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1974-04-27 第72回国会 衆議院 外務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月二十七日(土曜日)    午前十時四十九分開議  出席委員   委員長 木村 俊夫君    理事 石井  一君 理事 石原慎太郎君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 福永 一臣君    理事 水野  清君 理事 河上 民雄君    理事 堂森 芳夫君 理事 松本 善明君       足立 篤郎君    大久保武雄君       加藤 紘一君    坂本三十次君       谷垣 專一君    福田 篤泰君       石野 久男君    高田 富之君       土井たか子君    金子 満広君       渡部 一郎君    永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         運 輸 大 臣 徳永 正利君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山中 貞則君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         外務政務次官  山田 久就君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省条約局外         務参事官    伊達 宗起君         運輸省航空局長 寺井 久美君         運輸省航空局技         術部長     中曽  敬君  委員外出席者         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ――――――――――――― 四月二十六日  日本国中華人民共和国との間の航空運送協定  の締結について承認を求めるの件(条約第一六  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国中華人民共和国との間の航空運送協定  の締結について承認を求めるの件(条約第一六  号)      ――――◇―――――
  2. 木村俊夫

    木村委員長 これより会議を開きます。  日本国中華人民共和国との間の航空運送協定締結について承認を求めるの件を議題とし、政府から提案理由説明を聴取いたします。外務大臣大平正芳君。     ――――――――――――― 日本国中華人民共和国との間の航空運送協定締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま議題となりました日本国中華人民共和国との間の航空運送協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国は、昭和四十七年九月の日中国交正常化以後、日中両国間の各種実務協定締結のための準備を進めてまいりました。そのうち、航空に関する協定につきましては、昭和四十八年三月以来、中華人民共和国政府との間で協定締結のための交渉を行なってまいりましたところ、本年四月に至り案文について最終的に合意を見ましたので、昭和四十九年四月二十日に北京協定の署名を行ないました。  この協定は、両国指定航空企業が特定の路線において航空業務運営する権利の相互許与、業務の開始及び運営についての手続及び条件並びに航空機の使用する燃料等に関する関税の免除、事故の際の救援措置証明書相互承認等技術的事項を取りきめるとともに両国指定航空企業がそれぞれの業務を行なうことができる路線を定めるものであります。この協定は、日中共同声明具体化として日中友好関係の強化に資するのみならず、ここ数年来顕著な増大を見せている日中間の人的及び物的交流の一そうの増進に役立つものと考えられ、また、この協定によって日中間航空路が開設されることは世界航空網一つの大きな幹線を与えることになり、その国際的意義も少なくないと考えられます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  4. 木村俊夫

    木村委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     ―――――――――――――
  5. 木村俊夫

    木村委員長 この際、大平外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣大平正芳君。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 日中航空協定締結をめぐりまして、日台路線の取り扱いの問題がございました。政府といたしましては、日台航空路線維持することが肝要と考え、このため中華人民共和国理解を求めることに努力してまいりました。しかしながら、日台航空路線維持のための日本政府努力と誠意に対し、台湾当局理解が得られず、日台航空路線停止されるに至りましたことは、日台双方にとりまして不幸なことと考えております。  日本政府としては、事態の推移を見きわめつつ、日中国交正常化というワク組みの中で、日台航空路線が再び開かれるよう、今後ともできる限り努力する所存であります。     ―――――――――――――
  7. 木村俊夫

    木村委員長 引き続き本件に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井一君。
  8. 石井一

    石井委員 日中航空協定批准に関しまして、私は当委員会におきましてもたびたび発言を求め、批准推進派としての努力をいたしてまいったつもりでございます。ところが、最近のわが党内での発言その他、非常に深い、長い議論をいたしましたが、その中に当然傾聴すべきいろいろの問題というものがございました。私は、それはやはり一部の国民の世論であり、政府としては正式の委員会の場でそれに対しての一つの公式の見解というものを表明されるべきである、また、これまで説明し得なかった問題についても、これまでは交渉中の案件であるからなかなかそういうことが発表できないというふうなお話でございましたが、この席でひとつ公にしていただく必要があるだろう。こういう観点から、きょうはきびしい質問政府当局に向けさしていただきたい、こう考えるわけでございます。  そこでまず、今回の日中航空協定内容は、実務的な問題なのでございますけれども、非常に政治的色彩の強い、高度の政治判断のもとにこういう結果が出ておる。その中にわが国国益というものがそこなわれておる面も、確かに日台路線の廃止その他であると私は考えておるわけでございます。言うなれば、日中という原則日台という現実の上にかぶさったと、そういうこともいえるのじゃないかと私は思うのであります。  具体的な一つの例といたしまして、外務大臣は一月に訪中され、六項目の条件について、これは実務に関する問題でありますけれども先方側との協議を進められ、合意に達し、そして二十日調印というふうな、そういうタイムリミットというものの中で、今回の交渉調印というものが行なわれた。これはやはり一部の日本国民立場から見ますと、外相談話でありますから、日本政府が一方的に言うべきことを向こうと事前に相談をし、そしてその中から向こう要望も受け入れ、こちらの要望も十分言われたと思うのでありますけれども、そういう中で今回の台湾の旗であるとか社名とかいうふうなものにも触れた外相談話が発表された。私は、これは日本の自主的な外交姿勢として、やはり多少疑義が出てくるのではないか、こういう感じがいたすわけでありますが、この点について外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  9. 大平正芳

    大平国務大臣 御案内のように、わが国は戦後長い間中華民国一つ中国を代表する政府として承認し、この国との間に外交関係維持してまいりましたことは御案内のとおりでございます。一昨年の九月、われわれは中国を代表する唯一合法政府として中華人民共和国政府を選んだということは、わが国中国政策の大きな転換を意味するわけでございます。今後わが国といたしましては、中国を代表する正統政府として、中華人民共和国政府との間に、信頼に根ざした末長い友好関係を建設してまいらなければなりません。過去、戦後長く中華民国との間で誠実に国際的義務を果たしてまいりましたように、今後は、われわれは中華人民共和国政府との間に信頼理解の上に立ちました、末長い友好関係を繰り広げてまいらなければならない立場にあることは、申すまでもないことと思います。  そういうことにわれわれの外交路線が設定されたのでございますけれども日台の間には非常に濃密な、外交関係以外の実務的な関係があるわけでございまして、石井さんの言われるその現実というものは、たいへん重い重さを持っておるわけでございます。したがいまして、日中国交正常化の際におきまして、わが国政府といたしましては、中華人民共和国政府に対し、この事実を指摘いたしまして、この日台間の実務関係維持ということについて、日本政府の強い希望を表明し、先方もこれに対しまして日中国交正常化の精神とワク組みにもとらない範囲におきまして理解を示したわけでございます。  今度、いま御質問の、私が日台路線につきまして北京政府との間でお話し合いをいたしましたということは、日台路線をこのワク組みの中で安定的に維持してまいる上から申しまして、また、日中両国がこういう新しい外交路線の上で、今後信頼理解の上に立って日中関係運営していかなければならぬ立場におきまして、日台路線をどのような姿で維持してまいるかということにつきましては、徹底的に理解を求めておかなければならぬわけでございます。日本政府はこのことにつきましてそういうことをやる責任があると私は思うのであります。この日台路線処理というものは、あくまでも日本政府責任においてやることでございます。われわれが北京政府とやりました努力は、日台路線維持について十分の理解先方に求めて、これが安定的に維持されて、何らこのことについて文句が将来起こらないように、クレームが出ないようにすることの必要を感じたからでございますので、そのことについて鋭意先方理解を求めたわけでございます。  すなわち、日台路線は新しい日中関係ワク組みの中でこういう態様において維持したいという説明先方にいたし、先方はそれを理解するということでございまして、日中両国政府の間で合意して合意議事録をつくるというような性質のものではないと思うのであります。  したがいまして、その間には何らの外交的文書の交換はいたしておりません。口頭説明し、先方十分理解を求めるということに全力をあげたわけでございます。わが国政府といたしましてはなすべきことをなしたことでございますことを御理解いただきたいと思います。  それから第二でございますが、一定の時間的スケジュールを立てて、タイムリミットを設定して事を急いだではないかということ、そういうことであったのかという御質問でございます。事外交交渉でございまして、相手のあることでございまして、一方的にスケジュールをきめてやれるはずのものではないのであります。と同時に、われわれが外交交渉をやる場合には、当然のこととして日本国益を守っていかなければならない、主張していかなければならぬわけでございまして、そういうことを無視いたしまして、内容がどうであれ一定スケジュールのもとで何でもやってしまうというほど日本外交はお粗末なものであってはならぬと私は思っておるのであります。  なるほど世上この交渉はいついつまでを目標にしてやっておる、あるいはいつごろ調印になるであろうという観測は新聞紙上に散見されたことは事実でございます。しかしながら、日本政府がそういうことを新聞に発表した覚えもございませんし、私どもそういうワク内に何でもかんでも押し込めてやってしまえというようなお粗末なことはした覚えはありません。  ただ、交渉を実際やってまいります場合におきまして、われわれの交渉代表団本国政府との間でいつまでもだらだら交渉をやってまいるというわけにいかぬと思うのでございまして、内部的にはいろいろこれまでにこういう問題について一ぺん詰めてみろ、そしてそこで詰まらぬものは請訓をよこしてみろというようなことはしょっちゅうやったわけでございますけれども国益を無視し、事柄を急ぐあまり無分別に交渉を進めるというようなお粗末なことは絶対にいたしていないということは御理解をいただきたいと思います。
  10. 石井一

    石井委員 あの外相談話の中に、日台路線というふうなものを、たとえば地域的な民間往来である、そういうふうな考え方も入っておるようでございますが、結局私は、議事録も何もかわしておらぬと言われますけれども、この談話の意味するものは非常に大きい、このことによって台湾の帰属を日本政府としては明確化したのではないか、こういう疑問を私は持つものでございまして、これは実務協定がどんどんできておりますから、平和条約をもう締結するという方向に進んでおるわけでありますけれども、この点に関して今回の外相談話というのは台湾に対しては非常に大きな刺激になっているというふうに考えるわけでありますが、平和条約に対する見通しということをも含めて、この点はどういうふうにお考えになりますか。
  11. 大平正芳

    大平国務大臣 外相談話は、今回の日中航空運送協定内容、その意義を概略申し上げると同時に、いま石井さんがお触れになりました台湾航空企業の機体につけております旗の標識、社名等について日本見解を述べたものでございます。日中正常化が行なわれて、その原則の上で末長くこれから日中関係運営、発展させていこうという立場日中両国政府はあるわけでございまして、これは一昨年の九月共同声明発出以来終始変わらない姿勢でございます。一方、日台路線の安定的な維持をはかるためには、先ほども私からるる申し上げましたように、日中間に十分の理解がなければならぬわけでございまして、これは共同声明原則の上に立って十分の理解を得て安定的に維持していかなければならぬわけでございます。  ところが、旗とか社名とかいうことになりますと、その航空企業が属するオーソリティー、権威にかかわることでございます。したがいまして、私といたしましてはそういうことの持つ意味を十分念頭に置いてこの処理をしなければならぬと考えたわけでございます。  すなわち、日本政府立場は、日中共同声明のラインを踏みはずしてはならない、これは絶対の原則でございます。同時に、日本乗り入れられておる台湾航空企業、またそれが象徴するところの台湾当局権威というものにわれわれがどのように対応してまいるかということも現実の問題として十分配慮せなければならぬ。これを調整しなければ、日中の新しい関係日台路線の安定的な維持が達成されないわけでございますので、このために過去一年有余にわたりまして苦心苦心を重ねたわけでございます。  したがって、第一にわれわれが努力を傾けたことは、台湾当局に対しまして旗を撤去願いたいとかあるいは社名の変更を願うというようなことはいたしかねる、そういうことは避けなければならぬと考えたわけでございます。何としても避けなければならぬ。しかし、共同声明原則を踏みはずしてはならぬということでございまするので、われわれがやり得るぎりぎりの線は、日本政府国交正常化以来、こういうものについてどういう認識を持っておるかということを表明することが精一ぱいのわれわれのやり得ることでないか、またやらなければならぬことでないかと考えたわけでございます。しかし、そのことをやるにつきましても、われわれは中華人民共和国政府に対して、国交正常化以来こういう認識を持っておりますということを表明してあるという事実を私は談話で、口頭で触れただけでございます。それがもう精一ぱい努力なんでございまして、これが私の苦心談話の意味するものでございます。  その点につきまして、私は最後まで台湾の御当局理解を心の中で願っておったのでございますけれども、それが得られなかったということはほんとうに残念にたえないのでございます。しかし、台湾当局のお気持ちが理解できないわけじゃございません。けれども、私ども立場といたしましては、そこまでが精一ぱい努力だったということは日本国民にもそれから世界にも理解していただきたいものと考えております。
  12. 石井一

    石井委員 もっとその問題を突っ込みたいのですが、時間の制限がございますので今度は運輸大臣に二、三点お尋ねをいたします。ひとつ簡潔に、お答えをいただきたいと思います。  まず最初に、以遠権の問題でございますけれども経済性から考え等価値であるべきだというのがこれの常識でございますけれども、この問題に関してはわが国は著しく不利であるということがいわれております。わが国最初イスラマバード路線というものを求めたのであるけれども、それが受け入れられておらない、近い将来に開かれるというふうなこともございますが、この経済性の問題でわが国は不利ではなかったかということ、そしてこのイスラマバード路線に対して、今後希望が持てるのかどうかということ、この点をひとつ簡潔にお答えいただきたいと思います。
  13. 徳永正利

    徳永国務大臣 経済的な等価値論というのは、当然こういう実務的な、しかも技術的な協定においては追求されなければならぬことだと思います。ただ、日本経済基盤中国における経済基盤というものは相当大きな格差があると思います。そういうようなところでこれのバランスをとるということは実は非常にむずかしい問題があろうと思います。あろうと思いますが、今度の協定につきまして、いろいろの立場でそれぞれの評価があると思いますけれども、私どもはできる限りの双方出し合ったぎりぎりの線を詰めたつもりでございます。  なおまた、パキスタン路線につきましては、小川大使中国外務大臣の間で日本を不当に差別するようなことはしないのだということを言っております。これは私のほうから、いまはそうであっても将来第三国にこの門戸を開放するということがあればということで交渉を続けたわけでございますが、そういう言質もございますし、またわが方の寺井航空局長と副局長との間にも日本側要望については十分理解している、中国としては現段階ではコミットはできないけれども、その日本要望理解しているので将来の検討課題とするということを言っておりますから、私はこれに全力を傾けて交渉を続けてまいりたいと思っております。
  14. 石井一

