運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-03-15 第72回国会 衆議院 外務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年三月十五日(金曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 木村 俊夫君    理事 石井  一君 理事 石原慎太郎君    理事 福永 一臣君 理事 水野  清君    理事 河上 民雄君 理事 堂森 芳夫君    理事 松本 善明君       大久保武雄君    小坂善太郎君       坂本三十次君    深谷 隆司君       福田 篤泰君    石野 久男君       土井たか子君    渡部 一郎君  出席政府委員         外務政務次官  山田 久就君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省条約局外         務参事官    伊達 宗起君  委員外出席者         大蔵省主税局国         際租税課長   大竹 宏繁君         国税庁調査査察         部調査課長   甲斐 秀雄君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ————————————— 委員の異動 三月九日  辞任         補欠選任   大久保直彦君     矢野 絢也君 同日  辞任         補欠選任   矢野 絢也君     大久保直彦君 同月十一日  辞任         補欠選任   灘尾 弘吉君     加藤 紘一君   金子 満広君     不破 哲三君 同月十二日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     福永 健司君   小林 正巳君     前田 正男君   松本 善明君     金子 満広君 同日  辞任         補欠選任   福永 健司君     加藤 紘一君   前田 正男君     小林 正巳君   不破 哲三君     松本 善明君 同月十五日  理事松本善明君同月十二日委員辞任につき、そ  の補欠として松本善明君が理事に当選した。     ————————————— 三月十三日  日本国と中華人民共和国との間の貿易に関する  協定締結について承認を求めるの件(条約第  五号) 同月十四日  世界連邦樹立の決議に関する請願藤山愛一郎  君紹介)(第二四九四号)  同(岡田哲児紹介)(第二五二九号)  同(佐野憲治紹介)(第二五三〇号)  同(阪上安太郎紹介)(第二五三一号)  同(柴田健治紹介)(第二五三二号)  同(田村良平紹介)(第二五三三号)  同(湯山勇紹介)(第二五三四号)  同(勝間田清一紹介)(第二五九一号)  同(河上民雄紹介)(第二五九二号)  同(床次徳二紹介)(第二五九三号)  同(八百板正紹介)(第二六二七号)  同(八木一男紹介)(第二六六八号)  日中共同声明に基づく諸協定早期締結に関す  る請願下平正一紹介)(第二五二八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国アイルランドとの  間の条約締結について承認を求めるの件(条  約第六号)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国スペイン国との間の条約締結に  ついて承認を求めるの件(条約第七号)      ————◇—————
  2. 木村俊夫

    木村委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任についておはかりいたします。  委員辞任に伴いまして、現在理事一名が欠員となっております。これよりその補欠選任を行ないたいと存じますが、先例により委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 木村俊夫

    木村委員長 御異議なしと認めます。  それでは松本善明君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  4. 木村俊夫

    木村委員長 所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国アイルランドとの間の条約締結について承認を求めるの件、及び所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国スペイン国との間の条約締結について承認を求めるの件、以上両件を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堂森芳夫君。
  5. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいま議題となりました二重課税回避のための条約案件関連しまして、若干の質問を行ないたいと思います。  すでにこの種の租税条約は二十六カ国との間に結ばれておるのでありますが、今回アイルランド及びスペイン両国との条約の批准を国会に求めておるわけであります。この二つが批准されますと二十八の国との間に条約が結ばれる、こういうことであります。これらの一連の多数の条約というものは、大体において相手国からわが国にそのような条約を結ぼうといってきておるのか、あるいはわが国から積極的にそのような条約を結ぼうではないか、こういう意思表示で行なってきたのが多いのか、あるのは両方であるとか、いろいろあると思うのでありますが、その間の事情を概略でよろしゅうございますから御答弁を願いたい、こう思います。
  6. 山田久就

    山田(久)政府委員 お答え申し上げます。  御承知のように、昨今世界が狭くなってきたと申しまするか、国際的な人的あるいは経済的な交流、これが非常に大きくなってまいりましたし、それに伴っていろいろな情勢に対処する必要が起こってきているような次第でございます。したがって、この租税条約がこういう情勢に備えて、どうしてもそういうことになってきまするというと課税の重複というようなことをできるだけ防止する、あるいはまた起こったようなときにこれの救済手段を講ずるというようなことで、したがって、国際的な経済交流関係円滑化ということをはかるという必要がある。一方において、御承知のような南北問題というものが生じておりまして、そういう意味後進国に対する経済援助ということを円滑にするというような考慮というものもありますし、また人的な意味でのいろいろな技術的な指導者先生留学生、こういう者の交流関係を容易にするという意味での免税措置というような、そういうことをやるのがこの情勢で必要だということで、これが生まれているわけでございます。  したがって、これは大体双方にいろいろそういう必要があって申し出ているわけでございますけれども日本の場合においては、大体どちらかというと、先方からのこういうものをつくろうじゃないかという要求にこたえている場合のほうが多うございます。今度の二つ案件については、アイルランドについては先方、それからスペインのほうでは日本がいろいろ投資企業進出というようなことがございまするので、したがってこちらのほうから相談を持ちかけた、こういうような事情になっております。
  7. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいま山田政務次官から、これらの二十六の国、さらに今回の二国との条約を結んでいくということは、わが国にとっても、また相手国にとっても、そうしたいろいろな意味での経済交流人的交流その他に貢献するところがあるからこういう条約を結ぶのだ、こういう答弁であったと思うのであります。  そこで、日本アイルランド日本スペインとの経済関係はそう多くはないと思うのでありますが、どれぐらいの経済関係があるのか、最近の調査数字等を示してもらいたい、こう思います。
  8. 大和田渉

    大和田政府委員 御答弁申し上げます。  まず、日本アイルランドとの経済関係でございますが、貿易関係で申し上げますと、一九七三年で日本輸出が三千二百八十七万九千ドル、日本輸入が二千五百七十七万ドルでございます。それから企業進出の点で申し上げますと、日本からの企業進出は、アイルランドの場合、件数で六件、金額にいたしまして約七十八万四千ドルでございます。そのほか船舶航空機往来という問題については現在のところございません。なお、アイルランドから日本への企業進出というものはいまのところ見られておりません。それから国費留学生受け入れという問題につきましては、一九七三年、日本政府国費留学生が一名、アイルランドからの者は戦後合計で四名でございまして、非常に少のうございます。  それから、日本スペインとの関係を申し上げますると、貿易関係で七三年、日本輸出が二億二千四百二十一万九千ドル、それから日本の対スペイン輸入が九千百六万四千ドル。それから企業進出の面で申し上げますと、スペインから日本への進出はございませんけれども日本からの進出が、件数にいたしまして二十三件、金額にいたしまして一千六十五万ドルでございます。それから船舶航空機往来につきましては、先方から日本へのものはございませんけれども日本から航空機が一便、船舶が十二船という数字が出ております。それから国費留学生受け入れの点で申し上げますると、日本政府からの国費留学生が七三年度一名、スペインからの国費留学生が十名。戦後の累計をとりますると、日本政府からの国費留学生が十一名、スペイン政府からの国費留学生が百六名という数字が出ております。  いま先生指摘のように、それほどにまだ多くないということはいえると思いますが、投資の面につきましても、投資環境、あるいはスペインアイルランドいずれもヨーロッパ全体に大きなマーケットを持っているという点から見まして、今後を期待されるということは申し上げられると思います。  以上でございます。
  9. 堂森芳夫

    堂森委員 この際でありますので、もう少し詳しくお尋ねしておきたい、こう思うのです。  そこで、アイルランドにしましてもスペインにいたしましても、輸出輸入を、総額としては大きな額でないにしても、はるかに大きく上回っていると思うのでありますが、この貿易の内容、それから企業進出が向こうからはない、こちらからはある、開発途上国といえるでありましょうが、どういうような企業が行っておるのか、詳しくでなくてもけっこうですが、答弁をしてもらいたい、こう思います。
  10. 大和田渉

