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1974-04-02 第72回国会 衆議院 社会労働委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月二日(火曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 大野  明君 理事 葉梨 信行君    理事 山口 敏夫君 理事 枝村 要作君    理事 川俣健二郎君 理事 石母田 達君       伊東 正義君    大橋 武夫君       加藤 紘一君    粕谷  茂君       瓦   力君    住  栄作君       田川 誠一君    田中  覚君       高橋 千寿君    戸井田三郎君       橋本龍太郎君    栗山 ひで君       大原  亨君    金子 みつ君       島本 虎三君    田口 一男君       田邊  誠君    村山 富市君       森井 忠良君    山本 政弘君       大橋 敏雄君    坂口  力君       小宮 武喜君    和田 耕作君  出席国務大臣         労 働 大 臣 長谷川 峻君  出席政府委員         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省労働基準         局賃金福祉部長 大坪健一郎君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         労働省職業訓練         局長      久野木行美君  委員外出席者         議     員 川俣健二郎君         議     員 森井 忠良君         労働省職業安定         局雇用政策課長 鈴木新一郎君         労働省職業安定         局失業保険課長 関  英夫君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 三月二十九日  辞任         補欠選任   伊東 正義君     江崎 真澄君   加藤 紘一君     河本 敏夫君   住  栄作君     千葉 三郎君   羽生田 進君     中垣 國男君 同日  辞任         補欠選任   江崎 真澄君     伊東 正義君   河本 敏夫君     加藤 紘一君   千葉 三郎君     住  栄作君   中垣 國男君     羽生田 進君     ————————————— 三月二十九日  勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案  (内閣提出第七三号) 四月一日  原子爆弾被爆者援護法案大原亨君外十三名提  出、衆法第一四号)  国有林労働者雇用の安定に関する法律案(川  俣健二郎君外九名提出衆法第一五号)  失業保険法及び労働保険保険料徴収等に関  する法律の一部を改正する法律案森井忠良君  外九名提出衆法第一六号) は本委員会に付託された。      ————◇————— 本日の会議に付した案件  勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案  (内閣提出第七三号)  国有林労働者雇用の安定に関する法律案(川  俣健二郎君外九名提出衆法第一五号)  失業保険法及び労働保険保険料徴収等に関  する法律の一部を改正する法律案森井忠良君  外九名提出衆法第一六号)  雇用保険法案内閣提出第四二号)  雇用保険法施行に伴う関係法律整備等に関  する法律案内閣提出第六四号)      ————◇—————
  2. 野原正勝

    野原委員長 これより会議を開きます。  内閣提出勤労者財産形成促進法の一部を改する法律案議題とし、その提案理由説明を聴取いたします。労働大臣長谷川峻君。
  3. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 ただいま議題となりました勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  いまや国民の大部分を占めるに至っている勤労者とその家族の生活の動向は、わが国経済社会の将来に深く関連する問題でありますが、勤労者生活現状を見ますと、賃金水準は近年における経済成長に伴って年々大幅に改善されてきているものの、貯蓄住宅等の資産の保有の面ではなおいまだ相当の立ちおくれが見られるところであります。  このような勤労者生活の実情にかんがみ、勤労者財産形成を促進してその生活の一そうの安定をはかるため、昭和四十六年に勤労者財産形成促進法が制定され、勤労者財産形成貯蓄について税制上の優遇措置が講じられるとともに、財産形成貯蓄の一部を原資として勤労者のための持ち家分譲融資制度が設けられたところでありますが、制度発足後二年間で財産形成貯蓄を行なっている勤労者数は早くも二百七十万人に達し、その貯蓄額は千六百億円をこえるに至っており、勤労者財産形成促進制度に対する期待がいかに大きいものであるかがうかがわれるのであります。  しかしながら、このような勤労者期待とその努力にこたえ、その生活を真に豊かで安定したものとするためには現行財産形成促進制度内容は、まだ必ずしも十分とは申せません。  政府は、このような観点から勤労者財産形成促進制度を大幅に拡充したいと考え、そのための案を勤労者財産形成審議会に諮問し、その答申をいただきましたので、ここに勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案として提出した次第であります。なお、本法案のほか、財産形成促進制度改善措置のうち、財産形成貯蓄利子非課税限度額引き上げ並びに持ち家取得を目的とする財産形成貯蓄積み立て期間七年以上のものにのいての税額控除率引き上げ及びその要件緩和等税制上の援助措置を充実する措置につきましては、すでに租税特別措置法の一部を改正する法律案に盛り込んで御審議をいただき、その成立を見たところであります。  次に、この勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案内容につきまして概要を御説明申し上げます。  第一は、勤労者財産形成貯蓄制度改善であります。  すなわち、日本住宅公団宅地開発公団法案により新設が提案されております宅地開発公団等が発行する宅地債券等購入等またはその購入等のために預け入れ等を行なう預貯金等一定要件を満たすものを、新たに勤労者財産形成貯蓄に含めることといたしております。  また、勤労者財産形成貯蓄を行なっている勤労者転職をした場合に、転職後も従前の勤労者財産形成貯蓄契約に基づいて引き続き貯蓄をすることができるようにするため、勤労者財産形成貯蓄要件整備を行なうことといたしております。  第二は、勤労者財産形成基金制度及び勤労者財産形成受益金制度新設であります。  勤労者財産形成を一そう促進するため、事業主は、その事業場労使合意に基づき、財産形成貯蓄を行なっている従業員加入員として勤労者財産形成基金を設立することができるものとし、基金事業主から加入員一人当たりおおむね均等の拠出金を受け入れ、金融機関等との信託契約等に基づいてこれを運用し、七年ごとにその受益金加入従業員に分配することとし、その従業員が分配を受けた受益金について課税上特別の措置を講ずることといたしております。  さらに中小企業等財産形成基金を設立することが困難であるものについては、事業主労使合意に基づいて直接金融機関等勤労者財産形成基金と同様の機能を有する勤労者財産形成受益金契約を締結することができることといたしております。  第三は、勤労者財産形成貯蓄付加金制度新設であります。  事業主財産形成貯蓄を行なう従業員に対して、その貯蓄援助するため、労使合意に基づき金融機関等財産形成貯蓄付加金契約を締結し、従業員の年間の財産形成貯蓄額一定率に相当する付加金を拠出したときは、その従業員が受ける付加金及びその運用収益について、課税上特別の措置を講ずることといたしております。  第四は、長期財形住宅貯蓄契約者に対する住宅金融公庫等住宅資金貸し付けについての特別措置新設であります。  積み立て期間七年以上の長期財形住宅貯蓄契約に基づいて七年以上積み立てを行なった勤労者に対しては、住宅金融公庫等が行なう住宅資金貸し付けについて、通常の貸し付け限度額当該勤労者が行なった長期財形住宅貯蓄預貯金等の総額の二倍に相当する金額を加えた金額まで割り増しして貸し付けることといたしております。  また、これに関連して、雇用促進事業団が行なう住宅分譲貸し付けまたは住宅金融公庫等が行なう割り増し貸し付けに必要な資金を円滑に調達するため、勤労者財産形成貯蓄契約を締結した金融機関等に対し、事業団及び公庫の資金調達への協力を義務づけることといたしております。  その他、この法律案におきましては、その附則において、所得税法法人税法租税特別措置法地方税法及び住宅金融公庫法等関係法律所要整備を行なうことといたしております。  以上、この法律案提案理由及びその内容概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ慎重に御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。      ————◇—————
  4. 野原正勝

    野原委員長 川俣健二郎君外九名提出国有林労働者雇用の安定に関する法律案議題とし、その趣旨の説明を聴取いたします。川俣健二郎君。
  5. 森井忠良

    森井議員 私は提案者を代表いたしまして、ただいま議題となりました失業保険法及び労働保険保険料徴収等に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由内容について御説明いたします。  昭和三十年代から始まりました政府自民党高度経済成長政策は、大資本の側から見れば成功し、GNPは世界第三位になりました。しかし、勤労諸階層から見れば大きな犠牲をしいられたのでありまして 大企業 重化学工業中心に大規模な産業再編成が行なわれ、公害の多発や農業切り捨て炭鉱閉山による大量失業発生など、絶えず雇用不安定化をもたらすとともに、多くの労働者産業企業間移動を強要してきました。  したがって、労働者雇用量は全体的には増加しながらも、そのつど合理化による労働強化人間疎外知識熟練度の不安に悩まされたのでありますが、政府自民党はこの深刻な現状を無視し、資本の一方的な要請に応じて安い労働力を供給するために手をかしてきました。若年労働力の大企業への吸収、農業切り捨てによる季節労働者発生などがそれであります。  本来、労働契約労使対等立場で締結されるべきであり、その場合労働者は自己の知識能力等を考慮し自由な立場職業が選択できるものでなければなりません。そのためには失業中といえども労働者生活保障が完全になされなければならず、現行失業保険法のように賃金の六割給付最高三百日分、最低は九十日分でありますが、では不十分であり、生活に追われて不本意な就職を余儀なくされるのであります。  ましてや今日のように石油危機便乗値上げ狂乱状態にあるインフレ下で、中小企業倒産が激増しているとき、失業保険法給付等改善時代要請でもあります。  以上の観点に立ち、われわれは大要次のような内容をもって本二法の改正を行なおうとするものであります。  その第一は、一般保険者に対する給付内容等改善であります。すなわち、失業保険金日額現行の六割から八割に増額するとともに受給期間を三年、これは妊娠、出産等で就業できないときは四年でありますが、まで延長し、かつ給付日数最高七百二十日分まで引き上げることといたしました。  なお日雇い労働保険者に対しましても、給付要件緩和失業保険金日額引き上げ待期日の廃止などのほか失業保険金支給区分現行の二級区分から、五級区分にするなど所要改正をすることにしております。  その第二は、短期雇用者等に対する国庫負担率引き上げであります。  政府は今国会雇用保険法案提出し、いわゆる出かせぎ労働者給付の引き下げ、保険料引き上げを行なおうとしていますが、わが国の深刻な食糧事情を無視して農山漁村荒廃におとしいれ、農林漁業では食えない実績をつくり、その出かせぎ労働者資本に安く提供してきたことを考えると、きわめて理不尽な改悪であり、むしろ日本農業が立ち直るまで積極的に保護していく必要があり、失業保険会計の収支を論ずるなら、当然国庫負担引き上げるべきであります。この見地から短期雇用者等に対しては国庫負担率を二分の一に増額することといたしました。  その第三は、保険料改正であります。  すなわち、先ほど述べました日雇い労働保険者失業保険金日額引き上げと第五級まで支給区分を拡大したことにより、新たな印紙保険料を設定いたしました。  また一般保険料とも従来の労使折半負担割合はきわめて不合理であり、先進諸国と比べても労働者に著しく不利となっておりますので、当面労三、使七の割合とするようにいたしております。  以上が失業保険法及び労働保険保険料徴収等に関する法律の一部を改正する法律案提案理由であります。  政府はその雇用保険法案におきまして、失業保険法をなしくずし的に変質させて、保険財政資本に奉仕する能力開発事業ほか二事業を行なおうとしていますが、本来制度的な雇用保障職業訓練などは国と資本の責任において、労働者の利益がそこなわれることなく行なわれるべきであり、われわれは別途、これら雇用保障制度については法案提出いたす所存であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決いただきますようお願いして、提案理由説明を終わります。(拍手)      ————◇—————
  6. 野原正勝

    野原委員長 次に、内閣提出雇用保険法案雇用保険法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案川俣健二郎君外九名提出国有林労働者雇用の安定に関する法律案及び森井忠良君外九名提出失業保険法及び労働保険保険料徴収等に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。葉梨信行君。
  7. 葉梨信行

    葉梨委員 私は、政府提案雇用保険法案につきまして、若干質問申し上げてみたいと思います。  現行失業保険法が制定されましたのは昭和二十二年でございますけれども、当時は生産施設は多数破壊され、また失業者が町にあふれ、また三百万人にならんとする復員軍人が帰国をするということで、雇用情勢としては最悪なものがあったと思います。復興を目ざすたいへん賢明にして勤勉な国民努力を基本にいたしまして、経済政策また安定した政治情勢また外部の状況等が幸いいたしまして、復興が目ざましく行なわれ、やがて昭和三十年代からは経済成長が始まりました。これに伴いまして、過般の労働大臣雇用保険法案等提案理由説明でもお話がございましたが、雇用情勢が非常に改善されまして、求人者求職者との関係も逆転してまいりました。昭和三十五年に池田総理高度経済成長政策が発表されましてからは、特に雇用情勢はよくなりまして、一九六〇年代と申しますか、念願の完全雇用も達成され、最近の数年間は超完全雇用といわれるような状況になったわけでございます。昨年の統計では、わが国失業率は一%台である。アメリカが五・二%、西ドイツが二・二%といわれるような状況と比較しまして、非常に低水準にあるわけでございます。  しかしながら、昨年来の物価の値上がりに対処しまして政府がとってこられました緊縮財政金融引き締め等による総需要抑制政策効果をあらわし、また昨年の秋に起こりました中東戦争によってあらわれてまいりました、石油中心としますエネルギー危機影響等がきき始めまして、最近では操業短縮企業倒産が起こる、あるいは一時帰休だとか解雇が行なわれるようになりまして、雇用情勢にはかげりが見られるようになってきております。しかし、エネルギー情勢も最初心配していたほどではなく、やや緩和をされてきた。また、政府引き締め政策もだいぶきいてきて、むしろスタグフレーションになっては困るというような情勢から、巷間金融緩和が論ぜられるような状況になってまいりまして、このようなかげりというものはそう長く続くものではなく、大局的に見ますと、労働力不足基調が続くのではないかと考えております。しかし一方においては、雇用失業情勢はかなり悪化するというような悲観論も一部に見られるわけでございます。  このたび労働省が提案されました雇用保険法案を私どもこれから審議するわけでございますけれども、その審議の前提としまして、一つはこれからある程度長期的な雇用情勢についての政府の見通しを伺いたいと思いますし、またそういうような雇用失業情勢に対処して、雇用政策が当面考えていかなければならない課題としてはどういうものがあるかというようなことにつきまして、国会政府との間に共通の認識を持つことがまず第一番に必要であろうと思うのでございます。いま申し上げました二点について、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  8. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 きのうは四月一日で、全国ほとんど一斉に新入社員入社式がありまして、私も都の体育館に四千名ほど集まった新入社員を前にして、ごあいさつなどを申し上げたのです。その際に申し上げたことば諸君は大学でしっかり勉強されて、その間に日本のことをよく学んだそうしますと、これはもう学問の上からも、敗戦のときのあの失業、あのインフレ、そして荒廃に帰したところをここまで伸びたということは、学問的にもおそらく諸君ははっきり胸に持ってこられたろう。そして石油危機といわれて、いま葉梨先生がおっしゃったように、よその国ではいかにして離職者を防ぐかという時代である。しかし、新入社員というものはほんとうにありがたいことに、求人の手控えなし、新規採用取り消しはなし、こういう中で諸君はしっかりがんばってもらいたい。よその国の例等を見ますと、日本が一%の失業率でやっている姿というものは、日本の特性であり、ほんとうにあらためてお互い皆さん方の御努力である、こう私は思うのであります。  しかし一方、何といたしましても、これだけの予想しない石油危機でございます。わずかニドルぐらいのものがスポットものは十四ドルで入ってくるという時代ですから、経済の基盤が完全に変わってきているということは、これはだれしもが認識されて、その対策に忙殺されているときでありますから、いまから先の経済情勢に見合うところの雇用政策というものを当然お互いは立てる必要があるのじゃなかろうか。まずすぐにいわれることば需給ば逼迫しておりますけれども、お互い年齢が高年齢社会になってまいります。若年労働者はなかなか手に入りません。一方、高年齢社会になりますと、そういう方々がいまから先、地域的にあるいは産業的にどう吸収し働くようにするかというところに、私は量質違ったところの雇用対策というものが生まれる。そういう中にこのたびの法案皆さま方に御審議していただく、こうしたところにいまからしっかりと——いままでも国会の御審議を通じてここまできたものですが、さらにこれを質ともに積極的に雇用対策というものをあらためてやる必要があるのじゃなかろうか、こう感じているものであります。
  9. 葉梨信行

    葉梨委員 ただいま労働大臣が御指摘になりましたような高齢者社会への移行に伴いまして、高齢者雇用する問題であるとか、それから質量両面にわたる完全雇用実現への対応策であるとか、心身障害者等特別に配慮を必要とする人々の雇用の問題それからエネルギー問題、国際的、国内的要因に伴う雇用変動に対処してどうやっていくかというような雇用政策上の主要課題がございますが、雇用保険法案は基本的にどういうようにこれらの四つの課題に対処していかれようとしておるのか、伺いたいと思います。  それから先ほど私が冒頭に指摘申し上げましたように、失業保険制度創設当時と最近、それから今後の雇用失業情勢は非常に著しい相違が見られるわけでございまして、このようなすっかり変わってしまった雇用失業情勢現行制度が対応していけないことによっていろいろな問題が生じております。今回の雇用保険法案は、こういうような問題について、現行失業保険法がかかえている問題にどう対処していかれようとしているのか、この二点についてお伺いしたいと思います。
  10. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 具体的に細分化申し上げますと、いま先生のおっしゃったように心身障害者雇用の問題とか、あるいはまた地域的に労働力需給をどう調整していくかという問題とか、さらにまた産業構造の変化に従いまして、働く諸君能力をあらためて開発するということなどもございます。それにいたしましても、今度の法案について私たちが特に考えておりますことは、第一に、高齢者社会への移行等に対処いたしまして、高齢者心身障害者に対して年齢等就職のむずかしい、安い、その度合いに応じまして給付日数の決定、さらにまた高齢者に対しまして保険料の免除あるいは常用支度金支給等、思い切った手厚い措置を講じたい、こう思っております。  さらにまたエネルギー問題あるいは国際経済環境等がこれだけ変わることでございますから、それに伴いまして、ときに発生するおそれのある失業問題に対処できるように、一時帰休に対する援助あるいは全国的不況のときにおきましては一律延長措置を行なうことなども考えております。またさらには季節的受給者等をめぐる給付負担の過度の不均衡、こういうものを是正すること等を重点にいたしまして、ただいまやっております失業保険制度の持つ失業保障機能を強化することといたしてまいりたいと思っています。  次に、雇用改善事業等の三つの事業を付帯的に行なうことによりまして、雇用構造改善あるいはまた失業の防止、労働者能力開発の増進、それから労働者福祉向上等をはかって、そういう質量両面にわたる完全雇用実現を積極的にはかってまいりたい、こういうふうな考え方を持っているものであります。
  11. 葉梨信行

    葉梨委員 大臣の御説明によりまして、意欲的にこれからの雇用問題や現行失業保険制度の持つ矛盾に対しまして、対策を講じようとしておられることはよくわかりました。  ところで雇用保険法案構想、いま言われた構想の中で重点項目一つとされております高齢者対策心身障害者対策については、雇用保険で対処するだけでなく、やはり一般会計によって総合的な施策が講じられなければならないんじゃないだろうかと私は考えるわけであります。特に心身障害者の場合につきまして申し上げますと、雇用保険のほうでせっかく給付日数延長とか常用就職支度金支給等施策を設けられ、これらの人たち就職援助をはかろうとされても、働きたくてもその技能が十分でないとか雇用の場がないというようなことであっては、実際には効果を見出すことができないわけでございます。そういう意味からすると、心身障害者のリハビリテーションの問題とか職業訓練等の問題がうまく運営されているかどうか、さらには雇用率順守状況はどうなっているか、現状を御説明いただきたいと思います。
  12. 久野木行美

    久野木政府委員 まず職業訓練関係について申し上げますと、現在、一般並びに労災等の諸経費によりまして身体障害者職業訓練校全国的に国立として十一校設けまして、それを県に運営を委託しております。それからもう一つといたしましては、兵庫県と愛知県に県立の認可身障訓練校というのを設けまして、洋服、洋裁、電子機器、軽印刷などの訓練科につきまして指導員一般より多数に配置する等の特別の配慮をいたしまして、きめこまかい訓練を実施できるようにしております。四十八年度におきましては千八百八十名につきましてその能力に適応した職業訓練を実施しております。今後とも心身障害者訓練につきましてはその特殊性から訓練の面でも種々配慮しながら運営してまいりたい、こういうふうに考えております。
  13. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 身体障害者雇用対策職業安定行政の中で最重点項目でございます。今回新しく御審議いただきます雇用保険法案の中でも身体障害者対策を私どもは特に取り上げているわけでございますが、その前段といたしまして、一般政策の中で心身障害者雇用の促進政策をいろいろと審議会の御答申に沿って進めているわけでございます。  そのまず第一の問題は、法定されました雇用率をいかにして達成するかということでございます。法律によりまして定められております雇用率は、一般民間事業所におきましては一・三%、それから政府関係機関におきましては非現業部門で一・七、現業関係政府機関では一・六%という率が定められております。  現在までの、昨年度におきます達成状況を申し上げますと、官公庁関係におきましては非現業部門の一・七に対しまして一・七一、それから現業部門の一・六の雇用率に対しましては一・六七、おおむね政府関係機関、関係団体におきましては雇用率を達成いたしておりますが、なお個々の機関につきまして見ますると、未達成のところも間々ございます。こういった心身障害者雇用促進につきましては政府関係機関が率先して雇用の促進に当たるべきである、私どもかように考えておりまして、先般政務次官会議におきましても、大臣の御指示によりまして、政府関係機関の雇用の促進をはかるように御協議いただきましたところでございますし、今後とも一そう先頭に立って進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。  それから民間につきましては、一・三%に対しまして一・二九というのが現在の達成状況でございます。やや下回っておりますが、全体としますとおおむね雇用率に近い線に近づいておるかと思います。ただその中身について見ますると、大企業におきましては一・一七ということで、中小企業が比較的協力的に身体障害者雇用を進めておるのに対しまして、大企業が非常に成績が悪い、しかも未達成事業所が半数近いというような状況でございますので、今後はその大企業中心にいたしまして今年度は心身障害者雇用の促進を強化してまいりたい。その具体的な施策といたしましては、昨年暮れに身体障害者雇用審議会から御答申いただきました線に沿いまして、雇い入れ計画作成命令を発するとか、あるいは求人に際しまして心身障害者雇用を特に重点的に指導してまいる、あるいは審議会で御指摘ございましたように、場合によりましては非協力的な悪質の業者に対しましてはその氏名を公表するというような制度も積極的に検討いたしまして、こういった大企業筋の心身障害者雇用の促進を特に重点的に取り進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。  リハビリテーションにつきましては、労災関係福祉事業といたしまして労災病院に付帯いたしましてリハビリテーション施設を持っております。それと同時に、重度身体障害者のリハビリテーション作業施設を全国各地に、各関係企業と連携のもとに設置いたしまして、こういった身体障害者のリハビリテーションとその後のいわゆる職業になじませるというような観点から、こういう施設の増強につとめてまいっているわけでございます。今後職業訓練と並行いたしましてこの施設の増強につとめてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  14. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 局長がだんだん御説明されましたが、一言だけ私つけ加えますと、身体障害者雇用問題というのはお互いほんとうに一一生懸命やらなければならぬと思って労働省重点施策にしておりますが、特に御報告申し上げたいことは、この委員会で非常に御推進がありました。そこで各組合の方々の協力をもらえという話などもありましたので、非常にいいサゼスチョンだと思いまして、ただいまいろいろな労働組合の方々が私のところに参りますから、その方々にも、事業所のほうに対して、私のほうは局長が申されたようにいろいろお願いもいたしますが、組合側といたしましてもぜひひとつ御協力をお願い申し上げますということを申し上げながら、相ともどもに雇用の促進をやっていきたい。一方また政務次官にもお願いいたしまして、各省政務次官会議の席上にこれを御披露申し上げまして、官庁関係をさらに進めるようにということも推進しているわけでありまして、こういう委員会のいいお知恵と申しますか、それを直ちに実行できたこともあらためて御報告申し上げたいと思います。
  15. 葉梨信行

    葉梨委員 ただいま大臣から伺いましてたいへん意欲的な対処のしかたをしておられる、たいへんありがたいことでございますが、さらに推進をしていただきたいと思います。  いま私質問申し上げた中で大事な問題が答弁が抜けましたが、雇用保険でやるだけじゃなくて一般会計を使うべきじゃないか、こういう点についてきっちりした答弁をお願いいたします。
  16. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 先ほど申し上げました身体障害者雇用促進のためのいろいろな施策を行なっておりますが、こういう人たちに対しますたとえば融資の問題でございますとか、作業環境を整備するために融資をやる、あるいは雇用を促進するために雇用奨励金を支給する、こういったいろいろな施策を行なっておりますが、こういった面につきましては当然御指摘のとおり一般会計を今後一そう拡充してまいります。従来も一般会計で実施いたしておりますが、今後ともそういう方向で進めてまいりたい。と同時に、雇用保険のほうで給付日数の問題なりあるいは就職支度金なり、そういったきめこまかな施策を講ずべき点はこの両会計相まってこの雇用の促進を強化していきたい、かように考えておる次第でございます。
  17. 葉梨信行

    葉梨委員 いま御説明いただきましたが、そこらの境目、ここからこっちは一般会計、ここからこちらは保険でやるという、もう少し境目をはっきりお話しいただきたいと思います。
  18. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 失業保険の被保険者であった身体障害者の方々が再就職のためにいろいろな、一般の健常人よりも手厚い施策を講じなければならない、こういう場合は当然雇用保険の特別会計で実施いたしますが、たとえば職業訓練なんかの場合でございますと、職業訓練を受ける身体障害者のための諸施策に必要な経費これは当然一般会計です。こういうことで、一般的には身体障害者雇用促進のための経費は一般会計で支弁する、こういうたてまえで実施をいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  19. 葉梨信行

    葉梨委員 いま伺ったのは心身障害者だけじゃなく高齢者も含めての質問でございまして、当然いま高齢者ということばが抜けたのだろうと理解いたします。  ところで雇用保険法の体系を見てみますと、失業給付のほかに雇用改善事業能力開発事業、それから雇用福祉事業の三つの事業を行なって雇用問題に積極的に対処しようとしておられるわけでございます。このような三つの事業は保険事故になじまない、これらを含めて保険といえるかどうか、保険事故は失業であるのに雇用保険と称するのはどんなものだろうかというような議論も聞くのであります。私は、現行失業保険の場合においても、その目的とするところは単に労働者失業中の生活の安定をはかるという消極面だけでなくて、失業者の求職活動を援助するとか、早く就職の場を得るように援助するということにあると考えておりまして、新しく提案されました雇用保険もこの延長線上においてさらに施策を発展させようとするものであろうと理解しておるわけでございますが、そう考えれば問題はないと思います。これについて労働省としての見解を承りたいと思います。
  20. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 今回、現行失業保険法改正いたしまして、雇用保険法という体系を新しくつくり上げようとする点につきまして、まず第一は雇用保険という名称の問題それからその中身に、従来のいわゆる失業者に対する失業給付に加えて、新たに雇用改善事業能力開発事業労働者福祉事業、こういう新しい事業を保険制度の中に取り込むということにつきまして、原案作成の時点前後からたいへん御議論のあったところでございます。ただいま先生から御指摘ございましたように、現行失業保険制度におきましても、単に失業者に対して失業中の生活保障するということでなくて、積極的に再就職を促進していく、同時に雇用を安定させるということが現行失業保険法の最大の目的になっておるわけでございます。今回の雇用保険法案はこの現行の制度をさらに一歩進めて積極的に、現行失業保険制度において行なわれております失業保障機能を強化いたしますと同時に、できるだけ失業を予防し、あるいはどうしても失業を余儀なくされる場合にも、その失業を少なくするというために雇用改善事業を行ない、あるいは労働者の個々の能力開発のための諸事業を行ない、あるいは主として中小零細企業労働者のための福祉対策を実施する、こういうことによりましてより積極的な失業保障のための制度にしていこう、こういう考え方でございますので、私どもはこういった新しい法案に盛り込まれました三事業が、保険事故というものではなくて、保険事故である失業という事故をなくすための、あるいは予防するためのいわば付帯的な事業である、かように考えておるわけでございます。したがいまして、そういうものを雇用保険法という一つの体系の中に取り込むことば何ら差しつかえないのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。  もっとも、失業保険に対して雇用保険という名称はどうかという点も、再三御指摘がございました。ただいま先生からもお話しございましたが、たとえば例をあげますと、負傷とか疾病を保障するために制度化されております健康保険法がございますが、疾病保険でなくて健康保険、健康を維持するための保険だというような概念構成が行なわれておりますことから考えましても、失業保障するための法律体系が雇用保険という名前であっても一向差しつかえない、おかしくないのじゃないか、かように考えておるわけでございます。
  21. 葉梨信行

    葉梨委員 いまのお話に出ました雇用改善事業能力開発事業雇用福祉事業等のいわゆる三事業は、いまお話しのように、保険事故である失業の予防、減少に役立つだけでなくて、不安定な雇用状態の解消とか労働者能力の向上、福祉の増進に役立つものでありますので、体系的に重点をきめて積極的にこれを実施していただきたいと思うのであります。   〔委員長退席、大野(明)委員長代理着席〕  ところで、これらの三つの事業にかかる経費を、千分の三の事業主負担だけによる保険料によってまかなうという原案でございますけれども、この考え方はどんなところからきているのであろうか。特にわが国の社会保険は労使が折半して負担するのが一般的でございまして、今度のこの法案のように事業主だけで負担するというのは、ほかに例を見ないものであります。たいへんユニークな考え方であろうと思いますけれども、外国でこんな例があるかどうか、それも含めて伺いたいと思います。
  22. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 今度の雇用保険法案におきまして行ないます三事業は、ただいま先生御指摘のように、千分の三の事業主負担によって行なうことにいたしております。こういった新しい三つの事業を実施いたしますことによっていろいろ解決をはかっていこうといういろいろな雇用面の問題につきましては、その問題自体が企業雇用賃金慣行、こういったことに根ざしておる問題が大部分でございます。と同時に、この三事業を実施いたすことによりまして労働者職業の安定をはかっていく、福祉の向上をはかっていくということでございますが、それは同時に企業自体にも利益をもたらすものであります。と同時に、こういった施策を行ないますことは、企業の社会的責任を果たすよすがにもなるわけでございます。そういうことから、非常に画期的な考え方ではございますけれども、失業という事故を防止し縮小させるための積極的な施策として、雇用保険法体系の中でこういう制度を取り入れたわけでございます。  外国におきましても、イギリスにおきます選択的雇用税とか職業訓練賦課金という制度がございます。あるいはフランスにおきましても職業訓練税制度、こういったものがございます。各国にこういった類似の制度がございまして、私どもの今回の考え方もこういった外国の、企業負担による賦課金あるいは目的税制度、こういった趣旨を取り入れた次第でございます。積極的に今後進めてまいりたいいろいろな施策の原資に充てたい、こういう考え方でございます。
  23. 葉梨信行

    葉梨委員 いまお話がありました外国の例を引かれましたけれども、外国ではいつごろからこういうものが実施されたか、それから料率がどうなっているか、ここらをちょっと伺いたいと思います。
  24. 関英夫

    ○関説明員 まずイギリスの選択的雇用税は一九六八年に発足した制度でございまして、課税額は、雇用者一人一週につき二十五シリングないし八シリングというような形で、年齢等によっていろいろ差がございますが、そういうようなものになっております。  それからイギリスの職業訓練賦課金制度は、一九六四年に発足した制度でございます。賦課金といたしましては賃金総額の一%を上限としております。  それからフランスの職業訓練税制度は一九一〇年代だったと思います。いまちょっと手元に資料がございませんが、そのころに発足したものでございまして、課税額は年間支払い賃額の〇・八%でございます。七六年までに二%まで引き上げられる、こういうような制度になっております。
  25. 葉梨信行

    葉梨委員 ちょっと細目にわたりますけれども、負担の問題は、だれが負担することになっていますか。
  26. 関英夫

    ○関説明員 ただいま申し上げましたイギリスないしフランスの制度は、すべて事業主負担でございます。
  27. 葉梨信行

    葉梨委員 あまりこれにかかずらわっていると時間がなくなりますけれども、外国ではだいぶ早くからやられているわけです。わが国が一九七四年になってやっと始めるという、この立ちおくれた原因なんかについてちょっと聞かせていただきたい。
  28. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 従来この種の保険制度にまつわる付帯的な福祉施設、保険施設といったものはまさしくつけ足り的な形で行なわれておりました。こういう積極面を保険制度の中で実施するということについては、御指摘のようにやや立ちおくれの感がございます。失業保険法体系の中では、従来、二十二年に法律施行されまして以来こういった点を逐次拡充してまいりましたが、その考え方はあくまでも保険施設、福祉施設ということでございまして、労使折半保険料負担の中からこういうものを副次的に実施するという域を出なかったわけであります。しかしながら先ほど大臣からお話ございましたように、単に失業ということに対する保障というだけでなくて、より積極的に失業を防止し、質的な完全雇用を達成するためには、こういった付帯的な事業をより拡充する必要がある。そのためにはイギリス、フランス、諸外国に見られますような雇用税あるいは賦課金というような考え方を保険法体系の中に取り込む必要があるということで、今回従来の労使負担による保険料で実施いたしておりました保険施設を切り離しまして、こういう制度によることにいたしたわけでございます。
  29. 関英夫

    ○関説明員 まことに申しわけございません。先ほどの答弁の一部をちょっと訂正さしていただきたいのですが、フランスの職業訓練税制度の発足は一九二五年以来でございます。失礼いたしました。
  30. 葉梨信行

    葉梨委員 大体今度の雇用保険制度の基本的な考え方はわかったような気がいたしますので、次に個別の問題に立ち入って伺いたいと思います。  今度の改正生活に大きな変化を受けるものとして問題になっておりますのは、例の短期雇用特例被保険者の制度についてでございますが、季節的受給者につきまして、従来から毎年予定された失業を繰り返すとか、その給付に要する費用の多くは一般労働者事業主の納付する保険料によっているとか、いろいろ問題になっているわけであります。この短期雇用特例被保険者の制度を新しく設けられた趣旨をひとつ伺いたいと思うのであります。
  31. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 このたびの法案では、従来から課題となっておりました農林水産業への適用拡大を行なうこととしております。農林水産業は季節的労働者が多いために、適切な措置をとりませんと極端な不均衡を招くおそれのあることは御承知のとおりでございますので、季節的受給者につきましては、その実態に深く配慮しながら特例を設けることといたしまして、お話しのように給付面については三十日分の一時金としているわけであります。   〔大野(明)委員長退席、委員長着席〕 それというのは、季節的受給者の平均受給実績や、新しい制度によりますところの給付日額の大幅な引き上げなどを考えまして急激な変化を避けるようにいたすと同時に、一時金の制度をとることによりまして就労の機会増大が期待されております。そういう考えのもとに、これらの労働者生活の実態に一そう即応したものと私たちは考えて御提案申し上げているわけでございます。
  32. 葉梨信行

