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1974-02-28 第72回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年二月二十八日(木曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 安井 吉典君   理事 伊藤宗一郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 佐々木義武君 理事 田川 誠一君    理事 前田 正男君 理事 石野 久男君    理事 原   茂君 理事 瀬崎 博義君       加藤 陽三君    河上 民雄君       山原健二郎君    近江巳記夫君       北側 義一君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      森山 欽司君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     片山 石郎君         科学技術庁計画         局長      安尾  俊君         科学技術庁研究         調整局長    千葉  博君         科学技術庁振興         局長      木下  亨君         科学技術庁原子         力局長     牟田口道夫君         科学技術庁原子         力局次長    伊原 義徳君         科学技術庁原子         力局次長    生田 豊朗君  委員外出席者         原子力委員会委         員       井上 五郎君         外務大臣官房審         議官      杉原 真一君         外務省アメリカ         局外務参事官  角谷  清君         水産庁海洋漁業         部審議官    米澤 邦男君         資源エネルギー         庁石油部開発課         長       豊島  格君         資源エネルギー         庁公益事業部原         子力発電課長  児玉 勝臣君         運輸大臣官房海         洋課長     新藤 卓治君     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(科学技術振興の  基本施策)      ————◇—————
  2. 安井吉典

    安井委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。科学技術振興基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石野久男君。
  3. 石野久男

    石野委員 外務省の方がおいでになっておられますが、きょう局長おいでになっていないようですけれども、去る二十日に、外務省アメリカに対して、原子力潜水艦のわが国への寄港を見合わせてもらいたいという申し入れをしたという情報を聞いておりますが、それは事実でしょうか。
  4. 角谷清

    角谷説明員 外務省といたしましては、本問題が生起いたしまして以来、米側に対しましては、問題の重要性、問題のポイント、国会における御議論、世論の反応等々を、随時、当地大使館を通じまして通報いたしておりまして、加えて科学技術庁におかれます種々の問題の御検討等進行状況等もあわせまして、米側には随時連絡をいたしまして、米側理解を求めることにつとめてまいっておる次第でございます。
  5. 石野久男

    石野委員 こまかいことはいいんですが、そういう、寄港を見合わせてもらいたいというような連絡をしたかどうかということを。
  6. 角谷清

    角谷説明員 ただいま申し上げましたとおり、アメリカ側に対しましては、この問題につきまして理解を求めるということで、随時緊密に話し合いを続けておる、こういう次第でございます。
  7. 石野久男

    石野委員 理解を求めるということは、原潜寄港中断を要請したとい画ふうに受け取ってよろしいですか。
  8. 角谷清

    角谷説明員 原潜寄港中断を要請したというおことばでございますけれども、私といたしましては、現時点におきましては、原潜寄港の問題も含めまして、いろいろな問題をアメリカ側随時通報協議を続けておって、先方理解を求めつつある、こういうように御答弁すべきだと思います。
  9. 石野久男

    石野委員 分析研分析データが捏造されておるという事件が起きてから、国民原潜に対して非常に危惧の念を持っております。そういうことも含めて、向こう側といろいろと理解を求める折衝をしている、そういうふうないまの答弁ですから、やはりそのことは、外務省としては、この間、問題がはっきりと解明され、また分析能力が十分出るまでは、原子力船をなるべく寄港させないようにという国民の声をアメリカ側に伝えるということは、自然のことだ、当然のことだと思いますが、そういうような意味での話し合いをしている、こういうふうに受け取ってよろしいわけですね。
  10. 角谷清

    角谷説明員 重ね重ねで恐縮でございますけれども問題点、それからいろいろな国会における御議論あるいは新聞等にあらわれております反響等を含めまして、問題を全般的にとらえつつ、先方理解を求めるべく話をしておる、こういうことでございます。
  11. 石野久男

    石野委員 先方は、それに対してどういうような意向を示しておりますか。
  12. 角谷清

    角谷説明員 当地大使館を通じまして話をいたしておるわけでございますが、先般二十一日のワシントンにおける国務省記者会見におきまして、国務省キングという報道官本件に言及いたしまして、二月一ぱい原子力潜水艦寄港はないであろうという発言はいたしております。この発言をしたという事実は、当地大使館を通じまして、われわれも聞いております。したがいまして、米側反応と仰せられますと、さしあたっての反応というのは、このキング報道官記者会見というものと申すべきであろうと存じます。
  13. 石野久男

    石野委員 外務省としては、そういうキング報道官応答というものに対して、一応理解を求めることについて意思は通じた、というふうに理解しておるわけですか。
  14. 角谷清

    角谷説明員 私どもといたしましては、われわれの気持ちをアメリカ側も十分考えていてくれておるとは思います。そのあらわれの一つとして、キング報道官発言もあったものと了解しております。  ただもちろん、このキング報道官発言というのは、二月末までは来ないということでございまして、それ以降のことについては、何も言っておるわけではございません。
  15. 石野久男

    石野委員 二月末ということになりますと、きょうがもう二月の末ですね。理解を求めた点は、きょうでもう一応ピリオドを打つわけです。しかし分析研の問題が出てから、事態は、いろいろな努力をしておるけれども分析作業自体について、まださだかな、仕事をするという見通しが確立されていない。とすれば、外務省米側に対して、これらの事態についていろいろと理解を求めたという内容には、いささかも進展はないわけですから、二月末現在で、キング報道官期限が切れたとした場合、あすから三月に入っていきますが、三月に入った時点では、事前にそういう連絡をしたことを、あらためてまた、その期限以後、二月末以後の事態について申し入れをする用意がありますか。
  16. 角谷清

    角谷説明員 ただいま、二月末まで理解を求めたという仰せでございましたけれども、それは別に二月末まで理解を求めたということではございませんで、要するに一般的に理解を求めておるということでございます。今後どうなるかという点につきましては、現時点では、私といたしましては、特に何も申し上げる立場にない、このように御答弁させていただくべきだと思います。
  17. 石野久男

    石野委員 分析研問題が出て以後、特に各地における寄港地でのコバルト六〇等の問題などもあって、住民なり国民のこのことについての憂いといいますか、危惧というものは拡大しても、その後の事態は、いささかもこれでいいんだという安心感を持つような状態になっていないと思うのです。したがって、外務省米側に対して理解を求めたという点についての行為を、非常に適切な行為だと一般には受けとめております。キング報道官は二月末まではそうしましょうと言ったが、外務省としては、キング報道官のその応答は、二月以降においても効力を発生するものだと認めておられるならば、それでいいのですが、そうでなく、それは二月末までは、ということでピリオドを打ったとするならば、当然外務省としては、三月以後におけるこの種の問題についての折衝をやはりすべきだろう、こういうふうにわれわれは思うし、また、そうすることを国民は望んでおると思いますが、外務省としては、その用意がありますか。
  18. 角谷清

    角谷説明員 先ほども申し上げましたとおり、キング報道官なる者の発言は、二月以降については、別に何も言っておらないわけでございます。それから外務省といたしましては、米側との話と申しますか、米側十分本件問題点等随時連絡協議を続けるという態度は、これはもちろん今後とも続けていきたい、かように思っております。
  19. 石野久男

    石野委員 いま参事官答弁があったように、外務省は、この件について、今後もやはり折衝するという点を私は了とします。したがって、この件については、分析問題に自信の持てるようになるまでは、国民原潜の放出する放射能問題について非常に危惧を感じておりますから、やはり折衝を続けてもらうように、これは希望しておきます。そういう点は、きょう大臣局長も来ておりませんけれども参事官から外務大臣に対して、はっきりと伝えてもらいたいし、またあなたの意向も、それについてお聞きしておきたいと思いますが、いかがですか。
  20. 角谷清

    角谷説明員 本問題につきまして、アメリカ側理解を現在求めつつございますし、この努力を今後も続けたいということは、私が申し上げまして、この点はもちろん大臣も御同一であると了解いたしております。ただ、その結果がどうなるかということは、またこれは一つ別の問題でございまして、この時点で、将来この問題がどういうふうになるかということまで、私が申し上げておる次第ではございません。ただその努力外務省としても続けるつもりであるということを申し上げたわけでございます。
  21. 石野久男

    石野委員 長官にお尋ねします。  長官もすでに御承知だと思いますが、外務省のそういう折衝と見合うような形で、たとえば長崎の市長諸谷さんは、あらゆる核保有国軍艦入港を、このことを契機として拒否するということを談話で発表しておりますし、それから横須賀市長もまた、外務省のこの行為に対して賛意を表しております。森山長官は、この前私の質問に対して、何も知りませんということでした。その後閣内で、外務大臣折衝お話をしたと思いますが、本件についてどういうふうに理解しておりますか。
  22. 森山欽司

    森山国務大臣 この前の科学技術特別委員会で申し上げましたが、今回の事態はまことに遺憾な事態でございます。そしてこの善後措置につきまして、鋭意努力をいたしておるわけでございますが、その進捗状況につきましては、科学技術庁原子力局のほうから、外務省アメリカ局のほうに、随時連絡をいたしておる次第でございます。  原子力潜水艦寄港に対する体制が当面未整備な状態、不備がある状態については残念しごくでございますが、私ども立場から原潜入港について云々するということは、まあ俗にいえば、言えた義理ではございませんから、私どもはこの対策進行状態について外務省のほうにお話をしておるということでございます。私が外務大臣お話ししたところによりますと、その実情について、外務省のほうから随時米軍のほうと連絡をとっておるということでございますし、外務省のほうでは、これについて慎重に検討をしたいということをいっておるというふうに聞いておりました。しかるところ、先生指摘のごとく、二月一ぱい入港しないという明確な意思表示が、アメリカのほうからあったように伝えられておる、そういう事実があったということも聞きましたが、これは二月一ぱいということでありまして、三月以降については、いまだコメントはないというふうに聞いておるわけでございます。私どもといたしましては、一日もすみやかに体制立て直しをして、日米安保条約上の義務の履行に遺憾なきを期するというほかに、今日の段階は、それ以上のことは申し上げられない、そういうことでございますので、どうかひとつ御了解を願いたいと思います。
  23. 石野久男

    石野委員 日米安保条約に対して、政府の責任をとらなければいかぬということですが、伊原原子力局次長が、二十五日の参議院決算委員会で、沖繩ホワイトビーチなどでは、いわゆるコバルト60が、たとえばシャコ貝で六十二ピコキュリー、あるいは海底土の中から百七十八ピコキュリーという非常に高いものが出ているということに対する質問をしたのに対して、やはりこれは原潜放出放射能疑いがあるという答弁をしておる。そういう政府見解がある以上、原子力潜水艦を、しかもその放出放射能に対する分析のはっきりした作業体制というものができていないときに、日本がやはり原子力潜水艦入港を無放任で許すということは、幾ら日米安保条約がどうであろうと、これは国民感情からしましても、また実際の危険に対する安心感というものからいっても、許されることじゃないと思うのです。大臣はいま、アメリカに対してあれこれ言えた義理じゃないという話ですが、外交折衝外務省がすることでしょうけれども、しかし国民の安全に対して、特に科学技術庁長官は、放射能問題についての関心というものは外務省よりももっとやはり強くなくちゃいけないし、そういう立場からすれば、当然やはり直接アメリカに言わなくとも、外務省に対して強い要求をすべきでないか、こういうように私は思います。ですから、長官がやはり外務省にすべてをまかしているというような態度をとるということは、私はまずいと思うのです。もっと積極的に、この問題について、解明自信が確立するまでは、やはり国民危惧を与えないように、心配をさせないようにする努力を、長官自身がとらなければいかぬのじゃないかと思うが、そういうことは考えていませんか。
  24. 森山欽司

    森山国務大臣 先般の不祥事態に対して、ただただこれ恐縮するのみでございまして、何とかしてその体制立て直しを一日もすみやかに実現することが任務であると考えております。先生のおっしゃるお考えもわからないではございませんが、やはり科学技術庁長官といたしましては、ただいま申し上げたようなことで、事態に対処をしてまいりたいと考えております。  ただ、先生が先ほどおっしゃいましたコバルト60の問題でございますか、沖繩の問題につきましては、実は私は専門家でございませんから、ピコキュリーなんというのが出てまいりますと、どういう単位なのかわかりませんし、またそういう単位で出てきた数値というものが、ほんとうに危険なものかどうかということについてもよくわかりませんし、またさらにそれがアメリカ原子力潜水艦から出たのではないかと受け取れるような発言が、先般原子力局次長からございましたが、その点についても、はたしてどうなんだということで、私自身関心を持って、その問題の調査を、事情を聞いてみましたが、どうも私は専門家でございませんから、専門家原子力局次長から、この問題についての解明をいたさせたいと思いますので、この点はそういうふうにお取り計らいを願いたいと思います。
  25. 伊原義徳

    伊原政府委員 先生指摘の、参議院決算委員会での私の発言でございますが、まず初めに、私の説明が非常に至らなかったために誤解を与えたことになりまして、たいへん申しわけないと深くおわびいたしたいと思っております。  実は、コバルト60がどのようにして海底土なり海水の中にあるかという原因につきましては、いろいろ考えられるわけでございますが、まず放射性降下物によるもの、あるいは最近の鉄にはことによってはコバルト60が含まれている、こういうものがあります。それから、原子力潜水艦可能性があるということで、いろいろのことが考えられておりますが、実はこれは科学的には、まだ明らかでない点が非常に多いというのが実情でございます。私は、その辺につきまして、沖繩数値加藤先生から御指摘いただきましたときに、その数値信頼性は別といたしまして、現在までのデータによりますと、沖繩数値、特に那覇港の数値は、原潜寄港していない港に比べてやや高いということがありましたものですから、放射性降下物のみによるものではないのではないか、したがいまして、原潜疑いを全く否定できるほどの科学的根拠は、いまのところはないかもしれないということを申し上げたつもりでありますが、ただ、これは先ほど大臣からも申し上げましたように、人体影響は全く考えられない、こういう程度の、痕跡程度のものでございます。したがいまして、コバルト60がいかにして海底土の中にあるかという原因についての知見が十分でない。放射性降下物によりますこういう場合の最高値がどの程度であるか、こういうこともまだ明らかでない。こういうことでございますので、結論といたしまして、原因については全く不明であるといわざるを得ない、こういうことでございます。今後とも追試を重ねまして、そのコバルト減衰状態を見ることとしておりますので、私の説明が非常に舌足らずで、誤解を招きまして、御迷惑をおかけいたしましたことは、たいへん申しわけございません。
  26. 石野久男

