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1974-05-24 第72回国会 衆議院 外務委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月二十四日(金曜日)    午前十時八分開議  出席委員   委員長 木村 俊夫君    理事 石井  一君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 水野  清君 理事 河上 民雄君    理事 堂森 芳夫君 理事 松本 善明君       足立 篤郎君    大久保武雄君       加藤 紘一君    坂本三十次君       深谷 隆司君    高田 富之君       土井たか子君    渡部 一郎君       永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山中 貞則君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         公安調査庁次長 渡邊 次郎君         外務大臣官房長 鹿取 泰衛君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省条約局外         務参事官    伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君  委員外出席者         法務省民事局第         五課長     稲葉 威雄君         法務省入国管理         局入国審査課長 小林 俊二君         水産庁漁政部沿         岸漁業課長   平井 義徳君         参  考  人         (日本赤十字社         外事部長)   木内利三郎君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ————————————— 委員の異動 五月二十二日  辞任         補欠選任   土井たか子君     山本 政弘君 同日  辞任         補欠選任   山本 政弘君     土井たか子君 同月二十三日  辞任         補欠選任   土井たか子君     山本 政弘君 同日  辞任        補欠選任   山本 政弘君     土井たか子君     ————————————— 五月二十三日  世界連邦樹立の決議に関する請願(山田芳治君  紹介)(第七〇五四号)  同(西村直己紹介)(第七一六〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 木村俊夫

    木村委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  国際情勢に関する件(北朝鮮における日本人妻問題)調査のため、本日、日本赤十字社外事部長木内利三郎君に参考人として御出席を願い、御意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 木村俊夫

    木村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人からの御意見は、質疑応答の形式でお聞きすることにいたしたいと存じますので、さよう御了承願います。      ————◇—————
  4. 木村俊夫

    木村委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井一君。
  5. 石井一

    石井委員 去る十八日、インド地下核実験が行なわれて、第六番目の核保有国となったという報道でございますが、インド側は、これはあくまでも平和利用目的であるということを主張しております。平和目的軍事目的というものは、官房長官談話でもわかりますように、その点非常にむずかしい問題がありますけれども、このインド核実験に関し、外務大臣の御見解をまずお伺いしたいと思います。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 インドがニュークリアポテンシャルとして核開発能力を持っている国であることはわれわれも承知しておったのでございますけれども地下実験をやられたということに対しましては、いろいろな意味におきましてたいへん残念なことであると考えております。内政上、外政上、インドといたしましてはいろいろな考えがあったと思いますけれどもわが国立場から申しましてたいへん遺憾であると申し上げるほかないと思います。仰せのように軍事目的平和目的、限界が必ずしもさだかでないという懸念もございますけれども、せめて平和目的に徹せられることを心から願っております。
  7. 石井一

    石井委員 遺憾であるという表明は、外務大臣として当然だと思うのでございますけれども、今後わが国外交政策として、それではどう対処するのかという問題があろうかと思います。最近の報道によりますと、パキスタンでも保有する力があるという発言がありますし、イスラエルでもつくろうと思えばいつでもできるというふうなことも伝えられております。こういうことを考えますと、国際情勢というものは、要するに最近起こっておる天然資源というふうな問題あるいは新しく起こっておる核というふうな問題で、非常に新しい二つの焦点を中心に多極化していきつつあるというふうな感じがいたすわけでございます。  そこで、わが国としては、こういうものを縮小するための運動を非常に積極的にやるとか、あるいはまた極端なことをいいますと、核防条約批准せずにわが国方向を変えるとか、いろいろとこういう事態に対処して考えられる問題があろうかと思うのでございますけれども、この辺について外務大臣はこの事態をどういうふうに受けとめられ、どういうお考えを持っておられるのか、この点をひとつ御答弁いただきたいと思います。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのように世界がいろいろな意味で多極化の様相を深めてまいりまして、非常にまとまりにくくなってまいり、前途に多くの不安を包蔵しておるという御認識は、私もあなたと共通にするものでございます。この場合、日本としてこういう事態に対処してどうするかということでございますが、これは申すまでもなく、日本が自主的に決意せなければならぬことでございまして、その場合、日本日本立場を見定めてまいることがまず第一必要だと思うのでございます。  こういう狭い国土で大ぜいの人間が高度の経済文化生活を営んで、いわゆる経済大国に成長してきている日本でございまして、そのためには世界全体からなお資源を仰がなければなりませんし、市場も開拓せにゃなりませんし、グローバルな関連をいやおうなしに持たざるを得ないわけでございますが、荒れ狂う世界の中で日本軍事力でこれを保障しようなんていう力はとても持ち得ないわけでございます。わが国としては非軍事国として国際的な信頼を得て、そしてわが国生存と安全を守っていかなければならないわけでございまして、わが国が従来とっておりまする外交基調平和外交基調にせなければならぬという非軍事国としての国是というものを宣明してまいり、これを堅持して世界信頼にこたえていきつつ、われわれの生存をその中で保障していかなければならぬ、こういうわれわれの立っておる立場というものはいかなる事情が出てまいりましても変わらないものでなければならぬと私は思っております。
  9. 石井一

    石井委員 ときあたかもインドガウル大蔵次官が訪日中のようでございまして、昨日外務省局長との会見の中で、日本側としては、今度の核実験という事態インドに対する経済援助というものを非常に苦しい立場に追い込んでおるということで、率直な意見交換があったようでございますが、これは核実験とも関連をいたしまして、また対外経済協力という面からも政府の非常に大きな政策の転換だというふうにも受け取れる一面がございます。  局長のお話でなく、大臣としても先ほど非常に遺憾であるという御表明がございましたけれども、それじゃ、遺憾であるから経済協力に対してはある程度のそういう配慮をしなければいかぬ、こういうふうなお考えをお持ちなのでしょうか。この点はいかがでございますか。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国インドに対しましてこれまで円借款を軸といたしまして各種の経済協力をやってまいりましたし、現に進めつつあるわけでございます。この経済協力を今度のことによってどのように考えてまいるかということにつきましては、私、核爆発のことを伺ったばかりでございまして、まだ十分検討を重ねておりませんし、今後のインド経済推移、財政の推移、それからインド軍事外交政策等推移を十分見定めた上で日本として考えてまいらなければいかぬことと思いますので、ただいまの段階で決定的にこれをどうするこうするということを申し上げるのは、まだ時期が若干尚早であろうと考えております。
  11. 石井一

    石井委員 そこで、わが国の核兵器不拡散条約に対する批准の問題でございますけれどもわが国批准する方向といたしまして三つの条件を政府声明として出しております。この内容は省略をいたしますけれども、結局、世界が不拡散方向に進んでおったものが、今度は急にこういう形で拡散方向に進んでおるということは否定できないことであり、世界情勢としては核という問題には一つの非常に重大な時期が来ておるというふうに私は認識をしておるわけでありますが、政府は、この条約に対する国会批准への態度見通し、こういうふうなものを現時点ではどういうふうにお考えになっておるわけでございますか。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのように、この条約に対して政府署名を了しておるわけでありまして、この署名にあたりましていま御指摘のような三点が究明されなければならぬという趣旨の留保がついておるわけでございます。  その三点のうち核保有国側の軍縮の問題につきましてはいま困難な状況のもとにございますけれども米ソの間で鋭意折衝が続いておるようでございまして、あの条約署名された当時から見まして少なくとも一つ前進が見られているように受け取れるわけでございます。  それから第二の、核保有国による非核保有国安全保障の問題につきましても、御案内のようにここ数年来平和共存が徐々に定着を見つつある状況でございまして、やや好転のきざしが出ておることも御案内のとおりでございます。  それから第三の、原子力平和利用についての実質的な平等を確保するということにつきましては政府が最も力点を置いて今日まで努力をしてきたところでございまして、国際原子力機関との間で予備折衝が続けられてまいったわけでございます。政府としては、この平和利用実質的平等性確保について自信が持てる状況をまずつくり上げなければならぬと考えまして、そこに力点を置いていま科学技術庁と協力いたしまして原子力機関との間の折衝用意をいたしておるというのが今日の段階でございます。  そういう状況を積み重ねて十分なデータを用意いたしまして、与野党の御了解を得ながら究極において本条約批准を求めたいというのがわれわれの政府基本的な考え方でございまして、その考え方はいささかも変わっておりません。
  13. 石井一

    石井委員 基本的な方針は変わらない、しかし、再検討とは言いませんけれども、いろいろと慎重に対処しなければいかぬ事態である、こういうふうに私、いま答弁を伺ったわけでございますが、この問題の最後に、アジアの平和なり安定ということを考えましたときに、アジア大国といえばやはり中国でありインドであり日本である。そのうちの二カ国までがこういう形になってきた。これはこれまでの世界のパワーポリティックスの中で非常に新しい次元の問題が出てきておる。こういう中で今度のインドのこういう動きというものはアジアの平和なり安定というものに影響があるというふうには大臣考えになりませんか。これは最後の御答弁として、締めくくりとして御所見がありましたらお伺いしておきたいと思います。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 西南アジアにおける安定勢力としてインドが存在し、かつアジアの平和に貢献していただくということは、仰せのようにアジアの平和にとりまして決定的とまでいえる重要なことであると思うのであります。したがいましてインド態度というものは、私どもは常に重大な関心を持っておったところでございます。  今度インドがああいう挙に出ましたことははなはだ残念に思いますけれども、先ほども申し上げましたとおり、インドがあくまでも自重されまして平和利用に徹しられていくことが望ましいと考えておるわけでございまして、私どもといたしましては、仰せのように中国インドもそして日本もそれぞれの立場におきましてアジアの平和ということに対して責任を持っておる国でございますので、いろいろアプローチのしかたは違うにいたしましてもそれぞれの持っておるアジアの平和に対する責任は果たしていただく方向で自重ある行動を期待いたしたいと考えております。
  15. 石井一

    石井委員 本条約批准国会に求めるのは次期国会に、というふうに政府としてはお考えになるかそれとももう少し慎重にされるか、この点だけをひとつ確認しておきたいと思います。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 これは、しかし政府の都合だけから言えないわけでございまして、十分、この条約批准をお願いするにつきましての必要にして十分な用意をしてかからなければなりません。とりわけ平和利用実質的平等性確保を具体的になし遂げてそれを提示しなければならぬわけでございますので、そういったものが全部でき上がってお願いするのが手順だと考えております。  したがって、いつの国会にこれができますか、私どもとしてはできるだけ早くお願いするように鋭意努力したいと考えておりますけれども、どの時点でいよいよ批准のお願いをするかということにつきまして、まだ時点をはっきり国会で申し上げるまでには至っていないことを御了承いただきたいと思います。
  17. 石井一

    石井委員 日中関係について一、二問ほどお伺いいたします。  きょう、例の難産いたしました日中航空協定発効するということでございますが、次は漁業協定である。しかもこの民間協定期限が来月の二十二日で切れるということでありますからタイムリミットがもうきておる、こういうことでございまして、現在北京でいわゆる実務担当者の、責任者会談が始まっておる。こういう形で申しますと、ちょうど日中航空協定がとりましたようなパターンでこの実務協定が進んでおる。これは両国民にとって非常に慶祝の至りなんでございますけれども、これの本交渉並びに締結までの見通し、それから国会は六月三日で閉会されてしまうわけでございますけれども国会に対する批准手続、これを省略していいものなのかどうか、具体的に発効までどういうふうな手順になるのか、この点をひとつ御表明いただきたいと思うのでございます。
  18. 高島益郎

    高島政府委員 日中間漁業協定交渉は、政府のほうから交渉要員を派遣いたしまして本日から北京で始まる予定でございます。現在の段階におきまして私たち考えておりますことは、いま御指摘のとおり六月二十二日で期限の切れます民間取りきめにかわり政府間の協定にしたいということが私たちの希望でございまして、この点につきましては日中間共通意思がございます。そういう立場に基づいて鋭意これから交渉を詰めまして六月二十二日までには何とか妥結に持ち込みたいということでございまして、いまの段階でどういう見通しになるかということははっきり申し上げられません。  それからもう一点、国会との関係でございますけれども、もしかりに六月二十二日までに政府間協定が妥結いたしましたといたしましても、御承知のとおり国会休会中でございますし、私どもこれを国会承認のために提出するということは不可能でございます。したがいまして、この協定がいわゆる国会承認を要する協定ということで当面考えておりますので、そういう観点からいたしますと、直ちに民間取りきめにそのまま政府間協定が取ってかわるということは法律的には不可能だろうと思います。  ただ、どういう方法でそれでは六月二十二日以降日中間漁業を規制するかという点につきましては、いまの段階では、この協定でき上がりぐあい、また協定の取りきめるべき内容いかん等に依存いたしますので、そういった点をよく見きわめた上で考えていきたいというふうに考えております。
  19. 石井一

    石井委員 通商協定それから航空協定と、同じような手順を踏んで国会承認を得てきたわけですが、いまの政府委員答弁であると、それじゃ漁業協定は、内容いかんによってはそういう手続を踏まなくても実際の効力は発効する、そういう条約的な見解がとれると、そういうことですか。この点はいかがですか。
  20. 高島益郎

    高島政府委員 私ども、原則としてこの漁業協定は当然国会承認のために提出しなければならない性格のものだと考えております。したがいまして、そういうものが国会承認なしに発効するということはあり得ません。ただ、貿易協定の場合もそうでございましたけれども国会承認以前の段階において、政府のレベルで行政権の範囲内で処理し得る事項があるはずでございまして、そういった点につきましては、政府間で発効前の処置として暫定的に実施するということは考えられようかと思います。  しかし、いまの段階漁業協定内容がどうなるかということはわからないわけでございますので、その協定内容のうち、どういう事項発効前に暫定的に実施し得るかという点は、はっきり申し上げることは不可能でございます。
  21. 石井一

    石井委員 交渉過程でありますから、あまり内容を追及いたしませんが、見通しとしては非常にスムーズにいっておって、そのタイムリミット内に妥結しそうだという見通しを持っておられるかどうかということ、これは簡単にお答えをいただいたらいいと思います。  それから、海運協定の問題がその次にありますが、これに関してあまり話を聞いておりませんけれども、これもすでに準備交渉に入っているのかどうかという点、この点もひとつお答えをいただきたい。
  22. 高島益郎

    高島政府委員 漁業協定につきましては、実は先週の土曜日に日中間協定案を相互に交換したばかりでございまして、交渉はきょうからやっと始まるということでございますので、いまの段階ではっきりした見通し、つまり簡単にいくかどうかという点は申し上げられません。  それから海運協定のほうでございますが、この委員会におきましても再三御答弁いたしておりますが、日中双方間でもう協定案についての交換を終わっておりまして、おそらく私ども考えでは、この漁業協定が終わり次第、海運協定交渉に入れるのではないかと思っております。
  23. 石井一

    石井委員 大平外務大臣は過日の記者会見で、日中平和友好条約締結に関して、まだスケジュールを明示する時期ではないけれども、たいした困難はなかろうと思う、こういう御発言をされておるのを拝見いたしましたが、いま政府委員答弁によりますと、逐次実務協定が固まってきておる。したがって、第三、第四というものが終わっていきますと、必ずこの時期が来ると思うのでございます。  ただ、私が非常に懸念しておりますのは、この間の日台路線の停止というふうな問題でございまして、基本的にやはり両国の、台湾の帰属、尖閣列島その他のそういうふうな問題、これが両者が確実に合意に達しない限り、この友好平和条約というものはむずかしいという感じが私はいたすのですが、そういう意味ではかなりの困難が、最後のこの有終の美を飾るべき条約にはあるというふうに私は見ておるのでございますけれども大臣の御見解はその点いかがですか。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 日中間を律する基本的なルールといたしましてはすでに共同声明が発出されておるわけでございまして、共同声明ワク内におきまして問題を処理してまいることを基本といたしておりまするし、またそうする以上は私は大きな困難はないと考えておるわけでございます。言いかえれば、共同声明ワクを越えて新たな問題の提起があるというようなことは私は予想いたしていないわけでございます。問題は、日中間友好関係を律するルールというものを条約的なものに固めて、より安定したものにしようということが基本考えでございますので、その限りにおきまして私は大きな困難はない、そう考えております。
  25. 石井一

    石井委員 そこで、日ソ平和条約交渉でございますけれども、これはまあ日中ほどに、はでに取り扱われていない向きがございますが、私が観察しておりますところ、ここ特に数カ月、緊密に文書の交換があり、またフランスの大統領の葬儀の節には空港その他で首脳会談というふうなものも行なわれ、日ソ首脳意思疎通が非常に緊密化しておる、こういうふうに考えるわけでございます。  もちろんその焦点平和条約シベリア開発だ、こう思うのでありますけれども、この平和条約交渉スケジュールに関しましても、いま日中に関してお述べになりましたように、スケジュールはまだ確実に言えない時期であるとしてもたいして大きな問題はない、もう非常に目前に来ておる一つ外交案件である、こういうお考えですか、それとも日中に比べて日ソの場合はニュアンスが非常に違う、こういうふうなお考えですか、この点はいかがですか。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 日中の場合は平和友好条約でございますが、日ソの場合は平和条約でございまして、当然のこととしてこれは領土条項というものが入ってくるわけでございますので、しかく問題は簡単でないと思います。この問題につきましては過去十七年間かかえてきた懸案でございますし、いまなお解決されていない問題でございます。したがって、これを解決しなければ平和条約締結できないというのがわが国立場でございます。  しかし、これを解決してまいる上におきましては、日ソ間におきまして意思疎通、あなたのおっしゃる意思疎通が十分行なわれて、あたたかみのある関係が樹立されてまいらなければならぬし、そのために不断努力が必要だと考えております。そういう意味におきまして、仰せのように最近日ソ首脳間の意思疎通がひんぱんに行なわれておるわけでございまして、そのことは日ソ間の理解を深めてまいり、日ソ間のいろいろな懸案解決につきまして、平和条約も含めましてそういう過程を丹念に踏んでまいりますことは非常に意義がありまするし、また効果が期待できることと思うわけでございまして、今後もそういう意味不断努力をしていかなければいけないと考えております。  ただ、それがいつになれば結実して平和条約締結ができるかという展望でございますが、いつごろになったらそれが可能であろうというようなことをまだ私から申し上げる自信はないわけでございまして、目下われわれは鋭意努力を積み重ねておるのだというように御承知を願いたいと思います。
  27. 石井一

