運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1973-03-22 第71回国会 参議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年三月二十二日(木曜日)    午前十時六分開会     —————————————    委員の異動  三月二十二日     辞任         補欠選任      初村滝一郎君     中村 禎二君      林田悠紀夫君     片山 正英君      田渕 哲也君     木島 則夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大竹平八郎君     理 事                 上田  稔君                 佐藤  隆君                 高橋 邦雄君                 西村 尚治君                 米田 正文君                 森中 守義君                 横川 正市君                 鈴木 一弘君                 向井 長年君     委 員                 小笠 公韶君                 梶木 又三君                 片山 正英君                 木村 睦男君                 楠  正俊君                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 塩見 俊二君                 白井  勇君                 竹内 藤男君                 玉置 和郎君                 中村 禎二君                 長屋  茂君                 細川 護熙君                 山崎 五郎君                 山内 一郎君                 吉武 恵市君                 足鹿  覺君                 上田  哲君                 川村 清一君                 小林  武君                 瀬谷 英行君                 田中寿美子君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 安永 英雄君                 三木 忠雄君                 矢追 秀彦君                 木島 則夫君                 岩間 正男君                 渡辺  武君                 青島 幸男君    国務大臣        内閣総理大臣   田中 角榮君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  三木 武夫君        法 務 大 臣  田中伊三次君        外 務 大 臣  大平 正芳君        大 蔵 大 臣  愛知 揆一君        文 部 大 臣  奥野 誠亮君        厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君        農 林 大 臣  櫻内 義雄君        通商産業大 臣  中曽根康弘君        運 輸 大 臣  新谷寅三郎君        郵 政 大 臣  久野 忠治君        労 働 大 臣  加藤常太郎君        建 設 大 臣        国 務 大 臣        (近畿圏整備長        官)        (中部圏開発整        備長官)        (首都圏整備委        員会委員長)   金丸  信君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      江崎 真澄君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 二階堂 進君        国務大臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       坪川 信三君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       福田 赳夫君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  増原 恵吉君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       小坂善太郎君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       前田佳都男君    政府委員        内閣法制局長官  吉國 一郎君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        人事院総裁    佐藤 達夫君        人事院事務総局        職員局長     中村  博君        警察庁刑事局保        安部長      斎藤 一郎君        行政管理庁行政        監察局長     大田 宗利君        防衛庁参事官   大西誠一郎君        防衛庁参事官   長坂  強君        防衛庁参事官   岡太  直君        防衛庁長官官房        長        田代 一正君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛庁人事教育        局長       高瀬 忠雄君        防衛庁衛生局長  鈴木 一男君        防衛庁経理局長  小田村四郎君        防衛庁装備局長  山口 衛一君        防衛施設庁長官  高松 敬治君        防衛施設庁施設        部長       平井 啓一君        経済企画庁国民        生活局長     小島 英敏君        経済企画庁総合        計画局長     宮崎  仁君        経済企画庁総合        開発局長     下河辺 淳君        環境庁企画調整        局長       船後 正道君        環境庁自然保護        局長       首尾木 一君        沖繩開発庁総務        局長       岡田 純夫君        沖繩開発庁振興        局長       渥美 謙二君        外務省アジア局        長        吉田 健三君        外務省アメリカ        局長       大河原良雄君        外務省欧亜局長  大和田 渉君        外務省条約局長  高島 益郎君        大蔵省主計局長  相澤 英之君        大蔵省理財局長  橋口  收君        大蔵省理財局次        長        小幡 琢也君        大蔵省銀行局長  吉田太郎一君        国税庁次長    江口 健司君        文部省社会教育        局長       今村 武俊君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省医務局長  滝沢  正君        厚生省薬務局長  松下 廉蔵君        厚生省社会局長  加藤 威二君        厚生省保険局長  北川 力夫君        厚生省年金局長  横田 陽吉君        農林大臣官房長  三善 信二君        農林省農蚕園芸        局長       伊藤 俊三君        食糧庁長官    中野 和仁君        通商産業省企業        局長       山下 英明君        運輸省航空局長  内村 信行君        運輸省航空局技        術部長      金井  洋君        労働省労働基準        局長       渡邊 健二君        労働省職業安定        局長       道正 邦彦君        建設大臣官房長  大津留 温君        建設省住宅局長  沢田 光英君        自治大臣官房審        議官       森岡  敞君        自治省行政局選        挙部長      山本  悟君         —————        会計検査院長   白木 康進君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十八年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十八年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十八年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十八年度一般会計予算  昭和四十八年度特別会計予算  昭和四十八年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。  これより質疑を行ないます。川村清一君。
  3. 川村清一

    川村清一君 最初に、田中総理大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、田中総理は、最近、ソ連ブレジネフ書記長に親書を送り、シベリア開発に協力する旨を伝えたとか、訪ソをすべく現在検討中であるとかというようなことが報ぜられておりますが、田中総理対ソ外交姿勢というものがどうなのかということに、われわれは非常に注目しておるわけでありますが、一部では、総理のこの姿勢は、田中内閣の評判が非常に悪くなったので、人気回復のために対ソ外交のほうにゼスチュアを示しておるのだといったようなことを言っている人もいるわけでありますが、総理の、この対ソ外交の基本的な姿勢基本方針、こういったようなものをまずお聞きいたしたいと思います。
  4. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 一九五六年の日ソ共同宣言から、日ソ間は、武力不行使、内政不干渉の原則のもとに友好関係を続けておるわけでございます。また、昨年大平外務大臣訪ソによって第一回の日ソ交渉が行なわれ、今年度は第二回の交渉が予定をせられておるのであります。ソ連ブレジネフ書記長からは、書簡をいただいておりました、その返書の形で私から書簡を出したわけでございます。  日ソの間には、平和条約をできるだけ早い機会に締結をして、友好親善を深めなければならないという基本的な考えがございますし、また、シベリアにおけるチュメニ油田開発、ヤクートの問題、サハリンの問題等々、開発の問題も存在いたしますので、これらの問題は、日本経済維持のためにも関心のある問題でありますので、日ソ間で接触を続けながら、これらの問題に対しても有意義な開発を進めてまいりたい、こういうのが基本的な考え方でございます。  言わずもがなのことでございますが、お触れになりましたから一言申し上げますと、人気回復のために外交手段として選ぶようなことは、ごうもないことを、この際明らかにいたしておきます。
  5. 川村清一

    川村清一君 総理施政方針演説では、北方領土の問題には触れていらっしゃらないわけでありますが、佐藤総理は、この北方領土のことにつきましては、われわれも驚くような強い調子の演説をされておった。私は、田中総理演説を聞いておって、佐藤総理演説と対比して非常に印象深かったわけでありますが、そういう印象を通して、何かこの北方領土に対する考え方というものは、佐藤総理時代とは変わったんではないかといったような気がするわけでありますが、この際、田中総理北方領土に対する基本的な考え方というものをお尋ねしたいと思います。
  6. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 北方領土、すなわち歯舞、色丹、国後択捉、この四島は、日本の固有の領土であり、この四島の祖国復帰民族悲願であります。国民的な悲願でもあります。でありますので、日ソ交渉においては、本件解決のためにたゆみない努力を続けなければならないということは論を待たないわけでございます。これは、もうすでに申し上げましたように、日ソ交渉の第一回が行なわれ、引き続いて第二回の交渉を予定しておるわけでございますから、粘り強く本件成就のために努力を続けていくことは、もう当然のことであると、こう考えております。
  7. 川村清一

    川村清一君 総理の言っていらっしゃる、シベリア開発に協力する、いわゆる経済協力という面と、北方領土返還要求と、これは結びつきますか。一体なものですか、別々なものですか、この点をひとつお聞かせいただきたい。
  8. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 過去の外交手段とすれば、解決するものはみな一緒に片づけたほうがいいという気持ちがあるかもしれませんが、北方領土の問題というのは、これは粘り強い交渉によって、また、これを日本国民が求めておるという事実を事あるごとに述べながら、ソ連政府理解を深めなければ実現ができないことでございます。それと、やっぱり外交テクニックというようなことで、ものをからませるということは、過去にあったことでございますが、そういう問題よりも、やはり日ソ交渉というものは日ソ交渉として行なってまいります。また、悲願達成のために粘り強い努力を続ける。しかし、シベリア開発という問題は、この問題にすべてからめるというようなやり方ということよりも、両国利益のために、親善友好のためにお互いが理解をし合いながら開発が進められ、その開発利益がわが日本のためにもなり、また相手国であるソ連利益をももたらすということで合意をせられるならば、それは、一つずつ仕事を進めていくということで差しつかえないものである、このように理解をしております。
  9. 川村清一

    川村清一君 外務大臣にお尋ねをしますが、大平外務大臣は、昨年の秋、第一回の平和交渉の折衝をされてお帰りになってから、私は北方領土の問題については悲観楽観もしないというようなお話をされておりますが、悲観楽観もしないということはどういうことですか。
  10. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ソ連側領土問題に対する態度はたいへんかたいものがありまして、依然として、わが国の主張平行線をたどっておるわけでございます。この平行線をたどっておる面から見ますと、容易に解決が得られるものと期待するわけにはまいらないと思うのであります。そういう意味において、この交渉はたいへん困難な交渉であると思っております。しかしながら、ソ連側も、平和条約締結して、日ソ関係を長きにわたって安定した基礎の上に置きたいという強い希望を表明されておるわけでございます。平和条約締結してまいる上におきましては、領土の問題というものをちゃんと確定する必要があるわけでございます。したがって、この問題を避けて通るわけにはまいらないわけでございます。そういう意味におきまして、私は悲観はしていない。しかし、この問題がたいへんむずかしい問題であるという認識は、絶えず持っておるわけでございます。そういう意味で、悲観もしないが楽観もしないというように申し上げたわけでございます。
  11. 川村清一

    川村清一君 悲観もしない、楽観もしない、忍耐強く交渉を継続すると——忍耐強く交渉を継続するつもりでありますということは、外務大臣外交方針演説の中にあるわけでありますが、私は、それは当然だと思うわけです。それはよく了解されるわけでありますが、そこでお尋ねしたいことは、忍耐強く交渉は継続するけれども、一体先展望はどうなのか、明るい見通しがあるのかどうか、ここをお聞きしたいのです。一体国民希望を持ってよいのかどうか、その希望展望もなく、見通しもなく、ただずるずるべったりと交渉を続けていくのか、そして、いまの考え方を一向変えないんだというようなことでいくのかどうか、この点をはっきりお聞きしたいわけです。
  12. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど総理もおっしゃいましたように、領土問題、これは民族の変わらない悲願であるということでございまして、この問題を日本のほうで取りはずすというようなことはできない相談でございます。しかし、局面は、先ほど申し上げましたように、双方依然として平行線のままであるということでございますから、この展望について、はっきりものを言えと迫られましても、たいへん明るい展望はございますというようなことを私から申し上げる状況ではないと思うのであります。さればこそ、われわれは無限の忍耐を持って当たってまいらなければならぬわけでございまして、きわめてあたりまえのことを申し上げておるわけでございます。展望につきましては、遺憾ながら明るい展望を、いまはっきりと申し上げるというわけにはまいらないわけでございます。
  13. 川村清一

    川村清一君 民族悲願であることは当然で、私がここで質問に立っておるのも、その民族悲願を実現したいと思っていろいろ御質問申し上げておるわけであります。そこで、展望はどうかということは、当然、国民の声として聞きたいところでしょう。ところが、展望もさっぱりないということになれば、非常にさびしいわけなんですよ。  そこで、重ねてお尋ねしますが、一体情勢というものは、いわゆるソ連側態度というものは、一九五六年の日ソ共同宣言のあの時点から、少しでも変わっておるのか、前進しておるのかどうか、ここをお尋ねしたいのです。
  14. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ソ連側態度が、一九五六年当時の状況と変わっておるという徴候は、ただいままでのところ、はっきりつかむことができません。
  15. 川村清一

    川村清一君 一九五六年の時点とちっとも変わっていないということであるならば、これは非常に困難な問題ではないでしょうか。言うまでもなく、日ソ共同宣言は、一九五五年の六月から翌五六年の十月まで、十七カ月間にわたって日本側全権松本俊一氏とソ連側全権のマリク氏との交渉が続けられた。その交渉経過は、松本さんの書いたこの本に非常によく書いてあるわけでありますが、私はこれを勉強してよく了解いたしましたが、この十七カ月の間に、当時の外務大臣重光さんが訪ソして直接交渉に当たったこともあるわけです。それもきまらないで、最終的には鳩山総理が病苦を押して、みずから訪ソしてついに交渉がまとまったと、こういう経過があるんです。しかしながら、平和条約締結に至らないで、日ソ共同宣言の形で国交が回復したのであります。で、今日までその日ソ共同宣言締結されてから十七年間経過しているんですよ。今日なおソ連側態度が当時と若干も変わっておらないとするならば、領土問題の解決は容易でないと考えざるを得ないではありませんか。重ねてお尋ねしますが、これはその当時とちっとも変わっておらないということなんですか。
  16. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのように、容易でないと思います。しかし、先ほども申しましたように、ソ連側も、日ソ共同宣言で、いま両国関係を律しておるわけでございますけれども、平和条約という安定した基礎を与えなけりゃならぬということにおいてはたいへん熱意を持っておるわけでございまして、そこに、私どもは悲観をしない根拠を見出しているわけでございまして、したがって、今後の平和条約締結交渉というものに、じっくり取り組んでいかなけりゃならぬものと考えております。
  17. 川村清一

    川村清一君 じっくりかかることは賛成なんです。忍耐強く交渉を継続することも、これは当然なんです。これをとやかく言うのでありません。じっくり腰を据えて、主張すべきことは主張して、がんばってもらいたいんでありますが、そこで、外務大臣、私まあ簡単に申し上げますが、実は私は樺太真岡の出身の者でございますが、昨年の夏に、社会党北海道本部サハリン——もと樺太です、ここの墓参団を派遣したわけですが、その墓参団の一行の一人として参りまして、私の郷里の真岡、いまのホルムスク、本斗——ネベリスク野田——チェーホフ、それから農原——ユジノサハリンスク、この四つの町へ行きまして日本人の墓をお参りしてきたんですが、もう樺太情勢というものは昔とすっかり変わって、見違えるようになっているわけです。そして人口も、もう倍ぐらいにふえていっている。若い人たちがたくさんいる。いわゆる樺太で生まれて樺太で育った青少年がたくさんいるわけですよ。もう本斗——ネベリスクですが、ここはサハリン州の漁業の基地ですが、市長さんに話を聞きましたら、住民の平均年齢が二十何歳だという話を聞いてびっくりしたんですが、そのぐらい若い人たちがいるんです。  それで、いまこの北方領土四島、特に国後択捉、これは沖繩より大きな島ですからね、なかなかいいところです。どのぐらい人がいるか私はわかりません。そして青少年がどのぐらいいるかわかりません。しかし、時間がたてばたつほど、この島で生まれて育った若い人たちがふえていくこと、これはもう明らかでしょう。そうしますと、これはあなた、日本へこの島返すぞと、こう言ったところで、そこで生まれたその人たちにとっては、これはふるさとになる、故郷になるんですよ。自分の故郷日本に返すなんて、これは国と国との交渉、これは別ですよ。その住んでおるその人のいわゆる人情として、そこで生まれて育った者が、ここは日本に返すんだからと言われたって、これは賛成しないでしょう。そういうようなことで非常に私はむずかしくなるんではないか、時間がたてばたつほどむずかしくなるんではないか、こういうことを、率直に、この樺太へ行って私は感じてきたわけなんですよ。そこで、粘り強く、しんぼう強く交渉することは賛成なんです。そうしなければならないけれども、それと現実の問題をどうマッチするか、マッチさせるかと、この辺を外務大臣が、総理大臣が考えてもらわなければ、まだまだむずかしくなると思うんです。御見解をお聞きしたいのです。
  18. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 一日も早くという願望と、そして現実経過に伴う憂慮がつのるばかりであるという御見解につきましては、私も同様の憂慮を分かつものでございます。したがいまして、そういうことを念頭に置きまして精力的にぶち当たらなけりゃならぬ課題であると心得ております。
  19. 川村清一

    川村清一君 日ソ共同宣言の第九項をちょっと読んでください。
  20. 大和田渉

    政府委員大和田渉君) 第九項をお読み申し上げます。「日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約締結に関する交渉を継続することに同意する。ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約締結された後に現実に引き渡されるものとする。」  以上でございます。
  21. 川村清一

    川村清一君 この条文をすなおに読んだ限りにおいては、平和条約締結領土返還返還領土範囲等はすでにきまっていると解釈されますが、日本政府主張は、この第九項に照らして、ソ連政府に対してどのような理論構成をもって説得に当たっているか、お尋ねします。
  22. 大和田渉

    政府委員大和田渉君) ただいま日ソ共同宣言の第九項をお読み申し上げましたけれども、いわゆる領土問題に対する日本要求の理論的な根拠と申しますのは、日本サンフランシスコ条約によって千島樺太、台湾、朝鮮に対する権利、権原を放棄している、ただし、その千島の中には北方領土は入っていない。その根拠といたしましては、一八五五年の日魯通好条約及び一八七五年の樺太千島交換条約根拠がある、こう考えております。
  23. 川村清一

    川村清一君 いや、その説明はようわかっているんです。私が言うのは、第九項をすなおに読んだ人と限定して考えてみた場合に、そういうサンフランシスコ条約がどうとか、あるいは一八五五年の条約がどうとかということでなく、この条文を読んだ限りにおいては、法律解釈ではそう受けとめられないでしょう。そこで、日本政府はどういう理論構成をもってソ連を説得しているかということをお尋ねしている。
  24. 大和田渉

    政府委員大和田渉君) ただいまの第九項は、日ソ共同宣言の後に平和条約締結のための交渉は継続する、で、平和条約締結の暁には、日本国民の要望にこたえて歯舞群島及び色丹島を返すということを書いてございます。われわれの根拠といたしましては、その共同宣言を行なった時点平和条約が結ばれなかった、なぜ結ばれなかったというのは、要するに、四島であるか、あるいは二島であるかということについて日ソ両国の意見が合わなかったという結果と考えております。したがいまして、今後平和条約締結のための交渉を続けるという意味は、やはり、日本の四島返還要求と、ソ連側のこの共同宣言の時点で認めた二島を返還するということの、その問題についての交渉を継続するんだというふうに考えております。
  25. 川村清一

    川村清一君 政府の主張しておる、いわゆる返還領土、四島——国後択捉歯舞、色丹、これについては、必ずしも国民的コンセンサスが得られていないと私は思うんでありますが、政府としてはどう受けとめられていらっしゃいますか、外務大臣
  26. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) おっしゃる意味は、歯舞群島と色丹だけでは北方領土問題の解決にならぬという御趣旨でございますれば、おっしゃるとおりだと私は思います。
  27. 川村清一

    川村清一君 私の言うのはそういうことではなくして、それは、時間がないのでいろいろ説明を省略しているからわかりにくいと思うんですが、私は三つあると思うんです、返還要求領土。——一つは、歯舞、色丹で平和条約締結すべきでないかという議論、これはごくわずかです。その根拠は、いまの日ソ共同宣言第九項に基づくもの。もう一つは、一八五五年の日露の通好条約に基づいて、いわゆるクーリルアークというのはウルップ島から以北である、国後択捉は、これはもうその時点から日本領土である、固有の領土であるという見解。したがって、サンフランシスコ条約で放棄したのは、いわゆるウルップ島から以北であるというその根拠。それが政府の主張しているところであって、国後択捉歯舞、色丹である。ところが、一八五五年にとらわれないで、一八七五年の樺太千島交換条約、これに基づいて言うならば——これが一点と、サンフランシスコ条約そのものが、これが大西洋憲章あるいはカイロ宣言、ポツダム宣言、これに違反しておる、いわゆるサンフランシスコ条約そのものが間違いである、そういう根拠に立つならば、千島列島全部をこれは要求すべきだ、固有の領土だというこの主張。三つの意見があると思うんです。だから、この三つの意見じゃ困るから、これが国民的コンセンサスを得られていないんじゃないかと私は言っているのです。外務大臣、どうですか。
  28. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのように、大別して三つのカテゴリーに分けるといたしますならば、そのカテゴリー別にそれぞれが完全に国民的コンセンサスを得られていないという判断におきましては、あなたと同様でございます。私どもは、歴代の政府がとってまいりまする第二のカテゴリーというラインに沿って、現に交渉を続けておるわけでございます。
  29. 川村清一

    川村清一君 事、外交交渉ですから、これはやはり、でき得るならば国民的合意を得て一つにすべきではないか、なるように努力すべきではないかということを私は考えているんですが、政府としてはどういう御見解ですか。
  30. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 政府は、これまでずっと固有の領土返還ということを主張してまいっておるわけでございまして、そういうラインで国民の協力を得て実現をはかるという方針を、今後、いまの段階で変えて、新しいコンセンサスを新しい基礎で求めるという考えはいま持っておりません。
  31. 川村清一

    川村清一君 それはおかしいじゃないですか。これはあんた、その新しい主張というか、その千島列島を全部固有の領土だと主張するのも、民族悲願の上に立ってやっているんであって、ですから一つにして、そうして交渉に当たったほうが、強力ないわゆる交渉になるんじゃないかという見解に立って私はお尋ねしているんであって、あなたのほうで、この分かれている議論を一つにまとめるように努力してみる気はないかどうかということを私はお尋ねしているんです。
  32. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま申し上げましたような政府の既定の方針というものに従って、すでに交渉を始めておるわけでございまして、そのことはすでに国民にも公表をいたしまして理解を求めておるわけでございまして、こういう段階におきまして、川村さんのおっしゃるお気持ちはよくわかりますけれども、政府の方針をにわかに変えるということは私は妥当でないと思うわけでございまして、既定の方針で臨むことが賢明であると思います。
  33. 川村清一

    川村清一君 どうもおかしいですね。私は別段反対をここで表明しているわけでもないんです。そういう方針で政府が交渉に当たっていることももう十分知っておるのだ。知っておるけれども、政府と考えを異にしておる者もいるから、この際政府は——あなたは政府の考え方をPRして、国民の了解を得られるように努力しておると言っているが、その努力をさらに強めて、ほんとうに国民が一つの考えになるように、さらに努力を深める、そういう所存はないかどうかということをお尋ねしているんです。重ねてお答えください。
  34. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) あなたのおっしゃることはよくわかるんでございますけれども、交渉する主体である政府といたしまして、交渉態度を軽軽に変えちゃいかぬと思うのでございまして、いままで踏襲してまいりました方針を堅持して臨むことが私は賢明ではなかろうかということを申し上げておるわけでございまして、そういうラインで、国民的な理解を広く深く求めてまいるということを努力するのが私どもの任務じゃないかと思っております。しかし、あなたの言われることが間違っておるという意味では決してないわけでございまして、交渉主体としての態度といたしましては、交渉態度を変えないということのほうが賢明ではなかろうかと思っておるわけでございます。
  35. 川村清一

    川村清一君 交渉態度を変えれなんということを私は申しているわけでないわけですが、まあしかし、それを議論しておっても時間がかかりますから、やめますがね。  そこで、田中総理にお尋ねしますが、日中国交の正常化を実現されました。次に、日ソ間の友好親善を深め、経済協力、文化交流を進めてまいりましても、日本外交の根幹は日米関係にあることは変わりはないでしょう。そうして一方、日米安保体制をますます強化していくと、世界の国からは、日本は軍事大国に進むんではないかというような心配を持たれておる、その持たれるような四次防のごとき防衛政策を強行しようとしている。この日本の姿をソ連一体どう見ているか。北方領土返還にきびしい態度を持ち続けておるのも、ソ連はこの日本姿勢というものを見て、これがこれに反映しているんでないかという気がするんですが、総理はどういう御見解をお持ちになっていますか。
  36. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 日米安全保障条約を維持していこうということ、いかなければならないということは、もう日本としては基本的な姿勢としてこれをきめておるわけでありまして、これを維持していくということが、日ソ平和条約締結の障害になっておるということでは私は全然ないと、こう思います。これは日中間においても、日米安全保障条約が現状のままで国交の正常化ができているわけでございますし、これは先ほども申し上げましたように、日ソ間は、五六年にすべてのものを平和的に解決をしよう、内政不干渉であると、武力の不行使であると、これはもうそういう原則がきまっておるのであって、私は、日ソ間というものもやっぱり相当接近しつつあるという認識を持っておるわけでございます。
  37. 川村清一

    川村清一君 北方領土返還した暁におきましては、この地域を非武装地帯とするということを宣言する、そういう用意が総理にありますか。
  38. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 非武装地帯にするということをいまから考えておるわけじゃございません。これは、日本に返ってくれば日本が防衛しなければならない地域になるわけでございまして、これは一般的な国土に編入されるわけであります。しかし、これはそういう問題がきっと返還交渉のときにいろいろ出てくるんじゃないですか。いろいろ出てくる問題であって、日本が、返還が実現しないうちに非武装地帯にするとか、どうするとかということではないと思うんです。そういう問題は、ソ連が四つの島を返すが、一体そのときには自衛隊を置くか、米軍の基地も一体置くのか、こういう問題が出てくるのかもしれませんが、それは、いま未確定な問題に対して日本が——向こうが、そういうことをすれば返しますよということであるならば、それはまた別でございますが、いまそういうことを宣言したりする必要はないと、こう思います。
  39. 川村清一

    川村清一君 いま宣言するなんということを聞いているんでなくて、返ってきた場合に宣言する用意があるかどうかということと、もう一点、ソ連があの島々に相当の投資をしていると思うわけですが、そういう施設、設備、こういうものを買い取る、これも、返るとすればその交渉の中に当然出てくる問題ですが、買い取る用意、こういうものがありますか。
  40. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは返還ということが第一でございまして、返還が行なわれるということであれば、日本が買い取る必要があるものがあればその支出に応ずることは一向差しつかえありません。ただ、大砲とかいろんなものまで買い取れということになると、また問題があるでしょうが、向こうはそんなことを言うわけじゃないと思うんでして、それは交渉の過程において条件は十分満たされると、こう考えていただいてけっこうだと思います。
  41. 川村清一

    川村清一君 いずれにいたしましても、領土問題の解決は非常にむずかしい問題であります。これは世界の歴史で明らかであります。北方領土の問題は、ソ連とヨーロッパ諸国との関係、あるいは中ソ、米ソの関係、これらのものが非常に複雑微妙なこういう国際情勢等がからまっているだけに、なおさら困難な問題であります。しかし、領土問題というものは、言うまでもなく国の基本の問題なんです。したがいまして、安易に妥協することなく、筋の通った主張を続けてその解決努力すべきであります。そのためには、腹蔵なく話し合える好ましい両国関係というものをつくっていかなければならない、これが大事でないかと私は思うんです。シベリア開発に協力し、経済、文化、スポーツを通じて親善友好を深めていく、このために一そう努力すべきであると思います。その意味においても、田中総理はぜひソ連を訪問すべきである、訪ソすべきである、私はそう思うんです。かつて鳩山総理が、病躯を押して訪ソして日ソ共同宣言をまとめたように——もちろん田中総理が行ったからといってこの領土問題がすぐ解決するとは私は思っておりません。しかしながら、行ったほうが行かないよりはいいんです。行くことに私は意味があると思うんです。そうして、向こうのブレジネフ書記長と腹を割っていろいろ話し合うことが大事ではないかと思うんです。会議のみやげなんか、あまり気にする必要はないんです。フランクな気持ちで私は行っていただきたいと思うんです。ぜひ行っていただきたいと、こう思うんです。その気持ち、ありますかどうか、ひとつ総理の率直な気持ちをここで披瀝していただきたい。
  42. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ソ連からは公式な招待も受けております。受けておりますが、いま国会開会中でございまして、まだ、いつどのような時期に訪ソをするかということを決定しておるわけではございませんが、いま御指摘があったように、二つの島は返すが、あとの二つはまだ未定であるということでありますし、日ソ平和条約締結したいという考え方、しなければならないという考え方は、両国とも同じであっても、こちらはまだ二つの未確定の島を返してもらわなければならない、こういう国民悲願を背負っておるわけでございますから、私が訪ソをすることができる時期があればいつでも訪ソしてけっこうだと。あなたがいま言われましたように、何かみやげとか、もうそういう外交を考えるべきじゃないんです。お互いが交流をし、お互いが意思の疎通をはかるということによって平和外交というものは前進するのでありますから、私も、いま御指摘になったような、訪ソをするとしてもそういう考え方訪ソをしたいということでございます。
  43. 川村清一

    川村清一君 国内問題についてお尋ねしますが、国土地理院の全国都道府県市町村別面積調べは、昭和四十二年調べで歯舞群島、色丹、国後択捉の四島面積を別表に入れ、政府は公式に歯舞、色丹、国後択捉を北海道の一部として認めたわけです。したがって、昭和四十四年度以来、この四島の面積は、北海道及び根室市に対する普通交付税積算の基礎になっていることは、建設大臣、自治大臣、御存じですね。
  44. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 存じております。
  45. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) お答えいたします。  入っております。税の対象にもなっております。
  46. 川村清一

    川村清一君 重ねて私はここで確認しておきたいんですが、これが昭和四十四年国土地理院から出た面積調べですが、ここに出ている北海道の面積——本表にある面積と、別表に出ておるところのこの歯舞、色丹、国後択捉の面積と、これを合わせたものが北海道の面積である、こういうふうに確認して差しつかえございませんね。建設大臣、どうですか。
  47. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) そのとおりであります。
  48. 川村清一

    川村清一君 ちょっとその地図を見せて……。(地図を掲示)この北海道大地図というのは、これは北海道開発庁、長官室に掲げられている地図でありまして、私、これをお借りしてきたんです。そこで、自治大臣でも、建設大臣でも、だれでもよろしゅうございますが、この地図、ひとつ説明してくださいませんか、北海道を本土とする千島列島との関係を。——いや、だれでもいいんです。説明してください。これは北海道開発長官の部屋にかかっている地図です。
  49. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) ここが国後択捉でございますね。あと何を説明したらいいのですか。
  50. 川村清一

    川村清一君 その千島列島というのがありますね。北海道大地図ですよ。そこに千島列島がありますね。だから、千島列島全部が北海道地図に入っているのかどうかということを聞いている。それでなければ、千島列島は全部抜けるのか。千島列島と北海道の関係を説明していただきたい。北海道地図の中に千島列島全部入っているでしょう。
  51. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) どうもよくおっしる意味、私、受け取れませんが、これは千島列島を全部入れておる北海道地図であるということですね。それで、いま対象になっているいわゆる北方領土の問題は、先ほどから外務大臣が言っておられるように、歯舞群島国後択捉、そして色丹島ということでございますね。その意味で、あと何をお尋ねでございますか。
  52. 川村清一

    川村清一君 政府の言う択捉国後、これは北海道の面積に入っているということは確認されたでしょう。それで、北海道地図の中に国後択捉が載らなかったら北海道地図にならないんじゃないですか。国後が半分載っているが、択捉は全然ないんじゃないですか。国後は半分しかないんじゃないですか。北海道というのは全部を北海道と言うんでしょう。
  53. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) それは、北海道の中心部を大きく見るためにこれはこうなっておるのであって、そのために千島列島を横につけて、国後択捉も書き上げておる。これは地図の構成上の問題ですから、どうぞ御了承願います。
  54. 川村清一

    川村清一君 そんなでたらめを言っちゃいけませんよ。それで、昭和四十四年のこの委員会で、私はやはり国土地理院で出した地図を持ってきて説明してもらったんです。その国土地理院が出した地図というものは、北海道地図といって、そうしてその地図には国後と、択捉半分しか載っていない。そこで、択捉が半分しかないのはどういうわけだと言ったら、この紙が小さくて入らなかったと。そんなばかげた、落語みたいな話がありますか。この国土地理院の地図というものは、国の地図の原図であって、それをもとにして、小学校でも、中学校でも、学校の地図というものは国土地理院でつくっている地図をもとにしてつくっているんですよ。そんなでたらめな地図じゃだめだということを私は言ったんですよ。そうすると、これは何ですか、この地図は。しかも、北海道開発長官の部屋にかかっている地図、そこらの町に売っていたものを持ってきたんじゃないですよ。あなたの部屋にかかっているのを私借りてきたんです、これは。
  55. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 私はいいかげんな、権威のないことを言っているんじゃないです。北海道開発長官の部屋には、北海道本島のやはり開発整備をしっかりとらえるために、北海道本道をクローズアップした地図が望ましいわけです。もとより国後択捉については、私どもは返還されなければならぬ領土と考えておりまするが、現在の施政権は及んでおりませんので、北海道開発長官の部屋にあるのはこの地図が最も適切である。地図の説明については、国土地理院は建設省管轄ですから、建設大臣から申し上げますが、私が申し上げておる意味は、北海道開発長官室としてはこの地図が最も適当である。これは現状を率直に申し上げます。
  56. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) (地図を示す)この地図を見ていただきますと、択捉国後が全部入っております。これは地理院のです。
  57. 川村清一

    川村清一君 その地図ならわかるんですよ。この地図がわからないということは、田中総理大臣、これは、ぱっと見たときに、千島列島全部が北海道に入っているとだれでも見るでしょう。この地図を見たら、そう思いませんか。
  58. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういう、これだけの問題になっているものですから、北海道の地図をつくるときには、紙のスペースをもっと横に広げて少なくともつくるべきだと思いますが、これは東京都の地図でも、小笠原までずっと東京都でございますが、東京都はやっぱりこれと同じ構成になっておるんです。東京都の中心部が大きくなっておって、他は、列島部分は、非常に大きいものですから、そこはほとんど海と点だけになりますから、やはり点だけの列島部分はこういう構成になっておるのであって、これは、この地図の構成を見て、四島を軽視したものとか、そういうものではないのだと。やはり入れるならば、この千島列島の中に、四島とそれから北千島との間に国境線を引いて明確にしておくという必要はあると思いますが、この地図の構成そのものは、そう意図的なものでもないし、四島を軽視したものでもないので、これは御理解いただけると思います。
  59. 川村清一

    川村清一君 意図的なこととか、そういうことを言っているのじゃないのですよ。  そこで、それでは文部大臣にお尋ねしますが、小学校や中学校で教える地図ですね、これは一体国後択捉日本領土で北海道の一部であるという、そういうやつはどういうことでもって示していますか、教えていますか。
  60. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 御承知のように、教科書検定で先生方が教科書を編成される、その場合に、国後択捉を北海道として出しておられる、それについては、もちろんそれをそのとおり認めているわけでございます。
  61. 川村清一

    川村清一君 私の質問に答弁していない。その国後択捉までが日本領土で、ウルップ島以北の列島はこれはソ連領土だと——まあサンフランシスコ条約からいうとまだ帰属が決定していないことになりますけれども、その区別は何によって区別しているかということを聞いているのですよ。
  62. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 国後択捉日本領土日本主張しているわけでございますので、そのとおりに主張しているわけでございます。
  63. 川村清一

    川村清一君 地図でどういうふうにそれを区別していますかというのです。
  64. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 私、ちょっといま教科書を全部見ているわけではございませんので、調べましてあとでお答えをいたします。
  65. 川村清一

    川村清一君 ちょっと聞いてください。大事なことですよ。そんなでたらめじゃだめですよ。  私、先ほど申し上げましたように、去年サハリンに行きまして、そして中学校なんか行ってみたのですよ。そして地理の教室へ行ってみたのだ、どういうふうに教えているかと思って。そうしましたら、サハリン州として、もう国後も、択捉も、歯舞も、色丹も、全部色を、いわゆるソ連樺太と同じ色にして、明らかにここはソ連領土だということが明示される、そういうふうにちゃんと地図がなっているのですよ。そうやって教えているのですよ。ところが、こっちのはわからないじゃないですか。そこで、そんなようなことならば、子供は千島列島全部これは日本だと思うでしょう。ここからこっちが日本で、ここからこっちは日本でないという、政府が主張しておる領土線というもの、国境線というものがわからないじゃありませんか、これは。その国境線を何で教えているかということを私は聞いているのですよ。だめですよ。答えてください。
  66. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 御質問を承知しておりませんので調べておりませんが、御承知のように、占領下に置かれておった時代には、もちろん日本の施政権の及ぶ範囲しか許されておりませんでした。その後には、教科書の検定にあたりまして、日本領土主張していることはそのとおりでございますので、それはそのとおり認めてまいっているわけでございます。現在の教科書がどういう種類になっているか、いま文部省のほうで調査をしておりますので、あとでお答えをいたします。
  67. 川村清一

    川村清一君 総理、国境というものはきびしいものですよ。これは、社会主義の国であろうと、資本主義の国であろうと、世界の国々は国境というものに対して非常にきびしい態度をとっていることは御承知のとおりでしょう。こんなでたらめな、ずさんな態度では私はいかぬと思うのですよ。どこが日本領土なんだと、どこが国境なんだと、こういうことがはっきり地図に明示されていなければ——大体大臣の部屋に、わけのわからないような地図を張っておったって私はだめだと思うのですよ。弁解しなくてもいいのですよ、私はきめつけているわけじゃないのですから。そこで、その地図に択捉とウルップ島の間に線を一本ぐっと引いて、はっきり区別がついていればいいのです。区別も何もないじゃないですか。だから、こういうずさんな地図ではだめですということを私は申し上げている。総理大臣、どうお考えですか。
  68. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) いま文部省の教科書検定課長に連絡をとりましてわかりましたが、全部国後択捉は入れさせておるそうでございます。入れていないものにつきましては入れるように指示して入れさしているそうでございます。入れておるようでございます。もし入れていないという教科書は古い教科書ではないかと思います。いまは全部入れております。
  69. 川村清一

