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1974-03-22 第72回国会 衆議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月二十二日(金曜日)    午前十時七分開議  出席委員   委員長 木村 俊夫君    理事 石井  一君 理事 石原慎太郎君    理事 福永 一臣君 理事 水野  清君    理事 河上 民雄君 理事 堂森 芳夫君    理事 松本 善明君       加藤 紘一君    小坂善太郎君       坂本三十次君    深谷 隆司君       宮澤 喜一君    石野 久男君       土井たか子君    渡部 一郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         科学技術庁原子         力局次長    伊原 義徳君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君         外務省情報文化         局長      黒田 瑞夫君         文化庁次長   清水 成之君         運輸省航空局次         長       後藤 茂也君  委員外出席者         外務大臣官房領         事移住部長   穂崎  巧君         外務省アジア局         外務参事官   中江 要介君         外務省アメリカ         局外務参事官  伊達 邦美君         大蔵省主計局主         計官      禿河 徹映君         厚生省援護局庶         務課長     河野 共之君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ————————————— 三月二十日  世界連邦樹立の決議に関する請願久保田鶴松  君紹介)(第三〇一九号)  同(森下元晴君紹介)(第三〇二〇号)  同(山崎始男紹介)(第三〇二一号)  同(石井一紹介)(第三〇六四号)  同(武藤嘉文紹介)(第三〇六五号)  同(赤澤正道紹介)(第三一〇四号)  同(倉成正紹介)(第三一〇五号)  同(竹村幸雄紹介)(第三一〇六号)  同(福田篤泰紹介)(第三一〇七号)  同(三木武夫紹介)(第三一〇八号)  同(安井吉典紹介)(第三一〇九号)  同(島田琢郎紹介)(第三一三四号)  同(高田富之紹介)(第三一三五号)  同(竹本孫一紹介)(第三一三六号)  同(和田耕作紹介)(第三一三七号)  日中共同声明に基づく諸協定早期締結に関す  る請願(林百郎君紹介)(第三〇二三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国中華人民共和国との間の貿易に関する  協定締結について承認を求めるの件(条約第  五号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 木村俊夫

    木村委員長 これより会議を開きます。  日本国中華人民共和国との間の貿易に関する協定締結について承認を求めるの件を議題とし、政府から提案理由説明を聴取いたします。外務大臣大平正芳君。     —————————————  日本国中華人民共和国との間の貿易に関する  協定締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま議題となりました日本国中華人民共和国との間の貿易に関する協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  政府は、わが国中華人民共和国との間に貿易に関する協定締結するため昭和四十八年六月以来東京及び北京交渉を行ないました結果、本年一月五日に北京におきまして、わがほう本大臣先方姫鵬飛外交部長との間でこの協定の署名が行なわれた次第であります。  この協定は、十カ条からなり、関税、内国税その他の課徴金、一時的輸入品第三国向け通過運送支払い送金等に関する事項につき相互に最恵国待遇を与えることとしているほか、支払い通貨貿易平等互恵の原則及び適正な国際市場価格基礎として締結される契約に基づくこと、技術交流貿易に関連する展覧会の開催、仲裁判断の執行、混合委員会設置等について定めております。  この協定締結により、昭和四十七年九月の国交正常化以前においても相当量の実績を有していた両国間の貿易は、より安定した基礎の上に一そう促進されるものと期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  4. 木村俊夫

    木村委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  本件に対する質疑は後日行なうことといたします。      ————◇—————
  5. 木村俊夫

    木村委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井一君。
  6. 石井一

    石井委員 日中航空協定の事務的な詰めがいま行なわれておるわけで、新しい局面を迎えておるようでございますが、これに関連いたしまして、いわゆる日本の空の安全という観点からの、空域と申しますか、空の領域に関する点について、その他今後のこの交渉の進め方についてきょうはお伺いをいたしたいと思います。  まず最初に、防衛局長出席を求めておるわけでございますが、日本空域の中に、安全を確保する上から防空識別圏というのがある。そしてもし国籍不明の飛行機が侵入してきた場合には、自衛隊機による緊急発進というのが行なわれておるというふうに伺っておりますけれども、この防空識別圏なるものの法的根拠法律的性格、この点について簡潔にまずお答えいただきたいと思います。
  7. 久保卓也

    久保政府委員 防空識別圏は、自衛隊内部における業務の運用の便宜上設定しておるものでありまするので、格別法律に基づいているわけではございませんけれども領空侵犯措置というものが法律できめられておりまするので、それに伴って訓令でもって防空識別圏に関する長官の指示をいたしております。したがいまして、庁内限りのものであります。
  8. 石井一

    石井委員 そうすると、各国防衛上の判断からそれぞれの国が設定するものである、場合によっては、この防空識別圏というのは、非常に国が隣接しておる場合には重なり合うこともあり得る、こういう見解もとれる、こういうことでございますか。
  9. 久保卓也

    久保政府委員 ただいま申し上げましたように、日本の場合には長官訓令によって定めておりますが、外国の場合にもおそらく内部の規定で定められておると思いまするけれども、正確ではございません。ただし、各国、特にICAO加盟をいたしておりまする国では、防空識別圏を設定しました場合に、AIPと申しておりますが、航空情報出版物というのがICAOに提出されまして、その中に各国のものが書かれております。  ところで、アジアの分につきましては、日本韓国台湾、それぞれちょうど重ならないように線を画されております。これは昔米側が調整した関係もあろうかと思いますが……。それから、われわれの承知している範囲では、フィリピン、それと南ベトナム、これも設定いたしておりまするけれども周辺の区域でありますので、重なっておりません。中国北ベトナムICAO加盟してないそうでありまするし、ADIZ、防空識別圏がどういうふうになっているか、よくわかっておりません。それからソ連の場合には、領土から百五十ないし二百キロに接近する場合にはソ連管制機関通報するようにというのが、先ほど申し上げたAIPの中に書いてあるそうでありまして、そういうことで、全般的には重なっているようには思いません。ただし、ソ連の百五十ないし二百といえば、あるいはわがほうのと重なっている可能性がございます。
  10. 石井一

    石井委員 たとえば沖繩が返還された後にその領空わが国がコントロールするという事態になると、そこでまた新しい事態と申しますか、台湾との関係その他も生じてくると思いますし、その点はもう少し突っ込んであとでお伺いすることにしたいと思います。  シカゴ条約ICAOによって飛行情報区、FIRというのが定められておりますが、これはどういう性格を持っておるのか、今度はこれは運輸省のほうからひとつ簡潔にお答えいただきたいと思います。
  11. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 お答えいたします。  飛行情報区と申しますのは、ただいま先生の御指摘のように、一九四四年の国際民間航空条約、いわゆるシカゴ条約、その附属書第十一、航空交通管制に関する附属書でございますが、この附属書にその観念が規定されております。この飛行情報区と申しますのは、ICAO条約加盟国並びにその周辺の公海上の空域を区割りをいたしまして、その一つ一つ飛行情報区、たとえば東京FIRマニラFIRグアムFIRといったように飛行機が飛ぶ空域をそのように区分けをしたものでございまして、一つ一つ飛行情報区には、締約国管制当局がその空域を飛ぶ航空機のあらゆる情報を把握し、かつそこを飛ぶ航空機飛行の安全についてのサービスを提供する、こういうたてまえになっております。  具体的には、ただいまも申し上げましたように、日本近辺では日本の北海道から九州にわたる地域の日本海及び太平洋側の海の上も含めまして東京FIRがございます。その南のほうに、沖繩沖繩FIR、同じく周辺の海洋の上を含んでおります。その南のほうに台北FIR、さらに東のほうの隣にはグアムFIR沖繩の南のほうにはマニラFIR、北のほうには大邱FIR、大体そのように日本近辺ではきめられております。  台湾政府は、一昨年ICAOにおきまして、中国を正当に代表する政府ではないということを認められまして、事実上ICAO加盟国政府としての機能を停止しておりますけれども、実際上の問題として、従来からきめられておりました台北FIRはその後も同じように存在し、そこで台北センターは従来と同じようなICAO標準に基づいたサービスを提供しております。
  12. 石井一

    石井委員 そうすると、防空識別圏と同じように、ICAOFIRというのも重複しておるところはないといまおっしゃった点、その点確認したいと思いますのと、答弁は非常に簡潔でけっこうでございますが、もう一つ中国FIRとか北朝鮮FIRとかこういうのはICAO加盟してないからこれは存在しない、こういうことになっておるのか、この点いかがですか。
  13. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 各FIR空域はそれぞれ重複したものはございません。また、中国及び北朝鮮は、現在のところICAO加盟国としての機能を実際上果たしておりませんし、その領空の上には飛行情報区、FIRはきめられておりません。
  14. 石井一

    石井委員 そうすると、FIR東京に国籍不明の飛行機が入ってきた、これをたとえば防衛庁のほうはどういうふうに掌握するのか。つまり、そのFIR防空識別圏の間には緊密なる協定なり連絡事務取りきめ、こういうふうなものがあってそこをうまく機能しているのかどうか、この点はいかがですか。
  15. 久保卓也

    久保政府委員 たとえば台湾日本の間ですと、FIRよりも防空識別圏のほうが、少し外へ出ております。そこでどういうふうに機能いたすかと申しますと、自衛隊機については、この防空識別圏を通過する場合に自衛隊管制機関連絡する義務がある。しかし、一般民間機についてはその義務がございません。先ほど申し上げましたように庁内の訓令でありますので、一般民間機については義務が課せられておりません。この点は外国と違うと思います。  そこで、私のほうは運輸省連絡をしまして、運輸省がその防空識別圏の外から中へ入ってくることが予想される飛行機についてのフライトプランを全部いただいております。したがって、フライトプランと照合いたしますので、それに合っておる航空機については下のほうからは領空侵犯措置を講じない、しかし、自衛隊機でもなし、またフライトプランもないものは、いわゆる不明機と称せられまして、それが日本本土のほうに来る方向にあれば、下のほうからスクランブルをかけて、領空侵犯予防措置を講ずる、こういうことになります。
  16. 石井一

    石井委員 それではもう一つ基本的な問題をお伺いしますが、FIRを管理する国は、何時何分どこの飛行機がどういう高度を何千メートル、どういう速度で入ってくるという航路、それをその進路にあたる隣接のFIR通告する、これがICAOでこういう形の義務があるというふうに伺っておりますが、これは正しいわけですか。
  17. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 先生のおっしゃるとおりでございます。飛行機離陸前に、いわゆるフライトプランというものが離陸飛行場航空当局に提出をされまして、その予定コースの上のFIRセンターにはそのフライトプランが全部連絡をされるという仕組みになっております。
  18. 石井一

    石井委員 そうすると、たとえばFIR東京から現在のところFIR沖繩通告され、その通告が今度は沖繩から、事実上機能はやっておるけれども加盟からはずれておるFIR台湾に通達されるというのが現在の姿である。それでは、この間カナダの航空路が今度新しく聞設されるという話を聞きましたけれども、この場合、日本領空を通ったものが韓国FIR通告される。それではそれから先はとういう通告か——このFIRというのは機能しなくなるのか、この二点をひとつ簡単にお答えいただきたいと思います。一点は南に行くもの、一点はこちらに行くもの、そのFIRというものの機能がどうなるのかということです。
  19. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 第一点、飛行機東京FIRを通過し、沖繩上空を通って台湾のほうに向かいます場合には、現在はそのフライトプラン東京センター沖繩センター、さらに台北センターというふうに、事実上リレーされております。  第二点、中国に向かって飛行機が飛びます場合には、これまで御説明申し上げましたようなICAO条約並びにその附属書に規定された管制方式は、そのままは実施は不可能でございます。したがいまして、実際上の問題といたしまして、その飛行機飛行たびごとに、上海にございます同じような機能中国において果たしている機関東京センターとの間に通信回線を特別に設定をいたしまして、従来通常ICAO標準に基づいて行なっておる航空管制とは全く別個に、実際上の問題として、何時何分にどのような飛行機がどういう高度でどういうコースを通って入っていくということを相手国管制当局通報をし、かつ相手国管制当局から、自分のところの飛行場気象状況はどうであるこうであるといったような通報連絡を受けている。一応ICAO標準というものにはよらずに、事実上、こういうものでございますからほとんど類似の方法でございますけれども、申し上げましたような方法飛行機の安全が確保されているわけでございます。
  20. 石井一

    石井委員 北朝鮮は……。
  21. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 北朝鮮の場合に、もし飛行機が飛ぶことがあるとすれば、全く同じような方法をとらざるを得ないと考えております。
  22. 石井一

    石井委員 それでは現在沖繩航空交通管制権米軍にゆだねられておるというふうに聞きますが、これはいつ返ってくることになっておりますか。
  23. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 二年前の沖繩返還の際の日米間の取りきめに基づきまして、沖繩FIRにおけるいわゆる航空路管制業務は、本年五月十五日に日本の責任に一応されることに取りきめられております。
  24. 石井一

    石井委員 そうすると、米側からこの管制権が五月十五日に移管された場合には、ICAO加盟国でない台湾FIRに関する新しい取りきめといいますか、そういうことをやらなければその航空の安全というのははかられないのじゃないかと思うのであります。これは民間の取りきめでは済まないのじゃないか、こういう感じがいたしますが、この点はいかがですか。
  25. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 ただいままで御説明申し上げましたように、台北FIRにおける台北管制当局の仕事のやり方は、実際上すべて従来のICAO標準方式にのっとったものでございます。したがいまして、先生指摘のように、米軍から日本航空局沖繩における管制業務を引き継ぐといたしますと、五月十五日以降はアメリカ軍にかわって日本の何々がお隣になりますということを、実際上隣である台湾センターの人に知ってもらう必要があろうと思います。毎日多数の航空機を、いわばその境界線において受け渡しをするわけでございまして、それを一機一機連絡をしても、それは技術的に不可能ではございませんけれども便宜の問題として、隣合った管制当局の間では包括的に事務的な打ち合わせと申しますか、こういう場合にはこのようにして飛行機受け渡しいたします、そういった基準のようなものを取りきめるのが例でございます。
  26. 石井一

    石井委員 私が申しておるのは、いま台湾FIR機能しておるのは、米軍との連絡のもとでそこが隣接しておる。アメリカ台湾とは正規交渉というものが存在しておる。だから、それはスムーズにいくわけですけれども、五月十五日以降は日本台湾とが隣接してくる、飛行機はもちろん安全を確保しなければいかぬわけですから、飛ばさなければいかぬわけですけれども、そこには国交が現在のところ残念ながら正常化でない。  こういうことに相なりますと、その時点においてFIRの取りきめを台湾と結ばなければいけないのではないか、またそれを結ぶにあたっては、日中航空協定交渉にあたって正規国交のある中国側の了承も得なければいかぬのではないか、この点はいかがですか。
  27. 高島益郎

    高島政府委員 本年五月十五日以降のFIRの引き継ぎにつきましての取りきめは、当然日本台湾との間に何らかの取りきめをしなければならないというふうに思っております。現在の時点におきましてどういう形式のものをしなければならないかという点について、まだ最終的な政府の決定はいたしておりませんけれども、とにかく何らかの取りきめが必要である。しかもこの取りきめをする権限のある当事者は、やはり政府機関であるということは十分承知しております。しかし、この点につきましては、日中間関係も十分顧慮しながら、差しつかえのない航空安全のための何らかの取りきめをしたいというふうに考えております。
  28. 石井一

    石井委員 私は飛行機自体民間協定なり民間で飛ばせると思いましても、いま議論いたしております点は、防衛運輸外務、何らかの形で政府というものが取りきめに参画しなければ、国際条約に基づいたこういう問題でもございますし、そういう話し合いが非常に必要である、こういうふうに考えるわけでございますけれども外務大臣この点に関して何か御意見がございますか。
  29. 大平正芳

    大平国務大臣 航空往来の安全を確保するということはわれわれに課せられた非常に大事な任務でございます。したがいまして、その安全が確保される道はどうしても講じなければならないわけでございまして、いま政府部内におきましてその件につきましてせっかく検討をいたしておるところでございます。
  30. 石井一

    石井委員 だんだん時間がなくなってきましたので、簡潔にお答えいただきたいのですが、たとえば日台の間に民間航空の取りきめを行なった場合に、台湾FIRとの取りきめができないというような事態が起こったとしたら、これはどういう事態が予想されるのですか。これは運輸省のほうからお答えいただきます。
  31. 後藤茂也

    後藤(茂)政府委員 FIRFIRの間における飛行機受け渡しと申しますものは、御説明申し上げましたように、基本的なやり方というものが確立されておりまして、何人がそれを担当いたしましてもそのやり方に大差はないということは申せます。したがいまして、原則的な、包括的な取りきめというものがなければ直ちにその飛行機受け渡しができなくなるというふうにつながるものではないと考えます。しかし、便宜の上から考えますと、そのような原則的な取りきめ、相談というものがあらかじめなしに、飛行機の安全に関する飛行機受け渡しが一機ごとに行なわれるということは望ましいことではないと思っております。
  32. 石井一

