運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-05-10 第72回国会 衆議院 外務委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年五月十日(金曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 木村 俊夫君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 福永 一臣君    理事 水野  清君 理事 河上 民雄君    理事 松本 善明君       足立 篤郎君    奧田 敬和君       瓦   力君    小林 正巳君       坂本三十次君    田中 龍夫君       谷垣 專一君    深谷 隆司君       福田 篤泰君    宮崎 茂一君       宮澤 喜一君    高田 富之君       土井たか子君    瀬野栄次郎君       松尾 信人君    渡部 一郎君       稲富 稜人君    永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         外務政務次官  山田 久就君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局外         務参事官    伊達 宗起君         大蔵大臣官房審         議官      大倉 眞隆君         農林省農林経済         局長      岡安  誠君         水産庁長官   内村 良英君  委員外出席者         外務大臣官房領         事移住部長   穂崎  巧君         外務省経済局国         際貿易課長   小宅 庸夫君         大蔵大臣官房審         議官      原   徹君         大蔵省主税局国         際租税課長   大竹 宏繁君         日本ユネスコ国         内委員会事務局         総務課長    笹岡 太一君         文化庁長官官房         国際文化課長  角井  宏君         通商産業省通商         政策局経済協力         部長      森山 信吾君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ————————————— 委員の異動 五月九日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     石田 博英君   小林 正巳君     大石 武一君   深谷 隆司君     菅野和太郎君 同日  辞任         補欠選任   石田 博英君     加藤 紘一君   大石 武一君     小林 正巳君   菅野和太郎君     深谷 隆司君 同月十日  辞任         補欠選任   大久保武雄君     奧田 敬和君   加藤 紘一君     瓦   力君   小坂善太郎君     宮崎 茂一君   大久保直彦君     瀬野栄次郎君   永末 英一君     稲富 稜人君 同日  辞任         補欠選任   奥田 敬和君     大久保武雄君   瓦   力君     加藤 紘一君   宮崎 茂一君     小坂善太郎君   瀬野栄次郎君     松尾 信人君   稲富 稜人君     永末 英一君 同日  辞任         補欠選任   松尾 信人君     大久保直彦君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際協力事業団法案内閣提出第五七号)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税の防止のための日本国とアイルランドとの  間の条約締結について承認を求めるの件(条  約第六号)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国スペイン国との間の条約締結に  ついて承認を求めるの件(条約第七号)      ————◇—————
  2. 木村俊夫

    木村委員長 これより会議を開きます。  国際協力事業団法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。永末英一君。
  3. 永末英一

    永末委員 大平外務大臣がまだ出席でございませんので、大臣の答弁を要求する以外のところから伺います。  過般パプア・ニューギニア開発輸入促進調査団なるものがパプア・ニューギニアを訪問いたしまして、調査を実施いたしました。これはおそらく通産省関係だと思いますが、どういう目的で、どういう規模で参ったか、御報告を願います。
  4. 森山信吾

    森山説明員 お答え申し上げます。  通産省におきまして開発輸入促進調査団というのを毎年派遣いたしておりますが、昭和四十八年度、ただいま先生指摘のとおり、パプア・ニューギニア地域チーム派遣いたしております。  なお、参考までに、昭和四十八年度の派遣チーム数は三チームございまして、パプア・ニューギニア地域のほかに、ブラジル及びアルゼンチン、それから東南アジアのインドネシア、タイ、シンガポール、この三地域に対して派遣をいたしたわけでございます。  派遣目的でございますが、御承知のように、昨年の十二月にパプア・ニューギニアオーストラリアから自治を獲得いたしまして、いわゆる自治領となったわけでございます。また、近く独立が見込まれておるわけでございますが、この独立に際しましての課題は、経済社会基盤の改良、整備ということではないかということでございまして、今回私どもがこの調査団派遣するに際しましては、パプア・ニューギニア地域が今後独立するにあたりまして、どういう基準を踏まえてわれわれとして経済協力をやっていったらよろしいか、そういうことに重点を置いた調査をやってきてもらいたいということで派遣したわけでございます。団長は、海外コンサルティング企業協会専務理事をいたしております山口仁秋氏にお願いしたわけでございまして、三月に出ていっていただいたわけでございます。  その調査結果につきましては、私どもにいただいております報告書をごく簡単に要約いたしますと、まず第一に、パプア・ニューギニア産業規模につきまして調査をいたしてもらいました結果、現在の規模がきわめて小さい、パプア・ニューギニアの土着の産業規模がきわめて小さい、今後経済的独立を達成するためには、中小規模産業振興を特にはかる必要があるのではないか、このためには、日本としまして、中小規模産業に貢献できるような人材を送り込んで、きめこまかな指導を行なえるような仕組みを考えてほしいということがまず第一点の報告でございます。  それからまた、現在のパプア・ニューギニア状態を見ますと、産業開発基盤となっておりますインフラストラクチュア整備がたいへんおくれておるわけでございますので、この点に対する日本側の配慮をぜひ考えるべきである、こういう報告を第二点にちょうだいいたしております。  それから第三番目に、現在日本から進出いたしております企業、この企業活動につきましては、企業自身が学校あるいは医療施設道路等整備いたしまして、何らかの形でその利益を現地社会に還元する等、まあ現地社会と協調、融和をはかって事業を進めておる企業もございますけれども、中には必ずしも現地事情の十分な把握が行なわれなくて進出をしたために、若干のトラブルがあったという例もなきにしもあらずということでございますので、今後健全な民間投資を促進するためには、事前現地政府等との十分な話し合いが必要ではなかろうか、こういう点を第三点として指摘を受けておるわけでございます。  それから第四点といたしまして、パプア・ニューギニアには御承知のとおりプラリ川という川がございまして、きわめて水量の多い川でございまして、言われるところでは五百万キロワットの発電能力が可能ではないか、こういう程度の大規模水量を持ちますプラリ川というものがございまして、このプラリ川を総合開発をすることによりまして、これをてこにいたしまして、いわゆる電力利用基幹産業を起こしまして、これによりまして経済的独立をはかろうとする基本的戦略というものをパプア・ニューギニア側は持っておる、それに対する協力の姿勢を考えていったらよろしいのではないか、この点の報告を受けております。  それから第五点といたしまして、オーストラリア政府も、対パプア・ニューギニアに対しまして、今後とも強力に支援を与えていくという方針のようでございますので、十分オーストラリア政府とも協議をしていくべきではなかろうか、こういう報告をいただいておるわけでございます。  以上、簡単でございますが、パプア・ニューギニア調査団報告を御報告いたした次第でございます。
  5. 永末英一

    永末委員 団長は伺いましたが、団員の構成を伺いたいと思います。
  6. 森山信吾

    森山説明員 団長につきましては、先ほど海外コンサルティング企業協会専務理事山口仁秋氏と申し上げましたが、そのほかに、団員といたしまして七名おりまして、今回は特に選考するにあたりまして民間企業の方を御委嘱するのではなくて、団体の方をお願いしたい、総合的な立場からものごとを判断できるようにという観点で選定いたしまして、その名前を申し上げますと、軽金属製錬会の嘱託でございます末吉氏、それから日本フエロアロイ協会の石森氏、それから中小企業振興事業団武立氏、それから商工組合中央金庫の嶋田氏、通産省から和田技官、それから海外貿易開発協会から白石氏、海外コンサルティング企業協会から藤本氏、以上団員が七名、合計いたしまして八名がチームとして行っていただいたわけでございます。
  7. 永末英一

    永末委員 調査した地域は、どことどこですか。
  8. 森山信吾

    森山説明員 まず調査団オーストラリアに参りまして、シドニーキャンベラ等におきましてオーストラリア政府との打ち合わせを行ないました。それからポートモレスビーに飛びまして、プラリ川及びヨンキ水力発電所調査いたしました。それからマダンに飛びまして、マダンではアイユラの農業試験場調査をいたしました。それからマダンからラエ地区に飛びまして、ラエ地区では主として現地職業訓練所調査をいたしております。それからラエからラバウルあるいはビアラ、ポートモレスビー等に三班に分かれましてそれぞれ調査を行ないました。この三班が再びポートモレスビーに戻ってまいりまして、最後にシドニーで総括的な打ち合わせをいたしまして帰ってまいりました。
  9. 永末英一

    永末委員 この調査団派遣にあたって、事前現地政府と完全な打ち合わせを遂げて行かれましたか。
  10. 森山信吾

    森山説明員 この調査団派遣にあたりましては、オーストラリア政府協議をいたしまして、オーストラリア政府を通じまして現地側と十分なコンタクトを出して出発をしていただいたわけでございます。
  11. 永末英一

    永末委員 伝えられるところによりますと、この調査団目的現地政府には完全にわかっていない。何か資源でもさがしに来て、また日本経済資源を取っていくのではないかという疑いを、現地チャン大蔵大臣から言われたということが伝えられております。その伝えられていることがほんとうだとしますと、現地政府と十分打ち合わせをしないで、いま伺いますと、オーストラリア政府とやったのであってというような程度で行っておられるのですが、一体なぜ現地政府と十分な打ち合わせをせずに行ったのですか。
  12. 森山信吾

    森山説明員 御承知のとおり、パプア・ニューギニアは現在自治を回復いたしておりますが、まだ正式に日本外交関係にあるわけではございませんで、日本といたしますれば、オーストラリア政府がまだ窓口であるということでございまして、オーストラリア政府に直接的にはアプローチをしたわけでございまして、オーストラリア政府からパプア・ニューギニア政府に対しまして話し合いを通じてもらった、こういう次第でございます。  それから、先生指摘の、この調査団現地に行くにあたりまして、若干調査団使命が誤解されておったという点は残念ながら事実でございまして、たとえばチャン大蔵大臣等の談話が新聞等に発表されまして、日本から資源略奪のためのチームが来た、こういうことを新聞に書かれた事実はございます。それで調査団長でございます山口仁秋氏が直ちに記者会見を行ないまして、今回の調査団使命を十分に説明いたしました。また、これは単に新聞記者会見のみならずチャン大蔵大臣に対しましても、十分な説明をいたしまして、その結果この調査団派遣趣旨が十分に理解を受けまして、氷解をしたと私どもは了解いたしております。
  13. 永末英一

    永末委員 外務省経済協力局は、この調査団派遣について何かコミットをしたのですか、しないのですか。
  14. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 外務省といたしましては、先ほど通産省政府委員からも御説明ございましたように、外交問題につきましては、パプア・ニューギニアはまだオーストラリアが担当しておりますので、そのオーストラリア政府との連絡につきまして、通産省依頼を受けて連絡に当たったというだけの限度で、これはむしろ経済協力局でございませんで、地域局の主管でございましたが、そういうことだけを行ないまして、ほかには何にも  いたしておりません。
  15. 永末英一

    永末委員 この地域がまだ独立をしていないことは、日本政府もよく知っているわけだ。独立もしていない先に、世界で有名な通産省を主体とする調査団が出かけていったら、これから独立しようとする現地政府の要路の者がどう考えるか、わかり切ったことではありませんか。しかしいま伺いますと、オーストラリア政府だけに日本政府窓口連絡しただけであって、経済協力局はあまり知らぬのだというお話ですが、それでは外務省は一体何をしておるのか。  この調査団の初めの資源略奪ではないかと言われたことはともあれ氷解したと言われましたけれども、そういうニュアンスの思いが残ってくれば、今後パプア・ニューギニア地域独立後われわれが接触をいたします場合に、きわめてむずかしい出発点をつくってしまったということになるのでございまして、外務省は責任を感じないのですか。
  16. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 昨年の秋だったと記憶いたしますが、日本豪州の定期の閣僚会議というものがございまして、その際に豪州側閣僚の中にパプア・ニューギニアからの大臣も特別に一緒に参られまして、特に日本に対して今後パプア・ニューギニア開発について協力依頼されるというようなこともございましたし、その前にはパプア・ニューギニアから現在のいわば総理大臣に当たられるチーフミニスターも見えて、今後独立した後に日本協力してほしいというようなこともございますし、さらにはまた今後政府ベース調査団というようなものも計画中でもございますので、そういうことを踏まえて通産省の御依頼オーストラリア側に伝達したということでございます。
  17. 永末英一

    永末委員 私は全部のあちらの大臣を知っております。キキ外務大臣とも、日本に来られた場合に一週間ほど一緒に過ごしましたが、あなた方は現地政府当局者の気持ちを十分知っていないのではないか。知っていないからこういう形で調査団派遣するのだと思うのですね。なるほど外交関係オーストラリア政府がいままだ持っております。しかし、事前にその調査団の趣意を説明しに行くことくらいできるでしょう。  いまのお話によりますと、あたかもキキ外務大臣が要望したかち、あるいはチーフミニスターのソマレさんが要望したからスムーズにやれたようなお話でございますが、先ほどの御報告で、現地ではスムーズに受け取っていなかったということがはっきりいたしたではありませんか。開発途上国、特にこのパプア・ニューギニア地域に対する接触は慎重の上にも慎重を重ねていただかないと、無用な汚点を当初につけていただくととんでもないことになる。私は、はなはだ慎重を欠いたミッションではなかったかと思います。外務当局はもっと真剣になって経済協力のことをやらなければならぬということを忘れておると思うのです。なるほど通産関係はいろんなことをやっておりますが、経済協力局というのがあるのなら、外務省のほうがもっと全般の政治情勢社会情勢を考えて接近をしていく。その場合に通産省と話すのはわかりますけれども、何か連絡だけをしてあとは通産でどうぞごかってに、こういうことになれば、われわれがどんなに善意を持っておりましても現地では善意にとられない、こういうことが起こるのであります。  いま大和田欧亜局長が参られましたが、大和田さん、いま質問いたしておりますのは、通産関係で三月に参りましたパプア・ニューギニア開発輸入促進調査団の話でございまして、その直後に本委員会で、いまわが国政府としてパプア・ニューギニアにどういうコミットをいたしておるかは、私があなたに質問をいたしました。さて、ただいままでの返答から伺いますと、どうも当初から調査団自身がきわめて悪い意味で現地に受け取られておったということをここで発表されたのでございまして、コミットのしかたがきわめてまずいということを私はここで御忠告を申し上げておるのでございます。  したがって、パプア・ニューギニア地域については、もっと外務省が包括的に、日本政府でこの通産関係のみならず漁業関係調査団も行っておるはずでございまして、それは東京ではセクショナリズムというのがございましても、相手方にとっては日本政府がセクションで分かれているというようなことを考えやしませんよ、一つでございますので、私は欧亜局がもとだと思いますが、欧亜局の中にこのパプア・ニューギニア地域接触する場合にはきちっとやはりインテグレート、統合して、そして間違いのない調査団を送るようにしていただきたいと思うのでありますが、いかがですか。
  18. 大和田渉

    大和田政府委員 おくれてまいりましてどうも恐縮でございます。  御質問あるいはそれに対する通産省当局その他の質疑応答を私は存じておりませんのですが、ただ御趣旨としまして、やはりああいういま発展途上地域に対する政府レベル調査団というようなものについては、より政府としての包括的な政策のもとに派遣すべきだという御意見だと思いますが、私、まさに賛成でございます。実際に送りました漁業調査団あるいは通産省が中心になって送られましたミッションにつきましても、もちろんこれはセクショナリズムじゃなくて、われわれとしては通産省ともあるいは農林省とも連絡をとった上で派遣しております。ただその結果について必ずしも十分でないという御指摘がございましたようでございますが、その点につきましてはわれわれとしても常にまあインプルーブメントということを考えざるを得ないので、十分検討させていただきたい、こう考えております。
  19. 永末英一

    永末委員 先ほどの通産からのお話の中で、プラリ川の開発についての報告調査団からあったということを伺いました。プラリ川は外務大臣であるキキさんのふるさとの地域でございますが、このプラリ開発については、日本企業の中で相当前からコンタクトをして進めておる状態であると承知をいたしております。そしてその方面ではすでに実質的な調査にかからねばならぬ段階だ、こういうことを伺っております。  さて、提案されておりますこの事業団法案の中の二十一条に、この事業団役割り一つとして、「開発途上地域における公共的な開発計画に関し基礎的調査を行うこと。」と書いてございますが、これはほんとうにやるのですか。たとえばプラリ川の調査なんというものはこれに該当するのでしょうか。いかがですか。
  20. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 先生指摘の条項は、第二十一条の一号業務の中のホ号の点だと思いますが、まさにこれは従来から海外技術協力事業団がやってまいったことでございまして、今後正式の政府行政ベースでこういうことが行なわれるということに該当すると思います。
  21. 永末英一

    永末委員 パプア・ニューギニアに対する調査団がいろいろな報告をいたしておりますけれども、その中で特に現地としてはこのプラリ川の開発日本側一体着手をし得る力を示すのかそうでないのかというのは、今後わが国パプア・ニューギニアとの間に重要な問題を提起をする問題だと思うのです。現地新聞には、日本側がもたもたしているものだからアメリカの会社が一手に引き受けてやりそうな記事が大きく出ておったこともございました。  したがって、事業団法事業団法でございますが、調査はやったけれども結局調査費の配分についてもたもたしてやっておるというようなことであってはならぬのでございまして、パプア・ニューギニアの人は単純率直なキャラクターの持ち主でございまして、調査をされたらちゃんと実効があがるはずだというぐあいに期待をいたしておるのでございます。いま外務省の話を伺いましたが、通産省プラリ川の開発調査のために力をいたす覚悟はございますか。
  22. 森山信吾

    森山説明員 プラリ川の開発につきましては先ほど調査団報告でも触れておることを申し述べましたが、私どもプラリ川の水系がきわめて豊富であり、先ほどちょっと触れましたように五百万キロワットの発電能力を有するほどの大規模水系であるということを十分認識いたしておりまして、これは積極的に進めてまいるべきものではないかというふうに考えておりまして、その具体的な実施の方法につきましては外務省と十分協議しながらやらしていただきたい、かように存じております。
  23. 永末英一

    永末委員 まだ十分独立をいたしておりませんが、この地域のこの問題については、日本以外の他国から手を差し伸べられるようなすきを見せることなくお進めを願いたいと思います。  さて、同じく二十一条の三号のイというところで、関連施設整備に必要な資金貸し付けるというようなことが書いてございますが、これは貸し付け相手方はどういうものなんですか。
  24. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 御指摘の二十一条一項三号の資金貸し付け対象としましては、法文上ははっきり書いてございませんが、さしあたり本邦法人貸し付けるということを頭の中に考えておるわけでございます。
  25. 永末英一

    永末委員 わがほうのいままでの資金貸し付け等は、国内で会計検査院の制度がちゃんとあるものですから、本邦法人ということが対象になるわけです。しかし、ここで関連施設整備インフラストラクチュア整備をするということになりますと、本邦法人といったら、日本資本主義社会でございますから、全部営利企業がやっているわけですね。営利企業自分営利目的を達するための関連のある公共的な施設をやる、こういうことになるときわめて限られてくるわけです。しかし、たとえばパプア・ニューギニアを例にとりますと、現地の人々は、その企業が行なっていることによっていかに自分たち生活環境が有利に展開するかあるいは水準が上がるかということを求めているのでございますから、おのずから、企業営利目的を達するためにやる関連施設現地が求めているものとは非常な差があるわけです。その場合に、わがほうの本邦法人にのみ貸し付けるというようなことをこの事業団がやっていることで目的が達せられるのかどうか、もっと別の考え方があるのではないか。あるいは事業団がようやらぬのなら、円借款というものを、その関連事業をやる相手方政府にグラントとしてやるとかいうことを総合的に考えねばならぬと思いますが、そういう考えはあるのですか。
  26. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 まさに先生指摘のような諸般の点を今後考慮していかなければいけない問題が多々あると存じますが、先ほどお答え申し上げましたのは、さしあたり、この発足の当時には本邦法人貸し付けるという方針でおるということを申し上げたわけでございます。
  27. 永末英一

    永末委員 考え方はよくわかるが、さしあたり本邦法人に貸すというのだったら、あっちがいま求めているのはそういう形ではぼくはないと思うのですが、どこでどういうことを考えるのです。この事業団法本邦法人に金を貸すことばかり考えているとしますと、ある人はこの事業団法で商社に上のせの金を貸すのじゃないか、そんなものなら反対してしまえという意見もあるぐらいでございまして、もしこの事業団開発途上国社会水準発展に非常に貢献するものだというのなら、何か日本政府は新しいことを考えたかと思ってこの事業団法を受けとめたわけでございますけれどもお話を伺うと、やはり依然として本邦法人だけだということになると、この事業団法の性格がだんだん縮こまってしまうのですが、いかがですか。
  28. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 むしろ私どもは、この本邦法人の行ないます事業に、当事業団からこういうお金を貸したりあるいはまた別のところでは投資というようなこともできるわけでございますが、そういうことをすることによって民間の手によります経済協力をより適正な方向に誘導していこうとか、あるいはまた政府の考えを民間のやっている考えに有機的に結合させるとか、そういうようなことをむしろ目的にして事業団をつくっていこうと考えておるわけでございまして、考え方としてはそういうふうにやってまいりたいと存じておるわけでございます。
  29. 永末英一

    永末委員 投資という場合にはどういうことをやるのですか。どういうものに投資するのですか。事業団が主体となるのですか。本邦法人のものが開発途上国に行った場合のものにやるのですか。合弁会社にやるのですか。それとも相手方の何かにやるのですか。その辺がよくわからない。
  30. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 投資と申しますのは、いまの項、イ号のところでございませんで、次のロ号の場合でございますが、その場合にもやはりイ号と同じように、さしあたりはまず本邦法人というところに考えております。ただ、本邦法人がありまして、それが間接的に先方と協力するということは、妨げないわけでございます。
  31. 永末英一

    永末委員 いま御答弁のさしあたりということがよくわからないのです。さしあたりというのは、法律はこうだが、さしあたり本邦法人にやるつもりだが、法律の性格として本邦法人以外にも貸し付ける、投資できる、こういうことなんですか。それともこの法律なら本邦法人のみということなんですか。私はそんな法律解釈は聞きたくないな。
  32. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 法律の何と申しますか、運用のことを申し上げておるわけでございまして、従来も海外経済協力基金法とかそういうものも同様な運用が行なわれておるというふうに承知しております。
  33. 永末英一

    永末委員 伺いますが、この法律で貸し付けるのは本邦法人のみなんですか、それ以外もできるのですか。あなたいま運用と言われたけれども、そこがよくわからぬのだ。
  34. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 この法律の規定上は、本邦法人だけには限定されておりません。
  35. 永末英一

    永末委員 わかりました。  この事業団調査機能を持っておると思いますが、どれぐらいの調査機能を持たそうということですか。
  36. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 第二十一条の中で調査ということが二カ所ほど出てまいりますが、先ほど御指摘になりました第一号の、従来から海外技術協力事業団がやっておりましたことを引き継ぎますための開発計画に関する基礎的な調査というようなこと、それからさらに第三号の中でもそういうような調査ができることになっております。
  37. 永末英一

    永末委員 先ほどプラリ川の開発のことで申したのでございますけれども開発途上国に対してどういう経済協力を行なうべきかというのは、問題はどういう調査が行なわれるか。もちろんプラリ川の場合は電源開発を中心にしたものでございますけれども、その他漁業にいたしましても、漁業に関連する施設等々をどうするのか、また道路や橋梁等の交通体系をどうするのか、それぞれやはり調査が必要でございまして、いま私が伺ったのは、どれぐらいの金を動かして調査をする覚悟があるか。それは調査をしなくちゃならぬという字は書いでございますが、調査もいたします、ではなくて、むしろ事業団が直接に事業をするよりは調査機能、その調査費ぐらいはばんとここらでやりますのだというぐらいの覚悟がなかったら、開発途上国のほうが望むような経済協力は行なわれないと私は思います。それを聞いているのでございますから、その辺をお答え願いたい。
  38. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 御指摘のように、日本のこういう海外経済協力を行なう場合におきます調査というのは、従来から必ずしも十分ではなかったという点は指摘されてきているところでございますので、事業団の発足後にあたりましては十分にその調査機能を拡充して、適当な情報を把握して、またその事業そのものについての十分な調査、それからその後における業務の実施を容易にするために尽力をしていきたいというふうな考え方を持っております。
  39. 永末英一

    永末委員 金の分量ではどれぐらい使いますか。あなたはこの事業団で動かすお金を一〇〇とした場合に、どれぐらいは調査に使わなくちゃならぬ、こういう御覚悟ですか。
  40. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 現在のところ予算といたしましては、従来海外技術協力基金がやっておりましたこの調査の部分の予算ができておるだけでございまして、それには約三十億円程度の予算が計上されておると承知しております。
  41. 永末英一