    石井委員 次に、大阪空港に対する乗り入れ、これは公害訴訟その他、たいへん重要な、重大な国内問題なんでございますけれども、これを受け入れられておる。これもわが国後退だと一部にいわれておるわけでありますけれども、これを処理するために国内便を減便することによって解決されようとしているのかどうかという点が一点。  もう一つは、日台路線停止ということで、これは事実上の非常に不便というものがわが国にあるわけで、これも非常に後退だといわれておるわけでありますけれども、これは、この再開に努力をするということは先ほどの外務大臣の御答弁でも明らかでございますけれども、いまのキャセイ航空その他を増便することによってこの不便をカバーしようとしておるのか、それともあるいはいまのままでしばらく持続することによってその必要性台湾側にも説得しようとされておるのかどうか。この大阪空港の問題あるいは日台路線の問題について、基本的な見解を簡潔にお願いしたいと思います。
  15. 徳永正利

    徳永国務大臣 中国民航日本に就航するようになりますと、大阪空港の便数の問題でございますが、原則的にはこれは約束したいわゆるジェットの発着便というものは狂わしません。それからまた、日本の飛行機を減便してでもというお話でございますが、その乗り入れ時期等の問題もございまして、これは十分その時点において考えなければならぬことだと思いますが、そういうようなことをしなくても受け入れすることができるというふうに考えております。  それから、日台間の人の交流でございますけれども、この点におきましては、たとえばキャセイ航空を増便するような計画を持っておるかということでございますが、この点についても、ただいまのところ原則的にこれを増便して受け入れるという考えは持っておりません。何かの方法でその需要を満たしていかなければならぬというふうに考えております。
  16. 石井一

    石井委員 最後に、防衛庁長官がお見えじゃございませんので、外務大臣にお伺いしてみたいと思いますが、私は当委員会防空識別圏の問題、それからFIRの問題を提起いたしまして、台湾との政府間交渉が必要ではないかということを申し上げたわけであります。その内容については申し上げませんが、沖繩が返還され、全く日本防空識別圏FIRというものが台湾と隣接する、そうして防空識別圏に関しましては自衛隊機その他が飛び違うというふうなこともあり得る、これはどうしてもやはり台湾政府との政府間交渉というものが、民間航空機はいま避けて飛ぶわけでありますけれども、この二つの問題に対してどうしても必要じゃなかろうかと思うのでありますけれども、こういう問題についてはやはり国家の平和安全というふうな見地からも鋭意今後政府間交渉を続けざるを得ない、こういうお考えでございますか、この点をお伺いしたいと思います。
  17. 大平正芳

    大平国務大臣 今月二十日台湾当局におかれて日台路線停止措置が声明されたわけでございます。けれども、いま石井委員が御指摘になりました問題は、ひとり日台間の航空往来だけでなくて、第三国航空機安全運航にかかる問題でもあるわけでございます。したがって、政府といたしましては、交流協会を通じまして先方と打ち合わせ中でございます。この問題はそういう第三国との間の問題もございまして、必ず解決されなければならない問題であると私は思います。特にこれができないというような事態は私は考えていないわけでございます。
  18. 木村俊夫

  19. 石原慎太郎

    石原委員 外務大臣にお伺いいたしますが、今回のこの協定は非常に政治性が強い。獲得された両者の路線がいわば外交路線ともいわれております。しかし、そうならば一そうこの協定を結ぶにあたってわが国中国に対してとる外交的、政治的原則は、さきのハワイ会談日米共同声明にもいわれましたように、中国ソビエトのような閉ざされたクローズドソサエティーとわれわれ自由主義国家圏の質的な相違、つまり開かれた社会と閉ざされた社会の質的な相違というものを認識し、その認識にのっとって閉ざされた社会を開いた社会にしていくという姿勢だと思います。また言いかえれば、彼らに自由主義社会の第三者が客観的に見ても公平な原則というものを適用させていく努力がいかなる交渉においても保たれるべきだと思います。つまり相手側政治的な非常に主観的な原則に屈さないという姿勢こそが、日米共同声明でも確認されたわが国中国なりソビエトに対する外交交渉基本になくてはならないと思います。  たとえば中国との経済協力で、先般訪中いたしました日本財界代表団が、その話し合いの途中に生じてきた向こう側工業所有権に対する認識の違いというものに非常に大きな不満を抱いて、こういったものに正当な認識相手側に持たせるために非常に努力をしつつあるということでありますが、私はそれが妥当な財界財界なりの姿勢だと思いますけれども、そういう基本姿勢が今回の交渉の中で貫かれ得たという満足なり御自信をお持ちでしょうか。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 世界一つになりまして、万国普遍国際法国際慣習というものが確立して世界の秩序が守られていく状態が一番望ましいことは申すまでもないことでございます。しかし現実は、政治の信条、体制を国によりまして異にいたしておりますし、政治経済、民度の差異はおおうべくもない現状でございます。その間世界を分かついろいろな壁が張りめぐらされておることも事実でございまして、このめんどうな現実に対しましてわれわれとしては、石原君がおっしゃるようにその高い壁をなくする、あるいはなくすることができないまでもこれを低くしていく、そういう努力現実的な外交努力をもちまして追求していかなければならぬと考えております。  貿易にいたしましても、自由な貿易といいますけれども、自由な貿易なんて世界にございませんで、われわれとしてはより自由な貿易を求めて努力してまいるわけでございますし、ココム規制というようなものもございますし、これもだんだんとその壁が低くなりつつございますけれども、こういうことが本来ないような世界が望ましいわけでありますけれども現実はあるわけでございますので、可能な限りそういう障壁を低くしてまいるような努力をいたしているわけでございます。  しかし、そういう障壁があり体制の相違世界観の相違がございましても、つき合わないというようなことになりますと、ますます世界はばらばらになっていくわけでございますので、わが国外交方針はたびたび申し上げておりますとおり、そしてよく御理解をいただいておると思いますけれども、アメリカはじめ自由圏との友好親善関係を軸といたしますが、同時にそれを軸としながら体制の異なる国とも幅広くおつき合いを繰り広げてまいりまして、相互理解を深めてまいって互恵的な交流を広めてまいるということを基本にいたしておるわけでございます。  今度の日中航空運送協定は、一方の体制の異なる中国の要請に屈して、そしてその言いなりほうだいに結んだのではないかというような批判が一部にございます。そういうお粗末なことはいたしておりません。私ども、主張すべき国益は主張し、先方の言い分も十分聴取し、その間にどこに通約の道があるかということは、交渉団をはじめといたしましてその背後にあるわれわれ政府といたしましても十分検討いたしまして取り結んだわけでございまして、この協定が不平等なものであるというような批判には、私は抵抗を感じます。私といたしましては、互恵平等の姿においてでき上がっておるものと考えておりますが、もし個々のこの協定の組み立て方、それから内容につきまして、具体的に御指摘がございますならばお答えを申し上げていきたいと思います。
  21. 石原慎太郎

    石原委員 互いに違う原則両国交渉の中で、大臣が非常に御苦労なさったのは私、評価いたしますが、しかし実際にでき上がった協定は、それぞれの主観的な価値判断があると思いますけれども、私にはいささか意外な感じがいたしたという感慨を禁じ得ない。それにしましても、与党内でもずいぶん議論があったようでありますが、協定そのものの実質的な審議と申しますか、その価値判断に対する討論がまだまだ希薄なような気がいたします。  おっしゃいますように、必ずしも体制の違う両国間の協定というものは、経済的な価値の交換だけでは済まないということは私十分理解いたしますが、まず運輸大臣にお伺いいたしますけれども質問の前提に私は十分体制の違う両国間の協定の中で政治的な価値、これはあくまでも主観的なものでございましょうが、それがある比重を占めるということは認めますけれども、まずその前に、ならば今回の協定経済的な観点だけにしぼってみた場合にはプラスアルファの、政治的な価値判断というものを除いてまず経済的な等価値の交換という、われわれ自由主義国家間の協定原則ということにのっとってみれば、必ずしも経済的には平等な価値交換としては行なわれていないのではないかという気がいたします。政治的な価値についてはあとでお伺いいたしますが、純粋に経済的な等価値の交換という観点から見れば、はたしてこの協定が平等なものであったかどうかということをお伺いしたいと思います。
  22. 徳永正利

    徳永国務大臣 元来、私が御説明申し上げるまでもなくいまお話がございましたように、経済的な基盤というものは中国日本はそれぞれに大きな開きがあるわけでございまして、それのみを追求してこの等価値を求めるということは、非常にこれは協定自体としては困難な問題であることはいま御指摘のとおりでございます。  そこで、せめて先ほど石井委員にもお答えいたしましたように、欧州に、ヨーロッパに飛ぶ路線として一番近い路線、これが経済的な価値とすれば、非常に大きな意味を持つわけでございます。それにつきましては、いわゆるパキスタンルートというものがこの条文の中には織り込めなかったというのはまことに残念でございますが、まあいろいろな価値判断があると思います。しかし、それでは純粋に現時点でそいつを価値判断しろということになりますと、これまた非常にむずかしい問題があろうと思います。将来性のことも考えてみなければなりませんし、しかしながら、いろんな評価のしかたはあろうと思いますが、その他の問題も含めて、まあまあという線には落ちついたと考えておる次第であります。
  23. 石原慎太郎

    石原委員 運輸大臣がおっしゃいますように、今度の交渉で公式、非公式に獲得された将来性ということを、私は当然経済的見地からも織り込んで協定を評価すべきだとは思います。しかし、その際問題になるのは、今度の協定の最大眼目であったイスラマバード経由の欧州最短距離の路線の扱いでありますけれども、これに対する期待は運輸関係者に非常にあったと思いますし、世界も注目していたと思います。いずれにしましても、アメリカと全く路線が異なって、ドラスチックに台湾との関係を切り、中国との国交をあえて清水の舞台から飛びおりるつもりで正常化された政府が、そのベースで獲得される具体的な、実務的な最大の所産というものは、航空協定に関しては、私はこの路線であったと思いますが、それが残念なことに覚書きにもうたわれていない。  しかし、お聞きしますところ、日本が他国に先んじてオプションだけはとったという、その政治的なオプションというものの保証、要するに政府はどの程度確信していらっしゃるのでしょうか。これから他の国が中国とこの路線についての交渉をしていくときに、その間世界の情勢の中にいろいろ変化があるかもしれませんが、いかなる変化があろうとも、日中国交正常化ワク組みが続いている限りは、日本が他国に先んじてこのルートのオプションを持っているのだという確信をどの程度お持ちでしょうか、外務大臣にお伺いします。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 イスラマバードー北京線は、いまパキスタンだけに開かれている空路と承知いたしております。なぜそういうことになったかと申しますと、御案内のように、印パ戦争がございまして、インドとパキスタンの間柄から申しまして、パキスタンの選ぶ道として、ダイレクトに中国に入る空路を考えられたことと思うのであります。そこにはいまパキスタンの飛行機だけが飛んでおりまして、中国民航も飛んでおりませんし、いわんや第三国は飛んでいないわけでございます。  私は航空の専門家ではございませんので、このルートが本来国際航空路の中で、安全その他の面から見まして定着した幹線ルートになるのかならないのか、そういう判定は私にはちょっとできません。できませんが、いませっかく政治的な問題としての判断を求められたわけでございますが、将来このルートが、国際的な幹線として十分たえるルートになり、そして中国民航その他第三国もここを飛べるという、また飛ぶ環境が出てくるという場合に、日本がディスクリミネート、区別されて取り扱われることになったらたいへんだと思います。これは将来の課題にしようじゃないかということでございますが、協定にうたわれてございませんけれども、これを保証する道は日中関係の重さだと思うわけでございまして、日中関係というものが、第三国にも与えられながら、この路線日本には認められないなんという日中関係運営をわれわれがやっておっていいものかどうかということになりますと、答えはおのずから明らかだと思うのでございまして、私は、第三国日本が区別されるなんということは全然考えておりません。
  25. 石原慎太郎

    石原委員 その外務大臣のおっしゃる、日本が将来他国とディスクリミネートされないような期待というのが出てくると、私はちょっと非常に不安になるのです。つまり、よい意味で、われわれに有利な意味で、われわれが他国から差別されるというならわかりますけれども、これだけあえていろいろなことをされて、なおこの協定が妥結された現在そういうことをおっしゃると、非常に私は不安なんです。  われわれはたいへん大きな譲歩をしたと思いますし、またこれから数年先に、地図に線を引いてみればわかることですけれども、地球はますます狭くなるだけに、より最短距離というものを交通関係者は望むでしょうし、そういう、だれが見ても将来ますます客観的な価値を持つルートというものを、できるだけ他国に先んじて日本が強いオプションのもとに獲得してこそ初めて今度の航空路があるいは数年先に正当な評価を受けるということになると思います。  現在の段階で、あらためてお聞きしますけれども、この航空協定交渉によって、日本が、あの非常に短距離の路線を指向している他国に一歩、二歩水をあけたという認識は持てないのでしょうか。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 英国、フランスその他ヨーロッパ各国と中国との関係、それから日本中国との関係、こういうことは比較にならぬわけでございます。また、以遠便と申しましても、北京以遠という意味がヨーロッパと日本と全然違うわけでございまして、これを同じベースで比較するということはナンセンスだと思うのであります。  私が申し上げる意味は、日中関係の重さというものは、中欧関係中国と欧州関係というような関係とは比べものにならぬと思っておりますので、その点には一まつの不安もないのでございます。石原委員 次の問題に移りますが、運輸大臣にお伺いしますけれども大阪空港の問題が、私は今度の協定経済的な見地から見ての一つのネックになっているという気がするのです。  御承知のように、大阪空港に対する国際線の申し入れば非常に多うございますし、こちら側の原則としては新規乗り入れ、増便はしないということでありますが、今回、中華航空に差しかえて中国の飛行機が飛んでくるということを政府は了承なさったわけですけれども、現に、キャセイをあやつっております英国は、大阪-ソウル線というものを日本が拒否したために、その報復処置として香港-シドニー線というものを切ってまいりました。  こうした報復の可能性が当然あると思いますけれども、私は、その報復の可能性というものがある限り、今度の協定のプラスマイナスはいろいろな面がありますけれども、この報復の可能性というものは、やはり今度の協定のマイナスといいますか、一つの不安の拠点になるという気がいたしますけれども、その点いかがお考えでしょうか。
  27. 徳永正利

    徳永国務大臣 御指摘のようないろいろな問題を含んでおると思いますけれども、その時点になりまして、どういうふうな組み合わせになりますかということは十分考えていかなければならぬと思います。台湾の中華航空は大阪乗り入れを御遠慮いただくということでございますし、それらの点等も組み合わせまして、そういうおそれのないような措置を今後とっていきたい、かように考えております
  28. 石原慎太郎