    葉梨委員 基本的な考え方を伺ったわけでございますが、季節的な受給者といいますか、これらの方々が失保に加盟している中での人数として何%ぐらいおって、また支払っている保険料のうちで、これらの方の支払う保険料は何%ぐらいあるのか、そこら辺をお伺いしたいと思います。
  33. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 全体の被保険者の中で特例被保険者になりますいわゆる季節出かせぎ受給者は人数で約三%でございます。この三%の人たちが納めております保険料は全体の三%に当たります。
  34. 葉梨信行

    葉梨委員 それらの方が支払いを受けている保険金は、全体の支払いを受けている保険金のうちで何%くらいになるか、そこらはどうでしょう。遠藤(政)政府委員 三%の被保険者で二%の保険料を納めている人たちが年間受け取ります保険金の額は、全体の約三五%でございます。
  35. 葉梨信行

    葉梨委員 そこら辺に大きな問題があると思います。当然これらの方々はだいぶ前から、こういうような出かせぎを一年の半分ぐらいはやり、半分くらいは郷里に帰ってくるというようなことで、この保険金の受給ということが生活に組み込まれている。特に北海道、東北地方はそういう状況にあるようでございますが、しかし何か大きな矛盾があるような気がするわけでございます。それに対する改革案として大臣がいま言われたような一時金制度を提案されたわけでございましょうが、一時金の具体的な金額その他については次の機会にまた伺うことにいたしますが、いずれにしろこれは解くべき重大な問題であろうと考えるわけでございます。またこの季節出かせぎの方々の問題は、視点を変えて考えてみますと、一つ失業保険や雇用保険失業給付というような保険の仕組みを使って解決する問題ではないともいえると思います。農業政策や地域開発政策やあるいはこれらの労働者の通年雇用を進めることによって解決すべき問題であろうともいえると思います。  そこでまず、現在の出かせぎ農民が失保なり雇用保険失業給付にたよらずに生活できるようにするために、農業政策をどのように進めればいいかというような農林省サイドの問題がございます。先般成立を見ました、農村への工業の導入についての法律がございますが、現況はどうなっているか。それからまた農村工業導入に関連しまして、地方での雇用機会の確保をはかる上で工場再配置の動向が重要であると思いますけれども、工場再配置法の実績はどうなっているか、こういう問題も伺いたいと思います。  それと通年雇用対策でございますが、東北、北陸、北海道等のように積雪や寒冷な気候によりまして公共工事の発注が冬の間は少ないという問題とか、公共工事の発注が会計年度の当初に行なわれるけれども、予算執行準備の関係で端境期になるというような問題もあるわけでございます。特に積雪寒冷の問題としましては、わが国よりは寒冷な気候を持っている北ヨーロッパとか西ドイツなどで冬季施行が盛んに行なわれている、こういうことも聞くわけでございますが、わが国の場合なぜ行なわれていないか、そこらについて原因や今後の対策を伺いたいと思います。  特に最後に、労働省においては従来から通年雇用奨励施策を行なっていると聞いておりますけれども、その実績がどうなっているか。それから今後はどういうようにまたさらに対処をしようとしておられるか、いろいろ問題を申し上げましたが、まとめて答弁をお願いいたします。
  36. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 先生御指摘のように、出かせぎ労働問題の根本的な解決ということになりますと、まず第一に基本的には農業経営の近代化、農林省で実施いたしております農業政策に問題の根本的解決をゆだねる以外にないわけでございます。と同時に雇用問題といたしましては、こういった農村地域に、出かせぎに出なくてもいいような、地元で雇用が確保されるということが、私どもの労働行政のサイドとしては重要な問題でございます。そこで御指摘のありました農村地域工業導入促進法、こういった施策に基づきまして地元の雇用を確保する、これに職業訓練なりいろいろな施策によって農業従事者が地元で雇用につけるようにする、と同時にこういう人たちが通年雇用できるような、年間を通じて常用就職できるような体制を進めていくということが肝要なわけでございます。  そこで農村工業導入のいろいろな計画がございますが、いま私どもの手元にあります数字を申し上げますと、農村工業導入実施計画の状況を申し上げますと、四十六年度で都道府県計画で二十九、市町村で百十二。四十七年度は同じく都道府県で二十九、市町村で百九十。四十八年度の見込み、これもまだ結果が出ておりませんが、都道府県で四十二、市町村で二百五十、合計で二百九十二の計画がございます。実績は、四十八年十月末現在でございますが、導入企業数で、すでに操業中のものが二百四十一企業雇用者数で約一万七千八百、このうちで農業従事者からの転職が約半数の八千七百四十三、こういうのが実績になっております。その後導入の内定いたしておりますのが約六百十九企業というデータが私どもの手元で出ております。  今後こういった農村工業導入を一そう促進してまいりますと同時に、通年雇用につきましても、通年雇用のための設備融資あるいは通年就労奨励金、あるいは昨年度から実施いたしました通年雇用特別奨励金、こういったものを今後とも一そう拡充いたしまして、通年雇用を進めてまいりたいと思っております。四十七年までにこの通年雇用奨励措置によって対象になりました者が、十四万六千に及んでおります。今後ともこういった施策を充実してまいりますが、今回の雇用保険法案におきまして、雇用改善事業の中で、農村地域なり過疎地域なり地元に雇用の確保できない地域に新しく企業を進出させる、あるいは企業を過密地域から移転するというような場合には、その新増設あるいは移転のために必要な労働者の移転費とか、各種の福祉施設の設備を必要とする企業に対しまして、労働者一人当たり十万円程度の金額をいま予定いたしておりますが、こういったものを支弁いたしまして、地元の雇用の確保を積極的に進めるという措置を三事業の中で盛り込んでおる、こういうわけでございます。
  37. 関英夫

    ○関説明員 西ドイツとわが国の建設業の問題でお尋ねがございました点を補足さしていただきたいと思います。  西ドイツや北欧諸国におきましても、従前は冬季建設工事が行なわれず、建設労働者はやはり季節的に失業しておったわけでございますが、政府、業界一体になった冬季建設工事促進の施策が行なわれ、また政府から冬季工事促進のための種々の援助策が行なわれております。その点は、わが国でもやっておりますような冬季建設工事のための融資制度だとか、いろいろな労働者雇用奨励の制度とか、そういった点は特に変わりがあるわけではございませんが、わが国におきましては、特に北欧と比べましても、北海道等、積雪の量とか雪の質とか地盤との関係で、技術的に克服可能でありましても、工事のコストの増高が特にはなはだしいわけでございます。そういう意味で北欧ほど簡単にはいかない点がございますが、北欧諸国のいろいろな援助策等もわが国でも取り入れておりますし、また労働省といたしましても、公共工事の発注官庁にできる限りひとつ通年施工をやってほしいというようなことで取り組んでまいりました。今後ともそういう点ではさらに一そうの努力をいたしたい、こういうふうに考えております。
  38. 葉梨信行

    葉梨委員 いま局長から数字を示して最近の実績を伺いましたけれども、はたして流れが変わったかどうか、ここらの判断はどうでしょう。
  39. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 先ほど申し上げました数字、それ以後のデータを私どもいま手元に持ち合わせておりませんが、大勢としては積極的にそういう方向でせっかく進められておるというように私ども感じております。と申しますのは、四十六、四十七、四十八年度の実績を見ますると、次第に積極的に計画数もふえておりますし、企業の誘致計画も進んでおるように私どもは受け取っておる次第でございます。と同時に、今年度の新規中卒、高卒の就職状況を見ますると、過去におきましてはほとんどがこういう過疎地域、農村地域から県外に流出いたしまして、京浜地区、中京地区、京阪神地区に集中いたしておりました。ところが、この数年来次第にその傾向が緩和される方向に向かいまして、地元企業誘致と相まって、現在、全体としては半数近くが地元の企業に残るというような状況が顕著に出てまいっております。こういうところから見ましても、やはりこういった計画が逐次浸透してきているのではないか、かように考えております。
  40. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 ほんとう葉梨先生に恐縮です。私は東北出身で、御心配いただいておる地方の出身者でございますだけに、こういう問題について御心配いただきますことは恐縮でございます。  農業政策、あるいは国の政策全般として、やはり地方のそれぞれの開発、そこにまた工場誘致等々を行ないながら、地元において定着する就職ということこそが何より大事なことだ、こう思っているわけでありまして、いま局長もお話しされておりましたように、私の郷里などでもだんだんにUターンの傾向というのが見えている。そしてまた、若年労働者諸君がすぐに東京あるいは川崎、そういうところへ来る者がいささかでも少なくなってきているという傾向が見られているところでありまして、この委員会でわが東北、北陸というふうな問題に対して特別に御心配いただきますことに、私は敬意を払う次第であります。
  41. 葉梨信行

    葉梨委員 農村地域工業導入法とか工場再配置法等は労働省と農林省あるいは通産省との共管事項になっておるわけでございますので、その推移を見ながらどうか適切な手を打っていくように希望いたします。  それから、ちょっと伺いますが、建設業が季節労務者を使う、それは建設業に著しい事実でございますが、建設業のどういうところからそういう現象が出てきているか、そこらについて御説明願いたいと思います。
  42. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 建設工事、特に土木工事の場合におきましては、工事期間が一定の期間に限られる、それから工事の場所が一定していない、こういうことから常用的な性格を持った労働者がごく一部で、大部分がその工事期間中に雇用が限られるという性格を持っております。一方で、農閑期に出かせぎに出ざるを得ないという労働形態を必要とする人たちがいる。こういうことが結びつきまして、建設業の建設現場におきます労働力は出かせぎ労働力にたよるというのが長年の慣行になってきております。先ほど来御指摘の農村工業導入等によって、今後こういった農村地域、過疎地帯に雇用が確保されない限りは、やはりこういう状態が続くものと私ども考えざるを得ない。そこで、今回の雇用保険体系の中で、先ほどいろいろ御指摘になるような矛盾はございますけれども、この出かせぎ労働者に対する保険制度というものを制度的に組み込まざるを得ない、私どもはかように考えておるわけでございます。
  43. 葉梨信行

    葉梨委員 使われている人の立場から見ますと、農村へuターンしていきたいという流れがあると同時に、都会で通年雇用にしてほしいという要請も当然あるわけでございます。そういう意味では、私は建設業の経営態度といいますか、雇用に対するポリシーというか、ここら辺もメスを入れる必要があると思います。しかし、きょうは時間がございませんので、この問題についてはこれ以上突っ込んで質問をいたしませんが、ここらについては突っ込んでいきますと重大な問題があると思いますので、労働省におかれても十分に検討していただかなければならないと思います。  次に移りますが、いままでは雇用されていた期間というか、被保険者になっていた期間によって給付日数をきめていくというシステムでありましたが、今度の法案では変えて、年齢別にあるいはまた就職が困難な方とかというようなことで分けて、受給日数をきめておるようでございます。私、三十歳未満の受給者について日数を調べてみますと、平均六十三日、ところが、男は四十六日、女子は七十日という非常に大きな差が顕著に見えるわけでございます。どういうことからこういう現象が起きているか検討してみたわけでございますが、私なりに調べたところでは結婚とか出産、育児等を理由として退職する女子について、就職する意欲がないのに失業保険ほしさに形式的な求職活動をする例がかなりあるというような事業主側の苦情を聞くのであります。こういうような人たちに対する対策はこれからどういうようにしていくか、ひとつ御見解を承りたいと思います。
  44. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 安定所に失業保険金の受給においでになる方々の中には、特に結婚退職あるいは妊娠、出産によって退職された方の中には、現実に妊娠している、あるいは出産後間もないということで、働けないけれども行かないと保険金をもらえなくなるので無理をしておいでになる方もあるように見受けられます。こういったことにつきまして、ネコの手も借りたいような中小企業あたりからは、安定所に一ぱい若い人がいるのに、来てもさっぱり就職をしてくれないというような苦情が再々投書等にあらわれていることも、御指摘のとおりでございます。私どもは今回、こういったことの起こりませんように、こういった妊娠、出産、結婚ということによって一時的に退職をしてしばらくは就職できない、しかしある一定期間が過ぎれば就職が可能になるというような人たちのために、こういう人たちがその期間を過ぎてなおかつ保険金の受給資格が存続されるように措置いたしますために、受給期間延長措置をとったわけでございます。こういう人たちにつきましては、できるだけ、たとえば出産の人については育児の問題でございますとか、こういった問題もございますが、そういった側面的な援助施策を講じますと同時に、保険の受給資格が十分確保されるような措置を今後とも講じまして、こういう人たちの再就職に万全を期してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  45. 葉梨信行

    葉梨委員 いまのお話でも、さっき私が申し上げましたように、女子が七十日も受給する、男子に比べて格段に長く受給しているというその背景がはっきりされないような気がします。そこらもう少し突っ込んだ事情をお聞かせいただきたいと思います。
  46. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 確かに結婚とか妊娠へ出産によって退職を余儀なくされる方々の中には、一方ではほんとうに働きたいけれどもやむを得ず退職せざるを得ないという人がおられますと同時に、その反面、結婚してこれで家庭に落ちつこう、あるいはいままで共かせぎで働いていたけれども、子供が生まれたからこれで労働市場から引退しようという方がおられることも事実でございます。そういう方々がこの失業保険制度というものをほんとうに御理解いただけない面がありまして、保険料をかけているんだからそれに対する反対給付としての保険金をもらうのは当然なんだというようなことから、安定所に形式的に求職申し込みをして保険金を受け取られるという事実がございます。ただ、しかしながら、安定所の窓口におきましては、一応労働の意思と能力があるということで、はたしてほんとうに意思があるのかどうか、あるいは能力が客観的にどうなのか、この判定は先生御承知のとおりきわめてむずかしい問題でございますので、そういったほんとうに労働の意思、能力がない人たちも一応形式的に失業保険受給者として保険金の受給を受けられる、そういう現象が他の男子労働者に比較して多いことも私は事実だと思います。
  47. 葉梨信行

    葉梨委員 質問があとになりましたけれども、この問題について今度の法律案では、給付日数年齢別にきめるというようになっているわけでございます。基本的にどういう考え方でこうしたのか、そこらについて御説明を伺いたいと思います。
  48. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 従来、失業保険金給付日数は過去における被保険者期間の長短によって定められておりました。一年以上であれば百八十日、五年以上、十年以上というような形で保険給付日数が定められておりまして、これは本来失業保険が短期保険であり、他の年金等の積み立て制度によります保険と本質的に異なっておりまして、何年間被保険者であっても、失業したあと再就職までの期間を失業保険制度によって担保するというのが制度本来の趣旨でございます。そういうことから、今回再検討いたしますに際しまして、失業しておられた、離職をされた方々の実態を調査いたしますと、再就職までの平均期間、実績というものが、最近の雇用失業情勢労働力需給の逼迫の状況の中で非常にはっきりした差が出てまいっております。  三十歳未満の若年層につきましては、これは求人倍率も二倍に近い状態でございまして、地域的に格差はございますけれども、一般的には比較的就職が容易である。その反面、高年齢者になりますと求人倍率も極端に差がありまして、全体として完全雇用的な状態の中でも、就職がなお容易でない。こういうことから就職が困難であるか容易であるか、再就職までどれくらいの期間が必要であるか、その実績をもとにいたしまして、その就職の難易度を年齢別の求人倍率その他のデータによりまして給付日数を定めることにいたしたわけでございます。  そういたしますと、三十歳未満では、ただいま先生御指摘になりましたように、かなり長期にわたっております女子も含めてなおかつ六十日程度である。男子につきましては四十四、五日程度であるということから、三十歳以下を六十日という給付日数で、過去の実績から今後の情勢に対応するものとして十分ではないか、かように考えた次第でございます。
  49. 葉梨信行

    葉梨委員 次に伺いたいのは就職支度金制度についてでございますが、従来と全く異なる常用就職支度金制度を採用しておられるようでございますが、従来の制度にどんな欠陥があって今度の新しい制度をきめられたのか、そしてどんな政策効果期待しておられるか、そこらについて伺いたいと思います。
  50. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 この就職支度金制度は、過去において炭鉱合理化によってたくさんの炭鉱離職者が出ました際に、その再就職をより促進しようという趣旨からつくったものを失業保険制度に取り入れたわけでございます。ところが現実にはその制度が最近非常に恣意に乱用される傾向が出ておりまして、ほんとう就職の困難な人たちが実は就職支度金がもらえない、比較的就職の容易な人たちが短期に再就職を繰り返してこの就職支度金をもらっているというのが、ここ数年来の実績ではっきり出てまいっております。  そこで、制度本来の趣旨に返しますために、こういった比較的就職の容易な方を除外いたしまして、ほんとう就職の困難な人たちに本来の就職支度金制度が活用できるような制度にするために常用支度金制度をつくることにいたしたわけでございます。
  51. 葉梨信行

    葉梨委員 いま御説明のように若い人たちが失保に多く依存している原因の一つとして、若い青年男女が十分な職業意識とか職場に対する適応性を欠いているために離職、転職をする場合が少なくないように思われるのでありまして、学校における職業教育とか職業指導、あるいは勤労青少年に対する定着指導等の対策を一段と強化する必要が私はあると思うのでございます。これらについて労働省としてどういうふうな施策をとってきておられるか、お伺いしたいと思います。
  52. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 御指摘のように、最近新規学校卒業者は金の卵といわれるほど貴重な扱いを受けておりますが、こういう人たち就職いたしますと、大体三年間で半数程度が転職いたしております。その内容を見ますと、最近の労働力需給の逼迫の状況の中で、主として大半が上向移動でございます。その上向移動については、結果的にはたいへんけっこうなことだとは思いますが、問題は、最初に就職いたしますときにほんとうにその人に適した職業についているかどうかという点かと思います。そこで私どもは新規学校卒業者につきましては、中卒、高卒を含めまして適性相談あるいは就職活動につきまして学校の就職担当の先生と安定所の担当官が十分相談いたしまして、できるだけそれぞれの生徒に向いた職業を紹介し、あっせんするようにつとめておるわけでございます。と同時に、就職後、勤労青少年相談員等を使いましてそのアフターケア、フォローアップをいたしまして、こういう人たち転職するにいたしましてもできるだけ下向移動することのないように十分事後措置を強化してまいっておるわけでございます。
  53. 葉梨信行

    葉梨委員 高年齢者につきまして労使保険料を免除するということでございますが、他の社会保険に見当らない新しい制度が提案されたと私は思うのであります。これは一つの大きな目玉じゃないだろうかというふうに考えるわけでございまして、どういうお考えでこの提案をされたか、ひとつ大臣の御見解を承りたいと思います。
  54. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 先ほどから御説明申し上げておりますように、日本の労働社会がだんだん高齢者の社会になることは必然でございます。そうしますというと、被保険者というものは長い間保険料を納めた人でございます。そういう人が離職しましても、一般的にはなかなか再就職が困難じゃなかろうかというふうに考えられますので、こういう高齢者に対しましては、保険料をあらためて課することは負担の公平の原則からもいかがかということからいたしまして、これは全部ただ、保険料ば取らないというふうにしたところに、一つのまさに私たちの御審議いただく大事な問題がある、こういうふうに考えておる次第であります。
  55. 葉梨信行

    葉梨委員 たいへんいい提案をしていらっしゃると私は評価したいと思います。  時間の関係がありますので、一応の問題点の指摘を申し上げまして、立ち入っての質問は同僚議員からの質問に譲りたいと思いますけれども、一つ伺っておきたいのは、こういう意欲的な新しい観点に立つ雇用保険法案を提案されていらっしゃる。これは国会審議をまって初めて成立を見るわけではありますけれども、かりにこういう考え方による新しいシステムができるとすれば、地方の出先をはじめとして労働省に至るまでの行政組織もこういう新しい考え方で仕組みを変えていかなければ、私は対応できないのじゃないかと思うのです。そういう意味で、はたして役所のほうにそういう準備があるか、準備があるとすれば具体的にもう作業が進んでいるかどうか、これを少し伺ってみたいと思うわけでございます。
  56. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 確かに、現在の職業安定行政を担当いたしております第一線の機関としての安定所につきましては、いろいろと御批判や御見解を承っております。職業安定審議会におきましても、その強化策等につきまして再三にわたって御建議をいただいて、従来とも努力いたしてまいりましたが、今回の新しい雇用保険法をもし今国会におきまして成立させていただけるということになりますと、これを執行するための行政体制として、御指摘のように不十分な面が多いかと思います。私どもは当然その点につきまして、来年度におきまして御指摘の方向に向かって体制づくりを進めていきたいということで、現在もうすでにその準備に着手いたしておるわけでございます。世の中の人から、利用者各位から御信頼いただけるような安定機関というイメージチェンジをして、この新しい制度を十分推進できるような組織につくりかえておる次第でございます。
  57. 葉梨信行

    葉梨委員 勤労者の皆さん方も、いまの御答弁のようなことで、ぜひ大臣を先頭にして労働省の全知全能を集めてくふうしていただくことを期待しておると思います。今回私も審議をさせていただきましたこの雇用保険法案でございますが、個々にはいろいろ問題があると思います。しかし全体として見ますと、福祉社会の建設にさらに力強い第一歩を踏み出そうという意欲を感じるわけでございます。福祉社会を建設していこうという場合にわれわれが心がけなければならないことは、社会的公平という立場に立ちまして、限界のある財貨、お金を効率的にほんとう対策を必要とする人たちに使うということであり、逆にまた対策効果をあげないで、また目的を離れて乱用が目立つようなものについては勇を鼓して改変して、時代や社会の要請するところに対応していくというスクラップ・アンド・ビルドの原則を堅持していくということにあると思うのでございます。そういうことを私はここで最後に強調いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  58. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 まさに私たちにしますと質、量ともにさらにこの社会に合うような充実したことを考えたことで、皆さんにこの法案の御審議を願っておりますので、皆さん方のだんだんの御注意の中に、新しい体制づくりと、そしてまた、何が人生で不幸かといいますと、失業ほど不幸なことはないと思います。そういうものを防いでいくところにこの法案を十二分に活用しながら、そして新しい気持ちでこの法案に対応していく機構づくりをしっかりつくりたいと思っておりますから、御理解のほどをお願いします。
  59. 野原正勝

    野原委員長 枝村要作君。
  60. 枝村要作

    ○枝村委員 大臣にお伺いじたいのですけれども、有沢研究会が研究結果を報告したのが昨年の十二月の十一日だと思うのです。その直後、雇用保険制度の創設という提言に対して、主としてマスコミあげて、時代要請に合致したものである、あるいは保険料免除など高齢者に対して手厚くしたものである、こういう歓迎する向きがあったことは私はよく知っておるのです。ところが、日がたつに従って次第にいわゆる評判が悪くなってきておるのは一体どういう理由であるということになるのですか。たとえば最近では全国農業会議所とかあるいは全国農業協同組合中央会、全国森林組合連合会、全国漁業協同組合連合会、こういう団体までがこの法案に強い反対の意思表示をして、そして積極的な要請の行動を始めておる。もちろん東北六県の各地方自治体は反対の決議をしておることはもう御存じのとおりであります。そして最近の社会保障制度審議会あるいは中央職業安定審議会のこの二審議会もあまり賛成するような内容の答申がされていない。こういうふうに見てくると、先ほど冒頭言いましたように、最初はよかったが、次第に日がたつにつれて評判が悪くなったという原因はどこにあるのか。その大きな情勢をあなたはどのように率直に感じていらっしゃるかということをまず聞きたいのであります。
  61. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 有沢先生、岩尾さん、そういう方々が御苦心していただきまして、しかもだんだんお話をお伺いすると、そういう審議会、調査会というものは大体机の上で仕事をされるのであるけれども、この問題のためには現地をお歩きになったその苦心談などもお伺いし、そういうことと同時に、新しい保険制度ということで、おっしゃるとおり、論説、社説等々では非常に御賛成をいただいたことは御承知のとおりでございます。  一方、なぜそれじゃ反対運動が起こったかと言いますと、これは季節出かせぎ者の問題等々がその中に入っておりましたために、私たちはそういう問題を——私たちのほうの原案も審議会やらいろいろな意見などを入れながらつくったことでありますけれども、いまの出かせぎ問題等々からいたしまして、直接自分に関係のある問題からして、いまのようなお話が出ておることも万々承知しております。  いずれにいたしましても、そういう方々がお見えになればお会いもし、あるいはまた農業団体の方あるいは森林関係の方にも、私の説明が足りないところは、役所のほうの諸君にお供をいたしな一がら、法案の大体の内容というものについて御説明し御理解をいただいているようなわけでございまして、御審議の間においての皆さん方のまたそういう大事な意見をお伺いしながら、ひとつ将来の運用に対してやっていきたいという感じ方を持っておることも御報告申し上げます。
  62. 枝村要作

    ○枝村委員 大臣が答えされたような原因が一つあることも私は否定はいたしませんが、具体的な問題については同僚が今後時間を十分とって質疑をかわして明らかにしていくと思いますが、大まかにいって、やはりこの法案内容があまりにも実情から離れているのじゃないかということがいえるのじゃないかと思うのです。それば審議会の中でも指摘しておりますように、今日の非常な物価高、そして石油問題などからくる内外の経済事情のたいへんな動きが、この失業保険法を改めて雇用保険としていく、そういう一つのシステムがその実情に合っているかどうかという問題がやはりこういう評判の悪い一つの原因にもなってきている。  そしてもう一つは、政府のこの法案に対する思想ですか、底辺を流れる基本的な考え方、目標というのがどうも疑念を持たれるという感じが、特に被保険者の人々には、特に出かせぎの労働者の人々にはある。それは、たとえば失業中の生活保障するという今日の失業保険の目的が、先ほどから質疑の中で明らかにされたように、それだけではなくて、三事業を通じて雇用安定、そして失業を食いとめるためのいろいろな方策、そして失業してもすぐ就職を促進するような方向にする、そういう一連の思想に対して、いわゆる失業保険そのものの基本的な考え方と変わってきておるのではないか、やはりそういう疑念が抱かれてくる。  それから三番目には、確かに年齢区分によって高齢者には手厚い方法が講ぜられておるように見えるが、はたしてそのようになるのかどうか、そういうことと、若い人たちに対するきわめて冷酷な取り扱いがされておる。反面、事業主に対してはたいへん至れり尽くせりの手厚いやり方が施されております。こういうことがわかってきたためにこの評判が悪くなってきたのではないか、このように私は思うのです。どうですか。
  63. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 そう一ぺんに酷に言われても、ちょっと答弁はむずかしゅうございます。そんなに悪いものを保険制度の専門家の皆さん方がお考えいいだくわけでもないと思いますし、また私たちとしましても、労働省はやはり働く諸君のことを守るというのが基本でございますから、だんだんの御議論のあることはわかります。たとえば老人の諸君にそれでは全部給付をやめるなどと言われるが、これは必ずやります。それと同時に、若い諸君と言いますけれども、若い諸君のことは私たちも大事にしなければいけませんが、やはり若い諸君はかりに離職をしてもすぐに再就職できる、こういう世の中でございますから、そういうものに見合ういろいろな制度を改正をし、そしてまた充実し、質と量と、いままでは量の時代、それを質を充実していくというところに今度の私たちの基本的な考え方がある。それがどういうふうに枝葉になって、それについての御批判というものならば、だんだんの御議論をしていただく、こういうふうに思っております。
  64. 枝村要作

    ○枝村委員 いまの問題については、後刻私のほうからもう少し質問させていただきますが、失業をした若い者が今度再就職するときに、質と量の面で、いい賃金あるいは待遇、労働条件でその目的が達成されるかというと、そうならないようないまの世の中になっておるということを考えますと、あなたの言うとおりにはならぬということになります。それはあとからいたします。  そこで、大臣は宮城県の出身で、特に出かせぎの多い東北六県の方なんです。ですから、この法案で一番犠牲、被害を受ける出かせぎ農民の実情は、私よりもよく知っていらっしゃると思うのです。それだけに、この法案現状の実態にほんとうに即応して満足すべきものであるかどうか、こう思うのですが、この質問に対してあなたは満足であるというような御実感はないでしょう。その点をお伺いします。
  65. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 出かせぎ地帯じゃないところの先生から、出かせぎ地帯であるわが東北のことを御心配いただきまして、ほんとうに恐縮なんです。  そこで、いまおっしゃるように、三十日分一時金を出すところが一体賛成されているかどうかということだろうと思うのです。だんだんお話し申し上げましたとおり、やはり三十日分一ぺんにやることによって、またいまから先の給付の率が上がることによって、私は、一時金というものを獲得することによって、自由にその地方でも働けるというメリットがあるのではなかろうか、そういうことを考えながら、この出かせぎの問題については、私も自分の地帯でもございますし、そういう問題を考えながら、いずれにしても十分なるひとつ御論議をいただきたい、こう思っているわけであります。
  66. 枝村要作

    ○枝村委員 いや、私の質問に対して率直な御答弁はなかったわけなんです。いまの政府提案に対して私は言っているのです。基本的な、雇用保険制度に抜本改正したとかせぬとか、そういう問題で言っているのではないのです。これは限った問題として、いまの政府提案の原案のままで、あなたは十分りっぱなものだ、これでよろしい、完全なものだと思っているかどうか、こういうことです。
  67. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私は提案者でございますから、そういう意味では、こういう御提案を申し上げたということでございまして、いずれにいたしましても皆さん方の御審議をお願いしておる、こういうことでございます。
  68. 枝村要作

    ○枝村委員 そうすれば、あなた方の政府原案のまま成立をはかるということでしょう。それは当然かもしれない。しかしその自信があるのかどうかということになると、これは疑問があるでしょう。だからそれ以上追及しませんが、たとえば法案要綱では、季節産業にかかわる保険料は千分の四十三というのを提案されたのですね。ところがいろいろな意見や要望があって、それを取り入れたのかどうかわかりませんが、この原案ではそれを修正して千分の十八とした。そのこと自体は労働省政府の当初の態度が変わったんじゃないか。いい意味で変わることはそれ自体私は喜ぶのですけれども、自信の問題となると、確固不動の確信、思想を持つということになると、やはりいい悪いは別にして、変わったこと自体はそれがないということをまず第一に証明するのですよ。  それともう一つは、いま伝えられておりますように、短期雇用者に対する、一年未満の人たちには、三十日分の一時金を支給するというけれども、それじゃこの法案が通りそうもないから、何日かふやさねばならぬ、こういううわさが、労働大臣は知らぬかもしれませんけれども、どんどん流されておる。これはいまの私の流儀からいえば、原案をそのまま通す自信が政府にはないからそういううわさが乱れ飛んでおるのではないか、こういうことになるのですが、間違いですか、どうです。
  69. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 きょう初めて御説明申し上げ、法案審議をお願いしたようなわけで、そういう話は寡聞にしてまだ存じ上げません。皆さんが腹の中でそれぞれいろいろなことをお考えになっていることまでは、ちょっと私まだ理解できないでおります。
  70. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 ただいま一、二の点で具体的な例をおあげになりましたが、当初私どもがこの法案内容として考えておりました保険料率の負担につきまして千分の四十三が千分の十八に下がった、自信がないんじゃないかという御指摘でございます。この保険料率につきましては、短期受給者につきましては、先ほど葉梨先生の御質問にもございましたように、全体の被保険者の中の三%の人たちが、保険給付の面においては三五%、約三分の一受給している。こういうことに対する都市の労使からの御批判という点もございます。これを何らかの形で御納得いただけるような形に是正しなければならぬ、これが一つの問題でございます。かりに一時金三十日分をそのままにして保険料をどれくらいにしたらいいかという試算をいたしますと、約千分の百強になります。しかしながら、そういった極端な保険料負担をかけるということにつきましては、これはたいへんいろいろ問題がありますし、保険という制度の本来の趣旨から申しましても適当ではないということで、まあまあ過度な御負担ではなくてごしんぼういただける程度のものということで当初試算いたしました千分の四十三を、かりに短期受給者の一番適切な例で、出かせぎ労働者人たちが月収十万円といたします場合、従来の保険料は月に六百五十円であります。それが千分の四十三にいたしますと、ちょうど二千円になります。月収十万の人がいままでよりも千三百五十円の負担増になるということはそれほどたえがたい負担増ではないんじゃないかという考え方でいろいろ考えておりましたけれども、何しろ六百五十円が二千円になるのですから、ちょうど三倍になります。これは制度の改革としてはあまりにも急激過ぎるという関係団体あるいは審議会等の御意見もございましたので、いろいろと再検討いたしまして千分の十八に改めて御提案をいたしたわけでございます。そのほかにも二、三点いろいろ審議会の御意見によりまして手直しいたしまして、原案を作成いたしたわけでございます。決して自信がないというようなことではなくて、基本的には私どもは最善のものをつくるべく努力をいたしたつもりでございます。内容につきましては今後当委員会におきまして十分御審議をいただきたい、かように考えておる次第でございます。
  71. 枝村要作

