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1974-05-16 第72回国会 衆議院 決算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月十六日(木曜日)    午前十時二十一分開議  出席委員   委員長 臼井 莊一君    理事 井原 岸高君 理事 唐沢俊二郎君    理事 松岡 松平君 理事 綿貫 民輔君    理事 原   茂君 理事 庄司 幸助君       赤澤 正道君    宇都宮徳馬君       中村 弘海君    吉永 治市君       稲葉 誠一君    津川 武一君       有島 重武君    坂井 弘一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林大臣官房経         理課長     石田貞二郎君         農林省農林経済         局長      岡安  誠君         農林省農蚕園芸         局長      松元 威雄君         農林省畜産局長 澤邊  守君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         林野庁長官   福田 省一君  委員外出席者         農林省構造改善         局農政部長   今村 宣夫君         農林省構造改善         局建設部長   福澤 達一君         食糧庁総務部長 杉山 克己君         会計検査院事務         総局第四局長  田中  稔君         参  考  人         (日本中央競馬         会理事長)   大澤  融君         参  考  人         (日本調教師会         専務理事)   国吉 文雄君         参  考  人         (中央競馬馬主         協会連合会会         長)      中村勝五郎君         決算委員会調査         室長      東   哲君     ————————————— 委員の異動 五月十六日  辞任         補欠選任   田代 文久君     津川 武一君   浅井 美幸君     有島 重武君 同日  辞任         補欠選任   津川 武一君     田代 文久君   有島 重武君     浅井 美幸君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十六年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十六年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十六年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十六年度政府関係機関決算書  昭和四十六年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和四十六年度国有財産無償貸付状況計算書  (農林省所管農林漁業金融公庫)      ————◇—————
  2. 臼井莊一

    臼井委員長 これより会議を開きます。  昭和四十六年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、農林省所管及び農林漁業金融公庫について審査を行ないます。  この際、おはかりいたします。  本件審査のため、本日、参考人として日本中央競馬会理事長大澤融君、日本調教師会専務理事国吉文雄君、中央競馬馬主協会連合会会長中村勝五郎君の御出席を願い、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 臼井莊一

    臼井委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、参考人からの意見の聴取は委員質疑により行ないたいと存じまするので、さよう御了承を願います。     —————————————
  4. 臼井莊一

    臼井委員長 これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。綿貫民輔君。
  5. 綿貫民輔

    綿貫委員 大臣御存じのように、昨日は農業者危機突破大会というのが開かれまして、きびしい農業現実にどうして対処するかということで非常に真剣な会合が持たれたのでございます。いろいろの論議はございますけれども、昨年の石油危機以来、農業経営は採算を割ってたいへんなことになっておるわけであります。この危機打開には短期対策と長期の対策が必要だと思うわけでありますが、とりあえずの短期対策としてはやはり米価引き上げ、こういうことが一番重要な課題になると思うわけであります。現在農民要求いたしております最低要求額六十キロ一万六千七百四円というこの米価についてすみやかに決定すべきであると私ども考えるわけでありますが、これについての御見解をまず承りたいと存じます。
  6. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お話しのように、農業者農業を営みますにも諸掛かりがだんだんかさんできておることは事実でございます。  米価は、御承知のように生産費所得補償方式という方式でいたします。そのためには米価決定の前に法律に基づいて米価審議会を開催するわけでありますが、米審に提出いたします資料につきましては農林省がこれを提出するわけでありますが、その資料がまだ十分に集まる時期に来ておりません。毎年六月末から七月にかけてやっておるわけでありますが、そういうことでありますので、いつこれをやるかということについては、いま鋭意その資料を収集中であります。したがって、それが出まして米審意見を徴して決定いたすわけでありまして、綿貫さんのお話のように諸掛かりが高騰いたしております一般的経済事情はよく承知いたしておりますが、米価をどのように、どの程度にやるべきであるかというふうなことにつきましては、まだお答えのできる段階ではない次第であります。
  7. 綿貫民輔

    綿貫委員 昨日の大会で、今年産の米価についての引き上げ要求と同時に、四十八年産米の価格についての追加の引き上げ要求が出されておるわけでありますが、これは当決算委員会にも大いに関係があると思うわけでありますけれども、さかのぼってこの引き上げ要求が出ておるということについてどのようにお考えであるのか。また、その方法などについてどのように——お出しになるのかならないのかわかりませんが、どういうふうにお考えになっておるのか、ちょっとお伺いいたしたいと思います。
  8. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いま申し上げましたように、諸物価の高騰という事情は確かにその後ございますが、私どもといたしましては、農家に米をつくっていただくために、まず生産意欲を減退されるようなことがあってはなりませんので、その辺を十分勘案いたしまして米価に対する処置をいたしておるわけであります。御承知のように四十八年度産米価というのは、引き上げ率を前年対比かなり多くしております。そういう事情もございますので、いまバックペイをするというふうなことを政府考えておりません。
  9. 綿貫民輔

    綿貫委員 一般米価もさることながら、自主流通米というものについても問題がたくさんあるわけであります。いろいろ今後この米価については問題があろうと思いますが、短期処理としての唯一の最高の手段であると思いますので、大臣の今後の政治的な御判断をひとつわれわれは期待をいたしておるわけであります。  そこで、この短期の問題とあわせて長期的な問題ということでございますが、現在、後継者の控除の新設とか特別減税というようないろいろな問題も考えられてはおるようでありますが、過去の農政に対する農民不信というもの、これを払拭するということがまず今後の農政の一番基本でなかろうか、こう思います。そういう意味で、農民農政信頼させるということがいままでややもすると欠けておった、こういうきらいがなきにしもあらずでありますが、特に私がいまここで取り上げます問題は、農民の中に農政不信を呼んでおる一つの例として大臣にもお聞きいただき、また畜産局からも御答弁をいただきたいと思うわけであります。  まず、私の地元富山県で起きた問題でございますが、昨年の四月から六月にかけましてハイラック事件というものが起きたわけであります。これについて畜産局長御存じでございましょうか、ちょっとお伺いいたしたいと思います。
  10. 澤邊守

    澤邊政府委員 ただいまお尋ねの昨年の事故につきましては十分承知しておりまして、現在調査中でございます。
  11. 綿貫民輔

    綿貫委員 これは畜産局長よく御存じでございますが、ハイラックという商品名飼料、つまりダイブの影響で、二百頭にのぼる牛が病気になりました。うち六頭が即死というような状態で死んだわけであります。これは農林省が推奨をした飼料だということで農家が使ったわけであります。  農林省はこの事態を見まして、十月一日、家畜衛生試験場米村部長を団長に、名古屋大学の田崎教授らを含む調査団を出しまして、そのときの調査の結果、記者会見で、十二月中に結論を出すということであったのでありますが、現在まで何らの結論も出されていないということでございます。これについてはどのようになっておるのか、またどのようにお考えであるのか、伺いたいと思います。
  12. 澤邊守

    澤邊政府委員 昨年の五月上旬から六月上旬にわたりまして、ただいま御指摘ございましたように富山県において事故が発生したわけでございますが、県及び県経済連事故発生後、六月二十五日に配合飼料を回収し、ダイブ使用も停止をしたわけでございます。国といたしましては、肥飼料検査所において成分の検査を行なったほか、十月上旬から、ただいま御指摘がございましたように大学関係専門家、それから農林省関係の試験研究機関等加わりまして、専門家による調査団現地に派遣いたしまして実情の調査に当たらせますと同時に、調査団現地より持ち帰りました病理鑑定用の材料、内臓だとか血液等でございますが、そういうものを持ち帰りまして家畜衛生試験場において検査を実施し、さらに試験場におきまして牛の給与につきまして動物試験再現試験、同じようなえさを給与いたしましてどのような結果になるかということを行なっていたわけでございましたが、それを終わって、現在そのデータ整備中でございまして、近く専門家会議を開いて、いろいろ議論があるようでございますが、審議をいたしまして結論を出したいということでございますが、一回の会議結論まで至るかどうか、そこはまだ、やってみないとわかりませんが、やや予定よりおくれておりますけれども、そういう動物実験等も新たにやりまして、現在、鋭意結論を急いでおるところでございます。
  13. 綿貫民輔

    綿貫委員 たいへんゆうちょうな御返答でございますけれども、これはもう半年以上過ぎておるわけなんです。しかも推奨するときは、これはだいじょうぶだという太鼓判つきで推奨されて、その結果弊害が起きたものについては、その責任の所在もまだはっきりいたしておりませんし、それからこの原因についても発表がない。まだしばらく調査をしなければわからぬというような、そんなゆうちょうなことで、私が先ほど申し上げました農政に対する信頼をつなぎとめようということができるかどうか、非常に疑問だと思うわけであります。私がきょう質問をするというようなことで、この二十日ごろまでに調査団会合を開いて結論を出してみたいというようなお話もあるやに私は聞いておりますが、これはひとつ早急に結論を出していただきたいと思います。  特に、これを推奨するまでの経過として、生産会社、これは三菱化成でありますが、ここのデータに基づいていろいろの非公式な会合に研究所のスタッフが出席した中で、だいじょうぶだということで推薦がきめられたということも聞いておるわけでありまして、末端の農家では農林省推薦飼料として安心して使った結果、こういう事態が起きたわけであります。この問題についてひとつ早急に結論を出していただきたいと同時に、こういうものがもたもたしております間に補償についていろいろとアンバランスが生まれておるわけであります。やかましく騒いだ人にはたくさん補償する、黙っておる人には補償しないというようなことで、騒いだ人には一頭四十数万円の補償もしておりますし、騒がない人には三万円程度の涙金だというようなことで、また、特にこれを政争の具に供して、ある政党に泣き込んでその政党が騒いだ、その政党の騒いだ人には多く補償して、おとなしい農民にはあまり補償しない、こういうような事態も起こっておるわけです。  こういうことで、これは大臣ひとつ冷静に、こういうものを政争の具に供するということがないように、農林省の政策としてこの問題に十分な結論を早急に導くように御指導願いたいと思います。長期的な信頼をつなぎとめるためにも、こういうことは日本の国の中のほんの一部の現象かもしれないけれども、こういう小さなささいなことから農民の不満が生まれるということもあるわけですから、十分御留意を願いたいということを特に強く要望申し上げておきます。  次に、昭和四十六年度の農林省所管一般会計歳出決算額は六千七百三十七億五千七百万円余となっておりますが、補助金の目の件数交付金額及び交付団体件数はどうなっておるのか、これをちょっとお伺いいたしたいと思います。
  14. 大河原太一郎

    大河原(太)政府委員 お答え申し上げます。  補助金の目の件数は、予算決算では移しかえその他によって目の数が違うことは御案内のとおりでございまして、お尋ね補助金の目の件数につきましては二百件、交付金額は五千五百四十八億二千三百万円でございます。  補助対象団体については、一件一件でございまして非常に多数にわたりますが、直接に交付する農業関係の公団、事業団あるいは全国段階なり都道府県農林漁業団体等でございまして、件数と交付された数につきましては、これはやや時間をいただきまして一件、一件数えさせていただかなければならないわけでございますので、われわれとしてもこれについては詳細明らかにしたいというふうに考えておるわけでございますので、御了解願いたいと思います。
  15. 綿貫民輔

    綿貫委員 昭和四十六年度会計検査院決算検査報告によりますと、支出関係不当事項百九十件のうち農林省所管は六十二件でありまして、しかもこれは全部補助金ということになっておるわけであります。この六十二件のうち、きわめて遺憾な事項として補助対象外のもの六件、事業の実施に要した費用より高額な事業費を要したことにして事業費を過大に精算したものが二十一件もあるわけであります。  このような事例にかんがみまして、農林省一体補助事業採択交付金決定及び精算についてどのような措置を講じておられるのか、お伺いいたしたいと思います。
  16. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 補助対象事業採択にあたりましては、都道府県等によって検討されました計画書を当省においてさらに審査いたしまして、必要により現地調査を行なって、適当と認められたものについてのみ補助金交付決定を行なっておるわけでございます。  また、精算につきましては、提出された実績報告書に基づきましてその内容審査して、補助目的に沿わないものにつきましては返還せしめる等の措置を行なっております。  なお、相当数指摘を受けましたことはまことに遺憾でございまして、今後このようなことのないように指導監督の強化をはかってまいるつもりでございます。
  17. 綿貫民輔

    綿貫委員 ただいま大臣から補助金返還とかいろいろなお話がございましたが、昭和四十六年度の不当事項六十二件の事後処理といたしましては、補助金返還手直し工事などは完全に行なわれておるのかどうか、これに対してひとつお答えを願いたいと思います。
  18. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御指摘のございましたこの六十二件につきましては、手直し工事体制整備または返還措置を講ずる等、すでにその措置を十分完了いたしております。
  19. 綿貫民輔

    綿貫委員 会計検査院は、国庫補助事業補助対象外事業費精算過大などを不当事項として指摘しておりますが、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律罰則に該当しないのか、もしそうだとすれば、事例をあげてその理由をひとつ御説明願いたいと存じます。
  20. 田中稔

    田中会計検査院説明員 ただいま先生お尋ねの件の中から、補助対象外として指摘いたしました中で一番金額の多い兵庫県の高田養鶏組合の例を具体的に御説明申し上げます。  この組合は、養鶏経営を行なうこととしまして、五名が出資金百万円を出しまして農事組合法人高田養鶏組合というものを設立いたしまして、その補助事業内容といたしましては鶏舎を三棟設置するのだということで申請をしていたわけでございます。ところが、私ども検査の結果、実際は、この組合の設立に伴う出資金は五名ではなくて二名が出資をしていた。それから事業に必要な資金も二人だけが負担をしておりまして、この二人の人がそれぞれ個人的にこの施設運営管理をしていたという事態がはっきりしたわけでございます。したがいまして、この補助金共同行為をするということが前提の条件になっておりますので、そういう条件を欠いておると認めまして、補助対象とはならないというふうに判断したわけでございます。  ところで、この事態をどうして適化法罰則に該当するというふうに判断しなかったかという点でございますが、事態はただいま私が申し述べましたとおりでございますけれども、この二人の方が申請当初からこの施設個人使用目的として、単に共同利用ということは偽装にすぎなかったのかどうかという点になりますと、私ども検査といたしましてはなかなかそこまで断定できないということでございます。それに、私ども指摘いたしました後、この県及び農林省におかれまして、本施設を所期の目的を達成させるように体制整備をはかられたという点もございまして、私どもといたしましては、適化法罰則に該当する事案だというふうには断定いたさなかった次第でございます。
  21. 綿貫民輔

    綿貫委員 いろいろと御説明をいただきましたが、とにかくあとから補助金を返せばいい、工事手直しをすればいい、あるいは罰則に当てはまらなかったからそれでよかったというものではないと思いますので、今後ひとつこの補助事業については、さらに厳正の上にも厳正な行政をやっていただきたいと強く要望して、質問を終わりたいと思います。
  22. 臼井莊一

    臼井委員長 この際、関連質疑申し出がございますので、これを許します。松岡松平君。
  23. 松岡松平

    松岡委員 ちょっと農林大臣にお伺いしたいのですけれども、今後の農業方針についてのことをお伺いしたいのです。  いま、ともかく圃場整備事業というものはかなり行なわれておりますが、これは大体平地ですね。ところが山間地の段々畑とか、そういう方面における農業近代化というもの、また生産性の向上というものは全然なされていないわけです。あわせて、これに関連して、最近では農業工業化といいますと、具体的にいえばビニール使用の水の利用その他でかなり成績の上がっている農法があるわけです。こういう点について大臣の御所見をひとつお伺いしたいと思うのです。  そこで問題は、山間地の小さなたんぼも、あるいは畑もあるんですが、これをこのままにしておくということは、だんだん工業部面への農業人口の転出が行なわれるし、やはり何としても農業人口を確保しておくという上においては、農法を変えていかなければならぬと私は考えておるのですが、大臣、どういうお考えでしょうか。ひとつ簡単でいいんです。今後の御所見を承ればけっこうであります。
  24. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私ども農耕地有効利用、これをできるだけ強化していかなければなりませんが、そういう意味合いで、いま松岡さんの御指摘になりましたような里山等につきまして、なお畜産関係等においても草地の造成を大いに必要とするところでありますので、そういう地帯にもやはり農地としての基盤の整備をして造成をしていかなければならない、そういうふうに考えておりますので、いまの経済発展に伴いまして、ともすれば壊廃される農地が出てくるわけでしありますから、その中においてもわれわれは優良農地を確保するという大前提は変えないわけでありますけれども、どうしても壊廃が、御承知のように一年に六万四、五千ヘクタール出てまいります。そういうことを考えましても、やはり畜産農業を維持し拡大してまいりますためには、いまお話しのように、わりあい放置してあるような地域の山間地をさらに造成してまいるということは、ぜひ必要なことである。それには、お話しのございましたように水の問題がございます。そういうことを総合的に勘案いたしまして、私どもは国民の食糧、穀物だけでなくて畜産を含めて自給度を高めていくという方向に沿うて、いまお話し申し上げましたような趣旨で農用地の開発をやってまいる、そういう考え方を基礎にして進めておる次第でございます。
  25. 松岡松平

