○
遠藤(政)
政府委員 先生から今回の
雇用保険法案の中身につきまして、要するに
失業者を保険制度から締め出そう、締めつけをしようとしておるのじゃないか、その具体的な例として、出かせぎの季節受給者の問題あるいは若年層の問題この二つを具体的におあげになりました。
第一の出かせぎの問題につきましては、短期受給者の保険制度のあり方につきましては、確かに研究会の段階におきましても、本来、短期季節出かせぎの受給者の
人たちは保険制度になじまないものである、こういう指摘が行なわれておりました。それをあえて今回異例な一時金という制度で、
失業給付を目的として
雇用保険制度の中に組み込もうとしたその理由でございますが、四十二年それから四十四年に当
委員会におきまして、
失業保険法の
改正案を御
審議になりました際、この問題につきましては、出かせぎの季節短期受給者につきましては、本来
失業保険制度と矛盾した制度で、これをどうやって規制するかということが当時の
改正の
一つの考え方であったと思います。四十四年の
改正におきまして、この
委員会で
国会修正が行なわれまして今日に至っておりますが、今回のこの出かせぎの短期受給者を保険制度の中で新しい形で組み込みました考え方は、この四十二年、四十四年の
改正のときと全く違った考え方をとっておりまして、この二回の
改正で、どうやって規制するか、いかにして
合理化するということを基本に置いて考えられたのに対比いたしまして、今回は、確かに本質的には
失業給付という制度になじまないものでありながらも、従来の制度の中で、この出かせぎの人に対する
失業保険
給付というものが、こういう
人たちの
生活の中に深く組み込まれてしまっておる。こういう実態と同時に、この出かせぎという労働形態が
全国各地で、特に北海道、東北地方におきましては、決して好ましい形態ではないけれども、現実に出かせぎに出ざるを得ない、やむを得ない、同時にまた、
日本経済全体にしても、この出かせぎという労働形態があるからこそ
労働力の需要がまかなわれておる、こういう両々の実態から見まして、十何年来この制度の中に深くなじみ込んでしまったこの出かせぎの短期循環受給者の
人たちの実態を規制するという方向でなくて、現実の実態というものをそのまま受けとめて、これを新しい
雇用保険制度の中に定着させようという考え方をとったわけでございます。
そういう一時金という制度で、制度の中に組み込んでも、いずれは将来打ち切るためのまず第一段階ではないかという御疑念でございますけれども、これは私事で恐縮でございますが、三年前、当
委員会におきまして、中高年の
雇用促進
特別措置法を御
審議になりました際、将来の失対就労者がまず第一段階でここで締めつけられて、いずれかの時期になしくずしに打ち切られるのじゃないかという御懸念をたくさんの方々から伺ったわけでございますけれども、これは、その当時私ども
法案審議の際にお答えいたしましたように、当時失対就労者の中で自立をし、あるいは再
就職をし、あるいは引退される方々には、それぞれ御希望によっていずれかの道をお選びください、あとに残った
人たちは、
現行の緊急失対法のワクの中で、失対就労者として、言い方は適当かどうかわかりませんけれども、当時そのままの
ことばで申し上げましたけれども、死ぬまで安心して働いていただきたいということを申し上げたわけです。にもかかわらず、なお当時口ではそう言っておるけれども、いずれ五年後の再検討、三年たったら、五年たったら大なたをふるって全減させられるのじゃないかということを再三繰り返して私ども耳にしたことがございます。しかし、三年前の
法律成立当時から今日まで、ほとんどいままでと打って変わって減少はいたしておりません。と申しますことは、私どもも申し上げたとおりに、そういうなしくずしになくそうという意図はございませんし、何らそういう
措置はとっておりません。
今回の出かせぎの短期受給者に対します
措置にいたしましても、いままでと考え方を百八十度全く変えて、実態をそのまま受けとめて保険制度に組み込もうというところに今回の真意がございます。そういうことによりまして、いままでのいろいろな不合理な矛盾、批判を受けておりましたものを正当化しようということからきた制度の立て方をとっておるわけでございます。
また一方、若年層の
失業保険の受給日数を六十日にしたことについて、これもやはり締めつけすることによって低廉な
労働力の供給源にしようとしているんじゃないか、こういう御懸念でございますけれども、これも決してそういうことじゃございませんで、三十歳以下につきましては、先ほど申し上げましたように、現在の労働市場、今後の
雇用失業情勢を考えますと、
労働力の供給、
若年労働力の供給が今後一そう減少していく、こういう
情勢が長期的に続くわけでございまして、その中でいままでの実績が、この三十歳以下につきましては、
失業保険の平均受給日数も四十五日程度でございます。現在の状態の中では、今後ともこういう若い
人たちにつきましては、
職業選択の自由はもちろんのことでございます。これは憲法で
保障されておりますが、そういう制度の中で自由に自分の希望する
職業を比較的容易に選ばれるというのが現実の状態でございます。それに反しまして、中高
年齢の方々は、全体としては
労働力は非常に逼迫しておりますけれども、なかなか
就職しにくい、これは需要地域でもそうでございますが、ましてや過疎地帯になりますと非常に困難な状態であります。本来
失業保険制度そのものの本質を考えますと、各人が被
保険者同士がその
負担によって必要な方々に必要な
給付をするというのが制度本来のたてまえでございます。と申しましても、べらぼうにというわけにはまいりませんけれども、
一定のワクの中でその理想を果たし得るような制度にすることが望ましいものだと私は考えております。そういうことで、比較的若い
年齢層の
就職の容易な人については、従来の実績を考えて
給付日数を短くすることが妥当であり合理的である。それに反して、
就職の困難な
人たちが従来比較的そういう面で制度の上から必ずしも手厚いきめこまかな保護を受けてなかった分を、今回の
措置でこういった中高
年齢者、特に高
年齢者あるいは
身体障害者あるいは特に社会的に
就職上いろいろ問題のある
人たち、そういう
人たちについて手厚い
対策を講ずることにした、こういうのが今回の趣旨でございまして、単に若年層に
給付日数を切り下げたということで、御指摘になりましたような意図は全くございませんし、そういうことは制度の趣旨からいってもすべき問題ではない、私どもかように考えておるわけでございます。