運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1973-03-24 第71回国会 参議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年三月二十四日(土曜日)    午前十時五分開会     —————————————    委員の異動  三月二十四日     辞任         補欠選任      片山 正英君     川上 為治君      田  英夫君     田中寿美子君      上田  哲君     吉田忠三郎君      前川  旦君     辻  一彦君      藤原 房雄君     三木 忠雄君      萩原幽香子君     木島 則夫君      岩間 正男君     加藤  進君      青島 幸男君     喜屋武眞榮君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大竹平八郎君     理 事                 上田  稔君                 佐藤  隆君                 高橋 邦雄君                 西村 尚治君                 米田 正文君                 森中 守義君                 横川 正市君                 鈴木 一弘君                 向井 長年君     委 員                 梶木 又三君                 川上 為治君                 木村 睦男君                 楠  正俊君                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 塩見 俊二君                 白井  勇君                 竹内 藤男君                 玉置 和郎君                 中村 禎二君                 長屋  茂君                 林田悠紀夫君                 細川 護煕君                 山内 一郎君                 吉武 恵市君                 足鹿  覺君                 上田  哲君                 小林  武君                 竹田 四郎君                 田  英夫君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 安永 英雄君                 和田 静夫君                 塩出 啓典君                 三木 忠雄君                 木島 則夫君                 加藤  進君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        法 務 大 臣  田中伊三次君        外 務 大 臣  大平 正芳君        大 蔵 大 臣  愛知 揆一君        大蔵大臣臨時代        理        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       小坂善太郎君        文 部 大 臣  奥野 誠亮君        厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君        農 林 大 臣  櫻内 義雄君        通商産業大臣   中曽根康弘君        運 輸 大 臣  新谷寅三郎君        建 設 大 臣  金丸  信君        自 治 大 臣  江崎 真澄君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 二階堂 進君        国 務 大 臣        (行政管理庁長官福田 赳夫君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  増原 恵吉君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       前田佳都男君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   亘理  彰君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        公正取引委員会        委員長      高橋 俊英君        公正取引委員会        事務局長     吉田 文剛君        公正取引委員会        事務局経済部長 三代川敏三郎君        行政管理庁行政        監察局長     大田 宗利君        防衛庁参事官   大西誠一郎君        防衛庁参事官   長坂  強君        防衛庁参事官   岡太  直君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛庁装備局長  山口 衛一君        経済企画庁調整        局長       新田 庚一君        経済企画庁総合        計画局長     宮崎  仁君        経済企画庁調査        局長       宮崎  勇君        科学技術庁長官        官房長      進   淳君        科学技術庁計画        局長       長澤 榮一君        科学技術庁原子        力局長      成田 壽治君        法務省入国管理        局長       吉岡  章君        外務省アメリカ        局長       大河原良雄君        外務省欧亜局長  大和田 渉君        外務省経済局長  宮崎 弘道君        外務省条約局長  高島 益郎君        大蔵大臣官房審        議官       大倉 眞隆君        大蔵省主計局長  相澤 英之君        大蔵省関税局長  大蔵 公雄君        大蔵省理財局長  橋口  收君        大蔵省証券局長  坂野 常和君        大蔵省銀行局長  吉田太郎一君        大蔵省国際金融        局長       林  大造君        文部省初等中等        教育局長     岩間英太郎君        文部省大学学術        局長       木田  宏君        文化庁次長    清水 成之君        厚生省薬務局長  松下 廉蔵君        厚生省社会局長  加藤 威二君        農林大臣官房長  三善 信二君        農林省構造改善        局長       小沼  勇君        農林省農蚕園芸        局長       伊藤 俊三君        農林省食品流通        局長       池田 正範君        農林水産技術会        議事務局長    中澤 三郎君        食糧庁長官    中野 和仁君        林野庁長官    福田 省一君        水産庁長官    荒勝  巖君        通商産業省通商        局長       小松勇五郎君        通商産業省化学        工業局長     齋藤 太一君        通商産業省公益        事業局長     井上  保君        運輸省鉄道監督        局長       秋富 公正君        運輸省航空局長  内村 信行君        運輸省航空局技        術部長      金井  洋君        気象庁長官    高橋浩一郎君        建設大臣官房長  大津留 温君        建設省都市局長  吉田 泰夫君        自治省行政局長  林  忠雄君        自治省財政局長  鎌田 要人君        自治省税務局長 佐々木喜久治君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    参考人        日本銀行総裁   佐々木 直君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十八年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十八年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十八年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十八年度一般会計予算  昭和四十八年度特別会計予算  昭和四十八年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。  理事会におきまして、一般質疑は本日からこれを行ない、本日の質疑はお手元に配付いたしましたとおりすることに協議いたしました。  そのように取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) それでは、これより一般質疑に入ります。田英夫君。
  5. 田英夫

    田英夫君 最初に、外交問題について政府のお考えをただしたいと思いますが、先日の外務委員会でも外務大臣にお尋ねいたしましたので、重ねて確認することになりますけれども、まあ、世界じゅうの期待にこたえてベトナム和平が到来をいたしました。その和平協定を詳細に検討してみますと、われわれにとっても、きわめて関係の深いものだと言わざるを得ないのですけれども、最初にこれは確認しておきたいのですが、和平協定第一条、アメリカ及びその他のすべての国は一九五四年のジュネーブ協定認めているとおり、ベトナムの独立、主権、これを尊重しよう、こういうことが書いてありますけれども、なぜアメリカという名前だけは特別に書いてあるか、すべての国は、と書けばアメリカが入るにもかかわらず、なぜアメリカが特別に特記してあるのか、この点について、あらためて大臣のお考えをお聞きしたい。
  6. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日本といたしましては、国際会議に参加いたしておりませんし、したがって、また、パリ協定の草案、ドラフトに参加したわけでございませんので、わが国立場で、その規定ぶりにつきまして責任あるお答えを申し上げる立場にないことは御了解いただきたいと思います。
  7. 田英夫

    田英夫君 それでは、わが国関係をお尋ねしますが、その他のすべての国は、とある以上は、日本も当然この協定を尊重するといいますか、その限りでは、これを尊重しなければならないという立場だと思いますが、いかがでしょうか。
  8. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) たびたび国会を通じて政府から申し上げておりますとおり、政府といたしましては、これを尊重してインドシナ政策に対処いたしたいと思っています。
  9. 田英夫

    田英夫君 当然、わが国もこの和平協定の精神は尊重しなければならないということになると思うわけですが、そこで、たとえば第九条には、南ベトナム人民自決権ということで、南ベトナム人たち自決権は神聖であって奪うことのできないものだ、すべての国によって尊重されなければならない、こういうことが書いてありますが、これはもうすべての国——日本も入りますから、当然、日本も尊重なさる、政府も尊重なさると考えていいですな。
  10. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおり心得ております。
  11. 田英夫

    田英夫君 さらに第十条には、南ベトナムの両当事者は、と書いてあります。これは、言うまでもなく、グエン・バン・チュー政権臨時革命政府をさすわけですけれども、この両当事者というものの存在を政府は当然お認めになると思いますが、いかがですか。
  12. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そのとおりでございます。認めております。
  13. 田英夫

    田英夫君 いまのお答えで、南ベトナム二つ政権が存在する。両当事者ということばでこれを認めるということになると思いますが、政府としては、アメリカニクソン大統領は一月二十四日のベトナム和平協定発表の際に、南ベトナムにおける唯一合法政権グエン・バン・チュー政権である、こういう演説をしておりますけれども、日本政府はこのニクソン大統領考え方を支持されるのか、あるいは今後行動の上でそれを示されるおつもりがあるのかどうか。南ベトナムにおける政権というものについて政府がどうお考えになっているかを、ここでお示しいただきたいと思います。
  14. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) パリ協定自体承認問題等には触れていないわけでございまして、したがって、各国の外交関係ベトナムとの外交関係の設定につきましては、たいへんまちまちな態様が見られるわけでございまして、アメリカもまた、みずからの判断でそういう措置を講じておることと思うのでありまして、それは何もパリ協定とはかかわりのないことだとわれわれは考えておるわけでございます。で、わが国の場合は、先般の外務委員会でも御答弁申し上げておきましたとおり、従来、外交関係サイゴン政府との間に持ってまいっておりましたので、これを変えるつもりはございません。したがって、この外交関係は、南ベトナムにおける合法政府という立場でやってきておるのでございますので、臨時革命政府わが国承認するということは考えていないということを申し上げたのでございまして、いまなおそういう考え方に変わりはないのであります。
  15. 田英夫

    田英夫君 それでは、グエン・バン・チュー政権というものを、いま、お認めになっている。これは、政府承認するという権限は当然政府がお持ちなわけで、これは国際法の通念として、このグエン・バン・チュー政権認めておられるのは政府権限ですけれども、それではグエン・バン・チュー政権というのは南ベトナム全域支配している政府だと、法律的なことばで言えば一般的な事実上の政府であると、こういうことなのか、それとも、南ベトナムにおけるある地域だけを支配している地方的な事実上の政府と、こういう国際法上のことばがあるようですけれども、ある地域だけを支配しているというふうに政府はお考えなのか、この点はいかがですか。
  16. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 事実上、サイゴン政府支配に問題がないとは言えないわけでございますが、法律的に申しますと、南ベトナムにおける唯一合法政府であるという理解に立って、日本といたしましては、サイゴン政府国交を結んでおるわけでございまして、一つ政府国交を結んだ以上、その地域におきまして別な政府国交を結ぶというわけには私はまいらないと思います。
  17. 田英夫

    田英夫君 いや、私がお聞きしているのは、そういうことをお聞きしているのじゃなくて、同一地域二つ政府承認することができないことはわかっているのですけれども、グエン・バン・チュー政権というものが南ベトナム全域支配していると理解しておられるのか、おられないのか、ということを伺っているわけです。
  18. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) だから、いまお答え申し上げましたとおり、事実上の問題として、サイゴン政府支配に制約があることはだれの目から見ても明らかでございますけれども、外交関係を設定して、その政府承認を与えるという場合におきましては、ベトナムにおいて一つしか与えられないという立場に立っておるわけでございます。
  19. 田英夫

    田英夫君 それでは話を次に発展をさしたいと思うのですけれども、政府はしばしば、ベトナム和平以後、ベトナム復興のために援助をしたいと、こういうことを言っておられますけれども、具体的にどのくらいの金額で、四十八年度どういう計画をお持ちか、ここでお示しいただきたいと思います。
  20. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 政府としては、何も援助を押し売りするつもりはないわけでございますが、日本立場から申しまして、応分のことを考えなければなるまいという一般的な援助意思表明はやってまいったわけでございます。ただ、二国間でやるのか、国際的な仕組みでやるのか、それが一体どういう規模になるのかというようなことにつきましては、まださだかでないわけでございます。とりあえずの措置といたしましては、先般、閣議決定を得まして、国際赤十字連盟を通じまして五億円の緊急援助を本年度の予備費から支出いたしたわけでございます。明年度予算といたしましては、十億円のこの種の予算を計上いたしてございますが、これもあくまで腰だめでございまして、現実要請がございますならば、あるいはこれをオーバーするケースもあり得ようかと思いまして、財政当局にはあらかじめ、これで不足の場合におきましては、四十八年度の予備費からお願いせにゃならぬ場合もあり得るであろうということを申し上げて、原則的な了承は得ております。
  21. 田英夫

    田英夫君 まあ、私の率直な気持ちを申し上げれば、日本政府は、あのアメリカ戦争協力をして、戦車は修理してやるわ、それを送るわ、あるいは沖繩基地その他本土の基地を含めて、直接間接にアメリカ戦争協力をしてきたという意味で、ベトナムの国民に大きな責任を感ぜにゃいかぬ、こういう立場からすれば、たかだか十億円ぐらいのものを来年度用意しているということは非常に不満なんですけれども、ところで、外務省三宅課長を近くハノイに派遣するということですけれども、これは日程などはきまりましたか。
  22. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) パリにおきまして北越側の代表との非公式な接触を経まして、先方が受け入れるという意思表明がありました。時期といたしましては、三月一ぱいはたいへん受け入れ態勢関係でむずかしいから、四月になって迎えたいということでございまして、四月の何日になるかということにつきまして、まだ確定いたしておりません。
  23. 田英夫

    田英夫君 三宅課長ハノイでの話の内容といいますか、三宅課長派遣の目的といいますか、これはどういうふうに考えたらいいですか。
  24. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まず、北越側が、わが国との今後の政治経済その他の関係についての取り組み方についてどのような考えを持っておるか、南越政府との間で今日までわれわれが結んでまいりましたもろもろの関係がございますが、そういうことに対して先方がどのように評価しておるか、言いかえれば、北越日本との関係を設定する場合につきまして、それがどういう関係を持つのか持たないのか、また、さらに和平後の経済復興の問題につきまして、先方がどのように考えられておるのか、そういったこと一切がっさい、いろんな問題を隔意なくひとつ意見の交換をしてきてもらいたいと、しかし、これはノンコミッタルベースと申しますか、ここで三宅君が参りまして、すぐお約束をするというわけにはまいりませんで、一応そういった話を全部承った上で帰ってこいということでございまして、先方の感触をよく伺った上で、日本としての対応策を編み出してみたいと考えておるわけでございます。したがって、せんだって本委員会におきまして、この接触国交を持つ前提として考えていいかという御質問がありましたのでございますが、私といたしましては、そのようにおとりいただいてもけっこうでございますと、できれば、そういうことになれば幸いだと思っておるんでございますけれども、ただ、先方が、いま申しましたような問題につきまして、どういうように考えておるかということを一応全部お聞きすることが、まずわれわれのなすべきことではないかと考えております。
  25. 田英夫

    田英夫君 三宅課長を派遣するということは最初接触だというふうに受け取られるわけですけれども、三宅さんがどうのこうのということではなくて、一課長を派遣して話が済む——いま大臣も、これは打診だという意味のことを言われたけれども、当然、そのあとに続く段取りというものがなければならない。アメリカの場合はキッシンジャー自身が行って話をしている。まあ、アメリカ日本とは立場が違いますけれども、そのあと、当然三宅課長打診の結果によって次の手をすでにお考えのはずだと思いますけれども、そういう段階的な計画をここでお示しいただきたいと思います。
  26. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まず三宅君を送って、三宅君の報告を承って、いま田さん御指摘のような問題につきまして日本として考えさしていただきたいと思っています。
  27. 田英夫

    田英夫君 たとえば次官クラスの人を派遣するという、人間を派遣する問題も続くでしょうが、同時に、ハノイ日本側——まあかつて北京に置いた覚書事務所のようなもの、そういうものを置くお考えがあるかどうか。いかがですか。
  28. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 重ねてで恐縮でございますが、まず一応三宅君の報告を伺った上で、どういう対応をしてまいるかということを考えさしていただきたいと思います。
  29. 田英夫

    田英夫君 どうも課長を派遣して打診をして、まあそれによってどうするか、あとのことはまだ言えない、きめてないというようなことをお聞きすると、どうも政府は本気で北ベトナム承認し、あるいは復興援助をするというお考えがあるのかどうかということを疑わざるを得ないんで、しきりに援助援助ということを言われるにもかかわらず、また、思わせぶりに北ベトナム承認の方向へ進むんだというふうに言われるにもかかわらず、課長を派遣するだけで、あとは、計画はそれからだというようなことは、いささかどうも問題だと思いますが、援助の問題についてもう一つ南ベトナムグエン・バン・チュー政権との間にはすでに復興援助について何らかのお話をしておられますか。
  30. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まだ復興援助についての具体的な話し合いはございません。
  31. 田英夫

    田英夫君 そうすると、援助ということをしきりに言われるけれども、北に対しては三宅課長を派遣してそれからだと、政府承認しておられる南ベトナムグエン・バン・チュー政権に対してさえ接触がない、話し合いがないということになりますと、もう一つ問題は、さっき冒頭にお聞きしたように、グエン・バン・チュー政権支配南ベトナム全域に及んでいないのはもう常識だと、こうおっしゃった。そうすると、南ベトナム臨時革命政府支配地域に対する援助というのは将来のことでしょうけれども、これからどういうふうにお考えになりますか。
  32. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国会を通じまして私ども申し上げておりますことは、日本応分援助をやらねばならぬ立場にあるし、また、そういう意向を持っておるということと、日本が将来やるべき援助というものはベトナム全土を対象とする、そういうようにいたしたいということまで申し上げておるわけでございまして、それを具体的にどのような姿でやってまいるかということは、これから現実援助要請がございまして、それを吟味して実行に移すにあたりまして考えてまいらなければならぬ問題でございますが、いままだ和平協定成立後、軍事的段階といいますか、軍事政治的段階と申しますか、そういう段階にあるようでございまして、援助の問題につきまして実のある相談がまだないわけでございますので、いま私のほうからどうこうするということを申し上げるのは時期尚早であろうと思うのでございまして、将来いろいろの要請がございました場合に、ベトナム全土に結果が及ぶように、そして日本立場か生かされるように私どもは考えなければいかぬということだけをいま考えておるわけでございまして、具体的なやり方ということをいま編み出す段階ではないと承知いたしております。
  33. 田英夫

    田英夫君 いまの大臣のおことばで、将来、いままだやや紛争が続いている状況だけれども、安定をしてきて、要請があれば、南ベトナムはもちろん、ベトナム全域に対して援助をするんだ、こういうお答えであったということに、これははっきり確認をしておきたいと思うので、そうなりますと、当然、南ベトナム臨時革命政府支配地域に対する援助ということが行なわれなければ、これはグエン・バン・チュー政権援助したものが臨時革命政府支配地域に及ぶとは考えられない。また、北ベトナム臨時革命政府の間は密接ではありますけれども、おのずから違った別の政権でありますから、北に援助をしたからそれが南に回っていくというふうなことでは済まされない。当然そういうことになると思いますので、南ベトナム臨時革命政府支配地域、これは、はっきり申し上げれば、政府がお考えよりもはるかに広い。  これは、パリ会談の次席代表であった臨時革命政府グエン・バン・チエンという人と先日ローマの会議で私会いましたときに、こういうことを言っていた。日本での報道によると、南ベトナムはヒョウの斑点のようになっているというふうに言っているようだけれども、違う、ヒョウの斑点の黒い部分がわれわれの支配地域というふうに日本ではお考えのようだけれどもそれは違う、南ベトナムはヒョウという動物のような状況ではないんだ、われわれの支配地域は、むしろ、ヒョウで言えば黄色い部分である、そして、もっともっと斑点の小さくて少ない動物で、それがグエン・バン・チュー政権支配地域だ、こういう話をしておりました。これをまるまる受け取らないにしても、南ベトナムに対する支援ということを考えたときに、臨時革命政府に対する支援ということを考えなかったら、これは全域に対する支配というおことばと違ってくると思うのです。その辺は将来の問題ですけれども、どういうふうにお考えですか。
  34. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申し上げましたように、先方から日本に対して何らかの形で援助要請というものがあってから問題が始まるわけでございまして、冒頭にも申し上げましたように、日本は何も援助を押し売りをするわけじゃないわけで、一般的な方針といたしまして、日本立場にふさわしい協力は惜しむものでないということを、一般的な姿勢をいま申し上げておるまでのことでございまして、具体的な援助要請があった場合に、ケース・バイ・ケースで考えていかなければならぬと思いますけれども、南北を問わず、ベトナム全域を対象としてわれわれは考えるべきじゃないかということをいま申し上げておるまででございまして、具体的なことを、まだ御相談もないわけでございますので、国会を通じてお答えができる段階じゃないことは御承知願いたいと思います。
  35. 田英夫

    田英夫君 実は、これはきわめて近い将来に具体的になる可能性があると思うんですけれども、法務大臣に伺いますが、南ベトナム臨時革命政府の側の人物が、そうした援助要請の問題もおそらく含めて、あるいは日本国民との話し合いということを含めて、日本に入国を求めてきた場合には、これをお認めになりますか。
  36. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) すでにベトナムの状況は御案内の状況に置かれております。したがって、南ベトナムから日本に入国したい、お説のような事情で入国したいという事態がありましたときは、そのこと自体を中心にしましていろいろ検討しなければならぬ点はあろうかと存じますが、極力——極力、入国ができますように処置をしたいと、現にそういう考え方でやっておる次第でございます。
  37. 田英夫

    田英夫君 極力入国を認める方向でということで、ひとつこれは、いま外務大臣が言われたように、援助要請があればこれはすべての地域に、ベトナムすべての地域援助をする方向で進めたいということが大前提としてあるとすれば、しかも、日本政府南ベトナム臨時革命政府との接触というものは、これはサイゴンでは当然不可能だと思います。同時に、外務省では、臨時革命政府は首都もない政権だということで、たとえばグエン・バン・チエンという南ベトナム臨時革命政府の代表は、パリ会談でアメリカのポーター代表に、おまえのところは首都もないじゃないかと、そんな野蛮人と話せるかという、さげすみのことばを受けたといって非常に憤激をしていたけれども、まさか日本政府はそういうことはお考えになっていないと思うので、接触の場としては、向こう側から日本のほうへ来るということが当然考えられるし、すでに、たとえばパリ会談次席代表であったグエン・バン・チエンという人物が私に日本への入国を希望する発言をしておりました。  いま、もっと具体的に伺いますが、そうしたパリ会談次席代表という程度の人物が日本復興援助話し合いに来たいというふうに具体的に申し入れてきた場合には、政府は受け入れる用意があるかどうか。
  38. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) いまのような人物が、いまのような条件で入ってきます場合においては、受け入れる用意がございます。
  39. 田英夫

    田英夫君 その辺をひとつ、きっかけにして、ぜひ南ベトナムあるいはベトナム全域に対する援助ということをやっていただきたい。まあこの際お願いをしておきたいと思います。  その入国の問題ですけれども、どうも出入国の問題についてはいろいろ問題が多いと思うんですね。特に中国との問題になりますけれども、日中国交回復をおやりになった、政府はおやりになったにもかかわらず、日本に長くいる中国の人たち、この人たちの取り扱いがどうも不適当である、そういう不満を私もしばしば耳にしております。入管局長にもしばしば私のところからお願いにも行っているわけなんですけれども、この点は、大臣、どういうふうに受け取っておられますか。
  40. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 昨年の九月二十九日に日中国交回復が行なわれました以前と以後は、だいぶ事情が違いますが、二十九日に回復をいたしまして以後は、相互に国交のある国同様の取り扱いをいたしまして、今日まで入国の管理も、入国問題も、その方針で取り扱ってきております。ただ、機関の問題が——機関と申しますのは、双方の大使館、公使館等の外交機関という意味でございますが、そういう問題のこともあり、今日幾らかスムーズにいきかねておる点があろうかと存じますが、今後は努力をいたしまして、平和条約締結をいたしますまでの間におきましても、いやしくも今後におきましては十全の処置を講じまして、国交回復いたしました両国の間に、あるべき姿をつくっていきたい、こう考えております。
  41. 田英夫

    田英夫君 大臣はどの程度報告を聞いておられるかわかりませんけれども、いま私、ここで具体的な実例を、名前まであげてやることは差し控えますけれども、どこどこの入管事務所でこういう事件があったということを申し上げるのは控えますけれども、実際には、日本にすでに長くいる中国の人たち、たとえば中国料理のコックさんとか、そういう人たちが、もう五年も十年もいるにもかかわらずいまだに入国手続の更改の期限——短いものは三カ月とか六カ月で切りかえろと、こういうふうになっているんですね。そのつど仕事を休んでは一日つぶして入管事務所に行って、非常にいやな思いをする、入管事務所の出先の方は、非常に何か従来の——外務大臣、おいでになるけれども、日中国交回復以前の、中国を敵視していたときのような姿をいまだにとっている、これが、受ける側の中国の人たちの率直な気持ちのようです。この辺のところをひとつ早急に改善していただかなければいかぬと思うのですが、ここで大臣にお約束をいただきたいのは、かなり多く地方の入管事務所に権限が委譲されているといいますか、自由裁量の部分がある。この人物には何カ月という更改期限を与えるという部分が、入管事務所の一事務の官僚に与えられている。この辺のところの、法務省の中の、内部の規則がどうなっているのか、これ、いまここで具体的に伺ってもあれですが、資料として出していただけますか。
  42. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 承知いたしました。資料を後に差し上げることにいたします。
  43. 田英夫