    石原委員 しかし、現実に、すでにキャセイというのは、今回の問題が起こってくる前に、大阪空港の現在の規制というものを踏まえての日本側の主張をいれずに、はっきりと報復手段をとったわけです。  日本中国は、他国に比べて特殊な関係があるというのは一つの主観でしょうが、それが国際的に通じるか通じないか、わかりませんけれども、他国が、今回の中国機の乗り入れ、中華航空にかわった乗り入れというものを見届けた上で報復の処置に出ようとしたときに、政府としては、その他国の、要するにそういう報復の主張というものを説得する自信はお持ちなんでしょうか。
  29. 徳永正利

    徳永国務大臣 大阪空港は、御存じのように、いま特殊な騒音障害空港でございますから、いろいろ前にそういうキャセイ航空の問題があったわけでございます。しかし、今度の場合は、先ほど御説明申し上げましたように、台湾の中華航空が大阪の乗り入れを御遠慮願う、そのかわりということでもございませんけれども中国民航乗り入れが大阪になるわけでございますから、そういう面において、他の外国との航空路線の混乱というものは十分説得し得るし、また問題は派生することがないような措置をとってまいらなければならぬ、またとれるものだと私は考えております。
  30. 石原慎太郎

    石原委員 時間がございませんので、防衛庁の関係者と外務大臣にそれぞれ質問して終わりますが、いままでるるいろいろな討論がございましたけれども経済的に見ては、明らかに平等性を欠いている。しかし、そういうものを国際政治にのっとった、これからいろいろな中国関係――現時点で、あくまでも現時点での外交的な価値、政治的な価値というものがいろいろ相殺し合って、外務大臣は、この協定というものは決して不平等ではないという評価をされているわけでしょうけれども、ならば、経済的な不平等性、それもいろいろな論があるかもしれませんが、そういうものを上回る、この協定のつまり外交的な、政治的な価値というものをわかりやすく御説明願いたい。  と同時に、防衛庁の方にお伺いしますけれども、この協定によって台湾との路線が切れた。台湾の去就が非常に注目されているわけでありますが、日本の安全と防衛の問題に関して――少なくともこの協定の実現によって、私は、日本の安全と防衛に関しては、一つ非常にマイナスな問題が起こってきた、つまりいままで以上のある危惧というもの、不安というものがあらためてもたらされたという認識をせざるを得ないと思います。つまり、いままでの日本の安全と防衛の状況というものがプラス・マイナス・ゼロであったとするならマイナスの要因がふえたという認識をせざるを得ないと思いますけれども、防衛庁としてどういう見解をお持ちかということを、あわせてお尋ねいたしまして、質問を終わります。
  31. 大平正芳

    大平国務大臣 国交を持ちまして一年有余になるわけでございまして、この両国の間に実務協定――航空協定も含めまして実務協定を結ぶということは、きわめて当然の道行きでございますし、そのように両国は早く締結交渉を開始しようということで合意いたしましたことは、御案内のとおりでございまして、まず、この当然の道行きとしてたどるべきことをやってまいるということは、われわれの一つ責任であると考えておるわけでございます。経済的な問題もいろいろありましょうけれども、そういうことを怠っておるということ自体がおかしいと私は考えておるわけでございまして、なるべく早くこういうことはやっていくべきことが、日本外交姿勢、国際信用をつなぐ上から申しまして、当然の道行きと考えておるわけでございます。  それから、世界の中でそれぞれの国々、非常に個性的な体制を持ち、信条を持っておるわけでございますが、その間に交流を幅広く進めてまいるということは、それぞれの国民の利益ばかりでなく、世界全体の、一つ世界を目ざしての努力の中の歩みといたしまして、当然追求していかなければならぬことだと思うのでありまして、この航空協定ばかりでなく、貿易協定にいたしましても、海運協定にいたしましても、その他の協定にいたしましても、そういう意味で評価しなければならぬことと思うのでございます。  ただ、この問題が、ほかの実務協定と比べまして、たいへん政治性を帯びてきたということは、隠れもない事実でございます。そして私は、それはそれなりに私自身も理解できるわけでございます。中国問題というのは、日本にとりましては、裏を返して言えば、台湾問題なんでございまして、この台湾の問題を中国政策の中でどのように位づけてまいるかということが、戦後、石原さんも御承知のとおり、歴代の政府が苦吟を重ね、苦悶を重ねてきた問題なんでございまして、このことが正常化を契機といたしまして、その原則ワク組みの中で一つの接点にぶつかったわけでございますので、これは技術的な協定ではございますけれども、そこの接点で、政治的に発火したという性質のものだと思うので、これがとりわけ日本の国内におきまして、高度の政治性を持ってきたことは、十分私は理解できると思うのでございます。  わが党内におきましても、いろんな白熱の論議が行なわれて、そのこと自体は、私はふしぎなことではないと考えております。しかし同時に、これは避けて通れない道であると思うのでございまして、そしてしかもそれは非常に明快な回答が可能である道とも思わないのでありまして、お互いがこの非常に困難な、現実に課せられた問題をどのように解きほぐしていくか、狭い道ながら安全な道をどうさがし求めてそこへ行くかという問題は、これから先も私は、われわれが背負った十字架であると考えておるわけでございます。いま感想を言えといえば、私は、そんな感じを持っております。
  32. 石原慎太郎

    石原委員 局長、純粋に防衛的な見地から……。
  33. 久保卓也

    ○久保政府委員 今日のところは、航空機の飛行に関する範囲にとまっておりまするので、私どもといたしましては、日本の安全保障上、特別の障害が生じたというふうには感じておりません。しかしながら、台湾側の態度は今後どういうふうに発展するかどうかという問題がありまして、たとえば警戒水域というのを台湾はとっておりますけれども、そういうような海上にまで問題が発展するかどうかというようなこと、それから日米安保体制がありまする反面、米華条約もあるわけでありまして、米国としてはきわめて微妙な立場に現在立っておるわけでありまして、今後の問題としてデリケートな要素をはらんでおるということは、私どもも感じております。
  34. 石原慎太郎

    石原委員 終わります。
  35. 木村俊夫

    木村委員長 水野清君。
  36. 水野清

    ○水野委員 私の持ち時間、非常に短いわけでございますから、簡単にお答えをいただきたいと思いますが、最初に、今回の日中航空協定締結にあたって払われた外務大臣運輸大臣の両大臣の御努力に対して、私は敬意を表するものであります。  ところで、この日中航空協定調印の際に、台湾中華民国政府から、台湾防空識別圏、これは東経百二十三度でございますが、これから西に入ってきた日本航空機の安全を保障しないというような、ことばは違いますが、声明が出ております。それからさらに東経百二十四度のFIR、飛行情報区に入ってきた航空機に対しても不穏な声明があったことは御承知のとおりであります。  私は、この声明を見て直感したわけでありますが、これは台湾政府日本政府に対する、あるいはわれわれ日本人に対する一種の外交的な恐喝ではないかというふうなことを感じたわけであります。香港へ行く日本航空の飛行機が台湾上空を飛べない、これは向こうの主張は当然であります。しかし、御承知の、いま申し上げた東経百二十三度の防空識別圏の西には、日本の領土である与那国島が半分入っております。それから東経百二十四度のFIRの西にも、西表島という島が入っております。これらの島々には、当然島に帰属する日本の領空権というものがあるわけであります。それにもかかわらず、一方的に台湾側から、この両島の周辺まで含めて防空識別圏あるいはFIRの中に組み込まれているということについては、今後非常な問題が残ってくると私は思います。  このことについて日本政府は、いま日台関係を慎重に考慮するというお立場から、あまり議論をなさらないようでありますが、これは将来台湾中華民国政府の帰属から中華人民共和国の帰属に入っていく――帰属ということばはちょっと違いますが、勢力圏に入っていくという事態になっても、私はやはり一つの問題は残ると思うのでございますが、どうも最近、拝見をしていると、日本政府は、金持ちけんかせずというのか、あまりこのことについて争おうとしておられない。まあ、いま争いをするという時期ではないと思いますが、むしろ、日本防空識別圏台湾航空機が入ってきた場合も、どうぞ自由にお通りください、こういう発言すらしておられますけれども、このことにつきまして、まず防衛庁のほうから、法律的にはどういうものであるか、また両大臣から、今後はどういうおつもりでこの問題を政府として処理をしていかれるか、この二点について御答弁をいただきたいと思います。
  37. 久保卓也

    ○久保政府委員 防空識別圏と申しますのは、それぞれの国が自分の国に対する防空あるいは領空侵犯に対する措置を講ずるために、それぞれの国内措置によって講じられておるものであります。FIRのほうは国際的なものであります。したがいまして、本来は重複してもよろしいのですけれども、従来の経緯がありまして、フィリピン、日本あるいは沖繩、韓国、台湾と、それぞれちょうど重複しないように設定されております。そこで、これを越えたから本来要撃されるというような筋合いのものではございません。  ただ、台湾は従来特別の国際情勢下にありますものですから、日本よりも、従来でも相当強硬な措置が講じられておりますが、今回、いま御指摘のように、与那国の上空を日本防空識別圏が通っておりますが、与那国については日本の領土でありまするので、領空三マイルというものについて、台湾側で法律的にはとやかく言われる筋合いのものではない。領空に台湾政府航空機すら入れないはずでありまするから、条約的に申せば、日本航空機は自由に与那国に入れるものであるというふうに私は思います。
  38. 寺井久美

    寺井政府委員 FIR航空情報区の件につきましてお答え申し上げます。  FIRと申しますのは、ICAOの第十一附属書に規定されておりまして、飛行情報業務及び緊急業務が提供される空域ということになっておりまして、本来、領土とは関係なく、航空機の航行をスムーズにかつ安全に移管をするための区域ということになっております。したがいまして、御指摘のようにこのFIR日本領土を越えるところで引かれておりますが、本来、日本の領土内を航行する航空機につきまして必要な情報が提供されるのは当然であるという考え方に立っておりまして、台湾側もこの点についてはあまり問題にしておらないというふうに考えております。  それから、この声明によりますと、台湾側としては、日本が支配する空域に入らないときめたので日本側台湾のコントロールする空域に入らないでくれということでございまして、許可なくして空域に入るということを禁止しておるという趣旨に解釈いたしております。  これをICAO的に申しますと、それはどういう航空機であるかといいますと、国籍不明という概念ではございませんで、むしろフライトプランが提出されていないかあるいは隣接管制部からの管制移管がなされないで航空機が入ってきたというような場合でございまして、このような場合に、当該航空機に対して必要な情報を求め、かつ安全上の措置をとるというのが、ICAO的な考え方であろうかというふうに考えております。
  39. 水野清

    ○水野委員 私の質問時間はわずかでありますから、これで終わりますが、どうも私は、最近の日本政府の置かれている立場というのは、この台湾政府の声明についてもそうでございますが、韓国の政権の最近日本に対する態度もそういうふうに感じております。あるいはこの前あった、これは非常に立場は違いますが、シンガポールのハイジャック事件、クウェートにおける大使館の占拠事件でもそうでありますが、日本という国は、ともかく恐喝に弱いのじゃないか、からだは大きいけれども、非常に金持ちそうでいいかっこうをしておるけれども、おどかせば飛び上がって驚くのじゃないかという印象を国際的に非常に植えつけられつつあるように私は思うのです。これはたいへんなことだと私は思います。  先ほど外務大臣から、日中航空協定締結に対して非常な御尽力をなすって御苦労のあったこと、あるいはお考えが披瀝されましたけれども、ともかく、一ぺんきめた国の政策とか方針ということをぐらつかせないで、日本政府というのはきちんとしておる、言い出したことについてはきちんと筋を通す国家であるということを諸外国がわかってもらうような外交をひとつ展開していただきたい、こういうことをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  40. 木村俊夫

    木村委員長 堂森芳夫君。
  41. 堂森芳夫

    堂森委員 去る四月の二十日に日中両国航空協定調印されまして、そして五時間後には日台航空路線が断絶される、こういうことが発表されたのでありますが、いわば一昨年の日中共同声明両国国交正常化の土台、礎石をつくったということができるのでありまして、今回の航空協定調印は、両国の連帯のあかしを今度は高々と掲げた、こういうことがいえると思うのであります。そして、従来の両国関係一つの大きなエポックをここに画したということがいえると思うのであります。われわれは早くから国交正常化を叫んできた。私は、やはりわが党はそういう立場を終始一貫早くからとってきた名誉ある党であるということを自負を持っておるものであります。そして同時に、国交正常化共同声明調印が行なわれると、一日も早く航空路の開設、航空協定の成立、調印、そういうことを主張してきたのでありまして、今回それが実現を見たということは、非常におそくなって、いろいろとわれわれには意見はあるのでありますが、その実現を心から喜ぶものであります。  そこで、いつから日中両国のこの航空路が開かれるのか、いろいろと新聞等には推測の記事が出ておりますが、まだわれわれの委員会では一いつごろから東京-北京間の航空路が開かれる予定であるのか、そういう見通し等について政府の答弁をお願いしておきたい、こう思うのであります。
  42. 大平正芳

    大平国務大臣 この協定は、いま衆議院で御承認のための御審議を願っておるわけでございまして、衆議院の御承認を得まして、参議院の御承認を得て発効するわけになります。で、現実のフライトが開始するにあたりましては、日中双方ともそれだけの用意を、準備をせなければならぬわけでございます。したがって、まず第一に、この準備はできるだけ早く急ぐということでございまして、ファーストフライトはできるだけ早く開設の運びにいたしたいということ、それが方針でございます。  しからば、それは一体いつごろの見当かということでございます。そのことにつきましては、いろいろな観測が流れておるのでありまするけれども、具体的に何月何日にということを日中双方で合意をいたしておるわけではございません。できるだけ早くいたしたい、準備を急いでファーストフライトを早く飛ばしたいということで、せっかく用意を急ごうじゃないかということでございます。
  43. 堂森芳夫

    堂森委員 それはできるだけ急ぐという御答弁でありますが、しかし、日本政府政府でいろいろプログラムをお持ちでありましょうし、当然そうした準備体制にもう入っておられるのであります。もう少し具体的に御答弁を願っておきたいと思います。
  44. 大平正芳

    大平国務大臣 日中共同声明が発出されたのは一昨年の九月二十九日でございます。で、ことしは二年目に当たっておりますので、中国側といたしましては、この二周年記念というところをめどに飛ばしたいという御意向が非常に強いわけでございます。私どもといたしましても、それを努力目標といたしまして、せっかく準備を進めてみたいと考えております。
  45. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、政府希望といいますかあるいは目標は、九月の共同声明調印当時をめどとして準備をしておる、こういうふうに理解していいのでございますか。
  46. 大平正芳

    大平国務大臣 双方いろいろな用意が要るということは前提として申し上げて、二周年記念ということも念頭に置きまして、そういう時期までには何とか開設の運びにいたしたいものでございまして、そういうことを努力の目標といたしまして、鋭意準備を進めたいと考えております。
  47. 堂森芳夫