    川村清一君 北海道の中に……。
  70. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 入れております。
  71. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) こういう問題は非常に重要な問題ですから、私重ねて率直に申し上げておきます。これは詭弁でも何でもなくて、北海道開発庁の大臣室の地図ですから、これには国後択捉がクローズアップされていない。外務大臣室の地図を持ってこられるというと、これは入っておったかもしれませんし、北海道開発庁としてはこれでよろしいと、領土問題になれば違いますということは、いま文部大臣も言っておるとおりですから、これはやはり重要な問題ですから、念のために申し上げておきます。
  72. 川村清一

    川村清一君 そんな答弁じゃ私承知できないですよ。だめだ。だめ。私質問をやめますよ。そんなばかな答弁てありますか。事、国民に対して何ですか。外務大臣の部屋がどうだとか、自治大臣の部屋がどうだとか。私は、小学校であろうと、中学校であろうと、どこの家庭の地図であろうと、いわゆる日本領土を示す、国境を示すものがそんないいかげんなものであっていいんですか。そんなばかな話がありますか。
  73. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御発言の趣旨はよく理解いたしております。政府が刊行する地図ですから、これは正確を期さなければならない、これはもう言うまでもないことでございます。そういう意味では、いまこのような問題が三つあります。一つは国後択捉歯舞、色丹であり、第二は竹島であり、第三は尖閣列島であります。こういう問題に対しては、国民的な議論のない——先ほどもございましたが、要求するものが、二つの島が一つの案である、四つの島が二つ目である、北千島を含めたすべての要求が第三案であると。しかし、この第一案と第三案はですな、これは別にして、第二案はおおむね国民的コンセンサスを得ておるものだと思います。それとまた竹島や尖閣列島に対しても、国民だれも疑うものはないわけでありますから、やっぱり南北樺太に、北緯五十度にきちっとした境界標がありましたように、地図にも領土というものに対しては明確なものが示さるべきであると。私は、そういう意味で、いまの四つの島と北千島の間に線を引いて、そうして、できるならば、それ以北は何月何日の条約第何条によって日本が放棄した地域であるというふうに明確にしておけば、これはもうだれも異論のないところでありますし、やはり竹島の問題も含めまして、日本領土というものに対しては、少なくとも日本人である以上は異議がない。これはもうしごくわかりやすいというふうに区別をされる境界線というものが、地図の中にしるされることが望ましい。私は政府機関としてはそのように統一をするように努力をいたします。
  74. 川村清一

    川村清一君 次にですね、日ソ間の民間協定で、貝殻島周辺水域で沿岸漁民がコンブ採取をしている。これは農林大臣も御存じだと思うんですが、ところが、その取ったコンブを持って帰ってきますと、これは関税定率法の規定を受ける。非常にこれは矛盾しているんじゃないかと私は思うんですが、大蔵大臣、これはどういうわけでしょうか。
  75. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 川村君、地図はいいですか。
  76. 川村清一

    川村清一君 いいです。
  77. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 地図はとってください。
  78. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 関税定率法の関係は、御承知のように、政令等におきまして、北方地域、すなわち歯舞、色丹、国後択捉は外国とみなさざるを得ない、そういう取り扱いになっておりますことは御承知のとおりでございます。同時に、行政の運用上は関税等がかからないように便宜の措置を講じておりますことも御承知のとおりと思いますが、手続等におきまして、できるだけ関係漁民の方々に迷惑をかけないように便宜を十分はからうようにいたしておるつもりでございますが、なお足らざるところがございましたならば、十分措置をいたしたいと思っております。
  79. 川村清一

    川村清一君 関税を払ってるわけじゃないんですから、免税措置を、関税定率法に基づいて申請をしてやってもらってるんですから、実損はないわけです。しかし、外国として取り扱う。貝殻島というのは、御承知だかどうかわかりませんが、納沙布岬に立って見ますとというと、すぐ眼下に見える島です。無人島です。その島の周辺に行ってコンブを取ってくる。これはいわゆる日ソ民間協定でやっておる。そこからコンブを取って、そうして岸に持ってくるときに、免税の申請をして、免税措置を受けなければならない。いわゆる外国とみなすということが、いま言った北海道の地図の関係にかけて私は矛盾していると思うのですが、どうですか、もう一度お答えください。
  80. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 実はこれは沖繩の場合も、返還になりますまでは、関税制度上は外国とみなす取り扱いにいたしておりました。しかし、それと同様の制度にならざるを得ないわけで、現行制度としてはそうやっておりますが、御指摘のように、申請を受けますのも、率直に申しますと、形式的な手続だけにいたしておりまして、ただいま申しましたように、実際上の運営上は支障のないようにいたしておるつもりでございますが、なお、それらのやり方についてさらに一そう便宜な措置が要請されておるようでございますれば、一そういう点については、さらにくふうをこらす用意を持っております。  その制度が矛盾しておるではないかという御指摘、あるいは関税そのものを基本から法制上も免除するかどうかということになりますと、遺憾ながら、返還が実現されておりません現状におきましては、これはなかなかむずかしい。一方的に日本の法制だけでこれを本邦と同様に扱うということを制度上いたしますことは、非常にむずかしいというよりも、困難なことであると、こういうふうに存じておりますから、実際の運営上できるだけの便宜をはかろうということで、事実上解決するようにしたいというのが政府の方針でございます。
  81. 川村清一

    川村清一君 もう一点あるのです、同じような問題が。それは、根室海上保安部の巡視船が北方領土に抑留されている漁民を引き取りに向かう。これは色丹島のあなまでよく行なわれるのですが、そこに行くときに、根室税関支署に外国行きの認可を得てから出港するわけです。そうして抑留漁民が根室港に帰ったときは、今度は海外旅行者と同じように、上陸前にやはり税関支署の検査を受けなければならない。これは関税法の適用を受けておる。関税法施行令の九十四条に、わざわざ政令でもって、その「本邦の地域は、」として、歯舞、色丹、国後択捉とうたっておいて、そうして本法の百八条で、これを「当分の間、外国とみなす。」と、こういう。そうすると、この四島は北海道に入っているんだと、北海道の一部であるということを認めている。そうして普通地方交付税算定の基礎になって、その分は交付税として交付されておる。ところがその島は法律的には外国である。海上保安庁の巡視船がそこに行くについても一々税関に届け出ていかなければならないと、矛盾していませんか、これ。
  82. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) それは確かに矛盾しているとお考えになるのも私はごもっともだと思います。しかし、同時にこれは、日ソ間の交渉によって、法律的にも、条約上もはっきりするわけでございますから、それまでの期間におきましては、残念でございますけれども、所要の手続をするようにしておきませんと、やはりこれは交渉上その他の点を考えましても、日本の政府のとるべき態度としては、現在はわが方の施政権が現実に及んでおりませんわけでございますから、そういう点から考えましても、返還が具体的にすみやかに行なわれることを期待しながら、事実運営上は、ただいま御指摘の点につきましても、出国の手続あるいは入国の手続等はいたすわけですが、実際上の運営においてくふうをこらしておると、当面のところはやむを得ないことではなかろうかと考えております。
  83. 川村清一

    川村清一君 このような国内措置によって、実際に現地の住民、特に漁民たちはたいへんな迷惑を受けているわけです。苦労をしているわけです。ですから、一日も早く島が返ってくることをほんとうに念願しておるというこの気持ちは、本土の方々とは違うかたい気持ちを持っているということをぜひ理解してもらわなければならない。そのために、外務大臣に大いにひとつ努力してもらわなければならないと思うわけです。  それで、重ねて外務大臣、最後にもう一点お聞きしますが、安全操業の問題はどういうような基本的な態度交渉を進められておるのか、そして現時点でどういうような状態がつくられつつあるのか、ちょっと御説明いただきたい。
  84. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは川村先生御承知のとおり、去年の秋、当方から具体的解決案をソ連側に提示いたして、回答を求めておるわけでございます。政府としては今後とも、北方領土周辺水域における不幸な拿捕事件を根絶いたしまして、操業の安全をはかるために、現実的な立場に立ちまして、早期の解決をはかるべく努力を傾けてまいる考えでございます。で、去年の秋私が訪ソいたしました際にも、当方の提案に対しまして返答を求めたわけでございけれども、近いうちに返答するということでございましたが、いまなお、まだ回答に遺憾ながら接していない実情でございます。
  85. 川村清一

    川村清一君 北方領土の問題に関連してまだまだお尋ねしたいことがたくさんありますが、時間がきましたので、いずれまた別な機会であとの問題はやることにいたしまして、今度はずうっと飛びまして、一番南の沖繩の問題についてひとつお尋ねしたいと思うわけです。  そこで、総理大臣施政方針演説の中で沖繩に関して演説をされまして、その中に、沖繩振興開発計画の実施を推進して、沖繩県民の長い歳月にわたる労苦に報いてまいりたいと、こう言っているわけです。そこで、沖繩振興開発計画でございますが、これは一昨年の沖繩国会で立法化されました沖繩振興開発法の第四条に基づく振興開発計画だろうと思うんですけれども、これがこの計画書でありますが、これは一体開発計画と言えるものですか。これは担当大臣からお答えいただきたい。私はこんな計画じゃあ、これはとても計画でないと思うのですが、どうですか。
  86. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) 御指摘になりました沖繩開発基本計画というものは、沖繩開発の基本的な要綱を、現地の各位また学識経験者各位が集まられて英知をしぼられてつくり上げられた要綱でございますので、私はこの要綱を基本にいたしまして、沖繩開発を強力に進めてまいる覚悟でございます。
  87. 川村清一

    川村清一君 これは基本理念です。沖繩振興開発計画なんです。これは沖繩振興開発法第四条に基づいてこれをつくらなければならない義務が政府にあるのです。昭和四十七年に始まって十カ年間の計画をつくるということになっているのです。そこでこれをつくったわけです。これが計画ですかと言っているのです。計画の名に値しますか。
  88. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) 私も十分これに対して検討もいたしましたが、十分の開発計画としての計画性、妥当性、構成を持っておると、こう考えており、また期待もいたし、これに沿って強力に進めてまいりたい、こう考えております。
  89. 川村清一

    川村清一君 担当大臣がそう高く評価されているのではしようがありませんね、これは。少なくとも法律に基づいてつくられた計画ならば、十年間にこの計画を実施していくならば、沖繩はこうなるんだと、こういうことをするんだと、それのためには、その到達する手段が明らかにされ、さらに、この計画を実施するためにはこれだけのお金がかかるんだと、国はこれだけ金をかける、地方公共団体はこれだけ負担するんだと、民間投資はこれだけ期待しておるんだというようなことが具体的に明示されてなければ、計画と言えないではありませんか。これは一体計画ですか。
  90. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) 川村議員御承知のとおりに、この計画に基づきまして、十年後の沖繩というものはかくあるべき姿であってほしいというもとにおいて、ただいま人口におきましても百万、また県民の所得におきましても三千百億円を一兆円にというような、あらゆる一つのめどを、目標を立てまして、そうして具体的に年次計画を立ててまいっておるような姿でございますので、本年の四十八年度の予算措置につきましても、それに沿った配慮をいたしておりますので、ことしの予算六百二十七億、去年の七二%をこえておるような状況、これに対して私はさらに沖繩の海洋博というものが、これらの開発振興の一つの大きい起爆剤となっていくべきであると。また沖繩のめどというものは、何といっても、御承知のとおりに、あの亜熱帯地帯の美しい海岸を中心といたしましての東洋、いや世界の私は一つの保養地帯、観光地帯にもっていくと、いろいろの具体的な目標をおのずから政府といたしましても立てて、これに即応する施策を万全を期してまいりたい、こう考えておる次第であります。
  91. 川村清一

    川村清一君 沖繩開発庁長官は、一体この計画書をお読みになりましたか。
  92. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) 冒頭にお答え申しましたときに、私も十分読んで検討を加えましたと申し上げたとおりでございます。
  93. 川村清一

    川村清一君 この計画書の中に、検討する、検討するという、政府答弁みたいなこの「検討」ということばが何カ所あるか御存じですか。
  94. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) 何カ所あるかは私も覚えてもおりませんし、「検討」するということが、いわゆる前向きの姿勢で積極的に取り組むべきであるという、私はそれを踏まえて進むべきであると、こう解釈いたしております。
  95. 川村清一

    川村清一君 「検討する」ということばは十五カ所あります。一例をあげてみますか。「沖繩県の亜熱帯の自然的地理的条件を生かし、老人が健康で生き甲斐のある生活を享受することができるような老人の保健、福祉、勤労、休養等を目的とする総合的な施設の設置について検討する」、こんな計画がありますか。
  96. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) まあ、おことばを返すようでもございますけれども、私は検討しながら、これに積極的にひとつ取り組むと、それでございますから、さきにも申し上げましたように、私は内閣委員会でもお答えいたしたのでございますが、いまから一カ月ほど前の有力な日本の内地の新聞の世論調査を見ますときに、日本に、本土に復帰してよかったというのが五二%、その中にあって、なぜよかったかという考えを持っておられる方が、日本人としての権利を回復してよかったと。私はここだと思うのであります。沖繩開発というものは、この二十七年の異民族によって支配された労苦に報いながら、そして日本に返ってよかったと、そして日本人、内地の日本人と何ら格差がないところの喜びを政治の上に与えるというのが、私は沖繩開発の基本的姿勢である。それによって私は公共事業も、あるいは生活環境の整備も、あるいは農林水産の開発も、あるいは観光の面も、こうした面、文教の面に対しましても、政府といたしましては、御承知ではあり、ましょうが、積極的な予算措置も行政措置もとっておりますので、私はこの基本計画に沿いながら進んでおることをひとつ御理解いただきたいと、こう考えております。
  97. 川村清一

    川村清一君 基本計画でありませんと言っている。これは振興開発計画です。あなたのおっしゃっているような検討なんというのは、計画に値しませんよ。こんなことを言っちゃ失礼ですけれども、ここに北海道開発法に基づく第三期北海道総合開発計画書がありますよ。それから経企長官いらっしゃいますが、経済社会基本計画がありますよ。これと比べてごらんなさい。これは質が違いますから、同じことで議論はできないかもしれませんが、少なくとも北海道開発計画と比べてごらんなさい。計画ですか、これは。私に言わせるならこれは作文ですよ。
  98. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) 私は、基本計画すなわち行政の上において即刻行なわれる具体化した施策に通ずるものであると、こういうような気持ちをもって、先ほどから具体的な方途を御説明申し上げておるのでございますから、賢明な川村議員、北海道も大事、沖繩も大事。われわれ日本の当然の施策の、均衡を持った施策であるということを私は御理解願っておきたいと、こう思っております。
  99. 川村清一

    川村清一君 北海道開発計画には、所要資金、「この計画を実施するための政府投資は、約八兆五千五百億円を見込み」、産業が幾ら、社会開発基盤整備が幾らと書いてあって、それから最後に、「計画期間における民間企業等投資は、約十二兆二千億円と見込まれる」、資金計画載ってますよ。一体それじゃ、開発長官にお尋ねしますが、この計画を行なうためにどれだけのお金がかかるんですか。どれだけ政府は投資するんですか。
  100. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) これにつきましては、御承知のとおりに、全国の総合開発計画と沖繩のいま申しました基本計画の具体的な振興対策と、これを並行いたして、合体した姿で沖繩開発を進めてまいるということでございますので、十年間にこれに要するところの費用というもの、あるいは国家資本というものに対するところの具体的な数字は出していないところに私はなお一そう期待感を持てる。また、政府もこれに対して万全の策を講じてまいるということであります。ことに、御承知のとおりに、今度の海洋博に対するところの関連事業からくる沖繩というものは、これによって私はほんとうに沖繩開発振興の起爆剤となっていくんじゃないか、こういうような特殊性もございますから、単なるしゃくし定木によってこれだけの投下をすべきであるということを立てなかったことも私はここにある、こう考えております。正しくひとつ御理解を願いたいと、こう思っております。
  101. 川村清一

    川村清一君 全然話がおかしいですよ、それは。政府が責任を持つとするならば、政府はどれだけ財政資金を投資するということが明確に責任持たなければ、全くそれは絵にかいたもちにならざるを得ないですよ。そんな当てのない計画なんかないですよ。それじゃ北海道開発計画、あるいは経企庁の経済社会基本計画、これなんか実に——企画庁長官にお尋ねします。いまのああいう答弁は、経済企画庁長官としてどういうふうに考えられますか。一つの計画に資金の裏づけのない、資金計画もない、そんな計画がありますか。相当これは具体的なものが出ておりまして、一つの指標ですけれども、出てますよ。
  102. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 沖繩の関係では、やはり新全総が問題だと思いますが、御承知のように、昨年十月の末に閣議決定されまして、沖繩の特性を生かしていこうということを決定したわけです。すなわち、自然と文化を積極的に個性豊かな沖繩として存在させるようにしていこう、本土との格差をなくそう。それから南の交流拠点としての発展をさせようという基本の方針をきめたわけでございます。  その根幹となる事業は何かといいますと、三つございまして、まず第一は、本土と沖繩の相互の結合、さらに東南アジア等の海外諸国に至る交通通信ネットワークの整備が第一でございます。第二に、那覇市を中心とする広域的な都市の整備と広域生活圏の形成促進、これが第二でございます。第三点に、環境保全を考慮しながら地域の特性を生かして、工業、農水産業、観光等の開発を積極的に推進する、こういうことを言っておるわけでございまして、それがこの第四部ということになっておるわけです。新全総の関係ですと、全体を見直そうということで、沖繩の第四部だけでなくて、全体のいま見直しをやっておりまして、昭和五十年から六十年に至る計画をつくろうと、こう言っております。ただ、そういう計画ができる前にも、できるだけ当座必要なものはやっていこうということになっておるんでございまして、沖繩開発十カ年計画も、まず、いま言ったような特性を生かしながら、豊かな沖繩をつくっていこうということでございますが、それでは具体的に何をすべきかということになりますと、いまの新全総と同じように見直していく、そして五十年から新しい新々新全総ですね、そういうものをつくります場合に、もっといま川村委員のおっしゃるような数字の入ったものをつくるということが妥当ではないかということでございまして、ただいま総務長官から非常に熱意あふるる御答弁がございましたが、そうした沖繩のための意欲というものをさらに大きく盛り上げていこうというふうに私ども考えておる次第でございます。
  103. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) 大事な問題でございますので、正しく御理解を願いたいということは、御案内のように、二十七年間異民族の支配下にあって、そして昨年の五月に復帰いたしまして、そして直ちに四十八年の予算編成に取り組まなければならない。また行政上、御承知のとおりに、そうした立場にあった行政の場でありましたので、基本的なあらゆる条件にふさわしいところのデータがそろっていない、こういうようないろいろな条件があったものですから、そうした資金計画に対しての科学的な統一あるところのデータが出せなかったということも私は御理解願いたい。それに即応して、政府は責任もって、さき申しましたような日本の本土に返ってしあわせになった、日本人の個人としての権利を回復したという喜びを一つの柱にして立てていくということも御理解おき願いたい。これは沖繩の県民にとっても大事な問題でございますから、私はそうした事情のあることを申し上げて御理解も願いたいと、こう思っております。
  104. 川村清一

    川村清一君 それじゃ、さっきの話とだいぶ違うじゃないですか。さっきあなたはどういうことを言ったか、この計画についてどういうふうに評価されましたか。
  105. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) 決して私は、何の違いもないと思っております。基本姿勢もまたしかり。早急にそうしたもののできなかったことを、いまつけ加えて申し上げたことも、何ら私は基本的には変わっていないと、こう思っており、作文もいたしていないと、こう思います。
  106. 川村清一

    川村清一君 先ほどは、この計画は非常にりっぱな計画だと言っておる、あなたも入ってつくったのだと高く評価されたでしょう。資金計画がないのはどうした、こんな計画はないじゃないかと言ったら、資金計画がないところがいいところだとあなたはおっしゃったでしょう、さっき。どうなんですか、それは。だめですよ、そんなでたらめ言っちゃ。
  107. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) 決して私でたらめじゃございません。なぜということも、二度も三度も御追及になりますから、それはこういうような事情があったということを申し上げたわけでございまして、これはもう当然常識的にお考えいただいても御理解いただくんじゃないか。それですから、前段で申し上げた気持ちも、後段で御説明申し上げましたのも全部通ずるものだと、こう思っております。
  108. 川村清一

    川村清一君 速記録ができてきたら総務長官よくごらんになってください。あなたの言っていることは、最初言っていることといま言っていることと全然違うんですよ。  それじゃ、これが決定されるので、開発審議会にかかっているはずなんです。審議会から答申のときに出された審議会の意見をここで読んでください。
  109. 岡田純夫

    政府委員(岡田純夫君) 審議会の大来会長から、その沖繩振興開発計画案につきまして、「昭和四十七年十二月十八日付沖開第一二三七号をもって当審議会に諮問のあった沖繩振興開発計画案については、審議の結果適当であると認められるので、この旨答申する。なお、審議の過程で、(1)戦後二十七年余にわたる沖繩県民の労苦と犠牲に報いるための振興開発の推進、(2)振興開発を進めるうえでの米軍施設・区域の整理縮小の必要性、(3)事業の実施に際しての県民の意向の尊重と所要資金の確保の諸点に関し、計画の実施に当たり特に配慮するよう強い要望があったので、最善の配慮をなされるよう申し添える。」、以上のような答申がございました。
  110. 川村清一

    川村清一君 ここにも載っています、「所要資金の確保の諸点に関し、」。ちゃんと載っています。そこで、所要資金がきちっとなっておらないような計画は、これは絵にかいたもちである。所要資金をしっかり載せなさいという、そういう考え方のもとに質問をした。総務長官は、その資金計画がないところにこの計画のいいところがあるんだと、さっきはっきりあなたおっしゃったんだ。その点、言い直しなさいよ、そうでなければ、私はだめですよ。
  111. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) お答え申し上げます。  お気持ちの上においては、川村委員と私とは全く通じておるものがありまして、一致しておると思います。資金計画を私は必要とせないというお答えは全然いたしておりません。そういうようなことから考えますときに、川村委員の御趣旨もお気持ちも心情も十分そんたくいたしまして、これから沖繩開発のそうした計画に対するところの配慮も十分ひとつ積極的につとめてまいりたいと、これでひとつ御理解願いたいと思います。
  112. 川村清一

    川村清一君 それじゃ、あれでしょう、先ほどの経企長官のお話等もあったので、いずれ資金計画もきちっとつくって、そうしてこの計画に載せるということなんですね。それを御答弁いただきます。
  113. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) そうした方向で、ぜひひとつ努力してまいりたいと、こう思っております。
  114. 川村清一

    川村清一君 次に、沖繩振興開発を一番阻害している要因は何だと思いますか。
  115. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) 川村委員の御指摘になりましたまあお気持ち、あるいはねらいというものがどこにあるかはわかりませんけれども、私として、いま責任の長官といたしまして考えていることは、二十七年間の異民族によって支配されましたことによる内地との行政上のすべてにおいての一つの手おくれが顕著に見られていると、これはやはり早く取り返すということ、これが私は非常に大事な問題ではなかろうかと、こういうような気持ちを持っておるのでございます。幸いにいたしまして、参議院の予算委員会の野党、与党、各党のありがたい御理解と、また御承認もいただきましたので、あさっての朝立ちまして三日間、土、日、月と沖繩に参りまして、開発長官就任以来最初の視察といたしまして、私はこの目で、この耳で現地の様相を十分承って、そして開発計画をさらに具体化してまいりたいと思いますので、御協力をお願いしたいと思います。
  116. 川村清一

    川村清一君 沖繩のいろんな仕事を進めていく上において、一番困る問題は何ですか。
  117. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) いろいろ先ほども申しましたような阻害する点も多うございますが、最も大きい問題は何かというと、私はあなた同様、やはり基地の問題であると、こう考えております。
  118. 川村清一

    川村清一君 基地の問題と、もう一つ最近特に困る問題は何ですか。
  119. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) やはり一番大事な、いまの沖繩の県政上最も重要な問題は、やはり物価高の問題、こうした問題がやはり一番重要な問題であると、こう考えております。
  120. 川村清一

    川村清一君 土地買い占めの問題はどうでしょうか。
  121. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) 土地の問題も、最も大事な一環として、私は御指摘になったとおり考えております。
  122. 川村清一

    川村清一君 一番大事なものを忘れちゃったら困るのです。やっぱり基地の問題、土地の問題。これはもう土地の問題、物価の問題は内地よりもっと困る。そこで基地の問題、土地買い占めの問題が非常に振興開発を阻害する要因だと、大事な問題であるということになりますれば、一体どうして沖繩開発庁が出してきたところの、法律に基づいて政府に出した沖繩のほうの計画の大事な「むすび」の点から、その土地の問題や軍事基地の問題を削除したんですか。
  123. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) ちょっと、御指摘になりました要点がはっきりせないんでございますが、川村さんのおっしゃることは、どういうことでございましょう。
  124. 川村清一

    川村清一君 これは沖繩県が出した、これは振興開発法第四条に基づいて沖繩県知事が総理大臣に出すわけです。総理大臣は今度は審議会にかけて、総理大臣がこれを決定するわけです。そうして県の出した「むすび」、結論です。最後のところに、「軍事基地の撤去を強力に推進し、基地転用計画を早急に策定実施すること。」という一項がある。その次に、「無秩序な土地の買占めを規制し、地方公共団体等による土地の先行取得の推進、その他公有地の拡大について積極的施策を講ずるものとすること。」と書いてあります。この二つの一番大事な、いま大事だと認めたこの大事な二項を政府の出した案からこれを削除した、これには載っておらない。これはどういうわけかと聞いている。
  125. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) 御指摘になりました二点でございますが、基地の問題は、いわゆる日米安保条約を堅持いたしております日本政府の立場から言いますと、私は基地の整理縮小という表現を使っております。屋良知事は基地の撤去と、こう述べておられます。沖繩全土の一三%の基地であることを思うときに、この問題がいかに重大であるかということは、私先ほど申しましたとおりでございます。しかし、いま申しましたように、基地縮小も整理縮小も基地の撤去も、これは当然帰一するところは、なるべく早く基地をなくするということの、ことばの表現が違うだけでございますから、目的は私は帰一するものと思いますので、その方針に向かって、われわれ田中内閣といたしましては、日米協議会を通じ、あらゆる場を通じて、現実的にやっておるということで私は御理解願いたいと思います。  土地の問題につきましても、やはりその利用計画、あるいはそれに対するところのいろいろの規制、田中内閣の決定いたしました土地対策を一つの基本にいたしまして、これを推し進めてまいりたいと思いますが、復帰前の一年から復帰後のこの十カ月、約二年近い間に土地の売買が予想されて行なわれたのは、予想を含め、また、今後の売買を含めまして約八千万平米というような現実も報告を受けております。それに対して大体四倍の値上がりもいたしておるというようなこともございます。そうしたことを考えますとともに、土地の一つの境界というものがまだ正確にできていない。御承知のとおりに、いろいろの不幸なああした事情から土地の変形を来たしておる。そういうような問題から、ことしの予算では二千三百万円などの予算を計上いたし、昨年は一千万円の予算を計上いたしまして、その土地の境界というような線の調査も正確を期しまして、四十八年度でこうした問題もひとつ片づけまして、そうして土地問題に対する正確なるところの施策を、措置を講じてまいりたいと、こういうことでひとつ御理解を願っておきたいと、こう思います。
  126. 川村清一

    川村清一君 総務長官がそうおっしゃっていることなら、なぜここへ書かないんですか。屋良主席が出した計画にはきちっと書いてある。それをですね、政府できめたこの計画書からは、これを抜いてしまって、書いてない、何にも。もしあなたがそうおっしゃるならば、屋良主席が出した計画書のことばを若干変えてもここに書くべきじゃないですか。全然削除してしまって、ないのはどういうわけだと聞いているんですよ。
  127. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) お答えいたします。  ない、あるという問題よりか、実際にこれを行なうということが政治の要諦でございますから、この点にあんまりこう、重大的に、失礼ではございますけれども、おしかりを受けなくとも、私はこれに対するおしかり以上の気持ちを持ってひとつやっていきたいということで御理解を願いたいと、こう思います。
  128. 川村清一

    川村清一君 何だかその、何といいますか、のらりくらり、のらりくらりとしてね、ごまかすような答弁ばかりしておって、だめですよ、それは。誠意がちっともないじゃないですか、ことばだけで。そんな、あなた、書いても書かなくても同じようなものなら、計画、初めからつくってもつくらなくても同じでしょう。
  129. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) その計画の中に、一つの先行取得その他の問題について具体的に述べておりますので、政府委員をして答弁をさせます。
  130. 岡田純夫

    政府委員(岡田純夫君) 振興開発計画の中に「県主の開発利用」という項目がございまして、その中で「地方公共団体による公有地の拡大等土地対策について、適切な措置を講ずる。」というふうにうたってございますのは、県の案につきまして、県とよく相談いたしまして、用地の、特に公有地の先行取得ということをここに根拠を置きまして、具体的にも来年度十億円の予算を投じまして、三カ年間で三十二億円の先行取得を措置いたしましたのも、考え方はこの規定から出ているものでございます。  それから米軍施設・区域の点につきましても、特に中南部圏にそれは集中いたしておりますので、「沖繩における米軍施設・区域は、大規模かつ高密度に形成され、しかもその多くが地域開発上重要な本島中南部地域に存在しており、那覇市を中心とする中南部都市圏の形成に影響を与えているので、開発を進めるうえで、できるだけ早期にその整理縮小をはかる必要がある。」ということをうたっております。  それから、なお中南部圏ばかりでございませんで、最後の段階のところで、「むすび」といたしまして、「沖繩における米軍施設・区域については、沖繩の振興開発をすすめる見地からその整理縮小をはかる必要がある。」と、全県的にそういう配慮をする必要があるということを「むすび」でうたっておるわけでございます。
  131. 川村清一

    川村清一君 沖繩振興開発というものを、これをほんとうにやっていこうとするならば、基地の問題、土地の問題、これを解決しないでこれは私は絶対できないと。計画そのものがずさんであるというのも、ひっきょうするにそこに原因があると思うんです。前に琉球政府が出したこの計画のほうが、このほうがすっきり筋が通っている。十年間でもう基地がなくなると、そういう想定のもとにこれは計画をつくっている。基地がなくなるという想定なくして、一体ほんとうにこの沖繩の振興開発計画がつくれるかどうか、これを重ねてお尋ねします。
  132. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) 全く同感でございまして、われわれといたしましても、基地の縮小整理また撤去、これらについて最大の努力を進めてまいる覚悟でございます。
  133. 川村清一

    川村清一君 問題はそこにあるわけなんです。先ほどから私が振興計画、この計画書がずさんであると、こんなものは計画でないと、ちっとも具体性がないじゃないかというようなことを追及していますが、つくれないんですよ、いまの状況で。どなたがつくったって、つくれないんですよ。ですから、この問題を解決しなければ、とても農業ひとつ考えてみたって、一体土地がなくて農業が振興する気づかいはないでしょう。できないんですよ、これは。総理大臣、どうお考えですか。あなたはこの振興開発計画を強力に推進するということを施政方針演説でうたっているんですよ。ところが、計画書はこんなずさんなものなんですよ。ひとつ基本的な総理のお考えを述べていただきたい。
  134. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 沖繩は長いこと異民族統治のもとにありましたので、本土との間には経済的格差があるわけでございまして、十年間で本土と沖繩との格差をなくしようということを、まず目標にいたしておるわけでございます。しかし、これを具体的にどうするかということになりますと、特殊な亜熱帯地域でございますし、それから二次産業技術を上げるとしても、海洋の汚染というような問題に対しては本土以上に考えなければならないところでもございます。しかも、一次産業技術が非常に高いのが沖繩の特徴でございますが、しかし、これをすぐ二次、三次に移動させるというような考え方沖繩開発計画がつくれないわけでございます。とにかく、東南アジア地域等の連絡基地としての役目も十分考えられるわけでございますし、また観光地帯としての沖繩も考えられるわけでありますが、思いつきとか常識的な考えだけではなく、沖繩というものの自然を守りながら、特殊性を守りながら、理想の達成に向かわなければならないというために、北海道のように積み重ねが非常にたくさんありまして、この計画を直ちに政府計画に移せるような状態に沖繩がないということだけは事実でございます。そういう意味で、こまかい数字を書かなかったことは、それだけに沖繩県民の盛り上がり、沖繩の特殊性ということを尊重しながら、合理的、理想的なものをつくらなければならないという配慮のもとにつくられた基本計画であるという点も見のがせない事実であって、これもひとつ理解いただきたいと思います。具体的には、やはり基地の問題でありますが、基地をなくするといっても、十年間で、なくできるわけありませんから、整理、縮小、合理化ということになるわけでございます。  それからもう一つ土地の問題は、今度御審議をいただいております法律ができれば、観光地として開発をしようとして買ったものでも、知事が特定地域に指定すれば乱開発は押えられるわけでありますし、これらの問題に対して緑地や自然は保全せられるわけでございます。そういう意味で、できるだけすみやかに具体的な数字、あなたがお示しになった北海道開発計画とひとしいもの、それ以上のものがつくられなければならないということで、政府も努力を続けてまいりたいと、こう考えます。ただ、基地の問題は、全廃ということを前提にして組まれた沖繩県の案なるもの、これは理想的であっても、実際基地が全廃できないということになれば、それは画餅に帰するわけでございます。現実と理想をいかにマッチせしめるかということが真の開発計画であろうと思います。その意味で、基地の整理縮小に対しても、積極的に政府もいま日米間でいろいろな努力を続けておるわけでございますし、可能な限り最大限の沖繩開発計画、理想的な計画を推進してまいりたいと、こう考えます。
  135. 川村清一

    川村清一君 総理は、施政方針演説の中で、沖繩のいわゆる地域社会を、新しい時代に即応した豊かな地域社会をつくるために努力します、そのために昭和五十年の世界海洋博覧会を推進します、りっぱにやりますというようなことが述べられている。ところが、現実の問題として、海洋博覧会のために、政府の言った、いわゆる総理の言っておる豊かな地域社会というものと逆行するような社会がいまつくられつつあるわけで、たいへんなことになっている。この海洋博覧会のために起きている沖繩のいろんな問題に対処して、担当大臣の通産大臣はどのような処置をなされておるか、ここでひとつ述べていただきたい。
  136. 坪川信三

    国務大臣(坪川信三君) 先ほども申しましたように、海洋博に対する政府といたしましては、中曽根通産大臣が本部長として万全の対策を目下立てつつあるわけでございますが、それによるところのデメリットの面等が非常に深刻であることも予想されてまいってきておるものですから、明後日立って、よく視察をして、その上で対策をさらに立てたいと思っておりますが、御承知のとおりに、いま約千九百億円の海洋博の仕事をめぐってのあらゆる関連事情がどういうふうな状況であるかといいますならば、御承知のとおりに労務の不足、これが一つの台湾から来ていただいておりました労務者の激減というような状態もありますので、これらにつきましては労働省と連絡をいたしまして、十分いま調査をいたしながら労務の配慮もいたしておる。また資材の上におきましても、非常に物価高を生じておりまして、砂とか板とか、くぎとか、こういうようなものが非常に高騰しておる。こういうようなことから、推進本部にいわゆる関連事業の施設部会というものと物価対策部会というものの二つをつくりまして、そして明日もいわゆる関連施設の部会を開きまして、これらに要する資材の問題、あるいは労務の問題、あるいは輸送の問題、こういうような問題を事務的にも対応を十分立て得るところの仕事を、作業を進めておるような次第でございます。そうしたことによって、こうした不幸な隘路、デメリットを解消すべく最善の努力をいたし、そして私もあさって参りましてよく聞いてまいりたい。ちょうど月曜日は永野商工会議所会頭を中心とされる東京の、内地の財界のおも立った人も来られまして、そして現地と、沖繩経済開発、また海洋博に対するところの現地の対応策も立てる場も、会議もございますので、私もそれに出席いたしまして、県また市町村、そして国、この三者が一体となって、この海洋博、世界での初めての意義ある海洋博をひとつ成功させたいというのが田中内閣の大きい方針であることをはっきり申し上げ、各党の御協力も仰ぎたいと考えておる次第であります。
  137. 川村清一

    川村清一君 あの、通産大臣……。
  138. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 沖繩におきましては、大体いままで年間九百億円程度の工事量の仕事がございました。海洋博が始まりますと約二千億円程度の仕事が行なわれます。そうすると、いままでの仕事に加えてその程度の仕事量がふえるわけでございますから、当然物資、労務あるいは物価、そういう問題が起きてくるわけでございます。それでただいま総務長官から申されましたように、沖繩開発庁長官から申されましたように、いろいろな部会をつくりまして、各省分担してそれぞれの手当てをやっておるところでございます。特に私たちが力を入れておりますのは物価対策、労務対策でございまして、これらの点につきましては、綿密に各省で打ち合わせをやりながら措置をやっておるところでございます。
  139. 川村清一

    川村清一君 いまの通産大臣の特に力を入れておる物価対策、それから労務対策、これについてもっと具体的に、こういう対策を立てるのだということを、案があったら示していただきたい。
  140. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 沖繩県にもその対策本部ができまして、沖繩県並びに本土政府、両方からどの程度の労務の要望が月別に出てくるか、あるいは物資に対する要望が月別に出てくるか、それに対して供給がどの程度行なわれるか、そういう両方の需給関係のいま資料を両方で綿密につくり上げておりまして、そしてそれに対する手当てを対策本部を中心にして実行していこう、そういうことでやっておるのでございます。
  141. 川村清一