    大和田政府委員 まず、企業進出状況を申し上げますると、アイルランドの場合に、社名で申し上げますると、森永乳業、三井物産及びソリアモント・デベロップメント、この三つの合弁会社、ブラザー工業、 フィガロ技研、トヨタ自動車、日産自動車、三井金属、日魯漁業、旭化成、日本軽食品、こういうようなものが日本から出ております。  それからスペインへの企業進出、これは商社の現地法人設立投資をも含んでおりますが、二十三件と先ほど申し上げましたけれども社名を申し上げますると、丸紅が三件、三洋電機貿易が二件、それからビーユー、日商岩井、日新製鋼、花王石鹸三井物産日本水産、ソニー、東京銀行、大洋漁業富土通松下電器産業等の社でございます。  それから貿易の点は、御説のとおり、たとえばスペインの例をとりますと、かなり日本出超になっております。スペイン全体といたしましても、貿易面ではかなりの入超という形をとっておりますが、スペインの場合、海外送金及び観光収入というもので収支大体相償って、むしろ若干の黒字を出しているという状況でございます。  それから日本アイルランドとの貿易につきましても、やはり先ほど申し上げました数字のように、日本出超になっておりまするけれどもアイルランド自身は非常に積極的に外国からの投資を求めているという状況でございまして、時間がたつにつれて日本投資もふえるでございましょうし、それによって貿易じりが赤字であっても、必ずしもアイルランド側はそれを気にしていないという感じに受け取っております。
  11. 堂森芳夫

    堂森委員 まあ両方の国ともかなり大幅出超になっておるということでございます。  そこで、この種の租税条約で二十六結び、今回二国と結ぶと二十八になるということでございますが、租税条約締結によりまして、海外直接投資などの環境整備につとめることは、わが国にとっても、国際的な資本交流促進ということからいたしましても必要であろう、こう私も思うのであります。しかし民間の直接投資促進面から見ますると、多国籍企業が非常な巨大化、マンモス化していく、その結果、世界経済を撹乱するような、そういう混乱を来たすような情勢が生まれてきておることも事実ではないだろうか、こう思うのであります。  こういう国際経済を撹乱するような要因が発生することは、これはまた世界各国が友好的に国際関係を結んでいく上においてやはり好ましいことではないということがいえると思うのでありますが、私は条約を読んでおって、何かこのような状況をコントロールしていくための、そういう国際経済を撹乱するような要因をチェックしていくような規定租税条約に導入していくということは無理なんだろうか、そういうことをすべきではないだろうかというふうに考えておるのでありますが、大蔵当局としては、そういうような状況に対して、今日また今後どのような態度で臨んでいこうとしておられるのか、答弁を願いたいと思います。
  12. 大竹宏繁

    大竹説明員 多国籍企業活動世界経済の撹乱的な要因になっているのではないか、この面の租税条約規定はどうであるかという御趣旨の御質問かと思うわけでございますけれども、御承知のように、租税条約の本来の目的と申しますのは、二国間の二重課税排除ということが目的でございます。  ただ、その条約の中に、多国籍企業活動関係のある条文が若干入っておるわけでございます。具体的な規定を申し上げますと、この規定の中に特殊関連企業条項というものがございます。これは、たとえばアイルランド条約で申し上げますと、十条にその規定が入っておるわけでございます。この趣旨は、企業が、親子間あるいは系列企業といったような特殊な関連を有しておる場合に、その企業の間で独立した企業の間にはないような特殊な支配関係が生じまして、その結果、取引におきまして、たとえば価格を操作するというような手段を使いまして、所得を恣意的に二国間に配分をするというようなことが起こってまいります。このような事態に対処するために、この規定を設けまして、そういうような場合には互いに関連のない独立した企業が市場において公正妥当な取引条件取引をしたならば得たであろうと見られる所得課税所得とするという趣旨規定でございます。  それから、やはり同様な趣旨利子及び使用料に関する規定の中に織り込まれておりまして、公正妥当な利子あるいは使用料の額をこえると見られる支払いにつきましては、条約で定める軽減税率を適用しないというような規定を設けております。それからまた、これもスペイン条約アイルランド条約両方に入っておるわけでございますが、情報交換という規定がございます。これは双方の国がこの条約を実施してまいります間に、いろいろ課税にあたりまして、相手国当局情報を求めなければ適正な課税ができないというようなことがございまして、その場合には必要な情報を交換できるという規定が入っております。したがいまして、二国間にまたがりまして多国籍企業が恣意的な取引条件を設けまして、所得を不当に増加あるいは減少させるというような事態が生じました場合には、租税条約においてこのような規定を活用いたしまして、これに対処することができるというふうに私どもは考えておる次第でございます。
  13. 堂森芳夫

    堂森委員 私、ただいまの答弁でありますが、そういうような多国籍企業というものの大きな進出によって、国際経済の撹乱というものがくるのを租税条約そのものでコントロールしていくということは、元来無理なのじゃないだろうか、こうも思うのであります。  どうしてもそれぞれの国としては、そのような何らかの措置を持っていなければならぬと思いますが、わが国大蔵当局政府としては、そうした多国籍企業というものに対する好ましからざる状況が生まれてこないように、どういうような措置をとっておるのか、これからもとっていこうとしておるのか、これもあわせて答弁を願いたいと、こう思います。
  14. 大竹宏繁

    大竹説明員 仰せのように、租税条約というものは、本来が二国間にわたります二重課税排除というものを目的として考えられておるものでございます。したがいまして、多国籍企業のような場合に、その活動が単に二国間にとどまらず、何カ国にもわたって活動が行なわれておるという場合には、二国間の租税条約をそのままの形で適用できないという事情は確かにあるわけでございます。多国籍企業全般につきましての政府対策考え方というものは、まあ私のほうから申し上げるのはちょっと差し控えさせていただきたいと思いますけれども租税だけに限ってお答えを申し上げさせていただきますれば、一つの考え方といたしましては、できるだけ租税条約網を広く張りめぐらすことによりまして、そのような多国籍企業の多国間にまたがる活動に対処するという考え方が一つあろうかと思います。  それから現在、御承知のように、国際連合あるいはOECDの場におきまして、多国籍企業活動あり方、これに対します政府の対処のしかたといったようなものにつきまして議論が開始されておるところでございます。したがいまして、このような議論の方向を見定めまして、国際的な協調のもとに対処していく、その場合には必要な措置を、政府として新しい措置をとるというようなこともあるいはあろうかと思います。現在のところ、まだそういった国際的な討議の場で具体的な線が出ておりません。したがいまして、その条約以外の面でどうであるかということを申し上げますると、国内におきまして、税制の面で多国籍企業の不当な租税回避というものに対処する方策があるかということでございますが、これにつきましては、国内税法上に若干の規定がございます。  たとえば法人税法の第十一条の規定でございますが、これは実質所得者課税原則というふうに呼ばれておるわけでございますけれども収益の帰属すると見られる者が単に名義人にすぎない場合があって、その収益の実質的な帰属者が別にあるというような場合には、その実質的な収益を享受しておる者に着目しまして、その法人法人税課税するという規定でございます。これは、そのような多国籍企業名義を別に設けて、別の会社をつくって架空の取引をするといったようなときに規定が適用になるかと思うわけでございます。  それから、やはり法人税法の二十二条の四項というところに、事業年度所得金額計算原則が掲げられておりまして、法人の益金及び損金の額は、公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されなければならない、恣意的な原則を設けることを排除するという趣旨でございます。  それから、法人税法の百三十二条には、同族会社等行為または計算の否認の規定もございまして、同族会社等にかかる法人税の更正あるいは決定をする場合には、その行為または計算を容認した場合に、法人税の負担を不当に減少させることとなるという場合には、その行為計算を否認いたしまして、適正と認められる課税標準計算するという規定でございます。  それから、ただいまの規定内国法人及び外国法人両方に適用される規定でございますけれども外国法人だけに限って申し上げますると、これは法人税法の中に外国人課税標準規定等がございまして、詳細にその所得計算課税の態様を規定しておるところでございます。  このように、多国籍企業と申しましても、結局は帰するところ、その取引は二国間の取引に終局的には分解されるわけでございます。したがいまして、条約を適用すべき場面におきましては、その二国間の条約を適用する、それがわが国とある国との関係におきまして、国内法処理ができるという場合には国内法処理をするというような体制で現在のところ臨んでおるわけでございます。
  15. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、いま国際租税課長からのいろいろな答弁がありましたけれども、私の聞いておることは少しく意味が違うと思うのであります、せっかく答弁を願ったけれども。この多国籍企業というものが各国に大きくどんどん根を張ってきておる、これは国際的な経済交流、したがって、経済交流ということは大きく言って国と国とのよい関係がどんどん推進していくという面もあるが、多国籍企業というものがだんだん大きくなっていくことによって、また逆の面も出てくるのではないか。  そこで外務省経済局長に、その点どういう方針で——おのずとやはり常識的なよい関係、よい秩序の多国籍企業発展がそれぞれの国になくては、国際的なよい関係は生まれてこないと思うのでありますが、そういうことに対して政府は、これはもちろん大蔵当局外務当局とがいろいろ御相談になり、あるいはまた通産当局とも関係があると思うのでありますが、どういう方針で多国籍企業というものに対処しておるが、こういうことをお尋ねしておったのです。税制の上からは、なかなかこれはむずかしいことではなかろうかと思います。
  16. 宮崎弘道