    松岡委員 いまほど大臣から御所見承りまして、よくわかりました。ただ、最近圃場整備ができましたといいながら、まだ自然落差方式による用水を使っておるのですね。これは非常に古い方式だと私は思うのです。水をむだに使う。同時に必要でない水を流してしまって、いまやがては飲料水にも困ってくるだろうといわれているときに、私は農業における水の使用というものはよほどお考え願いたい。  ことにいま圃場整備の完備したところなんかも、私は方々歩いて見ているのですけれども、なぜああいうパイプ配管をやらないのか。パイプでやりますと、鉄でございましても、塩化ビニールでございましても、熱の吸収力がありますから冷害問題が起こらないのですよ。同時、タンクにためておきますれば、これもやはり温度が上がりますし、冷害地帯なんか、ことにこの問題考えてもらいたいと思うのです。  それと先ほど申しましたビニールたんぼの問題も、これはもう肥料の合理化、水の合理的使用現実にこれをやっておるところは反収二割くらい上がっておるのですね、成績は。ただビニール張るだけのことでございまして、たいした労力はかからない。  ただ、私はもう一点あわせて御希望申し上げておくが、兼業農政というものはなるべくこれは漸減方式をとっていただきたいと思う。なぜかなれば、兼業というものは非常に農家家庭生活というものを陰惨ならしめる。のみならず、実際手取りというのが非常に少ないのです。なぜかというと世帯を二つに分けておるわけでして、出先で働き手のおやじさんがやはりかまど一つ持っているわけです。家庭でも持っておる。実際手取りうちに持ってかえる金というものは少ないのです。それで一体、やむなく泣き泣きがまんしておるというこの状態は、私はやっぱり——低地開発したり、それから山間でも、豆やトウモロコシを植えるところはまだたくさんありますよ。これをほったらかしておいて、そうして都に出かせぎにいくということは、ちょっと問題があると思うのです。出かせぎさえ行けば生活が楽になるという妙なイメージがあるのです。だから、これはつとめてひとつ政府のほうで、やはり農家地元で働けるだけ働く、また開発できるところはどんどん政府のお力添えを得て開発してやってもらいたいと思うのです。豆やトウモロコシを植えるのにそんなにたいした開発費はかかりません。これは機械力を使わなくてもできる場合もあります。だから、こういうことも、高い金で外国から輸入していることを考え——、しかもその輸入も、ときによってとめるとかとめぬとかいわれておるようなことでは、私はこれは問題が多いと思うんですね。それから、あわせてアフリカ方面にも開発援助をしてもらえば、大豆でもトウモロコシでも米でも、もうつくりたい意欲は満々としておるのですから、この点にも目を向けて、農業は単に自国の耕地ばかりでなくて、やはりそういう低開発地における未開の土地の開発に協力すれば、自然こちらの自給も確保できるというものじゃなかろうかと考えておるのでございますが、大臣、お答えなくてもけっこうです。これで終わります。
  26. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御高見を私ども十分胸に置きまして、なお今後の農政と取り組んでまいりたいと思います。
  27. 臼井莊一

    臼井委員長 次に、原茂君。
  28. 原茂

    ○原(茂)委員 最初に、郷党の大事な大臣お願いをしておきたいと思いますが、いま米価要求が盛り上がっております。できる限りひとつ農民の要望にこたえるようにせっかく御努力をいただくように、お願いをいたしておきたいと思います。  きょうはその問題に触れずに、農産物の流通過程における農協のあり方について、まず第一に大臣所見をお伺いしたいと思うわけであります。  そこで、わかり切ったことのようですが、農協のいま存在いたしております意義について、簡潔に大臣からひとつお教えをいただきたいと思います。
  29. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 その前に、農協の現状をちょっと政府委員からお答えいたします。
  30. 岡安誠

    ○岡安政府委員 農協が現在農産物の流通機構に関係している現状につきまして簡単に御説明申し上げますが、先生御承知のとおり、農協は計画生産の推進のほか、共同集荷施設とか集配センター等の流通関係施設整備をはかり、共販事業の推進をはかっておるところでございます。  まず、販売事業におきまして農協系統の利用率を申し上げますと、これは四十六年度の数字でございますけれども、米は大体九五%程度、青果物につきましては四三%ぐらい、畜産物が約四〇%ぐらいということでございますし、施設の面におきましても、最も多くの農協が設置いたしておりますのは青果物の集荷施設でございまして、大体すべての農協のうち約三五%がこの施設を持っております。その次に多いのは青果物の選果施設でございまして、これは大体二三%の農協がこの施設を持っております。その次が牛乳の集乳施設、牛乳の集荷の施設でございまして、これが大体一〇%余りの農協が持っておるということでございまして、それ以外の施設で多いものは卵を洗うような施設、それから青果市場、それから畜産物の集荷施設、クーラーステーションというような施設を持ちまして、現在流通関係の機構の整備、またその役割りの拡充強化に努力をいたしておるというのが現状でございます。
  31. 原茂

    ○原(茂)委員 大臣からちょっと農協の使命について……。
  32. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いま申し上げましたような状況で、流通関係について農協は大きな役割りを果たしておるわけであります。私どもといたしましては、そういうことも大事な一つの仕事の中でありますけれども、やはりわれわれが直接農民諸君に希望いたすような農政についての指導的立場をとって、したがって、みずから農民たちがつくっておる組合でありますので、そういう機関を通じて、やはりわれわれが考えております農政を推進するための一翼をになってもらいたい、また技術指導等も大いにやってもらいたい、そういうことを組合に期待いたしておるわけであります。
  33. 原茂

    ○原(茂)委員 農協が農産物の流通過程で、一番、目について、この点が欠陥だなあと思いますのは、ちょうどほかの産業における独占支配あるいは価格形成の力、そういうものがあるのに、世界に例を見ないような、全農民が一つの組織に固まっている農協というこの大組織でありながら、価格形成機能がない。ある意味では、やろうとするなら独占価格の形成ができるはずなのに、それができていないというところが、わが国における市場を見たときの、農協そのものの非常に大きな欠落した条件ではないか。逆に言いますと、農民が農協による理由は一体何だというなら、間違いなく、生産者としての利益を守り、また消費者としての利益も同時に守っていきたいということから農協によっているわけであります。このような、農民がよっている農協が、実はわが国の独占形成の中における位置づけがたいへん脆弱なものであって、価格の形成能力すら持っていない。しかもその間にはいわゆる卸売り市場がある。次にまた小売り段階というものがある。これが農民と実際の価格形成の問題とを切り離しているような、遮断をするような状況にすらなっている。この点を何とか考えていかないと、農民が正しく自分のつくったものに自分の価格をつける、あるいは幾らで値段がつけられているのか、その実情を目の前に実際に見ることができないままに、どこかで価格がつくられ、きめられる。お米はもちろんですが、一般の魚、野菜にしても、卸売市場によって価格がきめられてくる。自分ではどうしようもないというもどかしさ、これが農協に対する潜在的な不信となって非常に大きく、いま内面的に膨張し始めているというようなことを考えると、農協というものに何らかの形で、現在の資本主義機構という中でも流通過程における、農民と直結した形で、農民の意思が価格形成にあらわれていくような形を何らか講じてやる必要があるのじゃないかというように、最近思えてならないわけであります。  これはもう昔から学者の一部が論じている問題でもあるのですが、事実、この問題は非常に大事な問題ではないかと思います。たとえば最近のアメリカなどを見ますと、日本で言うと大きな郡に匹敵するような州の中に何カ所かせり市が持たれる。州知事の公認でせり市が持たれる。そこへどんどんどんどん農民は直接生産物を持ち込む。また、大口消費者であるスーパーだとかあるいはホテル業者というようなものは、直接そのせり市へ出かけていって買うというようなことが、州の施策として指導的に行なわれている、助成までされているというために、農民はそのせり市へ行って、自分のつくったものがそのせりで幾らに値づけされているかを直接知ることができる、日によってその値段は動くわけですけれども、やはり納得がいくというような仕組みが、たとえば資本主義の本山といわれるようなアメリカですらすでに行なわれていることを考えますと、日本はせっかく全国組織としての農協があるのだから、この農協が現在やっているような仕事だけでなくて、政府の指導的な誘導をそこに加えて、もうちょっと農民が直接自分のつくったものに、価格というものと関連して、満足できるようなそういう仕組みが、日本でもそろそろとられていかなければいけないんじゃないか。試みにやろうとする、そういう何か考え方があって小さくはやっているところもあるようですけれども、まだまだ十全ではない。私は、政府が思い切って基本的な問題としてそのことをとらえて、いわゆるそういったアメリカ式の市場によって生産者と消費者が直結をするということを大胆にやるときが来ているし、やればできるし、やるべきではないかというふうに第一に思うのですが、大臣いかがですか。
  34. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 政府委員から一応お答えいたさせます。
  35. 池田正範

    ○池田政府委員 基本的には、いま先生御指摘の、みずからつくる者がみずからのかかったコストに適正な利潤を加えて売るというたてまえが貫き通されることが、資本主義の経済のもとにおいて一番望ましいことであるというふうに私も思います。しかし、いま御指摘の中にいろいろございますように、たとえば米のように行政価格が介入してすでにきまるといったようなものもございますし、野菜、魚のごとく生鮮食料品もございます。おそらく、主としていま御指摘の中にありますことは、お米もありましょうが、生鮮食料品のような形で、あるときには二千円もするキャベツが一週間の問に二百円になるといったようなもどかしさというものがある、これをどうにかしなければいかぬという問題を頭の中に置いて御指摘に一なったのではなかろうか。  現実には、現在日本の場合には御承知のように卸売市場、産地市場、中間的な地方卸売市場とそれぞれございます。魚なんかの場合には大体産地市場というのが中心になって、中央卸売市場に入ってまいります場合には、その間に冷凍技術が介在をいたしますので、本来の意味の生鮮食料品でない分野がかなり多い。つまり生産者団体が卸売市場に対して委託販売をするのではなくて買い取りしてもらうという形で、そこで売買が決済をされてしまうという形になります。したがって、そこで決済されました価格と卸売市場でできます価格との間の関連は必ずしもない場合が出てまいります。野菜の場合には、これはほとんど完全に委託でございます。したがって、主要な団地ができてまいりますと、その大きな団地の共同出荷の力というものに非常に強く左右されてまいりまして、それで、たとえば嬬恋なら嬬恋のキャベツというものがある時期支配的になる、あるいは八月前後になりまして長野県の高冷キャベツというものが大阪市場を支配するといったような形が当然出てくるわけでございます。  したがって、普通の市場におきましても、そういった生産者団体の消費地市場価格を支配すると申しますか影響を与えていくという組織的な力というものは、どんどんふえてまいりますし、私ども政府といたしましても、共同出荷によって指定の消費地市場に入ってまいります、価格安定対策対象になる生鮮食料品というものを、少なくとも七割程度にまでは計画的に上げていきたい。いま大体五六、七%でございます。  それからもう一つは、あとから御指摘になりましたのは、つまり従来の卸売市場というものに対してある程度刺激的に消費者に直接する市場のやり方、これは一つは集配センターというのを農協が直営でつくってやっております。これは戸田橋あるいは大阪が最近つくっておりますし、それから大和市等でもつくっておりますが、これもいま先生御指摘のような理想を一つ持って、中央市場に対する一つの牽制作用として、そういうものを農協が直接消費地市場に売るという一つの施設でございます。それからもう一つは、農協がスーパーを直営するという形、これについても実は今回の予算の中でも約二十カ所ほどこの補助対象を広げることにいたしておりまして、したがって方向としては、いま先生おっしゃったような方向を、本来の市場は全部それに置きかわるというふうには考えられませんけれども、少なくとも中央卸売市場なり産地の市場というものが本来の正常な機能を果たし得るような牽制機能としてそういうふうなものができるように政府の施策をそちらから援助する、こういう形は今後ともとってまいりたいと考えておるわけでございます。
  36. 原茂

    ○原(茂)委員 そういう事務的な内容の御説明は実は大体承知した上でお聞きをしていますので、私の言っているのは、そういう状況がだんだんに育成されるのを待っているんでなくて、政府の基本方針としていま大胆に推進すべきだ、こういうことを実は大臣からお伺いをしたかったわけであります。  こまかいことに入りますが、たとえば現在、実際の市場へ行きますと、野菜なんかにもいろいろな何々という規格がきまっている。キュウリだって、まっすぐなものと曲がったもの、中間のもの、大きい、小さい。食って味が変わるのかどうか知りませんが、一体、こんな規格なんというものが消費者にとって必要なんでしょうか。私は無縁だと思う。何のためにこういうことをやるのか。卸売市場がやはり、法律で保護をされている立場を利用して野菜に対する規格をかってにつくっている。そうして上中下あるいは値段の高低をつける。その間に、生産者の知らない間にばく大な利益や、あるいは不当な不利益を生産者に与えるというようなことが現に行なわれている。私は、こんなものは消費者とは無縁だと思う。あるいは包装が近ごろやかましく言われる。その包装の器材、資材が非常な値上がりをしているためにいま農民は困っている。こんな包装が実際に必要なのかどうか。きれいに包装してあります、卵にしても何にしても。これは市場がいろいろな段階を経て、いわゆる流通の中に余分なものがあるから、なくそうと思えばなくしていい。世界にあまり例がないんじゃないですか。こんなにきれいに包装しているところは日本だけだと思う。歩いておわかりだろうと思う。こんなことも消費者とは無縁です。関係ない。しかし、値段は高くなる。それが生産者に行っていないということも、基本的には、農協の流通過程の中における位置づけをしっかりと政府の方針できめていくことを通じてなくしていくようにすべきではないかと思うから申し上げているのであります。大臣いかがですか。
  37. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私も原さんと全く同じことを考えまして、いろいろな人に、関係者に聞いてみました。ところが、日本の今日の主婦たちの好みで、曲がっているのとまっすぐなのじゃ、まっすぐなほうが高いそうです。まっすぐなものを希望される。それから、いまお話しのように、私ども子供のころは、八百屋へ行ってみれば、どろのついたニンジン、ゴボウがそのまま並んでおった。そのほうが鮮度を保つのにいいと思っておった。ところがこのごろは——農林省でも一般家庭の主婦たちにお願いをいたしまして、そして定期的に情報を入れてくださる機関がございます。たとえば烏山あたりで先年やっていただきましたが、そういう御婦人の実地の調査によりましても、やはりいまおっしゃいましたように、私どもから見ればむだなように思いますけれども、とうふもビニールの船の中に入れなくちゃだめだ。それから、まるで芸術品みたいにきれいに包装して、そういうふうなもののほうが希望者が多いというのであります。これはやはり私は、消費者の態度もそういうことについては大いに検討する必要があると思うのであります。そういうようなことは消費者の好みによってやむを得ないことだろうと思いますが、なるべくそういうむだを、ロスを省くということは、私は物価のために必要なことだと思っておることは御同感でありますが、実情はそういうことであります。  そこで露地野菜等のキュウリ、夏になればキュウリが出ますけれども、それはビニールハウスでつくりました形のいいものとは値段が違います。やはりビニールハウスでつくったほうが常にマーケットで市価が若干高い。  私はいまお話のございましたようなことを根本的に考えてみますと、農業協同組合というのは組合であります。ああいう組合というものが一体どこまで仕事ができるかということは、かつて協同組合ができましたころからずいぶん研究されておるようでありますけれども、やはり今日のような、先ほど政府委員からも御説明申し上げましたような状況のもとにおける取引においては、もし産地直結のことができますならば、農協自身がいま、すでに米の集荷の手数料、それから今度は組合員に対する物品の販売についての手数料というふうなことで、一つの商社と同じような仕事をしておることは事実であります。そういう仕事も半面にはある半面において、今度はさっき私が申し上げましたように、技術指導それからまたそのときどきの情報を流して農家の生産に資するというふうなことが組合の大きな使命ではないかと私は思っておるのでありますが、そういう角度から考えまして、農業協同組合というものが生産者のためにどういう限度まで仕事ができるかということは、非常な研究問題だと思っております。したがって、現在の経済社会におきましては、与う限りなるべく中間のロスを省くような指導はわれわれはしてまいりたい、こういうふうに思っておるわけであります。
  38. 原茂

    ○原(茂)委員 大前提を先に申し上げる必要ないと思って言わなかったのですが、とにもかくにも現在は、消費は美徳だなどということは間違いだということを国家的に、国民の認識として持たなければいけなくなってきた。当然その裏返しとして省力、省資源ということを通じて、いま大臣のおっしゃったようにむだを省いて、できる限り消費者の生活がインフレ、高物価で悩むことのないように、落ちつきを見せるようにということがいま政治の方向なんです。そういうたてまえからいったときに、農林省の行なうべき指導の第一の仕事として、いま私が考えたようなことが必要ではないかという前提で申し上げているわけであります。  私の辺々にも、週刊誌なんかに、頭をぐわっと飛行船みたいにまるくしたきれいな女の子の表紙絵があると、そいつをやったら自分もいいと思うのかなんか知らぬが、一緒になって、とんでもない背の小さい女がまるく高くして得意になって帰ってくる。これは日本人の一つの癖なんで、何か見せられ聞かされると自分でもやってみたい、こういう感じがある。市場そのものが価格操作のために、とうふをあのきちっとした箱に入れる、あるいはキュウリがまっすぐのほうがいいような値段の差をつけておくものだから、何となく、曲がったキュウリよりまっすぐのほうがいいんだという好みみたいなものが出てきたようにいまはなっている。これは国民的なあやまちです。現在の国の方針からいったら、インフレを、あるいは高物価を、生活安定をと考え政府の立場からいったら、こういった誤った国民の嗜好的な錯覚は取り除くように、市場を通じてもやるべきだ。なければいいんだ。曲がったやつもまっすぐなやつも一緒になって一キロ幾らと出してあれば、そんなえり好みをするはずがない。悪い習慣をつけられただけなんだというふうに私は思うので、どうしてもそういった意味の考え方を基本的に、いまは政府が総需要抑制までして、とにかく経済的な立ち直りをやろうという大事な時期においては、そういう新しい角度、新しい決意で農協の流通過程における位置づけを考え政府が積極的に助成も行ない指導もするということがどうしても必要だというふうに思うわけであります。  農民に対して農協があると同じように、消費者はやはり団結の必要を考えて生協運動というものを盛り上げて、生協が、いまも局長お話にあったように、至るところで相当の成果をあげつつある。その意味で私は、生協に対しても、いま言った農協のあり方が変わっていくと同じように、変わるんじゃない、新しいものを取り入れていくと同じように、それにタイアップする生協に対する育成策というものも政府としては当然考えていいと思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  39. 池田正範

