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1974-02-14 第72回国会 衆議院 社会労働委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月十四日(木曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 大野  明君 理事 葉梨 信行君    理事 山口 敏夫君 理事 山下 徳夫君    理事 枝村 要作君 理事 石母田 達君       伊東 正義君    瓦   力君       小林 正巳君    住  栄作君       田川 誠一君    田中  覚君       戸井田三郎君    中村 拓道君       羽生田 進君    粟山 ひで君       大原  亨君    金子 みつ君       田邊  誠君    村山 富市君       森井 忠良君    寺前  巖君       大橋 敏雄君    坂口  力君       小宮 武喜君    和田 耕作君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君  出席政府委員         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  仁君         厚生政務次官  石本  茂君         厚生大臣官房長 曾根田郁夫君         厚生大臣官房会         計課長     木暮 保成君         厚生省医務局長 滝沢  正君         厚生省薬務局長 松下 廉蔵君         厚生省社会局長 高木  玄君         厚生省児童家庭         局長      翁 久次郎君         厚生省保険局長 北川 力夫君         厚生省年金局長 横田 陽吉君         社会保険庁医療         保険部長    柳瀬 孝吉君         社会保険庁年金         保険部長    出原 孝夫君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      梅澤 節男君         厚生大臣官房審         議官      三浦 英夫君         通商産業省機械         情報産業局車両         課長      後藤  宏君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二日  辞任         補欠選任   矢野 絢也君     坂口  力君 同月四日  辞任         補欠選任   坂口  力君     矢野 絢也君 同月六日  辞任         補欠選任   矢野 絢也君     坂口  力君     ――――――――――――― 二月六日  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す  る法律案内閣提出第三一号) 同月七日  結核予防法等の一部を改正する法律案内閣提  出第三四号)(予) 同月二日  保育所予算増額に関する請願松野幸泰君紹  介)(第一四七四号)  クリーニング業法の一部改正に関する請願(伊  藤宗一郎紹介)(第一四七五号)  同(菅野和太郎紹介)(第一四七六号)  同(白浜仁吉紹介)(第一四七七号)  同(大野市郎紹介)(第一六一五号)  同(田中榮一紹介)(第一六一六号)  同外二件(高沢寅男紹介)(第一六一七号)  国民健康保険高額療養費支給制度に関する請  願(吉川久衛紹介)(第一四七八号)  同(小坂善太郎紹介)(第一四七九号)  同(羽田孜紹介)(第一六二〇号)  観光地のごみ、し尿、汚水処理及び水道施設整  備に関する請願吉川久衛紹介)(第一四八  〇号)  同(小坂善太郎紹介)(第一四八一号)  同(羽田孜紹介)(第一六一九号)  原爆被爆者援護法制定に関する請願大原亨君  紹介)(第一四八二号)  同(小濱新次紹介)(第一六一八号)  身体障害者生活保障等に関する請願大野潔  君紹介)(第一四八三号)  同(鬼木勝利紹介)(第一四八四号)  同(北側義一紹介)(第一四八五号)  同(鈴切康雄紹介)(第一四八六号)  同(松尾信人紹介)(第一四八七号)  同(矢野絢也君紹介)(第一四八八号)  同(小濱新次紹介)(第一六一三号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第一六一四号)  心臓病患者医療及び生活補償に関する請願  (伊東正義紹介)(第一四八九号)  同(小宮武喜紹介)(第一四九〇君)  同(斉藤滋与史君紹介)(第一四九一号)  同(戸井田三郎紹介)(第一四九二号)  同(山下徳夫紹介)(第一四九三号)  戦時災害援護法制定に関する請願矢野絢也君  紹介)(第一四九四号)  同(山田芳治紹介)(第一四九五号)  社会福祉施設労働者労働条件改善等に関する  請願大野潔紹介)(第一四九六号)  同(北側義一紹介)(第一四九七号)  同(鬼木勝利紹介)(第一四九八号)  同(鈴切康雄紹介)(第一四九九号)  同(松尾信人紹介)(第一五〇〇号)  同(矢野絢也君紹介)(第一五〇一号)  同(小濱新次紹介)(第一六〇八号)  同(坂口力紹介)(第一六〇九号)  同外一件(瀬野栄次郎紹介)(第一六一〇号)  同(松尾信人紹介)(第一六一一号)  同(矢野絢也君紹介)(第一六一二号)  療術制度化に関する請願外十一件(中村弘海  君紹介)(第一六〇三号)  同(三池信紹介)(第一六〇四号)  国民健康保険における高額療養費支給制度の早  期実施に関する請願鈴木善幸紹介)(第一  六〇五号)  保育所整備緊急措置に関する請願鈴木善幸  君紹介)(第一六〇六号)  乳児医療費無料化に関する請願鈴木善幸君  紹介)(第一六〇七号) 同月四日  身体障害者生活保障等に関する請願有島重  武君紹介)(第一六八二号)  同(伏木和雄紹介)(第一六八三号)  同(松本忠助紹介)(第一七七三号)  重症心身障害児施設整備改善に関する請願  (佐々木秀世紹介)(第一六八四号)  同(田村良平紹介)(第一六八五号)  戦時災害援護法制定に関する請願登坂重次郎  君紹介)(第一六八六号)  社会福祉予算削減反対に関する請願奥野誠  亮君紹介)(第一六八七号)  同外五件(佐々木秀世紹介)(第一六八八  号)  心臓病患者医療及び生活補償に関する請願  (小林正巳紹介)(第一六八九号)  同(増岡博之紹介)(第一七七二号)  医療保険制度の改革に関する請願田村良平君  紹介)(第一六九〇号)  療術制度化に関する請願(森下元晴君紹介)  (第一六九一号)  保育所事業振興に関する請願登坂重次郎君紹  介)(第一六九二号)  原爆被爆者援護法制定に関する請願外二件(石  橋政嗣君紹介)(第一六九三号)  同(増岡博之紹介)(第一七七五号)  社会福祉施設労働者労働条件改善等に関する  請願有島重武君紹介)(第一六九四号)  同(小濱新次紹介)(第一六九五号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第一六九六号)  同(伏木和雄紹介)(第一六九七号)  同(矢野絢也君紹介)(第一六九八号)  同(小濱新次紹介)(第一七六八号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第一七六九号)  同(松本忠助紹介)(第一七七〇号)  同(矢野絢也君紹介)(第一七七一号)  同(紺野与次郎紹介)(第一八三八号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第一八三九号)  同(松本忠助紹介)(第一八四〇号)  腎炎ネフローゼ児に対する医療施設設置予  算の増額等に関する請願渡部一郎紹介)(  第一七七四号)  クリーニング業法の一部改正に関する請願(田  中榮一紹介)(第一七七六号)  同(渡辺栄一紹介)(第一七七七号)  重複障害者障害年金等増額に関する請願(橋  本龍太郎君紹介)(第一八三〇号)  漢方医療健康保険法適用に関する請願(安里  積千代紹介)(第一八三一号)  歯科技工士の免許に関する請願阿部喜元君紹  介)(第一八三二号)  同(大西正男紹介)(第一八三三号)  同(關谷勝利紹介)(第一八三四号)  同(永山忠則紹介)(第一八三五号)  同(野田毅紹介)(第一八三六号)  同(毛利松平紹介)(第一八三七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月十三日  福祉年金併給制限撤廃に関する陳情書  (第一三四号)  生活保護基準引上げに関する陳情書  (第一三五号)  国民年金制度改善に関する陳情書  (第一三六号)  社会保険制度改善に関する陳情書  (第一三七号)  国民健康保険組合に対する国庫補助増額に関す  る陳情書  (  第一三八号)  建設国民健康保険組合助成に関する陳情書  (第一三九号)  身体障害者更正援護総合施設国庫補助制度の確  立に関する陳情書  (第  一四〇号)  重症心身障害児施設における特別措置に関する  陳情書外一件  (第一四一号)  原爆被爆者援護法制定に関する陳情書外四件  (第一四二号)  社会福祉予算削減反対に関する陳情書外一件  (第一四三号)  社会福祉拡充等に関する陳情書外一件  (第一四四号)  民間社会福祉施設整備等に関する陳情書  (第一四五号)  老人医療無料化拡大に関する陳情書外一件  (第一四六  号)  厚生年金保険法老齢年金制度改善に関する陳  情書(第一四七  号)  保育対策充実強化に関する陳情書  (第一四八号)  人工肛門受術者身体障害者福祉法適用等に関  する陳情書(第一  四九号)  妊婦、乳児健康診査無料化等に関する陳情書  外一件(第一五  〇号)  広島県旧佐伯都井口村外九地域特別被爆地域  指定に関する陳情書  (第一五一号)  看護婦養成対策拡充強化に関する陳情書  (第一五二号)  老人医療機関整備拡充等に関する陳情書  (第一五三号)  救急医療体制整備に関する陳情書外一件  (第一五四号)  がん対策促進に関する陳情書  (第一五五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 野原正勝

    野原委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。瓦力君。
  3. 瓦力

    瓦委員 四十九年度の予算編成にあたりまして、厚生大臣老人や身障者、生活保護家庭母子家庭など減税の恩恵もなく、団交で大幅賃上げをかちとることも望めない人たちこそ行政の力で救いの手を差し伸べなければならない、弱者保護について厚生大臣はこういう意気込みで予算獲得のために御努力されたわけでありますが、こういう経済情勢下でありますので、私も一言意見を申し述べたいと思います。  四十七年以降、過剰流動性による物価上昇、四十八年度末のエネルギー危機に加え、利に走る許しがたい一部企業の便乗値上げ売り惜しみ行為など、国民生活を脅かし、あばれ回ったいわゆる狂乱物価はいまなお大きな不安の影を落としております。予測される石油の第二次値上げ日本列島を麻痺させるといわれる春闘などを控え、さらにまた物価火山が爆発する危険があります。今日、やや鈍化の傾向にあると見られる経済情勢が残念ながら複雑な要素をもってなお活火山である、かようにいわなければなりません。  政府は、当面の事態をすみやかに勇断をもって鎮静すべく万全の措置を講ずべきであります。このことは福祉二年を迎え、わが国の経済社会の方向を福祉優先に定着させる大前提でもあろうかと考えます。国民のすべてに健康で生きがいのある生活を保障することを目的とする社会保障の確立は、まず物価問題との対決である、かように考えます。施設整備等の問題もさることながら、自救措置を講ずることのできない、みずからを救済することのできない、いわゆる社会的弱者の要望、願いにこたえるため、またこれらの仕事に従事し、介護等に携わる方々の処遇をも含めて、公正なる社会的分配を確保するため最大の努力をしなければならないときであると考えます。  こういった観点に立ちましてこれから質問を行ないたいと思います。  私は、前国会大臣社会保障長期計画策定について質問をさせていただきました。そのときに、いわゆる昨年でございますが、八月下旬に懇談会審議報告が受けられるであろうという御返事がありましたが、その後の経過につきまして、もしおわかりでしたら御答弁いただきたいと思います。
  4. 石本茂

    石本政府委員 大臣にかわりましてお答えをいたします。  ただいま御質問のございました長期計画策定でございますが、社会保障長期計画につきましては瓦委員も御承知のように、それぞれの学識経験者からなりますいわゆる社会保障長期計画懇談会が設けられておりまして、そこから意見を伺ってきたところでございますが、この懇談会からは昨年の九月の下旬でございましたが、中間的に審議状況報告をいただきました。その後も引き続きまして慎重な検討を進めていただいております結果、今日ただいま私ども承知いたしておりますのは、看護婦等につきましては、五十三年に四十九万人の就業者を確保することにより需給のバランスをはかるということの報告をいただいておりますし、また社会福祉施設整備計画につきましては在宅対策との関連に留意をするほか、新しい需給に適切に対応ずるよう現行五カ年計画をすみやかに改定いたしまして、そして社会福祉施設整備を新たな軌道に乗せるべきであるとの報告をいただいているところでございます。これらの報告の取り扱いにつきましては、その内容を慎重に検討いたしました上で決定することといたしたい所存であります。  なお、その他の部門につきましても今後引き続き検討を進めていただくことにしておりまして、総括的な報告をできるだけ早い機会にいただけるものと期待しているのが現状でございます。
  5. 瓦力

    瓦委員 懇談会作業が、非常に福祉関係いろいろな問題があるときでありますから、早急に取りまとめるということも困難かと思いますが、また懇談会の資料につきましてお手元に参りましたら、ひとつ私たちの勉強のためにもちょうだいをいたしたいと思います。実は基本的には、長期的な展望を踏まえて着実に社会保障施策を推進しなければならないわけでありますが、昨今の経済情勢を考えますと、弱者に対するあたたかい手の差し伸べ方というのは状況に応じて機敏に適切に措置をしていかなければならない、かように考えるわけであります。  そこで、これから二、三の問題につきましてお尋ねをしたいと思います。  前国会において国民年金厚生年金等、画期的ともいえる幾つかの改善がなされたわけでありますが、多くの国民がこれを歓迎し、またその後相当多くの理解も深まってきたかと思います。制度として信頼されるためには適切な措置をやはり講じていかなければなりません。そこでスライド制が導入され、その実施が待たれているわけでありますけれども実施の方針、これにつきまして年金局長からお尋ねをしたいと思います。  また続いて福祉年金についてでありますけれども、一緒に御答弁賜わりたいと思いますが、四十九年度五〇%の引き上げが予定されておりますけれども、今日のきびしい経済情勢を考えますと、増額措置といいますか、そういったことを考えていただかねばならない、かように思うのですが、そういった作業を考えておられますか。
  6. 横田陽吉

    横田政府委員 お答え申し上げます。  まず最初スライド実施の問題でございますが、先生指摘のように、昨年の改正によりまして初めて導入をいたした制度でございますので、これを具体的に実施いたします際には、年金制度に対するいろいろな関係から相当難問をかかえておるわけでございます。そういった関係がございますので、実は昨年の法律改正の御答申をいただきました社会保険審議会におきましても、最初スライド制実施につきましては当審議会厚生年金部会意見等を十分に聞くようにというふうな御趣旨でございましたので、実は今年早々スライド制実施を具体的にいたします際に、どのような内容、どのような手順でやるかということについて現在御意見を聴取いたしておる段階でございます。  ただ、先生指摘のように、最近の非常に異常な物価上昇がございますので、制度の中には、御指摘もございましたように厚生年金につきましては十一月分から、それから国民年金につきましては来年の一月分からるライドを実施するというふうになっておるが、それまでなかなか待てない事情があるのではないか。この点につきましては、実はスライド制を導入いたしました法律をつくりました際に想定いたしました社会経済情勢とだいぶ異なっておりますので、私どもも非常に苦慮いたしております。ただ問題は、このスライド制自体が非常に画期的なものであり、技術的にきわめて困難な要素を持っておりますので、十一月分から実施するということだけでも、実は審議手順その他から申しましてぎりぎり一ぱいの期間でございます。そういったことを考えますと、当初予想しなかったような社会経済情勢で非常に困ったという認識を持ちながらも、実際問題といたしまして、第一回目のスライド実施を早めるというようなことなどはたいへん困難でございますので、その辺どのようにいたしたらいいものか、目下鋭意検討をいたしております。  それから福祉年金の問題でございますが、福祉年金は御承知のように昭和三十四年に一千円ということで発足いたしまして、その後は百円、二百円、せいぜい三百円の値上げでございましたが、昨年は一昨年の値上げに引き続きまして千七百円の値上げということで、いわゆる五千円の福祉年金が実現いたしまして、それを今回はさらに五割アップというふうなことで七千五百円にしていただきたい、そういうお願いをいたしておるわけでございます。  ただ、この点につきましても、最近の相当物価上昇というものを考えれば、もう一回考え直すべきではないかという御意見もいろいろな方面から私どもも伺っておりますけれども、この問題につきましては全額国費負担であるというふうなこと、それからまた、これだけ金額を上げるという問題ではございませんで、御承知のように生活扶助その他のいろいろな社会福祉施策と相まって効果を発揮する、そういうふうな仕掛けでございますので、金額値上げについてはきわめて困難である「七千五百円よりさらに積み増しをすることは非常に困難であると私ども考えております。  ただ問題は、御提案申し上げておる予算の中にもはっきりいたしてございますように、併給制限の問題でございますとか、それから所得制限の問題でございますとか、そういった点につきましては従来に見ないような相当改正を前回もいたしましたし、今回もいたしておるわけでございますので、相当受給なさる方につきましては幅広く受給されるような状態が実現されるものと考えておりますので、その辺を十分御理解いただきたいと考えております。
  7. 瓦力

    瓦委員 それでは生活保護世帯方々に対する手当の問題についてお尋ねをしたいと思います。  昨年の十月に生活扶助基準社会福祉施設措置費五%の引き上げ、さらに十二月に特別一時金、来年度の予算には扶助基準を二〇%上げるというようなことで、私は、政府のほうとしても手は講じてきておる、かように思うわけでありますけれども、何しろこの異常な物価高でございます。生活保護世帯方々には、異常な物価高のもとでその生活は非常に深刻でございます。これらの方々に一時金であるとかまた底上げをして手当を差し上げるというようなお考え、これは社会局のほうで検討なされておりますでしょうか。
  8. 高木玄

    高木(玄)政府委員 ただいま先生からお話がございましたように、昨年来の異常な物価高に対応いたしまして、昨年十月と十二月にその対応措置を講じたところでございますが、今後とも消費者物価動向を十分に注意しまして、必要な事態が生ずれば、機敏に対処してまいる覚悟で行政に当たりたいと考えております。
  9. 瓦力

    瓦委員 ちょうど大臣もお入りになりましたので、この問題についてお尋ねをしたいと思います。  生活保護世帯に対する手当でございますけれども、ぜひ大臣にお伺いしたいわけですが、非常な物価高でございますし、制度的にはいろいろ心配をしていただいておることはよくわかるのですが、一時金のような形で何か差し上げたいというようなことが新聞にも一部報道されましたが、私は大臣のあたたかいお心でおそらく検討が始まっているんじゃないかというようなことを考えておったわけでありますけれども、局においても前向きで考えていただいておるようでございますが、この際大臣から、時期はともかくとして、どういう心組みで取り組んでおられるか、大臣のお気持ちをお聞かせいただきたいと思います。
  10. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 最近における異常な物価高相当長期に続いておりますことはまことに遺憾なことでございます。したがって、政府としては全力を尽くしてこの物価騰勢というものを抑えるということに真剣にいま努力をしておることはすでに御承知のとおりだと思います。  それはそれといたしまして、現実こういうふうに物価が異常に上がっております。そういうことになりますと、この異常な物価高をもろに影響を受ける方々、そういう人々の生活はあくまでも守る、これは当然のことであり、政府としてもなさなければならない問題だと考えております。したがって私といたしましては、毎月毎月実は卸売り物価がどのように変わっていくだろう、消費者物価がどういうふうに動いていくだろう、その数字をこわいような気持ちで実は見ながら、そういう数字が出るたびにどうすればいいだろうということを毎日のように実は苦慮をしておるような次第でございます。したがって、私どもは昨年来、特に最低生活に悩んでおられる方々でございますから、生活扶助基準につきましては、昨年御承知のように十月五%の引き上げ臨機応変に行なう、あるいは年末のいわゆるもち代と称せられる一時金につきましても、従来の一時金だけじゃ足りないだろうというので、追加をしてめんどう見るようにしましょうやということをいたしてきたわけでございまして、今後とも私としては物価動向消費生活水準の動き、そういうものに慎重なる関心を払いながら、その動向とにらみ合わせた対応策臨機応変にやっていく、こういうふうにしてまいりたいと考えております。  そこで、その対応策としてどういうことがあるのかといったふうなお尋ねであったと思いますが、一時金という形でめんどう見るということがいいのか、あるいは四月からは御承知のように昭和四十八年度に対して二〇%の引き上げ扶助基準引き上げということになるわけでございますから、その間どういうふうなことが一番適当な措置であろうかということで、きめてはおりませんが、どういう方法が一番適切であろうかということでいま検討をいたしておる段階でございます。  要するに物価動向に対応した臨機応変な具体的な措置をそのつどそのつどとっていって、そして最低生活に苦しんでおられる方々を、少しでも生活を守っていくという強い決意で臨んでまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  11. 瓦力

    瓦委員 大臣のそういったお気持ちを聞きますと、もう一度社会局長にさらにお願いをしておきたいと思うわけであります。  先般当委員会で、秋津療育園フジホーム、東京都養育院東村山分院ですか、視察をさせていただきました。この物価高で、社会福祉施設でもいろいろやりくりしながら皆さん苦労しておられる。ことに栄養士の若い方々などは、ほんとうに御苦労しながら年老いたお年寄りに向く食事に苦労しておられる。もう二百九十九円という一つの目安をこえて三百二十円になっておる。おそらくこういった問題につきまして他の委員からも質問があると思いますが、措置費内でのやりくりがもう限度にきておる、赤信号がついておるというようなことでもありますので、大臣のお気持ちを体しまして、鋭意ひとつ弱者に対する保護ということで、いまこそ厚生省が立つときでありますから、抜かりなくひとつお取りまとめ作業に励んでいただきたいということをお願いしておきます。
  12. 高木玄

    高木(玄)政府委員 先生のただいま仰せられましたように、社会福祉施設の実情につきましては私どもできるだけ情報を集め、その実態の把握につとめてまいっておりますが、非常にやりくりに苦労している実態であることはおっしゃるとおりであります。したがいまして、昨年来生活保護につきまして特別措置を講ずる際、必ずあわせて社会福祉施設の収容者の処遇改善につきましても対応措置を講じておりますが、今後も生活保護について特例措置を講ずる場合には、あわせて施設についても配慮してまいるように努力したいと思っております。
  13. 瓦力

    瓦委員 時間もございませんので、それじゃ最後に看護婦の確保の対策につきまして質問をしたいと思います。  福祉二年目の今年は社会保障関係費が大幅に伸びた。四十一年から四十八年まで一般会計予算額に占める割合が一四%台であったわけでありますが、一六・九%に今年はなっております。七分の一から六分の一、一般会計予算に占める割合も高くなってまいりました。非常にわれわれも仕事のやりがいがあるわけでありますし、大臣はじめ皆さん方の御苦労も多とするわけであります。いよいよわが党も福祉時代というものを定着させなければならない、かように考えております。  その中でも、ことに最近の傾向では、一般的に物を大切にするとか、人のために力を尽くすとか、親切にする、こういったものの考え方というのはだいぶ変わってまいりました。いろいろ投書を見ますと、非常に看護婦さんに対する期待が大きい。現在のところは非常に足りないわけでありますけれども、先般も若い看護婦さんの投書を見ますと、院内保育所の設置それからナースバンク等について非常に大きな期待をしておるわけなんです。私は、今度看護婦の確保対策について非常に御努力された、ことに政務次官にこの問題についてお答えをいただきたいと思いますが、これで万全であるかどうか、どういったことがまた心配になるのか、そういった点につきましてひとつ御答弁を賜わりたいと思います。   〔委員長退席、大野(明)委員長代理着席〕
  14. 石本茂

    石本政府委員 ただいまの御質問でございますが、来年度に向かいましてそれぞれ手を打ったわけでございますけれども、いま申されましたバンクができたからといって、また保育所の運営が国費で補助できるといたしましても、これは万全の手であるということは私簡単には申し上げられないと思うのです。いずれにいたしましても、いま厚生省の考えておりますのは、養成の増強ももちろんでございますけれども、いま申されましたようにやはり定着性を高めていきたい。専門的な職業でございますので、できることならやめていく人をできるだけ多く食いとめていきたいということを考えまして、そして保育所の問題それからバンクの問題を出したわけでございます。  これは決して試験的なんて簡単なものじゃございませんで、私はこの二つの柱は必ず定着性を高めると信じておるわけでございますが、やはり一つは労働環境の中の業務の区分けがまだ十分できておりませんので、これは職場におります、看護職におります者が中心になって区分けをしていかなければいけないと思っております。  それからもう一つは、ただいま人事院との対決をいたしております第二次勧告案のことですが、やはり基本給を何とかその職制にふさわしいものにいたしませんと若い後輩はついてまいらないというふうに考えておりますので、この点でいろいろと委員先生方の非常なお力をちょうだいいたしておりますので、今後とものお力添えを願いながら、しっかりがんばっていきたい。そして何とか五十三年には先ほど申しました四十九万人という数をともかく確保してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  15. 瓦力

    瓦委員 以上で終わります。
  16. 大野明

    大野(明)委員長代理 大原亨君。
  17. 大原亨

    大原委員 それでは厚生省の全般的な問題について、時間は限られておるのですが、要点的に質問してまいります。  大臣は四十九年度の予算はほんとうに福祉優先である、こういうふうにしんから思っているのですか。その論拠をかいつまんで、あなたは何十ぺん演説をしたと思われるので、ひとつ御答弁を簡潔にお願いしたい。
  18. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 御承知のように本年度の予算というものは、異常な物価高という問題を解決する、物価問題を解決する、これがやはり政治の最大の課題であることは御承知のとおりであります。そこで、この物価というものを押えるということに全力を尽くす、そういうふうな考え方から、すでに御承知のように、財政の面において総需要抑制政策というものをとった。思い切った総需要抑制政策であったと思います。ですから、そういうふうな背景を考えるならば、これで満足すべきものかどうかといえば、まだ満足すべきものであるとはいえないと思いますが、要するに現在置かれておる日本の経済、財政の中で、まあ三七%という厚生省の予算がふえたということは、やはりこの辺で満足というのではなくして、しんぼうし、しかも前向きの姿において三七%というものが確保された、前向きにおいてということで、まあまあこの辺でしんぼうすべき予算ではなかったか、かように考えておるわけでございます。
  19. 大原亨

    大原委員 総需要抑制によってインフレをおさめて、その中で福祉予算を確保する、こういうことで福祉優先を実現するんだ、こういう大体の筋書きであると思うのですが、この議論はまた別の機会に譲るといたしまして、三七%ほど前年度比厚生省の予算が大きくなった、これは未曽有のことだ、こういうことでありますが、その内訳について、おもなものについて、これは局長からでもいいわけですが、たとえば年金改正の平年度化によって大体どのぐらい増加分、まあ三七%の中の内訳ですが、増加分があるんですか。  それからもう一つは、二月一日の医療費の改定によりまして国民健康保険政府管掌健康保険に国の持ち出しがあるわけですが、これが内訳として大体どのぐらいあるんですか。
  20. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 政府管掌健康保険の四十九年度の国庫補助として持ち出す予定にしております金額は千三百二十億円でございます。
  21. 大原亨

    大原委員 国民健保の増加分があるでしょう。
  22. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 国民健康保険は千八百十三億というふうにいま覚えております。
  23. 大原亨

    大原委員 増加分合計して幾らですか。
  24. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 政府管掌と合わせますと大体三千二百億弱になると思います。
  25. 大原亨

    大原委員 あと年金ですね。
  26. 横田陽吉

    横田政府委員 年金は福祉年金とそれから拠出制年金とございますが、福祉年金について申し上げますと、平年度化いたしました場合には千六百六十三億八千五百万円でございます。  それから拠出制年金の厚生年金でございますが、厚生年金は四十八年度が三千四百六十七億でございますが、これは平年度化の数字が出ておりませんけれども、四十九年度は七千六百二十四億五千万円でございます。
  27. 大原亨

    大原委員 増加分は。
  28. 横田陽吉

    横田政府委員 増加分は四千百五十五億円余でございます。
  29. 大原亨

    大原委員 年金関係四千五百億円、それから医療保険の関係が三千億円、合計いたしますと七千五百億円で前年度の増加分をほとんど食っちまうんですね。ちょっとこれは算術が違うんじゃないか。
  30. 横田陽吉

    横田政府委員 こちらの厚生年金の場合は特別会計でございますので、一般会計にされる分は給付費の二割だけでございます。その意味では計算が違います。
  31. 大原亨

    大原委員 これは統一的に把握している主計官からちょっと、大まかに……。
  32. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 概略の数字を申し上げますと、四十九年度の社会保障関係費の伸びがおよそ七千七百億でございまして、そのおもなものは、まず年金の四十八年度の抜本的な改正によります増、約二千億、それから医療費の改定に伴います増加分が約二千五百億でございます。
  33. 大原亨

    大原委員 これは主計官は一人でやっているからわりあい計算は早いですね。年金が二千億円で医療が二千五百億円で合計して四千五百億円、七千七百億円から差し引きますと残りの増加率というのは幾らになりますか。
  34. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 いま急にその計算ができないわけですけれども、ただいまの二千億と二千五百億、前年度の社会保障関係費がおよそ二兆円でございますので十数%になるかと思います。
  35. 大原亨

    大原委員 私の試算でもあらまし一五%ぐらいの——一五%プラスアルファになるかもしれないが……。これは年金の議論は引き続いてやります。   〔大野(明)委員長代理退席、山口(敏)委員長代理着席〕 医療の議論も時間があればこれもやります。ですが、その問題を含めて、そういう年金の増加分と、大臣医療保険の政府負担の増加分、これを加えましたら一五、六%の伸びなんです。医療については診療報酬の値上げが、国民の立場になってみると、どれだけ給与の改善になっているか、こういう議論の余地があります。しかしながら、医療の供給面を含めてたくさんの問題があるわけです。これは財政負担がふえただけでいいということではないということははっきりいたしております。  それから年金については、福祉年金その他の増加分について言われておるわけですが、そういう当然増の——福祉元年とことばで言いましたが、昨年の改定を延ばしていきました当然増、それらの当然増を引いてみますと一五、六%であって、政府全体の一九・七%の予算のその伸び率から見ると、それほどこれは福祉優先予算であるというふうなことはいえないのじゃないか、こういうふうに私は断定するわけです。福祉優先福祉優先と言うこともほどほどに考えてもらいたい、こういうことであります。  それから第二の問題は、大臣あるいは関係局長等は——これは大きな問題を一、二やっておきますが、これからのインフレをどういうふうにお考えになっておるのですか。基本的な問題です。これは大臣予算委員会の討議等を通じてお考えがあると思うのですが、インフレはとまると思っていらっしゃるのですか、どうなんでしょう。
  36. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 厚生省は経済省ではございませんから私が答弁するのもいかがかと思いますが、やはりいまの物価高というものを短期間におさめなければならぬ、こういう決意でいま政府はやっておるわけでございます。財政の面においては御承知のように総需要抑制ということをやり、金融面においても、さらに民間の経済界においても設備投資の抑制をお願いするというようなことで金融面で非常に強力に締めておる、こういうわけでございますから、私どもとしては短期間にこの物価高をおさめなければならぬし、またおさめ得るものである、こういう考え方で全力を尽くしておる、こういうことだと思いまして、その点は、すでに今日までの予算委員会において総理はじめ各経済閣僚が熱心なそういう決意を申し上げ、国民の御協力を得ようということで協力をしておるわけでございますから、私どもはこれを短期におさめなければならぬ、またおさまるであろう、こういう見通しのもとに問題を考えておるわけでございます。
  37. 大原亨

    大原委員 経済企画庁来ていますか。先般の発表にもございましたけれども、ことし一月の前年比一年間の卸売り物価の上昇率は三四%、それが原材料の値上がりから卸の製品の値上がりに移行しているというのが特色です。もう一つは、大企業の製品に移行しているというのが特色です。そこでお尋ねするのですが、消費者物価のこれに対応する値上がりは幾らというふうにお考えですか。
  38. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 先般、月例経済報告で申し上げてあるところでございますが、一月の東京の消費者物価は二五%という数字になっておったと思います。正確な数字をいま私持っておりませんけれども、大体そんな数字でございます。
  39. 大原亨