    石野委員 参議院答弁された議事録はいま私は持っておりませんけれども参議院答弁したこととここの答弁との食い違いがあるというと、これは問題が出てまいります。この問題はやはり多くの新聞記者諸君も見ておるし、聞いておるし、それからわれわれもまた質問を聞いておりますから、次長が言われたことの中には、降下物だけではないだろう、原潜疑いもあるというふうに受けとめられる、そういうふうにはっきりした答弁をしておるとわれわれは思います。だから、一つのことについて、いろいろな答弁食い違いがあることになるとたいへんですから、これはあとでもう一度はっきりと、誤りのないようにひとつしてもらいたい。  私はやはり、かりにその放出放射能人体には危害のないごく微量なものだといっても、その微量なものだということが問題なんですよ。それが累積していくという可能性と、それからやはり半減期が非常に長いということと、原子力に関連する放射能については、半減期問題等も含めて、累積することの危険性をわれわれはいつも考えなければならないし、またそのことのゆえに論議が沸騰しているでわけすから、やはり簡単な答弁の訂正などはしないように願いたい。私はいまの次長答弁が、参議院答弁をくつがえすものであるとするなら、これは問題だということだけを申し述べておきます。  いずれにしても、私は原潜寄港した沖繩ホワイトビーチ、あるいは佐世保においてもそうでしたが、やはり原潜寄港するごとに放射能問題がやかましくなるということは、放出している事実があるからだということだと思います。したがって、やはりそういう事実があるのに、原子力関係する科学技術庁が、国民立場に立った処置をしないということはまずいと思うのです。これは長官もそうですが、特に原子力委員会の実際に仕事をしております井上委員長代理は、こういうような問題については、全く無関心であってはいけないと私は思います。井上さんは、この問題についてどういうふうにお考えになっておられるか、ひとつ所見を聞かしてもらいたい。
  27. 安井吉典

    安井委員長 ちょっと、その前に、いまのは、統一見解の御要求はきちっとされて、その次の質問ですね。
  28. 石野久男

    石野委員 そうです。
  29. 伊原義徳

    伊原政府委員 いまのをちょっと補足させていただきたいと思いますが、実は昭和四十八年十一月の第十五回放射能調査研究成果発表会というのがございまして、もちろんこれは公開のあれでございますし、報告書が出ております。その中で、海上保安庁の専門家発表によりますと、放射性降下物の中においても、あるいは原子力軍艦寄港しない港においてもコバルト60は検出されており、微量コバルト60は、そのまま原子力軍艦による汚染とは結びつかないという見解でございます。また検出されたコバルト60については、これが何からもたらされたものであるかを明確にすることは困難である。原子力軍艦関係のない他の港においても、コバルト60が検出されているので、この程度の量では原子力軍艦によるものであると断定することは困難である、こういう見解がございます。こういう専門家見解もございますので、御報告いたします。
  30. 石野久男

    石野委員 そうすると、いまの次長のその説明は、参議院でのあなたの答弁とは違いますよ、ということなのかどうなのか。もし参議院答弁と違うということであるならば、そこをはっきりしなければいけないから、私はいま正式に議事録を持っておりませんので、もしなんでしたら、ここへひとつ議事録をとってもらいたいと思うのです。そしてやはりその点を突き合わせをはっきりしてもらってから、質問をいたします。
  31. 安井吉典

    安井委員長 いますぐお答えができるのですか。参議院議事録との関係をきちっとさせたお答えを、いまいただけますか。
  32. 石野久男

    石野委員 参議院議事録をとってください。
  33. 安井吉典

    安井委員長 あとで統一的な答弁というのをしていただけますね。——そういうふうにしますか、いますぐやりますか、どうしますか。
  34. 石野久男

    石野委員 いま次長から、かねてこういうような見解がありますというようなことを、この席で答弁があると、やはり私の質問に対して反論していることになりますから、その答弁がある限りは、私もその問題について一応私の意見を言わなくちゃいけませんから、だからいまの次長発言がそういう発言であるとするならば、私は参議院答弁はどうなんだということをはっきりしてもらわなければ、質問、先にできませんですよ。
  35. 安井吉典

    安井委員長 速記をとめて。   〔速記中止
  36. 安井吉典

    安井委員長 速記を始めて。  それでは、いまの件については、参議院における速記録を取り寄せて、その検討の上で、さらに答弁をしていただくことにいたします。  井上原子力委員
  37. 井上五郎

    井上説明員 原子力委員は、申し上げるまでもなく、原子力基本法に基づいた設置法によりまして、私ども委員を拝命しておるわけであります。と申しますことは、私どもの職制は、原子力平和利用に限られておるわけでございます。しかし、ただいま御指摘のように、もしも異常な放射能その他一般国民保健上好ましからざることがあるならば、原子力委員としては、当然これについての関心を払わざるを得ないわけでございます。御指摘の問題につきましても、私ども事情は聴取をいたしております。ただし、伊原次長参議院でいかような答弁をしたか、私も速記録を見ておりませんから、これについては私何も申し上げませんが、ただいま御指摘ピコキュリー——ピコキュリーというのは、申し上げるまでもなく、マイクロマイクロキュリー、すなわち一兆分の一でありまして、かりにそうしたものがありましたといたしましても、これが国民保健上重大なる影響があるものとは考えておりません。
  38. 石野久男

    石野委員 これは井上委員長代理の、国民保健上重大なものでないという考え方、その考え方について、私ども非常に異議がございます。確かに量は少ないけれども、それだけのものがバックグラウンドに加わってきますから、それが数多くしげくなってくれば、当然やはり累積することだけは間違いないわけですよね。そういうものについて、原子力委員会が、これは国民保健上たいしたことはないんだという、この安易な考え方の中に、安全性に対する国の考え方なりあるいは原子力委員会考え方が象徴されていると思うのです。これはきわめて重大なことだと思います。私は、ピコキュリーというものが非常に微量なものであることはよくわかっておりますけれども、しかしそれがバックグラウンドに、あちらでもこちらでも加算されてくるんだということは忘れちゃいけないんだと思います。そういうことについてのやはり厳重な警戒と関心を持っていくことこそが、原子力委員会に対して期待されるものであると思うのですよ。委員長代理井上さんが、それはたいしたことはないんだという考え方を持っていることについては、これは今後われわれこのことに携わる者として軽視できない。私は、おそらく委員長が何かの思い違いをして発言したんだろうと思いますがね。少なくともあなたの職責におって、こういう発言を聞くとは私は思わなかったんですよ。もう一度ひとつお考えを聞かしてもらいたい。
  39. 井上五郎

    井上説明員 委員といたしまして重大な関心を持つべきである、私どもまさに重大に考えております。ただ、申しました問題は、数字的な判断から申しまして、ピコキュリー、あそこで検出されました程度のものが、結果的に国民の健康上重大なる影響を与えるものではないという判断をしたということでありまして、この問題を委員会として軽々に扱っておる、あるいは御指摘のような態度で扱ったということではございません。十分御指摘の点は、私どもも全く同感でございまして、この点は誤解のないようにお願いしたいと存じます。
  40. 石野久男

    石野委員 これは重大な関心を払うべきだと思います。  それからもう一つ、私は委員会の皆さんにお願いしておきたいことは、このことはその時点では重大なことではないんだという判断と、しかし原子力船が入ることによって、やはり放射能を持っておるところの物質が放出されておるという事実が明らかになった場合は——原子力船は、先ほど長官も言われるように、日米安保条約に基づいて何べんでも入れる用意政府はしているわけですよ。そうすると、この微量なものが数多く加算するという、過去から現在、将来にわたるところの見解が、原子力委員会見解として述べられなければいけないのじゃないだろうか。原子力船はもう一回だけだということであるならば、私は井上さんのその発言は了といたしますけれども——了としないけれども、まあしかたないだろうと思います。だけれども、まだこれからしばしば原子力船が入るのだ、あるいはまたあなた方は日本でも原子力船をつくり、そしてますます多く航行させようとしておるとか、あるいは発電所をつくる、再処理工場ができるというようなことで、そういう放出物質がますますふえていくというときに、このピコキュリーというようなものはたいしたことはないのだという考え方ではまずい。だから私は、やはりこの考え方はその時点だけでとめるのではなくて、将来にわたってもたいしたことはないのだと言えるのかどうかということについて、ひとつ井上さんの御意見を聞いておきたい。
  41. 井上五郎

    井上説明員 まことにごもっともなことでありまして、もしも原子力船入港することによって、そうした放出がたび重なって非常に大きな値になるであろうという予測ができますならば、先刻申しましたように、私どもは法律的の職責は別といたしまして、これは国民保健上好ましくないということを申し上げざるを得ないと思うのでありますが、ただいま私どもが関知しておる限りにおきましては、こうしたことが、第一原子力船の放出物によるものかどうかを今日は断定ができませんと同時に、その後の経過から見て、必ずしも累積的効果が出ておるとは考えておりません。さような意味におきまして、私どもは今日において安全であるということは必ずしも申しませんけれども、危険であるということは、私は考えておりません。
  42. 石野久男

    石野委員 現在ではそれは危険でないということと、それから、こういうことがたび重なっていくことはどうかということについての見解は、非常に重要な相違を来たします。いま井上さんのお話しになりました、原子力船でそういうことがあるということははっきりしていないということと、それから伊原次長参議院答弁しておることとの間に、これまた食い違いが出てくるわけです。そうだとするならば、井上さんのいまの発言と、伊原次長参議院におけるところの答弁との食い違いをどうするかという問題が、また新たに出てまいります。この点は、私は、井上さんの答弁について、あとでもう一ぺん伊原さんの答弁とのかみ合わせで質問いたします。  長官にお尋ねしますけれども分析研問題がこういうようにごたごたして、長官努力をして、いままで分析研でやっておった仕事を、それまでの間、理研だとか放医研等へ分析依頼する方針だということの折衝をなさったようです。ところが、それぞれの事業体においては、理研の労組にしても放医研労組にしても、作業拒否の態度を表明しておると聞いております。そういう問題の調整は十分とれたのですかどうですか。
  43. 森山欽司

    森山国務大臣 従来のああいう体制でございましたから、これにかわる応急的かつ恒久的措置を目下鋭意講じておるわけでございます。その応急的措置といたしまして、理化学研究所、放射線医学総合研究所等にお願いをいたしておることは御案内のとおりでございます。それにつきまして、それぞれの責任者から、急のことでございますからいろいろむずかしい問題はあるけれども、協力しよう、という返事はいただいておるわけであります。労働組合のほうから、必ずしもそれに対して賛成をしておられないということも聞いておるわけでありますが、これはやはり、それぞれの研究所の責任者から、やりましょうと言うことが中心になるべきでありまして、労働組合は元来そういうことについて意見を表明すべき立場にないと私は考えております。これは労組法の条文をお読みになられましても、元来本来的にそういう立場にはないものだと、私は理解をいたしておるわけであります。
  44. 石野久男

    石野委員 そうしますと、現場の労働者が違った意見を持っておる場合でも、それはもう全然、長官としては無視して仕事を進めるという、そういう考え方で、分析作業をこれらの理研とかあるいは放医研等にさせていくという考え方でおるわけですか。
  45. 森山欽司

    森山国務大臣 事と次第によると思いますが、今日のような状況でございますから、労働組合の方々にも御理解を得て、わかっていただいて、御協力を願いたいと私は思っておる次第でございます。
  46. 石野久男

    石野委員 労働組合はそういうことを言うべき筋合いのものでないのだというようなたてまえをとって、そういう態度で、長官はこれらの現場の作業者との折衝をして、仕事はうまく進むというふうにお考えですか。
  47. 森山欽司

    森山国務大臣 できるだけ労働組合の方々の御協力はいただかなければならぬと思います。そういう意味で、それぞれの研究所等の責任者は鋭意努力をしておられると私は信じております。しかもなお、やはり御了解を得られないということになりますれば、これはやむを得ないことでございまして、そのための最善の努力は、これは尽くすべきものである。しかもなお、今日の時期でございますから、最終的には、ひとつわかっていただかなければならない、また、わかっていただくように努力をいたしたいと考えておるわけであります。
  48. 石野久男

    石野委員 私は、しつこくはあまり聞きたくないのですけれども、なるべく努力してもらうのはいいけれども、もしわかってもらえなければやむを得ないと、こういうようなことを長官言われますと、それではほかでどこかまた代案を考えないと、分析作業というものは全然できないだろうと思うのですよ。そういう点に一定の見通しをお持ちになられて、そういうようなお話をなさるわけですか。
  49. 森山欽司

    森山国務大臣 ただただ御協力をお願いする、それぞれの責任者の方々からは、協力しようという御返事も得ており、組合のほうからは色よい態度ではございませんけれども、ぜひわかってもらいたいというのが、私の基本的な気持ちでございます。
  50. 石野久男

    石野委員 これは具体的折衝の問題ですから、私は、労組との話し合いというものは、もう労組は口を出すべきじゃないのだというような、そういう考え方を前提として話を進めていったらば、おそらく私は話はまとまるまいと思うのですよ。だから、長官が先ほどそういう発言をなさったことについては、これはやはり一応改めておいてもらったほうがいいように思いますよ。そうでありませんと、きっとそれはひっかかるだろうと思います。  私は、分析研問題について、一日も早く分析作業のできるような体制づくりをする必要があると思うのです。そのことについて、二十五日に学術会議の越智会長が談話を発表しております。その談話によりますと、この事件の起きた根源を突き詰めれば、これまで科学者の意見を取り入れてこなかった政府の科学技術行政のゆがみであると、こう言われております。これは学術会議の会長としては、非常に思い切った政府に対する意見の具申だと思うのですよ。私も、やはりこの前の質問のときにも、学術会議が、かねてから環境放射能についての研究所のようなものをつくれというようなことを言っておる意見を、六年前から要請しておるものに答えていない政府態度についてお聞きしました。学術会議の会長から、長官に対してこうした率直な意見が出ておりますけれども長官は、学術会議の申し出に対して、それを受け入れるだけの用意がありますか。あるいはまた、それに対する何らかの手だてをしたかどうか。それとも、そういう談話はおれは無視するよという態度なのか。この際、ひとつ長官の意見を聞かしてもらいたい。
  51. 森山欽司

    森山国務大臣 会長談話を、私自身まだ詳細に検討いたしておりませんので、十分検討いたしまして、御答弁を申し上げたいと思います。
  52. 石野久男

    石野委員 会長談話は、直接科学技術庁のほうに対して、申し入れとしては全然意思表示はされていないのですか。
  53. 森山欽司

    森山国務大臣 こちらには、正式にはまだ届いていないのではないかということでございますが、しかし、そういうものがあったということは聞いておりますので、いまそのメモもございますから、よく検討いたしましてから、御返事申し上げたいと思います。
  54. 石野久男

    石野委員 この際、私は、検討するという意思はよくわかりますけれども、しかし、ちょうど原子力委員会のほうからも井上さんに来てもらっておりますし、あとでもう一つお聞きしたいことと関連して、長官の意見を聞いておきたいのですが、原子力委員会原子力安全会議を新たに設けたそうでありますが、この新たに発足させた会議の意図するもの、それはどういうところで、この会議をどういう意図によってつくったのか、その点をひとつ聞かしてください。
  55. 井上五郎