    ○池田政府委員 一つは規格の問題でございますが、これにつきましては、確かに御指摘のように、目で見ることに重点を置き過ぎておる日本のいまの生鮮食料品の選び方というのは、世界の中でもちょっと異例だといわざるを得ないと思います。ただ問題は、その中で、先ほど大臣から申し上げましたような消費者側のサイドの歴史的な消費性向と申しますか、同時に、やはり高く売れるものは高く売りたいという農業側の要請がございます。そこで、どうしても高く売れるという条件をつくるために、たとえばよく笑い話に出る、キュウリの底へおもりをつけるような話が中に出てくるということも、現実の問題としてあるわけでございます。しかし、私どもとしては、いま先生御指摘のように、現実に売られているキュウリというのは上中下ぐらいのものであって、八種類も十種類もに分かれているわけではないのですけれども、やはり高級な、たとえばレストラン向けにうんと高い値段で売れるといったようなものをつくる特殊産地も出てくる、非常にこまかい技術を使う産地があることも否定できない。そうしますと、売る段階と買う段階とで当然規格についての食い違いというのが出てくるわけでございます。そこで、全体として大づかみに申しますと、そういう特殊な産地のほうでつくっておる規格というものを、全体的に消費者のサイドから見ても便利な形にだんだん直していくという全国ベースの規格化の運動、これはずっと今後も続けていきたいというふうに考えておるわけでございます。  それからもう一つは金ぴか箱の問題でございますけれども、リンゴの箱なんかを見て、あれだけのリンゴの箱に入れなければいかぬのかということは、確かに疑問が起きます。私ども最近は往復容器を使いまして、いわゆるパレチゼーションと申しますかパレットを使ってやる。これは約一億七千万円ほどの予算をいただきまして、新年度とりあえず長野県なんかを中心にして往復容器を使って、これは消費地の卸売り業者が協力してくれませんとできませんものですから、そこで回収できることの見込みのついた段階でだんだんにやっていくというふうにやって、全体としては考えていきたいと思います。  それから、全体としてのマーケッティング、特に小売り段階のマーケッティング、これは先ほど農協の問題を申し上げましたけれども、農協以外の一般的な民営のスーパーにつきましても積極的に補助金を出して、そのかわり一つの問題はやはり会員制と申しますか、ある会員にしか安く売らないという仕組みはやめていただきませんと、これは補助金が出しにくくなります。したがって、そういうふうなオープンなシステムというものを前提にする民営の大型小売り店というふうなものも、今後はせいぜいひとつ努力してやっていきたいと考えている次第でございます。
  40. 原茂

    ○原(茂)委員 ありがとうございました。この問題だけで時間をとるわけにいきませんので、きょうは最後に重ねてお願いしておきますが、前段申し上げたような省資源、生活擁護というたてまえから思い切った方針の新しいものを、あるいは大転換を、いまの政治の必要とする方向に沿わせるように、農協とも十分に話し合いをしながら農協を指導し、そうしていまのような御説明がありましたが、鶏と卵と同じことなんで、産地でもってこんな規格をわざわざつくるのだということも、市場がそれを好むというゼスチュアがあるために起きたことなんで、そういうことのないように、とにかくむだを省くというような農協のあり方に対して、積極的に今後指導と、なお予算上のその意味における措置お願いをいたしておきたい、こう思います。  次いで競馬問題に入りたいと思いますが、まず農林大臣に、個人的に関心がおありかどうか、ちょっと先にお聞きしておきたいと思います。
  41. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私は何回か農林省に参りましたが、競馬はあまり関心がありませんで、一回見ました。
  42. 原茂

    ○原(茂)委員 綿貫先生のように相当関心をお持ちいただいていると非常にわかりがいいと思ったのですが、一回でもごらんになっていれば、同時にまた担当官庁の責任者でもございますので、真剣にこの問題を大臣からもお考えをいただくように、これから二、三お聞きをしたいと思うのです。  競馬というのは俗にいうギャンブル、こういうものではなくて、健全なスポーツだという大事な面も持っていることは大前提でございます。しかも、最近の競馬ファンの状況を見ますと、数百万ともいわれ、あるいは間接的に関心を持つ人を入れると数千万ともいわれるような、非常な国民的な関心が持たれている問題であります。つい先ごろ馬手組合の厩務員の方々の春闘にかかわってのストライキがございまして、相当待望された、御存じの大レースの一つであります皐月賞、これが約三週間延びて、つい先ごろようやく実施することができました。ある意味では、期待したとおりの馬が優勝してしまって、悲喜こもごもがあったようでありますけれども、この皐月賞を契機に、今回のストライキを通じてあまりにも熾烈に、長く期待を裏切ったために、中央競馬会というものの存在に対して国民の目が鋭く向いてきたことは間違いないと思うのであります。  私は、このストライキの起きた原因について、徐々にこれからお伺いをしてみたいと思うのです。なぜ一体、あの三週間にわたる長い間、皐月賞が延びるほど、馬手組合との間の問題解決ができなかったのか、中央競馬会の大澤さんおいでになっておりますので、まずお聞きをしたい。
  43. 大澤融

    大澤参考人 お尋ねのことでございますが、ああしたことで競馬を一月近く休みまして、ファンの方々その他の方に非常に御迷惑をおかけいたしましたことは、非常に残念なことだと思っております。  あのように馬手組合の問題が長続きをして、一カ月近く競馬を休みましたことは、ことしは先生も御承知のように、物価高というようなことを背景といたしまして、非常に高額のベースアップの要求一般的になっておりまして、それらを背景として、馬手組合におきましても大きな金額のベースアップを要求する、それを受ける調教師さんあるいは実質的にその裏で負担をされる馬主の方、これらの方の負担が増高するものですから、何といいますか、馬手さんがよろしいというような回答がなかなかできかねたというようなことがあって延び延びになったということだと思います。
  44. 原茂

    ○原(茂)委員 どこの労働組合対会社側の交渉も、いまお答えがあったような状況で長引く、非常に通り一ぺんのお答えなんですが、普通の問題をいま論議しているのではありません。国会の貴重な場で貴重な時間を使って中央競馬会全体の問題を、多数のファンにかわって分析あるいは検討をしてみたいという立場でございますから、時間の問題もありますので、おそらく理事長もお考えになっているであろう、ここに問題があるという点を、これからの質問にはお答えをいただくように、他の参考人にもぜひお願いをいたしたいと思うのであります。  私はしろうとでよくわかりませんが、馬手、厩務員に対する給与は、いまお話のあったように調教師から出る。ところが調教師が実際に負担しているのは、その給与のうちの約五・四九%程度、残りは賞金から出る調教師会に行くお金あるいは馬手のほうに行くお金などから出されているというのが現状で、実際にいま理事長の言うように、調教師が雇い主であるからという前提で、高額の要求にこたえられないでただ延びたんだというのとは、ちょっと事情が違う。したがって、私はこのように延びる——過去にも何回もあります。二年に一度程度この種のストライキが行なわれてきた。これからも、この物価の変動の激しい、生活の苦しいこの状況になりますと、頻発するおそれがあると心配をいたしますので、一体どうしたらこの馬手組合を納得させる待遇ができるかという点で、いま私が申し上げたようなそういう調教師の関係のお金の出し方、給与全体がいま私が申し上げたような構成になっているといたしますと、問題を解決するのにはどうしたらいいのだろうかというふうに、そこに焦点をしぼらないと問題はほぐれていかないと思うのであります。  ここで、調教師会の専務さんおいでになっていただきましたので、一体調教師会としては、今回の馬手組合との問題が長引いた原因は、私が言うこともかみ合わせながら、一体どういうところにあったということを、ずばりお答えをいただきたいと思います。
  45. 国吉文雄

    国吉参考人 ただいま御指摘いただきましたように、このたびのストライキが相当長期にわたりまして、国民の皆さま方に多大の御迷惑をおかけいたしましたことにつきましては、まことに申しわけなく存じておる次第でございます。  ただいま先生から御指摘いただきましたように、馬手に対する雇用の問題は、調教師との間に雇用関係が生じておるのでございまして、調教師が馬手に対して賃金その他の給与を支払うということが当然のことになっておるわけでございます。ただ、調教師が支払います給与の原資は馬主さんから預託料という形でちょうだいをいたしまして、これを収入といたしまして、調教師はみずから馬手に対しまして支払いをいたしておるわけでございます。したがいまして、この毎年起きますベースアップ等につきましては、調教師が馬手組合団体交渉をいたしまして決定をいたしまして、それによって支払うのでございますけれども決定する前に馬主さんなり競馬会の方々と十分なる連絡をとりまして、団体交渉において決定したものは必ずこれを完全に支払いできるようにいたさなければならないのでございます。したがいまして、従来も、厩舎制度改善協議会におきまして関係方面と十分な連絡をとりまして、そうして原資につきましては厩舎制度改善協議会において大体のワクをちょうだいいたしまして、これによって調教師会は労働組合団体交渉をいたして今日までまいったわけでございます。  従来、幸いにいたしまして、厩舎制度改善協議会におきましてスムーズに原資の調達ができておったのでございますが、このたびは、先ほど申されましたように非常に物価の上昇が急激でございましたので、したがいまして、ベースアップもかなりの額にならなければならないというような点からいたしまして、いろいろと関係方面との間の連絡も手間がかかったわけでございます。そうした中におきまして労働組合のほうの要求はかなり熾烈でございまして、ストライキという形を重ねるようになったわけでございます。しかし、私どもといたしましては何とかいたしましてスムーズに早く解決をいたしたいということで、厩舎制度改善協議会を再び開いていただきまして、そこで十分なる御検討を願いまして最終段階の回答をいたし、ようやく円満解決を見たような次第でございます。  私どもは、今後もこの厩舎制度改善協議会におきまして十分な御連絡また御協力をいただいて、再びこのことが起きないようにいたしたいと考えております。そのためには、ベースアップ等の時期に直面したときではなかなか解決のつかない点もございますので、平常におきまして何らかの形において十分な連絡をいたしまして、平素において準備をいたしていきたい、かように考えておる次第でございます。
  46. 原茂

    ○原(茂)委員 専務さんにもう一度先にお尋ねいたしますが、賞金の一〇%が調教師に進上金として出されています。その一〇%の進上金、平均するとどうでしょう、一千万近くになるんじゃないでしょうか。それのうちからせめて半分とまでいかなくても四〇%程度でもこの馬手組合の側に回そうということになると、今回の春闘の要求は充足できたのではないでしょうか。どうでしょうか。
  47. 国吉文雄

    国吉参考人 ただいま御質問のございました進上金につきましては、平均いたしますとあるいは一千万円くらいになるかとも考えられますが、いわゆる相当にかせがれる調教師さんと、それからさほどにかせげない調教師さんもございます。また、手腕が非常にすぐれておりましても、そのときどきの馬の状態等によりまして、必ずしも、絶えず技術のすぐれた調教師さんがかせぎが多いというようなわけにもいかないのでございまして、平均すれば御指摘のような数字になるかと思いますが、進上金につきましては、なかなかこれをもって馬手の給与に充てるというところまではいかないのでございます。調教師さんの家族ぐるみに厩舎を経営している経費に充当するためには、進上金がほとんど唯一といってもいいようなわけでございます。したがいまして、従来も多年にわたりまして、馬手の給与につきましては預託料という形で馬主さんから実費をちょうだいするという形でまいっておるのでございまして、したがいまして、調教師が進上金の一部をこれにさいて給与に充てるということはとうていできないのでございまして、やはり私どもは従来の多年の慣習、多年のありきたりに従いまして、先ほど申したように、馬主さんなり競馬会と十分な連絡のもとにスムーズに、預託料の形において給与を調達させていだだき、そして円満に労使関係をやっていきたい、かように考えておる次第でございます。
  48. 原茂

    ○原(茂)委員 理事長と局長にお伺いしたいのですが、馬手、厩務員と法律上の雇用契約を結んでいるのは調教師ですか。お二人から答えてください。
  49. 澤邊守

    澤邊政府委員 調教師が雇用主として馬手、厩務員と雇用契約を結んでおる、こういうふうに理解をいたしております。
  50. 大澤融

    大澤参考人 おっしゃるとおりでございます。
  51. 原茂

    ○原(茂)委員 であるとすれば、専務さん、少なくとも雇用者である限り、一々厩舎制度改善協議会に相談をして、中央競馬会の助成金を当てにし、馬主協会から出してもらうお金を当てにし、それからまた賞金の一部、売り上げの一部が入ってくる調教師会に対するお金を当てにしといってくしゃくしゃにまぜないで、現に法律上も雇用主である限り馬手の要求にこたえ、雇っている限り十分に生活させる義務を負っているはずであります。一体なぜ預託料を、馬主からもらうそのお金もだんだん上げてもらって、給料に充当している、自分の平均一千万くらいにはなるだろうとお認めになったそのお金から思い切って出してでも馬手の生活を保障しようとなさらないのか、どうしても納得がいかないのであります。  そこで、そのことに対してもう一度お答えをいただきたいのと、きょうは馬主協会の会長さんもおいでいただいておりますので、どの程度平均預託料を出し、あるいは相談を受けたために馬手の給与に相当するようなものを、どのくらいの額のものを、たとえば今春闘では馬主さんの側ではお出しになったのでしょうか、これをお聞かせいただきたい。
  52. 中村勝五郎

    中村参考人 お答え申し上げます。  馬主協会といたしましては、先ほど申されました三者協議会というようなことを一言申し上げておかなければならないのではないかと思いますので、しばらく、そのいままでのいきさつを申し上げたいと思います。  昭和二十九年に競馬法ができまして、国営以来のいわゆる民営競馬になりましたときは、ちょう委員でおいでの松岡さんも役員であったのでございますが、その当時においては結局争議というものができない状態にありましたので、まだ昭和三十五年の熾烈なる争議のときにおいては中労委のあっせんまで参ったのであります。中労委のあっせんにおいては、昭和三十五年は、調教師はまだ使用者としての条件を欠いているので、競馬会が担保の責任ありというような形を下されたのであります。そのあと競馬会においてもいろいろ考えられまして、昭和三十六年三月に厩舎制度改善協議会というものを設置いたしたのであります。  その厩舎制度改善協議会は昭和三十六年、厩舎の諸問題を根本的に再検討し、競馬の健全なる発展に資するために、馬主連合会役員のうちから約十名、日本調教師会役員のうちから約十名及び中央競馬会の役員(監事は除く)をもって組織せられ、議長には競馬会理事長、事務局長には調整部長、ただし三十六年は総務部長をもってこれを構成されたる三者協議会というものができたのであります。これはいわゆる馬手諸公に対する盆、暮れの手当のことだけを決定するのではなくて、いわゆる現代的なる厩舎をつくり、そして競馬の健全なる発展について種々協議せなければならないという形でやったのでございますが、その後競馬会においてさっぱり会議がなかったことは事実でございます。  そのあと昭和四十二年度に京都におきましていわゆる争議が起こりまして、そこに暴行事件というような問題が取り行なわれました結果、京都の地裁において、判決案の中の一部で、競馬会は馬丁との間に事実上労使関係ありというような形の裁決を受けておるのであります。  また現在において、船橋の健康保険、社会保険の強制加入の問題については、法律の第十五条目に定めたることでありまして、昭和三十二年、競馬事業は強制加入に足る事項に該当がないので、レジャー産業として任意に加入をはかるようにしたということであります。しからばレジャー産業というのは、調教師及び馬主関係がやっていることではないと思うのであります。すなわち競馬会においてレジャー産業は開催されているのではないかと推察いたすのであります。  さような形においていわゆる三者協議会というものはいつの間にやら、ストをやられてしまうと、——馬主におきましては、何とかして多くのファン大衆のレジャーをじゃましてはならない。また、あらゆるところにおいて生産されている生産者、現在日本は世界第三位にある生産国であり、約一万二千頭の馬が生産されているという国でありますので、この生産者への影響も、競馬が停止されることによってまことに甚大だと思います。馬主会におきましては、雇用関係としてはあくまで調教師が雇用し、競馬を開催するのは競馬会であることは間違いない事実でありますが、やはり馬を愛し、競馬馬を持ち、そして自分の馬の勝つことを、ダービーでも取ることを終生の念願として考えている場合におきましては、やむを得ず馬主はでき得るだけの負担をあえてするような状態になっておるのであります。  先ほど、馬丁の収入は幾らであるかというようなお話を受けたのでございますが、このたびのストが起こりました以前において大蔵省にいろいろ税金関係で折衝いたしましたが、一部出張費も入り、蹄鉄料も入る、一部薬代というものが当然入ることは、馬の生活上やむを得ざることだと思うのであります。大体二十万前後の金は出費しておるのであります。それから今日、馬が上がっていき、馬手諸公の給料その他が上がってまいります。蹄鉄代でもべらぼうな上がり方をしております。まず出張いたしますれば三十万近くの金は使われるのではないかといま考えられるのでありますが、こまかいことは私にはまだよくわからないのでございます。  それから、先ほど、調教師の収入が平均一千万ということを言われていたのでありますが、これはいささか違うような気がしてならないのであります。大体において一千六百万平均の収入はあるのではないかと思うのであります。これは東京国税局をお調べくだされば十分おわかりのことだと思うのであります。  それだけでよろしいでしょうか。——では、どうも失礼いたしました。
  53. 原茂

    ○原(茂)委員 たいへんありがとうございました。  これは当局それから大澤さんにお聞きするのですけれども、いまお聞きのように、なるほど十五年前に中労委の裁定を仰いで、それから競馬会は調整部なるものをつくって、それがだんだんいまの改善協議会等をつくるように発展をしてきた。しかし満足に会議は開かれていない。四十二年京都地裁における判決もあるというようなことを考えますと——時間がないので結論的に申し上げますが、こういう問題を解決するというよりは、現実に照らして正規の雇用関係に持っていかない限り、いまのような調教師の考え方などをお聞きになってみるとわかるのですが、再び三たび、いままでと同じように何回かのこういう問題が起きて、なおかつ根本的な解決にはならない。今回もなっていない。したがって、ずばり言うなら、やはり馬手を中央競馬会が直接雇用をするという雇用契約を結ばない限り問題の解決にならない、本質に合っていない、こういうふうに思うのですが、大澤理事長からまずお答えをいただいて、あとまた大臣なり局長から、そのことを前提に考えたときにそれをしないとするなら、今後このようないわゆる重賞レースといわれるようなものが延期、延期になるようなことは絶対にないという保証を当局としてできるかどうかということをひとつお答えいただく。
  54. 大澤融