    宮崎(弘)政府委員 御指摘のとおり、多国籍企業規模建たとえば投資残高におきましても、あるいは実際上の生産高におきましても、非常にふえてまいっているわけでございます。そこでその結果、各国国際貿易国際収支にもいろいろ影響を与えますし、生産雇用あるいはその他各国経済面にも影響を与える度合いがふえてきておると思います。  ところが、現在までの多国籍企業に関します関係条約は、御承知のとおり、たとえば日米をはじめといたします日本各国との間に結びました通商航海条約で、事業活動の問題とかその他につきまして、最恵国待遇あるいは内国民待遇等を与えておる、こういうような二国間の取りきめのネットワークがあるわけでございます。それからまた、OECDにおきましては資本自由化行動と称されるものがございまして、直接投資は対外も対内も原則として自由だということになっておるわけでございます。  そこで、このような状況下で、いま申し上げましたように、多国籍企業活動が非常に伸びてまいりますと、新しい問題がいろいろ生じておるということでございまして、先生指摘のように、一方におきましては多国籍企業活動が活発化しました結果、たとえば資本なり、労働力なり、技術なり、そういったようないろいろな生産資源世界的な規模におきます合理的使用というようなこともできるようになりましたし、世界経済あるいは国際経済全体としての生産を高めるというようなプラスの面もございまして、その活動自体を全く否定し去ることはできませんし、かつ世界経済の中にすでに織り込まれておる状況でございますので、そういう面も考えなくちゃいけないと同時に、他方におきまして、多国籍企業が、かりに国家のワクを越えまして、その国の諸政策や国際社会全体の利益に反するような行動をとれば、これまた非常にぐあいの悪いことでございます。  そこでいまは国際社会全体の経済的な発展につながらせるように持っていかなくちゃいけないと同時に、その多国籍企業各国国民経済に対します種々の摩擦を生じないように持っていかなくちゃいけないという調和をどこにはかるかいうことが問題になっておりまして、この問題を非常に突っ込んでやろうではないかという国際的な世論が起きてまいりまして、たとえばOECD、これは主として先進国同士の間の多国籍企業のいろいろな影響を検討しておるわけでございますけれども、 ○CEDでも突っ込んだ検討を始めようという機運が出てまいりましたし、あるいは国連ないしその傘下の国際機関でも、まず実情把握、それに対する対策も徐々に検討していこうという声が出ております。さらに民間におきましても、国際商業会議所というようなものがございまして、ここでも多国籍企業あり方について議論が始まっておるわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、他方におきまして、先ほど申し上げましたように、国際的な条約取りきめの現在の状況をよく踏まえると同時に、他方におきまして、このような国際的な場におきまして、どういう秩序が一番望ましいかということを十分検討いたしまして、これと同時に、先ほども大蔵省のほうから答弁がありましたが、国内租税政策なりその他の政策で、国内でできることはまたやっていくというように、内外あわせまして、この問題は非常に大きな複雑な問題でございますので、対処していきたいというふうに考えております。ですから、とりあえず多国籍企業の問題につきましては、OECD議論に参加いたしまして、他方国連その他におきますいわゆる開発途上国の意見も勘案しながら、新しい秩序づくりに積極的に参加してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  17. 堂森芳夫

    堂森委員 いま答弁がありましたが、このような多国籍の企業に対する対策というものは、たとえばわが国にとりましても、わが国の産業全体にも大きな影響がある場合もあるし、またそういうことが世界的なよい国際環境をつくっていく上においても果たす役割りも大きいのでございまして、この多国籍企業に対するいろいろな複雑な問題があると私は思うのでありますが、いまも経済局長は、OECDの機関の中に入って、そうして世界的な正常な望ましい秩序をつくるような方向で努力していくのだ、こういう話でありますが、それはそのとおりだと思うのであります。  時間がありませんから先に進みたいと思いますが、わが国は、一九六四年四月でありますか、OECDに加盟したのでありますが、ただいま審議しておりますこれらのアイルランドスペインとの間の租税条約も、基本的にはOECDのモデル条約に即して租税条約各国締結してきておるのであろうと思うのでありますが、OECDのモデル条約各国租税条約締結にどのような影響を及ぼしてきておるのか、このモデル条約を金科玉条のような基本として各国が結んでおる状況であるのか、必ずしもそうでないのか、この点も承っておきたいとこう思います。
  18. 山田久就

    山田(久)政府委員 このモデル条約は、御承知のように、世界の専門家が七年間かかって練りに練ったものでございまするので、われわれは相当の信頼と権威をもって、これをいろいろ複雑な中において一つのモデルとしてやっていこう、この基本方針でやっていこうというのがわが国の政策でございます。しかしながら、一方においてこれができる過程においてはやはりいろいろな意見もあって、最大公約数的なものもありますし、またそれぞれの国の特殊事情ではそれを一がいにやっていけないという部面もございまするから、そういう面はそういう点を十分勘案し、そして取り入れてやっていくということでやっておるような次第でございます。  なお、いまの御質問ではございませんけれども、先ほどの問題に関連して、実は多国籍企業の問題ですが、もう御承知かと思いまするけれども、一九七二年、五十三回の国連の経済社会理事会で、多国籍企業というものの持ついろいろな昨今の影響、インプリケーション、特に後進地域に対するいろいろな影響、これはラテンアメリカあたりではやはり心配して、これを制限したらどうかというような意見も出ているものですから、これについて多国籍企業というものの今後のあり方というようなものについて十分検討していった上、各国がとる政策についての必要な勧告、そういうものをひとつやってほしいということで、専門家グループをつくって、それによってことしの七月に答申が出ることになっていますので、そういう点をやはり勘案して、ひとつ全般的な問題も考えていこうという政府の考えであるということも、ちょっと加えておきたいと思います。
  19. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいま山田政務次官からの御答弁の中にありますように、このOECDのモデル条約は、七年間かかって粒々辛苦してつくったモデル条約である、そうしてこれが世界各国租税条約のモデルになっておる、こういうことでありますが、最近になって、このOECDの財政委員会で、このモデル条約に関し、再検討しなければいかぬ、七年かかってつくったものではあるが、いろいろと再検討して、そしてこれをやりかえなければいかぬというふうにいわれて、これが実際にすでに討議に入っておる、こういうふうに言われておるのでありますが、この点について実情はどうなのか、そして再検討されなければならぬというのにはやはりいろいろと理由があるわけでありまして、モデル条約のどういう点が、いろいろな意味で問題にされなければいかぬのか、再検討されなければいかぬのか、この点について御答弁を願いたいと思います。
  20. 大竹宏繁

    大竹説明員 OECDのモデル条約は六三年に公表され、各国に勧告されておるわけでございますが、その後一九六七年に至りまして、財政委員会でこのモデル条約の再検討を開始するということが決定されております。その後作業を継続いたしまして、現在も引き続き改定作業を行なっております。モデルは全部で三十条ございますが、現在までに一応改定作業を終わったのは二十条でございます。  なぜこのような改定を行なう必要があったかということでございますが、これは二つぐらいの理由があろうかと思うわけでございます。  一つは、モデル条約を適用していきます過程におきまして、いろいろ解釈につきましてあいまいな点、あるいは意見が分かれる点というようなものがあるわけでございますが、その辺をはっきりさせようということがあろうかと思います。  それからもう一つは、租税条約はやはり現実の経済の実態を反映して、それに適切な対策を講ずる必要があるわけでございますので、その基礎になっております経済取引が国際的な変化によりまして変わっていった場合には、その経済的な実体の変化に即応する規定の改変をする必要があるわけでございます。そのような趣旨から改定が行われておるわけでございます。  その辺を具体的にちょっと申し上げますると、たとえばどういうところが変わったかということでございます。このモデルの中に、国際運輸業所得の相互免除の規定がございますが、この船舶航空機の運航による国際運輸業所得の相互免除という規定は、従来、共同計算とか共同経営、あるいは国際経営共同体といったような国際的な提携関係をもって行なわれるところの国際運輸業には、適用がはっきり書いてなかったわけでございますが、それがその後、そういう実態がふえてまいりますにつれまして、そういうものにも適用になるというような趣旨で改定を行なっております。  それから解釈、表現等につきましての改定はいろいろな条項に見られておりまして、それは条文自体を改定する、あるいはこのモデル条約に付属しておりますところのコメンタリーを改定するというような形で改定を行なっておるわけでございます。まだこの改定作業は引き続き継続されておりまして、大体来年一ぱいぐらいをめどとして完成をしたい、こういうようなことで現在作業を行なっておるところでございます。
  21. 堂森芳夫