    永末委員 この調査は、事業団がいままでやっている事業の寄せ集めではなくて、新しい一歩を−踏み出すとすると非常に重要な問題だと思いますので、重点を置いて運用していっていただきたいと思います。  過般のこの委員会で海外青年協力隊について伺っておいたのでございますが、この海外青年協力隊の問題点の一つに、いい青年にたくさん海外青年協力隊に入ってきて活動していただくためには、現在その人がついておる職業、職場にそのままいて、退職することなくこの青年協力隊に入ってきてもらうことが必要ではなかろうか。それはちょうど技術協力の面においても同じことが言えるのであって、したがって、政府として各企業あるいはまた青年の場合には労働組合、こういうところに十分な連絡を行なって、得心をしてもらってやるべきだ。そういう準備があるかどうかということを伺い、その運営をお願いしておったのでございます。さて、法律としては、青年協力隊に入ったきた場合には半額くらい給料を持つのだという法律は出ておりますが、実施の効果はどうなっておりますか。
  42. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 従来の例でございますが、海外技術協力事業団の専門家並びに青年協力隊に派遣されます青年につきましては、青年の場合ですと各地方の県等を通じて募集するわけでございますが、その際に現職を持っておる者につきましては、その現職に対しましていわゆる所属先補てん制度と申しまして、海外に派遣されている間じゅう予算をもちましてその人の分の給料を補てんしてあげるという制度をとっておりまして、それがどういうふうな効果を持っておるかというのは実際の数字にはあらわれておりませんが、応募者の数等から考えますと、そのことは十分に理解されて、いい隊員を集めるのに貢献しておるというふうに存じております。
  43. 永末英一

    永末委員 ぼやっとした答弁でございますが、この制度をとる前ととったあとでのたとえば海外青年協力隊員になった人の数、そして退職せずしてふえた人数、調べたらすぐわかりますね。その教字はいま出ますか。
  44. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 ただいま申し上げましたこの所属先補てん制度と申しますのは、協力隊につきましては昨年度から始めましたものですから、いまのような若干ぼやっとした御答弁しか申し上げられないのがはなはだ残念でございますが、前年度の数字をさっそく取りまとめて、できましたらばお届けするようにしたいと思います。
  45. 永末英一

    永末委員 大平外務大臣に伺いますが、わが国の外交の中で、国際的な経済協力というものの比重、重要性が非常に増していると思うのです。あなたは外務大臣としてわが国の外交の主宰者でございますが、軍事力を背景に外交を考えることはやらないわけでございますから、防衛とか国際的な平和のバランスの問題というのはどうお考えになっているか知りませんが、なかなか本委員会で伺うわけにまいらぬのでございます。  ただ、その次に通貨の問題ということになりますと、これは大蔵省が出てまいるのでございまして、外務大臣が通貨の会議に行かれることはございません。通貨問題というのは、国際問題として近年非常に重要になりましたが、これは外務省の所管ではない。通商貿易問題となると、これは通産省が出てまいって、どうも外務大臣が主としてこれを所掌していると思われない。国際経済協力ということになりますと、これは経済協力局というようなこともございますので、外務省が非常にやっておられることかと思うのでございます。  あなたが来られない前に、パプア・ニューギニアに対する調査団通産省を中心にして派遣された事実がございました。それと外務省との連絡について、私ははなはだどうも不備な点があるということを考え、そういうふうに判断をいたしました。したがって、この委員会でも再三あなたに質問申し上げたのでございますが、外務省側が主導権を持って包括的なコミットパプア・ニューギニア地域にはしていただきたいと申し上げました。  さて、伺いたいのは、わが国の果たす経済協力の中で、大平さんは、外務省はどれくらいやっていると感じておられますか。
  46. 大平正芳

    大平国務大臣 私は、大きな前提といたしまして、外交と内政は一体でなければならぬと思っておるのです。外交をやってまいる上におきまして、政府全体はもとよりでございますけれども、国民全体のできれば祝福を受けてやりたいわけでございますが、それがたいへんむずかしいといたしましても、極力その理解と支援を得てやらなければ効果があがらぬわけでございまして、あらゆる対外的なわが国の外交を進めてまいる上におきまして、各省の全幅的な協力をどのように取りまとめてまいるか、各省の持てる力、経験、それを十分外交に生かすようにしなければならぬわけでございますので、外務省がいつも出しゃばりばかりしておるということは決して私は賢明な態度じゃないと思っております。  経済協力につきまして、一応総合調整は私の任務でございますけれども、これは各省並びに民間の全幅的な協力を得なければなりませんので、まず第一に私の任務は、全体としてわが国の官民を含めての力量というものを経済協力について最大限に発揮するようにまずつとめるのが、第一の任務だと心得ておると御理解をいただきたいと思います。  しかし第二は、その中で、それはそれとしても、外務省はどういう役割りを果たしておるかということでございますが、御案内のように、外務省は、出先に百四十の在外公館を持っておりまして、現地政府との接触外務省が一手でやっておるわけでございまするし、現地の情報も、商社その他を通じてとられる場合もありますけれども、オフィシャルな情報は外務省が収集し、外務省が責任を持って現地政府との間の折衝に当たっておるという点が特徴でございます。したがって、その間遺憾のないようにやらなければならぬと考えておりますし、現にそれにつとめておるつもりでございます。  それから第三に、国内におきましては、外務省、大蔵省、通産、経企、これは輸出入銀行というのは大蔵省が主管でございまするし、経済協力基金というのは経済企画庁が主管でございます。それで、この二つの機関が経済協力のファンドを提供する源泉でもございますので、こういう四省の間の協議会というのはしょっちゅうやっておるわけでございまして、その間に意思の疎通を欠くことのないように音頭をとらしていただいておるわけでございます。  したがいまして、各省それぞれの役割りがあるわけでございまして、これからこれまでが外務省でこれからこれまでがほかのどの省でというように大根を切るようなぐあいになかなかいきませんけれども、全体としてまとまりを持ってそれがスムーズにまいりますような一つのプロモーターの役割り、それから調整の役割り、それから現地政府との責任のある交渉、接触、そしてできましたものの仕上げは、交換公文あるいはローンアグリメント、そういうような姿でいたすものを仕上げていくというようなことをやっておるわけでございますので、そういう点から御理解をいただければしあわせと思います。
  47. 永末英一

    永末委員 先ほど通産省通商政策局から、「経済協力の現状と問題点」一九七三年版という六百数十ページの上等の本をいただきまして、読ませていただいたのですが、・外務省にも経済協力局がございますが、その所管のもとにございます海外技術協力事業団、今度これは消えて国際協力事業団に入るようでございますけれども、それは年報が出ておるわけですね。経済協力局というものが国際協力の全般をちゃんと、本をつくれということを言っているわけじゃございませんが、ちょっと一目で一ぺんにわかるようなものをつくっておられるかどうか知りませんけれども、残念ながら見たことがないのでございます。  ただ、大平さん、あなたも御経験があると思いますが、通産省通商政策局が経済協力という本を書きますと、なるほど日本というのは経済協力を通商政策の一環としてやっておるな、こう受け取られてもこれはしようがないということになりますね。経済協力というのは、わがほうは四省がそれぞれ所管があって、輸出入銀行をやっているもの、協力基金をやっているもの、いろいろございます。しかし、相手方からすれば、われわれ日本一つに見える。  したがって、経済協力とおっしゃるのなら、通商政策でやっておるのじゃなくて、やはりまさに二国間の友好促進のためにやっているのだしというようなニュアンスが非常に強く出てこなければ、われわれの善意相手方に理解されない、こうなるのではないか。私は、通産省がこんな本を出してはいかぬなんてちっとも言うつもりはございませんけれども通産省がやっていることに比較すると、あなたのほうの努力が足らぬのじゃないか。いまあなたがおっしゃったような角度で各省の調整それから他国との関係について努力をしておられるのだったら、それがもっとよくわかるように国民に知ってもらわなければ、国民はわかりませんからね。国会議員がわからぬのでありますから、国民はなかなかわからぬと思います。その辺の感覚はいかがでしょう。
  48. 大平正芳

    大平国務大臣 永末さんも御承知のように、経済協力というのは発展途上国——最近、発展途上国と申しましても、後発発展途上国と相当経済離陸の間近いものも出てきておりまして、発展途上国と申しましても、いろいろニュアンスの段階の相違がございますけれども、いずれにいたしましても、そういう国々の自助努力にささえられた自主的な開発協力するということでございます。つまりわれわれが通商政策上の都合でやるとか、われわれが押し売りをするとかいう性質のものでは全然ないわけなんでございます。通産省であれ大蔵省であれどこであれ、私はそういう基本の認識はお持ちのことと思うのでございます。  通商産業省がおやりになることは貿易の仕事であるというように狭く御解釈いただかずに、経済協力のそういう理念をもって遂行されるものの一翼として、通商産業省の名において、その立場においてその力量においてやっておられるのであるというようにむしろ寛大に御理解をいただきたいと思うのでございます。通商政策の分野はそれ独特の論理があり、慣行があり、約束があり、それで運営されておるわけでございますが、それとあわせて、産業政策を担当されておる通産省といたしまして、経済協力政策についても重要な役割りを持っていただいておるというように御理解を賜われば私はしあわせと思います。
  49. 永末英一

    永末委員 私は寛大なんですけれども相手方が寛大に見てくれないと困るのでありまして、したがって、相手側に見られるような体制をわが国政府としてはとる必要がある、このことを申し上げておるのでございます。われわれが一生懸命国際協力をやりたいと思いましても、田中総理大臣がインドネシアに行くとあんなことをやられたりするのは、われわれの政府開発途上国に対する姿勢にどこかに間違いがあるからだということを率直に反省をしていただかなければならぬと思います。  さて、国際協力という点で、あなた方のほうからいただきました資料で見て、なるほどなとびっくりさせられたのでございますが、一九六八年から一九七二年、四年間で政府開発援助のために使われている金額は約一・七倍ぐらいになっておるわけです。政府資金協力ということでやられている金は二倍半ぐらいになっております。ところが、民間資金協力ということでやられている金は実に三倍になっておるわけですね。つまり民間資金協力という形でどんどんわが国の国際協力相手方には入っておる。民間協力というのは、資本主義社会ではいいことでございますよ。ところが、相手方になりますと、日本企業の進出と映るわけだ。そしてそのことは、グラントエレメントの比率がきわめて低いわけですね。開発途上国に対する供与国の中できわめて低い。これは世界に有名なことである。しかもそれがだんだんまた低くなっておるということでございますからね。  そうなりますと、いま大平さんは、あなたの御趣旨からいえば、いい国際協力をしたいと思っておられるかもしれませんが、結果的にそうなっておるから、ああいうような問題が起こってくるということになりますと、やり方を変えねばならぬ。だれが主導権を持つか。私はいままでどおりに寛容な気持ちで通産省のやっておることを見ておるといたしましても、そういういわば各省ばらばらなやり方で、寛容に見ておればこそ、相手方には日本企業が進出をしエコノミックアニマルがやってきた、こう映るのでございますから、国際協力のあり方は考え直さなければならぬ段階に立ち至っていると私は思います。少なくともグラントエレメントの比率を上げるということぐらいについて何か策がなければならぬ。あなたはどういう策をお持ちですか。
  50. 大平正芳

    大平国務大臣 いまあなたが御指摘になられた、民間協力が多くてGGベースのものが少ない、それは御指摘のとおりでございまして、わが国経済協力が、DACでも指摘されておるように、GNPの〇・九七、つまり量的にはほぼ一%の水準に達しておるわけです。したがって、これはもう世界的に見て恥ずかしくない状況にあることでございますが、あなたが御指摘のように、質的に見るとGGベースのものが少ない。それからグラントエレメントが低い。全体として三四、五%くらいが先進諸国のグラントエレメントであるのに比べて、二二、三%くらいのところで低迷しておるというようなことはあなたが御指摘のとおりでございまして、したがって、政府はこれではいけないので、やはり政府政府、GGベースのものをふやそう、そしてせめて先進国並みの状態までには持っていかなければならぬのじゃないかということに力点を置いております。  いま御指摘のとおりの問題意識がありますので、そういう方向に努力しておるのですが、最近、ここ二、三年間非常にGNPの伸びが顕著であったものですから、せっかく努力いたしましても、絶対額は相当伸びたけれども、比率からいうと、二三%から二二%にGGベースのものが落ちたという非常に奇妙な結果が出ていますけれども、実際は絶対額は非常に伸ばしたつもりでございます。今後その点は財政当局の理解を得まして伸ばしていかなければならぬと考えております。  ただ私が、一般に日本の国会の論議ばかりでなく、国会の外における論議を通じましても感じますことは、経済の進出に対するきびしい批判がありますので、そういうことに対して反省しなければいかぬじゃないかという議論が非常に強いわけです。もとよりわれわれは聞くべきものは聞かなければいかぬし、正すべきものは正さなければいかぬと思いますけれども、一面、日本の海外経済進出というものは、現地の雇用をふやし、民生福祉の向上に寄与し、その国の経済自立を進めていく上から申しまして、現地の国々からは相当歓迎を受け、評価を受けておる面もあるわけでございます。  しかし一面、若干の批判がありますのは、第一は、これは経済支配に通ずるのじゃないか、あるいは経済の制覇を日本がねらっておるのじゃないかという批判があるわけでございますが、これは冒頭にあなたに申し上げましたように、日本といたしましては、これは相手国に対する協力なんであって、経済的支配をねらうなんという気持ちは毛頭ないわけなんでございます。そういう時代でもございませんし、そんなことをやって効果があがるわけでもないし、これはもう十九世紀から二十世紀にかけての遺物なんで、私どもそんな気持ちは毛頭ないわけなんで、日本自体におきましてもそういう議論はひとつここで清算しなければならぬのじゃないかと思っております。  それから特定の政権維持をねらってやっておるのではないかという議論もありますけれども政府はそんなことはひとつも考えていないわけなんでございまして、その点に対する曲解というか誤解というものがある。それらは私は漸次是正していかなければいかぬのではないかと思っております。  それからさらに、日本人というのは非常に閉鎖的なところがありまして、海外に行きますと、日本人サークルというのをつくって、外国の社会慣行あるいは商慣習に非常になじみにくいところがあるのです。これがやはりいろいろ摩擦を起こす原因なんで、やはりその国の永年の伝統で定着してまいりました慣行、商慣習などには十分理解を持ちまして、その中で日本はどういうようにすべきかということはもっと考えておかなければいかぬのではないか。その点は確かにわれわれの努力の余地が十分あるのではないかと考えておるわけでございます。  それから公害をまき散らすではないかとか、チープレーバーを求めていくじゃないかという議論もございますけれども、海外におきましては、その国の法制を守り、その国の慣行を守って、その中で雇用の機会をつくって、その国のためになるということでございますから、その国が全体として賃金が低い国であれば、郷に入れば郷に従えで、そこで妙に高い賃金を考えるということはむしろ無理なんで、そういう点は、現地の社会と十分溶け合うように現地の法令を十分守っていけば、何もうしろめたい気持ちを持つ必要はないのじゃないか。  したがってこの経済進出につきましていろいろ曲解とか誤解が非常に多いような感じがするので、やはり国会の議論を通じても漸次解明してまいりまして、それで内外を通じての理解を深めていかなければならぬのじゃないかということを考えておりますので、今後ともそういう点について御指導と御鞭撻を願いたいと思います。
  51. 永末英一

    永末委員 大平さんから懇切な御答弁をいただいて、お気持ちもわかりますが、現地日本企業が進出するということ、これはわれわれがいかに考えましょうとも、相手方からいたしますと、やはり経済的侵略と映る場合があるわけですね。これをときほぐすのはなかなかである。だから経済協力の基本として、民間資金協力という形で、輸銀あるいは海外基金を利用しながらどんどん進めていくのか、それとも問題は、これから努力をしていただかなくてはなりませんが、政府開発協力というものをGツーGの関係でやっていく方針を進められるのか、この辺はやはり私は政治だと思うのですね。  先ほど大平さんは、GNPが急激に伸びたから比率は下がったが、絶対額は上がっているのだとおっしゃった。なるほど上がっていますよ。しかし、上がり方が民間資金協力よりも少な過ぎるということである。しかも問題があると思うのです。私の見る一つの問題は、借款条件というものが各国に比してかた過ぎる。これはやっぱり下げる必要があるのじゃないか。  しかし、その場合に、財投というもののみに原資をゆだねておるならば、財投は国民の中からの資金をもらっておるわけでございますから、その利子部分はやはり返さなくてはならぬということになりますと、条件がハードになる。しかしその利子について、一般会計、租税から持つということになると、もっと考え方は変わるのではなかろうか。これは外務省だけでできるかどうかわかり一ませんが、少なくとも政府開発協力というものを大幅に引き上げていく姿勢がなければ、日本の悪評は直らぬのではなかろうか。その辺のお考えをひとつお聞かせ願いたい。
  52. 大平正芳

    大平国務大臣 それはまさに御指摘のとおりでございまして、従来の経済協力は、民間協力をはじめ政府の関与した協力も、工業化ですね、その相手国の工業化を促進するという点に重点が置かれ過ぎたように私は思うのです。それが経済進出あるいは支配に通ずるのじゃないかという誤解を生んでいった大きな素因であったように思うのでございまして、重点は、そういうところでなくて、やはり根っこから、食糧の自給、それから農業生産力の向上という点に力点が置かれなければならぬ。さらには、現地の医療とか衛生を充実させる、向上させるというような点、あるいはさらにもっと教育の水準あるいは行政の水準、あるいは計画能力の培養といったところに援助の力点を漸次移していかなければならぬのじゃないか。  今度御審議をいただいておるこの事業団役割りというのは実はそこにあるわけでございまして、これは大体そろばんにあまり合わぬ性質のものでございます。インフラストラクチュアの建設なんというのもそろばんになかなか合いにくいものでございますので、この事業団を設けていただきたいというのは、そういう境の事業につきまして、ある程度採算を度外視してでも進めていくという道を開きたいと考えておるのでございまして、また、現地の事情から申しましても、そういうものがしっかりしないと、幾ら工業化を急いでみても、経済の自立に結局は役に立たないわけでございます。戦後のソ連の場合でも、中国の場合でも、やはり工業化が進むと農業基盤の限界にぶつかるわけであって、そこで非常に困難にぶつかった経験は明らかなのでございまして、農業基盤がしっかりして食糧の需給が安定して農村の購買力が充実しておるという条件のもとにおいて、初めて工業化というのが実っていくわけなんでございます。  したがって、去年東京でエカフェの総会を開いたときに、あのときは日本が主催国で私が議長でやったわけでございますが、私がこれから日本としてはアジア諸国に対する援助の力点は農業開発に置くのだということを主張したら、各国からユナニマスな支持を得たわけでございます。これはやっぱり各国もそれを非常に待望いたしておるわけなんでございまして、だから、あなたのおっしゃることを具体的にやろうとすれば、私は、経済協力の力点をいままでのような工業化の力点からこちらに漸次シフトさせていくということを精力的にやっていかなければならぬと思っております。全く同感でございます。
  53. 永末英一

    永末委員 同感だと言っていただいてありがたいことでございますが、先ほど申し上げましたのは、その政府開発援助というものの金の捻出のしかたを政府としてはきっちり考えて、他国と比べてかたい、悪い条件を持っておったのではなかなかついてこない。その辺は日本外交の真価が試される重要な問題だと思います。いまあなたのおっしゃったのは、まさに私がこれからそれを伺おうと思っておったのですが、金だけではだめなんだ、つまり、日本人が彼らに信用されるかどうかということが経済協力の一番大きな効果でございまして、もうけるためにやるのではございませんから、したがって、農業の問題、水産業の問題あるいはまた教育等の問題、あるいは行政の問題にいたしましても、われわれの日本人の中から、やはり人間と人間との接触を通じて、彼らに信用を得ていくということが経済協力の大きなファクターなんだということをやっぱり積極的に取り上げてこれを拡大していかねばならぬ、そういうことになっている。それをいままで忘れておるから、国際的な人気が悪いと思うのです。  ただ、私が心配をいたしますのは、この事業団法をそのためにつくたのだとおっしゃいますけれども、主力は要するに技術協力事業団と海外移住事業団と二つ合わせて、そのほかに水産のほうはもうすでに財団をつくったから、水産以外の農業だけをやるような気配いを見せて、それからそういうものと総合してやらねばならぬような借款とか資金供与という問題はまた別になっておるわけですね。だから、この事業団でやれる範囲というのはきわめて局限されているような気がする。しかし、これは外務大臣の行政能力、政治能力によって、これがもし外務省が行なう国際協力一つの柱だとするのなら、その柱を有効に動かせるような、外の団体は調整だけではなくて、これを中心にやっていくのだ、こういう何らかの機構を考えていっていただかなければならぬのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  54. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 永末先生指摘のような問題点が多々わが国経済協力に存在することは事実でございますが、今回、この国際協力事業団を設けました目的は、そういうことのすべてを一挙に解決しようということではございませんで、この国際協力事業団の適当なる事業規模というようなことも考え合わせまして、それから従来から不足しております技術協力資金協力とのつながりとか、民間の協力政府協力とのつながりとか、そういうような点をより一そう十分にしていくためにこの事業団を創設したもので、現存しておりますその他の経済協力のための機関である、たとえば海外経済協力基金というものとは、むしろ相補い合いながら進んでいくというふうに持っていくのが、いまのところでは一番適当かというふうに存じております。
  55. 永末英一

    永末委員 大平外務大臣に私は先ほど申し上げましたが、いま答弁があったように、それぞれの政府機関が相補っているというようなやり方ではだめなんだ、もっと何かを柱にしていくというぴちっとした背骨をちゃんと正してやっていかねばならぬときに来ているのじゃなかろうかということを申し上げた。その意味合いで、この法律が直接関係はございませんが、別途法案が出ておりますが、国際協力というものは日本外交の重要な問題で、いまのような問題点があるということで外務大臣が勇敢にそれをやろうとされる場合に、また、もう一人大臣をつくろうというわけでしょう、国際協力相というものを。どういうことなのかと思いましてね。この国際協力相という人は、事業団とは無関係だと思います。これはどないしてやっていかれるつもりですか、外務大臣
  56. 大平正芳

    大平国務大臣 いま、内閣法の一部改正で閣僚一名増員をお願いいたしておりますのは、あなたも御案内のように、無任所大臣なんです。無任所大臣ということを具体的に申しますと、外務省設置法もその他の各省設置法も全然触れていないわけです。つまり、私から申しますと、外務大臣の権限には一切触れてないわけなんです。だから事務局を持ってないわけですね。つまり総理大臣の命令を受けて、あなたがいま御指摘になりました経済協力行政というものが各省多岐にまたがっておりまして、私が総合調整をする立場におるわけでございますけれども、非常に経済協力案件がマッシブなものになってまいりましたし、多岐なものになってまいりましたので、総理大臣の命を受けて機動的に各省の間のいろいろ調整をお願いしたりあるいは海外との連絡もお願いしたりすることによって、この経済協力行政そのものをもう一歩思い切ってプロモートさせていこうという役割りでございます。すなわち外交の一元的な展開に関係はないわけでございまして、政府部内におきましてそういう一つのプロモーターを無任所大臣というフリーな立場でお願いしようということでございます。  事実外務大臣と申しましても、政策論ばかりやっておれませんで、いろいろなプロトコルもたくさんございますし、宮中の行事からたくさんありまして、実に一人で背負いきれないぐらい仕事が多くなってきまして、したがいまして経済協力行政の総合調整をやらしていだだいておりますけれども、内閣にそういう無任所大臣がおられてプロモーターをやっていただくということは私は歓迎するわけなんでございますが、この大臣が外国との折衝をやるという場合には、私が特派大使にいたします。あるいは政府代表として任命いたします。それから交渉をやらないまでも、外国とのコンタクトを持つという場合は、全部私のもとで調整した範囲のお仕事を対外的にはお願するつもりです。そういうことでこれは支障ないようにやってまいるつもりでございます。  国内におきましては、通産大臣も大蔵大臣も経済企画庁長官も農林大臣も私と同列でございまして、総合調整をやれといっても、お互いに対等の立場でございまして、総理大臣が結局まとめていかれるわけでございますが、総理大臣の手足になりましてそのあたりのプロモーションの仕事をおやりいただくということは、そういう意味で全体としての仕事を進めていく上において役に立つと思うのです。  たとえば田中総理が去年の八月から私に命令がありまして、日本の海外協力というのは、いま一体どうなっておるのだということなんですね。それでどれだけの約束が行なわれて、どれだけの交換公文がどの案件にいつできて、ローンアグリーメントがどれだけできて、そして現に約束したもので実行しているのはどういうようになっているのだということを調べてみよということで命令がありまして、いろいろ調べてみますと、この三月末現在で大体一兆円ぐらいの約束はしておるわけです。交換公文ができているのは大体七千億弱です。実行できているのが三千七百億円くらいです。その間の仕事が、大蔵省は利率だ、条件だというのをやかましく言うし、それぞれの役所にいろいろな言い分がありまして、それからまた現地のほうでは、約束はいたしましたけれども、先ほど申しましたように、行政能力がないものだから、さてどんな仕事をやろうかということで、プロジェクトの発掘自体ができていないというような実情があるわけですね。  したがって、やはりこういうことのプロモーターというのはいつもそれをにらんでおりまして、それでどこに隘路があるか、どこに問題があるのだということを突き詰めまして、それで一々その隘路を打開していくという役割りが私は非常に大事だと思うのでございまして、そういう意味で、屋上屋を架するものではなくて、機動的な行政の推進という意味で、非常にポジティブな役割りを期待できるのじゃないかと思って私も賛成し、歓迎をいたしておるところでございます。
  57. 永末英一

