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1974-02-26 第72回国会 衆議院 社会労働委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月二十六日(火曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 大野  明君 理事 斉藤滋与史君    理事 葉梨 信行君 理事 山口 敏夫君    理事 山下 徳夫君 理事 川俣健二郎君    理事 石母田 達君       伊東 正義君    加藤 紘一君       瓦   力君    住  栄作君       田川 誠一君    田中  覚君       高橋 千寿君    戸井田三郎君       登坂重次郎君    粟山 ひで君       大原  亨君    金子 みつ君       田口 一男君    田邊  誠君       村山 富市君    森井 忠良君       山本 政弘君    寺前  巖君       大橋 敏雄君    坂口  力君       小宮 武喜君  出席国務大臣         労 働 大 臣 長谷川 峻君  出席政府委員         総理府人事局長 皆川 迪夫君         郵政省人事局長 北 雄一郎君         労働大臣官房長 北川 俊夫君         労働省労政局長 道正 邦彦君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         労働省職業安定         局失業対策部長 佐藤 嘉一君         労働省職業訓練         局長      久野木行美君  委員外出席者         公安調査庁総務         部長      竹内  弘君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 二月二十日  辞任         補欠選任   瓦   力君     鴨田 宗一君   大橋 敏雄君     矢野 絢也君 同日  辞任         補欠選任   鴨田 宗一君     瓦   力君   矢野 絢也君     大橋 敏雄君 同月二十一日  辞任         補欠選任   大原  亨君     阿部 昭吾君 同日  辞任         補欠選任   阿部 昭吾君     大原  亨君 同月二十二日  辞任         補欠選任   坂口  力君     矢野 絢也君 同月二十三日  辞任         補欠選任   矢野 絢也君     坂口  力君 同月二十五日  辞任         補欠選任   小林 正巳君     久野 忠治君 同日  辞任         補欠選任   久野 忠治君     小林 正巳君     ————————————— 二月二十一日  児童手当法等の一部を改正する法律案内閣提  出第五四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 野原正勝

    野原委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森井忠良君。
  3. 森井忠良

    森井委員 私は、まず当面をいたします春闘についてお伺いしておきたいと思います。  一口に申し上げまして、三月一日のストが近づいてまいりました。率直に申し上げまして、ようやく政府をはじめといたしましてもろもろ関係者動き出した、こういう感じを持つわけであります。言うなれば、三月一日という設定がなかったら、田中総理はもちろんのこと、長谷川労働大臣もまだまだ腰が重かったんじゃないか。やはりストライキ設定というものがあって、それを回避をしようというそれぞれの動きが実を結びつつある、こういう現状認識に立たざるを得ないわけであります。  その最たるものは二十一日の総理関係閣僚さらには労働団体との第一回の会談という形になってまいりました。二回目は昨日の、長谷川労働大臣をはじめといたします各閣僚労働団体との会談であると思うわけであります。これらはいろいろスケジュール闘争だとかなんとかいわれますけれども、何といいましても、公労協を中心にいたしまして三月一日という大きな設定をいたしまして、これまでに話し合おうじゃないか、要求はこれこれだということを明らかにした、ここに一つの節があると私は思うわけであります。したがいまして、三月一日までに問題の解決がどう進展するか、すべての国民が関心を持っております春闘につきまして一つの占いになるような気がしてなりません。  そこでまずお伺いをいたしたいのは、二十一日の総理と四団体との会談成果欠陥並びに昨日の長谷川労働大臣労働団体、もしくは春闘共闘委員会との話し合いの同じくこの成果欠陥、簡単でよろしゅうございますから、まずお伺いをいたしたい。
  4. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 それぞれ解釈はおありだと思います。しかし私は、昨年の石油危機が起こってからもそうですけれども、ああいう大きな国の大変化になるときは、財界との懇談会、さらにまたマスコミとの懇談会労働団体との懇談会どもやるべきじゃなかろうかと実は思いもし、提案もしたことでございました。しかし、御承知のとおり年末の予算編成等々ございまして、それができませんでした。そこで、このたび財界との懇談会マスコミとの懇談会、そして多少時間がずれましたけれども労働団体総理並びに各、ほとんど全閣僚が出ての懇談の場を設けたわけであります。  それぞれの方々が主張される問題は、私が予算委員会の席上等々でいつでもお伺いし、あるいは社労委員会でもお伺いしていることでございます。それをまた労働団体方々立場からも論ぜられているという解釈をしておりまして、やはりそういう意味と、もう一つ先生からもお話の出ました、三月一日のストライキという固有名詞が出ましたが、私はそれをただ回避するという意味ではありませんで——これがお願いできれば一番いいんです。そういうことからしまして、円満な、ああいうストライキのないことをお願いしながら、私はこういう大事なときですから、第二の国難とさえいわれるときですから、労使の間の平和なうちに問題が解決していく。そうして、お互い二十四、五年間持ち続けた民主主義のやり方というものをじょうずに持っていってもらって、混乱なしに、しかも物価あるいは人心のいらいらというようなことのないようなことをお願い申し上げたい。いわんや三月一日は私たちの子供の入学試験のときでございますから、けさも私は文部大臣に、ぜひひとつ入学試験の支障のないようにお願い申し上げますということをお願いしたようなかっこうでございまして、そういう良識のある姿勢というものが全部にとられることを労働大臣としてはお願い申し上げ、根回し等をやっているつもりでございます。
  5. 森井忠良

    森井委員 今度の国民春闘の、まあ昨年もそうでしたけれども、大きな特徴は、一つは当然企業内要求というものがございます。賃上げあるいは週休二日制、時間短縮、そういった企業内要求というものもありますが、同時にもう一つ要求として、いわゆる国民生活を守る、これをしてくれなければ——たとえばインフレに弱い層に対して何とかこれをカバーするような政策を打ち出してほしい。あるいは具体的に労働大臣次元で申し上げますならば、失対事業で働いておられる労働者皆さん賃金を上げてくれ。これはある意味労働大臣使用者であります。そういう意味で、またインフレ撲滅というふうなことになりますと、これは田中内閣そのものに対する労働者国民の切実な要求でもある。つまり企業内とそれから企業内では解決できない中身と、二つを持っておると思うわけです。その意味では、いやおうなしに、後段で申し上げましたように、政府は当事者の側に立たざるを得ないという問題があります。なかんずく労働大臣は、いま申し上げましたように、失対賃金の問題一つとってみましても、これはたいへんなことだと思いますし、あるいはまた労働省出しておられます毎月賃金統計等を見ますと、あのお出しになったファクターというのは公務員賃金ベースにも従来から影響するような経過もあるわけであります。そういたしますと、やはりこの三月一日というものは政府としても血眼になって解決をされなければならぬ性質のものだと思います。その点いかがでしょうか。
  6. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 まさに三月一日というのを申されますと、これはたいへんなことでして、国労東京、大阪の国電をはじめ、新幹線あるいはまた表日本主要幹線で二十四時間のストライキを実施するということをおきめになったことは、私はたいへん心配しているものであります。特に、先ほども申し上げましたように、大学入学試験——日本はいま高等学校入学者全国平均八〇%、その中の二七%が大学の入試を受けるかっこうでございまして、日本人は教育熱心なものですからたいへん心配している向きがあると思うのです。これはぜひひとつ良識でおやめいただくようにとお願いしているのですが、一方この国会で御議論いただきます物価高騰おりから、働く皆さん方あるいは年金受給者生活保護者、こういう人々に対する援護、手当てというものはほんとうに考えなければならぬことだ。もちろんこうした方々があらためてそれをスローガンにされている意味もわかります。けさ閣議におきまして、たしか四百八十五万人ですか、私いま数字ははっきりしませんが、そういう方々に対して予備費百三十億を出す——この中には、先生御心配の失対就労者の問題も私のほうでも要求いたしまして、特別に三日間の就労のワクをおきめいただいて、厚生省、労働省関係で総額百三十億の予備費出してこういう物価高騰おりからの一助にしようということで、実はおきめしたわけであります。
  7. 森井忠良

    森井委員 少なくとも昨日までの動きを見ますと、大臣、私はもう歯がゆくてならないわけです。あなたは、のどまで出ている、言いたいけれどもものが言えないという形のものがずいぶんあるんじゃないかと思うのです。たとえば最賃制の問題にいたしましても、もうすでに生活扶助基準等引き上げられまして、これは政府予算原案でも出ておりますとおりなんです。何がしかの引き上げをしなければならぬ。全国一律最賃制というのは、確かに労働大臣としては政策上の問題があるかもしれませんが、もっと歯にきぬ着せないでそのまま本心を吐露される必要がある。失対賃金の問題にいたしましても、たとえば、他の公務員との関係もありますけれども、年度末手当の〇・五カ月分の制度化、あるいはインフレ手当、そういった問題についても——すでに生活扶助基準等引き上げになりました。この生活保護の問題については、二月十四日にわが党の大原委員から厚生大臣に対しまして質問をし、そこでかなり前向きの答弁を引き出しているわけですね。労働大臣に限って、いまもって失対賃金について——いまちょっとありましたけれども、昨日まで、少なくともきのう労働団体お話しになったときも、あるいは春闘共闘委員会のメンバーとお話しになったときも、私の立場では答えられないということを話しておられます。これは、先ほど申し上げました三月一日という次元から見ますならば、最も問題を早く解決しなければならない立場におありの労働大臣として、きわめて遺憾なことである。失対賃金も含めまして、当面しております具体的に回答ができるような中身について、いま何があるのか。いまの段階で、三月一日までに労働大臣としてはどれとどれがものが言えるのか、ひとつお示しをいただきたいと思います。
  8. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 先ほどからお答えしておりますように、この国会での御議論、あるいはまたいろいろな方々要望等々も含めまして、それは四百八十五万人の人間に一々手当てをする書類上の手続なんというのは、きのうやおとついで徹底するわけじゃございませんで、やはり前々から準備をさせつつあったわけであります。その中で、失対も三日間働いてもらう予算措置もしておったということをひとつ御理解いただきたいと思う次第であります。ただいま、私のところに団体方々が見えられましての労働省所管関係の要請は、週休二日制とか時間短縮とか、ある場合には石油危機が起こっても雇用のほうが安定するようにやってもらいたい、そういうふうな三項目に分かれておると思っておるのです。  それにいたしましても、私の仕事は、先生承知のとおり労働省でございまして、せんだって四団体と各閣僚の集まっている席上で、総理から、労働省の目というものはいつでも労働組合のほうだけ向いているじゃないか、労働団体のほうを向いているじゃないかという冗談さえ出るくらいで、私は、やはり働く諸君のことをほんとうにお世話申し上げ、御連絡申し上げている場所、こういうところが私たち仕事だろう、こう思っております。すぐさま最低賃金全国一律というふうなことは、御承知のとおり、いま地域的に、業務的に、ずっと二千九百万ぐらいの人にかぶさっていることですから、すぐ直ちにできませんけれども先生方の御要望なりあるいは世の中の動きというものを勘案しながら、何かしらできるものから、いないな少しでも動けるものはというふうなかっこうでやっておるということを御理解いただきたいと思う次第です。
  9. 森井忠良

    森井委員 そこで、いま大臣から若干の答弁をいただきましたけれども、三月一日までまだ間があります。国労、動労は、先ほど大臣の御指摘になりました受験生に対するいわゆる迷惑——まあ迷惑のかからないストライキというのはないわけでありまして、当然、日本も含めまして先進国では、相手に迷惑をかげながら圧力をかけるということがストライキの本質であるというふうに私ども理解をしておりますから、ある程度の迷惑はやむを得ないと思いますけれども、その迷惑を少しでも回避しようとして、国鉄労働組合は特別の配慮をする、また意見の若干の違いはありますけれども動力車労働組合にいたしましても生鮮食料品その他の輸送については配慮する、できることなら、政府なり経営者にある一定の要求をのんでもらいまして——率直に申し上げますが、三月一日のストライキは、要求が満額片づかなければストライキをやめないというふうには私ども理解をしておりません。かなり政府も前向きになった。先ほど申し上げましたように、労働組合もろもろ国民への配慮をしながら、やむにやまれずストライキをする。先般の委員会でも田邉委員から申しましたように、ストライキというものは目的ではないのですね。これは手段なんです。問題は、要求がいれられればいつでもやめるという性質のものだ、これは明確に申し上げておきたいと思うわけであります。そうしますと、残された期間、まだまだ話し合いの余地は残っておると思いますし、また政府としても問題を詰められまして、できるだけ早くこの三月一日のストライキが避けられるように最善の努力をしてもらいたい、こういうふうに思います。  それから、ちょっと気になりますことは賃金の問題でありますけれども、これは新聞によるわけでありますが、労働大臣は、きのうの正午から大手町の経団連会館で開かれた読売国際経済懇話会の第二十回月例講演会に出ていらっしゃいますね。「春闘日本経済」と銘打ちまして講演をしておられるわけでありますが、その中で、労働大臣立場で、法治国だから法律に違反しないように云々ということがありますけれども、これはあとで御質問申し上げたいと思いますが、労働省立場で、日本賃金水準アメリカの半分であるが、イギリスを越したというOECD統計を紹介しながら、日本チープ・レーバーではない、このことを盛んに強調されたというわけであります。日経連なり経団連が、特に日経連が先月と今月、二回にわたりまして、春闘に対する心がまえというものを発表しておられます。これは先月の二十二日、今月の二十一日、二回にわたって出しておられますけれども、ある意味で私は、経営者の話と労働大臣の話が通ずるような気がしてならないわけです。大臣ほんとうにこの記事は、いま私が読み上げましたとおりでしょうか。特に日本賃金水準等についてあなたの所感を吐露していただきたいと思うのです。
  10. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 お答えいたします。  実はきのう外国人が約七、八十名おります会合に呼ばれまして、題は先ほどのあなたのおっしゃったような題でございましたけれども、これは各国でございましたから、私は日本が最近伸びたゆえんを申し上げたのです。そして、先日もヨーロッパのテレビ会社が来まして、日本チープ・レーバーで、私たちのほうの国に輸出するのがチープ・レーバーだ、こういう話などもありましたからと申し上げまして、そして最近の主要国賃金水準比較というものを申し上げて、過去の生活基盤の小さいときには賃金が安いこともあった。しかしながら、ここ六三年から今日まで十年間というものは、こういうふうに経済の伸びに従って分配もよけい取られている。数字の上でははっきり——一九六〇年には日本を一〇〇とすればアメリカが八七二。ですから約九分の一です。しかしながら今日、七三年には日本を一〇〇としますとアメリカが一九四・八。こういう数字をずっと申し上げたことでして、何も経団連と歩調を合わせるというふうな意味じゃありませんので、この数字を申し上げて、要するにお互いの国が基盤が大きくなる中でここまで伸びてきた、こういう話を申し上げたわけであります。
  11. 森井忠良

    森井委員 OECDではなくて、労働省の分析をお伺いしたい。労政局長いかがですか。
  12. 道正邦彦

    道正政府委員 賃金国際比較は必ずしも技術的には容易でない面があることは、御指摘のとおりでございます。ただいま大臣が申し上げました数字は、OECD資料あるいはILO資料等を基礎にいたしまして、時間当たりに換算いたしまして技術的にはじいた数字でございまして、OECD数字をそのままうのみにしたというものではございません。
  13. 森井忠良

    森井委員 これは私時間の関係で、ほかの質問がございますので、はしょらせていただきますけれども、この際、日本賃金水準認識はきわめて重大な問題だと思うのです。これは政府といわず、あるいは自民党といわず、社会党といわず、真実を知りたい。ですから、労働省のほうできちっと資料を本委員会に御提出願いたい。その際、単に賃金水準だけではなくて、たとえば社会保障的な支出、これはかなり外国と減額をしなければならぬ要素もあると私は思いますので、その辺についても大胆率直にお出しを願いたい、こういうふうに思います。よろしゅうございましょうか。
  14. 道正邦彦

    道正政府委員 御指摘のございました資料は提出いたします。
  15. 森井忠良

    森井委員 次は、また三月の一日でありますが、主として公労協労働組合ストライキをいま予定をしておるわけでありますけれども、もとはといえば、これは、たとえば公制審発足をいたしましてからもう足かけ九年になります。昭和四十年でありますから、もう四十九年でございましょう。その間、第三次公制審まで来まして、そしていま公制審はその任期も切れて、九月三日に最終的な答申が出てきた、こういう経過をたどっておるわけであります。  私はつくづく思うわけでありますが、西ドイツブラント政権ですね。社会民主党なんでありますが、ここでも公共部門で働く官公労働者が二百三十万人、十日にスト批准闘争を行ないました。そしていよいよストライキに入るという情報日本にも入ってまいりました。私は、西ドイツ公務員労働者ストライキ権の問題については必ずしも賛成をしておりません。現業に限られておりますし、組合員上級職下級職というような形に分けまして、確かに問題はあるわけでありますが、日本のそれと比べてみますと、何といいましても——ちょうどいま春闘で戦っておるわけでありますが、同じ時期にそういう情報が入ってくる。労働者の単純な感じとして、ともかく外国で同じような仕事をしておる仲間はストライキ権があり、そして日本労働者にはそれがない。もっともこれはイロハだとおっしゃいますかもしれませんが、この際、明確に認識をしておきたいと思うのであります。たとえば、この都内でもそうです。同じ地下鉄でも、東京都営地下鉄ストライキ権がない。そして営団地下鉄その他はストライキ権があるという、これだけの矛盾がございます。これは全国にあるわけでありまして、たとえば阪神、阪急、国鉄並行路線を同じように電車が走っておりながら、片やストライキ権があり片やストライキ権がない。こういうきわめて矛盾をした、しかもだれの目から見てもこれはおかしいじゃないかというような中身になっておるわけなんです。しかも、そういった問題をはらみながら、すでに公制審発足をいたしましてもう足かけ九年という長い間放置をされてきた、ここに私は最大の問題があるように考えるわけであります。  しかも、二十一日の田中総理会談の際、四団体側から公務員公労協皆さんスト権の問題について明確にしてほしいということがありまして、ようやく昨日ですか、関係各省事務次官の構成によります公務員制度連絡会議というものをお開きになっていらっしゃる。しかも、これは結論が出たのは——結論らしいものが出なかったようでありますが、新聞によりますと、運用解釈ですぐできるようなものとか、あるいは簡単な法改正等でできるものについては、なるほど事務次官会議で出るでしょう。肝心の、いま申し上げました労働者の基本的な権利でありますストライキ権については、これは次官会議では荷が重いわけであります。労働団体田中総理一体公務員公労協皆さんスト権はどうしてくれるんだということがあって、大急ぎで開いた感じがしてならないわけであります。こういった政府のいままでの姿勢、おそさ、そういったものに大きく責任があるように私は思うわけであります。  もう私から申し上げるまでもありませんけれども、とにかくいままでずいぶん労働者処分を受けております。解雇はおそらく千三百人をこしておるんじゃないでしょうか。そして百七十万人近い人がいままで処分を受けてきておる。一回処分を受けると、少なくとも三十万から五十万くらい。これは二十そこそこの労働者でも、それこそ墓場まで経済的な制裁を受けるわけであります。こういった深刻な認識があるわけです。しかも、現状先ほど申し上げたとおりなんです。昭和四十年にドライヤー調査団が来日をいたしまして以来、ILOのあらゆる場で、とにかく日本政府がとってまいりました処分というのは過酷なものであるという明確な判断を、いままで国際的にも示されておるわけです。特に昨年のILOの結社の自由委員会の百三十九次報告、一日も早く何とかしなければならぬじゃないか、こういうふうなことがあっても、依然として先ほど申し上げましたとおり春闘の最中に総理労働団体が会うのは昭和三十九年以来だそうでありますけれども、そういう画期的な一つの節のときに出されて、いままだこれだけの対策しか打たれておらない。やはり政府に大きな責任がある。だからまた、言いにくいことを言うようでありますけれども、三月一日に戻れば、あのストライキをかまえたのは、責任のかなりな部分は政府が持っていただきたい、こういうふうに思うわけです。いかがでしょうか。
  16. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 公務員のそうしたスト権の問題に対しましては、おっしゃるとおり、昨年の九月でしたか公制審答申出しまして、それ以来事務次官諸君のところで会議を開き、あるいはまた三公社五現業、なかなかいろいろな部門が多いものですから、課長だ、係長だというふうなところで会議を開いて、そういうときどきの模様については、この委員会において先輩議員方々からも御指摘があって、早くすべきだという御意見をしょっちゅう私たちも聞いておったわけであります。しかも、ILOの勧告もさることながら、やはり公制審とちょうど同じようなことでございまして、関係するところがなかなか大きいということは、先生承知のとおりでございます。事業の内容もございますし、予算の問題もありますし、これは先生のほうがお詳しいことでして、それだけに幅広く研究しておって、すぐこれを、要求したからすぐ出せ、出さないからというところまでいかないという事情も御了解いただきたい。こういうときに事務次官会議をきのうあたりも開いたということでございますから、そうしたことがまた進み出す一つの原因になるのじゃなかろうか、私たちもそういう面から注目していきたい、こう思っております。
  17. 森井忠良