    石井委員 日ソ平和条約に関する交渉が非常に堅実で、私はその点は高く評価したいと考えております。さっき、あたたかみがあるというふうにおっしゃいましたが、一番問題になりますこの領土問題に関して多少ともやはりソ連立場というものが変わりつつあるのかどうか、この辺はもちろんそういう発言ができるような時期でないことはわかりますが、何かそういう感触を最近お感じになっておりますか、この点はいかがですか。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 まあこれは解決済みであって、議論してもむだだというようなことではないのでありまして、去年の田中訪ソの際におきましても、大部分の時間がこのために割愛されて内容的な交渉が行なわれたということは、従来から見まして大きな前進であったと私は考えております。したがって、不断努力を積み重ねて理解を深めてまいる過程におきまして、双方理解をもちましてこういった問題を解決して、ほんとうの意味友好関係の基盤を築いていかなければならぬというふうに考えておりまして、そういうことについてソ連側も私は同じ考えでおられるに違いないと考えております。
  29. 石井一

    石井委員 田中総理の親書でブレジネフ書記長を招請されております。また、そのほかソ連首脳陣わが国に招くというふうな、こういうことがよくいわれておるわけなんですが、この辺の本年じゅうに実現の可能性の見通しはいかがですか。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのように、ソ連の三首脳をそれぞれわが国に御招待申し上げましたことは事実でございますし、また先方も原則としてそれを受諾されていることも事実でございますが、いつごろになったらそれがどういう姿で実現していくか、そしてそのうちどなたがまず参られるかというような問題につきましては、まだスケジュールはきまっていないわけでございまして、今後の外交折衝にゆだねられた課題であると考えております。
  31. 石井一

    石井委員 きょうは委員会最後になるかもわかりません。非常に総括的に、問題をあまり突っ込まずに質問をして恐縮ですが、最後に残された時間、韓国の日本人学生の問題について二、三点お伺いをいたします。  私は、これを取り上げるのは今回初めてでございますけれども事態をまことに憂慮いたしておるわけでございまして、特に十七日に早川、太刀川両氏が非常軍法会議検察部へ送検されました。これは新しい事態であります。二人の刑法上に関する地位が変化するときには事前に通告するというのが国際慣例であり、そういう確約もあったというふうに私は伺っておるわけでございますけれども、こういう行為をとられた。  まあ他国のことであるからつべこべ言えないという立場も私は理解できるのでありますけれども、やはりこういう事態になる場合はもう少し国際間の信義というふうなものがあってもいいのじゃないか、私はそう思うのでありますけれども、これに対して抗議をするべきでないだろうかどうだろうか、これも議論の分かれるところでありますが、この事態大臣はどう見られますか。
  32. 高島益郎

    高島政府委員 早川、太刀川両氏の送検につきましては、当然私どもとしては事前にそういう通報があるべきものというふうに考えておりました、それがそうでなくて、別なルートから知る立場に置かれたことはきわめて残念であります。これはあとでわかったことでございますが、韓国外務部といたしましては全く承知しておらずに、承知しておれば当然大使館に対しまして通報があったものというふうに思われますけれども、この事実を弁護士を通じて承知しましてから、直ちに大使館のほうから外務部に対しまして事情を尋ね、かつ今後のこういう重要な事態の進展についての通報について特に厳重に申し入れした際にわかったことでございまして、韓国政府内部の問題ではございますが、たいへん残念なことでございます。私ども今後はこのようなことが再び起こらないように、必ず事前に十分政府内部の連絡をよくした上で大使館に対しても逐次通報あるように厳重に申し入れしてございます。
  33. 石井一

    石井委員 いまの答弁から察しますと、これはかねがねいわれておることでございますけれども、韓国の外務部とそれから治安当局というものは全く独立しておる、これは当然でありますけれども。したがって、あなたのほうから向こうの外務部に交渉したって、現実に身柄を拘束しておるその立場の者には意見も通じなければ何ら拘束力がないという事態のもとにこれがどんどん進んでおる。国際間の問題であるからいたし方がないという面もありますけれども、これだったらほんとうに実際適切なわがほうの主張というものは通らない、こういうふうに考えるのでございますけれども、私はそこでこういう事態が起こっておるということ自体、何らかの新しい発想によるアプローチを変えていかなければいかぬ。  したがって、大臣、この問題に関して、たとえば朴大統領であるとか金首相というような人に高度の政治的な折衝というものをしないと、事務的な問題ではこれは解決しない時期にきておるというふうに考えられるのでございますけれども、この点で何か特別に外交ルート以外で、特使を派遣するとか何らかの手を打たれるというようなお気持ちはありませんか。この点はいかがですか。
  34. 大平正芳

    大平国務大臣 御案内のように日韓間の問題というのは、たいへん近接した国でございますし、いろいろな関係がありましたお互いの仲でございますので、非常にむずかしい関係でありますことは申すまでもございません。しかし、外交関係、韓国が独立されて独立国同士の関係になりました場合におきまして、私どもといたしましては独立国同士の公正な外交関係というものを打ち立てていくべきであるということを基本といたしておるわけでございまして、国際的なルールに従いまして、公正な外交関係を通じて両国間に生起いたしました問題を円滑に、しかも公明に解決してまいるということでいきたいと考えておるわけでございます。  その場合のとるべき手段といたしまして、通常外交ルートによる交渉ばかりでなく、いま石井さんがおっしゃるように高度の手段が考えられることは当然と思うわけで、そういう場合もあり得ると私は考えるわけでございます。本件の場合におきまして、いま直ちにそれではどうするかということについてお答えする用意はございませんけれども、いずれそういう高度の手段を講ずることによって問題の公正な解決に役立つというようなことでございますならば、それは十分考慮に値することであろうと私は考えております。
  35. 石井一

    石井委員 韓国政府の良識というものをも私は期待いたしますし、大臣もそうであろうかと思うのでございます。ところが、かなりの時間が経過いたしておりますが、最近のたとえば事務次官あたりの言っておられることを聞いておりましても、これは軍法会議が終わるまでは手が打てないのだ、もう外交的にはあらゆることをやっているのだ、こういうことでございますけれども、もしかりに軍法会議が終わり、いわゆる予想以上の極刑でも出た場合に、一体これは両国の国民感情というふうな面から大変なことになる。外務大臣をはじめ外務当局の当事者として、これまでのやってこられたことが善意と誠意に満ちておったって、これはたいへんな事態になる。その前に、私は何らかの政治的手を打たれるべきそういう時期がいよいよ来ておるのじゃないか、こういうことを感じます。  この点を与党としても申し述べまして、私のきょうの質問を終わりたいと思います。
  36. 木村俊夫

    木村委員長 堂森芳夫君。
  37. 堂森芳夫

    堂森委員 まず、外務大臣にお尋ねしたいと思いますが、ただいま日本に来ておりますところの米空軍の長官のマクルーカス氏が二十二日に外人記者会見をいたしまして、その席で、日本の自衛隊は将来増強され、海外任務を持つ日の来ることも予想されること、その他のことを言っておるわけですが、マクルーカスという人はアメリカの空軍長官でありますから単なる民間人でないのでありまして、そしてこの空軍長官がわが国に来て外人記者団を集めて公開の席でわが国の自衛隊の増強は当然あり得るということを発言し、海外派兵もあり得るということを発言したということは、これはきわめて重大なことだと思うのであります。  したがって、こういうアメリカの地位の高い一公人が公然とそういうことを発言したことに対して、外務大臣はどのようにお考えでありますか、まず、この点について伺っておきたいと思います。
  38. 大平正芳

    大平国務大臣 米空軍長官の記者会見の概要は報告を受けましたし、その会見の中で、自衛隊が海外任務を持つ日の来ることも予想されるというくだりがあったということでございます。この問題につきましては、従来政府国会におきましてたびたび言明をいたしておるわけでございまして、空軍長官の記者会見があったかといって政府見解に別段の変化はないわけでございまして、政府は憲法のワク内におきまして行動をしなければならぬ制約を受けておるわけでございまして、従来の方針と私は何ら変わりはないものと承知しております。
  39. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、もちろんそういうことは当然でありますが、外務大臣は、アメリカの空軍長官という公人が、軍の最高首脳の一人が、公開の席でわが国の内政干渉と考えてもいいこのような重大なことを発言したことに対して、外務大臣は、しからば、アメリカの空軍長官なりアメリカの軍部なりに抗議を申し込むとか、それに対する弁解を求めるとか、何らかの措置を講ずべきだと思うのでありますが、そういうお気持ちはないのでございますか。
  40. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 二十二日のマクルーカス空軍長官の東京の外人記者クラブでの発言に関しましては、その後国務省のキング報道官が米政府の従来の考え方に何ら変わりはないということを、二十二日の外人記者クラブの発言に引き続いて同席しておりましたシュースミス代理大使自身が、日本側の政治的、心理的いろいろな関係からそういうことはないということを言ったという趣旨のことを確認いたしまして、そういうのが米政府考えであるということを言っておりますので、米政府自体がこの問題について誤解があるというふうには考えておりません。
  41. 堂森芳夫

    堂森委員 局長が出られたのですが、局長答弁のように代理大使は空軍長官のそういう記者会見における発表については、日本の国内の問題あるいは心理的な影響等いろいろな条件があるので、これは仮定に対する答弁のようなものだというような意味の追加もしておることは新聞にも報道されておるのです。しかし、空軍長官が堂々と公開の席でしゃべったことに対して、向こうの政府は、そういうことを言っていない、そういう意図はない。従来からのアメリカ政府態度には変化はない、こう言っておるとしても、空軍長官はそういうことをはっきり言っておるのですから、外務省として——まあ防衛庁も来ておられますけれども外務大臣として当然私は空軍長官に何らかの意思表示をすべきだと思うのです。あるいは内閣全体としてそういう意思表示をはっきりしていくべきだと思うのですが、外務大臣からお答え願いたいと思います。
  42. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、日本政府政策日本政府がきめるわけでございまして、よそさまの干渉を受ける筋合いのものではございません。したがって外国のどなたかがこう言ったからというようなことで一々こちらが応酬してまいるといういとまは実はありません。私といたしましては、しいていえば、アメリカ大使館当局に御注意を喚起することはしてけっこうだと思いますけれども日本政府といたしましては、先ほど申しましたように、わが国立場というものを堅持してまいることではばかるところはないものと考えております。
  43. 堂森芳夫

    堂森委員 外務大臣、ことばを返すようですが、あなたは外国のだれがどう言おうとというような表現でしたが、アメリカの空軍長官ですよ。一新聞記者の人が言ったとか一民間人が言ったのとは違うのですよ。空軍長官がたくさんの記者を集めてしゃべったことは、何を言おうと日本政府は従来の方針を守るのだから、それでいいということはそれはいかぬと思うのです。それは日本政府としての権威を云々されても何ら弁解ができないような態度であると思うのです。  もう一ぺん念を押しておきますが、そうすると、そういうことに対しては、あなたは何もやらぬということでございますか。日本政府はもう態度は変わらぬのだから、それでいいのだ、という御意見でございますか。ほっておけばいいというのですか。それは私はどうかと思うのですがね。
  44. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカ当局におかれても誤解を生んではいけないということで配慮をいたしておるようでございますし、一つのマナーの問題として大使館当局に私どもが申し入れておく必要があろうかと思います。ただ問題は、私が申し上げている趣旨は、日本政府政策日本政府が自主的にやるのであるという自信をもって対処せにゃならぬということを申し上げておるわけです。
  45. 堂森芳夫

    堂森委員 それはもう当然のことです。わが国が自衛隊を廃止しようと削減しようと、あるいはあってはならぬのですが、増強しようと、日本の国の政府責任で行なうことは当然でありまして、独立国家の当然のやるべきことであります。何もアメリカその他の第三国から何ら干渉を受ける必要のないことであります。堂々と大使館を通ずるなり直接向こうの政府でもいいですから、外交ルートというものはあるのですから、空軍長官の発言の不当なことを当然意思表示をすべきである、私はこう思うのですが、外務大臣に要望しておきます。  それから、防衛庁来ておられますが、ああした空軍長官の発言をどう思っておられますか。まず、それから承っておきたい。
  46. 久保卓也

    ○久保政府委員 私ども国会で、たとえばアメリカはアジアから米軍を撤退するかというような御質問に対しまして、私ども見通しを申すことはあるわけでありますが、今回の空軍長官のことばは、英語と日本語ではやはりニュアンスが違っておるようでございまして、この英語に忠実に理解しますると、ひょっとしたら日本の自衛隊はいまよりも大きくなるかもしれないということもあり得そうだという一つ見通しを申し述べているというようなことでありまして、これが直ちに米側の政府見解でないことはただいまも御答弁があったとおりでありますし、質問に応じた一つの本人の見通しでしかないということでありますので、私どもそれをとやかく言うべき筋合いのほどのものではないというふうに感じます。
  47. 堂森芳夫

    堂森委員 防衛局長、もう一ぺん聞きますが、海外行動もあり得るということもそうですか。それは答弁なかったのですが、もう一ぺん……。
  48. 久保卓也

    ○久保政府委員 同じ文言が使われておりまするので、本人のニュアンスとしてはいまのように解釈できると思います。
  49. 堂森芳夫

    堂森委員 この問題についてさらに追及したいと思いますけれども、時間がありませんから他の問題に移りたいと思いますが、私は、やはり外務大臣にも申しておきます。防衛庁にも申し上げておきます。主権国家としての日本に対してそういうふうな軽々しい——たとえ仮定のもとに行なわれた質問に対して答弁する場合でも、やはりわが国の自主的な立場というものをそこなうような発言をやってもらっちゃ困るということを厳重に申し入れてもらうようなことを今後やるべきだ、私
  50. 高島益郎

    高島政府委員 前に当委員会におきまして、太刀川、早川両氏のいわゆる容疑事実につきまして、韓国側が説明している内容を御披露したことがございます。その後、弁護士を通じまして両名から確認したことで追加すべきことといたしましては、これは前にも申し上げましたけれども、昨年十二月来数回にわたって学生指導者と会っているということをはっきり弁護士に伝えてきたということだけであります。ただ、太刀川氏につきましては、会ったことは会ったけれども、それは取材のためであったということをはっきり申していたということでございます。
  51. 松本善明

    ○松本(善)委員 この事件は、学生運動の幹部と会った、デモの計画を聞いた、デモの写真をとったというのは、これは客観的に見ればまさに取材活動であって、本人の取材目的であったということをまさに裏づけることであると思うのです。そういう取材活動が、こういう形で死刑を含む大統領緊急措置四号によって弾圧をされておるということは、単にいま逮捕されておる二人の学生諸君の——学生といわれていますけれども、実際はフリーのジャーナリストだと思うのですが、その二人の学生だけでなく、韓国で活動しておる日本人の記者諸君すべての運命にかかわる重大な問題だというふうに考えています。  外務大臣、この問題が在韓日本人の記者諸君のすべての運命にかかわる重大な問題だということを認識していますか。外務大臣にそういう認識があるかどうかを伺いたいと思います。
  52. 大平正芳

    大平国務大臣 容疑事実を正確にわれわれも知り、そしてそれが正当な処理を受けなければならぬと考えておるわけでございまして、容疑事実の解明ということにわれわれもつとめておるわけでございまして、仰せのように、これが一つの取材というものであったのかどうなのかという点は、まだ私は寡聞にして十分解明を聞いておりませんので、この段階で答えようがございませんけれども、十分事実を確認いたした上で、不当な取り扱いのないようには処理していかなければならぬと考えております。
  53. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは驚いたことですね。内容について韓国側で発表されてから一月にもなろうとしております。私は先ほどからの外務大臣外務省当局の説明を聞いておりますと、一体外交保護権を行使するお考えがあるのかどうかということを疑いたくなります。事実の有無を正確に直ちに韓国の外務省から当然報告を要求する権利がある。それに基づいて外交保護権を行使するかどうかということを考えなければならない。わからなければわからないで済むという問題ですか。海外にいる日本人の生命や身体の安全については、外務省はそれほど軽く考えておるのですか。  私は先ほど来のアジア局長その他の答弁を聞いて、まことに腹の底から怒りを感ずる。それほどたよりない外務省なんですか。これについて外交保護権をほんとうに行使する気があるのかどうか、外務大臣にお聞きしたいと私は思うのです。
  54. 大平正芳

    大平国務大臣 外交保護権を周到に行使しなければならぬ立場にあり、責任を持っておりますことは御指摘を待つまでもないことでございますし、また今回の事件につきましても昼夜を分かたず私ども努力をいたしておるつもりでございます。  ただ、先ほども申しましたように、相手国側から、私どもの照会に対しまして、時を逸せず正確な返答が必ずしも十分参ってないということは、たいへん残念なことだと思うのでありますが、外務省がそれを怠っておってそうであるということでございますならば、あなたのおしかりは受けますけれども、私どもはそうではなくて、最善を尽くしておることだけは御理解をいただかなければならぬ、外務省の名誉のために。
  55. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういうことを言われますが、送検をしたという事実すら外務省に直接知らされないでしょう。それで先ほど同僚委員が質問をしたときに、遺憾である、残念であるということを言い、いまも外務大臣言われたけれども、抗議するということを一言も言わないじゃないですか。弁護士から聞いてから、何ごとですか。  当然に外務省として国を代表して先に聞かないで、それを黙って見ているという法はないと思うのですよ。それについて外務大臣、抗議も何もしないのですか。あたりまえのことで、残念だということでここでひとり言をしゃべっておるだけですか。
  56. 大平正芳

    大平国務大臣 事柄をなす場合に、抗議するということも、なすべき場合はしなければならぬわけでございまするし、問題は早期に公正な解決をはからなければいかぬわけでございます。その一点に私ども努力を集中しておるわけでございまして、高姿勢な態度をとること必ずしもあらゆる場合に適切であるとは私は考えないわけでございまして、そういった点につきましては、外交当局を御信頼いただきたいと思います。
  57. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、いままでの経過から見るととても信頼できないというふうに思うのです。これは死刑を含んでいるのですよ。軍法会議にかけられるについては、黙って見ているだけで、打つ手はないと言っているじゃないですか。そういうことになってから手が打てますか。  私は、それではお聞きしたいのは、まず取材活動が弾圧をされたというふうに認識をしているかどうか、あらためてもう一度お聞きします。そういう認識には達していないかどうか。
  58. 高島益郎

    高島政府委員 これは弁護士を通じて本人太刀川氏がそう言っているということでございまして、私どもが、太刀川氏が韓国でこれまでどういう行動をしてきたかということを確認する方法がございませんので、いま先生のおっしゃったような判断を下す立場にはございません。
  59. 松本善明

    ○松本(善)委員 外交保護権を行使するについての基本的な外務省立場でありますが、人権に関する世界宣言は国連の総会を通過をしております。私は、今回の事件は言論、報道の自由、人権宣言の十九条にも違反をしておるし、それから人権宣言の十一条の二項の罪刑法定主義、あの二人の諸君は緊急措置令の発動以前の行為について罪責を問われているわけですから、これはとても文明国では考えられないことです。そういう意味では、明白に世界人権宣言に違反をしております。  こういう日本人の人権が海外で明白に侵害をされているという場合に、その人権宣言を守れ、そういう立場で人道的な配慮をすべきであるということを外交保護権の行使として日本政府がやるという考えはないのかどうか、当該国の法令が人権宣言に違反し、人権を侵害をしておるならば、唯唯諾々としてそれに従うのかどうか、その点についてお聞きしたい。
  60. 高島益郎

