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1974-03-20 第72回国会 衆議院 外務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月二十日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 木村 俊夫君    理事 石井  一君 理事 石原慎太郎君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 福永 一臣君    理事 水野  清君 理事 河上 民雄君    理事 堂森 芳夫君 理事 松本 善明君       大久保武雄君    小坂善太郎君       坂本三十次君    深谷 隆司君       宮澤 喜一君    石野 久男君       勝間田清一君    土井たか子君       渡部 一郎君  出席政府委員         外務政務次官  山田 久就君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省条約局外         務参事官    伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君  委員外出席者         大蔵省主税局国         際租税課長   大竹 宏繁君         国税庁調査査察         部調査課長   甲斐 秀雄君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ――――――――――――― 三月十八日  民間航空の安全に対する不法な行為防止に関  する条約締結について承認を求めるの件(条  約第八号)  業務災害の場合における給付に関する条約(第  百二十一号)の締結について承認を求めるの件  (条約第九号) 同月十九日  欧州共同体委員会代表部の設置並びにその特  権及び免除に関する日本国政府欧州共同体委  員会との間の協定締結について承認を求める  の件(条約第一〇号)  千九百六十七年七月十四日にストックホルムで  署名された世界知的所有権機関を設立する条約  の締結について承認を求めるの件(条約第一一  号)  千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百  十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五  年十一月六日にヘーグで、千九百三十四年六月  二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一  日にリスボンで及び千九百六十七年七月十四日  にストックホルムで改正された工業所有権の保  護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条  約の締結について承認を求めるの件(条約第一  二号)  千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百  二十五年十一月六日にヘーグで、千九百三十四  年六月二日にロンドンで及び千九百五十八年十  月三十一日にリスボンで改正された虚偽の又は  誤認を生じさせる原産地表示防止に関する千  八百九十一年四月十四日のマドリッド協定の千  九百六十七年七月十四日のストックホルム追加  協定締結について承認を求めるの件(条約第  一三号)  千八百八十六年九月九日に署名され、千八百九  十六年五月四日にパリで補足され、千九百八年  十一月十三日にベルリンで改正され、千九百十  四年三月二十日にベルヌで補足され、千九百二  十八年六月二日にローマで改正され及び千九百  四十八年六月二十六日にブラッセルで改正され  た文学的及び美術的著作物保護に関するベル  ヌ条約締結について承認を求めるの件(条約  第一四号)  千八百九十六年五月四日にパリで補足され、千  九百八年十一月十三日にベルリンで改正され、  千九百十四年三月二十日にベルヌで補足され並  びに千九百二十八年六月二日にローマで、千九  百四十八年六月二十六日にブラッセルで、千九  百六十七年七月十四日にストックホルムで及び  千九百七十一年七月二十四日にパリで改正され  た千八百八十六年九月九日の文学的及び美術的  著作物保護に関するベルヌ条約締結につい  て承認を求めるの件(条約第一五号) 同月十八日  世界連邦建設に関する請願永末英一紹介)  (第二七一九号)  米空母ミッドウェー横須賀母港化反対等に関  する請願中路雅弘紹介)(第二七二〇号)  米原子力潜水艦日本への寄港中止決議等に  関する請願諫山博紹介)(第二八三四号)  同(楢崎弥之助紹介)(第二八八五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十八日  日中平和友好条約締結促進に関する陳情書  (第二四三号)  日中航空協定早期締結に関する陳情書外二件  (第二四四  号)  日中共同声明に基づく諸協定等早期締結に関  する陳情書外七件  (第二四五号)  南北朝鮮の自主的平和統一促進に関する陳情書  (第二四六号)  横須賀米軍空母母港化反対に関する陳情書  (第二四七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国アイルランドとの  間の条約締結について承認を求めるの件(条  約第六号)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国スペイン国との間の条約締結に  ついて承認を求めるの件(条約第七号)      ――――◇―――――
  2. 木村俊夫

    木村委員長 これより会議を開きます。  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国アイルランドとの間の条約締結について承認を求めるの件、及び所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国スペイン国との間の条約締結について承認を求めるの件、以上両件を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松本善明君。
  3. 松本善明

    松本(善)委員 二重課税回避に関する条約は、わが党はずっと一貫して反対をしてきたのですが、いまの時点に来ますとさらに重要性を加えているように思います。これは突っ込んだ政策論争がやはり必要なんで、外務大臣出席の機会にあらためてやりたいと思いますが、きょうは事務当局に、そのための下準備というような質問を少ししていこうと思います。  条約そのものについて伺う前に、いまの時点で、企業海外活動というのが非常に盛んになってきておる、こういう状況のもとで、企業海外での活動を利用して税金を免れるといいますか、そういうことがいろいろな形でやられる。タックスヘブン税金天国ということばも生まれておるわけでありますが、こういう企業海外活動を利用しての脱税といいますか税金を免れる行為というものについて、政府はどういうふうに把握をし、どういうふうに考えているかということについて伺おうと思います。
  4. 大竹宏繁

    大竹説明員 お答えいたします。  御指摘のように、企業海外取引が活発になるにつれまして、そのような取引を通じます租税回避、あるいはいわゆる租税回避地タックスヘブンというようなところを通じます租税回避というような現象が指摘をされておるわけでございます。このような状況に対しましては、租税条約の中に関連規定を設けるとともに、国内法におきましてもそれに対処する条項がございまして、制度的にはそのような規定に基づきまして対処することになっておるわけでございます。  租税条約との関係で申し上げますれば、特に重要なのは三つの条項でございます。  第一は、特殊関連企業条項でございまして、これはスペイン条約の第九条、アイルランド条約の第十条でございます。この規定趣旨は、条約締結国の間におきまして、企業親子会社といった関係、あるいは系列企業というような、互いに支配関係にあるといったような条件を利用いたしまして、お互いの間の取引価格を不当に安くしたり高くしたりすることによりまして、所得を不当に増加あるいは減少させるというようなことが考えられるわけでございます。このような場合には、国内税法におきましてももちろんそれを是正することができるわけでございますが、国際的な取引関係するわけでございますので、お互いの国の間でこういう条項を設けまして、このような関係を利用した取引が行なわれた場合には、特殊な関係がなかったと仮定をいたしまして、相互に独立の立場にある企業市場において公正妥当な価格でもって取引をした場合に生じたであろう所得をもって課税所得とするという規定でございます。  それから第二番目の条項といたしましては、利子及び使用料にかかる条項がそれでございます。スペイン条約で申し上げますと、利子につきましては十一条の六項でございます。それからやはりスペイン条約では十二条の六項が使用料についてでございます。それからアイルランド条約におきましては、利子について十二条の六項、使用料につきまして十三条の五項というところに規定がございます。この趣旨は、先ほど申し上げました特殊関連企業条項と同じというふうにいえるかと思うのでございますが、具体的には利子あるいは使用料の支払いを通じまして同じような租税回避をはかるというようなことが考えられるわけでございまして、その場合には、通常の場合に利子使用料源泉地国で認められております軽減税率適用をその部分について認めないという規定でございます。  それから第三番目の規定といたしましては、情報交換規定がございます。これはスペイン条約の二十六条、アイルランド条約の二十八条でございます。租税条約の持ちます効果の一つといたしまして、二国間にまたがる取引を正確に把握しまして適正な課税を行なうということがあげられておるわけでございますが、このような課税は二国間におきましてお互いに知り得た情報を交換することによって達成できるわけでございまして、国際的な取引にかかるものにつきましては、なかなか一国だけの努力ではむずかしいわけでございまして、そこで、課税当局間が租税上の規定を設けまして、相互情報を交換するという形で、適正な課税に国際的な協力をしていくということにしておるわけでございます。  それから、もう一つ指摘のありました、いわゆる租税天国といいますか、租税回避地を利用いたしました脱税というものにつきましては、現在、国際的な場におきまして、この多国籍企業議論が進められておるわけでございますが、その中の一環といたしまして、この不当な租税回避地の利用というものにつきましてどう考えるかということで議論を進めておるところでございます。やはりこのような租税回避地につきましては、究極的には、情報交換規定条約締結国としか働いておりませんので、このような租税回避地そのもの租税条約規定が働くということは、現状においてはなかなかむずかしいわけでございます。  したがいまして、わが国といたしましては、このような租税回避地を利用しての不当な租税回避というものに対処いたしまして、そのような地域子会社を設けまして、これを利用して脱税をするということを防止するために、これらの子会社から取得する配当につきましては、法人税法で認められておりますところの間接税額控除を認めないことにいたしております。これは法人税法の六十九条四項にそのような規定を置いておるわけでございます。  それから、これはまだそういう事例がないわけでございますけれども、租税回避地を持っておる国と条約を結んでおる例がございますが、そのような国との条約租税回避地適用を拡大するというようなことも考え方としてあるわけでございますけれども、そのような場合には、わが国といたしまして、租税回避地には租税条約軽減税率適用しないということを方針としておりまして、たとえ租税回避地を含む国と租税条約がありましても、租税回避地につきましては軽減税率適用しないということで現在臨んでおりまして、現実にはまだそういうことは問題になっておりませんけれども、そういう話が出た場合にはそのような方針で対処していきたい、このように考えております。
  5. 松本善明

    松本(善)委員 条約の中にいろいろの措置がありましても、結局、実際上はその租税回避地との条約がなかったりして野放しになっているということの話でありますけれども、いまの話でありますと、たとえば移転価格ですね、租税回避地子会社に一たん売却した形をとって輸出をやるというような場合、その価格を安くする、そこの子会社の利潤をふくらませる、こういうやり方は、結局いまの状況では野放しになっている、それについては議論はし始めておるけれども手はない、こういう状態で大蔵省はいるということですか。
  6. 大竹宏繁

    大竹説明員 移転価格の問題についてでございますが、野放しになっておるというわけではございません。わが国税法におきましては、法人税法に、実質課税原則あるいは公正妥当な原則によって所得を計算するというような原則、このような規定を置いておるわけでございます。したがいまして、これは租税回避地であるないを問わないわけでございますけれども、いわゆる移転価格を設けまして不当に安い価格販売をするというような事例につきましては、法人税法規定によりまして適正な課税所得是正をさせるということは、国内税法上可能でございまして、租税回避地との間に条約がたとえなくても、わが国が一方的にそういう措置をとることは可能と考えておるわけでございまして、決して手がないということではございません。もちろん条約があればそれにこしたことはないわけでございますけれども、たとえございません場合でも、そのような措置はとることが可能かと考えております。
  7. 松本善明

    松本(善)委員 まあもしいまの説明のようにちゃんと捕捉ができるということであれば、タックスヘブンということは生まれないでしょうし、日本はそういうことは許されないところなんだということになっておると思いますけれども、実態は決してそうではない。  事実を少し伺いたいのですが、大蔵省タックスヘブンとして考えているところは一体どういうところですか、一応いま考えておられるところを全部あげてください。
  8. 大竹宏繁

    大竹説明員 いわゆるタックスヘブンなるものにつきまして、明確な定義というものがないわけでございますが、一般的にタックスヘブンとは何かということで通常言われておりますものは、次のような条件を備えた国あるいは地域をさすというふうにいわれております。それは、まず第一に、法人の設立、運営あるいは生産というような、この企業活動の前提になりますところの法人活動が非常に簡単にできるというようなところでございます。それから租税の面におきましては、税負担、あるいは税外負担なども含めまして、そのような負担が非常に軽いということでございます。それから為替管理がなくて非常に自由な取引ができるというようなこともあげられております。それから企業秘密が確保できるとか、政治経済が安定しているとか、情報収集が容易であるとかいうような付帯的なことも言われておるわけでございます。  このような国に該当するところといたしまして、いろいろな国があげられておりますが、これを分けてみますと、一般に次のように言えると思います。まず、所得税法人税あるいは所得に対する税というものが全くない国というのがございます。このような国といたしましてあげられておりますのが、バハマであるとかバーミューダ、それからケーマン諸島ニューヘブリデス島といったようなところでございます。それから国内所得課税いたしますけれども国外所得は免税にするとか、あるいはきわめて低い税率でかけるといったような国といたしましては、リベリアとかパナマ、バルバドス、ジャマイカ、香港、アンチグアといったようなところといわれております。それからちょっと趣は違うわけでございますけれども、一定の事業活動につきまして税制上の恩典が認められているといったようなところといたしましては、ルクセンブルグといったようなところもいわれております。
  9. 松本善明

    松本(善)委員 あなたの先ほどの説明でいきますと、そういう場合は全部捕捉できるのだと言っていますが、実際には日本でもそれが相当行なわれているということは、いろいろな報道やその他にでもあらわれております。大蔵省としてそれを捕捉をして何らかの措置をとったという実例があるかどうか、それを伺いたいと思います。
  10. 大竹宏繁

    大竹説明員 このような移転価格捕捉できる、みな捕捉しているというふうには私申し上げたのではなくて、その点もし不十分でございましたら補足させていただきたいと思いますが、移転価格捕捉自体は非常にむずかしいわけでございます。  たとえば、端的に申しまして、移転価格というものが非常に代表的にあらわれてくるケースといいますのは、中間財のようなものに多いわけでございます。完成品のようなものでありますと、非常に市場価格のようなものもはっきりしておるわけでございますので、たとえその価格が安かったというようなことがありましても、わりあい比較すべき他の価格が存在しておるわけでございます。ところが中間財の場合には通常市場では取引されないで、企業の中で動いていることが多いわけでございます。そのようなケースにつきましては、なかなか何をもってそれでは市場価格とするかということはいろいろむずかしい問題でございますので、捕捉という問題につきましてはかなりむずかしい問題がございます。したがいまして、それを捕捉するのはどうするかということは、国と国との間の協力ということが非常に役に立つわけでございます。  したがいまして、移転価格を全部捕捉しておるというふうにはちょっと言えないかとは思いますが、そういうケースを発見いたしました場合には、これにつきまして是正措置をとっておりまして、そのようなケースは具体的にはあるわけでございます。ただ、それが何件くらいあるかということは、ちょっと統計がございませんので、ここで申し上げることはできないのでございますけれども、課税実例といたしまして、その移転価格があって、それを是正したというケースはあると聞いております。
  11. 松本善明

    松本(善)委員 タックスヘブンを、租税回避地を利用しての税金回避行為というもので、実際に、もしわかればどの程度かけられるであろうということについての推定とか調査とか、そういうようなことはしたことはありますか。
  12. 大竹宏繁

