運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-04-24 第72回国会 衆議院 交通安全対策特別委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月二十四日(水曜日)     午後一時十四分開議  出席委員    委員長 勝澤 芳雄君   理事 小此木彦三郎君 理事 大竹 太郎君    理事 斉藤滋与史君 理事 中村 弘海君    理事 野中 英二君 理事 野坂 浩賢君    理事 平田 藤吉君       越智 通雄君    片岡 清一君       左藤  恵君    佐藤 守良君       太田 一夫君    久保 三郎君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房交通安全対策         室長      秋山  進君         運輸省船舶局長 内田  守君         運輸省自動車局         長       中村 大造君         運輸省航空局技         術部長     中曽  敬君         海上保安庁次長 見角 修二君  委員外出席者         警察庁交通局参         事官      寺尾  繁君         大蔵省銀行局保         険部長     安井  誠君         農林省農林経済         局農業協同組合         課長      大坪 敏男君         航空事故調査委         員会事務局長  笠松好太郎君     ――――――――――――― 四月二十三日  踏切事故防止及び安全対策強化に関する陳情書  (第五五三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  交通安全対策に関する件      ――――◇―――――
  2. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員長 これより会議を開きます。  交通安全対策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。久保三郎君。
  3. 久保三郎

    久保(三)委員 きょうは大体三項目ほどお尋ねをするのでありますが、出席されている方々の御都合もございますから、先にわりかた簡単な質問を申し上げていきたいと思うのです。  まず一つは、これは警察庁お尋ねするのでありますが、これは前にもこの委員会運輸委員会で言及したと思うのであります。最近貨物自動車運行による事故というと、積載荷物との関係あるいはこれは道路構造にも関係あるかとは思うのでありますが、そういう事故が多い。たとえば積み荷による事故が多い。ごく最近の事例では、トレーラーに鋼材を積んだ車がカーブに差しかかった際に横転して道路を通っていた人が圧死されるというような事故。それからついせんだっては、高速道路バターが荷くずれして道路一ぱいバターになって、このために派生した事故が出てきたというようなこともありまして、数限りないと言ったらたいへん語弊がありますが、かなりこの種の事故が多いんですね。それからもう一つ砕石というか、そういうものにはシートをかぶせてというようなお話が、そういう指導があるようでありますが、シートをかぶせなければ当然でありますが、かぶせても不完全な場合には、砕石が飛散して後方から来る車両フロントガラスに当たって、これが事故につながるというような問題があるんですね。船舶の場合も完全じゃないんですが、船舶の場合は、積載荷物について多少規定を設けて指導というか規制をしているんですね。なるほど道路交通法の中にもこの積載について言及している条文がないわけではありませんが、至って抽象的でありますし、いま私が幾つかの例をあげたようなものに対して、適切に積みつけ指導するというか規制する立場にはないと思うんですね。そこで、最近のような貸物の積みつけ不良による事故が多い現況にかんがみて、積みつけに対する規定というか規制というか、そういうものを設けて、特定のものについてはもう少しきびしくしたらどうだろうということが一つ。  もちろんきびしくするばかりが能ではありませんが、もう一つは、積載方法について指導を具体的にする必要が当面ありはしないかということですね。なるほど自動車運転については免許証というものをとることによって一応の課程を卒業するわけでありますが、トラック運転手というのは空車運転するんじゃないのですね。荷物を積んで運転するのでありますから、当然この積み荷方法あるいは危険防止方法、こういうものを熟知していない限りは完全な運転はできないんじゃないかというふうにわれわれは思うのですよ。ついてはそういう指導を徹底してやるべきであろう、こういうふうに思うが、その点はどういうふうに考えられるか、以上二点であります。  それとあわせて運輸省に聞きますが、車両保安基準はなるほど設定されている。車両そのものには、構造保安基準に適合していれば、危険というかそういうものはないものと思う。しかし、積み荷の積み方によっては当然保安基準をこえて危険が出てくるのは、さっきあげた例からもわかるとおり、片積みであった場合、その場合にはたとえば傾斜角度保安基準に合っていても、これは残念ながら、保安基準どおり範囲に安全にいわゆる運行はできない形があるわけですね。だから、これはあえて運輸省指導しろとは言いませんけれども、車の使用方法についてメーカーは当然、単にエンジンやハンドルの切り方だけを教えるマニュアルじゃなくて、説明書じゃなくて、積み荷をした場合に、どういう積み方をすればこの車は危険であり、あるいは重心が上に上がるとか、カーブを切る場合にはどの程度の高さなら安全であるとか、どの程度のものならば傾斜つけておいても荷物はずれないとか、そういうものが親切にあるべきはずだと思うのです。それから警察お話をしました、たとえば荷物を縛る、緊締する場合においても、どういうものでこういうものは緊締しなければならぬとか、緊締した場合のとめる場所はここにございます、このフックにかけて一重じゃなくて二重にこういう場合はかけなくちゃいかぬというような使用方法について説明がなされるべきだと思うのであります。そういう考えはあるのかないのか。  それからもう一つ、これはしろうと技術屋でないからよくわかりませんが、保安基準というものは積み荷に、特にトラックの場合はどういう状態で策定されているのか。何でもないときには何でもないのでありますから、言うならば、異常時においてどの程度までの限界が保安基準であるのかというのが、私はあり得るのじゃなかろうかと思うのです。まあ聞けば、たとえば傾斜度は三十五度におさまればいい、それは空車の場合だと、こういうふうにおっしゃるわけでありますが、空車の場合で三十五度、それじゃ積んだ場合は何ぼまでが許容されるのかが示されなければ、これは保安基準とはちょっといえないのじゃないかというふうにも、理屈っぽい言い方でありますが、思うのであります。この点はどういうふうに思う、保安基準についてどう思う、あるいはメーカーに対してその積み荷と車の関係説明を要求すべきではないか、こういう問題。それぞれ警察庁並び運輸省からお答えをいただきたい。
  4. 寺尾繁

    寺尾説明員 お答えいたします。  先生からのお尋ねが二点。一つ規制を強化する問題、あと積み荷のしかたなどについて運転者に具体的に教育なり指導をする方法いかんということであったかと思います。  先生おっしゃいましたとおり、最近、といいましても去年、四十八年の一月からことしの四月にかけて関東管区内と警視庁の例でございますけれども、大体死亡事故として積み荷が落ちたり、あるいはその積み荷を縛っておるロープが切れたり、あるいは積み荷が動いて積み荷の間に見張りの人間がはさまったりといったような事件だけで六件、九人の方がなくなっております。まだほかに重傷もたくさんございますし、全国を入れましたならばかなりの数字になるのじゃないかと思います。  そこで、これの規制をどうやっておるかということにつきましては、現行法がやや抽象的でないかという御指摘があったわけでございます。私どもといたしましては、さきに道路交通法改正いたしまして、積み荷が散乱したり、あるいはロープがゆるんだりといったようなことの規定を、最近、二年ほど前の道路交通法改正で入れたわけでございますけれども、同時に、従来重量等がオーバーしてはいかぬというような抽象的なことばであったものを非常に詳しく分けまして、重さ、高さ、幅、それから積み方の要領について、先生お話によればなお抽象的ということでございますけれども、一応そういう改正をしたわけでございます。  そうして、法律はそういうことでございますけれども、私ども事故の大きさにかんがみまして、これをどういうふうに取り締まっていくかという点になりますと、道路交通法のほか、保安基準あるいは道路法にも関係規定がございますので、これらを、道路においてあるいは一斉取り締まりあるいは検問、あるいは特定場所埠頭等におきまして取り締まりをいたしまして、それぞれ相当の予防的な検挙はいたしております。  さらに、最近全交運なんかからもいろんな問題があったわけでございますけれども、たとえば鉄鋼埠頭——先ほど六件と申しましたが、六件のうち五つまでが鉄材を積んだ車による死亡事故であります。一件が電気冷蔵庫事故でございますが、そういった鉄材のようなものによる事故が非常に多いものですから、鉄鋼波止場といったようなところで重量を監視すると同時に、それらの積み方に対する規制を強化するように、さらにそういう重量オーバーなどがありました場合は、荷主あるいはその経営者についても責任を問うようにということで、先日来、神奈川であるとかあるいは福岡でそれぞれ経営者に対する追及もやっておるわけでございますが、そういうことで、それぞれの荷物に応じた容器を荷台として、全然はみ出さず、ひっくり返っても飛び出さないといったような、鉄材あるいは木材、それぞれに応じた具体的な規定に仕上げるということは、できればそうしたいのでございますけれども、千差万様でございますので、そういう場合でもはみ出す長いものなどがございますので、なかなかそこまではできておらないというのが現状でございます。  さらに、これに対する教育でございますけれども、私ども二年ほど前に、交通方法に関する教則というものを設けまして、図面並びに文書をもって、一応非常にわかりやすい形で全運転者に徹底するように、交通方法に関する教則で書いてございますけれども、さらに具体的には、それぞれの取り締まりに当たった警察官等がその場で十分注意をするといったような方法を通じまして、指導を重ねてまいりたい。さらにいろんな交通安全協会等の会合その他がございますので、そうした機会をも通じまして徹底してまいりたい。ことばが足りませんですけれども、大体そういった方向で今後も推し進めてまいりたい、かように考えております。
  5. 中村大造

    中村(大)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま警察庁からお答えございましたように、積み荷あり方につきましては、使用者ユーザーに対してかねてから警察庁では指導なりあるいは取り締まり、そういうことを通じて御努力いただいておるわけでございますけれども先生指摘のように、車をつくって売るメーカーないしはディーラト、こういうものを通じて、ユーザーに対して積み荷適正化について具体的なやり方案内書といいますか、こういうものについてもう少し積極的にメーカー、ディーラーを指導すべきではないか、こういう御趣旨だと思います。これはきわめて適切な御指示だと存じますので、私どもといたしましても十分関係方面と協力いたしまして、そのように指導をしてまいりたいということでございます。  それからもう一つ、現在の保安基準あり方でございますけれども、これも先生の御指摘、まことにごもっともでございます。特に最大傾斜角度空車状態で三十五度ときめられておるわけで、したがって、これが積載された状態ではどうなるかという問題があるわけでございますけれども、やはりその荷物種類あるいは積み方、これは千差万別でございますので、そういうあらゆる状態を仮定して、積載された状態での傾斜角度保安基準できめるということが非常にむずかしい、こういう状況でございます。  それから、保安基準の中でそういう積み荷を前提にしてもう少しきめのこまかい規定ができないかという御趣旨かと存じますけれども、現在の保安基準は、いわゆる適正な荷重といいますか、積み荷をして、その状態での保安というものが十分保てるように保安基準をきめておるわけでございます。ただ、それの積み方はこれまた千差万別でございますので、そうなりますと、たとえば積む荷物種類、大きさ、そういうものによってそれぞれ異なった保安基準ないしはそれの構造をきめる、こういうことは技術的にも非常に困難な面があるわけでございますので、こういう問題はさらに私どもいろいろ勉強をさしていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。
  6. 久保三郎