    森井委員 時間がかかることについてもわかります。いままでサボったことについて私は申し上げておるわけでありますが、この前の社会労働委員会でも大臣は、公制審の動向を見守りながら、言うなれば公制審結論待ちという形の答弁に終始しておられましたね。   〔委員長退席、大野(明)委員長代理着席〕  そこで、これは労働省の所管じゃないとおっしゃるかもしれないが、非常にむずかしいところで、大臣、窓口はなるほどスト権の問題については総務長官の所管の形になっておりますけれども、もともと三公社五現業労働問題については、これは労働大臣の職務と切って離せないわけでありまして、法律に明示してあるとおりなんです。そこでせめて、時間がかかるものならかかるように、当面応急措置をとらなければならない。たとえば先般の社会労働委員会道正局長は、林野やあるいは全逓等については特別昇給制度がない、こういう指摘をしておられます。裏を返せば、過去の処分者等については、少なくともとりあえず特別昇給というふうな形の救済の制度があるではないですか、こういうふうに私は受け取りまして、ずいぶん労政局長進歩したなという感じを持ったわけです。しかも、去年の七三春闘の終結時におきますあの労働団体との七項目の合意事項、これでも処分については公制審答申を尊重するという、それ以外の覚え書きとして、処分につきましてはもろもろの情勢があるわけでありますから、慎重、公正にやるというふうな形、これはもう男と男の話でありまして、いみじくもこの前の社会労働委員会で労政局長答弁をいたしましたような特別昇給制度等も踏まえまして、やはりこの問題を応急的に処理をしながら、最後は当然法改正、制度改正をやらなければならぬというふうに私ども理解をするわけであります。  そういうことになりますと、とりあえず、法改正をあと回しにいたしましても、いま申し上げました実績がすでに出ております。先ほど百数十万の労働者処分を受けたという話をいたしましたけれども、すでにかなりの部分については救済をされておる。それは現実には先ほど申し上げましたような形になっておるわけです。このことはいみじくも、これも社労委員会でおっしゃいました、労働団体は、三公社五現業の労使関係は前進をしておりますという認識をお述べになったと思うわけでありますが、これは三月、田邉委員質問でしたか、たしかそれに近いことをおっしゃいました。私は耳をそばだてて聞いておったわけでありますが、そういうことからすれば、とりあえず、公制審の正式な答申はあとにいたしましても、いま申し上げましたような応急的な措置をとる必要があると思います。この点、お考えをお聞かせ願いたい。
  18. 道正邦彦

    道正政府委員 公制審答申は九月に出ておりまして、その答申を受けまして政府内部で検討しているということでございますので、公制審答申が出ていないということではございません。  それから御指摘処分等の問題でございますが、いわゆる昨年の七項目の合意に基づきまして、処分につきましては公正、慎重に行なうということで、私どもといたしましては、公正、慎重に当局が行なっておられるものというふうに考えております。  それから過去の処分のいわゆる実損回復の問題につきましては、これも前回の当委員会でお答えいたしましたように、特別昇給制度がございません林野と郵政のうち、林野につきまして公労委の仲裁裁定が出たわけございます。その線で当事者が話し合って、この問題についても円満に話し合いを続けていただくことを心から期待するものでございます。ただ、遺憾ながら、郵政につきましてはそういう制度がまだできておりません。したがいまして、私どもといたしましては、郵政の労使間でこの問題について話し合いをお進めいただいて、必要があるならば仲裁裁定の形に持っていかれるのも一つの案と思いますけれども、要は、労使がこの問題について話し合いを続けていただく。私どもといたしましては昨年の春闘七項目の合意がございますので、その線に従って関係者との協議を続けるということについてはやぶさかでございません。
  19. 森井忠良

    森井委員 公制審答申は出ておりまして、私の言い方が間違っておりましたけれども政府の態度が明確でないということについては、明確に申し上げておきたい。なかんずく、事務次官レベルでいま議論をさせるという。私をもって言わせるならば、やっぱりずるいと思うのです。これは田中総理が一言、本気でやろうじゃないかといえば済む問題です。やはりいま政府・自民党の態度がきまっておらないところに最大の問題がある。しかし諸外国の法制その他を見られまして、いつまでも放置をすることは許されない。しかも利害関係からいきますと、延びれば延びるほど労働者側に不利なんです。ストライキをかまえるのはあたりまえなんですよ。長引けば長引くほど、ストライキ権がないのですから。公制審答申の内容は、もうほんとうにあいまいもことしておりますけれども、明確に制度改正を要求している部分もあるわけなんです。これは去年の九月なんですよ。しかも、その後年末闘争があり春闘があるということはだれしもわかっておる。にもかかわらず、今日まで放置をされたという責任だけは私はとっていただきたい。もっとはっきり申し上げますならば、三月一日のストライキにつきましては、その大半の責任政府にあるということを申し上げておきたいと思うのです。  時間の関係で、質問を次に移らしていただきます。  次に、それでは若干話題を変えまして、身体障害者の雇用促進の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  去年の十二月の十三日、身体障害者雇用審議会から答申が出されてまいりました。もともと身体障害者雇用促進法は、昭和三十五年にできたかなり古い法律であります。十四年たっておる。この身体障害者——言うなれば政府・自民党は、去年が福祉元年でありましたからことしは福祉二年という形の宣伝になるんでしょうか。なるほど率直に申し上げまして、年金その他おととしよりは去年は確かに進みました。また去年よりはことしが、予算案を見ましても若干でも前を向いておることは認めます。ところが事身体障害者の問題につきましては、これは厚生省の所管と労働省の所管の部分がありますが、少なくとも労働省の所管の部分におきます身体障害者の雇用促進の問題については、私は残念ながらいい点をあげることができない。少なくとも長谷川労働大臣になられたらかなり進歩するであろう、こういうことで大きく期待をしておりましたけれども、どうも前進がないように思えてならないわけであります。そこで、いま申し上げました十二月十三日の身体障害者の雇用促進に関する答申は、その意味で比較的簡単明瞭に問題点を浮き彫りにしておると私は思うわけであります。時間がありませんから、この扱いについてまず局長からでもよろしゅうございますから、どうなっておるのか、これから御説明を願いたいと思う。
  20. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 森井先生指摘のとおり、昨年の十二月十三日でしたか、身体障害者雇用審議会の答申をいただきました。その中身は御承知のとおり、事業主に対する雇用義務の強化あるいは事業主に対する雇用助成の措置、それから職業紹介体制の強化あるいは職業訓練、こういった項目が指摘されております。私どもはこの答申を真剣に検討いたしまして、その内容につきまして予算措置を講ずるものは予算措置を講ずるし、行政指導を強化するものはするということで、四十九年度に真剣にこれに取り組んでまいりたいということで努力をいたしておるわけでございます。
  21. 森井忠良

    森井委員 身体障害者のいまの雇用状況について簡単に御説明願いたい。
  22. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 身体障害者の雇用につきましては、法律によりまして雇用率が設定されておることは御承知のとおりでございます。  この達成状況につきまして簡単に申し上げますと、政府関係機関、官公庁におきましては現業、非現業それぞれ雇用率が設定されておりますが、全体としておおむねこの雇用率が達成されておる状況でございます。民間におきましては、一・三%の雇用率に対しまして全体といたしましては一・二九%、ほぼ雇用率を満たしておる状況でございますが、なお個別に見てまいりますと、主として大企業、五百人以上の企業におきましてはかなり雇用率を下回っております。一・一七、こういう状況になっておりまして、私どもはこの審議会の答申を受けまして、今後は大企業を中心に雇用率を達成するように最大の努力をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  23. 森井忠良

    森井委員 そういうことになりますと、まず現状認識だけお互いにしておきたいと思いますので……。  身体障害者雇用促進法の第十一条、これは主として国なり地方公共団体等の官公庁の雇用率であります。それを見ますと、さすがに厚生省あたりは一・七の義務に対しまして二・九二であります。労働省さんも一・九六。一・七をオーバーしております。ところがひどいのもあるのです。政府全般からいきますと、国の機関が一・七二、三公社が一・七一であります。三公社の場合一・六でいいわけでありますから、いずれも基準にパスしておる。ところがずいぶんこの政府中身にアンバランスがあるわけであります。何といいましても、これは身体障害者雇用促進法という法律に基づいてどうしても達成をしなければならない。特に法律がある以上は、政府各機関はこれは絶対に縛られなければならない性質のものだと思うわけであります。その意義については時間の関係で省略をいたしますけれども、たとえば公安調査庁というのが表にあります。これは名前をあげて恐縮でありますが、ひとつお互い政府機関ということで御了承をいただきたいと思うのであります。これは〇・一〇なんです。〇・一なんですね。政府関係の各機関からいきますとほとんど基準は突破をしておりますけれども、いま申し上げました公安調査庁が〇・一〇。資源エネルギー庁が悪いのでありますが、これは役所ができて間がないということで、ちょっと理解を示さなければならぬと思います。人数の規模におきましても、公安調査庁の場合、該当の職員数というのが千九百九十八人で、身体障害者を雇用しておるのはたった二人です。足りないほうが三十一人、その結果〇・一〇という数字になっておるわけであります。こういった政府間のアンバランスについて一体どのように考えておられるのか。  また、政府関係機関、三公社の場合を見てみますと、電電公社がようやく昨年から一・六の雇用率の達成ができたようでありますけれども国鉄は、これはみずからの企業の中にも障害者が出るということもあるのでしょうか、一・九〇、こういう形で間に合っている。おそらく自前ではないかと思います。  郵政省が、これが雇用率は基準を達成しておりませんで、去年の十月現在で一・五一。これはもうちょっと詳しく申し上げますと、郵政省の場合、郵便配達その他身体障害者をもって充てるには無理だという職員の数は除きまして、したがって無理のない率になっておるわけでありますが、そういう意味での該当職員が二十一万三千八百八十七人、そしていま雇っております身体障害者が三千二百十九人、これは一・五一なんです。入学試験でいえば補欠になるかならぬかというぐらいの点ではないかと思う。あと職員をまだ雇わなければいけない数というのは二百三人であります。こういう状態になっております。郵政省の努力も私はもちろん多といたしますけれども、他の各省にできて、たとえば似たような職種として電電公社の達成率を見ますと、これは達成しておるわけであります。こういうふうな政府関係機関のアンバランスについて、大臣どのように思われますか。
  24. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私は、こういう委員会でいまのような数字をお伺いするということは非常に行政の参考になると思っているのです。せんだって私のところに議長さんやらが陳情に来たときに、その人たち労働省に入ったところが身体障害者の方々が働いているのを見て非常に感心しましたというから、あなたの市役所でもひとつお使いください。私のほうへ陳情に来るときには、こういういいものを見たらひとつまねしてください、こんなふうに私申し上げたことなんです。ほかの役所、こういうものは、きょうの御指摘もありましたことですから、局長が各省の人事課長ですか、そういう方々にあらためてきょうの御議論を基礎にいたしまして雇用率達成、いないなそれ以上やるようにさらに推進したい、こう思っております。
  25. 森井忠良

    森井委員 民間の企業に対しては、職業安定所長を通じて雇用計画の作成命令等が出せるようになっております。政府機関の場合は、さすがに同じ機関でありますから労働大臣と協議というような形にたしかなっておると思うわけであります。いま大臣が言われました趣旨を私どもは期待をしたいと思いますが、それにいたしましても、大臣、いまこういう現状であります。そこできょうは、まことに過酷でありましたけれども、成績の悪いところと、いま一歩で努力目標に達するというところに来ていただきました。  まず公安調査庁お見えですか。——公安調査庁にお伺いをしたいわけでありますが、あなたのところはいま申し上げましたような〇・一〇という非常に低い達成率なんであります。これはかなり早く公安調査庁というのはわれわれの反対を押し切っておつくりになったわけでありますけれども、そのことは別にいたしましても、一体いままでどういう経過でこういうふうに雇用率が達成できなかったのか、またこれからどうしようとされるのか。時間の関係もありますので長々とは要りませんけれども、簡単明快にお答え願いたい。
  26. 竹内弘

    ○竹内説明員 お答え申し上げます。  いままでの経過を申し上げますと、現状二名という御指摘は、まことに申しわけないことでございますが、そのとおりでございます。何ゆえにそういう低い数字のままずっと推移しているのかという疑問を起こされるのは非常にごもっともだと思いますけれども、私どものほうの役所の職員の仕事から申しまして、志望者の中に身体障害者の方は従来ほとんどいらっしゃらないというようなことが実情でございまして、雇用促進法の趣旨とするところは私ども十分わかっておるつもりではおりますが、やはりその数字において御指摘のような現状であることはまことに遺憾に思っております。  ただ考えまするに、私どもの役所と申しましても、全員が直接に調査業務に当たっておるというわけのものでございませんので、たとえば電話の交換に当たる方とか、タイプをもっぱら行なっている方だとか、そういう人たちおりますので、その面につきましては、ただいまの御指摘もございましたので方針まで申し述べさせていただきますが、将来つとめて、志望者がございましたら私どもの役所に向いた方は入って働いていただく、かように考えております。
  27. 森井忠良

    森井委員 身体障害者雇用促進法、まことに失礼でありますが、御存じですか。——それではちょっとお伺いしたいわけでありますけれども、第何条で雇用義務があるのですか。あなたは人事担当者でしょう。
  28. 竹内弘

    ○竹内説明員 十一条による計画作成の義務と十二条による通報の義務ということはよく存じておるつもりでおりますし、御趣旨もしごくごもっともな法律であるということはもうよく考えております。
  29. 森井忠良

    森井委員 大急ぎでファックスをとられたから、たぶんいまお読みになったんだろうと思うのですけれどもほんとう法律を御存じなら、特に公安調査庁というのは法律もかなりお調べになるのでしょう。そうしますと、私は率直に申し上げまして、もっと本気で取り組んでほしかった。先ほど申し上げました資源エネルギー庁のように、まあこれは汚職が多いですけれども、役所が新しい、だからやむを得ない事情はわかると思うのです。いまあなたの答弁を見ますと、職員の仕事性質からして非常に無理があるという言い方になってきておるわけですね。ここに私はやはり問題があると思うのですよ。ちゃんと法律とそれから関係の政令を見ますと、たとえば郵政省の場合でいきますと、いま申し上げましたように、どうしてもその職に身体障害者をつけることができないような郵便配達等は除外をされておるわけなんです。そこのところを理解をしていただくなら、あなたのいまのような答弁にはならないと思うのですね。明確に認識をしていただきたいのですけれども法律はあの雇用率、おたくの場合なら一・七でありますけれども、これはいま申し上げましたようなことで除外職員というのをきめて、ある意味では——外国にはあまり例がないのですね、調べてみましたら。除外職員というような例は。まともに職員の数でかけて雇用率を出すのです。日本の場合はたくさん、これものける、これものけるという除外例が規則あるいは政令等でありまして、のけてあって非常にゆるくした上で雇用率というものをはじいておるわけです。ですから公安調査庁の場合も、この職種は無理だというなら法改正をお願いしなさい、除外してくださいということを。それも放置をしたままです。私は除外をするのはおかしいと思いますけれども。そういう経過では私はきわめて遺憾でありますし、いま申し上げましたように、職員の仕事性質上他の官庁と一緒にならないという理由があるのなら、ここで明確に述べていただきたいと思うのです。
  30. 竹内弘

    ○竹内説明員 御指摘のようなお願いもいたすつもりではおります。しかし、いたす場合の理由となりますところは、御質問の趣旨にお答えすることにもなると思いますので一応筋だけ申し上げますと、私どもいわゆる破壊的団体というものの調査となりますと、外へ出向いてそれに関係のある人たちにいろいろ教えてもらって、それによって調査をするという面が大部分でございます。そうなりますと、やはり活動性も要求されますし、さらにはその調査の過程におきましてかなりの乱暴を受けるというような危険も実際にございますし、心理的にもかなり苦しいような立場になることもございます。そういうことを大体志望される方が御存じであって、そこでやはり採用を志望される方が数においても少ないのだろうという一面もあることを御了解願いたいと思います。
  31. 森井忠良

    森井委員 あなた先ほど法律は存じておりますとおっしゃいましたけれども、あなたの理論でいけば、〇・一〇というのは当然だ、やむを得ないという形にしかならないじゃないですか。  じゃ職業安定局長にお伺いしますけれども、この施行令の別表に掲げてあるものの中を、公安調査庁のいまの発言によりますと、これをもっとふやさなければならないことになりますが、どうなりますか、これは。もっと除外職員をふやすべきですか、公安調査庁については。明確にお答え願いたい。
  32. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 私ども現状においては、これをさらに追加して増加する考え方を持っておりませんが、当該官署からそういうお申し出があれば、その内容を十分調査いたしました上で、もしそういう必要があればそれを慎重に考慮いたしたい、かように考えております。
  33. 森井忠良

    森井委員 そうすると局長、私がいま読み上げました公安調査庁の雇用率というのは、あなたとくと御承知のとおりなんです。見られましてこの別表を変える御意思がないとすれば、いままで公安調査庁とどういう協議をなさったのですか。
  34. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 従来人事担当課長会議等におきまして、あるいは官房長会議等におきまして、この身体障害者の雇用率の達成につきましては各省庁にそれぞれ御要請を申し上げております。私が担当いたしましてからは具体的な措置はまだ、いままでとっておりませんけれども、今後審議会の答申によりまして、特に官公庁は率先してこの雇用率達成につとめるべきであると考えておりますので、当該官署につきましては十分御協議しまして達成できるように私ども精一ぱい努力をしてまいりたい、かように考えております。
  35. 森井忠良

    森井委員 時間の関係がありますのでそれでは……。  率直なところ、公安調査庁側の御答弁、私きわめて不満であります。特殊事情等は、明確に申し上げまして、これは認められませんよ、実際問題として。それはあなたのところよりも、たとえば郵政省あたりの職場はどうなりますか。保険の勧誘にしても、もちろん郵便配達にしても、すべて非常にむずかしい職種でしょう。あなたのところはそういう意味では、まだそれこそぬるま湯におられるような官庁じゃありませんか。身体障害者を使おうとすれば幾らでも使えるはずなんです。しかも、何千人も使えというのじゃないのですよ。先ほど申し上げましたとおり、率こそ〇・一〇ですけれども、いま二人しか雇っていらっしゃらない。足りないのは三十一人なんです。全部外へ出歩く職員だから無理だと言われますけれども、二千人近い該当職員がおって、三十人そこそこが働く職場がないんですか。そういうことを十分御認識をなさって、これは直ちに労働省と協議をなさいまして、将来におきますこの雇用計画を明確にした上、この委員会で計画作成が明確になった段階で御報告を願いたいと思います。  次に郵政省についてもお伺いしたいわけでありますが、先ほど補欠だと言いましたけれども、あくまでもこれは足りないんですね。人数が多いから理解はできます。しかし、同じような企業であります電電公社がようやく昨年達成をした。しかも、中身を調べてみますと、電電公社の場合でしたら各通信局ごとに担当者をぞれそれ集めまして、そして身体障害者の雇用につきましても通信局ごとに割り当てをする。もちろん会議のつど必要性を力説しなければなりませんけれども、まだたとえば職場で便所の改装その他問題はたくさん残っておりますけれども、いずれにしても、努力をされればできるという形がそこで明確になっておると思うわけであります。そこで郵政省にも、いままでどうしてこの雇用率が達成できなかったのか、これからどうしようとなさるのか、この際お伺いをしておきたいと思います。
  36. 北雄一郎

    ○北政府委員 数字はお示しのとおりでございます。私どもも、身障者雇用促進法が三十五年にできまして以来、やはり各機関に毎年その採用の目標を割り当てておるわけでございます。そのほかに、採用時に身体検査をいたしますが、その場合、身障者につきましては一般的な合否の基準によらないで、身体検査をいたします医者の個別的な判定にゆだねる、一口に言えば甘くするというようなこともとってまいったわけでございます。ところが三十五年に法が施行になりました当時一・二という雇用率であったわけでございまして、いま申しましたような手段をとりました結果、その後逐年この率は上昇してまいったわけでございます。ただ近年に至りまして、その雇用率の上昇が遺憾ながら横ばいという状態になりまして、今日一・五一という数字である、こういうことでございます。したがいまして、やはりこういう状態ではいけないと私どもも思っておりますので、ひとつこの際さらにこの雇用促進法の趣旨を下部へ徹底する、また各機関への割り当てということにつきましても、先生指摘のように、本法の意義を十分に周知をいたしました中でこの割り当てをやる、その確実な実現をはかるということでつとめてまいりたいというふうに思っております。
  37. 森井忠良

