運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-02-19 第72回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月十九日(火曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 角屋堅次郎君    理事 坂本三十次君 理事 登坂重次郎君    理事 林  義郎君 理事 森  喜朗君    理事 渡部 恒三君 理事 島本 虎三君    理事 土井たか子君 理事 木下 元二君    理事 田中  覚君 理事 渡辺 栄一君    理事 小林 信一君 理事 佐野 憲治君    理事 米原  昶君 理事 岡本 富夫君    理事 坂口  力君  出席国務大臣         建 設 大 臣 亀岡 高夫君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 三木 武夫君  出席政府委員         公害等調整委員         会委員長    小澤 文雄君         環境政務次官  藤本 孝雄君         環境庁長官官房         長       信澤  清君         環境庁長官官房         審議官     橋本 道夫君         環境庁長官官房         会計課長    竹谷喜久雄君         環境庁企画調整         局長      城戸 謙次君         環境庁自然保護         局長      江間 時彦君         環境庁大気保全         局長      春日  斉君         環境庁水質保全         局長      森  整治君         厚生省医務局長 滝沢  正君         通商産業省立地         公害局長    林 信太郎君         建設省道路局長 菊池 三男君  委員外出席者         資源エネルギー         庁石油部開発課         長       豊島  格君         労働省労政局労         働法規課長   寺園 成章君         参  考  人         (公害防止事業         団理事長)   江口 俊男君         参  考  人         (本州四国連絡         橋公団総裁)  富樫 凱一君         参  考  人         (本州四国連絡         橋公団理事)  渋谷 正敏君         参  考  人         (本州四国連絡         橋公団理事)  蓑輪健二郎君         参  考  人         (本州四国連絡         橋公団理事)  田中 行男君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君 委員の異動 二月十四日  辞任         補欠選任   稲富 稜人君     折小野良一君     ――――――――――――― 二月十四日  水銀PCB汚染防止対策に関する請願柴田  睦夫紹介)(第二〇〇八号)  同(柴田睦夫紹介)(第二〇六六号) 同月十八日  水銀PCB汚染防止対策に関する請願柴田  睦夫紹介)(第二〇九二号)  同(柴田睦夫紹介)(第二一四九号)  同(柴田睦夫紹介)(第二二一〇号)  同(柴田睦夫紹介)(第二二三一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月十三日  PCB汚染対策に関する陳情書  (第二〇六号)  響灘海域漁場汚染防止に関する陳情書  (第二〇七号)  奈良県内自然公園民有地買上げに関する陳情  書(第二〇八号)  琵琶湖の水質保全に関する陳情書  (第二〇九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  参考人出頭要求に関する件  公害対策並びに環境保全に関する件(公害対策  並びに環境保全基本施策等)      ――――◇―――――
  2. 角屋堅次郎

    角屋委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  まず、昭和四十九年度環境庁関係予算説明を求めます。信澤官房長
  3. 信澤清

    信澤政府委員 昭和四十九年度の環境庁関係予算案につきまして、その概要を御説明申し上げます。  昭和四十九年度総理府所管一般会計歳出予算のうち環境庁予算の額は、百五十四億七千六百九十六万円であり、これを前年度の予算額百九億三千七百四十六万四千円と比較すると、増加額は、四十五億三千九百四十九万六千円であり、その増加率は四一・五%であります。  このほか、建設省所管予算として、国立公害研究所及び公害研修所施設整備に必要な経費が計上されており、これらを加えた昭和四十九年度の環境庁関係予算総額は百八十億一千七百万四千円であり、前年度に比し、五十億一千三百六十八万八千円の増額となっております。  次に、予算の主要な項目について御説明いたします。  第一に、公害対策について申し上げます。  まず、大気汚染等防止対策及び水質汚濁防止対策については、環境基準設定及び各種規制基準強化を引き続き計画的に推進するほか、新たに大気汚染物質に関して、いわゆる総量規制昭和五十年度以降逐次実施していくため必要な調査等を行なうこととしており、また、蓄積性汚染自動車公害、振動、悪臭並びに航空機及び新幹線騒音についての対策を確立するための調査を行なう等六億九千二百十一万円を計上しております。  このほか、地盤沈下及び廃棄物対策費として六千五百二十一万円、土壌汚染防止及び農薬対策費として一億四千八百三十八万円をそれぞれ計上するなど、公害規制強化する等のための経費として、総額九億五百七十一万円を計上しているところであります。  次に、公害監視設備整備費については、新たに都道府県整備する水質調査船について助成を行なうこととする等地方公共団体監視測定体制充実整備することを重点として十三億四千百五十九万円を計上しており、前年度に比し、二億五千七百四十六万円の増額となっております。  環境保全企画調整等経費については、いわゆる環境アセスメントの実施を促進するとともに、環境保全長期計画策定のため、必要な基礎調査を行なう経費として四千百七十七万円、また、公害防止計画については、新たに八地域において必要な基礎調査を実施するため、三千百四十万円をそれぞれ計上しているところであります。  次に、公害健康被害補償対策のため必要な経費として十八億八千五百七十九万円を計上し、第七十一特別国会において成立した公害健康被害補償法の施行に万全を期することとしております。  公害防止事業団については、その事業規模を八百二十億円に拡大することとし、これに伴う事務費等助成費として十五億九千七十四万円を計上しております。  公害防止等に関する調査研究推進のための経費については、科学的な調査及び試験研究を一そう促進するため、総額三十六億六千三万円を計上しております。  このうち、国立試験研究機関等公害防止等試験研究費として二十五億四千百二十七万円を環境庁において一括計上し、各省庁試験研究機関等における試験研究総合的推進をはかることとしております。  また、光化学スモッグに関する調査研究費一億八千二百万円、化学物質審査判定のための基礎調査研究費六千万円、水質汚濁に係る総量規制導入のための調査研究費九千六百万円など、公害による健康被害大気汚染水質汚濁及び自然環境保全等に関する調査研究費として七億三千八百七十六万円を計上し、必要な調査研究を進めることとしているほか、環境保全総合調査研究促進調整費として三億八千万円を計上し、関係省庁が所管する各種環境保全に関連する調査研究の総合的な調整をはかることとしております。  さらに、昭和四十八年度中に発足させることとしている国立公害研究所に必要な経費として五億六千二百八十五万円、公害研修所に必要な経費として一億九千二百八十九万円を計上し、それぞれ、前年度に比し大幅な予算増額をはかっているところであります。  以上、公害対策費総額は百二億一千二百八十二万円であり、前年度に比し、三十七億八千五十六万円の増額となっております。  第二に、自然環境保護整備対策について申し上げます。  まず、自然公園等維持管理費については、国立公園内の環境保全に要する経費に対する補助を大幅に拡充することとしているほか、九州自然歩道整備するための調査を行なう時、施策を一そう強化することとし、三億四千七百七十四万円を計上しております。  また、交付公債による民有地買い上げ制度については、その事業費総額を六十億円と予定し、このために必要な経費として四億八千百十五万円を計上しております。  鳥獣保護については、渡り鳥の保護対策を確立するため、新たに湖沼の調査を行なうこととしている等、一億四千五百六十一万円を計上しているところであります。  さらに、国立公園等整備をはかるため必要な施設整備費として二十二億九千八百五十七万円を計上しております。  以上のほか、自然環境保全対策費として六千九百十六万円を計上しておりますので、自然環境保護整備対策費総額は三十三億四千二百二十四万円であります。  なお、このほか建設省所管予算として、国立公害研究所施設整備のため二十四億五千六百二十三万円、公害研修所施設整備費として八千三百八十一万円がそれぞれ計上されております。  また、国立公害研究所施設整備に係る官庁営繕国庫債務負担行為として、新たに二十一億三千万円が予定されております。  以上をもちまして、昭和四十九年度の環境庁関係予算案の御説明を終わります。     —————————————
  4. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、昭和四十九年度環境保全関係省庁予算について、便宜環境庁から説明を求めます。城戸企画調整局長
  5. 城戸謙次

    城戸政府委員 各省庁昭和四十九年度環境保全経費等概要について御説明いたします。  まず、歳出予算について御説明いたします。  昭和四十九年度における環境保全経費総額は三千四百二十一億円となり、前年度の当初予算に比べ六百七十七億円、二四・七%の増加となっております。  このうち、一般会計分は三千百四十五億円と、前年度の当初予算に比べ六百二十億円の増加となっており、各特別会計分は二百七十六億円と、前年度の当初予算に比べ五十七億円の増加となっおります。  次に、事項別予算の主要な項目について御説明申し上げます。  第一に、各種基準等設定につきましては、総額五億六千六百万円を計上しております。この経費は、環境庁等におきまして、環境基準及び排出基準設定等推進をはかるためのものであります。  第二に、監視取り締まり強化につきましては、総額三十四億九千二百万円を計上しております。  このうち、主要なものといたしましては、まず、環境庁におきまして、大気汚染及び水質汚濁の状況を監視測定するため、大気汚染監視設備整備費等九億一千四百万円、水質環境基準監視費等四億一千三百万円を計上しております。  また、各種化学物質による環境汚染防止するため、環境庁厚生省及び通商産業省におきまして、化学物質審査規制対策費三億一千二百万円を、運輸省におきまして、自動車排出ガス検査体制整備をはかるための経費六億三千六百万円、海上公害監視取り締まり体制整備をはかるための経費三億一千五百万円をそれぞれ計上しております。  第三に、公害防止事業助成につきましては、総額五十二億三千五百万円を計上しております。  このうち、主要なものといたしましては、まず、環境庁におきまして、公害防止事業団助成等経費十五億九千百万円を計上しております。また、農林省におきましては、漁業に係る公害防止漁場環境維持保全等のための経費十億三千万円、赤潮被害をてん補するための養殖共済における特約の創設に要する経費一億四千八百万円を計上するとともに、悪臭等畜産公害防止をはかるため、畜産経営環境保全集落群育成費七億三千五百万円を計上しております。さらに、通商産業省におきましては、金属鉱山による鉱害防止するため、金属鉱業事業団運営費三億八千百万円を計上しております。  第四に、公害防止関係公共事業等推進につきましては、総額二千七百二十一億五千八百万円を計上しております。  このうち、主要なものといたしましては、まず、下水道整備促進するため、建設省等におきまして、下水道事業費一千八百八十三億八千七百万円を計上するとともに、特に来年度からは、国庫補助率を大幅に引き上げることといたしております。  また、廃棄物処理施設整備促進するため、厚生省運輸省等におきまして、廃棄物処理施設整備費二百十五億九千二百万円を計上しております。  次に、特に最近におけるヘドロ汚染農用地土壌汚染等いわゆる蓄積性汚染の問題に対処するため、農林省におきましては、カドミウム等による汚染農用地客土事業等に要する経費として二億五千三百万円を、運輸省におきましては、港湾内の汚泥しゅんせつ事業に要する経費として、十五億六千三百万円をそれぞれ計上しております。さらに、通商産業省におきましては、休廃止鉱山における鉱害防止事業に要する経費として十二億五千百万円を、運輸省におきましては、一般海域清掃事業費として七億五千万円を、また、建設省におきましては、海底浄化対策事業費として一千万円をそれぞれ計上しております。  また、防衛施設周辺及び公共用飛行場周辺における騒音問題に対処するため、学校等防音工事助成、家屋の移転補償等を行なうこととし、防衛施設庁におきまして、二百四十四億三千八百万円、運輸省におきまして、百三十七億円をそれぞれ計上しております。  このほか、都市における産業公害防止するための緩衝緑地整備事業費として、建設省におきまして、二十七億五千五百万円を計上し、また、地盤沈下防止対策として、農林省におきまして、新潟地域特殊排水事業費十九億二千八百万円、通商産業省におきまして、工業用水道事業費二十六億七百万円、建設省におきまして、高潮対策事業費二十八億一千九百万円等をそれぞれ計上しております。  第五に、公害防止調査研究推進につきましては、総額百八十一億一千八百万円を計上しております。  このうち、主要なものといたしましては、まず、環境庁におきまして、各省庁試験研究機関等における公害関係試験研究総合的推進をはかるための経費として二十五億四千百万円、公害研究所に必要な経費として五億六千三百万円を計上しております。  次に、農林漁業における環境保全的技術に関する総合研究推進するため、農林省におきまして、四億四千二百万円の経費を計上しております。  さらに通商産業省におきましては、産業公害防止技術開発促進するため、重要技術研究開発費補助金二十二億二千万円を計上し、窒素酸化物除去技術等開発を重点的に進めるとともに、太陽エネルギー等の無公害な新エネルギー開発推進するため、新エネルギー技術研究開発費二十二億七千万円を計上しております。また、金属鉱業における坑廃水対策及び蓄積鉱害対策のための調査研究推進するため、三千五百万円の経費を計上しております。  第六に、公害被害者保護対策充実につきましては、総額三十三億三千百万円を計上しております。  このうち、主要なものといたしましては、まず、環境庁におきまして、公害健康被害補償対策のために必要な経費として十八億八千六百万円を計上しております。  また、昭和四十八年度に水銀PCB等被害漁業者等に対して行なった融資に対する利子補給に要する経費等について、助成を行なうための経費として、農林省におきまして十億二千五百万円を、通商産業省におきまして一億七千六百万円を、それぞれ計上しております。  このほか、新たに原因者不明の漁場の油濁による被害を救済するための経費として、農林省におきまして四千万円を計上しております。  第七に、自然保護対策推進につきましては、総額三百五十九億二千四百万円を計上しております。  このうち、主要なものといたしましては、まず、自然公園等維持管理及び鳥獣保護対策充実をはかるため、環境庁におきまして、四億九千三百万円を計上しております。  また、都市環境緑化等推進するため、建設省等におきまして、公園事業費二百二十九億七千五百万円を計上しております。  次に、自然環境の中で良好なレクリエーション施設整備するため、環境庁におきましては、自然公園等施設整備費二十二億九千九百万円を、運輸省におきましては、観光レクリエーション施設整備費二億一千七百万円を計上しております。  さらに、開発等に対して自然環境や史跡を保護するため、民有地買い上げを実施することとし、環境庁におきましては、総額六十億円の交付公債を予定し、これに必要な経費として四億八千百万円を、また、文部省におきましては、三十七億円の経費を計上しております。  このほか、港湾における緑地遊歩道等整備するため、運輸省におきましては、二十三億七千百万円の経費を、また海岸の環境整備をはかり、その利用の増進に資するため、運輸省建設省等におきまして六億六百万円の経費を計上しております。  以上に申し上げました事項のほか、主要なものといたしましては、大気汚染地域等における公立小中学校等児童生徒特別健康診断移動教室及び学校環境緑化促進事業等推進するための経費として、文部省におきまして五億五千百万円を、廃棄物対策の一環として、紙類の回収及び再生利用促進のための経費として、通商産業省におきまして一億七千百万円を、それぞれ計上しております。  次に、公害防止関係財政投融資について御説明いたします。  昭和四十九年度における公害防止関係財政投融資は、全体として、事業規模または貸し付け規模において、総額五千三百二十二億円を予定し、前年度の当初計画に比べて四百四十六億円の増加となっております。  まず、公害防止事業団におきましては、事業規模において八百二十億円と、前年度に比べて九十億円の増加をはかり、中小企業等公害防止施設整備等促進することとしております。  また、日本開発銀行におきましては、貸し付け規模において千八十億円と前年度に比べ四百三十億円の増加をはかり、水銀汚染防止のための苛性ソーダ製法転換等を重点的に推進することとしております、苛性ソーダー製法転換につきましては、北海道東北開発公庫におきましても、四十億円の貸し付け規模を予定しております。  次に、中小企業金融公庫におきましては、貸し付け規模を二百億円に、国民金融公庫におきましては、貸し付け規模を四十億円にそれぞれ拡充することとしております。また、農林漁業金融公庫におきましては、畜産経営環境保全施設に関し、二十九億円の貸し付け規模を、金属鉱業事業団におきましては、金属等鉱山鉱害防止工事に関し、二十二億円の貸し付け規模を、また、日本私学振興財団におきましては、私立学校防音工事等に関し四億円の貸し付け規模をそれぞれ予定しております。さらに、東北開発株式会社におきましても、騒音防止工事に関し四億円を予定しております。  このほか、地方公共団体下水道整備廃棄物処理施設整備等事業推進するため、地方債計画において三千八十三億円を予定しております。  最後に、公害防止関係税制改正措置について、その主要なものについて御説明いたします。  まず、公害防止準備金制度並びに公害防止施設及び無公害化生産設備特別償却制度については、対象となる業種または施設の拡大をはかるとともに、適用期限の到来するものについては、これを二年延長することとしております。  また、廃棄物再生利用設備について、初年度三分の一の特別償却制度を創設するとともに、工場緑化費用について、短期償却を認めることとしております。  さらに、金属鉱山等事業者金属鉱業事業団に積み立てる鉱害防止積み立て金について、課税の特例を認めることとしております。  最後に、公害防止事業団から事業協同組合等譲渡を受けた土地をその組合等から再譲渡により組合員等が取得する場合の登録免許税の税率の軽減措置について、共同利用建物の敷地の用に供する土地をその対象に加えることといたしております。  以上をもちまして、各省庁昭和四十九年度環境保全経費等の御説明を終わります。
  6. 角屋堅次郎