    久保(三)委員 警察庁お話、それから自動車局長お話も、積み荷千差万別であるからなかなかそう簡単にはいきませんよというお話なのですが、千差万別だからいろいろ問題が一つはあるのですね。それからもう一つは、事故を起こすというのは、千差万別の中でも大体さっきお話があったように、鉄鋼とかあるいは原木なんというものも危険が伴うのですね。あるいは長尺ものの材木とかそういうもの。それからこういう例はあまりないとは思うのですが、硫化銅みたいなさらさらしたもの、こういうものがそのままバラ積みになっていると、傾斜があると片荷になるのですね。片荷になれば当然危険になってくる。ある程度そういう特殊なものがあると思うのです。私は、しつこいようでありますが、少なくともいまの道交法の五十七条ぐらいで、あるいはそのほかにもあるかもしれませんが、そういうものだけでいろいろ考えられても、これは無理ではなかろうかというふうに思うので、さっき二つの項目について希望を兼ねて質問したわけなのでありますが、むずかしいけれども何か手を打たなければならぬということはおわかりだと思うのです。そうだとするならばやはり検討を加えてもらいたい。  たとえば非常に皮肉な、意地の悪い質問でありますが、道交法五十七条で出発地警察がその積載の特例を認めて、その認められたトラックがもしも積み荷の積みつけの不良によって事故を起こしたというときには、これは当然運転手責任だろうと思うのです、五十七条では。警察は単に、これは重たいけれども分割はできないから、やむを得ないから持っていってよろしいというだけの、気楽な許可を与えるにすぎないものではなかろうかと思うのです。たとえばストリップミル鉄鋼コイル、これは一巻き二十トンくらいあるそうでありますが、これは分割できないから十トン車でいいから持っていけといった場合、まあそれは分割できないから五十七条を引用して許可した場合に、本来ならばコイルはまるいから移動するのですね。一本や二本のロープで引っぱってみたところで、これはそうなかなか——ブレーキをかけたり、坂道をのぼったりおりたりした場合には、これは歯どめをかけなければならぬ品物だと思うのですね、一つは。しかも、歯どめも単に車の歯どめなどをちょっとかすがい程度に差し込むということではまずいのですね。車体にちゃんとくぎならくぎで取りつけられたものの歯どめがなければあぶないのではないかというふうに思うのですね。そういうことまでの指導はおそらく五十七条ではしないし、また、そこまでの点検を警察官は義務づけられていないと思うのですね。これは一切運転手に義務づけられているということなんです。義務づけられているのはそれでいいと思うのですけれども、少なくとも許可するからには、危険であるかないかの認定はやはり当然職務上必要な範囲だと思うのです。そういうところからいって、第一線の警察官は規則にないことまでやれといったってこれは無理でありますが、内部的には少なくとも積み荷はこういうふうにやれというくらいの指導はやるべきだと私は思うのです。運転手のほうもできなければ、警察官自体危険度の判定ができないようでは、交通警察をまかせておくわけにはいかないのではないかというふうに思う。そういう意味では一つある。だからあわせて運転者教育というか、指導もするのが当然ではないか、千差万別でむずかしいことはありますよ。しかしおおよそは先ほどの例のとおりあぶないやつはわかるのですよ。ですから、それくらいのやつはひとつ考えてみたらどうか。もう一ぺん再考を促したいのであります。  それからもう一つは、運輸省お答えでありますが、メーカーに対する、使用方法の明示というか、そういうものを御検討いただくことを御同意いただきましたので、これは推進してもらいたいと思うのです。  保安基準について全くのしろうと、技術的には何もよくわかりませんけれども、どうもしろうとの勘として、積載時におけるところのいわゆる保安基準といったらおかしいが、保安度はどの程度まで許容されるものかというのは、やはり許容限度というものがあると思うのです。品物によってかさ高になるものもあるし、かさ高にならぬものもある。あるけれども片荷は大体どの程度まで、こういう品物ならこの辺までくればこれは保安基準範囲外になりますよというようなことくらいは、やはり使用する、運転するあるいは積み荷を積みつける者の目安として何かを明示する、保安基準というしかつめらしいものでなくても、ある一定の限度をつくっておく必要がありはしないか。私は、車がいまの保安基準だけで全部安全だとは、しろうとなりに考えてみても考えないのですよ。道路構造もありましょう。あるいは積み荷の物によっても違うと思うのですよ。だから、そこでいま申し上げたようなことをひとつ考えてみたらどうか、そしてメーカーにもやはりそういうものに合致する構造を検討してもらうということが必要ではないかというふうに思うのです。そういう点はしろうとの意見でありますから、どういうふうにお考えでありますかわかりませんが、私どもはそういうふうに思うのです。これはあわせてあとから御答弁をいただきたいと思うのです。  時間の関係で、続けて次は警察庁にも自動車局長にも関係のない質問に入ります。  これは船舶局長お尋ねをするのでありますが、最近というか、先般この委員会ジャンボエアバス脱出装置についての議論がなされたと思うのです。脱出装置脱出が可能であるかどうかの問題ではなくて、脱出装置そのものについて私は問題があるというふうに思うのです。たとえばカーフェリーなどにもあるいは旅客船にもあると思うのでありますが、なわばしごがあると思いますが、これは荒天時でなければ、波も風も全然ないというようなところならば、大の男で血気にはやる者はしろうとでも、たとえば乾舷八メートル以上ありますね。そういうところからでもおりることはできます。しかもこれは垂直でありますから、下を見たら非常に健康な者でない限りは目がくらんで、どうも恐怖心が先に立つのじゃなかろうかと私は思うのです。ましてや荒天時においては、残念ながらセーラーというか乗り組みの船員以外は——船員でもなかなかむずかしいのじゃないかと思うのですが、それ以外の者は残念ながらなわばしごなどで下の救命艇なり救命ボートに乗り移ることは、私はかなり困難だろうと思うのですよ。ましてやシューターは、最近合成繊維というか、そういうものでできている。これは波風には動揺するわけですね。動揺しますから、これまたそういうものでかなり下までおりていくというようなことはむずかしいと思うのですね。飛行機の場合でも、脱出装置を使うのはおおむね海の上だろうと思うのですね。その場合に、おそらく風波があってそういう脱出装置そのものが動揺しますから、その脱出装置に乗っても下までさっとおりられるかどうか、私はたいへんむずかしいのじゃなかろうかと思うのです。こういうものの研究はどうしているのか。これで安全だと思って、たとえばカーフェリーのごとく五百名も六百名も乗せていくのだが、これで安全だという実験をしたことがあるかどうか。五百も六百もの一般の人を対象にして実験したことがあるかどうか。おそらくないのじゃなかろうかと思うのです。また、やろうったってこれはたいへん無理だと思う。しかしこの実験をしないで、ただ観念的に、膨張式ゴムボートもあります。漁船のような場合には、乗り組み員も、荒くれ男といっては語弊がありますが、血気盛んなものがある。しかも漁船のごときものは乾舷は非常に低い。だから膨張いかだであっても、泳ぎもできるというから飛び込んでいって膨張いかだに乗り移っていける場合がある。しかしこれは、しろうと乾舷の高いところからシューターでうまくおりても、動揺しているゴムボートに乗り移ることは、私はそう簡単にいくものとは考えられないのですね。なわばしごにおいてもそうですね。ボートは上下に動揺しているのですから、なわばしごでおりてきて、くろうとであれば上がったときにぽっと乗り移れるが、しろうとはおそらく下がったときに手を離すのじゃないかというふうに思うのです。その場合には、残念ながらゴムボートには移れないで海のほうへ落ちてしまうという心配があるのですね。いままであまり大型の事故はなかった。あっても、いつか瀬戸内ですか、その事故のときには乗客は非常に少なかった。また平水航路と同じようなところであったというようなところで、これは難をのがれたのでありますが、どうもその点が心配なんであります。船舶建造の際にはそういう安全の装置についていかなる規制があるのかないのか。それから、現行のこういう脱出装置というか救命装置というか、そういうものについていまはどんなふうに考えられているのか。時間もたくさんないようで、あと質問がありますから簡単に願いたいのですが、そういうこと。あるいは現在研究開発はしているのかどうか。そういう諸点についてお伺いをしたい。  それからもう一つ海上保安庁つけ加えてですが、これはある会社社長の書いた書物の中に、たまたま最近私が見まして——これは旅客船をやっている船会社社長かもしれませんね。その人の言うことには、船が岸壁に着く寸前に海上保安庁が乗り込んでいって、定員オーバーだ、けしからぬということで処罰されたそうであります。これはどういうふうに思いますか。なるほどこれも取り締まりだけれども、乗せないのが取り締まりだと思うのですね。乗船時においてこれはチェックする。下船時にチェックしたって何になるか。無事に帰ってきたものは何も関係ない。もし事故があったらたいへんだというだけの話で、これこそ形式的な取り締まりであって、もしもそういうものをほんとうにやっておるとするなら、海上保安庁はたるみ切っているのじゃないかというふうに思うので、これはどういうふうなのか。これから夏になってレジャーの問題もかなり出てくる。定員オーバーというような問題が出てくる。そういう際に、やはり安全の観点からチェックはするのでありますから、そのやり方についてどういう指導を持っておるか、これを説明してください。  以上です。
  7. 内田守

    内田政府委員 お答えいたします。  具体的にはゴムボートとか救命艇とか、そういう救命設備そのものの問題と、それから船からそういう救命設備脱出して、無事に本船から脱出する脱出装置、二つあろうかと思います。  最初御指摘のございました脱出装置のほうでございますけれども、これは従来、御承知のように、舷の低いものにつきましてはなわばしごとかあるいは網ばしご等が利用されており、それから救命艇とか、わりあいに舷の高いものにつきましてはダビットとかあるいは起重機みたいなものでおろすとかいうやり方がとられておったのでありますけれども、後者の場合は、わりあいそういう意味では脱出は確実ですけれども非常に時間がかかる。それから前者の場合は、先生指摘になりましたように、すぐ飛び込めばいいのですけれども、あるいは利用は簡単だけれども荒天とかいろいろなときに問題があるというようなことで、私ども従来からいろいろこういう脱出装置の開発というのをやってきたわけでございます。先ほどいろいろ御批判ございましたけれども、現時点で、御指摘になりましたシューターでございますけれどもシューターはごく最近開発されたものでございまして、これはちょうど陸上のビルの上から袋になっておりるような形で脱出シューターができれば、比較的簡単に乗り込んで行けば自動的に下に一定のスピードでおりることができるという装置で、われわれ開発されましてからいろいろな実験等を重ねまして、現在考えられます脱出装置としては最良のものではないかということで、法令等に採用を踏み切ったわけでございます。もちろん、実験と申しましても、模型であるとかあるいは水槽の中の実験とか、あるいは何人かの人間を集めていろいろやったわけでございますので、ほんとうにこれが波浪になってどういうふうになるかというようなことにつきましては、何しろ開発あるいは法制化そのものをいたしましてから日がなお浅うございますし、それから使用の実績もあまり実際にございませんので、今後そういう実績等を勘案して順次改善につとめていきたいというふうに考えております。  それから、救命設備そのものは、救命艇とかゴムボートとかございまして、これは従来からもわれわれもいろいろやってきたわけでございますけれども、それぞれ一長一短ございますので、それらの改善と同時に、現在、私ども全天候型というとオーバーでございますけれども、船から救命艇に人が乗り込んだままおりて、そして荒天の中でもできるような救命艇の開発を二年ぐらい前から始めまして、ことし実船実験に入りたいというようなことで、そういう開発を一生懸命やっているというのが実情でございます。
  8. 見角修二

