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大平国務大臣 先ほど申しましたように、
国交正常化後の
日台間の
関係で
実務関係の
維持でございますが、これは
国交正常化の
原則、
ワク組みというものにもとらない範囲においてわがほうは
維持したいという
希望を持っておる、
中国側はこれに
理解を示したわけでございます。
中国側といたしましては、
国交正常化をいたしました以上は、そして
中国における唯一の
正統政府として日
本国政府が
中華人民共和国政府を選択したという以上は、それにふさわしい態様ですべてのことが行なわれることが望ましいと
中国側が
考えられることは、私は当然
理解しなければならないことと思うのであります。
問題は、じっと見ておると正常化後といえ
ども正常化以前と全く変わらない姿において
日本の首都と準首都に
乗り入れておるということに対して、少なからぬ不満を持っておられたようでございます。しかし、いずれこれは
日中間に
航空協定を取り結ぶということになるので、そのときにこういう問題をどのように取り上げるべきか、処置すべきかということを
先方も
考えておったことと思うのでありまして、
先方といたしましては、できることならこれは旗の標識とかあるいは中華
航空というような
社名というものについては御遠慮いただいたほうがよろしいのではないかという
考えを持っておったし、また首都、準首都の
乗り入れというような点につきましても、
中国側としては正常化後のあり方として望ましくないと
考えられておったようでございます。
しかし一方、
台湾側といたしましても、この問題につきまして非常な関心を持たれておることも事実でございます。永末さんおっしゃるように、こんなものは
一つの標識にすぎない、デザインにすぎないというドライな見方も私は成り立たないわけではないと思うのであります。しかし、今日のように
中国問題という
政治的な生きた
現実の中におきまして、正常化後の
日台関係のあり方としてこういう態様がそのままの姿でいいか悪いかという問題が
一つございますのと、それから今後安定的に
維持していこうという場合に、もんちゃくが起こらないようにちゃんとしておかなければならぬという問題があるわけでございますので、去年の春以来まさにその問題で私
ども関係者は非常に頭を痛めてまいったわけでございます。
それで、
中国側のそういう要請というものと
台湾側の
考えというもの、これをどのようにどこにそれでは接点を求めて安定的な
維持をはかる態様を目ざすかということを、ぎりぎりの問題を私
どもとして非常に
苦心をいたしたわけでございます。そしてこの一月の訪中の際に
中国首脳とお
話し合いを申し上げて、
基本的な
理解といたしましては、まず機体につけてある旗の標識それから
台湾の
航空企業の
社名、そういったものはそのままということで自分たち
理解しましょう、ただ正常化を遂げた後において
日本政府はそれをどう
認識しているかだけはせめて明らかにしていただかなければという
中国側の要請があったわけでございまして、私
どもといたしまして、この場合こういう方法、私の
談話の姿で
日本政府の
認識なるものを明らかにするということによってこの問題を解決することができるならば、まずこれがこの際における解決策として望み得る唯一のものではなかろうか、そう判断いたしたわけでございます。
卒然として
談話が出たわけではないのでありまして、そういう背景を踏まえ、安定的に
日台路線を
維持していく
現実的な必要を踏まえ、こうすることがぎりぎりの判断である、そう
考えてやったことでございます。