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1973-03-31 第71回国会 参議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年三月三十一日(土曜日)    午前十時五分開会     —————————————    委員異動  三月三十一日     辞任         補欠選任      長屋  茂君     初村瀧一郎君      塩出 啓典君     上林繁次郎君      三木 忠雄君     沢田  実君      木島 則夫君     向井 長年君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大竹平八郎君     理 事                 上田  稔君                 佐藤  隆君                 高橋 邦雄君                 西村 尚治君                 米田 正文君                 森中 守義君                 横川 正市君                 鈴木 一弘君                 向井 長年君     委 員                 小笠 公韶君                 梶木 又三君                 川上 為治君                 木村 睦男君                 楠  正俊君                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 塩見 俊二君                 白井  勇君                 竹内 藤男君                 玉置 和郎君                 中村 禎二君                 初村瀧一郎君                 林田悠紀夫君                 細川 護煕君                 山崎 五郎君                 山内 一郎君                 吉武 恵市君                 足鹿  覺君                 上田  哲君                 川村 清一君                 小林  武君                 瀬谷 英行君                 田中寿美子君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 安永 英雄君                 上林繁次郎君                 沢田  実君                 三木 忠雄君                 矢追 秀彦君                 中沢伊登子君                 岩間 正男君                 渡辺  武君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        内閣総理大臣   田中 角榮君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  三木 武夫君        法 務 大 臣  田中伊三次君        外 務 大 臣  大平 正芳君        大 蔵 大 臣  愛知 揆一君        文 部 大 臣  奥野 誠亮君        厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君        農 林 大 臣  櫻内 義雄君        通商産業大臣   中曽根康弘君        運 輸 大 臣  新谷寅三郎君        郵 政 大 臣  久野 忠治君        労 働 大 臣  加藤常太郎君        建 設 大 臣        国 務 大 臣        (近畿圏整備長        官)        (中部圏開発整        備長官)        (首都圏整備委        員会委員長)   金丸  信君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      江崎 真澄君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 二階堂 進君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       坪川 信三君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       福田 赳夫君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  増原 恵吉君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       小坂善太郎君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       前田佳都男君    政府委員        内閣法制局長官  吉國 一郎君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        国防会議事務局        長        内海  倫君        総理府統計局長  加藤 泰守君        警察庁長官官房        長        丸山  昂君        防衛庁参事官   長坂  強君        防衛庁参事官   岡太  直君        防衛庁長官官房        長        田代 一正君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛庁経理局長  小田村四郎君        防衛庁装備局長  山口 衛一君        防衛施設庁長官  高松 敬治君        経済企画庁調整        局長       新田 庚一君        経済企画庁国民        生活局長     小島 英敏君        経済企画庁総合        計画局長     宮崎  仁君        経済企画庁総合        開発局長     下河辺 淳君        経済企画庁調査        局長       宮崎  勇君        科学技術庁長官        官房長      進   淳君        科学技術庁原子        力局長      成田 壽治君        環境庁企画調整        局長       船後 正道君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        沖繩開発庁総務        局長       岡田 純夫君        沖繩開発庁振興        局長       渥美 謙二君        外務省アメリカ        局長       大河原良雄君        外務省条約局長  高島 益郎君        大蔵省主計局長  相澤 英之君        大蔵省銀行局長  吉田太郎一君        大蔵省国際金融        局長       林  大造君        文部省体育局長  澁谷 敬三君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省薬務局長  松下 廉蔵君        社会保険庁年金        保険部長     八木 哲夫君        農林大臣官房長  三善 信二君        農林大臣官房予        算課長      渡邉 文雄君        農林省農林経済        局長       内村 良英君        農林省食品流通        局長       池田 正範君        食糧庁長官    中野 和仁君        通商産業省通商        局長       小松勇五郎君        通商産業省貿易        振興局長     増田  実君        通商産業省企業        局長       山下 英明君        通商産業省企業        局参事官     三枝 英夫君        通商産業省重工        業局長      山形 栄治君        通商産業省化学        工業局長     齋藤 太一君        通商産業省繊維        雑貨局長     齋藤 英雄君        工業技術院長   太田 暢人君        運輸省港湾局長  岡部  保君        運輸省鉄道監督        局長       秋富 公正君        建設大臣官房長  大津留 温君        建設省都市局長  吉田 泰夫君        建設省住宅局長  沢田 光英君        自治大臣官房審        議官       近藤 隆之君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    参考人        日本銀行総裁   佐々木 直君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和四十八年度一般会計暫定予算内閣提出、  衆議院送付) ○昭和四十八年度特別会計暫定予算内閣提出、  衆議院送付) ○昭和四十八年度政府関係機関暫定予算内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会開会いたします。  委員異動に伴い理事が一名欠員になっておりますので、この際、理事補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事向井長年君を指名いたします。
  4. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  暫定予算案審査のため、本日、日本銀行総裁佐々木直君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 昭和四十八年度一般会計暫定予算昭和四十八年度特別会計暫定予算  昭和四十八年度政府関係機関暫定予算以上三案を一括して議題といたします。  この際、愛知大蔵大臣から発言を求められております。これを許します。愛知大蔵大臣
  7. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私は、去る三月二十六、二十七日の両日、ワシントンで開催されたIMFの二十カ国委員会出席し、一昨日帰国いたしました。  国会開会中、しかも予算案審議中に、前回の拡大十カ国蔵相会議に引き続いて、再度にわたって私の出張をお認めくださいました各位の御理解と御協力に対し、あらためて厚く御礼申し上げすす。  御承知のとおり、IMFの二十カ国委員会は、国際補償改革の長期的な問題を論議する場であれます。この問題は、一見抽象的な議論にすぎないように見えますが、実は、今後の国際経済運営基礎をどう定めるかという根本問題であり、その成り行きは国民生活にも大きな影響を及ぼすものであります。  私は、かねてから、世界経済の発展のためには、安定した為替秩序基礎とした一つ世界の確立が必要であると考え、会議では、そのような考え方に基づいて次の諸点を主張いたしました。  一、安定した、しかし調整可能な平価制度  二、調整過程における国内政策重要性  三、準備資産の中でのSDRの役割拡充  四、ドルの交換性回復  五、資本移動規制重要性  また、私といたしましては、各国がその経済運営にあたって経済節度を守ることの重要性を強調いたしました。こうした主張は、多くの代表から共感をもって迎えられましたし、全会一致で採択されたコミュニケにも、この趣旨は十分織り込まれたものと存じます。  今回の会議では、各国が安定した、しかし調整可能な平価制度必要性経済運営における節度重要性をあらためて確認し合ったことが成果であり、今後の国際通貨制度の改革問題の討議に明確な指針を与え、これを大きく前進させたものと評価できると思います。  なお、私といたしましては、今回の会議機会に、各国通貨政策国際金融政策最高責任者と会い、隔意なく意見を交換することができましたことも、まことに意義のあったことと考えております。  以上、きわめて簡単ではございますが、出張の御報告にかえさせていただきたいと存じます。
  8. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) この際、申し上げます。  三案の取り扱いにつき、理事会におきまして、審査期間は本日一日間とし、質疑時間は百三十五分とし、各会派への割り当ては、自由民主党及び日本社会党はそれぞれ四十五分、公明党二十分、民社党及び日本共産党はそれぞれ十分、第二院クラブ五分とし、質疑順位につきましては、お手元に配付いたしました質疑通告表順位とすることに協議決定いたしました。  そのように取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  それでは、愛知大蔵大臣から、暫定予算三案の趣旨説明を聴取いたします。愛知大蔵大臣
  10. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) このたび、昭和四十八年四月一日から十一日までの期間について暫定予算を編成することといたしましたが、その概要について御説明いたします。  まず、一般会計について申し上げます。  今回の暫定予算におきましても、暫定予算が本予算成立までの応急的な措置であることにかんがみ、暫定予算期間中における人件費事務費その他行政運営上必要最小限度経費を計上することといたしております。新規の施策にかかる経費につきましては、教育及び社会政策上の配慮等から特に措置することが適当と認められるもの、たとえば、生活扶助基準単価引き上げ失業対策事業賃金日額引き上げ国立大学の学生の増募等を除き、原則として計上しないことといたしております。  公共事業関係費につきましては、新規発生災害にかかる直轄災害復旧事業費のほか、直轄事業維持修繕費等について暫定予算期間中における所要額を計上することといたしております。歳入におきましては、税収及び税外収入についての暫定予算期間中の収入見込み額及び前年度剰余金を計上することといたしております。  以上の結果、今回の一般会計暫定予算歳入総額は四千五百四十三億円、歳出総額は七千三十九億円となり、二千四百九十六億円の歳出超過となりますが、国庫の資金繰りにつきましては、二千五百億円を限度として、必要に応じ大蔵省証券を発行することができることといたしております。  次に、特別会計政府関係機関につきましては、いずれも以上申し述べました一般会計の例に準じて編成いたしております。  なお、財政投融資につきましても、暫定予算期間中に必要となると見込まれる最小限度の額として、国民中小企業金融公庫に対し、資金運用部資金計百六十億円の運用を予定いたしております。  以上、昭和四十八年度暫定予算につきまして、その概要を御説明いたしました。  何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛同いただきたいと存じます。
  11. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これより質疑を行ないます。羽生三七君。(拍手)
  12. 羽生三七

    羽生三七君 本論に入る前に一つお尋ねしたいことは、度を越えた日本経済成長が、インフレ、公害あるいは環境問題等の挑戦を受ける結果をみずから招いたことは言うまでもございません。  こういう状況のもとで、今日、人間の尊厳が阻害され、資本利潤追求の法則が圧倒的な支配力をふるって、土地をはじめ、生活必需品までの投機買い占めが横行している今日の事態は、言うまでもございません。この事態はきわめて重要であると思います。今日のこのような客観的な諸条件は、野党政治活動にきわめて有利な基盤を提供していると言えましょう。また、逆説的に言えば、そういう基盤を提供しているものは、ほかならぬ政府自民党と言うこともできるのであります。で、私どもは、そういうことを喜んでおられるでありましょうか。私どもは、そういう考え方をとりません。なぜなら、今日の事態犠牲をこうむるものは、ほかならぬ国民大衆であるからであります。今日の事態はきわめて重要であることは、これは確実でありますが、この事態に対する政府危機意識は、社会党共産党等革新陣営に対してであって、国民生活に対する、あるいは今日の経済的、社会的諸条件に対するものとは思えないのであります。しかも、このことは、単に国内だけに限定された問題ではなしに、国際的にも、特にアジアの地域と日本の対応のしかたにも関連する問題と思われるのであります。  この認識欠除が、実は社会福祉の貧困、過剰外貨蓄積投機買い占めインフレ等に象徴されているのではないかと思います。先ごろ上尾駅の事件が起こりましたが、もちろん、特別事情もあることでしょう。しかし、単にこれを順法闘争との関連で見るのではなく、大衆のさまざまな欲求不満が集中的に爆発したと見てもよいのではないかと思います。政府危機に直面するのは政府自民党責任としても、今日のさまざまな悪条件によってこうむる国民犠牲は一体どうなるのか。今日の内外情勢はきわめて重大であると思います。この情勢をどのように認識して、これにどう対処されようとするのか、政府の基本的な見解を承りたいと思います。政府認識はきびしさが足りないのではないかと思いますが、総理の所見をお伺いいたします。
  13. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御指摘のような現状が存在することは率直に認めるわけでございますが、戦後の荒廃の中から今日を築いてくる過程におきまして、まず一人の犠牲者も出さずして何とか新しい日本を築くためには、どうしても経済再建復興を主眼としなければならなかったことは申すまでもないことでございます。また、原材料を持たない日本が、原材料を持っておる国々と自由な世界で競争しなければならないという宿命から考えれば、国際競争力をつけるために努力し、つちかわなければならぬことも、また民族的な宿命であるとも言えるのでございます。  その意味で、国民的理解協力を得ながら戦後の経済復興につとめてまいったわけでございますが、各位の御協力のたまもので、まず経済は復興いたしました。国際競争力は培養せられました。そして今日を迎えたわけでございますが、この二年来、俗にいわれるニクソンショック以来、急激に国際環境が変化をしてまいりましたし、その結果もございまして、日本においては種々な問題が惹起をしておることは事実でございます。国際収支の問題、また物価問題等、指摘されるような事態がございます。  もう一つは、経済成長という一つ目的達成過程において努力は続けてきたつもりでございますが、理想的な社会環境整備社会保障拡充が行なわれなかったことに対しましては、この現実を直視し、これからできるだけ早い機会に、計画的に、国民が望んでおるような国内情勢整備をはからなければならないと考えております。また、それはでき得る体制ができてきたと思うのでございまして、野党皆さんを対象として意識をしてというようなことではなく、国民生活を守り、よりよき日本をつくるためには、与野党を問わず、お互い理解し合いながら前進を続けなけばならないのでありますから、狭い視野に立つものではありません。われわれがいま置かれておる政治責任という立場から、皆さんの御協力も得ながら、一つずつ、困難な問題であっても、勇気を持ってこれに対処をし、解決をしてまいらなければならない。このような基本的な考えを持っておるのでございまして、検討するというようなことではなく、計画国民の前に明らかにして、スピーディにこれらの問題を解決しなければならない。せっかく国民蓄積をしてくれたこれらの力を遺憾なく活用することによって所期の目的を達してまいりたい、こう考えておるのであります。
  14. 羽生三七

    羽生三七君 本論に入りますが、四十八年度予算案財政投融資計画及び政府経済見通し等が、円の再切り上げや物価騰貴景気過熱等事態によって、その前提条件で大きくくずれたことは言うまでもありません。しかも、この前提条件は、四十八年度予算案衆議院を通過した段階よりも条件破綻のスピードを一そう早めているし、また、問題は拡大していると思います。したがって、この新しい事態に対応して、それにこたえ得るような予算案に組みかえるべきであったと思います。そして、そのためには、わずか十一日間というような暫定予算案ではなしに、一カ月程度の暫定予算を組んで、その間に、今日の情勢に即応した予算を作成すべきではなかったのかと、こう思いますが、いかがでございますか。
  15. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 御案内のように、二月の九日、十日あたりから国際通貨の大変動が起こりましたことは御承知のとおりでございまして、その後、日本としては変動為替相場に移ったわけでございます。その当時、衆議院段階におきましても、予算について、これを組みかえるべきではないかという御議論が行なわれたわけでございますけれども予算については、御案内のように、歳入歳出両面からいたしましても、変動為替相場に移りましたことによって経済見通しがどういうふうになるかということにつきましては、流動的な要素も多うございますし、また、相当の期間かかりませんと、その行くえがさだかに見定めることもできませんし、したがってまた、現在もそうでございますが、歳入見積もり等につきましても、現在見通し得る状況について格別これを修正するということは、必要でもないし、適当でもない。また、歳出面について申しますならば、外貨建て等の支払いになっておりますものの関連においては、これは歳出の面におきましても、変動為替相場中は、よるべき基準としての外国為替相場という基準がございません関係もありますし、また歳出実行上減少するというものも、ある程度見込まれるとは思いますけれども、現在これを特に修正、補正をするという必要は認められない。むしろ、そうしたことよりは、こうした変動相場制下における流動的な経済社会におきましては、かねがね考えておりますような物価の安定、福祉の充実、そして国際協調というような、三つの大きな目標から申しましても、こういう状況になりました以上は、なお一そう、四十八年度予算は一日もすみやかに実施に移り得るようにしていただきますことが、こうした流動的な情勢においても一そう必要なことであると、こういう考え方に立ちまして予算の御審議をお願いして今日に至っておるわけでございます。  ところで、その当時と今日とを比べてみますと、変動為替相場運営も平静に推移しておりますし、そして、こうした状況をもとにいたしまして、わが国としては国内に重点を置いた——従来の輸出至上主義と申しましょうか、そこかう展開をして、かつ、福祉国家建設あるいは物価の安定に努力を大いにいたさなければならないということがますます望まれてまいり、また、そうした基調もとにかく平静になってまいったように思いますかう、ますますもって、こうした考え方の四十八年度予算実行させていただきまして、その上に立って、金融政策においてももちろんでございますし、この財政とあわせて成果をあげるようにできるだけの努力を続けたいと、そして、将来におきまして必要あれば、その必要の生じましたとき、あるいはそうした認識のできました場合に、予算補正あるいはその実行等につきまして十分の考慮を加えていくということが今日とるべき最善の態度ではないだろうかと、こういうふうに政府としては考えておる次第でございます。
  16. 羽生三七

    羽生三七君 組みかえではなしに、補正という場合には、その補正は例年のようなものではなしに、非常な広範囲に及ばなければならぬと思うんです。これは規模の問題ではありません、その及ぶ範囲のことです。前提条件がこれだけ大幅に狂ったのですかう、補正の範囲、その性格というものは、非常に広範にわたるのは当然だと思いますが、その補正の時期はいつごろを想定されておりますか。
  17. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私は、現在の時点からいたしますれば、どのような時期に、どういう状況下に、どの程度の補正をすることが考えられるかということは、いまの時点では、先ほど来申しておりますように、考えておりません。必要がございました場合、そして、それに対して補正の必要というものが認識された場合、その限度において補正をするということが適当ではないだろうか。現在は、とにかくこの四十八年度予算が幸いに成立いたしましたならば、先ほど来申しておりますように、三つの目標に向かってできるだけ効率があがるような実施に努力をいたしたい、こういうふうに考えているわけでございますし、同時に、これを中心にした他の金融その他の政策も、現下の経済状態に即し得るように機動的に展開してまいるべきであると、かように考えておる次第でございます。
  18. 羽生三七

    羽生三七君 通貨は一応小康状態を保っておるといいましても、いまのこの激動する状況の中では、例年のように、補正は秋とか年末とかいうような、ゆうちょうなことは許されぬのじゃないかと思います。私は、すみやかに、この補正で、いわゆる福祉経済への転換を実現されることを要求いたします。  それから、特に公共事業など、事業の進行過程を見て手直しということでなしに、情勢の推移を見るということでなしに、むしろ、すみやかに繰り延べるものは繰り延べる、あるいは中止するものは中止するということを補正の中で明らかにして、政府の意のあるところを明確にしたほうが私は適切だと思いますが、その公共事業等、もちろん内容にもよりますけれども、繰り延べあるいは中止等についてどういうお考えを持っておられますか。
  19. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 公共事業等につきましては、これはまあ補正ということも、いま御指摘もございましたけれども、それよりも、この四十八年度予算実行に移るようになりましたなうば、やはり流動する経済状況でございますかう、適宜適切な配慮を加えていくことは私は当然必要なことであろうかと思いますが、それらの点につきましては、国内、国際状況等をにらみ合わせまして、適宜弾力的な考え方で臨むべきである。御指摘の点については、十分ひとつ政府としても考慮の中に入れてまいりたいと考えております。
  20. 羽生三七

    羽生三七君 あとかう触れる問題でありますが、ひとつここで総理に注文したいことは、法人税の引き上げとか、サラリーマン減税等、先日衆議院で言っておられましたが、それを四十九年度かうでなしに、四十八年度補正予算で実現させるべきではないかと思いますが、いかがでありますか。
  21. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 衆議院の大蔵委員会で、所得税法案の審議過程においていろいろ質疑が行なわれまして、その過程において考え方の一端を申し述べたわけでございます。これは、このようにするということではなく、法人税に対してはどう考えるかということでありますかう、法人税は増徴の方向で検討しなきゃならないと思いますと、また、所得税のあり方に対してはどういうことであるかと言うかう、まあ現在の税率を二分の一にすれば一兆九千億の財源を必要といたしますし、また、三〇%控除ということを考えて、試算をすれば四千五、六百億円の財源を必要といたしますと。しかし、いまもうすでに低所得者に対しては三〇%以上の控除を認めておりますが、非常にむずかしい制度でありますので、どのような控除を受けておるのかさえもわからないようなものであるから、こういうものを据え置くというわけにはいかないし、これも引き上げるとすれば総額五千億ないし六千億の減税になると思いますと。まあこれはいつでも、年度末になって経済の見通しを立ててから、財源との見合いで減税案が決定をせられるというようなことでございますが、今度は、もう八月の三十一日には概算要求を各省からするわけでありますので、国会が終われば、もう引き続いて諸般の問題を検討いたしまして、四十九年度予算の編成に対しては万遺憾なきものを提出できるようにしたいということでございまして、現在まだ四十八年度の補正そのものが未確定なものでございますので、どのような財源措置をとるかということに対して確たる見通しを申し上げる段階ではないと、こう思います。
  22. 羽生三七

    羽生三七君 それはあとからまたお尋ねいたします。  そこで、経済企画庁長官、最小限度政府経済見通しは改定を必要とするんじゃないでしょうか。
  23. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 四十七年度のものは、もう三月でございますかう、これはこのごろの非常な物価高の問題がございますけれども、これでよろしいかと思っております。  四十八年度のものにつきましては、これはもう相当に、この十二月以来の状況が変化しておりますので、それに合わせて考えることがよろしいかと思いますけれども、私、しばしばの機会に申し上げておりますように、政府経済見通しというのは、単なる、ほうっておけばこうなるぞということではございませんで、こうありたいという政策努力が含まれておりまするので、たとえば物価の問題にいたしましても、漫然と七%になるであろうとか、そういうようなことでなくて、やはり御審議をいただいておりまする程度のものには、何とか、年間を通じてでございますし、そうした政策を盛り込んだものにしたいと、こう考えますわけでございます。  いずれにいたしましても、ただいま総理からもお話がございましたように、この予算が通過をさしていただき、また国会が終わりました段階で、よく状況を見てみる必要はあると思っております。
  24. 羽生三七

    羽生三七君 この問題はまたあとに譲りまして、通貨問題についてお尋ねいたします。  報道によると、今回の通貨会議では愛知大蔵大臣もだいぶ活躍されたようでありますが、私が、今回の二十カ国蔵相会議を新聞報道で見る限りの感想を申してみたいと思いますが、まず第一番に、変動相場制が一定の合法性を確立したこと、それから、SDRが基本的準備資産となることを認めたこと、さらに作業部会の設置をきめたこと等が具体的特徴であろうと思いますが、全体的な印象としては、ハリ会議以来まだ日の浅いこと、また、この間大きな波乱のない小康状態が続いていること、そしてさらに、会議が本質的な問題に触れて突き詰めた論議をかわせば、この小康状態がこわれかねないことをおそれて、若干の合意のほかは問題をすべて今後に持ち越したことではなかろうかと思います。しかし、そういう表面上の平穏さにもかかわらず、アメリカが脱ドル体制に向かって着々進みつつあること、さらに、通貨とともに通商政策についてアメリカが日本等に相当強い要求を持っていることを示したこと、これらのことが今回の二十カ国蔵相会議を特徴づけていると思いますが、この考えは間違っているかどうか、蔵相のお考えを承ります。
  25. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいまの御観察は、ニュアンスの相違はございますけれども、問題の所在あるいはこれからの日本として対処すべきところを、方向を御指摘になっておると、私も同感される点が多いように思います。  簡単にまず申し上げますと、最近の国際通貨不安が相次いで起こりましたことに対して、こういうことが何としても再び起こらないように、そのためには、ともすると分極化する傾向もないではないので、一つ世界——世界全体がまとまって、お互いに助け合い、知恵を出し合って国際通貨制度を確立しなければならない、その基本的な考え方のもとに、当面の通貨不安を退治していきたい、この基本的な考え方については、私は完全に合意せられておると思いますし、そのことがコミュニケの上にも盛られておると思います。  そして、具体的な問題になってまいりますと、恒久的な通貨制度を確立するためには、たとえばSDRというものにもつと積極的な、建設的な期待をかけて、これを魅力のあるものにしたいと。これは実はかねがね二十カ国委員会でも、日本としても非常に強く主張しておったところでございますが、これが考え方として合意がされておるわけでございます。同時に、アメリカのドルに対しましては、特に日本の立場からいえば、さしあたり信認を回復していかなければならない。これに対しては、アメリカとしてもできるだけの努力をしてもらわなければならない。そこで交換性回復の問題というものが大きな問題として、先ほど報告申し上げました五つの項目の中の一つにも大きく取り上げられておるわけでございます。  それから、よく世上の話にもなりますが、いわゆるユーロダラーと呼ばれるような式の国際的な、投機的な資金の動き、これを規制をしなければならないということ、こういうことが中心であり、かつ、各国は、それぞれ国内経済政策においても、インフレを防止することについてあらゆる努力を集中すべきであるということも確認されているわけでございます。そして、国際的な合意によって確立しなければならない通貨制度の確立についての問題については、具体的な方法を取り上げて、そうして、これについては早急に、代理会議と呼ばれておりますが、いわば各国の次官クラスの共同の検討を早急に開始をする、そうして、おそくも九月に予定されておりますナイロビのIMF次期総会には、各国が合意し得るような対策といいますか、方策を確立しよう、こういうことを合意の上で、できるならば、それにもまた先立って七月の末ぐらいに、もう一度関係蔵相会議を開き得るように、ひとつ代理会議に対して強力に指示をし、また、それぞれの国が、それぞれ名案を持ち寄って、いわばスミソニアン体制にかわる、そして、まあこれは常識的に申しますと、ブレトン・ウッズ体制というような、一つ世界を盛り上げていくという基礎観念のもとに、そういう具体的な対策を新しく建設しようと、こういうことになっておるわけでございます。したがいまして、二十カ国委員会のコミュニケは、基本的な合意をまとめたという点については成果はございますが、しかし、やや抽象的に流れているということは御批判のとおりでございますから、これを具体的に確立するということがこれからの残された問題であって、これに対して日本としても早急な努力を傾倒しなければならない、こういう状況であると思います。  それから、通商問題との関係でございますが、今回のこの多数国間の会議におきましてはもちろんでございますけれども、通商と通貨は車の両輪のようなものである。この認識はすべて一致しているわけでございますが、何としても通貨問題が今日のところでは非常に緊急な問題で、これを多数関係国の間で合意を確立しようというところに精力的な努力や話し合いが行なわれましたものでありますから、この二十カ国委員会として通商問題についてこれからどうするというようなところの協議とか、したがって合意とかは特に確立されたわけではございません。  ところで、それから御質疑のありました点は、日本の場合は日米の問題が非常に大切である、この日米の通商問題ということになりますと、これはまた非常に大きな問題でございますけれども、今回の会議の場において、あるいはこの会議機会において、特に日米間で通商問題について相談をしたということがございませんし、また、アメリカ側からこの会議機会を利用して、日本側に対してどうしてほしいというようなことを特に提起された事実もございませんし、こちらも今回の目的がそれ以外にあったわけでございますから、通商問題等について格別の話し合いというものは行なわれませんでした。  以上、概略お答え申し上げます。
  26. 羽生三七

    羽生三七君 具体的な問題は、また、だんだんあとからお尋ねいたしますが、それより前に、二、三私の意見をまじえながらお尋ねしたいことがあります。  最初に、通貨問題については間接的な問題になるかと思いますが、この日本の輸出力についての私の考え方ですが、蔵相は日本の二回にわたる実質的な円の大幅切り上げ、その後の変動制によって今後輸出傾向が変わってくるように、これは外国で語ったように聞いておりますが、もちろん幸干の変化があるでしょうが、私は根本的な基調変化が直ちに起こるとは思いません。したがって、日本の黒字が減って、日米間の国際収支が均衡するという保証は近い将来にはないように思います。周知のように、日本経済の成長率は欧米に比べて非常に高いものであります。この成長率の高さは今後の経済動向との関連があると思われますので、ここで、企画庁長官、アメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ、イタリー等の一九七二年の実質成長率を示していただきたい。日本も同時に。
  27. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 七二年のいまお示しの各国のGNPを申し上げますが、日本が九・二%、アメリカが六・四%、フランスが五・五%、西独が二・九%、イタリアが三%、イギリス州三・二五%ということでございます。
  28. 羽生三七

    羽生三七君 いまの数字でも明らかなように、日本の実質成長率は、これら諸国の二倍ないし三倍でありますが、しかも、現時点では、このわが国の実質成長率は瞬間風速一五%と言われておるわけですね。そこで、成長率の高いということは、高い生産性を見込んでのことであります。これは言うまでもありません。  次に、今度はいまの諸国の最近三カ月間の卸売り物価の上昇率をお示しいただきたい。
  29. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 一九七二年の日本の場合で申し上げますと〇・八%、アメリカが四・六%、フランスが四・六%、西独が三・二%、イタリアが四・一%、イギリスが五・三%、これは日本の場合は最近の卸売り物価の動向が出ておりません段階でございます。
  30. 羽生三七

    羽生三七君 いまの数字でも明らかなように、これら諸国の卸売り物価の上昇率が驚くべき高いものだということです。本年に入ってからは、アメリカのごときは一段と高い上昇率を示しております。最近、日本の卸売り物価が危険信号となっていることは、これはあとから申し上げますが、しかし、なお年率で言えば欧米のほうが高くて、特にアメリカが、一番高いわけであります。しかも、今日のアメリカのインフレは鎮静する気配を見せておりません。これ、いまの二つの指標、すなわち欧米諸国の経済の実質成長率に比較しての日本の成長率の高さ、それに欧米諸国、特にアメリカの卸売り物価の上昇率の高さという二つの要因から判断する限りにおいては、ドルの切り下げ、あるいは円の再切り上げ等によって、中小企業とかあるいは特殊な業種のこうむった打撃ははなはだしいにいたしましても、全体としての日本の輸出力は依然として強いということです。期待するほど黒字は減らないのではないか。円が長期的な変動相場制にある場合はとにかく、早期に固定レートに復帰したような場合には、再々切り上げにもつながりかねない。それほど日本は強い輸出力、成長力、強さを持っておると思いますが、いかがでありますか。これは黒字減らしにそんなに役立たない趨勢だと思いますが、いかがでございましょうか。
  31. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今回、円の動向をめぐりましていろいろ意見があるわけでございますが、私の個人的な意見を申し上げさしていただきたいと思いますが、これは、いまの状況は、愛知大臣の帰朝報告にもありましたように、まだ依然としてドルに対する信認、したがって、また、ドルの交換性の回復という問題がまだ先にあるわけでございます。そういう段階日本の円の固定相場制の復帰というものはなかなか困難であろうと、いまの変動相場制は当分続くものであろうというふうに私は思うんでございます。これはEC諸国の間においてもさような状況のようでございまして、そういう点から見ますると、いま日本の非常な輸出競争の強さの根源でありましたところの相場、円のあり方、これが浮動しておりまするので、その意味においての輸出競争力というものは相当減殺されると思います。でございまするから、まあ私は、これは当分フロートする段階において輸出が急増するということはないのではないかというふうに思います。ただ、いま御指摘のように、アメリカあたりで相当物価が上がりつつ——最近特にその騰勢が目立っておりますので、そういう点からすると、この円が高くなったことの関係が吸収されますけれども、それはまた円がフロートしているということによって減殺されるということで、それほどの、いま羽生先生のおっしゃったような影響はないのではないかというふうに私は考えております。
  32. 羽生三七

