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1974-02-14 第72回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月十四日(木曜日)    午前九時四十七分開議  出席委員   委員長 木村 俊夫君    理事 石原慎太郎君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 福永 一臣君 理事 水野  清君    理事 河上 民雄君 理事 堂森 芳夫君    理事 松本 善明君       足立 篤郎君    小坂善太郎君       坂本三十次君    深谷 隆司君       宮澤 喜一君    勝間田清一君       大久保直彦君    渡部 一郎君       永末 英一君  出席国務大臣         国 務 大 臣         外務大臣臨時代         理       三木 武夫君  出席政府委員         外務政務次官  山田 久就君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省中近東ア         フリカ局長   田中 秀穂君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君  委員外出席者         外務省経済局次         長       西田 誠哉君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ――――――――――――― 委員の異動 一月十六日  辞任         補欠選任   柴田 睦夫君     津金 佑近君 二月一日  辞任         補欠選任   赤澤 正道君     小坂善太郎君 同月六日  辞任         補欠選任   大久保直彦君     矢野 絢也君 同月十四日  辞任         補欠選任   矢野 絢也君     大久保直彦君     ――――――――――――― 昭和四十八年十二月二十日  世界連邦建設決議に関する請願楢崎弥之助  君紹介)(第三四〇号) 昭和四十九年一月三十日  日中共同声明に基づく諸協定早期締結に関す  る請願唐沢俊二郎紹介)(第一二九四号)  同(倉石忠雄紹介)(第一二九五号)  同(原茂紹介)(第一二九六号) 二月二日  日中共同声明に基づく諸協定早期締結に関す  る請願小坂善太郎紹介)(第一四〇一号)  同(吉川久衛紹介)(第一四〇二号)  同(羽田孜紹介)(第一五五五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 昭和四十八年十二月十九日  朝鮮の自主的平和統一支持に関する陳情書  (第八号)  核兵器完全禁止国際協定締結に関する陳情書  (第九号)  日中航空等協定即時締結に関する陳情書外  二件(第  六五号)  日中平和友好条約早期締結に関する陳情書  (第六六号)  旧樺太抑留韓国人の帰還に関する陳情書外一件  (第六七号) 昭和四十九年二月十三日  日中航空協定早期締結に関する陳情書  (第一一八号)  日中平和条約締結等に関する陳情書  (第一一  九号)  日朝国交正常化に関する陳情書  (第一二〇号)  横須賀の米軍核空母母港化反対等に関する陳情  書(第一二一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件(中東問題)      ――――◇―――――
  2. 木村俊夫

    木村委員長 これより会議を開きます。  この際、山田外務政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。外務政務次官山田久就君
  3. 山田久就

    山田(久)政府委員 一言ごあいさつを申し述べさせていただきたいと思います。  このたび、外務政務次官を拝命することになりました。何かと今後いろいろお世話になることばかりだと思います。どうかよろしくお願い申し上げたいと思います。      ————◇—————
  4. 木村俊夫

    木村委員長 国際情勢に関する件、特に中東問題について調査を進めます。  本日は、昨年十二月、中東諸国を歴訪されました三木国務大臣並びに本年一月わが国中東諸国との長期的友好関係を促進するための特派大使として中東諸国訪問されました委員小坂善太郎君に中東諸国実情を御説明願い、かつ今後の見通しなどについて承りたいと存じます。  それではまず三木国務大臣からお願いいたします。国務大臣三木武夫君。
  5. 三木武夫

    三木国務大臣 昨年の十二月の十日に出発をいたしまして、約二十日間政府特使として中東八カ国を訪問をいたしたわけでございます。  旅行目的は、一つには中東和平に対して日本として貢献できる道はあるかということが一つ。もう一つは、訪問をいたしました中東諸国日本との友好関係増進するためにはどういうことが必要なのか。こういうことを旅行目的として八カ国を回ったわけであります。  中東和平の問題については、この機会中東和平達成したい共通の願望を持っている。機運もそういう機運が動いてまいりましたので、そういう強い希望中東諸国は持っている。その解決基礎になるものは、一九六七年国連安保理事会決議二四二号、一部の例外はあるけれども共通中東和平基礎はこの二四二号の決議である。これは、イスラエル占領地からの撤退パレスチナ人の権利の回復、あるいはまた各国領土、主権、独立尊重ということをうたっておりますから、基礎になり得るものだと思うのであります。日本もまた一九六七年の安保理事会のときは非常任理事国であったわけですから、この決議安保理事会の通過に対して日本もまた強く支持をしたものであります。そういう意味においては、日本責任を持っておる国の一つであるということでございます。  いまスエズ戦線におけるイスラエルエジプトとのディスエンゲージメントが合意に達しまして、一つ中東和平への糸口というものが開かれておるわけでありますけれども、問題は山積いたしておるわけでありますから、ジュネーブの平和会議というものは、結論に達するまでには相当長期に時間がかかるに違いないとは思いますが、非常に機運は動いてきておる。日本もまた、中東和平達成世界平和にも関係いたしますし、石油という資源世界の四割ぐらいを占めておるわけでありまして、これまた石油安定供給にも影響するわけでありますから、われわれとしては、あるいは国連の場において、あるいはまた関係諸国との話し合いを通じて、和平達成を促進する責任を持っておると考える次第でございます。  また、訪問諸国との友好関係増進については、御承知のように、石油という資源は限られたものであるし、中東にしても、せいぜい三十年、五十年の生命しか石油は持っていない。その石油という資源が枯渇しない前に産業開発をやり、あるいは社会開発をやって、中東諸国人たちの子孫が生活できるような国づくりをしておかなければならぬという非常に強い責任中東指導者はみな考えておる。当然のことだと思う。日本石油の八一%を中東に仰いでおるわけでありますから、中東諸国とすれば、日本の繁栄の基礎には石油というものが大きく影響したわけでありますから、今度はひとつ、そういう工業開発あるいは社会開発日本が少し技術協力とか過去の経験を通じて協力をしてもらいたいという強い希望を持っている。将来はやはり石油経済協力技術協力とリンクして考えようという考え方が非常に強いわけであります。日本もまたこれだけの石油供給を仰いでおるわけでありますし、そういう中東諸国が安定することは好ましいことでもありますので当然に今後中東産業開発とか社会開発に対してわれわれができるだけの貢献をする責任がある。従来この点については、石油というものが買い手市場であったわけでありますから、どうも石油資源の貴重さというものに対してわれわれの認識も足りない点があって、中東に対する日本関係というものが非常に手薄であったことは当然でありますから、そういうことで、今後中東産業あるいは社会開発に対して貢献をしていくべきだという感を強くいたしたわけでございます。  私が出発をしたときには、十一月五日に二五%の供給制限と、出発の前日の十二月九日にまた五%の上積みであったわけですから、約三〇%近い石油供給削減を受けるというような決定がなされて、中東に旅立ったわけでありますから、もしそういうことが実施されれば、日本石油関連産業というものは、操業していけない工場がたくさん出てくることは明らかである。そういう中で日本出発しましたから、いわゆる日本国民生活産業、あるいはまた日本工業力に依存しておるアジア諸国がどういう影響を受けておるかという実情を、私はよく話をしたわけであります。これに対して有力な中東指導者は、日本を困らすことが目的でもないから、日本に対する供給削減というものを撤廃するために努力しようという指導者各国指導者の中から出てまいりまして、クウェートでそのための石油会議を開くということを私に約束してくれた指導者もあるわけでございます。  それで、二十五日、クリスマスの日に、そのクウェート会議日本石油に対する供給削減というものは撤廃になって、昨年九月の実績というものが確保されたわけであります。そういう意味において、石油に対する将来の供給面からの不安というものは一応解消がなったわけであります。むろん、まだ中東というものは流動的でありますから、中東和平がどういうふうに進んでいくかということとも関連がありますが、一応供給の面では非常に不安は取り除かれたわけでありまして、そういう意味においては、結果的には日本のためにもよかったと考えておるわけでございます。  ところが、いま問題は価格に移ってきて、石油は御承知のように、昭和四十六年までは一ドル台できて、四十七年になって二ドル台になって、それが昨年の十月ごろまで続いたのが、十一月には三ドルになり、十二月には四ドル台になり、今日では八ドル台をこえるというような状態で、急激な石油の値上がりが起こってきたわけであります。むしろ今日では、供給よりも石油価格の問題に問題が移ってきておる。これは産油国自身の間にも、一方において石油価格というものが非常に急激に上がってくれば、また自分にはね返ることでもあるわけです。それからまた開発途上国というものが受ける打撃というものも非常に大きな打撃があるわけでありますから、この問題は国際的な大きな問題になっていることは事実であります。日本としても、これは産油国消費国との間に適正な石油価格というもので石油価格決定をさることをわれわれとしても望んでおるわけでございます。  いずれにしてもわれわれとすれば、今後もう石油というものが限られた資源である、これを保全しなければならぬという強い考えが起こってきておるわけでありますから、いままでのように、金さえ持っていれば石油は自由に買えるという時代は終わった、ここでそういうふうに、石油というものが価格も非常に安い、昔のように石油が安価に豊富に供給できるという時代は終わったわけでありますから、こういう情勢の変化に対応して国内の産業体制とか国民生活の様式というものに対してもわれわれとしては一つの大きな転換をはからなければならぬ必要がある。  いずれにしてもこれはもういままでのような日本自分考え方だけでやっていけるという時代ではなくなったわけでありますから、産油国も含めて大きな長期展望の上に立って、あるいはそういう中東諸国との経済技術協力も、あるいはま石油に対してのわれわれの今後の取り組み方もここで大きに考え直さなければならぬ時期に来ておるという感じを強くいたした次第でございます。  委員長お話もありましたので、一応私の御報告はこれで終わる次第でございます。
  6. 木村俊夫

    木村委員長 次に、小坂善太郎君にお願いいたします。小坂善太郎君。
  7. 小坂善太郎

    小坂(善)委員 私は、ことしの一月十五日から政府特使といたしまして、田中総理の親書を持ちまして、アラブ八カ国を歴訪してまいりました。ただいま三木特使が言われました八カ国以外のアラブ諸国、すなわちマグレブといわれておる地中海のモロッコ、アルジェリア、チュニジア、リビア、レバノン、ヨルダン、それからこちらへ参りましてスーダン、それから北イエメン、それだけ訪問いたしまして、それぞれの、王政の国では国王、大統領制の国では大統領、あるいは革命評議会というものが牛耳っておる国では評議会の議長あるいは総理大臣等と話をしてまいったわけでございます。目的は、三木特使と同様でございまして、中東紛争に対するわが国態度説明をし、また訪問国との間の友好関係増進するということでございましたわけですが、三木特使の行かれたころと変わっております情勢は、量の問題について石油問題はやや好転をした、しかし価格の問題が非常な問題になっているという点でございます。  目的の第一でございます中東紛争に対するわが国態度説明し、友好国として日本を取り扱ったことに対しての謝意を表したわけでございますが、すでにこの点はよく了解しておりまして、中には日本友好国中の友好国であるという国もございますし、あるいはもうそのことは、すでにああいう発表をする前から私どもはそう思っていたという国もあり、中には、自分の国は特にそのことに奔走したと言ってくれる国もあったようなわけでございます。たとえばアブダビの外相シリア外相日本にやったのはわが国である、ことにシリアは非常に強硬派であったので、日本実情を見せることを主張したが、たいへんよかったと思うというような、そういう話をしたところもございましたわけでございます。  第二の問題については、いま三木特使の言われたような認識のもとに、ただわれわれとしては、石油価格高騰というのが非常に日本経済を直撃することになるし、また善意の第三者と申しますか、東南アジアにおいての開発途上国、われわれが義務としてこの開発を考えている国にはかり知れざる打撃を与えることになるのだという話をいたしたわけでございます。私の訪問国の八カ国のうち、二カ国だけが、すなわちアルジェリアリビアだけが石油産出国でございまして、他の国は石油の出ない国でございますので、私の話についてはそういう国はもとより非常によく了解いたしますし、全部よく了解してくれたと存じます。要するに、価格高騰というものは、われわれとしては従来一ドル、二ドルという安い石油を売らされておった、このことははなはだ不当なことで、高くせねばならぬと思うけれども、しかしこれはもろ刃のやいばになるのだという認識を述べておられました。  私はそのことについて了解を得たと思いますが、さらに先方といたしましては、私の言う、一方的に価格をきめるのじゃない、価格が高くなることはわれわれは当然のことだと考えるけれども、一方的に、ある朝日がさめてみたら突然に三倍になっているというような、そういうことは困るのだ、やはり双方の話し合いで、納得する価格にきめていきたいのだということを言うことに対しては、先方は、それはそうだと言ってくれるわけでございます。ただ、工業製品あるいは一次産品——石油価格の上がるのは困るのだけれども小麦価格が上がるのは困らないのか、そういうことに対して私ども立場というものをあまりに考えなさ過ぎるじゃないかというような話もございました。私は、日本石油を輸入しているし、小麦も輸入しているので、これはお互いの立場は非常によくわかるのだからということをよく話してまいったつもりでございます。  私の感じを率直に申しますと、非常に日本に対する期待が大きいわでございまして、ことに開発途上国でございますわけですから、日本の明治維新のテークオフ、あるいは第二次大戦後の経済の立て直しの経験、そういうものについて非常な尊敬の念、率直に申しまして尊敬の念を持っておると思います。ただ、最近の日本物質万能といいますか、そういう点についてはなはだもの足りなく思っているようなことを言う国もございまして、日本の本来の精神主義と申しますか、日本人の心というものを私どもにもつとわかるようにさしてもらえないかということを言っておる国もございました。  私はさような点は非常に大切なことだと思いまして、今後アラブ諸国とつき合う上には、大いに心と心を開いてつき合っていくということがたいへん必要なことであって、もとより技術協力等も必要でございますが、その前にアラブ諸国の信頼を得る方法をわれわれは考える必要がある。距離的にも非常に遠いのでありますし、いわゆるハードウェアを輸出するというようなことをいろいろ考えても、これはその点からかなり問題がある。私はやはりもっと若い人の交流、たとえばみなサッカーをやったり、非常に好きでございますから、ユースサッカーをやるとか、あるいは空手とか柔道とか、そういうものに対する非常な期待を持っておる。一人の青年が何十人、百人近い弟子を持ちまして、大統領の招宴などというものに日本から行っている青年が出てくるというようなところもございまして、これらの青年はOTCAの援助で行っているわけでございますが、何か技術協力空手が使われるなんというのはちょっとおかしいので、文化交流基金というものもございますから、そういうようなものも考えて、もっとこういう点を心がけてみてはどうかというふうに思うのでございます。  いずれにいたしましても、この石油というものは、わが国経済国民生活に非常に大きな問題でありますので、これらの諸国との非常に親しいつき合いということを考えるにはどうしていったらいいか、技術協力の点はいろいろこれから考えなければなりませんし、しかもアラブ外交と一口に言いますけれども、いろいろアラブという国の国柄はございますわけで、それらのきめのこまかい接触を考えるべきであろうかというふうに思っておるわけでございます。  またいろいろ御質問がございますようですから、この程度のイントロダクションにいたしまして、あとは御質問にお答え申し上げたいと思います。     —————————————
  8. 木村俊夫

