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1973-12-19 第72回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年十二月十九日(水曜日)     午後一時十九分開議  出席委員    委員長 安井 吉典君    理事 伊藤宗一郎君 理事 佐々木義武君    理事 田川 誠一君 理事 石野 久男君    理事 原   茂君 理事 瀬崎 博義君       羽田  孜君    湊  徹郎君       粟山 ひで君    河上 民雄君       堂森 芳夫君    近江巳記夫君       内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      森山 欽司君  出席政府委員         科学技術政務次         官       長屋  茂君         科学技術庁長官         官房長     牟田口道夫君         科学技術庁計画         局長      長澤 榮一君         科学技術庁研究         調整局長    千葉  博君         科学技術庁振興         局長      大坂 保男君         科学技術庁原子         力局長     田宮 茂文君         環境庁自然保護         局長      江間 時彦君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君  委員外出席者         厚生省環境衛生         局環境整備課長 折田 貞雄君         工業技術院総務         部技術審議官  木下  亨君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       井上  力君         参  考  人         (新技術開発事         業団理事長)  鈴江 康平君         参  考  人         (日本重化学工         業株式会社常務         取締役地熱事業         本部長)    森 芳太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興対策に関する件(地熱発電技術  開発及び原子力安全性確保に関する問題等)      ————◇—————
  2. 安井吉典

    安井委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  この際、森山国務大臣及び長屋科学技術政務次官よりそれぞれ発言を求められておりますので、これを許します。森山国務大臣
  3. 森山欽司

    森山国務大臣 科学技術庁長官に就任いたしました森山欽司でございます。  わが国は、いま皆さま案内のとおり、重大な時期に差しかかっておりまして、このような時期に科学技術庁長官を拝命いたしましたことは、その職責の重大さに身が引き締まる思いをいたしておるところであります。科学技術庁長官としてこの委員会出席いたしますことは初めてでありますので、この機会をおかりいたしまして、一言科学技術振興に取り組む私の考え方の一端を申し上げ、ごあいさつにかえさせていただきます。  言い古されたことばでありますが、国土狭く資源に乏しいわが国が、今後国民生活向上をはかっていくためには、人間の英知すなわち科学技術による以外にないことは申すまでもございません。  科学技術振興をはかるにあたりまして、基本となるものは、何と申しましても人間であります。研究者が安んじてその能力を発揮できるようにするとともに、研究者という職責が青少年にとって魅力あるものになるようにすることが何よりも大事でございます。これに関しまして、研究者がその能力において十分処遇をされるとともに、良好な研究環境が与えられるよう努力する考えでありますが、さしあたっては、研究公務員処遇の一そうの向上をはかってまいる所存でございます。  さらに、世の中が複雑になるにつれまして、多くの異なった分野専門家知恵を出し合って初めて解決できる問題が多くなっておりますが、科学技術庁総合調整官庁といたしまして、関係機関協力の促進、能力の結集につとめてまいったわけであります。今後ともこの面に力を入れますとともに、科学技術庁とか文部省とかいうなわ張りにこだわることなく、大学の先生方知恵も十分に拝借をいたしまして、多くの方々の知恵を合わせることによって、与えられた課題に対処してまいりたいという考えでございます。  こういう考え方のもとに、最先端の技術分野である宇宙開発、人類の未知の領域を開く海洋開発、さらに、エネルギー資源分野に飛躍的な革新をもたらすべき原子力開発、さらには、国民福祉の画期的な向上に実を結ぶことが期待されておるライフサイエンスなど、重要な課題について、国家的なプロジェクトとして積極的に推進をはかってまいりたい所存でございます。  なかんずく、当面の最も重要な課題でありますエネルギー危機への対処につきましては、原子力発電は燃料の輸送及び備蓄の容易なことなど、多くの利点を持っておりまして、本年六月末現在、世界的に見まして、動いております発電炉はすでに百三十二基、出力四千万キロワットをこえ、また、わが国におきましてもすでに五基、百八十万キロワット、年度内にあと二基追加されますから、約三百万キロワットをこえる発電設備を保有するなど、すでに実用的段階に達し、こういう時期でもございますし、また資源の将来の見通しからいいましても、今後ますます増大の一途をたどっておるというこの世界の趨勢を考えまして、長期的な総合エネルギー政策の観点から、わが国の将来のエネルギー供給の有力なにない手といたしまして原子力発電を積極的に推進をする所存でございます。  しかし、皆さんも御案内のように、いろいろ問題も御論議されておることでございますから、安全審査体制の拡充、安全研究の強化をはかるなど、安全性確保環境の保全に万全を期して、これについて地元の十分な御理解を得るように相つとめますとともに、原子力発電所建設が、地元福祉向上にも役立つ方向にこれから進めてまいりたいというふうに考えております。  御案内のとおり、まだ就任いたしまして半月余りでございまして、未熟でございますが、委員各位の御指導により、今後大いに勉強いたしまして重責を果たしてまいりたいと思います。何とぞよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。(拍手)
  4. 安井吉典

    安井委員長 長屋政務次官はまだお見えになっておりませんのであと回しにし、お見えになった際にごあいさつをお願いすることにいたします。     —————————————
  5. 安井吉典

    安井委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  地熱発電技術開発に関する問題調査のため、本日、新技術開発事業団理事長鈴江康平君及び日本重化学工業株式会社常務取締役地熱事業本部長森芳太郎君を参考人として、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 安井吉典

    安井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  この際、両参考人一言あいさつ申し上げます。  本日は御多用のところを本委員会に御出席下さいましてありがとうございます。どうかそれぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べ下さるようお願いいたします。  なお、御意見の聴取は、質疑応答の形で行ないますので、さよう御了承願います。     —————————————
  7. 安井吉典

    安井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原茂君。
  8. 原茂

    ○原(茂)委員 大臣が新しく長官に就任されましたこと、心からお喜び申し上げます。  いまの方針のごあいさつをお伺いいたしまして、特に原子力開発に関する熱意のほどがよく読み取れたわけであります。われわれとしましても、原子力開発というものの重要性を痛感しておるわけでございますが、本来この問題から先に入るべきなのですが、同僚委員から多くこの問題に関しては別途またきょうあとでお伺いをするようになっておりますので、私のきょうお伺いいたしたいと思いますことを最初に端的に申し上げて、皆さんの御意見をひとつ勉強する意味でお聞かせをいただきたいと思うのです。大臣はベテランでよく御存じだろうと思うのですが、ひとついろいろと含んでおります内容等、お聞き取りをいただきまして、終わりになりましてから総合的な感想をお伺いする予定でございますので、御答弁をお願いします。  鈴江さんと森さんには先日たいへんごやっかいになりましてありがとうございました。きょうまた、御多用中わざわざおいでいただきまして感謝いたしますが、お二方だけにお伺いをするということではなくて、通産省からもおいでいただきましたり、その関連の中からまたお伺いをすることが出てくると思いますので、そのつどお答えをいただくようにお願いをいたしたいと思います。  エネルギー考えたときに、非常に大きな期待を持っておりますのは、実は核融合でございます。核融合の現段階における状態を見ますと、非常に遠い将来でないとそういう時代がまだ来ない、これはもう決定的な状況でございますが、そういう状況の、いわゆる核融合時代というものが来るまでたいへん長い期間がかかるその間は、放射性廃棄物等の問題があっても、まず原子力にたよることが至当だという学者その他の意見がございますが、私は、原子力開発の現段階における安全性その他を考えましたときに、これに匹敵するとも劣らない重要な課題として、すでにけさの新聞等で報道されておりますような産業技術審議会——茅誠司先生が会長でおやりになっている通産相に対する答申が、大きく四つの項目に分けて出されたようでありますが、その中にもありますような問題の一つとして、地熱エネルギーというものの開発利用、それから水素エネルギーというようなものも非常に重要な課題として、国家的な立場で取り組まなければいけない段階が来ていると思うのであります。  残念なことに、地熱発電等を見ましても、まだほんとうには国としての力の入れ方に問題があるように思う。  かつてわが国河川調査に関して国家が思い切った労力をかけ、費用をかけました。そのおかげで、水力利用という点ではたいへん大きな開発に寄与してまいりました。今日わが国にある国際的にも水準の高い水力利用というものの根源をさかのぼっていくなら、間違いなくこれは、水そのものに対する、河川に対する調査というものを、全体としては資源という立場国家が思い切ってこれに力を入れた結果が、わが国水力利用の現段階における発展を来たしたと思うのでありますが、そういう意味においては、この地熱なり水素エネルギー等に関しては、およそ国家的ななすべきことが山積していながら、何一つまだ手をつけていない、こういう段階だろうと思うのであります。  まず地熱に関して考えてみましても、きょうもおいでいただきました鈴江さんのおやりになっております新技術開発事業団というものの御協力があって、日本重化学工業の、たとえば岩手における松川発電所開発が完成いたしました。いま二万キロという発電がなされて数年になるわけであります。続いて、大分県における大岳発電所の一万三千キロですか、こうしたものがすでに開発をされて今日利用されている。計画中あるいは調査中のものはあとでお伺いいたしますが、既設のものとしてはわずかに、二百カ所以上の開発利用可能の地域があるといわれているのに、いまだにその程度しか試み的に手がついているにすぎないというような状況考えますと、現在石油中心のこの危機的なエネルギー問題を考えれば考えるほどに、原子力にも増して、私は地熱利用というものに対する国家的な注力というものが何が何でも必要な時代を迎えた、こういうふうに考えておりますが、まだわが国全体としても、地熱に対する理解なり関心度はそう高くありません。私はもちろん浅学非才で、このことに関してほとんど知っておりませんので、きょうは地熱発電現状、その将来性、あるいは問題点があるとするなら、どういうところに問題点があるのかというようなことを大きく教えていただく意味で、これから質問を申し上げていきたいと思うわけであります。  その前に、これはわかり切ったことには違いないのですが、私は地熱発電というものを四つか五つに分けて、こういう利点があるのじゃないかというふうに考えます。  その一つは、やはり地球自体原子炉としたいわゆる発電方式だ。地球そのもの原子炉になっているという意味で非常に意義のあるものだ、こういうふうに考えるのが一つ。  それから二つ目には、これは純然たる国内資源でまかなうことができる。純然たる国内資源でまかなうというところに特徴がある。  それから三つ目には、石炭や石油などの燃焼による公害、特に大気汚染というようなものが全然ない、皆無だという点が大きな特徴一つになろうと思うのであります。  その次に、しいてあげますならば、これからお伺いをするのですが、原子力あるいは石油その他に比較して、水力と比較しても、私はこの地熱発電のコストのほうが安いというふうに考えられるのではないか。この点も非常に経済的な問題として重要な特徴にあげることができると思うのであります。  それから、これの利用の範囲でございますが、単なる発電だけではなくて、冷暖房に使ってみたり、農業に酪農に、その他非常に広範囲にこれを利用できるというところに、それを通じての地域開発ということが、先ほど大臣も、やはり原子力発電考えるときに、安全性というものを十分考えると同じに、その地域に裨益するという点に、いままでにない何か条件的に取り上げるという決意を述べられました。間違いなくそのことは大事だと思うのですが、この地熱発電のごとき、やはり地域開発という点では、非常に重要視すべき幾多の多目的な利用法があるというふうに考えることなどなどが、私は地熱発電特徴としてあげることができるのではないか、こういうふうに考えておりますので、そういうことを前提にして、国民的な熱意をもって地熱発電というものに取り組んでいきたい、いくべきだ、こう考えるわけです。  その地熱発電とは、現在国際的に見て、たとえば一番先に先べんをつけましたのはイタリアでございますが、次いでアメリカ、ニュージーランド、メキシコといったような諸外国においてのこの地熱発電エネルギー利用現状は一体どういう状況になっているのか。それに対してわが国現状、先ほどちょっと申し上げましたが、松川なり大岳におけるそれ、それからこれは参考までに、わかったらぜひお聞きしたいのですが、台湾とか韓国に対しても、わが国学者先生がもう相当古くこの技術開発のための指導をされているはずでありますが、現在台湾韓国において一体どの程度の見込みがあり、あるいは、はっきりとどこか、この場所でどの程度のものを開発するという目標でもできているのかどうかも、あわせてまず最初に、通産省資源エネルギー庁にお伺いしたい。
  9. 井上力

    井上説明員 お答えいたします。  まず第一の御質問でございますが、先生おっしゃいますイタリアにおきましては、ローマの北西三百キロメートルにラルデレロというところがございますが、ここを中心にしました地域で、一九〇四年から天然蒸気による発電を企画いたしまして、一九一三年には約二百五十キロワットの非常に規模の小さいものでございますが、発電に成功しております。以後、順次設備容量をふやしてまいりまして、第二次大戦当時は約十四万キロワットという規模になっております。しかし、戦災によりまして一時は壊滅状態になりましたが、戦後復旧いたしまして、八年後の五三年には二十六万五千キロワットになっております。一九七〇年九月現在で約三十九万キロワットということになっております。  次にアメリカでございますが、アメリカにおきましては、地熱地帯太平洋岸に存在しておりまして、現在開発を行なっておりますのは、カリフォルニア州のサンフランシスコの北東百二十キロメートルにございますガイサーでございます。この地域では、一九二一年に調査を開始いたしましたが、当時電力供給先が見つかりませんで、計画は一時中断いたしまして、一九五五年には開発が再開され、六〇年には一号機一万二千五百キロワットが運開して以来、順次増設されまして、現在は計三十万二千五百キロワットが運転中でございます。  日本現状でございますが、わが国地熱発電は、四十一年に運開いたしました日本重化学工業株式会社松川地熱発電所の二万二千キロワット、及び昭和四十二年に運開いたしました九州電力株式会社大岳発電所の一万一千キロワット、合計三万三千キロワットでございますが、建設中または計画中のものといたしましては、三菱金属株式会社大沼発電所の一万キロワット、電源開発株式会社鬼首発電所の二万五千キロワット、東北電力株式会社葛根田発電所、これは、日本重化学工業株式会社より地熱により蒸気供給を受けまして発電をする計画でございますが、この計画の五万キロワット、九州電力株式会社八丁原発電所の五万キロワットの計画合計十三万五千キロワットがございます。その他の国の、いまの先生お尋ね台湾あるいは韓国につきましては、ちょっと私ただいま資料がございませんので、後ほどまたお答えいたします。     —————————————
  10. 安井吉典

    安井委員長 質疑の途中ですが、長屋科学技術政務次官がお見えになりましたので、この際発言を許します。長屋政務次官
  11. 長屋茂

    長屋政府委員 私、御紹介にあずかりました科学技術政務次官長屋茂でございます。  政府委員といたしまして、初めての当委員会への出席でございますが、遅刻いたしまして、委員長はじめ委員皆さま方に御迷惑かけましたことを心から恐縮いたしております。厚くおわびを申し上げます。以後注意をいたしますので、どうか御宥恕のほどお願い申し上げます。弁解がましくなりますけれども、実は気になりまして、先ほど一時五分にここに参りましたら、守衛の人が、まだいま理事会中だということでございまして、ちょっと席をはずしたということで、たいへん大失敗いたしまして、まことに申しわけございませんが、決して軽視したということでない点を、諸先生方の御理解をお願い申し上げます。     —————————————
  12. 安井吉典

    安井委員長 質疑を続けます。原茂君。
  13. 原茂

    ○原(茂)委員 いまの、エネルギー庁台湾韓国に対する問題は、あとで私のほうへ状況だけ報告してもらえば……。参考に知りたいだけですから、お願いしたいと思います。  それから、いま現在やっているところの中に三カ所お話があったのですが、葛根田はどうですか。
  14. 井上力

    井上説明員 葛根田は、現在発電はしておりませんが、計画中で調査中でございます。
  15. 原茂

    ○原(茂)委員 何万キロ……。
  16. 井上力

    井上説明員 五万キロでございます。
  17. 原茂

    ○原(茂)委員 そこでもう一つ総合的な問題として、どこがわかっているか知りませんが、開発途上国に対するこの種地熱エネルギー問題の指導研修のために、日本で何回か研修会を開いて、十数カ国からその研修に毎年来ている。しかも、研修を受けた諸外国の諸君が同窓会みたいなものを開いてまで、相当何か開発途上国に対する指導的な役割りわが国が行なっていると聞いているのですが、そういうこと、御存じの方いませんか。前もって、そういうことをお伺いしますよといっておかなかったのですが、思い出したので聞くのですが、わからなければわからないと、どなたでも。参考人の方で御存じだったら、森さんからでも。そういうことがあるはずで、知っていなければいけないはずですよ。
  18. 森芳太郎

    森参考人 私、詳しいことを存じませんけれども、毎年九州大学で、発展途上国の東南アジアの皆さん二十名近くの方が地熱研修を行なっておられまして、終わりにいつも私どもの松川発電所を視察に参られますので、それは存じ上げているわけでございます。その程度のことしか私存じません。
  19. 原茂

    ○原(茂)委員 これも資源エネルギー庁あたりは、もうちょっと関心を持って、知っておいたほうがいいんじゃないかと思いますが、これも一度調べておいて……。何年からやり出して、何人ぐらいどこの国から来て——今日その研修生そのものが、開発途上国としては、この種の問題に関する相当中心的な役割りを果たしている、またその現地における問題点を持ち寄っては、同窓会的な会合を持った中で、日本指導をまた受けるというようなかっこうであるように承知していますが、そのことの、そうであるかどうかという内容をひとつ、これもあとでけっこうですからお知らせをいただきたい。
  20. 井上力

    井上説明員 後ほど調査いたしまして、御報告いたします。
  21. 原茂

    ○原(茂)委員 それからもう一つ、これもエネルギー庁でいいんだろうと思うのですが、地熱地熱といっても、非常に地熱性質そのものが違うわけですよね。したがって、たとえばいま例にあげられたイタリアあるいはアメリカその他と、わが国がいま松川大岳開発して、その結果から見た地熱性質というものとの違いがあるのかどうかですね、これは全く同じものなのかどうかをひとつ……。
  22. 井上力

    井上説明員 お尋ねの点でございますが、日本の場合は火山活動が非常に複雑でございまして、構造的にも非常に地質が複雑であるということがございまして、基礎調査あるいは精密調査等につきまして、非常に高度な技術を必要とするということのほかに、リスクが非常に大きいという問題がございます。これに対しまして、先ほど申し上げましたイタリアとかあるいはアメリカの場合には、地熱賦存状況が非常に単純でございまして、リスクも少なく、開発が比較的容易だというふうな特徴がございます。
  23. 原茂

    ○原(茂)委員 その点の詳細、もうちょっとあとで項を分けてお伺いしたいと思うのですが、確かにそういった違いがあるようです。あるようですが、これは森参考人にお伺いしたいんですけれども、松川地熱発電のあの施設ができて、開発が今日完成して利用されているんですけれども、一番最初にあそこを掘さくして探査を行なったそのときから見て、一体何%ぐらいの成功率とお考えになっているのかですね。私は、いまのような、イタリアアメリカ地質からいって非常にリスクが少ない、単純だ、日本の場合複雑だと、火山性のものでどうのこうのということはよくわかりますけれども、そうであるにもかかわらず、石油とかその他のものと比べたときに、この成功率というものは、話にならぬほど高率な成功率が実際には得られているんじゃないかと思うのです。この点、非常に今後地熱考えるとき大事なんでして、リスクリスクといいますけれども、私は、九〇%はわかりませんが、松川あたりで八〇%ぐらいの成功率といっていいんじゃないかというように思うのですが、森さんいかがですか。
  24. 森芳太郎

    森参考人 いまの成功率お話でございますが、問題は発電用蒸気成功率のことと解釈してよろしいと思いますけれども、現在松川で七本発電用井戸が掘られております。蒸気の出なかった、つまり使いものにならぬ井戸は一本もなかったわけでございます。ただ一つだけ、仕上げの方法を誤まりまして、不安定な蒸気になっている井戸が一本ございます。ですから、厳密にいいますと成功率は七分の六でございます。いまおっしゃいましたとおり、九〇%近いような成功率をあげているわけでございます。
  25. 原茂

    ○原(茂)委員 大岳は何%といえるでしょうか、これは鈴江さん御存じでしょうか。
  26. 鈴江康平

    鈴江参考人 存じません。
  27. 原茂

    ○原(茂)委員 森さんどうでしょう。聞いていませんか、どの程度と判断できるか。
  28. 森芳太郎

    森参考人 大岳の場合は、前の試験研究期間がだいぶ長うございましたし、最初五、六本浅い井戸をお掘りになりまして、それからやっていったということで、最初井戸生産非と認めがたいと思います。その後に掘られたものについては、やはりほとんど九〇%から一〇〇%ぐらいの成功率をあげておられるというふうに考えております。
  29. 原茂

    ○原(茂)委員 これはいまお聞きになったとおりで、相当の日本の複雑な、しかも火山性のものであり、なお、なれないせいがあるのでしょうが、他のものと比べて、なおかつ非常に高率だということだけは、これは銘記しておく必要がある。地熱発電に関してのリスクという問題は非常に大事です。新しいエネルギー開発リスクを論じないわけにいきませんから、そういう意味ではこのリスクリスクということがことばにちょいちょい出るのですが、私はこの地熱発電成功率は非常に高いということを、われわれよくいままでの実績の上からこのことは確信できるという点が非常に重要だと思いますので、あえてお伺いをしたわけであります。  次に、具体的に火力と水力と比較したときに、既設の二カ所の地熱発電のコストとの比較をしたときに、パー・キロワットアワーでもけっこうですから、あるいはもっと計算のしいい単位があるならその単位でけっこうですから、その点をお知らせいただきたい。
  30. 井上力

    井上説明員 日本重化学工業からお見えでございますが、お聞きしておりますところでは、松川発電所発電原価は、四十八年度の計画でございますが、キロワットアワー当たり二円七十六銭、それから九州電力の大岳でございますが、これは四十七年度実績で四円三十六銭というふうに聞いております。  水力、火力と比較してみますと、火力の場合は、これは油の値段で非常に違うわけでございますが、油の値段と、それからもう一つは、火力発電所建設されましたものが一号機かあるいは二号機か三号機かということによって、建設費もかなり違いますので、一がいには言えませんが、およそ申し上げますと、大体燃料費がキロリットル当たり七千五百円から八千円ぐらいといたしまして、三円前後というふうに見られております。  それから水力発電所でございますが、これはやはり開発地点によって非常に違いますことと、それからもう一つは、水力の場合ですと、発電所の価値が、火力、原子力あるいは地熱といったものと違いまして、いわゆるキロワットの価値というものを見ますものですから直接的な比較はできないと思いますけれども、一般水力、つまり揚水式でない水力では、現在のところ大体開発されておりますものが、キロワットアワー当たり四、五円程度かと思います。
  31. 原茂

    ○原(茂)委員 大体私の調べてきた数字とほとんど同じです。しかし、火力の場合には、現在の石油問題等考えると、これはキロ七千円だ、八千円だなんということで今後使用できるということはおよそ及びもつかない。水力に近いか、それ以上に火力のほうがコストアップしていく危険があるということを考えますと、松川なり大岳考えただけでも、もうすでにコストは低廉であるということが、これも二つ目に重要な課題として実はわかるわけです。非常に重要な問題、成功率それから実際のコストというようなことが、いずれも非常に有利であるということがわかります。  そこで、次にお伺いしたいのは、これは参考人にお伺いしたいのですが、松川でおいでいただきましたから第一にお伺いしたいのは、現在のあの施設をフルに稼働をするために、必要があるならば、必要な設備、操作をする機械の入れかえをしてもいいという前提で、現在のあの場所で、現在の施設を少し改造するだけで、いまの二万二千キロワットというのが、どの程度出力を増すことができそうかということが一つ。  それから今日に至るまでの間に、一番最初のボーリングから始まって、費用はどのくらいかかりましたか。この松川日本重化学工業のおやりになり始めるそのいつごろから新技術開発事業団は関与され、協力をし始めたのか。新技術開発事業団が、現在完成してあの稼働している過程で、何割の資金的な援助をされたのか、資金援助をしたときに、その条件は一体どんな条件なのか。たとえば返済の期限なりあるいは金利なりというようなものをお伺いをしたいわけです。  このことをお伺いするのは、御存じのように、まだまだ日本でこれからやらなければいけない開発の地点がたくさんありますが、そういうところの開発に、一体われわれがどの程度の目安を持ったらいいのかが知りたいからでございますから、実績をそのままに実はお教えをいただきたい。
  32. 森芳太郎

    森参考人 それでは、松川の施設を、いま稼働しているやつを改造するなり何かして、どのくらいの出力までこれを大きくできるかという御質問でございますけれども、タービン発電機は定格出力がきまっておりまして、現在の二万二千キロワットプラス五%ぐらいのところが限界でございます。(原(茂)委員「タービンをかえるのです」と呼ぶ)タービンをかえましても、冷却塔付属一式を全部かえないと出力が増加できません。ただ、あそこにまだ相当スペースが残っておりますので、私どもの調査範囲内では、さらに十万キロワットぐらいの増設は可能と見ております。  それから松川発電所の一番最初からの費用でございますが、建設利息を含めまして、二十六億円でございます。これは送電線二十一キロメートル、こういったものも入っておりますが、何ぶん一号機でございますので、先行投資分がそういう意味で入っているわけでございます。
  33. 鈴江康平

    鈴江参考人 申し上げます。  先ほど先生もおっしゃいましたように、地熱開発成功率が現在非常に高いのでございますけれども、日本におきましては、実は明治の末期から九州大学が主として研究されておりまして、別府でやられておりましたが、これは小規模でございますけれども、途中でタービンが吹き飛んだりしまして、うまくいかなかったということを聞いております。その後、戦後工業技術院の援助だと思いましたが、伊豆の南方の下賀茂でございますか、あそこでも相当やりましたけれども、結局うまくいかなかった。その他二、三あったようでございますけれども、どうもうまくいかない。その後、日本重化のほうで、地質調査所とタイアップされまして、試験掘りをいろいろやっておりましたのですが、その段階で、従来やり方が少し間違っているということがわかってきたわけでございます。  それは、従来蒸気のふいているところを掘ればいいというようなことでございましたのですが、あとから考えればあたりまえのことなのですけれども、上にいわゆるキャップロック、大きな、あまり蒸気を通さないような岩盤があることが、下の地熱が非常にプレッシャーが高くなりますから、そういうところがいいんだということに気がつきまして、そういうところをさがす、そのさがし方が地質調査所の研究員の研究であったわけでございますが、そういうことを承りまして、われわれもいままで全部失敗しておりましたけれども、いろいろお話を聞いて確信を得ましたので、ぜひ商業的規模で初めて行ないたいということで、そのプロジェクトに援助をしたわけでございます。  そのときは、私どもも事業団も、実はあまり資金がございませんので、一番リスクの多いのは、井戸を掘って、それがいい蒸気が出るかどうかという問題でございますので、蒸気が出れば、地上の部分はそれほどリスクがないということで、井戸を掘ることにつきましてわれわれのほうで約三億円の資金を投じたわけでございます。一本大体五千万円ぐらいで掘れるだろうということで五、六本分を実は用意したわけでございます。そのあと、先ほど森常務からお話がありましたように、実は失敗した井戸もあったわけでございますが、やってみますと、わりあいに順調に参りますので、現在、さらに葛根田のほうの新しい技術を加えたプロジェクトに、われわれのほうとしては援助をしておるわけでございます。  そして、われわれのほうといたしましても、三億ちょっとでございますが、私のほうの制度といたしまして、成功いたしますと、出しました金は返ってくるわけでございますので、もうすでにそれは全部返していただいております。さらにうまくいきますと、ロイアルティーをもらうことになっておりますが、大体売り渡しました電気代の二%を実施料ということでいただいております。現在も、年間にすると、相当のロイアルティーを私ども実はいただいておるわけでございますが、そういうことによりまして、また次のプロジェクト、現在の葛根田に対しましては、約八億円の資金を用意しておるわけでございます。これも大体同じような条件になるかと思いますが、そういう次第でやっておるわけでございます。(原(茂)委員「金利は……」と呼ぶ)金利は取らないのでございます。私どものほうの制度としましては、金利のかわりにロイアルティーをいただきます。
  34. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで、もう一度押してお伺いしたいのですが、蒸気状況からいって、十万キロ、は可能だといったときに、タービンその他の取りかえが必要になるだろうと思うのですが、そういう必要はないのですか。あるとすれば、どれくらいの費用がかかるのですか。
  35. 森芳太郎

