運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-05-14 第72回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月十四日(火曜日)    午前十時三十三分開議  出席委員   委員長 角屋堅次郎君    理事 坂本三十次君 理事 登坂重次郎君    理事 林  義郎君 理事 渡部 恒三君    理事 島本 虎三君 理事 土井たか子君    理事 木下 元二君       加藤 紘一君    瓦   力君       住  栄作君    染谷  誠君       田中  覚君    戸井田三郎君       橋本龍太郎君    八田 貞義君       渡辺 栄一君    岩垂寿喜男君       小林 信一君    佐野 憲治君       米原  昶君    新井 彬之君       岡本 富夫君    折小野良一君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君  出席政府委員         内閣官房長官 大村 襄治君         防衛庁参事官  長坂  強君         防衛施設庁長官 田代 一正君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         環境政務次官  藤本 孝雄君         環境庁長官官房         長       信澤  清君         環境庁自然保護         局長      江間 時彦君  委員外出席者         大蔵省理財局国         有財産第二課長 川崎 昭典君         林野庁指導部長 松形 祐堯君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 五月十四日  辞任         補欠選任   大石 千八君     瓦   力君   羽田野忠文君     加藤 紘一君   松本 十郎君     住  栄作君   岡本 富夫君     新井 彬之君 同日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     羽田野忠文君   瓦   力君     大石 千八君   住  栄作君     松本 十郎君   新井 彬之君     岡本 富夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  富士地域環境保全整備特別措置法案内閣提出、  第七十一回国会閣法第一一五号)      ————◇—————
  2. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これより会議を開きます。  内閣提出富士地域環境保全整備特別措置法案を議題とし、審査を進めます  質疑申し出がありますので、順次これを許します。岡本富夫君。
  3. 岡本富夫

    岡本委員 まず環境庁にお聞きしますけれども、この富士保全法の保全する地域ですが、これは富士山頂を中心にして、おおむね二十キロということでありますが、実際に富士を保全するためには、やはり田子の浦あるいは駿河湾まで含めてしまわなければ、ほんとう富士保全にはならないのではないか。御承知のように富士地域は、いま、富士市のほうでは大気汚染が非常に多い、非常に患者もよく出ているというような地域でありますから、ほんとうはここまで延ばさなければならぬのじゃないか。ただ、この二十キロだけですと、現在の自然公園法でおおむね規制できるということですから、どうも中途はんぱなように考えられるわけですが、やるからにはきちっとしたものをやって、後代に富士を残していくということが大切ではないか、こう思うのですが、それについての意見を述べてもらいたい。
  4. 江間時彦

    江間政府委員 先生が御指摘になりましたように、富士に関連する地域というものは非常に広いわけでございまして、場合によっては伊豆半島方面までという考え方もあり得るかと思います。そこら辺は、いろいろ検討したわけでございますが、われわれの考えでは、おおむね半径二十キロという範囲をとりますことによりまして、富士山に直接的な影響を及ぼす地域はほぼ確保し得るんではないか。なるほど伊豆半島方面まで広げるということも一つ考え方だと思いますが、大体切りのいいところで半径二十キロありますと、富士に直接的な影響を及ぼすところは把握できるというふうに考えております。
  5. 岡本富夫

    岡本委員 私は、いまの富士国立公園あるいは国定公園、この自然公園法で大体もう現在規制されているところがほとんどで、この国立公園外地域というのは、ほんとうにわずかだということを考えますと、これは将来やはり、いますぐというわけにはいかぬかもわかりませんが、富士地域富士市あるいはまた田子の浦、こういうところまで含めていくという検討が必要ではないか、こう思うのですが、それだけひとつ前向きに……。
  6. 江間時彦

    江間政府委員 われわれが当初に立案いたしましたときには、そのような考え方に基づいたわけでございますが、先生のような御指摘考え方としては大いにあり得ると思いますので、今後の検討材料にいたしたいと思います。
  7. 岡本富夫

    岡本委員 次に、この富士保全法が、いまの自然公園法国立公園あるいは国定公園、これで大体規制できるのに、なぜこうした特別措置のようなものができたかということの背景ですね、これをひとつ明らかにしておきたいのですが、先般も当委員会山梨県知事に来ていただいたときにも若干申し上げたのですが、この山梨県の県民室発行の「北富士演習場問題を考える」、これは山梨県から発行されておるわけでありますが、この中にも、北富士演習場をさらに演習場として山梨県側が認めるという、この担保として富士保全法をつくって、そしてここに予算を出すというような裏づけの記事がたくさんあるわけですが、これは大体内閣官房長官になっておるわけですけれども、来ていないから、この点について環境庁としてはどういうように考えておるのか、ひとつお聞きしたい。
  8. 江間時彦

    江間政府委員 この点につきましては、前々から御説明申し上げておるとおりでございますが、富士地域の自然を守る、自然を保全していくというために、前々から何らかの必要性を感じておったという客観的な事実があったわけでございます。たまたま富士地域演習場問題、その他のいろいろなことが起きまして、確かに今回の法案をつくる契機となったということは事実であろうかと思います。しかしながら、この二つのことというのは、全く別個のことでございまして、われわれは従来からこのような保全法考えておったというふうに考えております。
  9. 岡本富夫

    岡本委員 富士保全について考えておったということでありますけれども、内閣総理大臣あるいはまた外務大臣大蔵大臣建設大臣防衛庁長官が協議の結果、「北富士演習場を従来どおり使用したい、ただし防衛施設庁がさきに示した二十一パーセントは返還する。」「富士保全法を立法するとともに、地元の民生安定のため諸施策を講ずる。」こういう政府考え方、そのもとに暫定使用を契約されたいという申し出山梨県知事にあった。こういうことですから、これは結局北富士演習場を従来どおり使用するというのが大きな前提になっているということにほかならないと私は思うのです。いままでの答弁では、これが非常に大きな契機になったということですから、それで答弁は尽くされたわけですけれども、やはり国立公園の中でこういう演習が行なわれているということは、非常に好ましくないのではないか。三木長官、この点についてひとつお聞きしておきます。
  10. 三木武夫

    三木国務大臣 この法案は、岡本委員の御指摘のように、北富士演習場取り扱いについて起こったことは事実です。しかし、その前から富士周辺環境保全をしたいという声があって、環境保全に関する法案を希望しておったことは事実なんですね。それをちょうど北富士演習場取り扱いという問題があったので、この機会にこれを実現をはかりたいという強い希望が山梨県側に起こったことは事実です。  それはなぜかといいますと、岡本委員ごらんになっても、地図を見ても、富士山ろくと湖の付近だけは国立公園になっているのです。ところが富士宮市とか、富士市であるとか、御殿場市であるとか、今度入れようとする地域は全然入っていないのです。ただ湖とか山ろくまでだけでは、富士周辺環境整備というものに、やはり少し範囲が狭過ぎますから、だから、それを広げてやろうということでありますが、動機というものは、そういう動機であったわけであります。  しかし富士山周辺というものは、これは単に景観ばかりでなしに、何か日本人に霊峰富士といわれるような、ああいう心情的にもやはりほかの地域と違ったところがありますから、それをこういう法律によって、できるだけ環境を整備していこうということは、非常に必要性はあるわけです。生まれた動機というものは、いま言ったような動機なんてす。しかし、法律内容とするものは——やはり必要な法律である、こういうふうに考えておる次第でございます。
  11. 岡本富夫

    岡本委員 それで、私、この法案はそういうように御答弁があったように、結局北富士演習場を従来とおりこれから使っていくという一いまこの案では五年間ということでありますから、永久ということは、私はまずいと思うのです。また逆に、いままでの自然公園法によるところの国立公園、これの管理というものが非常にまずかったのじゃないか。たとえば精進湖にしましても富士五湖ですね、非常によごれてきておる。だから、この法律をつくってやるのだ。それならば、いままでのこの自然公園法に基づく規制というものが非常に弱かったということは、他の地域でもそういう自然公園法に基づくところの国立公園規制というものが非常にゆるいのではないか。それだったら、新しくもう一ぺんつくり直さなければならぬということでは、これは話にならないと私は思うのが一つ。  それから、管理する人数が非常に少ないというのが、これが事実なんです。あの広いところを五人か六人です、私も行って見ましたがね。そこらあたりが、これからの自然公園法に基づくところの国立公園管理あるいは規制、こういうものもやはり厳重にやらなければならぬと私は思うのです。これだけをひとつ申し入れておきます。時間があれですから。  次に、防衛庁——私、先国会たったと思うのですが、この演習場の中に不発弾あるいは爆弾の破片がずいぶんある。私も、この前は行って、それを持って帰ってきて、当委員会で、山中防衛庁長官だったのですが、見せて、こういうものがたくさんあるのだということを言うと、それは全部掃除しますというような約束だった、その後どういうようにやったのか。これをひとつ報告してもらいたい。
  12. 長坂強

    長坂政府委員 お答え申し上げたいと存じます。  北富士演習場におきますところの不発弾処理状況、これは必要があれば、また東富士演習場も言及いたしますが、四十八年の四月から今年の三月まで、その不発弾の捜索に従事いたしました隊員は、延べで九千五百三十八人でございます一それで処理日数としては二十四日、それから不発弾処理いたしました数は百四十でございます。それで相当の成果をあげておると考えておりますが、まず、この不発弾処理ということに重点を置いて、体制を組むべきであるという趣旨で、不発弾処理体制といたしましては、射撃訓練終了点検と呼称しておりますけれども、射撃終了のつど、当該射撃を実施した部隊弾着区域重点に置いて清掃をするというのが一つでございます。  二つ目は、週点検と呼称しておりますが、射撃実施最終日最終射撃日またはその翌日に、当該週最終射撃部隊が、安全上、注意を要する区域弾着区域のここだというところを重視して、週点検ということでやっております。  それから、さらに定期点検としましては、五月から九月までの各月、これは特別の立ち入りの日が設けられますので、その前に弾着区域及びその区域周辺定期点検として清掃を行なう。それから演習場の野焼きをする四月、演習場全般清掃を行なう。その他の月にあっては、おおむね五月から九月までの各月の例に準じまして、月の下旬に清掃を行なうという定期点検をやっております。  そのほかに、臨時点検といたしまして、大雨の直後及び射撃実施状況から危険が予想される場合、随時、臨時清掃を行なう。  こういう四つの体制でやっておりますが、昨年の、つまり四十八年、それからことしの前半というようなところは、米軍時代のたまが出てくるのが多いわけでございますけれども、その不発弾清掃ということにまず重点を置く。破片弾のことについては、それは事後のことにいたしたいということで、まず不発弾処理体制重点を置いて、そのようなことをやっております。  それから弾着区域標識、それから立ち入り禁止標識なども、それぞれ所要の数に合わせるべく、どんどん数をふやして立てておる。一応こういう状況でございます。
  13. 岡本富夫

    岡本委員 約束の時間もありますから——ただ防衛庁に、この不発弾の事故がやはり何べんか続いておるのと、それからそのときの民間人の生命の安全、この保証がどうももう一つはっきりしてない。  それから昨年、山中長官は、砲弾の破片清掃するということを私にここで約束したわけですが、これはまだ二の次だというようなことでは、これはどうもおくれておる。この点について、もう一度厳重にひとつ対処していただきたい。これはもう時間の都合で申し入れておきます。  最後に、これは環境庁ですが、第七条の利用地域指定のときの公聴会開催は、これは地元住民意見を十分に聞くようにひとつ義務づけていく、そういう考えはないか、これだけ一つお聞きして、終わりたいと思います。
  14. 江間時彦

    江間政府委員 御指摘のような点も十分検討さしていただきたいと思うわけであります。
  15. 岡本富夫

    岡本委員 それでは約束の時間ですから、終わります。
  16. 角屋堅次郎

    角屋委員長 小林信一君。  小林君に申し上げます。  官房庁官の御要請がございましたが、官房長官日程等のこともございまして、大村官房長官に代理を願うことにいたしましたので、御了承願いたいと思います。
  17. 小林信一

    小林(信)委員 この法案で何といっても一番問題だったのは、この法案ほんとう富士を保全するという考えから生まれたのか、この審議の中でたいへんな疑問になりました北富士演習場自衛隊使用転換させる交換条件として富士保全法がつくられるのではないかというような疑念が濃くて、元来もっと純粋であるべき自然保護法律が、単なる演習場使用交換条件としてつくられるようなことは、これは非常に今後この法律が動いていく場合に、その本来のものが十分に認識されないということが大きな論議であったわけでありまして、そうすればやはりその一番発頭人は官房長官であるわけであります。  官房長官に対するいろいろな質疑もかわって行なわれたわけでありますが、残念ながら官房長官、いままでお見えになることができなかった。きょうもまた、私は特にきのうお願いをしまして、そういう意味からしても、きょうはどうでもあなたに出ていただかなければならぬ、でなければこの法案が終結することはできないじゃないか。理事会ではどういうふうにきまったか知りませんが、私個人からすれば、少なくとも官房長官万難を排して最終のこの段階に出て所信を表明し、その誤解を解かなければ、この法律がせっかくの法律であっても生きてこない、私はそういうふうに強く要請たんですが、副長官、決して私は不足に思うものじゃありませんけれども、官房長官責任を何か疑わざるを得ないような気がいたします。——長官、来ておいてになるのですか。
  18. 角屋堅次郎

    角屋委員長 いや……。
  19. 小林信一

    小林(信)委員 いないところでしゃべっても何にもならぬ、しばらく待ちます。  官房長官、さっそくでおそれ入りますが、あなたがいるものとばかり思って、私はもう担当時間しゃべったわけですが、もう一ぺん言い直さなければなりません。  端的にお伺いいたしますが、この法案に対して、審議の中で官房長官に対していろいろ問題が出たのですが、あなたは御存じですか。
  20. 大村襄治

    大村政府委員 伺っております。
  21. 小林信一

    小林(信)委員 問題点を、あなたから御説明願いたいと思います。
  22. 大村襄治

    大村政府委員 問題点と申されましても、いろいろあるのではないかと思いますが、官房長官が関係された限りにおける問題点と申しますのでしょうか、この法律案の前に覚書ができて、官房長官がそれに署名をされている、そのことについていろいろ質問等がなされたようでございます。  官房長官といたしましては、山梨県知事地元を代表して、こういうことをやっていきたいので、署名してほしいということで署名したものでございますが、法律提案され、それが成立しました場合には、またそれに基づいて行なわれることでございますので、覚書そのものは、そういう意味ではその時点においては、それなりの意義があったのではないか、そういうふうなことを申されております。また詳しい点につきましては、これは防衛施設庁なりそちらのほうの所管でございますので、詳しい問題はそちらと御相談して進めていきたい、こういうふうなことを申されておるのでございます。
  23. 小林信一

    小林(信)委員 核心に触れていないということはないのですが、この審議の中で一番問題であったのは、国の象徴ともいうべき富士山を守っていくということについて、この法案がいろいろな内容を持っておりますが、それらについては大かた無理はない、賛成するところが多いわけであります。しかし、この法律について、この委員会が前の国会から継続して、この国会最後まで審議を続けてきた一番の問題点というのは、この法案富士山という自然を守る、つまりお互いの良識、そういうものが大きく発動される中で、富士山というものは守られていくのだ、そういう性格の法律でありながら、官房長官が、北富士演習場を一たん六百四条という民法が適用されて、山梨県にその大部分が返されてしまう。したがって演習場というものが不可能になる。それを山梨県知事を説得して自衛隊使用転換まで運びつける。その交換条件として、この法律が最初から浮かび上がっておった。とすれば、この法律は、自然を守るということよりも演習場を可能にするための法律ではないか、そういうことで自然を守るということをやってよろしいかどうか、これが各委員から問題点として、あげられたわけであります。  したがって、一ぺんは官房長官がここへ来て、そうしてその真意をわれわれ委員に披瀝をしなければ、この法案が終結にならないと私は思う。私だけでなく、各委員がそうだと思います。したがって、きょうはどんなことがありましても、万難を排して、この富士保全法が動き出すときには、ほんとうにその本来の使命が全うできるような法案にするためにも官房長官が来なければいけない、私はそういうことを強く要請をしておったのです。ところが、きょうもおいでにならない。あなたにてんづけ失礼とは思いましたが、この法案問題点を、あなたはどういうふうにお考えになっていますかと聞いたわけですが、何となく迫力がありませんよ。ほんとうにこの富士保全法を生かそうとする、富士を守ろうとする、そういう気概がない。ということは、この富士保全法というものを官房長官は政治的に考えておったというように私はいわざるを得ないのです。  そこで、いままでその経緯についていろいろと話はございましたが、私はひとつ角度を変えまして、お尋ねをいたします。  この保全法がまだ提案をされないうちに、官房長官山梨県知事とこういう覚書を結んでおりますが、その覚書の表題が「富士地域環境保全整備特別措置法に関する覚書」と書いてあるのです。ここにも問題点がありました。まだ国会審議をしてないときに、もう成案になっているような考え方で、相手方とこういう法律をつくります、しかも内容を「第二十条第一項に規定する政令で定める割合については、」なんという、もうでき上がったというような状態で、この覚書が交換されているわけです。だから国会を軽視しているじゃないか、あるいは絶対多数というものは何もかも可能にしてしまうのだという、そういう力を過信した、そういう中からこういうものが生まれてきているのだというような御指摘も各委員からあったわけです。そういうものがあなたたちに、少なくとも副長官にもおわかりになっておったかどうか。私は失礼ですが、まっ先にそのことをお尋ねしたのですが、何となくわかっているような、わかってないような御答弁で、まことに心もとない次第であります。  それはさておき、こういう詳細に、第何条の第何項でどういうことをきめますといっている以上は、この法案というものに対しては、官房長官一つの自信を持ってお考えになっておいでだといわざるを得ないわけです。とすれば、この法案の中の富士地域、これから指定するわけで、政令で定めることになっておるのですが、とにかく演習場を含めたあの地域というものを何かに使う場合には審議会にかけなければいけない、その審議会にかける前には、当該県知事公聴会を開いて地域住民の声を聞かなければいけない、その上に県議会の議を経なければいけない、そういうことがあるのですよ。  そのつくる法律をまじめに官房長官考えるとするならば、一たんもう演習場は不可能になったわけです。新たに山梨県に土地の借用方を頼んで、そして演習場にしなければならない段階ですから、この法文をもしまじめにお考えになるならば、まず山梨県知事住民の声を聞かなければいけない、県議会の議を経なければいけない、そうして審議会のようなものにかけなければいけない、そういう手順を踏んで演習場というものを可能にすることが、この法案趣旨官房長官が理解をしておるならば、その道を経なければならなかったのじゃないか。ところが、自分たちが利用することについては山梨県知事だけと話をして、そして既成事実をつくって、その交換条件として、この富士保全法をつくる。何かこの法律というものは全くむちゃくちゃなような気がするのですが、そこら辺は、副長官はどういうふうにお考えになりますか。
  24. 大村襄治

    大村政府委員 この覚書の中で、まだ成立してない法律案を、あたかも成立したがごとき法律、あるいは法第何条というような書き方をしておる点は、確かに御指摘のとおり適当ではなかったという感じもいたすわけでございます。あくまで法案の条文に即して、いろいろ運用方針をきめたというのが、この覚書のあれではないか、そういう意味では表現は必ずしも適当ではなかったというふうに考えるものでございます。  そこで、地元意見の聴取のしかたでございますが、確かに御指摘のとおり、あくまでこの地元関係者意向をよく聞いて、これを尊重してやっていくべき筋合いのものであるというふうに考える次第でございます。この覚書段階におきましては、知事地元の代表ということに相なっているようでございまするが、この法案ができましたならば、確かに御指摘のように、それぞれ所要手続を経て地元意向が十分反映するように運営してまいらなければいけない性質のものであるというふうに考えております。
  25. 小林信一

    小林(信)委員 やはりあなたは勉強してないし、問題に責任を感じておらぬから、いまのような御答弁になると思うのです。私の聞いておるのは、この法律の中で、あの周辺のどこかを何かに使おうという場合には、これは審議会にかけなければいけない、その審議会の組織はかくかくであるということまで出ております。しかも、それに提案をする場合には、当該県知事公聴会を開いて住民の声を聞かなければならぬ、それを県議会にかけなければいけない、そうして決定したものを審議会に出してくるわけです。もしこれを富士を守るためには必要であるということを官房長官が痛感をするなら、演習場自衛隊使用転換するためには、なぜその順序を経なかったか、私はこれを聞いているのですが、あなたの、その答弁はとんでもない御答弁をしていますよ。どうですか。
  26. 大村襄治

    大村政府委員 覚書を拝見いたしますと、「第一」を拝見いたしましても「富士地域保護利用整備計画に掲げる事業は、地域住民生活環境福祉向上等に配慮しつつ本法の目的を達成するために必要な各種の事業政令で定めるものとする。」、いわば手続と申しますか、方向づけが書いてあるようでございまして、お説のように法律を制定しました後に、いま申されたような審議会、そういったようなことを進めるのと必ずしも背馳するものではない。ただ、この覚書を調製されました段階におきましては、審議会とかそういった点がまだできておりませんので、そのおおよその方向を、この覚書でうたわれたものであって、内容それ自体は、精神においてこの法の要請する手続の面と必ずしも背馳するものではないというふうに考えておる次第でございます。
  27. 小林信一

    小林(信)委員 この法案の精神−また法案は出ていないのですから、交換をするのですから、官房長官の腹の中には、この法案内容、精神というものはあったはずだと思いますよ。審議会はまだできておりませんから、審議会にかける、それは必要ないでしょう。しかし、住民の声を聞くというようなことは、これはもう法律が通っておろうがおるまいが、こういう考え方富士地域に持つとするならば、官房長官はそれをただ知事の単独の意見を聞くのではなくて、そういう過程を経た中で聞くような方法をとるということは私は可能だと思います。可能であるし、これからつくるこの法案に対して、ほんとうに精神が生きてくると思います。  ところが、演習場を可能にするためには、そういうような構想というものは全然考えない、知事を説得さえすればいい、それに対して何か代償さえ与えればいい。そういう形では、自分のやっていることと、国民にこれから要求することとは全然違うわけですね。演習場を可能にするためには、相手をだましても、ごまかしても、あるいは圧力を加えてもやる。そして法案の中身は、これからこの法案が通った以上は厳重な過程を経なければ土地利用はできない。国民にしいるものはきびしくて、自分たちのやることはかってほうだいのことをやっている。そういうことで、この法案が生きますかどうか、もう一ぺん御意見を承りたいと思います。
  28. 大村襄治