    木村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堂森芳夫君。
  9. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいま三木総理並びに小坂特使から簡単でございますが御報告がございましたことに関連して、質問を申し上げたいと思うのであります。  最初に、委員長に要望しておきたいのでありますが、われわれは外務委員として昨年の暮れ以来、変転きわまりないいろんな国際情勢、あるいは石油をめぐる事情、いろんな事件が相次いで起こってまいりました。われわれは外務委員会を年末といえども、年始といえどもやってくれと、こういうことを強く要望いたしましたけれども、結局きょうまでできなかったのであります。私は外務委員会として非常に残念だと思うのでありまして、やはり外務委員会存在の権威からいっても、もっと適切に、かなり無理はあるでしょうけれども、一回ぐらい外務委員会を開いてもらって、われわれが質疑をし、国民の皆さんの前にこの変転きわまりない情勢等について知ってもらうという機会をつくってもらわなかったら外務委員会意味がない、こう私は思うのであります。いま済んだことを申しておるわけでございますから、今後格段の御努力を願いたいということをまず冒頭にお願いをしておきたい、こう思うのであります。  そこで、ただいま三木総理からもお話がございまして、今度の旅行目的は大別して二つあるとおっしゃいました。一つは、中東紛争の性格とういうものをよく現地で理解しよう、そして日本がこの中東和平に何かの力を尽くすことができるならば、そういう道もわれわれは探索しなければいかぬ、こういう意味を申されたと思うのであります。それからその次は、アラブ諸国との友好関係増進していくために、日本が持っておる技術学問等一つの大きなつなぎとして何か協力ができるのでないか、そういうことについて各国の首脳と会って友好増進のために話し合いをしたい、こういうことが第二番目の目的であった、こういうふうに申されたと思うのです。もう一つは、副総理はおっしゃらぬけれども、私はおそらく向こうから、話はそれだけでないだろう、まだ第三のものがあるだろう、こういって、石油の話が当然これは出ないはずがないのであります。副総理が大政治家として、そういうことは言わぬというようなことで御説明になったのだと思うのでありますが、時間が四十分ぐらいしかありませんので、詳細については御質問できませんが、逐次二、三点についてお尋ねしまして御答弁願いたい、こう思うのであります。  そこで、中東紛争原因ということでありますが、中東といってもいろいろたくさんの国がございまして、副総理訪問された国は八カ国であります。小坂特使が八カ国と、こういうようにお二人がそれぞれ分け合って訪問されておる。たいへん広い地域でございます。たとえば、私は専門家でないですからたいして知りませんが、サウジアラビアという国とイラクという国はまるで違う。まるで違うというか、傾向が違うのじゃないでしょうか。サウジアラビア専制君主制の国である。君主制の国である。それからイラク革命政権政権を取っておる。まあ左寄りの国である。右と左の国。そこへいくとエジプトであるとかシリアなんかはわりあい中立的な国で、西欧諸国と友好的な経済的ないろいろな関係を持っておる。外交関係を持っておる。またソ連圏とも友好関係を持つというような国もあるというようなことであります。  それから、紛争原因をたずねましても、たとえばイラクのような国は、イスラエルそのもの存在すらも否定するというような国である。しかし他の国は、肯定はしてないにしても、イスラエルという国が現実に存在してきておるので、それを否定するということは肯定はしていないと思う。外交的にこれを承認しているわけではないと思うのでありますが、イラクなんかの国のような立場とは違うと思うのであります。非常に事情が違うと思うのであります。  そこで、一九六七年の国連の二四二号の決議案、ちょうど当時三木さんが外務大臣で、私、あなたに質問して、いろいろなあなたの御意見を聞いたのをいまでも記憶しておりますが、あの決議というものすらシリアは承認してないのじゃないかと思うのです。イラクはもちろんそうじゃないか。そういうふうに非常に複雑だと思うのですが、一体紛争原因というものをどのように認識してお帰りになったのか、まずこれを承っておきたい、こう思います。
  10. 三木武夫

    三木国務大臣 紛争原因は、明らかなごとくイスラエルがシナイ半島の全部、ゴラン高原、それからヨルダン川の西岸とかエルサレム旧市街地であるとか、こういうところを武力によって占領をしたいわゆる一九六七年の六日戦争、このことが中東紛争——昔の歴史はいろいろありますけれども、最近の中東紛争原因はやはりそこにある。したがって、いま堂森さんの御指摘のように、中東諸国はおのおの政治体制などの違いもあります。国際関係などの違いもありますが、しかしイスラエル武力によって領土を拡張したことはけしからぬ、やはりイスラエル占領地からの撤退を求めなければならぬということについては、たれも異存はないわけです。今度の場合もそういう点で一致しておるわけですね。  それをどういうふうに中東紛争解決していくかという方法論については、御指摘のように、私が会った指導者の中ではイラク指導者だけでありました。シリアも初めは二四二号の決議による中東紛争解決反対であるというような時期もありましたが、私が会ったときは、大統領も二四二号の決議によって解決をすることに対してわれわれも同意しておるということでありましたから、イラクだけでありました。イラクはやはり御指摘のように、イスラエルというものは解体をしなければならぬ、複合的な国家をつくるという考えでありますから、これは二四二号の決議と真向こうから反対立場をとることになるわけでありますが、それ以外の国々は、私の行った国では二四二号で解決する以外にいま解決基礎を求めるような原則はないということであったわけでございます。
  11. 堂森芳夫

    堂森委員 現地の事情三木総理はよくごらんになっておられるわけですから御理解だと思うのですが、私の貧弱な知識からいきましても、あの地域の紛争の大きな問題点が四つぐらいあると思うのです。先般解決した、まあ解決の緒についたエジプトイスラエルとの兵力引き離しの協定、停戦協定というのですか、これが一つの大きな問題点、つまりエジプトイスラエル関係。それからもう一つは、ヨルダンの西部の地域の被占領地域がどうなっているのか。ここにパレスチナ人の国をつくろうとかいろいろな問題点がある。それから今度はイスラエルの北部のゴラン高原地帯ですか、あそこは何か本を読んでみますると、あそこをイスラエルがとればダマスカスが何か砲撃にさらされるそうであります。あれがシリア側へつくと今度はイスラエルの重要都市は砲撃で簡単にめちゃめちゃにされるというような、たいへんむずかしいところのようでありまして、このゴラン高原地帯というものの帰趨がまたたいへん大きな問題。それから御承知のエルサレムの問題、これがまた前に戻せ、いや戻さぬ、あるいは国際都市にするとかいろいろな議論が出ているようであります。まあ大別してそれらの問題が大きいものとしてある。  そこで、副総理がおっしゃるのは、イスラエルが六七年の戦争にやった六日戦争ですか、ああいう占領をやっていることはこれはけしからぬのだ、不当なんだ、不正義で正しくないんだ、こういう御判断のようでありまするが、そうしますと、政府は一体イスラエルにどういう態度で従来対処して外交を展開してこられたのでありますか。これからはどうされるのでありますか。これを承っておきたい、こう思います。
  12. 三木武夫

    三木国務大臣 日本の場合は、やはり武力による領土の拡張は認めないというのは、これはもう日本の外交政策の非常な基礎になるわけでありますから、そういう見地に立って、国連においても私自身が国連総会に出席をしたわけです。そしてその演説の中には、いわゆる武力による領土の拡張は認めないということを強調し、パレスチナの問題にも触れて演説をした記憶がございますが、これは日本だけでこの問題を解決できるということはむろんできないわけでありますから、どうしても現在においてはイスラエルを説得をしなければいかぬですから、アメリカというものが中東紛争解決のためにイニシアチブをとらなければならぬ。これに対して国連というものもこれは重要な役割りを果たすわけでありますから、私は中東旅行から帰って引き続いてアメリカと国連訪問したのも、そういう私ども旅行を通じて首脳部と話し合ったこの会談を踏まえて、キッシンジャー国務長官やワルトハイム事務総長と話し合うことは中東和平の促進に役立つと考えて私は行ったわけでありますが、有意義であったと考えております。  そういうことで、単にいま直接に中東紛争のために最大の努力を払っておるアメリカとか国連とかいうばかりじゃなしに、中東紛争解決には、やはり西欧諸国も含めて世界がみな関心を持っておるわけですから、そういうことで、国際政治の場において日本が果たす役割りというものは私はある、こういうことで、いますぐに日本が先頭に立ってどうという、そういう立場ではないですけれども、この機会を逸したら、中東紛争というものはいつ解決できるかわからぬわけでありますから、こういう解決への機運が動いておるときに、日本はやはりそういう国際政治の場においてあらゆる努力をすべきだと考えておる次第でございます。
  13. 堂森芳夫

    堂森委員 いま三木総理にお尋ねしたいのは、具体的にイスラエル政府に対してどのような外交的な措置をとってきておられるのか、これからとっていかれるのか。それからもう一つ、さっき御答弁になられましたが、七日にアメリカに行かれましてキッシンジャー氏やワルトハイム事務総長とお会いになって、どういうお話でございましたか、その点もあわせて御答弁願いたいと思います。
  14. 三木武夫

    三木国務大臣 イスラエルに対しては、日本中東政策、いま言っておったような基本的な中東政策というものは、機会あるごとに日本政府からイスラエル政府にも伝えておるわけでございます。  また、アメリカにおいてはキッシンジャー国務長官と中東和平の問題について話し合ったわけでありますが、ちょうど私は一月九日に会ったが、あしたまた中東に行って、そしてスエズ戦線におけるイスラエルエジプトの兵力切り離し、これをぜひとも解決したいのだということで、非常に自信を持って私に語っておりました。中東紛争解決に寄せるなみなみならぬ決意というものを私はくみ取ることができました。それは、いま堂森さんの御指摘のように、むずかしい問題が次々にあるわけですから、それを一ぺんにジュネーブの会議解決するということは容易でありませんから、一つ一つ問題を解決していこうというのがキッシンジャー国務長官の考え方だと思うのであります。またワルトハイム国連事務総長も、そういう段階的な解決ということを支持しておるようであります。そして両人とも、この機会はやはり中東紛争解決の大きな機会であるということで全力を尽くして中東和平解決のために当たりたいという強い決意の表明がございました。
  15. 堂森芳夫

    堂森委員 そこで、これは新聞報道でありますが、三木総理日本へお帰りになった当時、ロイター通信でクウェートの何という新聞が三木さんの談話をとらえて、日本は恩知らずだというようなこと、お読みになったことがありませんですか。——それはこういうことなんです。あなたがアメリカへ行かれてアメリカで言ったことは、イスラエルの絶滅なんということは、おれはアラブ諸国訪問したときに言っていない、こうアメリカで言ってきた。そうすると、クウェートのある新聞は、そんなことはおれらは何も話したことはないし、考えてもいないのだ。しかしそういうことを三木特使日本へ帰って言うということは、アメリカ寄りの政策、考え方を持っておるから——まあことばは、これは新聞の報道ですからあれですが、アメリカで洗脳されたからそういう談話を発表するのだというようなことを書いている。私はあなたが今度中東へ行かれて非常な努力をされてきて、それに対して非常に残念だと思うのですが、何かそういうことで思い当たることはございませんですか。
  16. 三木武夫

    三木国務大臣 ちょっとその記事を、何か日本の新聞にも出たので私も読んで、誤解は解いておいたらいいということで、クウェート・タイムスにも私自身が手紙を書いたわけであります。それはアメリカへ行って言ったのではないんですよ。中東旅行のときにも首脳会談においても、イスラエルの撲滅論に自分はくみするものではないという話はしたわけです。そして中東指導者も、自分イスラエルの撲滅論というものは考えていないのだということを言われた人もありますし、また先ほどお話ししたように、イラクは解体せよというのですから、そういうことが中東で出たことは事実でして、アメリカで何もそういうことを言う必要もなければ、言ったということではないんで、何か新聞記者の質問に答えたんですよ。そしてそういうことを私は質問に答えて言ったことがありますが、それはアメリカへ行って洗脳されてからの発言とかそういうことではないので、中東旅行中に私の見解も明らかにした、こういうことで、そういう記者の質問に答えた場合がある。あれは何か少し誤解があると思っています。
  17. 堂森芳夫

    堂森委員 三木特使が第一に行かれたのはアブダビでございますか。それからサウジアラビアに行かれた。そして当時お立ちになるときは、非友好国というらく印でなかったかもしれませんが、友好国ではなかった。中立国扱いぐらいにして削減をする、こういう事態のときにあなたがおいでになって、そしてファイサル王と二人っきりで会って、いろいろ熱のこもった討議をされて、そしてファイサル王があなたの演説にほれて、そしていろいろなことを努力しようというようなことになったのが、今度の十二月二十五日のクウェート各国石油担当相会議でああいう決定になったということを新聞等で読んだことがあるのです。それはそれでたいへん御苦労さんだと思うのでありますが、それまでなぜイギリス、フランスなんかと違うような日本の国の格づけをアラブ諸国がしてきたかという理由はどこにあるのでございましょうか。どういう御感想でございますか。
  18. 三木武夫

    三木国務大臣 最初に私が言ったように、どうも日本中東外交が手薄であったことは事実であります。したがって、相互の理解といいますか、そういう点では欠けたところがある。そうやって政府の代表が行って、各国の最高の指導者とひざを交えて日本考え方というものを話したというようなことはないんですからね。そういう点で、石油会議の模様を私はよくは知りませんけれども日本に対しての理解というものが十分でなかったことは事実なんですが、十分でなかったのは、日本責任がある。やはり堂森さんごらんになっても、日本の外交が中東外交に非常に力を入れたという実績はありませんからね。そういう点で、お互いに理解を得る機会に乏しかったので、短期間でありましたけれども、しかしかなり時間をかけて各国指導者話し合いをして、日本立場というものも理解を得た。  また私は油をくれとは言わなかったんですよ。それはなぜかと言えば、先方からすれば、油の供給制限をするというような緊急的な処置をとったのはやはり中東和平を促進したいからである。国連決議はしても、決議ばかりで実行に移されない。ここで世界の注目を世界の関心を中東問題というものに向けるためにああいう非常的な手段に訴えたんだということを異口同音に指導者は言っておるわけですからね。だから、何か少しでも中東和平に寄与できる道はないかと考えることは日本として当然なことであって、それを抜きにして石油をくれということは、そういう恥ずかしいことは私もできない。そういうことで、最初に申したように、旅行目的というものを二つにしたわけであります。しかしその途中では、向こうに対して日本石油事情というものはよく説明をしたわけですよ。そういうことで、石油の問題というものが相当話題になったことは事実であります。そのことも友好国にする判断に一つの影響を与えたことは事実でしょうね。  しかしとにかく、日本が非友好国のような取り扱いを受けたことには相互の理解を欠いておった面がある。今後やはり日本の場合は石油の八一%も中東に依存しておるわけですから、中東の問題というものに対しては油以外のことは無関心だということは許されないと私は思います。したがって、今後は中東諸国との間にも、単に油の問題だけでなしに、いま言った経済協力技術協力—新しい国づくりをしたいと考えるのは当然ですから、油がなくなった後にはまた砂漠の上で中東人たちがさまよって暮らさなければならぬということは、指導者としては耐えられないことでありますから、国の開発をやりたいと考えることは当然であって、向こうの立場にもなってこちらも考えてみることが必要である。そういうことで、中東外交に対する一つの反省もなければならぬ。そういう実際の会議の模様を私は知っておるわけではございませんが、一口にいえば相互理解を欠いた結果である。こういうふうに考えております。
  19. 堂森芳夫