    森参考人 取りかえではなく、増設になるわけでございます。いま、いろいろ見積もりをとりますと、めちゃめちゃな値段が出てまいりますのが実情でございますけれども、ことしの一月の時点で、五万キロワットですと、大体六十億ぐらいかかるような数字が出ております。現時点では、ちょっと見当がつきません。もう少し安定してから、値段が確定すると思いますけれども……。
  36. 原茂

    ○原(茂)委員 やはりこういう関係でも、現時点では値段がとてもじゃないけれども、つかみにくいですかね。われわれの生活と同じですね。  そこで、次いでお伺いしたいのは、現在、新技術開発事業団は、葛根田に大体八億円の予定をされているようですが、それ以外には、新技術開発事業団としては、計画なり見通しを持っておいでになりませんか、現在は。
  37. 鈴江康平

    鈴江参考人 先生御承知でいらっしゃると思いますが、われわれの事業団といたしましては、新しい技術を企業化し得るようにするということでございますので、同じような技術でもって次の技術開発をやる場合につきましては、何ら援助もいたしません。おそらくこれは通産省の問題になるかと思うのでございますが……。  今度、葛根田でやりましたのは、前の経験からしまして、三つの新しい技術が生まれましたので、それを実際にやってみて、企業化し得るかどうかということのためにやっておるわけでございますが、それを申し上げますと、一つは、地熱の探査の技術でございまして、これはいろんなデータを——物理探査、化学探査、いろいろあるわけでございますが、そういうものを組み合わせて地下の状況を見るわけでございますが、これを一つのシステムにいたしまして、電算機でもってデータを入れれば、大体地下の状況がわかるというようなソフトウエアの開発が一点でございます。  それから第二点は、いままで井戸を掘っておりましたのに相当時間がかかるものでございますから、従来、モーターでぐるぐる回しておりましたのを、今度エアタービンを使いまして、高速回転をして短期間に掘ってみたい。それによって、コストも非常に下がるという見通しでございます。  それから第三番目は、地下から掘りました蒸気を出す井戸でございますが、これを取り方をへたにしますと、寿命が非常に短い。そうすると、一本掘るのにまた三千万円とか四千万円かかるものでございますから、なるべくそれをあまり無理な使い方をしたくない。これは何本も井戸を掘るものでございますから、お互いの干渉がありまして、一方からたくさんとると、片方はあまり出ないとか、いろいろな問題がございますので、それを全体的に各井戸から同じような量がとれ、しかも、それによって無理なく長く続くためにどういうコントロールをしたらいいかというようなことも、一つ考え方にございましたものですから、それではアプライしてみようという、その三つの新しい技術でございます。でございますので、また将来何かの新しい技術がありますれば、あるいはわれわれのほうで援助さしていただくかもしれませんですが、そんな段階でございます。
  38. 原茂

    ○原(茂)委員 そうすると、鈴江さんもいま葛根田でおやりになっておる新しい三つの方式を、新技術開発の前提として取り上げたから手を出しているんだ。いまのところは、それができてみて、また新しい方式が、これでやってみるかという開発のプロジェクトができない限りは、新技術開準事業団としては、これに対しては関与をしない、こういうことになりますね。  そこで、ついでに一つ伺いしておくのですが、けさの新聞をごらんになったと思うのですが、産業技術審議会が答申をしました中の四つのアイテムの一つ地熱に関しては、これはやはり何か新しいサンシャイン計画という前提で、そういうものの事業団でもつくろう、総合的なエネルギーを論議するための事業団をつくろうという構想の答申のようなんですが、それの審議に参加まれたことはありますか、ありませんか。全然関与していなかったのでしょうか。
  39. 鈴江康平

    鈴江参考人 私も産業技術審議会の委員になっておりますので、その審議には加わっているわけでございます。
  40. 原茂

    ○原(茂)委員 そこでひとつお伺いするのですが、そうすると、この新しい事業団をつくるというような構想を、一緒におつくりになったわけですが、その中には、新技術開発事業団としては、実際には入っていかない、こういう前提になりますか。新しい技術が必要になるかもしれないので、その事業団には、やはり新技術開発事業団というものは参加することになるのでしょうか。それはどうなんでしょうか。
  41. 鈴江康平

    鈴江参考人 その点でございますけれども、これは私どものほうの事業団といたしますれば、これはそもそも事業団のできましたいきさつもございまして、私どもの事業団と申しますのは、一番初めの創立のいきさつと申しますか、経緯は、実は日本学術会議から勧告がございまして、その勧告は、要するに日本科学技術はどうも海外の技術にたよっておるばかりでいかぬ、研究者学者、そういった者の研究成果を日本の産業界に生かしてもらいたい、そのために、われわれのような機構が必要であるということの勧告がございまして、それに従って発足したわけでございます。  したがいまして、私どもは、そういった学者寄りと申しますか、学者ベースと申しますか、そういうほうの御意見、御希望を、できるだけそれを具現化するというふうに考えておりますものですから、通産省のほうにできます事業団、私の方針としては、それはけっこうだろう、つまりそういう新しいエネルギーに対して、われわれの資金だけではとうていできないのでございますから、そちらでおやりになることもけっこうでございますが、ただ、私どもの希望といたしましては、そういうものができましても、やはり通産省の産業ベースでもっていろいろお考えになるかと思いますが、われわれとしては、やはり学者の期待にこたえまして、いろいろな発明がありました場合には、直ちにそれを育てていきたい、そういう希望を持っております。  ただ、その間にいろいろ重複があってもまずいものでございますから、これは通産省科学技術庁間において十分協議していただいて、それぞれ得意とするところにひとつやらしていただければたいへん幸いである、そんなような感じを持っておるわけでございます。
  42. 原茂

    ○原(茂)委員 これは通産省にお伺いするのですが、新技術開発というものではなくて、やはり既設のもの、技術をそのまま利用して、これから地熱発電をやっていく。現に、先ほど説明のあった三カ所をやり、四カ所目も手をつけているわけですが、こういうものに対する通産省の援助、助成、どういう手助けをしているのですか。
  43. 井上力

    井上説明員 いまの御質問でございますが、私どものほうといたしましては、工業技術院の地質調査所において、全国的に地熱基礎調査というのをやっておりますが、これは地理的には地熱エネルギーに恵まれておりますような地点をねらいまして、四十八年度から三カ年計画でやっておるわけであります。  四十八年度といたしましては、合計八千万円の予算で、駒ケ岳の北部、それから吾妻北部、それから栗駒北部、伊豆南部、薩南の諸地域におきまして調査をやっておりまして、さらにこういった基礎調査が終わりました場合には、引き続きまして地熱開発の精密調査を行なうということで、来年度以降さらに精密調査調査費をとりましてやっていく。来年度の要求といたしましては、現在約四億五千万の予算要求をしております。
  44. 原茂

    ○原(茂)委員 おっしゃるとおり、その程度しか国としては手を入れていないわけであります。  ここで森さんにお伺いしたいのですが、あの開発をおやりになる途中で、あの地帯一帯が自然公園法の規定のある場所なんですが、それとの関連では、何か困難がおありになったのですか。あそこにできるまでに、それとの関連で、どうしてあれができたのか、そういう点をひとつ教えていただきたい。
  45. 森芳太郎

    森参考人 現在稼働をしております松川発電所も、それから現在工事中の葛根田の雫石のほうの建物、これも国立公園の中でございますので、現在環境庁に、いろいろボーリング、これは土石採取というのでございますが、それと、いろいろな工作物の許可をいただくように折衝をいたしまして、やはり国立公園でございますので、これは非常にむずかしいことでございます。通り一ぺんではなかなか許可はいただけないのでございまして、ずいぶん長く時間もかかりますし、いろいろ御説明もしなければなりません。いまのところは、滝ノ上のほうも、環境庁のほうから、蒸気井戸を掘るまでの許可をいただいておりますが、来年はパイプラインとか、東北電力さんでおつくりになります発電所の許可を受けなければならぬということで、非常に時間がかかります。  大事な自然を維持するということで、やむを得ないと思いますが、現状は非常に時間がかかると思います。
  46. 原茂

    ○原(茂)委員 これは、きょうおいでいただいた皆さんで、どうしたらいいかということを論議してもしかたがないと思うのですが、確かに、国立公園であればなおさらこれは重要な問題になりますので、これとの関連をどうするかを、これからの課題として解決していかなければいけない課題だろうと思うのです。  その点は、またあとで関係官庁ともこの委員会で話をお聞きいたしますけれども、あの松川だけでも、熱水の利用に関しては何かの計画がおありだろうと思うのですが、その計画をなさるのに、国立公園の中をどういう形であれ、パイプで送るわけですが、この問題は、環境庁との間に何かもうすでにやりとりをやっているのですか。もう全然そのことは考えていないのですか。
  47. 鈴江康平

    鈴江参考人 実は、松川のときには熱水があまり出ませんで、ほとんど全部蒸気でございましたので、その熱水による問題はなかったのでございますが、今度の葛根田のほうは、かなりの量の熱水が出るわけでございます。環境庁といたしましては、それを流さぬでくれというふうな要求がございますので、ただいまそれを地下に還元する井戸をさがしておりまして、もとに戻すというふうに考えております。  そのときに、まだその熱水はかなりの温度がございますので、できますれば、それからも電気をとって、そうしてあとを地下に埋めたいというふうなことを寄り寄り考えておりますが、とにかく、今度はそのお湯は地下に返すというような方針で環境庁とも話し合っておるわけでございます。
  48. 原茂

    ○原(茂)委員 ついでに伺うのですが、あの熱水の中に鉱物質、何か物質的なものは入っているのですか。たとえば砒素が入っているとか、そういうことは、もう決定的に、こういうものが入っているというのは、どの地域でもいえるのか、あるいは地域地域によって含まれている物質が違うのか、その辺もあわせて……。
  49. 鈴江康平

    鈴江参考人 一番問題になりますのは砒素でございますが、実は葛根田松川も砒素はございます。ところが、日本の温泉は全部砒素があるのでございますね。ですから、砒素は確かにいけないのでございますけれども、従来の温泉は全部やはり地面から出る湯でございますので、大体同じような性質なんでございますね。濃度は、PPMが土地によって多少違うのでございますが、松川よりもずっと多い砒素を持っている温泉もございます。それからもちろん少ないものもございます。  それで、われわれとしましては、今度、そういうことがございますので、地下に圧入すればその問題は解決するのじゃないか、そういうふうに考えておるわけでございます。
  50. 原茂

    ○原(茂)委員 地下に圧入するということも確かに必要ですし、この地熱発電考えたときには、やはり水がなければだめなんですよね。結局、地下水の問題が先に探査されて、あるかないかによって地熱発電が可能かどうか、こういうことになるのだろうと思うのですが、そういうときに、地下水がある、熱水が今度は還元されていくといったときに、その熱水というものは、これはしろうとでわからないのですが、ほんとうに全部還元が可能なんでしょうかね、地下へ還元するということは。ほかへ全然流れないですか。
  51. 森芳太郎

    森参考人 地下へ還元いたしますと、全部それは下へ戻るかというお話でございますが、それは確認のしようがございませんけれども、全部が戻らないにしても、地下水の水位を一定に維持しまして、水の出力をある程度常にコンスタントに保つというような役割りは、十分に果たし得るものと考えられます。  それから、全然地表には流さないのかという御質問でございますが、この大量の熱水の熱だけを取り出しまして、早くいいますと、真水と熱交換をいたしまして、現在地元の雫石町、盛岡市を含めまして、あの周辺で熱供給の事業を県が主体になって考えておるところでございます。熱水そのものは地下へ流しますけれども、熱だけは取り出しまして、熱供給利用するということでございます。
  52. 原茂

    ○原(茂)委員 これは通産省のほうへついでにお伺いしておくのですが、現在わが国で、地熱開発利用を、地熱発電という前提でいいですが、やろうとすると、何カ所ぐらい、大体全体としての容量はどのくらいは期待できる、こういう調査をもうされていますか。確実な調査はきっとないんだろうと思うのですが、大まかな調査でも……。場所の数とね。
  53. 井上力

    井上説明員 個所数はちょっと知りませんが、いままで日本でいわれておりますところでは、たしか昭和四十五年だったと思いますが、経済企画庁におきまして、たぶんこれは机上調査だと思いますが、調査をされまして、経済的に開発可能な地熱発電の量は、約二千万キロというふうにいわれております。
  54. 原茂

    ○原(茂)委員 鈴江さんでも森さんでも、いかがでしょう。いま答弁になりましたような、四十五年の調査らしいというのですけれども、個所数がわからない。でも、おおよその個所数がわかっているのじゃないかと思うのですが、どうでしょう。全然わからないものでしょうか。それが一つ。  それから全体の容量を二千万キロワットと言っていますが、私はその倍ぐらいのものの可能性というのが、もうすでにあると見ていいのじゃないかと思うのですが、その点、どうでしょう。通産省が言ったからといって拘泥されずに、ひとつ思ったとおりを……。
  55. 鈴江康平

    鈴江参考人 私もデータ、そういうものはないのでございますけれども、地質調査所でこの研究をやられた研究官、中村久由さんという方がおられますが、これは地熱専門家でございます。  この方の御意見では、まあ二千万キロはできるのじゃないかということでございます。しかし、地熱の出るのはもっとずっと多いだろうと思いますのですが、何ぶんにも、あまり山の中へ入りますと、発電機や何かの運搬自体もできない。ですから、まあ二千万キロというのがどういうのか、採算ベースに乗るというような考え方からいえばそうなるかもしれませんですけれども、どうもその点、いろいろな条件がございますので、あるいは石油が非常に高くなれば、もっと開発ができるかもしれませんね。どうもはっきりしたことを申し上げられなくて恐縮でございますけれども、残念ながらいまそういうデータがございませんので、工業技術院のほうで今後本格的に調査をされるようでございますので、そうしますれば、もっとはっきりしたことがわかるのじゃないかというふうな気がいたします。
  56. 原茂

    ○原(茂)委員 地熱の容量としては無限大みたいなもので、これはもうはかり知れないと思うのですが、やはりある程度、ここらは探査すべきである、可能性がありそうだ、大岳なり松川の経験からいって、少なくとも絵で見ても、この地帯には地質学上探査をすれば、可能性の率は、先ほどの率にしても出そうだ、ありそうだ、こういったくらいのことが、通産省に全然ないのですかね。もしないとするなら、学者がどういう基礎でやったのか知らぬけれども、二千万キロワットというのを四十五年に出したというのは、その積算の基礎は、どんなところにあるという前提なのですか。
  57. 井上力

    井上説明員 二千万キロを出した基礎はあると思います。ただ、ただいま私、資料をちょっと持ち合わせがございませんので、わかり次第お答えいたします。
  58. 原茂

    ○原(茂)委員 これは通産省が二千万キロワットというから、四十五年の古い二千万キロワットというのですが、こんなにエネルギー問題がたいへんな時期に来ているのに、四十五年のデータでもって二千万キロワットくらいだと、こう言って、しかも個所はといったら、個所はまあまあ、基礎もあまりはっきりしてない。こんなばかげた——エネルギーに対する国家の熱のなさですね。これはもうがっかりですね。  もう少し私は、少なくとも学者なり、この経験をされている先生方の知識も、それこそ何会議でもいいから動員をして、もう早期に、現在可能性としてはどのくらいだ、個所としてはどの程度の個所を今後追求をすべきだというようなことくらいは、きちっと分布図ができてないといけないと思うのですよね。そういう可能性はないですか。四十五年のデータそのままでいま答弁をされた。それっきりでぽきっと終わってしまうのですかね。
  59. 井上力

    井上説明員 先ほど予算のところで申し上げましたように、工業技術院の地質調査所におきまして、基礎的な調査を現在三カ年計画でやっております。これができましたならば、新しいデータが得られると思います。
  60. 原茂

    ○原(茂)委員 それがいつごろできるのですかね〇四十五年のデータしかいまなくてですよ、ぽっきりその間断絶があって、いつごろこの大事な地熱発電に関するデータというのは出る予定なのですか。
  61. 井上力

    井上説明員 いまの計画では五十年度末に出ることになっております。
  62. 原茂

    ○原(茂)委員 きょう通産大臣に来てもらいたかったのですが、どうしたのだか出られないのだそうですが、とてもじゃないですけれども、五十年度末になって、まあそのこともあるから、八五年から五カ年計画地熱に関するというような、きょうの新聞を見ますと発表になっていますよね。そんなものが基礎になっているのだろうと思うのですが、私はやはりもうちょっと、予算八千万くらいでやっている状態を、まあ来年五億ですか四億ですか、予算づけができて何かやるようですが、こんなものにこそもっと金をかけて、思い切って地熱の可能性の追求というものはしなければいけないのじゃないかと思いますが、これはまあまた別の機会に申し上げるよりしょうがないようです。やむなく先へ進むわけですけれども……。  そこで、もう一つついでにお伺いしておきたいのは、現在地熱発電というものに対する日本の総合的な技術というものは、一体、国際的に比較をしたときに、まあまあ満足すべき、あまり遜色のないところまで——地熱発電に関する探査を含めた開発利用に至るまでの技術というものは、設備なり何なりをつくるということも含めて、一体どの程度だとお考えなんでしょうか。通産省の前に鈴江さんと森さんからもひとつ、あまり遠慮しないで言ってみていただきたいのです。
  63. 鈴江康平

    鈴江参考人 私は、実は技術は劣っていないと思っております。  ただ、先ほど申しましたように、日本外国と違いますのは、まあニュージーランドにしろほかのガイサーでも、日本のような山、坂がないのでございますね。ことにニュージーランドのやつはフラットなところでやっておりますので、非常にやりやすいという点がございます。しかし、掘る技術にいたしましても、まあエアタービンというのは、世界的にも新しい、アメリカも試験的にやっておるようでございますけれども、そういう問題点、まあ蒸気が出ればあとは普通の発電所とそう変わりはないわけでございます。ただ、非常に低圧タービンでございますので、従来のタービンよりも大型になり、それからまた腐蝕の問題もございます。  それで、事業団で開始いたしましたときに、タービンの腐蝕という問題を非常に取り上げまして、その点を工業試験所の方々の御協力を得まして、防蝕性のブレードにいたしまして、それでやっておるわけでございますが、しばらく前に日本で国際地質学会がございまして、松川にずいぶん見にこられまして、それで日本のタービンは非常にいいということになりまして、実はその同じ性質のタービンがアメリカ、メキシコにずいぶん出ております。大体二万ないし五万キロワット程度のものでございますけれども、かなりの数量が輸出されておるのでございますので、私は、こう言っては何ですけれども、劣っていないような感じがいたします。  まあしかし、地下が圧入問題とかいろいろある、これは今後の問題でございますので、向こうも研究しておるようでございますから、今後はちょっとわかりませんけれども、ただいまのところは大体追いついているのじゃないかと考えております。
  64. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで、ついでにこれもお伺いしたいのですが、いま鈴江さんのお話にあったように五万五千キロワット、ガイサーのあの周辺における二基、二基、二基というような、追加、追加、追加、みんな日本の東京芝浦電気工業で納入をしているのですね。これはわが国では二万二千台、一万一千キロだと言っておりながら、アメリカにおける開発あるいはニュージーランドも、たしかメキシコだかの七万五千キロのやつも、東京芝浦から行っていると思うのですね。  こういうような非常に大きなキャパシティのものが、すでに機械としては、タービンとしては開発されて、外国で働いている。ですから、その面における技術においては間違いなく優秀な技術を持っている。とにかくアメリカその他が買うのですからね。しかも、日本で使っているものの倍以上のキャパシティのものをすでに何基となく輸出して、使用されて、開発されているのですよ。そうしてイタリアにしろ、アメリカにしろ、何十万キロワットというものがすでに発電されている。日本では、この四つ目の大きな問題なんですが、この種の問題の技術というものにおくれがあるのじゃ、これはたとえば原子力の問題を考えたときに、一番大きな問題はやはり安全性の問題なんですよね。温排水一つとりましても、これでもう完全だというものがいまだにない。  ところが、この基本的な技術問題で地熱発電考えたときには、私は、原子力に匹敵するような技術上の欠陥なり、これから調査しなければいけないのだとかいうようなものがもうないと、おっしゃるとおり言い切れると思うのですね。設備としては、諸外国がとにかく買ってまで使う大容量のものができているという状況であれば、技術的には問題がない。こういうことが——第一には先ほど言った問題、第二の問題、それから第三の問題としての技術というようなものも、これは問題ないのだということが言えてくると、この地熱発電というものは、日本の今日的なエネルギー問題の中でいろいろな条件を考えたときには、これがもう国家的に全力をあげなければいけない対象である、こう言い切れると思うのですね。  ただ、そうであっても、じゃ今後に問題点がないのかというと、たとえて言うと、いま探査、探査ということばが出ましたけれども、探査に必要な測定機器類にしても、現在森さん、鈴江さんがお使いになってきた大岳松川段階における測定機器のあの精度、あの状態でいいかというと、これもやはりまだ開発しなければいけない問題があるでしょう。そういう意味における問題点はもうちょっと検討し、研究をし、くふうをこらすという意味技術的な問題点が、そういう測定機器類に一つあるというようなことも、重要な問題としては考える必要があると思う。それからまだそのほかにも、探査技術そのものもやはり相当改良されていかないと、現在やっているようなボーリングの状態でいいのかというと、このボーリングだって、少し深くなると、外国へロイアルティーを払って、日本だけでやれないようなものまである。これは地震に関係してそういうものを知ったわけですけれども、しかし、とにかく探査をするといっても、非常に広い範囲にわたるこの技術の中に、探査技術というものでも、やはり外国と比べてまだ改良を加える必要があるというようなものもあるに違いないと思うのです。  それから、先ほどもちょっと多目的な利用ということを言ったのですが、熱水の利用のしかたがまだまだ未熟で、いま森さんその他が考えられているようなもの、だけで終わるのか、あるいはもっとこれにもくふうをこらし、新しい地域開発の重要な課題として検討しなければいけない問題点もあるだろう。それからもう一つは、先ほどもちょっと出た資金の問題ですが、やはり多額の資金がないと、探査をして実際にこれが開発利用されるまでに相当の、やはりパーセンテージは少ないにしても、リスク考えなければいけないというための資金の問題が、やはり問題としては依然として残るだろうと思うのです。  そういうようなことを考えると、何にも問題がないとはいえない。しかし基本的には、この開発技術という点では、発電に至るまでの設備に至るまで、わが国技術は確立されている。確立というと、科学者はいけないというでしょうが、現段階においては、外国と匹敵あるいはそれ以上の高度な技術を持っているのだ、こういうふうに実は考えていいと思うのです。  これは通産省にお伺いするのですが、こういう問題がまだ多少とも残っている、その残っている中で、前段に私が一つ指摘したように、ちょうど河川調査に国が非常に力を入れて、わが国水力利用の基本をつくったと同じように、地熱利用しよう、開発しようというときに、必要ないわゆる探査というものに対して国家が前面に出て国の費用でやらなければいけないということが、一つの大きな問題になる。  いま申し上げた四つのうちの費用の問題ということにも関連するわけですけれども、地熱発電というものを考えたときには、国が相当前面に出て、まあある程度というのじゃない、河川のあのときの状況と同じような、労力から費用に至るまで、全面的に国家が負担をするというようなことが急速にここでやられないと、地熱発電というものの開発利用というものが急速に進むことはあり得ない、こういうふうに考えますが、現在そんなことが論議されていたり、あるいはそういう方向でいっているものが多少でもあるのかどうか。ただ工業技術院の助成補助、あるいは八千万なり四億なりの予算を取ってやらしているだけだ、こういうのかどうか、ひとつ御答弁いただきたい。
  65. 井上力

    井上説明員 先ほど申し上げましたように、工業技術院の調査所で全国地熱基礎調査というものをやっております。これは、先ほど申し上げました八千万円は本年度でございますが、来年度は約二億の予算を要求しております。これが三カ年計画で、全体の概要をつかむということで進められておるわけでございますが、概要をつかんだあと、さらに精密調査をやるという予算、これが、先ほど申し上げました来年度約四億五千万の要求でございますが、これで精密調査、構造試錐、掘さく調査というのをやります。これはいずれも国がまるがかえでやるということで計画しております。
  66. 原茂

    ○原(茂)委員 その四億五千万円かけましても、国がまるがかえでやっても、工業技術院だけで地質中心調査をする、しかも、じゃ、いままでいろいろな関連からわかっているような可能性というものが多少でもあるところに対して、一斉に調査なり何なりをやるということになっているかというと、どうもなっていないのです。おそらく限られた小さな地域にしかそういうことができていないのだと思うのです。  私は前段に申し上げたように、非常に大事なクリーンエネルギーという前提に立ったときの非常に大きな課題一つとして、地熱発電というものは考えなければいけない。その地熱発電というものを原子力に並べてみても、決して遜色のあるものではないし、私が一つ、二つ、三つ、四つと、確信を持ってもいいはずだといわれる安全性の問題その他というものを、コストの問題なり何なりを取り上げてきたときに、何といっても、それだけそろっているなら、国をあげてこれに取り組むべきだ、こういう時代が来ているのはもう間違いないのですが、そのことに対する熱意が、国家的な立場では非常に足らな過ぎると思うので、これは大臣に決意のほどをお伺いしたいのです。  この原子力に対する先ほどの熱意のある方針が述べられましたが、これにも匹敵する大きな力というものを地熱発電にも向けていくということが必要だと思うのですが、いままでお聞きになったような状態でやっていて、五十一年になったら、ある程度大体のこういうところにこんなものがというようなことがわかるようなことをやっている。しかも予算の面では八千万だ、四億五千万だという程度でやっていこうという、その姿勢そのものを根本的に改めなければいけないと思うのですが、こういう点は、いままでお聞きになっていて、大臣はどうお考えになるか。思い切ってこれに力を入れるという決意を述べていただければと思うのですが、いかがでしょう。
  67. 森山欽司