    永末委員 終わります。
  58. 木村俊夫

    木村委員長 河上民雄君。
  59. 河上民雄

    ○河上委員 私は、この問題につきましては前にも御質問をいたしましたが、なお幾つか留保いたしておりましたので、それを含めて、まとめてお尋ねをしたいと思います。  いま外務大臣大平さんは、田中総理から海外援助は一体どうなっておるのだというお尋ねがあって、実情を調べてみよという命令があったということでございまして、約束だけでも一兆円とか、交換公文で七千億円とか、実行しておるのは三千数百億円というようなお話がございましたが、いまの総理と大臣とのやりとりを伺いますと、どうも総理大臣外務大臣ですら、一体海外協力というのはどうなっておるのかということが、実情をよくつかまれていないということをいまのエピソードからもうかがうことができるわけでございます。ましてや一般の国民には全くわからないというのが実情じゃないでしょうか。いまの対外援助、これまでの対外援助の欠点というのは、国の政府と国の政府との間の了解だけでどんどん進められて、国民と国民の間のレベルでの了解といいますか、ほんとうの国際協力というものになり切っていないということにあったと思います。  したがって、いまこの国際協力事業団を審議するにあたって私は特に強調しなければならないことは、そしてまた、この一月総理が東南アジアへ行かれましたときにあの激しい反日デモが起こったというこの事実から見まして、これを国の政府政府とのレベルからもっと国民のレベルに広げていくといいますか、国民化するということが大事じゃないかと思うのです。  いつも私どもはこういう委員会でお尋ねいたしますと、対外援助につきましては予算のワク内でちゃんとやっているのだ、その予算は毎年国会の審議をいただいてきめているのであって、決してほしいままに適当に金を配っているのじゃないのだ、こういうようなお話でございますけれども、しかし、具体的にどこの国にどれだけどういうぐあいに、またどういう目的で対外援助が行なわれているかということについての掌握というのは、実は国会もあるいは国民も全く不十分であると、私はそういわざるを得ない。ましてや、いま閣議の中でさえ実は一体どうなっちゃったのかと、こういうようなことが取りかわされるような実情でございますので、私は前にも本会議で申しましたけれども、これは対外援助を予算のワク内でやるから、予算の審議を終わればもうそれでいいのだということじゃなくて、具体的にどういうように使われておるか、いまどういう状況にあるかということをやはり国会に報告する義務があるのではないか、そしてまた、そのことを国会を通じて国民にわかりやすい形で報告する義務があるのではないか、私はそういうふうに思います。そしてそれが国会の論議の的になりその論議を通じて国民が海外援助というものをどう考えるかというふうにならなければいけないのじゃないかと思うのであります。  そこで大平外務大臣、特にいま田中総理大臣からそういう一つの命令があったというようなお話でございますから伺いたいと思うのでありますけれども、ちゃんと筋道の立った権威のある対外援助に関する白書を毎年国会に提出する、そしてそれが国会の論議になるという形にすべきだと私は考えますけれども大臣のお考えを承りたいと思うのです。
  60. 大平正芳

    大平国務大臣 いま河上先生の言われたように、非常にこの経済協力の問題が複雑多岐にわたってまいりまして、政府自体も首脳が現状を掌握しにくいような状態になっておることを私は告白いたしまして、それほど複雑になっておるということは御指摘のとおりでございます。これにはいろいろの原因があるわけでございまして、国内だけの原因ではないわけでございまして、相手といたしておる国自体が全く十分の行政能力をまだ備えていない、あるいは一たんお約束をいたしましても、固い約束をしておりながら条件の改定を途中で求められるというようなこともございまして、なかなか事柄が円滑にすいすいと運んでいかない性質のものであるということは御了解をいただきたいと思うのでございますし、それは私はいまのような状態においてある程度やむを得ないことだと思うのでございます。しかしそれにしても、それはそれとしても、現状をできるだけわかりやすい姿で国会と国民に知らすべきじゃないかということは、私は仰せのとおりだと思うのでございます。  そこで、それはどういう方法によったらいいかということでございます。ただ行政府と立法府の間には憲法上厳としてそれぞれの立場がございますから、この間外務委員会のほうで御注意がございまして、どういう形で国会の御承認を求めるべきであるか、求めなくていいか、そういう点についての政府の見解は明らかにいたしておいたわけでございます。それは政府としては政府の立場におきまして、対立法府の関係におきまして太い筋道というものがございますから、私のかげんでいいかげんなことはできない立場におります。  しかしそれはそれとしても、あなたのおっしゃるようになるべくわかりやすい姿で掌握できるような方法を考えろということでございまして、これは一つの白書方式というのが確かにあると思うのでございます。通産省が出す経済協力についてのまとまった報告があるようでございますが、あれはまだ白書という性質のものではございません。外務省としてそういうものをつくって、国会と国民に御理解いただくような手だてを考えるべきじゃないかと思って、いま私どものほうで検討をいたしておりまするので、出す以上やはり御要望に沿うようなものでなければなりませんし、しばらく時間の余裕をかしていただきたい。せっかくいま検討をいたしておるところでございます。
  61. 河上民雄

    ○河上委員 いま大臣から、しばらくの時間をかしてほしいということでございますが、やはりぜひなるべく早い時期にそれを白書のような形で国会の正式の論議のルートに乗るように、また一般の国民、いわばタックスペイヤーの立場でありますけれども、これは税金でやるわけですから、国民の皆さんが、なるほど海外援助というものはこういうことでやっているのか、われわれはそういう仕事に税金を払うという形で参画しているのだ、その仕事は満足すべきものになっているという安心感が持てるような、そういう形のものにしていかないと、日本の国民にさえはっきりしないものが、今度は向こうへ行って現地の国民に十分に納得されるということは考えられないわけでございます。ひとつその点をせっかくの御答弁いただいたわけでございますので実現していただきた  いと思います。  第二に伺いたいと思うのでありますけれども、先ほど同僚議員の御質問に対する御答弁の中でも、海外援助、国際協力というものは金だけではないのだという議論がありました。私も全く同感でございますが、何よりも国際協力の成果というのは、米の生産が幾らふえたとかいうことではなくて、相互の国民の間の信頼と尊敬というものが生まれるということが最大の成果ではないかと思うのであります。  そういう意味からいいまして、今回、従来の外務省管轄の二つの事業団のほかに農林開発それからまた社会開発についての協力という新しい分野が加えられておるのでありますけれども、その一つ一つにつきましてはすでに先般の合同審査の中でかなり専門的に述べられておりますので私はあえてつけ加えません、深く触れませんが、私が非常に心配することは、もし農業開発などで日本協力というものが非常に成果があがって、見るべき成果を得たという場合に、そのことがかえって現地の従来のある意味においては技術的にはおくれた農業というものをかえって弱化する結果になりはしないか、そういうような問題があらためて起こりはしないかということをおそれるわけです。  ちょうどアメリカの戦後の、余剰農産物を非常に困っていた開発途上国に送り込んだことが、韓国の場合のように、本来なら農業国であるはずの国の農業を疲弊させてしまったというような問題があるわけですが、そういう農業開発プランというものとその国全体の農業との関係をどういうふうに考えていくのか。結果としてそういう日本が近代的な農業をそこへ導入したことが、しかも部分的にモデルをつくったことが、かえってその国の全体の開発にマイナスするということが起こりはしないか、そういうような問題についてはどういうふうにお考えになりますか。全くそういう憂いなしと考えられるかどうか。
  62. 岡安誠

    ○岡安政府委員 わが国が相手国と相談をいたしまして農林業開発を進める場合におきましては、やはり相手国政府の全体的な経済及び社会の発展のための計画という一環でなされなければならないというふうに考えております。先生のような御不安は、もしそういう全体計画とかけ離れた計画での援助がなされた場合には起こり得るかとも思いますけれども、私どもはやはり今後の協力事業というものは、相手国政府と十分打ち合わせの上で相手国政府考え方に沿った形で援助がなされるというふうなことを基本に考えてまいりたいと思っておりますので、先生のような御心配が起きないように極力注意をいたしたいと思っております。
  63. 河上民雄

    ○河上委員 非常に抽象的なことでございますので、ここで心配があるかないかということを論議するのはいかがかと思いますけれども、往々にしていわゆる近代的な手法というものの導入が、かえって混乱を引き起こすということは過去においてもあったわけですし、国際協力事業団というものが全体として非常に新しい発想を含んでいると自負しているような節があるだけに、私はそういう危険を逆に感ずるわけです。むしろ土着的な方法を伸ばしていったほうがより近道である。短期的にはなるほど生産は上がったかもしれないけれども、長期的に見てはかえってマイナスになったということにならないようにすることが非常に必要であろうと思うのです。そういうことがないと、結局信頼と尊敬というものをそこなうことになるのじゃないか、私はそのように考えるわけです。  たとえば義務教育の普及などということを考えましても、社会開発の中に学校の問題も入ってきますけれども、そういう場合にもそういう点をよほど留意しないと、こちらは何か一種の使命感を持って若い人たちが行っても、それが必ずしも生かされないということになりはしないか、そういう点を私は非常に懸念するわけであります。そういうことは今後具体化する過程で私は絶えず注意していきたいと思いますし、皆さんのほうにおいてもそれを留意していただきたいと思うのであります。  そういう今後の運営の問題につきまして、私は第三章にあります運営審議会の問題についてお尋ねをしたいと思うのですが、この運営審議会というのは、今後そういう微妙な配慮というものを考えるときに、この運営審議会の構成なり、運営というものが非常に重要な意味を持ってくると思うのでありますが、これについていままであまり十分な御説明がありませんので、大体どういう人が選ばれるのか、またその運営はどうしていくのか、その点について御説明をいただきたいと思います。
  64. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 当事業団の運営審議会のことにつきましては、これはここの法文にも書いてございますように外務大臣の認可を受けて総裁がその委員を任名することになっておりますし、そういった具体的なことを現在の段階でいろいろ申し上げるのは必ずしも適当ではないかと思いますが、過去におきます類似の団体にも大体このような運営審議会というものが設けられておりまして、それぞれその総裁なり会長なり理事長なりの御意向に従って運営されてきております。  たとえば海外技術協力事業団にも運営審議会というのがございますが、これは海外技術協力の仕事が関係各省に非常に多岐にまたがっておりますので、そういった省の次官というような方に審議会の委員をお願いし、そのほかにも民間の有識者に委員をお願いする。それから移住事業団にもやはり運営審議会がございますが、これにつきましては、移住の問題について非常に学識経験のある方に委員会委員をお願いしておるというようなことでございますので、そういったような前例を参考にしつつこの事業団ができますときに総裁がおきめになって、運営の方法につきましてもやはり御検討になるものというふうに考えております。各先例においてもだいぶやり方も違いますので、いろいろな方法が考えられるのじゃないかと思います。
  65. 河上民雄

    ○河上委員 いま運営審議会の問題について一通りの説明がございましたけれども、過去の運営審議会というのは、一体どういうような実績をあげておるのか、どういうような仕事を実際にしているのか、その点を……。
  66. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 大体運営審議会と申しますのは、ここの第三章に書いてありますような規定を普通設けてありますもので、その当該事業団の業務の運営上につきましての重要事項を総裁ないしはその事業団の一番上の人の諮問に応じて審議するという機関でございますので、その委員会それ自体の実績というものが特別にあるわけではございませんで、会長とか総裁とかそういう方々が、その運営審議会の意見を反映して、それから先の事業団の運営を行なっていく、そういう性格のものだと存じております。
  67. 河上民雄

    ○河上委員 いまの局長さんの御説明だと、まあ、あってもなくてもいいような感じもしてくるのですけれども、そういうことではちょっと困るのじゃないかと思います。  いま局長さんは、運営審議会につきまして民間人の起用というようなことを触れておられたのですが、理事のほうの人事に関しまして、また各方面から天下り人事であるという批判が非常に強いのですけれども、今回のこの国際協力事業団理事の選任については、そのような批判が再び起きないようにする、そういう気持ちがおありですか。それとも従来どおり、あちこちのお役人の方がやめたのを引き受けていく、こういうふうなおつもりですか。
  68. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 この事業団は、まだ法律の御審議を願っている最中でございますので、この事業団理事とか、そういった役員の人事について私どもがとやかく申し上げる筋合いのものではないと存じますし、現実にもまだ何ら具体化しておりませんが、要するに、この事業団の与えられました仕事につきまして、その専門的な知識を十分に有するばかりでなく、その人柄から申しましても、また識見から申しましても、指導力というような点からでも、できるだけすぐれた方をその役員に選んでいただきたいというのが私どもの希望しておるところでございます。
  69. 河上民雄

    ○河上委員 こういう外郭団体につきまして、理事の天下り人事というのはいつも問題になるわけですけれども外務大臣、この国際協力事業団にたいへん熱意を持っておられるようですが、今回はひとつ思い切って民間人を起用するというようなお気持ちはございませんか。
  70. 大平正芳

    大平国務大臣 カテゴリカリーに民間人がよくて旧官僚が悪いなんという議論には私は賛成できないのです。民間にもいい人がありますし、官僚にもいい人がありますし、民間にも悪い人があるし、官僚にも悪い人があるので、私はそういうことはあまりものさしにはならぬと思っております。いま御巫君からもお答え申し上げましたように、この運営にあたりまして、最適任の方を物色いたしたいと考えております。  外務省でも、これは別な話ですけれども、百人ばかりの大使、特命全権大使という職があるわけでございますが、民間人というのをかりに、いいから頼むといいましても、第一、一流の人は正直いって参りませんし、それから百ばかりの大使館がございましても、いいところと悪いところとありまして、瘴癘の地もございますれば寒冷の地もございますし、まあ、いいところだったら行ってもいいがということだけではなかなか人事はできない。実際の衝に当たりますとそういうようなものでございまして、なかなか、民間の方で、こういうめんどうな仕事を、おれはやってみてやろうという人がかりにございましても、こちらがちょうだいできないような者でも困りまするし、こちらがぜひお願いしたいというような方が、それではひとつみこしを上げるかなんていう方がおられるかどうかですね。これはまあ現実の問題として、カテゴリカルな御判断でなくて、現実の人事の問題として私を御信頼いただきたいと思います。
  71. 河上民雄

    ○河上委員 しかし、ある程度統計的に、天下り人事が非常に多いということは、これはだれの目にも明らかなことであって、いまそういう弊害をなくするためにかなり勇断を求められておるというのが事実だと私は思うのです。もちろん、官僚出身の方が困る、カテゴリカリーにこれを排除してしまうという意見を私は持っておるわけではないのでありますが、しかし、結果としてそういうのが非常に多くなっておる。むしろそういう理事の方のほとんどが天下り人事によって占められているという事実は大臣もお認めになると思うのであります。  そういう弊風をどこかで打破しなければいけない。幸か不幸か、今回もそういう国際協力事業団の仕事に非常に精通した人が官僚出身者であったということになるかもしれませんけれども、しかしいま問われておるのはそのことではなくて、全体として天下り人事によって占められているのじゃないか、またその受けざらとしていろいろ外郭団体がつくられているのじゃないか、こういう批判にどうこたえるか、こういうことを私は伺いたいのですが、その点、大臣、いかがでございますか。
  72. 大平正芳

    大平国務大臣 つまり、官僚出身の方をもってあてるということではなくてもっとリベラルに考えうという趣旨は、私、河上さんと同感でございます。ただ、一般に天下り人事がいけないということに対して、私は若干抵抗がある。私は役人出身だから言うのじゃないですよ。私は役人に十六年おりましたけれども、もう政治家で二十二年おるわけです。もう政界人でございますから、役人を別に弁護するわけじゃございませんけれども、そういうようなことではなかなか民主主義は育たぬと思うので、私は、そういうことで天下り人事が頭から悪いというのではなくて、広く人材をこだわらないで求めて、事業の円滑な運営を期して、それらの民主的な運営を保障するようにしろという意味におきましては私は同感でございますし、その方向で努力したいと思います。
  73. 河上民雄

    ○河上委員 大臣、いま最後に非常にいいことを言われたのですが、先ほどの大使の問題でも、日本の社会というのは、丸山真男教授がよく言われるように、タコつぼ文化で、お互いのサークルの交流がないというのが一番いけないところだと思うのでして、そういう意味では、民間人であっても外交官として登用せられたり、あるいはまた逆であったり、そういうことはやはり必要だと思うのです。ところが、どうも政府でつくった機構にはもう大体役人しかいかない。先ほどちょっとおっしゃいまして、例がいいのか悪いのかわかりませんが、せっかく民間人として来ていただこうと思ってもあまり有能でない場合もあり得るというふうなお話でしたけれども、そういうことでなく、自由に交換できるということは非常に必要だと思うのです。  非常に具体的な名前をあげて悪いですけれども大平さんも御存じだと思いますが、国連の事務局で活躍している明石康という人がおりますけれども、ああいうような人なんか、非常に国際的な機構で日本人として、しかも日本国政府の代表としてではなく個人として活躍している。ところが、こういう人たちを役所の機構の中で生かすことができないわけですね。そういうような問題もこれを機会に考えるということもひとつ頭に置いていただかないといかぬと思うのです。そういうような中でやはり国際協力事業団とかそういう外郭団体の仕事もやっていかないと、どうしても役所の出張所というような感じになってくるのじゃないか、私はそう思うのです。  最後に、今度は、こういう機構の統廃合のときにいつも起こる問題でございますけれども、そこで働いておられる職員の方の権利義務というものはどうなるかという不安が当然出てくるわけです。今回のこの法案を拝見しますと、海外移住事業団のところについて言いますと、「事業団の成立の時において解散するものとし、その一切の権利及び義務は、その時において事業団が承継する。」云々というようなことになっておりますが、こういう中には従来の労使間できめられたいわゆる労働慣行というようなものも含まれておるのかどうか、その点はいかがでございますか。
  74. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 移住事業団の御指摘でございますので、あるいは領事移住部長からお答え申し上げたほうが適当かとも思いますが、従来の解釈としては、いま御指摘のようなものも「その一切の権利及び義務」の中に含まれておるというふうに解釈されてきております。
  75. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、こういう統廃合に伴って、従来の事業団で働いておられる方々が何らかの意味で犠牲者が出るとか、あるいはそういう意味での労働条件が格下げになるというようなことは全くあり得ない、こういうふうに法律的に見てもそうであるというふうに確認してよろしいわけですか。
  76. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 御指摘の点が職員の身分保障ということでありますれば、確かに、いま申し上げました御答弁からおわかりのように、これらの身分保障は行なわれるということでございますが、新しい事業団のたとえば給与とかいうような問題になりますと、これはこの事業団自身がきめなければいけない問題で、現在この段階でどうということを申し上げるわけにはいかないのではなかろうかと存じます。ただ、私ども外務省におりますものといたしましては、外務大臣が主務大臣としての立場から、なるべく早い機会にそういったような問題についても満足のいくような解決をはかっていってもらうように期待をしておるというわけでございます。
  77. 河上民雄

    ○河上委員 今度統廃合でいろいろな事業団一緒になったりするわけですけれども、今後この国際協力事業団の中で労働条件あるいは給与などについて格差を生ずるようなことがないようにしていかなければいかぬと思うのであります。そうしませんと、せっかくこういうものをもしかりにつくりましても、そこで働いている人の士気というものは非常に停滞してしまうわけです。すべては人がもとであります。  ことにこういう国際協力というようなことは銭金でやるわけじゃないだけに、人がすべて出発点であります。それだけに統廃合のときにいつも起こる問題でありますけれども、労働条件、職員の待遇、給与の問題について今後格差を生ずるようなことがないように、あるいは前より悪くなるというようなことのないように十分に配慮してもらわないと困るのでありますけれども、そういう点につきましていかがでございますか。
  78. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 御指摘のように、今回の新事業団には、現在これまで存在してまいりました海外技術協力事業団と海外移住事業団の二つが合併と申しますか、もとになって、新しい事業団ができ上がる。で、それにさらに別の仕事がつけ加わるという体制になっております。  したがいまして、御指摘のような問題が存在していることは私どもも十分に認識しておるところでございますが、先ほども御答弁申し上げましたように、そういった問題は新しい事業団ができましてからその関係者の間で慎重にきめていかれるべき問題でございまして、その際には、いま御指摘のような御懸念が生じないように調整が行なわれていくというふうに私どもは信じておりますし、また、外務省といたしましては、外務大臣が主務大臣という立場におられますので、そういう公正妥当な解決がはかられるようにこの事業団を指導してまいりたいというふうに存じておるところでございます。
  79. 河上民雄

    ○河上委員 いま一応の御答弁がありまして、すべてはこれからだというようなことでございますけれども、しかし、外務省はやはり主務官庁でありますから、これについては相当の責任を持っていただかないと、こういう法案を出した責任というものはどうも満たされないのではないかと私は思うのであります。ひとつそういう点は十分関係者が満足のいくように、不安のないようにしていただきたいと思うのです。  特に今国会において、農林省関係でありますけれども、農用地開発公団法案についてやはり同じような問題が起こっておりまして、農林省では、そこで働いている人たちとの間に十分協議をして、農林省としても十分責任を持つということを言っているわけです。外務省のほうも、ひとつこういう問題について責任を持っていただきたいと思うのでありますが、大臣、いかがでございますか、ひとつその点のお答えをここでちょっと述べていただきたいと思うのです。
  80. 大平正芳

    大平国務大臣 従事していただいている方々の雇用の安定、生活の確保ということは、この事業団の命運にかかわる重要なことを考えております。したがいまして、責任官庁といたしまして、いま御指摘のような諸点につきまして遺漏のないように責任をもって措置してまいるつもりでございます。
  81. 木村俊夫

  82. 土井たか子

    ○土井委員 まず、わかりきったようなことであって、実はもう一つはっきりしないことからお尋ねしたいと思うのですが、今回のこの国際協力事業団法案の第一条を見ますと、「開発途上にある海外の地域(以下「開発途上地域」という。)」というふうに明記をしてあるわけでありますが、この地域に対しては、国民所得が幾らくらい以下であるとか具体的なある基準が設けられているのでありますか、どうですか。それから具体的に、この地域というのはこういう地域をさすというふうなことが何らかの裏づけとして外務省としては御用意なすっているのかどうか、お伺いしたいと思うのです。
  83. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 「開発途上地域」というふうに確かにこの法案第一条に書いてございますが、それの定義が何かということにつきましては、国際的な尺度の問題でございまして、しかも、たとえば国際連合の貿易開発会議であるとか、OECDの開発援助委員会であるとか、それぞれの機関でいろいろな定め方をしております。一人当たりの国民所得が幾ら以下のものが開発途上地域になるとか、いろいろな基準がございますが、たとえば開発援助委員会の場合などでは一人当たり国民所得で何百ドルというような基準を設けているというふうに承知しております。
  84. 土井たか子

    ○土井委員 そうしますと、ケース・バイ・ケースで行き当たりばったりに、これは開発途上地域と考えてよかろうとか、これは考えることは不適当であるとかいうふうなのはそのつどお考えになるということでありますか。
  85. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 私ども経済協力を実施いたします場合に、開発途上国として考えておりますものは、通常OECDの開発援助委員会開発途上国のリストを作成しておりまして、俗称LDCリストといっておりますが、それを利用さしてもらっておるということでございます。
  86. 土井たか子

    ○土井委員 それをすなわち横すべりにして、日本の国内法で、ここにいうところの「開発途上地域」というふうにお認めになっていると確認していいわけでありますね。そうしますと、オーストラリアはそれに入りますか。
  87. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 オーストラリアはもちろんそれの中には入ってまいりません。
  88. 土井たか子

    ○土井委員 通産省のほうで、この法案が国会で正式に可決されて七月一日から事業団が発足をするということを予定して、具体的な事業を推進する方針ですでにプロジェクトの選定作業に入って、候補地を内定されていることは御存じでいらっしゃいますか。
  89. 森山信吾

    森山説明員 昨年私どもが海外貿易開発公団の予算要求をいたしました際に、たとえばオーストラリアあるいはブラジル等のいわゆる中進国の地域に対しまして開発プロジェクトというものを検討したことがございますが、今回の国際協力事業団の発足にあたりまして、具体的にどのプロジェクトをきめるかということはまだ作業としていたしておりません。
  90. 土井たか子

    ○土井委員 そうしますと、まだ候補地の選定もなすっていない、ましてや内定ということにまで至っていないというふうに理解しておいていいわけでございますか。
  91. 森山信吾

    森山説明員 この国際協力事業団法案は、いま御審議いただいておるとおりでございまして、鉱工業に関する分野につきましては外務大臣と通商産業大臣の共管ということになっておりますが、まだ外務省とすり合わせをいたしておりません。先ほど申し上げましたように、私どもが昨年単独で公団構想の予算要求を出しました際に考えましたプロジェクトはございますけれども、それを今回の事業団法が成立いたしました暁におきましてプロジェクトに内定するというような作業はいたしておりません。
  92. 土井たか子