    堂森委員 私は必ずしもそれだけではないように思うのです。今度の対イスラエル関係石油供給の削減の目標は、たとえばイラクなんかは賛成でない、こういっておる。それは目的はアメリカなんだ。イスラエルと密接な関係を持って、これを支援しておるアメリカへの石油供給を制限しよう、こういうことが大きな目的であるということはもう明らかであります。そしてアラブ諸国人たちが、日本の外交というものについて、アメリカ寄りである、対米依存である、こういう印象を強く持っておることが一つの大きな原因ではなかろうか。それをあなたは、いやそれはお互いに理解し合う程度が低かったからそうなんだといえば、そういうこともいえるかもしれません。  それからまたほかにいろいろあると思うのであります。これも私は自分で行って二、三聞いた場合もありますが、有名な話は、あなたも今度エジプトで副総理とお会いになったときに話が出たそうでありますが、まぼろしの川島借款というのがあるという話でありました。川島さんが副総裁として行かれたときに五千万ドルの借款を副総理に約束した。ナセルが、あの大きな男が泣いて喜んで川島さんを抱かれて感謝した。実際はそれが実現しなかったので副総理は左遷されたとかいう話、これは私聞いた話であります。これは著名な例かもしれませんが、アラブ諸国における民間ベースのいろいろなプロジェクトの話し合い、ほとんど全部といってもいいほど成功しないそうであります。話はあるけれども、いつの間にかそれが消えてしまう。日本人というのは口先だけなんだ。おべっかはうまく言うが、実行は何も伴わないのだ。これは私は民間ペースというところにも大きな原因があるのではないかと思うのであります。それからまた一つ、二つの企業だけで大きなプロジェクトがやれるはずもないと思うのでありますから、そこに対アラブ経済協力関係の従来における問題点があったから、そういう事態も起きてきた、こう思うのでありますが、そういうこともやはり大きな原因でなかろうか、こういうふうに思うのであります。  そこで私、時間もあまりありませんから、三木総理、それから小坂特使が向こうで約束されました借款援助等についてのあらまし、もしお二人であれでございましたら事務当局でもけっこうですが、中曽根さんのもまぜて大体どれくらいになるのか、例をあげていただいて、事務当局がまとめてしていただいてけっこうでございます。
  20. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 数字の問題でございますので便宜私から取りまとめて、三木総理小坂特使並びに中曽根通産大臣の中東諸国御歴訪の際にお約束をされました、もしくは検討を約束されました政府ペースのものを含む経済協力案件を申し上げます。  まず第一番目に、三木総理が約束されました分でございますが、エジプトにつきましては、まずスエズ運河の拡張計画というものがございます。このうちの第一期の拡張計画につきまして三百八十億円、これは金利二%、返済期間二十五年、そのうちに据え置きの期間七年間を含むという条件で供与する旨をお約束になりました。それからエジプトからは主として商品援助あるいは、プロジェクト援助も含むような大規模な援助をほしいという要請がございましたが、これらのこまかい金額、条件その他につきましては、今後さらに日本に帰られてからお詰めになって、今後見えるエジプトからの特使等とも御相談になっておきめになるということで、検討を約されたという形でございます。  それからサウジアラビアにつきましては、これは技術協力だけでございますが、今後大体五年の間ぐらいに約百名の各種の分野の専門家を派遣しましょう、またサウジアラビア希望するならば約三百名ぐらいの研修員を受け入れる用意がございますということをお示しになりました。それからまた、サウジアラビアがやっております職業訓練センターというようなものに対しまして、そういうものを拡張する場合には専門家日本から派遣することも考慮いたしますということをお述べになったわけでございます。  次に、シリアにつきましては、シリアは御承知のように戦争を行ないまして、その持っておりました製油所が破壊されましたので、そのかわりに新しい製油所をつくりたいという要請を持っております。しかしこの規模その他につきまして、まだシリア側でもはっきりしたことがきまっておりませんという状態でございましたので、これをさらに専門家を派遣して調査したりして詰めるということをお約束になりまして、今後金額、条件等はだんだんに煮詰まってまいるというふうに期待しております。  それからイラクでございますが、経済技術協力協定というものをかねがね結びたいという話が出ておりましたのですが、その協定を締結することについては原則的な同意を御表明になりました。イラクにつきましては、さらに中曽根通産大臣があとフォローされましたので、中曽根通産大臣のところでまた申し上げることにいたします。  中曽根通産大臣はまずイランにおいでになりまして、イランにつきましては輸出用の製油所のプロジェクトというものがございまして、これにさらに、そのあと石油化学関係の工場をつくるプロジェクトがつながっておるという話がございまして、これを全体で合わせますと相当大きい金額になりますので、これらのプロジェクトについてはいろいろな意見が交換されましたが、さらに検討を続行するということでございました。  イラクにつきましては、いま申し上げましたように三木総理がお見えになりましたあとでございましたので、中曽根通産大臣がイギリスとブルガリア等を訪問せられております間に事務当局の者が参りまして、経済技術協力協定の文言等につきまして話し合いを詰めましたが、問題は、その中にどういうような実際の経済協力を入れるかという問題が重要問題でございましたので、結局中曽根通産大臣と先方のジャズラウィといいます工業大臣との間で約束されましたのは、経済技術協力協定を結ぶということを前提にいたしまして次の三点でございました。  まず第一番目には、円借款と民間信用との合計いたしまして十億ドルを、仕上がりの金利と申しますか、平均の金利として五・二五%で供与する。それによりましてLPGのプラント、製油所などの建設に協力をする。それから、イラクから研修生を受け入れる等々の技術協力を行なう。それからイラク政府わが国に対しまして十年間に九千万トンの原油、そしてLPGにつきましては年間少なくとも百二十万トン及び石油製品が供給されるように措置をする。この三点につきまして合意をしてこられました。後にこれらの点が経済技術協力協定の中に盛り込まれるということになっております。  小坂特使は、まずモロッコに着きまして、三十億円の円借款を供与することをお話し合いになりました。この円借款をどういうようなかっこうで使うとか、詳細の点につきましてはさらに今後両国間で検討を続けるということでございます。  アルジェリアにつきましては、従来からアルジェリア政府からいろいろなプロジェクトに対します援助の要請が出ておりましたが、特使がおいでになりましたときに、主として電気通信関係のプロジェクトに円借款を供与するという話を示されまして、結局金額として百二十億円ということはきまりましたが、その詳しいことにつきましては今後両国間でさらに検討を続けましょうということでございました。  それからヨルダンに行かれました際には、やはり同じく電気通信関係のプロジェクトを中心に円借款を三十億円供与する。しかし、この詳細についてはさらに詰めましょうという話でございます。  スーダンにつきましても、プロジェクトはまだはっきりきまっておりませんが、やはり三十億円の円借款を供与することをお話し合いになりまして、このプロジェクトを何にするかとか、条件等についてはさらに検討を続けるということでございました。  リビアは、主として技術協力について話が出まして、研修生の受け入れとか、専門家の派遣とか、そういうような技術協力を今後やっていこうというお話し合いだけでございました。  レバノンの場合は、石油資源の探査をやってほしいという要請がございまして、これにつきまして検討してみたいということをお約束になった。  以上が三人の大臣、特使の御旅行の結果のお約束並びに検討のお約束の事項でございます。
  21. 堂森芳夫

    堂森委員 時間がありませんので副総理に要望しておきます。金額の多い少ないは別にしまして、かなり盛りたくさんの話が進められたようでありますが、従来民間ベースであったような、話だけで、あとは実を結ばなんだということ、これはやはり今後たいへん影響の強いことでありますから、もちろん閣議等で確認しておられるようでありますが、今後の努力を私要望しておきたいのです。  そこで、もう一つ重要な点をお尋ねしておきたいのですが、石油は、いまも御報告の中で、一バーレル八ドルから十ドルぐらいまでのところになるんじゃないだろうか。しかも、もうすでにアラブ諸国サウジアラビアなんかは金は要らぬといっておる。金は要らないんだ、われわれは石油がある間に国を近代国家にして、子孫にこれを残していきたいんだ、数十年して石油がなくなってからあわててもだめであるから、エネルギー源を大量に必要とするいろいろな重化学工業、こういうものをどんどんつくりたいんだ、それで日本技術協力あるいは資金の——まあ金は要らぬと言っておる国が多いという話でありますが、そういう協力をしてもらいたい。それからやはり従来のような安い石油がふんだんに入るということはもうおそらく今後はむずかしくなるであろうということ、これはもう当然だと思うのであります。これはやはり一つは重要な石油資源として保存したいということが各国ともあると思うのであります。そこで私は、聡明な三木総理感じられたと思うのでありますが、わが国の貿易政策というもの、これは当然輸入政策、輸出政策、そういうものがいままでのような姿ではだめなんだ。たとえば田中総理が東南アジアを訪問されて、われわれ日本人としては恥ずかしいような事態が各地で起きた。これも私は、一つの大きな原因はやはり安い資源をどんどん向こうから買ってくる、そして工業製品として日本のものが売り出していかれるということに対する発展途上国の感情というものがある、こう思うのであります。そこでわが国が安い石油が安い石油をふんだんに買う、安い鉄鉱石をどんどん買う、他のものをいろいろ買ってくるというようなことでは、わが国の貿易政策はもう行き詰まった。そこで中近東のこういう国々にも、わが国石油を買うための巨額な資金というものと、わが国の持った技術というもの、学問というもの、あるいはたくさんの人的な、資源と言ってはあれですが、人というものがそうした発展途上国において工業化というものに協力をしていく、そして向こうから原料として石油を買う、鉄鉱石を買うというのではなしに、製品、少なくとも半製品くらいにして向こうから買ってくる。輸入政策というものが大きく変わっていかなければ、わが国経済的な発展というものはあぶない、危険である、もうできないのじゃないか、こういうふうに私は感じられたと思うのでありますが、この点について三木総理のお考えはどうでしょうか。  それからもう一つお聞きしたいのですが、砂漠ばかりのいろんな国に土木工学の農業土木の知識と学問、技術であれを耕地にしていくということは不可能ではなかろうと思います。食糧が世界的には足らぬということがもうすでにいわれ、今後もますます足らなくなるだろう。農業開発についての向こうからの話、工業開発の話はいろんな新聞にも書かれおりますが、そういう話はなかったのでございましょうか。  それからもう一つ、十年くらい前ですが、倭島さんという大使がカイロにおったことがある。私、行きましたときに、倭島さんが、堂森さん、あなた医者だからと言うから、いやおれはやぶ医者であかんがと言ったのだが、とにかく会ってくれというので会いました。そうすると、衛生大臣が切実な訴えをされました。どういうことかといいますと、ああいう中東あたりではめくらが多いのです。これは生活条件が悪いものですから、トラホームだとかそういう悪質な眼病が多いのです。ところが眼医者がない、それでみすみすとめくらになっていくのが非常に多いのだ、できたら日本から眼医者をという話がありました。帰って厚生省に話しましたが、なかなかそれはうまくいきません。そういうような保健衛生上の、向こうから留学生をどんどん引っぱってくるとか、あるいは中国でやっておるようなはだしの医者みたいな簡易な衛生助手みたいなものでもつくるとか、そういう話は出なかったのでありましょうか。あわせて答弁を願いたい、こう思います。
  22. 三木武夫

    三木国務大臣 御指摘のように、やはり資源の保有国がみな資源は保全しなければいかぬという共通考え方を持ってきておるわけです。これは石油ばかりでないと思いますよ。ほかの資源に対してもこの傾向はやはりもうずっと広がっていくものだ。だからいままでのように、資源というものが買い手市場で必要なだけ安い値段でこれを輸入できるという時代は終わったと見なければならぬ。そこでやはりわれわれとしてもなるべくそういう資源を使わないような一つ産業構造というものにも計画的に移っていかなければならぬし、国民生活の様式についても省資源というような考え方からいろいろと反省も要るわけでありますが、そういうことが一面と、われわれの側からやはり資源の節約というものがなされなければならぬ、いままでのような安い値段ではもう入ってこなくなるわけですから。  一方において資源産出国も、ただもう石油なら石油を、それを燃料として売るというのでなくして、それを化学工業なんかの原料にして製品として売りたいという考え方が非常に強くなってきておる。指導者の中にも私が環境庁長官であることを知っておる人が多いわけですから、環境問題からいっても石油だけを輸入しないで製品を輸入されたらどうかということをいろいろ言われる指導者もございましたが、そういうことでだんだんそうなっていくわけです。  そこで石油を原料にして向こうで工業化して製品を買ってくる、こういうことにもなってくるわけで、とにかく友好関係といってもお互いに有無相通じて相互協力というものが友好関係を築き上げる基礎であることは明らかですから、そういう意味においてわれわれの今後の貿易構造というものもそういうものもそういうふうに変わりつつあるわけですから、変化が当然にくるし、日本はそれに対応する貿易政策というものを持たなければならぬということは御指摘のとおりだと思うのであります。やはりそういう意味においては産業も貿易も国民生活も大きな転換期にきておるという感じを非常に強く感じた次第であります。  また、砂漠の緑化に対しては非常に関心を持っておるわけです。もし砂漠が緑化されればこれはたいへんなものである。あのきびしい環境というものは一変するわけです。したがって、どういうことをやっておるかというと、盛んに井戸なんかを掘りまして地下水、これはもう非常に膨大な計画を持ってサウジアラビアなんかでは井戸を掘って、そして相当地下水にぶつかって、これはやはり農業化というものに対しても将来希望が持てるということを言っておりました。  だから砂漠の緑化というものに対しては、これは日本としても、一番喜ばれるのは、そういうことになればやはり中東諸国というものは環境は一変するわけですから、こういう点で技術協力の面というものは大いにあり得るということを感じたわけでございます。また先方からも、何か砂漠を緑化するために日本技術協力を求めたいという声は、クウェートでもあるいはまたサウジアラビアでも非常に強い声があったわけであります。そこで、単に工業化ばかりでないのです。堂森さんの御指摘のような農業開発に対しての関心も非常に多い。だから調査団が来る場合には単に工業の面だけでなしに、いま御指摘のあった農業の開発とか医療というような面で一つの医療制度というものの拡充といいますか、そういうものを含めて社会開発の意欲が非常に強くなってきておる。ただ工場だけつくったということでは新しい国づくりにはならぬものですから、したがって私も先ほど申したときに、産業開発社会開発と言ったのは、現地がやはりそういう社会開発的な意図というものが非常に強くなってきておる、だからこれからは日本はただ工業開発に対する協力ばかりでなしに新しい国づくり経験日本は持っておるわけですから、そういう経験などを通じて、社会開発の面についても今後日本協力をするということが、やはりバランスのとれた協力のしかたであるという感じを非常に強くしたわけでございます。
  23. 堂森芳夫