    森山国務大臣 原先生地熱発電に対する御熱意ある御質疑、たいへん傾聴いたしました。  私から申し上げるまでもなく、石油が近来入手難であり、また値段が上がっております。特に中東紛争後非常な状態にあることは、御案内のとおり、申し上げるまでもございません。また、石油に対する需要が増大しておりますし、また反面環境汚染等の問題がございます。したがって、こういう状態でございますから、先生お話しの地熱をはじめとして、いろいろなエネルギー源について多角的に検討していくということについては、私は全く同感でございます。  もうこれは先生案内のとおり、地熱資源は、先ほど御指摘のように、国産エネルギー資源でございまして、科学技術庁もぼやっと見ていただけではないようでございまして、工業技術院の地質調査所その他の調査結果をもとに、昭和三十八年度から四十一年度にかけて、ただいま理事長が来ております新技術開発事業団開発課題として、二万キロワットの地熱発電を目標とした所要の委託開発を行なわせております。開拓費はおよそ三億円であります。  この松川地区の発電は、これまで順調に行なわれておりますが、これらの成果をもとにいたしまして、五万キロワット程度の大規模地熱発電を可能とする探査技術蒸気井の掘さく技術等の開発を、昭和四十七年度から事業団の開発課題として取り上げ、これは雫石でやっていることは、これまた先生案内のとおりでございまして、この技術開発は、現在の計画によりますと、昭和五十一年度に完了する予定で、開発委託費は七億六千万円予定をしております。これらで得られる開発成果が、わが国における地熱発電に広く活用されることを期待をいたしておるわけでございまして、通産省でやっておられる面と科学技術庁がやっておる面と、両面ありますことをどうか御了解願いたいと思います。  ただ、先生もお読みになったと思いますが、ことしの九月の十三日にエネルギー技術開発懇談会報告書という、これは科学技術会議の報告ができております。  その報告によりますと、この新エネルギー源の開発問題について短期目標、中期目標、長期目標を立てておるわけでございます。その短期目標というのは、現在から、一九八五年といいますから、あと十五年ぐらいまでの間に、地熱発電について、「有望地域調査技術地熱発電システム等の開発により、一九八五年には数百万キロワットの開発が可能」であるというふうな予定をいたしております。そういう意味では、わが国に賦存する数少ないエネルギー資源一つとして、この面の技術開発にも積極的に取り組んでいく必要があろうというふうに考えております。  原子力発電と比べられますと、またいろいろ議論が出てまいると思いますが、ともかく、これからこういう方向に多角的に新エネルギー資源に取り組んでいかなければならぬということについては、全く同感でございます。
  68. 原茂

    ○原(茂)委員 大臣の言われた、その会議のきめたこと、その内容等も実は大体頭に入れていますので、よくわかります。  ただ、原子力と比較されると問題がある、これは私のほうから言いたいことなんで、この問題は、これから委員会のあるごとにいろいろとお伺いしていく予定です。原子力との比較をしないことにはいけないだろうと思うのですが、私がきょう総じて申し上げていることを御理解いただいたと思いますが、もう一度申し上げますと、何といっても、現段階におけるこの状態が、 エネルギー資源という非常に危機的な状況にあるものを十二、三年後に云々ということで、いま計画を立てているその計画そのものを思い切って短縮する方途というものを考えるべきではないか。原子力の場合には、計画をぐっと短縮しろといったところで、技術的にまだ非常にむずかしい問題があると私は理解するのですね。この問題のほうが、そういう点では、基本的な技術問題等に関してはほとんど知悉している、わかっているということで、計画を縮めることが非常に可能だ。しかも、資源としては純国産の資源が無限にあるということを考えますと、あと十二、三年たった八五年で云々なんということを考えておられるような状況ではいけないという前提で、いままでお伺いしてきたわけです。  この問題も、今後、そういう観点からもっと詳細に大臣考えをお聞きをしていこうと思うのですが、大ざっぱにいって、いまの私の言ったことを御理解しておられるかどうかだけもう一度お伺いしたい。短縮すべきだ、計画を。
  69. 森山欽司

    森山国務大臣 私は、地熱その他の新エネルギー源についての多角的検討というものについては、異議ございません。しかしながら今日、当面五年、十年程度の先のことを考えた際に、どの程度ものになるかという意味の評価につきましては、科学技術会議という、専門家がお集まりになってエネルギー技術開発懇談会で一つの結論を出しておられる。短期目標一九八五年までの新エネルギー源の開発という意味では四つの項目があがっております。  その一つ原子力発電。一九八五年には全発電設備量の約四分の一、六千万キロワットの開発が可能である。第二番目、大陸だな石油資源開発。大陸だなにおける探査技術、油井掘さく技術、採油技術等の開発による石油の増産。第三に、石炭の新利用。ガス化または液化技術開発による石炭の新利用が有望。そして第四に、先ほどの地熱発電があるわけでございます。  これは先生案内でございましょうが、近来の電力事情等を考えてまいりますと、一昨年、昭和四十六年あたりは、発電所建設予定量に比して実際着手したものはおよそ九〇%でありました。これは水力、火力、原子力全部入れてでございます。それから同じように昨年度は三二%程度であります。ことしは二〇%にはおそらくならないでしょう、四十八年度は。ただ、発電所建設がもし五年ないし三年ぐらいかかるといたしますと、予定よりこれほど下回っておる——それは経済成長のテンポが前のようなわけにはまいらないことは、いまさら私が申し上げるまでもないわけでございますけれども、こういう調子でまいりますと、テンポがかなりスローダウンいたしたといたしましても、昭和五十一年ごろから五十五年ごろにかけて、全国一斉とは申しますまいが、各地において電気が不足してくる。要するに、油が前のように安い値段でほしいだけ入るということは、夢よいま一度で、そういうことはもうないと私は見ておりますけれども、しかし、油が心配がないといたしましても、そうなると、あと三年後、四年後ぐらいに、とにかく産業のみならず、国民の生活の基本である電気が足りないという事態が、もう目の前にあるわけですから、それに対してやはり対処するということ、これはわれわれ真剣に考えていかなければならない。  そういう観点から私ども見ますと、やはりいろいろ御意見はございましょうが、原子力もその方向の一つとして大きく取り上げることは、ひとつお認めいただきたい。しかし、いまいろいろ問題がございますから、私も先生のいろいろの御意見——最終結論は必ずしも同じじゃないかもしれませんけれども、お話の中で、私どもはいろいろそういう点、考えなければいかぬ面にはやはりそれだけのこともしていかなければいかぬと思っております。  地熱その他のことについて、これも先行き大きい希望はこの報告書にも書いてあるわけでございますが、どうも十五年ぐらい先に数百万キロワット、現在の技術水準では可能性は見込まれるけれども、直ちに三年、五年先に当てになるというわけにはいまのところいかぬように私は思います。ここにおられる理事長さんと話したことはありませんけれども、おそらく報告書あたりを見ると、そういうことが書いてある。私は専門家じゃございませんから、やはりこういう報告書を読んで判断をせざるを得ないのでございます。  そういう意味で、先生のおっしゃられる地熱発電につきましては、新エネルギー源の多角的な検討という点については全く同意見でございますし、これから大いに力こぶを入れていかなければならぬと思いますが、また当面三年後、五年後の事態について、やはり政治家としての責任を果たさなければならぬ、そういうことで、もう先生方は長年こういう問題は検討されておられると思いますので、どうかいろいろ御教示を願いまして、それはいろいろ意見立場立場で違うと思いますが、できるだけひとつ調整をして、これから近い将来起きてくる事態に対処しなければならない、そういう意味で、ひとつ御叱正をお願いをいたしたいと思います。ありがとうございました。
  70. 原茂

    ○原(茂)委員 いや、ありがとうといったって、まだ終わったわけじゃない。大臣、初めての出席だから、施政方針を聞くつもりで、黙ってがまんして聞いていたのですけれども、まあ田中さんのおっしゃることを半分同じようにおっしゃっている。これは当然だろうと思うのです。  原子力の問題に関しては、また私も申し上げますし、石野委員からもその他の委員からも申し上げるでしょう。ただ、いまの考えておられる全体に流れている思想としては、とにかく、原子力による六千万キロワットというものの開発がすでにもう計画としては可能性がある。エネルギーの危機というものを考えると、とにかく電気そのものがここ三年ないし四年でなくなる、それに原子力なら間に合うんだという思想が底にあるようですが、これはたいへんな間違いだ、立場の相違ばかりではなくて。現在稼働している原子力発電そのものが、目的どおりフルに活動しているものがあるか。いずれも開店休業があり、いろいろな欠陥があって、アメリカですらスローダウンをさせる。日本においては、もう話にならないほど、あっちこっちも故障の連発である。まだその問題に対する解決も満足にいっていない。ましていわんや、安全性に関しては、全く未解決といっていいような状況にあるんだということを、これはこまかく同僚委員もまた言っていくでしょう。したがって、私はいまそれを論議しようとは思いませんが、少なくともいまのお話の中に、まだ依然として、八五年でとにかく地熱発電というものが、ある程度できればこれでいいじゃないかといわぬばかりのお考えがあるようですが、私は、これからこまかく論議をあと引き続いてやってまいりますけれども、地熱発電計画をぐっと詰めて、十何年なんという先を言わなくてもやれるし、国が本気でやろうと思うならできるんだという確信を、私はしろうとなりに持っているものですから、そういう考え方を何が何でもいま急速に取り上げていって——原子力をないがしろにするんではない、これも大事なものです。しかし、これと対比をしながら、地熱発電に対する非常に国家的な力の入れ方を、原子力と同じか、それ以上にいまやっていいじゃないかということを、個条をあげながら、こういう利点がありますよということを申し上げてきたわけですから、ひとつよく考えておいていただいて、こまかくこれからまたやりますから……。  最後にお伺いしたいのは、これは通産省でしょうが、水素エネルギーに関して、先ほどと同じように、世界あるいはわが国の研究開発利用現状がどうかということをひとつ。それから、この水素エネルギーシステムそのもの、全体をいうととても大きくなりますが、とにかくクリーンエネルギーの筆頭としての水素エネルギーというものの今後の問題点が一体どういうふうにあるのかということを、二つに分けてお伺いして終わりたいと思います。これはきっと準備をお願いしたと思いますから……。
  71. 木下亨

    ○木下説明員 水素エネルギーの研究開発状況でございますけれども、日本におきましては、工業技術院の東京工業試験所とか大阪工業試験所、こういったところ、それから大学の研究室でもおやりになっています。外国でもかなりやっておりますが、具体的な、いわば安く水素をつくる技術の研究という点に限って考えますと、世界的にまだまだ緒についたところだと思います。特に目立ちますものは、イスプラ研究所というところで、原子力の熱を使って水素をつくる、こういう研究がなされておりますが、これが少し目立つものという感じでございます。  それから、今後の水素エネルギー、これはいまさら申し上げることもございませんけれども、水素は二次エネルギーでございます。したがいまして、何を一次エネルギーに使って水素をつくるか、こういうことになりますが、もうわれわれとして考えておりますのは、太陽の熱、光、いわゆる太陽エネルギーを使うということ、それからうまく原子力の、たとえば高温ガス炉のような高温を取り出せるような原子炉開発されるならば、この熱を使う、これを一次エネルギーにしていきたい、こう考えております。  その製造技術につきましては、いろいろありますけれども、非常に高温が得られれば、これは水を分解してしまう直接分解法、こういうのもありますが、これは非常に先の話になってくるだろう。それよりは、たとえば六百度から千度といったような温度のもとで化学反応を使ってつくる方法、これが少なくとも当面の研究のやり方であろうと思います。もう一つは電気分解でございますが、これも高温高圧のもとでやれば、かなりコストは下がるということはございますけれども、大量に経済的に水素を使うという観点からいきますと、その熱化学法というのが有望であろう。われわれとしては、この方法を中心に、その三法いずれも研究開発を進めていかなければならぬ、こう思っております。
  72. 原茂

    ○原(茂)委員 どうもありがとうございました。  水素エネルギーの問題も非常に重要な課題でございますので、後刻またもう少し詳細にお伺いをすることにして、きょうは終わります。  参考人皆さん、ありがとうございました。
  73. 安井吉典

    安井委員長 石野久男君。
  74. 石野久男

    ○石野委員 鈴江参考人森参考人に少しお待ちいただきまして、お尋ねしたいと思います。  両参考人には、先日、本委員会が視察に行きました際にはたいへんお世話になりました。ありがとうございました。  時間もあまりありませんので、熱エネルギーの問題について、地熱エネルギーをどういうふうに使うかということについて、もうこまかいことはあまり申し上げませんけれども、原委員からいろいろこまかい質問がありました。私も先般松川を見まして、地熱利用するということについては、実は戦後電気が非常に不足しているときに、私どももこの地熱をどういうように使うかということを商工委員会でずいぶん研究したことがございました。しかし、それがなかなかできないでいたのですが、最近にこうした松川のような成功があり、世界的にもそれぞれ進んだところがありますが、現状石油危機のような事態になりますと、やはり地熱エネルギーとして取り出すということは、わが国エネルギー対策にとっても非常に重要な課題であろう、こういうように私は思います。  そこで、長官にお聞きする前でございますけれども、これは鈴江参考人にお聞きしたいのですが、参考人は先ほど、当分地熱の電力化される量は二千万キロワットくらいというような話をしておられましたけれども、これは私はやはりその調査の見方、しかたにあると思うのです。たとえば、科学技術会議の報告がそうであるということについても、現在の政府をはじめとして、財界の体制の問題が一つその裏にあるのだと思うのですね。地熱に対して、政府なり、あるいはまた電力業界がもう少し熱を入れておれば、技術会議なんかの取り上げ方もまた違うのだろうという感じを、私はしみじみと感じておるわけなんです。  したがって、もし政府が本格的に力を入れて探査をする、あるいはまた、それに対して積極的に予算措置もして、ひとつ石油を得るためにアラブ外交を大転換したくらいの大決意をもってやれば、これは先ほど原委員からも言われたように、自国産のエネルギーとして、もっと引き出し得るものでないだろうか、実は私はこういう素朴な考え方を持っておるのですよ。こういう点について、これは非常にやぼったい考え方、あるいは非常にえこひいきなものの見方だというふうに言われるものだろうか、それとも、ほんとうに政府の体制ができ、財界もそれだけ力を入れ、電力業界も力を入れるということになれば、もっとそれは引き出し得られるような可能性があるのではないだろうかという感じが実は私はするのですが、こういう点についての所見をひとつ両参考人から聞かしていただきたいのです。
  75. 鈴江康平

    鈴江参考人 先ほど申し上げましたように、二千万キロワットくらいできるだろうという予想はあるのでございますけれども、現実の問題がなかなかきびしくて、そう簡単にはまいらないんでございます。  といいますのは、御承知のように、日本は狭いものでございますから、地熱地帯がいろいろなものと競合するわけでございます。一般の温泉地帯、もちろん地熱があるわけでございますが、これをやりますと、温泉業者からだいぶ反対がございますし、それから山の中へ入りますと、国立公園等に非常に抵触いたしまして、なかなか国立公園地帯で発電するということは、国立公園審議会の了承を得ることが非常に困難な状況でございます。私どもも、実は葛根田も国立公園の一部なんでございますが、一番端っこであるということで了承をしていただいたわけでございますが、その点の考え方、これがまあそういった審議会、環境庁の問題もあると思いますけれども、その辺、いまのエネルギー不足に対しまして、政府部内で、この辺まではよかろうというような線を引いていただきますと、これは現在のように発電コストも安いんでございますし、設備投資も少なくて済むんでございますから、もうこれからはかなり商業ベースでやるところの可能性が多いだろうと思います。  ただ、私、いま考えますのは、一つの一番大きな障害は、そういったほかの問題との競合関係でございます。  それからもう一つは、先ほどもちょっと申し上げたんですが、日本は非常に山地で現在やっておりますので、資材の運搬が非常にむずかしい。実は松川のところへ——現在はかなり道路はよくなっておりますけれども、最初やりましたときは、橋を通るのにタービンが通れないということで、橋自身の補強までやりまして、それでやっと通したということでございますので、まあそういった道路開発、そういうものと一緒にやりませんと、なかなか採算ベースに合わないところも多いんじゃないだろうか。しかし、何といいましても、国立公園なんかとの関係がはっきりすれば、かなりやれる地点がある、後続のものが出るんじゃないだろうかと思います。  それからもう一つは、現在のところはまだいいんでございますけれども、実はその地熱に対しましては、法律がないんでございますね。鉱業権につきましては、いろいろ権利というものがありまして守られておるんでございますけれども、これは何もそういった保護がございませんので、一つの会社がいい地点を掘り当てると、別の会社がすぐ隣でやられても、実は文句は言えない。まあ幸いにして現在森林法とかそれから温泉法とか、いろいろな制約がございますのであまり乱掘にはなっておりませんけれども。したがいまして、またその許可を得るにもなかなか手間がかかる。こういうものが一本化できれば、非常にやりやすいなという感じでございます。  ただ、この問題につきましては、自民党の床次先生が、非常に御熱心に何かそういった法案をまとめようじゃないかということで、一応案をおつくりになりまして、見せていただいたことがございます。でございますので、おそらくそういうこともだんだん直っていくんだろうと思います。先生おっしゃいましたように、確かに地熱はあるんでございますけれども、すぐそれじゃあすからたくさんつくれるかといいますと、いろいろな障害がやはりあることは非常に残念なことだと思いますけれども、現実はそういうものでございます。
  76. 森芳太郎

    森参考人 いま先生のおっしゃいましたような体制が十分とられれば、私の個人的な考えでございますけれども、非常にこれは伸びていく、二千万キロといいますけれども、あるいは、場合によってはその倍近くのものがとれるだろうというふうに考えております。  といいますのは、いろいろな実例を見ましても、たとえばアメリカでガイサーというところの発電所、さっき御説明がありましたけれども、当初、開発途中、初めたころはせいぜい三十万から五十万キロワットぐらいだろうといわれておりましたが、現に、すでにことしの年末で、この間の手紙によりますと、五十万キロには達しそうだということでございます。  昨年の京都でありましたエネルギー会議でも、最初数十万キロワットというオーダーから二百数十万キロワットになり、現在では数百万キロワットぐらいは起きそうだというようなことがいわれておるわけでございます。  地熱の場合に、上のほうに厚くかぶりがありますと中の様子がなかなかわかりにくいということで、そういったようなわかりにくいところは全部はずした数字が、おそらく私は二千万キロという数字になったんだと思いますけれども、これは私のところでやっております松川発電所と、いま建設中の滝ノ上の発電所のところがございますが、距離が約七キロぐらいございます。そこがベルト状に地熱のゾーンがつながっているというように私ども考えております。国立公園でございますので、まだ基礎的な調査しかやっておりませんが、これが精密調査で確認されますと、そこだけでも数十万キロワットから百万キロワットぐらいのものがとれるというふうに考えられるわけでございまして、調査が進行すれば、しかも、まわりにそういうものの、先生のおっしゃいましたような体制が十分に整備されれば、さらに出力は伸びていくんではないかというふうに考えられます。
  77. 石野久男

    ○石野委員 いろいろ聞きたいこともございますが、時間の関係がございますので、この件について大臣——これはまあ通産省計画もございますし、また科学技術庁もやはり同時研究でやっておられるわけですが、きょうは通産大臣はおいでになっておりませんので森山長官にちょっと、これは内閣の中でもひとつ論議を起こしてもらいたいと私は思うのです。  私どもば、実は先般調査しましたときにも、調査報告の中で、地熱についてこういうような報告をまとめているわけですよ。「数多くの開発可能の地熱地域が存在するわが国において地熱利用はまだその緒についたばかりである。その開発利用上の多くの利点考えるとき、この貴重な熱源の早急な開発が望まれるが、特に長い年月と費用とを要する調査に対し国の助成措置が必要である。」こういうふうに実は本委員会調査団の結論としてもまとめております。  私は、やはり二千万キロが四千万キロになるかどうかわかりませんけれども、とにかく二千万キロワットそこそこのものじゃなかろうというふうには私は思っておる。それはやはり体制をどうするかということにかかわっているように思います。事実上、これだけの電力が出て希望性を見込まれるにもかかわらず、大きな電力会社はこれに直接にはかかわっていないのです。むしろ若干の利用をするということにしかそのかかわり合いがございません。したがって、この際私は、やはり国が一つ指導役割りを業界に対してもすると同時に、方針を出すべきじゃないか、こういうように思います。で、五十一年にはこうなります、五十五年にはこうなりますということじゃなく、いま石油でこれだけ政治的にも苦しみ抜いていることを考えれば、地熱に対しての来年度の通産省の予算については、私は予算を多くしたからすぐに出るとは言いません。言いませんけれども、予算を大きくすることによって可能性が倍加する、これ以上になるということは間違いない。ですから、私は、通産省の中において、地熱開発の問題についての予算をもっと大胆に再検討をしていただきたい。これは森山大臣にひとつぜひそのことを——きょうは中曽根通産相がいませんから、森山さんからこれは閣議の中で、エネルギー確保の観点からしても、しかもこれは自主財源ですから、ぜひひとつそのことを努力していただきたい、こう思いますが、大臣にはそういうなにがございましょうか。それとも、もう技術会議がこういうように出しているのだから、これはもう専門家がやったんだから、それ以上のことはむだだよというようなお考えなのか。そこのところをひとつお聞きしておきたい。
  78. 森山欽司

    森山国務大臣 先ほど原先生から、また、いま石野先生からお話がございました。与党のほうでも、有力議員が多数この問題に多大の関心を持っておられます。先生、御案内のとおりであります。  でございますから、先ほども申し上げましたように、私は、こういう時期でございますから、エネルギー資源の多角的検討ということについては、全く異存ない。その中で、この地熱というものも大きく着目すべきものだというふうに考えております。ただ、しかし、ここ五年、十年の問題でどの程度の評価をすることが一番妥当であるかということになってまいりますと、それはいろいろな意見が相分かれるであろうと思います。  それで私は、この科学技術会議エネルギー技術開発懇談会の報告、並びにこの報告の裏にある技術的な検討というものに沿って——私も先生のようにくろうとじゃない、しろうとですから、やはりこういうものを中心にしてものを考えてやっていくほかない。しかし、たとえば当面、来年の予算等について、これは予算編成としては非常にむずかしい時期にあたっておりますけれども、地熱発電などという方面につきましては、できるだけの体制で、一律に、どうもいままでどおりだというようなことのないようなふうに私も努力をしてまいりたい、そういうつもりでございます。
  79. 石野久男

    ○石野委員 通産省、来年は四億五千万円の精密調査のための予算措置をするというお話がございました。大臣から、まあ画一的には言えないが、そしてまた早急な期待もできないけれども、という前提ではありましたが、やはり予算の中で地熱開発についての努力をなさるということの御意見を承ったわけです。私は非常にそれは多とするのです。同時に、やはり科学技術庁立場からしましても、新技術開発事業団とかなんとかというようなところにこの問題を預けるというだけじゃなしに、科学技術庁自身が一つのプロジェクトを考える必要がある。そして、まずそれだけの値打ちがあると私は実は思うのです。そのことをやはり科学技術庁の中でも考えてもらわないといけないんじゃないか、こういうように思います。たまたま与党の中でも、この問題に対する相当熱心ななにがあるわけでありますから、本院においても、この問題は、政府だけでなしに、立法府の立場からも、このことの希望は、先般の視察の段階でも各視察団員が一致して考えておるところでございますので、それとも見合うというような意味で予算に対する配慮がなさるべきだ、こういうように思います。この点、ひとつぜひ通産省のほうでも、大臣のほうにも、また現場の担当の皆さん自身もそのことを考えていただきたい、こういうふうに私は希望いたします。よろしくひとつその点配慮して、よろしくお願いします。
  80. 森山欽司

    森山国務大臣 よくわかりました。
  81. 安井吉典

    安井委員長 この際、両参考人一言あいさつ申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、本問題調査のため、たいへん参考になりました。委員会を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。ありがとうございました。     —————————————
  82. 安井吉典

    安井委員長 石野君。
  83. 石野久男

    ○石野委員 森山長官の就任のごあいさつをお聞きしまして、時間もあまりありませんし、多くを述べることはないのですが、たまたま石油の危機が伝えられて、エネルギー問題が非常に重要な課題になってきているところでございますが、これは中曽根長官それから外務省の外務大臣がおいでになっている中で同時にお聞きしたがったのでございますが、両大臣それぞれ見えておりませんので、森山長官にこれをぶつけてお聞きいたしますけれども、石油のこういう危機が来ますと、当然のこととしてやはりエネルギーに影響が来るし、それからまた、石油を原材料としておりますそういう資源の問題としても、問題が出てくるわけでございますが、そういう点について、これは通産省、外務省の問題にもなってまいりますけれども、そういう石油危機に直面してのエネルギーの補完、あるいはまた石油資源についてかわるべきものということで政府が考えている構想、そういうようなものをまずひとつ聞かしてもらいたい。
  84. 井上力

    井上説明員 エネルギーの長期的な計画につきましては、たしか四十五年に、私どものほうにございます総合エネルギー調査会におきまして昭和六十年度までの見通しを立てておるわけでございますが、今回の石油危機に際しまして、長期的見通しを改定すべくいろいろ検討はしておりますけれども、何ぶんにも、現在のところ先の見通しが非常に不分明であるというようなことによりまして、公式的な先の見通しの検討というものはまだ行なわれておらないのが現状でございます。
  85. 石野久男

    ○石野委員 その点について、通産省としては、エネルギー計画はもう前に設定したものではだめだ、少なくともそれを見直し、変更しなくちゃならぬという観点に立っていることだけ間違いないですね。
  86. 井上力

    井上説明員 それは間違いございません。
  87. 石野久男

    ○石野委員 それと同時に、通産省としても、あるいはまた政府、経済企画庁にも関係あるのですが、当然のこととして、産業構造の問題にまで触れてくるわけですね。そういうことも、また当面考えていると見ていいわけですね。
  88. 井上力