    森井委員 では次に民間に移りたいと思うわけでありますが、民間も先ほど職業安定局長から報告がありましたように問題があるわけであります。全般的には一・二九という数字になっております。しかし、御説明がありましたように大企業ほど、まあことばが悪うございますが、サボっておる。これが歴然としておるわけですね。歴然とわかっておるわけであります。もう大企業の横暴さは、あなたが数字を言われましたからこれ以上は申し上げませんけれども、民間についてもずいぶん問題がある。しかも逐年ふえておるかというと、もうここ数年とまっておるんですよ。私はここが、大臣、問題だと思うんです。雇用率は昭和四十三年の十月から〇・二%引き上げられたんですね。三十五年に法ができまして、そしていま申し上げましたように四十三年の十月にコンマの二ほど雇用率を引き上げた、こういう経過があるわけです。実は諸外国は、一番悪いイタリアでも二なんですよ。先ほど申し上げましたように、除外職員というのはほとんど考えられておりませんけれどもね。それにしても二なんです。日本がいま一・六と一・七、民間が一・三でありますけれども、諸外国から比べれば非常に低い雇用率という形になっておるわけです。もう申し上げるまでもなくGNP大国なんですね。言うなれば、外国以上のことができるじゃないかと私ども申し上げたいわけです。もうドイツのごときはもっとふえておりまして、一〇%ないしは一二%、こういうような数字になっておるわけです。  そこで、民間企業に対する指導、これは何といいましても第一線の職業安定所長がやるわけでありますが、一体どの程度の指導をしておられるのか、お伺いをしたいと思います。
  38. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 御指摘のとおり、民間企業におきましては、総体といたしましては別でございますが、特定の業種、たとえば卸小売り業でございますとかあるいは大企業におきましては、確かに雇用率をかなり下回っております。私どもは従来から、こういった雇用率未達成の企業に対しましては、安定所で求人受理の際に、身体障害者に十分つとまるような職種、そういう部面につきましては身体障害者の雇用を推進してまいっておりますが、同時に、この促進法によりまして百人以上の企業につきましては、雇い入れ計画作成命令という条項がございまして、これを活用いたしまして極力推奨をしてまいっておりますが、実態は、先生指摘のとおり、なかなか思うように進捗していないことも事実でございます。今後私どもは、先ほど指摘のありました昨年暮れの審議会の答申に基づきまして、こういった求人受理の際に、特定の企業に対しましては、こういう未達成のものについては求人受理をあるいは場合によっては差し控えてでも身体障害者の雇用促進をはかってもらう、こういう方法をとりますと同時に、大企業につきましては今後さらに雇い入れ計画をつくらせるという措置をとってまいりたいと思います。  実は、一昨年から去年までの一年間に具体的に作成命令を発しましたのは、約四百件ほどございます。それによりましてその雇い入れ計画を作成させましたことによって就職いたしました者が、約百四十名ほどございます。そういった実績をさらに今後伸ばしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  39. 森井忠良

    森井委員 いま局長は比較的早口にさっと答弁をされましたけれども、あなたのほうも問題があるのですよ。それは、何といいましても——昭和四十六年の十月から四十七年の九月まで一年間のこの雇用計画作成命令を発したものの数字が出ているわけですね。四十六年の十月から四十七年の九月までの一年間、全国で三百九十七事業所なんですね、これは新規の雇用命令でありますけれども全国で安定所はいま四百七十あるはずなんです。雇用計画の作成命令を出したのが三百九十七事業所、パーセントにしてたったの三%。そうして、いま申し上げました四百七十も安定所があって、三百九十七回しか雇用計画の作成命令を出しておられない。なるほど第一線はそれは安定所でしょう。ところが、労働省そのものの責任というのは私、免れないと思う。ここのところにも問題がある。だから大企業をのさばらすのですよ。とにかくその中で、産業別に申し上げますとどこが悪いかというと、一番悪いのが、金融、不動産、そして保険業なんですね。金融業、不動産業、保険業、これが最も悪くて〇・七一ですね。それから卸売り業、それから小売業。卸売り業、小売業というものが〇・七三です。これが二番目に悪いんでしょうか。三番目が建設業なんですね。この建設業が一・〇、こういうような形で推移をしております。言うなれば、これは銀行とデパートが一番悪いということになるんじゃないでしょうか。さらにあとからお伺いしたいと思うわけでありますが、おそらくいま有名な石油連盟の各社であるとかあるいは十大商社であるとかといったところは、もっと悪いんじゃないかと思うわけですね。そうすると、あなたのところは一つ一つ職業安定所長にチェックをさせて、そして対応する機関から対応する企業へそれぞれ雇用計画の作成命令を出さなければならぬと思うわけです。四百件を割るような数字では、幾らりっぱな法律があってもどうにもならない。ですから、あなたのところの姿勢にも問題があると思いますが、どうですか。それは。今後の方針を明確にしてもらいたい。
  40. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 確かに先生から御指摘いただいたとおりでございます。私どもも身体障害者の雇用促進に各般の施策を充実させてまいってはおりますが、御指摘のこういった業種あるいは大企業について確かに十分な指導、行政措置が行なわれていなかったという点も、私ども十分認識いたしまして、昨年の審議会の答申を受けまして以来、各個別の企業につきまして雇用状況実態調査をいまいたさせておるわけでございます。それをもとにいたしまして個別に雇用計画作成命令を発する、あるいは求人受理の際、各安定所でそれぞれの企業に対して身体障害者の雇い入れ促進方存行政指導をするというようなことによりまして、極力早期に雇用率を達成できるように最大の努力をしてまいりたいと、現在十分検討中でございます。
  41. 森井忠良

    森井委員 そうしますと、私、別の資料を持っておるわけであります。先ほど銀行とデパートという表現をいたしましたが、たとえば商社について見ますと、労働大臣、いいところで一・三一、悪いところは〇・二六なんですよ。それから今度は石油につきましては、いいところはなるほど二・〇三というところがありますけれども、悪いところはやはり〇・三二なんです。商社や大企業の社会的責任という問題がよくいわれており総理の口からもこのことばはしばしば出るわけでありますけれども、脱税をしたり、隠匿物資をつくったり、数限りないことをしておりますが、せめていいことでもあるのかなと思って期待をしてこの大商社、石油会社等の雇用率を見たら、まだ〇・三そこそこのが幾つかある。これはどこですか。明らかにしてもらいたいと思うのです。
  42. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 確かに先生指摘のように、商社あるいは石油業界等におきまして、調査いたしました企業の中の半数程度は雇用率を達成いたしております。しかしながら〇・二六とかあるいは〇・三六とか、こういう低いところも確かにございます。実は私ども先ほど申し上げましたように、各個別のそういった大企業につきまして、雇用状況を現在鋭意調査中でございます。個別の企業名をここで公表いたしますことは差し控えさせていただきますけれども、私どもはこの調査の結果に基づきまして、極力先生の御指摘の線に沿うように行政努力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  43. 森井忠良

    森井委員 これは去年の十二月の答申のときも、公表を検討しなさいということが入っているわけです。ちゃんとこれは入っているのですよ。長谷川労働大臣あてに身体障害者雇用審議会が、もう企業名を公表することを考えろというふうに書いてあるわけです。しかもたとえば国税庁においてすら、所得のベストテンその他、年に一回は発表するのですよ。雇用率の達成なんというのは、何もそういぶかることはないわけであります。せめていま申し上げました大商社であるとかあるいは石油連盟の各社については、氏名を公表すべきだ。それが労働省としていままで仕事をやられなかったことに対する社会的な責任じゃないか。いかがですか。
  44. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 確かに昨年末の審議会の答申におきまして、身体障害者の雇用について著しく消極的なそういう事業所については、これを公表することによって社会的責任を果たさせる、あるいは社会的制裁を与える、こういう措置を検討すべきであるということは御指摘ございます。先ほど来申し上げておりますように、私どもこの答申の各項目につきまして、調査なり行政措置なり現在検討中でございます。実施中でございます。その上でなおかつ御指摘のように不当に身体障害者の雇用について拒否的な態度をとる、きわめて消極的である、理由なしにそういうものがあるとすれば、私どもは第一段階としては安定所の求人取り扱いの際に、求人指導によりまして雇用促進をはかってまいるのが第一かと思いますが、それでなおかつ目的を達成できないということがはっきり判断されました際には、公表ということを私どもは積極的に検討いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  45. 森井忠良

    森井委員 時間の関係がありますから簡単にやりますが、いま私が申し上げた数字はでたらめな数字じゃないんですよ、商社、石油連盟というのは。しかもこれは調べていらっしゃる。何に遠慮して発表なさらないのか。悪くいえば企業に癒着しておるではないかと言いたくなるので、私はこの次の委員会までにぜひ参考に御報告を願いたい。このことを申し上げておきます。  それからもう一つ企業の問題。大臣、私の選挙区に労災リハビリテーションがあるわけです。これは比較的歴史は新しいのですけれども、いま四十何人かの脊損患者を収容しておりまして、非常にいい実績をあげておるわけです。労災リハビリテーション広島作業所というわけですが、ここを見ますと、四十四人のうちで、石川島播磨重工であるとか住友化学、川崎製鉄、宇部興産あるいは大林組、熊谷組など、いわゆる大企業といわれるものの出身者が十四人もおるんですよ。これはなぜかといいますと、大企業ほど、労災でけがをしたら、三年たてばぽいなんですよ。ここに最大の問題がある。これは非常に深刻です。私ども患者の自治会の皆さんと話をすると、政府もとにかく手ぬるい。諸手当その他非常に困っておるということでありますけれども、それよりもなお、簡単に使いたいだけ使って、そして三年たてばぽいというあの大企業姿勢が一番憎いというわけなんですよ。しかも先ほど申し上げましたとおりの雇用率なんです。これはやはり少なくとも従業員五千人以上あるいは資本金一億円以上という会社については、その企業から労災事故が出ても絶対に解雇させないという、強制雇用あるいは解雇制限というものをつけなければならぬ。これは諸外国の立法例を見ましてもずいぶんそういう規定があるわけでありますから、ぜひひとつ前向きに御検討願いたい。  それから、もともと身体障害者雇用促進法という法律は精神訓話規定なんですよ。強制的なものが何もない。雇用義務は定めてありますけれども、義務を破っても全然罰則もない。これは諸外国では補償金という名前の罰金を取ってみたり、あるいは禁錮刑等を設定いたしましたり、それぞれしてあります。筒抜けになっているのは、ここに最大の原因があると私は理解をいたします。そういう意味では、せっかくここに一応問題点を浮き彫りにした答申が出ておるわけでありますから、法改正も含めて措置されるようにお願いをしたいと思うわけでありますが、大臣の所感を最後にお伺いしまして終わりたいと思います。
  46. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 人生の最大なるしあわせは、すばらしい健康をもって働くことだと思います。地方で特殊学級の子供たち、これが成人になった暁に就職させる、これが一番の親の悩みでございます。そういう実態を自分の地方でよく見ております。また、そういう諸君の集会にも出ます。現に国会の散髪室でも、そういう人をこのごろは雇用しているところもあります。すぐ直ちに法律ということもございましょうけれども、その前に、お互いがやはり国民の連帯感の中に、いままであるものを推進していく私たちの熱心さ、こういうものが、いま先生の発言を通じて一番大事なことじゃなかろうか。大企業の罪悪論もさることながら、やはり国民連帯感の中に、そういう方々に働いてもらって——成人になった者が、十八、十九過ぎれば一体どうするかということが一番親の悩みでございます。そういう方々に働いていただくチャンスというものを、いまこそ持っている法律を活用し、われわれが持っておるところの、ある場合には推進する力を熱心に出して御期待に沿う、こういうふうな感じ方を持っておりますことを申し上げます。
  47. 大野明

    ○大野(明)委員長代理 寺前巖君。
  48. 寺前巖

    ○寺前委員 私はきょうは二つの問題を聞きたいと思います。  大臣の所信表明に対する意見を聞きたいと思いますので、ひとつ大臣から率直に御意見を承りたいと思います。  一つの問題は、先ほどお話しになりましたが、生活保護の分野においても三月には幾らかのお金を出したいということがきょうの新聞報道にも出ております。きょうの閣議で、失対の労働者に対して三日分就労の日をふやすという問題を御説明になっておりました。この失対の賃金の問題をめぐって若干聞きたいというのが一つです。  それからもう一つの問題は、主として身体障害者の問題についていま話がありました。しかし、身体障害者の雇用問題もさることながら、いわゆる精神薄弱といわれるような人々の問題については、大臣の最後のおことばの中にありましたが、この分野の障害問題というのはさらにきびしい状況にありますから、この分野の問題について一体どのような見解をもってお仕事をしていただいておるのか。二つの問題について私はきょうは聞きたいと思うのです。  まず最初に、失対の賃金の問題ですが、いまのお話を聞いておりますと、三日分働かして、収入を三日分たくさん取れるようにしてあげたい、これが大臣のいまの御答弁の趣旨だったと思うのです。ところが、失対の労働者は、月に二十二日ですか働きます。あと失業保険をもらいます。失業保険の収入があるのです。両方を合わせて収入にしております。三日分働かすといったら、結局のところどういうことになるのか。失業保険の分が減って、そして就労の日がふえて、収入全体としてはたいしたことにならないのじゃないだろうか、私はそういう感じを受けるのです。  そこで、私はあまりこまかいことをここで当局の皆さんにお聞きしようとは思いません、細部のことについては私もよく知っていますから。ただ、大臣にそのことをのみ込んでおいていただかなければ話にならないから……。  問題は、ほんとうに失対の賃金というものに対してこれでいいのかということを基本的に考えていただかなかったならばいかぬのじゃないだろうか。  そこで聞きます。東京で標準的に、平均的にというのですか、失対の賃金は一日何ぼですか。事務当局からお答えいただきたい。
  49. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 千六百十八円でございます。
  50. 寺前巖

    ○寺前委員 念のために、当初予算を組んだときの賃金は何ぼだったでしょう。
  51. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 千五百四十六円でございます。
  52. 寺前巖

    ○寺前委員 そこで私は聞きたいのだが、失対の賃金が当初予算のときは千五百幾ら、そしてあれは十月に是正したのですね、十月に是正をしたときで千六百十何円、こういう実態だ。私はこの賃金は非常に低いように思う。  そこで、この失対賃金というのは法律ではどのようにしてきめるということになっているのですか。
  53. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 緊急失業対策法の規定によりまして、類似の作業に従事する労働者賃金を考慮して、失業対策事業賃金審議会の意見を聞いて労働大臣が決定するというふうに法律の規定はなっております。
  54. 寺前巖

    ○寺前委員 それでは東京の類似の屋外作業をしているところの賃金というのは幾らですか。
  55. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 手元に資料がございませんのでわかりませんが、先生指摘の点は屋外職種別賃金調査の結果をお尋ねだと思いますが、手元に資料がございませんので、申しわけございません。
  56. 寺前巖

    ○寺前委員 すぐわかることでしょう。私四十七年の八月の屋外労働者職種別賃金調査というのを調べてみたのです、あまりに失対の賃金が安いものだから。それを見ると、八時間に換算すると、軽作業の人夫を見ますと、東京都の場合には二千四百三十六円になっているのです。これは男女両方の平均ですよ。間違っていますか。間違っておったら言ってくださいよ。男子を見ますと軽作業の人夫は東京の区部を見ると三千百三十三円で、女子を見ると千八百六十四円になっているのです。これは四十七年八月の調査です。ですから、当初予算のときをそれと合わせると、当初予算のときには失対の賃金は、四十八年度の当初として、それを基礎にして見ると、千五百四十六円になっておる。これは標準で見ると、二千四百三十六円に対して千五百四十六円という数字になると、どこから考えてもあまりにもひどい違いじゃないか。法律では屋外労働者の似通った地域の賃金と見合ってやりなさい、こういうふうになっているのにもかかわらず、何でこんなに大きな食い違いが生まれているんだろうか、私はこれ、理解に苦しむのです。常識的に考えて、何で基本的にそういうものとして見ないのだろうか、私はちょっと聞きたいと思う。
  57. 佐藤嘉一

    ○佐藤(嘉)政府委員 手元に数字がございませんので、先生調査の結果の数字には間違いがないと思います。先生ただいま述べられました数字は、建設業全体の東京における数値の平均賃金をお述べになったと思うわけでございますが、失対賃金の算定にあたりましては、失対事業賃金審議会の答申に基づきまして、建設業でもいろいろな工事種目がございますが、その中で総合工事業の中の道路工事、港湾河川工事、その他の工事と、失対の就労者就労実態に対応しましたこれらの三工事の中に従事をしております土工、重作業人夫、軽作業人夫のうち、しかも雇用形態としては常用、日雇いがございますが、日雇いの労働者、しかも定額制、請負制がございますが、その中の定額制、通勤、住み込みの形態がございますが、通勤というような形、いま申しましたように、道路、河川工事、その他の工事、しかも形態としては日雇い、定額制の通勤の労働者を対象といたしましてやっておるわけでございまして、失対賃金の算定にあたりましては失対事業賃金審議会の答申に基づきまして、いわゆる一般的な給与額をとってるおわけでございまして、先生指摘数字は建設業全体の平均的な賃金でございますので、おのずから差異が出てきておるわけでございます。
  58. 寺前巖

    ○寺前委員 去年の失業対策事業賃金審議会の中間答申というのがありますよ。それを見ても、「当面屋外労働者職種別賃金調査結果を考慮することが適当であると判断するので、従来どおり、同調査結果のうち建設業の総合工事業中、失業者就労事業の事業種目に対応する道路、河川等の工事種目における定額制、通勤の日雇労働者の一般的な給与額を基礎とし、職種の選別については、失業者就労事業就労者労働力構成に見合うよう配慮すること。」という中間答申が審議会でも出ておりますよ。私は、この中間答申から考えてもどこから考えても、いまのおたくの言っているようなことの賃金実態にはなってこないと思うのですよ。だから、何だったら一回連れていってもらって、この仕事とこっちの仕事とどう違うかというのをやってくれるかね。労働大臣が一回東京の実際上の同じような仕事をしているところの現場へ行かれて、こういう仕事をしている場合の賃金は一体あなた何ぼもらってますかと言って聞かれたらいいと私は思うのです。常識的に考えてこんな低い賃金というのはないですよ、ほんとうのところ、何ぼ理屈をつけても。  この前あなたのところから、賃金はどうしてきめるのじゃと言ったら、全国のモード値の数字出して説明してくれましたよ。そういう話になってくると、もうこの法律とは全然関係なしの話だ。だから、私はもう多言を言いません。多くを論じません。問題は、法律にちゃんとあるように、その地域の同種の仕事をやっている人の常識がありますよ。社会の人が見たらわかる常識があるのです。やはりその常識の賃金にするということが基本でなければならないと思うのです。私はここを変えなければだめだと思うのです。  そこで大臣、聞きますけれども、この十月に改定をしたわけですよね。それは形式は、物価が上がる、社会の賃金も上がるという結果に基づいてなぶったという形式だろうと私は思うのです。その後の物価の上昇というのは激しいものですよ。公共事業なんか出しているのを見てごらんなさい。公共事業の入札については建設省もちゃんと言っていますよ。変化が生まれたんだから、その変化に応じたように労務費の問題についても考え直してよろしいということを言っているのでしょう。ちゃんと指示も出しているのです。社会の賃金相場の変化が起こっている。社会の賃金相場の変化が起こっているのだったら、すみやかに審議会を開いて相場の変化に応じた賃金改定をやるというのが私は基本だと思う。さっき三日間の就労日数をふやして何とか賃金を一カ月分たくさん入るように——私はこまかい配慮の問題についてはここではもう言いません。だけれども大事な問題は、一日の賃金の決定のしかたというのは、その地域の常識に合わなければだめだ。ここを変えなければならないというときに来ているのじゃないか。去年の十月改定以後の状況を見たら、新たな変化を提起していることは、公共事業のあの三省協定といわれる数字を見たって、あるいはその後の具体的な建設省の指導を見ても、改定をしなければならないということを認めているわけでしょう。認めているのだったら、基本的な内容を変えなければいかぬということになると思うのです。大臣、どうですか。こまかい話はしませんから、要するに私は、法律から言うならば、基本的には変えなければならない時点に来ているということを認められるのかどうかです。
  59. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 だんだんの御議論の筋はわかりますが、あなたも御承知のとおり、失業対策事業賃金審議会というものがおきめいただいているわけであります。そこで昨年の五%の問題もあり、あるいはまた、今度こういうときであるから三日間ワクをとってきた話もあり、来年はまたたしか一九・二%上げているということもございます。私自身も実は朝よくトレーニングに行くものですから、失対の就労者皆さん方が渋谷の駅前などで掃除をしている実態にぶつかることもあります。あるいはまた二、三日前も労働省の前に大ぜいすわっておられるのを見まして、思わず、かぜでも引かないように、かぜでも引いたら元も子もないぞというて激励などもしたこともございますが、そういう方々の実態も多少触れておりますが、建設費の資材高騰のものと多少わけが違いますので、いまのような審議会の御意見、そしていまの情勢というものをまたあらためてそういうところで御審議いただく機会があろうかと思いますが、従来の慣行に従って賃金を決定していただくというところを御理解いただきたいと思います。
  60. 寺前巖