    堂森委員 時間が来ましたから、これで終わります。
  24. 木村俊夫

    木村委員長 河上民雄君。
  25. 河上民雄

    ○河上委員 先ほど三木総理並びに小坂特使より中東歴訪の御報告がございましたので、それにつきましてお尋ねをいたしたいわけですけれども、それと非常に関連がございますので、私は初めに、一月二十四日、衆議院本会議において田中総理が発言されました内容について、これは非常に重大な問題でありますので、三木総理のお考えを承りたいと思うのであります。  一月二十四日、衆議院本会議におきまして、野党の竹入公明党委員長質問に対する答えでございますが、田中総理は、今後開発途上国とのつき合いにおいて心と心の触れ合いが大事だという一つの例に、日韓合邦時代、このことば自体非常に問題がありますけれども、まあ要するに、日本が朝鮮を植民地支配していたときに、日本人がやったことで、二ついまでも感謝されていることがある、その一つはノリの栽培であり、もう一つは義務教育の普及である、こういうことを言われたのでありますが、私はこれは田中総理認識というものを非常に端的に物語っておるというふうに思うのでありまして、こういう認識で今後の開発途上国との関係を推めると、もう一度大きな失敗をするのではないか、こんなふうに思うのであります。  私の知っておるある韓国の知識人で、現在日本のある大学に講義に来ている教授がおりますが、その方は、昭和二十年八月十五日、敗戦の日は中学生だった、ところが、そのときクラスで朝鮮語を完全に話すことができたのは自分一人だった。つまり、それほど完全に日本の義務教育というのは同化政策に成功したわけであります。これは、言いかえますと、朝鮮の文化の根源である言語を、祖国のことばを朝鮮人の子弟から完全に奪ったということになるわけです。よく朝鮮の人が言うのでありますけれども日本の朝鮮植民地支配というのは四つのものを奪った、国土とそして言語と、それから氏姓とそれから民族衣装だと、こういうふうに言うのでありますけれども、こういうことをやったのがいわゆる義務教育であります。したがって、これは感謝さるべき対象ではなくて、実は朝鮮の人たちにとっては、日本の義務教育というのはのろいの象徴である。こういうものを堂々と本会議の議場で日本総理大臣が、感謝さるべきものである、しかも、今後の新しい対外関係出発点として、その一つの例としてあげられたということは、非常に私はたいへんな問題であると思うのであります。さらに加えて言いますならば、これは善政であれば植民地政策は正当化されるという思想がそこにあるのではないかという疑いさえ起こさせるものだと思うのであります。  したがって、政府は官房長官談話か何かで他意はなかったというようなことで釈明を済ましているようでありますけれども、これは他意はなかったということでは済まない。私はこれは直ちに削除をして撤回すべき性質のものであると思うのでありますが、三木総理は、内閣の立場において、この発言に対して私の言うような意見に賛成せられるか、その御意見をまず初めに承りたいと思うのです。これこそ、そこから新しい日本の歴史が始まるのだということを私は強調して、三木総理のお考えを承りたいと思います。
  26. 三木武夫

    三木国務大臣 田中総理は、東南アジアから帰られて、そして何か、経済協力どもやはり心が通じ合わなければだめだということが、東南アジアの旅行を通じて強く頭の中にあったのだと思います。そういうことで、それを強調しようということで例に引かれたのですが、その例は私は悪いと思っております。それはやはり、何か誤解を与えるようなことはこれから注意せなければいかぬ。ことに、いま御指摘のように、植民地支配というものを正当化するということは、これはもう誤りであるわけでありますから。しかし、総理の真意というものは、植民地支配を正当化するという真意から出たものでないことは明らかであります。それで、その誤解を与えた点もあるようでありますから、官房長官の談話でその真意を伝え、また韓国の大使などにも総理の真意を伝えたわけでありますが、とにかく一つのこういう国際問題、微妙な韓国との日本の過去の歴史なんかから考えたならば、こういう発言に対してはやはり十分な注意をして発言をせなければならないわけでありますから、こういう発言は今後ともやはり非常に注意をする必要がある、こう考えております。
  27. 河上民雄

    ○河上委員 単にいわゆる失言ではなくて、そこにある思想といいますか、歴史に対する認識というものが実は私は問われておると思うのです。そういう意味で、これはもう間違っておったと副総理もいまはっきり言われたのですが、間違っている以上は、つべこべ弁解せずに、この部分は内閣の責任において撤回するということを、私はこの場でお約束をいただきたいと思うのです。
  28. 三木武夫

    三木国務大臣 先ほども申したように真意で私はないと思う。何人も、今日の時代において、その植民地支配を正当化するという政治家があり得るはずはないのである。これはもう歴史の審判を受けたわけですから、いまごろになって植民地支配を正当化するという政治家はあり得べからざることでありますから、田中総理がそんな思想を持っておると私は考えない。やはり、東南アジアなどの旅行を通じて、何かこう、ただ援助するというようなことではだめなんだ、何か心を通じ合わなければならぬのだということを非常に強く印象に受けられたために引用された——引用は適当でないと私は思います。しかし、真意は、いま河上さんの言われるような朝鮮の統治というものを正当化するという総理の真意でないということは、これは明白でありますから、今後そういう発言に対しては注意をすることと、その真意というものは韓国にも誤解を与えないように十分に説明する必要がある、私はこう考えております。
  29. 河上民雄

    ○河上委員 まあ、田中さんここにおいでにならないのであれですけれども、先ほど来三木総理もまた小坂さんも、中東を回られて、心と心のつき合いが大事だと、まあ田中総理が東南アジアから帰られての発言と同じような発想をしておられるわけでありますけれども、いま田中総理がもしその真意は別なところにあるとしても、そういううっかりしたというようなことで済ますようなこと自体が、実は心と心の交流を妨げる新しい壁になるのじゃないかと私はそう思うのでありまして、したがって、これは率直に間違っておったということを認めることから出発しないと東南アジア問題もあるいは中東問題も私はまた再び新たな壁をつくるのではないかというふうに、そういうふうに考えて強く申し上げておるわけでございます。これは決していわゆるあげ足とりではなくて、日本人全体として考えるべきものだということで申し上げているのであります。  あまり時間がございませんが、中東の各地を回られまして、その成果につきまして、先ほど堂森議員のほうから御質問がございましたので、私はそこであまり強く触れられなかった点について、二、三御質問したいと思うのでありますが、先ほど外務当局からいろいろ御報告がありましたすでに約束されたもの、あるいは検討中のものを含めまして相当の額になると思うのです。私が新聞などでお二人が帰られたときに発表されたもの、あるいは中曽根通産大臣、田中首相の発表されたもの全部合わせましてもこれはたいへんな額になるように思うのですが、これは全体で幾らになりますか。外務当局からもう一度円で幾ら、ドルで計算して幾らか、それから検討中のものは、これは額はきまってないと思いますけれども、大体全体で幾らくらいになるか、ここで言っていただきたいと思います。
  30. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの御質問の点につきましては、検討中と先ほど御回答申し上げた点が多いものでございますから、正確な数字を申し上げますことがはなはだむずかしいわけでございますが、はっきりいたしておりますものは、三木総理のスエズ運河の拡張計画三百八十億円、それから小坂特使の場合におきましてアルジェリアの百二十億円、ヨルダンの三十億円、スーダンの三十億円、モロッコの三十億円と、それから中曽根通産大臣の場合におきましては政府の借款と民間の信用供与とを合わせて十億ドルをイラクにお約束になるということでございまして、大体これは予想されますのは、かりに一対三くらいの割合で、政府借款一のその他は三というような程度で混入するというふうに仮定いたしますと、円とドルとをどういうふうに計算するかということもございますが、まあ十億ドルのうちの四分の一、二億五千万ドルというようなことになります。それらを単純に合計いたしますと、大体この円ドル換算の問題を対ドル三百円というようなふうに勘定いたしますと、約千二百億円くらいになるかと思われます。  ところが、これらが直ちに実施に、つまりお金が出ていくというふうになるものではございませんで、先ほども申し上げましたように、これからたとえばあるプロジェクトにつきまして政府間のお約束をつくり上げて、そのお約束に基づいていろいろな条件がきまりまして、それからさらに貸付契約というものができ上がって、それから実際に実施に入るというので、それまでの間の期間を若干見込まなければいけないのが通常でございますが、もしかりにいままでのお約束が全部いますぐにもう実行に移される、しかもそれがかりに三年間に全部実行されてしまうというような計算をいたしますと、年間ではいま申し上げました約千二百億円を三で割るということになりまして、四百億円くらいの支出ということに相なるかと思います。  他方、これはいろいろな例を申し上げなければいけないのですが、昭和四十七年の政府ベースの援助の総額は六億一千万ドルでございます。したがいまして、いまの三百円というのを適用いたしますと、約一千八百億円でございますか、というようなことになりますし、ですから、その中にはいまの四百億というのは十分にはまり込んでおる。それからまた、ただいま御審議願っておりますことしの予算の中に出てまいります海外経済協力基金の持っております政府借款用の財源と申しますか、そういうものは大体千七百億円ぐらいでございます。それからそのほかに輸出入銀行がやはり政府借款用に八百億円という予算を大体持っておるというふうに伺っておりますので、合計いたしますと、二千五百億円くらいの、四十九年度の予算の中にはそういう財源が、政府借款用の財源が出ております。したがいまして、その中にもいまのような金額ははまり込むということでございます。  ただし、申し上げなければいけませんことは、従来の政府ベースの中東に対します経済協力というものは、御承知のようにわが国政府ベースの経済協力がアジアに非常に集中し過ぎておると言ったほうがむしろいいくらい集中しておりまして、中東については非常に少ない金額しか、技術協力程度のものしかいっておらなかったというのと比べますと、ただいま申し上げました三年間で約一千二百億というような数字は、あるいは三年というのは当たっておらないかもしれませんが、全体で千二百億というようなお約束の数字はかなり大きな金額になる、しかし実現不可能なものではないというふうに考えております。
  31. 河上民雄

    ○河上委員 私が新聞などで簡単な計算をしますと、田中首相がこの前行かれて約束したものだけでも九百二十億円です。先ほどのは円で言われましたが、一応ドルでずっと計算していきますと、三木総理、中曽根通産大臣、小坂特使などが約束されたもの、ブルガリアに対して中曽根通産大臣が約束されたものまで含めますと、新聞などによりましても、十四億一千万ドルと非常にかなりの額にのぼっておるわけです。一九七一年の日本開発途上国援助というのは大体二十一億四千万ドルくらいでございますので、そういういままで日本がやってきた額からしますると、四人の方があちこち回られて非常に御努力願ったことはわかるわけですが、これだけ非常に巨額なものをこの二カ月くらいの間にあちこちで約束されてきておるわけです。いまのお話では今年度の予算でもある程度消化できるようなことをおっしゃっておりますけれども、はたしてそうだろうか、またさらに検討中のものをこれは含めたら一体どうなるのか、それをほんとうにやり切るだけの覚悟があるのかどうか、そういう点は三木総理に伺いたいと思うのです。  さらに三木総理は、エジプトに対しまして借款を約束されてまして、日本では金利がいつも高いということが問題になりますが、清水の舞台からおりるつもりで二分にしたというようなお話がございますが、それはけっこうでございますけれどもエジプトだけ二分にして、ほかの国は現在のところで見ますと、いろいろでこぼこはありますけれども、平均して日本の場合はかなり高いわけですね。そういうものを、よその国には五分、六分なんというような金利でやっておきながら、エジプトだけ二分にしてやるということで、はたして開発途上国に対する援助全体の日本の体系というものが成り立つのかどうか。今後金利二分で、どこの国に対してもやるという覚悟をもってそういうお約束をされたのかどうか。そういう点について三木総理のお考えを承りたいと思います。
  32. 三木武夫

    三木国務大臣 国際関係というのは、約束を守るということから始まるわけでありますから、われわれが約束をいたしましたこともそう乱暴な約束はしてきていないわけであります。約束したものは必ずこの政府は実行するという前提に立っておるわけで、それが可能である、こう信じておるわけでございます。  また、金利については、金利の体系というものはプロジェクトによって違うわけであります。スエズ運河というものは、エジプトといいますけれども国際水路である。また日本は海洋国家という日本立場等も考えまして、これは特別な金利を持ったわけでございます。ああいう国際的なプロジェクトに対しては、ほかの国においても、まだ二分よりも安い金利ででもスエズ運河のようなものはやってもいいというような国もあるやにも聞いておりますから、スエズ運河の改修といいますか拡張計画、これに金利二分の借款を与えるということが、ほかの援助に対して波及は私はしないと考えております。これは特別のプロジェクトとしてやったということで、説明がつくものだと考えておる次第でございます。
  33. 河上民雄

    ○河上委員 これは開発途上国に対する援助では、もう各国とも常識になっているわけですけれども開発途上国の要求は、大体年金利二%以下、返済期間は二十五年から四十年、据え置き期間は七年から十年、これはもう開発途上国共通の要求でございますので、いま三木総理はスエズ運河だけは特別だというようなことをおっしゃいましたけれども、はたしてそれでよその国が納得するかどうか。いまの国際常識から見て無理じゃないかと思うのです。その点いかがでございますか。
  34. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 河上先生ただいま御指摘の点は、OECDの開発援助委員会におきましても、日本の援助の条件というものが非常に悪いという点はたびたび指摘を受けている点でございまして、開発援助委員会加盟十七カ国のいわゆるグラントエレメントの総平均がもうすでに八四%ということになってきておりますのに対しまして、わが国のいわゆるグラントエレメントは六一%程度でございますので、なお二十何%かの向上をはからなければいけないという事態でございます。したがいまして、わが国といたしましては援助の条件、特に金利でございますが、緩和につきまして努力を重ねておりまして、すでに、アジア地域でございますが、インドネシアに対しましては、二・七五%というのを昨年約束いたしました。それからいわゆる後発開発途上国という部類に属しますバングラデシュにつきましては、一・八七五%という金利を約束しておりますし、同じような条件にありますラオスにつきましては、ナムグムダムの第二期工事につきまして二%という金利を約束しております。  三木総理が、スエズ運河につきましては特別であるという御趣旨の御答弁をなさいましたのは、中近東に対しましては現在まだそこまでいっておりませんで、徐々にそういうことになってまいりますかもしれませんが、スエズ運河の国際性というところに目をつけまして、中近東の中では特別な金利を与えられたというふうに解釈しておる次第でございます。
  35. 河上民雄

