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1974-04-24 第72回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月二十四日(水曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 角屋堅次郎君    理事 坂本三十次君 理事 登坂重次郎君    理事 林  義郎君 理事 森  喜朗君    理事 島本 虎三君 理事 土井たか子君    理事 木下 元二君       八田 貞義君    岩垂寿喜男君       金丸 徳重君    小林 信一君       佐野 憲治君    米原  昶君       岡本 富夫君    坂口  力君       折小野良一君  出席政府委員         環境政務次官  藤本 孝雄君         環境庁長官官房         長       信澤  清君         環境庁自然保護         局長      江間 時彦君         環境庁水質保全         局長      森  整治君  委員外出席者         参  考  人         (山梨県知事) 田辺 国男君         参  考  人         (富士宮市長) 植松 義忠君         参  考  人         (忍草入会組合         組合長)    天野 重知君         参  考  人         (国立公園協会         理事長)    千家 哲麿君         参  考  人         (山梨大学教         授)      中村  司君         参  考  人         (京都大学名誉         教授)     西山 夘三君         参  考  人         (千葉大学教         授)      池ノ上 容君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 四月二十四日  辞任         補欠選任   岩垂寿喜男君     金丸 徳重君 同日  辞任         補欠選任   金丸 徳重君     岩垂寿喜男君     ————————————— 四月二十日  有毒物質等による公害防止に関する請願(小坂  善太郎君紹介)(第五五一五号)  同外八件(河野洋平紹介)(第五五七九号) 同月二十二日  有毒物質等による公害防止に関する請願(竹本  孫一君紹介)(第五七二二号)  同(福永健司紹介)(第五九〇二号)  同外一件(浦野幸男紹介)(第六〇四四号) 同月二十三日  自然保護のためビーナスライン美ケ原線等の建  設中止に関する請願下平正一紹介)(第  六七八五号)  同外一件(中村茂紹介)(第六七八六号)  有毒物質等による公害防止に関する請願外二件  (木原実紹介)(第六七八七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  富士地域環境保全整備特別措置法案内閣提  出、第七十一回国会閣法第一一五号)      ————◇—————
  2. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これより会議を開きます。  内閣提出富士地域環境保全整備特別措置法案を議題として、審査を進めます。  本日は、参考人として、山梨県知事田辺国男君、富士宮市長植松義忠君、忍草入会組合組合長天野重知君、国立公園協会理事長千家哲君、山梨大学教授中村司君、京都大学名誉教授西山夘三君千葉大学教授池ノ上容君、以上七名の方々をお招きしております。  なお、議事の整理上、前半は田辺参考人植松参考人天野参考人及び千家参考人からまず御意見を承り、続いて以上の参考人に対し、質疑を行なうことといたします。  また、午後二時から中村参考人西山参考人池ノ上参考人から御意見を承り、続いて質疑を行ないます。  この際、委員会を代表いたしまして、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中のところ、また遠路にもかかわらず、本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  なお、国会の情勢により、先般御連絡いたしました日時を本日に変更させていただきましたことにつきまして、たいへん御迷惑をおかけいたしました。  本委員会といたしましては、現在、富士地域環境保全整備特別措置法案について慎重な審議を続行いたしておりますが、本日は、参考人の皆さまから貴重な御意見を承り、もって本法案審査の万全を期したいと存ずる次第であります。つきましては、どうか忌禅のない御意見をいただきたく、お願い申し上げます。  なお、御意見の開陳は、おのおの十五分程度に要約してお述べいただき、その後委員質疑にお答えいただくようお願いいたします。  それでは、田辺参考人からお願いいたします。田辺参考人
  3. 田辺国男

    田辺参考人 山梨県知事田辺でございます。  衆議院の公害対策並びに環境保全特別委員会におかれましては、委員長をはじめ委員各位、格別の御尽力を賜わっておりまして、まことに感謝にたえない次第でございます。  本日は、富士地域環境保全整備特別措置法案審議にあたりまして、参考人として御指名をいただき、意見をお聞き取りをいただきますことに対しまして、まずもって厚く御礼を申し上げる次第でございます。  御提案になっておりますこの法律案は、私ども地元住民にとりましては、多年にわたって要望をしてまいりました富士地域保全整備に関するものでありまして、わが国象徴である富士山中心といたしました一体的な地域の、かけがえのない貴重な自然、いわば国民的資産ともいうべき自然環境保全目的といたしまして、特別の措置を定め、文字どおり実効確保できる立法であろうと考えておるところでございます。  そこで、私は、まず第一に、この法律案がなぜ必要かという点について、地元県知事という立場から、具体的な状況を交えてお話を申し上げてみたいと思います。  富士地域は、首都から約百キロの距離に位置をいたしております。しかも、富士山富士五湖をはじめといたしまして、すぐれた風景資源に恵まれておりますので、休養レクリエーション等の場として、あるいは自然との触れ合いによる人間性の回復の場所としても、絶好の条件を備えておるものと思います。したがいまして、この地域を訪れるいわゆる観光客数も逐年増加の一途をたどっておりまして、山梨県側の北ろくについてみますと、昭和三十年には約二百十四万人であったものが、昭和四十年には約五百九十二万人、さらには最近の昭和四十八年には千百四十二万人と、約五倍に及んでおるわけでございます。これからの経済社会の動向、国民生活あり方、あるいは交通の発展等を考慮いたしまして、将来は、どの程度まで増加をしていくだろうかという推計を行なっておるわけでございますが、このままの趨勢でまいりますと、昭和六十年には、延べ観光客数は約二千五百万人ないし二千七百万人ぐらいになるのではないか、こう思われます。  そこで、問題になりますのが、この地域自然環境保全であります。  現状におきましては、心ない人々のために植生が荒らされたり、また溶岩が持ち去られたり、問題がしばしば起きておるわけでございます。これをどうして防止するかということで、いろいろの知恵をしぼっておるわけでございますが、なかなか安心できるというところまではまいっておりません。  また、富士山への登山道あるいは湖の周辺など、観光客の集中いたしております地点におきましては、ごみ、屎尿処理等の問題があります。常住人口の数倍に当たります一時的な観光人口の入り込みに対しましては、廃棄物処理責任を負わなければならないのが市町村の現状でございます。施設用地の問題、また財政負担などに相当に困難な事情をかかえておるわけでございます。  次に、富士五湖の水質保持についてでございますが、観光客増加と湖の周辺常住人口伸び等原因となりまして、湖水汚染が急速に進んでおります。五湖は北ろく地域における資源的なポイントでありますので、清らかな水質保全は重大な問題でございます。  県の調査によりますと、湖岸一帯は、浸透性の高いいわゆる溶岩地帯でございまして、湖水からの流出量の大部分地下浸透流出となっておるわけでございます。山中湖のごときは、総流入量のわずか三%が実績放流量、すなわち、表面流出率は三%という実態でございます。したがいまして、汚濁源となる要素、たとえば窒素、燐、あるいは浮遊物質等は勢い湖水に堆積をされ、汚濁進行原因となっておるわけでございます。  このような湖水ごと水収支生態学的な構造の分析とあわせまして、観光客の流動による汚濁負荷量増加等専門家への委託調査を含めまして、県といたしましては、でき得る限りの調査、検討を重ねてまいりまして、汚染防止対策を進めているところでございます。現状におきましては、汚濁源となる生活排水流入規制することでございますが、抜本的な対策といたしましては、公共下水道とあわせまして、流域下水道整備以外には方法はないものと考えられるわけでございます。  それにいたしましても、汚染防止のためには、地域一帯土地利用規制施設あり方等が問題でありまして、基本的な方針を確立して対処すべきものと考えておりますが、この点につきましては、後ほど触れさしていただきたいと思います。  また、この地域保全上、大きな問題といたしまして大沢くずれ対策があります。このことにつきましては、昭和四十二年の五月に、政府与党連絡会議の席上、私から提言いたしまして採択をしていただき、翌四十三年度から国直轄事業といたしまして、画期的な整備が進められることになった経緯があるわけでございます。この地域には、このほかにも吉田大沢などの多数の野渓、いわゆる雪しろなどの崩壊地がございますので、早急な保全整備が必要であるわけでございます。  次に地域自然状況の中で、特に取り上げるべき問題は植生であります。  北ろくの地域について申しますと、全地域の七一%が林地でありまして、青木ケ原の原生林などをはじめ、環境資源としては、いずれも貴重なものでございます。この林地の六八・二%に当たる県有林を管理しております県といたしましては、特に自然の保護保全に焦点を置いて施策を進めておるところでございます。  林業経営からいたしますと、植林をし、育成をして伐採するということでございますが、環境的な視点に立って考えますと、伐採は、極力抑制しなければならないわけでございます。県有林におきましては、自然の保護保全主体としました地帯を区分を設定しておりますが、これによりますと、風致保存県土保全などを目的とする禁伐林が全体の四三%を占めておりまして、財政的には相当負担を払っておるわけでございます。  なお、この地域における土地開発進行状況について見ますと、ゴルフ場、別荘、宅地造成など、民有地に対する業者の進出が目立っております。県有地につきましては、一切の開発的な申し込みをシャットアウトいたしております。  私が知事に就任いたしました昭和四十二年当時、百三十件余、六千二百ヘクタール以上の借地申請、いわば開発利用申し込みがありました。私は、グリーンプランという県土づくりの理念を掲げまして、できるだけ緑を残そうと考えておりましたので、開発ブームに乗って出されておりました借地申請をすべて返戻することにしたわけであります。もちろん、その後におきましても、一切県有地の貸与、分譲は行なっておりません。国民生活にとって、緑がいかに貴重な存在であるかということを長期的に判断して決定した措置でありましたが、当時はなかなか理解していただけなかったと記憶をいたしております。  しかしながら、民有地の場合は事情が違いますので、土地利用規制相当のむずかしさがあります。法的な制約を受けることなく、所有権の移動、そして用地造成が進められることになるわけであります。私は、自然環境保全条例をはじめ、ゴルフ場等設置規制宅地造成規制基準など、全国に先がけて次々と条例化をはかってまいりました。  以上、申し上げましたような状況から判断いたしまして、富士北ろくの地域の自然を守っていくためには、どうしても現地の実態に合った新しい立法が必要であると考えたのであります。増加する観光客計画的に分散配置するためには、きびしい用地規制が必要であります。また、その裏づけとしまして、必要な基盤整備を急がなければなりません。五湖の水質を守るための流域下水道の布設、林地保全のための治山、砂防施設整備等であります。  このような、規制基盤整備とを一体的に推進できる新しい法律案として、富士地域環境保全整備特別措置法案が提出されたものと理解しているわけであります。従来からあります自然公園法あるいは自然環境保全法で十分ではないかという御意見もあると伺っておりますが、私は、この地域特性実態から考えまして、十分ではないと思っております。  北ろく地域における自然公園面積は三万七千七百ヘクタールでありまして、この地域における全面積の七九・六%にも及んでおります。この公園地域の自然を適正に保護保全していくためには、自然環境の態様に応じまして、きめのこまかい、しかも徹底した規制措置が必要であろうと考えるものであります。  すなわち、それぞれの地域、地区における自然環境特性に応じまして、それにふさわしい利用環境確保するために、新法案では、四種類の利用地域を指定することといたしております。ロードレス・エリアとしての徒歩利用地域、自然へのアプローチを主体とする自然深勝利用地域、それに、キャンプ場運動場など健全なレクリエーション活動のみに限定する野外施設利用地域工場等を排除して、休養、宿泊を中心とした休泊利用地域でありますが、環境条件に合った整然たる利用確保するために、有効な方策であろうと考えるものであります。  以上、この法律案が提出されるべき背景とその必要性法律案趣旨、内容の一部につきまして、私の考え方を申し上げました。  第二に、この法律案が提出されるに至りました経緯につきまして、御説明を申し上げたいと存じます。  たまたま、この法律案の煮詰めにあたりまして、北富士演習場問題の処理と軌を一にいたしましたところから、演習場用地の提供と交換に、本県が一方的に要請した法律案ではないかという疑問を持たれているやに伺っております。こうした疑念を払拭していただくためにも、私は、知事としてその真意を申し上げ、委員会の諸先生方の御理解をいただきたいと存ずる次第であります。  この法律案は、演習場問題とは関係のないものであります。演習場問題につきましては、私は、知事就任以来、その返還を求め、国民的な活用をはかることを目標としてまいりました。しかしながら、この目標を実現するためには、どこまでも現実的な、実現可能な過程を経なければならないことは当然でありまして、私なりに申し上げますと、段階的な解決をはかってまいるべきものと考えております。  私は、この基本的方針に基づきまして、政府当局との折衝協議にあらゆる努力を払ってまいりました。この結果、昨年四月、使用協定を締結するに至ったわけでございますが、このことは、政府が必要とする演習場存在理解した上での、合理的な判断であり、また、必要な手続であったと考えております。この点につきましては、過去十数年来、多大の成果をあげております東富士演習場のよき先例もありまして、地元住民の大多数の方々の御理解をいただき、また、県民各層の御協力を得て進めてまいったものであります。  国有地の払い下げを含め、演習場面積の三割近い部分返還をはじめといたしまして、演習場が所在するために必要とされる周辺整備事業、すなわち、関係地域住民の民生安定の確保でありますとか、演習場使用条件の改善、林野雑産物の損失補償問題の解決などが、演習場問題の処理に付帯してとられました条件的な事項でありまして、確かに、国との折衝過程の中で確保したものであります。  しかしながら、広範な富士地域そのもの保全と秩序ある利用を保障しようとするこの法律案と、演習場問題とは、全く関連性のないものであることを御理解いただきたいのであります。演習場をもその一部として包含している富士地域は、世界に誇るべきかけがえのない資源であり、また、国民的資産であると自負しているところでありまして、防衛施設確保条件として取引するなどというものではないと確信をしております。いわば、本質的に次元の異なる問題であると考えております。  このことを側面的に立証する事実として、富士地域にかかる特別立法化への動きは、この一、二年の間に突如として起こってきたものではございません。少なくとも、わが山梨県にとりましては、十数年来の懸案であり、県民の念願であったのであります。  順を追って申し上げますと、最初は、昭和三十七年五月、磯村英一ら学者グループによる富士圏構想提案であります。富士圏の持っているポテンシャルを特別立法化によって発現させるべきであるという考え方であります。これを受けまして、昭和三十九年九月には、小林中氏を議長とする富士山麓総合開発委員会政府にその実施を建議しております。  昭和四十二年、私が就任しましたときに、静岡、神奈川の両県知事と相談いたしまして、富士をめぐる県際地域の問題を協議するため、三県知事会議を開催いたしました。御殿場市で開催をされました第一回会議に、私から富士圏整備法制定促進とあわせて、地域環境保全整備のための特別財政措置、たとえば環境交付税の創設などを提案いたしまして、決定になったいきさつがございます。これが、きっかけとなりまして、富士圏富士箱根伊豆公園地域へと範囲が拡大されまして、三県一体となって、その保全規制、秩序ある利用のための調査整備基本計画の策定を見たのは、昭和四十五年の九月であります。  このような計画づくり特別立法化への動きを通じまして、一貫して流れておりますのは、富士地域が、特別の価値と意義を持っている地域として、それにふさわしい位置づけが必要であるという考え方であります。  私は、このような経緯を踏まえまして、仮称富士保全法制定必要性を強く感じまして、機会あるごとに、政府をはじめ、関係方々に要請をしてまいったところであります。一昨年の七月、たまたま、このような私の考え方理解された政府協議をいたしまして、立法化への推進をはかったものであります。  以上のような経緯でございますので、日本の自然を代表する富士地域保全するために、諸先生方の、大乗的な見地からの透徹した御理解と絶大なる御協力をいただきたいと存ずるものでございます。  以上申し上げまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。(拍手)
  4. 角屋堅次郎

    角屋委員長 ありがとうございました。  次に、植松参考人にお願いいたします。植松参考人
  5. 植松義忠

    植松参考人 ただいま御紹介いただきました私、植松でございます。富士山の総面積の約四分の一の地籍を管理しております富士宮市長でございます。  本日は、この法案審議のために、わざわざお招きをいただきまして、意見陳述をお許しくださることを、まずもって光栄に存じております。  秀麗富士は、わが国の最高峰であり、また、国土象徴として、あるいは観光資源といたしましての名山であるというばかりではありません。富士山は、特にわが国気象学をはじめ地質学土壌学、あるいは植物学、あるいは動物学生態学自然科学等々、学術的にも貴重な自然の宝庫であると私は確信しておるのでございますし、皆さん方もそのように御承知くださっておることと思います。  また、東駿河湾工特地域をはじめといたしまして、岳南工業地帯に対する水質源の一大供給基地的な役割りをも果たしているとともに、良質で豊富な飲料水の源を包蔵している貴重な水源涵養地帯でもあるわけであります。さらに、標高ゼロメートルから始まりまして三千数百メートルに及ぶ標高差によりますところの、きわめてバラエティーに富んだ農林漁業等の振興が期待されるわが国唯一宝庫でもあるというふうに私は確信をいたしております。  私たち富士山ろくに住む住民といたしましては、以上申し上げましたような課題に対しまして、特に周到な注意と慎重な考慮と対策とを講じながら、問題に対処しなければならないであろうというふうに確信をしております。  したがって、富士山ろく開発を思考する場合、まず、第一に考えなければならないことは、有名な大沢くずれをはじめ、山頂ないし山腹に源を持ち、それから発達している無数野渓に基因する大災害から下流三十万の人々の貴重な生命と財産をいかに守るかということであります。  この対策なしには、どのようにりっぱな都市計画産業開発計画も、あるいは利用計画も一瞬にして烏有に帰することは明らかであります。  最近の実例を見ましても、去る昭和四十七年五月一日、富士山大沢くずれ源頭部の雪解けによりますところのなだれと降雨のために、源頭部に堆積されておりました約二十万トンという多量の土石土石流となって一気に山ろく扇状地に押し出しました。既設の砂防施設は各所で破壊、流出いたしました。泥流潤井川を経て二十五キロメートル下流田子の浦港にまで相当量土砂を堆積させて、港の機能は完全にストップされたという事実があるのであります。また、続いて五月五日あるいは六月八日、七月十二日と集中豪雨等がありまして、この年には約百万立米に及ぶ土石扇状地に押し出しまして、潤井川沿線住家や河川、田畑等に多大の被害をもたらしましたことは、すでに御案内のとおりであります。  事の重大さに対しまして、幸い国会で問題を取り上げていただきまして、富士山砂防潤井川災害復旧等事業として国、県の御採択を得まして、着々その成果をあげておりますことは、まことに感謝にたえないところであります。  しかし、わが国のすぐれた自然と国土象徴でありますところの富士山も、世界でも例を見ない大崩壊地、いわゆる大沢くずれや無数野渓をかかえまして、その下流に住む住民生命と暮らしを脅かす重大な課題に直面していることを強く御認識していただきたいのであります。  また、富士山ろく、特に南斜面に当たる岳南地域をはじめといたしまして、東ろく地域においては、現在大企業並びに民間デベロッパーによりますところの、すさまじい開発攻勢がかけられて、広大な土地の買い占めが先行するとともに、これら起業者による無計画、無秩序な開発事業のためにとうとい自然が破壊されようとしているのであります。  私たち富士山ろくに位する静岡県側の四市一町、すなわち富士富士宮御殿場、裾野の四市と小山町は、富士の自然と環境を守る会を結成し、お互いに連帯性を強めまして、これに対処して今日に至っておりまして、富士山保全に関する適切な立法措置を強く望んでおったことは事実であります。  このたび富士地域自然環境の適正なる保護とその利用との調整、整備のために、この特別措置法を制定されますことは、まことに適切な措置であると考え、この法案趣旨には賛意を表明するものであります。  富士地域にある四市一町は、国、県のレベルによる自然保護環境保全対策を早急に望む見地から、次のような意見を申し述べまして、御参考に供していただきたいと存ずる次第でございます。  まず最初に、富士山大沢くずれ対策でありますが、世界にその例を見ないといわれている大崩壊の源である富士山の大沢くずれの源頭部についての対策であります。第二には、扇状地安定化、第三には、下流への土砂害防止対策を国家的な見地から取り組み、下流に対する防災対策と、くずれ行く霊峰富士の山容を守るべきものと存じます。  また、そのための事業費は、地方公共団体に課することなく、全額国の御負担で行なっていただきたい、かように考えております。現在行なっております事業については、国の直轄事業に対しまして事業費の三分の一を県が負担しているということが事実であります。  次に、野渓調査についてでありますが、富士山には先刻も申し述べましたごとく、八百八沢と呼ばれるほどたくさんの野渓が発達しています。ことに西側から南側には、潤井川、芝川の上流部を形成しておりますところの大沢のほか、不動沢とか、あるいは桜沢、主杖沢、赤沢、市兵衛沢、ガラン沢、大日沢など、その他無数野渓があります。これら野渓は、絶え間なく侵食作業が進んでおり、崩壊が続いて下流災害発生の原因となっておるのであります。したがいまして、ぜひとも富士山腹の野渓について学術的、学際的な調査と、その抜本的対策を早急に配慮願いたいと考えている次第であります。  第三といたしまして、地下水の涵養と災害防止のためのマサ抜き等水源涵養の問題についてお願いいたしたいのであります。  すなわち、富士山ろく標高三百メートルから八百メートルの地帯には、富士山の一番新しい噴火でできました火山灰や砂れきなどが固結化いたしまして盤状になった火山灰性の砂質粘土が、数十センチメートルの深さのところに、ちょうど厚さ約一メートルくらいの層となっておるのであります。このマサ層と呼ばれる不透水性の盤土層は、大雨のときには直ちに鉄砲水となります。そして下流災害をもたらす。また冬季には干ばつを富士山ろくにもたらしまして、非常な干害をもたらしておるのが現実であります。  このことに対しまして、静岡県では、この対策として等高線に沿って帯状にマサ抜きをいたしまして、雨水を浸透させる人口地下水の涵養に取り組んでいるのでありますが、その試験の結果では、幅一寸メートル弱のみぞで、延長十キロメートル当たり、およそ二十万トンぐらいの地下水の涵養が実証されておるのであります。この富士地域の水資源対策について、国の全面的な協力をお願いいたしたいと存じております。  第四には、観光客のための屎尿処理廃棄物理事業を整備計画に盛り込むことについてであります。先刻の田辺知事さんのお話もございましたとおり、富士山をめぐる観光客は、今後ますます増加の一途をたどると思います。  富士地域地方公共団体は、御承知のとおり大石寺への登山客をはじめ、年間一千万人にも及ぶ観光客等の移動人口がもたらしますところの屎尿処理廃棄物処理等に苦慮しているのが現況であります。今後この傾向は、ますます増大するものと考えられるのであります。したがいまして、この特別措置法案の第五条の富士地域保護利用整備計画の中に、屎尿処理廃棄物処理施設整備に関する事業を取り上げていただきたい。そして環境保全確保について特段の措置を願いたいと考えるのであります。  以上、富士地域環境保全整備特別措置法案について所要の意見を申し述べたのでありますが、この法案保全を前提としながらも、一面では自然とのバランスをくずすような開発を誘導するきらいもありますので、富士地域都市計画土地対策、あるいは農林業対策など、あらゆる分野から富士山特有の自然資源保護、すなわち、保全を最優先とした立法化がなされるよう努力されることを強く希望いたしますとともに、地域の指定や計画の策定等、法の運用については、地元市町村等の意見を十分考慮して遺憾なきを期せられますよう切にお願いを申し上げまして、簡単ではございましたが、私の意見陳述といたします。たいへんありがとうございました。(拍手)
  6. 角屋堅次郎