    堂森委員 まあ、秋までには東京-北京間四時間二十分ぐらいでございますか、四時間ちょっとで飛ぶ飛行機が両国からお互いに行き来する、こういうことになると思うのであります。それはたいへん大きな、重要な変化であり、またこれは、単に日本中国との間の航空路が開かれて、そしてこれが、飛行距離がほんとうに自然の時間帯の中に両国の人が置かれるような姿になるということだけではないと思うのであります。  私が申し上げるまでもなく、中国を抜きにしたアジア地域における、ある意味では全世界におけるともいえると思うのでありますが、あるいは平和の問題あるいは逆の戦争の問題、そうあってはならぬのでありますが、そういう問題あるいはアジア全体の問題等はこれは考えられないというような深い関係を持った国でもあるし、またわれわれもこれに対して、日中両国がそうしたアジアの全体の発展、平和等にやはり大きな貢献をしていくような、これは長期的な意義を持った今回の航空協定である、長期的な展望に立つならば私は重大な意義があると思うのであります。  そこで、さきにこの委員会で貿易協定承認されまして、国会を通過してこれが批准を終わった、あるいは今回はこの航空協定実務協定の第二番目のものである、これがまた批准をされる、そしてその後もさらに目下交渉が始まっておるかあるいは始められるでありましょう漁業協定、あるいは海運協定、まあ次々とそうした実務協定が結ばれていくと思うのでありますが、それらの実務協定も現在両国間でいろいろと討議が行なわれておると思うのであります。それからまた、今後のいろいろとプログラム等もあると思うのでありますが、これらについて局長から答弁を願っておきたいと思います。
  48. 高島益郎

    ○高島政府委員 日中共同声明第九項にございます実務協定の中で、これから締結交渉を急がなければならないものといたしまして、いま堂森先生御指摘の漁業協定、それから海運協定、二つございます。  漁業協定につきましては、専門家レベルの会議を先般北京で行ないまして、代表団は帰ってまいりましたけれども、今後五月の中旬から政府間の交渉に入りたいという先方希望に応じまして、大体北京締結のための交渉を行なう段取りにいたしております。私どもといたしましては、この交渉において何とか妥結に至ることを希望いたしております。  それから海運協定につきましては、先般の外務委員会でも御説明いたしましたけれども、双方の草案を交換いたしまして、その内容につきましてそれぞれ照会あるいは質疑応答を繰り返しておりまして、このほうもできるだけ近い機会に交渉をいたしまして締結を急ぎたいというふうに考えております。
  49. 堂森芳夫

    堂森委員 他の実務協定についての話し合い交渉があるかないか、あるいは他にいろいろと構想を持っておられるようでありますが、これもあわせて承っておきたいと思います。
  50. 高島益郎

    ○高島政府委員 先般御承認いただきました日中貿易協定との関連で商標権に関する話し合いをいたしておりまして、このほうはまだ結論を得ておりませんけれども、今後も続けてなるべく早い機会に合意に達したいと思っております。  それから工業所有権の問題もこの前貿易協定の御審議の際に問題にされましたけれども、このほうは先方の法体系が整っておらないので待っていただきたいということで、このほうは私のほうから交渉の過程で非常に強い関心を表明いたしまして何らかの合意を見たいということで先方に強く折衝したわけでございますけれども、何ぶんにも中国には工業所有権の保護に関する一般的な定めがないので、この定めをするまで待っていただきたいということでございますので、このほうはいずれそういう段階が来ると思いますけれども、現状ではございません。  それ以外に特に日中間にいま話し合いをしているような実務協定はございません。
  51. 堂森芳夫

    堂森委員 それでは外務大臣にあらためてお尋ねいたしますが、それらの実務協定、今後また幾つかのものが、海運協定、漁業協定等が締結される、こういうことのようであります。他にもある、こういう話でありますが、共同声明調印が行なわれて、航空協定、これは実務協定の最も重要なものだと私は思うのです。これが締結されて発効する、こういうことになってくると思うのでありますが、しからば両国の正常な国交関係が樹立されるためには、やはり平和友好条約というものが結ばれなければならぬと思うのでありますが、これらの締結の時期であるとか、あるいはその構想であるとか、新聞報道等では両国の間に何らかの話し合いがされているやに書いている報道もございますが、せんだって来外務大臣はまだそういう時期ではない、そういう段階にまでいっていない、こういうような答弁であったようにも記憶しておるのでありますが、この協定の国会承認の審議にあたってあらためてもう一度その辺の答弁を願っておきたい、こう思います。
  52. 大平正芳

    大平国務大臣 いま、御案内のように、実務協定をそれぞれ仕上げるべく努力をいたしておる段階でございます。これが終わらなければ平和友好条約に取りかからないという意味ではないわけでございますけれども、仕事の手順といたしまして、まず実務協定を急ごうということ、両国ともそういうことで実務協定の協議をいたしておりますことは御案内のとおりでございます。  平和友好条約の問題は、当然共同声明にもうたわれておりますとおり、この締結交渉をやろうということに両国合意いたしておるわけでございます。したがって、われわれもそろそろ構想を持ちまして、まず初歩的な先方との間の意見の交換というようなことをぼつぼつ始めなければならぬと思いまして、私、一月に北京をおたずねいたしました段階におきまして、関係者の間でその構想についてごく一般的な意見の交換はいたしたことがございますけれども、私のほうも、また先方もどういうものを構想すべきかというようなことにつきましてまだ固まった考えがございませんので、この問題につきましては、われわれのほうも十分検討をいたし、先方の御意見もいろいろ漸次固まってくると思いますので、そういう段階でひとつお話し合いを始めてみるというようにいたしてみたいと思っていますが、その時期はいつごろかという見当はまだ私にはつきません。まず当面の実務協定を仕上げるということにいま懸命になっておるというように御承知を願いたいと思います。
  53. 堂森芳夫

    堂森委員 もちろん両国の平和友好条約というものを結ぶ場合に、これは無理な質問のしかたか知りませんが、わが国は、中国との平和友好条約を結んでいく場合に、平和のほうに視点を置いていくような内容になるのか、友好に主として視点を置くのか、これは機械的に区別はできないと思うのですけれども、どちらに重点を置いていくようなことになるのか、どういうようなお考え外務大臣はお持ちでございましょうか。これも承っておきたいと思います。
  54. 松永信雄

    ○松永政府委員 日中共同声明におきまして、日中の平和友好条約締結するということを掲げておるわけでございますが、御承知のごとく一般的に平和条約と申しますのは、戦争状態があって、その戦争状態を終了させるために平和条約締結する、俗にいいます講和条約ということが普通平和条約といいます場合にはすぐ観念としては出てまいるわけでございますが、御承知のごとく日中間におきましてはすでに戦争状態は終了しているわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、この平和友好条約の視点、力点というのは、むしろ両国間の国家国家関係を規律していくべき平和的なあるいは友好的な関係、これを主たる内容とする条約であると考えているわけでございます。
  55. 堂森芳夫

    堂森委員 私はやはり、この両国条約は、日中両国がアジア全体の平和にいかに貢献していくかということに大きな重点を置かれた条約になるべきだと思うのでありますが、外務大臣の御所見も承っておきたい。
  56. 大平正芳

    大平国務大臣 平和的で友好的で末長く両国関係を規律するしっかりとしたものにしたいものだと思います。
  57. 堂森芳夫

    堂森委員 どうも、外務大臣のそういう答弁でありますから、それくらいにしておきます。  そこで、事務当局でけっこうですが、中華人民共和国政府航空協定を結んでいる国は幾つあるのでございましょうか。
  58. 松永信雄

    ○松永政府委員 中国が現在締結しております航空協定は、二十七カ国との間で締結をいたしております。
  59. 堂森芳夫

    堂森委員 それでは台湾乗り入れている国は幾つございますか。そして会社は、一国で二つあるいは三つある国もあるかもしれませんが、幾つの国から幾つの会社の飛行機が乗り入れておりますか。
  60. 松永信雄

    ○松永政府委員 ただいまの御質問台湾のほうでございますか。
  61. 堂森芳夫

    堂森委員 はい。
  62. 松永信雄

    ○松永政府委員 台湾のほうは、現在七つの航空企業乗り入れております。
  63. 堂森芳夫

    堂森委員 幾つの会社が……。
  64. 松永信雄

    ○松永政府委員 七つでございます。航空企業が七つ乗り入れをいたしております。
  65. 堂森芳夫

    堂森委員 七つの国で八社ですよ、アメリカから二つ行っているのだから。まあいいや、間違ってるけれど……。  そこで、中国航空協定締結している国が二十幾つあるわけですが、その中で台湾航空機乗り入れている国はございますか。
  66. 松永信雄

    ○松永政府委員 先ほど七航空企業と申し上げましたのは、日本航空がいますでに飛んでおりませんので、それを除いた数で七つと申し上げたわけでございます。  それから中国航空協定を持ち、かつ台湾に飛行機を飛ばしている国というのは、厳密な意味では現在ございません。ただ英国が中国とは航空協定を仮調印だけしておりますから、もしそれを加えるとすればイギリスということになると思います。
  67. 堂森芳夫

    堂森委員 あなた、また間違いをもう一ぺん言うから私は教えてあげますよ。日本をまぜずに七つの国が乗り入れておりますよ。アメリカ、韓国、香港、南ベトナム、タイ、マレーシア、シンガポール、そしてアメリカからノースウエストとそれからもう一つTWAですから、そういう会社、二つ行っているそうですよ。これは私は調べたのですから、あなたが間違いを二度も言うから……。まあいいや、その点は。  でありまするから、現在の世界のいろいろな国、二十何カ国は中国と、北京政府航空協定を結んでいるが、台湾乗り入れている国は、イギリスが仮調印はしているけれども調印ではない。調印している国は一国もない、こういう状況でございますね。  そこで私は、もう時間もありませんから大平大臣――ああ、それから運輸大臣いらっしゃいますね。けさ私、朝早く新聞を読んでおりましたら、大阪から五人ぐらいの人から電話がかかってくるのです。今度大阪と羽田に中国の飛行機が飛んでくるようになると新聞は報道しているが、きょう何か委員会があると知っておられるのですね、その席で運輸大臣に、せんだっての訴訟事件等で運輸大臣も公式に、もうこれ以上ふやさぬと声明をしておられるのでありますが、この委員会で、それは中国の飛行機が来ても、せんだってふやさないと言ったあの声明はきちんと守ってもらうようにあなたから念を押して聞いておいてくれ、こういうことでございますので、ここで大阪のほうを向けてひとつ答弁する意味で言っておいてもらいたい、こう思うのです。
  68. 徳永正利

    徳永国務大臣 それでは明確にもう一度明らかにしておきます。  ただいま、せんだってまではジェット機が一日二百六十回ということでございましたが、現在は二百四十回、二百四十回以上は飛ばさないという約束をいたしたのでございます。ジェット機二百四十回でございます。さらにエアバスを導入した時点で二百二十回までに切り下げたい、それから新幹線が福岡まで開通する時点において二百回に落とす、こういうお約束をいたしたわけでございますが、そのことはいまもちっとも変わっておりませんから、大阪方面の方に御安心いただきたいと思います。
  69. 堂森芳夫

    堂森委員 まあそのように必ず守ってもらいたいと、こう思います。  最後に、これは皮肉でなしに大平外務大臣にその所信を承っておきたいのでありますが、まあ田中・大平外交と、こう言いましょう。田中内閣ができて、あなたが外務大臣としてやってこられたこの日中関係の打開、国交回復、これはやはりわれわれとしては、たいへんおそかったけれども、あなたは功績があったと、こう思うのであります。しかし、功績ばかりじゃないと私は思うのです。  あなたがそうした外交を推進してこられた、田中総理とあなたが協力してやってこられた、まあこれはもちろんその功績を、私たち野党の議員でも認めるものでありますが、しかし、今回の航空協定が閣議で決定するまでの事情等を、われわれは自由民主党の外におってよく見てきました。私は、これはいろいろ申し上げたいことがありますが、自由民主党あるいは保守党の内閣は、戦後の外交を、日米安保条約日台条約を柱として、反共主義の外交をずっと展開してこられたと思うのであります。そしてこれを、日中国交回復のためにはやはり従来のそうした反共主義的な外交基本態度といいますか、これは転換せざるを得ない、こういうやはり意識がしておると思うのであります。  ところが、なかなか保守党の体質というものは、そういうものが簡単にはこれを転換していくことができないという事情もあることは、私もこれは理解できないのではないのでありますが、日中共同声明が一昨年調印されて、そして今度日中航空協定調印が行なわれた。この間における自由民主党の保守党の党内の事情を見ておりますと、田中総理や外務大臣は、党内の合意をつくっていくような努力をしておられなかったと私は思うのであります。  あるいは、いや、おれはしたとおっしゃるかもしれませんが、結果から見れば、しておられないと思うのであります。それに対して、あなたはどういうお考えをお持ちでございますか。いや、おれはしたんだ、こうお考えでございますか、私はしていないと思うのであります。いつでも長期的な見通しではなしに、党内の派閥のバランスをどうしてつくっていくか、そしてそれでまあ短期的なことをしていく、こういうようなことに終始をしてこられた、あなた方は実際の党内の合意をつくっていくという努力をしておられなかった、こう私は思うのでありますが、これはやはり日本外交的な進路として私は大きな今後の問題があると思うのでありますが、いかがでございますか。
  70. 大平正芳

    大平国務大臣 外交政策は国の命運にかかわる基本的なものでございまして、派閥次元でとらえるようなものでは決してございません。私ども日本の国際的立場を踏まえ、国益を体し、日本の国際的信用をになって、どんな困難がございましても基本外交政策は貫いていかなければならぬと考えております。  政府と自由民主党は、御案内のように政党内閣でございまして、政府と与党の関係にございまして、政府と与党は一体となって内政、外交を進めてまいる筋合いのものでございまして、政府、与党の間のコンセンサスをどのようにつくり上げるかということは、私ども日夜腐心をいたしておるところでございます。  堂森さんが、田中さんもおまえもあまり努力していないじゃないかということでございますが、私といたしましては、精一ぱいやっておるつもりでございます。今後もやってまいらなければならぬことと考えておりますので、さように御理解をいただきたいと思います。
  71. 堂森芳夫

    堂森委員 もう私は終わりますが、やはり日中国交正常化後の国交正常化意義というものはどんなものであるか、たいへん御無礼な言い方かもしれませんが、そういうものの認識があなたの党内にもっと正しく認識されるような状況へ持っていく努力が非常に足りなかった、こういうふうに私は判断しておるのでありまして、あなたは、足りなかった、いや一生懸命やっておるのだ、こういうお話でございますから、それ以上水かけ論はいたしませんが、ある意味では田中総理のリーダーシップにも疑問を持たざるを得ないような状況がこの一週間ほどは続いてきたということは、これは国民みんな見ておるのでありまして、私はこれに対して警告を発しまして、私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  72. 木村俊夫