    ○枝村委員 有沢研究会の報告では、いま言った人々に対しては一時金として、現行の料金より四、五倍上げろというやつが出ておりますね。それに基づいて千分の四十三というのをあなたは出されたと思うのですが、しかし、それは適切でないという判断をされて、修正されて千分の十八にしたんでしょう。思想や目的が変わったとか、そこまで私は言いませんけれども、少なくとも当初の労働省の要綱に示された、原案に示された料金の問題については、やはり自信がなかったから改めたということになるでしょう。これは常識ですよ。答弁は要りません。  こういうふうに見てまいりますと、どうも労働省政府のやっていることはいわゆる自信と確信に満ちておらないような気がするのです。いままで国会でも再々対策上の問題として、そのかけ引きとしてこういう筋道を通ったこともあることを知っております。世論操作をする場合の手口にも使う。事はわかるのですけれども、しかし今回の問題はそういう手口の問題でないのであって、ほんとう労働省政府が自信を持っておるならば、そういう問題についてはぐらつかずに、たとえば有沢研究会の報告を忠実に法案化するのなら当初からやるべきでは——やってはならぬと思うのですけれども、あなた方の立場からすれば、やるべきでなかったか。それをやらなかったところにいまの私の質問があるということです。まあ、それはこの辺でとめておきます。  いまの答弁を聞きますと、思想も目的も、自信もあるし、変わっていない、こういうふうにおっしゃいました。で、この法案の基本的な思想というか考え方、目的は一体どこにあるか、こういう点をもう一度聞いておきたいと思います。
  72. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 いまの日本が、石油危機とかいろいろなことをいわれながらも、失業率一%に押えられる姿、そしてまた一面、求人倍率も今月はまた上がっているというような姿、こういう中において、就職はしておりますけれども、だんだんに社会が高齢化いたします。それからまた、働く諸君も技術がどんどん進歩しなければなりません。そういうふうな、今度は質を充実した雇用者、労働者、こういう姿になりつつ、一方では老齢化する。若い諸君は金の卵ですけれども、そういうお年寄りの方々は、地域によってはなかなか就職が困難でございます。そういう方々の御就職やらも願うということからしますと、従来の失業保険制度を——ときには訓練、ときにはいろいろな啓発、私のほうで三つの事業を考えておりますが、そういう中に充実した体制をとることによって、勤労者生活と長い間の福祉というものを考えるというところに基本がある、こう思っておるわけであります。
  73. 枝村要作

    ○枝村委員 失業保険を改正して、名前まで変えて雇用保険とするわけですから、これはやはりたいへんな大改正であると思うのです。雇用改善とか能力開発あるいは雇用福祉等の事業は、本来これは国の労働雇用政策の一環として行なわれるべきでありまして、国の財政負担によるか、あるいは国や資本の社会的責任においてこれはやるべきである、実現しなければならぬという点についての基本的な問題があることは、発言の中では、皆さんとわれわれと両審議会、一致するわけです。しかし実際にやっていることは、われわれから言わせれば、それとは反対のことをやっておる。先ほどから葉梨委員の質問に対して、今日まで農村の工場再配置によって工場、事業所なんかどんどん設置して、事業を開始しておるのが相当数あって、それに十四万六千の労働者を吸収しておるといっております。それはたいへんけっこうなことであろうと思いますけれども、実際に農村政策の貧困によってあすのめしが食えないというような地域、今日ではそのために出かせぎ労働者となっていかなくてはならぬというそういう地域に、はたしてどれぐらいのそういう工場配置や地域開発が行なわれておるかということになると、依然としてそのことは解消されておらぬじゃないですか。ここでどこどこと私は求めませんけれども。そういうことに対する優先的な施策をやる気はあっても、先ほどから言うように、失業保険制度改正して雇用保険、そして三事業を入れてそこでまかなうという法改正をしていきますと、それにみなたよっていくという結果ができて、本気になって政府がいわゆる完全雇用生活保障するという、そういうことに取り組むことができなくなるという心配がわれわれにはあるわけなんです。そしてまた、この抜本改正によりまして従来より一段と大きく保険財政雇用政策の財源に充てようとしておるのですよ。そういうことを見ると、この法案はどうしても、あなた方自身が常に言われる農民を守る農業政策をやるとか、あるいは産業全般の政策をよくしていくということとはつながらないような気がしておるし、その政策を進める上でブレーキにされるような存在に実はなっていくのではないかという心配があるわけです。その私の意見に対してどう思いますか。
  74. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 農村地域に十分な雇用機会を確保するということは、これは私どもの雇用政策の面でも非常に重要な問題でございます。枝村先生も私と同じような地域にお住まいでございますけれども、一つの例をあげますと、私の出身県であります福岡県で、炭鉱の閉山によりまして炭鉱地帯が非常に疲弊いたしました。この地域に企業を誘致して、地元で雇用の機会をつくり出していくということが非常に重大な問題になっております。さていろいろな施策をとりまして企業を誘致いたしますと、確かに大企業中小企業取りまぜて筑豊の炭鉱地帯に企業が入ってまいりました。それによりまして地元の雇用機会がある程度確保されておる。いまだに失業者はおりますけれども。その際に一つ問題になりますのは、大きい企業が入ってまいりますと、確かに地元の中小企業に比較いたしますと賃金が中央並みに高い。そうしますと地元の中小企業から苦情が出る、こういう事態を私は経験いたしたことがございます。これは私どもは、地元の中小企業がそういった中央から進出してくる企業に対して遜色ないような企業に育っていただくことが大事だと思います。そういう意味でもやはり中央から企業を誘致して地元の中小企業の育成をはかり、両々相まって地元の雇用機会をできるだけふやしていき、より労働条件を向上させていくという努力が必要だと私どもは考えておるわけでございます。  今回の雇用保険の中で、三事業を新しく制度化いたしておりますけれども、従来こういった三事業に類するいろいろな保険施設的な事業現行失業保険制度のワクの中で実施いたしておりまして、この点につきまして従来からも数回にわたりまして、失業保険の労使保険料でこういう事業を実施することについてはいろいろ問題があるという御指摘を受けてまいったわけでございます。今回、ただいま申し上げましたようなそういった雇用の面でのいろいろな大きな問題が従来から懸案として残されております、こういった問題に積極的に取り組むことによって失業を防止し、積極的に職業の安定をはかっていくという事業を取り上げますにつきましては、従来御指摘を受けました労働者負担する保険料からこういう経費を支弁するのでなくて、当然こういったものは企業負担によって行なうべきであるという考え方で、雇用保険制度の中で事業主負担による千分の三の保険料でこういった三事業を実施すると、はっきり制度的に割り切ったわけです。もちろん、こういった雇用政策の諸施策一般会計で実施すべきことは当然でございます。この一般会計で実施すべきものと、雇用保険制度のワクの中で事業主負担によってまかなうべきものと、これはさい然と区別されるべきであります。ただ、こういった労働者職業の安定をはかっていくための雇用改善事業あるいは労働者能力開発事業福祉対策事業、こういったものを一般会計でやるべきかどうかということにつきましては、一般会計は御承知のとおり現在の税体系の中では直接税と間接税、直接税中心でございます。勤労者のいわゆる所得税がその中核をなしておる。そういうものでやるよりも、むしろ私は企業負担によってまかなわれる経費で支弁すべきではないか、そういう趣旨で今回の積極的な施策をこの事業主負担による保険料でまかなう、こういう制度をつくったわけでございます。私どもはこれによってより積極的に雇用対策を進めることによって職業の安定、失業の防止をはかっていきたい。同時に、先ほど御懸念がありました従来の、現行失業保険制度の持っております失業保障機能は、何らこれをそこなうことなく一そう強化するという考え方は、この新しい雇用保険法の中でも一貫して貫いてきておるつもりでございます。
  75. 野原正勝

    野原委員長 この際、午後一時まで休憩いたします。    午後零時三十五分休憩      ————◇—————    午後一時十二分開議
  76. 大野明

    ○大野(明)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前の質疑を続けます。枝村要作君。
  77. 枝村要作

    ○枝村委員 午前中に引き続いて、私の質問を続行いたします。  この法案の基本的な考え方、目的について質問したわけでありますが、その二番目には、この失業保険制度の目的は、失業中の生活保障するというのがそれでありまして、また本来のあり方である。それが今度は、新しい雇用保険法によって、われわれから見れば、それを大きく後退させておる、そして、企業雇用政策を推進する、悪いことばで言えば、道具に変えていこうというねらいがある、こういうふうに見るわけなんです。時間がありませんから答えは要りませんけれども、そういうふうに労働者側は思っておる。   〔大野(明)委員長代理退席、委員長着席〕 あなた方がいかに弁解しようと思っても、やはりそういうねらいが根底にある、こういうふうに思います。  それから三番目には、約八十万の出かせぎ労働者が今日おるといわれておるのですけれども、これは予定された季節失業者、こういう呼び方で一般にいわれておりますが、この人たちに対して一時金を支給して、そしてある一定の時期を見て、この一時金制度そのものをやはり打ち切っていくのではないか、こういうねらいがありそうだというふうに見ておるわけなんです。  これはあなた方は、私の質問に対して、それはそうではないというように頭から否定するでしょうけれども、しかし、時代の移り変わり、今日の政府自民党のいろいろな労働政策の面から見ると、それは必ずしもそうでないという保証が将来にわたってあるかどうかということについての疑問が出てくるわけなんです。とりわけ、出かせぎ労働者に対する取り扱いについては、有沢研究会も、これは保険になじまないものでもあるし、将来はこれを打ち切り、保険とは関係のない方向で片をつけるべきであるという、そういう示唆がされておるんです。  今日の段階では、それをなじまないからといって一挙に全廃するとかなんとかいうことはできないし、また、政治情勢がそれを許さないしということにあると思われるような方向が志向されておりますだけに、私のいま言った心配が非常に広範に、特に該当者の人々には起きてきておる、こういうふうに思うのです。  そこで、いまの若年労働者やあるいは出かせぎ労働者失業給付から締め出していくという問題について、もう少し掘り下げて質問してみたいと思うのです。  この人たちは、いわゆる低賃金労働者ですから、失業保険から締め出すことによって、ますます低賃金労働者として企業が収奪する、これを強めていくというねらいがあるということを先ほどちょっと言いましたけれども、これは今日の独占企業側にそういうねらいがあるのに対して、いまのこの雇用保険制度を、このままで制度を続けていくとするならば、新しく抜本改正してれを運営していくとするならば、そういういま私が言いました企業や独占の考えておるその労働政策といいますか、そういうものにはやはり忠実に労働行政が、その行政の面で、側面からあるいは前面に立って実行しようということになるのではないか。その指摘の問題について、たとえばこういう例があるのです。  昭和四十六年労働省発表の失業保険受給者構造調査によりますと、再就職の場合、前の職の賃金より低くなった者が半分近くもおるということが明らかにされております。これは、事実のほどについては職安局長に答えてもらいたいのですが、たとえば五%から二〇%降下した者が一八・四%もおる。それから二〇%から五〇%賃金が下がって就職した者が一八・七%、それから半分以下に下がったのが四・三%おるということが明らかにされております。五%以下の数字があらわしてありませんから、まあそういうのを計算してみますと、大体半分ぐらいが再就職する場合には前の賃金より低く支給されながら、それを知りながら就職していくという、こういう例になっておるのです。これは私の一方的な意見だけではいけませんから、そういう事実があったことを認めますか、どうですか。
  78. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 ただいま先生がお示しになりました数字、実はちょっと私手元にございませんので的確に申し上げられませんが、私のほうで四十七年の調査によりまして、中高年齢者と四十五歳以上の人たち、それから若年層、これは二十歳から三十四歳までの移動の実態調査の結果が出ておりまして、これで、若年層のほうにいたしますと、賃金が移動によって三〇%以上増加した者が七・二%、一〇%から三〇%の増加が三三・二%、一〇%未満の増減が四二・二%、一〇%から三〇%減少した者が一四・五%、三〇%以上の減少が三・〇%。したがいまして、上行移動が四一・二%、それから並行移動、横すべりが二九・一%、合計いたしますと、平均水準より並行かあるいは上がった者が七〇・三%でございます。下がった者が二九・七%、こういう数字が出ております。
  79. 枝村要作

    ○枝村委員 それはいつですか。
  80. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 四十七年でございます。  それから四十五歳以上の中高齢者につきましては、同じように三〇%以上の増加が若年よりやや低くなっておりまして三・六%、一〇%以上二二〇%の増加が二三・三%、一〇%未満の増が四五・二、それから下がったほうが一七・〇、三〇%以上の減少が一〇・八。合計いたしますと、上行移動、高くなった者が三一・八、横すべりが三九、合計いたしますと同じくやはり七〇%でございます。下がった者が二九・二、こういう数字が出ておりますので、いま先生の御指摘になりました数字も私どもでもう一度調べてみますけれども……。
  81. 枝村要作

    ○枝村委員 私の言ったのは四十六年度の数字なんですから、その後賃金上昇やその他ありますし、それから去年からことしにかけて、さらに続くかもしれませんけれども、インフレになりますと賃金上昇そのものはやはり続いていますから、パーセンテージそのものは確かに上がるかもしれません。しかし実際には実質賃金は下がるということもあるでしょうから、一がいには評価はできませんが、いずれにしても、この四十六年度の労働省の発表によれば、私が先ほど言ったように半分ぐらいは大体降下する、そういう現象が起きてきておる。ですから、今度の法改正によって、俗なことばで言うならば、給付日数年齢別に区分していくでしょう。それから三十歳以下の人は六十日ですか。そうなりますと、結局はいままでよりもその部面でやはり締め出していくのですから、結局早くどこかに就職せねばならぬ、食うためにはという気持ちが出てきます。あなた方のねらいは、だから早く就職させるということになるかもしれませんが、就職するほう、いわゆる失業から締め出される若い人たちは、そういう状態におかれますと、何でも食べるためには仕事につかなければならぬということで、職業選択の自由なんというものもあったものではなくして、いわゆる雇用主、事業主に無差別に吸収されていくということになる。その場合に、やはり事業主資本の側はなるべく安い賃金で雇いたいという本能があるから、そういう吸収が全体として生まれてくるのではなかろうか、こういうふうに今度の法改正の中の問題として言われるのではないかと思うのです。  それから今度は新たに就職促進という文句も入ってくるわけなんです。いわゆる失業中の生活保障でなくして、早く就職させるようにするのがこの目的になってくるわけですね。そうすると、ますますそのための一段ときびしい措置がそれぞれで行なわれるし、そしていまの生活難に耐えられないから、失業給付も非常にきびしく制限されていきますので、先ほど言いましたように、何でもかんでも仕事に飛びついていくという現象があらわれてくる、こういう心配が私どもにはあるわけでございます。  ですから、一般的なことばで言うならば、日本の低賃金構造がこの人たちによってささえられるという日本情勢日本の状態が、産業構造の全体の中の一つの現象としてあらわれてくる。今日でもありますけれども、それが雇用保険という名前に変える、この新しい法案によってますますそういうふうになってくる。だから最初言いましたように、結局、企業雇用政策を推進させる道具ということはであらわすことは語弊があるかもしれませんが、そういうふうになっておる、こういうように、心配しておるところでありますが、それに対する労働大臣の所見をお願いいたします。
  82. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 先生から今回の雇用保険法案の中身につきまして、要するに失業者を保険制度から締め出そう、締めつけをしようとしておるのじゃないか、その具体的な例として、出かせぎの季節受給者の問題あるいは若年層の問題この二つを具体的におあげになりました。  第一の出かせぎの問題につきましては、短期受給者の保険制度のあり方につきましては、確かに研究会の段階におきましても、本来、短期季節出かせぎの受給者の人たちは保険制度になじまないものである、こういう指摘が行なわれておりました。それをあえて今回異例な一時金という制度で、失業給付を目的として雇用保険制度の中に組み込もうとしたその理由でございますが、四十二年それから四十四年に当委員会におきまして、失業保険法改正案を御審議になりました際、この問題につきましては、出かせぎの季節短期受給者につきましては、本来失業保険制度と矛盾した制度で、これをどうやって規制するかということが当時の改正一つの考え方であったと思います。四十四年の改正におきまして、この委員会国会修正が行なわれまして今日に至っておりますが、今回のこの出かせぎの短期受給者を保険制度の中で新しい形で組み込みました考え方は、この四十二年、四十四年の改正のときと全く違った考え方をとっておりまして、この二回の改正で、どうやって規制するか、いかにして合理化するということを基本に置いて考えられたのに対比いたしまして、今回は、確かに本質的には失業給付という制度になじまないものでありながらも、従来の制度の中で、この出かせぎの人に対する失業保険給付というものが、こういう人たち生活の中に深く組み込まれてしまっておる。こういう実態と同時に、この出かせぎという労働形態が全国各地で、特に北海道、東北地方におきましては、決して好ましい形態ではないけれども、現実に出かせぎに出ざるを得ない、やむを得ない、同時にまた、日本経済全体にしても、この出かせぎという労働形態があるからこそ労働力の需要がまかなわれておる、こういう両々の実態から見まして、十何年来この制度の中に深くなじみ込んでしまったこの出かせぎの短期循環受給者の人たちの実態を規制するという方向でなくて、現実の実態というものをそのまま受けとめて、これを新しい雇用保険制度の中に定着させようという考え方をとったわけでございます。  そういう一時金という制度で、制度の中に組み込んでも、いずれは将来打ち切るためのまず第一段階ではないかという御疑念でございますけれども、これは私事で恐縮でございますが、三年前、当委員会におきまして、中高年の雇用促進特別措置法を御審議になりました際、将来の失対就労者がまず第一段階でここで締めつけられて、いずれかの時期になしくずしに打ち切られるのじゃないかという御懸念をたくさんの方々から伺ったわけでございますけれども、これは、その当時私ども法案審議の際にお答えいたしましたように、当時失対就労者の中で自立をし、あるいは再就職をし、あるいは引退される方々には、それぞれ御希望によっていずれかの道をお選びください、あとに残った人たちは、現行の緊急失対法のワクの中で、失対就労者として、言い方は適当かどうかわかりませんけれども、当時そのままのことばで申し上げましたけれども、死ぬまで安心して働いていただきたいということを申し上げたわけです。にもかかわらず、なお当時口ではそう言っておるけれども、いずれ五年後の再検討、三年たったら、五年たったら大なたをふるって全減させられるのじゃないかということを再三繰り返して私ども耳にしたことがございます。しかし、三年前の法律成立当時から今日まで、ほとんどいままでと打って変わって減少はいたしておりません。と申しますことは、私どもも申し上げたとおりに、そういうなしくずしになくそうという意図はございませんし、何らそういう措置はとっておりません。  今回の出かせぎの短期受給者に対します措置にいたしましても、いままでと考え方を百八十度全く変えて、実態をそのまま受けとめて保険制度に組み込もうというところに今回の真意がございます。そういうことによりまして、いままでのいろいろな不合理な矛盾、批判を受けておりましたものを正当化しようということからきた制度の立て方をとっておるわけでございます。  また一方、若年層の失業保険の受給日数を六十日にしたことについて、これもやはり締めつけすることによって低廉な労働力の供給源にしようとしているんじゃないか、こういう御懸念でございますけれども、これも決してそういうことじゃございませんで、三十歳以下につきましては、先ほど申し上げましたように、現在の労働市場、今後の雇用失業情勢を考えますと、労働力の供給、若年労働力の供給が今後一そう減少していく、こういう情勢が長期的に続くわけでございまして、その中でいままでの実績が、この三十歳以下につきましては、失業保険の平均受給日数も四十五日程度でございます。現在の状態の中では、今後ともこういう若い人たちにつきましては、職業選択の自由はもちろんのことでございます。これは憲法で保障されておりますが、そういう制度の中で自由に自分の希望する職業を比較的容易に選ばれるというのが現実の状態でございます。それに反しまして、中高年齢の方々は、全体としては労働力は非常に逼迫しておりますけれども、なかなか就職しにくい、これは需要地域でもそうでございますが、ましてや過疎地帯になりますと非常に困難な状態であります。本来失業保険制度そのものの本質を考えますと、各人が被保険者同士がその負担によって必要な方々に必要な給付をするというのが制度本来のたてまえでございます。と申しましても、べらぼうにというわけにはまいりませんけれども、一定のワクの中でその理想を果たし得るような制度にすることが望ましいものだと私は考えております。そういうことで、比較的若い年齢層の就職の容易な人については、従来の実績を考えて給付日数を短くすることが妥当であり合理的である。それに反して、就職の困難な人たちが従来比較的そういう面で制度の上から必ずしも手厚いきめこまかな保護を受けてなかった分を、今回の措置でこういった中高年齢者、特に高年齢者あるいは身体障害者あるいは特に社会的に就職上いろいろ問題のある人たち、そういう人たちについて手厚い対策を講ずることにした、こういうのが今回の趣旨でございまして、単に若年層に給付日数を切り下げたということで、御指摘になりましたような意図は全くございませんし、そういうことは制度の趣旨からいってもすべき問題ではない、私どもかように考えておるわけでございます。
  83. 枝村要作

    ○枝村委員 この問題についても後刻同僚の間から具体的に質問があるでしょうけれども、あなた方がそういう自信を持って答弁し、将来政策、行政面でも間違いが起こらないように一生懸命やる決意を披瀝されたのでありますから、私自体は、時間がありませんし、これ以上この問題では質問は続けません。  そこでその次の質問に移るわけなんですけれども、有沢研究会が報告されたのが先ほど言いました十二月十一日です。国会提出されたのが二月十二日です。二カ月の間に手続がとられておるわけなんです。これはいままでの重要法案に比べるとまことに手ぎわよく迅速に行なわれておりますね。これは電光石火のごとくということばは当てはまりませんけれども、それに近いような勢いで進められておるわけなんですよ。なぜこのように急いだのか、こういう問題です。これは全く重要法案ですから、それだけになぜ、われわれから言わせれば慎重に審議をして、それぞれの意見を十分くみ入れて提案をしなかったのかという質問です。その理由をひとつ明らかにしていただきたい。
  84. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 現行失業保険法失業保険制度につきましては、従来から当委員会でもいろいろ御批判、御意見を承っております。関係各団体、各方面からもいろいろと御意見をお出しいただいておったわけであります。そこで私どものほうといたしましては、現行失業保険制度につきまして抜本的に再検討する必要があるという御指摘によりまして、過去四十五年の一月から、中央職業安定審議会の失業保険部会におきまして、いろいろ実地調査も加えながら、二十数回にわたって検討を続けていただいたわけでございます。その間におきまして、外国の制度を研究するために、委員の皆さん方に外国の実情視察も実施いただいたわけでございます。この失業保険部会で約三年数カ月にわたりまして検討を続けていただきまして、基本的な問題点の指摘をしていただいております。  その後、昨年の五月に、その問題点を踏まえまして抜本的な改革に踏み切る決意を固めまして、御指摘の有沢研究会を委嘱申し上げまして、この研究会で労働省原案を作成するにあたっての専門家の御意見を伺うことにいたしたわけでございます。この研究会で前後十回余りにわたりまして研究を続けていただきまして、その結果をもとにいたしまして一応労働省の事務当局案を作成いたしまして、中央職業安定審議会、中央職業訓練審議会並びに社会保障制度審議会に御諮問申し上げまして、それぞれの審議会で結論をいただいて今回の雇用保険法案提出いたしたわけでございます。  なぜ急ぐか、私どもといたしましては特別に必要以上に急いだというようなことではございませんで、もともと四十四年の法律改正におきまして、五十一年の一月までに農林水産業への全面適用とあわせて暫定措置等についての対策を講ずべきことを法律によって義務づけられております。いろいろとただいま申し上げましたような機関におきまして検討を加えられた結果、この失業保険制度の改革をやるということになりますと非常に大がかりな抜本改革にならざるを得ない。そういたしますと、これをもしかりに一年延ばすといたしますと、もうぎりぎり法律に指定されました、私どもに義務を課せられております期限までに間に合わなくなるような、内容が多岐膨大にわたりますだけに、施行のための準備、その後の軌道に乗りますまでに相当な期間を必要といたします。そこで研究会におきましても、過去三年有余の研究の結果を踏まえて、私どもといたしましては十分な御意見をちょうだいいたしました。その意見をもとにして、ただいま申し上げましたような原案作成に当たったわけでございますが、両審議会におきましても前後十回近い御審議をいただきまして、期間は確かに一月余あるいは二月足らずの短い期間ではございましたけれども、長期間にわたって非常に慎重かつ御熱心な御検討をいただきまして、その結果いろいろな御意見、御指摘を受けたわけでございます。その御意見をもとにいたしまして、私どもといたしましては事務当局といたしまして最大限の努力をいたしまして原案作成をいたしまして、ただいま御審議をいただいているような法案提出いたしたわけでございます。決して私どもは短期間に軽々に法案を作成したというわけじゃございませんので、御了解いただきたい、かように考えます。
  85. 枝村要作

    ○枝村委員 しかし、一般の人が常識的に見てそうは受け取られないのですよ。中職審の日程は、十二月二十一日に諮問と同時に説明から開始されて、二月三日までに八回ほど審議は行なわれたわけですね。それから制度審ではいつ諮問されたのですか。
  86. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 中央職業安定審議会では、十二月二十一日から二月三日まで十回審議が行なわれております。それから社会保障制度審議会は、四十八年の十二月十七日に研究会報告について御説明申し上げ、質疑応答がございました後に、本年の一月八日に諮問しまして、一月八日から二月八日までの一カ月間に前後七回の審議が行なわれております。
  87. 枝村要作

    ○枝村委員 制度審の場合は、二月八日答申書を完成して答申を出しました。それからその日の夜にいわゆる閣議の持ち回りで承認を得て、二月十二日に国会提出、そういう運びですね。間違いありませんか。
  88. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 はい。
  89. 枝村要作

    ○枝村委員 有沢研究会はいわゆる非公開で行なわれたのですね。
  90. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 非公開というわけではございません。外部の関係者の方が常時入っておられました。
  91. 枝村要作

    ○枝村委員 しかし私のほうは、非公開、もう少しきついことばでいえば密室で協議が行なわれたというように聞いておるわけです。ところが報告書には、労使団体の意見、要望を広く参考にしたというふうに書いてある。ところが、これもよく聞くと、実際には最終段階で各関係団体を含めて三十分ずつちょっと何やら聞いたという程度のもので、ここに記載されておるようにほんとう関係者の意見を十分聞いて、それを報告書の中に取り入れたというものではないと聞いているのですよ。いまのあなたの答弁と大きく違う。どちらがほんとうですか。
  92. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 私ども、日にちはいまちょっと手元にございませんので、的確じゃございませんが、たしか十月末か十一月ごろだったかと思いますが、有沢先生の御意向で関係団体、特に労働組合関係につきましては、各関係労働組合の意見を聞きたいということで、時間は各団体一時間程度だったかと思いますが、その際に詳細な資料等もお出しいただいて、有沢先生以下七人の委員関係組合の意見を聴取された事実がございます。そのほか、私どもは有沢先生の指示に基づきまして、関係のいろいろな人たちに私どものほうから研究会の意向を伝え、またそれに対する関係者の方々の意見も有沢先生のほうに御連絡申し上げるというような措置をとりました。決して密室で秘密裏に研究会が進められたということではございませんで、私どもは公開か非公開かという特別の前提はございませんでしたけれども、非公開という進め方で行なわれたとは私ども全然考えておりません。
  93. 枝村要作

    ○枝村委員 労働省と有沢研究会の関係ほんとうに密接な関係であったと思うのです。これはどちらがどう主導権をとって運営されたかわかりませんけれども、それはそのとおりですよ。あなたから言わせれば、非公開じゃなかった。それこそ癒着の関係ですから、当然非公開じゃない。  ただ、問題は雇用保険でしょう、重要な問題ですからね。しかも広く多くの関係者の意見を聞いてやらなければならぬという立場にあるにかかわらず、いま言いましたように、あなたのほうは密着しておるけれども、その人たちは全然疎外関係に置いて、しかも非公開、密室で行なわれている。最終回で三十分ずつ、何かしらぬけれども意見を聞いたという程度のものでこの有沢研究会の報告というものがなされている。これはもう事実だろうと思う。ところが職安局長によると、有沢研究会は前の失業保険部会の審議、討議を骨子に引き継いだ、こういうことを言っているのですけれども、これはほんとうですか。この点はまた聞かなければならぬのです。いまから質問しますよ。あなたのほうの演説はいいです。  それで問題は、いまあなたも答えられたように、二年半前ですかな、今日でいえば三年ぐらいになるのですけれども、二年半前に、これは労使合意失業保険の抜本改正をしなくちゃならぬという必要性を認めたようですね。それに基づいて中職審の中に失業保険部会というものを設置したのである。これは間違いありませんね。だから、その部会の目的と、設置のあとどのような運営と審議をしてきたのか。先ほどあなたが若干言われましたけれども、どうもそれだけでは、私のほうではあまり納得できないようなその後の事情があるようですからお聞きしたいのですよ。  それで、答弁される前に私のほうから言っておくことは、三者協議のもとに二年間慎重審議してきた。それはあなたが言われたとおりなんです。そして、その間、一昨年の秋には外国に委員を派遣した。それもそのとおりなんです。そのためにばく大な費用まで使ってきたということなんですね。労働省はその失業保険部会に対してこのようなことを一応構想として持っておられたということですか、それを聞きたいのです。それは、四十八年の秋ごろまでには失業保険部会の報告書をまとめてもらいたいという提起を、当初その部会にされたようである。部会もそれに従って、先ほど言いましたように慎重に審議し、その時期に報告書ができるように作業に取りかかっておる。そのやさきに有沢研究会なる私的機関を設置していって、そして失業保険部会は、雲散霧消か何か知りませんが、いまでもあるらしいのですけれども、何の役にも立たないようにほったらかしてある。こういうふうに実際にはなってきておるのであります。  いわゆる有沢研究会というのは労働大臣の私的諮問機関でしょう。それからこの部会は公的機関ですね。だから公的機関が全く無視されたわけなんです。早いことばでいえば侮辱されている。そして私的機関である有沢研究会をきわめて大事にし、尊重していく、こういうことを労働省は平然としてやってのけたわけです。ですから、その部会の労働者委員はたいへん腹を立てて、抗議声明を出すと同時に、全員が辞職願いを出したというのは事実でしょう。それが物語っておるわけなんです。労働省は一体何を考え、何を目的にしてこのようなことを露骨にやったのか。これは先ほど言ったように、国会提出を急いだという前段の、あなた方の一つの作業の現象なんですがね。その点を伺いたいのです。
  94. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 経緯を申し上げますと、職業安定審議会の失業保険部会におきまして、先ほど申し上げました四十四年の法律改正が成立いたしましたあと、従来からの経緯並びに当委員会におきまして法案成立の際に、国会修正で、附則で将来の問題が義務づけられまして、そういった問題を包括的に検討いたしますために、四十五年の一月から検討が始められました。大体、こういった問題について一年ぐらいの間に部会としての結論を出していただきたいということを申し上げておったようでございます。ところが、問題はなかなかむずかしゅうございます。御承知のとおりそういう事情がございまして、実際は、四十八年の九月まで会議が開かれまして、前後二十七回に及んでおりますが、その間に一つ一つ問題が洗い上げられまして、問題点の指摘が行なわれてまいりました。   〔委員長退席、葉梨委員長代理着席〕 審議会は労、使、公益の三者構成になっておりまして、部会として一致した問題についての結論が導き出されるに至りませんで、その間に、私がまだこの仕事を担当いたします前でございますが、五月の上旬に有沢研究会が大臣の私的諮問機関として発足したわけでございます。中央職業安定審議会及びその部会でございます失業保険部会とこの有沢研究会とは性格を全く異にいたしております。御指摘のように、審議会並びに失業保険部会は、これはもちろん法律に基づきます公的諮問機関でございます。この失業保険部会で失業保険制度の抜本的改革についていろいろ検討を加えられましたけれども、ただいま申し上げましたように一致した結論が出るに至らず、問題点を指摘するにとどまった。その間に、抜本的改革を実行に移しますための有沢研究会が委嘱された。その間の経緯につきましては、ただいま枝村先生の御指摘のように、部会の委員各位の御意見と労働省事務当局との間に食い違いがありまして、たいへん審議会からおしかりを受けた事実もございます。その後、大臣並びに私どもから審議会のほうにも、いろいろ行き違い、手違いをおわびいたしまして、今後そういった行き違いの起こらないように十分注意いたしますということを申し上げて御了解をいただいたわけでございます。  有沢研究会は、いわば労働省が事務当局といたしまして、事務原案をつくりますための専門的なお手伝いをしていただくための研究会でございます。それをもとにして各側の御意見を御検討、御開陳いただくための公的機関として審議会が設けられているわけでございます。言ってみれば、研究会というのはつくらなくてもいいしつくってもいいし、これは事務的な問題で、事務当局なりの問題ではないか、性格的にはそういうふうに申し上げられるかと思います。審議会は、当然法的にこの審議を経なければならない。経た上で最終的に原案を決定して国会審議をお願いする、こういう段取りになっておりまして、私どもは、手続的に若干の研究会の発足につきまして食い違いがありましたために、審議会のおしかりを受けたことも事実でございますけれども、その点につきまして御了解いただきました上で、あらためて失業保険部会、中央職業安定審議会の御審議をお願いして、その御答申を得た上で原案の作成に当たった次第でございます。私どもは、手続的には十分法定の手続を踏んでまいったつもりでありますし、今後こういった審議会の御意見は十分尊重してまいりたい、かように考えている次第でございます。
  95. 枝村要作

    ○枝村委員 どうも話をそらして、あなた原則的なことを言って、私の質問に対して真髄を答えておらぬ。私が言っておるのは、あなた方はわざわざ失業部会をつくって、それから長い間討議をさせておいて、もうすでにその取りまとめをしようとする段階になって、それを全く軽視し、むしろ放棄するような手続——手続ですか、そういうやり方をしたということなんです。これはけしからぬ。有沢研究会というものを五月に設けたというのは、その一番端的な例でしょう。せっかくまとめようというやさきに、おまえのところはもう用がないからといってほったらかして、有沢研究会という私的機関を設けて、そこであなた方の思うような作業をさせて今度の法案化をさせていくわけですよ。だから、三者構成の部会では、それは意見がいろいろ交錯してすぐまとまらぬかもしれませんけれども、しかし、そこで出た結論というものはりっぱなものになるわけなんです。そういうことをせずに、五月の段階でそういうふうに切りかえて急ぎだしたということは何かということをいま質問している。それを、先ほどあなたは、保険部会のそのいろいろな討議の御意見を参考にして有沢研究会に引き継いだと言われたけれども、どうも引き継いでおらぬような気がするわけですね。そういうやり方をなぜしたかというのを私が質問しておるのであって、いまのあなたの答弁では、そういうことでなく、一般的なことの手続の問題を答弁されたようなんですね。だから、もう一ぺんちょっと答えてください。
  96. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 失業保険部会が三年有余にわたっていろいろ御検討いただきましたけれども、結論に至らなかった。まあ部会としては一つの改革案というような形でまとめるんでなくて、問題点を指摘して、その問題点をどう処理するかについては労働省当局で考えるべきじゃないかという御意見もあったように記憶いたしております。  そこで、五月の時点で研究会が発足したいきさつにつきましては確かにおしかりを受けたようないきさつございまして、私どもは重々審議会におわびを申し上げたのでございますが、失業保険部会のその問題点の指摘、取りまとめられたものを有沢研究会が引き継いだというわけではございません。これは全く異質のものでございますので、失業保険部会の三年半の審議経過を引き継ぐという性質のものではないと思います。その部会の三年半の審議の経過ないしは問題点の指摘を、こういうものもございますということを有沢研究会に提示いたしまして、それも有沢研究会の研究討議の重要な参考資料にしていただいたというのが事実でございます。したがいまして、有沢研究会は有沢研究会として、審議会とは全く別個な労働大臣の私的な相談役という形で原案作成に御協力いただいたという性格のものでございます。  そういう次第でございまして、そのできた原案の原案と申しますか、素案につきまして、要綱をもとにして、失業保険部会で正規に前後五回にわたって御審議いただきまして、中央職業安定審議会の審議を経たというわけでございまして、私どもはそういう意味におきまして、確かに途中の経緯につきまして食い違いがあったために、私どもの手落ちでおしかりを受けるような事実はございましたけれども、失業保険部会ないしは中央職業安定審議会を軽視するというような意図は全くございませんことを申し上げておきたいと思います。
  97. 枝村要作