    角屋委員長 ありがとうございました。  次に、千家参考人にお願いいたします。千家参考人
  7. 千家哲麿

    千家参考人 私、ただいま御紹介をいただきました千家でございます。本日は、法案審議に際しまして、参考人として御指名をいただき、つたない意見を述べる機会を与えられましたことを非常に光栄に存じております。私は法律屋ではございませんで、公園の造園技術屋でございます。したがいまして、私の申し上げますのは、そういう立場からの意見を申し述べさせていただきたいと存じます。  まず最初に、この地域の国立公園としての特性でございます。先ほど来お話もございましたが、富士山は箱根とともに昭和十一年の二月に、富士箱根国立公園として指定をされたのでございますが、戦後国立公園の見直しが行なわれまして、昭和三十年の三月には、伊豆半島を含めることになり、さらに昭和三十九年七月には、伊豆七島も含めることになりまして、その名称も富士箱根伊豆国立公園と変わった次第でございます。このように富士火山帯に並んでおります山岳、半島そして島嶼という三つのものが入っておりまして、非常に雄大な構想のもとに設立された公園ということがいえようかと存じております。  地籍は山梨静岡、神奈川、東京の一都三県にまたがっておりまして、面積が十二万二千ヘクタール、二十六国立公園のうちでは、六番目に大きい公園になっているわけでございます。  この富士山地域が国立公園となりましたのは、申し上げるまでもないことではございますが、世界的に有名な、秀麗な火山でございまして、標高は三千七百七十六・三メートル、現在ではわが国で一番高い山でございます。それから山ろくには富士五湖という秀麗な湖がございまして、山頂から引いております非常に超大なすそ野とともに、美しい独特の風景を形づくっているのでございます。さらに、古くから名山あるいは霊峰といたしまして、信仰の対象となっておりますばかりでなく、詩、歌あるいは絵というふうに美術的の方面でも、大いに親しまれてまいっているわけでございます。さらに火山あるいは動植物等の自然科学的の価値あるいは史跡、遺跡等、文化財的の価値というものは、きわめて高いのでございます。このように富士山地域は、富士箱根伊豆国立公園の中でも、特にすぐれた諸点を持っているわけでございます。  なお、この場所は首都圏から非常に近うございますし、最近交通状態が非常によくなりましたので、先般お話もございましたように、年間約一千万人の人々が訪れておりますわが国で有数のレクリエーションの場所になっているわけでございまして、将来ますます国民に親しまれる重要な地域だというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、この地域を本日御審議の法律によりまして、自然環境保護をはかりながら、同時に、正しい利用を進め、その利用のための環境保全するということは、まことに重要なことだと私は信じているわけでございます。  次いで、現状について申し上げます。  本日の法案の対象となっております富士地域というものは、近年急速に開発をされてまいりまして、自然環境は残念ながら、かなり破壊されているというふうに申し上げて差しつかえないと存じます。これにはいろいろな原因があろうかと存じます。  まず一つには、国民が大都会からのがれて自然の美しい風景、美しい空気に触れたい、すなわち、自然に親しむという傾向が非常に強くなってまいったことでございます。それを助長いたしましたのが交通の改良でございます。たくさんの人が参りますので、勢い観光レクリエーション的の開発がそれに伴って進んでまいったわけでございます。一面におきましては、この富士山地域が、すそ野が長く、平たん地が非常に多く、開発がしやすいという一つの条件もございます。さらに山ろく一帯につきましては、ほとんどが民有地であるということも一つの大きな条件でございます。さらに、これらの平たん地あるいは緩斜地の大部分が、在来、集落あるいは農耕地、原野、林業経営のための森林でございました。したがいまして、国立公園計画保護計画におきましても、これらの地域を特別地域として十分に規制するというわけにはまいらなかったわけでございます。そういうことも一つの原因になっている次第でございます。  さらに御承知のように、全国的に見られました別荘分譲等に伴う土地ブームというものが、このあたりに大いに入ってまいりまして、さらには遊園地的施設が導入されるというようなことから乱開発が行なわれると同時に、富士地域においては、あまり好ましくないような姿のレクリエーション開発も行なわれた、これが現状でございます。  こういうような点から見まして、今回の法律によりまして、こうした自然環境の破壊を防ぐことができ、また富士地域にふさわしい利用環境保全というものができるならば、これにこしたことはない、かように存じております。  次いで、法律に書いてありますことについて、私の立場から若干の意見を述べさしていただきます。  まず趣旨でございますが、趣旨には三つ大きいことが書いてございます。  一つは、富士山中心として、国立公園だけでなく、その外周に及んで富士地域というものを設定して、広域的にここをとらえていく、こういうことが書いてございます。第二番目は、この地域自然環境保護をはかるとともに、その環境にふさわしい適正な利用環境確保して、それに必要な施設整備していく、こういうことが書いてございます。それから第三番目に、こういう目的を達成するために、富士地域保護利用整備計画を策定して、その実施を促進する、この以上三つが法律の趣旨でございます。  これについて意見を申し上げますと、第一の、富士山中心として、一帯を広域的に一つの自然環境として考えるということは、非常にけっこうではございます。ただ、若干概念的であり、詳細はまだ政令その他で定められると思いますが、どの程度の実効があるかはちょっと予測いたしかねますけれども、しかし、在来狭く考えていた富士山というものを、大きい富士地域というもので見直していくということは、私は構想としては、たいへんけっこうだ、かように存じております。  それから第二には、自然環境保護でございますが、これにつきましては、法文によりますれば、自然公園法あるいは自然環境保全法という既設の法律と相まって、自然環境保護をはかろうということを述べておりますが、これもまた、きわめて適切なことだと存じております。ただ、若干意見がございますが、それは、この地域で、富士地域という大きいものになりましても、その中心というものは、あくまでも国立公園でございます。ところが、この国立公園の保護計画、どういうふうにして自然環境保護していくかという法律による土地利用区分というような保護計画というものは、必ずしも十分ではございません。  例を申し上げますと、この地域で一番中心になりますのは富士山そのものでございます。それから知事さんもお話のございました青木ケ原の原始林でございます。こういうところは、この国立公園で一番厳重に守らなければいけないところでございます。また、これが富士山生命でございます。ところが、この地域自然公園法上一番厳重に保護すべき特別保護地区にはまだ指定されておりません。現在、その下のランクにございます特別地域に指定されているだけでございます。  なぜ指定されていないかと申しますと、いろいろ理由はあろうかと思いますが、私の察するところでは、富士山頂の土地所有権問題というものが解決しなかった。したがって、その問題とあわせてこの特別保護地区の問題を考えていくという観点から、この特別保護地区指定問題が進まなかったのではないかというふうに存じますが、この本日御審議の法律の第一歩として、この法律とは別ではございますが、富士山の守るべき特別保護地区を設定するということは、私はきわめて重要なことだ、かように考えております。  これと同じようなことは、若干程度は落ちますが、五湖周辺におきましては、在来、先ほど申し上げましたように、普通地域その他が多うございましたので、特別地域の設定がきわめて少のうございます。そういう地域において非常に乱開発が行なわれておりますので、富士地域における自然環境保護していこうとするならば、そういう計画についてもう一ぺん見直しをしなければいけないということを感ずるわけでございます。もし、そういう見直しがなされずに、このまま参りますれば、私は、この法律による効果というものは、あまり期待できないのではないか、つまり、自然公園法上の自然公園計画保護計画というものをまず見直すということは、この法律を施行する前提にある。そして、もしそれが行なわれなければ、本法を施行しても、しり切れトンボになるおそれがある、こういうことを私は心配しているものでございます。  それから第三番目に、法律の第五条第一項第二号によりますと、計画によりまして四つの利用地域を指定する、そして利用環境確保をはかる、そして適切でない利用規制をはかる、こういうことがうたわれております。これもたいへんけっこうなことでございます。  こういうふうに自然環境保護しながら、それに最も適した利用の質と量を選び出して、そして自然保護とにらみ合わせながら、その地域で最も適切な利用をはかり、保護をはかっていく、こういう考え方というものは、公園計画あるいはレクリエーション計画、森林レクリエーション計画等におきましては、定法的な手段としてとられているわけでございまして、一九六二年にアメリカが、将来のレクリエーション利用を推進するために、いろいろな施策を立てたわけでございますが、そのときに設けられましたレクリエーション資源調査委員会、これはロックフェラーが委員長で、たいへんりっぱな報告を出したのでございますが、その中で、今後の自然公園とか自然レクリエーション地域というものは、そうした意味での保護利用を兼ね合わせた土地利用区分をしっかりやっていくべきである、こういうことを申したのでございます。その後、各国はこの例にならいまして、そういう手法をとってまいったわけでございます。  わが国の国立公園の公園計画について見ますと、法律によりまして保護計画利用計画というものがございまして、それが、二つが一体になりまして、公園の計画ということになっているわけでございます。  保護計画におきましては、厳重に自然状態を保護すべき特別保護地区、第一種特別地域、あるいは産業その他と調整を保っていくための第二種、第三種特別地域、あるいは集落、農村等の制限をほとんどしないような普通地域、このような三つに分けて保護を三段階にやっているわけでございますが、その地域に、それぞれの地域特性に応じ、またその公園全体としての特性を生かす意味におきまして、利用計画というものは自然保護計画の上に乗って策定をされているわけでございます。したがいまして、わが国のいまの公園計画におきましても、現在の法律、今日御審議いただいている法律に載っておりますような利用規制というものは、ある程度は行なわれているわけでございます。  ただし、日本の国立公園というものは、外国の国立公園と違いまして、土地がすべて国有というわけにはまいりませんで、民有地もあり、県有地もあり、社寺有地もあるというような状態でございますので、完全にそういう利用保護とがマッチしたような形で進められ、望ましくない利用は全部排除している、こういう形ではございません。しかしながら、こういうようなことで、本法で定められておりますような利用地域の設定というものは、国立公園計画においても、ある程度は現在考慮されながら、指定がされていろということはいえるわけでございます。  私は、法律屋ではございませんので、よくわかりませんが、もし、今回提案の法律のように四つの利用地域を指定して、その地域において望ましからざる利用施設というものを排除するために法律が要るということでございますれば、私は、これは全国の国立公園、自然公園に共通の問題でございますので、自然公園法本体を直すべきである。もしかりに、この法律によりまして富士箱根伊豆国立公園の富士地域において利用地域というものが設定され、規制されたときに、それでは残っている伊豆半島はどうするのか、伊豆七島はどうするのかということに相なるわけでございます。  もし法律上そういうことが必要であるというならば、これは全国の自然公園に共通の問題でございますので、自然公園法の改正をしていただいたほうがよりベターではないかということを感ずるわけでございます。ただ、一足飛びにそこまではなかなか行きにくい。したがって、一応経験的に富士地域でそういうことをやってみるということでございますれば、万全の措置を講じて、そういうことをお取り計らいいただくことも一つの策ではないか、かように存ずるわけでございます。  それから、この法律の中に保護利用整備計画というのがございます。これは法律の第五条第二項によりますと、国立公園計画あるいは自然環境保全法に基づきます保全計画と適合するということが書いてございます。これも私、法律屋ではございませんのですが、「適合し、」ということは、完全に一致しているというふうに私は解釈をいたしたいのでございまして、富士地域の中における富士国立公園区域については、国立公園計画と本法による計画とが、そごしないようにすべきであるということを考えているわけでございます。したがいまして、これらの計画に基づきます事業が執行される場合には、この法律によりますと、環境庁長官に協議をすることになっておりますが、同時に国立公園としての協議も別途行なわれて、しかるべきだというふうに考えているわけでございます。  なお、この「利用」という字が非常に強く出ておりますので、一体保護が重点なのか利用が重点なのかという感じを、これは一般の人どなたでもお持ちになることでございます。したがいまして、私は、この法律に載っております各種の整備計画施設等の実施にあたりましては、それが開発の糸口にならないように十分に御配慮をいただくことができれば、たいへんけっこうじゃないかということを考えております。  それから最後でございますが、この整備計画というものは法律によりますと、関係県の知事さんが御協議の上で公聴会を開き、市町村長の意見を聞き、さらに県議会の議決を経て、環境庁長官を通じて総理大臣に提出する。非常にこまかい段階を経て出てまいるわけでございまして、これを決定されるのは総理大臣が審議会の意見を聞いて、あるいは関係行政庁の御意見を伺った上で決定する、こういうことになっております。  そこで私、ちょっと心配いたしますのは、富士地域の場合には二県ございます。二県の知事さんが御相談の上でいろいろお手配をなさると思いますが、そうして出てまいりました案というものは、この法律で考えております富士地域自然環境保護並びに利用環境保全に全く合致しているという場合には、全く問題はないかと存じます。しかしながら、過去の私どもの小さい経験によりましても、都市計画の市街化調整区域あるいは市街化区域の線引きの場合におきましても、いろいろと問題があって、必ずしもねらいとしたところにいかなかったという点があるわけでございます。今回の場合におきましても、土地の所有というものは非常に細分されていることと存じますし、権利も複雑であろうかと思いますし、したがって利害関係というものは、住民の皆さまにとってはかなり重要な問題であろうかと思います。  それから両県におきましても、立場はお違いでございましょうし、町村等においても立場が違うというようなことから、万一この計画というものが富士地域としてのバランスがとれてないとか、あるいは本法のねらうようなことと、むしろ規制をゆるめるようなことにならないように、私はこの法律施行にあたりましては、十分なる御指導あるいは御協議がととのえられてしかるべく、その上で施行されるということを希望する次第でございます。  私は技術屋だもので、違った角度から意見を述べさせていただきました。どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 角屋堅次郎

    角屋委員長 ありがとうございました。  参考人意見の開陳の順序が前後いたしまして、失礼いたしました。  次に、天野参考人にお願いいたします。天野参考人
  9. 天野重知

    天野参考人 ただいま御紹介を受けました北富士忍草入会組合長の天野重知でございます。  私は、富士山ろくに生まれ、育ち、そこで生活を営んでいる住民の立場から、富士地域環境保全整備特別措置法案について、幾つかの問題点を指摘したいと思います。  率直にいって、この法案は、その性質上、やむを得ないことかもしれませんが、政令にゆだねられている部分が非常に多く、私どものように専門的知識の乏しい者にとりましては、きわめて判断しにくい法案であります。  たとえば、この法案の基盤である肝心かなめの富士地域について見ても、明確に表明されず、政令で指定することになっており、私どもが常識的に考え、使っている、いわゆる富士山及びその周辺地域ではないようであります。  これは一例にすぎませんが、このように法案の根本内容にかかわる事項が、政令で定められるようになっておりますので、あらかじめ私どもが、この法案について、その是非を判断したり、理解したりすることは、たいへん困難であります。  したがいまして、私どもとしましては、的確な意見が申し述べにくいのでありますが、国会議員の諸先生方におかれましては、あらかじめ、政府関係当局より、政令案もしくはその内容の概要を示す資料の提出を求められ、その上で、その内容と合わせながら、法案について審議、検討されますよう、この際、特に要望いたしたいと存じます。  それでは、以下、私は、まず第一に、本法案富士保全法ではなく、演習場確保法であるという点に関して抱いている深い危惧の念を、現在私ども忍草入会組合に加えられている入り会い補償をめぐる政府の非道な措置との関連で申し述べたいと思います。  第二に、本法案のおい立ちからして、どうしても演習場をその対象地域から除外せざるを得ない場合、1米軍、自衛隊の演習自体に対するきびしい規制、2演習場周辺の特別保全地域指定、3演習場内における常時使用区域の設定、4常時非使用区域に対する保護措置等、演習による自然破壊行為の規制及び周辺への波及防止措置を、条文上、明確にしなければ、本法案目的はとうてい達成できないというべき点につき、私の見解を申し述べ、最後に、富士地域は、単に保護すべき自然環境というだけでなく、私ども入り会い農民にとっては、生存権、生活権のかかった、まさに命の山である点を強調したいと思います。  さて、皆さま御承知のように、米軍、自衛隊の演習は、最大の人為的な自然破壊行為であり、特に砲撃を主目的とする富士演習場地域の自然は、見るもむざんに荒れ果てております。ところが、伝えられるところによりますと、富士山及びその周辺の中で、最も風光明媚な、しかもその三分の一もの広大な面積を占めているという富士演習場は、この法案の対象から除外されているということであります。  だとすれば、この広大な演習場地域自然環境破壊を野放しにしたままで、一体、何が富士地域自然環境保全かと、私どもは、まず何よりも、この点を、声を大にして訴えたいのであります。その意味で、この法案は、当世はやりの欠陥商品と同じく、まさに欠陷法案といわざるを得ません。  しからば、何ゆえに欠陷法案になったか。それは、本法案提出のいきさつとねらいにあります。  この法案は、単に関係県当局の利用開発計画規制自然環境保全それ自体を目的とするだけでなく、その背景には、北富士演習場使用協定締結までの経過から見ても明らかなように、国が富士を砲撃演習場として自由に破壊することを承認させるかわりに、山梨静岡両県当局の富士周辺利用開発に、多額の補助金を出すというねらいがあるのではないかと思われるのであります。だとすれば、本法案は、富士破壊の最大元凶である日本屈指の砲撃演習場の安定確保はかるためのえさであり、煙幕であり、この点にしぼって考えてみますと、まさに、これは富士演習場周辺環境整備特別措置法そのものといわざるを得ません。  本法案の最大の問題点は、まさにここにあります。つまり、私どもは、この法案が成立発効した場合に、これが富士演習場確保のてことして悪用されることを、非常におそれるものであります。  この点について、あるいは諸先生方の中に、理解しにくいといわれる方々も多数おられると思いますが、たとえば、もしもかりに、山梨静岡両県当局が、演習場使用に反対し、その全面返還を求めた場合にも、政府は、その県の利用開発事業に補助金を支出するでありましょうか。そのようなことは、あり得ないと思います。いな、それどころか、両県当局自体が逆にそのことを懸念し、また、むしろ多額の補助を受けるため、政府演習場使用をより積極的に承認し続けるであろうことは、全面返還から使用転換へと百八十度の政策転回をした山梨県の例から見ても、きわめて明々白々であります。  このことは、今日、入り会い補償の支払いをめぐって、私ども忍草入会組合に加えられている政府の一方的、かつ理不尽な措置を見れば、一目瞭然であります。すなわち、政府、防衛施設庁は、われわれの入り会い権擁護、入り会い地回復の運動を押えるため、昭和四十二年度から四十四年度分までの入り会い補償を、ずっと支払わずにきました。ところが、昨年の北富士演習場使用協定締結の直前に、突如政府は、支払う方針を決定しました。  しかし、その支払い方法は、従来行なってきたように、直接入会組合と防衛施設局とが補償契約を結ぶという方式ではなく、北富士演習場対策協議会会長に委任した者だけに限って支払うというものであります。すなわち、委託しない者は絶対に相手にせず、支払わないということであります。これは、補償契約の当事者として、二十年来継続してきた入会組合の地位を不法に奪い去るものにほかなりません。しかも、入会組合が、入り会い補償の本来の交渉当事者であり、受給資格者であるということについては、政府は、文書まで出して確認していたのであります。それを政府は全く一方的に破棄してしまいました。  そこで、その理由を国会においてただしたところ、政府の言い分は、本件補償は恩恵的な行政措置であるから、いかなる支払い方法にしようと、行政庁のかってであるとして、みずから法治国家の体面、政府公約の尊厳を犯してはばからないのであります。  また、右の方針に関する横浜防衛施設局作成の入り会い補償処理要領によれば、一、入り会い補償の支払いは、演対協会長に委任した者だけに限る、二、しかも、その委任の条件は、補償の申請、補償契約の締結、補償金の受領等、本件補償に関する一切の権限を白紙委任することが、明記されています。これは、入会組合を有名無実化し、その機能を骨抜きにし、防衛施設当局とその御用団体といわれる演対協だけで、北富士最大の課題である入り会い問題を、うやむやにしてしまうというものであります。  しかも、ここで特に御留意願いたいことは、補償交渉の当事者は当該入会組合であるという、昭和四十二年十二月十五日の山上防衛施設庁長官の確約を、その下部機関である横浜防衛施設局が、昨年二月十七日、かってに破り去ったということ、そしてそれを、同年四月三日に、二階堂官房長官と田辺山梨県知事の覚書をもって政府が追認したということであります。国会議員の諸先生方に、特に強く訴えたいのは、まさにこの点であります。  なぜ、いままでどおり入会組合との直接補償契約ではいけないのでしょうか。なぜ使用転換直前というその時期に、演対協会長を代理人とする補償契約方式に切りかえねばならなかったのでしょうか。なぜ入会組合が、入い会い補償やその基礎となる入り会い慣行についての当然の発言権、交渉権を持っていてはいけないのでしょうか。しかも私どもは、演対協の運営が、設立目的である「全面反還・平和利用・入会権擁護」の旗を、少しの努力もしないまま放棄したので、すでに二年前に脱退しているのであります。にもかかわらず、防衛施設当局は、演対協会長に一切の権利を委任するよう強制しているのであります。  私どもは、こうした非道な措置に対し、直接適正な措置を求むべく会見を申し入れましたが、防衛施設当局は、一にも演対協、二にも演対協、演対協を通さなければ何事も問答無用として受け付けず、やむなく国会議員を通じて会見を求めましたが、これも断わられてしまったのであります。したがいまして、当忍草入会組合には、いまだに昭和四十二年から四十四年度分の入り会い補償は支払われていないのであります。  以上、私どもの経験からして、私どもは、この法案もまた、究極的には、演習場確保のてこに使われ、将来、演習場返還を要求した場合、政府は厘毛の補助金も交付しないであろうこと、間違いないものと確信する次第であります。  私どもは、真に富士地域の自然を保護するためにも、また入り会い農民の悲願、入り会い地回復実現のためにも、さらに、全面返還から後退したとはいえ、田辺山梨県知事いうところの「演習場の段階的解消」を達成するためにも、この法案が、演習場確保法としての役割りを果たすことを、心から警戒するものであります。  以上が、私の意見でありますが、次に、この際、つけ加えて御検討願いたいことは、本法案のおい立ちから見て、どうしても演習場をその対象区域から除外せざるを得ない場合、米軍、自衛隊による自然破壊の規制及び周辺地域への波及防止措置を条文上明確にしなければ、本法案目的はとうてい達成できないという点であります。  たとえば、その方策として、第一点は、米軍、自衛隊の演習そのものに対する厳重な規制措置であります。米軍、自衛隊の演習場使用状況は、今日では、かつての朝鮮戦争、ベトナム戦争エスカレート時代ほど激しいものではありません。しかし、だからといってもう再びあのような状況にならないのかといえば、そのような保障は全くないのであります。  事実、東富士演習場の使用状況は、きわめて激しいものであります。演習場使用協定によれば、米軍、自衛隊は、単に実弾射撃だけでなく、それぞれの部隊による各種の演習を行なえるようになっています。したがって、自衛隊の近代化、精強化が目ざされる中で、いずれは、今日の使用状況以上に演習の回数や規模が増大することは当然予想されるところであります。また、アジアの情勢次第では、米軍の演習もまた同じく激化することは十分予想されるわけであります。  もし、そのような事態になった場合、これまでのような、米軍、自衛隊の演習による演習場及び周辺自然環境破壊を最小限に食いとめるために、まず、米軍、自衛隊の演習行為そのものを、自然環境保護の立場から厳重に規制することが絶対に必要であります。借地料を上げさえすれば、被弾木補償を払いさえすれば、民生安定事業の助成金をたくさんやりさえすれば、何をしてもかまわないという、エビの中に針を隠してタイをつるような物欲誘導本位の態度は、政府として、今後絶対にやめていただきたいのであります。光るもの必ずしも金ではありません。光るものは、すべて金ではありません。  第二点としては、演習場周辺の特別保全地区指定であります。  演習場周辺地域、すなわち、本法案対象地域を、自然破壊の波及を防止するための特別保全地域として指定し、その地域を特に自然環境の推持保全に留意した森林地域にすべきであると思います。これをおいて、破壊を演習場内に限定し、その被害を場外に波及させないための方策はないかと考えます。ただ単に、境界線を置いたり、バラ線を張りめぐらすだけでは、演習による自然破壊の拡大を防止することはとうていできず、むしろ有害無益であります。  そもそも本法案は、自然の利用開発計画については、具体的にこまかく規定しているようではありますが、保全計画については、きわめて抽象的にしかしるされておりません。そこで、その保全計画の一つとして、このような自然環境特別保全地域の設定を明文化する必要性があるわけであり、これはまた、真の治山治水対策にも通じ、かつ、この法案趣旨にもかなうものであると信じます。  第三点として、演習場内における常時使用区域の明文化であります。  東富士演習場で行なっていますように、米軍、自衛隊の演習種類別にその使用区域を設定することは、入り会い農民など演習場立ち入り者の安全確保、危険防止のためばかりでなく、自然破壊の波及を防ぐためにも、燐弾その他の特殊兵器使用による土壌汚染水質汚濁などの被害を局限化するためにもまた山火事その他の被害を最小限にとどめるためにも、ぜひとも実現していただきたいことであります。さらに、長年、私どもが強く要望してきましたように、使用する砲弾を爆発しない模擬弾に変えることが絶対に必要であると思います。  第四点として、演習場内の常時非使用区域に対する適切な保護策があげられております。  たとえば、演習場のまわりの自然環境保全を厳格に守り、演習場内の常時使用区域を固定化しても、その中間にはさまれた場内の常時非使用区域の状態が荒れほうだいになっていると、思いがけない災害や甚大な被害が、場外に波及してくる場合が数多く見られることは、現に多額の国費を支出している障害防止工事の実態から見ても明らかであります。  このような被害を最小限に食いとめるためには、演習に支障を来たさない範囲にならざるを得ないにしろ、ともかくも、その中間区域の自然状態の推持、保全、回復等のための措置が適切にとられる必要があるということであります。  以上、四点、例をあげましたが、演習場に対し、このようなさまざまな規制及びその被害の波及防止措置がとられてこそ、初めて、この法案のおそらく最大の欠陥たる演習場の除外という問題も、まことに不十分ではありますが、ある程度まで補正されるのではないかと考えます。  最後に、特に強調いたしたいのは、いまさら申すまでもなく、富士山ろく一帯の地は、私ども入り会い農民にとっては、単に保護を受けるべき自然環境などというものではありません。私どもの生存権、生活権のかかった、まことにかけがえのない生活環境そのものなのであります。私どもは、遠い昔から、霊的にも富士の霊気に励まされ、富士の大地の恵みをいただいてまいりました。  このように、日本の山、霊峰富士を仰ぎ見つつ、草こそ命、草こそ命と念じ、生き続けている私どもにとりましては、演習場にせよ、観光開発にせよ、そこから疑いもなく必然的に生じ来たる幾多のおそろしい害悪は、自然のみならず、私どもの生活、生存そのものも破壊してしまうに至るのであります。  どうか、この最も根本的な一点を十分に御配慮くださり、この重要なる法案審議を納得のゆくまで尽くされますよう重ねてお願いし、私の供述を終わらせていただきます。(拍手)
  10. 角屋堅次郎

    角屋委員長 ありがとうございました。  四人の参考人方々は、それぞれ責任の立場にございますので、御承知のように若干時間がずれておりますが、やむを得ないことかと存じますので御了承賜わりたいと存じます。     —————————————
  11. 角屋堅次郎

    角屋委員長 引き続きまして、田辺参考人植松参考人天野参考人及び千家参考人に対する質疑を行ないます。  なお、本日の質疑時間につきましては、理事会での申し合わせもございますので、その線をもととして質疑を行なわれるようお願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。
  12. 林義郎

    ○林(義)委員 四人の参考人には、たいへんお忙しいところを御来院いただきまして、ありがとうございました。心から御礼を申し上げます。国会の都合で、最初に予定しておりました日時と違いましたことに対しまして、私からも深くおわびを申し上げておきたいと思います。  私は、自由民主党を代表いたしまして、富士地域環境保全整備特別措置法案につきまして参考人方々に御意見を聞くわけでございますが、時間の都合で、あまりたくさんのお話をいただくわけには、なかなかいかないだろうと思いますので、私もポイントだけにしぼりましてお尋ねをしたいと思いますから、よろしくお願いしたいと思います。  知事さんのお話でございますけれども、この法律と演習場問題は関係ない、こういうふうなお話でございました。天野参考人は、そうじゃない、こういうふうなお話でございましたけれども、御意見の相違、立場の相違ということでございましょうが、知事さんのお話の演習場問題は関係ないということは、この法律をつくることによって、取引として演習場の問題をやったのではないのだ、こういうふうな理解を私はしているわけでございますし、そういったことでよろしいかどうか、知事さんにお答えいただきたいと思います。
  13. 田辺国男

    田辺参考人 林先生にお答えをいたします。  私ども、この法案につきましては、先ほども申し上げましたように、演習場関係のないものであることをあらためてお話し申し上げます。
  14. 林義郎

    ○林(義)委員 植松富士宮市長さんにお尋ねいたしますが、私も昨年の九月でしたか現地へ参りまして、市長さん方の御意見を聞きました。そのときの話では、ゴルフ場その他の開発がたいへんに進んでおる、さらに大沢くずれのお話もありました。昨年の国会で、この法案が成立できなかったことは、私も非常に残念に思っております。できるだけ早くやらなければ乱開発というものは、ますます進むのではないか、こう私は思っておりますが、その後の状況がどういうふうな形になっておるのか。やはりこの法案は、私は、できるだけ早く成立させて、いろんな規制を加えていかなければ、富士地域自然環境保全には、きわめて悪影響をもたらすのではないか、こう思っておりますけれども、その辺につきまして、市長さんどういうふうにお考えでございますか。
  15. 植松義忠

    植松参考人 お答えいたします。  その後の状況は、実は昨年十二月十九日以降のいわゆる土地不売運動と、それから大規模開発の凍結宣言、この効果は相当あがっておりますけれども、しかし潜行的には必ずしもそうでありません。したがって、やはりこれは何らかの措置を講じない限り、この行為はまた爆発的に起こってくるんじゃなかろうか、こんなふうに実は考えておりますので、そのように御承知願いたいと思います。
  16. 林義郎

    ○林(義)委員 先ほどお話がありました中で、屎尿処理施設云々ということですが、私が聞いておるところでは、この五条の第何項でしたか、これは政令で指定するということになっておりますので、そういったものを一切含めて私はやらなければならないと思っておりますから、御了解いただきたいと思います。  そのほかに、市長さんがおっしゃいました中で、土地対策、農林業対策など、あらゆる分野から富士山の自然資源保護、すなわち、保全を最優先とした立法がなされるよう努力することを希望いたしますというお話でございます。この辺法律的に、たとえば農林業対策というようなお話がありましても、農林業対策につきましては、別に農林関係法でたくさんいろいろ法律がございますし、この法律は富士地域環境保全整備特別措置法でございますから、そこまで全部含めますと、法律体系としてでございますけれども、もしもこういったことを、ぜひ入れてもらいたいとかいうようなお話がございましたならば、この際、具体的な話を聞かせていただきたいし、またあとでということでございましたならば、資料でもけっこうでございますから、御提出をいただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  17. 植松義忠

    植松参考人 お答えいたします。  農林漁業の問題については、仰せのとおり、別な法律によって振興対策がはかられるわけでありますけれども、しかし、やはりその対策、それらの事業を行なう場合においても、自然環境の破壊にはつながらないような条件をどう整備するかということについては、ある程度の配慮が必要だろうということ。と同時に、水源涵養については、やはりそれも自然環境の問題と決して切り離して考えられないというふうな観点から申し上げたわけでありますけれども、しかし、それはまた別な法律で措置するとすれば、それはそれでけっこうと思います。  ただし、土地対策について、土地制度そのものについて、やはり強力な整備が裏づけされないと、この法案が必ずしも生きてこないというふうに感じておりますので、御了承願いたいと思います。
  18. 林義郎

    ○林(義)委員 そういたしますと、植松さんの御意見は、早くこの法律をやれ、こういうふうなことだというふうに了解してよろしゅうございますか。
  19. 植松義忠

    植松参考人 いろいろな関係がございますので、早くとかおそくとかということではなくて、他の関連法案とあわせながら、先ほどの参考人の御意見もありましたように、単独立法の場合には、非常に他の関連性がありますので、これとの見合いを十分考慮しながら、遺憾のないように期していただきたい、こういうように考えております。
  20. 林義郎

    ○林(義)委員 この法律をつくる——ここに書いてありますのは、さっきお話がありましたけれども、この法案は私が聞きましたところでは、早くやったほうがよろしい、あるいはこの法案趣旨については賛成である。趣旨が賛成であるならば、法律の仕組みをどうするかということは問題がありますけれども、法律の趣旨としては、私は御賛成だろうと思うのですけれども、それはそういうことでいいのでしょうか。
  21. 植松義忠

    植松参考人 法律の内容については、私たち法律家でないからわかりませんけれども、いわゆる私たちがほんとうに望むような立法を目ざして措置していただきたい。したがって、立法趣旨には賛成である、こういうことであります。
  22. 林義郎

    ○林(義)委員 富士宮市長さんは、私、こういうところでこんなお話をするのも恐縮なんですけれども、農民社会党とおっしゃるのですか、何かそういった党だそうでございますけれども、やはり市長さんでございますから、地元の総意をもって出てきておられるんだろうと私は思います。そういった立場でお話でございますから、地元としては市議会その他で決議をされてやっておられるのかどうか、この法案につきまして早くやれとかなんとかという決議をされたのかどうか、この辺をちょっとお尋ねしたいと思います。
  23. 植松義忠

    植松参考人 まだ市議会でこれを論議するという段階ではございません。ただ、市議会に対して、こういう問題が提起されて、しかも、私が本日出席するということについては、特別委員会に対しては御報告をしてあります。  それから、なお、さらに四市一町の意見の統一ははかって出てまいりました。
  24. 林義郎

    ○林(義)委員 わかりました。  次に、天野参考人にお尋ねいたしますが、先ほど非常に貴重な御意見をいただきまして、私もいろいろと考えたのですけれども、入り会い権の問題と、もう一つは演習場のいろいろな被害の問題、こういうふうな二つのお話がありました。そのほか、入り会い権の問題につきましては——入り会い権というのは、私の了解しておるところでは、封建的土地所有から近代的土地所有に移る過程におきまして出てきたものでありますから、入り会いというものは、そこをどう調整するかという形での問題だろうと思います。  これにつきましては、もう昔からいろいろな判決が出ておりまして、大正四年の三月十六日、同じく大正四年の十一月三日、昭和八年の十一月二十日、いろいろ大審院の判決が出ておりますし、近いところでは、四十八年の三月十三日に最高裁の判例も出ておる。こういうようなところから判断いたしまして、政府のほうの統一見解というのは、北富士演習場内の国有地については、いずれも入り会い権は存在しないと解されるというのが政府の統一見解である、こういうふうにいっておりますことは御存じだと思うのです。  そこで、先ほどのお話では入り会い権云々というお話でありますけれども、入り会い権があるという御主張であるならば、やはりここは裁判所でもって争うべきが筋だろう、こう私は思うのです。行政庁が認める云々ということではなくて、権利の得喪の問題でありますから、権利の存在、不存在の問題でありますから、やはりこれは裁判所でもって判断をすべきものではないだろうか、こう思うのです。近代法国家でありますから、このもとにおいて争うときには、行政庁というものは私人の権利をむやみに与えたり、またむやみに制限したりすることは法律をもってしなければできないわけであります。かってに行政的にやれといって認めろという話も、これはなかなかできるものではない。単に行政庁に対する関係だけではない、入り会い権となれば、第三者に対する関係もございますから、やはりそこは裁判所でもってきめるべきものだろう、私はこう思うのです。  この入り会い慣行というものにつきまして、いま私が申し上げたような考え方はおとりになっておられないようでありますけれども、そこはどういうことでございましょうか。
  25. 天野重知