    田英夫君 もう一つ問題は、日中国交回復ができて、中華人民共和国政府国交を結んでいる、そして台湾との間に国交が断たれているという状態の中で、台湾との間の、台湾の人の入国手続あるいはこっちから台湾へ行く人の手続、この辺はどうなっていますか。
  44. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 国交が断たれました以後の行き方でございますが、台湾には、ちょっとややこしい名前でございますが、亜東協会、それからわがほうには交流協会なるものを設けまして、それが相互に出先を持ちまして、そういうことばを使うことはどうかと存じますが、国交回復以前の状況と同様の状況を維持していく、昨年の九月二十九日以前の状況は相互に大使館があったわけでございます。それはなくなったけれども、それにかわるべき両方に、両国に協会をつくりまして、その出先を置きまして、それが旅券の査証を扱う、こういうことにいたしまして、いままでの状況と比べまして、さして時間的にも差別のないやり方で、わりあいにスムーズにその後の交流が行なわれておるということが実情でございます。  なお、きょうは入管は局長が来ておりますので、一応その事情を説明さしていただきたいと思います。
  45. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、日本側は交流協会、それから台湾側は亜東関係協会というものを設けまして、それぞれ、日本側は台北と高雄、それから、台湾側は東京と大阪に、それぞれ事務所を設けまして、査証関係の事務を取り扱っておりますが、御承知のとおり、台湾政府の発行します旅券は、わが国といたしましては有効な旅券として認めておりませんので、それにかわるものといたしまして、台湾側から入国する場合には、渡航証明書を香港の総領事館で発行しておりまして、交流協会の台北及び高雄のオフィスは、その香港の総領事館に対する取り次ぎ事務をやっておる次第でございます。したがいまして、従来の旅券で、台北の大使館あるいは高雄の総領事館で査証をもらっておりました状況と比べますと、多少時間的なズレがございますが、現在のところ、そういう両方の取りきめを行ないまして事務処理をやっておる次第でございます。
  46. 田英夫

    田英夫君 いまの交流協会——協会側は、堀田さんなどは日華交流協会と言いたいと言われたのを、まあ政府のほうで日台とすべきだと、こういう御議論があって、結局、両方取り去って交流協会になったといういきさつも聞いているわけですけれども、政府のほうでは、まあ外務大臣のお考えかどうかわからないけれども、そこまで気を使って日中国交回復後の問題について、私は注意を払っておられると思うんですが、にもかかわらず、現場では、入国問題あるいは日本に滞在する場合に、台湾のほうの人については、いま法務大臣もスムーズになっていると言われた、まさにそのことばのとおり、まことにスムーズであるにもかかわらず、日中国交回復をした、国交を持っている中国の人の在留については、さっき申し上げたように、ひどいのは三カ月ごとに更新しなけりゃいられないというようなこと、あるいはコックさんが小金をためて中華料理を始めたら、入国のときと職種が変わったからおまえは出て行けと言われた、こういう事例さえありますよ。これはどうですか。
  47. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) この切りかえの問題でございますが、これは先生お説のごとき厳格なことをやっておりますものもございますし、人によりましては、切りかえの期間を六カ月から一年、一年から三年というように延長しておる事例も数多くございます。この点は不公平になりませんように、ひとつ十分実情を調査をいたしまして、この点もスムーズにいくように努力をしてみたいと存じます。
  48. 田英夫

    田英夫君 これは、中国の人だけじゃなくて、朝鮮——非常に数の多い、六十万といわれている在日朝鮮人の人たちの取り扱いについても、最近、政府は再入国を何件かお認めになっているわけですけれども、日本にずっと在留している朝鮮の人の取り扱いについても、同様な不満があります。これはアジアの仲間の国の人たち、しかも長年にわたって日本にいる人たちの取り扱いということについて、もう少し法務大臣、御配慮いただきたい。この際、お願いをしておきたいと思うんです。  ちょっと話が変わりますけれども、防衛庁長官に伺いますが、先日、衆議院の予算委員会で、社会党の楢崎委員がお尋ねをいたしました、例の日本アメリカ基地、横田などに、しばしばデンジャラスカーゴという荷物が米軍によって運び込まれている。こういう問題について楢崎委員からお尋ねをいたしましたけれども、防衛庁としては、これをはっきりつかんでおられますか。当時はどうもあやふやだったようですけれども、その後お調べになりましたか。
  49. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) あれはあとで聞いてみましたが、防衛庁で所管をし、あるいは調査をするという性質のものでないということのようで、防衛庁ではつかんでおりません。
  50. 田英夫

    田英夫君 それでは、所管ということで運輸大臣に伺いますけれども、このデンジャラスカーゴという名前のものが、これは電信ですけれども、符号のようになっているので、なかなかわかりにくいけれども、そこに明らかにデンジャラスカーゴ、こう出てきますね。最近も実は来ていると思います。この辺のところを、所管の運輸省のほうではどの程度おつかみになっていますか。
  51. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 航空法によりまして、日本から出る飛行機につきまして、日本に出入する外国機でございましても、御承知のようにフライトプランを出す必要がございます。そのフライトプランによりますと、いまお示しのような、デンジャラスカーゴを積んでおるという旨の計画が米軍から出されておるということは、これは事実でございます。
  52. 田英夫

    田英夫君 ことしに入ってからでけっこうですけれども、どのくらいの件数が入って来ているか、おわかりになりますか。
  53. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 政府委員から御答弁させます。
  54. 内村信行

    政府委員(内村信行君) お答えいたします。  先般、楢崎先生から御質問がございました際に、一月、二月の実績を知らせという御質問がございまして、それによりまして調べましたところ、一月、二月で十八件ございました。
  55. 田英夫

    田英夫君 十八件ということなんですけれども、特に注目しなければならないのは、一月二十八日にベトナム和平が実現をした。ところが、それ以降も十件ありますね。こういう状態というのは、ベトナム戦争に必ずしも結びついていないと考えざるを得なくなってくる。これは防衛庁のほうの関係も出てくるわけなんですけれども、デンジャラスカーゴというのは、一体、防衛庁のほうの専門家のお立場からすると、どういうものだと思いますか、あるいはわかっていますか。
  56. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 私どもの一般的な知識として承知いたしておりまするのは、爆弾であろうと思います。
  57. 田英夫

    田英夫君 久保さん、専門家でそう言われたけれども、使っている飛行機はC141なんですよ。それで爆弾、これはどの程度積めますか。それで爆弾を飛行機で運ぶというのは、これ、常識じゃなかなか考えられないんですけれども、これはどうですか。
  58. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) C141の搭載量は、いますぐ調べて御答弁いたしますけれども、これはアメリカの運輸省でありましたかの、国内の規格から推察しますると、私どもとしては爆弾類であるというふうに承知いたしております。
  59. 田英夫

    田英夫君 たとえば十二月、これもずいぶん件数がありますけれども、十二月十一日、日本に飛んで来ている飛行機の、そのデンジャラスカーゴ、デンジャラスカーゴ・クラスAと書いてあります。これはクラスA・B別があるようですけれども、この辺の区別を政府はつかんでおられますか。
  60. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) ちょっと資料を持っておりませんが、たしかクラスAあるいはB・Cといった区別がありまして、特殊な危険物という表示であったように記憶いたします。
  61. 田英夫

    田英夫君 これはアメリカ軍の使っているクラス別と、民間のクラス別と、これは一緒でしょうか、その辺は運輸省のほうでおわかりですか。
  62. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) われわれのほうは、軍用機のほうはよくわかりません。わかりませんが、いまお尋ねの点については、国内航空法、それからIATAという国際的な機構がありますが、そのIATAの規定におきましては、このデンジャラスカーゴというのは、火薬類とか、高圧ガスとか、腐食性の液体、それから引火性の物質、放射性物質、毒物というようなものがあがっておるわけです。しかし、これは米軍のデンジャラスカーゴはどんなものかというのと、これは別のものだと思います。  それで、われわれのほうでも、もちろん米軍のこのAクラス、Bクラスというのはよくわかりません。わかりませんが、聞くところによると、いま防衛庁の係官が言われましたように、Aクラスのほうが危険度は高いものであるというふうに米軍の中では規定せられておるということを、これは間接に聞いておる状態です。
  63. 田英夫

    田英夫君 アメリカの民間はどうですか、A・B別があるようですけれども。アメリカの運輸省の……。
  64. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) ただいま申し上げましたような、これは日本の航空法だけじゃなしに、IATAの規定によりまして各国共通だと思いますから、いま申し上げたようなものを危険物として、原則としては搭載禁止、場合によりましては、非常に規制をしまして、搭載方法に規制をしまして搭載を認めておるというのが、各国の航空法のこれは一般的な例だと思います。
  65. 田英夫

    田英夫君 たとえば、日本の民間機に爆弾を積むとか、火薬類を積むとかいうことは当然許されないと思いますが、そのとおりですか。
  66. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 原則としてこれは禁止されております。
  67. 田英夫

    田英夫君 航空法の八十六条、それから、それに伴う運輸省令も、はっきりずうっと書いてありますよね、こういうものを載せてはいけないと。そうすると、日本の空をわれわれのほうは非常にきびしく規制をして、あぶないものを飛ばせないようにしている。にもかかわらず、アメリカの飛行機は、かってにクラスAを積んでいますよ、クラスAを。これ、外務大臣、どうですか、こういうことに対して、アメリカに対してひとつ注意を喚起していただくことはできないですか。
  68. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先般御質疑衆議院でございまして、実態を調査するように命じておきましたが、まだ私のところへはその報告が参っておりませんので、そういう報告を承った上で、どのように措置するか考えさしてもらいたいと思います。
  69. 田英夫

    田英夫君 いや、そんなことじゃなくて、もうわれわれの頭の上を三日に一ぺんぐらいの割りで爆弾——まあ久保さんは爆弾と言われたけれども、日本の飛行機は絶対に積まないでいる、そういうものをアメリカ軍がかってに持ってきている。安保条約があるからしようがないじゃ済まないと思うんですがね。これは国務大臣である大平さんとして、日本の政治の責任者として、これ、どう思いますか。
  70. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) したがって、いま申しましたように、一体どういうものなのかという実態を、報告受けて判断さしていただきたいと思います。
  71. 田英夫

    田英夫君 それはおかしいですよ、専門家の久保防衛局長が爆弾だと言っているんですよ。爆弾が頭の上を飛んでいるんですよ。それに対してどうお考えかと聞いているんです。
  72. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私の任務は、安保条約の運営の任務でございまして、安保条約上の問題になるかならぬかという問題をまず考えなきゃいかぬと思うのでございます。で、第二点といたしましては、しかしながら現実の問題といたしまして、安保条約の運営というものをしゃくし定木にやっているわけじゃございませんで、あなたが御指摘のように、われわれは政治の問題といたしまして、国民の世論と国民の感情、そういったことにつきましても配慮してまいって、それに対して、安保条約上当然の権能ではないけれども、アメリカ側に自省を求めなければならぬものは今日までも求めてきているわけでございまして、そういうことをやるにやぶさかではないのでございますが、その前提といたしまして、正確に実態を掌握した上で処置いたしたいと思います。
  73. 田英夫

    田英夫君 いや、それはそんなのんびりした問題じゃないと思いますよ、国民感情として。爆弾を積んだ飛行機が頭の上を通っている。特に横田が多いです、これは、見ても。この東京の上、飛んでいるわけですよ。この間も楢崎委員が言ったように、わざわざ、羽田から飛び立つ飛行機は、横田にそういう飛行機が来るために回り道をさせられて、大島のほうを飛んでいるわけでしょう。そこまで安保条約というのは大事なものですか。安保条約を推進する立場にあるとおっしゃったけれども、外務大臣はそれ以前に国務大臣であり、政府の責任者として国民の安全を守ることが第一じゃないんですか。
  74. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 安保条約も、だてにやっているわけじゃございませんで、日本全体の安全を守るために厳粛な任務を持っておるわけでございます。したがって、私は、公の立場で処理する以上、いま私が申し上げましたように、実態を十分掌握した上で措置いたすべきでございまして、とっさに思いついて、それはたいへんだというようなことで措置するというのは、そういう軽率な措置はやるべきでないと思います。
  75. 田英夫

    田英夫君 いや、どっちが軽率なんですか。国民の頭の上を爆弾が飛んでいると、専門家が爆弾だと言っているんですよ。大臣のはお答えになってないと思うんですね、国民に対する答えになっていないですよ。もう一回責任ある——、本来なら田中さんに聞きたいですがね。
  76. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) だから、その実態の究明をいたしておるわけでございまして、久保君が、いま爆弾であるということの一般的な感じを申されたのでございますけれども、私どもが処置する以上は、ちゃんとした実態を踏まえた上でやらなければいけませんので、そういう手順は踏ましていただきたいと思います。
  77. 田英夫

    田英夫君 それはこういうことじゃないですか、この間の戦車を運ぶ場合に、道路運送法——日本の法律、これに違反するということで私どもは反対をした。で、実際に運べなくなりましたね。運輸大臣、どうですか、航空法を守る立場にある運輸大臣として、日本の法律を破るような、そういう飛行機が——少なくともクラスAというのは、運輸省のお考えでは日本の飛行機は持って飛ばない、そういうものでしょう。それを、アメリカ軍が日本の法律を破って日本の空を飛んでいるということに対して、運輸大臣はどうお考えですか。
  78. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 米軍の積載するもの、自衛隊の飛行機の積載するもの、これは御承知のように、航空法の適用を除外されております。したがいまして、これは所管外のことでございますから、私からそれについての意見を申し上げることは控えます。
  79. 田英夫

    田英夫君 私は、そういうことを申し上げているんじゃないんですよ。あの戦車と同じように、日本の国民、しかも日本の空ですよ、それを所管外とか、アメリカ軍と自衛隊のことは知らないとか、そういうことを私申し上げているのじゃないんです。もっと国民の立場に立ってお答えをいただきたいのですが、もう一回そういう意味お答えを願います。
  80. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) その目的とか種類とかいうものは、私のほうにわかっておりません、先ほど申し上げましたように。これは法律によりまして、これは航空法の規定を適用しないんだということを書いております。航空法の規定を守っております運輸省といたしましては、その規定の適用のないものにつきまして、何ら私たちのほうは関与をしてないのでありますから、この点については意見を申し上げることを控えます。
  81. 田英夫

    田英夫君 そうすると、日本政府、自民党政府がお考えになっているのは、日本国民の安全よりも安保条約、アメリカの軍の行動のほうが大事だと、こういうことですか。
  82. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういう考えは毛頭持っておりません。
  83. 田英夫

    田英夫君 そうなるじゃないですか。いまの運輸大臣お答え外務大臣お答えからすれば、法律できめられているんだからしようがないと。アメリカ軍のものも、そういう危険なものは運ばせないという法律をわれわれはつくることができるはずですよ。どうですか。
  84. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほども申しましたように、私の任務は安保条約の厳正な運用をやる立場にあるわけでございまして、まずその提示された問題が安保条約上どのように位づけられるべきものであるかということについて、十分吟味する責任があると思うんでございます。で、そこに非違がございますならば措置しなければならぬと思うんであります。  それから第二点といたしまして、しかし安保条約上差しつかえがないからといって、そのまましゃくし定木に、そういうものについてわれわれは関心を持たなくていい、あるいは措置しなくていいというものではないと思うんでございまして、田さんも言われましたとおり、政治の問題というものは国民の世論、感情というものを踏まえた上で、それにこたえるところがなけりゃならぬということで、私も全くそれは同感なんでございまして、問題は、それについて措置いたすにつきましても、十分正確な実態をつかませていただきたいということでございまして、きょう、ここの席での論議だけを通じまして、それではたいへんだからおれはこうするというようなことは私としてはできないんでありまして、正確にひとつ実態を究明させていただきました上で、措置すべきものは処置したいと思います。
  85. 森中守義

    ○森中守義君 関連。  聞いておりまして、質疑者のほうでは、その事実があるという断定の上に立って、ものを聞いているわけですね。それから外相のほうでは、調査してみなければわからぬと、こう言われるんだが、事実問題としてそのとおりであった場合にはどうするんですか。ただこの場を、実態を見きわめてみるというだけでは答弁になりませんよ。もしそうであった場合にどうするんですか。その答えを出してくださいよ。
  86. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) したがって、正確に調べさせていただきたいと申し上げておるわけでございます。すなわち、爆弾であるのかないのか、爆弾であるとすれば、それがどういう危険なものであるのかどうなのか、それに対して安全装置がどうできているのかどうなのか、そういった点は、私としては十分究明した上で措置すべきものと思うんでございまして、そういう森中先生の御質問は、全部調べた上で処置いたしますということでひとつ御承知願いたいと思います。
  87. 森中守義

    ○森中守義君 ちょっともう一つ関連。  そこまで言われるならば、防衛庁長官もおりますから、一体どういうような状態を防衛庁は把握しているのか、わからぬことありませんよ。よく打ち合わして答弁しなさいよ。そうしないと、ただ調査研究してみる、検討してみるというんじゃ答弁になりませんよ。ちょっと休憩してでもいいから、防衛庁長官にでも実情を聞きなさいよ。だめですよ、それじゃ。だめ。
  88. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この問題が衆議院で取り上げられて以来、アメリカ側に照会をいたしてあるわけでございまして、防衛庁がやっている仕事ではないわけでございますので、まず先方から正確なデータをとってからにさしていただきたいと思います。
  89. 田英夫

    田英夫君 一月、二月で、さっき運輸省で出してくださった資料だけで十八件、五十八日間に十八件、爆弾が頭の上を飛んでいるんですよ。いま森中さん言われるように、いつまでにやってくれますか、それじゃ。そんなのんびりした話じゃないんですよ。しかも、楢崎委員が提起してからすでに二週間以上たっている。
  90. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) できるだけ早くいたしますが、せっかく参議院の予算委員会が開かれておるわけでございますので、本委員会中にはできるだけ早く御報告申し上げます。
  91. 上田哲

    上田哲君 関連。  問題は、防衛庁の専門家と称する防衛局長が、一般的には爆弾であり冒すと言っているのですよ。さて、その一般的にはというのはどういうことですか。防衛庁としては、一般的以上に、具体的には調べることができるんですか、知らないんですか、これが一つだ。  それから、外務省は調べるとおっしゃる、事実を確認をしてから具体的な処置をとるとおっしゃる。いま問題になっているのは、確認できるならばどうするかということが一つあるんですけれども、そのもう一つ前に、確認できるのかできないのか、どうやって確認をするのか、それをはっきりしていただきたい。つまり航空法では、そもそも安保条約、より上にあるから、米軍が何やっているかということは日本国内法では手がつかぬということになっているわけです。これはいままでの答弁です。  もう一つ、これは関連して出てくることなんですけれども、実は航空法が二十七年以来完全に自衛隊に引き継がれている部分は、自衛隊そのものが実は日本の国内法の上に行っちゃっているということがあるわけです。かごに入って向こうに行っちゃっているんですよ。これもデンジャラスカーゴですよ、よけいなしゃれになりますけれども。この問題は航空法上、手をつけられないということがあるもんだから、実は二つの面から、自衛隊の問題も含めて、米軍の危険な問題について実態を調べることができないということなんです。そういう面からひとつ伺いたいわけですけれども、どうやって調べるんですか。どういう手続、どういう方法によってそのデンジャラスカーゴの中身ということを確認することができるのか。防衛庁の側からいってもけっこうです。外務省の側からいってもけっこうです。運輸省の側からいってもけっこうです。その三者、どこからいってもけっこうだから、問題は、私が聞きたいのは、どういう方法と手続によってならば、その危険なAの中身というものを調べることができるのか。確実にできるというなら、それで一つの答弁です。できるかできないかに非常に私どもは危惧を持っている。調べます、調べますという答弁の中で、結果的にはわかりませんでした、そして最終的には、専門家と称する防衛庁も、一般的には爆弾でありますという答弁にとまっているんじゃ、結果的にはこれは処置ができないです。どの方法によって、どういう手続によって調べることが確実にできるのかどうか。できるならば、いつまでにということをきちっと御答弁をいただきたい。
  92. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それは責任あるアメリカ当局に照会をして正確なデータをとるよりほかに道はございません。そういう手順をとっておるわけでございます。
  93. 上田哲

    上田哲君 それじゃ答弁になりませんよ。それでは、答えは確実に来るんですか。デンジャラスカーゴの中身は爆弾であり、その爆弾というのはどういう爆弾であるのだということは、日本政府は確認するという法的根拠はありますか。
  94. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) アメリカ側から、われわれが照会いたした場合に、それに対して答えないということはございません。
  95. 田英夫

    田英夫君 いや、それはさっきから申し上げているように、五十八日間に十八件も来ているようなそういう問題を、しかも爆弾だという問題を、これ一日も放置するわけにいかないですよ。さっきから森中委員が言われているようにこの場でひとつ、ちょうど三大臣おられるんだから、事務当局もおられるんだから、統一見解をまとめてくださいよ。ちょっと続けられないですよ、それじゃ。
  96. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 防衛局長は一般的な知識として、ここで田さんの御質問に答えたわけでございますけれども、具体的にいま問題になっておる事案の実態がどうなのかということを究明しなければならぬと思うんでございまして、政府はそういう責任があると思うんでございます。したがって、それを究明する道は、責任あるアメリカ当局に解明を求めるよりほかに道はないわけでございます。しかし、事は急を要するというお説もごもっともでございますので、早急に確認いたしまして、それについての政府の見解はそのデータを踏まえた上で答えさしていただきたいと思います。今予算委員会開会中にひとつやらしていただきたいと思います。
  97. 田英夫

    田英夫君 本予算委員会開会中というのは私納得できないですね。これは、アメリカの出先機関は東京にいるんですから、もうきょうにでも、あすにでも会えるわけでしょう。それでこっちから聞けば答えないとは言わないという答弁がありましたね。月曜日、どうですか。
  98. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ここでお約束をするということは、そのとおりしなきゃいかぬわけでございますので、私もその回答ができる期日につきまして、いま米側とちょっと連絡をとってみますから、しばらく御猶予をいただきたいと思います。
  99. 上田哲

    上田哲君 関連。
  100. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ちょっとお待ちください。  本問題につきましての田君の質疑につきまして、外務大臣から本委員会中に報告をすると、こういう答弁がありましたが、委員長といたしましては、できるだけ早く答弁をするように特に求めて議事進行いたしたいと思います。
  101. 上田哲

    上田哲君 それについて関連。
  102. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) もう関連は、上田君ちょっと待ってください。
  103. 上田哲

    上田哲君 それについての関連があるじゃないですか。何で委員長発言できないのか。どうして発言できないですか。
  104. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) いやいや発言できないじゃなく、たびたびやっていま一応ケリがついたんだから。——じゃあ一問。
  105. 上田哲

    上田哲君 簡単に言います。回答が出なかったらどうするかということが一つ。向こうに照会するだけでは困るんですよ。回答が出なかったということになって、アメリカに照会しましたけれども回答が来ませんでしたと、こういうことでは回答になりませんので、いま委員長のお取り計らいがありますけれども、回答が来なかったときにはどうするのかということが一つ。  それから、ほんとうに一般的に爆弾だというんじゃなくて、その中身が何だということの向こうの回答がなかったときに、内容について確実に回答を求め得る法的根拠は外交的に何なんですか。そこを明示しといてください。
  106. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その点は政府を御信頼いただきたいと思います。本委員会でもいろいろ議論になりましたことは十分念頭に置きまして確認をいたしますから、確認の結果をごらんになってひとつ御審議を願いたいと思います。
  107. 田英夫