    羽生三七君 輸出が伸びるというんじゃないんですよ。黒字の減少が期待するようなことにはならないのではないかという、そういう基調であるということを私は申し上げたわけです。  そこで、今度は私の意見になりますが、二百億ドルもの巨額の外貨が蓄積されながら、しかもこれが有効に活用される手段が容易に見つからない、場合によっては国損にもつながるような今日の事態を招来したものは何か。結局、国民福祉よりもGNPや輸出の伸びなどを、これを国の政策の中心に、しかも長期にわって位置づけてきた結果の集積であると思います。いま日本は、通貨体制の安定、あるいは国際収支の均衡について努力を迫られているわけでありますが、さきにも述べましたように、このような状態が続く限り、国際収支に大きな変化が起こる可能性はきわめて乏しいと思います。今日の日本の問題点は、福祉経済への転換と言いながらも、その本質は社会保障費が対前年比若干ふえたというだけのことで、日本経済の体質、その軌道修正が本格的に行なわれておらぬということであります。今日必要なことは、年金制度の抜本的な改革、新たなる労働政策、公害防止、環境整備、勤労者所得税の減税や法人税の増徴等々であるし、さらに公共事業や社会開発等という場合にも、その内容こそが問題であるということを認識して、日本経済の体質そのものを変えることであると信じます。これらは、いわゆる黒字減らしのためということではありません。この問題は日本が内政上の問題として本質的に取り組まなければならない重要な課題であるけれども、それが実行に移されれば、結果として黒字が減るという、こういうことであります。もちろん、一定の限度において成長の必要性を認めることは当然であります。ただ、今日一般に言われているような意味での、成長なくして福祉なしという、こういう感覚では絶対に問題の解決にはならないということであります。  以上述べたような諸条件を整えることが実はほんとうの意味の円対策ではないかと、こう考えますが、これは総理の御所見を伺わしていただきます。
  33. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 蓄積された外貨の有効活用をはからなければならないということはもちろんでございますし、また、先ほどあなたが御指摘になられたように、変動為替相場制に移行しておっても、急速に国際収支が均衡するということはむずかしいと思います。その意味で国内的な諸条件整備をしなければならないということも事実でございまして、ます産業構造の転換からはかってまいらなければならないわけでございます。産業構造につきましては、膨大な原材料を使うような過去の重化学工業中心から、知識集約的な産業に移行していかなければならないということも一つでございますし、また、内政面において、福祉の充実という面で諸般の施策を強力に進めなければならないということも事実でございます。今度、いま御審議いただいております四十八年度予算も、その五カ年計画の第一年次という考え方で御審議をいただいておるわけでございますが、年次計画に沿って、しかも年次計画にとらわれるということではなく、実情を十分把握しながら、いわゆる先取り的な政策を実行してまいるという姿勢で進めなければならないということは当然だと思います。  また、あわせて一言付言いたしますと、ベトナム復興その他、日本がいままで政府ベースの開発途上国に対する援助に対して、援助の比率が少なかったわけでございますから、その面も大幅に拡充してまいる、内外ともに望ましい環境整備のために努力を続けてまいりたいと、こう考えます。
  34. 羽生三七

    羽生三七君 これから個々の問題についてお尋ねいたします。  二十カ国蔵相の代理会議は、討議の秘密報告を蔵相会議に提出したようでありますが、それによると、一、世界をおおう高水準のインフレ、二、各国をさまよう短資の流れ、三、主要国の国際収支の問題、以上の問題点をあげて、これらの要因が固定レートヘの復帰を困難にしていると指摘しているようであります。われわれの見る限りでは、この三つの要因は、そのいずれもが早急に、しかも効果的に解決する可能性はきわめて乏しいように思います。したがって、このことは通貨問題の根本的解決が近い将来期待できないことを意味しているのではないかと思います。もちろん、私は、解決に向かってあらゆる努力を払わなければならぬことを否定するものではありません。これは当然であります。ただ、それにもかかわらず、IMF体制、そして今日の自由経済の本質的な矛盾があらわに露呈したと見なければならぬのではないでしょうか。今回の会議について、ある新聞の特派員は、「会場を去る各国蔵相が胸にきざみ込んだことはもはや世界の通貨制度を戦後のブレトン・ウッズ体制に戻すことはできないという感慨ではなかったろうか」と、こう伝えております。問題の困難さを象徴した報道と思われます。この問題の困難さを大蔵大臣はどの程度理解をされておるのか、ぜひこの機会に所見を伺わせていただきます。
  35. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先ほどもちょっと触れましたけれども、ブレトン・ウッズ体制、それから最近ではスミソニアン体制と申しますか、ということがよく言われますけれども、スミソニアン体制というほうはくずれたと一般に言われておりますし、それだからこそ今日のような新しい局面が出てきたのであると、こういうふうに観察するのが大体一致した観察であろうと思います。それからブレトン・ウッズ体制、IMF体制ということについては、これはちょっと専門的ではございませんけれども、感覚的に申しますと、これは何とかくずしたくないと、これを中心にしていくことが、いわゆる世界一つという、ワンワールドということがよくスローガンとしてこういう場合に使われますけれども、これはなくしたくない。そうでなければ、戦後のブレトン・ウッズ体制というものがくずれて、そして世界はばらばらになって、各経済圏が封鎖的になったらこれは人類のための非常な不幸であると、これを、この考え方をもしブレトン・ウッズ体制と言うのであるならば、ブレトン・ウッズ体制はこわしたくないと、こういうことであると考えるわけでございます。しかし、内容的に言えば、ブレトン・ウッズ体制、つまり、ドルを中心にして、また交換性を前提にした、ドルを基準通貨にするという体制については、これまた戦後ずっと続いてきたようなこういう体制は維持することが非常にむずかしいということになると思うんであります。要するに、世界一つであるという感覚で、そうしてドルの状況が今日のようであるもんでありますから、たとえばSDRというようなものをほんとうに中軸にして、しかし、さしむきはどうしても、ドルが現状においては国際通貨、唯一の通貨でありますから、これの信認を回復するということをあわせ用いて、新しい局面に処していきたいということに大体の考え方がなっているのではないかと思います。  私は、お尋ね以外のことになって恐縮なんでありますけれども、イデオロギーを越え、あるいは国境を越えた全世界が、やはり国際通貨というものに関心を持ってこれを確立するという、新しい局面を展開していきたいということを、この二十カ国委員会でも表明をいたしたわけでございますけれども、その辺にも新しい局面に対処する——これには時間が相当かかりますでしょうけれども、やはり常にそういう考え方を押し出していくことが日本の立場としても適当ではないかと実は考えているわけでございます。ただこれは、そういう考え方はそうとして、具体的には先ほど五つに取りまとめましたが、幸いにその五つの問題に対して代理会議の意向もお示しのとおりでございましたが、大臣会議として、この代理会議に精力的な、かつ時間を切っての答案を国際的に出させようということで合意をいたした次第でございますから、これにいま期待をかけて、そして先ほど申しましたように、ナイロビまで何らかの体制をつくり上げようと、これは相当多くの国の集まりでございますから、コミュニケの解釈等につきましてもそれぞれニュアンスの違うところは私はあり得ると思いますが、これを取りまとめていくということについて希望を持って、期待を持って突き進んでいくということがここで必要なところであると、こういうふうに私は考えておるところでございます。
  36. 羽生三七

    羽生三七君 蔵相は、変動相場制のやり方にルールが確立されれば、それは固定相場制に近いものとなろうと語っておられますが、そのルールって、どういうことでしょうか。
  37. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 今回の合意されたものの表現の中に、御承知のように、安定して、しかし調整可能な平価制度の確立ということで一つ考え方が合意されているわけでございます。そのことは、従来の考え方よりもあまりリジッドでない、かた苦しくないという場合もあり得るということで、変動相場制というようなものも、もしこれがルールというものが確立されて、大幅にむちゃくちゃに市場の成り行きだけにまかせていくというような変動相場制度でないということが何らかの方法で国際的に確立されて、これを相互に協力し合うということになれば、いわゆる単純な、純粋な固定相場制度というものとほとんどすれすれに近くなるんではないだろうかという考え方を私は個人的に持ちますが、同様の観察をする者が主要国の蔵相の中にもございますわけで、そんな点が記者会見などで質問のありましたときに、私の個人的な意見として、そういうことも考え得られるでしょうということを申したわけでございますが、そのまま、現在のところでは、私はさように考えておるわけでございます。できるならば、それはきちっとした固定相場制度というものが国際的に確立され、かつ、これがお互いに協力し合えるということなら、それは一番いいでございましょうけれども、しかし、必ずしも、それに固執する必要は私はないのではないかと思います。要は、全部が、お互いに一つ世界のワクの中で協力体制ができるということであれば、その方法論については、ある程度流動的に考えてもいいのではないかと。  そこで、そのルールというのは、よくルール・オブ・コンダクトというようなことが言われますけれども、しからば、それは具体的にどういうことを技術的にも考えられるかということにつきましては、私も確たる、具体的にこうこうであるということを申し上げるだけの、まだ勉強を積んでおるわけでもございませんし、また、これはやはりIMF体制の中において十分検討し合うべき問題であり、また、そのことは当然代理会議の中でも相当いろいろ積極的な意見も出てくるのではないかと期待しているわけであります。
  38. 羽生三七

    羽生三七君 その場合ですね、ある期待されるようなルールが確立されれば、しいて固定レートに戻る必要はないとお考えかどうか。  それからもう一つは、ナイロビ総会後もなおフロートが続くこともあり得るのか、これは日本の場合ですよ、お尋ねいたします。
  39. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まあ、率直に申しまして、現在フロート時代にとりあえず入ったわけでございます。各国ともと言っていいのではないかと思います、ドル自身がフロートしていると言っても言える状態でございますから。で、これを取りまとめて国際的に一つ基準が確立される、少なくとも結論がきっちりできていかなくともいい場合もあろうかもしれませんけれども、まあ現在のところは、しばらく日本としてもこの変動相場制を続けていくことが私は適切であると。そんなら、いつこれが固定相場に返るかということになりますと、固定相場と申しましても、これに返るときに、日本だけが一人よがりと言いますか、自信を一人だけ持ってやりましても、将来国際的たまとまりができておりませんと、また平価問題というものも起こりかねないような、まだ今日は状況であると思うんです、国際的な面からいたしまして。ですから、よほどこれは腰を据えて、英知をしぼって、しかも、国際的にこれでやっていけるというところの、少なくとも日本側として自信が持てるときに日本のとるべき行動を決意するのがしかるべきことであろうと。したがって、固定相場制度に復帰するということは、いまのところ、まだ時期を明らかにする時期ではなかろうと、こう考えております。
  40. 羽生三七

    羽生三七君 今回の会議の結果、フロートが長期化することを合意したわけですが、日銀総裁は、固定レートにむしろウエートを置いて発言されておるように受け取れます。総裁はどういうふうにお考えになっているのか、承りたいと思います。
  41. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 戦後の世界貿易の伸びがブレトン・ウッズ体制を基盤にしてきておったことは、みんなの認めるところでございます。したがいまして、為替相場というのは、一番大事なことは安定であろうと思います。そういう意味からいいまして、安定した平価が確定されるということが理想としては一番望ましい。ただ、ただいまもいろいろお話がございましたように、そういう安定した固定相場に返ることはなかなか現状ではむずかしい。しかし、理想としては固定相場が望ましい。そういう意味で、私は、考えの基礎は、やはり、やがていつの日かそういう安定した固定相場に返るのが適当であるということを頭に置いて発言をした次第でございます。
  42. 羽生三七

    羽生三七君 理想論としてはまさにそのとおりだと思うのです。ただ、客観的条件がそれをしばらくは許さないのではないか。しかし、しばらくたっても、あるいはそういう理想が実現する可能性があるかどうかも疑問なのが今日の大勢だということですね。  そこで、この会議の結果、いま申し上げましたように、相当フロートは長期間続くと思いますが、政府は今日まで、このフロートは、貿易の縮小均衡を招くとか、あるいはブロック化につながるとかいうだけで、必ずしも国民を納得させるような説明をしておりません。この問題のメリット、デメリット、それにフロートが長期化すれば、それが国民生活にどういう影響を与えるのか、国民大衆にわかるように、ひとつこの機会にお話しをいただきたいと思います。
  43. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 変動相場制度、そして簡単なことばでフロートと言われておりますが、一番大切なことは、変動相場制度下におきましても、日本の場合におきましては、相場といいますと、現在は少なくとも円・ドルの相場ということに、実態的に一番大事な点は、そこにポイントがあるわけでございますが、この実勢相場というものが乱高下しない、できるだけ平静を保つということが一番大切なことであると思います。特に、ある程度これが長期化するということが予想される状況におきましては、これが安定をしておりますれば、私は一般の産業界の方々、あるいは、ひいて国民皆さんに対しましても、現状のもとにおいてという条件はつきますけれども、御安心が願えるところではないだろうか。いろいろの国際的な不安がございましたけれども、そうしてまた、いままでなかったような、ときにはある程度長期の市場の閉鎖もするのにやむなき状況もございましたけれども、幸いに、東京市場としてはずっと相場の乱高下なく、平静を維持いたしております。この状態が何とか続くように配慮してまいりたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。そういう状態でございまするならば、実質的に対外的にも通貨の問題としては安定した状況ができ上がるわけでございますし、この実勢を常に見きわめながら、また、これが乱高下しないように配慮していくということによって御安心を願い、また、経済界の安定というものを策することが適切な行き方ではないだろうかと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  44. 羽生三七

    羽生三七君 蔵相はアメリカで、交換性回復が第一だと、それができればコンソリデーションは要らなくなる、それに債権を凍結するのはばかげた話だと、これはこのとおりかどうか知りませんが、新聞にはそう語ったと出ております。理論的には確かにそのとおりでありますが、米国の場合は、今日むしろ、脱ドル、すなわち基軸通貨から離脱して、その重荷から解放されて、他国通貨並みの気安さを求めようとしていると見るべきではないかと思います。したがって、希望的、理論的には蔵相のおっしゃったとおりでありますが、現実問題としては蔵相はどうお考えになっておるのか。交換性回復と、いまのアメリカの実際の動きとの関連性です。これをお尋ねいたしたいと思います。
  45. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 大体いまお話しになりましたことは、やはり問題を正確に、と申しますか、的確におとらえになっている御発言と私は了解をいたします。そういうところに、また問題の複雑性があると思います。コンソリデーションということは、ドルの、要するに日本なりドイツなりは債権者でございますけれども、その債権を、いわばことばは練れませんし、また、誤解を起こしてはいけませんけれども、いわば一種の凍結にすることでございます。これも、ある場合にはやむを得ない。また、そのコンソリデーションの方法もひとつ大いに検討をしようということになっておるわけでございまして、その限りにおいては、私もその取り上げ方はけっこうであると思います。しかし、同時に、私どもはドルをたくさん持っている。しかも、これについては信認がなかなか回復しないとはいいながら、りっぱな国際的な決済手段でございますから、日本のようにドルを相当たくさん持っている国は、このドルが使えるものはどんどん使うべきであると、私はさように考えるわけでございます。そして、先ほどのお話にもございましたが、これが日本国民のために使えるようにする。あるいはまた、南北問題というような、日本としては国際的に大きな役割りも持っているわけでございます。いろいろの面からドルの活用をはかっていくことが、同時に非常に必要なことではないであろうか。同時に、一番基礎になることは、ドルが交換性を回復することができて、そして、信認が基本的に回復するということになれば、私どものドル債権というものが非常にこれはまた一そう強いものになるわけでございますから、これは特に貿易関係その他でも日米の関係というものは圧倒的に他の国に比べては比重が強いわけでございますから、これを望むのは当然でございます。したがいまして、代理会議等におきましても、この交換性の回復の問題、それからコンソリデーションのやり方や、幅や、その他の問題ということについては、国際通貨の確立という大命題をいかにしてつくり上げていくかということに、日本としても最大の協力をすべきでありますが、同時に、日本としては、日本の国益ができるだけ全うされるように、あるいは国損というものがかりにも起こらないように、このことをがっちりと踏まえていかなければならない。そういうところを踏まえまして最善の努力をしなければなるまいと思います。
  46. 羽生三七

    羽生三七君 いまの御説明で、次の私の質問はある程度、半分ばかり答えが出ておるわけですが、交換性の回復が第一という場合、アメリカの立場から言うと、過剰ドルの凍結が交換性回復の重要な前提条件になるという気がしますですね。問題が、したがって、交換性回復が第一と言いながらも、実際は、いまの過剰ドルの凍結をアメリカは求めなければ、それが実現できないという、こういう非常な矛盾を持っていると思いますが、それが先ほどの御説明で大体わかりましたが、大体そういうことでしょうか。
  47. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) そういうことであると思います。それからコンソリデーションといいましても、先ほど誤解があってはいけないと申しましたが、何も、ほんとうに塩づけになってしまうわけではございません。また、そうなっては困るわけでありますから、それとコンバーティビリティとの関連におきまして考えていかなければならない問題でございますから、そこの両者の関連それから日本としての国益、債権者たる日本の立場が、どういうところが一番日本のために得であるかということをやはり十分踏まえてかからなければならない、こういうふうに考えるわけでございまして、羽生さんの御指摘のポイントは、まさにそういうところにあるという点では、私も同感でございます。
  48. 羽生三七

    羽生三七君 アメリカの金保有高、それにSDRの今日の現状から考えて、交換性回復がきわめて困難と思われますが、ドルを大きく凍結した場合は別でありますが、そうでないと、この交換性回復は非常に困難だと思います。それはとにかくとして、蔵相もいま言われました交換性回復という場合に、具体的に一体どういうことが考えられるのか、私はあとから一つずつこまかく承りますがね、大まかに、たとえばどういうことが考えられるか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  49. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 交換性と申しますと、従来のいろいろの経過もございますだけに、交換性というと金だと、金とドルとの免換性ということがその内容であるというふうに受け取られがちでありますけれども、これは必ずしも金との免換ということは意味しなくともよろしい。これはたとえばSDRというようなものがすでに国際的な合意で確立されているわけでございますから、これとの結びつきということが確立されるということも一つの方法でございましょうし、あるいは他国の通貨と常に交換性を持っているということが確立されるということも、まあ交換性ということの定義から言えば、それらのものをいろいろ含むと思います。そこで、これからドルの交換性の回復ということについては、債務者であるところのアメリカも、債権者側からこういうような要請を強く受けているわけでございますから、いろいろのくふうを考えるでございましょう。また、債権者としては債権者の立場で、いま申しましたように、どこが一番いいかということで知恵をしぼるべきであろうと思います。ですから、その辺のところは、いま債権者の立場として、これがどうだ、あるいは債務者の立場としても、これだけはどうだとかというところの、ぎりぎりのところまでは、まだいっておりませんわけで、私としては、日本として一番いいところへ持っていくような結論を出すようにいたしたいものだと思います。同時に、先ほど申しましたように、現在その問題が解決しなくとも、ドルというものは国際的なりっぱな決済手段、あるいはその意味から言えば、どこの国の通貨よりも強い——強いといいますか、使用可能な程度の最も強い通貨でございますから、これの活用ということは、やはり日本として大いに積極的に考えるべきであると思います。
  50. 羽生三七

    羽生三七君 次の問題に移る前に、いまSDRの話が出ましたから、これに関連して承りたいと思います。  だから、金保有、金だけの交換性を言うわけではない。SDRもいま当面の対象になっていることは当然でありますが、また、そういう意味で、この声明では、準備通貨の役割りは縮小され、SDRが改革後の主要な準備通貨となるべきであると、こうされておりますが、先ほど申したように、これはアメリカの脱ドル体制の一環だと思います。そこで、現在のSDRの創設は、いまは十分コントロールされておりますから、SDR過剰という問題は起こっておりません。それゆえに、表面上ドルより安定したように見えます。しかし、そうした現状のままSDRとドルとの交換性を回復しても、現実に交換に応ずることは不可能と思います。一方、SDRの創設をルーズにしてドルとの交換に応じられるようにすると、今度は新たにSDRの過剰、それからSDRの価値の動揺は避けられないことになると思います。だから、SDRは金との関係が定められておるし、現実にいま金との交換ができるわけではありません。したがって、この信頼性は発行量のコントロールにかかっておるのではないかと思います。SDRを準備通貨とするという考えは、アメリカ及び現在外貨の不足である国々の問題点の一つを解決する方向ではありましょうが、SDRが年々減価するのをどうするかという問題が、いまのドルのかわりに発生してくるんじゃありませんか。したがって、私は、SDRを不当に高い地位に置いても、コントロールのしかたを誤るならば、いまのドルと同じ結果を招来する、こう思いますので、この点に関する蔵相の見解を承りたいと思います。
  51. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これも、ごもっともなお尋ねでございます。で、さしあたりSDRをもっと魅力のあるものにしたいということをわれわれも大いに主張しておりますのは、たとえば金利の問題というようなことが今日のところでは一つの問題点でございますけれども、同時に、基本的にSDRの発行量が多くなったらばどうなるかということは、もちろん考えていかなければならない。そこが、SDRというものを国際通貨基準にすることについてどういう保障を関係国の問でやるかというようなところが、これからの一つの焦点になってくると思います。ただ、一つ大きく違いますことは、ドルは何といいましてもアメリカ一国の通貨であって、そしてアメリカ自身の経済政策や財政政策、あるいは国民生活の変わり方によってドル自身の性格が変貌するわけで、それを前提にしたとも言えませんが、そのアメリカ・ドルが二重性格の一つとして国際通貨基準であったわけで、それにドルの交換性がなくなったものですから、こういうふうな状態になったわけでございます。その一国の通貨であるドルが国際基準通貨であったことと、SDRという、いわば一国の通貨ではない、国際的につくり上げた新しい、創造した一つの新しい手段であるということは、私は性格は相当基本的に違うものであると思いますから、SDRというものを国際通貨基準にする、準備資産の中核はそれであるということにするについては、いま御指摘のような点で、十分のくふうと研究が必要であると思いますけれども、ドルの場合とはその点において非常に違いがございますから、おのずから、くふうは私はあり得ると、こう考える次第であります。
  52. 羽生三七

    羽生三七君 日本の過剰ドル対策として、アメリカ政府の発行する中期、長期債を購入して過剰ドル対策に協力するとも伝えられておりますが、そういう方針をお持ちになっておるのですか、承ります。
  53. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 具体的にこうするというところは、まだきまっておりません。それも一つ考え方でございましょうけれども、全般的に過剰ドルに対してどうするかということにつきましては、もっと広くいろいろの方法、先ほど来申し上げておりますような点ももちろん含めて、大いに検討をいまいたしておるところでございます。
  54. 羽生三七

    羽生三七君 大蔵大臣は、先日、私の当委員会におけるこの関連質問に答えられて、第二外為構想をはじめ、外貨活用の方法に知恵をしぼっていると言われましたが、第二外為の目的は何なのか。第二外為構想は、これは本来田中総理の発想から出ておるものでありますので、田中総理としては、この前この発想を提唱されたときにはもう非常な御熱心だったわけでありますので、ひとつ総理大臣から、第二外為構想のねらうところはそもそも何なのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  55. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 総理からお答えがあると思いますけれども、御参考までに、外為構想というようなものの背景となっております考え方を、ちょっと簡単に申し上げさしていただきたいと思いますが、そもそもわが国の対外資産というものの構成を見ますと、他の国に比べまして、たとえば外貨準備の構成の内容が、短期な政府の資産の比重が大きいわけでございます。そして、たとえば民間の対外直接投資などの民間の長期資産の比重が小さいんであります。この意味から、国際収支の均衡を回復する、それから経済協力拡充等の要請に加えて、直接投資、証券投資などを含めまして、民間の対外投資を促進する必要性を私は痛感しているわけでございます。  で、そういう見地から、現在までやってまいりましたところには、外貨貸し制度をつくったこととか、経済協力をできるだけ推進していることとか、それから外貨預託の拡充とか、長期、中期債の購入でありますとか、あるいは海外投資を促進するための税制上の措置でありますとか、あるいは輸銀の投融資資金の金利の引き下げでありますとか、あるいは対外投資の自由化の完全実施をするとかいうようなことをいろいろやってまいったわけでございますが、さらに、ただいまも御指摘のように、もっと積極的なものが必要だというところが、第二外為構想と言われるような積極的な構想を必要とするゆえんであって、これは田中総理からも、かねがね、大いに検討を指示されておるところでございまして、私は、特に最近のような状況におきましては、こういったような考え方を大いに発展的に拡充したい。どうかしてこの第二外為構想というようなものを実現をはかって、外貨をうんと活用したい、そして、せっかく、と申しますか、たまっておる外貨を国民に還元する、あるいは南北問題の解決に資するとか、あるいは海外に対する投資を促進をして、そうして、長期にわたりまして日本の資源問題等の解決に資するとかいうような構想を、この際こそ展開し、実現を期していくべきではないだろうかと、こういうふうに考えるわけでございます。
  56. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 対外経済調整法の必要性を考えました一つの施策として、第二外為のようなものをつくる必要があるという考え方であったわけであります。まあ、日本は外貨積み増しをされておりますし、これを海外援助に回すといっても、なかなかそう簡単に回せないわけでございますし、ひもつきのない援助で、すべてドルを放出するということになれば別でございますが、そうでなければ、ほとんど円建てで物を送ったりするということになりますと、外貨には直接影響しないわけでございますし、まあ、日米間の話し合い等によって、これから石油資源開発の問題とか、いろいろな問題に対しても、日本とアメリカ、日本とイギリス、日本とフランスというように、多角的にジョイントベンチャー式で仕事をやるということが望ましい姿であるというような話し合いを続けており、その後日英の間にADMAの石油問題、七億五千万ドルばかりの問題が解決しておるわけでございますし、いままたインドネシアのガス開発の問題に対しても案件がございます。そういうような問題を考えてみても、外貨を直接使えるという道を開いて、長期投資ということを考えるべきだ、しかも、なかなかスケールが大きくなりまして、国際的に参加をするということになると、民間だけではなかなかいまの制度の中で外貨減らしというには効力がないわけでありますので、第二外為のようなものをつくってはどうかという提案をしておるわけであります。  まあ、外為特会法を改正して、外為特会でも行なえるんじゃないか、日銀自体が買ってもいいじゃないかという——理論的にはそうですが、なかなかそうはいかないと思うのです。ですから、投資を目的とした外為会計のような別なもの、外為特別会計でなくてもいいと思うです。別な機関というものをつくって、そこへ特会からドルを放出して、そうして積み増しされたものはアメリカの市場において株を買うとか、いろんな手段があるはずであります。それは、ただ利益を生むということではなく、日本の資源政策、海外投資、長期資産の確保という面で望ましいことであるという考えでございます。まあ外貨貸し、外貨の直接貸しということをやりましたので、これでうまくいくんだと言っておりましたが、なかなかうまくいかないんです。一億五千万ドルか一億七千万ドルしか、一年もかかって出ておらないわけですから、この程度でもってドル問題が解決できるわけはないのであって、これは、ある場合においては二十億ドル、三十億ドル、五十億ドルというようなものにもなるわけであります。これはアメリカの連銀債でも特別に発行して長期的なものでも買えるというなら別ですが、そういうことにはアメリカは乗り気じゃありませんし、そういうことであるなら、第二外為のようなものがどうしても必要だという考えで今日まで考えてきましたが、主管大臣である大蔵大臣もしごく賛成のような発言をいまいたしましたから、これはひとつ十分勉強してもらいたいと、こう思います。
  57. 羽生三七

    羽生三七君 ずっと前の報道ですが、通産省でやはりそれを考えて、何か特別立法を用意しておるように、かなり新聞には具体的に出ておったんですが、何かそういうことを通産省でやっておいでになるんですか。
  58. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 第二外為の構想は前からございました。しかし、去年以来外貨貸しをやりまして、大体三月末で九億ドルぐらいの外貨貸しがすでに行なわれております。最近ふえましたのは、濃縮ウラン、それからADMAの石油の支払い、こういうものに相当の外貨を貸してあったからであります。しかし、そういうふうにさらに外貨を活用するという意味において、もっとしっかりした制度をつくる、そういう点から第二外為という構想を引き続き検討しておりますが、最近の輸入問題並びに物資関係の需給調整という面から見まして、ある程度の農林物資あるいは非鉄金属等について備蓄をやる必要が出てきておるように思うのであります。そういう意味において、備蓄の意味もかねた外貨活用という意味の構想をいま通産省で練っております。新聞には何か、輸入促進公団というような記事が出ておりましたが、別にまだそういう支出は固まったわけじゃございませんけれども、輸入備蓄という意味の構想から発した、いまのような外貨活用制度と同時に、国内の需給調整制度というものを安定的に考えようとしているわけであります。
  59. 羽生三七