    天野参考人 林先生にお答えいたします。  入り会い権があるかないかという問題を、私は、きょうこの席では申し上げているわけではなくて、いま御質問の一点に触れたいと思いますが、入り会い権があるとするならば裁判所で争え、ごもっともだと思います。しかし、現にそういう関連の裁判も現在やっております。私の言いたいことは、昭和三十五年以来、内閣総理大臣その他の責任者において、立ち入り使用収益の入り会い慣習を確認して、これを尊重するという政府の一礼をもって、政府は入り会い権があるということを確認しておる。また、三十年当時におけるところの政府当局の説明も、同じというか、もっとはっきりと申し述べています。  そこで、現在政府が入り会い権がないんだということは、まさにそういった角度ではなくて、政治的な、富士演習場において、これを設置する上に入り会い権の存在が非常にじゃまだという、まさに軍国主義的なお考え方から、あのような政府統一見解が出たんだと思います。  私は、あくまでも池田総理その他において確認された立ち入り使用収益の入り会い慣習を確認し、これを将来に尊重する。これはどの民法学者であろうと、先生御承知のとおりだと思います、先生もだいぶ法律もおわかりのようですから。したがってそういう点から、たとえば甲府地裁におけるところの第一小屋の断行の仮処分におきましても、入り会い補償は見舞い金だ、あるいは恩恵措置だといったのに対して、そうではない、忍草の持っておる権利は、やはり民法上の入り会い慣習であるという決定があります。さらに東京地裁においては、それを、いろんないきさつはあったけれども、やはり忍草の持っておる権利は入り会い権である、政府の主張は退ける、こういうふうに裁判においてもなっておるのであります。  ですから、特に先生は自民党のように思いますが、同じ自民党の池田さん以後の人はそういうふうに言って、突如この問題が荒れ出したのは、いままで書いておった一札が、そうではない、恩恵措置だ、いや見舞い金だ、やってもやらなくてもいいんだというところに、北富士の一つの大きな問題点があるということを、ひとつ御検討願いたいと思います。  それで、私のきょう申し上げたいことは、入り会い権の補償がどうだこうだという問題は、富士周辺のおおよそ三分の一を占めるという演習場地域、しかも北富士においては、先ほど先生方が申されました青木ケ原と梨ケ原一帯というものは、北富士の一番玉なんです、風光明媚、広さからいって。そういうものが演習場になって、破壊されほうだいになった。その状態において、一体何が富士保全法でありますか。  もしかりに、保全法をよろしいといって通した場合、今度は別個に、たとえば山梨県知事さんが、あるいは静岡県知事さんが、また地元の市長さんが、やはり北富士演習場あるいは東富士演習場は日本の国益から見て、返還することがよろしいというような判断に立って、政府に迫った場合、この法案におそらく盛り込まれるであろうところの補助金が行くであろうか行かないであろうか。それを接収以来、きょうまで依然として議論なくやり、入会組合が当然補償当事者になり、しかも確約文書までされたものをみずから政府が法治国家の体面を破り、みずから政府公約という尊厳を破ってまで相手にしないというゴリ押し、これはいま地位保全の裁判になっています。  そういうところまでやるという政府あり方からいって、おそらく、たとえば両県知事さんが、あるいは市長さんがやはりよく考えてみたけれども、三分の一を占める地域演習場で破壊のままにしておいて、保全法はいいだろうか、やはりわれわれは考え直して、これは全面返還の旗を押し立てるべきだという考えになったときに、この法案をこのような熱意で通し、さらに補助金をくれるであろうかという点を、自分に加えられた政府の非道を例にして、私はそうではないということを申し上げたわけであります。
  26. 林義郎

    ○林(義)委員 お話は、その入り会い慣行についての政府の見解が変わってきたことによって、いままでと違ってきたから、演習場を今度やっても、もしも演習場の問題が変わってきたならば、政府のほうは補助金を出すということにはならないだろう、こういうふうな御趣旨だと了解いたしましたけれども、この富士地域環境保全整備特別措置法というのは、まさに特別措置法でありまして、国会がきめまして特別の補助率を出すということでありますから、政府がいかようであれ、政令できめた補助率は出さなければならないというのは、これは法律としては当然のことだろうと思うのです。この法律の中には、一つも演習場のことは書いてないのですね。だから、それをもしもそういったことでやめるということになれば、政府が、この法律をやめるという提案をしてもらわなければ、私は困ることになるだろうと思う。私は、法治国家というのは、そういうものだろうと思います。  やはりここに書いてありますように、「富士山が、わが国のすぐれた自然の象徴であり、かつ、世界に誇る国民的資産として、その恵沢を国民がひとしく享受し、後代の国民に継承すべきものであることにかんがみ、」てやるわけですから、これはそういった目的に照らして、補助率のアップをしたり、その他いろいろな施設をしたりすることについて金をつけるわけでありますから、私は、その問題とは一応関係がないというふうに判断するわけであります。これは、天野参考人は、いままでの御自分の御経験からそういった御不信があると思いますけれども、私は、いまの立法、行政の関係からして、これは当然にいまのような形でなければならないだろう、こう思います。  それから、もう一つお尋ねしておきますが、米軍の演習場がいろいろと問題が出てくる、場外に波及する、こういうふうなお話がありました。私も現地を視察いたしましたが、着弾区域というものは、あの広い中で一部である。まずまず普通であるならば、ほかにはずれることはないということであります。富士地域演習場をどうするかということにつきましては、忍草入会組合が属しているところの忍野村でも、富士吉田市でも、御殿場ですか、あの関係の市町村、それから山梨県でも、それぞれ県議会で演習場を認めるというふうな議決をしておられるというふうに私は了解をしておるのですが、この了解で間違いがないかどうか、まず知事さんからお答えいただきまして、そのあとで、時間がありませんから、まとめてお尋ねいたしますけれども、天野さんに、演習場のいろいろな被害が場外に波及するのではないかというお話でございますけれども、どういう具体的なものがあるのか、この辺について御説明いただきたいと思います。
  27. 田辺国男

    田辺参考人 演習場の問題につきましては、実は、県議会におきましては、代表者会議がございます。それから地元の市、村、それから議会、そしてまたその県、議会と構成をされております演対協、こういうところで了解をしておるわけでございます。したがいまして、山梨県としては、この問題については了解をしておる、こういう判断に立ってやったわけでございます。
  28. 天野重知

    天野参考人 先ほど政府が、この法案をこういった崇高な目的と、それから補助金をやらぬことはない、こうおっしゃる。まあそれは非常にけっこうなことだと思いますが、ただ、私一点申し上げたいことは、周辺整備法におきましては、予算の範囲内というような裁量がありますが、この法案はあとで法律問題の起きないように、はっきりと補助金をつけるということになっているのかいないのか、その点は私知りませんが、周辺整備法には、御承知のとおり、予算の範囲内という向こうの裁量がありますね、被害を与えるものにおいての。そういう点は私論じませんが、これは一点、先生に御検討願いたいと思います。  それから、場外の被害はどういうことに考えるか。これは民生安定事業といいますか、障害防止工事の実態等を見ると、具体的にも参考になるであろうと思うし、たとえば昨年でしたか、日本ランド、あれにたまが落ちたということもあるであろうし、それから、森林地帯ですから、一たび黄燐弾の火災が起きたとき、富士山あるいはあの一帯、東においてもどういう形になるか。たとえば、場内ではありますが、昨年でしたか、一千町歩も焼けてしまう、あるいは、たまを撃ち込まないといった県有林に黄燐弾を投げ入れて火災を起こす。これは常識的にお考えいただくと、一帯が続いておるのですから、そこは海の中の島ではない、こういうことです。  もう一つは、自然生態系、私は専門ではありませんが、私の現に見た演習場に使っておる部分と使っていない部分、それから、この場外の、たとえば一つの花なら花、キキョウならキキョウという花、そういうものの勢いというものは、私のようなしろうとが見ても、たいへん違います。それともう一つは、小鳥。小鳥が一体どうなるかという問題。ですから、私は、先生みたいな、この法案に賛成される先生方に、先生のおっしゃる、第一条の崇高な目的を実現するためには、演習場の存続を前提とする先生方においても、私は、この法案に反対でありますが、そういう点も御参考にと、こういう意味合いの上に申し上げたのですから、どうぞ。
  29. 林義郎

    ○林(義)委員 ちょっと時間がありませんからあれですが、いま私のお尋ねいたしましたのは、場外に波及をすると、こう言う。——というのは、実際には、やはり演習場をつくらなければならない。そうすると、その演習場の範囲外のものについて、中でやるところの自衛隊の演習行為が被害を及ぼすようなことがあるのか。ないと、こう聞いたわけです、現地では。何かちょっと、さっきの話では、被害を及ぼすようなことがあるというようなお話でありましたから、たとえば、そんなことがたびたび起こったのでは、これはやはり演習場の区域自体を問題として考えなければならない、広くしなければならない、こういうことだと思うのですよ。そういった点について、どういうふうにお考えになるか、こういうことでございますから、お尋ねしておきます。
  30. 天野重知

    天野参考人 先ほど申し上げたとおりでございますが、御承知のその演習場、東、北富士、要するに富士演習場というものは長距離砲とか大きなたまを撃つ、これを主目的にする。したがって、非常に被害が大きくなる、これは御承知だと思います。そういった場合、先ほど言った、続いておる。それで、具体的にいうと、たとえば、これは日本ランドの区域外に落ちたというようなこともさることながら、これはもう現に行ってみて、そこに物理的に形が出たという場合もあるかもわかりませんが、それは私は、草や木の状態からいくと、これは学問的ではありませんが、先ほど申し上げたような状態があるということ、また、常識的に考えても、中の自然破壊はかってにやりほうだいという形で、たとえば自然生態系の問題とか、鳥やいろいろの生息物の問題等というものが、もとどおりの状態であり得るかどうかということは、これは先生みたいな御賢明な人たちはわかり得ると思うのです。  隣に火薬庫を置いて、その周辺は一体被害があったことがあるかどうか。だけれども、少なくとも、その危険性があるということで、諸般の規制、しかもその諸般の規制もぬるいというので、さらに先生方、うるさく大きく規制をしておるというのに思いをいたして、これは机上でも、演習場そのものの実態は何であるか、これを見ればおわかりじゃないかと思います。
  31. 林義郎

    ○林(義)委員 最後に、実はこれは四月の三日の日に、忍草民主化同盟というところから私の宿舎へやってきたのです。なぜ、こんなのが来たのかなと思っておったところ、あけてみましたら、忍草民主化同盟趣意書というようなものが入っておった。私、この席で申し上げるのもあれでございますから、やはりこういったような問題——民主化同盟代表渡辺伊佐男としてある。それで「天野重知氏に対する質問状の写は左記の通りであります。」というようなことでいろいろ書いてございますが、これは天野さんに対して、たいへん反対なような団体のように私、文面から察しました。  やはりいろいろな御意見がありまして、反対、賛成、いろいろ私はあるだろうと思います。ありますが、やはり公正なところは公正にしていくことが必要だろうと思いますから、私、これをあとで写しをお渡しいたしますので、これにつきましてお答えできる範囲内でけっこうでございますから、お答えを当委員会のほうへ申し出ていただくわけにはいかないだろうか、委員長におきまして、そういうふうなお取り計らいをしていただけるかどうかでございますが、実は忍草民主化同盟というのは、どこを見ましても、住所も何も書いてないような資料でございますから、一体どんなものなのか内容もよくわかりません。わかりませんが、こういったようなことが事実なのかどうかということも一応お聞きしておいたほうが、公正ないろいろな話をするためには、必要なことだろうと思いますので、あえてお尋ねをするわけでございます。そんなものは知らないということでもけっこうでございますし、どういうことでもけっこうでございますから、お答えいただいてから、委員長にお取り計らいのほどお願いしたいと思います。
  32. 天野重知

    天野参考人 いま渡辺伊佐男、民主化同盟なる文書について聞かれましたが、率直にいいまして、非常にいいところへお気づきになった、しかし、きょう私が参考人として出たのは、この富士保全法の問題であるから、非常にいいところに気がつかれましたから、あるいはこの委員会をまた特別に開いて、これは非常に重大な、民主化同盟の文書なるものが——私も非常に先生方にお話ししたいのです。だけれども、きょうは、逃げるわけではありません。これは積極的に先生にお願いいたしますが、それを中心として特別に——私は議会の規則は知りませんが、忍草委員会でもよし、何委員会でもけっこうだし、また入り会いの論争でもけっこうですから、それを開いて、きょうは、この法案の問題だからあれして、特に先生が中心になって、この委員会を特別にしていただくということをお願いして、非常にいい点へお気づきになられて、ありがたいと思っております。
  33. 角屋堅次郎

    角屋委員長 ただいまの林委員の御要請の点については、率直に言って、私、その文面を見ておりませんので、その取り扱いについては理事会で相談をいたしたい、こう考えております。
  34. 林義郎

    ○林(義)委員 どうもありがとうございました。
  35. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、小林信一君。
  36. 小林信一

    小林(信)委員 参考人方々には、お忙しいところ、たいへん御苦労さまでございます。  実は二日にわたって参考人の方たちに御意見を賜わるように、私も希望いたしまして、委員長にお計らいを願って、そのように実は取り組んだわけでありますが、大体私が要請をした方々が出席をしていただいておるわけでございまして、時間も十分とって、富士保全法という法律よりも、富士山というのは、非常に大事な国の象徴であるというふうにいわれておりますが、実際はそうでない。まあ知事さんは非常に、御自分の県でございますので、御配慮を願っておられますけれども、全国民が大事にしておるようで、案外大事にしていない。これは千家先生にお尋ねすれば、一番よくわかるわけでありますが、新しい火山で、そしてもう下が溶岩であります。その上に樹木がはえており、動物が生息しておる。これはちょっと破壊をしても影響するところが非常に大きいというような性格を持ちながら、あまりその保全という  ことに留意されてなかったわけでありますので、こういう機会に利害関係のある方たち、あるいは学者の皆さんに富士山の問題について、私ども研究させていただこうじゃないかというようなことが主で、私はお願いをしたわけであります。  もちろん富士保全法をりっぱなものにするということが基本的ではございますが、しかし、残念ながら諸般の事情で一度にお呼びをするようになり、せっかくの参考人の皆さんを半日で済ませるというふうな形になりまして、実は私どもの党といたしましては島本理事、土井理事、お二人が質問をすることになっておったのですが、そういうわけで、おまえたちが当該県であるから質問をせよということで、あまり準備もなくお尋ねをいたしますが、しかも、時間がありませんので、きわめて簡単にお答え願いたいと思います。  第一番に、山梨県知事にお伺いいたしますが、この問題は、私まだ委員会では質問をしておらないのですが、しかし内輪話として、環境庁のほうに、これから富士保全の問題で私がどうしても質問しなければならぬ問題は、スバルラインの問題なんです。スバルラインをあのままでいいかどうかということを私は内々に話をしたわけです。  というのは、スバルラインは、私は自分の県ですから知っておりますが、つくるときの経緯あるいはその後の財政的な問題等もあって、簡単に、この審議にすぐ乗せることもどうかと思っておったのです。一面、環境庁のほうでお聞きしたところでは、山梨県の重要な財源である。あそこで取る道路の使用料という話もあるし、いや、そうでもない、かえって山梨県では、あれを持っているために苦労しておるのだというようなお話も聞いておるのですが、この際私がお聞きしようとするのは、環境庁が、全国六つの景勝地に自動車の立入りを禁止したわけです。その中に山梨県のスバルラインは入らなかった。関係ないのかと聞いたら、関係あるのだ、同じように考えなければならぬけれども、山梨県の事情を聞かなければ、ちょっと私どもに意見が言えないのだというような環境庁の考慮があるようですが、しかし、最近の富士山の自然というものを研究する人たちは、主として生息する動物あるいは植生、そういうものがみんなあのスバルラインに集中して、何とかしなければいけないというようなことを言っているわけなんですが、このことについて知事さん十分御検討になっておると思うのですが、お聞かせ願いたいと思います。
  37. 田辺国男

    田辺参考人 お答えをいたします。  富士のスバルラインは、すでにもう十五年以上前に建設をされたものでございますが、いま全国の国民が富士山という一つの大きな山にいわばいこいを求め、そしてその数というものは、年々多くの観光客富士山に登り、そしてまた自然との調和の中で心のいこいを求めておる、これは私は国民に対する大きな保健、休養の場である、そう信じております。  ただ、そのスバルラインの環境が著しく破壊されているという御指摘がございました。私どもは、この点につきましては、専門の学者、そしてまた実地調査等をいたしまして、できるだけこの植生の補植、補修、そしてまた地盤の整備、こういうものに意を用いて実はやっておるわけであります。幸いに二千メートル以下の地域におきましては、漸次植生の復生が実現をしつつある。そしてまた植生の繁茂というものが順次旧に復しつつある、こういう状態でございます。二千メートル以上につきましては、非常に困難な面もありますけれども、さらに私ども、学術的な、専門的な調査もいたしまして、できるだけその復旧につとめておるわけでございます。したがいまして、このスバルラインが、国民的な活用の上では大いに役立っておる、かように私は信じておるわけでございますから、このスバルラインのいわば自然破壊につきましては、ただいま申し上げましたような努力と、そして県をあげて、さらに万全を期してまいりたい、こう考えておるわけでございます。  以上でございます。
  38. 角屋堅次郎

    角屋委員長 質問者並びに委員各位に御了解を得ておきたいと思いますが、理事会でも申し上げましたのですけれども、千家参考人は、よんどころない公務で十二時三十分に退席されますので、あらかじめ、その点だけは申し上げておきたいと思います。
  39. 小林信一

    小林(信)委員 確かに富士山五合目まで自動車で行かれるというようなことは、富士山を愛好する人たちにとっては、最もありがたいことだと思うのです。しかし、だからといって、先ほども知事さんのお話の、昨年は一千百万の観光客があった、さらにこれが、昭和五十年になれば、二千万人をこえるではないかというような状況から考えれば、私は現状のままではいけない。ただ、補修をするとか破壊されないように防止をするというだけでは、とどめることができないような事情になると心配するわけです。確かにあの赤松のところ辺が、道路をつくりまして相当伐採しましたけれども、いわゆるマント群落とか、あるいはソデ群落とかいう、自然が、自然につくった森林を防御するような形が出ております。しかし、これは、上のほうの二千メートル以上の、大きな立ち木が立っておる、それが倒れておりますが、ああいうところには、なかなかそういう自然発生的な防衛というのはできないじゃないか。  これは人が多い少ないの問題ではないのですが、そのほかに、最近ああいうふうにたくさん人が登れば、いろいろ食べものを持って登る。食べたものを捨てる。そういうことから、ネズミが下のほうから、だんだん頂上のほうへ登っていく。そのネズミを追って、テンだとか、イタチだとか、キツネだとかいうふうなものが、だんだん上へ登っていく。そのために、上のほうに住んでおります鳥類とか、あるいはそのほかの生物もやられる。これはまあ富士山もまさにその状態だといわれておりますが、ほかの高山帯にたくさん見られるところなんですね。  そこで、人間が多くなる。その人間の及ぼす、いろんな関連をする被害で、先ほど申しましたような、きわめて脆弱な条件にあります富士山は、スバルラインという問題を考えなければいけないじゃないかということになっているようですが、たとえば富山県の立山で、スバルラインと同じようなものをつくりました。つくりましたけれども、すそ野でもって乗用車は全部おろさせます。そして、あとは県営のバスで頂上まで運ぶという形をとっているのですが、そういう方法をとることは、どうかというようなことを私は提案しようと思っておるのです。  しかし、いま知事さんの場合とすれば、県の財政的な問題でなく、富士山をいかに大ぜいの人に公開するかという点では、あのままの状態を続けたいとお考えになるのか。財源等のことを考えて、何か国で保障するならば、そういう措置をとって、お客さまを登らせるけれども、途中でもってみだりにおりて、いろんなものを捨てることがないようにするとか、五合目にああいうたくさんの建物を建てて、観光客がみだりに廃棄物を放置するような状態がありますが、そういうものを何とか規制するために、いまのような状態を規制することを、この法案で考えてほしい、私はこういうふうに言おうと思っているのですが、まず、知事さんの考えを聞いて、さらにきょう午後から学者の方たちもおいでになるから、そういう方たちの意向も聞こうと思っておるのですが、御意見をお聞きしたいと思います。
  40. 田辺国男

    田辺参考人 お答えをいたします。  この富士保全法が幸いに通過したならば、私ども、実は富士五合目にいろいろの店がございますが、県といたしましては、ああいうものを整備をいたしまして、下水の問題、それから飲料の問題、それから食器の整備の問題、そういうものを含めまして、できるだけ日本の観光地の代表的な地位に恥じない一つの設備をしたい。これは県営でつくりたい。それには相当の金を投資しなければならない。そして、その地域にごみを捨てない方式をとってみたり、それから現在は、自動車の駐車は約二千台足らずでございます。ですから、現在の規制の方法といたしましては、大体千五百台ぐらいしか入れない。したがって、それがもし一ぱいの場合には、現実といたしましては、下で規制をするという実態になっております。ですから、現在の時点においては、私ども上の駐車場の制限がしてありますから、無限に登るということはあり得ないわけであります。そういう点では自動的な規制、実際に上が飽和状態の場合には、もちろんゲートにおいて、これを差しどめすることになっておるわけでございます。  それから、途中におきまして、たとえばどこででも用足しをしてはいけない。したがって、県営で、自動車をとめて用足しをする小さい場所をひとつつくろうということで、いまその準備を進め、一部はつくっております。そして、たとえばコーラだとか、それから清涼飲料水を売る売店を民間に委託をいたしまして、そこで便所等の清掃をしてもらう。そして、できるだけごみを捨てない、こういう方式を実はとっておるわけでございます。  今後、この法律が通りましたならば、さらにこの法律の趣旨を生かしまして、私ども万全の措置を講じてまいりたい。そして、できるだけ富士の自然を保存、育成してまいりたい、かように考えております。
  41. 小林信一

    小林(信)委員 そのことは、また知事さんとも直接話もできるわけですから、私は御参考に申しますが、たとえば上高地ですね。これは自動車の乗り入れを環境庁で禁止いたしました。この上高地あたりはきれいな水が流れておりますよ、御承知だと思うのですが。ところが、あのきれいな水の中に大腸菌がいて、きれいだとは見えるけれども、まことにきたない上高地になっておる。  そこで地元の人たちは、登山客はビニールの袋を持っていってもらいたい。用便したら、それに入れて持って帰ってもらいたいというぐらいに、いまや上高地は、あそこは八十万の観光客が入っておりますが、その人たちが自然を破壊する、よごす。そういう問題について措置を講じなければならぬようになっているわけですが、富士山のこのスバルラインの問題をどう考えたらいいかということで、また御意見を承る機会があると思います。  そこで、千家先生にお尋ねします。  時間があまりないのですが、このスバルラインの問題、国立公園協会理事長さんとして、一度は御許可になったと思いますが、いまそのとおりの気持ちでおいでになるか。さらに静岡県の知事がはち巻き道路をつくりたい。山梨県の知事さんも、いまはどうか知りませんが、これに賛成されたように覚えております。それから青木ケ原に遊歩道をつくるという計画もありますが、これなんかも、いままでの富士山にああいう道路をつくった経験からして、私ども今回の富士保全法の中で——先生は、この法律はきわめて概念的であるとおっしゃっておりますが、私もそういう感がしてならないのです。しかも、環境庁にほかの方たちが質問しておりますが、知事さんは否定されておりますが、何となく、この法案が、ほんとうに富士山保全ということに心を置かないということから、そういうことが忘れられているような気がするのですが、以上三つの問題について、国立公園協会理事長さんとして、どうお考えになりますか。
  42. 千家哲麿

    千家参考人 ただいまの御質問にお答え申し上げます。  まず、最初のスバルラインの問題でございますが、スバルラインはかなり前にできまして、実は非常に残念でございますが、当時まだ、ああいうところに道路をつくるについての環境アセスメントというものの手法が開発されていなかった。したがって、知事さんのほうでおつくりになる場合に、いろいろな県内の専門家等の御意見はお伺いになりましたけれども、亜高山地帯にああいう道路をつけて、はたしてそれがどういう状況を森林にもたらすかというような生態学的な問題、気象学的な問題等につきましては、十分な配慮がされないうちにできてしまった。  したがって、そういう配慮をあまりしないでも、自然がもとへ返ってくるような、先ほどお話がございましたようなアカマツの林のごときは、もとに返りましたけれども、配慮されなければ、こわれてしまうような弱い自然というものは、現在ごらんのような状態で依然として残っており、あるいはこのままでは、もっとひどくなるおそれもなきにしもあらずだと存じております。  したがって、知事さんもお話しございましたが、各方面でこれを調査いたしております。たしか環境庁でも二カ年にわたりまして、道路をつくる前の環境と道路ができたあとの環境の変化について、いろいろ調査しておられまして、その一カ所としてスバルラインの問題を取り上げられております。昨年度の調査でございますので、おそらく詳しい報告は出ると思いますので、それは今後の回復の問題に大いに役立つのではないか、かように存じております。  それから、スバルラインで得ました、われわれの教訓は非常に痛ましく、また残念な経験ではございました。しかし、その経験というものは、その後の各地におきます山岳道路その他弱い自然の中に通す道路の場合に、よい判断を与えてくれたということで、私は、その点では、スバルラインは一つの指針をわれわれに与えてくれた、かように存じております。その後いろいろな学術的な研究も進んでまいりましたし、今日におきましては大きい道路をつくる前に、二、三年かけて自然科学的な調査をすることにいたしておりますので、今後そういう問題は少なくなろうというふうに考えております。  しかし、ただいまお話しのように、富士山においてさらに五合目付近の亜高山帯を回すような道路をつくるということは、今日われわれが経験しましたスバルラインの問題をまた再現することになるおそれが非常に強うございますので、私はそういう道路については賛成をいたしかねます。  なお、青木ケ原につきまして遊歩道というお話がございました。これは先年、環境庁が主唱をいたしまして、御承知のように東京の高尾山から大阪の箕面までの間東海自然歩道というものをつくりました。そのときに青木ケ原の樹海の中を歩道が通るようになって現在通っているわけでございます。これにつきましては、田辺知事さんはたいへん御心配になりまして、多くの人が来れば青木ケ原の中に入って、たばこを吸って火をつけたり何かしたら、たいへんだということで非常に御配慮をいただきまして、その結果、ようやくそういう心配がないような状態で東海自然歩道ができて、今日までそれによる被害があったということは、私ども聞いておらないわけでございます。今後のそういう問題につきましては、十分以上の調査と配慮並びに管理が必要だというふうに感じております。
  43. 角屋堅次郎

    角屋委員長 小林君に申し上げますが、千家さんが十二時半に帰られることについて金丸さんからも質問の要請が来ておりますので、ひとつよろしく。  この際、金丸徳重君の関連質問を許します。金丸徳重君。
  44. 金丸徳重

    金丸(徳)委員 私も、この問題につきまして各参考人に二、三のお尋ねをいたしたかったのでありますが、千家参考人は時間がたいへんお急ぎのようでありますので、小林先生の質問に関連いたしまして、先生にお尋ねさしていただきます。  問題に端的に入るのでありますけれども、先ほど先生の貴重な御意見を承りました中で、特に私感銘深く承りましたのは、富士山が特別な地域であることにかんがみて、特にその中でも青木ケ原一帯が普通の保護地帯として放てきされておるのは残念である、特別保護地域に編入されて、特別なる保護対策なり関心を国としても持たなければならないときであるということであります。  私も現地に生まれまして、あの辺一帯の大事なことをよく承知いたしております。しかし同時に、大事にされなければならないのは青木ケ原のみではなくして、むしろ北富士、あの湖水を控え、環境のまことによろしい地帯保護されるどころか、先ほどからも参考人の御意見の中に出てまいりましたように、かえって非常に荒らされる条件の中に置かれてあるのであります。これにつきまして先生から御論及がなかったのでありますが、何か御意図があってのお考えでありましょうか。それとも、それ以上にそうであるという意味において、青木ケ原に例示をされたということでありましようか。まず、その点をちょっとお伺いさしていただきます。
  45. 千家哲麿

    千家参考人 私、委員会がほかにございまして、たいへん時間の点で皆さまに御迷惑をかけておりまして申しわけございません。  ただいまの御質問でございますが、私が富士山の五合目以上並びに青木ケ原を特に取り上げましたのは、中心的の景観の場所であり、これだけは絶対に守らなければいけないという例の一つとしてあげたつもりでございます。  なお、私は先ほどそのあとで五湖を包む周辺についても、自然公園の立場から保護計画の再検討は必要だということを申し上げたつもりでおりましたのですが、あるいは抜けておったかもしれませんが、私の原稿にはそういうふうに書いてございます。と申しますのは、いまお話しのように富士山というのは、山だけではなくて——山のほうに入りますと水けがございません。われわれはレクリエーションの場合に、水というものに非常に心をひかれますので、五湖というものの存在は、富士にとっては欠くことのできないものでございます。ところが五湖の周辺には戦争前から農山村がございましたが、それが今日は観光集落に変わってまいりまして、御指摘のような状態が方々で出ておるわけでございます。  ところが、そういう地域の大部分が農耕地であったり集落であったりするために、自然公園法上は普通地域という非常に制限の軽い、何をやるのにも届け出をすればよいという状態になっておりましたのが、今日のあの辺の破壊、乱開発を招いた原因の一つでございます。そこで、私もそういう点につきましては、先生のただいまの御意見に全く同感でございまして、ぜひともそういう周辺についての保護計画というものを再検討しなければいかぬ。ただ、先ほどいろいろお話がございましたように、農耕地とか民有林でありますとか施業上の問題がございますので、そういう調整を十分はかりながら地元の方々協力しながら、そういう体制を整えていくべきだ、そういうふうに考えております。
  46. 金丸徳重