    井上説明員 さようでございます。
  89. 石野久男

    ○石野委員 私は、時間がありませんから、その問題はまた別な機会にお聞きすることにいたしまして、そういうふうに、エネルギーが、石油の危機を一つの分かれ目として長期計画も変更しなくちゃならないし、あるいはまた、産業構造そのものについてもやはり考え方を変えにゃならぬ、こういう段階エネルギー考えなければならぬ、こういうことになるわけですね。  それで、きょう新聞で見ますと、リビアのいわゆる熱い石油を買い取るということに政府は決意をなさったということでございますが、それと同時に、また一方では、シリアの立場からしますと、シリアは和平会議には参加しないということも出ているわけですよね。  外務省は、この問題について、これはどういうような観点で、石油問題等のかね合いで決意をたなさっておるのですか。
  90. 宮崎弘道

    ○宮崎(弘)政府委員 リビアの原油でございますが、まず実情を御説明申し上げますと、先般、管野議員を団長といたしますミッションがリビアに参りました際に、たまたま先方から、日本石油事情を理解いたしまして、リビアの石油日本に売るという話が出たわけでございます。これは私どもといたしましても、リビア側の配慮は大いに感謝するものでございます。  そこで、本件につきましてのあっせん処理は菅野議員に行なっていただくということにきめまして、昨夜、その旨をリビア政府に通達方、在リビア大使館に打電したわけでございます。  ただ、いま問題になっておりますリビアの石油の詳細はまだわかりませんが、中にはいわゆる係争中のものもあるかと思います。あるいは係争中でないものもあるかと思います。それからまた、価格、品質その他も明らかになっておりません。  そこで、今後そういう問題点につきまして、菅野議員が中心となりまして明らかになってまいりました段階で、これに対します対策を考えたいというふうに考えております。したがいまして、現在の段階で、これがはたしていわゆるホットオイルであるか、あるいは、ホットオイルと申しましても、非常に係争の焦点になっておるものもございますし、あるいはリビア政府と当該石油会社との間に話がつきかかっているものもございますし、その内容を十分検討いたしましてから、価格その他の条件もあわせて考えたいというふうに思っております。  したがいまして、本件はそういう趣旨で対処してまいるわけでございまして、ただ、アラブ諸国に対します政府の姿勢は、すでに御案内官房長官談話あるいは三木特使が現在向こうでいろいろ説明に当たっておられるところと変わりないわけでございます。
  91. 石野久男

    ○石野委員 リビアの石油を買い取るということが片方であり、片方では和平会談にシリアが入らないのだというようなことになりますと、事が非常にめんどうなことになっていると思うのですね。  一つだけお聞きしておきたいのですが、こういう決意というのは、メジャーとの関係からしますと、非常にめんどくさい関係が出てくるということは間違いないと私は思うのですね。そのめんどうな問題が出てくるということは、ひいてはやはりアメリカとの間の関係でもやはり若干の問題が出てくるということは、ある程度政府としても腹にきめてこれはやっていることだ、こういうふうに私は見るのですが、そういうふうに見ておってもよろしゅうございますか。
  92. 宮崎弘道

    ○宮崎(弘)政府委員 御指摘のとおり、いろいろな微妙な問題がございます。その問題につきましては、先ほど申し上げましたように、本件は、これは入札にあるいは日本の業界が参加するかしないか、ほかの国がどういうふうに参加するかしないか等、あるいはまた、どんな石油であるかということを見ましてからきめたいと考えておるわけでございます。いわゆるホットオイルに対して、日本政府がどういうふうに考えるかということは、現在私ども事務当局といたしましては、まだ申し上げる段階に達していないわけでございます。
  93. 石野久男

    ○石野委員 これは、時間があればもう少し私は外務省の腹も聞きたかったのですが、やはりこういう情勢というのは、石油の危機というものがわれわれにとって非常に重要だということから、外交の面でも、ある程度アメリカとの関係にトラブルが起きてもこれはしかたがないという腹がまえでこういう処置をなさった、こういうふうに私は実は受け取るわけです。  そこで、石油がなくなった、エネルギーが非常に不足する、電力がなかなか出ないのだというような事情から、先般来予算委員会でもそうでしたが、やはり連合審査等を通じて、中曽根通産大臣、あるいはまた森山長官も、いまもこの所信表明の中にもございましたけれども、やはりエネルギーは、いまの石油危機にかわるべきものとして原子力に大きな期待を持つということがいわれておるわけなんですよね。  原子力は、確かに、私たちも問題にしておる安全性の問題ということを除けば、これはもう非常にいいものだということは間違いないと思います。しかし、現状は、中曽根大臣森山長官が言われるほど、それほど原子力が安易な形で、すぐにでも役に立つというような見方ができない事情にある、私はこう思うのです。  これはもう多くのことを申しませんが、ことしになりましてから、各地に起きているところの原子炉の幾つかの事故ケースというものは非常に多いですね。だから、そういう事情を踏んまえてみますると、中曽根さんや森山さんたちが言われるようにそう簡単なものじゃない、こう私は思うのです。  そこで、そういうことを踏んまえながらも、森山さんはなおこの原子力へということであるとするならば、ちょっと私は文句がある。  そこで、ひとつ聞きたいのです。美浜の二号炉がいま定検中だそうですね。これはいつから定検に入っているのか、そして、いつごろこの定検が終わる予定なのか。それからひとつ聞かしてもらいたい。
  94. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 お答えいたします。  美浜の二号炉は、九月十五日から定検に入っております。これは、二号炉につきましては初めての定検でございますので、燃料棒はじめ、各部について点検を行なっております。それからまた、美浜一号炉の例もございますので、蒸気発生器についてもエディ・カレントの探傷機を用いまして、現象の有無等について点検を行なっております。このため、点検の期間が通常より長くなっております。
  95. 石野久男

    ○石野委員 大体いつごろ定検は終わる予定でございますか。
  96. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 一月末運開の予定でございます。
  97. 石野久男

    ○石野委員 九月十五日から一月末までというと、これはたいへんな定検の期間だと思うので、異常なような感じがするのだが、何か定検中に問題でも起きているのですか。
  98. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 確かに、わりあいに長うございますが、福島一号炉も初めての点検のときには、四十七年の九月から十二月まで八十八日間点検をしております。  それから異常というお尋ねでございますが、燃料体でピンホールのあるもの、それからその他クリアランスの短くなっているもの等が見つかっております。
  99. 石野久男

    ○石野委員 事故というか、そういうアクシデントが出ておるわけですし、福島一号炉の場合、八十何日かあった。今度は大体半年になりますね。これは異常でしょう。  それで、この二号炉の火入れしているというか、稼働し始めたのはいつでしたか。
  100. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 昨年の七月でございます。
  101. 石野久男

    ○石野委員 一年間で定検に入って、そういう形になった。ちょうど一号炉の場合も一年間で定検に入って、そして問題がいろいろと出てきたのですね。  それで、一号炉は今月に入ってから炉をとめたのですね。あれはなぜとめたのですか。
  102. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 初めの点でございますが、大体先生御承知のように、原子力発電所初めての定検のときには、わりあいに時間をかけて入念にやる習慣になっております。  それから第二の点でございますが、一号炉でございますけれども、これは十二月七日から定検に入っております。
  103. 石野久男

    ○石野委員 いつごろ定検は終わるのですか。
  104. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 これはもうすでに運転を再開いたしました。十二月十五日運開いたしております。
  105. 石野久男

    ○石野委員 これは定期検査なんですか。
  106. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 これは、御承知でございましょうけれども、一次系の蒸気漏れ等を集めますドレーンタンクの流量が少しふえましたので——ということは、バルブ等からのリークが少しふえておるということでございますので、そのバルブその他のチェックをいたしますために運転を停止いたしまして、パッキング等を取りかえ、バルブを点検し、そして運転を再開したということでございます。
  107. 石野久男

    ○石野委員 一号炉にしても二号炉にしても、そういうことでいろいろ事故があるのですが、私ども、ことしやはり美浜の炉について私どもがあそこを視察しましたあと、本委員会であのときの蒸気発生管の漏れの事故の実情の原因は何なんだということで論議をいたしました。そのとき、やはりインコネルにエロージョンかあるいはコロージョンの複合現象が起きているのかもしれないというようなことで、これはまたよく調べてみなければわからないんだということになっておりましたが、その後これの調査はどういうふうになっておるのですか。私は実は技術屋じゃありませんので、ここですぐ応答はできませんけれども、やはり一応その調査結果はどういうふうになっているか、ひとつ報告してもらいたいと思います。
  108. 井上力

    井上説明員 現在材料につきまして三菱重工業で検査中でございますけれども、大体熱腐食によるものではないかということで、まだ現在検査を続行中でございます。
  109. 石野久男

    ○石野委員 そうしますと、これはいまのところは、大体それの検査結果が出てくるという見通しはまだ立っていないのですか。
  110. 井上力

    井上説明員 近々出ると思います。
  111. 石野久男

    ○石野委員 近々というのは、いつごろになりますか。
  112. 井上力

    井上説明員 いまの見通しでは一月末ぐらいになろうと思います。
  113. 石野久男

    ○石野委員 研究結果が一月の末ごろになりそうだということですから、これは話になりませんが、これは長官は大体報告を受けているかと思いますけれども、実はこれは御承知のように、美浜の発電炉のやはり蒸気発生管の八千八百五十二本でしたかね、そのうちの二千九本をめくら栓工事をやったということであって、しかも、その後また今月になって約十日間ぐらい、やはりこのドレーンパイプのブレなどがあって検査しなければならぬというような事故が一号炉にあったわけですね。こういうことで、現状三十四万キロワットの発電設計能力を持っている炉が、おそらく二十万キロワットは出ていないだろうと、実をいえば私たちは思っているのですよ。そして、しかもいま事故原因について調査をしているけれども、まだその調査の結果が出てこない。インコネルという材質について私たちあまりわかりませんけれども、これはとにかくニッケル七五というような非常に温度の、耐熱の問題からいっても、われわれの見方からすれば相当な耐熱力があるものだ。それの原因がわからないというようなことになりますると、八千本のうち、やはり同じような条件下にあれば、またほかにも必ず事故が出てくるだろうという危険性を、普通しろうとは考える。ですから、いま三十四万キロワットの炉が二十万キロワットになって、これがこれから二十万キロワットを、だんだん炉操作が熟練すれば、また二十四万キロワット、二十五万キロワット、三十四万キロまでにいくという可能性は絶対にないのですね、この炉は。あるのですか。
  114. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 蒸気発生器の問題は、先生のおっしゃるようにやや重要な問題でございますが、それと、先ほど申しましたドレーン系の流量がふえまして、それを点検するために一時停止してバルブをチェックし、運転を再開したということは、本質的に違うと私どもは考えております。むしろ後者のほうは通常のオペレーションでありまして、そのように流量がふえたらすぐチェックをして運転をするというようなことは、火力発電所においても通常の業務として行なわれる。まあ原子力でございますので、いろいろ耳目を引くという点はあると思います。  それから蒸気発生器の問題でございますが、これは通産省がいま調べておられますのですが、私どもが聞いておりますところでは、そのインコネルの材質自体の問題というよりは、むしろその蒸気発生器の構造設計に多少欠陥があったというふうに聞いております。つまり、非常に曲げ方が急であったりいたしますために、そこのところにそういう損傷が発生したのではないか。これは通産省がいっておられますように、試験の結論を待つべきでございますが、私どもが聞いておりますのはそういうことでございます。  それからさらに、この炉が将来、三十四万、三十六万になるかという点につきましては、私といたしましてはちょっと御即答いたしかねますけれども、一つだけ申し上げておきますのは、二千八本めくらをいたしましても、伝熱係数、それから伝熱面積その他から計算いたしますと、それでも定格出力は出せる、それに対してまだ余裕があるということでございます。しかし、それが直ちに将来定格出力をこのままで出せるかどうかという点については、いまの時点では御即答いたしかねる次第でございます。
  115. 石野久男

    ○石野委員 局長、これだけとめちゃってもまだ計画出力は十分出せるのだということは、設計出力三十万キロまでいくというわけか。
  116. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 御承知のように、蒸気発生器は一次系と二次系の熱交換をする場所でございます。熱交換をすることができるかできないかというのは、いろいろな工学上のファクターがございます。一つは伝熱面積、一つは両方の温度差、それから流量、こういう問題がございます。そういう点から計算をいたしますと、この蒸気発生器に関する限り、定格に対して二千九本めくらにいたしましてもまだ余裕がございます、こういうことでございます。ただし、それが直ちに当該の原子炉が三十六万キロまで出せるかという点については、ほかの面もございますので御即答いたしかねる、こういうことでございます。
  117. 石野久男

    ○石野委員 私は技術屋でありませんのですぐに反論はできませんけれども、常識的に見て、八千八百五十二本というもののうち二千本、約四分の一ですよ、四分の一のいわゆる熱交換器で働く重要な役割りをしているものをとめちゃっているわけですよね。これは今度同じような熱量を出して、そしていわゆる熱量面積あるいはまた温度差、流量というようなものを計算すれば、三十四万キロの発電はできますというようなことは、私は、これはちょっと理解できにくいんですよ。もしそういうような設計であれば、おそらく経済的な側面からいって、私は五十万キロワットぐらいの炉になっていたのだろうと思いますよね。これだけ、四分の一を重要な——いわゆる熱交換というのは、結局発電には一番重要なんでしょう。ここを通らなければ発電できないんでしょうが。そこで設計しているものの四分の一がなくなっちゃって、それでまだ設計能力——それではこの設計はずいぶん余裕たっぷりにしておったものだということになって、ちょっと私はこれは理解できない。これはあとで私のほうでも、いまのあなたのその答弁についてはまた検討いたしますけれども、しかしこれは非常識だと思いますよ、率直に申しまして。
  118. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 御指摘のように、蒸気発生器は、原子力発電所にとりまして一番大事なところでございます。したがいまして、そういう場所につきましては、設計上十分な余裕をとるというのが、工学上の常識でございます。そういう点で、あるいは不経済という点はございましょうが、そういう余裕は当初からとるように設計すべき場所でございます。
  119. 石野久男

    ○石野委員 まあ、時間もあまりありませんが、それだけの余裕があったら、なぜいまそんなに三十四万キロワットのものを、二十万キロワットなんかの低効率のもので運転しているのですか。それは第一、採算がとれないじゃないですか。
  120. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 それでございますから、設計上の余裕はございますけれども、それが直ちに三十四万、三十六万になるかということについては御即答いたしかねる、ほかのファクターもございますので、そう申し上げました。
  121. 石野久男

    ○石野委員 なぜ出せますと言ったり、それから即答はできませんというような矛盾した答弁をするのですか。そういうことをいろいろ答弁していると時間がなくなるのだが、その意図するところは、原子力は、だいじょうぶですよということを言おうとしてあなたやっているのでしょう。しかし事実上、三十四万キロのものが二十万キロしか出ないので、もう普通ならば四分の一の出力が出ないというようなことは、現在エコノミカルな立場考えたら、そんなもので仕事になりますか。そうしてまた、これでだいじょうぶですよという安心感を地域住民に与えられると思ったら、局長、これはたいへんな間違いですよ。  私はまあこの論争はしませんが、長官に、ぼくはこの点をようく踏んまえて御答弁いただきたいのです。  現実に私ども、昨年来ずうっと原子力について関心を深めながら検討を加えてきました。ところが、この一年の間に各発電所における事故というものは、初歩的なミスから機構的なものから、もういろいろな形で多発しているのですよ。そして、率直にいって、いま美浜のごときは、期待される発電の六〇%ぐらいしか出ていないのでしょう。そういうもので、しかもこれは危険性を非常にはらんでいるわけですよ。こういう危険性をはらんでいるものがあるからこそ、私たちは安全性の問題を強く要求しているわけなんですよね。  だから私は、やはり原子力については、期待はするけれども、安全性の問題をもっと真剣に考えなければいけないということをしばしば言っているわけなんですよ。ですから、長官はきょうのあいさつの中で、原子力については積極的にというお話でございますけれども、積極的にやるべきは、原子力発電炉の安全性の問題、これに積極的に力を入れるべきだと私は思うのですよ。これは炉だけじゃございません。やはり使用済み燃料の処理の問題もありますし、廃棄物をどうするかという問題がありますね。これが十分に一連のものとして処理されなければ、原子力自体を長い期間にわたって私たちはエネルギーとして活用することはできないわけだ。炉が幾ら動いても、使用済み燃料がどんどんどんどん出てきて、処理に困るとか、廃棄物はどうしていいのだかわけがわからなくなったら、これはとてもとても、日本だけじゃなく、人類全体が大きな問題にぶつかってしまう。  だから、そういう意味で私は、発電所開発よりもむしろ安全性のほうへもう少し政府が指導権をとって、業界の諸君を全部一ところに寄せてもいいから、安全性問題をまず解決するというところへ——開発している炉はもうこれでしばらくストップしておく、それは、安全の限りにおいて稼働するのはかまいませんよ。だから開発よりも安全性へ力を入れるような政策を打ち出すべきじゃなかろうか。それのほうが、原子力平和利用の道としては、急がば回れで早道だろうと思う。そういうような考え方を、森山さん、今度長官になった機会にひとつ大胆に打ち出し得ないんですかね。
  122. 森山欽司

    森山国務大臣 美浜の炉の問題がございましたが、先般一号炉が運転を停止した、その報告は私も受けました。私は事務当局の技術者から報告を受けたわけでございますが、私の聞いている範囲内においては、まあ美浜だけではなくて、原子炉のいろいろな問題——それは機械ですから、他のいろいろな機械に比べて故障度は少ないけれども、故障というものが全く絶無だということはなかなかむずかしい。しかし、ほかのものに比べればもうはるかに少ないわけであります。しかし、かりに故障が起きても、一般公衆に甚大な損害を与えるような事故までには至らないように、十重二十重の防御施設をやっておるから心配はないんだというふうに、私どもは実は聞いております。まあ、さもあらんと思う。また、そういうことのために、原子炉を設置する際には安全性の審査をやっておるということであるわけであります。  しかし、石野先生、前々からいろいろ御主張のごとく、安全の問題は、もう念には念を入れたほうがよろしいということについては、私は全く同感でございますし、そういう意味で、いままでやってきたやり方以上に力こぶを入れる必要があるかどうかというような点で特に留意をいたしまして、まあ御案内でございましょうが、この予算の編成難のさなかに、二十人国務大臣がおりますが、その中で追加要求をしたのは私一人、特にこの安全性の問題中心にやっておるわけですから、どうかひとつ、それは安全性の問題は大いにやっていいが、原子炉をつくるのはやめちまえ、そこまでおっしゃられると、私どもも非常に困るわけであります。  そういう意味で、いろいろ御主張になっている面についてもわれわれは耳を傾けて、そういう面にもひとつ大いに力こぶを入れていこうというその姿勢について、どうか先生に格別の御理解を得たいと思っております。  これは科学評論家や何かが評論するなら別でございますが、われわれは現実の政治をやっておるわけでございますし、しかも、このままの情勢でまいりますれば、三年、五年中にまことに困った事態が出てくるわけです。で、いろいろお仕事をされる場合に、電力がなくて工場が動かぬとか、また、とにかく電力がほしいときに停電しちゃったということで各家庭まで困るような事態が起きてはたいへんですから、私どもは、そういう意味原子力安全性には、こういう時期であるけれども、格別の力こぶを、異例の力こぶを入れさせるように、国の重点をそっちのほうへ向けていくということと同時に、やはり今日の時期、長期計画原子力に期待されている一つの路線はあるわけでございますから、しかもその路線は、現状ですと、半分ぐらいしか進んでいないということでございますから、これは計画以上にひとつ大いにやりましょうというようなことで、張り切っているわけでも何でもないのであって、計画の半分しか進んでいない、これでは困るではないかということで、原子力発電の必要性を強調しているということでございますから、先生のかねがね御主張になっていることに真剣に取り組んでおるんだ。しかし、まあ全部が全部おれの言うことを聞かなきゃだめだよ、急がば回れだから、とにかく現在の原子力発電計画——案内のとおり、事実上いまストップしておりますが、この状態は私はいいとは思いません。やはり原子力発電原子力発電ですこやかに伸ばしていかなければならない。しかも注意して伸ばしていかなければならない。その道は、口で言うほど簡単ではありませんけれども、まあ、そういう方向で一生懸命やっていきたいと考えておりますので、先生の主張していることと全く方向が違った話をしているわけではございません。しかし、先生のおっしゃる方向に最も敬意を払いつつ、同時に、政府の従来の既定方針も進めていかなければならない、これは政治家としての責任である。もう三年か五年たったらその責任を——これはどの内閣が天下を取っても、どの政党が天下を取っても直面しなければならない事態でございますから、それに対して最善の努力を尽くしたい、こういう気持ちでございますので、どうか御理解を賜われば幸甚に存じます。
  123. 石野久男

    ○石野委員 理解をするには、みんなが受けとめられるような政策なりあるいは運営というものがないと、ここら辺は理解がいかないだろうと思うのです。私なり、私たちの同僚が理解するだけではいけないので、一般の地域住民も理解しなければいけない、そういうふうに思います。  そこで、したがってやはりただ頼みますとか、あるいはあなた方に税制上の処置をしてよくしますからというようなことではだめなんで、安全性というものに対する安定感が出てこなければだめなんでしょう。安全性に対する住民の安定的な感覚がここへこうくっついてこなければだめなんですから、そういう意味では、たとえば再処理の問題がすぐ出てきますが、再処理工場はもうじきやはり稼働へ入ってきます。そのとき専門審査会のほうで出しているなにからいえば、いつも問題になりますいわゆるクリプトン八五は煙突から毎日パーデーで八千キュリー出てきます、こういうわけだ。そして、しかも二キロ地点にはそれは降下していきます。そして、一般の人でも、年間三十二ミリレムの被曝はいたします、こうなっておるわけですね。こういうことになれば、地域住民は——三十二ミリレムというのは、五百ミリレムから見ればわずかですよ、こうあなた方はおっしゃるけれども、アメリカでいえば五ミリレムになっているのですよ、年間。百分の一になっているんだから、百分の一から見れば六倍以上になっているわけでしょう、これは実をいうとたいへんなことですよ。しかも、半減期は非常に長いんだから、濃縮していきますよね。そういうようなこと。そのほかに、また今度は作物を食べた、水を飲んだ、何をしたというようなことで、それ以外のものもまたこう入ってくる。ただ被曝だけじゃない。そういうようなことをとめるということがなければ、今度は再処理工場自体を動かすことは地域住民は納得しませんよ。  ですから、長官安全性には非常に力を入れます、こういまおっしゃった。それだったら、もう煙突から出る八千キュリーのクリプトン八五については、どこかでとめまして、煙突から出させないようにしますというようなことぐらいをしなかったら、安全性に力を入れますというようなことにならないでしょう。そういう用意があるかどうかということですよ。
  124. 森山欽司

    森山国務大臣 いまの廃棄物の処理ということですね。これらの問題につきましては、私どももただこれを拱手傍観しているわけじゃございませんので、そのことについて現在考えている考え方について、原子力局長から報告をいたさせます。専門的なことですから、私がまことしやかに言ってもあれですから……。
  125. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 再処理工場は、確かに先生のおっしゃるようにクリプトンと、ルテニウムとの問題もございます。ただ、先生がおっしゃいました中で年間五ミリレムといいますのは、アメリカにおきましても原子力発電所、それに軽水炉の周辺におきます問題でございまして、これがすなわちアズ・ロー・アズ・プラクチカブルということでございます。アメリカにおきましても、再処理工場については五ミリレムにしておりません。そして、ICRPの基準の五百ミリレムというのはまだ生きておるわけでございます。ただ、おっしゃるように、原子力発電所が五ミリレムで、再処理工場が三十二ミリレム、アズ・ロー・アズ・プラクチカブルということでございますので、この辺につきましては、現在動燃等で研究開発をいたしまして、このルテニウムとかクリプトンにつきましては、できるだけ少なくするようにいまやっております。
  126. 石野久男

    ○石野委員 時間がありませんから、私質問をおきますが、原子炉はこうで、再処理工場は違いますよ——放射能そのものは、地域住民にとっては、炉であろうと、再処理工場であろうと、放射能を受けるときは同じなんだ。そんなにあなた違うはずはないんで、そんな説明はちょっと聞きおくわけにいきませんから、これはあとでまた論議しますが、ただ森山長官にひとつお願いしておきます。  私どもは、安全性確保される限りにおいて反対するものじゃないんですよ。しかし、安全性確保が、確実に安心感を持たれるようなところまで施策が行なわれないで、ただ電力が三年たてば足りなくなるからというようなことで、設計能力は三十万キロワット、実出力二十万キロワットでも何でもいいから炉をつくって、そうしてじゃんじゃんじゃんじゃん電力さえつくればいいのだ、こういう考え方はまずいということと、いま一つ考えてもらいたいことは、先ほど通産省でも言われたように、エネルギー危機に直面して、エネルギーの長期計画の見直しが行なわれていく、同時に、産業構造についても、また一定のやはり検討が加えられなくちゃならないことも、通産省自身が考えているわけですよ。  それで、このことは、産業計画懇談会ですか、あの諸君がすでにもうはっきりとエネルギー問題については意見を出しておりますね。同時に、原子力発電につきましても、高速増殖炉なんというようなものについての見解は、あれはきたない電力だということまであの中には書いてあるんですよ。それほどのことまで書いてあるんですから、ただ前向き前向きだけでなしに、もう少し一般の住民がちゃんと安心してついていけるような電力行政、特に原子力行政というものをやってもらえないと、各地におけるところの住民の闘争というものは、それは簡単にはおさまらない、私はそう思います。  だから、そういう意味で、これは長官がいま一度決意を新たにして、ひとつ所見だけを私は聞かしておいてもらいたい。
  127. 森山欽司

    森山国務大臣 きわめて重要な問題について御指摘がございました。私は、先生安全性を強調される面についていささかの異存もございません。しかし、それと、これからの原子力発電推進する問題とはあわせ行なうべしという考え方をいま持っておるわけでございますから、安全性の問題につきましては、先生がおっしゃられる以上に万全の体制をとって進みたいと思います。  ただ、ここでこういう話をしましても、それは原子力発電をやろうとしても、現場においてなかなか住民の方々の御理解を得られなければ何にもなりません。これはまた先生のおっしゃるとおりでございます。その点につきまして、従来それじゃ万全であったかということについては、私はいろいろ問題があったといま思っております。  先般、参議院の予算委員会で田中総理が、原子力発電安全性の問題については、政府が責任をもって当たるという表現をされました。私は、やはり電力会社だけにまかしておかないで、また地元の市町村だけにまかしておかないで、政府みずからもこれらの問題に真剣に対処する姿勢を示していくことが、これからきわめて大事であると考えております。そういう意味で、諸先生方からもいろいろ御教示を願いまして、そういう方向で万全の努力を尽くしていきたいと思っております。
  128. 石野久男