    田英夫君 まあ委員長のお計らいもありますし、できるだけ早いという言い方、私はあまり好きじゃありませんけれども、ほんとうに来週早々にも、いまの上田委員の質問を含めまして結論を出していただきたい。これはもう日本国民の国民感情としてですよ、これは並んでおられる大臣も、委員の皆さんも、聞いていらっしゃる方、皆さんそうだろうと思う。自分の頭の上を爆弾が通ってるんですよ。これを一般の国民の人がどう受け取るか。これは政治の責任者としてはっきりしたことを出していただきたい。こう思うのがあたりまえじゃないでしょうか。  次に移りますが、これも防衛問題に関連をしまして、最近いわゆるスクランブルの発進が多いというふうに聞いておりますけれども、最近の事例、ことしに入ってからの件数でけっこうですが、お出しいただきたい。
  108. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 通常のスクランブルは年間三百数十件であります。ところで、最近の件数は、昨年末、四十七年の十月から十二月ぐらいまでは月間十五、六回で、大体平均的な数字であろうと思いますが、四十八年、ことしの一月で四十六回、二月で二十回ということで、これはどういう理由であるかよくわかりませんが、例月に比べまして非常にふえたという状況であります。
  109. 田英夫

    田英夫君 どうも急にスクランブルがふえているんですね。しかし、アジア——われわれを取り巻く情勢というのは、ベトナム戦争は終結したし、平穏になっているはずですよ。何かいま防衛局長わからないと言われたけれども、どういう理由でしょうね、これは。
  110. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 想像できないわけではありませんが、想像でよろしいでしょうか。——一つには、ソ連と中国の関係もあるかもしれません。それからもう一点は、実は沖繩配備の関係で、レーダーサイトが若干弱まっているということもございますが、そういうことに関係があるのじゃなかろうか。これは内部で実は研究をしているところでありますが、そういうこと以外に、特別に訓練があったと、演習があったというようには見受けられませんので、その関係とは感じられません。
  111. 田英夫

    田英夫君 まあ数年前にも国会でこのスクランブルの問題が取り上げられておりますけれども、あらためてお聞きしたいのは、このスクランブル発進の手続といいますか、発進まではいますぐわかりますけれども、発進をして、まあ怪しい飛行機に接近をする、さらにどういう手順を追っていくのか、ちょっと教えていただきたいんです。
  112. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 発進をした後には、現在レーダーサイトはバッジ組織で、半自動化の組織になっております。したがいまして、DCサイトという防空指揮所というのがございますけれども、そこの誘導管制によって自動的に相手方の航空機、発見されている航空機に、味方の航空機が誘導されていくということになります。通常の場合、いままではどういう航空機が接近したかということを目視、視認をする場合もありまするし、写真をとりまする場合もございます。あるいはこちらが行った場合に、接敵、つまり近くに行かない前に相手方が退散するといいますか、方向を転進するというのが通常でありますが、そういったような形で、いずれ領空そのものに入ってきた例はほとんどございませんので、たいていもとのところにやはり同じバッジ管制で誘導されて帰投しておるというようなのが実態であります。
  113. 田英夫

    田英夫君 大体それは通常の場合そうやって退散するんでしょうけれども、もし向こうに意図があって、そのまま領空に入ってくるという段階まで説明してください。
  114. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) いわゆる領空侵犯があった場合の措置でありまするけれども、この場合の手続といたしましては、領海の上空の場合と、領土の上空の場合とちょっと変えておりまするけれども、領海の上空の場合には、あとで申し上げる合い図によって退散を指示をする。領土の上空に来ている場合には、もよりの基地に誘導して着陸をさせるということであります。そこで、その合い図というのは、緊急通信の周波数がございます、それを使いまして相手方に意図を伝達いたします。それができない場合、何らかの、かりに、たとえば同じ周波数、これはたいてい持っているはずだそうでありますが、持っていなくて意思が通じない、ことばが通じないといったような場合に、翼を動かして合図をするというような場合、それから夜間でありますとフラッシュライトを点滅させながらそれをやるというようなこと、そういうようなことを総合的にいたします。最後の手段としましては、信号弾の発射ということもございまするけれども、そういう手段で退去を命ずる。もしくは、場合によって、基地への誘導、着陸を誘導するというような手段をとることになります。
  115. 田英夫

    田英夫君 悪いほうばかり聞くようですけれども、いよいよ、それをやっても相手は引き続き侵入をしてくるという場合は攻撃するわけですね。
  116. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 外国の場合ですと、撃墜をする事例が間々出ておりまするけれども、わが国ではそういった手順をとっておりませんので、相手方がそれをきかないと、しかも、こちら側に攻撃をしかけてくるのではないといったような場合には、相手を強制する手段はいまのところございません。
  117. 田英夫

    田英夫君 そうすると、相手が攻撃の意図を持っていることが明らかで、日本領空侵犯をしてきたという場合に、自衛隊の飛行機は一体どうするんですか。
  118. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 相手の攻撃の意図が明白である場合というのがどういう場合であるかが問題でありまして、たとえば、当然、こちらの航空機に対して射撃をしてくるといったような場合には、正当防衛の法理でもってこちら側が相手を攻撃することはあります。そしてまた、相手がこちらの航空機を攻撃するというのではなくて、たとえば爆弾の弾倉を開いて、まさに爆弾を落とそうというような場合には、こちら側は攻撃してよろしい、というような考え方をとっております。これはいわば緊急避難の法理でありまして、言うならば、正当防衛とか、緊急避難とか、そういった国内的な法理の場合のみに関して武器の使用を考えているということで、この点については、外国よりも非常に制限されておる。したがって、そういう意味で領空侵犯措置が十二分であるかというと、わが国の場合には、まあ手足が相当縛られているといった実態であろうと思います。
  119. 田英夫

    田英夫君 そうすると、そこまで来ればアメリカの飛行機がやってくれるということがありますか。
  120. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 昭和三十年代の中ごろまでは、米空軍もおりましたけれども、現在は岩国の航空基地しかおりませんので、しかも、領空侵犯については、沖繩も含めまして、いまは自衛隊が全部やっておりますので、米軍にその点を依存する余地はほとんどございません。有事の場合は別かもしれませんけれども。
  121. 田英夫

    田英夫君 大体そういうことで実態が明らかになってきたんですけれども、大臣防衛庁長官、この最後の攻撃をするという判断は一体だれがやるんですか。パイロットがやるんですか。
  122. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) スクランブルは何と申しますか、原則としてといいますか、通常二機で参ります。一機に何というか、編隊長というかが乗っておりますので、この編隊長に特別の事故ができない以上は、編隊長がその指揮をすると、編隊長に事故ができたような場合には単独でやると、もう一つの僚機がやる、こういうことでございます。
  123. 田英夫

    田英夫君 編隊長というのは、位からいうとどのくらいですか。
  124. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 場合はいろいろございましょうが、一尉ないし三佐であろうと思います。  なお、長官の御説明を補足させていただきますと、パイロットもしくは編隊長機が攻撃をする場合は、自分の飛行機がやられそうになった場合だけ、つまり、味方の飛行機が攻撃された場合のみは正当防衛という法理でもって、こちら側も反撃するということはありましょうが、それ以外の、たとえば先ほど御明示になりました相手方の攻撃が明白である場合、つまり判断を要するような場合、この場合には航空総隊司令官にいわば伺いを立てるといいますか、指示を仰いで、その結果によって判断をする。つまり、いわば緊急避難的な場合には、航空総隊司令官の判断を仰ぐ、こういうことになっております。
  125. 田英夫

    田英夫君 あげ足とるわけじゃありませんよ。この間の部下をひき逃げで殺して逃げちゃったという——これは一尉ですよ。まさに編隊長クラスの人です。この人が、ああいう人物が判断するんですよ、ここで攻撃するかどうか、スクランブルで。そのスクランブルの結果は、それがもとで二国間の紛争にも発展しかねない、日本の防衛ということを考えたときに、それがもとで紛争になりかねないというその判断を、ああいう人たちがやっているという実態を防衛庁長官どうお考えになりますか。
  126. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 先般の三上一尉の事件というのは、まことに申しわけない事柄でありまして、委員会の質問に対しまして、私も心から遺憾の意を、申しわけない意を表明をいたしたのでございまして、こういう者が一尉にざらにおるなんていうことでは絶対ございません。これを標準にして、ああいう者が判断をするという御批判は当たらないのでございます。ああいう者が再び出ないように、ああいう種類の者が再び出ないようには厳戒をいたしまするが、このスクランブルをやる場合の編隊長、三佐、一尉というような者が、大体ああいう種類の者がやっているというふうな意味でお受け取りにはならないようにお願いをしたいと思います。
  127. 田英夫

    田英夫君 時間がありませんから、この問題は、自衛隊の問題はもっとお聞きしたいところですけれども、あまり質問できないのですけれども、私も、何もすべての一尉、三佐が、編隊長クラスがそういう人物であるとは申しませんけれども、少なくともああいう人物が出たことだけは厳然たる事実であります。
  128. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 田君、時間がまいりましたから。
  129. 田英夫

    田英夫君 この点はひとつ厳格にお考えいただきたい、厳重にお考えをいただきたい。このことを最後に申し上げて質問を終わります。
  130. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて田君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  131. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 熊谷太三郎君。(拍手)
  132. 熊谷太三郎

    熊谷太三郎君 まず外交問題につきまして二、三お伺いをいたしたいと存じます。なるべく簡単にお尋ねいたしますから、御答弁もできるだけ簡潔にお願いをいたしたいと思います。  先日の施政方針演説におきまして、田中総理も、大平外相も、まず日米友好関係を基軸として、各国に対する積極的な外交を展開すると述べておられるわけであります。いずれも日米友好関係の堅持を外交問題の基調としておられるわけでありまして、もちろん、われわれも全く同じ考えでございます。ただ、基調は基調といたしまして、この基調の上に立ちながら、わが国はみずからの外交努力を傾けて、各国との協調につとめてまいらねばならぬことも言うまでもないと存じます。そこで、特に大切なことは、対中、対ソの関係であると思います。申すまでもなく、中国及びソ連はわが国の隣国であり大国でありますが、この両大国は、現在極端に相対立し、また反目し合っている間柄であります。したがって、この間に処しまして、わが国がこの両国との友好関係を保つためには、わが国としては、いやしくも両国の争いに巻き込まれないよう、一方に偏しない、いわば等距離外交の原則を貫かねばならぬと考えるわけでございますが、これにつきまして外務大臣の御所見を承りたいと考えるわけでございます。
  133. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま御質問の要旨につきましては全く同感でございます。熊谷さんの言われる等距離外交という意味が、それぞれ日中関係、日ソ関係、それぞれ変わらない友好的な精神で安定した関係を取り結ぶように、一方に片寄るというようなことのないようにという御趣旨でございますならば、全く私も同感でございます。
  134. 熊谷太三郎

    熊谷太三郎君 昨年、日中国交正常化の急速な進展に伴い、その陰にこれと反比例するように、日ソ関係が一時冷却化したような感があったのであります。すなわち、昨年一月、グロムイコ外相の訪日によりまして、九月に予定されておりました日ソ予備交渉も、また、年末に予想されておりました平和条約の交渉開始も、一時立ち消えになってしまったわけであります。これはあまりにも急速な日中正常化の進展に対し、ソ連が冷ややかな反応を示したものと考えられます。幸い、本年に入りまして、再び日ソ交渉の進展のきざしがあらわれまして、新聞等によりますと、去る三月七日、新関駐ソ大使とソ連の最高指導者でありますブレジネフ書記長との会見が実現しまして、その席上、大使からブレジネフ書記長あての田中総理の親書が送られ、今後、田中総理みずからが訪ソして、ブレジネフ書記長と直接日ソ首脳会談を行なう可能性もできたということであります。このような事態が生まれましたことは、昨年十月みずから訪ソされました大平外相をはじめ外務当局の外交努力が実を結んだ結果であると考えられまして、その御努力に対しては敬意を表するにやぶさかではありません。しかるに、おりもおり、去る一月下旬、訪中を終えて帰国されました某国会議員の帰国談によりますと、中国の周恩来首相は、わが国の北方領土返還要求を支持し、日本は問題の四つの島はもちろん、全千島列島を回復する権利があると表明されたということが新聞に報道されております。どの程度まで事実かわかりませんけれども、この新聞報道はソ連に少なからぬ影響、刺激を与えていると思うのでございます。もとより、北方領土の返還は一億国民の悲願でありますけれども、それは当面、一応どこまでも日ソ両国間の問題でありまして、第三国の介入すべき問題ではないと思います。いわんや、ソ連ときびしい対立関係にあります中国の支援によってその解決が期待できるものではないと思います。したがって、この問題について中国の支持を歓迎するかのようなこの先生の帰朝談は、かえってソ連を硬化させ、北方領土問題の解決はもちろん、これを起点として進められているでありましょう日ソ平和条約の交渉にも、やはり少なからぬ支障を与えはしないかと考えるわけであります。そこで、政府とされましては、あらためて、北方領土問題はどこまでも日ソ両国間のみの問題であって、特定の第三国の介入を求める意思がないということをはっきり言明されるお考えはないかどうか、承りたいと存じます。
  135. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 前段で、日中正常化が日ソ関係の冷却化をもたらしたのではないかと、ある段階、そういう御発言がございましたけれども、日中正常化というのは、もともと国交のない状態に国交をもたらしたことでございまして、日ソ間にはすでに一九五六年に共同宣言の形で国交が回復いたしておるわけでございまして、このことにつきましては、ソ連側も当然のこととして受け取っていただいておるわけでございまして、この措置が直ちに日ソ関係の冷却をもたらす要因になったというように私は理解していないのでございます。  それから北方領土問題の解決は、仰せのとおり、当然わが国の世論を背景にいたしまして、政府が自主的な、たゆまない努力でやってまいらなければならぬわけでございまして、その信念に変わりはないわけでございまして、仰せのとおり私どもは心得ております。
  136. 熊谷太三郎

    熊谷太三郎君 この点につきましては、重ねて申し上げますけれども、どこまでも第三国の介入を求める意思がないということだけはひとつはっきりさせていただきたいと考えるわけでございます。  それから次にチュメニ油田の開発等につきまして、通産大臣外務大臣にお伺いをいたしたいと存じます。  この問題につきましては、総理の演説の中でも、それが日ソ両国にとって長期にわたり有意義なものであるとなるように実現に努力したいと述べて、積極的な意欲を示しておられ、先日来の通産大臣のお話によりましても、民間レベルの協議が進展して、七月にも基本計画に調印する方向にまで進んでいる様子でありますが、最近の新聞報道によりますと、アメリカもまた、このチュメニ油田等の開発に参加したい積極的な姿勢を示しているといわれております。そこで私は、この際、こういうアメリカ側の要請を受け入れて、チュメニ油田等、シベリアの開発については、日ソ米三国の共同開発という形をとったほうが得策ではないかと考えるものであります。といいますのは、それにはいろいろのメリットが考えられるからでありまして、たとえば中国は、この日ソ関係の諸問題の進展についてはいろいろ神経をとがらせているわけでありますから、この開発については、近来中国といわゆる雪解け関係にありますアメリカの参加が実現しますれば、中国の疑念をやわらげる上においても大きなメリットがあるのではないかと、まあこのように考えるわけでございますが、この点につきまして、通産大臣外務大臣の御所見を伺いたいと存じます。
  137. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 熊谷委員のお考えと私たちも同調しておるところでございまして、まあわが国の石油の需給関係の見通しを見ますと、本年あたりが約二億八千万キロリッター使っておりますが、昭和六十年には約七億キロリッターにのぼるという試算も出ておるわけでございます。したがいまして、現在中近東のみにやや偏していると思われている石油ガスの供給地帯を、東西南北世界じゅうからこれを供給できるように新しい道を開拓していくと、これが日本の安全保障——これは軍事的意味にあらずして経済上の安全保障の面からも非常に重要な点であるわけでございます。そういう意味で、アラスカ、シベリアあるいはインドネシアあるいはイラン、中近東、アフリカ、アメリカ、ベネズエラ、あらゆる国々にいま努力しているところでございますが、その一環として、シベリアの開発協力ということもわれわれが熱心に指向しているところでございます。両国の国益が合致して経済取引条件に合えば、政府としてはこれを前向きに考慮する立場でございまして、この四月ごろ、民間レベルの代表団が先方へ行きまして、そういう基本契約の諸条件について打ち合わせるということになっていると聞いております。その結果によりまして、われわれも政府がいよいよ活動する段階に至るかどうか注目しているところでございます。いままでその交渉の過程におきまして、ガルフ・オイルあるいはエッソ等は共同参加してもいいというような情報がございました。しかし、その後それがそのまま確実に行なわれるものかどうか、見通しが必ずしもはっきりしない情勢もございまして、現在その関係者の側におきまして、その点について照会中でございます。私としては多方面から多元的にエネルギー資源を獲得することと、国際協調の方式でこれを裏づけていくと、そういうやり方を好ましいと思っておりますので、米国企業が参加することはわれわれも好ましいと考えております。
  138. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま通産大臣が御答弁に相なった趣旨で私どもも考えております。せんだってこの委員会におきましてアメリカの参加につきましてお話がございまして、アメリカ政府といたしましては、アメリカ資本が参加することをエンカレッジすることもしないけれどもディスカレッジもしないというように私どもは聞いておるということを御答弁申し上げたわけでございます。しかし、規模の大きいプロジェクトにつきましては、シベリアの資源開発ばかりでなく、どの地域の開発につきましても、日米の協力という方式は望ましい方式であり、私どもといたしましてはそれを推進してまいりたいと思います。
  139. 熊谷太三郎

    熊谷太三郎君 それでは次に、原子力発電についてお伺いをいたします。  現在わが国で運転中の原子力発電は百八十二万三千キロワット、建設中のものは千二百七十一万三千キロワット、合計一千四百五十三万六千キロワット、多少計算間違いがあるかもしれませんが、大体そのような程度でございます。で、原子力開発利用長期計画によりますと、昭和五十年には九百四十四万キロワット、五十五年には三千二百万キロワット、六十年には六千万キロワットの需要見通しが予想されておりますが、現状から見まして、はたしてそのような需要に対する供給が可能でありましょうか。この点につきまして、原子力発電を担当されます通産大臣科学技術庁長官のお考えを承りたいと考えるわけでございます。
  140. 前田佳都男

    国務大臣前田佳都男君) お答え申し上げます。原子力発電につきましては、現状並びに原子力開発長期計画の数字は、ただいま熊谷先生御指摘のとおりでございます。さて、この原子力開発の長期計画がはたして実行できるかどうかという問題でございますが、これはまことに大切な問題でございます。原子力に期待するところが非常に大きいという点から見まして、われわれが全力をあげてこれに取り組まなければいかぬという問題であろうと思います。これにつきまして、まず第一は、原子力発電のその原料になる核燃料、これをどうして確保するかという問題がございます。それから次は、核燃料を確保いたしましても、それが円滑にスムーズに発電できるようなそういう体制をとるということが必要であろうと思うのでございます。くどいようでありまするが、大事な問題でございますので、一応御理解をいただきたいと思うんでありますか、まず原子力発電の原料の天然ウランでございますが、わが国には非常に埋蔵量が少のうございます。大体推定約八千トンぐらいしかないと思われております。したがいまして、その原料はほとんど海外に依存しなければいけない、その購入は短期契約と長期契約、両方で契約をいたしておりますが、大体五十五年ぐらいまでは確保しておると、その後ももちろん確保しておりますけれども、はたして、需要に応ずるだけ全部確保しておると言えるのは五十五年までは確保しておる。長期的な見地から見まして、したがいまして海外の探鉱といいますか、鉱山を探す探鉱開発に取り組んでおりまして、民間も、民間企業にこの点は成功払い方式で探鉱資金の融資をいたしまして、民間企業をしてやらしめておる。そして動燃事業団という事業団がございますが、これに基礎調査をやらしております。そうして大体のわれわれのめどでありますが、昭和六十年ごろには所要量の約三分の一程度は海外の探鉱でそれを確保したいというように考えております。  まあ問題は、天然ウランはそうでありますが、その次に、実際現在の原子炉というのは軽水炉という炉でございまして、軽水炉の原料は濃縮ウラン、エンリッチド・ウラニウムでありまして、このエンリッチド・ウラニウムをどうして確保するかということは話が長うなりますから申し上げませんけれども、もっぱらアメリカにたよっておるわけでございます。日米原子力協定という協定がございまして、この協定にたよっております。この協定は四十八年度分までは一応確保しておる。四十九年度以後の分をいま改定交渉中でございまして、事実上もうアグリーメントというか、もう事実上協定ができておりますので、これを正式な文書にいたしまして、近く国会に上程をいたしまして、御審議をいただきたいというように考えております。ただ、アメリカにたよっておりますけれども、アメリカの供給力というものも、五十五年ごろにはもう自由主義世界からの需要量に対しまして供給力が足らなくなるというふうな現状でございますので、国際濃縮計画と申しまして、アメリカとあるいはフランスが日本に呼びかけております、一緒になってひとつ濃縮ウランをつくろうじゃないかという、その計画もございまして、その計画にわれわれは参加しちゃどうかというわけで、ことしじゅうにその結論を得たいと思って盛んに検討しております。ワーキンググループをつくって検討をいたしております。  とにかく、アメリカだけにたよるという考え方はどうかと思うんでありまして、できるだけその供給の多角化と言いますか、各方面から供給を得るように努力をしたい。そればかりじゃございません。日本の国産で濃縮ウランをひとつつくってはどうかというわけで、四十八年度から本格的に動燃事業団に、遠心分離法によるこの国産化と言いますか、そのことを四十八年度から開発に着手するわけでございまして、これがわれわれの目標では昭和六十五年以降には、大体日本で必要とする濃縮ウランの約三分の一程度はこれで確保したいというめどで進んでおりますが、これは相当まあ可能性があると思っております。  それから次は、燃料の問題はそうでありますが、それ以外に、さて具体的に原子力発電をどうして立地するか、スムーズに発電に持っていくかという問題でございますが、この問題はなかなか現実の問題としていろいろ抵抗、反対等にあっております。私はしかし、抵抗、反対もむげにこれは押し切るべきじゃない、その点は十分、やはり原子力の安全性ということはみんなこれは心配しておる問題でありますから、十分納得のいくようにできるだけしたいと思っておりますが、とにかく原子力発電につきましては、安全性というものはその前提であります。原子力発電の大前提であると思います。したがいまして、現在のこの制度でも、原子力委員会の中に原子炉安全専門審査会という会がございまして、原子力についての権威者が三十名程度集まりまして、原子炉の申請があった場合は、この安全審査に真剣に取り組んでおる状態でございます。そうして立地の適正、あるいは設備の安全性ということにつきまして、全力をあげて取り組んでおります。それでも、いろんなまあ御意見、反対が出ておることは先生も御承知のとおりでございますが、この問題につきましては、われわれはさらに全力をあげて取り組んでいきたいと考えております。  ことしの予算も、原子力関係につきましては、もちろんその濃縮ウランの確保であるとか、あるいは濃縮ウランの開発であるとか、そういう問題にたくさんの予算を四十八年度も計上いたしておりまするけれども、原子力の安全性という問題につきまして五十一億円ばかりの予算を……。
  141. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 前田長官、なるべく簡潔にひとつ御答弁願います。
  142. 前田佳都男

    国務大臣前田佳都男君) よくわかりました。できるだけ簡潔にいたしたいと思います。  そういう問題に取り組んでいきたいと思っております。  なお、環境の安全性等につきましては、原子力委員会の中に、現在原子力委員が六名おりまして、四名が常勤委員でございます。その四名の常勤委員を一名ふやしまして、五名の常勤委員にいたしまして、これは、何だ、わずか一名ぐらいの増員でそんなに力む必要ないじゃないかというふうなお考えかと思うのでありますが、これは、この一名の委員はもっぱら環境問題、安全問題、特に環境問題に取り組む委員に専念していただくという意味において、これをふやしたわけでございまして、今後とも原子力発電の振興についてはあらゆる努力をいたしたいと思うのでございます。
  143. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本の電力不足ということがだんだん問題になってまいりまして、もう今年、来年ぐらいから関西電力あたりでは心配しなければならぬ状態でございます。これを救ってくれるものは原子力発電であると私らも考えております。そういう意味で、原子力発電をスムーズに進捗させるということが目下の急務でございますが、一番のポイントはその安全性の問題とか、あるいはサイトを確保していくということであります。で、サイトを確保していくためには、やはり安全性に関して住民の納得を得るということが必要であるとともに、そのサイトがほかの土地に比べてベネフィットが多いということもまた大事なことでもございます。そういう意味で、今度の議会に原子力施設の周辺地帯整備法という、仮称でございますが、その法律をつくりまして、道路や下水やあるいは保健施設その他等につきましても、できるだけ地元にベネフィットを還元できるような形で促進しようと思って考えておりまして、いずれ提案する予定でございます。
  144. 熊谷太三郎