    井上説明員 原子力委員会は、本来安全の問題につきましては、申し上げるまでもなく、最大と申しますか最重点事項として、かねがね考えておるわけでございます。しかし、この問題はやはり技術の進歩とともに、また国民のより一そうの信頼をかちうるためには、今日までの安全の考え方だけで十分であるということは申し上げかねるかと思います。かような意味におきまして、より一そうの安全の研究、また実施をはからなければならないということで、一体安全というものに対する考え方、あるいは国としての取り組み方等々を基本的に考えてみようではないか、こういうことで、安全に関する御関心のきわめて高い学識経験者少数の方々にお集まりを願いまして、言うなれば安全に対する国のトップポリシーを考えたい。こういうことが、今回安全専門委員会をつくりまして、少数の方々にお集まりを願った趣旨でございます。
  56. 石野久男

    石野委員 安全に対する考え方、あるいは国がそれに対する取り組み方を考えるために、そのトップポリシーをつくるために少数の学者に入ってもらった。こういう意図は非常によろしゅうございますが、先ほど私は長官にも聞きましたように、学術会議のほうからはいろいろと意見が出ているわけです。それから、井上さんがおっしゃったように、今日までの安全に対する考え方だけでいいのかどうかということを、いまここで再検討せなければならぬというこの意味の中には、やはり従来原子力委員会なり国が考えていたことに対して、いろいろとまた違った意見の方々が日本の国内にはたくさんおるし、学者なりあるいは技術者がたくさんいるわけですね。そういうような人々を入れて初めて、その意図するところに適応するのではないだろうか、こういうふうに私は思うのです。あとでメンバー等についてまた資料を出してください。新聞で報ぜられるところを見ますると、ここに新たに従来の原子力委員六名に加わるところの専門家七名というのが出ておる。その方々はほとんど、従来原子力行政で委員会と関係のある方々ばかりのように見受けられます。従来原子力委員会に対する意見を述べている側の人はほとんど入っていない。これでは、安全性の問題に対する新しい考え方をどうするか、こうするかと言ってみたところで、学術会議の会長から言われている、とにかく科学者の意見を取り入れてこなかった政府態度、それがちっとも改まっていないと思うのです。  これは長官、私は時間があまりないですから、長官にお聞きしますけれども、新しく何か意図するものがあるとするならば、この際、従来政府並びに政府機関に対していろいろな意見を持っておる諸君の声がこの中に入ってくることが望ましいと思うが、長官はそういうことを考える意図があるかどうか。特に安全会議なんというものをつくったメンバーなどを見ますと、ほとんどこれは従来のいろいろ政策をつくったりなんかした人たちばかりです。これじゃちっとも役に立たぬと思うが、長官考えはどうか。
  57. 安井吉典

    安井委員長 いまの御発言で、資料の要求がありましたね。それにこたえられるかどうかも、あわせてひとつ御答弁ください。
  58. 牟田口道夫

    ○牟田口政府委員 安全会議に関する構成員だと了解いたしますが、後刻提出いたします。
  59. 森山欽司

    森山国務大臣 先生が最後におっしゃったのは、どういう具体的な意味か、政府あるいはいままでの原子力委員会等のやってきた施策にきわめて批判的な人たちの意見を、あらためて聞く用意があるかということでございますが、そういう気持ちは全くございません。
  60. 石野久男

    石野委員 全くございませんですか、もう一ぺんちょっと。
  61. 森山欽司

    森山国務大臣 そういうことをおっしゃるのは御自由でございますが、たとえば、いまの安全会議の委員の中にそういう方々を加えたりするような形において、それらの方々の御意見を取り上げるということは考えておりません。しかし、現実にいろいろな御批判がある点については、たとえば、ただいまお話のありましたような、科学技術行政の抜本的再建についての会長談話等につきましては、ひとつ十分検討していきたいと思う次第でございます。
  62. 石野久男

    石野委員 井上委員からも話があったように、いままでの安全の考え方だけではよくはないんじゃないか。この際、国として、安全に対する考え方、取り組み方についてひとつ考えようという発想に基づいて、新しくまたそういう会議をつくった。私は、国の中にいろいろな意見があるということをすべてかかえ込むことが政治だろうと思うのです。反対の意見は全く取り入れないというような考え方であるならば、これはたいへんなことになってくる。私は、いまの長官の御答弁も非常に問題があると思うのです。ことに今回の分析研問題にからんで、原子力についての安全性の問題は、従来にも増して、国民関心を深めてきております。しかも分析研問題を通じて出てきたことは、従来の政治あるいは行政指導、そういうものとの関連が深いというふうに見られている面がたくさんあるわけなんです。にもかかわらず、そういうことに対していろんな注意を喚起し、あるいは意見を述べてきた人々が数多くいたこともまた事実なんです。そういう人々の危惧したことが、いま具体的にいろいろな問題として出てきておるこの際でありますから、私は、むしろ、従来いろいろな意見を述べておった、反対ということよりも、違った意見を持っておった人、そういうような人々をこの会議なりあるいは施策の中に、あるいはポリシーをきめるにあたっての要員として入れるべきだというふうに思うのですよ。やはり長官のその発言は、またこれはひとつ問題が大きいと思いますから、もう一ぺん、ひとつはっきりと所見を聞かしてほしい。
  63. 森山欽司

    森山国務大臣 ちょっとあなたの御質問の趣旨が、何か反対のことを言っていた人間を原子力委員会の組織等に入れたらどうだ、こうおっしゃるので、その点は問題ではないかということを私は申し上げておるわけです。私が申し上げたいのは、広く、いろいろな御意見があって、いろいろな御批判を賜わることは自由でございますし、また、それらの御批判について耳を傾けるべき点は耳を傾けましょう、というふうに申し上げているわけでございます。また、その辺のところ、ちょっと私も困るのですが、たとえば学術会議と申しましても、私はすべてがすべていかぬと言っておるのではございませんし、今度の安全委員の中にも、たしか学術会議の副会長をやっておられる方が入っておられたように思うのでございまして、先生の御質問も、的をしぼってお話しになられるとあれでございますが、私どものほうも、そういうような考え方でやっておるわけでございます。どういうふうに答えていいのか、実はちょっと答弁のしかたに苦しむわけでございますが、先ほど来お話しいたしましたことを総合的にひとつ御理解を願えればと、こう思っておるわけでございます。
  64. 石野久男

    石野委員 日本学術会議の会長から談話があって、これまで科学者の意見を取り入れてこなかった政府の科学技術行政にゆがみがあったから、こういう結果が出たんだ、という発言があるわけなんですよ。そのことを取り上げて、今後のいろいろな施策をすべきじゃないか、そういうようなことで、たまたま安全会議というのが出ている中に、やはりそういうような問題をもう少し配慮すべきでないか。人員の配置についても、もっとやはり端的にするし、そういうことを受けとめる、あるいは意見も取り入れるようにしなければいかぬじゃないか、それについて、長官はどういうような考え方かということを、ぼくは聞いているわけだから……。
  65. 森山欽司

    森山国務大臣 私、これを読んでいないものですから、字句的には困るのですが、いまお話しのように、科学者の意見を聞かないでやっておったとは、私は思っておらないのです。科学技術庁でございますから、科学者の意見を聞かないで行政が行なわれたとは思っておりません。ただ、おそらくおっしゃる御趣旨は、科学者の選び方が問題なんだろう、こういうことではなかろうかと思っておりますが、ひとつこれをよく読ましていただいて、私のコメントをさしていただきたいと思っております。ただ、科学技術庁は科学者の意見を聞かないでやってきた、こう言われますと、私のほうは、はい、さようでございます、とは申し上げかねる。それはもう皆さま、与野党の委員各位は御同意であろうと思うのであります。ですから、ここに書いてあることにつきましては、一回読ましていただいて、私の意見を申し上げたい、こういうことでございます。
  66. 石野久男

    石野委員 科学者の意見を聞かなかったというのは、私が言っているのと違うのですよ。日本学術会議の会長がそういうふうに談話を発表しているから、言っているのであって、あなたがいま科学者の意見を聞かないことはないと言っても、学術会議の会長さんがそういうことを言っているのだから、だから、そのことについてわれわれは非常に心配するから、そういう長官の一方的な発言は聞き取ることはできない。学術会議の会長から談話が発表され、政府に対して要請されていることについて、長官は当然やはり考慮すべきだと私は思うのですよ。それも聞かないということですか。
  67. 森山欽司

    森山国務大臣 学術会議の会長がそういうことを言っているというふうに、先生が引用されますものですから、私は、科学技術庁は科学技術行政をやるために、科学者の意見を取り上げないで、それに基づかないで仕事ができるわけはないのでありますから、そのおっしゃり方は、いまおっしゃった範囲内においては問題があるのではなかろうかと思います。しかし、いろいろなことがここに書いてあるでございましょうから、検討してみましょうということを御返事申し上げるわけでございますから、どうかひとつ、その点を御理解願いたいと思うのであります。  それから、くれぐれも申し上げますが、いろいろな意見があって、そのいろいろな意見を聞きながらいろいろな仕事をしていくということについては、それは全く異存ございません。ただ、しかし、それを組織に入れて、すべての人を組織に入れてやれとおっしゃいましても、なかなかそれは容易ではないということを、私は申し上げておるわけであります。その点はどうかひとつ御理解願いたいと思います。
  68. 安井吉典

    安井委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  69. 安井吉典

    安井委員長 速記を始めて。
  70. 石野久男

    石野委員 長官に、予算に関係して、特に安全性の研究というものを重視しなくてはいけないということが、かねてから長官から言われておりますが、しかし、安全性研究の問題について、私はこの前のときにも長官にお尋ねしましたが、特に原子力研究所に対する安全研究のための予算の配分が、非常に多額に組まれているわけですよ。ところが、人員の問題では、いろいろな関係で、たった四名しかふえないというようなことで、どうにもならぬという、長官みずからのお話でした。しかし、私は、やはりもう予算が分科会に入り、衆議院を通ろうとする段階で、人員問題についての長官考え方だけは、やはりはっきりしておかなくてはいけないだろうと思います。資料はいまたくさんありますけれども、原研におけるところの安全研究についての予算増額というものは非常に多いのだが、それを分担させる人がいない。これでは、ちょうど分析研において、原潜入港が非常に数多くあったものだから、仕事が間に合わなくて、結局間に合わせの仮の報告書を書いたのだと大里部長が言っておったように、同じようなことが、また安全性問題でも出てくる可能性があります。どうしても、これは人員の増加ということを考えるべきだろうと思うのですよ。原研の労働組合からは約二百人ぐらいの人員増の要請がありますね。それは庁のほうにも来ておると思うのですが、そういう問題について、長官としてはその問題をどういうように考えるか、配慮する用意があるかどうかということだけ、ひとつ聞かしておいてくれませんか。
  71. 森山欽司

    森山国務大臣 まあ、これは率直なことを申し上げますが、このたび安全性の問題を中心にいたしまして、四十名の増員をいたしたわけでございます。でございますから、私は、いままで、しろうとでございますから、相当な増員になったと思っておりましたところ、一律削減による減員というのが三十六名ありまして、そして実際ふえたのは四人だというので、私は実はそういう点ではむしろびっくりいたしたというのが率直なところでございます。  それで、四十九年度の予算は大幅に増加しておりますが、大部分は建設段階にある施設の経費でありまして、したがって、当面は必ずしも多くの人員は要しないとは思いますが、今後建設の進展状態に応じまして、必要な人員の確保について所要の措置を講じ、安全研究の遂行に支障のないように、これから進めてまいりたいと思っておりますので、いままでの一律削減なるものも検討いたしまして、それらのものを織り込んで、なおかつ増員をするようなやり方を、ひとつ真剣に考えてみたいと思っておりますので、その点は、これから来年度の予算の編成その他のことも考えながら、いろいろ仕事を進めていくわけでございますから、真剣に取り組んでまいりたいと思いますし、また御相談もいたしたいと思っておる次第でございます。
  72. 石野久男

    石野委員 時間がないから、もう一つだけにしぼりますけれども、たとえば原研の場合でいいますと、安全研究に、本年度一応やはりそれと見合うような予算が三十六億ぐらいと計算される。昨年度は十三億なんですよ。だから約三倍ぐらいになるわけですよ。だからこれに対する人員というものがなければ、これは仕事にならないですよ。たとえば核融合の問題につきましても、昨年度の予算が四億六千万ぐらいのところを、ことしは八億という予算が組まれておるわけです。ここだけでもやはり予算が倍になっておるのですから、人員だって倍にならなければ、仕事になりっこない。だから、いま長官から話のあった、四十名が三十六名の一律削減で、差し引き四名しか、というようなことでは、とてもこれは原研の仕事はできないだろうと思います。ほかにもいろいろありますけれども、特に原子力研究所の場合は、安全性問題がこれだけやかましいときでありますだけに、人員問題、こういう事実を見合いにして、そうして労働組合が出しておるからけしからぬのだ、おまえらこういうものに関係すべきではないという長官考え方じゃなしに、これはほんとうに現場で仕事をする人たちの切実な要求であり、決して無理な要求じゃないのだから、それを配慮することだけは、ひとつはっきり確約しておいてください。
  73. 森山欽司

    森山国務大臣 労働組合の関与すべきことではないなどと、この問題については申しておりません。労働組合のほうからも御熱心な御要望があるようでございますし、また原研の理事長等からも猛烈なる要求がございます。そして石野委員おっしゃるような点については、私もこれは真剣に取り組まなければならない問題であると考えておりますので、国会は与野党の区別があって御意見が違うこともございますけれども、こういう点については、できるだけひとつ力を合わせて努力をいたしてまいりたい、その点は、私のほうからまた石野委員に御協力をお願いいたしたいと思う次第でございます。
  74. 石野久男