    ○石野委員 これで終わります。
  129. 安井吉典

    安井委員長 次に、瀬崎博義君。
  130. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 一般的な表現でエネルギー危機といわれている事態が、石油危機というはっきりした現象で国民生活を圧迫してきている今日、科学技術庁としては、国民の切実な要請を受けてどのような科学技術行政を展開しようとしているのか、また、しているのか。別のことばでいえば、今日の石油危機の以前と以後で科学技術行政に変化があるのかないのか。   〔委員長退席、石野委員長代理着席〕 また、科学技術行政において反省している点はどういう点なのかというふうなことを中心に置いて、以下、原子力行政の、特に新大臣のことでありますから、基本方針をお聞きしたいと思うのです。  その第一は、高度成長政策が根本的な転換を求められている今日、昭和六十年度で六千万キロワットの原子力発電所建設を目途とする長期計画全体の再検討が必要ではないかというこの問題です。田中総理も所信表明の中で、「原子力開発水力発電の見直し、石炭その他国内資源の活用、太陽エネルギー水素エネルギー等の無公害の新エネルギー開発推進し、エネルギー源の多様化につとめることが必要」だと、多様化を強調しながら、参議院の予算委員会での答弁でも、原子力発電開発を積極的に進めていくということを明らかにしているわけなんです。  そこで、長官お尋ねしたいのは、エネルギーの多様化という政策と、それから原子力発電所建設自身の進捗状況などから見て、先ほど言いました昭和六十年度六千万キロワットの発電設備容量を目ざす原発建設の長期計画について検討の必要ありやなしや、こういう点についてお尋ねしたいのです。
  131. 森山欽司

    森山国務大臣 先ほどもこのこと、石野委員からも御質疑がございました。  経済社会発展計画あるいはエネルギーの長期計画、さらには原子力委員会で作案いたしました長期計画等、一連のものについて、だいぶいろいろ様子が変わってまいりましたから見直す必要は私は確かにあろうと思います。しかし、まだ具体的にこれを数字の面で再検討するというところまで現状はいってはおりませんけれども、まあ腰だめで、ある程度いろいろなことについての見通しははかれると思っております。しかし、こういう時期、とにかく石油の問題がこういうふうな状態になってまいりました。  元来、石油資源は有限でございまして、三十年ないし五十年たったら石油資源は枯渇するであろうという見通しがあるわけでございます。そういう長期の見通しに立って原子力発電というものは、これは大体考えられたわけでございまして、今日のエネルギー危機のことを考え原子力発電計画考えられたわけでないことは、もう先生案内のとおりでございます。そして、その原子力発電も、従来の石油による火力発電にかわるべきものの一環として、ある時期その使命を果たすべきものと考えられておったことは、これは御案内のとおり。しかし、現段階のようなアラブで石油の不足問題等が生じてまいりましたから、したがってこれに対処するやり方はいろいろあるわけです。当面、十二月、一月、石油使用の削減というようなことも、これも目先の対策の一つでございましょう。これは国民生活あるいは産業界、社会の各方面に対して大きな影響があるわけでございますが、そういう当面の対策以外にも、経済成長の見通しも現に変わりつつあるわけでございまするし、この経済成長の見通しの変化に沿ってエネルギー資源、特に、たとえば電力の需給というようなものについての見通しも変わってまいるでございましょう。  それで、そういうものの中で、当面原子力がどういう役割りを占めていくかということでございまして、先ほど来お話しになっておりますように、非常に激動しておりますからいまどうのということを数字面で確定するには、現状必ずしも適当な時期ではございません。が、私どももある程度のその見通しというものを数字的にも立てて、これから処理していかなければならぬと考える点は、先生とその点は同感でございます。  そこで、これはまた御異論があろうかと思いますが、現在の電力のことに入りますと、一つ水力一つは火力、一つ原子力ということでございますが、水力のほうはともかくといたしまして、火力のほうは大部分が石油でございますから、このごろは既設の石油発電所にも石油が十分回りかねるような事態でございますから、したがって、ここで石油発電所を従来の計画どおり建てていくというのは、実際問題として、現存するものさえ石油の回りが悪いところへ新しいものを建てるということについては、動きが鈍くなっていることは私から申し上げるまでもないわけでございますし、今後石油というのは、前のように安い値段で幾らでも入るというようなものとは、私はアラブの問題が片づいても、そう簡単に片づかぬのではないかということをひそかに危惧をいたしておりますけれども、しかし、かりに早期に片づいたといたしましても、前のようなふうにはなるまいというふうに思いますから、石油による火力発電というものは、このままにしておきましても、なかなか従来の計画どおりにやっていくということは容易ではないのじゃないかという大局観と申しますか、を持っておるわけであります。  水力につきましては、皆さま先生も御案内のとおり、まだまだそれは揚水発電というやり方もあり、あるいは未利用資源開発という一面で余裕があるという見方もございましょうが、まあその余裕は当面の問題としてはある程度限られたもの、そうなると、先行き見込みがあるのは私は原子力ということに相なろうか、こういうふうに思います。  その問題では、先ほどお話があったように、たとえば地熱の問題、私は、エネルギー資源あるいは電力の資源確保という意味では、多角的検討をするにやぶさかではないというのです。ありとあらゆる見込みのあるものは全部その検討をしておくということはもちろん賛成でございますが、その評価はやはりおのずからあるわけでございまして、そういうことをいろいろ考えてみて、原子力というものに期待される面が、現在の計画量はもちろん、あるいはそれ以上やってもらわなければならぬというようなことになるかもしれないし、私はちょっとその辺のところは数字ではわかりませんが、現状のように原子力委員会原子力発電計画の半分程度しか進捗しないという現状については、これはもう少しそういう点は打開をしてがんばっていかなければならないのではないか。  ただ、それについては、先ほど石野委員とも論議をいたしましたように、やはり安全性の問題その他について、ある程度やることはやる。ただ石野先生は、もうとにかくそれに総力を傾注して、原子力発電所をつくるのはしばらく見送ったらどうだ、急がば回れとおっしゃるが、どうでしょうねというのが、いまのところ議論の割れ目みたいに私は思うので、原子力発電をやめろとはおれも言わぬのだぞというお話でございますが、その辺のところはちょっと意見の相違はございますけれども、そういう面で、ひとつ力こぶも入れてこれから進めてまいりたい。当面こういう時勢になって、原子力発電についてのおおよその考え方は以上のとおりでございます。
  132. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 緊急の処置として、原子力発電所推進が妥当なのかどうか。また、長期的に石油代替として、どうも長官原子力を最も有力な武器と考えておられるようだけれども、それならば、いまのようなやり方でいいかどうかはあと質問で申し上げるとして、とにかく大前提として、やはり腰だめでも見直す必要があるということはいま言われたし、成長自身も変わるだろうということだし、その点では強く撤回が求められている「日本列島改造論」の中で、三百兆円経済の訪れを前提にしながら「六十年度の電力需要をまかなうためには発電能力を二億三千六百万キロワットと四十六年末にくらべ三・五倍以上に引きあげなくてはならない。」このうち「原子力発電が三割を占める見込みである。」となっているのですね。ですから、この前提、つまり三百兆円経済を前提としてということ、このこと自身は今日くずれ去った、この点だけは長官、はっきりお認めになりますか。
  133. 森山欽司

    森山国務大臣 そういう表現だと、ちょっと返事がしづらくなるのですけれども、まあとにかく、この秋以来の石油不足による変化というものは、ただ当面の問題だけじゃなくて、長くわが国の経済に大きな影響を及ぼしてくる問題だと私は考えております。ですから、それは数字的にどういう数字が出てくるか、そういう数字を、これは何とか計画というような、あるいは計画の体系というような形でやっていくことはなかなかむずかしいと思います、いろいろなことを調べなければなりませんし、いろいろな形式を踏まなければなりませんから。しかし、私自身は、何かそういうもので現在のめどがほしいな、こういうふうに考えておる次第であります。
  134. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 あいまいな表現ですけれども、きょうはそのことを論争しようとは思いませんが、長官のニュアンスから見れば、こういう田中総理の見通しは根本的に間違っておったと言われたように思うので、先に進みましょう。  それでは、いまの長官の話の中には、原子力が、場合によってはこれ以上要求されるかもわからぬというようなニュアンスのことばがあったように思うのですが、しかし、見直す必要もあるということなんですね。それはともかく、つまり科学者技術者の自然科学的な側面からの意見は、先ほどもいろいろ例をあげてお読みになっておりますけれども、しかしこれは、やはり社会的条件が整わなければ計画が達成できないことは、今日の事態が証明しているのですね。そういう点でいろいろ手を打つとおっしゃっているけれども、手を打てば、当面の原子力発電にかけられている昭和六十年、六千万キロワットの目標は、いまはおくれているけれども追いつけるのだというお考えなんですか、それとも、それは非常に困難だという見通しを持っているのですか。
  135. 森山欽司

    森山国務大臣 まあ数字面で言いますと、先ほどお話しのように数字を変えてみなければならぬし、ふやさなければならぬかもしれぬというようなお話も先ほどいたしました。どういう数字が出てくるかわかりませんけれども、先ほどのように、石油による火力発電の先行きというものが従来どおりいかないといたしますと、そして、最近のように二年前には計画量に対して全体として九〇%、それから昨年度は三二%、今年度はおそらく二〇%を切るでございましょう。そして、そういう中で火力発電についてはさらに達成率が低下することが予想され、原子力に至っては、ことしは申請皆無でございますから、こういう事情でまいりますれば、三、四年たったら、やはり電力不足というのは来るというのが識者の常識ですからね。  ですから、もう国民に対する御迷惑というものが起きてくるのは目に見えておりますので、そういうことのないように最善の努力を尽くしたい。それには、先ほどの地熱もけっこうだし、とにかく間に合うものは何でもひとつやりたいということでございますが、とにかく三年ないし五年くらいでこの応急対策——この十一月の電気の節約なんというような応急対策もありますけれども、三年、五年の応急対策も真剣に講じていかなければなりませんですから、したがって、これは数字面では先生のおっしゃるとおり検討を要します。どういう数字が出てくるかはまだわかりませんけれども、しかし、大体各方面の方々でこれはちょっとたいへんなことが起きるのじゃないかというふうなお考えについては、あまり異存がないように私ども見受けますので、そして他のエネルギー資源でこれが乗り越えられるなら乗り越え、間に合うなら何とかしたいと考えておりますが、なかなかそれも容易ではございませんから、その努力はいたします。と同時に、やはり原子力というものについても、これは従来の既定の路線があるわけでございますから、少なくも既定の路線は継承していかなければならないような事態になっているのだ、こういうふうに考えておるわけでございます。
  136. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そうすると、要約すれば、当然この経済成長も変わらざるを得ぬので、したがって、長期計画の見直しもやるけれども、どっちにしても三、四年先には電力危機が訪れてくる、そのときに他に有力な手段がないから、結局は原子力発電に寄りかからざるを得なくなってくるであろう、こういうふうなことなんですね、いま言われている趣旨は。
  137. 森山欽司

    森山国務大臣 年々十何%ずつ従来は電力の消費がふえてまいりましたからね。それに見合って水力、火力、原子力ということで発電設備計画を立て、またそれに対して手をつけてきたわけです。ところが昭和四十六年には九〇%だ、四十七年に三二%やる、ことし四十八年には二〇%を切るんだということになってまいりますれば、これは幾ら何でも三年、五年の間にはそんなにとにかく予定よりも実際が下回ってくれば、これは壁にぶつかるというのが常識でございますからね。これは数字である程度の計算をすることは決して不可能ではございませんけれども、いろいろな与件がございますから、きょうはふわっとした議論で、おそらくこれについても、先生もそういうことは全くないとはいわれないと思う。そういう心配がある。要するに、心配というものを私どもも感じておりますものですから、それに対する対策を立てるということは、与党の立場においても、野党の立場においても、特に政府はその責任ある立場でございますから、取り組んでいかなければならぬということで、原子力についてそういうような発言をいたしておるわけでございます。どうかひとつ御理解を賜わりたいと思います。
  138. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 きょうはなるべく新大臣の見解といいますか、基本的政治姿勢をお聞きしておきたいから、あえてこっちの見解なり、反論はできるだけ避けたいと思う。  そういうことで、とにかくそういうふうな心配に基づいて対策を講ずるという意味原子力推進することが、政治家の責任だというふうな決意と受け取るわけなんですが、それで第二の問題に入るわけなんです。  今日まで石油に事実上全面依存した上、対米追随の結果が危機を招いているわけなんですが、こういう事態から原子力行政がどういう教訓を学んでいるかというテーマに入っていきたいと思うのです。  結局、日本には国産エネルギーがないことはなかった、石炭というふうなものが…。しかし、そういうものをつぶして、エネルギー資源石油中心に置き、その石油アメリカ系の大企業に依存してきた、その当然の結果が今日の危機になっていると私は思うし、大体いままでの予算委員会その他を通じての論戦でも明らかになってきていると思うのです。  そういう点では似たり寄ったりで、国内資源としては決して豊かとはいえないウラン、しかもそのウランを濃縮ウランの形でしか使用できない軽水炉を中心に、しかもその軽水炉をすべて、濃縮ウランもすべてアメリカにおんぶしている、こういうふうな状態について、大臣はどうお考えになっています。
  139. 森山欽司

    森山国務大臣 石油の問題を議論するときに、昔の石炭の問題を引き合いに出されると、ちょっとまた私もいろいろ意見があるわけです。  わが国資源賦存状況とか、炭労や何かストライキがたくさんありまして、デリバリーがはっきりしないからというようなことで、いろいろあって石油のほうに移っていったという自然資源的な問題と、社会的な要因と、いろいろあったと思うのですよ。だから、それをしゃべると私も非常に困りますが、アメリカに依存してという形で、いまおっしゃりたいのは、特に天然ウランだとか、ウラン濃縮とかいうのをアメリカのほうにたよっていてどうか、こういうお話だろうというふうに思います。  それで、天然ウランにつきまして、わが国のウラン鉱の資源賦存状態はきわめて貧弱であることは、いまおっしゃられたとおりでございます。どうしたって、やろうと思えば海外から入れなければなりませんが、これはアメリカだけではございません。八カ国か九カ国くらいの相当たくさんの国々からウランを入れるように、これは昭和六十年、六千万キロワットアワーまでの分につきましては、ウラン鉱の手配はすでについていることは、御案内のとおりでございます。しかし、これはアメリカだけじゃありませんですね、いろいろな国。ただ、濃縮の問題につきましては、日米原子力協定に基づきまして、従来アメリカ側に依存をしておる。それで、六千万キロワットぐらいまでの分はアメリカのほうにやってもらうように話も、もうすでについていることは御案内のとおりです。一応六千万キロワットの発電設備分の資源の手配はついておる。ただ、これはアメリカだけに頼んでおいてだいじょうぶか、こういうお話だろうと思いますね。  その点は、率直にいって、私どもは、日米両国友好関係という点から見て懐疑的ではございません。けれども、やはりそういう問題、アメリカ一国にたよるにもいろいろ問題ございますね。昭和五十五年ごろになりますと、アメリカのウラン濃縮も設備的に問題が出てくるんじゃないかということが一方においてあるわけでございます。それからもう一つ資源濃縮の問題をアメリカだけにたよっていいかという問題もそれはございます。われわれは変わらざる友好関係を頭の中に入れておるわけでございますが、アメリカ自身も能力的に手に余るかもしれぬとも思いますし、それから、そういうのを方々に分散してお願いするようにしたらどうかということもございますから、アメリカ、フランス、英国、オランダ、西ドイツ、そういうような国々の国際ウラン濃縮計画にも参加するように、いま原子力委員会で特別グループをつくって検討をいたしておるわけでございます。また、わが国におきましても、このウラン濃縮の技術を国産化しなければいかぬということで、一昨年からやっておるわけでございます。ですから、何かアメリカだけに云々というような状態にはない。しかし、資源の関係で、海外に依存しなければならないことはやむを得ないことだ、こういうふうに考えております。
  140. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 一つは、アメリカとの友好関係があるからだいじょうぶだというお話、その友好関係がいま災いしているわけでしょう、中東問題については。それから石油問題についてだって、多くをメジャーに供給を仰ぎながら、また一方、直接買い付けも中東でやっておったけれども、中東戦争という一つのきっかけで、よもやと思われるような事態に今日立ち至っているわけです。  ですから、いまの日本のような状態で、ウランの確保について、八カ国に供給の手はずを打ってあるから、六十年まで絶対だいじょうぶだなどということがいえないじゃないかというのが、いまの石油問題の教訓から学ぶべき点じゃないかと思うのですね。むしろ逆に、ウランのほうはだいじょうぶなんだということは、そういう事態から一つも学ぶところなし、あぶないなという感じを私は強めたわけです。  そういう外交問題は別といたしまして、そうしますと、結局、大臣考え方では、いまの軽水型の原子炉で大体六十年までの六千万キロワットは建設していくんだ、そのことの計画には変化はない、こういうことなんですね。
  141. 森山欽司

    森山国務大臣 基本的にはそのとおりでございます。  しかし、その間、これまたもう先生よく御存じのようでございますから申し上げませんが、新型転換炉とか高速増殖炉とか、そういう方向に、軽水炉から一歩も二歩も十歩も前進するような方向に向けて、ウラン資源が要らなくてもやれるような——要らなくてもといいますか、従来に比べれば何分の一、何十分の一で済むような方向にわが国原子力研究を進め、しかもそれを実用段階に持っていくように努力するというのが、いまの私どものやっておることでございます。
  142. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私が聞きたかったのは、もちろん、その研究開発については動燃事業団でやっておられることを承知しているし、見学にも寄せてもらっておるわけなんですが、こういう事態を迎えて、しかもウラン燃料の効率的な利用という面から見れば、きわめて非能率な軽水炉利用から、一日も早くこの原子力発電を進めるレールの上で、いまの高速増殖炉とか新型転換炉への移行を考えて、何か新しい対策なり施策を講じているのなら、それを聞きたかったわけなんですよ。そういうことがないとすれば、つまり、いままでの延長線上とするならば、こういう緊急事態を迎えて、さっきあれこれ抽象的な決意を表明されたけれども、実際具体的には手を打っておらぬじゃないかということになるのじゃないかと思うのですね。
  143. 森山欽司

    森山国務大臣 新型転換炉とか高速増殖炉とか、これは先生のおっしゃるとおり、早くできるにこしたことはありませんが、それこそいま、ある程度のめどがつきつつあるということでございまして、これが実用段階に達するについてのある程度のめどはありますので、いま原子力局長からちょっと説明いたさせます。
  144. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 前のレールはわかっていますから、それ以上に変化しているのならおっしゃってください。
  145. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 先生のおっしゃること、まことにそのとおりでございます。  御承知のように、新型転換炉は原型炉が五十一年にできますし、高速増殖炉は実験炉が同じころに動きますけれども、原型炉の着工をまだいたしておりません。したがいまして、いまの時点でまだその辺がプルーブンテクノロジーでございませんので、今後その研究開発を促進いたしまして、ウランの利用率のいい原子炉を主体にする発電炉に切りかえることをできるだけ早くいたしたいというふうに考えておりますが、御承知のような実情でございまして、すぐ直すというほど、まだ事態が進展していないわけでございます。
  146. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 結局、やはりいまの日本のような国情では、軽水炉一点ばりで原子力発電を進めることが決してりこうな方法でないということは、お認めになっておると思うのですね。ですから私は、当面の原子力利用の最も有効な方法については、日本の自主的な技術開発という点から見れば、開発途上と見るのが妥当じゃないかという感じがするのです。  そういう意味では、多面的という中では、きわめていい資料をおたくのほうで出しておられるのですよ。私の手元に届いている「我が国エネルギー経済に占める石炭の評価に関する調査報告」と「水力の合理的開発に関する勧告」——おたくの資源調査会から来ているわけなんです。  まず第一、これは政府部内では一体どういうふうな役割りを果たす資料なんですか。また、今後この資料に基づいて何らかの政策が実現されてくると見ていいのですか。それをお聞きしたいと思います。
  147. 森山欽司

    森山国務大臣 この報告、勧告は、私が科学技術庁長官に就任いたしましてから出たものでございます。資源調査会はいままできわめて有益な報告ないし勧告をたくさん出しておられますが、特に今回のこの報告、勧告は興味あるものであり、また有益なものであると私は考えました。それで、従来、報告を受けっぱなし、勧告を受けっぱなしで——まあ受けっぱなしといいましても、役所の中では処理したわけでございましょうが、私はこれを閣議に報告をいたしまして、こういう報告が出たから、関係各大臣において十分ひとつこの問題をお取り上げ願って御研究を願いたい、科学技術庁ももちろんやりますと、こういう話をいたしたわけでございます。それと同時に、科学技術庁のほうにおきましては、関係の各省を集めまして、この報告について説明会を催しました。そして、その説明をそれぞれの関係のところで御検討になって、各省のそれぞれの施策の上に生かしておられるものと私は確信をいたしております。  しかし、いずれにたしましても、資源調査会の報告、勧告は閣議まで報告したということは、今回がきわめて異例なことでございますので、真剣に取り組んでおるという面について御理解を願いたいと思います。
  148. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 では、長官の御尽力を高く評価して、この内容に従えば——これは内容に従わなくても自明のことなんですが、大体石炭の埋蔵量というのは、世界的に見ても、石油だとか天然ガスに比べれば一けた多いわけなんですよね。ですから、この中でもやはりそれの利用ということを大いに見直すということが強調されておるわけでしょう。これはやはり最も手っとり早いいまの緊急事態に対する対処策じゃないかと思うのです。これは大いに発電にも利用できるのじゃないかと思うのです。こういう資料を発表しておきながら、そういうことはあまりおっしゃらないのでふしぎに思うのですが、いかがです。
  149. 森山欽司

    森山国務大臣 先ほど、地熱というようなお話とか水素とかいうお話とか、いろいろ新しいほうの御議論がございましたけれども、私が前々から申し上げておりますように、こういう時期でございますから、既存のいろいろなエネルギー資源についての多角的検討というものは必要であるというふうに考えております。ですから、石炭の場合でも水力の場合でも、できることならどんどんやって、取り組んでいかなければならないというふうに考えております。  ただ、この内容は、たとえば、私も石炭といいますから昔の石炭のことを考えておったわけで、いろいろ読んでみますと、やはり考えているのは、太平洋をめぐる地域にたくさんの石炭がある。そして、その豊富に賦存する石炭を液化し、あるいはガス化するというようなことを考えておるので、必ずしも従来の、昔の日本の石炭産業の復活というような形においてこういう問題が取り上げられておるのではない。もちろん、国内の石炭でそういうことがまたできる部面がありますれば、そういう方向にやはり持っていくべきだと思いますが、取り上げております中身を見ると、かなり多角的といいますか、国際的にまで視野を広めた石炭の、国内資源だけじゃなくて、環太平洋地域の石炭資源というようなことがそれに書いてございますので、やはりそうういう角度で、国内資源も、もちろんそういう意味で使えるものは使ったほうがいいと思いますが、なかなかいま石炭を掘る人があまりありませんからね、それはいろいろな問題もございますけれども。ですからそういう意味で、私はこれは非常に興味のある報告であろうと思いますし、ぜひこういうものも生かすべきじゃないか。けさ何か新聞に出ておりましたね、東北電力か何かで——私、さっと新聞を見たものですからあれですが、東北電力と昭和石油が合意して、石炭ガス化発電を実用化したいというのが日刊工業新聞に出ておりました。さっとヘッディングだけ見て、うちを出てきたものですから、どういう中身だかひとつ説明してくれと、いま事務当局に言っておるわけございますから、こういうふうに、もしこれがこういう方向として可能性があるものならば、これもまた大いに考えていかなければなりませんし、ほかにも、さっき言った水力の見直しの問題も、揚水発電の問題だとか、あるいは未利用資源——いままでは水力開発は水系ごとにやっておった。しかし、もう水系と水系を結びつけてやるような水力開発もしなければならぬと、その勧告には書いてございました。口で言うのは簡単ですが、いままでのやり方からすると、ずいぶん考え方を切りかえていかなければならぬと思いますけれども、これも非常に興味ある報告であろうと思います。そして、それを関係官庁にはすでに文書でも送付し、説明会も行ないということで、科学技術庁立場としては、これらの考え方をただ報告しっぱなしということじゃなくて、真剣に取り組んでおることだけをひとつ御理解を願いたいと思います。
  150. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 なかなか雄弁な大臣なんで、時間をとってしようがないので、恐縮だけれども、極力短くお願いしたいわけなんです。  いまの話を聞いていると、石炭を日本で使用しなくなったおもな原因は、どうも炭鉱労働者のストライキ等に責任があるようなお話なんですが、これは全く間違いで、むしろ逆に、石油エネルギー源を切りかえる政府の施策に基づいて合理化なんかが強行されてきたために、そういうふうな争議が激化したのであるし、特に最近なんかは、別にそういうふうに争議が起こったとか、ストライキがあるなしにかかわらず、政府のほうから奨励してつぶしているのですから、こういう事実はやはりはっきり、この場で論議すべき問題じゃないけれども確認をしておいてもらいたいと思うのですよ。
  151. 森山欽司

    森山国務大臣 ちょっとそれは、それだけが理由だなんて決して言っているのではないのですから、どうかひとつ御理解を願わぬと、誤解を招いてはいけませんから。そういうこともかつて一つの原因であったという、それは一つですから、ほかにいろいろな原因があるわけですから、どうかひとつその点、御理解願いたい。
  152. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 結局、いまの大臣じゃないけれども、東北電力ですか、そういうことに成功した、そんなニュースがあるのでというふうなお話なんですが、そういうこと自身が、ぼくは無責任だと思うのですよ。むしろそういう道のあることを政府自身、つまり科学技術庁自身が技術開発してやらせるべき立場にあるのじゃないかと思う。もし民間がかってにそういう利用考えて、そのニュースを取り次ぐだけだったら、何も科学技術庁がばく大な機構をかかえて存在する必要はないと思うのです。これはちょっと失言じゃないかと思うのですが、どうですか。
  153. 森山欽司

    森山国務大臣 ちょっと私が言いますとあれですから、局長が専門的にいろいろお答えしたほうが正確だろうと思いますから……。
  154. 長澤榮一

    ○長澤政府委員 石炭のガス化、液化につきましてはこの報告で述べておるわけでございますが、同時に、通産省のほうで、サンシャイン計画の中で石炭のガス化、液化というのを来年度から取り上げるということで鋭意努力されております。  私どものほうもたいへんけっこうなことだと思っておりますし、また、この研究の促進のために大臣からも指示を受けておりまして、特別研究調整費というものがございますので、いま工技院と相談いたしまして、さしあたり取りかかれるようなものにつきましては手をかけようということで、いま工技院と鋭意所要の検討を進めている最中でございます。   〔石野委員長代理退席、委員長着席〕
  155. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 このおたくの資料の四六ページを見ると、おもしろいことを書いてあるのですね。「我が国では戦前、朝鮮窒素、満鉄等で石炭液化技術の企業化が行なわれたが、それは第二次大戦の終了と共に放棄された。また戦後の昭和三十年代末までは資源技術試験所、北海道大学、北炭化成等で液化、ガス化などの研究や開発が行なわれたが、エネルギー市場への石油の圧倒的な進出にともなって基礎研究を除き、開発研究は全面的に中断した。」それから「通商産業省工業技術院所属試験研究機関の石炭利用技術関係予算は表の通りであり、米国石炭研究局の研究開発予算と対比すれば、その格差は明らかである。」つまり、今日こういう事態を予想しておれば、本来石炭を掘り続けるかどうかは、これはほかの官庁の責任であるとしても、少なくとも研究技術開発をやっておれば、掘ればすぐ間に合う、そういうものを今日まで放棄してきた、中断してきた、こういうことだけははっきり政府の怠慢、責任として認めますか。
  156. 長澤榮一