    大村政府委員 先ほども申し上げましたとおり、この覚書法案の精神を尊重しながら、その進め方についていっているわけでございまして、決してその演習場だけを念頭に置いていっているわけではございません。覚書の「第二」を拝見いたしましても、「法第二十条第一項に規定する政令で定める割合については、国民的資産としての富士地域環境整備に必要な治山、治水、下水道及び自然公園の事業等につき、」この場合は知事でございますが、「甲の要望を配慮しつつ定めるものとする。」ということでございまして、やはり富士地域環境保全を大目的として所要の整備を行なう。こういう趣旨によってできておるものでございますので、(「名答弁」と呼ぶ者あり)この点は明白ではないかと思うわけでございます。  また法律ができましたならば、この大精神をあくまで尊重して実行に移してまいる所存でございます。
  29. 小林信一

    小林(信)委員 まあ名答弁ということばがありましたが、私どもにはますますわからなくなる。私が聞いているのは、この法律が出たら云々ということじゃないのです。出て、この法律が動く場合にも、その生まれてくる過程というものは非常に大事だと思うのですよ。ほんとうにその気持ちでこの法案交換条件として出す、そのときの精神というものがほんとうに生きるかどうかということは、まず隗より始めよで、北富士演習場というものを再度確保する、そのときに私は官房長官がしなければならなかったのじゃないかと思うのです。だんだんわかってきたでしょう。わからなくて答弁しておっても、名答弁というんですからね。こういうものを重ねていったのでは、富士保護法はほんとうに生きてこないと私は思うのです。  私は、これからあなたにも、長官にも申し上げようと思うのですけれども、ついでにここでもって申し上げますが、最近こういう警告をした人があります。これはこの人だけじゃなくて、あらゆる人たち考えておることと思うのですが、自然を守るということは、人の心の方向に革命を起こすことだ。自然を守るということは、法律をつくればいい、そんなものではありませんよ。それもつくらなければいけないのですが、ほんとうのものは人の心の方向に革命を起こすことだ。それはまず人類がせつな的思考から脱却して、遠視的視野に立って、社会があって初めて生きていける自分であることを再認識して、そしてだれでも持つ、限りない欲望というものに、人類の英知から築き上げた規制を加えることが第一歩である。いいことばだと思いますよ。法律をつくったから自然が守れるなんというものではない。やはりこの仕事に携わる人は、この原則に立っていかなければいけないと思うのです。  だから、こういう忠告をしております。為政者も官公庁もこの前提に立って、すべての計画を推し進め、八方美人的言動を慎み、国民将来のための施策に邁進すべきである。これはまだ出ておりませんが、「富士山黒書」という、富士一つの危険信号を訴えておる六つの富士を守る団体の人たちが集まって富士山の現状に警告を発しておる本です。その本の劈頭にこういうことが書かれるはずになっておりますが、これからもほんとうに自然を守るなんということは、形式じゃだめだと私は思います。  私どもの接する限り、いままで三木長官もこういう気持ちでもって鋭意御努力はなさっておいでになっておりますが、閣僚である官房長官も、ほんとうにそういう気持ちでこの法律をつくります、だからひとつ自衛隊使用転換させてくれと言ったように私は思っておるのですが、直接じゃないんで、ちょっと残念ですけれども、あなたから聞く限りでは、あまりそういうことは意識しておらない。演習場が可能になりさえすればそれでいいんだ、富士山のほうは法律だけつくっておけばいいんだ、それじゃ私はこの法案が生きてこないと思うのですが、幾ら重ねて申し上げましても、根性が曲がっておる人にはなかなかわからぬと思うのです。自然というものを守っていく政治をするためには、そういう人間の心の革命にまで、われわれはいつ達するかわからぬけれども、努力をしていくところに初めて自然保護というものはできるんだ。これは公害全体に言えることばだと思いますが、それをひとつ官房長官にお伝え願いたいと思います。  そこで、もう一つあなたにお聞きいたしますが、この法案の中に、いま申し上げました公聴会を開いて、住民の声を聞かなければいけない、住民ということばを使ってあるわけですが、この住民は何をさしておるのでしょうね。この住民地域の問題です。あの周辺演習場と利害関係のあるような地域住民をさすのか。あるいは、これに対して行政的な責任を持っております山梨県とか静岡県とか、そういう地域住民をいうのか。  富士山とすれば、これは世界的な富士山だといっておる。だから外国の人が参りましても、あきかんが散乱しておったり、観光客が五合目からたれ流しでもって、もう荒廃するにまかせるような状態でいる。それを外国人が嘆いて、こんなことでは富士山が死んでしまうというようなことばを盛んに残していっております。あるいはそういう意味では富士山は世界の富士山かもしれない。一体この住民というのはだれをさすのか、どういう範囲でもって解釈しておるのか、官房長官にお聞きいたします。
  30. 大村襄治

    大村政府委員 この法律案の大目的でございますところの富士山地域自然保護の精神を尊重せいという御意見につきましては、全く同感でございます。官房長官にもしかとお伝え申し上げます。  次に、住民範囲の問題でございますが、「公聴会を開催してその住民意見をきき、かつ、当該県の関係市町村の」云々ということで、関係地域住民というふうに理解をいたしております。
  31. 小林信一

    小林(信)委員 実にこれは重大なところですがね。今度は環境庁の局長さんから、この住民の解釈はどういうふうにしておるか伺いたい。
  32. 江間時彦

    江間政府委員 われわれのほうといたしましては、この住民といいますのは、富士地域の保護と利用につきまして直接的な利害関係を有する地元住民というふうに考えております。
  33. 小林信一

    小林(信)委員 地元住民とはどこをさすのですか。具体的にあげられますならば言ってください。
  34. 江間時彦

    江間政府委員 現在におきましては、富士地域内であることはもちろんであると思います。具体的にどの市町村の住民であるかということは、それを選択いたします段階に十分検討いたしたいと思います。要するに、精神は、富士の保護と利用につきまして直接的な利害を有する住民ということでございます。
  35. 小林信一

    小林(信)委員 そういうごまかしをしながら法案をつくっていったら、これはどういう法案になるかわからぬ。あなたの考え方で言えば、要するに、問題が起きたら、ごく小範囲一つの町村、一つの市、そういうものでもって可能にしてしまうおそれもあるわけですね。  私は先ほど申しましたように、ある場合には、この富士山という問題は世界の富士山になる場合もある。日本の富士山になる場合もあるのですよ。そういう問題であっても、自分たち政府の都合のいいような仕事をしようとする場合には、そこを小さく解釈して、一町村をつかまえて、そこの人たちの賛成を得たから、この法律のとおり、その住民意見を聞き、そして公聴会は終わったということに私はなると思うのですが、この住民という問題は、私はいまのようなばく然たる解釈で置いてはいけないと思うのです。だから、防衛庁のほうなんか、ここを巧みに利用している。この審議の中でもって、演習場に反対する人たちはどれくらいありますかという林さんからの質問が出た。結局一・六%という数字を防衛庁が出した。ああいうごまかしをすることも、この地域の解釈の問題で出てくると私は思うのですよ。  三木長官、ひとつ聞いておいていただきたいと思うのですが、ことに演習場周辺は長い慣習の中で利害関係が非常に濃くなっております。林雑補償の問題だとか何かにつけても、今度百三十五億金が出るとか土地を払い下げるとかいうように、因縁が深くなっておる人たちは、どうしても政府の言うなりにならざるを得ない。そういうような状態でいる人たちの声を聞いたからといって、ほんとうにこの法案どおりの住民の声になるかどうか。演習場に反対するのは一・六%でありません。防衛庁、そう言ったでしょう。林さんの質問にそう答えている。それはその周辺のいろいろな利益を与え、恩恵を与えておいて、そして義理でも演習場のあることに反対はできないという人たちの声から、そういう結論を出して、これが演習場に対する批判でございますというようなことでは、たいへんだと思うのです。それどころじゃない。最近はあの忍野地区の忍草の人たち、せんころ説明を聞きますと二百二十戸、その二百二十戸は全体の何%に当たるとか、全体地域からすれば一・六%という声を出してきたのですが、それへさらに圧力を加えている。  林雑補償費は当然単独の組合に渡してもいいわけです。ところが、演対協というものを中間において、この演対協に入っていなければ、これを介しなければ、林雑補償費は出しません。そうすると、ここでもって昭和四十年からですから、一戸に二十万、三十万という金が入ってくるわけです。もらう権利は持っていても、演対協というものに入っていなければもらえない、演対協に入れば、いまのような拘束を受ける。いやでも演習場に賛成でございますという態度をとらなければならない、そういう状況に長年つちかわれているのですよ。その住民を、大体こういう大問題を公聴会という名前でもって、審議会提案をする一つの条件として考えていいのかどうか。これは長官どうですか、そういう事情があることを考えれば、この住民という問題は、そう簡単に解釈されては私はたいへんだと思う。
  36. 三木武夫

    三木国務大臣 第六条に関連をしての御質問だと思うのですが、法律の条文としてはやはり住民というのを、その地域の直接の利害関係ということにおいて、法律のていさいとしてはせざるを得ないのだと思います。それでないと確定しませんからね。しかし言われるように、実際ああいうところは利害関係が錯綜しておって、必ずしも自分の意見というものを、公聴会の聞き方からいったら、利害関係から率直に言わない場合もあると思いますから、やはり意見を聞くときには、ここでいう法律公聴会というものは、そういう形態をとらざるを得ないでしょうが、もう少し広く意見を聞いてみることは、私は必要だと思うのです。  その利害といえば、自分の利害にも結びついているのですから、社会公共という利害ばかりでないですよ。自分の個人的利害にも結びついておる場合が多いですから、その開く場合には、そういう直接の利害関係を持たない広い意見も聞かないと、せっかく公聴会を開いてという精神に合致しない。それは運用においてそういうふうにやるように、指導をいたしたいと思います。
  37. 小林信一

    小林(信)委員 そうすると、江間局長の見解等とはだいぶ食い違ってくるわけです。私は何も大臣と局長の意見、見解が違ったから、そんなこと問題じゃありません。この際、ここのところの解釈というものは、私は非常に重大だと思うのですよ。ああいう防衛庁なんかのような見解にしてしまったり、そしていま官房長官が言っているようなことは、ちっとも勉強していないから言っていることなんで、こんなの全然信用できない。やはり当該の大臣それから局長、こういうところで真剣に考えていただくわけなんですが、地域住民というものは考えなければならぬと私は思うのですが、北富士演習場をつくるなんということについては、その地域だけの問題じゃない。これは少なくとも当該県公聴会というふうなもので考えていかなければならぬ問題だと思います。  今後そういうことはないとは思いますが、それほど住民のこの解釈というものを簡単にして、便宜的に役所の仕事が利用されるようなことがあってはたいへんだと思うのです。時間がないことですから、これをどう決定するかということはむずかしいのですが、ときによっては広く解釈しなければならぬという大臣のことばを私は信頼いたしまして、この住民という問題は終わります。  こういうふうにあげていきますと、この法案の中には、官房長官がただ演習場ほしさにつくった法律で、だからそういう内容をあげていきますと問題が多いのですよ。官房長官にうんと問題を言いたいのですか——長官ではもの足りないということじゃないのですよ。もの足りないということじゃないけれども、ちっともこれに触れておらぬような状態ですから、言うだけあなたの感情を害するようなことになりますので、ここら辺でもって終わりますが、とにかくこの法案について終生残るものは、演習場を確保するための法案ではなかったか。したがって、これにいろいろ盛られておりますけれども、それはほんとう富士を保全をするという気持ちではないんじゃないか。これから法案ほんとうのものになるためには、たいへんな努力を必要とするんじゃないかと思います。これは官房長官に対する質問は、以上で終わらしていただきます。  私は、少なくとも一日ぐらいもらって、ゆっくりこの内容検討をして、この法律が通るとすれば、それにこういう意見があったということを残しておいてもらいたいのですが、あと二十分しかありませんので、一番私の問題になります点をお聞きいたしますが、まず局長にお聞きいたしますが、この富士山を守る、何に守る価値を感じておいでになるのか。たくさんあるでしょうが、特に留意する点をお聞きいたします。
  38. 江間時彦

    江間政府委員 日本には非常に風光明媚なところがたくさんございますが、しかしながら客観的に見まして、富士山というのはわが国の景観の象徴であるということが第一点だと思います。  それから第二点といたしましては、たまたまこの地域が首都圏に非常に近接いたしておりまして、乱開発にさらされやすいという点をわれわれ深く危惧しておるわけでございます。
  39. 小林信一

    小林(信)委員 大体いままでの答弁がそういう抽象的なことで終わっておるのが私は残念だと思うのですよ。何が自然の象徴であるか。あの形であるか、白扇さかしまにかかるあの姿であるか、あるいはその中にいろんな植物がある、生物がある、地質がある、気象がある。そういう点では富士山は、何が特に特徴としてこれを価値評価しなければならぬか。そういうものが環境庁でもって明確になっているかなっていないかということが、この法律が生きるか生きないかの問題点になると思うのですが、そこを私はお聞きしておるのです。
  40. 江間時彦

    江間政府委員 私は主として景観について申し上げたわけでございますが、もちろん富士地域におきます歴史的な経緯、それから植生、それから鳥獣の生息、そういうふうな点におきまして、富士地域というものは非常に貴重な資産であるというふうに考えるわけでございます。
  41. 小林信一

    小林(信)委員 植生、生物至るところの自然にあるわけですよ。しかし、この富士山はどういう点がその特徴か、そこを私は明確に聞きたいわけです。
  42. 江間時彦

    江間政府委員 形の上で非常に特徴的であるというだけではございませんで、植生の上から見ますと、噴火の結果できました地質の上に、その後自然の植生ができてきたという点におきまして非常に特徴がございます。また、鳥獣の生息状況について見ますと、非常に種類が多様であり、そして、数が豊富であるということでございます。
  43. 小林信一

    小林(信)委員 その最初に言われました新しい火山の上の溶岩の中に、いろいろな化学作用が行なわれ、植物自体が植物自体のいろいろな行動の中でもって、いまのような木がはえ、草が茂る、これがやはり富士山の特徴のところだと思います。新しい火山、それであるとするならば、あそこにいま木がはえ、そして草がはえ、あるいはだんだん上のほうまでコケのようなものが溶岩の中に成長していく。これは植物の発生の歴史を見る科学的な大事なものでもあると私は思うのです。そして、そういう溶岩地帯に木がはえるのですから、地上は、土は深くないわけでしょう。だから、一ぺん木を切ったら、その木はどうなるか。しかも、これが東京の近郊であって観光客が殺到する、そういう脆弱な自然の姿の中に観光客がどっと押し寄せる。そういうことからしても、富士の保全というものは、もっともっと、ほかの山や景勝地以上に留意していかなければならぬというものが根本になければならぬと私は思うのですが、その点は、ことばは少なかったのですが、十分お考えになっておいでになると思う。  それからもう一つは、これはもう学者が全部言っておりますが、植物の垂直分布ですね。とにかくあそこに、中部地方から少なくとも東北方面までの生物は生存できる、植物が成長できる状況というものが一つの垂直分布でもって見ることができますね。これはほかの山にめったにないことだと私は思うのです。  それからもう一つは、独立峰ですね。ほかの山はいろいろな山とつながっておるが、あの山だけはほかの山とつながってない。独立した植物の発生とか動物の生息に特別なものがあると私は思うのです。そういうことがやはり明確にされておって、だから富士山は守らなければならないのだ、そういうものが審議の中でたくさんに出てまいりましたが、私はその点を明確にしなければいけないと思うのです。もっともっとこの点は一般に理解をさせた中で富士保全法が初めて生きることができると思うのです。  そこで、そういう岩磐の上に、砂れきの上に、ごろごろころがるものが、コケ等でもってころがらないようになって、そしてそこにいろいろな種が飛んできて、新しい植物が一ぺんはえます。その植物の葉が落ちて土壌なんかをつくる。そうすると、最初の植物が生存できるのでなくて、今度は、飛んでくる種の中でもって最も優位の、強く生存できる植物が変わるというふうに、あそこの山というものは植物が変遷しているわけです。これがどういうふうに今後繰り返していくか。しかし何といっても、まだまだ土壌というものはできておらない。そこで、それがあなたのおっしゃるように、人間が破壊をする、そのことをこの法律で防止していかなければならぬ。  もう一つ、垂直分布ではありますけれども、緯度に応じて、高さに応じて横に植物が繁茂するのではないらしいですね。これがまた、富士山の特徴だそうです。というのは、その時代、時代でもって溶岩が流れます。噴出物が違いますね。違うというと、その違うところに適した植物がはえますから、必ずしも横の連絡でなくて、地質に応じた植物の発生も出るというふうな、そういう特徴もあるそうですが、そういうようなことは十分お知りだと思いますが、何といっても脆弱なところである。そこに対して、これからこの法案が適用されて保護していくわけですが、最近道路がたくさんにできて、富士周辺というものは、その中へ道路が入っていくのですから、ほんとうは山の自然を守るのではなくて、こわしているような状態なんですね。  そこで最近環境庁では、全国に幾つかの自動車の乗り入れ禁止の地域をつくりましたね。あれらのところと比べて、富士山は被害がないから、あそこを規制しないのか、あるいはその価値がないから規制しないのか、御見解を承りたいと思います。
  44. 江間時彦

    江間政府委員 先生が数多く御指摘になりましたように、あそこら辺の自然というものは非常に貴重なものだというふうに考えております。われわれ、先日、数カ所の乗り入れ禁止の措置をとったわけでございます。富士地域につきましても、目下いろいろな検討を重ねておる次第でございます。
  45. 小林信一

    小林(信)委員 江間局長という人はもっと真剣に答える人だと思ったのですが、何ですか、木で鼻をくくったような答弁をする人ですね。ほかのところは指定をした、富士山に指定をしないのは、富士山はそれだけの価値がないのか、あるいは乗り入れても被害がないという考え方であるか。検討中ということは、考えるときにはおそらく日本全国を考えるのでしょう。そうして、まずこれは手を打たなければならぬというのが六つだったのでしょう。その中から漏れたのは、富士山にはそういう考えをする価値がないというのか、あるいは乗り入れても被害がないというのか、いずれの見解でもって漏れたのか、それを聞いているわけです。
  46. 江間時彦

    江間政府委員 あの地域が非常に価値あるものだということは申し上げたわけでございます。先生が御指摘になりましたように、あの地域が、道路をつくりました結果、非常に自然が荒らされているということは、われわれも十分認識いたしております。現状におきまして、あの地域の自然の復元というものにいろいろ手を打っておるわけでございますが、その問題と別にいたしまして、しからば、あれほど貴重なところを、なぜ今回の措置からはずしたのかということでございますが、これにつきましては、やはりいろいろ地元の同意であるとか、そのほかいろいろな要素を検討しなければならないということもございまして、われわれまじめにあの地域をそういう候補地として検討いたしておる最中でございますので、もうしばらくお待ち願いたいと思うわけでございます。
  47. 小林信一

    小林(信)委員 少なくとも六つが先に指定されて、富士山については、これから検討するということは、それよりもランクが下ということですね。
  48. 江間時彦

    江間政府委員 決してランクが上とか下とかということはございませんで、私はあの地域は非常にランクの高いところだと思っておりますが、ただ、ああいう措置は行政措置でございまして、あらゆる関係者の同意も得なければならないという問題もございまして、われわれ真剣に検討しておる最中でございます。
  49. 小林信一