    ○枝村委員 そう言われても、客観的には、やはりこの公的機関である失業保険部会を全く軽視したということを言われてもしかたがないほどの取り扱いをあなた方はやはりしておりますよ、実際は。だから労働者委員が総辞職したというのもそのことだと思うのです。その段階までは、四十八年の五月の段階までは、いわゆる有沢研究会に私的機関として、失業保険の問題をおまかせした段階までは、私が最初に指摘したように、電光石火のごとく法案を取りまとめて国会提出したとはまだ見ぬのです。それはなぜかというと、四十八年五月発足のいわゆる有沢研究会をつくった当時の新聞報道をいま見ますと、いまからどういうスケジュールでこの研究会の報告をまとめるか、それから法案をつくるかというのが明らかにされております。それによりますと、四十九年秋までに報告書をまとめて、そうして要綱を作成して中職審に諮問し、そして五十年の春までに答申してもらう。したがって、五十一年に法案国会に出されて、これが通っていくということになる、そういうスケジュールが発表されておるんです。これをやはり発表したということになれば、有沢研究会のメンバーのだれかがやったのではなく、労働省の幹部の中からそういうスケジュールを新聞社に発表して、それが新聞発表になったんだと思われるのですよ。これはここにもありますからね。ですから、その当時ではやはり慎重に審議して、この国会提出していこうという腹づもりであったと思うのです。ですから、研究会もそのつもりであったんでしょう。初めのうちは慎重審議を重ねておりました。ところが、去年の八月ごろから急にその取りまとめを急ぎだしたということなんですね。だから、一体そういうふうに非常に急がねばならぬ理由はどこから出てきたのであろうかというふうに私どもは思うのですよ。いままでのあなたの答弁によっては、それはやはり納得できません、そういう理由だけでは。有沢研究会そのものもそういうスケジュールで進めてきたのに、八月段階から急に取りまとめを急ぎ出してきて、そうして先ほど言ったように、ばたばたと手ぎわよく国会提出までになってきたというのは、一体どういう事情の変化があるのか、そういうことがどうしても納得できないのです。その点をひとつ御説明願いたい。
  98. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 ただいま先生からお話ございましたように、有沢研究会の発足いたしました五月九日の時点で、研究会発足の日に、有沢先生から新聞発表で、一年ぐらいを目途に制度の改革を実施したい、こういうお話があったように聞いております。その意図は、五十年度——五十年四月でございますが——から新しい改革した制度を発足させよう。そういたしますと、大体その当時め話では、五月から三月ごろまで検討して、それでその次の国会提出すれば四月の発足に間に合うのではないか、こういうお話であったように承っております。ところが、八月の、三回目でございましたか、私が就任いたしましたときに、有沢会長以下各委員から、事務的にそれでほんとうにだいじょうぶなのかという御意見が一つと、研究会としては、一年は必要ないので、いままでの部会の御検討なり各関係団体の意見書等も参考にしながら検討してみると、もっと短縮できるのじゃないか、施行の準備なり五十年四月からの実施ということを踏まえて、もっと単純に事務的に検討すると、それでいいのかどうかという御諮問でございまして、私どもは、五十年四月実施ということを確実に履行しようとすれば、法律提出いたしまして、かりに三月一ぱいまでに法案が成立いたしたとしましても、内容が当初予想されている以上に相当大部にわたる、こういうことになりますと、施行のための準備期間として最低限半年程度は必要でございますということを申し上げたわけです。とするならば、いま申し上げましたスケジュールで参りますと、五十年四月実施はとうてい不可能になってまいりまして、五十一年四月から実施するほかはなくなる。そういたしますと、五十一年の一月末までに農林水産業の適用その他関連の措置を義務づけられておりますものが、少なくとも二、三カ月はおくれることになる。といたしますならば、各委員の中から、いまから十分やれるのではないか、それをやらないというのは、労働省は一年でもおくらしたいという意図があるのではないかと、逆に私どもはきつい御指摘を受けたわけでございます。私どもは、事務的には約半年でこれを仕上げるということは非常に強行スケジュールになりますが、研究会でどうしてもそうやれとおっしゃるなら私どもはあえていといませんということを率直に申し上げまして、研究会の御指示を受けとめることにいたした次第でございます。私どものほうから何が何でも急ごう、拙速でやっつけようというような、やっつけ仕事でやろうとした意図は全くございません。その点は御理解いただきたいと思うわけでございます。
  99. 枝村要作

    ○枝村委員 あなたは研究会がみな悪いことにしてしまったが、それはそうかもしれませんけれども、しかしそれを受けて立つ労働省政府は、こういう重要法案を、民主的な手続をとり民主主義の原則に従って慎重審議してやはり世論にこたえるという、こういう態度をとらなければならぬ。それはとるべきですよ。それを、研究会が言うたからそのとおりやりましたなんだ言うて、研究会をみな悪者にしたって、それは筋が通りませんよ、何ぼあなたがそういう弁解をしても。しかも、特に制度審が指摘しておりますように、「内外の経済情勢の急転が雇用面に与える影響が予測できない今日、それに対応できるものかどうか疑わしく、特別立法さえ必要なことがありうる。」こういうことまで制度審では指摘しておるのです。そうであるから慎重な取り扱いをしなければならぬにもかかわらず、ばたばたっとやってしまって、そしてこの法案も、国会であと会期わずかしかないのにこれを成立させようという態度が政府にあるとするならば、これはいままでに輪をかけてやはりたいへんな問題だというように思っておるのです。そういう意味で私どもは、これは単に研究会がいいとか悪いとか、そういう手続をしてきたことに対して質問して追及するということよりも、終局的には、こういう問題に対してあまりに取り急いだというのは、一体どこに理由があるのか、政治的な問題でもあるのか、背景でもあるのか、こういうふうなことが当然疑問として浮かんできますので、質問をしておるのです。  そこで、中央職業安定審議会でも慎重審議せねばならぬというたてまえから、私はその経緯について質問していきたいと思うのですけれども、労働者側の四名の委員が特別に意見書などを出してこれに対して批判し、こうしろという前進的な要望をやはり出しておるわけなんです。この内容については私は言いませんけれども、こういうふうな中職審の中で、たとえ四名であっても、労働者側の委員がこういう特別意見まで出すという問題のある法案ですから、これは先ほど言いましたように、十分に配慮して取り扱わねばならぬ問題ではなかろうか、こういうように思っておるのです。  それからまた、一番問題なのは、時間もありませんからあまり言いませんけれども、社会保障制度審議会では、これはだれが見ても、諮問されたものに対してよろしいという答申の内容ではないのでして、これは、はっきり言うならば総批判を加えておって、出直してこいという意味の内容なんですよ。ですから、制度審の満場一致のそういう意味の答申までされているのですから、ますますもって、この法案を、先ほどのように急いで取り扱って国会へ提案し、国会でまた急いで審議してばたばたっと通すようなしろものではないということが言えるわけであります。そういうことを私は私の質問の中心に据えていままでやってきたわけなんです。  だから、もう少しありますけれども、大臣に答えてもらいたいのは、このような、いままで言いましたようないきさつがありました。ですから大臣はここで進んで、いままで中職審や制度審、それからずっと以前の失業保険の部会、そういう経緯をしんしゃくして、今度のこの七十二国会で急いで成立させるという態度ではなく、むしろ慎重に審議をして、そうしてりっぱな雇用保険にしてもらいたいという希望をむしろ進んで表明されるのがいいのではないかというぐらいに私は思っておるわけなんですが、その意見に対してどう思いますか。
  100. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 大きな法案であればあるほど、関係調査会、関係審議会、こういう方々の御熱心な御討議、御研究が必要であり、またそれだけに内部において熱烈な御議論なども出たことだろうと、いままでの質疑応答を聞いて私は看取したわけでございます。  いずれにいたしましても、途中のことでございますから、私詳細に判明いたしませんけれども、役所がだれだれのために利益するというふうな問題じゃございませんので、いろいろの議論の間に花が咲いた、そしてまた手続としますと、労働省とすれば、ときには御指摘いただいたものに対して釈明などもしながら、りっぱな問題をひとつ積み上げたいと腐心しておったことは、先生質疑応答の間におわかりいただけたことだと思うのであります。それにも増してこういう原案をお出しいただきまして、ここで先生のお話あるいは各先生方の御熱心な御討議をいただきますことが、これがすなわち慎重な御審議だ、私はこういうふうに思いますので、皆さん方の御意見などを拝聴しながら、そういうお気持ちなどを配慮しながら、いまからほんとうに、御協力によって可決された暁におきましては、りっぱな制度運用につとめてまいりたい、こういうふうに感じておるわけであります。
  101. 枝村要作

    ○枝村委員 もう一ぺん端的に聞きますが、いままでの審議があまりにも急ぎ過ぎたという意味で、それをカバーするという、ことばは語弊がありますけれども、やはり国会で慎重に審議する。そして十分に世論にこたえるという、そういう意味で政府当局がこの法案成立をこの国会にこだわらずにやりたいということはいえぬかもしれませんが、そういうことがあってもこだわらずに進みたい、慎重審議を願いたい、そういう意思の表明ぐらいあってもよろしいではないか、私はこういうことを言っているのですよ。
  102. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 先生のおっしゃった内容はよくわかりますけれども、先生も世論を先ほどからお話しになったように、一部新聞論説を見ますと、こういう時期であるから、法案が成立したあとの施行を繰り上げてでもこういう時代に対処すべきである、こんな議論、社説も出ていることもありますので、ぜひひとつ慎重御審議の上で、この国会において御可決のほどを特にお願い申し上げるのであります。
  103. 枝村要作

    ○枝村委員 まだ時間がありますから、この際ちょっと言っておきたいことがあるのです。それは、制度審議会の答申の資料なんというものは出しているのですか。
  104. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 従来いろいろと御相談申し上げたり、あるいは御意見を伺った関係の席には各審議会の答申はお配りいたしております。
  105. 枝村要作

    ○枝村委員 じゃ、国会には、われわれにはそれは配付されておりませんな。
  106. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 国会に正式に配付することにはなっておりませんが、できるだけ私どもは、先生方の御要望があれば、さっそく飛んでまいりまして差し上げたいと思っております。
  107. 枝村要作

    ○枝村委員 そういうことはあるはずがないじゃないですか。いままで審議会の答申などはいつも政府の資料として出されておって、出されてないことは一度もなかったはずなんですよ。ところが今回は、こまかいことを言うと私のこけんにかかわるけれども、それがいまの労働省の態度とすると、きわめて遺憾なんですよ。出していないのですよ。  それから、こういうふうに新聞の世論調査、読者の投書、早くいえばあなたのほうの都合のいいやつはどんどんPRするけれども、都合の悪いやつは出さぬということなんですね。参考資料として出さぬ。これで審議してくださいといったって、公正な審議を妨げることになるんじゃないですか。出さぬだって、われわれはよそのほうから持ってきますからわかりはしますけれども、その態度そのものにやはり基本的に間違いがあるような気がするのですが、どうですか。
  108. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 従来とも私ども法案関係審議会の答申等は、当然委員会先生方に、公式的なものではございませんけれども、公式にお配りしなければならぬという問題ではございませんけれども、必ずごらんいただくようにいたしております。実は今回もそういう意味で、正式な資料でなくて、社労の委員先生方のお手元にはお配りしたつもりで私おりましたのですが、いま聞いておりますと、何か手落ちのようでございまして、まことに申しわけなく、おわび申し上げます。
  109. 枝村要作

    ○枝村委員 ひとつ気をつけてもらいたいということで済むような問題ではないが、われわれとすれば、労働省の態度に非常に疑問を持つわけなんです。先ほどちょっと触れたように、この一冊にして参考資料に出した新聞の社説ですか論調やらは、全部が全部ほとんどが雇用保険に賛成する、こういう意味のものですね。中に一つだけ七月分といって、読者から、出かせぎ労働者の農民が一つだけそれは反対だというのが出ておるだけで、あとは全部いま言ったようなものです。こういうものからいろいろ比べてみて、いまのわれわれに配付することを怠ったということに結びつけてみると、あまり露骨で意図的である、こういうことを一言言っておきたいと思います。  それから、先ほど言いました、審議会をこのたびは特に軽視した。審議会の審議日数を切り詰めたり、それから審議会の答申を全く法案に取り入れずに無視したというのが、端的にこのたびは両審議会の問題として出てきておるんです。ですから私は、審議会を軽視するという問題について、特に今回の雇用保険法案の要綱と本法との関係について、その軽視する一部面があるような気がいたしますから、その問題を一言触れておきたいと思います。  その一つの例としてあげられる点は——その前に審議会に諮問する場合は法案要綱だけを出されるわけですね。ですから、法案要綱というのは、御存じのように、大体こういうものだという骨子だけであって、法律そのもののていさいを整えてはおらぬわけです。ですからややともすると、法律化、条文化することによって、たとえそれは細部な問題であっても、字句の表現とかあるいは法文化することによって、要綱案とは全く異なる部面が出てこぬとも限らぬわけです。できれば審議会にも法律化されたもの、法文化されたものを出していくのが一番正しいと思うのですけれども、それはいろいろできぬかもしれませんけれども、そういううらみが法案要綱と法文化した場合とには出てくるのです。それは私が言わぬでもわかっておると思うのですけれどもね。今回のやつを見ますと、どうも端的に要綱案と法文化されたものの相違があらわれてきておる部面があると思う。私は、要綱を示されて、それについて各審議会が意見や要望なんか出されて、それに基づいて法文化する場合には、前進的な方向でそれが修正されていくことについては、審議会を重視する、尊重るという意味でたいへんいいことだと思うのですけれども、反対に、そうでなかったら、これは軽視も軽視であるというように思うのです。その部面が今回の雇用保険法の中にもあるような気がいたしますから、それをいまから質問してみます。  これは特に、短期雇用特例被保険者の問題です。要綱ではこういうふうにこの問題については示されておる。第一には「農林水産業事業(季節性のない事業労働大臣が指定するものを除く)に雇用される者」と、二つ目には「一年未満の期間で季節的に雇用される者」、要綱ではこれに限定されておったわけですね。ところが本法になると、これが「季節的に雇用される者」が一つと、それから「短期の雇用(同一の事業主に引き続き被保険者として雇用される期間が一年未満である雇用をいう。)に就くことを常態とする者」こういうふうになってきております。そして、被保険者がこの二つに掲げる者に該当するかどうかの確認は、労働大臣が行なうものとする、こういうふうになっているのです。そう見てまいりますと、最初のきわめて限定された業種が非常に拡大されておる。しかもその拡大された業種を行政が、労働大臣が判断する、確認する。ですから法文化の場合には行政指導型になっておるということが、この意味ではいえるわけなんです。それがいいか悪いかは別にして、とにかく要綱に示されたものと法案化されて今日提案されておるものとは、そういう大きな隔たりがある。しかも限定されてあるのは農林水産、今度その他の全産業になりますと、今日では短期雇用者は自動車産業もありましょうし、造船もあろうし、それからあらゆる産業にそういう人たちが雇われておるのですから、そういう人たちにも行政指導でこれをそうするかそうしないかきめていくということになると、要綱案のときと比べて、今日の段階ではきわめて幅広いものにされておる。これは審議会におけるときの事情から見て、明らかに軽視ではなかろうか。いまのままでほっておくと、そういう取り扱いがされていくということになっておると思うのです。その点についての質問ですが、もし私の言っていることが誤解して受け取られておるとするといけませんから、明確な答弁をお願いいたしたいと思います。
  110. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 いまの点、確かに審議会に諮問いたしました要綱案と法律案の中では相違が出てまいっております。ただ私どもは審議会に諮問いたしました要綱をもとにして御審議をいただき、答申をいただき、その答申をもとにいたしまして最終的に法律案をつくります際には、その答申の趣旨を尊重しながら、私ども事務当局といたしまして趣旨をくみ入れて、手直しできるものは最大限手直しをして出す。もちろんいい方向にでございます。後退させるようなことはもちろんなすべきではありませんし、した事実もございません。そういう意味で手直しした点は若干ございますが、いま枝村先生の御指摘の農林水産業等の特例という形で要綱を御諮問申し上げておりまして、そのとき農林水産業事業雇用される者とそれから一年未満の期間で季節的に雇用される者、こういう二本立てで特例の対象にするという考え方で要綱を作成いたしております。これはいろいろ各審議会で御意見ございましたが、一番的確に御指摘を受けましたのは、社会保障制度審議会におきましてこういう立て方はおかしいじゃないのかという御指摘がございまして、御審議の過程で、これはいわゆる一年未満の短期雇用者という一本にしぼりまして、手直しをいたしますということを審議会の席上で申し上げまして、手直しした結果が、最終的な法律案の形になったわけでございます。これは内容的には全く変わりございませんで、むしろ農林水産業事業ということでくくります場合には、より広くなりまして、今回の法律案で対象になっております者以外の人も含まれる場合があり得る。これは理論的にもおかしいという御指摘を受けまして、手直しをいたしたわけでございまして、決して労働大臣の行政措置によって恣意的にこの範囲が変えられるということにはならないわけでございます。もちろん特例被保険者であるかいなかということは、何らかの形で事前に確認する必要がございます。これはおのずからいままでの実態から見まして当然判明する事実でございまして、それを形式的に事前にあらかじめ確認をしておくというだけの行為で、諮問いたしました要綱には労働大臣の確認ということばはございませんけれども、審議会の過程でもそういう御説明を申し上げまして、それは当然のことだという御意見を承っておりまして、何らそういう点では後退という形での修正が行なわれたわけではございませんので、その点は先生御理解いただきたいと思うわけでございます。むしろ審議会の御意見をもとにして手直しをいたしましたのは、先ほど御指摘になりました特例被保険者の料率の千分の四十三を千分の十八に引き下げたこと、あるいは受給資格の一年以上と一年未満の区別がございますが、その本来の受給資格は別でございますが、一年以上であるかいなかを識別します際に、最初は同一事業主ということで非常に限定しておりましたのが、これは不合理であるということで、二つあるいは三つの事業所にまたがっても、一年以上の資格をとる場合には同様にみなす、こういう手直し、その他若干の手直しをいたしております。これは審議会の御審議の過程でいろいろ御意見が出ましたのをもとにいたしまして手直しをいたしたわけでございます。そういうことで要綱と最終法案が後退という形で手直しをされているという事実は全くございませんので、その点はひとつ御理解をいただきたいと思います。
  111. 枝村要作

    ○枝村委員 もう時間がありませんから、これはまただれかがやるでしょう。  季節労働者に対する一時金制度について、時間のあるだけやってみたいと思います。  これはこういう考え方があるのです。これは失業保険制度の上から見ても少し矛盾しておるのではないか。これを将来推し進めていくと、失業保険制度そのものを破壊するとはいいませんけれども、打ちこわしていくようなかっこうになりはせぬかという心配が本質的にあるわけですね。しかも、労働大臣や職安局長が言っておりますように、今度のこの制度ば、一時金を出すからあとはあなた方が何をしようがかってにしなさい、こういうことになる。しかし法文上はそうはいきませんで、やはり職業安定所に行って失業の認定手か確認ですか、そういうものを受けて、そうしてそういう措置がされるということで、法文上ではあくまでも失業保険制度らしいていさいは整っておるのですけれども、いままでのあなた方の発言からすれば、私が最初言ったようなことになっているんですよ。そうすると一体政府の考え方はどこにあるのかということになってくるわけです。  それからこの季節労働者、短期雇用者に対する有沢研究会の報告の中にもいろいろありますし、政府がしばしばいってきておりますように、今回のは不公平をなくするための法改正であるということをいっておるのですが、いま言いましたように、失業保険の精神を将来にわたって踏みにじっていくというふうになっていきますと、むしろ他の被保険者の不信感を増大させるような結果を招く措置となりはせぬか。それから一番先に言いましたように、有沢報告が出たときには、新聞論調は一斉こぞってこれはいいものだと評価した。その中にはこれが一番先に出ているんですよ。ですから世論の反感をますますこれによって高めさせる結果になりはせぬか、こういうふうに思うのです。むしろ労働省政府がその方向に持っていかせるようにしているのではないか。そして最初私が申し上げましたように世論の反感を買う、他の被保険者の不信感を買わしておいて、その次の段階ではこういうものは打ち切ってしまって、やめさせてしまうということに筋道がどうもなっておるような気がするのです。私も思っておるが、ほかの多くの人が思っておるということなんですよ。それがやはり心配なんです。それはあなた方は否定されましたけれども、そういう筋道で運んでいけば、ああよかったというわけではないが、思うとおりになったということになるんでしょう。しかし今日の政治情勢ではなかなかそうは——これは長谷川労働大臣もその地域の出身者であるし、そんなばかなことを絶対にさせないということになるでしょう。そんなことをしたらあなた方選挙を通らぬことになるから、そんなことはさせはせぬ。だから今回の措置については、一時金の制度でも三十日ではなくして五十日、六十日にするかもしれぬということがそこから出てくるわけですから、一挙にはならぬですけれども、法の底を流れる思想はそこにあるということを先ほどから言っているんですよ。ですからその点について、時間がありませんからあまりしゃべられませんけれども、私としては非常に心配するわけなんです。  ここでひとつ、確認という意味じゃありませんけれども、先ほどちょっと言ったように、一時金制度によって三十日を給付する。そうなると、財政面からもやはり問題が出てくるような気がする。いままでいろいろな事情で、職安の窓口というとおそろしいから行かぬという人もおるでしょうし、いろいろおるでしょう。そういう人たちが、今度は行ったらすぐ認定してくれるから、それで三十日分くれるらしいというので、いままで行ったことのない人たちもどんどん行く。それは掘り起こすという意味ですかな、掘り起こしていく。そうすると、四十七年度には六十二万人の季節労働者が受給しておりますし、全受給者の約四割、支給金額が七百八十億、それが今度三十日になれば五百億になるかならぬか知りませんが、少のうなる。しかし、どうにか修正して四十六日か五十日ならまたふえる上に、さらにそういう掘り起こしが出てくれば、どんどんそのほうの財政がふくれ上がっていく、こういう面からもまた問題が起きて、一時金制度というものをつぶしていく材料をつくっていく、こういうふうになるおそれが私どもにはあるわけなんです。それが一つ、それに対して答えてください。時間がありませんから。  それと、先ほどちょっと言いましたように、法律にはあくまで「公共職業安定所に出頭し、求職の申込みをした上、失業していることについての認定を受けなければならない。」とあるのですから、立法上はこれを書かなければならぬでしょうけれども、これがある以上、法は生きるんですから、いま大臣や職安局長は、今日の段階ではそれはついちょっと書いただけであって、あとは行きさえすれば全部認めると言っておっても、この法があれば、法は生きものですから、これはいつどう変化するかわからぬ。そうすると、現行法だけでもいま言ったいろいろな事情があって、世論を背景にし、他の被保険者の不信感を買うという情勢がぐうっとかもし出たら、この現行法律でも、そういう一時金をもらう出かせぎ労働者に対して締めつけて、一銭もやらぬでもいいというかっこうになり得る可能性はあるんですよ。その二つ、これを答えてください。
  112. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 いまの二つの点でございますが、あとのほうの一時金の支給について、法律上の条文はいま先生がお読みになりましたように、「離職の日の翌日から起算して六箇月を経過する日までに、」これは時期でございますが、「労働省令で定めるところにより、公共職業安定所に出頭し、求職の申込みをした上、失業していることについての認定を受けなければならない。」いままでのやり方と変わらぬじゃないか、法文上は確かにそうも受け取れるかもわかりません。しかし、一時金ということに特別な意味があるわけでございます。いままでの保険制度では、一時金という制度はございません。従来の例は、出かせぎの人たちが郷里へ帰りまして、離職票を持って安定所に出頭して、一週間の待期が過ぎて、そうして二週間に一回あるいは四週間に一回安定所に出て、過去二週間なり四週間失業をしておるということの証明をした上で、その証明された期間について失業保険金があと払いされるというのが現行制度であり、今度の新しい雇用保険法一般給付のあり方でございます。これは当然でございます。この一時金の特例につきましては、従来審議会等でも疑義がございまして御説明申し上げましたが、この条文から出てまいりますのは、離職した日のあと離職票を持って安定所に出頭して求職の申し込み、これは失業給付制度でございますから、やはり形式的にはそうなりますが、安定所に出頭して求職の申し込みをして、一週間の待期が過ぎますと、その待期が過ぎた時点で一時金として渡される。つまり、過去何日失業したから何日分の失業保険給付を支給しますということでなくて、その待期の一週間が過ぎた時点で三十日分、一時金で全額支給される、こういうことでございます。したがって、そのあと働いてもよし、働かなくてもよし、その人の自由によって、その後働きたい人はその地元でしかるべき機会に労働される、こういうことになるわけでございます。その点ははっきりいたしておるわけでございます。ただ、失業給付制度のワク内の問題でございますので、あくまでその一週間の待期の時点で失業の認定という形式行為が必要であるという点だけでございまして、これはどうにでもなるという問題ではございません。そうであれば一時金という制度にはならなくなります。法律の趣旨と全く違った制度になりますので、特例一時金という制度は、あくまで形式要件はそういうことになった上で一時金という形で、過去の失業期間に対する給付でなくて、その時点での一時金が支給される、こういう制度になるわけでございます。  それから、もう一点の一番大きな問題でございますが、なるほど一時金というメリットもあるだろう。しかし、それが今後日額単価が上がるというようなことで、支給総額がふえてくる。と同時に、今度の一時金制度をとることになりますと、従来出かせぎに行って帰って、受給資格がありながら失業保険金を全く受けておられない方が一部にございます。推定では一〇%くらいあるんじゃないかと私ども考えておりますが、そういう人たちも安定所へ行って、離職票を出して求職申し込みをして、一週間待期をして認定を受ければ、無条件に三十日分支給されることになります。そういうことになりますので、私どもは、従来の失業保険金をもらっている人よりもこの一時金をもらう人のほうが頭数がふえるということは当然予想しております。そういう意味で、先ほどおっしゃいましたように、この一時金による総額と従来の保険金との額が違いますので減るという御指摘でございましたけれども、私はむしろ増加することは確実だと考えております。したがって、今後この一時金が単価が上がり、改定されることによってふえていくと、またこれがいろいろと批判のもとになる。出かせぎの人たちの短期受給の実態を見ますと、予定された不就業で、現行失業保険金制度のたてまえからいいましても、失業給付と、いう制度になじまないものであることは御指摘のとおりでございます。そのなじまないものをあえて実態に即してこれを新しい雇用保険制度の中に組み込もうとしております意図は、先ほど冒頭に申し上げたとおりでございます。したがって私どもは、そういう人たち給付を制度の中に定着させ組み込むと同時に、それに要する保険料負担についても、過大な負担は別といたしまして、何がしか一般の通例の保険給付に要する費用の負担とは別建てにしよう。これは、こういう給付なり負担の面におきまして特例制度をつくることは、ILOにおいても認められておるところでございまして、私どもは、そういう意味でこの制度を本来的な制度として新しい雇用保険の中に定着させ組み込もうという意図は、先ほどから申し上げておりますように、従来の出かせぎの人たちの短期受給者に対する考え方を百八十度変えて新しい提案を申し上げているわけでございます。したがいまして、そういうことによって、今後給付がふえることによって保険経済が破綻するということも、私どもは長期的に見ましてそういうことは絶対にあり得ないという確信を持っております。と同時に、ふえたことによって、いままでのような世論の批判が起こって、これをもう一ぺんまたなしくずしに追い詰めてなくしてしまおうというような意図が隠されているんじゃないか、こういう御指摘でございますが、これも先ほど申し上げました、三年前の失対就労者の問題に対して私どもがお答えいたしましたことが、三年半たった今日そのとおりに現実に過ぎておりますように、私は、この問題は、この辺で出かせぎ短期受給者の問題をはっきりピリオドを打って制度化することによって、こういう問題の繰り返しをしないようにしようという意図から御提案申し上げている次第でございますので、その点を十分御理解いただきたい、かように考えるわけでございます。
  113. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ちょっと関連で質問させてもらいたいのですが、何か局長の話を聞いていると、無条件で、きのう上野から帰っていった、ご苦労さんでした、判こをばんと押して、あしたから田植えをしようが、地元の場合に都合がいいように、きわめてぐあいがいいようになっているように見えるのです。ところがやはり条件は、休業しなければならないという認定が必要なんだ。従来どおりに、簡単にいえばうるさいんだ、窓口で。  それから二つ目は、この四十条によりますと「基本手当の日額の三十日分(次項の認定があった日から同項の規定による期間の最後の日までの日数が三十日に満たない場合には、その日数に相当する日数分)」と書いてある。全部三十日じゃないのです。したがって、一時金制度という——ILOで認められたことは私も知っていますよ。特例でこういうことをやったっていいことは知っていますよ。だけれども、法律になるものを三十日にきめるというところに、減額なのよ。一時金制度でやるということであるならば、九十日でもいいわけなんだ。この人は六十日の一時金、この人は四十日の一時金というのは認定後でいいわけだ。法律を九十日を三十日に削るということは、どう考えたって既得権の三分の一なのよ。それだけは認めてほしいよ。  それからもう一つは、労働省のほうではそんなむごたらしいことをやらないといったって、失業保険をもらって田植えをやるわけだ。失業保険をもらって、次の日から現場へつくわけだ。これは労働省の職安の窓口は黙認しても、一般世論は許さぬのよ。失業保険というのは国の金じゃないんだから。みんなから集めて、国民的な合意を得なければこの金は使ってはいけないようになっているの。それを私ら言うのよ。枝村君はそれを言っているのよ。それに対してはどうですか。  それから三つ目は、ふえません、こう言っています。金額はふえないというのだな。いま農民が動揺しているのは、九十日からゼロの人がいるわけだ。事務局、よく聞いておいてくれ。心臓の弱い人はゼロだ。ところが、ゼロの人も三十日もらえるぞというPRがいっているようだ。ところが、そうじゃないのです。やはりゼロの人はゼロなのよ。九十日の人は三十日になるかもしれぬけれども。したがって、いま平均が五十日だから、三十日だからちょっと修正すれば五十日になるのではないかという言い方は、ちょっとそれは行政に当たる者としては非常にごまかしがある。いまのゼロの人も三十日になるかわりに、九十日も三十日になるからがまんしてくれじゃないのよ。いまのゼロの人も三十日になるんだったら、計算をしてごらんなさい、支給金が多くふえますよ。そうしますと、労働省がもくろんでいる、一年間に八百億ぐらい浮かして、ほかの事業をやろうという金が出てこないの。  その辺の三つ、どうですか。いつまでも大臣大臣じゃないの、局長局長じゃないの。この法律で解釈されて支給されるんだから。これはとても一番弱い農民が——常に大臣局長が番頭をやっていれば、あるいは私らと約束したことが通るかもしらぬ。だけれども、そうはいかぬのだというの。どうですか。
  114. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 第一点は、やはり失業の認定ということで必ずしももらえないのではないか、そうではございません。先ほども申し上げましたように、いままでの失業保険金でございますと、失業の認定を受けて、過去の二週間なり四週間なりに対して失業しておりましたということを証明して、その証明された期間について保険給付が行なわれる。今回の一時金制度は、出かせぎから帰りまして、安定所に離職票を持っていって、求職申し込みをしたその日から一週間の待期期間、これは一般と同じです。待期を過ぎた七日目に行って、そこで一時金が三十日分支給される。これは全員、離職票で受給資格があれば一律に三十日分支給されるわけです。これを制度化することによって、そのあと、いまお話しになりました、金を三十日分もらって、それから田植えに行ったり、よその事業所に働きに行くと、いろいろと言われる。言われないようにするために、一時金という特例制度にしたわけでございます。要するに、働けばもらえない、働かないで遊んでいればもらえる。こういう予定された不就業状態の中で、それじゃまじめに働こう、いや、おれは働かないのがあたりまえだから働かないんだ。その働かない人はもらえるし、まじめにもう少し働きたいと働いた人はもらえない。あるいはうしろめたいからもう安定所に行くのもおっくうだ、うしろめたいといって行かない人は全然もらえない、ゼロだ。こういうアンバランス、不合理をなくすために、一時金という制度にして、そういううしろめたさをなくして、堂々とあとは働きたい人は働いてもらえるというための制度にしたのが、今回の一時金制度でございます。  と同時に、もう一点の、一時金で三十日で一律というけれども、カッコ書きの条項があるという御指摘でございますが、これは、そのもらう時期を離職の日から六カ月間ということにしてあります。ですから、出かせぎから帰ってすぐ行けば、無条件に全員三十日もらえる。ただそれを何かの都合で忘れていたり、あるいはいつでもいいからといっているうちにだんだん日がたって、五カ月半たったときには、あとの半月分しかもらえない。五カ月十日目に行けば二十日分しかもらえない、こういう結果は出てまいりますけれども、そういう特殊な例外がなければ全員一律に三十日ということでございます。  それから先ほど私枝村先生にお答え申し上げましたのは、支給総額が少なくなるのじゃなくて、ふえるであろうと申し上げたのであります。ふえるということを私どもは考えております。(「目的は減らすのだろう」と呼ぶ者あり)そうじゃございません。私どもはこれによって支給総額を圧縮しようとか、切り詰めようとか、それを浮かして何かに使おうということを考えているわけでは決してございません。むしろ、先ほど川俣先生がおっしゃいましたように、そういう制度の不合理、あるいは同じ出かせぎの人たちの間のアンバランス、あるいは出かせぎに出る人と地元で農林漁業に働く人たちとの間の格差、そういう矛盾をなくして、正々堂々と胸を張ってだれからも文句を言われずにもらえるような制度にしよう、そして今後これに対して批判が起こらないようにしようというのが、こういう一時金制度をつくった目的でございます。したがって、いま平均五十日とおっしゃいましたけれども、五十日というのは、十日分しかもらっていない人、あるいは九十日満額もらっている人、要するに何がしか保険金をもらっている人の平均が五十日前後ということでございます。そのほかに一〇%程度の全然もらっていない人たちがアウトサイダーとしている。そういう人たちももらえるようになりますから、したがって、総額としては現在の支給総額よりふくれ上がることは私は確実だと考えております。それを承知の上で私どもはこの制度をつくろうとしているわけでございます。(「ふくれ上がるならやめればいい」と呼ぶ者あり)
  115. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうなんだよ。ふくれ上がるならやめればいい。それば本会議の代表質問で、あなた方は大臣にどういうように答えさしたか、あとで会議録を見てごらんなさい。こういうことをやって一体どのぐらい失業保険勘定を浮かそうと考えているのですかお答え願いますという項目があった。それに対して答えさしているじゃないですか。ふえるということは期待してない——支給がですよ。残金が残ることを期待している、あの答えから見れば。——まあそれはいい。   〔葉梨委員長代理退席、委員長着席〕  それからもう一つは、認定の問題ですよ。いまのような局長の言い方だったら、なぜこのように二項に書いてあるのか。「特例一時金の支給を受けようとする特例受給資格者は、離職の日の翌日から起算して六箇月を経過する日までに、」六カ月の間に、忘れないうちに来い。「労働省令で定めるところにより、」ここが問題なんだ。「公共職業安定所に出頭し、求職の申込みをした上、失業していることについての認定を受けなければならない。」と書いてあるのだから、これはどういうようにおっしゃってもやっぱり失業してきたか、ほんとう失業しているのかという認定の結果出すのですよ。労働省令をあとで見せてもらうけれども。これは答える必要ない。時間がないから終わります。
  116. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 川俣先生の御懸念もごもっともでございますし、最も大事なところでございますから、はっきり申し上げます。  この点は、確かに第二項に書いてありますように、安定所に出頭して求職の申し込みをする、これは事務的手続として義務づけられます。これは雇用保険法におきましても現行失業保険法におきましてもそうでございますが、失業給付でございますから、形式的な要件を整える必要があります。特例一時金という特例の制度でありましても、やはり求職申し込みという手続をしてもらうという形式的な要件を課しております。と同時に、一週間の待期は、これは一般的に全部共通の問題でございますから、一週間たったその時点で失業の認定、その時点で失業しておるということであって、過去二週間なり四週間なり、過去の一定期間失業しているという認定ではございません。ですから、はっきりもう一つ言いますと、その出頭した日から一週間の待期期間中だけは失業している、このことがあればそれで足りるということを申し上げているわけです。それで、なおかつその上で、労働省令でかってにきめられるじゃないか、あとで省令をおれは見るけどとおっしゃいますけれども、国会で私が答弁申し上げ、大臣が確認された事項を、それに違反して省令をつくろうといたしましても、省令は必ず職業安定審議会の答申がなければ制定できません。この国会答弁に反したような省令をつくろうとすれば、当然審議会の労、使、公益三者構成の委員会で否決されることは間違いございません。で、私がここで申し上げたことに抵触するような省令をつくる意思は毛頭ございませんし、そういうことは万あり得ないことをはっきり申し上げておきます。
  117. 枝村要作