    熊谷太三郎君 少し順序が違いますが、自治大臣のお時間もあるようでございますから、自治大臣に一点御所見を伺いたいと存じます。  ただいま問題にしております原子力発電所の立地の問題でございますが、非常に困難な第二点としまして、この原子力発電所を受け入れた地元に対して、現在、国から何らメリットらしいメリットを与えられていないという点であります。  たとえば、私の地元であります福井県では、先ほど申し上げました運転中、建設中の原子力発電所千四百万キロワット中、六百万キロワット、つまり国土の百分の一の福井県に四七%の原子力が集中しているわけであります。これらの地元は、一方では原子力の安全を疑う一部市民や反対勢力の突き上げのため、その応接に日夜心労を重ね、また、多大の精力や時間を消耗をいたしますとともに、一方では、殺到します見学者や視察者の接遇や原子力発電関係の道路その他の諸施設に関する地元負担その他いろいろの諸経費の支出のために、一地区だけでも年間数千万円の支出を余儀なくされている実情でございます。しかるに、これに対して、いま申したように、ほとんどメリットらしいメリットを受けておらぬわけであります。  地元が当初当てにしておりましたのは固定資産税でありますが、この固定資産税は、現在七五%までは基準収入の中に加えられて、地元に残りますのは二五%しか残っていないわけであります。そこで、これを何とか一〇〇%地元にいただきたいということで、再三にわたる陳情の結果、どうやら半分ぐらいはひとつ還元してもいいというような話も出たのでございますが、やはり、それも法令をたてにとって、どうも直ちに実現は困難なようでございます。したがって、もしこの固定資産税の収入を基準収入からはずすということが当面困難でありますならば、せめていわゆる発電税または核燃料消費税などの新設によって、これら市町村の窮状にひとつ救いの手を差し伸べていただくお考えはないかどうか。  自治省も国家機関でありますから、国の主要な大切なエネルギー政策にせっかく協力しておりますこれら市町村に対して、少なくともその経済的負担に見合うような何らかの財政援助考えていただくのが至当ではないかと考えるわけでございます。これらの点につきまして、自治大臣のひとつ御同情ある返事をいただければと思います。
  145. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 御質問の御趣旨はですね、きわめて重要、妥当な、しかもまた、原子力アレルギーのまだある日本であるだけに、市町村の苦心、また、誘致したところの公共団体責任者の立場等々というものの苦しみなどがよく私どももわかります。ただ問題なのは、原子力発電所だけに特別措置をいたしますると、これは、原子力アレルギーがあるというハンディキャップはまさにあるわけですが、水源地はどうするんだ、火力発電所はどうするんだという問題が出てまいりまして、今日まだ御満足のいく結論を申し上げるに至っていないわけです。御指摘のように、基準財政収入額に七五%が充当されてしまう、それじゃ同じじゃないか、この不満はよくわかるわけでございます。そういう不満を背景にして通産省でいま苦心をされておられるのが電源周辺地域の整備に関する法律案、これを提出すべく目下調整中というわけでございます。したがいまして、私ども自治省といたしましては、いまにわかに御要請のような形で認めてまいりまするというと、どうも全国いろいろなケースがあります。そういうものとのバランスの問題もありますし、それから公平に地方団体に交付税を分配するというようなたてまえから言いましても、どうもアンバランスが生ずる。そこで、この通産省側の周辺整備の法律に基づきまして、いろんな諸経費がかさ上げされ、入り用も多くなる、助成率を高めてやるにいたしましても、やっぱり当然支出もふえてくることでありましょう。そのほか、いま御指摘のようないろんな経費が要る。で、そういうものを極力交付税ないし特別交付税、特に特別交付税などにおいてめんどうを見る。で、熊谷委員のおっしゃる意味はもう十分わかりますから、そういう点については今後もできるだけ配慮をするように努力をしてまいりたいと思います。  以上申し上げましたような形で現時点では、処置をしていくべきではないか、経費面を見ていくという考え方でおります。
  146. 熊谷太三郎

    熊谷太三郎君 どうかこの問題につきましては、今後ともひとつ、具体的に十分ひとつ御検討をお願いしたいと存じます。
  147. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 午後一時まで休憩いたします。    午後零時二分休憩      —————・—————    午後一時五分開会
  148. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、質疑を続行いたします。熊谷君。
  149. 熊谷太三郎

    熊谷太三郎君 先ほど原電問題につきまして自治大臣に要望いたしました原子力発電地帯に対する財政措置につきましては、科学技術庁長官及び通産大臣におかれましても、その実現のため積極的に御推進、御協力をお願いいたしたいと存じます。  そこで、前に戻りますが、先ほど前田長官のお話にありましたように、原電の立地問題はきわめて困難でありまして、聞くところによりますと、先ほど建設中と申し上げました中でも、東北電力の女川発電所をはじめ、幾つかの発電所は地元の反対のために工事が行き悩んでいるようであります。また、過去に、電力会社が建設を計画しながら地元の同意を得られないため、逆に計画を放棄せざるを得なかった例も枚挙にいとまがないくらいであることは申すまでもありません。このように、紛争のために計画なり工事なりが実現できない原因としては、先ほど長官からお話がありましたように、いろいろの点があげられると思いますが、第一は、安全性の確保と、これに関する啓蒙宣伝の不足であると思います。もちろん、安全性の確保ということは最も重大な問題でありますから、国におかれても万全の措置を講じておられることと思いますが、それに対する啓蒙宣伝、特に関係住民に対するわかりやすいPRという点については、まだまだ不十分ではないかと考えるわけでございます。そこで、政府とされましては、現在どのようなPRの方法を行なっておられるか、あるいは今後それを強化するについてどういうお考えを持っておられるか、承りたいと思います。
  150. 前田佳都男

    国務大臣前田佳都男君) お答え申し上げます。  ただいまの御発言は、まことに、ほんとうに現在われわれが一番当面しておる、むずかしい、困っておる問題につきましての御質問でございまして、全くそのとおりでございます。地元の反対あるいは異議の申し立て等が出ておりまして、われわれは一生懸命になってそれに取り組んでおります。ただ、安全性のPRとか宣伝とかいいましても、これはただ、安全であります、どうでありますというふうな宣伝だけでは納得がやはりいかないわけであります。やはり十二分に、いろいろむずかしい反対の論文なんかも新聞に出るわけでありまして、できるだけそういうものに対しましても、ほんとうの安心感を与えるような科学的根拠がなければいけないという意味におきまして、ただ、PR、PRというと、何か、安全でもないものを無理に安心感を与えるような、そういうふうにとられてもわれわれは困るわけでございまして、その点は、真実に、ほんとうに安全なんだと、こういうふうに安全に取り組んでいるのです。また、安全に取り組みたい、また、いい意見があれば教えていただきたいというふうな姿勢で、私は、原子力の問題については取り組んでいきたいと思っております。  一応役所的な説明をいたしますと、あるいは講演会であるとか、映画会であるとか、あるいは説明会であるとか、そういうことをやっておりますという答弁をするわけでありますが、ただ単にそういう答弁では一向説得力も何もありません。したがって、ほんとうにそういうものに対しては十分納得のいくように積極的な姿勢で、ただPR、PRと言うんじゃなくて、幾ら新聞に書いて、いろいろな宣伝物を配りましても、それだけじゃ安心しない。それにやはり裏づけるような、しっかりした根拠も十二分に説明するというふうな姿勢で私は進んでいきたいと思いますし、また、ただいまの点は、四十八年度の予算におきましても、普及啓発課という課をつくりまして、それの専門の課をつくりまして、ほんとうにどういうふうにすれば御納得をしていただけるんであろうかというわけで専門的にいま取り組みたいと思っております。この点につきまして、役所の考え方も、やはり役人の考え方というのは、あるいはやはり形式的で不十分かもしれません。どうぞひとつ名案がございましたら、先生のほうからも御意見を、あれば、お教えをいただきたいと思うわけでございます。
  151. 熊谷太三郎

    熊谷太三郎君 ちょっと、通産大臣がまだお見えでございませんが……。
  152. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 熊谷君、いまそこまで来て、電話をかけていますが——じゃ、ちょっと待ってください。
  153. 熊谷太三郎

    熊谷太三郎君 今回の国会に電源周辺地区の整備に関する法律案が提出されまして、予算案の中に千七百万円の調査費が計上されたように伺っておるのでございますが、これは、当局におかれまして、かねがね原子力等電源地帯の要請を取り上げられたものとしまして、その御配意に対しては敬意を表するものでありますが、原子力電源地帯の緊急整備を念願する立場からいいますと、なるべく早急に調査を完了されて、その実施に入っていただきたいと考えるのでございますが、通産大臣の御所見を承りたいと存じます。
  154. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 午前中も申し上げましたように、電源開発の一番のポイントは、サイトの決定、促進ということでございますので、周辺地帯整備法をいま各省との間で詰めをやっておりまして、大体来週ぐらいには各省まとまりまして、金曜日の閣議にかけたいと、そう思って一生懸命やっておるところでございます。中身につきましては、いろいろ、道路の建設あるいは下水道そのほかの土木工事について補助率をかなりアップするというようなこと、そのほかを中心にいたしまして、地元にメリットを与えると、それから電源業者からもある程度の金を出してもらいまして、それで地元にも還元すると、そういうような構想でいま作案しているところでございます。  もし詳細を御説明が必要でございましたら、局長が来ておりますから御説明申し上げます。
  155. 熊谷太三郎

    熊谷太三郎君 一応原子力の問題はこれで終わりまして、ちょっと問題は変わりますが、公正取引委員長に一言お伺いいたしますが、最近、たいへん品不足で悩んでおりますものの一つであるセメントあるいは生コン等に対しまして、この品不足に乗じて業者が不当に価格をつり上げるというようなことがないか、調査をされましたかどうか。調査されたといたしましたら、その結果がどうであったかということについて承りたいと存じます。
  156. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) セメントの業界の価格に対する問題は、私どものほうでつとにもう関心を持っておりまして、立ち入り検査を行なっております。その疑いは、セメントの全体のうちで大体九割ぐらいが、御承知のとおり、普通ポルトランドセメントと申しますが、それのほぼまた八割ぐらいに当たるものがバラ売りと称します。それ以外は袋詰めでございますが、そのバラ売りの大口のものだと思いますが、それにつきまして、値段が五千九百円程度であったものを、三月一日から六千二百円に、まず一たん引き上げると、そうして、まあこれは二段階にしまして、四月一日から六千四百円にさらに二百円引き上げる、結果において五百円ぐらい上がることになりますが、そういうメーカーの申し合わせ、協定によってこれを行なうという疑いがございました。大体まあそれでございますので、二十一社全社について立ち入り検査を行なっておりまして、場所としては二十四カ所を捜査しております。もう一つの疑いが、販売先をそれぞれ協定したと、つまりどこの工場がどこへ売るというふうなことをこまかく協定をしている、そういう疑いがございますので、現在これについて十分調査中でございます。調査中でございますので、結論としては、なるべく早く出すように努力いたしておりますが、まだ内容については申し上げる段階には至っておりません。
  157. 熊谷太三郎

    熊谷太三郎君 このセメントの需給調整ということにつきましては、政府全体とされまして、公共工事の発注時期の考慮等、いろいろ根本的に考えていただかねばならぬ問題であると思いますが、それはそれといたしまして、当面いささかでもその緩和に資する意味で、輸出の制限でありますとか、あるいは韓国ないし台湾等からのセメントの緊急輸入でありますとか、そういう方途について通産大臣のほうで何かお考えがありましたら承りたいと存じます。
  158. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) セメントにつきましては、ことしの暖冬異変の影響もございまして、需要が昨年の同月比に比べまして二〇%から二五%ぐらいふえてまいりました。それから、やはり最近の景気が急上昇して回復してまいりまして、民間設備投資そのほかの需要がかなり伸びてきたと、そういう事情によりまして各地において逼迫してまいりまして、御迷惑をおかけして恐縮に存じているところでございます。通産省では、三月九日に、特に中国地区を対象といたしまして、四月中に韓国から袋物を一万トンを緊急輸入して、そちらに充てることに手配をいたしました。しかし、その後、国鉄の順法闘争の影響が予想以上に拡大いたしまして、特に関東地方の内陸部ではセメント用の重油が回らないということもありまして、操業がむずかしくなっているという状態がかなり深刻に出てまいりました。通産省としましては、運輸省とも連絡をとりまして、貨車回りをいま一生懸命やりまして回復しておるところでございます。そこで、最近は、中国地方から全国的にそういう現象が出てまいりましたので、中央並びに地方にセメントの需給協議会を開催いたしまして、中央では当方の局長、それから地方におきましては通産局長が主宰いたしまして、需要者、供給者両方に集まってもらって、その隘路の打開について協議をいまやっている最中でございます。セメントは、長い間貯蓄するということがむずかしい品物でございますので、輸入ということがいままであまり行なわれませんでしたけれども、最近のこういう状況にかんがみまして、台湾あるいは韓国からのさらに緊急輸入をふやすというようなことや、あるいは緊急増産について施設がさらに増強が可能な範囲内において需要に合うように供給量をふやすと、そういうこともいま手配をしておるところでございます。
  159. 熊谷太三郎

    熊谷太三郎君 それでは、最後に、公共工事の発注制度ということについて大蔵大臣にお伺いをいたしたいと存じます。きょうは大臣が御不在でございますのでたいへん残念でございますが、一応ひとつ申し上げたいと存じます。  公共工事及び公団、公社等、準公共工事の発注額は、現在、中央、地方を通じて毎年きわめてばく大な金額に達しておるわけであります。したがって、その発注方法は、単に経済的見地からだけでなく、政治的見地からも、十分慎重な態度で行なわなければ、弊害の及ぶところが少なくないのであります。現在、国の公共工事の発注制度は、会計法によります一般競争契約、指名競争契約、随意契約の大体三つに基づいて行なわれているわけでありますが、事実におきましては、ほとんどが指名競争によって行なわれているのが現状であります。これは、現行制度のもとではやむを得ない方法でありまして、これによりまして公共工事が大体順調に消化されつつありますことも事実として認め得るものでございます。すなわち、経済的な見地からだけ言えば、一応その目的を達していると言えると思います。ただ、政治的見地から言えば、必ずしもこの制度が完ぺきであるとは言えないと考えます。と申しますのは、指名競争といいますのは、一定の資格ないし能力のある業者の中から発注担当者が適宜にピックアップしまして業者を指名し、指名した業者だけに競争を行なわせる方法でありまして、必ずしも業者の希望が反映するわけではありません。したがって、その工事の受注を希望する業者は、あらかじめその指名に加わりますためにいろいろな方法をとらざるを得ない仕組みになっているわけであります。いわゆる請託の余地がそこに存するわけであります。中央、地方を通じまして政治の姿勢をより正しくいたしますためには、考慮すべき重要な問題であると考えております。しかるに、昭和四十六年答申されました中央建設業審議会の答申にも、この点に関する明確な配意は示されておらぬのであります。  きょうは当の大蔵大臣もおいででありませんで、まあ詳しいことは後日に譲りまして、簡単に私の結論を申し上げたいと思いますが、この公共工事の発注につきましては、アメリカにおいてアメリカの連邦及び各州で行なわれておりますようないわゆる保証付公開入札の方法を導入されるお考えはないかどうか。いま直ちにこれを導入するといっても、むろん保証制度その他いろいろな点からいいまして困難でございましょうが、少なくともこの制度を前向きに検討していただくというお考えはないかどうか、これはひとつ簡単に御所見を承りたいと存ずるわけでございます。
  160. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) このたび、愛知大蔵大臣御不在中、臨時代理をつとめますが、よろしくお願いいたします。  お答えを申し上げますが、国が行ないまする契約については、会計法によって一般的に競争によることを原則としておるわけでございますが、特定の際には、ただいまおことばがありましたように、指名競争によっていることが多いわけでございます。公共工事の入札につきましては、競争の原理が生かされることが必要であることは言うまでもありませんけれども、他方、公共的な営造物をつくるものでありますから、技術的にも経営的にも十分信頼のできる業者を選定する必要があり、工事の実施能力、工事の手持ち量等を勘案いたしまして、最も適当と考えられる業者を二十社以上指名して指名競争を行なっているのが実情であるわけでございます。  指名競争入札におきましては、各省各庁の長が、指名競争参加の一定資格を有する者のうちから、個別の契約ごとに、さらに一定の基準に従って、個別の競争の参加者を指名するものとされておりまして、適正な契約が行なわれるよう十分配慮が行なわれているところであります。しかし、ただいま御指摘のように、アメリカにおきましては保証付公開入札制度がとられているわけでございまして、これをもっと前向きに検討してはどうかという御指摘は、ただいまお述べになりましたような経済的な理由以外にも、他にもいろいろな理由がございますわけでございますから、そういう点を勘案いたしまして十分調査検討いたしたいと、こう考えておるわけでございます。
  161. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて熊谷君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  162. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 竹田四郎君。
  163. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 先に福田長官にお聞きしたいのですが、神奈川監察局から、おそらく戦時中の防空壕の問題については報告が来ていると思うのですけれども、全国的にそういう話があるのか、ないのか。あるいは、特にそういう問題で御調査なさったことがあるのか、どうなのか。それに対する御感想を、まず長官のほうからお聞きしたいと思います。
  164. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お話のとおり、戦時中、軍の指導のもとで掘りました防空壕ですね、この案件があるわけです。それで、神奈川地方監察局からこの正月に、そういう問題があるというお話がありました。それから全国でも十七件ばかり、そういう問題が指摘されております。それで、そのうち二件は解決しておりますが、十五件が未解決だと、こういう状態です。こういう問題をほうっておいちゃいかぬ。早急に解決すべきものである、そういうふうに考えております。
  165. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 しかし、この防空壕の問題は、いま長官おっしゃられたように、もう戦後長い間放置されているわけです。具体的に藤沢あたりでは、その中に落ちて、死んだということはありませんけれども、けがをした人がある。あるいはそれによって家が傾いている。あるいはそういう防空壕の中が不良少年の住みかになってしまっているというようなことで、これは地図を先ほどごらんいただいたと思いますけれども、たいへんな大きな防空壕があるわけでありますが、特に神奈川県の場合には、関東ローム層という比較的やわらかい土質の中にこれができている。高さは、高いのになると三メートルぐらいありますし、中には地下の病院と考えられるもの、あるいは地下の工場と考えられるものがあるわけでありますけれども、それがそろそろくずれ始めてきておる。  しかし、それについて、この二十年間全然政府のほうの窓口がないということが住民にとっては一番困るわけです。危険もそういうことで予想されるわけでありまして、そうした意味では、まず政府にこの窓口をつくってもらうということが必要であろうと思うのですが、一体どこが受け付けるのか、この点をはっきりしてもらわないと、非常に市街地がふえてきましたから、いままでは、あるいは山林であり、あるいは農地であって問題になっていなかったわけでありますけれども、土地はどんどん移動しておりますし、そういう中で地下に防空壕があるということを知らないで買って、家を建ててしまったというふうな家庭もかなりあるわけでありますから、この点については、まず政府として、こうした戦時中に掘られた防空壕の窓口というものを、これは明確にしてもらわなくちゃならぬと思うのですが、この問題はおそらく総務長官なり、あるいは官房長官が、一体それはどこを窓口にするかという割り当てをやってもらわなくちゃならぬと思うのですけれども、官房長官にこの点をお尋ねいたします。
  166. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) いまお話がありましたとおり、戦時中の防空壕が残されておって、いろんなことに支障を来たしておる。これは遺憾だと思っております。それで、いまお尋ねのようなことが起こってきておるわけでございますから、責任官庁を明らかにせよ、これは明らかにすべきだと思っております。そこで、私は農林大臣、建設大臣には直接お話はいたしておりませんが、都市部にあるものは建設省、農村部にあるものは農林省所管にちゃんといたします。そしてなお話がつかないものは総理府において、私、総務長官が責任を持って処理をいたす、窓口になる、こういうことにひとつ御理解をいただきたい。そういたします。
  167. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それは、これから具体的にその問題が明確になったときには、おそらくはっきり——もう少し実はこの席ではっきりさしてもらいたかったわけですが、たとえば建設省のどこだとか、あるいは農林省のどこだとか、率直に言って、農林省と建設省が扱うところは一体具体的にどこなのか、分野はどういうことで分かれるのか、農村部、都市部といったって、これはなかなか解釈のしかたによって違うわけですから、その辺、もう少し官房長官からはっきりしてもらいたいと思うのですが、これ以上はきょうの席でははっきりできませんですか、どうですか。
  168. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) きょうは、私もこれからまた出かけなければなりませんから、直接大臣と話をする機会がございませんが、私が農林大臣、建設大臣とお話をしまして、どこの局ということをきめていただきたいと思います。これはきょうはできませんから、月曜日まで待っていただきたいと思います。
  169. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そこで、早急にそれはきめていただくとして、実際は、これだけ大きなもの、実は直後に、あるいはこの中に屎尿をぶち込んだり、あるいはこれが下水道に使われていたり、あるいは水がたまってしまっていたりということで、末端で調査するにいたしましてもたいへん金のかかる問題なんです。ですから、どうしても私は、これはもともと国が戦時中に掘ったものでありますから、海軍ないし陸軍が掘ったものである。別に民間が掘ったものじゃないわけなんです。そういう点では早急に調査をしていただかなければいけない。調査費を組んでいただいて、そして調査をしていただかなければ、ただ普通に入ってそれを測量すればいいというようなものではないと思うのです。場合によってはガスが発生しているわけです。  そういう点で、これは当然、国が少なくともまず調査費を組んで、調査を全面的にしてみる。そしてその中で、たとえば岩盤なんかが強くて、そのまま放置しておいてもいい、あるいは何かはかのほうに利用価値のあるものはそれは利用させてもいいと思うのですけれども、あぶないものから埋めるなり何らかの手当てをしない限りは、人命にも私は関係すると思うのですよ。そういう意味で、ぜひ四十八年度から調査費を組んで、具体的に、行管長官もおっしゃられたように、全国に相当あると思うのです。こういうものを全体として調査をして、そしてどれから手をつけていくのか、優先順位をつけて国のほうでこういうものを直していってもらわなければならない。おそらく藤沢だけの復旧費で十億かかると、こういわれております。でありますから、全国的に見れば、その復旧費というものはたいへんな額にのぼるわけですから、これは市町村の負担の範囲内の問題ではないわけですから、当然その辺も考えてもらわなければならないわけでありますが、とりあえず四十八年度に調査費を組んでもらう。このことは必要であろうと思うのですけれども、これは大蔵大臣の担当になりますか、どの大臣の担当になりますかわかりませんけれども、ぜひ調査費を組んでいただきたいと思います。
  170. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 大蔵大臣立場は、各省からいろいろお話があるものを、それを待って検討する立場でございますので、私はさように考えておるわけでございます。
  171. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いまの大蔵大臣の説明ですと、分担がわからなければ調査費は組めない、こういうことですか。いまちょっと私聞き漏らしたのですが、どうなんです。
  172. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) いや、そうではございませんで、名省から御要求があったものを、その御要求のあった段階考えたいと考えております。
  173. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうすると、まず建設省あたりがその一番担当省になってくる可能性があると思うのですが、建設大臣としては、そういうものに対して早急に調査なさるお気持ちはございますか、どうですか。
  174. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 防空壕の問題は、ことに市街地というようなことになりますと非常に重大な問題であろうと思いますし、また、これを転用して農業に使うという、あるいはキノコを栽培するというようなところもあると思うわけでございますが、市街地は、これは何としてもつぶさなくちゃならない。いままで建設省で、つぶしたということに携わったという例はあるようでございます。そういうことでございますから、政府でやるということになれば、建設省がやれということであれば、都市局でこれをやるということになると思うわけでございますので、その場合は建設省でお引き受けいたしたいと思います。
  175. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 この問題はそう長く、建設大臣、かかる問題じゃないと思うのですよ。まず窓口をきめるという問題はそうむずかしい問題じゃないと思う。これは四十八年度から調査を始めてくれなくちゃいかぬと思うのです。  具体的に藤沢市あたりにおきましては、藤沢市の自分の費用で調査をしたり、あるいは住民から実際家がかたいでしようがないとか、家の下に大きな穴があって危険でしようがないということで、藤沢市あたりではそうした面について市費でもってやらざるを得ない、そうした事態になっているわけですが、どうも建設大臣のお話ですと、窓口がきまらなければそういう調査費を要求することはできないと、こういうふうな感じを私は受けたのですが、これはさっそくにも調査費を組んで、まず調査をしてもらう、そこからスタートしてもらわなければ困ると思うのです。
  176. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) ただいま二階堂官房長官は、帰りぎわに私のところに耳打ちしまして、建設省でやってくださいと、こういうことですから、やる覚悟でおります。
  177. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 調査費は要求してくれますか。
  178. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 要求もいたします。
  179. 和田静夫