    小林(信)委員 私は、先ほどからあなたもそういう意見だし、私も同じ意見で、富士山という山はきれいな木も茂っている、草も茂っているようですが、薄い緑の衣を着ているようなもので、ほんとうにちょっとしたことから全部破壊される素質を持っておると思うのです。  そういう意味からすれば、富士山の自然を守らなければならないという一番の根拠は、岩盤のようなところに非常に木がはえているんだ、したがって、これは人為的にも考慮しなければならないところだという点で、あなたは日本全国の山の中で、富士山はあのきれいな姿ということよりも、そういう点に留意をするということで同意をしたわけでしょう。それだけの考え方があるなら、ほかの六つが指定されるときに、まっ先にここは指定をしなければならぬところだと私は思うのですが、あなたの御答弁を聞いていれば、やはりほんとう富士山を愛する、自然を保護するという気持ちよりも、もう一つ考えなければならぬのは政治的な問題だ——そんなことでもって、この富士保全法を出さないほうがいいんですよ。どんな事情があろうとも、この富士山がかくかくであるというあなた方の科学的な判断、それを推し進めていくところに、初めて富士山というものが守られると私は思うのです。そういうところからも、私は、この富士保全法というのは本来の富士山を守る法律ではなくて、非常に政治的な意味の強い法律だというふうに考えざるを得ないわけなんです。  立山連峰の有料道路は、富山県としては、つくるにはつくった。しかし、あそこの人たちの良識あるいは環境庁の指導もあったかもしれませんが、つくったばかりで自動車に乗り入ればさせません。みんな下のほうの駐車場へ置いて、そして県営のバスでもって頂上までお客さんを運んでいる。私たちが参りましたときには、県としては迷っておりました。金はかけたけれども、これじゃ採算がとれない、だから来年になると、あるいは乗り入れにするかもしらぬ、しかし自然を守るという点からすれば、今日の状態を守らなければならぬというのが地域の人たちの声でした。  今度あなた方は、これを規制して絶対に乗り入れてはならない——だから立山と富士山を比べれば、立山のほうがはるかにきれいです。生息動物なんかに関しても、いろいろ学者の意見を聞きますというと、富士山は最近観光客がふえて、それはもう持っていって、ほうり出しっぱなしですね。だから、だんだんネズミが上へ上へとのぼっていく。ネズミがのぼっていけば、今度はテンだとかイタチだとかキツネだとかいうものが、どんどんのぼっていく。鳥も、カラスの飛んでいくところは、初めはもっと下のほうでしたが、だんだん上のほうへ飛んでいくようになりまして、これは野鳥の中にも相当影響があると思いますが、そればかりじゃない。そういうテンだとかキツネだとかイタチだとかいうものが生息するようになってくれば、ほかの生息物に影響があると私は思うのですよ。もうほんとうに極限に達しているのが私は富士山だと思う。なお、そのときに慎重に考慮するというのは、一体何事です。私には理解できない。  私は、山梨県人でございますが、山梨県でも金をかけてスバルラインというものをつくったわけです。だから県民の一人とすれば、利害関係から考えれば、あのままにしておいたほうが県の利益になるかもしらぬ。しかし、私はそんなことを言っている時期じゃないと思う。あのスバルラインは、いかに弁解しようとも学者諸君が言っております。確かにふもとのほうの植物は一応安定してきているようであるけれども、千五百メートルから二千三百メートルくらいの間の樹木はますます倒れるだけだ。さっき私は独立峰だと言いました。独立峰の特徴は、風が強いということなんです。そうでしょう。もう何十年、何百年風雨にさらされて、かろうじてお互いの力でもって生存しておる木は、次から次に倒れていくのですよ。あなた方の説明を聞いておったら、道をつくるために土をとった、その土を落としたことが立ち木を害しておるというふうに言われておりますが、いまや学者の説はそんなものじゃない。  私は学者の先生たちにお話を聞いたのですが、ああいう樹木というものが生存するためには、その側面をマント群落という別の木がおおうようにして光が入らない、風が入らないようにならなければ生存できない。そして、そのマント群落のさらに防波堤になるものがソデ群落である。これが植生の社会の一つの原則です。環境庁があっても、あるいは自然を保護するという声があっても、千五百メートルから二千三百メートルの間のあの道路をつくった周辺というものは、何も手だてはない。だから、せんころの参考人の方は、人工でコンクリか何かでもって壁をつくりなさいということだったが、そんなことをやったら、もうあの道路の意味はなくなってしまいますよ。しかし、そうでもしなければ、あの立ち木は守られないということになっています。それでも、なおかつ慎重に、あなた方はまだ検討するのですか。  私は、スバルラインは、ふもとのほうに駐車場を置いて、そして県営のバスでもって頂上へ運ぶ。頂上へ運べば、おのずから、ここでおりてはいけません、おりたら、こういうところを使ってくださいというふうな規制をして、観光客にいまのようにむざんに荒廃させないようにすることが相当できるのじゃないかと思うのですが、これはひとつ長官どうですかね。まず局長からお聞きいたしまして、そして最後の決断を長官にお願いしようと思います。
  50. 江間時彦

    江間政府委員 私のほうも決して慎重な方向でというふうなつもりではございません。きわめて前向きで、このことは考えておるつもりでございます。いましばらく時間をいただきまして、前向きで検討いたしたいと申し上げておるわけでございます。
  51. 三木武夫

    三木国務大臣 スバルラインについては、これはやはり規制をしていかなければならぬ、そういうことで地元との話もついたようでありますから、環境のほうも、話のついた範囲内において規制を強化していきたいと思っております。
  52. 小林信一

    小林(信)委員 わりあいに三木長官は信頼できる人でありますから、いまのようななまぬるい御答弁ですが、御期待を申し上げます。  しかし、全くこれはえらいことかもしれません。私が簡単に、ほんとうに自然を守ろうというならばいろいろな複雑な問題があっても、それは排除してやれと言っても、これはむずかしいかもしれませんが、やはりいまこの法案三木長官の名前でもって、責任でもって出そうとするには、少なくともこういう事実をやりますよというものがなければ法案が生きてこないと私は思うのです。  そのほかにもたくさんあると思います。道路はスバルラインだけじゃありません。周辺の道路はもう至るところに出ておるわけでありますが、こういうふうに問題を申し上げていきますと、私はゆっくり半日ぐらいいただこうと思うのですが、もう時間が来てしまって……。  大蔵省に、二十条の「政令で定めるところにより、」——政令が多いわけですが、一体どれくらい出すのか、もうきまっているかどうかということについてお聞きしたかったし、あるいは林野庁の方たちに、やはり植生については専門でございますから、御意見を聞きながら——最近この委員会で、はからずも声が出たのですが、そのときは林野庁の方がおられなかった。岩垂さんですが、これはいろいろあなた方の解釈もあると思うのですが、「毎度お買い上げありがとうございます。」というような看板をかけて乱開発をやっている、乱伐をやっているというふうなおしかりがあったのですが、これがはたして乱伐であるのか、ほんとうに自然を保護する形でもってやっているのか、そういうこともお聞きしたがった。防衛庁については、一・二%の反対だというようなことは取り消してもらいたい。どこをつかまえて一・二%なのか。ほんとうに利害関係の複雑している周辺だけでいいのか。もっと範囲を広めて、演習場のあることについての賛否を確認をし直すべきじゃないかというような問題、そのほか、せっかく来ていただいて、まことに申しわけないのですが、これは約束でございますから、きょうじゅうに上げる法律でございますので、せっかく来ていただいた皆さんにおわびを申し上げて、以上で、私は質問を終わらしていただきます。
  53. 角屋堅次郎

    角屋委員長 木下元二君。
  54. 木下元二

    ○木下委員 まず、法案に即して少しお尋ねしたいのですが、富士地域保護利用整備計画決定の手続であります。これは内閣総理大臣が決定をするということでありますが、それには審議会意見を聞くという手続がきめられております。その趣旨は一言で申しますと、どういうことでしょうか。私が理解しておりますのは、一種の民主的なチェックを行なうというふうに理解しておるわけでありますが、それに間違いないのでしょうか。
  55. 江間時彦

    江間政府委員 利害関係ある人の意見を聞くだけでなしに、専門的な方々の御意見も聞くという趣旨も入っていると思います。
  56. 木下元二

    ○木下委員 これは整備計画決定の手続でありますが、関係県の知事が協議をして案をつくる。そしてその案をつくる際に、公聴会あるいは関係市町村長の意見を聞くということを行なって案をきめるわけですね。そしてその上で、環境庁長官を通して内閣総理大臣が決定をする。その決定の際に、いま私が申しました審議会意見を徴する、こういうことになると思うのですが、その場合、知事が協議をしてきめる際に、関係市町村長の意見は聞いているわけですね。ところが、その審議会意見を聞くということでありますが、その審議会の構成メンバーとしては「関係市町村の長を代表する者」というものが入っておる。それから  「関係県の知事」も入っておる。つまり一番最初の案をつくる際に関与した人たちが、また再び内閣総理大臣が決定をする際に、審議会として関与するということになりますと、これは手続として少しおかしいのではないか。  一番最初に案をつくった者と別個の者が関与をするというならわかるのですけれども、あるいは最初に案をつくった者から事情を聞くというだけならわかるのですけれども、そうでなくて、審議会の構成メンバーに入れて、その意見として、そうした知事やあるいは関係市町村の長の代表者の意見を聞くということは、少し手続としておかしいというように私は思うのです。いかがですか。     〔委員長退席、坂本(三)委員長代理着席〕
  57. 江間時彦

    江間政府委員 確かに先生のおっしゃいますように学識経験者であるとか、あるいは専門家の意見だけを聞く審議会という考え方もあり得ると思いますが、ただ、審議のプロセスにおきまして案を変更するというようなこともあり得るわけでございましょうし、やはり地元の利害を代表なさる方も入っておられるということが、より望ましいのではないかというふうにわれわれは考えております。
  58. 木下元二

    ○木下委員 一番最初の案をつくる際に、その地元側の意見は入っておるわけですから、それを再び上のほうで総理大臣がきめる際に、単なる参考人として意見を聞くというのならわかりますよ。そうでなくて、審議会に含めて、審議会意見として聞くというのは、これは少し筋の通った手続ではないように思うのです。ちょうどその整備計画の作成者と、この審議会のメンバーが重複しておる問題というのは、たとえば答案を書いた者が、再びそれを採点するのと似たような問題もあると思うのです。さっきも言われました一種の民主的手続、民主的チェックであるという観点からいえば、やはり審議会でこれをチェックするという場合には、一番最初に案をつくった者を除いて審議会を構成すべきである、そうじゃないですか。
  59. 江間時彦

    江間政府委員 確かにそのような考え方もあるかと思いますが、もし、具体的に途中のプロセスにおきまして案の内容を変えなければならない、そうした場合に、やはり直接利害を持っておられる方もメンバーに入っておられるほうがベターではないかというふうにわれわれは考えるわけでございます。また、実際に利害関係者審議会のメンバーに入れるということは、決してわが国の審議会の構成におきまして、おかしいことではないというふうに思うわけでございます。
  60. 木下元二

    ○木下委員 利害関係者を入れることがおかしいと言っているんじゃないんですよ。最初に案をつくった者を審議会のメンバーに入れることがおかしいというふうに言っているのです。これは私は理解できません。  さらに、次の問題に移りますが、この七条の利用地域でありますが、徒歩利用地域、自然探勝利用地域、野外施設利用地域、休泊利用地域、四つきめられておりますが、これはどのような基準に基づいて四つの地域に分けるのでしょうか。また、富士地域の全域を四つに分けるのか、あるいはそうでないのか。ないとすれば、どの程度の面積を、この四つの地域に分けるということを考えているのか。これも簡明にお答えいただきたい。
  61. 江間時彦

    江間政府委員 利用地域考え方は、それぞれ利用する目的に応じて地域を分けて、それ以外の目的には利用しないということでございまして、たとえて言いますと、徒歩利用地域でございますと、登山、ハイキングなどにしか使わない。したがいまして、その地域には歩道であるとか、避難小屋しかつくらないということになるわけでございまして、われわれの従来の自然保護行政の中では、わりに新しい概念に属するものでございます。
  62. 木下元二

    ○木下委員 質問に答えていないと思うのです。この富士地域の全域を四つに分けるのかどうなのかということ、いかがですか。
  63. 江間時彦

    江間政府委員 お答えを漏らして申しわけございません。  われわれは、全地域をこの四つの地域に全部分けてしまうということは、考えておりません。
  64. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、大体あなた方の構想としては、富士地域のどの程度の面積をこの四つに入れるというお考えですか。
  65. 江間時彦

    江間政府委員 現在の段階におきましては、具体的に面積までは考えておりませんが、要するに、われわれは、利用目的を限定することによりまして乱開発を防止したい、そういう観点からきめたいと思います。
  66. 木下元二

    ○木下委員 どうも抽象的なんですが、面積まできちっとおきめになっていない、これは当然のことですよ。そうでなくて、おおよそのことが一とうも私たち輪郭さえつかめないのです。四つに分けると、一体この富士地域のどの程度がこの四つに入るのか。ごく一部なのか、あるいは大半はこれに入ってしまうのか。そんなことさえわからぬのですか。少なくとも法案をお出しになる際には、この四つの地域がおおよそどういう基準で、どの程度のものをこれに含めるのだという、そういう考えがあるでしょう。それを聞いているのです。
  67. 江間時彦

    江間政府委員 もう少し具体的に申しますと、たとえて言いますと、徒歩利用地域でございますと、おそらく五合目から上、あるいは青木ケ原の樹海というようなところに徒歩利用地域が設けられると思います。自然探勝利用地域ということになりますと、特別保護地区であるとか、あるいは特別地域の第一のうちの車道沿線の地域であるとか、あるいは東海自然歩道の沿線であるとか、あるいは山ろくの展望所であるとか、そういうふうなところに限定されると思いますし、野外施設利用地域でございますと、特別地域の若干の場所であるとか、あるいは普通地域ということになると思います。休泊利用地域でございますと、やはり休泊に必要な場所、たとえて言いますと、山中湖の一部であるとか、湖の若干の地域あたりになろうかと思います。
  68. 木下元二

    ○木下委員 どうもそれでも輪郭がわかりにくいのですが、そうしますと、富士地域の大半がこの四つの地域に分けられるということではなくて、四つの地域というのは、点在するものだというふうに受け取っていいわけですね。
  69. 江間時彦

    江間政府委員 しかしながら、たとえば徒歩利用地域のようなものは五合目から上、全域というようなことになりましょうし、青木ケ原の樹海などもかなり広い地域でございます。利用地域によりましては、かなり広いものになろうかと思います。休泊利用施設のようなところは、おそらくきわめて狭い、点在したものになろうかと思います。
  70. 木下元二

    ○木下委員 それからもう一つ十一条であるのですが、「国立公園等以外の富士地域」という概念がありまして、これについて一定の行為の届け出制というものがきめられております。そしてこれは場合によっては、禁止にもつながるわけでありますが、一定の行為の規制というのが、これは工作物の新改増築ということになっておりますが、これは「その規模が総理府令で定める基準をこえる」場合ということになっております。これはどの程度の基準をお考えなのでしょうか。     〔坂本(三)委員長代理退席、委員長着席〕
  71. 江間時彦

    江間政府委員 現在の段階では、大ざっぱに国立公園の普通地域に対する規制の程度を考えております。
  72. 木下元二

    ○木下委員 これはもうあまり時間がありませんので、詳しく質問いたしませんけれども、私がこれを聞きたいのは、十五条によりまして、一定の行為の規制があるわけです。「ごみその他の汚物又は廃棄物を捨て、又は放置すること。」あるいは「著しく悪臭を発散させ、拡声機、ラジオ等により著しく騒音を発し、展望所、休憩所等をほしいままに占拠し、けんおの情を催させるような仕方で客引し、その他他人に著しく迷惑をかけること。」こういうことが禁止されておりますが、これはさっき申しました七条による四つの地域、この地域に限定されておるのですね。それ以外の地域、特にこの「国立公園等以外の富士地域——あなた方の説明によりますと、特に自然公園法などと別に、この法律をつくる趣旨というのは、そういう公園地域以外のところにも規制を及ぼすのだ、こういうふうに言われるわけなんですけれども、この十五条による行為の禁止が単に四つの地域だけに限定されておって、もっとそれ以外の地域、「国立公園等以外の富士地域」全体に及んでいない。なぜこれを及ぼそうとしないのか。ほんとうにこれはあなた方のほうにやる気があるのかどうかを疑わしある問題でもあると思うのです。  そこで伺っておるのですが、どうして、この十五条による規制を全体に及ぼそうとしないのですか。何か理由がありますか。
  73. 江間時彦

    江間政府委員 おっしゃるとおり、十五条の規制というのは、いわゆる利用地域にしかかかっておらぬわけでございますが、御承知のように、われわれが保全法考えております半径二十キロの地域の中には、いろいろな人口密集地域その他もございまして、現在の段階では、利用地域についてだけ罰則のかかる規制を置く、その他の地域については、一般法の規制範囲内でやってもらうという考えでございます。
  74. 木下元二

    ○木下委員 それはわかっていますよ。だから、なぜそうしておるのか。もっとほんとう富士地域を本腰を入れて保全をする。特にその国立公園地域以外も規制を及ぼすのだという趣旨で、この法律をつくるというならば、また、そういう角度から、この十五条というものもつくられたと思う。そうすれば、この四つの地域だけでなくて、もっと全域にこの規制は及ぼすべきじゃないか。そうでしょう。こういう点からも、あなた方が本気で富士の保全をお考えになっておるのか、非常に疑わしいから聞いておる。
  75. 江間時彦

    江間政府委員 御承知のように、毎回申し上げるとおり、半径二十キロの範囲という中には、人口密集地域も非常にたくさんあるわけでございます。われわれといたしましては、利用地域をかなりとることによりまして、その地域の中の規制から、まず始めるというのが考え方でございます。
  76. 木下元二

    ○木下委員 どうも非常に手ぬるい感じがいたします。  次の問題ですが、鳥獣保護区であります。これは山梨県側で言いますと、調べたところによりますと、一万七千ヘクタールであります。静岡県側は一万二千五百ヘクタールであります。そのうち、特別保護区というものを見ますと、山梨県側はごくわずかしか、じかも一カ所しかありません。これは面積をちょっと私のほうでつかんでおりませんけれども、もうごくわずかです。静岡県側は、これに対して四千ヘクタールあります。どうして、こう山梨県側の特別保護区の面積が少ないのか。これは県の姿勢も影響するのかどうか、私はよく知りませんけれども、非常に少ないのです。この点については、これは環境庁として勧告、指導できるという法制度になっております。一条ノ三というのがあります。それからまた、これは勧告、指導ではなくて、直接環境庁がこの特別保護区を設定することもできるというたてまえになっております。八条ノ二、一項、三項というのがあります。これは特別保護区の範囲を大幅に拡大をするように、そういう措置がとられるように私は強く要請したいと思うのであります。いかがでしょう。
  77. 江間時彦

    江間政府委員 先生指摘のように、静岡県側に比べまして山梨県側は少ないということは事実でございまして、われわれ非常に遺憾に思っております。先生の御指摘もございますし、今後特別保護地区の指定を積極的に推進してまいりたいと思っているわけでございます。
  78. 木下元二

    ○木下委員 面積、ちょっと伺っておきますが、おわかりでしょうか。幾らですか。ちょっと私のほうつかんでないので、特別保護区の山梨県の面積。
  79. 江間時彦

    江間政府委員 山梨県側は特別保護区はございません。
  80. 木下元二

    ○木下委員 静岡県側に四千ヘクタールもあるのに山梨県にないというのは、これは非常におかしいと思うのです。いまそういう答弁がありましたので、ひとつ早急にこれを進めていただきたいと思います。いつごろまでにという時期までほんとうは聞きたいのですけれども、ひとっこれはきちんとお約束いただいて、早急にこれにかかっていただく、こう理解してよろしいでしょうか。
  81. 江間時彦

    江間政府委員 先生の御理解でけっこうでございます。
  82. 木下元二

    ○木下委員 次は、演習場内では国立公園区域は面積が幾らあるのか。それから、特別地域の面積は幾らあるのか、おわかりでしょうか。
  83. 長坂強

    長坂政府委員 富士箱根伊豆国立公園といたしまして、平米で申し上げますが、千二百四十九万平米でございます。そのうち、特別地区が一千四十五万平米、それから普通地区が二百四万平米……(木下委員「私の聞くのは演習場内ですよ」と呼ぶ)演習場内でございます。
  84. 木下元二

    ○木下委員 その演習場内というのは、北だけですか。
  85. 長坂強

    長坂政府委員 北だけでございます。
  86. 木下元二

    ○木下委員 北の演習場内の面積がわかりましたが、これは標識はあるのでしょうか。環境庁からでもけっこうです。
  87. 江間時彦

    江間政府委員 現在設けられておりません。
  88. 木下元二

    ○木下委員 どうしてでしょうか。
  89. 江間時彦

    江間政府委員 この地域は一般人が利用なさる地域ではございませんので、演習をなさる当局が、演習に際して留意しておられれば十分ではないかという考えでございます。
  90. 木下元二

    ○木下委員 それはちょっとおかしいですよ。第一、一般人だって、演習のときは立ち入り禁止になっておりますけれども、そうでないときは入れるわけでしょう。それからまた、じゃ演習に来た隊員にそのことを知らせぬでいいのですか。隊員は一体どこから国立公園なのか認識できない状態ですね、標識がなければ。これはやはり隊員にも国立公園範囲を周知徹底させて、美観をそこなうというような行為のないように配慮すべきじゃないですか。
  91. 江間時彦

    江間政府委員 その必要性につきましていろいろ検討いたしまして、将来必要があれば設けたいと思います。
  92. 木下元二

    ○木下委員 どうも、この演習場内を自衛隊あるいは米軍が演習行為に使用しているわけでしょう。実際に演習をするときもあるし、あるいは休憩するときもあると思う。そういう場合に、みだりに木を切ったり、あるいは火をたいたり、そういうことのないように——これは国立公園の特別地域もあるわけですね。だから、これは当然標識を設けてやるべきだ。一般人だって中に入る場合だってある。一般人に対しても、それからまた隊員に対しても、一般人はめったに入らぬから、だいじょうぶだなんということでなくて、隊員はどんどん入っているわけですから、それを周知徹底をはかるということは当然必要なことですよ。  こういうことを見ましても、あなた方のほうでは、ほんとうにこの国立公園を本気で保護する気持ちがあるのかどうか非常に疑わしい。さっきも言われましたけれども、「富士山黒書」なんというものが出まして、いま富士山がたいへんな状況にあるというふうなことが発表されているわけですよ。この「大原生林は壊滅状態」にある、いまのままの状態でいくならば「大規模洪水は確実」だ、こういうことを、これを書いた学者の人たちが発表しておるのですよ。どうも、あなた方のお考えが私にはよくわかりません。  それから、もう一つ聞きますが、特別地域では、自然公園法による十七条三項所定の行為ですね、いろいろ禁止になっておりますが、そういう行為は、これは演習場内で自衛隊員等がやる場合には、四十条による協議の対象になっております。環境庁長官が協議をする。そういう協議は行なわれたことはあるのでしょうか。
  93. 江間時彦

    江間政府委員 われわれの理解するところでは、そういう関係施設がなかった、したがって協議がなかったというふうに思います。
  94. 木下元二

    ○木下委員 協議は一回も行なわれたことがないのですね。
  95. 江間時彦

    江間政府委員 私の記憶する限りにおいては、そのような協議が行なわれたことはございません。
  96. 木下元二

    ○木下委員 これは、たとえば自衛隊のほうでいろいろな標識演習場内に出しているのですよ。立ち入り禁止であるとか、あるいは注意の標識が出ておる。これは私が調べたところでは、国立公園地域内にも幾らかあるのです。そういうものを出す行為だって、これはこの十七条三項の禁止の対象でしょう。たとえば「広告物その他これに類する物を掲出し、若しくは設置し、又は広告その他これに類するものを工作物等に表示すること。」あるいは「土地の形状を変更すること。」あるいは  「工作物を新築し、改築し、又は増築すること。」こういう行為が、この十七条三項によって禁止をされ、許可を要する行為になっていますね。自衛隊等国の行為については、環境庁長官とその国の機関とが協議をするということになっている。  当然私はこれまでそういう協議も行なわれたのじゃないかと思っておったのですけれども、全然やられていない。しかし現実には、たとえばいまの立ち入り禁止であるとか、あるいは注意書き等の看板が自衛隊側によって出されておる。そうrると、自衛隊の行為は自然公園法十七条三項あるいは四十条によって一定の規制はあるけれども、事自衛隊に関しては、そういうものは適用なく、何でもやれるのだということですか。
  97. 江間時彦