    高島政府委員 私ども日本政府立場として、いろいろ韓国国内で公布しております法令についてとやかく言う立場にございませんので、その点については一般的な、たとえば先生のおっしゃったような罪刑法定主義の立場からの問題点その他は十分に先方に伝えてございます。
  61. 松本善明

    ○松本(善)委員 立場を聞いているのですよ。何をやったかじゃないのです。人権宣言に反しているというような場合に、それを守れということを要求していくという立場外交保護権を行使をするのか、それともそれがいかに不当残虐なものであろうとも当該国の法令がそうなっておるならば唯々諾々としてこれに従うのか、そういうことですよ。それによって韓国にいる日本人の記者諸君は、どういう立場日本政府が自分たちを守ってくれるのかということがわかるわけです。はっきり答えてください。
  62. 高島益郎

    高島政府委員 一般論といたしまして、外国がその国の法令に基づいてとった措置について、わが国がいろいろ人道上の立場あるいはその他から判断し、批判するということは適当でないと思っております。
  63. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣、確認されますか。人権宣言に違反する、言論、報道の自由についてそれが刑事事件に処せられる、そしてそれはしかも罪刑法定主義に違反をしている。かつての取材活動ですよ。かつての取材活動までも在韓日本人記者が処罰をされるという立場にあることを認めるはこう思います。時間がありませんからこの問題についてはこのぐらいにしておきます。  次の問題は、外務大臣は昨日アメリカからお帰りになりました。私は、今回の外務大臣の訪米についてはどうしても納得できないものがあるのであります。国会中であります。しかもあなたは行かれる前にこの委員会で、河上委員でありましたか質問しましたときに、ジャパンソサエティーの年次総会での演説をかねてから頼まれておったので、実は国会が延びないと思っておった、それで国会には差しつかえないと思うので、行けるように返事をしておったから行くのだ、たしかそういう意味答弁をあなたはしておられたと思うのです。しかし、国会はまだ続いておるわけです。そして政府が出した案件等も審議中であります。  私がそれをしつこく言いますことは、たとえば先般資源総会がありました。国会中だという理由で閣僚は一人も出ていないのですよ。資源総会というものが非常に重要な会議であり、またわが国資源のない国であり、また、世界じゅうのいろんな国からも、ある意味では日本経済的な大きな発展というものについていろいろ注目を浴びておる国でもあり、私は、資源総会などには堂々と外務大臣が出られるべき国際会議だったと思うのです。そういうときには閣僚は一人も出られない。そして今度は国会中であるにかかわらず、一民間の協会の会合であるジャパンソサエティーの年次総会に演説を頼まれておったから、国会が延びるか延びないかわからなかったので、済むという前提で承諾しておったから行ったという、こういう説明でありましたが、私はどうしても納得できないような気持ちになるのです。  これについて外務大臣はどうお考えでございましょうか、まず聞いておきたいと思います。
  64. 大平正芳

    大平国務大臣 政府国会に対して責任を持っておるわけでございまして、国会の御審議に応じますること、第一の任務と心得ておるわけでございます。したがいまして、終始そういう態度で対処してまいりましたつもりでございます。今度の場合もその方針に変わりはないのでございますけれども国会がそのころ会期を終えておるだろうという想定で先方にお約束をいたしておりましたわけでございまして、もし国会のお許しが得られれば、私もその約束を果たしたいと考えておはかりをいたしましたところ、国会のほうの了承が得られましたので、訪米してお約束を果たしたわけでございます。
  65. 堂森芳夫

    堂森委員 じゃあ資源総会には閣僚は一人も行ってないのですが、これはどういうふうにお考えでございますか。
  66. 大平正芳

    大平国務大臣 いま申しましたように、国会審議第一でございまして、当時は国会審議が山にかかっておったときでございましたので、一日も東京を離れるということはできないと判断いたしまして、国会に海外出張をするということをおはかり申し上げることも差し控えたわけでございます。しかしながら、仰せのように資源総会というのは大事な国際会議でございますので、われわれといたしましては慎重に人選をいたしまして、それに最も適した方を日本首席代表としてお願いをしたわけでございます。
  67. 堂森芳夫

    堂森委員 いまの答弁には私は納得しかねるものがありますが、済んだことをいま追及してみてもどうかと思います。  質問を進めていきたいと思います。  新聞の報道によりますと、あなたはアメリカを訪問されまして、大統領はじめ向こうのアメリカ政府のいろんな人ともお会いになっておる。あるいはまたおそらく民間人ともお会いになった場合もあるだろうと思うのです。  二、三の点についてお尋ねしたいのでありますが、新聞にも報道されておりますシベリア開発についてニクソン大統領ともあなたはお話しになった。ニクソン大統領は、非常な積極的な賛意とは書いてありません、積極的に重大な考慮を払おう、こういう意味でございますが、あなたとの積極的な話し合いをしたというふうにも報道されておるのでありますが、もちろん政府の第一の責任者は大統領でありますから、大統領は、しからばどういうような意向でシベリア開発に臨んでおるのか、まず、この点を伺っておきたい、こう思います。
  68. 大平正芳

    大平国務大臣 シベリア経済開発に対するわが国の協力問題でございますが、これは御案内のように、日ソの間におきまして従来から当事者の間でお話し合いが進んでおるばかりでなく、政府首脳間におきましても話題として取り上げられてまいりましたことは御案内のとおりでございます。わが国といたしましては、できるものから逐次実行に移したい、その場合アメリカの参加を希望するという態度に終始してきたわけでございます。そういうわが国の方針、そしてこれまでとってまいりました経過というものをアメリカ政府首脳に説明をいたしまして、これに対しましてアメリカ政府首脳理解を示されたことと、それからアメリカの協力につきましてはポジティブリーに検討したいということでございました。もとよりこれは民間がやることでございまして、そういうものが円滑に進んでまいりますようにエンカレッジをするという意味であろうと私は思うのでありますけれども、そういう反応でありました。
  69. 堂森芳夫

    堂森委員 それじゃさらにお尋ねしますが、大統領は積極的に協力していこうという心境であなたといろいろ話し合った、こういう理解をしていいわけですね。そこで、あなたは訪米中に、実際やるのは民間の経済人でありますが、そういう人たちとの接触はあったのでございますか。あったとするならば、どういう感触を得て帰られたのでありますか。なければこれはどうにもなりませんが……。
  70. 大平正芳

    大平国務大臣 シベリア開発に対する協力問題につきまして民間の方とお話ししたことはありません。
  71. 堂森芳夫

    堂森委員 ないわけですね。そうすると、向こうにおける経済界の今後の動向等についてはつまびらかに実際の現在における状況等には外務大臣は正確には把握しておられるということは言えないわけですね。
  72. 大平正芳

    大平国務大臣 この問題は、わが国の民間の当事者がアメリカのビジネスと相談すべきことでございまして、日本政府がアメリカ民間とコンタクトを持つべき筋合いのものではございませんので、民間のほうでおやりになっておることと思います。
  73. 堂森芳夫

    堂森委員 ところが、従来から、アメリカの輸銀は方針として、議会の雰囲気等から輸銀からのシベリア開発への融資はきわめてむずかしいのではないか、こういうふうにいわれてきた。そうした報道が絶えず新聞にもございました。ところが、あなたが訪米しておられる間に、大統領が近くモスクワを訪問する等の関係もあって、ソ連につくる肥料会社の資金として輸銀の資金一億八千万ドルですか何か融資されることにきまった、こう向こうの輸銀の総裁も発表しておる、これはいろいろな事情等もあって——事情というのは、アメリカには肥料が足らぬのだから、アメリカで肥料をつくろうとするとたくさんのエネルギーを必要とする、それでソ連へ融資をしてソ連でつくった化学肥料を輸入するほうがアメリカとしてはエコノミックに考えてもそのほうがいいのだ、こういうような判断もあって、ニクソン大統領がモスクワを訪問するについてのいろいろな考え方もあってそれがきまったのだ、こういわれておるのでありますが、そうすると、シベリア開発についての輸銀の融資ということはそうむずかしくないという見通しが持てるのでありますが、外務大臣はどういう判断をしておられるのか。これは、向こうの輸銀総裁に会われたか会われぬかそれは別にして、どういう判断をしておられるのか、それも承っておきたい。
  74. 大平正芳

    大平国務大臣 この問題はアメリカの問題でございまして、新通商法案審議にあたってアメリカのコングレスがどういう態度を示すかということが一つの問題点であろうと思いますが、それはアメリカの政府とアメリカのコングレスの間の問題でございまして、私がとやかく言うべき筋合いのものではございません。日本政府としてはアメリカの参加を希望しておるということを先方の政府に伝えてこれまでの経過を説明して理解を求めておいたにすぎないわけでございまして、それから先のことはアメリカ政府がコングレスとの間でどのようにリードされるのか、それは私の関知したことじゃないわけでございます。  ただ、希望といたしましては、円滑にサイベリアの資源開発につきまして日米間の協力が可能であるようなことを私は希望をいたしております。
  75. 堂森芳夫

    堂森委員 私がお聞きしておるのはどういう感触を得て帰られたかということをお聞きしておるので、あなたに直接どうせいということを私は言っておるわけじゃないのです。そう一々突き放すような御答弁じゃなしに、外務大臣としてどういう感触を持ってお帰りになったかということを私はお尋ねしておるのであります。あなたに直接どうせいということを言っておるわけじゃないのであります。  そこで、ニクソン大統領ともお会いになったわけです。あるいはまたあなたはエネルギーに関する協定の話し合いも大筋をきめてきた。これはあくまで今後事務的に両国の間の事務レベルでの交渉でそうした協定ができれば当然国会へおはかりになるのじゃないかと思うのでありますが、それはそれとして、どのような内容になるのか、新聞にはあらまし報道されておりますが、概略でようございます。あるいは事務当局でもけっこうであります。
  76. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ただいま御指摘のございました協定は、日米エネルギー研究開発協定ということでございまして、これは昨年の総理訪米の際の共同コミュニケにもうたわれておりますように、日米間にエネルギーの研究開発を協力して進めていきたい、こういう趣旨に基づきまして先般来事務的な折衝が米側と行なわれてきておったわけでございます。今回外務大臣の訪米にあたりましてラッシュ国務次官との間で、この問題が実質的に合意に到達した状況にかんがみてなるべくすみやかにお互いに必要な手続を進めて早期に協定署名発効が行なわれることを期待したい、こういう趣旨の話し合いが行なわれたわけでございます。  協定そのものは日米間で原子力以外の分野におけるエネルギーの研究開発を協力していきたいということでございまして、たとえば太陽熱、地熱、石炭のガス化、液化、水素エネルギー、これらいろんな分野につきまして協力をしていこうということになりますが、協力の態様といたしましては、専門家の会合、情報の交換、共同計画の実施、こういうことが含まれることになります。また、こういう協力を進める上におきまして年に一度程度は全体会議を開きまして研究開発の実施、促進をはかっていきたい、こういう趣旨のものでございます。
  77. 堂森芳夫

    堂森委員 アメリカ局長にもう一ぺん聞きますが、いつごろこれが具体的に協定締結に至るようになるのか、これもあわせて承っておきたいと思います。
  78. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 この協定は、行政取りきめの形をとることになるわけでございますが、国内的には閣議の手続を経ましてなるべく早い時期にということを考えておりますけれども、いまいつということをまだはっきり申し上げる状況に至っておりません。ただなるべく早く国内手続を進めたい、こういうふうに考えております。
  79. 堂森芳夫

    堂森委員 外務大臣にお尋ねしますが、あなたが訪米中に新駐日大使の問題について話はなかったのですか。あなたのほうから話はされたのですか。もうすでに前大使が離日して半年ぐらいになるのじゃないでしょうか。そしていまだに新しい駐日大使がきまらないということについて——すでに実際は新大使の人選はホッドソン氏ですか、きまっておるのであるが、上院の外交委員会における賛成がまだ得られていないというようなことに事情があるようでありますが、この見通し等について、あなたが滞米中に得られた感触を御答弁願っておきたいと思います。
  80. 大平正芳

    大平国務大臣 新駐日大使の任命につきましては、アメリカ政府といたしましてはそれにふさわしい方をということで人選にたいへん手間どったけれども、それは日米関係が大切であるから人選に慎重を期したという点が一点指摘されました。  それから第二点は、いま堂森さんがおっしゃるとおり、この任命につきまして、上院の外交委員会の御承認を必要とするわけでございますが、外交委員会の開会自体が委員会の御都合でまだ開かれていない状況でありまして、これは遠からず開かれるであろうし、実質的な困難はないということでございました。したがって、私としてはそう遠からずこの御承認はあるものと期待いたしております。
  81. 堂森芳夫

    堂森委員 時間があまりありませんから、もう一点だけあなたの訪米中におけるニクソン会談について関連してお尋ねしておきたいのですが、前からニクソン大統領が日本を訪問するとか、あるいは天皇が訪米されるとか、いろんな報道がたびたびなされております。今回あなたの訪米中において、ニクソン氏と会談された際、この天皇の訪米、ニクソン大統領の訪日等については話は全然なかったのでございますか、この点もあわせて答弁を願っておきたいと思います。
  82. 大平正芳

    大平国務大臣 双方からその問題は出ませんでした。
  83. 堂森芳夫

    堂森委員 なかったのですから、そういうこともないのでございましょう。  そこで、もう一つの点についてお尋ねしておきたい、こう思うのです。先般来北方海域でわが国の漁船がソ連漁業監督官からソ連関係国内法違反を理由に罰金を取られた問題が起きた。そしてこれはお金——何か先月の十八日から二十八日までの間に七隻が罰金を取られて、百ルーブルから二百ルーブルぐらいまで、そのうちの一隻は金のかわりに腕時計を二個と中古の方向探知器を取られておる、こういうことが新聞に報道されておるのでありますが、水産庁来ておられると思いますが、今日までにどれくらいの件数、北方海域でそういう事故が起きておるのでありますか、まず御答弁を願いたいと思います。
  84. 大和田渉

    ○大和田政府委員 本年の四月の十八日から二十八日に至る間に七件起きております。そのうちの六件につきましては百ルーブルもしくは二百ルーブル、あるいはそれに相応する円貨というものを罰金と称して取られております。それから御指摘のありましたように四月二十八日、最後の一件についてはルーブルもないし円もないということで腕時計二個と、それから中古でございましたけれども方向探知器を一基持ち去った。  これに対しまして、われわれといたしまして五月二十一日にそれらの事実を確認いたしました上でソ連政府に対して、これは国際法及び日ソ間の諸協定に違反するという抗議をしまして、特に罰金を徴収するというようなことは明らかに不法な行為であるということで、罰金及び持ち帰った物件の返還を求める抗議をいたしました。  なおその後五月十九日に二件発生しております。したがいまして、先ほど先生の御質問のこのような事件は全部で何件かということについては、合計九件と申し上げられると思います。  五月十九日に起こりましたうちの一件につきましては、船舶を連行したという事実がありまして、われわれとしましては直ちにその釈放、返還ということを求めまして、これは二十二日に釈放されております。  それからもう一つの五月十九日に起こりました件については、現在その船が日本に向かって航行中でございます。したがって詳しい事情はまだわかっておりません。  以上のような実情でございます。
  85. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、外務省から抗議を申し込んでいるわけですね。そしてソ連政府側の返答の中にどういう法律根拠によってしたかという説明はきておると思うのでありますが、この点について承っておきたい。
  86. 大和田渉

    ○大和田政府委員 われわれのほうが在ソ大使館を通じて抗議を申し込みまして、その際、抗議に対して先方がその場で答えた返事といたしましては、ソ連のこれら監督官の行なった行為は、ソ連の国内法に違反した行為なのでその国内法に基づいて徴収したということを言っております。それに対しまして私のほう、在ソ大使館員からは、ソ連の国内法に基づいてそういう行為がとれるはずはないのだということを言い返した段階になっております。
  87. 堂森芳夫

    堂森委員 そうすると局長、それに対して何ら説明はないのでございますか。たとえば大陸棚条約の違反である、こういった罪じゃないのですか。日本は大陸棚条約に入っていないから、ないのだ、こういう抗弁もしておられるとか新聞にはいろいろなことが書かれておりますが、どういうことでございますか。
  88. 大和田渉

    ○大和田政府委員 先方は、大陸棚条約に違反している行為だからということは言っておりません。ただソ連の当該国内法が、大陸だな上部の水域におけるそのような行為が罰せられるという規定があるのだという説明をいたしております。
  89. 堂森芳夫

    堂森委員 これは局長お尋ねしますが、ソ連の監督官が日本の漁船から直接現場で罰金を取り立てる、そういうことは可能なんですか。できないのじゃないですか。
  90. 大和田渉

    ○大和田政府委員 私どものほうの抗議がまさにその点でございまして、臨検ということはできるわけでございますが、その場合に、もし日ソ間の取りきめの違反、たとえばカニ、ツブ船がほかのものをとるとかいうような問題がありましたら、それをわがほうに先方は通報するという約束になっております。したがって、通報に基づいて日本側がその事実を確認した場合には、必要に応じて日本の法令で罰するというわけでございまして、ソ連側が直接罰金をとるということはできないわけでございます。
  91. 堂森芳夫

    堂森委員 局長、こうでないですか。日ソ漁業条約第七条ですか、日ソ漁業条約違反に対しては臨検、拿捕はできるが裁判権は漁民、漁船の所属国にゆだねる、こうなっているのではございませんか。それに対して、わが国政府ソ連政府に対してそういう一片の抗議だけで解決はできないのじゃないですか。どうなっているのですか。どうもわからないのですがね。
  92. 大和田渉

    ○大和田政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、日本側の抗議は一般国際法、つまり北洋の公海の上で起きた事件でございますから、一般国際法にそむくという点と日ソ間の諸取りきめに反する、そのうちの一つがいま御指摘日ソ漁業条約の第七条に基づくものであるということは先方に説明しております。  ただわれわれとしては、われわれの抗議によって先方が非を認めてそのまま返還するという措置をとればよろしいのでございますけれども、もしその行為をとらなければ、さらに強く抗議を申し込むという措置も当然考えられるというふうに考えております。
  93. 堂森芳夫

    堂森委員 これの解決ですね。取られた罰金はささいなものでありましょう。しかし、日ソ漁業条約で、はっきり規定されたわが国の権利というものが、これは完全にじゅうりんされておるわけですね。それでありますから、国益を守るために、もっと強硬にソ連当局と当然のごとく折衝していくべきだと思うのであります。  そこで、水産庁おりますね。——最近ソ連の大型漁船が日本の近海において操業しておるということ、これは非常にひんぴんとあるのでありますか。私はしろうとでわかりませんが、いろいろなことを聞くのでありますが、どんな状況になっておるのでありますか。
  94. 平井義徳