    大竹説明員 現在のところ租税回避地を通ずる租税回避の額というようなものがあるか、あるいはどのくらいあるかということにつきまして、正確な調査をいたしたことはございません。
  13. 松本善明

    松本(善)委員 そういうものがあるということは考えているのでしょうね。そんなものはないと思っていますか、それともそういうことがあるだろうと思っていますか。
  14. 大竹宏繁

    大竹説明員 これは租税回避地との取引というものでございますけれども、その租税回避地にたとえば子会社を設けた場合に、それが全部租税回避であるかどうかということは一がいに断定できないかと思うわけでございますが、それを不当に税の軽減のためのみに利用するというようなことがあれば、それは不当な租税回避であるというふうに考えられるわけでございます。したがいまして、租税回避地を利用してそのような不当なことをやろうと思えばでき得るということは言えると思います。
  15. 松本善明

    松本(善)委員 いわゆる租税回避地子会社を持っている会社、どういうところであるか。それから、先ほどあなたが言われた、実際にそれを捕捉した実例があるということですが、その実例についての、去年の分でもいいですね、去年の分での資料が次回までに出せますか。
  16. 大竹宏繁

    大竹説明員 税の問題につきましては、たびたび申し上げておりますように、いわゆる守秘義務関係がございまして、御審議の参考になる資料はできるだけ私どもも提出したいわけでございますけれども、個別のその課税の問題につきましては、残念ながらそういう資料を出せないたてまえになっておりますので、御容赦いただきたいと思います。
  17. 松本善明

    松本(善)委員 そんなことはないでしょう。どこの租税回避地子会社を持っている会社がどれだけあるかということであるとか、それからその実際に捕捉をした実例ですね、場合によっては個別の、必要な場合には、われわれ納得できる場合には、その会社名を秘するということはあるかもしれませんけれども、一般的にそういう資料の提出を拒否するならば、それは租税回避行為を弁護する、擁護する、それについての実態を国会の前に明らかにすることは大蔵省反対なんだというふうにしかとるわけにはいかないと思うのです。私はそういうことは許されないと思うけれども、これは資料を提出するようにしてほしい。いまの答弁は、私の質問理解をしてなかったのかもしれませんが、あらためて答弁を求めたいと思う。資料を提出しますか。
  18. 大竹宏繁

    大竹説明員 私のことばが足りなかったようでございまして、その点おわび申し上げます。  ただいま資料の点で私が申し上げましたのは、個別の企業課税の問題というふうに理解をいたしまして、そのような御答弁を申し上げたわけでございますけれども、一般タックスヘブンにどんなところが出ておるかというようなことは、ある程度わかるわけでございまして、それはお答えはできると思います。
  19. 松本善明

    松本(善)委員 実例はどうか。
  20. 大竹宏繁

    大竹説明員 それでは、いわゆるタックスヘブンといいますか、そのような、私が申し上げました国に子会社を持っております企業はどんなものがあるかというようなことをちょっと申し上げます。  たとえばバハマというところでございますが、バハマには、安宅産業、大阪商船三井船舶、日商岩井、これは三社で一社で出ております。それから川崎汽船、ジライン、伊藤忠、共栄タンカー、これが一本で子会社を持っております。それから住友商事、太平洋海運、大洋漁業、富士銀行三菱商事。  それから蘭領アンチレス、キュラソーでございますが、これは東洋火熱トヨタ自動車販売東京銀行日本冷蔵。  それから英領ケーマン島、アラビア石油。  バーミューダ三井物産、出光興産、トーメン、三菱商事。  それからニューヘブリデス銀行が多うございまして、住友銀行それから第一勧銀、三和銀行というグループ、それから太平洋水産三井物産、それから三井銀行東京銀行というようなところが、たとえばあげられるわけでございます。  御指摘のような租税回避地との取引でございますが、いま申し上げましたのは、これらの企業が出ているということはわかるわけでございます。ところが、そこで活動をして、いずれも子会社でございますので、その子会社所得そのものにつきましては、日本課税権が及ばないということはございます。しかしながら、この子会社との関係で、本社が租税回避行為があるというようなことがあれば、先ほど申し上げましたように、それにつきましては税法措置をすることができるのだというわけでございます。  それからタックスヘブンでの脱税というものは、先ほど申し上げましたように統計がないので、どのくらいあるかということはちょっとわからないわけでございます。移転価格との関係で、たまたま相手方がそういったような地域であったということはございますけれども、そのような課税是正につきましての統計というものは、地域別にちょっと出ておりませんので、正確な脱税統計といいますか、租税回避統計といいますか、そういうものはちょっとわからない状況でございます。
  21. 松本善明

    松本(善)委員 統計までいかなくても実例ですね。実際に捕捉をできたということについての実例を出してほしいのです。いまあなたの言うのでいきますと、子会社には課税権が及ばないということを利用してタックスヘブンというものが生まれるわけなんです。そこのところは結局野放しになっている。それに対しての対策があるのかということをどういうふうに実情を把握し、どういうふうにしようとしておるのかということを聞いていたわけだけれども、いまの話では、結局はどうも野放しになっているようですね。そういうことなのかということと、重ねてですけれども、捕捉できたということをあなたは先ほど言ったのだから、それについての実例はこの次までに出せるか、それから一部については、バハマについては、いま話がありましたけれども、ほかの租税回避地も含めて、ひとつ一覧表のようにして、この次の委員会までに出してもらえるか、このことをひとつ……。
  22. 大竹宏繁

    大竹説明員 お答えが前後するかと思いますが、まず企業でございますけれども、これは私どもで一応拾ったものでございますので、そのような、先ほど申し上げましたものの続きを一覧表に刷っておるものでよろしければ、そういうものは出せるかと思います。  それから是正の例というようなことでございますけれども、これはどういうケースであったかということでしたら御説明はできるかと思いますが、個別の名前は伏せさせていただきまして、どのようなケースであったか、どことあったかというようなことでしたら、いまなんでしたら御説明をいたします。相手はパナマであったようでございます。  それから、相手国の子会社につきましては課税権がないわけでございますけれども、子会社を利用したところの取引を通じまして、わが国課税権が及んでおりますところの内国法人であるとかあるいは外国法人につきましては、日本課税当局是正措置を求めることができるわけでございます。したがいまして、租税回避というものは、課税権のあるわが国に対して行なわれるわけでございますから、それに対して行なったものにつきましては、わが国がその課税権の及ぶ範囲内におきましては是正措置ができるというわけでございまして、相手の子会社課税権が及ばないために、そのようなものまでは是正が——是正といいますか、そういうものがあったとしましても、わが国としてのその子会社課税を云々するということは、主権が違うわけでございますので、できないと、こういうわけでございます。
  23. 松本善明

    松本(善)委員 これは深くはまたあらためて大臣のいるときにやろうと思いますが、この子会社に非常に安く売却をしているというような場合には、この租税回避行為の疑いが十分持てるわけですけれども、そういうようなことについて、調査なり関心なり、大蔵省は払ったことがありましょうか。
  24. 大竹宏繁

    大竹説明員 移転価格でございますけれども、先ほど申し上げましたように、移転価格の問題は非常にむずかしいわけでございますけれども、やはり税務調査におきまして、そういう価格をにらみまして、それを他のケースといろいろ比較いたしまして、あやしいと思われる場合には関係国に情報交換資料を依頼するというようなことはやっておるわけでございます。
  25. 松本善明

    松本(善)委員 先ほどの、あなたがパナマが相手で捕捉をした例があると言いますが、それをちょっと説明してください。
  26. 大竹宏繁

    大竹説明員 これは販売価格にかかるものでございました。販売価格を検討いたしましたところ、これがその会社関係のない第三者に売却した価格に比較いたしまして低かったわけでございます。したがいまして、その価格を第三者に対する販売価格まで引き上げまして課税所得是正したわけでございます。
  27. 松本善明

    松本(善)委員 そういうことが可能であれば、これはもう全部可能なんじゃないですか。一つ一つ販売価格について、移転価格ですね、これは国際的に見れば安過ぎるかどうかということは一ぺんにわかるのじゃないか。そういうことをすれば、これはタックスヘブンなんていうものは生まれるわけはないと思うのですけれども、それはどうしてそういうことにならないのですか。
  28. 大竹宏繁

    大竹説明員 また同じようなことを繰り返して申し上げて恐縮でございますけれども、移転価格のむずかしさといいますのは、市場価格のあるものが非常に少ないわけでございまして、他の第三者に売った価格が存在するかあるいはそういうものの市場価格がございまして比較が可能であるというものにつきましては、御指摘のように是正することができるわけでございますが、なかなかそれがわからないという分野が多いわけでございます。中間財などで、通常はそれは一つ企業の中で、生産の過程におきまして加工されておるというようなものが外へ出ていくというようなときの価格にかかるようなものが多いわけでございますので、非常にその辺の比較ということがむずかしいというのが実情でございます。
  29. 松本善明

    松本(善)委員 それがむずかしいということを言っている限りは、タックスヘブンが存在するわけですね。私はそうではなくて、むしろやる気がないといいますか、多国籍企業活動について、むしろ一体になっているというのがいまの現状ではないかというふうに思います。それはいまここであなたとそれ以上やってもしかたがありませんけれども、しかし物さえ送らないで、伝票だけで、そういう経由をして輸出をしている。タックスヘブンを経由をしてだけ輸出をしているというようなやり方が一般化されている中で、こういうことはとうてい許すわけにいかないというふうに私は思いますが、あなたとの議論ではそれ以上に進みそうもないし、むしろ課税権の問題を問題にして、事実上野放しになっているということが確認をされたということで、私は別の質問に移りたいと思います。もちろんもう一回またこの問題について議論をすることがあると思いますが……。  きょう、もう一つは、二重課税防止条約で、いわゆるみなし課税をやっていますが、このみなし課税によって減免を受けている金額ですね、これは一体どのくらいになるだろうか、各国別に知らしてほしいのですが、まず、このみなし課税があるのはどことどことどこか、国の名前をまずあげてくれませんか。
  30. 大竹宏繁

    大竹説明員 みなし外国税額控除のある条約でございますが、まずパキスタン、インド、シンガポール、タイ、マレーシア、ブラジル、スリランカ、韓国、ザンビア、それから今回御審議をいただいておりますアイルランドスペインでございます。
  31. 松本善明

    松本(善)委員 これらの国で、このみなし課税によって減免を受けている金額というのはどのくらいになるか、国別に示してほしいのです。みなし税額控除ですね。
  32. 大竹宏繁

    大竹説明員 このみなし外国税額控除でございますけれども、税務統計上、このようなみなし外国税額控除の計数を電算機の処理の対象としてあげておりませんので、それが幾らであって、国別にどのくらいの額であるかという計数は、現在のところ把握いたしておりません。外国税額控除の総額だけしか電子計算機に入っていないので、正確なみなし外国税額控除の計数はわからないわけでございます。
  33. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、この二重課税防止条約を結んで、みなし税額控除が行なわれることによって、日本で税収が減収になった金額は一体幾らになるのかということについては、結局何の資料もないということですか。そういうことについては大蔵省は何の関心もないのですか。
  34. 大竹宏繁

    大竹説明員 租税条約は、先ほども申し上げましたように、国際的な二重課税を排除するということが目的でございます。したがいまして、その目的のために、お互い課税権をある程度制限をするということはあるわけでございます。その結果、双方の関係国が、その税収の一部を減少させることになるということもまた事実でございます。大蔵省が、租税条約締結するにあたりまして、税収の問題について全く無関心であるということではないわけでございます。しかしながら、租税条約の目的と申しますのは、税負担あるいは税収そのものの軽減あるいは増加ということが目的なわけではございませんで、こういった歳入の減少というものは、租税条約の目的としておりますところの円滑な国際取引の実現、それからわが国に即していえば、わが国企業海外取引の円滑化というような目的のために、相手国に対して求めておりますいろいろな軽減措置、そのようなものに見合いまして、わが国でもそのような軽減措置をとらざるを得ないということが理由なわけでございます。  このみなし外国税額控除につきましては、先ほど申し上げましたように、今回のアイルランドスペインを含めますと十一カ国になるかと思うわけでございますが、いままでそれほど数も多くなかったわけでございますので、そこまでの統計を現在とっておらなかったわけでございます。大体どんな措置が相手国で税の優遇措置としてとられておるか、どのようなものを対象にみなし外国税額控除を要求しておるか、そのようなものに日本企業として出ていく可能性がどのくらいあるのだろうかというようなところをにらみまして、大体の見当はもちろんつけます。しかしながら、正確な計算というものは、租税条約締結のときにははっきりはわからないわけでございますが、大体この外国税額控除の目的そのものが、相手国のそういった税の減免措置につきましての努力を日本において無にしないということにあるものでございますから、どちらかといいますと、相手国の制度的な歯どめといったような面がわりあい強く出ておるものでございまして、税額そのものがそれほど多くはなかろうという判断にいままで立っておったわけでございますが、御指摘のように、このようなケースが非常にふえてまいりまして、今後わが国租税条約網を考えましたときには、やはり開発途上国というものがふえてくるということになりますと、みなし外国税額控除の額そのものも今後はふえるということもございますので、ひとつそのような統計をとるようにしたい、このように考えておるわけでございます。
  35. 松本善明

    松本(善)委員 これは結局においては、資本の海外進出、これを促進をするという役割りを果たしておるし、そのこと自体についての評価は、あなたとあるいは違うと思いますが、そういう海外活動をする企業というのは数が限られているわけですから、事実上は外国の減免税措置によって、税金国内においても減免される、そういう意味では特権的な減免税の中の一つになろうかと思うのです。それが一体どの程度になるかというのは、これは私はこの条約上の目的ということだけから考えるのではなくて、総合的に日本の税のあり方が一体どうなのかということとも関係すると思います。  いまこれから統計をとろうということを言われたのはけっこうなことでありますが、いま私どもは、この条約についての審議をしておるので、やはり各国別にどのくらいになっておるのかということについての資料を、私はこの条約審議中にやはり出されるべきであるというふうに思うのです。これについては出せますか。
  36. 大竹宏繁