    江間政府委員 自衛隊の施設につきましても、十七条の規制をのがれるものではないというふうに、われわれは考えております。過去の実績において、そのような協議が行なわれなかったのは、十七条に該当するような施設がなかったからであるというふうに、われわれは考えておりますが、調査いたしまして、もし十七条の協議を必要とするようなものがございましたならば、事務的に協議をしてもらうということになろうかと思います。
  98. 木下元二

    ○木下委員 こういう点でも、あなた方の姿勢というのは非常におかしいと思うのです。さっき私が指摘しましたように、自衛隊による標識立ち入り禁止、あるいは注意書き等の標識、そういうものを出すこと自体、これは十七条三項に当たるじゃないですか、当たりませんか。
  99. 江間時彦

    江間政府委員 先生の御指摘標識につきましても、大きさなり、規模というものを実際に調べてみないと何とも言えませんが、一般論といたしましては、軽微なものならば協議を必要としないというふうに考えております。その点は自衛隊であろうと一般のものであろうと区別する考え方は毛頭ございません。
  100. 木下元二

    ○木下委員 私、もう時間がありませんので、それはひとつよくお調べになって、しかるべき措置をとっていただきたい。私のほうは、大きさもみなわかっているのですけれども、ひとつ十分な措置をとってもらいたいと思います。  それから、次に移りまして、この北富士と東富士演習場を使用する米軍部隊でありますが、これは防衛庁のほうに伺いますが、どういう部隊でしょうか。
  101. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 東富士及び北富士演習場演習を実施しております部隊は、在日米軍の中の海兵隊でございます。第三海兵師団でございます。
  102. 木下元二

    ○木下委員 これは沖繩に本拠を置き、例のインドシナ侵略戦争における地上戦闘の主力軍であった部隊であります。この部隊に所属する米兵が、どんなに残虐な行為をベトナムでやってきたかということは、たとえば陸井三郎氏の「ベトナム帰還兵の証言」といった著書に出ております。それはともかく、私のほうで確認したところによりますと、ベトナム・ラオス協定以後も、この富士地域におけるこの部隊演習の規模と頻度は増大をしておるという状況のようであります。この点はいかがでしょうか。減っておるのではなくて、増大をしておる。
  103. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 特に最近五カ年間の状況を見まして、東富士北富士の米軍の演習状況が増加しているという記録はございません。大体同じような状態で使用されております。
  104. 木下元二

    ○木下委員 富士地域における演習状況について、少し詳しくお尋ねをするつもりでおりましたが、もう時間がありませんので聞きません。  一つお尋ねしたいのは、米軍部隊の使用は安保条約と日米地位協定二条四項(b)を法的根拠として行なわれておるということであります。私は、これについては二つの問題があると思うのです。  一つは、安保条約六条と、日米地位協定というのは「日本国の安全」と「極東における国際の平和及び安全の維持に寄与する」米軍に限って基地の使用を認めておるのです。この米海兵隊というのは、アジア、太平洋、インド洋、さらには中東方面までパトロールしております。これは公知の事実であります。まさに世界の憲兵然と行動をしておる、全地球上を出撃対象といたしております。こういうふうな部隊、日本の安全あるいは極東における平和安全というものと直接かかわりのないような行動に出る軍隊の駐留までを日米安保条約なり地位協定は認めていない。それが一つ。  それからもう一つは、いわゆる二4(b)でありますが、米軍が「一定の期間を限って使用すべき施設及び区域」、これに関して適用があるということなんですけれども、この東富士の場合には、一体一定期間を限った使用といえるのかどうか、きわめて問題なんですね。私のほうが調べた、また資料をいただいたものによりますと、一年のうち二百六十日ないし二百七十日も使用しておる。北演習場も東と同じことにならないという保証はないのです。この点においてもこれは一時使用を逸脱しておると思うのです。こういう意味で二重の違反があると思うのです。いかがでしょう。
  105. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 第一番の御質問は、たいへん高度の問題でございまして、あるいは外務省からの答弁に本来はなろうかと思いますが、私どもの理解しておりますところでは、その部隊がどういう行動をしているか、どういう任務を持っているかということは別の問題でございまして、少なくとも、それが在日米軍として日本にいる限りは、日米安保条約、日米安保条約の地位協定に根拠を置いて活動している在日米軍である、そういうふうに理解しております。  それから東富士北富士演習場の二条四項(b)の使用につきましては、二条四項(b)の規定に「一定の期間を限つて」ということばがございますが、これはかつて昭和四十六年にも、いろいろ国会において論議がございました際、昭和四十六年二月二十七日、衆議院予算委員会におきまして、いわば政府の統一的な解釈として二条四項(b)の「一定の期間」とはどんなものであるかということを御答弁した経緯がございます。  その中には「二定の期間」というのは、定め方としましては「年間何日以内というように日数を限定して使用を認める」という態様が一つございます。それから第二番目の態様としては「日本側と調整の上、そのつど期間を区切って使用」する。三番目には「米軍の専用する施設・区域への出入のつど」、たとえば飛行場のごときもの。それから第四番目の態様としては「その他、右に準じて何らかの形で使用期間が限定されるもの。」こういう態様がございますが、東富士北富士の場合には演習場の使用という特殊の態様でございますので、第二番目の「日本側と調整の上、そのつど期間を区切って使用を認める」ということで、現在これは演習場管理し、使用しております自衛隊、その演習計画の調整をやっております富士学校と米軍との間で、そのつど、たとえば年間の使用計画、あるいは一・四半期ごと、あるいは一カ月、あるいは一週間、そういうふうに小刻みな調整を行なった上で使用期間を定めている、こういう態様になっておりまして、地位協定二条四項(b)の一つの態様としては、妥当な態様だというふうに解釈しております。
  106. 木下元二

    ○木下委員 私はここでもう時間がありませんので、論議をいたしませんけれども、しかし、いま最後に言われた問題、衆議院予算委員会内容も援用して言われたので私も申しますが、日にちは同じかどうか、四十六年二月二十七日の衆議院予算委員会では、中曽根国務大臣が答弁いたしておりますが、米軍のほうが、こちらよりも使用量が多いというのでは主客転倒になる。だから、そういうふうな使用というのは、一時使用ということが言えないんだという趣旨答弁をしております。「一応時間的にいえば一年のうち半数以上向こうが使うというのでは主客転倒になるのではないか」だから、そういうのは一時使用の趣旨に反するんだということを言っておるのです。  ところがこの場合、私援用いたしましたように、一年のうち二百六十日、七十日も使用しておる。半数以上です。そういう使用というものが一体認められるのか、はなはだ疑問だと思うのです。その点、私は指摘をいたしておきます。時間がございません。  それで、最後長官にお尋ねしたいのですけれども、現在においても、この演習場演習状況というものは、相当な頻度と実態であります。ところが、これが一たんアジアに、あるいは世界に戦乱が起こりますときに、この演習場の使用状況はがらりと様相が変わるのですね。そのことは、朝鮮戦争あるいはベトナム戦争のときに、富士地域において激烈な、しかも大規模の演習が行なわれたことにはっきりあらわれておるのです。結局アジアもしくは世界に戦乱が起こるとき、これと結びついて富士地域での演習が活発化するということなんです。  つまりこれは、アメリカの世界における戦争行為のために、この演習場が過去において利用されてきたし、これからも利用される危険があるということなんですね。将来において第二、第三の朝鮮戦争あるいはベトナム戦争が起こらないという保証は全くないのです。アジアのどこかで戦乱が起こる、これには必ずといえるほどアメリカがかんでおったことは、過去の実例が示しております。そういう場合には直ちに米軍が介入していく。そのための実戦さながらの演習がこの富士山ろくで行なわれるということなんです。その戦争が日本の国の利害にかかわりがあろうとなかろうと、何のかかわりがなくても、こうした演習がやられるということなんです。世界のどこかで紛争が起こる。そうすると米軍が富士演習場演習をして出撃していく。これは日本の安全あるいは極東の安全にさえかかわりないことなんですね。こういった点、長官としては一体どのようにお考えになっておるのでしょうか。
  107. 三木武夫

    三木国務大臣 極東に紛争が起こって、そしてそれに米軍が介入する。北富士演習場演習をしておる海兵隊が行くときは、やはり直接そこで出動すれば、事前協議の条項にかかる。そこから出動すれば、そういうことに私はなると思う。だからそういうことで、演習場でやっておる海兵隊が直接戦場にそこを基地として出動するようなことにはならないが、日ごろの演習というのは、そのために演習場があるわけですから、そういうためには結局、いろいろなことを考えていけば心配の種ばかりですからね。やはり平和というものがあるということでなければ、いろいろな戦争の場合——世界戦争は、いま私はないと思っていますよ、あなたはあると思っておるのかもしらぬが。大きな世界戦争はないと思っておるけれども、それはあるというような場合を考えておるのだといえば、いろいろな心配の種がありますよ。  ただ、やはりこういう軍事的ばかりでものを考えないで、平和というものを維持していかないといろいろな、次々に原爆戦争でも起こったらどうかというようなことまで考えてくれば、もう人間は不安で生きていかれないですから、そういう意味——ことにアメリカ自身もニクソン・ドクトリン以来、アジアに対する軍事的介入というものはコミットメントしておる以外は介入をしないという一つのニクソン・ドクトリンでありますから、いままでのベトナム戦争のようなことが、私はそうひんぱんにあるとは思っていないわけでございます。
  108. 木下元二

    ○木下委員 もうこれで終わりますけれども、いまの演習場から出撃する場合は事前協議の対象になると言われるけれども、出撃になるのかどうかはともかくとして、これまでそういう事前協議などは全然行なわれずに、ここで演習がやられて、そしてベトナム方面に出ていった、これはもう事実ですよ。こういうふうなことに利用される演習場というものは、私はないほうがよいと思う。この点は環境庁長官も同意見だと思うのです。この富士演習場などはないほうがよい、これは理想としてお認めになると思うのです。この理想に近づけるために、一体長官としては、どういう努力をこれからされようとしておるのか。
  109. 三木武夫

    三木国務大臣 富士のようなああいう地域演習場がないほうがいいか、あるほうがいいかといったら、全部ないほうがいいと国民は言いましょう。ただ、あなたとの立場の違いは、自衛隊であるとかあるいは安保条約、そういうものを否定する立場と、われわれはそういうものがやはり日本の安全保障のために必要である、そういうことで演習場というものの必要を認めておるわけでありますから、そこに根本的な違いがある。しかし、その演習場も、どこかあれにかわるところがあったら、私も演習場をかえたらいいと思うのですが、ああいうところは相当な広い地域を要しますから、なかなか容易に代替地がないというところに、われわれの悩みがある。そういう条件のもとで、できる限り自然環境の保全というものに害を与えないような形で、それは自衛隊に対しても、米軍に対しても、あるいはまたわれわれとしても、できるだけそれは置かないほうがいいのだけれども、やむを得ないのですから、そういう条件のもとで、できる限り、そのことが自然環境保全にマイナスを少なくするというふうに努力をいたしたいと思うのでございます。
  110. 木下元二

    ○木下委員 もう質問を終わりますが、結局長官と私のほうの立場には基本的な違いがある、これは事実でしょうけれども、あなた方の立場に立っても、こういうところに基地やあるいは演習場がないほうがよい、これはお認めになっている。お口では代替地があればということを言われるけれども、それでは一体その代替地をさがすために、どれだけの努力をこれまでしてきたのか。あるいはまた北と東と二つ演習場がある。これはむしろ東一つにまとめることだって、あるいは逆の場合だってできるんですよ。特にこの基地の使用状況から見て、二つもなくてもいいじゃないかという問題だってあるわけです。そのために、では一体長官は、それだけ言われるのなら、過去において、どれだけの努力をしてきたのかということを私は聞きたいのです。おそらくこれは何もされていないと思う。結局、長官の立場というのは、自然環境よりも軍事優先を認める立場ではないか。このことを私は指摘をして、また別の機会に論議をすることにして、質問を終わりたいと思います。
  111. 角屋堅次郎

    角屋委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十九分休憩      ————◇—————     午後四時十五分開議
  112. 角屋堅次郎

    角屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。  島本虎三君。
  113. 島本虎三

    ○島本委員 もうすでに最後の総締めくくり的な部分に入ってまいりました。それで、これはおもに大臣を中心にして、その意見を聞きたいと思っているのです。ただ、この中でどうしても納得できない一、二点は、これは専門的に関係部署から答弁してもらいたい。  まず、富士地域の相当部分ですが、これはいままでの質疑によって明らかになりましたように、国立公園に指定されておる。それと同時に、自然公園法に基づいて、現に自然の保護と利用の促進がはかられているわけであります。また、自然環境保全法によっても、近く一部については自然環境保全地域の指定が行なわれて、そして自然の保護をはかられるように当然なると思うわけであります。それにもかかわらず、何ゆえに重ねてこのような特別立法を行なう必要があるのか、ここが問題だと思っています。皆さんもこの点は十分ただしています。しかし、まだまだこれに対して十分解明はなされておられないと思いますが、この点いかがですか。
  114. 江間時彦

    江間政府委員 先生の御指摘のように、自然公園法あるいは自然環境保全法というもので、十分ではないかという考え方もあると思いますが、われわれは富士保全法によりまして、やはり相当な実益があるというふうに考えております。大ざっぱに言いますと、三つばかり実益があるというふうに考えておるわけでございます。  まず、第一点といたしまして、この法律は自然公園の区域を越えて、富士山と一体的に考えるべき周辺地域全体を規制の対象としております。この点につきましては、自然公園の区域を拡大して、あるいは今後自然環境保全法の地域指定を行なえば、同様の結果が得られるではないかという御意見もあると思いますが、富士地域の中には人口密集地域や、ある程度の産業活動が行なわれている地域もございますし、従来の公園指定などの手法をもってしては、富士地域全体の指定をはかるということが不可能だというふうに考えるわけでございます。  第二点といたしまして、富士地域の自然環境の保全をはかるためには、ひとり環境庁だけではなく、関係各省庁がそれぞれ所管しております環境保全に関連する諸事業を総合的、計画的に推進していくことが必要でございますが、この法案に基づく富士地域保護利用整備計画の策定、実施されることによりまして、環境庁の指導のもとに、これが可能になるというふうに考えるわけでございます。  第三点といたしまして、利用地域の指定の制度は、この法案で初めてわれわれが試みてみる制度でございまして、現行の自然公園法では、保護計画を策定し、特別保護地域あるいは特別地域、普通地域などの区分のもとに、風致景観保護のための規制を行なうこととなっておりますが、いわゆる利用の観点からの規制の制度は、現在設けられていないわけでございます。自然公園といたしましては、単に風致景観に支障があるかどうかということだけではなく、当該地域の利用目的に合致しない施設は、これを認めないことというのが理想でございまして、この法案による四種類の利用地域を定められた地域につきましては、このような規制が可能になるというふうに考えておる次第でございます。
  115. 島本虎三

    ○島本委員 このメリットは、長官もそのように考えますか。
  116. 三木武夫

    三木国務大臣 そのように考えます。
  117. 島本虎三

    ○島本委員 そうすると、この第一の自然公園区域を越える全体を規制の対象にして、自然公園法並びに環境保全法、こういうようなものと見合わして、完全にこれは保全をはかりたい、こういう趣旨だ。そうだとすると、富士地域には北富士、東富士二つ演習場があって、毎日のように、この演習場は使われているわけです。毎日のようにこの地域演習が行なわれる、こういうふうになると、自然が破壊されているということと裏表、全体を規制の対象に指定するんだ、そういうことが必要だといいながら、演習は毎日のように行なわれて、自然破壊が行なわれている。結局、富士地域の自然を真に全体の規制の対象にして、これを守ろうとするならば、演習場をまず撤去するのが先決問題だということになる。できるとできないとにかかわらず、それはそういうふうになるわけです。  三木長官も、去年だったと思いますが、本委員会で、富士地域演習場がないほうが好ましいし、他に適当な場所があれば富士演習場がないほうがよい、こういうように、たぶんこの委員会で答えたように私、記憶しております。そうすると、こういう立法を考えるよりも、まず演習場の撤去を考えるのが、真の富士環境保全になるのじゃないか。これについて、演習場を撤去することについて、長官の所信をまず承りたい。
  118. 三木武夫

    三木国務大臣 私がそのようにお答えをしたことは事実でございます。いまも、富士周辺演習場があるということは、環境の上からいって好ましいとは思わないわけであります。ほかに代替地と申しますか、そういうところがあれば、私はかわったほうがいいという意見でありますが、どうも日本のような狭い国土の中においては、あれだけの広範な演習地というものが、なかなか入手できないところに、好ましいことではないけれども、これはやむを得ない。そういう条件のもとで、できるだけ環境の保全というものに心がけていきたいと考えるわけで、その点は残念ながら、わが僚友の島本委員とは、日本の防衛力の問題について見解を異にしまして、あるいはそういうふうなことで演習場は要らぬじゃないかという御指摘があるかもしれぬが、われわれとしては、自衛隊の存立を国の安全のために必要だと考え、それを補うための安保条約というものを肯定をしている立場でございますから、他の点については意見が一致することが多いと思います。しかし、その点については見解を異にして、この点について、どうも議論が平行線になることは残念に思うのでございます。
  119. 島本虎三

    ○島本委員 実際はもう一歩というこの一歩が踏み出せない、それが見解の相違だ、立場の相違だ、こういうように長官おっしゃっておられる。この一歩というところが、そもそも富士全体を保全するという高邁な理想でありながら、それだけはうしろ向きになる。これはやむを得ないと思う。地元のほうにも私は数回行ってまいりました。だれの口からもこのことを聞かされます。演習場の使用を認める代償として、政府は、この法律案を出したんだ、こういうように言われている。いままでの質疑応答でも、われわれはある程度この確信を得ているわけです。いわゆる演習場の使用を認める代償として、この法律案を出したのですか。
  120. 三木武夫

    三木国務大臣 代償ということではないが、こういう法案が出てきた一つ動機であることは、これは否定しません。それはなぜかというと、御承知のように、国立公園に指定しておるのは富士山山ろくまでと、あそこに湖がたくさんある、そういうところは指定になっておりますが、しかし、その周辺の、たとえば富士宮市であるとか、富士市であるとか、御殿場市というようなところは、全然公園の指定区域ではないわけです。ところが、とにかく百キロくらいの地域富士山がありますから、近時そういう観光開発というのですか、そういうところが非常に集中的に行なわれて、富士全体の環境を保全するために無視できないという問題が起こってきているわけであります。そういうところで、今度の場合は、地元からもそういう声があったのですよ。そうしていろいろな下水とか、湖にしてもよごれていきますから、何か特別にそういう地域の保全ということについて考えてもらうためには、全国一律のものよりも、特別立法で規制とか国の助成というものを少しかさ上げしてもらいたいという声が強くあったわけです。ところが、それが今日まで、その必要をわれわれも認めておったわけですが、こういう法律提案するまでには至らなかったので、これが出てきたものですから、ぜひとも年来のこういう一つ地元の主張を生かしてもらいたいということで、促進の動機にはなり得た。しかし、これと取引するために、この法案提案をしたというふうには、私は思ってはいないわけでございます。
  121. 島本虎三

    ○島本委員 その点になりますと、長官第一回目は演習場、二回目はこの動機、これについてまだ歯切れが悪い。長官が格調の高い英国を訪問されておりましたその際に、この委員会は継続されていた。そして開かれていた。その中で理事者を相手にして詰めていた。しかし、長官がいかにそれを言っても、私どもは演習場の使用を認める代償として政府がこれを提出したのだ、もうすでにそこまで確証を得ているのです。ですから、そうだと言ってもらいたい。そうならばそれでいいし、そうでなければそうでない、やりようがあるのです。  これはもう何回も言う必要はございません。法律案を準備したのは一昨年の昭和四十七年五月ごろなんです。ところが、富士との関係があるかどうか、このことはもう民法六百四条、これを発動ずる四十七年八月一日、このころになって急速度にこれが出てきておるのです。そして首相官邸で政府考え方をきめているのです。そのときに、富士演習場を従来どおりに使用する、そのかわり二一%返還する、そのかわり富士保全法をつくる、こういうのをきめて、そして八月の三日に、県側に対してこれを言ってあるわけです。  こういうようにしてみますと、一連ずっとあって、それからいろいろな協定、協約が結ばれているのです。その協定、協約が結ばれているその中に、「北富士演習場の使用に関する措置」これは四十八年三月三十日にやられている。そのほかに前回でまっ先に問題になったのは、「富士地域環境保全整備特別措置法に関する覚書」土井委員がついたように、これは四十八年四月三日、本法案が出される前に、もうすでに本法律ということで、この協定が結ばれているじゃありませんか。長官もこれに対しての意思表示がはっきりあるわけです。穏当を欠くと、あなたはおっしゃっておる。そうでございましょう。そういうようにして、一連のこういうような動きの中にこれが出てきたし、そしてこれによって富士を保全するということになると、演習場として富士を破壊する代償として富士保全法をつくるのだと。本来ならば、他の法律によってもできるのだけれども、ことにかさ上げをして、そしていいように見せかける、羊頭を掲げて狗肉を売ったのだ、こういうようなことにはっきりなるわけであります。そしてこの点についても、やはり八月の二十三日、山梨県の田辺知事も、こういうような意味の談話を発表しておるのです。  したがって、いま局長も、この点に対しては、演習場とそしてこの富士保全法提出の関係は無関係であるとはいえない、苦しいけれども、長官のようなこういう答弁をしておるのです。無関係であるとはいえないということは、関係あるということなんです。関係あるということならば、そうですよということになるわけです。どうもこの点、第二回目、演習場の使用を認める代償として政府はこの法律を出したんだ、私もそういうように断定せざるを得ないわけでありますが、それでもまだ違うとおっしゃいますか。
  122. 三木武夫