    堂森委員 それでOECDのモデル条約の再検討は、いろいろなあなたがおっしゃるような意味で必要である、私の聞いておるところでは、一条一条これをまた読み直して、検討して、そしてもっとわかりやすいような、解釈がむずかしくていろいろな解釈ができるような条約でなしに、もっと一目りょう然といいますか、何かもっとわかりやすいような条約にしていこう、こういう意味もあるのではないかと思うのであります。  そこで、さっき山田政務次官から御答弁の中に言われました、国連経済社会理事会で多国籍企業についての論議がいろいろ行なわれておる、そしていずれ答申が出るだろうと、こういう答弁をしておられますが、この国連経済社会理事会で租税条約の面が取り上げられて、そしてこれについてどういう方向に持っていくか、まあ私は開発途上国に対するあり方等が一番大きな問題になるのではないかと思うのでありますが、租税条約について、国連の経済社会理事会でどのような問題点が取り上げられておるとか、どういう方向になっていきそうなのか、この点御答弁を願いたい、こう思います。
  22. 山田久就

    山田(久)政府委員 その詳しい内容はまだつまびらかにいたしておりません。いま二回ぐらいですかにわたってそれを検討しておりまして、今後いろいろな面に触れての勧告が出てくるかと思っております。
  23. 大竹宏繁

    大竹説明員 国連の経済社会理事会におきまして、一九六九年からすでに五回にわたりまして、先進国と発展途上国の間の租税条約のガイドラインをつくろうという会議が行なわれております。この会議経済社会理事会の決議といたしまして、国連事務総長にそのような専門家の会合を設けるようにという決議があったわけでございます。  なぜこのような先後進国間の租税条約のガイドラインが必要かと申しますと、現在の租税条約のモデルになっておりますOECDのモデル条約は、先進国間の経済の実体を反映した租税条約のモデルでございます。したがいまして、先進国と発展途上国の間の経済関係というものに着目して租税条約をつくるとすると、かなり違った面が必要になるわけでございます。したがいまして、そのような検討をするようにということでございます。それでそういった勧告の基礎になっております考え方といたしましては、租税条約というものは、開発途上国にとりまして、資金それから人の交流を活発にすることによって開発途上国経済発展に役立つものである、したがって先進国と開発途上国租税条約締結を促進すべきであるという判断がございまして、このような会議が持たれておるわけでございます。  現在まで五回にわたりましてこの会議が行なわれたわけでございますが、出席しておりますのは先進国からと後進国からと双方租税の専門家でございまして、扱われております議題も、大体租税条約全般に関係する規定がほぼ網羅的に扱われておるわけでございますが、現在までのところ、意見の一致したものもございますし、あるいは先後進国間の意見がなかなか一致しなくて、ガイドラインという形にまではまとめきれないというようなものもございます。これはいまのところ一応このような会議が成果を上げておるというようなことで、国連としましても今後も継続して会議を続けるようにということでございますので、また明年この会議が持たれるという予定になっております。
  24. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、国連の経済社会理事会では、先進国対発展途上国との関係において租税条約のあるべき姿をいま追求して会議を続けておる、こういうことと解釈していいわけですね。  そこで、この条約の内容について少し聞いておきたいのですが、スペインアイルランド、いま議題となっておるこの二つの国との租税条約では内国民待遇の条項を設けておるのでありますが、今まで結ばれた条約の中で、オーストラリアあるいはニュージーランドと結んだ租税条約にはその内国民待遇の条項がないわけです。調べてみるとないわけです。課税上の取り扱いに関してはいろいろとこまかい規定がなければならぬのでありますが、内国民待遇条項の規定のある条約と、ない条約、こういうふうになっておるのは、あることと、ないこととどのような差があるのでありますか、大蔵当局答弁も聞いておきたいと、こう思います。
  25. 大竹宏繁

    大竹説明員 御指摘のように、ニュージーランド及びオーストラリアとの条約におきましては、内国民待遇規定を含みますところの無差別取り扱いに関する条項というものが入っておりません。  ニュージーランドからまず申し上げますと、ニュージーランドとの交渉におきましては、これはこのOECDモデルを日本が適用する以前の条約でございまして、OECDモデルに入っておりますところの内国民待遇の規定が欠いたままで交渉を始めました。したがいまして、日本がモデル条約を適用していく前の条約ということで、これを欠いておるということでございます。  それからオーストラリアでございますけれども、オーストラリアにおきましては、その国内法におきまして、配当について内国法人はリベートを支払うというような法制がございましたために、内国民待遇の条項を厳密に解釈いたしますると、このリベートを支払うというような法制が、内国民待遇条項に違反するおそれがあるというようなことがございましたものですから、それを落とす。それからまたもう一つには、オーストラリアとニュージーランドというものは非常に近い関係にあるということがございまして、ニュージーランドで入ってないのだからということで、それも落ちたという経緯もあるようでございます。  したがって、現在、条約の中で二つ条約が内国民待遇の規定が入ってないわけでございますけれども、内国民待遇というものは、国籍あるいは資本の系統等によって差別的な課税を行なわないというような趣旨でございまして、もしそのような課税が行なわれた場合に、内国民待遇がございますると、それを根拠に異議を申し立てることができるというような実体的な差はあるわけでございます。  しかし、いずれの国をとってみましても、税制におきまして課税の基準となるものは、国籍とか、資本系統といったものを基準としているわけではございませんで、そういった基準とは別の、居住者であるか非居住者であるか、あるいは内国法人であるか外国法人であるかというような基準を採用いたしまして課税関係を決定しておるというようなのが通例でございます。したがいまして現在のところこのような規定は一応留意規定といいますか、精神規定といいますか、そういう訓示的な規定にとどまっておるということでございますので、この二つ条約にそういう規定がないということによって、実体的な不都合というものは生じておらないわけでございます。
  26. 堂森芳夫

    堂森委員 あなたの答弁によりますと、内国民規定というものがオーストラリアあるいはニュージーランドとの条約にはない。しかし他の国との条約には内国民待遇の条項がある。しかしそれはなくてもさしたる障害といいますか、そういうものはなしにきておるというのですが、そういうトラブルが実際には全然なかったのですか、あったのですか。
  27. 大竹宏繁

    大竹説明員 ございません。
  28. 堂森芳夫

    堂森委員 ないということですね。それではそれでけっこうです。  それから、最近締結されてきておる開発途上国との租税条約におきましては、国際間における二重課税回避ということ以外に、いわゆるみなし外国税額の控除、こういうことが租税条約に入ってきて、そしてこれが開発途上国経済発展に大きく貢献してきておる、こういわれておるのでありますが、この税制による経済開発誘導政策というので、開発途上国に具体的にどのような大きな経済発展の協力効果が出てきておるのか、この点も答弁を願いたいと思います。
  29. 大竹宏繁