    木村委員長 松本善明君。
  73. 松本善明

    ○松本(善)委員 日中航空協定締結は、わが党もこれを歓迎するものであります。いま同僚委員が質問をいたしましたけれども、今後の日中関係についてもう少しお聞きしておきたいと思います。  平和条約締結について、外務大臣はまだ時期は見当がつかないということを言われましたけれども、漁業協定は五月中旬からということでありますし、それから海運協定締結が近いということであります。当然に平和条約締結の日程にならざるを得ないというふうに思うわけであります。これについてはどのくらいのことを時期的なめどとして考えておやりになろうと思っているか、その点について伺いたいと思います。
  74. 大平正芳

    大平国務大臣 松本さん平和条約と言われましたが、平和友好条約のことでございます。平和友好条約につきましては、まだそういう時期的なめどを立てるまでに至っておりませんで、日中双方ともそれぞれこれにどういう内容を盛るのが望ましいかということにつきまして考えて、いずれ意見の交換をしなければならぬと考えておりますが、まだ時間的にスケジュールを立てる、めどをつけるというところまで正直に言っていっておりません。
  75. 松本善明

    ○松本(善)委員 政府台湾路線の継続について交渉しようとしているということでありますが、これについてはどういう考え方でおられますか。
  76. 大平正芳

    大平国務大臣 日中国交正常化が行なわれました段階で、日中両国政府首脳の間で正常化の原則ワク組みにもとらない範囲内におきまして日台間の実務関係というものの維持日本政府希望する、先方はそれを理解するということになっております。それはもちろん航空往来も含んでおるわけでございまして、現にそれから一年有余にわたりまして日台間の航空往来が従前のような姿で続いたわけでございます。  しかし日台間におきまして、貿易であれ航空であれどういう関係であれ、これを安定的に維持してまいる上におきましては、もとより中国側に十分の理解を得なければならぬわけでございまして、今度の日台路線維持につきまして私が長い間かかって中国側とお話し合いをいたしましたゆえんのものもそこにあったわけでございます。したがって、日台路線の再開ということは、当然そういう日中間基本的な了解の上に立ちまして、安定的な維持をはかるような姿においてこれを考えてまいるということでなければならぬと思うのであります。  それから第二に、そういうことを考えるゆえんのものは、日台間に旺盛な航空往来があるわけでございまして、需要のあるところ航空サービスがこれに対応していくべきは自然の道行きでございますので、こういう旺盛な航空往来というものを維持する。しかしそれを維持する態様は、共同声明ワク内におきまして、中国側の十分な理解のもとに安定的な維持をはかってまいるということ、そういうことを踏まえて今後鋭意検討していくべき課題だと思います。
  77. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういう場合であっても、当然のことでありますが、中華人民共和国中国を代表する唯一の政府であるという立場は完全に貫かれなければならないと思いますが、いかがでしょう。
  78. 大平正芳

    大平国務大臣 当然のことでございます。
  79. 松本善明

    ○松本(善)委員 台湾とそういう交渉をして、またかりにきまった場合に、それは台湾の蒋介石政権を政府として認めるわけにはいかないわけですから、そういう場合のできる協定というかそういうものはどういう性質のものと考えておられますか。
  80. 大平正芳

    大平国務大臣 私は、日本政府台湾交渉する立場にないのです。交渉はできないわけでございます。道がないわけでございます。ただ、先ほど申しましたように、日台間にはいろいろな実務関係があるわけでございまして、そこに生起する問題の処理は、政府機関ではできないわけでございますので、私どものほうは交流協会という民間の団体をつくり、先方は亜東関係協会という民間の団体をつくりまして、そこを窓口として接触を保って、話し合いの中で事実上の解決をいたしておるということでございまして、今後もその姿に変わりはありません。
  81. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういたしますと、たとえばそういう政府承認してないという国がほかにもあります。朝鮮民主主義人民共和国でありますとか、あるいは南ベトナム臨時革命政府でありますとか、そういうわが国との関係がない政府があります。そういうところとも民間関係でそういう協定なり交渉をするということはあり得るというふうに考えておられるわけですか。
  82. 大平正芳

    大平国務大臣 一つ中国中国一つであるという立場に立って、その一つ中国を代表する唯一の合法政府中華人民共和国政府であるということ、それは大原則でございます。したがって、日台関係処理におきましても、私は事実上の処理をいたしますにつきましても、中華人民共和国政府の十分の理解を得てやらなければならぬと考えております。そしてその理解を得まして、いま申し上げましたような民間レベルにおきましての接触によりまして事実上の処理をいたしておるということでございます。  朝鮮とベトナムについてのお話がございました。これは私は事情が違うと思っております。南越の場合は、わが国は唯一の合法政府としてサイゴン政府を認めておるわけでございます。したがって同じ筆法でまいりますと、サイゴン政府の十分な理解と了解のもとで事を処理していくのが筋道でございます。いま南越におきましてはそういう状況ではないのでございまして、臨時革命政府わが国が接触を持つということを私は考えておりません。
  83. 松本善明

    ○松本(善)委員 朝鮮民主主義人民共和国はどうですか。
  84. 大平正芳

    大平国務大臣 これは南北朝鮮究極の平和的な統一を目ざして対話が始まっておるということは承知いたしておるわけでございますが、それぞれの政権が了解いたしましてそういうことが可能であるという政治的な状況というものがまだ生まれていないわけでございます。中国における場合と状況が違うわけでございますので、そういう姿において北鮮との間で事を運ぶということをいま考えておりません。
  85. 松本善明

    ○松本(善)委員 ベトナム民主共和国とは国交は回復したわけでありますが、ベトナム民主共和国との空路についてはどういうふうに考えておられますか。
  86. 高島益郎

    ○高島政府委員 ベトナム民主共和国との間におきまして航空協定締結するということは、現在はまだ考えておりません。
  87. 松本善明

    ○松本(善)委員 考えない理由、障害その他、できたらお答えいただきたいと思います。
  88. 高島益郎

    ○高島政府委員 ベトナム民主共和国との間におきましては、国交樹立をいたしましたけれども、御承知のとおり、まだ大使館の相互設置にも至っておりませんし、基本的に今後両国間の関係を整理していかなければならない問題がございます。もちろん将来の問題といたしましては、先生御指摘のような実務協定締結ということは当然あるわけでございますけれども、現状におきましてそういうところまでまだ考える段階にないというのが実情でございます。
  89. 松本善明

    ○松本(善)委員 確かめておきますが、そうすると大使館の実館の設置ということが進んでいないので、まだ考える段階ではないというので、基本的に否定しているわけではない、こういうことですね。もう一度。
  90. 高島益郎

    ○高島政府委員 政府としましては、国交樹立した国との間におきまして諸般の実務的な関係を発展さしていきたいというのは当然でございます。したがいまして、そういう将来の可能性を私、否定する意味ではもちろんございません。現在においてそういう実務協定のことまで考える段階にないということでございます。
  91. 松本善明

    ○松本(善)委員 台湾の蒋介石政府日台路線停止の声明の中で、台湾FIR、ADIZを飛行することを許さないという措置をとった。これは先ほども同僚委員が質問をしたわけでありますが、こういうことを言う根拠は全くないと思います。この点についての運輸大臣防衛庁長官見解を伺いたいと思います。――この台湾FIR、ADIZのことですね。もう少し詳しく申しますと、その中には与那国島などの、先ほど来質疑がありましたけれどもわが国の領空も含んでいるわけです。そういうことを一方的に台湾政府、蒋介石政権が、わが国の領空の上を飛ぶことを許さないというようなことをいう根拠は、法律的には全くない、国際法的にも全く不法なことであるというふうに私どもは思うわけですけれども、この点についての運輸大臣防衛庁長官見解を聞きたい。
  92. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ADIZは各国がそれぞれ自国の防衛のために設定しておるものでありますから、それぞれの国の配慮によってなされておるわけであります。いま沖繩の与那国島上空を台湾のADIZが通過しているという問題は、変則な状態として沖繩が米軍の施政権下にあったためにそういうような形になっていると思いますが、それはわが国を拘束するものではない。したがって与那国への民間便も依然として飛行が認められておりますし、また一方において、台湾側中国大陸の内部までADIZを設定しておる。それは各国自由であります。  われわれは沖繩が返還されますときに、中国大陸への配慮としては、それまで真四角に設定しておりました米側の既設定のADIZについて、大陸の沿岸に近い北東部分を大陸部沿岸に沿って斜めにカットいたしました。そういう配慮はいたしております。なおまた、当然のことながら、隣の韓国あるいはソ連等の間における距離の近さということから考えて、それらの防空識別圏の設定については当然の配慮がなされているわけであります。  われわれとしては、相手国の領土、領空にそのようなものを設定しておりませんが、かといって私たちの国の領土、領空というものは、われわれが設定するADIZの中に組み込んでも何らおかしいことはない。これはおっしゃったように国際機構その他できめるFIR等とは違うのでありまして、その国が独自できめるものでありますから、そういう折衝や交渉等は必要ない。わが国姿勢が、領土、領空はわが国防空識別圏である、こういうふうに考える行動は実際とれるわけでありますから、それで問題はないし、台湾側がそれを利用して、既存の識別圏のために日本側に対して何らかのアクションを起こす、あるいはそのために日本側が実害をこうむるというようなことは全くありません。
  93. 徳永正利

    徳永国務大臣 航空管制の場合は国際的な慣例等がございますから事務的な面が多うございますが、航空局長から説明させます。
  94. 寺井久美

    寺井政府委員 お答え申し上げます。  飛行情報区と申しますのは、その区域の中におきまして航行の安全をはかるために必要な航空情報を提供し、かつ捜査、救難等を行なう区域でございますから、その中に入ってはいかぬという規定は本来ございません。ただ、所定の連絡その他をした上で入ることが安全上必要である、そういう性質の区域でございます。
  95. 松本善明

    ○松本(善)委員 先ほどの答弁では、許可なく空域に入ることを禁止する。許可なしに入れないということであって、フライトプランを渡したり、管制連絡をした場合には行ける、こういう答弁でありました。そういうことを言うこと自身も間違っているのじゃないか。わが国の領空を飛ぶことについて一々台湾の蒋介石政権の許可を得なければならぬ。そしていま防衛庁長官も、スムーズに民間航空も飛んでいると言うけれども、そういう手続を経た上で飛ばなければならないという道理は全くないと思いますけれども、その点についてはいかがでしょう。
  96. 寺井久美

    寺井政府委員 飛行情報区というものが設定されておりまして、それを通過いたしますときに相手の管制機関に通報をするという仕組みになっております。これはなぜ必要かと申しますと、そこに飛行機が飛んでおるということが確認され、空の交通整理が行なわれておりますので、そういう観点から通報し合うということになっておるわけでございまして、許可を得るとか得ないとかいうとちょっと語弊がございますが、現在問題になっております与那国島のわが領土につきましては、これは通報をし、向こう認識をするという範囲内で足りるというふうに了解しております。
  97. 松本善明

    ○松本(善)委員 もう一回聞きますが、先ほど許可を得て飛んでいるというのは取り消しますか。
  98. 寺井久美

    寺井政府委員 通常の管制機関内の受け渡しについてはフライトプランの承認を得て飛んでおります。これはそういうことでございまして、そういう仕組みになっております。したがいまして、許可ということばの持つ意味がややちょっと違いますが、フライトプランを出して飛んでおる、こういうふうに御了解いただければよろしいかと思います。
  99. 松本善明

    ○松本(善)委員 台湾の蒋介石政権はシカゴ条約から抜けているわけでありますが、この後の台湾政府とのFIR処理、これはどういうふうになっておりますか。
  100. 寺井久美

    寺井政府委員 ちょっと御質問を聞き漏らしまして恐縮でございますけれども沖繩FIR、現在米軍が管轄、運用いたしておりますFIR日本側が引き継いだ場合に台湾との関係がどうであるかという御質問と了解いたしますが、本件に  つきましては非常に技術的な問題でございますし、飛行機の航行の安全上何らかの取りきめ、飛行機の受け渡しの方法その他を取りきめる必要がございますことは御存じのとおりでございまして、これはそういう技術的な問題につきまして交流協会、亜東協会を通じまして、現在台湾側と話を進めている段階でございます。
  101. 松本善明

    ○松本(善)委員 五月十五日に沖繩FIRを引き継ぐという問題もあるわけですけれども基本的には台湾の蒋介石政権はシカゴ条約から抜けているわけですね。その関係をどういうふうに考えているかということ、そしてさらに、このFIRわが国の領空上まで及んでいるということについての手直し、そのことについてどうしようと考えているかということです。
  102. 寺井久美

    寺井政府委員 まず、最初の点でございますが、台湾政府がICAOから退いておりますので、ICAO条約上のFIRというものではございません。しかし、ICAOから脱退いたします際に、飛行情報その他については従前どおり提供するという声明をいたしまして、それが実態的に現在も続いておるというふうにわれわれ了解いたしております。これの法的な意味等につきましては外務省からお答えいただきたいと思いますが、実務上は私どもはそういうふうに了解いたしております。  飛行情報区の手直しの問題につきましては、ICAOの仕組みの中で、各関係国が集まりまして、一つ航空交通上最も合理的な線を引くという仕組みになっておりまして、これが現在わが領土が台湾FIRの中に入っておるというようなこともございまして、これは適当な機会にやはり修正をしていくべきだと思いますが、これはそれなりのICAOの中の仕組みの中で修正を進めていかなければならないというふうに考えております。
  103. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは外務大臣にもお聞きしたいのですが、この交渉政府としてはやるわけにはいかないはずだし、このFIR台湾の蒋介石政権がその国の中でかってにやっているというふうな性質のものである。ICAOの中でも、台湾の蒋介石政権は来ないわけですから、これについてはわが国としてはもう少し進んだ考えを持たなければならないはずでありますが、この点についての運輸大臣外務大臣見解をお聞きしておきたいと思います。台湾の蒋介石政権とは政府としては交渉することはできないはずです。
  104. 大平正芳

    大平国務大臣 いまも政府委員から御答弁申し上げましたとおり、交流協会、亜東協会の間で接触を持ちまして、亜東協会を通じて台湾当局に当方の意図が伝達されて、そちらの意図は交流協会に伝わるというような仕組みにおいて処理いたしております。
  105. 松本善明