    石井委員 そういう官僚的な言い方でなしに、私が聞いていますのは、たとえば返還後、政府間の取りきめが台湾とできない場合、日本飛行機台湾FIRに入れなくなる、こういう事態が起こる可能性もあるのじゃないですか。
  33. 高島益郎

    高島政府委員 石井先生いろいろ仮定の問題について御心配でございますが、私どもといたしましては、そのような事態にならないように、五月十五日までの間に何とかして日本台湾との間にしかるべき取りきめを結びたいというふうに努力しております。ただ、それがもし万一成功しなかった場合どうなるかということにつきましては、これは運輸行政の問題でございますし、非常にテクニカルな問題でもございますので、そういうことに万一なった場合におきましても、航空の安全につきましては万遺憾なきよう努力されるものと私ども確信しております。
  34. 石井一

    石井委員 台湾防空識別圏国籍不明機が入った場合には、緊急発進するのは台湾にある米軍が、それとも台湾空軍か、これはどちらですか。
  35. 久保卓也

    久保政府委員 台湾米空軍が参ることもありますが、これは浮動性、絶えず動いておりますので、領空侵犯措置台湾政府航空機措置をしていると思います。
  36. 石井一

    石井委員 台湾防空識別圏日本防空識別圏が重複しておるところがあるのかないのか。もう一つ、これは関連しておりますが、台湾防空識別圏台湾FIR空域とは違うのかどうか、この二点お答えいただきたいと思います。
  37. 久保卓也

    久保政府委員 日本側防空識別圏台湾とは重複は全くいたしておりません。ただ台湾側防空識別圏中国本土にかかっておりますので、中国本土とは若干問題があるかもしれません。  それからFIRのほうは、台湾沖繩の間ではFIRのほうが沖繩寄りでありまして、防空識別圏のほうは台湾寄りに出ております。
  38. 石井一

    石井委員 私がいま議論を進めておりますそれをお聞きいただいてもわかるわけでございますし、また政府側も五月十五日までに何らかの政府交渉をする、こういうことを表明されたようでございますけれども、要するに日台航空路線というものをスムーズに維持していくためには、民間の取りきめだけでなく、FIR防空識別圏を含めたこういう意味からの一括した政府間交渉というものがなければ解決できないのではないか、私はそういうふうにこの問題を調べておりまして強く考えるわけでございまして、その点、今回の中国側との交渉におきましても、そういう問題をも十分配慮に入れてこういう形の交渉をされておるのかどうか、この点ちょっとお伺いしておきたいと思います。
  39. 高島益郎

    高島政府委員 日中航空協定交渉とまた日本台湾との間の民間取りきめにつきまして、先生指摘の五月十五日に切りかわるべき沖繩FIRの問題につきまして、十分考慮に入れてやっております。
  40. 石井一

    石井委員 そこで、現在政府から事務的なレベルでございますけれども、最終的な日中の航空協定取りきめのミッションが訪問しておる、こういうことでございます。これまで外務大臣が基本的な線を出して交渉を進められてまいったわけでございますけれども、今回のミッションは特にどういう問題を最終的に詰めさせようと訓令、指示されておるのか、この交渉団の基本的な方針、そしてどういうものを最終的に詰めてくるというお考えなのか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  41. 大平正芳

    大平国務大臣 日中航空協定自体交渉任務でございます。この問題につきましては一昨年以来すでに予備交渉をやっておるわけでございまして、それがしばらくとんざをいたしておったわけでございまして、今回それを詰めていただくということが私どもの念願でございまして、協定本文両国の間で詰めてまいる、そして合意に達するということを目的といたしておるわけでございます。
  42. 石井一

    石井委員 具体的な問題で、運輸省のほうから係官もたくさん行っておられるようですから、どういう基本的な方針を持っておられるのかお伺いします。  一つの問題は、乗り入れ地点がどういうふうになるか、こういうことでわがほうとしては広州であるとか上海であるとかというところを希望しておるのですが、この乗り入れ地点に対しては双方、特に日本側としてはどういう希望を持って臨まれておるのか、この点お答えいただきたいと思います。
  43. 大平正芳

    大平国務大臣 乗り入れ地点の問題とか以遠権の問題とかいう問題が問題であることは御案内のとおりでございます。その問題につきましてわがほうがどういう腹案を持って臨んでおるかということにつきましては、たいへん恐縮でございますけれども交渉を控えてのことでございますので、国会の場で公にするということは差し控えさせていただきたいと思います。
  44. 石井一

    石井委員 ただ、もしかりに交渉が成立いたしまして、うまく外交交渉ができ上がりましても、やはり国内問題、国内情勢とのからみという面も考えませんと、いまたとえば大阪空港の騒音訴訟の問題その他、これはたいへん重要な問題で、よしんば中国側がこれを非常に強く希望いたしましても、現実にこれができるかどうかというふうな問題になってまいりますと、それ以外のいろいろのそういう配慮も必要だ、私はそういうふうに考えるわけでございます。そういうことに対しては少なくとも日本側政府見解というか、そういうものがあるのじゃなかろうか。  そういう意味では成田、羽田という問題に関しては一応基本的な考え方ははっきりされておりますけれども、それ以外の第二の地点という問題に関しては非常に不明確な点があるわけで、この点については一応政府の見解がまとまっておるのであればお伺いしておきたい、こう思うのでありますが、この点はいかがですか。
  45. 大平正芳

    大平国務大臣 この段階で申し上げられますことは、大阪空港におきまして地域住民との間にいろいろ問題があることは十分念頭に置きまして交渉に臨んでおるということだけは申し上げられると思います。
  46. 石井一

    石井委員 そうすると大臣日本側の基本的な姿勢としては、できるだけ大阪の乗り入れというものは断念してもらうように交渉を進めておる、この点はそういうふうに理解していいわけでございますか。
  47. 大平正芳

    大平国務大臣 どう申し上げたらいいのでしょうか、つまり大阪空港に固有の事情というものを十分念頭に置いてやってまいりたいと考えております。
  48. 石井一

    石井委員 それから、以遠権の問題でございますけれども、これもソ連との交渉を回顧いたしましたときに、シベリアの空を飛ぶということは非常にむずかしい問題であったのが、これができ上がったことによってヨーロッパとのルートというものは飛躍的に便利さを増した、こういうことでございまして、この以遠権がどういう方向に進むかということも国民の非常に関心の高いところでございます。  いま交渉の過程であるからむずかしいということはわかりますけれども、当然政府としては、ソ連に臨んだときと同じように積極的にできるだけ多くの以遠権を求めていく、こういう考え方だろうと思いますけれども、この点に対する御見解はいかがですか。
  49. 大平正芳

    大平国務大臣 以遠権の問題は、申すまでもなく、乗り入れ地点もそうでございますけれども、いわば相互主義で処理してまいらなければいかぬわけでございますので、わがほうの主張だけが通るわけのものではないと思いますけれども、御指摘の点、十分腹に入れて交渉に当たるつもりでございます。
  50. 石井一

    石井委員 いまの御答弁だと、相互主義であるということですから、もしかりに向こうが以遠権を一つ要求してくるということになれば、やはり日本側としては一つしか得ることはできない、こういう考え方なのか、それとも可能性があるルートが三つほどあるようでありますけれども、その中から少しでも多くの以遠権をこの際獲得するためにやろうとするのか、これは交渉の結果を見ないとわからないということなんだろうと思いますけれども、その点やはり積極的に取り組むのと、早くまとめようというためにやや消極的に取り組むのとでは、結果は大いに違うと思うのですが、この点について何か感触がありましたらおっしゃっていただきたいと思います。
  51. 大平正芳

    大平国務大臣 これはまさに交渉の本体になってくるわけでございまして、十分わがほうの国益を踏まえて当たらなければならぬと決心いたしております。
  52. 石井一

    石井委員 私は、御承知のように日中航空協定を、これは国家間の約束事なんですから、できるだけすみやかに締結するために大いに努力をしよう、こういう立場なんでございますけれども、それかといって、先ほど申しましたFIRそれから防空識別圏、それからまた相互の乗り入れ地点というふうな問題は、かりに外交交渉だけがあまり早く前に進みましてもあとにそういう問題がついてこなければ、結局は航空協定自体に対してその目的が達成でき得ない、そういうふうな事態が起こる、そういうことは一番憂慮しなければいけない問題だ、私はそういうふうに考えるわけでございまして、そういう面で、やはり政府部内での連絡を密にされるのも当然必要でございますし、いま申しました諸点についても深い配慮のもとにお進めいただかない限り、せっかく協定はできたけれども飛行機は飛ばぬ、飛びにくい、こういう状態が出てくるとこれはたいへんだと思うのでございます。当然おわかりいただいておることでございますからこれ以上申し上げませんけれども、先ほど私が議論いたしておりましたFIR防空識別圏のことに関して、外務大臣からそんなに御発言がございませんでしたけれども、この件に関しまして何か御所見がありましたらお伺いをしたいと思います。  それから第二点に私が指摘しております具体的な交渉の中で乗り入れ地点、以遠権、これは国民の関心の非常に強い、外交問題が国内問題にはね返ってくるという性格を持っておるものでございまして、この点についても決意のほどがありましたらお伺いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  53. 大平正芳

    大平国務大臣 御心配の点ごもっともでございまして、外交が独走いたしまして航空の実際が不便を招来するというようなことがあってはならないわけでございますので、政府といたしましても運輸航空当局と緊密な連携をとりながら、国内の事情も十分吸収、消化しながら事に当たっておるつもりでございまして、今後交渉の途次におきましても十分その点は留意してまいるつもりでございます。  FIRの問題につきましても、御心配の点よくよく私どもも理解いたしておるつもりでございまして、その点につきましても安全を確保するためには十全の備えをしてまいるつもりでございます。
  54. 石井一

    石井委員 最後に、貿易協定がきょう提案されたわけでございますが、航空協定に関しても今国会成立を期す、こういう御決意に変わりはございませんか。
  55. 大平正芳

    大平国務大臣 私といたしましては、できるだけ早く交渉を妥結させて本国会で御審議を願いたいものという念願に変わりはありません。
  56. 木村俊夫

    木村委員長 河上民雄君。
  57. 河上民雄

    ○河上委員 最近起こったできごとにつきまして、二、三質問いたしたいと思います。  新聞やテレビなどの報道するところによりますと、このほど田中総理大臣ソ連のブレジネフ書記長に親書を送ったという情報がございます。またこれと並行して日本の経済界の代表者、植村氏などを中心とするミッションソ連を訪問するというような報道もあるわけでございます。これは常識的に見ますれば、この二つの動きにはある種の関連があるというふうに考えるべきではないかと思うのですが、その点についてまずお尋ねをしたいと思います。  田中親書の内容について、まず内容がどういうものであるか、この点について外務大臣から御報告をいただきたいと思うのです。
  58. 大平正芳

    大平国務大臣 御指摘の田中総理からブレジネフ書記長にあてた親書は、日本時間の三月二十一日の未明に重光大使から直接ブレジネフ書記長に手交いたしました。これは先般二月十四日に在京トロヤノフスキー大使を通じて田中総理に寄せられましたブレジネフ書記長のメッセージに対する回答の形をとっておりまして、内容の概貌を申しますと、第一は、日ソ関係全体に対する日本側の基本姿勢を再確認いたしますとともに、平和条約交渉を含む今後の両国間の外交日程の進め方につきまして、日本側の考え方を明らかにいたしますとともに、ブレジネフ書記長との間の対話を今後とも継続することについて同意を表明いたしたものでございます。
  59. 河上民雄

    ○河上委員 その中には、シベリア経済開発についての協力に触れられたところはないのでございますか。
  60. 松永信雄

    ○松永政府委員 私の承知しております限りにおいて御説明申し上げますと、一般的な形での日ソの今後の協力関係ということがその内容の中には含まれていると承知しておりますので、その中には、いま御質問がございましたシベリアの経済開発についての経済協力の問題も当然に解釈的には含まれてくるというふうに考えております。
  61. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、特に明文では出ていないけれども、内容的には含まれる、こういうふうに解釈してよいものかと思いますが、それでは今回の植村ミッションの派遣にあたって、政府は相談を受けているか、またとの範囲——このシベリア経済開発というのは、非常に大きな仕事でございますけれども、先方へ参りまして、たとえばいろいろの仮調印をするとか、そういうような仕事になるかと思うのですが、そういう場合に、どの範囲の了解を政府として与えておるのか、そういう点について伺いたいと思います。
  62. 大平正芳

    大平国務大臣 御案内のように、サイベリア開発を中核といたしまする日ソ間の経済協力の直接の当事者は日ソ経済委員会、これは民間の団体でございまして、その当事者が先方の当事者と十分意見の交換を遂げて、各プロジェクトにつきまして合意ができましたならば、基本契約というものを結ぶ手はずになっておるわけでございます。その基本契約が満足すべきものでございますならば、政府はそれを支援してまいるというたてまえになっておるわけでございます。  プロジェクトも複数にわたっておるわけでございまして、その一つ一つについて当事者間におきまして十分な意見の交換が遂げられることは、政府としても望ましいと考えておるわけでございまして、私どもといたしましては、両当事者の間における基本契約が満足すべき成果をもたらすということを期待いたしておるのが現在の姿勢でございます。
  63. 河上民雄

    ○河上委員 最近の外国の雑誌ですが、イギリスのエコノミストの二月二十三日号に、シベリア経済開発の将来性について分析した論文が出ておりますけれども、それによりますと、シベリアは、世界の石油埋蔵量の五分の二ぐらいを占めているとか、あるいは石炭の場合の埋蔵量はアメリカの五倍ぐらいになるとか、非常に希望を抱かせる将来性を持っているということが書いてありますが、同時にその反面で非常に遠隔の地であるということが難点であるとか、そうしてばく大な投資をしても、その成果というのは、今世紀末にならないと十分に報いられないのではないかというようなことも指摘してあるのでございます。  そういうことをひとつ考えましても、これは民間の仕事とはいえ、やはりかなり政府が腰を据えてバックアップするという姿勢が必要ではないかと思うのでありますが、そういう点についての政府の基本的な姿勢、政府にそれだけの覚悟があっていま望ましいというふうに言われたのかどうか、その点について大臣の御所見を承りたい。
  64. 大平正芳

    大平国務大臣 サイベリアの開発協力につきましては、チップでございますとか、木材でございますとか、あるいはウランゲリ港の建設であるとか、そういうプロジェクトはすでに基本契約ができ、実行に移っておりますことはすでに御案内のとおりでございまして、いま問題になっておりまするプロジェクトは、そういうプロジェクトに比べまして確かに規模も大きいし、所要の信用供与量も大きいわけでございます。けれども方式自体は、いままでわれわれが実行してまいりましたものと別に変わりはないわけでございますので、私が申し上げましたように、両当事者の間でとっくり話をいたしまして、満足すべき基本契約ができましたならば、たいへんそれは歓迎すべきことと考えておるのであります。  しかしながら、従来のプロジェクトに比べまして規模も大きいわけでございますので、政府といたしましても、従来にも増して関心を持っておることは間違いがないわけでございますが、まだ両当事者の間で了解ができない先に政府がとやかくコメントを申し上げるというのは時期尚早であると考えております。
  65. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、その問題について最後に一言伺いたいのですが、いま大臣も、石油とかそういうようなプロジェクトが入ってきた場合は非常に規模が大きいというようなお話ですが、そういう認識を持っておられるようですけれども、その場合に、日ソ間だけでやるのが望ましいのか、それとも伝えられるように日米ソですね、アメリカを加えて、あるいはその他の国を加えてやるのが望ましいと考えておられますか、その点についての大臣の御所見を承りたいと思います。
  66. 大平正芳

    大平国務大臣 いま申しましたように、たいへんプロジェクト自体の規模も大きい、必要とする信用量も巨大なものになるということでございますので、政府といたしましては、アメリカその他第三国が参加されることが望ましいと考えておることは間違いありません。去年の日ソ首脳会談におきまして、この点につきましては、日ソ間の合意といたしまして、シベリアに対する経済開発協力につきましては、日ソ間で話をする、第三国の参加をしかし排除するものではないけれども、この第三国は、日本がその第三国と話をつけて参加を求めることは差しつかえないけれども、あくまで日ソ間の話し合いでやろうということでございます。言いかえれば、第三国というのは、日本と同じ立場に立って三角交渉、三角協定というようなものではなくて、日ソ間の協定であって、そうして日本側が第三国を説得して参加を求めた場合それは排除しない、そういう了解になっておるわけでございます。  したがって、私どもといたしましては、できることならば、第三国に広く参加していただくことが望ましいと考えておりますけれども、しかし、これも経済開発の問題でございまして、第三国にもいろいろな考慮があるわけでございまするから、私どもが望みましても、はたしてできるかできないか、それは交渉の問題であると考えております。われわれ希望を持っておるかということを問われれば、もちろん第三国の参加が望ましいと思っておるということに間違いはございません。
  67. 河上民雄