    大竹説明員 スペインとの条約におきましても、アイルランドとの条約におきましても、ただいま御指摘のようなみなし外国税額控除という規定が入っておるわけでございます。このような開発途上国との間のみなし外国税額控除の制度というものの設けられております趣旨でございますけれども、一般に開発途上国は、国内外国からの投資を促進させるという見地から、一定の要件に合致する企業に対しましては、一定期間租税を減免するというような税制上の優遇措置を講じておるという例が多いわけでございます。先進国の企業は、このような優遇措置の利益を受けることができるわけでございますけれども、その先進国の企業の本国におきまして、その企業の全世界所得課税をしておって、その全世界所得課税から生じますところの二重課税については、外国税額控除制度をとっておるというような場合におきましては、このような開発途上国における税の減免措置によりますところの減免額、減免になった部分でございますが、減免分は結局は外国税額控除が減るというような形を通じまして、その本国の税収が増加するというだけの結果に終わってしまうということがあるわけでございます。  もしそういうことになりますと、開発途上国側といたしましては、せっかく減免措置を講じたにもかかわらず、その効果は先進国の税収を増大させるだけに終わってしまうという結果になって、その効果が失われてしまうわけでございます。したがいまして、こういった問題を回避しまして、開発途上国側の税の減免措置の効果を先進国に対しても保全するという趣旨から、みなし税額控除という規定が入っておるわけでございます。すなわち、先進国側はこれらの減免措置がなかったならば企業が納めたであろう税額を実際に納めたものとみなしまして、それを税額控除をするという仕組みでございます。したがってこのような税額控除があることによって、開発途上国側は投資の促進の効果というものを税制上確保したことになるわけでございます。  租税条約を先進国と開発途上国が結ぶ際に、開発途上国側はこの規定を置くように要求する場合がしばしばございまして、わが国といたしましては、この条約全体の規定あるいはこの減免措置の制度の趣旨等を十分に検討いたしまして、これを認めておる場合が多いわけでございます。租税条約本来の目的は二重課税排除という趣旨でございまして、経済協力、経済援助というものを正面から目的としたものではございませんけれども、こういった制度を通じまして、税制の面におきましても開発途上国側に協力をしておるということはいえるかと思います。
  30. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいまのあなたの答弁で、開発途上国との条約の交渉の過程で、みなし外国税額の控除ということは、開発途上国から要求がある場合もあるしというような答弁であったと思います。私はやはり開発途上国はいずれの国もそういうみなし外国税額の控除ということを要求してくる、そのほうが開発途上国にとっては大きく経済発展のために効果があるので、そういうことを要求するから、わが国もそうするのだ、こういうふうにあるべきだと思うのですが、あなたの答弁では、そういう要求をする国もあるが、全部はそうでもないのだというふうに私は聞いたのですが、それは間違いですか。
  31. 大竹宏繁

    大竹説明員 私の説明で不足の点があったかと思いまして、その点をおわび申し上げますけれども、その優遇措置を認めるか認めないかということは、まず第一に相手国にそういった租税の減免制度というものがなければならないわけでございます。したがいまして、そういう減免措置があり、かつその減免措置についてみなし外国税額控除制度を認めてほしいという要求があればという趣旨でございましたので、ちょっと補足させていただきます。  したがいまして、そういう制度を持っております国は、大体例外なく要求するという態度をとっておりますので、現在わが国が結んでおります条約は、後進国との間では大部分みなし税額控除制度を設けております。
  32. 堂森芳夫

    堂森委員 そこで私、お尋ねしてみたいのですが、わが国は韓国、タイ、マレーシアなどと租税条約を結んでおるわけでありますが、先般田中総理が東南アジアを訪問された。そのときにまことに不幸な事態がインドネシアとか、あるいはタイだとか、いろいろなところで起きたということをわれわれは見ておりまして、わが国とこれらの東南アジアの国との間に何か摩擦がなければああいうことにならぬのでありますが、租税条約そのものにおいては、これらの国との間に何か不満あるいはトラブル等があったことがあるのかないのか、この点についても答弁を願いたいと思います。
  33. 大竹宏繁

    大竹説明員 租税条約締結いたしました後におきましても、具体的な課税におきまして、この租税条約規定をどういうふうに適用するかというようなことをめぐりまして、わが国相手国との間に見解の相違があるというような例は、過去にもあるわけでございます。しかし、その租税条約規定で、権限ある当局の間の相互協議というルートを使いまして、そのような解釈の相違あるいは紛争につきましては解決を見ておるわけでございます。租税条約があるからこういう紛争が起こるということではむしろないのでございまして、租税条約は紛争が起こったときにそういう適切なチャンネルを提供しておるということにおいて意義があるわけでございまして、今回田中総理の東南アジアの訪問に伴いまして、租税上の摩擦が起こっておるというようなことはございません。租税条約がない場合のほうが、紛争が生じた場合には解決の道というものがなかなか相互に確立されておらないということがございまして、紛争の処理にむしろ困難を感ずるという事情がございまして、租税条約締結はこのような紛争が生じた場合にはむしろ非常に役に立っておるというのが実態でございます。
  34. 堂森芳夫

    堂森委員 私も田中総理の東南アジアの訪問の際に起きた摩擦といいますか、そういう事態が、租税条約の不備等からきたということを言っておるわけではないのですが、租税条約関連して、今度のアイルランドとの条約二十七条、スペインとの間の条約では二十五条に不服申し立て及び両国の当局間の協議に関する規定があるわけですが、そういうような紛争というものを、いままでに二十六の国と租税条約を結んできておって、この不服があって申し立てられて、両国で協議をしたという事例はないのでありますか、あるいはかなりあるものですか、その点について答弁を願っておきたいと思います。
  35. 大竹宏繁

    大竹説明員 この条約に定められております協議の態様というものはいろいろな形がございまして、一番簡単なのはお互いに手紙を出し合いまして、こういう点をどう考えるかというようなことで処理をしてしまうといったようなこともございます。それから、それだけでは済まなくて現地に行ったり、あるいは向こうからこちらに来たりというような形でいろいろ話し合いまして、解釈を明らかにしたり紛争を解決したりするということはございます。このようないろいろな形を含めまして、広い意味の相互協議でございますけれども、そういうことはかなりひんぱんに行なわれております。  各国とも税制がそれぞれに異なっておりますので、課税を受けて、それが条約に適合するかどうかということについては必ずしもはっきりしないというケースがあるわけでございますので、今後ともこのような規定を十分活用いたしまして、そのような紛争が生じた場合には適切に処理をしてまいりたい、こう存じております。
  36. 堂森芳夫

    堂森委員 そこで、わが国といろいろな開発途上国との間の租税条約については概略わかってきたのですが、今度は世界の他の先進国と開発途上国との間に結ばれておる租税条約は、どのような姿で南北問題に寄与するような条約を結んでおるのか。これはわが国開発途上国との間に結んでおる条約と大体同じようなものであるのか、何か違ったような形の条約が結ばれておるのか、具体的に御答弁を願いたいと思います。
  37. 大竹宏繁

    大竹説明員 開発途上国が先進国との間で租税条約締結する場合に要求いたします、その一般的な要求は何であるかということでございますが、先進国と開発途上国との間の経済の流れというものが一方的であるために、租税条約締結することによって源泉地での課税権が幾分なりとも制限をされるということがございます。そこでそのような制限をできるだけ後進国側に有利に、すなわちあまり制限しないで、後進国課税権をできるだけ広く残しておきたいという希望がございます。それから先ほどのみなし外国税額控除を認めてほしいというような要求が一般的でございます。  そこで、これはわが国のみならず、各先進国ともこのような源泉地におきます、具体的には後進国側の課税権をできるだけ広く見ていこうという態度をとっておるわけでございまして、具体的には恒久的施設の範囲であるとか、事業所得課税の方法であるとか、あるいは船舶課税といったようなことを通じて、そういう要求に応じておるわけでございます。  それからもう一つ、人的な交流を促進するという見地から、開発途上国との間では学生あるいは修習生といったものに対する課税を優遇しておるというようなケースもございます。これはわが国のみならずやはり他の先進国においても認められておるところでございます。それからいわゆるみなし外国税額控除でございますけれども、これも認めておる先進国がかなり多うございまして、投資所得につきまして主としてこれを認めておるということでございます。投資所得について主として認めておるという意味は、わが国の場合は法人税の減免につきましても認めておるわけでございますが、他の先進国におきましてはそこまでいかないで、投資所得についてだけ認めておるというようなケースが多いのでございます。
  38. 堂森芳夫

    堂森委員 そのような状況であるようでありますが、さらに進んで二、三聞いてみたいと思います。  共産圏の諸国から、自分の国の文化紹介という目的わが国を訪問してくる国立の芸能団体が非常に多くなっておりますが、これら団体に対する税法上の取り扱いはどのようにされるのですか、御答弁を願いたいと思います。
  39. 大竹宏繁

