるのに非常に障害になるんだ、この点を何とか早めに両方とも出してくれれば、これは先ほどの絶対不可能ではないということも少しは、うんとがんばれば何とかの条件ではできるということに少しでも近づいていくんだ、こういうことで、これは大衆団体がただ要求しているというだけではなくて、国会ベースとしてもぜひとも、他党とも相談して、協議し合って解決の道を見出していきたい。そういう点で、スライドということだけにこだわっていますとどうしてもいまの実務上という問題が障害になりますので、ことしだけはスライドというものを凍結して、物価上昇率で二月末ですと二六・七%という数字が出ていますから、まあ五%をこえることは明らかでありまして、当然スライドは適用されることは明らかなんで、そうした改定率を、国会で法律できめて、その作業をやってもらう。同時にそのやり方も、これは私専門家じゃないからよくわかりませんので、これはまたいわゆる年金のたてまえをあまりくずすということもあれでしょうけれども、その範囲の中でできるだけ簡単なやり方をきめて、このような実施を早めていただけないか。  同時に、当月払い制の問題に触れますけれども、この当月払い制の問題については、年金のたてまえからはそう原則を踏みはずしたものではないというふうに厚生省の方から説明がありましたが、この点はどうでしょうか。
  117. 横田陽吉

    ○横田政府委員 当月払いの問題につきましてはおっしゃるとおりなんです。ただ問題は、当月払いと申しましても、その月の一日現在で資格を確認してそれから計算をするわけであります。したがって、当月払い制をとりましても、大体その月の中旬以降になりませんと金額の支払いが行なわれないので、理屈の上では何の支障もないと思いますけれども、実益が非常に少ないだろう、こういうことでございます。
  118. 石母田達

    石母田委員 実益が少ないというのは、その一カ月分じゃなくて半カ月分ぐらいしか実際ならないのじゃないかということですね。その点は、私もこまかいことはよく知りませんけれども、実務上の問題でも、いまのスライドでいくとかそういうものに比べればそれはもうずいぶん少ないものだという話ですし、年金というのは、私どもさかのぼってやったり何かいろいろやってみたのですけれども、それはやはり死亡した場合とかいろいろな損失というのですか、そういうもののたてまえ上できないんだという問題があるので、当月払いならばそういうたてまえをくずさずにやれる。ただ、いま局長のお話ですと、まあ一カ月分よけいもらえると思ったのが案外実益が半カ月じゃないかということなんですけれども、その程度は、私もよくわかりませんが、しかし現在よりも余分に収入がはかれるということなんで、このこともあわせて緊急対策という中には十分検討していただいていい問題じゃないか、こういうふうに私は考えているわけなんです。そういう意味で、この当月払い制、それからいまの政策改定率、これは政府がどうするというような問題でないかもしれません、われわれの党がほかの党と話し合ってやるべき問題かもしれませんけれども、そういう点で繰り上げという問題をいまの実務上の障害ということであきらめずに、勉強されるというんだけれども、緊急ないまの事態にこたえられるように、いまの私どもの案も含めて十分検討していただきたい。   〔葉梨委員長代理退席、斉藤(滋)委員長代理着席〕 こういうことを大臣にお願いしたいと思うのです。
  119. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、私は何とかこのタイムラグを短縮したいという熱意は持っているわけでございます。そこでいろんな案を考えておるわけでございまして、まだ成案を得ているわけではございませんから、石母田委員提案なさる案ももちろんその中の一つとして考えていくことになるであろう、かように考えております。しかしこれは非常に困難な問題でございまして、ただ勉強と申しましても、そんなに長く勉強しようなんでいうんじゃ間に合いませんから、できるだけ早い機会に結論を出せるようにしたいものだ、できないならできないとはっきりしてあげなくちゃこれまたいかぬのじゃないか、こう考えておる次第でございます。
  120. 石母田達

    石母田委員 そこで、今回はそういうことで私も実務上の問題で業務課というところに初めて参ってびっくりしたのですが、いまのいわゆる年金時代というふうにいわれている中で、それにふさわしい業務体制を確立するということは緊急な課題になっているのじゃないかということを、きのうのいろいろの視察の中で得たわけです。現に厚生省のいろんな調査によりますと、昭和五十年には厚生年金が二百二十五万人、国民年金が百七十八万人、福祉年金が三百七十四万人、計七百七十七万人、これが昭和五十五年には合計しますと千二十八万人、こういうふうに白書に書いてありますけれども、これは大体このような数字でございますか。
  121. 横田陽吉

    ○横田政府委員 大体そうでございます。
  122. 石母田達

    石母田委員 これでいくと、今後五年後にはつまり一千万人になる。五年後というと五十五年からですね、一千万人という年金受給者となるわけなんです。そういう体制を考えますと、いまのようなやり方で、法改正なりあるいはそういう字句だけではなく——かなり日常業務が停滞しているということがきのう報告されておるわけです。それで聞きましたら、まあこれは組合の報告ですから、そのとおりの数字かどうかはもう一度よく調べていただきたいのですが、大体一人当たり三百件ぐらいの件数をかかえているんじゃないか。組合のアンケートを見ましても、みんなそういう業務をかかえているという報告であります。  同時に、あそこでは外からの電話を受けて問い合わせに応じているわけですね。そういうサービス業務を行なっているわけなんです。このサービス業務の電話が非常に多くて、これまたこの中で問題になっているわけです。聞きましたら、二月だけで電話が一万五千四十二本、これは日曜を除いて十三本の電話でそういういろいろな国民の皆さんからの問い合わせを受けている。これは受けただけが、これだけなそうです。ですから、実際にはもうなかなかかからないというんで、三回に一回しかかからないというぐらいの電話だそうですから、受けただけでこれだけなんです。特に問題になるのは、昼休みに七百五十三本きているというのですね。こういうことで、この電話は昼休みぐらいとらなくてもいいんじゃないかとかいろいろ組合で論議したけれども、何かこの電話というものはわざわざ遠くから、いろいろ北海道からも問い合わせにくるということもあるので結局とってしまう、まあとってしまうというと語弊がありますけれども、とらざるを得ない。こういうことが非常に労働強化につながっているというふうにきのう報告されております。それからそういう問題で電話も二十四本ぐらいに増設したいんだけれども、実際に電話を受ける人が少ないので電話増設はできない。こういうサービス業務の簡便化といいますか、サービスをくずさないでしかもその地方の社会保険庁あたりでも聞けるような、そういうものはできないのかどうか。そういう点で、ああいうコンピュータなどをやっているような非常に高度な全国民的な、そういう中心の核的な仕事をするところで、一方でこういう国民的なサービスも行なわなければならぬというのは何か——どっちこっちということじゃないけれども、もっと合理的にやれないものかどうかということなんですが、この点については何か検討されているわけですか。
  123. 出原孝夫

    ○出原政府委員 特に社会保険庁の業務課が外からの問い合わせが非常に錯綜しておるということは御指摘のとおりでございます。特に本年の一月及び二月に厚生年金及び国民年金の金額の法定通知をいたしました。それを通知をいたしました結果のお問い合わせが非常に多くなりまして、私どものほうの業務課の電話を臨時に十本増設をいたしたわけでございます。それでもなお業務課の電話が通じないという御苦情が非常に多かったのでございますが、いまようやく峠を越えつつあるところでございます。一時的な非常に多い、錯綜する時期は一応は通過したのではないかと思いますが、今後年金に関するお問い合わせは非常に多くなってまいると思います。  それから地方における社会保険事務所におきましても、私数カ所見てまいりましたが、やはり非常に相談の業務がふえております。これに対応する体制を講ずる必要があるということを痛感いたしておるわけでございますが、特に国家公務員の定数の削減もきびしいおりでございますけれども、そういう意味におきまして、社会保険庁の本庁及び地方を含めて今年も定員の増員をお願いし、ある程度の実現を見ておる、こういう状況でございます。  なお、今後とも努力をいたしたいと思います。
  124. 石母田達

    石母田委員 そこで、電話もふやしてできるだけその業務で国民にサービスをするということはけっこうなことなんですけれども、いま言いましたように人手が足りないということをいわれているわけなんです。いまあなたの口の端にも定数削減がきびしいおりからという話が出ましたけれども、おそらくこれは総定員法に基づく定数削減ですね、これがあのように、私ども反対の立場からいいますと、国会の審議でなしに、ああやって政府が一方的にきめることができる、しかも一律的なきめ方をしているということでわれわれも反対したわけですけれども、そのことは別としましても、この人手の問題で先ほど厚生大臣のほうから、そういう働く人々の立場を十分考えなければならぬということは私たちも一致するわけですが、その考え方、考慮のしかたというところで、この組合からの報告によりますと、人手が非常に足りないということで、昭和四十八年度保険庁は予算要求として百二十名の定員増を要求した。ところが、事実上認められた増員は二十六名にすぎなかった。第二次定員削減による減員は十三名、というと、これは二十六から十三を引くことになる。そうすると、事実上十三名しかふえないということになりますね。昭和四十九年度は、保険庁の予算要求が百二十五名、予算上認められた増員は三十一名、第二次定員削減による減員が十四名、つまり減らされた。こういうことになりますと、あそこの業務課が一致して国民的なそういう要請に何とかこたえたいという熱意の中で、この隘路になっている人手の問題を解決する上でこうした実態というものは私たちには考えられないのだけれども、この点について事実なのかどうか、答弁願いたいと思います。
  125. 出原孝夫

    ○出原政府委員 御指摘の数字はそのとおりでございます。私どもも定員の増につきましては私どもの社会保険庁の重点の事項として関係の当局に折衝いたしており、その結果でございますが、なおそれと同時に、私どもも職員の諸君の充足につきましてはきめのこまかい、たとえば欠員の補充でございますとかいったようなものもできるだけ配慮いたしまして、現有勢力をできるだけ強化するということにも心がけてまいるというふうに考えております。
  126. 石母田達

    石母田委員 厚生大臣にあわせて要望しておきたいのですけれども、先ほどの厚生大臣の立場から、こういう人手の問題、それから定数削減の問題でかなり矛盾があるようですから、この点について関係当局ともよく話して、ぜひ政府としても、いまこうしたことが大きな隘路の一つとなって、そのまた一つの中での障害になっておりますので、ぜひとも大臣としての政府部内での御努力をお願いしたい、こういうふうに思います。
  127. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 保険庁の職員が足りないという問題については、私も痛切にそう考えておるわけでございます。したがって、四十九年度の予算要求の際にも、保険庁の事務官の増員、これに全力を尽くしたわけでございますが、やはりこういう際でございますので十分な人員の確保はできませんでしたけれども、私も今後これで十分だとは思っておりませんから、これからどんどん保険庁の仕事はふえる一方でございますから、今後とも職員の充実、確保につきましては最大の努力を払いたい、かように考えておるような次第でございます。
  128. 石母田達