    川村清一君 ちっとも具体的でないですがね。私は一月に沖繩に行ってきたのですがね、通産大臣、たいへんなんですよ。もう海洋博のために物価は上がる、たいへんなことになっておりまして、もう現地では返上論が出ているのですよ。反対運動も盛り上がってきておるのですよ。ですから、もう少し具体的なきちっと対策を立てて、強力にやっていかなければたいへんなことになりますよ。  一例を申し上げますと、農業でサトウキビ、これはいま一月−二月の初めは刈り入れ時期ですがね。これは一トン、サトウキビの買い上げ価格が農林省告示で六千九百五十円ですわ、トン当たり。ところが労働賃金が一日五千円なんですよ。とてもじゃない、キビなんて刈ったってしようがないから、もうほうり投げている人が出てきておるのですよ。それから海洋博のためにどんどんどんどんホテルをつくるでしょう。そうするとホテルの従業員を、あのみやげものなんか売っている店屋さんがありますね、そこに働いている女子職員をスカウトしているのです、どんどん。そうしますと、みやげものを売っているああいう商店でも従業員がなくてお手あげの状態になってきているのですよ。こういったような状態、これに対処してほんとうにもっときめこまかい対策で強くやっていかなければたいへんなことになると思います。この際ひとつ農林大臣から、サトウキビ対策というものをここでどういうような施策をもって対処するか、お答えいただきたいのです。
  142. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 川村君、時間が参りました。
  143. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) ただいま御指摘のような状況はよく承知をしております。ただ、私どもがいままでとってまいりました対策で、これは欠くるところ非常にございまするけれども、いまこれを急に変えていくということについては非常にむずかしいのではないか。いま御指摘のように、トン当たり六千九百五十円、それに五十円の上積みをいたしまして、会社持ちで輸送いたしまするので、従来の例から見ますると、トン当たり五百円以上は手取りがふえるようにいたしておるわけでございます。また、会社のほうにも八億円の支給をいたしまして買いやすくもしておる。それからまた、サトウキビに対する各種の施策も講じておるわけでございまして、この収穫の状況につきましては、部分的には御指摘のことがありまして非常に困難をしておるようでございまするが、しかしながら、大体ある程度の目標を達成する収穫はしておるというふうに聞いておりまするので、いまここで緊急に何か特別な施策をやるということについては考えておりません。
  144. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて川村君の質疑は終了いたしました。  午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      —————・—————    午後一時四分開会
  145. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、総予算に対する質疑を行ないます。上田哲君。
  146. 上田哲

    上田哲君 戦力問題について論争をいどみたいと思うのでありますが、それに先立って、二、三の問題が緊急に発生しておりますので、御見解を問いたいと思います。  まず、陸上自衛隊の岩手駐とん地で、一尉が部下の陸士長を車ではね、しかも、その事件を隠滅するために死体を埋葬して盛岡警察署に逮捕されると、このような事態が発生していると聞いておりますが、その内容について御報告をいただきたい。
  147. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 御指摘のまことに申しわけのない事件が発生をいたしました。目下警察で取り調べ中でございまするが、部隊から報告をしてまいりました概要は、次のとおりでございます。  第九特科連隊の所属一等陸尉三上英一が、三月十八日午後七時ごろ、自宅から自分の自動車で盛岡方面に進行中、岩手駐とん地付近の国道で、外出から帰隊途中の戦車大隊第一中隊の陸士長鶴飼秋雄をはねて重傷を与えたのでございます。  三上一尉は、病院に収容するため、鶴飼士長を助手席に乗せ、岩手大学附属病院に向かう途中、同士長の体温が冷たくなってしまったので、死亡したと思い、おそろしくなりまして処置に困り、付近において車のトランクに同士長を移し、自宅に帰って、同月二十日午後八時ごろ、盛岡市内の岩手公園に埋没したということでございます。  部隊では、同士長が三月十八日外出から帰隊しないので、警察に捜査を依頼し、部隊及び盛岡警察において同士長の行くえを捜査中でありましたが、二十一日夕刻、この一尉の車輌前部に損傷があることから警察の取り調べを受け、本人が自供をいたしまして緊急逮捕されたものでございます。  まことに申しわけない遺憾な事件でございます。こういうことがあってはならぬことは、常々十分に厳戒を与えておるところでありまするが、この事件は、事件を起こしたことといい、事後の処置といい、まことに遺憾しごくのことでございます。部隊全体に対して、緊急に、さらに厳重に、このようなことのないように指示をいたしまするとともに、この事件は、刑事事件としては警察の手から司直のほうへ回っていくと思いまするが、防衛庁としては、大体事件の実態が明らかになりまするので、厳重処分をいたし、将来にわたってこういうことが再び絶対に起こりませんように懲戒免職処分をするいま手続をとっておるところでございます。まことに遺憾の申しわけのない事件でございます。
  148. 上田哲

    上田哲君 一尉というのは指導官でありまして、指導者が上官が部下をはねてその死体をかってに埋めて事件の隠滅をはかる、これは市民生活それ自体としても許されない問題であります。しかも、自衛隊の中で上官が部下にこういう処置をとる、これは非常に重大な問題だと思います。このようなことで、総理がよく言われますけれども、自衛隊についての国民理解が得られるでありましょうか。一人の人間を処罰するということではなくて、基本的に防衛庁、自衛隊に根本的な欠陥があるのではないか。それらについて、総理は、どのようにお考えになり、また、どのような今後の方針をおとりになるか、お聞かせいただきたい。
  149. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国土防衛の任に服しておる、しかも、自衛隊の中堅幹部が、このような事態を起こしたということは、はなはだ遺憾でございます。これはもう官紀弛緩とかそういう問題ではなく、人間性そのものの問題でございまして、自衛隊員全体に与える影響の大きさははかり知れないものがあると思います。人間性陶冶の面においては、この事件を契機にして特に配意をしてまいり、再びこのような事件が起こらないように万全の対策を講ずべきであると、心から遺憾の意を表するわけでございます。
  150. 上田哲

    上田哲君 一般市民ではなくて、登録をされていて営内にいる自衛隊員であります。その自衛隊員が一日ならずいなくなってしまっている。そのことが、この期間、警察に逮捕されるまでわからないでいる。こういう状態というのは、個人の問題ではなくて、自衛隊自身の問題として欠陥があるということになりませんか。
  151. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) まことに遺憾千万な事態でございまするので、そういうふうにお責めをいただいてもいたし方がないような気もいたしまするが、これは部隊全体が規律が弛緩をしたということでは私はないように考えます。これは、部隊についても、あらためてさらによくその点は調査をし、念を押すつもりでございまするが、この個人のまことに大きい間違いとしてこういう遺憾しごく、残念な事態が起こったというふうに考えておるわけでございまするが、しかし、部隊全体に対して将来絶対にかようなことの起こりませんようには、いま総理からも申されましたとおり、私からも申し上げましたとおり、さらに厳戒を加えまして、こういう事態の起こらぬよう、国民の皆さんからの理解信頼を失うことのないように、十分に厳戒をし、努力をしてまいりたいと考える次第でございます。
  152. 上田哲

    上田哲君 被害者がいなくなったのが十八日であります。加害者がつかまったのが二十一日であります。そのことが三日間にわたって放置されているというのは、自衛隊というところが市民生活とはかけ離れた特殊社会である、防衛庁自身がそのような方針を持っているということになってくると思います。私どもは、そのようなあり方に国民理解を求められるという言い方を、はなはだ納得できないのであります。基本的な反省を求めたいと思います。  問題を移しますが、ベトナム停戦後、日本国内の軍事基地の配置が新たな段階を迎えていると認識をいたします。それは、米軍基地の集約強化と、自衛隊基地への肩がわり強化という二面であると思います。これらの処置が地位協定の乱用によって進められていることはきわめて問題でありますけれども、特にその中心的な問題として北富士演習場の問題について御見解を問いたいと思います。  日米両国政府は、今月末までに北富士を日本側に返還する、自衛隊管理のもとであらためて米軍に共同使用——つまり二4(b)というやつですが、その二4(b)の方向に持っていくことに合意したと伝えられておりますが、そのとおりでありますか。
  153. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 御承知のように、北富士演習場につきましては、三月末までの暫定使用協定ということで現在やっております。それで、これについて引き続き本協定に移管するということで、現在鋭意折衝を重ねているわけでございますが、これにつきましては、政府としては、使用転換を一応目途として協定を結ぶと、こういう方針で進んでいるわけでございます。
  154. 上田哲

    上田哲君 合意したのかどうかと言っているんです。
  155. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 使用転換につきましては、米軍側も同意をいたしております。
  156. 上田哲

    上田哲君 また、政府は、これについて山梨県側の了解を取りつけていて、今月中に演習場内の県有地部分の提供に関する本契約を結ぶと伝えられておりますが、そのとおりでありますか。
  157. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) そのとおりであります。
  158. 上田哲

    上田哲君 この演習場の中には、地元住民の根強い入り会い権の主張があります。入り会い権を無視して契約を結ぶ、このことは契約自身が無効になることだと考えますが、いかがですか。
  159. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 御質問の趣旨がちょっと理解できないところがございまして、あるいは的をはずれるかもしれませんが、入り会い権の問題につきましては、前からいろいろ論争がございます。政府といたしましては、従来存している入り会い慣行を尊重してそれについての補償その他を行なってやっているところでございます。そういう点で、今後の問題といたしまして、それを全く無視して協定を結ぶということじゃなしに、そういう演習場の使用について理解を得つつ、片方では補償その他を実施してそういうことについての理解を得て演習場の使用をはかってまいりたいと、こういうことでございます。
  160. 上田哲

    上田哲君 よくわからぬということですから、二つに分けますが、政府がこの地区に入り会い権があるというふうに認めないで、入り会い慣行だと言っておられるというところをちょっと別にします。  一般的に、入り会い権のあるところは、入り会い権を無視して契約を結ぶことは、契約を無効にするだろうということが一つ。
  161. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 一般論として、入り会い権の存している場合には、入り会い権者の同意を必要とするというのが一般の考え方でございます。
  162. 上田哲

    上田哲君 分けた第二点は、入り会い慣行としても——われわれは入り会い権だと思っていますけれども、入り会い慣行としても、十分な話し合いを進める、理解を求めると言われているけれども、それは十分に進んでいるとお考えですか。
  163. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 御承知のように、山梨県におきましては、演習場対策協議会——俗に演対協と言っている組織がございます。(「そんなものは解体している」と呼ぶ者あり)演対協を通じて林野雑産物補償その他についての話し合いを進めていると、こういうことでございます。
  164. 上田哲

    上田哲君 理解を進めるような話し合いが進んでいるとは思いません。理解を得られなければ強行しますか。
  165. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) どういう形になりますかわかりませんけれども、その理解を得るように県も演対協も私どもも極力その方向に向かって努力をしているということでございます。
  166. 上田哲

    上田哲君 そんなことは聞いていないですよ。理解を得られなければ強行するかと聞いているのです。イエスかノーです。
  167. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 御質問ではございまするが、得られなければ強行するかと言われましても、これに端的にお答えすることは困難でございまして、いま施設庁長官が申し上げましたように、関係者——私どものほうも、県も演対協も、よく話をいたしまして、入り会い慣行を尊重するというたてまえのもとにこの問題の解決をはかっていきたい。うまくいかなければ強行するというふうなことのないように極力あくまで努力をしてまいりたいと、こういうふうに考える次第でございます。
  168. 上田哲

    上田哲君 理解が得られると思っているわけですか。
  169. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 問題がいろいろ複雑しておりまして、たとえば入り会い慣行自身の問題につきましても、関係の各町村の利害が必ずしも一致しないで問題が非常に複雑になっているところもございます。それから入り会い権自身についての解釈から問題が複雑になっているところもございます。しかし、私どもは、とにかくそういうふうな問題につきまして、林野雑産物補償その他の問題を、これは昭和四十一年以来ストップしておりますけれども、これらについても十分に話し合いをまとめまして、そうして何とかこれについての解決をしていきたいと、かように考えておるわけでございます。
  170. 上田哲

    上田哲君 地元の理解が得られなければ強行しないのですねということをはっきりしていただきたい。問題は、三月三十一日という日にちがあるわけです。
  171. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 林野雑産物補償についての理解が完全に得られなくても、賃貸借契約その他の問題が解決すれば使用はできるものと考えております。
  172. 上田哲

    上田哲君 これはもう一方的な強行じゃありませんか。そういうことは許せないです。防衛庁長官がさっきからおっしゃったのはおかしいじゃありませんか。そういう事態がないようにしたいとおっしゃる。そういう事態でもやろうと言っている。どっちですか。
  173. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 最後はどうなるんだという御質問でございますので、いまほどのように申し上げたのですが、私どもといたしましては、当初から申し上げているように、そういう事態にならないように極力努力をしてまいる、それについての可能性というものも全然皆無ではないというふうに私どもは考えております。
  174. 上田哲

    上田哲君 最後の部分を具体的に言ってもらいたい。そういう可能性が皆無でないということは、強行することもあるということですか。
  175. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 反対でございます。十分に御理解をいただいて使用できるような状態になることの可能性は皆無ではないと、かように申し上げたつもりでございます。
  176. 上田哲

    上田哲君 よしわかった。そうすると、理解が得られるならばやる、そうでなければやらぬということですね。理解が得られるときにのみやるということですね。
  177. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 法律的に契約をするということにつきましては、私は一部あるいは御理解を得られないところがかりにできたとしても可能であろうと思います。しかし、私どもとしては、そういうことのないように努力をしてまいりたいと、こういうことを繰り返し先ほどから申し上げているわけでございます。
  178. 上田哲

    上田哲君 あなた方は政府なんですから、行政府がそんなことが可能であろうなどということを第三者みたいな言い方で評論されちゃ困るですよ。あなた方がやるならばやるんだ、あなた方がやらなければやらないんですよ、これは。ほかにやる人がいないんですよ。どこかの記者席で書いているのとは違うのであって、やるかやらないかはあなた方の手の中にあるのじゃありませんか。だから、地元と話し合いがまとまるならばやる、まとまらないならばやらないというのは、あなた方の見方じゃなくて決意ですよ。政府としては行政府としてはどういう姿勢を持つのかということを聞いておるのであります。地元との話し合いがまとまらなければやらないと、総理、それでよろしいですか。——いや、総理だよ。あなたに聞いていないよ。ぼくは総理だと言ったはずだ。
  179. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 問題は、先ほどちょっと申されました入り会い慣行と入り会い権の問題の考え方の相違にも一つは帰着すると思います。それですから、私どもといたしましては、先ほど防衛庁長官も申し上げましたように、入り会い慣行は認めていると、そういうことでございますから……
  180. 上田哲

    上田哲君 話をこんがらがせちゃだめだ。二つに分けたじゃありませんか。
  181. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) はい、そういうことでございますから、それにつきまして、賃貸借契約というふうなものは、入り会い慣行の有無にかかわらず、それぞれの所有権を持っている者、あるいは所有権その他の権限を持っている者との契約が締結されれば、入り会い慣行の有無にかかわらず、その点は契約の締結は法律的に可能であると、かようなことを申し上げたわけでございます。
  182. 上田哲

    上田哲君 法律的に可能であるかどうかというのは、最終的に裁判所の判断にゆだねられなければならない。その途中であなた方は三月三十一日を迎えるからやろうとしているんじゃありませんか。そういうことが正しいか正しくないかということを行政府の判断として私は求めているんですよ。可能であるなんという法律解釈をするのは、あなた、いつから裁判所の下請になったんですか。そんなことを聞いてはおらぬ。責任ある政府当局として、一体、あなた方は入り会い慣行だと言う。しかし、地元は、明らかに入り会い権だと言っている。こういう見解が十分に一致していない段階において、地元の意思をどの程度に参酌するのか、くみ分けるのかということが政治の姿勢じゃありませんか。だから、話し合いが円満につくほうがよろしいとおっしゃった。円満につかない場合でも、三月三十一日という日切れに向かってやってしまうのかどうかということを私は行政府の決断として聞いているのです。話し合いがきまらなくても、三月三十一日が来れば、総理、やるのですか、やらずに話し合いを続けられますか、総理として聞かしてください。
  183. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 円満に解決すべく最善の努力を最終段階まで続けるわけであります。続けるわけでございますが、三十一日になってどうするのかと。すべてのものが解決しなければ使用できないか。しかし、そうではなく、所有権を持っている者に対しては契約ができ、しかも、争いのある入り会い慣行というものに対して話がつかなかった場合、それでも使用しないかするかという問題は、これは大半が解決をし、合法的に解決するわけです、そして問題のあるといわれる入り会い慣行というものに対してのみ話がつかないという場合には、これは演習は行なえると、こういうふうに政府は述べておるわけであります。しかし、それは、あなたいま入り会い慣行に対しても、最終的に、入り会い権ありと地元は言い、政府は入り会い慣行であると、こう述べているものは、裁判所の判定をまたなければならないものだから、そのときはやらないほうがいいんだという、あなたの言っていることはよくわかりますよ。よくわかりますが、政府としては、この演習場を使わなければならないという立場に立っているわけですから、違法な行為までしてやるわけにはいきません。いきませんが、所有者と協定ができ、入り会い慣行権だけの問題に対して一部話がつかない場合がありとすれば、これはどうなるかというと、やっぱりそのおおよそが解決をしておるということであれば演習場は使用できると、こう言っていいと思うのです。ただ、それまでは、最善の努力をいたします。これはまあ最善の努力をするということにウェートを置いてお考えをいただいたほうがいいのですが、法律問題として、じゃ逆に、政府を相手どって、入り会い慣行の部分に対してだけ使用禁止の仮処分ができるかという問題も残っているわけです、法律的には。しかし、この土地の入り会い慣行というものに対してはずっと経緯があるわけでございますから、そういう問題に対して、政府も、無理押しをしたり違法行為をしてこれを使用するなどとは考えておりません。おりませんが、円満に片づけるために全力をあげますというのが現時点のことでございます。三十一日に入り会い慣行権だけが残ったらどうするかという問題は、まだ決定はしておりません。それはそうでしょう、いま入り会い慣行権がまとまらなくてもやりますと言えば、やるならやってみろということになって、話がうまくいくものもうまくいかなくなりますから、行政の責任者がそういうことを言うべきでないということは、もう申すまでもないことであります。ですから、最善の努力をいたします、こういうことで、ここらで御理解いただけると思うのです。
  184. 上田哲

    上田哲君 そうしますと、じゃ、まとめましょうか。第一に、地元に対して政府は無理をしない、第二に、類似の判例をできるだけ尊重して行政判断を行なう、第三に、三月三十一日ということに徹底的な執着を必ずしもしないという方向で最善の努力をすると、こういうことで理解してよろしいですか。
  185. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) その四つのうちの第一、最善の努力をするということで御理解いただきたい。(「中身がない」と呼ぶ者あり)
  186. 上田哲

    上田哲君 むずかしいことじゃないですよ、総理。いまおっしゃったとおり、地元に対して無理押しはしない、これはあたりまえじゃないですか。また、できるだけ類似の判例はこれを参酌して考えよう。三月三十一日のみを目ざしてごり押しをすることはしないと、これが最善の努力をする内容であるということでいいでしょう。
  187. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いろいろな問題がございまして、あなたの四点は、そのまま、はいそうですとは言えないような状態にあるのです。それは、県もあるし、組合もあるし、それから所有者もございますし、入り会い権そのものを持っている者もありますし、入り会い慣行の場所もあるわけでありますから、だれが考えてみても、大体政府のやることが正しいという理解が得られないようなことを政府はやるわけはないのです。ですから、最善の努力をいたします。最善の努力をいたしますということでこれは理解がいただけると思うのです。
  188. 上田哲

    上田哲君 大いに理解いたしましょう。総理は三月三十一日にはこだわらないし、地元には無理はせぬということをおっしゃったということをよく理解をいたします。  そうすると、法律的な解釈を判例にのっとって大いにひとつ参酌しなければならぬのでありまして、たまたまその入り会い権については、去る十三日の青森県の入り会い権確認訴訟というのが、最高裁から新判例として出ております。政府はこの判例を尊重することは言うまでもないと思いますが、よろしいですか。
  189. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 入り会い権に関する判例は、大審院判例をくつがしたものと理解をしておりますから、判例に従順でなければならない。これはもう言うまでもありません。
  190. 上田哲

    上田哲君 この判例は北富士問題に非常に類似しているわけでありまして、大きな解釈上の先例となるものだと思います。特に昨年の十月十七日の参議院内閣委員会で、政府側は、行政府としては司法の最高意思に従って大正四年大審院判例の立場をとらざるを得ないと、その立場にもかかわらず、今回最高裁が新たなる判決が示されればそれに従うのだということをはっきりおっしゃっておられるわけでありまして、確認するような形になりますけれども、この判例にのっとって、北富士演習場問題についての処置は大きく政府の方針が変わると理解してよろしいですか。
  191. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私からお答えしてもいいのですが、これはずっと前から法制局長官が答えておりますから、法制局長官をして答えさせます。
  192. 吉國一郎

    政府委員吉國一郎君) お答え申し上げます。  実は、八月二十二日の政府統一見解につきましては、当院の内閣委員会におきまして足鹿委員に、私が統一見解について説明をしろという御要求がございまして、説明を申し上げたような関係もございましたので、私から今度の判決に関連した問題について申し上げたいと思います。  先ほど御言及の大正四年の三月十六日の大審院判決では、明治初年の官民有区分という処分がございましたが、その処分によって官有地に編入をされました土地につきましては、入り会い権は一切消滅したものという判決をしたものでございました。ところが、去る三月十三日の鼻風山の事件につきましての最高裁判決では、入り会い権は「当然には消滅しなかった」ということにいたされまして、したがいまして、大正四年の大審院判決は変更されるべきであるという意向が示されたわけでございます。政府といたしましては、司法の最高機関が示した右の新しい解釈につきましては、これを尊重すべきものであると考えておりまして、昨年の八月二十二日の政府統一見解の中で、右の解釈に矛盾する部分は当然訂正をすべきであると考えております。  しかしながら、最高裁の判決でも、「従前入会権を有していた村民の官有地への立入りを制限し、あるいは相当の借地料を支払わせて入山を認めることとし」て、「従前の入会権が事実上消滅し、あるいはその形態を異にする権利関係に移行したとみられる」ものと判決で言っておりますものと、それから「官有地に編入されたとはいえ、その地上に村民の植栽、培養を伴う明確な入会慣行があるため、これが尊重され、従前の慣行がそのまま容認され」、「官有地上に入会権が存続していた」と見られるものの二つがあると言っておりまして、ある土地につきまして、官民有区分の処分が行なわれましたあとで入り会い権が消滅したか、あるいは存続しているかということは、最高裁判決が出ました後におきましても、個々の事案ごとに判断をすべき問題であると思います。
  193. 足鹿覺

    足鹿覺君 関連。  関連でありまから簡潔にお伺いいたしますが、昭和四十七年十月十七日、参議院内閣委員会におきまして山下元利内閣官房副長官は、私の質問に答えて、「御意見は十分承りましたが、政府といたしましては、司法権の意思というものが最終的に最高裁の判決で示されている限りは、それに従うことであると考えておるわけでございます。」と明確に答えておるのです。ただいま総理は、その意味を踏まえて御答弁になったと私は理解をしている。しかるに、法制局長官の御答弁はおかしい。個々のケースによって違うというような意味合いのことを申されたことは不可解であります。北富士は今回の最高裁の判決のケースと性質が違っておる、北富士の場合には入り会い権が存在しないという政府の見解ですね。個々の問題を検討してみて、どうも、そういう気持ちを持っておるのではないか、こういうふうにも受け取れるのであります。だから、個々のケースとして北富士は今回の判例が適用できないのか。適用ができるのならそれに従う。総理は従順であるといま言われた。従順であるということは、山下官房副長官の言われたこと、その最高裁の判例に従うと言われたことと私は解します。したがって、この点は、個々のケースによって違うなどというような法制局長官の答弁はおかしい。その点を総理からはっきり御確認を願いたいと思います。
  194. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 最高裁の判例、特に前にあった判例をくつがえすような判例が出た場合は、その新判例に従わなければならないこと、これは言うをまたない、原則であります。しかし、今度の判決に対しましては、いま法制局長官が述べましたように、全体的に入り会い権に対してすべてのものを対象にして述べた事案ではないわけであります。これに対しては、いろいろ問題があるものは区別をして判決文が書かれておるわけでありますから、北富士の内容には、この判例の中に書いてあるような部分が存在いたします。これはすでに補償を払いつつ、しかも限ったものに対して入山を認めておるというようなものもございます。そういうような事態がこの判例に違反をするというような解釈はできないわけでありますが、この判例の、判決の趣旨に沿っておるものに対しては、適法に解釈をせらるべきはこれはもう当然でございまして、政府が違法な解釈を行なう、恣意によって解釈を行なう、そういうことが行なわれるわけではありません。この判決そのものがすべての入り会い権、各種の入り会い権すべてに対して新判例を示しておるわけではありませんから、大審院判例と異なる判例が示されたということであって、精神的にはこれに従わなければならない。だから、いま法制局長官が述べましたとおり、従前に述べております大審院判例による政府の考え方は、一部修正をしなければならないということは申し上げておるわけでございますから、すべてのものに対しての判例を示したものでないということは、これは判決文を読んでみればおわかりになるとおりでございまして、政府は判例を尊重しながら、適法な理解を示してまいるということであります。
  195. 足鹿覺

    足鹿覺君 委員長
  196. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 関連ですか。いま一問。
  197. 足鹿覺

    足鹿覺君 去る三月十三日に最高裁が、入り会い権は明治初年の山林原野等官民有区分処分によって当然には消滅しなかったものと解すべきであると判示し、従来、これが大正四年のことでありますから六十年近い前のことであります。これを政府が金科玉条としてきた、国有地に入り会い権が存在しないという考え方であった。これが今回くつがえった。これは個々のケースと言われますが、北富士に対しては適用しないという考え、あるいは適用しても一部に適用するという考え方なのか、私はその点が明らかでないと思う。四十七年の十月十七日の内閣委員会における私の質問は、北富士問題に対して、忍草その他の入り会い権に対する質問をしておるのでありまして、ほかのことを私は聞いておるのではなかったのです。いいですか。それに対して、政府を代表して山下官房副長官が、新しい最高裁の判例が出ればこれに従うと言明しておる。それをくつがえされるのですか。これはおかしいですよ。事実、いまの法制局長官の御答弁は、これをくつがえそうとしておる。くつがえさないならくつがえさないと、総理、おっしゃい、はっきり。
  198. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は、はっきり申し上げておるはずでございます。新判例に対しては、政府はこれに従いますと。これを守ります。新判例を守らないような行政府であったらたいへんなことでございまして、これを守るのはあたりまえでございます。これは守ります。  しかし、今度の判示をされた判決文の中には、もうすべてのものに対して全部入り会い権ありといっておるのじゃないわけであります。これは北富士演習場を案件として判示は求めたわけではないのでありまして、判例は、別の案件に対して判例が出たわけでございます。ですが、その判決文の中にありますとおり、いままで政府が、すべて官有地になったものに対しては入り会い権なしという考え方は妥当でないと、こういう趣旨の判決でありますが、しかし、その後いろいろな契約の内容によって異なる場合もあることを十分認めておるわけでありますから、北富士の中では私はまだこまかい問題を承知しておりませんから、一般的な議論でしか述べられないわけでございますが、しかし、適法に処理されておるもの、入り会い権に対しても全く補償を受けましたものであって、以後いかなる状態があってもそういうものは一切主張しませんというような契約のもとでやっておるものであるならば、これは入り会い権を新たに認める判示ではない。しかしその中には、いまのように、当然官有地に移ったけれども今度の案件と同じようなケースで、入り会い権ありというふうな場所もあるかもわかりません。あれば、その部分に対してはこの判例が適用されるということはもう当然でございます。それは当然のことなんです。  ですから、そういう意味で、この判例に従って実情が区分さるべきことであって、あらゆる官有地に対して、すべて入り会い権ありというようにこの判例を認むべきではないのであって、法制局長官が述べたことも、判決の条文によって述べておるのでありますから、これは理解ができると思いますし、政府もすべての問題を、いままでの解釈どおり、官有地に対しては入り会い権なしという大審院判例を、この後なお強弁するものでないということはもう当然のことであります。
  199. 足鹿覺

    足鹿覺君 委員長
  200. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 関連だから、その程度にしてください。
  201. 足鹿覺

    足鹿覺君 もう一問。
  202. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) じゃ、ごく簡潔に、いま一問。
  203. 足鹿覺

    足鹿覺君 北富士問題に私は焦点を置いてお尋ねをしておるのであります。  そこで、総理に伺いますと同時に、関係当局に伺いますが、北富士紛争は、大正四年判例を楯とする政府と、「入り会い権盗人は国だ」という忍草二十八年の悲痛な抵抗の歴史でもあるわけであります。政府は四十年五月以降、江崎・藤枝覚え書きの事実上の破棄をねらい、分裂工作、告訴の教唆等、忍草弾圧に明け暮れてきた。また政府は、昨年本院において神沢委員の質問に対し、恩賜林組合と訴訟取り下げに関する密約はないと言ってきた。ところが、四十五年七月四日、国有地払い下げを条件に、使用転換、訴訟取り下げと、私はここにその資料を持っておりますが、その契約をしておるのであります。訴訟の取り下げの契約をしておるのであります。覚え書きを契約しておるのであります。このとおり覚え書きを出しておるのであります。しかも、払い下げの国有地は、忍草の入り会い慣習が政府によって全面的に認められておる地域であり、現にその一部区域は植林事業に供されておるのであります。この密約は北富士紛争に油を注ぐものである。そこで、理財局長あるいは大蔵当局からその有無をお尋ねをいたして、あとで御答弁を願いますが、ときあたかも大正四年の判例がくつがえった。したがって、官房副長官の言明を踏まえて私はお尋ねをいたしておるのでありまして、入り会い権者の同意なしに富士保全整備法、国有地の払い下げの密約、膨大な国費の違法な支出によって、本月中に協定を結ぼうとしておる。これらの問題を適正に処理しなければ、いままで以上に紛争の激化が明白であると思います。にもかかわらず、予定どおり締結を強行なさる御所存であるかどうかを、総理に、この点はきわめて重要でありますので、お尋ねをいたし、引き続き基地周辺整備法について……。
  204. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 足鹿君、簡潔に願います。
  205. 足鹿覺

    足鹿覺君 衆議院の野坂浩賢議員が質問主意書を提出をいたしております。富士吉田市は民生安定施設として四十五年完成した整経工場を、糸をつくる工場でありますが、去る二十日、吉田織物協同組合に無償譲渡することを議会に提案した。これは譲渡を禁じた補助金等適正化法第二十二条に違反すると私は思います。本施設に対する助成金は二億円、助成理由は、戦前旧陸軍によって同市千十四戸の農家が土地を買収され、やむなく織物業に転業したので、それを救済するためであるとなっておるが、これはまっかなうそである。補助金等適正化法二十九条の罰則に触れるものと思う。さらに、この施設に対する助成金の支出が違法であると思います。同施設が周辺整備法の対象となる旨告示されたのが昭和四十三年六月二十七日である。しかるに、助成金の支出はいまだ告示の出ない四十二年からなされておる。そしてこのようなものができておる。これは一体どういうことか。施設庁長官並びに会計検査院長の答弁を求めたいと思います。  なお、官房長官にもこの際伺いますが……。
  206. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 足鹿君、簡単に願います。
  207. 足鹿覺

    足鹿覺君 このような前例があるにかかわらず、再び北富士演習場の使用転換の交換条件として、後藤田官房副長官が百億円の周辺整備事業を約束しており、それはすでに明らかになったように、補助金適正化法の罰則に触れる違法措置である。大蔵当局は了承を与えているのかどうか、大蔵大臣に伺うとともに、政府の約束が使用転換の交換条件というワンセットのものである以上、政府はいわばインチキ手形といえる違法な約束を撤回し、使用転換交渉をやり直すか、それとも厳密な現地調査の結果が明らかになるまで使用転換協定の締結を延ばすべきである。この点については総理の決断が承りたい。同時に会計検査院長ほか関係省庁の責任者に承りたい。
  208. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 官有地には入り会い権なしとしておった政府の考え方は、新判例によって改めなければならないと、こう申し述べておるわけでございます。しかしこの判例をつまびらかに読めば、すべてのものに対して判示をしたものでないということも御理解が十分いただけるはずでございます。ですから、官有地には入り会い権なしといっておった部分に対して入り会い権を認める、認めなければならないということもございますが、適法に措置されておる官有地に対してまで、すべての適法な措置によって行なわれた入り会い権まで復活するものでないことは言うまでもないわけでございます。ですからそういう問題は、地籍地籍によってみな事情は違うのでございますから、これらは新判例の精神に沿って適法に処理をしてまいりますと、こう明確に述べておって、いささかの間違いもございません。そして、あとは三十一日まででございますから、この暫定使用期間の三十一日までの間に合理的、適法かつ地元の協力を得られるように最善の努力をいたします。こういうことで十分御理解いただけると思います。
  209. 白木康進

    会計検査院長(白木康進君) お答えいたします。  一般的に申しまして、補助金の経理が不当な場合に、直ちに適正化法違反になるかどうかということは必ずしもそうでないわけでございますが、ただいまお示しの案件につきましては、私の記憶では、適正化法違反の事実があるかどうかの審議は私どもではいたしておらぬと思いますが、手元に資料ございませんので後刻調査の上、なお申し出があれば調査の結果、御回答いたしたいと思います。
  210. 上田哲

    上田哲君 政府は、山梨県知事との覚え書きに基づいて、県有地使用の代償として富士保全整備法なるものを今国会に提案するといわれておりますが、そのとおりでありますか。
  211. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) この富士保全整備法という問題は、昨年の八月二十八日でありますか、私と山梨県知事と、それから前山梨県議会の議長小林さん、これは北富士演習場対策協議会長という名前で来られまして、そのときに取りきめをいたしたものであります。先ほど足鹿さんの話の中にもございましたこの富士保全整備法というのは、政府が申し上げた問題ではありません。地元を代表する最も大きな知事さん、そして小林協議会長、この方々が来て、ぜひ富士保全法をつくってくれということでございました。その後、富士保全法だけでは困る、保全が先になるから困るので整備も入れてくれというので、富士保全整備法というものをぜひつくってもらいたいということで、その後二、三回にわたって陳情を受けておりますし、けさも知事も見えまして、そういう法律を早く整備してもらいたい、内容もきめてもらいたい、補助率のかさ上げもきめてもらいたいという強い陳情を受けました。この知事さんとかそういう小林さんは地元を代表する大きな方でであろうと、かように私は考えております。だから、山梨県知事さんのほうからこういうものをぜひつくってもらいたいという要望があったことだけを申し上げておきます。
  212. 上田哲

    上田哲君 言い出しっぺはおれではないということを盛んに言われておるわけでありますが、それでは政府の考えている富士保全とはどういうことでありますか。
  213. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いまお話しのあったように、山梨県の強い要望があった。富士は日本を象徴する富士山でありますから、これが最近いろいろ乱開発の傾向もありますので、この富士の自然的な環境は保全をしたい。そしてその自然的な環境を害するような開発というものはこれはチェックしなければならぬ。開発をするにしても、その環境保全にふさわしい開発をする。そういうことで富士というものの環境を保全するという必要はあるという観点から、まだこの法案については検討中でありますから内容はこうだとは言えませんが、その主たる目的は、富士という象徴的な自然環境の保全、その保全の上に立った一つの開発ということにその法案はなることは明らかでございます。
  214. 上田哲

    上田哲君 山梨県や地元は、富士を日本の象徴として国民のものとしてきれいに残しておきたい、これが地元の考え方。政府のほうは、基地として県有地の提供を受けたいということである、こういうことではないですか。
  215. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 富士に演習地があるということは、理想的に言えば好ましいことでも私はないと思う。しかし、防衛庁の施設庁長官ともこの点については話をしたわけですが、どうも代替地というものがないということで、ある程度、六十万坪ですかな、今回返還を受けることになっておる。二百十ヘクタールですか。しかし全面の返還というものは非常に困難である、こういうことであります。でき得べくんば演習場のない富士の環境を整備したいということは、われわれとしてもこれは願いでありますけれども、現在、安保条約のもとにおいて、そういう地位協定によって政府としてそれを提供することになっておりますから、そういう事情があるわけでございます。だから、いま私らのほうとして考えておる立法は、富士のよい還境を保全したい。これはもう立法を貫いていきたいという精神でございます。
  216. 上田哲

    上田哲君 政府の意図されている富士保全整備法の中に、北富士演習場は入るのですか、入らないのですか。
  217. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは入ることになるわけであります。
  218. 上田哲

    上田哲君 広大な、日本で一番大きい大軍事演習場を含んでいる日本の象徴富士の保全法なんというものは、一体考えられるでありましょうか。こういう考え方が、どうなんでしょうね、一ぺん伺わしていただきたい。
  219. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 最初に申し上げたように、好ましいことではない、できるだけそういう演習場は撤去されるようにすることが好ましいけれども、現実においてはそれにかわる一つの演習場というものがないということで、ある時間をかさなければならぬと、こう考えておるわけでございます。
  220. 上田哲