    ○見角政府委員 海上保安庁から定員オーバーの問題につきましてお答えを申し上げます。  旅客船あるいは旅客カーフェリー定員オーバーにつきましては、かねてから、年間を通じて特に重点を置きまして、厳重な取り締まりを実施しているわけでございます。特に年末年始につきましては全国一斉の取り締まりを行なっておりますし、また間近に近づいておりますゴールデンウイークとかあるいはお盆の多客期等におきましては、特にこの定期航路の多い瀬戸内海水域等におきまして重点的に取り締まりを実施しているわけでございます。  先生指摘の、たまたま着岸時に保安官が乗り込んでいって取り締まりをしたという事例、私はどういう場合にあったのか詳しくは存じませんけれども、御指摘のとおり、できるだけ出発時に定員オーバー取り締まりをやって、定員オーバーが起こらないということをもちろん重点に置いて考えなければならぬと思いますが、御指摘の事実は、出発時にたまたま保安官の体制が整わないで出発を見のがした、それを到着時においてつかまえた、何もしないよりは、到着時においてもせめて取り締まって今後の戒めにしたほうがいいという現地の保安官の判断でやったんであろうかと思いますが、そういうことばかり多くなっては、御指摘のような取り締まり趣旨に反しますので、十分御趣旨を現地に伝えまして、今後の多客期を控えて取り締まりに遺憾なきを期したい、かように考えております。
  9. 寺尾繁

    寺尾説明員 もっと具体的に指導すべきではないか。先生おっしゃいますとおりに、五十七条では非常に抽象的な規定でございますが、政令の二十二条で数字をあげまして、たとえば荷物はその荷物の十分の一以上はみ出てはいかぬとかいったことはかなり詳しく書いてございますけれども、それをいたしましてもなおかつ五十七条及びその政令で書いてございませんのは、荷物を固着するという見地からの規定は、おっしゃいますとおり五十七条ではございません。ただ、さらに道交法の七十一条という規定がございまして、これもやや抽象的に過ぎるかもしれませんけれども、先ほどもちょっと触れましたけれどもロープをがっちり締めるとか、あるいはその荷物が落ちないように、運転者の順守事項として書いてございます。これも、先生おっしゃいますとおり、運転者の順守事項であって、客観的に、たとえばコイルを積む場合にどういうふうに固着するんだといった具体的な規定はできてございません。  実は昨年の四月にも、先生おっしゃいましたような事故が、静岡県の管内におきまして、十トン車に積んだコイルが落ちて死亡事故を起こした例がございます。このときはたまたま制限重量をオーバーしてございませんでしたので、警察官とは直接触れずに出発したわけでございますけれども、もちろん、制限された、あるいは法令で定められた以上の方法積載いたします場合には、警察署長の許可を要することになりますので、そういう際は具体的に、どういうふうな方法で積みなさい、あるいはロープもしっかりつけなさいといったような注意をやっていきますように指導したいと思います。
  10. 中村大造

    中村(大)政府委員 保安基準で、もう少し目安というようなものを踏まえて規定できないかという御趣旨でございますけれども、要するに保安基準というものが、主として車両構造上から安全のぎりぎりのところをきめている、こういうことでございます。したがいまして、先生の御趣旨のような事柄が保安基準の中でどの程度まで規定し得るかということでございますけれども、私ども、いろいろ今後研究させていただきます。  ただこの問題は、保安基準規定ということだけではなくて、ただいま警察庁からも御答弁ございましたように、やはりその積みつけのしかたあるいは固定のしかたというふうなきわめて具体的な指導を必要とする事柄ではないかというふうに思いますので、関係者でよく連絡を密にいたしまして、さらに検討を加えてまいりたい、こういうふうに思います。
  11. 久保三郎

    久保(三)委員 警察庁にはもう一度申し上げておきますが、特殊なものというか、考えられるものは、いまのコイルの例じゃないけれども、やはりそういうものについての積みつけ安全の方法について、少なくとも、規則をつくれとは言いませんけれどもね、いろいろ責任の問題も出てきて、非常に役人というのは責任にならぬようなことを重んじますから、だから、そういう意味で、あまり規制をつくれと言うのもどうかと思うのですが、ただ問題は、そういうものによって指導して安全を確保するということは、もう御異論のないところだと思うのですね。ついては、特殊な品物の積みつけ方法、こういうものについて、やはり基準というか標準は、こういうものにはこういうふうな手当てが必要ですよ、こういうものにはロープは一本では足りませんよというようなことくらいは、やはり別な教本——乗用車に乗る人と同じようなところにそういうものがあってもむだでございますから、そういうトラック積み荷だけに限定した教本なども考えられて、トランク協会というものもあるようでありますから、そういうものの協力も得させながら、事故をなくしていくようにもう一度くふうをしていただきたい、こういうふうに思います。時間がありませんのでなんですが、私はきょうは寺尾事官には大体その辺で終わりにします。  それから、船舶局長になんですが、いずれにしても、最近は事故が大型化しています、乗りものが大型になっておりますから。最近ではバリ島の航空機事故があります。この原因その他は直接日本政府に関係ございませんからなんでありますが、乗っておる人は日本人だし、人間がたくさん死んでしまったのでありますから、これはいろいろな原因があると思うのですが、いずれにしても、事故が起きてからの救難も必要でありますが、さっき申し上げた脱出装置あるいは避難装置というか、そういうものの開発も大事でありまして、いま開発途上のように実は話では聞いています。私はそういうふうにとりますが、まだ完全ではないというふうに思うので、その開発を急がれることが一つだと思うのです。  と同時に、事故を起こさないように、これは船舶局長だけじゃなくて、海運局長がお見えじゃないのでなんでありますが、これは海上保安庁も同様であります。協力して、これは大型カーフェリーあるいは旅客船、こういうものに対するところの事故防止をもう一ぺん見直してもらいたいと思うのですね。もう間もなく夏の時期で、霧の発生する衝突の多い時期でありますから、ぜひお願いをしたいと思います。  それで、時間もたくさん残っていないのでありますが、きょうの一番大きい問題になりますか知りませんが、自賠責の問題でありまして、きのうの新聞によりますと、大蔵省は保険審議会を開きまして、保険制度そのものについての検討を始められたというふうにいわれておるのでありますが、その中で、保険制度全体は別として自賠責の問題が、やはり去年の十一月の自賠責保険審議会の答申にもあったように、自賠責制度について一応、この保険審議会にも諮問というか、そういう形をとったのかどうか、あるいは大蔵省として、いま自賠責と任意保険の関係が問題だと思うのでありますが、この関係についてどういうふうに考えられておるのかという問題、それからきのうの保険審議会の問題、この二つについて簡潔に御説明いただきたい。
  12. 安井誠

    ○安井説明員 自賠責保険の問題につきましては、先生いま御指摘のように、昨年十一月に自賠責保険審議会におきまして一応答申をいただいたわけであります。  その答申の中に、自賠責保険に関しまして、やはり将来、制度の改善を考えるべきである。具体的に申しますと、一つは、自動車保険が自賠責と任意保険との二本立てになっているために、たとえば契約を結ぶのも二つの契約を結ばなければいけない。それから、事故が起きますと両方の保険にそれぞれ通知をしなければならない。またさらに、保険金の支払いも各別に支払いが行なわれる、こういった問題があるわけであります。したがって、それは制度面それから運用面も含めて検討しろということ。  それからもう一つ、自賠責保険ができましてから、これは昭和三十年でございますので、もう十八年からたっておりますし、その間に、この自賠責保険をめぐりまして、たとえばいわゆるノーロス・ノープロフィットの原則であるとか、国による再保険制度のあり方、あるいは保険会社による収支のプール制度等につきましても、制度の基本にかかわる問題でございますので、自賠責保険審議会としては「任意保険を含めた自動車損害賠償保障制度のあるべき姿について長期的視野から検討を加える」べきである、こういう御答申をいただいたわけでございます。  地方、保険審議会と申しますのは、大蔵省の付属機関でございまして、保険制度に関する審議を行なうところでございまして、御承知のように、最近、生命保険、損害保険を含めましていろいろな批判が出ております。そういった問題をひとつ保険審議会で十分議論していただこうということから、昨年の十月に保険審議会を開きまして、その後総会を六回ばかり開き、いろいろな問題点を取り上げていただいたわけであります。三月の末にそれらの議論を取りまとめまして、こういう項目について審議をしていこうではないかというおきめをいただいたわけであります。全体で相当数、保険制度全般にわたる問題を取り上げたわけでございます。  その際、保険制度を二つに分けまして、生命保険と損害保険とに分けて、それぞれ部会を設けて審議する。昨日行なわれましたのは、実はその損害保険部会の第一回目の会議だったわけでございます。その際に、審議項目でいっておりますのは、自賠責審議会の答申を受けまして、わが国の自動車保険は自賠責保険と任意保険との二本立てになっており、契約者、被害者にとってすべての手続が二重となる等の問題点が、昨年十一月の自賠責保険審議会の答申において指摘されている、これについてどのような改善をはかるべきか、こういう問題を今度は保険審議会のほうで取り上げられたわけであります。  私どもといたしましては、これは先生御承知のとおりでありますが、現在損害保険会社が取り扱っております保険の中で、自賠責保険と任意保険とを合わせますと五〇%をこえているわけでございます。自賠責保険が約三一・二%、それから任意の自動車保険が二二・三%でございまして、保険料収入の過半が自動車保険でございます。自動車保険のあり方というのは非常に大きな問題でございます。これは保険契約の問題から保険金の支払いに至るまで非常な問題をかかえておりますので、やはり保険審議会でじっくり御審議願いたい。昨日は私ども、この審議会に自賠責保険審議会の議論を御紹介申し上げまして、その上、各委員から、いろいろな自賠責保険審議会に出ておりましたような問題点についてそれぞれ意見の交換がございまして、今後続けて検討していこうではないかということになったわけでございます。
  13. 久保三郎

    久保(三)委員 いま保険部長から、きのうの会議あるいは大蔵省で扱っているいままでの問題が一通りお話がございましたが、なるほど、自賠責始まって十何年、約二十年近くに相なります。その間いろいろな問題がありまして今日まで来ておる。やはり一番問題なのは、何といっても被害者救済がもっと徹低してできないかということ。そこで、自賠責の保障限度というか、これも去年この委員会の決議もあって、それを受けていただいて引き上げにはなった。しかし、それだけでは足りないということで、いまお話がありました任意保険の問題もある。ところが自賠責の限度を上げていけば任意保険の付保率というものはだんだん少なくなってくる。これは理の当然だと思うのですね。それだけに、逆に見れば自賠責の効能は果たしつつあると思うのですね。しかし、保険業というか、そういう商行為の範疇から見ると、任意保険の付保率が減ってくるということは、営業政策上あまり好ましい姿ではないのですね。その辺の調和の問題が一つの問題になると思うのですね。あるいは自賠責で全部青天井にするかどうかという問題、あるいは逆に任意保険というもので青天井に一本にするかどうかという、そういう議論も出てくるかと思うのです。ただ問題は、自賠責そのものは、最初の発足過程はいろいろありましょうが、今日ではやはり自賠責が被害者に対し公正に保障ができるかどうかという問題だと思うのですね。そういう問題があげて自賠責の存在価値だろうと思うのですね。そういうものを含めていまのようなお話があったのではなかろうかと思うのでありますが、運輸省としてはどういうふうにいまお考えであるのか、将来どんなふうに展望されるのか、それをお伺いします。  と同時に、きょうは農林省からも来ておりますから、農業共済としての自動車共済に対する展望、いわゆる任意保険と自動車共済との関係について見解を申し述べてもらいたい。
  14. 中村大造