    ○土井委員 それは当然だと思うのですね、共管事項でございますから。それはかってにおきめになったって、かってに足をはやして歩くわけにはいかないわけでございます。したがいまして、この法案が法律になり施行されて後に、やはり共管事項としてこれがどのように認められていくかという問題はあろうと思います。しかし通産省としては、すでに積極的に推進するという方針で、事業計画の選定作業に入り、候補地を内定したというのは、報道機関を通じて私たち知らされておる事実なんですよ。その候補地として積極的に推したいという方針でもって内定されている地域オーストラリアが入っておる。  そこで先ほどお聞きしたのは、国際協力事業団法案の中にいう「開発途上地域」の中にオーストラリアは入りますかと聞いたのです。入らないということになれば、この法案が法律となって施工されても、共管事項の中には入らないのです。それを取り扱う対象にはできないということじゃありませんか。
  93. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 土井先生の先ほどの御質問は、この法案の第一条の冒頭のところにございます  「開発途上にある海外の地域(以下「開発途上地域」という。)」そのことの定義についてお尋ねがございましたのでお答えしたわけでございますが、そのあと、さらに新しく加わります業務のことを書きました同じ第一条のしばらくあとを読んでいただきますと、「開発途上地域等」と「等」という字が特につけ加えてございます。それから二十一条をごらん願いますと、第三号業務と俗称しておりますが、その中でもやはり「開発途上地域等の社会の開発」云々というふうに書いてございまして、この「等」というのが一体どういうふうな意味を今後持ってくるかは、もちろんこの事業団それ自身が主務大臣の御認可を得る等の方法で具体的にきめていくわけでございますけれども、したがいまして、開発途上地域以外の地域が全く除外されるという意味ではないということがその中に示されているのではなかろうかと存じます。
  94. 土井たか子

    ○土井委員 わかりました。  そうしますと、この第一条からすれば、今回私どもが審議をいたしております国際協力事業団法案にいう「開発途上地域」ということにかかわらず、広く全世界にこの協力の内容は及ぶというふうに理解してようございますか。
  95. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 また妙な言い方かもしれませんが、この「等」という字が入ったことによりまして、広く世界に及んでしまうというふうにまで御解釈願うのは少し極端ではなかろうかと存じます。
  96. 土井たか子

    ○土井委員 しかし、概念からいうとそういうことになりますね。したがいまして、先ほど一応、国際機構で認められている開発途上地域という——またこれは国際慣例に従って考えるということに、常識的に表現すればなると思いますけれども、先ほどの御答弁からすれば、その意味がなくなっちゃうのですよ。「等」と書いてございますから、開発途上地域そのものに限りませんという御答弁の趣旨でございますから、その意味がなくなっちゃうのです。そこで、私が申し上げるとおり、開発途上地域というふうに国際慣例上認められている地域にとどまらず、全世界に及ぶというふうに一応考えておいてよろしゅうございますねということです。こういうふうに確認させていただいてようございますか。
  97. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように「開発途上にある海外の地域」というのがあくまでも主体でございまして、それから少しはみ出る場合もあり得るという意味合いで、「等」と申しておりますことは、そのあとに、今度はちょっと別の問題でございますが、移住の場合に「中南米地域等」というような書き方もございます。これは、主として中南米地域ではあるが、若干それ以外の地域も入るというような意味合いをあらわしておるかと思いますが、それと同じような意味で、主として開発途上地域ではございますが、若干それ以外のものも含まれるということに御解釈願えればありがたいと思います。
  98. 土井たか子

    ○土井委員 国際協力事業というものは、国際社会において日本の国家がどういうふうに信頼を保ち得るかという、非常に問題としては大きな意味を持っていると私は思うのですよ。そういう点から申しますと、この「開発途上地域等」の「等」の中身は限定していただかないと、先ほどの御答弁では全世界に及ぶと概念上考えられてもふしぎはないと私は思うのです。とどまるところを知らずですよ。  本来は開発途上地域に限定をして考えるべきだけれども、少しそれに色をつけて、それに類似したところ、まあはみ出ているけれども、この程度であればよろしかろうと考えられるところを「等」というふうに考えるというような御趣旨の御答弁ですけれども、だれがそういうふうに考えるのですか。これは主観の相違と言ってしまえばどこまでも広げることができますよ。拡大していくことができると思うのです。この「等」の中身はそういう点からいうとまことにあいまいだということを御確認願います。いかがです。
  99. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 少しことばが不足であったかもしれませんが、開発途上地域以外の諸地域でもこの国際協力事業団の働く仕事が存在するような場所もあり得るかというようなことを考えての規定でございますので、必ずしもいろいろな限定をつくるということではございませんで、自然この仕事をやっておりますうちに、たとえば先進国というリストの中に入っておるものでも、その中に非常にこの国際協力事業団の仕事を行なうのに適当な場所を持っておるものも出てくるかというようなことを考慮しての規定かと存じます。
  100. 土井たか子

    ○土井委員 これにあまりこだわっていると時間の浪費なんですが、しかし、これははっきりさせておくべきだと私は思うので、あえてもう一言申します。  それは開発途上地域があくまで主体なんでしょう、この法案の中身について協力をしようという相手は。したがいまして、開発途上地域を主体にしながら、「等」という中身についてはこういうふうに考えておるという、ひとつ政府見解を御用意願いたいと思います。これは日本語ではっきりと表現をしていただきたい。何らかの基準をそこに設けて、これ以下でなければならないとか、こういう地域をいうのだというふうな具体名称というものがそこに出てくれば一そうはっきりいたします。しかし、一応こういうふうに考えるという概念をはっきりさしてください。これをひとつ申し上げたいのです。お約束くださいますか。
  101. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 この国際協力事業団というものが仕事を始めました上でどういうふうに考えるかという問題になるかと存じますので、現在私どもが、もちろん事業団に所属しておるわけでも何でもございませんので、こういうことだということを限定して申し上げるのはまだ適当ではないというふうに存じます。
  102. 土井たか子

    ○土井委員 そういう姿勢があるので、せっかく法案の趣旨がこういうことでございますとりっぱに書いてあっても、実は思うとおりにいかないのじゃないかという心配も出てくるわけですよ。現にプロジェクトについていろいろお考えになっておる中身を検討してみると、経済的効率という点が非常に問題にされておるという側面がございます。したがいまして、いまのプロジェクトの中身を推進することに対して失いたくない、そういう基本姿勢がどこまでもつきまとったら、抜本的にいままでの日本の行き方に対して反省をして、そして経済協力というものに対して本来の姿に立ち戻ろうということがなかなか不十分な問題になり終わると思うのであります。  したがいまして、そういう点からしますと、これが足をはやして歩いてから考えてもおそくない、そのときになって考えるという御答弁の御趣旨でございますが、それは、すでにいま考えられておるプロジェクトについてはまず優先的にやってしまおう、既成事実をつくろうじゃないか、その上に乗っかって「等」について考えていこうというふうな姿勢がありありと見えるように私は思うのです。これは私の独断であったらまことに幸いでありますけれども、それはそのときになってもおそくないと言われる。しかし、これは考えようとしさえすればいまでも考えることができるわけであります、一応法案はできておるのですから。それをしかも審議をして、もう国会で採決をしきりに政府もまた与党も要求なさるわけであります。  そういう点からいうと「開発途上地域等」の「等」の中身というものはこの節はっきりしていただかなければならない、これは法案の趣旨からしてもそうだと思います。いかがです。
  103. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 土井先生指摘のような既成事実をあらかじめつくって、それをその事業団に押しつけようというような考えは毛頭持っておりませんで、この事業団が仕事をやっております際に、あるいは開発途上地域以外の地域でも、この事業団の仕事の二十一条に書いてございます業務の範囲の中に入ってくる適当な地域が出てくるかもしれないという点を考えた上で、この三号業務につきまして「等」という字を入れたわけでございます。
  104. 土井たか子

    ○土井委員 わかりました。局長の御答弁はわかりましたから、その「等」について、それでもまだ開発途上地域というものが中心になっている以上は、それに伴って、こういうことについて「等」の地域というふうに考えていいのだ、こういうふうに中身を考えた場合に「開発途上地域等」の「等」の中身になるのであるというところをひとつ明確にしていただきたいと思います。文書でお願いできますか。御答弁は先ほどから承ってわかりますから、そのことははっきり確認をしておきたいと思うので、いかがです。——時間が一時で休憩しなければならないということになっておりますから、これで一応打ち切りまして、質問は保留にさせていただいて、午後の質疑に加わりたいと思います。御了承いただけますか。
  105. 木村俊夫

    木村委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  106. 木村俊夫

    木村委員長 速記を始めて。  松本善明君。
  107. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣に若干確認の質問ですが、海外移住事業団海外技術協力事業団で働いている人たちの問題、先ほども質問があったわけですけれども、これについては労働条件その他は引き継ぐというのが外務省としての方針だ、こういうふうにお聞きしていいわけですか。−聞いていましたから、先ほどの答弁の繰り返しというよりは、外務省としての方針を聞かしてほしいわけです。     〔委員長退席、水野委員長代理着席〕
  108. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 外務省としての方針は、先ほど申し上げましたとおりでございまして、一切の権利義務の中に含まれているという従来の解釈に従います。
  109. 松本善明

    ○松本(善)委員 労働条件を含めて考えている、こういうことですね。労働条件が全部引き継ぐということを考えているということですね。
  110. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 ただ、先ほど御答弁申し上げましたとおり、二つの事業団というものがもとになっておりますので、その点については、事業団ができてからきまっていくであろう。それについて外務省としては、公正、妥当な解決がはかられるように指導していくという趣旨を申し上げたとおりでございます。
  111. 松本善明

    ○松本(善)委員 だから、それでお聞きしたいわけですが、公正、妥当ということは、労働条件その他については引き継いでいくという方向で指導をしていく方針かということなんです。それをはっきり言ってもらえばいいのです。
  112. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 その点については、そのとおりでございます。
  113. 松本善明

    ○松本(善)委員 それから連合審査のときに、インドネシアでの食糧の輸出規制の実情についての質問があったわけですが、そのときには調べてないということであったので、その点についての事情をお聞きしたいと思います。
  114. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 連合審査の際に御質問がございました、インドネシアで特にトウモロコシの輸出規制というようなことがあっただろうかということにつきまして、私どもそのときあまり資料を持ち合わせませんでしたので、御答弁が的確を欠きましたが、その後調べたところによりますと、インドネシア政府は昨年一九七三年の七月三日に商業大臣の命令という形でもって、トウモロコシ、それからその他のイモ類だと思われますが、ルートクロップと申しておりますが、そういうものの輸出を禁止いたしております。  この禁止の措置は、ちょうどその年の八月、九月、十月の端境期に非常に深刻な食糧の不足が懸念されました。他方、トウモロコシの国際価格も上昇しまして、インドネシアから輸出をすれば相当有利になるというような点を考えれば、あるいは輸出が急増するかとも思われたために、インドネシア政府がこれをとめたということが目的であったというふうに承知しております。  さらに同年の九月十五日には、同じような商業大臣の命令で、その禁止しましたものの中から家畜の飼料用の乾燥したキャッサバ、それからタピオカ、それからメーズ——トウモロコシの中では、インドネシア食糧調達庁の買い上げ基準に到達しないような程度のものについては、その輸出禁止の制約を解除するという措置がとられておるということでございます。
  115. 松本善明

    ○松本(善)委員 いまの話もその一つですけれども、東南アジアでは食糧不足ということが言われておるわけです。こういう状態で、開発輸入で安定的に輸入するということができるのかどうか、またそういうことが食糧不足を言われている国々から輸入してくるということが許されるのかどうか、こういう問題について伺いたいと思います。
  116. 岡安誠

    ○岡安政府委員 御指摘のとおり、東南アジア諸国の中には、現状食糧が非常に窮迫しておる、自給がなかなか困難であるという国があるわけでございまして、そういうところに対します農業の協力というものは、まず当該の国の食糧をまかなうための援助が第一になると思っております。  したがって、そういうところからわが国への穀物の供給があるとするならば、やはり当該国の需要を満たしたあとで、余裕があれば私どものほうに輸入をしてもらうというかっこうになると思いますので、私どもはやはり相手国の食糧事情その他を考えまして、協力のあり方も変えていかなければならないというふうに考えております。
  117. 松本善明

    ○松本(善)委員 しかし実際には、たとえば米が食べられないところから米を輸入してくるというようなことが従来でもあった。そういうことが批判をされておるわけです。  大臣にお聞きしておきたいのですけれども、そういう日本のほうの要求からやられるというか、現地の要求が無視されて日本の都合でやられているということがいままでもいろいろあったのではないか、そういう問題について今後どういうふうな考え方で臨んでいくかということを、お聞きしておきたいと思います。
  118. 大平正芳

    大平国務大臣 私の記憶に間違いなければ、日本のほうの都合でやった覚えはないわけでございまして、みんな先方政府の希望を聴取した上でいたしておるつもりでございます。今後もそれでやらなければならぬと思います。
  119. 松本善明

    ○松本(善)委員 これはやはり若干私たちと認識が違うようですけれども、この農業問題についての開発輸入のあり方ということについては、そう簡単なものではないように私どもは考えております。これについて、大臣はそういう認識で、その問題については全く問題がないというふうな認識であるとすれば、これはやはりかなり違ったものではないかというふうに思うのです。これは今後の問題として私たち追求をしていきたいということを申し上げて、私の質問をこれで終わります。
  120. 水野清

    ○水野委員長代理 この際、午後四時まで休憩をいたします。     午後一時八分休憩      ————◇—————     午後四時一分開議
  121. 木村俊夫

    木村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税の防止のための日本国とアイルランドとの間の条約締結について承認を求めるの件一及び所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国スペイン国との間の条約締結について承認を求めるの件、以上両件を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。松本善明君。
  122. 松本善明

    ○松本(善)委員 大蔵大臣に伺いたいと思いますが、この二重課税防止条約について、前回大蔵省の事務当局にいろいろ伺ったのでありますが、この二条約ともありますみなし外国税額控除の問題について、このために減収になる金額というのは国別にどのぐらいになっておるかということをお聞きしたところが、それは統計をとられてないという話であったわけです。  私は、こういう条約を審議するにあたっては当然にそういう場合は一体どういう結果になるか、減収になるものはどのぐらいか、すでに締結された条約の場合についてはどうなってきたかというふうなことは当然に資料として提出をして、そして審議をするというふうにするのが当然ではないかと思うわけです。理事会でもそういう話をして、皆さんそういうことだということであるわけですけれども、大蔵省としてはいままでそういうことをやってなかったように思うわけですが、私はそれではやはりよくないのではないかというふうに思うのですけれども、大蔵大臣、この点についてはどうお考えになりますか。
  123. 福田赳夫

    福田国務大臣 みなし税額控除問題につきましては、松本さんからお尋ねがあって、そして事務当局で資料がまだ整っておらぬというお答えをしたままになっておるというふうに聞いておるわけですが、これはやはり資料を整えたいと思っております。これは在外企業の問題でありますので、みなし税額控除問題に限らずなかなか手の届かないところが多いわけでありますが、重要な点でありますので、早急に調査をいたす、かように考えております。
  124. 松本善明

    ○松本(善)委員 それではいまわかっている範囲のことを事務当局に答えてもらいたいと思います。
  125. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 前回この委員会で御質問ございまして以来、鋭意私どもとしましても努力をいたしました。約一月かかりまして東京国税局の所管法人の中で活動状況から見まして外国に進出しており、かつ御質問のいわゆるスペアリングを受けていると思われるような企業をいわばピックアップいたしまして調査をいたしました。大体の集計をやっと終わった段階でございますが、その結果でございますと、数字的には約九億円を外国に納付したものとみなして、日本の国内法上税額控除を与えておる。  なお、調査としては大阪国税局、名古屋国税局の所管法人につきましても引き続き調査をいたしたいと思っておりますが、これらの法人が外国税額控除を受けております数字が約四百億でございますので、税務統計上出てまいっておりますその一期前の外国税額控除の総額、これはわかっているのでございますが、これと対比しますと、カバレージとしては相当大きいので、おそらくは全国を通じて調べましても、みなし税額控除の総額は十億円を若干こえるくらいの見当になるのではないかと思っておりますけれども、なお、鋭意調査をいたしました上で、わかりましたら御報告いたしたいと思います。
  126. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは私は国別にどうなっているかということをやってほしいということを要求したわけですが、そういうことでやってもらえますか。
  127. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 方向といたしまして、ぜひそういう分析もできるように考えたいと思っております。
  128. 松本善明

    ○松本(善)委員 ここで大蔵大臣に伺いたいのでありますが、いまの問題にいたしましても、これはほとんどが大企業ですが、それの減税になっていることについての調査がなされていないという問題であります。私はいま海外へ進出している企業が税の面で特別に有利になっている、いろいろな点で脱税まがいのことが行なわれている。タックスヘブンということばも生まれている。これはいままでは日本自身が大企業に対して税金がいろいろ安い、日本自身がタックスヘブンの傾向があったのだ、こういうふうにさえ言われていましたけれども、国内の世論が大企業に対する課税を強くしろということが強くなってきた。そういう中でタックスヘブンの問題が、外国に租税回避地を求めていくという傾向が出てきておる、こういうふうにもいわれている。  そういう中でそういう問題に対してどう対処するかということは、大蔵省としては真剣に考えなければならない問題であろうというふうに思うわけですけれども、この間事務当局にお聞きした範囲では大体むずかしいという、事実上野放しになっているというふうにしか考えられない状態であります。このタックスヘブンについてどういうふうな方針で臨まれるのか、お聞きしたいと思います。
  129. 福田赳夫

    福田国務大臣 多国籍企業ですね、そういう問題に連なることでございますが、これは多国籍企業につきましては、これはどうしてもそういう存在が国際社会で必要になってくる、その功績というか、メリット、これを否定するわけにはいかぬと思うのです。しかしながら、同時にそれが行き過ぎになる面につきましては、これはどうしてもこれを是正していかなければならぬ、こういう問題が同時にある、こういうふうに考えておるわけでありまして、その行き過ぎというか、弊害、デメリットの面の一つといたしまして税の問題というものもあると思います。  何せ外国にある企業でありますから、税制といたしまして適正なものができましても、これを的確に税制どおり把握するということが非常に困難なケースがあるのでありまするけれども、とにかくわが国企業活動ももういまや国際的になり、そうしていわゆる多国籍企業的な色彩を持つ企業わが国系統のものとしてふえつつある、そういう状態でありますので、在外のそういうわが国企業の支店でありますとか、出張所でありますとか、あるいはわが国企業の出資する別会社でありますとか、そういうものに対する税の捕捉、そういうものにつきましては実行上の問題として私はもっと力を入れる必要がある段階にもうすでに来ておる、こういうふうに考えております。  それで、国税庁でも、たとえばそういう問題の非常に多い国はアメリカでございますが、アメリカへ国税庁の官吏を派遣して連携をとりますとかいろいろ努力をしておりますけれども、そういう問題はアメリカばかりじゃございません。タックスヘブンの国々等につきましても同様であろうというふうに思いますので、課税面の行政上の措置の強化ということにつきましては今後とも力を入れ、またくふうをこらしてまいりたい、かように考えております。
  130. 松本善明

    ○松本(善)委員 大蔵大臣、メリットもあると言われましたが、タックスヘブンといわれているところに子会社を持つということについて一体どういうメリットがあるのですか。バハマとかバーミューダとかケーマン諸島とかニューヘブリデスとか、そういうところに子会社を持つということは何のためにやっているのか。それについて何かメリットがあるとお考えですか。
  131. 福田赳夫

    福田国務大臣 私がいまメリットと申し上げたのは、世界経済を国々の協調によって推進する上においてのメリット、デメリットという話を申し上げたわけなんです。ですから、あなたがいまおっしゃるタックスヘブンの国の国籍の会社を持つという問題とは違う角度のことを申し上げたのでありますが、特に船会社なんかにつきまして、タックスヘブンの国にその国籍を置く。パナマの国籍なんというのは非常に多いわけでございます。  そういうことがなぜ起こるかというと、これは私は税の関係だというふうに思います。タックスヘブンでありますから、税は軽減をされるということになる。その点に着目をいたしまして、パナマ籍で船を保有する、こういうようなことになるのだろう、かように考えます。
  132. 松本善明

    ○松本(善)委員 実情はそこへ送ったことにしてそこを経由して商品を送るというようなことで、税を軽減するというためだけに使われているという例が幾つもある。こういうことになりますと、いま大蔵大臣は、税の軽減のためにということを率直にお認めになったわけですけれども、そういうことがなされることによって大企業が合法的に税金を免れる、税金を軽減されているという問題はどうしても手をつけなければならない。いまも手をつけられるということを言われましたが、そのために、やはり海外の子会社を含めて利潤を明らかにさせるということが必要なんだと思うのですけれども、そういう点については大蔵大臣はどうお考えですか。
  133. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのとおりの制度になっておるわけなんです。たとえばパナマ籍の法人をつくり、それに対してわが国企業が出資をする、そうしてそこで利益が出る、こういうことになりますれば、それはパナマの税は免れるわけでございます。したがって、そこへ蓄積ができるという傾向になるだろうと思うのです。それをまた現地で運用をするというようなことになりますれば、それがまたさらに利益を生むような企業活動につながってくる、こういうことになると思うのです。  しかし、わが国企業はそれに対して出資をいたしておるわけでございますから、わが国企業は、その国、そのパナマ籍の法人からの配当を受ける、配当につきましては、わが国といたしまして配当課税をいたす、こういうことになる。それが的確にいっているかいっていないかという問題はあると思うのですが、私は税の体系といたしましてはまず一応整っておる、こういうふうに考えております。  それから、そういう別法人というのじゃなくて、支店だというようなケースに対しましては、支店、本店を総合いたしまして課税をいたしますから、これも法制的には十分整っているというふうに考えてよかろう、こういうふうに思います。ただ、その支店分の計算がほんとうに的確にいっているのかいっていないのかというところの捕捉、つまり税務行政の運用の問題、これも別法人をつくった場合と同様に税務の執行上の問題として非常にむずかしい点がある、そのむずかしい点を今後改善をしていくということが課題であろう、こういうふうに思います。
  134. 松本善明

    ○松本(善)委員 それじゃ、大蔵大臣にお聞きする前にちょっとお聞きしておきます。  パナマにどれだけの企業が子会社だとか支店を持っているか答えてください。
  135. 原徹

    ○原説明員 そういう子会社あるいは支店の形態ということでは、ただいまここに表を持っておりません。ただし、ことしの二月末現在におきまして、過去からの累積でございますが、投資を許可した件数が六十件でございます。
  136. 松本善明

    ○松本(善)委員 パナマでも六十件ということでありますが、これは私の調べた範囲でも相当数の子会社がありますし、パナマに限らず、たくさんの子会社がタックスヘブンというところではできているわけです。もし、大蔵大臣が先ほど言われたような実情で、法体系はそろっている、しかし、にもかかわらず実際上たくさんの日本企業が子会社をつくるとか、あるいは支店をつくるとか、いろいろな形で投資をするとかというようなことがタックスヘブンといわれているところで起こっておるということならば、これは租税行政の上では非常に失態というか、うまくいっていない、法体系がそろっているにもかかわらずやっていないということになるのではありませんか。
  137. 福田赳夫

    福田国務大臣 法体系の問題としますと、支店、出張所を持って、その支店、出張所活動を通じて利益を得るという場合におきましては、これはわが日本にある本店と総合して課税しますから、その点は、私は法制的に十分整っておる、こういうふうに考えております。ところが、特殊な別の法人格のパナマ籍のものにするという際におきましては、法人関係分が税がかからぬとかあるいは軽減されるとか、そういうことになるわけなんです。その点が、諸外国を含めてわれわれもと、パナマ籍の法人をつくるということになるのじゃあるまいか、そういうふうに思うのです。  でありますが、しかし利益があれば配当がある、配当に対しましては、わが国の配当に関する税制が適用されるということになるわけですから、その点で課税はまずわが国としてもその権利を行使し得る立場にあるわけなんですが、支店、出張所の場合とちょっとニュアンスが違う点は私も認めまするけれども、しかし、現実問題としましてその辺をどういうふうにするか。これはわが国としても国際競争上の立場もある、そういうようなことを考えますと、まあまあ制度としては満足しなければならぬような問題かなというふうに考えておるのですが、なお適正な方法があるかどうか、そういう問題につきましては、いわゆる多国籍事業というようなものがだんだんと国際社会でも問題になってくる際でもあり、検討してみます。同時に、これはわが国だけでは解決できないのです。終局的には国際間におきまして何らかのそういうものの調整措置を申し合わせるとか、そういう行き方も必要であろうか、かように考えております。
  138. 松本善明

    ○松本(善)委員 いまのお話のように子会社に対する投資の配当について課説をしているというだけでは、タックスヘブンはなくならないのが現実であることは明白なんです。だから私が言いますのは、海外にある子会社の分を含めて利潤を明らかにさすべきではないか、そういう調査をすべきではないか、そういうことなんです。どうでしょうか、これは本社へ行けばわかるはずだと思うのです。
  139. 福田赳夫