    石野委員 ありがとうございました。保留したものはあとでまた……。
  75. 安井吉典

    安井委員長 これにて石野君の質問は終わりましたが、先ほどの質問の中に出てまいりました参議院速記録は、まだできておりませんので、それと、きょうの次長答弁と、それを両方突き合わせまして、次回にさらに食い違いの点がないかということを明確にし、統一的な見解を示していただこう、こういうことにいたしたいと思いますので、そういうことで御了承ください。  次に瀬崎博義君。
  76. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 冒頭に私、政府要求をしておきたいのです。原子力三原則、つまり自主、民主、公開、特にこの際は公開の原則を強調し、それを守って、長官はじめ関係者が答弁されるように要求したいのであります。  政府は、原子力発電所の安全性について、専門家の批判や指摘、住民の不安に対して、科学的なまともな回答を出さないまま、国民に向かっては絶対安全を信じ込ませようとしてこられた。政府はその根拠として、きびしい事前の安全審査を行なっている、あるいはきびしい法律や制度上の規制を設けている、あるいは放射能についてはきびしい監視体制をしいている、こういうことを強調してきたのであります。ところが、これらの根拠の共通の基礎になる放射能測定が、電力会社によって、相当部分問題の分析研に委託され、その測定値がそのまま権威あるものとして公表されてきたことは、すでに明らかにされたところです。しかも福島原子力発電所、東電のでありますが、その東電が分析研に依頼した測定結果が、東電及び福島県を経由して発表されていたデータに、一部数字の書きかえや訂正があることも指摘されました。これに対して伊原原子力局次長は、この前の委員会で、昭和四十六年以前の分析研の測定資料は廃棄されたと、事実の証明を回避しながら、次のように答えておられます。分析研調査委託した部分については、残念ながら信頼性は失われたが、電力会社、自治体が独自の調査もしているので、だいじょうぶだ、こういう趣旨の発言であります。電力会社や自治体が行なっている測定結果や測定値はだいじょうぶだとおっしゃる、どういうチェック、どういう根拠に基づいているのか、お答えをいただきたいのです。
  77. 伊原義徳

    伊原政府委員 ただいま先生指摘の点につきましては、地方自治体及び電力会社で、データの総点検を行なっておるわけでございます。そういう観点からいたしまして、その報告を私ども受けまして、通産省ともいろいろ協議をしておりますが、現在の段階では、分析研の問題は別といたしまして、全体的に信頼性があると考えております。
  78. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 原子力発電所に関して、ここに一冊のパンフレットがあるのです。見てください。通産省も見ておいてください。題して「原子力発電 その必要性と安全性」であります。このパンフレットの特徴は、電力会社や地方自治体や何々原子力発電所推進協議会等ではなく、政府の編集、つまり通産省公益事業局の編集であることです。  したがって、まず通産省に聞きます。二六ページには、電力会社は「安全運転上必要なことを記載した保安規定を作成し、国の認可を受けなければなりません。」「国は、保安規定が十分守られているかどうかを監督しています。」とあるのです。通産省は十分監督していらっしゃると私は信じたい。電力会社はこの保安規定を、特に保安規定には放射線の管理に関する部分もありますが、守っているのでしょうね。
  79. 児玉勝臣

    ○児玉説明員 先生のおっしゃいましたように、電気事業法五十二条によりまして、保安規程を定めて届け出ることがきめられております。したがいまして、電気事業者としては、それにのっとってその義務を果たすということになっております。しかも五十二条の第四項に、電気事業者は保安規程を守らなければならないという条項もございます。そういうことで、保安規程に基づきまして、そのきめられたことを実施するわけでございまして、報告を特に求めるような問題については、これはまた規制法のほうで報告義務がございまして、提出されておりますが、保安規程のほうでは、そういう順守状況を監査に行くというときに、それをチェックするということにしております。
  80. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 時間もありません、私が聞いたことにだけ答えてください。  さっき読みましたように「国は、保安規定が十分守られているかどうかを監督しています。」と、こう言っているのです。この「国」は、一体何をさし、ちゃんと守られているかどうか、私は信じたいが、信じられるんですねと、こうお聞きしているんです。答えてください。
  81. 児玉勝臣

    ○児玉説明員 信じていただいてけっこうだと思います。
  82. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 「国」とは……。
  83. 児玉勝臣

    ○児玉説明員 「国」とは、科学技術庁と、それから通産省でございます。
  84. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 特に放射線の測定等に関しては、第一義的には、どちらの省庁が責任を持っているんですか。
  85. 児玉勝臣

    ○児玉説明員 放射線につきましては、科学技術庁のほうにいろいろとお願いしておりますし、また、能力も科学技術庁のほうが多いと思います。
  86. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 同じくこのパンフレットには、原子力発電所が運転されるときにその周辺に出てくる放射性物質の量は、全く問題にならない程度の非常にわずかな量でしかないはずなのですが、それでも、それが国の定めた基準よりも間違いなく低いということを確かめるために、モニタリングを行なわせます。国は電力会社に原子力発電所の周辺のいろいろなもののモニタリングを義務づけ、その結果を報告させることにしています。その上、このモニタリングが正しく行なわれているかどうかについても監督しています。  さて、第一義的な責任は科学技術庁にあるそうです。正しくモニタリングが行なわれているかどうかについて監督し、また報告はちゃんとチェックされているでしょうね。
  87. 伊原義徳

    伊原政府委員 ただいま先生指摘のとおり、確実に行なわれております。
  88. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そこで、東京電力は、福島原発周辺十四カ所で、月一回、空間線量率の測定、つまり大気中の放射能測定を行なわなければならないことにしています。  去る二月二十二日、現地で、私たちが立ち会いの上、東京電力に実験をしてもらったところでは、次のとおりの手順と時間がこの測定にかかることがわかったのであります。  まず、測定車に三インチ・シンチレーションサーベーメーター等の測定用具を積んで測定地点に行く。着くと、器具をおろし、車は測定に影響を与えないよう十メートルほど離す。測定地点に高さ一メートルの台を立て、その上にサーベーメーターをセットし、機器の安定を待つ。記録者が時計を見ながら、五ないし十秒ごとに——当日は十秒でした——合い図し、測定者は十秒ごとに十二回目盛りを読み上げる。次いで、地上三十センチメートルの台の上にサーベ−メーターをセットし直し、同じく十二回目盛りを読む。測定器具を測定車に積み込んで、次の地点へ移動するということで、切り詰めた測定でも十分以上はかかること、放射能測定の統計的な本質を考慮するなら、二十分ぐらい必要ということが実証されました。東電側の事前の説明でも、一地点二十分、少なくとも十分はかかるというのと合致しています。これは妥当な測定手順ですね。お答えをいただきたいのです。   〔委員長退席、石野委員長代理着席〕
  89. 伊原義徳

    伊原政府委員 おおむね妥当な手順であると考えます。
  90. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 四十八年九月、東京電力が一日の日程で十四地点の測定を行なったデータから、幾つかの例をあげてみたいと思います。  大熊社宅なる測定地点での時刻は十時五十分、次の測定地点気象観測小屋跡での時刻は十一時で、この間十分です。次の測定地点GE宿舎入口での時刻が十一時十分で、この間も十分です。測定だけでも、あなたもおおむね妥当と言われましたように、十分ないし二十分かかるのに、移動と測定を合わせて十分で行なわれたことに、データはなっているのであります。  四十八年十一月の測定データで見ると、夫沢バス停という測定地点から次の地点小熊田バス停までの時間間隔は十六分、さて、この間を実際私どもが自動車で時速四十キロメートルほどで走ったところ、十一分かかったのであります。残り時間五分で測定というわけです。  四十八年七月のデータでは、進入道路測定地点から次の気象小屋跡観測地点までの時間間隔九分間、こうした十分以下の測定間隔というのが、五月から十二月までで全部で六カ所あるわけです。  現地を見るに及ばず、もしも先ほどおっしゃったように、報告をとってチェックをしていらっしゃるならば、これらは不可能を可能にした測定として、その時点で、何らかの処置が政府で行なわれていてしかるべきだと思うのです。  次に、福島県が八月から独自の放射能測定を実施しています。「福島県放射能等基礎調査結果の八月分」、これであります。ちょっと伊原さん、見てください。  これによりますと、指導機関として科学技術庁の名前があがっておりますが、科学技術庁はこれにどういう指導、援助を行なっていますか。——早く答えてください、時間がないのです。はっきり書いていますよ。科学技術庁の名前です。
  91. 伊原義徳

    伊原政府委員 その資料をちょっと私、どういうものかつまびらかにいたしませんが、県に対しては、駐在官事務所を通じまして、専門家を技術指導その他で、県のほうに協力させております。
  92. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 先ほどの答弁から推測して、その報告は当然とっていると思いますが、あらためてお尋ねします。  指導されたようでありますその測定の結果については、報告を受けて、それなりのチェックをされたんだと思うのですが、いかがですか。
  93. 伊原義徳

    伊原政府委員 先ほど御指摘の、モニタリングカーによりますサーベーメーターによる測定につきましては、これは私どものところに報告が来るという性質のものでないと了解しておりますが、その辺、少し調べたいと思っています。
  94. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 おかしいじゃないですか。私が先ほどから、政府が責任をもって発行したこのパンフレットに基づいて、報告を受けチェックして監督するということになっている、やっていますねと言ったら、やっていますと言った。いま私が読み上げている資料というのは、いずれもこれは公表資料であります。政府が報告を受けていなくちゃならないし、チェックしていなくちゃならない資料なんです。はっきり言ってください。
  95. 伊原義徳

    伊原政府委員 この環境モニタリング等につきましての報告は、包括的には受けておるわけでございますが、ただいま先生指摘の細部につきましては、ちょっと私、この場で明確に、いただいておるとかいただいていないとか、申し上げられませんので、至急調べたいと思います。
  96. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは、モニタリングは正しいかどうか、電力会社、地方自治体のやっていることが信頼できるものかどうか、言い切れないはずだと思うのですが、おかしいですね。  県の測定手順は、ほぼ東電と同じであります。違うのは、サーベーメーターは三インチでなく一インチを使用、地上一メートルの測定だけで、地上三十センチメートルの測定はしておりません。風力、風向測定は地点ごとに行なっております。測定地点は二十四カ所。なお八地点については、放射性粒子濃度の測定のため、ダストモニターという作業を行なっている点が違うのです。  昨年九月二十日の県の測定データに示されたコースを、私たちは実際に自動車で走ってみました。たとえば上手岡児童館から次の夜の森公園までの時間間隔十分と示されておりますが、移動に五分かかりました。大野小学校から山田八幡神社の間は十五分となっておりますが、移動に九分かかりました。大野病院と双葉北小学校間は十分となっておりますが、移動だけで十三分かかりました。県のほうのも、電力会社以上に、あちこちで不可能な測定が可能になっているわけであります。  なお、県のほうは、八地点で、先ほど言ったダストモニターをやっているのですが、このサンプルの採取には、福島連絡調整官の話だと、てきぱきやっても六十分ほどかかるというのです。そうしますと、県発表データの示す測定及び移動で、大体において四十分から六十分以内という時間にも疑問が起こってくるわけです。監督という立場にあり、また指導の立場にあり、報告をチェックするなら、こういう点をして初めてチェックになるわけですが、さて、どうしてこういう矛盾した測定結果が生まれてくるのか、どうお考えですか。原因について……。
  97. 伊原義徳

    伊原政府委員 ただいま御指摘の点につきまして、報告聴取につきましていろいろ段階がございますので、ただいま御指摘の点、非常に細目にわたると思いますので、あらためて調査いたしたいと思っております。
  98. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 実際の測定が以上のような状況で行なわれているにもかかわらず、朝、第一地点九時過ぎに始まり、最終地点が夕方の五時前になっていることが示されているように、相当強行スケジュールで、直接測定に当たっている現場の職員の苦労と努力がうかがわれるわけです。これは政府の指導や、県、電力会社の幹部の無責任さ、放射能監視を科学的ではなしにPRの一手段ぐらいにしか考えていないことを示すものと受け取らざるを得ないのであります。  このパンフレットの最後のほうに、「電力会社が自分自身で行なうモニタリングは、はたして信用できるものなのだろうか、」——政府がこういうふうに書いているのです。「もしこんな疑いを持ったら、それを晴らすにはどうすればよいでしょう。」まさにいま疑いがかかっております。「測定の結果を電力会社に公開してもらうことです。そもそも測定方法が問題だというなら、測定器具の使用状況を見せてもらえばよいのです。」国としては、いままでこのような考え方で電力会社に対してモニタリングを公開することを指導してきました。もしお互いの間に何か誤解でも生じるようなことがあったら、通産省や科学技術庁が協力して、その誤解を解きほぐすために努力することにしています、となっております。前の委員会からも、再三再四、幾つもの個所にわたって、私たちは、私たちの誤解かどうか知りませんが、とにかく問題があることを指摘しました。いまこそこういうことが必要な時期です。測定が分析研で行なわれているものについては、分析研でどんな測定であったのか、その実態も含めまして、福島原子力発電所にかかわる放射能測定の全内容と当面の科学的な改善策、これを国民に明らかにするのは、政府にとってあまりにも当然なことだと思うのです。またこれは、三原則の立場からいってもあたりまえ過ぎる話であります。長官、私は早急にこの報告を求めたいと思いますが、よろしいですか。——何ですか、このあたりまえの当然なことができないのですか。
  99. 森山欽司

    森山国務大臣 福島県の事態でございますから、県のほうとも電力会社ともよく連絡をとりまして、実情調査いたします。
  100. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 残念ながら、原子力三原則なるものをほんとうに理解されていないようですね。  さて、電力会社、地方自治体が独自の放射能測定をやっているから、分析研の測定分の信頼性が失われてもだいじょうぶだと、伊原原子力局次長は言われました。その次長に、以上のことを十分認識した上で、以下お答えをいただきたいのであります。  私が先日の科学技術特別委員会で、日本分析化研で行なった東電福島原子力発電所の波高分析器による測定データを提出するよう要求した際、あなたはわざわざ、東電福島原発の場合には、波高分析器は沃化ナトリウムのヘッドを用いた波高分析器を使っておりますので、予算委員会で問題になった潜水鑑に関係する波形チャートの捏造の問題とは別の機械でございますと言われた。東電の分析には、原潜関係に使ったゲルマ半導体検出器による波高分析は行なっていないのですね。確認をしておきたいのです。
  101. 伊原義徳

    伊原政府委員 実は分析研にございます機械は三台ございまして、沃化ナトリウムをヘッドとするものが一台、ゲルマニウム(リチウム)をヘッドとするものが二台ございます。そのゲルマニウム二台のうち一台は原子力潜水艦に使っておりまして、ほかの一台を政府委託以外に使っておると理解しております。したがいまして、私の先日の御答弁、あるいは正確でなかったかもしれませんが、趣旨といたしましては、潜水艦に使っております装置とは別の装置を主として用いておるというふうに考えておる、こういうことでございます。  なお、四十八年上期の分については、担当者の話でございますと、沃化ナトリウムを使っておるようでございますが、もう一度確認いたします。
  102. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 話が全くここのところはまちまちで不安定なんです。私はきのう、規制課長でしたか、おいでになったのは。その話を聞きますと、東電が依頼して実際に分析してもらったのは、沃化ナトリウムをヘッドとする分析器のほうであるが、確かにゲルマ検出器による分析も頼んだけれども、今回の事件にぶつかって、実際にはそれが行なわれていないのだ、こういう説明だったのです。あなたは、あなた自身のこの間の委員会での発言を今回訂正するようなことを言い、また、いまのあなたの発言からいくならば、規制課長の話がおかしいということになる。一体どれがほんとうですか。
  103. 伊原義徳