    大竹説明員 一般的に外国のある団体につきまして所得税、法人税を非課税にするということにつきまして要件がございます。それは所得税法の中の別表第一の二というようなところ、あるいは法人税法におきましては別表の第二の二というところで規定がされておるわけでございまして、日本の公益法人に準ずる業務を行なうものでなければならないという規定でございます。したがって、外国の国立の芸能団体といったようなものは、わが国におきましては、通常の芸能団体と同様に課税になるという形をとっております。したがって、これは国内法でそういうたてまえになっておるのみならず、条約におきましても国立の芸能団体は通常課税されるという趣旨をきめておりまして、たとえばアイルランド条約スペイン条約においてもその趣旨規定が入っておるわけでございます。
  40. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、たとえばある共産圏の国から国立の何か芸術団体が日本に来て、そして何も報酬はもらわぬ。呼び屋さんが呼んだそういう公演ではなしに、純粋な意味で向こうから来た芸術団体、芸能団体が向こうの芸術、芸能を日本紹介する、こういうような場合報酬はないわけですね。そして当然のこととしてホテル代とかあるいは汽車賃、交通費その他はもちろん受け入れ側で支払われるでありましょう。そして当然のごとく金が一文なしでは団員は歩けないのですから小づかいも支給されると思うのでありますが、そういうときにはその課税はどういうふうになるのですか。
  41. 大竹宏繁

    大竹説明員 先ほど国立芸能団体が課税になるかならないかというようなことについて申し上げましたけれども、もちろん課税になりますのは、団体として何か報酬があるということが前提になっておるわけでございます。日本へ参りまして、ただ公演をして何も報酬は得ないで帰った場合にはもちろん課税はないわけでございます。  それから団員に対するいろいろな報酬あるいはお小づかいといったようなお話でございますけれども、そのようなホテル代とかお小づかいといったような、いわば呼び屋さんが呼んできたような場合のケースでございますが、その場合にはその旅費、滞在費あるいはお小づかいも含めまして、そういうものは原則として課税の対象になるわけでございます。ただ、その費用といたしまして払われた額が相手の団体に直接お金として渡されるのではなくて、旅費の場合ですと航空会社とか、それから宿泊費であればホテルに直接支払われる場合であって、しかもその額がその費用として通常必要であると認められる範囲内のものであるということであれば、その金額課税しなくてもよいというようなことで、これは所得税法の通達にそういう趣旨規定されておるところでございます。したがって、そのお小づかいというものも厳密に言えば課税の対象になるということでございます。
  42. 堂森芳夫

    堂森委員 もう一ぺん聞きますが、呼び屋さんが呼ぶときと、呼び屋とはいえないような何か団体が——これは呼び屋といえるのかどうか、呼び屋というのは一応営業的にやるような人を呼び屋と、こう言う。そうでない団体が招聘した、そしてホテル代だとか汽車賃とか——これは呼び屋さんが呼んでも課税の対象にならぬのですか、なるのですか。小づかいを渡せばこれは源泉徴収されてもやむを得ない面もありますが、ホテル代とか交通費等は、これは呼び屋が呼んだ場合でも、ならぬのじゃないですか。どうですか。
  43. 大竹宏繁

    大竹説明員 若干説明が不十分だったかと思いますが、こういう趣旨でございます。だれが呼ぶかということは、この課税の問題では本質的な問題ではございませんで、それを営業にしておるいわゆる呼び屋というようなところが呼ぶか、あるいはそういう営利を目的としないような団体が呼ぶかということは、この課税にあたっては関係がないわけでございまして、いずれにいたしましても先ほど申し上げましたように、その対価の支払いがホテルとかあるいは航空会社へ直接に行なわれるという場合には課税をしないということでございまして、お金で渡すというときは、これは報酬であるということで課税になるというのがたてまえでございます。
  44. 堂森芳夫

    堂森委員 共産圏との貿易が盛んになって、たとえば中国との間の日中貿易協定も近くこの委員会で審議される、こういうことになっております。遠くない時期に日中航空協定も結ばれる、こういうことになってくると思うのであります。人的交流も盛んになっていく。  ところが、わが国はまだ共産圏の国とは租税条約を結んでいないのでありますが、すでにソ連とはフランスその他が結んでおるのではないか。これは間違いかもしれませんが、結んでおるのじゃないかと思うのであります。日本の場合はやはり——もっとも共産圏の国と資本主義国家との間には、産業の構造が違いますし、貿易だって違います。すべてが違うわけでありますが、しかし今後交流が盛んになっていった場合、租税条約を結ばなければならないようになってくるのではないかと思うのですが、この点は政府はどのように考えておられましょうか。山田政務次官からお聞きいたしましょう。
  45. 山田久就

    山田(久)政府委員 共産圏との間の関係では、租税そのものの体系というものも非常に違っておることは御承知のとおりであります。ことに国際的な企業、これのいわば交流進出、そういうようなことは、これらの国では原則として認めていないというようなことになっておりますので、いままでそれらの国との間には事実問題として二重課税というような問題が起こっておりませんので、それでやっていない、こういうような実情でございます。
  46. 大竹宏繁

    大竹説明員 先ほどの御質問、それじゃちょっと私のほうから補足させていただきます。  まず、ソ連との租税条約を結んだ国があるかというお尋ねでございますが、アメリカがソ連と昨年租税条約締結いたしました。それからフランスというお話がございましたが、フランスはソ連との間に、国際運輸あるいは使用料等一部のごく限られた範囲で租税条約締結しておるというような状況でございます。先ほど先生のお話にもございましたように、両国の、両国といいますか、わが国と共産圏諸国との間の税制の相違あるいは人的あるいは物的な交流の態様がほかの国とかなり様相が異なっておるというようなことから、現在のところ二重課税というような問題が生じておりません。しかし最近に至りまして、東欧諸国の中でルーマニア、ポーランドあるいはユーゴスラビアというような国におきましては、外国企業の若干の活動を認めるというような動き、あるいはそれに伴いまして外国人あるいは外国企業に対する税制を整備するというような動きが若干ございまして、そのような経済的あるいは文化的な交流が進みました場合には二重課税というような問題も生じてくることになろうかと思います。そのような場合にはやはり租税条約締結ということを私どもも検討したい、こう思っております。
  47. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、経済交流人的交流が盛んになるであろうと予想されるわけですから、将来は共産圏の国とも租税条約を結ぶようになっていくだろう、こういう答弁ですね。  いろいろ聞きたいのですけれども、ちょっと時間が長くなりましたので、私の質問はこれで終わります。
  48. 木村俊夫

    木村委員長 石井一君。
  49. 石井一

    ○石井委員 ただいま議題となっておりますこの租税の二重課税に関する件で、ただいまもいろいろの角度からの議論がございましたが、現在二十八あると申しますが、今後もどんどん多くなってくるという感じがいたすわけでありますけれども、まず基本的に租税条約締結のメリットとデメリット、この点について政務次官、どういうふうにお考えになっておりますか。
  50. 山田久就