    石母田委員 念を押すようでございますけれども、ここにこれまた組合の「たけのこ」という中で訴えがありますので、若干読ませてもらいたいと思います。  「ともかく人手がほしい」これはS子さんという匿名ですからわかりませんが、「支払・裁定の女性は訴えます」「みなさん、業務課の実態をご存じですか。支払班、裁定班は、すざましい仕事の山で、どう手をつけ、どう処理してよいかわからない状態です。こんな状態法律改正、老令年金の現況届の提出時期、二月定期支払いの問い合せなど、すべての忙しい条件がそろって一時的なものと思われるでしょうが、これからも四月には遺族の現況届、五月定期支払い、七〜八月にも同じ事が待っている訳です。」そして「欠員は全業務課職員の一割近くもおります。」これは三十七名と報告されております。「今の状態がこのまま続くなら欠員をうめてもらった所で、仕事にみあう人員にはほど遠さを感じます。でも、とにかく人が欲しいです。これからますます年金受給者はふえて行くことは明らかです。全業務課の皆さんにもこの問題を考えてもらい、下だけの声でなく上部に大きな声として反響させてゆきたいと思います。」「まさに“異常”です、この忙しさ!」N子さん。「狂乱的物価上昇ということばがあるが、最近の支払係の忙がしさは狂っているようだ。欠員、更定通知特別処理班への派遣、法律改正に伴う仕事量の増加、電話照会、とりわけ照会文書は山と積まれ、あたりまえの受給者への一カ月以内の回答でも残業で頑張っても処理がむずかしい。」「裁定班もこんな状態です」T子さん。「裁定係、なかでも東京ブロック担当の裁定二係の異常な忙しさが叫ばれて何年放置されつづけたのでしょうか。」「受給者へのていねいな応待などとても無理。どうしたら仕事量にみあった人員を確保できるのか。そのすじ道を真剣に考える時だと思います。」「先ず国会議員の方に、実情を調査に業務課に来ていただけたらと切に望んでいます。T子」「私の職場はまさに猫の手も借りたいという言葉がピッタリです。ある日、朝から受話器を耳にあてどうしでしたが、そのうち目がチカチカしてどうしても書類が読めません。そこへ来た人が“そんな赤い顔してどうしたんだ”と言うので鏡を見ると目がまっかです。こんな状態では本当に頭がおかしくなるような気がします。気持のゆとりとか思いやりとかそういう人間性がだんだんすりへっていくような気がしてなりません。U子」。  私は、これも年齢も名前もわかりませんけれども、おそらく若い人たちも含まれていると思うのです。こういう人たちがこのようなほんとうに過酷な労働条件でやっているわけですから、こういう人たちがあげて、このような年金の繰り上げという問題で、もしきまれば、とにかく何とかそれにこたえよう、しかしこたえるためには、それだけのやはり条件が必要だということでございますから、そういう点でぜひ、もしわれわれの繰り上げということを検討される場合も、その点でぜひとも業務課のこうした人手の問題について要求される方向に必ず実現するように御努力願いたい。  特に、この中で、日常業務等が未処理で非常にたまるということと同時に、プログラマーという特殊な一番の中枢の仕事があるのですが、ここの養成の問題についていわれているのです。ここの余裕ある人員がほしい、それには養成で、きわめて専門的なことらしいのですが、こういうことについて、ぜひともプログラマーの養成の問題について何とか努力をしてほしい、こういう要望がありましたけれども、この点については何か対策はあるんですか。
  129. 出原孝夫

    ○出原政府委員 御指摘のプログラマーは、現在業務課に二十三名おります。恒常的な業務でございますればこれで可能なんでございますが、特に昨年、一昨年来の大きな改正に引き続きスライドということになりますと、この人たちに非常に大きな労働がかかってまいるわけでございます。しかもこの人たちにつきましては、にわかに補充のきかない専門的な人たちでございます。したがいまして、こういった臨時的な業務が非常に多く重なるということを前提にしての定員ではございませんでしたので、私ども現在、非常にそういう意味におきましての問題を意識しておるわけでございます。将来のプログラマーの拡充なり充実の方針につきましては、十分検討いたしました上で、その方針を立ててまいりたいというふうに考えております。
  130. 石母田達

    石母田委員 とにかく相当緊急な私は課題になっていると思いますので、急いでこれは対策を立てないとたいへんなことになるのじゃないかということを作業場を見て感じました。  同時に、これまた現場からの要請でありますが、残業時間が先ほど言いましたように、一月百八十時間か二百時間というようなときもあったそうなんですけれども、そのいわゆる超勤手当ですか残業の手当が、予算がないからということで残業が規制される、あるいは結局もらわずにやるというようなことで、大体目の子勘定で八〇%くらいしかもらっていないのじゃないか。特に職制の人たちが、職制というと係長ですか、そういう人たちの間にもそういう人たちがあるのじゃないかというお話でしたが、この点については、何かそういう事実については報告されているのか。これは現場の人たちは一生懸命やるという立場ですから、あまり表面には出てないらしいのですけれども、内部の話を聞くとこういう話があるので、やはり公務員といえどもきちんと仕事をしたらそれだけのものをきちんともらうというのが、これはたてまえですから、もらうべきはもらったほうがいいと思うので、そういうことがあったら率直にこの場でも出していただきたい、こういうように思います。
  131. 出原孝夫

    ○出原政府委員 正確なことを調べた上での御回答でございませんのでございますが、確かに一時的に、全部を超勤を支払えないというような事態になっておることもあったかと思います。それを社会保険庁全体のやりくりで、あとで埋めるというようなことでできるだけカバーはいたしておるはずでございますが、ちょっといま突然の御質問でございましたので、正確なお答え申しかねますが、大体そういうようなことでカバーはいたしておるつもりでございます。
  132. 石母田達

    石母田委員 大臣にもこれはぜひそういうことのないように、いま穴埋めをされるということですけれども、これはぜひやっていただきたい。そして、その処置についてあとで御報告願いたいというふうに思いますけれども、よろしゅうございますか。
  133. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 よろしゅうございます。
  134. 石母田達

    石母田委員 それでは、次の質問に移りたいと思うのです。それは生活保護者の基準の引き上げの問題で、いろいろ政府でも二〇%引き上げというようなことがあるわけですけれども、こういう人たちはスライドといっても、つまり実際には政府の皆さん方の改定でできるわけなんですけれども、それで、先ほどからの論議をいろいろ聞きまして、三月二十二日に厚生大臣が外国へ行かれる前に、私ども四党共同して出した要求に対して回答をいただきました。その中で、もし物価が二〇%以上上がったならば、五月、六月にも改定するというようなことばがあったように思うのですけれども、これは私は口頭で聞いたもんですから、文書で見てないもんですから、何かそういうことを言われたのかどうか、あるいはそういう思い当たる節があるか。私、人づてなもんですから、お答え願いたいと思うのです。
  135. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 四月になりまして扶助基準を昭和四十八年当初に比較いたしまして二〇%引き上げることにいたしたわけでございます。そこで、今後は物価の動向を十分監視しながら、必要があれば扶助基準の改定を行なう用意があるということを申し上げておるわけでございます。こういうことを予算の通る前に言うことは非常に勇気の要ることでございますが、先ほど来八木委員その他が非常にきびしく言うもんですから、私の心の中を率直にこう申し上げた次第でございます。
  136. 石母田達

    石母田委員 その場合に、二〇%という数字はあげられたわけですか。ぼくらの聞いたのは、何年度かを基準にして、去年に比べて二〇%以上物価が上昇した場合というふうに理解していたのですけれども、二〇%という数字は出ていたのですか。
  137. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 すでに四月一日になりましたから、十日分は暫定予算ですが、扶助基準は間違いなく四月一日から二〇%上がったわけです。昭和四十八年の四月に比較いたしますと扶助額が二〇%、四十八年の四月にもらっておった扶助額よりも二〇%、五万円なら六万円、こういうふうに、現在上がっているのです。そこで今度は四月の物価動向がどうなる、五月の物価動向が前年度に比べてどうなるというものを比較いたしまして、その物価が扶助基準の上がりぐあいよりも上になるなんということがあったらこれはたいへんなことですから、すぐ扶助を上げる、こういうふうなやり方に直していくわけでございます。
  138. 石母田達

    石母田委員 四月一日から前年度比二〇%アップ、これはわかりました。だけれども、私の理解していたのは、五月、六月にも改定しますという話の続きで、物価上昇率が二〇%以上であった場合には五月、六月にも改定するというのは、これのほかにそういう改定をするつもりなのかどうかというふうに……。
  139. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 ですから、昭和四十八年の四月に比較いたしまして、すなわち五万円ならば二〇%の六万円ぐらいの額になったわけです。ところが、さらに四月、五月、六月がいまの物価よりももっともっと上がってくる……。
  140. 石母田達

    石母田委員 そのとき二〇%。
  141. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 それは関係ないです、何%上がろうが、上がりぐあいと見合ってやるわけですから。要するに扶助基準にあまり近づいたらすぐ上げなければいかぬ、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  142. 石母田達

    石母田委員 確認する意味で。すると、いまの四月上げたけれども、電力も公共料金もどんどん上がっていくという中で、上がり方が非常に激しい場合には、ことしの五月、六月にも改定することはやぶさかじゃない、こういうことですか。
  143. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 二〇%上げましたけれども、物価の動向に応じ今度は二五%——それから二五%じゃないのですよ、二〇%になったものから五%上げるとか一〇%上げるとか、こういうふうな改定をするにはやぶさかじゃないという、思い切った実は発言をしておるわけでございます。
  144. 石母田達

    石母田委員 その思い切った発言の中で、さらにそれはどの程度くらい——いまさら何%とは言わない。思い切った発言をされる以上は、どの程度ぐらいの変動があった場合というような、厚生大臣の個人的見解になるかどうか知りませんけれども、その程度は大体どの程度ですか。
  145. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 どの程度物価がまたさらにいまよりも上がったらということは考えておりません。諸般の情勢をながめながら諸般の情勢を考える。やはり賃金動向もありますね、それから消費者物価もありますし、諸般の情勢を考えて、最低生活の人々の生活を守る、こういう強い考え方から改定をしていく、こういう考え方です。それについてはあまり基準を置かないほうがむしろいいのです。弾力的にやっていくのがむしろ一番望ましいという考え方でございます。
  146. 石母田達

    石母田委員 こういうふうに理解していいですか。ただ物価上昇率が何%になったらというような状況じゃなくて、生計費全体がそういう改定をせざるを得ないというような状況になったならば、五月、六月にも改定することにやぶさかでない。この五月、六月というのは非常に近い時期ですから、そういうことを発言されると、厚生大臣という責任から、これは生活保護をもらっている方から見れば非常に期待が大きいわけですよ。国会の中でそういう月が出るということは、私どもが話すのと違って、厚生大臣ですから。そういう意味で、その条件が非現実的な条件であった場合には、これは全く期待はずれになるわけですけれども、そういう期待をある程度持ってもいいというような程度の現実性のあるものかどうか、そこに考えられている条件というのはとても非現実的なものであるかという点については、五月、六月という月が出た以上は、そうした期待を現実に持たれる人たちに対しても、もう一歩の何か発言がほしいような気がするのですけれども、その点について、厚生大臣の御見解をお願いしたいと思います。
  147. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 これは先ほど来申し述べておりますように、ことしの四月以降扶助基準を二〇%上げたわけでございますが、四月以降物価とか消費水準等がいまのような状態、狂乱物価で月五%も六%も上がるというような事態になれば、当然扶助基準も改定しなければならぬだろう、こういうふうになるわけでございます。私どもの考え方は、消費者物価指数のみならず消費水準もあわせて総合的に生活というものを見直していく、こういう考え方でおるわけでございます。
  148. 石母田達

    石母田委員 しつこいようですが、こういう問題は非常に期待される人もあるのではっきりしておきたいのですけれども、いままで政府の態度というか方針というか、私どもが保護基準の改定の問題を出しますと、去年の十月やったばかりじゃないかとか、そうははっきりは言わないけれども、上げました、上げたばかりだということで、努力された条項だけ、内容だけを強調されて、現実にいまの実態に対してどうなんだということについては、私どもにとってはきわめて不満足な回答が多かったわけです。いまのお話を聞きますと、四月一日に上がって、五月、六月というとあと来月、再来月という問題であります。こういうことについて国会で厚生大臣が、仮定の問題にしろそうした月を具体的にあげたということは、現実にそういうことを期待している人にとっては大きな関心を持つ問題だということを十分に意識しての御回答であるかどうか、御見解であるかどうかということを、非常にばく然として答えにくいかもしれませんけれども、私の意のあるところはわかると思うので、そういう意味で厚生大臣としてもう一度そういう期待を持つというようなことが当然あるということを意識しての答えであるかどうか、御見解をお述べ願いたいと思うのです。
  149. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 生活扶助というのはほんとうに最低生活の方々について国が保障するという制度でございます。厚生省としては当然そういう人の生活は守っていかなければならぬというわけでございますから、そういう人たち生活を守るという責任の上から、当然そういうことはやりますということをはっきり申し上げておくわけでございます。したがって物価動向に応じてそういう方々の生活が苦しくなれば扶助基準がまた上がっていく、こういうわけでございます。しかしそんなことを私は望んではいないのですよ。望んではいないのです。もう物価は鎮静してもらわなければほんとうに困るのです。去年などは石母田さんから仰せにならぬでも、去年の十月に五%上げて、去年の暮れにはもち代というものもさらによけいに出しましょう、しかも三月の初めには、一時金といいながら一人当たり二千円、子供でもおとなについても二千円、四人家族なら八千円、こういうわけで出しておるわけでございまして、厚生省は最低生活の保障ということについては全力を尽くしている。これは八木さんなんかもうなずいておりますから、間違いないことだと思います。
  150. 石母田達