    大原委員 二五%というのは全く異常な値上がりです。一月の前年比の消費者物価の値上がりは二五%というのは異常な値上がりです。厚生省は、この消費者物価の上昇は、これは机上の計算、統計上の数字でありますが、実際上の生計は、どのくらいの生計費の値上がりになっておるか、こういう資料を検討いたしたことがございますか。その数字があればお示しをいただきたい。
  40. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 厚生省においていろいろ生活扶助とかそういうもの、あるいは組織等を考えますときには、消費者物価指数というものをもとにしていろいろ検討しておるわけでございまして、そのほかの統計資料というものは使っておりません。
  41. 大原亨

    大原委員 政府のは平均いたしますと一四%という四十八年度の、ことしの三月までの消費者物価の上昇の見通しでありますが、この調子でまいりますと、一四%で済みますか、済みませんか。
  42. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 一月の数字を先ほど申し上げましたのは東京の数字でございまして、全国が十二月で二〇%ちょっとこえておると思いますが、その辺の数字を根拠にいたしまして四十八年度の見通しの改定を行ないまして、いま御指摘の一四%という年度の見通しを出しておるわけでございますが、その後の東京の数字等見ておりますと、この一四%という四十八年度の見通しの数字におさまることはちょっと困難ではないか、もう少し上がるのではないか、こういうふうに私は考えております。(大原委員「どのくらい」と呼ぶ)これは私、計画局長でございまして、その見通しについての試算等はやっておりませんのでわかりませんが、私の見たところでは、ちょっとこのまま横ばいになっても一四%はむずかしいのじゃないか。
  43. 大原亨

    大原委員 この調子でいくと幾らぐらいになりますか。それはわかっているだろう。
  44. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 年度の見通しについては、私として申し上げる数字は持っておりません。
  45. 大原亨

    大原委員 あなたの見通しでいい。
  46. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 ちょっと言うわけにもまいりませんので、これは調整局のほうでいろいろ検討しておると思いますが、私のほうではまだその連絡を受けておりません。
  47. 大原亨

    大原委員 平均というのは実際には実情に合いませんけれども、私は二八%をこえると思うのです、大臣。いまの調子でいけば一六%には達する、こういうふうに思います。  そこで、この議論はここでするのではないのですが、しかしインフレの見通しをどうするか、それに対応して社会保障をどのように防衛をしていくか、守っていくか、水準を上げていくか、こういう議論が大切だから私は議論をしているのです。これは当面の措置とそれから長期的な措置が要るわけです。  私は過去十カ年間物価の上昇率を見てみますと、これは石油の問題以前ですが、大体十カ年間で一万円札が五千円になっている。貨幣価値が下落しております。この調子でいきましたら、三年くらいでまた二千五百円になります。このあと三年くらいで大体二千五百円になる。三年をこえるかもしらぬけれども、三年くらいにはなると私は思いますね。そこで金と遮断された管理通貨のもとで、しかも資本主義体制のもとではインフレは避けられない。日本のような工業国では避けられない。そういうふうに相場が立って、投機がプラスいたしますから避けられない、私はそう思うのです。クリーピングインフレーション、こういうことをさっき予算委員会の部屋で公述人が言っておったが、いまギャロッピングインフレーションになっておるわけですね。厚生大臣としていまの事態に閣内において対処する道は——クリーピングインフレーションはいま避けることはできないと私は思う。しかし問題は、ギャロッピングという状況は、世界的な資源問題その他で先が見えておるわけですから、あらゆる思惑があるわけです。人口の激増問題もあるわけです。食糧問題もあるわけです。ですからギャロッピングインフレに対応して社会保障福祉をどう守るかということを厚生大臣は閣内において主張しなければならぬ。田中総理大臣と一緒になって、わけくそもわからぬような見通しを次から次に改定していくことに追従しておったのでは、これは厚生大臣のつとめは果たすことはできないと私は思う。クリーピングインフレーションを避ける方法は、私はいまの状況においてはないと思っている。問題は、ギャロッピングからどのようにして社会保障を防衛するか、そういう総合的な観点がなければ、インフレのあと追いあと追いということになって、先ほど数字を若干議論いたしましたが、私は福祉優先にはならぬ、こういうふうに思うわけです。いかがですか。
  48. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 すでに御承知のように、四十八年度の消費者物価の平均上昇率は一応一四%、あるいは一四%をこすかもしれない、私はそうだろうと思うのです。一応予算的には一四%ということで積算をしておりますが、それはこえるだろうと思います。  そこで、四十九年度においてはどの程度物価が上がるだろうかということを考えておるわけでございますが、先ほどもちょっとお答え申しましたように、財政の面において、金融の面において政府をあげて全力を尽くしているわけですね。物価上昇をプッシュする要因は、外的な要因もたくさんあるということもいわれておりますが、何としてでも短期に押さえなければならぬ。財政的にも総需要抑制、金融面においても引き締めを強力にいまやっておるわけでございまして、何とかおさめないわけにいかぬと思うのです。これは生活保護世帯ばかりではない、すべての国民物価高に悩んでおるわけですから、このまま上がっていくだろうという見通しは政府としてはとるべきではない。全力を尽くしてこれをおさめなければならぬ、こういう決意でやっておりまして、来年度におきましては四十八年度に比して、年度間の物価の平均伸び率は九・六%程度におさめなければならぬし、そういう見通しのもとにやっておるわけでございます。  私は大原さんと意見が違いますのは、インフレを終息させることばいまのような情勢ではなかなかできない、こういう前提でございますが、政府の政策よろしきを得れば、また国民の御協力をいただけるならばおさめることができる、こういう前提で私は議論しているわけでございます。
  49. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 申しわけございませんが、先ほど答弁いたしました数字が誤っておりましたので、訂正をさせていただきます。  一月の東京消費者物価二五%程度と申し上げましたが、二〇・四でございまして、私の思い違いでございました。  なお、四十八暦年の全国の対前年増加が二三・九……。(大原委員「それは卸」と呼ぶ)これは消費者物価の四十八暦年でございます。
  50. 大原亨

    大原委員 それは四十八暦年を四十七暦年と比較して、二三%上昇しているのですか。それはたいへんなことじゃないですか。私が言った一六%どころじゃない。だから、齋藤厚生大臣厚生大臣としていまの事態に対処するために、私はいまのこのような異常なインフレに対応する基本的な厚生大臣の心がまえを聞いているのです。田中総理大臣意見じゃないです。あれがああ言ったからといって右へならえする必要は全然ないです。問題は、このような異常なインフレの中で福祉優先を貫く、人間尊重を貫くためには、厚生大臣としてはいかなる心がまえでやるのか。過去十何年間、ずっと二・数%の上昇にとどめるといって、経済企画庁が中期経済計画その他所得倍増計画、すべていってきたけれども、五%以上ずっと上がってきたんだ。そしてその間に、一九七一年にはドルショックがあって、ドルと金の関係も遮断されたわけだ。完全な管理通貨になったわけだ。ですから、そういうときには、人口とか資源とかあるいは環境とか、そういう国際的な情勢で、無資源国の日本が工業立国していく際には、そういうインフレの要因が一ぱいある。クリーピングインフレーションということを越えておるのが数年来の傾向だと思うけれども、問題は、ギャラップした場合に、どういうふうにして福祉を、社会保障を守るかという観点をぴしっとしなければ、厚生大臣と私は三七%の形の問題、名目の問題についての議論はしないけれども社会保障や社会資本の充実を担当する厚生大臣としては欠くるところがあるのではないか、私はこういうふうに言っておるのです。いかがですか。(宮崎(仁)政府委員委員長」と呼ぶ)あなた厚生大臣じゃないじゃないか。ちょっと待っておれ。
  51. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 社会保障を担当する私としては、こういうふうな異常な物価高の姿を一日も早くおさめなければならぬ。しかしながら、一面、そういう中にあってでも国民生活は守っていくようにしなければならない、こういう基本的な考え方で善処をしておるわけでございます。  すなわち年金においても、本年度は幸いに皆さん方の御協力をいただいて成立した年金法によって、いわゆる前年度に比較して四十八年度がどの程度上がるか、一応予算的には一四%ということで計算をして予算は組んでおりますが、一四%が一五%になれば一五%の基準に従って年金額を上げる。これによって実質価値の維持をはかっていこう、こういうふうなことを考え、さらにまた、もろに物価高の影響を受ける生活扶助あるいは福祉施設に入っておられる方々のいわゆる措置費についても、物価高に対応できるような、すなわち二〇%の引き上げをやりましょう、こういうことをやってその生活を守るために全力を尽くしておるわけでございます。  要は、物価高を押えるということが第一前提なんです。これは仰せになりましたとおり、物価高ということは社会保障にとっては敵であると私はほんとうに思っています。ですから、これは何としてでも押えなければならぬ。押えなければならぬけれども、そうした中にあって国民生活を守っていくということで、私は私なりに厚生省としては全力を尽くしておる考え方でございます。すなわち、年金については一四%のスライドということを現実予算的に考えておるのですから、その一四%が一五%になれば、一五%だけ年金額は上がります。こういうやり方でございます。この制度などは、確かに私は、画期的なスライド制の導入、画期的な制度であったと思います。こんな物価高を予想した制度を考えたわけではなかったのですが、非常に役立つ結果になった。これは与野党ともに私は喜んでいただける問題だと思うのです。ということで、厚生省としては、そういう中にあって社会保障の実質的の伸びということを頭に描きながら努力をしておるということは御理解いただけると思います。
  52. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 たいへんお粗末で申しわけございませんが、先ほど申し上げました四十八暦年の一二三・九というのは、これは原数値でございまして、四十七暦年に対する増加率は一一・七でございまして、間違いましてたいへん申しわけございません。
  53. 大原亨

    大原委員 大違いじゃないか。何たることか。ああいう経済企画庁だから何もできない。それが物価庁だからね。
  54. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員長代理 討論の基礎になる数字ですから、質問者のあれをよく聞いてやってください。
  55. 大原亨

    大原委員 この議論はさらにまた詰めるとして、もう一つ厚生大臣に聞きたいことがある。いま自民党はもちろんですが、社会党もあるいは各野党も過剰流動性の残りである超過利潤税、社会党は法人に累進課税でありますが、累進賦課していくわけですが、これは臨時的にやるわけですけれども、そういう案をそれぞれ議論をしておるわけです。つまりインフレというのは、たとえば新日鉄が一兆円の借入金で経営しておるとすると、高度成長をやったとすると、二割ほど物価が上昇すれば二千億円ほど一兆円の借金の値打ちが下がるわけですから、それだけ利益を得るということになります。しかしながら、一方国民大衆はインフレの犠牲を受けることになるわけです。インフレの一番罪悪というのは社会的な不公正を生むわけです。そこでいま超過利得税の議論がありますが、これは意見がまとまったならば、この超過利得税で何千億円出るかはともかくといたしまして、数千億円出ましたら、これは厚生大臣としてはあるいは田中内閣としては、当然に社会保障社会福祉のほうに、これから議論をいたしますが、そういう方向に積んでいくべきだという主張をあなたはすべきだと思うけれども、いかがですか。
  56. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 今度の超過利得税というのですか、それについて与野党が相談をなさって法律をつくることは適当であろうというふうに私も考えておるわけでございます。この金をどういうふうに使うかということは、これは実際目的税としては出ないと思うのです。目的税としては出てこないのじゃないかと思いますが、それは国民の税金として入ってくるならば、国民生活全体を考えて、その予算というものは、その税金の額というものは使っていく、これは当然だと思うのです。それを何も社会福祉とか社会保障ということばかりに限定するとかえって使いにくいのじゃないでしょうか。社会福祉ということは、私が申し上げるまでもなく、大原先生のような大専門家でございますから、社会保障のほかに生活環境の整備もありましょうし、住宅もありましょうし、われわれの生活全体を豊かにするために使う、これは私は当然だと思いますね。ですから、狭いものに限定して税金というものを取るということは一般的に好ましいことではありませんが、集まった金は生活向上のために使う、これは私は当然だと思います。
  57. 大原亨

    大原委員 それはそれ以上議論しませんが、そこでたとえば、いま瓦委員質問がございました。逐次私もやっていくわけですが、生活保護を受けておるのが百四十万人ですね。それから福祉年金をもらっておる人が四百万人ですね。それから老齢年金の特例をもらっておる人が、いわゆる谷間の老人が百万人で、これはだんだん少なくなるわけです。福祉年金は全体に少なくなる。五百万人プラス百四十万人で六百四十万人、この方々はやはり日本のインフレの被害を、福祉施設の関係者と一緒に直撃的な被害を受ける、こういうふうに私は思うわけです。ですから、この異常なる、想定もしないと大臣が言うようなインフレ、福田大蔵大臣は狂乱、そういうインフレのもとにおいてどういう実情にあるかということをつぶさに検討して、これに対応する措置政府全体としてとるべきである、こう思うわけです。いかがですか。
  58. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 年金受給者の生活を考えなければならぬということは、私は当然だと思います。そこで私どもは、御承知のように昨年の十月に五千円になった福祉年金を七千五百円に引き上げる。それから谷間と申しますか六十七歳、六十八歳、六十九歳の者については四千円であったものを五千五百円に引き上げましょう、こういうことをいたしておるわけでございまして、私としては障害福祉年金もこれに見合って上げているわけでございますから、なるほどそれは先に言い出したことではあるにしても、去年の初め予算委員会の冒頭において四十九年度は七千五百円にする、五十年度には一万円にするということを申し上げたにしても、これだけの配慮をしたということは私は評価していただきたいと思うのです。評価していただけるとまた思います。  これはよく私ども先般も予算委員会で申し上げたのですが、福祉年金の性格というもの、位置づけというものが私は基本だと思うのです。これは大原委員と一緒になって私ども国民年金法をつくったのですから、私が申し上げるまでもなく大原委員は十分御承知のとおりだと思うのです。この位置づけ、現在のあの法律の中における位置づけならば、五〇%引き上げたということは、いろいろ御意見はあると思いますよ、いろいろ御意見はあると思いますが、私は思い切ったことだったと思うのです。そのことがまた逆に拠出制年金の五万円年金というものを押し上げていった原因にもなっておるのですね、これは皆さん御承知のように。すなわち、十年年金で夫婦で二万五千円ですね。一人当たり一万二千五百円という十年の拠出制年金ができたことも、福祉年金を三年目に一万円にしますという背景があったからそういうことができたのだということも私はいえると思うのでございます。生活面からいえばいろいろ意見はあると思いますが、政府政府なりに努力したということは、よく御承知大原委員に高く評価していただきたいと私は思っているのです。
  59. 大原亨

    大原委員 生活保護の問題で、去年当初予算で一四%上げたのですね。それは経済企画庁の物価の五・五%の経済見通しを背景にいたしまして一四%上げたわけです。途中で追加して二〇%にしたわけですね。いま当初予算、これを編成する際に政府の見通しは九・六%です。しかしこれは九・六%でおさまると考えているのは、いままで全部政府の見通しがうそっぱちであったように、だれも考えていないわけです。去年の実績が五・五%消費者物価が上がるというのが、いまもあなた方が認めているように一五%上がるという見通しですから、たとえ中間以降においてスローになったところで、平均はやはり、げたというか、物価が上がっている惰性があるからこれは上がるわけです。そうすると五・五%に対して一四%上げたわけですから、九・六%プラスアルファ、一五%といたしましてもこれは大きな数字になりますが、それに対応して、物価の上昇分と生活水準に対応して格差を縮めていく、そういう考え方から言うなれば、二〇%の上昇率はいまや低いのではないか。予算は八月ごろからずっと編成しかかって、そして大蔵省の大体網の中に入っていって査定をしたわけですが、査定時期において若干の石油危機の問題等がありましたけれども、それを並行して考えただけでも、生活保護基準は低いのではないか。ましてや所得が低い人の段階においては、率は同じでも金額が低いわけです、これは当然のことですが。ですから、下のほうは厚くしなければならぬわけです、こういうふうな物価の上昇期には。たとえば百万円の人が一割上昇すれば十万円ですが、しかし十万円の人が一割上昇すれば一万円ですから、十万円と一万円の間には九万円の差があるわけです。そういうことは低所得層の場合にみないえるわけです。ですから、超過利得税の問題も私は直ちにストレートにそれに結びつけてどうこう言うわけじゃないが、予算審議中でも私は改めるべきは改めるべきである。当然である、だれが考えても。三〇%近く、二五%プラスアルファあるいは三〇%程度の、春闘だって三〇%三万円ということがいわれているわけですから、そのくらい生活保護基準をやはり上げるべきである、こういうふうに思います。そしていままでの、ずっと昨年十月からもどんどん上がっているわけですから、その分の穴埋めとしては、三月末に一時金を出すということもあるだろう。いままでのものについては一時金、これからは率を上げていく、こういう二つのこと、これは一本にするかどうかは別にいたしまして、そういうことを考えてやるならば、生活保護基準も二五%以上プラスアルファを当然やるべきではないか、そう思いますが、いかがです。
  60. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 生活扶助基準をきめますときには、これはもう大原委員承知だと思っておりましたからあまり言わなかったのですが、個人消費支出と物価と二つを実は勘案してやっておるわけでございます。  それで昭和四十八年度一四%引き上げたのは、あの当時の見通しとしては、個人消費支出の伸びが、たしか一三・四か一三・六であったと思います。物価はなるほど五・五でございました。こういう考え方で一四%の引き上げというものを四十八年度の予算で計上し、そしてその後物価動向によって、さらに個人消費支出の動向によって十月から五%上げた、こういうやり方なんです。  ことしはどうかといいますと、経済企画庁あるいはまた政府全体としてきめました経済見通しは、個人消費支出は一七%の引き上げということを見通しておるのです。物価は先ほど来申し上げておりまするように九・六。そこで前年度、四十八年度の当初に対して二〇%引き上げということをきめて予算を提出いたしておるような次第でございます。ですからその間においては、四十八年度一四%をきめたときとことし二〇%というものをきめたときの根拠というものは、違っていないのだということはひとつ御理解いただきたいと思います。  そこで、いまお尋ねの点は将来どうなるかということなんですね。これは先ほど来申し上げておるように、私ども物価を何としてでもこの上期に押えなければならぬ。総理をして言わしむるならば四−六、こう言っておりますね。四−六において物価というか卸売り物価を中心にしてだんだん押えていく、こういう考え方。年度の平均は九・六にとめなければならぬ。まあそのとおりになるかどうかこれはわかりません、やってみなければ。私もわかりません。(大原委員「もうわかっている」と呼ぶ)わかりません。九・六でとまるかもしれないし、あるいはあなたの言うように何%か上がるかもしれない。そんなことはわかりません、まだ四十九年の四月になっていないのですから。  そこで、私ども努力はいたしますが、将来の物価動向というものについては私は重大なる関心を払っていかなければならぬと思うのです。これは重大なる関心を払っていかなければなりません。そして消費水準の伸びがどういうふうに変わっていくか、それから物価指数がどういうふうに変わっていくか、それと見合って私は対応する措置臨機応変に講じてまいります、こう私は誠意をもって言うておるのです。ほんとうに誠意をもって、臨機応変、こういう対応策をとってまいります、こういうことを言うておるわけでございますから、いかに私どもがこういう低所得者に対するあたたかい思いやりの気持ちで政策をやっておるか、御理解いただけると思います。
  61. 大原亨

    大原委員 私が言ったのは、個人消費支出と消費者物価なんですけれども、個人消費支出もこれは名目なんですね。したがって、消費者物価が五・五%上がると、これは最低なんですね。生活水準が上がればそれにつれて上げるということなんですから、プラスアルファなんですよ。そういうことからいうならば、九・六で済む見通しはないわけですから、五・五%のときに一四%、それで九・六のときにはそれに対比して九・六で済まないという前提の上に立っても、途中五%加えたものを頭に入れて考えた場合に、二〇%の上昇率であったのでは、これは去年の当初予算を上回る措置じゃない。ましてやこういう異常インフレに対応する措置でもないし、それに伴う名目消費水準の上昇の措置にも適合しない。つまりインフレのあと追いであって、これは少なくともインフレを追い越す程度までは、最低所得者の政策についてはやるべきである、こういう議論なんですね。だからそういう措置を、臨機応変措置というふうに言われましたけれども、これはこの国会中にでも、予算審議の最中に予算を直して悪いという手はないわけですから、私は、生活保護の基準をやはりいまの情勢に対応して上げるべきである、そうしなければ、決してインフレに対応する福祉優先予算ではない、こういうふうに言っているわけです。  私は、厚生大臣、先般ちょっと新聞に出ておったけれども生活保護基準を上げますと福祉施設の基準も上がってくるわけです。実際に見てみますと、食料費や日用品費など、これはいまべらぼうなものですよ。だから私は、そういう点について配慮しなければ、幾ら百万言インフレを四−六の期間中にブレーキをかけると言っても、参議院が済めばはいさようならということになるのだから……(齋藤国務大臣「そんなことないですよ」と呼ぶ)大体これは常套手段だよ。参議院が済むまでだ。十二月と言っておいて、三月と言っておいて、今度は四−六で六月と言って、今度は夏ごろだ、こう言っておる。それで期待を持たしておいては、ニンジンをぶら下げておいては国民をつっていくという手じゃないですか。(「失礼じゃないか」と呼ぶ者あり)失礼なことじゃないじゃないか。これは事実じゃないか。そうじゃないですか。だから、それに対応する措置を、裏づけをしておいて、インフレにしたならば、これは絶対に政府全体としてはやっていけないのだ、国民としてもこれは最低の願いだというところの政策を打っておいて、そうしてインフレに対する政策をやります、こうこなければ私は政治ではないと思うわけです。どうもあなたのなには、何百ぺんか田中総理の話を聞いていると、だんだんと脳みその中身というものがそのほうへ曲がっちゃって、そうしてオウム返しにそういう議論をしてきている。ここでは社会保障の議論をしているのだから、ここではいかぬわけですよ。あなたはいいところも悪いところもあるけれども、非常にずさんなところもある。口数も多いけれどもね。しかし田中総理ほど口数が多くて中身がないこともない、比較すると。しかし、厚生大臣だからもう少しきめこまかに、やはりぴしっと厚生大臣としての態度を確立すべきであろう、こう思うのですよ。だから、生活保護基準は、いまの情勢では是正をいたします、是正をするように努力をいたします、厚生大臣としては。こういうことぐらいはめどを示すべきではないですか。
  62. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、来年度の予算においては、個人消費支出は一七%というものが伸びるであろう。まあ生活保護基準というものはすでに御承知のように、昔のマーケットバスケット方式でも何でもないのですから、こういうふうに一般の消費水準に近づけるということで生活保護基準できめているわけです。それで、物価のほうも九・六ということで計算をしておりますので、二〇%ということをいたしたわけでございます。そこで大原委員のほうは二〇%をうんと上げておいて、そうして臨機応変にやればいいじゃないかという考えのようでございますが、私どもはやはりそういう考えは持っていないのです。そういう考えはないのです。要するに物価を押えるということに政治の最大命題をかけているわけですね。これはもう御承知のとおりなんです。政治の最大の命題は物価を押えることだということで予算というものを編成しておるわけであって、将来物価が上がったときにはどうなるか、それは臨機応変措置をとります……(大原委員「いま上がっていると言うんだよ」と呼ぶ)いや、そんなことはありません。まだ来年度になっていないのですから。物価が上がれば、その情勢に対応するようなものをやりますと言っている。だから、何もその予算をいじる必要は一つもない、私はこのように考えております。
  63. 大原亨

    大原委員 いまのような議論であるならば、年度内の議論といたしましても、生活保護基準という所得制限をし、財産制限をしているそういう救貧的な政策においては、たとえばいままでの十月以降のどんどん物価が上昇している、予想以上に上昇している分については、たとえば三月末に一時金を出します、一時金について配慮いたします、こういうことぐらいは厚生大臣としてはもう見通しがついているのですから、ここで、新年度の問題についてはその段階において考えるなら考える、こういうふうに分けてびしっとやらないと、どうもあまり大ざっぱな議論過ぎるんじゃないですか。いかがです。
  64. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 そこで御承知のように、私はもうほんとうに消費者物価指数の発表があるたびに寒けがするのです、実は。実はいま経済企画庁の宮崎局長からお話がありましたように、一月の消費者物価指数二〇というやつが出たんですね、ほんとうに。まだ全国は出ていないのです。(大原委員「同じようなものだ、東京が困っていれば全部困る」と呼ぶ)しかし、これは地方によって多少違いますから。そこで私も、この一月の消費者物価、東京ばかりじゃない全国の指数、そういうものがどういう形で出てくるか、非常に実は心配しているんです。これをどういう対応策をとったがいいか。まあ一時金でその生活をめんどう見るような方式がいいのか、あるいはことしの扶助基準をある程度上げるというやり方がいいのか、あるいは二月の動向はどうなるであろうか、あちらこちらにらみながら実は考えているのです。きょうの段階ではまだどうということをとるということをきめておりません、ほんとうに。きめておりませんが、この状況を見ながら、何とかしなければ厚生大臣つとまらぬ、こういう気持ちは持っているんですよ。その気持ちで私はいま慎重に考えておるんです。これだけで十分だと思います。
  65. 大原亨

    大原委員 ただいまの御答弁は、非常に厚生大臣としてはいまのような異常な物価上昇については注目し、心を痛めておる。だから、一時金にするか、扶助基準を新年度にわたって上げなければならぬか、こういう問題等について考えておるんだ、こういうことであると思います。これはまあ水増しして理解しても何にもならぬことですから当然のことであると思いますが、問題はここに一つあるということが一つ。  それから、福祉年金はやはり年金の性格をこれから決定すると思うのです。修正積み立て方式という場合には賦課方式的に修正するわけですが、福祉年金はそういう一つのなにをやっているわけですね。そこで政府の発表や宣伝は、一カ月五千円の福祉年金が七千五百円、五割増しにことしの十一月になる。これはもうたいへんなことだという話なのですが、私は福祉年金は、これはいまもちょっと議論がありましたけれども、これは補完的な、政策的な年金であったものが、だんだんと質が変わっていると思うのです、現実に。これはやはり最低生活保障の年金に近づけなければいけない。こっちには修正積み立て方式の拠出制の問題がありますね。しかし、これは約五百万人の高齢者層を中心といたしまして、高度成長の中で過密過疎ができて、年寄りがどこにでも取り残されているという現状ですね。ですから、福祉年金最低生活保障年金に近づけるという観点で私は考えるべきではないか、はっきりすべきではないか。それをこれからの社会保障の五カ年計画、あとで総括的に議論いたしますが、五カ年計画の中で実現をしていくべきではないか、こういうふうに思いますが、いかがでしょう。
  66. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この福祉年金の性格、年金全体における位置づけ、非常に実はむずかしい問題だと思います。当初出発のときは確かに敬老的な、補完的な年金で出発したことは事実です。これは大原委員もお認めいただけると思うのです。そのとおりなんです。最初は千円だ。そのあとは一年に百円とか二百円ずつしか上げないで今日まできたわけですが、田中内閣ができまして、田中さんが英断をもって計画的に上げていきましょう。三千三百円から五千円、七千五百円、一万円、こうなってきたわけです。そこで私は、補完的な敬老的な年金から社会保障的年金へ移行する、進行中じゃないかと思うのです。進行中だと思うのです、これはほんとうに。そういう方向に持っていくべきであるといま結論を出すのがいいかどうか別としまして、そういう社会保障的性格を徐々に強めつつある現段階じゃないか。したがって、五十年度一万円になりますね。五十一年度何ぼにするということはちょっといまのところまだ言いにくいですね。まだ先のことですから言えませんが、私はやはり社会保障的性格に強く移行さしていくことが望ましいんじゃないか、ということがきょうの段階で言い得るぎりぎりのところじゃないかと私は思うのです。必ず社会保障的な年金にしなくちゃならぬとまで言えるかどうか。しかしそういう方向に向いて、好むと好まざるとにかかわらず、意見の差はあるにしても、そういう方向に徐々に進行中であると私は言えると思うのです。そのことがまた、御承知のように、拠出制年金が本体でございますが、それも経過的な十年年金とか五年年金ありますね。これが金額をもそれに従って変えていかなければならぬ。それがまた逆に、今度は五万円年金というものを生活水準その他と見合って、水準の引き上げという問題が私は五十一年度に起こってくる問題ではないか、こう思うのです。ですから福祉年金の性格をどうやって位置づけるか、これがやはり年金制度全般にわたっての大きな変革をさせていく糸口になるのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  67. 大原亨

    大原委員 だから保険財政も福祉年金の財政も一元的に考えて、やはりこれから福祉年金を軸にして全体の年金をどうするか、こういうことを考えるべきだと思うのです。五カ年計画ではそういう考え方で、やはり計画的に昭和五十二年を目標にやるべきであるということで大体のコンセンサスができておるようにも思いますが、もう一度念のためにひとつ。
  68. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この長期計画においては、年金の問題は具体的にまだ取り上げられておりません。取り上げられておりませんが、私は、やはり経済社会発展計画の最終年度五十年度までに、年度間においてはいろいろなアンバランスはあるにしても、最終の段階においては国民所得と振替所得との比率が八・八でございましたか、そこだけは持っていかなければならぬ。こういう考え方からいえば、当然やはりその補完的な福祉年金社会保障的な性格をもっと強く帯びさすように持っていかなければならぬであろう。この点については大原委員意見は一致すると思います。そのことがまた拠出制年金の改革につながっていく、こういうふうになっていくのじゃないかと思います。
  69. 大原亨