    ○平井説明員 お答えいたします。  昨年末からことしの五月ぐらいにかけまして、ソ連漁船が非常にたくさん日本の近海に参りまして、わが国の沿岸の漁民との間にトラブルがありましたのですが、最近になりましてわれわれが外務省を通じまして強く抗議をいたしましたのと、もう一つは漁期が過ぎたという事情もあったかと思いますが、現在われわれのところではほとんど一隻も確認しておりません。全部帰ったというふうに私たちは了解いたしております。
  95. 堂森芳夫

    堂森委員 かなりわが国の沿岸漁業ソ連のそうした不法なやり方によって被害を受けておると思うのでありますが、外務省としてはどのような交渉折衝をしておられるのでありますか。  それから、私はもう時間がありませんからやめなければいけませんが、この罰金の事件についても、強く、繰り返しソ連側の陳謝と罰金の返還と、これは当然求めなければいかぬ、そして漁業条約というものが正当に守られるような状況をつくるための格段の努力をしてもらいたいということを要求しまして終わりたいのですが、いまの最初の質問について御答弁願いたい。
  96. 大和田渉

    ○大和田政府委員 第一の御質問でございますが、おっしゃるとおりに日本の近海でソ連の大型船が操業している。一般的なそういう問題と、特に伊豆沖の銭州というところの近辺で、サバの産卵場でございますが、そこで、わがほうが自主規制をして一本釣りに限定しておるにかかわらず、先方は網で魚をとるというような問題がございまして、それらのすべてをくるめまして、一体日本側の漁具その他にどの程度の損害が出たのかということを、水産庁から的確な資料をいただきまして、それをもとに四月三日に損害賠償九千六百万円の要求というのをいたしております。  以上でございます。
  97. 堂森芳夫

    堂森委員 終わります。
  98. 木村俊夫

  99. 土井たか子

    ○土井委員 私は、まず問題になっておりますインド核実験について一つお尋ねをしたいわけでございます。  昨日、衆議院の本会議場でインド核実験に対しまして抗議をいたします決議を全会一致で議決したのでありますが、ただいま全世界の各国ともインド核実験に不満の意を続々と表明しているわけでございます。  そこでまず外務大臣インドと申しますと御承知のとおり五億七千万人という人口のうちで大体概算二億数千万人がぼろをまとって、たいへんな貧困な最低生活をしておる。年間大体、これも概算ですが、三百六十万トンぐらいの食糧輸入や経済援助でやっと飢えをしのいでいるというのがかの国の実情であるはずであります。ネール首相時代は、インドは非同盟平和主義を唱えてまいりました。大国の核武装を非難してまいりました。その国が、たとえ平和利用目的のものとはいえ、国際世論に反してまでも核実験に踏み切ったという理由はどの辺にあるというふうに政府としてはお考えでいらっしゃるか、まずそれをお伺いしたいと思います。
  100. 高島益郎

    高島政府委員 インドがどのような政治的理由によって、あるいはその他の理由によって今回地下核実験に踏み切ったかという点につきましては、私ども推測いたすことはいろいろ可能でございまするけれども、こういう席で申し上げることは慎まなければならないと思います。  ただ、インド政府が正式に申しておりますことは、今回の地下核実験はもっばら平和的利用のためであって、将来インドのいろいろな土木工事その他に核を使うことを目的としたものであるということは言っております。
  101. 土井たか子

    ○土井委員 いまのお答えでは確かな政府見解というわけにはいかないと思うのでありますが、しかし一応インドの国内においては、いままで報ぜられるところによりますと、各政党は右から左に至るまで核実験の成功には一様に歓迎の意を表しているというふうなことになっております。これは、考えてみるとインドの威信向上に役立ったというふうなことで問題にされている。  そうなってまいりますと、核保有国になったことで国家の威信が高められる、国際社会、国際舞台において国の影響力というものが増していけるということなら、今後潜在的な核保有国ということが考えられる国々に対して、こういうふうな連鎖反応というものが呼び起こされるという可能性があるのじゃないか。  たとえば、とたんに考えられるのは、イスラエルなんというのはそういうことでありますけれども、イスラエルがもしこういうふうな連鎖反応を起こすということにでもなれば、中近東にあるところの緊張度というものは非常にたいへんなものになるわけでありまして、こういうふうな問題に対してわが国としてはどういうふうに対処しなければならないか、非常にこれは大きな問題だと思います。  したがいまして、この点に対してどういうふうな対処をしなければならないかということの御見解をひとつ、これは追い打ちをかけるようでありますけれども、はっきりお伺いしたいと思うのです。
  102. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国の核政策はすでに確立されておりまするし、国会におかれましても圧倒的な支持を得ておるわけでございます。したがいまして、政府といたしましてはそのラインに沿いまして、内政的にも外交的にも精力的に処置していくという以外に分別がないわけでございます。すなわち、核拡散の傾向をできるだけ抑制してまいることに今後とも努力してまいらなければならぬことは当然でございまするし、そして核エネルギーの利用ということにつきましては、平和目的に厳格に限定してまいるように周到な配慮を内外にわたってしていかなければならぬものと考えます。
  103. 土井たか子

    ○土井委員 核抑制、核についての平和利用、これはもう原則だと思うのですが、そういうことを表明されたのでありますから、ひとつこの点ははっきりさせておきたいということがございます。それは人間の知能によって開発された兵器、しかしながら、一たん使えば人類の破滅という極限に達する可能性を持っている兵器、これに対していかにこれを押えていくかというのは、いわゆるバランス・オブ・パワーの上に乗っかった問題だと思うのです。  いままでこの核兵器については、大体このバランス・オブ・パワーの上に乗っかって、取り扱いについて大きく分ければ二つの選択の道があったと思います。その一つは、いまもうすでに核を保有している国に対してその核を凍結するという方法、あと一つの方法は、これはおそらくいま外務大臣が御答弁になったことに非常にかかわり合ってくるわけですけれども、核を拡散させて、多くの国が核を保有して、バランスをそこで保っていくということ、この核戦争の危機の増大ということを防いでいく二つの選択があると思うのですね。  そこで、それに対しまして、核不拡散条約によって核を凍結してしまうというふうな選択が一応なされたわけでございますけれども、核不拡散条約の前提にあるのは、アメリカとソビエト、米ソが核軍縮を誠実に履行するということであります。このアメリカとソビエトの主導のもとにつくられた核兵器の不拡散条約、前文と六条にそれは記されているわけでありますけれども、これは御承知のとおり査察協定というものが結ばれなければならないということがどうしても必要条件になってくる。  ところが、いま現実に見てまいりますと、いまだに世界の核軍縮はされていない、核保有国数の拡大されていくという現実がある。ここにおいて、米ソ責任というものは非常に重大だというふうに言わざるを得ないわけですけれども日本をはじめ、非核保有国というものが強く要求している地下核実験の禁止というのがいまだに実現していないというのも、いわばこの米ソを中心にした核保有国責任であると思われます。  これに対しまして、いま外務大臣はそういう御答弁をなすったわけでありますから、ひとつ、外務大臣の御所見を、この節お伺いしたいと思うのです。
  104. 大平正芳

    大平国務大臣 いま土井先生の言われたことに全く同感でございまして、そういう方向に、わが国としても持てる影響力を最大限に発揮して努力してまいることがわれわれの任務であると心得ております。
  105. 土井たか子

    ○土井委員 非常に簡明な御答弁ですが、それならば具体的に、インド核実験に対してどうなのかということをひとつはっきりさせておかなければなりません。先ほども申し上げたとおり、昨日は衆議院の本会議場で全員一致でインド核実験に対しての抗議の決議をいたしました。しかし全世界に目を投じますと、いま報じられている限りにおいても、カナダは食糧関係の援助は人道上続けるけれども、しかしすべての援助は一時停止する、計画は再検討しなければならないというふうに述べておりますし、西ドイツにおいては、野党も開発援助の打ち切りということをしきりに要求しているわけであります。さらに国連でも援助については再検討すべきであるというふうな声もだんだん出てきている。  わが国としては、インドに対しまして、きょうの報道によりますと、経済援助について、援助額の削減等々をお考えになっているようでありますけれども、一体具体的にこの問題に対してどういうふうにお考えになっていらっしゃるかということを、ひとつここではっきりお伺いしたいと思うのです。
  106. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど石井委員の御質問にもあったわけでございますけれどもわが国インドに対する経済協力を今後どのように処理してまいるかということにつきまして、まだ各省の間で十分討議をいたしておらないわけでございます。政府部内におきまして討議をした上で、わが国としてどう対処するか打ち出したいと思いますので、いまの段階でこれはこうする、あれはこうするというようなぐあいに私から具体的に御答弁申し上げますのは、しばらく時間をかしていただきたいと思います。
  107. 土井たか子

    ○土井委員 ただその節具体的にどうされるかということの根幹にはどういう考えがあってそういう具体的な対策を打ち出されるかという、その根幹にある姿勢をひとつはっきりこの節確かめたいと私自身は思うのです。  それはインドが核を保有するということ自身に対して、日本としては非保有国として、核は持たない、つくらない、持ち込まない、さらに実験もしたがって当然のことながらやらない。そういうことから核を保有することに対する抗議ということであるのか、あるいはインドというものが核を保有したこの現実を見た場合に、発展途上国としての認識をもうインドに対しては持たないというふうな意味においての対策であるのか、これはたいへん意味が両者違うと思うのでありますが、いずれの立場に立ってインドに対しての対策をいま具体的にいろいろ講じられようとしているのでありますか。この点はいかがでございますか。
  108. 大平正芳

    大平国務大臣 経済協力政策は、少なくともいままでは御案内のように、発展途上国あるいは後発発展途上国に対しまして、先進国がその経済の自立に対しまして、またその国の経済計画に対しまして応分の貢献をするというたてまえでできておったわけでございまして、核政策との関連において経済協力が問題になりましたことは今回初めてでございます。  したがって、こういう問題の処理にあたりまして、そういう基本的な考え方も含めまして、日本としてはどう対処するかという点は十分吟味してみなければならぬ課題であると思いますので、しばらく時間をかしていただきたいと思います。
  109. 土井たか子

    ○土井委員 しばらく時間、しばらく時間と言われますが、やはりタイミングというものは、外交にとっては、これは釈迦に説法になりますけれども、非常に大事だと思うのであります。したがいまして、この基本姿勢というのは、すでに外務省当局としては持ち続けてこられている姿勢があると思うのですよ。日本外交姿勢のこれは根幹ともいえる問題だと私は思うわけでありますが、ひとついま述べたことについても基本姿勢からもう一度再検討されるという意味の御答弁であったのでありますか。
  110. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国の核政策の選択は非常に決定的なものでございまして、再検討の余地はないと思います。本題は、とれとの関連におきまして、インドに対する経済協力をどうするかという新たな課題が出てきたわけでございまして、基本姿勢は変わらない。しかし、経済協力政策との関連でわれわれはどうやるかという新たな課題に直面しておるわけでございますので、そういうことも含めて検討をしてみたい、こういうことでございます。すなわち、核政策自体については再検討ということはあり得ないと私は考えております。
  111. 土井たか子

    ○土井委員 そういたしますと、それはインドという国を発展途上国と認識してよいかどうかということに対しての再検討が今後の課題になっているということでありますか。
  112. 大平正芳

    大平国務大臣 発展途上国であるかないかという目安は、すでに国際的にもコンセンサスがほぼ固まってきておるわけでございます。問題は、そういう経済的な概念でなくて、核エネルギーというものを手にした国はいままでの発展途上国にはなかったわけなんですから、そういうのが出てきたわけでございますから、だから、いままでの経済協力政策の中にそういう新たな問題が出てきたわけでございますから、経済協力政策という純粋な経済政策の分野で問題が処理できないような課題が出てきたわけでございますから、しばらく時間をかしてもらいたい、こういうわけです。
  113. 土井たか子

    ○土井委員 なかなかいわく微妙なわかりにくい御答弁でありますけれども、大体の姿勢というのはうかがえた気持ちがいたします。まあこれは核に対して、核政策上は、いままで取り続けてきた非核保有国としての日本立場からインドに対してひとつ強い姿勢で臨むということははっきりしておる。ただ、今後の課題としては、いままでインドに対して持ってきた発展途上国としての認識を、ここで再検討して中身について新たに考え直さなければならないのじゃないかということに対して問題にしているのだという趣旨でございましょう。わかりました。  それで、昨年十二月でありますけれども田中総理がこの国会に核拡散防止条約を提出して批准を求める方針を明らかにされました。しかし、今国会はもう閉会に近づいております。そこで、このような新しい事態が出てまいりました節、この核拡散防止条約をどのように取り扱われる御用意がありますか、これをひとつお伺いいたします。
  114. 大平正芳

    大平国務大臣 核保有国がふえてくるというような現実に直面いたしましても、わが国の核政策というものは不変であると私は承知いたしております。したがって、そのラインに沿いまして核に関する政策というものは処理してまいらなければならぬわけでございまして、いま仰せのNPTというものにつきましてはすでに政府署名を終えておるわけでございまして、その際明らかにいたしました三つの問題点の究明をいたしておるところでございます。早くその解明を急ぎまして、そして十分のデータをもちまして国会の御審議をなるべく早くお願いするという基本の方針にはいまのところ変わりはありません。  いま一番力点を置いておりますのは、平和利用の実質的な平等性を確保するという意味におきまして、国際原子力機関との間で交渉を持ちまして、これを保障するに足るだけの用意をすることがまずわれわれの任務であると心得まして、科学技術庁と御協力しながらいまそういう手順を進めておるところでございます。
  115. 土井たか子

    ○土井委員 そういういろいろな方策を進めていらっしゃる中で、いま具体的にインド核実験というものが事実起こりました。そして世界考えられている問題の一つとして、潜在的核保有国として核実験をやれる能力のある国に実は注目が集まっておると思うのです。いま日本がその中にあるということは現実の問題であります。  つまり、日本は潜在的核保有国として比較的たやすく核実験をやれる国である、今後日本としてはどうするのだろうか、こういうふうに世界の目がいま注目していると申し上げてもいいと思うのですが、その上、現在までのところ核不拡散条約にも加盟していない。諸外国で、日本も近い将来核実験をするのじゃなかろうかと思っている国も私は中にあると思う。  そこでこの際、日本といたしましては、非核保有国であります、非核政策を推進いたします、核実験はいたしませんという趣旨のことを内外にはっきり言明すべきだと思うのでございますが、こういうことに対して外務大臣は御用意がおありになるでございましょうか。
  116. 大平正芳

    大平国務大臣 政府は機会あるごとに言っておりまするし、国会の決議もあったわけでございまして、これはすでに後退を許さない政策であると承知いたしておるわけがございまして、いまさら宣明するしないというようなそんな問題では私はないと考えておるわけでございます。このラインに沿いまして政府が何をやり何をやらないかということが大事なんでございまして、その点は政府を御信頼いただきたいと思います。
  117. 土井たか子

    ○土井委員 まだインド核実験の問題についても種々こまかい点はあろうかと思いますけれども、きょうは時間の制約がある中で一つどうしてもお伺いしたいことがありますので、その問題をこれから少しお尋ねしたいと思うのです。  例の韓国で逮捕されました太刀川、早川、この二人の日本人学生についての問題であります。すでに弁護士がこの二人の学生についてはついたということでありますが、政府とされては、この弁護士を通じて太刀川、早川お二人の基本的な人権は侵されてはいない、拷問を受けるというふうな非人道的な扱いは受けていないというふうな報告をいままでに受けていらっしゃるかどうか、この点はいかがですか。
  118. 高島益郎

    高島政府委員 私ども、この二人の日本人につきましていま先生が御指摘になった点が一番実は心配でございまして、弁護士を通じて聞いた最重要な点もその点でございました。早川氏、太刀川氏両氏についてそれぞれ弁護士が面会いたしまして、その結果はっきりいたしましたことは、両人とも健康はすぐれている、それから拷問等を受けたことはないということをはっきり確認いたしております。
  119. 土井たか子

    ○土井委員 そうしますと、先日の外務委員会におきまして松永条約局長が釈放要求の根拠として答弁された際、基本的には韓国の主権にかかわる問題である、正式に外交問題としてわが国から提起できるのは、日本人の権益や人権が不法、不当に侵された場合、それからまたその扱いが人道的に問題がある場合にできるのであるというふうな御答弁をされております。  そこで政府とされては、この太刀川、早川両氏の人権の侵害はないと現状において判断をされているのであるならば、太刀川、早川両氏の釈放の要求はもはや根拠がないというふうに考えられて、釈放要求はしないということになっているのでございましょうか。しかしながらこのお二人については、外務大臣のパスポートの発行に従って韓国側では入国ビザを認めて両氏は入国したという事実もございます。これについて、この釈放要求をどういうふうに考えていらっしゃるのか、ひとつお伺いいたします。
  120. 高島益郎

    高島政府委員 先般の当委員会におきまして松永条約局長が御答弁いたしましたのは、一つは法律論といたしまして、外交的保護というものはどういう場合に行なわれるのかという、主として法律論だったと思います。不当、不正な取り扱いを受けないように要求し、それがもしそうでない場合に、それを補うような措置を求めるという一般的な外交的保護の説明だったと私聞いておりました。  今回の二人の逮捕に関連いたしまして、私たち政府が一貫してとっております態度は、これは韓国の国内で起きた問題であって、韓国の国内法によっていろいろ処理されることはやむを得ない。しかし、ただいま先生御指摘のとおり、それが不当、不正な取り扱いを受けないように、人道に取り扱われるように、しかも、これはそういう法律論を離れまして、外国人である日本人の事件でございますので、特別な考慮を払って早急に本件を解決するような方向で処理してもらいたいということを韓国政府に対して要請し続けておりまして、その点については何ら態度の変更はございません。
  121. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、釈放要求に対して現状どういうことを具体的に努力されておるかということをお伺いします。
  122. 高島益郎

    高島政府委員 現在、この二人の学生は、ほかの韓国人五十五名とともにいろいろ捜査されておりまして、日本といたしましては、この二人については当初から釈放の要求、またそれがどうしてもできない場合には、捜査の終了次第早急に本件を解決して、特別な考慮を払うという方向で、本件の早期の解決ということで一貫してまいりました。現在の段階において直ちに釈放ということは、弁護士を通じてわれわれが得ておる印象ではほぼ望みがなさそうに思われます。  しかし、わがほうといたしましては、捜査継続にもかかわらず、早期に本件が解決されて、この二人の日本人について寛大な措置がとられるということを要求しているのが現状でございまして、現時点においての釈放ということは、現在の捜査の段階からはほぼ不可能という感じを弁護士は持っております。
  123. 土井たか子