    大竹説明員 この減収額がどのくらいかということは、正確な数字というのが、ただいま申し上げましたように電算機に入っておりませんので、それはちょっと早急に出すということは不可能でございますが、大体の感触を申し上げまして、御審議の参考にさせていただきたいと思うわけでございます。  わが国の外国税額控除がそれではどのくらいあるかということからちょっと申し上げたいと思いますが、これは四十七年度の計数でございますが、四百七十九億でございます。これが外国税額控除の額でございます。このうちどのくらいそれではみなし外国税額控除があるだろうかということでございますけれども、あくまでもこれは推定の数字でございまして、過去に一応サンプル的な検討をしたことはございまして、そのときの感触を、ごく大ざっぱでございますが、ラフに引き延ばしてみるとどのくらいかとおっしゃられますと、まあ十数億か二十億前後くらいではなかろうかというような感触は持っておるわけでございますが、これはあくまでも非常にラフな計算でございまして、あるいはそんなにないのではないかという感じもいたしております。したがいまして、これはあくまでも感触といいますか、正確な計数とおとりいただくと、まあちょっと正確な数字ではないわけでございますけれども、まあそんな感じで申し上げて非常に恐縮でございますけれども、現在のところ私どもの頭の中にあるものを申し上げれば、そんなことになるのではないかというふうに考えております。
  37. 松本善明

    松本(善)委員 感触で審議をするというわけにもいかないのですが、これは私は、本来ならば、そんな少ないものであれば、こういう規定ができたり何かしていくということはちょっと考えられないのですが、これについての取り計らいについては、委員長、後日理事会でお計らい願いたいというふうに思うのです。そういうふうにしていただきたいと思います。——よろしゅうございますね。  それからもう一つ統計を今後はとろうというふうに考えておられますが、そういうことは一体正確に実現するのにはどのくらいでできますか。今後みなし外国税額控除についての統計をとるということになっていった場合には、今年からはとるということになるのですか。
  38. 大竹宏繁

    大竹説明員 これは電算機のプログラムを変えなくちゃいかぬ問題でございますので、どのようなものをどういうふうにとるかということでございまして、すぐ変えて入れるというわけになかなかまいりませんし、経費も若干かかるということもございますので、いますぐにはいかないかと思うのでございますが、私ども御指摘のような計数を何とか出すべきではなかろうかということで前向きに考えておりますので、ことし、来年というわけにはあるいはいきませんかもしれませんが、できるだけ早く検討いたしまして、統計もつくっていきたいというふうに考えております。
  39. 松本善明

    松本(善)委員 それではそれも大臣と議論をいたしましょう。ほんとうならば、条約の審議については、そういうものは聞かれるまでもなく全部委員に配られて審議がされるべきだというふうに私は思います。  もう一つお聞きしておきたいのは、アメリカとの二重課税防止条約によって、もし二重課税防止条約がなければ取れたであろう税収、逆にいえば二重課税防止条約があることによる日本の税の減収、それは一体どのくらいになっておるだろうか、これについて御説明願いたい。
  40. 大竹宏繁

    大竹説明員 一般に申しまして、租税条約締結した結果、税の減収がどのくらいあるかということは、計算が技術的に非常に困難でございます。と申しますのは、租税条約がなかった場合に幾らそれではその国との間で税収があったかということがわからないわけでございます。今度は租税条約ができてからそれでは幾らであったかということがまたわかりませんと、この減収額というものは正確に出ないわけでございます。そのような制約がございますけれども、租税条約締結によります減収額の考え方でございますが、それはあくまでも両国間の経済交流が基礎になっておるわけでございます。そういうものから見て、それではどんな程度であろうかということを大体見当をつけるという方法しかないのではなかろうか、こう思うわけでございます。したがいまして、日米の場合、それではそういう交流の状況から、どんなぐらいであるかというようなことで御質問に対するお答えにかえさせていただきたいと思うわけでございます。  まず、四十七年につきまして、その辺のところを申し上げたいと思いますが、この租税条約によるところの減収が一番出てまいりますのが投資収益でございます。これは御承知のように、条約を設けることによりまして、投資所得につきましての軽減税率を設けております。したがいまして、そこではっきり条約の結果、税が軽減されたということが出るわけでございます。  それでは投資収益が日本とアメリカの間でどうであったかということを申し上げてみますと、利子、配当でございますが、これが四十七年中の計数でございますが、アメリカから日本に支払われました投資収益が九億一千二百万ドルでございます。それから日本からアメリカに支払いました投資収益、アメリカの受け取りになるわけですが、これが七億一千三百万ドルでございます。したがいまして、もしこの軽減の度合いが両国が同じだったといたしましても、どちらが減収額が多いかといいますと、日本のほうが少なくてアメリカのほうが多いという感じになるわけでございます。  もう一つここに軽減の度合いが、どっちが強いかということを比較してみますと、日本は、投資収益に対しましての利子、配当でございますが、これに対する源泉徴収税率は二〇%でございます。これを一〇%に下げておるわけでございます。配当は一般が一五で親子間が一〇、こういうことでございますが、利子は二〇を一〇に下げております。それからアメリカでございますが、配当は一五と一〇でございますが、利子は一〇、アメリカは源泉徴収税率が、一般税率が三〇%でございます。したがいまして、軽減の度合いはアメリカのほうが大きいということでございますので、基礎になる数字もアメリカの減収額のほうが大きいし、税率の下げ方もアメリカのほうが大きいということでございますので、減収額を比較いたしますと、アメリカの減収額のほうが日米条約関係では多いのではなかろうかというふうに考えております。  それから次は、人の動きの関係でどうかと申しますと、人の動きは、御承知のように、学生とか教授あるいは短期の滞在者あるいは自由職業所得というようなものについての減免措置というものがきいてくるわけでございます。これはそれでは日米間でどのような動きを示しておるかということでございますが、やはり四十七年の統計で見ますと、日本からアメリカへの人の流れは、合計で四十一万六千人ちょっとでございます。そのうち観光が三十一万五千、その他というのが約十万、それからアメリカから日本へという人の流れが二十八万一千でございます。そのうち観光が十八万七千で、その他いわば所得の発生におそらくかかるであろうという人の分が九万四千。したがいまして、その他のところで比べてみますと、日本からアメリカへは十万人、アメリカから日本へは九万四千ということで、ほぼ交流としては見合っておるのではなかろうかというふうなことでございますので、この面から見ますと、大体現在の日米関係から見た限りでは、租税条約上の減収額というものは、アメリカのほうが少し多いか まあせいぜいとんとんぐらいではなかろうかというような感じでございます。
  41. 松本善明

    松本(善)委員 スペインアイルランドについてですけれども、現在の貿易の現状と、この条約を結ぶことによって税の面ではどういうふうになるのか、ほかの面、貿易全体を含めてはどうなるのかというような影響について話をしてもらいたい、こう思います。
  42. 大和田渉

    ○大和田政府委員 スペイン及びアイルランドとの貿易の現状だけをとりあえず御説明申し上げます。  貿易関係で申し上げますと、スペインでございますが、日本からの輸出が二億二千四百二十一万九千ドル、これは昨年、七三年度でございます。それから輸入が九千百六万四千ドルでございます。  それから日本アイルランドとの貿易でございますが、七三年に日本からの輸出が三千二百八十七万九千ドル、輸入が二千五百七十七万ドルでございます。とりあえずそれだけ御説明申し上げます。
  43. 松本善明

    松本(善)委員 この条約を結ぶことによって出る影響ですね、税の面とほかの面とか、これについて……。
  44. 大竹宏繁

    大竹説明員 税の面についてお答え申し上げます。  税につきましては、両条約ともOECDのモデル条約をほぼそのままとっております。したがいまして、税に及ぼす影響というものは、お互いの国の交流が同じならば大体同じようなことになるわけでございますけれども、先ほど来の御質問にございますスペアリングの関係はどうかということをちょっと補足させていただきますと、スペアリング、みなし外国税額控除でございますが、これにつきましては、スペインにおきましては、外国からの借款の利子と、それから技術援助にかかる使用料というものにつきまして、軽減措置がとられております。これをわが国のみなし外国税額控除の対象にしたわけでございます。  それからアイルランドでございますけれども、これのみなし外国税額控除の対象といたしましては、まずある種の工業製品についての所得、それから特定の物品の輸出にかかる所得、それからシャノン空港、まあこれは空港でございますけれども、そこでの営業にかかる所得、これらの三つにつきまして減免措置がとられておりまして、このようなものをみなし外国税額控除の対象にしておるわけでございます。  したがいまして、スペイン及びアイルランドいずれの例におきましても、みなし外国税額控除の対象になっております所得そのものの範囲が相当限られておりまして、現在、たとえばアイルランド関係のこのような面に日本企業が進出しておるということはまだございませんで、したがいまして、この条約のみなし外国税額控除の規定の結果、税の減収というようなものは、当分はおそらく全然ないであろうし、あったとしてもきわめて微々たるものではないかというふうに考えております。
  45. 松本善明

    松本(善)委員 きょうの質問はこれで終わります。
  46. 木村俊夫

    木村委員長 なお、松本君の資料要求につきましては、理事会で協議することにいたします。  渡部一郎君。
  47. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは租税条約につき御質問をいたしたいと存じます。  まず、租税条約について、今日に至るまで政府租税条約に対する見解は微妙に変化いたしておりますが、現在時点における租税条約に対するメリットとデメリット、またその評価というものについてお伺いしたいと存じます。
  48. 山田久就

    ○山田(久)政府委員 お答えいたします。  この租税条約というのは、国際間の人的あるいは経済的な交流に伴って生ずるところの二重課税防止するために二国間で締結されるものである、これはもう御承知のとおりでございまするが、結局その目的は、同一所得について課税権が重複するということを回避しよう、そのために居住者や所得の源泉に関する定義などを明確にいたしまして、そうして相互課税権を制限する、こういう目的と、そうしてまた現実に衝突が起こったというような場合には、それに対する救済方法を定めるということを主たる内容といたしておるような次第でございます。  要するに、経済取引の円滑化ということ、また適正な課税の確保、また情報の交換などによって国際的な脱税防止にも資する、これがそのメリットであると考えて今日まで措置してまいったような次第でございます。
  49. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 では、いまの質問が悪かったかもしれませんから、租税条約というのはいつごろからこういう形式の条約がつくられるようになったか、その歴史的な経緯から述べてください。
  50. 大竹宏繁

    大竹説明員 租税条約は、ただいまお話にございましたように、国際間の経済取引に伴いまして生ずる二重課税を排除するということでございます。したがいまして、経済交流が国際的に活発になってまいりました時代から、このような租税条約というものが必要であるということが意識され始めたわけでございます。それは主として第一次大戦後というふうにいえるかと思います。  それで、歴史的に見ますと、まずその国際的な交流というものは、船舶及び航空機の発達に伴いまして、その運航にかかる所得というものがまず二重課税の面で問題になったわけでございます。したがいまして、まず船舶、航空機の所得についての二重課税防止というような考え方から、そのような条約なり協定というようなものが結ばれる。次いで一般所得にかかる租税について、租税条約がおいおい結ばれるようになったわけでございます。これは各国でそれぞれ結んでおったわけでございますけれども、やはり非常に技術的な問題であるために、そこに統一した原則、手続、方法、解釈といったようなことが必要になってまいりまして、国際連盟がすでに戦前からモデル条約の作成ということを検討を進めまして、二、三のモデル条約をつくったわけでございます。その後、このような作業かOEEC——OECDの前身でございますが、そこへ引き継がれまして、一九六七年にOECDのモデル条約ができたということでございます。これは国際的な流れでございます。  それから、わが国の例を申し上げますと、わが国におきましては、すでに戦前におきましても、船舶と航空機につきましては相互免除の条約を結ぶというようなことがございまして、戦後になりまして、租税条約締結というものがだんだん本格化してまいったわけでございます。それで、まず最初に締結されましたのがアメリカでございまして、これが昭和三十年に発効しております。その後、北欧諸国、それから東南アジア、ヨーロッパ、いろいろその時点におきまして施行する国は若干ずつ変わっておりますけれども、最近に至りますまで、すでに二十六の条約締結されておるわけでございまして、二重課税の排除につきましての条約網というものは、相当広範に締結されつつあるというのが現状であります。
  51. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 このような国際的な条約の中で一つのパターンがきまって、そうして行なわれた租税条約のパターンというものが、今日の世界の現状に照らしてふさわしいものであるかどうか、私は問題を提起したいと思っておるわけであります。まず、その辺どういうふうに認識されておるか、お伺いしたい。
  52. 山田久就

    ○山田(久)政府委員 現在のOECDのモデル条約、これはただいまお話があったかとも思いますが、七年間相当検討してモデルとなるパターンをつくり上げてきたというものでございまするので、今日までそれを大体モデルにしてやってきておることは、すでに御説明のとおりであります。しかしながら、やはりその後のいろいろな経済状況の動き、各国の情勢、いろいろなものが起こってきておりますし、また発展途上国との関係では、この交流関係が一方的というような結果から、やはりそこに不均衡が起こってくるではないかというようなことで、こういう方面については特別のタイプの租税条約を検討すべきではないか、こういう議論も出ておりますし、われわれといたしましても、やはりいまの客観情勢に応じた、また発展途上国の立場というようなものをいろいろな形において考慮に入れた、そういうものについてやはり検討してみる必要があるというような立場で対処しょう、こういうことで臨んでいるような次第でございます。
  53. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 あなたはいま、客観的諸情勢が変わったことをみずから認められました。そこで申し上げますが、その中で、発展途上国の経済発展に対し、本条約が適応しない旨を述べられました。適応しないと思われるにもかかわらずこういう条約を出される理由は何かということを私は聞かなければなりません。  ですが、その前に申し上げますが、客観的情勢が変わってきて、この条約が必ずしも現状に適応しないことを、後進国問題しか限定しないでいまお述べになりました。あなたはこれだけしかこの条約に対しては欠陥がない、これだけしか問題がない、こうお思いですか。
  54. 大竹宏繁

    大竹説明員 ただいまのお答えを、それでは私からちょっと補足させていただきます。  客観的な情勢が変化したという面につきましては、確かに国際取引がいろいろな面で複雑多様化しておるという面がございまして、OECDのモデル条約だけについて見ましても、かなりその規定が適合しないという面がございます。これについては、モデルそのものの改定ということを現在やっておるわけでございます。  もう一つの後進国の問題につきましては、御説明のあったとおりでございまして、これも経済社会理事会の中におきまして専門家の会議を設けまして、OECDモデルでは必ずしも適合しない面をどういうふうに考えるかということで、いわゆるガイドラインをつくるという作業を現在進めておるところでございます。     〔委員長退席、水野委員長代理着席〕  そのほかの面でも適合しないという面は、あるいは御指摘のとおり多々あるかとは思いますけれども、このアイルランドスペインだけについて申し上げますと、やはり両国とも若干後進的な面を経済にそれぞれ持ってはおりますけれども、OECD加盟国でございまして、ほぼその経済交流につきましても似たようなものであるというところから、OECDモデルをそのまま適用した条約になっておりまして、この二つの条約につきましては、特に実体に適合しないということはないのではないかというふうに考えております。
  55. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、ますます妙な話になってきたわけですけれども、私は思いもかけぬ話にいまなってきているわけでありますが、この租税条約のモデルになったOECDモデル条約について、不適合部分があると今度は明快にお述べになりました。この不適合部分というのは、どことどことどこなのであるか。それに対してガイドラインが国際的につくられようとしているというお話もありました。それに対してわがほうはどういう態度で臨んでおられるか、まず審議の必要上、最初にそれをお述べいただきたいと思います。
  56. 大竹宏繁