    ○河上委員 それでは日ソ間の話し合いが一応まとまったあとに、日本としてアメリカの参加を要請するという作業、プロセスが次にくるように承ったわけですが、その場合、アメリカの参加を要請するというのは、日本政府がやるのですか、それともやはり民間の団体がやるわけでございますか。
  68. 大平正芳

    大平国務大臣 日ソ間の話がきまって第三国の参加を求めるという筋道ではなくて、民間の当事者が日ソ間でお話をする道程におきまして、第三国の参加という問題が出るかもしれません。それは事柄の先行の順序がどうなりますか、いずれにいたしましても、政府がダイレクトにタッチするのではなくて、民間の当事者が、その問題について第三国の参加の問題もまず処理されるというたてまえでございます。
  69. 河上民雄

    ○河上委員 新聞などの報道によりますと、ただいま戦時における武力紛争に際しての民間人の保護を徹底するために、俗に人道法と呼ばれております、戦時における文民の保護に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約の再確認と発展のための国際会議が開かれているようでございます。三月二十九日まで一カ月余りにわたって討議が行なわれるということですので、結論はまだ出ていないと思いますけれども、これには政府の代表も参加しておられるわけですね。
  70. 松永信雄

    ○松永政府委員 わがほうから代表を参加させております。
  71. 河上民雄

    ○河上委員 これによりますると、無差別爆撃の禁止などさらに強化するというようなことが議題になっておるようでございまして、これによりますると、われわれ昭和十九年、二十年の、日本の大都市の市民にとっては忘れられない、いわゆるじゅうたん爆撃なども今後適用されることになるわけですが、そういう意味で、これは非常にじみな会議ではありますけれども、ある意味においては、国民にとって無関心でいられない会議だと思うのでありますが、一般的に申しまして、もっと経過を政府としても知らすべきではないかと思うのですが、具体的に何か知らせておられるのか。また結論が出てから国会なりその他、他のルートで国民に報告されるおつもりなのか。何しろ実際にはこういうことが行なわれておるということが、あまり国民に知らされていないのが実情でございますが、もう少し経過を報告していただきたい、そういうふうに希望したいと思うのですが、いかがでございましょうか。
  72. 松永信雄

    ○松永政府委員 現在ジュネーブにおいて開かれております国際人道法会議におきましては、御指摘がございましたような問題が討議、検討されております。私どもといたしましても、この会議が在来ございますところのジュネーブ四条約のさらに発展的な改定等のための会議をいたしているわけでございますが、その重要性、ことに文民の保護、取り扱いについての人道上の不偏的な原理原則をさらに徹底させるという点には、非常に重要な意義を認めて重視しているわけでございます。  ただ、取り上げております問題は、かなり技術的な問題も多いわけでございまして、私どもとしては会議が取りまとめの段階になりました時点において、これを政府としてどういうふうに評価するか、あるいはさらにジュネーブ会議の内容を一般にも広く紹介する等のことも考えなければならないと思っているわけでございますが、いまのところその結論がどういうふうな結論になってまいりますか、まだ実は会議中でございますので、非常に明確なことを御説明する段階にないわけでございます。
  73. 河上民雄

    ○河上委員 わが国のこの会議に望む主張、どういう点に力点を置いて主張しておられるのか。新聞の報道によりますると、今度新しく追加議定書案というものが出ておって、その内容を発展させる目的で出ているわけですが、次のように新聞に書いてあるのです。  それによると、「米国が第二次大戦やベトナム戦争で行ったような人口密集地帯へのじゅうたん爆撃や、広島、長崎への原爆投下など核による都市攻撃は当然許されないばかりでなく、それを命令した者も戦争犯罪人として処罰しなくてはならなくなる、と日本会議代表団は言っている。」こういうふうに書いてあるのですが、いかにもこうなっては困るような書き方なのですけれども、実際はどういうことでございますか。こういうような報道がなされるというのは、一体わが国の代表団がどういう主張を持って戦っておられるのか、非常に懸念されるわけなんですけれども、実際にはどういうふうにしておられますか。
  74. 鈴木文彦

    ○鈴木(文)政府委員 ただいま先生の御指摘された新聞記事は、必ずしも正確であるかどうか、ちょっと問題があるかと思いますけれども、ただ問題の性質といいますか、本質といいますか、それに対する日本側の考え方は、できるだけ人道保護を強化するという方向で前向きに検討いたしておりますということを申し上げます。
  75. 河上民雄

    ○河上委員 新聞に書いてあるように、もしこれを命令した者も戦争犯罪人として処罰しなくてはならなくなるということは困るというお考えですか。それとも当然そうなるべきだというお考えで臨んでおられますか。
  76. 鈴木文彦

    ○鈴木(文)政府委員 ただいま御指摘されました点は、実は必ずしも明確にこうであるという結論にはなっておりません。一つは新しい問題でありますだけに、人道法会議での扱いがどうなるか、またどういう方向に議論が進むかということも見定めた上で、慎重に検討してまいりたいというふうに考えております。
  77. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、そういうような主張はしておられないということでございますか、ほかの国が何かそういうことを主張して、それが多数になればそのとき考えると、こういうお考えのように承わりますが……。
  78. 鈴木文彦

    ○鈴木(文)政府委員 実は会議は二十日に始まりましたのですが、いろいろ手続問題に時間がかかりまして、いまようやく実質審議が始まりまして、きのうきょうの段階で一条、二条というような、ほんとうに条約の最初の部分を討議しております。したがいまして、いま御指摘のありました問題については、まだ会議の討議が始まっておらないのが現状でございます。
  79. 河上民雄

    ○河上委員 手続問題ということを言われましたけれども、今度の国際人道法会議に、南ベトナム臨時革命政府出席を希望しまして、その資格をめぐって投票が行なわれましたけれども、一票差で否決されておりますが、日本政府はこの南ベトナム臨時革命政府の参加に反対しておりますけれども、これはどういう意味ですか。もし日本政府がせめて棄権にでも回っておったら、事態はずいぶん変わってきておると思うのですけれども……。
  80. 鈴木文彦

    ○鈴木(文)政府委員 この条約の権利義務の主体になりますものは国家でございますので、ただ、この条約の趣旨ができるだけ人道的な保護の範囲を広げ、かつこれを強化するという趣旨から、政府としては、ほかの団体が投票権なし、オブザーバーというかっこうで参加する場合には賛成する、ただし、これは国として投票権を持って完全なかっこうで参加するという場合にはこれを認めないということで、これに反対いたしたわけでございます。
  81. 河上民雄

    ○河上委員 今度の問題のジュネーブ条約によりますと、第四条でございますか、この条約によって、拘束されない国の国民は、この条約によって保護されることがないとなっております。したがって、この条約に参加してない国民ないしは国家としてもし認められていない難民とかそういうようなものは、保護されないというところに一つ問題があるわけでして、今回の国際会議では、国家としてまだ承認されていないとか、あるいは難民であるとか、たとえば南ベトナム臨時革命政府とか、あるいは中東におけるPLOのグループの人たちとか、そういうようなものを保護できるようにするというところに、一つ大きな問題があったと思うのです。  そういうときに、わが国承認していないからこれを排除するということになりますと、非常に問題があると思うのです。いまの日本政府は、オブザーバーなら保護の対象になるというふうに考えておられるのですか。
  82. 鈴木文彦

    ○鈴木(文)政府委員 日本政府かPRGの完全な形での参加に反対いたしましたのは、これは外交会議に参加するという問題の観点からとらえたわけでございます。条約の適用の問題は、またこれと別個でございます。  いま御指摘になりました国家でない団体、あるいは無国籍者あるいは避難民に対する保護の範囲を広げる、あるいはこれを強化するという考え方は、まさにこの条約のいまやっております会議の目的でございまして、二つの議定書案のうちの第一の議定書に、組織的な抵抗運動のメンバーであるとか、あるいは無国籍者あるいはレフュージーでございますか、それに対しては、一定の条件を満たす場合には、これは保護を与えるべきではないかというのが、この議定書の案になっております。
  83. 河上民雄

    ○河上委員 それに対して日本政府は賛成しておられるわけですか。
  84. 鈴木文彦

    ○鈴木(文)政府委員 ただいまの問題は、まだ会議の場で討議が始まっておりませんけれども、この条約の趣旨あるいは会議の持つ考え方、精神にのっとりまして、わが国としてもできるだけ前向きに検討してまいりたいというふうに考えております。
  85. 河上民雄

    ○河上委員 それではこの前回教国の会議で採択しましたラホール宣言によりますと、イスラエルがいま問題になっております民間人保護に関する一九四九年のジュネーブ会議のジュネーブの条約を守っていないということについて、非常な非難を加えております。こういうようなラホール宣言の、そしてそれを守らすべきだというようなことが強く訴えられているわけですが、政府はこの趣旨を受け入れるお考えですか。
  86. 松永信雄

    ○松永政府委員 現行のジュネーブ条約の規定から見ますと、御指摘がございました事態について、直接的に条約が適用されるかどうか、実は疑問、不明確な点がかなり多いわけでございます。現在、開かれておりますジュネーブの会議におきましては、まさしくこういうような事態に対しても条約が適用され、十分な保護が行なわれる、与えられるようにという方向で検討がこれから進められるというふうに了解しておりますし、私どもとしても、そういうことは非常に望ましいことであると考えているわけでございます。
  87. 河上民雄

    ○河上委員 いま国際情勢の非常な複雑化に伴いまして、本人は主観的には戦争状態と思っておる、客観的には平時であるという状態は間々あるわけでございまして、たとえばパレスチナ・ゲリラにとっては現在は戦争状態である。しかし中東の多くの国は、中東戦争が終われば、これは平時に戻ると、こう考えておるわけですね。にもかかわらず殺傷が行なわれる、あるいは報復手段が行なわれる、こういうような問題は、当然この条約でいろいろ論議されることになるかと思うのですが、これは単にパレスチナ・ゲリラだけではなくて、最近ルバング島から下山して帰還されました小野田さんのケースにおいても、主観的には戦争状態だとつい最近まで思っておられた。しかし客観的にはもう完全にフィリピンと日本との間は戦争状態は終わって平時に入っているはずだと思うのですが、そういう場合に、小野田さんの場合は非常にお気の毒なケースでありますけれども、幸いにして国際法上の問題は起きていませんけれども、こういう問題は個人の問題だから、あまり国際法の適用にならぬかもしれませんが、論理としては非常にそういう問題があると思うのですね。  ちょっと少し話が変わってくるかもしれませんけれども、小野田さんは無事に帰られましたけれども、その前に小塚さんや島田さんは不幸にしてなくなられておりますが、ああいう場合のなくなられたことは、戦死というふうに日本政府は見ておられるのか、単なる事故死として考えられておるのか、条約局長としてはどういうふうにお考えになりますか。また厚生省としてはどういうふうにお考えになりますか。
  88. 松永信雄

    ○松永政府委員 いまの御質問の場合について申し上げますと、先生すでに御指摘にありましたように、日本とフィリピンとの間の戦争状態というのは完全になくなっている、平時的な関係にあるわけでございまして、フィリピンにおいて発生いたします事件、事故は、フィリピンの現在の法律的な管轄権のもとにおいて発生した事件なり事故であるというふうに考えられるわけでございます。したがいまして、なくなられた不幸な事件というものは、フィリピンにおいて発生しました事故による問題であるというふうに考えるべきものであろうかと存じます。この点は、小野田元少尉の行為なり行動についても同じ関係になるのだろうと考えております。
  89. 河野共之

    ○河野説明員 ルバング島におきます島田さんあるいは小塚さんの死亡につきましてでございますが、これは厚生省といたしましては、死亡ということで取り扱っております。ただ、これらにつきましての援護法あるいは恩給法上の取り扱いにつきましては、公務上の死亡ということで公務死として取り扱う、かようにいたしております。
  90. 河上民雄

    ○河上委員 それは常識的には戦死というふうにお考えでいらっしゃるのですか。
  91. 河野共之

    ○河野説明員 ただいま申し上げましたように、すでに戦争は終わっておりますので、私どもといたしましては死亡という取り扱いで、しかもこれにつきましては、各種の援護の取り扱いといたしましては公務死、公務上の死亡ということにいたしております。
  92. 河上民雄

    ○河上委員 今度の事件につきまして、日本政府として、フィリピン政府に対して、御迷惑をかけたということで、三億円届けることが決定されたように官房長官の談話で聞いておるのでございますけれども、これはどういうことに対して三億円の補償をされるおつもりなのか。その中には、たとえば捜索費とかいろいろあるかもしれませんが、ルバング島における島民の死亡あるいはけがその他に対する補償も含まれておるのかどうか、いまの条約局長の御答弁と関連してその点をちょっと伺いたいと思います。
  93. 高島益郎

    高島政府委員 小野田元少尉の救助に関しまして、フィリピン政府及び民間の方々の多大な御協力によりまして救出されたという事実にかんがみまして、過去ルバング島におられる間に小野田元少尉あるいはその他の方々の救出に関連いたしまして、島民に多大の犠牲をしいた事実がございます。現実に三十人近くといわれるフィリピンの方々がなくなってもおりますし、そういった点も含めまして、法律的な意味での正式な補償とかなんとかというものではございませんで、私どもそのようなフィリピン政府及び民間の方々の甚大なる御協力と、それからそのようないろいろな被害を与えたという事実についての見舞い、そういったもろもろのものを含めまして、謝礼という形でもって三億円のお金をルバング島の方々の民生と福祉のために使っていただきたいということで鈴木特使が行かれるということになっております。
  94. 河上民雄

    ○河上委員 もう少し伺いたいことがあるのですけれども、私に与えられました時間も参りましたので、きょうは私の質問、これで終わりたいと思いますが、いずれにせよ、こういう不幸な事態、戦争はすでに三十年前に終わりましたが、その傷あとは、三十年一世代、なおわれわれの上にのしかかっておるということをあらためて感じておりますので、こうした問題について、単に便宜的ではなく、筋を立てて処理されるよう希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  95. 木村俊夫

  96. 土井たか子

    ○土井委員 わが国の海外に向けての経済発展は、不可避的に海外における子弟の教育問題というものを非常に重視するという傾向になっていくわけでありますが、御承知のとおりに昨年八月二十九日に当外務委員会において、海外子女教育についての決議がなされております。この決議の中身からいたしまして、そこから発展させていって、二、三の問題をまずお伺いしてみたいと思います。  一つは、これは海外における子弟教育に、最近経済界が、海外子女教育振興財団を通じてたいへんに力を入れておられるわけですが、その海外子女教育振興財団から発行されております「海外子女教育」という月刊誌がございます。これは大臣も御承知だと思うのですが、これの本年の陽春号、十八号によりますと、御承知のとおり、全日制日本人学校が四地域に今度新設されるということが「外務省の部」のところに書いてございまして、さらに読んでまいりますと、「文化庁の部」では、日本人学校や補習授業校の教材整備について、三十三校分についてだけ日本人学校の教官・児童用図書についての教材整備がなされるという文面がここに出ておるわけでございます。  三十三校と申しますと、これは既存の全日制日本人学校というのが三十三校あるわけでございますから、新規の本年十月から新設されるこの四校についての補習授業等の教材整備については、これははずされておるのじゃないかというふうなことが、ここに出されておる文面からはうかがえるわけでございますが、これについてまず実情をお伺いしたいわけであります。
  97. 清水成之

    ○清水政府委員 御指摘のとおり、私ども文化庁のほうにおきまして、全日制学校三十三、それから補習授業校二十八だったと思いますが、教材整備等積算をいたしておるのは確かでございます。ただいまの御指摘の点でございますが、積算上確かにさようになっておりますが、毎年運用の問題といたしまして、新設されますものにつきましても配付をいたしておる、こういう実情でございます。
  98. 土井たか子

    ○土井委員 それは了解しました。  さてその次に、一九五九年の七月二十二日に、日本国政府とパラグァイ共和国政府との間の移住協定締結されているわけですが、この協定の中身を見てまいりますと、その九条に「この協定に基く移住により形成された日本人農業移住地は、現行の規則に従ってパラグァイ共和国の教育制度を遵守し、かつ、可能なときからスペイン語で教育を行うことを条件として、私立日本人学校を設けることができる。」というふうになっております。ところが外務関係、それから文部省関係、さらに先ほどの海外子女教育振興財団から出されている文書、どれを見ましても、実はパラグァイ共和国において日本人学校があるという記載がございません。実はこの協定の第二条で、日本・パラグァイ移住混合委員会が設けられて、「この協定に基く移住に関する五年ごとの基本計画を作成すること」となっておりますが、現状は一体どういうふうにこのパラグァイにおいては日本人学校が取り扱われているか、この点ひとつお答えを賜わりたいと思います。
  99. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 パラグァイの移住地の学校の問題でございますが、確かに協定には私立学校ということになってはおります。ただ、現実の問題といたしましては、現地につくっております学校はもちろんございますが、これはあくまでパラグァイの政府が自分で移住地に学校をつくったということになっております。したがいまして、さっき御指摘のありましたように、日本の私立学校としてパラグァイに日本人学校があるということにはなっていないわけであります。この移住地にあります学校は、そういうことでパラグァイの政府がつくっております。ただ、いろいろな関係で、非常にへんぴなところにありますから、これに対しまする先生等がなかなか来ないわけでありまして、われわれ政府のほうは移住事業団を通じまして、そういう先生方が来られてもいいような多少の月給の割り増しとか、その他いろいろな便宜をはかっている次第でございます。
  100. 土井たか子