    石母田委員 八木さんはそれでうなずいたかどうか知りませんけれども、ここであまり態度を示せない、あごなんか下げられないと思ったのですよ。私はそうは思わないのです。あれを出してから一カ月余の月日がたつ、そうして私どもいわゆる四党としての立場から福祉手当三万円の要求を出しているわけです。こういう人たちがやはりインフレの非常に大きな影響を受ける。それでいまから電力も上がる、私鉄も上がる、ガスも上がるのじゃないか、それから十月になればお米、国鉄運賃の値上げの凍結も解けるということになると まさにどんどんどんどんとどまるところを知らないウナギ登りの物価に悩まされる、こういう不安で一ぱいなわけです。そういう意味で、そうした抑制したいという主観的努力はどうか知りませんけれども、実際にはどんどん上がって、狂乱の異常の物価値上げになっているわけです。そういう中で老齢福祉年金だとかを受給されている方とか、そういう人たちを含めて、何としても福祉手当三万円の要求あるいはまた福祉年金の額を先に上げることはわかっているのだから、これをどんどん繰り上げて早く支給するとかそういう問題について、すでに大新聞の中にもそうしたことをどんどん主張しているというような状況で、非常に国民的なこういう要求も高まっているわけです。  そういう点でいま厚生省はそういう人たち生活をほんとうに見ているんだということの認識から出発しますと、これ以上の努力というものに対する誠意がまた疑われてしまいますので、いままでの努力努力として、とにかくそれではきわめて不十分なんだ、そうしてこの春闘の中で大きな統一ストライキが近く起ころうという中で、何としてもこれを解決するという意味で、低所得者に対するそうした要求が大きな要求として出ているわけですから、この問題について誠意をもってこたえるという立場からも、私は、この一カ月余をそのままで済ましてきた、つまり二千五百円だけで終わっている、これに対しての不満を表明して、もう全部出ているわけですから、こういう点についてなお一そうの真剣な改善努力というものなしにはこの重大な事態を解決することはできないんじゃないか。(八木(一)委員「そのとおり」と呼ぶ)そういう点で厚生大臣のもう一度の——八木さんを例に出されましたけれども、おそらく八木さんもいまの声のように、そうではない、われわれ四党の立場からいっても、この点は必要だという点で厚生大臣に要求しておりますので、三月二十二日の回答をもって終わりというのではなくて、引き続きこの実現のために、りっぱな回答を出すように再度要請したいと思います、厚生大臣
  151. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この三万円支給とかいうことは春闘の項目になっておりますが、こういう問題は春闘の中において解決すべき問題ではない、こう私は考えております。社会情勢全般、経済情勢全般の中で、国民生活を守るという観点から私は朝から議論をしておるわけでございますから、その点はまず第一に御理解をいただきたいと思います。  それから、こういう扶助基準の額なりあるいは福祉年金の額というものは全部国民の税金である、こういうことをまず考えなければならぬ問題でございます。国民の税金をこういう方々に差し上げるわけでありますから、厳正な態度をもって臨まなければならぬ、これはもう仰せのとおりでございましょう。しかしながら最低生活、こういうものを守るという責任はあるわけですから、そういう観点からまた強い考え方でこれに対処していく、これはもう当然のことでございまして、今後とも私は国民生活を守るために、健康と命を守るという強い信念に基づいて善処を続けてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  152. 石母田達

    石母田委員 私は春闘で解決するとかいうことではなくて、この春闘の中で多くの人々がこういうことを要求されている、これが切実な要求になっているということは、もういまの物価の中で当然に考えられるわけですから、その問題を解決する意味において、私どもも、また政党の立場から国会の審議の中で、きちんと国政の場で解決できるものは解決するという立場から発言しているつもりであり、皆さん方に要求しているつもりなんです。そういう点でしっかりとこたえていただきたいというふうに思います。  また予算の使い方については、あなたから言われるまでもなく、国民の税金という問題で、その問題になれば、この中で社会福祉予算についてあなたの所信表明に対してはっきりと私たちの立場、たとえば予算の使い方でも、自衛隊の増強のためにあれほど大きな予算を投入する必要があるのか、また、福祉予算を大幅に削っておきながらその日のうちに最初に復活予算を、自衛隊の戦車四十両を含むそういうものにたくさんの金を出す、こういうふうなやり方ではたして国民の納得が得られるものであるかどうかという、こういう問題の論戦はすでに私はここでやっているつもりでございます。そういう点を含めまして厚生大臣が、いま出されている国民の要求、そういうものに対して真剣にこたえられるよう心から要望いたしまして私の質問を終わりたいと思います。
  153. 斉藤滋与史