    大竹説明員 まず、二つに区分して申し上げたいと思いますが、OECDのモデルそのものが適合しないといいますか、モデルそのものの改定作業が行なわれているという趣旨は、OECD諸国の間でこのモデル条約の解釈がいろいろ分かれておるというような面がございます。それから経済的な活動が変化しておりまして、その面でモデル条約規定が少し古くなったという面もございます。  たとえば具体的にどういうことかと申しますと、国際運輸業などにおきまして、従来は、特に飛行機のケースでございますけれども、通常の運航だけ考えておればよかったわけでございますが、だんだん共同運航とか、共同経営といったような形態ができてきておる。そういうようなものもモデルに取り込むべきではないかというような意見が出まして、そのような趣旨でモデルの改定をするというようなことがあるわけでございます。  したがいまして、OECDのモデルそのものは、そういうように、より明確に、より実態に即した形で改定作業が行なわれておりまして、その結果を今回のアイルランドスペインでもある程度取り入れてやっておるわけでございまして、OECDモデルが適合しないということにお受け取りになったとすれば、私の説明がはなはだまずかったわけでございまして、申し上げたのはそういう趣旨ではございませんで、実態に即応するような形でのモデルの改定ということでございます。  それから、開発途上国との関係でそれではどういう関係があるかということでございますが、これは開発途上国と先進国との関係というのは、経済的に交流が一方的になっておるわけでございます。したがいまして、OECDモデルのように相互軽減税率適用したという場合には、開発途上国側の減収が多くなる、租税条約によるところの税の減収というものが開発途上国側に一方的に働くことになるというところに問題があるわけでございます。したがって、この点をどうしたらいいかということで、いろいろ話が進められておるわけでございます。  たとえば先ほど申し上げました国際運輸業などの考え方におきましても、OECDモデルでは、船舶も航空機も相互所得を免除するという規定になっておるわけでございますが、先後進国間のガイドラインづくりの話の中では、船舶については半額課税をしようというような話が出ておるわけでございます。それから事業所得課税におきましても、OECDのモデルにおきましては、恒久的施設というものの範囲をかなり厳格にしぼっておるわけでございます。その結果、開発途上国側は課税したくても恒久的施設がないというふうに見られる場合が多くなって、事業所得課税できないというのは困る、したがって恒久的施設の範囲というものをもっと広げてもらいたいというような意見がございまして、そのようなことを考えておるわけでございます。  たとえばどういうことかと申しますと、OECDのモデル条約の中では、コンサルタント業務などは恒久的施設にならないというようなことも解釈上いわれておるわけでございますが、この国連の場におきましては、コンサルタント業務も恒久的施設になるのだというような規定を置くというようなことがそれに当たるかと思うわけでございます。そのほか事業所得課税などにつきましても、できるだけ後進国側が広く課税できるような配慮をしてはどうかというような意見が出ておるわけでございまして、これはなかなかお互いに利害の対立する面があるものですから、必ずしもまだ全部の問題について意見が一致したわけではございません。今後も討議が継続されることになっておりますので、いずれそういった指針みたいなものが公表される運びにはなるかと思いますが、現在のところまだこの面では作業中でございます。
  57. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 明快にお答えくださったので、はなはだありがたく思っておるわけですが、OECDのモデル条約の現実に即応しない部分という表現をいまされましたので、その表現で申しますが、不即応部分について、いま幾つかの例示をされかつそれを述べられました。そうしますと、こういう問題が出てくるわけであります。OECDのモデル条約を下敷きにしてつくられましたこの二つの条約において、そのような部分がより適切に処理されたかどうかが当然問題になるわけであります。そうしますと、私のほうといたしましては、当委員会の審議に資するため、OECDのモデル条約に対し現在世界的に出ている不即応部分、主要なる議論、そうしたものはどういうものがあるか、これはリストにして出していただいたほうがいいのではないか、こう思うわけであります。  なぜかというと、いまおっしゃいましたように、いま後進国との関係で数々の問題が述べられましたが、わがほうが租税条約締結をしました国の中には、明確に後進国と思われるものがございますね。たとえばマレーシアであるとか、名前をあげるのがいいのか悪いのかわかりませんが、スリランカであるとかエジプトであるとか、こうしたものについてはその配慮を欠いておったように私は思います。  そうしますと、これはいまお述べになった議論からいうならば、以前の租税条約に対しては適切でないということをみずから述べられたと同じことであります。私は、逆にそのことを問題にして、過去のことを全部引っくり返していま議論しょうとしているわけではないのですけれども、OECDのモデル条約それ自体が現実に適応せず、少なくとも開発途上国の前途に対して憂うべきものがあるとするならば、それに対する資料というものは出てこなければならないと私は思うのですね。そしていま私はちょっと申し上げたいのですが、現在スペインアイルランドの二つの国との租税条約を結ぼうとしている。これらは後進国なのか、開発途上国なのか、先進国なのか、中間部分なのか、不明解ですね。ところが、これを先進国だときめつけてこの租税条約を結んだとしか思われない、この条約の結び方は。私はこれはいかがなものか。そういうところが一つも明快でなくて、いまいきなり租税条約というものがだっと出されてきたわけです。  私は、はなはだ遺憾なんですが、委員長に対しある事情、一つだけ事情を御説明しておきたいのですが、私はOECDに結ばれましたこのモデル条約の草案について資料要求をしたわけであります、資料を出してもらいたいと。そうしたら、ある当局は、名前は言いませんが、非常にこれを拒まれ、ある当局は一生懸命さがしてこれをコピーして持ってきてくださった。これであります。  当委員会がOECDのモデル条約が下敷きになっているこの条約をやるにあたって、こうしたものまでわざわざ隠すようなやり方というのは、私は非常に不本意なんですね。どうかしているのじゃないか。何もこれは秘密の条約じゃない。ごらんいただいているとおり何も秘密の条約じゃない。ただしこれは日本文になっておりますが、これと照合してみますと、モデル条約の部分と変わっている部分を幾つか散見するわけです。その散見する部分については、いま御説明いただいたとおりプラスに配慮されている部分が確かにあるわけです。しかし、どことどこが変わっておってどうなるかということのためには、そのOECDのモデル条約に関する最近の審議の主要部分についてわれわれは承る必要があると思うのですね。そうでないと、この租税条約をどういう意味でつくったかわからない。なかんずくけしからぬのは、このアイルランドスペインをわがほうは先進国と見ているのか後進国と見ているのか、だましやすい相手と見ているのかさっぱり不明です。大蔵省当局のほうからも外務省当局のほうからも、両方から御答弁いただきたい。こんなことでは審議ができないじゃありませんか。  まず一つは、なぜOECDのモデル条約の草案をわれわれに早く提示をされなかったのか。それからOECDのモデル条約に関しいろいろ問題点があるのに、なぜその問題点を隠してこられたのか、それが第二。第三は、スペインアイルランドに対しては開発途上国扱いにするのか先進国扱いにするのか、その辺が不明確のうちになぜこの租税条約がこうして出てきたのか。この三つをまずちゃんと御説明いただきたいと思うのですね。
  58. 大竹宏繁

    大竹説明員 まず、御指摘のございました点で、順序はちょっと前後いたしますけれども、OECDのモデル条約でございます。これは、また繰り返しでたいへん恐縮でございますけれども、不適合ということばを私が申し上げたとしますとちょっとことばが強かったかと思うのでございまして、それでは具体的にちょっと御説明します。  まず、現在このモデル条約の条文が三十条ございまして、このうち二十条につきまして大体の改定作業を終えておる段階でございます。それではどういう点が改定になったかということでございますが、これはまず先ほどの国際運輸業所得でございますが、ここに共同計算、共同経営または国際経営共同体のような提携の場合にも相互免除を適用するというふうにつけ加えたわけでございます。これはいわば共同運航というような事態が、モデル条約ができた以後相当盛んになったということを考慮した改定でございます。これはスペインアイルランドにもこのようになっておるわけでございます。  それから次が投資所得の面でございますが、これが配当、利子使用料規定でございますが、ここがちょっと変わりまして、これは配当、利子使用料の実質的な受領者に軽減税率適用するということで、いままではその辺が必ずしも明確でなかったわけでございますが、いわゆる実質課税原則というものをより明確にしたという形で、そういう方向で改定が行なわれておるわけでございます。  それから次が芸能人等の所得の条文でございますが、従来芸能人等の所得につきましては、その役務が提供された国が第一次的に課税権を行使するということになっていたわけでございます。ところが芸能人企業といいますか、いわば法人形態で芸能人が外国で興業するというようなケースがふえてまいりまして、そのようなものも取り込まなければいけないということに議論がなりまして、このような役務提供地での課税原則というものが芸能人等の役務を提供する企業にも適用になるのだという趣旨で改定が行なわれたわけでございます。  実体的な改定のおもなものはそんなところでございまして、実態との間にズレが非常に大きいというふうには見ていないわけでございます。改定といいましても、いわばその程度でございまして、現実との間に非常なズレがあるのだというふうにはいえないかと思うのでございまして、その点そのようにおとりになったということでありますと、私の説明が非常にまずかったわけでございまして、おわびさせていただきます。  それから、アイルランドスペインというのは一体先進国か後進国かというような御質問でございますが、私どもの意識の中にございますのは、これらどちらの国もOECDに加盟しておるということでございます。したがって、モデル条約適用関係におきましては仲間内だといいますか、同じレベルに立っているというような意識が非常に強いわけでございます。OECDのモデル条約の改定作業で年に数回会議があるわけでございますけれども、そのときもつい横のほうにスペインアイルランドも並んでおるというようなことで、いわば仲間内みたいな感じがいたしておりまして、OECDのモデル条約が基礎になるということはお互いにもう暗黙の了解になっておるということでございます。  といいますのは、OECDのモデル条約は、その加盟国に対しまして、条約締結するときはこれをモデルに締結してもらいたいというような勧告が出ておりまして、いずれの国もそれを受諾しておるわけでございます。したがいまして、後進性を一部残しておるということは否定いたしませんが、条約締結にあたっては同じ土俵に乗っかっておるという意味におきまして、OECDモデル条約適用する点についていえば、相互に何ら問題がないというふうに了解いたしまして、OECDのモデル条約にのっとって条約締結することとしたわけでございます。  もちろん、先生も御指摘のように、後進国的な面に対する配慮というものは、スペアリングの規定を置きまして両国の要望にこたえるという形で、その面ではあるいは後進国的といえるかもしれませんが、これはいずれも両国の置かれたそういう現在の経済的な状況というものを考慮した結果というふうに御了解いただきたいわけでございます。
  59. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 よろしゅうございますか、私、いま御丁寧な御説明を伺いましたが、うしろの部分はちょっと解しかねるわけですね。まず、前の部分からちゃんと申し上げますが、OECDモデル条約は三十条ありまして、二十条につきましては改定作業をいたしましたと述べられましたね。そうしたら、どことどこが直ったのか、本委員会に出されるのは当然だと思いますね。そうでしょう。  ですから私、OECDのモデル条約並びに改定作業の済んだ二十条についてはこういう議論があってこうなったということで、直った部分を当委員会委員会資料として提出されるよう、委員長よろしく御配慮お願いいたします。
  60. 水野清