    羽生三七君 こういう第二外為制度の創設等について、日銀ではどういうお考えを持っておるか、承りたいと思います。
  60. 佐々木直

    参考人佐々木直君) いまの多額にのぼりますドル資産というものを日本の将来のために活用する、われわれの後に続く国民のために生きて使っていくということは非常に大事なことだと思います。それからまた、日本銀行の立場といたしましても、いまドル資産が相当ふえております。それで、国内における資金の調整をいたします場合に、日本銀行が自分の資産を売却して資金を吸収するという手段が必要でございます。ところが、いまのように資産の中で外貨がふえてまいりますと、外貨の売却によって円資金を吸収するということはむずかしゅうございますので、これをなるべく国債その他オペレーションに使用できるものに移していくことが必要であります。そういう意味で、第二外為会計ができて、そこに日本銀行の外貨を渡しまして、かわりに国債を受け取る。そしてその国債によりまして国内の資金の需給を調整するという、そういう道も開けてくる。それで、両方から考えまして、この構想には私といたしましては賛成をいたしております。ただ、つけ加えまするが、いまのような国内におけるオペレーションの材料の不足を考えまして、われわれのほうでは売り出し手形制度を開発しておりますので、それによって現実には資金の吸収をはかっておることをつけ加えておきます。
  61. 羽生三七

    羽生三七君 私、専門家でないからよくわかりませんので、勉強のために承るんですが、第二外為の場合、円資金を調達するのかどうか。それからまた、現在の外為から第二外為へドルをどうやって移すのか、どうも私にはよくのみ込めないので、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  62. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいま日銀総裁からもお話がありましたが、いましばらくちょっと時間をおかしいただきまして、その方法論を検討して、御説明をすることにいたしたいと思います。構想としてこれを具体的にうまく運営がやれますようにいま検討をいたしておりますから、もうちょっと時間をおかしいただきたいと思います。
  63. 羽生三七

    羽生三七君 実は、皆さん全部、いま総理大臣はじめ関係閣僚、それから日銀総裁、みな大体御賛成のようなふうですが、しかし、よほど気をつけないと、特に留意しなけりゃならぬことは、これは企業の原材料の輸入代金の前払いになったり、企業の輸出促進等の一環につながるおそれたしとしないんです。そういうおそれが絶対出ない保証がない。だから、現下日本経済が要求しておるものと実は必ずしもマッチしない逆の方向へ走るおそれなしとしないわけです。だから、その辺をどうするかということを考えなければ、必ずしも安易に、第二外為ができれば、それが外貨の活用になると一がいに言い切れないと私は思います。だから私はむしろ、自分のことを申して恐縮ですが、先日ここで平和基金の創設はどうかという提案をしましたが、実際にほんとうに有効に外貨を使える方法があるのかどうか、現在の状態とどう違うのか、蓄積されているいまの状態と凍結というような場合、どう違うのか、それも私にはよくのみ込めない。だから、活用の方法といってそんなに簡単に私はあるとは思えません。だから、むしろ、この間申し上げたような平和基金制度なんかで、もっと有効に使ったほうがいいと思いますけれども、それはとにかくとして、いまの日本経済が要求しておるものとおよそ逆の方向に走りかねないような第二外為の創設は十分留意していただかなければならぬと思いますが、この点はいかがでありますか。
  64. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 羽生さんは専門でないという前提でお話しなんですが、実は私も大いに考え、かつ検討しておりますのは、その点でございます。現下の日本経済政策の運営に逆行するようなふうなことになってはいけません。そこで、しかし一方で外貨の活用ということは必要であり、そして、第二外為の構想、これが逆行しないように、一方の目的に達するように、そして先ほど私が申しましたような目的のほうに限定されて活用されるようにするのにはどうしたらいいかということについて、いま少し検討の余地をお与えいただきたいと思います。私も、そう先走って外貨活用というだけでもってやりますと、これは逆行するような効果が出てこないことを保しがたいものでありますから、その点で、もう少し検討を慎重にやらしていただきたいと思います。  それから、基金等の問題につきましては、これも確かに私は御見識のあるお考えであると思います。将来——現在はもう予算の御審議を願い、まさにもう時間的にも余裕がないわけでございますし、今後の情勢の推移を見ながら、あるいは立法その他の必要もあろうかと思いますが、そういう点につきましても十分検討させていただきたいと思っております。
  65. 羽生三七

    羽生三七君 もう一つ私の疑問は、マルクや金を買わないと約束しておる日本として、二百億ドルの正しい使い方というものは、なかなか私容易じゃないと思うんですよ。安易な使い方をやればいまのようなことが起こってくるという。そこで、先ごろ当委員会で、ドルの凍結について日本も応分の負担を考えにやならぬと言われたのは、一体それはどういうことをさしておるのか。これはあのとき承って、一体具体的には何を大蔵大臣はお考えになっておるのかよくわからなかったので、この点をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  66. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 凍結ということばは、先ほど申しましたが、コンソリデーションということは、本来はあまり望むべきことではございませんけれども、ただこれは、むだにしてしまうとか、ほんとうに塩づけにしっぱなしというのでなければ、ある程度は交換性との関係もございますし、将来の楽しみと申しますか、そういうことで債権が保全されるということであるならば、ある限度においては考え方協力してもいいではないかと、こういう考え方でございまして、したがって、ドルの残高についてのコンソリデーションということの方法論を検討するということについては、日本としても積極的にそのスタディには参加をするという意図を表明した、こういう経緯でございます。
  67. 羽生三七

    羽生三七君 その場合ですね、これは、こういう質問をするのはやぼかと思いますけれども、応分ということばはどの程度のことを考えられるのか。これはある意味では国損に通じますからね。どの程度のことが応分なのか、これは、いま何十億ドルとか、それからそれをどういうふうにとかということはなかなか言えないでしょうが、どういうことをお考えになっているのでしょう。
  68. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは、内容、仕組みの問題でございますから、大ざっぱに、つかみで何十億ドルというようなことは申し上げられません。これはひとつ、コンソリデーションの仕組み、あるいはその内容、それと関連いたしまして、それからまた、日本自身としての外貨の活用が望ましいような形で、できるものとの関連も見なければなりませんし、いたしますので、これはまず今後の二十カ国代理会議などで、コンソリデーションということをやるとすればどういう方法でどうやるかというような検討をにらみながら、日本としては、いやしくも国損を起こさないように、国益につながるようなことということで、いま何十億ドルあるいは百億ドルというような、額をあげて申し上げる時期では私ないように思います。
  69. 羽生三七

    羽生三七君 今度のあの共同コミュニケの中に、客観的指標の場合、外貨の保有高を基準にすると、こういうことが出ております。ところが、この蓄積は外貨は現実には投機資金としては使われないわけですね。だから、実際に実害があるわけでは私はないと思います。したがって、これを基準とするのはおかしいじゃないかという、こういう私は気がするんです。この問題は各国意見が分かれて、だいぶ議論があったようですが、日本としては一体どういう意見を持ち出されたのか、伺わしていただきます。
  70. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) いわば、指標の一つのデータとして考えることは適当かもしれないけれども、単純な外準だけを指標に用いるということには反対であるという態度を日本としてはとっておるわけでございます。ことに、その点はやはり一つの大事な点でございますから、私の演説の中にも特にそれに触れまして、単純な外貨準備というようなものを唯一の指標にするというような考え方は、たとえば過去における集積のあらわれであって、これからの各国の政策の展開、あるいはもっと複雑な経済状況の反映というようなものがその指標の中に加えられないということは、これは理論的にも非常に不合理であると。御承知のように、かつてある人の私案に、外準を唯一の指標にするということは簡単明瞭であって、これを基準にした操作に協力しない国にはサンクション、制裁をかけるというような、非常に単純、明快ではあるかもしれませんが、そういう案が出たことがあり、これを支持する国もないではなかったわけでございますが、そういうことになることは日本として好ましいことでございませんから、これはもう取りやめにして、ただ、何かよるべき指標というものは必要であろうと、その中にこれも一つの資料として入れるということにはあえて反対はしないというようなことに相なった次第であります。
  71. 羽生三七

    羽生三七君 これも報道ですが、客観指標の作成ということは、黒字国の平価の切り上げをねらったアメリカの主張で、問題の進展によっては、巨大な外貨を持っている日本は非常な困難なところへ追い込まれる危険性があると、こういう報道があるわけであります。それはそういうことがあったのかなかったのか、そういう場合、もう一つ基準となるものがあるとすれば、むしろ基礎収支ではないかという気がするのですが、この辺いかがでありますか、お伺いいたします。
  72. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 前段にお話しになりましたことは、そういう危険性がございますから、それで私も特に大事な点と思いましたので、私の冒頭演説にもその点を特に触れておいたわけでございます。  それから後段のほうのお話は、それも一つの要素として組み入れるべきもので、適当かと思います。要するに基礎収支といいますか。そういうことをいろいろのデータを集めて、そして客観的なインディケーターをつくるということには、私もけっこうだと思うんですけれども、ただ、この説の出てきたゆえんのものは、単純な外準を唯一の指標にするということになると、これは日本としては相当けんのんなところへ追い込まれますから、これは私としては反対であると、その私どもの反対の意見も列国は十分理解したと私は確信いたしております。そして、今後しからばいかなる複数のインディケーターをとるのが適当かということについては、専門家同士で検討しようということになりましたことは、コミュニケでおわかりと思います。
  73. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、いまそういう大蔵大臣の御心配が現実のものとならぬように、作業部会、専門家グループで討議をする場合に、日本の意向というものは取り入れられるお確信がございますか、その辺はいかがでしょうか。
  74. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私は、だいじょうぶであると確信いたしております。
  75. 羽生三七

    羽生三七君 次は、パリ会議でスワップの発動と拡大が合意されたことは、これは言うまでもございませんが、その際、日本とアメリカとの間で、日本はスワップから除外する旨の了解が成り立っていると、これは報道でありますが、こう伝えられておりますし、また、報道でなくとも、実際に今度の会議を見れば、何かそんなふうになったようにも見えますけれども、ただ、報道のほうは、そのかわり、日本に大幅な、いま現在はフロートになっておるから、現実には、そういうことはどういうふうな影響を持つかわかりませんが、大幅な円の切り上げを期待して、日本をスワップの適用から除外しておるという、こういうように伝えられておるんですが、その辺はどういうことなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  76. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) パリ会議の終わりましたあとで御報告や御説明をいたしましたように、パリ会議のコミュニケの第五項にスワップのことが出ておるわけでございますが、これは日米関係に当然適用されるものでございまして、日本が除外というような——私も実はある新聞の記事を見て、これはどういうところから出たのか、あり得ざる話でありまして、やはりイマジネーションがあまり多くあり過ぎたんではないかと思います。これはもう三月十六日のコミュニケではっきりしておるところでございますし、それから、現に当委員会で、あのときにも日銀総裁からも御説明があったところでございまして、スワップは現に日米間にも、約束というか、約定があって、その十億ドルをさらに拡張するということになっておりまして、日銀とニューヨーク連銀と申しますか、米連邦連銀との間の話し合い、取りきめ等が引き続きずっと有効に続いておることは、これは御承知のとおりでございまして、いわんや、これは論理的にも続かないんですけれども、スワップから日本は取りはずされているんであると、しかも、日本は何十%とかの円の切り上げを約束させられたとかいうことはとんでもないことでございまして、その後のこの二十カ国委員会の開催、その内容等からごらんになりましても、固定相場ということ自身が安定し、しかしながら調整可能な平価制度ということばが合意文書で使われているぐらい、まだまだ議論の煮詰まらない状況下において、日米の間で何か約束ができているというようなことは、国際の舞台のこういう進行状況から申しましても、私は常識的にもあり得ざることではないかと、これはひとつ御理解をいただきたいところでございます。
  77. 羽生三七

    羽生三七君 ただ、スワップはドルの短期資金の移動についての対策でありますから、日本のように為替管理によってそれを押えようとする国には、その適用というものはあまり必要はないような気がするんですが、その点はどうでしょうか。
  78. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) この点はお話のとおりでございます。たとえば、ドイツとアメリカとの問、これと日本とアメリカとの問は事実が違うわけでございます。為替管理をやって、短期の資金の、投機的資金の流入をこちらは防ぎやすい立場であるし、向こうは非常に防ぎにくい立場にございますから、その点を取り上げて申せばお話のとおりでございます。
  79. 羽生三七

    羽生三七君 この今回の声明によりますと、そのコミュニケの中に、国際収支対策として貿易規制を使うことに反対することを明確な前提とすべきであると、こうなっております。このことは、アメリカの言う課徴金問題は撤回されたと理解してよいのかどうか、これはいかがでございましょうか。
  80. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) そのコミュニケの意味することは、そのとおりにお読みいただけば、課徴金というようなことはあり得ない、手段としては考えられないということを私は意味しているものと、こういうふうに理解をして適当であると思います。
  81. 羽生三七

    羽生三七君 それなら非常にけっこうでありますが、ところがですね、アメリカの国会に近く提案されるという通商法案の骨子は、緊急輸入制限の発動条件の大幅緩和をはじめ、国内産業保護の色彩の濃い、きわめてきびしいものであることは御承知のとおりであります。このことは、今回の声明に盛られた、いま申し上げたあの趣旨に基づいて、実際に発動されないという保証——いま蔵相は発動される心配はないと言われましたが、それとの関係はどうなのか。国会は国会、声明は声明ということなのか。もちろん、アメリカの国会の今後の推移を見なければわかりませんが、必ずしも、私はここでもうそんな心配は全然ないと言われるほど楽観すべき状況ではないと、こう思いますが、もう一度お聞かせをいただきたいと思います。
  82. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) このコミュニケに関する限りは、アメリカの代表は財務長官でございますが、財務長官を含めて満場一致採択をされたものでございますから、このコミュニケに関する限り、アメリカの意図はそこに表明され、かつ、これに合意をいたしました、こう申し上げて間違いないと思います。
  83. 羽生三七

    羽生三七君 それだから、コミュニケはコミュニケ、アメリカの国会は国会と、こういうことですね。コミュニケがすべてアメリカの国会の動きも制約するほどの強いものだと、こういうことですか。
  84. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいま申しましたとおりで、コミュニケに関する限りは、アメリカの代表もこの満場一致の採択の中に参加をいたしております、という事実を申し上げたわけでございます。
  85. 羽生三七

    羽生三七君 それで、米国は、輸入課徴金の発動については、その回避のかぎは日本側の今後の態度にあると、こう言って、六月の日米経済合同委員会の以前にも具体策を示すように迫ったと、こう言われております。先ほど、ワシントンで個別会談なんかやったことはないというお話もありましたが、まあその点は、お会いになったか、そうでないかは別として、しかし、アメリカはそんなに私は日本に対して甘いものではないと思いますが、六月の日米経済合同委員会には、何らかの日本の態度の表明を迫られることはありませんか、お伺いをいたします。
  86. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) アメリカの人は、会いさえすれば日米の貿易のインバランスを困ったことだと言っておることは事実でございますし、また、事実そのとおりで、日本としても、これはドルの状況がこういうわけでございますから、日本としてもまことに困ったことでございます。ただ、先ほど申しましたように、この会議に私も出席いたしまして、二日間、まあ日曜もいろいろの人に会いましたけれども、これは通商問題についての交渉ではございませんから、困った困ったという声は耳には入りましたけれども、どうせい、どうしよう、あるいはこちらからどう要請するというようなことは、交渉——ネゴシエイションとしてはやっておりません。これは、いずれそういった問題については、六月の日米閣僚会議等においてあらためて話し合いが行なわれることもございましょう。同時に、これは私の感想ですけれども、やはり累次の円対策というものの日本で考えかつ表明していることは正しい、日本としても正しい行き方であると。で、そこに示され、決定された線は、私は政府としてこの上とも努力をいたすべきである。これは相当のところまでやっておるわけでございますが、たとえば、私の所管で申しますと、実は資本の自由化がまだやられておりません。今月になりましたが、今月、まあ初めの予定は中ごろと思っておりましたが、どうかして四月の中ごろには、資本自由化に対する日本政府としての方針を決定いたしたいと考えております。とにかく、円対策というようなものが内外に公表されておって、これを着実に実行していくということが日本としても必要なことであるということは、私の感想、印象として強く受け取れた次第でございます。
  87. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 午後一時まで休憩いたします。    正午休憩      —————・—————    午後一時六分開会
  88. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、羽生君の質疑を続行いたします。羽生君。
  89. 羽生三七

    羽生三七君 大蔵大臣は、ワシントンで東南アジア八カ国の蔵相を招待して会談したと伝えられておりますが、これはまあ、脱ドル体制に備えて、円を背景とした新しい経済圏を志向されておられたのかどうか。それほど明確ではないにしても、そういうことを多少はお考えになった集まりかどうかお伺いします。
  90. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 午前中にも申し上げましたように、一つ世界というワク組みで国際通貨問題はぜひとも確立したいということを、各国とも基本的には合意しておるわけでございますけれども、同時に、やはり地理的の関係や、いろいろの相互の経済関係からいって、ブロックという意味では決してございませんけれども、地域協力の姿というものはいろいろの意味で育て上げ、かつ相互に協力し合うことが一方において非常に必要なことであると考えるわけでございまして、機会あるごとに、こういう雰囲気やお互いの意見交換というものをつくってまいりたいと考えているわけでございます。  それから、たとえば今月の下旬に、ADB——アジア開発銀行の十周年の創立記念総会があるわけでございますが、そういったような機会も、できるだけ関係国問の意思疎通の場に活用してまいりたい、そういうふうなこともございましたものですから、会議の合い間を縫うて自由な意見の交換をいたしまして、気分的には非常に効果があったと思いますが、具体的に、円というものを国際的にさらに積極的な場で役立てていく仕組みとか方法とかいうところまでは、まだもちろん具体的に構想ができているわけではございません。また、かりにそういうことを考えるにいたしましても、日本が積極的にどうということよりも、日本関係の深い国々がこういうふうなやり方をすることが望ましいというような機運が出てくるかどうかが前提でございますし、一方では、ナイロビを目ざして国際通貨制度の確立ということが言われているときでございますから、これらに対しましても、かりそめにも障害になるようなことは避けなければなりませんから、あまりあせった、また練れない考え方をいろいろと討議し合うというようなことは慎重にやっていかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  91. 羽生三七

    羽生三七君 今後、円を国際通貨としてどう位置づけていくかということは非常に重要な問題だと思います。これは日本とアメリカとは貿易関係で深い関係を持っておるにしましても、この国際通貨体制の現状からすれば、円とドルとの関係が従来どおりであってよいとは、たれも考えてはおらないと思います。したがって、ドルに対して円がより行動の範囲を広げなければならぬという期待は当然あっていいと思います。私はここで必ずしも円ブロックを云々する意思はありません。ありませんが、円の将来をどう持っていくかは、これは実は切実な問題として、野党であっても私たちも真剣にこれは考えなければならぬ問題だと思っております。そういう意味で、この問題の真剣な政府当局の検討と、正しい運営を期待して、通貨問題に対する質問はこれで終わって、次の問題に移ります。  最近の経済動向を見ますと、景気の上昇速度がきわめて激しことは言うまでもありません。新聞報道によれば、東証上場百六十二社の利益率は、昨年九月期に比べて四四・二%の増、第一部、第二部合わせて三月期のそれは、昨年九月期に比して経常利益で二四・五%も上昇。また、投機ブームを反映して、証券会社の中には、前年の二・一六倍、四百十九億二千六百万円の所得をあげているところもある。さらに国税庁の、これは二、三日前の発表ですが、これによると、資本金一億円以上の会社のうち、上位五十社の所得は一兆六千八百十五億円で、前年比二八%増と、こうなっております。こういうふうに見ますと、特に東証の上場の第一部、第二部を合わせた会社のものは、経常利益で二四・五%上昇と、こう見込まれております。そういう中で、卸売り物価の上昇率は、先ほどもお話があったように、前年同月比九%以上、史上最高を記録いたしております。それからまた、これは卸売りだけではない。消費者物価も、けさの新聞に報道されておるように、東京の消費者物価は四十年代の最高を記録しております。こうした動きは、明確にこれは利潤インフレと言えるものではないでしょうか。実は私、これは日銀総裁にも聞きたかったんですが、現在のこのような驚くべき企業のばく大な収益というものは、明らかに利潤インフレを意味しておると思いますが、御見解を承りたいと思います。
  92. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) インフレというものの定義は実はございませんで、従来は通貨面からの定義があったわけですが、最近は、海外の物価とも、国際関係の緊密化によって相互に関連をするわけでございますし、経済の成長の問題もございますし、賃金の問題もあるというようなことで、あまり一定の、近代経済学としてインフレとはかくいうという定義はございませんけれども、大体常識的には、かなりの程度の一般的な物価騰貴、すなわち卸売り物価も小売り物価も含めて、それが一般的な物価騰貴があって、それが長期間、しかも加速的に継続する状態というふうに解しているわけでございます。このごろの状況は、従来申し上げておりますように、昨年の中ごろから不況の立ち直りが非常に顕著でございまして、ことに昨年末から次第に加速的に物価の騰貴が目立ってまいりまして、卸売り物価から、最近は、いま御指摘のように、東京の卸売り物価指数において戦後の最高といわれるような、戦後のインフレ時期を除きまして、安定している時代の最高を見たようなわけでございます。ただ、一方におきまして、この状況に対する批判が非常に強くなっていることも事実でございまして、総合商社に対する強い批判、またそれに対する会社の売り惜しみに対する法的規制の問題も出ておりますし、また、通産、農林当局においていろいろ行政指導していただいておる。そういうような関係から非常にわかったことは、需要を満足させるだけの供給が実はあるということでございます。ほとんどのものについて、問題物資については、ほとんどそういうように言えるのです。しかも、ああいう部分的なはなはだしい騰貴があるということは、やはり最近は、何といいますか、インフレマインドと申しますか、持っておればもうかるぞというような心理が働いているということがいなめないと思うのでございます。こういう点では、おかげさまで、そうした国民の心配、国会を頂点とする国民の心配というものが響いてまいりまして、部分的には物が出始めている。毛糸などは暴落をするのではないかということを心配している者もあるという状況でございまして、この機を逸せず、問題の過剰流動性の線についても、さらに歩を進めていきたいと考えているわけでございます。  私の聞いておりますところでは、きょう一時に日本銀行において公定歩合の引き上げをやる、〇・七五%引き上げるというふうに決定をするということを聞いております。さらに、私どもは、その上にもまだ、状況を見て必要な手を打ちたいと考えているのでございます。  そこで、御質問の点に戻りまして——たいへん余談を申し上げて失礼でございましたが、需要を利潤によって引っ張っているのじゃないか、それがインフレではないか、こういう点は、ちょっと一般的なものではないと思うのですね。非常に利益を得ているのは相当限られたものであって、一般のすべての会社、すべての企業が非常な高利潤を満喫しているかというと、必ずしもそうではない。現に、政府のほうは、輸出にたよっている中小企業の対策として、二千二百億円というものを特利をもって貸し出そうというようなことをやっているわけでございまして、その点、必ずしも利潤インフレと言い切るのはいかがなものであろうかと思います。  それから、一つは、事のついでに言わしていただくと、私はやはり、先ほど羽生委員のおっしゃられました、政府野党は攻撃しているのではないとおっしゃった点、非常に感銘を持って伺ったのですが、何かやはり、物価が上がっていくことは、これは政府がけしからぬと、これは私ども甘んじて受けますけれども、そういう観点で、物価は高いのだ高いのだ、まだ高くなるぞと言うことが、それじゃ高くなるのなら買わなければ損じゃないかという心理を呼んでいる点も、あながち否定できないのじゃないか。やはり物価国民のものであるから、まあこの国会においても超党派的に、物価を征伐するという強い意思をこの際持つべきではないかというふうに思っているわけでございます。
  93. 羽生三七

    羽生三七君 この利潤が大きいと民間設備投資がふえるというのが、実は日本経済の過去のパターンです。それで私は言ったわけです。それで、今度の景気上昇も例外ではなくて、四十八年一月の機械受注状況は、これは船舶を除いて、前年の四割増であります。それからまた、四十八年度の民間設備投資も、十八兆七千億円の政府見通しでありますが、開銀調査では、それを五千億円も上回って、十九兆二千億円に達しております。この景気が過熱していることは確実ですね。そこへもってきて、経済社会基本計画長官の出されたこれによりますと、こう書いてありますね。「民間設備投資が活発化し景気過熱が生じた場合、それを放置すれば、本格的な需要インフレーションが発生する危険性がある」——そのとおりでしょう、いま。いまなっている事態はそのとおりなんですよ。だから、利潤インフレも需要インフレも、あらゆるものが複合的にいま発生しているわけです。現段階はまさにそれに相当するインフレーションじゃないですか。これは承っておきます。
  94. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 昨年の第四四半期に非常に機械に対する受注が伸びたということを申し上げました。ほうっておくと、機械受注ということは設備投資の前提でございますから、設備投資がふえるんではないか、こういうことを心配しておることを申し上げまして、私ども非常にその点を懸念しており、日銀でも銀行の窓口指導によりまして、そうした点を押えるようなことをいろいろやっておるわけでございます。ところが、いま出ておる、たとえばセメントの逼迫というようなものは、そうした設備投資よりも住宅投資に非常に向けられておるというふうにも聞くわけでございます。で、その限りにおいては歓迎すべきことでございますわけですけれども、まあ私どもとしては、そういう設備投資中心型の経済でなくて、公共投資、あるいは民間の住宅投資、あるいは個人消費、そういうものに向けるようなことをできるだけ誘導しているわけでございまして、で、どうもまだ実態がはっきりつかめませんわけですけれども、私は、設備投資は、いわゆる公害企業というようなことを言われておりまする、従来の経済を引っぱってきたパターンでありまする重化学工業とか、いわゆる基礎産業ですね、鉄鋼とか、そういうようなものに対する非常な設備投資がふえているとは言いがたい状況であると、現時点では思っておるわけでございます。で、やはり設備投資も、公害除去のために必要な設備投資であるとか、そういうようなものに向けるようにできるだけしてまいりたいと思います。  で、最近の問題は、やはり在庫投資がふえているという点が一つの問題だと思うのです。これはやはり買いだめにつながっていく、売り惜しみ、買いだめにつながっていくわけでございまして、そういう点を少し洗いまして、できるだけ個人蓄積、公共蓄積、そういうようなものをふやすような方向に誘導してまいりたいと考えておりまして、現状は御指摘のような問題点はありますけれども、私ども決してこれが経済社会基本計画で申しまするそうしたパターンをはずれた方向へ走っているというふうには思っていないわけでございます。
  95. 羽生三七

    羽生三七君 これは時間があれは——はっきり経済社会基本計画にそういうふうに書かれていて、今度はそれが公害設備投資等だといって問題を全くそらしてしまうということはまことに遺憾です。  ところで政府は、よくアメリカのインフレとか、あるいは輸入インフレというような表現を使われますが、これは、外国の卸売り物価が四%あるいは五%の上昇率を示しておることを言うのではないでしょうか。そういうことをさしておるとするならば、日本は、まだ外国に比べて低いにしても、いま驚くべき高さで卸売り物価が上昇していますですね、まあ消費者物価のことは別として。こういうものをもしインフレと呼ばなければ一体何をインフレと呼ぶのか。だから定義の問題じゃないのです。だから、現実の問題として、まさにいまやインフレであるし、私がいまここでインフレと言ったからといって、そのために買い占めが一そう多くなるなんという、そんなものじゃないのです。これは日本の高度成長で十分な資金の余裕ができて、投機に回すような金をみんな山ほどかかえているからこういうことになるんで、そんな、ここの国会の論議でインフレが高くなったり低くなったりするものじゃないと思います。
  96. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) インフレということばを使ったからものが上がるとは私も思いませんけれども、ただ現状は、いま申し上げたように、一般的な物価が加速的に、継続的に上昇しているという点では、ものによっては下がっておるものもあるわけでございまして、たとえば電気製品とか、そういうものは現実に下がっておるわけですね。ここでまあ、いろいろインフレの形があって、非常にばく然たるものがクリーピングインフレーションとか、あるいはデマンドプルだとかコストプッシュだとか、いろいろ言っているわけですが、日本の場合はやはり低生産性部門があって、ことに流通機構に非常にそれが多いと、そこで流通機構の後進性のゆえに物価高を呼んでいるという面が非常にあるんで、その点では、四十八年度予算で相当にこの点を見ているわけでございます。いわゆる物価対策費一兆三千二百億と言われるのはそれでございますけれども、しかし、まあ羽委員の仰せられるように、ばく大もない利潤が一方に発生しておる。この使い道が、まず木材に行き、土地へ行き、株式へ行き、最近は消費物価にだんだん来ている、これを私も否定していないのです。ですから、何とかしてこれを退治したいということはもう口をすっぱくして言っておりまして、おかげさまで少し一部に買いだめ品のまた再放出が始まらんとしておるのでございまして、この点はぜひひとつこの機をとらえて、物価引き下げ運動を全国民の運動として考えていただきたいし、また下がったものはどんどん報道していただきたいというふうに私は思っております。  実は昨日の閣議で総理からも、やっぱり暗やみでいるようなもので、物価が上がる上がると言われていてどうなっているかわからないから、もっと情報を提供してもらおうじゃないか、経済企画庁しっかりして、通産、農林その他の省と連絡をとってやれというお話がございまして、まことにそのとおりでございますので、私どもは、一体どのくらいの需要があって、そうして現在どのくらいのものが用意されておるかということをできるだけ国民に明らかにすることによって、明るい町を歩いていればどこに何があるかよくわかりますので、不安というものはないわけでございますから、そういう物価のあり方をつくり上げたいと思っておるわけです。現に洋服なども非常に値上がりしていると、こう言われますのですけれども、洋服の需要というのは八百万着と言われているわけですね。ところが、現実にストックが一千万着あるのですね。そうしてその一千万着ストックがあるということがわからないと、洋服はまだまだこれは上がりそうだというのでみんな要りもせぬ洋服をつくるようになる。こういう点をひとつ改めることがいま非常に大事なんじゃないか。私どもはひとつ情報を提供するということを大いに心がけたいと考えておるわけでございます。
  97. 羽生三七