    ○和田静夫君 関連。  自治大臣、いま竹田委員から質問があったように、すでに藤沢市なら藤沢市が、この問題について独自の費用を、いわゆる負担をして、危険度をなくするために作業をやっている。そうしますと、これはもう地方自治体が独自に出すべき費用ではありませんから、前にさかのぼって特別に補助を考える、こういうことがやっぱり必要になってくると思うのです。そのことについて了とされますか。
  180. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) さいふのほうは私が持っているわけではないのでありまして、その問題は大蔵省と十分に折衝いたしまして、御期待に沿うように努力いたしたいと考えております。
  181. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これを埋めていくということになりますと、たいへんな金と人力がかかるのですが、どうですか、自衛隊あたりの施設部隊を使って、自衛隊の前の先輩が掘ったわけですから、自衛隊がこの復旧をされるというようなことはどうでしょうか。
  182. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 御承知のように、自衛隊には工事引き受けというのがございますので、いまのような問題は、関係市町村長から要望が出ますれば、十分その要望にこたえる方向で検討いたしたいと、こう考えます。
  183. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それでは次に問題を移していきます。  最近の商品投機問題でありますけれども、政府のほうは、商品投機の規制ないし取り締まりの法案を出していこうというお考えのようでありますが、この法案で商品投機というものは解消できますか、どうですか。
  184. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 根本的には過剰流動性の問題があると思っております。そこで非常に需要が多い。そこで、その需要の中で一部に投機に向かう需要がある。これが全般に非常に異常な状況を呈しておるということにかんがみまして、両々相まってこの問題と取り組んでいこうということで、一義的には行政指導も考えていっておりまするが、行政指導をもってしても足らざるところは、ただいま御指摘の法案によりまして正常な姿に戻していこう、こういうことを考えておるわけでございます。で、法案のほうもすでに二週間近く前に国会に提案してございますので、これをひとつできるだけ早く通していただきまして、われわれの意図することを行なわしめていただきたいと考えておるわけでございますが、なかなか完ぺきにいかぬ点もあるかもしれませんけれども、いままでよりは、はるかによくなると思います。  それから、最近、国会でもっていろいろ御論議をいただくことが非常に効果があったように思いまするのは、昨日の日本経済新聞でございましたか、非常に投機熱が鎮静化しておるやに思われるという記事が出ておりましたので、だんだんああいう異常な状態というものはなくなりつつあるのではないか、ぜひなくしたいと、こう思っておるわけでございます。
  185. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大臣がおっしゃるほど投機は私は下がっていないと思うのです。この間も、たとえば、ベニヤ合板、これは農林関係ですけれども、聞きますと、ベニヤ板の輸入というのは四倍から五倍輸入しているのですね、十二月から一月。しかし、ベニヤ板というのは、去年は百七十円ぐらいで一枚買えたものが、いまは大量に買って四百二十円というのだそうです。個人が買うということになりますと、四百八十円から九十円というようなことで、十一月−十二月にそれだけ大量に輸入したのだけれども、一向に下がっていないというのが現実です。  ですから、私は、いまおっしゃられたような法律ぐらいでは、これはとてもそうした商品投機というのはなくならない。結局、企業の手元にある流動性をどう収縮していくか、この辺に手を入れてもらわなければ、くつの上からかゆいところをかくような、そういう状態にしかできないと思うのですけれども、その企業の手元の流動性を減らさせる方法というのは何か検討されておられますか。
  186. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) おっしゃるとおりでございまして、ベニヤ板などというものは従来非常に不況産業であったわけでございますね。昨年あたりは、ベニヤ産業なんというものは北海道でも非常に困っておった。それが最近非常に好況であるのですね。これはもうおっしゃるとおり、私は買い占めがあると思っております。しかし、これをどうやってたたき出していくかということは、いまあの法案ではとおっしゃいましたけれども、あの法案もひとつぜひ使わせていただきたい。早く立法していただきたいというふうに考えておるわけなんでございます。  しかし、私申し上げたように、根本には過剰流動性の問題があると思うのです。これは私もあなたと同じように思っておるのです。この過剰流動性をなくす方法というものはどうしたらいいかということで、実は私の立場からやかましくこれは言っておるつもりなんでございますが、日銀のほうでは二回にわたりまして預金準備率の引き上げを行ないました。これはあの程度がいいのか悪いのかということは、われわれは日銀というものの金融を扱っていらっしゃる中立性と申しますか、主体性と申しますか、そういうことにおまかせをしているわけでございます。それからさらに日銀のほうにおきましては、手形の買い取り限度の制限額をきめたり、あるいは金融機関の貸し出しが大手商社に行かないような方法、たとえば市中銀行等に対しましては、この年の一−三月の大手の十大商社向けの貸し出しを昨年の第四四半期の実績の半分以下にするというようなことで締めたりいたしておられまして、さらにこの先、四−六の分につきましても貸し出し抑制の指導を一段と強める方針をとっておるというふうに承っておるわけでございます。預金準備率にいたしましても、一月に約三千億円をしぼった。ここへきてまた同様に三月の十六日からやったわけでございまして、一度上げた上のまた引き上げでございますから、今度は相当に乗数効果というものが働くだろうと思っておりますが、そういう点で、非常に商社の手持資金などは苦しくなってくるという現実の事態が出てくるというふうに思っておりますので、商社の側においてもだんだんこういう情勢が反映して慎重になってきているように聞いておるわけでございます。私はさようなことが実ることを期待しております。実は物価を扱っておるということになっておりますので、気が気じゃないのですね、このごろの卸売り物価の高騰というのは。私も竹田さんと同じように非常に心配をしておるわけなんでございますが、だんだん効果があらわれつつあるように思っておるわけでございます。
  187. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 日銀総裁はそういう点でたいへん御苦労されていると思うのですが、いろいろな金融政策をやっていると思うのですけれども、どうですか、日銀総裁として、金融機関の過剰流動性を引き揚げることによって企業の手元の流動性を減らしていくと、こういうような非常に間接的なやり方、こういうやり方でいまの商品投機というものがおさまって、そしてしかも、価格も前の正常な価格に返っていくというようなことは可能ですか。私はなかなかそれには——もちろんできないとは思いませんけれども——非常な時間を費やさなければならないと思うんですが、日銀総裁としてはどういうふうにお考えですか。
  188. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 企業の手元の流動性が非常に高くなっておりますことは、先般の為替の変動相場制に移りました前後に、輸出前受け金が相当入ってきたということがきっかけになったと思います。現実に企業の手持ちしております現金、預金、それから運用有価証券、これは相当な金額が増加いたしております。しかし、これは各企業あるいは各個人の手元に持っておりますものですから、これを直接吸収するという方法は、これは、公の方法では、ございません。しかも、われわれの分析では、こういう金融緩和の時期におきまして、金融機関が資金の運用難におちいるのではないかということで、去年の春ぐらいから貸し出し競争をいたしました。こういう金融機関の融資態度の軟化と申しますか、やわらかさが、手元がふえておる企業に、この手元に持っておる金を使っても銀行からすぐあとは供給してもらえるという安心感をもって非常に活発は取引をやったと、こういうふうに見ております。したがいまして、この際、金融機関の融資態度が変わってまいりますと、企業はある程度豊かな手元資金でも、これを使ったらあとの補いがつかないということになりますと、仕事のしっぷりが非常に変わってくる。それが現実に、いまのところ、もうすでに見え始めておるのでございます。したがいまして、私どもとしては、金融機関の融資態度を大きく変化させるということが当面政策の面で可能な重要なやり方であると、こう考えておりまして、先ほど大蔵大臣からもお話がありましたように、この四−六の都市銀行の貸し出し増加額の査定にあたりましては、前年の増加額を下回る数字というようなところへ持っていって、いま話をしておる次第であります。こういう面でのやり方はやがて効果をあげてくるものと、こう考えております。
  189. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 非常にのんびりした、春らしいお話を聞いたわけでありますけれども、庶民の生活というのはそういうわけには私はまいらぬと思うんです。もう少し急に金融の引き締めのことを考えてもらわなくちゃいけないと思うんですけれども、企業の手元の資金というものをふやしている一つのやり方として、最近のいろいろ話題になっております株式の時価発行問題という問題が一つあると思うんですけれども、こういうものが通貨を偏在させていく一つの大きな原因でもあろうと思うんですけれども、こうしたものは、私は当然その自粛を促し、必要でないものまでも時価発行をやっていくというようなことは、今日の時点においては私は適当じゃない。私は、時価発行そのものをすべて否定するものじゃありませんけれども、やはりそれにはその時期というものを十分考えてもらわなくちゃいかぬと思うんですが、こういう時価発行とか転換社債というようなものを私はもう少し規制していいんじゃないか、いまの時期において、こういうふうに思うんですが、大蔵大臣、その点はどういうふうに思っておいででいらっしゃいますか。
  190. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 仰せのとおり、本来時価発行というものは、自己資本の充実のために非常に体質改善の立場からもいい影響を持つものでございますけれども、それで株価が上がるということに便乗して、そして安易に時価発行をして、それでその資金が投資に向かうということは、これはもうどうしてもよくないことなんでございますから、当局といたしましては証券業界に対しまして、発行企業の質的基準の強化、銀行や事業会社への片寄った消化の是正、発行企業の資金使途の確認、発行額が過大に流れることのチェックなど、四つの点を要請いたしました。証券業界はこれを受けまして、発行のルールの一そうの強化を申し合わせまして、この四月から実施するという運びになりましたわけで、おっしゃるような意味は、私どももまことにそのとおりに考えまして、すでにさような実効が見えておるわけでございます。
  191. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私は、これ一つの提案なわけですけれども、たとえば、そうした企業の手元に資金が非常にだぶついている。これは、たとえば一年を一つの決算期にしている場合には中間報告をさせて税金を納めさせる。それから個人の場合でも中間に納税をさせる、こういう制度があると思うんです。税金を延納させるだけを奨励するだけじゃなくて、私は、こういう時期には逆な手段を使って、あらかじめ去年の実績に対応して、しかも、景気は上向きだということでございますから、そういう法人税の予納制というようなものをこういう際につくっておいて、そして企業のだぶついた資金というのをむしろ国のほうに早く引き揚げてしまう、こういうようなことをむしろ私は考えるべき時期にきていると、こういうふうに思うんですが、その点は大蔵大臣、どうですか。
  192. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この間、あるテレビを聞いておりましたら、有力なる銀行家が、銀行の貸し出しがふえたためにこうなっているんじゃない、企業はたっぷり時価発行でもうけて持っておるからそれを使っているんで、銀行のせいじゃないということを言っておられたのを聞きまして、まあ、いろんな考え方があるもんだなと思ったわけでございますが、いまの御提案等もたいへん検討さしていただくに値するというふうに考えております。十分慎重に検討さしていただきます。
  193. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 この場限りで、検討するというようなことで過ごされては私は困ると思うんです。それは、一つは資金的にだぶついた資金が動き出す。確かに動き出すと思うんですが、しかし、それがはたして、いま日本の経済構造なり産業構造を変えなくちゃならぬという、こういう時期にもあるわけです。ですから、それがただもうかればいいということで、新しい企業の設備資金にそれが使われていってしまうということになれば、これだけ国民が苦労しているのに、また過去の産業パターンというようなものに返ってしまう可能性があるわけでありますから、ここだけの話にしないで、そうした手段というものを使って、産業構造を変えていく手段にもこれはおそらく私はなり得るだろうと思いますし、そうしただぶついた資金を少なくさしていくという上においても私はこれは考えてもいい方法だと思うんですがね。さっきのお話を聞いてますと、まあ、大蔵大臣の臨時代理だということもあるかもしれませんけれども、ただ検討するというようなことだけではどうもちょっと私は納得いかないんですが、それ以上お答えできませんか。
  194. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) どうも代理だもんですから、あんまり根本に触れるような意見を申し上げることは遠慮せにやならぬのでございますが、その点はひとつお含みおきをいただきたいんですが、ただ、日本の企業の場合、これは自己資本比率は非常に少ないわけでございますね。借り入れ金——他人資本の比率が非常に多いので、できれば時価発行のできるような会社は、その分を自己資本に組み入れて会社の内容をよくするということもこれまた一方において必要なことだと思うのです。問題は、ほどほどが、ほど合いが大事だと思うわけでございまして、そういうことを含めて、ただいまの竹田委員の御提案は十分検討さしていただきたい、こう申し上げているわけでございますが、いずれ本物にもよく引き継ぎまして、検討さしていただきます。
  195. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 たいへん御遠慮なさって御回答をいただいているというようなことでは、あんまり突っ込んでお聞きできないということになってしまうわけでありますけれども、もう一つは、これ、日銀総裁にお聞きしておきたいと思うんですが、この前愛知大蔵大臣は、この席で細川委員の御質問に対して、貸し出し準備制度——フランスあたりがやっている制度でございますね——これは検討をしてみるというお話だったわけでありますけれども、日銀としてはこういう制度というものはどういうふうにお考えでございますか。
  196. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 一昨年預金準備制度の改正を行ないますときに、金融制度調査会でこういう準備預金制度全般についての検討が行なわれました。そのときに貸し出し準備制というものも検討がある程度行なわれたのでありまして、しかしながら、結局答申には貸し出し準備制について触れるところがなかったわけでございます。  この貸し出し準備制度は、貸し出しの増加しました額に対応して預金を積ませるということになっておりますが、結局、資金の供与額が増加するときにそれを押える手段として預金を基礎とするか貸し出しを基礎とするかという差がございますが、その両者に共通するところは、資金の吸収が貸し出し態度を消極化させるというねらいは同じであろうかと思います。それで、日本の場合には、いま現実には窓口規制というようなやり方で直接に貸し出しの数字を調整いたしておりますものですから、貸し出し準備制というものにすぐ移行するという現実の必要がそれほど痛感されてないという点があろうかと思います。しかし、いま世界で貸し出し準備制を使っておりますのはフランスでございまして、フランスは最近それをずいぶん強く使っておるのが実情でございます。したがいまして、この次われわれとして準備制度につきまして根本的な検討を加える時期におきましては、もう一度貸し出し準備制度というものについて検討をやる必要があろうかと、こう考えておるのが現状でございます。
  197. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大蔵大臣にお聞きいたしますけれども、ECが共同変動相場制に入ったわけでありますが、ECの共同変動制というものの将来、アメリカにもいろいろ意見があるようでありまして、いろいろ論評が流れてきておりますが、日本政府としては、ECの共同変動制の将来というようなものはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  198. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ECの共同フロート制というものは投機再発を防止するためにつくられました、むしろ共同防衛的な措置であると思いまして、個別的にフロートする措置を避けたことは、やはりECが通貨統合の計画あと戻りさせたくないという関係諸国の意思を示すものであると考えるわけでございます。今回の共同フロートは一時的な対応策で、これがそのまま閉鎖的なブロック化につながっていくというふうには考えておりません。ECがその通貨間の変動を狭い幅に限っておりますことは、やはり固定相場に戻るということを考え、その固定相場というものの持つ利益を十分いまでも信頼しているということをあらわすものだと思っているわけでございます。  わが国といたしましては、今後とも世界貿易の縮小、ブロック化が生じないように外交努力を払ってまいる所存でございまして、また、原則として各国通貨が固定相場制に復帰すべきであるという従来の考え方に変わりはないわけでございます。
  199. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それにもかかわらずECが今度の共同フロートに移った一番大きな原因というのは、やはりECの団結、それからECの将来の統一通貨制というものを目ざしておそらく共同フロートという形に私は進んだだろうと思うのです。そういうふうに考えてみますと、まあ、すぐであるかあるいはかなり将来であるかわかりませんけれども、やはりECブロックというようなものができてくる可能性というものはかなりあるんじゃないかと思うのですけれども、日本政府意思と合致するかしないかわかりませんけれども、ECのそうしたブロック化というものの可能性というものは私はあると思うんですけれども、それは日本政府はどう考えておりますか。
  200. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま大蔵大臣とのやりとりにありましたように、ECが、去年の十月拡大ECの首脳が集まりまして、経済通貨同盟というものを一九七〇年代末までにはつくり上げたいという道標を打ち立てて、それを追求しようということで同意を見ておるということは、仰せのように、ECが経済統合の実をあげる本能を持っておると思います。したがって、そういう傾向でECの今後の経済政策、通商政策というものが、地域的な特恵であるとか、地域主義的な傾向に傾斜してまいるということは、一志仰せのとおり考えられることであると思うのでございます。けれども、EC全体といたしましては、九カ国が力を合わせて、技術の開発、公害の防除その他もろもろの、通貨の調整その他を通じまして、ECの経済の発展自体を通じて域内外にわたる通商を拡大していこうという一本バックボーンが入っておると思うのでございます。したがって、私どもといたしましては、ECが統合の実をあげていこうとすることに対しまして、それをじゃまだてするつもりはございませんけれども、これがおっしゃるような方向に地域主義の傾向を強めてまいるということには警戒的でなければならぬと思うのでございまして、ECとアメリカ日本は、世界経済をささえる大きな柱でございますので、三者協力いたしまして、そういうことのないように十分経済外交の上におきましても、通貨外交の上におきましても、配慮してまいらなければならぬと考えております。
  201. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 最近の大蔵大臣国際会議での態度というものを見ますと、何か最近は、ECのほうに乗っかってアメリカに適当なことを言ってるという感じが非常にするわけですね。今度、ワシントンへきょう乗り込むそうでありますけれども、こういう点については、ECとアメリカとの関係——アメリカはかなり、ECというものはやがて崩壊をするだろう、こういう、希望的な観測かあるいはしっかりした観測かこれはわかりませんけれども、そういう論評のほうが非常にアメリカの論評としては多いようでありますけれども、そうした問題について今度の二十カ国蔵相会議における日本の愛知大蔵大臣が示す態度というものは、一体どういうことを予定して行ってらっしゃるんですか。
  202. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ただいま外務大臣がおっしゃいましたように、まあ、アメリカとECと日本というものは、やはり自由貿易をささえる三本の柱であるという根本的な認識に立ちまして、できるだけそれぞれがそれぞれの立場において繁栄いたしますように考えていくというのが基本的な態度であると思います。しかし、御承知のように、最近のドルの大量売りというものは、やはりアメリカ自身の持ついろいろな経済的な困難、それに対する国際的な一つの反発といいますか、それに対する姿勢といいますか、そういうもののあらわれであるというふうに見ざるを得ない点があるわけでございます。そこで、さしあたりの問題といたしましては、EC諸国もフロートする、日本もまたフロートするということで、投機を避けていくということがやむを得ない措置でございますけれども、やはり根本的には、ドルというものはいま唯一の支払い手段になっておるわけでございまして、各国が貿易決済をする場合はドルしか、いまないわけでございますから、何としてもドルを強くすると、こういう立場考えなければいけない。それには、アメリカ自身がやはり経済再建に本気になってもらうことももちろん必要でございまするし、多国籍企業というものに対して、アメリカ考え方をまたいろいろ考え直してみてもらうことも必要であろう。そういう点で、アメリカのドルがどんどんどんどん流出していくという点をどうやってささえるかということも、日本日本立場から一緒に協力的な立場考えていくということ。それでさらに、今後、金というものとドルとの関係をどうするか、また、それにかわるものとしてのSDRというものをどう強化するかと、そういうような将来を見通しての立場に立ちながら、さしあたりは、ドルをどうして強くするかということでございまして、何もアメリカと一緒になってECをたたくとか、ECに乗っかってアメリカをたたくとか、そういうことではなくて、冒頭に申し上げたように、自由主義をささえる、拡大する、世界の経済をささえる三つの柱の一つとしての日本立場ということで考えていきたいということが、愛知大蔵大臣先方においてとられる態度の基本であるというふうに思っておるわけでございます。
  203. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それにもかかわらず、きのうの報道によりますと、国際経済に対するニクソン大統領報告というのが出ておりましたけれども、それに対して、かなり大きな反発の、通産大臣あるいは大蔵大臣の発言が載っておりましたけれども、日本がそういうような形を考えていても、アメリカ自身がかなり大きい保護貿易主義的な考え方を出してきている、あるいは輸入課徴金というものを、日本を名ざしで、ある程度しゃべっている。こういう、ECはブロック化する、アメリカ自体は保護貿易化してくるということになりますと、結局、円が孤立をしていく、こういう可能性が私は強くなるだろうと思うんですけれども、そういう見通しは全然ないわけですか、どうですか。
  204. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ニクソン大統領が二十二日に国際経済に関する大統領報告を議会に出しておることは御承知のとおりでございますが、その中で、新通商法案に関する部分をちょっとメモ的に抜き出してみますと、まず第一点には、五年間で関税全廃を目ざすということを言っておるわけでございます。これは、新国際ラウンドにおけるEC、日本との交渉の結果によっては、そうするということを言っておるわけでございます。  第二点は、四つの問題を言っておるわけでございますが、次の場合には、輸入制限発動の権限を自分にくれということを求めておるわけでございますが、そのうちの第一は、輸入制限を続ける国に対しては貿易関税障壁を引き上げると。いま竹田委員のおっしゃいました点でございます。第二点は、輸入急増による国内産業労働者の救済のためには調整援助を強化するとともに、セーフガードの発動条件を緩和する。第三点には、貿易相手国が不公正な競争をするために生ずる被害を救済する措置をとる。これは、まあ一種の、見方によっては相手が悪いのだからおれのほうは救済的に保護主義になってもしようがないぞということともとれるわけでございます。それから第四点は、アメリカの国際収支の赤字が持続する場合には、輸入課徴金、輸入数量制限を各国一律に発動する場合のほか、特定の黒字国に差別的に課する。これはまあ日本が対象になるであろうかというようなことがよく言われる点でございます。そういう点を見ますと、アメリカとしても非常に赤字対策に真剣に考えざるを得ないのだと、そのためには、ある場合には国内産業保護のためには相当の措置をとるということを言っておるわけでございまして、これは昨年の八月十五日にニクソン大統領が言いました所得政策、すべての所得を制限するという国内的な措置と相対するような対外的な強硬措置というふうにも思えるわけであります。  ただ、私は、この際特にコメントしておきたいことは、あの国内措置は、御承知のように、一月十五日にエクスパイアしまして、いまあの制限をやめましたわけでございます。その結果、非常に物価、賃金が高騰しておるわけです。ことに物価が高騰しているわけです。ですから、あの措置は非常な決意をもってやったんだろうけれども、やはりそれだけの効果があがっていないということになるわけでございまして、国際的な措置についても非常な決意をもってこういうことをやられた結果は、やはり根本に触れざる対策でありますると、かえって結果は思わしくないじゃないか、世界貿易を縮小させるということは、日本にとっても困ることでございますが、やはりアメリカの経済あるいはアメリカの国民生活にとってもロングランに言って決して好ましい影響を持つことではないのではないかというふうに思うわけでございます。
  205. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 通産大臣にお聞きいたしますけれども、きのう発表された大統領の報告は新通商法の前ぶれだと、こういうふうに言われておりますけれども、それによって、いままで電算機あるいはIC等は政府は相当自由化の腹を固めていたと思うのです。こういう問題は、どういうふうになっているわけですか。
  206. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自由化の方向で検討していくという方針は変わりはありません。ただ、私が新聞記者会見で述べましたのは、アメリカが差別的課徴金制度、あるいは差別的関税制度を日本や特定国に向けて実施するかどうかということであります。このことは、日本の将来にとっても非常に大きな影響を持ってくるし、国民感情の上からも、日米友好親善の上から、われわれとしては重大な関心を持つべき条項であると思っているわけです。したがって、その点について内外に注意を喚起したいと、そう思いまして、そういう発言を新聞記者会見でいたしました。で、自由化の問題は、それとは別個の問題でありますけれども、しかし、アメリカ側がどういう通商政策に出るかということは、われわれのほうも、いずれガットその他で話し合うべきことでありますから、非常に重大な関心を持ってアメリカの推移を見ておる。どういう権限を大統領が獲得するか、その権限をどういうふうに運用するかということがポイントであります。
  207. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうした問題が、どうアメリカが新通商法によって出てくるかわかりませんけれども、私は、日本が追い込まれてくる可能性というものはかなり強いだろうと思う。そうしてまいりますと、今後の円とドルとの関係、これは国際的な経済体制の問題にも入ってくるであろうと思うのですけれども、かなり険悪な立場というものが私は出てくるんじゃないだろうか。必然的に出てくるんじゃないだろうか。たとえば、OECDめ四十八年度の日本の黒字というものは六十億ドルぐらいは出るだろうと、こういうふうに、数日前の新聞でありますか、発表しております。この前の場合におきましても、OECDは八十億ドル日本は黒字が出るだろうというところで、約九十億ドルの黒字が出たわけでありますから、かなり正確な数字であったわけであります。そうなってきますと、ドルと円との経済関係というものはかなりけわしいものになってくる心配はないのかどうなのか、あくまでも愛知大蔵大臣が行ってそうした問題は解決してくる、こういうのであるのですか、どうですか。その辺はどうなんですか。
  208. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ハワイで田中総理がニクソン大統領に、両三年内に均衡させると、経常収支を黒字に均衡させると、あるいはGNPの一%に押さえると言われましたことは、一応その方向に向かって、いま進みつつあるといってよろしいと思うんでございます。ことにこの円の切り上げ、実質的な切り上げ後の輸出というものは、かなり変わってくると思います。ただ私は、ひそかに気にしておりますことは、最近ちょっと、いまの前のお答えで申し上げましたように、アメリカの卸売り物価が非常にいま上がっております。非常な勢いで上がっている。そうすると、やはり日本アメリカに対する輸出はあまり減らないのではないかということが、物価の面からいうと、輸出価格の面からいうと、言い得るようにも思えまするのでございまして、こういう点は相互のやはり国内政策の問題もあるわけでございます。日本としてはできるだけ自由化を進めるし、開放経済体制というものをさらに進めていくという考えを持つわけでございますけれども、アメリカアメリカで、やはりアメリカ自身の経済問題について真剣に努力して、そしてインフレを起こさないようにする、押さえていくということをやってもらうということによって、やはり日米両国は非常に友好関係にある国でございますから、お互いに友好国同士の話し合いによって、円満に円・ドルの問題は解決していくべきであるし、また、愛知大蔵大臣も十分その用意を持って行かれるのでございますから、これができ得るものであると、こう考えておるわけでございます。
  209. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 時間がありませんから、さらにその点をお聞きしたいんですが、また、次の機会に譲っていきたいと思うんです。  次に、産業構造のあり方という問題についてお聞きしたいと思いますが、これは企画庁長官にお聞きしたいと思うのですけれども、この間、十五日ですか、産業計画懇談会が産業構造改革の提言をなさっておりますけれども、それによりますと、たとえば、石油精製というような石油の輸入あるいは資源多消費型の日本の構造、こういうものは直すべきであると、こういう提言をしておるわけであります。そうした資源多消費型の日本の産業構造というものが公害を起こしたり、あるいは資源の危機を招いたりするわけでありますけれども、そうした点に対する、私は、かなり大胆な提言であるし、また、あの提言はかなり、まあ八〇%ぐらいはそのまま受け入れてもいいような提言だというふうに思うのですけれども、政府は、あの提言を一体どのようにおとりになっているのか、政府としての感想をひとつ聞かしていただきたい。
  210. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 実は、私はあの報告を読みまして、非常にわが意を得たような部分が多いように思いましたわけでございます。しかし、政府として、まだこれを正式に検討したわけでございませんから、政府としてこう考えるという立場ではございません。また、今後そういうまとまった検討をする意思も実はないわけでございます。したがって、経企庁長官個人の感想を申し上げるわけでございますけれども、この経済社会基本計画を決定するにあたりまして、田中内閣は六つの、何と申しますか、コメントといいますか、次の諸点に留意しつつこの計画をきめようと、こういうことにきめたわけでございますが、その中で一番ユニークな点は、第三項でございますが、「資源や環境の有限性に配慮し、使い棄ての経済を反省し、浪費をしない消費生活と環境を汚染しない経済活動への転換をはかる。」、こういうことを、この計画をきめるにあたって、内閣として言っておるわけでございます。これは、いままでの経済五カ年計画とか、あるいは中期経済計画とか、あるいは経済社会発展計画、あるいは新経済社会発展計画、それらのいずれにもなかった点でございまして、やはりわれわれは環境と資源の有限性というものを考えなきゃいかぬのじゃないかと、石油を無制限に持ってきて、日本はこれだけつくれるからといって、つくったつもりでおっても、あるいはつくるつもりでおっても、やはりそこに汚染の問題が出てくるし、あるいは原料供給国のいろいろな問題が出てきて、そう無限に来るものじゃないのだし、最も無限と思われているところの循環資源と申しますか、太陽とか、水とか、空気とか、そういうものだって限度があるものなんだということを考えながら、消費は美徳というような考え方でなくて、物を大切にする経済、消費生活というものをあらためて見直そうではないかというのが政府の基本姿勢でございまして、この点は、いまの産業計画懇談会の提言の言っているところと変わらないわけでございます。  ただ、あの計画は、かなり、何といいますか、現在の産業に実際責任を持っている人でない、何といいますか、長老といいますか、じいさんたちの放言的なところが多分にございまして、あの鉄の計画はやめちまえ、石油の計画もやめちまえと、それはみんなやめると、これはどうしたらいいのだということになるわけでございます。ですから、計画そのものとすると、これはたくさん矛盾する点がございますが、あまりうちょうてんになって拡大することばかりじゃだめだよということは大いに聞くべき批判であると思いますし、政府としても、この基本計画の中に、ちゃんとそのことは腹にしまってやろうではないかと、こういうことを申しているわけなんでございます。
  211. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私は、どうも企画庁長官が、じいさんたちの繰り言だというふうな立場でこの問題を受けとめておられるということになると、私はたいへん問題だと思うのですよ。むしろ私は、これは真剣に取り組んでみる、その方向にいってみるというようなことを私はかまえるべきだと思うのですよ。経済基本計画の中にも、たとえば石油の消費量、先ほど通産大臣が言ったその七億キロリットルですか、そこまではいっていないにいたしましても、大体その方向でいくような計画になっているじゃないですか。ことばの上だけでそういうふうに並べても、たとえば、ことしの民間の設備投資計画というようなものを見てみますと、たとえば石油精製なり、石油化学関係の民間投資というのは、そんなに減っていないわけですよ。もうおそらく人並みにふえているといってもいいと思うのです。言うだけで、実際に民間がかってにどしどしとその方向にいくのを黙認していると、こういうことであっちゃどうにもならぬじゃないですか。その点は、あまり私はあの提言を軽々しく、何といいますか、相手にしないというような立場というものは、いまの日本の経済の実態から大いに間違っていると私は思うのですけれども、やっぱり、じいさんの繰り言としてあれをおとりになるわけですか。
  212. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあ繰り言というふうに申したかどうですか、言ったとすれば、これはちょっと私の言い過ぎだと思いますが、要するに、あの人たちは産業に携わっている、あるいは金融面に携わっているえらい人たちなんですね。ですから、その産業の方向が間違っている、あるいは金融のしかたが間違っていると思えば、その頭取に、あるいは社長に、「君、少しこの計画は多過ぎるのじゃないか」と言えば言える人たちなんですね。ですから、それらのセクターの中でやればいいことなんです。で、私はあえてそういうことをちょっと言ってみたのですがね。それは何も天下に言わなくたって、自分らがその気になってくれればやれることなんじゃないかということを私は言いたい。しかし、政府としては、いま申し上げたように、いままでの発展発展という行き方に反省を求める、反省して自分自身でこれをリシンキングといいますか、もう一度考え直してみるということは私はいいことだと思います。そういう点で、私は冒頭に、大いに聞くべき点をたくさん含んでいると、こう申し上げたわけです。ところが、この計画を、みんなやらなくていい計画だという点は、私は、言い過ぎだと、こう思っておるわけでございまして、もう現実の問題として、いろいろな、たとえば発電計画にしましても、よほど、先ほどからお話が出ておりましたように、発電の地帯における立地の利益をどうして付近の居住者に還元するかというような問題をよほど考えていかないと、発電だってそれは思うとおりにいきませんし、いろんな工場をつくるにしても、住民パワーの問題もございますし、そう思うとおりにいかないというのは、もう現実の問題として出てきているわけですね。むしろ私どもの努力は、ほっといたら非常に日本が縮小均衡になる、それを発展させつつ、モダレートな発展をするにはどうしたらいいかという点にこそ問題があるのだというふうに思いまするものでございますから、あえてちょっと強いことばを使ったのですが、決して尊敬する先輩たちのことを、じいさんと言い、あるいは繰り言などと言うつもりはございませんから、これは、もしその点に御配意があれば、取り消すことに少しもやぶさかではございません。つつしんで取り消して差しつかえございません。
  213. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私は、政府がきめた経済社会基本計画も読ましてもらいました。この政府の基本計画よりずっとあっちのほうがすっきりしてますよ。あの基本計画を読んだところで、五カ年か六カ年の計画ですけれども、いままでの上塗りをする程度のものだと思うのですよ。こんなことでは、いまの公害日本や、あるいはごみで閉じ込められている日本というのは、日本の経済構造は変わっていかないし、また、黒字定着の日本の経済構造というのは私は変わっていかないと思うのです。一時的には、いろんな施策によって黒字が若干少なくなるかもしれませんけれども、輸入がふえれば、そのふえた輸入だけが輸出に回っていく、やがてまた黒字になる、こうした事態に私は発展してしまうと思うのですよ。この数年間公害問題を通じ、あるいは富の不均衡を通じ、いろいろな国際通貨の問題を通じ、かなり議論をされてきたわけですよ。ですからこの辺で、たとえば民間設備投資についてもある程度政府が誘導をしていく、そして新しい、これは政府自体も、知識集約産業に転換していかなくちゃならぬということは基本計画の中に述べているわけです。そういう方向に具体的に誘導をしていくという手段は全然ないわけです。その辺を示さずして、懇談会の提言がとにかくそんなに言いたければ、自分たちで、後輩にやらせればいいというようなものでは、私は、産業構造というのはないと思うのですよ。一つ一つの企業がこうするから、これは産業構造が転換をしていくというようなものじゃないと私は思うのですよ。その辺については、一体経企庁の長官としては、どのようにこれからの産業構造を転換していくか、具体的な手段——方向はわかりますが、具体的な手段をどういうようにしていくのか。たとえば四十八年度の、過熱に向かおうとしているところの民間設備投資計画をどう直さしていこうというような計画をお持ちなんですか。
  214. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この基本計画で申しますと、七七ページから七八ページ、それから八〇ページあたりに、その問題がずっと書いてあるわけでございますが、私どもは、やはり日本の立地からいたしまして、あまり原料素材的な工業というものは、これはもう限界である、そこで、できるだけ頭脳集約的なそういう工業が必要であるし、すでにできておる工業に対しましては、公害防除のための企業、たとえば吸じん装置であるとか、空気清浄化の装置であるとか、そういうようなもの、そういうものに向かっていくのがよろしいというふうに考えておりますわけでございまして、それにはやはり財政金融、ことに財政の持つ機能というものをできるだけ有効に使っていくのがよろしいというふうに思います。しかも日本の行政指導というのは、世界で非常に有名なくらいりっぱなものになっておるようでございますから、通産省の行政指導、また農林省の行政指導によって、だんだん好ましい方向に持っていくということであると思うのでございます。で、根本的には、やはり産業設備投資が最重点であり、輸出産業発展型という、輸出重点、産業重視型の経済から、やはり福祉重視型、しあわせを求めることに、活力ある福祉社会をつくるということに、指導の根本を置いていくのがよかろうというふうに存じます。で、やはり私は、あの産業計画会議の批判で申しましたように、あの提案の中には、非常に多くの聞くべきものがあるということを私、冒頭に申し上げたわけでございますが、そういう点は十分に承知しております。やはりどうするかというと、私どもは計画経済というふうな行き方じゃなくて、やはり個人のイニシアチブというものを尊重する、市場のメカニズムというものを重視しながらやっていく、しかし、そこには財政の持つ機能というものを十分に重視して、そしてその方向に誘導することであろうと考えておるわけでございます。
  215. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 どうもその辺よくわからないのです、おっしゃっていることが。私も、いま直ちに計画経済にしろということじゃなくて、誘導する手段を聞いているわけです。あなたのおっしゃっている方向に誘導するには、具体的にどうしたらいいか、その点を私は聞いているんですが、そういうお話は聞けなかったということが残念なわけです。  そこで、時間もありませんから次に進みますけれども、日本の国民総支出の中に占めるところの個人消費支出の割合というのは、たとえば昭和三十年代は六割二分くらいが国民の消費支出になっていたわけですね。それが最近では五〇%台、場合によれば割るというほどになってきているわけです。そういう関係があって、日本の経済をリードしていくものというのは、常に設備投資であったり、輸出であったりするわけです。こういう国というのは私は比較的少ないと思うんです。あくまでも個人消費支出、国民の支出が大きくなることによって経済をリードしていくというような形になっていかなければ、それは私は国民福祉を充実するとも言えないし、福祉元年などとはとても言えないわけです。基本計画を見ましても、その点はわずかに五二%、若干一%か二%程度上がっておるわけです。そういう個人消費支出の割合というものを、少なくとも私は六〇%台に引き上げる措置を財政がやっていかなくちゃいかぬと思うんですよ。それをやっていけるのは私は財政だと思うんですよ。そういうふうに三十年代の六〇%台に返していくというようなお考えはございませんか。
  216. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先ほど申した福祉型への転換の一番のよりどころは、九十兆円の投資をするということを、具体的に道路に何ぼ、交通通信ネットワークには何ぼ、というふうにきめて書いております。それから振替所得は幾らというふうな、そちらの方向へ財政を持っていこうと、こういうことでございます。それからいまの個人消費でございますが、これは仰せのとおり、四十六年度が五二・四、四十七年度が五一・七でございますわけです。で、昭和三十五年度が五五・九でございますから、確かにその当時より減っておるわけでございますが、昭和四十八年度の見通しは五五・九、昭和三十五年とくしくも同一になっておるわけでございます。そういうふうに、財政的な支出によって個人消費支出をふやしていこうと、こういうことを考えておるわけでございます。ただ、個人消費支出が昭和三十年代は多かったようでございますけれども、これはやはり偏在しておった点がございまして、一般大衆の消費というのは非常に少なくて、一部の限られた人、あるいは非常に限られたグループが多く個人消費をしたということでございまして、——いまや大衆消費の時代に入っておる。私どもは、その均衡を失わしめないような平準化した形での消費をふやそう、こう考えておるわけでございます。
  217. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 昭和四十八年に五五までいきますか。そんないっているはずないでしょう。
  218. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) われわれの見通しでございますから、いくはずがないとか言われますと、これは明年にシャッポをぬぐことになるか、あるいは胸を張ってお答えするか、これはやってみぬとわからぬわけでございます。一応見通しは個人消費支出が五五・九、民間設備投資が一八・七、それから民間在庫が三・九、民間住宅が八・〇、それから政府の財貨サービス購入が二一・五、資本支出が一一・九、海外からの所得、輸出と海外からの所得が一二・二輸入と海外の所得が一〇・六というようなことになっております。そういうことをやろうと考えておりますし、そうなるであろうという見通しのもとにやっておるわけでございます。
  219. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 五一・一%じゃないですか。五五・なんていっているはずないですよ。
  220. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは重大なミスをいたしました。これは私のほうの間違いで、五一・一でございます。
  221. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ですから、あなたは先ほどの答弁で五五までいくから六〇の近くにいくと、こういうような話でしたけれども、そうはいかないんですよ。それへいかせるために私は聞いていたんですけれども、そういう数字のミスをされてはこちらの議論、たいへん迷惑しちゃいますから、その辺は企画庁の長官ですからね、その辺の数字ぐらいはぴしっとやはり——そんなに大きな誤差はなくても、大体その辺の数字言っているくらいにしていただきたいと思うわけですが……。  時間がありませんから、私は個人消費支出を多くする根源というのは所得税の課税最低限というのをもっと引き上げるべきだと思うんですよ。それでなければ個人消費支出をふやすということは私はできないと思うんですがね。今度の所得減税ではとてもそういうわけにはいかぬと思うんですよね。百五十万円まで私どもはしろと言っているわけですけれども、そういたしましてちょうど弾性値が大体とんとんぐらいになってくると思うんですよ。いまの形でいけば低所得層への租税の弾性値というものは低所得層に限って大きくなる。上へいけば上へいくほど小さくなってくる。こういうものを改めなければ、福祉の社会などと私の言えた義理はないと思うんですがね。その辺を直すつもりはないですか。
  222. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 竹田君、時間が参りました。
  223. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあ、いろいろな点を勘案いたしまして現在のようにしたわけでございますが、やはり所得がふえるということは購買力がふえるということでございまして、購買力がふえるということは物価が上がるということでもある。そういう物価の上昇といろいろにらみ合わせてさような免税点がきまっておるわけでございますわけですが、しかし御意見のほどはよく承っておきます。
  224. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 もう一問。
  225. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 簡単に。
  226. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ちょっと申し上げておきますがね。所得の伸びの割合と税金の伸びの割合を見ますと、下へいくほど所得の伸びに比べて税金の伸びが高いのですよ。それが弾性値ですよ。百五十万円で夫婦二人の場合で一・六二ですね。それがたとえば三千万円になりますと一・二一ですよ。所得が一伸びるのに片方は六割伸びている。片方の三千万円の人は一伸びているのに税金のほうがわずかに二割しか伸びていない。こんな私は不公平なことはないと思うのです。この租税の弾性値を、所得税の弾性値を直していくには、やはり課税最低限をうんと引き上げる以外に私はないと思うのです。それをやらないで、先ほど、基本計画にこういうふうに福祉を中心とするように変えていきますなどと言ったところで、私は始まらぬと思うのです。これは大蔵大臣じゃないわけですから、また遠慮して答えられると困りますから、この問題はあと大蔵委員会で私やりますけれども、片っ方でこういう税金を取っておいて、そういうふうにやられるのは、はなはだ私はことばだけのものだということをここでもあなたは明白に白状したと、このことをつけ加えて、私は質問を終わります。
  227. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 答弁はいいですね。
  228. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 要らないです。答えてくれないですから。(笑声)
  229. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて竹田君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  230. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 林田悠紀夫君。(拍手)
  231. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 最初大蔵大臣にお伺いいたします。  世界的な通貨不安でございますが、これは交換性を失っておるドルに対して各国の通貨を結びつけざるを得ないというところから起こっておると思います。二十二日にニクソン大統領が議会に送りましたフラニガン報告の中で、国際通貨体制に関するアメリカの基本的な考え方を明らかにいたしております。その中に、準備資産のよりどころとしての金の役割りを減らして、SDRに重点を置いていくということを期待をしております。またドルの交換性を回復したいというようなことも述べておるわけでございます。まあかなり具体的な問題を述べておりまするが、こういう問題につきまして早急に実現するのかどうか非常に疑問があるわけでございまするが、大蔵大臣考え方をお願いしたいと思います。   〔委員長退席、理事西村尚治君着席〕
  232. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 国際金融局長から。
  233. 林大造