    ○長澤政府委員 ただいまの御指摘の点は、まさにこの報告書にも取り上げてございますし、事実でございます。  石炭研究が確かに少なかったと思われますけれども、その時点におきましては、そのほかに緊急なエネルギー関係の研究開発のほうに、少ない人員、予算でございましたので、振り向けられたというようなこともあるのではないかと思います。アメリカにおきましては石炭のガス化、液化の研究が一番進んでおりますが、これは、アメリカは非常にたくさんの資源を持っておりますし、そういう点で継続的にやってこれたのだと思っておりますが、日本では、残念ながらいまやっておりますのは、基礎的な研究だけであるということでございますが、今後大きく取り上げていこう、通産省で取り上げていこう、こういうことでございますので、この方面の研究も進んでいく、こういうふうに考えております。
  157. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それではこの項の最後として、こういう事実関係がおたくの報告にも載っておるわけですね。ですから、さっきのように、最も手っとり早い方法が、軽水炉をアメリカから輸入することだというふうなことについても、一応やはり検討を加えて、目先のことばかり考えないで、もう少し系統的で確実な着実な技術開発というものが常に科学技術庁で行なわれるように、ひとつこの点は長官にいままでの誤りを認めて御考慮いただきたいと思うのですが、どうですか。
  158. 森山欽司

    森山国務大臣 石炭につきましては、いま長澤局長から話があったのだと思いますが、私は原子力の当面の方向としましては、必ずしもあなたがいまおっしゃったように……。
  159. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いや、ぼくは否定はしていないのですよ。そういうことを考えるなら、片一方でそれも考えなさい。
  160. 森山欽司

    森山国務大臣 いろいろのことを考えておやりなさい、こういう意味では、十分ひとつ貴重なる御意見として伺っておきます。
  161. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 第三は、原子力発電所の立地に関して、経済的な利益誘導の発言が今国会でも目立っているわけですが、そのこと自身を私、否定はしませんけれども、しかし、それが本質的な問題解決の道なのか、それとも、技術的にも法制的にも原子炉安全性を確立することが、本質的な解決の道なのかという問題で、若干すでにお話も出ているわけなんですが、ただ、そこでまず確認しておきたいのですが、いろいろこれは議事録にも出ているし、新聞にも出ているのですが、たとえば固定資産税の軽減の特例措置を廃止するとか、あるいは原子力発電所地元には安い電力を供給するとか、それから新たに発電所税を新設するとか、こういうことが発言されているわけですね。  これについては長官もちゃんとその相談に加わられて、内閣の統一した方針としてわれわれ受け取っていいことなんですか。
  162. 森山欽司

    森山国務大臣 私は原子力発電所というのは、本質的にあぶないというふうには考えておりません。それは、確かに機械でございますから、故障は起こり得ましょう。しかし、普通の機械に比べれば、はるかに故障度が少ないように気をつけてつくられてございますし、かりに故障が起きても、一般公衆に迷惑をかけるような事故が起きないように十重二十重の防護体制があり、そして、そういう原子炉をつくるときには、それを一々安全性の審査をやかましくやり、途中でも検査をやりというようなことでございます。そして、世界的に見ましても、軍事利用の当初のことはいざ知らず、平和利用に入ってから今日まで、世界的に見てそういう事故は一件もないのです。日本でも幾らか関係者で、作業人者で放射能の被曝をしたという方はございますけれども、これはみんな許容量以下ですから。  しかし、とにかくそういうことは注意してやらなければいかぬよと石野先生おっしゃるから、それはそうです。そういうことがないようにやらにゃいかぬし、そういう方向に、もし力こぶの入れ方が足りなければ入れましょうというので、あなた、この予算の編成難のときに追加要求をやっている。とにかく最初五百億と、こう大きく出たものですから、大蔵大臣や大蔵省、一体、一千百億の四十九年度予算で五百億もよけいよこせとは何ごとだといって、私自身も、ちょっといまのところ、まあ話半分以下しかそれはできないと思いますよ。というのは、御案内のとおり一つ一つ項目を見ていただければ、必ずしもそれを全部消化するような情勢にはございませんから。しかし、とにかく安全ではあるけれども、われわれはそういう方向に力こぶを入れていくという姿勢はなければ、それはわれわれもぜひひとつこういう原子力発電は進めなければならぬということは言えぬわけでございますから。ただ、将来は石油がなくなるから原子力だとか、当面石油不足だから原子力を進めなければならぬというだけじゃなくて、それはそういう面でうんと力こぶを入れていこうというのが、いまの私の基本的考えでございます。  それから、いま地元の問題でございますが、そういうふうに一般にあぶない、あぶないなんていわれる原子炉をせっかく地元でつくったはいいが、できた電力は、地元じゃなくて遠くのほうで、町場で使う、工業地帯で使うということでは、一体何のごりやくがあるんだといわれるのだって、私は人情の自然だと思うのですよ。それを利益誘導といわれると困りますが、やはり地元にもそういうものをつくった妙味を還元するという考え方は、私はあってしかるべしだと思う。地元利益誘導というおことばは、私は遺憾ながらこれは受け取れないと思います。  ただ、それをどういうやり方でやるのだということで、固定資産税の軽減措置の適用をもとへ戻す、そういう考え方は確かにあります。自民党の与党のほうでも、長い間研究されて一案を持っておるわけでございます。それからまた、特別の税金をつくってはどうだというお考えも、どなたかが言われましたね。  それからまた、われわれ今度の予算要求で、できればキロワット当たり千円ぐらいの補助金を地元——地元にいろいろかかるわけでございますから、いろいろこういう誘致をしようということになれば、いろいろな建築もしなければならない、いろんな費用がかかる。そういう意味で、埋め合わせをつける意味のような補助金も考えなければいかぬ。いろんな考え方をいま主張をいたしております。しかし、これ一つでもできたら、先生、非常にいいと思うのですがね。なかなかこれが実現しないのですよ。  今度も私ども、いまいずれの問題も主張いたしておりますが、なかなかこれは、いま先生がすべて申された問題が当面の予算、税制改革の中でこれでだいじょうぶだという段階に、率直に言っていっておりません。でございますが、ぜひこれはやらなければいかぬこと。それが利益誘導だなんといっておこられたんじゃ、とても私はかなわぬ、こう思っておるので、それは、おまえら、やれたらやってみろ、ひとつおれたちも外から応援してやるぞというくらいにひとつ言っていただきたい。これはやっぱり地元の人のためにはなるわけでございますから。しかし、なかなかこれは現段階でいま申し上げましたように、はっきりしためどは得ておりません。  いろいろ党は前から検討して一つの結論は出ている。また、ある方はある方で、こういう構想はどうかということを主張されておりますし、予算要求も私どもやっておるわけです。だけれども、なかなかまだ決着を得ておりません。しかし、そういう方向で、いずれの方向に向かっても、できることをやりたいと思って努力をしておるわけでございます。
  163. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そうなると、ますます悪いと思うのですよ。これはほとんどが参議院の予算委員会での、いろいろな大臣に分かれていますけれども、発言なんですね。だから、利益誘導ということばがそんなにかんにおさわりになったかどうか知りませんが、しかし、現実に何らかの利益が与えられて誘導されるのだったらまだしもだけれども、これは、じゃことばだけですね。政治的発言だけ与えられて、実際には実行の見通しはまだ裏づけはないのだというお話になると、だまし討ちと言って悪いかしらぬけれども、何か、かまえだけ見せて、実際のものを与えない。非常にぼくは危険な発言をしたものだなと思うのですね、いまの長官のことばを聞いていると。それは率直な私の感想として申し上げておきます。  ただ一つだけ、この問題について、それほどたくさん予算をよこせと要求された政治姿勢と決意のほどはけっこうなんですが、中身として、原子力局の中に安全部をつくったなんというような、そんな機構いじりじゃなしに、具体的に、技術的な問題でこういう安全性の確立を目ざす施策が入るのだとか、あるいは法制的な面でこういうふうにさらに規制が強化されるのだとかいうようなのがあれば、それこそ一言で、時間がありませんから、これとこれなのだという目玉をおっしゃってください。
  164. 森山欽司

    森山国務大臣 私、知っていますけれども、政治家が言うより、やっぱり事務当局の専務ベースに乗ってどんなことを主張しているかというのをお耳に入れていただいたほうが安心でしょうから、原子力局長からお話しします。
  165. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 安全性の問題につきましては、具体的に安全審査体制が、まあかねがねおっしゃっておられますように、アメリカでは千四百人いるのに日本では数十人しかいないというようなことがございますので、安全審査の体制を強化いたしまして、精密な審査ができるような人員要求と、これに伴います大型コンピューターの導入、それから、先ほど来御質問ございます燃料のピンホール等が実際に試験ができますような大型ホットラボの建設というふうな点をいまお願いしておるわけでございます。
  166. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それがいまの五百億円とかいう要求の中身ですか。
  167. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 いま、安全性に関してということでございますので、その安全性に関する点について御説明申し上げました。
  168. 森山欽司

    森山国務大臣 最初私は参議院で話をしました。そこから問題は始まったわけです。そこでいろいろな意見が出たことは事実でございますし、そのころは全部で五百億くらいに当たるアドバルーンを大きくぶち上げたことも確かであります。  しかし、一つ一つ検討いたしますと、たとえば原子力の安全審査の問題にいたしましても、私はアメリカに人数が多いと言いましたが、これはいろいろ誤解を招く表現でございまして、向こうは専任者の問題、日本では学者や何かの方々をたくさん動員をしておられるというようなことで、必ずしも数の問題ではございません。しかし、これは充実しなければいけませんですからね。  しかし、たとえばことしのように、原子力発電所の申請が一件もないと、審査するといったって審査する相手がないでしょう。だから、これはかりに百人ふやすといったって、ことし百人ふやすことが適当かどうかという問題が出てまいりますので、実情に応じて前々から少し準備しなければいけません。そういう意味で、この時期でやはり出直すつもりで、安全のほうにも力こぶを入れますが、出直すつもりで体制を整備していくということを考えておるわけでございますから、必ずしもそれを一年でやるというわけじゃございませんで、何年かがかりで切りかえてまいりたい、こういうことでございますから、何か大きなアドバルーンだけ上げたけれども、ちっともものにならぬじゃないかというふうにおしかりをいただかずに、この時期に追加予算するというその精神だけでも、見上げたものであるというぐあいに、おほめのことばをいただけないかと実は思っておるわけでございます。どうかひとつ……。
  169. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 ほかのことならいざ知らず、科学技術は精神力や宗教だけでは解決しないと私は思いますが、きょうはお聞きするほうに回っておりますから、あえてわれわれのほうの反論は申しません。  第四番目の問題は、先ほどのお話にもあったように、田中総理の言う、安全性の問題は、電力会社にまかせずに、政府が責任を持ってやるんだというふうなことですね。もうけるところは電力会社がやって、危険なところだけを、あるいはまたその対策のための費用だけ政府が持つ、これはあまりいい方法ではないようにぼくは思うのです。  私どもは、こういう原子力発電所などエネルギー産業は、国有化するのが妥当である、こういうように思っているし、われわれの政府ができましたらぜひそうしたいと思いますが、そこへ至るまでの過渡的な処置としても、少なくとも原子力発電という分野については、個々の電力会社にまかせずに、もう少し国が直接責任を持てるような体制で、建設なり運転を行なうというふうなことをお考えになっていることは全然ありませんか。
  170. 森山欽司

    森山国務大臣 現在さようなことは考えておりません。やはり民間の自主性をもとにいたしまして、民間ではできないことを、また、政府がやらなければならないことを、また、当面重要なことを政府として努力をいたしたい、こういうことでございます。
  171. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 たとえば、現在でもすでに電源開発株式会社などのような、半官半民のような組織もあるでしょう。私はこういうものがいいと言うのじゃないのです、現にあるのですから。  何かそういう点では、現在の電力会社まかせが、今日の極端な対米従属と安上がりな安易な軽水炉導入、また安全性の無視になっていると思うのです。ですから、やはりそういう運営面についても考えるべき時期じゃないかと思うのですが、全然その検討必要なし、そういう大臣のお考えですか。
  172. 森山欽司

    森山国務大臣 電源開発の問題になりますと、大きくいいますと、通産省がやはりいろいろものを考えていくような立場にありますし、いろいろな歴史と伝統を持った仕組みでございましょうから、原子力発電については、そういう一つの大きな全体の方針の一環としてこれを進めていくというふうに、私どもは現在考えておるわけでございます。
  173. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは最後第五に、一般的に新エネルギー資源開発といわれる問題について、系統的な説明を求めたいということなんです。  十二月四日の本会議で中曽根通産大臣が、わが党の瀬長議員の質問に答えられて、「通産省におきましても、サンシャイン計画という大規模計画を立ててやっておりますが、たとえば、この中で最近注目すべきことは、水を分解いたしまして水素と酸素を直接つくろうという発明」——発明といっても、これはわかり切ったことなんだけれども、「発明がやや望みが出てきつつあります。大体九百度ぐらいに熱を加えまして、そうしてそれにさらに化学的な触媒を三度ぐらい加えますと酸素と水素に分かれる。まだこれは工業化する段階に至っておりませんが、これができたら、日本の燃料問題は大きく前進するわけでございます。」と本会議で言われたわけですね。  今日の直面している日本石油危機の解決という差し迫った問題との関係で見た場合、この発明なるものにどういう評価を与えたらよいのか、まずその点から通産省に聞いてみましょう。
  174. 井上力

    井上説明員 サンシャイン計画……。
  175. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 当面している危機との関係で見た場合の評価を言ってください、ということです。
  176. 井上力

    井上説明員 サンシャイン計画は、紀元二〇〇〇年までの長期計画として考えられておりまして、各段階に応じまして、太陽エネルギー技術開発、あるいは、先ほどから出ておりました地熱発電技術開発、それから、合成天然ガス等、製造技術の研究開発、それから水素エネルギー技術の研究開発というものを並行的にスタートしてやっていく、こういう考え方でございます。
  177. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 だから、この中曽根答弁のもとになった質問というのは、じゃここでちょっと要約だけしてみますが、世界の資本主義国は一様に国内石炭の開発を進めているのに、自民党・政府だけが石炭を廃鉱の中で水浸しにしながら石油にしがみついてきたことに、今日の危機の重要な原因の一つがある。政府は、直ちに二百億トンの石炭をはじめ、国内エネルギー源の開発に全力をあげる方向で、エネルギー政策の抜本的転換を行なうべきではないか、こういう質問に対して、いまの中曽根答弁になっているわけですね。  だから、われわれの問うたことから見れば、この答えは、一体どういう評価、つまり現在の解決に間に合う問題なのか、全く遠い夢の話をすれ違いで出されたと見ていいのか、どっちなんですか。
  178. 井上力

    井上説明員 いまの御質問でございますが、最終目標は二〇〇〇年程度に置いておりますけれども、いろいろな段階においていろいろな成果を積み上げていく、こういう計画でございます。ただいまの石油危機ということになりますと、これはどのくらい続くかちょっと見当がつきませんが、ここ一、二カ月にはとても間に合うあれではないと思います。
  179. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 しかもここで、これを発明と称して、しかも工業化できたらということばまで使われておるのですが、じゃ、できる段階というのは、いつごろと予想されているのですか。この大臣の答弁……。
  180. 井上力

    井上説明員 いろいろ研究内容によって違うわけでございますので……。いま御質問の石炭の問題でございますね。
  181. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いや、中曽根答弁の具体的な内容です。三度くらい触媒を加えて酸素と水素に分かれる云々というやつ、九百度ぐらいでという……・。
  182. 井上力

    井上説明員 水素の製造技術につきましては、電解法と化学法、直接熱分解法の三つの方法を考えておりますが、当面の四十九年、五十年は電解法のテストプラントの設計建設、あるいは試験といったようなものを考えております。化学法テストプラントにつきましては、五十二年度以降設計、建設あるいは試験を行なう、それから直接熱分解法テストプラントにつきましては、五十一年度以降設計、建設あるいは試験を行なう、こういうような計画になっております。
  183. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私は一般論を聞いたのではなくて、これは中曽根さん、だいぶ具体的に言っているわけですよ。「大体九百度ぐらいに熱を加えまして、そうしてそれにさらに化学的な触媒を三度ぐらい加えますと酸素と水素に分かれる。」これは、一体おたくのおっしゃったうちのどれに入るのですか。
  184. 井上力

    井上説明員 私、直接担当でございませんので、あるいは間違っているかもしれませんが、直接熱分解テストプラントの計画の中に入るのだというふうに考えられます。
  185. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そこで、これは長官にひとつ評価をお聞きしたいのですが、とにかく質問している内容自体は、当面の石油危機の解決策を問うている。それに対して、いえば、一定のはっきりした数字まであげて、解決の道があるかのごとくに通産大臣が説明する、こういうこと自身は、私は現在の問題と将来の問題とをごっちゃまぜにして、真の解決の道をそらしているような感じを受けるのです。ですから、こういうことが政治家として、それでなくても不安な心理状態にある国民に対する答弁としては妥当なものかどうか。どうお考えになります。
  186. 森山欽司

    森山国務大臣 水素エネルギー利用という問題は、先ほどお話し申し上げました科学技術会議エネルギー技術開発懇談会の報告によりますと、こういう新エネルギー源の開発が三つに分かれておりまして、短期が一九八五年ごろまで、これに原子力発電、大陸だな石油資源開発、石炭の新利用、先ほど議論のあった地熱発電。中期目標で原子力利用、これは新型転換炉等をいっているわけでございます。それに太陽熱利用水素エネルギー利用、これは紀元二〇〇〇年まで、大体今世紀の終わりないし来世紀の初め。そして長期目標として、来世紀以降として高速増殖炉と核融合という順序になっております。  おおむねこういうような順序でまいりますから、位置づけをいたしますと、水素の問題は中期の目標の一つになっている。ですから、当面どうだ、こうおっしゃられると、これはまあだいぶ先のことになるというふうに、この報告からは私は解釈をいたします。  しかし、エネルギーの関連技術開発というのは、その成果が現実に発揮されるようになるまでかなりの年月を必要とする。かなりの年月を必要とするから、これはほっておいていいということにはならぬ。やはり長期的計画についても、いまから研究開発に着手していかなければいかぬという意味で、私は水素の研究も意味はあると思います。  ただ、先生がおっしゃられるような意味で、当面の石油危機と関連して水素の問題ということになりますと、これはだいぶ先の話になるというふうに考えざるを得ません。まあ私もそういう返事をしても、これは間違いないと思いますけれども、中曽根大臣発言された趣旨もそういう意味であるというふうに私は理解しておりました。
  187. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 確かに、この水素エネルギーの問題は、有望なエネルギー源ではあるけれども、開発についていろいろな困難が伴うということは事実なんでしょう。私も専門家じゃないから、そういうことはよく存じませんが、岩波発行の「科学」に押田さんという方がこの問題を論じておられますけれども、そこでも「太陽エネルギー利用の困難さというものを一般の方々にもよく知ってもらう必要があると思う。それによって、見当違いな、あるいは安易な議論を少くすることができるであろう。」そして太陽エネルギーそのものの持つ希薄性、間欠性などの困難な性質をあげながら、「一般の関心が太陽エネルギーに向ってきた現在、景気のよいことを書こうとすればいくらでも書けるのであるが、それはほんとうに良心的ではないと思う。」と述べておられるわけなんです。  ですから、こういう学者の指摘もある点から見て、この中曽根氏の答弁は景気のよい話ではあるに違いないけれども、安易感を与えて、むしろ現在のこの深刻な危機に立ち至った責任や原因をかえってぼかし、当面の対策を回避するということに役立っているのではないかと思うのです。私、これを中曽根氏に直接問いただす機会がないのですが、長官は総括官庁の長官として、こういう安易な、かって気ままな景気のよい話で、あまり国民をたぶらかしてはいかぬという御注意をしておいていただきたいと思うのですが、どうですか。
  188. 森山欽司

    森山国務大臣 中曽根大臣発言の趣旨は、先ほど申し上げたように私は理解しておりますので、どうかさようなところで御了承を願いたいと思います。
  189. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 では、こういう発言科学技術委員会であった、また、学者はこういうふうな警告もしているという点は伝えていただけますね。
  190. 森山欽司

    森山国務大臣 承知いたしました。
  191. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは最後に、今日このエネルギー資源の問題について、危機的な様相を反映して、各省庁ともに何らかの取り組みを示しているわけですけれども、いまのように、体系立って、いつごろにはどういうエネルギー資源開発されるのだ、いつごろになればこれができるのだ、だから当面の問題、数年規模の近い将来の問題、それから数十年規模のさっき言われた中期のもの、こういうものをどこかの官庁なり大臣なりが責任をもって国民に知らせるということを抜きにして、それこそ問われたら、景気のよいことでその場だけのがれる、これは許されないと思うのです。  そういう点では、私が一々この法律を読み上げる必要はないと思うので、申し上げますが、科学技術庁設置法の第十一条には長官の任務が書いてあります。そこにはちゃんと、資源の総合的利用をはかるためのいろいろな勧告をしたり、報告を求めたりというのがおたくの任務になっていますから、その点でそういう責任を感じて、今後ある程度秩序のある、体系の立った、政府として責任の持てる、そういう現状を踏まえた発言で国会答弁は対処してほしい、そういうことをひとつ大臣にお願いしておきたいのですが、どうですか。
  192. 森山欽司

    森山国務大臣 非常に貴重な御忠言、ありがとうございました。先ほど申しました科学技術会議エネルギー技術開発懇談会、これにいまエネルギー科学技術部会というものができまして、そして目下検討中で、この——このと申しましても、来年の三月ごろをめどに、そういう問題について固まった意見を発表するように目下鋭意検討中でございます。できましたら、またあらためて本委員会で御報告を申し上げるようにさせていただきたいと思います。
  193. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 では終わります。
  194. 安井吉典

    安井委員長 次に、近江巳記夫君。
  195. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは新長官に対しまして初めての質問でございますが、今回三百三十五億になる原子力関係の追加予算を大蔵省に要求をする、こういうことになったわけでございますが、いままで科学技術庁がとってまいりましたそうした姿勢から比べますと、非常に思い切った決断であると思うわけです。その背景につきまして、簡潔にお願いしたいと思います。
  196. 森山欽司

    森山国務大臣 先ほど各委員にもいろいろ申し上げましたことですが、要約して申し上げますれば、原子力につきましては、この石油危機の問題の前からその重要性はつとに指摘をされておる。石油について、資源の賦存状態は三十年ないし五十年である、こういわれておりますし、そういうエネルギーの将来から考えて、原子力について大きな期待が寄せられておるということでございます。  現にわが国におきましても、炉として動いているもの五基、百八十万キロワット、あと二基今年度じゅうにできて、三百万キロワットちょっとになります。あと十五基がすでに許可を得て、建設に着手しておるということであるわけであります。それで、いま一基が審査中であるわけでありますが、ことしに入りましてからは、まだ原子力発電所建設計画はないわけであります。  それで、先生案内のとおり、原子力委員会原子力発電所の長期計画というのがございます。これは昭和五十五年には三千二百万キロワット、昭和六十年には六千万キロワットという計画でございますが、そういう計画に対しまして、いまの様子では、おおよそ半分程度でストップしておるというようなかっこうになっておるわけでございますから、計画に従って原子力発電所建設を促進していくという必要性はもとよりでございますし、先ほど来るる申し上げましたように、当面の石油危機というものは、原子力発電に期待するところがきわめて大きいという点から申しましても、そのことは促進をしなければならないというふうに考えておるわけであります。  しかしながら、原子力発電につきまして、国際的に見ましても国内的に見ましても、その安全性については心配ない、私はこう思っております。それは確かに、機械は故障はいたしましょう、機械でありますから。しかし、機械の故障度はきわめて低いわけでございますし、かりに起きても、十重二十重に防御施設が施されておりますし、また、そういう点についての安全審査をやかましくやり、途中で検査もやりということでございますから、もうこれは世界的にもそういうことでございますから、いま世界で百三十二基、四千万キロワットの原子力発電やっておりましても、とにかく実用になっておる。そして、こういう平和利用原子力発電所で、事故というのは、日本を含めて一件もないわけでございます。というのは、故障はあるかもしれませんが、公衆に迷惑を与えるような事故というものはまずないというふうに考えていいと思いますが、しかし、万が一起きたらどうするんだ。特にわが国のように、広島や長崎のように、原子力に対して非常に敏感な経験を持っておるわけでございますから、したがって、そういう心配というものについて、できるだけの体制をやっていかなければならぬ。そういうことでございますから、当面、この時期におきまして原子力発電を伸ばそうというならば、ただただ長い長期計画に従ってやるんだとか、当面の石油危機でどうしてもやらなければならぬじゃないかというようなお説教をするだけでは、私は適当ではないのではないか。やはりいろいろこの問題について御心配をしていただいておる各方面の御意向というものを十分参酌して対処していくのが適当であろうということで、かねがねこの問題について、これは私が長官着任後でございますけれども、いろいろな問題点を検討いたしました。  それで、ここで考え直さなければいかぬなということで、おおよその輪郭ができておりましたころに、ちょうど参議院の予算委員会でこれらの問題を指摘されましたものですから、これをひとつ実現しなければいかぬ。総理も、原子力発電所の安全の問題については、政府が責任をもって当たらなければいかぬということも言明されておりますので、急遽これらの問題が持ち上がりまして、ことしの予算は、御説のとおりまことにむずかしい編成難の時期でございますが、この問題は大事だからというので、逆に追加要求している。いまの予定では、二十二日ごろ内示があるというふうに聞いておりますが、そして、年内に予算を決着つけたいということのようでございますが、最終的にどういうめどを得ることができるかどうかということについては、今後馬力をかけてやらなければ、なかなか容易でないと思っておりますので、どうか先生の格別の御支援をお願いをいたしたいと思います。経過は以上のとおりでございます。
  197. 近江巳記夫