    大澤参考人 お答えいたします。  現在、馬主さんが馬を買ってこられて、それを調教師さんに預けて一人前の馬に仕上げる、その馬を仕上げるのには日々かいばをやり、馬運動をやるというようなことが必要ですから、調教師さんが馬手さんをお雇いになってめんどうを見させるということになっているわけです。  いまおっしゃるように、中央競馬会が馬手さんを全部雇ってしまえというようなことは、調教師さんというのは、これは調教師の免許を持って経営を行なっておられる方、そういう独立の経営体でやっておられる場合に、その方が雇っておられる馬手さんを第三者である中央競馬会が雇う、競馬会の職員が独立の経営体の仕事をするというようなことは、——馬手さんあるいは調教師さんまでもが、あるいは馬までもが競馬会のものになるというような場合は別ですけれども、そういうことはいまのような自由社会でちょっと考えられないこと。したがいまして、私は、あくまでも雇用主である、経営主である調教師さんが馬手さんを雇用して、今度のようないろいろな問題がありますときも、何といいますか、雇用主としての性格をはっきり持って対処するという方向にいくのが本筋だと思います。  中村さんから歴史についていろいろお話ございました。確かに調教師さんなり何なりが実力がない間は、中央競馬会がいろいろなごめんどうを見る必要があったかと思います。最近でもまだ——先ほど調教師さんがお持ちになっているのは五・何%とおっしゃいましたけれども、昨年の十二月で見ますと、自主的に馬主さんが負担しているのは八一%ぐらい。中央競馬会が勤続手当ですとかあるいは住宅手当ですとか、さらには非常に大きいのですが、九割ぐらいのボーナスの負担をしておりますが、約一八%ぐらいの負担です。調教師さんの自主的な御負担は一%にもなっていないというような数字がございます。それは実力のない間は競馬会なり何なりがめんどうを見ていくことはいいでしょうけれども、従来基本給までも見ておった、しかしそういうことでは相ならぬので、経営主としての形態を確立していく、そうして自分の雇っている馬手さんのめんどうを見ていくという本来の体制にだんだん近づいていかなければならない。そういう意味で、たとえば基本給というようなものはもう競馬会出しておりません。そういう意味で、私は原先生がおっしゃるような、中央競馬会が直接に雇用主になるというような形に持っていくことは適当じゃないというふうに考えております。そして、今後の問題としては、調教師さんがほんとうに経営主として自覚を持って、ほんとうの意味の当事者能力を持って、こういう場合にも当たっていくということが私は必要だと思います。  先ほどお話がありました三者協議会にいたしましても、従来は、調教師さんが育たない間はそれでよかったかもしれませんが、いまお話のあったように、平均千六百万円もお取りになるというように実力がついてきたわけです。そういうときには、三者協議会といって、中央競馬会なり馬主さんが幾ら幾らの原資を手当てするからというようなことがあらかじめあって、そして馬手さんに相対するというようなことでなくて、経営体なんですから、たとえば鉄をつくる会社が経営をやる場合には、適当な賃上げをして、その賃上げした部分は中の合理化で消化するとか、必要な場合には売れる値段として値段も上げていくというようなことがあるわけです。調教師さんもそういうふうな方向に行って、馬手さんの雇用主だということで、馬手さんの福利なり生活なりのめんどうを十分みずから見るという態度が私は必要だと思っております。
  55. 原茂

    ○原(茂)委員 時間がありませんから簡潔にお答えいただきたいのですが、とにかく京都地裁の判決なども、これは重要視しなければいけないと思うし、それから、現に調教師会の体質からいって、いま理事長の言う期待が今回も裏切られた、なかなかにこれが一朝一夕に変わるという保証がない。理事長もおそらく、むずかしい問題だとお考えになっているに違いない。であるのに、まだこのままの体制でいこうとなさる。これはあやまちだ。やはりいまの調教師の皆さんは調教師委員会に組織をする、そしてこれに対する監督指導を競馬会が行なう、同時に馬手は直接競馬会の雇用にする、こういうふうな解決以外に私はないと思う。  で、そのことに対して大臣あるいは局長の側から、そういうふうに検討をしていただかないと再び問題が起きると思うのですが、自今こういう問題が起きる心配がない、こういう保証ができるかどうか、いま私の言ったことを前提にしてお答えをいただいて、終わりたいと思います。
  56. 澤邊守

    澤邊政府委員 厩務員の雇用関係の問題、給与の問題につきましては、われわれといたしましては、先ほどお答えいたしましたように、雇用主はあくまでも調教師であるという前提においてものごとを対処していくべきである、その意味では現在の調教師の側が雇用主としての地位、責任について自覚をさらに深めていただいて、当事者能力を持って解決に当たっていただきたいというように考えておるわけでございます。  将来の問題として、どのようにして改善をしていくかということは、いまのような考え方で調教師と厩務員の労使関係の基本を正常化する、雇用関係を明確にしていく中で解決をしていくべき問題ではないかというふうに思うわけでございます。先生の御意見として出されました、直接中央競馬会が雇用するという点につきましては、われわれとしては、ただいまるる中央競馬会の理事長が申されたような考え方と同じような考えを持っております。     〔委員長退席、綿貫委員長代理着席〕  ただ、厩舎制度の問題あるいは賞金問題とも非常に関連する問題でございますので、その他、きょうはお話出ませんでしたけれども、いわゆる畜産公害の問題とか、現在中央地方の競馬がかかえております問題は非常に複雑であり、しかも基本的な問題について社会的な関心も非常に強く持たれて、その改善方が要望されております。これらの問題につきましては、一昨年の秋以来競馬懇談会を持ちまして、現在は専門委員会の段階関係者を委員に委嘱しまして慎重に検討いたしておりますので、それらの結論もいずれ遠からぬときに出ると思いますので、これらの結論も見ながら、いまの問題を含めて競馬をめぐる種々の問題についての根本的な改善を手がけていきたい、かように考えております。
  57. 原茂

    ○原(茂)委員 大臣に締めくくりのように決意をお伺いしたいのですが、いま申し上げたように、私は大至急に検討する事項として、やはり調教師会が調教師委員会をつくり、これに対して直接指導監督の権限を競馬会が持って、馬手は委員会に委託をして管理をしていただく、その馬手の身分は競馬会の直接雇用だ、こういう形以外には、おそらく問題の解決のしかたはないと思うのですが、これは大至急に十分検討するようにお願いしたいと思うのですが、大臣の決意をひとつ。
  58. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 十分検討して対処させるようにいたしたいと思います。
  59. 原茂

    ○原(茂)委員 終わります。ありがとうございました。
  60. 綿貫民輔

    綿貫委員長代理 稲葉誠一君。
  61. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 時間の関係で問題をしぼってお聞きをしたいと思うのですが、基本的な問題として、一体日本人は一年間にどのくらいの米があれば生活していけるのかということについて、どういうふうに考えておられるのでしょうか。
  62. 杉山克己

    ○杉山説明員 日本人の米の一人当たり消費量は年々低下してまいっております。それに対しまして生産量は、年々若干の変動はございますが、最近におきましては若干増加してまいって十分供給をまかなうに足る、現在では四十九年度におきまして百三十五万トンの生産調整を行なっているというような状況にあるわけでございます。四十九年度の、国全体として管理下に直接置いて、限度数量として確保しなければならない米は、若干の余裕を見込みまして八百六十万トンというふうに予定いたしております。
  63. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 農協側などでのこれについての見方は、千百五十万トンで十分だというようなことを宮脇さん言っていますね。この数字と、いまあなたの言われたのとは、どういう点におい違いがあるんですか。これは前提は、たとえば補完的なものとして小麦その他の輸入の問題がある、あるいはその他の国からの食糧の輸入もありますね、それらとの相関関係で判断しなければいけないことなんで、ちょっと私の質問も、大ざっぱなことは自分でも認めておるのですが、それが違っておると、問題がちっとも発展しないんですよ。自給率の問題を論議したって全然話がかみ合わないから、そこら辺の基本的なところから聞いているわけです。
  64. 杉山克己

    ○杉山説明員 もう少し数字の内訳、詳しく申し上げますと、四十九年度、今年におきまして全体の潜在生産量は千三百五十万トンというふうに見通されております。それに対します需要量は千百五十五万トン、この点は、いま言われました団体の数字と端数程度の差はございますが、大体似たような水準でございます。ただ、そのうち政府として直接管理の対象に置いて、予約限度数量等において確保をはかっていかなければならない数量はどのくらいかということで、私、先ほど八百六十万トンという数字をあげたわけでございます。
  65. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それは、小麦が五百万トン入ってくるということを既定の事実として、これだけの食糧があれば日本はやっていけるということのように聞いておるわけです。そうすると、その小麦がもし入ってこなくなったときには、一体これはどうなんですか。そこら辺のことをどういうふうに考えているのですか。
  66. 杉山克己

    ○杉山説明員 昨年秋以来、石油危機等々も関連いたしまして、今後の食糧の安定的な確保がどうかということがいろいろ論議されておりますが、私どもといたしましては、本年の作柄、それから今後相当期間の作柄についての見通し等を考えますと、そう極端に小麦あるいは大麦の海外からの供給が落ち込むということはなかろうというふうに考えております。  ただ、そうはいいましても、やはり年々豊凶もありますし、・国際的なもろもろの政治その他の事情もございますので、そのときどきにおいて供給の安定に若干問題を生ずるということなしとはしないというふうに考えております。したがいまして、それらの事情も勘案いたしまして、現在の米の需要の見込みにおきましては、それから政府が確保する数量の点につきましては、若干の余裕を見て生産をしていただく。したがいまして、本来ならば、計算上四十九年度は百九十五万トンが過剰になるという見込みでございますが、その生産調整をゆるめまして、六十万程度は在庫の積み増しをはかって、生産調整は百三十五万トンにとどめるというようにいたしております。そういう国際的な安定確保の道をはかるとともに、国内的に米で若干の余裕を見込むというような対応を講じているところでございます。
  67. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 これは大臣はここまで御存じかどうか。いまの食糧、米なら米を確保するに必要な耕地面積は、一体どのくらいあればそれだけの米が確保できるというふうに考えておられるかということ、これがまず第一点。  それから、それじゃその必要と考えられておる耕地面積が現在どの程度あるのかというのが第二の問題です。  こういう点について、大臣でなくてもいいですけれども……。だから食糧の自給率といったって、それを上げるとか上げないとかいっても、ただばく然とした議論だけでなくて、そういういろいろな前提があると思うので、それを一つ一つ踏まえていかないと議論にならないと私は思うのですよ。そこでいまのことをお聞きしているのです。大臣でなくても、政府委員でもいいです。
  68. 大河原太一郎

    大河原(太)政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの先生のお話は、現在の食糧の自給、特に穀物を中心といたしました農産物の自給についての耕地面積、これは米なり小麦等の穀物生産のための田畑及びさらに草地等を含めて全体として考えるべきだと思いますが、その面積は、四十七年度におきましては五百六十八万ヘクタール、約五百七十万ヘクタールでございます。そのうち水田が三百三十一万ヘクタールでございます。
  69. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いま言った約五百七十万ヘクタール、これでいま必要としている千百五十五万トンですか、それが生産できるという考え方ですか。
  70. 大河原太一郎

    大河原(太)政府委員 ただいま先生の御質問に対しまして食糧庁からお答え申し上げましたように、潜在的な生産力といたしましては、三百三十万ヘクタールでは約千三百万トンをこえる生産力はあるわけでございますが、需要が千百万トンそこそこでございますので、二百万トン弱の転作等の生産調整を行なっておるというのが現状でございます。
  71. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 あまりこまかい問題もあれですが、そこでこの自給率の問題で、穀物の場合が四三%ですか。それから全体としては七三%、オリジナルカロリーで五三%、穀物が四三%、これが昭和三十五年に大体八三%くらいあったのですが、それが十年以上たっているのですけれども、どういうわけでこういうふうに穀物の自給率が低下をしてきたのか。その原因は一体どこにあるかということですね、まず一つの問題は。これはおそらく常識的にいけば、昭和三十五年池田内閣ですか、あるいはその前か忘れましたが、池田、佐藤、それからいまの田中ですか、そういうふうに続いた高度経済成長に伴って穀物の自給率というものは——三十五年は岸さんか、忘れましたが、どうでもいいですが、その自給率というものは下がってきておるのじゃないですか。その原因が一体どこにあるかということですね、それをお聞きしているわけです。
  72. 大河原太一郎