    角屋委員長 以上で予算説明は終わりました。     —————————————
  7. 角屋堅次郎

  8. 小澤文雄

    小澤(文)政府委員 ただいまから公害等調整委員会が所掌しております公害紛争処理に関する事務概況につきまして説明申し上げます。  公害等調整委員会は、一昨年の第六十八国会において制定されました公害等調整委員会設置法により、従前中央公害審査委員会土地調整委員会とが統合されまして、総理府の外局たる行政委員会として一昨年七月一日から新しく発足いたしたものであります。公害等調整委員会は、公害紛争処理法の定めるところにより公害に係る被害に関する民事上の紛争について調停仲裁及び裁定を行なうとともに、地方公共団体が行なう公害に関する苦情処理について指導等を行なうほか、なお、従前土地調整委員会任務権限であった鉱業採石業または砂利採取業一般公益等との調整をはかるという職務も行なっております。  続きまして、これらの事務の概略について説明申し上げます。  第一に、公害等調整委員会が行ないます公害紛争についての調停及び仲裁は、ともに、紛争解決基礎当事者の合意に求めるものでございますが、当委員会が管轄する公害紛争は、人の生命、健康に重大な被害を生ずる公害に関する紛争農物作魚介類など、人の生活に密接な関係を有する動植物に一億円以上の被害を生ずる公害に関する紛争新幹線鉄道及び航空機の運行により生ずる騒音に関する紛争及び被害地加害地が二つ以上の都道府県の区域にまたがる公害に関する紛争でありまして、いずれも、社会的に重大な影響を有し、かつ、広域的な見地から処理することが適当と考えられるものであります。なお当委員会の管轄に属さない公害紛争につきましては、公害紛争処理法に基づいて全国の都道府県が設けております都道府県公害審査委員会等が行なう和解の仲介、調停及び仲裁手続によって処理されております。  第二は、公害紛争についての裁定でございますが、これには、責任裁定原因裁定の二種類がありまして、ともに訴訟手続に準じた手続によって紛争処理することとなっております。まず、責任裁定と申しますのは、公害による被害について損害賠償に関する紛争が生じた場合に、被害者からの申請に基づいて、その相手方の損害賠償責任有無及びその範囲について判断するものであります。一方、原因裁定と申しますのは、公害紛争においてその解明が困難で、当事者間の争いの中心となることが多い被害加害行為との間の因果関係について、当事者からの申請に基づいて、その有無を明らかにする裁定でありまして、公害紛争の特質を踏まえて設けられた制度であります。  第三の事務は、地方公共団体が行なう公害に関する苦情処理について指導等を行なうことであります。住民から申し立てられる公害に関する苦情の数は、その地域の環境問題の指標的な意味を持つものでありますと同時に、また、公害苦情公害紛争の前段階的な性格を有しているものでありますので、その適切な処理をはかることは、公害紛争の発生の事前防止という面におきまして、きわめて重要な機能を果たすものであります。このような公害苦情の適正な処理重要性にかんがみ、公害紛争処理法においては、これに当たるべき地方公共団体の責務を明らかにし、公害苦情相談員制度を定めておりますが、公害等調整委員会は、地方公共団体が行なう公害苦情処理について指導、助言、協力等をすることとなっております。  次に、最近までの当委員会事務処理概要説明申し上げます。  公害紛争処理に関しましては、当委員会に係属しましたものは五十件でありまして、いずれも調停申請であります。そのうち十件は、従前中央公害審査委員会から引き継いだもので、残る四十件が、公害等調整委員会の発足後申請されたものであります。  これら五十件の調停申請公害事件別に見ますと、不知火海沿岸における水質汚濁による水俣事件が三十六件、渡良瀬川沿岸における鉱毒による農業被害事件四件、大阪国際空港周辺地域における騒音による生活環境被害事件六件、徳山湾における水質汚濁による漁業被害事件一件、燧灘東部海域における水質汚濁による漁業被害事件一件及び鹿児島湾における水質汚濁による真珠養殖不能事件二件でありまして、これらを通じ申請人の総数は約一万二千六百人の多数にのぼっております。  これらのうち、紛争処理が終結しましたものは十一件で、うち九件は調停が成立し、一件は県公害審査会に移送、一件は申請の取り下げがあったものであります。調停が成立した九件の内訳は、不知火海沿岸における水質汚濁による水俣病事件八件、これは患者数七十五名でございます。燧灘東部海域における水質汚濁による漁業被害事件一件でございますが、これらの事件は、調停申請後約一年半で終結いたしました。  一方、申請の取り下げのあった一件は、鹿児島湾における水質汚濁による真珠養殖不能事件でございますが、本件は、調停委員会の提示した調停方針に基づいて当事者間に和解契約が成立した結果、申請が取り下げられたものであります。その他の事件は、目下鋭意調停手続を進めているところでございます。  また、最近取りまとめを終わりました昭和四十七年度の全国の公害苦情の総件数は、約八万八千件となっておりまして、前年度に比べて約一五%増加しております。これらを公害の種類別に見ますと、騒音、振動に関する苦情が三二%で最も多く、次いで、悪臭二五%、大気汚染一七%、水質汚濁一六%の順であり、これらで全体の約九割を占めております。  引き続き、昭和四十九年度の公害等調整委員会予算案につきまして、その概要説明申し上げます。  昭和四十九年度の総理府所管一般会計歳出予算のうち公害等調整委員会予算総額は、二億三百七十九万二千円でありまして、これを前年度の歳出予算額一億八千九百四十三万九千円と比較いたしますと、一千四百三十五万三千円の増額となっておりまして、そのうち主たるものは、公害因果関係の解明に要する調査のうち、特に専門的、技術的要素の強いものを外部の研究機関に委託するための公害紛争調査経費、及び公害苦情処理について地方公共団体の職員に対する研修指導等を実施するための公害苦情相談制度経費であります。さらに昭和四十九年度においては定員を三名増員することにより、事務局機構の整備拡充をはかることにしております。  以上が、公害等調整委員会が行なってまいりました公害紛争処理に関する事務概況及び昭和四十九年度の予算案の大要でございます。  なお、現在、当委員会において紛争処理制度強化充実をはかるため、あっせんの制度を導入する等を内容とする公害紛争処理法の一部改正について検討を進めておりまして、追って所定の手続を経て今国会に提出し、御審議をいただく予定でございますので、何とぞよろしくお願いいたします。
  9. 角屋堅次郎

    角屋委員長 以上で、公害等調整委員会公害紛争処理に関する事務概況説明は終わりました。      ————◇—————
  10. 角屋堅次郎

    角屋委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  公害対策並びに環境保全に関する件について、本日、参考人として、公害防止事業団理事長江口俊男君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 角屋堅次郎

    角屋委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決しました。     —————————————
  12. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次に、公害防止事業団事業概要について、参考人江口理事長から説明を聴取いたします。公害防止事業団理事長江口俊男君。
  13. 江口俊男

    ○江口参考人 公害防止事業団理事長でございます。  事業団の事業概況と、四十九年度の予算案の概要につきまして御説明をいたします。  まず、食害防止事業のこれまでの実施状況につきましては、公害防止事業団昭和四十年十月一日に設立を見まして以来、昨年の暮れまで、およそ八年有余の間に、造成建設事業におきまして八十六件、約七百億円、貸し付け事業におきまして千三百四十六件、約千三百五十億円、合計いたしますと約二千五十億円に及ぶ事業を手がけてまいった次第でございます。  当事業団が行なっております造成建設事業には、御手元にお配りをいたしております資料の二枚目にございますように、共同公害防止施設の設置・譲渡共同利用建物の設置・譲渡、工場移転用地の造成・譲渡及び共同福利施設の設置・譲渡の四つがございます。  共同公害防止施設に関しましては、三重県四日市の共同排水処理施設など十五件につきまして、建設業務の受託及び譲渡契約を結び、十七億円を投じまして、すでに十件について完成譲渡いたしております。  共同利用建物につきましては、神戸のゴム工場アパートなど十四件、約六十七億円につきまして契約をし、そのうち十件が完成を見ております。  工場移転用地は、契約四十一件中、三十四件がすでに完成しておりまして、事業費はおよそ二百九十億円に達しております。  また、公害が発生するおそれが特に著しい地域に、工業地域と住居地域とを遮断するためのいわゆる緩衝緑地地帯を設ける共同福利施設としては、市原、四日市、徳山等八件がすでに完成しまして、現在鹿島、鶴崎など七地区で工事を行なっております。この事業費は総計約三百二十五億円に達する見込みでございます。  一方、貸し付け事業のほうでございますが、昭和四十一年度は十三件、二十四億円というわずかな額でございましたが、ここ数年、公害が大きな社会問題となるに従いまして、企業からの借り入れ申し込みも殺到し、資料の二枚目にございますように、年間約三百数十億円の貸し付け実績をあげるようになりましたが、本年度は十二月末までに、すでに二百七十件、約三百六十五億円の貸し付け決定が行なわれるに至っております。  これらの建設施設の内容や貸し付けの対象につきましては、御参考までに御配付いたしました当事業団の「業務案内」の一三ページ以降に掲げてございますので、後刻御参照願えばありがたいと思います。  次に、当事業団の昭和四十九年度予算案について御説明をいたします。  まず、事業費は、お配りしました資料の一枚目にありますように、契約ベースで八百二十億円、その内訳は、造成建設事業二百二十億円、貸し付け事業六百億円であります。これは、四十八年度の事業費総額七百三十億円、その内訳、造成建設事業費百八十億円、貸し付け事業費五百五十億円と比較いたしますと、総額で一二・三%、造成建設事業で二二・二%、貸し付け事業で九・一%の伸び率と相なっております。  また、資金ベースでは、七百七十三億円、財投資金借入額では六百三億円でありまして、これは前年度の六百九十二億円及び五百七十億円と比較しまして資金ベースで二・七%、財投資金額で五・七%の伸び率となっております。  さらに、事業団の実施する事業のうち、共同福利施設、いわゆる緩衝緑地の建設につきましては、その高度の公共性にかんがみまして、毎年国庫補助金が交付されてまいりましたが、昭和四十九年度も二十七億五千万円余の補助が行なわれる予定に相なっております。  以上のような事業量の増大に応じ、それを遂行するための事務費等として、人員二名の増員等を含めて十五億八千九百万円余の交付金予算となっております。  以上が、簡単でございますが、当事業団の事業概要と、四十九年度の予算案の概要でございます。  よろしく御審議をお願いいたします。
  14. 角屋堅次郎

    角屋委員長 以上で公害防止事業団事業概要説明は終わりました。  この際、暫時休憩いたします。     午前十一時十八分休憩      ————◇—————     午後二時四十六分開議
  15. 角屋堅次郎

    角屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、連合審査会開会申し入れの件についておはかりいたします。  運輸委員会において審査中の公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律の一部を改正する法律案について、運輸委員会に連合審査会の開会申し入れをいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 角屋堅次郎

    角屋委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決定いたしました。  なお、連合審査会の開会日時等につきましては、委員長間の協議により決定されますので、さよう御了承願います。      ————◇—————
  17. 角屋堅次郎

    角屋委員長 公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。
  18. 林義郎

    ○林(義)委員 第七十二国会の当委員会の審議の最初にあたりまして、環境庁長官にいろいろと御所信を承りまして、これにつきまして、私ももう少し突っ込んだ大臣のお話を聞かせていただきたい、こう思って質問に立った次第であります。  その前に一つ、私は、委員長にお願いをしておきたいことがあるのです。  当委員会、いままでずっと継続して私も出ておりましたけれども、政府側の答弁を聞いておりますと、問題につきましては、よく検討しますとかというような答弁が非常に多いわけであります。ところが、その検討いたしますというのは、単に検討するにとどまりまして、全部ができているかどうか、なかなかこれははっきりしてない点が私はたくさんあるのだろうと思うのです、委員長におかれまして、調査室もあることでございますから、現在までのこの委員会において検討中というやつを全部一ぺん資料を整理していただきたい。そうして、この前の選挙のときですから、四十七年の当初の国会のときからの検討事項というのがだいぶ残っておりますから、これを整理していただきまして、政府当局ともお打ち合わせの上で、検討がどういうふうになっているか、この辺のひとつ資料を私は出していただきたい。これを委員長にお願いしておきたいと思いますが、委員長、いかがでございましょうか。
  19. 角屋堅次郎