    大原委員 まだきめておらぬということは私は了解しませんよ。あなたは去年の国会のときも、八月にはもう社会保障長期計画をつくると言った。ここに議事録ありますが、田中総理も、予算編成期は八月から始まりますから、それまでには社会保障の五カ年計画をやります、そのときに年金はどう、医療はどう、福祉施設はどう、こういうきちっとした骨組みをつけてやります、こういう答弁を何回もしているのですよ。それからずるずる国会を軽視するというか国民を侮辱するというか、いろいろな理由をつけてやってない。それは怠慢であるから、そういう後者のほうの答弁については私は了解しないが、まあ大体の方向についてはわかった。  そこで私は一つ指摘をしたいのですが、当面緊急の措置として私はこういう計算をしてみたのです。厚生大臣、年金は拠出年金と福祉年金がつながっておって、国民年金厚生年金厚生年金から国民年金につながっておるわけですが、この厚生年金の昨年の十月の平均標準報酬が八万四千円になって、八万四千円の六割保障ということを原則にして年金を組み立ててきたわけです。その八万四千円を基礎にいたしまして、五千円、当時は三千三百円でしたが、十月から五千円になったわけですから五千円を計算すると、八万四千円対五千円のベースは〇・一一九なんです。これは全部私は計算してやってみました。〇・一一九に匹敵する。一割一分九厘です。そこで四十九年、ことしの十月に、ことしの春の賃上げで名目賃金ですが最低二万円というふうに踏んでみますと、そうしますと十万四千円ですが、十万四千円に対応する七千五百円は〇・一一五です。一割一分五厘です。だから二千五百円を上げたといっても低い所得の階層の金額で、あるいは率でいうことは実際上は生活保障的な考え方からいうなればひどいわけです。ひどいわけですが、率からいいましても五割といえば思い切った措置のように見えますけれども生活水準というふうな制度の中からいいますと、必ずしも十全の措置ではない。ましてやいまのような異常なインフレです。したがって社会保障的に転換をしていくという大臣も所見を述べられましたけれども、私は、従来からずっとあったように、少なくともこの老齢福祉年金を基礎にして障害福祉年金やあるいはその他の年金があるわけですが、これは七千五百円を少なくとも一万円プラスアルファといきたいのですが、一万円ぐらいには緊急に是正をして、足りない分、異常なインフレの状況の分は一時金、こういう問題等を私は当面緊急の措置として考えることは、これはいままでの議論あるいは政府がやってきた意図、そういうことから見ても当然ではないか、こう思いますが、いかがでしょう。
  70. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 五千円を七千五百円に五〇%アップしたという問題についてのお尋ねでございますが、実はこれは私が申し上げるまでもなく全額国費なんですね。五千円を七千五百円に二千五百円とわずかだと、こうおっしゃるけれども昭和四十九年度分の、大体これは十月実施となりますと半年分、老齢福祉年金を五千円から七千五百円に上げる、障害福祉年金を現在七千五百円を一万一千三百円に上げる、こういうふうな一連のものがあるのです。となりますと、半年で、金のことを言うのは、私は大蔵省じゃないのですが……(大原委員「半年で幾らになりますか」と呼ぶ)半年で四百四十億円ぐらいになるのですよ、ほんとうをいいますと。二千五百円老齢福祉年金を上げるその差だけですよ。それと障害福祉年金、母子年金、これは一連のものですよ。そうしますと、これはここに主計官がおられますが、十月実施として四百四十億円くらいになるのです。平年度にすると一千億円をこすのです、二千五百円上げただけで。老齢福祉年金だけならそんなにありませんよ。しかし、それと関連してみんな上げていかなければならぬですから。というわけでございますから、何でも二千五百円、わずかだから上げたがいい、それだけではやはり財政を預かる政府としては言いにくい。やはり総需要抑制のこの際でもありますので、この辺でことしはごしんぼうしていただくきりないのじゃないかと思うのです。かりに七千五百円を一万円に上げますと、それだけの部分で相当の金がかかりますが、十年年金をどうしてくれるという問題が出てくると思うのです、すでにそうなってくると。そうでございましょう。十年年金は一万二千五百円です。二人で二万五千円ですが、二人は別として一万二千五百円、老齢福祉年金のほうは全額国費それが一万円にことしの十月からかりになるとすれば、それじゃ拠出制のほうをどうしてくれるのだという問題がすぐ起こりますよ。それは当然起こりましょう。それは当然起こりますよ。そうなると、今度は拠出制年金のほうもどうしてくれるのだという問題になるわけだ。(大原委員「当然だ」と呼ぶ)当然だといえばそれは言うことばは簡単でございますが、そう簡単にはいかぬ。みんなこれは関連しているのですよ。だからその辺も十分御理解いただいて、厚生省もよくやったくらいのことはたまに言ってもらいたいものだと私は思います。
  71. 大原亨

    大原委員 厚生省が若干の努力をしたことを否定しているわけじゃないのです。しかし、異常なインフレで状況は激変しておるじゃないかという点を指摘しておるわけです。それは初めから一貫して言っておるわけですから、インフレに対応できるような年金をつくりなさい、こういうことで福祉年金の話をしたわけです。  そこで時間もなにですから、もう一つ、年金について私がちょっと考えていて問題となる点だけを討論しておきたいのです。これは年金局長でもよろしいですから、なかなか討論する機会がないので、これはいままでも、これからもないかもしらぬからここでひとつやっておくわけですが、保険料と給付をどうきめるかということの問題があるわけですけれども、拠出制の年金の問題でありますが、積み立て金の預託利子をこれは七分五厘にしましたね。しかし、保険計算の予定の利回りは上げておりませんね。これは理由はいろいろあると思うのですね。あると思うのですけれども、保険計算の予定利回りは幾らで、なぜこれを上げなかったかということについて説明をいただきたい。
  72. 横田陽吉

    横田政府委員 拠出制年金の、厚生年金国民年金と両方ございますが、厚生年金につきましては御承知のように五年に一回財政計算期の際に計算をし直す、こういうふうな考え方でございまして、今回は財政再計算をいたしませんので、したがって今回は特段の計算のし直しはいたしておりません。(大原委員「幾らですか」と呼ぶ)動態計算をいたします際の利回りは六・二%で計算をしております。(大原委員「五・五じゃないの」と呼ぶ)六・二で計算をしております。ただ静態計算で五・五でございます。  国民年金のほうは、御承知のように毎年保険料を引き上げていく、こういうふうなたてまえをとっておりまして、今回も二百円の値上げお願いいたしますので、今回計算の際は、前回九百円の計算をいたしました際と別の計算をいたしております。必要がございましたら文書で御提出をいたしたいと思います。
  73. 大原亨

    大原委員 積み立て金の預託利子は——積み立て金の預託は、これは理財局が管轄いたしまして財政投融資に回っていくわけです。資金運用部へ入って財政投融資に回っていくわけです。その預託利子は七分五厘ですが、保険計算の予定利回り、これは私がなぜ言うかというと、保険料は利回りが高くなればなるほど安くなって給付がよくなる。まあ絶対的な問題じゃないから、これは相対的な問題ですね。そういう計算になるわけですね。私は五・五で計算をしているというふうに了解をしておりましたが、それは間違いありませんか。これは大蔵省側も、理財局ではないが主計局が保険庁と話し合ってきめていると思うのです。これはいかがでしょう。
  74. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 保険数理の問題につきましては、御指摘のように厚生省でやっておられるわけでございますが、全体の設計等につきましては、ただいま年金局長の御答弁のとおりと理解しております。
  75. 大原亨

    大原委員 それは厚生年金の保険計算、保険料の出し入れについての計算をする基礎は——これは積み立て方式ですから言っているわけですよ、積み立て方式ですから。国民が出した保険料を、労働者が払った保険料をどのように目減りがしないような措置をとっておるかということでもあるわけです。これは六・二%なんですか、それとも五・五%なんですか。
  76. 横田陽吉

    横田政府委員 先ほど申し上げましたように、実は昨年の法律改正をいたしました際に非常に大きな変動が加わったわけです。まずスライド制の導入、それから再評価、そういった問題がございますので、財政再計算も従来は五・五%の利回りで動かない年金の計算をいたしておったわけです。それを六・二%に切りかえまして、その六・二%に切りかえました当時は預託金利は六・五%でございました。ですから、その辺は預託金利そのままをとりますと、御承知のように預託金利、最近のあれを申しますと、四十八年三月末には六・二%、それが四十八年の六月になりまして六・五%、それから十一月に六・七五%、四十九年の二月に七・五%、一般の金利水準とリンクいたしまして預託金利は変わってきておるわけです。下がったり上がったりいろいろいたしております。したがって、五年に一回やります財政再計算の際には、その時点での預託金利そのものをとりますと計算自体が非常に不健全な様相を呈してまいりますので、したがって、その時点での預託金利よりは多少安い水準で計算をするというのが大体保険数理の仕組みになっておるわけでございます。
  77. 大原亨

    大原委員 それでは六・二%と七・五%の運用利子、これは理財局、財投、それから保険を出す当局の側からいえば保険料の利回り、その差が開いておるわけですよ。前よりも開いておる。六・二を七・五に一致さしてまいりますと、大体年間に保険財政にどういう影響がありますか。
  78. 横田陽吉

    横田政府委員 その点の動態計算は、利率を動かしますと相当膨大な計算でございますので、したがっていますぐ数字を申し上げるわけにはまいりませんが、御必要でございましたならば、七・五で計算をいたしました際にはどうなるかというふうな数字をあとで御提出いたします。
  79. 大原亨

    大原委員 私がある専門家に聞きましたら、保険料の予定利回りを五厘ほど上げて計算いたしましたら、いまの厚生年金の給付が二割上がるというぐらいばく大なものです。これはばく大なものです。それだけ保険財政に影響を及ぼしますから、保険料を決定する際にもあるいはこの給付を決定する際にも影響があるわけです。これはひとつ計数を整理をしてもらって、保険庁等が知っておるはずですから、これはお出しをいただきたい。  そこで厚生大臣、問題は、七・五の利回りで積み立て金の預託をいたしますと、六・二はもちろんですが、いまのような異常なインフレのもとにおいて政府が想定する来年の九・六%からいいましても、あるいは本年の消費者物価の見通しの一四%プラスアルファからいいましても、つまり社会保障で積み立て方式で積み立てておる保険料がものすごく目減りをする。このことは、昨日の大蔵委員会で福田大蔵大臣は、少額預金についての高利回りの問題について議論をしておられましたが、目減りがする、そういうことになるならば、長期の積み立て方式などというふうなものは絶対成り立たない。いまのような異常なことが続く続かないは別にいたしまして、二十年、三十年後にはかすみたいになっちゃう、積み立てたやつがゼロになっちゃう。これはゼロに無限に近づくのです。  こんなことで、現在その預託金を使っておるものか利益を受ける——これはもちろん社会資本もありますけれども、そうして出しているほうが、年金の制度でありながら逆に収奪を受けるというふうなことはこれはいけない。民主主義の道義、公正の原則からいうてもいけない。少なくともこの運営の利子を一般財源から入れればいい、利子補給をすればいいわけですから、政策的に。たとえば農業者の年金については、西ドイツではゼロのところがあるが日本では三%のところがあるわけですから、だから、それは金を運用する場合にいままでの頭を切りかえて、運用利回りがいいから大きな企業へと、こういうような形ではなしに、やはりどこに財投を使うかという使途の問題と一緒にこの積み立て方式を修正していまやっておるわけですけれども、この七・五と六・二の利回りというものを私は引き上げるべきである。そうしなければ、積み立て方式自体の自殺行為ではないか。そういうことをするならば、政府は一ぱいそれに対する対策が要るわけですけれども、そのことがインフレを押えていく裏づけになるのではないか。所得の再配分になるのではないか。そういう六・二と七・五がギャップがある。六・二と七、五というのは一・三のギャップがあるわけです。これはひど過ぎるのではないか。それと一緒に全体の水準を、この利回りを上げるべきではないか。年金局長ではそういう答弁はできないので、数字上の見解があれば聞きますが、私は厚生大臣からこのことを聞きたい。
  80. 横田陽吉

    横田政府委員 六・二と七・五の差ということでございますが、基本的には、先ほど申しましたように、財政再計算の際に計算をし直すわけであります。それで現実に利息としては七・五%もらっておるのに計算上は六・二%という計算をして、そのために保険料が非常に高くなっておるが、こういう問題でございますが、それで段階保険料でございまして、現在の保険料というものは必要な保険料の大体六割から七割の間でございます。したがいまして、現在の料率を前提として考えました場合には、必要以上に受け取り利息を低くして保険料率を高めておるということは、計算上は出てまいらないわけでございます。
  81. 大原亨

    大原委員 そういう計算はわかるのです。そういう計算はわかるのですが、厚生年金国民年金の保険料というのは貯蓄なんですよ。あるいは税金であるというふうな計算のしかたもあるわけです、これは税金である。それをどんどん率を上げるのは、健康保険だって年金だって保険料を上げるというのは、これは税金を増税しているのですね、一方では。そういう見方もあるが、これは貯蓄の中にも入るわけです。財政投融資ですから貯蓄の中に入るわけです。日本くらい財政投融資を通じまして一般財源のかわりに膨大な原資を浮かしている国はないわけです。これを福祉優先に中身を改めると一緒に、この使途についても厳重な規制を加えていなかなければならぬということです。それでなければ、生産第一から福祉優先への転換ではないのです。だから少なくとも、臨時措置としてもよろしいが、いまの異常なインフレの時代においては、消費者物価を下回らないような利子の計算をしなければ、これは社会保障としては自殺行為ですよ。だから、福祉元年が去年ことばの上ではあったかもしれない。ただし福祉二年というのはない。五カ年計画もできておらぬでしょうが。福祉二年はない、こういう考え方も言い得るのであって、いま利子の問題で大蔵大臣も議論しているから、厚生大臣も参加して、そういう主張をすべきであると私は思うが、いかがですか。
  82. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 利子の問題は小さいようで非常に大きな問題でございます。ただ、私どもは年金という非常に長期にわたる制度を運用していくわけでございますから、しかもまた、異常な物価高というものが五年も十年も続くはずはなし、続けちゃたいへんな話でございますから、そういうことを考えてみれば、いろいろ考える点はあるかと思います。いろいろ考える点はあると思いますが、そう思い切った改革を加えなければならぬというものではないような感じがいたします。
  83. 大原亨

    大原委員 西ドイツは戦後の異常なインフレに対応して賦課方式をとったのですよ。保険料をかけるものと積み立て方式をとる矛盾から出てきているわけですよ。  それで私、十年間の長期計算があるわけですよ。長期計算の基礎を一々あげてみますと、全部食われていますよ。賃金上昇率とか物価の上昇率、全部あるのですが、食われていますけれども、非常に低目にやってあるのです。十年計画がございますし、一方では昭和八十五年、老齢人口がピークになるときをやっておるわけです。私は計算をとっておりますけれども昭和八十五年、ピークになるときに、四百十一兆円の年度末の積み立て金があるわけです。六分二厘、六分の運用利回りといたしまして、二十四兆円利子が出てくるわけです。そういたしまして、国が出す金がやはり二十四兆円くらいあるわけです。そしてあとは保険料でいって、今度は賦課方式に変わっていくわけです。そういう構造展望をもって保険料率を決定し、給付をずっと電子計算機ではじいてやっておるわけですから、そういう長期のやつを、私ども社会党あるいは四党案というのは三年を単位として計算する。一年の単位じゃないわけです。三年単位で計算しておいて余裕金を持っていこう、こういう考え方ですね。ですから、インフレに対応する議論といたしましては、基本的には賦課方式でなければ、全く所得の分配の公正を欠くわけですよ。そのことを議論するのだけれども、それは前提にあるのだけれども、われわれの考え方はそうだけれども、少なくとも政府としてはこのくらいなことはすべきではないかという議論を私は問題として提起したわけです。これ以上私は議論しません。そういうやるつもりのない者と議論をしたってしようがないから議論しません。しかし、問題としては議論を発展さしていかなければ年金はよくなりませんよ。福祉年金はよくなりません。  先般、福祉施設の整備について、五カ年計画をつくり直してやれという社会保障長期計画懇談会の答申があったわけであります。この厚生省が昭和四十六年以来五十年を目標にいたしましてやりました社会福祉施設長期五カ年計画、これは大蔵省は認めていなかったわけですが、しかし、これでは足りないという議論です、簡単に言うとそういう議論です。それから、この問題と社会保障五カ年計画との関係というものはどのような関係で理解をしておりますか。これはどなたでもよろしい。
  84. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 四十六年から五十年までということで五カ年計画をやっておるわけでございます。これの実施状況を見直してみますと、最も緊急度の高い、すなわち特別養護老人ホーム、それから重度心身障害児の問題、それから保育所、この三つ、三つばかりではありませんが、主としてこの三つは一応四十六年度から五十年度までという、計画からいうと大体目的どおり実施できるという見通しを立てております。ところが、こういう計画で立てておりますが、この計画をもう一回見直してみようではないかというのがいま長期懇からいわれておる意見でございます。  すなわち需要の見通し、特に一番大きな需要の見通しを見直しをしなければならぬというのは、保育所の問題が一番大きな問題でございます。保育所が一番でございます。これが一つ。  それからもう一つは、四十六年で立てましたときのいろいろな社会福祉施設の中に精薄施設だとか厚生施設だとか肢体不自由施設とか、こまかく区分していろいろございます。ところが、これが実際の需要に合っておるかどうかがはっきりしておらないということがはっきりしてきたわけなんです。それが第二番目。  それから第三番目に、いままでの厚生省の考え方は主として施設に収容するというところに重点を置いておったわけでございます。ところが、いろいろ計画を進めてまいりますと、やはり施設に収容されるよりは自分の家庭において子供をめんどう見たいという、在宅の希望が相当あるという事実がはっきりしてきたわけです。そしてまた、なるほどそうだ、そういう在宅の考え方も加味していかなければならぬという問題が出てまいりました。  それからもう一つは、保育所その他の社会福祉施設において特にいろいろ考えなければなりませんのは、最近の大きなニュータウンと申しますか住宅団地、何万人も入るようなニュータウンというものができるようになってきたときに、それに対する社会福祉施設というものを四十六年のときは考えていなかった。そういうふうなこともあわせて考えて、すなわち四十六年から五十年度までの計画のうちで緊急なものはやってしまえ、しかしそのほかに見直しの必要あるものはこの際もう一回見直しをして、四十八年度から五十二年度までというこの長期懇の計画の中で見直しをして、実施可能なようにしてやりなさい、こういう御意見が出ました。   〔山口(敏)委員長代理退席、大野(明)委員長代   理着席〕  それから、従来社会福祉施設においては十二万人程度を考えておったのですが、年々それをもっと多くしなければならぬであろう、こういうふうなことも出てまいりましたので、まことにごもっともな御意見だと考えまして、それぞれ専門の審議会において案を練りまして、近く五カ年間における大ざっぱな数字を入れた計画策定したい、こういうふうに考えておるような次第でございます。
  85. 大原亨

    大原委員 社会保障長期計画、五カ年計画は、昭和五十二年を目標にする経済企画庁の経済社会基本計画に対応して練り直すということだと思います。その中で重度心身障害児の施設と老人ホーム、寝たきり老人の対策については、経済基本計画は具体的にあげておるわけです。具体的にあげてぴしゃっとやる。それで、いまの福祉施設の従来の厚生省の考え方でいうなれば、重度心身障害児の施設、そういうもの等については昭和五十年で目標を達成する、こういうことでいっておるわけですか。
  86. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 いま申し上げました三つの問題、特別養護老人ホーム、重障、この二つと、それから保育所については、四十六年当時きめた数字はほぼ五十年度に完成されそうである、こういう見通しなんです、この三つは。ところが、重障と特別養護老人ホームのほうは、一応これは五十年でできますからいいのですが、保育所のほうは四十六年のときに想定した需要の見通し、これはたしか百三十六万とかなにかになっているのですが、どうもそれ以上に需要が多いということがはっきりしてきたわけです。ですから、五十二年度までに完成しようというのは、保育所に関しては、最近における需要の見通しをはっきりつかんで、そしてそれを五十二年度までに拡大して完成するようにしたらどうだ、こういう御意見承知しております。
  87. 大原亨

    大原委員 時間もなんですから、社会労働委員会でも先般滋賀県の第一、第二のびわこ学園を見たわけです。それから兵庫県の砂子療育園とかあるいは東京都の問題の島田療育園、こういうふうな施設を私どもはいろいろ調査をしたわけですね。しかし、いまの施設の中身、建築の中身、たとえば寝るところも教育するところも食事するところも全部一緒だ、遊ぶ空間がない、こういうふうな問題、そういう療育施設として意義のある施設でないところで働くという働きがいの問題それからやはり人的には看護婦さんや指導員その他の炊事婦、栄養士さん等の従業員を確保する問題だとえば患者一に対して職員一の比率で来年度は重度心身障害児の施設はやるということなんですが、しかしその中で、たとえば腰痛症の代替ができるのか、こういう問題、またはこういうところほど勤務時間、特に週休二日制などを優先的に実施すべきである、そうしなければからだの休まるひまはない、夜は排尿やその他のことがあって寝ない子供もおる、こういうことで実際にへとへとになる、だから、施設の面とそういう人的な面で、いままでの一・一の程度では、私どもは具体的なところに適用をしてみるとこれは足りないのじゃないか。国際水準からいっても、一・八ぐらい要るのじゃないか。待遇についても、やはり公務員並みという簡単なことではなしに、これはたいへんな精神的な労働なんですから、だから特別勤務手当等も考えるべきではないか。こういう労働条件と待遇と建設の面において、特に後者の面においては考えないと、この重度障害児の施設は形ではできても、実際上は施設としては活用されないでだんだんと後退する、こういう事実に対する認識とこれを改善する計画、こういうものをどうするかということについて、私どもはせっかくここへ焦点が集まっておるわけですが、洗い直してみるべきではないか、こう思いますが、いかがでしょう。
  88. 翁久次郎

    ○翁政府委員 ただいま御指摘になりました重症心身障害児施設でございますが、問題が多岐に分かれておりますし、また御指摘の点は確かにそのとおりの点が多うございます。  まず職員の問題でございますけれども、全国の施設の中で、私立、社会福祉法人立の施設の中に、腰痛を訴えておられる職員が出てきていることは事実でございます。これは勤務の態様等も問題がありますけれども、ぜひこの問題については解決をしていかなければならないということで、昨年は労災認定も全国の施設で大体五十一人の方が労災認定を受けておられる。それからまた、それ以外にお医者さんから腰痛症という診断を受けておられる人もあるわけでございます。私どもとしては、この職員についてはまず処遇の改善ということについて非常に努力をしなければならないというように感じて、その努力をまずする。  それからもう一つは、先ほども指摘がありましたように、重症心身障害児施設は、いわば療育、病院形態から出発した施設でございまして、これは児童福祉施設の態様の中に入れたわけでございますけれども、この面について特に職員が児童と、入っておられる障害者と一緒に起居をともにするということが、職務環境上必ずしもよくはないということで、特に職員宿舎の建設ということについてはできるだけの配慮をいたしたい。現に、国庫補助あるいはその他の措置によりまして逐次職員宿舎の建設ということに向けておるわけでございます。  それから御指摘のございました職員の介護の問題でございますけれども、昨年いろいろ問題がございまして、大臣も先頭に立って努力をしていただきました。大体重症心身障害児施設の経費と申しますのは、医療費とそれから別途児童福祉法上の措置として重症児指導費というものがございます。そのほかに児童一人当たりに日用品費というものをつけておりますけれども、これを大幅に改善をいたしまして、医療費については御承知のとおりでございます。  それから重症児指導費につきましては、四十八年度三万七千何がし、これを約七〇%増いたしまして六万七千何がしという額にいたしました。日用品費にいたしましても、大体月一万円程度の増加を見たのでございます。これによりまして、施設によりましては現在でもすでに介護職員として収容児一人に対して一人程度の配置をしておられる施設もございます。また施設の中身は、ごらんになって十分御承知と思いますけれども、非常に多様でございまして、必ずしも一人に一人ということでなくても済む施設もございます。また中には、収容者一人に対して一・五というような、まあ区々でございますけれども、やり方によってはその程度のことができるという予算的な配慮はいたしてございます。それから、これはやはり何と申しましても重い子供と申しますか、動けない子供をかかえて職務するわけでございますので、必要な省力化機器と申しますか、エレベーターであるとかあるいは便所の改善であるとか、こういうような施設整備費については昨年来若干の配慮をいたしておりまして、来年もこれについてはさらに進んだ配慮をしてまいりたい、こういうように考えております。  ただいかんせん、この施設は御承知のとおりたいへんむずかしい症状を持った、区々に分かれた態様の子供さんをかかえておりますので、職員が非常に集まりにくいということも事実でございます。この点については先ほど申し上げましたように、処遇の改善、施設の改善、それから何と申しましても環境をよくしていくということで、熱意のある職員が来ていただけるような配慮をさらに進めていかなければならない、こういうふうに考えております。
  89. 大原亨

    大原委員 これはあと同僚の委員からの質問がございますが、島田療育園の場合だって、看護婦は三十名ほど定員がいるのですが、腰痛と妊産婦の方が十一名で、この三月までにはやめたいというのが五名で、あと十四名しか残らぬ、こういうことですね。それならば預けた子供さんを連れて帰ってくれ、他へ移してくれ、出身地へ移してくれというふうなことになっておって、実際にはこの計画計画倒れになるという可能性があるわけです。ですから、総合的に徹底した、やはり近代的な施設と内容を完備すべきである。  私は、最後に具体的な問題を一つ聞いておくのですが、労働省は週休二日制について三十億円ほど予算を計上しております、中小企業対策で。これはこういう場合には活用する方法があるのかどうか。  それからもう一つ、厚生省の予算の中で看護婦さんの病院内保育所をつくるというのがあるわけですが、予算を計上しておりますね。やはり看護婦さんたちは、結婚して子供ができてもここで働くという希望者のためには、やはり朝から晩までの非常に不規則な生活であるから普通の保育所にやるわけにいかぬ、こういうことで施設内の保育所をつくってもらいたい、こういう要望があるわけです。  労働省は基準法のことを聞きたかったわけですけれども、これは聞かないで、この二つについて労働省と厚生省の御答弁をいただきたいと思います。
  90. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 労働省の週休二日関係予算について申し上げますと、三十数億円という中には、週休二日を実施いたしました場合の労働者の余暇活用のための勤労者いこいの村の建設費等が入っておるわけでございます。これは勤労者であればどなたでも御利用いただけるわけでございますが、行政的な費用といたしましては、週休二日制を推進する中小企業等の集団に対する補助金約一億八千万円ほどと、あと週休二日の実態調査あるいはそれの影響に関する研究委託あるいは労使に対する資料提供、関係者の会議等々の事務費約八百六十万円ほどでございます。  それらの行政指導のための費用につきましては、これは社会福祉施設費等ももちろんその対象になり得るわけでございます。
  91. 翁久次郎

    ○翁政府委員 来年度で病院の院内保育の中身としては入っておりませんけれども、ただいま御指摘の点については前向きで検討してまいりたい、こういうように考えております。
  92. 大原亨

    大原委員 あと、それぞれの質問があったわけです。医療保険の問題からあったわけです。ここで切るというのはせっかく準備してもらって悪いのですけれども、しかし時間の申し合わせもございますから、協力する意味で切ります。またの機会に質問をいたします。せっかく用意してから出席してもらった人がたくさんあるわけです。きょうは答弁してもらわぬで帰ってもらうことになって非常に悪いわけでありますが、以上をもって私の質問を終わります。
  93. 大野明

    大野(明)委員長代理 この際、暫時休憩いたします。本会議散会後直ちに再開いたします。    午後零時三十二分休憩      ————◇—————    午後一時二十四分開議
  94. 野原正勝

    野原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前の質疑を続けます。村山富市君。
  95. 村山富市

    ○村山(富)委員 午前中、大原委員から総括的な質問が行なわれましたが、私は、特に大臣が所信表明で述べておられますように、今年度予算編成にあたって、第一に社会福祉の充実をやった、こういうふうに言われているわけであります。  そこで、社会福祉施設の実態というものがどうなっておるかという現実問題をとらえながら、具体的に質問をしたいというふうに思うわけです。  まず第一にお尋ねをしたいのは、今度二月一日から医療費の改定が行なわれました。給食費ももちろん引き上げられたわけであります。これは東京都の例と国立病院の例とを比較しますと、国立病院の場合には、四十八年は給食費の材料費については二百九十円、東京都が三百二十円。四十九年の四月から国立病院関係、療養所関係は三百五十二円に引き上げる。ところが東京都の場合には四百三十五円に引き上げて二月から実施をする、こういうことになっておるというふうに聞いておるわけです。考えてまいりますと、医療費の中の給食費が二月一日から引き上げられるわけですから、したがって、東京都と同じように、額の違いはあっても、実施は二月一日からやるべきではないか、こういうふうに思うのですが、なぜ国立病院、療養所の場合には四月から実施になるのかということについてまずお尋ねします。
  96. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この問題につきましては、確かに東京都の場合は全国一で最も高い給食費のように聞いております。地域の格差がかなりございまして、たとえば御指摘の厚生省の本年度の二百九十円に相当する額が、都道府県立の県立病院等では二百六十円というようなことで、同じ五百五十円という基準給食の報酬の支払いに対して、材料費の使用のしかたには非常に差があるわけでございます。  それともう一点、御指摘の二月一日からの改定について、実はこの問題はかなり大幅な改定でございますし、また現在の物価の上昇状況等をからめますと、従来は改定とこれとは無縁なものとして、たとえば保険の改定がなくても、われわれはやはり社会の物価の上昇あるいは内容改善ということで努力してまいりました。しかしながら、いま申し上げたようなたいへんな異常な状態でございますから、この点についていろいろ検討してみたわけでございますけれども、結論を先に申しますと、われわれの予算の範囲内で行政努力をする。たとえば患者数についても施設ごとに多少の、予算で配られた患者数と実態との差がある。それから地方の局長会議等を通じまして私の気持ちを伝えまして、予算上ただいまの二百九十円をたとえ十円でも十五円でも上げるということは従来もなかったし、非常に困難なことであるので、いろいろの努力でやってもらいたいということを指示したわけでございまして、この点は御指摘のように非常に私も内心は苦しんでおる問題でございます。  ただ、国の予算措置の上では一応年間の物価の上昇を今回、ただいま午前中の論議にもございましたように、二〇%というような数字はございますけれども、これは年間の平均で見ますと、私どもの資料では食料関係が一四%、今回三百五十二円にするのは前年に比べまして二八%上げてございまして、この点をお答えに使うことは、私、実は率直に言ってやはり四月からもう月々の平均で食べてきていますから、決して個人の家庭のように別にストックがあるわけでございません、予算の執行でございますから。したがいまして、平均的に一四%で一六に上げてあるから何とかまかなえるのじゃないかということを、私はま正面にお答えとして使うのはたいへんまずいとは思います。しかし、気持ちの上では、非常に自由にその改定をすることのできない現状におきましては、最大の行政努力でこれをカバーしたいというようなことで、ただいま考えておるわけでございます。  で、都道府県の実態は、大体四十七の府県のうち県立病院をほとんど持っておりますが、そういう点で非常に実態としては、半分以下のところが今度二月一日から改定しました、そういうことで国としては改定は困難である、こういうことであります。
  97. 村山富市

    ○村山(富)委員 その物価の値上がりとか、そうした諸般の情勢を勘案をしながら給食費の原材料というものは改定をしていく、これは当然な話だと思います。その物価の値上がりが異常であるし、同時に医療費の改定がなされて二月一日から給食費が上がるわけですから、そういう条件というものを反映しながら、東京都も二月一日から給食費の改定をするわけです、引き上げをするわけです。なぜ国の場合だけ四月一日ということになって二月一日にできないのか。もっと極端に言いますと、二月一日から給食費が上がるわけですから、上がった分を一体どうするのかということになるわけでしょう。ですから、二月一日から上げることがこれはもう理論的にも客観的にも条件的にも当然ではないか、こういうふうに思うのですけれども、端的にひとつ答えてください。それが行政努力でやるというなら、思い切って、これはわずかな金ですから、こんなことでいろいろ言われるよりも、思い切ってこの際二月一日からやるというふうにすべきではないかと思うのですが、どうですか。
  98. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生の御指摘の背景には、五百五十円から七百五十円に上がった、したがってこれについて当然収入があるのだから支出の上でも考えるべきだ、こういう御理論だと思います。それともう一点は、五百五十円のときに幾らでなければ基準給食と認めないという材料費の上の縛りはございません。先ほど触れましたように、各県各病院全部ばらばらでございます。ただ唯一のチェックのしかたは、カロリーその他の給食内容が適正であるかどうかはこれはチェックされているわけでございます。したがいまして、今回の七百五十円の収入に対してこれをまかなう材料費を幾らであることが適正であるかという、ちょっとお答えとしてはひねったようなお答えで恐縮でございますけれども、決して厳正に幾らでなければならぬという実態がない。そういうような観点からいきましても、この二カ月はわれわれとしては国の財政措置の上で従来の年間の給食費を活用し、あるいは場合によっては三月三十一日の食べものと四月一日の食べるものとががらっと変わるというようなことじゃなくて、三月のうちからくふうをしなさいという指示を私は地方局長を通じてしておるわけでございます。そのあたりがせいぜいの努力でございます。  それから、将来物価スライド問題と診療報酬がからむならば、私は改定の時期によっては病院等の給食費の改定問題にも取り組む必要があるという気持ちを持っております。将来にわたって、ちょうどことしのように二月に改定される、予算を十二月に組むというような時期もございますし、それから全く予算がもう途中のときに、場合によっては保険の改定があるかもしれません。そういうときに、保険の将来の考え方がこういう給食費のようなものを、かりの仮定の問題でございますけれどもスライドというようなことが導入されると仮定しますならば、われわれとしては当然もう年間の予算をきめちゃったからこれで給食費はだめだということじゃなくて、そういうスライド制が導入されるような制度上のものが明らかになってまいりますれば、われわれの給食費もそういう改定をしていくということを検討すべきであろうと私は思います。
  99. 村山富市