    ○枝村委員 時間がなくなりましたから、最後に一つだけ申し上げておきます。  朝ほどわが党の森井委員が提案いたしました、わが党提案の失業保険法及び労働保険保険料徴収等に関する法律の一部を改正する法律案ですが、これは一般の被保険者に対する給付内容を、結局給付日数最高七百二十日分まで引き上げる。それから二番目に、短期雇用者に対する国庫補助率の引き上げを二分の一に増額する。それから第三に、保険料改正でありますが、これは労働者負担を三、使用者負担を七、こういう割合にせいという内容を骨子にするものであります。  そこで労働大臣にお伺いするのは、このわが党の提案を、今後の審議の中あるいは今後の政府失業保険を改善しようとする場合に参考にして、前進的な対策を立てられるように私のほうから強く要望しておきたいと思うのでありますが、その点に対する所見をお伺いしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  118. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私はいろいろな問題を聞くことが自分の勉強にもなりますし、また労働問題についてそういう案が出ました。先ほど私も提案理由説明を拝聴しておりましたが、なお帰ってよくその案を拝見しながら、私たちのほうの案とどういうところが違うか、またどういうものを将来見ていくかというときに参考にしていきたいと思います。
  119. 野原正勝

    野原委員長 田口一男君。
  120. 田口一男

    ○田口委員 先ほどから、二人の委員から基本的といいますか総括的に御質問があったのですが、私は言うならば職安行政という面に限ってお尋ねをしたいと思います。  その質問に入る前に、いま大臣いろいろ聞いて勉強云々ということを言われたのですが、職安無情といったふうなことばであるとか、それからもっとひどいことばでいえば鬼の職安、私もかつての同僚の職員がこういう怨嗟怨望の的になっているということを聞いて遺憾にたえないのですが、こう言われておることは大臣は御承知であるかどうか。一体労働省の一番えらい人が、自分の部下がこういったことを言われておる原因はどこにあると思うのか、こういう点についてまずお尋ねしたいと思います。
  121. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私も自分の地方で職安にたまに遊びに参ります。また東京でも時間があるといろいろな労働省関係の機関を歩いて、自分で体験しながら役所で聞いた話を裏書きをしているわけでございます。  私たちが学生時代、飯田橋の職安というところに行きますと、口のない時代でしたし、事実非常に大ぜいが並んで非常に暗うございました。しかし最近参りますと、明るいのにびっくりいたしました。そして何か要望しますと、十分もたちますとその人に見合うようなカードが二枚も三枚も来まして、それをより取り見取りというかっこう、そういう中に、何さま人を世話する役所でございますから、相手のほうは苦しいとき人に相談しに来たときに、それが不親切であったり、あるいは込んでいるがために丁寧なことばもかけ切れなかったというふうなことからしまして、ときにあなたのおっしゃるように職安無情、あるいはまた鬼の職安というふうな気持ちを起こされていることも私は理解するものでありまして、私はやはり人間一番不幸なものは何かというと、病気もあります、さらに失業であります。一生に一ぺんも失業をしないで、職業安定所に立たない、これが私は人間の一番しあわせなことだと思っておりますので、そういう方々に対して、特に親切な声で、あるいは親切な態度で接触してもらいたいということを、私自身の口からも実は歩きながら申し上げているような次第でありまして、そういう心の通ったことをやって初めて、お手伝いしてもときにあらためて感謝されるのじゃなかろうか、こういうふうに感じておりますので、御注意の点はいまから先も徹底させて、期待に沿うようにしてもらいたい、こう思っております。
  122. 田口一男

    ○田口委員 この問題はあとでもう一ぺんお尋ねすることにいたしまして、質問の第一番目は、先ほどから有沢研究会、そういったものが問題になっております。私はそれをあえて繰り返そうとは思わないのですが、正直言って、局長も言われているように、新しい雇用保険法案の下敷きになったのは、審議会も経たけれども、有沢研究会の提言、報告が下敷きになったと見て差しつかえないですね。そうであれば、この有沢研究会が指摘をしておる現行失業保険制度の問題点、こういったもので相当指摘をしておりますけれども、この問題点について、有沢研究会から答えてもらうことはできませんから、事務局として二つほどまず答えてもらいたい。  第一は、特に研究会が強く指摘をしておりますことに、給付の不均衡ということばがあるのですね。女子労働者、それから若年労働者、また先ほど問題になった季節労働者などめ、そういった不均衡という意味は一体、端的に言って何なのか、これをまずお聞かせいただきたい。
  123. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 一般的に社会保険におきましては、これは給付負担、この考え方におきましては、その保険の対象になっております被保険者給付負担の均衡をはかるということについては問題は別でありまして、各被保険者個々人あるいは被保険者雇用する企業あるいは被保険者年齢階層別あるいは被保険者の所属する各産業、その間にその保険事故によってそれぞれのアンバランス、格差があることは当然のことでございまして、それをもとにしてそれぞれの保険事故に対応する、それに要する経費の負担を同じ比率で負担させるという考え方は、社会保険においては原則としてとられないことはもう御承知のとおりでございます。  ここで失業保険におきまして給付負担のアンバランスということが取り上げられておりますのは、先ほど枝村先生からもお話がございましたように、失業保険の現実の給付の中で、短期受給者の給付の実情を見ますると、全体で被保険者の中の占める割合が三%、その保険料は二%にすぎない。その人たちの年間受け取る保険給付の額が約三分の一をこえるような実情になっておりまして、それ自体はいま申しました社会保険の原理から申しますと、だからそれに相応する保険料負担をしなければならぬということにはならないわけでございます。しかしながら、この出かせぎ労働者の方々のいわゆる短期受給の実情は、失業保険法、今回の新しい雇用保険法に盛られております失業という定義、概念からいたしますと、全然異質のものでございまして、こういう人たち現状一定の就業と予定された不就業とが毎年繰り返される。この予定された不就業は、いわゆる失業保険法あるいは今回の雇用保険法案における失業とは全く異質のものである、こういうふうに考えられるわけでございます。  そこで、それでは先ほど枝村先生からも御指摘になりましたように、そういうものをあえて制度の中に組み込むことについては明らかに矛盾があるじゃないかということでございますが、それをもちろん承知の上で制度化しようとしているのが今度のねらいの一つでございます。そこでそういう場合に特殊な保険事故として短期受給者の受給実態をとらまえようとします場合に、そういうものと一般的な失業とを同じような考え方で律するわけにはまいらない。したがいまして、そういう特殊な保険事故に類するものとして制度化する場合に、そういうものについての給付負担のバランスというものをある程度考慮に入れるということは、制度上必要なことではないか。こういう例は、ILO条約におきましてもこういうものに対する特例措置というものを認めておりまして、そういう意味での受給のアンバランス、負担給付のアンバランス、こういうものを制度的に是正するような措置をとることが必要であるというのが研究会の真意でございます。その際に、どの程度に給付負担のバランスをはかっていくかということは、制度をつくる場合のいろいろ政策的な意図あるいは政治的な配慮というものが当然必要になってくるであろうと思います。今度の場合も、この三十日分の一時金を出かせぎの短期受給として制度化します場合に、これをそのまま負担に当てはめてみますと、三十日分をまかなうためには約千分の百をこえるくらいの保険料負担が必要になってまいります。しかしそのままするのでは、これは社会保険の性格上、社会保険の原理からいいましても適当でないということで、当初は千分の四十三というようなものを考えておりましたけれども、なおかつ審議会等の御意見もございまして千分の十八という保険料率を定めたというのが今日までの経緯でございまして、そういうところに給付負担のバランスを、社会的な公平という観点から何がしか調整措置をとったということでございます。
  124. 田口一男

    ○田口委員 その給付の不均衡ということで、いま言った短期労働者季節労働者の問題はあとでだいぶ時間をかけて議論をする必要があると思いますが、いま言われた中で有沢研究会の給付の不均衡という中には、季節労働者ばかりをいってないのです。女子労働者もあげている。それから若い人もあげている。いま局長が言われたことばじりをとらえるのではないのですが、異質ということばでいえば、女子労働者若年労働者はやはり給付されておる率が高いのは事実です。それは認めます。ところが、これは異質といえるのかどうか。不均衡といえるのかどうか。もし不均衡ということを強調するのなら、逆に失業保険の均衡ということがなぜ問題になってこぬのか、保険制度からいえば。そういう点について、私は有沢研究会を敵視するような見方を持っておるのではありませんけれども、それを下敷きにした本法案からいうならば、その給付不均衡で女子労働者若年労働者季節労働者——それは一応さておくとしても、給付の不均衡にこだわっておるのはわからない。これはどう思われるかということを事務当局からひとつ……。   〔委員長退席、大野(明)委員長代理着席〕  それからそれに関連をして、失業保険課からいただいた「失業保険事業月報」、これを見て全く素朴な質問をしたいと思うのですが、これは四十八年九月分の一番新しい資料ですから、従来の傾向なり何なりということは一応抜きまして、私の単純な理解では、雇用関係が切れた、離職をする。失業ですね。そこで職業安定所の窓口へ離職票を持っていく、受給者の資格を決定をしてもらう。そうすると、いろいろな手続があるでしょうが、何日かたったら、今度のあれではスタンダードにいくと三十五日目ですけれども、失業保険金がふところに入る。百人出したら百人まるまるとはいえないにしても、一人や二人のいろんな問題はあるでしょうけれども、大体文句なしに失業保険金がもらえるものと単純に理解をしております。ところがこの月報を見る限り、数字は御存じでしょうけれども、四十八年九月の離職票提出件数の総数がざっと十二万六千、そのうちで受給資格を決定された件数が十一万九千。端数は言いません。さらに受給資格を決定をしてもらったあと、これは初回受給者というのですから初めて金をもらったということでしょうけれども、その初回受給者の数が六万四千。ここで見ると、私が一番初め単純な質問をしたように、手続はさておいて、離職票を出したら文句なしにもらえるのだ——その十二万六千のうちで受給資格を決定されたのが十一万九千で、約六千六百人減っておる。さらにまた今度は実際に金をもらう初回受給者については五万五千人減っておる。これは一体どうなのかということですね。  それから、それに関連をして、いま保険という話が出ましたから社会保険的な問題について言うのですけれども、支給終了者数というのが、やはり同じ月報の中に出ております。ことばを変えて受給期間満了者という数字も出ております。ちなみに言ってみますと、支給終了者がこれも総数で五万一千、それから受給期間満了者が九万三千。数字はいろいろと合わぬ。理由は問いませんよ。  私がここで問いたいのは、たとえば健康保険、政府管掌健康保険であるとか日雇健康保険であるとかいろいろあります。それらの給付期間が切れた場合には、あとでささえる——一番下という表現を使いますけれども、下でささえるのは生活保護法の医療給付であるとかなんとかというのがありますね。失業という状態があって失業給付金をもらって、そのもらう期間が満了したあと一体どこでこれをささえておるのか。ここのところ労働省では労働行政という立場からいって、支給終了者という五万何がしの人たち受給期間が満了した九万三千何がしといういわゆる失業者ですね、それをどのように追跡をしているのか。これは大臣、やはり一般医療、健康保険の問題と並べて考えた場合に、労働行政の面から追跡をし、これを何かささえるという手だてというものがあるのじゃないか。これを三つ目としてひとつお聞きをしたいと思います。
  125. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 最初の、いまの問題の前の女子、若年の受給についてのアンバランス論でございます。たとえば三十七、八年以来、石炭合理化によりまして大量に炭鉱離職者発生いたしました。失業保険の受給者の中で占める割合はかなり大きなウエートを占めておりました。これは当然そういった炭鉱の合理化、エネルギー革命というようなことによって起こってきた失業でございます。それがたとえ失業保険の受給者の中で相当大きな部分を占めるからといって、これを給付負担のアンバランス、制度面の不合理性というような形でとらえる性質のものではないことは、これはもう御理解いただけると思います。それに反して、同じような現象が、女子、若年層の場合に受給者が非常に多い、全体の中で占める割合が高い、この点が指摘されますのは、現実の労働市場におきまして若年労働者については、先ほど来申し上げておりますように、どこへ行っても引く手あまたで、全般的にいいますと、いろいろ問題のある中で比較的容易に再就職ができるような状態に置かれております。今後そういう傾向はますます強くなっております。   〔大野(明)委員長代理退席、山口(敏)委員長代理着席〕 にもかかわらず、それに比較して就職の困難な中高年齢者に比較して女子、年少受給者の割合がきわめて過大である。労働市場の状況とは全く反比例して受給実績が高い。そこに制度上の不合理性、アンバランスがあるのじゃないか、こういう御指摘があったわけでございます。それが実態がどうであるか、その点はいろいろと御検討いただいたわけですけれども、たとえば安定所の問題、御指摘がございましたけれども、安定所で非常に窓口業務に忙殺されております。その中で一番大きいのは若年労働者の保険受給の実態でございます。そういった状況で、安定所へ行きますと、どこの安定所におきましても、大体保険受給者の中で半分近くが若年の人たちである。そういう人たちがいるにもかかわらず、ネコの手も借りたいような中小企業求人をしてもそういう人たちは全然来てくれない、この点についていろいろと御批判がございますが、そういう実態から見まして、この若年者の保険の受給実態について、やはり全体としての受給状態の中で相当なアンバランスがあるじゃないか、こういう御指摘でございますので、出かせぎと性格的には違った問題でございますけれども、やはり制度上の矛盾というものがそこにあらわれておるのじゃないかということが言えると思います。   〔山口(敏)委員長代理退席、委員長着席〕  それから第二点の受給の実態でございますが、安定所の離職票を提出した人の中で確かに受給資格が決定された者はその中から約三、四%低下しております。その三、四%と申しますのは、離職票を持ってきたけれども、受給資格がついてない。これは六カ月の受給資格期間が必要でございますが、その六カ月の受給資格を満たしていない、あるいは手続上の不備があるとかいうことで受給に至らないものがございまして、大体九六%程度が受給資格を決定いたしたような実績になっております。その受給資格が決定された中で現実に保険金を受け取っておる者は、いま先生の御指摘は約六割ぐらいということでございますが、私どものほうの過去の実績は大体八割くらいになっております。平均いたしますと、八割ぐらいが保険金の受給をいたしております。時期によって若干違いがございますけれども、いま御指摘の点は約六割ということでございますけれども、全体としては八割ぐらい。そこでまたなぜ二割くらいの受給資格者の中から保険金の受給者が減るか申しますと、これは受給資格はありましても一週間の待期、あるいは受給資格が決定された中に離職理由によって一月あるいは四十五日あるいは六十日の給付制限期間がございます。任意退職の場合は三十日ですとか、それから本人の責めによる事由、刑事罰を受けたとか、そういうことになりますと、二カ月とか、こういう受給制限がございます。最近の労働市場の状況はただいま申し上げたような状況でございますので、比較的中高年以下の三十歳あるいは四十歳前後の方々につきましては、この待期中あるいは給付制限期間中に就職される例が非常に多うございます。これは一つの理由は、就職支度金はあとに保険金の受給日数を残せば残すほど就職支度金をよけいもらえるという制度になっておりまして、ここ四年間に就職支度金の支給実績が急激に倍増いたしております。そういった傾向から見まして、こういう給付制限期間中あるいは待期期間中に就職をする例が非常にふえてきておる、また任意退職の割合が全体の受給資格決定者の中で非常に高い、こういうことから受給資格は決定しても現実に保険金の支給を受けないで再就職をして就職支度金を受けておるという実例が非常に多くなってきております関係から、こういった約八割程度が保険金の支給を受ける、こういう実情でございますけれども、その反面におきまして中高年齢者、こういう階層になりますと、実態は全く反対の現象でございましてなかなか就職できません。したがって先ほど御指摘になりましたような支給終了者、九十日なり百八十日なり二百十日といったような支給期間を満了してなおかつ就職できないというような人たちが一部にあらわれてくる、こういうことでございます。  ただ支給終了者五万一千人あるいは期間満了者、所定の給付日数に満たないけれども、受給期間が切れてしまう、こういうのがあるわけでございますが、この人たちが先ほど健康保険の例で病気しても、なおかつ期間が切れてという例を引き合いにお出しになりましたけれども、そういうのとはちょっと異質かとは思いますが、この中に確かに期間が来て保険金がもらえなくなって、なおかつ就職できないという人も確かにございます。しかし同時に逆にこれは、こういう言い方を申し上げるのが適当かどうかわかりませんが、形式的に労働の意思と能力を持っておって求職の申し込みをしておる、しかしほんとうはもう労働市場から引退するつもりで就職の意思はほんとうはないのだ。しかし、もらえるのだから、権利があるのだからもらわなければ損だということで、要するにもらうだけはきっちりもらって、それで終わったらそのまま労働市場からリタイアするというような人たちもかなりあることも実態としては御推察いただけると思います。そういうものがありますので、支給終了者即完全失業者、どうにも手だてがないのだということではございませんで、失業保険の受給者につきましては、特定の人につきましては、冒頭に申し上げました中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法によりまして、就職指導措置等がございまして、失業保険からなお引き続いて転換給付制度による給付延長等の措置もございます。そういったことによって、ほんとう就職の必要な人については、必ずしも十分とはいえないかもわかりませんけれども、そういう補完的な措置も制度として存在いたしておりますので、こういうものを十分活用いたしまして、その再就職をはかっていきたい、かように考えておる次第でございます。
  126. 田口一男

    ○田口委員 この事業月報の問題はあとでもう一ぺん突っ込んで聞きますけれども、「労働時報」、これは御存じですね。これの四十九年二月号の一八ページに「新規学卒就職者の離転職」という職業安定局が要約をしたのが出ておるのですが、これを例にとってお聞きをしたいわけです。これによりますと、時間の関係でこちらのほうは御存じでしょうから問題点だけ指摘をしたいのですが、まず就職後五年間の離職状況のあらましを見ると、中学、高校とも「一年間で二〇%前後、三年間で五〇%前後、五年間で七〇%以上の者が離職している。」これの男女別、いろいろあります。そこで「やめたい理由」というのは、結局七〇%云々というふうな方のやめた理由ということにもなるのだと思うのですが、「男子は将来の安定性、仕事の内容、労働条件の順に多く、女子は個人的事情、将来の安定性、労働条件の順となっている。」こういった三つの事由が多くて、三年なり五年でそれぞれやめていくのだ、こういうふうに私は読んだのですが、ここで五〇%とか七〇%やめた者がそれぞれの地域に帰って職業安定所の窓口へ離職票を持っていくだろうと思うのです。持っていった場合に、ひとつ職業安定局長、職安の窓口の職員になったつもりで、一体どういうふうになるのか、現行法で失業認定というものは一体どういうふうになってくるのだろうか、それをひとづかいつまんで、こういうふうな扱いをしますということをお答えをいただきたい。  ついでになんですが、ずっと見ていきますと、こういった「離職率が高いという事実のみをもって、ただちに問題とすべきでない。」昭和十年ごろの調査によっても大体一年間に四割程度の者が転職をしているのだからというのが前にもあるのですが、「ただちに問題とすべきでない。」というのはどういうことなんですか。それをちょっとお伺いしたい。
  127. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 確かに若い中卒、高卒の人たち転職率が非常に高い。御指摘のように三年たちますと大体半数が一回以上転職をしておる、こういう結果が明確にデータの上で出ております。戦前でございますと、一つのちゃんとした安定した企業就職いたしますと、終身雇用といったような慣行もさることながら、なかなか就職時代労働力過剰時代でございますので、何としても、少々そこの労働条件が自分の考えているよりも低くても、あるいはそこの職場に不満があっても、そこから離れまいとして定着していくというような傾向が強かったと思います。しかし戦後労働市場の状況が好転してまいりまして、端的にいいますと、どこへ行っても食うにはこと欠かないというような状態が比較的現実の問題となってまいりますと、新規学校の卒業生、あるいは大学卒業生でも一たとえば大学を卒業して一流の企業につとめますと、昔はいわゆるエリートコースというようなことで、転職しようとは夢にも考えなかったような私ども当時の実態でございますけれども、最近では何か不満があるとさっさとそこをやめてほかへかわっていく、天下の一流企業のようなところに就職した人でも、大学卒、高卒、中卒を含めてそういう事態がもう至るところに見受けられるようになってまいりました。と申しますことは、少なくとも若い人たちにとっては比較的容易に自分の満足する職場が得やすいということが一つの条件になっているかと思います。若い人たちはそういう転職の機会が多いと同時に、将来の自分の生活設計といいますか、職業設計の上でいろいろと探索をするような時期にあるということもありましょうし、それから最近の傾向として、若い人たちの中で、職業観といいますか、自分の職業というものに確かな考え方があってその職についたというのではなくて、一ぺんやってみよう、悪ければまた次に変わればいいというような、いわゆる職業教育といいますか、十分な適性の判定、職業指導というものがなかなか徹底しない。そういうことのために、まあとにかく就職をして、また次に変わっていく。したがって、三年間に二回、三回変わるというふうな実例もございます。そういったことから転職が多くなってきておりますが、私どもといたしましては、こういった若い新規労働力に対しまして十分な職業指導、適性判定をいたしまして、できるだけその人に向いた安定した職場を確保するような努力、行政指導が必要である、かように考えておりまして、いろいろな施策に取り組んできておるわけでございます。そうは申しましても、こういった人たちが現実に学校を出て一年あるいは二年で任意退職をして、どこかに変わりたいということで離職票を持って安定所に来ました場合は、任意退職でございましても、就職をしていない限りにおいては当然保険法でいう失業者でございます。そこで、受給資格の決定をし、失業の認定をして、失業保険金給付すると同時に、本人の希望を聞いて就職のあっせんをする、こういうことになろうかと思います。
  128. 田口一男

    ○田口委員 そこのところの手続でちょっといまから聞きたいのですけれども、いま言った五〇%、七〇%の若い諸君が職安の窓口へ行って受給資格の決定とかいろいろな所要の手続をする。その場合に、現行法の第十五条、十六条の趣旨からいったら、受給要件として当然満たすべき条件が五ついわれておりますね。一つは労働能力、二つ目は労働意思、三つ目は労働対応性、四つ目は求職活動、それから職安への登録。ここでいう五つの要件を満たす限りにおいて失業保険の受給要件が満たされるのですが、だれが考えても、求職活動と職安への登録ということは、離職票を持っていくことによって存否が確認できると思うのです。しかし、能力とか労働意思とか労働の対応性という存否は一体だれが確認をするのですか。これをちょっとお聞きしたい。   〔委員長退席、山口(敏)委員長代理着席〕
  129. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 要するに安定所へ行って求職の申し込みをして、適当な職場をあっせんしてもらいたい、こう言うことによって労働の意思を表明することになるわけです。それから能力は、特殊な資格とか過去の経験とか、そういうものが客観的に明らかに証明されれば、それはもちろん社会的な労働能力として判定をされますけれども、そういうものがなくても、本人が健康で、求職申し込みをして働く意思がはっきりしておれば、極端に病弱で、現実に労働に耐えないというようなことが明らかにならない限りは、本人の申告によって、労働能力があるものと判定せざるを得ないと思います。
  130. 田口一男

    ○田口委員 いまのお答えをちょっと確認すれば、五つの要件のうちで、求職活動、職安への登録ということによって労働の意思というものは、自動的といっちゃなんですが、一応認められる。能力なり対応性というものは、いろいろ話を聞いたり、その者の過去の経歴というものから大体判断ができると思うのですね。そういうことで、いま局長が御答弁なされたことが、ほんとうにというと語弊があるのですが、そのどおりにやられておれば、さっき言った保険事業月報に見る限り、離職者と資格と初回受給者の数、いろいろ御説明がありましたけれども、こういった差がもう少し縮まるのじゃないかという気がするのです。もっと言わしていただくならば、これは毎回失業保険の問題でこの委員会でも議論になっておるようですけれども、例の適正化通達ですね、失業保険給付適正化要領、私どもは適正化通達、適正化通達といっておるのですが、これを見た場合に、いまの新卒の離転職状況などを例にとって、こういう事実が起こっておる。   〔山口(敏)委員長代理退席、委員長着席〕 私どもはそれぞれ職安の窓口で聞いたりいろいろなこともしてみたのですが、いま言った若い者が、就職先の労働条件がどうも思わしくないからやめた、そこで職安の窓口へ行って、いろいろ法律にも書いてある手続を踏まなければなりませんが、どこかいいところないかということで一番関心を持つのは、次につとめるときの賃金です。いままでつとめておった会社は、五万円しかもらっていなくて不満だった、仕事がきつい割りに五万円しかくれない、だからいままでのような仕事をするのなら七万ぐらいはもらわなければ困るということでやめた者があると思うのです。いろいろあるでしょうけれども。そこで、そういう希望でもってひとつ職業を紹介してもらいたい、そうしたときに窓口で求職票というのを出すのですね。この求職票を見ると、これは私がちょっと借りてきたのですけれども、黒い色で印刷したのが男です。それから緑で印刷したのが女子です。それからもう一枚、失業認定申告書というのがあるのです。よいところをさがしてくれということで書くことは当然なんですけれども、なぜ男と女と色を分けたか。これは統計技術上というだけではどうも釈然とせぬ面がある。さっきの女子受給者が多いということなんかからわざと分けたのじゃないかという邪推をしたいのですが、なぜ分けたのか。  それからもう一つ奇異に感ずるのは、「太枠でかこんだ項目について記入し、該当の文字を〇でかこんでください」といって、生年月日とか身長とか視力とか免許資格なんということがずっと書いてあるのです。ところが、さっき言った本人が再就職をしたいという一番の条件である私は幾らほしい、この欄は太ワクから外なんですね。これは一体どういうことなのかという気がするのです。私はいままで五万円もらっておったけれども、今度は七万円もらいたい、こう書いて、そこで七万なんてちょっと君無理だよ、まあ五万五千ぐらいでどうだというような話ならわかるのですよ。本人の希望する金額は全く聞かずに太ワクの外に出すということは、本人の意思なんて尊重していないのじゃないか。これは冗談じゃなしに、こういう点が問題になっておるのです。ここでトラブルがあって、先ほど大臣は私の申し上げた職安無情ということで——徹底すると言っておるのですが、こういったやりとりの中で、鬼の職安ということもつい出てくる。なぜやったのかという真意をひとつ聞かしてほしいのです。
  131. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 先ほどの男子と女子の求職票に色分けをしております。これは安定所で一括いたしますと、男子と女子の求人が別になります。業務取り扱い上の便宜から色分けをし、また統計上の操作からも色分けしているわけであります。差別する意思は全くございません。  それから求職表の中の書き込みの事項につきまして、太ワクで囲んで本人に書かせるものと、それ以外のものとに仕分けがしてございます。本人に書かせるものと、それ以外の部分については書かさないのではなくて、本人と相対での相談の上で、本人の意向を十分くんでそれに実態を書き込むというために、そういう措置がとられております。書かさない、聞かないということではございませんで、たとえばこれは求人、求職両方に言えることでございますが、求人受理をいたします場合も、中小企業あたりから求人の申し込みがあって、年齢何歳でどういう経験のもので賃金は幾らだ、そんな安い賃金では人はとれませんよ、もう少し出さないとだめです、こういう指導をいたしております。あるいは、そういう職種だったら、若年はやめなさい、そういう人だったら中高年の人を雇ってください、こういう求人指導をするわけでございます。  同時に求職者につきましても、たとえばいままで五万円の賃金で働いていたけれども、七万円ほしい。しかし七万円が妥当であるかどうか。かりに七万円そのまま書いた場合には、なかなかその人には求人が回っていかない、幾らあっせんしても不調に終わってしまうという可能性もあります。そういう場合には、あなたは年齢が幾らで経験がどういう経験である。そうしますと、どういう職種の場合なら七万円いけるかもしらぬけれども、あなたの希望する職種じゃ七万円はとても客観的に無理かもしれない。そういう相談をした上で本人の希望に応じて、その人に一番向いた職種を選んで、それで本人の希望条件を書き込むというのが、そういう措置をとっている理由でございます。本人の意向を全く無視して、かってなことをやるために書かさないのじゃなくて、本人とじっくり相談をして、その上で本人の求職条件というものを明らかにしておくためにそういう措置をとった。決して、そういう先生のおっしゃるような意図ではございません。御理解いただきたいと思います。
  132. 田口一男

    ○田口委員 聞く限りにおいては、私は善意に、すなおに解釈したいのです。ところが昭和三十九年八月ですから、もらった資料も茶けておるんですけれども、この一番初めに、適正化通達の中でいま言ったことに関連して「その他の求職条件の希望を固執する者は、労働の意思及び能力がないと推定される」、こういった中でいま言った金額の問題も入っているんじゃないか。自分では書かない。そこで面接の際に、一体君幾らほしいんだ、七万円ですが、そんなの無理だぞというふうなことで、いや、七万円どうしたって、びた一文七万円切れたらいやですと、言い方いろいろありますけれども、「その他の求職条件の希望を固執する者は、労働の意思及び能力がないと推定される(手引V−一五三五三)ことは当然であるが、」こういうことが書いてあって、どうもわからぬのです。暗号解説書みたいなのがあるのですが、この中身ですが(手引V−一五三五三)というのがある。これは一体何かの暗号なんですか。
  133. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 これは暗号でもございませんし、秘密のものでもございません。要するに、安定所の職員が受給者に対しまして姿意的に自分の裁量だけでかってな行為をさせないために、こまかい基準が定められております。それに準拠して判断をできるように、言ってみれば比較的未熟な人たちでも、あるいは熟練した窓口職員でも同じような取り扱いができるようにするための行政手引きというものがございます。そこに取り扱いの基準が定められております。これは昭和二十二年に失業保険法ができまして、昭和二十四年にこの行政手引きをこまかく定めまして、それを逐年改定いたしてきておりまして、それが安定所の職員のいわゆる行政手引きといいますか、とらの巻みたいなものなんですが、これは別に非公開のものでも秘密のものでもございません。それによって、自分が取り扱いの判断に困った場合はそれをもとにして判断をする、こういうことでございまして、いまの行政通達につきましても、私こまかいこと見ておりません。昔のことで記憶の薄れているところもありますので、担当課長から御説明させたいと思います。
  134. 田口一男

    ○田口委員 秘密のものでないということで私もいろいろと聞いたんですが、一五三五三という番号はわからぬのですが、大体こういう趣旨なんですか。たとえば、失業認定その他いろいろと項目がある中で、法第二十一条の給付制限という項目を立てて、五一四五一から五一五〇〇までずっとこまかく書いたのがあるそうなんですけれども、それをちょっと話を聞くと、いまの五万円七万円でいえば、法第二十一条第一項第三号の、一般賃金水準と比べて不当に低いときの認定基準という解釈なんです。その中に(イ)(ロ)二つあって、その地域の同種業務、同職種同程度の経験年数、同年配の標準賃金と比較して、おおむね百分の八十以下はいま言った法二十一条一項の不当に低いということなんです。それから(ロ)の就職先の手取り額が本人の失業保険金のおおむね百分の百より低い場合は、やはり法第二十一条第一項第三号により低いんだ、こういう文章を見るんですが、いまいうこのV−一五三五三、これは古いんですから新しく変わったのかどうか、その辺がわからぬのですが、大体同じようなものなんですか。
  135. 関英夫