    ○土井委員 その弁護士がこの両氏に接見しての印象として、軍事裁判にかけられることは確実と思うというふうに述べられたといわれております。日本政府としては、この両氏が軍事裁判にかけられるかかけられないか、たいへん重大な問題であります。いまのところは、弁護士が二人に接見した結果、かけられることは確実だと思うと言っているにすぎない。韓国政府からそういう通告を正式に受けられたかどうか、また、二人の弁護士が確実と思うと述べられている限りは、当然に韓国政府に対して、日本政府としては、その間の事情、具体的な内容を問い合わせるべきだと思うのでありますけれども、はたしてそのような努力はなされていらっしゃるかどうか、これをひとつ伺いましょう。
  124. 高島益郎

    高島政府委員 弁護士は弁護士の立場で、個人的な感触としてそういうふうになりそうであるということを申しておるだけでございまして、私どもといたしましては、その事実について韓国政府にそれをもとにして確かめるという立場にはございません。
  125. 土井たか子

    ○土井委員 ただしかし、韓国政府に対してそれを問い合わせることは、政府間でできるはずじゃありませんか。外務省として、弁護士を通じてそういう見解が述べられたということはキャッチされているはずであります。したがいまして、韓国政府に対して、それは確実なのかどうなのか、事情はどうなのであるか、これは問い合わせるべきであると私は思うのですよ。いかがですか。
  126. 高島益郎

    高島政府委員 私ども承知しておりますのは、両名が軍法会議の検察関係に送検されたということまででございまして、それ以後の処置については韓国政府は、私ども質問いたしましても、今後どうするかということについての見通しはまだ述べておりません。
  127. 土井たか子

    ○土井委員 実にいいかげんなことですね。十七日に送検されていながら、二十一日になってやっと送検の事実を日本大使館に伝えてきたという事柄がすでにあるわけです。韓国の法律では、普通の刑事事件の場合は、送検されてから二十日以内に起訴、不起訴が決定されるわけですけれども、今回は大統領緊急措置四号ということで問題にされているということになってまいりますと、普通の刑事事件の場合とは違った取り扱いがあるであろうと思われます。これに対してどういうふうに外務省としてはキャッチされておりますか。
  128. 高島益郎

    高島政府委員 いま先生御指摘のとおり、通常の刑事事件の場合ですと、送検後二十日以内に起訴されるということになっているようでございますが、今度の軍法会議の場合につきましては、必ずしもその例になっているわけではないという説明を受けております。しかし実際上は、おそらく従来の通常の刑事事件と同じように二十日以内に、もし起訴されるとすれば起訴されるというふうに考えております。
  129. 土井たか子

    ○土井委員 その点は確かに調べてくださいよ。緊急措置というのは普通の手続じゃないですよ、種々きめられている中身を見ますと。罪刑法定主義のたてまえからしてもおかしなものであります。したがいまして、この中身については、普通の刑事事件が二十日であるから、おそらくこの問題も二十日以内にどうかなるのではないかと考えております程度では困るのです。やはりこの辺はしっかりと調べておいてもらわなければ、対処のしようが出てこないじゃないですか。外務省当局として具体的にこういう問題に対してどういうふうに対策を講じられているかということを聞く場合に、これはその前提として知っておかなければならない最低限度の知識というものであります。その程度があいまいであるならば、対策だって正確なものは打ち出せるはずがない。この点に対しては一回しっかり調べてみてください。  外務省の東郷事務次官は、政府がこれ以上打つ手はないと思うというふうな手詰まりを嘆いていらっしゃるようです。いまの御答弁からいたしましても、それから先日来の外務省当局の姿勢からいたしましても、打つ手がないのではなくて、普通の外交交渉ができる相手国ではないとすら考えられるのです。  法眼外務省顧問も先ごろ韓国に行かれているようでありますし、非公式な折衝を重ねておられるようでありますけれども日本側としては努力をしたものの、韓国側は具体的に何らこれに対して反応してくれない。そういうところに、思案投げ首であって、これ以上打つ手はないと思うというような発言も出てきているのではなかろうか、こういうふうに思われるわけです。当面はこの軍法会議の成り行きを見守るだけで、今後は早期に刑を確定して国外退去処分にしてもらって解決していく以外に手はないという方針もかいま見えるわけでありますけれども、これは決して解決だと私は思いません。日韓の友好親善関係を促進するのではなくて、これは悪化の方向に持っていく素因にもなりかねないと思うわけであります。  そこで、この問題に対して、あと時間がございませんから、ぜひ確認をしておきたいことがあります。早期に刑を確定して、そして国外追放という方針でこの問題に対して当たりたいという外務省立場からすると、早期に刑を確定する、刑を確定する場合には前提として起訴がございます。起訴する場合には訴因が明確でなければなりません。太刀川、早川、この二人の訴因については、外務省としては、韓国側と連絡をとりながら、こういう中身であろうということがすでにはっきりわかっていらっしゃるのでありますか。これが一つ
  130. 高島益郎

    高島政府委員 いわゆる訴因というものにつきましては起訴前の段階でございますので、私ども承知いたしておりません。しかし、この容疑事実につきましては再三この委員会でも申し上げておりますとおり、大使館の館員が直接本人に面会して本人を通じて容疑事実を確認したいということで一貫してまいりましたけれども、それが果たせず一回会ったっきりでございます。そこで、弁護士の任命を経て、弁護士を通じて両名から伺っておりますが、弁護士自身が実は容疑事実のいろいろにつきまして現在の段階では公表したくないということでございますので、私どもといたしましてもここで公表するわけにまいりませんが、はっきりしておりますことは、昨年十二月来、両名とも韓国の学生指導者と数回にわたって会っているということを両名が確認しているということが一つ。もう一つ、太刀川氏につきましては、会ってはいるけれども、これはもっぱら取材のためであるということを本人が言っていたという二点でございます。
  131. 土井たか子

    ○土井委員 この点についてはさらに確かめるということがどうしても私は必要だと思います。しかし、これから言う二点目については、これはよほどしっかりしておいてもらわないと困る問題であります。それはわが国の場合には国外退去処分というのは出入国管理令によって定められている。わが国の場合には出入国管理令第二十四条四号で退去処分はできるようになっている。ところがこの場合、その六十三条二項を見ますと、刑期を終了した者が退去処分を受けるようになっている。例外としてあるのは刑の執行中でも国外退去処分はできることになっておりますけれども、実際問題としてそのほとんどのものが刑期終了後に国外退去処分を受けているわけであります。  事件解決として、いま二人の日本人学生が韓国で起訴され、そうして軍事法廷でいろいろ判決を受けるということになりますと、御承知のとおりに、いま言われた訴因から、大体いままでのところキャッチなさっている中身から考えていきましても、大統領緊急措置四号に基づくということになりますと、刑の内容は御承知のとおり非常に過酷なものであります。そうしますと、国外退去処分として、韓国の場合にこの問題をどう取り扱うかということと同時に、刑期終了後ということになる場合についてはどういうふうな対処のしかたを外務省としてはお持ちになっていらっしゃるか。この辺は私は大事な問題だと思うのです。韓国の法令上はこういう問題に対してどのような取り扱いをやっておりますか。一般通例の取り扱いではなかろうと私は思いますよ、大統領緊急措置という問題は。いかがですか。
  132. 高島益郎

    高島政府委員 そういう問題についても私ども当然具体的に調査しなければならないと思っております。
  133. 土井たか子

    ○土井委員 これは聞いてあきれます。そういう調査をせずして国外退去を要求をするということをいままで言い続けてこられたのでありますか。外務省としては非常に無責任だと思いますよ。国外退去についていまの韓国がどういう取り扱いをやるか、特に大統領緊急措置という方式で国外退去に対してどういうふうに考えておるか、これすら調べもせずして国外退去を要求をするということをいままで言われ続けてきたのでありますか。私はこれは聞いてあきれる。これに対してどういうふうに今後責任をおとりになりますか、いまから早急にこれに対してはお調べになりますか、いつまでに調べられますか、はっきりしていただきたい。
  134. 高島益郎

    高島政府委員 韓国の法令についてはもちろん私ども調査し得る限りにおいて調査しておりまして、大体わかっておりまするけれども、この具体的適用についてはそれぞれ国内の問題でございますので、私どもがそれこそ有権的に解釈するという立場にございませんので、ここで公表することを差し控えさせていただきたいと思います。
  135. 土井たか子

    ○土井委員 私は解釈を聞いているのじゃないのです。韓国としてはこういうことに対して法令上どのようになっておりますかということをお伺いした節、これに対しては調べてみますという御答弁なんです。したがって、私はいま申し上げたような質問をいたしました。法令上しっかり知っていらっしゃるのですか。どうなんです。
  136. 高島益郎

    高島政府委員 これは先ほどから申しておりますとおり、有権的な解釈ではございませんから、何とも申せませんが、韓国の入国管理法上、刑の執行前であっても国外退去ということが可能な体系になっておることは事実であります。
  137. 土井たか子

    ○土井委員 それは確実ですね。したがってその線に沿って、ひとつそれならば外務省当局としてはこの対策を十分に講ずるということ、万全を期してもらわなければ困ると思います。  さて最後に、私はこの問題について外務大臣にひとつお伺いしておきたいことは、例の日韓基本条約に従ってこの前私が質問申し上げたときには、国連憲章を尊重するということが基本にございます。国連憲章の一条三項には「経済的、社会的、文化的又は人道的性質を有する国際問題を解決することについて、並びに人種、性、言語又は宗教による差別なくすべての者のために人権及び基本的自由を尊重するように助長奨励することについて、国際協力を達成すること。」とございます。そうしてこの第十条では、総会の任務及び権限について規定がございます。「総会は、この憲章の範囲内にある問題若しくは事項又はこの憲章に規定する機関の権限及び任務に関する問題若しくは事項を討議」する。  国連に対して、いまの日韓問題、特に大統領緊急措置四号ということによって逮捕されている日本人の人権、さらには在日韓国人の人権、こういう問題について提起なさるというふうなことがお考えの中にあるかどうか、いかがでございますか。
  138. 大平正芳

    大平国務大臣 日韓間に起こりました数々の不幸な事件がございますけれども、これは日韓間で解決すべきものと考えておりまして、これを国連に持ち出すつもりはありません。
  139. 土井たか子

    ○土井委員 それは全然御用意してないわけですか。全然お考えになっていらっしゃらないわけですね。
  140. 大平正芳

    大平国務大臣 日韓間でできるだけ早期に解決したいと考えております。
  141. 土井たか子

    ○土井委員 先ほど来承った事情からいたしましても、どうも韓国まかせ、あなたまかせという姿勢がちらちら見えてならないのです。日本としてこの問題に対してどういうふうに取り扱うかということは、現に韓国において日本人二人が逮捕され、しかも軍事法廷に起訴されるかどうかというときでありますから、よほどこれは私は重大問題として取り扱ってもらわなければならないと思います。  いままで努力はなすっておられるようでありますけれども、どうも私はその努力のあとというものは後手、後手のように思われますし、当然に韓国側に対していろいろと通告をし、あるいは事情聴取をし、あるいは抗議を申し入れ、あるいは意見をいろいろと申し述べなければならない節にも十分なその措置が講じられているとはいえない。  したがいまして今後この問題に対してはやはり世界人権宣言、あるいはいま申し上げた国連憲章の趣旨に従って、韓国に対してはひとつ日本外務省当局としてこの問題を十分重視して強い姿勢で望むということを確認させていただきたいと思うのですが、このことに対しての御見解を承って、時間ですから私は終わります。
  142. 大平正芳

    大平国務大臣 外務省といたしましては、国外にありまする邦人に対しまして外交保護権を周到に行使いたしまして、その安全を守り、人道上の処遇を保障していかなければならぬわけでございまして、これは韓国ばかりでなく、どこの国におきましてもそうでございます。ただ、外国で日本人が犯した犯罪につきましては、管轄権は向こうにあるわけでございまして、わが国政府の手の届かぬ問題でございます。  ただ、あなたがおっしゃるように、できるだけその事実を照会し、掌握をいたしまして公正な解決を期待しなければいかぬし、早期の解決を期待しなければいかぬし、不当な処遇がないように処置してまいるわけでございまして、そういう点につきましてはたびたびおしかりを受けておるようでございますけれども外務省としては決してなまけておるわけではないことを御承知願いたいと思います。
  143. 土井たか子

    ○土井委員 終わります。
  144. 木村俊夫

    木村委員長 松本善明君。
  145. 松本善明

    ○松本(善)委員 最初に、マクルーカス・アメリカ空軍長官の発言の問題についてお聞きしたいと思いますが、先ほども同僚議員の質問がありましたが、外務大臣にはあとから伺うことにいたしまして、防衛庁長官にこのマクルーカス発言日本の自衛隊が一そう拡大し、そして日本の領域外でも活動する情勢も今後予想されるという趣旨の発言をしたことについて、私は当然これは内政干渉の発言であり、これについては抗議をすべきであるというふうに考えておりますけれども防衛庁長官はどうお考えでありますか。
  146. 山中貞則

    ○山中国大臣 まず、マクルーカス米空軍長官と会談した閣僚は私だけでありますから、私みずから進んでこの場に出てきたわけであります。  まず私との会談では、そのようなことに関する一切の話題は出ておりません。そのことは本日の閣議においても明確に報告をいたしておきました。ということは、政府見解というものは今日まで明らかでありますから、日本国憲法に照らし、そしてそのもとにおいて制約された形で存在する自衛隊のあり方として、象徴的にいわれる海外派兵及びそれに類似する形においてもそういうことはやらないということを明確にしておりますから、私どもとしては、よその国の空軍長官であったとしても、それが記者団の仮定上の質問に仮定上答えたとしても、私たちとしての自衛隊の存在に何ら関係をするものではないと考えておりますが、念のために、その場においてもシュースミス代理大使より日本の国内法の制約があることで全く仮定のことであるというつけ加えをしておるようでありますけれども、正式に日本を離日されるにあたってのステートメントをマクルーカス長官が出しておりますから、それを読んでおきます。  「離日するにあたり一言申し上げたい。日本を訪問できたことは非常な喜びとするところであり、再びぜひ来日したい。アジアの訪問で日本に最初に訪れ、日米関係の重要性を強調したことは意味あることであった。この機会に、水曜日の記者との昼食会席上でのことで、私の自衛隊に対する見解についての誤解についてはっきりさせておきたい。私は仮定の質問に仮定の答えをしたわけです。しかし現在の世界の情勢にかんがみて、私は日本の自衛隊の役割りの変更をもくろむものでも望むものでもありません。合衆国は、自衛隊が自国の防衛に制限されている憲法上の、また政治上の制約をよくわかっており、認めている。自衛隊の役割りを変えるかどうかといういかなる決定も明らかに日本政府責任であろう。合衆国は、日本政府が自衛隊の質的向上をさせる努力をすることを歓迎するものであるが、このことは自衛隊の役割りのいかなる変化をもわれわれが望んでいるということを何ら意味しているものではない。」  こう言っておりまして、本人もわが国における、向こうからいえば国防、自衛隊の役割りについて少し知らないでものを言ったために、あとでこのような訂正をしたものと思われますから、何ら関係もなく、また変化もないということを申し上げておきます。
  147. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は知らないでというよりは、むしろ空軍長官ともあろう人が言うわけですから、そういうことについて日米の政府間でいろいろな話がされているのじゃないか。  その証拠として申し上げたいのは、再々本委員会でも問題になっておりますいわゆるサイミントン委員会の議事録でジョンソン国務次官が述べておりますが、これは外務省の仮訳の第一分冊の二一〇ページです。自衛隊について、「日本政府は、」「平和維持軍の中である種の役割を果すことを考慮する用意があると表明した。」という部分があるわけです。私は米空軍長官のたまたまの発言というふうに、そう見るわけにはいかないと思うのですね。サイミントン委員会という公式の議事録でもこういう発言があるわけです。   一体、日本政府は、こういう平和維持軍の中で役割を果すことを考慮する用意があるということを言ったことがありますか。
  148. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 サイミントン委員会におけるジョンソン次官の発言に関しましては、このような背景があるだろうというふうに考えております。  それは一九六九年に佐藤総理がニクソン大統領との会談のあとでナショナルプレスクラブで演説をいたしておりますが、その際日本インドシナ地域における役割りとしまして、国際平和維持機構にも求められれば日本の国情に合致した方法で参加協力すべきものというふうなことを述べておられるわけでございまして、国連の平和維持機構との関連におきまして、日本の国情に合致した方法で参加協力というふうに述べているわけでございまして、ジョンソン次官の発言はこのことを念頭に置いての発言であろうというふうに考えております。
  149. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、外務大臣にお聞きしますけれども、そういうことでありますと、自衛隊の海外、日本の領域外での活動する情勢が予想される、あるいは海外任務が生まれるだろうということを空軍長官が言ったということは、あるいは場合によってはそういうことが考えられるということがいまのアメリカ局長答弁からするならばあり得るのじゃないですか。そういうことの疑惑を生ずるからこそ、はっきり抗議するなら抗議するということをすべきではないかと思いますが、外務大臣見解を伺いたいと思います。
  150. 大平正芳

    大平国務大臣 国連が平和維持機能を果たす上におきまして、紛争現地に監視団を派遣するというような場合がございまして、かつて日本にもそういうことが求められたことがありまして、日本政府も断わった経緯があるわけでございます。こういった問題は、佐藤さんがおっしゃるとおり、日本の国情の許す範囲で日本政府が選択し、判断してまいる性質のものであって、外国のどなたがどういう場面でどういう発言をしようと、そういうことと私は関係ないことじゃないかと考えております。  先ほど防衛庁長官も言われましたとおり、わが国の憲法を忠実に順守しなければならぬ政府でございますので、その範囲におきまして自衛隊法というものを持っておりまして、その規制の中におきまして私どもが具体的に判断していくべき性質のものと考えております。
  151. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、外務大臣の言われることは、将来自衛隊はそういう意味では海外任務を持つということでありますか、海外任務を持つことがあるということですか、いま外務大臣が言われた趣旨は。そういう意味では自衛隊の海外任務を持つことがあり得るということを言われたわけですか。
  152. 大平正芳

    大平国務大臣 予ての海外任務ということの意味でございますが、平和協定ができて、その監視をする要員を派遣するというような場合、日本がそれに参加するかしないかという問題は、確かにこれは一つ検討を要する課題であろうと私自身は考えます。これは日本の憲法、自衛隊法のワク内におきまして、日本政府みずからが判断してきめるべき性質のものではないかと思います。
  153. 松本善明

