○浦野
説明員 本件の
事故につきましては、先ほ
ども御
議論ございましたように、
事故の
内容、
原因等については目下
調査団を派遣いたしまして
調査をしているやに聞いております。したがいまして、私
ども特に
法律の解釈をつかさどる民事局といたしましては、その事実
関係がわかりませんと、具体的な事案の処置としての
法律の適用の有無については断定的なことは申し上げかねるわけでございます。ただ、いま御
質問ございましたように、一般論としてどのような賠償責任を国が負うべきかということの御
質問のように伺いますが、これから申し上げますことは若干の前提がございますけれ
ども、新聞報道などによりますと、今回の
爆発事故の
原因は、旧軍隊が敷設した地雷であるような報道もなされております。もちろん、地雷であるのかどうか、それがどういう
状況で
爆発したのかということについては目下
調査中でございますので、その点は伏せまして、一体そういう旧軍が敷設したような
爆弾について、それが何らかの
原因で
爆発し、
地域住民が
被害を受けた場合に、どのような根拠規定で国が賠償責任を負うことができるか、この点について一般論的なお話を申し上げることで御了解いただきたいと存じます。
この点につきましては、申し上げるまでもなく、国家賠償法の適用の問題と、それから民法の一般の不法行為責任の問題と、二通り考えられると存じます。
第一番目の国家賠償法の適用でございますが、これは申し上げるまでもなく、一条の公権力の行使による
損害といえるかどうかという問題になろうかと存じます。国家賠償法一条に規定してございます公権力の行使、本件の場合それがどのように適用になるのかということがまず問題でございまして、それは、国もしくは
地方公共団体が、一体かような埋設され、しかもそれが埋設されているということが予知できないような
爆弾について、どのような公権力の行使があったといえるかという問題になろうかと思います。この点は、いわばそういう危険物を
除去しなかった不作為が即公権力の行使に当たるかという問題が出てくるだろうと思われます。その場合に、さような不作為義務があるとするならば、その義務というのはいかなる根拠規定に基づく義務なのかというのが当然
法律論としては出てくるかと思われます。その場合考えられますことは、
自衛隊法附則十四項によって、
通報などにより
自衛隊が
爆発物などを
除去することができるという権限規定が置いてございます。これは、必ずしも私
自衛隊法を通読したわけではございませんから、確定的なことは申し上げかねますけれ
ども、一般的な規定として解釈いたしますと、これは
自衛隊の
警察作用上の一権限を規定したにとどまるというように解釈されるのではないだろうかというぐあいに思われるわけであります。つまり、そういう危険物があった場合に、
自衛隊の任務として、当分の間は、一定の手続により
除去できるということを書いているにすぎないわけでございまして、何ら
通報もないような状態の場合に、当然に公法上の義務としてそれがあり、しかもそれを
除去しなかったことが不作為の公権力の行使に当たるというようにはたしていえるかどうか、ここが
一つ大きな問題だろうと思われます。その点は、先ほど一番先に申し上げましたように、現在
調査を進めておりますから、はたしてどういう
状況で埋設され、それがどういう
状況で
爆発したのかということがわかりますと、もう少し問題を掘り下げたお答えができるのではないかと存じますけれ
ども、いまの
段階では、
自衛隊法を使ってくるだけではどうも明確な義務規定にはならないだろうというぐあいに思うわけであります。
問題は、義務というのは何かということになるわけでございますが、国もしくは
地方公共団体がさような危険物を
除去する公法上の義務があるとするならば、これは一般論でございますけれ
ども、義務を特定する
内容のものでなければならないのではないかというぐあいに、まあ
法律家としては思うわけでございます。それは、一般論として申し上げますと、具体的な特定第三者に対する義務というように特定されることが必要であろうと思われます。ということは、換言いたしますと、その弾丸がある一定の
場所にあって、しかもそれによって
事故発生が予見できるというような
状況になりますと、公法上の義務だという解釈もあるいは可能かというように、まあ、これは私の個人的な見解でございますけれ
ども、考えられるのではないかと思うのでございます。本件の場合はたしてそういう
状況にあったのかどうかということがまずわかりませんものですから、まさに抽象的なお答えにならざるを得ないわけでございます。
いずれにいたしましても、いま申しますように、国家賠償法を適用いたそうといたしますと、結局公権力の行使とは何か、しかも、その行使する義務があるとしても、だれがその公権力の行使を怠ったことになるのかという所管の問題もふまえて、事実
調査の結果に基づいて判断していくべきではないかというように思うわけでございます。
第二点の民法の不法行為の問題がございます。この点は、申し上げるまでもなく物の管理者の責任ということになるだろうと思われます。あたかも冷蔵庫を放置しておいて、その冷蔵庫の中に
子供が入って、締まってしまって、その
子供が窒息してしまったという場合と同じように、その物の所有権がだれに属するかは別問題といたしまして、その物をそういう危険な状態に置いておいたという物の管理者の責任が、不法行為の要件を満たすことになるかどうかということに帰着すると思われるわけであります。
本件の場合を考えますと、これは明らかに弾丸であったと思われますので、そういう危険物をそこのところに置いておくことがすなわち管理者の瑕疵であるというようにいえるかどうかがまず問題になる。そのためには、そこに置いておくことが不法行為であるというように、民法の七百九条を使えば、構成せざるを得ないわけでございます。はたして、その不法行為というのは、いつ不法行為が
発生したのかということが
法律論としては問題になるだろうと思われます。旧軍が敷設したといたしますと、敷設行為自体は
戦闘行為で一応適法行為だと思われますが、それが一体いかなる時点で不法行為になり、つまり掘り出して
除去することをしないでおくことが不法行為だというのは、いっそういう
法律関係が成立するのかということが、これも具体的事案をつぶさに検討しないと、ならないだろうと思われるわけでございます。
さらに、一体もしそういうものを管理する義務があるということになりますと、一体だれがさようなものをどういう形で管理するのかということも、現行法上よくわかりません。地中深く埋まっていたように新聞などでは報道されておりますけれ
ども、探知できないような
状況下にあるそういう旧軍隊の
爆発物をだれがどういう方法で管理可能であったのか、それが出てまいりませんと、民法七百九条の不法行為のいわゆる危険物の保管管理者責任という問題もむずかしいだろうというぐあいに思われるわけでございます。したがいまして、いま
調査中でございますので、この
調査の結果を待った上で、さらに国家賠償法なり民法の不法行為の適用があるかどうかについては検討すべき問題だと考えております。