    伊原政府委員 四十八年上期の分までについては、沃化ナトリウムを使っておる、こういうことのようでございます。
  104. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 では参考までにお聞きをいたしますけれども、このゲルマの分析——略称そう言いますが、と、沃化ナトリウムの分析器とでは、どちらが精度がよいのですか。
  105. 伊原義徳

    伊原政府委員 ゲルマニウム(リチウム)半導体検出器のほうが精度がいいといわれております。
  106. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 このグラフのあらわれ方にも相当違いがあるのでしょう、簡単に説明してください。
  107. 伊原義徳

    伊原政府委員 その差があることは承知しておりますが、その詳細についてはちょっと存じておりません。
  108. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 分析研で、ゲルマの分析器で分析されたものには、測定番号にどういう符号がついているか、また、沃化ナトリウムの分析器で測定されたものには、測定番号にどういう符号が表示されているか、これをお答えいただきたいと思います。
  109. 伊原義徳

    伊原政府委員 ただいまちょっと存じ上げませんので、至急調べましてお答えいたしたいと思います。
  110. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 たとえば、すでにあなた方が私どもに提供してくださった、そして不破議員が示されました、これら原潜の波高分析器によるデータには、すべてGeたとえば一一二八番、たとえばGe一一三一番、こういう番号が打ってあります。このGeというのがつまりゲルマ波高分析器による分析を示した測定ナンバーではないのですか。——あなた方が出しておるのですよ。
  111. 伊原義徳

    伊原政府委員 そのように推察されますが、ちょっと確認いたしたいと思います。
  112. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 ふしぎですね。あなたがたしか責任者となって、問題が起こってから、この分析研の立ち入り調査をされたのではないですか。何を調査してきたのです。
  113. 伊原義徳

    伊原政府委員 全般的な調査並びに不正事件の事実を確認するための調査に行ってまいりました。
  114. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そういう調査をするのに、測定番号そのものも見ないで、一体、正確にどれだけが正しく、どれだけが間違いなどというふうなことが軽々しく発表できましたね。とても信じられません。何を調べたのですか。そんな一般的な回答で済みますか。
  115. 伊原義徳

    伊原政府委員 多数の職員及び専門家と同行いたしまして、厳正な調査をいたしたつもりでございます。
  116. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 厳正だと言われましたね。たとえば測定番号GE一八〇五、測定月日七月十四日、サンプル番号七−沖−K−三二、形状風乾土、かわいた土ということでしょう、測定者河合、というのは、原潜海底土の測定を示していました。続く測定番号GE一八〇六番、測定月日七月一四日、サンプル番号七−沖−K−三五、形状同じく風乾土、測定者河合、というのも原潜海底土の測定でした。さらにそれに続く測定番号GE一八〇七番、GE一八〇八番、GE一八〇九番、GE一八一〇番というのは、それぞれ何の測定を行なったか、少なくとも厳正にやられたのならば、これはわかるはずだと思います。何ですか。
  117. 伊原義徳

    伊原政府委員 その辺は十分調査をいたしまして、わかっておるはずでございますが、ただいま手元に資料がございませんので、後刻御報告させていただきます。
  118. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私どもは、できるだけ手っとり早くその報告をいただきたいのであります。   〔石野委員長代理退席、委員長着席〕  申し上げておきます。分析研にある台帳から見たところによりますと、測定番号GE一八〇七というのは、測定月日七月十六日、ですから、これから推定しますと、この測定はいま言われた四十八年上期に当たって、本来ならばゲルマの分析器では分析されていないはずの時期なんです。サンプル番号八−FK−四、形状風乾土、測定者山野で、東京電力の試料の測定になっているのであります。次の測定番号GE一八〇八番は、月日七月十六日、サンプル番号八−FT−六、形状アッシュ、つまり灰であります、測定者山野で、やはりこれも東京電力の試料の測定であります。さらに続く測定番号GE一八〇九番、月日七月十七日、サンプル番号八−FK−五、形状風乾土、測定者山野で、これも東電の試料の測定であることが、われわれの知る限りでは明らかになっているのであります。その次の測定番号GE一八一〇番は、再び原潜分となっております。  先ほどからの伊原次長答弁、並びに科学技術庁関係者の発言によれば、東電の場合、沃化ナトリウムの分析器を用い、少なくともいまの訂正されたお話でも、四十八年上期は沃化ナトリウムの分析器を使い、原潜の測定を行なったゲルマの分析器は使っていないとのことでした。しかるに、私どもの知る限りでは、以上のとおり、東電の分の測定をゲルマの分析器で行なっているのです。これがまた二通りあるということではありますが、とにかくゲルマの分析器で行なっているのであります。こうなってまいりますと、原子力局次長答弁は、国会でうそを言ったということになるわけなんです。こういう点からも、私は前回、少なくとも東電、六十四種類の波高分析の結果のグラフは出してほしい、こう言っておったのです。一体真実はどうなんですか。
  119. 伊原義徳

    伊原政府委員 先ほど御説明いたしましたように、ゲルマニウム(リチウム)半導体検出器は二台ございまして、一台は科学技術庁平和利用研究、これの委託のためのものでありまして、いま一台が分析化研の自社所有のものでございます。したがいまして、科学技術庁平和利用研究関係の機器につきましては、これは科学技術庁関係の委託業務に使うということが原則でございまして、電力会社の分をもし使ったとすれば、それははなはだおかしいことであると思いますので、至急それは調査いたします。ただし、その電力会社の試料が、もし平和利用委託研究の関係に使った試料であるとすれば、科学技術庁関係の機械を使うことでもよろしいかと思います。この辺の実情については、至急調査をいたして御報告いたします。
  120. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私の聞いているのは、そういうことじゃないんです。政府答弁は、二台あるゲルマの分析器のどちらかということではなしに、沃化ナトリウムの分析器なのかゲルマの分析器なのかということが問題になっているのです。しかも測定の精度といい、あらわれてくる波形といい、この二つの機械では結果が違ってくるのです。そこをはっきりしてほしい。あなた方がおっしゃった発言と私どもが知っている知識とでは、ここに全く相反する結果が出ているわけで、私どもは国会議員の当然の権利として、いまその是非を明らかにするために質問をしているわけであります。そこのところを明確にしていただかなければ——ゲルマの二台のうちどっちかという問題でないということを十分理解してください。はっきり答弁
  121. 伊原義徳

    伊原政府委員 ただいま御指摘の点も含めまして、至急調査をいたします。
  122. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 さらにつけ加えて申し上げておきますと、せんだって私どもが、福島県の共産党の方々、また科学技術者会議の方々、住民の方々とともに、東電を訪れましたときの東電側の説明によっても、東電が分析委託した波高分析器によるチャートは、すべて沃化ナトリウムの分析器によるものである。これからはゲルマでやってもらおうと思ったけれども、またそういう契約をしたのだけれども、実現を見るに至らずに今回の事件になったのだ、こう言っているのです。ですからどの点から考えましても、一体この東電の福島原発に関する波高分析は、ゲルマのほうで行なったのか沃化ナトリウムのほうで行なったか、これはそれこそ正しい測定が行なわれているかどうかということをわれわれが評価していく上でも、絶対的に必要な資料ということになってくるわけであります。これほど深い事情のある資料を、せんだって私が要求したにかかわらず、政府は、これは県と東電が依頼したもので、政府が直接出すべき必要のある資料ではないなどと言を左右にし、また理事会でも、これはもう一度委員会で要求してくれ、こう与党の方はおっしゃったわけであります。こういう重大な点を、あなた方は十分理解しているのかどうか、あらためて、私はこのことをはっきり申し上げておきたいのであります。ですから、どう言い返されましても、いまのところ、電力会社と政府側の答弁の共通しているのは、東電の波高分析器によるデータは、沃化ナトリウムをヘッドとする分析器によるものだ、こういうことなんです。われわれのほうはゲルマのほうを使っている、こういうことなんです。わかりますね、事の重大性は。いかがですか。大臣にはその重要性がわかると思うのです。答えてください。——事の重要性を、大臣に判断を求めております。
  123. 伊原義徳

    伊原政府委員 至急、先生指摘の点は、調査をいたしますので、しばらく時間の御猶予をいただきたいと思います。
  124. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 あらためて大臣に、私が前の委員会から要求した資料というものは、こういう重大な背景のもとに要求されているのだということを認識されたかどうか、お尋ねをしたいのです。
  125. 森山欽司

    森山国務大臣 いずれにいたしましても、よく調べてみまして、お答えをいたしたいと思います。
  126. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 大体、原子力行政は、原子力三原則に基づいていなければならないものなんです。これほど複雑な、時間をかけた議論をしなくても、少なくとも、放射能監視に関する測定結果ぐらいは、すべて公表されていて当然ということになるのです。ですから、ここまで来た以上、大臣もまず事の重大性を認識していただきたい。その点の答弁を願いたいのです。
  127. 森山欽司

    森山国務大臣 安全性重要性につきましては、これはもうきわめて重大なことだと考えます。
  128. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 安全性の重大ではないんです。原潜のときにも問題になったように、科学的に正しい測定が行なわれているのかどうか。測定してもいないものが測定されたことになったり、あるいはデータが書きかえられ捏造されたり、あるいはまた、分析に使った機械が一体どの機械なのか、このことがはっきりしない。こういうようなことでは、一体安全性も何も根拠がないじゃないですか。ここの点をどう理解しているのですか。
  129. 森山欽司

    森山国務大臣 先ほど来申し上げますように、重大であるかどうかは、調査の結果を待って考えたいと思います。
  130. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私はこの際、特に委員長にお願いをしたいのであります。事の重大性にかんがみまして、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律に基づいて、次の書類の提出を求めます。分析研におけるサンプルナンバー八−FK−一から八−FK−五番までの波高分析にかかる資料提出をお願いいたします。
  131. 安井吉典

    安井委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  132. 安井吉典

    安井委員長 速記を始めて。  政府答弁を求めます。伊原次長
  133. 伊原義徳

    伊原政府委員 ただいまの件につきましては、十分調査の上、できるだけ早く御報告いたしたいと思っております。
  134. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 また、できるだけ早く、でありますが、その時期につきましては、ひとつ後刻理事会でおはかりになるかもわかりませんが、予算委員会の締めくくり総括質問の前日までには届けられるように、お願いしたいのであります。
  135. 安井吉典

    安井委員長 極力そうさせるように要求しておきます。
  136. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 最後に、結局私が先ほど、いろいろな方々の御協力を得まして、実際に福島で調査した自治体や電力会社独自の公表データなるものの問題点指摘いたしました。電力会社、自治体が独自にやっているから、だいじょうぶなんだと伊原さんがおっしゃった、その一角がここでまたくずれたわけであります。ですから、この際どうしたって、分析研にかかるものも、電力会社にかかるものも、地方自治体がやっていらっしゃるものも、すべて含めて、絶対安全だとあなた方が宣伝されてきた根拠、放射能監視の測定内容というものは、あらゆる面にわたって公表されなければならない、あらゆる面にわたって調査されなければならない、こういう点を私は強調せざるを得ません。原子力行政の基本が、原子力基本法に定められた自由、民主、公開の三原則であることは、繰り返し繰り返し申し上げました。ところが、今日の科学技術庁態度国会での答弁を見ておりますと、そのかけらも感じられない。科学技術庁は確かに物理的に存在するかもしれませんけれども原子力行政は存在しないというのでしょうか。大臣に、原子力三原則に基づく原子力行政の確立を強く要求をいたしまして、私の質問を終わります。
  137. 安井吉典

    安井委員長 本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五十六分休憩      ————◇—————    午後三時三十七分再開
  138. 安井吉典

    安井委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。小宮山重四郎君。
  139. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 きょうは、午前中、石野委員から、復帰前の沖繩周辺の海域の原潜放射能の問題で質疑がございました。私、ここに二つの新聞の記事を持っておりますけれども、これはあと参議院決算委員会からの速記を取り寄せて、また討論することになるのでございますけれども、この両新聞から見ますと、「復帰直後の四十七年五月二十二日の調査で、沖繩海底土中から検出されたコバルト60の“高い数値”の一部分は、原潜によるものであると推定される」と、伊原原子力局次長が答えておりますけれども政府がこういう発言をしたことは最初のことでございます。「原潜によるものであると推定される」という発言をされたということはたいへん重大であって、何を根拠として、原子力局次長はそういう発言をされたのか。たぶんあなたが舌足らずで、そういうものもあるのであろうという予想のもとで発言をされたものと私は考えます。しかし事は重大でございます。先ほども質問の中でやっておられましたときに、委員の中からは、発言をくつがえすものだという発言もございました。あなたがそういう発言をしたかどうかということは、あと参議院からの資料で明確にいたしますけれども、もしあなたが本意でそういうことをおっしゃったかどうなのかを、まずもってお聞きしたいところでございます。
  140. 伊原義徳

    伊原政府委員 ただいま先生指摘の点でございますが、参議院決算委員会におきまして、私の説明が非常に不十分でございまして、舌足らずでございまして、非常に誤解を与えました。これはもう深く反省をいたし、おわびをいたしたいと思います。  この問題になっておりますコバルト60の問題でございますが、各港の海水あるいは海底のどろの中から検出されたものの原因がどういうことであるかということにつきましては、放射性降下物によるものあるいは鉄に含まれているもの、あるいは場合によっては、原子力潜水艦によるものなど理論的にはいろいろなことが考えられるわけでございます。しかし、専門家の間でも、まだそれが非常にはっきりとしているということではないというのが実情でございます。  沖繩数値、特に那覇港における四十七年五月の調査におきまして、現在までに公表されましたデータ、これはもちろんデータ信頼性の問題もありましょうが、それは別といたしまして、そのデータによりますと、原子力潜水艦寄港していない港に比べましてやや数値が高い。そこで、放射性降下物のみによるものではないのではないかということ、原子力潜水艦疑いを全く否定できるほど、あるいはそこまで全く否定できるほどの科学的根拠は持っていないということを申し上げたつもりでありますが、そこが非常に表現が適切でないために、誤解を招くような表現になりまして、たいへん申しわけなく思っております。ただし、この値は、人体への影響は全く考えられないという程度の、きわめて微量のものであるということを申し述べたいと思います。  したがいまして、コバルト60の原因につきましての知見が、まだ現在の段階では十分でございませんで、一体放射性降下物によって、どの程度の値が最高値として考え得るか、というふうなことが明らかでございませんので、現時点においては、原因については全く不明である、こういわざるを得ないと思います。したがいまして、今後とも追試を重ねまして、減衰状況を見るということにいたしております。  私の説明が非常に舌足らずで、不十分でございましたために、たいへん御迷惑をおかけいたしましたことにつきまして、重ねて深くおわびいたします。
  141. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 どうも舌足らず、舌足らずということで、たいへん国民に不安を与えるようなこと、しかも確固たる原因がなくて、そういう発言をされることは、たいへん不謹慎である。私はそういう不謹慎な発言を、この重大な時期にされることは、もってのほかだと感じます。まず、そういう問題とともに、すべてこの放射能が出る——たとえば百七十八ピコキュリーというような数字が出たとか、最近はPPMとか、そういうようなものが一般化されております。わからずにみなしゃべっております。あなたが、原潜であろうというようなことを、確固たる信念もなく、またそれが必ずしも原因であるということの認定もなくて、発言することは、たいへんわれわれ国民を惑わすものであります。今後気をつけていただきたい。  科学技術庁長官、その点について御所見をお伺いしたい。
  142. 森山欽司