    角屋委員長 ただいま林先生からお申し出の委員長に対する件につきましては、御趣旨ごもっともだと存じますので、委員会等にも御相談申し上げまして善処いたしたいと存じます。
  20. 林義郎

    ○林(義)委員 理事会でおそらくお話し合いをするということになるだろうと思いますが、私は環境問題というのは、一つ一つのものの積み重ねであります。そういった一つ一つのものの積み重ねを小まめにやっていくということが、ほんとうの実のある環境行政の大前提だろう、こう私は思いますから、ぜひそれをお願いしておきたいと思います。  大臣の御所信を拝見いたしまして、大臣、中東にもわざわざおいでになりまして、石油の問題ということで、昨年は国内はたいへんな騒動でありました。新聞等によりますと、いまごろはもう日本はパニックになっている、こういうふうな新聞もあったわけであります。幸いにいたしましてパニックでもなくて、こういうふうな形で審議をしておるわけでありますが、やはり、石油の問題を私考えますのに、国際政治の上におきましても、たいへん大きな変革だろうと思うのであります。米ソという対立の問題と同時に、やはり新しい南、あるいはもう少し狭く言うならばアラブとの話し合いというものが、これからますます必要になってまいりますし、いままでは油というものが非常に安く買えたのだということでございますが、なかなかそうはいかなくなってきたという時代に来ておりますから、これに対して、どういうふうに対処していくかというのが外交問題として非常に大きな問題だろう、こう思うのであります。と同時に、国内におきましても、そういったふうに非常に不安定な資源になってきておる。いままでは非常に安定かつ低廉な資源である、こういうふうに考えられておりましたのが、不安定かつ高価な資源になってくるということでありますから、当然に国内の産業体制、さらには消費構造自体も変えていかなければならない時期だろうと私は思うのであります。その際に、ひとつ考えていかなければならないのは、自由主義社会の持っておるところのプライスメカニズムというものをできるだけ生かしていくということが必要だろうと私は思うのであります。  非常に簡単な例を引いて恐縮でありますけれども、たとえて言うならば、石油が非常に上がるならば、自動車のガソリンにつきましても値段を高くするとか、あるいはガソリン税を高くしていくというような形でもろての間接的な消費規制というものも、やはり当然に考えていかなければならない問題だろうと私は思うのであります。  単に石油が公害の発生の原因であるということだけではない。やはり資源をどういうふうに使っていくかということを考えていかなければならない時期に来ているのではないか、こう思いますし、そういった新しい時代についてのお取り組みを、これからどういうふうに政府のほうでされるのか。いままでのものを少し手直ししてやったのでは、なかなかいかないのではないか、こう思っております。三木長官は副総理もやっておられますから、そういった高いお立場からひとつ御所見を賜われば幸いと存じます。
  21. 三木武夫

    ○三木国務大臣 この石油の問題というのが大きな世界的な問題になってきたのは、石油がもう完全な売り手市場になった。いままでは金さえ持っていければ幾らでも自由に石油が買えたわけです。ところが産油国自身とすれば、これはやがて枯渇する資源である。だから、できるだけその資源を大切に使おう、細く長くそれを使おうという資源保全の考え方というものが産油国に強くなってきておる。  もう一つは、他の工業製品の値上がりに比べて、石油というものは安過ぎた。それは、昭和四十六年度は一バーレル当たり一ドル台ですからね。四十七年度になってきて二ドル台になった。それが、この石油の危機になってきてから、去年の十月、十一月ごろから急激に上がって、去年の十二月には四ドル台になった。いま九ドルをこえて九ドル五十セントとかそういうふうにいわれておるような時代で、あまりにも急激に値上がりをしてきたわけですが、この石油の価格というものは、産油国自身も自分の首を絞めるものですからね。それは何かといったら、工業製品は買うわけですから、石油の価格が高くなれば工業製品の価格も上がってくる。やがて工業化をやりたいという産油国自身も、その値上がりの余波を受けるわけですから、高ければいいというものではない。その間やはり適正な石油の価格というものが世界的に見出されなければならぬ。産油国自身でも、ウィーンで産油国会議の中に経済委員会というものを置いて、石油の適正な価格というものはどうしてきめるかということを研究をしている。  また消費国自身でも、この石油の価格というのは国際収支の面でも大きな問題を投げかけますから、これはやはりいまは消費国の大問題です。だから、産油国も消費国もともに、適正な石油の価格というものは世界的な課題である。これはやがて適正な価格で一応安定するでしょうが、言えることは、石油は昔のように安いものではなくなるのだ、いまの水準から昔の水準に返ることはない、これはやはり相当に高い一つの資源、高くつく資源であるということを考えなければならぬわけですから、だからここで日本は国際収支の問題が起こってくるわけです。  さしあたり、去年の数量をことしも続けて輸入すれば百億ドルぐらいは外貨の持ち出しが多くなるわけですから、そういうことを考えてみますと、まあ一つには輸出をして、そうして輸出ドライブをかけて国際収支の赤をカバーしていくという方法はあるにしても、あまりそのドライブをかければ、それはせっかく鎮静してある国際日本商品のアメリカ市場とかヨーロッパ市場が、また非常な緊張状態に入りますから、そういうことはできないし、一方において、だから輸出は伸ばさなければならぬけれども、節度のある輸出というものをやっていかなければならぬというわけですね。  一方においては、やはり生産力は維持せなければならぬけれども、なるべくやはり石油の消費を少なくしていくということで、日本のように毎年二〇%も石油の消費量がふえるわけですからね。こういう状態になれば、世界の石油の半分は日本が輸入してこなければならぬわけで、そんなことはできるわけではないのですから、やはり産業においてもできるだけ石油というものを、省エネルギーといいますか、そういう産業構造に変えていく。また国民生活もこの大量消費、大量使い捨てといいますか、これをやめて、もう少し簡素な国民生活というものを再評価をする必要があるのではないか。  そういうことで、産業と国民生活の面からできるだけ石油の消費を少なくしていくということでいくよりほかにはない。いま供給の面では、もう供給はやはり確保できたのですよ、価格の問題で問題はあるにしても、供給は確保できたけれども、せっかくこの石油危機を通じて石油の消費を節約しようというこの機運は、これはもう石油が入ることになったということでもとに返さないほうがいい、やはり原則としての、石油の消費を節約していこうというこの機運は生かしたほうがいい、こう考えるのであります。  だから、いままではみな演説では、技術や国民の頭脳に依存した産業構造に変えなければいかぬという演説はみなやっているのですが、実感がなかったわけです。今度は実感をもってやはりそういうことでなければいかぬなということをみな感じてきたわけですが、この問題は急激にはできないですから、計画的に年限をかけて移っていかなければならぬが、そういうことに対して、せっかく石油の危機というものが一面からいったら国民生活を混乱さしたけれども、一面においてはこのことは大きな教訓を受けておる。その教訓というものを生かさなければならない。そういう点で、いま言ったような省エネルギー、こういうことが国民生活にも、産業構造の中にも、この教訓を生かしてやらなければいかぬということが、まあ私はいま石油の危機を通じて考えさせられる点でございます。
  22. 林義郎

    ○林(義)委員 もう少し私は問題をしぼりまして、石油というものが非常なエネルギー源になっている。それからいろいろな資源になっておりますが、公害という問題と、要するに資源論というものは若干違ったところがあると思うのです。お互いの大気や水をきれいにしていこう、こういう一つの大きなねらいがありますし、それに重点を置いていかなければならない。いみじくも長官がおっしゃいましたとおり、いままではみな演説の中ではぶっておったけれども、実感として持っていなかった、こういうお話でありますが、やはりこれを私は実感として持っていくためには相当なことをやっていかなければならないと思うのです。  当委員会におきましても、きょうは私に与えられた時間あまりございませんから、ゆっくりお話しする時間ありませんが、一つには、私は大きく技術革新というものをやっていかなければならない、石油依存の技術体系から、石油にできるだけ依存しないような技術のほうが価値がある、そういったことにしたほうがもうかるだろうということが一つ問題と、それからいわゆる環境アセスメントの手法というものをやっていきまして、しかもこれがプライスメカニズムの中に入っていってやれるような体系というものをつくる必要があるだろうと思うのであります。  特に公害の問題として言うならば、過疎過密の問題があります。この総量規制方式を採用するということが今回うたわれておりますけれども、総量規制方式ということになりますと、やはり取り組んでいかなければならないのは、過密問題の解消というのが私は大きな政策的な課題だろうと思うのであります。単に大気の問題を煙突についてどういうふうな割り当てをするというような技術的な問題ではなくて、過密をどう解決していくか、スラム街になっているところをどう解決していくかという広い観点から問題を取り上げていかなければならない。そこには単に工場だけの問題ではないと思うのであります。非常にたくさんの自動車が走る、お互いの生活環境というのが非常に悪くて、長屋のようなところに住んでいるというような人がたくさんあります。そういったものも一緒に、ほんとうに住みよい豊かな国土をつくっていく、豊かな生活環境をつくっていくということで私はいろいろな施策というものを進めていく必要があるだろうと思うのです。  そういったふうに私は考えますので、きょうはあまり時間もないようでありますから、大臣の御所信を聞きまして、またいずれの機会にゆっくりとお話を承りたい、こう思いますので、よろしくお願いいたします。
  23. 三木武夫

    ○三木国務大臣 お説のとおりだと思います。  私は、短期的ないま資源の問題というのはたいへん大きな日本の、石油ばかりでなしに、ほかの資源もみな輸入しておるのですが、石油のような資源保全の考え方というものは、ほかの資源にもやはりそれは波及していくでしょう。大問題です。少し長期的な展望に立てば、林委員の言われるように、いわゆる無公害エネルギー開発するということがこれは環境問題から考えても一番好ましいことですから、これは相当な研究開発のための費用をつぎ込んで、アメリカなどでも一九八〇年が来たら、エネルギーは自給しようという計画で、アポロ計画のような集中した大じかけな計画を立てておるようでありますが、日本の場合は、これだけやはり公害の問題というのがやかましい国でもありますから、無公害エネルギー開発ということは、これは非常に長期的に見れば力を入れなければならない。いますぐにこれが解決できるとは思わない。相当やはり長期の計画の上に立たなければならないと思います。  また、いま総量規制の問題も、これはできた規制の事実の上に立って環境を保全していこうというのですから、やはり産業立地のときからそういうふうに考えないと、あとからよごれる程度を規制していこうということは消極的になりますから、言われるとおり、もうそれは工場でも、あるいは空港でも、あるいは新幹線の場合でも、みなこう立地的な条件から問題を考えていくということでないと、環境の保全というものは何年たってもいわゆる根本的な解決にはつながりませんから、御指摘のようなそういう問題を根本にさかのぼって環境保全というものを考えていくということが必要であるし、また技術開発を通じて無公害エネルギー開発するということは、長期的に見てもまさしく問題の核心であろう、林委員のお説には全く同感でございます。
  24. 角屋堅次郎

    角屋委員長 林委員に一言申し上げます。  理事会で御相談申し上げました審議時間についてたいへん御無理を申し上げまして、恐縮でございました。御協力を感謝いたします      ————◇—————
  25. 角屋堅次郎

    角屋委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  公害対策並びに環境保全に関する件について、本日、参考人として、本州四国連絡橋公団総裁富樫凱一君、理事渋谷正敏君、理事蓑輪健二郎君、理事田中行男君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 角屋堅次郎

    角屋委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決しました。     —————————————
  27. 角屋堅次郎

    角屋委員長 質疑を続行いたします。島本虎三君。
  28. 島本虎三

    ○島本委員 大臣の時間も限定されておるようでありまして、質問が限定されることは、まことに遺憾なのでありますが、委員長の仰せのとおりに従いまして、逐次質問を展開してまいりたいと思います。  まず環境庁長官の所信表明、これを見まして、書かれている字句がわりあいに優秀であるということに対して私は敬意を表しました。ただ、この中で、いままでは環境庁がある以上環境保全を先にした、環境をおかされたものの公害対策はそれの次に来ておった。したがいましてアセスメントということばも出てき、それに対する対策もこう載っているわけであります。今回は公害対策を先にして、一番最後にこの「美しい国土、豊かな自然を保護し、」という環境保全行政を入れたということは、何かこれは意義が別にあるのでしょうか、ないのでしょうか。まず形態が変わりましたので、この点について、ひとつ具体的にお伺いいたします。
  29. 三木武夫

    ○三木国務大臣 日本式な表現方法として、一番大事なことを最後に言うという場合もあるわけです。そういう場合が多いです。一番大事なことを最後に言う場合もあるわけでございまして、決して環境の保全というものをおろそかにして、そのあと追いのような公害対策ばかりが環境行政の、これが一番の基本であるという考え方ではないということでございます。
  30. 島本虎三

    ○島本委員 したがいまして、やはり環境保全を優先すべきである、これが全部に貫かれて、最後に持ってきたのは、これは一番おいしいお菓子は最後に食べるものであるという古い伝統にのっとって持ってきたものである、こういうようにひとつ私は理解して、この軽重はむしろ最後に持ってきたことによって意義があるのだ、こういうように解釈してよろしゅうございますか。——それを承って一応安心するわけであります。  では、まず、環境保全対策について伺いますが、自然公害環境というものは破壊しないことが前提であり、原則であります。そしてアセスメント、これを口にするときは、破壊を最小限度に食いとめるための一つの方便として、こういうものが成立してくるわけであります。したがいまして、この自然環境保全には、アセスメントを必要とする事態をつくらないことが一番なんだ。そのためにこそ、数次にわたって環境保全法の改正であるとか、または政府が、いろいろ困難な点もあったのを議員立法として瀬戸内海環境保全臨時措置法、こういうようなものの成立を促進させたりしたことは御存じのとおりなのであります。したがって、自然環境を悪化させないということ、これがまず前提条件であり、すべての事業もそれから出発するものである、こう考えておりますが、長官は、この考えには異議ございましょうか。
  31. 三木武夫

    ○三木国務大臣 自然環境というものは、手をつけたらいけないんだ、現状の形において保存をしなければ、自然環境の保全にはならぬのだということには賛成できません。自然環境は創造の面もありますし、あるいはまた自然環境を変化をさして、より人間生活に有用な他の面に転用する場合もあるでしょう。したがって、自然環境をできるだけ保全をするということが必要であるということは、お説のとおりですけれども、そのことは、そのままに置かなければいかぬのだということでは現実的でないと思う場合があると私は思います。
  32. 島本虎三