    ○村山(富)委員 もう時間がありませんからくどくど申し上げませんが、米価の改定なんかがあった場合には上げているわけでしょう。ですから、年度途中でもやろうと思えばできるわけでしょう。やっている例があるわけですから。ですから、これはもういろいろ言わなくて、さっき言いましたように二月一日から医療費の改定で給食費も上がるわけですから、しかもこれだけの物価の異常な値上がりがあるのですから、それだけ十分考慮しながら、少なくとも東京都がやっているわけですから、東京都に負けないように国もやるというくらいの努力をしてもらいたいということをひとつ要望しておきます。  次に、重度心身障害児施設について、これは私ども委員会からも行きましたし、党からも各施設を調査していますから、その調査の実態を踏まえながら具体的にお尋ねしたいと思うのです。  第一に、従来は障害児一・五人に対しては一人という割合で予算上の指導費なんかも配分しておった。ところが、現状を考えた場合にそれではやはりいかぬので、一対一にしたい。その一対一にするために重度障害児の指導費を三万九千三百五十九円を四十九年度から六万七千二円に引き上げた、こういうふうになっているわけですね。この六万七千二円に引き上げた算定根拠は一体何ですか。
  100. 翁久次郎

    ○翁政府委員 重症心身障害児施設、特にいま御指摘のありました施設は民間の施設の重症指導員、こういうことだと承知しております。これはまず医療費、これが基礎になっておる病院形態のものでございます。その上に重症指導員、ただいま御指摘のあったものが加わります。そのほかに日用品費、児童一人当たりでございますけれども、これも加わります。それから、来年度からでございますけれども、特殊疾患収容施設管理費という、特に医療保険の改定によりまして一日三十点加算になることになっております。こういったものを全部総合いたしまして三十の民間の施設に配分しているわけでございます。ただいま御指摘がございましたように三十施設の介護職員の割合でございますが、これはそれぞれの施設の特殊性によりまして、ごらんになりましたそれぞれの施設でもおわかりいただいたと思いますけれども、介護職員の対比は必ずしも一様ではございません。ただいま御指摘がございましたように大体一・五対一くらいではなかろうか。昨年来腰痛問題あるいは職員の処遇問題というものが起こりまして、ぜひこれは改善しなければならない。そこで、昨年来、大臣はじめの努力によりまして、いま御指摘のありました重症指導費につきましては三万九千何がしから六万七千円にふやしたわけでございます。この算定の基礎でございますけれども、必ずしもこれだけではない、総体として全部ふえたわけでございまして、病院形態をとっておりますので、ちょっとくどくて恐縮でございますけれども、重症施設の場合は、大体一類看護と申しまして、これが医療費の改定によりまして約四八%程度のアップになるわけでございます。それのプラスとして重症指導費が加わりまして、そこで一体どの程度までの介護職員が張りつけられるかということになりますと、おおむね一対一は完全に消化できるのではないだろうか。ただ問題は、今後の職員の処遇あるいはその改善というようなものをいたします上に、施設によりましてはこれを職員として採用されて使われるところもございますし、あるいはこの費用をもって省力化の、いわゆる力を省く、たとえばエレベーターであるとかあるいはおふろの改善であるとかそういうものに使えるわけでございまして……。
  101. 村山富市

    ○村山(富)委員 質問に答えなさい。何に使うか、かにに使うかという話を聞いているわけじゃないのです。六万七千二円にしたというのは、従来からのあなた方の説明を聞いていますと、いままでは介護職員が一・五に対する一人だった。だけれどもこれじゃいかぬので一対一にしたい。そのために三万九千何がしの金を六万七千二円に引き上げたのです。言うならば医療費の分はこれは一類四対一で出るわけですから、この指導費というのはその医療費で見れない分の介護職員について何とか見ていこう、そして補っていって一対一にしていこう、こういう考えでしょう。ですから六万七千二円の算定根拠は一体何ですかということを聞いているわけですから、それだけ答えてください。
  102. 翁久次郎

    ○翁政府委員 御指摘のように、医療費の分以外の指導職員であるとか保母の増員というものに該当する額として、おしなべて大体ことしの七〇%増でその目標に達し得るということで六万七千二円という額が出たわけでございます。
  103. 村山富市

    ○村山(富)委員 六万七千二円という金額が生まれてきた。それならその積算根拠は何ですか。
  104. 翁久次郎

    ○翁政府委員 くどいようでございますけれども医療費と日用品費とそれから特別加算というものが全部で勘定になって施設に参りますから、そこでお医者さん、看護婦、保母、指導員、そういう方々を雇うわけでございます。それを雇って、かりに施設のほうでそういう方々全部介護職員として張りつけた場合に、全部合わせて総体として一対一は満たし得るというために必要な指導費として六万七千円であるということで算出したわけでございます。
  105. 村山富市

    ○村山(富)委員 そうしますと、医療費が四八%アップになった。そして日用品費も若干上げる、それから特殊疾患に対する管理費も三十点ついた、こういうものを全部ひっくるめてみて、そして一対一にするためには、あと指導費を六万七千二円にすれば大体まかなえるじゃないか、こういう計算ですか。
  106. 翁久次郎

    ○翁政府委員 そういうふうにお考えいただいてけっこうでございます。
  107. 村山富市

    ○村山(富)委員 そうしますと、あなた方大蔵省に当初要求しているときには、七万二千五百四円で要求しているわけです。これはやはり一対一にするつもりで要求したのでしょう。それが六万七千二円に削られたわけです。そこで、この差額があるんだけれども、どっちがほんとうなんですか。
  108. 翁久次郎

    ○翁政府委員 要求段階におきましては、まだ医療費の改定は全く見当のつかない時点であったわけでございます。これは四十八年における医療費というものが一応想定されておったわけでございます。なお、その際には、先ほど申し上げました特殊疾患収容施設管理料というものも何ら医療費改定の中身としては考えられていなかったわけでございます。  なお、加えて申し上げますと、四十八年度平均の給与というものを一応積算いたしまして、それに大体倍額程度の指導費をつけるならば、一対一に近い数字が得られるのではないかということで、要求段階ではそういう数字が出たのではないかと——私、当時実は局長しておりませんのでなんでございますけれども、ただ、最終的にきまりました段階におきましては、先ほど申し上げましたように医療費なり特定疾患の管理料それから日用品費、総合的に合わせて六万七千何がしを加えますと、一対一、場合によってはそれ以上のものが張りつけられるということになっている、こういうように考えております。
  109. 村山富市

    ○村山(富)委員 それ以上深追いしませんが、ただ、いままで三万九千三百五十九円であった当時は、一・五人に対して一人、大体こういう基準であったわけですね。ところが、現実は、もちろん賃金だけでなくていろいろな要因があって、一・五人に対して一人の介護人は充足されておらぬ現場が多いわけですね。そこで、いま言われるように、六万七千二円にしたからといって必ずしも一対一の介護職員が確保されるというふうには限らないわけですよ。  そういう現実を少し私は実際に見ていますからこれから御紹介したいと思うのですが、たとえば島田療育園の場合にどうなっておるかと申し上げますと、病棟が六病棟ありますが、一病棟が定員が三十九名、現員が八名です。そして腰痛の患者が二名。退職希望が一名。したがって、四月から三十九名の定数が五名になるわけです、一病棟。それから三病棟は五十一名の定数が、いま言ったような状況があってこれもまた五名になるわけです。五病棟は四十七名が三名。六病棟は三十九名が一名になるのです。ですから、百七十六の定員に対して実際に看護婦さんがそろうのは四月時点では十四名になる、こういう現状ですね。したがって、島田療育園の人たちは、いま百七十六の定員に対して大体百名近く東京都の人がおりますから、したがってこの東京都の児童については東京都に見てもらいたい、こういって東京都に要求しておるわけです。ですから、二十名の看護婦さんを東京都の病院から回してくれ、それができなければ子供を都に引き取ってもらいたい、こういう切実な要求をぶつけているわけですよ。これが島田の場合の現状ですよ。  それからさらに、この委員会から第二びわこ学園の調査に参りましたが、第二びわこ学園を見ますとこういう現状になっておるわけですよ。東棟と西棟と新棟の三つの棟があります。児童数が、東が四十五名、西が四十九名、それから新棟が二十七名、計百二十一名ですね。百二十一名の児童数に対して在籍せる看護婦さんは十九名ですよ。そして、しかも夜勤可能なものは十二名しかないのですよ、十九名の中に。ですから、もう二・八なんて問題じゃないのです。看護婦さんが実際に全然いない時間帯がどれくらいあるかといいますと、たとえば新病棟の場合には、準夜勤の中で看護婦さんが全然いないというのが月に十一回ある。それから東病棟の場合には、日勤の勤務体制の中で八回、準夜勤の場合に二十三回、深夜勤の場合に二十五回、全然看護婦さんがいない時間帯があるわけです。こういう勤務でなければもうつとめられぬような条件になっておるわけですね。それだけ看護婦さんが不足をしているわけです。これが第二びわこ学園の実態です。  それからもう一つ、私どもは兵庫県の砂子学園に参りましたが、ここではもう看護婦さんも保母さんも看護人も充足できないので、せっかく入っておる子供を交代に帰宅をさせているのですよ。これは昨年の七月ごろ、ことしの末までひとつ家で見てもらいたい、それまでには何とかしますから、こういう約束で子供を引き取ったわけです。ところが、施設のほうは看護婦さんが充足ができぬもんだから、したがって引き取るわけにもいかずに、そのままずるずる自宅に引き取ったままになっているわけですね。こういう現状を考えた場合に、単に六万七千二円にしたから、あるいは医療費が上がったから一対一で介護職員が確保できるだろうというふうに思っておりますか、どうですか。
  110. 翁久次郎

    ○翁政府委員 御指摘の点はまことにそのとおりでございますし、私ども予算が入ったからといってそれでいいとは一つも考えておりません。特に、ただいま御指摘になりました三施設はそれぞれやはり問題をかかえ、また御指摘のような事実があることも承知しております。非常に心痛めておりますのは、子供を預かっておられる施設が子供を帰さなければならぬようなことにおとしいれてはいけないということで、これは私どもも施設あるいは県を通じて何回も連絡もし、また問題点については相談にもあずかってまいりました。  今朝も御答弁申し上げたわけでございますけれども、やはりこれは施設全体のイメージアップをはかりながら、職員の処遇改善、特に環境改善、それから何と申しますか、職員の働くための条件をよくしていくということをしてまいりませんと、幾ら来ていただいた職員でもやめていってしまうということになるわけでございまして、これは単に予算上大幅にふえたからいいというものでないということだけは十分承知しております。
  111. 村山富市

    ○村山(富)委員 そうしますと、単に予算措置をしたからそれで解決する問題ではない、それにはやはり労働条件なりあるいは職員の福祉施設なり、そういうものを考える必要がある、こういうことなんですね。具体的に考えているかといえば、何もないでしょう。たとえば私は第二びわこ学園でいろいろ聞きましたけれども、いま職員の、言うならば一対一の介護職員を確保するために寮が必要だというので寮を建設中ですね。  その具体的な例を申し上げますと、二十室こしらえるのに大体四千九百万円かかる。その四千九百万円かかる中で、社会福祉振興会から大体千四百万から千五百万の補助金がもらえそうだ。国と県が九百万程度の補助金をくれる。したがって、残りの二千六百万円から二千七百万円は自己負担でつくらなければならぬわけです。しかも、この二十室では足らないのでさらに四十二室こしらえる。この四十二室については、八月の見積もりで九千七百万円かかるわけですよ。大体三〇%くらい建築材料費が上がっていますから、おそらく一億円越すでしょう。かりに九千七百万円として、日本自転車振興会から四千三百万円の補助金がある。あとは全部自己負担です、五千四百万円は。ですから、数千万円の金は自己負担でまかなっていかなければならぬわけです。どこから求めるかといえば、これも募金以外にないというのですよ。募金でこれだけ集まればそれはできるかもしれませんよ。集まらぬ場合にはできぬわけです、これは。そうすると、職員を入れようったって採用できないわけですよ。ですから、あなた方が言われるように金だけではない。こんな施設もつくらなければいかぬ。つくるために国は何をしているかといえば、わずかに国と県で九百万円でしょう。これでもって済ませますか。それは募金ができればいいけれども、できない場合には寮はできないのですよ。できなければこれはもう病棟を閉鎖するかどうかする以外にないのです。これが差し迫っている現状なんです、現実なんです。こういう現状、現実に対してどうするんですか。
  112. 翁久次郎

    ○翁政府委員 御指摘の第二びわこ学園は、立地条件も非常に市街から離れておりますし、どうしても職員宿舎というものがなければ職員の定着性をはかる上に問題があるということは、そのとおりでございます ただいま御指摘がありました四十九年度四十二名の宿舎を建設することも、将来介護職員全員が宿舎に入るための必要なものであるということも事実でございます。国としては、従来このような施設についての宿舎の補助金は一応対象でなかったのでございますけれども、四十八年これをぜひともそういう必要があるということで適用いたしました。来年につきましても、できるだけこういった職員宿舎の補助金というものを広げていこうというように考えております。しかし御指摘のように、どうしても基本になります額については、法人の自己負担以外には考えられないわけでございまして、それが結局社会福祉振興会の低利の融資ということにならざるを得ない。これがわが国の現在の制度におけるぎりぎりの現状であるということでございまして、そういった意味で、国がその施設を建設するもの以外についてのできるだけの措置、これは考えてもおりますし、御相談にも乗っておりますけれども、基本になる自己負担の分を国が負担するというところまで制度上現在なっておりませんので、これは非常に残念ながら、御指摘についてこれ以上のお答えができないわけでございます。
  113. 村山富市

    ○村山(富)委員 ちょっと大臣にお伺いしますが、私は冒頭に申し上げましたように、大臣は所信表明の中で、本年度の予算編成にあたって、「第一に社会福祉の充実であります。特に現下のきびしい経済情勢の中でその生活が脅かされている老人身体障害者、母子、生活保護世帯等の生活の安定と福祉の向上をはかるための施策には最重点の配慮をいたしております。」こう言っておるのです。  ところが現実には、いま局長からも答弁があったように、こういう社会福祉施設の現状に対して何ら手は打てないわけでしょう。これはもうつぶれていきますよ。来年から何とかしたいんだという問題じゃないのです。現実差し迫ってもうどんどん職員の腰痛症が出てくる。そして子供はほったらかしになる、帰さなければならぬという状況になっておるわけでしょう。しかも寮をつくるとすれば、その寮は募金にたよらざるを得ない。募金が集まらなければできない。そうしますと、もう病棟閉鎖をして、子供をどこかに帰す以外にないのですよ。ですから、砂子学園のように、せっかく寮に入れた子供が三十人も交代で家に帰される。しかも半年ぐらいと言われたのに、見通しがないというので、家庭不和の原因になったりして、これは自殺者が出るかもしれませんよ。そういう現状になっているのです。どうですか、大臣
  114. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 社会福祉施設、特に重症の施設についていろいろ問題があることは私も十分承知をしております。重症のお世話というのはほんとうにこれはもうたいへんなことでございます。単なる予算や人員の数だけで能事終われりという性質のものではありません。やはりそこに働いておられる方々がほんとうにこういう子供たちを扱っているんだなという意識、これはやはり私は大事だと思うのです。  もちろん、それにはそれ相当の労働条件というものを与えるということは当然なことでございますが、そこに働いている人も、こういうやっかいなむずかしい子供を扱っているのだという気持ち、責任、こういうことも私は非常に大事なことだと思います。それから施設においてもできるだけのことを国がめんどうを見るということも、これは大事なことだと思います。そこで、具体的にいろいろそういうむずかしい問題のあることは私も承知しております。しかし何としてでもこれは解決しなければなりません。もうその施設をやめてしまう、あるいは子供を家庭に帰してしまう、こういうことはやっぱり社会福祉の後退でありますから、それは許せない問題だと思うのです。  そこで、具体的な問題ということになりますと、第一次的には、県はどういうふうに考えているのか、東京都はどういうふうに考えているのか、美濃部さんはどう考えているのか、滋賀の知事さんはどう考えているのか、やっぱりその辺から具体的に詰めていく必要があると私は思います。国としてはできるだけの予算的な措置をしておるつもりでございますが、それでも足りないということがあれば、また別なやりくりも考えねばなりませんでしょう。あるいはいろいろな施設、寄宿舎その他の問題について何かいい方法はないだろうかということも考えなければならぬでしょう。しかし、それにはまず第一に施設の経営者がどうすればやっていけるかという方針をまずきめて、そして県はそれにどういうふうに対処するのか、こういうこと等を十分相談していかなければならぬと思います、これは率直にいうて。でございますから、私はこの機会にはっきり申し上げますが、児童家庭局長のところにおいて、関係者を呼んで、どうすれば何とかやっていけるのか、どうすればいいのか、それには職員においてもやはり考えてもらわねばいかぬと思うのです、職員も。ただ労働条件が悪いからこんなところだめだ、それだけではやっぱり済まぬ問題があると思うのです、人間の問題ですから。やっぱりそういうことを十分に詰めて解決するように——銭かねだけの問題じゃありません。やっぱり精神的な問題、一ぱいあると思うのです。そういう問題について大いに努力をいたしたいと考えております。
  115. 村山富市

    ○村山(富)委員 職員の問題ですけれども、ここに保母さんの手記がありますが、ちょっと読んでみましょうか。「「起床、低学年の子供の着換、尿児の後始末、洗面、べット片付、お掃除、朝食、登校の仕度、忘れ物はないか、名札はつけたか、その間に間断なくしゃべりかけてくる子供達に手を動かしながら合槌を打つと、それがとんちんかんで、子供は無視されたと感じてプッとふくれる。つい私だってこんなに忙しいのよ、あなた一人にかまっていられないのよと思わず大声を出したくなる。子供は学校へ行っても一日中不気嫌で、それがまた仲間から施設の子と嫌われる原因となり、」——保母さんの過労は子供の心を傷つけてしまっている。」そしてこの保母さんは、子供が好きで入ったわけですけれども、そういう現実にぶつかって、私はいいことをしているのだろうか、こういう悩みにかられて、とうとうこの保母さんはやめていくわけですね。  ですから、これは職員の心がけとかなんとかに大臣転嫁するなんというのは、これはけしからぬと思うのだ。そんな問題じゃないですよ。むしろ、いまあなたは東京都知事はどう考えているのか、あるいは兵庫県の知事はどう考えているのかというようなことを言っておりましたけれども、これは法律的には国に最終の責任がありますよ。やり場のない子供は国が引き取らなければならぬですよ。そんななまやさしい、猶予のある問題じゃないのです。現に子供は家に帰されているわけでしょうが。そして帰された家庭はたいへん生活に困って、もう何とかする以外に方法がないというところまで追い込まれているのですよ。そういう現実に対して、そんな答弁では、やっぱり私は責任のがれだと思うのですよ。ですから、ここまでくれば、いろいろ言っておれぬから、たとえば第二びわこ学園の寮については何とかその資金対策を考えよう、あるいは砂子学園や病棟閉鎖に追い込まれておるところについては、子供を引き取ろう、あるいは国立の看護婦さんを派遣しようというような措置がとれるのかとれないのか、どうですか。
  116. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 そういうむずかしい問題がありますから、具体的にどうすればいいのかということをやっぱりはっきり相談に乗ってやるということが大事なんじゃないのでしょうか。それは寄宿舎ができればそれで全部済むというものでもないのでしょう。私はこういうところにはいろいろ問題があると思うのですよ。こういう島田療育園、それから滋賀県のびわこ学園、それから兵庫、具体的にその施設施設にほんとうにどうすれば定着していただけるのか、こういう前提に立って詰めてみる必要があると思うのです。これは一般的に私は言えないと思うのです。予算的には、いま申し上げましたように、指導費も三万九千円から六万七千円に上げて、できるだけのことをしたつもりです。これでも足りないとおっしゃるかもしれませんが、できるだけのことはしているつもりなんです。そしてまた、この指導費のほうで足りない、何とかやりくりできないかということであれば、また相談にも乗りますよ、具体的に。ただ、具体的にどうすれば定着していただけるのか……(「政府はどうするのだ」と呼ぶ者あり)だから、それをやるのか——だから政府は指導するわけなんです。政府は一律にできません。それは、こうすれば全部というわけにいきません。収容している子供によって、小さな子供もありましょう、大きい子供もありましょう。施設施設にはそれぞれの態様があるわけです。それは特殊の事情もありましょう。だから、そういう特殊の事情を踏まえて具体的にどうすれば定着していただけるのか、それを詰めて、そして改善努力をしていきたい、こう私は言っておるのです。
  117. 村山富市

    ○村山(富)委員 一般論で申し上げたのじゃないですよ。たとえば島田療育園の場合には、現実にこういう状況に追い込まれて、東京都に要求しておるわけですよ。東京都の看護婦さんを二十名回してください、それができなければ子供を東京都で引き取ってください。この問題は東京都で解決しなければ国に来ますよ。最終的には国に法律的な責任があるわけですから。この島田療育園の問題についてそれならどうするのですか。  それから第二びわこ学園の場合には、とりあえず寮だけ確保して、そして寮に職員を入れて、何とか一対一の介護職員だけは確保しようということで寮をつくっているわけでしょう。その寮が、自己負担ができるかできぬかで、できるかできぬかきまるわけでしょう。この差し迫っている寮の建設について、自己負担ができぬ場合には一体どうするのですか。
  118. 翁久次郎

    ○翁政府委員 ただいまの段階で私どもが考えておりますのは、島田につきましては、あそこは法人でございますので、法人の理事者のほうでただいま御指摘になったことを十分承知しております。そこで何としてでも看護婦さんを足りないものを入れて、それだけの努力をして、できれば東京都に御迷惑をかけなくても済むようにしたいということで、ただいま理事者は一生懸命努力している。私どももこれに対して励ましをしているわけでございます。  それから滋賀県につきましては、ただいま宿舎をつくっております。この基本の額につきましては、近く滋賀県の厚生部長とも相談をして必要な寄付等についての相談に乗りたい、こういうように考えているわけでございます。
  119. 村山富市

    ○村山(富)委員 励ましをしておるというのはどういう意味ですか。励ましで問題は解決するのですか。
  120. 翁久次郎

    ○翁政府委員 用語の不適切な点はおわびいたしますけれども、施設が三十幾つございまして、それぞれ個々に、先ほど大臣が申し上げましたように問題があるわけでございます。そこで、それぞれの問題を解決していくためには、第一義的にわれわれも予算的に努力をする、そして予算の範囲内でできるものはこれを実現をしていく。実現のできないものについては、個々に問題がございますから、それぞれ法人の場合には理事者が先頭に立って努力をする、そして職員の処遇その他を改善していくということについてわれわれが相談を受け、また積極的に助言もするという体制をとっているわけでございます。
  121. 村山富市

    ○村山(富)委員 それじゃあなたは島田療育園の場合もよく知っているのですね。それから第二びわこ学園の場合もよく承知しているのでしょう。どういう助言をし、具体的にどういう処置をしているのですか。
  122. 翁久次郎

    ○翁政府委員 厚生省といたしましてまず第一義的にやりましたことは、最初に申し上げましたように、法人立の施設全体の職員について、重症児指導費の増、特殊疾患収容施設管理料を新設する、それから日用品費の増ということで、予算的な措置をいたしました。四十九年度からこれが具体的に発足するわけでございます。  そこで、各施設にかかえております問題として、ある施設においてはいわゆる機械器具等の整備が必要である、またある施設においては、先ほど来たびたび御指摘がありましたように看護婦さんが不足しておる、それからある施設におきましては、特にびわこのように立地条件のよくないところにおきましては、特に職員の宿舎等について配慮をしなければならぬという問題があるわけでございます。厚生省といたしましては、これをできるだけ予算の範囲内で実現できるような努力をするということがまず第一でございます。さらに問題が起きている施設につきましては、その連絡を受けて、それぞれの都道府県を通じて適切な指導をするというのが厚生省のたてまえでございます。
  123. 村山富市

    ○村山(富)委員 そういうあなた方の予算措置やら何かも含めてやって現実がこうなんでしょうが。そして現実の中から問題が投げ出されてくるわけでしょう。その投げ出されている現実に対してどういう助言をし、どういう措置をしたんですかと、こう言っているのです。六万七千円都道府県単位で指導費を引き上げた。管理費も上げた。しかしそんなものでは解決しない。なおかつこういう問題がある。当面、島田の場合にはこういう問題がある。第二びわこ学園の場合にはこんな問題がある。このある具体的な問題に対して厚生省はどういう助言をし、どういう施策をしたのか、こう聞いているわけです。
  124. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この問題は、御承知だと思いますが、昨年の春の国会でも問題になりまして、皆さん方から、一・五対一ではまずいじゃないか、一対一ぐらいに何とかならぬのか、こういうお話がございました。予算的には一・五対一、こういう予算でございます、しかしこれを一対一にしてくださるなら何とかなるでしょう、こういうお話がございました。そこで、あのとき、そんな困るなら、年度中でやりくりをしましょう、それさえ上げてくだされば何とかなります、こういうわけでしょう。御承知のとおりだったと思うのです。そこで急遽、思い起こしますが、たしか七月の中ごろ、当初からでしたかな、一対一になるようにやりくりしましょう、特に重い子供を扱っておる施設については三千万の金を出しましょう、こういうわけでやったわけでございます。  こういうふうに具体的に問題があると思うのです。私は心配しているのですよ。ほんとうに看護婦さんなり介護の人がいなくなっちゃお互いに困るのですよ。そこで、何とかならないだろうかという具体的な詰めをしなくちゃならぬと私は思うのです。昨年来の皆さん方の強い要望によって、予算をふやしましょう、一律といいますか、一対一になるように、今度は全部の施設についてやるようにしましょう。皆さん方の御意見を十分尊重して私どもはしているつもりなんです。しかし、施設によってそれぞれ事情が違うと思うのです。この施設には子供がたくさんおる、こっちには重い二十代の子供がおるというものもありましょう。立地条件において悪いから、ここには寄宿舎をつくりたい、こう思っているのもありましょう。ですから、そういう具体的なケースケースで私どもは十分相談に乗って、この問題の解決をはかって、介護をする人たちがいなくならぬように、そして気持ちよく働いていただくにはどうすればいいのか。みんな違うと思うのですよ。具体的にそういうものについて監督しているのは、御承知のように県の知事さんでしょう。私が直接監督しているのじゃないのです。そうでしょう。だから、滋賀県の責任者はどう見ているのか、兵庫の責任者はどう見ているのか。これさえあれば何とかなるというのか。どうしてもだめだとおっしゃるのか。だめだというなら、どこかのほうにかえてやるようにしなくちゃならぬでしょう。それはそうでしょう。だから、そういうふうに具体的なケースケースにおいて責任者と十分相談をして詰めてまいりましょう、こう私は申し上げておるわけでございます。
  125. 村山富市

    ○村山(富)委員 詰めてまいりましょうと言われるが、これから詰めるわけですか。
  126. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 これから詰めるのですよ。
  127. 村山富市

    ○村山(富)委員 局長、あなたは、もうびわこの場合も、島田の場合も、砂子の場合もよく承知しています、だから助言もし、いろいろなことをやっております、こう言うのだからね。大臣はいまから詰めると言う。どっちがほんとうですか。でたらめを言いなさんな。
  128. 翁久次郎

    ○翁政府委員 個々の問題それぞれあることは御指摘のとおりでございまして、私どもはそれを、たとえばびわこで申しますと、直接担当しております課長を行かせまして、そこで実情をよく調査して、同時に問題点を把握し、そして近く滋賀県の担当部長ともそういったものを含めて十分相談をしようということにしております。それから島田につきましては、先ほど申し上げましたように、看護婦さんの不足は御承知のとおり全国的な問題でございます。特に重症心身障害児施設についてはこういった看護婦さんの不足は深刻でございます。厚生省は、大きくはやはり全国的な視野でこれを考えなければなりませんし、個々の問題につきましては、それぞれの理事者が努力していることにつきまして非常に敬意を表しながら、たとえば予算については先ほど申し上げたような措置をとるというようなことがわれわれがやっておる中身でございます。
  129. 村山富市

    ○村山(富)委員 もうくどくど繰り返しませんが、びわこ学園の寮の建設なんかについても、これだけの自己資金をつくらなければならぬわけでしょう。これは募金にたよる以外にないというのですよ。だから見通しはきわめて暗いわけなんです。こういう具体的な問題に対して、国は、いまの補助金制度なり法律からいえば出す道はない。だからもうメーファーズ、手をあげる以外にありませんといって放任をするか、そうでなくて、それはやはり現実の問題として何とかしなければならぬだろうというので、さっき大臣が言うように、知事とも話をして、国がこれだけするから県もこれだけしてくれというような具体的な手を打つのか、打てるのか、どうですか。
  130. 翁久次郎

    ○翁政府委員 第二びわこにつきましては、昨年におきましても寮の建設について初めて国庫補助金を出すという措置をとりました。それからただいま御指摘のように、基本になる寄付金等につきましては、あそこは御承知のとおり全国から収容児を預っておるわけでございます。そこで滋賀県当局は、昨年もそうでございますけれども関係府県とも何回も集まりまして、この父兄を中心とした会もあるようでございますが、そういった努力をしております。国の現在の制度でできる限りのものを駆使しまして、これを何とかして負担の軽減をはかっていくということは、今後も努力することについてはやぶさかでないということを申し上げているわけでございます。
  131. 村山富市

    ○村山(富)委員 ひとつ大臣からこれは最後に具体的に聞きたいのですが、もう私は一般論で言っているのじゃないのです。びわこの場合も具体的、島田の場合も具体的、砂子の場合も具体的です。これができなければ病棟閉鎖をする、子供をまた帰すという以外に道はないのです。そうなった場合に、子供は国が引き取りますか、あるいはそういうふうにならないように具体的な手を考えるという決意があるかどうか。
  132. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先ほど来申し上げておりまするように、そういうふうに収容した子供さん方が家庭に帰るということのないように、りっぱなそういう施設の目的があるわけなんですから、その目的が達成できるように、国はできるだけの援助をしなければならぬのですよ。でございますから、具体的に一つ一つによっていろんな特殊事情もありましょうから、責任者の方と十分相談して、介護の人たちが落ちついてめんどう見ていただけるように、そしてそれを閉鎖するなんという事態にならぬように全力を尽くして改善策について努力をいたします。
  133. 村山富市