    森山国務大臣 小宮山委員御指摘のとおりでございまして、誤解を招くような発言政府委員から出ました点は、まことに遺憾に存じます。以後、かかることのないように注意をいたします。
  143. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 新聞にも、最後のほうには、こうした影響を受けた海産物を一日百グラムずつ五十年食べても、国際放射線防護委員会の基準の一万分の一と確認され、国民の健康に影響はない、ということが書いてあります。最近は、魚の汚染等についても、厚生省自身たいへん不謹慎な発言をされ、それによって多くの中小企業者、零細企業者が迷惑をこうむったことは、皆さま方周知の事実でございます。今後とも、科学技術庁は、こういう問題をもう少し慎重に取り扱っていただきたい。慎重に取り扱わないからこそ、分析研のような大きな問題が出てくるのでございます。ぜひ皆さま方、科学技術庁には、今後とも放射能問題については、イデオロギーを入れないで、いわゆる科学は科学として取り扱っていただきたい、そういうことを強く要望いたします。  私もしろうとでございます。何か新しいことばでピコキュリーというのが、先ほど申したようなことでございますけれども、ちょっと説明していただけませんでしょうか。
  144. 伊原義徳

    伊原政府委員 御説明申し上げます。  ピコキュリーと申しますのは、キュリーという単位の一兆分の一でございます。キュリーと申しますのは、御承知のように、放射性物質の量と申しますか、放射能をあらわすための単位でございますが、普通ラジウムの一グラムが一キュリーというふうに歴史的に定義されたわけでございますが、一ピコキュリーと申しますのは、その一兆分の一でございます。したがいまして、非常な微量でございます。たとえばコバルト60で考えますと、一グラムの一兆分の一のさらに一万分の一、これは京という単位だそうでございますが、一京分の一グラムになるそうでございます。  なお、わが国でいろいろラジウム温泉その他の温泉等がございますが、たとえば山梨県の増富鉱泉におきましては、一リットル当たり三十万ピコキュリーという放射能が含まれているそうでございます。
  145. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 そうしますと、この新聞に書いてあります、海産物を一日百グラムずつ五十年食べても、国際放射線防護委員会の基準の一万分の一というのは正しいのですか。全然影響ないということですか。
  146. 伊原義徳

    伊原政府委員 先生指摘のとおり、試算をいたしますと、そういうことになりまして、人体への影響は無視できる、こう考えております。
  147. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 けさの石野先生質問の中で、原潜放射能の問題で、私ちょっと疑問を感じましたので、原子力問題はまたあとで御質問申し上げることとして、海洋問題について、ちょっと御質問させていただきたいと考えます。  海洋は、生物、鉱物、エネルギー等の多種多様の資源を含んでおり、その開発というものは、日本にとってもまた世界の人間にとっても、非常に重要なものであり、またこの開発がきわめて大きな役割りを果たすものであることは御承知のとおりでございます。特に、最近の日本における石油危機に見られますように、世界的なエネルギー資源の需給の逼迫という問題を考えますと、日本は特に狭い国土、また四面海に囲まれておりますので、高度の社会経済を営んでいくわれわれとしては、海洋開発の推進ということは非常に急務のことだろうと考えます。  ここで、海外にわれわれ目を転じますと、海洋開発をめぐる国際的諸問題は複雑をきわめ、これまでの海洋利用に関する国際的制度は、いま大きく変革を来たしております。すなわち、海洋開発の進展と海洋の自浄力をこえます汚染の進行、あるいは海洋の無限性が根本的に見直されるようになってまいりまして、海洋の自由の原則というものも、いまや大きく修正されるときに至っております。こういう情勢の中で、私たちの国であるわが日本の海洋開発を、急速かつ強力に推進すべきでございますが、その舞台となる海洋は、国際的な広がりを持っておりますがゆえに、海洋開発は国際環境に調和したものでなければなりません。たとえば五十年の七月二十日から開かれます沖繩国際海洋博でも、「海−その望ましい未来」というようなテーマで考えております。  昨年の十月でございますか、海洋開発審議会が「わが国海洋開発推進の基本的構想および基本的方策について」の答申を行ないました。同審議会が海洋開発における国際的諸問題についてどのような答申を行なったか、まずお尋ねいたしたいと思います。これは研究調整局長からお答えいただきたいと思います。
  148. 千葉博

    ○千葉政府委員 海洋問題につきましては、小宮山先生はかねてからたいへん深い御造詣と、それから御熱心な御指導によりまして、私どもいろいろとその賜わりました御鞭撻、そういった線に沿いまして、鋭意わが国の海洋開発を進めておるわけでございまして、深甚なる敬意を表しておるわけでございます。  この海洋開発審議会の答申は、昨年の十月に第一号の答申を受けたわけでございまして、わが国の海洋開発推進の基本的な構想及び基本的な方策について、ということでございまして、これは御案内のとおり、わが国におきまして、この海洋開発について初めてのこういったまとまった考え方が、しかも各界の方が集まりまして、二年間にわたっての審議でこの答申が出たというところに大きな意義があるわけでございます。  それで、いま先生が御質問の、国際的な諸問題につきどのような答申を行なったかと、こういうことでございますが、これはわが国の海洋開発を進めるその基本的な構想をまず御案内いたしまして、それから、そのいわゆる国際的諸問題が、一体そういったものにどういうふうに関連しているかということを申し上げたいと思うわけでございますが、その推進の構想は四点ございまして、いわゆる日本の海洋開発を進めるのには、環境の保全と一体化した開発をまず進めるべきである、これがまず第一点でございます。  第二点が、開発は総合的、計画的に推進すべきである。つまり、いわゆる海洋開発が無秩序に行なわれては、これはもう、第一点の環境の保全との間にも、あとで申し上げます国際的な問題も、きわめて密接な関係がありますので、たいへんいろいろ問題が出てくる。そこで、計画的にこれを推進すべきである。いわゆる国土のほうから見た開発だけで、いろいろ埋め立てたりあるいはスペースの利用をしたり、あるいは漁業、あるいは鉱物資源の開発などを無計画に行なってはならぬ、こう指摘しております。  第三には、海洋科学技術の開発を先行的に推進すべきである。つまり、海洋開発を行なうにあたりまして、まず海洋の科学技術の開発、これを先行的に推進すべきである、こういうように第三点は述べております。  第四点といたしまして、いま先生指摘の、この開発は国際環境に調和して推進すべきである。つまり海洋開発は、国際的な広がりを海洋自身が持っているがゆえに、海洋の探求あるいは海洋の開発の推進にあたりましては、国際環境との調和に十分配慮しなければいかぬ、このように指摘いたしまして、日本の海洋開発を推進するにあたっては、三つの海域に分けまして——三つの海域とは、沿岸海域の総合的な開発の推進、これは湾とか瀬戸内海とかというようなものです。二番目が、日本の周辺海域の資源開発の推進、これは主として大陸だなの地域でございます。三番目が、いわゆる大洋域の調査研究の推進をせよ、こういうことでございます。こういったことを、先ほど申し上げました四点の線に沿って進めるべきであるというように指摘をいたしておるわけでございます。  その国際的な観点から見て、海洋開発の問題点でございますが、これは調和して行なえ、こう指摘しておりますが、さらにその内容につきまして、こういうようにこの答申では書いてございます。  要するに、沿岸開発にしろ、大陸だなにしろ、大洋域にしろ、そういった点を開発するにあたりまして、いま、いろいろその国際的な、いわゆる法秩序の確立についてのいろいろな国際的な動きがある。それで、その動きとどういうふうに調和させていくか、その点についていろいろ答申されております。  これは、二年間にわたりまして、審議会の中にも国際分科会を設けて、関係者が集まりまして議論した結果が載っておるわけでございますが、その内容を見ますと、先生指摘のとおり、いわゆる海洋の自由というものを基本にしての海洋開発、これは従来行なってきたわけでございますが、いわゆる無限性がもうなくなってきて有限なのであるという最近の考え方をベースにしての国際秩序、こういった秩序について、いま国連を中心にいろいろ議論されておりまして、この会議において、いま一つの節にこようとしておるわけでございます。  それは、御承知のとおり、第三次の海洋法会議、これがもう近々開催されるわけでございますが、これを見ますと、その内容は、まず領海の幅員の問題、これはもう御案内のとおりでございます。第二がいわゆる大陸だなの問題、第三が海洋汚染防止の動き、四番目が海洋の科学調査の自由制限の問題こういったような動きがございまして、どれ一つといえども、これはたいへんな、海洋開発について重要な影響を与えるような状況にあるわけでございます。  それでは、そういった問題についてどういう指摘をしているかということを、海洋開発の面からいろいろ指摘しておるわけでございますが、まず第一に、このような海洋の国際的な法秩序確立に対して、わが国として海洋開発の面から見た場合の、いわゆる基本的な態度をどうとるべきかという点につきましては、こういうように書いておるわけでございます。問題の所在は、これはたとえば会議を失敗して海洋の国際的な無秩序状態ができたといたしますと、そういった場合には、御案内のとおり、一例が発展途上国が経済水域というものを、これはもう管轄権を主張しておりますので、そういった点をおのおの主張し出すということになりますと、漁業の問題あるいは鉱物資源の開発の問題にすぐこれ問題となってくる、こういったようなことでございまして、したがいまして、答申では、国際的な合意確立のために積極的にこれが努力をしなければならぬ、こういう指摘をしておるわけでございます。  それから、先ほど申し上げました領海の幅員問題、これはもう新聞等でいろいろと議論をされておりまして、いわゆる三海里から二百海里までいろいろな説が出ておりまして、こういった傾向として——全体の傾向としては、非常に拡大していく傾向にあるわけでございます。そういったものにつきましては、まあ十二海里で合意される可能性が強いので、この線に沿って、領海接続水域の漁業管轄権問題、それから国際海峡の自由通航問題などの領海幅員関連問題について……(小宮山委員「その問題はあと質問しますから」と呼ぶ)そういったことも慎重に対処すべきだ、こういうふうに指摘しております。  それから、そのほか海洋開発に特に関連のございます問題といたしましては、領海の接続水域の海洋資源開発権の問題、こういった問題について、合理的な国際基準を確立するよう努力する必要があるのだ、こういったような指摘もいたしておるわけでございます。  それから、大陸だなの範囲の問題、これにつきましては、距岸距離基準を重視する傾向にあることを考慮いたしまして、わが国の立場を早急に明確化する必要がある、このように指摘しておるわけでございます。  それから、深海底の開発方式の問題、この問題につきましては、国連での決議などございまして、人類の共通の財産として、国際的な制度と機構をつくって開発する、それまでは開発行為を行なってはいけないという決議がございます。こういった問題につきましては、妥当な国際海底の制度と機構を早急に確立するよう積極的に努力をすべきであるというようにも指摘いたしております。  そのほか、海洋汚染の防止に関連いたしましては、発展途上国の主張いたしますこれの汚染防止ゾーンの設定をすべきであるというような主張、こういったものに対しましては、これはまた海洋環境の保全に努力をすべきだけれども、こういったゾーンをつくることについては非常に問題がある、これは管轄権の強化になって、非常に問題であるというような指摘もいたしております。  そのほか、最後に、科学調査の自由の問題、これにつきましても、いろいろと科学調査を行なう必要がございます。海洋開発にとっては最も重要な問題でございますので、いわゆる公正な科学調査ができ、その成果がすべての国に活用できるようにするための合理的な基準を確立いたしまして、その基準に従って行なわれる科学調査については、自由にやれるという、その自由を確保する必要がある、このように述べているわけでございます。  今後のこの海洋法会議、非常に注目すべき点だと考えておるわけでございます。  以上でございます。
  149. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 長い御説明たいへんありがとうございました。  委員長にお願いしておきますけれども、ぜひ出せれば——昨年十月に行なわれました海洋開発審議会の答申、あるいはこれは外務省にお願いしておきますけれども、国連海洋法会議のいままでの資料等については、出していただければたいへん幸いかと思います。
  150. 安井吉典

    安井委員長 よろしいですか。——じゃ、あとで御提出いただきたいと思います。
  151. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 次は、いま千葉局長から、国連海洋法会議の話が出てまいりましたので、外務省にお尋ねいたしますけれども、第三次国連海洋法会議というのは、先ほどのお話のように、領海の幅員とか大陸だなとか汚染の問題等々の問題がございます。この会議がどうなるかということは、日本の海洋開発に重大な影響がございます。自由民主党でも、ことしの初めに大ぜいの方が、その問題でアメリカにも行かれたようでございますけれども、来たるべき第三次国連海洋法会議というのはいつ開かれるのか、また参加国は何カ国か。それから第三次国連海洋法会議の開催に至ったいきさつについて御説明いただきたいと思います。
  152. 杉原真一