    ○島本委員 自然公園の中には特別地域、これは一種、二種、三種、こういうように区別されてあって、一番重要なのは第一種特別地域である。これはもうすでに、われわれとしては言うこともないほど了解しているところであります。このような地域に対しては、特別の保護を加える、またそれに対しては逆に破壊させないようにするのが第一番だ、こういうようなことであろうと思います。私どもとしては、このために環境庁があり、そのために施政方針があり、このように意義づけられるものである、こういうように思ってやってきたわけです。  私はそのために、ひとつはっきり聞いておきたいことがあるのです。いままだ建設大臣は見えておりません。追って来ることになっておりますが、急いで呼んでもらいたい。おそくても三十分までに来るということであります。  本四連絡橋は、瀬戸内海の景観に対しては一つの革命的な変革を来たすことになるわけです。そして景観的革命は、そのまま公園概念の否定ないし改変につながる、こういうようなことにも学術的に論述されております。こういうような点からして、本四連絡橋の肯定は自然環境を基調とする国立公園概念の否定につながるものである、国立公園概念の強調は逆に本四連絡橋の否定である、こういうように言われておりますけれども、公団のほうでは、こういうような点に対していろいろ調べて、そして調書をおつくりになっていることだと思うのです。この自然環境保全について、本四連絡橋がどのような影響を及ぼすものであるか、これを十分調査されてございましょうか。そして、あるとするならば、これらについてどういうような措置を考えられているのか、ちょっと御説明願いたいと思います。
  33. 富樫凱一

    ○富樫参考人 本四連絡橋が瀬戸内海の国立公園にどういう影響を与えるであろうか、この点に関しまして国立公園協会にお願いいたしまして、四十七年度から調査をいたしております。その中間的な報告がございますが、これによりますといま言われたように、自然公園というものを残すということでありますと、これは架橋とは一致しないわけでありますから、架橋が否定されることになるわけでございますが、しかしまた架橋は一方の見方からいたしますと、人工景観ということで優秀な景観をつくり出すということにもなるわけでございます。この点について自然公園と架橋とともにあり得る、協調できるところがあるであろう、こう考えるわけでございます。  その方策といたしまして、橋梁自体に景観的なくふうをこらすと同時に、それに連絡する道路等は道路公園というような観念でこれを修景していけば、国立公園の名に恥じないであろう、こういうようにいわれておるわけでございます。私どももそう考えるわけでございますが、いよいよ工事にかかりますには、工事の内容を環境庁に協議いたしまして、その結果によってかかることになるわけでございますが、私どもとしましては、自然公園と架橋と協調できる点があると考えておるわけでございます。
  34. 島本虎三

    ○島本委員 そういたしますと、その点については、私どもこの自然公園のいわゆる特別地域、こういうようなものに対しては最も関心を寄せなければならない点であります。この中で一番懸念しておるものは、どの橋も特定の一つを除いては、このうちの一番重要な特別地域、ここを通ることになるわけです。触れないほうが望ましいというところを全部通ることになるわけです。ここを通らないで、景観を害さないで、そしてりっぱな景観を保持したままで架橋はできないものかどうか、その辺まで十分考えておられるかどうか、この辺が私は問題だと思うのであります。  最も近く、そして最も効率的にというと、最も美しい景観を破壊することになる。この点についてのそれぞれの要求はあるでしょう、技術もあるでしょう。しかし、そのためにこそわれわれとしては、いままで自然景観の保存であるとか、これのために努力してきておるわけでありますから、せっかくそれを行なって臨時立法まで時限立法でありますけれども、これをやって、そのあとで一年間延期している。そのあとにこそこの景観維持、そして環境保持、こういうような点で十分想を練るべきじゃないか、こう思うわけであります。  したがいまして、いますぐ着工するのでなければ、時期がはっきりあるわけです。この三つの点について、やはりいま言ったようにして、自然環境を保全しながら、最も重要な、破壊してはならないところの第一種の特別地域、こういうようなものに対して極力避けて、景観を保持しながら橋をつくる、これが第一じゃありませんか。しかし、いまの与えられた計画では、全部これを変革さして通ることになりますが、これは重大な一つの変革であり、環境の革命だと思うのです。  これに対して公団は、依然として前と同じ考えでしょうか、むしろこういうような点について考える余地があるならば、これから時間をかけて景観保持のことを考えながら案を練る考えでしょうか、まずこの点を伺います。
  35. 富樫凱一

    ○富樫参考人 架橋のルートは三本ございますが、これは十数年の調査を経ております。瀬戸内海に橋をかけるといたしますと、いまきめたルートしかない、こういうように結論しておるわけでございますが、まあ多少の変動はあるにしましても、大方のルートは変え得ない、このようにわれわれは考えておるわけでございます  橋をかけるということになりますと、ある程度の自然環境を変革することになるわけでございますが、この変革につきましては、できるだけ景観を保持できるようなくふうを、これは十分金をかけ、調査をしてやるべきであろうと考えております。国立公園協会にお願いいたしまして、出ました調査がございますけれども、これはさらに調査をお願いすることにいたしておりますし、われわれのほうといたしましても実地に即した実験を四十八、四十九年度で実行いたしたいと考えております。  それの一つは、道路を修景いたしまして、それがどのように景観に影響あるかということの調査、道路自体を走ることによっての景観もございますし、道路ができて、それを外から見たときの景観もございます。また道路を築造するにあたりまして、よく切り取り面などそのままになっておりまして、これが美観をそこねる点も多々あるわけでございますが、これらの処理につきましても、実験的にただいま研究中でございまして、お話になりますような重要な地域は避けて通れと、こういうお話でございますが、これは架橋の性質上、どうしてもいまきめた位置でなければ、まあ多少変更はあるにいたしましても変え得ない、かように変えております。
  36. 島本虎三

    ○島本委員 変え得ないという考えだとすると、念のために伺いますが、最後案はもうできているということですか。
  37. 富樫凱一

    ○富樫参考人 建設、運輸両省から指示をいただいておりますが、それによりましてルートがきまっております。まだルートのきまっておりませんのは、明石海峡を渡る神戸側のルートだけでございます。
  38. 島本虎三

    ○島本委員 そして、これは各種の諮問された委員会がございますけれども、その協会なり諮問先から否定的な答申はございませんでしたか。
  39. 富樫凱一

    ○富樫参考人 国立公園協会の中間報告には否定的な意見がございます。これは全部の意見ではございませんが、そういう意見もありますし、またそれに反対の意見もあるわけでございます。これらの点につきましては、今後どう架橋がそれに対処していくかよく御説明申し上げ、御認識をいただいて御決定をいただきたいと存じます。
  40. 島本虎三

    ○島本委員 否定的な意見もあり、肯定的な意見もある、それはもう私どもも伺っております。しかし否定的な意見はそのままにして、そのままやるのだというのでは、何のために諮問したことになるのですか。公団がその態度ならば、われわれとしても、もう一回考え直さなければいけないと思います。瀬戸内海の環境を保全するために、瀬戸内海環境保全臨時措置法、時限立法、三年間の臨時立法さえ出しているのです。それだのに、現在あるこの優秀な環境を保全しなければならない第一種の特別地域、この中を通してでもやろうとするこの考え方を強行するというならば、あらためて本委員会としても、私どもとしては考え直さなければならないと思います。  三木長官にお伺いいたします。これは残酷かもしれませんけれども、この中には否定されているコースとして二つあるようであります。  その中には、坂出から、これはDルートですか、このDルートと、それから明石から行って徳島へつなぐ、この肝心の鳴門の秘境、ここを通って——渦巻きは、こういうような、その上に建てるという、この計画が示されているのです。そのまま建てるということになると、これはとんでもないわけです。私どもとして、はたしてそういうようなことを変更しないで、これを強行するのかどうか、自然環境保全ということは、このことばだけでいいのか、これは重要であります。私はもう、三木長官にお伺いしたいと思います。
  41. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま申したように、自然環境をそのままで保全していくということは必ずしも現実的でないと申したわけですが、四国と本土とを結ぶ橋梁を建てることが国として必要であるというような方針を政府は決定をしたわけであって、そこでこれからの仕事は、いま島本委員の言われるように、環境の保全というものは非常に大切なことでありますから、その橋梁をつくるについても、工事の進んでいくに従って、たとえば橋脚を建てるというような場合、その工事の進捗状態に応じて、われわれとしても環境の保全の見地からアセスメントをやっていくつもりであります。  だから、ここで、もう橋は要らぬのだ、それは橋をかければ環境を破壊するのだ、こういう立場に立てば、島本委員の御指摘のように、これはもう橋もかけてはいかぬということになるわけでありますが、われわれは、そういう必要はある、こういう前提に立って、しかし環境の保全という目的とできるだけ両立させながら、こういう国家的な事業というものをひとつ完成していきたい、こういう立場でこの問題を対処していきたいと考えておる次第でございます。
  42. 島本虎三

    ○島本委員 したがって、いま長官が言ったような考え方で答申が出ているのです。しかし、答申が出ておっても、それを無視してでもこれをやろうとする考えのように公団側の意思として受け取れたのです。はたしてそれでいいのかというのです。
  43. 三木武夫

    ○三木国務大臣 それは何人もやはり環境を保全しながらいろいろな開発をやっていくということは、政治の大きな前提になっておるわけでありますから、公団自身としても、今後工事を進めていくについては、その全体の上に立っておることは明らかでございます。したがって、今後、公団と環境庁との間にも非常な緊密な連絡をとって、公団自身も環境を保全しながらやりたいということは、もうこれは前提条件でありますから、そういう開発をやりながらも環境をできるだけ保全していこうという、この考え方と両立できるように、今後ともわれわれとしてはこの工事の進捗に対しては十分な関心を持っていきたいと思っております。
  44. 島本虎三

    ○島本委員 これ一つで時間を費やすつもりはないのでありますけれど、勢い、私の質問のまずさから、時間がよけいかかるようになったのです。しかし実際は、こういうようにして景観を保持する、いわゆる第一種特別地帯、こういうようなものには、そのまま残しておくという意思に立てば、その部分だけ何か方法があるはずじゃありませんか。架橋でなければできないのですか。架橋がそれほど優秀なものなんですか。その渦潮であるとかこういうようなものは、唯一の、もう鳴門の地区においては、国立公園、こういうようなものの中で最大の渦潮現象、こういうようなものをこの場所では併有しているのでしょう。それと同時に、瀬戸の景観としてわが国の代表的な自然景観である、こういうようにいわれて特別地域に指定されているのでしょう。  そうして答申は否定的な答申が出ているでしょう。それでもその上に架橋しなければならない。これでもってりっぱな足を立てたならば景観の保持になるんだというもし考えがあるとすると、これは重大な侮辱です。むしろそういうようなところこそ下を通したらどうですか。ないわけじゃないでしょう。建設大臣もせっかく来ていなさるのです。本四架橋、これにはそれぞれ諮問先から答申が出ているようであります。そしてその答申によると、それが環境保全上望ましくないという個所もあり、それから、それでわりあいによろしいという個所もあるようであります。しかし、やはりいま公団側では、政府がやれというとおりにやるんだ、こういうような御意見のように承り、いかに景観を保存しなければならない、環境を保全しなければならない、こういうような場所であっても、その環境以上にりっぱな橋をつくるからいいんだ、こういうふうに受けとれるような答弁があったわけです。  瀬戸内海は世界の公園であり、同時にこの保全のためには、もうすでに議員立法で時限立法、三年間ということでありますけれども、瀬戸内海環境保全臨時措置法、これさえつくっているのです。そのために自然環境保全法、数回にわたってこの法の改正も行なっておるわけです。したがって、その部分に対してはなるべくそういうような地点は残すようにして進めるというのがほんとうだと思う。私どものほうとしては、今後進めるためには自然景観をこわさないようにして、もしこれにかわるものがあるとするならば、別な意味で道路公園としての可能性の有無を確かめて、そういう部分において道路公園もないわけじゃない。しかしながら、そういうような数々の島々を橋脚につかって、ほとんどその価値をなくしてしまうようなやり方さえも散見するわけであります。そうなりますと、もう少しこれは考えるべきじゃないか、せっかくいま猶予期間が一年なりある、その間に考えるべきじゃないか、これなんであります。建設大臣、これに対する高邁なる御意見を承っておきたいのです。
  45. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 お答いたします。  この日本の国土、これは一度傷つけたら永遠にもとに返らないということで、そういうところは大事に残して子々孫々にまで伝えていこうということで自然公園法ができておるわけでございます。またこの自然公園法に基づいて、国立公園関係の審議会がございますことは島本委員御承知のとおりでございます。  そこで、私も建設大臣に就任いたしますと直ちに、実はこの本四架橋の問題を記者団からどうするんだということを聞かれたわけでございます。それで、まつ先に事務当局に審議会の審議の状況はどうだったのだということを実はただしたわけでございます。ところが、一応の建設省の案で、路線でありますとか構想でありますとかそういうものを中心にして審議会の一応の了承を得て、あと個々の施設あるいは橋脚が、どこの島にどういうふうに立つ、あるいはどこにどういうふうに穴を掘って橋脚を埋める、そういう個々の問題については、またそのときどきに審議会に相談をするということを前提として、一応の了承をいただいたというふうに事務当局から聞いたわけでございます。  御承知のように、この山紫水明の国土のいいところは永久に残そうということであります反面、そこにもまた住民がおるわけでありまして、その住民の福祉ということも十分考慮に入れなければならぬわけでありまするし、また四国並びに本土の将来の有機的な関係という立場から考えましても、この交通網を整備をするということもきわめて大事なことでありますので、この調整をどうするかということが、たいへんむずかしいところとなるわけでございます。  したがいまして、本四架橋公団に対しましては、そういう点十分考慮をして、何といっても瀬戸内海の漁業並びに景観、そういうものに支障のないような形でできるだけ建築をするように、工法等も十分考慮した上で取りかかるようにということでございまするし、おそらく島本委員から、小さな島が橋の踏み台になって消えてなくなるというようなことはしのびない、こういう御指摘もあったやにいまお伺いしたわけでございますが、できるだけそういうことのない、やはり天から与えられた美観というものはできるだけこれを保全をして、そうしてさらにそこに構築してまいります人工の工作物、これはつくり方によっては将来文化財、こういわれるほどのものも残し得るわけでございます。  そういう点も十分公団のほうで考えてやっていくようにということで指導をいたしておるわけでございますので、島本委員御心配のような点は十分考えた上で、やがて架橋——だいぶ先のことになります。特にことしは総需要抑制ということで、工事も一応ストップさせておるわけでございますので、その間にそういう点を特に配慮をして調査検討を進めなさいということを申しておるわけであります。
  46. 島本虎三