    上田哲君 中に演習場があるということはたいへん好ましくないとおっしゃっておられるわけです。時間をかせとおっしゃるわけです。ところが、米軍はもう要らないと言っておるのです。それならば、日本政府のもとにある自衛隊を日本政府がもう富士保全のために二次的に扱うとなれば、これは解消することではありませんか。
  221. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) いま、米軍は要らないと言っているというお話でございますけれども、私どもの承知している限りでは、米軍としては、本演習場は本土唯一の米軍が使っている演習場でございまして、この演習場はぜひ使用したいという意向は非常に強いものがございます。それからまた、自衛隊にとりましてもこの演習場は必要である、こういうことでございます。
  222. 上田哲

    上田哲君 じゃ、何で二4(b)にするのすでか。二4(b)にするというのはおかしいじゃありませんか。二4(a)であればいいはずじゃありませんか。そういうことはでたらめな詭弁であって、もしそれがあなたの言うとおりであるならば、日本自衛隊は、日本政府は、アメリカさんの肩がわりに、こちら側の管理権のもとで米軍の利便に供するということになる。しかも霊峰富士を。おかしいじゃありませんか。もしそれがいけないと言うなら、間違いだと言うなら、過去五年間資料提出を求めてありますから、自衛隊と米軍とこの演習場をどういうふうに使ったかという頻度を出してごらんなさい。
  223. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 二4(a)ということで米軍の管理のもとに自衛隊が使用するか、あるいは二4(b)ということで自衛隊が管理をしてそれに米軍の使用を認めるかということは、一つのたてまえの問題として一個の問題であろうと思います。しかし、私どもは、たとえば住宅専用地区とかあるいは専用飛行場とか、そういうものと違いまして、演習場自身というものは、どちらが使用するにしても全部が全部それを使用するわけではない。そういう形のものになってまいりますと、米軍の演習場を自衛隊がそれを使用させてもらうという形よりも、日本本土にある演習場でございますから、国土内の演習場でございますから、むしろ二4(b)という形で自衛隊が管理して、そうして必要に応じて米軍の使用を認める、このほうがたてまえではないかというふうに考えたわけでございます。で、この考え方に立って、すでに東富士演習場は昭和四十三年にそういう二4(b)という形に移行しております。また、昭和三十六年八月に基地問題閣僚懇談会では了解事項としてそういうふうに使用転換の方針を明らかにされておりますが、これも、いわばたてまえの問題としてそういうふうに共同使用についてどちらのたてまえがいいのかということから考えられた問題であろうと思います。
  224. 上田哲

    上田哲君 高松さん、あなたたいへんなことを言いましたよ。そういう解釈をこれから政府はとっていいですか。さっきの副総理の話と全然違うんだ、これは。いいですか。還境庁長官が言われたのは、富士山は日本の富士として日本国民だけが使っていきたいんだと、演習場があるのは好ましいことではないんだけれども安保条約があるからしかたがないんだとおっしゃった。いいですか。それならば二4(a)なんですよ。二4(a)でアメリカ軍が管理権を持っている、それを日本が共同使用をさせてもらうという形になるんだ。つまり、これはアメリカが富士の演習場を持っているんだってんだからしかたないっていうことなんだ。いいですか。国内法はそこで問題が出てくるわけですよ。ところが、二4(b)だとあなたはおっしゃるが、二4(a)でも二4(b)でもどっちでもこれはいいんだということを言った。日本が管理権を持つのが二4(b)ですよ。場合によっちゃアメリカに貸してやるということは、主権のウエートが違いますよ。日本の高級官僚施設庁長官というのは、日本の主権について、こんな国土狭隘な日本の主権についてその程度の感覚しか持っておらぬのか。いいですか。二4(b)は、日本に管理権が移って、やむを得ないけれども、アメリカに貸してやろうということならばことばとしてわからぬではない。二4(a)でも二4(b)でも同じだ、どっちに管理権があってもこれは都合のいいほうにすればいいだけのことだなというようなことで日本の高級官僚施設庁長官がつとまると思うか。そういう解釈を立てることは、霊峰富士ということを言わずとも、われわれの国土に対する重大なこれは解釈変更のみならず見識の破綻ですよ。こういう考え方で二4(a)と二4(b)が運用されていたというのなら、私たちはこれを新しい解釈として承る。はっきりしたまえ。
  225. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) 少しことばが足りないで誤解をいただいたのかもしれませんが、私が申し上げましたのは、共同使用については二つの考え方がある、しかし、演習場というふうなものにつきましては、まさにいま上田先生のおっしゃったように、一つの主権国家として考えた場合には二4(b)のほうがたてまえとしてはより適当であるというふうに私どもは考えているということを申し上げたわけでございます。二4(a)でいつまでもいくということにつきましては、そういう点で、一つの独立国家、主権国家というたてまえからいってそれは好ましいことではないではないか、むしろ二4(b)のほうがより適切である、こういうふうに考えたことを先ほど申し上げたわけでございます。それから、還境庁長官が、安保協定によって提供している施設だからということをおっしゃいましたのは、現実そのとおりでございまして、それから、これは二4(b)になりましても、米軍は二4(b)という形において使用をするということには変わりはございませんので、地位協定の二条4項(b)に基づいて使用するという形に相違はないのでございまして、この点も私はさように考えます。それから、富士演習場はなくなったほうがいいということにつきましては、私ども、その点につきましてはいろいろ問題があろうと思いますが、ただ、現実には他にかわるべきそういう演習場というものは現在ない。そういうことで、これはやはりやむを得ず使用をしてまいらなければならない。それは、その使用は米軍にとっても必要であるし自衛隊にとってもそういう必要性がある、こういうことを申し上げたわけでございます。
  226. 上田哲

    上田哲君 根本的にはよくわかっておらぬです。こういう施設庁長官がいるというのは、日本国民のためまことに憂うべきことですよ。はっきりしていただきたい。二4(a)と二4(b)と、日本国主権の管理権、どちらがウエートがあるのですか。
  227. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) いま施設庁長官が申し上げたことを申し上げるようなことになりまするが、安保条約が始まりまして、初め米軍が相当の、何といいますか、第一線部隊をも包含をしておるような状況のもとにおいて演習場等の使用が始まりました場合、その一部について共同使用を認めるというふうなことがあって、向こうが使用管理権を持ち自衛隊が使わしてもらうという形がだんだん出てまいりましたが、その後の経過、よく御承知のようなことでございまして、現在の状態では、やはり日本の国としては、日本の国すなわち自衛隊が管理権を持ち、必要な使用を米軍に認めるというふうにすることが適当であろう、また米軍もそういう形を了承をするというふうにだんだん事情が変わってきたということでありまして、日本国の主権の行使というものについて、何と申しまするか、軽々しく解釈を変更したという筋のものでないことはひとつ十分御理解を賜わりたい。そういうことで、だんだん安保条約を履行していく経過の中でそういうふうになってきた。それで東富士演習場について先にそういう形態をとり、北富士についてもそういう形態をとることを米軍も了承をしておるという形でございまするので、日本国の主権について軽々しい解釈の変更をした問題でないということをひとつ御理解を賜わりたいと思うのでございます。
  228. 上田哲

    上田哲君 ああいう解釈がまかり通ったら重大なことです。解釈の変更をしたんではなくて、初めっからそういう解釈論に立っているところに問題があるんです。明らかに二4の(a)から(b)に変わるというような、項目が一つ動くということではなくて、管理権がどちらに主体を持つかということは、日本国主権の問題としては非常に重要なことですね。法務大臣どうですか。うなずいておられるから伺っておきたい。
  229. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) お説のとおりに存じます。
  230. 上田哲

    上田哲君 明らかに二4(b)に日本の主権がその分だけ回復されたというふうに認識を持って、寸士といえども日本の国土を考えていただかなければ困る。政治の姿勢ですよ、そうですね、総理。そういう立場からすれば、安保条約のもとにある日本自衛隊、日本政府という立場であれば、それはわずかな差であるかもしれないけれども、いまの「てにをは」をとらえるわけではないが、施設庁長官のことばにあるように、二4(a)であったものが二4(b)によって米軍が日本の演習場を使うのだ、使わせてやるということばを使えとは言わないけれども、われわれは米軍に使用を認めるのだぐらいのことは言わなくちゃ、あなたは日本の官僚でありますか。政府はそれぐらいのことをしっかりしてくれなければ国民理解なんかあり得ないでしょう。私は、そこのところは非常に「てにをは」の問題ではなくて、重要だと思う。そうではなくて、二4(a)と二4(b)をそんなに軽々しく(a)から(b)に動かしたなんて考えているようじゃ施設庁にまかしておくことはできないのだということを私は言っておきたいんです。さて、そうなるならば、二4(b)になったということは、その分だけ日本に主権行為は通るだろう、どうしても富士をきれいにしたいというなら、その分だけ発言権がふえるだろうということになるはずでありましょう。自衛隊を握っている政府の行政権としていま一歩の努力はできませんか。
  231. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 富士保全法というものが、富士保全整備法、これが成案を得ておりませんから、いま明白なことは言えませんが、そういう法律があっても、その演習場というものはその保全法の適用を受けるということは当然でございます。
  232. 上田哲

    上田哲君 総理、いまの二4(a)と二4(b)の問題、これは基本の問題ですから、総理の御見解をひとつ伺っておきます。
  233. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それはあなたが指摘をされたとおり、(b)に移っていくということが望ましいことであると、これはもう日本が管理をするということがこれからの方向としては正しいことである。これは現実問題としても、アメリカ軍が使用の主体である場合には、アメリカ軍司令官に会おうとしたってなかなか地元の者も会えないわけでありますが、自衛隊が使用しておるということであれば、これはもういつでも会えるわけでございますし、随時地元の要望も入れられるということから考えてみても、自衛隊が主管をするということが正しいことであると、これはもう言うまでもないことであります。  いまの答弁は二つの問題を一緒にして答えておりますからおしかりを受けたと思いますが、これは二4(a)がいいのか二4(b)がいいのかといえば、もう(b)のほうに移ることが主権の上から見ても当然にいいことである。で、あとの問題は、米軍の使用そのものはこれは地位協定その他によってやることでございまして、区別をしてお答えをすれば理解ができたと思いますが、幾らかその意味で誤解を生じたとすれば遺憾でありますが、これはもう主権の問題からいっても日本の自衛隊が使用するということが一番いいことだと、こう思います。
  234. 上田哲

    上田哲君 これであまり時間をとりたくないんですが、誤解されちゃ困るんでもう一言申し上げておきます。  私は二4(b)のほうがけっこうだということを言ってるんじゃないんです。二4(a)でも二4(b)でも困ることは同じなんです。これは二4(a)でも二4(b)でも同じなんです。困ることは同じなんですよ。そこのところはひとつ誤解しないようにしていただきたい。けれども、二4(b)ということの主権上の配慮を、あんないいかげんな解釈で一般論として持たれては重大なことだということなんです。それ、もう一ぺんだけひとつ……、重大なことですから。
  235. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これはあなたも二つに分けてひとつ考えていただきたいと思うんですが、これは一つは富士演習場がないほうが望ましいという気持ちはわかりますが、これは望ましいことと必要であることと、現実的に他に代替地が求めがたいということはもう事実でございますから、その問題はひとつ別にしまして、そのためには、演習場があることによって霊峰富士の周辺が整備をされないようなことがあっては困るのでと新しい立法も考えておるわけでありますから、その問題は別にして、で、現実問題としては演習場の存在を否定することはできない、演習場の必要性も否定することはできないとしたならば、次はその形態の問題であります。二4(a)にするか二4(b)にするか。それは(b)にするほうがいいというふうに二つに分けてお答えをしているわけであります。
  236. 上田哲

    上田哲君 私は(b)にするほうがいいということを全く主張しているわけではありません。(a)でも(b)でも困ることは同じであります。一般論とは別な話をしていたんでありますが、いまここで問題にしなきゃならないことは、一番大事なことは政府にとって何かといえば、わが国で一番距離の長い演習場である東富士と合わせた北富士演習場がほしいということなんです。これが富士保全、環境保全という目的を逸脱して乗り越えているということに問題がある。だからほんとうの富士がきれいにならない。大体どんな名前をつけようと、富士保全整備法ですか、日本の象徴としての富士を保全するためなんということが書いてあるようでありますけれども、六千五百ヘクタールに及ぶ膨大な北富士演習場がこのどまん中にあって、戦車が走って、火炎放射器が草木を焼き払っている、大口径の砲弾がうなって飛んでいるというようなところがどうして日本の象徴の霊峰富士のすそ野でありましょうか。何が富士保全整備法でありましょうか。ここではほんとうの意味合いが果たされないと思う。なぜそういうことになってしまうかといえば、これは根本的に演習場の提供を受けたいという目的が優先をしてるんだと、こういう保全法というものが出されるということは、(a)、(b)のいかんにかかわらず、これは私は間違いだと思うんです。いかがですか。
  237. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 現実は、言われる面が確かにあると思いますが、その現実を踏まえて環境整備のために、できるだけ環境保全の目的を達成するためにそういう立法も必要であるというのが政府の立場でございます。
  238. 上田哲

    上田哲君 まさしくこれは富士保全法ではなくて北富士演習場保全法であると思います。こういうものはほんとうに、単に地元民だけではなくて、富士を振り仰いでいる全国民の気持ちを裏切るものであろうと思います。このような矛盾に満ちた法案は政治倫理の上からも提案すべきではないと考えますが、総理、いかがですか。
  239. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは、富士にはいま大沢なだれというのがあって、国費をもって富士を守ろうとしているわけです。そして演習場が必要である、これを除くことができないということが前提でもありますし、またそれが事実であるとしたならば、演習場あるなしにかかわらず、富士保全ということが必要であるということも前提としておる答えではありますが、演習場というものはもうのけられないのだ、必要なんだというならば、それを合理的にできるだけ小さくし、地元の利益を守ってやるということに対しては努力をすべきであります。同じように、富士保全法というのを政府がつくって、政府はいまどうしても演習場必要なんですから、せめてやはり富士の保全ということに対しては積極的である、こういうことは政治の上では当然果たさなければならない責務だと思うのです。演習場も除けない、富士保全もしない、これでは政治は存在しない、こう思います。実際、演習場だけではなく、いま河口湖や山中湖そのものが汚染されてどうにもならない状態になっておるのでありまして、演習場の周辺だけ整備しようというのでなく、富士のすそ野を整備しよう、富士全体を整備しようと、こういう挙にいずるものであるということでひとつ御理解賜わりたい。
  240. 上田哲

    上田哲君 私は富士保全整備法を根本的に撤回すべきであるという主張を掲げて今後とも政府を追及していくということを明らかにして問題をあとに譲ります。  本論に入りますが、私は四次防は決して三次防の延長ではない、こういう立場から、特に今日の四次防は十分に近代戦遂行能力を備えた増強計画であるということを踏まえて戦力論をいどんでいきたいと思います。  初めに解釈をただしておきたいのでありますが、さきの臨時国会で、戦力についての政府の統一見解、これを精読いたしますと、最後の部分に非常に重要なところがございます。戦力とは、近代戦争を遂行する能力というのも戦力の一つの定義であると思う。これは一がいに間違いであるということはないと思うという見解が表明されております。これは一方には増原長官が答弁されてましたように、一般通念としては戦力とは近代戦遂行能力であるという解釈、理解、それと、一方では政府の言う、憲法上の禁止している戦力というのは、自衛のための必要最小限を越えるものであるという二つの論理を調和させようとする、こういうものではないか、少なくとも善意に解釈するならば、今日自衛隊の実体について半歩は理解を示したものであるというふうに私は評価もしたいと思うんですが、真意はいかがですか。
  241. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 私のほうにお問いがあったので私からお答えをいたしますが、戦力というものについて解釈のことばに推移があったことはよく御承知のとおりでございます。そういう意味で単純に戦う力というだけではことばがはっきりしないということで、近代戦遂行の能力というふうに説明をし、あるいは自衛のための最小限の武力、自衛力というふうな説明をしてまいったわけであります。そういう意味で、近代戦遂行能力ということばは、普通解釈をいたしますれば、まあ、いわゆる戦いの攻守両面にわたって、最新の兵器、あらゆる手段、方法を用いて遂行されるような、本格的な戦いを遂行するようなもの、そういう総体というふうに言うことができるかと思うわけでございまするが、わが国におきましては、防衛力は憲法九条で、自衛のための必要最小限度という憲法上の厳粛な制約がありまするので、私どもは、自衛のための必要最小限度のもの、これはいわゆる自衛という、専守防衛という目的のみならず、規模、内容等も専守防衛に使われるという必要最小限度のものではなくてはならぬというふうな意味で、そういう解釈をしてまいっておる。御質問の趣旨とあるいはそれたかもわかりませんが、そうであればもう一ぺんお答えをし直したいと思います。
  242. 上田哲

    上田哲君 一般的にいえば、戦力とは、近代戦遂行能力というのが通念だと。日本の自衛隊も、憲法の規定そのものと、実態の問題として、近代戦遂行能力という実態に近づいているということを、半歩はお認めになった見解であろうということです。
  243. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) その点はいま明確に申し上げたように思うのですが、近代戦遂行能力ということを普通に解釈をすれば、現代における戦いの攻守両面にわたって、現在の科学の持つ最新の兵器その他あらゆる手段、方法を用いて本格的な戦いを遂行できる総体、攻守両面にわたり現代の持つ力を発揮をして、最新の兵器、あらゆる手段、方法を用いて戦いを遂行する総体の力というふうに見るべきものだと思うのでありまして、憲法が厳粛な制限を受けておる自衛隊というのは、自衛のための最小限度のものでありまして、いわゆる攻撃的脅威を与えるようなものを持ってはならないということもあります。これを、まあ専守防衛ということばで一応申しておりまするが、専守防衛という立場でありまするので、そういう意味に、この近代戦遂行能力というものは解釈をしていただくべきものである。自衛のための最小限の力というものとはおのずから違う内容のものであるということでございます。
  244. 上田哲

    上田哲君 つまり昨年十一月十三日の政府統一見解で、非常に前進したと評価しておきたいのは、昭和二十九年までとっていた政府の、戦力は近代戦遂行能力ということに半分は戻ったと。そこなんですよ。——もう一ぺん言いましょうか。自衛のための必要最小限ということが一番中心となる解釈とされるわけですね。しかし、その内容として近代戦遂行能力ということを実態として半分は認められたということですね。
  245. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) これはあなたはよく御承知と思いますが、そういう近代戦遂行能力ということばが出ましたのは、戦力を持ってはならないと——戦力とは何か、近代戦を有効に遂行し得る力だと。そういうものは持ってはならないという意味で、戦力ということばが沿革的にも出てきた。それが近代戦遂行能力という意味の戦力に、ことばとして移りましたが、その近代戦遂行能力というのは、いわゆる戦力であり、わが憲法で持つことを認められていないものという意味のものでありまするので、自衛隊は、憲法の厳粛な制限に従って、自衛のための最小限度の自衛力というものを持つ、こういうことになるわけでございます。
  246. 上田哲

    上田哲君 質問を変えましょう。  政府の見解としては、憲法九条に禁ぜられている戦力とは、自衛のための必要最小限の範囲を越えるものだと、したがって、今日の自衛隊は、自衛のための必要最小限だとおっしゃる。それは政府の見解として受け取っておきましょう。そして、その政府の言うところの自衛のための必要最小限は、客観的にいえば、今日近代戦遂行能力に達しているとお考えになりますか。
  247. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 近代戦遂行の能力というのを、先ほど申し上げましたことを繰り返して恐縮ですが、すなわち現代における戦争の攻守両面にわたって、最新の兵器、その他あらゆる手段、方法を用いて遂行される本格的な戦いを遂行し得る総体というふうに私はいま解釈するのが、近代戦遂行能力というものの意味では適当であると思うわけでございます。そういう意味では、自衛隊の持つこの力、これをいわゆる戦力ということばであらわしてもいいかもしれませんが、自衛隊の持つ自衛力というものは、自衛のため必要な最小限度、専守防衛を遂行するものでありまして、近隣の諸国に対して攻撃的、侵略的脅威を与えるような武器を持つことはできないというふうなことにもあらわれまするし、この近代戦遂行能力とは、制限をされた——よりは制限をされたものであるというふうに御説明をしておるわけでございます。
  248. 上田哲

    上田哲君 どんなに実態をおおい隠しても、今日の四次防は、世界の通念における近代戦遂行能力に到達しておると思うのです。それはしかし抽象論でやっても意味はないので、政府の見解として、私どもがはっきりさしておきたいのは、少なくとも、その自衛隊の持っている戦闘力の大小の問題ではなくて、それが自衛のためにのみ行使されるかどうか、つまり先ほど来のおことばを使えば、専守防衛であるかどうかということにしっかり究極されるのだと、こういうことでいいですね。
  249. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) やはり専守防衛ということだけではいけないと思うのでありまして、近隣の諸国に攻撃的、侵略的脅威を与えるようなものを持つことは、この自衛のため最小限必要な力としても許されない。防衛を全くする、自衛を全くするというような装備を持つ、そうして専守防衛というたてまえで国を守るということであるわけでございます。
  250. 上田哲

    上田哲君 それは、単に自衛であるだけじゃなくて、ほかに対して脅威を与えるようなものを持ってはいかぬのだ、ということも含むという意味ですね。
  251. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) いわゆる攻撃的脅威、侵略的脅威を与えるような武器を持つことはできないという意味でございます。
  252. 上田哲

    上田哲君 自衛隊が合憲であるかどうかというのは、専守防衛が少なくとも絶対条件の一つであるということは明らかですね、これは総理
  253. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 何ですか。
  254. 上田哲

    上田哲君 自衛隊が合憲であるということは、専守防衛が少なくとも絶対条件であると。
  255. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 憲法の条章に明らかに九条が存在するのでございますから、自衛隊が合憲であるということは、全く自衛のため、防衛的であって、攻撃的であってはならないという範囲になければならないということは、もう言うまでもありません。
  256. 上田哲

    上田哲君 念のために確認しますが、そうすると、自衛隊が専守防衛の線を踏み出すということになれば、明らかにこれは憲法違反として政府はこれを押えるということでありますね。
  257. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 事実問題を指摘されれば一番わかると思いますが、いずれにしても、自衛隊は他に脅威を与えてはならない、侵略はできない、国際紛争を自衛隊の力で解決をしない、こういうことでありますから、これは全く専守防衛、防衛のみに使われるものであるということであって、他の目的に使われるということになれば、違憲の問題が起こることは当然であります。
  258. 上田哲

    上田哲君 そこのところは非常によくわかりました。  もう一つ。いわゆる、防衛力の限界問題でありますけれども、総理が、中国から帰ってこられた。たいへん御苦労でありました。しかし、その直後に四次防を策定された。そしてそのときに、防衛力の平和時における限界を策定せよということを指示された。これは私は、このままでは、国民理解ということ、いつも総理が言われる問題がなかなかむずかしいのじゃないかということを直観的にお考えになったからだと思うんです。そのときの御心境ですね、これをお聞かせいただきたい。
  259. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは四次防に対しては、防衛力が無制限に拡大をされるおそれがある、一体歯どめはあるのかというような考え方国民の一部の方々にあることは私も承知をいたしております。これは防衛力も相対的な問題でございますからと、こういう答弁をよくするのでございますが、そうすると、相手がどんどんと科学や技術が発達してまいりますと、専守防衛であっても、こちらの兵器の威力も拡大していくわけであります。そうすれば、もっぱらそれが防御用につくられたものでも、攻撃用に使われないという保証はないじゃないかという問題も起こってまいります。そうすると、専守防衛ということばの中で一体どこまでいくのかという問題が国民の間に起これば、防衛に対する理解と認識を欠くわけでありますので、そういう意味で、平和時における防衛力の限界という勉強課題を出したわけであります。それは相手のある話でございますし、一つの状況を想定をしなければならない。しかし、その想定すること自体もむずかしいということでありましたが、それは、一つの、すべてに当てはまる方程式というのではないんだと、だからひとつ勉強してみて——国民理解を得られるためには、できないと言われても勉強すべきである。こういうことで、防衛庁もむずかしい問題でありますが、ひとつ勉強いたしてみましょう、こういうことであって、これは、国民理解を得られるためには——そういったある程度のやっぱり歯どめというものがあるんだということを国民理解をしていただくためにも、いま憲法で許される防衛力の限界というものはこういうものなんだと、そして平和時におけるものはこういうものなんですということが国民の前に示されれば、それなりに私は意義あることだと、こう考えたわけでございます。
  260. 上田哲

    上田哲君 これを政府みずから撤回されることになったわけでありますけれども、撤回されたという経緯について、どういうふうにお考えですか。
  261. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは、衆議院において、勉強しておるか——勉強しております、勉強の結果は国会でもって明らかにするか——明らかにいたしますと。また、これは国民理解を得るために考えたことでございますから、国会でもって申し上げるということは当然のことでございます。で、まあこれは参議院でもってほんとうなら申し上げるべきでございましたが、衆議院先議でございましたので、衆議院でもって質問があって、衆議院でもってその実態、その勉強の結論を明らかにせよという御発言でございましたので、防衛庁長官が述べたわけでございます。で、まあ述べましたら、いろいろ御質疑がございましたが、どうも四次防よりも大きい、これが平和時かというようないろいろな御質問がございました。まあその結果、衆議院予算委員長の御発言もありまして、政府はこれを撤回をする。この種の問題は、これは勉強した結果が出たか——出ました。言ってみろということですから、申し上げたわけです。ですから、出すとか、撤回するとかという議案、案件ではないわけでございますから、政府の勉強の結果をすなおにそのまま申し上げたわけでございます。しかし、あの当時の状態からいいまして、政府が自主的に撤回ということばを使って撤回をしたほうがどうも国会尊重になると、こう私は理解をしまして、撤回いたしますと、こう申し上げたわけでございます。これは発言したものを発言を取り消しますと、こういう種類のものではなく、これはちょうど印刷物を配付しましたので、印刷物を含めて撤回いたしますと、こう申し上げたわけであります。
  262. 上田哲

    上田哲君 私は、両院一体でありますから、どっちでどうなってもそのことは問題にしません。まあどっちが言い出したとか、言い出さないとかいうことも全然問題ではないんです。  私がここでひとつはっきりしていただきたいと思うことは、私は、総理が平和時の防衛力の限界を何とか考えてみようとおっしゃったことは、発想としてよかったと思っているんですよ。よくすれ違いとか、平行線とかということになりますけれども、私たちは非武装中立ですから、もういかなる一兵たりともあっちゃいかぬということを、いまも原則として持っておるわけです。けれども、それはそれとして、今日二十六万の自衛隊というものが現存しておるときに、議論ができなきゃしょうがないと思っているから、また総理のお気持ちをそんたくするに、日中に橋が渡った。帰ってきたところで、どかんとまた大きな四次防が出てくるなんという話は、やっぱり国民が違和感を持ったことは事実ですから、総理、率直に申し上げて、防衛問題にあまり熟達されているとは思いませんけれども、だからこそ、直観的には、これはちょっとでか過ぎるぞということをお考えになっただろうと思う。そうですね。——まあそれはいいですよ、それで。だから、やっぱりこれはどこかできちんとしておかないと、国民理解が遠ざかるぞということになるだろうということでお考えになったということは、議論のためにはけっこうだと私はいまも思っておるんですよ。そう思っているんです。  ただね、総理、私は、去年の十一月段階でも、しきりにこのことを申し上げたのだが、これはなぜできなかったのかということをいま考えていただきたいんですが、元来、平和時であってもなくても、それはかまいません。およそ防衛力の限界を策定するということ自体が無理なんじゃないですか。
  263. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 防衛力の限界という問題は、これは相対的な問題でございますから、相手のある話でございますので、なかなか勉強するのは無理なんですと、こういうことでございます。無理であっても、国民の一部に、四次防が五次防になり、五次防が六次防にどこまで続くんだというような不安な気持ちが一部にでも存在する限り、やはり努力をすべきであると思う。努力をすべきである、勉強すべきであると。こういう課題は絶えずあるんです、現実問題として。行政をやっておりますとですな。それはやっぱり国民理解を得るためには、たいへんむずかしい作業であっても、とにかくやってみなさいと、まあ今度の問題は一つの状態を想定をして積み上げてくる以外にはないんです、こういうことでありましたが、一応あのような問題で出たわけであります。私はそういう意味では、めんどうな問題であっても、やはり絶えず努力をするということが責任ある立場にある政府としては、当然なさなければならない問題だろうと思うんです。ですから、まあ私は撤回をする運命になりましたけれども、やっぱりそれなりに政府は勉強しているんだ、努力をしているんだということに対しては、理解が幾ばくか得られたのではないかと、こう考えております。
  264. 上田哲

    上田哲君 私が申し上げたいのは、それは政府は政府なりに、政府の立場から国民に何がしかの理解材料を与えて、政府への理解を浸透させたいというお立場もおありでしょうから、これから研究なさるでしょう。それはまあ政府の立場でしょう。  私が申し上げたいのは、いかにそういう努力をされても、防衛力の限界策定ということは元来無理なことなんだと、ここに問題があると思うんですよ。それはどうして限界策定が無理かということは、軍事力の膨張計画、増強計画というのは由来歯どめのないものだと、ここに私は根本義があると思うんです。これはいかがですか。
  265. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ、そういう御議論もよく理解できますが、しかし、世界の動き、世界も日々これ人類は進化しておるのであります。やはり、そういう世界の動き、時の流れ、周辺の状態、それから国力からくるおのずからの制限、それから国の政策の中で、やっぱりどうしてもなさなければならない問題もあります。そういうものとのバランス、いろんな面からやっぱり考えられてしかるべきだと思うんです。ですから、相手があるのだからということで、国民生活もすべてのものを犠牲にして、ということにはならないと思うんです。ですから、外交努力国民全体の防衛に対する理解、第一線に立つ者は何人でしかないが、これが一たん緩急ある場合には国民は総ぐるみ立ち上がると、こういう状態が前提にあれば、これはまた国の防衛力というものは相当強くなるわけであって、専門職というものは局限されるわけでございますから、だから、いろいろな状態において、それは数学のように明確な結論は出ないにしても、やっぱり勉強すべき問題だろうと思います。だから、特に憲法九条という制限がありますから、これは九条という制限の中で必要最小限の自衛力の整備ということでありますから、これは、だから、数字的にこまかく方程式でもってはじき出されるものではありませんが、絶えず憲法の定める、許容する限度内であって、国民負担も最小であって、しかも国を守れるというものは一体どういうものなのだろうということの研究は怠るべきではなかろうと、こういう考え方でございます。
  266. 上田哲

    上田哲君 総理、怠るべきではなかろうはいいんですよ。しかし、いかにそれを努力されても、防衛力の限界策定ということはできないものだという本質があると私は言っているのです。つまり、軍事力増強計画というのは自己増殖しまして、知性や理解で押えようと思っても限界策定ができないことが古今東西の歴史の教えるところだろうと、自己増殖するんだと、だから歯どめがかけにくいものなんだと、それが本質なんだという理解を持っていただかないと、今回の撤回問題というものの本質はずれてしまうと思うんです。
  267. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは、自分だけではなく、日米安全保障条約を基調としておると、こういう問題もございますし、まあ、これから国連でもって有効な手段がとられるようになるまでの間と、こういうことでやっておるわけでございますから、だから無制限に拡大できるものでないということだけは事実なんです。無制限に拡大できるものではない。
  268. 上田哲

    上田哲君 総理、違うんですよ。
  269. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いやいや、憲法の歯どめがございますし、無制限には拡大ができない。無制限に拡大できないという歯どめがあるならば、逆に、最も少ないもので、最も効率的であり、ということを勉強するということは、やっぱり私は……。
  270. 上田哲

    上田哲君 できないということです。
  271. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 全然できない問題ではないと思うんです。各国、世界の国々すべてを相手にして自衛力をやるんだと、こういうんじゃないんですから。
  272. 上田哲

    上田哲君 ばかな。
  273. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いやいや、そういうことでないんです。ですから、どこの国でも国を守るという基本の上に立って、問題は、国民の、お互いにお互いを守ろうという気持ちが一番前提になっているわけですが、これはそれなりに防衛力、軍事力を保持しておるのでございますから、これは際限のない問題であるということではないと思うんです。少なくとも憲法で許容される限度内で、そして国民の負担ができるだけ少なくて、それで国を守ろうということですから、数字でもってきちっとは出せませんが、これは勉強できる問題、勉強しなければならない問題、まあ、出したり引っ込めたりする問題じゃございませんが、これはやっぱり勉強はしなきゃならない問題だと、こう思ってやってみたわけです。やってみたわけですが、国会では評価されなかったわけでございますので……。まあ勉強をしたということでございます。
  274. 上田哲

    上田哲君 歯どめはあると思いますか。
  275. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 日本の自衛力ですか——日本の自衛力には憲法で九条の歯どめがある、これだけはもうございます。
  276. 上田哲

    上田哲君 とにかく、何かの歯どめをつけなきゃならぬということだけはお考えのようであることははっきりしましたので、問題を具体的に進めたいと思います。  先ほど来、私が確認してまいりましたのは、全体条件ではないけれども、絶対条件の一つとして、専守防衛でなきゃならぬということが憲法解釈だということを言われておる。しかも、それは攻撃的、侵略的なものがあってはいかぬのだと、もしそれが出てきたら歯どめをしっかりかけるということをおっしゃっている。また、防衛力の限界ということの議論にもかまけながら、どうしても歯どめをしっかりかけていくということをおっしゃっているので、これを抽象的な観念にならないように、具体的にひとつ、いうところの防衛論争のすれ違いを避けて、具体的に詰めていきたいと思います。少なくとも国民皆兵論みたいなお話になったり、あるいは国を守る気概みたいな話になってしまっては、これは困る。具体的にひとつ議論をさせていただきたいと思う。  まず、四次防の兵器の実体として、その中心となるべき主力機F4EJファントムについてお伺いをしたいと思います。この生産、配備計画の概要を示してください。
  277. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) F4EJは、三次防におきまして百四機の生産が国防会議で決定されております。その後、二十四機が四次防でつけ加えられておりますが、これの配備につきましては、四十八年度に百里に一個スコードロン、四十九年度に、一応いまのところは千歳で一個スコードロン。それから五十年度に小松とおそらく築城で二個スコードロンの配備をする予定であります。以上、四個スコードロンであります。
  278. 上田哲

    上田哲君 性能、兵装について述べてください。
  279. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 航続距離は、五百ポンド爆弾四発で四百マイル、それからスピードは二マッハ以上、それから上昇限度は一万八千メートル。それから搭載兵器につきましては、スパローが四発、ファルコンが四発、そのほか二〇ミリ機関砲が一つということであります。  御質問があれば、またお答えします。
  280. 上田哲

    上田哲君 四十八年度予算の中の計上分、それから全体の機数ですね。
  281. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) お答えいたします。  四十八年度の調達計画としましては二十四機考えております。それから取得でございますが、御承知のとおり、四十八年度予定しておりますものは第三次の計画に当たるわけでありまして、第一次が四十四年度三十四機、第二次計画が四十六年度四十八機でございます。四十八年度が二十四機でございます。その調達は五十一年度、五十二年度というところに調達する予定でございます。大体五十一年度、五十二年度には月平均一機ずつの予定を考えております。  以上であります。
  282. 上田哲

    上田哲君 金額を言ってください。
  283. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) 四十八年度の総体、後年度負担歳出化を入れまして、二十四機分につきましては五百五十六億円というふうに計上されております。
  284. 上田哲

    上田哲君 全部言ってくださいよ。三十四機、四十八機、二十四機。
  285. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) 調達の金額で申し上げますと、四十四年度三十四機分につきましては六百九十二億二千三百万円でございます。それから四十六年度第二次契約四十八機分でございますが、これは一千一億六千三百万円でございます。それから第三次の四十八年度がただいま申し上げました五百五十六億一千万円でございます。これが調達の総体金額でございます。
  286. 上田哲

    上田哲君 四十四年度分で四十八年度に入っている分がありますね。四十六年度分で四十八年度に入っている分、それから四十八年度分、新規分ですね、それから後年度負担分、きちっと出してください。
  287. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) 四十四年度に契約いたしまして三十四機分でございますが、これにつきましては、四十六年の七月に戦闘機二機が輸入機で入っております。四十七年度におきまして、このうち、現在までのところ、二月末までに六機入ってきております。三月に一機入りました。したがいまして、現在九機、四十七年度末におきましては、F4EJの保有機数は十機というふうに考えております。  それから今後の調達でございますが、四十四年度の分につきましては四十八年度末までに全部納入という予定でございます。それから四十六年度の分につきましては、先ほど申し上げましたとおり、四十八機分でございますが、これにつきましては、四十九年度、五十年度に二機ずつというふうに計算しております。
  288. 上田哲

    上田哲君 全部で何機ということですか。
  289. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) 全部で百二十八機でございます。
  290. 上田哲

    上田哲君 一機の単価、四十八年度で。
  291. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) お答えいたします。  四十八年度の予算単価でございますが、フライ・アウエイ・コストでいきまして、十九億三千三百万円というのが予算上の単価でございます。
  292. 上田哲

    上田哲君 それは補用部品を含んでいないでしょう。
  293. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) ただいまフライ・アウエイ・コストといたしまして十九億三千三百万円と申し上げましたが、これに初度部品が三億八千四百万含まれておりまして、これを合計いたしますと、一機当たり二十三億一千七百万という計算になります。
  294. 上田哲