    ○村山(富)委員 これはひとつ要望意見も言っておきますが、今後やはりこういう施設のあり方については、言うならば療養機関としての性向を持っておる、あるいは福祉施設の性向を持っておる。これはチャンポンになっておるわけです。ですから病院が主体なのか、あるいは収容することが主体なのか、全く不明確ですね。ここらも今後新たに明確にする必要があるんじゃないかということが一つと、現実にびわこ学園なんかは八〇%の腰痛患者が出ているわけです。その腰痛患者が出てくることに対して、健康管理なりあるいは勤務、労働条件を改善していくなり、そういう具体的な指導と施策というのはいままでは何もないでしょう。これは出てきてからでは間に合わないので、未然に防止するようなそういう管理上の問題なら何かを改善していく必要がある。そういう積極的な手も打てば打てるわけですから、したがってそういう努力も今後十分やってもらいたいということをつけ加えてこの問題は一応それで終わります。  次に、二・八制の問題について若干お尋ねしたいと思うのですが、二・八制を完全実施するためには、看護要員の必要数は大体一病棟当たり最低十七人が必要である。厚生省が言ってきたその計算からしますと、大体二・五人に一人ということにならなければ、二・八制の完全実施はできないというふうに言っておるわけです。この考え方には間違いがないかどうか。
  134. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 十七人というのは、私たちは婦長も——これはいろいろ議論があるところでございますが、十六人という計算でやっております。大きな差ではございませんけれども、しかし一人の差は、積算していきますとかなりの差になります。一応十六人ということで、あとは間違いございません。
  135. 村山富市

    ○村山(富)委員 そうしますと大体二・五人に対して一人という計算も間違いないわけですね。
  136. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 間違いございません。
  137. 村山富市

    ○村山(富)委員 そうしますと、現在の医療法の二十一条による法定人員、それから医療法施行規則の第十九条でいう従業者の員数の標準、これは入院の場合には四対一、それから外来の場合には三十対一、こういう医療法の基準があるわけです。この基準がある以上は、いま言われた二・五人に一人なんということはできぬわけでしょう、法律でこうなっているわけですから。したがって、この法律が壁になって二・八制はできない、こうなるわけです。そこらの考え方はどうですか。
  138. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この問題は、実は健康保険の支払い等でも、すでに四人に一人というのは、御存じのように、病院を開設するときに職員を確保して医療を確保する一つの基準として医療法で定めてあることでございます。二十三年当時の定めでございますので、前国会でもお答えしましたように、実態はもはやこの数字は合わなくなってきておるということは率直に言えると思います。したがって、結論を申しますと、看護婦の需給関係等を見ましてこれは直します。しかしながら言いわけ的に、現行四人というものが基準だから二・八ができないと、あるいは理事者側が理由に使っているかもしれません。しかし現状はもはや四人に一人以上の実態にだんだんなってきております。したがって、健康保険でも特類看護に三人に一人というものを医療の必要上もう設けてきておるわけでございまして、その点は、規則でございますし、われわれの判断で直せる問題でございます。ただあくまで病院等を開設するときに看護婦を確保する基準を、たとえば四人を三人にするということになりますことが、やはり看護婦確保の全体の需給等わが国全体の需給計画をにらみながら——ただ規則だけを改正して実態が合わないということでもいけませんし、いまはむしろ上回ってきておるという実態でございますけれども、あくまでも最低の基準でございますから、これは慎重に検討して、直す方向で検討いたします。
  139. 村山富市

    ○村山(富)委員 そうすると、基準に見合いながら二・八制が完全実施できるような、あるいは看護婦の充足やら現状と見合いながらこの規則は改正する考えであるというふうに考えていいですね。  次に、そういう二・八制等々の関連を踏まえながら、いまの精神病院や結核病院なんかが三類看護に位置づけられている理由は一体どこにあるのですか。
  140. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この問題は実は三十三年ごろ次官通知で、先ほど来御指摘のような二十一条を受けまして、都道府県知事の許可を受けた場合は、主として結核、精神、らい等の慢性疾患の患者を収容している施設においては六人に一人でいいという、四人に一人の基準に対して六人に一人という通知が出ておるわけでございます。具体的に当時六人としたこの根拠というものについては、私実は明確に承知いたしておりませんけれども、慢性疾患の当時の医療の実態からいきまして、一般的な急性病を取り扱う病院よりも、当時改正の時期においても実態としても若干少なかっただろうと思うのでございまして、それを基準とする場合に、やはり実態として六人に一人というものが生まれたものというふうに理解いたしております。
  141. 村山富市

    ○村山(富)委員 私はこれはどうもよくわからぬのだけれども、さっき申し上げましたように、医療法では大体病院は四対一というふうになっておるわけでしょう。そして医療法施行令の四条の六で特例が設けられて、精神病院や結核病棟の場合には、都道府県知事の許可を得て例外規定があるわけですね。そうしますと、この通達やら告示がありますね。告示の場合にはちょっとやわらかいのですけれども、この通達なんかはもう明確ですよ。一類看護は認めないものとすると、こうなっているわけです、精神病院や結核病棟の場合には。これははっきりしています。そうすると、医療法は四対一でなくちゃならぬという規定がある。ただし施行令で特例が設けられて、わざわざ都道府県知事の許可を得て四対一でなくてもよろしい、こういう例外規定があるわけでしょう。そういう法のたてまえから考えた場合に、この通達や告示なんというのは厳密にいえば法律に違反するのではないかというふうに思われるのですよ。どうですか。
  142. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 ただいま医務局長からお答えがございましたように、医療法並びに医療法令関係では、その法令が施行当時の事情もございまして、一般は四対一、結核、精神は六対一となっております。それはあくまでも医療法の施行規制の段階でもその数は一つの標準である。「標準」と書いてあります。保険のサイドで申し上げますと、基準看護というのは一つの一定水準の看護サービスを提供し得る状態にすることが目的でございまして、その意味合いで一般の病棟とそれから特殊な病棟とは分けまして、それぞれ特類から三類まで基準の数を違えてきめているわけでございます。でございますから、現在の段階におきましては、確かに先生おっしゃったように、結核、精神については一類を認めないということを当時はいっておりますけれども、最近の実情から申し上げますと、結核におきましてもあるいは精神におきましても、現に特類もあれば一類もあれば二類も認めているわけでございます。でございますから、だんだんとやはり看護内容の変遷と申しますか、疾病の変化に伴う看護の対応のしかたと申しますか、それに従って実情は現実に見合ったようなかっこうで基準看護が運用されておる、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  143. 村山富市

    ○村山(富)委員 そうしますと、この告示や通達なんというものは出しっぱなしですね。これはやはりそうでなければ、もうこの通達は訂正して出し直すというふうにすべきじゃないですか。
  144. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 確かにそういう段階に来ている実情にあると思います。ただ私どもは、いま看護の一般的な問題といたしまして、病院の看護体制というものをどういうふうにすべきか、こういう問題がむしろわれわれのほうというよりも医制の本来の部局で検討をされておる段階でございますので、そういう問題と非常に密接に関連をするのが基準看護のあり方でございます。  そういう意味合いで、基礎的な看護体制の問題が固まりますれば、そういう際に、基準看護もそういう機会には基本から一ぺん洗い直して、どういうかっこうのものが一番いいかということを検討してみなければならない、このようには考えております。
  145. 村山富市

    ○村山(富)委員 もうあまり時間がありませんから申しませんけれども、この通達によると、さっき申し上げましたように一類看護は認めないものとする、こうはっきりなっているのでしょう。ところがいま局長の答弁を聞いてみても、現状は一類もあれば二類もあれば三類もあるわけでしょう。ですからこの通達は言うならばもう有名無実になっているわけです。だけれども、それ以後訂正された通達は出ていないのです。そうでしょう。
  146. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 実は一昨年の二月の医療費改定の際に新たに特類看護というものが認められたわけでございます。その際に、私どもは結核あるいは精神につきましても、一類あるいは特類の承認が例外的な取り扱いとしてできるというふうなことをいっておりまして、そのことを通牒として出しております。
  147. 村山富市

    ○村山(富)委員 これは局長からもはっきり答弁がなかったのだけれども、なぜ三類に位置づけたかという問題については不明確ですね。現状から判断しますと、やはり精神病院なんかは特殊な問題がいろいろあるわけですよ。ですから介護人が実際に充足をされておれば、こんな事故も起こらなかったといったような事故が現に起こっているわけでしょうが。  先般私は武蔵に行ったときに、これは理事者のほうが、ことし死者が八人ありました、昨年こう言っておりましたけれども、ある人から聞いた場合には、これは死者じゃなくて自殺です、こういうふうに言われていますね。これも職員がちゃんと配置されてついておれば未然に防げたかもしれませんよ。それから三重県の小山病院なんかは、昨年十月に四十九歳の婦人が腰ひもで首を絞められて廊下で死んでおったでしょう。こんなことが起こるというのは、やはり目が届いてないからですよ。しかも精神病院に入っている患者というのは、みずからに危害を加えたり他人に危害をいつ加えるかわからぬような患者が多いわけですよ。そういう特殊な病院ですから、むしろ一般の病棟なんかよりももっとやはり介護人が必要だといわれるような要素もあるわけです。私は、これはやはり三類なんという位置づけでなくて、むしろもっと介護人をふやして、そしてちゃんと看護ができるようにしてやるべきだというふうに思いますから、その点の今後の訂正は十分考慮してやりますか。
  148. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 具体的に精神病院の御指摘がございましたが、精神病院のみならず、従来の看護の基準なりあるいは四人に一人というのはあくまで最低基準的な標準でございますけれども、今後の改定にあたって、先ほど慎重にとお答えした気持ちの中には、先生おっしゃるように精神病院の場合はどうあるべきか、一般病院でも特に重症の患者を取り扱う病棟、あるいは手術直後の患者の病棟というような医療内容に伴いますところの看護の基準を設けたいというのが私のほうの考え方でございます。
  149. 村山富市

    ○村山(富)委員 これも現状からすると二・八制の問題もあるわけなんですから、したがって三類なんというものじゃなくて、一類にして二・八制ができるような条件をつくっていくということが大事だと思うのですね。そのことをつけ加えて申し上げておきます。  それからもう時間がありませんから局長お尋ねしますが、例の武蔵の療養所の場合に、現実に看護職の欠員があって、そして病棟は閉鎖をされておるし、同時にまたこれからも病棟が閉鎖される可能性が十分あるし、やめるという看護婦さんもおるわけです。その看護婦さんの欠員についての充足は年度内にやるのですか。
  150. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この点は武蔵のみならず、国立病院、療養所の定員管理上あるいは予算上、実は採用をストップした時期がございます。その後逐次、施設と職員の理解によりまして改善されてまいっております。結論を申し上げますと、三月に入りますればこの問題についての解決をいたしたいというふうに考えております。
  151. 村山富市

    ○村山(富)委員 それでは確認しますけれども行政職(一)、(二)それから医療職(一)、(二)、(三)と、こうありますね。総体的には、全部を含めますと現状、定員が三百三十名、そして臨時賃金職員が八名に対して、現員が三百四十三名、臨時賃金職員が十人、過員になっているわけですよ。ただ足りないのは医療職(三)表の看護職員が足りないわけですね。この欠員は、ほかの職は過員になっておっても、看護婦さんの欠員については充足する、こういうふうに了解していいのですか。
  152. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 私がお答えした三月に解決したいというのは、これは当然いまの現状の各施設の要望がほとんど看護婦の充足にございます。したがいまして、武蔵のような精神療養所に実は看護婦の確保をする、要するに来てくださる方が非常にむずかしくなっているという実態はございますけれども、しかし予算措置その他の上ではこれを解決できるようにいたします。
  153. 村山富市

    ○村山(富)委員 そうすると、これはここの場合は二類ですね、看護基準は。これは一類看護にするともっとたくさん欠員があるかもわかりませんね。ですから、そういうことも含めてやはり年度内にこの看護婦さんの欠員については、総定員法とはかかわりなく補充していく。それから私は、いまの看護の実態からすると、総定員法なんというもののワク外で看護婦さんの欠員については充足をしてやるべきだと思いますけれども、そこらはいままでずいぶん論議されていますからもう繰り返しませんけれども、しかし、いずれにしてもこういうふうに差し迫って困っておる医療機関の看護婦さんの欠員については、年度内に十分充足をするように努力するということでいいですね。
  154. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 御指摘の二類、一類の問題は、実は大部分の精神療養所が准看の養成施設を持っておりましたりして、保険の場合の基準看護には看護婦と准看護婦と看護補助者の比率をある程度守らなければならぬわけでございます。残念ながら武蔵の場合、数はほぼ一類に相当するのですけれども、准看と看護婦の比率が保険局の定めに従いますと、一類を要求するには無理であろうというようなことで実態はなっておりますので、その看護婦さん、数の上の採用がむしろ看護婦が採用できて、准看と入れかわる時期が来れば当然一類がとれるというような実態でございまして、御指摘のように、三月以降は、総定員法というおことばでございましたが、これは総定員法の中で国立病院、療養所の定員がきまります。定員の中で一部過員が生じたために、財政管理上、定員管理上、その採用を一時ストップしたわけでございまして、これが努力で逐次改善されましたので、今回また例年どおり採用をやるように三月以降は考えております。こういうことでございます。
  155. 村山富市

    ○村山(富)委員 いろいろ申し上げましたけれども、せっかく福祉元年といい、これだけ総需要抑制の中でも、このインフレの中で一番しわ寄せを受けている層に対して、重点的に施策をやっていくという所信表明もあったわけですから、そのことばにたがわないように、いまからでもおそくないわけですし、差し迫って現実に困っている問題もたくさんあるわけですから、そういうところについては何らかの手を打っていって、そして少しでも最低を引き上げていく、こういう努力を積極的にやるということを強く要望しておきまして、質問を終わります。
  156. 野原正勝

    野原委員長 石母田達君。
  157. 石母田達

    ○石母田委員 きょうは、二月一日に行なわれました厚生大臣の所信表明について質問したいと思います。  おととい私ども社会労働委員会から視察に参りました。行った個所は、私は東京班でございまして、寝た切り老人が入っている特別養護老人ホーム、また、経済的に恵まれてない老人が入っている養護老人ホーム、そして重症障害児が入っている施設、この三つを見てまいりました。ある新聞は、私ども秋津療育園という重症の障害児施設に参りましたときの状況をこう伝えております。あまりの深刻な状況に、視察していた国会議員団は声もなかった。もちろんこれには新聞記者の主観も入っておりますけれども、まさにそうした事態だったと私は思います。こうした状況のもとで、この所信表明に述べられたことを見ますと、あまりにも、国の責任というもの、これがずさんなものであり、そうした社会施設に働く人々、入っている人々、こういう声と切実な要求に対して、むしろ目をそむけているのじゃないか、ことばだけがただ羅列されておるのじゃないかという感じを受けたわけであります。  先ほどの論議もありましたけれども、この所信表明の中で、大臣は、かつてない難局が訪れておる、そういう中で、政府としても厚生省としても、総力をあげてこの福祉優先の政策転換を思い切ってはかった、その証拠として、四十九年度厚生省所管予算は、前年度に比して三七%と大幅な増を見ているじゃないか、こういうことを論拠にしておられるわけであります。私は、この三七%の中身がどういうものであるかについて厚生省にお尋ねいたしました。ところが、その資料によりますと、この増加分の三七%、つまり七千七百億円の内訳は次のとおりであります。一つ、当然増三千六百億円、一七・四%、政策増千六百億円、七・四%、診療報酬改定増二千五百億円、一二・二%となっております。  私は、ちょっと専門家に聞きたいのですけれども、ここでいう当然増というのは、あらかじめ増額が予定されている支出、こういうふうに私ども常識的に考えておりますけれども、それでいいのかどうか、お答え願いたいと思います。
  158. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 当然増の考え方はいろいろありますが、私どもが整理しております当然増経費というのは、いま先生指摘になりました、前年度の制度改正によって当然義務的に支出される経費、並びに厚生省予算の場合でございますと、たとえば医療費の自然増、そういう傾向増的なものも含まれております。
  159. 石母田達

    ○石母田委員 いま答えられたとおりだと思います。つまりこの当然増の一七・四%というのは、何も政府やあるいは厚生大臣が総力を傾けたとか、特に力を入れなくても、私ども国会審議をいたしまして、いろいろな、たとえば福祉年金についての諸改善をはかった、そういうことが法律の中で改正されまして、これを実行するということで、当然義務的に組まれるべきものであります。さらに、診療報酬の改定増の一二・二%についてもやはり政策増には入れてない。これはもちろんです。診療報酬を引き上げなければならぬ、改定しなければならぬということは、北川保険局長はじめ厚生大臣も私ども国会の中で答えておる。ただ、どれだけ上げるかは中医協やその他でなかなか発表はできませんでした。しかし、これとても、一九%の数字はともかくとして、診療報酬によって改定しなければならぬということを見ますと、私どもは当然増に近い内容だと思っております。つまり政策増七・四%、これがいわゆる新しく政府施策によって予算化されるものだ。よく見ますと、たとえば老齢福祉年金で五千円から七千五百円になるというのも、これは田中首相もそう言っていたと思いますけれども、三年のうちに一万円にするのだ、三千三百円から五千円に、そして七千五百円、一万円と、こういうことを考えますと、これとても、政策増といってもある程度予定された支出じゃないか、私はこう思うわけです。  それはともかくといたしまして、こうやって見ますると、大幅に伸びた伸びたという三七%のうち、政策増といわれているものが七・四%しかない。これがいまのかつてない難局といわれている、私どもが見てきたあの社会施設に入っている人々、働いている人々、これに対する社会福祉を優先さした、思い切って転換さした政策と言えるのかどうか、こういう点について厚生大臣にお伺いしたいと思います。
  160. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 いまそういうふうな施設の一つ一つの問題をとらまえて、社会福祉予算が大きく伸びたというようなことを私は言うておるわけではありません。すなわち、社会保障という国民生活全体、年金、医療社会福祉、そういうもの全体を含めて、国民の健康と生活を守るような社会を目がけてどう日本が進んでいるか、これが基本だと私は思うのです。幸いに昨年においては年金の改正も御協力いただきました、医療保険の改正も御協力いただきました。そういう体制の中で、所得保障というものは大きく動いているのです。これは現実そのとおりなんです。それは医療保険のほうも七割給付というふうに動いているわけでございます。ですから、そういう全体をとらまえながら、特に最近の物価高における経済状況、そういうものを考えて、もろに物価高の影響を受けるところに重点的に予算を配分する、こういう仕組みでいっておるのでございまして、一つ一つをとらまえて、これでは足りないではないか、こういうものではあるまい。国全体として福祉社会目がけて大きく動いておる、こういう姿をとらまえて、その中でものを御判断いただければ、私は非常にしあわせだというふうに考えております。しかし、そういう一つ一つの問題についても私どもはないがしろにしているわけじゃありません。先ほども社会党の先生にもお答えいたしましたが、重症心身障害児の問題などは何としても解決しなければならぬ。昨年の国会においても、皆さん方から一対一に何とかならぬのかというお話があって、年度の途中でもそれじゃ一対一にやれるように、特に重い子供を扱っておる施設についてはやりくりいたしましょう、来年度においても全部一対一になるように予算的な措置を、指導費のほうも措置費のほうも多くいたしましょうと、私は非常にきめこまかくやったつもりでおります。   〔「そうだ」と呼ぶ者あり〕
  161. 石母田達

    ○石母田委員 そうだという声も私語にありましたけれども、私はそうだとは思いません。私はいまの一つ一つというようなことを取り上げているのではなくて、この四十九年度の特に厚生省予算が三七%伸びて、これが一つの論拠になって、福祉優先への政策転換を思い切ってやったとか、あるいはあなた自身が、私としても微力を尽くしたところだと言われるから、その中身を、私は厚生省の提出した資料によって事実を申し上げただけであります。その事実の示すところを繰り返しますけれども、七・四%という伸びでも、いわゆる新しい施策というものはそれしかないんだ、それ以外の大部分は、先ほどから言われておりますように、予定された支出増、これを予算化したにすぎないんだという点を私ははっきり言って、あまりこの点を取り上げて総需要抑制福祉重点予算だと言うことは、明らかに国民を愚弄するものだということを申し上げたいだけであります。   〔委員長退席、山口(敏)委員長代理着席〕  さて、あなたがいま一つ一つのことについてはかなり重点的にやったと言われますので、社会福祉施設緊急整備五カ年計画の進捗状況は一体どんなものであるかという点で私はお尋ねしたいと思います。  ここに社会保障長期計画懇談会が出している資料並びに私が厚生省から取り寄せた資料、これは大体一、二%しか違っておりませんので、私はこの長期計画懇談会のほうの資料を使わせてもらいます。それによりますと、つまり昭和四十六年度からの五カ年計画、その中の大体六〇%ぐらいが遂行されなければならぬということなんでしょうけれども、そういう状況の中で、四十六年から四十八年ですか、この状況で見ますると総数で五二・二%となっておりますけれども、緊急収容施設、いわゆる寝たきり老人等の施設、重度の身障者の施設、重度心身障害児の施設、これを合わせまして二六・七%となっております。特に重度の身障者の施設は二四・六%、重度の心身障害児の施設は一七・九%、これは厚生省の資料によると二〇・二%になっておりますけれども、大体同じようなものです。これらの施設というのは、緊急という名前がついておるとおり、またあなたが所信表明で去年も述べられ、ことしも述べられておるように、最重点の配慮をした重点的な施策であると思いますけれども、このような遂行率が、いまあなたが言われた、一つ一つに重点的にやった仕事の結果なのかどうか。これがあなたの言われる根拠なのか、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  162. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 社会福祉施設はもう御承知のように四十六年から五十年までの施設になっておるわけでございまして、このうちで最重点がどれかといいますと、詳細は局長から確答をはっきり申し上げますが、寝たきり老人の施設等の中の特別養護老人ホーム、三万八千六百人というものを整備計画で五十年までに何とかしましょう。これは一つの大きな問題です。  それから二番目には、ダブルの重症心身障害児の施設、一万六千二百人、この数字がそれでございますが、これについては五十年度に大体全員収容が可能になるような計画になっております。四十九年度の予算数字等も局長から詳細に申し上げますが、そういう仕組みになっております。  それから保育所につきましても三十九万六千人という数字でございますが、これについても五十年度にほぼこれに近いところの数字のものを施設することができる、こういう事態になっておるわけでございます。そこで先ほどもちょっと申し上げましたが、保育所については五十年度までの計画として三十九万六千人というものを見込んだのではございますが、その後の住民の需要要望というものが非常に多いということでございますので、こういう問題については、さらに国民の要望を見通して新しい計画に乗り移るようにしなければなるまい、こういうふうになってきたわけでございます。  さらにまた、身体障害者のそのほかのいろいろな施設がございます。そういうものについても国民の要望の実相をもう少し見直してみたらどうだというふうなこと、それから社会福祉施設については、在宅対策ということもあわせ考えてみなければなるまい、単に施設に収容するだけということではいけないではないか、こういうふうな意見もございました。緊急なものは予定どおり何とか五十年度で、私ども国民にお約束申し上げたことは大体できる、そのほかの問題についてはもう少し国民の要望の実相を見直して、そして五十二年度までの新しい計画に乗り移るようにしたらどうだ、こういうふうな御意見でございましたので、そういう御意見に従って作業を進めてまいりたい、こんなふうに考えておる次第でございます。
  163. 石母田達

    ○石母田委員 私は、保育所やその他はまだ聞いていませんで、きょうは主として視察をしてきました老人の特養ホーム、養護ホームあるいは軽費老人ホーム、それから重度の障害児の問題ということに限っておりますけれども、そういう点で、あるいはこの計画自体、いろいろ問題があると思いますが、計画から見れば前進しておる部分もあるというお話ですけれども、私がいまお伺いしたのは、そうした社会福祉に対する、福祉優先と言う、また総力を傾けると言うあなたの姿勢がこのようなパーセンテージを根拠にしておられるのかどうか。あるいは今度の長期計画懇談会の資料にありますように、「整備実績が予定を著しく下回るものもあるのが実態である。」というふうに指摘もしておりますけれども、私たちは、むしろこのような指摘が正しくて、そういう点に立って早急にこのような整備五カ年計画の改定が必要だ、もちろんあなたがいま保育所の問題で言われたように、保育を要する人たちの子供の実態というものがふえてきて、それに見合った計画を再検討しなければならぬという部面もあるでしょう。しかし、私がきょう言いました非常に遂行率といいますか、達成率の低いという問題が、むしろ緊急な、収容しなければならない施設だとあなたたち自身が言っている項目からいうときわめて不十分ではないか。そのことについて、大臣はこれで満足だ、大きな前進じゃないかと思っておられるのかどうか、もう一度御答弁願いたいと思います。
  164. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この四十六年度から五十年度の計画というのは、初年度から五十年度に近づくに従って率を多くしておるわけでございまして、たとえば例を引いて申し上げますと、重度の心身障害児の施設は一万六千二百人というのが整備計画でございました。四千六年、四十七年で二千二百五十五人、四十六年から四十八年までで大体合計いたしますと三千九百九人。ですから、四十八年までには二四・一%でございますが、さらにこれが四十九年度には千何百人ふやすというふうなことになって、五十年度にはやはり千六百人程度きり収容するものはない、こういうことになりまして、大体こういうものは五十年度で全部完成、こういう見通しを立てておるわけでございます。  それから特別養護老人ホームのほうも大体そういう仕組みで、たとえば三万八千六百人に対して四十六年から四十八年までには二万四百六十一人。それに対して四十九年度の分がプラスになり五十年度の分がプラスになる。なるほど四十八年まででは特別養護老人ホームですと達成率は五三%、それから重度心身障害児の施設は二四・一%ということでございますが、四十九年度と五十年度で一〇〇%に近くなるようにいたそうという計画を進めております。四十九年度は残りの二年間の大体半分ぐらいは見込んだ予算計画しておるわけでございます。  ですから、具体的な数字が必要がございましたら、児童家庭局長から詳細に数字を申し上げさしていただきます。申し上げますとはっきりわかります。
  165. 石母田達

    ○石母田委員 はっきり何がわかるか、そのわかり方が問題です。  問題は、あなたはやはり実態を知らないと思うのです。私はおととい視察に行って、フジホームというところですか——聞いていてくださいよ、特養ホームなんです。そこでは六十三名がまだ待機者。つまりそれは昨年の八月ごろ申し込みなそうです。それが入れないでいるという実態なんですよ。ですから、私はこういう計画自体の人員についても、この懇談会指摘するように再検討しなければならない問題がたくさんあると思うのです。ですから、「政府は、すみやかに現行計画を改訂し、社会福祉施設整備を新たな軌道に乗せる必要がある。」というふうに懇談会が述べておりますね。この問題に沿っていわゆる改定をされる意思があるのか。けさほどの政務次官の答弁ですと、そういうこともまた検討されているようでございますけれども、その点について、どういう点がいままで改定を迫られているのかということもはっきりさした上で、そうした長期計画をいま立てておられるとすれば、そういう事実があるのかどうかはっきりお答え願いたいと思います。
  166. 高木玄

    高木(玄)政府委員 特別養護老人ホームの整備計画について申し上げますが……
  167. 石母田達

    ○石母田委員 整備計画じゃないです。社会福祉施設緊急整備五カ年計画について懇談会がそういういま言った意見書を出しているでしょう。
  168. 高木玄

    高木(玄)政府委員 特別養護老人ホームは、四十六年度を初年度とする五カ年計画は、当初年度が一〇%、次の年が五%増し、次の年が五%増しというふうに逐次伸ばしていきますので、四十八年度末で四五%を達成するというのが一応の目標になっておりますが、特別養護老人ホームは五三%の達成率でございますので、当初予定よりはこの整備状況は進捗いたしております。しかし、いま仰せられました社会保障長期計画懇談会では、おととい出されました御意見の中で、具体的に特別養護老人ホームにつきましては、昭和五十二年ごろまでに施設の不足を解消することということでございますので、この線に沿って実現するようにいたします。
  169. 石母田達

    ○石母田委員 ちょっと質問が全然違うよ。いま結局懇談会がいっているのは、社会福祉施設の緊急整備五カ年計画について意見を出しているわけでしょう。そうじゃないのですか。
  170. 高木玄

    高木(玄)政府委員 そうでございますが、その中で特に具体的に特別養護老人ホームについて言及されておりますので、それをただいま申し上げたわけでございます。
  171. 石母田達

    ○石母田委員 そんな都合のいいところばかりとらえないで……。時間がないからきちんと、自分の都合のいいことだけ言おうとしないで、社会福祉施設整備五カ年計画について改定すべきであるという意見が出ているわけでしょう。それで先ほどの次官の話では、そうした検討も加えられているようなお答えのようでしたから、私の質問に対してもはっきりとその内容その他についてお答え願いたい。
  172. 翁久次郎

    ○翁政府委員 児童家庭局の関係で申し上げますと、保育所については先ほど大臣が申し上げたとおりでございます。  精神薄弱関係の施設について申し上げますと、精神薄弱児のほうは予定以上に進捗しておりますけれども、おとなの精神薄弱者のほうにつきましては達成率が非常に低いわけでございます。この点につきましては、むしろ収容施設に収容して福祉をはかるのがいいのか、在宅の精薄者の方を社会参加をさせるような方向でやるのがいいのか、こういった問題がございまして、四十六年度精神薄弱児者についての総合調査をやった結果が出てまいりましたので、これと在宅、収容施設との関係で再検討する。それから重症心身障害児施設につきましては、先ほど大臣が申し上げましたようにさらにこれを進めてまいります。  こういうことで、児童家庭局関係の施設については以上のような点を再検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  173. 石母田達

    ○石母田委員 とにかく、妨害しているのかな、みんな。こっちが聞いているのは、社会福祉施設整備五カ年計画について「政府は、すみやかに現行計画を改訂し、社会福祉施設整備を新たな軌道に乗せる必要がある。」といっているのに、個々の問題を聞いているんじゃないんだよ。その整備五カ年計画で何局、何局ということをここでいっているのではない。大臣、答えてください。
  174. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 従来の四十六年から五十年までの五カ年計画の進捗状況も見直しながら、四十八年から五十二年にわたる新しい計画をつくり直します、こういうことを申し上げているわけでございます。
  175. 石母田達

    ○石母田委員 その際、私は二つの点について要望したいと思うのです。  その一つは、大臣も御承知かもしれませんけれども、わが党でこの社会福祉施設緊急整備五カ年計画についての改定案といいますか、そうしたものを提案しているわけでございます。ぜひこれを新しい計画をつくる場合の参考にしていただきたい。この中で積極的に取り入れるべきはどんどん取り入れていただきたいということを、まず一つ要望したいと思うのです。この点について大臣の御答弁を願います。
  176. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 各方面の意見は十分承ることにやぶさかではございません。ただ問題は、社会福祉施設をつくるならば、その実態がどうなっているかということが一番大事な問題でございますから、単に抽象的な御意見でありますと困りますが、実態に基づいた御意見ならば、十分承らしていただきたいと思います。
  177. 石母田達