    ○島本委員 大体わかったわけです。それでなおもう一歩踏み込んで、大臣に伺っておきたいのであります。  これは、国立公園協会その他から、諮問に対しての答申がちゃんと来ているのであります。まだ公団としては、最後の案に至るまでの問いろいろ考究中のようであります。ですから、この際かたくなな態度ではなく、いま大臣が言ったような基本線に基づいて、たとえばAルート、神戸−鳴門ルート、この中には、鳴門のいわば国立公園地帯というか、これは唯一の渦潮の現象を併有しているし、瀬戸の景観としてはわが国を代表するような自然景観であるということ。それからその地区に対する架橋計画というものに対しては、これまたいろいろと突出した細長いみさきであるとか、それに続いての海上に線状に点在する岩礁であるとか、この渦潮であるとか、こういうようなものの致命的な破壊にならないようにすべきだと思うのです。これを破壊してしまったならば、いかに言ってもこれは破壊なんです。したがって、自然景観を尊重する国立公園の立場に立って、この地区における架橋計画は十分考えろ。ただ、いまのようなやり方では否定的な答申になっているはずです。考えろという答申のようです。ですから、ここを考えないといけないというのです。その点が一つです。  どういうふうにして考えるか、それなんです。そういうような世界的に優秀なところであるならば、いまの日本の技術としては、ちゃんとこれはやれないはずはないわけです。そういうようなところを残して他のほうは架橋にする、こういうような方法だっていいじゃありませんか。国民の望むところじゃありませんか。ここに副総理と優秀なる建設大臣がいるのでありますから、相談したならば、これぐらいできないわけは決してない。  それともう一つはDルートです。児島−坂出ルート。こっちのほうになりますと、いろいろ問題点もあるようであります。いわゆる三ツ子島付近の橋台、こういうようなものでは島嶼をのみ込んでしまうほどの計画が散見されるわけであります。こうなりますと、繊細優美なこういう島の感覚が全然薄れてしまう。まさに保護と開発がまつ正面から対立するような個所さえあるわけであります。ここに対しては、もっと十分に考えた上で実施するのでなければならないし、そういうような点がはっきりするまでの間は、もう少し他の何でもないところから着工していく、こういう方法だってあるのじゃないか。私はまず、自然環境の保全を優先してもらいたい、こういうような考え方からして、やるなというのじゃなくて、自然環境保全をしながらやる方法を考えなさい、このことなんであります。  したがって、全然環境をだめにするならばルートを変えてもいい、こういうふうな考えでありますけれども、この辺も十分考えてやらなければならない。そして新たに道路公園の構想だってないわけじゃないと思うのです。その公園はどういうふうにしてやったらいいか。他の外国にもあるはずでありますから、そういうような発想だって新たにやってもよろしい。しかしながら、いま言ったような大事なところは残すべきだ。なぜそれをやれないのですか。なぜそのくらい簡単なことをやると言えないのですか。私は、いままでは尊敬この上もなかったのですが、きょうは三木長官がどうも踏み切れない点が遺憾なのであります。きょうは建設大臣のほうがすぱっと踏み切っているじゃありませんか。(「建設大臣は専門家だから」と呼ぶ者あり)専門家もちょいちょい名前から間違うことがありますから、副総理とお二人の意見を伺います。
  47. 三木武夫

    ○三木国務大臣 島本委員も、これは工事をやるなというのではない、環境保全というものを十分に考えて、その保全というものの上からいって場合によったならば、いろいろ工法なんかも変えてもいいではないかという建設的なお話で、われわれとしても環境を保全しながらこの橋はかけたいという考えでありますから、今後工事の進捗状態に応じて環境を保全しながら工事を進めていくということに対して最大の注意を払いたいと思っております。
  48. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 島本委員の仰せのとおりでございまして、とにかく建設省といたしましては現在の技術陣をフルに動員いたしまして、よくぞこういうものを残してくれたと子々孫々に言われるようなものを残さなければいかぬわけであります。そういう意味から、あらゆる世界の例、さらには技術等を検討をさせまして、そして御趣旨のような線が生かされていくように、いまも実は本四架橋公団の富樫総裁に申したところでございます。  私も島本委員が質問されるというので、にわか勉強ではありましたけれども、いろいろ私なりに、私も厚生省におりまして国立公園関係の仕事もやったことがございますので、そういう立場から吟味をいたしてみましたが、岩礁が一カ所ですか、これが橋脚に使われるというような点があるようでございます。そういう点は景観との関係において、どのような関係にあるかというような点については一応議論いたしたわけでありますが、これはやむを得ないだろうということで認定をしたという経緯もあるわけであることを申し添えておきます。
  49. 島本虎三

    ○島本委員 そのやむを得ないだろうは、他に方法がなかったということでしょうか。どうもその点はまだ若干私は不満なんです。他に方法があるならば、それに変える。これだって方法です。そういうようなことからして、私としては本四連絡架橋、これは屈指の自然景観とかかわりを持つ瀬戸内海、これが具体化するいままでに、景観学的な配慮や環境配慮がまずなされずに進められた。そしていま若干の猶予の中でそれが議論されるようになった。私どもを含めてやはり関係者が十分にこの問題に対して取っ組んでいなかったということを、自己反省を交えて怠慢のそしりを免れないと私は思っております。このままでは悔いを後世に残すことになるおそれがあるから、そういうような子々孫々にまで恨まれないような計画をすべきだ、これが私のすべてであります。  そういうことからして、特に大事な点で否定的な意見が出されている。その解明がなされないままで進めてはならない。情勢の変化もあることであるから、完全だという橋からかかってもいいじゃないか。これは大臣としては全部三つを一緒にやはりやらなければならないというお考えでしょうか。
  50. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 実は私も先般四国に行って、四国の方々のお気持ちも聞いてみたわけであります。島本委員御承知のとおり、この三橋につきましては、地元の出資も実はなされておるわけであります。したがいまして、やはり地元の県民の方々の意思というものも私どもとしては無視できない、こう考えるわけでございまして、私は四国と本土の間に三橋があっても、これは非常にいい、こう考えておるわけでありまして、やはりいま仰せのように、鳴門、それから中間と今治、あの線の三橋はそれぞれ竣工日時が違っておるわけであります。したがいまして、同時着工という形になりますか、昭和四十八年度に一応の着工をしたい、こういうことでおりましたところ、総需要抑制ということで工事の着工を一応中止いたしておるわけでありますが、経済の落ちつきの情勢を見はからって着工に踏み切りたい、こう思っておるわけでございます。  したがいまして、ただいま申されたようないろいろな、そのほかの電源線の配線でありますとか、あるいは橋までの関係道路の土地買収でありますとか、そういう点の仕事を積極的に進めさせておるということでございまして、同時着工といえば同時着工、あるいは二、三カ月の差は自然にできてくるということも御理解いただきたいと思うわけであります。
  51. 島本虎三

    ○島本委員 なおこの問題は、議員立法として瀬戸内海環境保全臨時措置法を出したという委員長を含めまして本委員会の責任もございます。なお本委員会でも自然環境保全法を数回にわたって改正しているというような責任もあります。そういうようなことからして、今後もこの推移を十分見きわめつつ、やはり国民の要請、また子々孫々までも恨まれることがないような、こういうような自然環境だけは保全しなければならないんだという考え方で十分今後の推移を見てまいりたい。なおこの委員会でも、当然私をはじめとして十分その点では関心を持って臨みますから、必要の場合には大臣もちょいちょいこの場所へ来てもらいたい、このことを要請しておく次第であります。  それから本四公団においてもそのとおりでありますから、その点も今後お含みおき願いたい。そしていろいろな点で御教示を賜わりたい、このことだけは、ひとつ強く要請しておきたい、こういうふうに思います。  今度は長官のほうですが、環境保全のために、これはいまのような状態でございますから、今後もなおいろいろな点が発生してまいる可能性がございますけれども、これは告発権というのがまた問題になっております。そうすると、人類の生存または優秀な環境を保全する、このためにかかわるところの基本的な権利である、こう解されております。この権利はすべての国民に保障さるべきものであるのです。これはもう聞く必要もないわけです。したがって基本的な権利、こういうようなものを認めるということで今後指導を強化していく必要があるし、法の改正も当然考えるべきじゃないか、この点は大臣もうたっているようでうたっておりませんけれども、この四ページの中ほどに、これはちょっといわれているようであります。  したがって今後、総評等においても、企業内から公害企業の告発をしてまででも、これは国民の健康と優秀な環境を守るんだ、こういうふうなことがはっきりされたようであります。こういうようなことからして、当然告発したことによって社会的に阻害されることがないように、基本的な人権の保護、こういうようなことも考えなければならないし、そうして法の改正も当然考えなければならないし、国民に対する保障されたこの権利に対しては、環境庁としてもこれは当然考えてやらなければならない、こう思いますが、この点ひとつ御高見を伺います。
  52. 三木武夫

    ○三木国務大臣 四国の、本土との連絡架橋というものは、もう何十年の歴史を持っている。住民が一丸となって実現のためにやってきたわけであります。まあ中には異存を持っておる人もあるかもしれませんが、県、市一体となった長い運動の結果、政府としても取り上げるということになったわけでありますから、こういう問題について告発というようなことが、どういう形で起こりますか想像もできませんが、それは法治国家でございますから、法律の規定によっていろいろそういうことが起こり得ることは法治国家として当然でしょうが、この架橋については四国あるいは本土におけるその人たちが多年の要望の結果、政府が取り上げた経緯というものも御理解を賜わっておきたいと思うわけです。
  53. 島本虎三

    ○島本委員 ちょっと誤解されたようです。本四架橋のほうからもう離れて、一般論に入っているのです。それにばかりこだわっていると、きょう大臣ちょっとおかしいですよ、一般論で言ったのです。  それはそれとして、労働省来ておりますか。——労働組合が、労働運動の一環として公害を告発した場合には、労働者が不利益処分をされる、こういうふうなことがありましたが、これは不当労働行為に類するということに考えが変わったように思いますが、この点どういうふうに理解しておりますか。
  54. 寺園成章

    ○寺園説明員 お尋ねの件でございますが、企業が公害に関します法令に違反した事実がございますときに、その事実を公にするという点の御質問かと思います。  企業の秘密というのは、ある場合もございましょうけれども、公害法令に違反した事実というのは、保護の対象になる秘密というものには当たらないと思います。したがいまして、そのような事実を公にした、告発したというようなことを理由として不利益な取り扱いをするということは許されないと思います。  その場合に、労働組合が労働組合員の勤務条件の維持改善をはかるという活動の一環として、そのような行為をなした場合に、当該組合員を不利益な取り扱いをしたという場合には、先生仰せのとおり不当労働行為が成立するということになっております。
  55. 島本虎三

    ○島本委員 労働省でも先般来いろいろ御存じのとおり、昭和四十五年にいわゆる公害国会が開かれて、基本法が改正され、その後十四の法律が制定され、いまや二十をこえるような公害関係の法律が立法を見ているわけです。そして四十五年以降は、公害に対しては公害罪処罰法ができて、それ以来公害は社会的犯罪ということになっております。企業内でもこれを告発した者は、これはもう不利益処分はされない、こういうふうなことに観念が変わった、これは法務省でもそういうふうな見解を示しているわけです。労働省でも当然これは、告発した者でも不利益処分をした場合には、その不利益処分に対して不当労働行為である、こういうようなことにして、はっきりこれを規制してもよろしいんだ、こういうようなところまで、もういってもいいのじゃないかと聞いたのですが、まだそこまでいっていないですか。
  56. 寺園成章

    ○寺園説明員 御質問の不当労働行為の点でございますけれども、現行の不当労働行為の制度は、労働組合の正当な行為をしたことを理由として不利益な取り扱いをしてはならぬということでございます。したがいまして、勤務条件の維持改善の活動の一環といたしまして、企業内の公害違反の事実を告発する、公表するといった場合に、そのような行為をしたことを理由として不利益な取り扱いをすれば、当然に不当労働行為に当たるということでございます。
  57. 島本虎三

    ○島本委員 大体それに当たるでしょうけれども、やはり何か、かたい考え方があるようですね。もうすでに変えてもいいんです。告発しても、それを処分した者は不当労働行為なんだ。これは変えてもいいんです。あとは社労委員会でまたやりますから、それまでこれはいいとして、今度は公害防除です。  総評でも、企業内告発を運動方針としてきめました。私、最近見てきた中で、中国の上海、この方面へ行ってみますと、工場群で、もう労働者とそれから技術者と指導者、三者結合した上でその地域公害を自分らで排除するということで、積み重ねを行ないながら、これを行なっております。やはりいまのようにして、労働者がやるとするならば、当然これに対して政府も支援を送って、そうしてその上に立って、公害排除のために労働者がやるというなら、使用者にやらして、そうして政府も中へ入って、技術者を入れて、四者結合の上で公害排除を具体的にこういうような地帯に起こさしてはどうですか。もう起こしてやっているのが私の見てきた中国上海なんです。  そこで私どもは、後進国だと思っているこの上海に偉大なる発見をしてまいりました。先進国であるはずの、技術的にもこれは先輩国であるはずの日本がまだそこまでいかない。しかし、やればやれる。この際ですから、やはりもう労働者と使用者も入れて、指導機関も入れて、同時に技術者も入れて、四者結合の上に立って、これは公害排除というようなものに対しての一つの専門機関を持たして、ここで検討させるように指導なさったらいいんじゃないか、こう思うわけです。  大臣は、この点はいいだろうと思いますが、念のために聞いておきます。
  58. 三木武夫

    ○三木国務大臣 企業内においても、告発することは目的でないのですからね。やはり、企業の公害防除というものに対して、これはもう今日においては物を生産するという一面において、公害を防除しながらいかに生産能率をあげていくかというのが、これからの企業の競争になるわけです。だから労働組合も企業も一体になって、公害を防除するために最大の努力を払うということでないと、告発を奨励するような形でいくということが、企業というものの有機体として必ずしも適当であるとは私は思わない。そういうふうな公害防除というものに不熱心な態度を企業がとれば、それは労働組合からも告発されるというような……(島本委員「使用者が、それを言っても聞かないから告発するのです」と呼ぶ)そういうものがあれば告発されることはやむを得ないと思います。  しかし、やはり根本は、企業も労働組合も、公害防除というものは、これからの企業の前提条件になるわけですから、利害が相反するわけではないのですから、そういう場合においては、やはり労働組合も企業も、公害防除に対しては一致できるはずです。それでも一致できないで企業が公害防除を怠るということならば、告発されることはやむを得ないと思います。
  59. 島本虎三

    ○島本委員 いまの物価の問題や石油から発して、企業の態度はそうじゃありませんか。公害環境から若干離れて、アラブまで行ってきましたから、その公害の実態に対しては外国の知識を十分得てきたと思うのです。しかし日本国内の公害の状態は、いま石油と物価の陰に隠れていますが、このためにどれほどまた公害が深刻になっているか。これからも角屋委員長のもとにこれは摘発されなければならない。そうやる際にも、いまのような状態を起こさないためにも、四者結合させて十分指導したらどうですかということなんです。この点はこれからの問題であります。  角屋委員長にちょっとお伺いいたしますが、私の質問時間はもうないのですか。
  60. 角屋堅次郎

    角屋委員長 先ほどの林さんとの関係で、あと五分ということですが、島本委員御承知のように、大臣は四時から御用がございますので、その関係もありまして先ほど時間を回したわけですが、特に……。あとしばらくよろしいそうです。
  61. 島本虎三