    ○斉藤(滋)委員長代理 大橋敏雄君。
  154. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私は、まず最初に児童手当に触れまして、それから年金問題に入っていきたいと思います。  児童手当といえば、いまの大臣がまだ社労の自民党の筆頭理事をなさっていたころ、四十二年ごろからたいへんに苦労なさって、私もその中に入りましてともに苦労していきながら四十六年に制度が創設された、御承知のとおりでございますが、そのときの各党の合いことばといいましょうか、要するに児童手当三千円程度では非常に不十分である、不十分ではあるけれども、制度発足の意義からいってやむを得ない、まず発足させよう、発足してしまえばあとは幾らでも改善ができるのだ、このようなことででき上がったわけであります。そして四十七年の一月からでしたか、実施されて今日になって今回その改善の法案が出たということになるわけでございますが、先ほどから大臣のお話を伺っておりますと、なるほど、大臣は厚生行政に対する、社会保障、社会福祉に対しては積極的、かつ意欲的な姿勢をもって取り組んでいる。私もこれを認めないわけではございませんけれども、この児童手当に限ってはまだまだその意欲のほどが薄い、こう感じられるわけであります。まず最初にその感じられる内容を申し上げますと、今回の児童手当の手当金の引き上げが非常に低いということ、また手当の額が低い場合は逆に対象児童の拡大といいますか対象ワクの拡大、これを積極的にやるというならまた別でございますけれども、そういう点でも非常におくれておりますし、疑問でなりません。まずお尋ねいたします。
  155. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 児童手当、これは児童の養育費の一部を負担するという、もうほんとうに日本の児童行政の上では画期的な制度であると私は思います。お互いに皆さん方と一緒に相談をさしていただいて、そしてこういう新しい立法が日本において行なわれたということは、私はもう児童行政の上で非常な前進であったと思います。しかしながら、これは国の財政のみならず被用者の子供さんについては、すでに御承知のように会社、工場等にも負担をしていただいている、こういうふうなこともありますので、これを実施するにあたってはなかなかむずかしい問題がございました。しかし、皆さん方の御協力によってこれが実現したということは非常な前進であったと思います。  ところで、相当の財政負担がかかることでございますので、三年計画でやろうじゃないかということでやってきたわけでございます。去年、一昨年と二年やって、いよいよ昭和四十九年度で一応第三子に対する児童扶養手当制度というものは完成する、こういうわけなんです。そこでその額を従来三千円であったものを今度だけ四千円に上げたのですが、初年度と二年度は三千円で終始してきたわけでございます。しかしながら最近の物価はどうも三千円で——ほんとうをいうと三年間の段階的実施ということであれば、やはり前うしろの公平ということを考えてみれば同じ額でいくのがほんとうだと思うのです。しかし、最近の物価の動きが激しいものですから、最近の物価動向ににらみ合わせて、三千円を四千円にした、その程度でございまして、それに関する限りはなるほど金額は少ないということはいえると思います。  それから問題は、一応それはそれなりとして、一応本年度に完成するわけでございます。そこで来年度から今度は問題が別な方面に発展していく、こういうことになろうと思うのです。これは先ほどもどなたかの御質問にもございましたが、ILOの百二号条約からいっても日本の児童扶養手当というものは先進諸国に比べれば範囲が狭い。これは仰せのとおりでございます。それをどの程度まで範囲を拡大していくか、第二子、第一子、さまざまあるわけでございましょう。しかしこれはなかなかたいへんな金なんですね。国費ばかりじゃありません。いまの制度を続けていくとすれば事業主の負担もたいへんなことなんです。そういうこともありますので、慎重な態度は持していかなければならぬと思いますが、本年度に段階的実施が終了いたしました。明年度においては、大橋委員は特にこの問題については御熱心な委員でございましたから、皆さん方の御意見も十分承りながら、範囲の拡大とかそのほかの問題について来年度以降検討をして、これを実現していくというふうに努力をしたい、こんなふうにいま私は考えております。これで一応満足しているなんというものではございません。諸外国に比べましてまだまだ劣っている問題がたくさんあるわけでございますから、そういう問題は次年度以降において十分努力をいたしてまいりたい、こう考えておるような次第でございます。
  156. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 お話なさっていることはわからぬでもございませんが、これは見解の相違というのでしょうか。われわれは、段階的発足、その中身についてはいままでなかった制度をつくるのだ、やむを得ないという立場であった。本来ならば四十七年度当初から段階的ではなくて実施したかったわけです。ですからこれを百歩譲って、政府の立場でわれわれも従ったということになるわけでございますけれども、そういう意味からいきますと、私たちは、今回の引き上げ方については非常にお粗末である。お粗末ということは何も額が低いだけではなくて、支給対象児童の内容においてもお粗末である。これは私一人が言っているのではなくて、当時、社会保障制度審議会のこれに対する答申が出ております。この中にもはっきり言ってますよ。「本審議会は、他にさきがけて、本制度の創設を提唱して来たところであるが、それが曲りなりにも、また極めて貧弱な内容であるにもせよ、」こうあるのですよ。社会保障制度審議会自身が非常に中身については貧弱だといっておるわけですね。またそのあとに続いて、「本制度は、将来飛躍的に発展をさせなければ本来の目的を達成できない。」とはっきりいっている。飛躍的な発展がなければならぬというわけですから、こうした三千円から四千円程度の引き上げ方では飛躍的といえるでしょうかということが一つ。  それから今回いわゆる段階的な対象拡大が本年度で完成するわけでございますが、私たちはいま言いましたように当初から、第三子ではなくて、むしろ第一子から支給すべきであると言っているくらいですから、そういう点でいえば決してこれは飛躍的な改善ではない、こういわざるを得ないのですが、もう一度大臣の決意を聞きたいところです。
  157. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 ただいま御提案申し上げておりまするような法律の現状においては、確かにこの答申にありますように、そう発展したものとは考えておりません。しかし私どもは、こういう新しい制度というものを生み出すときにはいろいろなむずかしい問題がたくさんあるわけですね。会社、工場等につとめておられる方々についての家族手当の問題とかいろいろな問題があったわけでございます。それから被用者の子供さん方については、会社からも一部負担をしてもらわなければならぬ、こういったような問題もあった。それから国の財政もなかなかそう容易ではないといったふうないろいろな問題があって、やっとこれができたわけでございます。しかし現実は、ある意味から極端な言い方をすれば、大橋委員などから言わせればそんなちっぽけなものとおっしゃるだろうと思うのであります。私もそう声高らかに世界に向かって誇り得る制度の内容ではない、そう思います。けれども、まずこういう制度をつくるということがやはりたいへんなんですね。ですから、今日の段階はこの程度でごしんぼういただいて、そして他日飛躍的発展を期したい、こういうのが私の心情でございまして、来年度以降大いに努力いたしてまいりたいと思います。
  158. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 では、来年度以降の飛躍的発展のためにもう一言申し添えておきますが、この制度発足の時点で児童扶養手当は二千九百円でした。児童手当は三千円だった。ところが今回、スライド制の規定もない児童扶養手当は、福祉年金との関連性でその後改正されて、今回六千五百から九千八百円に引き上げられるわけですね。そうしてみると、児童手当が発足したときはむしろ低かった児童扶養手当が一万円近くなっている。こちらは三千円から四千円でしょう。全く均衡を欠いていると私は思わざるを得ないわけですね。今回はやむを得ない、やむを得ないとおっしゃるからどうしようもないのかと思いますけれども、他日、次の機会というときにはこの均衡を保っていただきたい、こういう気持ちですけれども、いかがですか。
  159. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 確かに当初出発したときには、児童手当が三千円で児童扶養手当は二千九百円、これが母子福祉年金とのつり合い上、今度九千八百円に上がるわけでございます。  そこで児童扶養手当は、御承知のように生き別れの母子の生活を守っていかなければならぬという社会的要請に即してこういうふうになってきたものでございます。二つを並べてみればなるほど均衡が破れたじゃないか、むしろ逆じゃないか、こういう御意見も私はあろうと思います。しかしながら、やはり児童扶養手当を受けられる家庭というものも考えてあげれば、片方よりも多くしてあげるというのも常識じゃないかと思います。しかしながら、来年度以降において大橋委員の言われる飛躍的発展のためにいろいろな問題を考えるとすれば、こういう手当額の調整の問題、それから範囲の拡大の問題等がやはり大きな問題になろう、かように考えておりますから、そういう問題に善処してまいりたい、かように考えております。
  160. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 確かに手当の問題もありますけれども、対象児童の範囲の問題も——いま全世界で児童手当を実施している国が六十四カ国、そのうち第三子以降はわが国とソ連とベトナムの三カ国だけです。スエーデンは第一子以降、イギリス、西ドイツ、フランス等は第二子以降でございます。こういう実情は百も御承知であるはずでございますが、この点も踏まえて次回の飛躍的発展に期待をいたします。  では、時間も限られておりますので、次に年金のほうに移りたいと思います。  前七十一国会におきまして、全国民の注目の的の中で年金制度の審議が行なわれたといっても私は言い過ぎではないと思います。すなわち、政府が言っておりました五万円年金が、はたして言われるとおりのものであるかないかというものだったわけでありますが、残念ながら国民の期待には大きくかけ離れたといえるのではないかと思います。  たとえば厚生年金においては、五万円以上の老齢年金受給者というものは昭和四十九年の三月、いまですね、ようやく受給者全体の約一割程度になるにすぎないということでございました。五万円年金、五万円年金とおっしゃいましたけれども、  これは標準的年金のモデル計算というわけには一般的には見られなかったということがはっきりしたわけです。しかし、わずかでも厚生年金の場合は五万円以上の受給者が出るということは事実でした。それに引きかえまして国民年金のほうでは、拠出制年金が開始されて三十年も経過した昭和六十六年になりましても、五万円年金を現時点で考えた場合ですけれども、五万円年金を受ける人は一人も該当者が出ない、こういう実情にあったわけです。政府説明では昭和六十八年四月に初めて受給者が出るということであったわけでございますが、これにいたしましても二十年先の話。当時まぼろし年金といわれたわけでございますが、やむを得ない実態にあったわけですね。しかも、昭和四十七年十一月末で被保険者の八%が任意の付加年金の加入者であったわけですが、したがいまして、実態的には夫婦四万円年金としかいえないような内容であったわけです。したがいまして、今後国民年金は付加年金、いわゆる所得比例、これを充実、改善して、厚生年金と老齢年金との均衡をはかっていく必要がある、私はこう思うのでございますが、いかがなものでございましょうか。
  161. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 昨年法律提案いたしましたときは、まぼろしとかなんとかいろいろ言われましたが、しかし、厚生年金は実際のところ五万円年金になるわけでございます。   〔斉藤(滋)委員長代理退席、山下(徳)委員長代理着席〕 しかし、御承知のように、改正前の法律はすでに二万円水準年金でございましたから、大体あの当時の法律のもとにおいて受け取りましたのは一万九千円かそこらが平均でございましょう。しかし、これが再評価によりましてこの二月に、現実にそれはたいへんな額をもらっているのですよ。これはみんな喜んでいまして、私のところにはこんな上げていただいていいのでしょうかというお礼状が一ぱい来ているのです、ほんとうを言うと。(発言する者あり)これはほんとうなのです。おそらく大橋委員なんかにも、社労の委員でございましたから、たくさんのお礼状が来ておったのじゃないかと思うのです。  そこで、厚生年金のほうは長い歴史を持って成熟しておりましたから、それも可能でありました。しかし、国民年金は、何も言いわけするわけじゃありませんが、それはできたばかりの制度でございますから、ある一定の年数を経れば五万円年金になる。これはかけ引きありませんよ。私どもこんなことを言ったって、私のほうは何も一つも得するわけじゃないので、国民が喜ぶことなのですから。ある一定の年数が来れば、間違いなく夫婦五万円という年金額に来るわけでございます。しかし、それが現実に来るのはだいぶ先である、これは私もわかります。ですから 大橋委員の仰せになりますのは、その何十年先になるのなら、それをもうちょっと早く詰められぬか、こういう趣旨かとも思います。そういう点は私は、今回のこのスライド制というものが、そういうものを実現させる非常な好機になると思うのです。といいますのは、現在の十年年金は、御承知のように夫婦で二万五千円でございましょう。それが今度はかりに物価スライドで二〇%かに上がったとします。そうすると、夫婦年金で、十年年金でもう三万円になっちゃうのですね。そのくらいならば、やはり本来の五万円年金のほうも、もっと早く五万円になるようにしろとかいうふうな意見が出てくると私は思うのです。国民年金については早く成熟させろ、こういう意見が出てくると思うのです。しかし、それはあまり早く私らやろうとすると、今度は保険料にはね返る、こういうことでまた皆さん方から反対を受けてもいかぬので、まあ皆さん方のほうでそういうある程度の保険料の増徴はやむを得ない、こういう空気が出たところで、それをなるべく短縮して、成熟させて、そして厚生年金と同じような調整をとっていく、こういう方向になるのじゃないかと思うのです。  ですから、私をして言わしむるならば、そういうふうな高い水準給付をいただこうとするならば、ある程度の保険料増徴はやむを得ないのだ、こういう空気が出ていただくことが私は非常に望ましいと思うのです。どうかそういう意味において、大橋委員給付改善を望むならば、すなわち二十年先に五万円になる、それをもっと二十年先を十五年先、十年先に五万円年金を現実にもらえるようになるというふうな制度にしようというのならば、ある程度の保険料の増徴はやむを得ないのだ、こういうふうに野党の諸君もみんななっていただけると、これは国民年金の五万円水準年金というものはもっと早く年数を短縮してやれる、こういうふうになっていくのじゃないかとも思います。  いずれにせよ、国民年金のほうは成熟がおくれておりますからやむを得ないなんていうことで、私は満足をしてはおりません。これを短縮するようにしなければならぬ。しかし、それには保険料という問題があるのだということもお忘れにならぬようにしていただきたい、こう考えておるわけでございます。
  162. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 その保険料の問題はあとでゆっくり論議しようと思って準備しておりますから。  いずれにいたしましても、国民年金は夫婦合わせて幾ら、こうなっているわけでしょう。いまの妻の加入は任意なのですよね。したがいまして、いま私が言わんとしたことは、国民年金の妻のいわゆる任意加入の問題について、今後の厚生省の考えはどうかと聞いたわけですよ。先般議論しましたときには、被保険者のわずか八%程度だったのです。今回の厚生白書によりますと、昨年同期に比べますと約六十万人が増加している。これは関心が深まってきた証拠であろうと私も見るわけでございますけれども、それにいたしましても、これに取り組む厚生省としての態度あるいは方針、それを聞きたいわけです。
  163. 横田陽吉

    ○横田政府委員 国民年金の付加年金につきましての妻の加入の問題でございますが、これはなかなかむずかしい問題でございますが、ただ、先生御指摘のように、最近は付加年金の趣旨もだいぶ理解されてきておりまして、非常にふえております。  それからもう一つは、国民年金の年金としての仕組みをつくります際に、付加年金の加入し得る口数をもっとふやして、実質的に厚みを持たせたほうがいいという御意見、これも審議会等でもございますし、私どもも一つの検討の問題といたしております。ですから、先生のお述べになったようなそういった考え方も、私どもは、非常に重要な御意見といたしまして検討をいたしたいと思います。
  164. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 それでは、基本的な問題になろうかと思いますけれども、いまのインフレの高進あるいは物価高、経済情勢の激変に応じまして、社会保障長期計画懇談会の中間報告や看護婦の需給計画、あるいは社会福祉整備計画等々すべて手直しされまして、いわゆる公表がなされたわけですね。ところが、肝心の医療保障だとかこの年金制度の長期計画についてはさっぱりまだ明示がなされていない、私はこう感ずるわけです。これはまさに画竜点睛を欠いたものではないか、こう指摘したいところなのですがね。この点はどうなのですか。どう思われますか。
  165. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 昨年経済社会発展計画というものを、経済企画庁が中心になりまして、内閣できめたわけでございます。それに基づいて、社会保障の分について長期計画をつくろうというので懇談会をつくったわけでございますが、まあ、さしあたり委員の方々に非常に御苦労を願いまして、社会福祉施設につきまして、従来の計画の見直し、それから新規の社会の要請、そういうことを頭に描きながら、社会福祉施設の整備についての計画、それから看護婦の養成計画、こういうものをきめたわけでございます。  そこで、いまこれから本格的に取り組んでいこうと思いますのは、医療保険の問題と年金問題なのですが、年金は、御承知のように、昨年の九月の末に、すったもんだやって、やっと参議院において通って成立をした、こういういわくがあるわけであります。しかも、また最近における物価の動向ということも考えなければならぬ問題でございましょう。それから、先ほど来、朝からいろいろお話のありました賃金の上昇というものがどういうふうになっていくか、これは、年金の改善をやるのに必要な要素が非常に浮動的なものが多いのですね、年金を考えてみれば。そういうようなことでおくれておるわけでございます。しかしながら、年金の政策改定ということも、私は、四年を待つまでもなく、だいぶ近づいてくるようになったという感触をけさ申し上げたが、私はそのとおり思っているのです。これはほんとうに心からそう思っている。ひとつぜひこれは何とかそういうふうにしなければなるまい、こう思っております。そういうふうな考え方から、ことしの春の賃金値上げの状況がどうなるか、それも見直しながら、年金の水準の改定というものに手をつけねばなるまい、そういう段階で、長期懇談会で大筋の青写真をつくっていただくようにしなければならぬだろうと思っております。  それから、医療保険のほうは、これは私は相当な改善だったと思うのです、去年の改正というものは。これはやはり画期的なものです。これは世界に出してそう恥ずかしくない、非常にりっぱなものであったと私は思う。しかも、七割給付を家族に実現する、それから三万円の高額医療をやる、これはたいへんなことですよ。それから、ただ一つ残っておりますのが日雇い健康保険ですね。これも私ども、思い切って政管健保に準じてやろうじゃないかというわけで、今度の国会に提案をしておるわけでございます。そういうようなことで、大体医療保険については、体系的な整備が一応できてくるわけでございますから、今後はこの大道の上に乗ってどういうふうな積み直しをしていくか、そういうことを考えていかなければならぬ。でございますから、今度の国会において日雇い健保が皆さん方の御協力によって成立しました後の一つのプログラムとしてこれを考えていきたい、こんなふうに考えておるわけでございます。  したがって、私どもなまけておるわけでもなし、委員の方々がサボっておるわけでも何でもありません。浮動的な要素がたくさんありますので、浮動的な要素がある程度固まった段階において長期的な計画を立てたい、そして最終年次においては振りかえ所得を八・八%に持っていこう、こういう強い決意をもって臨んでいこう、こういうわけでございます。
  166. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 御承知のように、わが国の社会保障給付費の中に医療保険関係が六〇%占めているわけですね。現在、年金給付がこの社会保障給付費の中に占める割合というものがどの程度なのか、それは数字的に答えていただきたいことが一つと、それから先進国並みといいますか、医療給付費との均衡をとるために、今後どのような方針で年金給付改善をはかっていこうとなさるのか、ちょっとダブる感じになりますけれども……。  要するに、いま私が言いましたように、医療給付費と年金給付費との均衡というのは、いまものすごい断層がついているわけですが、この均衡をはかるための年金改善の方針はどうなのかということ、これはやはり局長さんではなくて、大臣の考えになると思いますので、お願いします。——それじゃ、その資料をさがすまで次の問題に移りましょう。  厚生年金、国民年金は、いわゆる五万円年金といわれてくるようになりました。これは内容については欺瞞的だとかいろいろいわれてきましたけれども、いわゆる五万円年金といわれてきたわけですが、肝心の老齢年金の最低保障額が厚年、国年には設けられていない。これでは、この老後の生活保障をする年金としてはきわめて不十分である、片手落ちである、こう思うのでございますが、いかがなものですか。
  167. 横田陽吉