    ○関説明員 いまの先生の御質問の給付制限の基準のところは、これは法律に基づきまして中央職業安定審議会に諮問いたしまして、どういう場合に給付制限をするか、どういう場合にはそれに当たらないかという基準でございまして、これは三十六年当時から今日まで変わってございません。行政手引きというのは、その後印刷をし直しまして、番号等は変わっておりますが、いまの御質問の給付制限の認定基準のところは変わっておりません。前と同様でございます。  で、ただいま先生お読みになりましたように、紹介拒否が給付制限理由とならない、就職先の賃金が、途中省略しますが、一般賃金水準に比べて不当に低いときというものの認定基準といたしまして、二つほど先生が読み上げられました点はそのとおりでございます。今日でも変わりございません。
  136. 田口一男

    ○田口委員 じゃ、変わってないならそれに基づいて言いますけれども、いま言った百分の八十以下は不適当だ、それから失業保険金の百分の百以下は不適当だ、これは常識から考えてもあたりまえだと思うんですね。ところがそのあとに、おおむねという解釈なんです。私はこれはちょっと意見を交えてお聞きをしたいんですが、おおむね百分の八十以下は不適当だ、おおむね百分の百より低い場合は不適当だということは、その限りでは私は常識だと思うんですけれども、おおむねの解釈をして多少上下にというんですね。百分の八十なり百分の百の上下です。しかも就職の促進をはかるために、この基準を多少低下させて厳格な取り扱いをすることという前書きがちょっとありますけれども、情勢を見た上で、こういう基準を出しておるけれども、百分の八十よりも低下をさせて就職の促進をはかる。失業保険金の百分の百ということが常識だけれども、それより低下させてでも就職の促進をはかるべきだというおおむねの解釈を、いままだ変わっていないと言われる手引きの中に書いてある。となると、これは一体どういうことを意味するかということを聞きたいんですね。私はずばり、意見を交えて聞きたいんですが、(ロ)の項でいっているんですよ。失業保険金と同額の賃金手取り額だったら、どんな労働の意思、意欲、能力を持っておったって、それならやめたと言うにきまっていますよ。保険金が一日当たりで二千円だ、向こうも二千円だ、えらい目して二千円、同じものをもらえるなら、このほうがいいじゃないかというのはあたりまえだと思うのです。しかしそういう場合に、就職の促進をはかるために、以下でも、どの辺かわかりませんけれども、百分の八十より以下でも厳格にやって促進をさせるということは、こういう論理が成り立つんじゃないですか。いま言った失業保険金と同額もらったんじゃいやだ、あほらしい。しかし厳格にそこを紹介された、あほらしいからそこをいやだと断わる。断わった者は働く意思がない。働く意思のない者は失業者と認定しないのだから、もうあしたからの失業認定というか、失業給付金は出しませんよ、こういう論理になるんじゃないですか。その点どうです。
  137. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 失業保険金額の百分の百あるいは標準賃金といいますか、その地域で行なわれる通常の賃金の百分の八十、それ以下であれば当然断わっても問題にならない。問題はそれ以上になって断われば、ほんとう就職する意思がないんじゃないかという判定が下される、こういうことでございます。それは常識的に妥当だという御意見でございますが、問題はそのおおむねということでそれが若干下回っても云々という御指摘でございますけれども、これは当該地域における労働市場の状況というようなことから、百分の八十あるいは百分の百が厳格に、法律の刑事罰を適用するような解釈でなくて、行政措置、運用の問題でございまして、たとえば七十九なら絶対いかぬのか、しかしそれであっても、将来の見込みがあって工応身分的に安定するということであれば、失業保険金をもらっているよりはいいんじゃないか、こういう見通しがあれば、若干いまは下回っていても、すぐたとえば昇給するとか、あるいは試用期間中を過ぎれば昇給があるというようなことがあれば、少しは本人の意向があっても、どうですか就職をしてはということもあり得る、こういうことだと思います。  ただ問題は、現実にそういう厳格なことでなくて、おおむねということばを使っておりますけれども、そのことを理由にして締めつけをやって給付制限をやった実例が、はたしてどれだけあるかということでございますけれども、全体として、数はちょっとあとで申し上げますが、就職拒否、紹介拒否をしたことによって給付制限を受けたという例は、現実にはきわ革めて少のうございます。と申しますことは、安定所の窓口で就職あっせんをして、それをそういった理由によって断わって、その断わったことによって失業保険の給付が制限を受けたというのはきわめてまれであるということを、事実問題として御報告申し上げたいと思うわけでございます。  安定所の職員は、これはこういうことを申し上げていいかどうかわかりませんが、私のほうの労働省の全労働の組合の組合員でございまして、言ってみれば同じ労働者立場です。安定所はそういった失業者人たちに一日でも早く就職してもらいたい、そのためのサービスをする機関であり、サービスをするための職員でございます。同じ労働者立場に立って行政を担当しております職員が、そういったおおむねという解釈を厳格に解釈して、あえて就職拒否という措置をとって制限をするというようなことは、いままでも私どもはあまり聞いたことはございません。その点の運用は、決して御心配になるような運用にはなっていないということを私は申し上げておきたいと思うのです。
  138. 田口一男

    ○田口委員 確かに職安の窓口でやっていらっしゃる職員の方は、いま局長がおっしゃるように全労働という労働組合の組合員ですから、労働者意識を持ってみえることは私は否定しませんよ。しかし、よくいわれる公務員の二面性ということで、一方で労働者でありながら、一方ではこういった通達どおりやらなければならぬ。そこのところのジレンマがあると思うのですよ。そこで、わんさと来る、こなしていかなければならぬ。ついことばづかいも荒くなる。それがさっき大臣心配されたような、たいへん受給者に対して、受給者のほうは一段低い立場ですから、そういったことになるのではないか。いまはそうまで厳格にやってないというのですけれども、この通達、二の2の今度は結婚、妊娠、出産、育児という——季節労働者も一部入っておりますが、私は特に女子の問題について言いたいと思う。  この通達では、「結婚、妊娠、出産、育児、老病者の看護その他家事家業等の手伝いのために退職した者は、一般的には労働の意志及び能力がないと推定され、」こう書いてありますね。私は、これに関連して、一番初めに言った有沢研究会も、どうも女子の労働者を敵視をしておるというか罪悪視をしている。女子の失業保険受給者を、こういった結婚なり妊娠なり出産ということで、労働の意思、能力がないと推定されてしまう。しかも、これを受けて、「この推定をくつがえすに足りる事実の立証により、失業状態にあることについての証が得られない限り、受給資格の決定を行なわない」という御丁寧なことまで書いてあるのですね。私は結婚しましたけれども労働の意思、能力がありますよ、 こういったことを立証して、そうだなという心証を得られなければ決定は下さぬ、こういうことは、どうですか。  しかも、もっとこれは御丁寧なことが書いてあるのです。「受給中の妊婦の労働能力について」という、これも八月二十八日に出ておるのですが、今度は、一たんもらっておる女子労働者について、結婚すれば普通十月十日で出産するのですから——いまでは結婚してから五月くらいというのがありますけれども、それは別として、「労働基準法第六五条の出産前の母子保護規定は事業主の義務として本人から軽易な作業への転換を申し出た場合は配置換えを行い、」云々と書いてあるのですね。しかし、そういった保護規定があるにもかかわらず「出産準備又は出産のため離職するものは労働意志がない」のだ、こうきめつけておるのですよ。これはちょっとおかしいのですが、「通常妊娠七ヶ月頃になると出産準備を行うものであり、本入が自発的に法第三条不該当を申出るのが例であるが、」云々ということで、妊娠をしたら労働能力、労働意思が全くないのだという前提に立った通達じゃないのですか、これを読んだ限りでは。どうですか。  大臣、いろいろ企業の、しかも大企業の労務担当が、冗談にしても許せぬ、こういうざれごと言うのを聞いていますか。若い婦人労働者は職場の花だ、しぼまぬうちにいけかえろ。意味わかりますか。女子労働者は職場の花だ、だからしぼまぬうちにいけかえろ。いけかえろということは、やめさせろということでしょう。若いのがどんどん来るんだから、ちょっとひねてきたら、もうやめさせてという、そういう労務管理方針がいまある中で、さあ結婚した、腹が大きくなった、やめろ。一方、そこで労働の意思がないというふうなことになったら、立つ瀬がないではないか。こういうところがあるからこそ私は、紹介の窓口の職員は厳格にやらざるを得ぬ、心ならずも、こうなっていると思う。
  139. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 結婚退職とか妊娠出産退職の扱いについて、いろいろとございますが、結婚退職の場合に、結婚したらやめなければならぬというような労働協約があるとかあるいは内規があるとか、やめなくてもいいけれども事実上やめざるを得ないような取り扱いをされるというような場合は、これは結婚退職が当然失業保険の受給対象になります。しかしながら、そういう理由がなくて、結婚して家庭に入るからやめるという場合には当然、給付制限の対象になるわけでございます。  また、妊娠、出産の場合は、妊娠あるいは出産の前後、これは基準法で働かしてはいけないことになっております。その働かしてはいけない期間に、安定所に出てきて求職申し込みをしても、それは就職あっせんをするわけにはまいりません。したがって、これは失業保険法の問題ではございませんから、当然給付の対象にならない。あるいはたとえば、もう一つ申し上げますと、結婚の場合も、東京でつとめておった人が結婚して大阪にだんなさんについていく、働きたいけれども東京で働くわけにはいかぬから東京はやめて大阪で求職申し込みをする、これは当然理由のある退職として取り扱われますから、給付の対象になります。結婚、妊娠、出産についてはそういった個別ケースによって判断せざるを得ませんので、そういったことを通達の中身で事こまかに、窓口で恣意的な判断をしないように明細な基準を定めてあるはずでございまして、それにはずれるような判断がもし行なわれるとすれば、これは当然審査の対象にもなりますし、正当な給付が行なわれることになるはずだと私ども考えております。
  140. 田口一男

    ○田口委員 いまのそのことで、これは労働省なり、要求をしていないのですが法制局あたりの見解を聞きたいのですがね。普通一つの例として、人事院なり県の人事委員会などがある。職員に対して停職なり、それから減給、戒告という処分をすることがあるのですね。最近の事情をいえば、ストをやるとかで減給処分をしますね。その職員が地方公務員法に基づいて人事委員会に提訴しますね。提訴した場合に、立証責任がどちらにあるかということで、自治省なり人事院の考え方では、処分権者に立証責任があるというのですね。君はこれこれのことをしたから停職何カ月、戒告だ、なぜ戒告にしたのですかといったら、その具体的な理由を処分権者のほうが立証しなければならぬ。これを私はそのままずばり援用しますよ。そこのところの違いを法制局がおったら聞きたいのですが、結婚、妊娠、出産、育児、個別に判断すると言いましたけれども、それはさっきも言いましたように「この推定をくつがえすに足りる事実の立証により」ということは、私がその該当者であれば、私のほうから立証しなければならぬというのですね、これは。そうでしょう。あなたは受給権がありませんよと処分をしたおたくのほうに立証責任があるのではなくて、受給権を切られた私のほうから、女子のほうから立証しなければならぬ。これをいま例にあげた人事委員会に提訴した場合の問題と行政法の比較問題からいって、これは一体どうなのか、これをちょっと聞きたいのですが。
  141. 関英夫

    ○関説明員 先生のお話の立証責任に二つあると思います。一つは安定所が受給資格の決定なりあるいは職業紹介をした、その紹介先を断った、拒否をした、そういった場合に一カ月の給付制限をするという処分をする場合に、どういう場合に処分をするかというのを示したのがこの通達でございます。ですから、先ほどの就職拒否の場合であれば、こうこうこういう基準に該当している場合は給付制限の処分をしない、あるいは基準に該当しない場合は処分をするように、こういう判断基準を示しておる。妊娠による退職ということについて一例を申し上げれば、産前産後の一定期間は労働基準法上就業禁止でございますし、解雇も禁止されておる。そのときにやめてきたということは、妊娠しあるいは育児に専念するためにやめられたと普通は考えられる。したがって、そうじゃないのでどうしてもやめざるを得なかったということをこちらが判断するのに足るような資料を相手方が出してくれたら、その場合には、やめたことについてなるほど理由がある、こういうふうにしなさい、こういうことを指示しているのです。  先生のおっしゃる意味の立証責任は、この処分が何らかの形で争われた場合、どちらがその処分理由を証明する責任があるか。先ほど局長言われましたように、この処分を不服として審査を請求する、あるいはそれが裁判所に行くということで事件が問題になりました場合に、たとえば受給資格を認めないという処分をした、その理由の立証責任、これはそういう提訴の上での立証責任は処分をした側にある、こういうことになるわけであります。
  142. 田口一男

    ○田口委員 いずれにしても、いま言った適正化通達、それに基づいての暗号解説書みたいな手引きですね。これを厳格にやることによって、あたりまえにやっておるのだとおっしゃるかもしれませんけれども、これが怨嗟の的になっておる一要因であるということは、これは大臣もそれから局長以下も理解できるだろうと思うのです。このことが怨嗟の的になっておるのです。ですからいま言ったように、提訴をして云々というところの立証責任じゃなくて、その前にこういう理由があったら持ってきなさいよといったって、いや私はこうですから労働意思があります、能力がありますということを筋道立てて言う人はまあまあ少ないだろう。そこでもうあほらしいといいますか、あきらめて、それならいいですわということで引き下がる。ところが一方では、そのことについて筋道立てて申し立てたら失業保険金がもらえた。もらえぬ者が、これは不公平じゃないかといって投書をするという経緯が新聞論調に間々あるということをひとつ御理解を願いたいのであります。あれはうまくやっているじゃないか、おれもうまくやりたいけれども、そういう手づるなり何なりがないから泣き寝入りだ、ひとつ新聞社に投書してやれということになっておるのじゃないか。そういうことも間々あることをひとつ知っていただきたい。  私はそういうことから見て、有沢研究会にもう一ぺん戻りたいのですが、どうもこの有沢研究会のあの報告、提言を見ると、さっきも言ったように、女子労働者それから季節労働者若年労働者のそういう失業保険金を受給しておるものを罪悪視をしておる論調なんです。もっと言うならば、この新法にも関係するのですが、労働者というのはもともと性が悪いのだという労働者性悪説、そして企業家はみんな人がいいのだという企業家性善説に立って提言、報告をしておるという節々があるのですね。私はこれはあえて名前は言いませんけれども、この審議会の中でこういう発言をした人があると聞いたんです。女子労働者やそういった人が不正受給をしておる、こういったことを適正化をする新法案について反対をするのは反国民的だと言っているのですね。私はこれはいろいろことば足らずとかなんとかいうこともあったのだろうと善意に解釈するのですが、いま私が申し上げたようないろいろな例、通達、手引きによってやられて、しかもうまくくぐってとは言いません。それでもなおかつ職業安定所のほうで手引きを厳格に執行して、なおかつ受給者の数が多い。このことをもって不正受給者のように見て、反国民的だというふうなことを言うに至っては一これは事務当局のほうに答弁を求めるのは酷かもしれませんけれども、私はそういう考えで今度の新法律案への一つの提言を行なったということは問題だと思うのです。いまの女子労働者に私はこだわるのではありませんけれども、妊娠、出産、場合によってはもうこれでいまの社会保障の状態からいって働きたくても働けない人もあるだろうし、家事手伝いというものももう一つあるのです。そういったものを同列に扱って、すべて労働の意思がないのだ。一方で妊娠、出産は働きたくても働けぬ。家事の手伝い、それとは大いに趣が違うと思うのです。それらも一緒くたに扱って労働の意思、能力がないといってはねのける。そこで、もらった者は反国民的というふうにきめつけられてしまう。これではさっき言った労働者性悪説といってもしかたがないと思うのです。それを基本にして今度の雇用保険法案というものがあるんじゃないか。高率であることは認めますよ。率の高いことは認めますけれども、そういう実態を一体どう見ておるのか。たとえばいま私が例にとった妊娠、出産と家事手伝、いとを一緒くたに見ておるということについて、これは普通一緒じゃないでしょう。これはどうですか。
  143. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 私どもはこの妊娠、出産、あるいは結婚による退職を、単なる家事手伝いと同じように見る考え方は毛頭持っておりません。女子の受給者が全体の受給者の中で比較的高い割合を占めておりますが、だからといってこの女子、若年の受給者がみな先生から先ほど例にあげられたように問題として指摘され、あるいは当然給付制限を受けるべきものだとは私ども考えておりません。しかしながら、現実には労働市場の状況が非常に逼迫しておりまして、特に若い人たちについては、男女を問わず、どこへ行っても引っぱりだこだ。そういう状態の中でほんとう就職しなければならない人、したい人、そういう人たちの中にあって一部に、とにかく保険料を払ったのだから保険金をもらわなければ損だ、働く意思はないけれども、働くということを言っておけば安定所は何とか通る——現に給付制限を受けました者は一年間に百六十万人のうちで一万六千人、一%でございます。そういう、間々あると先ほどから先生おっしゃっておるように、全く間々ある程度の問題でございます。そのほかに、実際は就職の意思がないけれども、保険金をもらうために行っているという人がかなりいることも事実でございます。そういう人のためにほんとうに働きたくても働けない、あるいは働きたいけれども職がない、こういう人たちがたくさんいらっしゃることも私は事実だと思います。そういう人たちが制度的にアウトになるようなことではいけない、合理的に本来そういう人たちにはあるべき姿で保険給付が行なわれるという制度にすべきではないかというのが、三審議会の大半の御意見でございます。私どもはそれに事欠くことのないような本来あるべき姿として制度を立て直すという趣旨で、今回の雇用保険法案を御提案申し上げておるわけでございます。ただ単に数が多い、あるいはその中に一部そういう人がいるからそれを目のかたきにしてそれを締めつけよう、そういう意図でないことを御理解いただきたいと思います。
  144. 田口一男

    ○田口委員 そこで、新法といいますか、この雇用保険法案のほうに今度は入りたいのですが、私がいままで申し上げたのは、現行失業保険法の制度の中で、これは職安審議会のあれにも表現されておるのですから職安無情ということばも使ったのですが、そういったようなことが言われておる。しかし手引きであるとか通達であるとかということで怨嗟のまとになっておることも、これは事実です。そういった適正化通達、それに基づいた手引き、こういったものを集大成して法文化したものが雇用保険法でないかという言い方を私はしたいのです。法律には同じようなことが書かれてありますけれども、いままでは、それは通達ですから、また手引きですから、それらを堂々と日の目を見さすために集大成し法文化したというのが今度の法案ではないかという言い方を私はしたいわけです。確かに、いま局長おっしゃったように、そういう人もおるでしょう。これは私はごく小部分おることは認めますよ。また反対給付を、年金のように、掛け金かけたんだからかけた分だけはもらいたいという人もいることは私は否定しません。しかし、それはほんのちょっぴりだと思うのです。そういったことをことさらに、針小棒大というのはなんですけれども、あげつらって、しかも罪悪視するような言い方で有沢研究会が提言をしている。  こういうことから考えて、いまの失業保険法というものができたそもそものいきさつをもう一ぺん振り返ってみたいのです。確かに今日と情勢の変化があることは私は認めます、もう二十年からたっておるのですから。しかし、やむを得ず出てくる失業に対する恒久的な制度として創設したのだというのが、この失業保険法を出したときの提案理由ですね。失業手当というのなら、国が全部金を持って、失業した者には幾ら幾ら出しましょう、こういうシステムならば、有沢研究会が言っておるように、女子労働者が三割、四割をもらっている、季節労働者が何割もらっておる、こういうことを罪悪視する見方も一部出てきても、これはある程度当然だろう。しかしいま私が二、三の例をあげたように、結婚、出産と家事手伝いを一緒くたにしたり、それから本人の労働条件の問題について百分の百以下のあれを厳格にやったり、こういうことでいろんな問題が出てきておる今日、保険制度である以上、これは受給権者が窓口に押しかけていってどうだこうだというのは、当然の権利じゃないかと思う。私は、その辺のところが新法の発想の基礎になっておるという気がしてならないのですが、そうでないと打ち消すでしょうけれども、その辺についてひとつ明快にお答えをいただきたいし、同時にまた、これは基本的な問題で枝村さんのあたりからも御質問があったのですが、現行法の場合には失業中の生活安定ということを主眼に置いておる。ところが本法案を見ると、それもやるけれどもと言っておりますけれども、どうもあとにくる求職活動と就職促進というほうにウエートが移っておる、こういう気がするというよりも、読んだ限りではそうなっておるということ。また同時に、有沢研究会の一員で職安審議会の一員でもある公益委員の方が言っておるように、求職の意思のある者に支給するのが失保機能からいって当然だから、求職者給付というのがあたりまえだ、こういった意見が強く出ておりますように、私が思うというだけではなくて、事実経過から見ても、失業中の生活安定という本来の機能から就職促進、それから求職活動のほうにウエートを変えたのが本法の趣旨ではないか、こう指摘をしたいのですが、いかがでしょうか。
  145. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 ただいま先生御指摘の点は、審議会でもいろいろと御議論があったところでございます。冒頭に大臣からお話し申し上げましたように、今回の雇用保険法案現行失業保険制度失業保障機能を、一そう実態に即して強化していこうということが一つの大きなねらいになっております。確かに従来の失業保険金というのは求職者給付と名前が変わった。しかしそれは、ごらんいただきますとおわかりいただけると思いますが、失業給付という大きな手当の中で、いままでの移転費だとかそういったものを就職促進給付という名称でくくり、従来の失業保険金日額を、基本手当を求職者給付というふうにして、全体をいわゆる失業保険金という名前に変わる失業給付という名前でくくっております。いままでと基本的には考え方は全く変わっておりません。そういう意味で、失業中の生活安定に資するためという失業保険法の目的と、今回の雇用保険法失業者に対する給付の目的と、これも基本的には全く変わっておりません。ただ、誤解されますのは、失業中の生活安定で、求職は何も要らないのではないかというように現行失業保険を誤解されがちでございますけれども、確かに目的のところには書いてはございませんけれども、失業中の生活保障のための保険金の支給を受けるためには、求職申し込みをして失業の認定を受け、求職活動することが要件になっております。それと同じことが雇用保険法にところを変えて書かれただけでございまして、基本的には全く変わっておりません。同じ性格のものだとはっきり断言申し上げて差しつかえないと思います。  そのことで前段にお話しになりましたことも、今回の雇用保険法が従来の失業保険の給付の面におけるいろいろな取り扱いを集大成して締めつけの道具になっているんじゃないかというような御意見でございますけれども、これは決してさようではございませんで、今回の雇用保険法案が成立いたしますと、いまいろいろとお取り上げになりました窓口での認定基準とかあるいは各種の通達類も、もう一ぺん新しい法律に基づいて、あらためて通達なり基準なりを設定することになるわけでございます。その際に、こういった基準のような重要な問題については、当然審議会におはかりして、その答申をいただいた上で施行することになります。その際に、いままでいろいろと御指摘を受けておりました、あるいはただいまいろいろとお話がありましたような、窓口でトラブルを起こしたり、あるいは世間から御批判を受けるような職安無情といったようなことの種になっておるような問題につきましては、そういうことにならないように十分配慮をして、改めるべきものは改めていくようにしたい、かように考えておる次第でございます。
  146. 田口一男

    ○田口委員 こういったことを、新法が成立するかどうかは別として、今日でもぜひ趣旨徹底をしていただきたいということを要望しておきたいのですが、時間がそろそろ迫ってきましたから、あと二点ほどお伺いをして終わりたいと思います。  その一つは、雇用保険法案——新法といいますけれども、この第十五条の(失業の認定)ということにからんで、一ぺん時間があれば縷説をしてほしいのですが、求職者給付をふところに入れるまでの事務手続ですね。これを読んでいくと、標準的な場合には大体こうなるのですよ。きょうは二日ですけれども、四月一日と仮定して、きのう私が職安の窓口へ離職票を持っていって、七日間待期だ、それから二十八日があって、結局三十五日日に基本手当がもらえる、すらっと読めばこういうことなんですね。ところがさっき私は——いま局長、もう一ぺん基準、通達を審議会にはかってというのですから、なんですけれども、ここのところだけは一つ忘れぬでおいてほしいのです。離職票を持っていった、まあちょっときついことばになるのですが、トラブルが起こって、職安無情なんていわれる原因は、失業事実の認定について専断があったと——間々あったと言いましょうか、失業事実の認定に専断があったからこそ職安無情、鬼の職安といわれるのですね。そこで、トータルシステムであるとか過去に不正受給がなかったかとかということをチェックしますね。それから現行法の規則の十三条、十四条に基づいて調査をするとか、それから実証をしてこい、確かにそうですなあと心証を得るような証拠を持っていかなければならぬとか、それから給付制限、給付をしないというふうなことについて、いろんなことで相談、話し合いということで、ある。それで三十五日たって行った。まあ実際は待期明けに来なさいということになるでしょうけれども、待期明けに行ったら、こういう話がある。それから二十八日目に行ったら、またそういうことを聞かれるわけでしょう。そこでもらった。今度また二十八日目に行くと、またそういうことを聞かれるわけですね。いまは二週間が二十八日目に延びたということは一応評価はしますけれども、やり方は同じことになりはせぬのか、そこのところを一番心配するのです。ですから、私が言ったように、大体すらっといった場合には、一日に申し出て、七日待期をして、きょうから三十五日目に金をもらえる、失業と認定される、こういう理解でいいのか。そういう理解に立つならば、いま申し上げたような現行の基準、手引きによったようなことはひとつ改めてもらわないと困る。  同時に、今度は全面適用になるわけですね。私も関連して申し上げたいのですが、全面適用になった場合には、大臣、どうしてもやってもらいたいのですが、同じ職業安定審議会のほうから建議が、一番新しいので四十八年九月二十二日ですか、「職業安定機関の組織・機構の強化に関する建議」というのがありますが、昭和三十三年以降、今度で四回目です。今度のこの中身を見ると、人をふやせと書いてあるわけですね。これは職業安定審議会としては全くずばりいっておると思うのですが、こういう表現を、大臣はお読みになっていただいておるかと思うのですが、「も早や業務の簡素化を行ないうる余地は殆どない」、合理化、機械化、全部入れても、いまや日本職業安定所は業務の簡素化を行ない得る余地は全くないのだ、こうまでいっておるけれども、にもかかわらず、公共職業安定所の定員を見ると、過去五年間見た場合に、四十四年が全体で一万四千三百六十人。四十九年の定員が、実員で一万三千三百六十四名。何と九百九十六人減っておるのです。もう簡素化を行ない得る余地がないと指摘されておるにもかかわらず、総定員法だ何だかんだということもあるのでしょうが、安定所の職員が毎年減っている。そこれもってきて、もしかりにこれが通ったら全適になる。仕事が忙しくなれば、いらいらして頭にきますよね。また職安無情ということが繰り返される心配があるのじゃないか。そういう点、建議を一体どう理解しておるのか。  それから法案の問題について、質問の一に関連してですが、求職者給付のうちで、私ののみ込みが悪いのかどうか、なんですが、求職活動、就職促進に重点を置いておるにもかかわらず、傷病関係についてどうも矛盾があるように思うのです。傷病手当という項が今度はありますね。現行法の場合には傷病給付金。そこで、この法案が本委員会に提案される前に労働省のほうから説明を聞いたのですが、その説明の中で、今度は一年の受給期間を四年にしますよ。その受給期間延長する原因に傷病が入っておる。そうすると、考えようによっては、今度の中では実質、傷病給付金というようなものは消えてなくなってしまったのじゃないかという受け取り方を私はするのです。それはどうなんですか。
  147. 関英夫

    ○関説明員 手続問題等については私からお答え申し上げたいと思います。  新しい雇用保険法案の制度に変わりました場合に、求職者給付を受ける手続がどうなるかということでございますが、まず、自己の責めに帰すべき重大な事由によって解雇されたり、あるいは正当な理由がないにもかかわらず自己の都合でやめた者と、それからそれ以外の普通で言えば解雇された者、やむを得ない理由によって辞職した者、こういう者と違います。最初の正当な理由のない自己都合の退職、こういったものには給付制限の期間が一カ月ないし二カ月ございます。そういったもののない普通解雇等によるやむを得ざる離職の場合は、離職後、離職票を安定所に提出して求職申し込みをいたします。その最初に安定所に行きました、出頭した日から四週間日に最初の失業の認定がございます。で、待期の七日間がございまして、その七日間は支給対象になりませんが、その七日を過ぎたあとの三週間、二十一日失業だと認定を受ければ、最初に安定所に出頭した日から四週間日、二十八日目に三週間分が最初は支給されて、以後四週間おきの失業の認定、こういうことで二十八日分ずつ、こういうことになります。先生の先ほどの御説明ですと、七日の待期を過ぎてから四週間、こういうお話でございましたが、取り扱いは安定所に最初に出ました日から数えて四週間日、最初の七日は待期期間に当たりますので、そのほかの日が全部失業だとの認定を受ければ、最初に受給するのは最初の出頭から二十八日目に三週間分ということになります。それ以降は、二十八日目ごとに全四週間分の失業の認定を受けて支給を受ける、こういうふうに続いていきます。離職事由によって給付制限を受けるものの場合は、その最初の待期の七日の次に一カ月あるいは四十五日あるいは二カ月、そういった理由によって長さが異なりますが、その給付制限期間が入りますので、それを過ぎてから初めて支給になる、こういうことになります。以上が事務手続でございます。  それから受給期間延長、一年を最長四年まで延ばしたことの中に傷病というのが事由の一つに入っている、したがって傷病手当がなくなったんではないかというお話でございますが、この受給期間延長は、傷病だけではありませんが、その他いろいろな事由を掲げておりますが、そういった理由によって、その際求職活動ができない者が、延長を申し出ることによって延長措置を受けるわけでございます。一方すでに給付を受け始めていた者が傷病になりますと、傷病手当の支給も受けられる。したがいまして、いままでは傷病手当の道しかなかったわけでございますが、今後は御本人がそういう場合には選択があり得るわけでございます。傷病手当制度をなくしたわけではございません。要は、先生の御質問は手続問題だけでなく、適正化通達というものに基づいた安定所の失業の認定、労働の意思、能力、そういったものの判断があまりにもきびし過ぎることになって職安無情にならないように、こういう御趣旨だと思います。手続そのものよりも御趣旨はそちらにあるんだろうと思います。労働の意思といったようなものの確認は、要は受給者の御本人の内心の意思の問題になりますので、これは非常にむずかしゅうございます。日本だけではなく、私、諸外国の例もずいぶん聞いておりますが、この労働の意思の確認というのは特に諸外国でも苦労している。特にまた女子受給者については苦労しているという話は、日本のみではございません。そういう意味で、内心の意思を確認していくという意味で、非常にむずかしいわけでございます。そういう意味で、その確認の判断の基準を通達で示して、安定所ごとにまちまちにならぬようにという配慮をいたしておりますが、失業保険受給者の数が多い、あるいは安定所の職員が足らぬとかいうようなこと、そのほかいろいろな事情から十分な時間もかけられず、とかく不親切な応対になって内心の意思の判断に誤りが、たまたまにしろあったとすれば、非常にそれは申しわけないことでございますので、私どもとしてはできる限り客観的に公正にその辺の判断をしていくように、十分これからも注意してまいりたいと思っております。
  148. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 安定所の体制の問題でございます。これから雇用保険法案が成立いたしますと、来年度から零細企業の一人でも人を雇っておれば全部保険の対象になります。受給できることになります。過去、各種の社会保険がございまして、零細企業まで含めて全面適用に踏み切った例はございません。そういう意味におきまして、今回の雇用保険は、私どもは、我田引水かもしれませんが、画期的な目玉を一つ掲げておるつもりでございます。その際、全面適用になりますと五人未満のいわゆる零細企業が、これは数はいろいろいわれておりますけれども、相当な数にのぼります。これの適用把握ということになりますと、先ほど先生御指摘になりましたように、安定所の職員は一万四千三百六十人から一万三千三百幾らに約千人近く減っております。反面、業務量は増大していく一方でございます。全面適用になりました場合に、この適用の把握あるいは被保険者資格の取得、喪失、保険給付事務、こういったものが相当膨大な業務量になることを私どもは当然覚悟しなければならないわけでございます。にもかかわらずあえて全面適用に踏み切ったわけでございますが、一方で安定所の合理化については機械化その他も限界にきておるという安定審議会の御指摘ではございますけれども、実は本年度からこの失業保険の適用、資格取得、喪失業務、給付事務につきましては全面的に機械化するためのテストを行なっておりまして、来年度から全面的に——いわゆるトータルシステムと称しておりますが、これによってほとんどが機械化されることになっております。そういうことで事務の簡素化、機械化を進めると同時に、一方では、全面適用になりましても、私どもが従来全面適用に踏み切れませんでした最大の原因は、零細企業を完全に掌握することが不可能に近い。人海戦術をもっていたしましても、中小企業の場合は新しくできてまたつぶれていくという事態の繰り返しでございますので、これを完全に把握して適用していくということは非常に至難のわざであるということで、全面適用になかなか踏み切れないというのが過去の実情でございました。それをあえて今回踏み切りましたのは、そういうことによって、こういう小零細企業労働者失業保険の適用がないが、そういう企業ほど企業基盤が脆弱でつぶれやすい、解雇が起こりやすい。それが放置されるということは、労働行政特に雇用問題におきましては最も重要な問題でございますので、あえて適用把握がむずかしいままに踏み切りました。その理由は、かりにそういった安定所の業務体制が不十分なために現実に適用把握ができなくても、法律の網をかぶせておけば、かりに適用していない、保険料を収めていない企業がありましても、その企業倒産なり企業縮小によって解雇した場合には、その企業から解雇されたあるいは離職した人は、当然この新しい雇用保険の対象として給付が受けられる、その時点でさかのぼって当該企業に対して適用していく、こういう考え方ではっきり体制を整えることにいたしたわけでございます。そういうことで、こういう画期的な全面適用という制度に踏み切ったわけでございます。このことによって確かに業務量はふえますけれども、一方で機械化、合理化をすると同時に、そういう考え方で、あえてシラミつぶしに人海戦術をとって適用把握を執行していくという考え方は持っておりません。私どもは現在の体制を強化することによって十分新しい保険制度を運用していけるのではないか、かように考えておるわけでございます。  同時に、過去四回にわたって安定審議会で御建議いただきまして、体制の強化、機能の刷新を御指摘受けておりますが、人員の増につきましては、総定員法の関係で公務員の定員をふやしていくことは非常にむずかしい問題でございます。その中で私どもは精一ぱい努力いたしておりますが、その面は別といたしましても公共職業安定所は、いってみますと失業者で社会的には不遇な立場に置かれた方々が集まってこられる場所でございます。そういった意味で、窓口は来所される方々にできるだけ気持ちよく応待できるような環境をつくり上げることが大事でありますので、安定所の環境整備、窓口職員の処遇の改善等には十分力を入れてまいりまして、関係者の方々に安定所に対する信頼を高めていただくような措置を今後ともとってまいるつもりでございます。
  149. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 先ほど来の御質問、さらにまたいろいろなお話が出まして、非常に参考になるところがありました。まさに先生おっしゃるように、末高さんの建議の中にもはっきりと公共職業安定所職員の増員等々が書いてあります。総定員法でむずかしいときでありますけれども、幾ら機械化をいたしましても、公共職業安定所の仕事というものは対人関係でございます。人間と人間でございます。それだけに、むずかしいときでも増員は懸命にはかっていかなければならぬと思っておりますので、その節にはよろしくひとつ御指導のほどをお願いいたします。
  150. 田口一男