    大河原(太)政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、穀物の自給率が低下しておりますが、この原因につきまして端的に申し上げますと、第一点は、三十年代の中葉以降におきます高い経済成長に伴いまして所得水準の上昇、それに伴います食生活の多様化、高級化、これは具体的に申し上げますと、大きくは畜産物需要の増大でございます。この畜産物については、申すまでもなく大家畜等は自給飼料に依存しておりますけれども、多くは濃厚飼料トウモロコシ、マイロ等の濃厚飼料に依存しておりまして、その数量は年々ふえておりまして、現在は一千万トン以上になっておる。このような畜産物の消費の増大、これを豚、鶏等を中心とした中小家畜につきまして国内生産でまかなう。しかし、トウモロコシ、マイロ等におきましては、先生のほうがお詳しいと思いますけれども、土地利用型の農業で、大規模農業、大規模な機械化農業というものを主体として生産せざるを得ないというような制約がございまして、輸入が増大する、これが先生御指摘の穀物自給率を下げる大きな要因になっておるというわけでございます。  なお、穀物自給率全体は御指摘のように四三%でございますが、うち、米の完全自給等もございまして、食用穀物の自給率は七一%、それで、非常に低いのが飼料穀物、ただいま申し上げましたトウモロコシ、マイロ等の飼料穀物の自給率が非常に下がっておるという点が大きな原因でございます。
  73. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いろいろ自給率の計算方法がありますね、だから何%、何%と言われてもよくわからなくなってしまうのですが、私が考えているのは、何でもかんでも国内で自給しろという考え方は私はとらないのです。それはおかしいので、そんなことをやったら、非常に生産性のあがらないというか、非能率な、金ばかりつぎ込んで効果のあがらないものが出てくるわけですから、意味がないのですけれども、そこで農林省としては、大臣に、大ざっぱな答えでいいのですけれども、全体として、たとえば食糧なら食糧、あるいは畜産物でも何でも、ほかのものがいろいろありますけれども、全体として一体どの程度までの自給率に今後高めていきたいというふうに考えておられるのかということですね。これは大蔵省の主計官の宮下氏などでも、そういうような日本農業全体の中で、国内自給を原則とするものと、それから一定量は自給を行なって、不足する場合は輸入によって確保するもの、それから輸入に依存せざるを得ないものとか、こういういろんな選別をしていって、その中でどれはどの程度自給をしていくということが日本の経済全体の発展のために必要かということの基本的なものがないと、何かめくらヘビみたいなものですね。そこら辺を今後どういうふうに判断をされるのかということをお聞きしたいわけです。
  74. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 農林省は、昭和五十七年をめどにいたしまして生産の長期見通しを立てております。これはいま政府委員からもお答えいたしましたような、国民の食生活の嗜好の変化等も考慮いたしましてできるだけ自給度を高めていくというつもりでありますが、お話のございました将来の見通しにつきまして、米は一〇〇%でございます。これはたとえば四十七年を申し上げますと、米は一〇〇%、それからくだものが八二%、肉類八一%、鶏卵九八%、牛乳、乳製品八七%、これは実績でありますが、これを基礎にいたしまして、五十七年には米は同じく一〇〇%、それから果実は八一ないし八八%、肉類は八二ないし九七%、鶏卵は一〇〇%、牛乳、乳製品は八七ないし九七%、異常に少ないと思われますのは、小麦が御承知のように八%、大裸二五%、大豆が十二%、こういう目標を立てておるわけであります。  すべての施策をこれにピントを合わせてやっているわけでありますが、いま政府委員からもお答えいたしましたように、先ほど稲葉さん御指摘の、もっと前の穀類の自給率に比べますといまは落ちてきておると申しますのは、わが国で必要な肉類等を生産いたします酪農等に必要な飼料穀物の需要が増大してまいったということでございます。したがって、そういうものを、いまお話のございましたように、国内で全部自給するということは、これは考えられないことでございます。しかし、できるだけの自給度は維持しなければならぬというので、四十九年度予算では、麦に対しても一俵二千円の助成をいたすとか、大豆に対しても補助金を出すとかというふうなことで、それからまた稲作と麦を交互にして裏作を奨励するとかというふうな施策を講じて、できるだけの自給度は維持するつもりでありますけれども、それでとうてい間に合わないものでありますから、国内で生産のできるものは全力をあげて自給度を高めるが、どうしてもそれが不可能なものについては、安定した価格で輸入にまたなければならない、こういう計画を立てて進めておるわけであります。
  75. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると一つの質問は、いまのような形で米の自給率を一〇〇%とするのですか、ちょっとよく理解できませんが、となると、一体どれだけの耕地が要って、どれだけの農業人口が要るのですか。経済成長が進み、それで列島改造なんかをいうと、農業の就業人口というのは一六%ぐらいから四%か五%に下げるというのでしょう、列島改造というのは個人の議論かどうかは別として。そういうものをやっていって、その自給率を一〇〇%になんて全然できないのじゃないですか。これが問題としては一つですね。結局、農業というものが農業独自のものとして考えられない。日本経済全体の中でどういうシェアを占めていくかということの適切な判断なしには、これは全然答えは出てこないというふうに私は思うんですが、具体的にいまの点が問題だと思うんですね。  それから、小麦なり大豆なりあるいは飼料作物、こういうふうなものを外国から輸入するといったって、それはほとんどアメリカでしょう。そうすると、アメリカの経済というものに、いわゆるアメリカの核のかさじゃない、アメリカの食糧のかさの中に入って、アメリカ経済から日本の経済というのは脱却できないということは、もう結論的に出てきて、日本として動きがとれなくなってくるのじゃないですか。ここら辺についてはいまどういうふうにお考えなのか、こういうふうに考えるわけですね。  それからもう一つ、三点目は、たとえばイギリスなんかは逆でしょう。イギリスなんかはこの十年間に、五二%ぐらいのいろいろな自給率が六十何%に上がったというのだが、イギリスの場合は、まあ国柄が違うからあれですけれども、小麦その他のものについてもどんどん自給率を上げて、そして不足払い助成金というのですか、こういう形のものをやって上げていっているわけですね。これは一つの例かもわかりませんが、国柄が違うからそのまま比較するのはおかしいのですけれども、私の疑問に思うのは、いま言ったように米の自給率をそうやって上げるといったところで、経済の発展をいまのような経済の発展にしていったのでは、これはとてもできっこないのじゃないかということが一つの問題ですよ。  それからもう一つは、小麦にしろ大豆にしろ飼料にしろ、これはアメリカ経済に全く依拠しているのだ、アメリカの食糧のかさの中に入っているのでは、日本はいつまでたったってアメリカの経済の影響力からのがれられないじゃないか、結局アメリカの言うことを聞かざるを得ないじゃないか、こういう点についてどういうふうに判断したらいいのかというのが、これが問題の第二点目ですね。
  76. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いまお話のことは、われわれにとりましても政策決定について重要な課題の一つでありますが、政府が常々言っております規模拡大ということにつきましては、やはり他産業と比較してひけをとらないような農業というものを育成していくのでなければだめだ、こういうたてまえでございますので、いまイギリスの例をおとりになりましたが、どこの国でも先進国ではそうでありますけれども農業人口というものは毎年少しずつ減っておるのです。それで生産量は減っておりません。それはつまり、私がいま申し上げましたように、規模拡大をやって合理的な運営をして、産業として成り立つようにしていくからです。  そういうことを考えてみますと、いままだ全体の就業人口の中に占める農業人口というのは一三%ぐらいになってきていると思いますが、イギリスあたりは四%そこそこ、アメリカもそうであります。それでなおかつ生産が維持される。それで、一応の目標といたしまして、私どもは五十七年、さっき生産目標を申し上げましたが、そのときの耕地面積は大体五百二十万ヘクタール、それから農業就業人口は四百三十万人を見ております。そこで、経済成長に伴って労働力が、従来は農村からたくさん出てきておる。そういうような経済発展を並行して伴っていく場合に、一〇〇%の米の生産の維持をするために農業労働力等においてどうか。これは私どもも同様にその点を心配すればこそ、本年発表いたしました白書におきましても第二番目のところに、後継者の育成ということが非常に重要な問題であると指摘しておるのもそういうことでございまして、農業は、そろばん勘定だけでもいけませんけれども、やはりある程度経済的に安定した収入が得られるということでなければ、なかなか後継者と申しましてもたいへんでありますので、そういうことに重点を置いた施策を講じるという考え方に立って五十七年度の目標をつくっておる、こういうことでございます。
  77. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いままで自立農家の育成ということを言っていたわけでしょう。その自立農家の育成というのは、だいぶ前に言ったのですけれども、それは具体的に、目標はどういうふうになっちゃったのですか。それは一体成功したのか失敗したのかということですよね。失敗したともあなたのほうで言いにくいだろうけれども現実にはやはり失敗したんじゃないのですか。ぼくは農業だけのジャンルでものを見るから、あるいは失敗したとかなんとかという議論も出てくるかもわからぬ。日本経済全体の発展ということを見ればそれは失敗じゃないんだという議論も出てくると思うのですよ。田中さんはおそらくそういうふうに言うだろうと思うんだ。  それはそれとして、自立農家がどうして目標どおり達成できなかったのか、どういう状態になってきたのかということが一つ。今度の農業白書ではそれが変わっちゃったのですか。中核農家というのですか、どうもよくわからないのですが、自立農家をどうしてやめて今度は中核農家になっちゃったのですか。どう違うの、それは。よくわからないのですがね。それは作文だから、違わないとおかしいから違えたのでしょうけれどもね。
  78. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 考え方は違っておるわけではございませんで、やはり自立経営農家を中核にして、いま御存じのように全体の農業の中で専業農家というのは大体二〇%そこそこになってきている。農業者の中で第二種兼業農家がたぶん六割ぐらい。これはよその国にも兼業はたくさんありますけれども日本は特にそういう点が特異な状況であると思っておりますが、この二種兼業の方々をどのようにして経済効率のあがる生産をしていただくかということは、わが国の農政にとって重要な問題ではないかと思っております。  そこで、先年きめていただきました農村工業導入促進法、そういうようなことで公害を伴わないような事業、地方に向くようなたとえば組み立て工場とか繊維工場みたいなものは、できるだけ中央のこういうところに集中しないで地方に分散する必要があるというので、いま六百余りいろいろ計画が立てられて、二百何カ所はすでにやっておりますが、そういうようなことを一方にやって、農村にある労働力を都会地に集中しないで、地元において生産をあげてもらうと同時に、そういう方々の持っておられる若干の農地があるわけでありますので、こういうものを効率的に耕作に供して成果をあげるということが、わが国のような狭い国土の中では非常に必要でありますので、いま農水委員会で御審議を願っております農振法の改正案、これを提案いたしておりますのは、農振地域における農地で、しかも小さな面積しかお持ちにならない方は、これは専業農家といっても無理ですから、そういう方にひとつ土地を提供していただいて、そうしてその規模を大きくした経営に移してもらう。それは売却してもらえればなおけっこうでありますが、どうも日本人というのはやはり土地に執着をいたしますので、売却はいやだ、そういう方には利用権の設定等をすることによって、効率的にそういうものを農地として活用できるようにというふうなことをやろうというのでいま法律案を出しているわけでありますが、そういうことで、できるだけ私どもの持っております耕地を効率的にこれを活用しようという考え方で立っているわけであります。  したがって、私どもは、たとえばいま飼料穀物の自給度が減ってきておる、そういうことから畜産にも支障を来たすというふうなことでありますので、先般成立させていただきました農用地開発公団というような形で、全国二十何カ所に畜産基地を設け、そうしてまた広範な地域を活用して、そういうところにその地域、地域に即した大きな規模の農業経営をやっていこうというようなことも、今度法律が成立をいたした次第であります。  そういうことで、私どもは、御指摘のように、いまのような経済成長を伴う状況の中で、農業というものはわれわれの期待どおりに位置づけて進められるかという御意見につきましては、私どもも非常に慎重に、それをやれるように経済成長の中で対処していかなければならぬことは当然でありますけれども、私どもとしてはそういう趣旨でこの五十七年の目標を立てている、こういうことであります。
  79. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 自立農家というのが率直に言うとあまりうまくいかなかった、だからいまさらこれを持ち出すわけにはいかないから、今度は中核農家というふうにことばを変えたんだと思うのですがね。それはどうでもいいんですが、問題は、いま言った五十七年度に一〇〇%の米の自給といったところで、そうすると、東南アジアその他からの米の輸入というようなことはもう考えないということですか。それが一つの問題。  第二点は、そのときに一体米の生産費がどういうふうになるか、これは非常に遠いことだからまだわからぬ。わからぬけれども、そういうふうなことを——日本の経済、日本の政治を動かしているのは財界ですよ、いい悪いは別として。農民じゃないですよ。その財界がそういうようなことは承知するわけはないんじゃないですか。ぼくは、農林省は一生懸命やってくれてると思いますよ。だけれども農林省日本の経済全体の中の一つの部門ですよね。それですから、日本の資本主義経済の中の一率直に言うといわば基盤というか、犠牲になる一つの基盤だよね。農業というのはそういうふうな性質を持っているものだ。いいか悪いかは別ですよ。そう考えてくると、いま言った米の自給を一〇〇%にするとかなんとか、そんなことを日本の財界が承知するわけはないじゃないですか。そうなってきたら労賃はどんどん高くなるでしょう。物価よりもむしろ労賃が高くなって、そしていわゆる低米価、低賃金という日本の資本主義発展の大原則というものはくずれちゃうじゃないですか。そんなもの通りっこない。日本の財界はそんなものは賛成しっこないんじゃか、こう思うのですが、これが第二点の質問。  それから第三点は、いま大臣が言われた農家生活の安定ということ、これはそのとおりですね。そうなると、まず生産者米価の問題もあるのですが、前提として消費者米価は半年延ばしたわけですね、十月一日ですか。それは今後生産者米価が上がるということによって相関関係で、消費者米価が十月一日からいままでの九・何%ですか以外にまた上がるということも考えられるのかということですね。これについてはどういうようにお考えかということですね。  大体大きく分けて三つですが、お尋ねしておきたいと思います。
  80. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 経済成長が行なわれていくことは、これは当然なことであります。しかし、いまお話のございましたように、経済界がどういうふうに考えられるか、経済界の人々も日本人でありますので、やはりいまの国際関係、国際状況の中における食糧の状況というのは、彼らも十分承知しているはずであります。  そこで、今日ただいまの国際社会の中で、かりにわが国の米の生産が減退したといたしましょうか、どこから米を持ってくることができるかということであります。アメリカ合衆国は若干可能性がありましょう。しかし、それはやはり、御承知のように先年来、半額で来たような時代もありますけれども、いまや国際価格と日本の生産者米価との間に差異はなくなってきました。そういうことを考えてみますと、私は国際社会の中の日本の食糧の逼迫状況を考えたときに、わが国の政策としては、動かすべからざる方針は、やはり与う限り食糧の自給力を高めるということだと思うのであります。これはだれも反対することのできない鉄則ではないかと思うのであります。しかし、それにもかかわらず、やはり先ほど来お話のありましたように、他の産業のほうが楽しておって所得が多いという形になれば、よほどわれわれが一生懸命になりませんと、私どもの期待しているような農業の継続はむずかしいのでありますから、その点は、農政について全力をあげるということはもう当然必要なことでございます。私は何もローマクラブの先生方のことばをかりるわけではありませんが、将来の世界全体の人口と、それから耕作可能な面積のそろばんをはじき出しただけでも、世界的なこともあるが、まずわが国のことを腰を据えてやらなければならぬという考え政府全体の考えであり、御支援を賜わり得る考え方ではないかと思っております。  それから米価のことでございますが、米価につきましてはしばしば申し上げておりますように、生産者米価は、米価をきめる直前までの実際の数値を取り入れて、それを農林省米価審議会資料として提出するのが一番公平なやり方であり、生産者のためにも利益になることではないかと思っております。たとえば、米の生産費の算定の中に労働賃金がございますが、この労働賃金は、米の生産費だけに限って、いままで都市近郊五人以上四百九十九人未満のそういう一般作業場の労働賃金を平均したものを米価の労賃に加えておりますので、それは、労働省の毎月勤労統計で四月締め切りのものが全部出てまいりますのが六月末でありますから、そういうものをとっていままでやつておったわけであります。それがいまごろではとても問に合いません。そういうふうに考えてみます、七月に入りましてから米価決定するということが、今回の春闘等でも非常に大幅に賃金も上がっているのでありますから、そういうものをいろいろ入れましたものの考え方、一番最近時値をとってやるということが一番いいことではないかと思っておるわけであります。  まあそういうことでありますが、価格につきましては、やはり米審という厳とした存在がありますので、それに諮問をいたしてきめてまいりたい。  消費者米価は、予算編成に際しまして半年実施を延ばしました。これはもう稲葉さんよく御存じのように、食管会計というものは今日のような状況でありますので、本来なら私は、これは食管会計の健全性を保持する意味から申しましても、消費者米価と生産者米価の逆ざやというものは全体として縮めてまいるということが、国の財政上も一番理想的なことだと思っておりますが、それらの点を考慮いたしまして、まあいろいろ考えていつところでありますが、一応政府決定いたしました方針をいまは順守しているわけであります。
  81. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 問題は二つですが、いま大臣が言われましたような、ことしの春闘で大幅な賃上げがあった、いままでにない賃上げがあった、言われなかったけれども農業資材その他についてもいままでとは違った大きな値上がりがある、そういうふうなことを、当然ですけれども考慮をして生産者米価をきめるのだ、こういうふうに承ってよろしいでしょうか、これはあたりまえですけれども。そんなものは考慮しないとは言えないから考慮してと言うでしょうが、それが一つ。  その結果として、いま言われた消費者米価の十月二日からのものを、これは半年延ばした、それに変化があるということも考えられないわけではないということになりましょうか、これが第二の質問です。
  82. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 米審が開かれますときには、一番近い資料の用意してあるものを農林省から提出して米価審議の御参考に供するわけでありますので、もろもろの要素がそこに入っていくことは当然なことだと思います。  それから消費者米価につきましては、生産者米価がそういうふうに上がれば消費者米価についてどうするべきであるかということにつきましては、また別個に検討をいたしまして、米審とも相談をする必要があると思っております。
  83. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いま言われたもろもろの要素というのは、これはことばどおりもろもろなんだけれども、どんなものがあるわけですか。その中でウエートをつけるとすると、いろいろな要素があるでしょう、どういうふうな要素の中でウエートのつけ方——これは米審に諮問するでしょうから、あなたのほうから先にこうだこうだとはなかなか言いづらいでしょうけれども、せっかくあなたがもろもろの要素だと言うのだから、そのもろもろの要素というのはどういうものがあるのか説明していただいて、できればウエートも御説明願えればと、こう思うわけです。時間があれですから、これで終わるわけですけれども……。
  84. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 麦その他のものはパリティ方式できめることになっておりますが、米のほうは生産費所得補償方式というのでありますから、従来の方法に従って、生産費所得補償方式によってそれに出すべき要素というのは従来ずっときまっておりますので、それを提出をいたしてきめてもらう。その要素というのは、今日の経済情勢等にかんがみまして、昨年から比べますとだいぶ違ったものができるのは、これは常識的なことだと思っております。
  85. 綿貫民輔

    綿貫委員長代理 津川武一君。
  86. 津川武一

    津川委員 だいぶいま生産農民が、米価の大幅値上げを要求して、全国各地で大会を開いたり、きのうは中央集会などを開いておりますが、私は、日本農業の中枢的な役割りを果たしておるのが稲作であると思うのであります。したがいまして、稲作の振興、これは何をおいても日本農政の中枢的課題だと思うわけですが、これを育てていくためには、農業資材を安定して長期的に供給することも必要であるし、農機具、機械なども値段を安くして共同で利用させて、利用料を少なくすることも重要な課題であるし、農民が使う資金も長期で低利の資金を支度する。たくさんのことがある中で、それらにも増して重要な課題は、ただいま農林大臣が前委員に答弁しておるように、生産と所得を補償してやるということでございます。そこできょうは、過去の生産者米価やいまの生産者米価を関連させながら質問してみます。  生産者米価は、ここに政府資料がございますが、昭和三十五年よりずっと上がってきまして、四十三年、四十四年、四十五年産の生産者米価は据え置いたのであります。ところが、その間に稲作の生産費はどう動いたか。十アール当たりについていうと、政府統計ですが、四十三年には四万四千五百四十二円、四十四年には五万四百十九円、四十五年には五万三千四百四十六円。米価の据え置きの始まった四十三年、前年の四十二年産が四万、そして据え置きをやめて少し米価を上げた四十六年は五万六千、このように生産費が上がっておる。それにもかかわらず米価を据え置いたわけであります。農業資材だけでなく、その間に農民生活に必要な物価の動向がどうであったかということを見てみますと、昭和四十年を一〇〇にすると、四十一年には一〇五、四十二年には一 ○九、生産者米価を据え置いた四十三年には二五、四十四年には一二一、四十五年には一三〇と、これまた上がったのであります。ここに日本農業の発展を阻害する基本の一つをとらえることができるかと思うのであります。  こういう低米価政策をとっておりますので、その間における農家戸数が、今度は減ってまいりました。四十二年には五百四十一万戸というものが、四十三年五百三十五万、四十五年には五百三十四万、こんなふうに農家戸数が減ってまいりましたし、特にこの中における専業農家が非常に減って、第二種兼業農家が非常にふえていったのであります。そして、生産も生活もしなければならぬ農民は、自分の生産と生活に必要な所得というものを農業外に仰がなければならなかった。米価を据え置く前の四十二年には、農業所得が全収入の四九・五%だったのが、生産者米価を据え置いた四十三年には四六・八、四十五年には三六・五、こんなふうに急速に下がってきたのであります。  生産者米価を据え置いて低米価政策をとった、このために何が起きたか。私たちの郷里の青森県でいうならば、米の収穫が終わったときに、稲わらを堆厩肥にしなければならぬ、それをやっていると生活ができないので、出かせぎに出て、あのとおり公害一ぱいの野原が稲わらを焼く煙に立ち込められておって、ここでまた金肥にたよらなければならぬ。化学肥料に何か起きたときにはたいへんな事態になるという状態であります。  農業外収入に生産と生活費を仰がなければならなくなったので、たくさんの人が出かせぎに出ておって、この間五所川原というところで、夫が出かせぎに行って、夫からの便り、送金が来ない妻が、二人の子を殺して自分で家を焼いて心中するという事件が起きております。それだけでなく、現にいま、せっかく生産費と生活費をかせぐために出かせぎに出ておったのですが、十一月の二十日前後に来て、四月十二、三日に帰っていって失業保険をもらっているのですが、この四月十五日前後に帰っていく出かせぎ者の賃金不払いが、現にいま不払いとして私のところに相談に来ているのが、青森県の森田というところで七人、百万円、黒石市というところで二十三人、百五十万円、板柳という町で十五人、二百三十万円、同じ板柳でまた十人グループで百十七万円。昭和四十四年に七人の出かせぎ者が間組の工事であの荒川の放水路に水没された大鰐というところで二十八人、五百八十四万円。これだけの賃金不払いが起きて、現に私たちがいまこれを片づけなければならぬ、こんな情勢にあるわけであります。  そこで、農林大臣が前委員にはしなくも答え生産費所得補償方式、これをとるならばこういう事態はかなりよくなるので、そこで生産者米価を上げなければならないというふうに考えておるのか、まずこれをお尋ねいたします。
  87. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 米価は、御承知のように米審意見を聞いて決定する、こういうわけであります。米審の開かれますまでに、農林省といたしましては生産費等について十分なデータをそろえまして、それを米審に提出して、米審で答申を得てそれを参考にきめる、こういうことであります。でありますから種々の資料を収集しておる次第であります。
  88. 津川武一

    津川委員 たてまえはそうでしょう。だが、米審に皆さんが諮問するときに試算を出しますね。米審に諮問するということはいわば一つの形式、実態はあなたが出す試算、これが米価をきめていきます。現に農民が、たとえば農協中央会が六十キロ一万六千七百四円、日本農民組合全国連合会は同じく六十キロ二万二百二十円、弘前市の農協は二万三百六十一円の値上げを要求しているのです。こういう状態であるし、所得も、あなたがしゃべったように労働賃金も上がっている、とすれば、これに対して米審を待って上げるか上げないかを答えるというのでは、農林大臣としての責任もないし、まことに困ったものだと思うのです。上げなければならぬ、このように考えておりますか、どうです。
  89. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 米審という権威のある機関がありますので、私どもはそれに答申をいただくための資料を鋭意そろえておる最中、こういう最中に私ども米審の先生方の意見に多少でも制肘を加えるような考え方、それらしきことを申すべきときではないじゃないか、これは慎まなければならぬことだ、こう思っておるわけであります。
  90. 津川武一