    政府委員(林大造君) ただいま御指摘のフラニガン報告書というのをまだ正式に私ども入手しておりませんが、ただいま御指摘のとおり、国際通貨体制のもとで、準備資産としてのSDRの地位を強化していく、そして、そのSDRの地位の上昇に伴いまして、金及びドルの地位を次第に後退させていくということでございますが、この件につきましては、一月の二十カ国委員会の代理会議で取り上げられ、その際いろいろな意見交換が行なわれまして、また今週の代理会議、それから来週月、火と行なわれます二十カ国委員会の蔵相レベルの大臣会議におきましても、同じように取り上げられるはずでございます。で、現在までのところ、大体において意見が一致しておりますのは、ドルの地位は相対的に後退をしていく、そしてSDRの地位がそれにかわっていくという点につきましては、各国の間に大体の合意が成立しつつございます。で、金の問題につきましては、だんだんその地位は後退させていくという方向につきましては大体の合意ができておりますけれども、本件は非常に技術的にむずかしい問題でございますので、さらに詰めようということになっているわけでございます。  それから交換性の問題につきましては、昨年の九月末のIMFの総会におきましても、米国のシュルツ財務長官が、条件さえ熟すればドルの交換性回復に応じる用意ありということを申しておりまして、その際の交換性と申しますのは、必ずしも金による交換性を意味いたしませんで、SDR等による交換性をさしているわけでございますけれども、これもすでに従来から出されている線でございます。したがいまして、今回の報告書に出されておりますいろいろの考え方、特に御指摘の点は、従来から米国が公にしている線の延長線上にあるわけでございまして、私ども、そういうものとして受けとめて、国際会議その他でも対処している次第でございます。
  234. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 交換性の回復の問題でありまするが、世界企業がばらまきますドルとか、また今回の国際経済報告にもニクソン大統領は述べておりまするが、大量の石油輸入はすでに米国の国際収支上大きなマイナスになっておる。そして、これからまた需要が供給を上回るにつれて、さらにそれはふえるであろうというように申しております。こういうことから、交換性回復という問題は、相当長引くのではないだろうかと、また昨年のアメリカの貿易収支を見ますると、フランスを除きまして、各国に対して赤字となっておるのであります。また、金の準備は、百億ドルよりないというような状況でございまして、これからのやはり国際通貨の安定という問題は、相当困難性があるだろうということが考えられるわけでございます。これに対しまして、大蔵大臣はどういうふうにお考えでしょうか。国際金融局長でもけっこうです。
  235. 林大造

    政府委員(林大造君) 御指摘のアメリカの多国籍企業の功罪につきましては、いろいろな意見が出ておりますけれども、今回ドルの一〇%切り下げという措置によりまして、米国の国際収支が次第に均衡回復の方向に向かうと期待していると、で、それは直ちには効果は出ないかもしれないけれども、しかし、必ず均衡回復の方向に向かうことは確かであるということにつきまては、アメリカのボルカー財務次官も指摘しておりますし、これは私どもが欧州その他の専門家の集まりでいろいろ議論いたします際にも、レート調整の効果というのは、時間を経て次第にその効果を発揮してくるものであるということに顧みましても、そのようになっていくことを期待できると考えております。  今回の会議におきましても、アメリカのそのドルの流出の問題、それがアメリカの資本流出規制の問題とどういう関係にあるかという問題がいろいろと議論されまして、米国といたしましては、資本流出規制の問題は、国際収支の状況を見ながら実施していくつもりである。そういう含みでいろいろのことをきめていくつもりであるということを申しているわけでございます。で、まあ基軸通貨としての米ドルの信認回復のために、米国としては、今後もいろいろの政策運営を行なっていくと思いますので、したがいまして、いろいろまだ今後経緯はあると思いますけれども、国際通貨体制が全体として安定の方向に向かっていくことは間違いないのではないかというふうに考えている次第でございます。
  236. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 次に、日銀総裁にお伺いいたしたいと思いまするが、現在非常な急務になっておりますることは、四十六年のニクソンの新経済政策以来、緩和しておりまする金融によりまして、インフレが進行をしてまいっておるという問題でございます。どうしてもこのインフレを抑制するということが必要でありまするが、日銀におかれましては、この一月と三月に預金準備率の引き上げを行なわれましたし、また、不動産金融や商社金融につきましては、窓口指導の発動をしておられます。それでこの通貨の過剰流動性ということがいわれておりまするが、供給が過剰であるかどうかという問題につきまして、いろいろ基準もあるようでございまするが、現在の金融情勢から申しまして、通貨は過剰な状態にあるのかどうか、その辺の状況をお伺いしたいと思います。
  237. 佐々木直