    ○石母田委員 これは私のほうの案をごらんになっていないんじゃないですか、失礼ですけれども。これは一九七七年までに総額三兆八千六百億円ということで、特養ホームは一体要利用者がどのくらいおるのか、施設数はどのくらい必要なのか、必要な資金はどのくらいかかるのか。あなたたちが掲げておる一つ一つの項目ごとに全部あげて、私どももかなり長い間の検討でやったものでございますから、決して抽象的なものではなくて、私はむしろ政府案よりも非常に科学的、現実的なものだと思っておりますので、きょうは読んでいないようですから、ぜひ読んでいただきたいと思います。  それからもう一つの要望は、きょうの朝日新聞の社説にも書いてありましたが、これまでの整備五カ年計画はいわゆる省の計画であって、閣議決定された政府計画じゃない。こういうことがでこぼこを生ずる一つの原因のようにも書いてあります。私はこれは一面では正しい指摘じゃないかと思っています。私どもも前々から、なぜ政府がこのような社会福祉の施設を何カ年間でつくるという計画政府施策として閣議で決定しないのか、こういうことについてきわめて疑問に思っておるわけです。いま閣議で決定されたそうした計画は十幾つかございます。けれども、その中に社会福祉のそうした関係のものは一つも入っていないと私は聞いておりますが、はたしてそうでしょうか。イエスかノーだけ言ってください、いろいろなことを言わないで。
  178. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 現在のところ、ございません。
  179. 石母田達

    ○石母田委員 第七次道路整備五カ年計画が十九兆五千億とか、あるいは第四次港湾整備五カ年計画が二兆一千億とか、第二次空港整備五カ年計画が五千六百億円とか、こういう道路とか空港あるいは住宅というようなもののいろいろな公共事業が、こうして政府施策として計画の達成自体に予算の裏づけを持っておる。これはいいことだと思っているのです。なぜ社会福祉優先だとか重点だというようなことを言いながら、政府施策にこうした計画をきちんと入れないのか。私は入れるべきだと思っているのです。これは、やろうと思えば、そうした立法をしてきちんと手続をすればできることなんですから。道路や住宅もいいでしょう。しかしあなたが毎回強調されているように、こうした社会福祉の、国民にとって最も必要な緊急的なものを、まず政府の閣議決定で施策としてきちんとやるべきだというふうに考えますけれども、そういう新しい計画を再検討される場合に、ぜひこの点を、大臣はそのために努力をしていただきたい、こういうふうに考えますけれども、どうでしょうか。
  180. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先ほど来たびたび申し上げておりますように、今度の新しい四十八年から五十二年までの五カ年計画を見直し、改定をするわけでございます。これにはやはり相当国民の要望、保育所などは要望が非常に強いわけでございましょう。それから身体障害者等については、その実数をどうやって把握するか、これは非常にむずかしい問題がたくさんございます。そこで、そういう問題を踏まえて、できるだけ社会的ニードに、ニードというのですか、社会的要請に即した計画をつくりたいと考えております。  そこで、必要があればそれは閣議決定もけっこうだと思いますが、皆さんもすでに御承知のように、わが国の経済は激動をきわめておるわけでございまして、なかなかそのとおりいけるかどうか、将来の見通しというものが非常に困難だという実情もあります。したがって、年度的にこれを割るということは、実際問題私はなかなかむずかしいと思うのです。いろいろな努力目標はわかりますよ。努力目標はわかりますが、かちっとしたものをつくるということがどうであろうかという難点もあります。  しかし、私どもは、五十二年度末においては経済社会基本計画に基づく振替所得と国民所得の比率を八・八に持っていくように、これは社会福祉施設ばかりじゃありません、年金、医療、何もかもみんなひっくるめてですが、そこまでは持っていける、これはすでに閣議決定になった方針でございますから、そういうワクの中で社会福祉だけの閣議決定をする必要があるかないか、この辺は相当問題があると思うのです。社会福祉だけを抜き出して実数を把握するということもなかなか困難ですし、社会のニードというもの、要請というものもやはり時々刻々これから変わってくるんですね。そういうことを考えてみれば、社会福祉施設だけの閣議決定の必要があるかないか、相当まだ検討の余地はあると思いますが、私は石母田先生のおっしゃる気持ちはよく理解いたしますから、非常に実施可能であり、確実な計画をつくるようにまずさしあたり努力いたします。その努力の結果、必要があったら閣議決定もこれはやぶさかではない、こういうふうに考えておるわけでございまして、まずいまのところは、正確な、実現可能な計画をつくる、こういうことに全力を尽くしてまいりたい、かように考えております。
  181. 石母田達

    ○石母田委員 ぜひそのために努力していただきたいと思いますが、大臣はさっきは、五カ年計画が遂行できてないじゃないかと言うと、ちゃんとできるんだ、ちゃんと計画を立ててやっているんだ、こう言う。ところが今度は、閣議決定したらいいじゃないかというふうになると、いや、不確定要素がたくさんあって、福祉だけできない。そんなことを言ったら、道路だって住宅だってみんな不確定要素があるのですよ。インフレや物価値上がりはみんな共通するんだから。そんなことは理由にならないのです。いままでの国の施策がいかに社会福祉が重点にないかという、何よりも私は証拠だと思うのです、はっきり言うと。ですから、むしろあなたたち厚生大臣が、いわゆる概算要求で削られたなんていうだけじゃなくて、はっきりそういう必要な五カ年計画を立てて、そしてきちんとやる。この点について、私どもは、いまの行政のやり方については非常に感心しているんです。ですから、政権交代して私どもが与党になった場合も、この五カ年計画について年度的にやるということは、非常にいまの政府のやり方から学んでいるのです、内容は別として。ですから、そういう点はぜひ自民党の政府の皆さんでも取り入れていただいて、ぜひ閣議決定にするように努力していただきたい、こう要望したいと思います。  さて、私はこの視察の結果問題点がだんだん明らかになってきた。そういう中で、一番社会施設に働く人々や経営をやっている方々が共通して言っていることは、この働く職員の待遇改善と養成をどのようにするか、どのように確保するかという問題が非常に深刻な問題になっているわけです。この問題についてはけさほどからかなり討議されております。  はっきり申しますと、秋津というところの療育園の理事長はこう言っています。もう人手不足の問題についてはお手あげの状態だ、出口もなく、入り口もふさがったというのがいまの状況だ。「昔は金が欲しかった。いまは何よりも人が欲しい。人手の問題は私たちの力だけでは、どうにもならない。三十歳近い重症児の行き先もなく、新しい入所者を迎えることもままならない。」このことを秋津の療育園の草野熊吉という理事長さんが私どもに訴えておりました。  ここは新聞にも出ましたように、秋田おばこの、いわゆる天使といわれた人たちが秋田県からかなり来たということもあったそうですけれども、次第に数が減って、昨年は一人も来なかったそうです。こういう中で、昭和三十三年以来ほんとうに身を削られるような気持ちでこれまで盛り上げてきたこの施設、自分はもう率直に言って逃げたい気持ちだ。だから、十五年目の記念集会に出たときも、自分はお葬式に参列するあいさつをする、こう言って私たちに涙ながらの訴えをされているわけであります。  私は、この社会施設に働く人の手不足という深刻な問題、この問題は、先ほどから答弁にあるようにケース・バイ・ケース、個々の問題だ、具体的な問題だという一つ一つの問題だけで解決つくものであるかどうか、むしろこれは国としての施策、国として全国的な問題として解決しなければならない問題が含まれているのではないか、こういうふうに考えるわけです。  たとえば厚生省社会局の施設課が調べた一九七二年の調査によりますと、民間の社会福祉施設が八千五百五十三カ所、職員数が約十万ですけれども、この平均勤続年数は、四十七年が三・八年、これが四十八年になりますと、去年になりますと、二・八年になっております。二年以下が五八・四%、約六割近い人々が二年以下でやめてしまう。三年以下になりますと六六・四%。これがいまのこうした社会福祉施設に働く職員の人々です。これは意識がないとか、あるいはボランティア精神がないとか、こういうものじゃない。私どもも行って、なるほどうちでとても扱えない人々があそこに入ってくる。それが三十キロ、四十キロ。障害者の施設がないから、十八歳と言ったってもう二十歳以上の方がたくさんいる。そういう重いからだを入浴させたり、一日六千八百枚のおむつを洗ったりたたんだり、こういうことをやれば、もう職員が腰痛症で倒れるまでとにかくいまの施設をやらなければならない。すべて職員の犠牲にかかっているということをはっきりと経営者自身が言っているのです。  こういう実態の中で、この社会施設に働く職員が、厚生白書によりますと約三十万人おられるそうであります。この問題について、国として、政府として真剣に施策を考えなければもうこれはどんどんじり貧になる。これはもう、自民党の議員の方も私たちと一緒に行った方がこの中にもおられますけれども、その方も言っているのです。こういう問題について、この待遇改善並びにこの腰痛症といわれる職業病、これをなくすためにはいろいろ職場の環境を変えなければなりません。現にあそこは、フジホームでしたか、あの入浴場を改良した。百万円ほどかけだそうです。それからあの自動式に動くギャッジ・ベッド、そういうことでやはり腰痛症の方々がかなりなくなったといって報告されております。そういうもの、あるいは一番皆さんが共通して訴えていたことは養成なんですね。つまり、こういう社会福祉の事業に働くというためにはそれなりのやはり精神的な教育が必要であります。また同時に技術的なやはりいろいろな教育も必要なんです。そういう養成が全国的にはいまのところないそうですけれども、こういう問題について政府として、国として考えてくれないか、これはもうみんな共通の希望であり、私どもももう、それは自民党であろうと共産党であろうと、みんな行きましたけれども、みんながそうだということになっておるのですけれども、そういう問題について、厚生大臣としてぜひこの社会福祉施設に働く職員の待遇改善、職場環境の根本的な改善、そして何よりも養成していくという、こういう問題について独自的に特別に私は対策を政府の立場から、全国的な立場から考えていただきたい。そうしないとたいへんなことになるということで、私は、ぜひ厚生大臣の所見をお伺いしたいというふうに思います。
  182. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員長代理 ただいま石母田委員から発言がありましたけれども、先般社会労働委員会の視察のときに、これはもう党派を越えて、福祉施設の職員の確保の問題につきましては、非常に強い認識と、また国会を通じての努力も約束をしてきたところでございますし、そういう点を十分踏まえてひとつ政府側も御発言いただきたいと思います。
  183. 翁久次郎

    ○翁政府委員 ただいま御指摘の点につきまして、私どもがただいま取り組んでいることを申し上げて御答弁申し上げたいと思います。  腰痛症の問題につきましては、特に重症心身障害児施設を中心に発生しておりますので、この二月から労働省、厚生省並びに斯界の整形医科の先生をはじめとする研究会を発足して、すでに第一回の会合を持ちまして早急にこれの予防、それから対策というものを中心に御答申を得て実行に移したい。それから省力機器につきましては、先ほど御指摘のありましたいろいろな機器がございます。さらにこれの開発につきまして研究費をもっていろいろな機械器具の開発をさらに積極的に進め、同時に来年度予算の範囲内におきまして、予算にも盛って、こういった機器の整備の補助をしてまいりたい。  それから養成関係につきましては、まだ省議の決定は経ておりませんけれども、国立の施設にこういった重度の精薄、重症心身障害児の施設に働く方々のための施設をぜひ付置したい、これはぜひ実現をしたい、こういうふうに考えております。なお現在のところ精神薄弱関係につきましては、国立の秩父学園に養成施設がございますけれども、これでは十分でございませんので、そういった点をさらに進めてまいりたい。なお処遇につきましてはけさほど来しばしば申し上げているような改善、さらに今後とも改善をはかってまいりたいと考えております。
  184. 石母田達

    ○石母田委員 大臣、特に養成の問題なんかについて。
  185. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 こういう施設に働く方々の養成確保という問題は、これは非常に大事な問題だと思います。先ほどもお述べになりましたように勤務年数が少ないとかなんとかというふうな問題も承りました。そういう点について、やはり思い切って退職金制度をりっぱなものをつくってあげるとか、そういうことも必要でありましょうし、養成施設をつくるというふうな問題もありましょうし、こういう問題については今後とも前向きに、全力を尽くしてまいりたい、かように考えております。
  186. 石母田達

    ○石母田委員 そういう全国的な問題をぜひ積極的に進めていただくと同時に、非常に私の気のついた、これは各省に要求して解決したほうがいいと思うのですけれども、このインフレによる給付水準の実質低下の問題で、特にこれはフジホームから出された資料によりますと、非常に給食費の材料の値上がりが激しいわけですね。こういうものについてよく実態を見ていただいて、たとえばニンジンなどというのは、私は男だからあれだったけれども、一キロおととし十二月で四十円だったのがいま百円ですね。野菜が非常に高いですね。それからみそがこの一年ちょっとの間に五五%上がっているとか、しょっちゅう使うものが非常に値上がりしているのですね。この材料の受け入れ方ですね、どういうところから買っているか知らないけれども、私どもちょっと見ても、特に安いところから買っているというような感じがしないわけですけれども、こういう仕入れ先なんかも検討していただきたい。それから日用品の値上がりで、特にガーゼ、ほかのものも大体三倍、四倍、ちり紙が三倍になっているとかありますけれども、ガーゼが四十八年の二月から四十九年の二月、一年間に百八十円から五百五十円になっているのですね。あれは一反ですか、十メートルですね。そうすると三倍以上でしょう。これは特に指定品目ですし、厚生省としては物価調査官もいるわけですから、これは四人か三人いられるわけですから、ぜひこれは調べて、いまたしか薬価基準は百三十二円が今度取っ払ってしまったけれども、こういうものできちんと安く手に入るような手だてをぜひやっていただきたいとか、あるいは先ほどの入浴場の改善についてはぜひ、フジホームでもしそういうことで効果があるとすれば、まあ百万円かかったそうですけれども、そういう施設で少しでも職員の方が楽になるのだったらぜひ検討していただきたい。こういう幾つかの問題であとでまたいろいろ申し上げますけれども、ぜひ努力をしていただきたい、こういうふうに思います。よろしいですか。  それではまた予算に戻りまして、いろいろこれは現在の四十九年度予算予算委員会検討されておりますので、その方面でも私どものほうから主張はしておりますけれども、何としても私は社会福祉予算をもっと大幅にふやすべきだ。このふやす財源について、わが党としては不急不要の予算を削って社会福祉予算に回すということを主張しているわけであります。たとえば今度の予算の中に電算機振興対策費、それから外航船舶建造の利子補給、こういうものは明らかに大企業への補助金なんですね。こういうものは打ち切って、あれだけ国会で大企業が大きな糾弾を受けて、ばく大な利益を得ている、こういう中で、こうした借りた金の利子まで補給するという、こういうものは打ち切るべきだ。通信放送衛生関係費、こういうものも不急のものとして削って社会福祉予算に大幅に回していくべきだ、こういう主張をしているわけです。  そこで、きょう大蔵省の方が見えていますから、専門以外でございますので、電算機振興対策費あるいは外航船舶建造の利子補給、こういうものは一体それぞれどのくらいの額であるか。これは、私の調べによりますと、電算機の新機種の開発その他に使われるお金だそうですが、これは百九十六億五千五百万円、昨年度に比べて、当初に比べて六四%のアップ。交付先は、これは大蔵省じゃ答えられないかどうか知らぬけれども、発表されたところによると富士電機グループ、東芝のグループ、三菱のグループ、この三つのグループに四十八年度では分けられて、四十九年度もそのとおりであろう、こういう御返事でございます。それからもう一つ外航船舶建造の融資利子補給というのは、外航船を建造したたとえば日石だとかそういう大きな企業が市中銀行及び日本開発銀行から借り入れ金した場合に、その利子を国が市中銀行、日本開発銀行に対して補給する。四十九年度の予算は百四十八億五千四百万円である。それから最後の通信放送衛星については、これは実験用の通信衛星及び放送衛星の開発を行なうための予算で、四十九年度の予算は四十五億五千五百万円。昨年度に比して四・二倍増の予算で、これは御承知のように米航空宇宙局に上げてもらうということで、通信衛星は三菱電機、放送衛星は東芝、もちろんこれはそれぞれアメリカの会社と合同でやるわけですけれども、これらにきまったということが発表されております。  以上の事実について何か違っている点がありましたら補足して、そのとおりであればそのとおりということでお答え願いたいと思います。
  187. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 先生ただいま御指摘になりましたコンピューターの振興対策費、それから外航船舶利子補給の予算に計上されております金額は御指摘のとおりでございます。それから通信放送衛星関係につきましては、歳出ベースで申し上げますと七億八千万、四十九年度計上されております。
  188. 石母田達

    ○石母田委員 そうすると、この四十五億というのは何か間違いですか。
  189. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 四十五億というのは国庫債務負担行為の金額でございます。
  190. 石母田達

    ○石母田委員 いま言われたとおりの内容だとすれば、国が大企業直接の補助金をやるほうがいま予算として必要なのか、それともけさほど来、また私も言ってきたこの社会福祉施設に働く職員、入っている人々、その父兄の方々、こういう人たちを考えて、そしてその声を聞くときに、このような不急不要なものをやめて、いまの昭和四十九年度でなぜこれをやらなければならぬのか。これを先に回してむしろ緊急的な社会福祉予算に回すこと、私はこれこそ社会福祉優先の施策であると思う。また所信表明で言われる社会福祉への政策の思い切っての転換の第一歩でもあると私は思うのです。こういう点について、政府を構成する厚生大臣として、また自民党の有力者の一人として齋藤厚生大臣が、一体私の意見が間違っているものかどうか、私どもの主張が無理なのかどうか、厚生大臣の口から、こういう不急不要の予算を削り、あるいはあとに回して、そして福祉予算の大幅の増額のためになお一そうの努力を願いたい、こういうことをはっきりと国民の前に表明していただくよう要望したいと思いますが、この点についての厚生大臣の見解をお願いしたいと思います。
  191. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 ただいま先生の御指摘の点の経費を社会保障関係費に振りかえるべきではないかという問題は、財政に関係する問題でございますので、私のほうから一言御説明をさせていただきますが、社会保障関係費につきましては、本年度約二兆九千億、対前年度三六・七%の増額になっておるわけです。一方、一般会計の予算の伸びは一九・七%でございますから、政府としてはかなりの社会保障関係費……(石母田委員「時間がないのだ」と呼ぶ)なお、その中身につきまして、当然増経費が多いではないかという議論がありましたけれども……(石母田委員「そんなことは大蔵大臣に聞けばわかる。時間がないのだよ」と呼ぶ)年金の四十八年度の大幅な改善に伴なうものでございまして、なおかつ来年度の政策費の増が少ないのではないかというのが先生の御発想の点かと思いますけれども、本年度の政策費の増も、たとえば年金で申し上げますと、四百億ことし計上した金額は来年度千六百億の……。
  192. 石母田達

    ○石母田委員 委員長、ああいう発言は困るよ。私の聞いているのは、齋藤厚生大臣の政治姿勢を聞いているのに、あんな大蔵省のどのあれだか知らぬけれども、ああいうことは委員会としてまずいと思うのだ。委員長に中止を求めます。
  193. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員長代理 石母田委員の前回質問の補足的な見解ですから、答弁を簡潔にお願いしたいと思います。
  194. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 したがいまして、先生が御指摘になりました三つの経費、例示されました三つの経費は、それぞれ産業政策あるいは日本の宇宙開発計画それぞれについて政府が政策的に必要と認めて計上したものでございまして、これを社会保障関係費に振りかえる必要も認められませんし、また適当ではないというのが私どもの考え方でございます。
  195. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 それぞれお述べになりました費目の予算というのは必要であるということで閣議決定をしておるわけでございます。私も閣議の一員としてその予算は必要なものである、かように考えております。したがってその予算を削って福祉に回すという考えは全然持っておりません。
  196. 石母田達

    ○石母田委員 それは国民がどういうふうに聞くか、国民が判断するでしょう。  私は最後に、時間が参りましたから申し上げますけれども、いまのあそこの何とかという大蔵省がどういうことをやっているか。御承知のように今度の防衛庁予算が復活しました。そういう中で、二十一日の日に御承知のように防衛庁は八十億の自主削減案というものを発表しました。内示されたのが二十二日です。大蔵省はこの二十二日の日に七四式の新型戦車四十両、対潜護衛艦DDK二千五百トン一隻護衛艦DE千五百トン一隻を認め、実質上の復活第一号とした。大蔵省は、新聞報道によれば、同長官——というのは防衛長官のことです。「同長官の総需要に対する積極的な協力は歓迎に値する。これを意気に感じ、当初ゼロ査定としていた新型戦車、対潜護衛艦、護衛艦をただちに認めた」、こういうふうにいわれております。まさに私ども国民にとっては常識では考えられない特別の配慮をしているわけであります。そして一方私どもは、厚生省から得た資料によりますと、軽度の障害を有する幼児を一般児童の中で保育したい、こういうおかあさん方の声、父兄の声、厚生白書にいわれるように、こういう声が多くなっている。これに答えて厚生省が二億円の五十一カ所の要求をしたのに対して、内示額六百万、予算でも六百何万になって二十カ所に減らしております。また家庭保育室、いわゆる無認可保育の問題は非常に大きな問題である。これは厚生白書の第四番目に書いてあります。こういう中で、無認可に国の助成を出すことはできない、しかし家庭保育室という形で、昼間里親ということで厚生省は要求したはずです。これに対しても査定ゼロ、予算ゼロ、これがどんなに、この保育所に入りたくても入れない子供たち、それを持つおかあさんたち、こうしたささやかなことさえもあなたたちは削っているのだ。こういう中で私は、いま齋藤厚生大臣は閣議で決定したのだから削る意思は全くないと言いましたけれども、このような予算について、あなたはもっともっと人間として、日本の国民の一員としてこういうことが許されていいのかどうか、こういうものを削ったほうが、軍艦つくったほうが、戦車を復活させたほうがいいのかどうか。こういうことで、あなたは微力を尽くしたということを所信表明で言われておりますけれども、私はその微力の尽くし方の方向が間違っているのじゃないか。あなたが自民党政府大臣だがらそうしたことを言われるのかもしれませんけれども、私は社会施設に働く職員並びに入っておられる人々、その人たちのおかあさん、また多くの国民の声を代表して、私は、あなたがまた政府がこうした政策を転換してほんとうに社会福祉予算のために大幅な増額をされるよう要求いたしまして、私の質問を終わります。
  197. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 防衛も国家として最も大事な問題の一つであります。それから先ほどお述べになりましたようなことも、政府が全般的な施策を進める上には必要な問題でございます。それを削って福祉に回すという考えではないのであって、いまのような経済、社会状況において、社会福祉がどの程度の予算において位置づけられているかということを批判するのが正しいのでありまして、御承知のように来年度の予算は苦しい予算の中でありますが、国民の税金の中から二兆八千億のお金を出す、これはやはりたいへんなことですよ。そこを批判していただきたい。されば、先ほどの重度心身障害児の問題でも、皆さん方は昨年一・五を一にしてくれぬか、ああやりましょう、こうことしの予算においてもちゃんとしているじゃありませんか。そういうふうに、きめのこまかい国民の要望に即してやっておるわけでございます。したがって、防衛の予算を削って福祉に回すという考え方じゃなくて、国全体の予算を編成するにあたって社会福祉予算はどの程度が適当であるかという判断に立つならば、現在の段階においては社会福祉予算というものはまあまあの成績である、私はそうかたく考えております。
  198. 石母田達

    ○石母田委員 あなたがそう考えても、それはいずれ国民は判断しますけれども、私の言っているのは、そういう予算の復活のときに、こういうものが出されているから、あなたたちも復活予算でやったでしょう、そのときにあなたは軍艦を、新型四十両の戦車をふやすほうに協力したのか、それとも厚生省の立場からあなたたちの立場を貫くために努力したのか。微力を尽くしたといっても向きが違うのじゃありませんかと、先ほどの答弁から非常に疑わしいので私はそう言ったまでのことでありまして、これは両方の見解の相違でございますから、私はこれで質問を終わります。
  199. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員長代理 大橋敏雄君。
  200. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私も大臣の所信表明に対して一般的な質問をいたしますが、御承知のように、社会保障社会福祉の問題は文化国家のバロメーターだといわれているほどでございます。これは政府のみならず、国民もまた関係者もあげて取り組むべき仕事であろうと思います。しかしながら、御承知のように、わが国のそれは遺憾ながら非常に立ちおくれているといわれた状態にありました。近年になりましてようやく社会保障社会福祉の問題がクローズアップされてまいりました。あなたの所信表明を見ましても、非常にそれに取り組む意欲はうかがわれます。特に石油危機あるいは物価高、インフレ等々非常に困難な状態に置かれるであろうという、いわゆる社会的な弱者の皆さまに対するものの考え方は、私は評価できると思います。あなたの表明の中に、「経済的にも社会的にもわが国にとって一大転機ともいえる今日の事態に対しては、単に物価上昇等への応急的な対応にとどまらず、経済社会構造の中に福祉優先の原則を確立し、」云々とございます。全くそのとおりだと思いますけれども、いよいよひのき舞台といいますか、福祉問題が大きくクローズアップされた今日におきまして、厚生省の使命、責任はきわめて重大になってきたと思います。お年寄りの進度が、いわゆる老齢化社会はものすごいスピードでやってきていると同じように、この社会福祉問題については、いまの厚生省の皆さまが一人で二倍、三倍あるいは十倍もの努力をしなければ追いつかないほどの忙しい仕事になってきたものと思います。  いずれにいたしましても、このような時代になりまして、いわゆる社会福祉の善意といいますか、あるいはその美名に隠れまして、つまり法の裏をかいて、非常に感心できないといいますか、不心得なことをやろうとする一部の者があらわれるということは非常に遺憾なことでございまして、多くの篤志家の心を傷つけるものと私は思います。したがいまして、こういう問題につきましては特に厳格に、きびしく監督指導をしていただきたい。私はこれからいろいろと質問したいわけでございますが、時間の関係もございまして、精神薄弱者対策に焦点をしぼりまして質問してみたいと思います。  また、具体的な例を引いて申し上げるわけでありますが、これはわが党が調査した内容に基づいてお尋ねをしていくわけでございますけれども、いまから取り上げようといたしますのは、社会福祉法人草の葉育英事業団、四十八年以前にはこのような名称で運営されているはずの育英事業団のことについてお尋ねをいたします。  その場所は長野県の松本市人山辺区の三城八千九百六十一番地の一六一〇、ここに所在している草の葉育英事業団の問題でございます。  結論から先に申し上げますと、わが党がその現地に参りまして調査いたしました結果はこのように写真にもおさめてきておりますので、あとでゆっくりごらんに入れたいと思います。  まずこの施設は第一期工事としまして、昭和四十二年度、小型自動車振興会からの補助金を受けたいわゆる補助事業でございます。第二期工事も四十三年度補助事業として実施された建築施設でございます。   〔山口(敏)委員長代理退席、葉梨委員長代理着席〕 先ほど言いましたように結論から申し上げますと、第一期工事でなされたこの建物が、鉄筋コンクリート建築であるというのが、事実はブロック建築で建てられている。あるいは、四十三年八月にこの工事が完全に完了いたしましたという報告書が関係のところに提出されているにもかかわらず、事実は野放し状態、放置されていた。あるいは施設は未完成であって、精薄者はまだ一人も入っていない。食堂や台所もない。水道も全く出ないというような現状であります。第二期工事の四十三年度分の補助事業にいたしましても、この完成の報告が四十四年末になされているわけでございますが、事実は未完成でございます。食堂、台所、あるいは冷暖房等、便所等も不完全であって、日常生活は不可能という状態。言うならば、第一期工事が四十三年に完了して今日まで五年有半、両方で百人収容できる状態にあるといわれながらも、いまだに一名の薄弱者の教育もなされていない、こういう実態があったわけでございます。厚生大臣はこのことについておそらく御承知であろうと思いますが、知っているかいないかということを簡単に答えてもらいまして、あと当局のほうから、その事業の規模、敷地面積がどれだけであって、建物がどれだけであってというようなことを説明していただきたいと思います。
  201. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 ただいまお尋ねの草の葉育英事業団のことでございますが、私、初めてきょう承ったわけでございまして、承知しておりません。
  202. 翁久次郎

    ○翁政府委員 ただいま御指摘いただきました草の葉育英事業団につきましては、さかのぼることいまから八年前の四十一年の十月に社会福祉法人の認可申請が出ました。当時の事情を聞きますと、非常に篤志の方が、自然の中で知恵おくれの人と生活をともにしながら社会復帰をはかっていこうという善意で、この施設を精薄者援護施設として社会福祉法人が経営したい、こういうことで認可申請がございました。十月にこの認可をいたしたわけでございます。その後四十二年、四十三年両年度にわたりまして、ただいま御指摘になりました補助金が小型自動車振興会から約三千六百万出ておりました。第一期工事としては四十二年度に一千四百万、それから第二年度に二千二百万何がし、合計三千六百二十一万という補助金で、主として第一期工事は三十五名分、第二期工事五十名分、これだけの収容者のための施設が、完成はしておりませんけれども、でき上がっております。その際の規模でございますけれども、寄付者が寄付されましたのが、旧名で恐縮でございますが、一町二畝一歩、それから宅地が百五十坪、実は当時からそこに、事業を始めようという理事の方がすでに住んでおられまして、そこに五十九坪の木造の平屋建ての建物があったそうでございます。  以上のようなことで、四十三年には一部建物ができ上がりましたけれども、御指摘のように、いまだ精薄者の援護施設として活動するに至らず、その後時日を経過して、その後のことについてはまた後ほど申し上げますけれども、発足当時の事実関係については以上のとおりと伺っております。
  203. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 大臣はこのことを初めて聞いたとおっしゃったのですが、そうなれば、あとで私が質問しようと思っておる問題と非常に重大な関係が出てくるのですけれども、その問題はあとで明らかにいたします。  草の葉育英事業団というのは、長野県のすみのほうにある施設ですから、一々大臣がそんなところまで知るわけがないというようなお考えで、そういうふうにおっしゃったのかもしれませんけれども、この問題は、今後社会福祉施設を建築していこう、あるいはそれを運営していこうというものに対して、非常に大きな問題を示唆していると思うのです。  そこで、いま局長のほうから概略の説明がありましたけれども、まず補助金の支給額は、その一期におきましては一千四百十五万円、二期工事におきましては二千二百六万円、合計三千六百二十一万円、これが小型自動車振興会から出ているわけですね。これは御承知の投げ渡しですよ。さて、その完了報告が、第一期工事、いわゆる四十二年度の補助事業については、四十三年十月九日に出されております。その報告書を読んでまいりますと、実際に建ち上がったのは四十三年の八月三十一日ということになっております。二期工事の四十三年度補助事業は、四十五年の一月二十八日に報告されておりまして、実際に建ち上がったのは四十四年十一月三十日ということになっておりますが、この報告内容もきわめてずさんであり、いいかげんであるということなんですが、これも順を追って質問してまいります。  ただ結論から先に申し上げておきますが、大臣、特に聞いておってください。私は、この問題を取り上げて、この法人をあるいは解散させ、事業をつぶそうという意思は毛頭ございません。むしろその逆に、一日も早く健全な運営をさせたいという気持ち質問しているわけです。そのためには、やはり問題点を整理しまして、不明朗な分については排除して、関係者が心から納得いく状態に持っていかなければならぬ、そういう気持ちです。結論はここにありますから、何もおれは知らぬぞ知らぬぞというようなことで逃げるのではなくて、ほうとうに私の言うことに対してそうかと認められれば、認めるべきものはすなおに認めて、反省の立場から次にかかっていっていただきたいと思うのでございます。  それじゃ、自動車振興会からの補助金が出ておりますので、まず通産省の方にお尋ねいたしますが、私がこの問題を調査しまして、確認する意味において草の葉育英事業団に対する補助事業についての報告を求めたところ、この一枚の用紙にまとめておいでになりました。この補助金その他の内容については、厚生省のいまの説明と大体一致するわけでございますが、私はその経理上に多少の疑念を抱いておりましたので、領収書をそろえてもう一度報告してくれませんかと申し上げましたら、次に、一期、二期工事別々にこうしてさらに報告してくれました。  ところが、そのときにおっしゃったことは、もう自動車振興会は、第一期工事分については、ずっと前の仕事なものですから、資料が完全にそろっておりません。領収書もないわけではございませんでしたが、本日はここには持ってまいりませんでした。しかし、ここにしるしておる分については、責任をもって領収書があったと言えます。ただし第二期工事の二千二百六万円ですか、この分については確かにまだ不明な点がございますので、これは監査の結果指摘しておるところでございまして、今日なおそのままになっております。  大体このような御報告があったと思うのでございますが、以上の点について簡単に、そうだとか違うとかだけ言ってください。
  204. 後藤宏