    金丸(徳)委員 山頂とともに、青木ケ原とともに、北富士一帯は非常に貴重な保護さるべきところであるという御意見で、私も非常に安心いたしました。  ところが、あの地帯につきましては、先ほどからもなにがありますように演習場として長らく使われておりまするし、また、これからももしかすると、しばらくの間は使われなければならないような事態に置かれることが心配されるのであります。しかも、これからあそこに大きな重戦車を持ち込んだり、あるいは重い大砲を持ち込んだりいたしまして、山腹が荒らされ、あるいは爆発的な大きな砲弾がどんどん撃ち込まれるというような状況に置かれるのでありまするが、これについてはどういうお考えでありましょうか。私は心配しておるのでありますが、国立公園内に演習場もしくはこれと同じような荒らされる条件に置かれるところが他に例がありましょうか。それもあわせて、ひとつ先生のお立場からお伺いさせていただきたい。
  47. 千家哲麿

    千家参考人 ただいまのお話でございますが、自然公園と申しますのは、自然を中心にした公園でございまして、非常に静かで環境がいい、しかも平和的でみんなが親しめるということが必要でございます。したがいまして、本来から申し上げますれば、これは富士について申し上げるのでなくて、一般論として申し上げますが、演習場その他そういうレクリエーション、あるいは自然保護とそごするような形のものがあるということは必ずしも望ましいことではございません。  アメリカの国立公園の例を見ましても、アメリカの国立公園の中で私はずいぶん知っておりますけれども、演習場のあるというところはございません。ただ、ハワイの国立公園におきましては、軍のかなり大きい休養施設、これはキャンプ場でありますとか、ロッジとか、家族が来て休む場所がございます。しかし、これも公園指定の前からそういうものがあったために、それが公園区域に取り入れられたというふうに承知しております。  一般論といたしましては、自然公園の周辺は静かで平和的でありたい、私はそう念じております。
  48. 金丸徳重

    金丸(徳)委員 どうもありがとうございました。
  49. 小林信一

    小林(信)委員 いろいろお聞きしたいのですが、田辺知事が後段で言われた点は、やはりこの富士保全法をめぐりまして、大ぜいの委員から、いろいろ意見が出たところです。いまも千家先生からも、そういう意見の開陳があったわけでありますが、先ほどの知事さんのお話では、富士保全法と知事のとられた米軍の使用から自衛隊の使用転換を約束をしたということは無関係である、こうおっしゃっているのですが、この委員会にみなぎっておりますものは、何か取引の法案ではないか、自然を守ろうという法律であるのに、演習場を自衛隊が使用する、その条件としてつくるというようなことは、これは性格上許されないものである、そういう点が非常に各委員の問題になっているところなんです。  しかし、知事さんは、あくまでも富士保全をするということと、そういうこととの取引はしたことはない、こうおっしゃるのですが、しかし、いろいろな政府知事さんの取りかわした覚書、協定というようなものを見ましても、それらしいものは多分にうかがわれるわけなんであります。しかし、お話を聞きますと、あの演習場というものはやがてなくなして、そして富士全体を国民の保養の場にするというようなお考えで、それを段階的にその目的に達するためにやったんだというお話ですが、私はあの時点が最も、これは単に山梨県とか田辺知事とかいうものでなくて、国民の象徴である、世界富士山であるというものを、ほんとうに完全に保持するには最も重大な時期ではなかったか、四十七年の七月二十七日が。これが民法六百四条が適用されて返したくはなかったでしょうが、政府山梨県にお返ししましょうといった段階が、知事さんが心を鬼にして、あくまでもがんばるところではなかったか。  以来、私どもはいろいろお聞きしますと、当時の福田行政管理庁長官も言っておりました。あそこに演習場があることは好ましくない。三木環境庁長官も言っております、あそこに演習場があることは好ましくないことだ。山中防衛庁長官も同じようなことを言っております。しかし、いま私どもは安保条約を締結しておる立場からすれば、何ともこれを断わることができないんだ。しかし、あの時点では、知事さんがほんとうに富士を完全な姿で保持しようとがんばってもらえば、あの段階が最も演習場をなくなす機会だと私は思って言うのですが、あのときに田中総理ともお会いになり、特に官房長官と、十分交渉をされたわけでありますが、そのときの事情というふうなものを、いま知事さんの持っておるお考えというものはどうであるか、お聞きしたいと思います。
  50. 田辺国男

    田辺参考人 お答えをいたします。  あの富士山ろく演習場がないということにつきましては、私、一番ないのが好ましいと考えております。それはいまも変わりません。  ただ、日本に自衛隊がある。自衛隊がある以上は、どこかに演習場を持つ必要がある。しかし、その演習場が日本全体で調査をしたときに、この富士山ろくが唯一の場所だ、こういうことになれば、私どもとしては、この演習場を提供せざるを得ない、これは、私は県民のすべての人たちも理解していただける、そう判断をいたしたわけでございます。  したがいまして、私といたしましては、やはりあの地域を国民の活用の場として、また県民休養の場としてこれを使いたい、そういう願いは込めておるわけでございますが、やはり現実論というものをよく見きわめた上で、知事としての処置をとった、こういうように御理解をしていただきたいと思います。
  51. 小林信一

    小林(信)委員 いろいろお聞きしたいことがありますが、一応知事さんの御心境だけ聞いて、また私どもは私どもなりに論議をしてまいりたいと思いますが、しかし一点、富士保全法は、その問題とは次元の違う立場で考えたものであるといわれますが、この幾つかの覚書等を見ますというと、「北富士演習場の暫定使用に関する覚書」等の中で、第6として「乙は、富士山及びその周辺自然環境保全する等のため富士保全法を制定し、適切な措置を講ずる。」こういうものを入れなければ、かえって私はよかったと思うのですが、こんなものを入れたために、これはだれが聞いても見ても、この富士保全法というものは、——私は知事を責めはしない、政府を責めるわけです。あなた方は一体富士保全という美名に隠れて何をやっておったのだと言いたくなるわけです。これに乗ったということは、これはどういうことなんです。
  52. 田辺国男

    田辺参考人 いま演習場の使用の問題の時点におきまして、私が先ほど意見陳述をした際にもお話を申し上げましたように、私が四十二年から富士山ろくの自然を守っていこうということは、終始変わらざる私の願いでございます。したがって、いつの日か、この富士周辺については環境交付税、さらには富士保全法というようなものをつくってもらいたい、こういうことを願いを込めておったわけでございます。幸いに、その時点におきまして軌を一にしてこの問題が出てきた、こういうように御理解をしていただきたいと思います。  したがって、私がこれをもって取引をしたとか、そういうことではないということを御理解いただければ、たいへんしあわせだと思います。
  53. 小林信一

    小林(信)委員 私が申しましたように、私は知事を責めるよりも、そういう印象を与える政府をこの問題では追及して、この法案の性格というものはすなおに受け取ることができないじゃないかというように、いま各委員が究明しているところなんで、決して知事さんを責めているわけじゃないのですが、しかし、知事さんに対しては、このことで一緒に検討してまいりました立場からすれば、あのときが私は富士をほんとうに美しく守っていく絶好の機会ではなかったか。  これは私のほうからも一言つけ加えておきますが、そこで、いま金丸代議士がそこへ来まして、おい弱ったものだよ、この法律が通るか通らぬで知事に確約しております二百十ヘクタールの払い下げの問題、あるいは百三十億の補助金の問題、こういう問題も停滞しておるのだというふうなお話ですが、それは事実ですか。
  54. 田辺国男

    田辺参考人 二百十ヘクタールの恩賜林組合への払い下げの問題につきましては、現在その境界線等がたいへんに不明のために、おそらく、調査を進めておりますので、五月中には結論が出ると私は聞いております。  それから百三十億の問題でございますが、できるだけ市村とも話し合いの中で、私どもはこの百一二十億の金を消化をしていきたい。そうしてまた、それをすることが、あの地域周辺整備に大きく裨益することである、こう判断をいたしております。
  55. 小林信一

    小林(信)委員 別にこの法案の成否ということには関係ない。そこでやはりこの問題も委員会の中で、まだ私は触れておりませんが、お話し合いがありましたですね。この二百十ヘクタールというのは、いわゆる林業地域の拡大のために払い下げるものである。ところが、いろいろな新聞なんかで、あそこの地価は幾らするものだ、したがって全部買うには九十億かかるとか、百億以上かかるとかいうふうな話がありますが、林業地域拡大というものであれば、私はそんな膨大な金を政府が要求するということは不当だと思うのですが、知事さんの腹がまえはどうですか。
  56. 田辺国男

    田辺参考人 私の考え方といたしましては、やはり地域は今度払い下げるとするならば、林業地域としての形で払い下げるということでございますから、やはり林業地域としての地価で払い下げるということが適当ではないか、こう判断をいたしております。
  57. 小林信一

    小林(信)委員 私どももそういう点でがんばってもらいたいと思います。あれは観光地であって、一坪何万円だとか、そんなことだったら、これは払い下げはたいへんであるし、また世間が誤解するようなものにもなると思うのです。  ひとつ天野さんにお尋ねいたします。先ほど問題になった演対協とかあるいは補償料の問題、私たくさんお聞きしたいことがあるのですが、いままでのこの委員会審議の中でも納得できないものと、ちょうど一緒になった問題ですから、お尋ねいたします。  いまの補償料の問題ですが、四十二年以降、演対協を通さなければ支給しないという話で、いま、それを受け取らない人たちは、どれぐらいあるのですか。
  58. 天野重知

    天野参考人 正確にはちょっと記憶がありませんが、百二、三十人ぐらいあると思います。
  59. 小林信一

    小林(信)委員 それをここではどういうふうに扱っているかというと、防衛庁のほうでは、富士山ろく演習場のあることに反対する人たちがこれこれであるというふうに評価しているのです。あの演習場周辺地域の人たちのいまや二%である、だから演習場のあることに対して反対する人たちは二%だ。その評価をする考え方が、私は大きな間違いだと思うのです。富士山は決してあの周辺の人たちだけではないのです。まず山梨県へあるいは日本国じゅうの人たちが、あそこにあってしかるべきかいなかということを判断することを当局は考えなければならぬのに、周辺の人たちがわずか二%しか反対しておりませんというふうなことを言って、あそこに演習場のあることを決して防衛庁の人たちは何とも考えておらない。まことにけしからぬ言い分で、そういう質疑を取りかわしているのです。  つまり演対協を通さなければ支給しない、これは防衛庁に私も忍草の人たちと一緒に行って、長官だか、あるいはその下の人だかに話をしたときに、そういうことはないと言明したことを私は覚えているのです。まさにこの補償料を支給することによって、忍草の人たちの中にも、いま何か文書が出たといいますが、私もその文書を見ておりませんが、ああいう文書を出しながら——出したそのことすらも、私は施設庁あたりの一つの作戦ではないかと思うのですが、そうして演対協をわずらわせれば補償料がもらえるんだというようなことで、だんだん切りくずしていく。ひきょうなやり方なんですね。もっと公明な方法で、当然その権利があるのですから、支給すべきがあたりまえだと思うのですが、こういう点について私どもも一つの疑問を持っておるわけですが、天野さんとしては、どういうふうにお考えになっておられますか。
  60. 天野重知

    天野参考人 先生御承知と思いますが、一番大事なことは、私はこう思っているのです。二%か一%か、どういうお話があるか知りませんが、先ほど知事さんがお話しのとおり、小さく山梨県と見ましても、また地元民といたしましても、北富士演習場があってよろしいという者は一人もないと思います。これは知事さんのおっしゃるとおりだと思います。  しかし、そこで問題は、先ほど申し上げました政府、防衛施設庁が物欲、エビの中に針を隠して——貧困といいますか、いろいろの状況に応じて国の施策が公平に行き届かないから、ああいう工事もしてもらいたい、こういう工事もしてもらいたいということがある。岳ろくは御承知のように貧しいわけですから、そういうところに国の施策がよく行き届いておりませんから、市長さんはじめ、町村長はじめ、議員さんはじめ、いろいろなことを希望するわけです。お金といいますか、そういうことで、演習場を認める。認めざるを得ないということです。だからその貧しさ、国の政治の施策がよく浸透しないという結果、もたらすところの地元民の感情といいますか、その気持ちへ当てはめて、民生安定事業は違法であって押し切ってやっちゃうぞ。いや、入り会い補償も政府の言うとおりであるとするならば、もう全然入り会い権も法で保護する権利もないのだ、全く恩恵だといって、これもその意味からいえば偽って出す。国費の非常な違法支出です。私はそう思う。  だから問題は、地元とかなんとかという問題でなく、国の施策というものの上から——演習場があっていいなんという者は私は一人もないと思う。防衛庁以外は。それは先ほど福田さんも言うとおり、あるいは三木さんも言うとおり。私も現に池田さんにも石橋さんらにも同じ話を聞きました。
  61. 小林信一

    小林(信)委員 委員長に申し上げますが、私の発言中二分くらい委員長発言の時間があったので、二分くらい延ばしてもらってもいいと私は思うのです、したがって、あと四分ばかり、どうでも土井先生が発言をしたいそうですから、時間をやっていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  62. 角屋堅次郎

  63. 土井たか子

    ○土井委員 一問だけ、四分ということでありますから、山梨県知事さんにお尋ねしたい問題がございます。  実は、これは順を追って経過説明をするまでもない話でございまして、端的にそのものずばりをひとつお尋ねするわけでありますが、昨年の四月三日に本協定を締結されるにあたりまして、「北富士演習場の使用に関する覚書」と「富士地域環境保全整備特別措置法に関する覚書」という、この二つの覚書を二階堂官房長官との間に締結されているわけであります。それは確認させていただいてようございますね。——ところで、いま私は手元に写しを持っておりますが、四月の三日に結んでいらっしゃいますこの「富士地域環境保全整備特別措置法に関する覚書」というもの、これは先日のこの委員会でも私は質問させていただいたわけでありますが、表題からいたしますと、こういう法律はまだつくられてないんですね。  これはもう知事さんに言うまでもないことでありまして、憲法からいたしますと、県知事には法律制定権ございません。法律案に対して審議をして、衆参両院が可決しないと法律にはならない。憲法五十九条の示すとおりでございます。いま私たち手に持っているのは、法律ではなくて法律案なんです。審議のまつ最中なんです。当時、昭和四十八年の四月三日というのは、まだこの法案が本委員会に付託もされていないときであります。五月の八日になって、初めてここの委員会に、この法案は付託されているわけですね。それに先立って、表題を見ますと「富士地域環境保全整備特別措置法」と書いてある。これは不穏当じゃないか。憲法からすると越権行為もはなはだしい。国会に対するところの侮辱だということを私は申し上げて、どうお思いになりますかと言ったら、環境庁長官は、私もこれはおかしいと思うという発言であったわけです。あと内閣で、このことは検討していただいているはずであります。  結ばれた当事者の一人である県知事さんが、きょうは御出席でありますから、私は直接県知事さんに、このことに対して問いただしたいということで立ち上がったわけです。いかがでございますか。
  64. 田辺国男

    田辺参考人 お答えをいたします。  私といたしましては、この法案が成立した場合と理解をいたしております。御指摘の点はごもっともだと思います。法案とするのが、私も適切であろうと考えております。
  65. 土井たか子

    ○土井委員 そうしますと、もうすでに結ばれている覚書にはこういう表題になっておりますから、これについての善後策を何らかお考えになっているはずではなかろうかと思うのであります。特にこれは中身を拝見いたしますと、いま私たちが手元に持って審議中の法案それぞれに具体的にかかずり合う中身を持っているのです。たとえば条文まではっきり書いてある、二十条とか十六条とか。それについて、政府との中でこういうふうに約束をしておりますよと言わぬばかりの中身でありますから、私たちに対しましては法案審議の途上、この表題を見ますと「措置法」と書いてあるということは、まことに不穏当で済ますわけにはいかない問題です。これに対して知事さん、どういうふうに善後策を講じようというふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  66. 田辺国男

    田辺参考人 ただいま申しましたように、この法案が成立した場合と理解をいたしております。その点につきましては、私も法律案であるのが最も好ましい、かように考えます。
  67. 土井たか子

    ○土井委員 もう時間ですから、私はしつこく言うことは本来きらいでありますけれども、そういうふうにお考えになっていることは、先ほどからも確認している。何らかそれをはっきり、どういうふうな対策でお示しになるかということが実は問題なんです。お考えはお考えとして、もう承ったのですから、これに対してどういうふうに善後策をお考えになっていらっしゃるか。善後策ですよ。
  68. 田辺国男

    田辺参考人 その点につきましては、官房長官にお聞きをいただきたいと思います。
  69. 土井たか子

    ○土井委員 だけれども、結ばれている当事者は知事ですから、きょうは知事さんは、ここに御出席で参考人として御発言をいろいろなすっているわけでございますから、参考人としての知事さんに私は御質問をさせていただいているわけでありまして、官房長官には別に聞く機会がございます。したがいまして、参考人としての知事さんに対して私は質問させていただいておるわけでございますから、それに対する御答弁として承っておきたい、こういうことでございます。
  70. 田辺国男

    田辺参考人 ただいま先生から御指摘がございましたように、私には提案権も何もございません。したがいまして、これは政府がいろいろと配慮をすべき問題だと思います。ですから、私としては、この法案が成立した場合、こう判断を——当時においては理解をしたわけでございます。
  71. 土井たか子

    ○土井委員 時間ですから、もうこれで終えたいと思います。  そういうふうに知事さん自身ははっきり当初から理解をなすっていたということでございますね。この覚書に対して署名をなさるときにも、その点は、この表題をごらんになって、何らお感じになるところはなかったわけでございますね。疑問にお考えにならなかったわけでございますね。そのことだけ、ひとつ確認しておきたいのです。——わかりました。
  72. 角屋堅次郎

    角屋委員長 この際午後の審議関係もございますので、約三十分、暫時休憩いたします。    午後零時五十二分休憩      ————◇—————    午後一時二十二分開議
  73. 角屋堅次郎

    角屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。参考人に対 する質疑を続行いたします。木下元二君。
  74. 木下元二

    ○木下委員 田辺参考人に、まず事実関係を少しお尋ねしたいと思います。  四十八年四月三日に、覚書が二つつくられております。「北富士演習場の使用に関する覚書」と「富士地域環境保全整備特別措置法に関する覚書」、二つつくられておりますが、これは四月三日という日でありますが、同時に調印されたことには間違いはないのでしょうか。
  75. 田辺国男

    田辺参考人 その日に調印をいたしました。
  76. 木下元二

    ○木下委員 その日であることは、この書面を見れば明らかなんでございますが、同時に——その日でも、その日の調印をするときに一緒に調印をされたということは間違いないかどうかとお尋ねしておるのです。
  77. 田辺国男

    田辺参考人 引き続いて調印をいたしました。
  78. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、「北富士演習場の使用に関する覚書」、この中に書かれております事項、北富士演習場の安定的使用を確保するとか、あるいは演習場の使用と周辺地域の発展とを両立されることを目的として進めていくというようなことで書かれておりますが、そういう内容のことと、それからもう一つの覚書の「富士地域環境保全整備特別措置法に関する覚書」で書かれておる内容のこと、これは一緒に話が進んで、それではけっこうということになって、同時に調印という運びになったわけでございますか。
  79. 田辺国男

    田辺参考人 この演習場の問題、それから環境保全法の問題、これはちょうど軌を一にいたしたということでございます。
  80. 木下元二

    ○木下委員 別々に話が進められたということではなくて——これは当然そうだと思うのですが、一緒に、話し合いの中身も一つのものとして、話し合いが進んだのではないのですか。
  81. 田辺国男

    田辺参考人 これは別々に話は進んで来たわけでございます。たまたま調印の際に同じ時点になった、こういうことでございます。
  82. 木下元二

    ○木下委員 この話し合いには、相当な日時を要したということになりますか。
  83. 田辺国男

    田辺参考人 相当な日時を要しております。
  84. 木下元二

    ○木下委員 この「北富士演習場の使用に関する覚書」では、この演習場の安定的使用を確保するというふうなことがうたわれております。他方において、このもう一つの覚書のほうでは、富士地域保護利用整備計画に掲げる事業を進めていくということで、内容が書かれておるのであります。これは、もう全く別個のものということではなく調印も同時に行なわれておる。これは決してたまたまこれが一緒になったというふうには理解しにくいのでありますが、あなた、知事さんの主観的なお気持ちは、これはともかくといたしまして、少なくとも客観的には、これは一対のものとしてつくられた、こう考えざるを得ないのです。  一方において演習場確保する、他方において政府のほうが、山梨県にいろいろと援助をして事業を進めていくということが一つのものとして、この覚書がつくられておる、覚書は二つになっておりますが。だからこそ同時に調印された、こう理解せざるを得ないのですが、この点はいかがでしょうか。
  85. 田辺国男

    田辺参考人 先ほども申しましたように、富士山ろくのいわば自然を温存をする、そしてこれを守っていきたいという念願は、私が四十二年就任以来の願いでございます。たまたま、仮称でございますけれども、当時富士保全法というようなものをつくってもらいたい、こういうことを再三政府に要請をいたしたわけでございます。したがいまして、その演習場問題と軌を一にしまして、この問題が解決をするということでございまして、その点がちょうど同じ時点であったということが、たいへんに誤解を生んでおるということは、私にとりましても、たいへん残念に思っておる次第でございます。  以上でございます。
  86. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、富士地域環境保全を進めていくということで、法律をつくってもらいたいということは、知事さん側の、つまり山梨県側の政府に対する要望であったというふうに伺っていいと思うのですが、一方では、演習場の使用の問題は、山梨県側から出たということではなくて、政府のほうから出た、政府のほうから、その演習場の使用の確保をはかってもらいたいということで出てきた。この二つがかみ合って、二つの覚書という形になってあらわれたのだ、こういうことでございますか。
  87. 田辺国男

    田辺参考人 先ほども申しましたように、当時山梨県の県有地に対する、いわば六百四条の規定によりまして、県有地が使用期限が来た、こういう時点におきまして、私ども演習の中止を申し出た、そういう経過があるわけでございます。したがって、国におきましては、使用転換につきましては、当初から長い間山梨県に申し入れをしてきたわけでございます。私どもとしては十分これを検討をするということで、先ほど申しましたように、山梨県のあの置かれた位置、そしてまた演習場富士山ろくにやはり置かざるを得ない、そういういろいろな判断をいたしまして、この協定を結んだ、こういうことでございます。  また、片方、富士保全法等につきましては、私ども県から強く要望を進めておったわけでございますが、たまたま環境庁においても、そういう富士の自然を守るという点においては、こういう法律も必要だということは政府においても考えておったわけでございます。たまたまその時期が一致した、こういうふうに御理解をしていただきたいと思います。
  88. 木下元二

    ○木下委員 これはたまたまその時期が同時になったということのように言われますが、話が進み——まあ話はあるいは別々に進められておったかもわかりませんが、結局話し合いが共通の到達点に達して、話がついたのは同時についたのじゃないのですか。だからこそ同時に調印をなさったのじゃないのですか。
  89. 田辺国男

    田辺参考人 ただいまお話を申し上げましたように、片方の演習場問題につきましては、ちょうど期限が切れている、そしてこれを演習場にやはりしてもらいたい、こういうことで実は暫定使用の再延長までいたしました。そして、それがちょうど四月の三日でございますか大体煮詰めができて、そして使用転換をするということにきまったわけでございます。その時点において、保全法の問題につきましても、国と県との意見が一致をいたしまして、ちょうど同じ時点でその調印がなされた、こういう次第でございます。
  90. 木下元二

    ○木下委員 その辺は、もうこれ以上私、お尋ねいたしません。ほかの問題に移りますが、どうもたまたま別々の問題が同じ時期に偶然一致して話がついたということは理解しがたいので、これはやはり客観的には一対のものとして調印がなされておるとしか理解のしようがないと私は思うのです。  そこで、次の問題ですが、富士における自然破壊は相当ひどく進んでおるようでありますが、具体的にどういう状況なのか、知事さんとして、どういうふうにこの点を御理解なさっておられるか、伺いたいと思います。
  91. 田辺国男

    田辺参考人 富士周辺の自然破壊の問題につきましては、一つは、先ほど私も申し上げましたように、あの大沢くずれ、また山梨県側には吉田大沢、大きないわばなだれ等が、雪しろ等があるわけでございまして、これを放置いたしますと、下流におきましてたいへんな被害をこうむる、また富士の自然も害する、こういう意味では、こういう問題については、もっと手厚い保護対策をやるべきではないか、こういうことが一つございます。  それからもう一つは、青木ケ原等をはじめ、あの自然林、こういうものが現在の国立公園法等においては十分管理ができない、したがって、この自然を守っていくためにはさらに強い法律を必要とする、こういうことでございます。  それからもう一つは、やはり観光地でもございますので、先ほども申しましたように、その地域に来る観光客が千百万人以上来ておる、こういう現実に立ちますと、この地域のごみ、屎尿処理の問題というものは、たいへん大きな問題だ、したがって、こういうものをやはり、各地から来る観光客のごみ、そして屎尿の問題もあわせて検討をする必要がある。また、これにはやはり強力な措置を必要とする。  もう一つは、富士五湖の汚染の問題でございます。この汚染を何とか防止をしなければいけない。しかしそれには、現在下水道というものは町村の必置義務になっております、こういうものをひとつ早く手を打って、この汚染防止するということ、同時にあの流域下水道というものを整備をしていく、そういうようなもろもろの自然保護というものが必要なあの富士山ろく現状というものを考えましたときに、この法律が必要である、私はかように感じておる次第でございます。
  92. 木下元二

    ○木下委員 この富士保全法案富士地域保護利用整備計画ですね、この中の保護計画というものは、どのようなものをお考えになっていられるのか。それからまた、利用整備計画というのは、どのようなものをお考えになっていられるのか。簡単でけっこうですから、お示し願いたい。
  93. 田辺国男

    田辺参考人 この地元県といたしまして、私どもとしては、やはり国土保全という意味から治山治水事業、こういうものを考えてもらいたい。先ほど申しましたような、やはり大沢くずれ等がございますので、その点と、それからもう一つは、いま申しました富士五湖の水質保全の問題、それからさらには、このごみ、屎尿処理、こういう問題でございます。そのほか自然公園の事業、それからまた広域都市公園事業などというものがありますけれども、その法律では目的を十分達せない、したがって、この保全法によって、いわば保護利用整備事業というものをやってもらいたい、こういう考え方でございます。
  94. 木下元二

    ○木下委員 山梨県の山林のうち約四割は恩賜県有財産として県有林と聞いております。これにつきまして、一昨年、山梨県恩賜県有財産土地利用条例というものがつくられたそうでありますが、この内容と県有林利用計画はどうなっておるかということを伺いたいと思います。
  95. 田辺国男

    田辺参考人 山梨県の県有林は大体十五万六千ヘクタールあるわけでございまして、この県有林は私ども、明治末の御下賜になった、いわば恩賜林という名称でこれを総称いたしております。  そして、この県有林は、いわば県土の保全ということを第一義としてやっておるわけでございます。したがって、この利用等につきまして、私どもは治山治水というものを主目的として管理をしているわけでございまして、できるだけ植生というものを保存をしていこう、こういうことが第一でございます。  それから、その他地域の公益的な機能、すなわち水源涵養、それから休養、レクリエーション、こういうものの要請にこたえるために、できるだけひとつ森林の公益的機能を発揮していこう、こういうことでございます。  それからもう一つは、伐採量をできるだけ抑制をいたしております。すなわち、蓄積量というものを大いに増大をしていこう。かつては山梨県においては、昭和三十五年から四十年ごろまでにおいては約三十五万立方メートルの木を切っておりました。現在においては約二十三万から二十万立方メートル程度の木を切っておる。すなわち、節伐をやっておるわけでございます。これを今後やはり二十五年間は続けていこう、こういう考え方でございます。その後になりますと、大体二十五万立方メートルずつ年々切っていかれるであろう、こういうことでございまして、山梨県としては節伐をすろことが、県の財政にたいへんに大きな圧迫を来たしておる。それにもかかわらず山を守っていく、そういう意味では、植林、そしてまた自然の保護ということにつとめておるわけでございます。  それから、県有林開発利用というものは極力押えておりまして、ちょうど四十二年当時、借地申請が百三十二件、六千二百ヘクタール、こういう申し入れがございましたが、私は開発のための貸し地というものは一切拒否する、そして分譲も一切取りやめる、こういうことでこの申請をすべて返戻し、今日それを守っておるわけでございます。  それから、県有林の管理形態というものは、地元保護団体の協力を得まして保全をしておるわけでございます。ただ、この県有林につきましては、県の施業地、部分林、樹栽貸し地、それから小柴下草採取区域、こういうように分かれておるわけでございますが、山梨県は恩賜県有財産保護組合という一つの保護団体の管理によりまして、六十三年間全国に例を見ない独特な管理運営をいたしておりまして、りっぱに山梨県の自然を守り、植林が十分繁栄をしておる全国に珍しい管理体制である、かように考えております。  以上でございます。
  96. 木下元二

    ○木下委員 次に、植松参考人にお伺いいたします。  時間の関係で、まとめてお尋ねいたします。  第一点としまして、富士宮における富士山ろく開発状況はいかがでしょうか。  第二点としまして、乱開発に対して、富士宮での対策はどのようなことを行なっていられるでしょうか。  第三点としまして、本法律ができました場合に、そうした乱開発規制は可能とお考えでしょうか。  以上であります。
  97. 植松義忠