    上田哲君 だから、ごまかされちゃうんですよね。十九億なんと言っているんだけれども、二十三億一千七百万です。兵装もはっきりしてないんです。バルカン砲等々、もっと具体的に言ってください。
  295. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 測距レーダー、それから光学照準器、それから電波高度計というものであります。まだあと、ちょっと調べてみます。
  296. 上田哲

    上田哲君 調べて報告してください。報告してもらわないと話が先に進まない。こんな主力機の性能が説明できないようじゃだめですよ。
  297. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) すぐできますか。
  298. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 二〇ミリガン一、それから先ほどのファルコン四、スパロー四、それから爆弾が五百ポンドで四、そのほか慣性航法装置、それから電波高度計、前方監視レーダー、それから、おそらく御質問の給油装置であります。
  299. 上田哲

    上田哲君 まじめに答えてもらわなければ困る。防衛局長がこの程度のことがやれないでどうするんだ。答えてください。防衛局長というのは兵装を聞かれたら、これくらい時間がかかるのか。主力機じゃないですか。
  300. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 以上でございます。
  301. 上田哲

    上田哲君 たいへん奇妙なことを伺ったが、空中給油機というのは兵装なのか。
  302. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) イクウイップメントということばを兵装ととれば、そのうちに入ります。
  303. 上田哲

    上田哲君 空中給油機については、じっくり伺うけれども、実に奇妙な発言があった。これが兵器の一部だとお考えになっているところにすでに問題があるではないか。ゆっくりお伺いするんだけれども、たとえば、バルカン砲あるいは空対空ミサイル、五百ポンドの爆弾云々——総理、これはたいへんな兵器ですね。たいへんな兵器だということは御認識になっておられますか。総理の認識がなければ困る。属僚の話じゃないですよ。一国の総理として、たいへんな兵器であるということは、いまおわかりになりますか。
  304. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私はいま聞いたのでございますが、相当なものであるという威力はわかりますが、まあ、相当科学も技術も進歩しておるんだということを理解した次第であります。
  305. 上田哲

    上田哲君 防衛局長や装備局長が二百でぱっと言えないなんというところで、こんなに金を使われちゃ困る。黙って聞いていたら十九億円という話になってしまう、二十三億千七百万円。聞き直さなければ出てこない。こういうところにも小さな詭弁がある。総理はよくわからぬとおっしゃるから、お教えしましょうか。たとえば、二十億円としても、いま陸上自衛隊の新入隊員の四千人分の一年間分ですよ、これ。これだけたいへんな飛行機ですよ。これが実に百二十八機もこの四次防で装備されるということです。まさしくこれは四次防の主力兵器であって、たいへんなものだという御認識はお持ちになりますね。
  306. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 飛行機は古いものから新しいものにかえていかなきゃならないということで、全体の機数そのものから比較をしますと、かつて千数百機もあったものが非常に少ないものにはなっておるわけでありますが、性能の上においては非常に改良をせられておるということは理解しております。
  307. 上田哲

    上田哲君 ちょっと横へ飛ぶんですがね。衆議院の楢崎委員に提出された防衛庁の資料を見ますと、この単価というものがたいへんな上昇カーブをたどっているんです。三月七日提出の資料に基づいて、たとえば驚くべきことに、V107が一三・二%、P2Jが一一・八%、HSS2が一八・四、一八・七%、たいへんなこれは上昇率になっている。単価がどんどん上がっているんです。ファントムだってこのとおりですよ。こういう説明がこんな紙きれ一枚じゃわからぬ、この内容については詳しく出してくれますか。
  308. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) お答えいたします。  先生御指摘の、先般衆議院で楢崎先生に御提出をいたしました資料につきまして、できるだけ詳しい内容を私どものほうで用意するようにいたします。
  309. 上田哲

    上田哲君 いつ出しますか。
  310. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) 私どもで、いま内容のこまかい積算を出すようにはいたしますが、御承知のとおりに、四十八年度の予算単価でございまして、四十八年度に予算がお認め願えれば、その予算に基づきまして、今後関係企業あるいは外国の企業等と契約ネゴに入ることになります。したがいまして、その内容につきまして、私どものできる範囲での資料をなるべく早く提出いたしたいと思いますが、日付につきましては、いま直ちにこの場で申し上げることは、何日というふうにできませんが、できるだけ早く出すようにいたします。
  311. 上田哲

    上田哲君 全然逆ですよ。増高のパーセンテージが出ていながら、一括承認してからでなければ明細が出せないというばかなことがありますか。予算審議できませんよ。
  312. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) 四十八年度のそれぞれの機種につきましては、契約の方式といたしましては、先生御承知のとおり、これは三年ないし五年の概算払い契約になっております。それから、各機種につきまして、それぞれまた内容がいずれも性能を強化、性能を改善するもの、あるいは機体その他のものにつきまして、人件費の増高その他によるアップと、いろいろと中身が分かれておりますので、私どもの大蔵省から査定を受けました総額の予算というものにつきましては、新しいものにつきましては、類似製品の価格を参照としまして、それに基づきまして、四十八年度で調達でき得るという数字を算定して出しておりますし、また、四十六年度その以前に契約があるものにつきましては、その時点の単価を基準といたしまして、その後の経費増、人件費増等の査定を大蔵省で加えられまして、全体の概算としてきめられているものでございます。
  313. 上田哲

    上田哲君 いつ出る、いつ。
  314. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) できるだけ早い機会に出したいと思っています。
  315. 上田哲

    上田哲君 できるだけ早いじゃ、審議ができないですよ。できるだけ早くじゃ、それまで待っていなければならない。いつまで待つのですか。
  316. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) 私のほうで、できれば数日中にもお出しできるかと思っています。ただ、先生いま御指摘の点は、先般楢崎先生の御要求に応じまして出した機種に限定して出すことになりましょうか、もしくは、その他の機種も入りましょうか。その点につきまして、実は私、その範囲が、まだいまの先生の御質問から十分くみ取れなかったものですから、その点を御明示いただければ、その御要求に沿ってお出しするように考えたいと思っております。
  317. 森中守義

    ○森中守義君 関連。  これは、いま横川理事が委員長にちょっと申し上げたように、四十四年に三十四機購入計画がある。四十六年に二機、四十七年に七機、合計九機がもう実納されている。実納されているということは、ちゃんと積算の根拠がある。ライセンスも十分整っている。こういうように私は思う。それならば、いまからのことだから、すぐは出せませんということは通りません。若干価格に変動を生じているにしても、すでに九機が実際納められている。それでかまいませんよ。それならすぐ出るわけだ。出しなさいよ。
  318. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) いまの森中発言について、山口局長
  319. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) ただいま森中先生がおっしゃったのは、F4EJの単価についての御指摘かと聞きましたが、F4EJの内容につきましては、直ちに提出するように考えたいと思っております。いま、現在ここに資料を持っておりませんので、できるだけ早い機会に、F4EJでしたら、これは前年からの資料もございますので、資料を御提出することはできると思います。
  320. 森中守義

    ○森中守義君 多少その機種が違うということだから、それは一応是認いたしましょう。けれども、すべて概算、概算ということで、正確なものが出せないというのじゃ困る。だから、いま言われたF4EJでもかまわない。これと概算の見積もり、ちゃんと持っているはずだ。その程度ならば質問者も了承しますよ。単価がどのくらいになるのか、全然見当もつかないのに審議が進んでいくというぐあいにいきませんよ。それでもいいから出しなさいよ。
  321. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) 見積もりにつきましては、実は先般楢崎先生の資料要求に応じまして、中身をある程度こまかく細分したものを関係の機種につきましてはお出ししてあります。
  322. 上田哲

    上田哲君 全然出てない。これだけだ。そんなでたらめ言っちゃいけないよ。
  323. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) 先ほど楢崎議員の御要求に対しましてお出ししました資料は、私どもといたしましては、金額、予算単価、それからその内容につきまして二つに分けまして、近代化に要した費用としての増加額及び加工費の部分で増加いたしました増加額及びそれぞれの増加率、それぞれがどの程度増加に寄与したかという比率と、それから中身といたしましては、どのような近代化の内容があるのかという項目を実は内容に提示したわけでございます。実は、先ほども申し上げましたとおり、四十八年度の予算をお認め願った場合に、今後は契約に入るものでございまして、そのそれぞれの近代化の機種につきまして、金額をここで予算上明示するということになりますと、今後の契約上、実は私どもとしましてはできるだけ安く契約をしたいわけでございまして、一つの基準というものをこの場合出してしまいますと、もうそれが相手方といたしましては一つの最低限度というようなことにとられまして、今後の契約が非常にむずかしい段階でありますので、近代化の内容につきましての個々の品目の金額につきましては、公表することに関しましては、その内容は差し控えさせていただきたいと思っています。
  324. 上田哲

    上田哲君 予算審議できないじゃないか。
  325. 森中守義

    ○森中守義君 関連。  これは、いまの答弁はまことに穏やかでないですよ。何のために予算を審議しているんですか。いまのことばは、予算審議に対する挑戦ですよ。こんなことならば、予算の審議権を何のために国会が持っている。だから、正確な単価でなくてもいいから、概算でいいからと——そこまで質問者は言ってないけれども、私は、概算でも質問者は了承するであろう、こう言っている。概算でも出しなさいよ。だめですよ。出るまでこの委員会は進められない。
  326. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) F4EJにつきまして、単価につきましては、先ほど私触れましたように、御提出いたしました実は資料におきまして、上田先生まだこれでは不十分だと御批判がございました。私どもといたしましては、その中身としまして、先ほど触れましたように、初度部品を含めまして単価は二十三億一千七百万円と申し上げまして、その四十六年度との差額につきましては、三億四百万円の差額が出ております。その中身といたしましては、特に近代化関係の増額はゼロでございまして、F4EJの場合には、加工費の増額のみが三億四百万でありまして、年率の増加率が七・三%というふうに実は資料として御提出さしていただいたわけでございます。この点、まだ不十分な資料というおしかりを受けましたが、私どもは実はこの段階までをただいまお出ししまして、近代化はゼロでございまして、加工費の伸び率が七・三%、これはおもに人件費並びに材料費、この増加率というふうに計算をしております。
  327. 上田哲

    上田哲君 二〇%ほどもぐんぐん伸びちゃってる内容が説明できなくて、予算の審議をしろなんということはとんでもないわけですよ。F4EJについても、十九億というのが二十三億にぽんと飛び上がっている。聞かなきゃ出てこない。あえて聞かなかったら、十九億でごまかされてしまう。こういう形で予算審議はできないと思うんです。これはひとつ可及的すみやかに出していただくということと、これがきょうの本旨ではありませんから、理事会でおはかりをいただいて、後ほどひとつ、はっきり出していただくところまで、その分の質問は留保いたしたいと思いますが、いかがですか。
  328. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 理事会においていずれ協議をいたします。
  329. 上田哲

    上田哲君 それでは本題に入りますが、F4EJに空中給油装置がついていると思います。百二十八機全部につくはずであります。
  330. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) ついております。
  331. 上田哲

    上田哲君 フライングブーム方式ですか。
  332. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 公式の名前は承知いたしておりません。
  333. 上田哲

    上田哲君 そんなもの、調べてこなければ議論にならないですよ。(「防衛局長がわからぬで、だれならわかんだ」と呼ぶ者あり)何だこれは、一体
  334. 岡太直

    政府委員岡太直君) 一般的に申しますと、空中給油方式というのは二種類ございます。一つは、米国で開発された方法でございまして、先ほど先生がおっしゃいましたフライングブーム方式でございます。もう一つは、英国で開発されまして、これは名前を少し忘れましたけれども、長いワイヤーを使いまして遠距離でやるやつでございます。それから、米国で開発されたものは、まっすぐの、直線のブームを給油機の下からおろして、戦闘機につないで給油すると、こういう方式でございます。
  335. 上田哲

    上田哲君 だから、何方式と言うんですか。制服が来なければわかりませんか。
  336. 岡太直

    政府委員岡太直君) ちょっと質問を誤解しまして失礼しました。F4Eについておりますのはフライングブーム方式でございます。
  337. 上田哲

    上田哲君 二つあるというのは、プローブ方式とフライングブーム方式と、二つあるのです。そうして、これはフライングブーム方式がつくんです。そんなことがわからないじゃ、防衛庁は一体どうして二十三億円の金を使うのですか、一機について。不見識じゃありませんか。しかもそれを、当然ついております兵装の一部に加えて報告するごときは非常に不見識だ。この空中給油装置をつけることによってF4EJの性能はどうなるのですか。
  338. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 米国機がつけておりまするものをそのまま採用しておるわけでありまするが、自衛隊といたしましての効用というのは、二つ給油装置があるために、給油の時間数が半分に減るということであります。
  339. 上田哲

    上田哲君 しろうとのようなことを言ってもらっちゃ困る。足がどれだけ延びるのか。
  340. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) おわかりのごとく、足とは直接関係ございません。地上で二つの給油装置でやりまする場合は四分で給油が終わります。一つでやりまする場合は八分であります。満タンになりました場合の航空機の足の場合は関係はございません。
  341. 上田哲

    上田哲君 何というでたらめなことを言うんですか。空中給油をしてですね、ガソリンがなくなったところへ給油をして、その分だけ航続距離が延びるなんというのは、飛行機を語る者の常識中のイロハじゃありませんか。足が延びないとは何事ですか。防衛局長やめなさい。
  342. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 私の答弁は、地上で給油する場合のことを当然申しておるわけであります。ですから、自衛隊と申しました。空中給油というのは、アメリカがやるでありましょうけれども、わがほうは、空中給油機も持っておりませんし、訓練もいたしておりませんし、そういうつもりはありませんので、当然自衛隊としては、地上で給油する場合に、いま申し上げた時間数が節約できるということを申し上げたわけであります。
  343. 上田哲

    上田哲君 地上でやるものを空中給油装置と言いますか。
  344. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 装置の名前を空中給油装置と申し上げたのでありますが、それをどう利用するかというのは、自衛隊の実情に沿ったような利用のしかたをしております。
  345. 上田哲

    上田哲君 日本では空中給油したことはありませんか。
  346. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) ないはずであります。
  347. 上田哲

    上田哲君 はずじゃわからぬ。やったかやらないかはっきりしたまえ。はずではわからない。
  348. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 最初二機を米本国から日本に空中輸送をしてまいりました。米国のパイロットでありますが、その際は、空中給油をしたそうであります。
  349. 上田哲

    上田哲君 あたりまえじゃないですか。KCからやっているじゃありませんか。さっきの答弁でも明らかなように、地上給油には使っているわけですね。
  350. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 使っております。
  351. 上田哲

    上田哲君 米軍の使っているF4Eと日本のライセンス生産するF4EJとは同じです。だから、つまり同じ空中給油装置がついております。米軍の例で答えてもらいたい。この装置によって足はどれだけ延びるのか。
  352. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 言うまでもなく、どの距離のところで空中給油をするかによって違ってまいりますから、一がいに申し上げられません。ただし、日本で空中給油をかりにすると仮定いたしますると、たとえば、日本海でやると仮定をいたします。その場合に、これは航空の制海権がどちらにあるかといったような問題も関連してまいりまするから、なるべく日本の近間、たとえば、かりに日本海のまん中二百マイル辺で空中給油をするとすれば、その分だけ足が延びるという、これは単純な計算になります。
  353. 上田哲

    上田哲君 さっきの性能の御説明で明らかなように、航続距離三千キロあるわけです。これをやれば、米軍機の例で言うならば、五千キロから七千キロになる。千歳から飛んだら、かりにどこまで行きますか。
  354. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 計算いたしておりませんが、バイカル湖の先になろうと思います。ただし、いま何千キロと仰せられましたのは、爆弾その他全部兵装をはずして、いわゆるフェリーの状態の場合であります。
  355. 上田哲

    上田哲君 とんでもありません。爆装をした上で空中給油、KC135によって三千から四千マイル飛ぶことは常識中の常識じゃありませんか。小松から飛んだらどこまで行きますか。計算できなかったら話にならぬ。
  356. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) F4が二千マイル飛ぶ場合は、これはフェリーの状態、何べんも申しまするが、兵装をはずした場合であります。実際に使える状態で飛ばせる場合は、これはまた戦闘作戦行動として使う場合には、高度の関係がございます。したがいまして、四百マイルないし四百数十マイルといった範囲が、通常に使い得る半径であります。したがって、もし、いま申し上げたように、日本海のまん中辺で空中給油をするとすれば、それに行動半径として二百マイル延びるということであります。  先ほど三千キロあるいは四千キロとおっしゃいましたが、これは片道でありますから、向こうの飛行場に何も持たないで行けば、そうなるということであります。
  357. 上田哲

    上田哲君 そんなことはあたりまえじゃないですか。何を言ってますか。明らかに爆装をして、二百マイル延びるわけですよ。千歳から行けばバイカル湖まで十分行くんだと言っているわけです。総理、これは明らかに攻撃的な内容を持ちますね。——総理ですよ。総理でわかるじゃないですか、こんなことは。答弁も小学生レベルなんだから。
  358. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 私からお答えをさしていただきたいと思います。  給油をいたしますると、足が延びることは当然でございまするが、先ほども申しましたように、自衛隊においては、給油機を持たず、給油の訓練を行なわず、将来も給油をやろうという考えがありません。その上、そういう給油によって長距離まで足を延ばすという場合の目的は、私はやはり爆撃にあるかと思いまするが、爆撃照準器は、日本のF4EJははずしてある、装備をしてないことは毎々申し上げておるとおりでございまして、そういう意味で、いわゆる、攻撃的な力を発揮するような使い方はF4EJについてはいたさないということを毎々申し上げておるところでございます。
  359. 上田哲

    上田哲君 攻撃的には使わないようにいたすと、攻撃用には使わないようにいたすとおっしゃるのだが、どういう保証があるのですか。
  360. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) F4EJを採用いたしまするときに、国会においても御審議を願ったと聞いておるのでございまするが、これはいわゆる要撃戦闘機、インターセプターとして採用する。したがって、爆撃照準器ははずすということで、この機の採用がきまったということでございまして、したがって、攻撃的な使い方は、何と申しまするか、できないような形に装備の一部をはずしておるということでございます。
  361. 上田哲

    上田哲君 増田長官時代に三点はずしました。何をはずして何が残っているのですか。
  362. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) F4で、ウエポン・リリース・コンピューター、爆弾を投下する場合の計算機であります。それからボミング・コンピューターがついておりますが、このうちの、いまのウエポン・リリース・コンピューターは取りはずしております。それからボミング・コンピューターのうち、爆撃機能を持つ部分、これは残しております。それから核管理装置というものがありますが、これははずしております。それから、核、非核両用のブルパップ専用の送信機、誘導用の送信機がありますが、これもはずしております。以上です。  なお、残しておりまするものは、いま申し上げたもののほかに、光学照準器というのがございます。これは目視の照準器であります。
  363. 上田哲

    上田哲君 残してあるものがたくさんあります。言ってください。
  364. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) いま申し上げたつもりでありますが、光学照準器と、それから先ほどのボミング・コンピューターの中の爆撃機能を持つ部分、これを残しております。それからレーダーは当然残っております。
  365. 上田哲

    上田哲君 AAM空対空ミサイル、M61Aバルカン砲、AIM7Eスパロー、IRホーミングミサイル云々、しかも、三点はずしたといっているスペシャルウェポン・ダニ・コントロールDCU94A、その他も取りつけようと思えばいつだって取りつけられるんです。ファントムというのはおそるべき攻撃兵器であるということは、常識中の常識なんです、これは間違いないですね。
  366. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) F4というのが、世界で四千機以上使われているごとくに、要撃機あるいは地上支援機に対して非常に有効な兵器であるということは、世界的に認められております。
  367. 上田哲

    上田哲君 そうでしょう。世界的に四千機も使われているナンバーワンの攻撃機ですよ。これに空中給油装置をつけて、バイカル湖まで行けるようなことになるんだとすれば、これはたいへん攻撃的な脅威を隣国に与える。総理、これは間違いないんじゃないですか。
  368. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 爆撃装置をはずしておりますし、それから給油機も持っておりませんし、給油の訓練もしておらない、こういうことでございますから、足は行動半径四百マイルという飛行機でありますので、これはもう要撃戦闘機ということであって、これは……。
  369. 上田哲

    上田哲君 空中給油ですよ。
  370. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 空中給油、いま、だからアメリカの飛行機が給油すればという御発言もありましたが、それは機能としては使えないというものではないでしょう。これはそう言えると思います。しかし、日本の戦闘機というのは、これは要撃だけに使うということでございますから、そういうことを言えば、それは軍艦でも射程距離は非常に短いわけでございますが、(「軍艦じゃないよ」と呼ぶ者あり)海上自衛隊の自衛艦に直しますが、自衛艦でも、これはほかの国の近くにいれば、着弾距離というものの中に入れば、当然攻撃兵器になるじゃないかということになりますが、これは全然そういうものに使う意思もなく、他国に、攻撃用の戦闘機として——爆撃機としてですね、その場合は爆撃機として、脅威を与えるものではない、このように理解しております。
  371. 上田哲

    上田哲君 いま防衛庁当局が認めましたように、元来、この飛行機というのは世界ナンバーワンの攻撃機なんですよ、そうですね。それが一つです。  そして、これが空中給油機を持つことによって、たいへんなところまで、隣国に十分飛んでいける性能を、やろうと思えば持てるようになるんです。とすれば、これをさせないようにしなければなりませんね。
  372. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) でございますから、爆撃装置はつけない、給油機も持たない、給油の練習もしない、こういうことを言っておるわけです。
  373. 上田哲

    上田哲君 それならば、空中給油装置というものをはずすべきじゃありませんか、総理
  374. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういう議論も成り立ちます。成り立ちますが、これは先ほど久保防衛局長が述べましたとおり、地上から要撃のために飛び立つときに、八分かかる給油が四分で済むということになれば、それだけ要撃のための、防衛のための効力はあがるわけでありますから、そこらの調整はむずかしい問題だろうと思います。いずれにしても、給油装置がついておれば、飛ぼうとして飛べないものではない、こういうところにウエートを置いての御発言でございますが、これは飛ぶ意思もないし、爆撃装置もつけておりませんし、バイカル湖の上空までいって戦闘しようというんじゃありませんから。行くとなれば、結局爆撃をするということになります。だから、問題はやっぱり爆撃装置の問題だと思います。私、しろうと考えで申し上げるわけですが、それは結局は、要撃戦闘機としては、地上から舞い上がるために非常に短い時間で済むということは、これは防衛上の利点ではあります。しかし、それが別な面から見れば足を長くすることになるじゃないかということに、反対に考えれば、そういう議論も起こるわけでありますが、空中給油装置というものを取りはずすことがいいのかどうかという問題は、どうも専門的な問題のようでございまして、これは少し防衛庁当局からもう一ぺん答弁をさせたいと思います。
  375. 上田哲

    上田哲君 これまでの政府の御答弁は、総理、攻撃能力というのは二つあるというんです。一つは、爆撃装置等の攻撃能力ですね。もう一つは、足の長さだというんです。そこで、FST2改の場合は、足が短いからという説明を政府はとって、爆撃装置を取らなかったんですよ。ファントムの場合は、爆撃装置をはずしているんですよ、足が長いから、もともと。それがさらに今度は長くなるんです。もともと長いんですよ。これはFST2改とは違うんですよ。もともと長いところを、空中給油装置によってさらにとんでもないところまで、アジアじゅう、インドまで行けるんです、これは。そこまで行ってしまうものだから、これはいけないので足を縮めなければいけないということなんです。だから、ことばをかえてもいいんです。誤解でもいい、危険でもいい、危惧でもいい、隣国に、そういう脅威、侵略的な攻撃的な心配を与えるものであったら、専守防衛の原則からいったら押えなければなりませんね。そうであれば、政府が説明している攻撃能力、爆撃能力と足の長さという二つの問題からいえば、この場合は、足の長いのが特徴であるこの飛行機の、さらに、その足を空中給油装置によって長くしないようにするために、どうせ空中で使わないとおっしゃっているんだから、それならば、これを取りはずすということが当然な姿だと思う。これはきわめて常識です。
  376. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 事実関係を申し上げまして御判断に供したいと思います。  いま申し上げましたように、この装置は、空中給油のために自衛隊は使おうとしているのではありません。地上給油の給油時間を節約しようということであります。ところで、その時間節約がどういう意味を持つかということを申し上げてみたいと思います。高高度で相手方の飛行機が来まする場合には、御承知のように、二百数十マイルの先から発見できます。したがいまして、ある程度の余裕はございます。ところが、低高度で参ります場合には、場所によって違いますが、百マイルもしくはそれよりもはるかに以下でなければ、いま、AEW機のない今日は、発見できません。そういたしますると、いま八分と四分と申し上げましたが、かりに六百マイル、六百ノットで来るとすれば、計算上、簡単に申し上げれば一分間で十マイル参ります。四分節約ということは四十マイルであります。そこで、低高度で来まする場合は、百マイル以下数十マイルで発見できる場合に、数十マイル分の、つまり四十マイル分の時間的あるいは距離的、いわばゲインといいますか、利得を得ることになります。  もう一点は、投弾線、たまを投げる線でありますが、それは、爆撃目標に対しまして大体五マイルぐらい以前から爆弾を落とすとちょうどその目標に命中するということで、五マイルとか、十マイルとかいうものが非常にシリアスな、重要なファクターになります。そこで、日本のように非常に縦深性の狭いところにありましては、なるべく、会敵、つまり相手方に会う時期というものを短くしたい。さらには、われわれは防衛力というものをできるだけ小さい規模にしようとするわけでありまするから、百数十機のF4というものもなるべく効率的に使いたい。そうすると、一ぺん飛び上がって、また帰ってきて給油をし、たまを積みかえるという時間もなるべく少なくすることによって回転率を高めたいということでありまするので、いまのような日本の防衛体制をとる以上は、なるべくそういった機能的な使い方をするのが適当ではないかというのが、事務当局の判断であります。
  377. 上田哲

    上田哲君 総理、誤解を招かないようにするのが日本政府の方針ですね。しからば、この部分は、使わないと言っているんですから、はずすのがほんとうではありませんか。望ましいではありませんか。総理の判断。
  378. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま申し上げましたように、この装置をはずすことによって倍も機数をふやすことがいいのかという問題も起こってくるわけです。いずれにしても、地上に帰らないで、少数精鋭でいこうということですが、精鋭が度をこすと相手側に——相手でなくて、近隣諸国に脅威を与えるということになると思います。私は、いま久保防衛局長が専門的な立場で答えたことで、やっぱり理解をしていただくということでなければ、これ、一体そういうものをはずせるのかはずせないのかも私はわからないんです。構造的にはずせるものかどうかもわからない。
  379. 上田哲

    上田哲君 簡単にはずせるんですよ。
  380. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そうですか。——いずれにしても、とにかく、これは国民の税金をもってまかなっており、しかも、最小限の負担で防衛の任を全うしなければならないということでありますから、しかも、これは空中給油機もないし、空中給油の練習もしておらぬということで、また、爆撃装置そのものもはずしておるということで、長距離爆撃を行なうというような用途に使わないと、使う意思もないんだということでありますから、いまの状態においては、以上のお答えが私の限界でございます。
  381. 上田哲

    上田哲君 実に足らないですがね。長距離爆撃の可能性が具体化してきたら、これははずさなければならぬということはお認めになりますね。
  382. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは長距離爆撃などをやるという気持ちがありませんから……。
  383. 上田哲

    上田哲君 それが現実化してくる危険があれば。
  384. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 要撃機でございますから、もう爆撃機には一切しないということでございますから。
  385. 上田哲

    上田哲君 その危険があったらと言うんです。その現実的な危険が迫ってきたら、これは当然いけないですね、はずしますね。
  386. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そんなこと起こり得る……。
  387. 上田哲

    上田哲君 起こり得れば。
  388. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 起こり得ない問題でございます。
  389. 上田哲

    上田哲君 起こり得ればどうしますか。
  390. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) こっちはどうもね、相手をやらないんですから、これは。
  391. 上田哲

    上田哲君 起こり得る心配があれば、どうしますか。
  392. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういう心配はないんです。絶対にやらないということであります。絶対にやらないということです。
  393. 上田哲

    上田哲君 それじゃ、さっきの歯どめ論と違うんですけれどもね、念のために伺いますけれども、運輸大臣、国内の日本の基地から米軍機が発進するときに、フライトプランは出ますか。
  394. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) すべての航空機が、日本国内から出ます場合には、フライトプランを提出しております。
  395. 上田哲

    上田哲君 岩国の米軍のF4Eファントムが飛び立つときも福岡管制部へ出ますね。
  396. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 運輸省の管制当局に対して出しております。
  397. 上田哲

    上田哲君 そのとおりですね。たくさん例がありますけれども、たとえば、ここに四十七年五月十六日のスカイホークのA4の例があります。こまかくは時間がもったいないんで、もう省略しますけれども、この日の午前四時三十分にスカイホークA4は岩国を出発して、オーニング・エアリア百七十九、沖繩の嘉手納の空域ですね、ここを五十二分に通過してKC135から給油を受けています。実際にこういうふうにして飛ぶんですよ。同じ飛行機なんですよ、総理。これは結果的にはマニラへ行きましたけれどもね。こういう状態が起きているんですよ。日本の航空管制部でもちゃんとつかんでおるんですよ。これぐらいの状態になっているんですから、そしてまた、岩国からファントムはみんなこのKC師でもって給油を受けてベトナムへ行っているんですよ。同じ飛行機なんですよ。それが爆装もできる、そして積もうと思えば核も積めないことはない、という性能を持っていて——これは積まぬでしょうけれども。それにしても、たくさんの兵器を積んでいて、爆弾も持っていて、そしてどこまででも飛んでいけるということになったら、これは同じ飛行機が飛んでいて、ついこの間まで爆弾を落としているんですから、同じ基地があるんですから、これは危険だと思うのがあたりまえじゃありませんか。思いませんか、総理
  398. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは爆撃装置を施しておらないわけです、日本が持っているものは。
  399. 上田哲

    上田哲君 攻撃力は持っているんですよ。ミサイルも持っているんです。バルカン砲も持っているんです。
  400. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、爆撃装置は……。
  401. 上田哲

    上田哲君 つけようと思ったら、いつでもつくという心配もあるんですよ。だからそれを……。
  402. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それはつけないということです。それはつけない。
  403. 上田哲

    上田哲君 つけないように、だから、そっちもはずしたらどうですか。
  404. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、それはもう爆撃装置をつけないということでございますから……。
  405. 上田哲

    上田哲君 攻撃できるんです、攻撃できる。攻撃できるんですよ、この飛行機は。総理は御存じないからどうしようもないんだけれども。それは無理なんだ。攻撃できる。
  406. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 攻撃戦闘機でございますから——いや、要撃戦闘機でございますから、来るものに対して要撃をするんですから、それは戦闘行為を行なうわけでございます。行なうわけでございますが、途中で給油をして、そして他国の領空に侵犯をして、そこでもって攻撃を行なうというようなことは考えられないわけです。領海を侵犯されるとか、日本の本土が攻撃を受けるとかいう場合に飛び立つわけでありますから。だから問題は、問題の危惧されるところは、長距離爆撃機に転換されるおそれがあるということでございます。だから、これはもう爆撃の装置はしません、施してもいませんし、これからもしませんと、こういうことです。
  407. 上田哲

    上田哲君 そうすると、先ほどの論理を詰めていきますと、地上給油をするために都合がいいからだということだけが残るわけですね。
  408. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そのとおりです。
  409. 上田哲

    上田哲君 これはたいへんな詭弁なんですよ。私は実際、これは非常に許せないと思うんです。国会を軽視してはいかぬですよ。この空中給油装置というものが、いままでは足が長くなるからという議論だけをしてきました。そうではないのです。空中給油装置というのは、実は、CAPといいまして、戦闘空中パトロール方式というものを実現するための体制なんですよ。これは今日一流戦備を持っている国の常識になっておるんです。足が長いか長くないかなんということは二の次の問題でありまして、CAP体制ですよ。戦闘空中パトロール体制というものをやるために、空中給油体制というものは必要になっているんです。
  410. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 日本の自衛隊ではありませんで、一般論として申し上げれば、いま先生の御指摘は防衛論としては正しい意見であろうと思います。
  411. 上田哲

    上田哲君 念のために聞いておきますけれども、専守防衛とは、スクランブル、地上待機の限界ですね。
  412. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) スクランブルは、いわゆる緊急発進で、常時待機しておるものが、不明機が出た場合に上がるわけでありますから、それだけではございません。要するに、全航空自衛隊の力をあげて、わが国を攻撃する航空機があれば、それを要撃するというのが専守防衛の範囲であります。
  413. 上田哲

    上田哲君 だから、空中給油装置について聞いているんですよ。これはスクランブルのためだけですね。空ではやらないということをさっき言っているじゃありませんか。
  414. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) スクランブルということばを使われましたのでそう申し上げましたが、いわゆる最初地上で給油する、あるいは飛び立ったものが帰ってきてもう一度地上で給油する、それのために使われるものであります。
  415. 上田哲

    上田哲君 地上待機、スクランブルだけ、それを専守防衛の限界線だと考えているのならば、空中給油装置は本来要らないんですよ。半分になるとか四分になるとかいうのは全く詭弁です。これは。性能を全部言えないような防衛局長が、そういうことだけで詭弁を弄するというのは非常に間違いだ。これは、たくさん下から入れる装置がある給油装置の中で、背中から突っ込むようなものは、地上でどれだけ有効ですか。給油装置は、だから、私はさっき何方式かと聞いたんです。その方式は背中から入れるんですよ。地上で背中から入れることがどんなに効果的でありますか。ばかも休み休みおっしゃい。これは空だから、空中だからこそ、B52がKC130から受けるように、ファントムF4EがKC135から受けるように、背中が必要なんです。空のものなんですよ、これは。詭弁もはなはだしい。つまり、これはCAP体制、戦闘空中パトロール体制に入らなきゃならぬ。そうでなければ要らないんです。だから、世界に四千機もF4Eファントムが飛んでいるというのは、そういう国々が全部戦闘空中パトロール体制を指向するという体制が入っているということを物語っているではありませんか。日本もそういう体制を目ざさなければならないというところに、百二十八機というのが来ているということじゃありませんか。弁明できないでしょう。
  416. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) アメリカがF4を使う場合に空中給油をすることは当然ありましょう。しかし、常に空中給油でなければならぬことはあり得ないわけでありまして、航続距離その他の面でいって、空中給油の必要がない場合、地上で給油する場合もありましょう。しかし、それはそれといたしまして、本来は、その名のごとく、空中給油のためにつくられたものであることは間違いありません。しかし、そのでき上がっているF4というものをわが自衛隊がどういうふうに活用するか、非常に防空上の縦深性の少ない、また航空機数の少ないわが自衛隊がどういうふうにするか、それはわが自衛隊の知恵でありまして、地上戦闘におきまする何分間というものの有効性というものは先ほど御説明したとおりでありまして、われわれとしては、いまこの給油装置があるということは非常に重要な要素であるというふうに考えております。
  417. 上田哲

    上田哲君 自衛隊の知恵なら、地上給油装置をつくればいいんですよ。わざわざ空中給油装置を残しておく理由は何にもない、地上では。これはどういうふうに詭弁を弄しても、今日の航空戦略の常識からすれば、空中給油装置を持っているということは、空中給油体制を、CAP体制をしくためのものだということは否定できないではありませんか。常識を持っているか持っていないかだ。
  418. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 一般論として、CAPが必要であることは間違いありません。特に、縦深性が少ないわが国にありましてはそうであります。ところが、日本の場合には、CAPが必要でありながら機数が少ないので特定の場所でしかできません。したがって、たとえばF104の場合でも、これはきわめて滞空時間が少ないわけでありまするけれども、F104の場合でもCAP運用は考えております。ですから、F104ですらそうでありますから、F4はもっと足が延びますので、CAP運用としてはF104よりも適当である。そのために空中給油をしたらもっとF4のCAP能力が増加するではないかという御指摘ならば、それはまさにそのとおりでありまするけれども、今日の国内情勢からすると、そういったことは適当ではなかろうということで、軍事的な合理性は、必ずしもその点では私どもは追求いたしておりません。ただ、現用のF4でも、CAP運用することはあり得るということは申し上げております。
  419. 上田哲

    上田哲君 ほら、見てごらんなさい。現在の国内情勢ではそれができないというだけであって、常識としては、これは空中給油機がなかったら、こんなものは装置を持ったってしようがないということじゃないですか。そうでしょう。
  420. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 毎度申し上げていることを繰り返しますが、地上で給油する時間を短くすることは防空上きわめて有用である。
  421. 上田哲

    上田哲君 そんな詭弁を使っちゃだめだ。
  422. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) これは詭弁ではありませんで、計算をされればそのとおりで、おわかりになろうと思いますし、また、防衛局長個人の意見ではありませんで、空幕で検討した結果であります。
  423. 上田哲