    羽生三七君 二、三年前に、当委員会、この席で、私が物価上昇を年金にスライドしろと言いましたところが、羽生さんは敗北主義だ、物価なんかこれ以上上がるはずはないと言われたのは政府の閣僚なんですね。ところが今度は、年金の物価スライドをやるでしょう。だから、物価を下げられる確信がおありになるのかどうか、そういうことですね。何を、どういう状態が来ればそれではインフレとおっしゃるのか。いまそれほど御安心なら、これ以下に物価を下げられる御確信があるのかどうか、これを承りたい。
  98. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 物によりけりであると思うのでございます。非常に生産性の高い、たとえば電機製品などは現に下がっておるのですね。しかし、一般的に物価の水準を下げていくほうがいいかどうかというと、私はこの点は、羽生委員も前の質問で仰せられておりましたが、微騰するほうがいいということを仰せられておりましたが、私もそう思っておるのです。実は二けたの成長というのは、これは国民の非常な爆発的なエネルギーの結果とはいいながら、ちと高いと思うのですね。今度はもっと安定した形がいい。  そこで、九%というのも高いじゃないかという議論もありますが、いままですでに一〇%以上の成長をしてきたものを五年間の間に急角度に七とか六とかいうところへ落とすわけにはこれはいかないと思うのでございます。そこで九までして、あとのまた五年ぐらいでは六ないし七ぐらいのところに持っていくというふうに考えておるわけです。  その間の物価の点はどうかというと、まあ消費者物価で四%台ということを申し上げておりますわけでございまして、そういうところに落ちつけるように、いわゆるポリシーミックスで、財政と金融と貿易と、そうして最近は為替がフロートしておりますから、この変動する為替の形をじょうずに使いまして、こういうところへ持っていきたいというふうに思っているわけでございます。
  99. 羽生三七

    羽生三七君 実は日銀総裁におってもらおうと思ったところが、いまの公定歩合の引き上げ問題で帰られてしまったのですが、〇・七五%公定歩合で引き上げた場合、私はタイミングを誤っておると思いますが、おそかったと思いますけれども、それはそれとして、具体的にはどういう影響があらわれてくるのか、日本経済の実態の上に。これは大蔵大臣ですか経企庁長官ですか、承りたい。
  100. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) この機会に、お答えに先立って申し上げますが、本日、日本銀行は公定歩合を引き上げることに決定いたしました。  最近の経済情勢を見ますと、景気の上昇基調は一段と高まっておりますし、諸物価の高騰も著しいものがございます。国際通貨問題の経済に及ぼす影響につきましては十分留意する必要がありますが、最近の景気動向にかんがみまして、この際引き締め措置を一段と強化する必要があると考えます。今回の公定歩合の引き上げは、現在の経済情勢から見まして適切な措置と考える次第でございます。政府は、今後とも日本銀行と緊密な連絡をとりながら、金融政策の機動的な運営に一そうの努力を払ってまいる所存でございます。  公定歩合の変更の内容は、商業手形割引歩合、並びに国債、特に指定する債券または商業手形に準ずる手形を担保とする貸し付け利子歩合が年五・〇%になります。これは現在より〇・七五%の引き上げでございます。その他のものを担保とする貸し付利子歩合も同じく〇・七五%引き上げまして、年五・二五%にいたします。明後日、月曜日から実施をいたすはずでございます。  これを前提にいたしまして、私から日銀政策委員会に対しまして、最近における経済一般の情勢に照らし、臨時金利調整法第二条第一項及び第二項の規定に基づいて定められております金融機関の預貯金等の金利の最高限度について再検討する必要があると認められますので、金利調整審議会に諮問いたしました上、これを変更せられたいという指令を出しました。で、これは臨時金利調整法第二条第二項の規定によって行ないました措置でございますから、追って預金の金利の引き上げもきまるはずでございます。  で、これはただいま簡潔に申し上げましたが、御案内のように、金融政策につきましては、総需要を一般的に抑制をするということについては、先般来はいまだその時期ではなかろうと、しかし、同時にインフレマインドを抑圧することが必要であることと、それから対象別、目的別の金融の引き締めということは絶対に必要である、こういう角度から、一月以来、詳しく申し上げる必要もないかと思いますけれども、随時、預金準備率の引き上げは二回にわたって行ないましたし、それから土地に対しあるいは証券に対し、あるいは商社金融に対し、窓口引き締めをきびしく実行してまいったわけでございますが、その後の情勢から見まして、一段と景気の上昇基調が強くなっておりますし、物価の騰貴も引き続き憂慮すべき状態にもありますので、この際ひとつオーソドックスな行き方もまじえまして、金利の引き上げということを実行することにいたしたわけでございます。これはただいまお尋ねもございましたが、これによって金融情勢がいかなる状況に数字的に変動していくかということは、的確に数字的に予測することは困難であると思いますけれども、いままでやってまいりました金融政策引き締め政策に加えて、さらに金利政策におきましても相当の措置をとりましたから、現在御憂慮なさっておりますような状況に対しましては、相当適切な効果を発揮するものと考えておるわけでございます。  なお、中小企業あるいは農業関係といったような、かねがね当委員会でも御指摘や御論議をいただいておる面につきまして、政府関係機関等の貸し出しの金利等はこれを引き下げることにいたしておりますが、これはいわば特別の政策であり、いわば特利政策でございますから、そのほうはそのとおりに、既定方針どおりに実行いたす方針でございます。
  101. 羽生三七

    羽生三七君 預金金利の引き上げは、諮問しただけでなしに、実際に実行というのはいつごろを予定されておりますか。
  102. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これはただいまも読み上げましたように、臨時金利調整法の規定によりまして、上げることが妥当であるという趣旨を含めて指示をいたしましたわけでございますが、その内容、時期等につきましては、金利審議委員会意見を取り入れることがたてまえでございますから、私から先回りして申し上げるのもいかがと思いますが、おそらく考え方として、昨年七月に引き下げました、それをもとに戻すことは当然であろうと、こういうふうに考えております。
  103. 羽生三七

    羽生三七君 まあインフレ問題、まだたくさんいろいろ申し上げたいことはあるのですが、時間の関係がありますので、ここでちょっと問題がそれるかもしれませんが、四十八年度予算の中身を見ると、伸び率は確かに福祉部門が大きい。しかし増加金額からすれば、成長政策の段階で重視された項目が圧倒的にこれは大きいわけです。これは一々例証するまでもないと思います。たとえば道路第七次長期計画等が認められたこともその一つでありましょう。ところで、この四十八年度予算の性格といい、規模といい、これは福祉経済への軌道修正と言えるものではないことは、先ほども述べたとおりであります。その結果として、物価の値上がり、インフレまたは輸出第一主義から黒字の蓄積、そしてその結果として投機買い占め、しかもそれが国民生活の必需品、病人の手当ての材料にまで及ぶと、こういうすさまじさを現出しておるわけです。また一方、列島改造論の提唱から地価の騰貴を招いたり、あるいは木材その他資材の値上がりから、庶民のマイホームの夢を砕いたことも、これは事実であります。結果的にはそうなっております。  ところで総理に、言いにくいことですが、ぜひ要請したいと思うことは、列島改造論そのもの政今日の時代が要請しておる社会改造的な創造性私持ったものであるならばこれは格別ですが、総理がさきに提唱したような内容のものであれば、結局土木事業を中心とする、主軸とする高度成長政策の延長とならざるを得ないのではないかと、私はそう思う。そこで、総理は列島改造論をあくまで固執されるのかどうか。この際これを撤回、再検討をされることを私はぜひ要請したいと思う。これは党利党略や攻撃のための攻撃ではないんです。これはまじめに、現時点における最重要な課題として、ぜひそういう意味で受け取っていただきたい。これは私はまた、御答弁があればそれについて私もまた意見を述べたいと思いますが、これはぜひ再検討をお願いをしたいと思います。
  104. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 列島改造が必要である。ということは、これはもう動かすことのできないことだと思います。これは端的に申し上げますと、東京、大阪、名古屋の五十キロ圏に総人口の三分の一以上が集まっておるのでございますから、この状態でもって車を一つ考えてみても、いま二千三百万台の車は十年たてば四千万台をこすと言われておるわけでございます。こういう状態で、一体交通網が整備されるのか、また交通が確保されるのか、もうお互いが国会に通ってくるのに、きのうの晩は私はおそかったものですから、零時でございましたから、これはもう非常にいいなあと思いましたが、これは朝などは十五分のところ、わずか六キロのところがパトカーをつけても三十分かかると、こういうことでございますから、これはもう十年、十五年先のことではなく、来年一体どうなるかという問題が存在するわけでございます。しかも土地の不足とか、それから地価の上昇とか、公害の問題とか、それだけではなく、この三大拠点にキティ台風や、かつての名古屋を襲った台風のようなものが来ないという保証は全くないのであります。チリ津波と同じものが東京湾を襲わないということはないのでございますし、また、このままにしてまいりますと、六十年を展望して意識調査をしますと、国民の八五%くらいが都市生活を望んでおる、こういうことでございますから、これはいまのままにしておけばみな拠点に集まるということで、それはもう想像することのできないくらいな混乱が予測されます。しかも、もう一つだけ申し上げますと、東京都の防災会議でもって、いま関東大震災と同じ規模の地震が関東を襲ったとしたらどうなるか。この中で一番ショッキングなデータの一つは、下町のある区の人間の生存可能率は三%だろうと、こういう事態を前提として考えるときに、成長率を一〇%にすればという仮定であのような列島改造論なるものをものしたわけでございますが、しかし、これが六%になり五%になりゼロになっても、福祉政策が進んでまいり、生活レベルが上がれば、車だけでも都市機能はすべてまいってしまうわけでございます。だからそういう意味で、列島改造論、狭いながらも日本の列島を改造することによって、まだまだ希望は持てるのだという意味で書いたわけでございますが、あの書き方というのは少しまずかったと思います。私も時間がなかったので、あの中で「都市政策大綱」というやつを前提としておりますから、いまは公害、公害といって、これはもう皆さん言っておりますが、昭和四十二年「都市政策大綱」がつくられたときに牛込柳町と大原町の交差点を指摘しております。それでも、公害でもってどうにもならないようになる、だから公害を排除しなければならない。しかも、ようやくここまで日本経済力が拡大をしてきた以上、これからはさて適正なる分配が行なわれ、しかもその分配の結果、国民生活というものが豊かなものにならなければならないのだと、社会環境整備社会保障を行なおうとしても、マッチ箱の積み重ねの中において社会保障を行なうよりも、もっと視野を転じて鳥瞰的、俯瞰的に日本列島を見るときには、同じものでも非常に大きな効果をもたらすような投資効果をあらわすということを前提にしてあの本を書いたわけでございますが、通産大臣在職中でございまして、早々の間にものしたものであるというところで、あれは通産大臣ではなく私が厚生大臣の職にあれば、そのほうから書いたわけでございますが、(笑声)ちょうど通産大臣という職で、手元にあった数字というもの、手近にあるものでもって第一巻を書いたと。ですから第二巻に、おそまきながら、これは成長政策を拡大しようとするものはでなく、国民福祉をほんとうに確保していくためにはこれ以外には道はない、道はないんです。どんな場合でもありません。こういう状態において、これはもう生産コストは上がりますし、どうにもならない状態になるわけでございますから、その意味において、真の福祉を確保するためには、経済政策でもって電力が水がと言わないで、電力が、水が、土地が、一次産業との労働調整はという面から書き出しましたから、御指摘を受けるわけでございますが、しかし、生産のために生活があるんではありません。生活のために生産手段があるのでございますから、そういう意味で、これはもう何ページか加えられてしかるべきものというよりも、やっぱり第二巻というものが一巻とすりかわるべきものであったと、そうすれば、いやしくもいまのような御指摘は受けない。私はどんな場合でもそう思います。どなたが考えられても、現時点において、これから十年、十五年、二十年、三十年、百年の将来を考えるときに、列島改造をなしとして真の国民福祉の向上ははかれないという、私はそういう考えを前提にして書いたものでございますので、そういう意味では、列島改造というものに対しては、ひとつ別な意味から御批判をいただきたい。これは、これを取りやめるとかそういう趣旨のものじゃありません。あなたは長野でございますが、東京と長野が続けば長野からでも通えるわけでございますから、長野にはまだ土地も山もたくさんあります。あります。水もあるんです。だから、そういうことがですな、私はほんとうにそういうまじめな考え方で書いたわけでございまして、これは日本列島改造論というものを十分いい意味でひとつ評価をいただきたい。お願いいたします。
  105. 羽生三七

    羽生三七君 これは改造論にはもちろんメリットもデメリットもありましょう。ただ問題は、今日日本の客観的な条件が要請している問題は、その層、その性格、その次元を全く異にしているということであります。だから必要なものは、その地域の住民なり、場合によったら国会の了承を得て、そのつど必要なものをやっていけばいいので、こういうような大網を打って、それで大きな土地の買い占めやあるいは物資の買いだめをあおるようなことをしたことにむしろ問題がある。だから、この基本的な問題の選択を誤りますというと矛盾は一そう拡大するということです。私は、総理が、現代日本経済や社会が客観的に要請しているものを正確に把握をして、そしてその実現のために誤りなきを期してもらいたいと思う。重ねて、いまお話しになったことは、ある意味においては再検討、修正ということもお考えになっていると理解していいのかどうか。私の言うような意味に直されるという意味に理解していいのかどうか承ります。
  106. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 列島改造という論が出たので土地が上がったという御指摘がございますが、それは私は反論いたしません。これはいろんな過剰流動性の問題とか、いろんな問題がありますから、だからこの問衆議院では、私もいろんな、列島改造はすべての諸悪の根源であるというような意味の御発言もございましたので、とうふが上がったのも列島改造との関係があるんですかと、こう言ったら、いや、まあ、あの……と理解をいただいたわけでございますから、それは私は率直に申し上げまして、列島改造というものに対しては、必要であるということは、これはある意味では書き出し方がまずかったと思いますが、これは福祉政策というものを完全にやっていくためには、だから、あの中にも一応書いてありますが、この世に生まれたことを、この国に生まれたことを真に喜び合えるような日本をつくるためには列島改造が必要であると、こう書いてあるのでございまして、あなたが、経済的な面が強調されては困ると、また、そうでなくても安定成長へ持っていかなければならないというものが逆の方向に作用しては困るというようなことであれば、私はそのとおり、第二巻を必要といたしますというのは、真に列島改造論が指向するものを書き足さなければならないと考えておるわけでございますから、列島改造論のマイナス面は除去しなければなりませんし、修正も一向差しつかえありません。あれは一つのたたき台として国民の前に出したわけです。それで、これはあらゆる角度からたたいていただいて、真に実行可能な理想案をきめてもらってこれを実行したいということのたたき台を出したわけです。ただ、観念論だけを幾ら言っておってもよくならないのです。テンポが速いものだから、あっと言っておるうちに、思索をしておるうちに過密は進んでしまう、地価は上がってしまう、物価は……ということになるわけでありますから、政治はやはり具体的なたたき台を出す、テーマを提供して国民の判断と支持を求める、こういうことでありますから、私はそういう意味であの本を出したわけでございます。マイナス面の除去に対しては積極的にやってまいりますし、プラス面を付加してまいりたいと、こう考えております。  最後に、一言でありますが、列島改造論が出ましたのでもし作用したとすれば、全国的に水があり、土地があり、港があり、一次産業比率が高くて、この十年間か十二年間の間に三〇%の一次産業比率を持っておるものが全国的六%になるとすれば、少なくともこの半分は余剰労働力となる、良質の労働力を得られると考えた地域が幾らか買いあさられたり目をつけられたりという面はあったと思います。しかし、そのかわりに、大都会というものは非常に周辺は上がっておりますが、列島改造論というものが出なくて、このまま自然発生で大都市というものの需要がふえるという前提に立ったら、大都市の周辺の地価はもっと上がっておったという理論も成り立つわけであります。ですから、そういう意味で先ほど情報の提供、こういうふうにセメントは上がっておるがセメントの生産能力はあるんです。木材は全部でもって去年よりも何十%輸入しているんですと、しかし住宅ローンなどでもって六〇%も住宅がふえておるから、その差額はこれだけなんで、何カ月の間にはギャップはちゃんと埋められますという情報を提供されれば、買い占めも売り惜しみもなくなるわけでありまして、私はある意味ではその作用をなしたものだと考えておるのでございます。だから、そういう意味で、あなたのまじめな御提議に対しましては、これはあなたも——私はまあ新潟でありますが、あなたは長野ですから大体よくわかっておると思うのですよ。東京はこんな混雑をしておって、長野県が過疎で困っておるということを考えれば、こんなことはよく私は御理解いただけると思いますから、まあそういう意味で、まじめな意味で、私はまじめに謙虚に御発言はお聞きをして、マイナスをもたらさないように全力投球を続けてまいります。
  107. 羽生三七

    羽生三七君 率直に申し上げて、改造論を再検討するということを国会で約束されただけで、私は土地買いの、土地あさりの異常な心理が鎮静すると思うのです。だから第二巻をつくるとかどうとか、そういう問題ではないんではないかと思います。  それはそれとして、もう一ついやなことを言います。これは日本では経済問題で政治責任が問われるようなケースは過去にほとんどありません。大体国際問題とかスキャンダルとか、そういうことが問題になる。しかし、今日のように、インフレ投機買い占め等のような異常事態が長期にわたって続いた場合、しかもこれを予期することができないような状態が長く続いた場合、先日当委員会で、土地の値下がりが一、二年中に実現できなければいつでも責任とりますと言われたが、私はそういう一つ一つのケースはここで申しません。ただ、いまのようなこういうひどい事態が一年も二年も長期にわたって続いて、それを抑止することができないような場合には、みずから責任をとるような、そういうルールが確立すべきではないかと思う。そうでないと、これは何か個人のスキャンダルを掘って、そういうことで、さあどうだどうだとかいうようなことを言って責める以外に、経済のことなんか、動くものだから物価の上がるのはあたりまえじゃないかと、こういう論理でいけば、いつまでたってもこの政治責任というものは明確にならぬ。ですから、そういう意味で私は、この際のけじめというものをひとつはっきりする意味で総理の御見解を承っておきたい。
  108. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 非常に適切な御指摘だと思います。過去の政治責任というものは、外交問題とかスキャンダルとか、その種のものに限られておって、経済問題でもって政治責任が追及されると、これはきめ手がないということで追及されなかったと思います。しかし、いま御指摘のように、相当な経済的な事態が惹起した場合政治責任を負わなければならない、これはもうこれからは当然そういうことになると思います。ただ、そういうときには、それまでの間には、行政府だけで政治ができるわけではないわけでございます、いまの制度は。そういう意味で、行政府でなさなければならない仕事に対しては、時限法でも何でもけっこうですから、手段を与えていただかなきゃならないんです。これはもうそれだけは私は明確に申し上げておきます。ですから、これだけ物価が上がっているときに、少なくとも物価抑制のために時限的にこうしなければならないという法律をお願いをしたときには、まあわれわれはもっと強い法律のほうがいいんだというお気持ちがあっても、まずやってごらんなさいと言って、衆参両院をさっと二日か三日で、まあ一日でもですな、ほんとうに通していただくような、そういうことができないとしたならば、それは多数を持っておっても単独審議はしない、できない、現実問題として。そういうルールの中で手を縛っておって、足を縛っておって飛びなさい、こういうことになると、政治責任もなかなかそれは両方にあるんでございますからということで、また竜頭蛇尾になるんです。だから与えるものは与えて、そのかわり、できなかったらおやめなさい、こうでなければ私はならぬと思うのです。ですから、今度の西ドイツがとっておる手段、それからアメリカの大統領がとっておる手段、日本の状態においてはできない面が非常に多くあります。テンポが非常に速いので、国際的波動に対応する場合に、これは実際間髪を入れずやらなければならぬわけであります。まあこのごろは、きょう一時に上げる公定歩合の〇・七五はけさの新聞に出ておると、まあ頭のいい人が書いたのでありましょうけれども、こういう全部タイミングを失するような経済政策で効果があげられるはずがありません。私が言うまでもないことだと思うのであります。そういうためには、私もまじめに考え、国会に対しても政府の苦衷を訴えます。しかも、こういう目的を達するためにこうしたいと思いますというようなこともお願いをして、そうして国会の御支持と理解を得ながら、やっぱり鞭撻をしていただく、そういうことであれば私は政治責任が当然問われてしかるべきである。あなたが一番初めに申された、こんなことをしておると野党を利するだけである等々言いましたが、私は野党も与党も考えていないです。みな日本人だと考えている。私も野党をやったことがありますから、そんなに与党だというような感じはないんです。やっぱり政治家は与野党を問わず、国民にその責めを果たさなければいかぬ、こういう困難なときはほんとうに私はそう思っておりますから、それらの御指摘のように、政治責任を回避するものではありませんが、仕事ができるように、国民の負託にこたえられるようにひとつ御鞭撻のほどを切にお願いします。
  109. 羽生三七

    羽生三七君 実は、経済問題についてはたいヘん個々の問題について用意してまいりました。先ほどのインフレの問題、あるいは公共投資の繰り延べの問題、それから大企業の手元金融の処理に対する問題、それから法人税の引き上げの問題、勤労者所得税の問題、一ぱいまあ用意してまいりましたが、時間ありませんので、最後に総理に、ちょっと問題が違いますが、核非武装宣言をしてもらいたいという、そういう要求をいたします。  というのは、総理は、先般核兵器問題について、一たんは、あらゆる核兵器の所持が憲法に反するという発言を行なわれながら、その後、この純防御的な核兵器は憲法に抵触をしないという従来の政府見解に後退したわけです。訂正されたわけですね。その後退をめぐって一部の外国新聞、たとえばル・モンドでは、これはあたかも日本が将来核兵器を所有する権利を留保したものとか、あるいはそのための布石とか受け取って、日本の核武装の可能性をめぐって再び種々の観測や論評が行なわれていることは御存じのとおりであります。私はここで憲法論をやる意思は毛頭ありません。ただ、外国の有力な新聞あるいは学者、さらには政府の高官ですらも、日本の核武装の可能性について、決して否定的な見解を持っていないということです。総理は、核をつくらず、持たず、持ち込ませずと再三言明しているのですから、もしそれが総理の真意であるならば、政府の不動の方針ということで、この際核非武装宣言を行なうことによって、世界の疑惑を一掃し、また、アジアにおいて覇権を求めないという平和日本の真意を世界に伝えてはどうか。私は昭和三十三年に本院本会議で核非武装宣言の提唱をいたしております。以来もう十数年、しかし、田中内閣になってからまだこの問題は一つも出ておりません。だからあらためて田中内閣に、つくらず、持たず、持ち込ませずと言うならば、この際、世界に向かって核非武装宣言を行なって、日本の平和外交の起点としては核非武装外交、平和外交の起点とされてはどうですかと、こういうことを承ります。
  110. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 非武装宣言と同じものが行なわれております。昭和四十六年十一月二十四日に衆議院会議において、「非核兵器ならびに沖繩米軍基地縮小に関する決議」、「政府は、核兵器を持たず、作らず、持ち込まさずの非核三原則を遵守する」という決議が行なわれております。これに対して、佐藤内閣総理大臣発言として、非核三原則は政府が従来堅持をしておるものでございまして、将来とも堅持をしていくものである。私も、国権の最高機関である衆参両院において、この三原則は堂々と述べておるのでございますから、この内閣も引き続いて非核三原則を堅持するということでございまして、この上やるとすれば、もう一ぺん閣議でこれを追認して発表するということかもしれませんが、これは三権のうち最高機関である国会において述べておるのでございますから、これ以外に行なうとすれば、四十六年十一月二十四日に行なわれたような決議と同趣旨の決議を衆参両院の決議としてやられると、政府はそれに対して、政府も国会の意思どおりでございますと、こう言う以外には手がないのでございまして、私はもう非核宣言を何回もこの場で申し上げておるということでございますから、具体的にどうせよということであるならばお示しをいただきたい。
  111. 羽生三七

    羽生三七君 それは、時間の関係で私は次の問題に移りますが、政府声明をして、その口上書を世界の先進国にお配りなさいということです。だから政府が声明しなきゃだめなんです。これは他日に問題を留保さしていただきます。  最後に、福祉政策の充実強化は田中内閣の政権交代における最大の公約であったはずであります。予算で見る限りでは公約実現にはなかなかほど遠い。対前年比幾らか伸びておるというだけでほど遠い。いかなる福祉政策の展開を意図されるのか、総理の見解をぜひ承りたいと思います。
  112. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 四十八年度予算は、対前年度比と比較をされてもおわかりになるとおり、社会保障関係費を相当拡大をいたしておるわけでございます。これは経済社会基本計画の五カ年分の一年と、初年度としての数字を合わせたわけでございますが、四十九年、五十年とこの計画を実施することはもちろん、この計画を上回るような社会保障拡充ができますように格段の努力をいたしてまいりたいと、こう考えます。一つには、社会保障というもの、社会保障全体の制度の拡充強化がはからなければならないということは一つございます。もう一つは、社会環境整備生活環境の整備ということでございまして、道のないところに家をつくるわけにもまいりませんし、水洗の衛生施設を持たない家は水準以下のものでございますし、また住宅環境そのもの、お互いの社会環境そのもの、ただ住宅はスペースを与えればいいというものではありません。そういう社会構造そのものの変化も必要なわけでございまして、社会資本拡充と、生活環境整備を中心とした社会資本拡充と一般的社会保障の充実強化のために最善の努力を傾けてまいりたいと、こう考えます。
  113. 田中寿美子

    田中寿美子君 関連して。  最初に、委員長にお願いしたいんですけれども関連質問はたいへん制限されますから、私は三問ぐらいにしぼりますので、三回質問さしてください。  具体的な問題で緊急に御質問したいわけなんです。先ほどから羽生委員から福祉経済への政策は不十分だというお話がありましたけれども、四十八年度の予算を立てる際、あるいは今後の田中内閣の目標として福祉予算の中の目玉、ことし特に四十八年度の目玉は年金だということにしていらっしゃるのですね。ところが、現在暫定予算審議しているのは、四十八年度の予算がまだ通らないからやっているわけなんです。  そこで、厚生大臣にお伺いしたいんですが、四十八年度予算の中に厚生年金並びに国民年金の改正案に基づいた予算が盛られているわけでございます。ところが、この年金の改正法案は、まだ国会には提出されておりますけれども上程はされておりませんですね。まだ衆議院でも趣旨の説明も行なわれていない。そこでお尋ねしたいんですけれども、衆参両院の審議の後にこれは決定すべきもの、もうわかり切ったことですけれども、それを確認したいということと、それから政府提案に対して、いま野党が共同で賦加方式を目ざした年金の改正法案、年金法案を準備中でございます。したがいまして、法案が国会にかかりました際には相当の議論があると思います。そうしますと、政府提案の法案は大幅に修正されることもあるし、あるいは否決されることもあるということをお認めになりますかどうか、まず第一点でございます。
  114. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 福祉政策の一環として、年金の改善をはかろうということで、厚生年金、国民年金を一本の法律にいたしまして国会に提案をいたしてございますが、衆議院においてもまだ趣旨説明が行なわれておりませんので、まだ成立はいたしていないことは御承知のとおりでございます。で、この法案に対しましては、社会党さん、その他野党の方々、いろいろ御意見をお持ちになって、近く四党で共同の年金法改正法案を出されるということは承っておりますが、その内容は承知しておりませんが、そうした法案が出まして、国会において政府提案と一緒に御審議をいただけるわけでございまして、私どもはその政府提案の法律がそのまま成立することを望んでおりますが、それは国会のことでございまして、私としては成立を期待し、望んでおるということだけは申し上げておきたいと思います。
  115. 田中寿美子

    田中寿美子君 それでは第二点目ですけれども、ですから国会の審議次第では政府提案も変更することがあり得るということは確認したいと思いますが、国会の審議にも先立って、社会保険庁の年金保険部年金課長から各都道府県の年金の相当の長にあてて、政府提案によりますところの改正案によった年金保険料の徴収の要請の文書が回っておりますですね。それで、まず国会に提出されたのは二月の十七日ですね、年金改正案が。ところが、この通達でしょうか、内簡というようなことばが使われておりますが、一月二十三日に各都道府県に出されているのですね。そうして、その中身が問題なんでございますが、その中身は、一年分前納の勧奨をしている。いままで一年分前納、年金の保険料ですね、国民年金の保険料を前納している市町村があるので、そういうところに対しては前納を勧奨することを要請するような文書ですね。そうして四十八年の四月から十二月までは五百五十円、これまでの年金保険料でよろしい。一月からは改正の見込みであるから、九百円の計算で前納を徴収することを要請して、こまかく何月に納めたら幾らというような指令が出ているわけなんです。  それから、これはまだ国会で予算も通っていないし、法律案もまだまだいつ通るかわからないような状況で、また大幅に変わる可能性もあるような状況で、改正案によった保険料の徴収を指示するということは非常に不当だと思うのです。これは国会の異議権を全く無視しているし、行政機関が立法機関をはるかに先行して、そういうことを行なっているということについて厚生大臣はどう思われるかということと、それからもう一点は、このようなことはどこの責任で決定されて、どういう権限でそういうことを指示されるのかということをお伺いしたい。
  116. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 御承知のように、国民年金の保険料は、現行法では毎月五百五十円でございまして、毎月徴収するという方式と、それから本人の希望によっては一年分まとめて前納せしめるという方式がございまして、一年分まとめて前納させますと割引をいたそうと、こういう仕組みで保険料徴収というものをいただいておるわけでございます。実は私もそういう御質問があるということをけさ承りまして、実はけさ私も内簡を見たわけでございますが、それは、こういう法律改正のときには、地元の町村の方々から、法律改正するならば、来年の一月から五百五十円が九百円でございますか、上がるということであれば、来年の一月からの分は九百円という計算をして前納するということになりますと、ことしの四月か五月ということになるわけでございますから、そこで来年の一月分からはそう上がるという前提で保険料を取っていただくほうが便利ではないか、こういうふうな要望もあったということで、保険庁がこの国民年金保険料徴収の責任官庁でございますので、その課長が、内簡として、被保険者の御了解を得られる場合においては、来年の一月からはこういうふうに上がるということを前提としてお預かりしておいてもやむを得ませんと、こういう通達を出したのでございます。そこで、私もその通達を見まして、御質問ございますように、四十八年度の予算も成立しておりませんし、法案は衆議院に提案いたしました段階で、それを予定してこういう通達を出すことはどうであろうか、これは好ましいことではないと私も考えまして、先ほどさっそく、こういうことを予定して、法案も成立しないうちから予定して、保険料徴収というのはやっぱり義務ですから、こういうことをやることは好ましくないから、通達を訂正させまして、従来の——従来といいますか、現在の保険料の額で一年分の前納をやる、これはけっこうでございます、そうすれば五分五厘の割引があるわけですから、それはそうしていただければ、本人さえそれでよければそれでいいわけなんですから、現在の法律に基づく五百五十円の保険料で前納をする、本人の御了解によって前納していただくのはけっこうだけれども、法律成立を前提として、来年の一月からは九百円になるという前提で前納分を取ることはよろしくないから、そういうことは改めてもらうように、保険庁のほうにも指示いたしましたので、本日付で訂正の通達を出すことにいたしたいと思います。  こういうことはだれがきめるのだと、こういうことのお尋ねでございますが、役所というのは、こういう仕事はなかなかたいへんな、やっかいな仕事でございます、ほんとうを言いますと。たいへんな仕事でございますので、各府県の課長さん方に、こういう法律を出す予定にしておりますと、で、こういう法律がもし通ればこういうことになるのでございますよと、ほんとうにいろんな準備に相当手間がかかりますので、そういうことをやっておったわけでございまして、悪意があるわけでも何でもないというふうに御理解をいただきたいと思う次第でございまして、本日付をもって、さっそく訂正の通達を出すことにいたします。
  117. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 羽生君、もう……。
  118. 田中寿美子