    ○横田政府委員 厚生年金自体につきましての最低保障の問題ですが、この問題は、基本的に標準報酬自体が低いと年金の給付額が低くなる。したがって、こういう問題で老齢年金等につきまして、最低保障それ自体をきめるということはむしろさかさまだと考えております。  ただ現実問題といたしまして、御承知のように、定額部分と報酬比例部分とが大体半分半分になっておりまして、定額部分が事実上の最低保障になっておる、こういうふうな構造になっております。ただ問題は、六カ月で年金のつきます遺族年金ですとか障害年金の問題につきましては、六カ月でございますので、通常の計算をしますと非常に年金額が低くなりますので、その場合には定額部分の二十年分を障害年金、遺族年金についての最低保障額というふうなしかけにいたしておるわけでございます。
  168. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いまおっしゃるとおり、障害年金あるいは遺族年金については最低保障額、今回改正されて二万円ですか、額は低いと私たちは思いますけれども、一応こうしてある。肝心のこの国年、厚年等にはその最低保障額がきめられていないということは、その老後の生活保障という立場から見た場合、不十分ではないか、こう感じるわけですね。同時に、この遺族年金あるいは障害年金の最低保障額も二万円では低過ぎる、最低やはり三万円には引き上げるべきではないかと考えるのですけれども、いかがですか。
  169. 横田陽吉

    ○横田政府委員 この問題につきましても、実は今回のスライドをいたすことになりますと、まあどういうふうなやり方になるかは未定の要素も多少ございますけれども、スライドによってその金額自体は相当変わってくる、こういうことになります。
  170. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 大臣、先ほどの医療給付費と年金給付費とのバランスからいって非常に断層がつき過ぎている、この関係について、今後年金改善の基本的な考えはどうかということをお尋ねしたわけですが、これについて。
  171. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 大体この社会保障給付費と国民所得との比率で申し上げたほうがおわかりいただけると思うのですが、昭和四十九年度、いま御提案申し上げておる予算等があるいは法律が通りますときには、社会保障給付費と国民所得の比率は八%になります。それが五カ年計画の五十二年度、最終においては九・七、約一〇%ということになるわけでございます。  そこで、この国民所得に対する社会保障給付費の比率が八%というのは、諸外国とどの程度になっているかということからまずちょっと申しますと、アメリカよりは日本のほうがいいのです。ただ西ドイツ、フランス、スウェーデン、イギリス等に比べますと劣っておりまして、社会保障給付費というものの国民所得に対する比率は大体半分、こういうことになっております。  そこで、半分になっておりまして、諸外国の年金と医療との関係はどういうふうな比率になっておるかというと、その社会保障給付費の三分の一とまではいきませんが、大体三分の一近くが年金。医療が大体年金より多いところと低いところとある、こういうふうになっております。  そこで日本はどうかというと、この八%のうちの三分の一どころじゃなくて、医療が半分、いまお述べになりましたように八%のうちの四%、こういうことになるわけでございますが、年金については現在八%の中で占めている比率は二・五。ところがこれは五十二年という三年後になりますと、逆に年金のほうがずっとふえていくのです。社会保障給付費がふえていきますが、医療費のほうはそれほどふえない。年金のほうのその中に占めている比率がふえていく、こうなるわけでございます。  それで、おそらくこれがことしのスライド制なんというようなものを実現していきますと、ことしだけでもがらっと変わっていくような感じがいたしまして、諸外国の年金と医療との比率からいうと、年金のほうの伸び方のほうが強くなっていく、こういうふうになると思います。医療費のほうは、金額はふえましても比率からいうと横ばいになっていく、こういうわけで、社会保障給付費が伸びていくのはまさしく年金が大宗になっていくだろう、こういうふうに考えられるわけでございまして、これは私ども、今日までいろいろ申し述べておりますとおり、事業者がどんどんふえるだろう、この傾向と同じ傾向をたどっていくだろう、こう思います。  しかし、さらに最近における賃金、物価の問題とかいろいろな問題の上から、五万円水準年金を何とか政策改定すべきだ、こういうふうな声も徐々に上がってまいりましたし、そういう声を実現する時期もだんだん近づいてくれば、この年金が社会保障の中で占めている比率というものはこれはもう激増していくのじゃないか、こういうふうに考えられる、こういうふうに申し上げていいと思います。
  172. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 厚生大臣の積極的な意欲の上から見るとがらりと変わるかもしれませんけれども、まだ事実はそんなにがらりと変わるほどの内容じゃないのですね。やはり政策的に大改善をして年金の給付を引き上げていくという方向をとっていただきたい、こういうことです。  先ほど最低保障額の問題を述べたのですけれども、これは厚生省に直接関係はないけれども私の意見として申し述べておきますが、公共企業体共済組合法には長期給付障害年金、遺族年金について最低保障がないのは他の公的年金と比較して均衡を失していると私は思うのであります。これも早期に最低保障額を設けるべきだという考えがあるのですが、これは厚生省として意見、見解を述べられますか。——全然述べられない。述べたらたいへんですかね。じゃ、ぼくの意見として言っておきますから、今後こういう改善の際にはわれわれの意見を想起して参考にしていただきたいと思います。  それでは次にスライド制の問題に入っていきたいと思います。  昨年の改正によりましてスライド制が導入された。先ほど何人もの方が議論しておりましたけれども、現実に年金額が改定されるのは厚生年金でことしの十一月から、国年では来年の一月からというわけですね。しかし、このようにスライドしながらもおくれたのでは、昨今の急激な物価上昇に追いつくことができないという現実があるわけでありまして、この実施時期について先ほどからも何回も質問がなされていたと思うのですけれども、私もわが党の立場からこの問題について触れてみたいと思います。
  173. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 厚年で申しますれば、十一月にスライド制が実施され、現実にその増額部分の金がいただけるのは昭和五十年の二月ということになるわけでございます。こういうことはやはり物価狂乱のこの情勢のもとにおいてどうもぴんときませんね、これは率直に言うて。ぴんとこないと思うのです。ことしの十一月に上がったと言いながらもらうのは来年の二月、五十年ですね。四十九年度がまさに終わらんとする一月前にもらう。そこで何とかこのタイムラグを短縮しようではないかというのが私の気持ちなんです。しかし、これには相当な作業を要すると思いまして、私も大臣として、さあ、これをすぐやれと言っても、できないことをしいるわけにいかない。そこで事務当局に十分検討さしたわけなんです、これはほんとうに。国会で問題になる前から実は検討さした。ところが、保険庁のほうでは、プログラムをつくってやるには数カ月かかる、それを三百万をこす人たちに対して一人一人直していくのにたいへんな月日がかかる、こう言うわけなんです。それでこれはなかなか容易でないとこう私は思います。なかなか容易じゃない。困難だ。困難だというよけいなことを言うなと言う人もおります、先ほど来。しかし事実は事実として申し上げなければならぬ。そこで、実は非常に困難ではあります。しかしながら、心の中には、十一月改定、いただけるのは来年の二月というのはどうもぴんとこないという気持ちがどうしても抜けないのです。そこでこのタイムラグを何とか短縮する方法はないだろうか、こういうことで実は何かいい方法はないか、わが省内でも有能な横田局長ですから、何かいい知恵を出してくれるのじゃないか、こう思って待っているのですが、まだいい知恵を出してくれていない。したがって、まだ私も成案を得てない、こういうことなんです。しかし、成案は得ておりませんが、私は放棄しておりません。何とかタイムラグを短縮するようないい方法はないだろうかということでいま真剣に勉強中でございます。
  174. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 先ほどから大臣はあくまでも国民のためにとおっしゃっておりました。私の気持ちもその点は同感です。そういう意味から、いまのタイムラグの短縮について真剣にとおっしゃっている大臣の気持ちを私はそのまま受けとめておきます。期待いたします。  時間が非常に迫ってきて残念でならないのですけれども、昨年の十月に生活保護基準等が措置費等が五%引き上げられた。なぜそのときに年金額については触れられなかったのかということが一つですね。それから、もう時間がないからあわせて質問しますからきちんとしておいてくださいよ。福祉年金の問題ですけれども、今度七千五百円になる。この引き上げ方については先ほどずいぶんやかましく議論されておりましたけれども、これを繰り返す気はありません。ただ、年金の谷間に置かれていた老齢特別給付金ですかね、これを受ける方々についての引き上げ方が非常にバランスをまたくずしているのではないか。今度は五千五百円ですか。六千円になって当然ではないか、こう思うのでございますが、これは私はあくまでも春闘云々という問題とは別に、あくまでも政策論議として当然これは六千円にすべきである、それでないと片手落ちだ、こういうふうに感ずるのでありますけれども、いかがなものでしょうか。
  175. 齋藤邦吉

    ○斎藤国務大臣 この老齢特別給付金という名前ですか、要するに谷間の方々、大体これが五千五百円ということになりますと、福祉年金の七二%くらいになるわけでございます。これはもともと、私どもはいま八〇%で定額でやりますということを言ったわけではないので、五千円に対して八割なら四千円だ、わかりいいではありませんかということを私、去年申し上げたつもりです。法律的に何も八割と書いているわけでも何でもないのです。そこで一つ考えなくちゃならぬのは、大橋委員御承知だと思いますが、六十八歳の年齢層の方で十年年金の方がある。同じ年齢で——もちろん生まれた月は違いますよ。あと先の違いはありますが、年齢でいいますと、六十八歳の方で十年年金の方は拠出制の年金が来年の一月から支給開始されるのです。同じ年齢層なんです。要するにいままで任意加入にも入ってなかった、入れなかった人が五千五百円とか、前は四千円でしたね、五千五百円とこうなるわけです。ところが、同じ年齢層で、ちょっとあとに生まれた人、あるいはこの四月一日以後に生まれた六十八歳の人は、来年の一月にならなければ十年年金がもらえないのです。この方は保険料を現実に納めているのです。そういうふうなこともありますので、上げろ上げろという気持ちも私もわかりますよ。わかりますが、その辺は適当に考えていくべきじゃないか、こう私は思うのです。したがいまして、私はこの辺が適正なところではないかな、むしろ政府努力を買っていただきたいな、こう思うような感じすら持っておるわけでございます。
  176. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 福祉年金のほうは五〇%の引き上げをした。それに合わせるならば、いま私が主張している六千円になるべきである。この理屈も大臣はわかると思うのですね。ですから、大臣はあらゆる財源の問題等諸般の事情から、なるたけ押える方向にいま気持ちが向いているようでございますけれども、やはり齋藤厚生大臣のこれまでの積極的な取り組みの姿勢からいきますと、これだけがぽこんと穴があくような感じになりますね。せっかくの意欲的な積極的な大臣の姿勢がこれでくずれる、逆に消されてしまうというようなことにもなりかねないと思います。ですから、私のこれは真剣な注意だということも心にとめられて再度検討していただきたいということです。もう一回。
  177. 齋藤邦吉