    ○松本(善)委員 私はとんでもないことだというふうに思うわけです。自衛ということとはもう全く無関係の海外任務が生じ得るというようなことを言われたことは、きわめて重大だと思いますけれども防衛庁長官どうですか、いま外務大臣が言われたような趣旨での海外任務を日本の自衛隊は持つことがあり得るのか。
  154. 山中貞則

    ○山中国大臣 外務大臣は国際通念、いわゆる常識論としての意見を述べられたものと私は受け取っております。かりに外務大臣の言われたようなケースであっても、それが直ちに憲法違反の論争云々になるかは別にして、わが国としては、武装した集団を海外に派遣する、それはわが国が他国の領土なり、その他の権益をめぐって、武装集団を外国にいわゆる海外派兵の形で派遣するものでない、国連で合意された監視機構その他であっても、わが国の憲法の意図するところ、そのような問題は、検討はしても、結果的には答えは否定、いわゆるノーと言うべきものであろう。したがって、われわれはそのようなことはあり得ないし、また自衛隊としては考えていないということであります。
  155. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、外務大臣の言われていることと防衛庁長官の言われていることは違うわけです。しかも、これはサイミントン委員会の議事録でも、「平和維持軍の中である種の役割を果すことを考慮する用意がある」ということを言っている。それをアメリカ局長は肯定する。そういうことを言うのは当然であったという趣旨で、佐藤前総理大臣発言を言われたと思うのです。私は、それでは閣内で意見が全く一致していないと思う。これは一体どうするつもりですか。外務大臣に伺いたい。
  156. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ジョンソン次官のサイミントン委員会における発言のことにつきまして、先ほど御質問があり、私、御答弁申しましたけれども、もう一回念のため、ジョンソン次官が同じ発言のところで、日本の憲法第九条に関することに触れておりますので、その点を言及さしていただきたいと存じます。  ジョンソン次官は、「憲法第九条に関する解釈、日本国内の態度、およびおそらく種々の面でこれら以上に重要と思われるその地域における各国の態度のため、日本軍事勢力が日本国外で何らかの直接的安全保障の役割を受けもつとは予測し難い。」こういうふうに述べているわけでございまして、ジョンソン次官自身は、十分日本の国内における憲法九条の問題を承知しての国連維持軍に対する発言を行なっているわけでございます。  したがいまして、私、先ほど佐藤総理の演説に関しまして御説明申し上げましたけれども、佐藤総理の演説自体も、あくまでも日本の国情に合致した方法でという限定があるわけでございまして、日本の国情、憲法を無視したような形での協力はあり得ないということは前提にあるわけでございます。
  157. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういう説明はまた別問題として、いまはっきり外務大臣にお聞きしたいのは、防衛庁長官の言われたことと外務大臣の言われたこととは違うわけです。その点について外務大臣は一体どう考えられるかということをお聞きしているわけであります。
  158. 山中貞則

    ○山中国大臣 違っていないのです。憲法上は議論すべき余地があるだろうと外務大臣も言われたのです。しかし、自衛隊法にそのような定めはどこにもありませんから、わが国の自衛隊が現行自衛隊法のもとでそのような国連監視機構、一例をあげれば、そういうものであっても、参加する余地は法的な根拠がないということを申し上げているわけです。したがって、あり得ない。
  159. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは防衛庁長官がそういうふうに言っても、やはり外務大臣発言は消えないですよ。そういうことがあり得るということを言われたわけで、私はきょうこれだけを質問するわけにいきませんし、防衛庁長官にも時間を限って出席をしてもらっておるので、これ以上やりませんけれども、これはもうきわめて遺憾である。日本の憲法の根本の問題について、大臣の間で閣内で意見が一致してないということは、きわめて重大であります。引き続いてこの問題は別の機会に追及をしたいと思います。  外務大臣にお聞きしたいのは、原子力潜水艦の寄港について政府は月内にも受け入れを通告する、そういうことがいわれておりますけれども、分析化学研究所の問題について監視体制が全く不備である、全くなっていないということが今国会で明らかになって、以来原子力潜水艦の寄港は行なわれておりません。当然に国民の生命や健康の安全を守るそういう監視体制なしで受け入れをするということは、とうてい考えられないことでありますけれども、この点についてはどうなっておるのか、外務大臣から御説明をいただきたいと思います。
  160. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 去る一月の二十九日に、当国会におきまして原子力船寄港地における監視体制の問題が提起されまして、自来科学技術庁におきまして、原潜寄港地における監視体制の再確立という作業が急がれているわけでございまして、私どもといたしましては、科学技術庁がこの春以来ずっと行なってきております放射能分析などの状況につきましては、米側に対しまして逐次通報してきておったところでございます。  米側といたしましても日本側のこの状況を十分心得、また承知いたしておりますので、そういう点をにらみながら、米側自体としては原潜の日本寄港についていろいろ考えておる、こういうことであるというふうに申し上げたいと存じます。
  161. 松本善明

    ○松本(善)委員 監視体制、新分析センターの業務開始もまだしてないし、場所もきまってない。そういう状態で受け入れる考えでいるのかどうかということを外務大臣に伺いたいのであります。
  162. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 監視体制の問題につきましては、国会におきまして科学技術庁のほうから御説明がありますように、そもそも原潜の寄港にあたって、安全性につきましては十分の信頼を持たれておるにもかかわらず、国内の民間研究所の検査が非常にでたらめであったという問題に関連いたしまして、新しい分析機関の設定が急がれているところでございます。  それと同時に、原潜の寄港地における海水、海底土、海産生物、こういうものの検査をあらためて緊急に行なうことによって、従来政府考えております安全性について、何の心配もないということを念には念を入れて実施するという考え方で、科学技術庁のほうの作業が急がれているというふうに承知しているところでございます。  したがいまして、そのような情勢を米側に伝え、米側はこれを心得て考えておる、こういうことを先ほど申し上げた次第であります。
  163. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、その体制が整うまでは受け入れないということですか。
  164. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 科学技術庁のほうにおきまして、横須賀、佐世保あるいはホワイトビーチという原潜の寄港地の海水、海底土、海産生物、こういうものの緊急なサンプリングを二月以来実施し、その放射能分析が現に行なわれてきているところでございます。遠からずその結果が明らかになっていくものであるというふうに科学技術庁のほうから聞いておりますので、その結果がなるべくすみやかに明らかになることを私どもとしては期待しているところであります。
  165. 松本善明

    ○松本(善)委員 アメリカ局長答弁を聞いていると、核心には全然触れないのですよ。私は答弁のやり方を少し考えなくちゃいかぬと思うのです。私の聞いているのは、アメリカは原子力潜水艦を月内にも寄港させる、こういうことを言っておるけれども、そういうことが報道されているけれども、そういう事実があるのかどうか、そして日本政府はそれを受け入れる気があるのかどうか、そういうことを聞いているのですよ。それを一言も答えていないじゃないですか。外務大臣、答えてください。時間をつぶすだけなんだ。
  166. 大平正芳

    大平国務大臣 松本先生重々御承知のとおり、わが国といたしましては安保条約上、原子力潜水艦の受け入れを拒否する権限はないわけです。言いかえれば、アメリカ側はこれを寄港させる権限を持っておるわけでございます。そして二十四時間前にわが国に通報するということになっておるのが、いわば原子力潜水艦の寄港問題の基本にあるわけでございます。  ただ問題は、安全性が確保されなければならないということは当然のことでございまして、原子力潜水艦の寄港問題は十年余り前から出てまいりまして、数次の折衝を経まして、まず第一義的にアメリカ側がその安全を保障する措置をとられておることは御承知のとおりでございます。しかし念には念を入れて、日本政府側におきましてもいろいろな確認措置を講じてきておるわけでございまして、その一部に指摘されたような不始末があったことは私ども承知いたしておるわけでございまして、この安全性の保障、国民感情を満足させる上からいきましても、一日も早くそういう欠陥が補われることが望ましいということで科学技術庁を中心に鋭意努力中であると承知いたしておるわけでございまして、アメリカ局長も申しましたとおり、そういう措置が早急にとられることをわれわれは期待しておるということをすなおに申し上げておるわけです。
  167. 松本善明

    ○松本(善)委員 まだいろいろ不十分ですけれども、こういう原子力潜水艦の寄港には私たち反対である、しかも監視体制が十分整わないままで入ってくることになれば重大であるということを述べて、私は次の質問に移りたいと思います。  韓国で逮捕された二学生の問題でありますが、本委員会その他衆参両院の各委員会でのいわゆる容疑事実ということについての説明を総合しますと、本委員会では高島アジア局長が答えられたわけですけれども一つは学生運動の幹部と会ったということ、それからデモの計画を聞いたということ、それからデモの写真をとったということ、そして若干の金を渡したということ、しかもこれらはいずれも大統領緊急措置の四号が発動する前のことであるということでありますが、これらについては確認をされますか。その他それ以上に現在わかっておる容疑事実について説明することがあれば説明してほしいと思います。のかどうか。いまのアジア局長答弁はそれを認めるということです。外務大臣はそれを確認しますか。重大なことになりますよ。
  168. 大平正芳

    大平国務大臣 それぞれの国の体制、それを具象してまいる法制というものは、その国の国民が選択しておるものでございまして、一般論といたしまして、わが国政府が私の立場でそれをコメントすることができない、コメントすべきものではなかろうということは、たびたび本委員会を通じて申し上げておるわけでございます。私ども立場といたしましては、日本人が海外におきまして、その国の管轄権のもとで犯した犯罪につきまして、まずその容疑事実というものをはっきり確認して、それが不当な取り扱いを受けないように十分注意してまいる必要があると考えております。また、その道程におきまして、日本人が人道的な処遇を受けるように配慮していかなければならぬと考えておるわけでございます。問題は、法制の是非ということにつきまして、わが国といたしましてそれについてコメントすることは適切でないと思います。
  169. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣、いまソウルに派遣されている記者諸君は、本社に対する連絡も規制されている。何も言えない。まことに異常な事態が起こっている。知っていますか。特派員の話はさっぱり要領を得なくて、帰ってこなくちゃわからない、そういうことがいわれています。これは二人のジャーナリストの問題だけでは決してないですよ。  これはまた引き続いて問題を追及したいと思いますが、報道によりますと、日本国籍を有する元韓国人が韓国大使館に呼び出されて、この太刀川君の問題について事情聴取をされた、そういうことが報道されています。こういう事実があるかどうか、この点についてお聞きしたいと思います。
  170. 高島益郎

    高島政府委員 そういううわさを聞きまして、韓国大使館にも確かめてございますが、韓国大使館の説明によりますと、任意に事情を尋ねたという説明でございます。
  171. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういう犯罪捜査、韓国側からいえば犯罪捜査です。それが日本国内で行なわれている。しかも元韓国人ではあるけれども日本の国籍を持っている人間に対して、そういう犯罪捜査が任意であろうとも行なわれた。これは主権侵害だと考えませんか。金大中事件のときと同じじゃないですか。外務大臣、どう考えますか。そういうことは任意であればかってにやってもいいということですか。
  172. 高島益郎

    高島政府委員 私どもとしましては、たとえ任意の出頭でありましてもこのようなことは適当ではないと思います。そうような立場から韓国大使館に対しまして、わがほうの立場を申し入れてあります。
  173. 松本善明

    ○松本(善)委員 抗議をしたのですか。
  174. 高島益郎

    高島政府委員 わがほうの見解を申し入れてあるわけであります。
  175. 松本善明

    ○松本(善)委員 まことに情けない話だ。私はほんとうにじれったくてしょうがないです。日本の主権を何と考えているのか。  もう一つ聞きたい。公安調査庁がこの太刀川君の問題について調査をした、そういう事実があるかどうか、それについて説明してもらいたい。
  176. 渡邊次郎

    ○渡邊(次)政府委員 太刀川君の問題につきましては、朝鮮総連に関係があるという報道がございましたので、その間の事情を明らかにするために、下宿先の女主人等から一応の事情を聞いた程度でございます。
  177. 松本善明

    ○松本(善)委員 公安調査庁が調べに行ったのは二十六日でしょう。二十五日に韓国側が事情を発表して、翌日に朝鮮総連に関係があるというだけで公安調査庁が動くというのはどういうことですか。一体それはどういう任務ですか。いかなる任務によってそういうことを調査をするのか。もうまさに言論、集会、結社の自由に対する背反ではないか。どういう目的でやりましたか。
  178. 渡邊次郎

    ○渡邊(次)政府委員 太刀川君について一応事情を聞きましたのは、朝鮮総連に関係があるという報道がございましたので、そして朝鮮総連は私どもの役所の調査対象団体になっておりますので、庁独自で調査をしたわけでございます。
  179. 松本善明

    ○松本(善)委員 朝鮮総連に関係をしているという報道があれば直ちに調査をするということが、結社の自由に対する重大な侵害だと言っているのです。外務大臣政府全体としてそう考えませんか。この太刀川君、早川君が逮捕された問題について、それの釈放のために努力するのではなくて、むしろ公安調査庁がその調査をやっている。日本政府もぐるじゃないか。これについてはKCIAと公安調査庁はきわめて深い関係があるということがいわれております。それを裏づけるようなことをやっている。これは閣僚として、こういうことがあってもかまわぬと思いますか。政府努力すべき方向を間違っているのじゃないか。大臣考えを伺いたいと思います。
  180. 大平正芳

    大平国務大臣 公安調査庁が独自の判断で仕事をされるということに対して、私はとやかく言う立場にございません。ただ、私といたしましては、この不幸な事件の早期の解決ということに全力をあげてまいりたいと考えております。
  181. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣、もう一度伺いたいのですが、これは人の命にかかわる問題になりますよ。そういう問題として外交上のどういう措置をとろうとしているか、それを伺いたいのです。そういうことをやめろとか、それから在韓日本人について逮捕をするという場合には一体どういうふうにするか、そういうことの取りきめをするとか、あるいはいろいろの方法があると思いますし、あるいは韓国政府が全然意にも介さないという態度であるならば、援助の打ち切りとかいろいろの方法があると思います。  一体、外交上の措置として何をとろうとしておられるか、外務大臣見解を聞きたいと思います。ただ努力しているだけでは済まないことであります。日本人の命にかかわることです。
  182. 大平正芳

    大平国務大臣 早期、かつ公正な解決を招来すべく、あらゆることをやっているつもりでございます。一々申し上げる自由は持っておりませんけれども、全力をあげてやってまいるつもりです。
  183. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、もうまことにたよりない外務省である、まことにたよりない政府であるということをほんとうに感じます。この問題については、私たちも今後とも徹底的に追及をしていきたいと思いますけれども、重大な事態にならないように外務省はやるべきであるということを要求して、私の質問を終わります。
  184. 木村俊夫

    木村委員長 渡部一郎君。
  185. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 他の議員も取り上げられましたが、まず、自衛隊は将来海外派兵をすると言われました件につきお伺いをするわけであります。  事は、他の国の政府の高官が述べたのではなく、日本と日米安保条約を結び、密接なる政治、経済軍事関係を持つ国の長官が述べられたことであり、また大平外務大臣が訪米されて日米関係は日米安保関係を基軸とするということをわざわざおっしゃったその直後に、反対側に飛んでこられましたマクルーカス米空軍長官が日本の東京でこうしたことをお述べになる、ここに深い、深い意義を感ずるわけであります。  自衛隊は将来強化され海外に派兵されるときがくるだろうという旨の御発言があったと承るわけでありますが、これは問題としては私はまず正確な認識から始めるのが妥当だと思いますので、委員長におかれましてはこの文書を外務省から取り寄せられ、当委員会に資料として御提示いただくことをまずお願いしたいと存じます。
  186. 木村俊夫

    木村委員長 そのように取り計らいます。
  187. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 では、この報道について、外務大臣、もう一回お答え願えませんか。
  188. 大平正芳

    大平国務大臣 このことにつきましては、いま防衛庁長官から松本さんに対してお答えがありましたとおりと承知いたしておりまして、アメリカ側におかれても仮定の場合の発言といたしまして誤解を生むおそれがありはしないかという懸念も持ちまして、御本人並びに大使館の当局においても釈明をいたしておると承知いたしております。  しかし、海外派兵の問題はわが国の問題でございまして、他国からとやかく言われるべき性質のものではないと思うのでございまして、海外派兵あるいは国会での決議がございましたが、海外出動というようなものは、日本の憲法が禁止しておるところでございまして、できる性質のものではないと思うわけでございます。先ほど松本さんとのやりとりの中で、海外派遣というものにつきましては山中長官は自衛隊で認められていないからそれはやらないということ、それは私もそのように承知いたしておるわけでございまして、私と山中さんの間には別に意見の相違はないわけでございまして、私が言わんとするところは、日本が憲法並びに自衛隊法のもとで、その制約のもとで、日本の判断でやることであって、他国からとやかくいわれるべき性質のものではないのだということを強調したかったわけでございます。
  189. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 では、まずその松本さんの御質疑に関する部分でありますが、非常に明快を欠いたわけでありまして、私、横で聞いておりましてよく聞こえませんでした。横で聞いておりました私の感想では、国連で決議その他が行なわれた場合は外務大臣はそれは十分考慮しなければならぬ、海外派兵を考慮しなければならぬと言われたように聞こえました。もしそれがほんとうなら大問題ですが、どういう意味で言われたのか。国連で何かきまったらその問題については考慮するとか考えるとかいうニュアンスをお持ちなんでしょうか、それを御説明いただきたい。
  190. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国外交は平和の創造ということに対して積極的でなければならぬと思うわけでございまして、あくまでも平和に徹した外交を展開してまいらなければいかぬと思っておるわけでございまして、その場合、平和の創建に当たっての国際協力という立場わが国は国連を中心といたしましていろいろな活動に多彩な参加をいたしておりますことは、渡部さんも御承知のとおりでございます。  その場合、一つ考えられますことは、国連が平和維持のために監視団を派遣するという場合、そういう場合に日本があるいはそこに要する機材をあるいは提供する、あるいは便宜を提供するというようなことも一つの活動部面であろうと思いますが、そこに人間を派遣するということも概念上考えられないことではないと思うのです。ただ、自衛隊法によりますと、自衛隊は海外派遣はできないという立場をとられておるわけでございます。それならば文官、自衛隊員でない者は一体できるのかできないのかというような問題は、また十分検討する余地はありはしないかという感じは私は持つわけでございます。  これは日本政府が現在日本の体制の中で十分検討して、平和の創建に日本が役立つというようなことがもしありとすれば何が考えられるか、何が考えられないかということは、日本の分別できめていかなければいかぬ問題じゃないかという、そういう問題はあるのではないかと思っておりますが、現実に自衛隊に関する限り、派兵の問題、派遣の問題というのは明らかになっておると思います。
  191. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そういうことを言われたのですか。そうすると、これは確かに外務大臣、これはだいぶ問題の御発言のように私思いますですね、いままで、こうした御発言外務省関係でなかったわけでありますから。  それではもう少し先を伺いますよ。国連が平和維持のためにその監視団を派遣しようとするとき、機材あるいは便宜の提供というものはあり得るがと、まずおっしゃいました。いままでそういうことをなさってきたのですか。実例をあげて述べていただきたい。
  192. 大平正芳