    ○寺前委員 大臣、その法律は、いまも言っているように実勢に合わせということでしょう、わかりやすく言えば。その地域の同種の、それに基づいてお金を払いましようじゃないか、これが法律賃金のきめ方になっていると思う。その内容を審議会に持ち込んできめる、こういうことになるわけでしょう。だから十月の場合にそういうことをやったんだから、基本的に言うならば、すみやかにそういう作業に乗り出さなければいけない。乗り出す時期が来ているんじゃないか、明らかに変化が起こっているんだから。それはちゃんと建設省のほうでは、物価高騰、工事請負契約が変化が生まれざるを得ないときに来ているんだから、労務費についても考え直してよろしいということを公共事業の場合にも指示しているんです。これ、いつやっているのか。とうにやっている。十月の賃金改定以後早い時期にやっている。その時期にそのことをやっているのだったら、すみやかにそれに呼応して、公共的な仕事をやっておられて、ここの分野においても新しく資材の高騰だけではなくして、労務費についても考え直さなければならないということを片方で指示しているんだから、それに呼応する準備をしてすぐに審議会にかける、私はこれは常識だと思う。だから常識から考えるならば、今度の三日間という問題提起は御配慮の問題としては理解はできても、賃金という問題から見るならば、基本的には十月改定以後早い時期に、建設省が公共事業の分野において労務費を上げたという問題の直後に、あわせて検討して提起すべきだ、そういうふうな体制に以後改めていただきたいというふうに思うのですが、その辺の見解をひとつ聞きたいと思うのです。
  61. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 公共事業の設計単価と申しますか、昨年来資材費その他の高騰によりまして、単価が引き上げられる措置がとられたことは先生指摘のとおりでございます。私のほうの労働省関係におきましても、こういった準公共事業的な緊急就労対策事業あるいは産炭地開発就労事業等につきましては、こういった原材料、資材費等の値上がりによる増額措置は私ども講じてまいっております。この点につきましては、御承知のとおり賃金につきましては、労使間の協議によって定められることになっておりますので、実勢に応じて賃金もきまってくるかと思います。  失対賃金につきましては、先ほど来御説明申し上げておりますように、また先生十分御承知でございますが、前年の八月の屋外職賃の結果に基づきまして、類似の作業に従事する人たち賃金を参考にしながらきめるということで、ただいま先生再三お繰り返しになりましたように、常識的なものできまるということでございます。その中でいろいろとございますが、いわゆる就労者構成とか年齢構成とかあるいは作業能率、そういったことによってきまってくるわけでございます。日雇い労働者賃金を日々の情勢によって決定するということはなかなかむずかしゅうございまして、この賃金決定にあたりましては、毎年八月の屋外職賃の結果がもとになるということになっておりまして、私どもは、昨年末審議会の答申によりまして八月の結果をもとにした積算をいたしました上で、来年度一九・二%の上昇を予算化いたしまして、現在御審議をいただいているわけでございます。三月にその具体的な各県別、各地域別の賃金決定が行なわれるわけでございまして、審議会におきまして、その際こういった情勢につきましても十分御報告申し上げて御審議をいただきたい、かように考えておる次第でございます。
  62. 寺前巖

    ○寺前委員 大臣、提起している問題は、そういう事務的の話じゃないのだ。四十八年度予算は、五・五%の物価上昇という前提を基本にして予算を組んだわけでしょう。そのときの賃金はどういうふうにしていくかということ、それを全部考慮した上で予算を組まれたと思うのですよ。それが明らかに狂いが起こってくる。工事費の面においても狂いが起こったわけでしょう。一般公共事業の面において狂いが起こった。それから、失対の場合は性格が少し違うが、生活保護の場合も変化が生まれて、いままでのやり方ではどうにもならぬといって、十月にその改定をやったわけです。だから、基本的に狂いが起こった。前年のあれを基礎にするだけではだめだというので、労務費の場合においても改定を考えざるを得なかったわけですよ。それがことしの特徴だったと思うのです。物価が異常に上昇したというのがやはり特徴だった。だから、それに見合った工事費を準備しなければならぬし、それに見合った労務費を準備しなければならぬ。建設省のほうはそうでしょう。だから、同種の業態に新たな事態が生まれたという異常な事態の場合に、積極的に労働省もそれに呼応するところの賃金を審議してくれと提案するのは、そういう意味では当然だ。だから、十月に改定されるというのは当然だと私は思う。その後の事態は、十月までの物価の変化と十月以後の物価の変化、これを考えたら、これまた異常な事態なんです。もっとひどい状態になったわけでしょう。この事態の中における賃金決定というのは、そういう意味では緊急性を持っている賃金の基本問題を考えなければならない事態があった。大臣、ちょっと聞いてくださいよ。さっきもここでお話があったように、労働大臣のとっている態度はおそ過ぎるじゃないかという批判があったと思う。次の審議会ということではなくして、こういう事態が生まれたときには直ちに検討に付すということをやるべきじゃないか。すなわち、公共事業の分野において新しい労務費が考えざるを得なくなっているときには、呼応してこれを考えていくということをすみやかに作業としてやる、こういう態度をとられなかったら、社会の実勢に合わない賃金になるのではないか、御検討いただきたいというのが一つ。私はもう多く論じませんから、それが一つ。  それから、昨年の実態に基づいてそれぞれの地域の失対賃金をきめましたという話でしょう、簡単にいったら。ところが、私は常識的に見て合っていない。ですから、ことしの賃金決定については、大臣責任をもって、社会常識に合うかどうかということを各地域別のやつを点検して、新しいやつはやります。この二つについてお答えをいただきたい。
  63. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 非常に失対就労者についての御同情ある御発言、けっこうだと思います。私が今度三日分差し上げたことを御理解いただいていると思いますが、いまの賃金の問題は、先生承知のとおり、やはり情勢等考えながら、昨年にいたしましても、一三%のやつを十月に五%上げたり、さらにはまた四十九年度は一九・二%というふうに予算に組んでいるわけでありまして、審議会で、年齢あるいは地域、いろんな問題等々を勘案しながら、私は最近のこうした賃金が決定されていると思います。そういうことからいたしまして、将来ともにいまのような審議会の非常な慎重な、そしてまたいろんな問題を勘案してやっていることを尊重しながら、それを実行していきたい、こう思っております。
  64. 寺前巖

    ○寺前委員 大臣、ちょっとぼくの言っていることを理解してもらっているか。要するに、公共事業の面で予算の当時よりも実態に合わない分野が出てきたので、緊急是正の措置をしたわけです。わかるでしょう。公共の契約のあり方として、これじゃ仕事にならぬということで緊急是正をやったわけです。そうすると労務賃も上げざるを得なくなったわけであります。事業費を上げなければならなくなった、労務賃も上げなければならなくなった。そういう事態が生まれたときに、その賃金は地域の同種のやっと見合って払うということが基本なんだから、実態に合わなくなった場合には、相呼応して、すみやかに失対の分野においても合うように検討するのは当然でしょう、こう言っている。それだけの話。答弁ください。——ちょっと待ってください。大臣に言っている。数字じゃない。常識論を言っている。わかりますかと言っている。さっきから答弁がないものだから。
  65. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 ですから、そういうふうな情勢を踏まえながら、私のほうとすれば昨年の十月に五%上げた、そういうことです。
  66. 寺前巖

    ○寺前委員 もう一回説明しましょう。昨年の十月、そういう情勢を踏まえてやられた。よろしい。それじゃ、あの十月以後に異常な事態が生まれて、建設省がそれ以後の事態において緊急是正をやっているわけです。それに呼応するやつをやらなければだめでしょう、こう言っている。だから、ものごとはそういうふうに、今後常に、公共事業でそういうことがやられる場合には、同じように呼応するところのやつをすみやかにやるというのが常識的でしょうと言っている。それを御理解いただけましたかということです。
  67. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 そういうことも考慮しながら、先取りして四十九年度には一九・二%をちゃんと私のほうは予算を立てている、こういうことでございます。
  68. 寺前巖

    ○寺前委員 そうじゃないのです。本年度予算の話をやっているのではない。緊急是正というのを建設省は、鋼材の価格が高騰したときに、単価の計算から、人件費についてもいついつ以後の分については、労務費についてこういうふうに上げてよろしいということを九月段階に出すと同時に、十二月段階にはいままで契約したものについても遡及して、こういうふうにやりなさいとか、新たな指示をやっているのですよ。この時期に、さらに十月段階の賃金の、おたくのほうでやった段階とは違った新たな段階提起をやっているわけです、この段階に。この段階に提起している段階に呼応するやつをやるべきではなかったのか。だから以後そういう方向で考えてもらいたいという問題提起です。
  69. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 確かに公共事業につきましては、事業の遂行上資材費等の値上がりその他によって公共事業の単価が改定される、これはあり得ることでございます。しかしながら失対事業につきましては一般公共事業と違いまして、賃金の面におきましても、一般公共事業が民間の労使の間で決定される、こういう原則でございますのに反しまして、失対事業の場合は賃金審議会の意見を聞いて同種の類似の作業に従事する人たち賃金をもとにして大臣が決定する、こういうことになっておりまして、一年に一回決定するというのが原則でございます。たまたま昨年の十月に五%の臨時改定をいたしましたのは、全く異例の措置でございまして、今後そういった民間の賃金が月々日々動くからといって、これに追随して流動的に決定を変更するということは、これは私どもは原則としてとるべき措置ではないと考えております。ただいま大臣からお話がございましたように、全く諸般の情勢から異例の措置として行なわれたことでございまして、それをもとにして来年度はそういった事情も勘案しながら一九・二%のアップ措置を講じているわけでございますので、その点を御了解いただきたいと思います。
  70. 寺前巖

    ○寺前委員 異常な措置だ、そうですよ。異常な事態が起こっているから異常の措置をやるのだ。異常な事態が起こっているから異常な措置がとられているわけですよ、公共事業の面でも。公共事業の面でもいつでもこんなことやっていませんよ。異常な事態が生まれてきているから異常なことをやっているのだよ。だから言っているのだよ。だから大臣ほんとうのところをはっきり検討してほしい。  一つは、たとえばさっき東京の例で言った、実際の常識から見てあまりにも低い状態にある。今度はそういうことのないように、もう一度責任をもって見直してくださいよ。私はきわめてそれは常識的に言っているのだから。だからもう一度責任をもって常識的に見直してほしい。この前のやつももう一度振り返って見てほしい。実際にその地域の同種のやつ等の関係を見て、常識的であったのかどうか反省してくれということを私は要求しているのです。別にむずかしいことを言っているのではないのだ。それが一つ。  もう一つは、異常な事態が十月までの段階にもあったからそういう事態がつくられた。ところが十月以後の事態のほうがもっと異常だ、これは常識的です。そうすると、その十月以後の異常な事態に合わして緊急措置をとるべきである。私はそういう基本賃金の問題として考えてもらいたい、こういう異常なときにはそういうふうにやるべきだというふうに思うのです。それで私はすなおに——私はこだわって言っているのじゃないのだから、すなおにそうだと言われたらいい話であって、何もいま三日分出すやつにけちをつけているわけでも何でもない。よろしい、早う出せと私は言うのやね、そっちのものは。——そっち見てはあかんねん。だからそっちのほうは言わぬと言うとるのや、さっきから。そうやろ。一番常識的なところを考えてくれなければ困るよという話をしているので、これは大臣に対する話であって事務の話をしているのと違うのだから。だからその点をすなおに検討してくださいますかと、これだけのことなんです。もう一度お願いして次に移りたいと思うのです。
  71. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 そういう御議論が熱心に出たということを心の中に入れまして、いまから先いろいろ研究してみたい、こう思います。
  72. 寺前巖

    ○寺前委員 研究してみるというのですからほんとうに研究してくださいよ。心から私は要望します。  次に移ります。  さっき言いましたが、いわゆる精神薄弱者といわれる人々の雇用問題というのは身体障害者の雇用問題とは違ったむずかしさがあるという前提に立って私はお聞きをしたいと思うのです。  この精神薄弱者といわれるこういう人たちは雇用の対象として検討されるのかされないのかということをまず私は最初に聞いておきたいと思うのです。
  73. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 法律上あるいは世間一般で精神薄弱者といわれる方々の中に、先生承知のとおりいろいろな態様、程度の差がございまして、一がいに精薄者といわれる人たちを雇用の対象として労働力として取り扱うことが妥当であるかどうか、この点は非常にむずかしい問題があると思います。私ども従来からこの精薄者を雇用の対象としての職場の確保といった点で、行政面でどういう措置をすべきかという御質問を受けております。またいろいろと御要請を受けてまいっておりますけれども、こういう人たちを具体的に現実に雇用政策の対象として考えます場合に、一般社会人の中に伍してこれを雇用の場につけることの可否についての判断をどうすべきか、その判断基準、そういったいろいろな個人的な差異がございます。そういった点で非常にむずかしい問題をかかえておりまして、私どもはまだなかなか具体的な基準あるいは政策の目標等を確定するまでに至っていないのが実情でございます。
  74. 寺前巖

    ○寺前委員 心身障害者対策基本法の第十五条「国及び地方公共団体は、心身障害者の雇用を促進するため、心身障害者に適した職種又は職域について心身障害者の優先雇用の施策を講じ、及び心身障害者が雇用されるのに伴い必要となる施設又は設備の整備等の助成その他必要な施策を講じなければならない。」心の障害者といわれることばの使い方についてはいろいろ異論がありますが、法律にこういうふうに指摘をしております。ですから国並びに地方公共団体がこの雇用の対象として施策を講じなければならないことは、基本法で明確にしてあるわけです。ところが現実には身体障害者雇用促進法というのですか、という法律が存在しているだけなんです。ですから精神薄弱者の取り扱いのほうの法律は、現実には存在していないわけです。そのことを局長さんは検討中だということでおっしゃったのだろう。内部のいろいろなことはむずかしい面があるということをおっしゃったのだろうと思うのです。   〔大野(明)委員長代理退席、斉藤(滋)委員長代理着席〕  私も決してそう簡単につくり上げるということにはならないと思いますが、だけれども、この分野について基本法で指摘している立場に立って、責任をもって追及をしていただきたいということを心の底から思うわけなんです。  私のところにもいろいろな手紙が来ております。たとえばこういう手紙が来ているのです。「私は脳性麻痺の障害者です。年は三十二歳で東京に出てきてから一年半になります。現在は生活保護を受けて生活しています。東京に出てきたときは、新聞の拡張員として働きましたが、ノルマに追われ、また給料も歩合制で八カ月ほどでやめました。からだもこわしましたし、それで今度の仕事は無理のない仕事ということで車の免許をとりました。それで職安に行き仕事をさがしてもらい、その会社に行きましたが、しばらくすると不採用の通知が来ました。会社名はKK・アークで、不採用理由は、身体障害者が必ずしも不可でありませんが、両手に商品を持って運び、納品する場合もかなりありますので、この方には気の毒でありますが採用できませんということでした。  そこで今度は蛇の目ミシン工業につとめました。集金係は保証金五万円を積まなければならないということでセールスに回りました。ところがここでもノルマに追われ、それについていけなくて断わられました。今度は光国商事というところに行きました。ここでも不採用。理由は肉体的に少々無理。今度は人の紹介である金属会社の一般事務に行きましたが、人が足りないということで七時ごろまで毎日残業をやらされ、しかも事務のほかに、金属をみがいたり運んだりということで、無理がたたりやめさせてもらいました。一年の間に四回も五回も不採用になったり、やめざるを得なくなったり、一体どうしたらよいのでしょう。しかも賃金も安く、最高五万円、何がしか差っ引かれて四万数千円。これでは夫婦二人で民間のアパートに入り生活することはできません。障害者には働く権利がないのでしょうか。どうか人間として働くことを保障してください。」  こういう手紙が来ています。ほんとうに年じゅう次から次へと歩いておられます。まだ歩く分野の人もありますが、歩けない分野の人たちもまだたくさんある。この分野の人たちに対する対策上のむずかしさもあると言われることは私もわかります。だけれども、むずかしければむずかしいほどよけい集中的に仕事をしてあげなければその責務を果たすことはできないと私は思います。政治というのは、ほっといてもいいところにあえて手を出さなくても、極端に手を差し伸べなければならないところにこそ政治は存在する、行政もそれに従属して存在するという立場に立たなければならないと私は思います。  そこで、いま文部省では、昭和五十四年に向かって教育の面において、いままではこういう分野の子供は、うちの子はこういう子だからひとつ義務教育を免除してくれという届け出をしたら、よろしい、かんにんしてやりましょうということでほかされておったわけです。それではいけない。そこにこそよけい手はかかっても仕事をしなければいかぬということになって、養護学校の義務化というのが、昭和五十四年までに準備しましょうということで義務化の準備がいま全国的になされております。私はこれは大きな光を与えていると思います。しかし、この義務化が同時に、学校に行ったら必ず次には社会に出なければならない歴史の過程にあるわけです。また、現に出ているわけです。そういう人たちに対して、片一方教育の面は義務的に設置の方向は進んだ。それじゃ雇用のほうもそれにふさわしい義務的な仕事を、国のほうがやはりそれまでにおくれないように準備する必要があると私は思う。文部省のほうが五十四年までにそういう対応の義務教育を全国的に実施するのだといわれるのだったら、労働省のほうも、この分野に対する雇用について責任を持った体制をいつまでに立てるかという基本を検討する必要があるのじゃないかと私は思うのですが、この基本的な態度についての大臣姿勢を聞きたいと思います。
  75. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 まさに学校を卒業したあとでそういう子供たちがどうなるかというのは、母親の一番の悩みであることはあなたと同様に私たちもよくわかるわけであります。そして、それが教育の面でそういう組織的な教育が行なわれるという一つの進歩だと思っております。労働省といたしましても、いまのうちにテストケース等々を考えながら、何かしらそういうものに対応する準備をいまから先整えていきたい、こういう感じ方を持っております。  なお、詳しい情勢かれこれ、いままでの作業等々については局長から答弁さしてもけっこうです。
  76. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 先ほど申し上げましたように、まず第一の問題は、そういった義務教育化が進んでまいりました場合にも、その修了者がはたして雇用対策の対象者として、一般健常者に伍して社会人としての立場を継続していけるかどうか、その判定を一体だれがどこでどういう基準でやるかということが、これが一番前提になりますむずかしい問題かと思います。しかし、そういうことをせんさくしておったのではなかなか前に進みませんので、労働省といたしましても、ただいま先生指摘のような精薄者の就職対策、雇用対策といった面で積極的に施策を講じてまいりたいということで、実はこういった人たちを対象にした専門の職業訓練校を現在全国で二校用意いたしまして、精薄者の中からぜひとも社会人として就職を希望したいという人たちを対象にして、適職を見つけまして訓練を実施いたしております。  これを全国的に及ぼすということはただいま申し上げましたように非常にむずかしい問題でございますけれども、こういった技能訓練を施しますと同時に、それを経ないでもなおかつ何らかの形で就職できる人たちにつきましては、専門の指導官を置きまして就職指導をしていくというようなことで、漸次そういう方向へ施策を進めてまいりたい、かように措置いたしておるわけでございまして、今後そういった義務教育化が完成しました暁に、その中から就職対策の対象者としてはっきりした基準を確定し、労働省の行政の中で身体障害者と同じような形で就職促進をはかっていくことができますならば、私どもはこれに過ぎたることはないというふうに考えておりますが、その具体的な措置を昨年の審議会の答申にもいろいろ指摘をされておりますところでございますので、そういったことをもとにいたしまして今後積極的に検討してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  77. 寺前巖