    ○土井委員 在外日本人学校の実態というのは、やはり昨年の八月二十九日の当外務委員会においての決議に従って、整備を充実させていくという基本的なものがあるわけであります。ところが、こういう海外子女に対して教育を行なうという問題は、国境を越えて、国籍を越えてやはり各国共通の国際協調、相互理解ということを基本にして進めらるべきだと思うのです。そういう点から考えていきますと、いままでのところ、昨年のあの決議に従って、十分に外務省も文部省もこの問題に対処されてきたかどうか。この点たいへんに問題少なしとしないわけであります。  そういう点からひとつ指摘を申し上げたいことかここにあります。それは、海外子女教育振興財団の活動内容が、海外におけるわが国のこの経済活動というものに対して、より有利に展開されるようにということをおもんばかるあまり、実は子女教育についてはあと回し、むしろこの教育という問題が経済活動に付随して考えられるということであってはならないと思うわけでありますが、もし私がいま指摘する問題が、そういうふうなことが杞憂であれば幸いだと思いながら指摘するわけであります。  これは正規のルートからいただいた文書なのですが、「海外子女教育施設一覧表」というのを昨年の五月一日調べで出していらっしゃる。ところがこの中に、全日制日本人学校、それから日本語補習学校というふうな各区分けがしてありまして、そして全日制日本人学校についても所在都市と所在国というものが記載されております。その中に、所在都市、台北、高雄、これについて中華民国という所在国の名称がふってあるわけであります。外務省は台北、高雄については、所在国を中華民国というふうにいまも認識なさっているわけでありますか。
  101. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 ただいま御指摘の資料を私いま持っておりません。ただもしいま御指摘にありましたように——いま拝見いたしましたところ、その資料は海外子女教育振興財団のつくった資料のようでございます。われわれ現在まで、私自身気かついておりませんで、まことに申しわけございません。さっそく厳重に訂正さすように申し伝えます。
  102. 土井たか子

    ○土井委員 言うまでもありませんが、海外子女教育振興財団については、外務省からも、これは補助金を出していらっしゃるのですね。こういう文書を通じまして、かねてより海外子女教育振興財団というもののこの構成メンバーというものが、一体どういう人たちによってなされているかという側面から考えますと、経済活動に対して有利な状況を展開せんとするあまり、教育問題というものがむしろそれに付随する問題として考えられていく、こういうことに対しての危惧を持っている人は少なからずあるわけでありますから、そういうことから考えてまいりますと、この文書を見まして、はたせるかなという感じがするわけであります。  こういうことについては、やはり外務省当局、それからさらには文部省当局、ひとつこういう問題に対してなおざりにしてほしくないわけであります。やはりその責任の所在というものは、昨年の八月のあの決議に従って考えていった場合にも、あくまで海外における子女教育というふうなものを重視して、そしてこれに対して充実させていくというところに本旨があるわけでありますから、そしてそれが重要視されるという気風がだんだんこれから先はもっと強くならなければならないということでありますから、ひとつこれを機会に、こういう問題が二度と再び起こらないように、ひとつしっかりした態度で臨んでいただきたい、こういうことをまず申し上げる次第です。  さて、それから聞くところによりますと、一月九日に田中総理がタイを訪問された際、タイにございます日本人学校について、これを正式にタイ国で認可をしてもらいたいという申し入れがあったやに承わるわけであります。  ただ、この問題についてはいろいろ問題点が多いわけでありますが、タイ現地の新聞によってこのことをいろいろ見てまいりますと、「大使館日本人学校に抗議起こる」という見出しで、一月の二十七日の記事が一つございます。これは一月の八日に、タイの政府日本大使館に日本人学校を私立学校として経営させることを認可したことに対して、抗議が集中しているという記事の中身でありまして、そうして特に前経済大臣である、そして現在国民議会の議員であるブーンチャナ・アタッコーン氏から、いろいろ議会で質問が投げかけられているわけであります。  これはおもに日本人学校に関しての文部省に対する質問の中身でありますが、その質問の中身は、日本人学校というのは、タイの私立学校法に反しているにもかかわらず、長年にわたって経営されてきた。タイ内閣は本年一月九日、タイを訪問した日本の田中角榮首相への配慮から、一月の八日日本人学校を認可したというふうに前置きをして、最初、学校が設立されたときにも、生徒数やカリキュラムや学校で教授される科目の種類というものが、必ずしもタイが要望している中身にかなっているものではないというふうなことをるる説明しながら、政府日本人学校の継続を公に認可したのは合法的であるかどうかという質問さえこの中で提出されているわけであります。  さて、このタイにおける日本人学校というのは、これは周知の事実でありますけれども、バンコクにある日本人大使館の構内にございまして、しかもこの学校の中身についていうと、この学校のカリキュラム一切は、中学校課程を卒業しさえすれば日本人の高校に入学を認めるという、日本の学校教育制度に組み入れられているカリキュラムの編成になっているわけであります。  それで、ちょっと古い資料ですが、その後の資料というものが私は当たってみましたけれども見当たりませんので、これを引用いたしますけれども昭和四十一年二月に、文部省が外務省を通じて三十八カ国の在外公館から、いろいろかの地における日本人学校、補習学校に対しての取り扱いを調べた回答を受けております。その中では、タイの場合は「外国人学校の校長は、その国」——というのはタイでありますが、タイの「国民でなければならない。」「教授用語をその国の国語に限定する。」「その国」というのはタイの国語に限定するということです。そしてさらに、タイの「国語の学習を義務づけている。」タイの「歴史の学習を義務づけている。」タイの「地理の学習を義務づけている。」タイの「宗教または道徳の学習を義務づけている。」以上、諸点があるわけであります。それからしますと、ずいぶんいままでのかの地における日本人学校の内情といったものは、タイの国が考えているような条件には合っていないのですね。  今度、田中首相が訪タイされて、そして日本人学校についてはタイ政府がこれを学校として経営することを認可したということになるはずでありますが、中身については具体的にどういうふうにこれが進められ、どういう取り扱いにおいて日本人学校というのが今後タイにおいて認められていくかということについて、少しお尋ねをしたいわけであります。
  103. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 御承知かと思いますが、タイの学校は昭和三十一年、現地の日本人がいままで運営しておりました学校を何とかタイの法令に基づくものにしたいということで起こったわけでございます。タイ政府といたしましてはそれに対しまして、私立学校法に基づく学校の運営ということではなくて大使館の付属の学校として運営してくれということで、自来そういう形で運営されてきたわけであります。われわれとしましては、その当時からタイの政府とは密接に連絡をいたしまして、タイの政府の意図に従って学校を運営するということには十分心がけてきた次第であります。  先ほどお話のありました今年初め田中総理がタイにおいでになったときにタイの政府から、日本人学校としていまの学校を向こうの学校として認可するということにつきましては、前々からタイの政府からそういう手続を今度はとってくれということでとっておったわけでありまして、総理のおいでになりました機会に原則的な承認を得たわけでございます。  それに関連しまして、さっきお話のありましたようなタイの私立学校の法律によりますと、そのタイのことばであるとかタイの地理なり社会なりその他のいろいろないわゆるカリキュラムについて、いろいろな条件があるということでございます。これにつきましても、今後日本人学校はどのような形で認可されるかということは、全く現在タイ政府とわれわれが話し合いをこれからしようとしておる問題でございまして、どのような形になるか、私はいまのところ先のことでよくわかりません。  しかし、現在タイにありますほかのいわば外国人の入っておる学校というものを見ますと、いわば外国人であるという実態に即しまして、タイの政府がある程度そのカリキュラムについては弾力的な態度をとっておるということが見受けられるわけでありまして、いままでわれわれが運営してきました日本人学校につきましても、タイの政府は同じような態度で臨んでおったわけであります。
  104. 土井たか子

    ○土井委員 タイにおける日本人学校を認可してもらいたい、許可してもらいたいという熱意のほどは、これもまた「海外子女教育」ことしの新年号に、ページは一四ページでございますが、「教職員の和合によって」というバンコック日本人学校長の名前で載せられている一文がございます。その中には「本校がタイ政府より日本人学校として正式認可されること。」たいへんな熱意で書いてあります。これは一年、二年、ここしばらくの間に始まった問題じゃないので、早い機会からタイにあるところの日本人学校については正規に認可されたいという御要望があったに違いないわけであります。  ところが御承知のとおり、学校教育法の施行規則六十三条二号に従って、全日制日本人学校の中学部を終了した者はわが国の高等学校への入学資格があるものとされて、わが国の教育制度に組み込まれているわけでありまして、この趣旨のほどは外務省から私たちに配付をされる「世界の動き」昨年の八月号、三一ページに出ております。  そういうことからいたしますと、昨年八月のあの決議に従って考えていった場合、国家間におけるところの相互理解というものを基本に置いて、相互尊敬ということを基本に置いてやはりこういう問題については解決をしていかなければならないことであろうと思うのです。いまタイのほうにおける日本人学校に対しては、先ほど申し上げたとおり、少し古い資料でありましたけれども、文部省が外務省を通じていろいろ調べられた結果は、あのような条件がタイの国の条件としては用意されているわけであります。その間、どういうふうにこの解決を求めていったらよいとお考えであるか、外務大臣、ひとつ御意見をお伺いしたいのです。
  105. 大平正芳

    大平国務大臣 御案内のように、九万二千人ほどの在外邦人を持っておるわけでございまして、就学適齢期に達した子弟がほぼ一万人おるわけです。この人たちは現地に長く住みついてその現地の国民になって終生を終わるという人でなくて、いわば何年間の勤務期間をかの地で過ごして、やがてまた日本に復帰して来られることを予定されている方々でございますので、わが国の学校制度と現地における教育との間の架橋と申しますか、それが円滑にまいらないと、父兄のお立場としても子弟の立場としても安心ができない事情は御理解いただけると思うのであります。  しかし一方、御案内のように教育の主権というのはその国が持っておるわけでございますので、その主権にさわることになりまするとたいへん事柄はゆゆしい問題になってくることも、私はよく理解できるところでございます。したがいまして、われわれといたしましては、両方の目的を調整いたしましてまいらなければなりませんで、全日学校、補習学校あるいは通信教育等を通じまして、わが国の教育制度への適用も一方においてはかりつつ、担当の先生それから児童生徒、そういう方々がいま現にごやっかいになっておる国に対する理解、その社会に対する適応、そういうものも一方において充足してまいるように配慮していかなければならぬと思うのであります。これは先ほど領事移住部長が申し上げましたように、私立学校として御認可をいただきますとどこまでのアローアンスを現地政府からちょうだいできるか、そこらあたりで十分話を詰めまして両方の調整を円滑にはかってまいって、問題を起こさないようにやってまいらなければいかぬと考えております。
  106. 土井たか子

    ○土井委員 現地のいろいろな状況を物語るのは現地の新聞によるということが、一番私たちにとっては身近な、またじみちな方法であろうと思うわけでありますが、タイのほうでは、タイ現地の新聞に有名なマグサイサイ賞受賞者の漫画家が今度のこの問題を取り上げて一つの漫画を載せているわけであります。それは日本人管理学校に反対をするという漫画の中身でありまして、その漫画は、友だちを自分の馬小屋に置いてやったために自分が追い出されてしまった親切で気のよい馬を物語として引用している中身であります。私はそれを参考までにここに持ってきておりますから、あとでまた大臣にもごらんいただきたいと思うわけでありますが、そういうふうな現地の事情というものは、これはやはりタイにおける日本の経済進出なり経済活動なりというものが、やはり現地の国民にどういうふうな感情を持たしているかということがありありと出ているわけなんですね。日本大使館の構内に置かれてきたいままでの日本人学校について、タイ政府がこれを許可したからといって、日本側がそれに免罪符を与えられたような気持ちで、自分たちの国のこの学校教育制度そのものをそこではっきり強引に押し切ってまかり通らせるということは非常にむずかしいということも現地の事情としてあるのじゃないかと私は思うわけであります。  そこで大臣、この問題に対しての具体的な話し合いといいますか、具体的な取りきめというのは、どういう形で一体いつごろ進行していくのか、それをひとつおわかりであるならばお答えいただきたいと思うのです。
  107. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 先ほどちょっとお答えいたしましたように、現在のところ、どういう形で学校ができるかということはわかっておりません。ただわれわれとして予測しておりますことは、まず第一に、学校の運営管理がどういうふうに行なわれるかということがおそらく問題になるだろう。それから第二番目は、カリキュラムの問題であります。さらに第三番目は、一体どういうふうな資格の生徒をそれに入れるのか。大体そういう三つの点が問題になるだろうと思いますが、現在のところ向こうの政府の意向は全くわかっておりません。
  108. 土井たか子

    ○土井委員 そうしますと、首相は先取りをされたような形であるけれども、中身はそれに伴っていないというのが実情らしゅうございますね、たいへん心もとない御答弁でありますから。これについてはいつごろ、どういう形で進むか全く亡霊のようなものというふうに理解しておいてようございますね。
  109. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 先ほども申し上げましたように、タイの学校は昭和三十一年以来運営されておるわけでありまして、向こうの政府がわれわれがどのような教育をしているかということは十分に知っていることであります。したがいまして、そういう教育の実態を踏まえまして向こうの政府が認可しょうという原則的な態度をきわめたわけでございますから、タイの側に立って申しますればタイの政府として日本の学校がどういうものであるかということが全くわからないということではなくて、おそらくいろいろな問題点はちゃんと知っておると思いますし、その問題に従ってわれわれにいろいろな話があるのだろうと思いますけれども、われわれが期待いたしますことは、われわれの教育内容はすでに十分理解されていることでございますので、そういう理解の上に立ってその認可の手続を進めてもらいたい、こういうことでございます。
  110. 土井たか子

    ○土井委員 さらにタイを含めて海外における日本人学校の問題は、これは海外協力事業団等々についての問題を別の機会に取り上げるということもございますから、その席でさらに私はこの問題を提起したいと思います。  さて、外国との国際交流、国際相互理解というのは、日本が海外における子女をどのように教育をしていくかという、日本から外に出る子女教育という問題も片やございますが、また一方外国から日本にやってくる留学生に対する受け入れという問題もございます。外国人が日本でいかような取り扱いを受けて、教育を受けるかという問題もございます。これはやはり一環の問題でありまして、日本外国においての日本人学校に対する取り扱いで、日本における外国人の取り扱いを無視して要求するということは、これは不可能だと思うのですね。そういう点からいましばらくお聞きしたい問題があるわけです。  日本について留学生の交流というのは、まず数を見てまいりますと、受け入れ数は派遣数の四分の一弱にしか現状はすぎません。アメリカは逆に五・九倍、受け入れ数のほうが多いわけであります。フランスは四・一倍、西ドイツは二・六倍、イギリスは一・五倍、いずれも日本が先進国と考えている国々は受け入れ数は派遣数を大きく上回っているわけであります。そういうことから考えていきますと、日本はこの先進国と比べまして著しい出国超過であるという点がまず一つの特徴として考えられてよいと思うのですね。  次に、この出国超過現象を示しているのは、派遣の行き先なんでありますが、圧倒的に多いのは欧米であります。全体の八四%を占めている。アジア、東南アジア地方へはわずかに一一%しか出向いていないのです。ところが受け入れのほうはアジア地域から六〇%も来る、欧米からは三六%を受け入れているにすぎない。つまり日本は留学生の出入国数において大きなアンバランスに加えまして、さらに派遣先の地域と受け入れ先の地域がちぐはぐとなっておるという現状があるわけです。  こういうことをひとつまず念頭に置いておいて、さらにユネスコの統計を見てまいりますと、これは一九六八年調べということになっているわけでありますが、日本にいる留学生の数は一万三十一名ということになっている。数の上では世界第十一位にランキングされているわけなんです。ところがこの中身を見ていくと問題がにわかに出てくるわけです。この中身のうちで六千五十二名、すなわち半数以上は日本で生まれて育ったところの朝鮮人と中国人の子弟が占めているわけなんです。統計数字をここで私はいろいろ取ひ上げてあげ足とりみたいなことを言うつもりでは決してないわけですけれども、しかしこのことを持ち出した経過を考えてみますと、少ない日本の留学生数を国際社会に報告するときには倍以上に拡大するために大いに貢献してくれているのが実はこの朝鮮人、中国人学生だということになるわけなんですね。在日朝鮮人や中国人の子弟を除いた四千名弱の渡日留学生の中の五百八十余名に日本政府は奨学金をいま支給しているわけなんです。しかしその他には支給をしていないという実情が現にございます。  そこでまず、そういう問題も含みながらお伺いしたいことがここにあるわけですが、一九六五年、つまり昭和四十年の十二月二十八日に文部事務次官通達がございます。実はこの文部事務次官通達というのはあくる年の一月に日韓条約締結されているわけでありますから、それに先立っての次官通達なのでありますが、ここに掲げられているのは「朝鮮人のみを収容する教育施設の取扱いについて」ということでありまして、その中には学校教育法第一条の学校として認可すべきではないということと同時に、各種学校として認可すべきではないということをはっきり言明しているわけなんですね。  ところでお伺いしたいのですが、ソウルにあるところの日本人学校の地位というのはいまどういうふうに取り扱われておりますか。これは外務省、文部省、さらに先ほどの海外子女教育振興財団等々が出していらっしゃる文書によって確かめましたところ、私立各種学校としての取り扱いがあるわけでございます。かの地における日本人学校の地位については各種学校としての取り扱いがなされていながら、日本にある韓国人、朝鮮人に対しての学校については各種学校としても認可すべきではないということがこの次官通達で定められている。こういうことについては外務大臣どういうふうにお考えになりますか。  私はもはや、そういうことからすると、相互理解、平等に立脚しての相互尊敬という念でやはりこういう問題に対しては対処していかなければいけないということから考えますと、この次官通達というのはあってなきがごとしの状況である、むしろこの次官通達というのは撤回すべきである、この部分というのは廃棄すべきであると考えるわけでありますが、どういうふうにお考えになりますか。
  111. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 ただいまソウルの日本人学校の問題が出ましたので、それについてお答えします。  ソウルの日本人学校につきましては、われわれのほうからこういう学校をつくりたいということを韓国政府に申し入れいたしまして、それに対して韓国政府としては、現地に、ある期間滞在しておる日本人だけを対象とする学校であればこれを認めてよろしい、こういうことでございまして、それに従って現在学校が運営されているわけでございます。
  112. 土井たか子