    ○松本(善)委員 いま航空局長が言った、国際的に各国が集まってというけれども、ICAOからは台湾の蒋介石政権は抜けておるのだから、それは台湾相手にきめられることではない、日本がきめることになりはしませんかと、こういうことなんです。
  106. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 ただいまの御質問の点でございますが、確かに台湾はICAOから脱退と申しますか、とにかく現在はメンバーではなくなったということは事実でございます。ただ、そもそもFIRと申しますのは、先ほど来御説明がございましたように、民間航空の安全をはかるという趣旨でICAOというワク内でそれぞれの業務分担をきめた区域でございまして、これは情報提供のサービスを行なうということでございます。  したがいまして、そのような気象情報ですとかそれからその他の航空機の安全な航行に必要な情報を提供し得るところといたしまして、どの国も現在台湾の地域に実務的にサービスを提供し得る状態にないということがございますので、ICAOにおきましても、別に決議等があるわけではございませんが、その周辺諸国のFIRを広げて台湾の上空に及ぼすことをしないで、現実にまた台湾当局もそのサービスを続行するということで実際上運航されていると、そのように了解いたしております。
  107. 松本善明

    ○松本(善)委員 協定の五条の二項には、ICAOと同じような、「飛行の安全及び協定業務の能率的な運営のために必要な通信、航行援助、航空交通管制、気象情報等の役務を提供する。」こうなっております。これは、「自国の領域につき、」ということでありますが、こうしますと、本来は台湾FIRというものについても中華人民共和国交渉しなければならない筋の性質になるかとも思いますが、この協定五条でいいます「領域」というのは、中国側についてはどの範囲をいうのでありますか。
  108. 松永信雄

    ○松永政府委員 ここでいっております「領域」につきましてお答え申し上げます。  第五条に申しております「領域」というのは、本協定を実際に適用する見地からそれぞれの国内法が及んでいる全域であるということを意味していると考えております。これにつきましては、日中間に実体的な了解の食い違いというものは全くございません。航空協定実務協定でございますから、国内法が実施し得る範囲において適用されるということは事柄の性質上当然のことであると考えております。
  109. 松本善明

    ○松本(善)委員 それで少し締めくくり的にお聞きしておきますが、防衛庁長官、そうすると、台湾のADIZの上を飛行することは許されないということについては、日本側としては無視してよいという考えでいいわけですか。
  110. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは現実中国大陸の上もADIZが相当深く入り込んでおりますが、まだトラブルが起こった例は聞いたことはありません。台湾側のほうは、たとえば与那国島をとりますと、私どものとらえるのに一番近いレーダーとして宮古レーダーがありますが、これで上空では一万フィート以上しかとらえられない、台湾のほうは七千フィートでとらえられるというような違いがありますけれども、しかしこれは防空識別圏を設定して、それに対してアラート態勢に入り、スクランブルをかけるという実際の行動と完全に一致するかというと、そうではありませんで、そういう境界はありますが、しかしながら、それぞれ、たとえば中国と交錯しております点でも、大陸のほうは大陸のほう並みにまた防空識別圏は広げておると思います。  そういうようなことで、交差しているところもあるわけでありますから、日本として、わが国の領土、領海、領空というものの範囲内において、防空識別圏は与那国島の一番南からその領空、領海をとればよろしいということでありますので、それによってトラブルが起こらないことは――当方からしかけるわけではありませんが、台湾のほうから何らそれらの具体的な動きもありませんし、もともと論争のありました尖閣列島もわれわれの防空識別圏に入れておりますが、それについても台湾側のほうは何ら文句を言っていないということで、これはたいへん幸いなことであると思っております。
  111. 松本善明

    ○松本(善)委員 長官、防空識別圏をきめるということだけであればそのとおりかもしれません。しかし、その上を飛ぶことを許さないと言っておるということが問題なんです。それはほっておいていいのですか。あるいはそれはわが国政府としては無視をするということですか。
  112. 山中貞則

    ○山中国務大臣 現実にどのような事態が起こっているかでありますが、民間航空協定は確かに日中の取りきめと同時に台湾側停止という措置がとられました。しかし、わがほうは国内における国内便としての那覇-与那国間の飛行機が飛ぶわけでありますから、それについて私も心配をいたしましたけれども台湾側の情報提供、識別圏と関係のない、嘉手納を通じて与那国地域の気象状況を知らしてくれるという行為は今日まで引き続き行なわれているようであります。  これは民間航空機の話でありますから、運輸大臣の領分でありますけれども、そういうことが証明しておりますように、何らトラブルが起こっていない。起こったとすれば対応せざるを得ません。しかしながら起こっていないことは、台湾側の態度というものに私は非常な――問題は民間航空協定のことである、したがって、船舶その他の、日本の漁船等の漂流その他に際しても、あるいは飛行機についても、外務大臣から承れば緊急着陸等は認めるということでありますから、たいへんおとなの態度をとってもらっておる。したがって、防空識別圏というものが、線はありましても、私どもの線とかりに交錯しても、実際に何らアラート、スクランブル等の問題が起こっていない、いままでどおりやっていけるというのであれば、この識別圏の問題は両国が協議して定める線でありませんので、特別の問題はないし、将来も起こらないことを期待しているというだけであります。
  113. 松本善明

    ○松本(善)委員 私の言うのは、トラブルが起こってないから、いまの答弁をお聞きしましても、何かおとなの態度をとっているというようなことで容認をしておられるように思いますけれども、その上を許可なくして飛ぶことを許さないと声明しているわけですね。そのことがそのまま認められるのかどうかということを聞いている。トラブルが起こっていないからそれでいいという性質のものなのか、わがほうは無視をするのか、あるいは抗議をするのか、という問題であります。  無視をしていくのかどうかということを先ほど聞いたわけですけれども、この点について、実際上のトラブルではなくて、わが国の態度です。蒋介石政権がそういうことを言っているのだから、それについて、そういうことは認められない、許可なくして飛ぶことは許さないなんということはもちろん言えないのだ、そういう性質のものだということをはっきりさせて無視をされるのかどうか、こういうことなんです。
  114. 山中貞則

    ○山中国務大臣 外務大臣にお聞きください。
  115. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣、どうぞ。
  116. 松永信雄

    ○松永政府委員 国際法上の問題としてお答え申し上げたいと存じます。  防空識別圏、あるいはこれは防空確認区域というふうに称されることもございますけれども国際法上確立した概念というのはないわけでございます。ただ、国際法上の問題といたしましてはっきりしておりますのは、防空識別圏あるいはFIRというものによって領空ないし領土の限界、範囲がきまるということはあり得ないわけでございます。また、こういうものを設定することによって国際法上の一般原則、たとえば航海自由の原則でありますとか航行自由の原則が不当に侵害されてはならないということ、これまた当然のことであると存じております。したがいまして、先ほど防衛庁長官のほうからもお答えがございましたように、防空識別圏というのは、現在の時点におきましては各国がそれぞれ一方的な国内法によって設定している区域でございます。この区域を設定することによって、その範囲に許可なくして入ってくることはできないと言うようなことは、国際法上は認められないことであると考えております。  今回の台湾側の措置につきましては、これも先ほど御説明があったと思いますが、先方は自分のほうが入っていかないから、日本のほうからも入ってもらいたくないということ、これが趣旨であろうと考えております。
  117. 大平正芳

    大平国務大臣 いま松本先生が御指摘の点も含めまして、四月二十日台湾当局が声明を出されたわけでございますが、この声明を取り上げて、日本政府として何らかのまとまった意思表示をするつもりはありません。
  118. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、これは当然に国際法上の根拠もないということをいま条約局長も言っておるわけですから、無視をするというようなことを言うなり、これは間違っているというようなことを公にされるべきだというふうに思いますが、そういうこともおやりにならないのですか。国際法上根拠がないということはいま明らかになったわけですけれども、黙って見ているのですか。
  119. 大平正芳

    大平国務大臣 いま申し上げましたように、特にこの声明を取り上げて日本政府が意思表示をするという考えはありません。
  120. 松本善明

    ○松本(善)委員 それから、FIRについて変えるという問題ですね。与那国島の上について今回のような問題が起こってくるという状況もあるわけですから、変えるという問題は当然に考えなければならないのではないかと思いますが、この点については、運輸大臣いかがお考えですか。
  121. 徳永正利

    徳永国務大臣 いままでICAOの交渉と申しますか、そのいろいろな話し合いの上でそういうふうなことに今日までなっておるわけでございまして、それにいたしましてもこの問題については将来検討してまいりたいと考えております。
  122. 松本善明

    ○松本(善)委員 ICAOの会議はいつごろが予定をされており、わが国としてはどういう時期的なめどを考えておりますか。
  123. 寺井久美

    寺井政府委員 お答え申し上げます。  FIRに関します会議はICAOにおきましては大体五年に一度開かれております。仕組みといたしましては、ICAOの各地域の会議で一応のプランというものを定めるということになっておりまして、したがいまして、この次に行なわれるこのICAOのFIR会議というものは大体四年ぐらい先になります。
  124. 松本善明

    ○松本(善)委員 それからもう一つ。与那国島等の救難の場合、民間航空、定期航空の場合はフライトプランを出しておるということで一応済んでいるようですけれども、救難の飛行等について、これは支障なく行なわれておりますか。これは運輸大臣
  125. 寺井久美

    寺井政府委員 現在のところ、具体的に救難活動が行なわれたという最近のケースがございません。しかし、たとえば漁船の遭難等に関連いたします救難活動のために航空機が飛ぶというようなことについては支障なく行なわれるものというふうに考えております。
  126. 松本善明

    ○松本(善)委員 このケースにつきましては、中華人民共和国交渉する場合についても、あるいは台湾の蒋介石政権についていろいろ民間上の接触がある場合も、やはり中華人民共和国中国を代表する唯一の政府であるということ、それからわが国の主権は決して侵されないようにするということ、いわば平和五原則が完全に貫かれるようにする必要があるというふうに私ども考えております。その点について最後外務大臣にお聞きして、私は質問を終わりたいと思います。
  127. 大平正芳

    大平国務大臣 当然のことと、心得ております。
  128. 松本善明

    ○松本(善)委員 終わります。
  129. 木村俊夫

    木村委員長 渡部一郎君。
  130. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、ただいま議題となっております日本国中華人民共和国との間の航空運送協定に関し御質問をいたすわけでありますが、今日まで、この航空協定の審議にあたり、多数の論戦が自由民主党の中でかわされ、この国会提出にあたり難航しましたことにつき申し上げたいと思うわけであります。  一つは、この航空協定内容は、さきに発出されました一九七二年九月二十九日付日中共同声明の精神に基づくものであり、またその内容からいっても当然の事項がしたためられているものと思考されます。これに対して、自由民主党内の議論の内容について当委員会発言することは、政府との間でこの議論をするにあたって不当である面もあると思いますが、問題はこの共同声明内容が与党内部に理解されていなかったということを感ずるわけであります。すなわち、台湾を捨てることがいいか悪いかとか、この際、共同声明を結んだことの責任論までが出ているということは、与党の権威を重くするものではなく、かえって日本国外交、ひいては与党、政府基本的な外交問題に対する認識を疑われるものではなかろうかと私は思うわけであります。  したがって、この点は、今後、日中国交正常化という路線において、すでに約二年間の時間を経過しているのでありますが、政府及び与党としては、日本国政府中華人民共和国政府との共同声明の原点に返り、この内容をもう一回理解せられて議論を立て直す必要があるのではないか。そうでなければ、この論戦を見ている限り、中華人民共和国政府側としても、これは日本は何を考えているかという議論になりかねないばかりか、日本政府というのは、かくも約束したことに関して不安定な理解を示すものであるかという意味で、国内的な政治葛藤が国際的に影響を及ぼすものになるとまず思うわけであります。またその次に、国際的に日本外交問題に対する不理解、不見識というものが如実にあらわれてくるのではなかろうかと、私ははなはだ遺憾に思う一人であります。  したがいまして、与党も代表されて、与党から選出されておられる政府の代表として大平大臣に申し上げるわけでありますが、外交当局者として、もう少しこの共同声明内容その他についてよく理解をさせていただく努力が必要ではないかとまず思うわけであります。
  131. 大平正芳

    大平国務大臣 外交基本は、国際的信用を基本に置いて確保してまいらなければならぬわけでございます。日本国と外国との間の交際におきましてこの基本線をくずしていけないことは当然仰せのとおりでございます。したがって、与党はもとよりでございますけれども日本の各野党それから国民全体に、日本政府外交方針につきましてこなれた理解を願って、そうして外交政策がよどみなく推進されて、国際的な理解信頼が高まってまいるようにいたさなければならぬことは当然のことと考えております。そのために政府といたしまして、とりわけ外交当局といたしまして、そういうことのために努力をしなければならないという仰せも渡部委員の御指摘のとおりでございます。  問題は、そういう任務に私ども外交当局が十分事をなし得ておるかどうか、十分の評価をちょうだいするだけの努力をいたしておるかということでございますが、私どもといたしまして、与えられた能力、与えられた要員、仕組みの中でできるだけの努力はいたしておるつもりでございますけれども、必ずしも国民全体の御期待にこたえておると自負するわけではございません。これから一そう努力をいたしまして、仰せのような趣旨に沿っていかなければならぬと考えております。  しかし、あなたが御指摘されましたように、とりわけ与党との間に多くの摩擦が起きるようでは心もとないじゃないか、国内的にも国際的にもそのことは心配があるではないかという御指摘はよく理解できるところでございまして、私どもをささえておる与党との間に間然するところなき理解と協力体制を打ち立てていくことがまず非常に大事であることは私もよく承知いたしておるわけでございまして、そのために努力をいたしておるわけでございまして、本協定をめぐりまして対与党関係の折衝でコンセンサスを得べくコンセンサスをお願いする段階におきまして相当の時間を経過いたしましたことは、まことに私並びに外交当局の力量の不足でございまして、この点は十分反省いたしまして、鋭意御指示のような線に努力をしてまいるつもりであります。
  132. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は自民党の外交政策に対して全部支持しているわけではありませんし、この問題に関してと言っているわけでありますが、歴史的に見て日本のアジアとの関係というものは、日本外交問題というのは要するに中国問題であったと一口に言えるかと私は思います。また、中国問題は、これはまさに最近に至っては台湾問題であった、こう思うわけであります。日本の今回のしくじりは、台湾問題に対する日本政府の態度が明確でないばかりかあとずさりをして、山に登ってからうしろへ戻ったような感じを与えることであります。これでは次の交渉をするにあたり外務当局は何をどちらの方向に向かって交渉すべきか疑わざるを得ない面も出たのではないかと私は思います。  私が責任を言いますのは、一つは機密漏洩事件として問題になった、与党内で議員が外交文書をばらしたわけであります。野党側の議員がそれを手にした場合には徹底的な追及が行なわれ、関係者は裁判所においてさばかれる。与党においては放恣なその行動が与党の内部のことだからといって甘やかされて放置される。これでは実際外務官僚としては仕事のしょうがなかろうと私は思います。また、これでは自民党外交の将来が全くもう信用のならぬものとして信を失うことは当然であろうかと存じます。  したがって、自由民主党は今度何かの外交行動をとろうとするならば、出直すことはともかくとして、いまのまま何かをしようとするならば、その辺からきちんとなさらなければならないのではないかと私は思います。野党に対してのみ責任を追及し、与党の議員の外交機密の漏洩に関し何一つ手を触れないとしたら、それは私は外交にならないと思う。むしろ与党に対してよりきびしくあってこそ外務大臣としてのその職責にふさわしかろうと思います。しかも、その書類はどこから漏れたかといえば、外務大臣運輸大臣の手元から、どちらかから漏れたとしか考えられないということを伺い、私はもうあきれ返っているわけであります。両大臣はこの問題に対してどういう見解を持たれるか、お答えをいただきたいと存じます。
  133. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのように外交を遂行してまいります場合に、その交渉内容、過程につきまして秘密にしなければならないものがございます。外交機密というものがあるわけでございまして、これを保護しなければならないという意味で国家公務員法におきましてもこれを保障する措置がとられておるわけでございます。  本件の場合、政府といたしまして事柄が重大でございますので鋭意事件の真相を調査いたしておる段階でございまして、この実相を十分掌握しないままの姿でこれをどうするこうすると申し上げますのは軽率のそしりを免れないと思いますので、この段階におきまして政府が申し上げられますことは、外交機密は守らなければならない、そしてそういうことの漏洩につきましてはきびしい態度で臨まなければならぬということ、そして今度の事件につきましては十分の事実の究明をいたしましてこれに対して適正な措置がとられなければならぬ、そう考えますが、事案そのものにつきまして目下調査をいたしておる段階でございますので、結論を申し上げるという段階には至っていないことを御承知いただきたいと思います。
  134. 徳永正利