    ○島本委員 どうもおそれ入ります。高邁なる委員長に感謝をしながらもう若干……。  地盤沈下対策というものは、あらためて長官のこれには載っておりませんが、予算としては重要部門に入れてきょうの説明にありました。この地盤沈下対策というものは、いま千葉県で、また東京都内で、あるいは新潟県でこういうようなことが起こりつつあり、日本では防止できないものであるのかどうか、どれほどまで進んでいるのか、これに対してはっきりさせてもらいたい。地盤沈下はもうだめなんですか。
  62. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 お答え申し上げます。  実績で申し上げますと、地盤沈下は工業用水のくみ上げ超過によりますものと、それから天然ガスの取得超過によりますものと二通りに分かれております。  それで私どもが所管しておりますのが工業用水くみ上げの関係でございます。大阪、尼崎あるいは名古屋、こういった地区におきましては、過去と比べますと、近年著しく地盤沈下がとまっております。  数字で申し上げますと、東京の例では、三十九年、四十年間は城北で大体二ないし十六センチメートル、年間ですが下がっておりました。それが四十七年から八年にかけての一年間はゼロから十二センチぐらいというふうなことでございます。大阪の例で申し上げますと、三十八、三十九年の間は二ないし十センチの沈下が、四十七年にはゼロないし二センチの沈下というふうに改善されております。大阪のようなケースは、尼崎、名古屋等でございます。東京のようなケースは、川崎、横浜、四日市、埼玉南部といったような形になっております。  それで、現在この地下水のくみ上げ超過につきまして、くみ上げを規制し、あるいはそれによって地盤沈下を防ぎますために、昭和三十一年に工業用水法が制定されておりまして、この法律に基づきまして地域を指定いたします。一定の基準に適合しない工業用の井戸は新設が禁止されております。既存のものにつきましても基準に適合しない場合は、別途工業用水道を建設するなど、代替水源のほうに切りかえるという形になっております。こういう形で十三地域が現在指定されておりまして、このための代替水源としての工業用水道が二十五完成いたしております。これによって地下水利用から工業用水道に強制転換を行なっておるわけでございます。この結果、先ほど申し上げましたように、著しかった地域が、大阪、兵庫はほぼ全面的に沈下がとまる、それから川崎、横浜は大部分沈下がとまるという状況でございます。  ただ、ただいま先生御指摘の千葉につきましては、なお地盤沈下が進行いたしております。したがいまして、昨年六月にこの地域に指定すべく工業用水審議会で指定の答申をいただいて、目下環境庁のほうで手続を進めていただいております。そういう状況でございます。
  63. 島本虎三

    ○島本委員 それでは最後になりますけれども、通産省、沈下をとめることまではいいのですが、この原因は工業用水のくみ上げ、これはわかったわけですか。その他にも原因があるのですか。
  64. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 お答え申し上げます。  現実に起こっておりますのが千葉、新潟地区におきます天然ガスのくみ上げ超過でございます。このほうは資源エネルギー庁の担当課長が参っておりますので、もし実情が必要でございますれば、担当課長から説明させたいと思います。
  65. 島本虎三

    ○島本委員 工業用水、天然ガス、こういうようなものを取るから地盤が沈下する、この原因がはっきりしているんですか、関係者が来ているなら、その点聞きたいのです。地盤沈下の原因は何なんですか。
  66. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 工業用水に使うために地下水を著しくくみ上げる場合あるいは天然ガスをみだりにくみ取る場合、こういう場合に地盤沈下が起きるわけでございます。
  67. 島本虎三

    ○島本委員 そこなんです。天然ガスも水溶性のもので、水と一緒にくみ上げているのでしょう。すなわち工業用水のくみ上げと同じ種類のものでしょう。それを取るから何メートルか下の地盤、伸縮性のある地盤が沈むから、詰まるからそのまま地盤沈下につながる。だから、地盤沈下の原因は工業用水と工業用のガスの取得だ、こうだとすると、地盤沈下させない方法は、取らないこと——浮き上がらせる方法はないのですか。
  68. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 お答え申し上げます。  この点は、先ほど島本先生から御指摘があり、あるいは私的に私ども先生から直接あるいは関接に承っておりますように、表流水を積極的に地下に注入するという形で地盤沈下をとめ、かつ必要な地下水あるいは天然ガスを引き続き使っていくという方法もございます。(島本委員「やらせますか」と呼ぶ)天然ガスにつきましてはずいぶん前からすでに実施いたしております。その実績は後刻申し上げますが、工業用水の場合、四十九年度予算といたしまして、そういう方法をテストするための予算をすでに内定して御審議を願う段階に入っております
  69. 島本虎三

    ○島本委員 工業用水のくみ上げ、天然ガスの取得によって地盤沈下した。いまにしてわかったのは、おそ過ぎるかもしれない。しかしながら、それは前からやっている行為ですから、やはりいま言ったようにして、同じような温度の水をつぎ込むことによってとまり、なお逆に浮上するという方法のあることは明らかなんです。これを各企業にやらせるように指導し、そして地盤沈下がいま進行中のところでも、これを食いとめさしたらいいと思うのです。通産省はもうすでにこうなるまでやらないということは、私はおかしいと思っている。もうすでにそういうような例証もあり、他の国ではそれをやって成功しているのですから、日本のような高度の技術を持つ国は、それがわかった瞬間に、それを導入してやらしたらどうですか。地盤沈下をとめるだけじゃなく、浮上さしているのでしょう。これをやらすべきだと思いますが、それをやらせますか、やらせませんか。
  70. 豊島格

    ○豊島説明員 お答えいたします。  新潟県につきましては、昭和三十四年から、くみ上げについては規制いたしておりましたけれども、四十八年の十月からは、天然ガスを採取するときに出てきます涵水と申しておりますが、付随水は、排出を全部禁止する、完全圧入還元方式というのを採用いたしておりまして、それによって非常に効果をあげております。  それから千葉県につきましては、船橋市等はもう採取そのものもやめるということでございますが、千葉市周辺、九十九里浜につきましては相当、全部ではございません、たとえば千葉市周辺では、五〇%以上は還元するということで、地盤沈下を大体食いとめる方向で進めております。
  71. 島本虎三

    ○島本委員 これで一応終わるのですが、そこを聞いているのじゃないのです。地盤沈下を食いとめるのまではわかったのです。しかし、その方法として、くみ上げなければいいというところで皆さんの考えはおさまっているのです。  そうじゃなくて、ほかの国では、その地層を調査して、伸縮性のある地層へ逆に地下水と同じような温度の水を一たとえば冬になればそうなりますから、逆に注入することによって浮上させている例があるから、いまもうくみ取らなければいいと、これだけでは現状維持です。そうしないで、逆に浮上させるような方法、それはもう今後当然とっても差しつかえない、工業地帯ではできるのですから。くみ取っている、それを逆に入れればいいのです。ただ時期と、その温度の問題だけですから。  こういうようなことを、皆さんの技術を注入しながらやったらどうですか、やるつもりなんですかということなんです。せっかくいい答えが出ると思ったら、やはり通産省は、そういう答えしか出ないのですか。
  72. 林信太郎

    ○林(信)政府委員 ただいま島本先生の御指摘のとおり、指導して促進いたしたいと考えております。すでにいままで地下水を注入によって強化するという方法が、小規模ながら——大体日量で千トンくらいのベースでは、地質調査所あるいは林野庁あるいは特別な自治体で行なわれております。そのケースが、約二十件ぐらいございます。  問題は、上海の成功の例に見られますように、大量の注入によってその循環が可能である、こういうことでございます。日本の場合には、なかなか大量のところまでまだ実験値がございません。問題はかなり技術的に詰めておりまして、めづまりが生ずる、あるいは入れる水が地下水汚水の原因になる、あるいは入れる水とすでにあります水が、なかなか水が合わないと申しますか、そういう現象が起きるとかいうふうなことで、難点も相当明らかになっております。  したがいまして、なお技術的な検討を進めながら、工業用水道につきましても天然ガスにつきましても、いま御指摘のような方向で強力に指導してまいりたいと考えております。
  73. 島本虎三

    ○島本委員 長い間、委員長にたいへん迷惑かけて指名してもらいましたことを感謝して、私の質問は、これでやめさせてもらう次第です。ありがとうございました。
  74. 角屋堅次郎

    角屋委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後四時十四分休憩      ————◇—————     午後五時五分開議
  75. 角屋堅次郎

    角屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小林信一君。
  76. 小林信一

    ○小林(信)委員 長官、非常にお忙しい中をおそく来ていただいて、たいした質問をするのじゃないのですが、よろしくお願いいたします。  だからといって遠慮するわけでなく、真剣にお尋ねしたいと思うのですが、長官の所信表明の中に「引き続き全力を傾注する覚悟であります」と、こういうりっぱなことばが使ってあるのですが、普通の大臣なら、多く儀礼的なことばとして私は受けとめるのですが、大臣の公害に対するいままでの実際御努力の姿を拝見すると、これはほんとうに真剣なおことばだと思うのです。またそうでなければならない現状でもございますが、しかし、その前の「最大の政治課題」であるとか、あるいは「一つの時代は終わりを告げ、」とか、非常に重大なことばを使っておいでになるので、私はずっと自分ながら検討してみたのですが、何かまだ大臣の情勢のつかみ方に足りないところがあるのではないかというふうに思うのです。  これは見解が違うといえばそれまでなんですが、と申しますのは、公害というのは資源の有限性に対し、今日のごとく深刻に考えず資源を消費し、生産の拡大と物的生活の向上を追い求めてきたのが原因である。しかし、私は、その前にもう一つ問題があるような気がします。それはそれが資本主義であるかもしらぬし、あるいは企業家のものの考え方かもしれませんが、いわゆるもうけさえすればいいという利潤を追求することのみにきゅうきゅうとする、そのことが私は一番考えなければならない問題であるような気がいたしますが、私はなぜこういうことを申し上げるかというと、環境行政というものは理論じゃないと思うのです。しまいには自然を愛するというようなものは、ただ理論でこうしなければ自然が破壊されるから愛護するというようなことでなく、一つの習性になっている。動物に対しましても植物に対しましても愛情を持つ、そういうところまで環境行政というものはいかなければ、その目的が達し得られぬと思うのですね。  要するに精神面というものが啓蒙、開拓されなければならない。そこまで環境行政というものは進まなければならぬと思うのです。ただ、今日の公害の発生した原因というものをいたずらに経済成長というふうなことに腐心をしたのが原因であるというのでなく、もっといまの社会の、ことに先頭に立つような人たちのものの考え方というものが根本的に改められなければ、いまの経済混乱にしても、あるいはそれからよってくる公害の発生の問題にしても、法律や制度をいかに厳重にしても私はだめだと思うのですが、そういうところまで大臣が把握をされておられるかどうか、おそらくそのとおりだとおっしゃるかもしれませんが、何かここにそういうことが明示されて、そして、あなたがこれから環境行政をする場合に、青少年もあります。そういう人たちにほんとうに心響くものは、そういうものに発生するほんとうの真髄というのをつかまえて、それに大臣自身も抗議をするというような姿勢の中から、いま私の考えるようなものが生まれるのではないか、こう考えて、何かこの文面から受け取りますというと、これでも十分ではあるけれども、もっといま深いものを要求しておるような気がして、大臣にこの点をお伺いするわけなんです。
  77. 三木武夫

    ○三木国務大臣 小林委員御指摘のように、日本の文化というものは自然と融和された中に育ってきた。ほかのいろいろ日常の生活を考えても、生活の中にこんなに自然が取り入れられている。家の建築なんかもそうです。庭と家というものが一体になっている。婦人の着物でも、いろんな自然の模様というものがある。西洋人にはそういうふうな趣味はない。そういう本来のものだけれども、敗戦によって食べるものもない、着るものもない、こういう状態から、みなが物質的な豊かさを求めてきて、そうしてそれが高度経済成長というものにつながっていったわけです。だから、全速力で走ったわけです。日本人の本来のものというのは、そういうものがあったわけなんです。それを速度をフルスピードで走るものだから、そういう過去のよきもの、あるいはまた周囲とのバランスというものを失って、ここへ来たわけです。そこで、一面においては物的な生活は豊かになったけれども、そのことはまた心のゆとりもできてきたわけなんですね。だから、いま反省してみる機会も与えたことは事実です。  自然環境の問題についても、みなが自然というものは大切だ、金で買えないものだ、これは大事にしなければいかぬという気風が終戦後こんなに起こった時代はないです。ゆとりを持ってきて、みなが一ぺん反省してみようという機運になったわけですから、それは小林さんの言われるように、政治の指導の面にも欠けたものがあったと思いますよ。しかし、そういうことでみなが物的生活の豊かさを求めてきたわけですから、ここでこの機会をとらえて一いま二つの大きな制約が起こっているわけです。一方は資源です。資源というものは、必要なだけ日本が買ってこられる時代はないわけですから、資源というものは、非常に限りあるものであるということを資源の産出国も考えてきて大事にしようというわけです。  これは石油ばかりじゃないと思うのですよ。ほかの資源に対しても、金を持っていったら買えるのだ、そういう時代は終わったと思うのですよ。その制約があるし、一方においては環境という制約が出てくるのです。それは、幾ら物的な生活がこれ以上豊かになるといったって環境が失われていったら、そういう国の行き方というものを国民は支持しないですよ。  そこで、やはり日本自身がいままでの方向を転換せざるを得ない。世界から飛び離れて、日本だけが一〇%、十何%という成長をずっと続けて、この勢いでいったら、石油も世界の産出量の半分ぐらいまで日本へ輸入してくるような、そういうことが非常に異常なことなんだ。ノーマルなことではないんだ。もっとノーマルな状態に日本は返らなければならぬという大きな教訓を石油ショックはみなに与えたわけですから、したがって、これからノーマルに返ってくると思いますよ。いままでが異常だったんだ。経済成長を追い求めてGNPが世界の何番になったというようなことは異常な姿なんです。もっと世界並みの成長でいいんだ。また、われわれの過去のよい自然というものを大切にしてきた伝統というものを忘れたり、また周囲との一つの社会的な均衡を失ってきておる面が多いわけですから、そういうものを少し均衡を取り戻して、もう少しノーマルな状態に返ろうという機運がいま非常に盛り上がってきておるから、この機会はいろいろな環境行政をするにしてもやりやすいわけです。国民がみな応援隊ですから、われわれがしっかりするならば、みな応援してやろうという空気です。  そういうことですから、そういうふうな一般の気風がそうでないと、なかなかやりにくいわけです。高度経済成長に酔うてみなが突っ走っておるときに環境保全といっても、大川に小石を投げるような感もあった。いまはそうでないですから、みながそう考えてきておるわけですから、これからは環境行政の責任の衝にあるものは積極的にこの機運というものをとらえて、日本が単に物的な面ばかりでなしに、もう少し自然環境も大事にするし——人間しあわせにならぬですから、幾らものといっても、一ぺんに一人の人が消費するものは限られておる。もっとそれ以外に人生には求めるものがたくさんあるのですから、そういう自然というものは最も大きな要素の一つだと思いますよ。  こういうことで、こういう社会的な情勢にもなってきたので、ひとつ決意を新たにしてやろうということを申したわけでございます。
  78. 小林信一