    ○河上委員 まあ、日本ではあまり誠意のないことをべらべらしゃべるのは油を売るというんですけれども、借款の条件などにつきまして、いま清水の舞台からおりるつもりで思い切って好条件を約束してこられたということでございますが、こういうことは本来もっと腰を据えて、開発途上国に対してどういう援助の形態をもってやるかということをきめてから当たるべきではないかと思うのです。そうしないと、これはどうも油ごいに行って油を売って帰ってきたというような非難をあとになって受けるおそれもあるわけですので、ひとつこの点、すでに十分な方針なしに足を踏み出したようなかっこうでございますが、これは政府あげてもう一度腹をくくって考え直してもらわないと、再びあと五年か十年たちまして、日本は結局油がほしかったんだ、そのためにいろいろなことを約束したにすぎないんだということになりはしないかということを私は非常におそれるわけでございます。三木さんも小坂さんも、各地でいろいろお約束をしてこられましたけれども、油ごいに油売りというようなことにならないように、ひとつお考えをここでもう一度確認をしたいと思うので、単にいま約束してきたことを守るというだけではなく、今後の経済援助についてお二人から簡単に方針を、中東歴訪という非常に貴重な経験を生かして、自分としてはこういうふうに政府全体を持っていきたいんだということをひとつ伺いたいと思います。
  36. 三木武夫

    三木国務大臣 日本の海外経済協力というものは、国際的に見ても条件が悪い。これはOECDなどにおいてもその条件というものは、国際的な一つの水準があるわけですから、そういう点で二分の金利を清水の舞台から飛びおりなければならぬようなことできめなければならぬという日本の海外援助というものに対して検討を加えて、できるだけ条件をよくしていく。金額も金額でありますけれども、今後はやはり海外経済協力に対する条件というものをできるだけよくしていくということに、日本は努力していかなければならぬと私は思います。
  37. 小坂善太郎

    小坂(善)委員 私の場合、実は出発の前に各省の間でいろいろ詰めてもらいまして、その出た結論を出ざる範囲で話をいたしてまいりましたので、当然政府として実行すべき責任のある話をしてきたつもりでございます。したがってこれは必ず実行されます。しかし金額以外の諸条件については、先ほど経済協力局長から申し上げましたように、今後いろいろ検討して詰めてまいるということになっておるわけでございます。  そこで、全般論として申しますと、三木特使も言われたことと大同小異になりますけれども、私はやはりアメリカとかソ連というような超大国と競争して、全額において日本が海外援助の額を競うというようなことは、これはすべきでないと思います。むしろやはり日本には日本の特性があって、特に技術的なノウハウというようなものを生かす、そうした点で協力をしていくのがいいんじゃないか。しかも開発途上国が何を望んでおるか、彼らの心の行く方途をつかみながら、それに沿うた協力をやるように心を砕いていくべきではないか、かように思っておる次第でございます。
  38. 河上民雄

    ○河上委員 もう時間があまりございませんので、最後にひとつ三木総理に伺いたいのでありますが、エジプト指導者と話をされたときに、終局的にスエズ改修工事の協力を約束されて帰ってこられました。このスエズ改修工事を向こう側が持ち出してきた背景というものについて、三木総理はどういうふうにお考えになったか、また、こういうことがあらかじめ出るであろうという予測を持って行かれたのかどうか。特にこのスエズ運河というものが国際政治上もいろいろ意味を持っておるわけでありますし、また石油の輸送価格の上にも相当の影響がある場所でございます。そういう点について、三木総理のお考えを、御報告をいただきたいと思います。それをもって私の質問を終わります。
  39. 三木武夫

    三木国務大臣 日本出発いたしますときにも、スエズ運河の問題というものは検討をしてまいったのであります。大体の条件なども政府のほうで検討をしたその条件を持っていったわけでございます。先方と話をしてみますと、日本に対して協力を求めたいといういろいろな項目があるわけです。その一番先のプライオリティーはスエズ運河の改修につけておったわけで、日本もそういうことが話し合いに出るだろうということでこっちはもう準備をしておったし、向こうもまたこれを優先順位としては一番最初に持ってきたわけでございます。おそらくエジプト指導者はまだそのときにはスエズ戦線における兵力切り離しの話し合いがまとまった時期ではありませんけれども、そういうことは成功をするであろうという見通しの上に立っておったのかもしれません。そうなってくると、スエズ運河を開通するという時期というものは早められるわけですから、そういうことで、先方のほうとしても、そういう背景を頭に入れて優先順位というものを一番最初に持ってきたものだと私は思います。このことは、やはり国際水路でありますから、いろいろな各国の利害関係はあるにしても、日本のような海洋国家として、スエズ運河の再開に備えて、改修に対して日本協力するということは国際的にも意義のあることだと思うのです。スエズ運河は油と引きかえでありませんからね。日本がそういうスエズ運河というものが全世界的に有効に利用されるように協力するということは、意義のあることだと考えております。
  40. 木村俊夫

    木村委員長 松本善明君。
  41. 松本善明

    ○松本(善)委員 三木総理にいろいろ伺いたいのでありますが、中東へ行かれましてこれからの石油のいろいろな事情についても考えてこられたと思いますが、私はまず最初に、中東での国有化問題についての副総理のお考えをお聞きしておきたいと思うのです。  二月の十一日にもリビアはアメリカ系の三社を国有化いたしましたし、それから一月の三十一日にはクウェートがブリティッシュペトロリアムとガルフォイル、これの六〇%の資本参加協定に調印をするというようなことで、いまでも国有化の波というものはどんどん進んでいるというふうに私は思うわけです。これは現在だけでなくて、ずっと前からのことであると思いますけれども、ますますこの国有化傾向というものは進むんじゃないかというふうに思いますが、三木総理はどういうふうに考えておられるか、中東へ行かれた経験からお聞かせいただきたいと思います。
  42. 三木武夫

    三木国務大臣 リヤド協定で一九八二年五一%産油国がパーティシペーションといいますか、油を支配するというような協定があったわけでありますが、御承知のように、最近クウェートでは六〇%のパーティシペーションということでメジャーとの間で話がついて円満に解決をされた。ほかの国々もそういうリヤド協定よりもずっと時期を早めて、五一%どころか六〇%ということで、クウェート一つのきめられたパーティシペーションの割合というものは、中東諸国に影響を持ってくると思うのですよ。民間というものはないわけですから、油に国の支配力というものが非常にふえてくるわけですが、だんだんこういう傾向というものは強くなりつつある。そして産油国自身自分の油を支配するというような、そういうシェアというものはふえてくる。ただしかし、いま販売組織や輸送手段を持っておりませんから、一たん自分の手に入れた石油をまたメジャーにハイバックをしておるような形ですけれども、これがだんだんと輸送機関も持ってくると、完全な支配をするような時代はやはり将来に来ると思います。いまはただその割合だけをふやしてはいっておるけれども、実際に扱うのはメジャーであるというような、そういう過渡的な処置しかとれないわけでありますが、将来にわたってはもっとやはり産油国の支配というものが強化されてくる、これが大きな傾向であります。
  43. 松本善明

    ○松本(善)委員 ハイバックになるかそれともDDオイルがふえてくるかという問題はまたあとでお聞きしたいと思いますけれども、この国有化傾向を考慮に入れてわが国中東政策も考えなければならないのは当然だと思うのですけれども、それでもう一つお聞きしておきたいのは、アルジェリアが提案をいたしました資源問題等開発に関する国連特別総会の開催の見通しですね。それから、ここで恒久主権決議の問題が議題となる可能性等について御報告をいただきたい。
  44. 三木武夫

    三木国務大臣 政府委員のほうから答弁をいたします。
  45. 鈴木文彦

    ○鈴木(文)政府委員 アルジェリアが一月三十一日に国連の事務総長に資源問題一般という広い問題の討議のための特別総会の開催を要請いたしまして、事務総長がこれを受けまして、総会の議事手続と申しますか、それによりまして、この会議に参加するかどうかという照会を加盟国全部に出したわけでございます。その手続規則によりますと、照会を発してから三十日以内に加盟国の過半数がこれに賛成であるという回答をしました場合に会議は開催される。開催の日は、過半数の賛成が寄せられた日から十五日後ということになっておりますので、一番長い場合に四十五日目に開催される。したがって、大体三月の半ば過ぎには開催されるという計算になろうかと思います。現実にどの程度賛成の回答が寄せられたか、私、出る前に一番新しい数字を持ってきたのは、五十九カ国賛成の票が寄せられております。過半数は六十八カ国でございますので、おそらく見通しとしては今週中には開催の手続が開始されることが確実だというふうな見通しでございます。  それから、第二の点でございますけれどもアルジェリアの提案は資源問題全般ということでございますが、おそらくそのねらいは、資源問題を中心として先進国と後進国との間の新しい経済関係についてレビューをして新しい経済関係のワク組みをつくりたいというのが、おそらくアルジェリア提案の背後にある考え方ではないかと思います。これは実際に会議が始まりましてアルジェリアがどういう提案をするか、それを見きわめたいと考えております。
  46. 松本善明

    ○松本(善)委員 いままでのいろいろな動きからすれば、ここで恒久主権決議の問題がもう一回問題になることは、私はほぼ推察がつくのではないかというふうに思いますが、この天然資源に対する恒久主権の決議の問題について、いままで政府が答弁していた大体の問題点は、第一は国有化の権利が問題だ、それから第二が海洋資源に対する問題だということで答弁をしてきたわけであります。この天然資源恒久主権に賛成できない理由としてそういうことを言ってきたわけですが、この国有化問題について、海洋資源の問題についてはまた別の機会にしたいと思いますが、国有化をするということは、その国がどういうふうにきめるかということの権利を持っているのではないか、私はそういうふうに考えるのです。この問題について、その国の資源について国有化するとかしないとか、そういうことを他国が干渉できないのではないか。このことは、そういう立場をはっきりしておきませんと、中東アラブ諸国に対する関係でも、日本は一体何を考えておるかということになるかと思います。  この国有化について反対をするのかどうか、アラブ諸国石油資源を国有化するということについて反対をするのかどうか、この点についての政府の考えを聞いておきたいと思います。
  47. 三木武夫

    三木国務大臣 資源の保有国、それはやはり、どういうふうな形に持っていくかということは、その国の判断によるものだと思います。むろんその間、既成の権益との調整というものはその国がすべきであって、しかしそれを決定するものはその国自身であることは明らかであります。
  48. 松本善明

    ○松本(善)委員 それは政府の方針と伺ってよろしゅうございましょうか。
  49. 松永信雄

    ○松永政府委員 若干補足して御説明申し上げます。  国有化の問題がその国の管轄のもとにおきます財産その他について適用されるということでございますから、それはその国自身の主権の問題であろうと存じます。ただ、いわゆる財産権の尊重と申しますか、その観点から国有化が行なわれる場合に妥当な補償が行なわれるべきであろうというふうに考えております。
  50. 松本善明

    ○松本(善)委員 ちょっとその辺はことばじりですけれども、たいへん大事な問題で、妥当な補償が行なわれるべきだということが外国が言えるのかどうか。それはそういうことを希望しているということなのかどうか。それはそういう条件その他については、その国が決定すべきことであるというふうに私は考えます。そうでなければ、その国の主権の侵害だというふうに考える。その点ははっきりお答えをいただきたい。
  51. 松永信雄

    ○松永政府委員 具体的な問題につきましてどういう補償を行なうか、どういう措置をとるかということは、その国が決定すべき問題だろうと存じます。ただ、国際的な通念と申しますか、一般国際社会において基本的な人権あるいはその財産権の尊重ということが、これは国連等においても世界人権宣言でございますか等にも出てまいりますけれども、いわれていることでございまして、国際的にそういう問題を議論してはいけないということではないと存じます。
  52. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは、国有化がそういうことだということについての考えはお聞きしてわかりましたので、いわゆる二国間取引の問題を少しお聞きしたいと思うのです。  国有化傾向が進んでいくと、それについては反対することはできないということになりますと、これは当然に、先ほど三木総理もお答えになりましたけれども、ではメジャーにもう一回バイバックということでやっていくのか、それとも直接取引という方向が出てくるのか、これは当然問題になってくる。クウェートの場合も、日本などの消費国に対して直接取引が拡大するということを期待をしている、あるいはそこをねらっているということも言われておるわけであります。この二国間取引に対してわが国がどういう態度をとるかというのも、これまたきわめて重要な問題であろうと思います。  まず私は副総理にお聞きしておきたいのは、サウジアラビアのヤマニ石油相が日本に来られたときに、二国間取引の問題に触れて、日本長期的に考えた場合には一番条件を備えている、こういうふうに言った。これは広く報道されているところでありますけれども、この二国間取引を積極的に進めていくということが必要であろう、何も間にメジャーを置かなければならないということでは決してないと思う。この条件がありさえすればどんどんDDオイルを買う、そうして二国間取引を進めるということをやることが必要だと思いますけれども、その点についての副総理のお考えをお聞きしておきたいと思います。
  53. 三木武夫

    三木国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたごとく、やはり産油国のDDオイルといいますか、直接に支配する油はふえてくるわけでありますから、どうしても産油国とすれば、それといわゆる国内の開発とリンクしてやる、そういう傾向が生まれてくることは事実だと思います。したがって今後は、やはり大きなエネルギー問題というものは一国だけで解決できる問題ではないわけですから、どうしてもエネルギーの問題には国際協力というものが必要になってくるわけでありますが、一方においては二国間の協定というものも、将来はやはりそういう二国間協定の場合も非常にケースが多くなっていきますから、国際協力をするものは国際協力を大いに進めなければならぬが、一方において二国間協定というものも、今後実際問題としては進めていかざるを得ないと思います。  ただ、二国間協定の場合に、世界経済全体に非常に大きな悪影響を与えるような二国間協定というものは、そこには世界経済全体に非常な打撃を与えるような二国間協定というものは慎むべきであって、二国間協定にも節度が要るという、そういう態度は必要だろうと思いますが、傾向としては国際協力と二国間協定、この二本立てにならざるを得ないと思います。
  54. 松本善明

    ○松本(善)委員 御存じのとおりと思いますけれども、たとえばフランスはサウジアラビアイラク——これは取引拡大状況というのは、もうそんな緩慢なものではないと思うのです。いまどんどん進んでいる。すでに協定がされたり、それから協定を交渉中とか、打診中とかいうことだけでも相当になっていると思います。フランスがサウジアラビアイラク。西ドイツがイラン、アルジェリア。イギリスがイラン。イタリアがアルジェリアサウジアラビア。スウェーデンがリビアイラク。あるいはデンマークがサウジアラビア。こういうことがずっと出ているということは、もう広く報道されていることであります。日本態度は、早急にきめていくことが非常に重要だと思うのです。  私はもう一つ、いまの答えで、二国間取引がふえていくということはお認めになったのですが、サウジアラビアのヤマニ石油相のそういう考えに積極的に——もう具体的になっているわけですから、これに対応していくという考えがいま政府にあるかどうか、これをひとつお聞きしておきたいと思うのです。
  55. 三木武夫