    ○近江委員 今回のこの予算のつけ方を見ておりますと、あまりにも見え透いたというか、予算を大幅につけるということは、これは非常にけっこうなことです。われわれは、あまりにも安全性の予算等につきまして、環境汚染の問題であるとかが少な過ぎる、一体こんなことで、実際に国民のそういう不安にこたえることができるかということは言ってきたわけです。だけれども、政府はいつもわずかな積み上げをして、全体の総予算が、たとえば一五%増ですから、それに比べればまだ増しですと、毛のはえたようなことしかしなかったわけです。今回、こういうようにがばっと要求をした。いいんですよ、要求することは。安全性にうんと力を入れてもらいたい。こういうことはうしろに火がついて、さあたよるのは原子力だ、それを推進するためには、地元にしたって、また安全性にしたって力を入れなければならぬ、こういうやり方、私はこのやり方が問題だと思うんですよ。  安全性が大事だというなら、それは長官は着任されてその努力は私は買いますよ。だけれども、政府としてそれだけ安全性について大串だと思うなら、なぜもっと着実な積み上げをしなかったかということです。そうでしょう。その根本的なあなた方の反省がない限りは、予算積んだ、さあ研究君に対してやれ、そういう政治的な圧力をかけ、金だけ積んで、研究者がそれだけの結果を出しますか。研究というものは、着実な積み上げがあって、初めて一歩一歩芽が出てくるわけですよ。そういう政治姿勢というものが、私は問題だと思うんです。少なくとも、そういう積み上げの方針でやっていくべきですよ。だから、予算を要求することについて、私は非常にけっこうなことだと言っているんですけれども、今後はそういう方針にほんとうに反省してもらいたい。どうですか、大臣
  198. 森山欽司

    森山国務大臣 私は、科学技術庁についこの間参ったものでございますので、従来どのようなことであったかは、一々チェックはいたしておりませんが、しかし科学技術振興のためには、歴代大臣及び科学技術庁幹部は、最善の努力を尽くしてまいったのではないかと考えております。しかし、もし先生のおっしゃる点において、考え直さなければいかぬ点があるといたしますれば、ひとり十分これから配慮をいたしまして、御趣旨に沿うように努力をしてまいりたいと考えております。
  199. 近江巳記夫

    ○近江委員 今回のこの予算の要求につきましては、自民党の政務調査会の科学技術部会、商工部会、資源エネルギー対策調査会が決議しておるわけですね。そういうようにバックアップしている。われわれもこの際ほんとうに方向転換すべきだ、こういうことで、従来主張してきたわけであります。こういうことで、これがアドバルーンだけに終わるようなことになれば、政府・自民党は天下に対してうそをついたことになるし、そういうようなことで、何といっても長官のがんばりが大事だと思いますし、この際、思い切ったいままでの反省点を一ぺん政府で変えて、そうしてそれをほんとうに伸ばしていく、いま総ざんげをしてほんとうに力を入れていくときだと思うんです。そういう点で、安全性の問題については、十分力を入れてもらいたいと思うんです。  それで、安全性なり環境汚染の問題等につきまして、他の委員からも発言があったわけですが、特にどういう、項目をやるのですか、それは局長でけっこうです。いまのコンピューターの問題、それから定員増の問題でしょう、あと軽水炉の安全研究ですか、そのほか安全性なり環境汚染の問題等について、あったら言うてください。どういうことを入れるのですか。
  200. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 お尋ねでございますので、このたび追加いたしましたものも込めまして、いたしたいものも込めまして、四十九年度は安全性についてどういうことを考えておるか、そして財政要求しておるかということを概略申し述べたいと思います。  まず安全研究でございます。先生のおしかりを受けましたが、実は安全研究につきましては、御承知のように、四十七、四十八というふうに、額としては少のうございますが、安全研究の項目は倍増しております。この点につきましては、御承知のように、軽水炉の安全性中心にいたしまして、ECCSの実験のためのローザ計画、それから反応度事故の解析のための計画、この二つが主として原子力研究所で行なわれております。それからそれに加えまして、ただいま申し上げましたように、原寸の燃料の照射後実験ができますための大型ホットラボの建設、それから安全審査の精密化に備えまして、大型コンピューターの導入しいうことがおもなものでございます。  それからお尋ねの第二点の周辺監視問題、それのもとになりますゼロリリースの研究につきましては、先ほど御質問のございましたクリプトン八五の低減をはかりますための研究、それからトリチウムの低減をはかりますための研究、それからさらには、それが外へ出てまいりましたときに、周辺で監視いたしますための監視機構についての県への補助金というふうなものが導入されております。  いま手元にちょっと資料がございませんので、言い残したことがあるかと思いますが、私の記憶で申し上げますと、大体以上の点が安全に関するおもなる点でございます。
  201. 近江巳記夫

    ○近江委員 温排水による環境問題であるとか廃棄物の問題であるとか、肝心なことが抜けておるわけですよ。その辺はどうなんですか、あるんですか。
  202. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 ただいま記憶で何か残したと思いましたが……。廃棄物の問題につきましては、中低レベルの廃棄物を処理処分いたしますための放射性廃棄物処理処分センターの設立を要求しております。  それから再処理につきましては、これは金額は少のうございますが、第二再処理等に関しまして、それの新しい技術進歩を取り入れました、先ほど申し上げましたゼロリリースの技術も取り入れました場合の立地基準の調査ということを始めたいということで、調査費を要求しております。  そのほか、既存の現在建設進行中の再処理工場につきましては、それに関連いたしましてクリプトン、トリチウム等のゼロリリースの研究開発費を要求しております。
  203. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで大体金額的に何ぼになるのですか。安全性なり環境汚染の調査の問題であるとか、これは幾らですか。
  204. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 大体概算でございますが、百八十億程度になると思います。
  205. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、当初要求は、大体百億ちょっと足らないぐらいだったでしょう。これは大体倍でしょう。そうしますと、この予算のつけ方一つ見ましても、いままでの原発地帯見ていますと、原発を置いた、そうすると、特例措置によって固定資産税が安い。従来もらっておった地方交付税は、そのために政府から打ち切られる。そしてあとに残ったのは、結局安全性に対する不安と環境汚染の問題と、職員などの子弟のための教育施設とか、みんな赤字に泣いておった。こういうことを聞いて、今回こういう補助金も出したのではないかと思うのですけれども、それで、今回また新設のところについてはこういうことをやるぞと、言うなら、メリットを非常に張りつけて、そして誘致したら得だぞというような感じが非常に濃厚なんですよ。科学技術庁であれば、もっと根本的な安全性の問題であるとか環境問題であるとか、もっと力を入れるべき——市町村等のそういう補助はもちろん大事なことですよ。やはりそういう根本的な精神に立たなければいかぬと思うんですよ。予算の獲得をした暁は、そういう点にほんとうに力を入れて、この機会に思い切って、そうした安全性問題等、国民のそういう気持ちにこたえるようにしてもらいたいと思うのです。科学技術庁は、根本的に相当反省しなければならぬことが多いですよ。それを申し上げておきます。  それから、総合エネルギーのバランスという点におきまして、石油危機がこういう状態で押し寄せてきているわけです。そういうことで、いま原子力に力を入れようということになってきているわけですね。サンシャイン計画であるとか地熱発電の問題であるとか、いろいろあろうかと思うのです。こういう地熱発電等が案外に現実に何カ所かでやっておるということで、いま非常に有望視されてきておるわけです。  何か特別立法をしようというような一部の声もあるように聞いておるのですが、政府の考え方はどうなんですか。これは通産省でも科学技術庁でもけっこうですけれども。
  206. 森山欽司

    森山国務大臣 地熱発電は、先ほど申し上げましたように、この委員会はもとよりのこと、与党も野党も非常に御熱心な方が多くて、いろいろな構想が出ておるようでございますが、ただ、現段階におきましては特別立法までということには至っていない、こういうふうに思っております。しかし、非常に多数の方々が非常な熱意を燃やしておられる、そのことはよく承知しておりますし、その御熱意にこたえるようにこれから努力しなければいかぬと考えております。
  207. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、行政的な配慮ということになろうかと思うのですが、松川等も私たちも見てきたわけですが、特に火山地帯等にあるわけですね。そういうようなことで、環境問題等からもいろいろな異論もあるわけです。  きょうは環境庁さんも呼んでおるわけですが、環境庁としては、この地熱発電建設についてはどういう見解を持っておりますか。
  208. 江間時彦

    ○江間政府委員 お答えいたします。  エネルギー問題との関連で、地熱発電につきましては、これがクリーンエネルギーであるというふうにいわれておりまして、非常に時代の脚光を浴びておるわけです。また、実際にこの地熱発電というのは多目的な利用が可能であって、地域開発にも資するところが多いといわれておるわけです。  ただ、われわれの立場から見ますと、やはり地熱発電といえども、公害あるいは自然破壊がかなりあるわけでございまして、まず一義的には、井戸を掘って水蒸気が出てくるわけでございますが、その蒸気の熱気による自然破壊というものがまずございます。それから、たいていの場合には非常に多量な熱水が出てまいりまして、これの処理という問題が残るわけでございます。あるいは、場合によっては有害物質が熱水とともに出てくるという問題も、現にこれは一部で起きております。  それから、何よりも井戸を非常にたくさん一カ所に掘らなければならないというふうな問題もございます。それから自然破壊の上で最も大きな問題は、やはり機材等を運ぶために山奥まで非常に長距離にわたる道路をつくらなければならないというのも、一つの自然破壊でございます。幸か不幸か、非常に景観のいい、われわれが所管しております自然公園の地域にその有望な場所がたくさんございまして、これについてわれわれも苦慮しておるわけでございます。通産省当局とは、昭和四十七年に、さしあたって六カ所ほど公園地域考えましょうという覚え書きを取りかわしておりまして、現在の段階では、われわれすでに考えました六カ所の地点は、稼働中のもの、それから現に調査中のもの、あるいは工事が進行しているものがございますが、ともかくわれわれが六カ所考えました理由というのは、当面この種の技術開発のためにどうしても必要な部分について、この程度あればよろしかろうという観点から覚え書きを取りかわしたわけでございます。現在、いろいろ一般には取りざたされておりますが、通産省当局からこの覚え書きを改定したいという正式の申し出はまだわれわれのほうに参っておりません。具体的な相談がございましたならば、われわれその協議に応じますけれども、ただ、去る十一月に開かれました自然環境保全審議会におきましては、当面は六カ所に限るべきであるというふうな意見をわれわれのほうにいただいておりまして、早急にこの問題にどうというような状態には現在ないというふうに考えております。
  209. 近江巳記夫

    ○近江委員 環境庁さんのおっしゃることもよくわかりますし、通産省はどう考えておりますか。——来てない。それじゃ研究調整局長あるいは計画局長でもいいですよ。
  210. 長澤榮一

    ○長澤政府委員 地熱発電の立地問題でございまますが、地熱エネルギーは貴重な国内資源でありますことは、先ほど来いろいろ論議されているところでございますし、その有効利用をはからねばならないというのもまた当然だと思っております。  しかし、地熱発電に伴いまして環境がそこなわれるという事実も、あるいはおそれもあるわけでございまして、これは環境と調和して行なわれる必要もあるのではないかと思っております。自然環境保全審議会という場でいろいろ論議されているというようなことでございますので、われわれもこの審議会の御意見をよく聞き、慎重に対処していく必要があるのではないかと考えております。
  211. 近江巳記夫

    ○近江委員 この新しいエネルギー開発の必要性もあるわけでありますし、また、環境の保全ということも、これは大事なことでありますし、これはひとつ政府で、関係各省よく寄って、そしてよく打ち合わせをやってくださいよ。通産省のほうはもうどんどんやっていくのだ、環境庁はストップだ。だから、それはよく話し合うべきですよ。両方がけんかしているような、そういうことじゃまずいですね。どちらもこれは全く言っていることはよくわかるわけですね。その点、これは非常にむずかしい問題ですよ。大臣はどう思いますか。
  212. 森山欽司

    森山国務大臣 環境の保全という立場から、環境庁が地熱発電立地の場所柄を気にしておられるという立場はよくわかるわけでございますが、当面、現状においては、先ほどのお話で、両省に覚え書きがあり、かつ、ことしは六カ所ぐらいにとどめておこうということで合意があるようでございますから、当面の問題としては、私はそれでいいのではないか。しかし、先行きこれでいかぬということになりますれば、両省のみならず、科学技術庁のほうも入れていただいて、いろいろ御相談をしてこれから進めてまいりたいと思います。研究の促進状況とあわして、地熱発電推進の方向に、科学技術庁としてはできるだけ努力してまいりたいと思います。環境庁としては、また別の立場があるでしょうから、これは政府として、いろいろな角度からの話し合いの結果ということでございますが、私どもの立場としては、できるだけ努力してまいりたい。これは先の問題です。当面はどうでしょう。これで大体いまのところ六カ所試験設備を認めたということでございますから、これでひとつ推移を見守る。それで変える必要が出てくるということになれば、科学技術庁としてもできるだけ努力をする、こういうふうにひとつ御了解願いたいと思います。
  213. 近江巳記夫

    ○近江委員 それじゃ、どちらも大事なことですから、ひとつ十分な論議をして検討していただきたいと思うのです。  そこで、こういう環境のそういう問題もなくエネルギーが取り出せるというすばらしい方法があるわけですよ。こういうことは、できることはやるべきですよ。  それは何かと申しますと、もう稼働しているところもあるのですけれども、これは清掃工場に発電機をつけてやる。これは大阪の西淀川にあるわけですけれども、五千四百キロワットを清掃工場で出しているのですね。そのうち、四千キロワットを関西電力に売っておるわけです。今度東京都も、来年の四月に着工する葛飾清掃工場は出力一万二千キロワットです。案外大きいものですね、一つの清掃工場でこんなにできる。しかも、この余熱の利用になってきますと、いろいろな利用のしかたがあるわけです。ただぐうっと燃やしておるだけで熱を逃がしてしまうというのは、これは非常にもったいない話です。  だから、これは厚生省なら厚生省の管轄だからということで、科学技術庁通産省も知らぬ顔をするんじゃなくして、エネルギーという問題からこれはもう十分に検討しなければならぬ問題ですよ。きょうは厚生省さんも来ていただいておりますので、現状についてひとつお聞かせをいただきたいと思うのです。
  214. 折田貞雄

    ○折田説明員 ただいま先生のおっしゃられました発電を含めましてのごみの熱エネルギー利用の実態につきまして御説明いたします。  現在清掃工場の中で利用されているエネルギー利用の実態は、温水プールとか、あるいは老人福祉センター、それから付近の住民に給湯するとか、発電をするとか、あるいは洗たくに供用するとか、いろいろやられておりますが、いま先生の特に御指摘になりました発電中心に申し上げますと、発電をしておりますのは、先生の御指摘の西淀工場のほかに、東京におきましては、石神井、世田谷、千歳、大井——大井はまだ実験中でございますが、川崎の臨港工場、そういうような工場におきましてすでに発電をしております。売電をしている部門は西淀だけでございます。これはいろいろ事情があると思いますが、ほかの工場におきまして発電をしておる部分につきましては、主として自家用として使われております。  われわれといたしましては、いま先生が御指摘になりましたような、特にエネルギーの不足時代におきまして、ごみを資源として再生利用したらどうだという御意見もいただいておりますので、いろいろ検討しておりますが、諸外国におきましては、いまおっしゃられましたようなことが現に実現しておるわけでございまして、たとえばパリのごときは、市が直接経営してやっております。そしてエネルギー発電に、または付近の住民に給湯しているというような実態でございます。  これはヨーロッパは市が直接経営しておるということと、もう一つは、発電所の近くにあるということで、お互いにエネルギーを交換し合えるというシステムになっておりますので、非常に便利になっております。そうして、その上に、ごみの質がわが国と非常に違っております。わが国の場合は、御承知のように厨芥が多うございますので、一キログラム当たりのエネルギーのカロリー数が千から千二百カロリーぐらいでございますが、ヨーロッパはその倍くらいでございます。したがいまして、昔から発電エネルギーとして使われております。それから、ごみの質が、エネルギー的に見ましても、高いのと同時に一定しておるということも、ヨーロッパの場合に発電その他に使われている一つの要因かと思いますが、わが国の場合は、そのようなことがないということで、いままであまり顧みられなかったかと思います。  ちなみに、これを重油のエネルギーとカロリー数と比較いたしますと、ごみの場合は、わが国の場合は十分の一から八分の一程度でございます。それから、世田谷工場で実際に行なわれておりますのは、いま先生がおっしゃられた西淀のほかに、世田谷におきましても、九百トンで二千五百キロワットぐらいおこしておりますが、将来、先般東京都の発表にありますがごとく、大きな工場におきましてそのような発電計画しているところが多いようでございます。  われわれといたしましても、大体小さなところでは二十四時間運転がききませんので、原則として大体毎日三百トンくらいのところの処理工場でございましたならば、そのような、いまおっしゃられたようなことができるかと思います。それで、三百トンのところで試算いたしますと、大体四千から四千五百キロワットくらいのものが発電され、そのうち、自家用といたしまして千五百キロとりますと、売電用といたしまして三千キロワットくらいが売れるんじゃないかとわれわれは推定しておるのが現状であります。
  215. 近江巳記夫

    ○近江委員 東京都を見ましても、葛飾工場に続いて足立の清掃工場でもこの秋は一万キロワット、五十年代に完成する十二の清掃工場にもほとんど一万キロワット前後の発電設備を設ける、こうなってきますと、これは東京都だけで、これからつける分だけで十五万キロワットあるのですよ。これは非常に大きな電力だと私は思うのです。だから、全国的にいきますと、いま現在清掃工場が全国で千五百でしょう。年に少なくとも二百カ所くらいつくっておるわけですね。そうなってきますと、これを全部発電にさせていきますと、また、余熱の利用ということになってきますと、相当な電力ができるわけです。  そういう点、これは小さな焼却場は別として、少なくとも発電機がつけられるくらいのところは、義務づけたってかまわぬと思うのです。私は、これは厚生省だけでは無理だと思いますけれども、そういう点についてはどう考えますか。厚生省さん、それから科学技術庁
  216. 折田貞雄

    ○折田説明員 義務づける点につきましては、突然でございますので、私のほうからちょっとお答えしにくいこともございますが、技術的には、いま先生が御指摘になられましたことにつきまして可能だと思いますので、特にいまさっき申し上げましたように、三百トン以上につきましては、今後こういうものをつけていく傾向になるんじゃないかというふうに思いますし、また、関係各省とこの問題についていろいろ御相談しまして、今後の問題を考えていきたいというふうに考えております。
  217. 長澤榮一

    ○長澤政府委員 ただいまのお話にもございましたとおり、廃棄物には相当の有機物がございまして、エネルギーに転換されることが可能なわけでございますし、こういうふうな廃棄物を有効利用するということは、資源がない日本にとってはたいへんけっこうなことだと思っております。  ただ、それを義務づけるかどうかというような問題につきましては、当庁としては所管外でございますし、回答はちょっとしにくい点がありますけれども、たいへんけっこうなことだとは思っております。
  218. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは各省にもまたがる問題でもあろうかと思うのです。将来、発電機をつけるなら補助金を変えるとか、技術的な問題、いろいろあろうかと思う。科学技術庁には研究調整費もあるわけですから、関係各省みなまたがって、どこが責任をもってやるか。厚生省は技術的な知識がないわけです。ないとは言いませんけれども、科学技術庁の専門的なものはないわけでしょう。そういう点におきまして、これは専門家においてそういう技術的な研究もさせるとか、やはりこういう点にこそ力を入れなければいけませんよ、これは。そうでしょう。だから、その点につきましては大臣の判断ですね。大臣に見解をひとつ賜わりたいと思うのです。
  219. 森山欽司

    森山国務大臣 たいへん興味ある御提案でございますから、研究をさしていただきたいと思います。
  220. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは十分研究していただいて価値のある問題だと私は思いますし、関係各省によくまた言っていただきまして、十分な検討をしていただきたいと思うのです。科学技術庁としましても、研究調整費があるわけですからね。いろいろな点でそれは使えるわけでしょう。それは局長、どうですか。
  221. 千葉博

    ○千葉政府委員 先生ただいま御指摘のごみ燃焼、これによります発電、こういったような問題につきまして、従来もときどき耳にしたわけでございますが、ただいま先生から御指摘ありまして、さらに厚生省から現状の御説明がございまして、私どものほうも毎年度調整いたしておりますが、さらに専門家を集めまして、そういった点のいわゆる問題点がどこにあるか、科学技術的な面でこれを十分に検討いたしまして、必要とあらば、私のほうで持っております、いま御指摘の特調費などを用いまして、これを進めるというふうな方向で、前向きに検討していきたい、かように考えております。
  222. 近江巳記夫

    ○近江委員 それじゃひとつ、大臣もおっしゃっていただいたわけですから十分検討をしていただきたいと思います。(森山国務大臣局長のほうが進んでいるね」と呼ぶ)さらに大臣は輪をかけて進んでもらわなければ困る。  それから原子炉の問題なんですが、カナダのCANDU型というのは天然ウランを非常に使いますし、価格の安定ということもあるし、さらに軽水炉の二倍のエネルギーをとることができる、経済性もいいということもちょっと聞いておるのですが、これについてはどういう見解を持っていますか。
  223. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 御指摘のカナダのCANDU型は、ごく最近ピッカリングというところで発電に成功いたしておりまして、先日グレイ総裁が参りましたときに、その実績を非常に申しておりました。確かに一つのタイプの原子炉でございまして、おっしゃるように、そのウランの利用率は軽水炉よりいいわけでございます。  ただ、これが実績が出ましたのはここ一、二年でございます。それからもう一つ、CANDU型の先のプルトニウムで低濃縮をいたしましたタイプのものがカナダのジェンティリーという土地でやっておりますが、それと、動燃事業団でやっておりますいわゆる新型転換炉というものは同じカテゴリーのものでございます。したがいまして、先ほど大臣から御答弁がございましたように、軽水炉の次の形として、わがほうでは新型転換炉というような形でCANDUの一つ先のものをいま研究、建設と、こういうことでございます。
  224. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、それは採用というようなことについては一応考えない、こういうことなんですか。
  225. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 このCANDU型を直接グリッドに入れるという問題につきましては、実はいままで、先生御存じのように、実用炉の導入というのは技術上の実証性とか経済性という形で九電力会社がやっておったというかっこうでございますので、いまここでカナダのCANDUをグリッドに入れろというふうなアクションを政府としてはとりにくい。しかし、その先であります新型転換炉というものを政府の手で、動力炉・核燃料開発事業団で開発しておる。それの原型炉が五十一年ごろ認可になる、こういうことでございます。
  226. 近江巳記夫

    ○近江委員 それからこの燃料の問題ですけれども、動燃事業団とかいろいろあって、努力されておると思うのですが、これはこれから先石油の二の舞いになるという危険性があるわけですね。いままで石油でも自主開発をわれわれはやかましく言ってきたわけですよ。ところがメジャーからも安く買えるんだ、そうせく必要はないでしょう、こういう感じの空気があったわけですね。いまになって、もっと自主開発をやるべきであった、そういう二の舞い、三の舞いをしてはいかぬわけです。  そのことにつきまして、この燃料確保について基本的な考え方をお伺いしたいと思うのです。それは局長でけっこうです。
  227. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 先ほど大臣からその点に触れたと思いますが、一つ石油と違いますのは——もちろん国内資源というのは貧弱でございます。しかし、石油と違いますのは、九万五千トンを確保いたしますと十年間もつという点で、ある意味で非常に備蓄が容易でございます。石油をストックしようと思ったら、そのタンクだけでそのくらい金がかかるわけでございますが、イエローケーキの場合はそういうあり姿が非常に少ないという点が有利でございます。  以上の九万五千トンというのは、民間ベースの長期契約ベースの確保のしかたでございます。しかし、それだけでは不足であるということで、先生御承知のように、動燃事業団等が南アとか豪州とか、そういうところと協力いたしまして探査をし、それと、有望のものは民間企業につなげまして、金属探鉱事業団の成功払い融資等を利用いたしまして、将来の所要量の三分の一程度開発輸入をいたしたいという政策を、すでにもう五、六年前からとっております。その成果というのは、必ずしも非常に十分であるというふうには申されないのが残念でございますが、つい最近ではニジェール等でその成果のある程度見るべきものができております。  したがいまして、申し上げたいことは、すでにウランの場合は、開発輸入で将来の需要量の三分の一を確保するという政策をとり、それが現実にスタートしておるということでございます。  それから、これも先生御承知のとおりでございますが、軽水型を主体といたしますと、そのイエローケーキ自体では発電炉の燃料になりませんので、濃縮の問題がございます。これも大臣が先ほど触れられた点でございますが、日米協定の改定によりまして、一応アメリカ側は昭和六十年までの供給について合意をしておりますが、片や、昭和五十五年ぐらいになりますと、現在アメリカの持っております三工場の能力が不足する。これは日本だけに不足するわけではございませんで、ワールドマーケットのデマンド、サプライの関係がその辺から狂ってくるということでございまして、各国もそのセキュリティーの意味から、アメリカだけではなくて、多角的にその濃縮サービスを確保いたしたいということで、フランスにおいては、フランスを中心といたしますユーロディフ計画というのができておりますし、それから西ドイツ、オランダ、イギリスのトライ・パーティーというのが遠心分離工場のパイロットをすでにつくっております。それからアメリカにおきます第四工場というのがございますので、これらを見回しまして、直接参加し、または購入契約をし、あるいは将来の参加の余地を残すということで多角化をはかるというのが、現在のところの方針でございます。さらには、究極的には動燃事業団におきまして遠心分離法の開発をし、国の技術を確立するという方針をとっているわけでございます。
  228. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでこの探鉱につきまして、金属探鉱促進事業団ですか、これと動燃事業団とありますね。実際、たとえば四十七年度、八年度でこれはどのくらい金を出しておるのですか。
  229. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 私、ちょっと金属探鉱事業団のほうの融資額はしかと覚えておりませんが、動燃事業団は四十八年度には一億七千八百万程度の海外調査費がございまして、これを使ってやっております。  なお、金属探鉱事業団の海外探鉱の融資額、これは総額で六億でございますが、これはウランのみではございません。銅、鉛、亜鉛等が入っております。ただし、その中でウランのみに成功払い融資制度が適用されております。
  230. 近江巳記夫