    ○斎藤国務大臣 それは私大橋委員のおっしゃる気持ちわかります。それはそれで福祉年金との比較においてものをおっしゃるという気持ちはわかります。しかし、一面、同じ年齢層の中で任意加入で長いこと保険料を納めておられた方が六十八歳でおるのです。それが夫婦で二万五千円なんです。それは五年年金。そういう方もやっぱり一部にあるということも考えながら、ほどよいところで額をきめるというのが大事なことではないか。それは、福祉年金との比較においていろいろおっしゃる、六千円まで上げてくれ、これはわかります。わかりますが、五年年金に入っている保険料を納めた方で、その人も現在同じ六十八歳なんです。ところがその人はことしもらえないんですよ。来年の一月からもらえるんです。こっちの谷間の方々はもうもらっているんでしょう、現実。拠出した人はもらえない、こっちはもらっているということも考えてみれば、それは大橋委員、私の気持ちもよく理解できるんじゃないかと思います。
  178. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 とにかく、いまの年金制度には矛盾がたくさんあるわけですね。やはり総合的に大掃除しなければならぬと思います。  もう時間があと少ししかないわけですよ、まだたくさんやりたいんですが……。  これは具体的な問題ですから、これは厚生年金関係になるのですけれども、武蔵野市の矢内秀治さんという方から、私のところに深刻な陳情が参ったんです。その一部をまず読ませていただきます。  「私は右大腿切断、左下肢不全と難病の血友病A型、身障手帳一種の二級です。一昨年十月妻と死別して小学校四年の男児と現在二人暮らしです。私は三十五年から厚生年金障害年金(年金額は昨年十一月からの支給額です)を年三十六万円受けてます。妻は生前小会社に十三年間勤務し、その間十三年安い月給から厚生年金を差引かれました。死後私に遺族年金として年二十四万円出ることに成りましたが、私が受給者のため」というのですから、障害年金でしょうね、「受給者のため支給停止です。」その後ほんとうにかわいそうだと思われるような内容がずっと書かれているわけですが、時間の関係上省略いたしますけれども、要するに、奥さまが働きに行って十三年間保険をかけたわけでございますが、なくなった。その後、御主人のほうが障害年金を受けているために、いわゆる遺族年金の二十四万円は全然受けられない。したがって、奥さまの十三年間の保険料というものは全くかけ捨てになっていくという感じになるわけです。  こういう点、やはり共済年金と厚生年金だったらこれはきちっとできたはずなんですけれども、私は制度上の大きな疑問として残るわけですから、この点についての御意見をひとつ、もう一つ具体的な問題がありますから、簡単に答弁をお願いしたいと思います。
  179. 横田陽吉

    ○横田政府委員 御指摘の問題は、同じ制度の中の二つ以上の給付があった場合の調整の問題なわけです。  御指摘のように、障害年金を受けておられた方が遺族年金を受けられるという場合には、どちらか高いほうを選ぶ、こういうふうな制度に現在なっておりまして、この方の場合は、障害年金の方が遺族年金よりも高いのでそれを選ばれた、こういうことなわけです。  この同一制度の中で二つ以上の年金給付を重ねて支給するかどうかという点につきましては、非常にむずかしい問題でございます。いますぐこれが解決できるという目安はございませんけれども、非常にむずかしい問題ではあるが研究はしなければならない、こういう感じでございます。
  180. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 時間があればもっと内容に突っ込んでいきたいところですけれども、時間の関係で……。  もう一つ実は来ているんですよ。次も厚生年金関係になるわけですけれども、切実な陳情でございます。  これは北九州の八幡の方、吉川八千予という御婦人からでございますけれども、これは法改正の谷間に放置されたという実例です。非常にかわいそうな問題ですが、厚生年金の旧法において、この方は寡婦年金をもらったわけですけれども、当事二十九歳だったんですね。当時四歳と一歳の子供には遺児年金が支給されていたわけです。当時の法律では、子供が十六歳に達したらば同時にこの受給権を失権することになっていたわけです。さらに二十九年の法改正で、十六歳から十八歳に引き上げられた。そういうことになりましたために、したがいまして、昭和三十九年でその次男の一歳の方が十八歳に達したわけです。そういうことで失権になったわけでございますが、その次の年の四十年の六月に法改正がなされたわけでございます。それは、四十年六月以降に失権する者については、これまでの寡婦年金を遺児年金にかえて支給してやりましょうという内容に変わったわけですね。したがいまして、当時一歳の子供が零歳であったならばこの恩恵に浴したわけですけれども、一歳であったばっかりに、あるいはもう一年早く法改正がなされていればこの方は助かったという、いわゆる法改正の谷間に置かれた状態なんですね。こういう方は少ないと思うのですけれども、何とか特別に救済の手が打たれないものだろうかということなんですけれども、いかがなものでしょうか。
  181. 横田陽吉

    ○横田政府委員 これも、制度自体の冷酷といえば冷酷な一面なんでございますけれども、ある時点におきまして有利な改善がなされました場合に、それをさかのぼることの可否という問題につきましては、実は年金制度すべてがそうなんですが、事実関係の認定というものを過去にさかのぼってなすことが事実上不可能な場合が多い、そういうようなことから、いまお話しのような事例につきましても、新しく有利に改善いたしました制度自体を遡及適用するということはやらないのが、大体の場合になっております。そういった関係から、いまのような事例が発生するものでございます。
  182. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 最後に大臣に、これはとても局長が答えられる内容じゃなかろうかと思いますので……。  いま申し上げましたように、法改正の一年早いかおそいかのことで、受けられる遺族年金が受けられない。もう本人は五十の坂を越した方で、神経痛といいますか関節炎といいますか、そういう病気をわずらいながら、痛みを耐えながらまだ仕事に出ているわけですね、非常にかわいそうな立場にあるわけでございまして、これは非常に特殊な例であろうと思います。あったとしてもきわめてわずかな員数だろうと思いますので、大臣の立場から特別配慮をお願いしたい、こういう気持ちなんですけれどもね。
  183. 齋藤邦吉

    ○斎藤国務大臣 御承知のように、日本は成文法主義というものをとっておるものですから、まことに法というものは冷酷な場合が間々あるものでございます。諸外国の中では、慣習法的にいろいろやるものもありましょうから、そういう国はいろいろ弾力的にやれるものもありましょう。しかし、法というものは冷酷な場合もあり得るわけでございますので、いまお述べになりましたようなほんとうにお気の毒な方々、私も同情にたえません。しかし、にわかにそれを私が法律を無視した形においてやるというわけにもいかない。そこがつらいところなんですね。私も大橋委員がそういうお話なら、もうすぐ何とかしましょうと言いたいところなんです。ところが、日本は慣習法の国ではない、成文法主義の国であるというところの一つの悲哀ではないかと思います。しかし、お述べになりましたようなことは私も今後とも十分考えます。考えますが、あまり期待は持たれぬようにしていただきませんと、これはかえってまずい、こう思います。
  184. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 時間が来ましたので終わります。
  185. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 小宮武喜君。
  186. 小宮武喜

    小宮委員 最初にひとつ老人という定義と、老人とは何歳からをいうのか、ひとつ正確に教えてください。
  187. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 ただいまのお尋ねは、老人の定義はどういうものかということでございますが、非常にむずかしい問題でございまして、と申しますのは、老化の現象はきわめて個人差が大きいわけでございます。したがいまして、一定の年齢をもって律することはきわめてむずかしいし、また適当でないとも思われるわけであります。したがいまして、老人福祉対策、これは非常に広範多岐な施策が講ぜられておるわけでございますが、それぞれの施策ごとに、老後の各段階に対応して妥当な年齢を設定して施策を実施しております。したがいまして、六十歳から施策を講じているものもあれば六十五歳からのものもある、あるいは七十歳になってからのものもある、こういうふうに、施策ごとに適当な年齢を設定して実施しておるというのが現状でございます。
  188. 小宮武喜

    小宮委員 何歳から……。六十歳から……。
  189. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 六十歳、六十五歳、七十歳と、大きく分ければ大体この三つの段階に分かれていると思います。小宮委員 六十歳からも老人、六十五歳からも老人、七十歳からも老人ということになると、それぞれ個々の老人の老化現象に応じて、それではその人に、あなたは六十五歳になったから老人ですよというふうに認定するわけですか。
  190. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 先ほど申しましたように、老化現象というのは非常に個人差があります。したがいまして、一定の年齢をもって老人であるとかないとか律するのはきわめて困難でございます。ただ、老人福祉対策というものをいろいろ講じます場合には、施策の内容に応じて、この施策は六十歳以上の方に適用する、あるいは六十五歳以上の方に適用する、こういうふうにそれぞれの施策ごとに年齢を設定して実施している、こういうのが現状である、こういうことでございます。
  191. 小宮武喜

    小宮委員 その問題は私はせんさくするつもりはないんです。問題は、いま言われたように、六十五歳以上の老人の方々で六十七歳から六十九歳までは老齢特別給付金が出ている。それが今度の改正案では五千五百円。七十歳以上の方々については、今度五千円から七千五百円に引き上げられる。もちろん六十七歳から六十九歳までの谷間の老人に対しては、昨年の国会でようやく成立をしたわけでございますが、そのような意味では同じ老人でありながら六十七歳から六十九歳までの人と七十歳以上の人と、どうして五千五百円と七千五百円に区別をしなければいかぬのか。その点、いまの老人福祉法では七十歳からなっておると言われるけれども、これは大臣、やはり矛盾があれば、法律というのは永久不変のものでもないし、改正していいわけですから、その意味で、私はこれは前回も主張したんですけれども、一律に七千五百円にすべきだという持論を持っておりますからこういうふうな質問をしているわけですが、この点について、六十七歳から六十九歳までの人も七十歳以上の人も同じく七千五百円の老齢給付金にすべきだ、また老齢福祉年金にそろえるべきだという気持ちを強く抱いておるわけですが、どうですか。
  192. 横田陽吉

    ○横田政府委員 御質問の点でございますが、福祉年金制度ができました時点で、同じ年齢階層以上の方、この方はいずれも七十歳になりますと、所得制限の問題等はございますが、老齢福祉年金の受給権に結びつくわけでございます。したがって、老齢特別給付金の制度ができますまでの間は、七十歳までお待ちになって福祉年金を受けられる、こういう仕組みだったわけです。ただ、昨年、年金につきまして非常に画期的な改正がなされました際に、そういう階層の方は御承知のように拠出制の国民年金には結びついておらないわけでございますし、年金の年ということであれば、七十までお待ちになる、その寸前の方についても何らかの年金を、こういうようなことで、国会修正でこの老齢特別給付金というものが入ったわけでございます。  したがって、同じ年齢階層でその年齢の方よりも年をとっておられた方は、従来から七十までお待ちになって老齢福祉年金を受けておられる、そういうことでございますので、現在老齢特別給付金を受けておられる方も、七十歳になりますと、当然所得制限その他の事情の変更がなければ老齢福祉年金を受けられるわけでございますので、そういった意味合いから、この程度の差をつけるということは、むしろ当然といえば語弊があるかもしれませんが、やはり理屈のあることだと考えております。
  193. 小宮武喜