    三木国務大臣 ヤマニ石油相の発言は、たとえばサウジの場合においても工業化をやりたいという希望が強いわけですね。そういうものに対して、技術とかあるいは経験とかいうものを日本は提供し得る条件を持っているわけですから、しかも中東に対して日本は政治的野心を持っていないですからね、中東で覇権を争うという立場には日本はないわけで、そういう意味において日本協力というものは、中東諸国からいえば受けやすい立場にもある。そういうことで日本の持っておる技術的な能力あるいは日本という国の持っておる中東に対する態度、そういうものからして、中東に対しての協力をする場合において日本が一番可能性を持っておる、そういうところからヤマニ石油相の発言があったものだと私は考えております。
  56. 松本善明

    ○松本(善)委員 もう一つお聞きしておきたいのは、そうすると、これは答えられないのであればやむを得ないと思うのですけれども、私はもうちょっと積極的に、サウジアラビアとの関係の二国間取引をもっと具体化をして進める考えをいま持っておるのかどうかということを聞きたいわけですが、もう一つあわせてお答えいただきたいのですが、キッシンジャー国務長官が消費国会議で演説した中では、二国間取引はあらかじめ合意された行動基準に従うことが不可欠であると考える、こういう趣旨の発言をしています。これは二国間取引に対して牽制をして、そしてアメリカが産油国に対抗しよう、こういう考え方だと私は思うのです。この考え方に賛成するか賛成しないか。これはアラブ諸国とどういうふうに今後やっていくかということでも非常に重要な問題だと思うのです。このキッシンジャー国務長官の考え方三木総理は賛成なのか反対なのかということと、先ほどのヤマニ石油相の発言についての積極的な政府の対応の姿勢の問題と、両方お答えいただきたい。
  57. 三木武夫

    三木国務大臣 サウジアラビアは、世界石油の四分の一ぐらいの埋蔵量を持っているといわれておるし、また石油の寿命というものが一番長い国の一つでしょう。そういう意味で、しかもDDオイルというものは交渉中であると聞いておりますから、これはふえていくわけですから、どうしても日本サウジアラビア二国間協定というものは今後拡大していくという考えであります。政府もまたそういう考えであります。またキッシンジャー長官の発言というものは、私は真意はよく知りませんが、二国間協定の場合においても、たとえば石油価格などでもいろいろ問題になっておるケースがあるのですよね。たとえばナイジェリアにおいて、イランにおいて、一応の国際的な水準から非常に飛び離れたような石油価格で取引をするということが、全体の世界経済秩序に対して非常な影響を与えることは事実ですからね。数量は少ないけれども、やはりちょっと考えられぬような価格で入札をして、二国間でいろいろ取引をするということは、世界経済全体に悪い影響も起こり得るわけでありますから、二国間協定を否定するということは現実には沿わない。国際協力と二国間協定との二本立てが現実的だと思います。  しかしその二国間協定の場合に、やはり一つの節度が要るという考え方は私も同意見であります。世界経済全体に非常な打撃を与えるようなことはあるべきではないので、そういうモラルオブリゲーションというものがあると思いますが、しかし二国間協定を否定するといっても現実は否定できないですからね。二国間のいろいろ政治的、経済的深い関係があるのですから、遺憾だといって否定することはできないわけですから、二国間協定を否定する考え方は現実的ではない。しかし二国間協定の場合にも、やはり国際社会の一員としてそれだけのモラルオブリゲーションは持つべきだという考えでございます。
  58. 松本善明

    ○松本(善)委員 キッシンジャー国務長官もその二国間協定は否定することはできない、それは各国の主権の問題だと言っているので、その点は当然そう言わざるを得ない。ただ問題は、いま消費国会議をやっていますけれども、アメリカは実は消費国の代表というには私は当たらないと思う。大産出国です。しかも世界の主要油田の大きな部分を占め、日本や西ヨーロッパについての製油所だとか、それから販路の大きな部分を支配もしていますし、これは消費国代表というには当たらないと思います。それからアメリカ系のメジャーとアメリカ政府は一体の関係にありますし、政府とメジャーが日本西欧諸国を引き連れて産油国に圧力をかけようというのが私は今度の消費国会議のねらいだと思います。  ですから、キッシンジャー国務長官が言っている、あらかじめ合意された行動基準に従うことが不可欠であるということに賛成をするということになりますと、これは産油国に対抗していこうという考えだと思うのです。それに賛成かどうかということを私はお聞きしたいと思っているわけです。それが先ほど三木総理が節度が要るということを言われたのは、キッシンジャー国務長官が言ったのと同じ趣旨のことを言ったのかどうか、このことを聞きたいのです。
  59. 三木武夫

    三木国務大臣 エネルギー問題というものは、石油問題をとっても、これは産油国消費国の対決の形でどうして解決できるでしょうか。石油を持っているのは産油国です。それを消費国はその石油供給を受けていろいろな経済的発展を遂げてきたのです。しかし、産油国はいろいろな工業開発などをやるために消費国からのいろいろな技術協力などを望みたいというのですから、お互いに基本的立場は私は対決の立場ではないと思う。だから、対決というものでなしに、もう少し産油国消費国というものがお互いに補い得るものを持っておるのですから、協力の体制をつくる以外に石油問題の解決はない。  それをキッシンジャー国務長官でも、消費国が力で産油国と対決しようという考え方を持っておるとは考えない。そんなことは持ったところで解決できないですから、したがってそういう、消費国消費国でブロックをつくり、産油国産油国でブロックをつくってお互いの力の対決をしようというものの考え方には反対であります。そんなことはできるわけはない。解決できるわけはないのですから、したがって今度のワシントン会議でも、もしワシントン会議というものをわれわれがいろいろ評価するならば、エネルギー問題というものは国際的な協力の面というものが非常に多い。一国だけで解決できない。新しいエネルギーの開発といったところで、これは国際的な協力を得る面が非常に多い。そういうことであの会議をワンステップにして、調整グループというのはカナダと日本の提案でそういう調整グループというものができたわけですが、これは次の産油国も入れた大きな国際会議に持っていくときの予備的な会談であるというところに意味があったと思う。だから対決というような形で、力で対決しようということでは解決できない。どうしても何らか産油国消費国とが協力できる道を発見するということが、やはりこれからの石油問題解決の課題である、こう考えております。
  60. 松本善明

    ○松本(善)委員 大体の方向、考え方の方向のようなことはある程度理解できましたけれども、確かめておきたいのは、二国間取引はあらかじめ合意された行動基準に従うことが不可欠だという趣旨のキッシンジャー発言には反対だ、こういうふうに伺ってよろしゅうございますか。
  61. 三木武夫

    三木国務大臣 それは私自身が、行動基準というのはキッシンジャー長官がどういうことをさしておるのか、これに対して詳細にキッシンジャー長官の意図をいま知っていないわけですから論評はできませんが、もしもそれが何か石油を国際的な機構でこれを統制しようというようなこと、そういう考え方があるとするならば、そういうことは不可能なことである。そういう意図で言ったのではないと思いますが、真意というものが私自身にはよくわかっていないですから、ここに論評はいたしません。
  62. 松本善明

    ○松本(善)委員 それは広く報道もされておることでありますが、副総理がそういうふうに言われればやむを得ないと思いますけれども、そういうことにははっきり反対をしていかなければならないと思います。  それから、最後にもう一つお聞きしておきたいのは、きょう副総理は、中東紛争原因についてイスラエルがシナイ半島やゴラン高原やエルサレムなどを武力占領をしたことが原因だということを言われました。私はこの中東紛争の問題についてはそう楽観した考え方を持つべきでないというふうに思っているわけです。たとえば去年の十一月二十六日にアルジェで開かれた第四回のアラブ首脳会議ですね、ここでは被占領地から、特にエルサレムからイスラエル撤退をすることと、それからパレスチナ人民の全面的な民族的権利の再確立ということを最高、不変の原則として宣言をしている。この二つの条件が満たされない限り、中東では不安定な爆発的な情勢と新たな対決の継続以外のことを期待することは幻想だ、こういうふうにいっているわけですね。ですから、イスラエル撤退させるということは、これは中東和平のために非常に重要だけれども、しかしこれは本格的にやりませんと、なかなかできない、いつまでも不安定な状態が続くという危険があるわけであります。  私は、三木総理原因イスラエル武力占領にあるということを言われるならば、これはやはり侵略だということをはっきり言うべきではないか。そうして、私どもは前から問題にしておりましたが、国連憲章四十一条の措置をとるように動くべきであるということを言っていたわけですけれども、この点については少なくも経済的な取引はやめるとか、具体的な行動をイスラエルに対してとるということがいま必要なんではないかというふうに思うわけです。  この点について三木総理のお考えを聞きたいわけですが、第一は、イスラエルの六日戦争でやったことは少なくも侵略であるというふうにお考えになるかどうか、そしてまたこれについての具体的な措置をやる、たとえば経済的な取引をやめるとか、そういうような具体的な行動をとるという考えを政府は持たないかどうか、この二点についてお答えをいただきたいと思います。
  63. 三木武夫

    三木国務大臣 武力によっての領土の拡張というものは、これは国連においても二四二号で撤退を求めたわけでありますから、このこと自体はこれは何人もそれを正しい行為であるといって承認する国はないわけであります。しかし、この問題がすでにスエズ戦線などで解決し、ゴラン高原の問題にいま話し合いは入っておるようでありますから、結局は全面撤退に持っていかなければならぬが、それを段階的に解決していこうということは、中東戦争のような複雑な戦争の解決としては、現実的にはそういう措置をとることはやむを得ないと思います。  そこでわれわれとしていまできることは、いろいろな問題を提起になりましたけれども、できるだけこの機運をとらえて、そうして中東和平というものの目的達成できるように、日本日本の力の及ぶ範囲内において協力するということが、日本政府がいま考えておる一つ中東紛争に対しての態度であります。やはり、せっかく起こってきておる平和の機運というものに日本ができるだけのことをして協力をしよう。現に国連軍が中東で、兵力切り離しの協定ができてもやはり長期にわたって駐とんをしなければならないわけです。これに対する費用であるとか、あるいはまたトランスポーテーションというような費用に対しても日本国連協力をしておるわけであります。今年度の予算にも計上になっておるわけであります。  こういう点で、この機運をとらえて和平達成するために協力する。このことは、私は決して楽観はしていないのです。これは容易なことではない。いま言ったような問題はたくさんにある。パレスチナ問題もありますし、エルサレムの問題もある。むろんその前提には、占領地撤退もあって、容易ならぬ問題があるけれども、しかし、この機会解決せなければ、これまた中東問題というものは不安定な状態に置かれるわけですから、世界の平和の脅威にもなるわけですから、まあ日本政府としては和平達成に対してできるだけの協力をするということが、政府がこの問題に考えておる一つ中東政策の中心であるわけでございます。
  64. 松本善明

    ○松本(善)委員 副総理がいま言われたように、いまは非常にいい機会だ、それがいま解決できなければ将来にも不安定な状態が続く。全くそうだと思うのです。そうしてあらゆることをやると言われるのだけれども、しかし実際には、事実上見ているということではないかと私は思うのです。そういう状態でいいのか。やはり撤退をさすということについて、もしそれが非常に困難なことだ、なかなか楽観できないことだということを三木総理がほんとうに思われているとするならば、日本政府はもっと具体的な措置を世界に先がけて、そういう不正義なやり方、私は、侵略だとはっきり言うべきだと思いますけれども、そういうだれも正しいと認められない武力占領、これを撤退すべきだ、それをしなければ経済的な取引もやめようとか、そういう具体的な措置をとるべき時期ではないかと思う。そういうことについてはまだ見ているということでありますか。その点だけ最後に伺いたいと思います。
  65. 三木武夫

    三木国務大臣 日本国連決議にも強力に支持しておりますし、国連決議による諸原則が実行されるために一番適切なと思う措置を政府はとろうと考えておるわけでございますが、現在の段階における政府態度は、せっかく起こってきた和平機運というものに対して日本があらゆる場において協力をしようということがいま考えておる点でございます。将来、そのときに一番和平に役立ち得ると政府が考える中東政策はとるということは当然でありますが、現在のところはそういうことが政府の考えておる中心でございます。
  66. 松本善明

    ○松本(善)委員 まあ、先を見通して私は見た場合に、やはりそれではだめではないか、もっとはっきりアラブ中東における正義の立場支持するという態度をもっと強力に出さなければならないのじゃないかということを指摘をして、私は質問を終わりたいと思います。
  67. 木村俊夫

    木村委員長 永末英一君。
  68. 永末英一

    ○永末委員 私は、日本の外交というのは、外務大臣がかわりましてもその底にやはり一筋の道がちゃんと敷かれており、それを日本政府が歩んでおるということを、相手方の国がそれに信頼をしておるということでなくてはならぬと思うのです。今回の中東戦争に関係して、いわゆる日本中東政策が変わったといわれました。きょうお見えいただいております三木さんと小坂さんは、ともにかって外務大臣経験者でございまして、このお二方が、いわば変わったといわれる中東政策を背後にになって、アラブ諸国を御歴訪になった。そのことが、よく新聞でいわれるように油ごいのために行ったというのであってはならぬのである。もっとも小坂さんは油が出ない国々をお回りになりましたので、直接にはそうは思われなかったかもしれませんが、私どもは、もしこの行動が単に油のためにわれわれの外交方針を変更したのだと映るならば、それは目先のことだけを考えれば、いわゆる産油アラブ諸国にはにこにこされるかもしれませんが、もう少しロングランでものを考えれば、一体日本の国というのはどういう基準で外交をやっているか疑われるかもしれない、こういうことを心配いたしますので、これから許された時間内で御質問いたしますから、お答え願いたい。  第一に、先ほど三木さんは、中東戦争の原因は一九六七年、六日戦争以後、イスラエルがこれこれ、これこれのところを占領しておるからだと言われました。何かある現状が原因なんだ、ある状態が原因なんだ、こういう御見解でございますが、それならばあなたは、六日間戦争というのは、なぜ、どこに原因があったかとお考えになりますか。
  69. 三木武夫

    三木国務大臣 イスラエルアラブ諸国との対立というものは、それは長い歴史に戻るわけでありましょうが、現実に国連などの国際社会の場で決議をして、この諸原則を実行するということをしようではないかということで決議をしたのは、やはり中東紛争解決の諸原則というものがまとまった形で国連の場に出てきたというのは一九六七年の安保理事会の二四二号の決議だと思うわけです。それは歴史をさかのぼれば、原因は私が言ったような単純なものではないと思います。しかし、国際政治の場で解決しようとするならば、そこまでさかのぼって解決できるかというと、なかなか容易なことではないですから、現在の中東戦争というものを国際政治のワクの中で解決しようとするならば、やはりどうしても一九六七年の安保理事会決議基礎とせざるを得ない。ずっと昔の歴史を振り返ってみると、これはなかなか容易に解決できる道が発見できるとは私は思わない。そういうことで申し上げたので、中東紛争の真の原因というものをそう単純に見ておるというわけではないのです。けれども解決しようとするならば、それは基礎にならざるを得ないという考えでございます。
  70. 永末英一