    ○杉原説明員 第三次国連海洋法会議の口火を切りましたのは、一九六七年に、マルタの当時の国連大使をしておりましたパルドーという方が、海洋の大陸だなよりもさらに先の三千メートル、四千メートルという深いところに、ニッケルとかマンガン、銅、コバルト等の貴重な貴金属を含む石ころと申しますか、おとなのこぶしよりも大きなマンガン団塊と称するものが非常にたくさんある。しかもそれを開発する科学技術がだんだん発達してきて、ほうっておくと先進国だけが先取りして独占してしまうんじゃないか。したがって深海底は、そういう先進国に独占させてはいけないということを国連で言い始めまして、それではひとつ深海底の問題を検討する委員会をつくろうじゃないかということで、一九六八年から三年間、国連で海底平和利用委員会というものができて、深海底の議論を始めましたわけでございます。その結果、先ほど御答弁の中にありましたように、深海底にある鉱物資源は人類共同の財産であるということばを盛り込んだ、深海海底に関する法原則の宣言が一九七〇年に行なわれました。  ところが、深海底の問題を議論しております間に、それでは深海底というのはどこから始まるのか、大陸だなの幅というものは、一体現在の国際法ではっきりきまっているのかということに話が波及し、かつそれのもとになる領海の幅が一体幾らなのか、それも国際法できまってないじゃないか。御案内のとおり、一九五八年の海洋法四条約、それから一九六〇年の第二次の国連海洋法会議、ともに領海の幅員の問題をきめるべく会議したのでございますが、一致した国際的な条約を、その点についてのみはつくることができなかったわけでございます。と同時に、大陸だなの範囲につきましても、二百海里または開発可能な限度までというふうに、必ずしも明確でない定義が付された。そのために、その後いろいろの国がかってに一方的に領海の幅をきめ、かつ大陸だなの幅をきめるというような情勢に立ち至り、またその間、先ほど御指摘になりましたように、漁業についても、従来無尽蔵と考えられていたものが必ずしもそうでなく、漁業資源の枯渇あるいはそれが食糧としてだんだん不足する情勢が見えてきた。あるいは、従来海には無限の浄化能力があると信じられてきたものが、大型タンカーその他の発達に従って、必ずしもそういうものではなくて、海もよごれによごれるという情勢が起こってまいりまして、これではいけない、現在の海洋法すべてを洗い直して、全面的な大変革を加えた新しい海の法と秩序をつくろうということになりまして、同じく一九七〇年に総会の決議で、従来の海底平和利用委員会を拡大いたしまして、海洋法全部を洗い直すための拡大海底平和利用委員会というものができまして、一九七一年から昨年まで三年間、春、夏の二回ずつ準備会議を行なったわけでございます。ところが、この結果でき上がったものは、わずかにどういう項目が条約の中に盛り込まれるべきであるかという程度の基本的なアイテムだけで、条約案の作成にまでは至り得なかった。ということは、現在の世界の国々が、それぞれ非常に錯雑した利害関係を持っております。特に本件は、世界に現在残っております海洋資源をほとんど分割するにひとしい条約をつくろうというわけでございますから、各国とも容易に引けない。そのような情勢のために、条約案なしに会議が始まろうとしておるわけなんでございますが、会議の段取りといたしましては、昨年の末にニューヨークで、組織会議、議長とか委員長とか、そういうものをつくり、かつ手続、規則をつくろうといたしたのでございますが、手続、規則につきましては、やはり先進海洋国家と、数でもって条約をつくってしまおうという後進諸国との間の対立が激しくて、これもできないままに現在推移しているわけでございます。この六月から、ベネズエラのカラカスで約二カ月半海洋会議が行なわれますが、これには百五十カ国、現実に参加いたします国が百四十八か百四十九か、約百五十カ国参加いたして行なわれますが、現在の情勢では、もとになる条約案もない情勢で、おそらくことしのカラカス会議では、条約が完全には成立せずに、その次の会議まで持ち越される、あるいはさらにその先に条約の採択は持ち越されるかもしれない、という意見も出ておる現状でございます。
  153. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 大体のいきさつ等々はわかりました。この国連海洋法会議というものは、日本にとって非常に重要な意義を持っておりますけれども、日本という国は、御承知のとおり、海洋の自由の原則をたてまえとして、活発な開発利用を進めてきた国でございます。この会議の結果がどうなるかということは、日本の将来にたいへん重大な影響を及ぼすものであると考えられます。したがいまして、私は、この会議に臨むに際して、政府は海洋開発利用に関する国際的方向と国内的方向の整合性と申しますか、を十分検討して、国としてどういう方向で行くんだということを、しっかり方策を確立して、国際的法秩序の確立に積極的な役割りを果たす必要があろうかと思います。つきまして、第三次海洋法会議の見通し、特にわが国の基本的態度という問題についてお伺いいたしたいと思います。
  154. 杉原真一

    ○杉原説明員 確かにわが国は、従来の国際法でございます海洋自由というものを最大限に利用いたしてまいりました、世界一の海運国家であり、世界一の漁業国家であり、また陸上資源に乏しい以上、今後可能になる海底資源に対しても、大いなる期待を持たなければならない情勢にあります。もちろんこれは世界一と申すのはおかしいのですが、事汚染問題に関しましても、わが国のまわりの海あるいはわが国と東南アジア等に向かいます水路がきわめて汚染されているということも事実でございます。したがいまして、海洋国家として、日本は日本自身の利益を十分守るために、できるだけの努力はいたさなければならないのでございますが、他方、開発途上国側あるいは一部の先進国側が言っております、沿岸国というものも、資源の問題あるいは汚染の問題等々について、従来よりはより大きな管轄権を持たなければならない。現在のように、資源問題あるいは食糧問題が非常に国際的な問題になってまいりますと、こういうふうな沿岸国の主張にも理屈はあるわけでございまして、しかも地球表面の七〇%程度を占めております海の約半分を、現在の開発途上国側の主張によります二百海里の排他的管轄権というものができますと、どこかの沿岸国が分割してしまうというふうな情勢に立ち至るわけでございまして、これは双方にとってきわめて重大な内容を含んだ条約会議になるわけでございます。したがいまして、わが国といたしましては、もちろん日本の利益を守り、かつ安定した海の法と秩序が維持されることが、基本的には日本の利益に通ずるという基本的認識に立ちまして、先進海洋国側とそれから開発途上国側の利益の調整をはかって、特定の国だけじゃなくて、世界のすべての国が満足できると申しますか、少なくも公平に満足できるような条約ができるように、できる限りの努力をいたさなければならないと思います。もちろんそのためには、従来世界一海洋を利用してまいりました日本としては、ある程度の犠牲は覚悟しなければならない。この点はわれわれ会議に臨む者としても、今後国内の関係方面の方々にも御理解いただいて、正しい態度を打ち出して、今度の会議に臨みたいと考えておる次第でございます。
  155. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 いまのお話で、たいへん最後のところが気にかかる。国内的にある程度犠牲をしいるというような問題がございます。これはどういう意味だか、外務省はある程度具体的に言えますか。
  156. 杉原真一

    ○杉原説明員 一番手近な問題としては、漁業の問題でございます。日本が現在やっております漁業の規模は、大体一千万トン、そのうちの約四割が遠洋漁業から来るわけでございます。この遠洋漁業が行なわれております海域と申しますのは、大体において、先ほど私ちょっと触れました、沿岸国が二百海里の経済水域を樹立する範囲内に属するわけでございます。したがって、沿岸国が排他的な管轄権を持つと、日本は、従来自由に行なっておりました漁業を自由に行なうことができなくなるわけでございます。  さらに、その点について、遠洋漁業の中の八割が北太平洋において行なわれているという事実も、これは看過することができない事態だと思います。この場合の相手国は、アメリカ、ソ連ということになるわけでございます。このような国と話し合いをして、現在の漁業実績をできる限り確保する。たとえ国際法が、二百海里について沿岸国が排他的管轄権を持つようになっても、日本が従来やってきた漁業実績を、とにかくできる限り認めてほしい。それから、後進国に対しましても、経済協力その他を通じまして、もちろん従来のように自由にというわけにはまいらなくなりますが、しかるべき代償を払うことによって、捕獲を認めてもらう。もちろんその場合に、従来のように、とったものを全部日本に持って帰るということは、必ずしもできないかもしれません。そういう漁業の問題での、ある種の、いままでより抑制された操業というものが必要になってまいります。  それから、その次に起こってまいりますのは、これは領海の問題について御説明したほうが適当かと思うのでございますが、国際海峡の通過の問題、あるいは汚染に関する種々の規則というものも、今後きびしくなることはすでに現在の大勢になっておりますので、そういたしますと、船の構造、それから油の廃棄等々について、現在よりよりきびしい条件が課される。それから、国際海峡の通過にいたしましても、従来公海として自由航行が許されていた地域にも、それが領海となる関係上、従来ほどの自由は得られないかもしれない。この点については、実はこれは今度の国連海洋法会議の最も基本的な問題点一つでございますので、海峡制度がどういうことになるかということは、まだわかりませんですが、それについても、従来のような完全自由というものではなくなってくるという点を御指摘いたしたいと思います。
  157. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 いま御答弁の中で、今度の国連海洋法会議の中でも、たいへんな問題、いわゆる漁業の縮小というような問題、あるいは公海上だったものが沿岸国の領海になるというような問題、そういうようなものがもし実現してくると、たとえばいま石油問題でもたいへん大きな問題が出ております。たとえばマラッカ海峡とかロンボク海峡等の自由に航行しているものができない。それには使用料を払わなければいけないかもしれない。あるいはもっと遠回りをすることをしいられるかもしれない。そういうことによる日本の経済に対する影響というものはたいへん重大でございます。そういう問題で、大体十二海里説が実現したとき、漁業にどんな問題が出てくるのか、もう少し詳しく、外務省あるいは運輸省で、その辺の、マラッカ海峡等の問題、こういう問題ができたときにはどうなるんだという話を、ちょっと聞かせていただきたいと思います。
  158. 杉原真一

    ○杉原説明員 漁業のほうにどういう具体的な影響が出てくるか、数字をもってお答えするのは、あとで水産庁のほうから御説明いただくことにいたしまして、海峡の問題でございますが、先ほど申し上げましたように、海峡問題は、今度の海洋法会議の成否を決するような、一つの重大問題になるわけなのでございます。と申しますのは、領海につきましては、大体国際的合意が十二海里についてでき上がりそうだ。そうだと申しますのは、実はそれにいろいろな条件がくっついておるわけで、後進国側は、それに二百海里の排他的経済水域というものをくっつけております。それから先進国側、特に米ソは、たとえ十二海里で合意したにしても、十二海里に領海が広がることによって、従来公海が残っていた海峡が、百以上、実は一つまたはそれ以上の国の領海の中に入ってしまうわけであります。これは、軍艦の行動の自由というものを基本といたしております世界戦略のもとに立っておる米ソといたしましては、とても認められる情勢じゃない。したがいまして、そのような海峡については、従来同様自由通航の権利を認めろということを強力にいっておる次第でございます。したがいまして、沿岸国側の、これは領海だから従来の単なる無害通航権が認められるにすぎないという主張とまっこうからぶつかっておりまして、これがどこにきまるか、現在のところ見通しが立たないというような情勢でございます。  そういう意味で、具体的にどういう影響が出るかということを御説明するのは非常に困難なのでございますが、現在わが国が主として使っておりますマラッカ海峡、あるいはペルシャ湾の入り口にありますホルムズ海峡、あるいはインドネシアのほうにございますロンボク海峡等々を通っているわが国のタンカーは、数といたしましては、日本の輸入原油量の九八%が、これらの海峡を通って運ばれてきておるということを申し上げることができると思います。  もちろん、海峡問題につきましては、わが国はこのように海峡を利用する側に立つと同時に、わが国自身、国際的に非常に重要な海峡を幾つか持っております。そのために、特に軍艦の自由通航等の問題につきましては、必ずしも米ソ等と一緒になって自由通航を押しまくるということにもまいりません。事商船に関する限りは、わがほうとしては、できる限りの航行の自由を確保したいというふうな努力はいたしておるのでございますが、全体がそのように非常に熱い問題になっております関係上、結果がどうなるかということをいま申し上げることはできないような次第であることを、御了承いただきたいと思います。
  159. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 いま外務省の話では、なかなか数字を申し上げられない。しかし、少なくとも、現在一部の国々は、国家の管轄権の拡張というような問題、ペルーの二百海里のような問題が出ております。これは各国が相当同じような主張をし始めておる。日本にとって、生死を分かつような重大な国連の海洋法会議でございます。そういうような数字を持たないで、根拠を持たないで、日本の主張ができるのであろうか。そういうことは、ぜひしっかりした数字の上の根拠に立って、今後とも国連の中で、また諸外国の同意を得て、日本の実情説明し、わが国の海洋の自由、航海の自由ということを主張してきた、それが少なくとも通るような方向に向かっていただきたいと考えております。  運輸省にお伺いしますけれども、先ほどのマラッカ海峡等々を通るタンカー、これは運輸省ですか、そのタンカーで、油の九八%が日本へ入ってくるのだ、逆にいえば、日本へ入ってくる原油の九八%は、そういうところを通らざるを得ない。そうなりますと、日本の生死というものは、その海峡で押えられたらどうなるのだという問題もございます。また、それができ上がったらどういう影響が今後とも出るのか、その点についてお答えを願いたいと思います。
  160. 新藤卓治

    ○新藤説明員 お答え申し上げます。  海峡の問題につきましては、ただいま外務省のほうから御答弁ございましたとおりでございます。それで、海峡の問題と申しますと、国際海運の立場から申し上げますと、御承知のように、海峡、特に国際海峡と称せられる海峡は、国際交通の要衝でございますので、狭い水域に船舶交通がふくそうするということでございまして、したがいまして、航行の安全の確保あるいは汚染の防止といったような点が、特に一般海域よりも重要な問題として生じてくるわけでございます。これらの問題につきましては、国際海運という国際社会の利益と、それから海峡国と申しますか、沿岸国の利益のバランスをいかにとるかという問題でございますが、海運の場合、どのような海域にあっても、商船の安全かつ円滑な航行が確保できるというのが最も重要かと存じます。そういったことでございますれば、先ほど来強調されておりますように、海洋における安定的な交通の維持ということが、海運にとっては最も必要な絶対条件でございます。そういった観点から、こういった海運国と沿岸国との利害のバランスということにつきましては、海運国側の立場からでなく、沿岸国の立場も十分に理解しつつ対処すべきものと考えております。  それで、ただいまの先生の御質問でございますけれども、そういったことでございますので、まず海峡が閉鎖された場合にはどうなるかというようなことも重要でございますが、われわれといたしましては、そういった沿岸国の理解を得て、安定した交通事情が確立されるような点に向かって努力すべきではないか、かように存じておる次第でございます。
  161. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 蛇足かもしれませんけれども、このマラッカ海峡の問題はたいへんに大きな問題でございます。つい最近、日本の企業が、マライ半島に運河をつくるという話の中に、企業として参加したというニュースがございます。これは、こういうことを前提として、運輸省あるいは政府自体がそれに参画したのか、政府がそういう意図をもって、企業に参画させたのか、知っておれば答えていただきたい。
  162. 新藤卓治

    ○新藤説明員 お答えいたします。  その件に関しては、私十分存じておりません。ただ、私の了解するところでは、運輸省として、そういったことに省として参画したことはないのじゃないかと想像いたしますけれども、はっきりしたことは存じておりません。
  163. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 外務省いかがですか。
  164. 杉原真一

    ○杉原説明員 私も、所管外でございますので、よくは存じませんが、民間の会社が、アメリカのある会社のイニシアチブで、そういうふうな計画をやっておる、それに原子爆弾を使うというふうな問題につきましては、原子爆弾に関する関連の諸条約がございまして、そういうふうな諸条約が許す範囲内においてとり行なわれるということは、当然の前提として考えられているものである、というふうに考えております。企画そのものについては、私、内容は存じておりません。
  165. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 原子爆弾と言っておったけれども次長、原子爆弾なんですか、それは。
  166. 伊原義徳