    大平国務大臣 正確には私もちょっと記憶いたしていませんけれども、調べてみますけれども、御案内のように財政負担は政府がいたしたことはございます。機材的に援助したかどうかという点につきましては確かめて御答弁いたします。
  193. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、国連の平和維持のための監視団派遣としましても、監視団の主力は武装兵力であります。その武装兵力を日本から送るあるいはその援護措置をとるということは日本憲法の条項に照らしてきわめて疑いが多いと存じます。したがって、これは、こうした御議論をなさるおつもりでしたら、私は一つの問題点としてとらえなければならぬとまず思うわけなんです。  もう一つ伺うのですが、人間を派遣することも概念上考えられないことではないといま言われましたね。自衛隊員は自衛隊法では出せないがということをお認めになるわけですが、自衛隊員は出せない、自衛隊員でないのは出せる、こういう意味ですか。
  194. 大平正芳

    大平国務大臣 自衛隊の場合は海外派遣もできないという立場日本の自衛隊法はとっておるというのが公式の見解であると承知いたしております。それで、それでは自衛隊員でない者が平和維持活動の場合の、国連が機能する場合の要員として自衛隊員でない者を日本が派遣して協力するということは、概念的には考えられることではないか。しかしそういうケースはいままで起こっておりませんけれども、それが全然考えられないものでもないのではないかというように私はすなおに思うわけでございまして、あくまでもこれは日本政府が自主的にいろいろ検討すべき性質のものではなかろうかという感じがいたしております。
  195. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大臣、それはたいへんまずいのじゃないでしょうかね。ということは、国連軍と称するものが、いま一番問題になっております韓国との間におきましては、韓国において国連軍がいるわけですね。これは国連のいままでの成り立ちを、日本政府のいままでの立場からいえば、無批判にこれを支持する形をとってきたわけです。しかし、あそこで出ている国連軍というものは明らかにアメリカ軍そのものであり、アメリカの極東軍であり、そしてそれに加わるということは日本平和外交をこわすという大きな配慮がなければならぬと思うし、また日本政府は少なくとも公式的にはおっしゃいませんけれども、在韓国連軍に関しては、その協力体制についてはきわめて警戒的な措置をとり続けてこられたというのは事実だと思うのです。  ところが、あなたはいま国連平和維持機能という形で人を送ることが考えられるなどとおっしゃるということは、日本政府のいままで非常に警戒的に日本が戦争に巻き込まれないためにとってこられた立場を一挙にくつがえして、在韓国連軍にも加わり、在韓国連軍に資材を送り、たとえば在韓国連軍に看護婦を送り、在韓国連軍にトラックを送り、在韓国連軍についでに鉄砲を撃たないだけのあらゆる施設を送り、そして在韓国連軍の実際的な軍事を担当し、在韓国連軍のあらゆる鉄砲を撃たない自衛隊員でないと称するものを全部送る、しまいには自衛隊員を一時退職させて送るということだって可能な引き金を引くことになるのじゃないですか。  大臣、この答弁は取り消されたらいかがですか。これはちょっと問題になり過ぎませんか、こんなことを言われるのは。もしほんとうに大臣がそれで押し通されるのだったら、私はこれは大問題として議論しなければならないですよ。これはちょっとまずいのじゃないですか。こんなことを言っていいのですか。そうすると、あなたは戦争をやる気ですか、韓国で。これは問題ですぞ。
  196. 大平正芳

    大平国務大臣 問題をそう大きく拡大されると困るので、私が言っているのは、つまり国連の休戦監視委員会のようなものができて、そうしてそこへ各国がそれを見張りのために派兵するという場合、日本の場合はできない、あるいはそこへ派遣する場合は、派兵はもとよりでございますけれども、派遣をする、自衛隊員を派遣することも日本はできないということでございまして、そういう点は明らかになっておると思うのでございます。  ただ、日本として平和の創建に協力していくという場合において、財政援助をやるだけでいいのかどうなのか。お医者さんの派遣あるいは看護婦の派遣、そういったことが考えられないものでもなかろう。つまり日本としては平和創建の協力ということについてもう少しくふうしてみる必要はあるのではなかろうかというような感じで申し上げておるのでございまして、武力の増強、武力の行使に日本がそれに参加するとか、応援するとか、そういうことを私、申し上げているつもりでは毛頭ないわけでございます。  問題は紛争があったところに一つ協定ができて、そこに平和を定着させていく、硝煙がまだ十分消え去っていないところで早く平和が定着していくについていろいろな仕事がある。そういう場合に日本の憲法や自衛隊法その他日本の国情に照らしてやれること、やってならぬこと、そういったことは十分わきまえながら平和創建については日本としてもっと積極的な態度で臨む必要が起こってきはしないか。それは概念上そういうことが全然考えられないと割り切ってしまう必要はないのじゃないかというような意味のことを申し上げておるわけです。
  197. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いや、まずいですよ。それは大臣、ものすごくまずいことをさらに言われたですよ。これは私がいま議論しているだけだから、きょう当委員会には全部の委員おられないが、外務委員全部おそろいになったらこれはもう大問題ですよ。  じゃ、一つ全然別の角度から言いますよ。自衛隊を退職した人は自衛隊法に縛られますか。自衛隊の海外派兵条項に縛られますか。まずそれから伺いましょう。そうしたら、あなたの言っていることなんか全部打ちつぶして、自衛隊員全部出すことができますよ。どうですか。
  198. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  自衛隊を退職した者は自衛隊法に縛られるということはございません。  なお、一つこの機会に条約立場から明らかにしておきたいことは、国連平和維持活動というものと、それから国連軍、つまり国連憲章第七章の強制行動としての国連軍というものとは質的に異なるものでありまして、そのことだけを念のため申し上げておきます。
  199. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ますますよけいなほうに飛び火するような御答弁が続いておるのですがね。そんなこと言えば言うほどよけいなことになるわけで、まあ話があまりそこらじゅうにいきましたから、大臣が言われた中で、硝煙のあとに平和を回復するために、平和創造のために何かするべきことがあるのではないかと言われたら、国連軍というようなきわめて政治的色彩の強い、あるときはアメリカ軍の代名詞みたいなものの中に日本がおどり込むのではなくて、看護婦や医者を派遣するのは赤十字としてやるべきことであって、何も国連軍の中に医師や看護婦を派遣する必要はないではないですか。同じ医師や看護婦でもそれは軍事能力の一つじゃないですか。なぜそんな荒っぽいことを言われるのですか。それがまず一つ。  武力行使に参加するつもりはないとおっしゃいましたけれども、現在の武力というのは総力戦であります。その武力のさまざまな部分を維持する必要があるのです。ベトナムに行っていた五十万のアメリカ軍のうち、実際戦闘に参加する能力を持っているのは七万、あとの四十三万というのは一般のシビルであったということは、もうすでに報道されているとおりであります。四十三万の後方部隊というのがうしろにいるのです。それを日本が担当すればどういうことになったかということをお考えいただきたい。しかもそれが国連軍の名称のもとに行なわれているじゃありませんか。  しかもあなたの御発言は、国連のいまの平和維持機能と国連軍のことと全くごちゃごちゃにした御答弁をなすったのはあなたのほうです。その辺明確にしないうちにいまみたいな危険きわまりなき御発言をされるということはこれはもう大問題であって、いよいよ在韓国連軍に日本は加わり、ベトナムにおけるアメリカ軍にいよいよ日本は登場し、カンボジアにおけるアメリカ軍に日本は加わり、そして植民地戦争に全面介入する意思を、日本外務大臣は、キッシンジャーさんと会ったあと急速に、アメリカへ行った帰りにおみやげとして衆議院外務委員会で放送したと言われて、今度はアメリカで大問題になったって知りませんよ。  外務大臣、ここのところは取り消されたらどうですか。平和の創造外交に対するあなたの意欲はわかります。しかし、これは表現の方法を欠いておる。国連軍というのは、いまや完全な世界の平和勢力ではあり得ない。葛藤の場所であります。その中に一方的にちょいとそれにお手伝いしようかしらなんということ、そういう事態が政治的ニュアンスを招くじゃありませんか。これだけ私丁寧に申し上げたけれども、私の忠告を聞き入れられるのか、られないのか、伺います。
  200. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほどの、国連軍及び国連の平和維持活動に対しまして、いままで機材及び人員を供与したことはありません。しかし、お金は出したことがございます。その事実だけ、先ほど機材を出したかどうかはっきりしなかったので、それだけ、いままでの経過だけはお答えいたしておきます。  私が申し上げたのは、われわれが国際的な平和維持活動、平和の創建に日本は何をなしたらいいか何をなしたらいけないかという一般的な問題としてなお究明すべき問題があるのではないかという問題提起をいたしたにすぎないわけでございまして、具体的に国連軍に対しまして日本がいまどうするこうするということを申し上げたことではないのでありまして、そのようにお受け取りになる、そういう誤解を生む発言だとすれば、その部分につきましては私は取り消します。
  201. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 国連軍に対しては文官、武官を問わず出さない、こういう意味ですね、私はあなたを救済するために言っているのです。
  202. 大平正芳

    大平国務大臣 さようでございます。
  203. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 まさに非常にあぶなっかしいことを先ほどから御答弁が続くので、アメリカの空軍長官のまねなどせずに、かたい話をひとつお願いをしたい。  今度はこの空軍長官の御発言ですね。正確には資料が来てからまた伺いますが、こうしたことに抗議される、あるいは見解表明される、あるいは米側に意思を通されるおつもりはありますか。
  204. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 問題の会見は、二十二日の外人記者クラブの会見でマクルーカス空軍長官の発言があったわけでございますが、御当人がけさ離日するにあたりまして離日の声明を出しておりまして、これは先ほど山中防衛庁長官から御紹介がありましたとおりで、御本人自身が、あくまでも仮定の質問に対して仮定の答弁をしたにすぎないということと、日本の自衛隊の役割りについては十分承知しているという趣旨のことを明らかにいたしておりますので、空軍長官自身も問題のありかについては十分承知しておると思います。  また、二十三日に国務省のキング報道官が記者会見で次のように述べておると報ぜられております。それはマクルーカス空軍長官の東京での記者会見によって、米国が日本の地域安全保障のための軍事的役割りを果たすものという考えを持っているのかということについて、報道官は、シュースミス代理大使が東京で説明したとおり、あくまでこれは仮定の問題であって、また、アジア情勢に危険な変化があるとは思わないということで、アメリカ政府日本安全保障に関する問題の立場に何の変更もないということを言明いたしております。  このように米側におきましても、すでに問題の所在については十分承知しておるというふうに考えておりますけれども、先ほど大臣から御答弁がございましたように、念のため米側に対してはあらためて注意を喚起しておきたいと思っております。
  205. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それはどういう形でその注意を喚起なさいますか。
  206. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 外交ルートでしかるべく米側に注意の喚起をいたしたいと思っております。
  207. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは私は、時間がなくなってきて、恐縮なんですけれども日中航空協定の機密漏洩問題につきお伺いをするわけであります。  これはまことに妙な問題でありまして、日中航空協定について、自由民主党の内部において、交渉中の機密が漏洩したという事件が起こっておるわけであります。念のために日付を申しますと、四月十一日自民党の藤尾議員が、これを記者会見をして発表され、また日華議員懇談会総会でこれを述べられ、日華議員懇談会総会の一つの決議としてこれを支持する旨の意思表示があったとわれわれは承っております。また翌日四月十二日灘尾弘吉日華議員懇談会会長は、これは藤尾氏個人の行動ではなく会としての意思である旨述べております。また四月十二日小川大使は中国側に会い、遺憾の意を表明いたしております。四月二十日無事協定の調印が北京で行なわれたわけでありますが、私は四月二十七日、これを当外務委員会で取り上げて、政府は野党にきびしく与党に甘いのはなぜかと申しましたところ、事実関係を究明し、法律を厳正に適用する旨外務大臣から御答弁をいただいております。  二十七日以来今日に至るまで約一カ月を経過しているわけであります。この間、事実関係について御説明を得ず、法律を厳正に適用する旨の御答弁についても不十分であります。しかも法解釈の歪曲が法務大臣から行なわれるに至っては、もう言語道断というかあきれるというか、憲法を知らぬというか、憲法違反というか、そのことばを知らぬのでありますが、こうした事実がばっこいたしますならば、野党議員はものを言えない、与党議員は何でもいいという不愉快きわまる慣行が当委員会で出現するわけであります。  すなわち、日本国憲法の第四十四条は、両議院の議員の資格について、法律でこれを定めることを述べ、「但し、人種、信條、性別、社會的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない。」旨表示してあります。われわれと自民党議員とはその見解を異にしております。信条を異にしております。また社会的身分、門地、教育、財産、収入等いろいろ異なるところもありますが、与党の議員に対しては処罰が行なわれない、野党については徹底的に追及される、こういうことがあっていいかどうか、きわめて問題であります。  外務大臣はどうしてこの問題について積極的に事情聴取をなさらないのか、またこうした問題について、野党議員に対して苛烈な、そうしたことを他の大臣が述べることに対して、外務大臣が何もおっしゃらないのはどういうわけなのであるか、私、お伺いするわけであります。まず事実関係から述べ、しかる後に御見解を承ります。
  208. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 事実関係について答弁させていただきます。  渡部先生御指摘のとおり、四月十一日の記者会見で与党の議員から発言のありました部分は、その当時の時点において確かに外交上の秘であったことが発言されたわけでございまして、その後外務省をはじめといたしまして、秘密が漏れたのであるかどうか、漏れたとしたらどういう経路で漏れたのか、調べたわけでございます。  それで、私どもとして一番心配いたしましたのは、北京から参りました公電の中に、与党の議員の発言された部分と軌を一にするものがありますので、場合によるとこの公電が漏れたという疑いもあるわけでございますので、その公電の追跡をしたわけでございます。外務省の中におきまして徹底的に調査いたしました結果、外務省の中からその電信のコピーなり電信なりが漏れたという形跡は全くないということの結論に達したわけでございます。  それからあと、その公電のコピー二通が官邸に配付されていたわけでございますけれども、それにつきましても徹底的に調査していただいた結果、公電そのものも保管されておるし、その筋から漏れたという事実はないというふうな報告をいただいているわけでございます。  それから関係省に対しまして一部配付をしてあったわけでございますので、その行くえがどうなったかということを確かめたわけでございますが、関係省から報告が参りまして、公電自体は厳重に保管してある、公電そのものなり写しを見せたり渡したりしたということはない、ただ与党部会との申し合わせもあるので、交渉経過についてはその概要を説明したことはあるという報告をいただいたわけでございます。  その後の点につきましては、外務省として調べられるところは外務省の省員に関してでございまして、これ以上調べようがないというところまで調べたわけでございますので、この問題はさらに調査を続けられておりますけれども、これは外務省だけの問題というよりは、関係省を含めました問題として調査がさらに行なわれているということでございます。  そこで、先生の御発言の中に、与党議員に対する説明と野党議員に対する説明というものが違うように取り扱われるのはどういうことだという御発言があったかと思いますが、これは先日の法務委員会におきまして、仮定の質問に対する刑事局長答弁といたしまして、行政を円滑にするために、政府の職員が与党議員なり野党議員なりにあらかじめ説明をするということはある、その説明が適当な範囲であるかどうかということが問題だけれも、その相手が与党議員であると野党議員であるとによってその取り扱いがどうであったかという判断の差はない、与党議員であれ野党議員であれ問題は同じであるという答弁を刑事局長からしておりますので、これを御参考までに申し上げたいと思います。
  209. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると問題が二つあるのです。一つは、四月十一日藤尾君が手にしていた資料は一体何だったのですか。これが公電だと彼が持って振り回していたのはあれは何だったのですか。
  210. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 これも先日の法務委員会の法務大臣の御答弁にあるのでございますけれども、藤尾議員はメモを持っておられたということでございまして、これが何であるかということは私どもとして調べようがないわけでございます。
  211. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それは調べなかったにすぎないではないですか。与党議員だったからびくびくして聞きに行くこともできなかっただけの話ではありませんか。それをもうごたごた言うつもりはない。これくらいのことは国民に話すのがあたりまえだと思う立場から私はものを言っておるのです。  それで、私はもう一つ言っておきますけれども、四十九年の三月三十一日と四十九年の四月七日、この漏洩の起こるすでに前であります。三月三十一日はこの漏洩の起こる十一日前、またこの三日前、日中航空協定の案文としてここにコピーされておりますのは読売新聞であります。この読売新聞の内容協定文の内容ことごとくが盛られております。それで、「政府筋が三十日明らかにしたところによると、」と一方は書いてある。一方は「六日も協定の各条文についての詰めが行われたが、外務省筋が同日明らかにしたところによると、」と書いてあるじゃないですか。これはやかましいことを言って、毎日新聞がこの前機密漏洩でたいへんひどい目にやっつけられたときと同じ論法を使うなら国家公務員法違反であり、百条違反であります。公務員は業務上知り得たことを外の人にしゃべっちゃいけないというのにひっかかるじゃありませんか。この漏洩した責任者外務省のどこにいるのですか。それは調べたのですか、調べないのですか。この二つの内容をしゃべったのはだれなんですか。そしてこれを調べないでおいて、藤尾委員の分ばかり問題にするのはどういうわけなんですか。新聞に刷られているじゃないですか、この内容は。見てくださいよ。中身が全部書いてある。青天白日旗の問題であろうが、あるいは国旗の問題であろうが、名称の問題であろうが、六項目のワンパッケージの話であろうが、全部書いてあるじゃないですか。
  212. 高島益郎