    中村(大)政府委員 先ほど大蔵省から答弁がございましたように、昨年の自賠責保険審議会の答申で、現在のあり方につきまして、いろいろ再検討すべきことが答申されておりました。この問題につきましては、私ども実は大蔵省ともいろいろ検討はしてきておるわけでございます。ただ、かりにこれを一本化するというふうな前提で考えました場合でも、先ほど先生がおっしゃいましたように、いろいろな行き方というものが考えられるわけでございまして、どういう方向に持っていったらよいか、要するに長期的な視野に立ってこれを考えた場合にどうしたらいいかということは、やはり若干時間をかけて検討しなければならないのではないかというふうに思っておるわけでございまして、さしあたりは、制度面と運用面のうち、運用面についていろいろな問題点がございますれば、それの解消に努力をしながら、制度面について引き続いて検討する、こういうことでございまして、いますぐこれについて結論を出すということは非常にむずかしいのではないかというふうにわれわれは考えております。
  15. 大坪敏男

    ○大坪説明員 自賠責と任意共済の二本立てにつきまして農業共済の立場から申し上げますと、加入者たる組合員の農家あるいは共済をやっております農協の立場から見ましても、問題があるというふうに私ども認識しております。しかしながら、一本化をすることにつきましては、なおいろいろと慎重に検討を要することもあるようでございます。その点につきましては、関係三省で十分検討いたしてまいりたいと考えております。  当面の措置といたしましては、先ほども御答弁がございましたように、昨年の自賠責保険審議会における答申にもございますように、損保の例等にもならいまして、運用面につきましては十分改善をしてまいるということに考えております。
  16. 久保三郎

    久保(三)委員 皆さんなかなかはっきりした答弁でないだけに、問題は非常にむずかしい問題なんですね。と同時に、大蔵省、運輸省、農林省なんといって各省にいろいろあるものだから、問題がそれでなくてもむずかしいのに、よけいむずかしくなってきているというふうにも思うのでありますが、しかし、一本化、一本化というが、任意保険はいまの場合は自賠責を補完するというかっこうになりますね。そういう立場だと思うのです。補完するのには、さしあたり利用者からいくならば請求は一本にして処理してもらいたい。一部については、大蔵省の指導で、保険会社の場合は、自賠責と任意保険が、別な会社であっても窓口は一つにしていくというようなことを指導されているそうですが、これは当然そういうふうなことでやってもらいたいと思うのです。ただ、農協の場合は、一本化といってもこれはできないのじゃないかと思うのですが、この点はどうなんですか。農協の場合は保険会社との関係はどういうふうになりますか。
  17. 大坪敏男

    ○大坪説明員 農協の行ないます共済事業は、当然のことながら農協法の規定に基づいてやっているということでございまして、農協の事業性格から見まして、当然原則的には員内者を相手にするということでございます。もちろん員外利用につきましては、一定の限度を設けまして認めておりますけれども、原則的には員内者、つまり組合員に限るということでございますので、そういった意味から、損保と農協の事業とのプールということは非常にむずかしいというふうに考えております。
  18. 久保三郎

    久保(三)委員 私が言うのは、たとえば任意保険は損保会社に付保している、自賠責は農協でやるという場合には、農協でもあるいは保険会社でも、どっちでも自賠責の分なり任意保険の分を一緒に処理してもらえるということなのかどうなのか聞いたのであります。  いまの自賠責の場合は、保険会社が違っても、あるいは保険の会社がそれぞれ別な会社でも、一本で処理するというのを、いまの大蔵省の指導方針でやっているわけです。ついては農協も同じように、たとえば片方の任意保険は保険会社で、自賠責は共済だといっても、これは窓口は共済でやるか保険会社でやるかは別にして、一本でできるようにすればめんどうがなくてよさそうなものだ。これができるかどうかを聞いているのですが、できますか、どうですか。
  19. 大坪敏男

    ○大坪説明員 実態といたしましては、農協共済におきましては、任意共済は自賠責共済または自賠責保険に上置きして行なわれているのが通例でございます。
  20. 久保三郎

    久保(三)委員 任意共済の話をしているんじゃないのでして、任意保険というか、任意共済と自賠責と会社が別であっても、農協でなくても農協で扱うなり保険会社が扱うように、利用者から見たら一本にできないものかという話なんです。まあ、いいでしょう。しかし、それは研究して、できるようにしなければいけませんな。  それからもう一つ。これはだれに聞いたらいいのかな。自動車局長に聞いたらいいと思うのだが、この自賠責は、損保のほうはいわゆる保険はプールにしているのですね。共済は別だからこれはもちろん別なんだけれども、この自賠責の趣旨からいうならば、共済も一緒にプールするのが当然のように思うのだが、これはどういう考えを持っておりますか。
  21. 中村大造

    中村(大)政府委員 保険会社の場合は、現在いわゆる危険分散という趣旨もございましてこれをプールにしておるということでございますけれども、農協共済の場合若干制度が違いますので、これをプールにすることがいいかどうかちょっと一がいには御返答しかねるわけでございます。
  22. 久保三郎

    久保(三)委員 保険会社がプールしておいて共済がプールの仲間へ入っていないというのも、ちょっとどうかと思うのですね。農協に自賠責の範囲を拡大するときには、この点は国会の中でもあまり議論しなかったと思うのです。ところが、いまになって内部のほうにだんだん問題が出てきていろいろ議論があるのですが、これはここで一応の結論を得ようということではありませんが、少なくとも保険の将来の展望に立ってプールするものならプールするということでいかないと、一つはこれは混乱すると思うのです。そういうことを考えてもらいたい。  それからもう一つは、これは運輸省に聞いたほうがいいのですか、滞留資金の運用益の運用ですね。これは損保は損保でやっている。あるいは共済は共済でそれぞれおやりになっている。一定の基準みたいなのがあるようだけれども、実際は基準といってもそう明確なものではなくて、何か自動車事故関係するものにその運用益の一部を出そうということでそれぞれ出しているわけなんです。決して悪いことではないのであります。しかしながら、もっと民主化して、その損保なりあるいは共済組合なりの恣意にまかせて、といってはたいへんきついことばになりますが、考え方が中心で運用益の運用をやってはいけないのではないか。むしろ民主的に被害者の立場に立って、あるいは事故防止の立場に立つというならば、もっと高い見地に立って運用益の運用を民主的な委員会をつくってやってみたらどうだろうかというふうに思うのです。  農協はリハビリテーションをつくった、なかなかりっぱじゃないか、片方は消防自動車、救急車を寄贈したなんて、いろいろなことをやっているわけですな。これも悪いことではないですよ。しかしながら、一定の制度にはコースがなくちゃいかぬ、展望がなくちゃいかぬ。その展望の上に立って運用益の運用というものをなさるのがいいのではないかというふうにわれわれは考えるわけであります。ついては、これは自動車局長に聞いたほうがいいでしょう。あなたはこの問題にわりあい中立ですな。では、損保会社は銀行局だし、共済は農林省だし、あなたからお聞きしましょう。
  23. 中村大造

    中村(大)政府委員 自賠責の関係につきましては、保険協会が策定いたしました滞留資金の運用益支出に関する基本要綱、四十六年につくっておるわけでございますけれども、これに基づきまして大蔵大臣の承認を得て取りくずして使う、こういうことになっております。農協の共済につきましても、農林省の局長通達によってその使途をきめておる、こういうことでございまして、したがって先生指摘のように保険会社ないしは農協がそれぞれ悪意にこれを使用しているということはございません。それぞれ大蔵省、農林省運輸省三省でこれをチェックしているということでございますけれども、それはもう当然、各省庁は基本的な考え方については十分思想統一ができておるわけでございまして、したがって、個々に使われているものについては、そこにおのずから一定の基準というか、均衡がとれている、こういうふうに申し上げていいのではないかと存じます。
  24. 久保三郎

    久保(三)委員 基準ができているそうでありますが、片方は損保に関しては大蔵大臣の、片方共済については農林大臣のということで、同じような基準ができているのだろうと思うのでありますが、てまえどもはそういう基準をかってに役所がつくるべきではないのではないか。かっかく自賠責の審議会というのもございますから——審議会でやれとはいわない、メンバーが多過ぎるから。中で小委員会でも設けて、一応来年度の方法はこうしよう。原案についてはもちろん役所が立てていいですよ。どういう方向で、どういうものが足りないから、どういうものはこの運用益でひとつまかなってもらわなければならぬ、あとのないものは国家予算で財政的に措置しようとか、そういう平氏の合った対策が私は必要だというふうに思うのです。だからそういう点を一ぺん検討してもらいたいというふうに要望しておきます。  時間がなくなりましたからなんですが、最後に自賠責の改善については、再保険の問題も含めて、くれぐれも申し上げておきますが、再保険というのは発足当初は付保率が非常に少ないし、それからリスクも多いということで、保険会社が進んで国の再保険でやってくれ、こういうことだったと思うのですね。しかし、いまや性格は一変したのです。言うなら、損保のほうは、再保険はしないでわれわれ自身が一〇〇%保険をしたいという希望があることは営業上当然だと思うのですね。しかし、ここで考えなければならぬのは、一般の商品としての保険と自賠責はずいぶん違うと思うのです。ずいぶん違うというか、保険をかける人、付保をする人は、もしも第三者に損害を与えたときに、自分の支払い能力をかわってやってもらう、こういうことなんです。生命保険のごときものとはちょっと違うのですね。結局、被害者も保障するという担保、そのために自賠責があると思うのです。これは堅持してもらいたいと思うのです。その上での改善をやってもらいたいと思うのでありますが、これはどういうふうに思うのか、運輸省並びに保険部長から聞きましょう。それを先に答弁していただけますか。
  25. 中村大造

    中村(大)政府委員 再保険制度につきましては、先生指摘のように、自賠責制度が発足いたしました当時のいきさつ、趣旨から当然出てきたものでございます。この問題については、現在の自賠責制度のあり方についての長期的な検討、こういうことの中には、当然いまの再保険制度も検討の一つとしてわれわれとしては検討していく、こういうことでございまして、これについては、確かにいろいろな立場からいろいろな意見が出てくるわけでございますけれども、私どもは、現在の自賠責制度の趣旨が、いわゆる被害者保護、こういう社会保障的な発想から出てきたことを踏まえまして、この取り扱いについては慎重に対処してまいりたい、こういうふうに思います。
  26. 久保三郎

    久保(三)委員 保険部長が答弁する前にもう一言お聞きしたいのですが、最近損保がうしろだてというか資金を出して、金は出すが口は出さぬという約束だそうでありますが、自賠責の裁定委員会というものを東京につくられたけれども、この裁定委員会はどういう性格のものですか。いまあるのは、査定事務所というのが一つございます。査定事務所では用が足りないからだろうと思うのでありますが、そうだとすれば、査定事務所に対応して各都道府県にこういう裁定委員会というものをつくるのが本来ではないか。  それからもう一つ、金は出すが口は出さぬというのは非常にむずかしいことだと思うのだけれども、これはどうなのかということです。それが第二点。  それから農協に聞きますが、農協はこういうものを考えないのかどうか。あるいは裁定委員会というのは、保険部長に聞きますが、農協のものも合わせてやるのかどうか。金は向こうで出すが、口は出さぬというのだから、共済のほうもやったって差しつかえないのではないかと思うのだが、これはどうなのか。  以上、お答えをいただきたい。
  27. 安井誠