    植松参考人 お答え申し上げます。  まず第一点の、富士宮開発状況でございますけれども、先刻も申し上げましたとおり、いわゆる資本の土地買い占め、あるいはゴルフ場等、レジャー施設の設備開発というようなことで、ゴルフ場だけでも、既設のものが一つ、現在進行中のものが二つありまして、その他申請が、私の手元でストップをしておるものが十あるわけであります。まだ申請しようという傾向もありますけれども、それは一切受け付けないということで、いま規制はしておるわけでありますが、そのような開発ブームが一昨年から昨年にかけて非常に強かったわけであります。  したがいまして、私は富士宮土地利用対策委員会というものをつくりまして、これに対していろいろな規制の要綱を設定いたしました。さらに直接には、現在の法律の中では、いわゆる私権というものを行政がチェックし制約するわけにいきませんので、その私権の行使について住民運動を起こす必要があるということで、住民運動を起こしました。それは、土地を売らない運動、土地と農業を守る運動、土地と緑を守る運動、こういう形で展開して、私権の行使を、売る行使から売らない行使に意識転換をしようという住民運動を起こしたわけでありますが、この効果が相当あがって、今日では大規模な土地買収については完全にストップがかけられております。  しかし、潜行的には若干いろいろな問題がありますので、常に注意深く見守りながら、しかも農協その他のいろいろな機関を動員いたしまして相談窓口をつくり、土地を売らなければならないような事態に立っておる人たちに対する金融などの御相談相手となって、これについての指導と同時に対策を両立させておるわけであります。したがいまして、乱開発の状態については、いま一応規制がされておりますけれども、しかし今後、一体どこまでこの規制が続くかということになりますと、非常に疑問であります。  これが第二点の乱開発に対する対策の問題として、私は非常に神経をとがらしておりますが、末端の市町村の行政能力において、はたしてそれが可能であるかどうか。私の市だけが、あるいは隣の市ぐらいが規制しても、その他のところで規制が行なわれないとすれば、これは必ず法律問題に発展し、訴訟問題にもなりかねないという危険性が多分にあるわけでございまして、そういう意味から申し上げまして、土地制度を根本的に改めて、いわゆる公共優先の土地制度を確立すべきである。  第三点としては、補助的な手段として、やはりいまのように特別地域について、たとえば富士山のように、全く国土象徴であるばかりでなく、貴重な資源あるいは貴重なレクリエーションの場であるというふうな特別地域については、特別な立法が必要である。こういうことについては先刻午前中申し上げたとおりでございまして、富士山を直接守っております、わが静岡県内における四市一町の皆さんと協力をして一お互いに協力しない限り、これがばらばらでは効果があがりませんので、そういう対策をとってまいりました。  たまたまこの富士保全法が、先ほど来お話がありましたように、山梨県の知事さん等を中心にして発案されたということを聞きまして、静岡県知事もこれに同意をしておるようであります。それに基づきまして、四市一町のわれわれも協議いたしまして、この趣旨には賛成である、ただし、その内容がどうあるべきかということについては、まだ検討中でありますし、国会審議に付されておるという状態を承っておりますが、ただ問題は、この政令その他具体的なものがどう出てくるか、これについてはまだ非常に心配な点を持っております。端的にいえば、いわゆる環境保全法でなくて開発保全法になる危険性があってはいけないということで、保全をまず第一にする、開発をつとめて規制する。しかし全然開発をしないわけにまいりませんので、これについては、今後の課題として私が先生方にお願いいたしたいのは、これらの具体的な政令その他の内容について、やはり本法の趣旨目的が完全に達せられますように、特にお願いをいたしたいと思います。
  98. 木下元二

    ○木下委員 この法律がつくられましても、北富士演習場東富士演習場がそのまま残っていくということについて、植松参考人としては、どのようにお考えになるのでしょうか。
  99. 植松義忠

    植松参考人 演習場の問題については、私は実は直接演習場にかかわりを持っておる市長でありませんので、詳しいことがわかりません。ただし終戦直後、西富士演習場が実はありまして、そこで私は開拓事業を行ないましたその責任者でありましたし、つい最近まで、市長になるまでは静岡県の開拓連の会長でありました。したがって、あの当時米軍のいわゆる演習場または爆撃演習場ということでお話がありましたけれども、私は先頭に立って地域住民の人たちと一緒になって米軍との折衝をし、とうとうあそこの演習場化を阻止したその当時の責任者であります。  したがいまして、東富士あるいは北富士等の演習場を持たれておる方々に対する同情は人一倍持っておるわけであります。ただし、この演習場存在が、いわゆる国内法だけでなくて、国際法上の問題として存立しておるといういきさつがあって、とても私たちだけの考え方では、これをなかなか撤廃するわけにいかない。しかし、いつかはやはり、少なくとも富士山というりっぱな霊山のふもとには、こうした破壊的な、あるいは平和的でない存在というものは、やはり一切排除してもらって、そしてこれはしかるべき方法をとっていただきたい。そうして全く富士山富士山らしい、すがすがしい姿に戻していただくことを——もし国際的な関係があったとしても、あるいは国連大学等か何かそういうようなものであるとすれば、むしろ歓迎はいたしたいと思うのですけれども、演習場に対しては、私もほんとうに遺憾に存じておる次第であります。
  100. 木下元二

    ○木下委員 もう時間がありませんので、けっこうでございます。  最後に、天野参考人に一つだけ伺いたいのでありますが、この北富士演習場実態及びそれの及ぼす被害状況を、先ほどの御意見の中でも、これについては触れられておりますが、残った点、あるいはもっと具体的に明らかにしたいというような点がございましたら、述べていただきたいと思います。
  101. 天野重知

    天野参考人 北富士演習場があることによる被害が、大きく分けて二つあると思います。  一つは、物理的というか、あることによって自然が破壊されるとか、水害が起こるとか諸般のことがあります。これは、具体的には障害防止工事とか民安の事業とかいうものを見てやれば、全国的にどのくらいの地位を占めるか、少なくとも先ほど申し上げました、知事さんの言う百三十億円という事業が要る、たいへんな金です。そういうことでもって被害を防止したい。  もう一つの被害は、これはたいへんな被害です。北富士演習場があることによって、地域の静ひつというものが侵される。たとえば、われわれはそういう気持じゃないけれども、演習場に反対するのは、これはイデオロギー、また逆に言うと、演習場に賛成するものは、これまたイデオロギーだということで、いままで仲のよかった一つの地方、一つの村、一つの市、一つの県が、国の施策によってひっかき回されている、これは大きな被害であると思います。
  102. 木下元二

    ○木下委員 以上、終わります。
  103. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次は、岡本富夫君。
  104. 岡本富夫

    ○岡本委員 最初田辺知事さんにお聞きしますが、先ほどからお聞きしておりますと、午前中もそうですが、この富士保全法、それから北富士演習場使用協定については、何ら関係がない、別々のものだというように答弁されておりますけれども、これは「北富士演習場問題を考える」という、山梨県の県民室の発行のものでありますが、この中に「北富士演習場返還知事目標であると県民理解しているのですが、知事はこの目標達成のため、どのような努力を払ってきたのでしょうか。」   〔委員長退席、林(義)委員長代理着席〕  この間ずっと書いてありまして、非常に一生懸命に全面返還目標にしてきた。  そこで、この三ぺ−ジのところに「内閣官房長官の申し入れ」、「その後政府知事の申し入れにどのように対応したのですか。」この中に「八月一日、知事は二階堂官房長官の招きを受けて首相官邸におもむきましたが、そこで官房長官から  「総理大臣、外務大臣、大蔵大臣、建設大臣、防衛庁長官が協議の結果政府考え方としては、一、北富士演習場を従来どおり使用したい。ただし防衛施設庁がさきに示した二十一パーセントは返還する。」これが一。  二項目は「富士保全法(仮称)を立法するとともに、地元の民生安定のため諸施策を講ずる。」  これは官房長官のあなたのほうに対する申し入れでありますが、それに対して、知事さんからどういうふうに対処したかといいますと、「演習場標高千百メートル以下の国有地開放について再考願いたい。国有地八パーセントの開放では国が提案する両立論にはほど遠いものと考える。」これが一。二が「富士保全法(仮称)の内容についてできるだけ明確に示されたい。」三、「地元の民生安定対策の内容を明確にされたい。なお、この地域の特殊性から周辺整備法の対象外の必要な事業について対応するよう考えられたい。」こういうふうにあなたのほうの県民室から経過が発表されておるわけであります。  この北富士演習場使用協定をつくるにあたりましては、こういったやりとりがあります。したがって、富士保全法という法律の制定については何も関係ないということは、最初の発想はどうであろうとも、この交渉の中を見ますと、あなたのほうから発行しているのですが、北富士演習場使用と富士保全法というのは、明らかにうらはらの問題になっているということが明らかになるわけでありますが、この点について知事さんのお考えがありましたら、ひとつ。
  105. 田辺国男

    田辺参考人 先ほども申し上げましたように、演習場問題につきましては、政府も早く使用転換をしてくれ、こういう申し入れば常にありました。その際に官房長官等から、この当時においてはまだ法案の名前は明確になっておりませんけれども、とにかく自然を保護する、富士周辺保護する、そういうものについても考える、こういうことを言っておったわけであります。もちろん私は年来、この富士地域の自然を守るということについては強く要望しておった問題でございますから、その点については、ぜひひとつ実現をしてもらいたい、こういうことで並行的にこの話は進んだ、こう理解をしていただきたいと思います。
  106. 岡本富夫

    ○岡本委員 両方並行に進んだということは、先ほどちょっとお聞きしていると別々だったのだという話だったのでありますけれども、この北富士演習場使用協定を調印する際に、その担保として、この富士保全法を制定し、所要の経費を計上したい、これは出ておりますけれども、その話があって、それぞれ富士保全法を制定するという担保があるから、あなたのほうはこれに調印したのではないか、こういうふうに考えられるわけですけれども、いかがですか。
  107. 田辺国男

    田辺参考人 そこは非常に誤解を生むところでございますが、先ほどから申しておりますように、ちょうど軌を一にしてこの問題が議論をされた、こういうことでございまして、その点は、一つの担保としてこれを政府が出した、さようなことではないと私ども信じております。
  108. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうもずいぶんがんばられますけれども、あなたのほうの交渉経過、八月二十一日、知事は再び二階堂官房長官から招かれて次のような要請を受けたと、これにもちゃんと北富士演習場使用協定、それに対する今度は担保としてこういうように出ているわけですね。   〔林(義)委員長代理退席、委員長着席〕  たまたま一緒だった、別々だとおっしゃいますけれども、翌八月二十三日、暫定使用協定の締結について、どのような意見が出たか。まあこれは県会の意見でありますけれども、この県会の意見としても、暫定協定を結ぶべきでないという派と、暫定協定を結ぶことはやむを得ないが、いろいろ条件をのんではならない、またこの際、県として各種の要望が通るように暫定協定を結ぶべきだというような、それぞれの各派、県会の意見があるわけですね。それを受けて、あなたがまた八月二十三日に総理と会っているわけです。  したがって、これは別々だと、あなたはお答えになりますけれども、すべての交渉の中にこれは両方並列して——並列ということは、うらはらの問題で出てきておるわけですから、この点、私、あなたのほうの県民室から出ているこれで明らかになったと思うのです。それで、いまになってお答えにくいと思いますけれども、これはまた政府にあれしますけれども、そこで知事さん、この協定を見ますと、大体五年間は自衛隊あるいはアメリカ合衆国との間で使う、この使用協定ができたわけですが、あなたは全面返還というのが最初考え方だった。確かに、ほかだったらいいですけれども、富士のこんな日本の象徴というところで、たまを撃つということは一番ぐあいが悪いことですね。それじゃ、将来、全面返還を要求していく考えがあるのかどうか、これをひとつお聞きしたい。
  109. 田辺国男

    田辺参考人 返還を求め、国民的活用をはかることが私の一つの変わらざる方針でございまして、もちろん富士山ろく演習場のないことは望ましいことでございます。したがって、私は、将来これを段階的に解消をしていきたい、そのためにはあらゆる努力を払ってまいりたい、こういう考え方でございます。
  110. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、これを見ますと、忍草の皆さん方の入り会い権といいますか、地元忍草農民の皆さんの——私もここへ皆さんと一緒に調査に行ったのですが、こういった問題については、いままで国としても相当お金を出したりしているわけですが、知事さんは、こういう方もやはり山梨県民でありますから、山梨県民の立場として、その方々も擁護して、そして何とか皆さんが立っていけるような、生活できるような、そういう努力をなさるおつもりはありますか、いかがですか。
  111. 田辺国男

    田辺参考人 知事といたしましては、県民全体のしあわせを願うというのは大事なことだと思っております。ただ、この地域の問題につきましては、いろいろの問題点があるようでございまして、私どもとしては、やはり市村、そしてまた保護団体、そして演対協、こういうものと十分話し合いの中で、この諸問題については解決していきたい、こう考えております。
  112. 岡本富夫

    ○岡本委員 非常に時間が短いのであれですが、天野参考人にお聞きしますけれども、当委員会で、実は住民の皆さんがこの演習場に立ち入って、そして不発弾が爆発したというようなこともありまして、この問題のときに私は防衛庁長官に、時期を限ってどんどん中へ草なんか取りに行ったりいろいろなことを認めているわけですから、破片を全部掃除したらどうだというような話をしました。回答としては、全部破片を掃除します、そして皆さん方に危険のないようにいたしますということを言っているわけですけれども、その後行ってないのですが、どうですか、向こうの現状として破片は全部取り除かれましたか。いかがですか。
  113. 天野重知

    天野参考人 そのような措置はとられておらず、さらに不発弾も多々散在しておる、こういうふうに理解しております。
  114. 岡本富夫

    ○岡本委員 次の委員会で防衛庁長官に来てもらって——そのための参考意見をお聞きしておるわけであります。  そこで、最後に植松市長さん、大沢くずれが相当ひどいという、あなたのほうからのこういった資料もいただいておるわけですけれども、いまはどういうふうになっておりますか。建設省からも相当やかましく言って力を入れておるようでありますが、この大沢くずれの防止について、国に対する要望なり、あるいはまた、あなたのところがいまとっている状態、こういうことをひとつ御説明願いたいと思います。
  115. 植松義忠

    植松参考人 大沢くずれに対しましては、国会先生方はじめ政府皆さん方からたいへん理解ある御協力を賜わりまして、今日着々とその対策が予定どおり進んでおります。特に一昨年の災害の当時には、百万立米に及ぶ土石流が出たわけでありますけれども、昨年は、幸いこれらの被害はありませんでした。したがって、工事が順調に進んで、扇状地におきますところの堰堤については総額約二十七億ぐらいの投資がされまして、あの国道バイパスから県道の河底橋も立体橋にかわり、それ以後、以北の堰堤工事も第四堰堤から第九号までやっておりますけれども、第八号堰堤までは大体完成をいたしております。  さらに導流堤についても、その後補強、改良等が加えられまして、現在の状態においては、百万立米ぐらいの土石流がもし上から流れてきたとしても、ことしの雨季に対しては大体だいじょうぶだろう、こういうようなところまで実はいっております。しかし、崩壊する源頭部に対しては、なかなかこれに対するいわゆる技術的な解明がまだなされておらないようでありまして、これに対してはどのような方法をとっていいかということについても、早急に政府でひとつまた特別な調査団等をつくっていただきまして、これに対する対策を立てていただきたいと思います。  それからなお、せっかく堰堤をつくりましても、大体百万立米で満ぱいになりまして、次の年に参りますと、今度は天井川になって、またはんらんするおそれがあるわけであります。したがって、これはわが国ではあまりやったことはないということでございましたけれども、堰堤管理方式というものをぜひとってくれということで、強く私から要請いたしましたところが、土木研究所等もいらっしゃっていただきまして、なるほどそういうことが必要だということで、実は前建設大臣でありました金丸先生もいらっしゃってくださいまして、その実情をごらんになっていただき、堰堤管理をしようということで、これは要するに、堆積した土石を搬出して他に利用するか、排除して、次に大沢くずれから流出される土石をそこに滞留させる、水だけを下流に流す、こういうシステムをやるために管理道路をいまつくっております。そして、その管理計画をぜひ国のほうで早急に立てていただきまして、この管理をすることによって、下流に対する対策が非常に強化されるであろう、こう思っております。  次に、第三番目といたしましては、星山放水路でございますが、おかげさまで二年余短縮されまして、今月の明後日、これがめでたく開通するわけであります。したがいまして、これが開通いたしますと、いわゆる田子の浦港に対する災害対策については相当の効果があるし、富士市に対する潤井川防災対策は、ほとんど万全を期せられるだろう、こういうことでありますけれども、扇状地と、それからこの放水路の間が非常に危険個所がたくさんあります。  これについても、いま計画は立てておるわけでありますけれども、国のいわゆる総需要抑制のあおりの中で予算が削減されたようでありますし、土地の先行取得さえも、どうも思うようにいっていないということで、地域住民はことしの秋を迎えて戦々恐々としておるわけであります。改修に対して反対の人たちは一人もありませんし、しかも直接被害を受けるであろう三十数戸の家屋もみな移転を希望しております。市は移転先についても、いま一生懸命でかえ地を見つけておりますけれども、大体見当はついておりますが、予算がつかないために実施ができない。こういうことが一番いま困った状態でありますので、ぜひこれについては早急に国のほうでも予算的措置をしていただきたい、かように存じます。  さらに必要なのは、先ほど申し上げましたように、八百八沢と称するいわゆる野渓であります。これがまた、集中豪雨がある地点にありますと、ものすごい水が出て崩壊が続きます。したがいまして、いまのうちからこれに対する基礎的な調査をやっていただきたい。おかげさまであそこには国の直営であります富士砂防事務所がございますから、この機能を強化していただいて、大沢くずれ対策中心とした、いわゆる富士山砂防対策、これについてぜひ早急に調査をし、対策を確立していただきたい、これがお願いであります。
  116. 岡本富夫

    ○岡本委員 約束の時間ですから、午後の参考人がいますので、私は、これで終わります。
  117. 角屋堅次郎

  118. 折小野良一

    ○折小野委員 簡単にお伺いいたします。  最初に、田辺さんにお伺いをいたしますが、申し上げるまでもなく、演習場周辺につきましては、防衛施設周辺整備等に関する法律によりまして、国といたしましてはいろいろな整備をやらなければならない、こういうことになっておるわけでございますが、山梨県に関係いたします地域におきまして、最近、大体年間どの程度事業費整備事業が行なわれているのか、これは概略の数字でけっこうでございます。それから地元といたしまして希望され、あるいは期待される程度整備事業が行なわれておるのかどうか、お伺いいたします。
  119. 田辺国男

    田辺参考人 大体十四、五億でございます。
  120. 折小野良一

    ○折小野委員 その程度事業費で、地元としては大体これで整備ができる、あるいは満足べすき、あるいは期待できる状態だ、こういうふうにお考えになっておりますか。
  121. 田辺国男

    田辺参考人 これは初年でございますが、今後はさらにこれをふやしていくことが必要ではないか、かように考えています。
  122. 折小野良一

    ○折小野委員 富士地域に限らず、最近の乱開発、これに対しましては、地方団体におきましても、用地の規制その他でいろいろと苦慮しておいでになることだと思います。先ほどのお話によりましても、山梨県では環境保全条例、こういうものをつくっておられるということでございますし、それから富士宮市のほうにおきましては、いろいろと行政指導でそういう規制をやっておるということでございますが、しかし現在のわが国の制度のもとにおきましては、地方団体でこういう土地規制関係をやっていくということは、やはり限度がございます。いろいろと困難を感じておられることだろうと思います。  ところで、この面につきましては、たいへんおくれてはおりますが、国のほうでも、いろいろと土地規制を行なわなくてはならない。また乱開発防止し、自然環境保護していかなければならない。そのための利用計画というものをつくっていかなければならない、こういうことになってまいっております。田辺参考人とされましては、国のそういう施策に対しまして、特に現地の立場からどういう点の土地規制を特に御希望になりますか。お考えがございましたら、ひとつお知らせいただきたい。
  123. 田辺国男

    田辺参考人 富士山ろくは特に日本の代表的な自然環境を保存すべき地域でございます。したがって、私ども先ほど参考人として申し上げた中にもございますように、大沢くずれ、それから吉田大沢山梨県側にはそういうのがございますが、こういう地域崩壊をできるだけ防止する。  これについての予算措置というものは、現在の法律ではなかなかむずかしい。それから富士五湖の自然汚濁を防止する、こういう問題につきましても、現在の法律ではなかなかうまくいかない。それからごみ、屎尿処理の問題、こういう問題がございます。さらには樹海等の自然林の保護育成、こういうものについても現在では十分でありません。したがって私どもは、今回の保全法、こういう法律をぜひ通していただいて、この法律によって、これに対する万全の措置をやってもらいたい、こう願っておるわけでございます。  以上でございます。
  124. 折小野良一

    ○折小野委員 次は、植松さんにお伺いをいたします。  先ほどの御発言の中で、今度のこの法律に期待はするが、しかし開発誘導の懸念なしとしない、こういうような御意見がございました。したがって、保全を最優先にするという立場から、できるだけ地元の意見も聞くようにしてもらいたい、こういうことでございましたが、席をおはずしになりました千家さんの御意見の中でも、同じ問題につきまして、いろいろと利害が一致しないということが考えられる、そういう場合にバランスがとれないような結果になってくるんじゃなかろうか、あるいはむしろ規制がゆるむような結果になってくるんじゃなかろうか、こういうような御発言がございました。これは、個々の問題についてやってみませんことには、どうなるというふうにはっきりきめてかかることは、なかなかできないだろうと思いますが、基本的には保全というものを最優先にするような結論が出ることが望ましいということでございます。  しかし、この法律の中にも、やはり保全ということと利用ということと二面がございまして、場合によってはどちらかに多少なりと重点が傾く、こういうことも考えられないではないわけでございます。そういう面から、特に市長さんが地元の意見を聞くべきであるということをおっしゃいましたのは、地元の意見を聞くことによって保全優先の行政が確保されるであろう、こういうふうにお考えになってでございますか。いかがでございますか。
  125. 植松義忠

    植松参考人 お答え申し上げます。  地元の意見を聞いたからといって、必ずしもそれが万全だとは私は思いません。また、地元の意見を聞かないことは危険が伴うということであります。それよりももっと大切なことは、やはり保全の必要な土地については、むしろ国なり公共なりが土地を買収して、これにかってな、要するに民間の投資は一切介入できないというふうな状態に、まず第一に、とりあえずすることである。それからもっと考えれば、土地は商品的な扱いをさすべきではない、要するに自由な売買というものがあるべきではない。  とにかく土地は二つありません。いわゆるかけがえのない土地であり、また特に富士かけがえのない山でありますから、もっと大切なことは、なるべく国有地なり公有地を拡大して、必要な措置をその中でとっていくという方法と、もう一つは、一般論としては土地の移動、土地利用あるいは土地に対する形質変更、こういうようなものについては十分な、別な法律をもってしても規制をするべきである。そして本法は、それと合わさって効力を発揮するということでないと、やはりこの法だけに期待するということは無理じゃないか。もっと基本的に土地制度としての土地法を整備していただくことが基本的な問題である。したがって、地元の意見を聞かないということでは困りますので、聞いてはいただきたいのですけれども、その前提条件としてこの整備が必要だ、こういうようにお願いいたしたいと思います。
  126. 折小野良一

    ○折小野委員 先ほどもちょっと触れましたが、土地規制あるいは利用計画、こういうものにつきましては、現在国会におきましても、だんだん意見がまとまってきつつある、こういうような状況なんでございます。現在までの土地関係制度の中におきまして、公有地の拡大法というのがございます。これは地方団体が公有地を少しでも確保する助けになればという制度なんでございますが、私ども決してそれが皆さん方の御期待に十分に沿える程度のものじゃない、こういうふうに考えておりますが、現在この法律の運用について、直接市長さんのお仕事の面で御意見はございませんですか。
  127. 植松義忠

    植松参考人 いわゆる公有地拡大推進の法律に基づいて、それぞれ資格を持っている県並びに市町村は——まあ町村はどうかは知りませんけれども、市等については、この法律に基づいて土地開発公社を設立しております。私の市でも、これをつくっております。しかし法律はできたけれども、実は魂が入りません。要するにお金がありませんので、実際には拡大ができていかないわけであります。したがいまして、私たちは、いわゆるその原資の獲得に非常に苦慮しておりますが、きょうの新聞等の政府発表を見ても、これについてはむしろ特に規制を強化する、いわゆる土地の拡大については、あまり積極的にさせないというふうなことを発表されておるようでございます。  そうすると、昨年できたばかりの法律が、ことしはすでにもう開店休業だというようなことで、まことに私たちは困っております。しかも、住民の需要は学校の増設あるいは公共用地の取得あるいは屎尿処理場あるいは下水道等、焼却場もそうでありますけれども、あらゆる公共用地の必要は非常に大きいわけであります。にもかかわらず、それが十分になされないどころでなくて、むしろそれに規則が加えられてきつつあるという状態に非常に苦慮しておりますので、この点についても、やはり本法を推進する意味においても必要なことだろうと思いますし、とりあえず今日ただいまの住民の要望にこたえるためにも非常に困っておりますので、これも融資の道を拡大していただきたい、こういうように考えておる次第でございます。
  128. 折小野良一

    ○折小野委員 わかりました。  それでは最後に、天野さんにお伺いをいたします。  天野さんに、本日、参考人としておいでいただきましたのは、忍草入会組合組合長、こういうお立場でございますし、また先ほどそういうお立場からの御意見があったわけでございます。私どももそういうお立場からのお気持ちはよく理解できる、こういうふうに考えておるわけでございます。ただ、私がちょっとお聞きいたしたいのは、そういうお立場を離れて富士山ろくに生をうけ、富士山ろくに生活をしておられる、そういう立場から考えますと、端的にいって、演習場以外の富士地域、これにつきましては現状のままがいいのか、あるいはこういうような法律でもあって、少しでも規制をやっていって、環境保全することが大切なことなのか、そういう点のお考えをひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  129. 天野重知

    天野参考人 御質問の趣旨は、北富士演習場という問題との関連でなく、演習場があるということを前提にして、それからいまの保全法がよろしいかと……。
  130. 折小野良一

    ○折小野委員 演習場を一応除いて、そういうお立場から離れて、あの富士地域の一個の住民として……。
  131. 天野重知

    天野参考人 要するに演習場にかかわる入会組合という立場でなく、一個の住民として考えますと、先ほど申し上げたとおり富士地域の、富士のすそ野の大体東、北を合わせると三分の一という巨大な面積、しかも北富士においては先ほどから言われる青木ケ原の樹海、それから高原としての梨ケ原を中心とする膨大な面積を考えずして、富士保全ということはあり得ない。要するに面積的にも三分の一、すばらしい観光の場所、それを全然問題にしないで富士保全を考えるということは、失礼ながらナンセンスだ、これは私ははっきりそう言えます。  ですから、先ほど言ったとおり、さらに申し上げるならば演習場との抱き合わせでない、——知事あり方からいってそうだと私は思います。だとすれば、そういう疑いを持って、諸先生方も、何か抱き合わせじゃないか、条件じゃないか、これは防衛施設庁という悪玉の利益誘導の方法の上に出たんじゃないかといって、知事さんを、だいぶとっちめているようですが、私は知事意見に賛成します。ですから、もしそうであるとするならば、この際こういう疑わしいような法案政府に引っ込めていただいて、あらためて富士保全を御検討されるということがよろしいんじゃないかと、これは余分ですが、申し上げたいと思います。
  132. 折小野良一

    ○折小野委員 わかりました。  終わります。
  133. 角屋堅次郎

    角屋委員長 以上をもちまして田辺参考人植松参考人天野参考人及び千家参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には御多用中のところ、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。特別委員会一同を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。(拍手)  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  134. 角屋堅次郎

    角屋委員長 速記を始めて。     —————————————
  135. 角屋堅次郎

    角屋委員長 引き続きまして、午後の参考人意見を聴取いたします。  中村参考人西山参考人及び池ノ上参考人が出席されております。  この際、委員会を代表いたしまして、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中のところ、また遠路にもかかわらず本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  なお、国会の情勢により、先般御連絡いたしました日時を本日に変更させていただきまして、たいへん御迷惑をおかけいたしました。  本委員会といたしましては、現在、富士地域環境保全整備特別措置法案について慎重な審議を続行しておりますが、本日は参考人の皆さんから貴重な御意見を承り、もって本法案審査の万全を期したいと存ずる次第でございます。  つきましては、どうか忌禅のない御意見を述べていただきたく、お願いいたします。  なお、議事の整理上、御意見の開陳はおのおの十五分程度に要約してお述べいただき、その後委員質疑にお答えいただくようお願いいたします。  それでは、中村参考人からお願いいたします。中村参考人
  136. 中村司