    福田国務大臣 松本さんの言われる趣旨はよくわかるのですよ。わかるのでありますが、外国の企業に対してわが国租税徴収上の権利を行使し得るかいなかというような非常にむずかしい問題があると思うのです。そういう点になりますると、わが国だけの裁量では解決できない。そこで、先ほど申し上げましたように、国際間の何かルールをつくるような必要が出てくるかどうか、国際問題として諸外国との間で話し合いをし、そして意見をまとむべき問題でもある、こういうふうに申し上げているのです。  現にそういう点、その他多国籍企業の行き過ぎというか、デメリットと言ったほうがいいと思いますが、そういう点につきましては国際社会でも問題になっているのです。国連でもジュネーブに二十人委員会というのをつくりまして、そしてこの二十人委員会でいまいろいろ議論をしておるのです。その議論の傾向を見ますと、多国籍企業というもの、これを罪悪視することは妥当でない、しかしその行き過ぎがいろいろあるとか、あるいは不合理の点がある、何かルールをつくろうじゃないかというような動きになっておるというふうにいま聞いておりますが、とにかくわが国だけでこれを解決しようといいましてもなかなかむずかしい。限界がある問題だ。今日においては私はそう考えております。
  140. 松本善明

    ○松本(善)委員 その国につくった子会社に課税権がないということは、それはそのとおりで、別にそのことについて言っているわけではない。そういう問題をやろうと思えば国際的な話し合いが必要である、これはそのとおりです。しかし、この子会社がどれだけの利益を得ているか、それを親会社の中で調べて、そして親会社に対する課税の中で考えるということは当然できることではありませんか。そういうタックスヘブンに子会社を設けることによって税を免れようとしているということの実態を調査し、あるいは立法上、行政上の措置によってそういうことを防止をするとか、あるいはそういうことをやっても親会社に税金がかけられる、こういうふうな方法を考える道はないか。そういう意味で、子会社を含めた全体の利潤を明らかにさして、方法を考えるべきではないか、こういうことを申しておるわけですけれども、そういう点ではいかがでしょうか。
  141. 福田赳夫

    福田国務大臣 その点も話としては私よく理解ができます。できますが、何せそういうような多国籍企業、これは国際競争の激しいそのさなかで事業運営をしておる。ですから、わが国だけがそういう措置をするということ、そこにも一つの問題があるだろう。そういう点も含めて、これは国際間で何とかコントロールしようというようなことになれば、それは実行可能の問題じゃなかろうか、私はこういうふうに思うのです。  それからまた同時に、タックスヘブンというようなそういう法制をとっておる国、それがわが国の松本さんが言われたような仕組みの行き方をするということについてどういう出方になりますか、これもデリケートな問題だろう、こういうふうに思います。そういういろいろデリケートな問題を含んでおります問題でありますので、なお私どもも何か適正な道があるのかどうかということにつきましては検討してみよう、こういうふうに考えております。
  142. 松本善明

    ○松本(善)委員 国際的な、他国もやっておる場合には日本としてだけはできないという立場をとりますと、これは事実上野放しになっていくと私は思うのです、国際的な話し合い、それはやるのはいいでしょうけれども。そうすると、実際は大企業、多国籍企業がそういう形で税金を免れていっておる、税の軽減を受けておる、特権的な減免税を受けておる、こういうことになると思うのですね。それは日本の国だけでも措置をしなければ、非常な課税上の不公平、こういうことが現実に起こっておるし、それをそのまま容認することになるのじゃないかというふうに私付思いますけれども、その辺の矛盾はどういうふうにお考えになりますか。
  143. 福田赳夫

    福田国務大臣 国内でも税をどういうふうに見るかというような見地につきまして、一つ企業で行くのか、あるいは企業をいろいろ分けていくのがいいのかというようなことは企業としては当然考えるだろうと思うのです。同じ国内でも行なわれておるようなそういう事例が非常に顕著な形で起こっておるのが、タックスヘブンの国の国籍を有する法人をつくるという方式だろう、こういうふうに思うのです。ですから、一がいにその方式を否定するというのもどうかと思うのです。  でありますので、国際協調というか、国際社会全体でこれは妥当じゃない、だから何かひとつ検討しょうというようなことになって、国際間の申し合わせでもできて初めてそういう問題は解決されるのじゃないか、私はそういうふうに思います。  少し理屈になるようでありますけれども、国内においても総合企業というような形でいくのが税対策としていいのか、あるいは多少分散したほうが楽なのかというような配慮をする、これはまた自然の成り行きだろう、こういうふうに思うのですが、その辺、この問題は簡単直截に解決できない諸問題をいろいろ含んでおる、そういうふうに理解しております。
  144. 松本善明

    ○松本(善)委員 タックスヘブンといわれる国に子会社を持って、いわゆるタックスヘブンの恩典といいますか利益を受けておるというような企業名、そしてその企業はそのことによって一体どの程度の利益を受けておるかということについて、大まかな調査はやろうと思えばできることだと私は思うのですけれども、そういうことをおやりになる考えはありませんか。
  145. 福田赳夫

    福田国務大臣 もともと外国籍の企業である、それが資本的にわが国とつながりがある、そういう性格の外国企業に対しまして、こういう公開の場所で権威をもって御報告をするというようなそういう調査は私はむずかしかろうと思うのです。どんなふうなところにいっているだろうなという勘どころのつかみ方、これは出資会社あたりに聞いたらある程度はつかみ得ないことはないと思います。それをしかし書面にいたしまして国会へ権威ある文書として提出をいたしますとか、あるいは国会において御説明するとか、そういうことはなかなかむずかしいことじゃあるまいか、そういうふうに私は思いますが、今後こういう種類の問題を考える場合の資料でありますから、勘どころはどんなふうになるのかということにつきましては、これは大蔵省としては調査をしてみる、こういうことにいたします。
  146. 松本善明

    ○松本(善)委員 大蔵省として調査をされた結果を、これはやり方は研究の余地があるかもしれませんけれども、やはり国会に何らかの形で報告するということはなさるべきことではないか。大蔵省はやる、それについて国会には全然出せないということはとても納得のできないことであります。これは方法はいろいろ別かもしれませんけれども、何らかの形で国会に御報告をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  147. 福田赳夫

    福田国務大臣 非常に抽象的にあるいはなるかもしらない、しかし大蔵省では調査をしてみるつもりでありますので、そのまとまった点につきましてはそういう前提づきでの御報告はあるいはできるかもしらぬ、かように考えます。
  148. 木村俊夫

    木村委員長 松本君に申し上げますが、大蔵大臣の時間がきました。
  149. 松本善明

    ○松本(善)委員 この点について一そうの究明を大蔵省がやって、そしてタックスヘブンというようなことばがなくなるようになさるべきだと私は思います。もしそれがなくなれば報告もなくてもいいと思います。大体そういうところに子会社をつくるようなことがないようにさせる、そういう方向でやるべきだということを要求をして私は質問を終わりたいと思います。
  150. 木村俊夫

    木村委員長 これにて両件に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  151. 木村俊夫

    木村委員長 次に、国際協力事業団法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。瀬野栄次郎君。
  152. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 国際協力事業団法案について、去る四月二十六日外務、農林水産、商工、三委員会の連合審査で関係閣僚に対して質疑をいたしたところでありますが、大平外務大臣に対する保留分数点について質問をいたします。  まず第一に、わが国経済協力政策の転換とあわせ、政府開発援助をどのように量的にも質的にも改善していく方針であるか、まず最初にこの点、大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  153. 大平正芳

    大平国務大臣 諸先進国に比べまして政府開発援助が見劣りがするという状態にありますことは御指摘のとおりでございまして、政府はここ二、三年来政府開発援助の増額につきまして格別努力を払っておるところでございます。先進諸国の平均の位置ぐらいのところまでなるべく早くもっていくように努力をいたしたいということが一つの目標でございます。  それからひとり経済開発援助ばかりでなく、医療協力等におきましても努力をいたしてまいりたいという点が第二でございます。  さらに社会開発にも力を入れてまいりたい。これは採算をある程度度外視しなければできない仕事でございますので、そういう点に留意していきたい。  そういった点を目標にいたしまして鋭意先進国並みのところへ早いところもっていくべく努力中でございます。
  154. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 先進国並みにレベルを上げていきたいというような御答弁でありましたけれども、伝えられるところによりますと、アメリカの下院が第二世銀への予算支出を否決したと聞いております。さらにまたわが国の大蔵大臣の発言にもうかがわれますように、援助支出について引き締めムードであり、先進諸国の発展途上国への援助疲れが目立っておるところであります。  このような傾向に対し発展途上国側は、戦後発展途上国の資源をどん欲に食いつぶし巨大な富を築き上げてきた日本に対する不信感を強めております。日本の対外経済援助の基本姿勢は利潤を自由に持ち帰ることにあるのではないかとする見方を一段と強めておるのも御承知のとおりであります。反日ムードの広がりとその厚みを増すアジア情勢のもとで、援助姿勢の転換と田中・大平外交路線で贈与の拡充等を訴えておられますが、この外交に対し、去る四月五日ただいまおられました福田大蔵大臣は大蔵委員会において、今後の対外援助政策について緊急でない政府開発援助は抑制していくということを公式に打ち出し、わが国の国際収支基調の変化から対外援助も大きく制約せざるを得ない旨を明らかにしておるのであります。大臣も御承知のとおりです。  すなわち、援助疲れを表明する福田財政との足並みの乱れは、国民に戸惑いと不信を与えるにとどまらず、開発途上国の失望と不信を一そう深めることになるのではないかと私は指摘せざるを得ません。そうした内閣で行なわれるところの新大臣設置も事業団設置も看板倒れになるのではないか、かように思われるわけです。  その点、本法案審議にあたって大平外務大臣はどのように考えておられるか、御見解を承りたいのであります。
  155. 大平正芳

    大平国務大臣 大蔵大臣が海外経済援助につきまして慎重な発言をされておりますことは、私もよく承知いたしております。それは近来わが国の国際収支がたいへん困難な状況にありまして、大幅な赤字を記録するようになってきた。こういう状況におきまして財政当局を担当いたしておる大臣といたしまして、国際収支のバランスを回復するということについて異常な熱意を示されていることは、私は当然の責任であろうと思います。ただ、海外経済援助と国際収支の関連でございますが、これは諸外国もわが国も同じでございますけれども、アンタイド、つまりひもつきでない援助の場合、われわれが供与いたしました援助の資金によりましてどこからでも必要資材を輸入する、あるいは必要サービスを輸入するということになりますると、大蔵大臣が御心配になるようなことが端的に起こってまいるわけでございますけれども、多くの場合、わが国が実行しているもの、あるいは先進諸国がやっておりますものはタイドローンでございまして、わが国で物資とサービスを調達して開発援助に充てるという場合がほとんどでございますので、直接に国際収支に影響があるものとは思いませんし、そういった点につきましては大蔵大臣もよく承知していることと思うのであります。現に、ことしの予算におきましても海外援助予算につきましては相当理解を示していただいておるわけでございます。  しかし、すべての歳出予算がそうでありますように、海外経済援助につきましても慎重にこれを実行いたしまして、むだのないようにしなければならぬことは当然のことでございますので、そういう点につきましては、われわれ担当者といたしまして十分留意してまいるつもりであります。
  156. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間の制約があるので、あと二点外務大臣にお伺いして御答弁をいただきたいと思います。まとめて質問を申し上げます。  いま質問をいたしましたような結果からかような情勢を見ましたときに、国際協力事業団をつくっても、私は権限や機構を持たぬ大臣を新設したり既存事業団を集めた上に、新たな事業、業務を盛り込んだ大型国際協力推進母体を機構的につくってみても、実際に援助行政の事務的統合配分がなされないまま実施するというようなことになるわけでございまして、私は援助政策は混乱を来たすばかりではないか、かように心配してなりません。この点、外務大臣はどうお考えであるか、これが一点。  もう一点は、去る四月二十六日、農林大臣にも伺ったわけでありますが、農林水産委員会として特に私は指摘をしておる問題の中に、本法の中で漁業については国際協力事業団の業務から除外されております。なぜ入れなかったか。窓口は一本にすべきであった、かように思うわけです。当然含めるべきである、かように私は指摘をしております。  すなわち、財団法人海外漁業協力財団が昨年できて、荒勝君が理事長につい最近就任したばかりであります。このことも十分承知しておりますが、この財団法人海外漁業協力財団ができたばかりでこれをつぶすことができないということが問題となったために、今回除外されていると私は推察する。水産資源は、低開発地域においても資源は共通のものであります。一緒であります。こういったことから、漁業を本法からはずすのはけしからぬと私は思う。  外務大臣はこの件について再検討をしていただくと同時に、私は、外務大臣はこの漁業問題についてなぜはずしたか、農林水産とすべきものを農林業、こういうふうにして、きょうのいろいろな書類を見ても出ておりますが、この点、十分検討していただきたい、かように思うわけです。  この二点について御見解を承って、質問を終わりたいと思う。
  157. 大平正芳

    大平国務大臣 御案内のように、経済協力行政は多くの省にまたがりました複合行政でございまして、各省の間の協調が十分とられないと円滑な推進が行なわれないことは御指摘のとおりでございます。現にわが国におきましても、これは各国におきましても同様でございますけれども、各省にまたがっておるわけでございます。しかし、これを一つにかりにまとめましても、財政は財政、産業政策産業政策、外交政策は外交政策とそれぞれの担当の省がありまして、一つまた関連の関係省がふえるだけの話でございまして、ある程度やむを得ない道行きであろうと思うのでございます。  したがって、実際的な処理といたしましては、こういう各省にまたがった仕事を諧調のとれた姿において円滑に推進していくことに行政上の苦心を払わなければならぬと思うのでありまして、そういう意味におきまして内閣に無任所大臣を設置いたしまして、総理大臣の命令のもとで機動的な仕事を行なっていただいてその促進をはかっていただくことは、私は適切な措置であると考えておるわけでございます。また、これに関連いたしました各省におきましても、十分協力体制をつくり上げていくように努力することは、当然の任務であると考えております。  第二の漁業協力をはずした問題でございますが、これは農林省におかれましても国際協力事業団に原則としてこれを入れることに反対であるとは私は聞いておりません。ただ、いま御指摘の財団ができたばかりでございますので、これをいますぐこれに吸収するということでなく、できたばかりの財団にしばらくこの仕事を担当させようということにすぎないのでございまして、原則論として漁業協力は全く別のメカニズムでやらなければならぬというように考えておられるものとは承知いたしていないのでございまして、今後事態の推移を見まして、われわれ国際協力事業団とこの財団との関係をどうしてまいるかということにつきましては、農林当局とも鋭意話を進めてまいりたいと考えて、御期待に沿うように全体としての経済協力がまとまった姿で円滑に推進されることを保障してまいりたいと考えております。
  158. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 以上で終わります。
  159. 木村俊夫

  160. 松尾信人

    松尾委員 外務大臣にきょうお尋ねするわけでありますが、まず最初に、大臣の胸中にはもうきちっとお考えがある、私はこのように思うわけでありますけれども、従来のわが国の経済援助の基本姿勢と申しますか基本方針、どうもケース・バイ・ケースだとか無原則、または場当たり的というような、そのような感触というものをわれわれ非常に強く受けておったのであります。また、石油危機以来政府もいろいろ特使を派遣されまして、そうしてどうとかして石油を持ってきたい。ですから、結局そういう動きをながめてみましても、政府の動き自体がどうも経済協力という名のもとに、資源開発輸入というものに大いに力を入れ過ぎておる、そのような感じも持つわけであります。  そういう点でこの基本方針というものをこの際、内外に明確にされる、こういうことをまずやるべきであろう、そういう必要性があるのじゃなかろうか。さらに、であるならば、日本の基本方針というものは少なくともこの点というものは鮮明にすべき要点であると思うが、この点について最初にお答え願いたいと思うのです。
  161. 大平正芳

    大平国務大臣 経済協力政策の基本は十分御理解いただいておると思いますけれども、相手国の自助努力にささえられて、また相手国の国づくりの計画というものに沿って、わが国があとう限りこれに協力するということが基本でございまして、わが国がこれによって経済の支配を繰り広げようとか、これによって資源の確保を有利にしようとかいうことでは決してないわけでございます。  私どもは、国際的な社会における一員としての日本が、わが国の立場におきまして、その能力に応じた協力発展途上国に向けていたしますことが責任であると感じておりまするし、そういう国々とわが国とが末長きにわたっての友好関係を維持する上におきまして、またそれを通じて世界の平和を保障してまいる上におきまして、当然われわれがなさなければならない義務と考えておるわけでございまして、そういう理念に徹していきたいと考えております。  なるほどわが国資源小国でございまして、あらゆる資源、原材料、燃料、食糧等の大半は輸入に仰いでおりますことは御指摘のとおりでございます、われわれは資源を海外に求めなければならぬことは当然でございますけれども、これは国際的に公正な取引を通じて、価格を通じて確保していくべきであるし、わが国に対する信用によって供給を仰がなければならぬ性質のものでございまして、経済協力というものをえさにいたしましてこれを確保するというようなさもしい根性であってはいけないと思うのでありまして、そういうことではわが国の国際信用は保たれないと考えておるものでございます。  そういう基本的な理念というものは、政府も民間も十分心に体してやらなければならぬし、それについて相手国にそのわれわれの基本理念というものに対しまして、十分な理解を求めるように努力をしてまいりたいと考えております。
  162. 松尾信人

    松尾委員 御答弁ありましたが、相手国主権の尊重ですね、それから当然のことでありますけれども、互恵平等であるということですね、経済援助そのものは、よその国の条件よりも劣らないというような、そういうものを明確にして、この際内外に宣明する、一言でいいですから、そういうような方針を宣明したい、このようにおっしゃっていただきたいと思うのです。
  163. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおり心得ておりまするし そういうことにつきまして国の内外にわたりまして宣明してまいりたいと思います。
  164. 松尾信人

    松尾委員 次に、民間投資のことでありますけれども、七二年の政府ベースはGNP対比で〇・二一%、民間ベースが〇・七二%で、この民間ベースの急増というのがいろいろ問題をはらんでおるわけであります。でありますから、そういう点で経済侵略的なイメージを与えていく、これをどのように政府としては指導をし、コントロールしていくかということが必要だろうと思うのです。ところが、海外投資というものは、現在これは自動許可制であります。日銀の窓口の規制だけでありますが、そういうところに今後は、いろいろ批判もある現在、外務省としても、そこの中にやはり指導に乗り出していくべきではなかろうか、これが第一点です。  それから、日銀の窓口規制以外には、例外的に個別審査の対象とされるものがございます。その中で特に私が問題といたしたいのは、国際協力上または外交上問題があると認められる海外投資について、このように個別審査になっておるわけです。特に外務省に関係のあるこのような事例について、どのようにタッチし、どのように指導されていくか。  まず最初は、民間投資は自動許可制であるから、日銀の窓口規制だけである、これはやはり外務省がある程度そこには指導というものに乗り出していかなくては、私は、この日本の経済援助の基本方針というものを打ち出されても、思ったとおり進まぬのじゃないかという心配があるから言っておるわけです。  それから、個別審査の案件になりまして、いろいろ国際協力上または外交上問題がある案件、これについて、どのくらい外務省としてはきちっとタッチして問題の処理をされていくか、この点についてお答え願いたい。
  165. 大平正芳

    大平国務大臣 民間対外投資につきましては、御指摘のように、最近とみに活発になってきておりまして、明治、大正、昭和にかけましてわが国は恒常的に資本の輸入国であったわけでございますが、ようやく戦後、最近になりまして、資本の輸出国になったと申しますか、そこまで発展してまいりましたことは、ある意味において歓迎すべきことと思うのでございまして、これが投資対象国におきまして経済の自立に役立ち、雇用機会の増大に役立ち、民生、福祉の向上に役立つことができれば、たいへんしあわせと思うのでございます。  しかしながら、それが経済の支配あるいは制覇、そういうものに通じたり、あるいは対象国からいろいろな非難を浴びるということがあってはならないと思うのでありまして、そのためには、民間におきましても投資コードというようなものをつくりまして、自粛の体制が民間の各機関においてとられておるようでございます。政府としては、立法措置をもってこれを規制するというところまではいま考えておりませんけれども、民間の努力とわれわれの行政指導を通じまして、この対外投資がわが国の信用をそこなうことがないように、国際協力の実をあげるように期待しておる次第でございます。  第二の点につきまして、日銀の審査にあたりまして、外務省に関して注意すべき点についての御指摘でございましたけれども、ただいままでのところ、日銀から外務省に御照会をいただいたケースはまだ一件もないことを御報告申し上げます。
  166. 松尾信人

    松尾委員 もう時間もほとんどありませんので、この質問で終わりますけれども、第二点の私の質問は、発展途上国の累積債務の問題であります。特に東南アジア諸国とわが国との貿易収支でありますけれども、これはわが国が大幅に黒字であります。そういう調整の問題ですね。簡単に申しますけれども、通貨不安、世界的なインフレだとか食糧危機その他の条件で、この開発途上国の経済というものはきびしい環境にあります。そしてこのような累積債務というものが増加の一途をたどっておる。  これは東南アジアだけでありますけれども、七四年三月末の円借款の供与状況、合計六千五百六十億、そういうことで、このように債務というものが非常に累積になっておりますし、他方東南アジアと日本との貿易は、七三年に七億三千三百万ドルと、わが国の受け取り超過なんです。結局、開発途上国、その中の東南アジアに限ってみましても、累積債務の増加というものと貿易の赤字、このようなことで二重の苦しみを感じておるわけであります。  でありますから、非常にこれは重大な問題であります。簡単に解消できません。開発輸入と申しましても、何年もかかります。ですから、この海外経済協力というその重点を私はこのような地域に指向して、そしてまずその土台を涵養して、そうして開発輸入というものをやはりがっちりとその基盤に乗せていく、このようなことが必要であろうと思うのですが、これは大臣のはっきりしたお答えを聞いておきたい。  これで私の質問は終わるわけであります。
  167. 大平正芳

    大平国務大臣 いま御指 摘の対外債権、日本にとりまして債権が累積してまいる、債務国側の国際収支の不如意から、このバランスを回復していくということが非常に至難な状況であるという御指摘は仰せのとおりと思うのでございまして、現にそういう国々から、既存の債務の返済時期の繰り延べ、条件の緩和等につきまして累次交渉がございまして、ものによりまして逐次改定をいたしておりますことも御案内のとおりでございます。しかしそういった当面を糊塗する政策ではいけないので、いま御指摘のとおり、債務国側の経済がバランスのとれた自主経済になっていくような基盤をつくり上げることが根本的な対策に通ずると思うのでございます。  したがって、わが国の経済援助につきましても、その国の輸出力を培養するために輸出産業の育成、あるいはその国の輸入を減らすために食糧その他の自給に役立つような方向に仕向けてまいるということが基本であると考えまして、そういう方向に私どもも考えておるわけでございます。したがって、それが結局貿易収支のバランスにおきましても、そういう方向に改善のカーブが実現してまいりますように努力をしておるところでございます。  ただ、現在の段階はまだ満足すべき状態にございませんけれども、いま御指摘のような方向で、そしてまたそういう問題意識をもちましてわれわれの経済援助は進めてまいらなければならない、そういう決意でありますことを御報告申し上げたいと思います。
  168. 木村俊夫

  169. 稲富稜人

    稲富委員 私に与えられた時間は十分間でございますので、端折って簡略にお尋ねしたいと思います。  一番最初にお尋ねいたしたいことは、実はこの問題は本来なら総理か内閣官房長官に質問することが妥当ではないかと思うのでございますけれども、それがためにわざわざ官房長官にここに出ていただくということは恐縮でございますので、閣僚の一人として、しかもこの事業団の主務大臣でございます外務大臣にお尋ねするわけでございますので、そういう点でひとつ御了承の上御答弁を願いたいと思います。  最初にお尋ねいたしますことは、今回内閣法の一部を改正する法律案の中に、国務大臣の定員を一人増員するというようになっております。この提案の理由とするところは、「内外情勢の推移にかんがみ、経済協力の積極的推進を図る等のため」ということになっております。今回のこの事業団を設立する目的も、やはり「経済及び社会の発展に寄与し、国際協力の促進に資するため」となっておりまして、その目的とするところは相似ているわけでございます。  それで、その新しい国務大臣がいかなる形でこの事業団と関係されることになるのであるか。主務大臣外務大臣でございますが、そういう密接な関係をもって国務大臣の増員ができるわけでございますから、後ほどその内閣法の改正ができました後には、どういう形でこの事業団に関係されるのか、この点をひとつ承っておきたいと思うのでございます。
  170. 大平正芳

    大平国務大臣 この事業団外務大臣が主務大臣でございますけれども農林省関係の仕事につきましては農林大臣外務大臣が共管になっておりますし、通産関係の仕事につきましては通産大臣と共管、それから大蔵大臣とは協議大臣ということでございまして、今度内閣法の一部改正でお願いいたしておりまする増員を予定いたしております閣僚は、この事業団とは制度的に何ら関係がございません。いわゆる無任所大臣でございまして、その任務とするところは、経済協力行政が各省にまたがっておりまして、きわめて複雑な複合行政であるということでございまして、本来ならば総理大臣が各省大臣を駆使いたしましてこの推進をはかり、統合、調整に遺憾のないようにされる立場におられるわけでございます。  総理大臣といたしましては、自分の命令を受けて経済協力全体の仕事についての機動的な推進をはかるために閣僚を置きたいというのが趣意でございまして、この閣僚は事務局を持っておりません。したがって、外務省農林省も大蔵省も通産省も、設置法自体は何ら変更がないわけでございまして、既存の権限には何ら抵触がないわけでございまして、全く総理の命を受けて全体の経済協力の仕事の機動的な推進をやるということでございます。  したがって、外国にこの大臣が行かれて、経済協力について交渉するという場合には、外務大臣の隷下にありまして、政府の代表として、あるいは特使として任命いたしまして、外務大臣のもとで仕事をしていただくことになるわけでございまするし、外国と接触を持たれる場合におきましても、普通の他の国務大臣が現に外国においてお仕事をされる場合と同じように外務大臣の権限のもとでやっていただくようになるわけでございますので、制度的には何ら関係がないと御承知を願いたいと思います。実態的な仕事といたしましては関係がございますけれども、制度の問題としてはございません。
  171. 稲富稜人