    ○水野委員長代理 資料、出せますね。
  61. 大竹宏繁

    大竹説明員 はい、資料を提出いたします。
  62. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 やっとこれで資料が少しそろったわけです。  その次に申し上げるわけですが、先ほどOECDモデル条約の不適合部分について、御自分みずから述べられましたのは、開発途上国に対しては一方的な経済的な流れというものがある。たとえば開発途上国側は減収が多くなる。また、OECDモデル条約では船舶相互免除という話があるが、これは半額課税の話があるという旨のお話をなさいました。  ところが、これは外務省の資料でここに「アイルランド事情 外務省欧亜局西欧第二課」とばっちり書いてあるのがあるのです。この資料は、外務省から正規ルートでいただいたわけでありますが、この一番最後のところに恥ずかしそうに書いてあることがあります。それは、わが国企業進出の現況がここに記されております。これによりますと、実に日本のいわゆる巨大企業と称するものが合弁あるいは直接の形で相当進出をいたしております。ここにあげられているのは、ブラザー・インターナショナル、資本金四万ポンド、一〇〇%、これは日本側出資が一〇〇%という意味だと存じます。ドネゴール乳業、日本三井物産、森永乳業、資本金四十七万五千ドル、日本側出資五五%。三井電満アイルランド社、資本金百六十万ドル、日本側出資七〇%。旭化成アイルランド社、日本側全額出資二億円に増資予定と書いてあります。以上のほかに「東洋工業の自動車組立提携、日魯漁業、日本水産のトロール漁船基地と加工工場建設、コークにおけるステンレススティル工場二〇百万磅プロジェクトに三井物産と日新製鋼の参加などがある。」と書かれております。逆に向こうからこっちに対するこういう企業はございません。  そうしますと、この租税の二重課税条約というものは、こうした形のものに対する考え方にはかなり一方的な関係が両者の中にあるということを示しております。このような一方的な、わが国は向こうに出ていくか、向こうからこちらへ出てこないという状況が当分続く段階においては、日本の巨大企業を守るためにこの条約はプラスになるが、向こうからこちらへ出てくるためにはプラスにならない条約だと考えてよろしいんでしょうか。そういうところの配慮はこの条約にあったのでしょうか。私は何にもなかったといっていいのではないかと思うのですね。  そうすると、いま言われた先進国か後進国かという議論もおのずから明らかでありますが、工業先進国と工業の極端なる後進国との間にこうした条約を結び、いまこの時期に強行することの意味は何かと私は考えたのだが、どうしてこんなに急がれたのか、いまごろ、こういう時点で。これはどういう意味なんだろうか、そして後進国に対する配慮を欠いたこうした条約が出たのか、そこを伺いたい。
  63. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  どうしてこの際にこのような条約を急ぐのであるかという御質問でございますが、私どもといたしましては、租税条約というものを、租税の両国間における取り分を定め、二重課税防止し、経済交流を促進していくという意味におきまして、本質的には技術的な協定であると考えておりまして、アイルランドスペインとの間におきましても、ほかの諸外国と結んでまいりました租税協定と大体同一の、OECDモデル条約に従ったパターンで結ぶことによりまして、世界の経済交流の緊密化に伴う両国間の経済交流の促進化というものを考えたものでございます。
  64. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いまのは答弁にならぬですよ。それは一般論であって、何もアイルランドスペイン関係がない答弁をなすったじゃないですか。もうくたびれてくるな、そういうへたな議論ばかり続くんでは。ちょっとちゃんと答えていただけないですかね。  それから、先進国か後進国かというのはまだ答えが出てないですよ。だれでもいいから答えられる人、出てきて言ってください。
  65. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 ただいまの答弁にいささか補足させていただきますが、このアイルランドとの租税条約につきましては、アイルランド側からぜひ結びたいという要望がございまして、それに基づいて本件交渉が始まったという経緯がございます。  なお、先進国か後進国かということでございますが……(渡部(一)委員スペインが抜けた」と呼ぶ)スペインは、アイルランドと異なりまして、先方から申し込んできたという事実はございませんが、こちらから話をしました際に、向こうも非常に積極的であったということでございます。  なお、先進国であるか後進国であるかということでございますが、先進国、後進国と一口に申しましても、はっきりとした境界線がございまして、これ以下は後進国、これ以上は先進国というような区別はもとよりあるわけのものではございませんで、なるほどスペインアイルランドはOECDの加盟国である、かつはまた国連におきましても貿易開発会議でございますかの後進国グループ、いわゆる七十七カ国グループには属していないわけでございますけれども、しかしいずれにいたしましても、先進国の中におきましては、やはり後発性の国であるということはいなめないところではないかと存じます。
  66. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 では午前中の時間が尽きてきましたから、私がいま質問しようと思った質問リストの中にない話で終わってしまいましたのでちょっと申し上げておきますが、先進国か後進国かということについて、OECDの国と一緒に立って並んでいるからというような先ほどの大蔵省の御答弁は不適切だと私は思うのです。これでは日本の外交には主体性がないといわれて差しつかえがない。なぜかといえば、そうした形での経済進出というものが後々のエコノミックアニマルといううわさとなり、行動となってはじき返ってきて、わが国の評判を落としてきたことは事実だからです。OECDの国の仲間うちかどこかにお互いの暗黙の了解があるとか、境界線をつけるわけにはいかないとか、そうした議論もございましたが、先進国と後進国とをまっ二つに分けて、まん中がないなんという議論は私はしているわけではない。ただ先進国には先進国の扱いがあり、後進国には後進国の扱いがある。先進国の中の比較的後発国、その後発国には後発国に対する態度があろうと私は言っているわけです。したがって、この条約にはそういう点が加味されているかを聞こうとしているわけです、いま一生懸命に。ところが非常に変な話なんだな。境界線があるわけではございませんとか、そんなことを言うなら、私は先進国と後進国と中進国と分けて、リストを出せと言わなければならない。そういう程度の悪い議論を続けるのでは、本委員会の時間はあまりにも貴重だと私は思うわけです。だからもう御答弁は要りませんから、休憩なさって、あとでけっこうですから、そういうところを明快にして、この条約に対してどういう態度で臨まれて、どういう配慮をしたのかということも含めて御答弁をいただきたいと思います。
  67. 水野清

    ○水野委員長代理 渡部一郎君の資料要求につきましては、なるべくすみやかに御提出をお願いいたします。  午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時二十四分休憩      ————◇—————     午後一時三十五分開議
  68. 木村俊夫

    木村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡部一郎君。
  69. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 午前中に引き続きまして話を進めさせていただきたいと存じます。  当租税条約に対して、まず私の観点をちょっと申し上げておきたいと存じます。  私は、この租税条約が最近になって問題となっております世界の多国籍企業、ワールドエンタープライズに対してどういう影響性を持つかという点について着目したいと存じます。それは昨年の八月十二日、世界発展における多国籍企業、「マルチナショナル・コーポレーションズ・イン・ワールド・デベロップメント」という報告書が国連において出されております。この場合に多国籍企業、マルチナショナル・コーポレーションということばは、経済社会理事会におきまして、二つ以上の国で資産を支配するすべての企業と定義をいたしておりますが、この国連の報告書の中に、本委員会における租税条約の審議に対して多くの示唆に富むポイントがあらわれているように感ずるわけであります。私は、先ほど大蔵省御当局が御表明になったお話、また外務政務次官が述べられたOECDのモデル条約に対する現状不適合とか不即応とかいう表現の中にこうした観点からの問題がなかったことを残念に思っておるわけであります。  と申しますのは、一つはこの多国籍企業の行動とその原理に対して私たちはどういう態度をとるかということを日本政府側として明らかにしなければ、本条約案件に対する審議に対してどっちへ向いて議論するかが不明確だからであります。すなわち、この租税条約で意図されているところのものは、二国間における二重課税防止であることは言うまでもないわけであります。二重課税防止というものは、その企業に対して両国政府が打撃を与えないようにするという意味であり、かつその企業が持つ本国の本店の利益というものを十分に考慮するというところに意味があると思います。  いまここで述べておりますように、多国籍企業の場合には、小さな多国籍企業のスタートを擁護するという意味では確かにこの租税条約は意味があるのでありますが、しかしスタートされ終わった超大企業が、いまや国家利益をしのぐ大きな存在になっているにもかかわらず、この租税条約のようなものでは、規制、コントロールあるいは国家権益の防護、国民の利益の擁護という点では非常に欠くるところがある。むしろそういう点では空白地点ではないかと私は思うわけであります。  先ほどからの御指摘は、先進国と開発途上国とに分けて、その両者における租税条約の持つ意味合いというものについては、まだ十分ではありませんが多少お話が出ておりました。ところが、私がいま言っております多国籍企業とこの租税条約との関係については何ら触れるところがなかった。ということは、私は正面から議論しておるわけでありますが、大竹国際租税課長はこれを意図的にはずされておるのか、そうしたものはこれに関与すべきものでないと考えられておるのか、まずその辺から私はじっくり伺う必要があるだろうと思うわけでございます。また、外務省当局はそういったことについては十分御存じの上でこうしたお話を進めようとなさっているのか、私はそこも問題があるわけであります。まず、大蔵省から代表してこの件につき御説明を伺いたいと存じます。
  70. 大竹宏繁

    大竹説明員 条約と多国籍企業関連でございますが、まず条約上、多国籍企業活動について関連を有する条文はどういうものがあるかということからお話ししたいと思います。  多国籍企業活動という場合、租税条約との関係で問題になりますのは、もちろんこれは国をまたがる取引になるわけでございます。租税条約も二国間の課税を扱うわけでございますから、当然そういう一般的な形で規定があるわけでございまして、多国籍企業そのものを正面から多国籍企業という面で規定したものはごらんのようにないわけでございますけれども、そういう一般的な規定がカバーしておるわけでございます。  その規定はどういうものかということでございますが、多国籍企業といいますのは、いま国連の定義をお述べになりましたけれども、そこにございますように何らかの支配関係がある企業であるというふうにごく広くいって了解していいかと思うわけでございます。その場合、具体的にいえば、たとえば親子会社であるとか系列会社であるとか、そういう形で相互関係があって、相互関係ある企業間で取引を行なう、その取引が普通の企業の間の取引と非常に違うわけでございますので、そこに租税回避というような問題が発生しやすいわけでございます。したがいまして、この点に着目いたしまして、租税条約は三つの規定を置きまして、このような多国籍企業の国際取引を規制する、規制するというとちょっと正確ではございませんで、そういう恣意的な取引の結果生じた課税関係を適正にするという配慮をしておるわけでございます。  ただいま三つの規定を申し上げましたが、まず一点は、特殊関連企業条項、これはずばりの規定でございますが、これがスペイン条約の第九条、それからアイルランド条約の十条に規定されておるわけでございます。その規定をごらんになっておわかりのように、その趣旨は、企業親子会社あるいは同一系列企業というような特殊な関係を利用いたしまして、不当に価格を安くする、あるいは高くするというような利益操作を行なうというようなことを防止するために、このような不当な価格操作ないしは利益操作が行なわれていると認められる場合には、そのような企業間の取引は、あたかも二つの独立した企業市場通常条件取引をしたならば発生したであろうと見られる所得をもって課税所得としますという規定でございます。  第二の規定といたしましては、やはり同じような趣旨でございますが、利子及び使用料について述べている規定でございます。スペイン及びアイルランド利子条項及び使用料条項にその規定がそれぞれございまして、それは具体的には利子及び使用料を通じまして不当な利益操作を行なうということを防止しようという趣旨でございます。これは利子及び使用料につきましては源泉地国で一〇%の課税をするということで、一般税率よりも軽減した税率適用するという規定になっておるわけでございますが、これを不当に利益操作を行ないまして、たとえば利子を、普通の場合ですと六%の利子であるにもかかわらず一〇%も払うというようなときには、通常取引条件におきまして公正妥当と認められるような利子をこえて支払われた部分についてはこの軽減税率適用しない。したがいまして一般税率適用するという趣旨でございます。  それから三番目は情報交換規定でございます。これはスペインアイルランドとも同じような規定があるわけでございますが、多国籍企業の場合には一国だけではなかなかその取引実態が把握できないわけでございますので、適正な課税といってもおのずから努力に限界がある。したがってその課税に必要な資料を要求して相手国からそれを送ってもらうというような道を開いておるわけでございます。これが情報交換規定でございまして、課税当局協力して適正な課税を行なうという旨の規定でございます。  このように租税条約規定の中で多国籍企業適用し得る規定というものがうたわれておるわけでございます。  それではOECDにおいてその辺の議論はどうなっておるかというお尋ねでございますので、それをお答え申し上げます。  OECDにおきましても、多国籍企業の問題につきましては各国とも非常に関心が高いわけでございまして、多国籍企業について関係する委員会で広く議論をするという形で問題が取り上げられておりまして、税の面だけについて申し上げますと、租税委員会の中で現在多国籍企業課税のあり方等につきまして議論が行なわれておるところでございます。その具体的な問題の取り上げ方といたしましては、一つ情報交換をどういうふうにしてやるかというような問題それから一つ租税上の優遇措置を不当に乱用するというようなことは防止しなければならないといったような観点の問題、それから特殊関連企業の扱い等につきまして現在議論が行なわれておるところでございます。
  71. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 OECDでモデル条約を直しているまっ最中にこうしたものを出す、こうしたアイルランドスペインとの間の条約を出して押し通そうとしてくるその神経ですね。つまりテレビでいうならば、テレビのタイプが古くさくなって工場では新しいタイプを考え中なんだけれども、古いテレビをいまのうちに売り飛ばしていこうという業者と非常によく似たような感じがするんです。私はこの考え方が先ほどから気にかかってしかたがないのですが、それは今度モデル条約が正式に提出され、どこを修正しようとされているか、それを伺ってから議論することにいたしまして、それを預けておきます。  ですが、いまお話の中にあった三つの制限措置をつくったぐらいで、多国籍企業のこの特殊な地位というものに対し公平な税負担を課することができるように修正することができるとお思いかそうでないか、お答えいただきたい。
  72. 大竹宏繁