    小宮委員 いろいろ反論がありますけれども、一応先に移ります。  大臣、国民年金審議会ではこれまでの老齢福祉年金が小づかい銭程度であるということで、生活保障的な年金に改善するようにという意見書を大臣に提出しておりますが、大臣はこれをどう受けとめておられますか。
  194. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 これは福祉年金を、国民年金法をつくりましたときに、こういう制度を補完的な意味、拠出制国民年金、それの補完的な意味においてつくったわけでございますが、先ほど来いろいろお話のありましたように、七十歳以上の方々の全生活をささえる金という意味においてはできていなかった制度でございます。何と申しますか、敬老的な年金で、当時これは御承知のとおり千円、それからその後毎年百円だ、二百円だと、こう上げてきたわけなんです。ところが田中内閣になりまして、毎年百円、二百円、みみっちい、そういう小づかい——小づかいと言っては悪いですが、そんなに少しずつ上げていくのはどうだろうか、こういうふうな話もあって、三千三百円、それから五千円、七千五百円、一万円という飛躍的な上げ方をしてきておるわけでございます。それはやはり飛躍的ですよ。そこで、そうなってきますと、かりに来年一万円となると夫婦で二万円ですね。十年年金は夫婦で二万五千円。ことしの暮れにスライドすれば、二〇%とすれば三万円、こうなってまいりますと、敬老的な福祉年金にとどめておくことが社会通念上適当であろうかどうか、こういう声が起こってきたわけです。これは、先生方の御意見もそれに反映しているわけです。あんなのでいいか、あんなので食えるかということばかり言われるものですから、これはもともと敬老ですと言っても皆さん聞いてくれないのですよ。聞かないですね。そういう空気になりましたので、やはり敬老年金的から本来的な年金に順次移していく必要があるのではないか、こういうことを指摘して、年金審議会が、社会保障的性格を帯びるようにすべき段階に来ておるではないか、こうなったわけなんです。私は、まさしく方向としてはそういう方向が正しいと思うのです。しかしいまはどうか。いまはまだそこまでいっていません。そういう方向を目ざして一歩ぐらい前進というところかなという感じを持っておるわけでございます。現実はそうなっていません。けれども、将来はやはり七十歳以上の方々の、無拠出の方々の老後の生活をささえるような社会保障的な年金に持っていくべきだ、これは私はそう思います。これは政治の力においてそういうふうに持っていくべきだ、方向は間違いはない、かように私も考えておりますし、今後ともそういう方向に努力していきたいと思います。しかしそういう努力をするにあたって、やはりこれは国民の税金ですから、そこは慎重に考えていかなければならない、そういうように考えておるわけでございます。
  195. 小宮武喜

    小宮委員 大臣、労働省の高年齢者の雇用対策の中では、大体五十五歳以上を高年齢者として、六十五歳までを雇用対策の対象として、五十五歳から六十歳まではひとつ定年を延長させようじゃないか、六十歳から六十五歳までは雇用対策と社会保障との組み合わせでいこう、六十五歳以上は社会保障制度の中で救済していこうというのが労働省の高年齢者対策の方針なんです。そう見れば、やはり六十五歳以上の人に対しても、それはほかに収入のある人は別ですよ、しかしそうでない人に対しては社会保障的な性格で生活保障的なものを考えていかなければ、非常にいま困っているわけです。すぐ大臣は、いま言うように、それはもう今度思い切って福祉年金についても五〇%引き上げました、福祉予算も三六・七%もう大幅に伸びておりますとこのことをいつも口ぐせに言いますけれども、大体もとになる基準が安いのです。大体千円にしても、これは三十四年だったですか、そのときは拠出制の十年年金が二千円だったからまあそれより高くはできぬだろう、半分にしてひとつ千円にしようか、しかしそれ以下では各地方自治体の敬老年金がもう千円出しておるので、それよりはもっと下げたかったかもしれませんが、それ以下は下げられぬので千円にしようということで、大体この制度が発足したとき老齢福祉年金は千円からスタートしておるわけです。だから、大体スタートが少なくて、しかもいま大臣がいみじくも言われたように二百円とか三百円とか金額を上げていって、ここで五〇%上げてみたとていまの老人の方々の、われわれはやはり生活保障的な考え方ですが、大臣あたりや政府は、全部大体補完だというようなことばを使っておりますけれども、そういうような意味では私今回のこの年金法の改正案については大体不満です。すぐ政府は金がない、金がない、こういうようなことをいわれておりますけれども、私はこの問題についても、たとえば厚生年金あるいは国民年金の積み立て金にしても、昭和四十八年度末では九兆六千億に達しているわけです。したがって、むしろこういった金こそこういった老人の方々の年金のほうに回していただくならば、被保険者の方々も理解できると私は思う。  その問題ともう一つは、御存じのように今度のインフレでもうけた企業から臨時会社特別税を設けて、これで千八百億ぐらいの財源が入るわけですから、むしろそういった財源の配分をこれからどうするかという問題になるでありましょうが、そういうような場合は、インフレ、物価高によって生活が破綻しておるような弱者の人たちに、この千八百億の超過利得税あたりはどんどん回すようにするということで大臣が努力をすれば、私は今回出されておるこの年金法改正の五千円が七千五百円とか、四千円が五千五百円とかいうような金にしても、もっとそちらのほうから回せばもっとあげられるのではないかというふうに考えるのですが、大臣の考え方はそういうような気持ちが全然ないものだから、いかにしていまのままで押えようかということできゅうきゅうとしておるようですね、大臣は。もう少し前向きで考えたらどうですか、大臣。
  196. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 いや、私どもは非常に前向きに考えたからこそ、それは三千三百円から五千円になり五千円から七千五百円、これは飛躍的なものです。それは制度ができたときに、小宮委員御承知のように千円から、百円、年によっては二百円という歴史をたどってきたわけでございます。でございますから、私としては相当飛躍的なものだと思っているのです。心からそう思っています。押え込もうなどというのじゃなく、心からそう思っているのです。敬老的な年金としてはここまでよくもきたものだな、むしろ社会保障的な方向に向き始めたなというて私は喜んでおるのです。  そこでいま小宮委員から御提案になりました厚年の金があるから、こうおっしゃいますけれども、これはそう簡単にはいきませんよ。これは被保険者の方々は自分らの老後の生活を守るためにかけた保険料でございます。それを七十歳以上の方々にさああげましょう、こうなるかならないか。これはなかなかむずかしい問題でもございましょうし、そんなことでまた盛んに使ったのでは、いま保険料を納めている方々の将来の年金給付をどうやって確保するか、こういうことにもなるわけでございます。七十歳以上の方々にさあいまの七千五百円を二万円やりましょう、それじゃ一万二千五百円私が持ってあげましょうといったら、これはたいへんなことですよ。四百万人おるのですから、すぐ何千億というのがすっ飛んでしまうのです。というわけでございますから、おっしゃることはけっこうでございますが、なかなかそう簡単にいかないのではないかと思います。  それから臨時会社利得税のお話がございましたが、これは目的税でもございませんから、社会福祉に全部使うということにはならぬと思いますが、わが田中内閣は社会福祉に最大の重点を指向しておる内閣でございますから、狭義の社会保障のみならず、住宅やあるいは生活環境整備、まあ福祉ですね、そういう内容に多く使われると思います。すなわち総需要抑制ということなんですから、そっちのほうには金があまり回るはずはございませんというわけでございまして、必ずそっちに使わなければならぬということは言えないと思いますが、田中内閣の性格からして、そちらのほうに多く金は使われるであろうということを私も信じておりますし、期待もいたしておるような次第でございます。
  197. 小宮武喜

    小宮委員 私が厚生年金あるいは国民年金の積み立て金が九兆六千億あると言ったのも、いま言われるその金がほんとうに被保険者のほうに還元されておれば私は文句を言わない。しかしいまその金だっていろいろな方面に使われておるわけですね。だからその中からそれをこちらに回せば、試算はしておりませんけれども幾らかでもあげられるようになるのではないかという気持ちを私は持っているわけです。しかしその問題はもう時間がたちますから。  それで、これは大臣にもひとつ考えてもらわなければいかぬのは、たとえばいまのこの老齢福祉年金にせよ、老齢特別給付金にせよ、この支給の問題ですが、一月から四月までの分については五月六日以降に支払っておるわけですね。五月から八月までの分は九月六日以降、九月から十二月分は翌年の一月以降ということになっているわけですから、この問題について、私は十二月国会でもいろいろ申し上げましたけれども、せっかくお年寄りにお年玉として渡す場合に、正月を過ぎてから渡したほうが喜ばれるのか、正月前に渡したほうがほんとうのお年玉として喜ばれるのか、それを考えた場合に、この前の大臣の答弁は郵便局が忙しゅうございますから年末はそれは無理でございますと言っておりましたけれども、やはり九月から十二月分については、大体十二月中に支給できるような配慮をすべきじゃないのか。どうしてもそれができぬということであれば、たとえば九、十、十一月を十二月六日以降に支給してもいいわけです。やろうと思えばおのずからそういうような考え方が出てくるわけですが、ひとつお年寄りの老齢福祉年金の支給を十二月に限っては正月前に支給するように検討してもらいたい。どうでしょうか。
  198. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 それはたしか昨年の十二月の臨時国会でございましたか、各党からもいろいろ御意見があったわけなんです。そこで私ども事務的な話ばかりしていては申しわけないのですが、郵便局につとめておる方々は十二月というのはたいへんな月らしいのですね、ほんとうに。そんなようなことで、なかなかこれは容易でないというお話でございました。しかし、まだこれからだいぶ先のことでもありますから、私はそのお気持ち、非常に理解しているのです。恩給についても十二月に特例で支給しているという例もあるのです。これは私も知っているのです。そういうこともありますので、これはいますぐ結論は出せませんけれども、十分研究をいたします。郵政省のほうともよく相談をしまして、一月の老齢福祉年金の支給を十二月に何とかできないかという問題について、いますぐ結論は出ませんが、頭の中に入れて、非常にやかましく郵政省と相談します。その結果、結論を出したい、こういうふうに考えます。
  199. 小宮武喜

    小宮委員 ぜひそれは実現してもらいたいと思うのです。  次に、いま老人の方々から非常に多く訴えられているのは、先ほどの質問にもありましたけれども、老齢福祉年金と他の年金との併給制限の問題です。むしろこのほうが最近老人の間に非常に高まってきておるのです。そういうようなことで、この問題について若干質問します。  七十歳以上の老齢福祉年金の受給者で、他の公的年金との併給制限によって受給できない人がどれくらいおりますか。それと、その数字は全体の受給者の何%になりますか。
  200. 出原孝夫

    ○出原政府委員 昭和四十八年十二月末現在で公的年金の受給による停止者は十七万八千七百人おります。
  201. 小宮武喜

    小宮委員 やはり大きいですよ。だから、五千円を七千五百円に上げたといばっておられるけれども、実際は併給制限によって受けない人が十七万八千人もいるわけです。これは六十七歳から六十九歳までを入れたらまだ数字は上がりますよ。そこで大臣にぜひとも考えてもらわなければならぬのは、今度は十万円から十六万円に引き上げられましたね。それにしても、むしろこの際、併給制限をもう撤廃すべきだという考え方に私は立っているわけです。もう御承知と思いますけれども、この問題については数件の行政訴訟が行なわれております。御存じですね。  昭和四十三年に老齢福祉年金の夫婦受給制限無効の訴訟がありまして、これは国が破れたために年金法改正で夫婦の受給制限を撤廃しているのです。また障害福祉年金と児童手当の併給制限についても訴訟が行なわれて、一審で国が破れたために児童扶養手当法の改正をやって、国はまた併給制限を撤廃しているわけです。現在でもまだほかに訴訟が残されておるわけです。訴訟されたやつは必ず負けるわけですから、大臣、裁判で負けてから法律改正するようなみっともないことはやめて、この際、併給制限を撤廃すべきだというのが老人の方々の全部の声なんです。いま老齢福祉年金との併給制限無効はかなり出ているわけですね。それほどいまの老人の福祉年金が安いからこういうような訴訟が起きるわけです。老齢福祉年金を、いま大臣が言われるようにひとつ三万円ぐらい上げましょうということになれば、たとえ他の公的年金との関係があってそちらをとめられても、こういうような訴訟は私は起きないと思うのです。どちらも小さい年金を、こちらをもらうとこちらはだめだという併給制限をするから訴訟が起きる。訴訟をしたら必ず政府が負ける。負けたから法律改正してやるというようなみっともない——いま、田中内閣は福祉内閣だというようなことを言われましたけれども、それならば大臣、もっと前向きに取り組んだらどうでしょうか。所見はいかがですか。
  202. 横田陽吉

    ○横田政府委員 ただいまの御意見は、実は福祉年金のほんとうの制度の骨幹に触れる問題でございます。それはどういうことかと申しますと、他の一切の公的年金の適用を受けてない方のために仕組まれたものが福祉年金で、制度発足以来そういった基本的な性格は全然動いていないわけです。ただ、現実問題といたしまして公務扶助料の問題、これは非常に特殊な性格の問題でございますし、それから恩給のほうも、特に短期で恩給がついた方につきましては、その金額が非常に低いために問題があるということで、特例中の特例としてそういった併給を処理いたしておるわけでございます。したがって、たとえばよその手当との併給の問題がどうでございますとか、そういった問題とは性格を異にいたしますので、私どもは、他の公的年金の併給の限度額については、いま申しました普通恩給等についてはできるだけ引き上げるということをやりましたけれども、そういった仕組み自体を全くはずしてしまうということは、最初申しましたように福祉年金の性格を全く変えてしまうことでございますので、きわめて困難な問題だと考えております。
  203. 小宮武喜