    中村参考人 参考人中村司でございます。  私は、富士山の動物につきまして、分布それからその特徴などについて、まず申し上げたいと思います。  御存じのように、富士山は歴史的に新しい、そして独立した山でありますけれども、非常に広大で、しかも垂直分布におきましても幅が大きいというようなこと、それからさらに湖沼を有しているという、そういうようなことから申しまして、全般的に中部地方の動物相と類似しているというように見てもよいかと思います。これらの動物のうち、特に哺乳類とか鳥類、魚類、それからこん虫の中でチョウなどについて、その概要を申し上げます。  まず哺乳類でございますけれども、海抜五百メートルから千五百メートルの耕地それから村落には、クマとかイノシシのようなものが生息しておりますし、七百メートルから千三百メートルの草原は、ずっとすそ野が広く広がりまして、ススキが多く、ハタネズミが優占しています。また移動性の大きいキツネとか野ウサギのようなものも住んでおります。  千メートルから千五百メートルくらいの低山針葉樹林はアカマツ、カラマツが多く、ツガとか栗、コハウチワカエデというようなものが入りまじっておりまして、千五百メートルから千七百メートルの広葉樹林帯の、いわゆるブナ帯といいますけれども、そういうところにはミズナラ、ミヤマハンノキ、シャクナゲなどが見られます。こういうところにおります動物としましては、クマとかテン、シカ、リス、ヤマネ、ヒメネズミ、さらにネズミの仲間のアカネズミなども住んでおります。青木ケ原のうち中下部のところ、そういうところには溶岩洞穴が非常に多いわけでして、さらに高木が非常にありますので、いろいろなコウモリが住んでおります。  それから千七百メートルから二千五百メートルに参りますと、そのあたりが森林限界になりまして、一般には亜高山針葉樹林というふうに呼ばれておりますけれども、コメツガとかシラベが主体でありまして、カラマツとかシャクナゲ、コケモモなどが見られます。五合目付近に参りますと、特別天然記念物のカモシカが生息しております。それから実はサルというのは非常にポピュラーではありますけれども、富士山本峰には住んでおりません。かえって御坂山地のような周辺地域に住んでいるわけです。それからヤマネという動物を先ほどあげましたけれども、これは一属一種で珍しいものですけれども、須走とか御殿場、大和田や精進口の二合目当たりの海抜千五百メートルくらいのところに多く住んでおります。  次に、鳥類について申し上げますが、富士山におきます鳥類は、中部山岳のいわゆる典型というふうにいってもよいかと思います。  まず、五百メートルから千メートルくらいの耕地や村落に行きますと、スズメ、カラス、オナガ、ムクドリ、トビ、キジバト、モズ、ヒヨドリ、コサメビタキという比較的一般的なものが住んでおりますし、こういうところは冬になりますと、ツグミとかカワラヒワ、カシラダカ、そういう鳥の群れを見ることができます。  それから、七百メートルから千三百メートルの低地草原には、ホオジロが一番優占しております。そのほかノビタキ、オオヨシキリ、コヨシキリというようなものが住んでいるわけです。このあたり冬になりますと、ホオジロやツグミ、さらにタヒバリというものが見られます。東部梨ケ原や御殿場、須走の方面にやはり草原がありますけれども、ホオアカやアカハラ、ウグイス、オオジシギというような仲間がおります。  それから、千メートルから千五百メートルの低山の針葉樹林に、名前をたくさんあげるようでございますけれども、クロツグミとかエナガ、シジュウカラ、ヒガラ、コガラ、アカハラ、アオジ、ヤマドリ、ウグイスなど、さらにセンダイムシクイとかエナガ、シジュウカラ、メジロ、ゴジュウカラ、ツツドリ、カラス、キビタキ、こういったようないわゆる鳴禽類という非常に美しい声で鳴く鳥が繁殖しております。冬になりますと、シロハラとかベニマシコ、ハギマシコという仲間が見られますし、湖畔に参りますと、ジョウビタキとかカシラダカという鳥が飛来いたしますし、冬期に五湖のうち本栖湖と河口湖、それから近年は山中湖にも、かなりのカモの仲間が飛んでまいります。  それから、千七百メートルから千八百メートル以上の亜高山針葉樹林に参りますと、このあたりはコメツガとかシラベというものが多いわけですけれども、住んでいる鳥としましては、コルリやルリビタキ、メボソ、ヒガラ、ミソサザイ、ビンズイ、ウソ、キバシリ、それからかなり高いところに行きますと、ホシガラスという、からだに点のある鳥でありますけれども、そういったようなものですね。それから一番高いところに行きますと、イワヒバリというのがおります。  富士山では、低部の千メートルくらいのところに一番分布が多いとり——これは後の結論になるわけでございますけれども、それは中下部の環境の多様性ということと植生の多さ、それから水系の発達というような理由などによっているものと思われます。  それから、御存じの富士登山道が幾つかありますけれども、五つの登山道調査のうち、精進口が一番多いという結果が出ております。これは山階鳥類研究所の黒田先生が精査なさいましたけれども、その理由として考えられますのは、たとえば吉田口の登山道は、一合目までがアカマツとかカラマツというような造林が進行しております。したがって、広葉樹というのが少ないわけでございます。それに対しまして精進登山道というのは、青木ケ原の樹海の保存ということと相まちまして、広葉樹林がやはり多いということ、こういうことが鳥が住む上に非常に適しているのじゃないかというふうに思われるわけであります。  なお、富士山の本峰には昭和三十五年に、七羽のライチョウが移殖されましたけれども——これは特筆すべきことでありますので、ちょっと触れたいと思いますが、その後の調査によりますと、三十九年に十四羽までふえましたけれども、その後五合目以上植生が非常に貧弱であるということとか、それから二月くらいになりますと、全面がアイスバーンになるというようなこと、それからやはり登山者が多くなるというようなことと関係があると思いますけれども、キツネとかテンなどが非常に増加しておるというようなことで非常に少なくなりまして、そして二年ばかり前に一応絶滅したという調査結果になっております。  それから魚類でございますけれども、富士五湖の魚類というのは、現在人為的に放魚しております。オイカワというようなハヤの仲間とか、フナ、コイの仲間は全湖に見られますけれども、ワカサギなどは山中、河口、精進、マスの仲間のヒメマスなどは本栖とか西湖に住んでいるわけです。現在、山中湖、河口湖、西湖には十数種類、精進、本栖のほうは少し少なくて、十種類ぐらいを産しております。  最後に、こん虫類のうちの目に触れやすいチョウについてでございますけれども、富士山のチョウの場合でも、やはり海抜千メートルから千四、五百メートルくらいのところの草原に多いわけです。ギンイチモンジセセリ、チャバネセセリ、アカセセリ、ヒョウモンチョウというようなものがあげられます。それから、森林周辺の陽地やブッシュのところには、ヤマキチョウやホシミスジというようなのがおりますし、落葉広葉樹林のところにはフジミドリシジミ、ハヤシミドリシジミといったような仲間がいるわけです。  富士山というのは、先ほど言ったように新しい山でありまして、富士山のまわりには分布していますけれども、本峰にはまだ分布していないというのがありまして、代表的なものといたしまして、ギフチョウとかヒメギフチョウとかコヒオドシ、国のチョウとして知られているオオムラサキ、それからウラジャノメ、そういったようなものがあげられるわけであります。  さて、いままで申し上げました富士山における動物相の特色を短く申し上げますと、富士山の動物相というのは、特に哺乳類とか鳥類の場合でありますと、中部地方の縮図であるというふうに一応いってよいかと思います。  哺乳類というのは、富士山の本峰のほうには全部といっていいくらい——サルがいないということは申しましたけれども、かなりの種類がいるわけですが、かえって三ッ峠とか御坂山のような周辺山地のほうに種類が多いという特徴があるわけです。  鳥類につきましては、湖沼とか草原、森林というふうに、環境が非常に広いわけでして、特に海抜千メートルの地帯が最も多くの鳥を産しております。それから、大ざっぱな分け方ですけれども、北側と南側で鳥の種類が少し違うというようなことも一つの特徴といえると思います。  それから魚類は、毎年放魚しておりまして、それで種類をコントロールしているわけでございますが、これは普通の河川と同じようにやっております。したがいまして、やはり天敵関係ということが非常に問題になってくると思います。  近年、水質汚染が非常に進んでおりますわけで、たとえば、河口湖の場合、その度合いはちょっとむずかしいわけですけれども、中程度に近いくらいにだんだんよごれている。一昨年の調査で、そのような結果になったわけでございます。水質汚染の問題は、特にこれから注意していかなければならないと思います。  それから、こん虫の仲間というのは、富士山が新しいわけですので、周辺から分布がだんだん広まっていくわけなんですけれども、まだそこまで到達していないという種類が非常に多いということで、先ほども中部山岳の縮図であるというようなことを、ほかの動物で申しましたけれども、こん虫の仲間では、これからまだ進出しつつあるということでございます。したがいまして、富士のすそ野を含めた広範囲にわたる地域保護保全ということが望まれるかと思います。  以上で、富士山におきます動物相の特色を申し上げた次第でございます。(拍手)
  137. 角屋堅次郎

    角屋委員長 ありがとうございました。  次に、西山参考人にお願いいたします。西山参考人
  138. 西山夘三

    西山参考人 私は、都市計画とか地域計画をやっている者ですが、きょうは地域開発自然保護という観点から、この法案についての意見を述べたいと思います。  この法律は、富士地域環境保全整備特別措置法案という名前になっておりますので、私は環境保全のための法案かと思ったのであります。しかしながら、よく読んでみますと、これは保護よりも利用が重点でありまして、いわば利用整備のための、つまり開発のための法律であるというふうに結論せざるを得ないわけです。第一条に「すぐれた自然の象徴」 「世界に誇る国民的資産」として富士山をうたっておりますけれども、はたしてそれが守れるかどうかということは非常に疑わしいと思います。  最も基本的な問題としまして、自然保護ということなんです。自然保護というのは、一体何かということなんですが、現在、なぜ自然保護ということがやかましくいわれるのかということは、かなり根本的な問題に立って考えてみる必要があると思うわけです。これは、人間が自然の一部であるということ、自然を離れては人類は生存し得ないということ、こういうことを認識せざるを得ないというような、現在環境汚染といいますか公害ということが問題になってきておりまして、その中で自然と人間との接点として環境というものがあるわけなんですが、ところが、そういうことの中で、原生自然というものは非常に大事なものであるということ——その意味は一々説明申し上げません、皆さんも御存じのことだと思いますが、あるいはそれに近いところの自然といったものを、どういうようにして保全していくのかということをほんとうに真剣に考えなければならない、こういう時代にわれわれは来ているわけです。  その意味で富士山地域というのは、わが国象徴的な景観でもありますけれども、同時に、そういう意味で非常に大事な地域である。ところが、現実の問題としまして、首都圏に非常に過度な産業、人口の集中がありまして、そのためにおさめ切れないほどの人間が集まっておる、それがレクリエーション空間が不足しているものだから、そこで方々へ押し出されていく、非常に首都圏の人口密集地帯から近いところですから、そこに当然観光とかいろいろな形で人が押し出されていく、したがって、そのためにその地域が過剰利用され、破壊される。そういうような問題として現在環境の破壊が起こっておるわけなんですが、これを従来のような観光とかレジャー開発とかいったような視点で、同じようにこの富士山地域を見るというようなことを考えておったら、根本的にだめであります。  わが国は、非常に高密度社会を形づくっておりますが、その高密度社会をほんとうにうまくつくり出していくためには、豊かな国土をつくり出していくためには、土地利用について使い分けといいますか、住み分けといいますか、こういうものを非常に計画的にやっていかなければならない。高密度的なレクリエーションのための施設というようなものは、本来都市圏の中にあるべきものです。都市圏の中での公園だとか、いろいろなレクリ施設が不足しているから、そこで人々はやむなく押し出されてくる、そして周辺に非常に高密度、過剰利用のレクリエーション地というものをつくり出して、それが周辺を破壊していく、それがまた日本の自然全体を破壊していく、こういう事態になっているわけです。現時点ではいかに自然を守るかということ、この保全を貫徹してこそ、ほんとうの意味の自然との関係が成り立ち得ますし、また同時に、ほんとうの意味のレクリエーション、観光というものもまた成り立ち得るわけであります。  ところで、この法律は、自然公園法とか自然環境保全法といったものと相まって自然環境を適正に保護するというようにいっております。相まってということは、しかしよく読んでみますと、どうも主として保護はそれのほうに譲り、この法律は、そのほかのほうをやるというふうに受け取れるわけです。それはどうかわかりませんけれども、この法律だけですから、あとの政令とかそのほか詳しいことはわかりませんから何とも言えませんけれども、とにかく法律の文面では、そういうことのようです。ところが、わが国自然保護に対して行なわれている自然公園法とか、それから自然環境保全法、これはついこの間できたものでございますが、こういうものが、はたしてわが国の自然を守っておるのか、守り得るのかといえば、これは非常に心細いものなんです。  わが国の自然公園というのは、すぐれた自然の景観、風景地を保護するということになっておりますけれども、その中に、保護利用という二つのことがうたわれております。これは外国にはないことでございまして、自然公園といいますと、自然を保全するというのが主要な役目であって、利用などは入っていないわけです。ところが、わが国はその利用というのが入っておりまして、これも昔は、まだ利用というものが非常に微々たる状態であった場合は、それほど問題ではなかった。しかし、現在のような状態になってきますと、その利用がもう保全を無意味にするような関係になっておるわけです。外国の自然保護団体などでは、日本の自然公園というものは、自然保護でもなんでもないと、だから仲間入りもさしてもらえないというふうなものであります。  つまり開発指向の考え方であって、これは自然と人間の関係を、現在の環境問題が激化するような以前の状況を根底に置いて考えられたもので、今日においては非常に不十分なものであります。したがって、それを見ましたら、そこでやられる規制というのは非常にあやふやなものであって、特別保護地域ですか、こういうものはございますけれども、それは非常に小さくて、ほとんどネコの額じゃない、日本の国土からすれば、ほとんど問題にならない。こんなもので日本の自然が保護できると考えるのは、非常におめでたいことだと思います。  自然環境保全法は、それに対して原生自然環境保全地域などというのをつくっておりますけれども、これはしかし、財産権との問題で非常に制約されておる。したがって、これも有効に働き得ないというような状況で、自然保護というものはほとんどできない。その上にそれにまかしたと思われるような富士地域環境保全整備特別措置法ができるというのでありますから、あんまり上のほうの環境保全というのは、これはどうもことばだけであって、だめなんではないかというふうに心配するわけです。  第七条に、四つの地域区分がきめてありますが、徒歩利用地域、自然探勝利用地域野外施設利用地域休泊利用地域、この四つの地域区分が、どのように実際指定されるのか私わかりませんので、何とも言えないところがありますが、しかし、これは全部利用地域なんです。一体、守るということは一つもないわけです。ほんとうは制御地域というのがなければいけないのに、それが全部利用地域になっているというのは、これもやはり先ほど私が申し上げました不安を裏書きするものです。もし環境保全ならば、利用よりも、利用のチェックの段階で地域を指定すべきである。そういうふうになっておりません。したがって、もしこの利用地域が、従来の公園地域の中に設定されるとするならば、自然公園の破壊は利用によって一そう促進されるであろうということを言わざるを得ないわけです。  それらの実際の地域の指定は、いずれ現実の問題として行なわれるんだと思いますが、これは県の計画にゆだねられておるように思います。県は御承知のように、スバルラインを開発したというふうな、世界的にも非常に無謀な環境破壊をやった張本人といっては失礼かもしれませんが、そういうことをやっておりますので、はたして今後どういうことになるのか、ちょっと心配でならないわけです。  しかし、そういう姿勢の問題とか、そういうことだけではなしに、この環境保全ということは、実は計画というのは非常に科学的な予測のもとに対策を立てる、これが計画だと思うのです。ところが、その科学的な計画というのができるのかどうかといいますと、こういういろんな地域の線引きをするということは、非常にむずかしい問題でございまして、その線は単にこうするんだといって、その線で問題がきまるわけじゃないわけです。線を越えて非常に影響が広がっていきます。その影響のしかたに対して、どのくらい影響するのかということは、実は現在の科学研究でははっきりわかっていないわけです。  一昨年だと思いますが、第二回世界国立公園会議で二十二の決議をやっておりますが、そのうちの一つに、公園の境界というものは、生態学的な考慮を必要とするといっております。つまり単に地図の上に線を引くということではなしに、生態学的に、周辺にどういう影響を及ぼすのかということを考えてやらなければいけないといっているわけですが、このように開発というものの意味、その生態系、地質、地形に与える影響というものを考慮して、そういう地域の区分というものもやらなければならないわけです。  ところが、はたしてそういうものを科学的にしようとしますと、残念なことには、われわれの日本では、そういう研究がほとんど行なわれていない。したがって、科学的な与件を持った対策ができないということを意味するわけです。ことに、それに人文、社会的な要素が加わってきますと、つまり過剰利用の影響ですね、人がたくさん入り込んでくる、あるいはモータリゼーションによって自動車がどんどん入ってくる、こういうことになりますと、問題は一そう複雑になってきまして、たとえばマイカー族が踏み荒らすとか、あるいは盗掘をやるとか、こういったようなことは必然的に起こることなんです。起こることならば、それに対してちゃんと予防しなければいけないのだけれども、それは一体どのようにしたら防げるのかということは、わかっていないわけです。  行政管理庁の昨年の監察では、施策の策定は科学的な検討が必要だといっておりますが、実はその科学的にやろうと思いましても、科学が十分なっていないということなんです。同じ監察で、違反などを調べて国立公園地域の法律違反が非常に多いということをいっておりますが、二百カ所調査したところ、九十五カ所が違反で百四例があった。ところが、その中で何も処置しないで、ほっておいたというのが多いのですけれども、原状回復が困難などを理由に追認したといったようなことが多いわけです。この法律の十二条に、原状回復というようなことをうたっておりますが、一体自然環境に原状回復なんてあり得るのかどうか。これは法律の字句だけでうたっているのであって、そういうことはあり得ないわけです。原状回復が困難だから追認したというのが十五件もあるということは、これを事実が証明しているわけです。ですから、環境保全というのは、なまやさしいことではないわけです。そういう意味で非常に問題があると思います。  この中には、環境保全するために、下水の問題を取り上げるように聞いております。その下水の詳細な計画は、私は知りませんからよくわかりませんけれども、ちょっとその資料をべっ見しましたら、この汚水の処理で流される水というのは、桂川の容量をはるかにこえるものなのではないかというような気がするわけです。しかも、その下水道をつくったからといって、すべての上流の汚染がそれで食いとめられるのかというと、そうではありません。やはり下水に集約できないようなものがたまっていきます。それが雨のときに、どっと流されて湖水汚染する、あるいは全体が開発が進めば、じわじわと湖水汚染は進むわけです、水だけとって言いましても……。  この法律は利用整備のほうがおもになっておりますから、これが行なわれましたら、必ずや観光開発は進みます。たぶん県もそういうことを期待されておるのだと思いますが、そうなりますと、環境全体が悪化していって富士五湖は、先ほど湖がかなり汚染しているという話がございましたが、これがとめどもなく進行して、やがてどぶ池にならないとも限らない。その流れ出す、桂川も同様のものにならないとはいえない。こういう問題を含んでおります。  現在、自然と人間の関係というものが根本的に問い直されて、開発というものに対する疑問が提出されておるときに、少なくとも環境保全をうたうような法律が、ほんとうにそういうものを防ぎ得るかどうかということになると、非常に疑問である。私は、これは開発法ならば、もっともな法律だと思いますけれども、環境保全云々では、どうも羊頭狗肉の感がいたします。あらためて、ほんとうの自然環境保全をどうするのか、富士地域環境保全をどうするのか、これは首都圏に隣接していて非常にむずかしい問題がございます。しかし、そこには、おのずから観光レクリエーション開発の限度があります。どの程度環境の観光開発の許容量があるのかということを科学的に調べて、その上で開発計画を許していくというような科学的な政策をとらなければ、結局うたい文句で幾ら環境保全ということを言っても、だんだん環境は悪化し、日本の象徴的な自然であるところの富士山も、もちろん上のほうの大沢くずれとかいろいろなことがございますが、全体が破壊されていって、そして法律は環境保全をうたっても、現実はだめになってしまうことになるのではないか。  最後に、演習場のことですが、先ほどもいろいろ御意見をお聞きしましたけれども、富士のすそ野の巻き狩りというのは昔からの伝統でございまして、非常にけっこうなことでございまして、その巻き狩り程度なら、たいしたことはないのですけれども、機械力でばさばさやる。生物の生存を許さないといったような破壊が行なわれている。こういう地域があるというのは、この自然の保護からいきましても、またほんとうの意味の観光レクリエーションの利用からいいましても、かなり問題である。それを除外して、はたして環境保全ができるのかどうかということも疑問であります。  以上です。(拍手)
  139. 角屋堅次郎

    角屋委員長 ありがとうございました。  次に、池ノ上参考人にお願いいたします。池ノ上参考人
  140. 池ノ上容

    池ノ上参考人 私は、造園学科の風景計画というふうなことを担当いたしておりまして、そういう見地から意見を申し上げたいと思います。  まず最初に、富士山の景観の問題について少し触れてみたいと思いますが、皆さん御承知のように、日本は非常に特異な自然の風景に恵まれておるといわれております。その風景ができるゆえんというのは、いろいろあると思いますけれども、一つの要因として、日本では火山活動が非常に変化に富んだ地形をつくっているということが大きな要因だと思います。火山活動によってできます景観にしましても、いろいろなタイプのものがあります。特にその中の代表的なものとして富士山型のいわゆる成層火山と申しますか、コニーデと申しますか、そういうふうなタイプのものがあります。日本にもたくさんいわゆるコニーデ、富士山タイプの山というものがございますが、世界的に見ましても、こういう景色というものは多くあるわけでございます。しかし、その中でやはり富士山というものが景観的に最もすぐれたものであるというふうなことがいわれておりますし、また、そういうことが自他ともに認められておるというふうな状況だと思います。これについては、いろいろな理由などもございますけれども、少なくともいわゆる富士山タイプの景色としては、日本はもちろん、世界的にも非常にすぐれた景観の地域であるということが一つ言えるかと思います。  それで、そういった地域を自然風景地として考えていく。私は先ほど申しましたように、それを風景計画の対象として考えるわけでございますけれども、具体的に富士山地域を見てみますと、全体的としては非常にすぐれた自然の景色でございますけれども、部分的にはかなりいろいろな質的な景観の違いと申しますか、それがあるわけでございます。端的に申しますと、非常に原始的な景観を保持している地域から、特にすそ野の部分標高にいたしますと千五、六百メートルから下の部分については、かなり長い間の人為的な影響というものがそこに作用して、一種の特異な景観をつくっている。それは郷土景観と申しますか、あるいは田園景観と申しますか、そういうふうな自然要素の高い景観というものがあります。  したがいまして、そういった非常に原始性の高い景観から、かなり人為の入った景観というものまで、非常に連続的にいろいろな景観がございます。そういったものを、どういうふうに計画的に考えていくかということが、一つの問題だろうと思うのでございます。結局、富士山というのは、火山であるコニーデを中心にいたしまして、いろいろな景観要素がそこに組み込まれております。すそ野の景色も非常に雄大でございますし、またいろいろな寄生火山もある。それからまた、富士五湖といわれるような湖水もある。それから、非常に特異な条件でございますけれども、富士山植生というものも非常にすぐれたものがありまして、これがその景観を構成する重要な要素になっているというふうに考えられるわけでございます。  それで、そういうものを計画的にどう考えるかということでございますけれども、私はこういう広大な自然地域計画の基本的な考え方というのは、一種のコンサーべ−ションプラン、コンサーべーション計画だというふうに考えるべきだと思っております。コンサーべ−ションということばは、ちょっとはっきりした概念がおつかみになりにくいかもしれませんけれども、広い意味の保護保全という概念でございますけれども、それは単に消極的に保護するということばかりではなくて、原始的な地域については厳正な保護をはかりますし、あるいはかなり人為的な影響をこうむった地域についても、やはりその保全をはかっていく、あるいはその育成をはかっていくというふうなこと。  つまりコンサーべーションというのは、もっとことばをかえますと、そういった自然的な景観の美的な、あるいは快適な条件というものをつくっていく。それは、いわばそういった自然の環境というものをバランスのとれた状態に常に保っていくようなことを計画的に一種のランドプランニングとして考えていくということだと思うのであります。したがいまして、そういうふうに非常に厳正な保護を要する地域もありますし、またどちらかというと、保護するよりは景観をかなり人為的に育成していくような必要性のある地域というものもあるだろうと思うのであります。  それから、これは私の個人的な考え方でございますけれども、コンサーべ−ションプランというものの中には、もう一つ、そういう地域をどういうふうに野外レクリエーションのために利用するかということも含めて考えるべきだ、要するに、そういう地域利用というものは、そういう保全のワク内で考えられるべきものだというふうに最近考えております。その保全のワク内ということは非常にばく然としておりますけれども、一つは、質的な問題として、やはりその自然環境に適合した利用のしかたというものがあると思うのであります。  たとえばアメリカで十年ほど前に原始地域法というものをつくりましたけどれも、これは保護のための法律でございますけれども、原始地域における利用というのは非常にプリミティブな、低密度な、単純な、素朴な利用だというふうに規定をしているわけでございますけれども、やはりそれは、原始地域というものが規定する利用のしかたということになるかと思うのであります。つまり、要するに保護することと利用することというものは対立した考え方でとらえるのではなくて、やはり保護利用というものが、その地域の質的な問題として相関的にとらえられるということになるべきだというのが、私の考え方でございます。  それからもう一つは、先ほど西山先生からも御指摘がございましたけれども、利用の量の問題というのが計画的に考えられなければならない。これは、いま日本でも、あるいは各国でも適正な収容力という問題を、いかに合理的に算定していくかということについていろいろ研究が進められておりますけれども、そういうことで、たとえば富士山地域というものが、ほんとうに富士山の自然を利用するという場合に、どれほどの利用というものが許容されるかということが、やはりまず計画の段階できめられていかなければならぬだろうかというふうな問題があると思います。  そういうことで、自然風景地の計画というものは考えられるべきだと私は考えておりますけれども、富士山地域につきましては、私も長い間いろいろなかかわり合いを持っておりますが、先ほど申しましたように、日本の代表的な、非常にすぐれた景観地である。しかし、どっちかといいますと、必ずしも従来、保護についても万全な手が打たれてきていない。従来自然公園法あるいは今度新たにまた自然環境保全法、あるいは文化財保護法というものなどがございますけれども、必ずしも十分でないという点がございます。そういったことが将来もっと考えられなければならない。これは、たとえば自然保護とか環境保全というものに対する社会的な要請というものは、ごく最近非常に高くなってきたわけでございまして、僅々十年くらいのことだと思います。したがいまして、そういういろいろな情勢に対応して、そういったことがあらためて検討さるべき時期に来ているのじゃないかと思います。  それで、今度の新しい法律の問題でございますけれども、 法律の内容について、私読みましても、なかなか詳しく理解もできない点もございますけれども、これが新しい、たとえば利用環境確保というような問題が出ているわけでございますけれども、やはり基本的な考え方として、私が先ほど申しましたように、富士山ができるだけ理想的に保護される、保全されるというふうなことと同時に、その利用環境確保なり、その開発ということは、そのワク内で考えるべきじゃないかというふうに考えます。  したがいまして、具体的な新しい法律の計画というものがどういうふうな形になるかということも、私はまだよくわかりませんので、それ以上申し上げかねますけれども、基本的な考え方としては、そういうふうな考え方に立って、保護利用との計画の中に矛盾が生じないようなことにならなければいけないというふうに考えております。  以上、私の意見を申し述べました。(拍手)
  141. 角屋堅次郎

    角屋委員長 ありがとうございました。     —————————————
  142. 角屋堅次郎

    角屋委員長 続いて中村参考人西山参考人及び池ノ上参考人に対する質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。
  143. 林義郎

    ○林(義)委員 中村先生から、動物学、生物学の観点から、富士山保全はどうするかというお話を聞かしていただきましたし、また西山名誉教授から、開発のための法案ではないかと、おしかりに近いようなお話も受けましたし、また池ノ上参考人から、造園学の立場でコンサーべ−ションプランというようなものをやらなければならないのじゃないか、こういうふうな御意見がありました。  そこで、若干私もお尋ねをしておきますが、まず中村参考人にお尋ねいたしますが、いろいろとお話がございましたけれども、一体総括いたしまして、富士山というものは非常に日本で高い山である。そのときに、やはり富士山山ろくにおきまして、非常に特別の鳥類またはけだもの、こん虫というものがあるのかどうか、富士山だけにしかないというものがあるのかどうか。そのほかのある程度の高さの山であって、同じようなところであるならば、たとえば南アルプスその他のところでも生息しておる、そのほかのところにも生息をしておる、こういうような動物、植物、鳥類、いろいろあるだろうと思いますが、それと大体同じようなものが生息をしているのか、何か特に富士山というものが、動物学、生物学的な分類で特別な意味を持っておる山なのかどうか、その辺を具体的にお答えいただきたいと思います。  実は、先生からいろいろな鳥の名前その他の話を聞きましても、私たちよくわからないものですから、少し抽象的なお答えでけっこうでございますから、その辺をお答えいただきたいと思います。
  144. 中村司

    中村参考人 ただいまの林先生の御質問に対しまして、お答え申し上げます。  実は、富士山にしかいないといいますか、一応私の一般的な観点から、特に私は鳥のほうが専門でございますけれども、鳥などでは、特にここにしかいないというものはございません。それで実は四十二年でしたか、三カ年の富士山の、これは総合調査でございましたけれども、動物のほうとしましても、三カ年を当てまして調査をいたしましたけれども、思ったよりも動物、特に哺乳類の場合には非常に数が少なかった。それから鳥の場合でも、もちろん近年ほかの場所と同じように鳥が少なくなってはおります。  直接の御質問に対しまして、特にこの動物が、ということはありません。それは先ほど申し上げましたように、富士山は中部山岳の典型であるというふうに申し上げたわけでございまして、一応中部山岳の縮図というふうに見るというわけでございまして、特別なあれはございませんけれども、ただ特別天然記念物のようなカモシカという動物がおりますけれども、こういう動物が富士の五合目を中心としまして、かなり広い範囲に分布しておりますので、特別にそういうものは保護をしなければいけないというようなことで、直接的なお答えといたしまして、私のいま知っている範囲では、これというものは特にございません。
  145. 林義郎

    ○林(義)委員 富士山に移殖されましたライチョウが絶滅したという話がありました。一体その原因は、先生どういうふうにお考えになりますか。富士山自然保護に問題があったのか、あるいはライチョウというものが、そもそも富士山に生息できないものであったのでしょうか、どっちなんでしょうか。
  146. 中村司

    中村参考人 ただいまの御質問に対しまして、富士山は新しい山でございまして、御存じかと思いますけれども、ライチョウといいますのは、氷河期にずっと南下してきたといわれております。それで、その後富士山は爆発もしておりますし、それから平地から独立しておりますので、他の山岳からの移動ということができないということで、従来いなかったわけでございます。  そこで、富士山に北アルプスからライチョウを移住するときに、いろいろな論議があったようでございますが、一番問題となりますのは、富士にハイマツ地帯が全然ないということが問題になりましたけれども、その後の植生調査によりまして、ほかのもの、特に冬季いろいろなものを食べて生きていられるという調査がございまして、移殖したようでございます。  それで問題は、富士の五合ないしは六合以上のところには、ほとんど植生が貧弱でございまして、ほかの北アルプスや南アルプスのようにハイマツもありませんし、それからお花畑もほとんどございませんので、私どもは三カ年、ライチョウの調査にあたりましたけれども、ハイマツというのが、やはり身を隠すために絶対必要ですし、そして高山植物が、えさを食べるために絶対必要でございます。そのような植生を存していないということが一番大きな原因だったかと思います。  ほかの地域においても、鳥の増減の問題がいろいろと論議されておりますけれども、富士の場合には、先ほどもそれに触れましたけれども、あの鳥は一年じゅう高いところにいるという習性がございます。食を求めて下に下がるということがめったにございません。したがいまして、二月にアイスバーンで囲まれるということが致命的なことだと思います。それから、さらに繁殖期におきましても、のら犬などが上がりますし、それからキツネも、テンとか特にオコジョという動物がおりますけれども、こういうようなものがずっと上に登ります。それは登山者のえさを求めていくようでありますけれども、そういうことで、最後的にはキツネとか、のら犬などの天敵によって絶滅したものかと思います。
  147. 林義郎