    ○安井説明員 最初の第一点の再保険の問題でございますが、先生まさに御指摘のとおり、この自賠責保険が昭和三十年にでき上がりましたときは、保険集団も非常に少なく、自動車が百四十万台ぐらいのときでございましたし、自動車保険は非常にリスクが多い保険でございますので、むしろ損害保険会社のほうが全部引き受けることをためらったという事情がどうもあったようでございます。欧米の自賠責強制保険制度を調べてみますと、出発点から民営にまかせておりまして、国は、これだけ入らないと自動車運転してはいかぬという強制保険という形で関与しておるようでございます。先生まさに御指摘のございましたように、自賠責保険は被害者救済のためにある制度でございますから、何らかの形での国の関与は必要であろう。その国の関与のしかたが、現在のような再保険特別会計を通ずるしかたが妥当なのか。あるいはそれ以外の、たとえば百件に一件ぐらいは、全部国のほうで、ほんとうに支払い手続が正確に行なわれているか、被害者に不満がないかということを調べるという形で関与するのも一つ方法だろうと思いますし、先生先ほどもおっしゃいましたように、制度のあり方をどうするかというのは、非常に多くの議論がございますので、私ども、ここの委員会での御意見なども十分参考にさせていただきまして検討してまいりたい、かように考えているわけでございましす。  第二点の交通事故の裁定委員会でございますが、実はこれができましたのは、この三月から任意保険のほうで家庭用自動車保険、FAPと称しておりますが、家庭用自動車保険というものを新たに売り出したわけでございます。これについてはだいぶ長い間議論がございまして、欧米では自動車保険というのは、事故を受けた被害者と契約者である加害者との間の示談を取りまとめるというところまで、保険会社が契約者にかわりましてサービスしているのが通常でございます。日本だけが、保険会社が赤字だったというのが最大の理由だと思いますけれども、実はそのサービスをしていないわけであります。これをぜひやろうではないかということを議論いたしましたときに、一番心配をいたしました点は、保険会社というのは何と申しましても専門家でございます。専門家が一方で出て被害者のほうと話をいたしますと、被害者に不利な裁定といいますか不利な示談になるおそれがありゃせぬか。そのためには被害者の方々が不利にならないように幾つかの歯どめが必要であろう。第一は、支払い基準を、裁判所に持ち込んでも裁判で十分たえられるように、大幅に引き上げろということでございます。これは実は去年の十一月から実施したわけでございます。  第二点は、いまの被害者の方が、示談だけじゃございませんけれども事故が起きて御不満があるときに、一々裁判所に行かなくても解決する方法考えたらいいではないかということで、弁護士会のほうとも御相談した上で、これは損害保険協会が中心になってやったわけでございますが、交通事故裁定委員会というものを設けまして、その裁定には保険会社のほうは一切文句を言わずに従いますという一札を出しているわけでございます。  現在、裁定委員会委員長には前に東大総長をしておられました加藤一郎さんをお願いし、それから高等裁判所の判事をやられた方あるいは弁護士をやられた方がそれぞれ一人ずつ、中央裁定委員会と東京の裁定委員会と兼ねておられるわけであります。窓口はみな弁護士の方々にお願いして、そこで処理していただくという形になっております。先生まさに御指摘のように、将来はこれを地方にも当然広げていきたい。したがって、保険会社の窓口等にも、ポスターで、もし交通の損害賠償や保険について問題があれば、この裁定委員会にいつでも申し出てくださいというPRも、いまさせておるわけでございます。  農協のお話でございますが、農協が取り上げられているものまでこの裁定委員会がやれるかということは、少し異論があるかと思いますが、少なくとも持ち込まれたものを裁定委員会がお断わりする理由はない。保険会社のほうは、その裁定委員会できまりましたことはそれに従うというのが前提になっておりますが、農協のほうはまだそこまで話は詰まっていないと思いますが、取り上げて裁定委員会としての裁定をお出しになることはやっていただけるだろうと考えております。
  28. 大坪敏男

    ○大坪説明員 農協の共済におきます自賠責の損害の調査の仕事でございますが、現在、全共連におきまして自賠責共済損害査定要綱とその実施要領をつくらせまして、これは農林大臣の認可を得ているわけでございますけれども、そういった要綱、要領をつくらせましてやっているところでございます。ただ、その調査の実務につきましては、県段階の共済連が単協等から上がってまいります写真等のデータを基礎にいたしまして査定をするということでやっております。また、調査の実施基準等につきましては、調査機関相互間で矛盾がないよう、十分今後とも協議をして、遺憾なきを期したいというふうに考えております。
  29. 久保三郎

    久保(三)委員 農協課長さん、いまの御答弁は私の質問に答えていない。もう少し議事録を読んでください。時間がありませんから、以上。
  30. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員長 平田藤吉君。
  31. 平田藤吉

    ○平田委員 きのう、四月二十三日の未明にインドネシアのバリ島で、パンアメリカン航空のボーイング707型機が、空港に着陸する直前に火を吹きながら山の中に墜落するという事故が起きております。日本人二十九人を含む計百七人の全員が死亡したといわれております。先月三日にはパリ上空でトルコ航空のエアバス、ロッキード一〇一一が墜落し、事故史上最大の犠牲者を出したばかりです。航空機の安全問題は、一国の問題だけでなく、国際上でも問題になります。わが国の登録機の中には、きのうの707型機と同機種のものはないということですけれども、航空機は十分な安全上の点検がなされなければならないのだということを示していると思うのです。  そこで、まず最初にお聞きしたいのは、バリ島の事故機と同じ型のボーイング707型機が、日本へどの航空会社が利用して乗り入れているか、それから過去から現在までの同機種の事故例、この二つを示してもらいたい。
  32. 中曽敬

    ○中曽政府委員 前段のほうの御質問お答えしたいと思います、後段のほうは事故調査委員会の事務局長のほうからお答えがあると思いますので。  わが国に現在707を使いまして乗り入れておる航空空会社の名前でございますが、ノースウェスト航空、これはアメリカでございます。パンアメリカン、これもアメリカでございます。パキスタン航空、アラブ連合航空、サベナ航空、これはベルギーでございます。それからマレーシア・シンガポール航空、トランス・メディタレイニアンという航空会社、それからルフトハンザ、ドイツの航空会社でございます。キャセイという航空会社、エアー・インディア、それからエールフランス、カンタス——カンタスというのはオーストラリアでございます。それからBOAC これはイギリスでございます。そういった航空会社が707を使いして日本に乗り入れておるということでございまます。
  33. 笠松好太郎

    ○笠松説明員 お答えいたします。  707型機の全世界での事故記録でございますが、六九年あたりまで発生しました事故の記録、それから事故調査報告書がきておりますが、いままだ全部集計しておりません。後ほどまとめて報告したいと思います。
  34. 平田藤吉

    ○平田委員 日本でもBOAC機が事故を起こしておりますね。ですから、いま言われたように、あとで調べてひとつ出していただきたい。  それから、この機種について、日本にはないということから、日本の上空で事故を起こすような事態ということはどうなんだろうか、何か防止する策があるのだろうかということについてお聞かせいただきたい。
  35. 中曽敬

    ○中曽政府委員 ただいま申し上げました航空会社は、いずれもICAOという国際機関に加盟しておる国の航空会社でございます。このICAOに加盟しておる航空会社の間の相互の取りきめによりまして、それぞれの自国に属します航空会社の航空機の安全の問題につきましては、それぞれの国が責任を持つということが一つの原則になっておるわけでございます。その前提に立ちまして、わが国に乗り入れを認めておるというのが実情でございます。  ただ、航空機そのものの安全については、それぞれの加盟国、乗り入れ国が責任を持つわけでございますけれども、地上の援助施設、たとえば航空保安施設その他、価行場、そういった地上の施設につきましての整備ということは、当然これは当該国、つまり日本の場合でしたら日本のわれわれの航空局におきまして、それぞれの整備を行ないまして、安全に万全を期すということは言うまでもございません。
  36. 平田藤吉

    ○平田委員 そうすると航空機そのものの故障によって起こる事故については、日本としては手の打ちようはないのでございますということになりますね。しかし、日本に乗り入れている数も相当数にのぼっているわけですから、特にこの飛行機は前から問題になっているのですね、ジェット機が採用された最初のころの飛行機なんで老齢化している、老朽化しているということがいわれているわけですね。ですから、そのことについてはやはり国際機関でものを申しておかなければならないのではないかというように思うのですね。  さて去る十六日に、私と紺野議員とで羽田の日航を視察さしてもらったわけです。モスクワ事故との関連で視察さしてもらったわけですけれども、その上に立ちまして、モスクワの事故の問題について質問したいと思うのです。  この三月二十七日の当委員会で、モスクワ事故について運輸省の見解を聞いたところ、こう答えているのですね。本来着陸のときに使用されるスポイラーを離陸時に間違って操作したために墜落した、パイロットの単純なミスだというふうにいわれております。この見解について現在も変わりがないかどうかお聞かせいただきたい。
  37. 笠松好太郎

    ○笠松説明員 モスクワ事故の原因につきましては、昨年一月に発表がありましたように、離陸の際安全速度に到達以降乗り組み員が飛行機を失速に至らしめた。失速に至らしめた理由としましては、飛行中誤ってスポイラーを出して、その結果揚力が急に減り、抗力が増大したのであろうという見解、これは変わりはございません。
  38. 平田藤吉

    ○平田委員 つまり、いろいろと事故の原因を調べてみたけれども、あのような落ち方をするのはスポイラーが離陸中に開いたからだ。スポイラーが開いたということはパイロットがさわったからで、スポイラーは離陸のときは使用しないものだから、それにさわったということはパイロットのミスだというようにいままでいわれてきているわけですね。いまのお話もそこのところを少しぼかした返事になっていると思うのですけれども、大体いままでいわれてきていることと基本的に変わりないと思うのです。  そこでお尋ねしたいのは、ダクラス社のDC8型のグランドスポイラーは空中で開くという構造としてつくられていたのかどうか、お聞かせいただきたい。
  39. 中曽敬

    ○中曽政府委員 いわゆるDC8のグランドスポイラーといわれておりますものは、原則的には空中では使わない、地上で使うという目的のためにつけられたものでございます。
  40. 平田藤吉

    ○平田委員 使わないということと空中では開かないということとは違うのです。私が聞いているのは、空中でも開くという構造でつくられているのかどうかということを聞いているのですよ。
  41. 中曽敬

    ○中曽政府委員 ただいま申し上げましたように、本来地上で使うようにできておるものでございますけれども、モスクワの事故の当時におきましては、あのいわゆるグランドスポイラーと称するものは、空中でも開き得るような構造になっておったということでございます。
  42. 平田藤吉