    ○小林(信)委員 いま大臣が機運をとらえろ、確かにとらえなければならないときなんです。しかし政治というものは、常にそういう機運をとらえたり、あるいは予測するものに対する計画というものを持っていなければならないわけです。残念ながらいままでの政治は——企業ばかりに責任を負わしてはならないと思いますよ。経済大国だとか経済成長だとか、これを謳歌したのは、国民よりも政治を担当してきた人たちがまつ先に言ったんじゃないかと思うのです。その謳歌する人たちがちゃんと順序立って、計画立ってやってこないから公害も起きたわけだし、きょうの経済混乱も起きてきた。  だから、機運をとらえるのは大事なことなんですが、残念ながら、いままでの終戦後の政治の中ではそのゆとりがなかった。私は、大いにそれを政治全体の中で反省をしてもらいたい気持ちもしますが、大臣は、環境行政についてはこの機運をのがしてはならない、私も賛成です。そうした企業家の心がまえとか政治家の責任とか計画とかいうものが一切よってきて、そしていま大臣が一苦労しようということになっているのではないかと思うので、それはやはりしっかりとらえて——それをうやむやにしておいて公害をどうするかということでは、機運のとらえ方というのが実にならないと思います。  大臣と話をしておると、いま一つ話をしただけでも十五分もかかっちゃったのですが、そこで大臣はこういうことを言っていますね。  「一つの時代は終わりを告げ、」——これは非常にきびしい断定だと思いますよ。「資源多消費型の産業構造や生活様式の転換をはかるべき新たな時代へ、」と転換をしなければいけない、こうおっしゃっているのですが、これを大臣にお聞きすると、大臣はまた長時間、時間をかけてしまって、あと聞くことができなくなると思うのですが、ここはぜひとも、所信表明を大臣が素読をしただけでございまして、ここを聞かなければ意味がないなと思っておったのですが、短く説明ができれば、していただきたいと思います。
  79. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いままでの行き方が、日本は自己中心的であり過ぎたのですよ。だから資源でも、金を持っていったら幾らでも買える。その上に高度経済成長というものが成り立っておるわけでしょう。資源がないのです。石油ばかりでなしに、ほかの鉄鉱石にしたって、銅にしたって、いろいろな資源というものがほとんどない国ですからね。だから金を持っていけば資源は幾らでも買えるという前提で、いままでやってきたわけです。もうそういう時代は過ぎたのだ。だからそんなに世界から飛び離れた高度経済成長という時代は終わったのだ、世界並みにならなければならぬのだ、こういうことで大きな画期的な時代だと私は思います。それを御答弁申したのです。
  80. 小林信一

    ○小林(信)委員 このことは、とにかくここに産業構造あるいは生活様式の転換、これはやはり具体的なものを私どもはお聞きをしたいのですが、またゆっくりお聞きをしようと思いますが、これがあなたのほんとうにこれからの施政方針になると思うし、われわれももし賛成できるならば、全く協力を申し上げなければならないところだと思いますが、どういうふうにわれわれを感銘させるような内容をお持ちであるか、楽しみに、また宿題にしておきたいと思います。  そこで、先ほど林委員の質問の中で、石油不足に反省をして、この気持ちをもとへ返さずにおきたい、きょうの日の混乱が一つの教訓であるというようなお話があったのですが、私もそう思います。ところが、大臣がそんなことを言っておる間に、公害対策そのものが、この石油問題で混乱する中でもう後退していますよ。だから、このことも大事だけれども、あの経済混乱の中でもって公害問題が、まず従来のような認識がなくなってきておる。公害なんかどうでもいい、物さえあればいい。こんなふうにまだまだきわめて安心できない状態にあるわけです。  その一、二の例を見ますと、先ほども島本委員から指摘をされました、あの船橋の地盤沈下の問題ですね。先ごろまでは、市あるいは県が鉱区を買い取って、天然ガスをくみ取らないように一生懸命努力したわけです。ところが石油が不足しているでしょう。だから天然ガスの必要性というものを考えて、また十二カ所にわたって掘さくを許可したとかという話を私は聞きました。これは後退ですよね。そういうふうに、簡単に、いまの事情というものはひっくり返って、よほど大臣がこの決意を新たにするというところを持っていなければだめだと思います。  同じ千葉県でもそうですね。四つの石油会社があります。それが新しく事業を拡大をしようというのに漁業者が反対しておったのですね。反対しておったけれども、石油がなくなって、漁師の人たちは、A重油が得られない。そうすると、今度は、石油会社のほうでは、あなた方にA重油を優先的に差し上げますと言うと、いままで反対しておった企業の拡張を黙認するというふうな、そういうものが出てくるような時代ですね。あるいは発電所でもって原油をなまだきをして、公害発生を少なくしょうとした。そうすると、石油会社のほうで、そんなもったいない、石油を乱費するなら、あなたのほうへ石油を送りません。今度のこの経済混乱の中では、そういう注意があって、みすみす泣く泣く、今度は重油に切りかえたというふうに、あなた方が安心している間に、かえって、きょうの気持ちをわれわれは持っていきたいなんと言っておるときに、とっくに企業やあるいは国民は物不足に追われ、あるいは高物価に追われて、公害対策そのものが後退しているような現状もありますが、こういう点を御確認願っておいでですか。
  81. 三木武夫

    ○三木国務大臣 石油危機が起こったときに、私は閣議で発言をして、この石油危機によって環境行政の後退は許されないということで、これは環境基準を変えたりはしない、これはみな各閣僚においても、その点はやはり腹に入れておいてもらいたいと思って、発言をしたこともございます。  また、いわゆる日本マスキー法といわれるものにしても、自動車メーカーが私のところへ来て反対した理由は、ガソリンの消費量が一五%多くなる、これをやれば。こう言うのです。こういう石油危機の時期、石油の供給が非常に不足しておるときでもあるから、これを延ばしてくれ、こう言うのですよ。私は、それは石油の消費がふえることは事実でしょう、それでもやはり石油の消費が一〇%か一五%ふえることと、一方において大気汚染によって人間の健康などがむしばまれていくところ、これを両方比較して健康のほうをとったのです。だから、非常に強い自動車メーカからの陳情がありましたけれども、私は、これは採用しなかったわけです。むろん一方において、そういう無公害車を開発した自動車もすでにできておるということも、やはり有力な判断の基準になったことは事実です。  そういうことで、この環境行政の姿勢としては、これは少しも後退をしてないわけです。ただ、しかし石油危機の陰に隠れて、何かそういう地方の自治体なんかで、公害防止に対する熱意がいままでよりも薄くなっておるということは、われわれとしても、今後環境行政を進めていく上に、そういうことのないように指導をしていかなければならぬと思いますが、環境行政そのものの姿勢は、やはり何ら後退をしてない。このことは、ひとつ御理解を願いたいと思うのでございます。
  82. 小林信一

    ○小林(信)委員 私は、大臣のおっしゃった、そのほかのことにはあまり感激しませんが、やはり閣議の中で、あなたは副総理だという立場でなくて、環境行政を扱う者が、ほかの省庁に指揮命令と言うとおかしいですが、優先して発言できるような、そういう地位をまず確保しておらなければ環境行政はできない。さっき私が申しましたように、国民の習性までつくる、そういう精神的な影響を持つような環境行政である場合には、これは一つの教育なんですね。教育、それはあらゆる行政に優先しなければならぬ。だから、そのことに私は賛成でありますが、環境行政に限ってはというのは、大臣だけの気持ちであっては何にもならぬわけです。  いままでの公害という問題は、企業と政治の癒着とか、あるいは企業と役人の妥協とかというものが、私は公害というものを発生したとも思っておるのですよ。だから、案外大臣がき然たる態度を持っておっても、まだまだそういうものが払拭できない。少くともほかの官庁の官僚よりも、あなたの環境庁の官僚というものは、全くもう良心的な、しかも行なう場合には国民の立場で勇気を持って行動するというものがなければ、私は環境行政はだめだと思うのです。  しかし、大臣の先ほどのお話を聞きますと、島本さんとの話し合いの中で、あなたは何か橋をかける、それが自然を破壊するというふうなことを言いますと、あなたは両立をさせるのだ、こういうことばを使う。また、ある地方自治体なんかでは、産業と環境との調和をはかるのだ。調和とかあるいは両立をするとかということばでもってごまかすつもりはない。それを信じておられるかもしれませんが、われわれのほうでは、やはり政治が弱くなる傾向にある。いざとなると弱くなる、そういうものを私は感じておるわけなのですが、大体大臣の所信表明にあらわれたものをまた掘り返して二、三お伺いしたのですが、そうなまやさしいものじゃない。私の申し上げる一つの社会教育にまで、それがなるというところが環境行政の仕事であるとするならば、ほんとうにこの表明してあります、引き続き全力を傾注する覚悟である、至上の命題である、あるいは最大の政治課題である、これをひとつほんとうのものにして進んでいっていただきたい。そういうことを、これから具体的なことについてお伺いをしてまいりたいと私は思っております。  きょうはもう一つ、この際、いま当面しておる問題が一つありますので、その点を、おそらく大臣は御存じないと思うのですが、これはむずかしい名前ですが、大腿四頭筋短縮症という病気があるのです。これは全国至るところに出ておるのです。しかも集団をなして発生しておる。これにかかると、大体もう将来一人前の仕事ができないような、肢体不自由児のようなそういう子供になるのですが、これが原因が不明なのです。私どもの地域では、これを医療公害だといっている。公害だということで、公害問題として扱ってほしいというもので、しかも、ささやかなグループをつくって親たちが集まって、そして何とかこの原因を究明してもらいたい、対策を講じていただきたい、何とかその治療方法を研究していただきたい。これが、ただ、いま発生したのでなくて、全国的に調査すると相当ある。歴史的にも、この問題は問題になって今日まで来ているわけなのですね。そのことを私は厚生省にお願いをして、調べておいていただきたい、こう申しておりますから、厚生省から、この病状の者が全国にどれくらいあるか、それがどういうふうに発生しているのか、原因というものがつかまえられておるのか、一体これは公害対策でも考えることであるか、厚生省独自でもって考えればいい問題であるか、そういう点をまずお伺いいたします。
  83. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生のあげられました大腿四頭筋短縮症という病気につきましては、わが国で各地に、多少集団的な発生としてつかまれたものもございますし、個々のケースとしても潜在しているだろうというふうに学者の方もおっしゃっております。総体的な数字はただいまつかんでおりません。ただ、事例としては、十年ほど前に湯河原の三十名前後の発生、あるいは最近では福井県の今立町というところだと思いましたが、五十名前後の発生、それから、つい昨年気づきました山梨県の百四、五十名の発生、こういうような集団発生の事例がございます。  この病気は、実は先天的なものも絶無ではございません。同じような結果が出てまいるもので、先天的なものもあるということは文献にございますけれども、ほとんどが後天的に出てくる。そして、その原因ということで、まだ確定的な学説にはなっておりませんが、多くは乳児、生まれて間もない一歳未満の子供が医療を受けた際に、大腿部に注射を受けるというようなことがその原因ではなかろうかということが、文献的にはいわれておるわけでございます。  この山梨の例の場合も、初めは保健所における親の健康診断等から、少し子供がびっこを引く、あるいは足が曲がっている、こういう奇病、難病、これは公害的なものではないかというような意見があったようでございますけれども、県当局がこれを保健所を通じて調べた結果、巨摩郡の地域に先ほど申し上げましたように相当数の患者があるということがわかりました。そして、対策委員会をつくりまして、本格的な健康診断をしておるのが、ただいまの実態でございます。  この治療法等につきましては、最近の新しい整形外科学の進歩によりまして、早期に外科的な治療を加えることによって、乳幼児のような発育期の子供には早くにやりませんと、やはり右、左の発育に違いが出てくるというようなこともございまして、整形外科的な治療を加えることによって、この対策がかなり進展するわけでございます。もちろん手術のみならず、その間のリハビリテーション、マッサージをはじめ、いろいろの運動を積極的にすることによって、かなり機能を回復するというふうにいわれております。山梨県の現状の場合は、この対策委員会が専門医をお呼びしまして、いろいろ細部にわたって検診した結果、当面約五十名前後について手術を適当であろうとする症例の判定が出たそうでございまして、近く、そのうち最も重い十五名を優先的にこの治療をするというようなことになっておるわけでございます。  この治療の費用につきましては、実は児童福祉法の中に、身体の不自由な方に対して、この機能を回復させるための手術、治療に対して育成医療という制度がございまして、国が十分の八を持ち、県が十分の二を持って、児童福祉法に基づいて育成医療という公費負担制度を実施いたしております。県当局と御相談いたしまして、山梨県の場合におきましても、この手術、入院等の治療の費用につきましては、児童福祉法の育成医療によって対応していきたいというふうに考えておりますので、おそらく二月中にも手術の例が実施されるというふうに考えておるわけでございます。  落ちた点がございますれば、後ほどまた十分御説明いたしますけれども、一般論として、大腿四頭筋短縮症というのは、専門家の御意見では、乳児期の発熱その他の急を要するようなときに、どうしても飲み薬ではいかぬ、あるいは子供が吐いておるというようなときには注射を必要とするというような場合に、この注射をするケースが多いわけでございますけれども、最近は、なるべく乳児の治療には注射を使わないようには、みんな一般医療関係者は注意しておりまして、たとえば坐薬で肛門のほうから薬を注入するとか、あるいはシロップのような形で子供が飲めるようにできておる、どうしても困難なときには注射を使うというようなことが実態でございますけれども、山梨県の場合はたいへん数多くこのような問題が発生し、もちろん重い患者、軽い患者いろいろございますけれども、数の上で百数十名の発生があるということについては、厚生省といたしましても、非常に県当局と協力しながら、この解決に当たらなければならぬというふうには思っております。  したがいまして、この問題は厚生省所管のケースとして行政的には処理いたすつもりでおります。
  84. 小林信一