    ○永末委員 ただいまも三木さんは、一九六七年の六日間戦争の結果、これの解決策として安保理事会決議二四二号に盛られたものが何かまとまったものという表現をいまとられましたが、私はそうは見ていないのでございまして、この二四二号にはアラブ側とイスラエル側のそれぞれの要求や期待、願望というものがミックスされて書かれているのであって、だからこそ、一九六七年からすでに長い年月がたっておりますが、このことが実行され得なかったのは、ことばは一つでございますが、そのことばに対しての中身という解釈についてはそれぞれの側にいろいろな異論があったので行なわれなかった。私は、まとまってはいないというのがこの決議の性格ではなかったかと思うのです。  したがって、あなたが今度行かれました場合に、この決議に基づいてイスラエルが撤兵することがまず手始めだというような談話や声明をあちこちで発表されておられました。それにまたわがほうは官房長官談話で、この二四二号の早急かつ全面的実施、これは必要なんだ、こう言っておりますけれども、しかし、その官房長官談話の中で、たとえば一番強く訴えられたものは、「一九六七年戦争の全占領地からのイスラエル兵力の撤退が行なわれること」ということでございまして、それを受けておられるからこそ、先ほど三木さんは、今回の戦争の原因は、つまりイスラエルが六日間戦争以後占領しておった事実だと言われたのだと思うのです。  しかし、この「全占領地」というのは、実は二四二号には書かれていないのである。二四二号には、すでに御承知のとおり、「占領された領土からのイスラエル軍隊の撤退」と書かれており、別に英語を持ち出す必要はございませんが、テリトリーズ・オキュパイド・イン・ザ・リーゼント・コンフリクトということばである。まさにそのことばの中にはいろいろな意味が含まれております。同時にまたそれは、この項目のみならず、それ以外のいろいろな項目とミックスされてこのことばは生きておるのでございますから、それをこの点だけを取り上げて、もしわれわれ日本政府が、イスラエルの全占領地、つまり一九六七年以前、あの戦争が始まる前のラインまでイスラエル撤退せよということであるならば、それは一つの主張ではございますよ。しかし、そのことだけが、たとえば三木さんのことばを借りますと、わが政府は、中東戦争が和平に至ることを一番願っておるのだという解決策になるだろうか。二四二号というものは、いま官房長官談話で言われ、あなたが引用されたような「全占領地」という、英語はどうなっているか知りませんが、それが確固不動の日本政府の解釈なんですか。
  71. 三木武夫

    三木国務大臣 いま御指摘のように、二四二号というものは解釈によって多少の解釈上の相違があることは事実でありますが、しかし原則はあの中に入っておる。だから、それなら中東紛争基礎になるものはほかにあるかといったらないということ、これはパレスチナの権利の回復も入っておれば、その地域内における主権、領土、独立とかいうものの尊重も入っておれば、諸原則になるものは入っている。だからあれはやはり中東紛争解決一つ基礎にはなるわけです。それをどのようにして実際に移していくかという問題についてジュネーブにおける和平会議でいろいろ議論は出てくるでしょうが、一つの原則としては、あの原則というものを基礎にしなければ中東和平というもの、これは何も見通しが立たないわけであります。それからまた占領地からの撤退というのは、わが国の外交政策の中においても最もきびしい原則の一つは、武力による占領は認めないというわけでありますから、当然に日本の二四二号の解釈は、全占領地からの全面的撤退でなければならぬというのがわが国の解釈でございます。
  72. 永末英一

    ○永末委員 われわれも武力による占領などは一ミリも許すべきではない。北方領土なんてだからこそ返還運動をやっておるわけでございますが、ただわれわれがイスラエルアラブ諸国とのこの紛争に対してある見解を出した場合には、それが実現できるよう努力しなければいけませんわね。三木さんはこの前の訪問中にも、日本としてはそこまでやれない問題だというようなことを二カ所ばかりで新聞で談話をしておられた。そうだと思うのです。ジュネーブだってわれわれお呼びでないですからね。われわれがその席に行けるなら、「全占領地」というのはこういう意味だ。「全占領地」の中にはゴラン、ガザ地区、エルサレムも含まれるのでございましょう。そういう問題がありますから、私はそういうことを勘案しつつ、二四二号が——「全」というのは、英語でいえばオール・ザ・テトリーだと思いますが、一本にしてそういうことばを使わなかったところに意味があったのじゃなかったか。私は、二四二号が中東紛争解決のための一つの指針であることはあなたと同意見です。しかしながら、日本政府のやっておることを見ますと、その指針を深く足を踏み出して、アラブ側が従来主張してきたことばにのっとって発言しておるように思われる。そういうことが一体中東紛争をほんとうに解決するための、まさに局外者である日本としての立場だろうかということを考えてみなければならぬ問題だと思うのです。  たとえばパレスチナ人の権利が承認され、尊重されるなんというようなことばは、これは二四二号とは関係ございませんわね。いかがですか。
  73. 三木武夫

    三木国務大臣 その後何回かやはり。パレスチナに対しての決議——七〇年のパレスチナ人の自決権を尊重するという決議にも、西欧諸国では棄権をした国が多かったわけですけれども日本は賛成をして、そういうことで国連安保理事会決議に加えて、その後。パレスチナに対しての国連決議、これを加えたものが一つ中東紛争解決基礎になっていくと思うのです。
  74. 永末英一

    ○永末委員 だいぶ歯切れがおよろしくないようでございますが、パレスチナ人問題というのは、これまたいろいろな角度から、たとえばパレスチナ人の権利ということばを使いました場合に意味があるのでございまして、パレスチナ人自体は、自分たちの権利の正当な回復というのは、イスラエル国というものがあの地域からなくなることだということを終始一貫主張してまいったことは御承知のとおりだと思います。その場合に、われわれがそういういろいろな内容のあることを承知していながら、パレスチナ人の正当な権利の承認ないしは尊重ということばを使った場合、内容がよくわからない。私は三木さんが行かれたのは、官房長官談話は出たけれども日本のほんとうの方針はどこなんだということをまあ説明しに行かれたのだと思うのですね。国連決議なんというものは、各国の思惑でわっときてやるのでございますから、そこに書いてある文字にいろいろな解釈があるのはあたりまえのことでありまして、どういうことを一体パレスチナ人の自決権とかあるいは正当な権利の回復ということばで考えておられるのですか。
  75. 三木武夫

    三木国務大臣 いま御承知のように、各地に難民キャンプのようなところでパレスチナ人が非常な苦労をしておるわけですね。だから少なくともそのパレスチナ人が安んじて住めるような条件をつくらなければならぬ。これはやはり大きな国際的責任である。安んじて住めるような国を、そういうような条件をつくるということがどういうことかということは、これはアラブ諸国自身で、パレスチナ人も加えてきめられるべき問題だと私は思うのですよ。この問題に限って日本がいろいろこうすべきだということは言う権利はないと思う。アラブ諸国、あるいはまた。パレスチナ人も含めたアラブ諸国の人がいまのような不安定な、レバノンにもおれば、シリアにもおれば、ヨルダンにもおればというように分散してああいうキャンプの生活を続けておるわけですから、これに対してそういう人たちがその人たち希望をいれられて、そうして安んじて住めるような条件をつくるのには一体どうするかということは、やはりパレスチナ人も含めたアラブできめるべき問題だと思うのです。  言えることは、いまのような不安定な、各地に難民キャンプで生活するような条件はすみやかに解消さるべきでしょうね。そしてみんなが安心して住めるような条件をつくるということで、その方法論についてはパレスチナ人を含めたアラブ人たちできめるべきだと思うのです。これは私の考え方です。
  76. 永末英一

    ○永末委員 問題は、いま軍事力によってつくられているライン、これを平和交渉によって変えよう、変えなければならぬ、変わるだろうということは、そのラインをいままで保持してきたイスラエル側も承認しておればこそジュネーブ会議に臨んでおると思うのです。いま三木さんの言われたことは、その辺がきわめてあいまである。パレスチナ人だけの問題ではない。イスラエル側とのこれは折衝の問題である。同時にまた、ただ単に豊かに暮らすというのではなくて、パレスチナ人には権利の意識があればこそ、PFLPみたいな変なゲリラがあちこちに出没しておるのでございます。  三木さん、ちょっと話は違いますが、あなたずっとお回りになって、クウェート日本大使館がなぜ彼らに襲われて、田中さんお帰りでございますが、そして日航をそこに飛ばして来いということを要求したのでしょう。私はわれわれのアラブに対する外交政策、先年岡本公三などを中心とした赤軍ゲリラがテルアビブに行きまして、機銃や手りゅう弾で全然縁もゆかりもないイスラエル系統の人間を殺戮した。そのときの日本政府の反応は、あやまってイスラエル政府に償金等をたしか持って行きましたね。しかし岡本公三君の行動はアラブ側には非常に人気がよくて、あるところへ行けば、日本人を見るとミスター岡本とこう言うのだそうです。三木さんや小坂さんはそんなことはなかったと思いますが、それが今度はなぜクウェート日本大使館が襲撃を受けて、そして当然の事項であるかのごとくわが日本の日航の航空機の差し回しを要求したか。これは日本の外交政策の変換と何か関係があると思われますか、思われませんか。
  77. 三木武夫

    三木国務大臣 クウェートの事件を日本の外交政策の変更というふうには、こちらを主体に置いては考えてはいないわけで、あの場合としては、ああいう緊急の場合において日航機を差し向けるということは、やはり非常に危険が迫っているわけですから、その判断というものは私は正しいと考えます。
  78. 永末英一

    ○永末委員 私のお聞きしたのは、なぜ彼らが日本を相手にしたか。だれが考えたって、クウェートにはヨーロッパのほうの飛行機が行くのがきわめて短時間でございましょう。それはシンガポールに自分らの仲間が何かをやっているということもあったでございましょうが、わざわざ日航を指定してきたこと、そして彼らがあの当時外向きに発表したことの中には、要するに日本は油を買ってもうけ過ぎているから、これをやるのはあたりまえだというようなことを言ったと新聞には報道されております。われわれがしゃんとしなければならぬのはその辺ではなかろうか。  時間がないようでございますが、もう二つ聞きたいのです。  小坂さんはいまのようなアラブ側のわれわれの政策変更に対する評価、変更されたのか、しないのかも含めて、どう受け取っておるのか、印象を簡単に一言で言うてください。
  79. 小坂善太郎

    小坂(善)委員 先ほど申し上げたように、日本の親アラブ態度というものについては、従来からそう評価しておるのだけれども、何かああいう官房長官談話のような形で明瞭にされたことが非常に評価されるというような意見でございまして、特に国によっては政策変更ということばを使っておりましたけれども、私の説明を無条件に了承するという国ばかりでございまして、われわれが先ほど申し上げたこと以外に、アラブに対して特にこれから留意すべき点はないような感じでございました。
  80. 永末英一

    ○永末委員 これで終わりますが、パナスチナ人の権利に関する見解も、われわれがどうするのだというわれわれのはっきりした青写真をつくって、これは外へ出す出さぬは別ですが、そういうことでなければ、このような長年の年月を経ながらかもされてきた国際紛争に対して、いわば局外者としてコミットすべきものではないと私は思う。われわれはそう思っております。  したがって、言われた限りにおいては、これからあなた方のほうでつくっていただかねばならぬ問題、先ほどの領土という問題と全領土という問題も、全領土と言うたからにははっきりとしたある方針が示されておることになっておる。それを実現する能力というものについてわれわれがもし非力であるならば、これは非力でないと言われるかもしれませんが、非力であるならば、そんなに深くコミットすべき問題ではない。そのことをアラブ諸国説明するならば、日本政府立場立場としてわかってもらえるはずだ。何もそう勇んで足を踏み出すべきことではなかったのではなかろうかと思われます。  最後にお聞きしたいのは、中東紛争解決のためにわれわれはなすべきことをしたい、これは日本政府態度といわれますが、あの紛争以来イスラエル政府とは日本政府はどういうコンタクトをしておるのですか。中東紛争解決のため努力したですか。
  81. 三木武夫

    三木国務大臣 私はあなたと考えが違うわけです。日本自身がやらないことはあまり国際社会で発言するなということは、私はそうは思わない。日本はやはりこれだけの影響力を持った国でありますから、そういう紛争問題に対する日本の基本的考え方というものは明確にしたほうがいい。そのことはまた世界世論の形成にも影響を与えるものであって、明確に言ったほうがいい。そんなに全面撤退といっても、それをやれる力がないのにそれを言うべきでないという考え方は、私は持たない。やはりもっと明確に言ったほうがいいのだ。そのことが影響も与えることは事実ですからね。こういう国際世論というものは無視できない、力ばかりではやっていけないわけですから。  そういうことで、日本がたとえば武力によって領土の拡大を認めないというのは、これは日本の平和憲法の基礎になっているんですからね。それを強く発言することは当然のことであって、むしろあらゆる機会日本考え方というものを明確に述べたらいい。いままでは必ずしも明確になってない。こういうところに何か日本に対しての理解というものが世界に対して十分でない面があると私は思うのであります。  それからパレスチナ人の問題は、私はこういう点では日本が大いに尽くし得る余地があると思うのです。中東紛争解決したときには、パレスチナ人の地位というものもここできまるでしょう。そのときには、パレスチナ人のいわゆる民生の安定という面で、農業開発もやらなければならぬし、いきなり近代的な工業化ということは考えられないでしょうから、中小の工業というものも開発しなければならぬ。そういう点で、日本の尽くし得る余地は非常にあると思います。いまのところは、日本の案を示せといっても、これはやはりパレスチナ人自身の一つ希望もあるでしょうし、いま言われたイスラエルとかアラブ諸国が、これはどうしてもこの案を立てなければということで——私はパレスチナ人の問題についてアラブ指導者と話をしたわけです。ある人は、やはり新しい国をつくるべきだというし、そこまで結論に達していない指導者もあるわけであります。だから、アラブ世界においても、パレスチナ人の権利は回復されなければならぬということをみな考えておるけれども、その方法論については必ずしも意見が一致しておるわけではないわけです。だから、今後アラブ、あるいはその中にむろんパレスチナ人が入るわけであって、そういう意見で——どういうふうにするかという方向はわかっておるわけですね。いまのような状態というものは解消されなければならぬわけだ。それはやはりそういう問題については、原則的なことに対しては、私は常にもっと言うべきだという意見ですよ。しかしそういう地域社会できめなければならぬような問題に対しては、これに対して日本が発言するということは適当だとは思わない。それはやはりアラブ等の諸国あるいはイスラエルを含めたそういう一つの場においてこの解決を考えるべきであって、その後の、解決した後における民生の安定に対しては日本はできるだけのことをしたいという考え方、それでこのパレスチナ問題というのはいいんだというのが私の考えでございます。
  82. 小坂善太郎