    三木国務大臣 どうでしょうかね。富士山周辺というものは、やはり日本の中においても富士山は象徴するようなものですね。そういうものですから、何も取引でなければその環境保全をするということを考えないということは、それはやはり政治としてはおかしいですよ。あの環境というものは保全をしたいと政治が考えることは当然のことで、それは日本国じゅう美しくすることは必要ですけれども、特に日本を象徴するような地域として富士山というものの環境保全に力を入れるということは、政治として当然に考えなければならぬ責任です。  外国人でも、私はときどき聞かされるのだが、あんなに潔癖な日本人が富士山なんかをどうしてあんなによごすのだろうかという非難を聞くわけです。霊峰という名前をいいながら、そんなに——私も環境週間まてに一ぺん見たいと思っているのです。いろいろなごみの山になっているというのですからね。  そういうことですから、あの環境を、やはりよい環境を保全したいと考えることは当然のことで、動機は、いま言ったように促進したんですよ。むしろ政治がもっと早くから考えるべきであったぐらいで、それは怠慢だと言われてもしかたがないことなので、(島本委員「代償でしょう」と呼ぶ)だから取引で、その取引がなかったら、富士環境は保全しなかったのか、こういうよなニュアンスを持つでしょう、取引ではないかと。そういうことがあるなしにかかわらず、あの環境の保全というものは、もっと早くから考えなければならなかったのだ。だから取引ということばは、私は、ここでは承認はいたしません。しかし、ああいう法律ができた動機には、それは一つの促進の動機にはなったという点は言われるとおりだと思います。
  123. 島本虎三

    ○島本委員 では、これは無関係であるとはいえないと言った江間局長の見解を伺います。
  124. 江間時彦

    江間政府委員 ただいま三木長官答弁いたしましたように、われわれは、かねてから富士山の保全について検討しておった——確かに私か無関係でないと申し上げたのは、演習場問題がこの法案検討する引き金になったというふうな意味で申し上げたのでございます。決して取引として、これが成立したというふうな趣旨でお答えしたものではございません。
  125. 島本虎三

    ○島本委員 具体的に、無関係であるとはいえない、こう言ったことはそのまま、否定するのですか、肯定するのですか。
  126. 江間時彦

    江間政府委員 私がお答えしたことばは、否定いたしません。
  127. 島本虎三

    ○島本委員 そうすると、やはりその間に一連の関係と協議が行なわれているのです。山梨県知事が官邸に呼ばれて、このことを申し渡されているのです。もう準備しなさい、予算はつけますよと言われて、帰って声明さえ発表しているのです。それなのに、偶然一致したかのような言い方は、大臣としては少し歯切れが悪過ぎる。私としては、その点では少し——無関係であるとはいえない、それだったら、もう関係があるということになるのだから、幾らきれいに言ったってこれは関係がある、そういうようなことになりましょう。  それにいたしましても、富士保全法というのが出る前に、山梨県側から「富士保全法(仮称)案要綱」なるものがきておりますが、その中にいろいろな要件が盛られております。そして周辺半径二十キロ以内にしてもらいたい、こういうようなこともいっているわけです。この立法は、環境庁が中心になってやったんですか。これらの要請に基づいて、おやりになったのですか。
  128. 江間時彦

    江間政府委員 私、現在手元に山梨県から提出されました「富士保全法(仮称)案要綱」というものを持っておりますが、こういうことがあったことは事実でございますが、具体的な法案の作成におきましては、環境庁が自主的に検討したものでございます。
  129. 島本虎三

    ○島本委員 半径二十キロ以内にこれを及ぼすというのは、偶然ですか、これは一致していますね。そのほか、利用細分、こういうようなものについても、それぞれ用語は違っておりますが、趣旨は通じております。しかし、独自でやったとするならば、まことにこれはへまな法律だといわざるを得ない。もう順次、その法律内容等についても、これはひとつあとからお伺いして、はっきりしておかなければならない点があります。  それと同時に、長官ほんとう長官が言った霊峰富士、この霊峰富士というにしてはあまりにも行政は富士を破壊する方面ばかりやっているじゃありませんか。いま、あの周辺に道路がたくさん予定されているのです。前回もこの問題を二、三回ついたのですが、御殿場バイパス、東富士有料道路、こういうふうなのも道路公団によって、大蔵省で事業が採択されて予算的に事業を認める段階にまでもうきてしまっているわけです。そして、この事業として認可がされていますから、申請が建設大臣へ出たときに、これは判断するということにもうなっているわけです。そのほかに、公共事業としての御殿場バイパス、百三十八号、建設省の中部地方建設局がこれをやっていなさる。これは計画は四十八年から五十二年までという計画である。そのほかに、西富士有料道路、こういう計画もある。国道百三十九号線バイパス、別線になっている。そのほか、これまた山梨県に対してのいろいろな計画もある。それから静岡県にもまた計画がある。  こういうふうにしてやってみると、自然を保護するのだといいながら、こういう計画が国の手によって進められているということは、どういうことなんですか。やはり行政が法律内容と一致していない、そうでなければうしろ向きの行政を、それぞれ縦割りの行政ですからばらばらに行なっている、こういうようなことになるじゃありませんか。この有料道路並びに他の道路、特にその周辺道路に対してはもう何か系絡するといいますか、締結するといいますか、はち巻をする、こういうふうな道路さえあると伺っておるのです。道路計画そのものをもう一回チェックしてほんとうにやるのが、これが利用計画ではないですか。そういうふうなのがはっきりしないでおいて、そして富士を保全するといっても、富士を破壊しておいて、これを保全したというのにつながります。まさに羊頭を掲げて狗肉を売るような行政のスタイルである、こう言わざるを得ないのであります。  大臣、これはあなたは調整権があるのでありますから、当然こういうような調整権によってほんとう富士を保全するために、停止命令なり、十分これに対して、再考をここに促したほうがよろしいのではないか、こう思います。大臣の決意をお伺いしておきます。
  130. 三木武夫

    三木国務大臣 いま御指摘のような道路は、正式にきていないが、十分に検討をいたします。環境保全の立場から、私のほうで検討をいたします。
  131. 島本虎三

    ○島本委員 ほんとう富士を保全する、行政のほうも一つの方向を向いてそのまま実施する、こうであるならば、前回もこの委員会で質問され、答弁に窮した一つの問題、産業廃棄物、ヘドロのスラッジ、こういうようなものを富士周辺へ行って捨てているではありませんか。いわく、肥料にする。木のくずが肥料になるというのです。ならぬわけはないですが、そういうふうにして捨ててある。一方、富士周辺をごみの捨て場にして、こういうふうなのが環境を保全しているということになったら、これは困る。この辺の一般廃棄物でなく産業廃棄物、こういうふうな毒性のあるものさえも、これを二十キロ以内で投棄している。海へ捨てたら悪いからこっちへ持ってきて捨てている。こういうような事態が指摘されました。これは問題じゃないですか。  また、北富士のほうへ行って山の上から見ると、  一般廃棄物が山のように捨てられてある。行政指導はこういうようなところからしないといけないではありませんか、長官富士周辺、霊峰であるといいながら、産業廃棄物一家庭廃棄物、その捨て場になって、これが何の保全ですか。やはりこの点は重大な関心を寄せてもらいたい。これはいかがなものですか。
  132. 三木武夫

    三木国務大臣 私もたいへんに、いろいろな人から富士がいろんな廃棄物であまりにもよごれて  いるという話を聞きまして、ああいうような地域までも環境保全というのができないようでは、これはあまり環境保全環境保全ということも言えないというくらいにすら思うわけでありますので、私自身の目で一ぺん見てみたい。だから環境週間の前に一ぺん私は行く予定であります。そしてどういうふうに将来、そういうふうにいろいろな廃棄物でよごれていく富士環境を保全するかということを考えてみたいということで、責任を感じている次第でございます。
  133. 島本虎三

    ○島本委員 それに対して行政当局は、いまどのようにして処置しておりますか。
  134. 江間時彦

    江間政府委員 確かに富士を中心としまして、半径二十キロの地域にはかなり人口がございますし、またかなりの産業がございます。産業廃棄物もございまして、こういう点につきましては、われわれもその完全な処理に十分努力をしてまいりたいと思うわけでございます。  そのほか北富士地域におきまして、かなりなごみが集積されておるということもわれわれは知っておりまして、これらの処理につきましては、万全の処置をとってまいりたいと思うわけでございます。
  135. 島本虎三

    ○島本委員 これは行政だけはきちっとしておいてやってもらいたい。少なくとも産業廃棄物を東富士に捨てるなんということは、これはどうなんですか。このことが現在行なわれているということ自身がおかしいじゃありませんか。これに対して、どっちのほうでしょうか、答弁できますか。——呼んでませんからだめですか。  それはそれで、これは十分注意させ、一般廃棄物さえも投げているのは、県、市町村の責任ですから、そういうような点はきちっと指導すべきであります。産業廃棄物はもう犯罪に類するような行為ですから、これも厳重に取り締まってもらいたい。その理由は、肥料として森に与えるのだといいますけれども、こういう毒素を持っておるヘドロ、海に捨てちゃだめなのを山に捨てて肥料になるのでしょうか。こういうような、とんちんかんなことによって富士を荒らしておる。  こういうような行政をそのままにしておいて、そして法律だけやって演習地を認めさせようとする、これはなかなか理解することはできない。ことに昨年も不発弾事故のために人命がだいぶ失われた。おそらく前に岡本委員も、この点でお聞きになっているでしょう。そういうように承りました。そしてこの事故防止のための政府の対策、いろいろ考えられておるようです。これは着弾地点の清掃であるとか許可前に点検するとか、いろいろ考えられているようであります。ただ、この演習場富士地域の自然を破壊しているだけではございませんで、地域住民の命に非常な危険を与えているということにもなる。このような演習場に対しては、一日も早く撤去をするというようなことこそ、自然環境を守り、国民の生命と健康を守るゆえんなんです。したがって、この法律案を成立させることによって、政府富士演習場を恒久的に使用する考えなんですか。
  136. 三木武夫

    三木国務大臣 恒久的ということではありません。いま言ったように、だれの目でも、だれも国民の中で、ああいう環境のもとに演習場があるのはけっこうだと言う人はないと思います。だから将来、軍事上といいますか、そういう必要性、いろんな変化というものは予想されますから、そういうことで、永久であるということは考えてはいないわけでございます。
  137. 島本虎三

    ○島本委員 そうしたら、時限を付すとすれば、いつごろになりますか。
  138. 三木武夫

    三木国務大臣 それはなかなかむずかしい問題でございます。たとえばいろんな軍事上の変化というものもあるし、あるいはまた代替地というようなものが、いまはもういろいろ考えておってもないのですけれども、しかし全然そういうことはないともいえぬでしょうから、いろんな点でそういうことを考えてみますと、何年先とかいうことは、ちょっと申し上げるわけにはいかぬと思います。
  139. 島本虎三

    ○島本委員 狭いといいながらも、日本はまだまだ土地がある。霊峰であるといいながらも、富士の週辺に演習場を、それも二カ所も持っている。こういうようになると、当然保全するということばがもう完全に裏切られるようなことになっているわけです。まさに霊峰といいながらも、冷や汗をかきながら霊峰ということばが出てくるじゃありませんか。ですから、これはやはりもう近い将来考えなければならないのじゃないかと思いますが、そのための努力は、やはりするつもりですか、長官
  140. 三木武夫

    三木国務大臣 それは努力するつもりでございます。
  141. 島本虎三

    ○島本委員 じゃ近い将来というのは、まあ五年くらいをめどにして考えておるのだ、こういうように理解して、次に進めてよろしゅうございますか。
  142. 三木武夫

    三木国務大臣 何年という年限については、私はここで、そのことはそのとおりだとお答えはできません。私は、年限を切ることはできない、こう申します。
  143. 島本虎三

    ○島本委員 年限を切ることができないなら、やはり半永久、租借地のように九十九年ですか。
  144. 三木武夫

    三木国務大臣 それは島本委員の御解釈でございますので、そういうことになれば非常に好ましいと思うのでございますが、しかしそれが、いま五年というお話であったのですが、五年かあるいは九十九年か、そういうふうにいろんな不確定な要素があるわけですから、そういうもののことを  いろいろ頭に入れながら考えるわけであります。いま現にそういうものが起こってないのですから——そういうことも起こり得ないといえないわけですから、そういうことで年限を切って、具体的にこういうことがある、それなら、ここまでにいくのに何年というふうにできないわけですから、年限を切ることはできませんというのがお答えです。
  145. 島本虎三

    ○島本委員 年限を切ることはできませんが、これはもう使用しないように努力する、また他に移すように努力する、こういうようなことですか。この際ですから、その辺もうちょっとはっきり考え方を聞かしておいてください。
  146. 三木武夫

    三木国務大臣 いまの演習の目的が達成できるような適当な地域が見つかるならば、かえることにやぶさかではありません。
  147. 島本虎三

    ○島本委員 見つからなくてもいいです。
  148. 三木武夫

    三木国務大臣 見つからないのにかえる そこへいったらあなたと根本的ないろんな考え方が……。
  149. 島本虎三

    ○島本委員 二つも三つも要らぬでしょう。
  150. 三木武夫

    三木国務大臣 そういう軍事的ないろんな必要というものからきておるわけでありますから、やはりほかに適当な代替地かあれば——私でもなるべくああいう富士山のところにないほうがいいと思っているのですから、そういうことですから努力はいたしますが、いま見つかってないのですから、年限を切ることの答弁を、国権の最高機関でいたしますことは適当でございません。
  151. 島本虎三

    ○島本委員 昨年、昭和四十八年ですけれども、三月三十日に、「北富士演習場の使用に関する措置について」という閣議了解がございました。その中で、国有地二百十ヘクタールを地元に払い下げるというふうなことになっていたのですが、これまどうなりましたでしょうか。
  152. 田代一正

    ○田代政府委員 お答えいたします。  昨年の三月三十日の閣議了解に基づきまして、「林業整備事業を実施するため、国有地約二一〇ヘクタールの払下げを行なう。」、これは地元の皆さんに対して、そういうことをするということでございますが、その後この仕事の内容といたしましては、まず、防衛施設庁でもって国有地を正確に計測いたしまして、それが済みましたあとは防衛施設庁から大蔵省に引き継ぎます。大蔵省でもってその処分について考える、こういう仕組みになっているわけでございまして、防衛施設庁といたしましては、昨年の夏以来、計測をいたしてまいったわけでございますが、近くこの計測を終わるという段階になりました。したがいまして、近く大蔵省に事案を引き継ぐということに相なる段階に至っております。
  153. 島本虎三

    ○島本委員 そうすると大蔵省では、これをどのような団体に払い下げることになるのですか。
  154. 川崎昭典

    ○川崎説明員 本地につきましては、大蔵省では、国有財産中央審議会に御審議をお願いしてございます。その審議の決定を経まして、今度は関東地方国有財産審議会というものにおはかりして具体的にきめる、そういうことで、まだ正式にだれに払い下げるということをきめたと申し上げる段階ではございませんが、閣議了解がございますので、大蔵省としては地元のいわゆる恩賜林保護組合、これに払い下げたいということで検討いたしております。
  155. 島本虎三

    ○島本委員 恩賜林何でございますか。
  156. 川崎昭典

    ○川崎説明員 恩賜林保護組合でございます。
  157. 島本虎三

    ○島本委員 そうすると、林業整備事業として払い下げるのですか。——もしそうだとするならはこの林業整備事業というものはどういうことをやるのですか。
  158. 川崎昭典

    ○川崎説明員 植林の用地として払い下げるということでございまして、いわゆる植林事業でございますが、林業整備と特に申しておりますのは、以前その地に樹木が植わっておった、現在は植わっていない、再びもとの状況に返すという意味があろうかと考えます。
  159. 島本虎三

    ○島本委員 それは県のほうの林業指導になりますか、林野庁のほうの指導になりますか。
  160. 川崎昭典

    ○川崎説明員 事業内容につきましては、林野庁や県の指導を受けるということもあるかと思いますが、事業自体は、恩賜林保護組合の事業でございます。これは恩賜林保護組合と申しますのは、一部事務組合と申しまして、地方公共団体になっております。
  161. 島本虎三

    ○島本委員 この恩賜林保護組合、ここでは昭和四十八年三月三十日午前十時、閣議決定直後、約六十ヘクタールの土地を富士急へ貸すという議決がなされておる。現在十五ヘクタールは貸してある。過去において三百ヘクタールは富士急へ売却しておる。今度は、閣議決定がなされた、その日にもうすでに富士急へ六十五ヘクタール貸すという議決を組合でなしておる。一体林業整備事業というようなものはどういうことなんですか。富士急へ貸すことが林業整備事業になるのですか、林野庁。
  162. 松形祐堯

    松形説明員 お答え申し上げます。  実は、私ども、林業整備事業といたしまして、恩賜県有財産保護組合から、あるいは県を通じましても、何らまだ連絡を受けておりません。したがって、内容について実は承知していないという段階でございます。
  163. 島本虎三

    ○島本委員 大蔵省、そうすると、このいわゆる恩賜林保護組合、これはもう当然県有地でしょうけれども、借地料は入ってくる、爆撃弾のこの立木の補償はもらえる、被爆弾のこの補償もまたもらえる、経営阻害の補償もまたもらえる。昭和四十四年までに、財産がもう七億ほどできているという話であります。これは私の話じゃない。四十八年六月十九日の内閣委員会ですか大蔵委員会ですか、そこでこの論議が行なわれているのです。  こういうふうになりますると、肝心の富士保全のために、また二百十ヘクタール、これだけをやる。やるとしながらも、全部これらが富士急のほうにくらがえさせられる、こういうような林業整備計画なんかあるものですか。これはやはり再検討を要するのではないかと思うのです。こういうようなことでは、これは国の行政として適当でしょうか。
  164. 川崎昭典

    ○川崎説明員 ちょっと手元に資料を持っておりませんので、正確な数字は申し上げかねますけれども、恩賜林保護組合は、明治十何年に設立された地方公共団体でございまして、設立当初は、現在の所有地よりもはるかに広大な面積を所有しておったわけでございます。保護組合としましては、土地面積を回復して、林業整備をしたいということがございます。  それで、ただいま御指摘の六十ヘクタールでございますか、売り払うという議決をしたという旨でございますが、これは貸し付けるという議決を一たん、したことがあるようでございますけれども、その後、実行しないということで、そのままになっておるようでございます。
  165. 島本虎三

    ○島本委員 まあ、この問題ではピリオドを打ちたいと思うのですが、なおまた、疑惑が出てきた。過去において三百ヘクタール、これはもう富士急に売却しておる。現在十五ヘクタールを貸与しておる。そして現在それが行なわれないと言いながら、三月三十日の閣議終了後に六十ですか六十五ヘクタールですか、を富士急へ貸すという議決をこの組合がしているのです。その組合が、また二百十ヘクタールを今度は払い下げる。これが一つの国の行政として適当なのかどうか。どこがチェックしておるのですか。防衛庁ですか、大蔵省ですか、林野庁ですか。
  166. 川崎昭典

    ○川崎説明員 この地域一帯の土地の所有権については、明治以来、かなり変遷がございますが、御指摘の三百ヘクタールと申しますのは、これは大正年間に、現在の所有者は国有地または民有地となっておる土地でございますが、それを恩賜林保護組合が富士急に売り払ったことがあるという事実を御指摘されておるかと思いますが、その当時と現在とは事情も変わっておりますので、私のほうとしても、これ以上は、ちょっと御答弁を申し上げかねます。
  167. 島本虎三

    ○島本委員 ここは環境保全なんです。環境保全のための立法審議中なんです。その中で、演習場と関係ないと言いながらも、条件として二百十ヘクタールを恩賜林保護組合のほうに払い下げたい。恩賜林保護組合の過去においては、三百ヘクタールも富士急へ売っているし、現在十五ヘクタールを貸与していますね。そしてまた六十ヘクタールを貸し与えたいという議決までしておる。また二百十ヘクタールを、そこへやるのだ。これが行政上妥当なのか、適当なのか。このチェックをどこがしておるのだ。これをやられたならば、全部環境は台なしじゃないですか。そこへ防衛庁のほうでは、演習場を継続使用したいために、こういうようなこそくな手段をとっている。これは重大ではありませんか。これはあくまでも私としては、土地そのものと林業整備事業というもの、これがどうもわからない、一致していない、単なる名目のような気がする。いま国有地の払い下げは、またしても恩賜林保護組合のほうへしたいと言っておる。そこで、いまのような状態だ。もうすでに大会ですか、総会ですか、そこできめている、こういうようなことです。  こういうようなところへ国有地を払い下げるということに対しては、長官、これは適当にして妥当だと思いましょうか。国有地の払い下げ、こういうようなものは、富士地域の自然を守るためにこそ利用されて払い下げになると思う。しかし、破壊するために使われるようなこのやり方は、まさに中止すべきではないかと思いますが、長官の所見を承ります。
  168. 三木武夫

    三木国務大臣 私もそのいきさつを、いま政府委員に聞きますと、入り会い権も持っておったり、従来の歴史的な経緯があったようですが、所有権の問題というものは、公園の場合に、われわれとしては所有権の問題というところまで深入りしてないわけです。むしろ所有権よりも、その管理について環境庁は問題にするわけですから、これが将来払い下げられたときには特別地域に指定したい。そしてその環境の保全については、いわゆる所有権はわれわれはタッチしてない、しかし、この管理については環境庁が関与していきたい、そして自然環境の保全の目的に合致するように恩賜林保護組合に対して、やはりそういうふうな指導をわれわれは行なっていきたいと考えております。
  169. 島本虎三

    ○島本委員 いま入り会い権の話が出ましたが、この地方には忍草入会組合というのもあって、前からもいろいろ質疑されていますけれども、この演習場内の国有地に対して先祖代々からの入り会い権を持っているわけです。演習場があるために、この入り会い権が行使できない。演習場が恒久化されるということになると、やはり反対だというこの人たちの気持ちはわからぬわけではないわけです。もちろん絶対反対の態度を示しているわけであります。したがって、忍草入会組合の主張する、この入り会い権について国はどう考えているのですか。
  170. 田代一正

    ○田代政府委員 これは昨年閣議決定によりまして、かねがねこの北富士演習場に関連いたしました入り会い権の問題というのが非常に大きな論争になってまいったわけでございますけれども、昨年の閣議決定におきまして、政府といたしましては、入り会い権というものはない、入り会い慣行というものはあるかもしれませんけれども、入り会い権はない、こういう解釈を閣議決定でもっていたしているわけでございます。
  171. 島本虎三