    小宮委員 その併給制限を撤廃するということは非常に困難かもしれないけれども、制限の緩和を思い切ってやるように——今回は十万円から十六万円に上げたけれども、思い切って考えていただかぬと、国を相手どって次から次に訴訟をやられて、大臣は参考人で裁判所に呼ばれてたいへんですよ。それはそれとして、時間がないですから次の問題に移ります。  次の問題は、たとえば老人のお世話をするとか、身体障害者のお世話をするとか、母子家庭のめんどうを見るとか、そういういろいろな社会福祉の第一線に立っておる民生委員の問題です。この民生委員の方々は、こういった福祉業務のために、多いときには月に六日間、忙しいときは十五日ぐらいその仕事に費やされるというのがいまの現実なんです。ところが、この民生委員人たちに対する手当というか報酬というか、これがあまりにも安過ぎる。いま民生委員の方々の手当は幾らになっておりますか。
  204. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 民生委員に対する手当でございますが、これは都道府県分の地方交付税として計上されておりまして、四十八年度におきましては一人当たり年額一万三千円でございましたが、自治省と折衝して、四十九年度におきましてはそれを一万八千円に引き上げております。
  205. 小宮武喜

    小宮委員 それは月じゃないのですよ。年に一万八千円ですよ。月に割ったら幾らですか。千五百円じゃないですか。民生委員法を見てごらんなさい。これは昭和二十三年にできておる関係かしらぬが、第一条を見ても「民生委員は、社会奉仕の精神をもつて、保護指導のことに当り、社会福祉の増進に努めるものとする。」第十条では「民生委員は、名誉職とし、その任期は、三年とする。」と書いてある。大臣、いまごろ「名誉職」とか「社会奉仕の精神」といったって通用しますか。いまなっておる民生委員の方々はほとんど六十歳以上の方なんです。厚生省は民生委員の若返りということを盛んに奨励しておりますけれども、若い人が民生委員になるはずがないのです。自分のうちをあけて報酬は少ない。それに、月のうちに忙しいときは十五日も幾らも民生委員の仕事をやる。そればかりじゃないのですよ。民生委員の方々は社会福祉関係のあらゆる行事に招待を受けます。そうすると、皆さん、千円、二千円じゃないのです、やはり三千円ぐらい持っていくわけです。そしてやはり自分の金で、なくなられた場合も香典を出すわけです。大体民生委員が私費で負担しているのはどのくらいだと思いますか。
  206. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 民生委員が自費でどの程度の費用を支弁しているかにつきましては、いまちょっと厚生省として資料を持っておりません。
  207. 小宮武喜

    小宮委員 それは社会福祉協議会の大会あたりでも資料が出ておるように、みな大体最低毎月七千円くらい使っておる。それで、七千円を使って、私費まで使って、民生委員の手当は年間一万八千円、月に千五百円。これではほんとうにもうお金持ちの、時間があり余って困る人、そういうような人しかやる人いないのです。特に若い人は。御承知のように、いま五十代でも六十代でも遊んで食える人はいないですから、自分の仕事を持った人はだれも引き受けてくれません。しかし、この人たちはそういうような職掌柄、あまり口にも出しておりませんけれども、少なくとも、やはりもっと何とかしてほしいということを、われわれは各民生委員と会って聞いてくるのです。だからもっと——まあ一万三千円を今度は一万八千円に上げましたといばって言えますか、そんなことが、あなた。そして大臣、二十年以上ですか、大臣表彰は。大臣招待をいたしますと、夫婦同伴で東京に来なさい。旅費は一銭も出ないのです。あなた、北海道、九州から東京に夫婦で来たらどのくらい金が要りますか。そんな、月に千五百円ぐらいの金しか払わずにおって、それで東京に招待するときも、夫婦同伴で来なさい、その旅費も皆さんみんな自分で出しなさい。大臣、ようそういうことが言えるものですね。厚生大臣の表彰ですよ。そういうような安い、いままでの報酬で黙々と働いてきたこういうような民生委員の方々に対して、表彰するときぐらいはやはり旅費ぐらい支給するというようなことも考えぬと、あまりにも名誉職だとか社会保障精神に甘え過ぎておらぬですか。もっとやはり、民生委員の方々はこれだけ黙々と自分の職務に苦労しておる。この人たちに対してもっと遇する道を考えるべきだろうと思うのです。そうしなければ、民生業務というものはもうたいへんなものなんですね。民生委員のいまの報酬とほかの保護司や統計調査——いろいろ調査して全部調べて比べてみなさい。話になりません。だから私はもっと、今度は予算を組んでおるからすぐはちょっと無理だと大臣も言うでしょうけれども、もっとこういうような民生委員を大事にしなければ、この社会福祉の第一線で働いておる民生業務、社会福祉業務というものは停滞しますよ。その点について大臣どういうふうにお考えですか。
  208. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 民生委員の方々は非常に、社会福祉の第一線に立って御活躍を願っておる方々でございますので、いまのような状況で十分であるかということになりますと、私もいささかじくじたるものがあります。今後とも物心両面にわたって処遇改善をするように大いに努力をいたしたい、かように考えておるような次第でございます。
  209. 小宮武喜

    小宮委員 それは大臣、ひとつぜひ約束をしてもらわぬと、大体いまのこの法律そのものが名誉職だとかなんだとか書いておるけれども、実際にもう少し、時代が変わってきておるわけですから、こういうような時代に対応するように法律の中身をやはり改正する必要があると私は思うのです。だからその点も、法律改正の問題を含めて十分ひとつ検討していただきたいと思います。  それから、あまり時間がございませんので……。いま寝たきり老人それからひとり暮らしの老人ですね、このひとり暮らしの老人だけでも四十七万人いるわけですね。それで寝たきり老人が三十五万、合わせて八十二万ぐらいいるわけですが、最近の新聞紙上を見ても、老人のこういったひとり暮らしの方々がなくなられて、三日あとに見つかったとか、五日あとに見つかったとかいうような、こういう悲惨な事件が発生しているわけですよ。そう言うと厚生省は、いや、ホームヘルパーがおりますと言うけれども、八十二万名に対してホームヘルパーが何人いますか。全部ホームヘルパーでめんどう見ているわけじゃないのです。だから私はここで、厚生省が考えておるようですが、このひとり暮らし、それから寝たきり老人に対しては給食サービスをしたらどうなんだ。これは厚生省も、昨年の予算では前向きに一食九十円の予算を大蔵省に要求したところ、大蔵省がこれをたたき切ったというようないきさつもあったわけですけれども、この問題については、お年寄りの人たちが自分のうちで三度三度食べている人が全体の七七%ぐらいしかいないのです。二三%の人たちは三度三度の御飯も食べない。そうすると厚生は、お年寄りはあまり三度三度食べてはからだのためによくないから二食ぐらいでちょうどいいんだ、こういうようなばかげたことを言う連中が厚生省の中にはいるわけだ。冗談じゃない。そうしてそういう三度三度食べる人だって、もうからだが自由に動かぬから、即席ラーメン、お茶づけで済ますわけです。そのために足あたりがむくんできたという人もおるし、このように偏食するから栄養価値もないわけです。だからそういう人たちを、健康も回復して栄養をとらせるためにも、やはり給食サービスを実施したらどうか。  それと同時に、あの孤独の老人たちは人と接することを何よりも好んでいるわけですね。だからその意味では、この前も言ったように、ある寝たきり老人が、あるホームヘルパーが行って、今度は二千円上がりますよと言ったところが、その老人は、二千円は要りませんから、あなたに差し上げます、それよりは、もう一回でも二回でも多く来てくれませんかということを言われたということは、私がこの前の国会で言ったはずなんです。それほどこういうような孤独に悩まされておる老人の方々に給食サービスをすることによって、お互いな接触することによって孤独感から解放される。そして給食サービスをすることによって老人の方々の健康状態も、ぐあいが悪いときはやはりわかるわけです。そういうようなことによって、死んでから三日も五日もその死体がそのままで発見できなかったという事態もなくなるわけですよ。厚生省も、電話を今度の予算でも組んであります。しかし電話がこの八十二万名の老人の方々に一度につくわけじゃないのです。何年もかかるわけです。少なくとも、電話も大事だけれども、やはり朝、昼、晩、給食サービスをすれば、そのときいろいろなそういう事情がわかってくるわけですから、特に老人問題については非常に理解を示しておる厚生大臣ですから、ひとつこの給食サービスセンターについても、厚生省もこれについては前向きで取り組んでおるようですが、やはりこれを早く広く進めていくように、ぜひひとつ厚生省としては考えていただきたいということを私申し上げるのですが、大臣の所見を、局長でもけっこうですから、ひとつ前向きの御答弁を願いたい。
  210. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 御指摘の点非常にごもっともでございまして、今後ともひとり暮らし老人に対する給食サービスの事業の充実をはかってまいりたいと思いますが、これにつきましては四十八年度から、老人ホームの給食設備を地域に開放すると申しますか、その付近のひとり暮らし老人の方々にその老人ホームに来ていただいて、入所している老人の方と一緒に食事をしてもらう、それができない方には、老人ホームでつくった食事を配達するというようなことを行なう老人ホームがあります場合に、給食設備及びその運営費につきまして国庫補助を行なう道も開いてまいっております。将来ともそういった面につきまして、さらに努力を重ねてまいりたいと思っております。
  211. 小宮武喜

    小宮委員 老人ホームの問題出てまいりましたから、むしろそういうような意味では、これらの寝たきり老人だとかひとり暮らしの老人あたりは、そういうような施設へ希望する人はやはり収容していくということを当然並行して私は考えなければならぬと思う。ところが特別養護老人ホームは現在二百七十二施設、収容人員は二万百八十三人。厚生省もこの特養施設を重点に置いて、昭和五十年までに五万二千三百人の収容を目ざしていろいろ整備する方針のようでありますが、現在収容を必要とするその老人はどれくらいおりますか、これは昭和五十年までに五万二千三百人ですから、現在直ちに収容を必要とする老人の数はどれくらいおりますか。
  212. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 寝たきり老人につきまして現在特別養護老人ホームに収容する必要があるというふうに考えられておりますのが、本年度の推計で五万一千名でございます。
  213. 小宮武喜

    小宮委員 まだそれぐらいのテンポではやはり老人の方々のほんとうに救済することはむずかしいと思うのです。  そこでこれは老人問題はあまりにも問題が多過ぎるのです。だから少なくともこれは三時間、四時間ぐらい質問しないと私は満足するような答弁は出てこぬと思うのですけれども、しかしそういっても時間の制限がありますから、また次の機会に譲りますけれども、特にいま一番問題になっておるのは、この社会福祉施設の中で厚生省がやっておる措置費の問題です。この問題、措置費だけにしぼって私質問しますから。私、厚生省の役人を呼んでいろいろ聞いておると、あまりにも実情を知らなさ過ぎる。だからそういうような意味では、この問題はまたあとでやりますけれども、特に特別養護老人ホームが一番不足しておるわけですから、その意味では特に今度は公営と民営の比率がまだ公営の場合が非常に少ない。すべてやっぱり民間の篤志家とか宗教団体に依存しておるようないまの福祉行政というのは、大臣は先ほどから田中内閣の福祉とかなんとかいばって言うけれども、もっともっとそれならばそれなりにひとつ積極的に取り組んでもらわぬと、老人の人たちは救われません。そこでまだいろいろありますけれども、時間が来たようですからこれぐらいで質問を終わりますけれども、ひとつ大臣がんばってくださいよ。
  214. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 次回は、明五日金曜日午前十時理事会、十時十五分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時四分散会