    稲富委員 いろいろお尋ねしたいことがありますけれども、時間がありませんので、外務大臣の驥尾に付してこれが推進のために協力される無任所大臣であるだろう、こういう解釈をしまして、この問題に対する質問はこのぐらいにいたします。  次に、二、三お尋ねしますが、これは時間があとにありませんので、私、一括質問いたします。そうせぬと十分間過ぎますから……。あとまとめて大臣から御答弁を願いたいと思います。  最初にお尋ねいたしたいと思いますことは、本事業団発展途上国における農林業開発の推進にあたっては、相手国の農林業の生産を向上して、現地の農林業の振興と住民福祉の向上に寄与する、こういうことを当然第一にやらなくちゃならない。かりそめにも資源収奪等の批判を招かないような、こういうようなことを十分運営にあたってはやらなければならないということをまず考えなくちゃいけないと思うのでございます。これに対する主務大臣としての外務大臣の心がまえをひとつ承りたいと思います。それが第一点。  第二点におきましては、今度はこれが開発途上国におけるそういう農林業の開発を行なわれまして、これがかりそめにもわが国の国内の農林業に悪影響を及ぼさないような万全の配慮というものがなされなければいけない。  なぜこういうことを私が申し上げるかというと、すでに御承知のとおり、日本の農政が今日まで非常に後退したということは、やはり農業の国際分業論に支配されて日本農業は後退をいたしております。でありますがゆえに、かりそめにも今度の問題が形の変わった農業の国際分業論等になってはいかないと思いますので、このことにつきましては、先日農林大臣にも強く私は要望いたしておりまして、これは主務大臣としての外務大臣の御答弁も得たいということをそのときも申し上げておったのでありますが、かりそめにも日本の国内農業に悪影響を及ぼさないような、こういうような運営というものを考えていただかなければいけないのじゃないか、かように考えますので、これに対する主務大臣としての心がまえを承りたいというのが、第二点でございます。  第三点の問題は、この際過去における輸出の振興、海外企業進出の助長に偏していたこと等にかんがみ、今後の協力については特に開発途上地域の経済社会の均衡のとれた発展に寄与する、こういう意味から、あるいは医療の問題、あるいは教育等の問題、こういう問題に対しても大いに留意をしていくべきではないか、かように考えるわけでございますので、これに対する主務大臣としての心がまえを承りたいと思います。  その次にお尋ねしたいことは、開発途上国の農林業発展協力するためには、技術指導その他において必要な人材の確保をはからなければならないことは申すまでもございません。それがための専門家の養成あるいは研修及び待遇等に対していかなる具体的な構想を持っておられるのであるか、この点を承りたいと思います。  さらに最後にお尋ねいたしたいと思いますことは、開発途上国に対する協力をする上におきましては、あるいは金の貸し付けとかそういう問題がありますので、その地方におきまする実情調査というものが必要であると思うのであります。ややもしまするとわが国は今日までそういうような調査機関というものが非常に弱体でございまして、昨年度におきましては油もそうでございますが、飼料の輸入あるいは大豆の輸入、こういう問題に対して、ややもしますと商社に先取りをされるということは、政府としては調査機関を十分に持たない商社が調査機関を持っておるということで、先取りをされるというような点もありますので、こういうものに対してはやはり各地の経済事情、産業事情、こういうものをひとつ十分調査する機関というものが必要ではないか、こう思いますので、こういうことに対してのいかなる構想を持っておられるか、この点も承っておきたいと思います。  最後の問題といたしましては、これは先刻瀬野君からも質問いたしておった問題でありますが、今回のこの事業団対象から水産業がはずされております。これはもちろん財団法人海外漁業協力財団が昨年発足しておりますので、しばらくの間それにひとつよってみようというのが考え方であるということは十分承っておりますけれども、やはりわれわれが今後開発すべき水産業使命というものは非常に大きいのでございますから、この問題に対してはやはりこの事業団の一翼にこれを入れて、そうして推進することが必要であると思いますので一これは先刻大臣からも御答弁があっておりましたけれども、重ねて私からも希望を申し上げまして、ひとつ大臣の所見を承りたいと思います。  これが私の質問の全体であります。御答弁をお願いします。
  172. 大平正芳

    大平国務大臣 第一の協力対象国の農業開発につきまして、対象国側の自主性、主権の尊重、自主的な計画を尊重してまいるべきであるというお考え、全くそのとおりでございまして、われわれといたしましてもそういう基本的な理念を踏みはずすことなく対処してまいりたいと考えております。  それから第二の、国内農業との関連でございますが、これは農林大臣農林省が十分お考えおき願っておることと思うのでございまして、私ども外務省の立場といたしましては、国際協力の立場からいつも農林省にかたきことをお願いするわけでございますけれども農林省は国内農業との関連におきまして終始外務省との間には見解が違っておることが多いわけでございますが、今回の事業団の創立にあたりましては、そのかたくなとも言える農林省が御協力をいただいておるわけでございまして、私は農林省で万々支障なく国内農業との間の調整はとっていただいておることと思いますし、農林省のお考えを私ども十分尊重してかからなければならぬと思っております。  第三の、社会開発、医療とか教育に力点をもっと置かなければいかぬじゃないかという御指摘でございまして、これは間々、本委員会を通じましても政府が申し上げておるところでございまして、従来工業化に力点を置き過ぎたきらいもありまするし、それがいろいろな波紋を呼び、批判を招いておりますことも、われわれもよく承知いたしているわけでございまして、私どもといたしましてはいま御指摘の医療、教育等の社会開発面に漸次政府援助の力点を移していくように努力をしたいということを申し上げておるわけでございまして、そういうラインで今後推進してまいりたいと思っております。  技術指導にあたりましての専門家の養成につきましては、この事業団一つの大きな任務でございます。この具体的な方法はどうかという御質問でございまして、これはあとから政府委員から答弁させます。  それから、世界における食糧その他の情報あるいは事実についてのくまない掌握をしておかなければならぬ意味で、調査機関というようなものをつくるべきじゃないかという御意見は、よく私も理解できるところでございます。事実世界におきましてほんとうの意味におきまして行き届いた、生きた情報を持っておるのは、世界を通じて商社でございます。アメリカの食糧会社の持っておる情報なんというのは、政府のレベルを越えたものを持っておるようで、私も敬意を表しておるわけでございますけれども政府といたしましても、そういうセカンドハンドなものでいいというわけのものでもございませんので、いま稻富さんの示唆による調査機関をどうするかというような点につきましては、いま具体的に私は構想を持っておりませんけれども、少なくとも調査機能というものを充実させて的確な情報を掌握していって政策の指針にしてまいるということにつきましては、今後努力をしていきたいと思っております。  それから最後の漁業協力についての問題につきましては あなたがお述べになったとおりの方針でございまして、今後農林省との間におきまして、ことしできました財団と今度の事業団との関連をどうしてまいるかということにつきましては、水産業が非常にこれから大きな分野を占めるに違いないことが展望されますだけに、十分協議を遂げて、御期待にこたえなければならぬと考えております。
  173. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 大臣がお答え申し上げました中で、技術者、専門家の養成及び確保という点の具体的方法について若干補足的に御説明申し上げますが、この点につきましては、従来とも日本の専門家は、たとえば語学の点であるとか、それから日本の国内におけるいろいろな制度上の問題とかございまして、そういう点でなかなか確保に困難であったわけでございますので、特にこの法案の作成にあたりましては、第二十一条五号に掲げましたように、人員の養成、確保という点を明記いたした次第でございますが、具体的にはなるべく専門家をこの事業団にとどめておくようにできれば一番いいわけでございますので、任期が終わって帰ってまいりました専門家は、これを事業団の中にプールを設ける、その中から再びまた別の国に派遣する、あるいは同じ国に派遣するとかいうようにして、だんだんそういう語学力のついた人を活用していきたいとか、あるいはまたわが国協力しておりますプロジェクトの中で、ある期間は研修期間というようなものも認めて、修業のかたわら技術協力をやるというような形も考えたり、第三国に少し期間をおいて派遣して、そこで語学の勉強なども専門的知識のほかに加えるとか、そういったような方法をとりあえずは考えておりますが、今後もますますこの点については留意して拡充をはかっていきたいと考えておる次第でございます。
  174. 稲富稜人

    稲富委員 時間が参りましたので、これで終わります。
  175. 木村俊夫

  176. 土井たか子

    ○土井委員 まず質問に入る前に、午前中、当法案の第一条にいう「開発途上地域等」の中身につ  いてひとつ外務省見解をお示しいただきたいということでございましたが、これをまずお伺いしたいと思います。
  177. 大平正芳

    大平国務大臣 本事業団対象地域の主体は開発途上地域であり、これ以外の地域対象とする場合には主務大臣が何らかの形で事業団にこれを指示することとし、御懸念のように対象地域が無制限に広がることのないよう、十分監督、指導することといたしたいと思います。  なお、その指示の対象となる地域は、事業団法第一条にあるとおり、わが国が社会の開発並びに農林業及び鉱工業の開発協力する見地から選ばれるのでありまして、開発に必要な資金、技術が不足しており、わが国に対してこれらの面での協力を期待しておる地域になるものと考えます。
  178. 土井たか子

    ○土井委員 万々そういうことはあってはならないと思うのでありますが、いま大平外務大臣からお示しいただいたとおりで、この「開発途上地域等」というところの中身は、農林業及び鉱工業の開発協力する見地から考えなければならない対象地だということであります。そういたしますと、これは農林業については農林大臣、それから鉱工業については通産大臣との共管事項になるわけでありますね。  そこで、外務大臣と農林大臣あるいは通産大臣との間でこの地域に対しての認識が異にされているというふうな場合には、いかがなりますか。
  179. 大平正芳

    大平国務大臣 内閣は一体でございますので、十分協議いたしまして一つの見解をまとめなければなりませんし、またまとめ得るものと私は確信いたしております。
  180. 土井たか子

    ○土井委員 そういたしますと、これは午前中局長の御答弁で開発途上地域というのは一応OECDのDACのリストによるというふうなお考えをお示しいただいたわけでありますから、そのリストからはみ出ている、この「等」という地域に属するものに対しては、なぜこの節特にこの農林業及び鉱工業の開発協力する必要がある地域であるかという理由が明確でなければならないということだろうと思うのです、いまの御答弁からしても。  そこで、これはもういうまでもないことですけれども、内閣は行政権の行使について国会に対しまして連帯してその責任を負われるということでございますから、したがいましてそうそう私はたくさんの数はこの「等」というふうな場合についてはなかろうと思うのです、この事業団のこの事業内容について申しますと。したがいまして、これを国会のこの外務委員会の場所に外務大臣を通じてお示しいただくということ、これはここではっきり確認をさせていただいてようございますか。
  181. 大平正芳

    大平国務大臣 土井先生指摘の、「等」という点は、私ども非常に制限的に考えておりまして、そういうケースはあまり多くないと思いますけれども、私どもが特にこれは認める必要があるのではないかという場合におきましては、御要望に沿いたいと考えております。
  182. 土井たか子

    ○土井委員 そのことはひとつはっきりさせておいていただいて、さて、私、少しまだ気にかかるし、よくわからない点がございます。それは、この法案からいたしますと、第九条の役員の職務及び権限の中に「総裁は、事業団を代表し、その業務を総理する。」とございます。ところが、三十八条という条文を見てまいりますと、「事業団は、主務大臣が監督する。」とございます。この「監督」ということと「総理」ということは一体どういうふうな関係があるのか。  憲法の七十二条という個所を見ますと、内閣総理大臣についての職務内容、職権内容が明示されているわけでありますが、その七十二条の条文に従って申し上げれば「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を國會に提出し、一般國務及び外交關係について」「行政各部を指揮監督する。」とございます。内閣総理大臣というのは名の示すとおり内閣について総理をする、内閣業務について総理をするということなんでございますね。この総理をするということと、この七十二条の条文が明示するごとく「行政各部を指揮監督する。」の「監督する。」ということは、これはオーバーラップしているのです。したがって、「総理」ということと「監督」ということは、この事業団の場合にはどういうふうに認識されているのか。つまり総裁の権限にきめられている中身と、それから主務大臣が監督されるという中身とどういう関係にあるのか、ひとつその点をはっきり御答弁いただきたいのです。
  183. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 なかなかむずかしい御質問でございますが、まず第九条は事業団の役員を定めた規定の一部分でございますので、したがいまして、その総裁の仕事がどんなものであるかということを示すために掲げた規定で、つまり事業団の内部における総裁の職務を定めたもの、御指摘の終わりのほうの監督のところにございますのは、今度は事業団の監督官庁というのは主務大臣なんであるという、その事業団を今度は外から監督するものを書いてあるという関係でございまして、このいま御指摘の総理というのと監督というものの関係のようにオーバーラップしているものではなくて、主務大臣が上にあって事業団を監督される、その監督のもとに総裁があって、自分事業団の中の仕事全体をつかさどる、こういうような趣旨に御解釈願えればいいのではないかと思います。
  184. 土井たか子

    ○土井委員 どうもやはり条文というものはその点誤解がないように、また一目りょう然、読んで明確にすぐ理解できるようなものであってほしいといつも思うわけですが、私はそうそうこれをひん曲げて解釈しているわけでもなかろうと思いますけれども、どうも一般的にこの法文の概念からすると「総理」ということと「監督」ということの区別というのはそう明確じゃないのです。  したがいまして、いまの組織構成からすると、上下関係がこういうことになる、命令系統がこういうことになる、人事関係がこういうことになるということでわかるわけでありますが、しかしどうも表現からしてもう一つ、いまおっしゃったような点も明確にできるような法文上の表現がなかったかなというふうに私は考えながら、この第九条なりあるいは第三十八条なりを読んでおりました。少しその辺はもうちょっと吟味されてもよかったのじゃないかと思うのです。  さて、この経済協力の問題について先ほど来何度か論議をされているわけでありますが、担当国務大臣の創設について少し違った観点で私は伺ってみたいと思うのです。関係はないと大臣はおっしゃる。局長もおっしゃる。いままで終始一貫そういう説明が繰り返されているようでありますが、ここにございますのは御巫局長の論文でございまして、「経済協力の理念と日本の立場」という表題がついております。ここの中に「経済協力担当国務大臣の創設」という項がございます。これはお書きになった御当人が局長でいらっしゃいますから、この中身についてはだれよりもよく御存じであるはずでありますが、ここの中には、やはり経済協力の担当国務大臣を創設するということに対して、外交の二元化を招くものとも場合によったらなりかねない部面があるので、非常にこの問題についてはナーバスにこういうふうに考えていくべきであるというふうな中身がずっと示されておるわけでございますね。  それを見てまいりますと、内閣法のたてまえによると、国務大臣はすべて平等であるというふうにされておるわけでありますから、この国務大臣外務大臣のもとに立つものじゃない。したがって、外務大臣と今回考えられております経済協力担当国務大臣とは同等なのだ。そういうことからすると「内閣総理大臣の明確な指示をうけて、たとえば、ある特定の大型の経済協力計画を推進するとの役割を与えることができる。」こういうふうにここには書いてあるわけです。  そこで、無関係だ、関係ないとおっしゃいますが、今回のこの事業団のプロジェクトと、いまここで局長自身が明示されております内閣総理大臣の指示を受けて、ある特定の大型の経済協力計画を推進する役割りを果たさなければならないその中身とが重なる場合があると思うのですよ。部分的に重なる場合、十分にこれは事実に即応して考えていって、出てくる可能性はあると思います。インドネシアについてある特定の大型プロジェクトをやる、そういうときにこの経済協力担当国務大臣がやはりその一部にかんで、内閣総理大臣から特命を受けて、これに対してこの計画を推進するという役割りを果たされる。そうなってきますと、これは事実関係からして決して無関係とは言い切れない部面が出てくるのですね。  もうすでに、これは言うまでもないことでございますけれども、内閣総理大臣のことしの一月二十一日の施政方針の演説の中にも「国際協力推進のために国務大臣を新たに設けるほか、国際協力事業団を設立し、」云々というふうな表現での演説をなすっておりますし、それからまた大平外務大臣についても同様に「無任所国務大臣を新たに設けるほか、国際協力事業団を設立し、民間の協力を得て、」云々というふうな表現で演説をなさっておるわけでございますから、この辺やっぱり少しプロジェクトの中身でかむ問題が出てきたときに一体どういうふうにその問題を処理されるのかということが気にかかるのです。  今回のこの法案を読んでみましても、この無任所国務大臣というのか経済協力担当国務大臣というのかそれは知りませんけれども、その大臣役割りなりその大臣との関係なりは一向に出てこない。どういうことになるのでしょう、事実問題について考えていった場合。
  185. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 土井先生に私のつたない論文をそれほどまで詳細にお読みいただいて、はなはだ恐縮に存じますが、私がその論文に書きましたことは、別にこの事業団にも触れておるわけでございますが、要rるに事業団そのものは外務大臣がほとんど全体的に御監督になり、農林業については農林大臣及び外務大臣、鉱工業については通商産業大臣及び外務大臣が共管大臣として監督されるということで、そういう法文の構成の上からは無関係であるということをかねがねこの委員会その他の機会に御答弁申し上げてきましたところでございます。  いま土井先生お読みになりましたように、この経済協力などを推進する役目というような形で新たにこの無任所国務大臣がおできになりました場合には、この無任所国務大臣は内閣総理大臣の明確な御指示をお受けになった場合には、先ほど大臣が御答弁になりましたように、この大型のプロジェクトとかそういうものの促進をなさるわけで、その促進をなさる場合には、既存のあらゆる機関、団体をその一つのいわば手足といいますか道具と申しますか、というような形でお使いにならなければいけないことになるわけで、たとえば、ここでは民間資本を使わなければいけないとか、ここでは政府借款を出さなければいけないとか、ここではこの国際協力事業団の仕事をやってもらわなければいけないとか、そういう御判断をなさった場合に、そういうそれぞれの機関がそれぞれの任務に応じて総合的にその大臣の仕事のお役に立つというようなことがございます。いわば間接的な関係というようなものがそこで生じてくるというのはこれまた当然であろう。  そういった趣旨を、ちょっと紙の制限もございましたので少し筆が足りなかったかもしれませんが、書きあらわそうとしたのがその論文でございます。
  186. 土井たか子

    ○土井委員 どうもそれにしても、この事実問題、まあ起こってみなければわからないといえばそれまでかもしれませんけれども、それぞれの主管大臣が、特に共管事項についていろいろなプロジェクトにかんでなさるということで、さらにこの特別の経済協力担当主務大臣の手がけられる計画の中身も重なるという部面がおそらく出てこようと思いますから、その辺の調整というのはまことにむずかしいことに事実関係からするとなるのじゃなかろうかというふうに私は思うわけです。  そこで、ちょっとお伺いしたいのですが、外国の例を見ますと、海外の開発問題については、特に特設した機関によるというふうな場合もないことはありませんけれども、おおよその国についていうと、まあドイツなんかは独立機関を持っておりますが、フランスであるとか、それからイギリスであるとか、カナダであるとか、スウェーデン等々、外務省の外局がこれを取り扱うということになっておりますね。いま、こういう事業団方式でお考えになっていらっしゃる中身というのは、これはおそらくこのままではいかないので、ある構想があって必然的にその中にやがて、経済協力担当国務大臣を創設されても、その大臣自身の役割りを別口に考えられるという構想があるのじゃなかろうかとも私は考えていたのです。そういうふうなことは将来構想としていま全然考えてはいらっしゃらないのですか。  たとえば、いまから十年も前の話になりますけれども昭和三十九年の九月二十九日に臨時行政調査会の経済協力行政に関する答申が出ておりますね。あの中には、対外経済協力について、現在ある経企庁の経済協力課というものは廃止して、中身を一元化すべきだということで、今回この事業団の業務の中でずいぶん重きを置いている業務内容が外務省に対する新たな任務だということで、一元化を非常に認識して書かれている。答申の中にはそういう向きがあるわけです。  そういう点から申しますと、今回この事業団の中身というのは、一元化ということをいわれながら、しかしながら、先ほどから申し上げますように、事実関係においてはなかなか調整がむずかしいという部面が出てくるのじゃないか。そこで外国の例なんかをひもといてみますと、先ほど申し上げるとおり、外務省の外局としてそういうことを独立して、まあ独立してということは少し語弊があるかもしれませんけれども、専門に手がけるそういう機関を置くというふうなことがあるいは考えられているのかもしれないというふうにも思ったわけですが、この点はどういうふうにお考えでいらっしゃいますか。
  187. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう考え方はございません。
  188. 土井たか子

    ○土井委員 それでは今回のこういうふうな事業団のあり方については、昭和三十九年当時にございました臨時行政調査会の経済協力行政に関する答申なんかについては、具体的に中に組み入れられていないというふうに考えてようございますね。  それで、まだまだ問題点が多いのですけれども、あと一問だけ、特に文化庁、それから日本ユネスコから御出席をいただいているわけでございますからお伺いしたいと思うのですが、それは、特に今回の国際協力事業団というのは、国際経済協力事業団じゃないのですね。あくまで国際協力事業団なんですね。そういう点からしますと、やはり中身は、いままでのところ経済援助政策によって行なってきたことが、どうも政府の借款や民間資金というものを投入してずいぶん日本商品というものを東南アジアの市場なんかを中心にはんらんさせた、それに対してたいへんな批判がある、こういうふうな批判から、この反省ということで、今回のこういう事業団の中身にはその反省も生かされておると思うのですよ。  そういう点から考えますと、日本の援助とは、かの地における資源を使って日本みずからの繁栄のみを求めるための道具だというふうな批判が再びこういう事業の中身から出てこないように、心して行なわなければならない問題だと思うのです。こちらがいろいろ経済協力というふうなこと、あるいはいろいろな国際協力ということを行なおうとする場合についても、この受け入れ側がそれだけの体制を持っていなければこれは無理じいになるわけでありますし、あるいは強い批判というもの、あるいは反日感情というものを巻き起こさないという保証はどこにもございません。そういう点から考えますと、文化的な側面、特に教育面なんというものは私は非常に大事な問題だと思うのです。  いま、この事業団の業務の中で、二十一条一項三号にいうところの「開発途上地域における住民の福祉向上のための文化、交通、通信、衛生、生活環境等に係る施設整備事業」というのがございます。こういうふうな面を考えていった場合にも、私、思いますことは、すでに三月二十二日に一度私はこれに関連した質問をいたしておりますけれども、どうも日本の外国に行く留学生が日本から出国する場合どっちの方向を向いて行くかというと、圧倒的に多いのは欧米なんですね。これは全体の八四%も占めているわけです。アジアであるとか東南アジア地方へはわずかに一一%しか出向いていない。それから受け入れるのは、アジア地域から六〇%も来ますが、欧米がらはわずか三六%しか来ないという、この留学生の出入国数においてのアンバランス、こういうふうな問題を一体これからどういうふうに考えられていくかということは、私はやはり、今回のこの事業団事業の中身として考えていらっしゃる文化、交通、通信、衛生、生活環境等に係る施設整備事業を進められる場合にも重要な関連性を持つ問題だと思うのです。  そこで、こういうアンバランスの状態であるこの留学生の出入国数の問題をめぐって、ひとつ文化庁のほうから、あるべき姿というものはこういうものだということを、お考えがおありになるならばお示しをいただきたいと思うのです。
  189. 角井宏

    ○角井説明員 お答え申し上げます。御指摘のように、国際協力につきましては、その基盤をなすところの国民各位の協力の意識、それからもっと具体的には、国内への受け入れ体制の整備というのがたいへんな課題でございます。その点につきまして、わが国の体制というのは、これまで海外の先進国に学ぶことに非常に急でございましてこういった国際協力自体につきましては必ずしも国内体制が伴っていなかったという批判もあるわけでございます。  その点につきまして、すでに国際協力、国際理解あるいは国際協調というような点につきましては、学校の教育につきましても、最近、学習指導要領の改正によりまして大幅に取り入れるようにいたしておりまするし、それから留学生の受け入れあるいは海外からの研修生の受け入れ等につきましても、その処遇の改善等に非常に努力をしなければならぬという意識が非常に高まっておりまして、具体的にこれに取り組んでいるところでございます。  なお、文部省といたしましては大所高所から一つ方針を打ち立てる必要があるのではないかという観点で、これは私の記憶に間違いがなければ三年前でございますが、中央教育審議会に「教育・学術・文化における国際交流について」、これの改善についてという諮問を文部大臣からされまして、現在その審議が継続中でございます。ほどなくその結論が出ると思いますので、その線を尊重しながら、文部省といたしましては国内体制の整備をはかりたい。国際交流の拡充をはかるということが、とりもなおさずこの国際協力の線にもつながっていくというふうに考えております。
  190. 土井たか子