    ○土井委員 いまのはソウルにおける日本人学校の実情でありまして、私がお伺いしているのは次官通達の取り扱いでありますよ。どういうふうにお考えになりますか。まず、外務大臣のお考えを前もってひとつお聞かせいただきましょう。
  113. 清水成之

    ○清水政府委員 きょう所管局の者が参っておりませんので公式にどうということは申し上げられませんが、多少これまでの事情を知っておる一人としまして、個人的ではございますが申し上げたいと存じます。  ただいま各種学校の取り扱いにつきましていろいろの経緯があるということは先生御承知のとおりでございます。御指摘の朝鮮人学校の問題につきましては、各種学校上どういう取り扱いをするかということは戦後非常に長い問題でございまして、文部省としましていろんな法案上どうするかというようなことも考えた時期がございますが、いま事務次官通達は、戦後からのずっと一貫した態度を再確認をしたというような通知になっておるわけでございます。いまこれを撤回するということにつきましては文部省としても持っていないと思いますが、担当でございませんので、ひとつそういう御質問がございました趣旨は十分担当局上司のほうへ伝えたいと存じます。
  114. 土井たか子

    ○土井委員 それは十分に意のあるところを伝えていただかないと困るわけですが、さらにこの通達の中身を見てまいりますと、「それが事実上行なわれることを禁止する趣旨ではない。」なんというふうなことも最後のほうには出てくるわけであります。現実面は、各種学校として認可をするのは都道府県知事にこの認可権があるわけでありますから、都道府県知事の配慮によって認可をしている例というのは全国津々浦々にあるわけなんですね。ただ各種学校であるがために、大学に進学を希望いたしましても日本の大学は事国公立に関する限りシャットアウトいたします。私立学校では約三十校くらいがこの受け入れを現にいたしておるわけでありますが、国公立の大学ではこれをシャットアウトしております。韓国学園や朝鮮人学校、双方とも、外国からの留学生と同様の扱いで大学に受け入れることが至当であると私は思うのでありますが、こういうことについては外務大臣はどういうふうにお考えでいらっしゃいますか。
  115. 大平正芳

    大平国務大臣 これは日本の学校教育政策の問題であるようでございまして、私、実はよく承知いたしていませんので、いま伺いましたことを承りまして、文部当局から事情をよく聴取してみたいと思います。  ただ、原則の問題といたしまして、国際的な相互理解というものがつちかわれなければならないということにつきましては、原則的におっしゃることは私はよく理解できます。
  116. 土井たか子

    ○土井委員 それはひとつ外務大臣のほうから文部大臣にとくと事情をお聞きいただいて、そしていまおっしゃったような御趣旨のもとに、日本においても国際の水準にまで外国からの留学生に対する受け入れ体制は完備されるべきであるという基本方針を貫いていただかなければ困ると思うわけであります。この点はずいぶんおくれていると思います。  さらにもう一問だけ私はお伺いをしたいわけでありますが、国際交流といま外務大臣おっしゃいましたが、国際交流というのは、経済進出で生じました摩擦を緩和する保険料などでは決してないわけですね。そういう点から考えますと、日本の場合自己本位の進出を改める手がかりを発見することが非常に大事だろうと思うわけであります。  そこで、昨年来非常に問題になっている例の国連大学でありますが、国連大学についてはもうすでに国連総会の第二委員会で国連大学の本部を日本に誘致するということがきまっております。ただ私は、事務局がどこに置かれるか、大学の姿、形がどういうものであるかというよりも、その国が教育という問題について、国際交流という問題について、どういうふうな基本的な姿勢をもって臨むかということこそ非常に大事だと思うわけであります。言うまでもなく日本は国連中心主義の外交政策を国際協調主義ということにのっとって展開している。  そういう点から考えていきますと、ユネスコがユネスコ新聞というのを出しているわけでありますが、「条約批准状況に見る人権問題への関心度」というのがここに載っています。昨年の十二月五日号であります。これを見てまいりますと、世界人権宣言が採択されてからもう四半世紀を経過している今日、ここに教育上の差別待遇反対に関する条約というのがありますが、これは六十一カ国がすでに批准済みであるのに日本はいまだにこれ一つすら批准していない。  現状こういうふうなままに据え置いておいて国連大学を日本に誘致するということになると、早くも国連大学を日本に誘致するということは好ましくないという、かつて日本で留学生として教育を受けた人たちからの声が国連の事務総長のほうにも届いているやに私は聞くわけでありますが、こういう基本姿勢が現状据え置きのままで国連大学開設という姿、形ばかり追っかけても、これは私はだめだと思うわけであります。  外務大臣、この教育上の差別待遇反対に関する条約等々を含めて、現にユネスコで問題にされている条約批准に対して、日本としては、国連大学誘致を考えた場合にどういうふうに臨まれるかということをひとつお答えいただきたいわけであります。
  117. 松永信雄

    ○松永政府委員 人権に関します国際条約、多数ございますが、いま御指摘がございました条約を含めまして、私どもといたしましてはこの種条約の趣旨そのものにはまことに賛成でございまして、国内法制上、実施上の問題があるものも中にはございますので、そういう点を踏まえつつ前向きの姿勢で検討していきたいと考えているわけでございます。
  118. 大平正芳

    大平国務大臣 国際条約の批准が少ないから日本が非常におくれておるような御指摘でございますけれども日本はたてまえといたしまして、国内体制がちり一つ残さないように整備されてから条約の批准をやるという非常に気まじめな態度をとっておるわけでございます。ILO条約についてもしょっちゅう本委員会でも御指摘を受けておるわけでございますが、わが国は三十一批准しておる、イタリアは七十九批准しておる、アメリカは七つしか批准してない。しかし、それじゃアメリカが非常におくれておるかというと、そうでもないわけで、それだけのものさしでその国の民主化の度合いを判定していただきますと困ると思うのでございまして、まあ土井先生間違いないと思いますけれども、その点私は、人権の条約につきましても同様非常に神経質なまでにまじめに取り組んでおる日本国政府であるということはこの機会に御理解をいただいておきたいと思います。
  119. 土井たか子

    ○土井委員 理解をしつつも、非常に答弁というのは御都合のよいものでありまして、私は、いままで条約締結にあたって日本は国内事情というものを整備した上でという態度で臨んでこられたとは必ずしも言い切れない事情をよく知っているわけであります。たとえば日米安保条約等々については、条約優位説の立場をとりながら、条約をまず締結してからあと国内法について整備しておいてからとおっしゃる御答弁は、どうも実情に即応した御答弁とは考えられないわけであります。多国間であろうと二国間であろうと、条約条約で同様ですよ。これはおかしな御答弁で、詭弁もいいところだと私は思います。御都合のよいときにそういうような方法でおっしゃるのは解せないわけでありまして、外交というのはやはり一貫した態度で臨んでくださいよ  そういうところからしますと、きょう私、いろいろなお伺いをいたしましたけれども、国際交流というのは、相互理解、相互尊敬ということを基本にして、文化を有する民族というものが正しく理解し合うということでなければならないわけです。外務大臣が、日本にあるところの韓国学園や朝鮮人学校の実態、そうして日本の上級校への進学に対する取り扱い、それについてまだ十分に事情を御理解なすっていらっしゃらなかったということを、きょう私はよく知りました。国際交流というのは、すぐ隣に住む異なった文化を有する民族を正しく理解するところから出発すべきだと思うのです。そういう点からいたしましても、昨年の八月に当委員会でされた決議の中身を誠実に実行していただかなければ困るわけであります。誠実に実行するという意味からいたしましても、海を越えて遠くの人々に友好の微笑を送るだけが能じゃない。それももちろん大事かもしらぬけれども、国際交流がもたらすものは外に向かっての発展によって得られるものじゃなくて、うちにあるところのきびしい自制を得てたどる自己鍛練の道こそ肝心だと私は思うわけです。  そういう意味で、文部大臣に対して外務大臣から、きょう私が申し上げたところの趣旨を徹底的におっしゃっていただいて、日本の国内における外国人の留学生に対する受け入れの中身というものを十分に整備をしていただくように心からここで期待をしまして、きょうの質問を終わりたいと思います。ようございますか。
  120. 大平正芳

    大平国務大臣 文部省との間でよく御相談してみます。
  121. 木村俊夫

    木村委員長 石野久男君。
  122. 石野久男

    ○石野委員 私は先日、台湾の帰属の問題について中江さんが三月五日の内閣委員会で答弁なさったことについてお尋ねしました。その際はまだ議事録ができておりませんでして、その後議事録をいただきましたので読ましていただきました。本日は、その件について御質問さしていただきますが、これは非常に重要でございますので、中江さんが説明をなさった議事録をちょっと読ましていただきます。  「台湾及び澎湖諸島につきましては、これはサンフランシスコ条約で明らかなわが国の立場、最終的にはポツダム宣言第八項の立場を堅持するということで、日中共同声明におきましても確認された、その立場に変わりはないわけでございまして、台湾、澎湖諸島について、日本政府として、それがどこに帰属すべきものか、あるいはどういうふうな表示をするかということについて国際法上の帰属を意味するような表示というものは慎まなければならないというのが日本政府の立場だ、こういうふうに思っております。」  こういう点では、新聞に報道された「国際的合意ができるまでは慎まなければならない」ということとは違っておりますので、意味はよくわかったのでありますけれども、しかし、ここでいいます台湾、澎湖諸島については「国際法上の帰属を意味するような表示というものは慎まなければならない」、どこに帰属すべきものが、どういうふうに表示するかは慎まなければならないというようなところに非常に理解を混乱させる問題が一つあると思うのです。  と申しますのは、一昨年の九月二十九日の日中共同声明では、すでに台湾中国の領土であるということを明確に取りきめておられるわけですよ。迷う必要は何にもないはずなのに、こういう発言をされておるから問題が起きたのだと思います。中江さんの真意をこの際ひとつ聞かしていただきたいと思います。
  123. 中江要介

    ○中江説明員 ただいま御質問の、台湾の帰属の問題について、先般の私の答弁の中の国際法上の帰属云々というところについてでございますが、私は、日本中国との間では、一昨年の日中共同声明というものが日中関係のあらゆる基本にならなければならない、こういうふうに思っておりますし、先般の答弁でもこの日中共同声明の文言をいささかも逸脱してはならないという気持ちで答弁しておったわけでございます。  この共同声明の中には何とありますかと申しますと、これはあらためてお読みするまでもないことかもしれませんが、第三項に「中華人民共和国政府は、台湾中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」このとおりあるわけでございまして、私もこのとおりのことを先般申し上げたつもりであったわけです。  先ほど先生の御引用なされました私の答弁の前段のところで、サンフランシスコ条約それからポツダム宣言第八項の立場を堅持する、そのことが日中共同声明においても確認されておりますと御答弁申し上げましたのは、このことを言っておったわけでございまして、日本政府としてはあくまでも、日本中国との関係ではこの共同声明第三項の文言どおりの立場を堅持していくということでございます。
  124. 石野久男

    ○石野委員 それはよくわかるので、ところが後段で「国際法上の帰属を意味するような表示というものは慎まなければならない」ということがなかなか理解できにくいというところに、いろいろな誤認が出たり、あるいは記者諸君の取り違いが出てきたのだろうと私は思う。ここでいう「慎まなければならない」という意味はどういうことなんでしょうか。
  125. 中江要介

    ○中江説明員 これは私いま申し上げましたように、日本中国との間では、この共同声明第三項で両方とも考え方ははっきりしている。  その日本中国関係を離れて、一般に国際法上の帰属ということになると、いろんな学説あるいは考え方があるようでございまして、私も必ずしも専門家であるわけでないのですけれども、純理論的な国際法上の帰属の問題ということになると、これは非常にむずかしかろうということを申し上げて、そのことが、ただいま申されましたように、一部の報道関係者のほうで少し誤解といいますか不正確なとらえ方をされたということは、私自身非常に残念なことだと思っておるのですけれども日本中国との間では、日本国政府は、ここにございますように、中華人民共和国政府の立場を十分理解し尊重する、そしてポツダム宣言第八項の立場を堅持するということで、一貫してこの共同声明の第三項を一言も逸脱すべきでないという考え方でございまして、そこに一般国際法上の問題についてのむずかしさを意識して多少最後につけ加えた部分が不正確な報道というような形で認識されたことは非常に残念なことだ、こう思っている次第でございます。
  126. 石野久男

    ○石野委員 答弁としては前段だけでよかったわけですね。あとの部分が非常に誤解を招いたように思いますし、私は、今後の日中の問題、現にいま日中航空協定の問題が進められていく過程で双方に問題がありますから、この点をはっきりしておきたいと思うのです。  これは大臣にも、大臣の部下に、もうすでに共同声明の上では明確に第二項、第三項で台湾の帰属問題についてははっきりしているはずなんですが、にもかかわらず、こういう迷いの生ずるような答弁の出るということは、両国間の信義の上からいってもたいへんな問題が起きると思いますので、ひとつこれは注意してもらいたいと思います。  その点の所見を聞いておきたいし、それからいま一つ日中航空協定の問題と関連しまして、日台航空の問題が民間でいろいろ論議されておる。この点については、実は私自身、この日台問題がやがて民間で問題になってくるときに当然問題として出てくるであろうということで関心を持っておりますことが、いわゆるFIRの問題でございますが、この問題については、先ほど石井委員からいろいろな質問があったようでございます。その際大臣が、このFIRの問題について、日台航空民間の間で話し合いをするときに、政府は、この問題についてアメリカから日本に移譲があった場合、日本政府台湾との間に折衝をするという御答弁をなさったやに聞いておりますが、真意でございましょうかどうか、この点と、二つお聞いしたい。
  127. 大平正芳

    大平国務大臣 前段の問題につきましては、日中共同声明を踏まえまして、私並びに外務当局全体といたしまして、共同声明以上でもない、以下でもない、これを厳守してまいりたいと考えております。  それからFIRの問題でございます。この点につきまして、航空の安全を確保することは何にも増して大事なことでございまして、そのことのために、この方法といたしましてどういうようにやってまいるかということにつきまして、いま政府部内でもいろいろと検討を重ねておるところでございます。本来、気象でございますとか、郵便でございますとか、その他実務関係につきましては、従来とも技術的な問題につきまして未承認国との間に政府間のコンタクトを持った事例はないわけではないのでございます。したがって、私どもといたしましては、これをどういう手順でやってまいるかということにつきまして、いませっかく検討をいたしておるところでございまして、いずれにいたしましても、安全確保につきましては十全の措置を前もって講じなければならぬと考えております。
  128. 石野久男

    ○石野委員 私は、この点は非常に重要ですし、こういうようなFIRの問題について民間で折衝できるはずはないと思うのです。当然これは政府が出ていかなければならないのだが、その際、日台航空の問題について政府が折衝するということになると、共同声明の文言からいえば、台湾中華人民共和国のいわゆる神聖な領土の一部であるということになるので、折衝はおのずから北京において行なわれるものであろうと思います。それは先ほども言ったように、日中共同声明の上でもなければ下でもないという形で問題が出ていくわけですから、そういう点についてやはり政府は明確な態度を示さないというと、また誤解が生じてくるだろうし、現に北京で折衝されておる日中航空協定の問題について、当然のこととしてこの問題は出てくるはずでございます。  先ほどの石井委員に対しての答弁、私、非常に関心を持っておったのでちょっと聞きましたら、やはり政府が折衝に当たるというような答弁だったというふうに聞きます、まあ議事録を見ませんからわかりませんが。もしそうだとすると、ここでもまた日中共同声明とそごを来たすことになってくる。この点は非常に大事なことなので、大臣の明確な答弁をこの際ひとつはっきりしておいてほしい。
  129. 大平正芳