    山田(久)政府委員 先ほどもちょっと触れましたけれども、結局この条約締結目的というところに、同時に裏返せばそこにメリットがあるということになろうかと思います。昨今国際的な経済交流、そしてまた人的交流というものも非常に増加してまいっておることは御承知のとおりであります。したがいまして、こういうような状況におきましてこの二重課税というものが起こってくる、そういう客観情勢でございまして、したがいまして、この二重課税ということによって円滑な国際的な交流を阻害することにならないようにということから、この二重課税防止する、そしてまた一方においては万一生じたような場合にこれを救済する、そういう仕組みをつくっておる。これによって事実いろいろな経済交流についての障害が除去されるという結果になっておるわけでございまして、これが一つのこの問題を考えていく、これがっくり上げられていくメリットと申し上げて差しつかえないかと思います。  もう一つは、御承知のように、先進国それからまた発展途上国というこのお互いの南北問題という形においての交流または相互協力という関係が進んでおりますし、またこれは進めていかなければならないところでございますけれども、この面から考えて、やはり経済協力というものを容易ならしめるということのためには、発展途上国のほうとしてもいろいろ便宜を考えていってやらなければいかぬ。しかしながら、それにはやはり経済協力を行なう側のほうにおいてそれに対応した考慮がないと、片一方のほうで非常に税の減免が行なわれていてもその本店のほうで全部取られるというようなことになったのではその趣旨に反するということでございまして、そういう意味での仕組みができ上がるということによって、この面におけるほんとうの意味経済協力促進という、そういう結果というものを確保することができる、これも一つのメリットであろうと思います。  と同時に、これらの諸国では、いろいろ技術水準を高めるという意味で、教授であるとかあるいは研修生を派遣する、いろいろそういう人的関係交流も必要とされているわけでございますけれども、同じような趣旨から租税の免除というようなことを考えて、そしてその協力というものに少しでも寄与するというような点もそういう意味でのこれのメリットということになろうかと思います。  と同時に、先ほど多国籍企業ということが問題になりましたけれども、これに限らず、今日のように非常に関係が密接になってまいりますと、それぞれの国の事情でやはり租税関係の違い、こういうことについてのいろいろな情報をよく得るということによって、それぞれが課税というものの能率化をはかっていく、適正化をはかっていくということにもなりますし、他面これが一方においては脱税防止というようなことに寄与する結果にもなる。今日の条約そのものがそういうような意味において万全かどうかという点についてはなお検討の余地があろうかと思いますけれども、また一方においてはこの仕組みによっていろいろな情報をキャッチして、そういう脱税を捕捉するというような結果にも事実なっているような実情でございまして、以上のような点がこれからくるメリットか、こう考えます。
  51. 石井一

    ○石井委員 経済のレベルが非常によく似ておる交流の深い先進国同士などでは非常にけっこうなんですが、格差が非常にあるという場合に、やはり資本なりそのほかの動きというものが確実に一方通行になってしまう。こういうふうな場合にはいわゆる限度税率を設定するということは後進国に対しての負担にならないかどうか、この点はどういうふうになっておりますか。
  52. 大竹宏繁

    大竹説明員 御指摘のように、源泉地の限度税率を設けるということは、その所得が発生する国の税収が減少するということでございます。したがいまして、御指摘のように経済の流れが一方的であるという場合には、開発途上国のほうの税収が減少する要因となるわけでございます。
  53. 石井一

    ○石井委員 そうすると、それに対するクレームと申しますか、措置というのがどういうふうになっておるのか。角度を変えて申しますと、わが国が先進国と締結する租税条約と、それからわが国後進国と結ぶ租税条約との間には何らかの基本的な姿勢の違いがあるのか、どういうところを配慮されるのか。おそらく後進国からもそういう強い要望というふうなものがいろいろあるのじゃないかと思いますけれども、ただ単に二重課税排除するという意味だけでなく、もっとほかのそういう経済的、政治的な意味というものが加味されるべきではなかろうか、こう考えるわけですが、この点はいかがですか。
  54. 山田久就

    山田(久)政府委員 先ほどもちょっとお話し申し上げましたけれども、いま石井先生からの御指摘、もっともな点でございますから、したがって、後進国とのといいますか、発展途上国との間ということになりますと、源泉地国課税、そのいろいろな点、先進国の場合のようなきびしい解釈よりも、もっとルールを広く規定して、そして、発展途上国の場合に課税権をなるべく広く維持したいという要望にできるだけある場合においてはこたえていくというような点の考慮、そういうようないろいろな点が実際上行なわれているという点でございますね。  それからまた、先ほど申し上げましたような経済協力というような措置を考えてのいろいろな減免措置に対応して、通常みなし税額控除といっておりますけれども、実際上取られているというようなふうにみなして、それで先進国側のほうでその減税を行なっていくというような関係のこと、それからこれも先ほど触れましたけれども、いろいろな学生、事業研修生というようなものに対する免税範囲を広げて、文化あるいは技術交流を促すというような点についての協力も行なっておるというふうに言っていいかと思います。
  55. 石井一

    ○石井委員 したがって、その二重課税排除するという条約の中にも大きな差がある、こういうふうに申し上げ得るのかどうか。そして、すでにわが国と先進国とはほとんどこういう形の条約締結済みであるけれども後進国に対しては、今後まだまだいろいろな点で、そういういま御指摘のあったような点で問題があるので、そういう理由が根本になって後進国との間の締結というものが非常におくれておる、こういうふうに理解していいのか。この点はいかがですか。
  56. 大竹宏繁

    大竹説明員 御質問の最初の点でございますが、根本的に違いがあるかというお尋ねの点でございます。二重課税排除という目的は同じということはいえるかと思います。ただ、先生指摘のように、源泉地国での課税権をできるだけ広くしたい、あるいはみなし税額控除を置いてほしいといったような要望にこたえて所要の、いま政務次官のほうからお話のあったような点で若干の修正を行なっております。したがいまして、根本的に条約考え方そのものが変わっておるというわけではございません。あくまでも二重課税排除という基礎の上に立ちまして、開発途上国の実体に即した規定を置くように若干の修正を行なっておるということがいえるのではないかと思います。  それから、第二の御質問の、今後の締結あるいは締結の際の支障になっておる点はないかというような御趣旨かと思いますが、御指摘のように、すでに先進国との間ではわが国はほとんど条約網を確立しておるということがいえるかと思います。今後は主として開発途上国が対象になってくるわけでございます。開発途上国との租税条約の交渉というものは、先ほど来申し上げましたような開発途上国側の要望というものがかなり強いわけでございまして、おのずからそういうOECDモデルだけで処理し切れないということが多々ございまして、どうしても交渉は難航をするということは事実でございます。  また、現在この先後進国間の租税条約につきましては、国連の経済社会理事会の専門家の会議におきまして、ガイドラインをつくるという作業が進められております。そこでのいろいろな議論を踏まえまして、わが国の立場も維持しながら相手国の主張を前向きに検討して、条約開発途上国との間でも締結をしていきたい、このように考えております。
  57. 石井一

    ○石井委員 いまも触れられましたけれども課税権の配分について特別の配慮をしなければいかぬ。しかし、この点についてはまだなかなか考え方が進んでおらないというふうに、条約をずっと見ておりましても見受けられるわけでありますけれども、今後こういう配慮をどんどんと拡大していくことによって、これらの発展途上国の要望にもこたえていきたいと、こういう方針わが国でも進んでいるし、OECD会議でもそういう議論がなされておるのか、その点は基本的に税制上非常に大きな問題があるのか、この点はどうですか。
  58. 大竹宏繁

    大竹説明員 源泉地国の課税権の拡大という問題は、具体的には恒久的施設の定義というものを広く解するという方法が一つございます。それから事業所得課税におきまして、課税原則を若干後進国側に有利にするというような形で考えることができます。それから特に船舶課税につきまして、先進国間でありますと相互免除というのが原則でございますが、開発途上国との間ではそこに半額課税権を認めるというような形での修正というようなことが考えられまして、これらの修正の形態は、わが国がすでに開発途上国締結しました条約の中でも取り入れられておるところでございます。  で、御指摘のように、今後の交渉におきましては、このような問題につきまして相当要望が強くなってくるということが当然予想されるわけでありますが、これをもしあまりに広く解してしまいますと、課税権というものが全部向こうにいってしまうというようなことで、日本が一方的に課税権を放棄するというようなことにもなりかねないということもございまして、そこら辺はすでに条約締結した国とのバランスというようなものも考えなければならないということがございます。できるだけ後進国側の要望にもこたえていく必要は御指摘のとおりでございますが、おのずから限度というものはあろうかというふうに存じておるわけでございます。
  59. 石井一

    ○石井委員 ただいま議題になっております二つ条約で、いわゆるスペインのほうには脱税防止のためのということばが書いてないわけでございますが、内容は非常によく似ておるし、そういうことを意図しておるようでありますが、これが表題に欠落しておる理由、これはいかがなのですか。
  60. 大竹宏繁