    ○平田委員 それはあなた話がおかしいのですよ。というのは、このDC8型のグランドスポイラーは、空中では開けないような構造として設計されているのですよ。あなた方もそれを認めているのだから。これは日本航空のDC8型の操縦のための教科書や運用規程で「飛行中は開かない」ということを書いているということからも明らかだと思うのですよ。たとえば日本航空DC8型のシステム・スタディ・ガイド、これは構造学習書というのですか。これは昭和四十六年五月一日のものですけれども、その三十八ページにはこう書いてあるのです。「通常スポイラーレバーは、前車輪緩衝装置が伸びることによって作動する機構のため、飛行中は「開」の位置に行くのを防止している」開かないようにしてあるというふうにいっているのですよ。このようにパイロットはスポイラーレバーは飛行中は開かないものとして訓練され、操縦させられていたというのが事実ですよ。それでモスクワ事故では、空中でスポイラーが開いた結果あのような事故が起きたわけだけれども運輸省はモスクワ事故以前に、DC8型機のスポイラーは空中でも開くということを知っていたのかどうか、お聞かせいただきたい。
  43. 中曽敬

    ○中曽政府委員 このスポイラーは操作のミス——時点を申しますが、いわゆるモスクワ事故以前の段階におきましての話でございますけれども、操作をミスいたしますれば開き得るということを私どもも承知しておった次第でございます。
  44. 平田藤吉

    ○平田委員 それはモスクワ事故以前にも承知をしていたということですか。
  45. 中曽敬

    ○中曽政府委員 そうでございます。
  46. 平田藤吉

    ○平田委員 もし知っていたとしたらそれは非常に重大だと思うのですね。日本航空がモスクワ事故が起きてからその後の対策として最初に行なったことは、空中でスポイラーが開くかどうかという実験を行なったのですよ。あなた方はそれを以前に知っていたとしたら、これは重大だと思うのですよ。これは四十八年の一月に行なわれたわけですけれども、この実験の結果、DC8型機は飛行中でもスポイラーレバーが引けるし、スポイラーが開く構造であることが確認されているわけですね。この実験で確認されているわけですよ。しかし、それまで使用されていたDC8型の操縦教科書や運用規程、この両方では、この事実と全く反対のことが書いてあったわけです。そのため日本航空は、DC8型機航空機運用規程の改訂をせざるを得なくなったのですね。そこで四十八年三月十九日にこれを改訂したのですよ。  その内容はこういうことなんですね。従来は「空中では構造上レバーは引くことができない」つまりこれは不可能だという意味だと思うのですけれども、そういう表現になっていたのです。それを今度こういうふうに改めているのですね。「空中ではレバーを引いてはならない」禁止するというふうに改めているのですよ。この二つの意味は全く違うものだと思うのです。もちろん現在は運輸省もこの事実を確認しているはずです。  問題は、日航の教科書や運用規程が運輸大臣の認可した運航・整備規程に基づいてつくられているということです。もし運輸省がDC8型機のグランドスポイラーが空中で聞くということを知っていたなら、当然モスクワ事故以前に教科書や運用規程のミスを訂正しなければならながったはずです。それをしなかったのはなぜなのか、これは重大な問題だと思いますので、ひとつなぜそれを改訂しておかなかったのかということをお聞かせいただきたい。
  47. 中曽敬

    ○中曽政府委員 このいわゆるグランドスポイラーと称しますスポイラーは、空中に上がりましてからは——普通、テークオフ、つまり離陸いたしますときに、地上を滑走いたしましてテークオフいたしますが、その地上を滑走しておりますときの惰性が離陸後も車輪に伝わりまして、いわゆる車輪の回転スピードがあるわけでございます。その回転スピードが七十ノットより低くなりますと、普通は引っぱりましても相当な力を入れませんとスポイラーが上がらないような機構に実はなっておるわけでございます。   〔委員長退席、野坂委員長代理着席〕 したがいまして、ばか力を発揮いたしましてこれを無理やりに引っぱりますと、スポイラーは上がるけれども、普通はコックピットにおける操縦操作においてはそういうばか力は一応出さないものであるというふうな考え方のもとに、おそらく先ほど先生お読みになりましたような規程の中には、そういうような表現がしてあったんではなかろうかと思うのですけれども、実は、ばか力を発揮いたしまして引っぱりますとスポイラーは立つという構造になっているわけでございます。そこら辺の解釈をどうするか。普通の力では立たないのだけれどもばか力を発揮すれば立つというそこの辺のメカニズムに問題の焦点があるわけでございまして、そこら辺の問題をどのようにとるかといったところが、いまのような規程の表現の問題になっているのではなかろうかと思うわけでございます。
  48. 平田藤吉

    ○平田委員 それはあとでまた論じましょう。重大ですよ、あなたのいまの答弁は。  というのは、あなた方は実際に飛行機を見ていながら、私の前では、しろうとだと思ってそういうごまかしをするんだ。現場へ行って私はちゃんとどういうものであるかというのは見てきているんですよ。その問題はその問題としてまたあとで論じましょう。  次に問題なのは、ダグラスDC8の事故のうち、グランドスポイラーにかかわる事故が幾つか起こっていたという事実であります。モスクワ事故以前に幾つかの事故例があったわけだけれども、そのうち、スポイラーの繰作が原因だったといわれている事故は幾つあったのか、この点についてお聞きしたい。
  49. 笠松好太郎

    ○笠松説明員 スポイラーに関係しました事故を、私どもでICAOの二次通知から調べましたところ、二件ございました。  一つは、四十五年の七月にトロントで、エア・カナダ機が進入中、六十フィートぐらいから非常に大きな降下率になりまして、そしてヘビーランディングをしまして、四番エンジンを脱落して、復航しましたが、火災が起こりまして爆発して、右翼が落ちまして墜落しました。そして乗容百名と乗務員九名が死ぬという事故がございました。これは私ども二次通知をもらっておりまして、そのICAOの航空事故ダイジェストのほうがまだ着きませんので、カナダの事故調査当局に、報告書入手方要望中であります。  それからもう一つども知っておりますのは、昨年の六月二十三日にニューヨークで、アイスランデック・エアラインというのが、これはDC8ですけれども、着陸のときに四十フィートでグラノドスポイラーが急に出まして、急激な降下をして尾部から接地して、乗容六名と乗務員二名が重傷を負いました。この二件を聞いております。
  50. 平田藤吉

    ○平田委員 いま言われた二件について見ますと、日本航空運航技術第一課が出している「フライト・セフティ・レポート」のナンバー二〇二、これは昭和四十六年十二月十八日に発行されたものだけれども、次のように紹介しております。「某社のDC−8−63は慣熟飛行中」——慣熟というのは、つまり訓練飛行中の意味だと思うのですけれども、「慣熟飛行中スポイラーレバーをアーム・ポジション」——これは作動準備に引き上げるわけですけれども、「アーム・ポジションにセットできず、」——引っぱったけれども上がらなかった。「着地後、手動でグランドスポイラーを開くことにした。進入中、握っていたレバーがわずかに動き、突然グランドスポイラーが開き、十〜十五フィートの高さから滑走路に落下した。」、こういうふうに書いています。  それから二つ目に、カナダ航空のいま言われたものについても、事故調査委員会の国際民間航空機構、つまりICAOに対する二次通知によりますと、「理由は不明だが、グランドスポイラーが早く出たため、急激に降下し、航空機が損壊した。」というふうになっているわけです。  この二度にわたる事故は、DC8型機のグランドスポイラーが、本来地上に着陸してから開くべき機構になっていたにもかかわらず、それが空中で開いたことによって、急激に抗力が増大して滑走路にたたきつけられて起こったものだということははっきりしているわけです。  カナダでの事故あとでダグラス社が日本航空に対して、サービスブリテン、つまり修理点検告示というものを出しているはずだが、それはどんなものか、そうしていつ出されたのか、お聞かせいただきたい。
  51. 中曽敬

    ○中曽政府委員 先生指摘のエア・カナダの事故あとでございますが、四十五年の十二月三日付でございます。先ほどおっしゃいましたサービスブリテンが発行されております。  これはどういう内容かと申しますと、飛行中にグランドスポイラーを操作するなというふうな趣旨のプラカードをコックピットの中に装備し、同時に、そのことをフライトマニュアル、これは飛行規程と言っておりますけれども、その飛行規程の中にちゃんと書き込むというようなことを指示しているのが、このサービスブリテンの内容でございます。
  52. 平田藤吉

    ○平田委員 この二つの事故調査委員会調査報告書ですね、これをひとつ取り寄せてこの委員会に提出していただきたい。これはひとつ委員長のほうでもおはかりいただきたいと思うのです。  このサービスブリテンは、いま言われたように、四十五年の十二月三日付で出されているわけですが、その内容は、空中でスポイラーレバーにさわらないように注意せよという趣旨のものですね。そういうプラカードをつけなさいということを指示したわけですね。プラカードといったって、私どもがデモで持って歩くようなああいうでかいものじゃないわけですよ。二センチ真四角ぐらいな小さなものですね。そうしてレバーのわきにちょっと張ってあるのですよ。つまりこのことは、メーカーがDC8型機のグランドスポイラーが空中で開くという構造上の欠陥を認めたものだと言って差しつかえないと思うのです。カナダでの百九名という犠牲者を出して初めてその構造上の欠陥が認められたというわけですね。しかし問題なのは、この構造上の欠陥には何ら対策がとられないで、そのいわゆる非常に小さなプラカードだけで処理されてしまったということだと思うのです。  運輸省は、これらの二度にわたる事故が起き、DC8型機のスポイラー系統に構造上の欠陥があることを知っていたわけだけれどもメーカーの告示したプラカードだけで安全上問題はないと判断したのかどうか、プラカードを張っておけばよろしい、これだけでだいじょうぶだというふうに判断したのかどうか。もしそう判断したとしたら、その判断の根拠は何かということをお聞かせいただきたい。  同時に、もう一つ重大なことは、これはプラカードだけで何とかなるというふうにあなた方が判断していたとしたら重大な問題だと思うのだけれども、現段階でこのことについてどう考えておるのかということをお聞かせいただきたい。
  53. 中曽敬

    ○中曽政府委員 先ほどから申し上げておりますように、本来このグランドスポイラーというものは地上におりましたときに使うものでございます。そしてまた、先ほどちょっと申し上げましたように、普通の場合は、もしこれを操作しようとする場合には、その機械がこわれている場合は別でございますけれども、たいへんな力を要するというふうなメカニズムを持っておるものでございます。そういったことからいたしまして、われわれといたしましては、当時の判断といたしましては、これは世界的にもそうであったと思います、われわれ日本政府のみならず、他の諸外国政府も同様の判断をしたと思いますけれども、プラカードをつけまして、そして誤操作をしないようにというふうな使用メンションをすることによって、当時の時点におきましては不祥事故を防止し得る——し得ると申しますか、そういう対策が当時といたしましては一応妥当な線であったというふうに判断したものと思われるわけでございます。
  54. 平田藤吉