    大平国務大臣 まず、安全確保は何にも増して大切なことでございますので、それに最大限の配慮をしなければならぬということが第一でございます。そのためにどういう手順でこれを取りまとめてまいるかということは、いま政府で検討中であるということが第二でございます。第三に、しかしながら、あなたから仰せられるまでもなく、国際関係を処理していく場合におきまして、相互の理解と信頼ということが根本にあるわけでございますので、私といたしまして、この問題の処理にあたりまして、日中間の信頼をこわすようなことはしないつもりであります。
  130. 石野久男

    ○石野委員 私は、時間がないのですけれども、この問題は、議事録をしっかり見なくちゃわかりませんが、いまの御答弁でいきますると、政府としては慎重に検討を加えるということですが、しかし、民間日台問題を論議していく場合に、この問題は、民間台湾のどことどういうふうにこのFIRの問題を折衝されるのか、ちょっとこういう問題について民間でそういうことはできないだろうと思うのです。当然政府が出ていかなければならぬ。そうすると、政府の立場はどうあるべきかということが明確でなければならないし、その明確になるべきことと日中共同声明との関係、特に日中共同声明における第二項、第三項の問題は、この際きわめて重要な課題になってくるわけでございますから、この問題はいま答弁ができないのならお預けにしておいてもらってもけっこうです。  石井委員に対しては、政府が折衝に当たると御答弁なさったようでございますが、その点だけはひとつ明確にしておいてほしいのですね。この際、日中航空協定北京交渉がどういうふうになっておるかということも、簡単な御報告はいただきたいですけれども、すでに石井さんから御質問があったようでございますので、台湾問題についてのこのFIRの問題の処理を政府がいまのところは態度が不明確であるというならば、石井委員に対する答えとそごを来たさないかどうかという問題、これが一つあると思うのです。だから、いま一度、大臣が御答弁できないのでしたら、私はこの質問を保留さしていただきまして、次の機会にさしていただきます。
  131. 高島益郎

    高島政府委員 先ほど石井委員の御質問に対しまして、私、答えましたものでございますので、また繰り返し御答弁申し上げます。  台北FIRというのは、現実に台湾を支配している政府、これが実際にやっているわけでございますので、先ほどの質疑応答にございましたような日中共同声明台湾の地位あるいは帰属の問題とは別個に、実際に現実にそこを支配している当事者との間の何らかの接触を経なければ、航空の安全に関する取りきめはできないということは厳然たる事実でございます。ただ、問題は、わが国中国との間に正常化した国交がございますし、この基本を逸脱してはならない、その関係から、いかような形の取りきめをすることが一番適当かという点については、現状ではまだきまっておらないということを申し上げた次第でございまして、現在、そういう点につきまして、中国とも十分に協議をしつつ、双方に誤解のないような取りきめの形を結んで、航空の安全をはかりたいと  いうことでございます。
  132. 石野久男

    ○石野委員 中国ともということになりますと、その中国ともという局長中国というのはどちらなんです。北京なんですか、台湾なんですか。
  133. 高島益郎

    高島政府委員 これは言うまでもなく中華人民共和国政府でございまして、私ども、日中の基本関係を逸脱してはならないということが基本でございますので、台北FIR沖繩FIRとの関係につきまして、これから何らかの取りきめを結ぶにあたりまして、中国との間に誤解のないように処置したいということでございます。
  134. 石野久男

    ○石野委員 そうしますと、中国との間に誤解の生じないようにするということの意味は、台湾との折衝はしないということですね。
  135. 高島益郎

    高島政府委員 再々申しておりますとおり、台湾を現実に支配している当事者との間に何らかの交渉ないし取りきめをしなければ、この取りきめはできない相談でございます。したがいまして、これは何らかの方法でやらざるを得ないと思っております。
  136. 石野久男

    ○石野委員 何らかの方法というのには政府が出ていくのですか、出ないのですか、そこのところをはっきりしてください。
  137. 高島益郎

    高島政府委員 FIRについてのいろいろな技術的な知識その他を持っておりますのは運輸省でございます。したがいまして、この運輸省の当事者が何らかの方法で先方と接触するということは不可欠だと思っております。
  138. 石野久男

    ○石野委員 大臣、この運輸省政府機関の一人がそこに出ていくということになると、日中共同声明の第三項規定に対してそごを来たすだろうと思うのです。ここのところは非常に重要なので、私は大臣の所見を聞いておきたいです。  多くは言いませんが、とにかく大臣はそういう問題の誤解が出ないようにするためにどうするのかということです。二兎を追っちゃ、中途はんぱじゃわからないでしょう。あっちもこっちもかけているようなことでは、いわゆるここで示されている共同声明の第三項には中国の「立場を十分理解し、尊重し、」こう書いてあるのですからね。どうなんです、政府がそこに出ていったのじゃこれとは違うじゃないですか。
  139. 大平正芳

    大平国務大臣 共同声明の立場を踏まえまして、事柄を処理することは当然の道行きだと思います。  それから日台航空往来を維持してまいるということについては、中華人民共和国政府も理解を示しておるわけでございまして、この航空往来を維持してまいる上におきまして、安全は確保されなければならぬわけでございます。安全を確保するためにFIRをどうするかという問題の処理につきましても、北京政府との間に誤解を生じないように、私どもといたしましては処理してまいりたいと思いますけれども、いまアジア局長がお答え申し上げましたように、両航空当局で何らかの形の接触を持たざるを得ないことはやむを得ない道行きであろうと思いますが、そういうことをやるにつきましても、誤解が生じてはならない、そういうことはくれぐれも私どもとしてはないように事柄を運んでまいるつもりであります。
  140. 石野久男

    ○石野委員 時間がございませんので、問題を残します。
  141. 木村俊夫

    木村委員長 松本善明君。
  142. 松本善明

    ○松本(善)委員 最初に、チリの債権国会議のことについて若干伺いたいと思います。  三月末にパリクラブといわれる債権国会議が開かれることになっているということでありますが、いまチリの軍事独裁政権の非人道的な態度というのは、国連でも非常に重要な問題になっておるし、方々から非難が出ております。チリのキリスト教民主党も非民主的行為と政党活動の弾圧をしたということについての抗議の声明を発表をしておりますし、それからイギリスの労働党政権は、イギリスの軍艦がチリを親善訪問をすることを取りやめることにしたということでありますし、このチリの債権国会議でも、返済条件をゆるめる問題についてはチリの軍事政権が人権を保障するということがなければ返済条件をゆるめるというようなことをすべきでないということをスカンジナビア諸国やオランダ、スイスなどが言い出しておるということであります。  私は、先ほど大平外務大臣は、人権保障についてはまじめに取り組んでおるというお話をしましたけれども、もしほんとうにそうであるならば、このチリの軍事独裁政権についての非人道的行為を糾弾すべきでありますし、そういうために各国に働きかけるべきであると思いますし、またそういう人権保障がされなければ返済条件をゆるめるというようなことはすべきでないというふうに考えますが、この会議についての日本政府の態度について伺いたいと思います。
  143. 伊達邦美

    ○伊達説明員 お答え申し上げます。  債権国会議と申しますのは、御案内のように、その国の国民経済の破綻に伴います問題につきまして、それぞれの債権国が集まりまして会議をいたしております。おっしゃいましたとおり、ただいまその会議が大詰めに近づいていると思うのでございますが、わが国はこの会議に臨みます態度といたしまして、極力政治的な要因ということを排除いたしまして、純実務的に合理的な解決をはかる、そのことが破綻に瀕しつつあります国の経済の立て直しに資し、かつわが国の持っております債権を回収いたします利益がそれに伴ってあるという立場で従来ともこの債権国会議に臨んでおります。今回のも前政権時代からの引き継ぎの会議を続けて純経済的な立場からこれに対処してきておりますのでございます。
  144. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣伺いたいのですが、そうすると、これはアメリカや西ドイツなんかは、政治と経済を切り離すという理由で、人権保障についての確実な保証がなければ返済条件をゆるめないという意見に対して反対だという態度をとっております。そうすると、結局日本政府もこの人権保障というのは経済の破綻の問題とは関係なくきちっとやるべきことでありますし、それをやれば検討するということはあり得るかもしれませんけれども、この人権保障の問題についてはほかの国からそういう問題提起があるのに対しては日本政府は反対をすると、こういうことになるわけですか。
  145. 伊達邦美

    ○伊達説明員 お答え申し上げます。  ただいまの御質問の観点は、そもそも債権国会議というものの性格、従来これはかなり国際的に確立されております会議でございますが、この会議の場合には直接関係がないというふうに私ども考えて処理をしてきております。
  146. 松本善明

    ○松本(善)委員 もう一度きちっと聞いておきますが、スカンジナビア諸国やオランダ、スイスなどが人権保障をしなければ返済条件をゆるめないという考え方ですね。それには反対だということですか。
  147. 伊達邦美

    ○伊達説明員 お答えいたします。  その点は、今回の会議は近く妥結すると思いますけれども会議の中のやりとりの問題につきましては、会議の約束でまだ触れられない段階になっておりますので、どの国がどういうやりとりをしたかということにつきましては、いろいろ伝えられておりますかと思いますけれども、まだ発表と申しますか、外に出せない問題だと了解いたしております。
  148. 松本善明

    ○松本(善)委員 何べん聞いても非常にあいまいで困るのですが、日本政府の態度を聞いているので、大臣伺いたいのですが、私が聞いておることは、チリの政権が人権を保障しなければ返済条件をゆるめるということはすべきでない、こういう態度を政府はとるべきだということを言っているわけです。そういう考え方を政府はとらない、人権保障の問題などとは無関係に経済的な問題としてだけ処理するということであれば、私の言っていることに反対であります。反対なのかどうかということを聞いているのです。
  149. 伊達邦美

    ○伊達説明員 どうもことばが足りなくて申しわけございませんけれども、繰り返しますように、今回の会議に臨んでおりますわれわれの基本的な態度というものは、いま御指摘のような政治的ないろいろな要因を排しまして、純経済的に合理的にチリ経済を救済するという態度で終始しておりますと申し上げるよりほかございません。
  150. 松本善明

    ○松本(善)委員 結局、人権問題について考慮をしないということのようです。私はそういう態度はきわめて遺憾である。これは政治問題というよりは、人権の保障の問題でありまして、国際的にこの保障についてはもっと確固たる態度をとるべきであるということを要求をしておきます。  もう一つお聞きしたいのは、分析化学研究所の問題が今国会で問題になりましたが、原潜の寄港に関しての放射能の汚染調査の問題であります。予算委員会では、モニタリングポストにつきましては、非常に大きな事故がない限り一次冷却水はいままでのポストでは測定できない、こういう答弁が政府によってなされて、そして田中総理大臣でさえも、原潜にモニタリングポストを近づけるということは一つの考えではないか、そういうことも含めてあらゆる角度から検討したいということは述べました。  私は、この問題についての地位協定上の問題についておもに聞きたいわけですけれども、モニタリングポストをドックの中に設けるならば放射能の汚染調査については非常に有益である。これによってすぐに端的に放射能の汚染があるかどうかを調べることができるわけですが、これはやろうと思えばできるのか、できないのか。その点についてお答えをいただきたいというふうに思います。
  151. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 米軍に提供いたしております施設、区域内に日本側がモニタリングポストを設けるにあたりましては、米軍が管理運用いたしております地域でありますので、当然米側との調整を必要といたします。
  152. 松本善明

    ○松本(善)委員 モニタリングポストやモニタリングボートの測定調査、これはどういう法的根拠でやっておりますか。地位協定の二条4項(a)でやっているのかどうかということを聞きたいわけです。
  153. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 昭和三十九年に、日米間の了解によりまして原子力艦船の寄港についての安全性の確認が行なわれました後に、日本側といたしましては原潜の寄港に異存を唱えないという回答をいたしております。それを受けまして、日米間で日本側の監視体制を確立するという見地から、米軍に提供いたしております施設、区域内に、ただいま御指摘のモニタリングポストの設置についての話し合いをいたしまして、地位協定二条4項(a)に基づく共同使用という形がとられてきておるわけであります。
  154. 松本善明

    ○松本(善)委員 この合同委員会はいつそういうことをきめ、そしてどういう内容になっておるかということをお答えいただきたいと思います。
  155. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 昭和三十九年のたしか十月ころであったと思いますけれども、合同委員会でその合意を見ております。合同委員会の合意の内容といたしましては、横須賀、佐世保、それぞれの地点におきまして、横須賀がたしか三カ所、佐世保が三カ所だったと思いますけれども、その特定の地点に監視のためのポストを設けるということについての合意が行なわれておるわけであります。
  156. 松本善明

    ○松本(善)委員 この放射能汚染についてのいろいろの調査をするということは、二条4項(a)の「合衆国軍隊による当該施設及び区域の正規の使用の目的にとって有害でない」ことが確認をされているということでありますか。
  157. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 昭和三十九年八月の米側から日本政府に寄せられました声明並びにエードメモワールの中におきまして、米側は、日本側が原潜寄港の近傍地点においてモニタリングを行なうということについて異議を差しはさまないということを申しております。これを受けまして、日本側自体として原子力艦船の寄港の際の安全性を確かめたいという見地から、モニタリングポストを米軍に提供しました施設、区域内に設けている、こういう性質のものでございます。
  158. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういたしますと、ドックの中にポストを設けるということはできるということでありますか、日本側がやろうと思えば。
  159. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ただいま御答弁申し上げておりますように、昭和三十九年の合同委員会合意におきまして、特定地点を特記しまして、モニタリングポストの設置が合意されておるわけであります。そこで、ただいま御指摘がありました新しいポストを新しい場所に設けるということにつきましては、米側との調整を要するわけでございまして、日本側が一方的にその特定地点に新しいポストを設けるという措置をとるわけにはまいらないわけであります。
  160. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうしますと、いまのポストの置き方であれば、これはとんでもない事故が起こらない限りは測定はできないということが、科学技術庁によってもはっきりと答弁をされておるわけであります。役に立たないということであります。私ども調査をしました範囲でもそうであります。これはドックからはるかに離れたところにありますし、それからモニタリングボートにいたしましてもドック内の立ち入りができなくて、そこの下のどろをとることもできない。それから寄港時には常時継続の調査、二十四時間連続で監視するというようなことをしなければならないと思いますが、いまの状況では放射能汚染調査は十分に効果をあげられないということは答弁でも出ておりますし、それからわれわれの調査によっても確認をされておるところであります。  いまこれを改善するために、ドックの中にモニタリングポストを置くとか、あるいはモニタリングボートを原潜の入港時には二十四時間連続監視をするというようなことをすべきだと思いますが、こういうことを合同委員会で提起をするという考えは政府にありませんか。
  161. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 現在行なわれております監視体制の内容につきましては、科学技術庁のほうで主管庁として責任をもって担当してきておられるところでございますけれども、私どもの承知いたしておりますところでは、たとえば横須賀につきましてはモニタリングポストが四カ所、モニタリングポイントが六カ所、また佐世保につきましてはモニタリングポストが四カ所、モニタリングポイントが十カ所、こういう配置が行なわれておりますほかに、それぞれの港にモニタリングのボートが配置されておりまして、寄港時、非寄港時それぞれにつきまして監視体制を固めておるわけでございまして、私どもの承知しておりますところでは、科学技術庁として従来のポストの配置で十分である、こういうふうなことであるというふうに承知しておるところであります。
  162. 松本善明

    ○松本(善)委員 科学技術庁来ていますか。——原子力局次長ですね。  あなたは、モニタリングポストは非常に大きな事故がない限り一次冷却水を測定することはできないということを答弁をしました。いまの状況では、大事故が起こらない限りは、モニタリングポストやモニタリンクポイントではこれはほとんど把握できない、これはもう当然ではありませんか。その点をお答えいただきたい。
  163. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 お答えいたします。  ただいま先生指摘のございました現地におきますモニタリングポイントの機能でございますが、これは予算委員会におきましても御答弁申し上げましたように、その設置の目的が、まず第一に、寄港地の一般的な放射能のバックグラウンドを測定すること、二番目に、そのバックグラウンドの長期的な変動を把握すること、この二つが主目的でございまして、副次的に、大量の放射能放出があった場合にそれを感知するという目的が追加されております。  この現地におきまして異常放射能の検出をいたしますのは、たとえばポストなりポイントなりが一つ一で異常を検出するということではございませんで、モニタリングポイント、モニタリングポスト、モニタリングボート、そういった各要素が一体となりまして一つのシステムとして機能をする、こういうことになっております。したがいまして、先生指摘の異常放射能の潜水艦からの放出は、主としてモニタリングボートによりまして検出をする。しかし、全体的な総合的なシステムでございますから、単に一つのものだけで全体を機能するということではない。全体のシステムであるということを、私どもといたしましては御説明申し上げておる次第でございます。
  164. 松本善明