    ○近江委員 だから、金属探鉱促進事業団で六億とおっしゃったけれども、いろんなものを含めて大体四億ですよね。それから動燃事業団が一億七千万でしょう。そうでしょう。そうしますと、将来は自主開発だなんて言っていますけれども、海外に行くなら往復で旅費だけでもこれは何百万と要るわけでしょう、滞在して。実際こんなことでこれは調査できるのですか。たとえばメジャーがいまウランに目をつけておりますね。たとえばコノコなんか、一社で一年間に二十五億円出しておるのですよ。  だから、こうやっていますといったって、中身をぴゅっと見たら、実際にこういう貧弱なものなんですよ。もちろんこの金の使途については厳重に報告も受けてせにゃいけませんよ。動けといったって、こんな予算ぐらいで実際できませんよ。そういうことについて、もっと力を入れるべき点については力を入れる、そうしなければいかぬですよ。そうでしょう。これはメジャー一社の何分の一ですか。六分の一、七分の一。石油だっていままで同じようなことをやっていた。それで、いまになって、もっと政府が力を入れるべきであった。六十年以後は、こんなことをしておったら、同じことの繰り返しになりますよ。局長のひとつ決意を聞かしてください。
  231. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 確かにおっしゃるように、メジャー等の金に比べますと比べものにならないわけでございますが、先ほど申し上げましたように、動燃事業団は概査というのをいたしまして、その成果が出ますと民間に引き継ぐわけでございます。そのほかに、私、先ほど申し残しましたが、電力会社とそれから鉱山会社の共同出資によります海外ウラン探鉱株式会社というのもできておりまして、これが動燃の成果に基づきまして、ニジェールでフランス等と組んで企業化しようとしているわけでございます。  それからウランの探鉱は、先生御存じでございますが、非常に当たりにくいものでございまして、何か、三十カ所に一つぐらい当たればいいというふうなことのようでございます。そのせいで金探の成功払い融資もあまりはかばかしくないということがございます。  なおまだそれでは非常に足りないのでございますが、動燃事業団といたしましては、四十九年度には、海外調査費といたしまして約三億七千万の要求をしております。それから金探のほうもその六億を十三億に増加して要求しているようでございます。
  232. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう点は十分力を入れるべきだと思います。  それから、この濃縮の問題で、この間キッシンジャー長官エネルギー行動グループを打ち上げたわけですが、いわゆるエネルギー協力機構、これのポイントは原子力ですね。これについて、科学技術庁長官はどのように受けとめておられますか、この提案について。
  233. 森山欽司

    森山国務大臣 キッシンジャー氏の提案がありました直後、その情報が入りました。それで、これについてどういう態度をもって臨むかということは、各国の出方等を見てからきめよう、これは私だけではなく、外務大臣もそういう意向でございます。もう少し情勢の推移を見て対処いたしたいということでございます。
  234. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、この核拡散条約、これがいよいよ批准の問題があるわけですけれども、これは批准をするにしても体制が大事なんだと思うのですね。そうしますと、査察の問題にしましても、やはりそれだけの体制ができておるか、やはりその準備もなくして、それじゃよそが批准をしたからうちもやろう、これじゃだめだと思うのです。いよいよ近づいてきておるわけですから、これに対してはどういう準備をしておりますか、これは局長にお伺いします。
  235. 森山欽司

    森山国務大臣 ちょっと私から……。  核防条約はすでに調印をいたしました。そして批准の問題は残ってはおります。しかし、この批准につきましては、いろいろな意見があることも、先生案内のとおりでございますから、しかもその後、中共との国交の回復もあり、さらにはまた、先ほどお話しのキッシンジャーの提案等もあり、諸般の情勢から考えまして、科学技術庁といたしましても、慎重に対処したいと考えておるわけでございます。  総理は、批准を本国会でやりたいというお話もありました。私も聞いておりました。外務大臣は何かむにゃむにゃと言っておったので、よく真意のほうはわかりません。まあ、もう少し慎重に考えたいという御趣旨のように理解をいたしております。でございますから、いま御説のように、科学技術庁といたしましては、これは重大な仕事を進めるにあたっての影響を受けるわけでございますから、そういう意味で、よく検討をさしていただきたい。そういうことで、検討するようにということを目下事務当局に命じておるところでございまして、まだそれについて、私と事務当局の間で話を詰めておらないという段階でございます。
  236. 近江巳記夫

    ○近江委員 今国会で、年が明けますと批准を、承認を求めるというような空気にもなってきているわけでしょう。そうすると、やはり国内査察制度の整備であるとか、あるいはIAEA、これの協定締結のそういうような話し合いというようなことも進めなきゃならぬわけですね。原子力局長はどのくらいその辺のことについて準備していますか。
  237. 田宮茂文

    ○田宮政府委員 確かに、その核防条約の保障措置協定の問題がございます。これは外務省と協力いたしまして、いままでIAEAと予備的交渉をしてまいりました。  骨格といたしましては、ユーラトム並みの骨格ができそうであるというところまでなっております。ただし、ユーラトム並みにいたしますためには、国内保障措置制度、国内制度をある程度完備する必要があるということで、来年度予算では保障措置センターというものの要求もしておるわけでございます。
  238. 近江巳記夫

    ○近江委員 十分これは力を入れて体制をつくっておく必要があると思うのです。その点、特に予算等は非常に長官が力を出しておられますし、この点も非常に大事な問題でありますので、これは申し上げておきたいと思います。  それから、私は十分で終わらなければいけませんので、あと一問お聞きしたいと思いますが、ライフサイエンスですね。いまこのエネルギー危機等の問題で、案外に、ちょっとそれたような感じもあるわけでありますが、これは非常に大事なことであります。前長官も非常にこれは力を入れていこうということをおっしゃっておられましたし、このライフサイエンスについての長官の取り組みの決意をお聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思うのです。
  239. 森山欽司

    森山国務大臣 ライフサイエンス人間が生きているということ、そのことを対象にして、老化の制御その他、いろいろ各方面にわたって研究を進めていこうという新しい分野であるわけです。  科学技術庁としましても、従来の物理的なかたいほうのものではなくて、生物学的なほうの新分野でございます。いろいろな学問を駆使してこの問題に対処しようということで、前の長官もたいへん御熱心のようでございましたし、科学技術庁の事務当局も熱心に取り組んでおります。私もその話をいろいろ聞いていまして、これから大いにこういうものを伸ばしていかなければならぬと思っておるわけでございまして、今度の予算でもいろいろ要求を出しておるわけでございます。御案内のような非常にむずかしい状態のもとでございますが、何とかして、一歩というよりは数歩前進させるように努力いたしたい、そういう心づもりでございます。
  240. 近江巳記夫

    ○近江委員 終わります。
  241. 安井吉典

    安井委員長 次に、内海清君。
  242. 内海清

    ○内海(清)委員 だいぶ時間もたちましてお疲れのようでありますから、できるだけ重複を避けて、短い時間で上げたいと思います。  第一番にお尋ねしたいと思いますのは、先ほど長官からごあいさつがございました。その中で長官が、ことに科学技術振興ということの基本は人間である、こういうふうな前提を置かれまして、研究者がその能力を発揮し得るようにつとめるということばがあったと思うのであります。  これは今日わが国の研究開発というふうな面から見まして、きわめて重要な発言だと思うのであります。この委員会におきましても、実は、かつて、わが国の頭脳が国外に流出する、あるいは研究機関に優秀な研究者がなかなか集まりにくいというふうなことから、この研究公務員処遇についてはずいぶん論議されたときもあるわけであります。最近これがあまりないようであります。そういう意味からいたしましても、いま申し上げましたように非常に大事なことと思うのであります。  それにつきまして、先般ノーベル賞を受けられました江崎玲於奈さん、この人もあの当時、あるいは国籍問題が問題になりましたり、いろいろあったわけであります。そういうふうなことを考えまして、日本人であってこういう優秀な人が次々出ることは、まことに喜ばしいことでありますけれども、現在アメリカにおいて研究に従事しておるというふうなことが、そういうふうな問題を起こしたのだと思うのであります。しかし、江崎氏自身は、自分は日本国籍を持っているのだということで、それを訂正したようであります。このことは今後十分考えなければ、ことにわが国は貿易立国でありまして、そのためには、国際場裏において勝ち抜くためには、どうしても科学技術の進歩ということがなければ、資源の乏しい国でありますから、なかなか太刀打ちができない、こういうことであろうと思うのであります。  そこで、長官の言われました研究公務員処遇の改善ということ、これはおそらく長官は具体的なことを考えておられるのだと思うのですが、具体的に、お考えがあれば、この際明らかにしていただきたい。
  243. 森山欽司

    森山国務大臣 この委員会のごあいさつの冒頭に、科学技術振興をはかるにあたって、基本となるものは何といっても人間だということを申し上げました。これ、事業だって人でございますし、特に研究のように創意くふうを生かしていかなければならない、これまさに一〇〇%人に依存するということが言えるのであろうと思うわけであります。  したがって、研究の環境の改善とかあるいは研究費の増額など、そういうことも必要でございましょうが、研究者技術者の待遇改善というものを積極的に行なっていく必要がある。従来から研究者技術者が根強く持っている待遇上の不満を払拭して、これらの人たちに高い知識と意欲を持って、それぞれの分野で力強く取り組んでもらうようにすることが、何よりも大事であるというふうに考えておるわけであります。そのために、広く研究者と、こうおっしゃいましても、私どもでできることは、研究、特に役所関係の研究員、そういう点が問題になろうと思います。  それで、これは人事院その他のところで基本的な原則をつくり、各省でそれを運用していくということになるわけでございますが、私の考えといたしましては、官公庁にあって、従来研究者技術者の待遇、特に昇進とか昇格のテンポが法科、経済出身の行政職よりもおくれがちである、役所によってはかなりそろってきたところもありますけれども、場所によっては、そういう点がまだまだおくれがちのところがございます。これを是正し、少なくともこれが大きくおくれることがないようにする必要があるというふうに、私は考えております。  そのために、具体策として、各省庁における技術者の昇進できる最高のポストの格付をもっと高くして、その増加をはかる。たとえば技術者、研究者の指定職のポストをふやすというようなことも一つの方法でございますし、また、研究者の中堅である部長と研究員の管理職手当を行政職並みの二五%とする。また、室長と研究員の相当部分の手当を二〇%とする。これが管理職、普通本省の局長さん、二五%になっておりますが、そういうように一律にいっていないものですから、そういうふうにやっていったらどうだろうか。これはいまメモを書いてお話しておりますが、決してこれは科学技術庁の事務局からあがってきたメモではないのであって、私がかねがね考えておることをメモしたものを、私の所見としていま申し上げておるわけであります。  また、行政職に飛び昇格というものがあるわけでございますが、研究職の昇給間差の改善もはかっていかなければならない。また研究職といいましても、たとえばオペレーターのような研究技術員と申しますか、将来、昇進できる最高のポストを、研究員の場合に見合うような、将来の望みがあるようにしていかなければならない。まだこれは現実には必ずしも必要ではありませんが、将来やはりそういうことが起きてまいりますから、そういう希望を持たせる必要があるんじゃないか。  それからまた、各省庁の次官、課長、課長補佐クラスのポストについての等級評価あるいは管理職手当の改善、そういうものも考えてまいりたい。さしあたり来年度の人事院勧告の際には、こういう項目を強力に押してまいりたい。ある程度改善することが可能であると私は確信をいたしております。  また、筑波研究学園都市の建設推進のために、生活環境の未整備な状態の中に早くから移転して、苦労を余儀なくされている職員がおられます。そういうような人たちに、生活環境が整備されるまでの間一時的に御苦労手当——そういう手当はありませんが、気持ちとしては御苦労手当にあたるような、そういうようなものを支給する。これも本年の人事院勧告の中にぜひとも入れてもらうように努力をいたすつもりでございます。これは私ども科学技術庁がきめるというよりは、科学技術庁が全国の技術系の職員のためにやらなければならない仕事として、いま申し上げたようなことを考えておるわけでございます。  そのほか、時代の要求する最先端の科学技術、公害防止、福祉のための技術等に従事する者、従来から部内の均衡とか年功序列というのがものをいうわけでありますが、そういうものにとらわれないで、積極的に十分な処遇が与えられるようにその改善をはかって、必要な人材の確保をはかる必要がある。あるいは高い研究業績をあげた職員に対して、従来あまり報いていない。今後十分な報償と顕彰等が行なわれるように、制度、経費などの充実をはかっていく、こういうようなことにつきましても、何とか——研究者はやはり特別でございますし、研究業績というのは若いうちにあげる。先ほど江崎さんの話等もございましたから、ああいう面をやはりとくと考えて、あまり一般公務員の一律的なことだけでやっていては、いい人をそろえるのはなかなかむずかしゅうございますから、そういう点について、何か打破していくような方法を講じてもらいたいというようなことを考えておる次第でございます。  御案内のとおり、私はかねがね労働関係なんかいろいろやってまいりましたし、やかましいことも人一倍言いますけれども、いいこともやらなければいけませんから、この部面についてはこういうようなことも考えておるわけでございまして、これから機会あるごとにこういう方面に積極的に対応してまいりたい、そういうつもりできょうのごあいさつの冒頭にこのことを申し上げたわけであります。どなたか質問していただけないかと思っておったのですが、あなたに質問していただいて、ほんとうにありがとうございます。
  244. 内海清

    ○内海(清)委員 かなり具体的な処遇の改善をお考えになっておるようであります。労働問題の専門家であり、当然だと思いますが、これは一公務員の研究者だけでなしに、民間企業においても同様なんです。特に公務員関係からいえば、非常に景気のいい、民間の待遇のいいときにはどんどん民間に入ってくる、優秀な人が。これがいままでの例です。これはいまだんだん不景気になりおるから、この次ぐらいは公務員関係に優秀な人が入ってくるかとも思いますが、そういうふうに入ってきたのは、また民間が景気がよくなれば出ていくということがある。だから、少なくとも公務員研究者には将来に対して希望を持たして、後顧の憂いのない、安心して研究に没頭できる、こういう体制をつくっていかなければ、十分なる研究開発はできない、私はかように考えております。いまのは長官の個人的なあれだということでありますけれども、ひとつこれを十分人事院にお話しいただいて、実現していただく。これはわが国のいまの科学技術の進歩からいうたらきわめて大事なことだ、こう思いますので、要望しておきたいと思います。
  245. 森山欽司

    森山国務大臣 いまのは決して個人的ではございません。科学技術庁長官としてこういう考え方であり、また、科学技術庁にこの方向で努力をさせるつもりでございます。ただ、私がここでお話を申し上げることは、科学技術庁の何とか課から何とか局にあがってきた作文を読み上げているのではない、こういう意味でございます。どうかひとつ公的な意見として……。
  246. 内海清

    ○内海(清)委員 長官としての御意見でありますれば、より一そう心強いわけでありまして、必ずそれを実現させていただく、言うていただくだけじゃ何にもなりません。  もう時間がありませんので、いろいろ申し上げたいこともあったのですが、きょうの委員会最初からいろいろエネルギー問題で論議がございました。このエネルギー問題ということは、こういうエネルギー源のないわが国としては、これは早くから考えておかなければならなかった問題である。ただ、今日の日本の経済的な繁栄が、安い多量の石油がどんどん入るということで、これに対してすべてがきわめて安易であったと思うのです。このことは深く反省しなければならぬと私は思うわけであります。ここ最近になりまして、こういう問題でローマクラブが成長の限界というようなことを言い出した、あるいはわが国よりもむしろ早くアメリカ資源エネルギーの危機感が唱えられた、こういうふうなことであります。わが国におきましても、これは確かに学術会議がことしの六月十四日にエネルギー現状と将来というシンポジウムを開いておる。将来ということになれば、新エネルギーと省エネルギーというふうなことになろうかと思いますが、こういうふうなものもすでに六月にシンポジウムを開いておるのであります。  ところが、政府のほうでは、いささか手おくれである。しかし、政府もそのことを感じられたか、各関係の省庁でいろいろ行政機構の改革なども出てきた、こういうことでありますが、私はこれは少しおそかったと思うのであります。全般的に政府自身もきわめてゆうちょうに考えておった。同時に、国民大衆の認識自身もきわめて低調であったということが、今日この石油ショックにまいりまして大騒ぎをせねばならぬということに相なったと思うのであります。  そこで、これは先ほど来、長官が答弁でいろいろ言われましたが、科学技術会議、これは総理の諮問機関である、その中のエネルギー技術開発懇談会、これは長官が運営会議の議長である、それの答申が出ておるわけですね。だから、これは長官自身がこのことは十分御承知のはずである。  さっき私は十分聞かなかったですが、それの報告書に盛られていることについては、今後エネルギー科学技術部会ですか、そういうもので進められるかもしれませんが、この報告書を見ますと、エネルギーについていろいろ考えておられると思うのです。今後のエネルギー供給利用に関して科学技術の長期的、総合的な研究目標を設定する、そうして具体的な調査、検討を行なうということがまず書いてある。そうして、わが国が当面する課題として、石油価格の上昇と入手難、それからエネルギー消費の増大とそれに対する防止対策を強化する必要がある、そうして、その解決策としては、新しいエネルギー源の研究、開発、限られた資源の有効活用、それから環境汚染防止技術及びエネルギーの合理的利用技術開発、それから恒久的には核融合などのクリーンエネルギー開発技術開発というようなことがあげられておる。これはわが国としてはまさに当然なことであって、いままでにこういうことが十分考えられて、それに手がつけておられなければならぬことであったと思うわけであります。  そうして、この新エネルギー開発については、大臣がたびたび言われましたけれども、これは三段階に分けて、いわゆる短期目標と中期と長期になっている。短期目標は八五年までぐらいですか、八五年までに原子力発電の六千万キロワットの開発、それから先ほどからいろいろ論議のありました地熱発電、これは私の手元では数字がちょっとわかりませんけれども、数百万キロワットということになっております。それから石炭のガス化または液化技術開発等、それから大陸だな石油資源開発というのが短期目標の中に入っておるわけであります。  中期は二〇〇〇年まででありますが、これは原子力利用である。その原子力利用の中には、新型転換炉と高温ガス炉、そして高速増殖炉が入っておる。これをそれまでに開発しよう。それから太陽熱の利用水素エネルギー利用、こういうことになっておるようで、ことに原子力利用の新型転換炉、高温ガス炉、高速増殖炉、これを実用化して、そうして軽水炉を含めると、全発電設備量の二分の一まで持っていこうということになっておるようであります。  それから長期目標としては、原子力の高速増殖炉のほか、核融合まで持っていこう、太陽エネルギー技術開発というふうなことがあげられておるようであります。長期は二〇〇〇年以後の問題でありましょうが、これらがもし開発が完成されれば、エネルギー供給源としてはまことに頼もしいものであって、いわば無限といっていいかもしれませんけれども、化石燃料依存から脱却することができるだろうと思うのであります。  したがって、少なくともこの短期目標については、すでにどういうふうにやってここまで開発していこうという構想があってしかるべきだ。あるいは中期に対してもこれが必要でありましょう。あるいは長期に対してもあらかじめ考えておかなければならぬ問題である。  したがって、これらの短期、中期、長期目標について具体的に何か計画しておられることがあれば、簡単でいいですから、いずれまたあとで十分時をかりて論議しなければなりませんが、お示しいただきたいと思う。
  247. 森山欽司

    森山国務大臣 先ほど科学技術会議エネルギー科学技術部会があって、大体三月ごろまでに結論を出したいというお話を申し上げました。いまお話がありましたような項目につきまして、さらに五つの分科会に分けて目下検討中でございます。先生のおっしゃるとおりこの報告はきわめて注目すべきものでございますし、その報告は、なかなかいろいろなことを一度にどっとやるといってもできませんから、順序をきめて、一応概略の線は出ておりますけれども、これを具体的にどう進めていくか、これは科学技術庁だけの仕事ではございません。全政府あげての仕事でございますから、そういう関係者が寄りまして部会のほうで研究し、しかも分科会に分けて、結果を三月末くらいまでにまとめて御報告申し上げたい、そういう考えでおります。どうかそれで御了承願います。
  248. 内海清

    ○内海(清)委員 これはもちろん科学技術庁だけでなしに、通産省のほうがむしろ主体になるかもしれません。  いまのお話で、技術部会の中に五つの分科会を設けて、三月目標にこの作業をやっておるということですが、こういうエネルギー問題のきわめてやかましいときであります。少しでも国民に早く希望を持たせ、安心さすことが、また政治にとっては必要であります。できるだけひとつ作業を急いで、作業が終わり次第お示しいただきたい、こう思うのであります。このことをひとつ強く要望しておきます。  それから、いま申しました省エネルギーの問題であります。新エネルギー源については、いまお話ししたとおり、この対策がまたこういう際でありますから、私はきわめて大事だと思います。エネルギーをいかに合理的に利用するか、こういうことであります。  これは私、一例を申してみますと、たとえばこれは建設の関係になりますか、住宅あるいは商業部門などでも、電力の関係からいいますと、あるいはその他の冷暖房からいうと、非常な問題があると思うのです。住宅であるとか、それから商業部門は大体現在で全体の二〇%くらいの量のようでありますけれども、しかし、これらはだんだん増大する傾向にあるわけでありますから、建て家の断熱性の研究が必要であるわけであります。あるいは家庭電気機具の省エネルギー化が必要であろう、あるいは地域の冷暖房が必要であろう。この地域の冷暖房はわが国ではまだ非常におくれておりますよ。こういう問題がある。それから工業部門からいえば、現在全体の六〇%くらいのエネルギーを使っておるようでありますが、これはやはり工業プロセスの改善が一番大事だと思います。あるいは産業機器の省エネルギー化ということが非常に大事だ。これは一例でありますが、こういうものを一々拾い上げてやっていかなければ、省エネルギー対策にはならぬわけであります。これこそ口で言っておったのではだめであって、一々具体的な事象を取り上げてそれに取り組まなければならないと思うのです。これに対します研究部門か何かありますか。
  249. 森山欽司

    森山国務大臣 先ほどの五つの部門のうちの一つに、省エネルギーというエネルギーの合理的利用に関する小委員会が入っておりますので、やはり同じく検討をいたさなければならない。もちろん、科学技術庁がやる部面はその一部でございまして、実際やるのは、御案内内容でおわかりのとおり、政府をあげてこの問題に取り組まなければならない、そういうことになっております。
  250. 内海清

    ○内海(清)委員 もう多く言いませんが、一部に入っておればけっこうでありますが、これも同時に御報告願いたいと思います。  それから、この際これも簡単でいいのですが、例の原子力商船、動かぬ商船になっておるわけであります。去年の大臣の所信表明のあとで、これを私は質問いたしたのであります。その後いまだ一度もこの委員会ではその計画の報告なり、あるいは今後の見通しについては話がないわけであります。すでに完成してから大かた一年二、三カ月たつはずです。この問題は、取り上げますといろいろ問題がある。あるいは予算のむだづかいということからも追及しなければならぬ問題があるかもしれない。これが漁民等の反対にあって、いまだに臨界実験さえできない。しかも先般、十三日でしたか、むつ市の市議会では母港返上というような発言を市長がしておる。この問題は、私をして言わしめますならば、今日までの科学技術庁——まあ原船事業団ですが、しかしこれは科学技術庁がうしろだてであります。いわば全くこれに対する失敗であると申し上げても私はいいと思うのであります。したがって、この一船が動かないために、第二船の問題も、来年度の運輸省船舶局の予算でも、「むつ」が動かぬのにいまさら予算を、まあわずかな、調査程度でありますが、これがどうなるか。ことに第二船は、原子力委員会では、民間のほうにまかすという一つの方針が出ておるわけであります。ところが、最近になりまして、これがアメリカでも非常に見直されてきておる、御承知のとおりだと思うのです。来年の予算にはアメリカはおそらくかなり組むでしょうし、ことにシーランド社あたりは現在コンテナ船を八ぱい、大かた完工しましょうが、これを原子力推進に変えようかということになりつつあるようです。もしそういうことになれば、日本の海運あるいは造船、これはどうなるかということです。  第一船をつくったゆえんは、今後の原子力商船に備えて、建造技術と運航技術の養成、そういう今後に備えてのいわば実験船である、しかも多くの金をかけて母港までつくった。その母港が現在まで母港の役目を果たしておらぬが、あるいは地元では返上しようというふうな状態にまで来ておるということ、これは今後私は非常な問題だと思います。しかも日本の「むつ」についても、ドイツのハンブルグとかあるいは南米のリオあたりは、実験航海に出れば寄港してくれと、向こうから条件さえ出してきた。国内でも十カ所ぐらいあるのであります。これも何のことやらわからないし、国民のこの原子力商船に対する不信というものは、これがまたはかり知れぬと思うのです。  しかし、日本資源のない、あくまでも海運国であります。わが国の将来に対しても、あるいは海運の国際競争に対しても、最も関心を持たなければならぬ問題だと私は思っております。時間がありませんから多く申しません。現在までどういう経過を通ってきて、今後どういう見通しである、そのことだけ、きょうはそういう意味で、事業団の方も呼んでおりませんけれども、科学技術庁のほうで、簡単でよろしいですから、ひとつ御報告を願いたいと思います。
  251. 森山欽司

    森山国務大臣 「むつ」の問題は、いままで多額の金を費やし、長い時間をかけて、しかもなお今日の状態がめどを得ないということは、まことに遺憾な次第でございまして、先生の御指摘につきましては、ほんとうに同感と申しましょうか、遺憾と申しますか、ほんとうに残念しごくでございます。現在「むつ」の出力上昇試験は、地元漁業関係者の了解を得た上で、太平洋上約千キロの地点で実施するためいま準備を進めていること、御案内のとおりでございます。  実は、私は十一月二十五日に科学技術庁長官を拝命いたしました。二十六日に前、前田長官と事務引き継ぎをいたしたわけでございますが、前田長官が言われるには、実はあした「むつ」を出そうと思った、こうおっしゃるわけです。しかし、どうも私は、着任して様子があまりわからぬうちにすぐそれをそのままやるのもいかがかということでございますので、十一月二十七日にこれを決行するという面は、暫時延期をいたすことにいたしました。これは決して中止したわけではございませんから、既定方針は堅持をいたしまして、時期、方法等について目下検討中でございます。  繰り返すようでございますが、私の在任中に、あすというわけではございませんけれども、これを実施をする、そういう考えでございます。どうか御了承願いたいと思います。
  252. 内海清

    ○内海(清)委員 前長官にも申し上げまして、これは早急に解決せなければならぬというて、はじめ非常な意気込みでおられたようであります。結局それから一年たつということであります。母港をつくった以上、少なくとも母港で臨界まではこぎつけなければならぬはずだ、それが陸奥湾でできない、日本海でできない、太平洋へ持っていく、こういう例は、いままで原子力船の臨界でそういうようなのは世界にないわけであります。日本で初めてですよ。ですから、こういう問題については、日本が造船国であり、海運国である、これは全く——それは直接は事業団でしょうけれども、これのミスだと思うのですね、私は。いろいろ怪文書だなんじゃいわれたり、いろいろ問題を起こしてきた。しかし、われわれは、やかましく言うだけでそれがいくものでないから、科学技術庁の努力というものを期待して、今日まで問題としては実際に取り上げておりません。しかし、これがいつまでもこういう状態では許されぬわけであります。よしんば今度は太平洋上で臨界実験ができましても、あの母港の役目を果たすようにやってもらわなければ、何のために金をつぎ込んだかということになるわけであります。これは国民に対しても相すまぬと思いますので、そういう点もあわせて要望しておきますので、最善の御努力を願いたい。  時間がかなりたちましたので、以上で終わりたいと思います。
  253. 森山欽司

    森山国務大臣 熟慮断行いたす所存でございますから、どうかひとつ格別の御支援をお願いいたします。
  254. 安井吉典

    安井委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後六時四十四分散会