    大竹説明員 条約で具体的な条文として規定されておりますのは、ただいま申し上げましたような規定でございます。これの有効性でございますが、まず第一に国際的な協力がなければできないということがございまして、いずれにしましても、国をまたがる取引にかかるということで、お互い課税当局協力が必要になるわけでございますが、その点につきましては、各国とも多国籍企業課税につきましての問題意識はきわめて高いわけでございますので、お互いの間での協力についてはコンセンサスがあるわけでございますので、適正な課税という方向で国際的な協力をしていけるということでございます。  それからちょっと申しおくれましたけれども、国内的にも多国籍企業につきましては、法人税法等におきまして適用し得る条文があるわけでございますので、そのような規定を活用することによっても対処できるということでございます。  それから、最初にちょっとお述べになりましたモデルの改定の問題と、それから条約締結の問題でございますが、たびたび触れて恐縮でございますけれども、私どもの理解のしかたと申しますか、それをもう一度ここで述べさしていただきたいと思うわけでございますが、モデルの改定は一九六七年から行なわれております。したがいまして、もう七年ぐらいやっておるわけでございます。  それで、モデルの改定作業というのは、一条一条作業部会をつくりまして、作業部会にもよるわけでございますが、二カ国、三カ国、多いときは四カ国、五カ国がそのメンバーになりましてまず原案をつくります。そのつくりました原案を租税委員会の中の第一作業部会というところに上げまして、そこでまた全メンバーが集まりまして議論をいたします。したがいまして、一条の改定を行なうまでにかなり時間がかかるわけでございます。先ほど二十条ばかり改定をしておるというふうに申し上げましたけれども、そういうことで次々に条文を取り上げましてやっております関係上、そのように非常に時間がかかるわけでございます。この改定作業が全部済むのは一応目標としては来年度中ぐらいには、こう言っておりますけれども、これはあくまでも努力目標でございまして、そのような審議の経過から見ますと、まだ非常に時間がかかるのじゃないかという感じがいたします。  そこで、これを改定したものができなければ条約が結べないということになりますかというと、それはそうではございませんで、モデル条約なるものは六三年に公表されまして、それが各国に勧告されておるわけでございます。それを土台にいたしまして、各国とも現在租税条約締結はいろいろな国とやっておるわけでございます。午前中にも申し上げましたように、その改定の個所はかなり技術的な改定が多うございまして、字句の修正あるいは修文上の調整といったことにわたる面も多うございまして、必ずしも根本的に考え方が変わっちゃったという話ではございませんで、むしろモデル条約原則はほとんど変わらないというふうにいっていいのではないかと思います。
  73. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そういう議論をもしなさるのだったら、私、話を巻き返しまして、じゃ国連の経済社会理事会で出された勧告をあなたはお読みになっているのかと伺いたい。あなたが、もしそういう気持ちが全世界のOECDの税務官僚の考え方であるというのだったら、その人たちはそろってこの経済社会理事会の勧告を見ていないのではないかと思って、私は注意を喚起したい。  なぜかというと、経済社会理事会で何がいわれているかといえば、多国籍企業が進出先で、金融の面でも労務の面でも資材あるいは技術開発の問題でも非常に問題を起こしている。だから、これに対しては多国籍企業憲章であるとか国際貿易機関の新設であるとか、そういうような自制措置あるいは将来は規制措置というものがとられなければならぬ旨勧告しているでしょう。それに対応しているのかと私は聞いているのです。それが必要なことはもうそちらの多国籍企業を扱った経済社会理事会のほうでは明確に答えが出ている。ところが、あなたは何上一つ反応していないじゃないですか。具体的な例を幾つか申し上げましょうか、そんなにわけがわからないのだったら。  たとえば、トーメンがこの間問題になりました。この間の予算委員会でわが党の矢野さんが取り上げられた例ですから、私、率直に申し上げますが、それで大阪国税局がトーメンの大阪本社と東京本社を立ち入り検査した。そして海外経理部幹部のマル秘事務引き継ぎ書、機密費の資金受け渡し経理と明記したメモが発見された。国内本社、海外本社に裏帳簿があった。そしてドイツ、パキスタン、アメリカ、オーストラリアの各地三十八事務所の決算表その他を任意提出させたところが、申告漏れ約三十億、そのうち二十六億が課税対象になった旨、ここに記してあります。それはもうおわかりのとおりだと思います。  ところが、このときに出てきたことはこれだけではありません。税務官吏たちが私たちの取材に対して一様に答えていることは、現行の法規ではこれ以上はとれないという返事です。それはなぜかといえば、決算期の違うのを利用して決算期以前にお金を移動すること、これに対しては全然証拠がとれていない。また、ドルの値上がりとかあるいは落ちこぼれとか、ドルの価格の上下に応じて、このシステムを使って両者の金融操作をやることが可能である。海外法人海外法人同士で同一の品物を、あるときは高く、あるときは低くすることによって、実質的な財務統制というものを行なうことが可能である。そして税務署に対する弁明としては、そのときの相場がうまくいかなかったとか、落ちこぼれがあったとか、古いものがあったとか、そうした形でそれを言いのがれておる。税務署は、われわれ庶民に対してのみ源泉所得などとすごいので一生懸命に臨んでこられるけれども、こういう海外法人には全く手つかずではないかという印象が濃い。しかも、このトーメンの場合などで明らかですけれども、実際には二十億円の追徴で調査に終わっておる。査察はしない。  そして、そういう姿勢も問題ですけれども、私がいまあげたように、これらのまるきりインチキの領収書その他の受け渡しはわかりますし、今度の場合問題にもされて追徴金が課せられたというのは事実ですけれども、いまのような実際的な金融移動、資材移動によるところの資材の単価の微妙な改定によって膨大な利益をあげることが可能です。だから、国連におけるこの経済社会理事会の討論の中でも、平均的にいって、ワールドエンタープライズ、マルチナショナルコーポレーションのたぐいは、通常会社の業務と比較すると、一・五倍ないし二・五倍という巨大な利益をあげている旨の指摘がございましたね。そうすると、それに対して、一体この租税の二重条約というのは何の意味を持つのかということなんです、私の言っているのは。何にも意味ないじゃないかということなのです。  私は、きょうは結論から言いますが、マルチナショナルコーポレーションがスタートするときに、それを守る条約である。先ほど例をあげましたように、日本の小さなそうしたワールドエンタープライズ、マルチナショナルコーポレーション。ブラザーミシンであるとか三井物産であるとか森永乳業であるとかあるいは三井金属であるとか、こうしたものが元気よく世界におどり出ようとするときに、そういうものを守るための条約である。小さなマルチナショナルコーポレーションを守るための条約である。そうして巨大なマルチナショナルコーポレーションの利得に対しては目をつぶり、その金融政策は放置をし、そうしてぼやっと指をくわえて見ているだけの条約である。世界の税務官僚はあげてこのような、あなたがおっしゃった三カ条などというので、それに対して何にもできないじゃありませんか。あなたは言われた、特殊関連企業に対する特殊な課税あるいは利子使用料に対する問題、あるいは情報交換と言われた。  私は取材している途中でこんなことがあった。実際にこれらの条項はどれくらい発動されているのですかと非公式に伺った。そうしたら、情報交換というのはいろんなことが言えるから別として、ほかのことでは、こうしたものの条項が発動された例はほとんどありませんという現場の人たちの声でした。だから私、言っているんだ。このような多国籍企業に対する大抜けに加えて、名目的なこういう制限条項、これであたかも現場がうまくいくように錯覚させるような応対というのは不当ではないか、私はこう申し上げておるのです。私はその点、あなたと見解を全く異にします。私のいま言ったことは、トーメンをとったって丸紅飯田をとったって三井物産をとったって三菱商事をとったって、全部明らかではありませんか。  だから私は申し上げている。なぜこんなお粗末な条約をいまの時期にこんなにあわてて、OECDでさえあきれ返って直しているまっ最中なのに、何でこんなにあわててこの委員会に出してくるのか、何でやっているのかわからない。深い深い意図があるとしか思えない。
  74. 鈴木文彦

    ○鈴木(文)政府委員 ただいま国連の事務局の報告書のことに触れられましたけれども、この機会に、この国連の報告書の性格を一言申し上げておきたいと思います。  御承知のように、一九七二年、二年ほど前に経済社会理事会で多国籍企業の問題をひとつ検討しようじゃないか、特に後進国、開発途上国の経済開発との関連においてひとつ検討しようじゃないか。そのために有識者グループと申しますか、個人の資格で参加する十八人の方が任命されまして、この問題を研究するという趣旨の決議が成立したわけでございます。国連の事務局、特に経済社会局は、この有識者グループの検討の基礎資料としまして、ただいま先生の御指摘になりました報告書をつくりまして、有識者グループは三回にわたって会議を重ねまして、ことしの七月の経済社会理事会に有識者グループとしての討議の結果をまとめた報告書を出すことになっております。この報告が出た段階で、初めて経済社会理事会におきまして各国の代表がこの問題について討議するというふうな段取りになっております。
  75. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、まだ経済社会理事会の正式報告書ではないということをいま御指摘いただいたわけですね。わかりました。  それではそれは私の言い間違いですから、その部分は私、十分にわかった上で、次の議論をしたいと思います。  しかし、有識者グループによって指摘されたというその内容は考えるべきものを持っているのではないでしょうか。私は、そういう意味では、これははなはだ遺憾だ、この条約ははなはだ抜けている条約である、もうどうしようもないと思うのですね。これはもうナンセンスじゃないかと思うのですね、マルチナショナルコーポレーションのたぐいに対しては。どうですか、大蔵省の方は、これでもきき目があると思っているのですか。
  76. 鈴木文彦

    ○鈴木(文)政府委員 私の説明がちょっと舌足らずであったかと思いますけれども、この報告書は国連の事務局のつくりました報告書でございまして、それをベースに有識者グループで討議することになっております。したがいまして、いま先生が言われましたのですが、有識者グループが指摘したということではございません。
  77. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は大蔵省質問しているのですけれども、大蔵省はどうですか。
  78. 大竹宏繁

    大竹説明員 多国籍企業につきましていろいろ御指摘いただきましたわけでございますが、多国籍企業の問題というのは非常に範囲が広うございまして、税のみならず、先ほど御指摘の金融問題あるいは通貨、国際収支あるいは雇用問題、産業政策、独禁法の問題、多岐にわたる問題でございます。御指摘のように非常に活動範囲が広く、かつ一国の統制になかなか適合しない面も持っておりますこの多国籍企業につきましては、問題が指摘されております割合にその対応が十分でないということは御指摘のとおりでございます。  税の面におきましても、私が申し上げましたのは現状で持っております規定を主として御説明したわけでございまして、これで御指摘のように全部それでは多国籍企業の税の問題がカバーできるかどうかということは、OECDあるいは国連でもいろいろ議論がございますように、まだまだいろいろ検討の余地があるということは事実でございます。  したがいまして、私どもはまず第一に、先ほども申し上げましたように、国際協調がないとこの問題は一国だけで片づく問題ではない、まさに多国籍であるがゆえに、世界の関係国が集まって同一の歩調で問題に対処していかなければいけないということが基本的にあると思いますので、それにまず参加をいたしまして、十分議論を経た後に具体的な問題が出た場合には、国内におきましても、もし必要とあるならば新たな措置をとっていくということは十分検討してまいりたい、このように考えております。
  79. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 条約が、中小のこれから巨大化していく多国籍企業を助成するものではないか、そういうものを援助する条約ではないかという点のお話でございますが、私どもといたしましては、条約を結びます見地からは、どこの企業を、ないしはどの種の企業の援助をするというような立場から条約締結をいたしているわけではございませんので、たびたび申し上げておりますように、この租税条約と申しますのは、二重課税防止するという国際間における税制面における協調ということを主眼にいたしました技術的な条約だという立場をとっておりまして、その立場から条約締結しているわけでございます。  それからなお、この条約が、したがいまして多国籍企業のコントロールに何ら役割りを果たしていないではないかということでございますが、確かに、国際租税課長からも御説明申し上げましたように、若干の多国籍企業を規制し得る規定というものはございますが、あるいはそれだけで十分多国籍企業活動というものをコントロールできないことはございましょう。しかし、多国籍企業と申しますのは、非常に多岐な分野で活動しているものでございまして、これを租税面だけで規制し得るものであるかどうか、なかなか困難な問題ではないかと私どもは考えているわけでございます。したがいまして、国際間で、OECDにしろ、経済社会理事会等におきまして、多国籍企業というものを単に税制面だけからではなく、種々の観点から検討した上で、いかにしてこれを取り扱っていくかという点の検討がいま進んでおり、かつまた開始されようとしている段階でございますので、この二本の条約につきまして、多国籍企業に対するコントロールが及ばないという点は、現段階におきましては、そのうらみがもしありますとすれば、いたし方ないものではないかというように考えます。
  80. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いまお二人の答弁は、ものすごいことを言われたわけでありまして、大蔵省の御関係では、現状においては、全部が全部多国籍企業のそうした活動に対してカバーできるかどうかについては検討の余地があると述べられましたし、また国際協調がなければだめであり、国際協調の上で国内措置も考えなければならない旨御発言になりました。また、外務省としては、多国籍企業に対しコントロールができないうらみがある旨、率直に御答弁になりましたので、私は、この問題については意見がほぼ一致してきたと思います。  それはそれで意見は一致してけっこうなんですが、問題なのは政府・自民党のほうですね。政府自民党のほうとは一致しておらぬわけです。だから、これで私は官僚の皆さんとは意見が一致したのだ。問題は政府と自民党です。政府と自民党は全然一致しておらぬ。つまりこの条約は多国籍企業に対するコントロールとしては相当問題がありそうだというニュアンスだけはおわかりいただけると私は思う、さっきから何回も繰り返していますが。問題があるどころではない。  そこで私は、今度はちょっと品の悪いほうから議論をさせていただきますが、私はアイルランドに関してはデータをちょうだいしましたのですが、日本アイルランドの間の相互企業進出は、外務省の二月の資料によれば、日本からは件数が六件、投資総額が七十八万ドル、アイルランドから日本へ来たものは投資件数はゼロの投資額はゼロ。それから日本スペインとの経済関係のリストを拝見しますと、日本から進出している企業は二十三件、そして投資総額は一千六十五万ドル。ところが、スペインから日本へ入ってきているものはゼロ件のゼロドルですね。こういうリストをちょうだいしました。  ちょっと念のために伺うのですが、スペインに対して企業進出を行なっている日本企業の名前とその投資額を述べていただきたい。
  81. 大和田渉

    ○大和田政府委員 お答え申し上げます。  応募者と申しますか、その投資に応募している名前をまず申し上げます。丸紅でございます。参加を募集している会社は、これはスペイン会社でございますが、プロモトーラ・デ・インフェルシオーネスという会社で、これは場所はバルセロナ、金額は三十三万三千ドルでございます。出資比率が二〇%でございます。  それから三洋電機貿易、これは募集しているつまりスペイン会社の名前は略さしていただきますが、場所はナバラというところで、金額は十八万七千五百ドルでございます。出資比率は一九%。それから同じく三洋電機貿易が、やはりナバラに所在しております電機関係会社に投資しております金額は二十八万七千七百十五ドル、出資比率が一九%。  それから次に丸紅が、マドリードにあります会社に投資しております金額が十万ドル、これは出資比率一〇〇%でございます。それから同じく丸紅がオレンスという場所で農業関係の出資をいたしておりますが、これが金額が一万七千五百七十一ドル、出資比率が二五%でございます。  それからビーユーという会社がマドリードに、レストランサクラというのに投資しておりますが、投資額が三万六千ドル、比率は一〇〇%でございます。  それから日新製鋼と日商岩井が合同で投資しております非鉄金属関係の業種でございますが、場所はマドリードで、金額が三百万ドルで、出資比率が三五%でございます。  それから花王石鹸がケミカル関係でバルセロナに投資しておりますのは五十一万四千二百八十六ドル、比率が四五%でございます。  それから三井物産がマドリードに、これは商事関係会社でございますが、出資しておりますのは十四万三千ドル、出資比率は一〇〇%でございます。  それから三井石油化学工業と三井物産が共同でケミカル関係に投資しておりますのは、場所はマドリードでございますが、金額は百七十一万四千二百八十四ドル、出資比率が四〇%でございます。  それからパシフィック通商というのがバダロナに商事関係会社をつくっておりますが、金額は六万五千五百十一ドル、出資比率は一〇〇%でございます。  それから日本水産がラスパルマスに、ユーロ・ニッスイという会社に出資しておりますが、金額は二十三万二千六百六十六ドル、比率は五〇%でございます。  それから富士通がマドリードに、商事関係会社に出資しておりますが、出資額は六十二万四百四十四ドル、比率は一〇〇%でございます。  それからソニーがバルセロナに、電機関係会社に出資しておりますが、金額は四十六万五千三百六ドル、比率は五〇%でございます。  それから東京銀行が金融、保険関係でマドリードに出資しておりますが、金額は百十一万四千五百三十八ドル、出資比率は二%でございます。  それから三井物産が食品関係でバレンシアに出資しておりますが、金額は十八万六千ドル、比率は三〇%。  それから三菱商事がマドリードに商事会社をつくっておりますが、金額は二十一万五千四百二十一ドル、比率は一〇〇%でございます。  それから大洋漁業がマドリードに出資しておりますが、出資額は十一万六千二百九十六ドル、比率は九〇%でございます。これは富士通と共同でやっております。  それからもう一つ富士通が単独でやっておりますが、マドリードにやはり商事会社でございますが、金額は十五万五千百十ドル、出資比率は五〇%。  それから日商岩井が同じくマドリードに商事会社をつくっておりますが、出資金額は二十万六千八百九十六ドル、出資の比率は一〇〇%でございます。  それから三菱商事がブリアナという場所に、食品関係会社に出資しておりますが、その金額は七十七万五千八百六十二ドル、比率は五〇%でございます。  それから松下電器産業がバルセロナに、電機関係会社に出資しておりますが、出資比率は八〇%、金額が三百四十三万五千四百八十三ドルでございます。  それから三菱商事と三菱金属鉱業がバレンシアに非鉄金属関係で出資しておりますが、三菱商事の場合、出資額は十三万一千三百九十ドル、比率は二〇%、三菱金属鉱業の場合は二十六万二千七百九十ドル、比率は四〇%。  それから日商岩井と中北製作所というのが合同でマドリードに、機械関係会社に出資しておりますが、中北製作所は金額五万六千六百六十七ドル、比率二〇%、日商岩井が二万八千三百三十三ドル、比率は一〇%。  以上でございます。
  82. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 丁寧に読んでいただいて申しわけなかったのですが、このアイルランドスペインとの間のこうした関係について資料として当委員会に御提出をお願いしたいと思うのですが、よろしゅうございましょうか。
  83. 木村俊夫