    徳永国務大臣 外務大臣からるるお話があったとおりでございまして、私もそのように考えております。
  135. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 適正な措置というのは私はうなずけないわけであります。それはどういうのが適正な措置であるのか。少なくとも社会党の議員が質問をし、そして外交機密文書を当委員会に持ち出したとき、その外交文書の上の番号を見ただけでもどこから漏れたかがわかり、犯人が――犯人という名に私は当たらないとは思いますけれども、それが追及された。ところが、今回は、その文書を見、何が持っていかれたかわかっているのに、目下慎重な調査中というのは、政治的配慮があったとしか考えられない。そんな片手落ちなことでは話は逆戻りする、こう私は思うわけであります。適正な措置の内容というのは一体何なのか、それだけは私は言っていただかなければならぬと思います。
  136. 大平正芳

    大平国務大臣 法律は厳としてあるわけでございまして、事実は事実としてあるわけでございまして、事実を究明いたしまして厳正に法律は適用してまいらなければならぬ性質のものでございまして、そして国民の御納得をいただくような措置を講じなければならぬことは当然のことと思うのでありまして、その前提といたしまして事実を究明中であるということでございます。
  137. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 委員長にお願いしておきたいのでありますが、いまの外務大臣の御答弁は、真相を調査中であり、適正な措置をとるということであり、法律に照らして処置をするということであります。すでにそれをあげた人の名前がわれわれにはわかっており、そしてその持ってきた文書がわかっているわけであります。そうするならば、それに対しての処置は緊急でなければならぬと存ずるわけであります。そうでなければ、与野党に対する政府の扱いはあまりにも卑劣であります。野党のやった仕事については徹底的に追及する、与党のやった仕事については追及しない、こんなことでは当委員会の委員はあぶなくて審査ができないのであります。  したがって、外務委員長に申し上げるわけでありますが、これらについて早急に調査を終え、適正な措置を政府から報告させるよう、委員長にお願いしたいと思いますがいかがでしょうか。
  138. 木村俊夫

    木村委員長 いまの渡部一郎君からの件につきましては、後日理事会において協議した上、取り扱います。
  139. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ただいまの御処置を特にお願いして、次に私は、この共同声明の中から政府が見落としていることを一つ申し上げておきたいと思います。  それはこの共同声明の第七項「日中両国間の国交正常化は、第三国に対するものではない。両国のいずれも、アジア・太平洋地域において覇権を求めるべきではなく、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国あるいは国の集団による試みにも反対する。」日中共同声明はこう述べております。私はたいへん遺憾に思っておるのでありますが、いま中国のほうの状況、日本の状況ではなく、この交渉相手である中華人民共和国立場を考慮しなければならぬと存じます。  中華人民共和国の現在の最大の関心事は、対ソ問題であろうかと私は存じます。対ソ関係の軍事的緊張はすでに報道されているとおりであり、はでな諸外国におけるマスコミの一部においては、十一月戦闘開始とか、七月にその緊張が最高度になるとかという報道が伝えられております。また、最近わが国から北京を訪れる日本の使節団に対し、中国側が巨大な地下壕を見せた上、こういうものが必要な状況になってきた旨をすでに述べております。そして、それを日本人に理解してもらいたいと述べております。  わが国としては、この中ソの紛争あるいは米ソの紛争、米中の紛争あるいはその他諸国の紛争、わが国の周辺における巨大な武力衝突、そうしたものはいずれもわが国の平和にとって好ましくないことは言うまでもないわけであります。  したがって、本協定の推進にあたって、先ほどの外務大臣提案理由の御説明の中にあったわけでありますが、「この協定は、日中共同声明具体化として日中友好関係の強化に資するのみならず、」としるされていますが、私の意見では、日中友好関係の強化だけでなく、日中両国周辺関係の平和の維持のために役に立つように今後努力を続けていくことが大切だ、こう思っておるわけであります。  したがって、ソ中両国間の紛争、その相克というものに対し、今日までは横でながめておれば済んだような面もあったわけでありますが、今後は、それに介入しないとかその両国に加担しないとか、あるいは脅威を与えないとか、あるいはわが国に対する抗議の口実を与えないとか、そういうこまかい配慮が必要であると同時に、この両国間の火種を消すための努力ということも、わが国外交の中では必要な面が出てくるのではないか、こう思うわけでありますが、いかがでしょうか。
  140. 大平正芳

    大平国務大臣 世界が平和でありたい、そして日本はその立場において、日本の力量においてこの平和の創造に参加いたしまして、応分の寄与をしなければならぬことは、わが国外交の重要な任務であると考えておるわけでございます。みずかちの立場を踏まえ、みずからの力をはかり、平和の創造に参加してまいることが外交の非常に大事な任務であると思うのであります。  したがって、中ソの間ばかりでなく、世界に生起いたしておりまするいろいろの緊張が少しでも緩和の方向に向かいますように、そのことのために日本でできることは、労を惜しまずやるべきことと思うのでございまするし、日本自体の外交政策におきましても、そういうラインに沿って努力してまいることは当然のことと思うのでございます。  そして、いま現に日本政府がやっておりますこと、私はそういうラインに沿って、日中問題それからその他多くの国々との間柄の問題の処理につきましても、そういう基本的な要請を踏まえて、それをはずさないようにやっておるつもりでございますが、もしこういう点はどうだという具体的に御指摘がございますれば、答えさせていただきたいと思います。
  141. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 具体的に指摘をせよというお話でございますから申し上げるのですけれども、それは外務大臣のほうがほんとうは具体的にお考えになる必要があろと私は述べておるわけなんですが、一つ申し上げておきたいのは、最近シベリア鉄道であるとかあるいはチュメニ油田の開発であるとか、たくさんのプロジェクトについてのソビエト側との話がございます。その間において、中ソ紛争のこれ以上の激化あるいは戦闘行為の発生等については好ましいことでない旨の意思表示をわが国がすろということは、内政干渉ではないと私は思っておるわけであります。  ところが、私が新聞その他からあるいは直接お伺いしたところでは、そういう御発言は一切ない。この両国間の激化した雰囲気を押える方向の御発言がないということは私は遺憾だ、こう思っておるわけであります。したがって、日本人はどさくさにつけ込んで商売だけをしていくというニュアンスが濃厚にあらわれている。これではエコノミックアニマルといわれるのは当然であって、両国から信望を仰ぐことはできないと思う。  中国から見ればおそらくいま最大の問題だとしていろこの問題に対し、日本側がいかに平和を求めておろかの意思表示は、強力な友好行為と受け取られることでもありましょうし、またソビエト側から見ても、この険しい対立というものが緩和する方向に向かわなければいけない旨の日本政府の意思というものは、ある意味でその政治行為に対して一つの判断要素になることは間違いない、私そう思うわけであります。  田中総理、大平外務大臣のこのチームが、さまざまな諸懸案を、いままでと違って猛烈にたくさんやっていられる時期であればこそそういう意思表示がなければならない。そうでなかったら、まるでそうしたことを抜きにし、そこの問題だけさわらないということは、逆にいうと戦争が起こったらいいと指をくわえて見ておるという印象すら起こりかねない。外交努力というのが公平に行なわれてないと私は感ずるわけであります。  したがって、その辺今後平和を東洋に維持するという面においてひとつ御努力をいただきたい、こう思うておるわけであります。
  142. 大平正芳

    大平国務大臣 中ソの間が平和であってほしい、紛争が激化しないでほしいという声明をしようがしまいが、そういうことは当然のことでございまして、声明するまでもない、日本国民全体の願望でございますことは明々白々であると私は心得ております。  第二に、シベリア開発との関連でございます。私ども日本はサイベリアばかりじゃございません。地球上全体のあらゆる資源保有国との間の信頼理解のもとで、わが国が生存に必要なる資源、食糧、原材料を求めてきましたし、現に求めておるし、今後も求めていかなければならぬわけでございますが、しかしこの求め方は、渡部さんがおっしゃるように、日本の自家の利益だけを追求して、エコノミックアニマルであるというようならく印を押されるような姿であってはいけないことは当然でございます。  これは、資源保有国側と日本との間に、互恵平等の関係が確立されなければならないことと、それからそれら資源保有国と日本との間に、特定の資源保有国との間には非常に有利な条件を出し、あるいは特定の国には非常に不利な条件を提供していくというようなことでは、世界の信用は私は確保できないのでないかと思うのでありまして、いずれの国であろうとも、第三国が見ておりまして、日本のやっていることはわかるじゃないか、日本の置かれた立場において日本がやることは十分理解できる、自分が日本当局者であっても同じであろうというようなことを目安にいたしましてやってまいることは、私はぜひ必要だと考えておるわけでございます。  私ども、平和を希求するにどの国にも劣らない念願と悲願を持っておるつもりでございまするし、われわれは平和憲法を通じまして悲壮な決意を選択をいたしたわけでございまして、これを踏まえて、世界の信用を広く維持して、われわれがこの地球上で生存を続けてまいる上におきましては踏みはずしてならないことは、ちゃんと守ってやってまいるということで行きたいと思うのであります。  個々の資源の公正な確保ということについて、国際政治的な策謀というものにからまされないように、どのようにしてこれをフェアな条件のもとで、万国が納得できるような条件で確保するかという点にわれわれは心を砕いておるわけでございまして、その政府の真意は、渡部議員におかれましても十分御理解をいただきたいと思います。
  143. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは最後に、本協定に関し、大平外務大臣等の御努力に対し私は敬意を表したいと存じます。そしてこの協定だけでなく、今後実務協定の推進につとめられるとともに、先日、屋良沖繩県知事の訪中の際、鄧小平副首相の発言において、平和友好条約をすみやかに締結したい旨中国側の意思表示がございましたが、おそらくこれは思いつきではなく、中国側を代表する日本側に対するアプローチかと存じます。したがいまして、平和友好条約締結に関し、外務当局のテーマにあげ、御検討を賜わり、すみやかな締結促進をお願いしたい、こう思うわけでございます。
  144. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せの趣旨に沿いまして、鋭意努力してまいるつもりです。
  145. 木村俊夫

    木村委員長 永末英一君。
  146. 永末英一

    ○永末委員 私どもは、わが国中華人民共和国との間の航空運送協定が日中国交回復後、できるだけすみやかに締結せらるべきことを主張してまいりました。しかしこの協定締結せられるにあたっては、わが国がその他の国々との間にすでに行なってきた航空運送業務というものが著しく阻害をされたり、したがってまたわが国民の利益が阻害されないように政府当局は万般の用意をされ、準備をされて、その仕事を全うせらるべきであると考えてまいりました。  さて、政府は、この締結ができましたが、台湾との間にはいまや運航がないのでございまして、その点について、一体政府は十分な用意があったかどうか、われわれ疑っております。この辺のいきさつを中心にしながら、限られた時間でございますが、質問をいたしておきたいと存じます。  日中国交回復後、日本台湾との間には航空運航が行なわれてまいりましたが、これは何によって行なわれてまいったのでありますか。
  147. 寺井久美

    寺井政府委員 日台間の航空機の運航は、日中国交正常化後、運輸大臣の行政許可によって、台湾側航空機の航行を認めておったという次第でございます。
  148. 永末英一

    ○永末委員 日本国が、運輸大臣の行政行為によって、台湾から来る飛行機が日本の空港に着陸をし、わがほうの国内企業の飛行機が台湾の空港に着陸をするということが認められてき、現実に行なわれてきたということに対して、中国側からは異議を差しはさんだことはございますか。
  149. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほどの御答弁にも申し上げましたとおり、国交正常化の段階におきまして、日本政府といたしましては、国交正常化ができたが、そして外交関係台湾との間に切れましたけれども日台間の実務関係は今後とも正常化の原則ワク組みにもとらない範囲において維持してまいりたいという希望を表明し、中国政府はこれに理解を示されたわけでございます。そういう願望とそして先方理解の上に立ちまして、今日まで航空をはじめ、その他の実務関係が平穏に維持されておるわけでございまして、今日まで中国側からこれに対して異議を日本政府に申し入れられるということはございませんでした。
  150. 永末英一

    ○永末委員 台湾が、日台間の航空運送を停止するにあたって発しました声明の中で、次のようなことばがございます。これは外務省の仮訳によりますが、現行の中日――まあ、あちらは中日というのでございましょう。日台民航取りきめ云々、取りきめ、アレンジメントと書いてございますが、そういうものはあるのですか。
  151. 高島益郎

    ○高島政府委員 日中国交正常化の時点におきまして、日台間に存在いたしました条約及び協定類は、すべて失効いたしております。したがいまして、日本政府としてはそのような取りきめは一切ございませんが、台湾側の従来からの諸声明等によりますと、今回の声明も含めてでございまするが、そのような日中国交正常化以前の航空に関する取りきめが依然として存在しているかのような解釈をとっているように思われます。
  152. 永末英一