    ○林(義)委員 もうちょっとお尋ねしますが、青木ケ原には原生林が残っていると聞いておりますけれども、富士地域の鳥獣保護上、それは一体相当に価値があるものなのかどうか、原生林というものが。相当にあるのだろうと思いますが、原生林がないときと、あるときとでどういうふうに違うのか。あるときと、ないときと言うと、ちょっとおかしな設問かもしれませんけれども、問題点をはっきりするために、あるときと、ないときとどのくらいのことが違うか、二、三の例をあげてお答えいただきたい。
  148. 中村司

    中村参考人 ただいまの御質問にお答え申し上げます。  極端な例ではございましたけれども、原生林があるかないかという問題でございます。原生林がそこにありますと、その原生林に住む鳥、たとえばオオルリとかキビタキというような鳥がそこに住みます。もし、そこのところを伐採したりいたしますと、鳥の場合は、そういう環境に非常に応じやすいものですので、今度はそれに移動性もありますので、違った種類の鳥が、その森林を切り開いたところに住む、たとえばホオジロとかカラスとかいうようなもの、それから切ったばかりには、たとえばビンズイのようなものがそこに行くわけでございます。
  149. 林義郎

    ○林(義)委員 いまのことを要約いたしますと、富士山には特別に富士山としてだけ住んでいる鳥はいない。しかしながら、たとえばライチョウをここに放したところが、自然条件からはなかなか生息はできないものである、自然というものがありまして。ところで、原生林のようなものというのはいろいろな鳥の生息のためにはどうしても必要であろう、こういうふうなことが結論として出てくるわけであります。  そこで、西山参考人にお尋ねするのです。原生林を残さなければならないというのは、確かだろうと私は思うのです。それも、どこもかしこも全部原生林ということになりますと、富士山ろくから人間は全部立ちのいてくれ、一切入るな、こういう話になりますから、現実問題として、なかなかそういうことはできないと思うのです。先生からお話がありましたように、人間というものは、やはり自然の中の一つのものである。そういった考え方からやっていかなければならないし、本来、都市圏の中にレクリエーション施設をつくらなければならないのだというお考えもよくわかるのです。  ところが、これだけたくさんの人口が東京におりまして、都内に公園をつくったところで、たいへんな金もかかるし、そういうことをやらなければならないということは私もわかるのですが、現実問題として、人間はそれができるまで待っているわけにいかない。やはりどこかへ行くということになれば、当然富士方面に行くという人も相当に出てくるだろうと思います。また昔から六根清浄と言って富士山に登ったのですから、私もあなたもということで登るということも、これまた人間の本性として事実だろうと思います。  そういうような現実を踏まえてやらなければならない問題だろうと思いますが、先ほどから西山先生からお話もありましたし、池ノ上先生からもお話がありましたが、利用の量の問題だろうというお話がありました。この公害委員会でも、私もそういう考え方を持っておるのですけれども、大気の汚染にいたしましても、すべて総量規制というものを考えていかなければならないだろう。総量規制というものは環境容量というものがありまして、自然の浄化力その他というものがありますから、それの範囲内において行動すべきだろう、こういうふうな考え方が一つあって、その範囲内でいろいろな割り当てをしていったり何かしなければならない、おそらく同じような思考方式だろう、こう思います。  そこで、そういったことが自然環境の問題で、一体どういうふうな科学的なアプローチというものがやれるのか、観念的には私はわかりますけれども、具体的にそれでは人間が何人行ったならば、たとえば百人行ったならば、人間から炭酸ガスがどのくらい出るからどうであるとかこうであるとか、いろいろな計算があるんだろうと思いますけれども、一体そういったようなことが、いま学問的に相当にできているのかどうか。私は勉強しておりませんからよくわかりませんけれども、そういったようなものが相当あるのかどうか、この辺をちょっとお教えいただきたいと思うのです。
  150. 西山夘三

    西山参考人 いまお尋ねのことを端的にいいますと、研究はできておりません。できておらないからといって、ほうっておけということではありませんので、現在の優秀知脳を動員して、現実は解決しなければいけないと思うのです。そこで、いままでやってきた開発も、大体その時点その時点では、そういうふうにその時代の一番の知能を動員してやったと思うのです。しかし、その一番ベースに、一体自然と人間との関係がどうであるかというふうなことが欠けておったというのが私の申しているところでありまして、この非常に大事なベースを考えに入れると、やはりここで相当思い切った考え方の転換をしなければいけない。  六根清浄で上がるのは、人が歩くのは、ほとんど自然の破壊にならないわけです。たとえば植生ですと続いております。だけれども機械力で、たとえば自動車が大量に入っていく、こうなりますと、自然はほとんど姿を変えてしまうわけです。そういう形の開発のしかた、あるいは入り込みのしかた、これは自然にとっては非常に危険なものである。だから、それはいままでこうやっていたから、その延長でいいのだということにはいかないわけです。  それで、日本という国は非常に高密度社会ですから、レクリエーションをやるにしても、外国のようにほとんど人がいない砂浜に遊ぶとか、山もゆうゆうと登るとかいうのではなくて、山登りとなればきびすを接して、前の人のしりを見ながら登るというふうなことにならざるを得ない点もあるわけです。ですから、そういうようなレクリエーション空間の利用のしかたをするとするならば、一体どういうところが、そういう高密度的なレクリエーションの使用のしかたをしていい、どこはそれをしていい、どこはそれをしてはいけないのだというふうなことを、その効果を予測して、きびしく計画的にレクリエーション空間の配分というものをしていかなければいけないわけです。  ところが残念ながら、やはり先ほど言いましたように、根本的な考え方が違っておったから、いままでのレクリエーション開発の、観光開発計画というのは、ほとんど開発主導型の計画なんです。それですから、もちろん高密度利用地域とそれから低密度利用地域と、いまそういう区分もしてありますけれども、高密度利用地域、たとえばレジャーランドというのがありますと、それは一体どの程度周辺に——周辺にたとえ低密度利用地域をつくっておっても、どう影響を及ぼすかということは、あまり考えていなくて、しかもその高密度利用地域というのは——大体観光開発といのは、やはり企業でやりますから、そうすると企業がやれば必ず人をたくさん引かなければ成り立たない。高密度利用になるわけですね。高密度利用になれば、それはもう過剰利用とか自然破壊というものを必然的に誘発しまして、それがばっと地域全体をだめにしてしまうわけです。  そういう意味で、観光開発計画というのは、いままでのでは私はだめだと思うわけです。やはり根本的に考え直さなければいけない。それはまあ、そういっても、一々全部変えられるわけではないから、それはそうですけれども、しかし一方の極に保全すべきものがあるわけですから、そこのところを、やはりきちんと押えてやらなければいけない。その典型的な地域というのは、富士地域だとかそういうところだと思います。
  151. 林義郎

    ○林(義)委員 小さい富士地域という問題と、もう一つは、現実には首都圏というのがあります、中部圏というのがあります、東海道ベルト地帯というのがあります。しかも富士地域、日本の山であるということですから、やはりみんなすっとあの辺にレクリエーションというのは、どうしても集まってしまうのだろうと思います。そういった意味で、広域的な観点から見た場合、一体どういった方針富士山というものを、これから考えたらいいというふうにお考えになりますか。現実に人が集まってくるということを前提にしておかないといけません。たとえば、そこは何か非常にきびしい規制をかけるべきである。そうすると、人間はやはりどこかリクレエーションに行かなくちゃいかぬわけですね。そういったときに、どういうふうな広域的な利用というものをお考えになっておられますか。
  152. 西山夘三

    西山参考人 それは、私が富士地域計画の構想をいまここで話せと言われているのと同じでございまして、非常にむずかしいですから、完全に答えられませんが、やはり先ほど言いましたように、富士地域は典型的な自然地域であって、そういうところは日本の中に数少ないわけですね。だから、それは残す。残すとなる場合、実際のアプローチは一体何なのかといえば、もちろん私が初め申しましたように、一体どのくらいの観光開発の容量があるのかということを精密に、科学的に計画しなければいけないということはありますが、それを待つ間、やはり規制をきびしくしなければいけないということです。  その規制というのは、どういうことかというと、人が登山で登るのは、列を組んで登っても、それはもう知れているわけです。しかし、自動車のようなもので、だっとあるところまで行ってしまうというようなことは、一番ばかげた方法であって実際は長い間の道のりを歩いていけばレクリエーション空間というのは非常にたくさんあるわけです。そこを十分楽しみながら、六根清浄と上がって、初めて山のとうとさというのはあるわけであります。  それを、自動車をばっとつけてしまうから、その間の空間を全部だめにしちゃって、しかも、そのわずかな残されたところへ集中して、わっとつぶすわけですから、それはまずい。だから、そういうものを、むしろ規制するというところから出発して、おもむろに科学的な調査をやって、ちゃんとした計画を立てる、そういうことです。
  153. 林義郎

    ○林(義)委員 池ノ上参考人にお尋ねいたします。  いま西山先生のお話しになりましたのも、スバルラインの問題だろう、こう思うのです。公園計画というか、造園学という立場からいたしまして、このスバルラインの自然破壊の問題というのは、一体どういうふうにお考えになりますか。
  154. 池ノ上容

    池ノ上参考人 スバルラインの問題は、いろいろ世論を呼んでいるわけでございますけれども、端的にいいますと、やはりあれは適当でなかった開発だというふうに考えます。  これは一つは、いま西山先生からお話がございましたけれども、あそこまで自動車道路を上げることが適当であったかどうかという問題は、やはり計画の問題として、もう一度見直さなければいかぬ問題だろうと思います。  それからもう一つは、技術的な問題として、開発のしかたが適当でなかった問題がある。ということは、最近環境アセスメントというふうな問題がやかましくいわれておりますけれども、ああいうことをすれば、当然こうなるであろうという予測を十分にして、それに対応する対応策を立ててやらなかったという点にやはり一つの問題があろうかと思います。ですから、やはりああいうことを今後繰り返さないということが必要じゃないかと私は考えます。
  155. 林義郎

    ○林(義)委員 もう一つお尋ねしますが、富士地域が国立公園になっておりますけれども、その中で自然保護上、特に重要な地域というのは、どういうところでしょうか。あの非常に広い地域ですから、いろいろありますけれども、特別どうしても、自然保護を徹底してやらなければならないのは、どういうところがあるでしょうか。
  156. 池ノ上容

    池ノ上参考人 私は、先ほど申しましたように、風景計画的な立場から考えますと、富士地域というのは全部が大事だと思うのです。ただ問題は、先ほど申しましたように地域によって、その自然度と申しますか自然性の度合いと申しますか、それがかなり違うわけですから、その保護のしかたというものは違ってくるだろうと思います。たとえば富士山頂の部分だとか、あるいは青木ケ原の部分だとか、そういったところについては、きわめて厳正な保護をはかる必要があるだろうと思いますし、それからそれ以下のところにおいても、それはそれなりに、その地域の景観というものをやはり保全していく必要があるだろうというふうに考えます。
  157. 林義郎

    ○林(義)委員 ありがとうございました。
  158. 角屋堅次郎

    角屋委員長 島本虎三君。
  159. 島本虎三

    ○島本委員 まず、西山参考人に……。都市工学をおやりになっているということを聞きまして、いままでの参考意見、供述されました内容を興味深く伺いました。そうしてその中に、ほんとうに私自身ずいぶん教えられましたことを率直に申し上げておきたいと思うわけです。  西山参考人は、ただいま、本法案については、保護より利用が重点、開発のための法案というにおいがする、それから、自然環境保全法と相まって自然環境保護するということであるから、こういうようなことでは、相まってということばからして、わが国の自然を守り得るかどうか心細い、保護利用、こううたわれているが、こういうようなことは外国にない、こういうようなことがございました。なかなか含蓄のある、ずばり言われたことばだ、こう私自身も思っておりますが、その中で、これはいかがなものでしょうか、こういうようなことは外国にはないんだという御所見がございましたが、こういうような点は、外国ではどういうようなことになっていましょうか、ひとつ参考までに開陳願いたいと思います。
  160. 西山夘三

    西山参考人 外国の例と言われますと、私も、いまここでちょっと、すぐさまあげることはできませんが、たとえばアメリカなどでは、最近は利用施設を国立公園からどんどん排除していっている、自動車は入らないようにする、いままで入れておったのを入れなくするというようなことをやっておるわけです。つまりそれは、自動車が少なかった時代には、そうたいした害を与えなくても、こういうモータリゼーションがどんどん進んできて、みんなが自動車で入ってくるということになりますと、明らかに環境を破壊する。したがって、保全という目的を達することができない。そこで自動車を入れなくする、あるいはそのための利用施設をつくってあったのを、国立公園の地域外に出していくというふうなことをやっているわけです。  これは、そういう情勢の変化によって新しい、ほんとうの自然保全というものができなくなってくる、それをどうするかということに正しく対応していると思うのですが、それはやはり保全ということが第一になっておるから——先ほど池ノ上さんも利用保全とは結びついていると言われましたですが、確かにそうなんです。一緒に考えなければならないけれども、つまり利用のない保全というものは、あり得ないわけなんです。しかし、保全を優先して、保全確保しながら利用するというのが、こういう自然地域の基本的な条件であって、自然地域がなくなってしまえば、人類の生存さえもなくなってしまうというような、そういうものであるという認識の上に立って、この利用をやっているわけですから、したがって、利用の状態が保全を脅かすようになれば、それを排除していく、そういうことでございます。
  161. 島本虎三

    ○島本委員 わかりました。  それで、私どももやはりそれを一番警戒していました。具体的な質問になりますけれども、この法律の内容でも、やはり利用が多くて開発につながる、一番心配したのはそこなんであります。  そう言われまして、私もこう見ましたところが、やはり特別地域内の指定範囲、この徒歩利用地域、これに対しては歩道、標示板、避難小屋、こういうようなものしか考えられない。今度は自然探勝利用地域というのになると、特別地域内ですけれども、これに対しては休憩舎、サイクリングロード、自然植物園に野鳥園、それに公園の園地、こういうようなものが考えられる。そうすると、今度は特別保護区域を除く特別地域内及び普通地域内、これはもう野外施設利用地域ということになっているのですが、そういうようなところではキャンプ場であるとか、自然スケート場であるとか、船遊び場、テニスコート等の野外レクリエーション等施設が考えられる、こういうようなことをおっしゃるわけです。それから休泊利用地域、これは特別地域のうちの集団施設地区内の普通地域内及び国立公園内等の区域外の富士地域内、なかなかめんどくさいのですが、こういうようなところについては、野外施設利用地域において許される施設のほか、旅館、ホテルのようなものが考えられるというのは、この地域だけなんですね。  そういたしますと、いま先生がおっしゃったような地域が、特別地域だとか、またその区域内であるとか、特別保護地区を除く地域内及び普通地域内、こういうようなところでは考えられているように、ちょっと思われるわけです。  そうすると、こういうようなことでも、なおかつ自然環境が破壊されるのだ、こういうような点は外国にも例がないんだ、こういうようなことであるならば、これは全く環境庁あってないようなものでありますから、大いにその意見参考になると思いますが、いま言ったような内容でしか許可しない、許可基準にしているとすると、この点は先生お考えいかがでございますか。
  162. 西山夘三

    西山参考人 私そういう表を存じませんので、もう少しそういうのがあれば具体的に説明できるように準備できたと思いますが、いまお伺いしたところだけから伺いますと、大体その特別地域というのは自然公園法の特別地域ですか——自然公園法の特別地域というものは、実際はもうさわってはいけないところなんですね。普通地域というのは——特別保護地域ですか、それから特別地域、それから普通地域でありますね。ところが普通地域というのは、ほとんど制限がないのと同じことで、これはただ色が塗ってあるというだけの話です。特別地域になって初めて若干の届け出制になりまして、制限があるわけなんですが、しかしそれも非常にゆるいので、その辺で私は日本の自然公園法というのが利用保全と一緒になっておる。一緒になっておるのが別に悪くはないのですけれども、利用が優先されておる。  ですから、そんなでたらめな特別地域なんてあり得ないと思うのです、簡単に届け出で許すようなものは。ところが実際許されるようになっております。だから、そういう並んでいるものは、ほんとうは全部排除すべきものであると思います。
  163. 島本虎三

    ○島本委員 それで第三番目に、ちょっともう一回西山先生にお伺いしたいのですが、ここは富士地域環境保全地域、それと演習場が並立しているわけです。そこが問題なところで、特に皆さんのひとつ学問的な見解を承りたかったのは、その辺の関連性なんです。演習場があっても、昔は富士のすそ野の巻き狩り——この程度が望ましい、生物の生存も許さないような自然の保護、こういうものが許されないような、いまの自衛隊の演習場は問題だ、先生言ったのは、これだけなんです。問題であるから、したがって、どういうような点が問題なんで、演習場と、それから自然の保全というようなものは、これはわれわれとしては重大な関連性があって、これをやる以上、この法律なんかは羊頭狗肉なんだ、こういうように思っているわけなんです。  先生に、この点からしても、巻き狩り程度はいいけれども、現在の演習場では問題だ、この短いことばだけでは少しなんで、もう少し思い切って、ずばりとした所見を発表してもらいたい。どういうような点が問題なのか、何が自然破壊になるか、何がどうなんだと。
  164. 西山夘三

    西山参考人 巻き狩り程度はいいと言ったのじゃないのです。しかし、巻き狩り程度の自然破壊は非常に伝統的なものであって、すでに長い間、何百年間そういうことをやってきたわけです。だから、ススキ原になりまして自然が一定に定着しております。ススキ原も非常に人工的な景観であって、これはもう人工が加わって木が生長できないようにしているわけですね。ですから、これは明らかに人工的な景観なんです。しかし、それでも絶えずそういうものが入りながら、安定した一つの地域というものをつくっているわけですね。生態系をつくっているわけです。  ところが、演習場というものは、これは軍事的な目的で行なわれるものですから、どういうことをやっても制限はないわけです。事実巻き狩りは馬に乗って走るくらいですけれども、戦車のキャタピラで、があっと踏み荒らされれば、そこら辺のものは根こそぎやられてしまう。事実根こそぎやられてしまっているわけです。それからまた、砲弾が落ちて焼き払われる。さらに、どういうものがあと入ってくるかもわからない。それが演習地だと思うのです。ですから、それは明らかに自然のバランスのとれた地域の維持というものから逸脱しております。  したがって、そういうものは国土の中にあってはいけないわけです。私は、国土の中に演習地というものが、どうしても防衛上必要だというなら、それはあることはあってもいいかもしれないけれども、しかし、そういうような無制限な地域の使い方をするようなものは、あってはいけないと思います。そういうことは結局防衛のほうとかち合うことですから、そこで何かいままでの演習場あり方ですと、それはあってはいけないということに結論がなると思うのですが、そういうものが富士のすそ野の非常に大きな部分を占めておるということがあって、この富士環境保全法というのは、私は明らかに羊頭狗肉だというふうに思うわけです。
  165. 島本虎三

    ○島本委員 それで、私のあとからまた専門的な見地から小林委員がお伺いすることになろうと思います。  それで中村参考人と、西山参考人と、池ノ上参考人に、私が考えておりますことに対して簡単に、ひとつさとしてもらいたいことがあるのです。  富士はやはり私は残すべきものであり、あくまでもこの環境は崇高なものであって、触れてはならないとは申しませんけれども、しかし、これはもうほんとうに残すべきものである。これと同じようなものは、日本から、もうあっても手を触れないということもなんでしょうけれども、環境保全を優先させて残すべきである、これと同様のものは。北海道にもあり、沖繩にもございましょうし、奄美大島にもあるでしょう、そういうふうに思っているわけなんです。  それで、いまのところは、すぐ法律と一致してまいりましたのは、富士保全法と演習場関係と、いま先生の意見の開陳あったような、もろもろの問題が一致するからなのであります。そこで皆さんの意見を聞いているわけでありますが、富士の問題は、それぞれ聞きました。それで同じような状態にあるのは瀬戸内海であろうと思います。あれも国立公園、あれは特別地域、いろいろあるわけです。三つの橋を今度かけるということになると、これはもう水質、大気、それから自然景観、あらゆる点にこれが影響あるのじゃないか、こういうような場合に対しては、各先生方はやはり日本の発展のために、これは望ましいというふうにお考えでしょうか、それともやる場合には、こういうふうにすべきであるということがありましたならば、その決定打をひとつお聞きしたい。  それと同時に、最小限度この問題が解決されない以上、やるべきじゃないとするならば、それも大いに参考になろうかと思います。片や富士、片や瀬戸内海、瀬戸内海の場合は議員立法で瀬戸内海環境保全臨時措置法、こういうようなものさえつくって、水質の汚濁に対しての防止を決定している地域であります。三人の先生ほんとうに申しわけありませんが、ひとつわれわれに教えてもらいたいのであります。
  166. 中村司

    中村参考人 ただいまの富士の自然は残すべきであるという、それは基本的には特に動物の生息ということから考えたときに、それは望ましいことだと思います。  それから瀬戸内海の例から、さらに水質、大気というような非常に大きな問題になっておりますけれども、当然私ども、未来を予知しなければならないという点で、世界の、たとえばハワイで調査した炭酸ガス量、それから鉛の量とかが上昇しているとかいうようなデータがあるわけでございますけれども、やはりアイデアルには、自然というものはインタクトにするという、その基本的線は全く賛成でございます。  それから、具体的な問題につきまして、もしある地域が何もしないでおいても、汚染が進んだりするという、人口問題もございましょうし、もしそうするならば、そこに何か一つの措置が必要であるということは、やや抽象的ではございますけれども、考えなければならないかと思います。とにかく基本的には、動物の立場から見まして、自然というものはそのまま置くというのが絶対必要かと思います。
  167. 西山夘三

    西山参考人 富士のことにつきましても再三申し上げましたが、非常に典型的な自然であって、そういうようなものとして残すという、先ほど中村先生のお話にも、特別の動物はないんだというようなお話であったように思うのですけれども、特別の動物がないから、富士はこわしてもいいのかというと、そうじゃなしに、特別の動物がないという、そういう典型的な自然ですね、そういうものを一つの橋頭塗みたいにして残しながら——残すという観念は、いままで日本にはなかったわけです。なかったし、なくてもよかったわけです。よかったといえないですけれども、だんだんこわされてきて困った状態になったんだけれども、いまとなっては、そういう典型的な自然を拠点にして、どこを残すかというと、漸次広げていって、それと都市化とせり合ったような国土の構成にしなければいけないだろう。そういう意味で、富士は残すべきです。  瀬戸内海につきましては、現在、まだ汚染が進んでいるわけですね。たとえ全部工場から排水を流すということをやめましても、さらに進むわけです。そういう状況の中で、さらに開発を進めるような橋を立てるということは、これはマイナスの要因であることは明らかなんです。  しかし、それじゃ橋をつくるなと言えるかというと、これはそう簡単にも言えません。(島本委員「どうして」と呼ぶ)やはり、橋がどういう効果を及ぼすかということについての根本的に科学的な研究は、私はないと思うのです。科学的な研究がないというのは、一つは予測をするために十分な科学的な研究をしなければいけないですね。ところが、予測をするためには、いままでのことをよく追跡して、いままでこういうことをやったから、こういう結果が出たというデータを持っておって、初めて予測ができるわけです。それをやっていないわけです。  大体、いままでたくさんの地域開発をやりましたけれども、その地域開発の追跡調査というのは、ほとんどやっていないわけです。自然破壊の追跡調査も、ほとんどやっていないわけです。それでいて、予測ができるわけはないのです。ですから日本人というのは、向こう見ずにイノシシみたいに突っ走っていると、エコノミックアニマルというのは当然だと思うのです。その中で、瀬戸内海に三本も橋を同時に建てる。これはよっぽど勇ましい勇み足であって、やはり、一本つくってみて、どういう効果があるのか。そのじっくりやるということが、地域開発の一番根本の問題なんです。われわれは、われわれの世代になってから、日本国土を荒らしに荒らしているわけです。それはなぜかというと、高度成長のために何でも早くやればいい、前へ進めばいい、そのためにどういうことが起こるかというようなこともわからなくて、前へ進んでいるわけだ。これは全くあぶない話なんですが、そういうことが、いま問われているわけです。地域開発というものは、石橋を踏みながら行くべきである。ですから、どうしても瀬戸内海に三本の橋を建てるなら、まず一本つくって、それがどれだけの影響があったかということを見ながらゆっくりやっても、決して日本の国の経済力の発展にはマイナスになるとは思いません。そのほうがプラスです。ですから、そういうあわてた政策をやめることだと思います。
  168. 池ノ上容

    池ノ上参考人 瀬戸内海の問題についてお尋ねがございましたけれども、富士山につきましては先ほど申しましたように、日本の非常に代表的な景観ですし、かなり自然性の高い部分もあるわけでございますから、そういう意味の保護ということが必要であるということを申し上げたわけですけれども、瀬戸内海の景観というのは、景観の立場からだけ申し上げますが、かなり特異性のある景観である。これは内海多島海というふうな一種のタイプの景観だと思いますけれども、ただ現地を皆さん御承知だと思いますけれども、瀬戸内海の島なりあるいは沿岸の地域というものは、非常に開発が進んでいる地域でございます。  したがいまして、全般的に自然性というのは非常に希薄であるというふうなことが、一つの条件としてあるだろうと思います。したがいまして、そういうところでは先ほど申しましたように、そういった人為的な要素の入った景観というものを、どういうふうに保全していくかという問題が、一つの問題として、あの場合には考えなければならぬだろう、景観の立場からそういうことが言えるんじゃないかと思います。  それで、特に具体的に考えますと、いま出ております三つの橋の計画に関連しますと、たとえば鳴門海峡でございますとか、あるいは鷲羽山の先のところの塩飽諸島とか、この辺は景観的にはかなり大きな問題が提起されてくるだろうというふうに考えます。以上お答え申し上げます。
  169. 島本虎三