    高島政府委員 ただいま拝見しました読売新聞の記事でございますが、これは航空協定一般に通ずるいろんな協定に盛るべき項目が書いてございまして、協定文そのものの内容とは思いません。それから、外務省筋ということで引用されているそうでございますけれども、私を含めまして担当の地域課も当然でございますけれども、新聞に対しまして航空協定内容について事前に話したことはほんとうにございません。
  213. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 要するに、外務省は毎日新聞に悪意があるのだね。読売新聞には好意があるのだな、こうやってみれば。読売新聞には何でもべらべらしゃべる。それで機密漏洩は問題にしない。毎日新聞のときだけ目を三角にする。こういうしかけなんですね。毎日新聞をなぜ憎み、読売新聞になぜ好意を持つか、説明しなさい。
  214. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 毎日新聞と先生が言われました件は、例の蓮見事務官の事件を言われていると考えるわけでございますけれども、あの場合には国会の席上におきまして電文の照合をしたわけでございまして、公電が漏洩しているという確実な事実がそこで確認され、また外務省の中においてその経路を調べました結果、本人も自白しましたことによりまして、明瞭にこの秘密の漏洩がある、公務員法百条違反であるということの疑いが非常に濃くなりましたので、警察に調査を依頼したわけでございます。  先ほどアジア局長のお話がありましたように、項目その他につきましてある程度のブリーフィングをすることと公電そのものを見せたり写したりすることによって漏洩することによって国益が害されるということは、私どもとして違う問題であるというふうに考えております。
  215. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ここにあるのは「判例時報」の判決文です。あなたの言ったようなことは書いてないのだ。「外交交渉の一環として行われる個々の会談の具体的内容が少なくとも当該外交交渉の妥結調印前において漏示されることになると、当該交渉又は将来の外交交渉の能率的効果的な遂行が国民に保障され得なくなる危険性が考えられるのであって、」と明瞭にこのところに書いてありますよ。  今度の件だって、このとおりじゃないですか。そうでしょう。蓮見事務官のときだけはりきっただけじゃないですか。そしてあなたはいま、あのときは犯人が見つかったからやったようなことを言った。今度藤尾さんがああいう情報を得たルートというのはあなた方はすでにお調べでしょうから、だれからどうしてどの公務員が関係したかというのは知っているはずじゃないですか。そこまであなた方が黙っているのなら私も一言言っておきますが、外務省はそうして謝罪したじゃないですか、その件について。そこまで言っても知らぬというのですか。小川大使が何と言ったかあなた方は知ってないのですか。それでもなお知らぬ顔するのですか。  こういうふうに一方は処罰し、一方は処罰しない。自由民主党は派閥関係だけでしかものを考えないと言われてもしようがないじゃないですか。あなた方のやっていることはすでに公然周知の事実になろうとしている。適当に御答弁なさいよ、それならそこで。さももっともらしいことを言いなさい、そこで。あとで大恥かくだけなんだから。あとで恥をかかないようにうまく言いなさいよ。
  216. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 私の先ほどの答弁にありますように、あの四月十日なり十一日の時点におきましては、外務大臣の談話の内容ということは外交上の秘であったわけでございます。したがって、その時点であの内容が漏れるということは、交渉上あるいは日本の対外信用上害があると考えたわけでございまして、交渉の相手である中国側に対しても小川大使からその事情を説明したわけでございます。
  217. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そんなことを聞いているのじゃない。まあ答弁不能だろうな、これは。みっともないだけだよ、そんなこと言っているのだったら。答弁にならないですよ。ぼくの言ったことと違うじゃないですか。真相を知っているのは外務省じゃないか。そしてえらい人がからんでいるからじゃないか。それがおそろしくて言えないだけじゃないか。それを知らぬ顔して通そうという。破廉恥ですよ。一カ月たっているのじゃないですか。何にも言わないじゃないですか。  私の持ち時間はとうにオーバーしておりますから、私はきょうはこれでやめにしたいと思います。要するに、委員長、これは一月経過しております、一月に三日足りませんが、その間調べて、すべての真実はもはやすでに明らかになりつつあります。いま明らかにならなくとも、そのディテールに至るまで歴史の上で必ず語られる日が、これほどのマスコミの発達しているときですから、すみやかにその全貌が暴露されるのはもう目に見えております。そしてその結果、一つだけ明らかになることがある。それは与党議員と野党議員の扱いの不合理さであります。もう一つは、大平をたたきつぶすために立ち上がった某派のきわめて下劣な戦いのやり方であります。そして一方では、見識のない外交問題に対する取り扱いであります。また一方では、マスコミの報道の自由に対する陰険なる妨害であります。  私は、この事件の解明というものはあきらめないで続けるつもりです。そして、いまのような御答弁をなさるとあなたよろしくない。あなたはそれ以上知っているじゃありませんか。それくらいのことは私だってわかる。そういう言い方で当委員会に対してごまかし続けるなら、私は徹底的にやるしかない。この次、どこまで話せるかよくお考えになって当委員会に出てきていただきたい。それだけ申し上げて、私の質問を終わります。
  218. 木村俊夫

    木村委員長 永末英一君。
  219. 永末英一

    ○永末委員 私は、朝鮮民主主義人民共和国における日本人妻の問題についてお伺いいたします。  一九五九年八月十三日のカルカッタ協定によりまして、在日朝鮮人の方々が朝鮮民主主義人民共和国——これ以後北朝鮮と呼ばさしていただきますが、北朝鮮に帰還をいたしまして、その中で日本人であった妻、この人数は何名が北朝鮮に参りましたか。
  220. 小林俊二

    ○小林説明員 御答弁申し上げます。  現在までいわゆる北鮮帰還をもって北鮮ヘ帰還いたしました日本人の数は、六千七百五十五名と記録されております。このうち男が二千六百三十四名、女が四千百二十一名でございますが、この四千百二十一名の女性のうち、いわゆる日本人妻といわれる者が、正確に何名であるかということは確認されておりません。ただいまのところ、概算約二千名と推定されております。
  221. 永末英一

    ○永末委員 その日本人妻と称せられる者の数が、なぜ概算しか言えないのですか。はっきりと確定をして北朝鮮へ送ったのではないですか。
  222. 小林俊二

    ○小林説明員 実は、いわゆる日本人妻といわれる者の中には、内縁関係の者がございます。戸籍上の妻もございます。そういう関係で、明白な数が統計上分類されていないというわけでございます。
  223. 永末英一

    ○永末委員 日本人妻とはっきりわかっている者は概算でなくて何名ですか。概算というのはぼやっとしたところがあるから概算でしょうが、二千名程度の中ではっきり確認されている者は何名ですか。
  224. 小林俊二

    ○小林説明員 ただいまの手持ちの資料の中にはそういうことではっきり確認されたものはございません。これが確認し得るかどうか、後刻検討の上お答え申し上げたいと存じます。
  225. 永末英一

    ○永末委員 全体を確認して送ったのか、確認しないで一部分がわからないから概算と言われたのか、全然初めからいいかげんにして送ったのか、どっちなんですか。
  226. 小林俊二

    ○小林説明員 全体として日本人妻という形で、戸籍上の地位を有する者についての数は存在すると思います。ただ、いわゆる日本人妻といわれる場合に、内縁の関係の者も当然含まれざるを得ませんので、この点全体として約二千名と申し上げたわけでございます。
  227. 永末英一

    ○永末委員 それは調査をして、本委員会にひとつ御報告を願いたい。  さて、この人々の国籍は現在どうなっておりますか。
  228. 小林俊二

    ○小林説明員 出発のときに日本人として北鮮へ帰還いたした者の数を先ほど申し上げたわけでございますが、これらの人々はいずれも日本旅券を持って北鮮へ帰還しておるわけでございます。  ただ、この点につきましては民事局の第五課長がお見えですので、第五課長のほうに答弁をお願いしたいと思います。
  229. 稲葉威雄

    ○稲葉説明員 いままでそういうことで問題になったことはないわけでございますが、日本国籍を保有している者として取り扱わざるを得ないものと考えております。
  230. 永末英一

    ○永末委員 日本国籍を保有しているものと考えざるを得ない、こういうことでありますと、日本政府にはこの人々に対する保護の義務がございますね、外務大臣
  231. 高島益郎

    高島政府委員 もちろん外国にございます日本邦人について、一般的な意味での保護の義務はございますけれども、御承知のとおり北朝鮮は現在日本との正式な国交もございませんし、外交ルートがしたがってないわけでございますので、そういう意味では保護いたそうと思いましても、たいへん制約されるという実情にあることは御承知いただきたいと思います。
  232. 永末英一

    ○永末委員 この人々の現在の居住地はわかっておりますか。
  233. 高島益郎

    高島政府委員 消息のわかっている方ももちろんおりますが、わかっておらない方もかなりおります。
  234. 永末英一

    ○永末委員 分量で示してください。
  235. 高島益郎

    高島政府委員 その内訳は調査したことがないのでわかりません。
  236. 永末英一

    ○永末委員 調査してないからわからないのだったら、消息のわかっている者もあるがわからない者もあるという答弁はどうなりますかね。全然わからぬのですか。
  237. 高島益郎

    高島政府委員 親族を通じて連絡のある方についてはもちろんわかっているわけですが、そうでない方はわからないということでございます。
  238. 永末英一

    ○永末委員 政府は、そういう人々の消息を知る義務があるとはお考えになりませんか。
  239. 高島益郎

    高島政府委員 消息のわからない御親族の方に対しましてたいへん気の毒だと思って、われわれも関心を持っておりますけれども、現在の北朝鮮の状況のもとにおいて、ほとんど不可能であるというのが現状でございます。
  240. 永末英一

    ○永末委員 これらの人々が里帰りをした事実がございますか。
  241. 小林俊二

    ○小林説明員 ただいままでのところ、帰国していったいわゆる日本人妻から里帰りの希望の表明というものが当局に届きました例はございません。したがって、何らか間接的な方法で帰国したという例がない限り、正式には里帰りという例を私どもとしては知らないわけでございます。
  242. 永末英一

    ○永末委員 最近、日本人妻自由往来実現運動本部というものをつくられた方がございまして、その責任において約八通の日本人妻から日本に送られた手紙が公表されました。それをちょっとこの機会に読み上げさしていただきたいと思います。  たとえば食べ物の点でこういうことをいっているわけですね。  お米を食べないからおち々が出ないのです。ミルクを送って物らいましたがち々首がないのでこまって居ります。うどんおさかな一度食べて見たいわ。また、ここは実にきびしいものです。(中略)生きた魚なんて見た事もないし、カロリーなんか栄養について計画すれば何にも出ない生れて初めての食生活をして居ります。というような食物に対すること。また衣類に対しましても、  きず物二流品でよろしいのです。又何枚分でもいいのです。オーバ地と毛布、毛糸が欲しいのですが、なんとかしていただけないでしょうか。こういうようなこと、そして生活状況では、  何しろタケノコ生活でやっと口をつなぐのがせい一ぱいでどうしようも有りません。そこでこの度思ひ切ってお母さん初め皆さんになんとか助けてもらおと思ひ、思ひ切って手紙書いた次第です。どうかお母さん皆さんと相談なさって一度だけなんとかお願い致します。一〇〇%ナイロンの頭にかぶるネッカチーフ三百枚有れば何んとかなります。というような切実な依頼。また他の人は、  あれこれと考へると人間の常識としてはこのような書信を出来るものではない事も百も承知の上での何とか時の何頼みます。どうぞ洋のような心量を以ってお願いします。こういうような手紙が到着をいたしておるのでございまして、大平外務大臣、この質問の経過から、先ほど来伺っていただいておりますが、なお日本人の国籍を有しておる日本人が、少なくともこのような状況に該当しておると思われる人々が二千名ほどおるというのはあなたの政府の確認事項なんです。これをこのまましておることでよろしいと外務大臣としてはお考えですか。
  243. 大平正芳

    大平国務大臣 何とかそういう方々の御希望を一部でも満たしてあげたい気持ちで一ぱいでございますけれども、どういう手段方法が可能なのかということがまず第一に頭に浮かぶわけでございます。それから、これは北鮮におられるわけでございますが、北鮮の立場から申しますと、これは諸外国もそうでございますけれども、自分の国の体制のもとで、その主権のもとで生活を願っておるわけなんでございまするから、まず他国からの干渉というようなことに対しては神経質になりがちな傾向がほかの国においてもあるわけでございまして、そういう状況のもとで、国籍は日本の国籍と認めざるを得ないという法務省のお立場は先ほど伺ったわけでございますが、そういう場合に日本が何ができるのか、何をすべきであるか、何をしてはいけないのか、そういった点につきましてはとっさの答弁はできませんが、よくよく検討さしていただきたいと思います。
  244. 永末英一

    ○永末委員 問題は、北朝鮮と日本との間に国交がないということから生じておることなんですね。もし政府として何らかの責任を持ち得る国交がその間にあるならば、政府政府交渉でなし得ることがあるかもしれませんが、そういうものがないためになかなか難渋しておる。  ただ、このことが始まりましてからすでに十五年も経過いたしておりますけれども、もしこういう状態になるのだということを知りながら、帰還協定によって日本政府は帰還をしていく人々に対して政府の行動としてこれを実行しましたね。そうしますと、あとは何もできないにかかわらずそういうことをやったというと、結果的にこれだけの日本人を捨てたということに言われた場合、どうされますか。捨てたのじゃございませんでしょう。日本人ですよ。何にもできない地域へ送ってしまったということがいま起こっているわけですね。どうお考えですか、大平さん。
  245. 大平正芳

    大平国務大臣 これは強制送還をしたわけではなくて、政府で御本人たちの希望を確認した上で送還したはずだと私は思うのでありまして、みすみす棄民したというようにおとりいただくのは政府に対して酷だと思うのであります。しかし、その人たちが現地の事情に十分精通しておられたかどうかということにつきましては疑問がないわけではないわけでございます。しかし、現実にそのような手紙に示されたような事態があるということでございまして、それに対して何ができるのか、また何をすべきであるか、何をしてはいけないのか、そういった点につきましてはよほど検討さしていただかないととっさの御答弁はむずかしゅうございますので、なお検討さしていただきます。
  246. 永末英一

    ○永末委員 日本赤十字社から参考人が来ていただいておると思いますので、ちょっと参考人にこの際伺っておきたいのでございますが、一九五九年の協定の第六条第六項に、朝鮮側は「帰還者の帰還後の生活安定のため、その住宅、職業、就学等すべての条件を保障する。」こういう協定が結ばれて日本側からの帰還が行なわれたわけでありまして、日本赤十字社とされましては、一体この条項でどういう程度の内容を了解されておったか、お答え願いたい。
  247. 木内利三郎

    ○木内参考人 お答え申し上げます。  昭和三十四年、在日朝鮮人の朝鮮民主主義人民共和国への帰還に関しましては、どういう人をどういうふうにして帰すか、船をどういうふうにするか、そういう実務的な点について赤十字社が朝鮮の赤十字と連絡をして実務的な協定を結んで実施するようにと政府から御依頼を受けまして朝鮮と話し合いをいたしましていわゆる協定を結びました。  その中に、いま永末先生のおっしゃった、向こうへ帰った朝鮮人についてはその生活安定を保障すると約束をいたしました。そのときに、文章にはなっておりませんが、帰ったあと幸福に安定した生活ができるようによろしく頼むということを日赤代表から先方に話しまして、向こうも、十分に保障する、世話をしますという回答を得ております。  その後向こうにおける生活の状況について赤十字のほうへは別に何ら訴えを受けておりませんので、その後は特に、常に留意はいたしておりますが、別に処置は講じておりません。
  248. 永末英一

    ○永末委員 いま私が読み上げました手紙のこれは一節だけでございますが、そういう状況を真実と受け取られた場合、日本赤十字社としては何かしなければならぬとお考えでしょうか。
  249. 木内利三郎

    ○木内参考人 その状況がはっきりどういう方がどこにおられてどういう生活上の困窮あるいは不便な点があるかというような個々の方についての事情がわかりますれば、政府と御相談いたしまして何らかこれを解決するように努力いたしたいと思っております。
  250. 永末英一

    ○永末委員 個々の場合ということではなくて、これは手紙が来ておるわけでございますから明確にその人がだれであるかわかりますが、一般的な問題として、日本赤十字社があちら側の赤十字会との間に協定を結ばれた、そのときのお約束のあとづけをあなたのほうでやはりあちらの赤十字会と連絡をして実情をお調べになる、知らしてもらうために現地へ行かれるというようなことは御用意はございませんか。
  251. 木内利三郎

    ○木内参考人 一つの国の中におきます赤十字の仕事はその国の赤十字が担当してやることでございまして、他国から調査団というようなものを派遣することは国際赤十字として不可能だと考えます。
  252. 永末英一

    ○永末委員 あちら側の赤十字会が、この協定に基づいて渡った日本国籍のある方々のことを調べていただいて、あなたのほうが見舞い品を送るということはできますな。
  253. 木内利三郎

    ○木内参考人 先方に調査を依頼いたしまして、その結果先方が了解と申しますかそのようにしようということであれば、こちらから救じゅつ品を送る等のことはできると考えております。
  254. 永末英一

    ○永末委員 他の手紙にはこういう一文がございます。  今おじさんからの母あての手紙受け取りました。これは昨年八月四日付のもののようでございます。この手紙自体は九月四日付です。  手紙によれば今日本で北朝鮮に居る日本人の里帰り問題を実現するために北朝鮮側の意向を打診する考えを明らかにしたそうですが本当に日本人の人達の里帰り問題が実現出来れば良いんですが。母は今から里帰り問題が実現出来る様な考えをして喜んでおります。もう今から計画を立てております。こういう手紙がございます。  大平さん、あちらに行っておる二千名と推定される日本人妻だけの問題ではなくて、その人を送り出した、二千名でございますからおそらく数万と考えられるいまわが国の国内におるまさしく日本人ですね、これの親戚、縁者一同、こういう人人が非常に重大な関心を持っておる。そして現地ではすでに、交渉といえるかどうかわかりませんが、そういう問題について日本側が発動しておると受け取っているわけです。これにこたえるのはやはり政治だと私は思います。  したがって、里帰り問題について外務大臣はひとつ研究をして、これの実現に御努力をなさろうという御意思はございませんか。
  255. 大平正芳

    大平国務大臣 きょう提起された問題でございまして、ひとつ検討させていただきます。
  256. 永末英一

    ○永末委員 先ほど、この人々が夫たちとともに北朝鮮へ参ります場合に現地の事情をつまびらかにしなかったのではなかろうかというお話がございました。そんなことは国民の一人一人がしっかり知るわけはございませんよ。そういう場合に実情をちゃんと知らして、自由意思で行かれるわけでございますから、知らせるのは政府の役割り、結果的に見てそのことに政府の行為に懈怠があったという結果がこういうことを示しておると思うのでありまして、言うならばみずから求めたには違いないけれども、その状況が非常に窮迫している状況にある人を政府が気づいたならば、即刻これを普通の水準にまで直すということが政府のなすべきことだと私は思います。  日本赤十字の方もそれぞれ国際関係がございますから仕事のなし得る範囲がございましょうが、日本政府もまた国交はないからといって無縁のものだというような態度は許されない問題だと私は考えますので、大平外務大臣におかれましてもせっかく前向きにこれを御検討願いたい。もう一度お答え願いたい。
  257. 大平正芳

    大平国務大臣 検討してみたいと思います。
  258. 永末英一

    ○永末委員 終わります。
  259. 木村俊夫

    木村委員長 木内参考人には御多用のところ本委員会に御出席くださいまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  次回は、来たる二十九日水曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時十四分散会