    田中寿美子君 まだもう一問。三問目ですよ。最初、委員長の御了解をお願いしてあるんですね。  いま、先回りをされてしまいました。けさ、私のほうから、その質問の内容をお教えしたはずはないんですけれども、いつの間にかわかっていて、先回りされてしまったので……。問題は、当局の人たちに聞いてみますと、過去にもずっとそういうことをやっている、それは私どもが見のがしていたという点もあるかと思います。ですけれども、国会できまらない先にどんどん前納させるということは、係官の人たちからいうと、これはいままでの慣行でもあるし、それから被保険者にもこれは一種のサービスなんだ、前納させれば幾らか料金を安くするのだ、それから変更があったときには、それを次に、もし料金がもう少し低くきめられたようなときには繰り越していけばいいのだというような簡単な言い方でしたけれども、窓口をやっている人から聞きますと、これは、前納をしている者と前納をしていない者とあるわけですね。それで改正予定の制度によって前納させてしまった場合に、法案が変わってでき上がったときに、たいへんな混雑を起こすと。それで、人間が移動しますので、前納している地域から、そういう制度のないところへ来る者もあったり、たいへんかえって複雑であると。一本で、現行法でやってもらうべきであるという意見がたいへん強いので、今後そういうことがないようにしてほしいことと、それから、いま訂正とおっしゃいましたが、最初のその内簡というものは取り消していただきたいということを重ねて要望し、そして国会の審議を無視して先に行政が走っていかないことを要望いたしたいと思います。
  119. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 十分承りまして、筋を通した行政をやらせるようにいたします。
  120. 羽生三七

    羽生三七君 時間がありませんから、これで終わりますが、私の先ほど来の質問の趣旨が十分理解していただけたかどうか非常に疑問でありますけれども、いまの客観的な日本情勢がもうきわめてきびしい重要なものであるということを十分田中内閣も認識されて、誤りなきを期することを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  121. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて羽生君の質疑は終了いたしました。(拍手)
  122. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 高橋邦雄君。(拍手)
  123. 高橋邦雄

    ○高橋邦雄君 愛知大蔵大臣には、去る十六日のパリにおける十カ国蔵相会議出席され、また続いて二十六、二十七日とワシントンにおける二十カ国蔵相会議出席されまして、その中心となって大活躍されたことに対しまして、敬意を表する次第であります。  その蔵相会議におきまして発表されました共同声明につきましては、内容がどうもないとか、あるいは内容が薄いとか、具体的な成果がなかったんではないかというような見方が一部にあるわけでございますが、私は、この会議において、将来に幾多のむずかしい問題を残しながらも、やはり一歩前進をしたのではないかというふうに思うのでございますが、大蔵大臣は、この会議がこれからの通貨制度の解決のための方向づけまでなされたのかどうか、お互いの心がまえができたという程度のものなのかどうか、その辺の御所見を、まず伺いたいと思うのであります。
  124. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私の出張につきましておことばをいただいて、まことに感謝いたします。  パリからワシントンにかけましての会議におきまして、内容が具体的でない、抽象的であるという御批評をいただいていることは、私のみならず、参加いたしました各国の蔵相も同様の批評を受けているに違いないと思う点もございますが、一つは、安定した、しかし調整可能な平価制度をつくり上げていこうということに合意ができましたことと、それからそれを中心として、国際的な協力と協議によって一つ世界の通貨秩序が必要であるという点が合意されたことはメリットであるというふうにごらんいただきたいと思う点でございます。  それから具体的な問題については、たとえば準備資産の中でのSDRの役割りを拡大させるということ、ドルの交換性を回復させようということ、資本移動を規制しようではないかというような点につきまして、具体的に、できるだけすみやかに国際的な、建設的な案を、おそくもナイロビまでにみんなで知恵を集めて前進しようということが合意されたわけでございますが、いずれも相当専門的な問題でもありますし、それから、いずれもまた、それぞれの関係国としては相当の決心と努力の要る問題であるというようなことから、今回の二十カ国の蔵相会議では具体的な内容にまで、世界の方々を納得させ得るような具体的な内容の方向づけまではできなかったということは事実でございまして、これらの点について失望を与えたということは、私は是認されなければならないと思います。  それからもう一つは、インフレ抑制を含めて、各国国際収支について節度を守ろうと、それから国内インフレ対策をしっかりやろうと、それから為替相場の切り下げ等によって安易に自国の立場を擁護するようなことはやめようというようなことがはっきり確認されたということも、また相当な成果であったかと考える次第でございます。
  125. 高橋邦雄

    ○高橋邦雄君 いまお話しの声明の中にあります、将来の為替相場制度につきましては、安定的で調整可能な平価に基礎を置くが、特定の場合にはフロートも役立つ手段であることも認めると、こういう文言があるのでありますが、固定相場制を基礎とすべきか変動相場制を加味したほうがよいかというような点について合意が成立しなかったということが伝えられておるのでありますが、実情はどういうことでありましたのか、その辺の事情を明らかにしていただきたいと思うのであります。
  126. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 安定した、しかしながら調整可能な固定相場ということについては、合意が完全にできたわけでございます。ただ、これは横文字を使うことは恐縮でございますが、ステーブル・バット・アジャスタブルと、こういうことばが使われてありますところに若干のニュアンスの相違があることは否定できません。ステーブルというほうが原則でございます。したがって、バットということばが使ってあって、アンドではございません。場合によれば固定相場制度というものはよいものではあるけれども、もう少し柔軟性のある考え方もいいではないかという考え方が、バット・アジャスタブルということば、すなわち調整可能なということばの中に入れられてあると、まあこういうふうに御理解をいただければよろしいのでございまして、もっと踏み込んで言えば、スミソニアン体制というか、あるいはもっとさかのぼってブレトン・ウッズ体制というものに近い考え方が一番よいと思うのだけれども、今日のいわゆる変動相場制を中心にしたもので、それにある種の国際的な基準、守るべき規則というものが合意されるならば、それに近いものとしてこれを中心に考えてもいいではないかと、こういう考え方にある種のニュアンスの相違があるということは否定できない、こういうふうに考えるわけでございます。これは、固定相場か、あるいは変動相場か、いずれか一つを選ぶべきであるという考え方ではございませんで、いずれにしても、これを調整をして、そして中心となる基本的な考え方一つ世界を確立していこうという考え方でございますから、どちらかをよしとしてイエスかノーかというのではなくて、ステーブル——安定した固定的な考え方を中心にして、しかしあまり従来のような窮屈なところでなくともいいではないかと、こういうふうな考え方であるとごらんをいただければよろしいのでございまして、私も率直に申しておりますが、そういうわけでございますから、参加をし合意をした代表者の問でも、こまかく問われれば、そこに出てくる答えは若干のニュアンスの相違がある。これは、今後ナイロビに至るまでの過程におきまして、専門的な意見の調整、それから各国のそれぞれの立場の調整ということによってこれは完全に一本になるようにしていくのがこれからのわれわれの責任であると、こういうふうに考えているわけでございます。
  127. 高橋邦雄

    ○高橋邦雄君 次に、午前中の大蔵大臣の御報告の中にもございましたのですが、ドルの交換性回復が大事であるということを強調されたと申されておるのでありますが、前回のパリ会議では、米国がドルを買いささえること、及びそのためにスワップの活用あるいは拡大を考えること、また、買いささえを行なうために八百億ドルにのぼるといわれております過剰ドルの凍結を検討するというようなことになっていたと思うのでありますが、今回の共同声明を見ますと、蔵相代理会議で検討を急ぐというふうになっておるようでありまするが、今度の蔵相会議でドルの交換性回復のためにいろいろな問題点が検討されたのかどうか、その辺をお伺いいたしたいと思います。
  128. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ドルの交換性の問題は、蔵相代理会議におきまして検討が積極的に加えられますことは、SDRの地位の強化ということと同様でございます。  それから数百億ドルにのぼるといわれるいわゆるユーロダラー及びこれに準ずるようなものについては、徹底してひとつこれの対策を講ずるための具体的な措置が専門的な議題として代理会議で取り上げるということになりましたわけで、ハリ会議以来のこの種問題の重要性並びにその解決についての基本的な取り上げ方については合意ができているわけでございます。
  129. 高橋邦雄

    ○高橋邦雄君 大蔵大臣は、通貨改革案をまとめる時期につきまして、大体まあ九月のナイロビの総会においてきちんとしたものにしたいと、こういうことを申されておるのでありまするが、これにはアメリカのドルの交換性の回復という問題と国際収支の赤字の問題が解決をいたしませんとなかなか無理ではないか、こういう気がいたすわけであります。実際に九月にはまとめられるというふうにお見通しをつけておられるのかどうか、その辺についてお伺いをいたしたいと思うのであります。
  130. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 何ぶんにも多数の国の多数国間の会議であり組織でございますから、二国間の協議と違いまして、簡単にその推移を想像することは困難でございますが、ナイロビ会議においては何とかして合意のできるような案がでっち上がるように、そこで最終的な結論になるようにという意欲的な気持ちについては、各国とも同様であると私は観察いたしましたし、それだからこそ、こうしたコミュニケもでき上がったものであると。したがって、日本といたしましても、形式的には代理会議を通じて応分の積極的な努力を続けたいと考えております。
  131. 高橋邦雄

    ○高橋邦雄君 去る二十七日にアメリカの商務省が発表いたしました貿易収支がアメリカでは非常に悪化しておると、こういうことが伝えられておるのであります。その報道によりますと、四億七千六百二十万ドルの赤字を二月は出したと、こういうことが伝えられておるわけでございます。こうした結果、赤字が昨年の月間平均の五億三千万ドルから、一月には三億三百八十万ドルに改善したものが、再び非常な悪化の傾向を示し逆戻りをしたと、こういうことが報道されておるのでありますが、アメリカの国際収支、貿易収支を改善するということは非常に困難があるのではないか。したがって、九月のナイロビで新しい案がまとまるということについて非常な不安な気がいたすわけでございますが、重ねてお伺いいたします。
  132. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 直接のお答えにならないかもしれませんけれども、通貨と通商の問題は車の両輪でございます。したがって、両方が相即応して解決されなければなりません。また、コミュニケの中にもそういう思想は出ておりますけれども、しかし、何しろ通貨についての国際的な合意ができませんとどうにもならない。この認識が非常に強いわけでございますから、アメリカも国際収支の悩みを持ちましょう、日本国際収支では逆の悩みを持っているわけでございますから、それらの点については、国内的ないろいろの努力もあわせて、何とかひとつ国際通貨問題の確立ということについては、せっかくこうして多数国間の合意が基本的にはできているわけでございますから、これを推し進めなければならない。まあ、この点については、私は、むしろ疑問を抱いて消極的になるよりは、積極的に努力を進めて何とか合意ができるようにできるだけの努力をすべきものではないかと考えるわけでございます。  なおまた、国際収支の問題について一言いたしますれば、たとえば日本とアメリカの関係におきましても、多国籍企業というようなものが取り上げられるわけで、資本の移動につきましてもよく問題になるわけでございますけれども、たとうば、日本は、石油については中近東等からも非常な輸入超過をしているわけでございますから、そういったような企業のあり方、これと米系資本との関係というようなものを考えてみたい。あるいはまた、豪州と日本関係を考えてみても、アメリカは豪州に非常な投資をしておる、日本は豪州から非常な入超であると、こうやってマルチの関係で見てみれば、日本とアメリカとの関係だけでもってこの収支の問題を取り上げるというのもまた少し近視眼的なところもあるのではなかろうか。まあそういう点も少し眼界を広げて、双方ともに解決策あるいは問題の所在を取り上げていくこともまたこういった際には特に必要なことではないかというようなことも考えられる一つではないかと思います。
  133. 高橋邦雄

    ○高橋邦雄君 現在のようなフロートの状態が一体いつまで続くかと、こういうことは非常に重大な問題だと思うのであります。こういう状態が長く続くと、こういうことになりますと、国内の体制もそれに対応して考えていかなければならないと思うのであります。輸出契約を円建てにするような指導をするとか、あるいはこの委員会におきましてもすでに論議のありました中小企業対策をさらに再点検をいたすというようなことも必要になってくるのではないかというふうな気がいたすわけでございますが、国内対策をきめのこまかい行き届いた対策を講ずる必要があると思うのでございますが、この点に関しまして総理のお考えを承りたいと思います。
  134. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほども述べましたように、国内体制の整備が非常に重要であることは、申すまでもないことでございます。一方においては、国際的協調を進めながら、国内においては、先ほども述べましたように、経済社会基本計画計画に沿って、また、この計画一つの目標でありますから、現実的な面を直視しながら、適時適切に施策を進めてまいらなければならぬことは、御指摘のとおりでございます。
  135. 高橋邦雄

    ○高橋邦雄君 次に、暫定予算の問題について少しお伺いをいたしたいと思うのであります。  ことしもまた、前年度に続いて、新年度の予算が年度内に成立しないで、わずか十一日間ではありますけれども暫定予算を作成せざるを得なくなった。これはもうまことに遺憾でありますし、また、私どもといたしましても、非常に残念に思うものであります。暫定予算におきましては、国民生活に影響を与えないように、生活保護費や失業対策費、また恩給費などが組まれておりますから、直接生活が困るという事態は起きないと思うのでありますけれども、しかし、やはり十一日間という空白が生じたと、こういうことは事実で、また、これが国の経済全体に全く影響が絶無であると、こういうことも必ずしも言えないのではないかという気がいたすわけであります。  昨年も一カ月の暫定予算と、こういうことであったわけでありまして、ことしと続いて二年暫定予算が続いた。さらにその前を見ますと、四十六年度は年度内に成立いたしましたが、四十五年度は十数日問これまた暫定予算であった。私は、こういう状態が繰り返されますと、年度区分であるとかあるいは会計年度の独立の原則と、こういうものが少し軽く見られて、本来厳守しなければならないものであるにもかかわらず、同じことが繰り返されると、どうも少し感覚が鈍ってくるのじゃないか、こういうことが憂慮されるわけであります。  そこで、これはもうあくまでも厳格に守らなければならないと思うのでありまするが、その問題につきまして、国会の召集期日、こういうものに少し問題はないのだろうかという気もいたすわけであります。国会法によりますと、通常国会は十二月中に召集する。実際には十二月の末に召集されるわけでありますし、しかも、自然休会になって二十日過ぎに再開をされると、こういうことになりますと、二月、三月しか審議をする期間がないと、こういうことになるわけでございますので、やはりこの辺の事情につきましても少し検討を加える必要があるのではないかというような気もいたすわけでございますが、これは会計年度を変えての問題になるとこれはまたたいへんでありますが、それとは別に、国会の審議期間、また、さらには、予算編成、予算案を提出する時期、こういうものにもいろいろ関連してくるわけでございますが、ぜひ年度内成立を期するためにこうした問題を検討する必要があるのではないかという気がいたすわけでございますが、田中総理の御所見を承りたいと思います。
  136. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 予算が年度内成立に至らないことは、はなはだ遺憾でございます。これは政府が国会審議過程におきましていろいろ御質問に応じがたいような、御質問に対して的確な資料が出なかったり、また、質問に対して的確な答弁をしなかったりというような、いろいろなこともあったと思います。これはもう御審議には万全の対策で体制をとって協力をしていかなきゃならぬわけでございまして、まず、年度内成立をはかるためには、政府みずからが大いに努力を続けなきゃならぬと謙虚な気持ちで考えております。  それからことしの年度内成立ができなかったということの大きな問題は、一つには変動為替相場制に移ったという問題があったわけでございます。そこへもってまいりまして、防衛力の限界なるものでいろいろ審議が中断をいたしましたり、もろもろの要因が積み重なって今日に至ったわけでございます。しかし、昨年年末に総選挙を行なった結果としては、まあスピーディに予算の編成が行なわれ、二十六日に普通の年と同じように一月の休会明けにすみやかに予算案が提出できるようになったわけでございまして、その意味ではあまり予定は狂っておらなかったわけでございますが、まあ思わざるヨーロッパの波が押し寄せてきたということは事実で、これは私の心境でございますが、そういう問題等、いろいろ問題が重なって年度内成立ができなくなった。これはいいことじゃありません。やっぱり国会で審議をするもの、年度がかわるものでございますから、国会で範を示すという意味からいっても、これは一つの教育にもなるわけでありますし、子供に対しても国会だって四月一日から発効のものを四月の十一日までか十二日までやったじゃないかと。しかも、四月一日から年度がわりでもって失効しようとしておる法律もたくさんあるわけです。これは全部延びれば、何らかの附則か何かでもって四月一日にさかのぼるというようなことになるわけでありまして、これはどうもいいことじゃないと私は思うのです。そういう意味で、政府の責めに帰す問題でございますから、政府はやっぱり年度内に絶対に審議が終了していただけるような万全の対策をとらなければならないと、こう考えております。  ですから、さっきも御指摘がございましたが、憲法では毎年一回通常国会を召集すると。それで、国会法だと思いますが、通常国会は十二月上旬に召集するということだったんです。ところが、その後、十一月ごろには台風とか人事院勧告とかという制度がございまして、どうしても十一月から十二月にはいっでも臨時国会がもう常習化してしまったというのと、もう一つは、どうしても経済見通しというものを的確に把握するには十二月二十日ごろになる。そうすると、年末ぎりぎり一ぱいまで予算編成がかかる。一月一日から二十日までは自然休会、これは旧憲法時代からそういうもう習慣になっております。ですから、そういう制約があるものでございますから、今日のように、十二月中にということで、御指摘のように十二月の二十日過ぎ、十二月二十七、八日、場合によっては三十一日に召集すれば違法でないんだと、こういうことでありますが、これでは審議もなかなかたいへんだと思いますし、もうぎりぎり一ぱいに印刷をするということでありますから、来年度予算は、私は、大蔵省にも頼んで、できるだけ十二月二十日ぐらいまでに、できれば十二月の末までにその印刷が終わって、少し一月の審議を繰り上げていただこうかと。そういうようなことになれば、これは相当違うわけでございます。実際、きょう出してきょうから御審議いただくというのも無理な話でございます。  ですから、そういう政府の責めに帰すべきものは、これからひとつ政府は困難であっても改善してまいります。そのかわり、政府努力いたしますから、国会でもひとつぜひ御協力のほどを切にお願いいたします。
  137. 高橋邦雄

    ○高橋邦雄君 これは参考のためにお聞きしたいのでありますが、大蔵省の政府委員、わずか十一日間の暫定予算といいましても、これを作成するのにはかなり時間もかかるわけでありますし、また、人手も要るのでありますし、なかなか印刷費だってこれはばかにならないのではないかというふうに思うのでありますけれども、一体この暫定予算をつくるのにどれくらいな経費がかかったのか、参考にお聞かせをいただきたいと思います。
  138. 相澤英之

    政府委員(相澤英之君) 暫定予算の作成のための直接的な経費といたしましては、予算書等の印刷費が約千三百万円でございます。そのほか、各種の資料の作成費、また、予算の作成のために職員が超過勤務をいたしますが、その超過勤務手当、光熱費等の使用額、そういうものは実はちょっと推定がつきにくい点がございますが、ざっと見積もりましても、それらの印刷費以外の経費が千万円ぐらいかかるのではないかというふうに思っております。
  139. 高橋邦雄

    ○高橋邦雄君 なかなか、十一日間の暫定予算にしては非常に経費がかかるわけでございます。こうした点は、私どもも十分留意をしていかなければならぬというふうに思うのでございます。  私の持ち時間はだいぶあるわけでございますけれども、たいへん皆さまお疲れでもございましょうしいたしますので、私の質問は以上で終わることにいたします。
  140. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて高橋君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  141. 大竹平八郎