    津川委員 倉石農林大臣、形式的な返事でなく、ここは国政の場だから、実態的な論議をやりましょう。米審開かれます。私も覚えています。あなたたちが諮問する試算が決定的に米審のあれをきめております。現に農民要求している。米審決定でやっているというのは、それは形式はそうだけれども、実態はうそです。あなたはほかで、生産者米価を上げなければならぬと言っています。新聞記事で見るとそうです。ここは国会の場です。やはり責任ある答弁を——上げなければならぬと思いますが、いかがでございます。
  91. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 津川さんの御意見はそうかもしれません。しかし、私どもといたしましてはやはりいま資料を整えている最中なんですから、資料が全部そろったころにどうするつもりかということになれば、資料の御説明もできるかもしれませんが、いまは、そういうデータを集めている最中に、どうするんだというふうなことを私どもが申し上げるのははなはだ不謹慎ではないか、こう思うわけです。
  92. 津川武一

    津川委員 農林大臣だから、資料を集めることけっこうです。ぜひ集めてくださいね。これは必要なんです。  そこで、いま農民が求めている国政上の重要の問題で、あなたは、米審にかけるかけないということでなく、農林大臣として、現状からして上げなければならないと思っておりますか、思っていませんか。イエスかノーか、この二者のうちどちらだ。まだきまってないならきまってないでいいです。それを明確に答えていただきたい。
  93. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 まだきまっておりません。
  94. 津川武一

    津川委員 それはあとでまた論議します。  そこで第二の問題は、農民がお米をつくっていく、そうすると、本来の立場でいうと、苗を育てる前に、種をまく前に、ことしの生産者米価が幾らになる、だからおれは一・五ヘクタールつくる、高いからもっと丁七ヘクタールにする、安いから一・四ヘクタールにする、こういうことになるわけです。幾らだから自分の家族労働をどう分配するという計画を立てなければならぬ。したがって、生産者米価決定する時期は、私はその農作業、稲作作業が始まる前でなければならぬと思います。大臣は、六月の終わりになってくるといろいろ有利な条件も出てくるなどということを、農業白書の中での答弁で答えていますけれども、ほんとうのたてまえはどう考えておりますか。ものをつくるんだから、そのものの価格がつくる前に予見されてきまっていることがほんとうでありませんか。この点はいかがでございます。
  95. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 それもたびたびお答えいたしておりますように、やはり十分な資料を整えて米審意見を聞くというたてまえで、その資料をいま収集しているところで、まだ十分にそういうものの資料がまとまる時期ではございませんので何とも申し上げようがない、こういうことであります。
  96. 津川武一

    津川委員 農林大臣、たとえば昭和四十八年の肥料年度の後半の肥料価格、メーカーと全農がきめたとき、農林大臣はこの値上がりを承認しました。そのときの尿素の材料のナフサ、つくる材料の重油、これを正確な資料に基づいて承認していません。ナフサの値上がりを予想で承認しているのです。こういう肥料メーカーに、私流で言うならば大企業に、問題をきめてあげるときは想定で、推測で、生産者米価農民が求めているものに対してはあなたは正確な資料で一これはどういう態度なんです。もう少し農民の側に立たれたらいかがでございますか。農民要求に端的にこたえてみたらいかがです。あの三井化学だとか三井東圧だとか、ああいう人たちのは想定で早目にきめてあげておる。いかがでございますか、農民がこれほど求めておる生産者米価の早期決定に踏み切るべきではありませんか。
  97. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 閣僚はかわりましても、やはり農林省及び政府というものは一貫した責任を負っておるわけでありますが、四十八年産肥料決定のときには私、内閣におりませんでしたので、一政府委員からそういうことについて、御必要があればお答えいたさせますが、米価のことにつきましては先ほどお答え申し上げておるたてまえでやっていこう、こう考えております。
  98. 津川武一

    津川委員 私は、忘れもしません、三年前の参議院選挙、投票日の前の日まで、農林大臣を先頭にグレープフルーツの自由化はやらない、農民がそれを信じた。参議院選挙を終わって四日目、グレープフルーツの自由化をやった。いまはしなくも私に対する大臣の答弁を聞いていたら、農民はまた不信を起こしますよ。おそらく、参議院選挙前に倉石農林大臣は大幅アップするようなニュアンスのことをしゃべって、そして参議院選挙が終わればまた低米価に押えつける、こういうこともありますので、この不信を取り戻す意味においても、私は、生産者米価を早急にきめるべきだ。あなたが非常に大事にする米審、必要だったら米審を開いて、生産者米価をいつきめるかということをおやりになってもいいと思うのです。この生産者米価の早期決定に対して重ねて答弁を求めます。
  99. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 先ほどお答えいたしましたとおりであります。
  100. 津川武一

    津川委員 それでは生産費所得補償方式できめる、どのくらい生産費が上がっていると思っておりますか。時間がないので、やりとりするといけませんから、私、持っておる資料であげます。  これは農林省発表、二月、そうすると、昨年同月比にして畜産飼料が六二・三%、農機具が二五・五%、肥料が三四・九%、その他諸材料、加工材料入れると——その他の材料、これはビニールだとかいろいろな加工材料、加工原料は七二・六%、いろいろなものをつくらなければならぬ建築資材が二八・九%、こういう形で、総合としてでも三八・六%上がっております。これはあなたのほうの資料。この状況をあなたが諮問や試算をやるときに、はしなくも言ったように生産費所得補償方式でやる、この状態考えますか。生産者米価決定のときの重要な要素だと思うのでございますが、いかがでございます。
  101. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私どもでは事務当局からまだ何の報告も受けておりませんし、また、私に報告すべき時期に来ていないと思っておりますので、その資料整備いたしました上で私どもも十分に検討してみたい、こう思っております。
  102. 津川武一

    津川委員 あなたの名前で、あなたの責任で、あなたの監督で発表されている物価指数です。こういうことであるので、このことを生産者米価決定のときには取り入れるべきだと思うのです。その後、二月でなくて、四月だとか五月だとか六月にもやると思いますが、現在の時点でこれだけ上がっていることが、明らかに皆さんの発表で出ている。この点は生産者米価決定にあたって考慮されますかどうか、重ねてお願いします。
  103. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いま農林省資料を整理いたしております。その資料が整いました上でそれをまとめて米審に出す、こういうことでありますので、米審の開かれる前に私に報告があると思います。
  104. 津川武一

    津川委員 あなたは手続のことを言っている。私は実態を言っておる。農林大臣としてどんな手続をとるかを私は聞いていません。農林大臣としてどんな所信であるかを聞いているのです。重ねて答弁を求めます。  もう一つ、春闘で大体労働者の賃金が三〇%くらい上がっています。これもあなたは、六月末に労働省からまた統計が出るからそれをやったほうが農民に有利だなんて答えるでしょうが、この賃上げの具体的な計数を整理する過程の作業を聞いているのじゃない。これも同時に生産者米価決定するときに取り入れなければならない、私はこう思う。農業資材と労働者の賃金の値上がり、これをあなたは農林大臣として、農民に対する方針として生産者米価のときに考えなければならない、これが私の主張、私のこの指摘に対するあなたの所信を答えていただきます。
  105. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 事務当局が整理いたしておりまする資料の中には、もちろん都市勤労平均賃金も労働賃金の中に加算されるということを申し上げました。そういうようなことについてはまだ収集のできる時期に来ておりませんとさっき申し上げました。したがって、そういうものが整理されましたところで、私どもはそれを米審に提出をいたして判断をする、こういうことでありますので、いま鋭意整理中であるところでありますので、その点はひとつ御了承願います。
  106. 津川武一

    津川委員 あなたの作業の進行やそういうことを私聞いてない。二月に三七%農業資材が上がっておる。現にことしの春闘で三〇%賃金が上がった。このことを米価をきめる点でどう考えているかというあなたの所信、政治方針、あなたはこれを事務的手続で逃げようとしている。さあ日本農民——日本の国民だって、日本農業がはっきりしなければ、自分たちの主食の米はきめられない。これは明確に答えていただきたいと思うのです。
  107. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 同じようなことを何べん聞かれても同じような答えしかできませんが、いま私どものほうでは米審に提出すべき資料をそれぞれの局において収集して検討中である、こういうことであります。まだそのデータも整わないわけであります。先ほどちょっと賃金の話をしましたけれども、そういうことでありますので、現実にはどうも毎年やっております七月ということになるのではないか。それに間に合うように資料を収集しておくのが私どもの事務局の任務でありますので、いまそれをやっている最中だ、私が予断をもっていろいろなことを申し上げないほうがよろしい、こういうことであります。
  108. 津川武一

    津川委員 繰り返しますが、そういう事務的なことを私は聞いていない。あなたは国会の外では、新聞記事によると、上げなければならぬ、生産者米価は参議院選挙前にきめる——責任ある国の最高の機関の国会の質疑で、この農業資材の値上がり、この賃金の値上がりを生産者米価決定にあたってどう考えているかという所信を答えなさらないのか。いかがでございます。
  109. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 先ほども答えいたしましたように、生産費所得補償方式という方式を用いることはもうずっときめておるわけであります。それのデータを収集中である、こういうのであります。
  110. 津川武一

    津川委員 その生産費所得補償方式、その所得の基準になる労働賃金が上がったことは、あなたは前委員の前で話している。それじゃまあ農業資材はわからぬというなら一わからないはずはない、大臣だから。わかっている大臣なんだけれども、まあ一応おきましょう。先ほどあなたがここで話をした所得補償方式の労働者の賃金と比べていく、農業基本法もそうですが、そこの点ではどうです。これは所得補償方式の中に取り入れなければならぬと思いますが、いかがでございます。
  111. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 賃金につきましては、稲葉さんに申し上げましたように、労働省の毎月勤労統計から出てまいります。それは四月末の時点を基礎にして計算をするわけでありますが、それは毎年労働省では、六月末から七月の初めにかけて発表されるものであります。
  112. 津川武一

    津川委員 そうすると農業資材としては、皆さんが出した二月の経費が出ているのですが、これは考えますか、いかがでございます。
  113. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 そういうことについて検討している最中でありますので、いまお答えをするということはよくないではないか、こういうことであります。
  114. 津川武一

    津川委員 それでは、倉石農林大臣が国会の外において、生産者米価を上げなければならぬということを発言したことはありますか。
  115. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 どうもあまり記憶しておりません。
  116. 津川武一

    津川委員 約束された時間が参りましたからそろそろやめますが、もう一つ、田中総理は去年の国会で、日本の物価を安定させるためには農産物の輸入をうんと進める、ことしの国会では、物価が高くなったのは外国に依存した農産物の値段が上がったからだ、今度は自由化をやる、こう言って、この間財界の農政懇談会の席上では開発輸入をうんとやる、こういうことなんですが、田中さんの発言も踏まえて、私は、日本人の消費の需要があるもので、日本の土地でできて日本農民ができるものならば、これは国が全力をあげて援助して自給の促進をはかるべきだ、それで足りなければ海外から開発輸入してもいいと思うのです。田中さんの発言と私の発言と関連して、この点での大臣の所信を求めて私の質問を終わります。
  117. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 田中総理の発言というのをどこでお聞きになったか知りませんけれども——えて演説などでは、全部が速記のように出てまいりますと、しゃべっておる人の真意も伝えられるのでありますけれども、そのうちで一行か二行をピックアップして出しておる趣旨というのは、受けるほうでニュアンスの違うことがたびたびあるようであります。  総理がどこでどういうことを申したか存じませんけれども、やはりいまおっしゃいましたように、私どもは国内で生産可能なものはできるだけ自給度を高めていく必要がある、そういうことでありますので、麦であるとか、あるいは草地の造成、大豆等についても、四十九年度予算で助成措置を講じておることは御存じのとおりであります。  そこで、わが国に対して諸外国からずいぶんいろいろな希望を述べてきておる国があります。     〔綿貫委員長代理退席、委員長着席〕 そういう国と政府間ベースで話をしまして、そして今度新しくできます公団等を活用いたしまして、先方の要望に応じて技術的援助もし、そしてそこで生産のされたもので、先方もやはり必要なものはあるでしょう、そういう必要量は先方にできるだけ供給してあげて、なおかつ余力があれば、わが国でもそれを一定量安定した価格で入れるようになればたいへんいいことではないか。つまり、先ほど稲葉さんもおっしゃっていらっしゃったように、穀類、飼料穀物全部を国内生産するという、そんなことを考えたってだめなことだとおっしゃいましたが、そのとおりでありまして、したがって、必要量で安定した価格で安定した量を、一定量を入れるということは相互の利益になるのではないか、こういう考え方で海外協力をいたそう、こういうことでございます。
  118. 津川武一

    津川委員 農民が求めておる生産者米価の、生産と所得を、生活を保障する米価に対して、また農民が求めておる早期の米価決定に対して、いまあなたは、農民にそっぽを向いた、ある意味においては農民に挑戦と思われる答弁をしたので、私はこれに強く抗議して、また農林水産常任委員会でどうせ米価で集中審議を来週あたりやりますので、この質問をここで打ち切らないで、別の場で続けていくことを明らかにして、質問を終わります。
  119. 臼井莊一

    臼井委員長 次は、庄司幸助君。
  120. 庄司幸助

    ○庄司委員 いま津川委員からいろいろ質問があったわけですが、私もその点に関連して、確認の意味で、まず冒頭に大臣に伺っておきます。  あなたの御答弁だと、四十九年産米の生産者米価については、米審にかけるまでは一切上げるとは言わない、米審決定を待たなければ何とも言えない。となると、参議院選挙後に決定するというのが農林大臣の正確な御所信だ、こういうふうに承ってよろしゅうございますか。
  121. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 米価決定につきましては、私どもは、参議院選挙というふうなことを全然念頭に置くわけではありません。庄司さん御存じのように、事務的に見ましても、従来ずっと六月末から七月に米価決定をしております。それはやはり最近時値の資料をとってそれを米審に提出するということで、それが一番親切な正しいやり方である、こう考えましたので、時期は七月ごろになるだろう、こういうことを言っているのであります。したがって、私どもといたしましては、選挙云々のことよりも、いま申し上げましたような、事務的に一番適当であると考えられる時期にきめるのが一番妥当な方法である、こういうことであります。
  122. 庄司幸助

    ○庄司委員 時間もありませんから、この点はこれで終わりますけれども、とにかく七月にならないときまらないと農林大臣がおっしゃったと、こういうふうに了解しておきます。  それで、私がきょう伺いたいのは、昭和四十五年に開拓行政が打ち切られたわけです。その後、いわゆる開拓地において土地の買い占めがどんどん進行しているわけですが、農林当局においてこの土地の買い占め、開拓地についてこれまで、開拓行政打ち切り後に全国で大体何ヘクタールぐらい買い占められたか、お調べになっているんだったら、数字だけ簡潔にお願いします。
  123. 今村宣夫

    ○今村説明員 御質問の開拓地につきまして、昨年度私たちが調査をいたしましたところによりますと、百ヘクタール以上の開拓地の買い占め面積が大体七千ヘクタール程度というふうに推定をいたしております。
  124. 庄司幸助

    ○庄司委員 七千ヘクタールと非常に膨大な開拓地が、この開拓行政打ち切り後に買い占めにあっている。これはたいへんな事態だと思うのです。  私いまから若干申し上げますが、四十五年四月に「開拓者負債対策についてのお知らせ」というのが、農林省農地局から各県の開拓農家に配られたわけです。それによりますと、開拓者資金特別措置法が出て、これによって四十七年の三月三十  一日までに開拓者負債対策をやる、こういう通知がありまして、この通知に基づいて四十五年から四十六年にかけて「開拓者資金償還条件変更申出書」、私ここに手元に持っておりますが、こういうものをつくらせられたわけですね、農民が。そのつくった申出書を農林省の開拓者資金融通特別会計債権管理官が同意をして判こを押しております。  これはほんの一部でありますが、これは宮城県の刈田郡下で行なわれた資料であります。この中身を見ますと、世俗のことばでいえば、非常にでたらめな指導が行なわれた。この申出書を農林省の指導のもとで、実情に合わない計画が出させられている。私いま持っておりますのはほぼ十名分の資料でありますが、ほとんど蔵王の東山ろくの分ですね。ここは昭和二十年後に、戦後に入植して、二十数年来風雪に耐えて、ほんとに苦しい思いをしながら荒れ地を耕してきた開拓農家がたくさん入っておられる場所なんです。  そういう中でこういう実例があるんです。高橋さんという方でありますが、この人は開拓者資金の借り入れ残が元利とも百九十六万円、それからその他の借り入れ金が六十三万八千円。働き手は男女おのおの一人、子供三人。たんぼ、畑合わせて、これは草地が大部分でありますが四町歩、牛が十頭です。この人に対して、農業所得が百二十四万円ある、これは一応いいとしても——どの方を見てもいわゆる粗収入が五〇%になっておるんですね。農家によってみな粗収入は違うわけです。それが一律に五〇%でかけられている。その結果六十二万円の農業収入があると。それからさらに驚くのは、この牛十頭も飼っている、いわゆる多頭化やれといわれて十頭も飼っている農家が、農外所得が山林伐採その他で五十八万円あることになっております。これは、当時の賃金は大体二千円ぐらいでありますから、牛十頭飼っている農家が二百五十日も毎日出かせぎしておるということになる。こんなでたらめなことをやっていたら、牛なんか飼えるわけないですよ。しかも農業所得をあげられるわけはないんです。そうやって収入をはじき出さしておいて、今度は家計費の点になると、一人十五万円だ、これは十名全部見ても一律です。そうやって差し引き十二万四千六百円のいわゆる剰余分が出るということを書かしておいて、償還計画は十五万九百二十九円毎年払います、こういう計画を書かして平然としているわけです。その結果どういう事態が起きたかということを、いまからお話し申し上げたいのです。  こういういわゆる開拓行政打ち切りで、開拓資金は無理無理返させる手段をとったために、おりしも符節を合わせたように土地の買い占めが、四十六年、四十七年から猛烈に行なわれたわけですね。農林省調査でも、開拓地が七千町歩も買い占められた。この蔵王の山ろく、どれくらい買い占められたかという数字が若干あるわけです。これはもう蔵王山ろくの白石市の分だけで九カ所、約六百三十ヘクタール、それから蔵王町の分だけで十カ所、六百三十ヘクタール、こういうふうに猛烈な勢いで買い占められているわけです。ちょうどその時期に東北新幹線の白石駅の停車が決定する。東北縦貫自動車道のインターチェンジが白石周辺に設定される。こういうことが開拓行政の打ち切りと同時に全国で猛烈に進行したという事態について、開拓行政打ち切りというものがどれほど農民に深刻な影響を与えたか、それからどれだけ土地の買い占め屋をもうけさしたかという、これが一つの具体的な数字だと私は思うのですが、農林大臣、この点、どういう御所感がございますか。何なら事務当局でもいいです。
  125. 今村宣夫

