○庄司
委員 七千ヘクタールと非常に膨大な開拓地が、この開拓行政打ち切り後に買い占めにあっている。これはたいへんな
事態だと思うのです。
私いまから若干申し上げますが、四十五年四月に「開拓者負債
対策についてのお知らせ」というのが、
農林省農地局から各県の開拓
農家に配られたわけです。それによりますと、開拓者
資金特別
措置法が出て、これによって四十七年の三月三十
一日までに開拓者負債
対策をやる、こういう通知がありまして、この通知に基づいて四十五年から四十六年にかけて「開拓者
資金償還
条件変更申出書」、私ここに手元に持っておりますが、こういうものをつくらせられたわけですね、
農民が。そのつくった申出書を
農林省の開拓者
資金融通特別会計債権管理官が同意をして判こを押しております。
これはほんの一部でありますが、これは宮城県の刈田郡下で行なわれた
資料であります。この中身を見ますと、世俗のことばでいえば、非常にでたらめな指導が行なわれた。この申出書を
農林省の指導のもとで、実情に合わない計画が出させられている。私いま持っておりますのはほぼ十名分の
資料でありますが、ほとんど蔵王の東山ろくの分ですね。ここは
昭和二十年後に、戦後に入植して、二十数年来風雪に耐えて、ほんとに苦しい思いをしながら荒れ地を耕してきた開拓
農家がたくさん入っておられる場所なんです。
そういう中でこういう実例があるんです。高橋さんという方でありますが、この人は開拓者
資金の借り入れ残が元利とも百九十六万円、それからその他の借り入れ金が六十三万八千円。働き手は男女おのおの一人、子供三人。
たんぼ、畑合わせて、これは草地が大部分でありますが四町歩、牛が十頭です。この人に対して、
農業所得が百二十四万円ある、これは一応いいとしても
——どの方を見てもいわゆる粗収入が五〇%になっておるんですね。
農家によってみな粗収入は違うわけです。それが一律に五〇%でかけられている。その結果六十二万円の
農業収入があると。それからさらに驚くのは、この牛十頭も飼っている、いわゆる多頭化やれといわれて十頭も飼っている
農家が、農外所得が山林伐採その他で五十八万円あることになっております。これは、当時の賃金は大体二千円ぐらいでありますから、牛十頭飼っている
農家が二百五十日も毎日出かせぎしておるということになる。こんなでたらめなことをやっていたら、牛なんか飼えるわけないですよ。しかも
農業所得をあげられるわけはないんです。そうやって収入をはじき出さしておいて、今度は家計費の点になると、一人十五万円だ、これは十名全部見ても一律です。そうやって差し引き十二万四千六百円のいわゆる剰余分が出るということを書かしておいて、償還計画は十五万九百二十九円毎年払います、こういう計画を書かして平然としているわけです。その結果どういう
事態が起きたかということを、いまから
お話し申し上げたいのです。
こういういわゆる開拓行政打ち切りで、開拓
資金は無理無理返させる手段をとったために、おりしも符節を合わせたように土地の買い占めが、四十六年、四十七年から猛烈に行なわれたわけですね。
農林省の
調査でも、開拓地が七千町歩も買い占められた。この蔵王の山ろく、どれくらい買い占められたかという数字が若干あるわけです。これはもう蔵王山ろくの白石市の分だけで九カ所、約六百三十ヘクタール、それから蔵王町の分だけで十カ所、六百三十ヘクタール、こういうふうに猛烈な勢いで買い占められているわけです。
ちょうどその時期に東北新幹線の白石駅の停車が
決定する。東北縦貫自動車道のインターチェンジが白石周辺に設定される。こういうことが開拓行政の打ち切りと同時に全国で猛烈に進行したという
事態について、開拓行政打ち切りというものがどれほど
農民に深刻な影響を与えたか、それからどれだけ土地の買い占め屋をもうけさしたかという、これが一つの具体的な数字だと私は思うのですが、
農林大臣、この点、どういう御所感がございますか。何なら事務当局でもいいです。