  142. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 最初に、大蔵大臣にお尋ねしたいと思います。  円が変動相場制に移行されて以来、円レートが一日も早く固定制に返ることを望んでいるのがわが国の実情だろうと思うのです。そういういわゆる状況の中で、たとえばワシントンの蔵相会議、また本日の大臣の答弁、これを通して感じられることは、変動制がいいのか、固定制がいいのか、どちらがいいのか、今後またどうなっていくのか、一向にその辺が非常に明確でない、こういう感じを受けるわけですね。この点、大臣は、二十九日にお帰りになったときに記者会見をしております。その発言の中で、こういうことをおっしゃっていますね。「固定制と変動制とどちらがよいかというような考え方をすべきではない」と、こういうような発言をしているわけです。ということは、いま私が申し上げたように、どっちなんだと、こういう発言は、これからのレート問題はどちらでもいいんだと、こういうふうに私どもは受けられるのですが、この点はどういうふうにお考えですか。
  143. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 安定ということが一番大切なことでございます。先ほどるる御説明いたしましたように、土十カ国の合意は、安定で、ただ調整可能な余地を残した固定相場制度と、こういうふうにお読みをいただきたいと思います。それに合意をいたしたわけです。感覚的に申しますと、従来的な感覚の固定相場制度ということに何でもかんでもというのは、こういう御時勢になりますと、これは無理かもしれません。しかし、実体的には、それと同じようなそれに近いような制度というものが確立されることは望ましいと思います、これは国際的な合意として。で、これが問題として、ですから、旧来的な感覚で固定か変動か、どっちでもいいじゃないかと、あるいはどっちか一つの選択しかないではないかというふうな取り上げ方は、これから以降においては無理であって、もう少し複雑であると思います。一番大事なことは、現在日本はいわゆる変動相場制でございますけれども、実勢レートが乱高下なく平静に続くということが一番必要であり、そのために政府としても苦心をしておるところでございますが、こういったことが将来変動相場的なものが国際的に合意されるとしましても、国際的にお互いに支持され協力され合う中において変動相場制度というものが改善された形で行なわれることになって、旧来の固定相場的なものに近い動かし方になれば、これは一つの望ましい選択であると、こういうふうに考えるわけでございまして、そのところをどういうふうに国際間でお互いに協力し合えるようなものができればいいかということをこれからナイロビまでに確立する考え方をつくり上げたいと、こういう状況にただいまなっているわけでございます。
  144. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 いまの発言に関連しましてお尋ねしてみたいのですけれども、それでは、変動制が固定制に近いような状態に安定すれば、今後それでもいいという、こういう考え方で受けとめてもよろしいのでございますか。
  145. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) そういう場合も一つの選択の可能性のあるものであると思います。私どもとしては、従来からのやり方になれておりますし、国民もそれになれておりますから、固定相場制で旧来の形に返ることが望ましいわけでございます。同時に、それと実体的にほとんど変わりのないというところで国際的な合意が取りつけられれば、それも一つの選択であろうと、こういうふうに考えております。
  146. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 いまアメリカでは、新通商法案の導入ということ、この問題が一つの大きな問題として考えられている。御承知のように、これが導入されると、わが国の通商問題はますますきびしくなってくるであろう、こういう予想は当然されるわけです。そこで、この問題について、大臣は、やはり二十九日の記者会見のおりに、こういう発言をしておりますね。「輸入課徴金については、このような実施を示唆するような発言があったとしても、それはそれぞれの国内事情と解すべきだ。米国が日本に対し、政治的、感情的に刺激できるような状況ではないことがはっきりわかった」と、こういう発言をしておられます。これは、今後アメリカがわが国に対して輸入課徴金の導入はしないという大臣の確信ということになるのか、その披瀝ということになるのか、この点をひとつはっきりしていただきたい。
  147. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 通貨問題と通商問題は、車の両輪でございます。同時に、通貨問題は、いま、IMFの場と申しますか、多数国間の間の問題として取り上げられておって、その角度においては日本もアメリカもその一員として多数国間の協議の中に入っているわけでございます。ですから、この二十カ国委員会の協議やそこでの問題の取り上げ方の中には、二国間の日米間の通商問題というものは全然問題になっていないわけでございます。ですから、それと切り離して、日本とアメリカとの問の状況はどうであろうかという、見通しといいますか、それに対する、たまたま場所がワシントンでございまして、帰ってまいりましたから、日米の関係はどうであろうかということに感想を求められるならば、私は、たまたま日本変動相場になっておって、そうして円とドルの間の価値関係も従前とは変わっておるわけでございますから、そういうところから申しましても、理論的にいえば日本の対米輸出は減るはず下ございます。これは、漸次、時がたつに従って計数の上にもあらわれてまいりましょう。アメリカからの輸入はふえるべきはずでございます。そういうような環境の中で、そうしてアメリカの政治家も財界の人たちもおそらくそうであろうと思いますが、日本との間に感情的な対立を起こすような雰囲気ではない、激しい経済戦争のようなものを大事なお互い日米の間で起こすべきではないという、この気持ちが私は非常に強いように見受けられる。これは私は日米通商交渉をやったわけではございませんが、そういう感想から入りまして、日本国民感情を刺激するようなことをやるまいと思うし、それに期待をすると。同時に、日本側も、彼らの国民感情を刺激するようなことをすべきではない。これは経済問題を離れても私の気持ちを含めてそのときに私の所見を申し述べました。その一部がその記事に取り上げられているのだと思います。
  148. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 したがって、私がお尋ねしたい点は、この輸入課徴金制度というものがアメリカで採用されるかされないかということが大きな問題なんで、大臣の感触としては、今後この輸入課徴金制度というものは採用されるという、そういう考え方は薄らいだのだと、こういうことが言えるのかという点ですね。その点を大臣の感触をお話願いたいと、こういうふうに思うのです。
  149. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 新通商法案は、もうここ、アメリカのことですから、私にはよくわかりませんけれども、多くの情報等で察知いたしますと、ここ十日か二週間ぐらいのうちには提出されるのではないかと思いますから、それが提出されればもうだれにもよくわかるわけでございますし、さらにそれが五月に入って、アメリカの国会の審議に入れば、その状況もこれは公によくわかるわけでございます。私は、ただいま申しましたように、自分の願望も含め、かつ、アメリカの対日観ということからいって、彼らのほうでも日本を特に取り上げてディスクリミネートするようなことを欲してはおるまいと、私の願望を込めて私の個人的の観察を申したわけでございます。私はアメリカの政府や国会に対する責任はございませんから、アメリカのほうがどうするかということについて、政府の者として、現在日本政府の者として的確なことを申し上げる立場にはございません。私の一日本人としての願望を込めての観察を申したわけでございます。ただ、さらにもう一つ常識的に加えていけば、これはやはり日本の行動にも大いに関連するところがあると思います。アメリカのほうも、日本がアメリカの国民感情を刺激するようなことはしてもらいたくないと、おそらくしはしないだろうと、こういうふうな気持ちを持っているに違いないと、こう思いますから、これを政策の問題に今度は移し植えて申しますならば、かねがね日本政府が内外に公表いたしておりますような、いわゆる一言で象徴的に申し上げますならば、累次にわたる円対策というようなものを、これを実行していくことであると、日本の立場、日本の自主的な立場で実行していくべきことであると、私はこう思います。私の所管、大半が所管である事項について申しますならば、資本の自由化というようなものはできるだけ早く、できるだけ実行に移したいと、こう考えております。
  150. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 大臣がワシントンの蔵相会議に出られたその直前にですね、向こうへ到着されてすぐだと思いますけれども、二十五日ですね、二十五日に大臣はシュルツ財務長官、またアメリカの首脳とお会いになって、で、そこでの話のやりとりといいますか、これはアメリカ側としては、いわゆる通貨問題よりもかえって日本との貿易不均衡是正ということが大きな問題であると、こういうことをはっきり言っているようです、これは大臣がお聞きになったことですからおわかりだと思いますけれども。そうすると、どうしてもそういった強硬な姿勢に対して日本としてはそれに対処しなければならない。当然であります。そこで、今後わが国としてはその改善策というものを考えていかなければならないと思います。また、それと同時に、そのときにアメリカは日本に対してどのような貿易不均衡に対する是正策を、改善策を考えておったのか、また要望しておったのか、そういった点を少し明らかにしていただければ幸いだと思いますが。
  151. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) アメリカ側の考え方は、先ほども少し言及いたしましたけれども、通貨の問題はいわばマルチの、多数国間の話し合いの場に移りまして、そして、ただいまのところは日米間のみならず一応小康を得ているわけでございますから、特に日米の間でもって、通貨の問題についてこうやってほしい、あるいはこっちから、それはできない、おまえのほうでこうやれと、こういうような問題は、ただいまのところは日米間で特にある問題ではございません。これはもう多数の舞台の中で取り上げられ、そうしてナイロビまでに解決しようと、日本はフロートをしておる、自主的にこれやっておるわけです。ヨーロッパ側は共同フロートその他の状況であるわけでございます。一応これで小康を得ているわけです。ですから、いまの多数国間の話し合いが始まっているこの段階においては、この過程においては、日米間でどうするという通貨の問題はございません。したがって、よく一部には通貨の問題をかぎにして、ひっかけて、そうして通商の問題で日本に圧力をかけてきているんであろうと、こういう御心配もございますけれども、先ほど来申しておりますように、通商と通貨は車の両輪であることはそのとおりなのではありますが、いま日米の問ということになってみれば、通貨の問題は一応たな上げになっている、あるいは小康を得ていると、どうしてもそうすると通商のほうの問題で依然として日米の間の貿易の問題ではアメリカの赤字がたくさんあると、なかなかこれが解消しそうもない、将来とも不安だということをアメリカが問題として持っていることは当然であり、これを言及することはこれは自然の勢いであると思います。これは、アメリカの政府の人にしても国会の人にしても、あるいは市民もそうであると思います。これは自然の成り行きだと思います。  それから、日本の立場から言いましても、一部にはドルが紙くずだという御説もあるくらいでございますから、日本としては対米輸出、あるいは対米輸出というよりは、日米の国際収支の黒というものが日本にとってこれがこれ以上大きくなるということは好ましくないということは日本としても当然のこれは態度でなければなりません。そこで日本が、アメリカがどうであろうとも、この日米間の国際収支の黒を縮めるということについてはできるだけ総合的な対策をとるのは当然でございます。そこで、そういう態度とそれに順応する政策が着々と行なわれておれば、基本的に私は日米間の国民感情に対立はない、いや、もっともっと密接にしたいというのが大多数の双方の国民感情である以上は、とげとげしいことでお互い刺激するようなことは私はあろうはずはない、またないことを切望すると、ほんとうにざっくばらんに申しまして、そういう気持ちを私は持っておるわけでございますから、具体的に言えば、先ほど申しましたように、ひとつアメリカがその通商法案でどういうことをするとか、課徴金がどうだとかということを問題にするよりは、日本が自主的にどうやったらいいのかと、日本の国益としてどうやったらいいかということを着々と行なっていくということに徹するべきではないかというのが私の考えでございます。
  152. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 もちろん、アメリカと日本との間にいわゆる国際通貨の改革について、この両方で、日本とアメリカの間で解決できるという問題じゃないということはわかります。それはわかるけれども、これは報道によるものでありますけれども、二十五日の愛知大臣とそれからシュルツ財務長官、また米首脳との事前の会談といいますが、その席で言われたことは、いわゆるアメリカが考えていることは、日本とのいわゆる貿易の不均衡の是正をどう改善していくかということを非常に大きな問題として考えている、当然だろうと思いますけれども。で、だから、これをどう日本とすれば改善策をはかっていくのかということがこれは今後の大きな問題だろう、こういうふうに私考えましたのでお尋ねしたわけですけれども、そこで、いままでわが国がそういうアメリカとの貿易のいわゆる不均衡、その是正のためにまあいろいろと手を打ってきたわけですね。ところが、打ってきたけれども、やはり大臣がアメリカ一行ってみれば、米首脳は、まず口をそろえて日本との貿易の不均衡というものを強く訴えてその改善策を要請してきているということは、どうしてもそういう状況を考えたときに、輸入課徴金の施用というものは考えられると思う。私はこういうふうに考えるわけですけれども、この点、いかがでしょうか。先ほどと同じようなことでありますけれども、いわゆる過程が違ってきておりますけれども、私はそう思いますが、その点、どうでしょう。
  153. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私は、アメリカのだれよりも——と言うと語弊があるかもしれませんけれども、アメリカ側はと申しましょうか、何よりも関心の深いことは、日米の関係がアメリカの国際関係としても非常に大切であると、日米の協力関係にひびが入らないようにしたい、いやますますよくしたいということが、何よりも念願していることではないかというような私は印象を受けるわけでございます。そのワクの中で双方の政策を自主的にお互いに展開していけばよろしいのではないかと思います。ですから、日本としては、私はさっきからくどく申しておりますが、円対策で考えられたことを、そしてもっとそれよりも、たとえばアメリカから、いわゆる私の私見が多少入るかもしれませんけれども、残存輸入制限のもう自由化というような問題よりも、さらに幅の広い、アメリカからの日本はたとえば輸入増進についてできるだけの考え方を——考え方といいますか、実行をすることであるということを、たとえばひとつ考えるべきであると、とにかく日米の国際収支上の日本の黒をこれ以上ふやさない、減らしていくことに最大の努力をすべきことである。私は私見でございますが、そう考えます。そういうことについて、これは私は日本の国益からそうだと思うんですが、その国益を守る、その着実な政策というものがとられていれば、これは結果においてもアメリカとしては喜ぶことではないかと思います。自然、そういうところから基本的に日米の関係をよりよくしようとしておると、私の判断があやまちでなければ、アメリカが経済問題を越えて日本人の感情を刺激するような措置はとらないでありましょうという願望を込めて、私の観察をお話しいたしましたのが、御引用になっているその記事でございます。
  154. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 この問題についてはもう一問にとどめたいと思いますけれども、大臣は、変動相場制がアメリカとの貿易の不均衡を是正するためにその一環になるのだというような発言をされておるわけですけれども、今後大臣は、変動相場制をアメリカとの貿易不均衡是正のために、この変動制をそういうために続けていこうと、こういうお考えを持っていらっしゃるのか、その点をひとつ明らかにしてください。
  155. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 変動相場制でただいま東京市場には一つの実勢があらわれております。これが結果的に、対米貿易の面においては、日本から輸出が理論的に言えば減るはずである、こう申しておりますし、これは必ず結果にあらわれると思います。私はさらに進んで言えば、大企業方面についてそういう傾向があらわれることは、私は現在の状況下においては日本として望ましいことじゃないかと思います。  そこで問題は、中小企業あるいは農業といいますか、いわゆる中小の対策というものが必要でございますが、その面におきましても、構造の改善ということを頭に描きながらの政策が展開されること、そういう考え方は四十八年度の予算の上に財政政策としても考えられているわけでございますから、これを着々と迷いなく実行していくことではないだろうか。これがつまり輸出重点主義から内需に転換あるいは福祉増進ということにつながる考え方であろうと、こう考えております。
  156. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 次に、総理にお尋ねしたいと思いますが、昨日衆議院予算委員会でわが党の坂井議員がXC1輸送機とそれからC1輸送機、この製作の違法性について追及をいたしました。その際に総理は、善処をする、こういうふうにお答えになっているわけですが、ただ善処だけではわれわれわかりません、その内容は。どういう真意を総理は持っておられるのかわからない。したがって、その「善処」とはどういうことなのか、この点をひとつ明らかにしていただきたい。
  157. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 前段に申し上げておりますとおり、防衛庁の輸送機を日航製に試作をしてもらったという事実と、それから航空機工業振興法の審議過程において当時の大臣が発言をせられたその発言の趣旨、それから審議の結果附帯決議としてつけられたその附帯決議の趣旨等々を検討しますときには、妥当性に対して問題があるという御指摘がございました。政府はその事実を認めまして、本件に対しては善処をいたしたいと、こう述べておるわけでございます。でございますから、善処ということに対しては以後、自今、防衛庁の輸送機その他C1に類するようなものでございますが、こういうものは一切日航製には研究開発等はいたしませんということが最も具体的な善処の実体である、こう考えております。
  158. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 関連。  総理の「善処」の中身が一つはわかったんですが、いわゆる今後の判断をどうするかということの基準一つは出た、こう思ったんですが、いま一つは、それでは、この日本航空機製造株式会社に第三者がたとえばスポーツ的な航空機の開発を頼んだ、非常に性能もすぐれておる、こういうようなときに、将来そのようなものは、たとえ日航製で真剣になって開発し性能のよいものができたとしても、防衛庁等から買い付けがあっても一切これはやらない、こういう歯どめも一本ある、こういうふうに受け取ってよろしいんですか、それが一つ。これは総理に伺いたい。  いま一つは中曽根通産大臣に伺いたいんですが、昨日は、いままあ総理の答弁で全部済んでおるんですけれども、附帯決議の「等」ということについて、これは民間機だけではないということですが、そういうような意味のことを言われたわけですが、その点についてはそれから以後答弁がなされておりませんが、これは通産大臣からはっきりその点は伺いたいと思います。その二つです。
  159. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あの「等」ということばは、私は勘違いをしておりまして、平和民間輸送用航空機ということで、軍用目的というようなものにかかわるものは一切関与しない、そういう内容であることがはっきりいたしました。これは私の勘違いであります。  それから第二に「善処」ということでございますが、あれから通産省におきまして、当時の責任者はだれであるか、どういういきさつでああいう決定がなされたか詳細に調べてみました。当時、通産省におきまして四十一年十二月に契約決定に関与したと思われる者は、事務次官の山本重信、それから重工業局長の高島節男でございました。いま、これらの人々はみんなやめて通産省にはおりません。おりませんが、しかし、将来こういうことがまた後継者等によっていろんな部面においてなされてはいけませんから、厳重に次官、局長に対して、国会決議を尊重するよう、絶対こういうことを繰り返してはならぬと強く戒めておいた次第です。  あのときのいきさつは、民間輸送用航空機というので、輸送というところにかなり重点を置いて、防衛庁のものでも、あれは輸送にも使うのであるし、また、他の部面、民間用にも将来転用ができると、そういう安易な考えがあって設計委託をやったようでございます。もう一つ、いろんな機構をつくると経費が高くかかるというので、節約という意味もあったそうでございますけれども、いずれにせよ、国会の決議に背馳したことは事実でございますから、これはわれわれとしては大いに反省して戒めなければならぬところであると思います。  それからもう一つ、善処の仕事として、日航制は現在百七十五機を出し、百八十機で一応YSの仕事は終わる予定でございますけれども、このアフターサービスの仕事が残っておるわけでございます、いろいろ売り渡したり、リースした方面に対して。アフターサービスの仕事が終わったらもう解散させようと思います。これが善処の一つであります。  いずれにせよ、国会の決議に背馳するようなことはまことに申しわけないことでございますから、今後われわれともに戒めて、こういうことを再び起こさないようにいたしたいと思っております。
  160. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 この問題につきましては、いずれにしても、まだまだ問題が残るわけであります。で、時間もございませんので、次の本予算締めくくり総括等において十分に審議をしたい、こう思います。そのために資料を提出をしていただきたい、こう思います。  で、その資料は、まずXC1輸送機の開発にあたっての経費について明らかにする資料一切。特に国防会議会議録、それから防衛庁と日航製との契約書類一切、その中には基本設計契約とか、あるいは細部設計契約、試作機契約、疲労試験機契約、まあ、その他の契約があればこれは出していただきたい。  それから、いま申し上げたのはXC1でございますが、今度はC1のほうで、この輸送機に関して、川崎重工と主契約者として防衛庁が発注することに決定したいきさつですね、これを明らかにする書類一切。それと国防会議会議録。それから防衛庁がC1輸送機を川崎重工に発注することを決定した際の会議録、それから防衛庁と川崎重工の契約書類一切。それから最後に工業所有権の取り扱いを証する書類、以上の資料を御提出いただきたいと思います。  委員長、この点ひとつよろしくお願いしたいと思います。
  161. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国防会議の議事録についてだけ申し上げますが、国防会議の議事録は、何月何日、何を討議して、どういう結論を得たかというような、国防会議事務局長限りのメモはございますが、だれがどのように発言したかというような議事録はないわけでございます。これは何月何日、だれが出席して、どうきまったかというようなことを提出せよということであれば、整理の上提出をいたしたい。  これは国防会議議事運営規則によりまして、「国防会議事務局長は、会議の都度、その出席者、議案及び決定内容等を録取し、これを保管するものとする。」というだけでございまして、、議案とそれから決定案しかないわけでございますから、これは事前に申し上げておきます。
  162. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 御要請になりました資料、中には私企業の秘密に属する部面で、こういうものは公のものとして提出することをいままで差し控えさしていただいておるものがございますが、そういうことも含めまして検討をいたしまして、できるものを全部提出をいたします。
  163. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 今度は、厚生省並びに文部省にお尋ねをしたいと思います。  最近、岐阜市内の小、中学校の給食牛乳、この牛乳の中に大腸菌が検出された。これは絶対に入っていてはならないというものであって、それが入っておった。あるいはまた、中央卸売市場で取り扱う食品の中に、食品衛生法で規制されている食品添加物を大量に使っておる、あるいは大腸菌、雑菌に汚染されている食品が多くまざっておる、こういったことが明らかになったわけでございますけれども、この問題について、厚生大臣あるいは文部大臣は御存じでございますか。
  164. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 最近、岐阜の中央卸売市場におきまして、四十七年五月、九月、卸売市場において発見されました、もなか及びあんパンのあんに、お尋ねのような添加物が入っておったことを県の報告において承知いたしております。  その措置について申し上げますと、県当局は直ちにこれを発見いたしまして、当該のあんパン、もなか等を回収し廃棄いたしますとともに、業者から始末書をとり、厳重に警告をしたということの報告を受けております。  それから学校給食の問題でございますが、文部大臣からもお話があると思いますが、岐阜市内における学校給食用牛乳に大腸菌群が検出されたことを承知いたしておりまして、厳重に指導を強化いたすことにいたしております。
  165. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 昨日、岐阜県教育委員会に問い合わせまして、その結果、三月の定例の岐阜市議会で、学校給食用の牛乳やとうふに大腸菌が検出されたということで問題になったことを承知いたしました。岐阜市の教育委員会におきましては、牛乳につきましては県の教育委員会のほうに、また、とうふにつきましては関係の業界のほうへ善処方を求めたということでございます。
  166. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 大臣御存じのようですが、事務局のほうから詳細に内容について御説明願いたいと思います。
  167. 浦田純一

    政府委員浦田純一君) まず、中央卸売市場から発見されました違反品の問題でございますが、違反者は、岐阜県の揖斐郡揖斐川町三百五十の二、三輪屋、責任者は杉山光雄でございまして、違反事実及び措置でございますが、第一回目の違反事実は、昭和四十六年八月から四十七年二月までの間に、標示の不備などで四回にわたりまして警告を受けております。  それから引き続き、四十七年の五月十五日に、もなかのあんにデヒドロ酢酸の過量添加の事実が発見されまして、現品は廃棄処分、それから始末書及び警告処分を出しております。   〔委員長退席、理事西村尚治君着席〕  次に、昭和四十七年九月八日、九日の間に、あんパンにデヒドロ酢酸過量添加の件で、直ちに現品は廃棄、始末書及び警告処分、並びに施設の改善指導をいたしております。  ちなみに、デヒドロ酢酸の使用基準及び違反量でございますが、使用基準は、あんの中には一キロ中〇・二グラム、もなかの違反につきましては、これが〇・二四グラム、あんパンの違反につきましては〇・二五グラムということに報告を受けております。  学校の給食の件でございますが、これは、私どもは教育委員会のほうからの報告も受けておりますが、文部当局のほうから御報告させてほしゅうございます、私のほうも承知いたしておりますが。
  168. 澁谷敬三

    政府委員(澁谷敬三君) 学校給食用の牛乳につきましては、まず、市町村の教育委員会で需要量を取りまとめまして、それを県の教育委員会がまとめまして、県知事のほうに牛乳業者の選定と供給をお願いをするという仕組みになっておるわけでございますが、今回の件に関しまして、一回だけかなりの大腸菌が検出されたという事実がございまして、県の衛生部におきましては、牛乳処理業者全員を集めまして厳重な指導をしたと、そういうふうに聞いております。
  169. 沢田実

    沢田実君 関連。  ただいまの問題に関連してお尋ねをしたいわけですが、具体的に厚生省から御説明があり、大臣も、その処分が済んでいるようなお話でございますが、ただいま上林委員から質問申し上げましたことは、業者がどうこうということよりも、現在の卸売市場のそういう問題に対する検査の方法、そういうことに大きな問題があると、こういう意味で申し上げているわけですので、もう一歩突っ込んで、その点の全国的な面についての指導を私は要求をしたいわけであります。  というのは、たとえばいまのように、岐阜の御売市場で、他の県の製造業者でつくられた商品が参りまして、そこで保健所でこれは不適格だというようなことが発見された場合は、県に報告になります。そうしますと、製造業者のある県に、県から報告になる。その現地の保健所に連絡がある。そこで注意をする。注意をしたことがまた同じようなルートで返ってくる。三カ月から半年かかっております。そういうまずい商品はことごとく売り尽くされております、というのが現状ですので、事前に発見をして全部処理しましたというようなことは、その一つの処理の報告として来ておるかもしれませんが、決してそんな問題ではないということが大きな問題です。全国的に保健所ではそういうことにぶつかりながら、それがいわゆる厚生省、国の段階の問題になっておりませんので、われわれの生命の問題から、私は大きな問題として、厚生省では全国的な調査なりその対策をしていただきたい。  それから、もう一つは、文部省のほうですが、そういうような事実が発見され県に報告をされて、非常に長い間そのことが放置されております。これは私は一つの例で申し上げているんですが、岐阜県だけではないと思います。これはもう全国的に検査をしていただきますれば、あるいは報告されている事実を調査いただければ、よその県にもある事実だと確信をいたしております。そういう意味で、単なる、どの業者がどうした、あるいは県で処分をしたというような問題で、この予算委員会で問題にしているわけではございませんので、厚生行政、文部行政の大きな問題として取り扱いをいただきたいことを希望いたします。  それに対する大臣の答弁を希望いたします。
  170. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 食品衛生の重要性につきましては、十分私ども認識いたしておるわけでございまして、全国に食品衛生監視員というのが約五千人ほど配置してございますが、食品営業施設は、御承知のように、実に膨大な数にのぼっております。それからまた、いま御指摘のように、食品が流通をしておるわけでございますので、取り締まりもなかなかたいへんだと思いますが、私どもは、今後一そう取り締まりを厳重にいたしてまいりたいと思っております。  なお、私どもは、夏と年末におきましては、この食品衛生監視員五千人を総動員いたしまして、全国一斉に一斉検査をいたしておるわけでございますが、さらに今後は、食品の流通ということも頭に描きながら、さらに一そう厳重な取り締まりをはかってまいるように努力いたしたいと考えております。
  171. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 学校給食の場合に、衛生管理が特に重要な問題だと考えるわけでございます。食品衛生の問題につきましては、厚生省、保健所の系統で責任を負っておりますので、従来から、給食関係者に対しましては、保健所との連絡、協力を求める、助言、援助を求める、これを強く言ってまいってきているわけでございますけれども、今後とも、そういう体制は強めていかなければならないと思います。  同時に、栄養士の充実をはかっているわけでございまして、四十八年度から第二次七カ年計画、二千五百人以上は必ず栄養士一人を置くというようなことに着手しているわけでございますけれども、こういう面についても、なお一そうの努力を払ってまいるつもりでございます。
  172. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 いま沢田委員から、心配された点が聞かれたわけですけれども、これで問題な点は、たとえば大腸菌の場合には、これはいわゆる法で規制することができるようになっていない。したがって、県条例によってやっておる。県条例ということになりますと、県の任意ですから、県の立場で考えるわけですから、全国全部違うわけです。そういうところに問題があるだろうと、こう思います。で、この点をどういうふうにしていくかという、この点が一つ。  それから、たとえば、牛乳に大腸菌が入っておった。その検査をやる場合、これは培養試験で行なうので、結果が出るのが十日間ぐらいかかるというんです。せっかく検査をしたけれども、全部飲み終わっちゃってからだいぶ、場合によっちゃ、おなかもこわすだろう、下痢もするだろう、したがって。これは、そういうような状態が起きてからその結果がわかるという仕組みになっているんです。その辺をどうするかという、その点をはっきりしなければ、これは全国的にきちっとした規制もできなければ指導もできないんじゃないかと、こういうふうに思います。その点、ひとつはっきりしておいてください。
  173. 浦田純一

    政府委員浦田純一君) 上林先生御指摘のように、確かに今度問題となりましたとうふなどにつきましては、大腸菌群の基準については、食品衛生法上のきめはございません。しかしながら、現在、清涼飲料水等八品目、それから牛乳等五品目及びクリーム等の乳製品十六品目、合計二十九品目について大腸菌群の基準が規定されております。先生御案内のとおり、牛乳については、大腸菌群は、これは検査しなければならないという非常にきびしい規定でございます。また、今回のとうふにつきましては、市当局が非常に熱意を示しまして、基準を示しておるということでございます。もちろん、大腸菌群——できるだけすべての食品について、その特性を十分に考慮しながらきめていくということは必要でございますので、今後必要性のあるものにつきましては、至急に基準を定めるように努力してまいりたいと考えております。  それから、確かに牛乳のように、現在の検査方式では、飲み終わってあとから大腸菌のあったかどうかということが明らかされるということで、たいへんにその点問題が残るといったようなことでございますけれども、牛乳につきましては、毎日定期的に順を追って調べていくということによりまして、結果として大腸菌による汚染が起こらないように十分に注意していくことは可能であろうと思います。また、万一大腸菌群が発見されるといったようなときには、これは厳重に施設その他まで調べまして、そういったことが再び起こらないように指導、措置してまいりたいと考えております。
  174. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 厚生大臣、いかがなんですか。いまの答弁ではちょっと完全じゃありませんしね。まだまだこういう問題は、全国的にいえば次々に起きてくる可能性があります。
  175. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 食品に含まれておりまする大腸菌群の許容基準につきましては、先ほど食品約三十品目だけは局長の言いましたようにきめておるわけでございますが、その他のものにつきましても、今後、必要に応じ追加して許容基準を設定するようにいたしてまいりたいと思います。検査方法等につきましては、先ほど日を追うて検査するというやり方等を環境衛生局長から申し上げましたが、そういった方面においても、もっと改善を加えるものがあれば改善を加えながら、心配のないように検査を厳重にいたしてまいりたいと、かように考えております。
  176. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 まあ、時間がありませんので、あまり明確な、明快な答弁ではないと思いますが、次に移ります。  米の問題ですが、いま申し上げたように、時間がありませんので、そのものずばりいきますので、お願いしたいと思います。  自主流通米が、四十四年にその制度ができて、そして今日に至っているわけですけれども、だんだん国民の嗜好が、うまい米ということで、自主流通米のほうに走っておる。そうすると、標準米のほうは当然残るということは、これは当然考えられてくる。で、その残った標準米のその数量と、どのくらいのいわゆる家庭世帯というものが、そういう自主流通米のほうに転向をしておるか。その辺の、いわゆる数量の問題になりますけれども、数の問題になるけれども、ひとつ農林省のほうからお答え願いたい。
  177. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) この標準米は、昨年の十一月一日以降、四十八米穀年度の場合で申し上げさしていただきたいと思いますが、これは、自主流通米も含めた出回り量の全体、これに対して、政府としては四五%を見込んでおるわけです。そうして、この十一月以降の総理府の調査や食糧庁自体の調査で一応どの程度これが現実に標準価格米として出ておるかということを調べてみますと、これが大体三六%程度になっておるわけでございます。ですから、その差が、これが一般のウルチ米のほうに流れておるのではないかという御批判があるわけですが、これはこれといたしまして、それでお尋ねの世帯数のことは、これはなかなかっかみにくいのでございまするが、昭和四十七年十一月一日で世帯数二千六百万と見込んでおりますが、この中で大体半分はその標準米を——これはまるまる標準米を使用しておるというんでなくて、まあ、その標準米を大体この世帯の半分程度の人はずっと買っておられる方もあれば、ときに買う方もあるんではないかと、こういうふうに推定をいたしております。
  178. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 農林大臣は、小売り店において売れ残った米が混入されておる、そうして、それは売られているということを認めておられますね。そこで、今後も、こういう状態が続いてもやむを得ないというふうに、したがって考えているかということですね、その点、ひとつ。
  179. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) これは、ただいまお答え申し上げましたように、政府として大体全体の四五%程度が標準価格米で流通するであろうというのに、実績がそれに伴わない。まあ、うまい米が食べたいというような嗜好の点もございましょう。いろいろその原因はございましょうが、そうして、その余った場合のことを一体どうするかと、こういうことになりますると、お米屋さんのことについて御事情をお調べ願えばわかりますが、これも多年にわたって、お米屋さんは混米ということはもうずっと長いことやっておることでございまして、政府のほうとしては、多少余裕のあるように、そうして標準米が常置されるように、これを指導しておるわけでございます。この間うち、モチ米のために何かいろいろ御批評がありましたので、重ねてこの標準米の常置の義務ということについては厳重に通達をしておりまするが、しかし、いま申し上げたようなことで、残ってくるものは、多年の習慣上の混米を認めておると、こういうことでございます。
  180. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 続いてお尋ねしますけれども、農林省は、小売り店において残った米は混合米として売ってよろしいという、こういう指導をしているというんですね。ということは、混合米として売ってよろしいという指導をしておるということは、それはいわゆる自主流通米、銘柄のたとえばササニシキとか、コシヒカリとか、そういうものに混入してよろしい、そして売ってよろしいということを指導しているのか、その点をひとつ。
  181. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) いまおあげになった優良銘柄米、ササニシキとかコシヒカリ、これは、大型精米所ではっきり受け払いの帳簿の上からも明白なものは、そのとおりの表示をして売らせておるようにしております。ところが、お米屋さんによって月に何回か入荷をしてくる。そこへいろんな種類の銘柄米もあれば、非銘柄米もある。また、いま申し上げたような標準米の余りが出たということで、これを混米をして売るということについては、これを認めておるわけでございまするが、これはなかなか中身を表示するわけにはいきませんですね。この前も御意見で、そういうものも表示したらばどうか、混合率はどうだということを書いたらどうかという御意見もございましたが、それはそれなりに検討さしていただいております。しかし、それはなかなかむずかしい。米屋さんの実態からいってむずかしい。そこで、一方において、はっきりつかめる自主流通米は、これこれでございますと、これはやっぱり自主流通米の表示をいたします。それから銘柄米は銘柄米として表示をいたします。そうすると、このごろ問題なのは、ササニシキでないものをササニシキとして売っているじゃないか。これは不正表示になりますから、それで、大型精米所で受け払い簿ではっきりしているものだけさせる。それをかってに何か表示する、それは不正表示で取り締まりの対象になるかと思います。
  182. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 中を表示するのは非常にむずかしいという、いまお話でしたけれども、これは小売店でもって、いわゆるコシヒカリならコシヒカリというものが自主流通米として入ってくる、小売店に。そうすると、それにいわゆる残った標準米を加える。これならば、中の表示ができないということはないと思うんです。どのくらいのパーセントでもってこれは標準米が入っているんだという表示はできるんじゃないかと思うんですが、その点がどうしてできないかという問題ですね。
  183. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) これは、一ぺん現状をお調べ願うといいと思うんですが、必ず同じところから同じようなルートでコシヒカリだけ来るんだ、そして標準米があるんだという、こういう実態ではないようでございます。日本全国の問屋さんが、極端に言えば、あちこちから随時買ってきておる。こういうものでございまして、そして、それを米屋さん自体がそこで精米をしておる。こういうようなことでございまするから、だから、そこで検討には値するけれども、実際上はなかなかこれはむずかしいんじゃないか。そこで逆に、大型精米所で、はっきりしているものだけはちゃんと表示をさせるというくふうをいたしたようなわけでございます。
  184. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 米の問題は、あと、米の備蓄についてお尋ねしてみたいと思います。  総理は、この前、米の備蓄を今後考えていく必要があるだろうと、こういう答弁をしております。そこで、この備蓄については、じゃ、いつごろからそういった備蓄をやっていくかということ、それと、やる場合には、どの程度の数量、これが必要になってくるのか、その点をひとつはっきりしていただきたいと思います。
  185. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ことしの端境期、十月ごろまでには約五十万トン、四十九年の十月には七十五万トン、あと五十年に百万トンにするかどうかという問題が起こるわけでございます。これは国際的に米がどのようになるかという問題もございますし、また、日本に対していま援助を求めておる国が多数あるわけでございますから、そういう面も考えながら、備蓄——まあ、端境期に十分残る量、安全性を見た量というものをきめてまいろうということでございますが、ことしも地域的には、二百五万トンの生産調整の中で弾力的な運用ということで、どうしても古米ができない、また、良質のものでどうしてもやりたいというものに対しては、よく実情を農林省も調べておるようでございますから、米が不足になるというようなことが絶対にないようにやっぱりしなくちゃならない、こう考えております。  ただ、備蓄百万トンと口では簡単に言いますけれども、これが順調に国際的な市況、状況等がまいりますと、百万トンというものはそのまま全部食糧以外ということにいく、そのままずっと残っていくということになりますので、また、備蓄というものはそういうものだと思うのですが、米の場合は古米、古々米になっていきますので、そういう問題は、専門的にも十分検討しながら、安全度を見てまいるということでございます。
  186. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 突っ込んで、もう少しお話ししたいわけですけれども、時間が全くなくなりましたので、あと、建設省にお尋ねしてみたいと思います。  首都圏近郊整備地帯に宅地開発適地がどのくらい残っているのか、これを調査したことがあるかないか、この点ひとつお答え願いたい。
  187. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 市街地域の面積約百二十万ヘクタールから現に市街化されている約五十万ヘクタールを除いた、約六十六万ヘクタールが、当面、宅地開発の対象となる面積と考えられます。また、このうち東京圏——一都三県でございますが、市街化区域面積三十一万ヘクタールから、すでに市街化された十七万ヘクタールを除く約十四万ヘクタールがそれに当たると思います。近畿圏におきましては、二府四県については、市街化区域面積二十一万ヘクタールから、すでに市街化された約十一万ヘクタールを除いた約十万ヘクタールがそれに当たると思うわけでございます。
  188. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 その辺のところまで掌握をしておる、こういうことなんですが、それでは、いま大臣が申されたそういう面積について——土地問題はいまや最大の問題です。いわゆる公有地拡大法案等も出てきて、そして公有地を確保するということについては真剣であるが、なかなか手に入らない。そういうものを踏まえて、国としては、いま大臣がおっしゃったような面積に対して今後どういうような手を打っていこうと考えておられるか、その点をひとつ。
  189. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 御指摘のように、土地がないということは住宅が建たないということでございますから、その意味で、政府としても、この問題については最大な関心を持っておるわけでございます。そこで、この問題は、経済閣僚協議会でも要綱をつくりまして、御案内のとおりであるわけですが、また、あるいはいろいろ問題にもなっておるわけですが、市街化区域内における農地の宅地並み課税というような問題、あるいは税制の改善、あるいは優遇の問題その他をして、どちらにしても、むちも強く、そしてあめも大きくと、こういうようなことにして土地を出してもらうというようなことを考えなければならないと、しかし、まあこの時代になってきますれば、私は土地という問題は、いつも申し上げておるとおりでございますが、いわゆる公共優先であってしかるべきだ、相当の抑制もあってしかるべきだ、こういう意味で土地は国民の共有する領土だというような考え方を持っておるわけでございますから、いまデベロッパー等が大きな土地を持っておる等につきましては、いわゆる一つの大きな使命感を持ってこの時点に対処してもらいたいと、こういう私も要請はいたしておるわけでございます。
  190. 上林繁次郎