    ○今村説明員 開拓行政の一般行政への移行につきましては、私たちといたしましては、ただ単純に移行をいたしたのではございませんで、開拓者資金特別措置法によりまして、開拓者資金につきましては償還条件の緩和あるいは徴収の停止、履行の延期あるいは和解等の措置を講じますとともに、公庫資金制度につきましても同様な措置を講じ、また系統資金につきましては自作農維持資金によって借りかえて、長期低利の資金として行なってきたわけでございます。  先ほど御質問のございました具体的なケースにつきましては、私のほうとしても調査をいたしたいと存じますが、一般的に申し上げますならば、昭和四十五年、四十六年度に実施した開拓者資金の整理につきましては、その前年に全開拓農家につきまして経営調査を実施いたしまして、その実態調査に基づいて開拓者の所得、家計費、負債の状況、要償還額とその可能性、それから公租公課等の諸要素をいろいろ検討いたしまして、そして開拓農家の実情に応じて具体的償還計画を都道府県の指導のもとに策定したものでございますが、あるいは先生の御指摘のように、個別の農家につきましてはその点が十分行なわれてなかったケースもあるかと思います。したがいまして、私たちといたしましては、その後の開拓農家経営の状況をよく調査いたしまして、そしてそういう移行の際に必ずしも十分でなかったものにつきましては総点検を実施いたしたいと考えております。これは四十九年度、五十年度にわたりまして、それぞれ各県に金融機関、公庫、信連、それから県も入りまして、そして個別具体的に個々の農家について、そういう経営状況に基づく償還の具体的な計画の総点検をいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  126. 庄司幸助

    ○庄司委員 だから、実態調査などというものではないということを私は申し上げているわけです。農業粗収入が一律五〇%ですよ。こんな実態調査ないでしょう。それから牛十頭飼っているところで、だんなさん一人しかいないというところで、そのだんなさんが一年のうち二百五十日も出かせぎしておる、これで牛が飼えますか。こういうでたらめな調査をやって返済計画を立てさせている。そういう中からこういう事態が起きたという事例を一つお話しします。  これは自由民主党の「自由新報」の、その当該地についての号外があるのです。あるいは「願書」と書いてあります。あて先は宮城県議会議員、名前は、これは選挙の関係いろいろありますから、言わないでおきます。地方区の予定候補になっているようですから。その人にあてて願書が出ている。昭和四十七年五月二十日。いろいろ長い間苦労しきた、こう書いてあったあとに、「然るに此の度、国の方針に依り開拓行政が廃止となり一般農家と同様な立場で農政の振興をはかることになり今日まで開拓者と云う特権を受けておった各種補助金融資等について相当な制限を受けることが必須の状態に至りました。これに伴ない「三住地区開拓農業協同組合」を解散し」一般農協に加入することになったのだが、いまの借金の状態では合併もできない、やむを得ず、組合員が共同で牧場経営利用している組合所有地約百二十町歩を売却処分することに衆議一決した、国あるいは県等よりの多額の補助等により現状に至ったものなので快しとはしない、しかし、その点でどうしても売らなくちゃならないから、この県会議員さんに買ってくれ——これは自由民主党の号外ですから、私らがつくったものじゃありません。そして、その表のほうには、そういう願い書を受けて「組合員の願いを聞き入れた遠藤要氏」と、こう書いております。「遠藤要氏は、日頃こん意にし、先き行きを心配していた開拓農民の窮状を見るにしのびず、氏が代表取締役をしている仙塩興業にはかって、組合、及び組合員の債務、及び税金負担分を支払い、白石農協に合併する道を開いたのです。」こう書いてあります。この方は、買った当時、県会議長になっているのです。そして十アール当たり三十六万円で牧草地並びにその付帯地を仙塩興業が買収している。その後、これはうわさの域を出ませんが、うわさによりますと、何でも京成電鉄の関係、その辺に七十万で右から左に売られたといううわささえあるのです。  いま、農業白書で、農林大臣や皆さん方が農地の確保、自給率の向上、こううたっていますが、こういった、草地に非常に適当で、しかも牧場になっていた場所が、こうやって土地の買い占めにあっている。そして一部の営利を目的とする会社の食いものになっている実情がある。このちらしを見たってわかるわけです。  こういうことについて、農林省一体どういう対策を講ぜられるか。もう七千ヘクタールも買われちゃったのですよ。この買われた土地は、まだ農地としておそらく地目も変更されていないのだろうと思うのですが、これは地目変更を許可するのですか。その辺、事務当局でけっこうですから、ひとつ……。
  127. 今村宣夫

    ○今村説明員 最近における農外資本の農地その他の買い占めが行なわれておることは、私たちにとりましてまことに残念なことでございますが、しかし、今後の食糧の安定的供給という観点からいたしますれば、私たちとしては優良農地をぜひとも確保していく必要があるというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、私たちとしましては、そういうふうな観点からのできる限りの措置をいろいろ講じておるつもりでございまして、今度の国会に御提案を申し上げております農振法の一部改正におきましても、農用地区域における開発許可その他の許可制をとるというふうな措置を講じ、あるいはまた、そういう土地の買い占め状況のすみやかな情報の掌握等につきましても努力をいたしておるところでございます。また、農業団体等におきましては農地を守る運動というふうなことを展開いたしてございまして、私たちもそれについて積極的に協力をいたしておるところでございます。  ただ、先生から先ほどお話がございましたように、開拓地等につきましては農地そのものはなかなか手放さないわけでございますが、御指摘のございました白萩等につきましては、共同育成牧場の分を売ったということでございます。ただ、これは売ったと申しましても、まだ私のところへは農地転用許可は来てございませんし、あるいはまた実態等におきまして、所有権の移転登記とか土地の引き渡しが行なわれておるという状況ではないと思われるわけでございます。したがいまして、この土地につきまして申し上げますならば、この土地を最近において農用地区域に編入をいたしまして、今後県がこの土地をどういうふうに使うか。聞くところによりますと、あるいは県の畜産公社の肉牛の育成牧場にするとかあるいはイチゴの種苗の育成圃場等にするように、県がいろいろ骨折っておるところでございます。そういうわけで、私たちとしてはできるだけ優良農地を確保するということのたてまえに立ちまして、できる限りの努力をいたしておるところでございます。
  128. 庄司幸助

    ○庄司委員 時間ですから私これでやめますが、大臣、この点で最後に……。  開拓行政を打ち切ってこういう結果が出たという因果関係ははっきりあるんですから、いまお認めになったのですから、この開拓用地について、今度できた公団の趣旨もありますから、やはり農用地拡大の観点から、これを温泉つき分譲地であるとかレジャーランドであるとか、そういういわゆる農外に転用させないで、あくまでも農業用の用地として確保する。そして現地農民の希望も聞きながら、現地農民も参加できるような形態にしていっていただきたい。これが私の考えなのですが、大臣におかれてどのようにお考えになるかお聞かせ願って、終わりたいと思うのです。
  129. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 全体として私どもは農用地を確保するという基本的たてまえでありますので、ただいま政府委員からもお答えいたしましたように、私どもといたしましては農用地を確保するたてまえですべての行政をやってまいりたい、このように思っております。
  130. 庄司幸助

    ○庄司委員 終わります。
  131. 臼井莊一

    臼井委員長 有島重武君。
  132. 有島重武

    有島委員 私は、国営開拓パイロット事業のことについて御質問いたします。  農林大臣が途中で少し中座されるというお話を承りましたので、一番最初に農林大臣から、昭和三十六年度から四十八年度までの国営開拓パイロット事業の趣旨、概要、この辺のことを先に承って、それからあとこまかい点について局長に承っていきたい。先に農林大臣から、大ざっぱな内容でけっこうですからおっしゃっていただきたい。
  133. 福澤達一

    ○福澤説明員 お答え申し上げます。  国営農用地開発事業につきましては、旧制度以来の事業を改めまして、全員同意というような体系のもとに、個人の土地所有者のもとに申請によってそういう事業をやるというような体系に改めまして、以来今日まで続けてきておるわけでございますが、その事業の種類につきましては、農地開発事業、総合開発事業、それから草地の開発事業、この三つの事業に分類されるわけでございます。  それで、昭和四十七年度の時点につきましての国営農地開発事業の実施の概要を申し上げますと、その地区数は、いま申し上げました三事業につきまして八十二地区でございまして、総事業費は約二千五十九億八千万円にあがっております。そしてその対象になる農用地開発の面積が七万九千四百ヘクタールでございまして、このうち四十七年度までの実施額は約七百二十九億三千万円になっておりまして、大体三五%の進度になっております。また、それによって開発されました面積は、農用地開発面積にいたしまして二万五千ヘクタールになっておるわけでございます。
  134. 有島重武

    有島委員 農林大臣から、この事業の趣旨、それからまた抱負、こういったことについて一番最初に承っておきたい。
  135. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これは私ども自給度を維持し向上させるという考え方を基本に立てております農政の中核になる農用地、先ほど来いろいろな面からもお話がございましたが、この国営農用地開発事業、いま政府委員からもお答え申し上げましたが、全国で農地開発が五十地区、それから総合農地開発が十六地区、草地開発十六地区、合計八十二地区で二千五十九億八千万円という予算をつけておるわけであります。  もちろん私どもといたしましては、先般成立さしていただきました新しい農用地開発公団のように、基本的に一まあほかの農作物もやりますけれども、なかんずく重点を置きました畜産関係についてもこの用地を取得することは大切なことでありますが、わが国のような狭隘な国土の中で、しかも一億国民の食生活考えてできるだけ自給度を維持してまいるというためには、常に未利用地を開発して、農用地として可能なものにつきましてはこれを維持拡大してまいる、こういうたてまえで農用地の開発事業を営んでおるわけでありますが、将来とも私どもは、畜産の振興に伴って、たとえば草地が必要でありますので草地の造成、それからまた、毎年壊廃されております農地が六万三、四千ヘクタールもあるわけでありますので、先ほど来ここでいろいろお話のございましたように、これはわれわれの食糧政策を考えてまいります基本になるべきものである、こういう考えで最も力を入れておるわけでございます。
  136. 有島重武

    有島委員 それでは、きょうは特にこの国営パイロット事業についてなんですけれども、これは昨年も国会で実は問題になったこともございましたけれども、きょうは北海道の早来地区の国営パイロット事業について具体的に取り上げてまいりたいと思います。  構造改善局長に承っていきますけれども、こちらが聞いたことだけ答えてください。  早来地区の国営パイロット事業、この実施までの経緯と、どんな手続でもってこれは実施することになったのか、このことについて言ってください。
  137. 福澤達一

    ○福澤説明員 ただいまお尋ねの早来地区についてお答え申し上げますが、この地区は、御存じのように北海道の勇払郡の早来、苫小牧周辺の安平川の流域に開けた地域の開発事業でございまして、北海道におきます酪農の振興の中心の地域で、非常に技術的にも進んで、意欲のあるところでございます。  私どもは、これらの地域の地域住民の申請を受けまして、この地域の受益農家の規模の拡大をはかりまして、未利用地を、約八百九十八ヘクタールの草地を造成することによりましてこの地域の酪農振興をはかっていきたいということで、昭和四十五年から着工いたしまして昭和五十一年を完了の予定年度といたしまして、現在総事業費十三億二千六百万円をもちましてこの事業を実施しておるわけでございます。  なお、四十七年度までの進捗状況は、事業費にいたしまして四億四千六百万円で百四十六ヘクタールを現在まで造成をしておる実情でございます。
  138. 有島重武

    有島委員 いまの御説明ですけれども、工期は昭和四十五年から四十九年度ではなかったのですか。
  139. 福澤達一

    ○福澤説明員 当初、北海道開発局におきまして計画を練っている段階におきましては、四十五年から四十九年ということでございましたけれども、この事業発足の段階におきましては、四十五年から五十一年という工期に考えておるわけでございます。
  140. 有島重武

    有島委員 四十七年度までの御報告がありましたけれども、四十八年度はどのくらいまでいったのですか。
  141. 福澤達一

    ○福澤説明員 四十八年度におきましては、事業費二億一千万円をもちまして百三十五ヘクタールを造成しておるわけでございます。
  142. 有島重武

    有島委員 いままでのお話で、八百九十八ヘクタールのうちにわずか二百八十一ヘクタール、これだけ造成されている、竣工率三〇%ぐらいにしかならぬ。これは当初計画が四十九年度であったといういまお話ですけれども、これは一体五十一年度ということになれば、これでもって五十一年度にはできるのですか。
  143. 福澤達一

    ○福澤説明員 現在の段階では五十一年度を目途として完成するように努力をしておるわけでございます。(有島委員「できるかな」と呼ぶ)そういう目標に向かって努力しておる最中でございます。
  144. 有島重武

    有島委員 ほんとうに五十一年度までにぜひとも終わらせるという努力をしておられるならば、じゃ、いままでどういうわけでこれがおくれたのか、そういった分析がしっかりとできていらっしゃるはずであろう、そう思うのですけれども、いままで実施がおくれておる理由は何ですか。
  145. 福澤達一

    ○福澤説明員 一つは、四十八年、四十九年にわたりまして、総需要の抑制というような問題を含め、事業費の割り振りが十分でなかった点が一つございます。それから、その後、諸資材あるいは労賃等の値上がりによりまして事業費が増加したという問題もございます。  これらの点がございまして、当初予定しておりました進捗よりは、先生おっしゃるとおり多少おくれておるわけでございます。
  146. 有島重武

    有島委員 いま二つおあげになった総需要抑制と資材の不足、それは去年、この計画のみならず、全般的にいろいろおくれたことはありました。これは克服していかなければならない。  ところで、それでは、いまから時間をかけさえすれば当初計画どおりにちゃんとできるのですか。いまのはただおくれたというだけの話。今度は、おくれたにしろ当初計画のとおり全部できればそれはまだいいわけですけれども、おくれた上に当初計画どおりにほんとうにできるかどうか、この点はどうなんです。
  147. 福澤達一

    ○福澤説明員 この早来地区につきましては、苫小牧市に隣接しておる地域でございまして、この苫小牧市の工業的な開発の発展が非常に目ざましい問題がございまして、そういう周囲の開発の情勢に影響を多少受けた経緯がございまして、そのためにその地区の受益地の一部に変化が生じております。したがいまして、当初の計画どおりこれが完了するというようなことは、現在の段階、残念ですけれども、不可能な形になっておるわけでございます。
  148. 有島重武

    有島委員 それが大切なことですよ。ただおくれただけの話ではない。先ほどの農林大臣お話だけれども、これは農政の基本だ、そういうことになっておる。それから特に畜産の問題である。草地をつくるということに計画は一番集中されているわけであります。こうしたところで、これは計画がおくれるのみならず、計画ができない。いまは工業発展が目ざましい、変化が起こった、どういう変化が起こったのですか。
  149. 福澤達一

    ○福澤説明員 ただいまもちょっと言及いたしましたけれども、計画当時の昭和四十五年の本地区の経済の環境と申しますのは、苫小牧市の工業化としての発展が非常に激しくなってきております。そしてさらに、その苫小牧市の現在の港の東のほうにも第二の苫小牧港を開発して、そこに工業団地を形成しようという構想が出てきておったわけでございます。したがって、私どもの国営の農用地開発事業につきましては、こういうような問題から影響を受けないように考慮いたしまして、北海道あるいは地元の早来町あるいは苫小牧市のほうと十分これらの問題につきまして協議調整を行なって計画を樹立したわけでございます。しかしながら、その後こういう工業開発の建設が進むにつれまして、この地域周辺における経済社会の情勢が変わってきておりまして、そのことが一部受益者の心理的な影響などを含めまして、しかもその当時、農業振興地域の整備計画の策定の行なわれておらない前の時点でございまして、そういう経緯がございましてその周辺におきます情勢が変わってきたわけでございます。
  150. 有島重武

    有島委員 部長、こちらが聞いておるのは、工業団地ができた、その工業団地の変化のことを聞いているのではないのですよ。いま農政の基本であると先ほど農林大臣が言われたこの計画の中に、それではどのような変化が起こってきたのか、そっちを聞いているわけです。どうして計画を変更せざるを得なかったか。十三億からの仕事ですよ。この中でもって当初計画ができなくなった、どういった点についてその計画が実施できなくなったのですか。計画内部の変化はどうなっているのですか。
  151. 福澤達一

    ○福澤説明員 ただいまも申し上げましたように、外部からのそういう経済情勢の急激な変化ということを背景といたしまして、一部その関係しておる受益者の中から、その事業目的と異なった土地の権利の移転が行なわれたことと、それから事業の不参加を希望する者、こういうものが出てまいりましたことは、私どもといたしましては非常に残念なことでございますけれども現実にそういうことが起こったわけでございます。
  152. 有島重武

    有島委員 どうも、御存じなのか、あるいはその程度しか御存じないのか。いまおっしゃったのは何だか不参加になったものがあった、ではどのくらいの規模において不参加者が出たのか、また当初の目的と何か変わったふうなことがあった、それは内容は何なのか、それがどのくらいの規模において当初計画と変わったのか、そのことも御存じなんでしょう。御存じだったらば言ってください。
  153. 福澤達一