    ○田口委員 時間ですから、もうこれで終わりますが、最後に、私がいままでに申し上げたことは、現行失業保険法の扱いについての問題を具体的な事実に基づいて申し上げたわけです。これは、もとに戻って、有沢研究会、先ほど枝村さんとのやりとりの中でありましたけれども、こういう事実経過からも——指摘をするにとどめたいのですが、この法案審議の中で今後明らかにしていただきたいという注文をつけたいと思います。というのは、審議会の無視であるとか、有沢研究会を下敷きにしてそのままじゃないかとか、いろいろな問題があるという指摘が先ほど枝村委員からあったわけですね。その際に局長から、四十五年一月ごろから部内で失業保険の研究をやったというお話があったのですが、その事実経過を見ると、たまたま四十五年九月十七日と、一週間おいた二十四日の日経連タイムス、これは御存じだろうと思うのですが、こういう記事が載っておるのです。九月十七日には、「技能労働力不足にどう対処するか」という見出しで、日経連の雇用政策研究会がいろいろと実態をまとめた、この報告の取りまとめには企業からの委員六氏のほか、労働省経済企画庁、人口問題研究所、アジア経済研究所の担当官十二名も参加しておる、こういう問題点の指摘をしたのですね。これは私はあえて言おうとは思いません。こういった雇用政策研究会の研究報告を踏まえて、日経連の常任理事会で「労働力不足対策に関する政府への要望」というものをまとめ、全文日経連タイムスに載せておるのですが、それを見ると、失業保険制度の抜本的改革をはかることということで、いま言った女子結婚退職による不正受給の防止、出かせぎ労働者などの別ワク扱い、それから失業保険制度はともすれば惰民を養成することになるから、そういったものの排除。いろいろな書き方をしておるのですが、どうしても有沢研究会でいっていることと同音異句といいますか、そういうものがうかがえるのですね。ですからさっき枝村委員が言われたように、審議会の無視だ何だかんだという意見もありますから、最近のはやりことばでいえば、癒着とまでいいませんけれども、べったりというふうなことば、そういう批判も出てくるわけです。結局三事業を興して、失業保険金をとってそれをがっぽり企業のほうへやるとかいうふうな批判も出てくるわけですから、そういう点についての解明を今後もひとつ納得のいくようにしていただきたい。こういうべったりだというふうな批判のあることに十分こたえて、ほんとう失業者生活安定ということに、また今後の業務運営にあたっては締めつけといわれるようなことをなくして、文字どおりほんとうに職安はいいところだ、職安無情じゃなしに職安有情といわれるような職安にするように、これからもひとつ努力をしてもらいたい、これを申し上げて質問を終わります。
  151. 野原正勝

    野原委員長 石母田達君。
  152. 石母田達

    ○石母田委員 私はきょう、政府提出雇用保険法案についての質問をしたいと思います。  いまここに許しを得て積みましたはがきは、今度の雇用保険法案について、それが実施されると生活あるいは家族を含めてのいろいろな問題が重大な、深刻な打撃をこうむるということで、反対の意思を表明されている出かせぎ労働者の署名が一万二千通、さらに数千通の国有林に働く人たちからのはがきでございます。私はこの人たちの声も代表して、また今回出された雇用保険法案について私の党の立場から質問をしたいと思います。  まず最初に、私は、今度の法案の基本的な性格は一体どういうものであるか、つまり、この法案がいまの時期にこうして出されるというのは、一体だれがこれを推進しているのか、またこれによって一体だれが利益を受けるのか、何を目的にしているのか、こういう点について質問したいと思います。  きょうは大臣の予定も詰まっておるそうですから、答弁はイエスかノーかでできるだけ簡潔に行なっていただきたいということを初めに要望しておきます。  今回の法案が制定されることによって、昭和二十二年以来二十数年間続いてきた失業保険法を廃止する、そしてこの新たな法律によって制度の抜本的な改定が行なわれる。そのおもなものの一つが第一条の目的条項の変更にあるというふうに私は理解しておりますけれども、この点どうでしょうか。
  153. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 今回御提案申し上げております雇用保険法案は、昭和二十二年に制定されました失業保険法において、失業者失業中の生活安定と再就職の促進をはかることとしております失業保障機能を、さらに一そう現実の社会の実態、労働市場の実態に即して強化していきますと同時に、従来の失業保険法体系の中で、労使保険料負担によります経費で福祉施設あるいは保健施設として実施いたしておりましたものを、従来各関係審議会あるいは当委員会等においていろいろと御批判をいただいておりました点を今回合理的に改善いたすことといたしますと同時に、そのことによって今後いろいろな事態に際しまして発生いたします失業をできるだけ予防し、積極的に雇用改善をはかっていくための事業として、全額を事業主負担によって実施することにいたしたものでございます。基本的には従来の失業保険法と変わりはない、かように考えております。
  154. 石母田達

    ○石母田委員 あなた、あなたの説明の中で、根本的な改善をしたい、抜本的な改善をしたい、こういうふうに言っているのですよ。   〔委員長退席、山口(敏)委員長代理着席〕 そのとおりかということを私はやっているのだから、そうであるならそうである、ないならない、こういうふうにはっきりと言ってくださいよ。もう一度聞きます。今度は雇用保険法という、名前を変えてこれまでの失業保険制度を抜本的、根本的に改定するものであるかどうかということについて……。
  155. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 現行失業保険制度失業保障機能を抜本的に拡充していきたい、こういうことでございます。
  156. 石母田達

    ○石母田委員 その最も主要な内容が、私は第一条の目的条項の変更にもあると思うのです。これは現行法第一条に、「被保険者失業した場合に、失業保険金を支給して、その生活の安定を図る」、こういうふうにあるわけです。今度新たに雇用対策事業として雇用改善能力開発雇用福祉事業の三つを加えた、こういうことですね。
  157. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 そのとおりでございます。
  158. 石母田達

    ○石母田委員 このいただいた資料によりますと、この三つの対策事業、つまり新たに加わった雇用対策事業に単年度で千百二十六億円、これに対応する四十九年度の予算においては五百八十九億円ですから、差し引き五百三十七億円がこの三つの対策事業に新たに投入される、こういうことに理解してよろしゅうございますか。
  159. 関英夫

    ○関説明員 その資料は四十九年度予算編成前に、それまでの予算の前提条件が変わらないものということに仮定いたしましていろいろ積算、推算したものの一つでございます。したがいまして、四十九年度予算が成立した後、今度それを基礎にさらに五十年度予算を要求する際にそのとおりの額になるかと申しますと、そうはなかなかならないと思います。全体の保険料収入も賃金状況によってずいぶん変わってまいりましょうし、それから失業者数というものも変わってくる。いろんなことで変わってくる面がありまして、一応のあの時点における積算数字でございますので、ひとつ御理解いただきたいと思います。
  160. 石母田達

    ○石母田委員 労働省の試算がこういうふうに出て、あとまた四十九年度の予算が終わってから変わるかもしれない、こういう前提ですけれども、その前提で私も話します。  まず私は中身について少しお伺いしたいと思うのです。この三つの事業の第一番目が雇用改善事業になるわけですね。この雇用改善事業の三百九十三億円という試算した三分の一近くが地方雇用機会創出交付金、こういう項目であります。この地方雇用機会創出交付金というのは、雇用機会を増大させなければならぬ地方、必要のある地域に工場が移転または新増設したときに、その雇用促進のために交付されるものだと理解してよろしゅうございますか。
  161. 関英夫

    ○関説明員 ほぼそのとおりでございます。
  162. 石母田達

    ○石母田委員 それは説明によりますと一人当たり十万円、一事業所当たり三千万円を限度としている、こういうふうに聞いております。これはたとえばここに三つの企業、豊国機械工業と日立製作所、三精輸送機というのが工業再配置促進法に基づいて工場移転されることになっているわけですけれども、この三つの工場の移転者の中で新しい工場に移転する千七十九人、こういう人たちには当然これは適用されるわけですね。
  163. 関英夫

    ○関説明員 地方雇用機会創出交付金の具体的な支給基準あるいは支給額といったものは、先ほど申し上げましたように五十年度の予算としてわれわれ要求を考え、予算の最終段階できまるものでございますので、ただいまの先生のお話は、私どもが現在一応考えているところの地方雇用機会創出交付金の支給基準はそういうふうに考えたいという内容のものでございます。したがいまして、それが具体的にそういうふうにきまるかどうか、これはこの法律成立後さらに具体的に詰めないときまらぬ問題でございます。そういう前提を置いて恐縮でございますが、そういう前提を置いて考えれば、私ども一応労働者雇用機会が不足している地域と私どもが考えます地域を指定地域内に移転ないし新増設する場合に、そういう事業所の労働者の移転なり雇い入れに伴う諸経費、そういうものを一定割合補助していこう、交付していこう。しかしそうはいっても無限にいくわけにはいかぬだろう。そこにおのずから限度というものがあるだろう。その限度は、たとえば一人当たり十万円、一事業所当たり三千万ということが限度になるのじゃないかというふうに考えたものでございますが、具体的な移転の実例なり、あるいはそこでのこういう援助の必要性なり、こういうものをさらに詳しく調査いたしまして、具体的に予算をきめるまでにはさらに検討を続けねばいかぬだろうと思います。  それからまた、実際上こういう制度をやります場合に、関係審議会におきまして、中小企業が十分利用し得るよう、かつ中小企業にメリットがあるような制度にすべきだという御意見もございましたので、先生のお話の大企業あるいは中小企業によりまして、この交付率なんかも変わってまいると思います。そういう意味でいろいろ変化はございますが、一応お取り上げの事例なんかも今後成立後のことであれば、施行後のことであれば対象にはなると思います。
  164. 石母田達

    ○石母田委員 最後の答えだけで答えはいいわけです。この交付金の対象となるのは、私が説明を受けたところによりますと、三つあるというふうに理解しておるのです。その一つは、工業再配置法の計画認定によって、いわゆる移動促進地域から誘導地域に移る場合、もう一つは、いまあなたが言われたように、計画認定によらないで自主的に移転する場合でも、労働力の過密地域から雇用が不足している地域に移る場合、それからもう一つは、昭和四十六年六月の農村地域工業導入促進法に基づく新増設の工場ができた場合、この三つの場合がこの交付金の対象になるというふうに聞いておりますけれども、これでいいのですか。
  165. 関英夫

    ○関説明員 工業再配置促進法における誘導地域、つまり再配置の工場をできるだけ誘導すべき誘導地域なり、農工法によります農村地域等々は、私ども雇用機会不足地域をきめます場合に、当然にそういう法律ですでに現実に施策が行なわれているわけでございますので、そういうものも含めるように考えるべきだと思っております。
  166. 石母田達

    ○石母田委員 そのときのお話で、通勤圏というものを考えておられるという話も聞きました。これはおそらく雇用不足地域というときに、雇用対策基本計画ですか、あそこの中にある通勤圏という考え方を設定しよう、こういうことなんですね。そうしますと、いまの考え方の時点で、こういう場合はどうなんです。私のほうの横浜のまん中に三菱重工というでっかい工場があって、今度埋め立てして埋め立て地に移るという計画があるのですけれども、もしこれが実施された場合は、これは農村地域だけじゃないのだけれども、通勤圏という中には入るもので、当然こういうものは該当するようになるのかどうか。いまの時点の考え方でいいです。
  167. 関英夫

    ○関説明員 いまの事例、私よく存じませんのでわかりかねますが、通勤圏ということばが出ましたのは、労働力不足地域といいましても、山の中の地域もあれば、それからわりあい交通の発達したところもある。山のところに事業所を持っていくということを考えても、従業員の確保も容易でない、通勤もできない、こういうことになりますので、やはり労働力不足地域の中で、ある一定労働力が通勤可能な通勤圏を設定してそういうことをしないとこういう施策が実らないという話が、御意見として審議会の審議の過程で出てまいりました。それで、そういうことを私ども実際上施策を行ないます場合に考えたい、こういうことでございます。
  168. 石母田達

    ○石母田委員 こうした交付金というものが百二十一億円も組まれておる。これが資本家に交付されるわけですけれども、この対象になっている工業再配置促進法とかあるいは農村地域工業導入促進法というものは、言うまでもなく、日本高度経済成長政策あるいは日本列島改造計画に結びついていることは皆さんも御承知のとおりだと思います。念のためにこの改造論の中を読んでみると、「私のいう工業再配置は、」私というのは田中角榮総理大臣でございます。「工業再配置は、太平洋べルト地帯への工業立地の流れをくいとめ、さらに超過密都市から地方に向けて工業を積極的に移転させるところに新しいねらいがある。」こういうようなことは経済同友会からの要望も出ております。また、「日本では全就業人口に占める一次産業人口の割合が一七・四%と高い。これを工業再配置と総合農政の展開によって、昭和六十年までに七%程度に下げることができれば、八百万人前後の労働力を二、三次産業で活用することができる。」この総合農政の展開の中には、この間本会議での答弁もありましたように、この農村地域工業導入促進法によって農村に工業を誘致するということも含まれていることは言うまでもないことであります。この農工法が出ましてからすでに一万七千八百名の労働者がこうしたところで操業を開始して、その中で、農村地域で、つまり農民がすでにこの計画に従って八千七百四十三名、つまり五〇%ですね、五〇%が農村地域から労働力として活用されている、こういう状況であるわけです。私は、こうした創出交付金というものが、いま言いましたような工業再配置促進法や農村地域工業導入促進法を推進させるというような保証として使われるというふうに考えておるわけです。これはいまの答弁によっても、そういう対象がそういうふうになっているということですから、あとでこれはまた論議を進めたいというふうに思います。  次に、第二の事業であります能力開発事業に移りたいと思います。この事業費三百七十三億円が試算されておりますが、その三分の二近くの二百四十五億円、これが公共職業訓練に充てられているわけです。この公共職業訓練には一番の力点が注がれているというふうに見ていいですか。イエスかノーか。
  169. 久野木行美

    久野木政府委員 今回の能力開発事業におきましては、事業訓練、それから公共職業訓練校の充実、これを両輪のごとく考えたい。ただ、金額の上では二百七十云々という試算はいたしましたけれども、双方を重点と考えております。
  170. 石母田達

    ○石母田委員 この職業訓練で、現行中小企業の共同訓練施設というふうに助成はいまなっているわけですけれども、今度新たに三百人以上の大企業といいますか企業と、それからいま言われた企業訓練ですね、事業内の諸君にも新たに助成がされるというふうに聞いておりますが、それでいいのかどうか。そうだとすれば、試算でいいですから、大体それによるどのくらいの財政拡大が見込まれるのか、お答え願いたいと思います。
  171. 久野木行美

    久野木政府委員 第一点の、対象を今度ば制度的に拡大いたしたいということで、現在は共同の訓練の場合にのみ補助をしておりましたけれども、この能力開発事業が認められました場合には、今度は単独の企業においても出す。それから対象を、従来は養成訓練だけでございましたが、成人訓練にも拡大したい。それから、補助率を上げたいというようなことでございます。大部分は中小企業に対して支出する。それから、特にこの際申し上げたいと思いますのは、中小企業にごく手厚く考えていくという方針でございます。
  172. 石母田達

    ○石母田委員 この「職業訓練法に基く事業内認定職業訓練」という資料でありますが、これで見ると、三百人以上の訓練生というのが八六・五%、こういうふうに占められております。いま中小企業に厚くという話でしたけれども、実際のそういう財政が拡大されていった場合に、こういうところが適用になるとすれば、これはかなりこちらのほうの部分にその助成がいくということは考えられませんか。
  173. 久野木行美

    久野木政府委員 第一点に、人数は確かに二万六千九百三十八人ということで、全体の比率は多くなりまして、計算の面ではそういう三十人以上の企業金額は参りますけれども、しかし補助率において差をつけるというようなことで、特に中小企業、表でごらんいただくとおわかりのとおりに、共同訓練で五人から二十九人の規模のところが二万一千五百七十人、四二・八%、それから一人から四人の共同訓練校が一万四千百九十九人、二八・二%、双方合わせますと七一%ということになりまして、この共同訓練校等に最重点を置いていくという面は当然ございますし、今後とも私どもとしては、三十人以下の中小企業に対しまして補助率に差をつけて、この部面に手厚くしていきたい、そういうことになると存じます。
  174. 石母田達

    ○石母田委員 この中でさらに二、三項目聞きたいのですが、被保険者の公共職業訓練の充実というところで、事業主の公共職業訓練施設への訓練委託の助成がゼロから二十四億円と大幅に見込まれておりますけれども、これは公共職業訓練所へ事業主のほうから訓練が委託される、そういう場合の助成ですか。
  175. 久野木行美

    久野木政府委員 さようでございます。
  176. 石母田達

    ○石母田委員 これが大幅に拡大されるということになるわけですね。  次に、職業訓練受講奨励措置の実施が八億から一挙に五十億円というふうに見込まれておりますけれども、これはどういう内容ですか。私の聞きたいのは、事業訓練に逆に公共から委託するというものなのかどうか、その内容についてお伺いします。
  177. 久野木行美

    久野木政府委員 その場合は、結局使用者が公共職業訓練校へ受講させる場合に、その事業主の払う賃金の一部を負担して助成するというのと、それからもう一点は、労働者自身が受講する場合の教材費その他につきまして助成する、その双方でございます。
  178. 石母田達

    ○石母田委員 もう一つ聞きます。そのあとの有給教育訓練休暇交付金というのは、有給で教育訓練をさせる。それで休暇をとって、有給の休暇ですね、有給休暇で訓練させるという場合に出す交付金ですね。
  179. 久野木行美

    久野木政府委員 有給教育訓練休暇につきましては、結局制度的に、たとえば労働協約、就業規則等におきまして、使用者が従業員を教育訓練の目的で各種の講習等を受講させる際、その所得を失なうことなく休暇を、時間を与える、そういう際の一部を保障しよう、こういうことでございます。
  180. 石母田達

    ○石母田委員 そういうところは常識的に考えて、中小企業の場合人手不足ですからね。やはり大企業のほうがそういう制度がより多く採用されているというふうに私どもは考えるわけなんです。  その次に、三つ目の事業の問題について続いて質問したいと思うのです。この雇用福祉事業というのは、いま福祉施設ということで出されている問題があるわけですけれども、これについては再三この場でもいろいろ私どもは意見を出したわけですね。それは雇用奨励金であるとか通年雇用奨励金であるとか、あるいは職業訓練の特別給付金であるとか、こういうものははたして一体、福祉というもので出されるものか、福祉事業なのかどうかという点で、保険財政からこういうものの支出についてはわれわれは意見を述べてきたわけです。  今回、雇用保険法によってこうしたことが、いわゆるそれぞれ三つの事業内容区分されるかどうかして雇用保険という中に組み入れられてくる。同時に、特にこの中で事業費三百四十三億円のうち、二百億円以上とっている移転就職者の住宅設置運営費というのがあります。これははたして雇用保険という中に組み入れられるものであるか、これはおそらく、先ほど答弁のあった工業再配置促進法や農村地域における工業導入促進法、こういうような法律に基づいての移転で、そこで離職して移転する労働者が対象になっているというふうに考えますけれども、これはこういう人たちのための支出ですか。
  181. 関英夫

    ○関説明員 移転就職者用宿舎は、本来は安定所の紹介によりまして、広域職業紹介活動命令によりまして、従来住んでおったところからずっと遠いところに就職する、そういう人に対しまして貸与する、こういうのが本来の目的でございます。  ただ、そういうことでいろいろ従来まで設置してまいりました移転就職者用宿舎に、間々あき家がある場合がございます。空戸がある場合がございます。そういう場合に、そういった移転就職者の利用に支障がない限りにおいて、工業再配置なんかの場合には移転従業員、そういうような者にも貸与し得るということにいたしておりますが、本来の目的は広域紹介に基づく移転就職者のための住宅ということでございます。
  182. 石母田達

    ○石母田委員 この六十五条にいわゆる三つの雇用事業にかかる施設は、被保険者以外の者にも利用させることができるというのは、この施設の中に住宅も入っているのですね。その場合には、たとえば先ほど言った地元で農民が労働力として活用される場合に、被保険者でないけれども、あるいは職業訓練なんかを受けている期間中とか、そういう被保険者でない人にも利用させることができる、こういうことですか。
  183. 関英夫

    ○関説明員 被保険者等の利用に支障のない限り、そういう被保険者または被保険者であった者以外の者にも利用させることができる、こういう意味でございます。
  184. 石母田達

    ○石母田委員 こうやって見てきますと、たとえば炭鉱離職者の方々が、よく、住宅が、新しく就職される場合に入るとか、いろいろありますし、特に二種住宅という低所得者層に対しての住宅も考えられておるわけですけれども、これが幾ら四千何百億円の黒字があるからといって、こういうところまで雇用保険の中に組み入れなければならないのか。これは私は住宅政策として国がきちんとやるべきことだと思うのです。別な、資本家が社宅を建てるなら社宅を建てるというような方法でやればいい。やるべきことだと思う。こういうことが、いま出されているように、工業再配置促進法や農村地域への工業導入促進法というようなものに基づく移転の措置のために考えられている。福祉事業という内容もやはりそこから出ている。そして、きょう概算で出ないというので質問はしませんけれども、この千百二十六億円のうち三つの事業で直接資本家に交付または助成されているお金はどのくらいなんだと聞いたら、大ざっぱにいって四割程度でしょうということです。それだけでも四百数十億円です。これが直接資本家に交付されるということになるわけです。こうなってみますと、私は、今度の雇用対策事業内容をしさいに検討していけばいくほど、これによって資本家に直接交付される、助成される、あるいはまたこれらの事業が、高度経済成長政策日本列島改造計画による工業再配置、農村への工業分散政策を推進させるためのものであるということは明らかであります。私は、この問題について、今回の雇用保険法に書いたという一つの大きな意義はここにあると思っているのです。いま、この問題について、先ほどの資料にも出ましたように、日経連が昭和四十五年九月に「労働力不足対策に関する政府への要望」ということをまとめまして、労働省、文部省、大蔵省、自民党など関係方面へそれを提出した、こういうふうになっておりますけれども、これは御存じですか。
  185. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 今回の雇用保険でこの三事業を実施いたしますにつきましては、従来から、失業保険の福祉施設あるいは保健施設として……(石母田委員「事実かどうかということ、要望書を受け取っていますか」と呼ぶ)ただいま御指摘になりました日経連の要望書は、先ほどもちょっとお話が出ましたが、私ども全然記憶ございません。
  186. 石母田達

    ○石母田委員 日経連もまたかわいそうなものですね。すっかり記憶にないのでは、これはもう……。  ところが、記憶にないにしては、あまりにも今回の皆さん方のこの雇用保険法案内容が、この要望とほとんど同じだ、それにこたえたものだといっていいほどの内容なのです。記憶がないということなので、記憶を新たにする意味で私はここで少し読み上げてみたいと思います。  まず、この要望書でございますけれども、この要望書を出されたのは、先ほども論議がありましたように、近年ますます深刻化しつつある労働力不足において、わが国経済の、社会の成長発展に対する重大な隘路となっている、このことを解決する意味で、日経連つまり大資本家の連中が考えて、政府に、あなたたちに要望した点であります。一つは、「失業保険制度の根本的改革を図ること。」「失業保険制度を抜本的に改正し、出稼ぎ労働者はこれを別枠に扱い、」皆さん方の好きなことばでいうと、なじまないから追い出す、やめちゃうということですね。それから「また就職の意思のない女子結婚退職による不正受給等を防止するなど、失業保険制度の健全化に抜本的措置を講ぜられたい。とくに完全雇用下の失業の概念が著しく変化していることにかんがみ、失業保険制度がともすれば惰民」、つまりなまけ者を「養成し、労働力活用を阻害する弊を伴うことも考えられるので、失業の認定の厳正化、運営の正常化はもとより失業保険制度そのもののあり方についても再検討を加えられたい。」こう言っています。また「農村労働力活用のため、工場の地方進出を促進すること。」また「中高年齢者、心身障害者の活用」——私はこのことばが大きらいなんですね。活用だというのです。「活用を促進するための援助措置を講ずること。」こういって、幾つかの対策を要求しております。そして職業訓練施設の場合にも、「公共職業訓練施設の充実と再配置を検討し、産業界の委託による訓練機構を整備すること。」、「職業訓練については、若年者の養成訓練の充実はもとより重要であるが、中高年齢者、とくに農村労働力の再訓練のため、公共職業訓練施設の充実と人口の疎密に応じた配置を検討し、要すれば再配置されたい。」そして「また訓練職種とコースの多様化を図り産業界の要請に応じて受託訓練を行なうなど、公共機関としてのサービス機能整備されたい。」特に「女子労働のための職業訓練、託児所等を拡充するとともに、女子の労働基準を適正にする」その中では「現在では過保護と考えられる基準法上の女子保護規定を検討されたい。」というのは、御承知のように、深夜作業とか危険作業というものにあまり女子を制限するのではなく、もっともっとそういうところにも使ったら、あるいは深夜でもやらしたらいいじゃないかという懸案を日経連が提案していることは、皆さんも御承知のとおりです。そのための労働基準法の改正が出ていること、私どもがいう大改悪が出ていることは皆さんも御承知のとおりです。こういうものが日経連から皆さん方に要望されている。皆さん方は記憶にないということでとぼけているが、ほんとうにあなたは——そのころ労働省にいたかどうか知らぬけれども、こういうものが政府に対して行なわれているのです。あなたたちがきょうずっと、私が、試算だか何だか知らないけれども、これでお答え願った雇用保険法のいわゆる新しく加えた雇用対策事業というのは、まさにこうしたものにこたえている。同じでしょう。あなたたちの答えていることと全く同じなんです。そういうことがすでに昭和四十五年九月に日経連から要望されている。すでに四十四年の改正や何かで皆さん方一度出されて、それがそうなっておりますけれども、そういうことで、私は、今度の雇用保険法の基本的な性格というものは、まさにこうした大資本が工業再配置あるいは農村地域に工業をどんどん導入して、日本列島改造計画によって高度経済成長をして、そうして大きな利潤を得る、こういう発想のために、この労働力確保をどうするかという、そういう労働力政策から出ている。それで、一番黒字を持っている失業保険財政に目をつけて、できるだけ国の助成でこれを引き出す、こういうことをねらったものだというふうに私どもは考えているわけであります。  したがいまして、このような雇用保険法というものについては、この何千枚の人、あるいは一万人以上の署名した人たちだけでなくて、単に出かせぎ労働者とかあるいは国有林労働者という特定の人だけではなく、これまで日本の民主主義の中でも、憲法の中でも、失業者生活を安定するという立場から、この失業保険制度を曲がりなりにもささえてきたこの成果を一挙にくつがえすものだというふうに考えているわけであります。  さて、私は第二の質問のところに入っていきたいと思います。  雇用情勢の認識の問題と、それから失業対策についての政府の基本姿勢の問題であります。  それはこの間大臣が、首相もそうですが、本会議で答弁をされていた、午前中からも答弁されていた中に、盛んに日本失業率が一・四%、一%台だ、諸外国に比べても低いほうだ、こういうことを言われているわけです。完全雇用に近い状態だというようなことまで本会議では答弁されていたようであります。はたしてそうなのか。私は大臣に、もうこういうことは言わないほうがいいのじゃないか。というのは、あなた御存じかどうか知りませんけれども、この一・四%というのは完全失業者ですね。一週間のうちに一時間も働かない、もっと正確にいいますと、こういう人ですよ。一週間に、就業が可能で、就業を希望し、求職活動をしたにもかかわらず、収入を伴う仕事に一時間以上就業し得なかった十五歳以上の人であります。   〔山口(敏)委員長代理退席、葉梨委員長代理着席〕 これはほんとうに完全失業者ですよ。この人の比率なんです。これは間違いないでしょうね。
  187. 鈴木新一郎

    ○鈴木説明員 そのとおりであります。
  188. 石母田達

    ○石母田委員 それで、国際比較をされますけれども、これも労働省から得た資料なんですが、それによりますと、これはみんな算定する基準が違うのですよ。たとえばアメリカでは十六歳以上ですし、イギリスでは職安に登録した人です。イギリスとかフランス。特にフランスなんというのは、イタリアなんかから出てくる大量の季節労働者が含まれてないという話ですし、それから西ドイツもこれは十四歳以上で週二十四時間ですか、そういうように基準が違うのですから、この比較というのはILOでもおそらく信用していないのです。それで、ここにも同盟の人の資料がありますけれども、この内容を見ましても、わが国失業統計は実際の失業状態を正確に反映しておらず、そのために外国との比較はできない、こういっているしろものなんです。ですから、こういうことをとらえて日本完全雇用に近いとか、諸外国よりも少ないということは、私は大臣としてはあまり見識のある答弁ではないというふうに考えているわけです。特に、これは名前はきょうは出しませんけれども、あなたたちがよく知っている労働省の幹部の人が、ある論文にこういうことを書いているわけです。失業率が低いからといって完全雇用などということにはならないのだ、日本の貧しい社会保障ということを考えれば、一週間に一時間も働かないでどうやって生きるか。むしろそういう半失業——そこからは論文にはないのだけれども、半失業とかそういう状態にいることのほうが問題なんだということを書かれているわけです。あなたたちのほう——個人の資格でしょうけれども……。そういう点からいっても、この一・四%の失業率ということをあまり大きく取り上げて、これで日本完全雇用に近いなどといって、失業問題はあまりやらなくてもいいのだ、むしろそういう雇用安定のほうが先なんだという言い方ば、私は独断に過ぎるのじゃないかと思いますけれども、この点についての大臣の御見解を聞きたいと思います。
  189. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 いま労働省のだれか役人という話が出たり、日経連の話なども出ますが、私は、やはりいろんな人々のそういう意見を日本という国がよく吸収しながら変化によく順応したところに、今日の経済の発展があろうと思うのです。よく石母田さん、大資本とおっしゃいますけれども、ここの中に、たとえば雇用促進移転者住宅というのがあるのです。これは私の町にもあるのです。あそこには大資本も何もありません。これは従来やっている事業を三つに今度ぴしっと区分いたしまして、そして、しかも今度は、事業の性格、趣旨から、財源は事業主のみ負担させまして、労使負担保険料と会計上明確に区分しているわけであります。こういうことからしまして、この三事業の助成は事業主に対して行なわれるけれども、その内容労働者に対する休業手当、有給教育訓練休暇に対する手当等、事業主労働者に対して行なった給付について助成するものでありまして、すなわちこれは労働者に助成するということになろうと私は思うのです。  それからいま失業の問題でございますけれども、これはこういう時代にそれぞれの国のそれぞれの特性というものをよく私は感じるのです。先ほどイギリスの話、アメリカの話が出ましたが、石油危機といわれたアメリカが、あなたのおっしゃるとおり五・二%の失業率、あるいは西ドイツが外人労働者三百万をかかえながら二・二%。こういうときに日本の労働組合、企業別組合というものも、終身雇用とかそういういろいろな特性などによりまして一・一%の一これはOECDでございます。外国の統計でございます。そういうものの中に、今度は、そうした労働者諸君が将来自分を訓練しながらすばらしい技能を持っていい収入を得るというふうな、さらにまたいままでなかった能力を開発する、こういうところに私たちのいまから先の地位の向上なり生活というのがあるんじゃなかろうか、こういうふうな考え方がこのたびの法案に含まれているということをあらためてひとつ御認識をいただいて、そしてまた、失業者の問題となりますと今日は完全雇用——学問的には三%以下は完全雇用とかといわれますが、一%でも出たらこれはたいへんなことであります。いわんや経済的なこういう大変動、オイルショック、こういうときでありますから、おそらく時間短縮あるいはまた残業手当の縮小等々で、いまは新人の求人の取り消しとかそういうものはありませんで、逆に前の月よりは今月、一・一%が一・四%ぐらいになって少し上がっておりますけれども、どういうことが起こるかわかりませんから、受けざらとして、ことしはひょっとすれば五万人ふえやせぬかというところでいろんな受けざらを考えながら、そして雇用保険制度ができるというと、さらにこういう手当てが厚くなるんじゃなかろうか、こういうつもりで実は皆さんに御審議をお願いしておるということも御理解いただきたいと思うのであります。
  190. 石母田達