    伊原政府委員 これは定義がなかなかむずかしいかと思いますが、核爆発の平和利用といっておりますので、あるいは構造的にやや似たものになるかもしれませんが、これはさらに将来の問題でございまして、実際、核爆発の平和利用が大規模に商業的に行なわれた例がまだないようでございますので、私も小宮山先生に十分お答えできないかと思いますが、核爆発平和利用という表現で、一般的にいわれておるようでございます。
  167. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 だから、政府部内でも、原子爆弾と核爆発と間違えて、大ぜいの国民の方に不安を与えるような発言はぜひ慎んでいただきたい。放射能だって、テレビの前に出ればうんとあるのです。やはりそういうところを注意しなければ——原子力局次長、先ほどの沖繩の問題にしてもしかりです。もっと用語についてあるいは発言について、十分注意をしていただきたい。これは蛇足でございますけれども、申し上げておきます。  もう一つ、この第三次海洋法会議がどう出るかによって、日本の漁業という問題がたいへん大きくなる。特に四〇%の遠洋漁業がどうなるのか、それによって零細企業はどうなるんだという問題がございます。水産庁のほうから、その辺についての御答弁をいただきたいと思います。
  168. 米澤邦男

    ○米澤説明員 お答え申し上げます。  先ほど外務省からも御答弁申し上げましたように、日本は最近、漁獲量としては年間約一千万トンの漁獲をあげているわけでございますけれども、もし距岸二百海里というような制度が一律に世界的に採用されるということになりますと、現在約四百数十万の漁獲量が、大体距岸二百海里というところで漁獲されておりますので、これが影響を受けるということになりまして、わが国としても、一方において、わが国の沿岸漁業が外国の漁獲から保護されるというプラスの面もあるわけでございますけれども、日本のまわりであまり外国の操業がたくさんありませんので、全体として見ると、遠洋漁業によって失う部分がきわめて大きいということになるかと思います。  もちろん二百海里説が、現在、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの発展途上国を中心として、かなり強く主張されておるわけでありますけれども、なおその漁業の問題については、多少流動的な面もあるのではないかと考えております。ことに実績の問題については、その実績をどういうぐあいにこの新しい制度の中で取り扱うかという面で、必ずしも国際的な合意がまだでき上がっておりませんし、ヨーロッパの国々、先進諸国では、必ずしも実績を直ちに排除すべきであるというような考え方をとっておらないというぐあいに私は承知いたしておりますし、アメリカも、マグロ漁業という遠洋漁業を持っている立場上、高度に回遊性を有する魚類については国際管理をすべきである、資源保存のための国際協力、それから利用の面についての国際的な協力を実現すべきであるというような立場をとっているわけであります。それからソ連も、日本と並びまして遠洋漁業の一方の旗頭でありますけれども、これも現在のところはきわめて公海の自由寄りの——古典的な公海の自由ということを主張しているわけではありませんけれども、そちらのほうに近い立場を比較的とっておるわけでございますので、これらの国々と、会議の内外を通じましていろいろな協議を重ねて、わが国漁業に対する影響が最小限にとどまるような方途を、全力を尽くして努力していきたいと思っているわけでございます。
  169. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 この問題は、日本の漁民の生活がかかっている大きな問題でございます。大ぜいの方々の意見を徴し、あるいは各国の協力を得て、日本の主張が少なくとも国際海洋法会議の中で取り上げられるように、御努力をお願い申し上げておきます。  次に、大陸だなの問題についてお伺いいたしたいと思います。  海洋開発のスタートというのは、特に大型プロジェクトのスタートというのは、海底の鉱物資源開発ということが端緒となっております。最近の石油の値上がりを見ましても、大陸だなの開発が、値上がりによって可能になったというふうにもいわれております。そういう現在非常に重要性を高めつつあるこの大陸だな問題について、世界各国の主張が違うことは、先ほど外務省からもお話を聞きましたけれども、たいへんむずかしい問題であろうと思いますが、大陸だなとはどういうことなんでございましょうか。
  170. 杉原真一

    ○杉原説明員 海に対して大陸が張り出している部分を全体見ました場合に、初めゆるやかに——これは一般的な御説明でございますから、地形によって異なりますが、一般的に申しまして、初めゆるやかに海に入ってまいりまして、それが百五十メートルぐらいの水深になりますと、今度は急カーブに下へ深く、約二、三千メートルまで入って、これは日本語で大陸斜面と申しております。それから、一度三千メートルぐらい深くなりまして、今度またゆるやかに深海底に向かっておりてまいるわけでございます。この部分を英語でコンチネンタルライズと申しますが、そういうふうになっておりまして、これは地質学的な大陸だなの御説明でございます。これを、一九四五年のアメリカのトルーマン宣言に始まりまして、法律的な概念にかえて、条約をつくったわけなんです。その場合には、定義といたしまして、水深二百メートル、またはその外側でも開発可能であれば、その範囲までを大陸だなと称する。そしてそれに対しては、沿岸国が、海底及び地下の資源の探査及び開発に関して、主権的な権利を行使することができる、というふうに規定されております。
  171. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 そうすると、大陸だなの中で問題になりますのは、五島列島沖のような、日本と韓国がせり合って石油の権限の争いをやっております。あるいは沖繩の沖の何という島ですか、そこでも中国政府、台湾、日本が大陸だなの主張をいたしております。そういう問題は、いまのところでは、各国間の係争問題として取り扱われるのですか。いわゆる二国間、たとえば五島列島沖は、韓国と日本が共有権を有するのか、あるいは争っておるのか、その辺はどうなっておりますか。
  172. 杉原真一

    ○杉原説明員 先ほどの御答弁の中で申し述べましたように、大陸だなの範囲というのは、二百海里、水深二百メートルまたは開発可能限度までという、必ずしも明確でない定義が与えられております。そのために、どこまでが特定の沿岸国が主張できる大陸だなの範囲であるかという点について、絶えず見解が対立するわけでございまして、現在の日韓の間の問題も、そのように日韓が意見を異にした状況で何年間か交渉を続けまして、その結果、法的な立場はたな上げにしたまま実際的な解決をはかるべく、今回の協定をつくったものと承知いたしております。
  173. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 そうすると、話がそれてたいへん恐縮ですけれども、韓国と日本との間の大陸だな開発について、開発権というのですか、あれは鉱業法によるのですか。そうですね。鉱区設定の金というのはどこへ積んでおるのですか。
  174. 長豊島格

    ○豊島説明員 いまの御説明の趣旨、ちょっと私が誤解しておるかもわかりませんが、韓国側は、現在五島列島の下のほうまで、鉱業権を米系企業に与えておるわけです。それから日本側のサイドで申しますと、あの辺のところにつきましては、日本側企業の三社が、鉱業法に基づく出願をいたしておりまして、これは日本政府立場としましては、紛争地区であるということで、その間は鉱業権の設定を控えるということでございますので、企業の権利としては、一応先願権者ということにとどまっておるわけです。  それで、今回日韓で共同開発をするということにつきまして、協定に署名が行なわれたわけですが、その場合においては、その共同開発地域につきましては、双方が費用を半々で分担し、収益といいますか、とれた油は半々分配するという、共同事業方式で開発が進められるということに、この条約が発効すれば、なることになると思います。
  175. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 日本は海洋国だといいながら、深海の海底開発というものがたいへんおくれております。私も、数年前にアメリカのスクリップス研究所というのを見まして、日本の海洋、特に深海底の開発というものがたいへんおくれ、カリフォルニア大学においては、マンガン鉱をたいへん蓄積し、その分布図まで持っておる。またこれが近い将来、私は存じ上げませんけれども、鉱区の設定が各国の間で行なわれるという話も聞いております。で、科学技術庁としては、海洋開発を主管する役所かと思います。日本は、海洋開発についてはたいへん長い歴史、伝統を持っておりますけれども、海底開発という問題については、たいへん技術を持たないと申しますか、まだ経験も浅い国でございます。たぶん、これは科学技術庁の研究調整局あたりが所管して、深海底の開発の調査研究を行なっているのであろうと思うのですが、その点について、お答えをいただきたいと思います。
  176. 千葉博

    ○千葉政府委員 先生いま御指摘のとおり、わが国のいわゆる大陸だなより先の深海の部分でございますが、これについての調査技術と申しますか、そういったものの水準がどうかと申し上げますと、その点はまことに残念でございますが、もうこの一点でわかると思います。いま科学技術庁が開発いたしました「しんかい」と名のつく調査艇でございますが、これの潜航します限度がわずか五、六百メートルでございます。米、ソそれにフランス、この三国は、もうすでに六千メートル以上の深海にまでもぐる技術を開発しておりまして、それで調査を進めているという状況でございます。私どもといたしましても、何としても追いつき追い越さなければいかぬということで、いま鋭意調査研究を進めております。それで、本年度も三千数百万円の予算をもちまして、海洋科学技術センターを中心に、深海底の調査のシステムについていま研究を続けておるわけでございます。全体で百億程度のお金をかけまして、それで七、八年の日数をかけて、六千メートル程度の深海の状況をつぶさに調査できるというような方法を開発しようということで、鋭意いま進めておる段階でございます。
  177. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 私がさっき申し上げました話は、的確な話じゃございませんけれども、マンガン鉱などの鉱区設定についての国際的な取りきめをやるという話を聞いておりますけれども、そういう事実があるのか、あるいはあればどこがやるのだというようなことを、ちょっとお伺いしたいと思います。
  178. 杉原真一

    ○杉原説明員 一番最初に、第三次国連海洋法会議の経緯を御説明いたしましたときに、深海海底が口火を切ったと申し上げましたが、その一九七〇年にできました深海海底に関する法原則宣言の中には、深海海底とその資源が人類の共同財産であるといたしておりますと同時に、その財産の開発を規制するために国際機関を設立するという原則がうたわれております。この原則を条約案の形に直すために、一九七一年から昨年の夏まで、拡大海底委員会が準備作業を進めたわけなんでございますが、一体だれがその深海海底の資源を開発するのか。国際機関が直接やるのか、あるいは国際機関がライセンスを国に与え、そのライセンスに基づいて、その国、あるいは他の国でもよろしいのでございますが、私企業がこれを行なうのか。その辺の問題につきまして、実は先進国と後進国が、これまたまっこうから対立いたしておるわけでございます。もとをただせば、人類の共同財産であるということばを、それぞれが自分の都合のいいかっこうで解釈して、先進国のほうは、これは私企業がやって、その収入の一部を国際社会に還元するのでいいのだという立場をとるのに対しまして、後進国は、いやそうじゃなくて、開発自体を国際機関がやって、すべて国際機関が規制し、そして開発自体の事業も行なうのだという解釈をとっておりまして、この点については、まだ妥協案と申しますか、どれが最終的な条文になるだろうかという点について、見通しもつかない状況でございます。
  179. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 いまのお話で、全然見通しがつかない、深海海底を国際管理するための制度と機構というものが、どうなってくるのかわからないというお話でございます。しかし、わからないからといって、深海底の開発というものはそのまま放置していていいものではございません。われわれとしては、ぜひこの推進に当たらなければならないのであって、四十九年度予算ではどのような形になっているか、簡単に御説明いただきたいと思います。
  180. 千葉博

    ○千葉政府委員 ただいま先生指摘の深海底の探査関係の予算でございますが、いわゆる六千メートルの探査に必要ないろいろなシステム、こういったものの調査あるいは設計、こういったものに関する費用といたしまして、三千四百万円をいま計上いたしておりまして、それで四十八年度に引き続きまして、来年度もこの調査を行ない、五十年にはこの調査を完成いたしまして、この具体化をはかっていくというような計画にいま相なっております。
  181. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 五時までということなので、問題をはしょって質問申し上げますけれども、海洋開発というのは、いろいろな問題が、いままで御答弁いただいた中に、まだまだ掘り下げて御質問すべきことが相当ございます。しかし冒頭に話したように、汚染問題というもの、そういう問題はたいへん大きな問題であり、日本がこれから開催しようとする海洋博覧会そのものを見ても、日本がこの海洋の汚染問題をやったのでは、海洋博覧会そのものに傷がつきます。これには多額の費用をかけて、また人間の健康あるいは海洋そのものの望ましい未来というものを確立していかなければならないかと思います。それで、この海洋汚染防止問題については、海洋法会議ではどのような角度から検討されているか、簡単に御説明いただきたいと思います。
  182. 杉原真一

    ○杉原説明員 海洋法におきましては、海洋汚染の問題、これまたきわめて重要な関心を持たれておる事項でございまして、海洋法条約の一つの項目といたしまして、海洋汚染防止に関する国際法の一般的な規則が盛り込まれることになっております。そこでの中心的な課題となりますのは、やはり従来は、船舶に対する法の施行権というのは、その船舶の属する国にある、いわゆる旗国主義が中心になってすべての法律条約ができ上がっておったのでございますが、それでは必ずしも汚染防止上実効的な措置を確保することができないというのがいま国際的な世論になっておりまして、そのために、沿岸国が、特定の幅の海域に対しては、沿岸国みずからが、どこの国に属する船であるかにかかわらず規制し、場合によっては、これを処罰する権限までも持つべきであるという主張と、その主張にも、実はいろいろニュアンスが異なる提案がなされております。日本も、その意味では独自の提案をいたしております。したがいまして、問題の中心になるのは、従来の旗国が汚染防止の違反に対する管轄権を持つか、沿岸国にも持たせるか、あるいは船が入った港のある国にも違反船に対する調査処罰権限を持たせるかどうか、その辺が基本的な問題点になるかと存じます。もちろん、一般的な汚染を防止するための船の構造の問題、あるいはどこの海域ではどういう油を流してはいけない等々につきましては、ロンドンにございます政府間海事協議機構その他関係諸国際機関において具体的な諸措置が討議され、また幾つかの条約ができ上がっておる次第でございます。
  183. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 委員長に申し上げておきます。  私の質問がすべて終わったわけではございません。まだ海洋関係あるいは原子力、ライフサイエンス等々について、御質問申し上げたいことが、相当、数時間ございます。この辺をメンションしていただいて、私の質問を終わりますけれども、いまの海洋法会議の話を聞きましても、漁業だけでも四百数十万トンの減獲になるであろうという話もございますし、今後たいへん大きな問題を含んでおる。また、これは日本の今後の経済そのもの、あるいは零細な漁民の問題等々、日本経済、日本そのものに大きく影響する問題でございますので、政府でも、この問題については大ぜいの方に理解を求め、コンセンサスを得て、国際会議の中で、日本の主張というものを真剣に主張していただくことを切にお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  184. 安井吉典

    安井委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  185. 安井吉典

    安井委員長 速記を始めて。  これで小宮山重四郎君の質疑は終了いたしました。  なお、先ほど瀬崎委員より、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律に基づいての書類提出の要求がございましたが、この件については、次回の理事会で協議いたします。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五分散会