    ○寺前委員 いま大臣から、労働省としても当然義務化に呼応しての検討をしていくというおことばだったと思います。それで、私は早急に期限を切って準備に入ってほしいと思うのです。二つあると思うのです。一つは義務化に呼応するところの体制の問題と、それから現状の社会におられる人たちに対する対応の問題と、二つをやはり考えていく必要があるだろう。そこで、いま現状に対応する問題として、職訓校のお話と、それからもう一つは就職促進指導官のお話と、二つをやっているお話について聞かしていただきました。職訓校は、二カ校とおっしゃいましたが、おそらく愛知県一カ校だけだと私は思うのです。別にあげ足をとることじゃございませんので、念のために言っておくだけの話ですが……。そこで、それじゃ就職促進指導官というのがはたして今日そういう実態にふさわしいお世話をできる体制にあるのかどうかということについて、正直言うと、実は懸念をするものなのです。大臣はお聞き及びかどうか知りませんが、私の聞いているところでは本年度から設置されたように聞いております。間違いございませんね。そこで本年度八十名を設置された、来年度は九十七名にしようというお話として聞いておるのですが、間違いでしたら御訂正をいただきたいと思うのです。そこで私のお聞きしたいのは、ほんとにその人々が専念できる体制にあるのかどうか。私が聞きたいのはここなんです。就職促進指導官という名前を銘打たれるということは、このことは私は決して悪いことではないと思うのです。だけれども、ほんとに人一倍手間のかかる仕事である。人一倍手間のかかる仕事で、しかも時間のかかる長期にわたる仕事である。そのことを考えたら、そのことにふさわしい体制として、この八十名の人たち現状におるのかどうかということを具体的にひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  78. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 その前に、先ほど二校と申し上げましたが、実は愛知県の春日台、これは現実に動いております。それからもう一校は兵庫県に設置準備中でございましてまだ完成いたしておりません。そういうことで二校と申し上げたわけでございます。  それから就職促進指導官につきましては、実は本年度最初でなくて前から設置いたしておりましたが、来年度、四十九年度増員の予定で全体で九十七名になる予定でございます。確かに先ほど来御議論いただいておりました身体障害者の就職促進につきましでも、この専任の指導官を置いて実施いたしておりますが、なかなかむずかしい問題でございます。ましてや精薄者ということになりますと、先ほど先生も御指摘になりましたように、身体障害者を数倍上回るようなむずかしい問題でございます。そういう人たちに対しまして専任の指導官を置くと申しましても、これは、精薄者のいわゆるいろいろな施設がございますが、そういった施設の担当者と同程度あるいはそれ以上の専門的な知識に加えて就職関係の指導を要する問題でございますので、一朝一夕になかなか十分な人を得られると私ども考えておりません。したがいまして、いきなりそういった十分ふさわしい能力を持った人というわけにまいりませんので、現在の職員の中からそれに向いた人を当てまして、これを本年度から逐次教育を施しながら、先生の御指摘の養護学級の義務化といったような問題もございます。ここ一年、二年でこの業績があがるわけでもございませんけれども、私どもは積極的に、逐年この精薄者の対策が進められるように、こういった指導官の養成、研修等を重ねてまいりたい。そういたしまして、各県少なくとも、八十名では足りないんじゃないかということもございますけれども、逐次、身体障害者の対策とこの精薄の対策とあわせながら、こういった社会的困窮者の就職促進に全力をあげてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  79. 寺前巖

    ○寺前委員 まあ各県一名程度では少ないではないか。——一名以上おられますわね、八十名ということになりますと、都道府県から見ましても。それでも大きなところもあるから、各県一名。第一線は職安ですから、職安の数からいうと四百七十ぐらいありますか、それから見たら部分にしか配置されていないことになるということも事実ですから、すべての職安に配置されるという状況をつくっていただいたらいいと思うのですが、問題は、いま配置している就職促進指導官という人が、専念これにつとまるだろうかという問題が私はあると思う。  それで、実は東京を調べてみたんです。東京の職安は十六あります。十五のところにこの指導官が入っている。一人を除いて全部援護係長なんです。職安の窓口へ行くと全部援護係長なんです。その援護係長は何をなさるのですかというと、心身障害者、要保護者、釈放された人、精神病患者、特殊婦人の仕事、そういう仕事をします。それで、この分野の話は、その中の一つの係長でございまして、肩書きはつけていただいているけれども中身はそうはいきませんというのが第一線の現状のようです。しかも、就職促進指導官というのは、中高年齢の分野も担当する就職指導官になるんでしょう。おそらくそうじゃないですか。これは間違っていますか。——まあいいですよ。要するにそういう多面的な仕事がある。それじゃ一人だけは係長じゃないんだから、よっしゃその係長でない人に会ったら、ここでは何か専念してやってくれているんかいなと思って行ったんですよ、一カ所だけ係長でないところがあるから。そこは足立の職安です。そうしたら、係長のもとに係員一名です。そこで何をやっておられるのかということになると、これまたたいへんなんです、聞いてみると。釈放された人に対する職業紹介が年間百四十人から百五十人ある。刑務所から出て来られた人が百四十人から百五十人。要保護者に対する職業紹介も同じぐらいあります。ここだったらと思って行ったところが、そこもそうじゃなかったということがわかってしまった。結局、一人も専念できる体制がない。  これは時間のかかる仕事であり、長期にわたる仕事であり、かなり専門的な、心理学というのか、そういう分野も勉強しなければならない仕事なんですね。この人たちを私はほんとうに大切にしてほしいと思うのです、この仕事に肩書きのついた人たちが将来にわたってやれるように。とすると、肩書きをつけただけで、重苦しい思いだけをさせてしまうことになるんじゃないか。私は、ほんとう仕事をするんだったら、専念できる体制になってとけ込んでもらえるように、これはポストの面からも考え直していただけないものだろうか。これはもう既成の行政のワクをちょっとはみ出した話で大臣に言うわけです。取り扱いを基本的に考え直すような位置にその人たちを置いてもらいたい、これが一つ。  それから、去年講習会をおやりになったそうです。十日間ほどやった。講習会へ行って帰ってくるわけですが、これではほんとうのところ、一番大切なのは、こういう分野の仕事に対して上のほうの人が理解をしてくれなかったら、一ぱい仕事がある中で、もういいかげんにせいよという扱いになるじゃないか。だから、このポストの講習会ももっとやってほしいが、このポストについていない人を含めてもっと理解してもらうために、係官でなくても、一つの職安から二人なり三人なり集めてもらって、周囲が理解してくれなかったら困るという、そういう講習会と、えらいさんの講習会をやってくれ。むずかしい分野だけに一そう理解を全体として深める態勢に入ってもらいたいということが強く要望されたわけです。私はほんとうにこれはたいへんな、一方で教育の義務化をやる、それに呼応する中で職安がいま直ちに改善しなければならない問題として検討をしていただきたいというふうに思うのですが、いかがでしょう、大臣
  80. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 学校の場合もそうでしたが、ベッドスクールというものをやる場合には、普通の学校におれば健全な子供たちを相手にして楽な授業ができた。しかし、そうしたベッドスクールなり特殊学級の先生というものは、やはり愛情を持つことが一つ、そうしていとわないという気分が一つ、これがようやく定着をして、それがだんだんにいまのようなベッドスクールなり特殊学級というものを拡大していった。私は、そういうことからいたしますと、先生のお話を伺ってわかる気がいたします。なぜかなれば、職安という大きな一つ政府機構というものがあるから、時には就職のあっせんなども相手が聞いてもらえるというたよりになるものがあります。そうしてそれをやってくれるその人が、やはり愛情とそういう仕事の重要性というものが身についていないと、なかなか普通の人間の就職はいまこそは楽でございますけれども、身体障害者の場合でさえも先ほどのようなお話でございますから、いわんや精薄ということになると、よけい就職させるにも手間がかかるし、今度は本人を会わせるまでもまた説得の時間もかかる問題もある。個人差が非常にあるわけです。でありますから、私はいまお話しのように、やはり専門官としますというと、そういうふうな背景をよくのみ込みながら、愛情を持ちつつこれを続けていくという形の雰囲気といいますか、機能といいますか、制度、こういうものがどうしても将来ともに必要じゃなかろうか。  幸い私は見ておりますと、最近は何といっても、社会保障というものが全体の空気の中になっておりまして、若い諸君の中でも、社会福祉大学を出たとか、あるいは大学の心理学科を出たとか、児童心理をやったという者などが、時には学生時代にさえもボランティアでやっているところがたくさんあります。やはりそういう雰囲気の中からいまのような諸君が入ってもらうこともあるでしょう、ある場合には、いまなっている人がそういうふうに講習会などによって、この重要性というものを御認識いただきながら熱心になっていただくということもあるんじゃなかろうか。非常にいい意見をきょうは聞かせていただいたことは、私のほうでもすでに二校をつくって労働省としてやっていることでありますから、将来の改善なりあるいはまた、いまのような制度の進捗の問題等々について、せっかく学校はつくったもののお世話できないというふうな形じゃまずうございますから、効率をあげるためにはひとつ懸命な努力をしていきたい、こう思っております。
  81. 寺前巖

    ○寺前委員 大臣のお話を聞いたわけですが、私は、だからもうさしあたっての具体的改善を、まず、職安の窓口の改善問題については具体的に御検討をいただきたい、私が提案した内容で。これは大臣、御了解いただけますか、ちょっと念のために……。
  82. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 いままでどういう形であるかということを、先生のお話などもありますが、役所としてどういう機構とどういうふうな人事をやっているかということを、あらためて私も内部において検討いたしましょう。
  83. 寺前巖

    ○寺前委員 それから次に、いまお話しの職訓校の問題ですね。現実には愛知県でおやりになっているわけですが、全国的にまだ受け入れられる条件に全体として進んでいないわけですよ。これは私は、やはりかなりの援助を財政的にもしないと、自治体が受け入れるということにならない面があると思います。新しく施設をつくるという問題もあるでしょうし、あるいは既存の都道府県立の職訓校を改善するという問題もあるでしょうし、一番とっつきやすい形態でそれぞれのところが実践できるやり方を、これをそれこそ年次計画を立てて推進させる、そのための財政検討もやるということを、ひとつ四十九年度の課題として職訓校問題について御研究いただけないだろうか。四十八年度予算の提案をしているのに、これをこうこうごうごうということを私はここで言いませんから、要するに四十九年度の課題として研究をして、年次計画でもって改善できるように御検討いただけないだろうかということを強く要望したいと思うのです。これが一つ。  それからもう一つは、現実の問題として、養護学校を卒業する子、たとえば私の住んでおります京都でいうと、日本海のところに宮津というところがあります。その宮津に与謝の海という養護学校がある。これはできてから間がないのですが、ことしその高等部を卒業する子を見ていると、十三人の卒業生の中ですなおに就職できた人は五人なんです。すなおに——これは、学校の先生と職安の方々の御努力で、親も含めて御努力で五人はすっと就職ができた。四人の方は、職適といわれるあの制度で一年間めんどうを見てもらって訓練をして、あと引き続いてお世話になりますよという制度の中に入れられた。それからあと四人の人は、これはなじまないわけですね。こういう事態が生まれるわけですよ。  そこで、この職適の制度そのものを、ずっと職安の人と学校の先生と親御さん、地域の方々との懇談の中で進める上において、一番に討論をしてきてわかってきたことは何だったかというと、これはこれらの精薄の方々を、いわゆるIQというのがありますね、IQとか手作業の能力の度合いがどうのこうのということよりも一番大切なのは、職場雰囲気に入れるのかどうか、雇用主を含めて一緒にとけ込めるかどうかということが、一番の全体の人の努力の到達点なんですよ。だから、職適に入れるか入れないかという条件に入るか入らないかという問題の場合の第一要件というのは、むしろそのことなんです。IQが何ぼ以下だったらあなたはだめだとか、手作業のあれがどうだからだめだとかいうこと以上にその問題のほうが重要なんだということを、先生も職安の人も雇い主も家族もみんなが言うんです。  なぜ私はこの問題を提起しているかというと、実は昭和四十七年の秋に、この与謝の海の養護学校の卒業の子供を前にして、職安のほうから学校に、就職される方々のIQを聞かしていただきたいと、こう聞かれたんですよ。そうしたら、学校のほうはびっくりしたわけですよ。IQで私たちは教育やってません。どうして社会の中にとけ込めていけるかということを教育の基本にして育てております。だから、IQを何でお調べになりますかということで、そこから学校の先生と職安の方々との論争が始まった。そして、今度は雇い主やいままでの経験者にも来てもらって話したら、一番の焦点はむしろそこだったということに到達してきたわけだ。なぜ、それじゃ職安の人がIQは何ぼですかという問題を持ち込まれてきたかというと、実は労働省から出ているところの「精神薄弱者の職場適応訓練」という文書がある。四十二年に出した文書です。この文書に「実施対象者の認定基準および運用方針」というのがあって、その一番初めのところに、IQを縦に書いて横にMNの状況について書いた表がある。ですから、この人は職場適応訓練の対象者になるかどうかということがまずすべての先決事項だというので、それを調べないといかぬというふうに思われたわけです。ところが、四十四年になると、労働省の通達でこれだけでやってはいけないというような、そのあとについてくるように変化があったわけです。変化はあったけれども、やはり一番にこれが指摘してあるからこれを言いに来たわけです。そこで論議になって前進したのだから、それは非常にいいことなんです。  そこで、私は今日の到達時点から見るならば、こういうIQとMNを表にしたものを出しておかなければ、職場適応訓練の該当になるとかならぬとかいう段階にないということが、実践的にはもう現場のほんとうに討論やってきた人には到達してきているのだから、むしろ私は、適応訓練のこの文書は新たな段階に改善をしていただいたらどうなんだろうか。私はいままででも改善してきておられることを否定はしませんのですから、さらに新たな段階としてこの改善をしてもらうということが大切ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  84. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 精薄者の場合、職場適応訓練という制度が非常に有効であることはもう先生指摘のとおりでございます。そもそも職場適応訓練という制度をつくりましたのは、いわゆる職業訓練、技能教育訓練とは違いまして、その職場に就職をしようとする人がその職場になれていただくということが職適の最大の眼目であり、目標でございます。したがいまして、ただいま御指摘のように、精薄者の就職促進のために職適を利用します場合に、IQとかMNとかこういった指数を基準にいたしましたことも、過去においてもこれが最重点的な扱いを受けたことも、私は理解できるような気がいたします。  と申しますのは、先ほど来お話がございますように、精薄者を職場に定着させようとする場合に、その職場に対しての対応能力というものがまず安定所の担当官からいたしますと一番まっ先に頭にくる問題であります。したがって、そういった適応能力があるかないかということをまず判定をした上で、そうして職適を利用しよう、活用しよう、こういう考え方だろうと思います。しかしながら、たとえIQが低くてもMNがいかがであろうとも、そこで職場になれさせて、たとえ能率が低くてもその仕事ができるということであれば、私は職適を活用することが最も妥当であろうと思います。したがいまして、その職適の適応基準を9とかMNとか、そういった職場適応能力の判定をまっ先に置くのではなくて、こういった人たちが一般健常者に伍して社会人として仲間入りできるかどうかということが一番問題であろうと思いますので、私どもは今後はそういう方向でこの問題の処理に当たっていきたい、かように考えております。
  85. 寺前巖

    ○寺前委員 ひとつそれではよろしくお願いします。  時間もおそくなりましたので、私はあと一言だけちょっと……。  精薄と少し離れますけれども、障害者の問題というのはさらにいろんな分野があります。内部障害の人の問題についてもこれまた条件がむずかしいのです。障害者にはいろんな分野がありますから。そこで内部障害者の問題については身体障害者雇用促進法の中に——昭和三十五年にできた法律ですね。この法律の中に指摘はあるのです。特に「身体上の欠陥の範囲」の中の五項目のところに、「前各号に掲げるもののほか、就職に著しい困難があると認められる労働省令で定める身体上の欠陥」、おそらくこれが私内部疾患の話だろうと思うのです、読んでおって。きょうはぼくは話す時間がありませんから……。内部疾患の人たちに対する雇用問題は一体どのように考えてくれているのだろうか。おそらく内部疾患の場合は、この身体障害者雇用促進法が使えるのだろうと思う。使えるのだったら、この五項目のここのところを私は早く労働省令で指摘をしなければいけないと思うのです。もう法律もできてずいぶんなるのに、いまだに指摘がないということ、私は残念でかなわない。これも手紙が来ておるので読みたいのですけれども、やめておきます。だけれども、何かお考えになっているのだったら、ひとつ御答弁をいただきたい。
  86. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 そのとおりでございます。
  87. 寺前巖

    ○寺前委員 何か御検討になっていることがあったら、ちょっと説明してください。
  88. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 いままでいろいろと検討をし議論を重ねてまいりまして、内部疾患、内部障害につきましても、身体障害者雇用促進法の対象として対策を講ずるように措置する予定にいたしております。
  89. 寺前巖

    ○寺前委員 もう少し詳しく聞きたいのだけれども、まだ言いにくいの……。
  90. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 先ほど指摘のあった条項に指定をするように準備を進めております。
  91. 寺前巖

    ○寺前委員 それでは、これで終わります。
  92. 斉藤滋与史

    ○斉藤(滋)委員長代理 午後一時五十分まで休憩いたします。    午後一時三分休憩      ————◇—————    午後一時五十六分開議
  93. 大野明