    ○石母田委員 私は単純に質問しているのであって、そういう失業率を出す根拠の違いというものがあるわけですからね。そこの基礎が違えば単純に、正確に比較できない。ただそういうふうに大臣が本会議で言ったりここで言えば、聞く人は、そういうことを何も知らない人には、少ないんじゃないかというふうに考える人がありますから、その点は私は科学的に答えていただきたい、こういうことだけ言っているわけです。  私が聞きたいのはその次なんです。この研究会が報告を出したあるいは検討した時期というのは、言うまでもなく五月から十月ですね。ですから石油危機というものが叫ばれる前の時期だと思います。それ以後、いわゆる総需要抑制であるとか石油危機とかいういろんな雇用情勢の変化をもたらすような事態が次から次へと起きているわけです。現に操短やら時間外労働の打ち切りだとか、あるいはまた臨時季節労働者の首切りであるとか、雇用制限、レイオフ、そういうものが準備され、あるいはまたされているところがあるわけです。現にきょうの新聞で見ますと、これは私の横浜の日産なんですけれども、いよいよ月に十八日程度の就労制限を四月から行なうことを計画していると発表されておりますね。この前は二十七日、二十八日の二日間にわたって約一万一千人が一時帰休になった。もちろんいま自動車産業は特に自由化の問題その他問題がありますけれども、「このため、三月の賃金は少ない人で一万円、現場関係では三万円以上の減収となり、労働者はアルバイト探しをしたり、なかには退職する人もではじめています。」こういうふうに報道されているわけです。また企業倒産が十一月からずっとふえ始め、十二月——二月、こういうところで特に一千万円未満の企業や個人企業倒産件数が、全体の九二%を占めているという状況も出ているわけです。また、古河電工が来春卒の中、高生新規募集を中止するとか、あるいは松下電工の塩ビ工場が一部操業を停止するとか、こういう事態が次から次へと出て、今後このような事態がもっとひどくなるかもしれぬ。こういうことを考えた中で、私は、本会議大臣や首相が答弁をしているのは、失業率一・四%でこういう事態があっても十分吸収できるんだ、だからたいしたことはないんだというふうに答えられているように聞いたのですけれども、はたしてそうなのか。私から見るとそうではないのじゃないか。こういう見通しについてまだ、雇用対策本部を皆さんがつくられて、そうしてそれは対策としては発表してないけれども、いろいろな情報を集めて、こういうことも今後の雇用情勢の変化について検討しているという説明でありましたので、その内容について簡単にお知らせ願いたいというふうに思います。
  191. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 今回の雇用保険法案が有沢研究会の段階で昨年の五月以来検討して、その後において石油ショックのような問題が起こってきた、あるいは最近の情勢が出てきた。情勢の変化があって、この研究会で出した結論をもとにして、手続を経て提案をいたしております雇用保険法案は、情勢の変化に対応できないのではないか、こういう御趣旨かと思います。しかしながら、実は今回の新制度の検討に着手いたしました時点で、最初の段階で、日本経済が従来のような高度経済成長という事態が今後長続きするものではなくて、今後安定的な成長に向かうべき時期に差しかかっておることと同時に、先般の国際通貨調整問題であるとか、あるいは輸入の規制の問題とか、こういった事態、あるいは国内的な経済諸要因によって経済的に非常な不況に立ち至ることも十分予想される、そういう経済的な変化、あるいはそれが雇用失業情勢に反映してきて、雇用失業の面で大きな問題をかかえることは当然あり得べき問題であるとして、そういう問題に対処してなおかつ失業保障機能を十分発揮できるような失業対策の制度を考えるべきであろう、こういう議論が冒頭に行なわれて、その上で今回の制度の骨格を検討いたしたわけでございます。その検討の途中の時点で石油危機の問題が起こった。幸いなことに昨年の石油問題が起こりまして、ごく最近までは、当初予想されておりましたよりは雇用面の影響は比較的軽微であったかと思いますが、研究会の段階で私どもが考えておりましたように、今後こういう経済情勢の中で雇用失業の面にも相当な影響が出ることも私ども当然予想しながら対策を考えていきたいということで、実は先ほど大臣も申し上げましたように、失業者の今後の発生につきましては、一昨年の通貨調整の際と大体同程度で、今後五万人増ぐらいの見込みを立てまして、失業保険制度なり職業転換給付制度の中で十分吸収し得るような体制を整えておるわけでございます。と申しましても、今後各地域、各産業の面でそういった事態が発生します際には、十分情報網を発動いたしまして、的確に事態を把握して迅速にその対策に当たる、こういうことでいろいろ施策を検討いたしておりますが、かりに五万人出ましてもたいしたことはないということを申し上げた事実は、私どもございません。たいへんなことだと思っております。そういった事態がもしかりにも発生したならば、それは早急に対策を講じて、再就職なりその人たち生活の安定をはかる策を講ずべく、私どもは鋭意努力をしてまいるつもりでおるわけでございます。
  192. 石母田達

    ○石母田委員 その対策一つに、雇用調整措置のための交付金八十億円が出されておると思いますが、これも積算は五万人くらいの程度なんですね。
  193. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 雇用調整措置は、雇用保険法が成立いたしました暁に、来年度冒頭から発足いたしますので、今回の措置には含まれておりません。
  194. 石母田達

    ○石母田委員 そこで今度の中で、これはいままで再雇用約款つき解雇というのですか一時解雇ですね、これにも失業保険で給付したことがあるというふうに聞いておりますけれども、ありますか。
  195. 関英夫

    ○関説明員 昭和四十年のころ一時解雇が行なわれまして、当時通達を出したことが新聞にも報道されております。それは、要するに再雇用を約した一時解雇については、その実態がほんとうの意味で解雇であるのか、それともある意味で擬装なのか非常に問題があるわけでございます。そこで、失業保険の取り扱いの上では、実態が真に解雇である場合に限って離職として取り扱われる。それからそのような離職者に対しては、安定所は職業紹介を行ない、正当な理由がなくこれを拒んだ場合には給付制限をするというような、現行失業保険法上の当然の取り扱いをすべきだということを念のために通達した、こういうものでございます。
  196. 石母田達

    ○石母田委員 そういう点では一時解雇の場合も、たてまえとしてはそういう職業紹介を行なうという中でふるい落とすけれども、この通達で一応対象にはしたわけですね。今度の場合は、一時契約解雇者というか、その一時解雇者にも休業補償を六〇%会社が払う、その半分を出すということでしょう。イエスかノーか言ってください。
  197. 関英夫

    ○関説明員 今度の雇用改善事業の中で考えておりますのは、解雇でなくて、身分はそのまま継続しつつ工場を休業する、操業をやめる、そうして従業員身分を保有しつつ休ませる。休ませた場合に、休業手当を事業主が払う、それは非常に経済的不況の場合に、支払い原資が乏しくて事業主としてはたいへんな負担になる。そうすると、その負担に耐えられない企業は、休まして休業手当を払っているわけにいかぬから、結局一時解雇にしても首を切らざるを得ない。首を切るということは、先ほど申しましたように、実態が真に一時離職であるならば身分が切れるわけですから、労働者にとっても身分の継続の利益が失われる。そういうことがないように、でき得るならば身分を継続したまま休業で一時しのいでいただいて、景気が回復したらまた操業を開始していただく、こういうことに資するために、身分を継続したまま休業した場合の支払つた休業手当を補助しよう、補てんしよう、こういう性質のものでございます。一時解雇の場合の給付とは違います。
  198. 石母田達

    ○石母田委員 そうすると、離職票はなくてくれるわけですか。そういうことですか。
  199. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 その点どうも石母田先生は、失業給付雇用調整給付を混同しておられるような感じがします。一時解雇した場合は当然、失業給付として労使負担する保険料から失業給付給付されるわけです。それで雇用調整の場合は、できるだけ失業をさせないようにかかえ込んでもらおう、かかえ込むについて休業手当を支払えないならば、休業手当支払いの原資を二分の一なり、中小企業は三分の二補助しよう、そして失業を出さないようにしてもらおう、こういう措置なのです。
  200. 石母田達

    ○石母田委員 そうすると、これは一時帰休者ということですか。よく言う帰休者とはまた違うのですか。
  201. 関英夫

    ○関説明員 一時帰休ということばが非常にいろいろな意味に使われている場合がございまして、従来一時帰休といいました場合には、おそらく一時解雇の場合、身分を継続しない場合が多かったろうと思います。ただ、厳密にそう定義づけられて使われておるかといいますと、たとえば二日二日工場の操業をとめて、従業員身分は継続したままの休業の場合でも一時帰休という場合もございまして、世に使われている一時帰休ということばは、身分の関係で見ますと、継続している場合も身分が切れた場合も使う例がありまして、非常にあいまいに使われている、こういったのが実情だと思います。
  202. 石母田達

    ○石母田委員 そうすると、そういう雇用調整措置ということで、そうした人たちにも休業補償の半分は交付する、こういう内容ですね。私はこういう点について、うしろのほうではいいと言う方がありますが、これは自民党の方です。確かに日経連が、皆さん方のお友だちの日経連が、一月二十八日に「雇用保険制度案に関する意見」としてあなたたちに出している。労働省などに意見書を出しましたね。これは記憶に新たでしょう。その中で「当面する経済情勢にかんがみ、原案にある雇用調整交付金制度は、早期に実施されることを要望する。」といったことは、皆さんも記憶しておると思います。こういう早期に実施されることを要望したことを実施されたということになるわけですね。  さて、先ほど大臣が言った中で、失業の問題について、日本の場合に半失業といいますか、つまり不安定な雇用が非常に増大してきている。たとえばパートであるとか、あるいは臨時工、社外工、下請工とか日雇いとか、いろいろありますね。そういうものがこのデータを見ましても非常に増大しているわけです。ここにありますけれども、パートタイマーは三十八年に七十二万人だったものが百七十万人ですから、約百万人四十八年までにふえている。家内労働者も百四十三万から百八十四万になっている。あるいは季節労働者、臨時労働者、いずれもふえているわけです。こういう人たちの実態がどういうものであるかということは、私はこの間三月九日でしたか、未組織労働者といわれる人たちがどんなに低い賃金水準であり、あるいはまた社会保障でも非常に恵まれない状況に置かれている。これは大臣も認められたとおりですけれども、この中で特に若年労働者あるいは中高年齢層あるいは出かせぎを含む季節労務者という人たちが、この不安定雇用者の中でも大きな部分を占め、それがいろいろな受給内容なんか見ましても非常に不安定な状態に置かれている。これに対するわれわれの適切な対策なしには、ほんとう失業の予防ということにならないのではないか、雇用の安定ということにならないのではないか、こういう点で、政府の重要な施策一つとしても、この不安定雇用労働者といいますか、そういう人たちに対する対策が非常に重要であるというふうに私は考えておりますけれども、どうですか。これは大臣に……。
  203. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 いま石母田先生おっしゃいますようないわゆる不安定雇用と申しますか、その中の一つとしてパートタイマーとか臨時労働者とか、そういうたぐいの御指摘でございます。  全体として見ますと、臨時労働者の数は確かにふえておりますが、その中で男子労働者は横ばい、全体の割合として減ってきております。逐年減少の傾向を示しております。その反面、パートタイマーとか家内労働者は、確かに実数もふえてきております。こういう実態をどう判断するかという問題があるのではなかろうかと思いますが、パートタイマーは、最近いわゆる家庭の主婦等が追加収入を得るために何らかの仕事を、自分の都合でパートでしか働かない、いい口があれば働くけれども、いい口がなければ働かないという人がかなりふえてきている。そういう関係で、いわゆる不安定雇用という形でパートタイマーなり家内的な作業がふえているのかどうかという点は、非常に私は問題があるのではないか。  一般的な従来からの日雇い、臨時労働者、社外工、こういった関係は決してふえてまいっておりません。逆に減ってきております。いわゆる常用化の促進あるいはいわゆる社外工的なものが本工に繰り入れられるとか、そういった措置がむしろ進められて、正常な雇用形態に逐次進められてきておる。もちろんいろいろ問題はございますけれども、傾向としてはそういう傾向になってきております。と同時に、下請工については労働条件もかなり改善が進められてきている。そういう点から考えますと、いま御指摘のありましたような、パートタイマーとか臨時労働者の数が全体としてふえているから不安定雇用、半失業がふえているというような御指摘は、私は事実に当たらないのではないか、かように考えております。
  204. 石母田達

    ○石母田委員 これはまたずいぶん事実に対してあれですね。判断するのはあなたたちが判断してもいいのだけれども、私が読んだのはあなたたちの資料を読んだのだから。数がふえていることは事実でしょう。その点について、失業の予防とかあるいは失業対策としてこういう施策は重要であるというなら、そうであると言ってください。これは不安定雇用がふえていると考えないからその施策は重要でないというなら、そうでないと言ってくださいよ。時間を、協力してくれ、三十分縮めてくれ、この次三十分してくれということだけれども、これはとてもできないのだな。もう少し質問に対して、そうであるのかないのか。説明が長過ぎて、あなたたちの判断が入るからね。私の言ったことになるべくイエス、ノーでやってくださいよ。  それで、パートだとか、家内労働だとか、季節労働、臨時工だとかがふえているでしょう。こういう人たちに対する中で、たとえば出かせぎ労働者一つ見ましても、はがきを見ても署名用紙を見ても、この雇用保険について全部反対しております。この人たち生活実態というものがどんなに深刻な打撃を受けるかということは、先ほど十分理解できるというふうに言われておりますけれども、こういう人たち給付を大幅に削るとか、あるいは資格を制限する。月十四日通算六カ月ということによって、いままで四月十五日に帰るのには十一月十五日でよかったものが、十月十五日、一カ月前に来なければならぬ。こういうことで、いわゆる種まきだとかあるいは刈り入れをしようとすれば、今度は資格が取れなくなるんじゃないか、こういう不安が今度の雇用保険法で非常に増大しているわけです。こういう人たちがこういうはがきをよこしているわけなんです。そういう意味で出かせぎ労働者に深刻な打撃を与える。こういう問題について一体政府はどういうふうに考えているのかということを、私は労働大臣に簡潔に答えてもらいたいと思うのです。
  205. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 給付と受ける者の掛け金との不均衡ということが一つ考えられますし、もう一つは、言うちゃ悪いけれども、自分の地方でもそうですが、毎月毎月だらだらともらいに行っている。それを一発一時金でもらう。地方でも雇用需給というのは逼迫しておりますから、どこにでも働けるというところにメリットがあるのではなかろうか。そしてまた、今度は給付の率もよくなりますし、そういうことで、従来の実績からあまり下がらないところに三十日分がいくということに一つの大きな変化があるのではないかと私は思っております。
  206. 石母田達

    ○石母田委員 そうすると、これは、農林水産の人たちだけを特例扱いにする、保険料も高いということは、今後失業率が高いところの産業というものについてはこういうものを普及していくという考えなんですか。
  207. 関英夫

    ○関説明員 保険料において、短期特例被保険者を多数雇用する産業で現在考えておりますのは、農林水産業、建設業、清酒製造業、その他は労働大臣が指定ということになっておりますが、これは短期特例給付を受けるような短期特例被保険者を多数雇用する産業に、その短期一時金を少しでもまかなうために、いわば付加的な保険料として保険料全体を千分の十八に引き上げて課しているものでございます。したがいまして、今後ほかの産業との関係でいろいろ失業率が違ってくる場合があろうかと思います。石炭産業はエネルギー革命の中でいままで失業率が高かった。今度はまた別の意味で別の産業失業率が高くなってくる場合があろうかと思いますが、そういった、本来この雇用保険が前提としている、保険でめんどうを見るべき失業経済情勢や何かでたまたま多くなったからといって、保険料に差をつける考え方はございません。それは当然雇用保険としてめんどうを見るべき失業でありますから、そういう差を今後つけていくという考え方はございません。
  208. 石母田達

    ○石母田委員 こういう農林の出かせぎ労働者というのはやはり雇用労働者ですよ。雇用労働者としてはほかの産業とも平等なわけですね。ただ、特殊性があるということでその保険料を高くする、メリットを与えるということは、農林水産だから与える、第一次産業だから与えるということになるわけだけれども、こういうことは、先ほど川俣議員も言っていたけれども、所定の給付日数に入れないで、特例として三十日というやつを別にやってあるわけでしょう。そういう中で保険料を農林水産だけこういうふうにやる、メリットを与えるということはどういうことなんですか。
  209. 関英夫

    ○関説明員 短期被保険者につきましては、毎年きまって就業と不就業を繰り返す、こういうことがございます。したがいまして、他の一般産業におきます偶発的な失業というものに対する給付と違いまして、毎年きまって給付が行なわれる。これにつきまして従来種々問題がありました。しかし、その人たち生活実態を考えて、今度は特例一時金という特例給付制度をつくったわけでございます。これは普通一般の偶発的な保険事故である失業と違います特例の給付でございます。したがいまして、その特例給付を幾らかでもまかなうために、付加保険料として特にそういう短期雇用保険者をたくさん雇う産業を対象として千分の十八というものを考えたわけでございます。第一次産業である農林水産業は、その産業の性質上季節性が、ございまして、短期特例被保険者を多数雇用する、それだからたまたま対象になったわけであります。建設業も同じように、その業態の形態からいたしまして短期雇用保険者を多数雇うような産業である。したがってこれも対象にする。清酒製造業も同じということでございまして、他にも短期雇用保険者を多数雇う産業があればこの千分の十八の保険料率を課する、こういう考え方でございます。農林水産だから課するというわけではございません。農林水産業はたまたま、季節性を有し、短期雇用保険者を多数雇う産業であるから特別の保険料を課する、こういうことでございます。
  210. 石母田達

    ○石母田委員 なかなか納得できないけれども、さっきの一時帰休制のほうは、企業のほうに対しては——帰休ということばはあなたたちいやがるかもしれないけれども、そういう人たちに対して休業補償の半分は交付金で出すということ、あるいはかっては、そういう一時解雇というものについてもちょっと前に出したという話も聞いております。そういうようなことと比べると、出かせぎの人たちに対してこういう特例措置によって三分の一の給付制限を行なう、そして資格制限もまたきびしくすることによって、結局農民切り捨て、つまり農民を、出かせぎ労働者をこの保険から締めつけていくということについて、絶対これは許すことはできないというふうに私は考えているわけです。特に資格取得制限については、昭和四十四年に出されたときには、全面適用の拡大と合わせて出されたわけでしょう。そして全面適用の問題は、もちろん早めるということになったけれども、あのときば農林水産も含んでの全面適用だったと思いますね。ここに四十四年の修正案がありまして、附帯決議もありますけれども、この中にはそういうふうに書いてあるわけです。私は、この全面適用の問題は、きょうは時間がないから、あとでまたいろいろお伺いしたいと思いますけれども、そうした実際の実施状況から見てもなかなかたいへんなことだし、それからいますぐこれを解決するというふうな体制がとられてない。そういう中でこれと一緒に出されたいわゆる資格取得制限だけのほうが先にどんどん先行してやられておるというようなことについては、これまた私は納得できない。もちろん、この問題については共産党のみが反対したということでありますけれども、そういう点については、出かせぎのこの二つの特に大きな問題については私は絶対に容認することはできない、こういうことを述べておきたいと思います。  それで、もう一つの女子労働者若年労働者の問題ですけれども、この中で、資料をいろいろ見ますと離退職が非常に多くて、新中卒で三年以内にやめる人が半分以上だというようなことが出ております。そういう中で、男子で見ると、一番多いのが事業所が安定できないとか、次に仕事が向いてないとか、労働条件に不満であるとか、こういうものを合わせると五七・一%に及ぶわけです。それから、このほかに、よりよい職場があるとか、上役と合わないとかということがあります。またこれに比べると、女子労働者の場合は事情が違って、家の都合、個人的な事情が約三〇%で一番多くて、次に事業所での将来性、労働条件の不満、こういうものが多いわけです。こういうことは、その内容を見ますと、やはりそこの、つとめているところの劣悪な労働条件といいますか、職場環境というものが離退職の大きな原因になっているのです。それもそのはずで、いろいろな資料を見ましてもそのことが如実に出ているわけです。これは先ほど言われたように、臨時工とかパートとかあるいはまた中小零細企業というような比較的に不安定な雇用労働者の多いところ、そういうところはどうしても劣悪な労働条件にあるわけです。こういうところからやめる。   〔葉梨委員長代理退席、委員長着席〕 そしてまたいわゆる給付を切り下げて、そうしてそこへ結局戻っていかざるを得なくなってくる。これではまた同じことだと思うのですね。そうではなくて、その戻るべきいわゆる職場環境なり労働条件というもの、ここの根本的な改善なしには、こういう人たちのいわゆる離退職というものはなかなかとまらないわけですよ。それを給付を大幅に切り下げていく、そしてこういう人たちをまた不安定な再雇用の中に追い込むということの繰り返しでは、真に私は失業の予防、失業対策にはならないという点で、今回この女子労働者の、特に就職支度金の廃止とかあるいは若年労働者が大幅に年齢区分によって給付の切り下げを受ける、こういうことについて、私は、これは失業対策というよりもむしろ失業を多くする、あるいは不安定雇用をますます多くする、こういう結果になりはしないか。こういう点についての大臣の答弁を私はお願いしたいと思います。
  211. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 確かに御指摘のように、新中卒・高卒若年労働者の離転職率がかなり高い。御指摘のとおりでございます。中卒につきましては三年間で約半数が転職をする。これは従来のいわゆる終身雇用的な考え方が最近の労働市場の状況、労働条件の向上を反映いたしておりまして、中卒、高卒についていいますといわゆる金の卵といわれるような状況でございまして、一般的には大企業中小企業賃金格差が最近次第に縮小してまいりましたけれども、依然としてございます。その反面、若年労働力、新規学卒者につきましては、中小企業と大企業の格差がほとんどなくなってきておりまして、むしろ逆にこういった若年労働力、新規労働力を採用するためには大企業以上に賃金、労働条件をよくしなければ人が来ない、こういうこともありまして、この離転職がふえてきている、いわゆる西欧的なタイプに移ってまいりまして、労働移動が非常に活発になってきている。と申しますのは、確かに労働条件等に対する不満もございますけれども、どこへいってもいま程度のものは職場が確保できるということが一つの大きな理由になっております。そういう意味で、私は離転職が多いということは決して必ずしも悪いこととのみきめつけるわけにはまいらないかと思います。と同時に、こういった離転職をする人の大部分が上向移動を結果的にいたしております。こういう人たちがかりに新しいよりよい職場を求めて離職をし、転職するまでの期間、これは平均的に見ますと大体四十五日くらいでございます。今回の雇用保険でこういった従来の実績を踏まえまして、若年あるいは若年の女子の保険の給付の日数を従来の一律的な考え方から、これを実態に即してこういう人たちの再就職に必要な期間を最小限に押えるという形で、その反面より就職の困難な人たちに手厚くするという、こういう基本的な考え方に立って立て方を新しくじたわけでございますが、このことがこういった新規若年労働力の労働条件を悪くする、あるいは不安定雇用を増大させるということには私は決してつながらない、かように考えているわけであります。
  212. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 いま局長も申されましたように、昔は一ぺん就職したら絶対離れなかった。なかなかむずかしい時代ですから。しかし、いまの若手は、一番ありがたいことは職業の選択の自由、そしていいものを見つけていく、そいつにファイトを燃やす、それから嗜好が非常に多くなりましたから、自分の趣味にあるいは自分の性格に合わせて選択できるというところにありまして、私はそういう機会にいいところを見つけていくファイト、そしてその訓練、そういうところにお互いのほうがお手伝いをするというところに一つのメリットがあろう、こう思っております。
  213. 石母田達

    ○石母田委員 いま職業選択の自由があるからいいんだ、こういうふうにいわれますけれども、ファイトがあるというだけではこの職業選択はできないのです。選択する場所がそういう非常に劣悪な条件のところがある。これを局長、あなたが来てないときに、この未組織労働者や何かで大臣答弁でぼくがやっておるのだから。あなたはそれで自分の都合のいいところで小さいところしか見ていないからわからないけれども。そういう問題の中で、私は、では、一つ失業給付がきちんと完全に保障されていなければ、これは選択の自由が保障されないでしょう。たとえば失業給付はあと一カ月しかないということになれば、あせって、よりいいところというよりも、どこでもいいから行かざるを得なくなっちゃうのですよ。だから私たち失業者生活の安定ということは、職業選択の自由をやはり保障する一つの物質的な保障なんです。だからわれわれは失業者生活を安定する、そこを保障しておかないと、その人がよりいいところを望むという職業選択の自由ができないのです。だからこの憲法で職業選択の自由ということは、あわせて失業保険制度保障していく、これなんです。ところが、今回の雇用保険法案によりますと、その目的の中で、いままでの「生活の安定を図るとともに、」——その「ともに」のあとが重要なんです、「求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、」雇用構造改善能力開発、云々とここにあるでしょう。この「求職活動を容易にする等」、つまり一つの求職給付にするということですね。これは私は職業選択の自由ということから見ると、非常に大きな制限になる。というのは、これまで受給制限つまりわれわれのことばで言うと締めつけというものが行なわれているわけです。  この受給制限については、どんなにひどいものであるかということは、ここに一つの実例として出されている問題の中に——これは昭和四十一年の十月二十二日に飯盛秋一さんという元石原産業四日市工場のチタン生産課勤務の五十五歳の方が自殺をされましたけれども、そのされた原因が、職業安定所に行くことが苦痛で、そうしてなくなられた。そのことを奥さんはこう言っているわけですね。初め東亜紡泊工場に仕事があったのですが、朝の五時からで、私は残業なので、とてもこれはできないというのでやめた、ところが主人は安定所で、年をとっているのにぜいたくを言うな、ほんとうに働く気があるのかとさんざんいやみを言われた、そのまま通うたびに、いろいろ書類の書き方や指示事項の説明を受けてもわからず聞き直すと、忙しいのに同じことを言うな、何度聞くのだということを言われた。そして安定所で、自分でも職を探せ、見つからないのは努力しないからだろうと言われた。そして失業保険よりも何とかして職につこうと一生懸命職探しをやったんだ。ところが中高年層ですから、なかなかない。そこで私が——というのは奥さんが見かねて、何もあわてて働かぬでも何とか生活をするからと言ったのだけれども、安定所へ行くと、仕事が見つかったかと言われる、そしてわしが怠けているように思われるからつらいということで、次の出頭日の二十七日に行くことを非常に苦痛にして、二十二日に自殺をした、こういう悲惨な事件が起きたわけなんです。これほどひどくなくても、職業安定所に行くのがとにかく警察よりもこわいというようなことが、出かせぎの労働者の中からも痛切に出ているわけなんです。これはなぜかというと、いわゆる「失業保険金受給資格者の心得」というのですか、手引きがあります。これで見ますと、この失業保険をもらう失業者というのは三つの条件がなければだめなんだ、再び就職しようとする積極的な意思、気持ち、心がまえがあること、いつでも就職できるような能力があること、熱心に職を探しているが適当な仕事先がないため就職できないということで、たとえばこういう相談の中で紹介、あっせんの困難な職種、賃金、勤務時間等を言い張って変えない方や、求職態度のあいまいな方などは就職の意思なしと見なされ、保険金を受けることができません、こうなっています。そしてどういう人が受けられないかということの幾つかの例があがっています。結婚、結婚準備のため退職し、家庭に入る人、産前産後の人、乳幼児のある人で安定所が妥当と認める保育者のいない人、家事、家業に従事しなければならない人、老齢、病気、けがのため働くことが困難な人、病人の看護など家庭の都合で働きに出られない人、あるいは就職あっせんの困難な職種、賃金勤労時間、就職地域などを固執する人、こういう人たちについて、あなたたちはさらに通達の中で——これは昭和三十九年の八月二十八日の「失業保険給付の適正化について」ということで、この通達に基づいてこういうものをつくられたのでしょう。そういったいろいろの指示をしているわけです。そしてこういうことを相手が立証して、そういう推定をくつがえすような心証が得られない限り受給資格の決定を行ないがたいということで非常に受給制限、いわゆる締めつけを強化してきたわけです。そういうところからこうした悲劇が起こり、職安の受給制限、締めつけというものが度を過ぎてどんどんどんどん強化されていく、その中でこうした悲劇が出ているわけです。今回のこの目的条項の変更の中でこうしたことをますます——求職のための求職をしておる人、こういうことに給付が与えられるのだということを法制的にきめるのだ、こういうふうに私は考えておりますけれども、この点はどうですか。
  214. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 ただいまの点は現行失業保険法でも全く同じでございます。失業の定義、それから失業保険金を受給するための手続要件は、全く新しい雇用保険法案と同じ体系をとっておるわけでございます。過去におきまして、四日市で定年退職後、安定所の取り扱いを苦にして自殺をされたという話でございますが、万が一にもそういうことの原因が安定所にあるといたしますならば申しわけないことでございますが、私どもは安定所が求職者、こういった失業者人たちほんとうにたよりにしていただけるような、明るい親切な安定所になるように私ども精一ぱい努力をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  215. 石母田達

    ○石母田委員 大臣に聞かないとわからないんです。いまの問題で同じことだと言っているのだけれども、じゃ何でこの第一条の目的をこういうもうに変える必要があるかというふうに私は言いたいのです。いままで被保険者失業した場合に失業保険金を支給してその生活安定をはかることを目的とする——これしがなかったんですよ。そして今度の目的条項が変わる、つまり根本的、抜本的に変わるという中の一つのおもな内容として、現行法の第一条の目的が変更する、その一つは新しく雇用対策事業が加わったということ、これは先ほど言いました。もう一つの大きな変更というのは、「労働者生活の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、」ということがある。あなたたちはいままでやっていたと言う。確かにそうなんだ。締めつけてやっていた。これを今度は第一条の目的の中にはっきりと法的にもうたっておる。こういうことがこの目的変更の大きな内容だと私は思うのですけれども、いままでと同じだったらこれは削りなさいよ、どうなんですか。
  216. 遠藤政夫

    遠藤(政)政府委員 第一条の定義で失業中の職業の安定、生活の安定ということをうたわれております。同時に失業の定義は、労働の意思と能力を有する者、失業保険金を受けるためには安定所に求職の登録をしなければならない、こういうことが現行法で規定されております。いま御指摘になりました失業者失業中の生活安定、失業しておるということ、失業者であるということは、労働の意思と能力があって、求職申し込みをして一日も早く再就職をするということが、現行失業保険法でも当然の前提要件になっております。そのことが明文上明らかにされております。そのことを集約して目的に掲げたわけでございます。  雇用改善事業等事業につきましては先ほどから御指摘がございますけれども、従来労働保険特別会計の失業保険勘定で労使保険料でまかなっておったことについて、いろいろ御批判がございました。事業の性格としても不明確である。それを今回の保険法案では新しく事業主の全額負担による事業として、これを新しい雇用保険法失業保障機能に対する付帯事業として実施することにいたしたわけでございまして、いままでの問題点を明確にすることによって今後積極的な施策として拡充していくことにいたしておるわけでございますので、従来石母田先生がけしからぬけしからぬと御指摘があったのを御指摘の線に沿って改革したということでございますので、十分御理解をいただきたいと思います。
  217. 石母田達

    ○石母田委員 大臣に聞かないとだめなんだ。局長はああいう答弁をしてごまかそうとしておるから。それならなぜこれを入れる必要があるかということなんです。やはり雇用保険法案というふうにあなたたちが名前を変えたという中には、先ほど言ったように雇用対策という事業を加えたというだけではなくて、いままでは失業者生活安定をはかるということを目的とする、それしか書いてなかったものを、さらにこれは求職給付なんだ、名前も変わっているでしょう。いままでこういう手引きだとか通達でやってきたところを、今度は第一条の目的としても法的にもきちんと書くということですね。それをいままでと同じだとか、やっていたことをただ書いただけだということですが、それだったら変えなくてもいいんだけれども、やはり法的に第一条を変更してこれを書くということは、いままでないものを書くわけですからやはり大きな変更なんですよ。そしていままでやったことを今度は大っぴらに堂々と今度はやっていくということなんです。ですからこういうことになりますと、いわゆる不安定就労地域で、劣悪な労働条件、労働環境のところはまだまだ多い。これを大きく改善しなければならぬという状況大臣も認めるとおりなんです。そういうところからいろいろな失業者とか離退者が出てくる。それに対して積極的に働く意思のある者、あるいは子供があればちゃんと保護者がいて、じいちゃん、ばあちゃんがちゃんとやれるようになっておるか、その証明書を持ってこなければだめなんだ。こういうことがどんどん職安でやられておるわけです。こういう中でどんどん締めつけられることが、今度は法の名のもとにどんどん行なわれていく。つまりそこには当然いわゆる強制紹介というものが出されてくる、あるいはそれに対してあまり低い賃金だから行かないとか、あるいは他の職場というものをここに書いてあるように固執することによって、これは結局受給されないということになったらたいへんだから行かざるを得ないとか、そういう問題が出てくるわけなんです。こういうことが法の名において強制的に行なわれるわけですから、私は不安定就労者がたくさんいる場所へ、そこへ強制紹介して、結局低賃金や劣悪な条件でもそこに入らざるを得ない。つまり、もう職業選択の自由なんといったって、そこにはそういうことで自由がないわけだ。そういう場にいわゆる職安がなり、またそれの一つの大きなよりどころとしてこの法が、こういう目的を変えることによってなるのだ、こういうふうに私どもは理解しているわけなんだ。そういう点で私は、その目的の変更がこれはたいしたことないんだ、いままでと同じなんだという局長の答弁はこれは全然違うと思う。そういう点についてもう一度大臣の答弁を願いたいと思います。
  218. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 生きることはつらいことです。やはり意思と行動力、その中に私たちは働いていくわけでして、従来やってきたことをさらに内容を充実して保護し、そしてまた雇用の拡大をはかるというところが今度の法案のねらいでございまして、ひとつだんだんの御説明の中に御理解をいただきたいと思います。
  219. 石母田達

    ○石母田委員 きょうはそういう意味で大臣の日程で、私あと二十五分残っているというので、これはこの次にとっておくということで、私はここで残った時間はあとへ保留したいと思います。  しかし、いままで論戦の中でもはっきりいたしましたように、雇用保険法の問題については各省、各界の意見を聞いたというけれども、やはりここに積まれた人々の国民の声というものは反映されてない。むしろそういう大資本中心とする財界や大資本要請あるいはそれにこたえる内容のものであり、またいま大きな批判を受け、変更を余儀なくされている日本列島改造計画を推進させるものだというふうに思っております。そして私は、こういう雇用保険でなく、むしろ失業者失業対策を根本的に改善する、あるいは雇用を安定させるという点で、いまの失業保険制度賃金の八〇%に引き上げるとか、あるいはまた給付日数を大幅にふやすとか、保険料は国と資本家が負担を三対七にするとか、そうした問題、あるいはまた雇用保障の問題についても大量解雇を法で制限するとか、あるいはまたいろいろの雇用保障についての職業訓練の問題の拡充も含めてやっていかなくちゃならぬというふうに、むしろそれが先決であるというふうに私は強調いたしまして、私の質問を終わります。
  220. 野原正勝

    野原委員長 次回につきましては、まず明三日午前十一時より理事会、また明後日四日木曜日、午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時十四分散会