    上田哲君 防衛局長、おやめにならにゃいかぬでしょう。  じゃ、もう少しほかの側面から申し上げよう。今日の世界航空戦略は、実用戦闘機、爆撃機なんというものをフロントに配置しているなんということはだれも考えていませんよ。ペンタゴンへ行って聞こうと、どこへ行って聞こうと、これは常識なんです。今日は給油機が前線に出てくるんです。だから、沖繩からB52が引き揚げたって、ファントムが引き揚げたって、KCが残っているじゃありませんか。嘉手納にはKC価、普天間にはKC130が残っていて、嘉手納の師というのが大体全域をおおっていますよ、台湾からフィリピンまで。そして岩国のF4はKC130、普天間がやっているじゃありませんか。それさえあれば心配ないんですよ。この事実を否定しますか。
  424. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) アメリカの戦略戦術は、おっしゃるとおりであります。日本日本としての戦術の運用というものがあろうと思います。
  425. 上田哲

    上田哲君 アメリカの戦略の中に、安保体制の中にあるんじゃありませんか。同じ飛行機をライセンスでやっているんじゃありませんか。向こうは向こう、こっちはこっちで、性能がどうなるんですか。非常識なことはやめたまえ。どっちなんだ、一体
  426. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) この問題は、おわかりいただけると思うんですけれども、アメリカの航空機は、日米安保体制だけではありませんで、アジアのいわばアメリカの軍事戦略の中で動いておるわけであります。その中で、日本は日米安保体制として、日本自身の防衛にかかずらわっているわけでありますから、日本の自衛に、あるいは日本自身の防空に必要な範囲においてそれを運用する。したがって、アメリカの運用と日本の運用というのが違っても、これはやむを得ないのではないかというふうに思います。
  427. 上田哲

    上田哲君 そうなら、ますます空中給油装置をはずすべきじゃないですか。
  428. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) それでは、地上における四分間の利益というものをどういうふうにお考えか、そういうものは要らないというような御判断があればまた格別でありますが、縦深性の非常に弱い日本については非常に重要な意味があるということを専門家の立場では申しております。
  429. 上田哲

    上田哲君 あんたはもう専門家じゃないな。そんな詭弁は、三回、四回使っちゃだめですよ。  じゃ、別なことを申し上げよう。S作業という名前で、昭和四十一年から四十四年まで、このファントムの選定、FXの段階で、どういう選定経過があったか。
  430. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) これは、防空上どういうような航空機と、それからその機数の組み合わせ、スコードロン数の組み合わせが適当であるか、ナイキ及びホークも含めまして。その中で、どういう機種をどの程度持つのが一番総体的に効率的であるかということを、オペレイションズリサーチでやりました研究結果のことであります。
  431. 上田哲

    上田哲君 FXの選定について、第二回の調査団が昭和四十三年の七月から九月にかけてフランスとアメリカを回った。このときに、ファントムのほかに、F104の改良型のCL一〇一〇とミラージュF1を加えて三機種が候補にのぼったんです。ミラージュとそのCL一〇一〇をはずしてファントムになった理由は何ですか。
  432. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) これは、爆撃性能、それから航続距離、スピード、それからその他の運用性能というものを総合的に判断し、なお価格も含めてでありますが、そういうことを総合的に判断して、F4が適当であるという結論が出たように聞いております。
  433. 上田哲

    上田哲君 ミラージュにも、CL一〇一〇にも空中給油装置がないんですよ。そこがポイントでしょう。
  434. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 当時私はおりませんでしたが、あとでいろいろ話を、あるいは説明を聞きました場合にも、給油装置の話は全然出ておりませんでした。
  435. 上田哲

    上田哲君 知らない人に聞いてもしようがないけれども、つまり、自衛隊としては空中給油機がほしいんですよ。空中給油装置がなければ、これからの近代航空戦略の中では太刀打ちできないという認識が、明らかに制服の中にはあるだろう。これは元防衛庁長官の中曽根大臣にお伺いしたいけれども、四次防原案の構想のもとの部分に空中給油機の考えがあったはずですね。
  436. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはありませんでした。
  437. 上田哲

    上田哲君 ほんとうにありませんでしたか。
  438. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ほんとうにありませんでした。
  439. 上田哲

    上田哲君 中曽根さんの頭の中にはなかったが、防衛庁の中にほんとうにありませんでしたか。
  440. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは、ファントムを採用するときから、その点は厳に戒めておったところであり、日本の防衛方針がそういうふうに限局しておりましたから、防衛庁全体をあげて、ありません。
  441. 上田哲

    上田哲君 F4EJの国防会議決定はいつですか。
  442. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 四十四年の一月であったと思います。
  443. 上田哲

    上田哲君 F4EJの国防会議決定が四十四年一月。同じ年の四十四年十一月に発行されている「航空幹部学校記事」というのがあります。航空自衛隊の幹部が作戦研究をした結果をまとめたものです。時間を省略するために私は全部読まないけれども、この中に、はっきり書いてある。ここにおいて「この討論における結論は「航空作戦は専守防空によって勝利を得ることができない」という一事であった。」、「対象勢力の航空基地を連続的に攻撃して使用不能とし、その航空活動に制約を与え、わが航空優勢を早期に確立することにおき、」——いいですか。「わが航空兵力の七〇%を攻撃に使用し、三〇%で防空に任ずることとし、防空は攻撃機の発進帰投時の掩護を重点とするよう配慮した。」と、こう書いてありますよ。ファントムがきまったとき、そのときの国防会議できまったときの同じ年に、航空自衛隊の幹部の作戦研究の中では、はっきりもう、専守防衛はだめだ、七〇%は出ていくんだ、空中給油装置のCAPの体制でなければいかぬということを言っているじゃありませんか。中曽根さんに聞いているんじゃない。防衛庁は何と答える。そういう考え方が根底にあるということじゃないですか。
  444. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 幹部学校の記事の中には、いろんなことが出ておることは確かのようであります。しかし、防衛庁の計画、自衛隊の計画としましては、それぞれの防衛計画がございまするけれども、それはすべて要撃用に使われている、攻撃用に使うものはございません。もし攻撃といいましても、たとえば上陸するための艦艇を海上において攻撃するという場合ならば入りまするけれども、相手国領土を攻撃するというようなものは、こんりんざい、われわれの計画には入っておりません。もし、それが必要であるというならば、それは米国に期待せざるを得ないというのが基本的な発想であります。
  445. 上田哲

    上田哲君 総理、国防会議でこれがきまったときの同じ年に、制服の中にはこういう見解がちゃんと出ているんですよ。だから、危険があるんです。この危険は防がなければなりませんね。しかも、このファントムというのはライセンス生産ですから、おととしの七月の二十三日に一号機、二号機が来たんです、太平洋を飛んで来たんです。太平洋を飛びこえて来たのは、空中給油だから来たんですよ。いま日本の自衛隊の持っている飛行機は、ファントムは実際にそうなっているんです。これが向こうへ飛んでいかないという保証はないですね。とすれば、これはやっぱりチェックしなきゃならぬではありませんか。
  446. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いろいろな各部署で研究したり、学問的な問題もあるでしょうし、討論の過程においていろいろな問題があると思いますが、しかし、あくまでも政府が防衛計画をきめ、また有事の場合の出動の体制その他に対しても、これは厳に、憲法に背反をするような計画をきめたり、行動を許したりはいたしません。そういう意味で、一部幹部の問にそのような私見が述べられたり、また、そういうことが討論をされたりしても、憲法を守るということに対しては政府は責任をもって対処してまいりたいと、こう思います。
  447. 上田哲

    上田哲君 抽象的でわかりませんが、その幹部学校の記事について、この考え方について、どう思いますか。七〇%は攻めていけと書いてあるんです。日本の飛行機の七〇%は攻めていけと書いてあるんです。
  448. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) ただいま総理から申されたとおりでございまして、そういう研究が幹部学校の生徒の中で研究されたことは、あるいはあったかもわかりませんが、防衛庁としての防衛体制、自衛体制というものにそういうものは少しも反映をさしておりません。繰り返して申し上げておるように、ファントムも、何といいますか、相当給油によって足を長くし、あるいは爆撃照準装置をつけまするならば、いわゆる相手国の基地を爆撃、たたくというような能力ももちろんあって、そういう使い方をしておるところもあるわけですけれども、わが国は、これをもっぱらインターセプター、要撃戦闘機として使うということで、爆撃照準器ははずした、給油装置があるのは、ついておるものをわざわざはずす必要はない、そのことが地上給油を約半分にできるというメリットがあるということもあるので、これをはずさない。それで、これをやりますためには、もう御承知のように、給油機を持たなければなりませんし、そうして給油の訓練をやらなきゃならぬ。そういうことは絶対にやらないということは、はっきりした、これはもう一貫したかたい方針であるわけでございまするので、御心配を受けるようなことになることは万々ない、かように御理解を得たいと思うのでございます。
  449. 上田哲

    上田哲君 そんなことを信用しろというのは無理ですよ。出刃ぼうちょうを持っていたら、これはやるかもしれぬじゃないですか。そんなら、出刃ぼうちょうを持つなというのがほんとうじゃないですか。それをあなた方が、どうしても出刃ぼうちょうを離さないと言っていることは、やっぱり人殺しの気持ちがあるんだということにならざるを得ぬじゃないですか。これは国民が納得しませんよ。  念のために聞くけれども、こういう飛行機の運用研究というのは、だれの権限ですか。
  450. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 航空幕僚長であります。
  451. 上田哲

    上田哲君 制服でしょう。必ずこれは運用研究が始まる。この運用研究で、空中給油機を、CAP体制をアメリカのKCを使ってやりたいということが必ず出てきたって、シビリアンは全然これをチェックすることはできぬじゃないですか。どうしますか、総理。空幕長でできるのですか。
  452. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) そういう研究の結果を要請してまいりましても、防衛庁の方針として、そういう方針を採用は決していたしません。
  453. 上田哲

    上田哲君 だから、それはシビリアンまで来ない、空幕長権限だというのじゃないですか。どうするのですか。
  454. 横川正市

    ○横川正市君 関連で、ちょっと明確にしておきたい。  死刑を執行する場合には、法務大臣の机の中にきちっとあるわけですよ。それから、核の実行行為に入る場合には、アメリカの場合には大統領がこれはみずから自分で押すという、そういう専決手段を持っているわけなんです。いまのようにシビリアンコントロールのコントロールそのものが、そういうような即効的な具体的なものがないというところに——持たせることに危惧を感ずるわけですが、それを防衛庁長官としてはどう考えるかというのを、上田さんの質問と同時に、あわせて答えていただきたい。
  455. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) いま持っておりまするF4EJに給油をしてやるということになりますれば、もとより給油機を装備をしなければなりませんし、訓練をしなければならぬ。給油機などというものは、今度きまりました国防会議の決定に従いましても、やはりこれは重要項目に当然当たると考えまするから、防衛庁の段階でもそういうものは採用をいたしませんが、かりに間違って防衛庁でそういう案を出しましても、国防会議の場においても、シビリアンコントロールとして、そういうものをチェックすることはできるというふうに考えるわけでございます。
  456. 上田哲

    上田哲君 空幕長権限を、じゃ変えるのですね。
  457. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 運用研究そのものは空幕で行ないます。したがいまして、空幕長の権限でありますが、その結果は当然私どもは聞いております。そして、実務の流れとしましては、もし運用研究の結果こういう装備がほしいとなれば、これは空幕から内局に上がり、長官の決裁を得るということでありまして、御質問の文民統制という実は十二分に果たせると思っております。
  458. 上田哲

    上田哲君 何が果たせますか。果たせないじゃないですか。運用研究というのは、そういうことで結論が出ちゃったら。結論が出る前に、じゃ、どうやって運用研究するのですか。自衛隊だけでやるのですか。
  459. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 外国と日本の非常な違いのところであろうと思うのですけれども、制服の立場というのは、いわば軍事的合理性を求めてまいります。それをどういうふうに判断するかというのは、長官及び長官を補佐する内局が政治的な妥当性のワクの中で軍事的合理性を積み込んでいくということが判断をされるわけであります。さらに、長官も申されましたように、国防会議でもそういった政治的な立場で判断をされるということでありまするので、制服の研究がそのまままかり通るということではさらさらございません。
  460. 上田哲

    上田哲君 そんなことを聞いているのじゃないのですよ。ごまかしちゃだめだ。あのね、運用研究はどうやってやるのか。自衛隊だけでできないじゃないですか。アメリカのKCを借りるしかないじゃないですか。
  461. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) アメリカのKCを借りるということは考えたこともございませんけれども、そういった意味での運用研究は、いままで計画したことも、やったこともございません。
  462. 上田哲

    上田哲君 運用研究を、じゃ、やらないのですね。やるのなら、アメリカを借りなければならない。どっちですか。
  463. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) F4に対する空中給油という形での運用研究は、やる必要もございませんし、やる意思はありません。
  464. 上田哲

    上田哲君 運用研究をやる意思がないなんて言ってますがね、十年前はAEWにやりました。最近ではこのファントムの——いいですか、ファントムの赤外線探知機をつけるかどうかということでやっておるじゃないですか。何を言ってますか。現実に運用研究をアメリカ軍と共同で、自衛官が乗っておるじゃないですか、アメリカのF4Eに。この実態がありながら、口をぬぐって、やらないなんていう詭弁は国会を愚弄するものですよ、これは。はっきりしなさい。
  465. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 御質問は、空中給油に関する運用研究というふうに承りました。
  466. 上田哲

    上田哲君 子供だましの答弁をしてもらっちゃ困る。国民と国際的な不安をわれわれは除去しなければならぬという立場で聞いておるのです。小学生のような答弁はやめてもらいたい。運用研究ということをやっていくならば、空幕長権限のもとで許可ができるのだし、その例が幾らでもあるので、シビリアンは手がつかぬということになれば、実際問題としてこういう研究が進んでいくということがあり得るではないかと言っているんです。それをやりませんという話は答弁にならない。あり得るかどうかということを私は聞いておるんです。どうすればあり得ないかという具体的な行政上の手続をもって説明することがまじめな答弁ではないか。
  467. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 空中給油に関する運用研究というものはやっておりませんが、また、やる意思もないわけでありまするが、それをチェックする唯一の——唯一といいますか、最大の方法は、防衛庁長官が空幕長に対してそういう命令をされればけっこうであります。
  468. 上田哲

    上田哲君 じゃ、運用研究はやらないんですな、長官
  469. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) F4EJの空中給油に関するような運用研究はやる必要はございません。やりません。
  470. 上田哲

    上田哲君 空中給油をやっているのか、ほかのことをやっているのかということも、つまびらかになりません。F4Eについての運用研究ということを米軍と一緒にはやらないのだということをはっきりしていただく。もう一つ、空中給油機は絶対に買わないと、こういうことがはっきりしなければ、少なくとも最低の歯どめになりません。
  471. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) F4EJについての空中給油についての運用研究というようなものはいたしません。F4EJが米国の航空機と防衛のための運用研究というか、そういうものはもちろん考え得る問題でございます。
  472. 上田哲

    上田哲君 じゃ、歯どめにならぬじゃないですか。総理、歯どめになりませんよ、これは。  F4EJは二人乗りですね、パイロットが二人ですね。
  473. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) パイロット二人でありますが、後席のほうは、航法及び爆撃——要撃関係をやっていると思います。
  474. 上田哲

    上田哲君 パイロットかパイロットでないか、はっきりしてください。
  475. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) パイロットであります。
  476. 上田哲

    上田哲君 アメリカは二人パイロットを乗せないんですよ。どうしてですか。
  477. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) この辺は意見の分かれるところかもしれません。そこで、アメリカがパイロットを一人と指定する場合に、一機当たり何人にしているかということは私いまちょっと存じておりませんが、航空機当たりに対してどれぐらい持っているかということの関係もございます。それから日本の場合に、これは日米安保体制の一つの有効な場面であろうと思いまするけれども、航空機がなくなってきた場合に、パイロットが準備されているということは航空戦力を継続して維持し得るということになりまするので、私どもとしては、外国の若干の例はあるにせよ、両方ともパイロットの資格を持っているほうが適当であろうという判断に立っております。
  478. 上田哲

    上田哲君 これはパイロットの養成なんですよ、機数の問題じゃないんです。パイロット二人乗りということは、一つは養成、そしてもっと重大なことは、結局CAP体制で、戦闘空中パトロール体制をとるから、長時間飛行に耐えるような体制を組んでいるということなんです。  残念ながら時間がないから、こまかく詰めていられないけれども、もう一つ伺いたい重要なことは、RF4Eの性能を述べていただきたい。
  479. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) RF4Eは、速度はやはりマッハ以上、それから行動半径は約四百マイル、それから主要装備機材は、側方偵察レーダー、赤外線偵察装置、それから前方フレームカメラ、高高度パノラミックカメラ、低高度パノラミックカメラ、慣性航法装置、前方監視レーダー、データ表示装置。以上であります。
  480. 上田哲

    上田哲君 RF4Eにも空中給油装置をつけるんですか。
  481. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 現在ついたままで生産をしてもらう予定のようであります。
  482. 上田哲

    上田哲君 ついたままで生産なんて、実にもう子供だましの言い方になってまいりましたが、総理、F4EJも空中給油装置がある。RF4Eというのはたいへんな偵察機ですよ。カメラ二台つけたようなのとは違うんです。これにやっぱり空中給油装置がつく。この形というのは、完全なこれは戦略体制に入るんです。こういう形を歯どめせにゃならぬでしょう。
  483. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) RF4Eの場合は要撃機と異なっておりまするけれども、効率性を確保するということでは私は同断であろうと思います。特に日本の場合、偵察機の数が、ヨーロッパなどと比べまして、他の機種とのバランスの面から見ますと、RF4Eが御指摘のようにいいだけに、機数を非常に減らして持っております。それだけに、効率的に運用することは適当ではないかというふうに思います。
  484. 上田哲

    上田哲君 さっきの詭弁がここに明らかになっているじゃありませんか。RF4Eというのは偵察機ですよ。スクランブルをやるわけじゃありませんよ。どうしてこれに地上給油のための空中給油装置が要るんですか。明らかにこれはCAP体制、戦闘空中パトロール体制を、偵察機、戦闘機、うしろにAEW、こういう形で進めるという一体スタイル、これをつくるための空中給油装置じゃありませんか。ここまではっきりしてきて、まだ詭弁ということはあり得ないでしょう。空中給油装置というものを取らなければ、明らかにこれは日本の空軍力というものが隣国に対して非常に危険な体制に入るということを、これは否定できなくなるんですよ。あなたも専門家なら、そのくらいのことをはっきりなさい。しかも、これを取りはずしても、R——いや、Rじゃない、Rもそうですけれども、F4Eファントムの性能上には何の変更もないんですよ。関係もないんです。
  485. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 私は専門家でありませんが、専門家であればあるほど、航空機が一たん地上に帰ってまた飛び立つ、その間の時間をいかにして節約するかということは非常に重要なファクターになっております。ところで、RFの場合は、確かに御指摘のようにF4Eほどの必要性というものはないわけでありましょうが、これを除かねばならない必要は、またこれ、ない。やはり地上で給油する場合の時間の節約ということもあります。また、RFの場合に、CAPということは、これはやりません。
  486. 上田哲

    上田哲君 ここまで来ますと、詭弁のための詭弁であって、まじめな論議ではありませんよ。技術的にも、それから論理的にも、偵察機RF4Eまでが空中給油装置をつけておく理由もないけれども、さりとて取りはずす理由もないなどというばかなことで、こんなたいへんな、一機について二十億もするような金を使うことが正しいか。これは、論理としては、総理、たいへん私は未熟だと思うんですが、どうですか。——論理として未熟だろうと言うんです。こんな議論ではいかぬでしょう。
  487. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ、いろいろ御議論はあろうと思いますが、いずれにしても、日本の自衛隊は専守防衛であると、憲法の定めるワク内を越してはならないということが大前提でございまして、これが運用に対しては厳にこのワクをはみ出すようなことはしないということでございます。  しかし、一番初めに御質問がございましたように、相手のある話であるから、しかも、相手の技術や科学が発達してくると、それに対応するという面でいろいろな問題が起こってくる。特に飛行機は、昔のような飛行機ではなく、何にでも使えるというように用途が多様化してくる。これは、大陸間弾道弾とか、それから原水爆とかいう、全く憲法に背反する、もう憲法外のものであるし、相手に攻撃専用であるとか脅威を与えるとかいうものとは違いますが、いずれにしても、性能がよくなってくると、給油をすれば長距離にも使えるんじゃないか、爆撃装置をつければ爆撃機にもなるんじゃないかというような議論は起こってくると思います。これは運用の問題であります。ですから、絶対にそういう運用はしませんということが一つあります。あなたの言うように、それをはずしてしまえばいいじゃないかという議論も生まれるわけであります。そうすれば心配は全くなくなる。はずすということによって性能を減殺するという面も出てくるわけです。
  488. 上田哲

    上田哲君 ないんです、それは全然。全然ないんです。いま明らかにしますよ。それならいいでしょう。
  489. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、性能が減殺されるというのは、さっきの話では、八分かかるものが四分で給油できるということになれば……。
  490. 上田哲

    上田哲君 違うんです。
  491. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 四分で何マイルということになりますから、そういう面は、やはり運用で制約をするということが大前提にならなければいかぬと思うんです。いま、一番最後に述べられた偵察機というのは、これは長いこと滞空できれば偵察要務もできるわけであります。しかし、そうすると常時パトロール制へということにすぐなるんじゃないかと、こう置きかわるわけですから、そこらがむずかしいところだと思います。むずかしいところでありますが、いずれにしても、滞空時間を長くしておるということも、これは戦時パトロールというような意味ではなく、少ない機数で効果的にその責めを果たすというところにウエートを置いているんだということを、やっぱり理解していただく以外にはないのだろうと、こう思います。
  492. 上田哲

    上田哲君 総理ね、空中戦闘パトロールをやりますと、これは専守防衛じゃなくなるんです。これはもう明らかです。それはやめなきゃいけない。
  493. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 偵察でしょう、これは。
  494. 上田哲

    上田哲君 偵察だって、行ったらたいへんです。
  495. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 空中戦闘パトロールとおっしゃいましたからCAPのことだと思いますが、これは、日本は、相手の航空機を発見する時間あるいは距離が比較的短いという関係上、こちら側の基地から飛び立って相手に会敵する、いわゆる会敵ラインというのが比較的狭いわけであります。そこで、日本の北から……。
  496. 上田哲

    上田哲君 それはいい。いま、総理に聞いたんだから。そんなこと聞いてない。
  497. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 場所によって違ってくるわけでありますけれども……。
  498. 上田哲

    上田哲君 聞いてないことはいいですよ。時間がないんだ。むだなことだからやめたまえ。全然違うことです。  総理総理に私は質問しているんです。専守防衛というのは、やっぱりそういうものじゃないんです。いま、CAPという戦闘空中パトロールになりますと、これはスクランブル体制、地上待機体制からぐっと先へ出るんです。そして、偵察機が敵地の中に——敵と言っちゃことばが悪いが、相手国の中に常時行くような状態になっちゃ、これはいかぬのです。そういう体制はいけないでしょう。
  499. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは、少なくとも、相手国の領海に入ったり領空に入ったりすることは、これはもういけない。しかし、できるならば、日本の領海、領空というものは少ない飛行機で最も効果をあげるようなパトロールが続けられることが望ましい。そこを、滞空時間が長くて少ない機数で効率的な行動ができるということは、他にも行けるんだということになりますが、他には行かないんですと、絶対やらないんですと、こういうところに、やっぱりウエートを置いてお考えいただく以外にないと思います。
  500. 上田哲

    上田哲君 これを取りはずした場合に、性能上どれくらいのことが起きるのか。取りはずしたらどれくらい金がかかるのか。
  501. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) お答えいたします。  取りはずすということにつきましては、私ども、先ほどからお答えしておりますように、考えておりませんでしたので、具体的に設計変更等につきまして相手方のマクダネル・ダグラス社と何ら相談をいたしておりません。ただ、私ども考えられますことは、設計変更を要しますということ、それからそれに基づきまして、わがほうでライセンス生産を現在いたしますので、治工具、あるいは試験費用、あるいはその他の関連の実験費用等が、実は内容としましては考えられるかと思いますが、その内容につきまして積算は現在やっておりません。
  502. 上田哲

    上田哲君 性能は。
  503. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 航空機自身の性能には関係ございません。あくまでも地上給油能力に関係あるだけであります。
  504. 上田哲

    上田哲君 全く何でもないじゃないですか、つまり。  総理、もう一つ問題になるのは、ほかならぬ会計検査院が、これは要らないだろうと指摘しているんですよ。会計検査院。
  505. 白木康進

    会計検査院長(白木康進君) お答えいたします。  ただいまお尋ねの問題は、現在調査官の段階で調査中でございまして、私も、実は昨日新聞で承知したのが初めてでございますが、本日いろいろ事情を調べてみましたところ、これは純粋に経理的な立場から——先ほど来当局から御説明がございますように、給油機を持っていない、それから、給油をやらないたてまえであるということであるならば、そのためにファントム自体が非常に高価になっておるならば、ちょっと買い方としてちぐはぐではないかと、こういう、きわめて経理的な疑問がら調査官が質問をいたして、当局の説明をお伺いしておるという段階でございます。したがいまして、院としまして当局に注意を喚起したことも全然ございません。  なお、関連して申し上げますけれども、先ほど来いろいろ議論を承っておりますが、防衛庁で調達される兵器の性能と申しますか、機能と申しますか、どういう機能のものを買うか、あるいは現在の機能をどのように評価するか、こういったことは、予算の通常の執行の範囲内で行なわれることでございますれば、これは私どもの判断のらち外でございますので、その点はひとつ御了承いただきたいと思います。
  506. 上田哲

    上田哲君 総理、要らないじゃないかということが、調査官の段階でも出ているわけです。そして、いままでの議論でおわかりのように、たとえば、明らかにそういう、取りはずしても性能上の問題はないんです。いまも言明したとおりです。費用も、爆撃装置まではずしたんだから、それに比べればはるかに安い。数万ドルのはずですよ、計算してみますと。全然問題ないんです。しかし、そういうことも検討してない。しかし、根本的には危惧があるわけですね。こういう論議をもっとはっきり詰めなければならぬと思うのです。もっとしっかりこの問題を詰めなきゃ、結論を出すべきではないと思うのですが、いかがですか。総理から、総理から、総理から。そっちじゃないですよ、総理から。
  507. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この飛行機はもう発注しておるようでございますから、設計変更することによって、もっと高い金を出すようになるなら、これは問題でありますが、これはひとつ、国民の皆さんにも国会を通じて御論議をいただいておるわけでございますから、やっぱり納得していただけるような説明を防衛庁当局ができるようにいたします。
  508. 上田哲

    上田哲君 はい。
  509. 森中守義

    ○森中守義君 ちょっと関連。
  510. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) もういいでしょう。——簡単にひとつ。
  511. 森中守義

    ○森中守義君 先ほどの予算の、あとで理事会扱いになっておりますが、これは、いま質問の中でも明らかなように、非常に重要なんです。装置をつけるか、つけないかということです。大体概算で千六百億ぐらいの予算が浮くはずですよ。ですから、資料を出してもらう際に、概算でいいといっても、すでに契約は一応成立しているということのようですから、やや精密の積算を出してもらわないと、これは予算百二十八機全部で一千六百億も違ってくると、たいへんなことですから、ぜひそういう意味で防衛庁も出してもらいたい。
  512. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 理事会で協議いたします。
  513. 上田哲

    上田哲君 総理国民に大いにひとつ理解を求めるために納得のいく説明をするようにするとおっしゃった。私はそれを了とします。  とにかく、いまの話を聞いておりましても、お聞き取りのように、どう考えても納得できない、多く詰めなければならない問題がたくさんあることは確かだと思います。そういう意味で、たとえば、これを取りはずしたほうがいいだろうということは、いまの議論の中にもあるのです。それが問題がなければ、そのほうがいいじゃないかというところまでは、私は、だれが聞いていても、なったと思うのです。しかし、その性能がどうなるかということも十分に研究が詰めてない。大体変わらないということは防衛局長言ったけれども、しかし変えた場合には、費用がどうなるのかということも、実は積算してないということでは議論になりません。そういうことは、しっかりひとつ出していただくことが納得の中身だろうと思います。そのことを出していただきたい。  それから、そういうためには、いま森中委員も言われましたように、四十八年度予算の中で、四十四年度、四十六年度からずっと四十八年度に繰り越しておりますものが、四十八年度新規を入れて五百十億円、それから後年度負担を合わせまして千百億円、合わせて千六百億円ほどのものを、その結論が出るまでは、やっぱりしっかり押えていただかなければ、この論議というものは軽視されることになると思います。私は、それを第二点として要求をする。  そしてもう一つ、ぜひひとつですね、爆撃装置をはずしたとおっしゃるけれども、国民の金です。二十三億円です、一機。そういうものがどういう状態にいまなっているかということが、あの程度のいいかげんな説明では、私どもは税金を払うわけにはいかぬ。少なくとも、私どもは国会の権威において、もう百里基地まで行けば見られるんですから、可及的すみやかに、取りはずしたその装置がどうなっているのか、あるいは今日のバルカン砲がどうなっているのか、空中給油装置はほんとうにあなた方がことばに出すこともできなかった何方式になっているのか、実際地上給油がどうやって、何分、どうなっているのか、私たちにちゃんと見せていただきたい。  この三点を明らかにしていただくことを要望して、私は、その結論が出るまでこの質問を後日に留保したいと思います。
  514. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて上田君……。
  515. 上田哲

    上田哲君 理事会でそのことを御提案願います。——政府の答弁がない。
  516. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 答弁要りますか。
  517. 上田哲

    上田哲君 約束していただきたい。そのとおりすると言っていただかなければ困る。防衛庁長官から言ってください。総理でもけっこうです。政府側からしっかり。じゃ総理、わかったと言ってくださいよ。  もう一つ、ちょっと済みません、もう一つだけ。  ここに設計図があるんです。この設計図があります。この設計図を出してください。これは明らかに私どもが入手しております空中給油装置の設計図です。この設計図が当然防衛庁にあるはずでありますから。これ、ずっと見てください、これ、総理に上げますから。いま一つつけ足しますけれども、この部分に関する設計図を出していただきたい。  この四点です。
  518. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) ちょっと専門的になりますので、防衛局長からお答えをさせます。
  519. 上田哲

    上田哲君 いや、政治判断として了解したと言ってくれなければ困るですよ。
  520. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 関係資料は提出いたします。ただ、いまの設計図は、防衛秘密に当たっているのかどうかということと、それから相手方会社との関係もありますので、この点は留保さしていただきます。
  521. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて、上田君の質疑は終了いたしました。
  522. 上田哲

    上田哲君 三点、政府側はいいですね。
  523. 小田村四郎

    政府委員(小田村四郎君) ただいま御質問のありましたうち、四十八年度の予算について執行をどうするかという御指摘がございましたけれども、これは、すでに契約済みのものでございますので……。
  524. 上田哲

    上田哲君 そんなことは関係ないよ。
  525. 小田村四郎

    政府委員(小田村四郎君) 契約済みのものでございます。
  526. 上田哲

    上田哲君 そのための予算審議じゃないですか。契約のほうが国会の予算審議より優先するはずないじゃないですか。重大問題だ、またそれは。
  527. 小田村四郎

    政府委員(小田村四郎君) ございますので、四十八年度の予算が成立した場合には執行さしていただきたい、かように考えております。
  528. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて、上田君の質疑は終了いたしました。
  529. 上田哲

    上田哲君 いや、飛行機は見せるんですか。見せないんですか。
  530. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) いや、あとでこれは協議いたしますから。あなたの要請だから。もういつまでやっても、これはあんな答弁で。(笑声)     —————————————
  531. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 横川正市君。   〔委員長退席、理事米田正文君着席〕
  532. 横川正市

    ○横川正市君 時間がありませんので、個条的にずっと聞いておきますから、おもに総理大臣から答弁いただきたいと思います。  六次審と七次審の選挙制度審議会の答申と報告が出されておるわけです。この報告は、私どもは、非常に審議が尽くされておらないといううらみはありますけれども、選挙制度改革の基本的な方向が、答申あるいは報告の内容として示されたと、かように理解をいたしておるわけで、総理自身としては、この答申、報告の取り扱いについて、制度論から見てどう考えておられるか。これは制度のあり方ですから、たとえば政党側に一任をするというようなこととか、それから、何か、朝日新聞の記事を読みますと、両院の特別委員会に説明をする等の記事がありますけれども、これはちょっと取り扱いとしては間違いではないかと、こう思いますので、その点あわせてひとつお答えいただきたい。
  533. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 担当が私ですから、先に私から答えさしていただきます。  第六次審は、御承知のように、参議院の増員の問題を具体的に指摘しております。今回は答申という形ではございませんでした——もう時間がありませんから、簡単に、御承知の上での御質問ですから、お答えいたしますが、衆議院、参議院、両院にわたっての制度の問題、選挙方法の問題、政党の問題、これは、政党法というところまでやかましくは突っ込んでおりませんが、ほぼその方向を明示した、相当権威のある報告書であるというふうに考えております。  したがいまして、いま、院の問題であるかどうかということでございましたが、選挙法は、御承知のように、この院の法制定によって、あるいは改正によって改められてまいりまするので、当然、政府提案にするのかあるいは議員提案にするのかという、その提案者の問題は別といたしまして、最終的には院が決定をされるものというふうに考えております。
  534. 横川正市

    ○横川正市君 これは自治大臣でいいですが、改正の内容は、考え方としてお聞きするんですが、六次は参議院、七次は衆議院のものを含めておるわけです。そこで、改正は、そのまま両院の問題を案の中に組み込むということでやられるのかどうか、これが一つです。  それから、新聞を見ますと、小選挙区比例代表というような衆議院の改革が一つ出ております。これはもちろん定数是正もあります。それから、運動の方法については、これは自由化の方向が打ち出されているわけですけれども、内容としてはどういう検討をされた内容になるのか。  それから、あわせてお聞きいたしますけれども、たとえば比例代表制をとるとして、ドント方式の、いわば取り上げ方といいますか、いろいろな方式があるわけで、基礎のとり方がいろいろあるわけですが、それについては自治省としてもうすでに作業に入っておるのかどうか、あわせてお伺いをいたします。
  535. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 御指摘のように、増員の問題がございます。この増員の問題というのは、総定員をどうするかという問題にも関係がございます。したがって、増員をして、定員はその増員分だけふやしていくのか、あるいは人口が減ったところは減らすことが適当であるのか、この議論が人員の問題では当然出てまいります。それから、かりに、ここは参議院ですから参議院に例をとりますと、参議院の増員については、具体的に五つの県を報告書で指定しておりますね。そうであるという考え方に立つならば、衆議院においてもたいへんな人口のアンバランスということがありまするから、これを一体、増員という形でいくのか、減員というものもある程度考慮するのか、そのあたりは今後の検討にまたなければならない重要なポイントであると思います。そして同時に、その場合選挙区制度をどうするのか。報告書では、御承知のように、衆議院の場合は小選挙区と比例代表制、定員は、五百二十名ほどにふやして、あとは県単位で、固定名簿を出すことによって比例代表を取り入れると、こう報告をしておりますね。はたしてそういうものが国民世論に受け入れられる方向であるかどうか、これはまた検討の余地があると思いまするが、そういう形になっております。それから参議院の場合は、これも簡単に申し上げまするが、全国区についてのみドント方式による比例代表制度を取り入れることが望ましいと、こういうことにいたしております。ところが、これらについては従来の歴史的な経過もありまするし、今日の制度というものも偶然つくられた制度ではありませんから、当然、政府はもとよりですが、各党、私どもで言えば自民党もそうですが、あなた方社会党はじめ各党のものの考え方は那辺にあるのか、国民世論はまたこれをどういう形で支持するか、これなどを十分見きわめて今後の具体的な検討に入りたいといたしております。  もとより自治省におきましては、いつの場面でも資料として提供できる程度の用意は事務的に進めておりまするが、現在の段階でこういうふうにしよう、これを取り上げようというような具体的な検討には入っておりません。率直に申し上げますれば、いま政府与党では松野委員会というものがありまして、その下に赤澤小委員会というものがあって具体的検討に入っておる。貴党の場合でも、やはり選挙制度調査会等があって御検討をたえず進めておられる。こういったものの動向を見きわめて、今後十分公正な立場で対処をしたい、こう考えております。
  536. 横川正市