    ○大野(明)委員長代理 休憩前に引き続き、会議を開きます。  休憩前の質疑を続けます。大橋敏雄君。
  94. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 午前中の質疑者の中で、失対賃金の問題を取り上げていたわけですが、私も同じように、まず最初に失対賃金の問題についてお尋ねしたいと思います。午前中の方はかなり理論的といいますか、あるいは常識的な立場から議論されていたようでございますが、私は実際的な立場から大臣の気持ちを問い直してみたいと思います。  午前中の質疑をみておる限りにおいては、熱心な質問にもかかわりませず、大臣はその気持ちは十分心の奥にとどめておきます程度で終わっているわけですけれども、実際の失業対策に働いていらっしゃる労働者皆さんの実情というものは、われわれが想像する以上のものでございます。そういう立場から私はお尋ねいたしていくわけでございますが、まず最初に、現在の失業対策事業に働いている労働者の数はどの程度になっているか、お尋ねします。
  95. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 十二万八千と承知しております。
  96. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 申し上げるまでもなく、物価の狂乱といわれるこの中で、失対労働者の生活はその賃金が低いために非常に苦しい状態になっております。労働大臣は、直接こういう失業対策に働いていらっしゃる皆さんとの家庭的な接触は少ないだろうと思います。ところが私は、自分の選挙区に相当数のそういう方々がいらっしゃいまして、常にそういう内容について話す機会があるわけですが、それはそれはたいへんなものでございます。  実は「失業対策事業に関する要望書」としまして、昭和四十八年の十一月に、全国鉱業市町村連合会の会長さんとそれから全鉱連失対事業対策部会の部会長さんとが、要望書を持って、労働省にも参ったはずでございます。   〔大野(明)委員長代理退席、委員長着席〕  これがその要望書の内容でございますが、これを見ますと大体の実情がわかるわけでございますが、その中で、まず最初に「公共事業労務費単価と一般失対平均賃金の推移」という表がございます。おそらくごらんになったであろうと思いますが、これを見てまいりますと、昭和三十八年から四十八年まで、各年別にずっと相対して賃金が示されておりますけれども、まず昭和三十八年の公共事業の労務費単価は六百六十五円、そして一般失対の平均賃金が四百二十一円です。その差額は二百四十四円になります。それから四十年になりまして、公共事業の労務費単価が八百五円、一般失対平均賃金が五百十一円で、差額二百九十四円。途中飛ばしますけれども昭和四十八年になりますと、公共事業の労務費単価は二千七百十円です。一般失対賃金の平均賃金は千三百六十円、十月の改定で千四百二十三円ということになっております。その差額は千二百八十七円でございます。私は、この公共事業と一般失対はおのずとその事業内容が違うことだし、多少の差額はあってもこれは当然だろうとは思いますけれども、その差の開きがあまりにもひどい開きになっているということを申し上げたいわけです。昭和三十八年は六百六十五円の労務費単価であったのが、四十八年には二千七百十円になっておりまして、パーセントからいくと四・〇八倍の伸びです。それに比べまして一般失対の平均賃金は、昭和三十八年四百二十一円が四十八年には千四百二十三円で、その伸びは三・三八倍でございます。その差額を申し上げますと、三十八年二百四十四円が四十八年には千二百八十七円という開きになっております。差額そのものもそういうようになっております。  こうして見てまいりますと、やはり失対というものは陰に隠れた、いわゆる軽視された状態で進んできたのではないか、このように見ざるを得ないのであります。  先ほどの質疑の中で東京の平均賃金を言ってありましたけれども全国の現在の平均賃金は一日約千五百円程度ですね。月に直しますとわずか三万三千円です。ところが、生活保護費を見てまいりますと、大都市四人世帯で五万二千八百円、一人当たり一万三千二百円、しかも家計調査から見てまいりますと、エンゲル係数というものが五〇%前後も占めることになるということから、最近の食料費の値上げという実態から見ていきますと、この失対賃金がいかに低いかということがわかるわけでございますが、先ほど答弁の中では、三月に失対賃金審議会の意見を聞いて、その際どうのこうのというお話であったようでございますが、私はこの際大幅に引き上げてもらいたい。まず初めに大臣の気持ちをお尋ねしたいと思います。
  97. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 御承知のように、失対賃金をきめるにあたって、緊急失業対策法の規定に基づいて、民間の類似の仕事に従事する労働者に払われる賃金を考慮しているということでございまして、いま生活保護世帯の話などもありましたけれども生活保護の場合は世帯そのものを単位として、その生計費を考慮して算定していると聞いております。だから、その点私たちのほうと性格を異にしているので、直接御比較はちょっとやはり違うのじゃなかろうか。かりにこの二つの場合を比較しましても、労働省の私のほうの調査によりますと、失対就労者の場合は平均世帯の人員が二・二人でございまして、その平均収入は、比較した場合、生活保護基準をかなり上回っている、そういう数字が出ているわけでございます。安いという御心配もありますけれども、私のほうとしますというと、諸般の事情を考慮して昨年、四十八年の十月には五%引き上げるような特別措置を講じたり、あるいはまた年末には三日分特にお働きいただきながら収入増ということをはかってみたり、それらの実態を踏まえまして、四十九年度の予算では一九・二%のアップという措置を講じまして、いまの国会で御審議を願っているところであります。  何としましても、御同様、物価抑制というのが非常に大事なことでございますが、一方いまのような事情、物価の事情等も勘案して、政府としては今後とも生活実態について非常な関心を持ってやってまいりたい、こう思いまして、直接いますぐ、御要望に沿うて賃金を上げるという答弁ができませんことを残念に思う次第です。
  98. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 確かに生活保護費は家族ぐるみの計算になっていっているわけでございますが、基準のとり方が違うと思います。しかし生活実態というものはほとんど同じですよ。失対家族の平均は二・二ですか、ということでございますが、私どもが調べました内容によりますと、失対の家族というものは単独世帯が全体の三三・七%を占めておる、一世代世帯が二〇・〇%、あるいは二人以上いるような家族でも有業人員というものは一人だ。ですから、むしろ生活保護家庭よりも非常にきびしい状態にあるのではないか。四十九年度の生活保護費は、一級地ですけれども、六万六百九十円に引き上げられますね。失対の賃金は四十九年度、いま一九・二%の引き上げで見てまいりましても、月に三万八千三十四円二十六銭というのが平均賃金ですよ。そうしてまいりますと、確かに生活保護の二人分の三万三百四十円からは多少の開きはあるようですけれども、もう生活保護三人と比べますと話にならない。しかも現実問題として、失対の家族の収入というものはほとんどそれを当てにできない実情にあります。  たとえば子供さんが働いていても、自分自身の生活を切り開いていくだけで精一ぱいです。その子供さんの分の収入を目当てに生活をしようというような余裕はさらさらないわけであります。したがいまして、あくまでもそういう状態の立場に立って、この失対労務者の賃金というものを考えてもらいたいのであります。  実はきょうの新聞ですが、生活保護または失対労働者、いわゆる低所得者の生活がきわめて困難であるという調査結果が出ておりましたので、ちょっとそれを御披露しておきますが、これは社会保障研究会がやったことです。「悪性インフレ下の低所得層の暮らしと対応」という実態調査であるわけですが、それで明らかになったことは、低所得者層世帯の生活は、異常な物価高のもとで、生きるに必要な栄養の半分さえ満足にとれない、このような驚くべき事実が明らかになっております。これは神奈川、そして東京地区の九十七失対就労世帯と川崎地区の十三生活保護世帯と、そのほか世帯類型不明の十世帯、合わせて百二十世帯についての調査でございます。昨年九月から十月にかけて、そして一部分はことしに入って行なわれたもののようでございます。非常にたいへんな内容でございます。つまり生きるに必要な栄養の半分さえ満足にとれていない。その詳しい内容が出ておりますけれども、時間の関係もありますのでこれは割愛し、あとで読んでもらいたいのですけれどもほんとう中身を見れば見るほど、たいへんだな、お気の毒だな、こういう気持ちで一ぱいでございます。  また、これを食料費で見てまいりますと、一世帯あたり「単身世帯三百五十六・九円、高齢者母子世帯、平均二・七人のところで七百五十一円、特に高齢者母子世帯の場合は一カロリー当たり二十二銭となって、都区部の平均より下回っているということでございます。失対労働者世帯の場合でも、一日の食費は二百九十九円だそうです。ラーメン二はい代にも満たない、こういう実情でございます。  確かに四十八年度は、年度当初と十月の改定で、合わせて月に約五千円ばかりの引き上げになっているわけでございます。日額二百三十三円程度の引き上げでございますが、消費者物価の上がり方は、総理府の統計局の公式数に示しているものを見ても、この一年間、東京一月で二〇・四%です。食料費は二三・七%の上昇であります。完全に物価上昇に追い越されているというのが実態であります。こういうことから去年の十月にも緊急是正がなされたことは承知いたしておりますが、その後の物価の上昇というものは驚異的です。したがって、いま一九・二%の先取りの値上げの予算を示したとおっしゃいますけれども、これは実態に合わないと思うのですね。ここでもう一度真剣に考え直していただきたい。どうでしょうか。
  99. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 きのうも私はじめ厚生大臣その他で、中川善之助さんとか大河内一男さんのような社会保障関係の専門の方々にお目にかかって、こういう時期における考え方を、いつでも御答申いただくものですからあらためてきのうお伺いしたわけでございます。  そこで、けさもちょっと申し上げましたけれども数字において、けさ私のほうで、失対労務者に対しまして三日間分お働き願いながらそれだけの金を出すという予算措置を大蔵大臣にお願いして閣議で可決していただき、あわせて厚生省関係方々もそういう手当てをしていただいたということでございまして、ほんとう物価上昇に対処すること、与野党ともに物価抑制については真剣にお取り組みいただいておりますけれども、その中において、現実的なそうしたことを見るにつけても私のほうは手当てをしてまいる、こういうふうに考えておるわけであります。
  100. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 社会保障研究会の調査中身を見ますと、最終的にこういうふうに書いてあります。生活保護基準も失対賃金も、現在よりも五〇%以上の引き上げがなければ必要な栄養さえ確保できないと結論づけているというのですよ。いまの三日働いてもらう云々というのは、午前中の話にもありました。私もそれに反対ではございませんよ。だけれども、そういう程度のお茶を濁すようなことではとてもとても問題になりません。いま言うように、現在の五〇%ぐらいの引き上げがなければというのですから、少なくとも現在の平均賃金よりも千円前後の思い切った引き上げがなければならぬと思うのですよ。どうですか、この辺は。
  101. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 若干私のほうからも数字を申し上げて御説明申し上げたいと思います。  確かに、全国十二万数千の失対就労者の中で約二割が先生の御出身県にあります。実は私もそちらのほうにおりますので、実情もよく承知いたしておるつもりでございます。先ほどから生活保護世帯と失対就労者の世帯の比較をお示しいただいたわけでございますが、私のほうで毎年失対就労者の実態調査をいたしております。それによりますと、先ほど申し上げましたように、失対就労者の平均世帯人員は二・二人、大体二人ということでございます。平均世帯収入が六万七千百十六円という数字が実態調査の結果出ております。失対と生活保護と両方の世帯収入を比較いたしますと、一人世帯の場合は四万一千二百七十三円、生活保護の場合は一級地で二万四千百幾らということで、明らかにこれは失対世帯のほうが上回っております。二人世帯になりますと、失対の世帯が六万九百七円、生活保護世帯が三万五千七百六十四円ということでございます。福岡の場合の失対賃金は一カ月当たり四万二千三百十円ということでございまして、確かに算術計算で比較をいたしますといろいろ問題が出てまいりますけれども、実態はそういうことでございまして、私どもは失対賃金審議会の御意見伺いながら、賃金の決定にあたっては慎重に決定をいたしてまいっております。来年度一九・二%、これは米価の引き上げ等の措置があれば、またそれによって再計算の場合も出てまいりますけれども、私どもは実情に応じて大臣に御決定いただいておるつもりでおりますので、御了承いただきたいと思います。
  102. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 とにかく実情は食えない賃金であるということを知ってもらいたいのですよ。ですから、今後のこの賃金の検討の場合はそのところを十分踏まえた上で、それこそ血の通った決定をしてもらいたい、こう要望しておきます。  しかし、少なくとも私の地元の北九州を見ていった場合、これは全国平均より低い。しかも北九州市と筑豊の中では、また大きな格差がついております。就労者仕事の内容はほとんど同じです。私は非常に不合理を感じてならないのです。せめてそういう格差をなくすというぐらいのことはできるでしょう。
  103. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 福岡県におきまして福岡市と北九州が全国平均を若干上回っておりますが、北九州とその背後地にあります筑豊田川地区との賃金の格差があることは、事実御承知のとおりでございます。これは賃金決定の原則から申し上げますと、地場賃金、地元におきます類似の作業賃金との比較の上で決定されるといういきさつからいたしまして従来そのような傾向もございますが、最近の状況を十分勘案いたしまして、来年度の賃金決定にあたりましては、三月の賃金審議会において実情を十分御報告申し上げた上で、先生の御指摘のような方向に努力いたしたいと思います。
  104. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いま局長は、三月の賃金審議会の御意見を聞いて、そしてその際にいま私が言わんとするところを配慮するというような答弁であったわけですけれども大臣ほんとうにその気があるのかどうかということをまず確認しておきたいです。
  105. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 私は年の暮れに、皆さん承知のとおり、三日分働く日数を差し上げたのですね。そうしますと、一番お礼状をもらったのは飯塚でございます。やっぱりやって、だれか喜んでもらう姿というのは、直接聞きますとほんとうに私は感激しました。これくらいあります、私は労働省にとっておきましたが。ちょっとしたそういう行政のことをこんなに喜んでもらえるのかなという感じを持ちますと、やはりこういうことの御審議の中に、私も多少実態を、あなたたちのように内部に入ったりする、そういうことは努力が足りないのかもしれませんけれどもほんとう局長が申し上げたこと、これは私の気持ちと同じ、こういうふうに感じて、いまから先も前向きの姿勢でやってまいりたい、こう思っております。
  106. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 大臣もこの格差は是正していくという決意であることを確認いたしました。飯塚のほうから、三日分差し上げるということにたいへん礼状が来たと言いますが、これはきわめてごく一部の非常にすなおな方のお手紙だろうと思います。それは三日分であろうともそうした優遇の一端ですから、それは喜ぶことはわかっておりますが、全体的な生活の姿からいきますと、お茶を濁されたという感じを持っておる人もたくさんおることを銘記しておってもらいたいと思います。  きょうの午前中の大臣のお話の中で、朝トレーニングなさるときに失対労働者を激励なさっておるという話を聞きました。これも私はうれしい話ではございますが、あくまでもそれは皮相的な激励であって、もっと奥に、突っ込んだ失対労働者の実態を実感として味わってもらうためには、やはり足を踏み入れてもらいたい。この国会中はとても無理でしょうから、国会が終わったら一ぺん飯塚方面、筑豊方面に視察においで願いたいと思います。いまのあなたほどの熱意を聞くならば、実現されるだろうと期待いたしますが、いかがですか。
  107. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 機会があればぜひお伺いしたいと思います。昔は、私もあの辺の炭鉱などをずっと歩いておりましたし、ぜひそういうすばらしい、気持ちの美しい、そして一生懸命働く諸君にお目にかかることは楽しみでございます。
  108. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 産炭地域は特に打ち続く炭鉱閉山等で失業者が集中滞留しているわけでございますが、全国の平均の十数倍から二十数倍に達する市町村が非常に多いわけです。したがいまして、ここには失対、緊就、開就、特開という各事業が行なわれているわけでございますが、その対策事業の内容というものは自然に高度化していかざるを得ない実情にあるわけです。そして、いまの物価高騰の追い打ちを受けまして、労力費、資材費、人件費——技術者等の内容ともなれば非常に高いものとなりますが、また土地の購入費等の現実というものは、国の予算単価と多大の格差を生じているわけでございます。市町村はその分が超過負担となってたいへん財政的に苦しんでおります。そのことも先ほど要望書の中に事こまかく示されております。きょうはここでこの内容を読み上げることは差し控えますけれども、この事情もよくくみ取っていただきたい。  そこで、特に大臣にお願いしたいことは、事業費単価の引き上げですね。そして国と自治体との負担割りをもう少し変えてもらいたいということ、これがまず一点です。これをひとつ聞いておきましょう。
  109. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 先生指摘の緊就、産炭地開就、特定地域開発就労事業、こういった産炭地域関係の事業の事業費単価の引き上げにつきましては、来年度予算におきまして私どもは、御満足いただける額ではないかと思いますけれども、事業執行に必要な、かつ十分な額を予算として計上いたしておるつもりでございます。また本年度につきましても、いろいろ先刻来御指摘のような問題がございまして、緊急の措置といたしまして事業費の追加計上といったような措置も講じておりまして、関係市町村、地方公共団体の超過負担の解消に極力つとめてまいっておる次第でございます。
  110. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 とにかく事業費単価が実情に合わないということを十分記憶にとどめられて、もっと大幅な補助をしていただきたい。  負担割りのことですけれども、いま国が三分の二、地方自治体が三分の一になっていますけれども、この割合を変える気持ちはございませんか。
  111. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 一般失対につきましては三分の二、それから緊急就労対策事業につきましては五分の四の国庫負担、産炭地開発就労事業につきましては三分の二、特定地域開発就労事業につきましては三分の二、こういうことでございまして、その他の地方自治体の負担でございます五分の一あるいは三分の一につきましては、自治省と相談いたしまして交付税、特別交付税等によって処理いたすことになっておりますので、先ほど指摘の事業費単価を上回る超過負担分、つまり用地費だとか、そういったもの以外は原則として地元の負担にはならないたてまえになっております。したがいまして、私どもといたしましては計画を上回る事業費単価、いわゆる超過負担分につきまして極力補助対象になるように措置をいたしておるつもりでございまして、その点につきまして補助率を変えるということは考えておりません。
  112. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 せめて緊就並みに変えていただきたいですね。とにかくいま特開は年齢制限がなされております。四十五歳から六十五歳までの方を吸収しようということでございますが、産炭地域は先ほど申し上げましたように非常に失業者が多いということから、私はぜひこの年齢制限のワクを広げていただきたい、こう思っているのですが、実は東京の墨田高齢者無料職業紹介所が実態調査をしておって、最近まとめたものを発表いたしておりますが、この調査でも、同紹介所が就労あっせんした五十五歳以上の老人百八人について行なったわけでありますけれども就労の理由にほとんど全員、百八名のうちに百二名が経済的理由をあげているわけです。いわゆる家計の中心となっている人が七十二人もいることが明らかになっております。またこの中のお年を見てまいりますと、七十歳以上の老人が二十五人もおりました。また、その高齢者は男が七十六歳、女が七十四歳という、非常な高齢者が働かざるを得ない状況にある。その意思も十分ある、こういうことですね。  また東京都の労働局が調査した老齢者の実態を見ましても、調査対象となった五十六歳以上の五千百八十八人の高齢者のうち五八%が、働かないと生活ができない、こう答えております。五十代後半で三八・一%の人が在学中の子供をかかえていた。  こういう全国的な実情に加えまして、この産炭地域、特に筑豊方面は失業者が滞留しております。せめてこの特開事業の年齢制限を広げていただいて、もっと吸収していただきたい。予算上は十分余っているはずですから。どうでしょうか。
  113. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 この特定地域開発就労事業の対象者につきましては、先生承知の、三年前にこの委員会で御可決いただきました中高年齢者の就職促進特別措置法によりまして、雇用政策労働政策の対象は四十五歳から六十五歳まで、六十五歳をこえる方につきましては老人福祉対策の対象であり、あるいは老齢年金の対象者として、福祉対策として処理されるべき問題である、こういうふうにお考えいただいているわけでございます。したがいまして、特に失業者の多い筑豊地域等におきましては、御承知の同和対策の対象になる方々につきましては、この年齢制限の対象外、年齢制限がはずされておりまして、この特定地域開発就労事業といいますか、中高年特別措置法の対象になっておるわけであります。御指摘の六十五歳をこえる御老人の方々につきましても同じような扱いをすべきではないかという御指摘でございますけれども、これは法律上の制度としてそういうことになっておりません。と同時に、就職あっせんをいたしますことにつきましては、これは年齢のいかんを問わずごあっせんいたしますけれども、その上でこういった事業に就労させるかどうかということになりますと、御承知のようにこれはいわゆる一般公共土木事業に準ずる事業でございますので、六十五歳をこえるような老齢者にこういう事業に就労させることについては、これまたいろいろと問題があるわけでございます。そもそも六十五歳をこえる方については、労働政策の対象からはずれるのが当然であるという考え方がもとに、根本になっております関係上、こういう制度になったわけでございまして、私どもといたしましては、こういった人を失業者として扱うよりも、むしろその地域における老人福祉対策の対象者として、より手厚い別途の対策を考えられるべきではないか、このように考えておるわけでございます。
  114. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 産炭地域の失業者も、好きで失業者になっておるわけじゃなくて、働きたいわけです。ほかに就職あっせんを願おうとしても、そういう方々を使ってくださる事業所はほとんど見当たらないわけですよ。どうしても生活保護でいかざるを得ないという状態にあるわけですが、その生活保護だけでもきびしい生活状態である。何としても働きたい。地元に参りますと、各市町村とも、年齢制限を緩和してもらいたいという声は圧倒的でございます。是が非でもこれも再検討願いたいところでございます。これは大臣、よく考えておいてくださいね。  また、六十五歳以上の方は年金云々といいますけれども、いまの東京都の労働局の調べでも、この年金受給者というのはきわめて少ないということが示されております。しかも年金を受けている人は、そのうちわずか三八%、年間十一万から二十万が最も多く、ほとんど年間三十万に満たないのが実情である。これでは、生きるためにどんな無理をしても働かなくちゃならないという、これは労働局調べの結論ですよ。ですから、形式的にものを見るのではなくて、実際的に見ていただいて、広げられるものは早期に広げていただきたいということでございます。  時間も限りがございますので、次に移ってまいりますが、失対の夏、冬あるいは年度末の臨時の賃金等についてでございますけれども、これも市町村のほうから陳情があったと思います。夏、冬については、国のほうは昭和四十五年度までは、公務員並みの臨時の賃金を支給していたわけでございますが、四十五年度以降は九日分ということでずっと据え置かれてきております。冬期の手当も、四十八年度が二十二・五日分、四十九年度も同じ二十二・五日分です。これでは実情に合わない、そういうことで、市町村のほうとしては非常に財政的に困りまして、実は、市町村は市町村なりに報償金といいますか、あるいは見舞金というものを別にあげているわけですけれども、市町村は困るけれども、これは実態的にはどうしても支給せざるを得ない、こういう立場に立っております。この陳情書を見てもよくわかりますが、「事業主体の支給する報償金、見舞金については、労働省は好ましくないので、支給すべきではないと指導がされているところですが、現実には全国殆んどの事業主体が、相当の金額を、国の支給する臨時賃金に上積みして支給せざるを得ない実情にあります。産炭地の事業主体は、財政的に窮迫しており、そのうえ多数の失対就労者をかかえ、これらに多額の報償金、見舞金を支給することは困難であります。しかし、就労者団体からの要求額は毎年大きくなっております。事業主体としましても、低賃金物価上昇等を考慮し、これが支給については苦慮しているところであります。」そこで国にお願いしたいことは、「事業主体の支給する報償金、見舞金については、国の支給する臨時賃金に一本化」していただきたい。そして、「支給基準(夏・冬)を公務員なみとし、これに要する財源は国が三分の二補助、県市が三分の一を折半負担とする」こととしたい、これはぜひ希望を聞いてほしいということなんですが、この点についてはどうお考えになりますか。
  115. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 そういう御要望を確かに承っております。この夏・冬の、盆・暮れの臨時の賃金につきましては、先生過去の御経緯十分御承知のとおりでございますが、三年前に中高年特別措置法が成立いたします際に、この立案の過程等を通じまして実は一番大きな問題になりましたのが、この失対就労者の各期末の臨時の賃金の扱いの問題でございます。  そもそもこういった日雇い形式である失対就労者にいわゆるボーナス的な加給がなされることについては、いろいろと世の御批判もあり、制度的にいかがかという御議論もございましたが、国会先生方の御意見によりまして当初原案が修正されて、従来どおり臨時の賃金が支給されるという制度になって今日に至ったわけでございます。その際に、従来一定の期間を置いて何がしかずつ増額されてまいりましたこの各期末の臨時の賃金を、この機会に、日数を固定して、そうして毎年の賃金のアップによりましてその増額をはかっていくという制度が確立されたわけでございます。その後、それまでの間はこれに加えて地方自治体、県、市町村が報償金とかいろいろな名目で支給しておりましたいわゆる臨時の賃金的なものは好ましくないという行政指導をしてまいりましたことも事実でございます。しかしながら、三年前の改革以後は、私どもはこういう地方公共団体から支給されます報償金等のたぐいにつきましては、好ましくないとかあるいは支給すべきでないという指導はいたしておりません。したがいまして現在も、従来に加えて毎年何がしかの増額措置がとられて今日に至っておる次第でございまして、私どもはこの制度を今後さらに改革するとか、変更するという考えは持っておりません。今後実情に応じて、地方自治団体でこういった報償金等の措置をとられることもやむを得ないのではなかろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  116. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 とにかく失業対策事業というのは、その発生の経緯、歴史からいっていろいろと、軽視というわけにはいきませんが、何となく弱い立場でいつもそれが処理されてきたような感じでなりません。しかし、この失業対策事業というものは、もうワクは狭められるというか、人員が減少こそすれ、ふえることは絶対にないわけです、いまの立場からいきますと。せめて皆さんに対しては、相当平均年齢も上がったからどうのこうのという話もありますけれども賃金の上のせが、われわれが言っているような大幅なものができないとするならば、せめて時間短縮してあげたらどうですか、こういう方々に。そういう考えはないですか。
  117. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 三年前に、中高年特別措置法、いわゆる失対改革法と称せられました法律を御審議いただきます際に、私ここで答弁を求められましてお答え申し上げたことを記憶いたしておりますが、今後は、失対に就労している方々は、いわゆる失業者というよりは、むしろ老人対策の肩がわりでございます。したがってこの機会に、一般通常の職場に就職される方もあるいは残られる方も、御希望に応じていずれかの道をお選びいただきたい、残った方については、言い方には語弊があるかもわかりませんが、死ぬまで安心して働いていただきたい、こういうことを申し上げた記憶がございます。  そういう意味で、いま先生から御指摘になりました、何か失対というものを軽視しているというような感じがするとおっしゃっておられますけれども、私どもは決してそうじゃございませんで、いま残っております十二万八千の方々は、これは一つの例を申し上げますと、同じ年齢階層の方々に比較いたしますと、死亡率は低くなっております。労働時間にいたしましても、たてまえは一日八時間でございますけれども、実質は四時間半から五時間ぐらい働いておられます。したがって作業の内容も、比較的軽易な作業に最近は限定されてきております。こういう年齢階層の方々にとっては、比較的健康的な明るい職場になってきているのではないか。しかも地方住民の方にとっては比較的喜ばれる、感謝されるような仕事をしていただいておる、私はそういうふうに現実を受けとめておるわけでございまして、決してこういう人たちを軽視する、軽く見る、どうでもいいというような扱いをしているわけではございませんで、精一ぱい賃金なり、その他の処遇にいたしましても、この人方の実態に報いるような措置を今後ともとってまいりたい、かように考えておる次第であります。
  118. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 時間が迫ってまいりましたので次に移らしていただきますが、いずれにしても、失対労働者の実情というものはいままでるる申し上げましたようなものでありまして、もっとあたたかい立場対策に乗り出していただきたいことを強く要望しておきます。  雇用保険法の提案が予定されているわけでございますが、提案される以前から労働界のほうからは非常に強い反対の声がのぼってきております。特に東北、信越を中心といたしまして、失業保険給付の大幅カットを打ち出す改悪法案である、あるいは出かせぎ農業者にとってはまさに死活問題である、このように深刻に受けとめられて、その反対運動の火が燃え広がりつつあります、御承知と思いますけれども。  この季節労働者のことにつきまして、失業保険研究会報告にも述べておりますが、四十七年度において季節受給者が六十二万人、全受給者の四割、支給額が七百八十億円、これは総支給額の三四%を占めておるということが大きな問題になっているようでございますけれども、そのために、この雇用保険法の中でいま申し上げましたような失業保険給付の大幅カットをされるのだというような内容に措置されようとしているわけです。これは適当でないと私は思います。保険財政の立場から見るならば考えられない事柄ではないとは思いますけれども労働福祉向上のことが強く叫ばれている今日、政策としては非常に不適当だと私は考えるのでございます。根本的には高度経済成長政策の失敗、労働政策のいわゆる農業切り捨て政策の失政、ここにあると思うのです。この土台から整理してこないで、ただ出かせぎ労働者のみを一方的に締めつけるような対策であるということについては、われわれは賛成しがたい。四十七年度の兼業農家は、全農家の八五%を占めております。そして農業所得に占める農業外所得は実に六八%にも達しております。しかもこの農業外所得はいわゆる季節労働者として、いわゆる低賃金労働力として、特に建設業をはじめとする多くの産業に利用されてきたのは御承知のとおりでございます。むしろ景気変動の調整面の役割りをしてきたといわれているほどでございます。したがって、今度の石油危機等の問題から、経済変動の不況から出かせぎ労働者の求人は減少して、その被害をもろに受けているのがこういう出かせぎ労働者ではないかと思うのでございます。私は、この雇用保険法というものは、提案なさる前にもう一考なさる必要があるんじゃないか、こう思うのでございますが、いかがでございますか。
  119. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 今回御提案申し上げております雇用保険法案につきましては、従来から当委員会におきましても、失業保険の制度上の問題、運営上の問題につきまして、いろいろと御意見、御批判を承っておった問題でございます。たまたま四十四年に成立いたしました失業保険法の改正におきまして、当委員会で修正が行なわれまして、五十一年の一月末までに農林水産業について失業保険の全面適用をはかるようにという義務づけが行なわれております。この農林水産業への失業保険制度の適用に伴いまして、これと同様の実態を持っております出かせぎ、いわゆる季節的受給者の問題につきまして制度的に再検討するということもしばしば御議論があったところでございます。私どもといたしましては従来四十二年、四十四年の改正におきまして御議論いただきましたこの季節出かせぎ受給者の問題につきましては、従来のような出かせぎ形態あるいは出かせぎの受給の実態、これを批判的な立場で規制する、引き締めるというような考え方ではなくて、むしろ現実に出かせぎに出かける人の立場に立ちまして、あるいは出かせぎを受け入れる経済、社会の実態から見まして、出かせぎ労働形態が現状から見ますると好ましい労働形態ではないかもしれませんけれども、必要やむを得ない実態であるという認識の上に立ちまして、この出かせぎなり季節的受給というものを新しい雇用保険法の中で制度的に受けとめていこうという考え方で立案をいたしたわけでございまして、その内容につきましては、確かに巷間伝えられましたように、負担が三倍になり給付が三分の一になるというように伝えられておりますけれども、提案申し上げました内容は、御承知のとおり、失業給付に要します保険料につきましては、一般産業に比較いたしますと千分の五増、労働者の負担分は千分の七・五でございまして、一般の労働者より千分の一、一つの例を引きますと、十万円の月収のある人は百円いままでよりふえるという計算になりますが、給付のほうは確かに、一時金制度で三十日分ということになりますと、従来は六カ月の受給資格がつきました人たちの給付は最高限九十日分まで支給を受けることができるということになっておりますので、それだけについて比較いたしますと、確かに九十日分が三十日分、三分の一になるということでございますが、いままで九十日分ということの中で支給を受けておりました出かせぎの人たちの実態は、全国的に見ますと大体五十日程度になっております。新しい制度の三十日分の一時金の計算基礎になります単価が、今度の新しい制度で大幅に引き上げることになっておりますので、実額といたしますと、従来の実績の五十日分に比較いたしますと、一時金の三十日分は若干低めになっておりますけれども、ただ、一時金ということによって従来過去の失業期間に対して支払われた保険金と比較いたしますと、今回はその資格を持っておりますと、一回出頭して一時金で支給される、こういう一時金制度によりますメリットがございます。したがって、そのあとは働くことも自由である、こういうことになりますので、その実質的な比較をいたしますと、必ずしも実質的な削減にならないのではないかというふうに考えておりまして、世に伝えられますように、激変を生ずるような措置にはなっていない、私どもはかように考えておる次第であります。
  120. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私はきょう雇用保険法の中身について多く議論しようという意思は毛頭ございません。これは提案された段階で徹底的にやりたいと思いますが、その中身についてはもう一般にも知れわたっているわけです。そして多くの方々がそれなりに研究なさっているわけです。そうして特に季節労働者方々は、この問題を掘り下げ掘り下げしたあげく、これではいけない、とんでもないということの立場で猛反対に立っていらっしゃるわけです。青森などに行きますと、たいへんなことです。知事を先頭に反対運動が起こっております。ですから、いま局長が言うように、いわゆる事務的な計算の上からいくそういう説明では、とてもとても説得できる中身ではございませんし、また負担が三倍で、そして給付が三分の一ということは、どのように計算しましても現実がそのようになっているのである、こういうことからその反対の声が強いわけです。ですから私はこの問題については特に掘り下げて、そうして政治的な配慮も加えて措置をなさらないと、たいへんな問題が起こるのではないかということを注意を申し上げるわけです。大臣の気持ちを聞いておきたいと思います。
  121. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 雇用保険法案は国会に提出いたしましたが、まだ御審議いただく段階でない、それにもかかわらず内容についての、また及ぼす全体の問題についての御心配、ありがとうございます。私も実は出かせぎ地帯の出身者でございます。そう自分が役所にいるからという意味でもありませんで、やはり長い間学者の方々あるいはまた、いま局長の申されたように、三、四年前から、農林水産全体に失業保険を適用すべしというふうなことを踏まえながら、学者の方々が御研究いただいた雇用保険法案でありますから、一律に悪いものじゃない。いわんや出かせぎ地帯の私のほうでも、かりに九十日もらっている間に、一カ月二へんずつ職業安定所に金をもらいに行くわけです。そしてもらっている者を町の者、村の者が見るわけです。ところが一方、農村においても、地方においても、働く場所があるわけです。その人に働いてもらいたいと思えば、保険をもらっていると働けない、こういうふうなことなどもありまして、私はやはり一時金でぴしゃっといただいて、あとは六十日でも七十日でも、あいている間に、自分の仕事のほかにもし地方の労働関係に需要があった場合に大手を振って働くということも、一つのメリットじゃなかろうかということを感じおります。だんだん本国会に提案されて御審議のときには、ひとつ慎重に御検討のほどをお願い申し上げたいと思っております。
  122. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 その一時金のことについては関係者皆さんもそのような反対はないのですが、中身なんですよ。一時金で出すその内容に問題があるわけです。日にち、日数についていわゆる三分の一に切り下げられたといわれているところに問題があるわけです。そこを真剣に考えていただきたいということを申し述べておきます。  時間が来たようでございますので、この次の一般質問に私はこれをまた延ばしたいと思うのですが、五人未満事業所が四十四年で農林水産の一部を除いて適用になってきておりますけれども、一挙にはむずかしいということで段階的に拡大していこう、そして四つの業種にしぼってその適用拡大がなされてきたわけでございますが、おそらくその四つの適用拡大事業所は二十八万カ所あるといわれておりましたが、どの程度それが実現したものか。  私がこれを聞きたいのは、おそらく今回の法改正に積み残したまま次に移っていくのではないかという懸念を非常に抱いているわけです。そういうことについても今後詳しく尋ねてまいりたいと思いますし、きょうは地下労働対策についてもお尋ねする予定だったのですけれども、非常に時間が延び延びになって、きょうは割愛いたします。  最後に、いまの五人未満事業所の適用拡大に対するその後の動きについて、簡単でけっこうですから述べてください。
  123. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 失業保険の零細企業への適用問題につきましては、ただいま私手元に数字を持っておりませんので的確な数字をお答えできませんが、確かに従来適用拡大に伴って適用対象となっております小零細企業につきましても未適用の事業所がまだかなり相当数残っております。先生指摘数字に近い数字が残っております。  その上で、なおかつ今回零細企業を全面的に適用しようという点についての御疑念はごもっともでございますけれども、私どもは従来の考え方でまいりますと、こういう零細企業につきましては適用がなかなかむずかしい、技術的に保険料の徴収が困難であるということのために、ややもすれば小零細企業を適用からはずしていこうという考え方がとられてきたことは事実でございます。それを今回はあえて零細企業の適用に踏み切りましたゆえんのものは、私どもは法的に適用の網をかぶせることによって、たとえ適用把握が技術的に事実上物理的に困難であるにいたしましても、そこから離職をし失業した人たちについては、たとえ適用されておらなくても保険制度上の保険給付が受けられる、失業給付が支給されるということになりますので、そういうことによって、適用が技術的に困難であるという理由によって、適用拡大を遷延するというようなことによって、零細企業労働者をこういった保険制度の恩恵からはずすということは、私どもは行政の責任者として適当でないという考え方に立ちまして、今回そういった未適用をあえて積み残したままでも全面適用すべきであるという結論に達したわけでございます。したがいまして、今後最大の努力をいたしまして適用把握につとめてまいりますけれども、何しろ一人、二人という零細企業を完全に把握するということは、私はおそらく不可能に近い状態だろうと思います。しかしながら、そういう事業、未適用の事業所から離職をした人につきましても、これは一〇〇%その給付の対象になり得る、給付がされるということが今回の全面適用によって実現できることになるわけでございますので、その点でいわゆる零細企業労働者の福祉に欠けることのないように措置するというのが、今回の全面適用の目的でございます。その点を御理解いただきたいと思います。
  124. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 適用拡大が一挙にはむずかしいので段階的にやろう、その段階的の目標がどの程度達せられたのか、私はここにも非常に問題があるのでいま問題を提起しているわけですが、きょうは時間が参りましたので、質問をこれで打ち切ります。
  125. 野原正勝