    木村委員長 そのようにいたします。
  84. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、私はもう一回さっきの議論一つの方向を——いま日本では物価問題がたいへん議論された予算委員会を迎えたそういう時期であります。そうした中で、この進出企業の中には札つきの商事会社も何社か入っているわけですね。それで、私たちは政府海外にこうした投資を行ないあるいは進出するということを無制限に悪いといっているわけじゃございませんが、こういうような時期にこのような、少なくともワールドエンタープライズというものに対するコントロールについては重大な疑問のある条約を一生懸命押して押して押しまくって、この委員会で通そうということですね。その政治的背景というものを私は疑いたくなるわけなんですね。それは何を言っているかというと、つまりこうした会社群の利益を守るために日本政府は動いたとしか考えられないので、私は伺っているわけであります。日本政府としては、スペインあるいはアイルランド等に進出した日本企業防衛のために、これほどまでに努力をされたのかどうかを伺いたい。  そしてなお、先ほどお話があったのでありますが、先ほどの経済社会理事会の事務局のお話の中に、概して受け入れ国の過半数は外国の直接投資というものを促進しておる、発展途上国にとっては、多国籍企業は労働の国際分業を深め、強め、政治的、経済的依存性を永続的なものにすると考えられる、多国籍企業を受け入れた先進国の多くも、重要部門における多国籍企業の比重増大は独立の侵害と見ておると、こういうような表現で述べております。つまり当初においては受け入れを促進しながらも、しばらくたってみると、自分のほうでやりたい仕事というのは全部それらの企業に奪われているという形で反発というのが起こってくる。したがって、コントロールのない多国籍企業の進出を援護するということは、日本外交の基本的立場からいっても必ずしも賢明でないことをこれは示しています。この議論は傾聴に値すべき議論だと私は思っているわけなんです。  いまこの時期に、なぜこんなにあわてたか。アイルランドのほうは積極的に要望があった。スペインのほうは、口説いてみたら口説き落ちたのであると、大体そんなような意味合いのことを先ほど外務参事官はおっしゃいました。なぜこんなに押したのか、なぜこんなに企業の下請を外務省、大蔵省は熱心にやらねばならなかったのか。それはお役人である皆さん方から聞くつもりは私はないのです。もう少しこれは偉い人に聞かなければならぬだろうと思うのです。それで、多国籍企業をどう思っているかも不明なんですね。これをつかまえてコントロールし得るほうに断固日本政府は立ち上がろうとしているのか、多国籍企業の下敷きになってしまおうと考えているのか、これも不明ですね。けれども、その問題は私はうしろに置くとして、まず品の悪い話から伺いたい。  なぜいまごろの時期にこんなに、日本の商売人というか、この中のある種のものは非常な悪質な経済行為をなしたことで著名な企業であるが、そういう企業を守るためにこうした条約を押しまくられたのか、まず、公式的な御説明を承りたい。
  85. 大竹宏繁

    大竹説明員 多国籍企業につきまして再々御指摘でございます。確かに仰せのとおり、いろいろな弊害が世界的にいま指摘されておる。これに対する租税条約の対処のしかたは必ずしも十分でないというような御指摘でございます。租税条約そのものは確かに二国間のものでございまして、多国籍企業に必ずしも有効でないということはございました。ただ、スペインアイルランド条約につきまして、その辺具体的にどうかということでございますが、まだ多国籍企業の面で、スペインアイルランドで特に問題があるということは、現在のところまだ私どもは直接にはちょっと承知してないわけでございますけれども、いずれにしましても、それではなぜそういう条約を結ぶかということにつきましては、わが国方針といたしまして、租税条約締結の網を広げていくということは一つ方針でございまして、これはそういう二国間の租税条約網が広くなればなるほど国際的な経済取り引きが円滑にいくし、ひいては多国籍企業に対する対処のしかたも、条約という面でだけではございますけれども、そういう網の目が広がっていくことが望ましいということはあるわけでございます。したがってそういう見地からこの条約を結んでおるわけでございます。  それから、その進出の企業は、具体的にはいまアイルランドスペインにつきまして御説明があったわけでございますけれども、全般的に申し上げますと、大きいところは出てはおりますけれども、数から申しますと小さいところもかなり出ております。たとえばこれは通産省の調査でございますけれども、海外事業活動を行なっている企業の数でございますが、それから申しますと、資本金で五千万未満の企業というものが海外進出の企業のうちの二七%ぐらいを占めておるというようなこともございまして、必ずしも大企業ばかりをねらっておるということではないというふうに了解しておるわけでございます。
  86. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 もう、悪いけれども、それが大蔵省の国際租税課長としてお答えになる限界だろうと私は思うのです。あなたは説明員でいらっしゃるので、政府委員ではない。そうすると私は大蔵省の意向というものはここではわからないわけですね。ですから、これは大蔵省政府委員として、もう少し答弁できる方に来ていただかなければならぬとも思いますから、それ以上無理なことは私は伺うつもりはありません。  それから、こうやってお話を伺っておりますと、確かに多国籍企業は税制の面、金融の面、国際収支の面、雇用の面あるいは独禁法の面その他諸施策の面で問題がある。そうするとこれを扱われる通産当局と大蔵当局の両方の責任者にぜひとも来ていただかなければこれは審議しにくい。  委員長に申し上げますが、まことに申しわけないことでありますが、当委員会には本日外務大臣も御出席でありませんが、あわせて通産大臣にぜひとも御出席を仰ぎたい。大蔵省のほうは、大蔵省の担当局長ないし関連局長の御出席を求めたいと思いますが、よろしく御配慮をお願いしたいと思います。
  87. 木村俊夫

    木村委員長 ただいま渡部君からの御要求の件は理事会において協議したいと思います。
  88. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 したがって、いまの大蔵省の御答弁でも、私が主張した論点はそのままになっております。つまり小さな多国籍企業を守る条約という私の非難はそのまま残っておるわけですね。ですから小さな多国籍企業を、大きな多国籍企業についてはもう手も足も出ないが、ともかくこの条約では、小さな日本国企業を多国籍化するという作業に対してはプラスであろうと私は思います。  しかもこの時期にあたって、政府・自民党という形で呼ぶのは私は非常に酷なんでありますが、政府がとかく大企業に対し甘い対策をとってこられたのは公然周知の事実であります。そのときに、アイルランドから、スペインから日本企業が進出する可能性がここしばらくあるかどうかです。まずない。まずないと思うべきでしょう。そうしてまず、日本国との間ではこの租税条約は一方的な流れになるでしょう。そうするとどういうことかといえば、日本から進出した大企業を防護するための条約だという私の非難はそのまま残ってしまうのです。つまり政府・自民党はまたしても大企業擁護のための典型的な対策をおとりになったと私が非難しても、あながちその非難は排除できにくかろう。李下に冠を正さずということは、瓜田にくつを直さぬということもあるけれども、ちょっと行き過ぎではなかろうかというのが私の次の提起なんです。  これは万やむを得ず、官僚の方に答弁していただくわけにいかないから私政務次官に伺うのですけれども、政務次官としては、この時期にどうしてもしなければいけなかったのだろうか、その答えに率直な御意見を聞かしていただきたい。
  89. 山田久就

    ○山田(久)政府委員 国際社会の中でお互いが生きていくということは、それぞれの利害関係の合致ということで、それでその国際社会というものを円満に動かしているわけです。これはもう御承知のとおりだろうと思います。本件についても、つまり双方が、これをどちらから言い出したという問題はむろんありますけれども、やはりお互いお互いの利益に合致するという、そういう意思の合致によってこれは動いているものだ、これをよく認識しておいていただく必要があろうかと思います。  ただいま政府あるいは自民党で、何か知らないけれども悪徳企業防止するという特殊の目的でこれをやろうとしているのじゃないかという御批判、御指摘がございましたけれども、これは全く私は……(渡部(一)委員防止じゃなく、守るため」と呼ぶ)そんな守るためにやっているというのは、あえて言わしていただくと、御非難は御非難、いろいろ御見解はあろうかと思いますけれども、そういうことでないことは私ははっきり申し上げておきたいと思う。  問題は、やはりわが国の経済体制自身というものは、自由なる企業——政府か全部専売しているわけじゃない、むしろこの自由なる企業という、そういう体制の中でわれわれがその生きる道を考えてやっているわけであり、ことに資源のない日本、われわれの生存のためにも、そうして繁栄のためにも、できるだけ国際的な経済交流をスムーズに円滑に広げていく、こういうことによって世界も繁栄するし、まさに日本はこういう中において生き得るのだという、その線に従っていっているので、何もいまに始まったことじゃなくて、これは基本的な今日の日本政府のとっている方針にほかならないと思います。  この間において、いま御指摘のような多国籍企業、これはむろん、いまの国際化社会の中において、やはりその必要があって生まれてきておるものでしょう。むろん長所もあれば、しかしながらまたこれに対しての正すべき点あるいは批判、これも率直に認めざるを得ない。したがって、そういう面については、基本的な方向があるにかかわらず、また体制があるにかかわらず、そういうものはそういうものとして取り組むことは、いろんな角度からこれはやっていかなければならぬ、こういう点では私は全く同感です。  そうかといって、この広範な問題を世界は取り組もうとしているけれども、まだこれを捕捉し得るという段階には至っておらない、こういう段階のときに、ものはベストでなければ何もやらぬということではなくて、いまの段階においてよりベターな、プラクチカルな、そういうことについてはできるだけこれを対処していくのだ、そういう意味において、この経済の交流関係を促進するという目的、そうしてまた脱税というものも税の面からも防止する、そういうことにも役立つという意味でこの条約を考え、しかもこれは双方の希望の合致という形においてこれが行なわれる。現段階においては、つまりそれのなし得る限界の点で所要の規定を設け、情報の交換というものによって、いま脱税防止のことにも前よりか国際協力を促進して、少しでもそれに沿うようにという考えでやっているわけでございまして、この点は賢明なる先生に、特殊のおめがねをはずしていただいて、ひとつ御理解いただければさいわいだ、こう考えておるわけでございます。
  90. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 政治家同士ですから、私も率直に言わしていただくのですが、国と国との間の援助とか協力とか侵略とか、それは両方の意思の合致によってやるというのが最近のスタイルなんですよ。あなた御存じかどうか知らないけれども、私、あんまりあほみたいな議論が続いたからちょっとだけ小言を言うておきますが、ソ連政府がチェコスロバキアに侵入したときも、両国政府の意思の合致によってソ連政府は軍隊出して占領したのです。自由をあのように奪った時代にも、両国政府は意思が合致したのです。何も反発したんじゃないのです、チェコスロバキア政府というのは。またユーゴ政府もそうだ。日本が満州国を中国につくったときだって、あれは両国の意思の合致によって行なわれたのです。  そういうのは古いテクニックであり、古い表現だと私は思うのです。そんなことは、当委員会によって私は言われる筋はないと思う。そんな議論するのだったら、日米安保を結んだのも両方の意思の合致でしょうし、あらゆる日本の不平等条約は意思の合致によってつくられたのです。したがって私は、そういう議論ではこの問題は解決せぬと思うのです。  それから、自由なる企業の発展というものは、世界の繁栄につながる旨おっしゃいましたけれども、それは古い古い議論なんですね。それはもう一世紀前の議論なんです。初期資本主義の時代の議論ですね。いまは、自由なる企業の発展というのは世界に繁栄をもたらすのじゃなくて、世界に災厄をもたらすことが公害の面でいわれ、資源の面でいわれ、いま多国籍企業は、世界において国家関係を上回る強大な存在として登場したことが、国連において問題にされているわけですね。  その辺は私は、賢明にわかっていただかなければいかぬと思うのです。また、ベストでなければ何にもしないというのじゃなくて、プラクチカルにやるべきだとおっしゃいまして、それは先生の御持論であることには私は敬意を表して別に申し上げませんけれども、これはベストでないのだ。ベターですらないのだ。むしろこれは、見のがしの三振とでもいうべきものですよ。そして、世界的な企業の高度脱税行為を黙認するところの条約じゃありませんか。  さっき担当される方が、これが必ずしも適当でない旨を御自分で認められて、検討の余地があるとまで言われている。もう官僚の答弁としては、あれが最高の答弁と思われるくらいまで言われ、世界企業脱税問題については、これは問題があるとおっしゃったじゃないですか。私は、だからさっきから、反発を買わないようにゆっくり議論してきました。私の論拠は、ことごとく評価されているじゃありませんか。何でこの条約を通そうとなさるのか、別の意味づけが私は必要だろうと、きょう申し上げておるのです。これ以上議論しても、またそちらが恥かくだけではなかろうかと私は思うのです、ここまで議論をしちゃったら。この条約を通さなければならぬという、もうちょっと積極的な理由がなければいけない。私はその点、非常に遺憾としているのです。ですから、私は、この問題については、別の回答をこの次に用意されることを望みます。そしてもう少し的確に議論していただきたい。議論される方がまずかったなら、もう少し責任者に来ていただいて、議論したい。  私、もう一つ議論しておきたいのです。それは私がいま非常に心配していることが一つあります。それは世界企業というのは、いま世界に進出していますが、それが相手国において内政干渉を起こすという実例が非常に多いと存じます。その内政干渉を起こす事実に対して、日本から出かけた海外子会社が本国に対して保護を求めるということは、今後起こり得ることであろうと存じます。  それはなぜかといえば、社員が内乱に巻き込まれていなくなったとか、新聞記者がいなくなったとか、すでにそういうケースがあり、そういう商社活動であるとかあるいはマスコミ活動等通して、その国に逮捕されたり拘禁されたような場合、本委員会としてもそれに対する態度を表明されたことさえあります。ところが、先発多国籍企業の本社保有国においてはこれが高じて、名前をあげるのはぐあいが悪いかもしれませんけれども、ラテンアメリカにおけるユナイテッド・フルーツ社のごとく、その政治的な影響力がラテン諸国の大きな怨嗟の的になった例もあります。  わが国政府としては、こういうような多国籍企業、まさに日本型の小型の多国籍企業を、いまや守る立場にいらっしゃるかのごとく私には見えるわけであります。それがそのとおりかどうかは、これから聞いてみなきゃわかりません。また、責任者の方に来でいただいて聞かなければわかりませんが、その場合、少なくとも現在日本が保有している多国籍企業がある以上、そういう場合に内政干渉をしないということを鮮明にするべきではなかろうかというのが私の提案なんです。これは内政干渉いたしませんという公式的な意思表示がなければ、日本企業の進出は、次に銃剣をもってするところの軍事支配につながるだろうという恐怖は、世界には絶えることがなかろうと思います。日本国憲法があるから日本は攻めないのだというだけではならないだろうと私は思うのですね。  私は一つ、提案しておきたいのですが、これは海外子会社が本国に対して保護を求めないことを保障するカルボー原則とかいうのだそうでありますが、そういう原則が国際間にはあるそうであります。そういう原則を保持する旨、私は外務大臣なりあるいは中曽根さんなりあるいは防衛庁長官なり総理なりが意思を鮮明にされるべきだと思いますが、どうでしょうか。これは一つの提案であります。  また、私は次にもう一つ提案申し上げておきたい。きょういろいろな議論をしましたけれども、もう一つは、国連の先ほどの社会経済理事会において議論されたたくさんの議論があるわけであります。その議論については、私はその原則というものをよく踏んまえた上、わが日本政府はそういう問題に対していかに考えるべきかという基本的な立場を、早く当委員会において表明されることが妥当ではないかと私は思います。これが私の第二の提案です。  委員長、この点は資料の要求もお願いしてありますから、ひとつよろしくお願いしたいんですが、これはひとつ当委員会においてそういう問題に対してどう考えるか、意思表明していただかなければならぬと思うのです。そうでないと、これだけ多国籍企業を黙認した形のわが国政府のやり方というものは、やがて国際的な問題になろうかと思うわけであります。  第三にもう一つ。いままで租税条約は二十六結んでおります。いま二つ結ぼうとしております。租税条約を二十六結んでいる中で、租税回避が発生しやすい多国籍企業に対して、三つの制約を設けてあると先ほど述べられました。私は現場の方々から、これがあまりきき目がない旨伺いましたが、これについては私の情報は正確ではありません。これらの条項租税回避を引き起こさないためのさまざまの手というものですね、条約上に盛り込まれている手というものは、いままでどういうふうに動作してきたかということを私は知りたいと思います。それはいままでの既存の二十六カ国の関係において述べていただければ十分ではないかと存じます。  したがって、これを大蔵省当局からこの次に表明をしていただきたい。資料として出してくだすってもけっこうでありますが そうしていただきたいと思うのですが、いかがでございましょうか。
  91. 甲斐秀雄