    ○永末委員 いまの御答弁によりますと、台湾側はかってなことを言っておるのであって、日本側がもうすでに存在しないと思っているものを存在しているかのごとく言っておるので、われ関せずえん、こういう立場のように伺うわけでございますが、先ほどの運輸省の説明でも、台湾航空機日本の空港に着陸する場合には、運輸大臣の許可、行政行為においてやっておると思いますが、わがほうの航空機台湾の空港に着陸する場合には、わがほうの運輸大臣が行政行為によってやるわけじゃございませんわね。あっちがやるのでございまして、そのことをやはり了承しておるというのは、両方に何らかのことがなければ行ない得ないことじゃないかと思いますが、その間のいきさつを明確にしていただきたい。
  153. 寺井久美

    寺井政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、日中国交正常化の時点におきまして、従来存在いたしておりました航空に関する行政取りきめというものが失効したという立場日本政府はとっております。したがいまして、台湾航空機日本乗り入れを認めておるという行為は、運輸大臣の行政許可に基づいて行なっておりました。台湾側日本航空機をどのように取り扱ったかということについてはさだかでございませんが、所定の申請書を出しまして、その許可を得て飛んでおりました。
  154. 永末英一

    ○永末委員 世の中のことは、この人生にはすべて縁暈、実体のへりがございまして、その辺に人生の機微があるのかもしれません。政治にもそういうものがあり、外交にもそういうものがあるのかもしれませんが、大平外務大臣、私は台湾側の声明を読んで、これは結局のところ台湾は、自分のほうの飛行機が日本に行くことをやめると言い、日本側の飛行機があっち側に寄ることを認めない、こういうことを言ったわけですね。なぜ言うたと思いますか、あなたは。
  155. 大平正芳

    大平国務大臣 直接台湾当局に問いただしたわけじゃございませんので、正確な答えにはならぬと思いますが、私が受けた印象を語れというのでございまするならば、この声明は、台湾当局として持っておる原則立場というものに対して、わがほうのとった措置が、台湾当局原則立場から申して受け入れがたいという抗議を表明したものであると思います。
  156. 永末英一

    ○永末委員 あっちの原文に即しますと、こういっておるわけですね。「大平氏が発表した荒唐無稽の談話の中で、中華民国の国旗を否定し、わが国の尊厳と権益に重大な損害を与え、」とこうある。どうもこの文脈から申しますと、「中華民国の国旗を否定し、」と、こういうわけです。あなたが発表されました談話の中では、こう言っておられるわけですね。「台湾航空機にある旗の標識をいわゆる国旗を示すものと認めていない」、こういうことがあなたの談話なんでございまして、この点がひっかかっているのじゃないかと私思いますが、あなたはどう思われますか。
  157. 大平正芳

    大平国務大臣 その点も一つだと思っています。
  158. 永末英一

    ○永末委員 飛行機にデザインをかいておるのは、どこの国の飛行機でもあることでございまして、あなたの談話にもございますように、中国政府が、日中国交回復後日本台湾との間に航空機の行きかいのある事実は理解を示してきた。だから、何ら異議をさしはさまなかった。中国政府は、日本台湾との関係は地域的民間関係であるということを表明してまいりました。私も伺ってまいりましたが、そのことはあらゆる場合に明確にしてきたのでございまして、そこになぜ突然日本外務大臣談話に――その台湾の飛行機に書いてあるデザイン、各国の航空機にその属している国の国旗みたいなものを書いてある飛行機もございますし、書いてない飛行機もございます。航空機というものは全部が全部その国の国籍を表示する国旗と同じものを書かねばならぬという規則もございません。何もないのでございますから、なぜあなたがこのときに突然国旗ということばを出されたか、そこをちょっと伺いたい。
  159. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、国交正常化後の日台間の関係実務関係維持でございますが、これは国交正常化原則ワク組みというものにもとらない範囲においてわがほうは維持したいという希望を持っておる、中国側はこれに理解を示したわけでございます。中国側といたしましては、国交正常化をいたしました以上は、そして中国における唯一の正統政府として日本国政府中華人民共和国政府を選択したという以上は、それにふさわしい態様ですべてのことが行なわれることが望ましいと中国側が考えられることは、私は当然理解しなければならないことと思うのであります。  問題は、じっと見ておると正常化後といえども正常化以前と全く変わらない姿において日本の首都と準首都に乗り入れておるということに対して、少なからぬ不満を持っておられたようでございます。しかし、いずれこれは日中間航空協定を取り結ぶということになるので、そのときにこういう問題をどのように取り上げるべきか、処置すべきかということを先方考えておったことと思うのでありまして、先方といたしましては、できることならこれは旗の標識とかあるいは中華航空というような社名というものについては御遠慮いただいたほうがよろしいのではないかという考えを持っておったし、また首都、準首都の乗り入れというような点につきましても、中国側としては正常化後のあり方として望ましくないと考えられておったようでございます。  しかし一方、台湾側といたしましても、この問題につきまして非常な関心を持たれておることも事実でございます。永末さんおっしゃるように、こんなものは一つの標識にすぎない、デザインにすぎないというドライな見方も私は成り立たないわけではないと思うのであります。しかし、今日のように中国問題という政治的な生きた現実の中におきまして、正常化後の日台関係のあり方としてこういう態様がそのままの姿でいいか悪いかという問題が一つございますのと、それから今後安定的に維持していこうという場合に、もんちゃくが起こらないようにちゃんとしておかなければならぬという問題があるわけでございますので、去年の春以来まさにその問題で私ども関係者は非常に頭を痛めてまいったわけでございます。  それで、中国側のそういう要請というものと台湾側考えというもの、これをどのようにどこにそれでは接点を求めて安定的な維持をはかる態様を目ざすかということを、ぎりぎりの問題を私どもとして非常に苦心をいたしたわけでございます。そしてこの一月の訪中の際に中国首脳とお話し合いを申し上げて、基本的な理解といたしましては、まず機体につけてある旗の標識それから台湾航空企業社名、そういったものはそのままということで自分たち理解しましょう、ただ正常化を遂げた後において日本政府はそれをどう認識しているかだけはせめて明らかにしていただかなければという中国側の要請があったわけでございまして、私どもといたしまして、この場合こういう方法、私の談話の姿で日本政府認識なるものを明らかにするということによってこの問題を解決することができるならば、まずこれがこの際における解決策として望み得る唯一のものではなかろうか、そう判断いたしたわけでございます。  卒然として談話が出たわけではないのでありまして、そういう背景を踏まえ、安定的に日台路線維持していく現実的な必要を踏まえ、こうすることがぎりぎりの判断である、そう考えてやったことでございます。
  160. 永末英一

    ○永末委員 まだ防衛庁長官等にも質問したいので、大平さん御苦悶の心はよくわかりますが、御答弁をひとつ最後のお気持ちのところだけ簡潔にお願いしたいのですけれども、あなた、これの報告の閣議の中で、これで日台路線が切れるかどうかということをほかの大臣が質問いたしましたら、神さんでなければわからぬ、こうおっしゃったようですが、ああいう談話を出してもまだつながると思っておられたのですか。あなたはそのとき神さまであったかどうかわかりませんが、どうですか。
  161. 大平正芳

    大平国務大臣 数次にわたりまして台湾当局が出しておる声明を読みましても、日本政府が非常に苦心をいたしたところ、配慮をいたしたところ、そういうものはあるいは御理解をいただけるのではないかという望みは最後まで私は持っておりました。
  162. 永末英一

    ○永末委員 問題は、中国側としましては、台湾に対し日本国家として扱ってきた、その国家としての扱いはやめたということがきわめて明快にきちっと出るということが一番重要な点ではなかったかと思うのですね。そうしますと、あなたの声明の中でおっしゃっていることばを引用すれば、日台間の航空は地域的民間航空往来である、そういう点の表現をきしりとすることによって問題が解決したのではなかったろうか。私から言わせますと、そこへ何も国旗などということばを言われなくてもよかったのではなかろうかと私は思います。またきょうの答弁でも、台湾のああいう行政の仕事をしている機関に対してオーソリティーということばを使われている。オーソリティーということばは日本語ではございません。いまあなたが言われたあれは日本語ではどう言われるのですか、それだけちょっと答えてください。
  163. 大平正芳

    大平国務大臣 オーソリティーとか当局とか、いろいろ言っているわけでございます。
  164. 永末英一

    ○永末委員 さて運輸大臣にちょっと伺いたいのでございますが、わが国の港には、中華人民共和国の船もそれから台湾の船も来ておる。同じわが日本の港に、旗で申しますと青天白日旗と五星紅旗と掲げた船が同じように並んでおる光景が見られると思いますが、御存じですか。
  165. 徳永正利

    徳永国務大臣 承知しております。
  166. 永末英一

    ○永末委員 その場合に、あとで中華人民共和国のほうの五星紅旗をつけた船が入ってくるとしまして、あそこに青天白日旗が見えるから追い出してくれというようなことはございませんね。
  167. 徳永正利

    徳永国務大臣 そういうことはございません。
  168. 永末英一

    ○永末委員 これは日本の入ってくるところが開港だからでございましょうね。そういうことを中国政府は事実関係として認めておる。そして日本台湾との事実関係をまた認めておる状態である。私はその意味合いで大平大臣がことばをいろいろ苦労されたと思いますが、国旗などということばをお発しになったことはきわめて重大な問題ではなかったろうかと私は評価をいたしております。これは私の評価でございますから。  さて、時間がございませんから進めまして、あっち側の声明に、台北のFIR、すなわち飛行情報区ですか、それに入って来たらあっち側の関係規則で何とかする、こういうことが書いてあるのでございますが、どうされるのですか、運輸大臣
  169. 徳永正利

    徳永国務大臣 ちょっといま質問の要旨が聞きとりにくかったのでありますが……。
  170. 永末英一

    ○永末委員 もう一ぺん言います。いまの時間ちょっと延長してくださいね、十分聞いておられぬのですから。  台北のFIR、すなわち飛行情報区にわがほうの航空機が入った場合には、あちらの声明によりますと、あっち側の関係規則で処置するようなことが書いてあるのでございまして、そうすると、われわれの航空機はあっち側のFIRの線の中に入りますよ、与那国がございますからね。どうされるのですか。
  171. 徳永正利

    徳永国務大臣 台湾当局の声明は、日本のほうにはわがほうは入らないから、わがほうのほうにも入ってくれるなということでございまして、しからば与那国は明らかにFIRの線の中じゃないかという御質問だろうと思いますが、そのとおりでございます。  しかし、これは実務的な、ごく技術的な問題でございまして、この問題につきましては、先ほど来外務省からもお答えがございましたように、そういうようなことにつきましては、台湾の亜東協会あるいは交流協会を通じまして、今後いろいろな支障がないような取りきめと申しますか、話し合いを進めておる段階でございます。
  172. 永末英一

    ○永末委員 北京にある政権を中国の代表政権、すなわち中華人民共和国でございますが、これを承認し、台湾承認していない国の航空機が台北のFIRを通過していると思いますが、そういう飛行機に対して日本と同じようなことをやっていますか。
  173. 寺井久美

    寺井政府委員 日本台湾関係のない第三国航空機台湾FIR及び日本の東京FIRを通過することは所定の手続によってやっております。
  174. 永末英一

    ○永末委員 差別待遇ですね、運輸大臣わが国航空機だけはそうやられて、ほかの中国と国交のある航空機が台北FIRを通過しても何もしないというのですから、これは国際問題として大平大臣どう思われますか。
  175. 大平正芳

    大平国務大臣 台湾当局が声明を通じて、まず台湾側の飛行機は日本コントロールのもとにあるFIRを飛ばない、したがってあなたのほうも国際的な相互主義の上からいって、飛んでもらいたくないというのが声明の趣旨と心得ております。たいへん残念なことと思っております。
  176. 永末英一

    ○永末委員 防衛庁長官、ADIZ、防空識別圏が、アメリカがこの辺におりましたときにきっちり使った残滓がまだ残っておるのでございますが、与那国島のまん中を南北に走っておるわけですね。与那国島は言うまでもなく沖繩県の一島であって、わが国の領土である。この防空識別圏わが国の領土である与那国島の以西、西まで広げる御意思はございませんか。
  177. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ADIZは各国がそれぞれその国の防衛のために必要と認める範囲において独自にきめるもので、相互間にあるいは第三国も入れて話し合うものではありません。でありますから、台湾防空識別圏中国大陸の上まで及んでいる。しかしそれによってトラブルが起こっておるとは聞いておりませんが、私どものほうは沖繩返還の際に、尖閣列島を防空識別圏内に入れたことについて何ら問題もありませんでしたし、ただ、中国大陸に対する配慮としては、かつて米軍が持っておりました真四角のADIZによりますと、大陸にあまり近くなっておりますから、その点は西北の一辺の頂点を三角に切りまして、その点を大陸沿いにいたしました。  そこで、いま与那国上空を通過しておる問題、ことに飛行場区域は四分の三は台湾側防空識別圏に入っておりますから、この問題はたいへん憂慮をいたしたわけであります。しかしながら、台湾側としては、別段それに対して何らの伝えられるようなあるいは声明からくみ取られるような実際の行動はなくて、むしろ情報提供あるいは民間航空機の離着陸に便宜提供をしてもらっておるというのが現状であります。  ただ、防空識別圏は、防衛庁長官が設定するものでありますから、したがって、われわれはこの際、交錯してもそれは差しつかえないわけでありますから、与那国の領空、領海、そういうものを踏まえた識別圏というものをつくる必要がある、そう考えます。
  178. 永末英一

    ○永末委員 長い答弁をいただきましたが、もう一ぺん、最後のところだけでいいのですが、これは自衛隊法八十四条で、あなたの権限、内閣が認めればできることですね。いままでアメリカが根を張っておりましたので、何かこうきっちり線で分かれておったようですが、与那国以西、少なくともあなたの権限内にあるわが国の領土、領空を守るのは防衛庁長官の責務だ。だから西へ広げますね。そのことだけお答え願いたい。
  179. 山中貞則

    ○山中国務大臣 そうします。
  180. 永末英一

    ○永末委員 もう一つ、山中防衛庁長官に伺いたいのですが、この防空識別圏が交錯したところで別段防空識別圏の設定は各国それぞれの問題でございまして、わが国の安全保障上それでどうかなるものではございません。日中航空協定締結にあたって、防衛上ゆゆしき重大問題が発生するかのごとき議論があちこちにございました。防衛庁長官といたしましては、日中国交回復というあの事件で問題が変わり、私どもは安保条約は変質したと考えておりますが、この日中航空協定締結され、早期にわが国会で批准を受けると思いますが、あなたは、その前とあととで、防衛庁長官として非常に任務が変わったとお考えになりますか、同じことだとお考えになりますか。
  181. 山中貞則

    ○山中国務大臣 同じことだと考えます。
  182. 永末英一

    ○永末委員 質問を終わります。
  183. 木村俊夫

    木村委員長 これにて本件に対する質疑は一応終了しました。  次回は、来たる五月七日火曜日、午前九時三十分理事会、午前九時五十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時十五分散会      ――――◇―――――