    ○後藤説明員 ただいまの件はおおむね先生の御指摘のとおりでございまして、ただ私ども一、二補足させていただきますと、四十二年度事業につきましては、実は補助の監査もいたしまして、領収書等もすべて点検し、現地監査もいたしまして、事業は完了いたしました。その結果、実は小型自動車振興会における文書の保存期間が五年ということになっておりまして、保存期間が過ぎたということもございまして、完全な姿において現在その書類が残っておらないわけでございます。  四十三年度分につきましては御指摘のとおりでございまして、実は私ども監査を四十五年に実施しておりますが、この監査の結果、領収書の未整理あるいは工事の一部未完成という問題がございまして、これについて草の葉育英事業団の責任者に対して来会を求め、実はいろいろと改善方を要求したわけでございますが、その後におきます草の葉育英事業団の役員間の対立等を理由といたします運営の統一がなされないために、現在まで十分な処理がなされておらないのが現状でございます。
  205. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 要するに、小型自動車振興会のほうからの完成報告に基づいて監査した結果は、第一期工事についてはまずオーケーであった。第二期工事については一千二百万程度の経理上の裏づけが乏しかった、あるいは建築上にも多少の問題があったので指摘をしているのであるというように説明があったと思いますが、これが問題なんです。実は先ほど写真でも見せましたように、ここはいわゆる標高千三百メートルという高い高原に建てられているわけでございますが、遠くから見る限りにおいてはりっぱな建物が建っております。しかし中に入ってまいりますと、これで何が収容できるかとだれが見てもあきれ果てるような状態であるわけですね。そして現実にまだ一名も入っていない、こういうことでございます。  さて、具体的にお尋ねしますけれども、この第一期工事について監査の結果はオーケーということでございますけれども、この設計図において多少の疑問が起こるのでございます。つまりこの草の葉育英事業団の理事長が長野県の県知事あてに意見書を求めて出した申請書に添えて出されたときの設計図には、当然園児を収容する室とあるいはそれに相応する食堂あるいは炊事場等が示されているわけでございます。ところが第一回の完了の際に支払われたところの設計図を見ますと、食堂と炊事場がなくなっているわけですよ。これがそのときの、申請時の図面でございますが、これは長野県に出されておったものをいただいてまいりました。きちっとこうしてこれが収容棟になっているわけです。ここが食堂とそれから炊事場ときちっとなっておりますが、通産省のほうからいただきましたそれによりますと、それが消えてしまっているわけです。  まず大臣お尋ねしますが、少なくとも三十名ないし五十名収容する、そういう共同生活をする施設に、食堂やあるいは炊事場もないというような施設がこうした施設の中にはかにあるでしょうか。
  206. 翁久次郎

    ○翁政府委員 私現地に参っておりませんので具体的に詳細にお答え申し上げることができないのは残念でございますけれども、当時の事情を調査させましたところ、第一期工事につきましては、先ほど申し上げましたように三十五名収容の収容舎等々、それから最初に申し上げました従来からありました平屋の五十九坪に炊事場、食堂があるので、それを併用するのだというように説明を聞いておったというように当時の関係者は言っておるのでございます。
  207. 後藤宏

    ○後藤説明員 ちょっと補足さしていただきます。実は先ほど御説明しておりますように四十二年度事業につきましては、その事業の補助額が確定した結果、文書が完全な姿において保存されておりません。したがいまして先生指摘の補助の交付申請の際に添付された図面が、実は私ども手元にないわけでございます。そこで実は私ども関係者その他の意見を全部集めまして、一体どうであったか、補助の申請の際どういう図画が添付されておったかということを調べたわけでございます。その結果いま判明しておりますことは、いまこの席でお示しなされました図は実は交付申請の際の図面ではないわけでございます。いわば申請を要望なさる際、まだ補助金を審査するときの図面でございまして、その図面では確かに先生指摘のとおり炊事場と食堂がついておったわけでございます。しかしながら補助金の交付申請をする際の添付図面につきましては、当時のいわばこういう事務を担当しておった理事の証言あるいは小型自動車振興会の職員が、もしそういった内容の変更があるとすれば当然計画変更の手続をとっておったはずであるということの証言、また現地に監査にまいりました職員が実際に図面を持っておって、その図面とそういう開きがあった場合には当然——開きかあったはずだというような点から見て、それは第一回の審査の際から、おそらく炊事場と食堂は現状すでにございました十一坪の既存の施設を使うことで処理をしていたはずであるというのが現在まで判明した事実でございまして、問題はなお、昔のことでございますので、正確にいろいろ調査をいたしたいと思いますが、時間がありませんので、とりあえずわかりました点は以上でございます。
  208. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 実は私が示した長野県に出されていた資料というものは意見書を求めるときのものであって、実際の建物の設計とは違うのだ、こういうお話でございますけれども、私がいま言っているのは、きわめて常識的な質問かもしれませんけれども、三十名、五十名と収容する施設に食堂、炊事場もないような設計がなされていることに対して問題があるということですよ。これが一つです。  それから、これは支払い時にとられている図面だそうですけれども、これはあるのですが、肝心なのがないのですよ。だからしようがないのですけれども、いずれにいたしましても、どうでしょうか。既設の炊事場かあるいは食堂かを——食堂はかりになくても部屋で食べられないことはないわけですけれども、既設の炊事場を利用するつもりであったといいますけれども、じゃ百歩譲ってそうだとしましょう。しかしそれはいつこわされたのか。いま第一期工事も第二期工事も完成していないのですよ。生活できる状態ではないのですよ。かりに入園者があって入れたとするならば、その日から困るのですよ。こんなばかな話がありますか。そうでしょう。あなたは現地を見ていないからそういうことを平気で御答弁なさるわけでございますけれども、どこからどう見てもおかしなことだらけなんです。実はさる人に聞いてみますと、この施設はむしろ補助金だけで建てて、自己資金はほとんど使われていなかったのじゃないか、こういう疑いを持った方がかなりおりました。ですからやはり、私がここまで話しておりますので、もう一回現地に行って見てもらいたい。これが一つ。  同時に、大臣に申し上げますが、これは補助金を出す側は、直接の経理上の問題等もあり通産省のほうということになりますけれども、実際の運営は厚生省が直接の担当です。ですから施設をつくるときには当然助言もなさるでしょうし、指導もなさることと思います。こういう際にかりに食堂、炊事場もないような施設の案を持ってきたような場合は、当然こういうものは却下すべきだと思うのです。今後において特に重要な問題だと思いますよ。そういうことが一つ。これも含めてあとで答えていただきます。  それから報告書によれば、鉄筋コンクリートづくりとなっているわけです。しかし事実はコンクリートブロックづくりとなっているわけです。これは建設業者に聞いてみますと、外から見た目は非常にわかりにくいそうですけれども、実際の工事費の立場からいくと、鉄筋とブロックとは格段の差があるそうです。これは、私はしろうとですけれども、しろうとでもそうだろうというふうに判断いたします。ところがこの報告書の中では、あるいは厚生省の提出資料の中でも、すべて鉄筋コンクリートということになっております。事実は、この写真を見てわかりますようにコンクリートブロックづくり、したがってこれは手抜き工事の疑いがあるとまでいわれております。先ほどもお話が出ておりましたように、最近福祉施設に来て働く人が非常に手不足になってきた。募集してもなかなか集まらない。それは非常に施設が古いということ等があって、現在福祉施設を近代化していくということはこうした要員の募集、いわゆる人手不足の解消の大きなかぎになっているわけでございまして、そういう意味からいっても、この建築の内容というものは重視していかねばならぬと思うのでございます。  さて、先ほど申しましたように、大臣は、私は何にも知りませんでしたよとおっしゃっていますけれども、実は四十八年の三月二十八日にこの社会福祉法人が定款変更をしているわけですよ。去年ですよ。この事業団がそのまま今度は定款変更の申請を出しているんです。そのときにあなたは知らずに認可したんですか、それじゃ。
  209. 翁久次郎

    ○翁政府委員 四十三年以来、これは主たる事務所が東京都にございますので厚生省といたしましては……
  210. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いや、ぼくは定款のことはまたあとで話すからそれはいいよ、先ほどの建築の内容の問題だとか……
  211. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 建築の問題でしょう。承りますと、四十八年三月に定款変更しだ、おまえは知っておるじゃないかと、こういう趣旨のお尋ねでございますが、役所には御承知のように文書取扱規程というのがございまして、新しい方針をつくるときはどこまで判こをもらうとかいろいろ規制があるんです。これは全部大臣のところへ来ません。(大橋(敏)委員「これは問題だ」と呼ぶ)いや、問題じゃないですよ。役所の取り扱い方なんだ。大臣の権限を次官まで委任するとか、局長まで委任するとかそういう仕組みでいくんです、役所というところは、文書取扱規程というのがありまして。私、ほんとうに存じておりません。
  212. 翁久次郎

    ○翁政府委員 ただいまの法人の定款変更については、事務次官の決裁事項になっております。
  213. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 社会福祉法人の六法、これにはちゃんと厚生大臣の許認可事項になっていますよ。いいですか。だから、自分のところには全く来なかったから知りませんでしたということになれば、この厚生行政を全責任を持って引っぱっていかれる厚生大臣が知らないところで、いろいろなことがかってになされているといっても過言ではないですよ。
  214. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 認可権は大臣にあるわけでございます。ただその大臣の認可権を行使する際に、役所部内で事務次官に委任しておるわけでございます。しかし、最終の責任は私が負う、これは当然です。知らなくとも私が責任を負う、これは当然です。
  215. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 責任を負う、これは重大なことですけれども、いずれにいたしましても、私がいままで述べたような問題について、いわゆる食堂、炊事場もない中途はんぱな、そして手抜き工事と思われるようなこの件について、予定されていた予算額は全額支払われているという、第一期工事については。監査の結果もそうだと、こういうわけですよ。この件についてどう思われますか。
  216. 後藤宏

    ○後藤説明員 ただいまの件につきましては、先ほど御説明しておりますように、四十二年度の事業につきましては、この事業の管理法規に基づきまして、二回にわたりまして小型自動車振興会の職員で現地調査あるいは書類調査、監査等をいたしておりまして、その結果として事業を確定いたしておる次第でございます。  また四十三年度の事業につきましては、実は先ほど申し上げましたように、監査を実施した際にまだ未整備事項が書類にもございましたし、また工事にも一部未完成といった問題がございまして、これについては完了しておらないのが現状でございます。
  217. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私は、第一期工事の問題について一応取り上げたわけでございますが、これについても非常にずさんな監査がなされたといわれるわけです。今後こういう事業についてはやはり厳正公平にやってもらいたい、強く要望しておきます。  また、いまから言うこともおそらく厚生大臣、知らぬだろうと思います。また、特にその当時の厚生大臣はあなたでなかったのでなおさらのことだろうと思いますけれども、四十三年の四月一日付で、理事をやっていた内城本美という人、この人から厚生大臣あてに、時の理事長をやっていた山田新一氏の不信任についてという建白書といいますか、意見書が提出されている場合でございますが、これは御承知ないですか。
  218. 翁久次郎

    ○翁政府委員 大臣は御承知ございません。私、実は本件について調査した段階承知をいたしまして、この建白書が出てまいりましたので、不幸なことに、せっかく意欲に燃えたこの法人の中に意見の対立があるということははなはだ好ましくないということで、東京都に対して十分検査指導するようにこちらから通知をいたしました。自後、再三にわたって東京都が検査をして勧告もしている、このように聞いております。
  219. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 これは内城さんという方が、この福祉事業をやろうじゃないかと理事長をやっておる山田さんから話がかかりまして、そのために資産が必要だから土地を寄付しないかということで三千坪寄付をいたしたというわけですよ。この内城さんがその理事長に対する疑問を抱いて、いま言うその建白書を出しているのですがね。時間がないので一々その中身を読み上げていくのはあれですけれども、中身はたいへんなことです。いま言いましたように三千坪を寄付をした人ですよ。それが理事長との問題で、その内容をしるして厚生大臣あてに出しているわけですね。それについて、ただ東京都に調査をしろといっただけだというようなことで、私はこれはやはり無責任だと思うのですよ。一応手は打たれたようですけれども、実際は解決していない。無責任きわまりない、私こう思うのです。やはりそういう重要な問題はもっと真剣に取り組んでもらいたいと思うのですね。大臣、そうじゃないですか、こういうことは。
  220. 翁久次郎

    ○翁政府委員 問題がこじれてしまったことはまことに不幸なことでございますけれども、ただいまの段階では、先ほども指摘ございましたように、創立者の善意をあくまでも生かすという方向で関係者側と協議をしながら進めておるという段階でございます。  また四十七年の一月には、東京都の報告に基づきまして関係者——東京都、それから日動振関係者、厚生省に相寄りまして、再建策についても協議をしたように聞いております。
  221. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 東京都に依頼した。東京都は言われたとおりやっていますよ。これは四十三年、四十五年に検査実施、指導。理事会の開催なし、資産経理関係整備等指摘をした。内容はいま言った内城さんの建白書とおおむね符合している、私はこう思うのです。しかも東京都は手に負えないということで、四十七年一月二十四日には厚生大臣あてに直接指導を要請しているじゃありませんか。そうでしょう。そのときは大臣に伝えましたか。
  222. 翁久次郎

    ○翁政府委員 当時それを大臣までお伝えしたかどうかは、私承知いたしておりませんけれども、児童家庭局としては事柄の重大性にかんがみて、先ほど申し上げましたように、関係者を集めまして再建策を協議した、このように聞いております。
  223. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 とにかく、こういうことをお役所仕事というんでしょう。よく言われているのですがね。もっとこういう問題については人間的に取り組んでもらいたいと思います。それこそすばらしい事業がなされるであろうと期待されていたものが、逆にとんでもない問題になっているわけです。  私はさらに行政当局のお役所的態度を指摘したいと思うのでございますが、この法人の内部において、いま言われたように複雑な人間関係あるいは感情問題等があった。いわゆるごたごたがあった。こういうことですよね。その最中に、その問題が解決もしないうちに第二期、いわゆる四十三年度の補助事業の補助金交付が決定されているわけですね。四十三年の七月九日ということになっておりますが、しかも法人はその補助事業が決定後直ちに、四十三年八月に着工いたしております。しかもその後間もなく建設計画を全面的に変更いたしております。工事の次年度完了承認を受けるために、四十四年三月二十八日にようやくてんまつ書を添えて出されているわけでございますが、こういうことを見ただけでも、実際のトラブルがあるにもかかわらず、一方では形式的にどんどん進められていっている。こういうことを見たときに、一体何を指導しているのだろうか。先ほどから社会福祉の問題が次々と取り上げられて、厚生大臣はきわめて意欲的な、熱意ある答弁をしていたように私はうしろで伺っておりました。現実にはこういうところがあるのですよ。こまかいことといえばそれまでですけれども、こういう一つ一つの問題の中に、それこそ厚生行政の重大な問題がひそんでいると思うのです。  そこで設備設計の計画については、長野県の県知事もその不備についてすでに指摘しておりました。いま言うように、ごたごたがあっているうちにもう第二期工事が始まった。しかも、始まってすぐ設計の全面変更をやった。何のためにうろたえ回って設計変更しなければならなかったのか。四十一年に長野県の知事が意見書を添えたときに、あなたの二期工事の案の中身は問題ですよ、それでは不可能ですよと指摘しているのですから、その二期工事が経理上独立した申請補助事業であったにしてみても、関連性があるわけですから、当然その段階で設計変更がなされていてしかるべきだと思うのですね。でも現実はない。こういうのを一つ一つ見ていきますと、もう全くずさんそのものでございます。  しかもその報告書を見てまいりますと、これは第二期工事の完了報告書でございますが、非常に美文的で、実態に比較しますと欺瞞的だといってもいいのですよ。全部読むと時間がありませんので、簡単に抜粋して読んでいきますけれども「鉄筋コンクリート造りで火災等の不安がなく二階建てのため雄大な美ヶ原の絶景を眺める事の出来る最高の建物である事は今後の収容者をして喜こばすことの出来る点と思います。」それから「今後予想される効果」という中に——実はみずから全面変更した設計でしょう。もともとは第一期工事分を含めますと、大体大きくいうと八棟になるわけですけれども、それを全面変更して、もとの施設を入れて三棟になる、その完成報告ですよ。にもかかわらず「鉄筋建の収容棟八棟の完備が終りいよいよ当事業団が当初の目的である」云々と、こうあるわけですね。ありもしない棟のことが入っているわけですよ。これは八棟建てるときにもうすでにつくられていたのかもしれませんけれども、しかし最後のページをめくっていきまして「実施内容」に至りますと、今度は三棟、この中身については二階建一棟ということになっておりますから、わきまえた上での報告になっております。いずれにしても、これは読めば読むほど現実と照らしていいかげんきわまりないのですね。こういう報告をする責任者、すなわち理事長の責任というのは、これはどうなるのでしょうか。
  224. 後藤宏

    ○後藤説明員 お答えいたします。  ただいま先生の御指摘の点につきましては、昭和四十三年分の補助事業が完了した旨の小型自動車振興会あての事業完了報告書でございます。内容につきましては、御指摘のとおりかなりずさんな内容を含んでおります。私どもはこの報告書に基づきまして現地監査その他をいたしまして、先ほど御指摘申し上げましたとおり、すでに書類の未整備あるいは事業の一部未完成といったような形で実は改善を要求しているというのが現状でございます。
  225. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 通産省のほうは、建物についても経理上の面についても問題ありと指摘している。実際は困っているわけですね。  そこで、同じ建物についての問題で、厚生省の関係者に、これは第一期工事、第二期工事はどうだったのかと聞きましたら、第一期工事、第二期工事含めてその予定額の領収書がございますと、領収書が出てきました。監査報告では一千二百万何がしかのものが不明瞭である、はっきりしない、こういうことだったのです。厚生省のほうに要求しましたときには、出てきました、これはうそではないと思います。ただ問題なのは、これからいっても、未完成の建物にもうすでに全額払われているということになるのです。未完成の建物にかかわらず、代金はもう全額支払われてしまっているということです。その未完成ぶりもはなはだしいのですよ。写真をとってきてありますが、ここに便所があります。これは二階にある便所ですけれども、下の廊下が見えるのです。あるいはこの炊事場、第二期工事のほうには炊事場がありますけれども、それも中途半ぱです。これは御飯もたけません、おかずもつくられません。とにかくこうして野ざらしになっているものですから、建物から草がはえていて、全くずさんな工事であり、問題です。一体これはどう理解したらいいのですかね。
  226. 翁久次郎

    ○翁政府委員 これは当時を想像して申し上げるわけでございますけれども、おそらく、理事者間あるいは理事長との意思の疎通を欠き、あるいはお互いの意見の対立というものが、長年の間にわたってそういう荒廃を招き、また事務処理上もまことに不備な点ばかりをさらけ出したことになったものと思います。厚生省としてはこういったことがすでに四十三年以降わかってまいりましたので、先ほど来るる申し上げたように、東京都あるいは長野県を通じまして現地との接触をしながら再建策を確認し、同時に今後につきましても、できるだけ当初の善意を生かす形で再建に努力するように指導してまいりたい、こういうように考えておるわけでございます。
  227. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私は冒頭に申し上げましたように、この事業をつぶしたり云々するという意思は毛頭ございませんもので、こういう不可解きわまりない内容を知りながら、検察庁にも通告しませんでした。ほんとうに検察の手が出ていきますと、これは思いがけない方向に発展していくのではないかと思うのです。しかしながら、社会福祉事業の問題はこれからいよいよ重大な問題でもありますし、こうした精薄者の援護救済は大きな問題でございまして、私は一日も早くこれが健全なる運営がなされることを望んで、これ以上のことは申し上げませんけれども、いま申し上げましたように問題だらけなんです。  それから社会福祉法人の定款変更の問題ですけれども、四十八年の三月二十八日申請になっております。私は、任期が来たから変更されたのかもしれませんけれども、こうしたトラブルの事実を知りながら、あるいは監査の指摘事項がまだ解決されないまま定款が形式的に変更されて、しかも肝心の人がすべてボイコットされたような形になっていることは、問題をいよいよこじれさせていくのではないか、このように思って心配しているわけでございます。  時間が参いりましたので、最終的に大臣お尋ねしたいわけでございますが、私は去年も太陽の里の事件を取り上げました。困ったものだと思って取り上げたわけでございますが、このときも厚生大臣は、やはり公正適切な指導をしていって正しく運営いたすようにいたしますと、こう答えられました。私はそれを期待しておりました。きょうは時間がございませんので、その後の内容報告までは求めませんけれども、おそらく是正され、改善されてりっぱに運営されていることと信じます。が、きょう私が取り上げましたこの草の葉育英事業団、定款変更になりまして名称は変わっておりますけれども、これもいま言いますように一日も早く解決していただきたいと思いますけれども、問題点をうやむやにしては解決のしようがありません。全部問題を明白にさらけ出して、一つ一つ適正に指導していただきたい。大臣自身が指導していただきたい。そして、先ほど申し上げましたように不愉快なもの不明朗なものについては排除して、関係者が納得いく状態で一日も早く解決していただきたいと思うのでございます。この点について大臣の見解を伺いたい。
  228. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 いまの草の葉事業団の問題につきましては、実は私も初めて承知をいたしたわけでございます。しかもこの草の葉事業団が補助金をもらっているという経理なんでございますが、経理については、実は私のほうも県を経由してまいるときに推薦をするという形をとっておるだけでございまして、いよいよ最終の補助金を出すときにはその法人と自動車振興会のほうといろいろ話をして、必要があれば計画を変更したらいいじゃないかとか、何かいろいろな話の上で固まって、そこで補助が出る、こういう性質のものでございますので、ある意味からいえば厚生省もよく承知してない面が多かったと思うのです。しかし法人の監督は厚生大臣にあるわけでございます。承りますと、この法人はどうしてもなにか内部においてごたごたがあったり、長いことごたごたしている事件のように私も思います。こういうことでは、せっかく精薄という気の毒な方々をめんどう見る社会福祉施設としてほんとうにおもしろくありませんね。やはり設立した人たちは善意で設立したと思いますので、もう少しその善意が生かされるような運営でなければならぬ。私はそうだと思うのです。しかも補助金を自動車振興会のほうからもらっているわけでございますから、やはりそこに不明朗な点があってはならない。その補助金をもらって、そして当初の予定どおりの建物ができ上がる、そういうことでなければなりません。そしてまた理事同士が、みんなが心をひとつにしてこの法人をもり立てていく、こういうふうでなければならぬと考えます。  そこで、実はきょう初めて承った話でございますが、ひとつ徹底的に問題点の所在を明らかにして、そしてお互い何とか話し合いによって円満にやっていけるのかいけないのか、その辺のことを十分指導して、世間から不正があるのではないか、不明朗な点があるのではないかというふうな指摘を受けないような法人に建て直すために、私も全力を尽くして指導に当たってみたい、かように考えておる次第でございます。
  229. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは、最後に、厚生行政に対する、国民大臣に対する期待は大きいと思うのです。たいへんな幅広いお仕事でたいへんでしょうけれども、こうした特殊事情の問題については、局長から逐一報告するように指示をしてもらいたい。と同時に、この問題はもう想像以上に問題がこじれておりますので、大臣みずからこの問題に入って解決をしていただきたいことを強く要望いたしまして、時間も過ぎましたので、きょうはこの辺で終わりたいと思います。
  230. 葉梨信行

    ○葉梨委員長代理 小宮武喜君。
  231. 小宮武喜

    小宮委員 私は精神障害者対策について質問します。  ちょうど先月二十三日に、長崎県の佐世保市で、長期間精神病院に入院していたおねえさんを弟が病院から連れ出して、車の中でそのねえさんを締め殺したという事件が発生しているわけですが、この問題から考えあわせて、精神障害者対策というものについてもっと積極的に取り組んでもらわなければ、こういった悲惨な、またいろいろな犯罪の問題等もありますので、やはり厚生省の姿勢を前向きのほうにひとつ直してもらいたいと思うのです。  この弟さんというのは佐世保から兵庫県の明石に働きに行っておる人で、非常に近所では評判の親孝行なむすこなんです。毎月両親のめんどうを見るための費用を送金するし、このねえさんの入院代も全部仕送りしておるわけです。ところがそのようなことを続けておる間に、やはりこの人も毎月の出費が重なってくる、将来への不安、そういうようなものが重なって、ついにおねえさんを締め殺したというような自供をしているわけです。こういった精神障害者をめぐるいろいろな犯罪あるいは悲劇、こういうふうなものがひんぴんとして起きておるわけですが、それに比べて政府のまた国の精神障害者に対する施策が非常に立ちおくれておるということは、もう事実だと思うのです。そういった意味でいまからいろいろ伺いたいわけですが、いまのわが国における精神衛生の現状についてまずお伺いしたいと思います。
  232. 三浦英夫

    ○三浦説明員 精神衛生の現状と申しますと、現在の精神衛生のベットとか、そういうことの現状でよろしゅうございますか。
  233. 小宮武喜

    小宮委員 障害者の実態。
  234. 三浦英夫

    ○三浦説明員 現在精神衛生の病床は全国で二十七万ございます。そのうち国公立の病院が三万八千、残りは私立の病院で運営されている実態でございます。それからこれらの病院に入っておられる方に対しまして、特に自傷他害と申しまして、自分でからだを傷つけられたり、あるいは他を害するおそれのある方につきましては、都道府県知事が措置命令というものをとりまして、それによってそういう一部、の方々につきましては公費で入院をさせる措置をとっております。その患者さん方が二十七万のベットのうちに約七万七千人くらいおられるようになっております。それからそのほかに公費の制度といたしまして別に通院医療という制度がございまして、病院に入院はされなくても通院である程度病状がよくなる方につきまして通院医療制度がございます。それに対しましてやはり二分の一の公費負担を行ないまして、残りは保険でカバーするというような仕組みでございますが、その患者さんが約八万八千人くらいはおるような現状でございます。  それから、私どもの現在特に指向しておりますのは、従来はとにかく病院に入っていただいて治療をしていただくということでございましたが、それよりもさらにもっと社会復帰のための対策というのが非常に必要だということが関係の医学会その他から起こってまいりまして、最近私どもの精神衛生の施策の重点といたしましては、いわゆるデーケア施設とか社会復帰施設、あるいは各都道府県におきます精神衛生相談所というような機能を強化いたしまして、現在入院されている患者さんか作業療法等を続けながら社会復帰——いきなり社会に出ましてももう一ぺん再発のおそれがございますので、そういう社会復帰対策の強化をはかっていきたいということを指向しております。  そのちなみといたしまして、昭和四十九年度初めての試みといたしまして、いわゆる昼間の社会復帰施設のデーケア施設を一カ所と、それから夜昼収容といいますか、宿泊していただいて社会復帰をはかるための社会復帰施設を二カ所新規の事業として設置することを企図しておるような次第でございます。  そのほか、あるいは言い足らぬ点もあるのかもわかりませんが、ごく簡単に精神衛生の概況を申し上げた次第でございます。
  235. 小宮武喜

    小宮委員 精神衛生実態調査の問題ですが、これはちょうど昭和二十九年と三十八年と昨年の十月一日から十月三十一日まで全国的に実施しました。ところがこの中で、やはりこの種の調査に対していろいろ人権侵害だとかいうようなことの理由で調査不能、あるいは中止になったところがかなり多いと聞いておるのですが、そういうような意味ではことしは全国的な調査が行なわれなかったというようにわれわれは理解しておるのですが、いま言われた二十七万とかという数字はどういうような調査に基づいた数字なのか、その点いかがですか。
  236. 三浦英夫

    ○三浦説明員 実は昨年の十月に、全国の地区を抽出いたしまして六百地区を選び出して、精神衛生の実態調査お願いしております。その結果、私どものところへ結果として、御調査に協力いただけた地区が三百二十七地区でございまして、約六割弱の調査結果になったわけでございます。  なお、その前の先生の御質問の、実は二十七万床と申しますのは精神衛生の実態調査の結果ではございませんで、常に厚生省のほうでいわゆる病院報告という統計を持っておりまして、その報告に基づきまして二十七万床というのを把握している次第でございます。そういう関係で、実は先生からお話のありました精神衛生の現状というときに、まず申し上げなければなりませんのが精神衛生の障害者の数がどれくらいかということの御質問だったと思いますが、私ども行政の指導の不徹底もございまして、六百地区のうちの六割弱しか調査が回収できませんでしたので、全国的な数字で精神障害者の数を公表できるまでの統計的な自信がございませんでしたので、数字を申し上げていなかったような次第でございます。
  237. 小宮武喜

    小宮委員 調査の結果が六〇%くらいの調査に終わったということですが、実際こういうようないろんな問題が発生しますと、やはりなぜこういうような人たちを野放しにするのかというような問題が起きる。また、問題が起きると、人権侵害だという問題が起きる。こういうような中で、非常にむずかしい問題とは思いますけれども、やはり厚生省としてこういった実態というものを的確に把握しておってもらわなければ、これに対しての打ち手も、実態がわからぬでは手が打ちようがないわけですから、そういうような意味では、今度の実態調査が中止になった、また不能におちいったという中で、残り四〇%のところでは調査が行なわれていないわけですが、これは調査を中止をするのか、さらに継続してあらためて行なうのか、その点はいかがですか。
  238. 三浦英夫

    ○三浦説明員 実はこういう調査はかなり綿密な事前の計画を行ないまして、かつ一斉の時期に行なわれなければなりませんので、一応四十八年度の調査は四十八年度の調査で、まことに私ども行政の指導が不徹底で申しわけございませんでしたけれども、一応四十八年度の調査はそれをもって終了させていただくということにさしてもらっております。
  239. 小宮武喜

    小宮委員 この反対理由の中には、人権侵害の問題もありますけれども、ちょうど昭和三十八年に調査をしたとき、それを資料にして翌年精神衛生法の改正を行ないまして、それで強制隔離入院をさしたわけですね。だから、またそういった調査が何らかの目的に使われるのではないかというような不安もあったと私は思うのです。その意味では、こういうような精神障害者に対して国がただ調査をするだけじゃなくて、もっと福祉面でこういうふうに考えてやるんだ、またこうしたいんだ、だから、ひとつ皆さん協力願えぬだろうかというように、これはいろいろな協力の求め方もあると思うのです。事実、この人たちにいまこそ救いの手を差し延べなければならぬ時期に来ておると私は思うのです。そういうような意味で、この精神障害者に対する福祉政策というものがほかの心身障害者、精神薄弱者に比べて何ら行なわれておらぬというところに非常に問題が起きてきておるわけです。  そういうような意味で、いま精神障害者の中で入院を必要とする人がどれくらいいて、そしてそれを受け入れるベッド数は幾らくらいありますか。これは入院を必要とする全部を受け入れるだけの病床数はありますか。
  240. 三浦英夫