    ○福澤説明員 数字的に申し上げますと、受益面積の変更といたしまして、当初農用地の面積といたしまして八百九十八ヘクタールでございましたのが七百三十七・二ヘクタールになったわけでございます。したがいまして、その面積の差百六十・八ヘクタールというものが内容といたしましては変わってきたわけでございまして、その中には先ほど申しましたように、農外者に転売されたものだとかあるいは希望によって計画から脱落したものだとか、あるいはみずから国営事業の外で自己開墾をしたとか、そういうようないろいろな理由によりまして内容が変わってきたわけでございます。
  154. 有島重武

    有島委員 農林大臣いまお見えになったから、いまの話の経過を申しましょう。  北海道の早来地区のパイロット事業でございますけれども、八百九十八ヘクタール、十三億円、ほんとうは四十九年度にできるはずだったのが、いま五十一年につくるということになって非常におくれておる。おくれておるのみならず、いま部長が言われましたように八百九十八ヘクタールの中の百六十八ヘクタールというものが、これはもう当初の計画から落ちてしまっておる。その内容はというと、いま部長はなかなかはっきり言ってくれないから、こちらが調べたのを言いましょう。脱落したものが七十ヘクタールです。それから不動産業者の買い占めによるものが五十二・五ヘクタールです。それから自己開拓、この事業がおくれているのでみずからが開墾してしまった、そういう人が四十ヘクタール、この合計百六十八ヘクタールですか、これだけが当初計画から落とさざるを得なくなった。部長、そうですね。内容はどうですか、間違っていますか。
  155. 福澤達一

    ○福澤説明員 そのとおりでございます。
  156. 有島重武

    有島委員 そのとおりって、御存じなら——こちらの聞いているのは、そういうことを聞いておったわけです。そのこまかい内容、きっと、もっと詳しく御存じなんでしょう。  それで、あまり時間ありませんから先に行きますけれども、ここでもっていろいろなふしぎな問題があります。どうして脱落するのですか。これは地元農民の方々にとってはたいへんけっこうな計画であったはずですよ。にもかかわらず、途中からやめさせてくれと抜ける人が出てくる。これは一体どういうわけなんですか。どういうわけだと思っていますか、部長。
  157. 福澤達一

    ○福澤説明員 先ほども申し上げましたように、その周辺におきまして工業の開発関係が非常に進んでまいりました。したがって、その地域の社会とか経済とかというような情勢が変わってきたことによりまして、その一部の受益者が心理的に影響を受けたということでございまして、しかし、一方におきましては、そういう地区の中にありましても、自己開発をしようという意欲を持った者もございます。したがって、そういう心理的な強い影響を受けた人もおるし、また逆に、ここの地域に酪農を中心にしてやっていきたいという意欲をまだ持っておる人もあるし、いろいろその中におきましてはその心理状況というのが複雑でございまして、私どもはそういう現実の姿というものを受けとめまして、意欲を持っておる者に対しましてこの事業というものを強力にひとつ支援をしながら、早く完成するようにつとめておるわけでございます。
  158. 有島重武

    有島委員 大臣、聞いておいてくださいませよ。  じゃ、その意欲のある人には大いに援助するはずなのが、自己開拓をしてしまったのが四十ヘクタールもある。これはどういうわけですか。
  159. 福澤達一

    ○福澤説明員 事業の振興ということに対しまして十分意欲を持った人たちを支持して、それに一体となってやるということにつきましては、当初に申し上げましたように、いろいろ予算的な問題もございましたりして、自己開発というようなことをみずからやってしまった経緯がございます。
  160. 有島重武

    有島委員 それはどうしてそういうことになったと聞いているのです。そういう経緯があったことは承知しているわけだ。責任のある当局としてはそのことを一体どのように受けとめているのか、どのように分析しているのか、そういうことを聞いているのです。いまの話は、そういう状態がございましたということを繰り返すだけなんだな。何も考えておりませんということですよ。何か考えているのですか、それについて。どうですか。
  161. 福澤達一

    ○福澤説明員 私どもといたしましては農用地開発事業予算全体のワクの中でできるだけのことをしてきているわけでございますが、残念ながらそういう事態がそこにあらわれてきておるということは反省をしながら、そういうことの今後ともできるだけないように私どもはつとめていきたいと思っておるわけでございます。
  162. 有島重武

    有島委員 先ほどだと、十分協議をしながら、というようなお話もありました。にもかかわらずこういうことになりました、反省します、どういうふうに反省しているか聞きたいと私は思っていたのだけれども、反省は今後の問題になるらしい。  それからもう一つ、もっと大切なことは不動産業者の買い占めです。この不動産業者の名前をあげてください。何社ぐらいありますか。どのくらい買われたのですか。トータルはわかっている、五十二・五ヘクタール。
  163. 福澤達一

    ○福澤説明員 企業によって買い占められました面積は、ただいま申されました五十二・五ヘクタールございますが、その企業は六社でございます。相互通商株式会社、相互観光株式会社、岩倉組、東亜興産、三協商事、宏和産業、以上でございます。
  164. 有島重武

    有島委員 そのおのおのの登記してしまった面積、未登記分もあるでしょうけれども。それから登記年月、こういったこともわかっていますか。おのおのについて登記年月日、それから登記の面積、このことについてどうですか。
  165. 福澤達一

    ○福澤説明員 それが何月何日に登記されたということは、私のほうではまだわかっておりません。ただ、その面積につきましては承知いたしておりますので申し上げますと、相互通商が十四。九ヘクタール、相互観光が一ヘクタール、岩倉組が二十九・七ヘクタール、東亜興産が二ヘクタール、三協商事が二・九ヘクタール、宏和産業が二ヘクタールでございます。
  166. 有島重武

    有島委員 それじゃ登記の年月日をこちらが言いましょう。——登記の年月日はわかりますか。そちらでもわかれば、そっちから言ってもらってもいいけれども……。これは登記の年月日も大切な問題だ。
  167. 福澤達一

    ○福澤説明員 登記の年月日を申し上げますと、相互通商株式会社につきましては四十七年七月二十一日に七・六ヘクタール、相互観光が四十八年一月二十六日、それから相互通商のほうが、これは二口ございまして、四十八年四月十三日と四十八年六月十四日でございます。また岩倉組につきましては四十八年三月十二日でございます。東亜興産は四十七年三月十日でございまして、宏和産業につきましては四十七年三月三十日になっております。
  168. 有島重武

    有島委員 いま伺ったとおりで、相互通商株式会社というのが四十七年七月二十一日に七・六ヘクタール、それから同じくその会社が四十八年四月十三日に二・八ヘクタール、同じく相互通商株式会社というのが四十八年六月十四日に四・五ヘクタール、それぞれ登記している。それから相互観光株式会社が四十八年一月二十六日に一・〇ヘクタール登記している。それから東亜興産というのが四十七年三月十日に二・〇一ヘクタール。それから三協商事というのがまだ未登記になっているが、これが二・九ヘクタール。それから株式会社岩倉組、これが大手でありまして、四十八年三月十二日に二十九・七ヘクタールです。それから宏和産業株式会社が四十七年三月三十日に二・〇ヘクタール。それで合計五十二・五ヘクタール。こちらの調べは間違いありませんね。どうですか。
  169. 福澤達一

    ○福澤説明員 間違いございません。
  170. 有島重武

    有島委員 会計検査院、来ていらっしゃいますか。
  171. 臼井莊一

    臼井委員長 来ています。
  172. 有島重武

    有島委員 これらにつきまして、会計検査院農林省に対してどのような処置をとられたか。質問書を提出されたのじゃないかと思いますけれども、そのことについて説明してください。
  173. 田中稔

    田中会計検査院説明員 私ども、四十八年七月三日に実地検査をいたしまして、その結果、ただいま農林省のほうから御答弁になりましたような事態が確認されましたので、こういう事態に対してこのまま適切な対応策を講ずることなく計画を進める場合には、計画と成果の間に大きなそごを来たすおそれがあるのじゃないかということが認められましたので、事業計画について再検討を行ない、事業の効率的な実施をはかっていただきたいという趣旨の質問をいたしましたところ、農林省のほうからの回答といたしまして、転売された五十二・五ヘクタールについては極力当事者間で返還の処置を講ずるように勧告をする、それから脱落者の七十一ヘクタールについては事業計画の区域から除外をするというような回答をいただいております。
  174. 有島重武

    有島委員 これはたいへんな手落ちであろうと私は思いますけれども農林大臣、いかがですか、この問題について。
  175. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いま承っておりまして、私どもの手落ちであると思って聞いておりました。  御存じのように、農地開発事業を実施いたします際は、事業開始に先立ちまして、全員の同意を取りつけて事業計画を決定いたすことになっておりますし、その後に売買が行なわれたときも、その承継人にその効力が及ぶということになっておるわけでありますが、いまお話のございましたように、中には全然農業関係のない者に五十二ヘクタール余りが転売されておる、もう一つは脱落者も出ておる、こういうことにつきましては、私どもにとりましてははなはだ遺憾千万なことであると存じております。  これは私よくまだ、もっと部内において十分その前後の事情を調べてみたいと思いますが、農用地に転換されておれば、御存じのように、かりに仮登記などをいたしましても、本登記の許可がありませんでしたならば農地法違反でありますから、許可はできないはずでありますが、その辺のいきさつにつきまして十分調べてみたいと思います。いずれにいたしましても、すでに登記済みであるということになりますというと、おそらくそういう点において欠けるところがあったんではないかと存じます。したがって、やはり慎重に計画の再検討等を行なわなければならぬではないかと私、実は実情をあんまり報告受けておりませんので、内情を詳しく存じておりませんが、質疑応答を承っておりましてそういう感じを得まして、これからもやはりこういう事業をやっていくわけでありますので、再びこういうことを繰り返さないように、十分に注意をいたしたいと思っております。
  176. 有島重武

    有島委員 大臣からも、これはもう明らかに手落ちだ、今後十分注意していく、あまり内情の報告を詳しく受けていなかったというようなお話がございましたので、十分これは調べていただきたい。  それからさらに、国営パイロット事業といわれているものが、先ほど八十二カ所あるということでございましたね。これは似たことがたくさんあるのではないかということも考えられます。  それで、もう一ぺん会計検査院に伺いますけれども、国営パイロット事業について早来地区以外に、会計検査院が何か指摘した、質問書を出したというものがほかにもあろうかと思いますけれども、そんなことについて御説明いただきたい。
  177. 田中稔

    田中会計検査院説明員 早来地区以外に、四十八年に質問を出しましたのが五地区ございます。
  178. 有島重武

    有島委員 その五地区の名前をあげていただけますか。
  179. 田中稔

    田中会計検査院説明員 早来地区のほかには、加古川西部農業水利事業、東播用水、それから吉野川北岸農業水利事業、それから青蓮寺総合農地開発事業、それから那須野原開拓建設事業、以上でございます。
  180. 有島重武

    有島委員 お聞きのとおりです。私ども資料によりますと、吉野川北岸地区が五十五ヘクタール、加古川西部が三十九ヘクタール、東播用水五十六ヘクタール。青蓮寺、那須野原はおのおのどのくらいの規模ですか。おわかりになりますか。
  181. 田中稔

    田中会計検査院説明員 青蓮寺のほうが、非農家に売られましたのが五十八・一ヘクタールでございます。那須野原は百六ヘクタールでございます。
  182. 有島重武

    有島委員 検査院は、この八十二地区を全部調べてこのような問題提起といいますか質問書を出されたのか。幾つぐらいお調べになってこの五つの問題が出てきたのですか。
  183. 田中稔

    田中会計検査院説明員 十七地区調査した中のただいま指摘した五件でございます。
  184. 有島重武

    有島委員 お聞きのとおりです。十七地区調べてみただけでもってもう五地区このように問題が起こっておる。いま問題にしております早来、これを入れますと六地区でございますね。そういうことになっておるわけでございます。  それで部長に承っておきますけれども、部長はこういうことは御存じなので、今後どのような計画変更をやっていこうとしておられるのか。これをほうっておけば、幾ら反省したところでどんどん進行してしまうのじゃないですか。どういう手を打っていますか。
  185. 福澤達一

    ○福澤説明員 これらのこういう六地区につきましては、ただいま検査院のほうからお話があったとおりでございますが、最近における非常に急激な社会情勢の変化によりまして土地の需要というものが非常に増加してきておるという、こういう現実というものを踏まえまして、私どもは、何とかこの優良農地を確保して農業の施策を推進していかなければならないので、実は昭和四十八年二月に第一回の、こういう農用地開発事業につきましての適正実施の通達を出しております。それから引き続き四十八年の四月にさらにもう一回、それを徹底する意味でそういう通達を流しておりまして、これらによりまして、農地のそういう転用の規制というものをひとつ適正に、しかも非常にきびしく指導をして徹底を期してまいりたいと思っておるわけでございます。
  186. 有島重武

    有島委員 これも農林大臣、よく聞いておいてください。  いまのお話だと、四十八年の二月と四十八年の四月に通達を出して、そうしてやかましく通達で誤りなきを期しておるとおっしゃるんだけれども、先ほど申し上げたように、登記を見ますと、四十八年の二月に通達が出たその直後、四十八年の三月十二日に岩倉組が二十九・七ヘクタール登記をしておる。これは買い占められた総面積五十二・五ヘクタールの半分以上ですな。そういうことが起こっておる。それから重ねて四十八年の四月にまた通達を出したと言われておるけれども、四十八年の四月十三日に相互通商が二・八ヘクタールの登記をしておる。また四十八年六月十四日にも、同じ相互通商が四・五ヘクタールの登記をしておる。こういった通達をやったからもう極力これを押えていきますと部長は言うけれども、こんなことでは押えられないということはわかりますね。だから、今後これは一体どういうふうにしていくのか、そのことが一つ。  それから先ほども、これは大臣いらっしゃらなかったときかと思いますけれども、どうして脱落者が出るのか。これはいまの部長のお話だと、まわりのほうでもって工業団地ができてくる、人心が動揺してくる、まあそういうことでもってというお話がありましたけれども、この中に自己開拓をどんどんしている人がいる。自己開拓している人はほんとうに農政を思って、それで積極的にやる人だ。その人に対しての手がおくれている。これはまたおかしいと思うのだ。  それからもう一つ、自己開拓ができるだけの力を持っているところにこれだけの十三億というお金をつぎ込む計画をつくっておる。その計画ができたときにもうすでに非常に明朗でないような事情が何かあったのではないか。聞くところによれば、なかなかおりっぱな方々がその中にかんでおられるというようなことも聞いている。こういったことがあったのでは、先ほど農林大臣のおっしゃったせっかくの御構想、これは結局利用されてしまって、ほんとうの農政は育っていかない。このようなことがあってはならぬと私は非常に憂えるものであります。  そこで農林省、八十二カ所と言われたけれども、これをひとつ総点検なすったらどうですか。
  187. 今村宣夫

    ○今村説明員 先生御指摘のように、国営事業を実施いたしております地域につきまして土地が売られるという事態が、最近の経済、社会のいろいろな変化に伴いまして発生をしておることは、まことに遺憾でありますが、開発予定地と申しますのは大体農地ではございませんものですから、農地でありますならば転用許可証を持っていかないと登記変更ができないということに相なっておりますので、農地のところをいろいろ工事をいたしますときはそういうことはなかなかないわけでございますが、事業予定地でございますから、山林になっておったり原野になっておったりするという形で土地が売られやすいという実情に一つはございます。  したがいまして、今後の措置といたしましては、御存じのとおり農振法で線引きをいたしまして農用地区域に指定をするということがございます。これは四十四年から行なっておりまして、大体四十九年度で全部の農用地区域の編入が終わるわけでございまして、そういう過渡的な経過もございまして、そういう開発予定地がともすれば売られやすいという状況にあったことは確かであります。したがいまして、今年度をもって農用地区域の指定が終わるものですから、今後国営事業をやろうといたします場合には、そういう予定地域をあらかじめ農用地区域に指定をいたしまして、そうしてそこで事業を実施するということにいたしますならば、農用地区域に指定をしますと、今後はそこで、現在の農振法の一部改正で提案をいたしておりますように開発行為の許可制をとるわけでございますから、農用地区域に編入されれば、その農地でないものについてもそういう規制がかかっていく、こういうかっこうに相なるわけであります。今後の制度的な対策としてはそういう方向をとっていくことが必要であろう。  それからもう一つ、総点検のお話がございましたが、昨年度におきまして構造改善局としまして、全部の地域につきまして総点検を実施いたしております。したがいまして、先ほども申し上げましたように、局長通達をもってきびしくいろいろ指導をいたしておるわけでございますけれども、そういう制度的な面あるいはまた事業の的確なる実施、そういう面をあわせて、今後はそういう事態が起こらないように私たちとしても最善の努力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  188. 有島重武

    有島委員 では、時間が参りましたからこれで終わりますけれども、総点検はすでにやったという話だ。だからもうやらないでもいいというお話なのかどうか。私は、これは角度を新たにしてもう一ぺん全部洗い直さなければいけないと思う。しかも、その総点検の結果が農林大臣のお耳にも入っておらぬ。そのようなことでは、これは非常に憂うべきことであると思いますけれども、最後に農林大臣から、こうしたことを二度と起こさぬようにひとつお願いしたいという意味を含めまして、所信を述べていただきたい。
  189. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 事務当局からもお答え申し上げておりますように、私のほうにも不用意な点があったと反省をいたしております。冒頭に申し上げましたように、私どもは今日の食糧事情等につきましては、絶対に必要なる農用地は確保するというたてまえで、そのつもりで予算要求もいたし、対処しておるわけでありますが、私自身、その調査も手抜かりがあったような感じをいたします。  先般、私は所用がありまして徳島県に参りました。あそこでは、早明浦ダムから発してまいります用水について、いまお話のありました吉野川北岸の事業がおくれておるという話を聞きまして、なぜおくれておるのかということを聞きまして若干の疑問を抱いたようなこともございます。いま率直に、農政部長から申し上げましたように、それらの点を予定地全般にわたって十分に点検をいたしまして、適切な手段を講じて、こういうようなことが起こらないようにつとめてまいりたいと思っております。
  190. 有島重武

    有島委員 終わります。
  191. 臼井莊一

    臼井委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後二時二十八分散会