    参考人佐々木直君) その国の経済活動に関連いたしまして、どの程度の通貨の供給量が適当であるかということにつきましては、なかなかその間に的確な数字的な関連性を求めることはむずかしいのでございます。たとえば、一昨年から昨年にかけましてのように、日本の経済が停滞しておりますときには、むしろ通貨の供給量は多目にいたしまして、それによって経済の回復をリードしなければいけないのであります。それからまた最近のように、経済の成長が非常に急速になってまいりました場合には、これはむしろ通貨の供給量を押えぎみにもつていって、その伸び率を適当なところに落ちつけなければならないのであります。  ただいま御指摘がありましたように、昨年の暮れぐらいから、私どもといたしましては、相当強い引き締めに転じつつございます。しかしながら、昨年十二月と、ことしの一月とを比べてみますと、通貨の供給率はほとんど変わっておりません。まだ政策の効果としては出ていないわけでありますが、今後私どもといたしましては、二回にわたる預金準備率の引き上げ、それから窓口指導の強化、さらに、今後の状況に応じて、金融の引き締めをさらに進めてまいりたいと考えております。したがって、ただいま御質問のございました何%の通貨供給率の伸びが適当であるかという具体的な数字はなかなか申し上げかねますけれども、少なくともいまの伸び率を下げていく方向に、いまの各種の手段を併用をいたしまして目的を達していきたい、こう考えておるのでございます。
  238. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 経済が成長をしておるときには、通貨を押えるべきだというお話でございます。  それで、四十七年の十−十二月の民間設備投資というものは、過去の高度成長期と同じ高さであります。日銀総裁は、今後も金融引き締めを続けていきたというように申しておられまするが、この一月以降になりましても、やはり経済成長がそう劣えを見せていない。あるいは卸売り物価、消費者物価につきましても、なお高騰をしておるというようなところから、金融引き締めをやらざるを得ないというように考えられるわけであります。  それで、公定歩合でございまするが、昨年六月に引き下げられましてから据え置かれておるわけでありまするが、主要国の公定歩合の中では、日本が最低になっております。公定歩合の引き上げというようなところまで考えなければいけない金融情勢にあるかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  239. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいまも申し上げましたように、今後私どもとしては、さらに金融の引き締めを強めてまいりたいと考えておるのでございます。したがいまして、その金融引き締め強化の手段としましては、いろいろの方法が考えられておるのでございまして、それをどういう手段を、どういう時期に選ぶかということにつきましては、目下いろいろ検討中のところでございます。
  240. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 公定歩合の変更については、一義的には日銀総裁の責任で判断する事項となっておるわけでございます。政府として言及することは差し控えたいと思うんでございまするが、最近における経済諸般の動きにかんがみまして、林田委員の御指摘の点は十分肯綮に当たると考えておるわけでございます。四・二五%というのは、先進工業国の中で一番低い公定歩合であることはただいま御指摘のとおりでございまして、日銀総裁におかれてもこの点について言及されたものと考えておるわけでございます。
  241. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 次に、農林大臣にお伺いいたしたいと思いまするが、日中国交正常化以後に、ソ連の態度は日本に対しまして冷却をしてきておるというようなことがいわれておりましたが、その後、総理からの書簡とか、あるいは現地の大使が書記長に会うとか、そういうようなことによりまして、だんだん緩和をされておるというようにも聞いておるわけでございます。  一方、去る三月一日から日ソ政府間のカニ及びツブの漁業交渉がモスクワで行なわれ、サケ、マス、ニシンの漁業交渉は東京において開始をされております。まあ現在交渉中でございまするから、この詳細なことはお聞きいたさないほうがいいわけでございまするが、モスクワの特派員からは、ソ連側は十九日にカニ漁業の中心となりまする西カムチャツカ水域のタラバガニ漁業の全面禁漁をはじめといたしまして、七漁区全域にわたる異例の大幅規制措置を一括提案してきたようでございます。カニ交渉は、漁期の関連がありまして、一昨年は五月一日ぎりぎりに終わったわけでありまするが、昨年は、まあ日ソの関係の好転というようなこともありまして、四月十九日に仮調印にこぎつけております。本年は、そういうような背景を踏まえまして、日ソ漁業交渉は順調に進んでおるのでございましょうか。簡単でけっこうですが、状況をお聞かせ願いたいと思います。
  242. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) カニ、ツブのほうは、ただいまお話しのような、これは単に新聞報道だけでなく、ソ連側も日本側も公表いたしまして、ソ連側が西カムチャッカあるいは東樺太のタラバガニ、アブラガニの全面禁漁を主張しておるということは明らかでございます。われわれとしては、全く一方的な主張であると、こう言わざるを得ないのでございまするが、昨年あるいは一昨年のカニ、ツブ交渉の妥結の模様からいたしますると、まだこれはほんの序の口であると思うんですね。これからが本格的な交渉に入るものだと思いまするし、また、サケ、マス、ニシンのほうにおきましては、いままで資源状況などの話し合いをしたという程度で、数量的なものについては来週ぐらいに具体的になってくると思うんであります。で、そういうことで、われわれとしては北洋漁業の安全な、そして友好裏な操業というものを期待しておるわけでございまするが、よほど私どもとしてはしっかりした姿勢でこの大事な段階を迎えなければならないと思っております。先ほどちょっとお触れになりましたように、いろんな総理の親書、それに伴うソ連側の出方等はたいへんいいように思えるのでございまするが、具体的な漁業交渉ではまことにきびしいということを率直に申し上げておきます。
  243. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 北洋漁業は民族的な歴史を有するものでもありまするし、また、この漁業に従事する漁民は非常に大ぜいおります。この漁民の生活が危殆に瀕することがないように、どうぞ十分御努力をお願い申し上げたいと思います。  次に、昨年六月にイシコフ漁業大臣が来日いたしまして、赤城代議士と会見をいたしました。その問題は歯舞、色丹、国後、択捉周辺の安全操業の問題について話し合いが行なわれたと、こういうことでございます。その際に、日本からの提案を待って処理したいというようにソ連側は申したように聞いておりまして、昨年九月には、それを受けまして日本側から点で表現いたしました正式提案が提出されたのでございます。この問題は、人道上の見地からすみやかに解決すべきものと思うのでありまするが、その後の経過はいかになっておりますか、お伺いを申し上げます。
  244. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 昨年九月に、日本側が、安全操業につきましてはソ連側のことをも考えまして、経度、緯度で示した当方の考えを具体的に提示をいたしたのであります。しかしながら、その後正式な何らの回答には接しておりません。たまたま新聞報道などによりますると、歯舞、色丹周辺の安全操業については理解を示したようなことも伝わってまいっておりまするけれども、私どもとしては、正式に九月に提示いたしました、経度、緯度で示しておるその海域についてのソ連側の回答を求めてやまないものでございます。現在のところ、何ら回答に接しておらないと、こういう実情で、まことに残念に思っておるところでございます。
  245. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 これは四島というような領土を示さずに、経度、緯度で示されたというわけでございまして、どうしても北海道の漁民にとりましてはすみやかにこの問題が人道的に解決されなきゃいかぬということでございまするので、なお一そう御努力をお願い申し上げたいと思います。  次に、十二月の木材に始まりまして、大豆、生糸あるいは肉というような物価騰貴がずっと続いておるのであります。  まず第一に、生糸についてお伺いを申し上げます。日本の生糸の五割を使用しておりまする西陣とか、あるいは丹後の機業地では操短に追い込まれておる状況でございます。しかしながら一方、生糸は四十七年におきましては、前年よりも二五%の供給増になっておりまして、十万俵の供給がふえておるのであります。それだけふえておるのにかかわらず、生糸がない、あるいは価格がどんどん高騰しておるというようなことでございまして、これについては政府におかれては調査ができておると思います。それで、こういう生糸が織物になり、あるいは染められて、最終商品になって小売り店のどこかに滞留しておるのか、あるいは途中で生糸そのままでどこか滞留しておるか、あるいは自生地で滞留しておるか、まあいろいろそういうようなことがあろうかと思います。これにつきまして調査の結果をお伺いをいたします。
  246. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 明確に、どこにどの程度の糸があり、あるいは織物があるかということにつきましては把握いたしておりません。しかしながら生糸が織物問屋以降の流通段階に滞留しておるということから、それに伴う生糸の需要増というように判断されるのでございます。お話しのとおりに、昨年約五十万俵の生糸の引き渡し数量になっておりまして、これは前年比二四%増であります。また本年一月になりましてからの生産も昨年に比較してふえておると、こういうことでございまするが、遺憾ながらただいま申し上げましたような織物問屋以降の需要が非常に強いと、こういうことから生糸が逼迫したと、こう思います。
  247. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 生糸が二月、三月に入りまして急激に値上がりをしておるわけですが、これはやはり端境期にあるということが考えられるわけであります。それで六月までの端境期にこれから毎月どの程度の供給があるのか、まあ、これは中国からも輸入されるという話も聞いておりまするが、この端境期の供給の状況、また、それ以後出回り期に入ってまいるわけですが、長期的に見まして四十八年はどの程度の供給が見込まれるか、お伺いをいたします。
  248. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 御指摘のように、現在端境期のために生糸が暴騰しておるわけでございまして、そこで海外から輸入をと考えましたが、韓国、中国ともに十分な量がないようでございました。特に中国につきましては関税が一般的な場合と違う一五%というようなことでございましたので、便益関税を供与するということで七・五に引き下げての上で協力方を要請いたしましたところ、三百トン、五千俵を緊急に輸出をしてもらえるということになったのでございまするが、   〔理事西村尚治君退席、委員長着席〕 これだけでは私は、いまの生糸の需給状況から見て、この端境期の現在のような暴騰を鎮静化し得るかどうかということについてはあまり確信は持たないのでございまするが、しかし極力生糸の所有者と思われる向きには出荷の督励をいたしておりまするし、また織物業者のほうにつきましては自粛をお願いをしておりまするし、また取引所の過熱につきましては一時停止をするような措置もとって何とかこの段階を経過してまいりたいと、こう考えておるわけでございます。しかし今後における見通しというものを考えてみまするに、増産を極力すべくお願いをしておりまするけれども、桑の状況などからいたしましても、そう簡単にいけないということは御承知いただけるものと思いまするが、あらゆる努力をしながら国内における生産あるいは輸入、そういうものを合わせまして、同時に、需要面におきましてどうも仮需要的なものがやはりあると思いまするので、その辺の抑制も講じながら対策を立ててまいりたいと、こう思っております。
  249. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 いま農林大臣からお話しございましたように、織物業者に対しましてはむしろ政府のほうから操短を要請をしておられるようにも存ずるのであります。それで操短の場合に一人だけ操短するということがもしあったといたしましたならば、その人は信用がないと、したがって、うちのおやじは信用がないんだということで労務者はそのメーカーから離散をしてしまうのであります。だから、そういうことから、やはり組合で一緒に操短をするとか、そういうことをせざるを得ないというのが現在の状況でありまして、ところが一方、そうなりますると公取のほうでは、これは独占禁止法にひっかかるというようなことをおっしゃるわけであります。それで公取はこういう問題につきましてどういう態度をとっておられるのか、お伺いいたします。公取委員長
  250. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 西陣の場合を申しますと、これは先月、二月の二十四日から四日間にわたりまして一斉に休業したわけでございます。これは実は、そういうことをやろうと思うならば中小企業団体法に基づきまして認可を受けて行なえばできないわけじゃない、だから認可をするかどうかは主務大臣の判断にかかるわけでございますが、それを受けないで、いわば自分たちの都合上これは自主的にやっていいのだと判断してそういうことを行ないますと、これはやはり独禁法違反に問わざるを得ないということになるわけであります。そのほかに、まあ、いま私どもは立ち入り検査はいたしておりません。これは公然と行なった面がありますので、価格の点も一斉に協定をして二割アップというふうなことをやっております。ですから、コストが上がったので、それは価格協定というのはしかたがないじゃないかということも人情論としてはあるわけでございますが、これも、価格を自主的にそれぞれが引き上げることについては、これはかまわない、それぞれの業者が自分の判断に基づいて値上げをすることは何ら独禁法で対象といたしてはおりません。しかし組合が、あるいは組合員全体が協定をいたしましてかってに価格を引き上げ決定するということは、これはやはり独禁法上問題とせざるを得ませんし、中小企業団体法におきましては、価格の協定をするのはいわば第二段階で、生産数量の制限等では間に合わない、安定事業としてはそれだけでは十分でない、とても追いつかないから最終的に価格協定にいくということでございますが、これを実際認可している例は国内向けのものについては全然ございません。それでありますので、自分でかってに判断してそれぞれが値上げしたりあるいは操短をしたりすること自体について公取は何もとがめるものではございませんが、組合員が協定をして行なえば独禁法に正面から触れるものとしてそれを追及せざるを得ないという実情でございます。
  251. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 中小企業団体法によって認可を受けたらよいというお話なんでございまするが、実はこれ相当長くかかるのであります。まあ、いわばこの際は非常時でありまして、そういう点からやむを得ずやっておるというような面もお考えを願わなきゃならないと思うんです。要するに物がないのでありまするから、物のない場合にやはりどんどんなおつくって需要を旺盛にするということでありましたならば、なお一そう価格を引き上げるということになるわけでございまして、そういうことから、小さいネクタイ業者が中小企業団体法による認可を受けるひまがなくてやっておるというようなことを十分御配慮を願いたいと思うのであります。何か答弁ございましょうか。
  252. 高橋俊英

    政府委員高橋俊英君) 特に、業界が絹原料の高値で、あるいは品物が見つからぬということで苦境に立っているという事情は、私どもは十分事柄を決定するにあたって裁量する余地はあると思いますが、ただ、いま認可を受けるのに、簡単に間に合わないとおっしゃいましたんですが、これは実は数量の制限の認可を受けておるんです。ところが数量制限が、おそらくその数量のワクが非常にゆるいというのが実態なのでございますが、この数量を、ほんとうに品物がないんなら、ワクをもっときびしくする、つまり引き下げるわけですね、そういうふうにすればいいのではないか。私どもまだ調査中でございますので、実はこまかいことは申し上げる段階でございませんが、ワクに対して七、八割の生産をしてなお余ってしまうというふうな情勢があったように聞いておるんです。まだ中間でございますが、ですからワクが非常に甘いのではないか、とすれば、もっとワクを実情に合うようにきびしく、一時的にはそうするのもやむを得ないのじゃないか、そういうことで認可を受ける道があるのではないかとも思いますが、まあ、これは私の個人的な意見としてお聞き取り願いたいと思います。
  253. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 生糸の高値を冷やそうと思いますると、取引所の問題といたしまして、現在二十一中の生糸が上場されておるわけですが、二十七中の生糸の供用品拡大をやってもらいたいということは、すでに四年ほど前から出されておる問題でございます。ところが農林省側といたしましては、製糸協会からの反対もあるというようなことで、いままでこれが行なわれておりません。また神戸の取引所のほうは同調しておりまするけれども、横浜側が同意を渋っておるというようなこともあるようでございます。最近この供用品拡大が行なわれるというようにも聞いておるのでございまするが、いかがでございましょうか。
  254. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 供用品が少ないために過熱をしておる、こういう点も考えられまするので、二十七中につきましては、関係業界の意見調整をはかってまいりまして、近くこれは供用品にする考えでございます。  なお、一言つけ加えておきたいと思うんでありまするが、何ぶんにも需給状況が悪い、こういうことで、しかし御質問の中でも御懸念がありましたように、投機筋の動きなども考えられまするので、そこで農林省といたしましては、蚕糸業法四十四条によりまして、現在製糸業者、生糸売買業者、生糸保管者等についての在庫調査をやることにいたしておりまして、すでにそのような指示を与えておるようなことで、そういう面からでも、何とかこの過熱状態を冷却させたい、こう思っております。
  255. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 次に、食糧問題についてお伺いいたしたいと思いまするが、民生の安定あるいは国の独立の上から申しましても最も重要な問題でございます。農産物が投機にねらわれるというようなことがあってはならないわけですが、国民は目下食糧の価格を心配しており、食糧の需給に不安があるのではないかというようにさえ思っておるわけであります。  そこで、まずお伺いいたしたいのでありまするが、食糧の自給率でございますが、現在食糧の自給率はどういうふうになっておるのでありましょうか。
  256. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 昨年度で、全体で申し上げて七五%になっております。
  257. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 ただいまの七五%でございますが、これは自給率を価額計算ではじいた数字であろうと思います。現在自給率はすべて価額計算でどの国でもやっておるわけでありまするけれども、しかし、これは実態とは少しかけ離れるというような点もあるんじゃないかと思います。と申しまするのは、実際のオリジナルカロリーで自給率をはじくということになりますると、だいぶ様子が違ってくる。たとえば西独とかあるいはイギリスというようなところでも価額計算ではじいておりまするけれども、しかし、その価額計算は、輸入する食糧というものがそんなに国内の食糧と価格が変わりません。ところが日本は、米にしましてもあるいは小麦にしましても輸入物は日本の価格の半分でございます。そういうようなことからカロリー計算でまいりますると、日本の自給率は著しく低下する、こういうことが考えられます。また西独とかイギリスなんかはECに入っておりまして、EC全体としては九〇%の自給率になるというようなことでございます。それで実際にオリジナルカロリーではじきました自給率というものは算定がなされておりませんでしょうか。
  258. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) オリジナルカロリーの総合自給率は、先ほど申し上げた七五%に対比いたしまするのは五四%でございます。  そこで、ちょっと恐縮でございますが、御説明を申し上げたいのでありますが、畜産物をすべて必要飼料の形で換算して自給率を計算するオリジナルカロリー自給率につきましては、いまのとおりでございますが、この算出方法については、専門家の間でも必ずしも評価の一致しない問題がございまして、そこで客観的な指標といたしましては、金額表示の総合自給率をとっておるわけでございまするが、ただいま輸入価格についてのお話でございましたが、この七五%の場合は、輸入価格は国内価格に引き直して計算をいたしておるのでございます。
  259. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 日本の食糧政策は、国内生産で不足のものは世界市場から安いものをさがしまして、そして買うてくればいいというようなことでありましたが、日本の人口が一億四百万人をこえるというような状況になり、また、えさを必要とする肉類を多く摂取するというようなことになりまして、世界における日本の食糧並びに飼料の輸入が非常に大きな地位を占めるようになってまいりました。こういうふうになってまいりますると、今後の輸入対策というものは万全かどうか、また輸入対策の方法を変えなければならぬのじゃないかというようにも考えられるわけでございます。その辺いかにお考えになっておりますでしょうか。
  260. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 消費者の立場から考えまするときに、安い輸入食糧を入れて供給するということも一つの行き方であったかと思うんであります。しかしながら、昨年の国際的な需給の逼迫によりまして、特にソ連、中国のアメリカに対する大量買い付けということが、これが日本にも大きく響いたというようなことから考えていきまするときに、国内における自給率は、先ほど申し上げたような七五%でございますが、これを確保する、あるいは少しでも高めるという、そういう考え方に立って、私も、これからの行き方としては当然であろうと思います。また同時に、輸入の場合におきましても、輸入先を多角的に考える、数国を相手にして、安定的な供給をはかる必要があるのではないかと、こう思うんであります。  で、現在一番心配でございまするのは、昨年の下期のような逼迫がまたことしも予想されるかと、こういうことになります。ソ連あたりの雪が少ないということによって、むき出しでこの寒さの影響を受けておる、凍寒害を受けておるというようなことであるとか、日本の必要な飼料原料のぺルーの魚かすの状況はどうかというと、必ずしも芳しくないのでございます。しかし、アメリカにおきましても、日本の安定的供給というものにこたえ、あるいはアメリカ自身の方針といたしまして、本年度の作付面積は八%ぐらいふやすと、こういうことでございまして、小麦やあるいは濃厚飼料原料等につきましてはある程度ふえるので、対米関係の輸入につきましてはまず心配はないんではないかというようなことで、まあ輸入のほうにつきましても、また国内生産につきましても、これからよほど頭を使い、長期的な展望に立って行政をやっていかなければならないと、こう思います。
  261. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 そこで、農政の上におきまして、農産物の自給度の向上ということが必要でございまするけれども、一方、日本の農産物の価格が高過ぎるという問題がございます。生産コストを引き下げようと思いましたならば、どうしても農業の近代化をやらなければならないわけでありまするが、現在、日本の農業では、農地法の制約がありまして、農業を拡大しようといたしましても、農地を借りて拡大することがほとんどできないようになっております。たとえば、一昨年の生糸の値段が低下した、そのときに、総桑園面積の一五%近くが耕作されないままに見捨てられておる。専業養蚕農家としましては、経営規模を拡大したいということがございましても、これが借りられるということにはなりませず、そのまま放任をされております。  それで、農地法の問題でございまするが、もう少し農地の貸借を自由にできるというようなことが必要なんじゃないかと思うのでありますが、そのためには、公的機関があっせんするというような——私的なものでなくて、公的機関があっせんするというようなことも考えられるわけであります。たとえば、オランダにおきましては、農業改良普及員が農地のあっせん世話役を兼ねておるということでありまして、日本も農業改良組織が確立しておるわけでありまするが、こういう農業改良制度が経営指導にまで乗り出すというようなことから、公的な機関として農地のあっせんも行なうというようなことになったらどうだろうかと、かように考えるわけでございます。農産物の値段を引き下げる、コストを引き下げるという問題につきまして、いかにお考えでございましょうか。
  262. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) ただいま具体的な一つのお尋ねがございました。農業改良普及員の農地のあっせんなどで、農業生産の一番肝心な基盤である農地の流動化についての御意見でございましたが、これは、そういうことを制度的につくるかどうかは別といたしまして、農業委員会の行なう農地等の利用関係のあっせんや農地保有合理化のための各種施策に対して改良普及員が協力をしていくというようなことで実効をあげていったらばどうかと思うのであります。いずれにいたしましても、生産基盤の農地の確保、優良農地の確保ということは当然なことでございまして、その面についてのただいま御指摘のようなくふうをこらすということにつきましては、私どももよく検討さしていただきたいと、こう思います。
  263. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 気象庁長官、来ておられますか。
  264. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 来ております。
  265. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 気象庁長官にお伺いいたします。  この地球が寒くなってきておる、低温化傾向が一八〇〇年代の後半から一九〇〇年代前半にかけて続いたわけでありまするが、そういう寒冷時代と現在気候のパターンが似てきておるというように気象庁の朝倉予報官が述べておられます。一八〇〇年代の後半には、わが国では江戸時代の末期から明治時代の中期に当たりまして、隅田川や淀川が広い範囲にわたって氷が張り詰めたというように言われております。自然周期説をとる学者は、寒の時代に入ったというように説く者があるわけでありまするが、気象庁長官はどういうふうに考えておられますか。
  266. 高橋浩一郎