    ○三浦説明員 先ほど申し上げましたように、現在国公私立を合わせまして精神病院のベッド数は二十七万でございます。それに対しまして入っておる患者さんが二十七万をちょっとこえまして、利用率が一〇三・二%になっております。したがいまして、現在ベッドは満床——満床というか、申しわけございませんが、むしろ満床をこえた状態になっております。そういう関係で、むしろこれから社会復帰の施設を充実させていって、もしもそこへ行っていただける方があったら空床ができる、そういう方々を空床ができた後に入れていただかなければ、ベッドがいま満員の状態ということでございます。  それから、先ほど、どれくらい入院を要する方がいるかということでございますが、これにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、精神衛生の実態調査では数の誤差が非常にございますので御発表できるような数字になっておりませんので、非常に申しわけございませんが、把握できてないという現状でございます。
  241. 小宮武喜

    小宮委員 まだ入院を必要とする患者がおられると私は思うのです。ただ病院のベッド数が二十七万だから二十七万人入っておるだけの話で、それで満ぱいですといったって、ほんとうにそういうようなことで精神障害者対策ができるかというと、私はもっと前向きに取り組んでもらわなければいかぬ。特にいまの精神病床の八五%は私的病院なんです。国公立のものは一五%です。だからいまの精神障害者に対する対策というものは、当然国がやらなければならない問題をむしろ民間のこういうふうな篤志家に依存しておるというのがいまの実態だと思うのです。  そういうふうな意味で、どれくらいの入院患者がいるのかということについては、実態をつかんでおらぬというようなことでございますが、そういうふうにつかんでおらぬといって済まされる問題ではない。したがってわれわれは早急にそういうような実態を把握して、やはりそういった人たちを受け入れる病床の数だけは、今度はそういった民間の篤志家に依存するということではなくて、国なりあるいは地方自治体の責任において取り組むべきだというふうに私は考えます。それが本来の行政のあり方だと思うのですが、どうですか。そういうような意思がありますか。
  242. 三浦英夫

    ○三浦説明員 わが国の精神病院が、私的病院が八五%を占めておるということにつきましては、やはりわが国なりの歴史的その他の沿革があってこうなったんだと思います。したがいまして、今日まで私立病院の方々が——私ども実は私的病院を、措置入院をする場合には、指定医療機関という指定をする制度をとっております。こうして公的業務に非常に御協力をいただいておるわけでございますが、今日精神衛生が発達した過程につきましては、こういう私立の病院の方々の、先生おっしゃいましたような奇特な心があったからこそ今日まで来たということになるのです。したがいまして、将来におきましても、私立の病院をどうこうして公立病院をどうこうするというような考えではなしに、むしろ国公立の病院は私立の病院でできないような、たとえば特殊な精神障害者、老人であるとかあるいは子供であるとか、特に高度な医療を要する医療部門を国公立の病院で受け持っていただいて、その他一般の精神衛生患者の方々を私立の病院で受け持っていただく、こういうような分野調整も考えていったらいかがと思っている次第でございます。ちなみに私どものほうも現在、ことしは、四十九年度は六百床の精神病院の補助金を計上しておりますけれども、こういう趣旨に沿った形で精神病院のベッドの補助等も行なっていきたいというふうに思っておるような次第でございます。
  243. 小宮武喜

    小宮委員 いままで私的病院にたよってきたのは歴史的な沿革がどうだこうだと言ってみても、そんなことでは通用しません。ただここでこういうふうな質問をされるたびに、いかにも前向きに取り組むようなことを言われておるけれども、実際ほんとうにどうして取り組むかという姿勢を見せてもらわないと、ただその場その場の答弁に終わるということになります。したがってこの問題についてはまたあとでさらに質問しますけれども、次に移ります。  それでは、先ほどからも申し上げておりますように、精神障害者の入院費の負担という問題について、先ほど申し上げたような事件も起きたわけですが、そのために精神障害者の通院医療費それから入院医療費、これは一カ月大体どれくらいかかるのですか。ほかの病気とちょっと違うから……。それで、その中で患者の家族なり自己負担は大体どれくらいになるのですか。
  244. 三浦英夫

    ○三浦説明員 入院の医療費は大体月平均いたしまして九万三千円くらいでございます。それから通院をなさる方の一カ月の平均は六千六百円くらいになっております。入院をなさる患者のうち、都道府県知事が措置入院という形をとりました方々につきましては、費用負担ができる部分を除きまして公費で医療費を負担する、こういう仕組みになっております。現在費用を御負担いただいておる方は、全体のうちの、人員にして約一割でございます。それから金額にいたしまして、四十八年度の医療費で約五百億のうちの六億程度が自己負担をされる方ということになっておりますから、一・二、三%くらいが医療費負担をされていることになっているわけでございます。  それから通院医療につきましては、これは費用負担のできるものは徴収するという仕組みではございませんで、初めから適正医療の普及という考え方で行なわれておりまして、二分の一を公費で負担をいたします、こういう仕組みになっておりまして、残りの二分の一はたてまえとして、いわゆる所得階層別にかかわりなく自己負担ということになるわけでございますが、実質はその二分の一は各種社会保険でカバーされることになっておりまして、結果として社会保険の負担ということになりまして、窓口でお支払いされる方はほとんどないという現状になっておる次第でございます。
  245. 小宮武喜

    小宮委員 いまの説明を聞いて大体安心しましたけれども、しかしながら、措置入院者は別として、いろんな入院患者の中にはやはりかなりの負担をしておられる人もおるし、また、長期入院ということになりますと、なおさら、先ほど申し上げた家族の悲劇というような問題もありますから、そういうような意味では、こういった精神障害者の入院費あるいは通院費、こういうようなものは、大臣、いかがでしょうか、ひとつこの際思い切って無料化して公費負担にするということに踏み切られたらどうでしょうか。これは大臣、どうでしょうか。
  246. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 この問題はなかなかむずかしい問題でございまして、一挙に無料に持っていけるかどうか、私は非常に疑問だと思います。やはり社会保険の充実、そういった面で努力をして、負担をできるだけ軽減させるようにする、こういう方向でいったほうがいいのではないか、こういうふうにも考えます。しかし、今後ともそういう問題は十分検討してまいりたい、かように考えます。
  247. 小宮武喜

    小宮委員 さらに、患者が一たん入院して、回復して退院する、また今度は再入院、また退院ということで、病院と家庭を往復しておられる方がかなり多いのですね。だから、こういうような人たちが、回復してからでも、社会的に自立できるような設備、長期にわたって社会復帰の訓練と教育等の行なわれるこの福祉施設が必要ではないかということで、いろいろこういった障害者の家族の方々からも、いわゆる社会復帰センター、昼間施設をぜひともつくってもらいたいという切なる要望が強いわけですが、その問題についても、先ほど申し上げました医療費の無料化の問題もありますけれども、少なくともこの社会復帰センターの設立については、どういうふうにお考えですか。
  248. 三浦英夫

    ○三浦説明員 先生の御指摘のとおりでございまして、私どもも、病院の整備のほかに、こういう社会復帰施設の充実強化ということにこれから重点を置きたい、こういう心がまえで臨んでおります。したがいまして、先ほど申しましたとおり、わずかではございますけれども、四十九年度初めての試みといたしまして、昼間通われるデーケア施設一カ所、それから、そこへお泊まりいただいて、昼間は作業療法を中でしていただくなりあるいは外の会社、工場等へ行っていただくなりして、また夜はその施設に帰っていただいて医学的管理をしていただく、こういう社会復帰施設を二カ所と、最初の試みとして四十九年度に設置を期しておるような次第でございます。何とか私ども初めての試みのこれを成功させまして、将来さらにこれを広げていきたいと思っているような次第でございます。
  249. 小宮武喜

    小宮委員 それぐらいの熱意では、それはほんとうに精神障害者に対する対策をどうするかという、まだそこの気持ちまではなっていないようです。これは非常に大きな問題でございまして、やはり精神障害者に対する対策は一番おくれているわけです。  たとえば身体障害者の場合は昭和二十四年に身体障害者福祉法ができております。それから精神薄弱者の場合も、これはまた精神薄弱者福祉法ができておるのです。ただし、いまいう精神障害者の場合は、そういった法律もなければ、ただあるといえば精神衛生法で、これで強制隔離をするための法律しかないのですね。だから、そういうような意味では私はむしろいまの精神衛生法の法改正をやって、この人たちを——もっと福祉の問題も含めて大幅改正をやるか、さもなくば、精神障害者福祉法という法律をつくってもいいんではないかというような気持ちを持っておるのですが、その点いかがですか。
  250. 三浦英夫

    ○三浦説明員 先生の御趣旨、十分検討いたします。ただ、若干おことばを返すようになって恐縮でございますけれども、精神障害者の方は、ちょうど先生がおっしゃいましたように、やはり再発をされる方がよくあるわけでございます。ほかの疾病と違いまして、病院を退所なさっても完治されるということじゃなしに、もう一ぺん再発されるような方がございますので、やはり医学的な管理というのはそれなりに重点をもっていかなければならぬ、かように思っている次第でございます。そういたしますと、ややかたくなないいかたになりますけれども福祉福祉の別途の法体系で検討するとして、精神衛生法は精神衛生法として、やはり医学的な法律として、これをさらに内容充実強化していったほうがいいのじゃないかという、かような気持ちもある次第でございますが、いずれにいたしましても御趣旨の点、検討してまいりたいと思います。
  251. 小宮武喜

    小宮委員 重ねて要望しますけれども、やはり私の言わんとするところも、精神障害者福祉法という法律をつくったらどうなんだ、つくりなさいというのが私の率直な気持ちなんです。だから、いま言われたように、この問題についてはひとつ真剣に、前向きに取り組んでもらいたいと思いますが、大臣いかがですか。
  252. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 精神障害者の対策は非常におくれていること、御指摘のとおりでございます。それにはいろいろな理由があると思うのです。しかし、現実は立ちおくれておることは率直に認めざるを得ないと思います。そういう意味において、実は昨年も十月でしたか、十一月でございましたか——実態の調査をしませんと、どうにもならぬのですよ。ところが非常にこれには、こちらの行政的な啓蒙も足りなかったかもしれませんが、非常に反対が強いのですね。そういうふうなことで、私どもも手を打とうと思いましても、なかなか思うように手が打てない、そういう事情もあります。  それからまた、各家庭においてもそれを隠したがるという空気もないでもない、非常にあるのです。そんなふうなことから、実態把握が困難であるということもあって立ちおくれておりますが、いまのような状態に投げておいていいのかということに、なると、問題だと思うのです。  先ほど来御質問にありましたように、国公立の病院はほとんどなくて、私立の病院にまかせきりといったふうなやり方、極端な言い方ですが。そういうふうなこともあって、医療費も相当高い。それから社会復帰施設も、なかなか思うようにできないわけです。これには実はいろいろ理由があるのです。そういうふうなこともあって、やはり精神障害対策というのは非常におくれていると、私は率直に認めます。そういうふうな意味で、どういうふうなやり方によってこれを前向きに推進することができるか、そういうことを十分考えなければなりません。  そういうふうな考え方の一つとして、いま先生がお述べになりましたような、単独立法をつくって、精神障害福祉法といったふうなものをつくったらどうか、かえってそれが近道じゃないか、こういうふうな意見も出てくると思うのですが、ただ、またそういうふうになってくると、精神障害というので、何かレッテルを張ったような、差別をすると、こうすぐくるんですよね。これはすでに御承知のとおりなんです。これ非常にむずかしい問題でございます。あまり表に出ると、ばっと反対が出るんですね。人権侵害だ、やれ差別をするのか、何か精神障害者について背番号をつけるのかといったふうな、こういうことばかりなんです。すぐくるんですから。それ、なかなかどういうふうな取り扱いでやったらいいのか、慎重な上にも慎重に配慮しながらやらなければならぬと思います。したがって、私としては立ちおくれておるという現実は率直に認め、そしてこれをどうやって前向きに解決することができるか、そういう中の一つの方法として、先生がお述べになりましたような考え方もおありだと思いますので、そういう問題をみんなひっくるめまして、ひとつ慎重に検討さしていただきたい、かように考えている次第でございます。
  253. 小宮武喜

    小宮委員 いま大臣が言われたような問題も、一部にはなきにしもあらず。しかしながら、いまはやはりこういった精神障害者を持っておられる父兄の方々の中には、非常に目ざめてきておりまして、ぜひこういうふうな法律をつくって何らか救済策をひとつ講じてもらいたいという声が非常に高いのです。それはいま大臣が言われたような人が全然いないかといえばそうでもありませんけれども、しかし大多数の人たちは、現在でもそういった隠したがるというような問題も掘り起こして、実際そういうような人たちがどれくらいおるのか、各地域的にそういうような人たちが集まって、政府に対してもこういった運動を起こそうではないかということは、各地域別、それが全国的なつながりとなって大きな運動に発展しようとしておるやさきでもありますから、大臣が懸念されることもこれはごもっともだと思いますが、もうそういった時期は過ぎたということで、この際思い切って福祉の立場から、厚生省として積極的に取り組んでもらいたいということを重ねて要望しておきます。  それからもう一つは、私も十二日の日に京都のびわこ学園に視察に行ったわけですけれども、これはどこの施設に行っても述べられることは、施設で働いておられる職員の方々の給与の問題あるいはいろんな労働条件の問題、これはどこでも言われるわけです。原因もそれはいろいろありましょう。しかしながらいま言われた国が——先ほどからいろんな質問がでておりましたけれども、ただどうするかというような問題よりは、ただ国が何とかしなさい、しなさいということをわれわれが言うより、むしろどうですか、こういった社会福祉施設に働く職員の賃金並びに労働条件に関する法律をつくったらどうですか。そこで地方公務員、国家公務員、こういった公務員の待遇を与えるぐらいにやらぬと、ただそれだけでは、賃金面だけでも解決できない問題があると思いますけれども、少なくとも身分的にもそういうような安定した公務員並みに法律をもって位置づけをして待遇面についても公務員並みにしていくというぐらいの、もう特別立法ぐらいつくらなければ、そういつた問題はなかなか解消しないんじゃないかというふうにわれわれは考えます。したがってそういうような意味で、たとえば法律に基づいて国なり地方自治体でそういったアンバランスを是正していくというようなことぐらいまで考えなければいかぬのじゃないかというふうに考えるのですが、そういいますと大臣は、なかなかむずかしい問題でとまた言われるかもしれませんが、少なくとも前向きでこれくらいは考えてもらいたいと思いますけれども大臣の所見はどうですか。
  254. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私はこの社会福祉施設のうちで一番心配しているのは、重複しておる重度心身障害児の施設なんです。これは私どもは御承知のように数年前から、これは全員もう施設に収容しましょうという方針のもとに、一貫して非常な無理に無理を重ねて実は努力をしておるわけなんです。そしてしかもこの施設は、国の療養所施設に併設しているのが大半なんです。これはほんとう言いますと大半なんです。私はほんとうに残念なことだと思うのですが、国公立病院にも御協力願いたいと、こういうのです、ほんとう言うと。ただ国公立病院はさっぱり、そういっては悪いですが、あまり御協力いただけないのです。県立病院に二十病棟でもいいからやってくれませんかと、こうお願いするのですが、なかなか承知してくれないわけです。無理につくらすわけにいきません。そこでほんとうに九〇%というものは国立療養所の諸君に御無理願っているのです、ほんとう言うと。これはお気の毒なんです。しかしそのことだけでは不十分でありますので、民間施設ということで、民間施設にもお願いもしておるのです。ところがその民間施設がなかなか複雑な様相を呈しておるのです。施設ごとに内部の事情がいろいろやはり違うようでございます。私も国会の始まる前に療養所の重障施設を見てまいりました。ほんとうにお気の毒なんです。けれども療養所のほうにおりますと、一般患者のほうを見たり重障児を見たり、交代で見られるものですから、わりあいそこに精神の転換ができる。民間の方々は重度の方々ばかり百人なり百二十人を扱っているわけです。そこで精神的な転換もできない。そこに非常にむずかしい問題があると思いますが、私はこの問題だけは何とか解決しなければならぬと思うのです。  そこで、先ほど来申し上げておるように、具体的な一つ一つの施設ことに態様が違っておりますので、ひとつ第一の監督官庁である県なりと十分相談して、施設長がどういうふうな考えで、どうすれば看護婦さんが定着していただけるか、そういうことを一つ一つ掘り下げて、私のところでは寄宿舎があれば何とかなりますよという方もありましょう。私のほうは夜勤のほうを何とかしてくださればけっこうですというところもありましょう。いや私のほうは待遇を改善してもらわなければどうにもなりませんよというところもありましょう。いろいろ施設施設によって態様が違います。こういう問題を私は、一つ一つ本省としても投げておかないで取り上げて、きめのこまかい対策を相談に乗ってめんどうを見てあげる、これがやはり一番大事なことではないか、こういうふうに考えておりますから、私は個別的な指導、助言、援助、そういう方面を中心として、児童家庭局長以下全員にそういうやり方でやってもらうように今後とも努力をいたしてまいる考えでございます。
  255. 小宮武喜

    小宮委員 長崎県にも小長井町というところに重度心身障害者の施設があるのですが、今度、いま百三、四十人ですか、これを足らぬものだからまた病床をふやしたわけです。ところがやはりいま言われるように看護婦が集まらぬ。これは確かに地理的な問題もあります。ありますけれども、やはりせっかくつくった施設というのが看護婦さんがおらぬために遊ばしておるという非常にもったいない話なんですが、そういうような意味で、いま大臣が言われるように個別ごとにいろいろ援助、指導をやるというなら、やはり皆さん方、大臣あたりもここでわれわれが訴えて知るというような状態じゃないかと思いますので、せっかくそういうことばをいま言われたので、ひとつ大臣、全国の施設をそれでは全部調べて、それでどこの施設がどういうような要望があるか、ここはこうしてもらいたいという意見があるか、ひとつそういうような個別指導をされるというならば一応全部調査をされて、それでこの施設に対してはこういうような手を打つ、この施設に対してはこういうような手を打つということを、それではひとつ、ただ単なる答弁で終わるのではなくて、そういうふうに具体的に実行してもらいたい。やってもらえますか。
  256. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 重障をお預りしておる民間施設は、数は少ないのです。数は少ないのですから、本気になってやろうと思えばやれます。私ども見てまいりますと、ある施設に行きましたら、父兄がかわるがわる一週間に一日くらいは手伝いに行くとか、いろいろな協力がやはり必要なんですね。だからやはり施設ごとに知恵を出せば、私はいろいろあると思うのですよ。だからそういう意味において、私も言うた以上はこれは必ずやります。民間の施設、そうたくさん百も二百もないのです。わずかなんですから、全国で三十やそこらへんですから、個別的にやるようにいたします。  ただこれは、もう御承知だと思いますが、国が公務員並みに予算を配ってやるというだけでは解決しないのです。やはりいろいろな要素がこん然一体となって、その子供をめんどう見るという体制をつくることが大事だと思っているのです。これはほんとうに。施設の施設長ばかりではできません。看護婦ばかりではできません。国の金だけではできません。やはりそういう子供を持っている親も、そういう施設によってしあわせな生活を送れるようになっているのですから、親もどの程度援助をしていくかとか、私も施設なんかに行ってみましたら、一週間に一回必ず行ってくれるというのですよ。おしめを洗ってくれるというのですよ。もちろん生活が苦しくてそういうことができない家庭も私はあると思いますから、そういうことを強制するつもりはありません。けれども、全般的にそういう施設を守ってあげましょうという気持ちになるそういう体制づくり、これはひとつぜひ必要だと思いますので、先生方もどうか御協力をいただきたいと思います。  それと同時に、国公立病院ばかりじゃなしに、県立病院も町村立病院も、五人ぐらいは引き受けましょう、三人ぐらいは引き受けましょう、こういう空気になっていただくことも私は大事だと思うのです。百人、二百人というからたいへんなんです。三人ずつ五人ずつやってもらえませんか、こういうふうな体制づくりも私は必要ではないかと思うのです。政府もしたがって全力を尽くします。しかし政府だけではやっぱりうまくいかない面もあるということも御理解いただいて、御協力のほどをお願い申し上げたいと思います。
  257. 小宮武喜

    小宮委員 大臣が言われるようなことはわかります。それでやはりそういった入院患者の父兄あたりが、そういうような会をつくって、そういうような連絡をとりながらやっていることは事実なんです。だからそちらのほうも大事ですけれども、まあひとつ大臣も、せっかくここで各病院の各施設の実情を調べて、個別的指導をするという非常に心強い答弁を聞いた。百や二百もないのだから、三十ぐらいだからやろうと思えばできますということを大臣が言われた。これは必ず実行してください、あとでまた質問しますから。バッター交代します。
  258. 葉梨信行

    ○葉梨委員長代理 関連質問の申し出がありますので、これを許します。和田耕作君。
  259. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 大臣、昨年の国会で年金の問題でたいへん御苦労なすって、不十分ながらも一つの目安、基礎になる案ができたと思うのです。私はあのときから思ったのですが、これは物価がえらいこと上がると物価スライドの問題はどういうふうに運用されるのだろうというふうに思っておったのですけれども、案の定というのは悪いのですが、上がるも上がるもこれはたいへんな上がり方で、卸売り物価は三四%というのですから驚くべきものですが、この調子だと今度の物価は二〇%をはるかにこしていくような状態にもなるかもわかりませんが、これはどのように処理なさいますか、このスライドの問題。
  260. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 こういう年金制度に自動式スライド制を採用いたしておりますのは、昨年御協力によって成立した厚生年金国民年金だけでございまして、今年度は初めての適用の年になる、こういうわけでございます。  そこで、大体どういうふうになるかと申しますと、本年度の消費者物価指数が年度間どのくらい上がるかということが、四十七年度の比較においてこれは出てまいります。そうしますと、本年度の消費者物価指数の平均伸び率が何%だということがはっきりわかりますのは、昨年四月からことしの三月までのことでございますから、大体はっきりデータが出ますのが、実際問題として五月ごろだと思うのです。いよいよこの五月に、何%上がっておるか、一応予算的には一四%と計算して予算を組んでおります。これは国の補助の関係がありますから。しかし、実際何%上がるか、一五%になるかあるいは一三%台にとまるか、それはわかりません。しかし、上がったその率だけは上げる、そういう考え方で、それで今度はどういうふうなスライドをやっていくかというやり方について審議会において十分意見を練っていただきます。これは、あの法律国会に出す前に年金審議会のほうのお約束がございまして、初めての場合はどういうふうなスライドでやっていくか、何%出たときに金額何ぼの年金の受給者についてこの金額をどういうふうに動かしていくか、あるいはある程度の賃金上昇も加味するとか加味しないとか、いろいろ問題があるわけです。どういうようなスライドをやっていくかということについて審議会の意見を聞くということになっております。ですから、五月にデータが出ますと、少なくともやはり二カ月ぐらいはかかると思うのです、最終のスライドの方式がきまるには。今度はスライド方式がきまりますと、大体受給者の数は厚生年金を考えますと約二百万おります。それから国民年金は、御承知のように福祉年金は定額ですからこれは関係ありません、年度年度で上げていくのですから。いわゆる十年年金、拠出制年金ですね、これは十年で一人一万二千五百円ですから、定額でそれは出ていますから、いよいよ動かすならば簡単でしょうが、電子計算機で三百万人の年金額スライドして直していくのには、やはり五カ月かかるのですよ。電子計算機で三百万人やるのですから。そのほかに、電子計算機を動かす前に、プログラムというものをつくらなければいかぬのだそうです。これはなかなかむずかしいのですね。私もあまりそういう電子計算機の学はございませんが、プログラムをつくるのに、普通でいきますと六カ月かかるというのです。そうすると、スライド方式がきまって、現実に一人一人のカードに、たとえばあなたは三万五千何百円という年金額を、それじゃ今度十何%上げてこうなりますと、金額を打たなければいかぬのですから、それをやるのにはどうしても九カ月から十カ月かかる、こういうことなんだそうです。これはほんとうにたいへんなことだと思うのです。そういうやり方をしていかなければなりませんので、一応御承知のように、厚生年金については本年の十一月一日現在で全部これを片づけるというのでなければ、それ以上は繰り上げができないのだ。実は私もそうしなければなるまいと思ったのです。けれども、事務的に三百万人の人について電子計算機を使って——かりにみんな金額か同じならいいのですよ、五万円なら五万円と、こうなっていればいい。ところが、御承知のように厚生年金は定額部分と報酬比例部分というのがあって、三万八千九百五十五円とかなんとかあるでしょう。それをみんなこう直していくのでしょう。たいへんな作業だと私は思います。プログラムをつくるのに——プログラムというか機械に教え込むわけです。問題をつくったり何かするのに、その専門の職員がかかって四カ月だ、こういうわけで、どうしてもスライド方式がきまって十カ月はかかる。私もやりたいと思うのです。大体そういう考え方で進んでいくきりないのではないかと思います。しかし、そういう事務的なもののほかに、これはぜひ皆さん方に私はお考えいただきたいと思うのです。  年金というものは長期的なものなんですね。三月ごとにやれなんていう性質のものじゃないと私は思うのです。三月ごとに上がったときにはいいけれども、下がったときどうするのか。たいへんです。これは。長期的な生活設計の見通しを立てるというのが年金なんですから、私は十一月というあの法律の定められたとおりやっていきたい、かように考えておる次第でございます。
  261. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 大体の様子はわかりましたが、ぜひとも厚生大臣に御検討お願いしたいことが一つございます。  それは、いま一四%とかいろいろいう数字は、やはり消費者物価指数というものが基本になるわけでしょう。しかしここで考えなければいかぬことは、消費者物価指数をつくる場合の品目の選び方、ウエートのとり方というものは、どういう年齢の人を世帯主と考えているかわからないけれども、いま年金の対象になるお年寄りは若い人と生活様式が全く違っているわけですね。したがって、一般の消費者物価指数というものがその基礎として適当かどうか。たとえば耐久消費財というもののウエートのとり方、あるいは医薬品とか医療費用、こういうもののウエートのとり方、あるいは食料品、非常に違ってくるのですね。そういう点で、せっかく画期的な老齢年金に対する物価スライドという制度ができたわけですから、この場合に年金用の老齢者の生活物価指数というものを御検討になっていただかなければいかぬのじゃないか。せっかくお年寄りの生活を何とか物価高から守ろうという趣旨の場合に、そういう方式を検討なさることが政策目的からいってもやるべきことじゃないか。  実はいま物価委員会質問を終えてきたところですけれども物価委員会でもその問題を提起いたしました。そして総理府の統計局長も呼んでその話をしたのですが、それはぜひとも検討しましょうということだったんですけれども、この問題は、いまの法律では、五%以上上がった場合にはという、あれがありますね。しかし、今後の物価スライドというのはまだまだ尾を引く問題です。いまは年金ですけれども、大蔵委員会で問題になったというあの預金利子の問題、これはなかなかむずかしいと思いますよ。大蔵大臣もそういう答えをしたんだろうけれども、しかし政策目的から考えますと、やはりできるだけこまかい配慮をそういう点についてなすのが当然じゃないのか。そういう意味で、老齢年金を受ける人はもう相当の年齢以上の人ですから、その人たちの中から選んで生活調査でもするように、私は統計局に頼んでおいた。検討してみますということでしたけれども、そういうようなことで、ひとつできるだけ政府の配慮を示していただきたい、こういうふうに思うのですが、いかがでしょう。
  262. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 消費者物価指数をきめるときのいろいろな調査品目がたくさんあるわけでございます。そのたくさんの品目の選び方は、統計局において、たしか五年に一回くらいずつ生活実態にふさわしいように変更しなければならぬ、こういうことになっているわけなんですね。ですから、いまの消費者物価指数以外に年金にふさわしいようなものを選べと言われても、これはなかなかむずかしいと思うのです。これは地方地方によって違います、生活実態というものを考えてみると。やはり全国一律にある程度のものをやらにゃならぬ。ですから、いま統計局のやっておる消費者物価指数の出し方、その基礎になる品目が生活実態に適しておるものならば、私はそれでいいと思うのです。問題は、いまの統計局がやっておる品目調査生活の実態に合っているかどうか、これが基本だと私は思うのです。そういうようなことで、向こうのほうにある程度の改定をお願いするのが筋ではないか。厚生省だけで独自なものをつくり出す、これはやはりむずかしいと思います、実際問題として。うちのほうもそういう統計資料をつくるだけ陣容もありませんし、用意もございませんから、これは私はできないと思うのです。しかし将来、恩給、公務員の共済年金、それからうちのほうの厚生年金国民年金、こういうもの全部を通ずる自動スライド制が完備した暁においてはいろいろな問題が出てくると思うのです。ところが、そっちは自動スライド制になっていないのですね。そういうこともあって、一がいに、厚生年金だけ特有の消費者物価指数というものは選びにくいと思います。ただ問題は、統計局のやっておるあのやり方の基礎になるデーターの選び方については、生活の実態にふさわしいように直していく必要がある、私はさように考えております。
  263. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 予定がおありになるようですからもうこれでおしまいにしますけれども、私申し上げているのは、厚生省の一般の物価指数というものではお年寄りの生活実態とはかなり離れてくる。特に医薬品の問題とか、食料品の問題とか、耐久消費財とかあるいはレジャー関係とか、そういう問題では非常に大きなあれが出てくる。したがって、一度統計局のほうにそういう試算をさせて、その結果、いまおっしゃるとおり、恩給の問題もあり、いろいろ問題があるけれども、やはり法律ができないものでも、内容的にはそれに準ずるような措置政府が講ずるということになるわけで、これをやると、厚生大臣は非常に国民のことをことこまかく配慮しているということで、評価が非常に高まると私は思うのですけれども、ひとつ大臣、この問題はぜひとも前向きに検討していただきたいと思うのです。統計局でそういうものをつくらして、そして検討してみる。いかがでしょうかね。そういうもっと前向きのあれが必要じゃないでしょうかね。
  264. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 お年寄りとおっしゃいますけれども厚生年金は六十歳から出るんですよ。それから遺族年金等はもっと若い人からもらえる制度になっているのです。まあこれは七十歳とか八十歳の年金ならいざしらず、いま普通の老齢年金は六十五歳ですから、遺族年金はもっと若くても奥さん方はもらえるわけですね、不幸にして旦那さんに別れた方は。そういうこともありますので、お年寄だから食生活があまり違っているのだという——お互いもう六十を越していますからね。お互いといっても、先生は六十を越しているかどうかわかりませんけれども、私らも若いつもりでおるのですから……。しかし、御意見の点は、私よくわかります。ほんとうに実態にふさわしいような水準でなければならぬ。この原則は私は理解いたしますから、私のほうも十分研究はいたしてみます。それだけ申し上げておきます。
  265. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 内田企画庁長官は、前に厚生大臣として、私がそのことをぜひと厚生大臣に強調したら、当然ですよ、こういうことですから、前の厚生大臣はそういう発言をなさっておりますから、それはひとつぜひ前向きに一度検討してみてください。これは理屈に合っていることだと思いますから、よろしくひとつ。
  266. 葉梨信行

    ○葉梨委員長代理 次回は、来たる十九日、火曜日、午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十一分散会