    上林繁次郎君 次に、住宅五カ年計画についてお尋ねしてみたい。  二期五カ年計画ですね、これによりますと九百五十万戸計画をしている、そのうちの五百七十万戸は自力建設であると、こういうことです。御承知のように資材の値上げ、あるいはまた不足、こういったことから民間の建設というものが非常に窮屈になってきている。これが実態です。これらに対して、たとえば銀行ローンの問題もそうですね、これらに対して何らかの手を打ってあげなければ民間自力の五百七十万というこの目標はとても達成できるものではない、こう思います。その辺について建設省としてはどういう手を打っていこうと、こう考えておられるのか。
  191. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 私は、民間の問題につきましても、公的な問題につきましても、いま土地の問題あるいは資材の高騰というような問題で非常に難儀をいたしております。それ以外に、いわゆる東京あるいは神奈川、埼玉、千葉というところでは、もうこれ以上人口をふやしてもらっては困ると、それには学校も建てなくちゃならない、水道の設備もしなくちゃならぬ、幼稚園の設備もしなくちゃならぬと、そういうようなことがあるものですから、そういうものに対してはいわゆる国が何とかしてこれを先につくってやらなくちゃならぬと、こういうような方法も考えておるわけですが、どちらにいたしましても、民間のほうにいたしましても、これと同じように、いわゆる対策は、セメントにいたしましても、あるいは木材にいたしましても、相当不足がち、あるいは高騰であります。そういう意味であらゆる努力をし、この木材にいたしましては林野庁にお願いをいたしまして、あるいは外材をお願いし、あるいは代がえにしたり、あるいは林野庁にお願いの件は、民有林の放出、あるいは国有林の放出、そういうようなお願いもし、そうしてこの場をしのいで、まあ一応材木は小康状態を呈しておるわけですが、いまのところ一番当面の問題はセメントであります。セメントにつきましては政府が非常にあらゆる方面に手を打っていただきまして、通産省では韓国にまで手を伸ばし一万トンのセメントをとっていただくというようなことをしていただきながら、なおかつ地方には建設省の出先機関あるいは通産省の出先機関、そうして地方町村と連絡協議会等をつくりまして、いま速急にやらなければならないというようなものについてはこれに充足するというようなことを、対策を講じて問に合わせたいというような、非常にむずかしい中にも努力をいたしておるわけでございます。
  192. 西村尚治

    理事(西村尚治君) これにて上林君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  193. 西村尚治

    理事(西村尚治君) 中沢伊登子君。(拍手)
  194. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 初めに愛知大蔵大臣にお尋ねをいたします。  本日は三月三十一日で、昭和四十七年度の会計の最終日でございます。そこでお伺いをいたします。まず、日本銀行ですが、本日は年度末で手持ちドルの評価をされると思いますが、手持ちドルは幾らあって、一ドル幾らの評価をされますか。
  195. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 概略でございますが、二月末百五十億ドルでございます。
  196. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 一ドル幾らの評価をされますか。
  197. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 日本銀行の手持ち外貨につきましては、外為会計と同様の評価をすることになっておりますから、これは現在変動相場中は基準にとるべき評価額はございません。したがって、ドルをそのまま手持ち外貨としてごらんいただきたいと思いますし、評価をいたします場合は三百八円ということになります。
  198. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それでは大蔵省の外為会計ですが、これは幾ら手持ちドルがあって、これも一ドル三百八円でございますか。
  199. 林大造

    政府委員(林大造君) お答え申し上げます。  三月末のドルの保有残高は本日締め切りますので、若干古くなりまして恐縮でございますが、二月末の保有の外貨準備百九十億ドルのうち、政府の保有分は二十九億ドルでございます。ただ、このうちには若干、ごくわずかではございますが、金その他もございますので、ただその大部分が外貨である、その外貨は大部分ほとんど全部ドル建てでございまして、これは基準外国為替相場である三百八円によって評価することに外国為替資金特別会計法の規定によって定められております。
  200. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それでは、本日の変動相場による一ドルは幾らになっていますか。
  201. 林大造

    政府委員(林大造君) お答え申し上げます。  本日は土曜日でございますので、したがいまして外国為替関係の取引は行なわれないことになっております。したがいまして、昨日の中心相場を申し上げますが、昨日の中心相場は二百六十五円八十三銭でございます。
  202. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 そこで、愛知大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、わが国の固定相場制復帰の最低条件は何でしょうか、どういう状態になれば固定相場制に戻れるのでしょうか。
  203. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これはいろいろの条件がございます。今朝来いろいろ御質疑にお答えいたしましたが、国際通貨制度については、世界をあげて現在、再建恒久策の確立に狂奔しているわけでございます。その結果が満足のできるようなものであり、日本が国益としてもそれが適当であると判断できた場合が一番よい時期でございます。国際的な協議や会議やいろいろの状況を通じて、これならば日本は単独で固定相場をとってもだいじょうぶであるという確信が持てた場合も一つの判断の時期でございましょう。しかし、ただいまのところは流動的な要素があまりにも多うございますから、その時期がおおよそいつごろということを、日時等の予想をあげて申し上げることは不可能でございます。
  204. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 諸外国が変動相場制を続けていても、日本は自主的に固定相場制に復帰することがあり得ると大蔵大臣は述べておられましたが、ニューヨークからお帰りになられてからは全面的にその主張を変えられたのは、どんな理由と、どんな経過があったのですか。
  205. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私はちっとも主張を変えておりません。いま申しました、いろいろ複雑な条件があると申しましたけれども一つは、たとえば国際的にきちっとした機構ができて、これで日本としてもよろしいと判断するときも一つの場合でございましょう。それから、おおよそこれならだいじょうぶであろうと、こういうことで自主的な立場をとる場合もあり得ましょう、いずれの場合も。そしてその間にまたいろいろのバリエーションもあると思います。
  206. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 いまのいろいろな御答弁の中ででも、やがては固定相場制に復帰することがあり得ると思います。で、そうなったときに、その起こる差損ですね、それはどのように国民に説明をし、納得を得るおつもりですか、お考えを伺いたい。   〔理事西村尚治君退席、委員長着席〕
  207. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは観念的には、差損が起こるかどうかということもまだわからないわけです。ということは、変動相場をいつまで続けるか、また、実勢をどういうふうに見て固定相場制に一たとえば何に対してリンクをするかということだって考えられるわけですし、SDRがかりに基準になったというような場合にはどういう評価になるか、それもわかりません。ただ、いままでの観念からいえば、差損が起こることがあり得ると思いますけれども、これは日銀の保有分につきましては、従来からの差損の処理の方法は一つの原則は確立しております。それによって処理をいたします。それから外為会計の分につきましては、やはりある時期におきましては評価がえをいたします。そのときには、大体、日銀と同じように考えられるかどうかわかりませんけれども、一定の時期において評価損が出ることは当然あり得ることであると思います。で、それがいわゆる税金としての負担であるというところだけを取り上げられるならば、それは国損ということにもなりましょうけれども、そのときそのときの状況によって、その処理の方法によって、これは御批判を仰ぐべきものでございまして、もっとざっくばらんに申しますれば、一昨年当時のやり方とは変わってくるかと思います。と申しますのは、いずれにいたしましても、現在やっております変動相場については、為替の実需を中心にして、そしてこの相場を活用といいますか、市場を活用しているわけでございますし、いわゆるむだな外貨の買い方をして国損を起こすというようなことは私はやらないでいきたいと、こういうふうな基本的な考え方を持っております。
  208. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 一昨年の円の切り上げのときに、大手商社なんかの法人税が払わなくても済んだと、こういうようなことが巷間うわさされておりまして、一部の国民の方は、今度もまたかというような感じをたいへん持っておるものですから、この御質問を申し上げたわけですが、けさからの大臣の御答弁をいろいろ聞いておりますと、結局、将来、固定相場制に返る見通しは立たないということになりますが、それでは一体日本の輸出入関連業者はどうしたらよいのでしょうか。大臣の責任ある助言があったらお伺いをしたいと思います。
  209. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいま御質問ございましたけれども、東京市場における、日本としてはドルとの関係が一番大きなわけですから、ドルに対する円の相場あるいは円に対するドルの相場、これはただいま御質問もございましたように二百六十五円あるいは二百六十四円台というようなところが出ておりますが、幸いに、市場を開きましてから相当の期間、大体その辺のところで安定しておるわけでございます。午前中の御質問にもございましたけれども変動相場制下におきましても、そうした相場が乱高下しない、市場の実勢が落ちついているということは、大企業であろうが中小企業であろうが、あるいは旅行者であろうが、まず安定した取引ができるわけですから、それらの点について御心配をかけないように、乱高下しないように市場を見守り、あるいは必要に応じていわゆる介入ということをやると、こういうことで安定を期していきたい。これは何回かの最近の国際会議の中でも、相談の上におきましてそういうやり方をお互いにやるということについては、国際的な理解をお互いに持ちながらやっているわけでございます。
  210. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 新聞紙上で拝見しますと、大蔵大臣が先日アメリカでニクソン大統領にお会いになったようですが、そうですね。
  211. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 会いました。
  212. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 そのときの内容は何でございましたか。具体的にどういうお話し合いがあったのか伺いたいと思います。
  213. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 日本との関係をあらゆる意味において一そう増進したいということに特に大統領としても深い関心を持っているということと、それから、できれば田中総理大臣と会談をしたということでございます。いま一つは、私の出かけておりました用向きが用向きでございますから、ハリ会議以来累次にわたって自国のシュルツ長官等とよく国際通貨問題の再建について御協力をいただいてたいへん感謝をしておりますと、こういうことでございます。
  214. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 田中総理大臣をアメリカへ招待されるということは、アメリカがいまの為替問題や通商問題で日本にいろいろな犠牲を払わせているので、日本政府に対して何らか含みがあるのですか。それとも、おべんちゃらなのでしょうか。
  215. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私は非常にまじめに真剣に受け取りました。おべんちゃらやごますりとは違うと思います。一国の元首がおべんちゃらを言うはずはございません。それから、前もって要求がましいこととかなんとか、これは少しこちらがヘリくだり過ぎたお感じではないでしょうか。私は、いまの日米関係というものはそういうものではないと思います。それから同時に、経済問題の現象的な問題等については、私ども閣僚が全力をあげて処理をいたします。一国の総理と会いたいということは、もっと高い次元の問題であると私は想像いたします。
  216. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それでは今度、総理大臣にお伺いをいたします。  ニクソン大統領のお招きを受けて渡米をされますか。そのときに、いまの愛知大蔵大臣のお話ではございませんけれども、相当高い次元の目的を持って行かれると思いますが、また、いつごろおいでになられますか。
  217. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ニクソン大統領から正式な招待を受けておることは事実でございます。しかし、まだ国会開会中でございますし、その他の国々からも数多く正式な招待を受けておるわけであります。ソ連からも、イギリスからも、またインドネシアからも、その他の国からもあります。そういう意味で、まだ国会のめどもつかない現在、いつ訪米できるかということに対してきめておりません。おりませんが、私とニクソン大統領とのハワイ会談では、日米はこれはお互いとも必要とし合っておる友好両国であるから、首脳が絶えず定期的に会談をしようと、こういうことを言っておるわけでございます。事務的にはいろいろな問題に対して事務会談が設けられております。また専門会談も常置されておるわけでございます。そういう意味で、お互いが、会えば何でも理解ができるお互いであるので、専門家や事務レベルの会合は会合とし、また閣僚レベルの会合もございます。ことし六月ごろ行なおうと言っておるような日米経済閣僚会議もあるわけでございます。首脳がお互いに会おうと、こういう了解のもとにございますので、そういう意味で招待をされたと、こう思います。
  218. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それでは、今度はPCBの問題に移っていきたいと思います。  先日、またしても母乳から高濃度のPCBが検出されたことが新聞に載っておりましたが、このPCBの回収についてどの程度できていますか。
  219. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) PCBは、過去五万九千トンが生産され、輸入が一千トン、合計六万トンの供給がございました。このうち、熱媒体用はPCB自体として使用され、その量は約九千トンでありますが、液状PCBとして四十八年二月末現在、PCBメーカーに約一二千トンが回収されております。四十八年十二月末までに熱媒体を転換するよう指導しておりますので、今後回収は木らに促進されるものと考えられます。
  220. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 どんな回収方法がとられているか、御存じですか。
  221. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 変圧器とかそういうものに入れているものは外へ出ないというので、一応そのままにしておるようでございますけれども、そのほかのものはドラムかんに入れて、そして保管しているようでございます。
  222. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 私が調べたところでは、いまおっしゃった総使用量をドラムかんに直せば約二十数万本分だと。そのうち電機工業に使ったものが七〇%、そして、その回収されたドラムかんが約一千本。そうすると、相当量のPCBが残っているわけですけれども、その閉鎖型もつぶせば開放型と同じことになってしまう。回収システムはほとんどできていない。それから、もしも回収するならば、ドラムかん一本について約五千円のお金をつけなさい。トラックで運ぶんだから、トラック代を六百八十円出しなさい。一本のドラムかんを回収してもらうのに五千六百八十円要ると、こういうふうな話を聞いてきたわけですけれども、これでは回収できないのは無理ない話でございます。いろんなところに野積みになったり、つけもの小屋の中につけものだると一緒にほうり込まれたりしているのが現状のようでございますけれども、これはたいへんなことだと思います。ドラムかんも、もしも腐食をすれば液体が流れ出てくるのですから、これはたいへんな全くずさんなことだと思いますが、その企業が処理施設をつくっているのかどうか、その辺を伺いたいと思います。
  223. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ドラムかん一本について輸送費用を徴収しておることは事実のようです。それで、それは保管場所を整理したり管理する費用としてやっぱり取っておるということでございます。  先般、本院からも御注意がありまして、係官をそういう公害当該工場あるいは保管場所に実地調査をやらせまして、厳重に外へ漏れたり、汚染することがないように指示を与えてまいってきております。
  224. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 保管するだけではなくて、処理するための技術開発というものはできているんでしょうか。
  225. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 焼却炉というものが実験的にはできておるようでございますが、まだ大規模の工業化という段階には至っていないようであります。
  226. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 できていないのだけではなくて、これはどんどんできるように技術開発を続けておられるんでしょうか。
  227. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は、工業技術院傘下のいろいろ研究所を動員いたしまして、研究開発を一生懸命やらしております。
  228. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 そのPCBの回収をやり切っていない、そういったような状態である企業が、石油たん白の飼料製造に取りかかろうとしたのですから、全く無責任きわまりないと思います。これが石油たん白なんですけれども、世論の反対に会ってやめたと言っておりますが、これは事実として確認ができますか。
  229. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 鐘淵化学と大日本インキ工業は、世論にかんがみまして、二月二十一日及び二十二日に自発的に製造をやめると、そういうことを言ってまいりました。
  230. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 再三厚生大臣がこの問題について新聞発表をしておられましたけれども、厚生大臣はいかがですか。
  231. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 通産大臣からお答えいたしましたように、去る二月二十二日、鐘淵の社長が厚生省を訪れまして、企業化を中止いたしますということを申してまいりましたし、当日新聞記者会見において、その旨をはっきり申し上げておりますから、中止いたしたものと確認いたしております。
  232. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 三月の二十九日の東京新聞でしたか、サンケイの夕刊に、「石油タンパク欧州ではブームに」という、こういうたいへんショッキングなニュースが新聞に載ったわけでございます。これについて厚生省の浦田環境衛生局長だの農林省の方がいろいろ見解を述べられておりますが、業界では「それみたことか」と、こういうふうに言っているようでございますけれども、これはあくまでも十分な安全確認をされた上でやっていただきたいと思うんです。いまの時点では、いま厚生大臣、通産大臣の言明のとおりでございますので、私どもは安心をいたしておりますが、かつて洗剤に私どもがたいへん反対をいたしました。手が荒れたりいろんな、多摩川の表面があわだらけになるというようなことで、ずいぶんこの洗剤には反対したんですけれども、ここで反対の質問をいたしますと、直ちに私どものところには、あれは害はございませんというような本が配られるわけでございます。そして、今日までその洗剤を使ってきたわけですけれども、最近まあようやく国会でも洗剤をもう一ぺん見直してみよう、こういうふうなことが言われているんですから、二度とこの愚を繰り返さないように、くれぐれも安全性が確実に認められるまでは、この石油たん白の問題をやたらに使っていただきたくない、このように思うわけでございます。  そこで、次に移りますが、田子ノ浦のヘドロの対策についての現状と今後の見通しを伺いたいと思います。
  233. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 運輸省が担当しておりますのは、こういう汚泥のしゅんせつないし埋め立てというような事業でございます。その関係から御報告いたしますと、田子ノ浦港におきましては、昭和四十六年の四月から五月にかけまして、現在は環境庁になっておりますが、当時公害対策本部と言っておりましたが、それの指導のもとに富士川の河口の河川敷におきまして第一次の処理をいたしましたのが十一万立方メーターであります。それから、引き続いて昭和四十六年度にやはりこれは法律が出まして、公害防止事業費事業者負担法という法律が出まして、その適用事業として前回同様の処理方法で三十二万五千立方メーター、合計いたしまして四十三万五千立方メーターの処理を行なったのでありますが、現在なお残っておる堆積汚泥は大体八十七万五千立方メーターと推定されます。これにつきましては、静岡県は非常に熱心に取り組んでおられまして、四十七年度、四十八年度の二カ年間にわたって、残りの汚泥を処理をしたいという計画を持っておられるのでありまして、四十七年度につきましては、いま関係各省庁及び地元と折衝中であると聞いておるのであります。いずれ県の公害対策審議会の答申にも出まして、それから運輸省のほうに持ってこられましたならば、国といたしましては、法律の規定に従いまして予算的措置を講じるように配慮をいたしております。
  234. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それでは次に水俣のヘドロについてお伺いをいたします。  水俣のヘドロはトラック十万台分だと聞いておりますけれども、そのヘドロ対策の具体的な実施計画はどのようになっていますか。
  235. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 先般森中議員に対しましてお答えしたことを繰り返すことになると思いますけれども、一応簡単に御説明いたしますと、この問題については、事業の施行者である熊本県当局が非常に熱心に取り組んでおられまして、熊本大学に委託をいたしましていろいろ検討を重ねられましたが、最近その方向が大体きまってきたようでありまして、われわれのほうに向かって、昭和四十八年度から公害防止対策事業として実施したいという意向を伝えてきております。このために、まず熊本県としておやりになる仕事の大事なことは、県の、さっき申し上げましたような審議会に諮問をされまして、事業者、つまり原因をなした事業者ですね、その事業者がどのくらいの負担をするかということを先におきめになるわけです。それに基づいて、たとえば七〇%、あるいは八〇%というふうにおきめになりますと、その残余の分を県と国でもって補助をするということになるわけであります。いまその作業が進行中でございまして、私どものほうは四十八年度から予算を用意いたしておりますから、その打ち合わせが出ました場合には予算的措置は十分にやれると思っております。
  236. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 その処理には約二百億円かかると言われていると思いますが、その四分の三が企業責任で、その企業はまた補償問題でも百二十億か百五十億かかかると言われておりますが、これで急速にやれる見通しがあるのでしょうか。
  237. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) この問題については、御承知だと思いますが、法律が二つございます。その二つの法律のルールに従ってこれはやるわけでありまして、先ほど申し上げましたように、県が公害対策審議会の議を経まして、どのくらい事業者が負担するかということをまずおきめになる。それに応じまして国や県が補助をしていくというルールが法律上確立しておるんでありますから、そのルールに従ってわれわれは予算措置を講じておるのでございます。おそらく、ああいう判決も出たことでありますから、事業者自身相当に多額の負担をしなければならないのじゃないかと考えます。私どもとしましては、そのルールに従って予算的に、非常に予算がないためにそのヘドロの処理がおくれるということのないような措置は十分してあります。
  238. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 このヘドロの中で、有機水銀とどろと分けなくてはいけないかと思いますが、右機水銀を分離できるような化学的方法が考えられておりますか。
  239. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 非常にむずかしい御質問で、私にはよくわかりませんが、熊本県で、熊本の大学にいろいろ諮問をされました結果を聞きますと、まず第一に、有害物質による汚染度の高い区域は、これは全部埋め立ててしまおう、それから汚染度の比較的低い区域の汚泥はしゅんせつをしようということのようです。ただ埋め立て地外へ二次公害を発生さすといけないから、わりあいに汚染度の低い土地のどろを移す場合には、その工法が非常にむずかしいというようなことが言われておるのでありまして、結局は、これはまだ確定したものじゃないと思いますけれども、運輸省も技術的に相談相手になりまして、いろいろ両者で検討しなければならないと思いますが、二次汚染を防止するのには、この汚染区域を全部埋め立てることなどによりまして、結局汚染されてない地域との間で何か隔壁をこしらえて、外に流れないような方法を講じて埋め立てるという方法以外にはないだろうと、こういうふうに言われておるのでありますが、なお私は技術者でありませんのでわかりませんから、必要があれば担当の政府委員から御説明させてもけっこうでございます。大体そういうことを熊本大学の先生方は研究をして報告をしておるのであります。
  240. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 絶対に二次公害が起こらないようにという配慮がなされていれば安心でございますけれども。  以上、幾つかの問題について、あと始末についてのいろいろな問題をお伺いしたわけですけれども、たへん重大な問題をまだ残していると思います。政府は、第二の水俣病を生まない歯どめとしても、またこれからの公害病や薬害病の予防対策はどのようになっているか、お答えをいただきたいと思います。
  241. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 第二の水俣病のようなものを起こさないということは、絶対のこれは条件ですから、そのためにはやはり企業側も、判決にあるように、安全性の確認ということに対しては、企業の社会に持っておる大きな責任ですから、少しでも疑問があれば操業を停止する、それぐらいの社会的責任というものは持っていると、企業は。また政府のほうも、いま中沢委員の御指摘になったような、どろと有機水銀とか、PCBなんかの分離というものは、もっとやっぱり研究開発しなければならない面がありますから、来年の一月から国立公害研究所——環境と人間とのやはり関係というふうな問題、大きく言えば公害防止のための技術開発、これを来年から店開きするわけでありますが、ほかにも公害関係政府機関はたくさんあるわけですが、できるだけ重複しないように、環境庁で予算を一括して要求もして、要求するときから予算の調整をやり、そしてまた予算も、一括して予算をとりまして、そうしてできるだけ総合性を持たそうという努力をしておるのですが、国立公害研究所というものは公害防止の研究機関としては中心の機関になるところで、これをやはりできるだけ役所式なものでなくして、オープンな研究所として公害防止の役割りを果たしたいと、こういうふうに考えて、なるべく、公害が起こって、発生してからそれのあと始末というのでなくして、公害を起こさないための努力というものがこれから大事だと考えておる次第でございます。
  242. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 ついでにお伺いさせていただきますが、それの予算と、場所はどこへお建てになるんですか。
  243. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 筑波学園都市にいま建設を、予算も本年度、四十八年度についておりますから、四十八年度の予算について、四十九年の一月一日から発足したいという、そういうスピードで建設を急いでおる次第でございます。
  244. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 通産省のほうは何かそういうものを、構想を持っておられますか。
  245. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 工業技術院を中心にいたしまして、いろいろな公害防止技術の開発研究をやっております。例を申し上げましょうか。公害防止技術開発研究、特別研究費として四十八年度は十一億七千二百万円、うちNOx関係が二億五千八百万円、そのほか大気汚染防止技術、それから水質汚濁防止技術、産業廃棄物処理技術、それから騒音振動防止技術等の研究開発をおのおのやっております。そのほかに瀬戸内海の大型水理模型につきまして、瀬戸内海の汚染防止対策をやっております。そのほか、いままでやってきていることの中でさらに継続してやっておりますものは、電気自動車の開発、それから高温還元ガス利用による直接製鉄法、そのほか自動車の総合管制技術、それから重要技術研究開発としてクローズドプロセスの開発、その中で特に対象テーマとしては非水銀高純度電解ソーダ生産工程の開発、これは要するに、有機水銀が出てきたので、この開発をやっているわけです。それから無公害パルプ生産工程の開発、それから重油燃料ガス化による無公害コンビナートの開発、それから非水染色法、水を使わない無公害の染色加工プロセスの開発等等をやっております。
  246. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 次々に公害病や薬害病が出てまいりますから、一日も早くそういう研究をどんどん進めていただきたいと思います。それにしても、水俣病は、初めネコが狂い死にをした当時、その原因を調査しながら、何か知っていたらしいんですが隠していたということをちらっと聞いたことがありますが、企業にも秘密があったりエゴがあったりするんでしょうけれども、そういった調査研究の不十分のために国民が危険一ぱいの中に生きている。そして、国民の健康を守るためにぜひとも万全を期さなければならないと思いますが、この点で、厚生大臣は特にきつい決意をしていただきたいと思いますが、その辺をお伺いしたいと思います。
  247. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 厚生省所管で国民の健康、生命に影響のある事項がたくさんございまして、御承知のように、食品関係、これは食品衛生法で取り締まる、さらにまた、今度の国会では家庭用品の規制に関する法律、それから薬に関する法律、たくさんございまして、食べることから薬やら各方面にわたっておるわけでございまして、先般も閣議におきまして総理から厳重な指示をいただいておるわけでございまして、こういう各般にわたる検査体制を思い切って確立していきませんと国民は不安でならぬと思うんです。そういう意味において、今後総理の御指導もいただきながら、食品から飼料から家庭で使うものから化粧品やら、さまざまにわたるわけでございますので、思い切った検査体制を確立して、国民に健康や生命に不安を抱かせないように全力を尽くす決意でございます。
  248. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 もう時間がなくなってしまいまして、あと物価問題に触れるはずでございましたが、中途はんぱになるかもしれませんが、時間の許す限りお伺いをしたいと思います。  田中内閣になってから物価が日に夜に上昇をしていまして、夕刊に朝刊に、新聞を見るたびに何かの値上がりが報道されているわけでして、特にその中で、最近は卸売り物価が十四カ月も連騰をしている。たいへん異常なことでございますので、国民はもう恐怖を覚えていると言ったら、ちょうど国民のいまの気持ちにぴったりとするのではなかろうかと思いますが、これらについてどのような対策をしていらっしゃるか、お伺いをしたいと思います。
  249. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 中沢君、時間が参りました。
  250. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 全般にマネーフローのもとを断とうということで、先ほども申し上げましたように、きょうは公定歩合も上げまして、できるだけ全般の金融のもとを締めております。それから一方、国会に、例の異常なる投機と見られる売り惜しみ買いだめ等の臨時措置法を提案したりいたしておるわけでございます。  実は、このごろ、もっと消費者に情報を提供するということをやろうではないかということを考えまして、昨日総理からの指示もございまして、物価担当官会議も催しまして、いろいろやったところが、最近わりあいに物が出てきつつありまして、今度はぜひひとつ、いまの十四カ月から十五カ月目には下がったというところへ持っていきたいと思っておりますのですが、さようにして、いろいろな面でそういう現象が出ております。  一例を申し上げますと、たとえば、とうふでございまするが、大豆がどんどんいま下がっております。二月の月中では前年の四十七年の一月から六月までの平均に比べまして、平均がキログラム当たり七十三円七十五銭であったものが、ことしの二月半ばには百七十三円になっておりまして、約一三五%上がっておるわけでございます。これを、原料コストに占める割合で見ますと、三百五十グラムのとうふをつくりますに必要な大豆の量は八十グラムでございますので、結局八円弱上がっているということになります。そうすると、昨年の一月から六月までの平均が一丁三十八円でございますので、これを八円上がっているのを足しましても四十六円ということになります。ところが、四十六円でございません、これが実は二月には五十一円になっておるわけでございます。大豆がだんだん下がってまいりまして、いま八円弱と申し上げましたのが、今日の計算でございますと大体二円ぐらいでございます。ですから、本来なら三十八円プラス二円で四十円には売れるわけなんでございまするが、どうも一回上がってしまうとなかなか下がってこない、御承知のように、七十円から五十一円に下がったというようなことを言ってるわけでございます。こういうのは、もう少し消費者の運動で下げることができるんじゃないか。  それから、たとえば納豆を見ますと、百グラムの納豆をつくるのに必要な大豆の量は五十六グラムなんでございますが、これは、いまのような計算でいたしますと、大体五円弱上がるという勘定になりますんですが、これが昨年の一月から六月までの平均で二十四円でございますから、五円上がったとしましても二十九円でいいわけでございます。ところが、これが、二月が三十八円で、三月になりますと四十円になっております。こういうのは、いまのまた、豆の五円がまだ下がって、これも二円以下になっております。もっとうんと下がってもいいということになりますので、そういうことをいろいろこまかくあげまして、全体の国民的な運動として、いまの恐怖の物価から、のがれる方法をみんなで考えようじゃないかということでやりたいと思っております。
  251. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 最後に要望だけしておきます。
  252. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 簡単に願います。
  253. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 大手商社の買い占めだの売り惜しみがずいぶん盛んに新聞に載ったときに、いま検察庁は佐々木組を追い回しておりますけれども、当時国民が言ったことは、これは札束暴力団大手商社組だと、こうまで言っておりましたから、ひとつほんとうに本腰を入れてこの物価問題に取り組んでいただくことを要望いたしまして、質問を終わらしていただきます。
  254. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて中沢君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  255. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 渡辺武君。(拍手)
  256. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、国際通貨問題について伺いたいと思います。  今回のワシントン会議は、IMF体制といわれた戦後の国際通貨体制にかわる新しい通貨体制を、おもな資本主義国の協議によってつくろうという重要な会議であったと思います。今回の蔵相会議で、新しい通貨体制としてどのような全体的な仕組みが構想されたのか、あるいは今後展望されるのか、その点を、まず伺いたいと思います。
  257. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 安定した、しかし、調整可能な平価制度が基本であるべきこと、調整過程における国際的な協力と協議が強化されて、これに基礎を置いた一つ世界の通貨秩序を確立しようということ。具体的に言えば、SDRの役割りを増大させ、また、米ドルの交換性を確保し、投機的な資本の管理移動を取り締まろうと、大きく言えばそういうことで、できるだけすみやかにりっぱな体制をつくろうということに合意したということであります。
  258. 渡辺武