    ○平田委員 技術部長では責任が負えないらしい。判断したものと思うというんじゃ話になりませんよ。あなた方はそういう責任を負って、それでいいんだ、いいんだと思っていたから、その程度のことしかやっていないのですよ。構造上の欠陥を改修しない限り事故が起こり得るということは、ダグラス社がいうプラカードをつけていたにもかかわらず、モスクワ事故が起こっておるという事実を見ても明白だと思うのです。  しかもアメリカとカナダの二つの事故が起きてから、昭和四十六年五月に、国際航空運送協会はこう指摘しているのですね。「地上だけでしか使用されないグランドスポイラーが、飛行中使用されれば事故が起こり得る。将来の航空機は、地上だけでしか使用されないグランドスポイラーを、飛行中においては作動できないように製作されるべきである。」これはモスクワ事故の一年半前に出されている意見なんですよ。   〔野坂委員長代理退席、委員長着席〕 一年半前ですよ。だから、この報告書に出されているように、空中では動かない、作動しない、車輪がついてから作動するというふうにきちっとなっていれば、モスクワ事故は起こさないで済んだんですよ。  さらにカナダのトロントでの事故については、同事故調査委員会はこう発表しております。「DC−8のグランドスポイラーが飛行中作動しないように設計されねばならないし、現用のDC−8には危険防止のため、システムの変更が必要である。」こういっておるのです。つまりDC8のグランドスポイラーは構造上の欠陥があるため、設計変更が必要だし、現用のものには危険防止のためシステムの変更が必要だ、こういうふうにはっきり指摘しているわけですよ。これを知らなかったといって済まされないと思うのだが、どうだろう。モスクワ事故以前にこういう事態が繰り返し言われているにかかわらず、あなた方は何を考えておったのか、そこのところを聞かしていただきたい。
  55. 中曽敬

    ○中曽政府委員 先生指摘のIATAの指摘は、確かにモスクワ事故の前に行なわれておるわけでございますが、そういう勧告がなされておるということも、一応われわれとしては承知しておったわけでございます。しかしながら、われわれとしましては、世界各国がこれに対してどういうふうな動きを示すかというふうなことも、いろいろと情報を入れておったわけでございますけれども、FAAとの間の連絡によりましても——FAAといいますのはアメリカの航空庁でございますけれども、IATAの勧告は、確かにそのような勧告はあったけれども、われわれとしては誤操作さえしなければ空中においてグランドスポイラーが立つということはないので、そういったことを未然に防止するような手、つまりプラカードを張ることによって、そういったことがないようにパイロットに注意を徹底するというふうなこと、それから、フライトマニュアルにそういったことを書き込むというふうな措置をとれば、一応の手当てとしてはいいではないかというふうな考え方、これは世界各国共通しての考え方だったと思いますけれども、そういう見解のもとに、われわれも先ほど申しました四十五年の十月三日のサービスブリテンの線に沿いまして手を打ったということでございます。
  56. 平田藤吉

    ○平田委員 日本はアメリカの出店じゃないのですよ。日本の航空機の安全のためにどうするかというのを考えるべきなんですよ。実際に同じ機種で二つもスポイラーによって事故が起こっている。誤操作だ、あれはパイロットが悪いのだといって済まされるものじゃないのですよ。二回も起こっているとしたら、これは二度あることは三度ある、危険だということで手を打つのが日本人のならわしですよ。あたりまえの感覚です。それをアメリカが言ったからだいじょうぶなんでございますというような態度は、聞ける話じゃありませんよ。  結局、運輸省も日本航空も、DC8型の構造上の欠陥を知りながら、安全上の具体的な対策をとってこなかった。これは、繰り返し申し上げているように、明白な事実だと思うのです。そして、事故責任のすべてをパイロットに押しつけて、その場その場をごまかしておけばよいというような結果になっている。しかも、ダグラス社は、ついに二度目のサービスブリテンを四十八年十月五日に日航に出しておりますが、こういっているのです。「空中でスポイラーが開かないようロック機構の取りつけ」を告示したということになっている。日航はその十一月からロック機構の取りつけを開始して、ことしの四月一日現在、五十二機中二十一機までしかまだ完了していないのです。しかも、重大なことは、このダグラス社の耐空性に関する指示の内容は、いままでの機構のままだとスポイラーはほんのわずかの力でも開いてしまうような機構であることを裏づけているのですね。あなたが言うようにうんと引っぱらなければスポイラーは開かないのだというふうには考えられないのですよ。たとえばこうなんですね。「スポイラーを作動させるために必要なスポイラーレバーの移動距離は最低八分の七インチ」八分の七インチといったら幾らです。約二十一ミリですよ。「八分の七インチ以上でなければならない。」つまり、これはスポイラーレバーが二十一ミリ以内でも開くことがあるということを意味しているのですよ。また、「スポイラーレバーを作動準備の状態にしたときは、一・五ミリ以上位置がずれてはいけない。」こういっているのですね。だから、あなたが言うように、さっき技術論争で私をごまかそうとしておるけれども、ずっとレバーを引っぱらなければスポイラーは上がらないのだどいうのじゃないのですよ。これくらい精密なものにしておかなければ、この飛行機はあぶないですよ。完全なものにするためにはここまで厳密にしなければだめですよということを言っておるのですよ。あなた方のそういういいかげんな考え方が航空機の事故を頻発させるのです。しかも、それくらい厳密にしなければならないものを、いままでは単なるプラカードで済ましてきたわけだから、全くおそろしいほど危険な状態であったと言って差しつかえないと思う。  日航が四十八年二月九日告示を出しておる、指示を出しております。その内容は次のようなものです。「スポイラーレバーの作動準備について、現在着陸時のチェックリストの中でスポイラーレバーが作動準備位置にあることを確認しているが、この操作を行なうとき、機体によっては引っかかり、または固いものがある。原因は主としてスポイラーの電気的作動機によるものと思われる。このトラブルの場合、スポイラーレバーを少し手前に引くと作動準備をするのが容易であるといわれているが、この操作はきわめて危険であり。スポイラーが開く可能性がある。したがって、飛行中においてスポイラーレバーを作動準備をする場合は、上記のようにスポイラーレバーを手前に引く操作を行なわないよう十分に注意すべきである。なお、作動準備をする際、引っかかりまたは固いものは故障とし、整備、修理を積極的に要求されたい。」というふうに言っておりますね。つまり欠陥機である。やたらと故障が起こっておるということを、これ自体が証明しておるのですよ。  今回運輸省が出した耐空性改善通報、たしか三月七日というふうに聞いておりますけれども、ダグラス社のサービスブリテン、修理点検告示ですね。それと同じ内容のもののようです。この改善通報はトロントやモスクワでの事故原因と深いかかわり合いを持っていると断定できると思うけれども、今回の処置、つまりスポイラーの改修は、モスクワ事故とかかかわり合いがあったと認めるのかどうか、お聞かせいただきたい。
  57. 中曽敬

    ○中曽政府委員 先生指摘のように、私どもの耐空性改善通報、TCDと申しておりますが、ことしの三月出したのでございます。これは、いままで先生の御議論ございましたように、私どもが、モスクワ事故が起こりました当時の時点におきましては、一応プラカードを張ることによりましてミス操作を防止するという措置、あるいはそういったことを飛行規程の中に書き込むということによりまして一応防止することができるというふうに判断したことは事実でございまして、しかしながら、その後いろいろと世界各国でもこういった問題が議論されまして、やはり先ほど御指摘になりましたようなサービスブリテン、ないしは私どものほうで最終的にはTCDというかっこうで指示をしたわけでございますけれども、その中に書いてございますようなロック機構を設けるべきであるという結論に達しまして、これをやはりやったほうがベターであるという判断に立ちまして、そういったTCDを出したわけでございます。これが先生指摘のように、モスクワ事故とは何ら無関係であるということは、あえて私どもは申しません。要するにそういった過去におきますいろいろな事故例、ないしはその後におきますところのいろいろな検討、これはわれわれだけの検討でございませんで、ダグラス社、そういったメーカーの部内の検討もございましょうし、あるいはFAAとかあるいはその他世界各国の航空当局の検討結果、そういったものを全部総合いたしまして出てきました結論でございます。そういった意味におきまして、われわれとしましては三月の上旬にTCDを発行いたしまして、これを強制的にやらせるという措置に踏み切ったわけでございます。
  58. 平田藤吉

    ○平田委員 関係がなかったとは申しませんけれども、世界各国て問題になりまして——世界各国で問題になろうとなるまいと、日本の運輸省がとにかく耐空性証明を出しているのですから、耐空性証明を出しているあなた方が責任を負わなければだめなんですよ。世界各国はどうとかこうとか言っているけれども、アメリカとダグラス社、そこがきめるまでは、これで安全だと言われれば、へい、これで安全だ、大体だいじょうぶだろう、こういうことであなた方は済ましてきているのですよ。日本人としてやはり根性を持って仕事をやってもらわなければ困ると思うのです。よそさまの言うなりになってやっているからこういう事故は起こる。事故が起こったら今度はだれのせいにする、よそさまのせいにするか、そうじゃない。みんな乗員のせいじゃないですか。あなた方はパイロットのせいにしているじゃないですか。少なくとも新聞発表を見たって、このグランドスポイラーが立つ危険性をはらんだもの、だということも言ってないじゃないですか。しかも記録によれば、あのスポイラーが上がった直前と思われる段階にがちゃんという音がしている。その音も発表されていないですよ。何のためにその音が起こったか。それからすぐスポイラーが上がっている。そのスポイラーはその音とどんなかかわり合いを持っているのか。あやまってこれをぐっと引っぱたのじゃないということも考えられるのですよ。ちょっとさわった、いすがちゃんと下がった。ちょっとさわった、そのためにスポイラーがばんと立った。こういうことすら推定できるわけです。この推定できる大事なところはぽんとあなた方は全部カットしている。そうして、操縦士が十六ポンドの目方で引っぱった、こうでなければ上がらないはずだということを新聞に発表しているのですよ。ところが系統的に調べてみると、そうじゃない。事故が起こっているのは、いずれも操縦士がいろいろ努力をして——アメリカのDC8型機の事故だってそうでしょう。操縦士が着陸寸前の準備作動として、レバーをぐいっと上に上げる、これはやることになっている。自動操作に移すためにやることになっている。ところが上がらない。あれ、これはどうしたんだろうということで、持ち上げながら、その瞬間にがちゃんと少し動いた、スポイラーが立った、そうしておっこちるという事態になっている。欠陥機だからですよ。そのことも、あとになって日航がさっき引用したように指摘している。ひっかかりまたは固いい、こういうことから起こってくる事故ですね。カナダの事故については詳細が発表されていない。しかしスポイラーの事故です。共通していることは考えられる。だとしたら、あなた方がやはりこういうものが二つ起こったとしたら、DC8についてはもう一ぺん点検してみる必要がある。スポイラーについては検討する必要があるという、いままで出されている意見を総合しつ、これはロックをつけて、空中で動かす必要のないものなんだから、間違って何かの瞬間にさわっても、決してスポイラーが立つことのないようにすべきだというのがあたりまえの考えじゃないですか。ちょっとした間違いで飛行機は墜落なんですから。墜落すれば全員死亡なんですから。私は当然その衝に当たる責任のある人たちがそういう態度で臨むべきだと思うのです。  これまでの論議で明らかのように、運輸省や日航はダグラスDC8のスポイラーの構造上の欠陥があるということを知っていたということ、それからモスクワ事故以前からこのことを知っていたということ、これが第一の問題点だと思うのです。  第二の問題点は、モスクワ事故以前からDC8のスポイラーの改修が指摘されていたにもかかわらず、それを放置してきたということだと思うのです。とりわけカナダのトロントで百九名の犠牲者が出て、DC8のグランドスポイラーのシステムの変更が必要だと指摘されていたにもかかわらず、放置してきたということだと思うのです。  私はこの責任は非常に重大だと思うのです。そして最も重大なことは、モスクワ事故の原因を調査するにあたって、運輸省も日航もこの機構上の問題点に一言も触れていなかったということだと思うのです。私は、いままでの運輸省や日航の発表、ずっと調べてみたのですけれども、これを調べてみまして、モスクワの調査委員会では、この機種、つまりDC8というのはモスクワにあるわけじゃないのですから、モスクワの技術者はおそらくこういう欠陥機だということを知らぬですよ。このことをちゃんと指摘して知らせないで結論を出させているに違いない。推論を出させているに違いないと思うのです。私はそう推察している。これは重大な問題だと思う。あなた方は、日本国民に発表しないのですから、モスクワの委員会で発表するはずはない。重大な問題だと思う。そうして世間が忘れかけたころになって、事故とは関係がなかったような顔をしてこっそりと修理しているわけなんですね。修理することはいいですよ。修理することはいいけれども、少なくともこういう弱点があったということは天下に公表すべきですよ。だれにも気がつかないような直し方をすべきでないと思う。  以上の論議を踏まえてもう一度聞きますけれども、モスクワ事故はパイロットの単純なミスだという見解をとるつもりかどうか。あなた方じゃ返事はできないかもしれぬけれども、一応聞いておきましょう。
  59. 笠松好太郎