    ○島本委員 たいへんありがとうございました。
  170. 角屋堅次郎

    角屋委員長 小林信一君。
  171. 小林信一

    小林(信)委員 午前中の参考人にも私は申し上げたんですが、いま富士保全法を審議をしております私たちが、その保全法をりっぱなものにするということだけでなくて、私は富士山ろくに住んでいる者ですが、——山ろくといっても甲府のほうですから、ちょっと離れておりますが、まあ富士山のある県に住んでおりまして、その実情というものを多少知っております点から、この際、私どもはこの機会に、富士山のあらゆる点を先生方にいろいろお聞きすることが必要じゃないかということを私はかねて考えておって、この参考人の御意見を聞く機会を非常にうれしく思っておったんですが、残念ながら、貴重な御意見をわずかな時間しか聞くことができなくて、残念に思っておるわけです。  私は、いまお三人の専門的な御意見をお聞きしながら感じたものは、法律が出ているんですから、国も県も心配はしているでしょうが、何も富士山の問題には手をつけておらない。どうやったら人間の利益になるか、それが自然とどう関係するか、どう自然を保護することを避けて、人間がいかに利用するかということに腐心しておるのが、富士山ろく実態ではないか。だから、ほんとうを言えば、こんなまじめな先生方の御意見を聞いて法案審議をするなんということは、少しばかげているわけですよ。おそらくこの法律を出した環境庁にしましても、富士山実態というものをほんとうに知っているかどうか、私は聞きたいくらいなんです。ただ政治的に、この法律を通さなきゃならぬということで、きゅうきゅうとしているんじゃないか、それくらいに私は思っているんです。  いまも私は、環境庁の官房長にちょっと話をしておりましたら、官房長が、茅誠司さんが二、三日前に、五合目まで外人を連れて行ったそうです。その五合目の実態を見て、私は日本の恥をかきに行きましたと言って三木環境庁長官に話をしたそうですが、それが富士山実態なんですよ。だから、先生方お三人の御意見というものをお聞きして、ほんとうにそれを富士保全のために生かさなきゃならぬということを感じながらも、何か現実とは、われわれ論議していることが離れているような気がしてならないのです。  それくらい、例をあげれば——自然公園法が出ております、あるいは自然環境保全法が出ておる。ところが、富士山周辺、日本を象徴する富士山だといって、観念的にはみんな言っておりますが、あの河口湖でも山中湖でも、周辺にたくさん業者はお客さんたちを招いて接待をしております。それらの一切廃棄物はみんなたれ流しでもって湖に入っているわけです。数年前、エラブナですか、あれがたくさん岸にたくさん浮かんだことがございます。そういう事実を見ながら何にもしてない。これが現実なんです。  スバルラインの問題を私は午前中に知事に申し上げたのですが、私のいま考えていることは、このスバルラインはつくった、つくったけれども、私は自分の県ですが、あそこへは——立山へこの委員会調査に行きましたが、富山県は立山へ有料道路をつくりました。しかし有料道路はつくりながら、ストップして、自家用車は全部ふもとでもってとめてある。そして特定のバスに乗せて、途中でもって、ものを食べたり、ものを捨てないというようなことを十分気をつけながら頂上に運んでいっている。そして、一定の地域でもって監視を十分しながら、立山連峰の美しさをお客さんに見せておる。ところが、私どもが行きましたときに、富山県としては、せっかくつくったんだ、何とか利益が上がるようにしたいんで、来年あたりはと言ったのですが、今度は環境庁から、もう中へ自家用車は乗り入れてはいけませんよと言われた。  それと、山梨県のスバルライン、あれを比べますときに、全くもう富士山をだれが、日本人のだれかが考えているのかということを言いたいくらいなんですね。それをやめるように知事意見を聞いたのですが、知事はどうもその気になってない。皆さんから、そういうような点を強く指摘してもらって、私は、この法案がほんとうに富士保全法になるようにつとめていかなければならぬ。もちろん、先ほど来問題になっております演習場に対しても、もっともっと政府が何か決意をしてもらわなければならぬような気持ちを持っているわけですが、そういういま気持ちでございまして、二、三、そういう大きな観点からすれば、小さくなるかもしれませんが、お尋ねをしてみたいと思います。  まず中村先生にお尋ねをいたしますが、残念ながら先生は、いま鳥類以外の動物に対してお述べになっていただきましたが、「富士山の生物」という研究物を見まして、わりあい動物に触れておらずに、鳥類についてはたいへん研究をされておるのを見るわけです。鳥類の研究では、かえって先生のおとうさんが「小鳥のおじさん」と山梨県では愛称して、長い間個人で研究をされておられる。それが大かた基礎になっているのが、私はいまの富士山の鳥類の研究の事実ではないかと思います。富士急行で乱開発をしておる——私は乱開発といってもいいと思うのですが、その一つの罪滅ぼしかどうか知りませんが、「富士山」という研究物を発表されましたが、その中にも、しさいに検討しましたが、生物のほうの問題はあまり出ておらずに、鳥類の問題がたくさん出ておりました。これはひとえに中村先生のおとうさんの研究の結果だとも思っております。  私は、その鳥類の問題で先ほどライチョウの問題が出ましたが、これなんかも私はいかに富士山について学者の方たちも気まぐれであるか、申しわけありませんが、それくらいな考えを持っているのですが、これはこの委員会にお呼びする予定だった先生も入っておるのですが、「富士山」という本ですが、その中には「雷鳥はまさに繁殖の状態にある」こう書いてあるのです。先生のきょうの御発表では、ライチョウは移殖したけれども絶滅したらしい、これが私も実態だと思います。そうしてその原因は、先生明確にされなかったのですが、これは明確にする必要が、私はどうしても先生の責任としてあるような気がいたします。  立山へ参りまして、ライチョウの住んでいるところを見ますと、低いはっておる樹木のあの中にしか生息できない。ところが、富士山にはそうした高山植物はないのですよね。そういう生息の問題であるか、あるいはキツネあるいはテン等がのぼっていったのではないかという先生の御意見がありますが、いま大事なことは、そのほうの事実を確かめていただくことが私は大事だと思うのです。というのは、先生の御研究の中にもありましたように、ハシブトガラスですか、あれが先生の御研究の図を見ますと、二千何百メートルから上に点線で、もっと上に行っているのではないかというおそらく表示だと思いますが、それがありますね。ああいうものは、残飯だとか廃棄物だとかそういうものが、だんだん頂上へ散布されるのに応じて繁殖していっているのじゃないかと思います。それと同じようにキツネ、テンあるいは野犬、そういうものがどんどん上昇しておる状態だと思いますね。  ついでにお話ししますが、富士のすそのほうは、あの周辺の人たちが自動車にごみを持って、そうして中腹へ行って捨ててくる、下のほうはその状態ですわね。そうして登山をする人たちは、どこへでも自動車をとめて、そこでもって持っていったものを食べて、そこへそのままほっておく。五合目へ行ったら、これはもう観光客相手のもうけ主義の商店がそろっているのですから、それはどこへもごみを運び出していないわけですよ。みんなたれ流しですわね。そういう状態で管理されているのですから……。  先ほど一千一百万の観光客が四十八年にあったそうです。知事の予定では、昭和五十年には二千万人をこえるだろう。この観光客が増大する、それを無制限にあのスバルラインの中へどんどん入れていく、こういう状態でもって富士山をだれが守っているのだ。これを山梨県の責任だといって、もし環境庁がおられるなら、環境庁も私は大きな無責任だと思うのです。その状態に対して、何らかこれを阻止するとか指導するとかいうことがなければならないのですが、法案は出していますよ。法案は出しているけれども、環境庁の諸君なんというのは、そんなことは全然お考えになっておらない。何が私は富士保全だといいたいくらいなんです、現実は。法律が出れば何とかなるのではなくて、現状は見るに忍びない、何か策を講じなければならぬというなら、まともにこの法案も考えられるのですが……。私のしゃべることが多くなってしまったのですが、それが現状なんですよ。  だから、ライチョウの問題でも、先生もあいまいにされておりました。どっちか、生息するようなハイマツがないの、あるいはいまのような登山客がだんだん山を荒らすのに従って、そういう野鳥類がだんだん侵されるような状態というものが上のほうに進んでいって、ライチョウが生息できないのかどうか。こういう点も——せっかく七羽のライチョウを移殖して、そうして十何羽にふえたのですよ。しかし、それがどういう結果になったかということが明白になっておらない。それほど富士というものは実際においては無関心にされておる、これが実態だと思うのです。  そこで、スバルラインの問題ですが、どうですかね、これは。先生は一応生息する鳥類あるいは生息物についてお話があったのですが、スバルライン、そうして最近の観光客が増大する、それはこういう生息物に対して心配をされるようなことがあるのかないのか。  それから先生のおっしゃった垂直的な分布ですね。これは私は得がたい——ことに富士山は孤立峰ですね、ほかの山の連絡をしておらない、その特徴を持っておると思うのです。そういう中で、中部地方とはいっても、中部地方からあるいは奥羽地方あたりまでの動物というのが生息しているといっても私はいいと思うのです。単に一カ所で、中部地方だけでなくて、もっと緯度の高いところの生息物も生存をするという、これは私は非常に特徴的な得がたいものだと思うのです。特別な鳥がいなくても、一カ所でそういうものが見られるということは、私は非常な得がたい自然だと思うのですよ。そういうものがいまのような状態で放置されて差しつかえないのかどうか。  もう一つ先生にお聞きしたいのは、さっきもスバルラインの沿道の問題でちょっと私が意見を言ったのですが、どうも御理解をしていただけなかったのですが、下のアカマツの林のあるとこら辺の自然林は、これはみごとに自然の力で、例のマント群落という、第一番に、立ち木のすぐ横がマント式に雑草でおおわれる。そしてもう一段下がった今度はアスファルトの道との境が、いわゆるソデ落群という、これももっと小さい雑草、そういうものでおおわれて、はじめて高い木は光線が入らぬとか、あるいは風が入らぬとかいうことで自然に擁護されるわけですよ。それが確かにアカマツの自然林のあたりは出ました。したがって、生息するものもそうたいしたことはないと思うのですが、しかし、だんだん上のほうへ参りますと先生のさっき五合目付近の樹木のお話があったのですが、これはいまもって倒木が続いております。枯木が倒れて、だんだんそれがひどくなっていく状況があるのです。  これが、学者に言わせれば、マント群落が必要である、ソデ群落が必要であると言っているけれども、残念ながら、これはいつのときに出てくるのかわからない。人工よりも自然のほうがいいと言っていますが、自然にまかしておったのでは、全部裸になる以外にないのじゃないか。こういうふうに、生息する樹木の状態というものも私はたいへん問題だと思うのです。  そういう点から、鳥類の面からでもけっこうでございますので、いまの放置された富士山の植物、生息物ですね、こういうものはもちろんほうって  おいてはならないということはあたりまえだと思うのですが、もっと何か御指示なさることがあったら、御指示願いたいと思うのです。
  172. 中村司

    中村参考人 小林先生からいろいろ御質問がございましたが、その中に、私どもよりも現地におもむいて、実際にごらんになったり御調査になっておられるという面がうかがえまして、かえって私ども敬服する次第でございますが、幾つかの御質問ございましたわけでして、それに従いましてお答え申し上げたいと思います。  まず、ライチョウのことを一応申し上げたいと思いますけれども、先ほど私、ライチョウが北アルプスや南アルプスと植生が違うということをあげたわけでございますが、確かにちょっと突っ込みが足りなかったようでございます。  それで、南アルプスの三カ年の調査をもとにいたしまして富士の問題を考えてみますと、結局ハイマツがないということがキツネなどの天敵に襲われやすいという、そういうことで結びつくわけでございます。それから空からはタカの仲間がねらっておりますし、両面から鳥が攻襲されるということになるわけでございます。そしてその直接的原因というのは、小林先生も御指摘になられましたように、登山者が非常に高いところまで行って、いろいろな残飯を捨てるということ。おそらくこれは南アルプスでもそうでございましたけれども、キツネというのは三千メートルも高いところへは、ふだんは行かないはずですけれども、最近におきましては、南アルプスと富士との比較という意味で話が移動いたしますけれども、南アルプスの三千メートルの、いわゆる白根山といわれております、富士に次ぐあの北岳に近いところまでキツネのふんが発見されているわけでございます。したがいまして、そういったような、のら犬とキツネ、こういうものがどんどん高いところへ上がりまして、繁殖している鳥をつかまえるのは、よしんば身をおおうハイマツがあっても、赤子をひねるようにすぐとらえられてしまうと思います。おそらく南アルプスの例から見まして、富士山の場合でも最終的には、そのような天敵によって取り押えられたものと思います。  それから、それに付随いたしまして、カラスのことが出ましたけれども、昔はカラスは二千メートル以上へは行かないというふうにすら、いわれていたわけでございますけれども、近年は先ほどのキツネと同じ例で、いろいろな食物を高いところまで求めるということで、カラスが非常に高いところへ行っている。方々生態学者が、特に鳥の生態学者が述べておりますけれども、カラスやホオジロがあらわれたり高いところに行く、これは自然の変化である、そういうふうな一つの基準としているわけでございます。したがいまして、ライチョウの絶滅と同時に、カラスが高いところまで分布しているという問題も大いに考慮しなければならないことと思うわけです。  それから森林の問題で、要するに良禽は良林を選ぶというように、林によって鳥というものは住まいを分けるわけでございます。したがいまして、原生林がそこにありますと、もし、そこが針葉樹であれば、針葉樹のオオルリのような鳥がおりますし、そこが広葉樹が多ければ、ツツドリとかそのほかのキビタキとか、いろいろな鳥が来るわけでございますが、鳥の繁殖にとりましては、何といっても、やはり巣をつくるということでございます。  したがいまして、そのためには最近植林といいますと、すぐカラマツが植えられるわけでございますが、樹木のあとの利用ということからいえばそれらはいいかと思いますけれども、自然保護というような立場から、特に動物の自然保護という立場から考えますと、やはり広葉樹、いろいろなエイサーの仲間、カエデの仲間でございますけれども、ああいったものとか、いろいろな広葉樹林というようなものを、やはり植える必要があるということ。  それから、先ほども小林先生からマント群落というような御専門のことばが出たわけでございますけれども、林というのは、ただ、木がにょきにょき立っていれば、それでよいというわけではございません。特に鳥の繁殖、それから鳥だけではございません、そのほかの哺乳類、さらには土中動物、土の中に住んでいる動物、これがまた忘れられてはいますけれども、植物を育てるための重要な仲立ちとなるわけでございますけれども、そういうものの生息を許すのが、いわゆるブッシュ、マント群落。森林のほうから申しますと、いわゆる一次林、ススキのはえているところから順にソデが出てマント群落、つまり二次林、そして大きな高木で三次林というように立体的になっていくわけでありまして、やはり森林計画という場合に広葉樹、それからプッシュを大切にする、そういったようなことを今後考えていかなければならないかと思います。  したがいまして、先ほどスバルラインの例が出ましたけれども、どなたもスバルラインにつきましては非常に残念であるという御意見でございます。気がついたらといいますが、生態を研究しておられる植物の先生方でも、知らないうちに道路ができたというようなことをおっしゃるわけでして、やはり十分研究をして取り組まなければならなかった、そういうことがあるわけでございます。現実にはしかしながら、そういう道路ができているわけでして、鳥の分布などから申しましても、鳥というのは実は移動性がございますので、いろいろなメルクマールにはなりますけれども、またスタンダードにはなりますけれども、移動性がありますから、哺乳類のように、たとえば木を切れば、そこに住まなくなるというわけではなくて、鳥の場合はまた、それにいわゆるリプレースする、その環境に適した違ったものが来るという、そういうことになりますので、自然保護の立場から、鳥というのはもちろん一番感じやすいということでございます。  したがって、鳥を見れば、まずその環境変化がわかるということ、そしてやがては人間に及んでくる環境というものの一つのスタンドポイントになるということではございませんけれども、しかし移動性がございますので、その場所を選んで鳥がまた住むということ、したがいまして、人間のほうは、それを見て、こういうような鳥がいるようになったから気をつけなければいけない、そういうことは言えるわけでございます。  幾つか申し上げている間にお答えになったかというような懸念もございますけれども、ライチョウのこと、それからカラスのこととか、それから先ほどのスバルラインを中心とした森林の問題、そんなことを少し申し上げたわけでございます。  それで、ちょっと一言触れさせていただければ幸いでございますが、私は先ほど、富士には特別これだけしかいないという動物はいないというふうに申し上げたわけでございます。しかし、自然というのは、そこに——私がお伺いしていまして、西山先生から、たとえば何か特別なものがいないから保護しないでいいというような、ちょっとそんなおことばがございましたけれども、私は自然保護というものは、もっと大きな立場から、たとえばそこにかわいい小鳥いるからやるとか——ほんとうの意味の自然というものは、もっと大きいものでなければいけないと思います。  つまり人間の生存ということを長い歴史、それから未来にかけて考えていく場合にはもっと大きなことでなければいけないと思います。先ほどのように何かいるから保護するという、これはもちろん幾つかの保護の観点からいって必要だとは思います。けれどもいないからいいということは私は申し上げておりません。いなくても、全体として自然というものは、やはり保護しなければいけないという、それはもう当然終始しているわけでございます。  小林先生、もし何かございましたらまた……。
  173. 小林信一

    小林(信)委員 たいへん丁寧に説明していただきまして、時間がなくなってしまったわけですが、ほかのお二人の先生にもいろいろお聞きしたがったのですが、一つのスバルラインの問題からしても、ほうってはおけない状態、ことにハリモミの原生林がございますね、これなんかもう死滅寸前になっているような状態です。専門家に聞きますと、だんだんいろいろ耕作をしたり、木を切ったりするというふうなことが原因で、せっかくのあの平地にありますハリモミの原生林がだめになってしまう。何か特別な研究はされているようですが、もう死滅の状態だと思います。  そういうものが、やはり富士山を何か観念的には大事だと言いながら軽視する風潮というものがある。それがやはりあの中に演習場があって、その演習場がとやかく論議をされていいんだ、あるいはいけないんだというふうなことで、どっちかというと、時の権力を持っておる人たちが、しかたがないとかいいとかいうようなことで、あのまま存置することが富士山全体をそうしておるんじゃないかと私は思うのです。  これは環境庁でつくってくれたものですが、富士山の北側の、ここでは鉄砲を撃ってよろしい、ここは丘陵地だというふうなものですが、この中にぽっかり穴があいているところがあるでしょう。ここら辺ですね。これが例の演習場です。やはり禁猟区であるならば禁猟区が何合目以上、何千メートル以上というふうなところで、生物は同じなんですから、ずっと色が塗られなければならぬ。ところが、ここだけはぽっかりあいている。こういうものが全体の富士山を大事にするかしないかの岐点になっているのではないかと思うのです。思い切ってそういうふうに政府が決断をすることを望んでいるわけです。何か、あとは私は一分しかないのですが、お二人の先生に——私はお二人の先生の御意見を非常に傾聴したものでありますが、いまのようなスバルラインあるいはハリモミの原生林あるいは死滅しようとする湖というようなものについて、一言ずつ御意見がありましたら、お聞かせ願いたいと思います。
  174. 西山夘三

    西山参考人 ちょっとそれとは違いますけれども、私が、この法律が利用開発が主になっていると言っておりますのは、この文面で見ますと保全利用整備になっているわけですね。その上からいってもそうですけれども、しかし私ども地域計画地域開発のことを研究している者から言いますと、こういう法律をつくったらあと一体どうなっていくかということですね。いままでずっとながめてきたわけです。そうしますと、幾ら保全をうたっておっても、この法律に盛り込まれている本質的なものは、開発を促進するという要素が非常に強いわけです。開発を促進すればどうなるかというと、観光客の入り込みがさらにふえてくる。そのふえてくる者に対して、どれだけ手が打たれておるかというと、それはなるほど下水を整備すれば下水の処理はうまくなるかもしれません。しかし、そのことによって一そう開発が促進されます。手ぐすね引いて待っているのが、どんどんそういう施設がふえてくる。そうしますと、そういいうものは地域住民の生活には必ずしもプラスしない。もちろん開発が進むということは、ある程度住民のプラスにはなりますけれども、しかしどっと入ってくるのは、たいていその利益はほかのものに横取りされてしまって、住民にはあまりプラスにならないわけです。それでどんどん開発が進む、そういうことをこの法律が準備しているのだと思うのです。  ですから、ほんとうの保全をやるためには、もう少ししっかりしたものでないとだめじゃないか。いま先生の言われているように、ほんとうに富士の自然を守ろうとするならば、もう少し別のものでなければいけないのじゃないかと思います。
  175. 池ノ上容

    池ノ上参考人 スバルラインにつきまして、ちょっと技術的な立場から少し申し上げたいと思いますが、先ほど、現在もすでに一千百万でございますか、それから将来二千万というふうなことを予測しているということでございますけれども、すでに現在の量でも——計算はしにくいのでございますけれども、あそこの道路のキャパシティーだとかあるいは五合目あたりの収容力から考えまして……。
  176. 角屋堅次郎

    角屋委員長 非常に速記がとりにくがっておりますので、もう少し声を大きくお願いいたします。話の途中で恐縮でございますが……。
  177. 池ノ上容

    池ノ上参考人 どうも失礼いたしました。  つまり現在の状況でも、実際の量がオーバーしているのじゃないかという感じがいたします。まして、これが二千万ともなりますと問題だと思います。したがいまして、これに対する利用規制の問題というようなことが考えられなければならないし、たとえば乗用車の乗り入れを禁止するとかいうようないろいろな措置があると思いますけれども、そういう見地からの検討が必要だと思います。  それから、すでにできているものでございますから、できたものをどうするかということも考えなければならない問題だろうと思います。先ほどマント群落のお話がございましたけれども、私も十分研究しておりませんが、ほうっておけば、どんどんあれは後退をしていくことになりかねないと思います。したがいまして、あの場合には非常にむだなようですけれども、やはり人為的にマント群落ができるようなことを金をかけても、やっていかなければならないだろうという考えを私は持っております。
  178. 小林信一

    小林(信)委員 ありがとうございました。
  179. 角屋堅次郎

    角屋委員長 木下元二君。
  180. 木下元二

    ○木下委員 西山参考人に伺いますが、いま政府のほうでつくられようとしております富士保全法は、いろいろ参考人のほうから御批判がありました。これは開発のための法律であって、保全をはかることが困難であるという御意見のようであります。そこで、今後の富士山保全あり方、これをどういうふうに進めるのがいいのか、これまでの御意見の中に断片的にございましたけれども、富士の真の保全のために何をなすべきかということを、簡単でけっこうですから、お聞きしたいと思います。
  181. 西山夘三

    西山参考人 私、富士のことについては特別に研究したわけではございませんので、富士山については、いままで観光開発計画などが幾つかの機関で行なわれております。そういうものは、やはり参考にすべき点はたくさんあると思うのです。ただし、考え方は、やはり開発というものを相当比重を重く見ておるといいますか、観光開発、観光レクリエーション地域開発によってお客さんを誘導してくるというふうなところに重きを置いておったような開発計画が、いままで非常に多いわけです。ですから、そういうものを見直すことが必要だということです。  それから、やはりそういうところに動員をされておる先生方は、みな、まじめに研究されておられます。ですから、そういうものの成果は非常に利用すべきだ。ただし、十分に研究はやられていると私は思わないわけです。と申しますのは、いままで開発サイドの研究は、これは大いに援助をされてました。また、そういう開発サイドの計画をつくるには委託研究などがたくさんありまして、それに対して先生方がたくさん動員されるというかっこうで研究は進んでおりますけれども、これがそういう利用によって、どのような災いを及ぼすかというような研究は、これは農薬の問題だとか、何かいろいろな問題が起こっておりますが、それらがみな、そういう研究は非常におくれておったと同じように、開発についてもおくれておるわけです。今後はそういう研究を強化して、そうしてほんとうに国民のために役立つ開発ができるような開発計画が立てられる、そういう根本からやはり進めなければならないという問題が一つあります。これを抜かしては、ほんとうにいい計画はできません。  それを待つ間というと変ですが、待つ間にも実は並行してやらなければいけないのですが、やはり保全のためのきびしいワクを設けておく、それをうっかりはずさないということが非常に大事だと思います。その点で、この法律はむしろ開発を促進するというような性格を持っておりますので私は、あまり賛成できないというふうに言っておるわけです。
  182. 木下元二

    ○木下委員 わかりました。  それから、先ほども言われたのですが、この法律案の七条に、四種の地域の設定があります。徒歩利用地域、自然探勝利用地域野外施設利用地域休泊利用地域というふうにありますが、こういうふうな地域の設定で、有効な保全ははかれないという御意見があったわけです。利用よりも利用をチェックする立場から規制を強めていくこことが必要ではないか、こういう御意見であったと思いますが、こういうふうな四種の地域の設定では、有効に規制をはかっていくということがあまり期待できない、こういうふうに伺ってよろしですか。
  183. 西山夘三

    西山参考人 一番根本的な欠陥は、法の中に指定しない地域というのがあるのかないのか、私知りませんけれども、四つの地域しか書いてないとしますと、これは利用地域だけです。ところが、利用してはいけない地域が、ここでいう利用——徒歩も実は厳密に拒否しなければいけないというところもあると思うのです。そういう制限しなければならないというようなところは抜かして、全部利用になっておるというのは、非常に不信を抱かせるものだと思っております。  それからもう一つは、徒歩で利用する、あるいは休泊をするのだとか、これはみんな使い方のほうからなんですね。ほんとうは一体何を許していいのか、ただ、どういう行為を許していいのか、ここは許せない、ここまではしてもよろしいというふうな、そのしてはいけないことを、やはりきちんときめなければいけない、もちろん、これはうらはらの関係ですから、こういう四つの利用地域はそれぞれ、ここはこうしてはいけないというふうになるのだと思いますけれども、その観点は利用ということがありますと、おのずから抜けてくるところがあるわけです。そういう意味で、この地域の組み立て方はまずいと思います。
  184. 木下元二

    ○木下委員 わかりました。  それからスバルラインの問題でお話がありましたけれども、スバルラインの問題も含めて西山参考人の都市工学の立場から、国立公園等における道路建設の問題について特に御意見がございましたら、伺っておきたいと思います。
  185. 西山夘三

    西山参考人 私は道路のほうは、実はそれほど専門でございませんのであれですが、しかし、いままで日本の自然公園地域で道路が非常に自然景観を破壊し、また自然そのものを破壊してきたというのは、非常に安上がりな工事をしてきたということが一つあると思うのです。たとえば切り取りをするとか、あるいは盛り土するといった場合に、その土をよそから持ってくるとか、あるいは残土をよそに持っていくということをせずに、そこにまき散らしてごまかす、あとはどうなってもいいというふうなつくり方をする、こういうことは外国では一切やっていないわけです。自然が大事ならば、その必要な道路だけはきちんとつくって、あとは全然さわらない。あとは保全されるようなかっこうでやっていけば、もちろん自動車が通れば排気ガスとかなんとかで、その周辺何メートルあるいは何十メートル、あるいは場合によっては一キロというふうな環境の変化は受けますけれども、しかし一時的に、この工事そのものは環境を破壊するというふうなことはあり得ないわけです。ところが、そういうことを、安上がりでやるために、やっておりません。これは必要最低限のことです。  しかし、そのほかに道路をつくれば、必ずその影響が周辺に及びます、生態系に対する影響とかそういうものに対する調査といいますか、研究といいますか、これはやはり残念ながら行なわれていないわけです。そういう点、やはりこれからも基礎的な研究を積み重ねて、そうしてあやまちのないような開発をしてもらいたい、そういうふうに思います。
  186. 木下元二

    ○木下委員 けっこうです。  それから中村参考人に伺いますが、野鳥の問題ですね。富士地域の野鳥保護のポイントと申しますか、野鳥保護のために特に必要な施策ですね、これはどういうものでしょうか。
  187. 中村司

    中村参考人 特に野鳥というふうに指定でございましたので、その点でございますが、やはり野鳥というのは、森林、樹木があって、そこに生息するということでございますので、できれば、より高いところの森林というものは手をつけないということ、それは復元が非常にむつかしいということでございます。  それから低いところでは、特に先ほどもちょっと触れましたけれども、植林をする場合に、針葉樹林だけを利用せずに広葉樹、そういうものを植えるということ、それから、もちろんマント群落ということが問題になっておりますけれども、これは鳥だけではなく、当然鳥が孤立して生きているわけではございませんで、動物には動物の一つのサイクルがございますので、こん虫群もいなければ鳥は住めません。したがって、それが巣くうような、いわゆるマント群落がほしい、そういう意味におきまして、やはり今後の森林改策というものにもっとメスを入れて、動物の住みやすいようなところをつくるということ。  それから、ただいまの御質問にも関係があろうとかと思いますので申し上げるわけでございますが、狭いところに大ぜいの人が住んでいますと、どうしてもレジャーといいますか、レジャーということばのイメージが悪いわけですけれども、特に東京にお住まいの皆さま方の場合でございますと、やはり緑に触れたり、きれいな空気を吸うという、そういうことが、あすへのかてになるわけでございますので、おのずとそういうことが、これからは特に必要になってくるかと思いますが、もちろんいろいろな規制の中にある地域開発するということ、これは歴史的に見て、たとえばそこに絶対触れていけないということが歴史的に見て非常にむずかしいわけでございますので、もちろんアメリカの場合でもプレザーべーションとかコンサーベーションとかいろいろなことばの違いなどがあったりして、そこに絶対に触れないということが許されればよろしいわけでございまして、それはどなたも、それが望ましいことかと思いますが、それがむずかしい場合には、やはり何かを講じなければいけない。  さて、そこで鳥とそれから人間との関係でございますけれども、非常にたくさん家が建っているところに日本一鳥が多いという例がございます。特別な例かもしれませんけれども、それは山中湖の旭ケ丘、あざみケ丘、その辺でございます。そこはそのかわり樹木というものを自然のままに利用しているそうです、幾度かそこを通っておりますけれども。そういうふうに自然を利用して開発するということ、開発には問題がございますから開発ということばは避けますけれども……。  それで、いままで全然触れませんでしたけれどもヨーロッパとかアメリカなどでも、特にアメリカなどで目にしておりますけれども、人間の心の問題、つまり教育の問題です。鳥というものは人間が大事にしてくれるか、してくれないかということは、犬とかネコよりもはっきりわかると言っても過言ではないと思います。そういう意味におきましてやはり人間の心の問題、教育の問題ということを絶対におろそかにしてはいけないと思います。したがって、ただ物理的に、そこに家が建ったから、人が来たから、生きものがいなくなった、そういうふうにのみ考えるのは間違いかと思います。  長くなって申しわけありませんでした。
  188. 木下元二

    ○木下委員 野鳥保護区というのは、富士地域のうちどの区域、どの範囲が入っておるのでしょうか。おわかりですか。
  189. 中村司

    中村参考人 野鳥の保護区は猟政関係で、ちょっとあまり触れてはおりませんけれども、先ほども何か環境庁でつくったというあれをここで拝見したわけでございますが、演習場とか、もちろん演習場の中にも保護施策を講じているところはございますけれども、具体的にどことどこということは、ちょっと申しわけございませんが……。
  190. 木下元二

    ○木下委員 演習場の中にも全部ではないにしても、野鳥保護区が、だいぶあるというふうに聞いているのですがね。そういう状態というのは、非常に好ましくないと私は思うのですが、実弾演習をどんどんやっている。その実弾演習をやっているところ、そのものは入っていないにしても、すぐその横が野鳥保護区になっているという状況のようですけれども、そういう状況ではたして野鳥保護区としての意味があるのかどうか非常に疑わしいと思うのです。この点はいかがでしょうか。
  191. 中村司

    中村参考人 仰せのように、その近くで演習をしているところに保護区があるということは、基本的にまずいかと思います。ただ、私もその問題につきまして、県の係の方に質問したわけでございますけれども、国有地とそれから県有地とあるようでございまして、県有地部分、そこのところが森林の方面でやはりいろいろな施策を講じなければならない、それと相まって保護区の設定、そういうようなことも進めているのである、そのような回答を得たわけでございます。
  192. 木下元二

    ○木下委員 最後に簡単に、池ノ上参考人に伺いますが、富士山の自然の重要性、富士自然保護はいかにあるべきかという非常に基本的な問題ですが、そういうたことについて先生の立場で、どのようにお考えになっておられるか伺いたいと思います。
  193. 池ノ上容

    池ノ上参考人 先ほどもちょっと触れましたけれども、富士山の景観というのは、景観という立場から見まして、これは世界で最たる景観だと思います。したがいまして、これの保全については万全を期すべきだというふうに私は考える次第でございます。その具体的な方法といたしましては、先ほど私が申し上げましたような、やはり風景計画的な立場から具体的な地域ごとの保護政策を立てていくべきではないかというふうに私は考えるわけであります。
  194. 木下元二

    ○木下委員 終わります。
  195. 角屋堅次郎

    角屋委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人にお礼を申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。特別委員会委員各位を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。  (拍手)  次回は、明後二十六日金躍日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時四十八分散会