    ○松本(善)委員 この機能は、すでにもうみんなわかっていることなんですよ。よほどすぐ目の前で一次冷却水を出さないという限りは、モニタリングポストなどには反応しないということは、これはもうみんな知っていることですよ。だからこそあなたは、ボートがおもなんだということをいま答弁をしたのだと思うけれども、そのボートもドックの中に入れない、それからドックの下の土もとれない。それだったら、原潜の放射能汚染の問題を確実に調べるということになれば、やはりドックの中へポストを置くとか、それからドックの中にボートが入るようにするとか、それから原潜の寄港時には二十四時間継続調査をするとか、そういうことが必要になるだろう。少なくもそういうふうにしたほうが、原潜の放射能の汚染というものはよくわかるということになるはずだと思うのです。  いまのままのほうが汚染調査はできますか、それとも私が言うように、ドックの中にそのポストを設けるとか、あるいはモニタリングボートがドックの中へ入るとか、あるいは二十四時間の継続調査をやるとか、そういうことのほうが、原潜の放射能汚染を確実に把握するということになると思うが、その点どうですか。
  165. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 お答えいたします。  先ほども説明申し上げましたように、モニタリングポストでございますか、あるいは私言い違えたかもしれませんが、モニタリングポストの主目的は、その入港いたします港全体の地形、海象、気象その他を考えて配置するわけでございますから、その全体としての有効な配置の場所に置くということで考えております。  それから、ドックにつきましては、その出口におきましてモニタリングボートが監視をし、かつ、そこで水とどろを採取するということで、十分監視の目的が果たせると考えております。
  166. 松本善明

    ○松本(善)委員 私の言うのは、ドックの中に設ければこれは端的にわかるわけですよ。ドックの中になぜ置けないのか、それはなぜ有効でないと考えるのか、そのことを聞いているのですよ。外ではだめだ、これは科学者みんな言っています。それから私が調査に行って、科学技術庁の職員も言っています。なぜドックの中に設けないのか、ドックの中になぜボートを入れないのかということなんです。
  167. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、全体のシステムとして安全監視をいたしております。その観点から、ドックの中に設けるということでなくて、ドックの入り口で監視をすることで十分であると考えております。かつ、モニタリングポストの配置につきましては、一カ所に集中ということでなくて、港全体の地形を考えまして、広く包括的に一般的な放射能のバックグラウンドを監視する、その主目的に沿いまして、全体的な配置を考えておる次第でございます。
  168. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、原子力局次長説明はちょっとどうしても理解できないというか、私が言っておるように、全体の地形を考えてといいますけれども、いまの置いてあるポストであっても、ドックからはるかに離れたところにある。ドックのすぐそばにもないわけです。それでは一次冷却水が出てもわからないというのが、科学者も言っているし、それからあなた方の職員もそう言っているのですよ。だからこそあなた方は、ポストについては原潜の放射能汚染を調査するというのは直接の目的ではないということを言わざるを得なくなってきておるのでしょう。いまドックのすぐそばでということを言いましたけれども、ドックのすぐそばにはポストはないでしょう。そういうふうにするということがなぜ科学技術庁では考えられないのかということを聞いているのですがね。
  169. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 モニタリングポストを置きますおもな目的は、日米間の合意によりますところの寄港地の一般的な環境に対して測定可能な変化をもたらさない、こういう事項がございます。この一般的な環境放射能の水準に測定可能な変化をもたらさない、それを監視するのを主目的といたしております関係上、広く一般的なバックグラウンド測定に適当なように配置をいたしておる次第でございます。
  170. 松本善明

    ○松本(善)委員 私はとても納得できないのですが、時間がありませんので、科学技術庁との議論はまたあらためて別の機会にやるということにして、地位協定の三条三項で、合衆国軍隊の「作業は、公共の安全に妥当な考慮を払って行なわなければならない。」という規定がありますが、これは放射能の汚染調査というようなことについて日本側が要求することは断われない、こういう関係になっておるのではないかと思いますけれども、その点についての外務省の見解を聞きたいと思います。
  171. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 地位協定の三条三項は、まさにただいま御指摘のとおりに「合衆国軍隊が使用している施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払って行なわなければならない。」と書いてございまして、米軍は施設、区域を使用いたすにあたりまして、公共の安全に妥当な考慮を払う義務を持っております。  一方、原子力艦船の寄港に伴います安全性の問題につきましては、日本側昭和三十九年にこれの受け入れについて原子力委員会におきましてきわめて厳重な、また慎重な検討を加えました上で、安全性について何の問題もない、こういうことで米側の申し出を受け入れをした経緯があるわけであります。この間、昭和四十三年に佐世保のいわゆるソードフィッシュ号事件におきまして異常値が発生したことに伴いまして、この原因の究明に日米双方が当たったわけでありますが、残念ながらこの異常値発生の原因について突きとめることができなかったわけであります。しかしながら、当時の状況にかんがみまして、日米間で種々検討が加えられました結果、四十三年の十月に、当時の三木外務大臣とジョンソン駐日米大使との問で覚書が交換されておりまして、その中でジョンソン大使は、外国の港における合衆国原子力軍艦の運航に関する合衆国政府の声明においてなされている約束は今後の寄港の際にも厳格に履行されるということを述べますと同時に、寄港中における一次冷却水の放出の問題につきまして、今後日本の港においては通常一次冷却水が放出されることはなく、これが現在の実施方式に即したものである旨を述べているわけでございまして、日本側といたしましては、この一次冷却水の放出というふうなことが米国原子力艦船の日本寄港中に行なわれることはないというふうに考えているわけであります。     〔委員長退席、水野委員長代理着席〕  しかしながら、念には念を入れるという意味におきまして、先ほど来原子力局次長から御答弁がございますように、寄港地におきましてモニタリングポスト、モニタリングポイント並びにモニタリングボート、こういう配置によりまして安全性の確保につとめているわけでございまして、そういう意味におきまして、米側とは十分この問題についての理解の上に立っての原子力艦船の寄港が行なわれている、こういう状況でございます。
  172. 松本善明

    ○松本(善)委員 大臣伺いたいのですが、この検討ですね、いま放射能汚染の問題については、いまの答弁がありましたけれども、国民の中では非常に不安があるわけです。この機会にこのポストの位置だとか——総理大臣でさえも近づけるということを考えたらどうかということを言っておるわけで、ポストの位置だとか監視体制について検討をして日米合同委員会で提起をする。本来ならば十分の監視体制をとるということが日本側の権利であろうかと思いますが、そういうことをやるという考えがないかどうかということが一つ。  もう一つは、米軍基地についての調査を横須賀で私もいたしましたし、それからホワイト・ビーチで今度私たちの議員団がやろうとしていますが、それについて、アメリカ側は議員だけしか入れないということを言っておる。横須賀のときには新聞記者も一緒に入りたいという希望がありましたけれども、これも入れない。日本の国土でありながらも、こういう形でアメリカ軍が一方的に議員しか入れないということで、必要な調査の体制もとれない。議員が調査をする場合には、当然に科学者でありますとか、その調査に必要な要員を連れていくというのは日本の常識であろうかと思います。それの基地内立ち入りを拒むとか、あるいはその状況についての新聞記者の報道を拒むとか同行を拒むとかいうことは、私は是正されなければならない問題ではないかと思います。  この点についての大臣の見解、日米合同委員会であらためて監視体制の問題についてアメリカ側と相談をするという考えはないかということと、それからいまの調査のための立ち入りの問題、二つについてお答えをいただきたいと思います。
  173. 大平正芳

    大平国務大臣 第一の問題につきましては、科学技術庁のほうで先般御指摘がありました監視体制の不備な問題につきまして改変が行なわれておると承知いたしておりまして、私どもそれが早く改変が行なわれてまいることを期待いたしておるわけでございまして、この段階で特にアメリカ側に新たな要請を行なうつもりはありません。     〔水野委員長代理退席、委員長着席〕  それから、第二の問題でございますが、松本先生も御承知のとおり、国会の委員会という超党派的な立場で派遣される場合におきましては、議員以外に事務局の方々とかいう方々を御一緒に立ち入りを認めるというたてまえをとられておると承知いたしておりますけれども、特定の政党という場合におきましては議員だけに限るということがこれまでのアメリカ側の処理のしかたであったと思うのでありまして、今回御党からの御要請もございまして、再度コンファームいたしたのでございますけれども、その態度をまだ先方は変えるという意図を示しませんので、そういう事情はひとつ御承知願いたいと思います。
  174. 松本善明

    ○松本(善)委員 たいへん不満でありますが、いま外務大臣言われたことについてちょっと一言お聞きしておきたいのは、科学技術庁がいろいろ体制を整備をしているということは知ってのとおりだという話ですが、その体制、分析化学研究所にかわる監視体制の確立するまで原潜の入港を断われということについての申し入れをしろ、アメリカ側に差し控えるようにということを言うべきだということを私たちは言いましたが、この点はいまの答弁でお聞きいたしますと、外務大臣の認識でも、科学技術庁がいまやり直しをしているということでありますから、その整備が整うまでは寄港を差し控えるようにということを言うのは当然であるかのように思いますけれども、この点についての外務大臣の見解をあらためて聞きたいのです。
  175. 大平正芳

    大平国務大臣 これは国会でも御答弁申し上げておりますとおり、現行の監視体制の不備について問題が提起された、それで科学技術庁中心に改変体制が進んでおるという事情はアメリカ側によく説明をいたしてありまして、アメリカ側もその事情は私は理解いたしておると思うのでございまして、特に原子力艦船の寄港について差し控えてもらいたいという要請をいたすつもりはありません。
  176. 松本善明

    ○松本(善)委員 確かめておきますが、アメリカ側が事情を知っていて差し控えているので、申し入れをするつもりはない、こういうことですか。
  177. 大平正芳

    大平国務大臣 諸般の事情はアメリカ側に逐一よく説明をいたして、先方も理解しておると承知しております。
  178. 松本善明

    ○松本(善)委員 またあらためていろいろ聞くことにして、きょうの質問はこれで終わります。
  179. 木村俊夫

    木村委員長 渡部一郎君。
  180. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 委員長にお願いしますが、私の指定された持ち時間はいま終了の時刻であります。各委員が熱烈に御討議なさるのを妨害するつもりはありませんけれども、指定の時間を守っていただきますよう、議事運行上今後御配慮をいただきたいと存じます。  まず、日中航空協定締結問題について簡単にお伺いしたいと存じます。  現在、日中航空協定締結問題につき北京において交渉途上であると承っております。外務大臣の先ほどからの御答弁を伺っておりますと、この締結交渉をここ一週間か二週間のうちに片づけて本委員会に対し日中航空協定を提出したい旨の決意を披瀝されたと了解してよろしいわけでありましょうか。
  181. 大平正芳

    大平国務大臣 私といたしましては、本協定をできるだけ早く仕上げて、今国会中に本委員会で御審議をいただきたいものと強く希望をいたしております。
  182. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 次に、石井委員が言われたFIR関係の問題について、先ほどから錯綜した議論が続いているわけでありますが、台北FIR、それから沖繩FIR、こうした関係について調整するためいわゆる台湾政府交渉する、こういう意思表示をなさったと承ってよろしいですか。
  183. 高島益郎

    高島政府委員 再三お答えしておりますけれども、私、いわゆる台湾政府日本政府が正式に交渉すると申し上げたわけじゃございませんで、台北FIRを実際に管理しているものとそれから沖繩FIRを管理しているものとがとにかく何らかの形で接触をしなければその実体を取りきめられないだろうということを申し上げたわけでございまして、そのこと以上に出るものではございませ  ん。
  184. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 非常にうまい言い方をなすっているわけでありますが、実際上、台北FIRを管理しているものと言われましたが、そのものと日本政府交渉する、こうおっしゃったわけですね。
  185. 高島益郎

    高島政府委員 交渉すると申し上げたのでございませんで、要するに、ものといいますのも、先生十分御承知のことと思いますけれども、こういうことを管理するものというのは一般には政府機関でございます。そういう機関日本の当局との間で何らかの形で意思が疎通しなければその実体を取りきめ得ないだろうということでございまして、実際に物理的に会わなければ取りきめられないということまではっきり言っているわけではございません。
  186. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、直接的、間接的に意思を通す、こういう意味ですね。
  187. 高島益郎

    高島政府委員 そのとおりでございまして、直接であろうか間接であろうかということは別といたしまして、とにかく両方のFIRを管理しているもの同士が何らかの方法で意思を確認し合わなければ実体がきまらない、このことは航空の安全にとってきわめて重要であるというように考えております。
  188. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それは明らかに、共同声明の第二項、第三項において明白にされている台湾の地位、及び中国を代表する政府に対する共同声明調印後の大平さんの記者会見に述べられた事項と抵触しないように配慮する、こう述べておるわけですね。
  189. 高島益郎

    高島政府委員 その点も私再三申し上げておりますけれども、日中の基本的な関係をそこなってはならない、そのワク内で当然中国との間でも十分協議した上で納得のできる取りきめをしたい、こういうふうに申し上げているわけでございます。
  190. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大体はっきりしたわけでありますが、そうすると、今回の日中航空協定交渉の際、北京においてこの問題について北京側の、中華人民共和国政府の了解を得るつもりである、こういう公式の意思表示と承ってよろしいわけですね。
  191. 高島益郎

    高島政府委員 この問題は、先生御承知のとおり、日中航空協定そのものではもちろんございませんけれども日中航空協定と関連します日台路線の維持の問題と実は観念いたしますので、そういう点につきまして十分話し合うつもりにはしております。
  192. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この点についてはお答えいただきましたので、では海外広報予算の問題についてきょうはお伺いをしたいと存じます。  海外広報予算の成り立ちにつきまして、私は今度の予算委員会においてもできれば触れたいと思ったのでありますが、海外広報関係の予算だけに、切るわけにいきませんけれども外務省予算の中でひどいバランスを欠いた感覚のするものがあったわけであります。それはちょっと普通の表現ではできないほどひどい——ひどいといいますか、少ない予算でありまして、わが国外交の基礎をなす海外に対する情報の提供あるいは文化外交の基礎をなすこれらの友好親善のための広報費というものが使い方が妥当かどうかの前に、もう何というのかむだな量に、ある一定限度より低いものですからほとんどむだだといっていいぐらい少ないということをこの際遠慮なく言わしていただきたい、こう思っておるわけであります。  それはデータをあげて申し上げますと、もうちょっとすごいような数字が出ているわけでありまして、海外広報関係予算が四十八年度十二億九千八百三十七万九千円であったのが、今期政府予算原案として出されておりますのは十五億四千七十一万一千円、比較いたしまして二億四千万ばかりのプラスであり、一九%増となっております。ところがこの一九%増の十五億ばかりの予算というものがどれぐらいのものであるか、どういうふうに認識されておるのか。極端なことでありますけれども、諸外国の例を見ますと、ちょっと数字の上でも規模の上でも違い過ぎるのであります。  時間を節約するためにちょっと数字をこちらのほうで申し上げさせていただきたいのでありますが、四十八年の七月十二日海外広報課の調査によりますと、これは調査していただきましたところが、米国の場合は米国広報庁、USISの一九七四年度要求額は六百九十一億一千万円、国務省教育文化局の海外広報並びに文化交流関係予算は一九七四年度要求額が百六十三億二千万円、合計いたしますと、アメリカの場合は八百五十四億三千万円であります。いま申し上げましたように、日本の十五億四千万というのと比べると、これはとんてもない数字になっておりまして約二十倍——四十倍でしょうか、というとんでもない数字になるわけであります。  イギリスの場合は、外務省の海外広報関係予算一九七二年、ちょっと古いのでありますが、四十九億三千万円、中央情報局の海外広報関係が三十八億二千万円、英国文化振興会の七二年度予算が百三十一億八千万円、合計いたしまして二百十九億三千万でありまして、日本の大体十五倍近くに当たっているわけであります。  西ドイツは、西ドイツの新聞情報庁の海外広報関係は六十八億三千万であります。インター・ナチオーネス、海外広報関係は十四億三千万円、外務省のその関係は三百七十九億八千万円、合計して四百六十二億四千万円で、これはおおむねわがほうの実に三十倍に当たるわけであります。  フランスの場合は、外務省のほうで十七億四千万円、外務省の文化交流関係で五百九十億四千万円で、計六百七億八千万円であります。  ソビエトのデータも非常に古いのしかありませんが、やはり同じようなグレードにおける広報予算があがっております。  そうしますと、日本の場合、大体欧米諸国の十数分の一ないし四十分の一というもう話にもならぬほどの少ない予算になるわけであります。こういうような外交関係の組み立て方をするという場合は、その国家がファッショ国家であり、人に理解をされることを求めない国家であり、強大な軍事力を持ち、相手を一撃に打倒する能力を持ち、相手に特にわがほうの立場を知らせないで済むというような閉鎖的、鎖国的、ファッショ的軍国国家の場合にのみ許される予算のつけ方ではないかと私は思っているのであります。これほどの少ない予算にしておいておかれた理由と意義づけははたしていかなるものであったか。何か海外広報予算だけを特にこういうふうにものすごく縮めていらっしゃるというのは深い深い理由があるのではないかとすら私は思うわけであります。政府は一体どういう気持ちでこういう予算を組まれたのだろうか。またこれでいいのかどうか、私はちょっと率直なことをお伺いして、今後の問題について議論をしたいと思っているわけであります。
  193. 黒田瑞夫