    ○横川正市君 この選挙制度審議会が七次までのうち、私は五次と六次、直接委員会に参加をしたわけなんですが、その参加をしたときの一番主要な課題というのは何であったかといいますと、これはいまのままのかっこうで選挙制度というのが続く限り、たとえば衆議院の場合に、政権を交代するような、そういう状態になることは相当見通しとしてあとになるだろう、これではやはり民主的な土台ができないから、できるだけ選挙法が公正な判断ができるように改正すべきであるというのが、これはもう中立委員を含めての全体の意見でありました。そこでいま参議院は、総理はじめとして皆さん、次の選挙では与野党逆転するかもしれないという判断をされて対策を立てておるというのが一般の情報ですね。その土台になっているのは何かといいますと、これは地方区、それから全国区、その他入れてみましても、大体複数選挙といいますか、そういうものが土台になっているわけなんですよ。そういうものが土台になって、たとえば一人一区の地方区の場合の補完は全国区が行なうとか、そのほかは二人区あるいは四人区、六人区とか、八人区とかというような、複数候補者が出ることによって、いわば衆議院と違った選挙の結果というのが生まれてきておるわけなんです。そこで、これは総理の意見の中にあるようですが、たとえば一人区を中心とした三人区制というようなものが考えられているということをちょっと耳にいたしたわけですけれども、私は二人区がこれはもう基本であって、やむを得ざるものは三人区というようなかっこうに改正することが、より議会の中にいわば与野党の政権交代能力を持つ、こういうことになるんではないか、そのことに今日努力すべきではないかというように思いますが、ひとつ総理大臣と自治大臣からの意見を聞きたいと思います。
  537. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 先に私から申し上げますが、まだいま何人区にするかということについては具体的に検討に入っておりません。一人区でいくというのは、これは報告にもあるわけですね。そこで、一人区か三人区か、これは総理の意見というより、自民党の中でもそういう意見が一部にあるんです。それはどういうことかといいますと、やはり与野党で選挙してまいりますと、一人一区というのが報告書に出てきたわけです。その場合に、二人区という場合になりますと、まあ一対一という形になる。三人区であれば一対二——これは二が政府与党で野党が一人であれば、これは政府与党が勝ちであり、二が野党があれば政府与党は負けであるということが明瞭にそこで示される。本来、選挙というものは国民世論を背景にして、そこで世論の動向が政府を支持するかしないかということがはっきりすることのほうがいいじゃないか。その二人区の場合、五〇、五〇ではどうも国民世論の動向というものが明示されないという意味合いから、一人区を原則とするが、どうしても一人区にならぬ場合は三人区が望ましいのではないか。これは一つの私やはり権威ある意見であろうと思います。それから、いま横川議員が二名区がむしろ理想だとおっしゃる議論は、いまのそういう五〇、五〇になって世論の動向が明確にならないという欠陥はありますが、もとよりここでこうして党を代表しての御質問でございまするから、そういう御意見も十分検討をさせていただきまして、今後の選挙区をなぶりまするときには、一つの意見ということで、検討をさせていただきたい、こう思います。
  538. 横川正市

    ○横川正市君 選挙制度の審議とあわせて政治資金の問題が、これはもう耳にたこのできるくらいに言いもし、聞いてもいるわけなんです。ところで、審議会の委員の土屋委員は、たとえば政党法を制定したらどうかというのはこれは従前の持論でありまして、聞くべきものがありました。同時に柏村さんですね、前の警察庁長官ですか、は、前の選挙の総得票数にたとえば百円をかけるということで、選挙の公営を厳重にしたらどうかということで、提案がそれぞれ選挙を取り扱った責任者から意見として出ているわけなんで、いまの体質はどうかと言えば、自由民主党の政治資金のいわば内容を追及して、けしからぬという、こういうことになり、そのことがいわゆる政治に対する不信を呼び、あるいは自民党が凋落していく原因にもなるということで、私は決していまのままではいいと思いませんが、改正案としては、政党法とか選挙公営とか、これを中心に思い切った改正をすべきだと、こう思いますが、それに対してはいかがでございましょうか。
  539. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 御提案の線は私きわめて望ましいことだと思っております。政治資金規制の問題は、もうすでに御承知のように三回ここに出しまして、これが審議未了に終わっております。これはやはり個人中心の比較的金のかかる選挙、こういうものが背景にあったんではどうしてもだめだ、そこで、政党中心の、いま御指摘のような政党法ができればこれは一番理想的ですし、そういうものに近い制度をやはりつくり上げることによって、もっともっと選挙を政党本位の、また公営の選挙にしていく、そして、金のかからない、また国民世論が的確に表示できる選挙制度というものを考えなければならぬということで、今日私ども自治省においても苦心をいたしております。アメリカ等においても、先般、御承知のように選挙に使う金額あるいは寄付の限度額等々いろいろ設けておりましたが、これはなかなかむずかしい、政治団体を幾つもつくれば際限がないということで、これを撤廃いたしましたね。しかし、政治資金を公示するという点においては、アメリカでもドイツでも非常に厳格にやっておるわけです。ですから、そういう見習うべき点もありまするので、これなどを十分参酌しながら今後を期してまいりたいというふうに考えております。
  540. 横川正市

    ○横川正市君 実は私の時間が最初三十分あったんですが、ずっと供出をしましてなくなってしまいまして、あとの五分残っているのは、これはあすへ移さなきゃいけませんから、非常に残念ですが、選挙関係についてはまた一般質問で質問することにして、終わりたいと思います。
  541. 米田正文

    ○理事(米田正文君) それでは、横川君の質疑はこれで終了いたします。     —————————————
  542. 米田正文

    ○理事(米田正文君) 三木忠雄君。
  543. 三木忠雄

    三木忠雄君 それでは、最初に、私は商品投機としての米の問題に関して、食糧の需給調整等の問題をからめて質問したいと思うんです。  まず最初に、総理に伺いますが、いま世界的にも非常に食糧危機が訴えられているわけです。特に、いま食糧防衛論と、こういうような話まで現実に戦略家の中にいわれております。こういう意味で、わが国のこの食糧自給の問題に対して総理が長期的な見通しとしてどういうふうな考え方を持っているか、まず最初に伺いたいと思うんです。
  544. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 主食をはじめとし、食糧はできるだけ自給体制をとってまいりたいという考え方を基本にいたしておるわけでございます。その意味で、土地改良等に対しては長期計画を策定し、これを推進を続けようという考え方であります。
  545. 三木忠雄

    三木忠雄君 まあ長期計画、いろんな具体的な問題は総理の頭の中にまだないと思うんです、私ね。しかしながら、具体的に一例を米にとって考えますと、世界的な食糧の不足のおりから、わが国だけが農地を遊ばしているということは、世界的な見地からあまり許されないのじゃないか、こういう感じもするのですが、この問題に対していかがですか。
  546. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 米は一〇〇%自給できる体制にあることは、世界の中でも非常に恵まれておるということでございます。しかし、世界的に見ますと主食が非常に不足をしておる、そういう立場で、日本が食糧基地として立ったらどうかというような御議論もございますが、いずれにしても、日本の米は国際価格に比較すると非常に高いのでありますので、世界的なライスバンクができるのか、いろんな基金ができるのか、そういう問題と同時でなければ、日本だけがいまの状態において食糧提供国になるというようなことはむずかしいことだと考えております。
  547. 三木忠雄

    三木忠雄君 先般FAOの事務局長日本に来て、農林大臣か総理、会われたんじゃないかと思うんですけれども、二百万トンの備蓄を要請されて帰ったと、こういう話を聞いておるわけでありますけれども、具体的にこの問題に対しては、日本政府としてはどういうふうに考えておるのでしょう。
  548. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) FAOの事務局長は具体的に何を備蓄せいと、そういうようなことを申したのではございません。最近における国際的な需給事情などからいたしまして、備蓄をすることが好もしいということを示唆したのでございます。具体的な数字はございませんでした。
  549. 三木忠雄

    三木忠雄君 田中総理に、自民党総裁としても、ちょっと考えていただきたい。実際党内でいま、自民党内ですね、あるいは各党もいろいろ考えておりますけれども、米の生産調整をやめて、あるいは備蓄の問題がいろいろ論議になっております。こういう問題については、田中総理としてはどういうふうに考えておりますか。
  550. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 一応生産調整は今年一ぱいやるということできまっておるわけでございます。今年度の状況見通しますと、まだ四十三、四十四、四十五、四十六年米と、こう持っておるわけでございまして、そのうち外国援助で出すもの、それから飼料として四−六月に五十万トン放出をしようというような問題、こういう問題に対しては、これは実行に移していくわけでございますが、そういう問題を全部解決してまいりましても、今年度、米の需給に対して問題が起こるというような状態は考えられないわけでございます。しかし、どこで災害が起こるかもしれませんし、そういう意味で、いま日本から米の援助を受けるということが一番感謝をされておるのでありますから、米をもっとつくってはどうかというような声もあることは承知をいたしております。そういう問題に対しては慎重に検討してまいらなければならない問題だと、こう理解しております。
  551. 三木忠雄

    三木忠雄君 私は、これは提案も含めて申し上げておきたいのですけれども、日本は確かにいま米の問題でも、まあ、あとでちょっと論議したいと思いますけれども、ちょっと凶作になりますと、備蓄といっても現実にいま五十万程度しか食べる米がないわけですね。凶作になると、非常に端境期には需給調整が困難になってくるのじゃないかと思うのです。この問題に対してはどう考えておりますか。
  552. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) これは以前にもお答えをしたと思うのでございまするが、この四十八年度十月末に古米として五十万トン、これは必ず残ります。そうすると、そのころに新米が入ってまいりまするので、それが平年作でありますれば二百五十万トンは確実にある。これがもし相当狂いがあったといたしましても、十一月当初におきましては何ら心配はない。そしてこのことは、ただいま総理が言われました四十三、四十四、四十五年の過剰米の残というものは、これは別でございます。諸外国への供給などを考えましても、あるいは原料用に使ったものを差し引きましても、まず六十万トン程度は残す、こういうことでございまするので、この十月末の米穀年度のかわり目には別段の心配はないということをはっきり申し上げておきたいと思います。
  553. 三木忠雄

    三木忠雄君 そういう点が非常に私も計算が甘いと思うのです。その前に、世界的に非常に食糧危機で、特に南北問題が将来食糧問題になるんじゃないかと、こういうようなことまでいわれております。こうなった場合に、非常に日本がいま米が余っているからとか、あるいはそういうような需給調整をいろいろ甘い見通しで考えておりますけれども、現実に世界の各地において食糧が不足しているというこういう点、あるいはもっと積極的に、基金でもあれば、穀物ができるような地域が数多くあるわけです。こういう点に対して、日本がやはり主体的な、あるいは指導的な立場といいますか、こういう食糧問題に対してもっと真剣に取り組んで、たとえば世界の食糧の不足に対して、国連等において穀物基金ですね、こういうものを先進国でつくったらどうか、こういうものを提案してはどうかと、こう考えるのですけれども、総理のお考えを伺いたいと思います。
  554. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ライスバンク構想とか食糧基金構想とかということは、過去にも存在するわけでございます。今度は、アメリカを除いては世界各地とも食糧難にぶつかっておるわけであります。これはソ連でも、また中国でも、それからインドでもみんな平年作を下回っておる。これは雪が降らなかったり気候が不順であったというような問題があるわけであります。日本に比べては三毛作でもできるような南方諸地域が全部食糧に困っておる、こういう事実でありますので、まあ日本が主導してということではありませんが、いずれにいたしましても、国際的な機関でこれらの問題が最も大きな問題として取り上げられる趨勢にあるということは事実でございまして、日本も協力可能な面に対しては十分協力してまいりたい、こう思います。これは日本で米を出すよりも、日本が肥料を出したり、それから技術協力を行なったり、それから農耕機械を出してやったりということ、そのものも非常にメリットがあるわけであります。向こうは時期を言わず——日本でいまつくっているのはこれは南の米を北でつくっているわけですから、本来栽培すべき南でもってやることがより効率的であるということは言うを待たないわけでございます。これはもう主食だけではなく、飼料に対しての逼迫の問題もありますので、こういう問題に対して日本が貢献していける面については十分貢献してまいりたいと、こう思います。
  555. 三木忠雄

    三木忠雄君 それでは農林大臣に伺いますけれども、農林大臣の発言の中に、本年のこの米の生産調整は弾力的に運用していく、こういうような趣旨の農林大臣の答弁をされておりますけれども、その意味とその内容ですね、これを明らかにしていただきたいと思います。
  556. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) ただいまの御質問にお答えする前に、ちょっと私つけ加えて申し上げたいことがございますが、先ほど申し上げました私の数字は、もうすでに政府が手に持っておる米の数量でございまするから、この前もこれは申し上げましたが、昨年の暮れに四十六年の九万トンと四十七年の四百五十八万トン計四百六十七万トンというものをもうこれは握っておるのでございまするから、心配がないと言い切ったわけでございます。  それから生産調整の問題につきましては、先ほど申し上げたような数字からいたしまして、本年二百五万トンの生産調整をお願いすることにいたしました。これは言うまでもなく四十六年、四十七年、四十八年と、生産調整の三年目を迎えるわけでございまするが、四十六年の当初におきましては、最初のことでありますから画一的な調整をせざるを得なかった、この三年目に至りましてからは多少——多少というよりも三分の二くらいの要素を、地域の事情を入れた、いわゆる適地適作的な考えを導入してまいってきておるわけでございまするが、農林省としては、生産調整はやっておりまするけれども、農産物全体について一方において適地適作の大きな方針を持っております。そういうことで、ことし示しております生産目標について、それぞれの県から実態に沿っての要望が出てくるならば、それはそれに沿ってもよかろうということが、これが、生産調整に対して何か私の発言が非常に弾力的のように聞こえておる問題だと思うのでありますが、ただ、いまこの段階におきましては、この二百五万トンという数字を、これを変えてしまうということではなく、これを実行する上において、実態に沿うてやってもらうようにつとめようじゃないか、こういう意味でございます。
  557. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、たとえば銘柄米の産地等において、販売の自信のある地域では、生産調整を忌避する傾向が私は出てくるのではないかと思うんです。こうなった場合に、実績が計画量よりかなり少ない場合に、予約限度量はどういうふうなぐあいに算定するんですか。
  558. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 従来でも、実績を見ますると、予約限度量を下回るとか、あるいは生産調整が完全に実行されないとか、いろいろな場合が起きてきております。私が一番願いますところは、先ほども申したように、そのことが何か非常に故意なことでやられているんではなくて、ほんとうに稲作をやる上におきまして、こうやったほうが能率的であり合理的であると——私どもは一方において高能率農業といっておるのでございまするから、そういうことが反映して、その間に、生産調整の目標に達しておらなかったとか、あるいはところによってはそれがオーバーしておるとか、こういうことがございましても、その辺は、すなわち私の「弾力的に考えていこう」ということに相なると思います。
  559. 三木忠雄

    三木忠雄君 これ、食糧庁にちょっと具体的な数字を聞いておきたいんですけれども、いまの農林大臣の答弁からすると、産地の銘柄米等の生産調整の問題を忌避する傾向が私は相当出てくるのではないかと思うんです。たとえば、新潟県と宮城県の場合についての、政府米と自主流通米の増加が四十四年からどういうぐあいになってあらわれてきているか、数字でちょっと示していただきたいと思うんです。
  560. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) 新潟県の場合、四十四年から自主流通米が始まったわけでございますが、四十四年は、政府の買い上げ米六十二万一千トン、自主流通米五万六千トン、四十五年は政府米買い入れ五十万七千トン、自主流通米十三万八千トン、四十六年は、政府買い入れ三十七万六千トン、自主流通米十七万一千トン、余り米一万六千トン、四十七年は、政府買い入れ三十一万七千トン、自主流通米二十五万トン、余り米一万トン、こういうことになっております。  宮城の場合は四十四年、政府買い入れ三十七万二千トン、自主流通米が八万八千トン、四十五年、政府買い入れ米十九万一千トン、自主流通米二十五万トン、四十六年、政府買い入れ米十万三千トン、自主流通米二十五万二千トン、余り米一万二千トン、四十七年、政府買い入れ米十一万一千トン、自主流通米二十七万三千トン、余り米一万六千トン。  以上です。
  561. 三木忠雄

    三木忠雄君 農林大臣、こういう傾向を今後の問題として認めていくような傾向でございますか。
  562. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 地域の実情がおおむね正しく反映しておるように思います。したがいまして、いま食管法の上で一応問題になるのは、余り米が出ておりますね。それは計画以上ということになりますが、そういうものは、これは倉石農林大臣当時の農業団体との話し合いがございまして、そういうものは自主流通米の扱いとして成規のルートにのせる、こういうことでまいっておりまするので、かりにことしの産米でそういう傾向が出ますれば、同じような扱いをしてまいりたいと、こう思います。
  563. 三木忠雄

    三木忠雄君 これはあとで食管問題でいろいろお聞きしたいと思いますけれども、現実にこのように自主流通米を極度に、各県によっては銘柄の産地という理由も私あると思うんです。しかし、こういうふうな自主流通米を極度にふやしていくという傾向は、政府として今後認めていく方針なのかどうか、それを聞いておきたい。
  564. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) この自主流通米も、予約をいたしますときに、これは全部計画にのっておるわけでございます。すなわち、そこにそれぞれの地域の事情を勘案して本年度の生産目標を立てますときに、政府買い上げ幾ら、自主流通は幾らと、これはみな計画にのります。そうしてそれぞれ予約金も支払うわけでございまして、別段、特にいまの数字が計画以上に自主流通米がうんとふえたということではなく、これは、計画と実績というのは食糧庁のほうで数字があると思いまするが、そう大きな狂いなくいっておると思います。
  565. 三木忠雄

    三木忠雄君 私は、これはたいへんな問題だと思うのです。これはあとで食管問題のときに、自主流通米はこういう傾向でふえているということに対していろいろ論議したいと思いますけれども、その前に、農林大臣は、四十九年の産米以降については減反政策は再検討すべきであると、あるいはまた、備蓄米制度の確立には賛成の意向を記者会見等で、二階堂官房長官とあわせて発表しておりますけれども、具体的にどういうふうに農林大臣として考えているのかどうか。
  566. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) いまの御質問には若干前提がございます。それは、きょうも先ほど御質問の中で、そういう甘い観測ではどういうものかという御指摘もございました。それは、ことしの産米が一体どうなるか、いわば国際的に天候異変であると、そのためにソ連や東南アジアが昨年食糧に困った、こういうようなことからの御心配でございます。そこで、私どももそれについて、しいて抗弁をしておるわけではございません。これからのことでございまするから、万一のことがあった場合でも、相当——先ほど五十万トンと二百五十万トンの新米でいけると、こういうことを申しておりますが、それが著しく減った場合のことを考えますれば、四十九年の生産調整については、その段階で——これは一月に大体計画を立てまするから、その段階で考えられるという意味合いを申しておるわけでございます。  それから備蓄の関係でございまするが、これは、いま官房長官の名前も出ましたので、おそらく社会党の方々との会見の記事によるものと思うのでございまするが、そのときに社会党の皆さん方は、もみで備蓄するということを考えたらばどうかという御意見がございまして、その場合に、月五十万トンとして六カ月分の三百万トンくらいの備蓄はどうかというお話がございました。それは一つの考え方で、検討をするとは申し上げましたが、しかし、この席上で私が申し上げておりまするのは、百万トンを持ちますると、大体その辺の見当が、消費者のほうから考えますると、まず適切ではないか。新米が出ておるのに古米をずっと長く供給するということもどうかというようなことから考えていくと、現在われわれの計画としては百万トン程度がよろしいということで、ことし五十万トン、来年七十五万トン、明後年で百万トンというような、そういう計画でいく予定にしておりまするが、しかし、もみの話が出ましたので、これはもう少し検討してみようかと、こう申したわけでございます。
  567. 三木忠雄

    三木忠雄君 四十九年以降は、減った場合あるいは天候異変の場合等はいろいろ考えなきゃならぬ問題があるわけです、現実に。二百五十万トンと言うけれども、実際に古々米となって、食べることができないような米なんです。そのときになれば、また農林大臣としては、あるいは農林省としては、減反政策を解除するとか——どうも私たちは、農民側から言わしてみれば、あまりにも農政に対する、特に米の生産等に対しては場当たり農政じゃないかと、こういう点が農民の不満になってあらわれているのじゃないかと私は思うのです。その一つの例が、本年度の予算を見てみますと、農業倉庫の整備合理化推進対策補助金、これは私、決して農協や農民を責めるんじゃない。政府があまりにもいいかげんな考え方で、倉庫をどんどんつくりなさいといって補助金を与えて、一生懸命つくった。しかしながら、ことしからまた、ことしは四億八千万、三年間で十二億の倉庫をつぶすための補助金を出さなきゃならないような、こういうふうな場当たり農政というのは、もっと真剣になって私は考えなければならぬのじゃないかと思うのです。どう思いますか。
  568. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) これは御指摘のとおりであると思います。実際、米がだぶついておるころに倉庫をどんどん建てさした、そして政府米の管理を頼むということで倉庫を建てたのに、過剰米の処理が進むにつれまして、倉庫が遊んでおる、それではこれを管理しておる農協等では困るということから、やむなく、ただいま御指摘のような措置を三カ年間計画的に講じようということにいたしたわけでございまして、これは過剰米に伴うやむを得ざる事態であったと、こう思います。
  569. 三木忠雄

    三木忠雄君 やむを得ざるといっても、あまりにも税金のむだづかいが多過ぎるということですよね。確かに、いまマグロが値上がりしている。この問題は私はきょうはこの時間やりませんけれども、現実に倉庫を、冷凍倉庫をつくるための補助金を一ぱい出す、それが物価のつり上げになっているわけです。この米の倉庫自体も、一千万トンも備蓄できる程度の倉庫をつくっているわけです。そういう無計画で、つくるときはうんとつくらして、いざ今度は廃棄しなさいと、あるいは合理化しなさいと、これではあまりにも政府の姿勢というのは私はかんばしくないと思うのです。総理、どうお考えになりますか、これは。
  570. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 当時はつくられ過ぎたわけでありますから、はずれにしても倉庫が必要だったことは事実でございます。近ごろは生産調整が非常に合理的に進んだということで、長期的視野に立ってつくった倉庫をつぶさなければならないということになっておりますから、これは、農政に対して甘かったと言われれば、その指摘を、そうじゃございませんと強弁できるほどのものでないということは、私から申し上げます。  ただ、私たちいま考えておりますのは、これから非常に飼料が不足であるとかということで、米だけではなく、農協でもって、農業倉庫で飼料をある程度扱うというようなことができないのかとかいう問題も、いま検討しております。  それから、先ほどの御質問でありますが、二百五万トンの生産調整ということをゆるめるとか弾力的にということをそのまま申し上げるわけではございません。いま予算の審議をいただいておるわけでございますから申し上げるわけではございませんが、しかし、先ほど農林大臣も述べましたとおり、米をつくりたいけれども生産割り当てが非常に激しいので、つくれないと、転作も不可能であるというような場所もあるわけであります。そういうところは、地域的に十分実情を聞いて、そして備蓄をしなければならないという皆さんの御意見もあるわけでありますから、そういう場合に、二百五万トンは絶対に減産しなければならないんだという実をあげるための割り当て強行とかということはやらないつもりであります。そういうことではなく、実情を聞きながら、そこで幾ばくか食管が買い入れる量がふえるということは、すなわち備蓄にもなることでありますし、そういう意味で、農業団体との食管の話し合いにおきましては、十分実情に合うような、一方的な割り当てというようなことにならないように、十分実情に配意せよと、こういう考え方でありますので、その件もあわせて申し上げておきたいと思います。
  571. 三木忠雄

    三木忠雄君 まあ、生産調整の問題で、まだまだいろいろ議論したいことありますけれども、私は本来そちらのほうに時間をとる考えは毛頭持っておりませんので……。  食管について、いまいろいろ聞くところによりますと、食管制度の改革を検討中である、食糧庁あるいは農林省のほうで何か検討しているという、こういうふうな話を私は聞いているわけでありますが、この食管問題に対しての農林大臣の考え方はいかがですか。
  572. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) これは、前大臣の当時から米穀管理研究会というのがございまして、そしてその制度運営等についての研究をいたしておるのでございます。私もその研究会の適切な結論があればこれを尊重することについて反対をするとかいうようなことは言っておりません。その結果が出たらば出たで、その場合によく検討しよう、適切なことであれば、運営面で改善のできるものがあればそれは取り上げてもいいと。しかし、私が就任いたしましたときに、すでに国際的な非常に食糧事情の悪い状況にある、需給が悪化しておる、こういう際に、一方においてそういう研究がされておって、いいことが出るといたしましても、私としてのとりあえずの姿勢としては、食管制度はこのままでいきたい。そうでないと、これから御質問もちょうだいするんでありましょうが、現在でも食管制度が多少ゆるんだ面もある。もし食糧が不足のような事態が起きまして、そのことが災いしてもならないということで、自分としては、いま食管制度の改正は考えておらない。しかし、一方においてそういう研究されておることは、その答えが出れば尊重しよう、こういうふうに申しておるのが私の姿勢でございます。   〔理事米田正文君退席、委員長着席〕
  573. 三木忠雄

    三木忠雄君 そこが問題なんですね。答申が出たらそれを尊重するという。しかしながら、米穀管理研究会が提案しているのは、現在の政府の買入れ量は七〇%ですね、それを米穀管理研究会のほうは政府買い入れを五〇%に下げようというわけです。そうして自主流通米をふやそうという考え方なんです。これは、食管制度をなしくずしにしようという、一つの研究のあらわれではないか、米の自由化問題を推し進めようという方向の研究会ではないかと私は思う。こういう答申案が農林大臣のほうに出ているのじゃないかと思うんです。こういう考えに対する農林大臣の考え方はどうかということなんです。
  574. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) そういうふうな検討をされておることについては、就任後に私も刷りものなどを見て、ああこういう研究をしているんだなという認識は持っております。しかしながら、それではいまの研究会がそれを正式な結論にしたものかどうかといえば、そうではないわけでございまするし、なおまた、その研究会自体も、昨年の十一、十二月から本年にかけてのこの米の行政の実態をごらんになっておりますれば、おのずからまたその考えも変わってくるのではないか。ただ、私が就任後に、この研究会もう廃止せい、こういう姿勢をとったのであれば、私はもう研究会のほうのいろんなことについては全然頭を置いておらないと、こう言い切るところでございまするけれども、そうでない。せっかくいろいろ検討されて中には取り上げ得るものもあるんではないかと、こういうことでこの研究会に対する一応の敬意を表しておる。しかし、私としては先ほど申したとおりに、いまこの段階で食管制度を、これをいじるということについては、私としては現在それを考えておらないと、こういうことでございます。
  575. 三木忠雄

    三木忠雄君 これは一例でありますけれども、あとで質問したいと思いますけれども、新潟県の農協ぐるみのやみ米横流し事件ですね、これはまさしく国の食管法のなしくずし政策が大きな原因で、米販売に商社が介入するきっかけをつくった、こういう私は判断をするわけです。こういう問題に対しては農林大臣はどうお考えになるか。  もう一つ、モチ米とかあるいは銘柄米が非常にいま投機の対象になってきている。これは何かというと、やはり物価統制令の適用の廃止とか、あるいは自主流通米制度の大幅な拡充、あるいは銘柄、品質の格差の問題をつけた、こういう感じから非常に投機機構が出てきたんではないかと思うんです。こういう点に対して私は、いまの食管制度を含めて政府の管理をもっと強めていくべきではないかと、こう考えるわけですけれども、いかがですか。
  576. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 新潟の例につきましては、もし……。
  577. 三木忠雄

    三木忠雄君 詳細はあとでいい、そっちのほうは。
  578. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) これは食糧庁長官にでもお答えをさせます。  いまのお尋ねの原因が一体どこにあるのか、一番問題になりましたモチ米につきましては、昨年の作柄が悪い、そのために六万トン需要供給のアンバランスができた、こういうことから始まりまして、これに対しては政府の手持ちを放出するとか、あるいは輸入の手当てをするとか、一志の手を打ってまいったわけでございます。そこで、問題の、いまの米の行政の乱れは、御指摘の自主流通米に私は原因がないとは申しません。四十四年以来、酒米、モチ米を、これを自主流通米にいたしまして、そしてこのモチ米、酒米については実需者の代行というものを認めた。そういたしますると、この実需者の代行がモチ米や酒米を扱う上におきまして、たまたま、まだ食糧事情の非常にゆるやかなときでございまするから、未検査米があって未検査米に手を出した、あるいは銘柄米も妙味があるといって手を出したということが、これが現在の実情にまいったと思うんであります。したがって、そういうようなゆるみというものを何としても正していく必要があると、こういうことで食管制は、いまここでは改正はしないということを申しまして、そして、この食管制度を維持してまいりますれば、政府米にしても、あるいは自主流通米にいたしましても、御承知のとおりに、これ全部計画に乗っておるわけであります。それから流通経路も明白になっておるわけであります。たまたまモチ米の問題、あるいは酒米の問題、代行というような問題からゆるみが出て、そこに米がだぶついておるという事情も加わっての乱れがあった、今回それを正す意味におきまして、モチ米を中心に一斉に調査をいたした、こういう実情にあるわけでございます。
  579. 三木忠雄

    三木忠雄君 そこで私は、この自主流通米の制度ですね、これは食糧庁、食管のワクの中だけではなしに、もっと法律をもって規定すべきではないかと思うのです。この点については農林大臣、どう考えますか。
  580. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 一つのお考えであったと思うのでありまするが、しかし、これからの米のことを考えまするときに、消費者のほうもうまい米を食べたい、また農家のほうも一生懸命つくった銘柄米すなわちうまい米で多少でも収入が多いほうがいいと、こういうような生産者、消費者両方の面から見まして、自主流通米の制度というものを、これをうまく運用していくならば、供給面においても需要面においてもそこに効果があるというふうに見ておるわけでございます。ここで問題になりまするのは価格の関係であろうと思いますが、政府の売り渡し米の価格、それから昨年、米価審議会の御意向も参酌いたしまして標準米制度を設けまして、その標準米制度というものが一つの基準になって、物統令ははずれておるけれども、非常に自主流通米がはね上がるというようなことのない、一つの機運があるというようなことで、自主流通米制度というものの今後におきまして、いま御意見が出ましたが、私どもとしては相当メリットもあるものと、こういう前提で、なおこれについて改革をする考えは現在持っておりません。
  581. 三木忠雄

    三木忠雄君 この自主流通米を発足させた、こういうところが、食管が現実に乱れてき、いまの実需者の代行を認め、あるいはそこから未検査米のやみの購入とか、あるいはモチ米の投機の原因になってきているわけなんですね。この問題について私は、もっと食糧庁あるいは農林大臣がしっかりメスを入れていかなければならないと思うのです。  そこで私は具体的な問題で質問したいと思うのですけれども、その前に通産大臣に一言伺っておきたいのです。今月の十四日から十六日にかけて大手商社の幹部を呼んで、具体的な投機の問題に対する実態調査が行なわれたと私は思うのです。この結果について御報告願いたいと思います。
  582. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大手商社六社を中心に——官房審議官を中心にしたプロジェクトチームをつくりまして、羊毛、毛糸、綿糸、綿花、生糸、木材、大豆、米、土地、有価証券等の流通の実態のヒヤリングをやっておりました。大体聴取は終わったのでございますが、ただいまその集計をしておりまして、いずれまとまりましたら公表する予定でございます。ただ、その公表の際に、商社の機密にわたることは公務員法等のこともございまして遠慮さしていただきたいと思いますが、間もなく公表できると思います。
  583. 三木忠雄

    三木忠雄君 ちょっと端的に伺いたいのですけれども、現実にそういういま調査した結果、大手の商社の買い占めがあったと通産大臣は御判断なされましたか。
  584. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 詳細な報告はまだ受けておりません。しかし、どうもそういう疑問を持つ要素もなくはないということもあります。
  585. 三木忠雄

    三木忠雄君 それじゃ具体的な問題は報告を待つことに私しますけれども、昨日も新聞で、丸紅が買い占めをやっているという事実が報道されております。非常にこういう傾向があらゆる角度からいろいろ論議をされ、あるいは地方では、もうこういう問題が茶飯事のように考えられていたわけです。私はもう一点きょうは、新潟県で起こった農協ぐるみの米の横流しの問題、この問題について具体的に伺いたいと思うのですけれども、この詳細はどういうふうになっておりますか。
  586. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) 二月の初めでございましたか、この事件が明るみに出たようでございまして、さっそく食糧事務所を通じて調査をしたわけでございますが、この事件は新潟県警のほうで捜査段階に入っておりまして、詳細わかりかねるところもあるわけでございますが、概要申し上げますと、昨年の九月の中旬から十月上旬にかけまして、京ケ瀬農協という農協が新潟県米穀株式会社新発田営業所ほか二商店に四十七年産の未検査米を三十キロ当たり——一袋でございますが、これを四千百四十五円から四千九百円という値段で七千三百九十袋を売り渡した疑いによりいま捜査をされているわけでございます。で、その捜査の過程で、さらに加治農協、笹岡農協、豊浦村農協、それから水原農協も同じようなことで八千三百袋が未検査米として出ておるということが判明しておるわけでございます。
  587. 三木忠雄

    三木忠雄君 国家公安委員長に伺いますけれども、これは現実、どういうふうな実態になっておりますか。——国家公安委員長。(「いまちょっと……」と呼ぶ者あり)
  588. 斎藤一郎

    政府委員(斎藤一郎君) この事件は、警察といたしましては、四十七年の十月ごろそういう風評が立ちまして、県警の職員がいろいろ捜査をいたしましたところ、先ほど食糧庁長官から説明がございましたように、農業協同組合長などが未検査米を横流しをしておると。かつまた、横流しをした金をめぐって業務上の横領の容疑があるということでございました。それで、その後、関係の農業協同組合の課長などについて事情を聞いたところ、大体容疑が確信が持てたので、三月六日に至って、組合長などにかかる業務上横領容疑の令状を得まして、資料を得て目下捜査中でございます。
  589. 三木忠雄

    三木忠雄君 まあ、こういう捜査が非常におそいというか、あるいは食糧庁が実際にこの問題に対するまあ行政庁当局として、なかなかこの取り締まりをあきらめているような傾向がある。なぜもっと積極的にこの背後を調べないか私はふしぎでならない。特に、新潟県米穀株式会社と新潟県食糧卸株式会社の関係はどういうふうなぐあいになっておりますか、これは農林大臣掌握されていると思うのですが。
  590. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) 昭和四十四年それから四十五年に、当時の登録をとっております新潟県米穀株式会社が政府管理米の横流し事件を起こしました。そのために県知事としても役員の総辞職等を迫り、業務の改善を迫りました結果、四十六年一月にこの会社は廃業いたしました。新しく新潟県食糧卸株式会社というものをつくりまして、それが新しく業務を引き継いだということになっておるわけでございます。
  591. 三木忠雄

    三木忠雄君 この横流しの前歴のある県米穀です。今回もまた再びやみ米を集めたのは、農協の幹部だとかいろいろなことは言っておるけれども、現実にこの中心になったのは県米穀じゃありませんか。
  592. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) 先ほど申し上げましたように、昨年の秋に集めたのは新潟県米穀ほか二商店ということになっておりまして、この会社が集めておることは確かなようでございます。
  593. 三木忠雄

    三木忠雄君 これはある新聞の記事です。ぼくは非常に残念だと思うのです。やみ米が八千俵不正転売されていると。農協ばっかり責めているわけでありますけれども、現実にこの県米穀は一億円以上の金を使ってこのやみ米を買収しているという、この陰には、どこかで資金の導入がなければならないと思うんです。買える会社じゃないと私は思うんです。この県米穀という会社、あるいは県食糧卸会社、どういう会社の実態になっているか、食糧庁調査しましたか。
  594. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) 先ほど申し上げましたように、最初は登録業者であったわけでございますが、四十六年一月にやめまして、新しく会社が別にできておるわけでございますが、この両方は関係がございます。新しくできた登録会社に対しまして、前の会社が出資をしておる。こういう関係になっておるわけでございますが、その後、この会社は食品部、商事部、農産部等をつくっておりまして、年間売り上げ七十五億ということになっておるわけでございます。
  595. 三木忠雄

    三木忠雄君 この県米穀というのは、いま説明のあったように、現実に四十四年にやみ流しをやって、実際に食糧販売を停止された。そうして、その県米穀が四千万出資をして食糧卸株式会社をつくった。これは隠れみのの会社です。トンネル会社です。認めますね。
  596. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) 出資の関係はそういうことになっておるということは認めます。
  597. 三木忠雄

    三木忠雄君 これ以上食糧庁が進めようとしない。なぜかというと、やはり新潟食糧事務所自身が明らかにしているように、行政当局は強い取り締まりをすでにあきらめているんです、これは問題は。もっと積極的に、県米穀あるいは食糧卸を積極的に食糧庁は調べますか。
  598. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) 先ほど御報告申し上げましたように、この事件はすでに警察当局で捜査中でございますので、なかなか食糧庁としてはやりにくい面もあるかと思います。われわれのできる範囲ではやりたいと思います。
  599. 三木忠雄

    三木忠雄君 まあ食糧庁も、実際これは私も調べたけれども、実際上実情をつかんでいない。この会社は、いろいろ出資構成を見てみますと、この新潟県米穀というのは、三井物産や安宅産業が全部出資しているわけです、この会社は。三井物産が一億円出資をしているわけだ。安宅産業が一千万円を出資しているわけです。これは出資だけです。あと、やみ米に使ったのがどれだけ使ったのか私は知らぬ。食糧庁も握らぬでしょう。とにかく、この出資会社のいろいろな明細を見れば、現実に流動資金もあらゆる角度から大手商社から流れていると言っても過言じゃないと私は思う。こういう実態をもっと積極的に私は追及していくべきじゃないかと思うんです。そこまで入っておりますか、食糧庁。
  600. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) この事件が明るみになってまいりましてから、現地の食糧事務所を通じましていろいろ調査をしております。ただいま御指摘の資本関係等は承知しておりますが、それ以上その会社がどうしているかということは、なかなかわれわれの手ではわかりにくいわけでございます。
  601. 三木忠雄

    三木忠雄君 まあ、ここでそこまでこまかく私は深く入りたくありませんけれども、現実にこの役員の中を見ても、三井物産の新潟支店長が取締役に入って指揮権をふるっているわけです。こういう会社にやみ販売を前回やって認めておいて、それからまたトンネル会社まで同じように許可を与えるという行政当局の姿勢というものが、結局はやみ米の流行を蔓延さしている結果だと私は思うんです。どう思いますか、農林大臣。
  602. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 食糧の需給が緩和しておる、そういう間にこのような会社がはびこった、育ったと、こう思うのであります。現在、農林省としては、さようなことが起きてはならないということで、かたい決意のもとに先般も食糧事務所をして調査をせしめ、八十九件五千八百トンの未検査米を摘発したと。また、その量の多い、投機の疑いの持てるようなものについては告発もいたしたようなわけでございまして、いまの新潟の一例につきましては、これはまことに遺憾に存じておることで、このような事態を再度繰り返さないように注意をしてやってまいりたいと思います。
  603. 三木忠雄