    ○小林(信)委員 いまあなたから厚生省所管の仕事である、こういうふうにはっきり言われたので、公害対策委員会で取り上げるということはもう必要なくなったわけでございますが、時間もとってありますし、そしてついででございますから、環境庁長官でなく、副総理という立場で、長官もお聞き願いたいと思うのですが、あなたの、その原因については、「だろう」ぐらいでございますが、どういうような説があるか、原因について、あなたのいまのお話では、まだ未確定ですね。その原因は、こんな原因もある、あんな原因もあるというふうに幾つかの説があるのか、注射ということに一本しぼられて、しかし、それが確定的でないというのか、さらにいま研究中であるとかいうことを、私はこの際、おそらくこのことは当事者は期待をしているのですから、明確にお答え願いたいと思うのです。  それから、対策委員会が設けられたとおっしゃいましたが、対策委員会というのは県でつくったのですか、あるいはこういう人たちの親たちが集まってつくったのですか。県がつくる、だから公の機関がつくったならば、私は非常にうれしいのですが、放置されておって、そういう患者がたくさんあっちにもこっちにもいるというところから、全国のいろいろな事例を親たちが調べてきて、これはいままで至るところに発生した問題であって、そして大腿四頭筋短縮症という、大腿注射によって起きたものではないかというような考え方を持った人たちが集まって対策委員会をつくって、その人たちが県なり、あるいは国なりにいろいろ陳情した結果、これが認められて、二月から、あなたのいまおっしゃったように育成医療で全面的に心配をするというようになったのか、そこら辺もお聞きしたいと思うのです。  私はどこへ関連をして申し上げたかと申しますと、長官が「最大限の努力を傾注してまいりましたが、残念ながら緊急に解決すべき課題はまだまだ山積」しておる、こういう目に見えないものがたくさんある、ということを私は例にあげてこの問題を取り上げようと思っていたのですが、事厚生省の所管であるとすれば、別に環境庁に私は質問をする必要はないのですが、とにかく何か騒がなければ問題が取り上げられないという、そこに私、非常に残念なところがあるのです。だから、山梨県でこの問題が起きて、そして県内のお医者さんにはわからぬというのか、あるいは問題がむずかしいから東京のお医者さんを呼んだのか知らぬけれども、病院で、来て初めてこれはこういう病気でありますよということを言われたわけですね。そこで初めて騒ぎ出したら、全国の同じような親たちから盛んに電報が来たり手紙が来たりして、お互いにひとつこの際、何かと子供のために幸福の道をさがしましょうというような、そういう気勢が上がったそうです。  そういう点からして、厚生省の仕事とすれば、何か少しおくれておるような——この問題は、問題になってから、もうおそらく一年ぐらいたつのじゃないかと思いますが、それで初めて二月ごろこれを取り扱うというならば、あなたのおっしゃる、これは早い時期に手術をしなければ、期間がたつと整形手術がしにくいというお話がありましたが、一年も放置されておる。おそらくその間、厚生省にも、県を通してでも話があったと私は思うのですが、そういう点、もう少し明確にお話し願いたいと思います。
  85. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 原因につきましては、文献その他学者の御意見等も先ほど触れまして、不十分でございましたが、実は乳児の注射の場所というのは、おしりの筋肉、それから大腿部、これが——いろいろ人によって意見がございますけれども、おしりの場合でも座骨神経がございまして、場所を間違え、あまり深くにやりますと、座骨神経の麻痺を起こす例がございます。したがいまして、おしりの場合でも、乳児、生まれて間もない一年未満の子供でございますと、筋肉の発達その他がございますので、おしりだけに限定するという考え方じゃなくて、医学的には大腿部も使うことがございます。学者の御意見では、大腿部の四頭筋に注射をしたから、すべて起こっておるわけではございません。先ほど申しましたように、若干先天性の同じようなものもございますが、大部分は後天性である。それから注射の回数、それから同じ部位に繰り返すというようなことは注意しなければならぬということを指摘しておられます。  したがいまして、かぜの解熱等の場合ですから、その注射によって二、三日でもって解熱するようなケースの場合は、注射回数が一、二回で済んでおる、ですから何の障害も残っていないケースもあるわけでございますし、個々の例について、何回の注射であったというようなことは、これはこまかく調査しませんとわかりませんので、私の手元にはそのような資料はございませんけれども、一般論としては、学者の方の御指摘は、部位を注意するということと、それから注射回数が同じ場所なり、あるいは回数が多くなるケースに発生しやすいということを指摘しております。  それから対策委員会につきましては、昨年実は鈴木強先生からも、この問題で国会で御質問がございましたが、それは、ちょうど朝日新聞だと思いましたが、朝刊にその記事が出て以来、取り上げられたわけでございます。県といたしましての対策委員会をつくりまして、発見の動機は、先ほど説明しましたように、保健所等にそのような訴えがあり、それで調査してみたら、かなり多数の同じ症状の子供がいるということで、県がこれは対策を考える必要があるということで、対策委員会を実施したわけでございまして、これには診療、治療するほうの部会と、それから原因究明のほうの部会とできておると聞いております。山梨県内の医療関係者をほとんど網羅した委員会ができておるように承っております。  先ほど申し上げましたように、特定なこのような疾患でございますので、このようなことに経験の深い専門医を県が招請して、健康診断を的確にして、その病気であることを確認するとか、あるいは治療方法の経験からいって、どういう治療法を選ぶのが適切であるかというようなアドバイスを受けるために、県当局としても専門の医師の御意見を聞き、対策を講じておるというふうに承っておるわけでございます。
  86. 小林信一

    ○小林(信)委員 そうすると、大体、原因は注射によるというように判断をしておるわけですね。注射が原因であるというふうに厚生省は確認をしておるわけですね。先天的なものもあるけれども、そういうふうに確認をしておると言っていいですか。
  87. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この点につきましては、山梨県当局において原因の究明に当たっておられますが、私、先ほどから申し上げましように、私たちもいままであまり経験したことのない病気でございますし、文献等により急遽調べたわけでございます。もちろん新聞報道等の中にもそのようなことを触れております。かなり注射が原因ではなかろうかということを指摘しております。  したがって、私は、この席で申し上げたことは、文献による見解ということと、それから新聞報道その他が、それぞれ取材が専門医なり適切な方からの取材の上の報道だと思いますので、そういう点で、注射というものがかなり因果関係の深いものであるというふうに見解をただいま持っておる。山梨県のケースについて、個々のケースごとにどのような部位に何回やり、どういうふうにしたかというようなことを承知いたしませんし、山梨県に原因の究明の部会ができておりますので、その見解を待ちたいと思うのでございますが、いずれにいたしましても、一般論としての学者の見解、それからわれわれの文献による調査の結果について、私の見解を申し上げたわけでございます
  88. 小林信一

    ○小林(信)委員 別に、私は、注射によることが原因であるということをあなた方に確認をさして、したがってこれはだれの責任であるから、だれがそれに対する補償とか賠償とかいうのをせよということを言っているのではないのですね。何となく印象的には注射であるといいながら、究明をしてまいりますと、山梨県の問題は山梨県の医者たちが目下究明中であるというふうな、まことにあいまいな答弁をされるから私は念を押したわけですが、しかし大臣に私、これはひとつ考えていただきたいんです。  お医者さんは決して不注意というようなことでなく注射をしたらしいんです。いま厚生省でお話があったように、おしりに注射をするような場合に、おしめをしておるというふうなことから簡単に大腿部のほうに打つというふうなことが、しかも一回とか二回でなく数回に及ぶとか、しかも浸透性のある注射をするというふうなことが、最もこういう病状を発生させるのじゃないかというふうな、そういうことまでいままで文献の中にも出ております。したがって、厚生省のほうで全面的にこれから一切を補償するならですが、一つその医療公害とも私は考えてもいるんです。  そこで大臣、聞いていていただきたいのですが、この育成医療というものはどの程度責任を持つんですか。あなたはいま、国が八、県が二ですか、これをほんとうに完全な状態になるまで入院費、治療費一切を見る仕組みになっているのですか。何か一部を八対二でもって国と県が負担をするというようなことになれば、親たちの不注意とかなんとかということでなくて、ほんとうにお医者さんも一つの好意を持って注射をしたんですが、そういうところにいまのような問題があって、こういうふうな人たちになるということであれば、どこかでこれはやはりめんどうを見なければならぬと思うのですが、この育成医療の内容をもう少し御説明願いたいと思います。
  89. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 育成医療は、児童が身体に障害がある場合、それが従来は外部の手足の不自由とかそういう障害を中心に考えましたが、数年前から心臓病についても、子供の手術によって直すことができますので、これも育成医療の対象にいたしました。今回の場合は明らかに外部にあらわれた肢体の、特に足の障害でございますので、これを適用しているわけでございます。内容的には、かかる医療費の十分の八。生活保護と同様でございます。国の補助としては最高額でございますが、十分の八国が負担、十分の二県が負担で育成医療制度というものが児童福祉法の中に定められておりますので、いまわれわれが健康保険で一般的にかかれる医療というものは、即育成医療で全額これを見ることになっております。  ただし、私ちょっと、局の担当は児童家庭局が担当しておりますので、所得制限が若干あったんじゃないかという記憶がございまして、この点は非常に不確実な問題でございますので、後ほどわかり次第先生のほうにお知らせいたしますが、児童福祉法の中で若干の、所得の高い方については一部の負担があることがあったと記憶いたしておりますので、この点については確認の上、御通知を申し上げたいと思っております。
  90. 小林信一

    ○小林(信)委員 大事な点は、育成医療というのは、無制限にその子供がほんとうにもとの原形になおるまで、あるいはなおらなくても、これ以上はどうしようもないという、そういうかなり制限のない状態でもってめんどうを見てくれるのかどうかということが、私の一番お聞きしたいところだったわけであります。  それから所得制限が幾らかというようなことをおっしゃるけれども、一般に行なわれる所得制限というのは相当きびしいものがあるわけですが、そういう一つの規定を持った育成医療であれば、これはやむを得ないわけですが、その原因、発生、そういうものを考えれば、全く医者も、決して不注意な点もないとはいえませんが、かなり好意的にやってくれた、それが結果がこうなった、そしてもうみすみす、わからないままに五年も六年も七年も八年もですよ、これはなおりませんか、どうですかというようなことで、もう子供を持ち回って治療を受けてきた人たちもありますよ。いま二、三歳という子供でなく、もうその時代に受けて知らぬままに放置されておって、不自由になっておる子供たちが相当数、百何十人の中にはあると思うんです。  調査しただけですから、もっとあるいはふえるかもしれませんが、そういう人たちは今度はもう、あなたがおっしゃるように、幼児のときでなければ治療は不可能である、もうかなりまで成育してしまうとどうすることもできない、そういう人たちには、私がさっき申しましたように、何かその対策を講じて一人前の人たちと同じような職業につけるような補導とか、そういうことも父兄はいま要求をしておるわけなんですが、そこは何か考えておるのですか。
  91. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生御指摘のように、この山梨の子供には、昨年発見された段階で五歳、四歳という子供がございます。ということは、注射は乳児期に受けておるということでございまして、これらの子供たちのリハビリテーションといいますか、障害をできるだけ少なくするという努力というものは、先ほど来御説明しましたように、まず手術の適用のある重い患者については、手術を加えた上でマッサージその他のリハビリテーション療法を続けていくということでございまして、いままでの日本の医学では、かなりこのような問題に対する対応のしかたが不十分でございましたが、最近の整形外科医の意見を聞きますと、かなり回復することができるということでございます。  こまかい内容になりますと、子供の足の曲がっておる角度によって分類も山梨県ではされておりますが、九十度以上とかあるいは三十度以下とかいろいろございます。総体的に完全に、ほとんどわからない程度になおり得る可能性のあるものもあるようでございます。ということは、福井県の今立町で発生した事例について、手術の結果かなりの成功をいたしておりました。四十八名ぐらいのうち三十数名手術をいたしておりますが、どうしてもまだ障害が残りそうだというのが八名あるという文献がございます。これによりますと、再手術を場合によっては考えるというようなことが報告の中にございます。  したがいまして、結論として申しますと、かなり障害の強い子供がほとんど障害がわからぬような、ことに回復するまでには相当の医療と本人の努力と要ると思いますけれども、総体的には、先ほど申し上げましたように、百四、五十名のうち、当面三十数名が手術の対象であるということを考えますと、手術しないで、要するに訓練、マッサージ、温浴療法等を加えることによって、かなり障害を少なくした状態に回復できるものも期待できるわけでございます。  それで全然障害を残さないで回復できることを希望して努力していただくわけでございますけれども、具体的には、いま言ったように軽重いろいろございまして、そういう点からもわれわれとしては、医療の面では、育成医療というものについては、リハビリテーションを含めまして引き続きこれのお世話をするように考えておりますので、県当局と十分相談しながら、この対策を進めてまいりたいというふうに思っております。
  92. 小林信一

    ○小林(信)委員 最初、私は非常に不安に思っておったのですが、あなたの説明を聞いて、国も手をつけてくれておるし、県も努力をしてくれておる、しかも全治する可能性というものが、一〇〇%までいかなくても、相当高い率で見られるという話を聞いて、たいへんにうれしく思うわけですが、しかし二月からというお話でございまして、まだまだ取りかかっておらないとすれば、ひとつ促進をしていただきたい。そしてこの問題は、少し内部的に、山梨県の医者と、そしてその地域の人たちが呼んだ医者との何か感情的なものもあるようでございます。しかしそれは、いまのようなあなたの気持ちで対策を講じていただければ、そういうものは一切解消されて、父兄も安心して治療に従えるのじゃないかと思います。  そこで、県と厚生省が協力し合ってという話でありますが、厚生省はまだ行ったことはないのですか。だれも現地に行って調査したことないのですか。
  93. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 調査に職員を派遣したことはございません。ただ、われわれが、疾病の内容と、それから県当局の具体的な講じております対策と、詳細に連絡し合っておりますので、県のほうと十分相談いたしまして、もしこれが必要であるならば、われわれの関係職員を派遣いたしたいというふうに考えております。  なお、この機会に一部違う方面からの研究費をこれに充てまして、先ほど最初に御質問ございました、全国的にどのような発生状況があるかということを把握いたしたい。先ほどお答えの中で漏れておりましたので、つけ加えさせていただきます。
  94. 小林信一

    ○小林(信)委員 やはりその点は環境庁のほうがまじめですね。重大であればじゃなくて、重大なものであるおそれがあるならば、すぐに環境庁から現地に調査に行くというふうなところは、われわれが接しておりまして、環境庁のほうが厚生省よりも親切だという感じがします。あなたのいまの言い分の、必要であるならば現地を調査あるいは何か派遣をする、そんななまぬるいことじゃなくて、もっと親切にしなければいけないと思うのですよ。もしこれが、あなたたちが重大視して、そして発生と同時に、どんな状態か派遣をしておれば、見通しも親たちにつくし、そして県の対策委員会も、そんなにいろいろと陳情を受けなくとも、もっと早く安心できたじゃないかと思います。そういう苦言を呈しまして、たいへんにおそくまで御苦労さまでした。お礼を申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
  95. 角屋堅次郎

    角屋委員長 次回は来たる二十日水曜日、午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後六時三分散会