    小坂(善)委員 ちょっと御参考までに、私チュニジアのヌイラという総理に会ったときのヌイラ氏の見解を御紹介したいと思うのですが、彼によれば、中東問題についていえば道徳的な考え方と法律的な考え方とある。道徳的にいえば、ほかの国にイスラエル人が入り込んできて国家をつくるということは不正である。しかし法律的にいえば、国際間でこれを認めておる。すなわち一九四七年にイスラエルの国ができたということを認めておる。国を認める以上、国境は当然にあるべきである。だから、法律的にいうとイスラエルというものを認めなければならぬけれども、その国境以外のところにはみ出しておるものは、これは当然法律的にも道徳的にも認められないんだ、こう言うのでございます。  すなわち法的にはイスラエル存在を認めるが、法的でない面から見るとパレスチナ人に国を与えねばならない。これが国際社会の原則に合致し、平和的解決に役立つ考え方であり、われわれは平和主義者であり、発展途上国にとって世界の混乱は望ましいことではない。平和のために戦うのは平等、正当、そして世界の道徳のためであり、これがチュニジアの立場である、こう言っておるわけであります。この場合、パレスチナ人に国を与えるということばが出ておるわけでありますけれども、さてそれを国にするのかあるいはある地域にするのかということについても、私の会った幾人かの指導者の中でいろいろ見解もございます。したがって、結論から申しますと、やはりこうした問題についてはわれわれは四つの原則を十一月二十二日の官房長官談話で言っておるわけでありますが、その原則を主張して、パレスチナ人に具体的などういう地位を与えるか、権利についてどういう具体的な形を与えるかということについては、関係当事者間で相談をしてきめてもらうということ以外にないのではないかというふうに思っておるわけでございます。
  83. 永末英一

    ○永末委員 私は時間がないのでありますが、お答えがないのでもう一度申しますが、イスラエルとの間は何かされましたか。
  84. 三木武夫

    三木国務大臣 これは政府委員から答えたほうが適当かもわかりませんが、日本中東政策というものは、イスラエルに対して、政府にもまたここに駐在する大使にも政府は必要のつど伝えておるわけでございます。
  85. 木村俊夫

    木村委員長 深谷隆司君。
  86. 深谷隆司

    ○深谷委員 ただいま永末委員お話の中に触れられた件で、シンガポールの石油施設の爆破事件並びにクウェート大使館の占拠事件の結末の問題からまずお尋ねをしたいと思うのです。  幸いなことに、各国協力と外務省、日本政府の努力で、人命はそこなわれないで無事に解決はいたしました。しかし、この問題の解決にあたっての外務省並びに日本政府の行動がすべて正しかったから、解決したとは限らない。そういう問題が残っておると思うのです。特にこのたびの、人命に損傷なしに救出されたというこの解決にあたりましては、イエメン政府のとった態度というものがきわめて大きな役割りを果たしておったことは私が申し上げるまでもありません。ゲリラの身柄の引き受けにつきましてはいろいろな国々が逡巡をしておりました。その中で自分のところで引き受けてやろうというその申し出が今度の事件の解決につながっておるわけであります。このことについて感謝をしておることはもちろんでありますけれども、どのように理解をされておるか、まず聞きたいと思います。
  87. 三木武夫

    三木国務大臣 御指摘のとおり、ああいう場合に、これを受け入れる国というものはきわめて限られておるわけであります。したがって、もし受け入れ国がないということならば、これはどうしようもないような事態になるわけでありますから、あの場合に日航機を受け入れてくれたということは、解決に対して非常に貢献をしたわけでございますから、われわれとしてこれに感謝をいたしておる次第でございます。
  88. 深谷隆司

    ○深谷委員 わが国の謝意の表明は実際にありましたが、国内的に見ても、人命が救助されたということだけでたいへん大きな喜びにひたっておりましただけに、あまりその謝意が国民的な形であらわれてこなかった。このことはたいへん残念に思うのであります。同時に、二階堂官房長官は特使を派遣して相手のイエメン政府に対して深甚なる感謝の意を表したいというような意向も漏らしておったと思うのでありますが、その後この問題はどうなっておるのか伺いたいと思います。
  89. 田中秀穂

    田中(秀)政府委員 南イエメン政府の好意と申しますものは、先生御指摘のとおりでございまして、日本じゅうで感謝をしなくてはならない問題だと思います。したがいまして、これに対しまして、私、参ったわけでございますが、アデンにおります間に本省から連絡がつきまして、私から、日本政府の名におきまして、先方外務大臣と会いましたときに、深甚なる謝意を表しました。それと同時に、外務大臣から、先方外務大臣にあてまして、直ちに謝電が発せられております。  特使の問題につきましては、実は私まだ十分に承知しておりませんが、これは検討の上での結論が出てくるのではないかと思っております。
  90. 深谷隆司

    ○深谷委員 テルアビブの事件のときにはもうすみやかな特使の派遣がなされて、そのことが日本の感謝の意を表するという点ではまことに正確に相手に伝わっているわけです。今度の事件は確かに人命はそこなわれなかった。しかし、一つ南イエメン政府の行動がなければたいへんな惨事を起こしたことは間違いがない。そこで当然私ども特使を派遣をして、あらためて日本の感謝の意を伝えるべきが少なくとも外交ではないだろうかと思う。特に昨年の石油危機以来中東政策の転換を叫ぶわが国の外交から考えましても、むしろこういうときにこそ率先して相手の国に特使を派遣して感謝の意を表すべきだ、私はそう思っていますが、三木先生いかがでございましょう。
  91. 三木武夫

    三木国務大臣 官房長官からそういう話が出ておりましたが、いまむろん政府から各国の世話になった政府に謝意は伝えたわけでございますが、これが一段落したところで、いま御指摘のようなことも含めてどういうふうに日本政府が謝意を表するかということは今後検討いたします。
  92. 深谷隆司

    ○深谷委員 こういうような行動というものは敏速さというのが非常に大事だろうと思う。そこで、政府で御相談なさるということはけっこうなんですが、三木先生としてはこういう場合には特使を派遣すべきだとお考えかどうか、この点伺いたいのですが。
  93. 三木武夫

    三木国務大臣 これは政府部内でどういうふうに、御指摘のように南イエメン政府があれを受け入れなければならなか解決のめどは立たぬわけでありますから、そういう世話になった国に対しての感謝の意思は表すべきだと思いますが、どういう形で感謝の意思を表すべきかということは政府部内でよく研究をいたします。
  94. 深谷隆司

    ○深谷委員 私がこの問題についてたいへんしつこく申し上げるのは、わが国がとってきた外交政策というものが昨年から大きく転換せざるを得ないような情勢になってきた。したがって、こういうときには敏感に反応するような体制というのが当然できておらなければいけない。その動作がきわめて鈍いといったような感じを持つからであります。早急にひとつ政府態度をおきめいただいて、少なくとも礼を失しない、今後の外交にマイナスにならないような処置をしていただくことを強く要望いたしたいと思います。  これに関連をいたすわけでありますが、関係の課長さんもお見えになっておられるようですから念のためにお聞きしたいのは、いま中近東アフリカ局は、局長以下何名の配置になっておりますか。
  95. 田中秀穂

    田中(秀)政府委員 中近東アフリカ局は、中近東課及びアフリカ課の二課より構成されまして、その総員は、実員でございますが三十九名でございます。
  96. 深谷隆司

    ○深谷委員 そしてその中近東アフリカ局で担当している国の数は幾つですか。
  97. 田中秀穂

    田中(秀)政府委員 中近東二十二カ国、アフリカ三十六カ国、合計五十八カ国でございます。
  98. 深谷隆司

    ○深谷委員 昨年中近東問題で相当論議がなされたときに、一番大きな焦点は何かといえば、外務省、日本政府といってもいいのですが、そういうような機関が相手の国を十分に理解をし、協力関係をもたらし、円満な外交関係を打ち立てていくということに欠点があった、十分ではなかったという点が問題でありました。昨年からこれらについては改良を加えるということは、しばしば外務省でも答弁なさってきたところであります。ところが今日に至るも中近東アフリカ局は女子職員も含めてわずかに三十九人、そして扱う国は五十八カ国、これで円満な仕事ができるでしょうか、十分な仕事ができるでしょうか、というような疑問を私は持つわけであります。つまりはっきり申し上げれば、かけ声だけは政策転換を行なったようには聞こえるけれども、中身は少しも変わっていない、こういう点を特に強く私は感じないわけにはいかない。  これは外務省の局の構成ばかりではないのであります。現地の大使館の職員、この配置もすこぶる人数が不足、語学のできる方もいない、情報収集でも手落ちがある、さまざまな問題をかかえたまま今日にきておると思うのであります。先ほどのクウェートの問題、シンガポールのこの事件に関する処置でも私は緩慢だったと思っておりますが、同じような背景が外務省の機構の上でも依然として残っている、私はそう思っているのであります。この点についていかがお考えでしょうか。
  99. 田中秀穂

    田中(秀)政府委員 従来中近東との関係が非常に緊密であったとは言い切れないのは非常に残念でございます。ただ、中近東の諸国、これはみな大体第二次大戦後独立した新しい国が多いというせいもございますが、確かに在外公館の配置、内容、その他不備な点があったことは認めざるを得ないわけでございます。  しかしながら、ただいま御審議中の来年度予算におきましては、在外公館といたしましてはアラブ首長国連邦大使館及び在ジョルダン大使館、この二館の新設が御審議中と承知しております。そのほかにカタール、カタールにはクウェート大使館からの出張駐在の形式で事実上の実館が設置されるということに相なっております。  そのほかのことばの点の御指摘がございましたが、アラビア語の人員と申しますのが、現在上級、中級合格者双方合わせまして三十四名おります。そのほか現地での研修者を入れますと五十名をこえる程度のいわゆるアラピストがおります。もちろんこれでははなはだ手薄でございまして、来年度におきましてはこの陣容強化に極力力を注ぎたいというふうに考えております。  現在中近東関係の在外公館の定員は九十六名にすぎないのでございますが、幸いにして若干の定員増が認められたと聞いておりますので、これを極力、官房と相談いたしまして、中近東方面に振り向けていきたい、かように考えております。  それから、本省の体制でございますが、これは中近東二課新設は残念ながら見送られたわけでございますが、中近東担当の書記官が認められまして、これによりまして省内体制も充実するのではないか。  それとまた今回の事件あるいは昨年八月の日航機ハイジャック事件の際にも痛感いたしたことでございますが、通信体制がきわめて整備されていない。これは日本の在外公館のみならず、一般的な問題もございますが、こうした点を考慮いたしまして、極力専用回線の設置その他の方法によりまして通信体制の整備につとめたい、かように考えております。
  100. 深谷隆司

    ○深谷委員 現地の大使館の充実ということは非常に重要な問題でございます。ただいまお話がありましたようなアラブやジョルダソの新設については、もちろんわれわれも全力をあげて協力しなければならぬと思っておりますが、たとえばイエメンの場合ですが、いまサウジアラビアと兼務でございますね。御承知のように、イエメン政府は南と北で紛争があって、片一方のほうはサウジアラビアとあまり関係がよろしくないというように聞いておるわけなんですが、そのよくない関係があるにもかかわらず、兼務という状態ですね。こういう状態で格別な支障はないかどうか。実は小坂先生がおられたらその点も伺いたいと思ったのですが、局長からひとつお答え願いたい。
  101. 田中秀穂

    田中(秀)政府委員 ただいま御指摘の南北イエメンの問題でございますが、北イエメンを兼轄いたしておりますのはサウジアラビアでございまして、今回お世話になりました南イエメンを兼轄いたしておりますのは在エジプト大使館でございます。したがいまして、兼轄上のトラブルというものは現在のところは全く生じておりません。
  102. 深谷隆司

    ○深谷委員 私は、たとえばイエメンの場合に南北に分かれていて、片一方はサウジアラビアと問題があるとすれば、いま現在、事柄としては出てこなくとも、今後いろいろな問題が起こる可能性もありますね。問題なのはその兼務ということに問題があるわけですから、そういう事柄も含めて、ひとつ早急にこれらの改良に当たっていただきたいと思うのです。  時間がございませんから、まことに残念なんですが、実は私どももこの間自民党の議員団七名で中近東を回ってまいりました。そのときに痛切に感じましたのは、すべてとは申しませんが、おおむね中近東の大使館の大使級の人たちにまだまだ問題があるような感じがいたしてならなかった。しばしば言われていることでありますが、わが国の外交はどうしてもアメリカを中心とするものであって、これから開発されるというような国に対しては、積極的なというよりは超一流の大使を派遣をしないといったようなうわさも流れているのであります。昨年の石油危機のときには、中近東方面に出される大使というのはうば捨て山だといったようなうわさが公然と流れましたし、新聞に出ましても何らこれについての反論もなかったというところを見ると、そういう感じがなきにしもあらずと私どもは思うのであります。  三木先生にお尋ねしたいのですが、ある大使館に参りまして大使と懇談をいたしました。現地は日本の窓口ですから、たとえば商社ともあるいは関係日本人とも円満なつながりを持ち、相互に協力をしていかなければならないことは当然であります。ところが、その某大使の口の端からのぼることばの中に、何々商社はダニだ、何々会社はダニのようにきらわれているといったようなことがぽんぽん飛び出すような状態なんですね。エコノミックアニマルというような悪い評判が立っている。さまざまな商社もそれはありましょう。ありましょうが、そういうものもチェックし、セーブすることも大事な役割りであると同時に、正しく伸ばすことも必要なことなのであります。ところが、わが国を代表する大使館の大使が公然とそのような口ぎたないことばを使って平然としている。あるいはある参事官に会いましたら、たいへんお酒を飲まれる方で、お話をすることは、こういうような地域に流されたという嘆き悲しむことばばかり。こういうような状態で外国との十分な外交関係が打ち立てられるとは思えない。私どもは何人かの議員でそういう場面に遭遇いたしまして、このことを強く感じたのであります。この点についてどうお考えでしょうか。
  103. 三木武夫

    三木国務大臣 ご指摘のように、どうもいままでの外交の布陣が欧米といいますか、そういうところに重点が置かれておったことは事実です。しかし、そういう国々は外交の軌道に乗っておるわけですから、むしろ発展途上国というものの大使の持っておる役割りというものは非常に大きいものがある。自分が意欲的に動かなければ、軌道は敷かれていないわけですから、今後、最初に御指摘のあった陣容の強化、それからまた意欲的な大使を発展途上国に向けるとか、そういう点で外務省の機構、人間の布陣についても大いに反省を加えて検討してこないと、どうもいろいろな問題で——問題が多いですからね、発展途上国のほうに。いろいろ新しい問題が起こってくるのですから、こういう点では将来改革を加えなければならぬ問題点だと私は考えております。
  104. 深谷隆司

    ○深谷委員 中東地域は、もう申し上げるまでもなく石油だけの問題でこれから話題になる国ではありません。政治的にも文化的にも、あらゆる面で非常に重要な位置を占めてくるであろう、私はそう思うのであります。昨年のあの石油危機が、災い転じて福となるように、この機会に、以上申し上げたような問題も含めて、まことにこまかい問題にもわたりましたけれども、そういうような事柄のすべてが日本という国と相手の国との接点になっておるわけでありますから、存分にひとつ検討を加えて誤りなきようにぜひ事を進めていただきたいと思うのであります。  時間がなくてまことに残念でありますが、また次の機会質問いたします。ありがとうございました。
  105. 木村俊夫

    木村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時五十六分散会