    野原委員長 小宮武喜君。
  126. 小宮武喜

    ○小宮委員 何か局長の時間の都合もあるようですから、まず失業対策賃金の問題について先に質問します。  まず、先ほどからるる失対賃金の問題についてはいろいろ質問がされておりますので多くは申し上げませんけれども、確かにいまの失対賃金が非常に安い。そのために失対事業に働く人たちが今日のような物価狂乱の中で非常に生活に困窮しておるということは、これはいなめない事実なんです。これは大臣だろうと局長だろうと否定することはできないと思うのです。そこで、この失対賃金については、昨年十月にも大体五%引き上げられ、また四十九年度予算では一九・二%引き上げられておりますけれども、結局一日平均これが千七百二十八円なんです。そうしますと、二十二日働いたとして三万八千円です。平均家族は二・二といっておるけれども、あくまで平均であって、一人の人もおろうし——まあ一人の人はそれでもいいかもしれません。しかし、家族が三人、四人、五人おる人はそれでは一人当たりの生活費は幾らになりますか。四人とした場合九千五百円じゃないですか。それで生活ができますか。いろいろ答弁大臣も言っておられるから、もう答弁はいいです。ただこれくらいの金で生活できると思っていますか。その点いかがですか。
  127. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 それぞれの家庭の事情が違いますが、先生がおあげになった数字だけ見ればそういうことが言えると思います。
  128. 小宮武喜

    ○小宮委員 それではこの失対賃金の中に、たとえば家族構成が一人である場合、二人である場合、三人である場合、四人である場合、いろいろいるわけですから、その意味では私は、家族構成によって何らか家族手当というか、それは名前は別にしてでも、何らかのそういうような人たちに対してその人たちの生活を救済するためにやはり何らかの方法を考えてやるべきじゃないか。普通一般公務員にしても、また一般の民間労働者にしても家族手当というものがありますから、そういうような意味では、同じ失対事業で働いておられる方々の中でもそこに家族が三人、四人、五人とおられる人に対しては、そういうような何らかのものを考えて、少なくともやはり最低生活費を保障できるような措置を講じていただければ幸いと思う。大臣先ほどから飯塚で非常に喜ばれたというようなことを言っておりましたけれども大臣、ちょっとしたことが、行政に少しでもあたたかみがあれば国民は喜ぶのです。だから労働大臣もひとつまた今度、昨年も喜ばれたでしょうが、今度も、きらわれるよりやはり喜ばれるほうがいいでしょう。そういうような、やはり喜ばれるような措置をして、長谷川労働大臣は非常に血の通った、思いやりのある大臣だと一回いわれてみたらどうですか。だから、そういうような家族手当みたいなものの考え方は検討できないものかどうか、その点いかがですか。
  129. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 小宮先生承知のとおり、三十八年までは、失対の就労は一世帯一人という限定がございました。三十八年の法律改正によりまして世帯二人でも三人でも、失業者で失対就労希望者は就労できるというたてまえになって今日に及んでおります。しかも現在、先ほどから御指摘のございますように、失対就労者の世帯平均人員は二・二人。大体二人世帯、単独世帯が三分の一ぐらいでございまして、確かに家族手当という一般的な労働賃金の慣行もございますけれども、現在の失対就労者の平均年齢がすでに六十歳を越えております。そういう実態から申しますと、確かに四人世帯、五人世帯という世帯も実際の問題として残っておりますけれども、そういう世帯では、先ほど申しましたように世帯収入も相当な額にのぼっておりまして、その世帯構成員の中の二人ないし三人が何らかの形で働いておられる、こういう実態になっておりますので、先生指摘のように家族手当というような制度をあらためて失対の賃金構成の中に追加するという考え方は現在持っておりません。
  130. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは、実際失対事業に働いておられる方々が、なるほどその中には子供さんも働いておられる方もあるでしょう。それでは、失対事業に働いておられる方々のその家族の所得というものは大体幾らになるか、そういうようなことを調べたことはありますか。
  131. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 私どもは毎年失対就労者の実態調査を実施いたしておりますが、それによりますと、全国平均でございますが、一人世帯の失対世帯の収入が四万一千二百七十三円、二人世帯につきましては六万九百七円、三人世帯で九万一千六百円、大体こういう実態に相なっておるようでございます。
  132. 小宮武喜

    ○小宮委員 あまりこの問題で時間を費やすと先がなくなりますけれども、この失対事業法の十条の二の二項に、「夏季又は年末に臨時に支払われるものについて特別の定めをする場合を除き、」とありますが、夏季とか年末に一時金が支払われておりますね。これは、「特別の定め」というのはどういうような定めがあるのですか。
  133. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 十条の二の規定は、失対就労者賃金を定める場合の定め方が法律にうたわれておるわけでございますが、いま御指摘の「夏季又は年末に臨時に支払われるものについて特別の定めをする場合を除き、」というのは、夏と年末にいわゆる一時金というものを支払っております。その分についてはこれは別途だという意味でございまして、これは御指摘のように夏九・五日分、冬二十二・五日分が支給されるというのが現状でございます。
  134. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは、時間がなくなりますので——失対賃金がきめられておりますね、ここにも表がありますけれども、その表の十表の、たとえばABCの二ランクなら二ランクと押えた場合に、その地域の最低賃金との比較はどうなんですか。
  135. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 私どもは、この賃金決定につきましては、先ほど来御議論いただいておりますように、同種の、類似の作業に従事する人たち賃金を参考にしながら定めるということになっております。現実に各地域の十一ランクの賃金格づけの中で最低のものが、全国各地域におきます最低賃金よりは上回っているものと考えております。下回るものはないはずでございます。
  136. 小宮武喜

    ○小宮委員 先ほどからも質問が出ておりましたけれども、今回政府のほうも、このインフレ物価高の中で、生活保護者をはじめいろいろな年金受給者等について、二千円か二千五百円の臨時一時金といおうか生活保障金といおうか、そんなものを出しおりますが、この失対事業者にも、先ほど大臣のお話では大体三日分支給するという話でございましたが、それは確認してよろしいですか。それでいつごろ支給するのか。
  137. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 小宮さんからいい大臣になれという激励でございますが、御承知のように昨年の暮れも三日分働いていただくワクを差し上げて、そうして収入にしてもらいたい。今度も総理、大蔵大臣等々にお話し申し上げまして、きょうの閣議で三日分、この年度末までに三日分働いていただいて、その金をぜひひとつ手に入れていただきたい、こういう手当てを、けさしたわけでございます。
  138. 小宮武喜

    ○小宮委員 最後に念を押します。その四十九年の失対賃金の千七百二十八円、これは絶対に再考する余地はないということに理解していいですか。四十九年のこれは一九・二%上がってそれだけですから、もう少し再考したらいかがですか。
  139. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 四十九年度では一九・二%すでに上げたのでいま予算の御審議を願っているわけであります。私たちは働くそういう方々の生活の実態というものを常に見きわめておりますから、それがまた役割りでございますから、かりに、ただいまいわれている消費者米価というのが据え置きでございますが、そういうものがまた変化でもあるようなときは、私はいまの気持ちの中においてはあらためてまた考える必要が起こってくるのじゃなかろうかという気持ちもあることをお伝え申し上げておきます。
  140. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは、もしまた物価が異常に上がった場合は再度考慮する余地がある、考慮してもよろしいというふうに理解していいですか。  それともう一つ、いまの一時金の問題、これはいつごろ支給するのですか。
  141. 遠藤政夫

    ○遠藤(政)政府委員 ただいま大臣からお答えいただきましたように、この三月中に実施することに相なります。  それから、大臣いまお答えになりました、米価改定というような事態が起これば、大臣としては十分御考慮したいという御趣旨でございますので、物価が異常に騰貴するという、そういう仮定の立場に立ってお答え申し上げるあれを私どもは持ち合わしておりませんので、御了解いただきたいと思います。
  142. 小宮武喜

    ○小宮委員 この問題はこれぐらいにします。  最低賃金の問題ですが、これも中央最低賃金審議会から労働大臣に対して、四十七年度以前に実施した最低賃金について、最近の異常な物価高騰に見合う最低賃金額の緊急引き上げを四十八年度以内に行なうよう建議がなされておりますが、大臣はこの建議を受けてどのような措置をとられますか。
  143. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 その申し入れを受けまして、いま各県の審議会に作業をお願いしている段階でございます。
  144. 小宮武喜