    ○黒田政府委員 ただいま御指摘の数字でございますが、先生の言われますとおりの数字で、諸外国の広報文化活動の予算が出ていることは事実でございます。それに比べましてわが国の予算が非常に小さいということも事実でございます。ただ、いま先生の御指摘各国の予算は、一つには文化活動も含まれておりまして、それを含めて申し上げますと、外務省が持っております予算は海外広報予算といたしまして十五億四千万円来年度の政府原案に組み込まれております。それから文化交流の関係につきましては、国際交流基金から上がってまいります運用益など、これが二十三・六億円、その中で管理費を除きまして実際上広報事業に使います金が十六億円でございます。それから文化事業部が持っております予算の中で文化のために使われる予算が約一億円くらいかと思っております。そのほかに共同通信それから時事通信によりまして英文、中国語、スペイン語などによるニュースを外国へ出しております。これは広報活動の一部でございまして、そういうものを全部で見ますと約四十四億円ちょっとになるわけでございます。  そういうものを入れましても、諸外国と比べてはなはだ小さいということは事実でございますが、実は本年度の予算に比べまして来年度の政府原案につきましては一八%以上、一九%くらい増していただいておるわけでございますので、その予算の伸びといたしましては、むしろほかの予算に比べて優遇されておるわけでございますけれども、何ぶんにも基礎が小さかったものでございますので、いまだはなはだ不十分な状況にあるということをわれわれとしては申し上げざるを得ません。  ただ、来々年度からは最近の日本の海外における進出にかんがみまして、いろいろな問題が出ているわけでございますので、そういういろいろな問題をいかにして解決するかという手段の一つといたしまして、特に日本が文化面それから援助とかその他におきまして、非常に各国のためになることをしているわけでございますので、そういうことを広報するという面も含めまして大幅な長期的計画に沿いましたところの予算増をお願いしようと思いまして、現在計画中でございます。この計画をつくりますのには相当時間かかると思いますけれども関係省ともお計らいいたしまして、わが国の海外広報文化面での不十分な活動を大幅に増大いたしまして、各国のその方面における活動と比肩し得るようなものに持っていきたいというぐあいに考えております。
  194. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 将来の問題につき議論せざるを得ないわけでありますが、いまの四十四億というお話でもアメリカの実に二十分の一、イギリスの五分の一、ドイツの十分の一、フランスの十五分の一という予算であります。そうしますと、海外広報というもの自体の費用というものは、実態的に申しますと、ある限度を越えますと無価値になるわけでありまして、こういう予算のつけ方については常識のラインをはずれているのではないかと数年前から指摘をしてきた一人であります。  たとえて言いますと、私が三年前にソニーのデータをあげましたときソニーは九十億を海外広報の予算に使っております。わがほうは現在四十億であります。それからホンダスポーツという自動車会社がありますが、あれが当時四十億といっておりました。現在ではそれをはるかに数倍する予算というものがつけられていると思います。また一九%アップしたことを喜ばなければならないというただいまの情文局長の苦心、苦衷を込めたお話がございましたけれども、この期間円の変動相場制による実質的な円の切り下げと、そしてまた国内、国外を問わぬ高度のインフレを考えますならば、一九%アップということは実質的には昨年度より落ち込んでいることを示しているといっても差しつかえないかと存じます。  そうしますと、海外広報予算がかくも少ないと、どんな結論を招いてくるか。この間の総理の東南アジア訪問の際に象徴的にあらわれましたように、地元の情報の全くの無理解というか不的確な情報のもとに乗り出された総理が地元においてそれこそ学生のデモ隊をはじめとする大きな怨嗟の声の中にあって倒れていく、それは私はまた別の理由もあるかと存じますし、また日本のこれまでの外交政策のやり方自体にも問題がありますが、この広報関係の粗末な点で大きなマイナスをかぶった点もまたこれは認めなければならぬだろうと思うのです。私はこのことぐらいは政府が早く手をつけられるだろうと思って数年間期待をしておったのですけれども、ちょっと限界を越えておるのですね。  私はきょうあまり時間がないので論議する余裕もないのでありますが、一つここにあります英国の対日世論に対する調査というものを外務省におかれてはギャラップ世論調査社に依嘱しておられるわけですね。外務大臣おそらくごらんになっているだろうとは思うのですけれども、私、この中ですさまじいことを発見したのでちょっとお伝えしておきたい。この中にこういう調査があるのです。日本の政治制度というものについての質問がありまして、「日本の政体は、英国や米国と同様、自由選挙による民主制か、あるいは共産制か、もしくは何らかの形の独裁制か。」こういう質問が行なわれているわけです。これに対して四十八年現在において民主制と答えた者は一二%、七〇年のときには三五%あったのが四%も減ったのです。民主的であるかどうかは別として、日本は民主制でないと思われておる。そして共産制と答えた者が四十五年は一一%、四十八年に至って実に一三%になっているのです。寡聞にして私は日本が共産制であるとは理解していないのですけれども、一三%なんです。もっと傑作なのは独裁制と書いてありまして、独裁制だと答えた者が、ここのところ変わらないで一八%が続いておるのです。  これは田中内閣に対するまあわれわれの批評、酷評が響いているかもしれませんから、それは私たちにも責任があるかもしれない、この独裁制という部分については。そういう部分も大いにある。ですが、制度、政体に対する質問として、こういうような三一%に当たる人がイギリスにおいて間違えておるということは、これは海外広報をやった分に入らないのではないかと私は思うのですね。こういうのをデータとしてちゃんとおとりになって——これは外務省の資料でございますよ、これをおとりになっていて、何らその後御指示のあった気配がないとすると、そして海外広報予算については何らふえてないとすると、これは一体どういうおつもりなのであるか。私はちょっとこの辺も理解をいたしかねるわけであります。日本をこういうような国だと思わせるところが日本の外交戦略なのであるかとまで私は言いたくなる。  ついに、こういう誤謬があったがゆえに、約二年前ですか、日本においては犬殺しがたいへんたくさんおって、犬という犬は、イギリスから買われた犬が屠殺されておるというので、ロンドンの日本大使はイギリス全土をかけずり回って、われわれは犬を食ってないなどというような演説をして歩かなければならない。この程度の認識をした国家と国家の間でなまぐさい外交交渉あるいは経済交渉というものをしなければならぬとしたら、それはもう相互理解なんて不可能である。田中総理がやられた北海油田の話なんかもってのほかだ、話の通ずるわけがないと私は思うのですね。心と心が通い合う外交と言う前に、話が通じなくて全くとんちんかんな相手、錯覚されている相手との間に何の話し合いができるかと私は思うのです。大臣はこういう状況をごらんになってどうお考えになりますか。
  195. 大平正芳

    大平国務大臣 多くの国から真実を正しく理解していただきたいと思うことは当然の願望でございます。しかしながら、現に日本の国が、渡部先生指摘のとおり、十分理解されておるとは思いません。これはわれわれの広報活動ばかりでなく、全体として日本人、日本国のやっておりますことに対する全体的な評価をまたなければならぬわけでございまして、一朝一夕にできる仕事ではないと思うのであります。しかし、仰せのように、できるだけ正しい理解を得るために、われわれの部面で最大限の努力をしなければならぬことは当然のことと思うのであります。  第二に、しかしながら海外広報はいかにも貧弱じゃないかという御指摘でございます。仰せのとおり、先進国に比べましてたいへんなおくれをとっておることは御指摘のとおりでございます。私どもも多きを望むわけでございますが、予算は御案内のように飛躍をしないものでございまして、精一ぱいの努力をいたしましても、二割近くの増加しか認められないような現状でありますことは、たいへん悲しいことでございます。しかし、私どもといたしましては、与えられた予算の範囲内におきまして最善の努力をいたしたいと考えております。
  196. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 予算が飛躍しないということについては、私もしばしば外務当局から伺いましたし、大蔵省の方からも私的には何回かそうしたことを伺っております。しかし、何十分の一というような、必要量から見て極端な差というものは、どうやらものすごい状況になってあらわれているようでございます。たとえていいますと、これは映画のプリントでも、ドイツの場合は年間で約五百本という映画のプリントが用意されているそうでありますが、日本のほうは四本である。今度その四本の時間を縮めて、五本に引き伸ばしてこれを提供する。この日本国を広報するのに四本の映画というものは、私が公明党の兵庫県本部長として持っておる予算よりもはるかに少ないのでありまして、これは話のほかなのであります。  これで広報活動をやれというほうがおかしいのではないかと私は思うわけでございまして、予算に飛躍がないというのは、通常正常な形で行なわれている業務については飛躍のないのもそれは一つの見識であろうかと存じますが、日本が、多極外交化したときにおいては、一番先に予算を強大化して、この部分に対して圧倒的な外交的な立場をもって武器として使うべきものは、武力のない日本としては、外交関係に対する、特に広報関係の予算に対する配慮ではなかろうか、こう思うわけなんですね。予算に対して飛躍がないということなのでやむを得ないという御発言は、私はあまりうなずけない。むしろ、この問題にこそ飛躍があり、将来前向きな取り組みが必要なのではないか。今期予算についてはもう政府としても出し直しのしようがないというような状況に追い込まれているということについては、私も一応の理解を持っておりますが、これではしょうがない、手の出しようがないというのがほんとうじゃないかと思うのですね。  そこで私は、短い質疑時間でありますから、まだあとで何回もこの問題については当委員会において質疑をさせてもらいたいと思っておりますが、大蔵省の主計官がお越しのようでありますから、これについて今後、いままでの現状についてはともかくとして、ひどい状況であることもおわかりいただいたと思うのですが、今後どういう姿勢で臨まれるかをお伺いしたいと存じます。
  197. 禿河徹映

    禿河説明員 海外広報予算につきましては、先生指摘のとおり、諸外国に比べていろいろ低いというような御議論があることは私どももわかってございますが、その低い中で、実は私どもといたしましては例年できるだけ伸ばしていきたいということでやってきたわけでございます。  本年四十九年度の海外広報予算、全体の外務関係の伸びが御指摘のとおり一九%程度でございますが、その中で海外広報関係につきましては三〇%以上の伸びをはかるというふうなこともいたしております。さらには国際交流基金、この四十七年度から三年間におきましても二百五十億の出資をするというふうなことで、文化交流等につきましてもつとめてきたわけでございますが、絶対的水準におきましてまだ問題があるということは私どももよくわかっておりますので、来年度以降外務省全体の予算の中で、ほかの財政需要等も十分勘案しながら、その中でできるだけ広報予算等についても御相談をし配慮してまいりたい、かように考えております。
  198. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 まあ、いま私の言うとおりに、海外広報予算は少のうございますとおっしゃれば、本期予算はみずからこれは不備でございましたと言われることになると思うのですね。だから的確な御答弁ができないのもあたりまえかもしれませんけれども、これはちょっとけたが二けたぐらい違うのじゃないかと私は思うのですね。けたが二けた違うとどのくらいのことになるか。  ここに、タイにおける日本の広報文化センターの広報活動の模様と、各主要国の広報文化活動機関との比較表が来ておりますので、ちょっと読み上げてみますが、広報活動を行なう広報文化センターにおけるわがほうの大使館員は二名である。タイにおけるUSIS、アメリカの広報庁の出先機関、これはどんなことをやっているかといいますと、これはAUAという組織がございまして、職員が九名、現地補助員が四十名、教師百名を擁しております。それからイギリスはブリティッシュ・カウンシルがありまして、職員七名、現地補助員二十二名、教師三十名を持っております。フランスではアリアンス・フランセーズがバンコクほか二カ所に事務所を持っておりまして、大使館員二名、現地補助員十名、教師十四名を持っております。ドイツはジャーマン・カルチュラル・インスティチュートが職員四名、現地補助員十名、教師十一名を持っております。わがほうは大使館員が二名いるだけです。  こういう比較をちょっと見てもおわかりのように、向こうが百名とかそれ以上の規模を持っておるのに対して、こっちが二人、これでは広報するといったって、もうするとかしないとかの限界を越えているのじゃないかと私は思うのですね。そうするともうまるきり一方的な話がタイの中に流れ込んでしまう。タイは親日的だなんというお話がありましたけれども、親日的とか親日的でないとか、そんなことはもう全くお話しにならぬような限界になってしまう。  視聴覚活動についてだって、現在日本は百二十九本のそうしたものを、映画とかテレビで出しておる、こう書かれております。しかしタイ語版はたった十三本です。アメリカのは七百本出しておる。そのうちタイ語版は実に二〇%を占めておるといいますから、百四十本がタイ語で出ておる。そうすると十一倍ですね。こうした圧倒的な量で行なわれるアメリカの広報宣伝活動というものが、タイにおけるアメリカのいろいろな意味のささえになっていることはもう明らかだと思うのですね。  しかもここにあげられていますパンフレットは三十八種類、三十八カ国語で出されていますが、この何百万部という限界で出されているパンフレットのごときなんというものは、それこそもう話にも何にもならない、三十八カ国なんですから。三十八カ国語で出された何百万部とか何千万部程度の文書は、一回まいてはな紙になる程度の力量しかない。そういうものを出しておいて、それで済むのかと私は言いたいのですね。これでは外交官が死にものぐるいで幾ら努力しても努力のかいがなかろうと私は思うのです。  おまけに私がもう一つ申し上げたいのは語学であります。日本語を教えるという姿勢が全然ない。ネグリジブルスモールということばがありますが、まさにほとんどないといって差しつかえない。これでは世界の中でエコノミックアニマルといわれるのも無理はない。日本の企業による、単独の企業広報活動として行なわれるものが先行して、日本の文化的イメージだとか日本の政治的イメージだとか、日本の平和憲法に基づくイメージが出てこないのも無理はない。私は、これではもう広報にも何にもならぬじゃないかと思うのですね。おそらくこうした議論については皆さんの大半もおわかりになっていらっしゃると私は思う。  要するに、これは政府の基本的姿勢の変革の問題であると私は思います。財政が、外務省の予算がぼちぼちふえる中でのやりくりという形での海外広報予算というのだったら、また総理大臣外務大臣が行かれるたびにそこらじゅうでデモ隊に会い、火をつけられ、人形が焼かれ、国旗が焼かれる、そうしてまた日本はエコノミックアニマルとして世界の中で孤立外交をとり、そうしていつの間にか無理解な日本というもののイメージが定着していくことでありましょう。私はこの辺、何とかしなければいかぬのじゃないかと思うのですね。これこそまさに実力大臣としての外務大臣の御決断を求めなければならぬと私は思うのです。大臣はこの問題をどうお考えになりますか。  そうして私はこうした問題について、いまこそ本気にならなければいかぬときが来ておると思うのです。どなたが外務大臣をなさるにせよ、今後ともにこんなお粗末では手も足も出ぬというのが私はほんとうだろうと思う。私はこの予算の使い方の内容についてまだいろいろ異議があります。日本政府の広報についても文句がありますが、そんなことを論ずる段階でない。もうかくのごとき貧弱な、アメリカやヨーロッパ勢の広報に対する態度から比べるならば、まるで戦艦武蔵とボートぐらい違うこの予算で、一体何をさせようというのか。こういうのこそ戦争中の竹やり式の玉砕型の考えと軌を一にするものだと思います。  ともかく、地理的に離れている日本でありますから、理解されることの少ない日本が、それこそこうしたことにこそ力を注ぎ、エネルギーを注ぐことは当然ではないかと思うのですが、この辺で時間もなくなってきましたから、御見解を承りまして、私のきょうの質問にしたいと存じます。
  199. 大平正芳

    大平国務大臣 内外の資料を駆使されてたいへん私どもを啓発され、激励を賜わったことに対して感謝いたします。  この情報問題、広報問題の重要性は御指摘のとおりでございまして、ここにひとつ飛躍的な前進がなければならぬという御趣旨は私も全く同感でございます。いままで戦後の処理あるいは自立経済の達成という意味でなりふりかまわずやってまいった日本でございますけれども、これから仰せのような方向に新たな外交的活路を見出さなければならぬこと、仰せのとおりでございまして、そのためには微力でございますけれども全力をあげて御期待に沿わなければならぬと考えております。
  200. 木村俊夫

    木村委員長 次回は、来たる二十七日水曜日、午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時四十六分散会      ————◇—————