    大竹説明員 御指摘のように、脱税防止という題名がスペインのところに欠けておるということでございます。この題名にこれが入るか入らないかということは、情報交換規定の中で脱税防止するためという文句を入れるか入れないかということが具体的な違いとなって出てくるということでございます。脱税防止ということが入っております場合には、詐欺の防止またはこれらの租税に関する脱税に対処するための法規の実施に必要な情報を交換するというふうに具体的に書かれておるということでございます。そこでOECDのモデル条約におきましては、脱税防止のためという文言が題名にもございませんし、情報交換のところにもないということになっております。ただ解釈といたしまして、この租税条約を実施する間におきまして、そういう脱税等に関する情報も当然交換できるのだ、したがって脱税防止のためというふうに書いてなくてもその条約の実施のため必要な情報というものの中に含まれておるというふうに解釈が行なわれておりまして、 OECDの見解でもそのようになっておるわけでございます。したがいまして、この文言が入っておるかいないかということは実質的にはあまり関係ないわけなのでございます。  わが国といたしましては、OECDのモデルに即するということを原則としておるわけでございますので、脱税防止ということを入れないということが一応原則とはなっておりますけれども、何ぶんにも相手国側にもいろいろ事情がございまして、これを入れるということを一貫して租税条約締結方針にしている国がございますし、入れないということを方針としている国もございます。それでスペインの場合は入れないということでずっとこの条約締結してきたので、日本の場合もそうしてくれという要望が強うございまして、私どもといたしましては、そういう表現の問題もさることながら、実質で所要の条項が入るということのほうを重視しております結果、このようにスペインの場合ないという形に結果的になっておるわけでございますが、実体は私どもとしまして差がないというふうに解しておるわけでございます。
  61. 石井一

    ○石井委員 あまりたいした問題でもないかもしれませんからこれ以上申し上げませんが、先ほど何か片一方のほうはわが国から要望し、片一方のほうは先方からの要望であった。言うなれば内容はよく似ておるので、わが国はモデルに従っておるから、わが国から要請する場合はこのことばを入れない。しかし先方からそういうふうに要望されればそれを受けて立つ、こういう結果になっておるのですか。どうも御説明ではもう一つその点がはっきりしないわけですが、いま私が申しました見解は間違っておりますか。
  62. 大竹宏繁

    大竹説明員 交渉をどちらが申し入れるかということはいわばきっかけでございまして、きっかけがございまして、交渉が一たん開始してしまいますと、申し入れたほうであるから辞を低くして頼むのだというようなことではないというふうに私どもは了解しておるわけでございまして、まあそのきっかけはどちらから話があったにしましても、交渉の場におきましては、両国の主張というものは、その交渉の口火を切ったか切らないかの差にかかわらず、両国の主張というものが交渉の場ではどうしてもはっきり出てまいります。したがいまして、交渉の過程におきましていろいろやりとりがございまして、この条項を入れるとか入れないとかいうことで最終的な合意に達するという経過をたどっておるわけでございまして、あまりこちらから申し入れたか入れないかということは交渉の結果には関係がないというふうに私どもは理解しております。
  63. 石井一

    ○石井委員 先ほど御指摘のありましたいわゆる情報の交換の問題ですが、たとえばアイルランド租税条約二十八条に、租税に関して脱法に対処することを目的とする法規を実施するために必要な情報を交換する旨の規定が設けられておりますね。これは国際的な脱法、脱税取引について、租税条約開発途上国との間に、あるいはその結んでおる国との間に、これに具体的にどういうふうに対処し得るのですか。
  64. 大竹宏繁

    大竹説明員 租税条約情報交換の条項でございますが、租税に関して脱法に対処することを目的とする法規といいますのは、租税回避し、あるいは詐欺により脱税をするというようなことに対処するというように解釈をいたしておりますが、実際の具体的なやり方というのは、この租税条約のこの規定の第二項にございますような条件がかかっておりまして、法令上あるいは行政上の慣行に抵触しないで交換する、そういう法令または慣行に抵触してはならないということ、あるいは法令のもとであるいは行政の通常の運営で入手することができない資料は提供できない、あるいは商業上、取引上の秘密を漏らしてはならない、あるいは公の秩序に反するような情報を提供してはならないというようないろいろな条件がかかっておるわけでございます。  これらの条件がかかっておるわけでありますけれども趣旨は、申し上げましたように、詐欺を防止し、脱税防止するということが趣旨でございまして、両税務当局間の要請によりまして情報を交換しておるというのが実情でございます。
  65. 石井一

    ○石井委員 具体的にこういう実例、ケースというものはしばしば国際間に起こっておるわけですか、この点いかがですか。
  66. 甲斐秀雄

    ○甲斐説明員 租税条約に基づく情報交換は、必要に応じて諸外国の間に行なわれているわけでございます。もっとも最近にわが国企業海外取引が急速に増大してまいったということで、それに伴いまして、海外取引を利用した所得の脱漏の事例がかなり増加してまいっていることは事実でございますけれども、これはかなり近年のことでございまして、それに対処する一つの方策といたしまして、この情報交換という制度があるわけでございますけれども、これは見方によりますけれども、これまでのところ非常に多いということはまだいえないかと思います。
  67. 石井一

    ○石井委員 実はわが国の多国籍企業と申しますか、このことについてかなり調べてきておるのでございますが、時間の関係で、せっかく御出席をいただいておりますが、次回に譲りたいと思っております。  それであと一、二問条約的な問題だけきょうカバーさしていただきたいと思うのですが、アイルランド租税条約の第十条で、一方の国の企業相手国企業の支配に関与している場合または同一の者が両国の企業の支配に関与している場合における利得の計算の特例、こういう特例を設けた意義というのはどこにあるのか、この点御説明いただきたい。
  68. 大竹宏繁

    大竹説明員 アイルランドの特殊関連企業規定、あるいはスペインで申し上げますと、第九条にやはり同じような特殊関連企業規定というものがございます。このような規定を設けた趣旨でございますが、ある企業が親子間の関係あるいは系列企業といったような関係がございまして、お互いに支配あるいは支配されておるというような状況にあった場合に、その間に取引が行なわれるといたしますると、その場合の取引条件かなり恣意的にきめるということが可能になるわけでございます。たとえば非常に値引きをして売るとか、あるいは高く売るとか、あるいは通常の支払いよりも高い支払いをする、あるいは安くするといったようなケースが考えられるわけでございます。  ところが、そういうことをそのまま認めてしまいますと、一方の国の税収が減収を来たすというようなことになるわけでございます。したがいまして、そのような企業の恣意的な計算を認めるわけにはまいらないという趣旨から、この特殊関連企業規定が設けられているわけでございます。したがいまして、具体的には、このような特殊な関係を有する企業の利得の計算においては、そのような特殊な関連のある企業関連がないとみなして課税をします。したがいまして、お互いに関係のない独立した企業が市場において公正妥当な条件で取引を行なう、その結果、生じたであろうところの所得をもってその所得と認定する。したがって、不当に安くするような場合には、正常の値段で売ったものとみなして課税所得計算します、そのようにして租税を課するものとするというのが、この規定趣旨でございます。  したがいまして、多国籍企業に限らないわけでございますけれども、国際的な取引を利用いたしまして租税回避をはかるという場合には、この規定を活用いたしまして、それを防止するということが可能になるわけでございます。
  69. 石井一

    ○石井委員 非常に重要なところだと思いますが、それの適用の実例がどうなっておるのか、具体的なこの条項の効果というものがどうあげられているのかという問題はこの次にさしていただきます。  そこでもう一点最後に、こまかいことで恐縮ですが、スペイン条約では、適用区域を大陸だなにまで波及させております。これは、こういう広い地域にまで波及をせしめる理由として、何かその必要性というものが特別にあったのかどうか、この点も両条約を読んで疑問に感じましたので、ちょっとお答えいただきたい。
  70. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答えいたします。  御指摘のように、スペインには議定書の第一項として、大陸だなについての規定がございますが、スペインについて具体的にそのような事実があるわけではございません。スペインも大陸だなについて開発探査を行なっているということはございません。ただ、スペイン側から将来の事態に備えてその項目を入れておきたいという希望がございましたし、日本側もそれについては異存ございませんでしたので、入れた次第でございます。  ちょっとお答えが前後いたしましたが、先生の第一番目の御質問に対しましては、私どもの考えでは、大陸だなの地下資源に関しましては、少なくとも水深二百メートルまでは一般国際法上沿岸国の権利として存在しておるものである、したがって、その地下資源に対する主権的権利の行使をできる限りにおいて、それぞれの国内法がその探査開発に及ぶものであるという解釈は、従前からとっているところでございまして、その意味において、この規定は、別に、その事実を確認しただけでございまして、何ら創設的な規定を設けておるものではございません。  以上でございます。
  71. 木村俊夫

    木村委員長 次回は、来たる二十日水曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時三十六分散会