    ○小宮委員 これは最低賃金額そのものを引き上げるのか、現在の最低賃金にたとえば物価スライドをするのか賃金スライドをするのか、その点いかがですか。
  145. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 一月十八日に中央最低賃金審議会からいただきました御建議の内容は、昭和四十八年三月以前にきめられた最低賃金につきましてはできるだけ早く改定をする、通常の審議会における三者構成の審議によって改定ができるものは通常のやり方でできるだけ今年度末までに解決する、しかし普通のやり方ではことしの三月までに間に合わないものについては、それぞれの最低賃金がきまった以後における消費者物価によって改定をするように、こういう建議の内容でございます。ですから、物価にスライドで臨時緊急の措置として改定をする、こういう考え方でございます。
  146. 小宮武喜

    ○小宮委員 私は、この最低賃金法を見ましても、やはり物価スライドではなくて、少なくとも賃金スライドにするのが当然だと思うのですよ。たとえばこの法律を見ましても、この第一条の目的には「この法律は、賃金の低廉な労働者について、事業若しくは職業の種類又は地域に応じ、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善」と書いてあります。だからその意味では、これだけ物価がどんどん上がっていく、そうするとこの中で、たとえば組織のあるところの企業労働者というのは、やはり毎年毎年賃上げをやっていきますから、それだけ賃金は上がっていくわけです。そうすると、この法律の目的からいって、やはりそれを参考にして最低賃金をきめなさいというような内容になっているわけね、法律の内容は。だからそれをただ物価スライドだけでよろしいかどうかということになると、疑問を持つのです。これは私、最低賃金法そのものも、大体最低の賃金を保障する、最低の賃金とは何をもって最低の賃金かと言いたいのです。これでは法律そのものが、賃金引き上げるやつをこれをなるたけ引っぱって、それで安い賃金で、賃金をできるだけ少なく支払いなさいという法律そのものの解釈ができるし、また目的そのものが、そういった地域の賃金の事情、ましてや企業の支払い能力ができる範囲内でということそのものが全くおかしいんで、そういうような意味で私は、物価スライド制ということでなくて、やはり最低賃金制というのは、その地域がこれだけ賃金が上がっているわけですから、それに応じて最低賃金というのは変えていくのが当然だと思うのです。この最低賃金制の改定というのは各地方の最低賃金審議会で毎年改定しておりますか。
  147. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 先生もいまおっしゃられましたように、最低賃金法では、最低賃金は生計費それから同種の労働者賃金あるいは平均的な企業の支払い能力等を勘案してきめることに相なっております。したがいまして、通常の場合にはそれぞれ地域なら地域あるいは業種別のもかなりございます。業種別の場合にはその業種の賃金等を調査いたしまして、そうして同種の労働者賃金との関係、それから生計費、企業の状態等を調べまして改定をいたしておるわけでございます。  したがいまして、今回の中央最低賃金審議会の答申でも、そういう方向でやれるものはできるだけそれで急いでやりなさい。しかしそういうことになりますと、どうしても地域の賃金水準——これは賃金水準となりますと地域、業種によってかなりまちまちでございますので、春闘でたとえば去年何%上がったからといって全部それが中小企業までいくわけでございませんので、それがまちまちでございます。調査等に時間を要します。改定がおそくなりますので、最近における異常な物価高騰という状況にかんがみまして、そういうことでおそくなる場合には、臨時緊急の特別措置として消費者物価によって改定をしろ、こういう臨時緊急の措置でございまして、通常の場合には先生指摘のように、同種の労働者賃金等を調査いたしまして、それとの関係、生計費、企業の状況等を考えてきめておるわけでございます。
  148. 小宮武喜

    ○小宮委員 いま各地域の最も低い最低賃金というか、低いところはどこですか。どこというより、幾らですか。
  149. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 業種等によってはいまこまかく持っておりませんが、地域によりますと、沖繩県が一番低いわけでございます。それで最近改定をいたしましたので、いま公示中の額がたしか千円をちょっと上回ったくらいのところであると思います。
  150. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは、第四条二項の最後の「労働省令で定めるところにより最低賃金額を定めることができる。」という、この労働省令で定める最低賃金額は幾らですか。
  151. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 金額を四条に基づきまして具体的にきめておるものはございません。
  152. 小宮武喜

    ○小宮委員 金額はきめてないのですか。その前段に「賃金が通常出来高払制その他の請負制で定められている場合であって、前項の規定によることが不適当であると認められるときは、同項の規定にかかわらず、労働省令で定めるところにより最低賃金額を定めることができる。」こうあるわけです。金額をきめぬで、どうするのですか。
  153. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 四条を受けまして最低賃金法施行規則の一条におきまして、「最低賃金法第四条第二項の規定による最低賃金額は、労働時間が把握しがたい場合その他同条第一項の規定によることが不適当である場合において、当該労働者の出来高又は業績の一定の単位によって定めるものとする。」ということで、そういう時間が把握しがたいものについては出来高によってきめることができるというきめ方を施行規則できめておるわけでございまして、直接四条によって賃金額をきめておるわけではございません。直接の最低賃金額はそれぞれ中央または地方におきます最低賃金審議会において、三者構成で御審議いただいて、地域または業種別にきめておるわけでございます。
  154. 小宮武喜

    ○小宮委員 この問題については、また別の機会にゆっくりやりたいと思います。  次はいよいよ本題ですが、最後に官公労働者労働基本権の問題について質問します。  御承知のようにいよいよ春闘も始まりまして、もうすでに春闘共闘委員会では三月一日にストライキが予定されております。このストライキ回避の問題については政府労働大臣もいろいろ努力されておるようでありまして、それが実ることを期待はいたしますけれども、なかなかむずかしい問題ではないかというふうに考えます。したがいまして、特にストライキに入った場合に問題になりますのは、やはり公労協ストライキについて、これはストライキを行ないますと、従来から見て、すぐ処分をする。またそれに対して抗議ストをやる。それに対してまた処分をするというようなパターンを繰り返してきておるわけです。だから、ここらあたりでこういうような悪循環を断ち切るために、公制審のほうでも八年間にわたっていろいろ審議が続けられてきて、そして昨年九月三日公制審から、官公労働者労働基本権のあり方についての最終答申がなされております。  そこで、この官公労働者スト権の問題については、いままでもかなり国会でも取り上げられておりまして、そのたびに政府公務員制度審議会のすみやかなる結論を期待して、答申が出ればこれを尊重するということを繰り返し答弁してきておるわけでございますが、現在もう答申が出て半年になるわけです。政府のほうでも総理府を中心にして公務員問題連絡会議を設けていろいろ審議されておるようでありますが、そのいまの公務員問題連絡会議で検討されておる現状はどうなっておるのか。また、これはいつごろ結論を出す予定で進められておるのか、その点をひとつまずお聞きしたいと思います。
  155. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 ただいまお話のございましたように、長い討議の末に御答申をいただきましたので、政府としてはさっそくこの答申を実現をしたいということで、お話のございましたような機構をもって検討してまいったわけであります。今日まで連絡会議、それからその下にあります局長あるいは課長レベルの幹事会を含めまして十七回程度会議を持って、いろいろな角度から検討してまいりました。さらにそのほかにも各省庁別に、主管の省庁がございますので、そういうところが中心になりまして無数の会議を開いて事務的な検討を詰めてまいったわけであります。ただ、何ぶんにも非常に複雑な問題でありますのと、各省庁にまたがる問題でございますので、結論がおくれておるわけです。この点は、だんだんと時期も迫っておりますので、相済まないことであろうということから、昨日また連絡会議を開きまして、従来の経過を御説明をいたして、その結果、この答申中身のうち、法律の改正を待たないで運用によって処理していけるもの、あるいは現在のやり方の改変によって処理できるもの、こういう項目も若干あるわけでございます。そういう点は一そう趣旨の徹底をはかって、答申の趣旨が生かされるように、こういうことに合意をしたわけでございます。そのほか、制度の改正を要する問題点につきましては、いろいろな項目がたくさんあるわけでございますけれども、たとえば登録制度と法人格の問題を切り離して法人格の付与を考えたらどうかという御答申がございます。こういう点につきましては早急にさらに案を練っていく、こういうことでございまして、私どもも直ちにまた幹事会で具体案を練りたい、かように考えておるわけでございます。  一番問題の争議権につきましては、なかなか一つの方向を得るまでにはまだ至っておりませんけれども、この問題につきましてはひとつ関係省庁がさらに精力的に検討を進めてもらいたいということで、昨日は一応連絡会議を終えたわけでございます。  お話のございましたいつごろまでをめどにするかということでございますが、私たちは当初からなるべく早く結論を得るようにということで努力をしてまいり、今日もそのつもりでおるわけでございますけれども、何ぶんにも一省庁だけで判断のできかねる問題も多いこともございまして、いま明確にその時期を申し上げることはできない点を御理解いただきたいと思います。
  156. 小宮武喜

    ○小宮委員 それはよくわかります。しかし、一応のめどというものがなければ、この問題に公制審答申するまでにも八年かかっておるわけですから、いまの連絡会議でまた三年も四年もかかるということになるとやはり問題があるので、一応のそういうめどを立ててやっておられるのか。めどというものは立てずに、みんなで協議をして結論が出たときがめどだというふうに考えられてはやはり困るのです。こういうようなものが早く解決しなければ、特に今回の春闘ではいままでのスト権回復の問題について決着をつけるというような組合側の意向もあるわけですから、そういうような意味では、できるだけ問題を早く煮詰めて、そしてその結論出していただきたいということを、これは要望しておきます。  それからまたさらに、答申では「三公社五現業のあるべき性格について立法上および行政上の抜本的検討を加えるものとする。」こういうようになっているわけですが、あるべき姿というのは、カッコの中には「特に国民の税負担との関係」ということが入っておるわけですが、そのあるべき性格というのを、国民はよくわかりません。したがって、これはどういうようなことを意味しておるのか。私もわかっておるようで何をさしておるのか的確にはわかりませんから、ひとつ説明してもらいたいと思うのです。
  157. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 この争議権の問題につきまして公務員制度審議会で一番議論のございましたのは、特に三公社五現業の争議権についてでございますが、一番根本の問題は、まず現在の労使関係というものをどういうふうに考えるのかということが一つあるわけでございまして、これが正常な労使関係の上に立っているのか、あるいはそうでないのかというようなことをめぐりまして、まず現在の労使関係というものの認識のしかたに非常に違いがあったわけでございます。さらに、そういうことと関連をいたしまして、争議権を与えた場合に現状よりもよくなるのか、あるいはさらに争議権がひんぴんと行使されることになるのか、その辺の見通し、この点についても非常に意見の食い違いがあったわけでございます。  こういう意見の食い違いの原因をさらに考えてみますと、一つには、三公社五現業の事業の性格がやはり国家予算というものとの関係がございまして、国会の審議を得る必要がある。そういうことのために当事者能力というものがどうしても制限されることになる。こういうことをどういうふうに考えたらいいのか。それから事業の経営主体が申すまでもなく国なりあるいは準公的な公社であるというようなことからいたしまして、いわゆる争議行為における経済原則、市場原理が働かない、そのために一般の民営企業と違った問題が発生するということがその原因にもなってくるわけであります。そういたしますと、こういう問題はその事業あるいは企業の性格をどういうふうに考えるか、独立採算制なりあるいは経営形態というものまで含めましてどういうふうに考えるかということとうらはらになってくるわけでありまして、どうしてもその問題まで議論をしないと、むやみに争議権を与えても正常な労使関係が生まれない心配があるというようなことから、こういう答申になっていると私は理解をいたしております。
  158. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは、この公制審答申ILOの問題についてまた若干質問しますが、昨年十一月十六日、ILO理事会では日本の全逓、自治労、日教組など十一組合から提訴されていたスト権禁止、スト処分、不当労働行為についての結社の自由委員会の最終報告書というものを採択しておりますが、このILO報告について政府としてはどのように受けとめておるのか、また評価をしておるのか、その点いかがですか。
  159. 道正邦彦

    道正政府委員 ILOに対しまして十二件の提訴がなされておったわけでございますけれども、そのうちの九件につきまして昨年の十一月に一応の結論がまとまったわけでございます。いろいろ書いてございますけれども結論的に申しまして、公制審答申も出たことであり、国内で自主的に解決をしたらどうかというのが、その骨子であろうかと思います。そういう意味で、先ほど人事局長からお答えございましたように、政府といたしましては、公制審答申に基づき、国内において自主的に検討を続けているわけでございます。
  160. 小宮武喜

    ○小宮委員 このILOの最終報告の中に、「スト処分」の項の中で、「純粋に政治的性格を持つストおよび交渉の行われるずっと以前から組織的に決定されるストは、結社の自由の原則の範囲に含まれないと考える。」こういうような内容のものが採択されているわけですね。そうすると、こういうふうな純粋な政治ストまたはスケジュール闘争によって処分を受けた場合は、このILOの救済を受けないというふうに理解していいですか。
  161. 道正邦彦

    道正政府委員 百三十九次報告の百二十四項に、ただいま御指摘ございましたような文章があることは事実でございます。純粋に政治的な性質のもの並びに交渉が行なわれるずっと以前から計画的に決定されるストライキと申しますのは、要するに団体交渉をやらない、あるいは十二分にやらない、要するに団体交渉を尽くした上で最後に訴える手段としてストライキが認められるという趣旨からいって、交渉が行なわれるずっと前からスケジュール的にきめるストライキというのは結社の自由の原則を逸脱するものであるという趣旨からいいまして、これについて組合法その他に定める保護救済の規定が及ばないという意味では、ただいま先生が御指摘のあったとおりでございます。
  162. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは純粋な政治ストとは何をさすのか、ひとつ政治ストの定義について説明願いたい。
  163. 道正邦彦

    道正政府委員 憲法二十八条は、使用者と被使用者との関係に立つ者の間におきまして、経済上の弱者である勤労者のために団結権ないし団体行動権を保障したものでございます。この点は最高裁の判例でも確立しているところでございます。そういう意味からいいまして、そういう原則からはずれますいわゆる政治的なストは憲法二十八条の保障する団体行動権の範囲を逸脱するものであるということも、これまた最高裁の確立した判例でございます。したがって、労使間の団体交渉では解決できないような、たとえば国会による法律の制定であるとか、あるいは改廃であるとか、あるいは政府によりまする特定の政策の樹立あるいは遂行等の事項を要求して行ないまするストライキ、これはいわゆる政治ストでありまして、違法なものになるわけでございます。
  164. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは、年金ストのようなこういうような法律制度改正のためのストライキも政治ストだ、たとえば今度は、スト権回復のための順法闘争も政治ストと考えておるのか。そういった労働者賃金以外の制度改正要求ストライキというのは全部政治ストだというふうに政府は考えておるのですか。
  165. 道正邦彦

    道正政府委員 憲法二十八条の解釈につきましては先ほど申し上げたわけでございまして、ストライキをされましても使用者はどうにもならぬわけでございます。そういう事項を内容とするストライキ、特に国会の審議にまたなければどうにもならぬ事項を目的とするものは、これはやはり政治ストと言わざるを得ないと思います。
  166. 小宮武喜

    ○小宮委員 たとえば今年の春闘のように、老齢年金とかあるいは障害年金あるいはスト権回復の要求あるいは賃上げも入ります。こういうように要求項目がたとえば三つも四つも大幅賃上げ以外に含まれて要求され、その場合にストライキを打つ、この場合の判断は政治ストなのか、または経済的な要求も入っているわけですから、その点の場合、たとえば今回の場合にこういうような四つの抱き合わせの要求をしてストライキをやる。ストライキをやった場合は、これは政治ストとして処分しますか。この点はどうですか。
  167. 道正邦彦

    道正政府委員 ただいま御指摘がございましたように、純粋の政治目的を持って行なわれる場合もございますけれども、多くは経済闘争と一緒に行なわれる場合が多うございます。そういう場合になりますと、いずれが主であるかということで判断せざるを得ないと思います。これはケースごとにストライキの態様によって判断をするということにならざるを得ないと思います。ただ、蛇足かもわかりませんけれども一言つけ加えさせていただきますならば、労働組合といえども経済目的が主体の団体でなければならないわけでございますけれども、従たる目的として政治的な活動をすることは認められているわけでございます。その場合に、一般の国民に認められているような形において政治的な行動をするということである限りこれは可能でございまして、立法事項ではあるけれども、われわれの権利に関係があるということで政治的な行動をされる、これは認められるわけでございます。
  168. 小宮武喜

    ○小宮委員 しかし現実には、そういうような四つの項目を並べて抱き合わせて要求をし、ストライキを打った場合に、そのストライキがどちらのストライキか、これは区別できぬでしょう。むずかしいでしょう。そういうような場合に、たとえばストライキを打ったにしてもなかなか、公労協の場合はいろいろまた別問題がありますけれども、その点、あまり政府のほうも拡大解釈をして乱用をするようなことがないようにやってもらわないと、やはり現在社会で賃金以外にそういうような制度改善によって初めて労働者の生活が向上するわけですから、その意味では、政治ストという解釈をいまのような形でやられていくと、やはり労働者の生活要求、生活向上の大衆行動が非常に限定されてくるというようになってまいります。ひいてはそれが労働者の生活向上の道を閉ざされるということになりかねませんので、その点は慎重にやってもらいたい。  またILOの場合も、この報告の場合も、政府はどこまで尊重するのか知りませんが、ただ自分の都合のいいところだけは食いついて尊重する、自分のぐあいの悪いところはこれはもう捨てるというようなことでは困りますので、十分そういうようなことを考えていただきたいと思うのです。  もう時間も来たようですから、最後にもう一つだけ質問しておきますが、いま官公労働者労働基本権の問題について公制審答申とか、あるいはILOの報告とか、いろいろあっておりますけれども、こういうような官公労働者労働基本権の問題以前に、現在、たとえば民間の石炭労働者あるいは電気産業労働者は、当然規制する必要もないし、規制されるべき筋合いでもないのに、スト規制法によってストライキが規制されておるわけです。したがって、この問題を論議する以前に、スト規制法についてやはり解決しなければならない問題があると思うのです。この問題も従来からいろいろ国会で取り上げられてまいりましたし、私も社労委員会でやっておるし、また予算委員会でもやりましたけれども、もう一度大臣から、このスト規制法について、これは私は当然もう廃止をすべきだという主張を従来からいたしておるわけでありますが、こういうような官公労働者労働基本権の問題を論議されているおりからでもあるし、この問題についてどういうふうに取り組むのか、スト規制法は廃止するという立場で取り組んでもらいたいと思うのですが、この点について、労働省はどのように考えておられるのか一またどのように取り組んでおられるのか、この点もひとつお聞きしておきたいと思うのです。
  169. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 労政局長から御答弁もありましたけれども労働省としては勤労者を守る立場にあります。でありますから、当然法律にひっかかるようなことはやってもらっちゃかなわない、ひっかからないようにしてもらいたい、こういうたてまえをとっているわけでありまして、先生がおっしゃった三・一ストというものは、自分たちの権利ということもあるだろうけれども、それがいま憲法解釈で出るように違法ストといわれ、スケジュール・ストといわれるから、そのこともあるし、一方は御自分たちのことであるだろうけれども、この一億数百万の国民が足を完全に奪われるようなことがあって、物資の輸送がとまるとか、あるいは入学試験ができないとかいうふうなことであったらたいへんなことになりますので、ひとつ御自重をお願い申し上げたい、こう申しているわけでございまして、私は、こういうときにこそ国民連帯の姿で問題を見てもらいたい、こう思っておるわけでございます。  石炭、電気のストの問題については、私たち、敗戦の時代に地方におりまして、しょっちゅう電気がとまったり、いろんなことがありまして、こういう法律が生まれたことでありますが、それ以来事情も変わりました。そこで御案内のようにスト規制法調査会というものをつくりまして、すでに委員として学識経験者七名をお願いし、参与委員、これは関係労使の代表各二名ずつでございまして、いろんな問題を御研究いただくために、去る一月十八日に第一回の会合を開き、そして二月二十七日にまた会合を開いて、社会情勢に合わせながらいろんな問題を円満に解決していきたい、こういう姿勢をとっておりますことを御了解いただきたいと思います。
  170. 小宮武喜

    ○小宮委員 最後に確認しますけれども、その調査会はこのスト規制法について建議の立場になりますか、それとも大臣から、ひとつこの問題について検討してくれ、研究してくれということの諮問において、この調査会を運営されているのですか。
  171. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 これは労働大臣の私的諮問機関でして、私は、こういう方々答申を尊重してまいりたい、こう思って見守っているわけであります。
  172. 小宮武喜

    ○小宮委員 それで、その結論はいつごろまでに出る見通しですか。その点いかがですか。
  173. 道正邦彦

    道正政府委員 一月十八日に第一回の会合を開きまして、各委員さんから、労働省としてはいつごろまでに答申を期待するかという御質問がございました。私どもといたしましては、審議は大体月一回程度のスピードでお願いしたい、そういうスピードで審議した結果、いつごろ御意見をおまとめいただくか、これも審議会におまかせするということで、審議会の御判断にゆだねたわけでございます。
  174. 小宮武喜

    ○小宮委員 これで質問を終わります。
  175. 野原正勝

    野原委員長 次回は、明後二十八日木曜日午前十一時理事会、十一時三十分より委員会を開催することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十六分散会