    ○笠松説明員 お答えします。  モスクワ事故事故原因につきましては、スポイラーが立ったということは確かでございます。モスクワ事故事故調査につきましては、先生よく御承知のように、ソ連民間航空省の事故調査委員会に私どもが日航と合わせて七人で参加したのでございますが、そこでいろいろスポイラーについての話、技術的な話も、日本航空の技術員も私ども調査官も交えましていろいろ話は申し上げました。  それで、離陸直後にスポイラーがあいたとする論拠は、やはりフライトレコーダーの解析で、高度の低いところで速度が百五十四ノットから高度が百メートルに上がったとたんに速度も高度もどんどん低下していくということは、これはやはりスポイラー以外に考えられないということで、スポイラーが開いたというふうに出てきたわけでございます。  それから、ボイスレコーダーの録音の中に「スポイラー」とかあるいは「おやっ」という発言が出ておりますのと、フライトレコーダーの解析との時間一致から出てきたものであります。  それから、スポイラーが脚下げで、ひとりでに開く可能性が考えられまして、これはボイスレコーダーでは、飛行前点検ではスポイラー系統の異常は認められませんし、スポイラーが脚下げで自然に開く可能性といいますのは、スポイラーレバーを作動準備、アームドポジションにしまして、スポイラー系統が故障して、すべり摩耗防止装置、アンチスキッドにつながった二系統の各スイッチに二秒半以内に誤信号が入らないとひとりでに立たないということから、これは乗員の操作しか考えられないということでこうなったわけであります。  確かに先生おっしゃいますように、幾らミスをしても開かないという設計にすべきだと思いますが、モスクワ事故につきましては、こういうことで結論が出たわけであります。  それから、先ほどがちゃんという音とかそういった音が発表文の中の飛行経路に載ってないということでありますが、がちゃんという音は、滑走中にも類似の音が出ておりますが、ソ連邦の事故調査委員会としては、これが何の音であるか、評定というか、きめられませんでしたので、事故調査報告書にも記入されませんで、飛行経路を書いた側方図にも書かなかったわけでございます。  以上でございます。
  60. 平田藤吉

    ○平田委員 私が言いたいのは、運輸省事故責任があると言いたいわけですよ。つまりスポイラーが空中では開かないように操作しなさいという意見が出されているにかかわらず、知らぬ顔をしてきてよその国のせいにするわけにはいかぬ。その意見どおりにロック機構をつくって空中では動かないようにしておけば、モスクワ事故は起こらなかったのだ。しかもあれは、毎日の仕事の動作からいっても、いわゆる操縦士が通常引っぱるということはあり得ないことですよ。何か起こった事態のもとで、触れることによって起こっているとしか判断できない。そうすると、ちょっと車輪をおろす、その操作をやる、その瞬間にいすが下がる、ちょっとひっかかるという——ちょうど手元がひっかかる場所にレバーがあるのですよ。だから、あやまってこれをうんと引っぱったなんていうものじゃなくて、そこへさわることによって起こったとも考えられるわけです。だから、やるべきものでないものをいじったから起こったのだというような操縦士への責任の転嫁は許されないと思うのです。この経過についてはやはりもう一度検討し直すべきだ、運輸省自身で検討し直すべきだというふうに思うのですよ。ですから、そういう検討をして、運輸省自身がこういう飛行機についてはやはり早くからこうしておくべきだったという反省を含めてものを言うのがあたりまえだ、いまだかつて一ぺんだってそれを言ってないでしょう。運輸省がそういう態度をとるのはあたりまえだと思うのだけれども、どうですか。
  61. 中曽敬

    ○中曽政府委員 若干弁解じみるのでございますが、一言申し上げたいと存じますことは、実は、御承知のように、日本で使っております航空機、現在定期航空に使われている航空機はアメリカでつくられた航空機がすべてといってよろしいかと思うのです。したがいまして、先ほど御指摘になりましたモスクワ事故以前においてすでにIATAのほうからそういうふうな勧告が出ておったということももちろん私どもは承知しておったわけでございますが、さてこれを私どもが実行に移す場合には一体どうなるであろうか。つまり私どもの国の中に航空機メーカーがありまして、われわれが完全にコントロールできるようなそういう体制下にメーカーがあった場合には、補助金なり何なり出しまして、とにかくこのロック機構を直ちにつくれ、開発しろということが指示できるかと思うのでございます。実を申しまして、そういった点がまず第一点あるということ。  それから第二点といたしまして、このIATAの勧告が出ました直後におきまして、ダグラス社においては、当然この勧告をいかにしたら実行できるかということを、実は開発に着手したわけでございます。それが初めからそういったふうな設計としてできましたシステムであるなら問題は別でございますけれども、一たんでき上がっておりますシステムを変更いたしまして、これにロック機構を取りつけるかいう方法、こういった方法がなかなか一朝一夕にはできないというふうな点があったやに私らは聞いておるわけでございますが、それに時日がかかりまして、やはりやれというからには、そういったしっかりとした技術が開発された暁においてでないと、われわれとしては、先ほど言いましたようなTCDのごときものを発行いたしまして、これを日本航空にやらせるということは事実上不可能なわけでございます。そういったものを発行することはできますけれども、実行不可能なTCDを発行いたしましても、これは何の意味も持たない。そしてもう一つは、そういった部品をつくれといっても、ロック機構がかりに設計上、図面上はできたといたしましても、これを実際につくりますのに時間がかかる、そういったことを考慮に入れまして、タイミングを見計らいつつ、ダグラス社においてはどういうふうな開発が進んでおるかということを見計らいつつ、われわれとしては実際の行動を起こさなければならないという実は実情があるわけでございます。そこらへんのことを一応御勘案いただきまして、私どもといたしましても、航空の安全という問題につきましては、ほんとうにこれはだれよりも増して責任を持つ立場にございますので、御指摘になりますまでもなく、われわれとしては一生懸命やるつもりでおりますけれども、遺憾ながら、事実上の問題といたしまして実はそのようなハンデといいますか、みぞというものがありまして、なかなかこれが一朝一夕に、はい、やれといっても、直ちに実行できないというのが実情でございます。そこら辺の事情を一応、何と申しますか、御理解いただきたい、かように思うわけでございます。
  62. 平田藤吉

    ○平田委員 時間も来ましたから終わりにしますけれども、いいですよ、あなたがいろいろ時日がかかりましてと言うのはいいです。それでは委員会に、日本の運輸省として、アメリカに対して、またダグラス社に対して、DC8のスポイラーのロック機構について検討して空中では開かないようにすべきであるという意見を出されたのなら、その記録をひとつ提出してもらいたい。意見を出してあるなら記録を提出してもらいたい。いまの言いわけは、アメリカでやっておりまして、ダグラス社でやっておりまして、したがってなかなか届かないのでございます、日本でやるならすぐできるのだけれども、できないという言い分ですから、私は、そう言う以上は、アメリカ航空局に対しても、またダグラス社に対しても、あなた方は意見を述べていると思うので、その記録をひとつ出してもらいたい。このことを要求しておきます。そういう努力をした上でものの言えることであって、あなた方はその努力をしてないのですよ。してないから、あなた方は教科書もそのままほってあった、ほっぽらかしてあったのです。それをいまになってこの委員会で、そういうわけのわからない言いわけしたって通る話じゃございません。  最後にお聞きしますが、ボーイング747、エアバスですね。この間当委員会で視察に行きましたけれども、二階席を見ました。二階席に乗って福岡まで行ったわけですね。それで、まず感じましたのは、この間の委員会説明では、らせん階段を通って下の脱出口から避難するようになっておりますということなのですが、空港へ着きましたら、ばっと乗客が出口へ集中しますと、あのらせん階段は下から上まで、私は途中でしたけれども、まん中ごろでしたけれども、下から上までずっとらせん状にお客さんが並ぶのですよ。出られやしませんよ。しかも、非常事態で混乱が起こったときなんか抜けられっこないです。こういう危険な状態に置かれている。  それから、いやそれは、どうしてもそれが使えない場合には操縦室から脱出口がございますと言うけれども、あれはもともと乗員の脱出口なんですね。乗員の脱出口なんですから、乗員が、避難する人を誘導したりいろいろ手だてをしなければならぬためにまず脱出する、そのための脱出口なんですよ。それはいいとして、右側が使用不能になった場合に、二階は脱出日なしということですよね。天井の穴から脱出する以外にないですよ。あそこから何人脱出できるかといったら、五人ですよ。しかも、私ではちょっと無理だろうと思いましたな。よほど懸垂の力のある人でなければあれは上がれませんよ。年寄り、子供ではとてもじゃないが上がれません。  さらに、下が煙で充満してくるとらせん階段が煙突になる、二階席の煙を防止するためにというので、らせん階段にふたをすることになる、だからあれは下にはおりられないのですよ。そういう仕組みになっている。したがって、いかにもうけ主義だとはいいながら、二階席を売るのはやめるべきだ。あの飛行機は二階席を売るようになっていない。二階席を売るようになっているのだったら、客席にちゃんと脱出口がついているはずです。構造上からも二階席を売るようにはなっていない。だから乗員が、操縦士もスチュワーデスもみんな不安がっているわけですよ。あの二階席については売らないでもらいたいと言っているのですよ。それをだいじょうぶなんだ、だいじょうぶなんだという理屈をあなた方は並べ立ててはだめだ。乗員がそろって危険を指摘しているときには、うしろへ下がってやはり考えて、乗員の意見をまずいれるべきだ、私はそう考える。  きのうも彼が説明に来ましたけれども、そんなことを言ったら、両方ふさがったらどうするのですかなんてことを言っていた。ずいぶんふざけた男だと私は思っていましたよ。いずれにしても、われわれは真剣に、とにかく事故のないようにということを考えているのです。いままで指摘してきましたように、モスクワ事故だって、二つの事故を経過した上に立って措置をすれば、モスクワ事故は起こらないで済んだ。そのことを考えますときに、同じことを繰り返してはだめだ。危険だと指摘され、一応そのことがだれが見てもそうだなと思えるような状態のときは、それに対するちゃんとした手だてをしなさい。これは間違ったら大惨事になるわけですから、航空の安全のために、そういう立場から全力をあげてもらいたいということを要求しまして、時間も来ましたから、私の質問を終わります。  以上です。
  63. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員長 どうも御苦労さまでした。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後三時三十九分散会