    ○島本委員 従来から、国有地に対して入り会い慣行は尊重するということを聞いておりますが、入り会い権は認められないというのですか、認めない、そういう態度をとってきているのです。前からの答弁で私どももそれを知っているわけです。そうすると、入り会い慣行を認めるということになりますと、当然入り会い権があるということになるんじゃありませんか。というのは、昨年、最高裁の判決が出ておるでしょう。国でも入り会い権を認めているからこそ、昭和二十八年から林野雑産物損失補償を支払ってきたんじゃないのですか。
  172. 田代一正

    ○田代政府委員 昨年の閣議決定をなしました根幹は、御案内のとおり東北の屏風山事件というのがございまして、最高裁でもって入り会い権ありという判断があった。そこで、ひるがえって、富士の場合考えたらどうかということで非常に問題になりましたので、その後いろいろ検討したわけでございますが、私も手元にちょっといま資料がないので詳細なことは申し上げかねますが、やはり屏風山事件で問題になりましたような入り会い権を構成するということが、過去の沿革その他を考えますと、違うのじゃないかということで、入り会い権はございませんという決定をいたしたわけであります。  そこで、じゃ何で、いま御質問がございましたように、林雑補償というものを政府はやっておるかということでございますが、これはかねがね防衛庁、防衛施設庁といたしましては、先生も御案内のとおり、入り会いの慣行というものは認めるという立場に立ってきておるわけです。これはどういうことかと申しますと、やはり昔、旧陸軍が持っていた。戦後米軍が接収いたした。そこで、にわかに使用態様——昔は非常に寛大な使用態様があったわけでございますけれども、米軍の占領とともにそれがなくなってきたということで、地元富士演習場の円満な使用というものを考えた場合に、こういった一種の不利益というものに対して、何らかの措置を考えなければいかぬのじゃないかということでございまして、そういうことで、こういった不利益ということを目しまして、林野雑産物の補償ということを続けてまいったわけでございます。これは現在でも続けているやり方でございます。
  173. 島本虎三

    ○島本委員 これは林野雑産物損失補償は、現在でも続けているというのですが、これは入り会い慣行の阻害に対する補償的なものなんですか、恩恵的なものなんですか。
  174. 田代一正

    ○田代政府委員 林野雑産物の補償ということをやってきておりますのは、先ほど申しましたように、演習場の円満な使用ということを考え、同時に入り会い慣行というものがございましたので、入り会い慣行というものに基づく一種の不利益、そこに着目いたしまして、こういった措置を考えたわけでありまして、入り会い権に基づく、権利に基づく請求権、あるいは権利というものじゃなくて、いわば行政上の措置として、こういう措置を続けてまいったということでございます。
  175. 島本虎三

    ○島本委員 四十四年から、これは防衛施設庁から入会組合へ支払われておった。積算の基礎もこれは当然あるはずであります。政府の見解として、いま、入り会い権は認められないが、入り会い慣行は尊重するんだ。そうすると、権利としては、これは熟してはおらないけれども、あることは認めるということになる。ただし慣行は尊重するというのですから、演習場でこれは阻害されているのだ、妨げられるので気の毒だ。したがって、これは相当前から、二十数年前からでしょうか、恩恵的な給付として支払ってきておったわけなんでございましょう。しかし、はっきり林野雑産物損失補償ということになると、入り会い慣行阻害に対する補償的なものであるということに長い間もうなってしまっている。長い間恩恵的に見舞い金を出すなんということを毎年やるなんということはあり得ない。したがって、これはやはりその性格上からしても、いま言ったようにして積算の基礎まで調査して出してやっているのですから、当然これは入り会い権というものは認めたということに私としては解釈せざるを得ないわけだ。  それで、忍草入会組合に入り会い権のあることは長い歴史、それによっても明らかなんですが、これはいま裁判にかかっておるようでありますから、いずれこれは人の命を脅かして、富士の自然を破壊するし、入会組合の入り会い権を侵害するような演習場——演習場かあるからこれはあるのだ。これはやはり認めるわけにはいかない。国民の生命と財産を守るんだといいながらも、近所の人を殺傷しているということになる、また生命を脅かしているということになる。かてて加えて富士の自然を破壊しているということになる。そして入会組合の入り会い権を侵害するということにつながる。  そうすると、富士の自然地域の自然を守るためには、百の立法をするよりも、これは長官とまたここで触れるのですが、演習場を撤去することが一番望ましいということに、どうせつながるではありませんか。この点について、もう一回ひとつ長官の決意を聞きたい。何回やってもここへ来る。
  176. 三木武夫

    三木国務大臣 島本委員とは非常に同意をする点がいろいろ多いわけでありますが、この点については、やはり基本的に安保条約とか、あるいは自衛隊の存在というものを否定される立場であると、演習場一つの価値評価というものが全然ゼロになるわけでありますから、どうもこの議論はやはり平行線をたどらざるを得ない、あなたの説にごもっともであるというお答えはできないということでございます。
  177. 島本虎三

    ○島本委員 そこまでわかっていても一歩踏み出せないという点は、私も三木長官を尊敬するがゆえに残念である。しかし、あなたが一歩出してくれることを国民は期待しているのです。  それで、私どもは参考人を招致していろいろ意見を聞いてみたことがあるのです、長官。その意見によると、富士地域自然保護よりも、むしろ利用の面に重点が置かれているという、千家参考人でしたか、この意見が出されております。この法案富士地域の開発の糸口になるおそれがある—ということを言っているわけです。  いま調べてみたところが、こういうふうにして払い下げる土地が、次から次と開発関係のほうに手口を広げている。そしてこれらの恩賜林保護組合なるものは、富士急の不動産部だとささやかれているといわれている。そうすると結局は、こういう開発の糸口になるわけでありませんか。こういうような点については、行政的にも、立法の過程においても、そうなってはいけないから、この点は十分注意すべきだと思うのですが、これは開発の糸口になるおそれはないのですか。
  178. 江間時彦

    江間政府委員 富士保全法といいますのは、既存の自然公園法であるとか、あるいは自然環境保全法というものにプラスしてオンされる性質のものでございますから、この法律自体が開発を促進するという要素は、全くないというふうにわれわれは考えるわけでございます。また、富士保全法を立法することの実益につきましては、私、最初先生の御質問に対してお答えしたところでございます。また、先ほど長官がお答えいたしましたように、新しく払い下げを受けるような土地があり、しかもそれが自然公園の地域にふさわしいものでありましたならば、われわれそれを必要な地種区分によりまして指定いたしまして、その利用の、あるいは管理規制をはかるというように考えておる次第でございます。
  179. 島本虎三

    ○島本委員 先般、金丸建設大臣の参りました際に、富士はこのままにしておくと平地になってしまうおそれさえ考えられる、その一つは大沢くずれである、こういうように言ったことがあるのです。しかし演習場のほうへ行ってみますと、あの演習場に散乱する砲弾、不発弾、これはさがしてもわからない。大雨が降ったあとに全部流されてしまった中から出てくる、これをさがすのだというのです。演習地がある限り、もうすでに「富士山黒書」が出されているように、こういうようにして一回大雨が降ると、そのまま幾らか、どれほどの面積でしょうか、移動しているわけです。そして将来は、これはもう平地になるのじゃないか、そのおそれさえあるということは、当時の金丸建設大臣さえ言っているし、閣議でこれは報告をしたそうです。そして不発弾をさがす場合には、わからなくなった場合には、大雨が降ったそのあとへ行ってみると出ているのだ、それほど流されている。まさに富士を平地にしてしまうのは自然的条件にある大沢くずれと、人工的な影響による演習場使用によって土砂が限りなく流れ、そしてそれが何年か後に富士を平地にしようとする動きをいま続けているわけです。  したがって、長官は何と言おうとかんと言おうと、イデオロギーの違いであると言いながらも、自然的な情勢からしても、これを継続することによって富士がだんだんおかされている。自然的な条件と人工的な条件の二つが合致しているのです。こういうような条件にしておいて、これはしょうがないのだ、富士は保全するのだ、何かこれじゃ私はどうしても理解できないのです。  こういうようなことからしても、私は本論に戻ると、やはり演習場があるのが富士の保全に対してまことにマイナスになっているし、富士ほんとうに保全するというのなら、まず、その辺から始めなければならないのだということです。  それで、次にちょっといきますけれども、これはもう大体われわれもいろいろな方面へ行って調査してみましたけれども、富士地域に集まる観光人口というのですか、山梨県では年間一千万人をこえるのだそうであります。昭和五十年になったならば、二千万人をこえるのじゃないかといわれているのでございますが、環境庁は、この地域の利用者の適正規模というようなものは持っていなければならないと思うのであります。これも富士を保全するなら、その辺からもきちっとしておかなければならないのであります。過去は過去として、それは許すわけにはまいりませんけれども、現在のこういう規模に対して、どういうように考えていますか。
  180. 江間時彦

    江間政府委員 先生が御指摘になりましたように、四十七年における山梨県側の利用人口は、一千万人を少しこえるくらいの程度あったというふうにわれわれも聞いております。そのほか静岡県側でも大体七百万人、合わせまして千七百万人をこえる利用人口があったということは事実でございます。そうして若干の地域におきましては、現在すでに過剰利用におちいっているということも事実でございます。  また、将来これがさらにふえるということになりますと、われわれといたしましても、非常にゆゆしい事態であるというふうに考えております。また、われわれといたしましては山岳であるとか、あるいは公園地域を利用する場合に、一体どの程度が収容力の限界であり、そして最適基準であるかということも科学的に検討いたしておりまして、四十八年度予算の研究費で、そういう調査も委託しております。現在、その客観的な水準というものは、まだ明らかにするほどになっておりませんけれども、いずれにせよ、利用の最適規模というものは、われわれ把握いたしまして、それにのっとった規制も近い将来行なわなければならないというふうに考えております。
  181. 島本虎三

    ○島本委員 法律が出るように、もう本来ならば考えておかなければならないその適正規模というようなことに対しても、四十八年の調査によって客観的な水準はこれからだ、こういうのじゃ、やはり行政的にも何かおそ過ぎる。  それと利用地域の指定のことなんですが、これはもうどういうようなところから、これを行なうのでございましょうか。自然環境にふさわしい利用が確保できるのだということを前々から皆さんのほうが言っていなさるわけです。この利用地域はどの辺の地域を指定しようと考えているのか、おそらくこれは前からいろいろ言われた人はあろうかと思います。しかし、私は最後に具体的には、青木ケ原であるとか、富士五湖周辺地域であるとか、ハリモミ原生林地域であるとか、御中道地域、こういうような指定にあたっては、全部どのようにこれは考えましょうか。これは国立公園地区は全部利用地域に指定されるのですか。この点に対して、ひとつ明確な御答弁をください。
  182. 江間時彦

    江間政府委員 利用地域といいますものは、前々から御説明いたしておりますように、要するに自然環境地域にふさわしい利用を考えたい。逆にいいますと、利用の目的を限定したいというふうな考え方によるものでございます。したがいまして、利用地域の指定といいますのは、公聴会の開催等の所定の手続を経まして定められる保護利用整備計画に基づいて行なわれるということになります。  具体的な場所についての御質問がございました。この場で一〇〇%明確にお答えするわけにもまいりませんが、たとえば青木ケ原はまあ大体徒歩利用地域、それから富士五湖周辺地域につきましては、地域の実情に応じまして、ある部分は自然探勝利用地域、またある部分は野外施設利用地域、すでにホテルなどが整備されている地区につきましては、休泊利用地域に相当すると考えております。また、御中道地域は徒歩利用地域がふさわしいと考えております。ハリモミ原生林地域は、当面もっぱらその保護、保育をはかることが適当と考えておりまして、利用地域の指定はしないほうがよいと考えております。  以上、個別的にお答えいたしましたが、要するに利用地域といいますのは、すべての地域を指定するということではございませんで、必要な地域だけを指定していくということでございます。
  183. 島本虎三

    ○島本委員 必要な地域を指定する、そして利用環境にふさわしいようにする。利用環境なんて新語がまた出てくる。四つの利用地域を指定して、その施設を整備するということになりますと、新たに観光客を誘致することになり、これは富士地域の過剰利用をますます促進することに当然なると思う。少なくとも野外施設利用地域であるとか宿泊利用地域、これを設定して施設を整備するということは、結局観光客を呼ぶことにつながる。したがって、こういう点については自然破壊につながるおそれが十分あるし、この辺は十分考えなければならないところじゃないかと思うのです。少なくとも利用施設だとか野外施設であるとか休泊利用施設とか、こんなのを設定すると、それによって観光客がまたわっと来る。片やもう一千万人から二千万人になる、これを制御しようとしながら、片やうんと観光客を呼び寄せるような施設をまたしていく。どうも相反するのじゃありませんか。どうも一貫性がない。もっともこの法律には一貫性がないのだ、どこをやったって。演習場で荒らしておいて保全するなんていうから、こんなことになる。  また、この計画そのものにも一貫性がない。施設をしておいて、そうして今度はもうちゃんと観光客を制限する、こういう考え方が成り立ちますか。一千万人から二千万人になる。それを今後適正計画を立てて、これを制限するような方向へやるかと思えば、施設をして観光客を呼ぶような施設をじゃんじゃんする。どうもこの辺、一貫性を欠くんじゃないかと思うが、どうですか。
  184. 江間時彦

    江間政府委員 若干用語に問題があったかと思いますが、利用地域と申しますのは、決して利用を促進する地域というふうにお読みいただきたくないわけでございまして、逆にこれにしか利用をさせない地域と、むしろ土地利用を規制する目的で指定するということに主眼があるわけでございます。そのような意味で、私らは法律の運用を行なうように努力いたしますし、先生がおっしゃるように二律背反的なことがないように十分注意してまいりたいと思っております。
  185. 島本虎三

    ○島本委員 利用地域ということばが、そのまま生きているという限りは、やはり利用ということばが先行する。自然環境を守るために規制する意味だ、こういうふうに言っても、あなたはばかだと言いながら、私は、あなたはりこうだと言っているんですよというようなものじゃないですか。あなたをりこうですよと言いながら、心ではせせら笑ったようなやり方と同じじゃないですか。利用と規制は違うんじゃありませんか。二律背反することはないと言いながら、用語がもうすでに相反している。この辺は私はどうも理解できない。やはりこれは公園計画の見通しを十分行なって、自然公園法本体のほうで厳正に施行すると、富士山の自然は十分保護できるんだ、こういうことになると私は思うわけであります。しかしながら、そこまでまだいっていない。いないとしても時間がじゃんじゃんたってまいりますので、次へ進めてまいります。  十一条の一項がございましょう。当然もうこれは十一条の一項によって、国立公園以外の富士地域における工作物の新築などの行為は総理府令で定める。これは、基準をこえるものについては届け出を要することになっている。おそらくはどなたか、この総理府令の内容等聞いているだろうと思うのです。聞いていたでしょう。もし聞いていなければ、この際、やってもらいたいのだが、私のほうは調べてありますからいいのですが、この総理府令の内容はどういうようなことですか。
  186. 江間時彦

    江間政府委員 現在われわれ具体的な内容といたしましては、大ざっぱにいいますと、国立公園の普通地域規制措置に準ずるものという程度が適当ではないかというふうに考えております。
  187. 島本虎三

    ○島本委員 具体的に、この規制のあれはどういうふうになっていますか。
  188. 江間時彦

    江間政府委員 具体的に申し上げますと、建築物などにつきましては高さが十三メートルまたは延べ面積が千平方メートル、それから送水管などにつきましては長さが七十メートル、鉄塔などにつきましては高さが三十メートル、船舶の係留施設などにつきましては長さが五十メートル、ダムにつきましては高さが二十メートルというような程度になっております。
  189. 島本虎三

    ○島本委員 わかりました。それでは、この疑問に対して解明してもらいたい。  第十一条の第二項によって国立公園以外の富士地域における届け出行為、これに対しては当然チェックされる。必要な場合には規制ができるわけですから、厳重にこれは今後チェックしなければならない。基準は高さが十三メートル、延べ面積は一千平米、それからいろいろあるようであります。そうすると、この規定によって別荘それからゴルフ場、こういうような乱開発の防止に万全を期せられましょうか。
  190. 江間時彦

    江間政府委員 いま問題にしております地域といいますのは、いわゆる自然公園地域から漏れた白地地域でございまして、ただいま私が申し上げましたような程度の規模をこえるものはチェックの対象になるわけでございます。それで万全かというふうに言われますと、いろいろ問題あろうかと思いますが、ともかくこのような規制を厳格に守ってまいりたいと思うわけでございます。
  191. 島本虎三

    ○島本委員 だから言うのです。千平米といったら三百坪でしょう。三百坪以下ならば届けなくてもよいのだということでしょう、建物を。高さ十三メートルでしょう。そうしたら十三メートル以下ならいいということでしょう。レストハウスであるとかいうものは、結局小さいものは幾ら建ててもいいということになるわけでしょう。これをこえるものは困るが、三百坪以下の建物ならいいのだ、高さが十三メートルをこえないものならいいのだ、こういうことにして、じゃんじゃんやると、まずレストハウスなんか幾らつくってもいい。三百坪以上のものなんかちょっとないでしょう。別荘でもそのとおりです。そうして、このゴルフ場の開発、こういうようなことだって、これによって幾らやろうといったってできる。どうもこれでは私どもとして、高さの点からいっても面積の点からいっても、こういうような抜け道があるとするならば、大きいものを一回つくるな、こまかくして二つつくれというんだったら、できるじゃないですか。
  192. 江間時彦

    江間政府委員 いまわれわれが問題にいたしております地域は、いわゆる普通地域にも当たらない土地、具体的な規制内容——普通地域についていま申し上げたような中身でございますので、普通地域から漏れたところを普通地域よりも強い規制をかけるということは、なかなか法体系としてはむずかしいかと思います。  そのようなことは別といたしまして、もし非常にぐあいが悪いというような地域でございましたならば、それこそいわゆる利用地域という規制をかぶせまして規制をすることも可能になろうかと思われます。
  193. 島本虎三

    ○島本委員 それならば、結局は国立公園以外の富士地域における乱開発を防止するというためにも、少なくとも自然公園法における届け出の対象行為のうちの土地の形状を変更するもの、こういうようなものも加えられなければ、当然所期の目的が達成できないでしょう。こういうようなものを入れないでおいて規制するといったって、これは喜ぶのは業者だけじゃありませんか。こういうようにしてちゃんと抜けている。  それだけじゃない。もう一つ、これは具体的に金額をお聞きいたしますけれども、十一条の二項の規定による処分を受けるために損失を受けたものに対して、損失補償を二十三条によって行なうことになっていますね。そのための予算は十分確保することができますかどうか。これがなければ、まさに画竜点睛を欠く。予算措置が十分でない限りは、十一条の二項による行為の規制もまた実効が上がらないということになる。そうすると、結局は予算措置が十分に講ぜられて、これらの行為が規制できるとしたならば——できるんでしょう、これは。できるとしたならば、国立公園地域を拡大することによって十分目的が達せられるということになり、この法案は当然また必要がないということになってしまう。この点もまた、ちょっと御当局の御所見を伺わせてもらいたい。
  194. 江間時彦

    江間政府委員 おことばを返すようでございますけれども、やはり公園地域を拡張するというためには、自然景観その他の要件を備えなければならないと思います。富士地域であるから、すべて公園地域に編入するというわけにはまいらないだろうかと思うわけでございます。したがいまして、若干の地域につきましては、何ら線引きの行なわれない白地の地域ができる。その白地の地域に対しても富士保全法による若干の規制が行なわれるということになろうかと思います。  なお、先ほど先生補償費についての予算措置があるかという御質問がございましたけれども、われわれ予算の目をつくるなどの所要の準備はいたしております。
  195. 島本虎三

    ○島本委員 どう考えてみましても、この法案富士地域における保護利用整備事業、前からずうっとこういってきた。入会組合の問題から、演習林の問題からいろいろやってみると、どうもこの点保護利用に重点がある。そしてまた、国が高率の負担または補助を行なうところにねらいがあるのではないかと思うのです。政令でどの程度の補助を考えていますか。
  196. 江間時彦

    江間政府委員 現在まだ最終的にきまってないというふうに考えております。
  197. 島本虎三

    ○島本委員 当然これももうすでに話に出ていると思いますが、過剰利用ということをさっきから言っていますが、富士スバルラインのマイカーの乗り入れ、これは前回も何か質問があったように思っておりますが、これはいろいろな関係からしても十分考慮しなければならない生態系の問題も出ているわけです。  ですから、そういうような問題からしても、これはマイカーによるところの乗り入れを中止する、こういうふうなことが具体的にもう考えられなければならない状態ではございませんか。一千万人が二千万人になる、二千万人になったら、また四千万人になる、ふくれ上がって、マイカーで行ったならば、それによる、いわゆるSO2でもNO2でも、いろいろ被害が出るわけでありますから、そこを考えたならば、マイカーの乗り入れを中止する、そしてそれにかわる方法も考える、こういうふうなことまで、もうすでに考えないと、富士は大沢くずれでやられ、演習地でやられ、またマイカーの排気によってよごされる、その実態は富士保全法である、こういうふうなことになったら、これはまことに奇々怪々、笑止千万だと思う。したがって、富士スバルラインのマイカーの乗り入れを中止するということまでやって、他にかわるべき手段も当然持っていなければならないと思うのですが、この点はどうでしょう。
  198. 江間時彦

    江間政府委員 けさ三木長官がお答えいたしましたように、この問題につきましては、きわめて前向きの姿勢で検討するということになっております。
  199. 島本虎三

    ○島本委員 それはけさ、もうなされたのですか。そうですが。どうも失礼しました。  前向きの姿勢というのは、中止するというふうな方向、または無制限に許可しないという方向、これだと私は思うのです。最近はどうもわからないが、保全すると言いながら、演習はやむを得ないと言う。大沢くずれや何か、いろいろな問題なんかやる、また自動車の乗り入れもやる、これが富士の保全だということになると、前向きというのは案外うしろ向きかもしれない。前向きだという意味は、どういう意味ですか。辞典によって明確にしてもらいたい。もしできたら、期限も付して答弁してもらいたい。
  200. 江間時彦