    ○甲斐説明員 そういう条約規定に基づきまして、これまでに税務の上でたとえば更正処分しました件数がどれだけというようなことは、これは統計上把握しておりませんので、一般的な税務否認の一つ事例ということでございますと、たとえば日本にある外国法人子会社が、関係姉妹会社に対する製品の販売価格を第三者に販売する価格よりも著しく低額にしますことによりまして、利益の圧縮をはかっている事例がございましたので、税務上これを否認しまして、課税所得の算定を行なったというような事例がございます。これは租税条約規定されました特殊関連企業条項と結びつくものであります。また情報交換規定に関しましては、たとえば海外からの送金につきまして、これは借入金であると納税者のほうは主張していましたものが、情報交換の結果、実は受け取り手数料でありまして、収入に計上すべきものであることが判明したというような事例などがございます。  具体的にそれがどれだけの件数でどれだけの金額かというようなことは統計上把握いたしておりませんので、どうぞ御了承願いたいと思います。
  92. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いまそういう例がないことはないということだけはわかりました。だけれども、いま私の申し上げているのは、ほとんどないと言っているのでありまして、これはおそらくはもうほんの希有なるケースではないかと思われる節が濃厚にございます。したがって、いま統計資料が出ないというお話ですから、これはやむを得ないかもしれませんが、何らかの意味でそれに対して御研究をいただいて、当委員会の審議に資するようにしていただきたい。資料としては不必要でありますが、次回に対して、この規定が有効かどうかを当委員会で審議するにあたって、審議の方向がもう少しわかるような御答弁を出していただくように、御調査、研究をお願いしたい、こう思うわけであります。よろしゅうございましょうか。
  93. 甲斐秀雄

    ○甲斐説明員 ただいま申し上げましたように、具体的な件数、金額等につきましては、後ほどと申しましても、これはわからない状況でございますので、特殊関連企業条項なり、あるいは情報交換規定なり、租税条約に盛られた規定が、海外取引に関する不正の発見に対処する私ども税務の執行の立場から、いろいろな対応策の一環としまして有効な規定であるということだけをお答え申し上げたいと思います。
  94. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いまの御答弁はきわめて不明快ですから、これはこれで終わりにするわけにはいきませんから、この次伺うことにしておきます。そして御研究をいただくということにしておきたいと思うのです。  このアイルランドとの条約の第十条、スペインとの条約の第九条では、特殊関連会社間の行為、計算の否認規定が設けられておりますけれども、こういうような特殊な関係のある企業で租税負担軽減をはかることができやすいということは、条約上認められておるわけですね。認められているということは、そういうことがあるということを認めているものであると私は思います。そうしますと、その隠れた利得を独立企業原則に基づいて所得に出せといってあとで税務当局が更正決定した実例というのは、これはきわめて希有だというのが私の認識なんです。私の問題提起はそういうことです。  だから、有効適切にこの条項が働いていない。それはなぜかというと、私は関連国内法を欠いているからだと思っているわけであり、関連国内法規の上でも問題があると指摘しておきたいのです。それはなぜかというと、このような同族間のお金のやりとりについて、外務省にしても大蔵省にしても調べに行く人がいない。予算委員会における審議の過程でわかったのですけれども、トーメンの問題を調べたときにわかったのですが、税務当局では、海外に派遣する人はほんの十数人といって悪ければ二十人くらいの人数である。しかも一つの件数を理解するのに膨大な手間がかかる。実質的にはこれに対して対策というか、そういうものがとれないのです。向こう側の当局者に対して協力を要請するということができない、情報交換のみで。しかもその情報交換は荒っぽくて実際のきき目がない。トーメンの場合はインチキ領収書があり、おそらく内部告発もあったのでしょうけれども、そうした問題があるので、たまたまつかまった。  だから、私たちが実際この問題を扱ったときに、商社から何と言われたかというと、トーメンと丸紅飯田はへたくそなんですよ、あんなことはもうわれわれの間では常識なんですよ、彼らは変な領収書なんか事新しくつくるからつかまったのですよ、もう海外へちょっとばかり離れたら税務署なんか調べに来るものですかと笑っていました。そういう話は、町においてもそこらにおいてもささやかれておることは、税務当局としても御存じだと思うのですね。つまりなめられ切っているのです。だからもう海外に出た海外法人なんというのは、利益は隠しほうだい、ふところに入れほうだい。そしていまや国税当局は当外務委員会でおごそかにこの条約を審議する。そしておごそかに、さもやっておるような議論をなさる。私はこれはよくないと思うのです。  大体商社の課長さんたちに聞いてくださればわかりますけれども、商社の課長さんたちがあざ笑っているこの海外法人の利益隠し、そうした問題、条文の上でも認められておるその問題に対して、統計がないとおっしゃった。統計がないなんというところに、取り締まりを行なったと認めることができるでしょうか。統計がとれてない。報告はないのだ。それで的確に取り締まっておると言えるでしょうか。私は町のうわさを一つ述べました。私が耳で聞いた話なんです。ただのうわさではありません。そしていまここにはこの統計がない。調べていない。そしてたった一つ、二つの例をいま述べました。これで私にこれを信用しろといっても無理じゃありませんか。  だから、私はここで憲法をまた取り出すのも恐縮ですけれども、憲法は国民の最高法規であります。そして憲法ででは、条約についてはこれを厳守すべきこと、それを明確に規定をいたしております。憲法九十八条をごらんくださればおわかりのとおりであります。そうすると、どういうことになるか、こういう条約をつくって、関係国内法規は何もしないで、そして関係の税務当局はその税務対策をサボって、実質的には大企業海外法人で利益をばかすかふところに入れるのを税務署はあたたかく見守るというしかないじゃないですか。そんな不平等、不公平なことがあるでしょうか。だから私は言っておるのです。材料がないならないでけっこう。そのかわりやっておるとは認めがたいと言っておるのです。  だから、この次には、そんなばかなことを言われないで済むように、海外法人についても的確なる監視をしておる旨、その見解を表明するか、あるいは今後の決意を披瀝するか、どちらかにしていただかなければならない。海外法人の利益隠しを突きとめるための税務署員の数は少な過ぎるじゃありませんか。何もしていないにひとしいじゃないか。トーメンはたまたま見つかったのじゃないですか。それは予算委員会で明らかになっておるじゃないですか。ところが、今度の予算委員会の審議を通したって、次に何人ふやすか出てないじゃないですか。私は、だからそういうふうに委員会の審議をやるのだったら、現在の政府としてはその問題については熱心でないといわざるを得ない。本租税条約はたいへんめんどうな条約で、だれもが関心持たないかのごとく見えますけれども、これほど穴があって、先ほどから議論するたびに穴が出てくるのでは収拾がつかない。私は、効果的な反論を一つもきょうは承らなかった。そして私は、官僚の皆さん方からむしろ私の見解とほぼ同じ見解を承った。そしてきょうの私の午後の質疑時間は大体時間となりましたから申し上げますけれども、これではいかぬですよ。ひとつ委員長、この辺御配慮いただきまして、私は特にきょうは鋭角的な議論をしたわけじゃありません。私は非常に穏やかな議論をし、問題の素材だって、あたりまえのどこにでもあるようなものを持ってきていま議論しました。特殊なすっぱ抜きも何も用意しているのじゃない。疑いはますます濃いだけです。
  95. 甲斐秀雄

    ○甲斐説明員 最近におきますわが国企業海外取引の急速な増大に伴いまして、海外取引を利用した所得の脱漏の事例はただいまのお話のようにかなり増加しているのが実情でございます。このような状況に対処しまして、私ども税務当局といたしましては海外取引を特に調査の重点項目として調査の徹底をはかることとしているわけでございます。このため貿易実務等、海外取引に関する部内研修の充実につとめますほか、国税調査官の外国出張による海外事業所等の調査や、あるいはただいま申し上げました租税条約に基づく情報交換等のもろもろの方策を講じて一そう努力してまいる覚悟でございます。  先ほどの御質問で、国別、地域別というようなことでは具体的な数字をつかんでおりませんけれども、四十五年七月から四十八年六月までの三年間で、件数にして七十八件、脱漏の所得金額にして百二十七億円を把握している状況でございます。今後とも一そう努力する覚悟でございます。
  96. 山田久就

    ○山田(久)政府委員 ただいま渡部先生からいろいろお話がございました。しかしながら、いま問題になっている租税条約というのは、すでにおわかりのように多国籍企業の規制、つまりそういうことを正面からの目的としているものではこれはないわけなんで、にもかかわらず、そういう方面の脱税防止というようなことに間接には寄与しようというそういう効果をあげておる。そういう意味では、この条約そのものはとにかく二重課税防止というそういう面を第一義の目標としておって、間接にいま言ったようなそういう効果に資している、こういうことで、これ自身いまの国際化の時代においてわれわれの経済活動というものをやっていかなければならぬ、また相手国もこの開発促進ということを考えてそれでこれを望んでおる、こういうことなんでございますから、私はりっぱにその存在の価値、必要性というものがあるという認識でいくべきだろうと思うのでございます。  多国籍企業の問題については、国連、OECDその他で目下検討中であることは先ほどいろいろ指摘したとおりでございまして、結論が出ればこれにはこれなりにひとつわれわれとしてもそういう面から協力して、必要な対策をとっていきたい、これがわれわれの立場であるということをここにひとつはっきり申し上げておきたい、こう思うわけであります。
  97. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 国税庁の担当官から、この間に脱漏七十八件、百二十七億を把握しておる旨御表示がありまして、私は意を強うしておるわけでありますが、ちょっと伺っておきますけれども、国税調査官を海外へどの程度派遣されて、どの程度こうした問題について処置をされているか、後ほど資料でけっこうでございますから御報告を仰ぎたいと存じます。  また、租税条約関係のこうした条約の中にあるような適用条項ですね、こうした問題についてもわかればお知らせをいただきたいと存じます。  といいますのは、こうした問題がいまや国民の不平感をかき立てる最大の問題になっていると私は思うからであります。また海外で進出しております日本企業の数ですね、当然調査に行かれるのですからそうした数も掌握されているだろうと思いますけれども、またその事業所等どういう程度に把握されているかもお伺いしたいと思うのです。メンタルテストみたいにいま伺うつもりは毛頭ございませんが、それに対して何人ぐらいの人数でどれぐらいの規模で扱おうとしているか、そうしたこともあわせて御回答をいただきたい。それをひとつよろしくお願いいたします。  それでは、私のきょうの持ち時間は大体この程度であると思いますので、数々の問題点が残っておりますが、一応本日はこの程度にしたいと存じます。
  98. 木村俊夫

    木村委員長 次回は、来たる二十二日金曜日、午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時七分散会