    ○渡辺武君 どうもよく理解できない答弁なんですが、国際通貨体制といえば、一つの体系がなければならぬと思う。いままでのIMF体制も、これもドルを基軸通貨としての一定の体系が組まれておったと思います。ところが、けさほどからの御答弁を伺いますと、合意事項の個々の項目の御説明はありました。しかし、コミュニケも、改革問題についていろいろな要素は互いにからみ合っているというふうに述べております。どういう体系なのか、全体の仕組みを御説明いただきたいんです。
  259. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 全体の体系は、一つの通貨機構の中で確立した安定さを求めようという体系のもとで、具体的なおもな点をあげればいま申し上げたような点、これを掘り下げて、その上に全体の体系を取り上げていこうというわけであります。なお、私は、イデオロギーを越え、地域を越えて、ほんとうのワンワールドの通貨の体制の確立ということを心がけようということを提案もいたしておるわけであります。
  260. 渡辺武

    ○渡辺武君 その程度のことは、コミュニケを見ればわかるんですよ。しかし、あのコミュニケの中にも、客観的な指標の使用を含めた国際収支調整過程の機能の改善だとか、あるいは安定的な、しかし、調整可能な平価に基礎を置く為替相場制度だとか、あるいは特定の場合にはフローティングレートも役に立つ手法だとか、いろいろなことを言っているわけですね。これらの相互の関連はどういうことなのかということを伺っているんです。
  261. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) たとえば、今朝来申し上げておりますように、交換性の問題といえば、これがコンソリデーションの問題にもつながるわけでございますし、SDRというものを魅力のあるものにしようといえば、これと各国の通貨とのリンクをどういうふうにするかという、双方が全部からみ合って、非常にこれはむずかしい複雑な問題でありますが、これを精力的にまとめ上げていこうということであります。多くの国で、それぞれがそれぞれの立場あるいは希望を持っておればこうしたコミュニケということになって、これを、これ以外に何もないではないかと言われればそれは、今朝来書っておりますように、抽象的であるということは認めております。これをこういうふうな形でまとめるということについて合意ができたということは一つ成果であると、かように思っております。
  262. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは伺いますが、その来たるべき国際通貨体制の全体の仕組み、構想ですね、これについての日本政府の構想はどういうものでしょうか。また、今回の国際会議でどのような提案をなさったのか、伺いたい。
  263. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 国際会議での政府の主張は、当時、発表もいたしておりますし、私が再々申し上げているところをまとめたものであり、これはほとんど基調としては、コミュニケに取りまとめて取り上げられております。
  264. 渡辺武

    ○渡辺武君 基調として取り入れられているといいますけれども、そんな抽象的な、ばく然としたことではなくて、もう少し具体的におっしゃっていただきたい。
  265. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 終局において安定した、しかし調整可能な秩序ある通貨制度を確立しなければならぬということが終局の目標であります。
  266. 渡辺武

    ○渡辺武君 そんな程度の構想しか持ち合わせかいんでしょうかね、これは驚きました。  それじゃ伺います。現在の国際通貨不安の原因には、日本などの輸出拡張政策もあると思いますけれども、一番根本的な原因が基軸通貨であるドルの危機にあることは、すでに国際的な常識であります。アメリカ政府は、このドル危機克服にどんな政策を今度の会議で示したのか、その点を伺いたい。
  267. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 一口に言えばドルの交換性の回復でありますし、調整過程においては、コンソリデーションとかスワップとか、そういう技術的な問題も取り上げられ、また、基本的な問題の一つであるユーロダラーに関連いたしまして資本の流出の規制ということも取り上げられており、アメリカ側もこれに対応する姿勢を示しておりますことは御承知のとおりです。
  268. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは、普通、ドルのたれ流しということを盛んに言われております。これが国際通貨の不安の大きな原因になっております。ところが、そのドルのたれ流しの原因、つまり、アメリカの国際収支の大幅赤字の原因はどの辺にあるとお考えになっていらっしゃいますか。
  269. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは、アメリカの財政経済、あるいは御指摘があると思いますが、軍事政策、いろいろのことがあるだろうと思います。
  270. 渡辺武

    ○渡辺武君 私、大蔵省にお願いしまして、昨年の一月から九月までのアメリカの国際収支について分析をしていただいておりますが、その表に基づいて、アメリカの国際収支の赤字は一月から九月までの間にどれどれの要因で起こっているのか、これを御報告いただきたい。——大きな項目だけでいいです。
  271. 林大造

    政府委員(林大造君) 昨年の一月から九月までのIMFベースの記帳済みの計数でございますが、国際収支関係はいろいろなところがございますが、公的決済収支じりというところで申し上げますと、八十七億二千四百万ドルの赤字でございます。
  272. 渡辺武

    ○渡辺武君 その要因です。
  273. 林大造

    政府委員(林大造君) その要因につきましては、貿易収支が五十二億二千三百万ドルの赤字でございます。これは一九七〇年には二十一億ドルばかりでありましたのが、七一年に二十六億ドル余りの——七〇年が黒字、七一年が赤字になりまして、それが一−九月で五十二億ドルの赤字というふうに非常に悪化したわけでございます。で、軍関係の赤字は二十六億ドルでございますが、これは七〇年から三十三億ドル、二十八億ドルというふうに漸減をいたしております。  それから、政府関係でございますが、政府関係は四十四億ドルの赤字でございますが、これは七〇年四十六億ドル、七一年に六十二億ドルにふえまして、それが四十四億ドルに減っている。もっとも、これは七〇年、七一年は暦年でございますが、七二年は一−九月でございます。そのほかに一誤差脱漏、いろいろございまして、ただいま御報告したような一−九月の赤字が八十七億ドル、これは、七〇年の九十八億ドル、七一年の二百九十七億ドルに比較いたしまして、一−九月ではございますが若干減少いたしております。
  274. 渡辺武

    ○渡辺武君 大蔵大臣も総理大臣もいまの報告を聞かれておわかりだと思います。  アメリカの国際収支を赤字におとしいれている最大の要因は、これはアメリカがいわゆる防衛支出と称して海外に軍事支出をやっている、それからまた、アメリカ政府が同じような侵略的な性格を持った贈与あるいはまた借款その他をやって大幅な赤字を出している、この二つを合計すれば七十一億三千六百万ドルになる。公的決済ベースで八十七億ドルの赤字の中で、七十一億ドルがこういうアメリカの力の政策に基づく海外支出なんです。これを解決しなければ、ドル危機も解決しなければ、国際通貨不安も根本的には解決できない。この点についてアメリカ政府は、今度の会議でどういう態度をとったのでしょうか。
  275. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) いまの数字の分析については私も異論がありますが、それを議論しておると長くなりますが、とにかく、いまの日本の立場並びに二十カ国の他のアメリカ以外の国々も、ドルの交換性の回復、また、いま吹きだまったドルをどう処置するか、また、大きく移動するドルの資金についての資本の規制というものをどういうふうにするかということにこれからの対策が集中していることは申すまでもございません。
  276. 渡辺武

    ○渡辺武君 私の伺ったことにお答えいただいてない。  この力の政策に基づく支出について、これはやめるとか続けるとか、アメリカ政府がどういう態度をとったのかということを伺っている。
  277. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) やはり国際会議の中身は、公表された議事録以外は、お互いにだれがどう言い、彼がこう言いというのは、ある程度以上は慎むべきものと思います。
  278. 渡辺武

    ○渡辺武君 うまく逃げましたが、日本政府はこの点について、こういうドル危機の最大の原因、これ、おやめなさいということを国際会議でいままで一回でも言ったことございますか。
  279. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私の言っておりますことは、公表されている私のスピーチ、その他会見等ではっきり言っておりますし、帰国の報告でも明らかにしております。それ以外には言っておりません。
  280. 渡辺武

    ○渡辺武君 こういうアメリカの力の政策、これが最大の原因だということをあなた方も御存じだと思う。そのことを知っていながら、これを国際会議でも言おうとしない。つまり、アメリカの力の政策を不問に付して、そうしてドル危機の根本的な原因を残したままで、次の国際通貨改革をやろう、これは根本的な解決にならないことは明らかだと思う。客観的に言えば、アメリカの力の政策、これを前提条件とした通貨改革、これが今度のワシントン会議での内容だと言って差しつかえないと思うんです。  さて、続けて伺いますけれども、今回の会議でのおもな合意点、先ほど大蔵大臣も言われた点なんですが、個々の要素については、各国意見がまだ一致しない点もあるでしょうけれども、大筋では、いままでアメリカが言ってきた政策の方向で合意が行なわれたというふうに見ていいかと思いますが、どうでしょうか。
  281. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいまいろいろお話がありました。私は、アメリカの国際収支、それからアメリカのドルの収支と申しますか、これについては、分析の内容についてあなたの御議論と若干客観的に違う意見を持っております。というのは、ここ数年来の収支の変調は、むしろ民間の取引関係、貿易関係等にあることは、数字の上からも指摘ができるように思いますが、それは別といたしまして、具体的にどういうところに合意しているか、これは短い時間でございますから、なんでございますが、要するに、安定した通貨秩序をつくろうということが合意されていること、それから、そこに至る調整過程においては、一例をあげれば、たとえば、いま主要通貨はみんなフロートしているわけですが、これをできるだけ秩序あるものにしようということが合意されておる。要するに、国際的にできるだけ調整過程においても平静な、乱高下がないような、為替の切り下げ競争などはやるまいということが合意されておるのであって、こういう考え方は従来のアメリカも考えており、あるいは公表しておった政策とそのままであるとは私は考えません。現にとっておるところの政策についても相当の変更があり、アメリカとしても、こういう事態に対しての取り組み方が、責任と積極さが出てきた、こういうふうに私は観察いたします。
  282. 渡辺武

    ○渡辺武君 貿易収支の赤字が要因の一つであることは、これは先ほどの報告、数字ではっきり示しておりますよ。しかし、最大の根本的の要因、戦後一貫してアメリカの国際収支を赤字に追い込んできた最大の原因は、アメリカの力の政策に基づく海外支出である、ここのところを直さなければ、とうていドル危機なんというのは改善できるものではないですよ。その点は、大蔵大臣が幾ら強調したって、客観的な事実は曲げることはできないんじゃないでしょうか。  ところで、どうでしょう、重ねて伺いますけれども、たとえば、国際収支を調整するために客観的な指標が必要だというようなこと、あるいは安定的な、しかも、調整可能な平価に基礎を置く為替相場制度が必要だとか、あるいは特定の場合にはフローティングレートも必要だとかいうようなことは、これはアメリカの大統領が経済報告を出したときの付録として出されたボルカー・ペーパーといわれる、いままでのアメリカが国際会議で主張してきた次期の国際通貨体制についてのアメリカの方針、これにそっくり盛り込まれた方針ではないでしょうか。重ねて伺います。
  283. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) それが問題の点でございます。たとえば、いわゆるインジケーターというものの取り方についても、はっきりとこういった案については合意ができませんということは、私の主張にはっきりしておりますし、コミュニケの上におきましてもそれが取り入れられているということは、ごらんいただいているとおりでございます。それから資本移動の問題についてもそうでございますし、フロートにつきましても、一体二月以前においては、フロートということに対してはアメリカはどういう態度をとっておったでしょうか。これには反対しておったわけです。そういうことはあり得ざる、望ましからざる問題であって、最近になってからアメリカの態度が変わってきているということは御承知のとおりであります。
  284. 渡辺武

    ○渡辺武君 何を客観的な指標にするかということについては、おそらく各国意見はまだまとまらないでしょう。しかし、客観的な指標が必要だということは、これはボルカー・ペーパーでアメリカが初めから主張してきたところでしょう。特に、このコミュニケの中にはこういうことが書いてあります。「国際収支調整過程の機能が改善されるべきであり、黒字国、赤字国双方による時宜を得た効果的な調整を保証するような適切な方法が客観的指標の使用を含め」云々と、こう書いてある。つまり、ここには、赤字国も黒字国も責任があるのだという立場がはっきりと書かれている。この立場こそまさにアメリカが従来とってきた立場じゃないでしょうか。アメリカは、ドル危機の最大の原因が力の政策にあるということを押し隠して、そうして黒字国、赤字国これは共同責任だという口上で、実際のところは黒字国に責任をなすりつけて、そうして客観的な指標で半ば自動的に円なりマルクなりの切り上げの体制をつくろうというのが、これがアメリカの国際通貨政策の根本に据えられているところでしょう。どうですか。
  285. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) インジケーターの問題にしても、単純な外貨準備だけを唯一の指標にして、そうしてそれを基準にした上限下限によってサンクションの規定を置くというのがボルカー・ペーパーであります。そういうものは活用できませんということは、いろいろの場合においていろいろの角度から反対をしておることは御承知のとおりでありますし、しかし、そうかといって、調整過程に何らかのインジケーターを必要とすることは、これはまた当然な話でございますから、単純な外準というような過去の吹きだまりを基準にして、総合的な政策の効果や、これからの各国のとるところの、いろいろのやり方を想定しての指標の取り方というようなことが、実は必要なのであるということは、合理的なわれわれの主張でございます。そういう点を、よく御理解をいただかなければならないと思います。
  286. 渡辺武

    ○渡辺武君 いまの御答弁自身が、個々の問題、まだ具体的には煮詰まっていないが、全体としての構想は、これはボルカー・ペーパーがはっきり述べているようなアメリカの構想の方向で、今度のコミュニケもきまったということをはっきり示しているように思います。  時間もないので、次に移りますけれども、三月二十二日にニクソン・アメリカ大統領が国際経済報告の中で、新通商法案のアウトラインを示しているといわれておりますけれども、その内容を詳しくおっしゃっていただきたいと思います。
  287. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) もう一つ言い落としましたが、赤字国の責任ということも、はっきり出てきておることは、先ほど御指摘もあったとおりでございます。  それから、新通商法案というものについての大統領の教書と申しますか、発表がございましたことは、私もよく存じておりますが、しからば、新通商法案というものはどういう姿で出るか、これは、先ほど私も言及いたしましたが、今月の中ごろに、おそらくアメリカ政府はアメリカ国会に提出するでありましょう。そうして、それに対しての私の個人的な願望を含めた予測は、先ほど申しましたから、あえて繰り返しません。
  288. 渡辺武

    ○渡辺武君 そのアウトラインなるものを聞かしていただきたいというのです。大統領の経済報告の中にあったものを。
  289. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは御存じのところですから、私からあらためて申し上げるまでもない。どうぞ、もしなんでしたら、お読みくだされば、またお答え申し上げます。
  290. 渡辺武

    ○渡辺武君 そんなばかな答弁がありますか。こちらが伺っているんですよ。こちらが伺っていることにお答えいただけないから申し上げているのだ。そんなばかなことはないですよ。
  291. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) しかし、ポイントをおっしゃっていただかないとお答えのしようがない。
  292. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、要点を詳しくお聞かせいただきたいと申し上げておるのです。
  293. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 詳細について、アメリカの考え方をコメントすることはいかがかと思いますけれども、関税引き下げ、それから非関税障壁の削減等の貿易拡大的条項のほか、現在のエスケープクローズや、あるいは緊急輸入制限条項の発動要件の緩和、大幅な赤字となっている国際収支を改善するために効果のある措置等の貿易制限的な条項も盛り込まれるかというような感じのものであると、こういうふうに観察をいたしております。
  294. 渡辺武

    ○渡辺武君 その非関税障壁について、まず伺いたいのですが、日本の場合、非関税障壁のおもなものというと、どういうものがございますか。
  295. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 日本の場合の非関税障壁については、これは、たとえば輸入割り当て制の問題であるとか、あるいは輸入割り当てのやり方の問題であるとか、あるいは率直に言えば、表面的にはなかなかはっきりいたしませんけれども、商取引慣行であるとか、そういうところも含んで、外国の人から見れば、一種の非関税障壁だと取り上げておるものもあるようでございます。  先般、当委員会であったかと思いますが、総理からもお話があったわけですが、入国についての通貨の交換等の手続等についても、これは非関税障壁だと言っている外国の向きもございますから、そういう点は、これは日本の問題とすれば、そういう点で手続を簡素にするというようなことのくふうは、日本の場合には要るものもあろうかと思います。そういうものも含めて、非関税障壁と一般には言われております。
  296. 渡辺武

    ○渡辺武君 日本の場合には、農産物などの残存輸入制限、これが一番大きな問題じゃないでしょうか。
  297. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) それならば、そういうふうにはっきりおっしゃってくださればお答えのしようもございますが、これは再々言っておりますように、累次の円対策というもの、その中に含まれている問題で、できるだけこういう点は日本としても努力をすべきものであるということは、先ほど申したとおりです。
  298. 渡辺武

    ○渡辺武君 農林大臣と通産大臣に伺いたいのですけれども、円を長期にわたってフロートしなければならぬ。また、実質上大幅な切り上げというような条件に置かれている。その上に、残存輸入制限品目、これのいわば緩和もしくは撤廃という方向が、大統領の経済報告の中で出されてきている。これは日本の農業にとって大きな打撃になってくる可能性があると思うのです。この点、どのような対策を講じなさるのか。  また、何といいますか、国際収支を理由として、輸入課徴金あるいは数量制限などをやろう、あるいはセーフガード条項などについての緩和をしようというようなことを、大統領経済報告の中でも言っているようでありますが、この点、日本の輸出、中小企業に大きな打撃があると思いますが、その点、どういう対策をおとりになるか。
  299. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本の通貨、通商に関する原則は、無差別自由ということです。ガットもそういう精神です。アメリカが今度の政策によって差別あるいは制限あるいはブロック化という方向に、もし万一傾くようなことがあると、それはガットと離れていくということにもなりますので、われわれとしては賛成しかねます。  先般、ピーターソンが来ましたときにも、われわれのその主張はとくとよく言っておきました。もし、いろいろ中小企業に対する困難が出てくるような場合には、現在、変動相場になっていることもその一つでありますけれども、いままで議会で御説明申し上げましたような、いろいろな手当てをいたしまして、心配をかけないように努力をいたすつもりでございます。
  300. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 貿易、特に農産物の自由化につきまして、アメリカ側の関心品目、すなわちオレンジ、ジュース、肉、雑豆等につきましては、機会あるごとに、その困難性を申しておるわけでございまして、今回、新たなる措置がアメリカにおいてとられたからと申しましても、大きな変化はないと思います。また、日本側の主張というものは、向こう側でも逐次了解しておると、こう見ております。
  301. 渡辺武

    ○渡辺武君 最後に一問。
  302. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 時間です。一言。
  303. 渡辺武

    ○渡辺武君 総理大臣に最後に一言伺います。  お聞きのとおりです。アメリカは、まさに力の政策に基づく海外支出によって深刻なドル危機に落ち込んで、そのドル危機を、日本など黒字国の責任によって解決していこう、そうして、それを強制するために、いま農林大臣、通産大臣ですら反対せざるを得ないような強い輸入制限措置などをとって、いわば国際経済政策においての力の政策をとっている。これについては、私は総理大臣に責任があると思うのです。昨年九月のニクソン大統領との会談のときに、次の国際ラウンドについての合意に達したと、そうでしょう。まさに、今度アメリカ大統領が新通商法案というのを議会に出そうとしているのは、次期国際ラウンドに備えてのものです。これが日本に非常に大きな影響を与えている……。
  304. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 渡辺君、渡辺君、時間が経過しましたから……。
  305. 渡辺武

    ○渡辺武君 結局、こういう政策をとるのは、これは日本がアメリカとの間で、日米安全保障条約を結んでおって……。
  306. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 渡辺君……。
  307. 渡辺武

    ○渡辺武君 アメリカの力の政策を支持せざるを得ないということから来ているんじゃないでしょうか。この点、伺いたい。
  308. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) あなたのような断定的な考えだけでは、とてもこの問題を律せられないわけでございます。これはもう、新ラウンドを推進することは、アメリカのためではなく、日本のためであり、自由世界のためなのでございます。そういう意味で、協力もしてまいりますし、それから、アメリカ自体に求めるものも求めてまいりますし、平和のために、拡大均衡維持のために、お互いが協力をしてまいりたいと思います。
  309. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて渡辺君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  310. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 喜屋武眞榮君。(拍手)
  311. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私は、時間がちょっぴりしかございませんので、特に、沖繩問題にしぼって質問をいたしたいと思います。  まず、沖繩が復帰するにあたって、日本政府の意図がはっきり当時示されたのは、明るく豊かな沖繩県をつくり上げること、こういうことでございました。ところが、復帰してもう十一カ月、やがて一年を迎えようとしております。その現実の沖繩は、マスコミのことばをかりて言いますならば、病める沖繩、狂った沖繩、そして、復帰への喜びではなく、苦悩への前進である、こういうふうに表明いたし、また、ある婦人は、私に、「核もあり 基地の汚れもそのままに ここに帰れる島の悲しき」、この歌をよこしてくれております。これがきびしい沖繩の現状でございます。いまあらためて、田中内閣が、この沖繩をどう取り戻して、そして明るく豊かな沖繩県をつくり上げていくかということを、いまあらためて問われなければいけない、こう私は思うのであります。  そこで、田中総理の、いま私が申し上げた、病める沖繩・狂える沖繩に対する、ほんとうに明るい沖繩づくりに対しての基本的な姿勢を伺いたい。
  312. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 戦後に長い間苦労をされてきた沖繩が、ようやく祖国に復帰したわけでございますから、この沖繩県民の苦痛と苦労に報いるために、あらゆる角度から、沖繩振興のために、明るい沖繩建設のために努力をしなければならぬことは言うまでもありません。  まず一つには、沖繩が返ってきた、沖繩が異民族統治から日本の一部に復帰をした、日本の沖繩県に復帰をしたということに対する喜びというものは、これは本土のわれわれも沖繩の県民もひとしく認めておることだと思います。  それから、やらなければならない仕事は三つばかりあります。  一つは、沖繩にある基地の問題に対してでございますが、これは、佐藤・ニクソン会談において、サンクレメンテで共同声明が行なわれましたように、基地の整理統合、これは一日にしてできるものではありませんが、いずれにしても、積極的にこの仕事を進めております。  第二は、沖繩開発基本法に基づきまして、沖繩のあるべき姿を早急にきめて、沖繩の本土との差を一日も早くなくするように全力を傾けることであります。  第三は海洋博の問題でございますが、海洋博は世界で初めての海洋博でございます。そういう意味で、この海洋博というものが、いろいろな現象面でマイナス面も露呈しておることも事実でございますが、真の目的は、やがての沖繩振興に対して大きな寄与をするものとしての海洋博を進めてまいりたい、このように考えております。
  313. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 ただいまの基本姿勢に対しては、まだ十分満足するものではありませんが、私は最近、毎日新聞と、そしてローカル新聞の琉球新報の協力によって行なわれました世論調査の一部をここに御紹介いたして、沖繩県民がこの復帰をどうとらえておるのかということの参考にしていただきたい。  一、「田中内閣の基本姿勢について」——「田中内閣は沖繩のことをよく考えてくれていると思いますか」、この問いに対して、「全く考えてくれていない」——一四%、「あまり考えてくれていない」——三五%、計四九%であります。  二、「復帰の感想について」——「復帰前のほうがよかった」——二四%、「復帰前と変わらない」——二三%、計四七%。  三、「復帰後の暮らしについて」——「苦しくなった」——四一%、「変わらない」——五〇%。  四、「沖繩振興開発について」——「観光開発を望む」——四〇%、「農業の振興を望む」——三七%、「工業の振興を望む」——一六%。  五、「核と毒ガスについて」——「核が撤去されたとは思わない」——八六%、「毒ガスが全部撤去されたとは思わない」——八七%。  それから「自衛隊について」——「自衛隊の沖繩配備は全く必要ない」——四五%、「防衛上必要である」——五%。  このように世論は物語っておるのであります。  そこで、いま沖繩の目玉商品といわれておる海洋万博、その海洋万博に対しても返上論があるし、延期論があるし、それから協力否定論があるわけですが、そこで、主管大臣の通産大臣に、この海洋万博を成功させるための基本姿勢、そして対策を承りたい。
  314. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 海洋博は、平和沖繩への一里塚でもありますし、また、本土と沖繩県とが、末長く永久に抱き合っていくという喜びの大きな最初の仕事にもしたいと思っているわけです。また、これを機に、沖繩県の公共事業あるいは県の地域開発等にも役立たせ、そして民生安定、福祉向上にも資そう、そういう考えをもって鋭意つとめてまいっております。いろいろ年度末のことやなにかもありまして、物価騰貴あるいは資材の不足等で御迷惑をおかけしているところがございますが、先般も総務長官に行っていただきまして、いろいろ打ち合わせもし、私も、時間がありましたら、できるだけ早く伺いたいと思っております。そうして、物資の需給調整、工事計画の完全さを期しまして、御期待に沿うようにいたしたいと思います。
  315. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、厚生大臣に伺いたい。  いわゆる病める沖繩の売春、麻薬問題に対するその対策を承りたい。
  316. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 沖繩が今日まで置かれてまいりました特殊事情におきまして、麻薬事犯が本土よりも多いわけでございまして、復帰後、私どもは麻薬の取り締まりに全力を尽くしておりますが、今後とも、そうした方面に力をいたしたいと考えております。
  317. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、外人犯罪の激増は驚くほかありません。これに対する国家公安委員長の基本姿勢、対策を承りたい。
  318. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 復帰後間もないということ、それから、いままで異民族下の支配が長くて習慣が違うということ、いろいろな見地から、警察としましては、極力犯罪防止のために努力をいたしておりまするが、残念ながら、本土に比べまして凶悪犯が多い。  それから、いま御指摘の渉外関係の事件が多い。しかも、これには麻薬犯罪がからんでおるわけであります。  それから交通事故の関係は、右側通行であるところへ、左側通行のフェリーボートで本州の人たちが入っていったというようなこと、道路整備が十分でないというようなことで、非常にこれらの事件が多いことは、警察としてもたいへん憂慮をいたしまして、その装備通信関係施設等々の整備をはかって今日に至っておりますが、特に外人関係の犯罪には意を用いて、十分ひとつ今後も遺憾のないような体制をとりたいというので鋭意努力をいたしておりまするから、しばらくその経過を見守っていただきたいと思います。
  319. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、基地の整理縮小なくして沖繩の建設は不可能であります。これに対する外務大臣の見解、対策。
  320. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 日米の合意の線に沿いまして、この問第一次の那覇周辺の基地整理計画をきめたわけでございまして、これを早急に実施してまいりますことと、それから、沖繩の振興開発計画あるいは海洋博の実施等は、基地との調整が行なわれなければ遂行できない性格のものであることを念頭に置きまして、今後の整理統合計画に処してまいりたいと思います。
  321. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 これでおしまいです。最後に大蔵大臣にお聞きします。  病める沖繩を健全な沖繩にしていくことは、病める沖繩はやがては病める日本、狂った日本に——このつながりがあるということを思いますときに、よそごとと思ってもらっては困る。これは申し上げるまでもありません。ところが、何につけ、結論は、大蔵省の予算に裏づけられるということを身にしみて感じております。その面から大蔵大臣の、責任ある大蔵大臣の沖繩再建に対するひとつ基本的な姿勢と、その対策。そして具体的な対策の一つとして、いま緊迫した問題となっておりますあの与儀のガソリンタンクあとの与儀小学校敷地に対して無償譲渡するという、この政府の態度があるということは大体了承いたしておりますが、最後に、きょうここで責任ある大蔵大臣の御回答を求めたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。
  322. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私も、喜屋武さんのよく御承知のとおり、沖繩の復帰に対しましては、私としては全力をあげたつもりでございますだけに、非常に関心を深くし、憂慮もいたしておるわけでございます。予算の問題のこまかい点をいまさら御説明するのもいかがかと思いますけれども、臨時沖繩特別交付金は五十年までに特別の措置として継続してやっておりますし、それから沖繩関係費としましては、特に公共事業関係経費の大幅の計上をはじめとして、いままで政府側から御説明のありましたような点について十分配慮しておるつもりでございますが、今後とも、特に沖繩の問題につきましては、財政当局としても十分の配慮、御協力をいたしたいと思っております。  与儀のタンクあとの問題につきましては、ぜひ実現をいたしたいと、小学校に使用を、国有財産として使用していただくように方針はきめております。残った問題は、これは無償にするのには政令の改正その他の措置が要りますので、場合によりますれば、できるだけ少額の払い下げの手続にするか、あるいは政令等の手続を改正をいたすか、その最後の点につきまして、関係の向きとも御相談いたしておりますが、できるだけ御要望に沿うようにいたしたいと思います。  なお、中央官衙の出先の庁舎等については、沖繩側からも非常な御協力をいただいて、大蔵省としても感謝をいたしております次第でございます。
  323. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて喜屋武君の質疑は終了いたしました。  質疑通告者の発言は全部終了いたしました。よって、暫定予算三案の質疑は終局いたしました。
  324. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 討論は、理事会において、これを行なわないことに申し合わせました。  これより採決を行ないます。  昭和四十八年度一般会計暫定予算昭和四十八年度特別会計暫定予算昭和四十八年度政府関係機関暫定予算、以上三案を問題にいたします。三案に賛成の方の起立を願います。   〔賛成者起立〕
  325. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 多数と認めます。よって、三案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。(拍手)  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  326. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  次回は明後日午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十七分散会