    江間政府委員 事務的に言いますと、確かにスバルラインの地域といいますのは、自然破壊のあとが著しいということはございます。また、先ほど来、先生が御論議になっておられます、いわゆる過剰利用の問題というのも非常に大きな問題と思います。これに対処いたします一つの方法として、いわゆる交通規制という手段があることも事実でございます。われわれ、いつからどうということは申し上げられませんが、関係当局とよく相談いたしまして、できるだけその方向で検討してまいりたいということは、重ね重ねお答えしているところでございます。
  201. 島本虎三

    ○島本委員 それで今度は長官、気の毒な気もしますけれども、富士箱根国立公園の中で、資格を持っている管理者というのが八人しかおらないんだそうです。そして、この八人しかいない中で、いまいろいろ管理が行なわれているのですが、その裏をかかれているわけです。せっかく環境庁ができて、そして前にすでに自然環境保全立法がなされておる。それをチェックするための資格を持った管理者が、岩垂質問によると、たった八人しかいない、こういうようなことになっている。これではとうていやっていけるものじゃないし、管理の裏をつかれてもどうにもできない。森林保安隊というような構想は当時あったようですが、もう雲散霧消してしまってない、こういうようなことになりますと、やはりこれはこれくらいの人員で置くということは、富士保全のためにマイナスになっても直接プラスにはならないと思うが、これらの人員増は十分お考えですか。
  202. 三木武夫

    三木国務大臣 これは富士地域に限らず、どこもそういう公園管理のための人員というものは、ことしも少しはふやしたのですけれども、やはりもう少しふやす必要があると思います。(島本委員「少しぐらいじゃ足りないよ」と呼ぶ)しかし根本はそういう公園の管理者の数というよりも、ささえるものは、環境を大事にしようという国民的な意識というものがないと、それは少々ぐらいふやしても、これだけの環境管理としては、島本委員から、これでもう十分だと言われるようにはならぬですよ。やはり国民自身がそうやって、自分の国土ですから、よい環境を守ろうということに——だから一面から言えば、教育とかそういうふうな社会的な習慣というものをどうやってつけていくかということも、一面大きな問題だと思います。
  203. 島本虎三

    ○島本委員 いろいろ聞いてまいりましたが、まだことばそのものからいたしましても、自然公園の保護というよりは、むしろ利用に重点が置かれた考え方に立脚しておるわけです。あとから読みかえ法的なもので、利用というのは規制だ、こういうような釈明が行なわれるわけであります。  したがって、この第五条第一項第三号の保護利用整備事業、その二に掲げる事業、これだって過剰利用を促進することにもなるし、そして自然公園法の施行令第四条に規定する(公園事業となる施設の種類)これはもう自然公園の保護というよりは、むしろ利用に重点が置かれている、こういうようなことが考えられますが、この点について、改正を含んで十分考えるお考えはございませんか。
  204. 江間時彦

    江間政府委員 確かに用語その他から若干誤解を与えた向きもあるかと存じますが、現段階におきましては、この法案をぜひともお通しいただきたいと思うわけでございます。
  205. 島本虎三

    ○島本委員 それは答弁にならない答弁です。じゃ、法案を通したならば、やれるというのですか。この法案そのものは、いままで何回聞いても、しり抜けもいいところだ。ことばで何と言っても利用中心。そして、演習場を認めるための、これはもう担保物件、こういうようなことだ。いままで言ってきて、その中でも、せめてこういうような点は将来のために考えておけというのです。そうなると、また法律を通してくれ、そうでなければ考えないというのだったら、これは委員長にしかられるかもしれぬけれども、局長に対してはもう一言言いたくなってくる。そんな意味じゃないと思うのです。  環境庁は、富士箱根伊豆国立公園はもとよりのこと、他の国立公園についても、観光客による過剰利用による自然の破壊を防止するために、抜本的な施策を考えてもよろしい段階である。上高地あたりでも、あれほど世界的に有名な場所でも、もうすでにいろいろな観光公害が発生しておる。あのきれいな川が大腸菌がうようよするような状態になって放置されている。まして富士を保全するといっても、スバルラインのこういうような現在の状態から、またあらためて道路をつくろうとする動きさえ出ておる。  こういうようにして見る場合には、もうすでに抜本的な一つの施策を考えないと、だめな段階に来たということです。私は最後に、このことについて長官に、はっきりと決意を伺っておきたい。
  206. 三木武夫

    三木国務大臣 やはりこの法案にしましても、一つにおいては自然環境を保全するということと、利用に対しての一つ規制も行なうという、そういう目的もあると思うのです。非常に利用に対しての条項というものが多いじゃないかと言われますが、富士の場合は東名もあり、中央高速道路ができてから、しかも東京が近いですから、どうしたってあれを利用しようという者は非常にふえていくわけですから、こういう一つの特別立法によってそれを規制しなければ、こういうものでもあって規制をしないと、これの利用というものは、そういう環境開発事業というものが一番ねらうところですから、そういう点で、利用というものに関するいろいろな条項の多いことはやむを得ないわけですが、いま御指摘のように、過剰利用というような段階に来つつあるのです。  したがって、今後はそういう点においても、なるべく自然に接したいという、そういう者に対して機会を与えるということも必要ですけれども、それがあまりにも過剰利用ということになれば、  みなが接したいという自然そのものがそこなわれますから、御指摘のような、そういう点に対しては根本的に考えなければならぬ。富士山だけでないと思うのです。そういうことをわれわれとしては必要を感じておる次第でございます。
  207. 島本虎三

    ○島本委員 では、そういうようにして演習場の問題から、過剰利用の問題から、それを誘発するおそれのあるような立法の過程から、そうして今後いろいろ問題をはらんでいるこの富士保全法、もう一回これを撤回して出し直して完全なものにして、名峰富士とともに三木長官もいよいよ光り、ますます栄える、こういうようなところまで考えるべきじゃないかと思うのでありますが、これを撤回して、もう一回考え直して出す御意思はございませんか。
  208. 三木武夫

    三木国務大臣 御親切な御忠告でございますが、その意思はございません。
  209. 島本虎三

    ○島本委員 意思のないことが明確になりました。このような根本的に欠陥法案には、私どもとしてはまことに遺憾の意を表して、私の質問は、  これで終わらしてもらいます。
  210. 角屋堅次郎

    角屋委員長 米原昶君。
  211. 米原昶

    ○米原委員 私、前回質問したときに自然公園法違反なんじゃないかということを聞きました。そのときに江間局長が答弁された。二通り答弁されているので、はっきりしないのですよ。もう一度はっきりしてもらいたいのです。  第一の答弁のほうは、演習の音が二十四条でいう著しい騒音に該当しないのではないか、こういうことを言われたわけです。そしてもう一つ、第二に、演習場内の国立公園区域立ち入り禁止だから、迷惑をかけるような利用者がいない。こういう二通りの答弁をされている。これはどうもはっきりしないのです。一体どちらなのか。自然公園法に違反しない理由は、この二つのうちのどちらのほうが、いわば決定的なのか、この点をひとつ明確に答弁してもらいたい。
  212. 江間時彦

    江間政府委員 あいまいな答弁をいたしまして申しわけございません。要するに、具体的な騒音が公園利用の障害になるかどうかということでございますが、その点につきましては障害がないであろうということを申し上げたわけであります。
  213. 米原昶

    ○米原委員 そうすると、国立公園区域立ち入り禁止だからということは、理由でないとおっしゃるわけですか。
  214. 江間時彦

    江間政府委員 前回の答弁を打ち消すようでございますが、必ずしも立ち入り禁止になってないところもあるようでございます。人が出入りするところもあるようでございまして、その点は取り消さしていただきます。
  215. 米原昶

    ○米原委員 そうしますと、いまの問題点ですが、国立公園の中で立ち入り禁止のところがあるということ自体も一つの重大な問題点じゃないかと思います。立ち入り禁止地域がかなり広くあるということ自体が、国立公園として指定した意味をなくしているのじゃないか一自然公園法の第二条の二には(国等の責務)ということが定めてあります。そして第一条の(目的)に明確に述べているように、国民の保健、休養及び教化に資するために国立公園があることになっている。ところが、それにもかかわらず実際には、千四百ヘクタールにも及ぶ地域演習場として囲い込んで立ち入り禁止にしているわけです。これでは全く国立公園意味がなくなるのではないか。明らかに第二条二の(国等の責務)に反するのじゃないか。違反しないというなら、その理由を述べてもらいたいと思います。
  216. 江間時彦

    江間政府委員 先ほど来お答えいたしておりますように、演習場が自然公園と重複しておるということは、必ずしも望ましいことだというふうには、われわれは考えておりません。しかしながら、歴史的ないろいろな経過をたどって、このような状態になっていることでございまして、われわれといたしましては、現状におきましては現在置かれておる姿というものを基礎にして、ものを考えなければならないと思うわけでございます。
  217. 米原昶

    ○米原委員 重大なのは、私繰り返して言いますが、「つまり、国民の保健、休養及び教化に資する」、そうきまっているところに立ち入り禁止地域をつくるということ自体が法律違反じゃないかという点なんです。それがどうして法律違反じゃないのか、はっきり説明してもらいたい     〔委員長退席、林一義一委員長代理着席〕
  218. 江間時彦

    江間政府委員 御承知のように、わが国の国立公園というのは、制度といたしましてはいわゆる地域性の公園でございまして、所有者がだれであるかということを問題にしないわけでございます。したがいまして、わが国立公園の中にも私有地は非常にたくさんあるということでございまして、まあいろいろな論議もあろうかと思いますけれども、少なくとも演習場問題との関係で見ます限りは、われわれは現状置かれた姿でものを考えなければならないと思うわけでございます。
  219. 米原昶

    ○米原委員 この富士伊豆箱根国立公園は、昭和十一年の指定以来、多くの人々がここで自然に親しみ、またいこいの場所としてきたところであります。そうしたところを、かってに囲い込んで鉄砲など撃っている、軍事優先のためには何でもやろう、こういうことをやっておいて違反でないというのは、おかしいと思うのであります。ほんとう法律を守るという姿勢があるならば、即刻演習を中止して立ち入り禁止をやめにする、この千四百ヘクタールの部分を演習場から解除すべきである。これを明確にしてもらわないと、幾ら保全法をつくっても、根本のところが狂っていると思うのであります。     〔林(義)委員長代理退席、委員長着席〕 この点を一体どう考えられるのか、この点ひとつ長官から、もう一度明確な答弁を求めるわけであります。
  220. 三木武夫

    三木国務大臣 われわれとすれば、実際からいえば公園としての機能というものを発揮してないわけですから、それなら、その公園を解除すればすっきりするじゃないかといっても、この演習場が永久のものだとは考えていないわけですから、そういう点でやはり機能を発揮してないけれども、公園という一つ地域の中にそれを入れておくことが、かえってそれをのぞいてしまったからといって、そんなにもプラスじゃないじゃないか、むしろやはり公園の中へ現状維持して入れておこうということですが、機能を発揮してないわけです。それじゃ機能を発揮してないならば、それはもう演習場をやめてしまえということになると、根本的なあなたのお立場と相違があって平行線にならざるを得ないわけでございます。
  221. 米原昶

    ○米原委員 何より、そうおっしゃるなら、やはり早急に演習場撤去のやり方をもっと具体的に考えていただきたい。それでないと、これはいつまでもこんなことが続くようでは、ほんとう富士保全にはならないというのがやはり根本です。  もう一つ鳥獣保護法の問題、これも先日聞きましたが、一体鳥獣保護区の設定、これは何を目的として設定するのか伺いたい。
  222. 江間時彦

    江間政府委員 先生の御指摘のように、北富士演習場約四千七百ヘクタールのうち約二千四百ヘクタールが鳥獣保護区と重複いたしております。鳥獣保護区を設けました理由といいますのは、鳥獣が生息しやすいような条件を設定するということにございます。
  223. 米原昶

    ○米原委員 鳥は音に非常に敏感です。したがって、農作物を鳥の被害から守るために、よくいろいろな音の出るものを使ったりします。だから逆に野鳥を保護する場合、相当騒音に気を使わなければならないと思います。いまもおっしゃったように、北富士演習場四千七百ヘクタールのうち実に二千四百ヘクタールが鳥獣保護区となっております。そうしたところで演習を行なえば当然鳥に相当の影響を与えると思いますが、その点どうでしょうか。そばで大砲を撃つなど演習を行なったら、鳥獣保護などあり得ないことは明白だと思います。そして、これは鳥獣保護法に違反するのじゃないだろうか。この点についての見解をもう一度明確にしていただきたい。
  224. 江間時彦

    江間政府委員 先ほど来申し上げておりますように、確かに演習場と鳥獣保護区が重複しておるということは、望ましいことではございません。ただ法律違反になるかどうかということになりますと、この制度は鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律というものできめられておるものでございまして、この鳥獣保護区の区域内で規制されますことは、鳥獣の捕獲行為及び巣箱、給餌、給水等の保護施設を鳥獣保護区の設定者、本件の場合については環境庁長官でございますが、こういう設定者が、これらを設けようとする場合に土地所有権者などは、これを拒むことができないというこの二点にございます。したがいまして、ぎりぎり演習行為が法律違反かどうかということになりますと、法律違反にはならないというふうに考えるわけでございます。
  225. 米原昶

    ○米原委員 巣箱を取りつけた木を切ってしまうというような単純なことじゃないわけであります。そばで軍隊が演習されるなどというのは、野鳥の存在条件の根本を奪っていることにひとしいと思う。もし法律違反でないというなら、その理由は、ただ形式的な答弁じゃ困るんです。これは重大な問題だと私は思っている。この点もう一度明確にしてしてもらいたい。
  226. 江間時彦

    江間政府委員 私が、ただいまお答えいたしましたことは、形式要件としては法律違反にならないけれども、決して望ましい状態ではないということを申し上げたのでございます。
  227. 米原昶

    ○米原委員 昨年三月の閣議了解によると、「将来米軍が本演習場を必要としなくなったときは、本演習場内国有地等の地元利用面積の拡大について改めて検討する。」とあります。自衛隊に移管したといえ、この北富士演習場は米軍主導型だということが、この閣議了解のことばにもあらわれておる。まさにアメリカのためには日本の法律が実際上は無視されてもかまわない、こういう形になっているのは、はなはだ遺憾なんです。直ちにこの鳥獣保護区部分の演習場からの回避、演習の中止、これをやらないと、ほんとうの解決にはならないと思います。この点どうですか。
  228. 江間時彦

    江間政府委員 先ほど来、三木長官お答えいたしておりますように、現時点におきましては、やはり演習行為というものも必要な行為であろうかと思います。また片方でわれわれ鳥獣を保護するということも必要なことでございまして、その両者の調和がはかれるように努力してまいりたいと思うわけでございます。
  229. 米原昶

    ○米原委員 次に、いまも話のありました富士山ろくの荒廃の問題、利用の中で乱開発で荒廃されている問題について質問します。  確かに富士山ろくは首都圏から近いし、またそのすばらしい自然で多くの人々が訪れるところとなっております。しかし近年、乱開発が進んで、各方面から富士を守れという声が起こってきております。こうした富士の破壊の原因が一体どこにあるか、この点について環境庁の見解を伺いたいと思います。
  230. 江間時彦

    江間政府委員 富士山といいますのは、古くからわが国民になれ親しまれた存在でございまして、数多くの人がこの山に登りたいという希望を持っておりますことと、いま一つには、首都圏に非常に近くあって絶好のレクリエーションの場であるということ、それからゴルフ場であるとか、あるいは別荘であるとか、そういうものが非常に設けられやすい場所である、そういうことに主として基因しておると考えます。
  231. 米原昶

    ○米原委員 結局、富士山ろくの最近における破壊、この原因が一体どこにあるかというのですよ。環境庁としては何が原因だと考えられるか。われわれ一つは、あそこが演習場として利用されている。さっきも話しになりましたが、もう一つは、特に最近著しいのは、観光資本が利権を求めて富士山ろくを食い荒らしている、これが実は一番大きな原因じゃないかと思うが、どう考えられますか。
  232. 江間時彦

    江間政府委員 先生がいま御指摘になりました二つの点も、やはり大きなファクターであろうかと思います。
  233. 米原昶

    ○米原委員 土地の買い占めが全国至るところで横行しておりますが、富士山ろくはもちろん例外ではない。ここ数年、相当の規模で買い占めが進んで開発が進められていると聞きますが、その実態を全体として環境庁つかんでおられるかどうか。
  234. 江間時彦

    江間政府委員 先ほど来申し上げておりますように、われわれの国立公園といいますのは、所有権を問題にいたしておりません。その結果、いわゆる所有権の移転状況についての把握というものは、必ずしも十分でないかと思います。ただ、具体的にどのような地域にどのような施設ができておるかということは、いわゆる協議もしくは申請の対象となりますものは、われわれ正確に把握しておるつもりでございます。
  235. 米原昶

    ○米原委員 これだけの富士保全法という法律提案する以上、土地の買い占めの実態、これぐらいは的確につかんでおられるはずだと私は思っているのです。一体どんな企業がどのような規模で土地の買い占めを行なっているか、どのように富士山ろくの食い荒らしをやっているか、この実態はつかんでおられないのですか。
  236. 江間時彦

    江間政府委員 確かに所有の実態というものを調べる必要もあろうかと思いますが、現時点におきましては、われわれの自然公園法の体系といいますのは、具体的に土地または自然に改変を加えよう、主要な土地に対してそういう改変を加えようとした場合に、申請をわれわれのほうにしてくるという仕組みになっておりまして、所有権の移転は残念ながら把握いたしておりません。
  237. 米原昶

    ○米原委員 実は、富士保全という以上は、土地の買い占めの少なくとも実態をつかんで、実勢を見て、それに対処するという考え方が基本になくてはならぬと思うのです。そのあたりが実ははっきりつかまれてない、あいまいだということで、驚きました。私たちの調査だけでも、これは全体をつかんでいるわけじゃありませんが、富士の北のほうの山ろくだけでも、山梨県側だけでも、この数年間で実に二千ヘクタール以上の土地の買い占め、開発が行なわれている、こういうふうに大体はつかんでおりますが、この点、知っておられますか。
  238. 江間時彦

    江間政府委員 行政的に、具体的にわれわれ調査したものでございませんけれども、かなり土地が特定の企業によって買収されておるということは聞いております。
  239. 米原昶

    ○米原委員 富士の北部だけで、具体的な例をあげると、富士急が四百六十六ヘクタールの別荘、ゴルフ場、富士観光開発は同じく三百六十ヘクタールの別荘及びゴルフ場、そのほか相模鉄道、京王帝都、丸紅などが、まさに虫食いのごとく富士山ろくを荒らしております。こうしたものを規制することなしに、富士の保全はあり得ないと思うのでありますが、どうでしょう。
  240. 江間時彦

    江間政府委員 われわれの行政のたてまえと申しますのは、具体的に所有権の移転の実態を規制することではなくて、土地もしくは自然に対して改変を加える行為を規制することでございますので、現状におきましては、やはり自然に改変を加える行為そのものを規制していくことのほうが、よりベターではないかというふうに考えております。
  241. 米原昶

    ○米原委員 そうした答弁を聞いておりますと、全く富士保全の熱意がどこにあるかと言いたくなります。実際には、こうした買い占めの多くの土地が大規模なゴルフ場や別荘団地です。これらは全く一部の人々に開放されたものでしかない。こうしたものがぐんぐん拡大されているというところに富士保全の必要があるとすればあるのであって、それを全然規制できないようでは、この法律があるなしは別として、ほんとう富士保全の解決にならない、こうしたものは富士山ろくにふさわしいものとは、どう考えても考えられないのです。むしろそこを規制するようなものを出せば、たとえ演習場の問題があっても、まだこれは一定の意義があるとわれわれも感ずるのですが、そういうものをほんとう規制するかまえではないのではないか、そう思いますが、どうですか。
  242. 江間時彦

    江間政府委員 この法案が具体的な法律になりまして、保護及び利用につきましての具体的な計画ができるようになりますと、かなりなスケールでこういうことが期待できるのではないかというふうにわれわれは考えております。
  243. 米原昶

    ○米原委員 実際には、ほとんどそういう点が何もやられていないのです。私は、その点で、この法律ができてどれだけの効果があるか、考えてみましたが、実際には、たとえば富士山ろくの自治体である富士市、あるいは富士宮市、ここではそれなりに調査して強力に、自治体として強力にです、それなりに富士を守る行政を進めていると思う。少なくともこの法律がそれにプラスになるようなものであるのかどうかという観点から見たのですが、少なくともそういう点で土地の買い占め、かってなところにゴルフ場なんかをどんどんつくらせるということに対して、たとえば規制しているのです。  富士市では、専門学者に委託して学術調査も行なって、十ヘクタール以上の開発を禁止している。業者が私権をたてに訴訟を起こしても、それと戦うのだと市長が決意を述べています。また、富士宮市でも、市長が先頭に立って運動を進めております。環境庁としては、これらの自治体の行政に対して、一体どのような評価をしておられるのか。この法律が突然ぽこんと出てきて、いままでこれらの自治体がやっていること、それをむしろ助ける、推進するという点があるならプラスなんですが、はたしてこういう自治体がやっていることに対して、どのような評価をしておられるか、聞きたい。
  244. 江間時彦

    江間政府委員 富士市及び富士宮市におきまして、開発行為の規制をかなり強力に行なっておられるということは、われわれも聞いて知っております。おそらくこれは法的な強制力を有するというよりも、本質的には市町村の行政指導の一つの形として実施されているものと、われわれは理解しているわけでございますが、この法案におきましても、これらを直接、間接的にバックアップする方向でいけるというふうにわれわれは考えております。
  245. 米原昶

    ○米原委員 私はその点がどうもおかしいと思うのです。こうしたいわゆる革新自治体の積極的な姿勢に比べて、今回の法案は私は大いに疑問があると思っておる。富士地域半径二十キロメートルとするというわけでありますが、この地域内での規制は工作物の新築、改築、増築だけになっています。これではゴルフ場の造成などは全く規制の対象とならないじゃないか。また、別荘団地などはどうか。一体どれだけの規制ができるのかということを聞きたい。
  246. 江間時彦