    ○土井委員 これはやはり、この事業団の主管大臣というのは外務大臣でございますから、こういういろいろな事業計画あるいは事業の促進、運営というふうな問題については人間がやはり中心なんですね。したがいまして、この教育問題なんかについても、日本の国から外に出ていく留学生が一体どういうふうなつもりで国外で学ぼうとしているか、学んできた結果をどういうふうに生かすことが最も好ましいかというふうな問題、さらに逆に、日本が留学生を受け入れる体制が一体いまのままでいいのかどうか、特に東南アジアから日本に留学をしてくる留学生あるいは韓国から日本に留学してくる留学生、中国から日本に留学してくる留学生等々なんかの受け入れ体制なんかについても、決していまのままでいいはずはないということをこの前の委員会でも私は大臣に申し上げたとおりであります。  したがいまして、こういうことに対してはやはり基本的に十分御留意をいただいておかないと、私は、この事業団というものがせっかくこういうふうに目的についてはなかなか内容豊かにうまく書いてありますけれども、その御趣旨どおりにはおそらく進まないだろうというふうに考えるわけです。こういう点での御配慮は、大臣、一体どういうふうにお払いになりますか。
  191. 大平正芳

    大平国務大臣 留学生は、私費留学生の場合、それから国費で受け入れる場合とございまして、国費の場合におきましては、欧米諸国に劣らないだけの一応の予算的な配慮はいたしておるつもりでございます。しかし、それでもなおいろいろ不満もございまするし、不備もあるようでございますので、なお一そうの充実をはかってまいりたいと思います。  それから私費留学生につきましては、いろいろ居住その他におきまして民間の協力を得まして、わが国への留学によってスイートな思い出を持ってお帰りいただかなければならぬという意味におきまして、外務省といたしましてもできるだけの配慮をいたして御期待に沿わなければならぬと考えております。
  192. 土井たか子

    ○土井委員 それについても種々論議のあるところでありますけれども日本ユネスコ国委員会の事務局の方がここに御出席されているはずでありますから、一つお伺いしたいことがあるのです。  それは今回、アジア開発基盤になる初等教育を、バンコクのユネスコ地方事務所にセンターを設けて、そして事業領域というものを設定して事業計画をスタートさせるという構想が発表されております。これはたいへん大事なことであるように私は思いますけれども、ユネスコが出していらっしゃる昨年の十二月五日付のユネスコ新聞を見ますと、「条約批准状況に見る人権問題への関心度」という記事があるのです。そこの部分を見てみますと、教育上の差別待遇反対に関する条約というのがございますが、これは六十一カ国がすでに批准済みであるのに、日本はいまだにこれ一つすら批准していないという表現で記載されているのです。  ユネスコとされましては、この問題についてどういうふうにお考えでいらっしゃいますか。
  193. 笹岡太一

    ○笹岡説明員 最初に、御指摘のアジアのセンターの点でございますが、これは先生御案内だと思いますけれども、国際機関であるユネスコが、アジアの教育の量と質を短時間に発展するようにという趣旨で、バンコクに開発のための教育刷新センターというものをつくったわけでございます。それによって各国、アジアみんながよくなるようにということで、日本もこれに協力するということで、教育工学の分野でもって日本はこれに協力しようということで拠出金を出しましたり、あるいは国内予算を取っていろいろな研修を催す等の事業協力しているわけでございまして、御指摘のとおりアジアの教育発展の非常に重要な点について、日本もできるだけの協力をいたしたいということで、現在これに臨んでいるわけでございます。  それからもう一つの、条約の点でございますが、教育その他文化等の関連の国際的な条約、勧告等につきまして、いわゆるユネスコ本部と申しますか、国際機関であるユネスコがそういうものを出してございますが、その種のものにつきまして、わが国は国内への諸般の関係、諸般のところと十分協議しながらこれの加入というものを逐次始めているわけでございます。まだ十分全部の条約に入るという関係までいってございませんけれども、現在入ってないものの一つとして御指摘のような点があったわけでございまして、これはもちろん文部省のユネスコ委員会だけの問題ではございませんで、それぞれ関係のところと検討を重ねながら、おりを見てその方向に進んでいくという方針になっておるわけでございます。
  194. 土井たか子

    ○土井委員 それは検討を重ねながらおりを見てとおっしゃるのは、まことに事実ごもっともな御答弁でありますけれども、いつ聞いてもそういう御答弁が返ってくるのです。慎重に検討とか、それはおりを見て検討した上でひとつ考えてみますというふうな御答弁は、それはまことにごもっともなように聞こえますが、いつまでもその御答弁が続くというのは、これはいつかきちんとそれについてはケリをつけていただかなければならない中身だと私は思う。  特に今回の事業団というふうな問題についても、これを設置した目的に照らしてよりよく運営していこうということになりますと、先ほどから申し上げているとおり、教育の問題なんというのは非常に基盤的に大きな問題であり、重要な問題でございますから、そういう点から考えまして、これを機会に、外務大臣、この教育上の差別待遇反対に関する条約等々、やはりすでに批准をしていて当然である中身を持っているこの条約についても、これは世界で六十一カ国がすでに批准しているわけでありますから、日本がまだ批准をしていないこういう条約についてひとつ吟味をしていただいて、いまこの協力事業団法を問題にしているとき、これは絶好のチャンスでありますから、ひとつこれを機会により一そうこういう問題に対しても具体的に結実するように考えていただきたいと思うのですが、そのお考えをお伺いして、私はもう質問を終わりたいと思います。
  195. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国条約の批准につきましては、先生承知のように、まず条約を批准いたしまして国内法の整備をやるというようなことでなくて、国内法の整備を実行いたしまして、実体ができ上がって初めて条約の批准をお願いするという非常に手がたい方法をとっておるわけでございまして、非常に良心的な方法をとっておるわけでございます。したがって、この問題につきましても政府が無関心であるわけじゃないのでございまして、仰せのように十分検討をいたしまして、国際的義務を間然するところなく果たし得るということになりますならば国会に御批准をお願いするということになろうと思うのでございまして、せっかくの示唆でございまして、政府において鋭意検討をしてまいりたいと思います。
  196. 木村俊夫

    木村委員長 渡部一郎君。
  197. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 国際協力事業団法案につきましてお伺いするわけでありますが、いままでのところで多少お話の残っている点がありますので、お伺いするわけであります。  まず、わが国の農業の進め方について、外務省農林省では進め方が違うようなニュアンスをこれまでの御審議で受け、私は両者の意見を調整されることを求めたわけであります。すなわち、開発輸入に全力を置き、わが国としては自給度を高めないという方針なのか、またわが国は自給度を大いに高めて開発輸入に重点を置かず、それは補完的なものとするというのか、私の例示したのはこの例でありますが、要するに外務省農林省との間の農業問題に対する理解がきわめて違っておる。それは現場で、こうした協力事業団法ができ上がれば、この事業団の人々はそういう両省の意向の食い違いからたちまち仕事の上で大きなマイナスを生ずるということは明らかではないかと私は指摘をしたわけであります。  これに対して、外務省農林省からそれに対して統一的な見解をまとめる旨意思表示があり、そしてそのペーパーが配られたわけでありますが、ここで両者の統一された見解を御披瀝を願いたい、こう思っておるわけであります。
  198. 小宅庸夫

    ○小宅説明員 お答えいたします。  先ごろこの委員会で渡部先生からの御質問がございまして、それに基づいてその後外務省農林省の事務当局で世界の食糧需給の見通しというものにつきまして検討した結果を資料としてお配りいたしました。この中でいろいろと書いておいたわけでございますけれども、一昨年来の需給の逼迫の状況というものは、本年度におけるアメリカ、カナダ、その他、主要農産物における生産の拡大等もありまして、需給の逼迫状況は方向としては緩和の方向にある。しかしながら、依然として開発途上国における食糧に対する需要の増大の見通しもございますし、また急速度に減少いたしました先進国その他における在庫の復元、そういう需要等もございますので、今後とも引き続き食糧に対する需要はかなり逼迫するのではないかということでございます。  しかしながら、アメリカ、カナダ、その他主要生産国におきましては、今後ともいろいろ方策を尽くしまして生産拡大を考えていることでもあり、一九八〇年ごろまでを一応考えますれば、よほど不測の事態が起こらない限りは供給不足という不安は起こらないだろうというのが大体農林省外務省で一致した見通しでございます。しかしもちろんこれはあくまでも見通しの問題でありまして、今後とも鋭意日本が必要とする食糧の確保ということを海外において、はかっていかなければならない、こういう基本的なスタンスにおきましては、農林省外務省でそれほど基本的な相違があるわけではございません。  しかし、ともいたしますと外務省としては国際協力を通じて相手国から供給を確保するという点にウエートがかかるのに対しまして、農林省の側は、国内の生産というものを頭に置きながら必要な需要をまかなっていくということでございますから、ある程度のそういった違いが出てくるのは当然でございますけれども、方向において、国際協力を通じてわが国が必要とする農産物の供給確保をはかっていくということにおいては相違がないと思います。
  199. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 農林省側はどうお考えですか。
  200. 岡安誠

    ○岡安政府委員 世界的な食糧の需給の見通し等につきましては、ただいま外務省から御答弁がありましたのが外務省農林省と相談いたしましたところでございます。  これをもう一回繰り返しますと、少なくとも八〇年代ぐらいまでは非常な食糧の逼迫という状態はないと思いますけれども、需給の量並びに価格の面におきましては、やはり不安定な形で推移せざるを得ないというふうに考えておりますので、農林省としましてはそういう見通しに立ちまして、国民の基礎的な生活物資でございます食糧につきましては、国内生産の可能なものはできるだけ国内でまかなうということがまず第一でございまして、安易に外国に依存すべきではないというふうに考えております。  ただ、土地資源の制約等もございますので、今後さらに増大いたします需要に対処いたしまして、国内生産を拡大することには限界があると思われます飼料穀物とか大豆、木材等の物資につきましては、どうしても外国に依存せざるを得ないと考えておりますので、国際協力の立場に立ちまして海外における農林業の開発を促進いたしまして、輸入源の拡大と多角化をはかる必要があるものと考えておる次第でございます。
  201. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 きょうは両者の御意見がようやく合ったようでありますから、今後におかれましても、この国際協力と国内自給のどちらを重点にして農産物の必要な供給を確保するか、この命題については両者の御協調をお願いしたい、こう思っておるわけであります。今後は両者の比重の置き方、対応のしかたというよりも、それは担当分野の違いが政策の違いになるべきではないのであって、両者はこの部門を担当するというのはわかりますが、その担当分野の違いが意見の食い違いになり、そしてわが国の農業政策を混乱させることは、石油問題に数倍する大ショックを与える可能性がある。私は、外務省におかれては農業問題についてより深い御関心をいただく、特に需給問題についてはより深い関心をいただくと同時に、農林省とよく御協調の上この問題に対し対処していただきたい、少なくとも昨年末起こったようなオイルショックのような事態は招かないような御配慮をお願いしたい、こう思うのですが、大臣いかがでしょうか。
  202. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおり心得て対処したいと思います。
  203. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 こまかい点を二、三あと伺うわけでありますが、国際協力事業団に対して権利、権限の承継の問題につき伺うわけであります。  これは海外技術協力事業団及び海外移住事業団の一切の権利、義務というものは新事業団に承継され、旧事業団は解散される、こう明示されております。財団法人海外貿易開発協会に関しましては、申し出があった場合、しかもその一部の権利、義務を承継することができるとした理由は何であったのか、その辺をお伺いしたいと存じます。
  204. 森山信吾

    森山説明員 財団法人海外貿易開発協会につきましては、ただいま先生指摘のとおり、申し出があった場合は権利を承継するということになっておりますが、これは財団法人でございますので、いわゆるOTCAや移住事業団と違いまして国の機関ではございませんので、一応申し出制をとるということになっております。その一部ということになっておりますが、現在私どもが考えておりますのは、海外貿易開発協会でやっております業務のうちいわゆる合理化資金インフラストラクチュアに対する融資事業をこの国際協力事業団に移したいということでございまして、これは法案の第二十一条第一項第三号のイ号業務開発途上地域におきます「開発事業に付随して必要となる関連施設であって周辺の地域開発に資するものの整備」、これに該当するものを現在海外貿易開発協会でやっておりますので、その業務を移すということでその一部という表現を使わせていただいたわけでございます。
  205. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、この財団法人海外貿易開発協会はその後も残存し業務を続ける、こういうことになるわけですね。その場合、実際の仕事の上からいって国際協力事業団と密接な関係を残った部分も持たなければならないだろうと私は思うわけであります。そうすると、なぜこれを無理やり残さなければいけないのか、その辺はなはだ不明なのでありますが、いかがでありますか。
  206. 森山信吾

    森山説明員 財団法人海外貿易開発協会に引き続き残ります業務は、大きく分けまして二つございます。開発輸入資金の融資とそれから中小企業が海外に出て行きます場合の投資の金を貸す、この二つの業務でございまして、私どもが判断いたしましたのは、最初に申し上げました開発輸入資金につきましては、従来、海外貿易開発協会でやっておりましたのをこの国際協力事業団に移しますと、あたかも国際協力事業団開発輸入を正面的に取り扱う、こういうことになっては相手国に与える影響がはなはだ芳しくないのではないかということで海外貿易開発協会に残したわけでございます。  それから、中小企業の海外投資に対します融資につきましては、これはいわゆる中小企業政策の一環といたしまして考えることが必要ではないかということでございまして、つまり日本国内の中小企業対策というものと相当パラレルに政策が進められるべきではなかろうか、こういう判断がございましたので、引き続き財団法人に残して業務を行なってまいりたい、こういうふうに考えたわけでございます。
  207. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 開発輸入に対してそれだけ気を配られるなら、農業問題に関しては、まず第一に当該地における農業の振興につとめる、そしてそのあと開発輸入ができたらいい、むしろ開発輸入の分に非常に比重を置いた御説明農林省から行なわれておることは事実であります。先回の委員会においても私は何回も指摘をしました。こちらの分は開発輸入の分を削ってということは、開発輸入の分についてはむしろ海外貿易開発協会開発輸入部隊であるとして明確にその立場を位置づけ、そして海外経済侵略の部隊としてそれを温存し、その本部とするというふうに逆に見るわけであります。  そうして、おまけに中小企業の投資資金に関してと第二の項目をあげられましたけれども日本でこそ中小企業でありますが、海外に行けば、かの地域から見ればこれは巨大企業であります。これについてコントロールすることなく無制限な——無制限なというと、それには御異論もありましょうが、残しておくということは、結局日本の姿勢というものは、そうした意味で網をかぶせられるべきものが網をかぶせられないで残存するという形になるのではないかと私思うのです。  私は、こうしたやり方についてはうなずけないなと思っている一人でありますが、いかがですか。
  208. 森山信吾

    森山説明員 前段の開発輸入資金の融資でございますが、これは国際協力事業団という国の組織が直接輸入資金日本法人に融資するということになりますと、あまりにもその開発輸入ということが正面に出過ぎるのではないかという問題が一つございますし、また、開発輸入資金につきましては一般的に日本輸出入銀行で処理をするという問題もございますので、この国際協力事業団に直接入れることはいかがか、こういう判断をしたわけでございます。  それから先生指摘の、この国際協力事業団においう開発いたしました農林関係の物資を必要に応じて日本に持ってくる場合あるべし、こういうことでございますが、そういう場合には当然に海外貿易開発協会開発輸入資金と十分にリンクをさせていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから、中小企業資金につきましては、これは中小企業というふうに申し上げましたけれども、あくまでこれは日本の中小企業基本法にいいますところの中小企業でございまして、製造業でございますと一億円以下というふうに限定いたしておりまして、まあ現地に行きますと大きな規模ということはあるかもしれませんが、現在私どもが実施いたしております中小企業融資は、先ほどはことばが足りませんでしたが、海外におきまして合弁企業を行なう、しかも合弁で実施いたしましたものをだんだんと日本側の出資比率を低めていく、こういうような方針をとっておりますので、現地側に御迷惑のかからないように十分配慮してやっておるつもりでございます。
  209. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この問題は、この事業団法に対するものだけでなくて国際的な協力関係について全般的に議論する際に出てくる議論であるとは思うわけでありますが、それにしても御配慮が足らなさ過ぎるのではなかろうかと思う。特に開発輸入に関しては輸出入銀行が取り扱うからというようなニュアンスでありましたけれども、この協力事業団を運営するにあたり、そうした銀行が相談のときに最初から乗り出してくることは明らかです。輸出入銀行が関与するから開発輸入の分は向こうに渡すという議論は成り立たない。ですから、私はこの点についてはあくまでもただいまの御説明ではあまり明快でないと思います。  それからもう一つ私はここで言っておきたいのですけれども、この協力事業団法の早期成立について、全国農業会議所をはじめとする構成団体でつくられている海外農林業開発協力推進協議会から農林漁業の開発協力についての要望書が出ておりまして、私、手元に持っております。この中には、農林業開発協力の展開は、一、相手国農林業の振興を促し、まず現地需要を満たし、二、さらに産み出された輸出余力がわが国の必要な農林産物の安定供給に資するという点でも大きな意義を有している旨しるされております。この要望書の内容といままでの政府の御説明とは一致いたしておるわけであります。  私は思うのですけれども、要するにわが国の援助は、開発輸入という上に築かれたものであるのか、それともほんとうに地元のためにやるのであるか、この辺がいま二つの意見のもとに進みつつある状況ではなかろうかと思います。つまり二つの心を持った協力事業団というものが前進していく。そうするとどちらに比重がかかるのだという問題点にもう一回話が戻ってくるだろうと思う。だから、いまお話のありました開発輸入の下心といいますか、開発輸入というところが実はやりたいのだ。だけれどもその開発輸入というものはやらないというたてまえでいくのだ。つまり、たてまえと本音を分解したような言い方が本委員会の審議中続いているわけであります。  また、御巫局長自身が言われているわけでありますが、開発輸入の問題について、要するに農林業の開発輸入についてはオーストラリアであるとかあるいはアメリカであるとかの農業、そうしたものについてもこの対象にする旨言われました。つまりそうしたところは援助することによって即効的に農産物というものをふところに入れることができるということを明らかに言われているわけでありますから、これは開発輸入の考え方であります。  ですからこの事業団法案の審議にあたって、開発輸入の考え方が一方に厳として存在する。むしろ下心として大いにある。その上に衣がかぶっておって、上では経済協力というやさしい顔をしよう。この二つの問題が明確でないということは、私は遺憾ではないかと思うのですね。この二つの顔があるならあるで、それに対する対策というものと考え方というものが出てこなければならない。非常に折衷的な考え方の感じがするわけでありますが、どうでしょうか、この点は。
  210. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 二つの顔ということを仰せられましたが、私どもの考えておりますのは、この法律にも明白に書いてございますように、これらの事業をやることによってその事業対象となっている地域の経済及び社会の発展に寄与して、それによって国際協力を促進する、この一つの顔が国際協力事業団ほんとうの顔であるということを御答弁申し上げるよりほかないというふうに存じ上げます。
  211. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それはあなたがいまここでたてまえをおっしゃったわけですね。局長としての公式声明はそれでいいかもしれないが、あなたのいままで審議された間にはもう地金が出ているわけですよ。開発輸入というのがちらちらどころではないわけです。だから先ほど同僚委員が「等」の字について質問しておられた。私もそれは委員会の冒頭の審議の際、むしろ開発輸入という点ならば、アメリカあるいはオーストラリアにお金を出したほうが農産品はすみやかに輸入することができるではないかと言いましたら、あなたは、そのとおりです、それはこの「等」の字に入っているのですと明確にお答えになっているではありませんか。だからあなたはあのときに地金を出したのです。それでいまは地金を一生懸命隠しているわけですね。  だから、それは結局は国際的に出てきますと、たてまえの部分と地金の本音の部分が分解して出てくる、そういうことが信用を失う言い方になってくるのじゃないかな、こう思うのです。私はあなたを責めたりしかったりしているわけじゃありません。そしていまあなたをけ落とそうと思って言っているわけでもない。あなたがそういうふうに二つの表現をなさっている、空中分解なさっているということをいま冷酷に御認識いただきたいと私は申し上げているわけです。したがって、その問題については今後運用の際にもう少しお考えいただかなければいけないのではないか、こう申し上げているわけです。
  212. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 御指摘趣旨は、あるいは私が舌足らずのためにそういうような御印象を与えたかもしれませんが、先ほど御答弁申し上げましたのが事業団ほんとう目的とするところであるということでございまして、二心はございませんとお答え申し上げるよりほかないと思います。
  213. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それ以上は責めるとお気の毒ですから私は申し上げませんけれども、明らかにこの事業団法は二枚張りですよ。  それからその次にちょっと申し上げておきますが、これは全国海外協会連合会からの要望書が私の手元にございますし、この内容は必ずしも委員会の審議のうちに出ておりませんから、これについて三項目ありますからお答えいただきたい。  それはわが国民の海外移住の向うべき基本目標とその具体化のための施策を設計するとともに、これが達成実現を図るため、次のように措置してもらいたい旨ここに述べられております。海外移住に対する基本的な考え方、これは本委員会では御説明がちょっとなかったように私は思います。ですから、これはいまから海外移住の基本的な構想その他目標について申し上げてもお話があまり出てこないかとも私は思いますが、それについて概括的な御説明をいただきたい。  それから記が三つありますが、「一、開発途上地域における住民の福祉の向上のための文化、交通、通信、衛生、生活環境等に係る施設整備事業であって、移住者の定着及び安定に寄与すると認められるものを、積極的に行なわれたいこと。」これは無数の例があるようであります。  それから「二、移住者援護のため、老人対策を確立すると共に、援助団体の助成並びに、医療施設、教育施設、融資制度等にわたり、飛躍的な整備強化を進められたいこと。」これもはなはだしくおくれているということが何回か当委員会でも、またほかの委員会でも指摘されているところであります。  「三、新国際協力事業団の業務運営にあたっては、その効率化のため、地方海外協会等に対する業務の委託を積極的に活用されたいこと。」  この提案は明らかにいい提案だろうと私は思います。これは非常に控え目には書いてありますが、この全国海外協会連合会が示されたこの提案というものは、内容として十分詰めてかからなければいけない問題ではなかったと私は思うわけです。そうでないと、海外移住関係については従来とかく大問題がたくさんあったにかかわらず、それに対して十分な対策というか答えというものがない問題の一つであり、また欠落部分の一つであると私は思っているわけです。  その意味でこれについていま基本的な海外移住の基本目標、具体化のための実際的な施策並びに三項目について申し上げたわけでありますが、これについて関係される部局から、なるべく懇切にお答えをいただきたいと思います。
  214. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 まず第一に、先ほど御質問になりました移住についての考え方につきお答えいたします。  海外移住と申しますのは、基本的には国民の個人幸福の追求の手段として海外移住が行なわれるわけでありまして、政府はこれに対して必要な援助を与えるということで従来推移してきたわけであります。ただ、その問題の中に、この国際協力事業団に海外移住事業団を吸収したという点についてちょっと触れたいと思いますが、従来移住はさっき申し上げましたような国民の幸福の追求手段ということで、いわば個人のイニシアチブを尊重してやっているわけでありまして、今回海外移住事業団が国際協力事業団に入るに際しましても、この基本的な考え方は全然変えてはおりません。  ただ、すでに移住百年になりますが、アメリカにもおりますしブラジルにもおりますし、中南米等至るところに日本人がおりまして非常に活躍しておるわけでございます。百年たってみますと、現在日系人約百四十万といわれますが、これら移住者が移住先国で多大な経済的、社会的な貢献的をしております。  たとえば、ブラジル等におきましてはコショウを現地に植えてこれを大きくしたのは日本人でございますし、あるいはジュートを大きくしたのも日本人でございますし、その他ブラジルで有名なコチア産業組合のような日系の農業協同組合をつくったのも日本人でございますし、あるいはブラジルでは連邦の大臣がすでに二人も出ておりますし、議員もおります。そういうことでいろいろその国におきまして非常な活躍をし、いわば国際協力と申しますか、そういう一面において非常に大きな役割りを果たしておるという認識がだんだんできてきたわけでありまして、そういう観点もとらえまして、移住というものは個人の幸福追求プラスそういう国際協力という二つの面があるということを認識しておるわけでございまして、そういう面をとらえて、今度の国際協力事業団の中でさらに移住を生かしていこうという考えでございます。  そこで、移住というものがそういう考え方であり、国際協力の中に移住を位置づけるということでございまして、いままでわれわれが移住者を援護するにあたりましては、その移住者個人の幸福追求ということから移住者に対する援護として認識してきたものを、今後はできる限りその移住者の属する地域地域開発との関連も考えながらやっていったらどうだろうか、こういう考えを持っておるわけであります。その業務が国際協力事業団の業務と一致すれば、これは確かに相手国の経済開発にも役に立つであろうし、同時に移住者の利益を伸ばしていくということにも役に立つのではなかろうか、こういう認識を現在持っておるわけでございます。  それが移住の考え方でございますが、先ほど海協連の要望書の中に移住者の定着、安定のためのインフラと申しますか、関連施設整備というような問題について要望があるとおっしゃいましたが、これにつきましては従来、海外移住事業団が、御承知のように移住者のために道路をつくったり学校をつくったり病院をつくったりしてやっているわけでございます。  ただ、率直に申しまして予算が十分でございません。そのためにいろいろ移住者の方から要望がある点は私たちよく存じております。今後われわれといたしましては、こういう一つの大きな事業団に入ったということと、先ほど申し上げました地域的な開発もやるというような考え方もあわせまして、やはり移住地域のそういう関連施設整備というものは強く念頭に置いて仕事をしなければいかぬ、そのように考えております。  それから、次に御指摘のありました老人対策の問題ないしは移住者に対する医療、教育の問題でございます。  最初、医療、教育の問題に触れますと、先ほど申し上げましたように 海外移住事業団が直営している移住地におきましては大体病院をつくっております。それから日本から医者を派遣しております。それから教育については、これはあくまで現地の法制に基づく教育でございますので、向こうの政府で教育をやるわけでございますけれども、やはり移住地域というのは相当へんぴなところがございますし、それからいろいろな観点から向こうの政府の金も十分でないという点もございますので、場合によりましては学校施設の援助もいたしますし、それから先生の給料の援助とか、そういうことをやっておるわけでございます。  それから老人対策でございますが、これは非常にむずかしい問題を含んでおりますことは、確かに現地ブラジルで、主としてブラジルでございますけれども、一世、二世の間に断絶があるというようなことから、かりに生活に困らないにしても、とにかく子供から離れて生活して精神的に困っている、精神的に非常に窮迫している状態にある方、あるいは経済的にも困っている方といろいろあるわけでございます。  これにつきましては現地日本人の慈善団体が三つばかりございまして、それが主として日本人の困った人たちを収容しておるわけでございます。中には職業的な補導をやっておるところもございますが、政府としましてはこの団体に対しまして保護謝金というもので、ちょっといま数字は記憶しておりませんが、年間ある程度の金を出しております。  で、さらに進みまして、こういう老人をどうすべきかという問題につきまして、ここ数年来注目を浴びておりますので、われわれといたしましては、今年度国会で御承認いただきました予算の中で老人問題の実態について調査するということをまずやっております。実態について調査した結果どういうふうにするかということについては、いま腹案はございません。  ただ、ブラジルの政府としましては、かつて日本が老人対策について何かやりそうだというようなことが新聞に出ました場合に、東京の大使館の館員が訪れまして、日本政府は何か自分でそういうことをやるつもりがあるのだろうか、実は自分の国は社会福祉については一生懸命やっているつもりだということで、政府が直接これに手を加えるということに対して非常な懸念を示しておったこともございますので、われわれとしましては、政府としてこれに何かしなければいかぬという必要は認めておりますが、そのやり方につきましてはいろいろと考えてやらないと、やはりブラジルとの関係という点から問題が起こるのではないか、そのように思っております。まず実態調査をいたしましたその上でどういうふうな対策をとるかということは考えたいと思いますが、問題認識は十分に持っております。  それから最後に、海協連の中の地方海外協会の業務の委託の問題でございますが、実は昔、いまの海外移住事業団ができます前は、そういう地方海外協会が移住者の募集であるとかあっせんとか、いろいろそういうことについて仕事をやっておったわけでありますが、移住事業団になりましてからは移住事業団が各府県に支部を置きまして、現実にそれを引き継いでやったわけでございます。最近、移住事業団の各府県の支部が廃止されまして、全国が十ブロックに分かれまして、一部の府県にはなお支部を置いてやっております。  われわれが今後海外協会、これは各県によって海外協会のある県とない県がございますけれども、これをどのようにわれわれの仕事の中にとらえていくかということにつきましては現在検討を加えております。やはりこういう地方海外協会というものでありますれば、移住だけではなくて、海外知識の普及とか外務省に関係の深いいろいろな仕事をやっていただくのも一つの方法じゃないか、そのように考えておりますので、これに対しましてどのような業務を委託するかというようなことにつきましても、なおしばらく検討してみたいと考えております。  以上でございます。
  215. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いま御丁寧な御説明をいただいたわけでありますが、これら全国海外協会連合会等のこれからに対して検討をするべき内容は非常に多いわけでありますから、今後も慎重な御配慮とすみやかな御検討を得て、有効適切な措置をとられることを希望する次第でございます。  それからその次は、これは金額についてちょっと伺うわけでありますが、この協力事業団の資本金は政府出資による四十億円と、今回これに吸収されるところの事業団に出資があったとされる金額との合計額というふうにされているわけでありますが、それは一体どのぐらいになるものなのか。  それからまた予算にきめる金額の範囲で追加出資をするということがここにうたわれているわけでありますが、それはどの程度規模を予定されているのか。  また、今年のそれはおおまかにわかるわけでありますが、翌年以降はどういう気持ちで行なわれるのか、その辺のところをお示しをいただきたい、こう思うわけであります。
  216. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 この法律第四条の資本金の規定でございますが、四十億円といいますのは、四十九年度予算ですでに御審議をいただきました予算の中に含まれておるお金でございまして、この附則第六条四項、附則第七条四項、附則第八条五項の規定によって、「政府から出資があったものとされた金額」といいますのは、技術協力事業団とか移住事業団とか、そういったものに出資されました分のことをさしておるものでございまして、結局いまの四十億円を入れまして昭和四十九年度までの出資金の全部を合計いたしますと、二百二十三億五千万円ということになります。  それで二項以下の、政府は必要があるときは予算で定める範囲で追加して出資することができるとかその辺のことは、明年度予算とかそういうものの検討をこれからいたすわけでございまして、これらについての見当はまだ全く具体的にはわかっておりません。
  217. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それから、漁業についてでありますが、先ほどから幾つかお話が出ているわけでありますが、この協力事業団の中に漁業を加えなかった。海外漁業協力財団についてはできたての財団であり、これは当然加わるべきものであると思えるわけでありますが、大臣はこれに対して、将来は発展的にこの協力事業団に吸収されるべき意向を表明されておるわけでありますが、農林省側あるいは水産庁側はこれに対してどういう見解をお持ちであるのか、それをお伺いいたします。
  218. 岡安誠