    政府委員高橋浩一郎君) ただいまの点についてお答えいたします。  この気候が変わってきているということにつきましては、日本だけでなくて、世界的にいろいろな気象学者あるいは気候学者が二十年ほど前から非常に注意をいたしまして、研究しているところでございます。その結果によりますと、先生おっしゃられましたように、世界的に寒冷化が最近進んでいるということは、どうも事実のように思います。ただ、これは、特に北のソビエトとか、あるいは北極、そういうところで顕著でございまして、熱帯のインドとか中国のようなところでは、あまり温度は変わっておりません。しかしながら、雨が減りまして、干ばつが起こりやすいという状態になっているということが現在の状態のようでございます。そうして、まあこういったような状況がまだしばらくは続くのではないかというのが普通の一般的な見方でございます。  ただ、残念ながら、これがなぜ起こるかということにつきましては、まだ十分学問的にわかっておりませんもので、したがって、必ずこうなるというようなことは、はっきりは申せないのでございまするけれども、過去の例から見てみますというと、そういうような懸念があるのじゃないかというのが一般の現在の結論でございます。そうして、この問題につきましては、非常に重要な問題でございますので、気象庁といたしましても、さらにもう少しよく調査を進めていく必要がある、そういうように感じております。  なお、一言申し上げておきますけれども、これは、寒冷化と申しましても、その傾向があるわけでございまして、だからと申しまして、すぐ来年も寒くなる、そういうことではございませんで、ただ、これから先は、わりあい、特に北のほうの国では寒い年があらわれやすいということでございますので、そのことだけ念のために申し上げておきます。
  267. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 私は、これから十年くらいの食糧問題を考える場合に、こういう気象の条件というものも十分配慮しなければならないというように考えるものであります。昨年は、ソ連、中国、アメリカというようなところに凍寒害がありまして、また、南方のタイ、インドネシアでは干ばつで非常に世界的に気象異変が起こっております。また、一昨年は、日本においても米は大不作であったわけであります。そういうことから、先ほど農林大臣からお答えいただきましたように、ニクソン大統領は農業政策の大転換を打ち出しまして、小麦あるいはメーズ、大豆というような生産調整の解除をいたし、あるいはまた緩和を発表をいたしておるわけであります。しかし、それではアメリカで直ちにそれだけの農産物がよけいできてくるかと申しますると、これはいままで生産調整を続けておったんでありまするから、労働力とか、あるいは農業機械などから、直ちに右から左へ作付面積がふえて、そして収量が上がっていくということは疑問だというように言われておるわけであります。それで、現在国民も心配をしておるわけでありまするが、四十八米穀年度、昨年の十一月からことしの十月までの四十八米穀年度の米の需給見通しはどういうような状況にあるか、お伺いをいたしたいと思います。
  268. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) しばしばお答えを申し上げておりまするが、この十月末で古米五十万トンを持ち越して新しい米穀年度を迎えよう、そういうときの状況を考えますと、そのころに二百五十万トン程度の新米を得ますので、そこで心配はないと、こういう見通しに立っておるわけでございます。大体月々五十万トン程度の需要が必要でございまするが、これは昨年十二月末現在で、ただいまの余剰五十万トンを頭に置いて十分確保してございます。そういうことで、本年二百五万トンの生産調整を一方に行ないまするけれども、何ら米に関して心配はない、こういういま見通しにあるわけでございます。
  269. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 私は、もちろん四十八米穀年度の米の需給には、農林大臣のおっしゃいますように不安はないものと考えております。しかしながら、だいぶ前とは様子が変わってきておるということを考えなければならぬのであります。米の一人当たり消費量が、四十四年、四十五年というふうに減ったわけでありまするけれども、その減り方は最近鈍化をしてきております。それから、人口は毎年一・二%ふえておるというようなことから、総消費量はあまり減らないわけなんです。それから、生産のほうはどうかといいますると、四十五年から生産調整に入りまして、毎年生産調整をやっておるわけですが、四十六年は不作でございまして、四十六年単年度では、九十七万二千トンの不足を見ておるわけであります。前からずっと繰り越してきておるということによりまして、需給は緩和をしておったわけですけれども、四十六年単年度をとってみますると、九十七万二千トンの不足を生じておるわけであります。また、生産調整に入りました四十五年の年度末の国内産の古米の持ち越し量は、七百二十万トンあったわけです。ところが、その七百二十万トンは、毎年二百万トンが消費をされまして、四十七年十月末には三百七万トンになっております。そして、その三百七万トンの中で、古々米は二百七十七万トンでありまして、四十六年産米は、わずかに三十万トンよりありません。それで、この四十八米穀年度の終わりの十月末になりますると、古々米はどれぐらいになるかというと、八十五万トンよりなくなるわけであります。しかも、飼料に対する要求とか、あるいは外国から輸出をしてもらいたいというような要望も出ておるということでございまして、八十五万トンの古々米が必ず残るかどうかということは問題でございます。だから、そういうことから、いままでとは非常に事情が異なっておりまして、四十八年の十月に年度末の政府の四十七年産米の持ち越し量は五十万トンであるということを、いま御答弁いただいたわけでありまするが、これは計画はそういうことでございまするけれども、出回り量が必ずしも八百十万トンまでいくかどうかということは問題でございます。  それでお伺いいたしたいんですが、五十万トンというのは、一カ月分の配給量を持ち越そうというようなお考え方であろうと存じます。この一カ月分の配給量で、持ち越し量というものは十分であるのかどうかという点でございまするが、四十八年十月末には古々米がまだ残っておるということから、安心感があるわけでありますけれども、しかし、それはもうすぐなくなってしまいます。したがって、これからの持ち越し量というものを、ランニングストックと申しまするか、一カ月分の配給量で足りるかどうかということが問題であろうと思います。その辺はいかがでございましょうか。
  270. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 御心配をいただいておる点は、私にも十分理解ができます。そこで、この十月末は五十万トンと。そこで先ほど申したように、四十八年産の新米の二百五十万トンということで心配がないということを申し上げました。なお、古々米もある程度は残りますが、この古々米のほうも、韓国、バングラデシュ、インドネシア等の協力要請がどの程度かということで、ある程度狂いが出ると思うのであります。そういうことで、必ずしもおっしゃるように安心をしておられる状況ではない。そこで、四十八年産米をもう二十五万トン上乗せいたしまして、明年の十月末では七十五万トンに、そうしてできれば百万トンの古米を持つのがいいのではないか。実はこれをもっとうんとふやせ、こういうことでございますが、先日もお答えを申し上げましたように、消費者側のほうから申しまして、古米を新米穀年度になりましてもいつまでも供給するんだということでは、これは問題であろうと、そういうことから、百万トンぐらいなところが適当ではないかと、こう思うのでございますが、もみによる貯蔵などのお話もございまして、また、いろいろ心配をしなきゃならない天候異変等なども考えるときに、もう少し持たなければならないかなというようなことを一応頭に置いたりしてはおります。しかし、現在の考え方といたしましては、明年の十月末は古米七十五万トン、明後年においては百万トンにまでいたそう、こういう心組みでございます。
  271. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 だんだん古米持ち越し量を多くしていただくということでございまして、けっこうであると私存じます。  それで、農林大臣衆議院の農林委員会で御答弁していただいておりまするのは、ことしの生産調整の八割を転作に期待して、二割は作付をしないというように申しておられるわけであります。それで、この二割というと、大体四十万トンぐらいに当たるんじゃないかと思いまするが、大体、この八割の転作というのは、いままでの実績では五割以下でありまして、なかなか八割まで転作を見込むということは困難があろうと存じまするけれども、これは野菜とか飼料作物になるわけでありまするから、非常にけっこうであります。残りの二割休耕しようということがあるわけでありまするが、これにつきまして、最近、御答弁の中にもうかがえるのでありまするが、適地については生産調整をそう強制しないんだと、あるいは米をつくってもらうんだというような御答弁であるようにも伺えるのであります。  そうしますると、この二割の休耕ということが、四十八年度は続けていけるのかどうかという問題があるのでごいまするが、また私、考えまするのに、食管法がだんだん緩和されて運用をされておりまして、いままでゆったりしておったのは、やみ米が相当あったんじゃないかと思う。ところが、米に投機が行なわれるというようなことがいわれるようになりましたのは、いわゆるやみ米が減ってきておるんじゃないかということも考えられるわけであります。そういうようなことから申しまして、この二割の作付制限をことしもやる必要があるのかどうかということでございまするが、年度途中で変えるというようなこともできないと思いまするが、いかにお考えでございましょうか。
  272. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 休耕奨励金を出す分につきましては、一応目標が一七%の八万二千ヘクタールということになっております。で、転作奨励金を出すほうは八二%の四十万七千ヘクタールと、こういうことにいたしておるわけでございまするが、私としましては、農政のあり方として、一方において適地適作を指導しておる、あるいは大きくは高能率農業をひとつやろうということを言っておることからいたしますると、生産調整が、その当初に一律減反、これはもうやむを得ない措置としてとられてまいったと。まあそういうようなことが、本年度においてもなお残っておるとすると、それはどうも合理的ではないんじゃないかというようなことで、虫食い状態などで放置されるようなことがあるならば、そうでなく、合理的な能率のよい農業をやっていただくという上におきまして、そういうようなことにかなうような場合に、ことさらに生産目標はこれだけだ、生産調整はこれだけ守れということよりも、一方における、本来の農政の上から求められておるものについては、私はそこのところは弾力に考えてよろしいと。それで国全体から見ても、ところによっては、もう少し結果的には生産調整になると、しかしそうでなく、いま申し上げたような趣旨で、能率よくやるとするならば、自分のほうは転作、休耕よりも、やはり米がこの場合一番適しておるんだというようなことになりますれば、その辺は、双方にらみ合わせて勘案していこうということを申し上げておるわけでございます。
  273. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 農林大臣にもう一問だけお願いします。  木材の問題でございますが、日本の木材の消費を見ますると、国内材は四五%で、外材が五五%を現在占めております。昨年十月ごろから急激な値上がりを示しまして、最近はようやく落ちついてきておるわけでありまするが、この中で、アメリカ材が輸入の三割を占めておりまするが、アメリカにおきましては、製材輸出だけ許可するとか、あるいは将来は全面的に禁止をするというようなことまで言っておるわけであります。またソ連材は輸入の二割を占めておりまするが、これはシベリアの労務者の問題で急激な増産は不可能でございます。また南洋材を見ますると、フィリピンは資源的にもうすでに問題が生じてきております。  こういうような状況でありまして、去る二月に、林産物の需給見通しが閣議決定を見たのでありますが、五十六年、いまから十年先ですが、四十七年の六割増の輸入を見込んでおるのであります。こんなに輸入が見込めるのかどうか。それから、そのときになりますると、外材は消費量の六五%を占めまして、国内材は三五%よりない、こういうことであります。それから、パルプ用材の伸びが倍近い数字を示しておるということでありまして、非常な伸び方で、こんなに国内でパルプ工業をふやしていくのかどうかということが問題だと思いまするが、いかがでございましょうか。
  274. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) この長期見通しの作成当時と、最近における木材需給の逼迫ということを考えていきますると、ただいま御指摘のような点は、私も心配をしておるものでございます。  ただ、−長期見通しのときには、でき得るならば、多少時間がかかっても、ある段階がくれば国内供給がふえるようにしよう、こういうことで、非常に長期的に見ていきまするならば、この目標の最終年次では、輸入量を三八・三まで下げようということなんでございまするが、その中間で、昭和六十一年がピークで六四%も輸入に依存をするようなことになります。五十六年では六三・二と輸入量がなるように見通しておるわけでございますが、この数字で、現在の国際的な木材供給力というものを考えますると、そこには相当むずかしい問題があると思います。  たとえば、アメリカにただいま三〇%も輸入の中に依存しておるではないか——そのとおりだと思います。またアメリカが丸太を出さない、製材だと、それも長期的には非常に不安があるというようなことが伝えられておるわけでございまして、私は、相手国の事情も十分考え、当方が丸太でというようなことは、もう言えない段階ではないか。それからまた、カナダの場合でも同じようなことが言えると思いまするので、外材の依存度が高いだけに、各国のそれぞれの事情を十分勘案をして、それに応ずる国内体制を考えていかなければならない。だから廃材の利用を十分にするとか、あるいは、おがくずなどにつきましてもこれを利用するようなくふうをするとか、あるいは建築の場合におきましても、代替品でいけるようなものの開発もしていかなければならない。それこれ総合的に木材事情の悪いことに対応していく。  同時に、フィリピンの場合、お触れになりましたが、現在インドネシアのほうでも批判がありますように、日本が海外から外材を入れるにいたしましても、その場合、伐採後の造林等についての十分配慮をするとか、あるいは開発輸入方式をとって、相手国に迷惑をかけないというような、あらゆる努力をいたしまして、そしてこの木材事情の非常に悪いということに対処をしていくべきであると、このように見ております。
  275. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 農林大臣、どうもありがとうございました。  通産大臣に、たいへんおそくなりまして恐縮ですが、通産大臣の諮問機関であります産業構造審議会が一昨年に、七〇年代の通商産業政策に関する答申で、知識集約型産業構造への転換を説いたわけであります。また、先ほど竹田議員から御質問がありましたが、最近、閣議決定しました経済社会基本計画とか、あるいはまた、今般、産業計画懇談会、こういうところにおきまして、公害と資源という二大問題から産業構造の改革を必要としておるというように申しておるわけであります。  それで問題は、いかにしてそういう知識集約産業のほうへ誘導していくかという政策にあるわけでございまするが、まず第一に、一九八〇年の世界の石油輸出量、これは十二億五千万トンというように聞いております。その場合、日本の輸入量は六億トンになるんだということでありまするが、アメリカが大輸入国に加わってくるということで、はたして六億トンという、その世界の石油輸出量の半分になるところの輸入が可能であるのかどうか。そういうふうに考えておられるのかどうか、これをお伺いいたしたいと思います。
  276. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ある試算によりますと、そのときのアメリカの需要は約十三億トンという数字が出ております。そうすると、日本の需要量とアメリカの需要量を足してしまいますと、足りないというぐらいになって、ほかの国の割り当て分がなくなるという数字でございます、現在の情勢で見ますと。そういうことからいたしまして、きわめて困難であって、そのこと自体のためにいまから世界的な協議を行なう必要があろうと、産出国及び消費国を含めて、やはり世界の石油の需給調整ということを大乗的に考えなければならぬときがきていると思います。
  277. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 私もそう思うんでありますが、海流発電とか、あるいはジェットストリームの利用発電とか、太陽電池のエネルギー発電というように、いろいろ研究をされておるように聞いておるのでありまするけれども、これはどの程度研究をされ、その実現可能性はいかがなものでございましょうか。
  278. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) わりあいに可能性があるのは原子力でございまして、高速増殖炉はかなり有望に進んできております。それから核融合は、まだあとやっぱり十年や二十年はかかるんではないかと思われます。  そうしますと、もう一つ現実性があるのは地熱発電でございます。日本でも地熱発電を岩手県その他でやっておりますが、九州の別府あるいはそのほか火山地帯において、これは特に力を入れるべきものであると思います。  それから太陽発電につきましては、工業技術院におきまして、いろいろ試験研究をしておりまして、大体われわれが期待しておりますのは、家庭で要る電気量の半分ぐらいは太陽発電で自給できるようにしたい。現在ふろや何かは太陽熱でやっておるところがございますけれども、アポロの技術等を考えまして、太陽熱を電気に変えて、ルームクーラーや、あるいはテレビ等は、そういうものによって代替し得るようにしていきたいと、そういう考えに立ってやっておりますが、実験的にはある程度成功しておりますが、まだ工業化までは行っておりません。
  279. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 オーストラリアと原子力協定が結ばれたのでありまするけれども、カナダ、オーストラリアにおきまする濃縮ウランの製造につきましては、これもう着手するということでないと、アメリカから濃縮ウランが十分来ないという場合に間に合わないんじゃないかと思うんでありまするが、いかがでございましょう。
  280. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 原子力協定は、オーストラリア、アメリカ、カナダ、フランス、イギリス——日本はみんな持っております。それで、濃縮ウランの供給というものはいま大問題になりつつありまして、一九八〇年ごろの日本の濃縮ウランの供給ということが、いま非常に安定性を欠いております。  そこで、フランスを中心にするやり方と日本が提携をするか、あるいはアメリカを中心にするやり方と提携をするか、あるいはイギリス、ドイツ、オランダ等がやっておる遠心分離法の中へ日本が合同参加するかというような、いろいろな選択がございます。そのほかに、日本は自分で遠心分離法を動燃でいま開発しております。そういうようなさまざまな方法によって、最もよい選択をしようと思って、いま実際の成り行きを見ておるところでございますが、やはり一つの可能性があるのはアメリカとの提携でありまして、アメリカ自体が新しく工場をつくらざるを得ぬという立場になってきております。そこでまた、アメリカ自体におきましても、濃縮ウランの製造というものを民間に委託しようと、そういう方向に動いてきております。  そこで、日本の専門家とアメリカの専門家が、実際的に、実務上の話し合いをしておりますが、これがまだ、まとまっているというところまではまいりません。アメリカのほうがテンポが非常におそい状態でございます。しかし、一つの可能性として、その問題は、最も現実性の強い可能性としてわれわれは考えておるところであります。
  281. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 産業計画懇談会におきまして提言しておるのを見ますると、鉄鋼業でありまするが、鉄鋼のような公害型の基礎産業では、その生産は国内需要をまかなう程度にとどめるべきだ。鉄鋼業は一九八五年まで設備拡大は不要だというように申しております。この鉄鋼業につきまして、いかにお考えでございましょうか。
  282. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この問題は、公害との関係及び日本の産業の型を重化学工業型から福祉型あるいは知識集約型に転換するという大きな方針のもとに発言されておることでございます。で、ある程度合理性を持っておりまして、知識集約型の方向にできるだけ早く転換させるように努力しておるところでございますけれども、やはり一億の人口を養っていく上に、重化学工業の基礎なくして一億の人口を養えるという情勢ではないわけでありまして、ある程度の重化学工業の基礎というものは、やはり持っておく必要がございます。  鉄鋼業にいたしましても、やはり日本の経済が伸びていきます場合に、足りなくなったという場合に外国から輸入するという形になりますと、非常に割り高なものになります。特に、日本のような場合には、造船業あるいは自動車業というのは外国へ輸出しておりまして、その鉄板が自給で安くできるという点に日本の輸出力の強さの根源があるわけでございます。そういう面から見ますと、ある程度基礎的な輸出力を培養するためにも、鉄鋼業を外国に依存するということは非常に日本のデメリットになります。  だがしかし、いまのようなやり方で、公害が危険視されるという段階でやっていることがいいとは思われません。したがいまして、この増設のテンポは、これはおくらせる、そしてできるだけこれを、何と申しますか、中間製錬という、そういう方向も考えていいんではないか。国内ですべて全部やってしまうというようなことから、海外における中間製錬というようなことも考えていく。そういうような形で解決したら適当ではないかと思っております。
  283. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 現在、日本の重化学工業というのは、やはり鉄鋼が基礎になりまして、それが自動車になり、あるいは造船になりというようなことでできておると思うのであります。鉄鋼業は五兆円産業というようにいっておりまするし、自動車産業は四兆円産業、造船が一兆円というようなことでございます。  それで、これをだんだん知識集約産業のほうへ持っていくという場合に、その誘導政策がやはり問題になってまいります。これからの大きな知識集約産業といたしましては電子計算機でありまするが、この電子計算機はIBMというような非常な巨大工業がアメリカにあるというようなことでございまして、日本もその自由化を迫られておるわけでありまするが、電子計算機産業の育成につきまして、また、その迫られておる自由化の問題につきまして、いかに考えておられますか、お伺いをいたします。
  284. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 電子計算機並びにIC等の自由化は、やはり歴史の趨勢であり、国際協調の問題からもわれわれはもう踏み切らなきゃならぬ段階に来つつあると思います。しかし、どういうテンポで、どういう順序でやるかということは、国内的調整並びにアメリカその他外国の動向等も考えてみまして、私たちは慎重にいま検討しておるところであります。  大事なことは、やはりある程度、日本国内におけるシェアを外国の電子計算機によって占領されるということはできるだけ避けたい。ヨーロッパにおいて、イギリスとかフランスとかの例を見ますと、ほとんどIBMやそのほかのアメリカ資本によって占領されてしまって、いま非常にほぞをかんでおる状態であります。フランスでドゴール大統領が非常にいら立って国有的な一元的な政策をやりましたけれども、すでにおそしという状態で、ほとんどアメリカ企業に占領されておるという状態でございました。日本の場合は、ある程度、自由化しておりませんために、日本の六社の電子計算機が成長いたしまして、現在、日本のシェアは四五%ぐらいは国産でやっておる。IBMのシェアはやっぱり四四、五%です。あとはほかのユニバクとか、そういうものが入っておるわけです。そういう情勢から見ますと、ある程度やはり国産の電子計算機に日本のシェアを与えておくということは、知識集約型に日本を持っていくための一つの基幹的な要素でありまして、われわれはそういう政策をやはり堅持していきたいと思っております。だがしかし、国際的に見て自由化の要請にもこたえなければなりませんので、その間をどういうふうに調整しながら、あるいは法律的措置により、あるいは財政的措置により、あるいは行政指導的措置により実現していくかということを検討しているところでございます。  それで、まず一つは、日本的な、向いた独特の電子計算機をつくっていくということ。アメリカの商品に直接対抗できるようなものに——太刀打ちしたら、これはかないっこありません。アポロの技術を持っていて、あのアポロの機械の中には相当小っちゃなコンピューターが入っているだろうと思われます。秘密で、日本やその他には出していないものがまだあるんではないかと思います。これ市場を開放したら、それがどかっと出てきたら、一ぺんに日本の電子産業界は壊滅する危険性もなきにしもあらずです。よくあることです、そういうことは。そういうようなこともよく注意しながら私たちは進めていきたいと思いますが、日本の企業に合ったものを、ハードウエアにおいてもソフトウエアにおいても、開発していくということは、日本人でありますからできることでありまして、その方面に財政援助や行政指導の強化を行なっていく。特に弱いのはソフトウエアの面でございまして、その点を強化する。現在六社がやっておりますけれども、これをいま三系列にしております。しかし、その三系列のむだが必ずしもないと言えません。販売競争とか研究のダブりとか、いろいろございます。そういう面をさらに密接に結合させまして、そしていま言ったような方向に誘導していきたい。ある程度の財政援助も私たちはできるだけつけるようにしていきたい、そう思っておるわけでございます。
  285. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 もう一問だけでとどめます。  民間航空機産業でありまするが、日本では、昭和六十年になると、一億人の航空機の旅客が年間にあるであろうというようにいわれております。一九八〇年代には、世界じゅうの旅客機の需要は年間十兆円の規模に達するであろうというようにいわれておるわけであります。電子計算機産業に並びまして、民間航空機産業というものは、やはりこれは知識集約産業として育成を必要とする産業であろうというように考えるのであります。本年からYXの生産にも入ろうというように聞いておるのでありまするが、YXの生産につきまして、これは、日本だけでなくて、アメリカのボーイングとも一緒になってやろうというようにも聞いております。この航空機産業の育成につきまして、いかにお考えでございましょうか。
  286. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 知識集約型産業の一つの大きな領域は航空機産業でございます。そういう意味において、私たちは、子孫のためにも航空機産業を育成していきたいと考えております。  さきにYS11をやりましたが、これは結果的に見て大いに反省すべきポイントを残しました。たとえば、いろいろ計画をして着手したときには、すでにフレンドシップという、それより優秀な飛行機が出回ってYSが伸びていく前途を非常にさえぎられてしまったと、そういうタイミングのおくれが一つありました。それから今度は、売りさばくという場面に、日本は世界的な市場もあるいはそういうチャンネルもなかったもんですから、めくらで入っていったという状態であったと実際反省いたします。したがいまして、リースをやって外国の会社にそのままぼられたり、取られたり、あるいは外国のディーラーに対して十億円もむだな金を使ったり、そういう、いまから考えると非常に反省すべき多くの点もございました。しかし、飛行機自体はかなり優秀な飛行機であったように評価されております。優秀とまでいかぬにしても、ともかく中以上の評価を与えられている飛行機であったようにいわれております。  そこで、今度YXをやるという段階になりまして、そういう点をいろいろ反省いたしまして、まず、ボーイングと設計から共同でやろう、現在世界の盲点となっておる百五十人から二百人乗りぐらいの双発ジェット機を、短距離的な双発ジェット機で非常に滑走距離の短い効率のいい飛行機を設計しよう、そして、もしそれが、共同設計や研究をして、いけるという段階になったら、来年度から日本は本腰に入りますが、研究の結果、もしこれがだめだという場合には、やめてしまう。そういう考えに立って、ことしはその検討をして、ジョイントリサーチをやるという形になっておるわけでございます。それで、もしそれがうまくいけるということになれば、両国で、両方で分担してその製作を行なう。一方が下請になるという関係はやらない。そういうことを行ないながら、できた品物はボーイングの世界の販路に乗っけて売ってもらおう。まあそういうような新しいアイデアを持ちまして、まず、とりあえずYXを中心に航空機産業を掘り起こしていく手がかりにしてまいりたい、そう考えておるわけであります。
  287. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 委員長、ありがとうございました。
  288. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて林田君の質疑は終了いたしました。  明後日は午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十八分散会