    江間政府委員 先ほど島本先生の御質問にお答えしましたところでも出たことでございますが、大体白地地域に対する規制といいますのは、国立公園の普通地域に相当する規制になろうかと思います。したがいまして、たとえばゴルフ場についてどの程度の規制ができるかといいますと、おそらく建物を建てるということについての規制は明瞭にできると思います。したがいまして、建物のないゴルフ場というものは成り立たないと思いますので、その点で私は少なくとも最小限度それだけのことはできると思います。
  247. 米原昶

    ○米原委員 ゴルフ場といえば必ず建築物も伴うから、それでできると思う、という答弁ですが、この点でたとえば昨年の自然公園法の一部改正で、国立公園の普通地域内での規制を強めてゴルフ場なども規制できるようになりました。しかもこの富士保全法では、自然保護の上でも災害防止の上で大きな問題があるといわれておるゴルフ場でも、いま言われたような建物の規制という形の範囲でしか規制できない。これてはかえって——昨年の自然公園法の一部改正で、普通地域規制の中の土地形状の変更の中にゴルフ場等も含むという解釈で規制できるようになった。しかし今度の法律では、それが明確ではないのです。一体ゴルフ場の規制ができるくらいのことは当然入れるべきではなかったか。この点どうですか。
  248. 江間時彦

    江間政府委員 いま先生が言っていらっしゃいます地域は、おそらく国立公園の普通地域にも入らなかった、いわゆる白地地域のことであろうかと思います。したがいまして、普通地域よりも規制がゆるくなるということは、やむを得ないと思うわけでございます。  そこで、いわゆるゴルフ場そのものについての規制を、法律に書けなかったかということでございますけれども、現在われわれ国及び都道府県あるいは地方自治体のレベルでいろいろなゴルフ場についての具体的な行政指導は行なってきておりまして、私は最近においては、かなり成果を上げているというふうに考えているわけでございまして、必ずしもこの法律に書かないと、その規制ができないというものではないというふうに考えております。
  249. 米原昶

    ○米原委員 自然公園法の一部改正で、国立公園以外の富士地域、すなわち富士宮市や富士市などでは、これでゴルフ場を規制しているわけであります。その点から言うと、一歩後退しているのではないか、こういう感じがするのです。  今回の法案規制強化に役立つものではないという疑問は、いまの点だけでありません。四種の利用地域の指定についても、その意味で大いに疑問があります。第九条を見ると、今回の法案では自然公園法に比べ、許可や届け出の項目はふえるものではありません。ただ、四種の地域の利用目的に沿う形で、詐可や届け出があった際のばく然とした判断基準を与えるだけのものではないか、こういうふうに考えるのでありますが、どうでしょう。
  250. 江間時彦

    江間政府委員 前々から御説明いたしておりますように、富士保全法が施行されるようになったといたしましても、従来の自然公園法あるいは自然環境保全法というものについては従来どおりの実施がされるわけでございまして、富士保全法といいますのは、その法律体系の上にさらに上のせされたものになるわけでございますので、富士保全法が施行されたといたしましても、規制がゆるくなるということは全くあり得ないと思うわけでございます。
  251. 米原昶

    ○米原委員 それではもう一つ、いまの点、答弁してほしいのですが、四種の利用地域の指定について、この点はどうでしょうか。四種の利用地域の指定について私は疑問に思うのですが、これでは詐可や届け出のあった際のばく然とした判断基準を与えるだけのものではないか、こういう点であります。
  252. 江間時彦

    江間政府委員 四種の地域といいますのは、富士地域保護利用整備計画段階におきまして、具体的に位置規模並びに当該地域の利用の規制に関することを書くわけでございまして、これにつきましては利用ということばが使われるために、利用を奨励するのではないかという御懸念も、いろいろあろうかと思いますけれども、少なくともわれわれは、土地についての利用目的を明瞭化いたしまして、むしろ利用の規制を行なう、こういうふうに考えております。
  253. 米原昶

    ○米原委員 許可するかしないか、届け出を認めるかどうかという判断の基準だけのように思うのです。基準だけなら規制強化とはいえない。従来の自然公園法の運用上の問題で解決できるのではないか。そう考えるわけです。従来の自然公園法の運用上のやり方いかんで解決できるので、これだけで強化したとか上のせしたとか言われる意味がよくわからないのですが……。
  254. 江間時彦

    江間政府委員 前々から申し上げておりますように、自然公園法におきましては、それぞれの地種区分に応じて、一定の施設のものを設けるということが規制されるわけでございます。富士保全法が施行されますと、従来のそういう法体系にさらに新たな規制が加えられる。その中の一つに、いわゆる利用地域というものもファクターになる。しかも、利用地域という概念は従来の法体系になかった新しい体系でございまして、土地の利用についてある種の限定を行なう、そういうことであろうかと思います。
  255. 米原昶

    ○米原委員 時間もあまりありませんから簡単に言いますが、結論的に言うと、富士地域において現在地方自治体がやりつつある規制の水準以下じゃないかという感じがぬぐえないのです。国立公園についていえば、現行法の運用上で解決できる範囲内、これでは、この法律で真の富士保全ができるということは全くあやしいといわなければならない、そう思うわけであります。この点を根本的に変えなければ、どうにも承知できないわけであります。  長官の御意見最後に聞いて、終わります。
  256. 三木武夫

    三木国務大臣 いろいろと法案それ自体に対して御不満もあろうと思いますが、われわれはベターだとは思っているのです。従来、いろいろ御指摘になった、地方自治団体でやっておる行政指導というものは、おやりになってもいいわけですが、この上に全体としてのかける法律は、非常に進んでやっている地方自治体のいまの行政からすれば、このほうが手ぬるいではないかという御批判もあるかと思いますが、全体を一つの法体系として考える場合に、このことによって富士保全に対してベターではある。こういうことがこの提案を申し上げた理由でございます。
  257. 角屋堅次郎

    角屋委員長 以上をもちまして、本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  258. 角屋堅次郎

    角屋委員長 本案に対し、林善郎君から修正案が提出されております。
  259. 角屋堅次郎

    角屋委員長 まず、修正案について提出者から趣旨の説明を求めます。林義郎君。
  260. 林義郎

    ○林(義)委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております富士地域環境保全整備特別措置法案に対する修正案について、その趣旨を御説明いたします。  修正案は、お手元に配付いたしてありますので、案文の朗読は省略させていただき、その要旨について御説明いたします。  本案は、第七十一回国会から継続審査となっている法案でありますので、本法案で引用している自然公園法及び自然環境保全法が第七十一回国会において、一部改正されたことに伴う字句の整理等、所要の修正を行なおうとするものであります。  以上が修正案を提出いたしました趣旨内容であります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  261. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これにて本修正案の趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  262. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これより本案並びに修正案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。登坂重次郎君。
  263. 登坂重次郎

    ○登坂委員 私は、自由民主党を代表して、富士地域環境保全整備特別措置法案の原案及び林君提出の修正案に賛成する態度を表明するものであります。  以下、その理由を述べることといたします。  すでにたび重なる法案審議及び過日行なわれました参考人からの意見聴取を通じて明らかとなっておりますように、わが国の自然を代表する富士山地域については、その地理的特性や交通運輸機関の発達に伴い、近年これを訪れる者の数の増大は目ざましいものがあり、また、レジャー施設、ゴルフ場、別荘等の観光開発が著しく進行し、この地域の自然環境の保護と、これにふさわしい利用秩序の維持という面から、多くの問題が生じていることは否定できない事実であります。  このような状況に対し、本法案は、富士山国立公園に指定されている地域以外の山ろく一帯の地域をも含めて、富士地域の自然環境をより広域にわたって、計画的、一体的に保護、保全しようとするものであります。  法案審議段階において、種々論議のあった点については、今後本法律案の運用にあたっては、自然保護の立場を堅持することによって十分こたえ得るものであり、現在急務となっておりますこの富士地域の自然環境を守るため、本法律案が最も現実的かつ適当な方法であると考えて、これに賛成する次第であります。(拍手)
  264. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、小林信一君。
  265. 小林信一

    小林(信)委員 日本社会党を代表して、本法案に反対の意見を表明します。  本法案の第一条に述べてありますように、富士山はわが国のすぐれた自然の象徴であり、かつ、世界に誇る国民的資産として、高く評価さるべきものであります。よって、その恵沢を国民がひとしく享受し、後代の国民に継承するため、富士山自然保護に万全を期することには、われわれも賛成でありますが、しかし、この法案には絶対に賛同しがたいものがあります。その理由を申し上げます。  法案の第十五条、「何人も、みだりに次に掲げる行為をしてはならない。」という規定をしておりますが、その第二号に拡声機、ラジオ等により著しく騒音を発してはならないとあります。しかし、一面実弾演習が許されているということは、何とも矛盾を感じます。かえってこっけいさが先に立って、まともな法律の運営ができないと私は心配するのであります。ここに、この法案の性格を最も端的にあらわしていると思うのです。  次には、富士山の実態が正確に把握されていないまま、この法案がつくられていることは、最も残念なところであります。もっと科学的な調査をし、乱開発による破壊の実態というものを十分考えて、この法案がつくられているのかどうかということを私は問題にしなければならぬと思います。したがって、この法案は、他の意味を持って概念的な保全計画が立てられているのではないか、こう見なければならないのであります。  利益の対象として乱開発をされてまいりました富士山を守るためには、もっと科学的な根拠に立って、しかも決断をもって当たる積極性がなければならないと思います。当然緊急を要する幾多の問題があります。あるいは財政的な裏づけをしなければならない問題がありますが、そういうものは何らこの法案審議の中でうかがわれない。これでは特別に立法をする意味というものがなく、きわめて形骸的な法案に終わっている。私どもはそこを問題視しなければならぬと思うのであります。  私は、審議の中でわずか一時間しか与えられなかったために、たくさんの問題を残しておるわけですが、その一、二を申し上げれば、いまやあの周辺にあります五湖は、たれ流しのため池に変わろうとしております。青木ケ原という美しい森林は——屎尿処理場があることは、私は問題ではないと思いますが、あそこに屎尿処理場が置かれるというようなことから、いまやあの周辺は廃棄物の捨て場所になっております。  私どもは、紅葉台というところに登って見ましたときに、高いところに登れば、もう青木ケ原は産業廃棄物はもちろん、一般家庭の廃棄物、そういうものの処理場になっている。ハリモミの原始林が天然記念物に特別指定されておりますが、まさに死滅寸前にあることは、われわれこの委員会が視察をして十分知ってきたことでございます。つまり、皆さんがこの法案にりっぱなことを書いて提案をされておりますけれども、そのことはほんとうにむなしい感じを与える以外にない。富士山の実態というものは、環境行政の中ではまさに放置されている状態であります。  したがってこの法案を提出するからには、もっとそうした現実をしっかりつかまえ、科学的な根拠に立って、こう積極的に取り組みますというものがなければならぬのでございますが、残念ながら、そういうものが片りんも見られない。富士の五合目は、あのスバルラインの終点でございますが、いままでは天地の境と言われました。したがって、もうあそこは清浄なところであるというふうに考えられておったのですが、まさにいまは目をそむけたくなるようなごみの山に化しておる。観光道路を建設したために、森林が切り開かれ、それに対して何らの措置がされておらないまま、ますます荒れようとしております。  しかも、今回、環境庁が全国で六カ所の景勝地に対しまして自動車の乗り入れ禁止をいたしました。しかし、この富士山の現状を看過しておることは、法案を出してきた、その真意というものを私は疑わざるを得ない。そういう面を私どもは全く納得できないまま今日まで終始したわけであります。  私に言わしめれば、いまのような一つ一つの問題を取り上げても、まじめに論議できない、こういう気がするのでありますが、一体その原因は何だ。やはり私どもが、各委員から指摘をしました昭和四十七年七月二十七日、民法六百四条の適用を法務省が認めるところとなりまして、北富士演習場の四千ヘクタールに近い県有地が山梨県に返され、実質、演習場は閉鎖されたわけであります。  国立公園内に演習場が存在するということは、この審議の中でも、政府からも好ましくない、あることは好ましくないのだ、こういうことがすべての人から言われております。しかし、そういう考えを皆さんが持ちながらも、そうして山梨県民が、この機会こそのがしてはならない、この機会をつかまえて、富士山を本然の姿にするために、自然を保護するために、演習場返還をこの六百四条適用によって実現したいという悲願を持ったわけであります。知事もそういう意図を持っておったのですが、ところが百三十億、二百十ヘクタールの払い下げ、そしてこの保全法を条件として官房長官に説得をされまして、再び自衛隊使用転換にまで運んで、演習場が可能になったわけであります。  三木長官が、安保条約を認める立場とそうでない立場の問題で、このことに対する議論というものは避けてまいりました。しかし、そうしてこの措置を正当化しようとしておりますけれども、おそらくこの見解というものは、将来にまで残る問題であって、はたして当時の環境行政を行なう人たちの見解がこれでよかったかどうか、私は、将来の問題にもなると思うのであります。  私どもは、この演習場が生まれるときには占領下であった、だから文句を言うことができずに、民意を聞くことなしに演習場が指定されたわけであって、文句は言えなかったけれども、二十年たった今日、六百四条が適用される、そのときに自然保護が優先か、あるいは演習をすることが優先をするかという、私は、きわめて安保条約に左右されないで判断のできるときではなかったかと思うのであります。  こういうことが原因でもって、この富士保全法提案をされたということは、何としても私は、きょうここでこの保全法を、賛成をして通すということは、これは将来に大きなあやまちをおかし、自然を保護するということが——私は、審議の中でも申し上げましたように、もっと高い、人間性の向上ということを基礎にして考えていかなければならぬというときに、せめてこの法案が出されるときには、純粋な気持ちでもって、ほんとう政府自体が自然を愛するということ一点ばりでもって臨んでくるかどうかということが私は問題だと思うのです。  一方で騒音を出してはいけないと言いながら、実弾射撃が行なわれておる。一体今後どういうふうに取り締まっていきますか。そのことだけでも、この法案の無意味さを、むなしさを一般の人たちが感じて、富士の保全は不可能になる。こう私は判断しまして、法案に反対をすると同時に、修正案にも賛意を表明することができないことを申し上げまして、私の討論を終わる次第であります。(拍手)
  266. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に木下元二君。
  267. 木下元二

    ○木下委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、本法案並びに修正案について反対の態度を表明いたします。  反対の第一の理由は、この法案の目的が富士環境保全に名をかりながら、実は演習場の確保にあるという点であります。戦後、東富士演習場北富士演習場合わせて一万ヘクタール以上にも及ぶ広大な地域を占拠した米軍は、この富士山ろくをアジア戦略の重要な拠点として朝鮮人民、ベトナム人民などに対する殺戮を重ねてきたのであります。今日、東富士北富士演習場自衛隊に移管をされ、その重要な演習場になっているとともに、一時使用の名のもとに、米軍の演習も何ら支障なく続けられ、富士山ろくは一年じゅう砲弾が飛びかい、戦車と軍靴に踏みにじられております。富士の自然を語るとき、この広大な軍事基地を抜きにして考えられないのは当然であります。  しかるに、政府は一昨年、米軍北富士演習場内県有地の使用協定の期限切れに際して、国民の全面返還の声を無視し、この法案と引きかえに、なりふりかまわず演習場を確保しようとしたのであります。このことは政府山梨県知事との間で取りかわされた覚書山梨県知事の全面返還要求から演習場容認への態度変更などを見れば明白であります。今日、世界のどの国を見ても、その国を象徴する自然の地を他国の軍隊に踏みにじられているという国はありません。私たちは、アジアの、そして日本の平和のために、また日本の象徴たる富士を守るために、この演習場の存続を断じて認めることはできません。したがって、これを確保するためにつくられた本法案もまた認めることはできません。  反対の第二の理由は、この法案が、富士自然保護にとって何ら実効が期待できないばかりでなく、逆に観光資本本位の開発を促進するおそれすらあるという点であります。今日、富士の自然は、あの富士スバルライン沿道の樹木の立ち枯れに象徴されるように、重大な危機にさらされております。富士急などの観光資本は、広大な土地の買い占めを進め、レジャーランド、ゴルフ場、別荘などを次々と建設し、まさに富士山ろくを食いものにしているのであります。しかるに、本法案のかなめともいうべき富士地域及び四種の地域の指定による規制では、これら乱開発を防ぐことはできません。すなわち、富士山頂を中心に半径二十キロメートルの円内といわれる富士地域内における国立公園以外の部分での規制は工作物の新築、改築、増築の届け出のみであり、乱造の進んでいるゴルフ場などが対象とはならず、富士山ろくの革新自治体などがやろうとしている規制に水をさすものになりかねません。また四種の指定地域における規制も、利用目的に沿って自然公園法や本法案の規定を運用するというものにすぎず、何ら規制強化とはいえないのであります。また、巨額の国費の投入が予定されている富士地域保護利用整備事業も、利用環境の確保並びにこれらに必要な施設の整備をはかるためとあるとおり、自然環境の保護よりも開発のための環境整備重点があり、観光資本に奉仕するものといわざるを得ません。富士の自然を守るためには、観光資本による富士の食い荒らしをきびしく規制し、国民の手に富士を取り戻すことが何よりも重要であります。  日本共産党・革新共同は、以上の立場から、演習場確保、開発優先の本法案並びに修正案に反対することを明らかにし、私の討論を終わります。(拍手)
  268. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、新井彬之君。
  269. 新井彬之

    新井委員 私は、公明党を代表して、富士地域環境保全整備特別措置法案並びに修正案に対する反対の態度を表明するものであります。  まず、反対の第一の理由は、本法案が提出されるまでのいきさつに重大なる問題がひそんでいるからであります。  米軍基地の全面返還及びあと地の平和利用は、長年にわたる日本国民共通の願望であります。  政府は、昭和四十七年七月に期限の切れる北富士演習場の賃貸借契約の再使用契約及び米軍から自衛隊への使用転換を認めさせる交換条件として、当初、県有地の使用許可、契約の延長を渋っていた山梨県側と覚書をかわし、その中で一つ演習場周辺整備事業に対する国庫補助の増額、二つ、国有地のうち、二百十ヘクタールを地元に払い下げることとともに、本法案の制定を約束しているのであります。  これは、国家権力と金の力で、財政難の自治体につけ入り、反対を鎮静させようとの暴挙であり、北富士演習場全面返環、平和利用を願望する地元山梨県民をはじめ日本国民に対する重大なる背信行為であります。  もし政府が真に「わが国のすぐれた自然の象徴であり、かつ、世界に誇る国民的資産」として富士山の自然環境保護につとめようとするならば、まず最初に、北富士演習場内における射爆等による自然破壊行為を停止し、同演習場を広く国民に開放すべきであります。  それに対し、何ら対策を講ぜず、富士山自然保護を叫ぶことは大きな矛盾があり、政府は、勇断をもってまず北富士演習場の県有地の返還、基地の撤去を行なうべきであります。  次に、本法案内容から見て、自然保護の面では、現在の国立公園内はこれまでの自然公園法による規制とほぼ同じで、国立公園外地域だけが、一定規模以上の工作物の新増設をする場合、環境庁長官に届け出なければならないと、わずかに規制されているだけであります。環境庁は、富士山が、わが国のすぐれた自然の象徴であることから、特別の措置をとったと説明しておりますが、現行の自然公園法に屋上屋を重ねる結果になっております。  国民的資産として保護すべき自然は、ひとり富士山に限るものではありません。十和田湖及びその周辺の自然破壊は急激に進み、琵琶湖の汚染は目をおおうものがあります。さらに日本列島至るところに、民間デベロッパーによる土地の買い占め、ゴルフ場、別荘団地造成など大規模開発がわがもの顔に保護すべき自然を破壊しております。  かかる現状にかんがみ、富士山のみにかかる特別立法をするのではなく、自然環境保全法、自然公園法を改正し、適用範囲の拡大及び規制の強化こそ、早急に実施されるべきであります。  さらに、本法案には、徒歩利用地域をはじめ、四つの利用地域区分を設けているが、保全地域については何ら触れられておりません。まさに環境保全の名をかりた富士周辺開発計画法案ともいうべきものであります。  以上の理由で、本法案に反対いたします。(拍手)
  270. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、折小野良一君。
  271. 折小野良一

    ○折小野委員 私は、民社党を代表して、富士地域環境保全整備特別措置法案並びに同法案に対する修正案について反対の討論をいたします。  富士山が、わが国のすぐれた自然の象徴であり、かつ、世界に誇る国民的な資産であることは申すまでもありません。その富士山についての今日の問題は、そのすぐれた自然環境が最近のレジャーブーム等により、一部の心ない人々により、またブームを当て込んだ過剰利用、乱開発等によって破壊寸前の危機的な状態に立ち至っている。いまにして厳重な規制を行ない、積極的な保全を行なわなければ、そのすぐれた景観、環境を保持し、後代の国民に継承することができなくなるであろうということであります。  したがって、この富士地域環境を保全するためには、何よりも増して過度な利用と開発を規制し、自然環境の保全に徹することでなければなりません。  しかるに本法案は、利用環境の確保を趣旨とし、今後の利用整備を中心に制度化しようとするものであります。このことは、今日、富士地域の自然環境の保全が憂慮せられるほどの過剰利用の状態にある上に、新たな開発を加えようとするものであり、その意図のいかんにかかわらず、さらに一そうの環境破壊が進むであろうことを憂慮されるものであります。  政府は、この際、本法案を撤回し、いま直ちに、これまでの利用の規制をも含めた、きびしい富士地域環境保全の対策を講ぜられんことを強く要望して、私の反対討論といたします。(拍手)
  272. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これにて討論は終局いたしました。  富士地域環境保全整備特別措置法案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、本案に対する林義郎君提出にかかる修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  273. 角屋堅次郎

    角屋委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除いた原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  274. 角屋堅次郎

    角屋委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  ただいま議決いたしました本案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  275. 角屋堅次郎

    角屋委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決定いたしました。     ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  276. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次回は、来たる五月十七日金曜日、午前十時理事開、午前従事三十分委員会を開会することとにし、本日は、これにて散会いします。     午後六時五十一分散会