    ○岡安政府委員 この国際協力事業団と現在ございます財団法人の海外漁業協力財団との関係につきましては、先ほど外務大臣がお答えいたしましたのが原則でございまして、私どももそういうふうに考えておるわけでございます。  ただ、私、この際申し上げたいのは、ではなぜ今回の法律において海外漁業協力財団をこの国際協力事業団に含めなかったかという理由を多少申し上げたいと思っております。  これは先生まさに御承知でございますけれども、近年におきます開発途上国を中心といたしました領海あるいは漁業水域の拡大の動き等に対処いたしまして、わが国は海外漁場の確保をはかるために関係沿岸国と漁業交渉を積極的に推進するとともに、これと一体的に漁業協力を行なう必要性が高まっておるわけでございます。このために昨年財団法人である海外漁業協力財団を設立し、そのための漁業協力の推進をはかっておるところでございますが、これは漁業交渉の一環として行なわれまして、わが国漁船の入域操業との関連において実施されるという特殊な性格を持っております。またその性格上交渉の推移に応じた迅速かつ弾力的な対処が要請されているわけでございます。大体そういうような事情から今回の国際協力事業団の設立にあたりましては、海外漁業協力財団をその中に引き継ぐということをいたさなかったわけでございます。  なお、一言つけ加えておきますけれども、一般的な国際協力の一環として従来からOTCAによって行なわれてまいりました漁業に関する技術協力につきましては、これは国際協力事業団を通じて行なうというつもりでございます。
  219. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは最後に伺うわけでありますが、これは大臣にぜひ御答弁いただかなければいかぬわけでありますが、私はこの事業団法案の審議にあたり、経済協力に関する政府の基本的な方針が明快でないことを指摘いたしました。そしてそれはアフリカ基金の審議の際に私はすでに指摘をしたところであります。ところが大臣は、この委員会の審議の途中でその問題に私が触れましたところ、いままでそれに対する原則がなかったのではなく、総理あるいは外務大臣あるいは国連における日本代表の発言というものを収録されて、それを当委員会に提示されました。  しかしながら、まとめられた経済協力に対する日本側の指針というものは明示されておらず、ばらばらな印象を受けたわけであります。そこで私は、当委員会においてこの事業団法案の審議にあたってそれが明示されることが必要であり、大臣からお答えをいただきたい旨申し上げたわけでありまして、それについて御答弁いただきたい。  それからもう一つは、この法案の私ども政府の間で一番論争点になったのは何だったかといえば、結局は事業団法の運用に関してこの法案自体のできが悪くて訓示規定というか、この法案を運用するにあたる日本政府の基本的な態度というのが明示されない、実に技術的な法案であるということが言えると思うのです。もちろん日本国憲法あるいは日本政府の数々の弁明によればこうであるということはあとから追加で説明は行なわれるものでありましょうけれども、これだけ海外に多大な影響を与える法案に関して、それらの訓示規定というか指導的な規定がないということ、またそれに対する政府の見解が明示されないということは、明らかに本法案のつくり方について問題があろうかと私は指摘をしたわけであります。  したがって、私の質問を終えるにあたり、私のその心配に対して、政府はこの経済協力についてどういう原則を今後打ち立てていくか、それは単なるいまの答弁でなく、これからどういう原則でいくかということ、そうしてまた、事業団運用にあたってはどういう方向性でやるかということ、また経済協力に対しては具体的にどういう方向であるべきものとお考えであるか、それらについて政府の原則的な立場を明示されんことを求め、私の質問といたします。
  220. 大平正芳

    大平国務大臣 国際協力事業団の設立に関連いたしまして、政府経済協力の基本理念が以下のとおりでありますことを明らかにいたしたいと思います。  すなわち、第一に、経済協力は南北問題の解決による世界の平和と繁栄の実現に貢献するため、開発途上国の経済社会の発展と住民の福祉の安定向上に寄与せんとするものであり、これは国際社会の一員たるわが国の責任にほかならない。また、これは世界の平和と開発途上地域の繁栄はわが国の平和と繁栄のため不可欠の前提であるとの認識に基づくものであります。経済協力の実施にあたりましては相手国の立場を十分に尊重し、互恵平等と相手国の主権尊重、内政不干渉の原則順守に遺憾なきを期する所存であります。  第二に、以上の基本理念に基づきまして、政府政府開発援助の対GNP比率〇・七%目標達成等、いわゆる量的拡大、借款条件の緩和、アンタイドの推進、贈与部門、特に技術協力の拡充等による質的な改善、農業、社会開発等への協力の拡大による対象分野の多様化、対象地域の拡大及び国際機関への協力の拡充等に格段の努力を払いますとともに、経済協力の効率的推進に必要な処置を講じてまいりたいと思います。  第三に、国際協力事業団は、以上の趣旨に基づきまして設立されるものでございますので、その運営にあたりましては、経済協力の基本理念が十分に生かされ、国際友好と世界の安定と繁栄に貢献するよう配慮して運営してまいる所存でございます。
  221. 木村俊夫

    木村委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  222. 木村俊夫

    木村委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  223. 河上民雄

    ○河上委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となっております国際協力事業団法案に対し反対を表明し、簡潔な討論をいたしたいと思います。  投資元年というようなことばが差し示しますように、日本経済の海外進出が奔流のごとく流出しようとするとき、また東南アジア諸国など開発途上国日本の援助を欲しつつも、日本の海外進出の脅威をわれわれが想像する以上に敏感に感じ取っているとき、この法案が提出されたことはきわめて重大であると思います。  御承知のとおり、一方では対韓援助が金大中事件以来の政治情勢の中で両国国民の間でその妥当性に疑問が寄せられておるとき、また他方、資源を海外から買ってくればよいという時代がまさに終わろうとしているときでございます。  かかるときに、過去の経済進出についての深い反省も、また国際協力についての新しい理念の確立も欠如し、単なる機構いじりと資金量の増加に多大な精力を使うことは無益であるばかりでなく、きわめて危険であると考える次第であります。  私は、党を代表し本会議においても討論を行ない、また本委員会においても同僚議員とともに質疑を行なってきたところでございます。本日はその懸念すべき点について繰り返し述べることは避けますが、われわれは懸念する危険に対し十分な歯どめが欠けている本法案に対しては反対せざるを得ないのでございます。  最後に、私は、この機会に胸襟を開いて国民とともに国際協力について考えられるような民主的なあり方が確立されていくことを切望いたしまして、非常に簡単でございますけれども、反対討論とさせていただきたいと思います。
  224. 木村俊夫

    木村委員長 松本善明君。
  225. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、国際協力事業団法案に反対の討論を行ないます。  本法案に反対する理由の第一は、経済協力の名のもとに進出する大企業に対する至れり尽くせりの便宜をはかるものだということであります。この事業団は、本法案第二十一条第三号の開発途上地域等の社会の開発並びに農林及び鉱工業の開発協力するための業務を行なうことがこの事業団設立の最大のねらいであります。  すなわち、これまでも経済協力をてことした大企業の海外経済活動は、海外経済協力基金や日本輸出入銀行その他の政府機関からのきわめて有利な融資を受けて擁護されてきましたが、本事業団の業務は、このプロジェクト実施や資源開発関連する産業基盤、つまり道路、港湾、用水施設、上水道、緑地帯、学校、寄宿舎、病院、市場、さらには礼拝堂に至るまで海外での企業活動に必要なあらゆるものを国民の税金で整備しようというものであります。まさに大企業資源略奪の活動  に国民の税金をつぎ込もうとしているのであり、新植民地主義的な経済侵略を強めることにほかなりません。  第二に、自民党政府のこの新植民地主義的経済協力企業進出が、アメリカのアジア侵略への協力、下請となっている点であります。自民党政府経済協力は、ニクソン・ドクトリンに沿って南アジアのかいらい政権、従属国を中心としたものであり、ベトナムのサイゴン政権や韓国の朴軍事政権などへの援助が示すように、反共かいらい政権維持のための性格となっていることであります。私は、政府がこれまでアジア諸国から批判と懸念を受けてきたにもかかわらず、このような対米従属、新植民地主義的な経済進出を一そう強化することにとうてい賛成できません。  以上本法案は、開発途上国のための真の経済協力に役立つのではなく、新植民地主義的進出に資するものであることを指摘して討論を終わります。
  226. 木村俊夫

    木村委員長 渡部一郎君。
  227. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、公明党を代表し、国際協力事業団法案に対する反対の意思を明らかにするものであります。  日本国憲法は、権力は人民に由来するものであることを日本国民に明示しているものでありまして、この精神に基づいてこの法案を考えますとき、われわれは他国の人民の諸権利に関しても同じような十分の配慮をしなければならないと考えるものであります。  私は、本法案の審議の冒頭にあたり、ベトナムにおける生きる権利を要求する婦人運動議長ゴ・バ・タン夫人の例をあげ、これを述べました。すなわち同夫人は、平和を求め、独裁に抗議しつつ、数万の無名の女性たちとともどもに拷問され、石けん水を飲まされ、発狂しながら平和と自由を求めて戦った人々であります。ところがこれらの人々は何を述べているかといえば、今日われわれを弾圧する政権に対し、これ以上援助をしないようにと日本政府に強く求めているのであります。  すなわち、本法案は、国際協力事業団そのものの成り立ちと形成からいって、国と国との援助を明示するものであります。国と国、政府政府間の援助という形でこれが推移するのでありますならば、法案の中身、そのシステム、その企画というものがどれほどうまくできましょうとも、かえってその意思というものが現地の腐敗政権を応援したり、あるいは地元住民に対して深い危害をむしろ与える場合すら予想されるのであります。  わが国の従来の経済援助というものの成り立ちがこうした配慮を大きく欠くことによって多くの問題点を含み、われわれの善意がかえって経済侵略とかあるいは海外収奪とかあるいはエコノミックアニマル等のばり雑言をもって報われたことも、また歴史の示すところであります。  私は、本事業団の審議にあたり、内政不干渉の原則あるいは平等互恵の原則あるいは主権尊重の原則等を明らかにすることを求めました。また、この間において、私は日本国とそれらの国々の国と国との関係ではなく、それらの諸国民、人民の諸権利というものを擁護するために考えなければならぬ点のあることを指摘いたしました。  現在の人権宣言の基礎となっているといわれておりますアメリカのバージニアの権利宣言に、政府または国家は、「人民、国家または社会の利益、保護および安全のために樹立され」る。「いかなる政府でも、これらの目的に反するか、または、不十分であるとみとめられた場合には、社会の多数のものは、その政府を改良し、変改し、または廃止する権利を有する。この権利は、疑う余地のない、人に譲ることのできない、また棄てることのできないものである」とこれは述べております。これは政府は一定の限られた目的のために設けられているものであり、その目的に反する場合は、人民はこれを廃止する権利を持つ、すなわち革命権を持つことを指摘した最初の宣言であります。  わが国の憲法は、その意味においてこれらの流れを引き、主権在民の憲法でありますが、そのわが国憲法の精神を他に波及するのでなければ、われわれとしてはこれらの経済援助に対して軽々に賛成の意を表することができないと考えるわけであります。  私は、本法案の中における経済協力が成功した場合には、多くのそれら諸国民に対するプラスになり、民生安定に資することを認めつつも、これらの配慮を欠く多くのポイントのある経済援助に対して、私は本事業団法案の審議にあたって深い懸念の意を表せざるを得ないのであります。したがいまして、私は、日本国憲法の精神が今後の経済援助の原則として政府に確立されることを強く求めたいと存じます。  最後に、私は先ほど政府が述べられた経済協力の原則に対して政府の一歩前進を評価するとともに、この評価が実際行動となって評価される日のあることを強く要望するものであり、そのときこそわが党としてはこれら法案に対して賛意を表することができることを指摘するものであります。  以上をもって公明党としての反対討論を終わります。
  228. 木村俊夫

  229. 永末英一

    永末委員 私は、民社党を代表いたしまして、国際協力事業団法案に対して賛成をいたします。  私は、社会主義者といたしまして社会主義の発生を考えるのでありますが、人間が自由であるべきだということを考えた場合、その自由を実現するためには、経済量の均分化が必要であります。その意味合いで、まず人間がつくる国家の中における国民の経済量の均分化ということを目ざしつつ社会主義が生まれました。しかし、その国家は国際社会においては一単位として存在するのでございますから、当然この考え方を国際社会のあり方に援用いたしますならば、もし一つの国家のみがその国家の財力を大きくふやし、そして他の国家がそうでないという場合には、国際間における経済量の均分化をはかるというのが、社会主義者といたしましては当然の考え方だと考えております。  したがって、全世界の社会主義者、社会主義政党は、国際平和のためにも、また彼らの考える社会正義のためにも、国際協力、すなわち開発途上国に対するいろいろな角度からの経済協力をやることが社会主義者のつとめだと考え、それを自分たちの国家に要請をし、実行をいたしてまいりました。  今回提案されております国際協力事業団法案によって果たそうとする国際協力の実体は、日本政府が従来行なってまいりましたものと勘案いたしますと大きなものではございません。ございませんが、われわれの日本の国が資本主義体制をとっておりますために、先ほど申し上げました理念が必ずしも一本にまとまっておりません。おりませんから、たとえば借款の問題にいたしましても、あるいはまた輸出入銀行を通じての資金援助にいたしましても、あるいは協力基金を通じての援助、技術援助はばらばらでございまして、その中の一部を一つにまとめようとするものでございました。  もしわが国が資本主義国だからといって、そういう角度から開発途上国に対する経済協力を行なおうということでありますならば、われわれのやることはやがてはエコノミックアニマルのなせるわざとして反撃を食らうのでございまして、わが党はこの点についてのこの事業団法の運営がいかにされるかを慎重に審議をいたしてまいりました。大平外務大臣をはじめ政府当局はこの事業団法の運用については、このわれわれの主張点を十分に留意しつつ運用いたそうという決意のほどが読み取れました。  もちろん国際経済協力の理念的な面は先ほど申し上げたとおりでございますが、もしわれわれの国家が平和時においてわが国民経済の発展を願うならば、この国際協力というものを積極的に評価をし、これの適正な運用をはかることが必須の条件であると考えまして、数々の要望を付しつつ、わが党といたしましては本事業団法案に賛成をいたします。
  230. 木村俊夫

    木村委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。  国際協力事業団法案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  231. 木村俊夫

    木村委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  232. 木村俊夫

    木村委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  233. 木村俊夫

    木村委員長 速記を始めて。  この際、水野清君、河上民雄君、渡部一郎君及び永末英一君から、本案に附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。水野清君。
  234. 水野清

    ○水野委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表して、ただいまの法律案に対し附帯決議を付すべしとの動議について、その趣旨の御説明を申し上げたいと存じますが、その趣旨につきましては、本案の審査に際し十分御承知のことと存じますので、案文の朗読をもって趣旨説明にかえさしていただきます。  案文を朗読いたします。    国際協力事業団法案に対する附帯決議(案)   先進国と開発途上国との間の、経済的格差はますます広がり、加うるに、最近の世界的な通貨、貿易面での動揺やエネルギー資源問題或いは食糧危機の問題の顕在化は、南北問題を一段と複雑多様化せしめ、これら相互間に摩擦と緊張を招いている。   かかるとき、先進国の一員である我が国は、国際連帯の原理に立脚し、互恵平等、内政不干渉の原則を確認するとともに、長期ビジョンの策定等を行つてこれまでに蓄積した資本と技術を活用、供与して、これら開発途上地域の経済及び社会開発と国民福祉向上のための自助努力に協力し、開発途上地域の緊張と摩擦を和らげ、究極的に永続的な世界平和と経済的繁栄の基礎固めに貢献すべきである。   よつて政府は、本法施行に当たり、左記事項につき適切な対策を講ずるとともに国際協力事業団の適正な運営に努むべきである。    記  一、我が国の経済協力は、従来ややもすれば輸出の振興企業の海外進出の促進の手段とされる傾向があつたことにかんがみ、今後政府は、民間主導型の対外経済関係の形成を是正し、開発途上地域の経済及び社会の均衡ある発展に寄与することを第一義的目的とし、政府主導のもとに開発協力相手国住民の生活と福祉の向上のための分野にその重点を置き、いやしくも経済進出の姿勢について批判を招かないよう万全を期すること。  二、海外企業進出については、開発途上地域の自主的な国民経済の発展に資する見地から協力相手国の立場を尊重しつつ我が国の国際協力を効果的に推進するため万全な措置を講ずること。  三、国際協力の効果的な推進を図るため、特に国際協力事業団の新規業務と連けいせしめて政府借款を供与する等技術協力資金協力の一体化に一層の努力を払うとともに、国際協力事業団、海外経済協力基金、日本輸出入銀行を含む我が国国際協力の推進体制の整備について、さらに検討を行うこと。  四、国際協力に貢献する人材の確保を図るため、専門家の養成、研修及び待遇改善に努めるとともに、既就職の者の在籍参加の途を拡大し、地方公務員の積極的な活用については、所要の措置を講ずるとともに官民の協調による統一された意識のもとに技術協力事業の推進を図ること。  五、開発途上地域の人口、食糧問題の重要性にかんがみ、特に稲作等アジアの食糧増産のための農業開発についても国際協力事業団の新規業務の一環として政府ベースにより積極的な協力を行うこと。  六、国際協力事業団による農林業開発の推進に当たつては、国内の農林業に悪影響を及ぼすことのないよう万全の配慮を払うとともに、他方、国内の食糧自給度の維持向上のための諸施策を推進して、国民食糧の安定供給に遺憾なきを期すること。  七、国際協力事業団全体を主管する外務省は、農林業開発に関する事項及び鉱工業開発に関する事項についてそれぞれ共管官庁である農林省及び通商産業省と密接に協議するとともに、その他の関係省庁とも十分連絡をとり、もつて、事業団の各種業務の円滑かつ効率的実施に努めること。  八、国際協力事業団は、海外技術協力事業団及び海外移住事業団などから引き継がれるこれら職員の処遇について、その給与、身分、労働条件等に関し、不利益を与えないよう適切な措置を講ずること。 以上でございます。  何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  235. 木村俊夫

    木村委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  本動議について、松本善明君から、次の意見が提出されております。  附帯決議案については、海外技術協力事業団、海外移住事業団の職員の労働条件などについて、賛成できるものもあるが、本案についての反対討論において指摘したような新植民地主義的海外進出は、附帯決議によって解決できるようなものではないので、全体としては反対である。  以上申し添えます。  これより採決いたします。  水野清君外三名提出の動議のごとく本案に附帯決議を付するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  236. 木村俊夫

    木村委員長 起立多数。よって、本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議について政府の所信を求めます。大平外務大臣
  237. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま御決議がありました事項につきましては、これを体しまして、政府としては国際経済協力事業の推進に遺憾なきことを期してまいりたいと思います。     —————————————
  238. 木村俊夫

    木村委員長 おはかりいたします。  ただいま議決いたしました本案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  239. 木村俊夫

    木村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕
  240. 木村俊夫

    木村委員長 次回は、来たる十五日水曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十一分散会