    三木忠雄君 公安委員長いらっしゃいますね。
  604. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) はい、おります。
  605. 三木忠雄

    三木忠雄君 公安委員長、この取り締まりを、中小企業ばかりいじめないで、背後にある大手の資金を、大手商社をもっと徹底的に調査するという考えはありますか。
  606. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは、昨日も申し上げましたように、やはり中小企業いじめになったんでは取り締まりの実をあげることにならぬと思っております。したがいまして、御承知のように、たとえ自主流通米でありましても、これは指定集荷業者、登録販売業者、これ以外が自由になぶるわけにはいけないことになっとるわけですから、したがって、大手商社が共犯であるという確証があれば、当然、これは取り締まり対象にしなければなりませんし、現在世間で糾弾をされ問題になっておりまする動向から見ましても、十分そのあたりを含んで捜査を続けるよう指揮をしてまいりたいと思います。
  607. 三木忠雄

    三木忠雄君 これは、いま農林大臣が一例という話をされました。私は、まあいろんな実例ありますけれども、ここでそんな何例も取り上げて質問したくありません。しかし、あまりにも大手商社が米の介入を——現実にまだ自主流通米が少ない段階です。これは総理もよく認めていらっしゃると思うんです。しかしながら、もうすでに米の自由化を目ざして大手商社が系列化してしまっていると言って私過言でないと思うんです。これはあまり説明すると時間がかかるので、総理にこれ一部お見せします。現実にこういう実態になっている。そればかりやると時間がないので……。  総理、これを見ながら私、ちょっと一部申し上げたいと思うのです。これ、農林大臣にもう一部あったら差し上げたいと思ったのですが、現実にないからあとで渡します。  いずれにしても、商社がダミー会社というか、あるいは系列会社というか、これを全部つくっているわけです。たとえば三井物産が三井農産、三菱が新菱商事、あるいは丸紅が日産丸紅、日商は日東食糧あるいは住商農産、アタカフーズ、中部食糧こういう形に全部各商社あるいは下請会社に現地の食糧事務所を退職した人たちが天下りをしているということなんです。こういう系列で米の情報が全部キャッチされ、実際に米の買い占めルートが明確にでき上がってしまっていると言っても私、過言でないと思う。こういう点について私は、食糧庁だけを例にとったわけです。これは農林省や大蔵省の天下りを入れたら全部、商社がいっぱい出てくると思うのです。米の問題ですから、私は食糧庁だけを差し上げたわけです。現実に食糧庁の幹部、食糧庁の事務所長、あるいは係長等を経験した人たち、あるいは検査部長を経験した人たちがこういう商社に入った、米の実際の先買いの指揮権をとっているという点について、私は納得できないと思うのですけれども、総理、いかがお考えですか。
  608. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) きのうも申し上げたわけでございますが、どうも、役職におった高級官僚が民間に移籍をする場合には、人事院の審査を受けてやっているわけでございます。私は、実際、これらの諸君がちょうど五十から五十五、六ぐらいで人生の再スタートをするには、この二年間というのは相当痛いと思うんです。思うんですが、実際はそういう制度の中で再就職していくわけです。だから、これが六十までに延ばすとか、恩給制度があってちゃんと食べていけるとか、そういうことのない限り、やはりこういう問題は起こると思うのです。防衛庁の関係者がいろんな会社へ再就職しているという問題、建設省の諸君が建設会社へ行っている、運輸省の諸君がみな自動車会社や私鉄へ行っている。これは、他に職を求めるよりもやっぱり専門職を買われるというんで、やはりどうしてもそうなると思うのです。そういう意味で、警察とか厚生省の関係者などというのは非常に売れゆきが悪いわけであります。選挙にも立てないといってこう批判を受けている面もあります。ですから私は、こういうのを見ますと、確かに非常にいやな感じがいたします。いやな感じがいたしますので、制限するとしますと、何らか別な手段を講じてやらない限り役人になり手がありません。ですから、やっぱり高級公務員だけではないと思うのです。実際の権力を握っているのは高級公務員よりももっと別の人だとも言われておるわけでございますし、だから、実際にどうするのかという問題ですね、やっぱり私も、政府の主管者として考えなければならぬと思います。  いまこういう事例だけを提示をされまして、私も見て、あなたの言わんとするところ、わかります。そして、それがいろんな通報したり内報したりということがなくても、しなかったということをなかなか払拭できないと思うのです、これは。かつての部下に対して、その上におった者が民間に出ておる、いろんな政府の施策を事前にキャッチするには有利な立場にある、そういう意味では、高級公務員がみな代議士にでもなれればこれはまた別でありますが、そうではなく、また出てくれば官僚が若干出てき過ぎる、こういうのでございますから、私は、ほんとうにまじめに考えまして、こういう事故さえ起こさなければ、比較的に指摘はされないと思うのです。しかし、事故が起こった場合非常に手きびしく批判をされ、全然まじめに働ておる人までがその対象になるということは遺憾なことであると思います。ですから、政府は、関係者が再就職をしているからということをもって便宜を計らうようなことをしてはならないことは申すまでもありません。ありませんし、行政の運営が公正を期さなければならないということもまた当然でございますが、公務員がいまの定年とか、いまの状態において再就職をするという問題に対しては、もっと別な制度というものをやっぱりほんとうに真剣に考えてやらなければならない問題だと、私も真剣に考えております。
  609. 三木忠雄

    三木忠雄君 私は、真剣に考えなければいけない問題だと思うのです。これはまあ商社だけであればいいんです、まだ、一部。これは、資金が商社はダブついたって、系列会社に相当な短期貸し付け資金を貸しているわけです。これは各小さな会社に、傍系会社に全部短期貸し付けで、やはり米の買収資金でしょう、相当な、数億の金を使っているわけです。有価証券報告書を見たって、現実に出ているわけです。こういう点を考えましても、米の買い占めが、現実にやみ米の買い占めが行なわれているということは事実でありますし、そのほかに、三井物産等に例をとってみれば、新潟の事務所長あるいは宮城の事務所長がそのまま常務取締役に天下って、現実にその出荷に、食糧事務所長時代に売った顔で米の買い占めを始めているという、こういう事態は、これは私は納得できないと思うんです。  いわんや、一つの三井物産の例をとりますと、商社あるいはダミー的な三井農産販売、あるいは集荷業者の新潟県食糧卸販売会社、卸売り業者の木徳、精米会社の十米穀株式会社、小売り会社全部——小売り店は東京都内に百七十一店、あるいは大阪の和泉やあらゆるところにシェアを全部傍系会社で握っているわけです。こうなりますと、三井で買い占めた米というものは全部系列化して、小売り店まで全部操作をされてしまうというわけです。ササニシキあるいはコシヒカリがいま非常に暴騰しています。この原因は何かと言えば、やはりここで買い占められて、現実に流される結果に私はなってきているんじゃないか。あとで代行買いの不備な点を私、指摘したいと思いますけれども、こういうようにして米の流通が非常に乱れているということです。これがいま各県において商社が系列会社をつくっているという点を、私は、行政担当者としてもっと真剣にメスを入れなければならないと思うんです。農林大臣どう思いますか。
  610. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 御指摘を受けるまでもなく、お話のとおりでございまして、私としても、こういうような問題は、起きましてから、鋭意、かかる事態が重ねて起こらないように、また、現に乱れておるところは正すようにつとめておる次第でございます。
  611. 三木忠雄

    三木忠雄君 この卸業者、精米業者に至るまで全部食糧庁の幹部が入っている。私はあまりにもふしぎだと思うんですね。あまりにもみごとに入っていると言っても過言ではないと思うんです。  食糧庁に伺いますけれどもね、米の流通過程に現実に食糧庁が掌握できる幹部で何人天下っておりますか。これだけちょっと教えてもらいたい。
  612. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) 私の手元にあります資料でございますが、過去十年、本省の課長あるいは地方事務所長が米の関係に再就職しておりますのを申し上げますと、二十七人ございます。農協系統に三人、それから米穀の協同組合系統に六人、それから米麦改良協会等、そういう外郭団体に十一人、商社に四人、その他米屋等の営利企業に三人、こういうことになっております。
  613. 三木忠雄

    三木忠雄君 時間の関係であまりこまかく言いたくありませんけれども、資料を要求すると、出てくる資料というのはみんないいかげんです。これは総理、認めていただきたいと思うんです。あまりにもかけ離れた数字です。これはまあ確かに課長補佐以上とか課長以上、地方の事務所長あるいは検査部長というのは、実際に米に一番関係のあった人です。そういう人間は全部カットしてくるわけです。  私、読み上げます。私が掌握しただけで集荷業者で二十一名、米穀検査団体で六十八名、米卸業者で三十二名、米の袋関係で十六名、酒造あるいは米菓関係で二十六名、精米業者で二十三名、米小売り業者で二十八名、商社で二十四名、倉庫業者で八十名、これは米の関係の倉庫です。米の運送十九名、あるいはこの米で出る飼料関係の副産物に二十二名、合計、私の掌握でも三百五十九名いますよ。こういう実態がほんとうにあらゆる角度でいろいろ外郭団体あるいは公益法人、いろいろな感じで天下りをし、いろいろなピンはねと言ってはおかしいですけれども、現実に消費者に渡ってくる自主流通米の値段が上がってくるという一つの私は結果になってきているんじゃないかと思うのです。この点、どういうふうに農林大臣考えますか。
  614. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 先ほどお答え申し上げたとおり、私としては、かかる事態につきましては厳に戒めなければならないと、こう思っております。ただ、遺憾なことには、ただいまおあげになったような数字の把握をいたしておりません。これはもう正直に申し上げておきます。しかし、私の手元に報告されておるものから見ましても、相当な数があるということは予測ができる次第でございまして、これは、厳重に今後かような事態のないようにつとめてまいりたいと思います。
  615. 三木忠雄

    三木忠雄君 まさしく食糧庁の外に、商社を中心として第二食糧庁ができあがったと言っても私は過言じゃないと思うのです。こういうふうな過程で米が流されては消費者はたまったものじゃない。それ以外に何回も、わが党としても決算委員会で黒柳議員等が絶えず指摘してきた穀物検定協会等の公益法人に相当な天下りがあるということは、これはもうすでに行管庁も御存じだと思うのです。こういう点について、私は、もっと手きびしい整理あるいは統合していかなければならないんじゃないかと思うんですけれども、まさしく流通過程にこういうふうに天下っているという実態は、もっと姿勢を正すべきじゃないかと思いますけれども、行政管理庁長官としての意見を伺いたいと思います。
  616. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 公益法人に対しましては、一昨年の予算委員会また決算委員会で、三木さんや黒柳さんからたいへん御熱心な御意見の開陳があった。私も大蔵大臣としてその席におったんですが、佐藤総理も御発言に非常に感銘を受けたと思うんです。決算委員会が終わったあとで行政管理庁長官を呼んで、公益法人の総点検を命ずる、こういう特別指示があったわけです。そこで、行政管理庁といたしましては、公益法人の総点検をいたしたわけでございますが、結局要点は、一つは、任務を終了してもまだ存在しておる公益法人が存在する、また、息はしておる公益法人でありまするけれども、当初の目的を逸脱した行動をしておるというものが存在する。この前者につきましては、これは整理統合すべしという結論にいま行政管理庁は達したわけです。それから後者につきましては、その運営を改善すべしという結論で、これを関係各大臣に勧告をする。それから第三は、公益法人をつくる場合の基準がない、こういうことで、統一基準をつくるべきじゃないか、そういうまた勧告をいたしたわけであります。  それからもう一つは、まさにただいま天下りの話でございまするけれども、公益法人の中に政府職員が、無給ではありまするけれども、役員として参加しておる、こういう問題があるんです。これに対しましては妥当でない、こういう結論に達しまして、これを関係各大臣に通告をし、ごく特殊なやむを得ない事例があります、また弊害もないという事例が若干ありますけれども、大かたこれを整理いたした、こういうことでございますが、天下りそのものにつきましては、行政管理庁といたしますと、なかなかタッチがむずかしいんです。これは関係各大臣のもうほんとうの良識ある活動にまつほかはない。つまり、癒着が生ずる、ここが問題なんでしょうが、癒着を生ぜしめない措置ですね、これを各省庁の責任者が責任を持って監督をする、あやまちなきを期す、こういうほかないんじゃないか、そういうふうに考えております。
  617. 三木忠雄

    三木忠雄君 人事院総裁に伺いますけれども、四十七年の天下り白書が十五日に発表されたわけでありますけれども、これに対する総裁の見解と、もう一つ、ただいま申し上げましたように、食糧庁自身ですね、——私、食糧庁ばかり何かやっているようではありますけれども、あまりにも天下りの実態が多過ぎる、こういう点に対して総裁はどういうふうに考えるか、これについてお伺いしたい。
  618. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) お答え申し上げます。  毎年の例によりまして、ことしもただいま御指摘の報告書を発表いたしましたのですが、私ども、件数は大体どうなるかというようなことを当面の関心事といたしまして見ておるのでありますけれども、まあことしの数字はまずまず、去年は少し減りましたのですけれども、ことしちょっと上がりました。しかし、いずれにいたしましても、件数はいかがにあろうと、われわれとしては個々の事件ごとに厳正に審査をやっておるわけでございます。一時、非常にこの審査が甘くはないかというような御批判を受けたこともございまして、そういうことを非常に反省いたしまして厳粛にやっておりますし、また、ただいまお話がありましたように、各省大臣からこれは私どものほうに申請をされるのでありますが、各省大臣のほうも非常によくその辺のところをお考えいただきまして、よくよくのものでないとわれわれのほうにお持ちになってこないというわけで、大体の観察としてはまずまずのところをいっておるように思います。まあ、今後もその方針でまいりたいと思っております。
  619. 三木忠雄

    三木忠雄君 いま、くしくも、各省大臣が人事院に申請するわけでありますけれども、現実に、今回問題になっているこの米の買い占めでも、商社に、三菱と丸紅に天下った二人は承認人事になっているのです。ところが、同じ食糧事務所でありながら、三井に入った二人は承認人事になっていないのです。これはどういうわけですか。こういう基準があるのですか。
  620. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは御承知のとおり、三等級以下の、いわゆる本省の課長補佐クラスより下の——下というのはちょっと語弊がありますけれども、普通に言う以下の人々につきましては、各省にわれわれのほうとして御委任申し上げておりますので、おそらくその辺の違いがあるのではないかと思います。もちろん、われわれとしても、委任を申し上げましても、半年ずつ毎年二回報告書をいただきまして、そしてまた、われわれのほうは、その報告書について、場合によっては現地に参りましたりして、まあ十分その辺の調査はやっておるつもりでございます。
  621. 三木忠雄

    三木忠雄君 私は、この問題で深く入りたくはありませんが、あまりにも、この人事院の承認もちょっとおざなりじゃないかと思うのです。  そこで、この人事院の承認基準の私は再検討をすべきじゃないかと思うのです。あるいはそのほかに、人事院を経ない天下りへの処置が必要じゃないかと私は思うのですけれども、いまの食糧庁のような考え方にしましても、確かに憲法で定められた職業の選択の自由と、調和をはからなければならぬことは当然であります。私も理解します。しかしながら、あまりにも癒着がはなはだしいという点が数多くあるという点に対して、人事院を経ないこの天下りの処置を、もっと明確にすべきじゃないかと思うのですけれども、この点についてはいかがですか。
  622. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私企業の関係では、法律によりまして私ども審査いたしておるわけで、その点については、先ほど申し上げたとおりでございますが、それ以外の点については、残念ながらわがほうの所管に入っておりませんので、これは他からまたお答えされてよろしいことではないかと思います。
  623. 三木忠雄

    三木忠雄君 いまの答弁、聞こえなかった。
  624. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 委任分のお話ですか——それではどうも、間違いました。  委任分の面については、とにかく人数が多うございますし、役所の、法律的に言えば、用務員の方々に至るまで、私企業に行かれる場合には、みな審査せなければならぬという、たいへんなこれはたてまえになっておるものですから、私どもとしては、先ほど申しましたように、本省課長級以上はわれわれのほうで直接拝見する、それ以下の方は、各省にお願いして、われわれが事後審査をするということで、これはやむを得ないと思っております。
  625. 三木忠雄

    三木忠雄君 じゃ、この問題は総理に。  私、平均五十三歳で今回天下っている例を見ましても、やはり定年制の問題をもう少し私は取り組まなければいけないじゃないかと思うのです。この問題と、やはり人事院を経ない天下りの処置の問題ですね、これは各省でもっと明確にしておかなければならぬじゃないかと思うのですけれども、この点についてはどうお考えになりますか。
  626. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この問題は、癒着を防ぐために、人事院の基準でやっているわけですが、これは法律をつくるべきだという意見もずうっとあるわけです。どうもそうじゃないと。あなたもいま御指摘になられたように、憲法の条章をたてにとられて、人事院に承認をすべしと、こういう訴訟を起こされると対抗できないようないま体系になっておるわけであります。しかし法律をつくるということになりますと、これはもう二年間だったら二年間というものに対しては生活保障しなければなりません。当然そういうことであります。制限をする以上、公務員の身分を離れて後、何年か公務員法が準用されておると同じような結果をもたらす場合には、別途の処置が必要なわけでございます。  ですから、そういう非常にむずかしい問題があります。それで、いわゆる管理者として影響を及ぼした職責の限度をどこまでもっていくのか、いま人事院総裁は課長補佐までと言っておりましたが、同じ職に何十年もおれば、課長補佐でなくとも、局長以上に威令が行なわれておるという事例はお互いに十分知っているわけです。局長に頼んでもわからぬけれども、あそこに行けばわかるというのがあるわけですから、そういうものをどういうふうにして区分するのか、非常にむずかしいので、いまの人事院の基準によって、各省の良識に待っておるわけであります。まあやっぱり、いまあなたが御指摘になったように、定年制の問題、ひとつ専門化されないで、やっぱり人を動かしていくということでなければならないと思うんですが、資格者は何年かでもって必ず動いているようであります。しかし動かない人は、二十年も同じいすにすわっておるということになると、局長よりもはるかに影響力があるわけであります。そういうやっぱり理論だけではなく、現実の問題も十分考究しながら、この制度をどういうふうに救済するかということを考えていくべきだと思います。
  627. 三木忠雄

    三木忠雄君 この自主流通米が、制度が確立されてから代行買い制度が出てきた、酒米の代行あるいは米菓業者等の実需者からの代行買い、この制度が、私は商社が介入する一つの大きな理由をつくったんではないかと思うんです。この代行買い制度はどのように規制をされているものなのか、農林大臣から答弁を願いたい。
  628. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) この代行制度は、酒屋さんであるとか、あるいは製菓業者の方々が、すなわち実需者が、自分らの好き好きで委任をいたしますれば、そこに成り立つわけでございます。したがって、この代行制度についての規制措置というのは現在ないのでございます。
  629. 三木忠雄

    三木忠雄君 きょうは切りのいいところで私やめたいと思いますけれども、現実にこの委任状が、こまかく詰めたくありませんけれども、あまりにもでたらめな委任状が発行されて、代行買いが行なわれているという事実なんです。これが問題なんですよ。何俵買いなさいという、ただ一万六千俵と書いてあるだけなんです、酒造組合から。これを持っていけば、米は幾らでも買えるんですよ。こういう制度をつくっておいて、こういう制度を押えないで、ただただ商社がこうだああだと言ってみたって、ここ自身が、行政があまりにも手が届いてないというとこなんです。だから自由に買えるんです。これを持っていけば、コシヒカリを何ぼ買おうと、なれてしまえば、代行買い業者と集荷業者が仲よくなれば、必ずこれは買うことができるわけです。こういう委任状制度をどういうふうにチェックしているのか、これが問題だと私は思うんです。どうですか。
  630. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) この委任状を持っておる代行業者が買いに行きますのは、正規の集荷業者である全農へ行くわけなのであります。その間に、現実的には直接の問題が起きておるということを否定いたしはしませんけれども、実際上はそういう仕組みになっておるわけでございます。  そういうことで、今回の問題は、繰り返し申し上げるようでございますが、モチ米とか酒米とかから起きておる問題でありまするので、モチ米につきましては、今後、これは契約栽培でいこうと、そして契約で余るようなものがございますれば、それは政府のほうに引き取るというようなふうにして、モチ米の問題から今回のような事態が起きないようにしようということにつきましては、現在、農林省としては方針をきめたわけでございます。  この委任状あるいは代行の乱れのもとは、何といっても食糧の需給が緩和しておるというところに起きた問題でございまするので、今後、食管法による流通過程を厳正にやってまいりまするならば、相当な範囲防ぎ得るものであると、このように思っております。
  631. 三木忠雄

    三木忠雄君 そういう答弁では、米は取り締まりできませんよ。実際に銘柄米はどんどんどんどん自主流通で、新潟にしても、あるいは宮城にしても、自主流通がふえてくる。そこへ委任状を持って買いに行けば幾らでも買えるわけなんですよ、なれてくれば。こういうシステムをもっとチェックしないと、酒造会社と大手商社が共同出資で共同精米会社までつくっているわけですよ。酒造会社の証明とるのは幾らでもとれるじゃないですか。こういう抜け穴をつくっておいて、どうだこうだ言ってみたって始まらないじゃないですか。もっとしっかりした私は行政の態度をとるべきだと思いますが、どうですか。
  632. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 私、就任以来、この問題について細心の注意を払っておるところでございまするが、こういうことは申しにくいのでございまするが、政府管理米、そして政府の流通過程にあるものについては、そういう事態はないのであります。ですから、先どから申し上げるように、需給の緩和しておるところに未検査米があったとか、あるいは未検査米を買いあさったのが銘柄米に手が伸びたとかいうようなことでございまして、その本体というものは、乱れておるんではないことを御了承いただきたいと思うのであります。しかしながら、御指摘の点につきましては、より一そう私どもとして注意いたし、今後の行政に当たってまいりたいと思います。
  633. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、そこまであれであれば、委任状で米を買い占めた実態は、私に資料として提出いただけますか。
  634. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) なかなか把握しにくいと思うのであります。そういうことで、今回、全国の食糧事務所を動員して在庫調査をいたし、先ほど申し上げたように、八十九件の五千八百トンというものを掌握したわけでございまして、これはお求めに応じて、資料として差し上げたいと思います。
  635. 三木忠雄

    三木忠雄君 それでは、米の問題の最後で、私はカドミウム汚染米の売却の問題について質問したいと思うのです。  その前に、厚生大臣に伺いたいんですが、日本のカドミウム汚染米の許容基準があまりにも甘過ぎるというわけで、WHOあるいはFAOから、いろいろな勧告が出ていると思うのです。これについて、厚生省としてはどういうふうな考え方を持っておりますか。
  636. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 昨年、WHO並びにFAOの合同専門家会議が、食品添加物に関する専門家会議が開かれまして、一つの意見が出たわけでございますが、その報告書によりますと、日本の許しております許容基準よりも非常にきびしいものが出ておるわけでございます。  ところで、この報告書なるものは、その報告書の冒頭にみずから記載されておりますように、FAO並びにWHOの政策決定ではありませんと、さらにまた本文の中にも、このデータについては、そのデータが追加されるならば、訂正するにやぶさかでないと、こういうふうになっておるわけでございまして、世界各国に対する勧告というものではないようでございますし、さらにまた、日本が今日までやってきましたデータと比較いたしてみますと、相当いろいろな推論が加わっておりまして、吸収率の問題あるいは排せつ率の問題等、いろいろ推理、推論的なものがだいぶ入っておるわけでございます。したがって、先ほど申し上げましたように、WHOの決定でもなければ勧告でもございませんが、先般も新聞に出たことでもありますし、国民の主食に関することで、不安を与えるようなことがあってはなりませんと私ども考えておりまして、目下この報告書といいますか、意見書を専門家の諸君に再検討していただくということで、検討をしていただくことにいたしておりまして、その結果、そうした意見書と私どもの意見が食い違うならば、WHOのほうにも私どもの資料を提供いたしまして、十分検討してもらおう、こういうふうにいたしておるような次第でございます。
  637. 三木忠雄

    三木忠雄君 この委員会の中に、厚生省の食品課長も参加をしておるわけですね。それに対して、やはりいろいろな考え方を持っておると私は思うのです。したがって、特に日本の米が非常に基準が甘い。ことに一PPM、向こうのほうでは〇・一四PPM、十分の一ですね。やはりあくまでも、これはカドミウム汚染米というのは、イタイイタイ病の例のとおり、非常に真剣になって考えなければならぬ問題です。この問題について、私は政府が迅速な判断をはっきりすべきじゃないかと思うのです。早くすべきだと思うのです。この問題に対して、厚生大臣は新しい基準をいつ出しますか。
  638. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 先ほどもお答え申し上げましたように、事主食に関する問題でございますから、いまその意見書につきまして、わが国の専門家の諸君に再検討をさせておるわけでございますから、その結果を見まして、できるだけ早く発表をするようにいたしたいと、かように考えておる次第でございます。
  639. 三木忠雄

    三木忠雄君 のんびりしたことを言わないで、ほんとうにこのカドミウム汚染のことについては、われわれはいろんな点からもう感じているわけですね。もっと真剣になって早く考えなければならない。それが現実に政府保管米の中の〇・四から一PPMの米が売却されているという事実があるわけです。これを具体的に私はいろいろ聞きたいと思うのですけれども、現実にいま政府が保管しているカドミウム汚染米はどの程度あるのか、この点についてお聞きしたい。
  640. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) 昭和四十四年から四十六年産米まで含めまして、一PPM以上の米が千六百トン、それから〇・四から一PPM未満の米が一万八千百トン、それからなお四十七年産米につきましても大体六千トン程度あるわけでございます。
  641. 三木忠雄

    三木忠雄君 その政府保有米のカドミウム汚染米についての処理の状況あるいはストックの状況はどうなっておりますか。
  642. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) 一PPM以上の米は、食品衛生法上有害でございますから食糧庁は買わないということにしてあります。あとでわかったものは、買った結果でございますので、これはもちろん配給をいたしません。それから〇・四PPM以上一PPM未満のものにつきましては、食品衛生法上は安全ということになっておりますけれども、消費者感情を考慮しまして配給をしないということにしております。  それから、政府所有の一PPM以上の汚染米につきましては、染色のりなり、接着のり等の原料として、売却先を限定の上、食用途への横流れの防止措置を講じて売却することにいたしておりますが、現在、政府所有のもので売却いたしましたのはわずか二トンでございます。  それから、農家保有のカドミウムの汚染米につきましては、食管法に基づきまして、農林大臣の譲渡許可を得て、工業用ののり原料等に処分することにいたしております。四十六年度までの譲渡許可数は四百八十二トンでございます。
  643. 三木忠雄

    三木忠雄君 このカドミウムの汚染地帯で有名だった富山県の神通川流域の四十七年産米の販売実績はどういうようになっておりますか。特にカドミウム汚染米についての処理はどのようになっておるか、明確にお答えを願いたい。
  644. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) 御指摘の富山県の婦中町宮川地区におきまして四十七年産のカドミウム汚染米が一部出荷されたわけでございます。これは四十五年、六年の産米につきましての県の調査によりますと、〇・四PPM未満とされておった地域でございますので出荷したわけでございますが、出荷後、県の四十七年産米の調査結果が発表になりまして、直ちに食糧庁といたしましては出荷先に連絡をしまして、とめております。  その実態を申し上げますと、先ほど申し上げましたようなことでございまして、搬出量は千七十三トンございました。そのうち愛知、京都、大阪、兵庫、和歌山におきまして千五十二トン、これは政府の指定倉庫で凍結をいたしておりますが、一部愛知県につきましてすでにそれより以前に売却をされておりまして、二十一トンは売られたということになっております。
  645. 三木忠雄

    三木忠雄君 いま食糧庁長官もすなおに言いましたが、現実に、この二十一トンというのは、私の調査ではもっと売られているというわけです。これは一部いろいろ隠された面も私はあるのじゃないかと思いますけれども、富山のこの婦中農協の倉庫、宮川倉庫から千七十三トンがすでに売却されているはずなんです、カドミウム汚染米として。〇・四PPMから一PPMになんなんとするこのカドミウム汚染米が、富山のこの婦中倉庫ではすでにもう売却された米になっているはずです。どうですか。
  646. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) 富山の米を消費地に販売すべく、食糧庁が政府運送いたしまして消費地に着いておるわけでございます。私が先ほど申し上げました五県の消費地に着いておるわけでございます。まだそれから先、食糧庁は卸売り販売業者に売っておりません。売りましたのはいま申し上げた二十一トンでございまして、あとは全部食糧庁の政府指定倉庫で保留させております。
  647. 三木忠雄

    三木忠雄君 それがおかしいというのですよ。だって四十七年産米のこれが汚染米であるというようにはっきり食糧庁で検定したのはいつですか。
  648. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) 先ほど申し上げましたように、四十五年、六年の米につきましてはそこは汚染地域ではありませんでした。あとで、先ほど申し上げましたように、わかりましたものですから、食糧庁は直ちに出荷をとめたわけでございます。すでに消費地に行っておりましたが、まだ販売しておりませんので、それを消費地の倉庫で保管をしておる、こういうことになるわけでございます。
  649. 三木忠雄

    三木忠雄君 それがおかしいと私は思うんです。四十五年、四十六年も、これはさかのぼって私論議すれば、ここ自身も汚染米の地帯だったわけですよ。四十六年に石灰とかいろんなものを入れたので、少しはPPMが下がったけれども、現実にその地域も汚染米で凍結されているはずなんです。それが四十七年の産米はもうだいじょうぶだという食糧庁の甘い考え方から、十月にすでにもう千七十三トンが愛知あるいは大阪、和歌山あるいは兵庫に送られているわけです。いわんや愛知や大阪ではもう売却されているわけです。十月から二カ月も三カ月もそのまま食糧事務所に置いておく理由はない。それがうそであれば、私は証拠も出します。
  650. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) 先ほど申し上げましたように、ここの地域は去年までは〇・四PPM以下の普通の地域でございましたから、引き続き四十七年産米もそういうことであろうということで、すでに出荷をしたものも出てきたわけでございますが、県の調査の結果があとで発表になりましたのが十二月の初めだったわけでございます。その際に、私のほうで政府運送を消費地にかけておりますから、すでに生産地の米が消費地のほうに行っております。その分を直ちにとめたということでございまして、私の報告を受けたところによりますれば、先ほど申し上げましたように、愛知県に送りました百三トンのうち二十一トンが売却されたわけでございます。以外は政府指定倉庫にとめてある、こういうことでございます。いま現在、その地域の中で米全部が汚染されておるのではありませんで、この宮川地区から送られたものでも〇・四以下の米もあり、それ以上のものもあるものですから、これからはその仕分けをしなければいかぬ、こういう段階になっておるわけでございます。
  651. 三木忠雄

    三木忠雄君 そこがあまりにも、食糧庁自身が、あるいは農林省自身が、カドミウムの汚染米について真剣になって考えていないという証拠なんです。あまりにも甘い考え方だと私は思うのです。総理、どう考えますか。カドミウム汚染米、カドミウムであのイタイイタイ病でどれほど国民が苦しんだか、あの神通川の流域の人たちが。こういう点を考えても、あまりにもカドミウムの汚染米に対する処理のしかたが、私は——ことしはないだろうと、そういう甘い考え方のもとに消費地に送ってしまい、現実に愛知県の人は二十一万トンを食べているじゃないですか。この責任どうしますか。
  652. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) 先ほど申し上げましたように、この問題は非常に大きな問題でございますから、私たちのほうも、いま申し上げましたように、ちゃんと消費地でとめておるわけでございますが、県の発表より先に売ってしまったものは、これは卸、小売りを通じて行っておりますので、何とも押えようがなかった、こういうことでございます。
  653. 三木忠雄

    三木忠雄君 私は納得できないですね。いまの二十一トンは、正直に私が食糧庁にいろいろな具体的なデータを見せたので認めたけれども、それ以外の千七十三トンの米をすでに売却されておるはずなんです。これはどうも納得できない。それを私は明確にしてもらいたい。
  654. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) 繰り返すようで恐縮でございますが、食糧庁としては、搬出いたしました千七十三トンのうち売却いたしましたのは二十一トンでございまして、あとの千五十二トンは愛知ほか四県の消費地の政府指定倉庫で保管をしておるということでございます。  なお、それよりあとありました——あとといいますか、まだ送っていないものが婦中町に、宮川地区の倉庫に二百四十トン、これも保留をしております。
  655. 三木忠雄

    三木忠雄君 まあ二十一トンだけ認めて私はいいというわけにはいかない。現実にこの富山の婦中町の農協の倉庫できちっとカドミウム米が保管されているかどうかという点を考えてみましても、非常に雑な扱いをしているわけです。汚染米であれば、はっきりと食糧庁の通達でカビ米としてきちっとした規定があるはずです、汚染米についての。その実態もはっきりしないで、どの米が汚染米なのかわからないような、あるいは〇.四PPM以上の米がどれだけあるのか、それも明確にしないような実態で次々と売却されているというこの事実ですね。これは私はもっと食糧庁自身が的確に掌握していかなければならないと思うんです。私は現実にこの千七十三トンを売却した事実、写真とっていますよ。どうですか。はっきり言えばいいんだよ、もうこれで。送ってしまって食べたものはしようがないじゃないか。あとどうするんですか。
  656. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) 私の報告はそういうふうに聞いておりますが、なお、そういうことでありますればもう一ぺん調査をしてみたいと思います。そうでないはずなんです。私、何度も申し上げますように、政府運送をかけまして、消費地の倉庫に着いてからあとそういう発表があったものですから、そこで押えたということを申し上げているわけです。  ただ、それ以上のことは、もし御指摘があれば、私はもう一ぺん調査をしてみたいと思います。
  657. 三木忠雄

    三木忠雄君 これは私は納得できない。これ実際にその各倉庫にしまってあると言ったって、現実に私は食糧庁の各事務所にいろいろ聞いてみた。ないはずですよ、二カ月もたてば。こういう答弁でその売却米を逃げようというようなことでは私は納得できないと思うのです。もう少し明確にし、あるいはこのカドミウム汚染米について総点検をして、どうなっているかということを、実態報告を明確にしていただきたいと思うわけでありますけれども、いかがですか。
  658. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 私の手元への報告も、先ほど食糧庁長官の御報告申し上げたとおりの報告の数字になっております。  なお、これの検査の方法といたしましては、原子吸光法によってやるんだというようなふうにも書面が参っておりまするが、これはいま長官が答えておりまするとおり、長官や私が、愛知の在庫八十二トン、京都の八十八トン、大阪の七百六十四トン、兵庫の四十四トン、和歌山の七十四トンに、私どもが直接に当たっておるのでございませんから、ただいま御指摘のように、確かにカドミウム米、汚染米がもし流通しておるようなことでありますれば、これは容易ならざることでございまするので、これらの在庫のものにつきましては、重ねて点検をいたさせます。
  659. 三木忠雄

    三木忠雄君 まああとの数字の問題については、よく点検して、私はそれじゃ合わせたいと思いますけれども、そういうような合わせ方で私はがたがたしたくありませんけれども、このように農林省で認めた二十一トンにしろ、現実に、これはカドミウム汚染米です。これを売却しているという事実、この問題に対して農林大臣どう責任とりますか。
  660. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 私への報告は、四十七年十二月六日に汚染米が間違って出荷されたと、こういうことで、その後、あとう限りの措置を講じたい、こういうことでございまするが、二十一トンは遺憾ながらこれが流通過程へ入ったと、こういうことでございまして、これによって問題が起きました場合は、これはそれなりに責任を感じなければならないと思いまするが、この二十一トンにつきましては、現実に、先ほどから御説明を申し上げているとおりに、〇・四PPMから一PPMまでの間の食品衛生法上許されておるものも、これは配給をしないと、こういうたてまえで慎重を期しておるわけでございます。そういうことで、この汚染米が一体どの程度の汚染をしておるのかというようなことにつきましても、これを今後明らかにいたさなければならないと、こう思うんでありまするが、何ぶんにも先ほど申したとおり、出荷後の問題でございまするので、このあと重ねて慎重な検討をいたしたいと、こう思います。
  661. 三木忠雄

    三木忠雄君 まあ私はこの問題についてもっと政府自身が真剣になって、人体に影響のあるカドミウム汚染米です、これはもっと真剣になって考えなきゃいけないと思うんです。いわんや、もう一つは、カドミウム汚染米の一PPM以上の問題については、政府としては何ら干渉しないでおいて、各県に処理をまかして、ただそのままにしておるわけです。こういう問題についてもやはりもっと政府が私は責任を持って処理していかなきゃならぬじゃないかと思うんですけれど、一PPM以上の米はもう県にまかしてほったらかし、こういう実態はもっと究明されていかなければならないと思うんです。この点はどうお考えになりますか。
  662. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) 一PPM以上の米は食糧庁は買いませんので、これは地元で、農協等が責任を持って保管をいたしまして、そして食管法に基づき、農林大臣の譲渡許可を得まして、工業用ののり等の原料に処分するということにいたしておるわけでございまして、県にまかしておるわけではございません。
  663. 三木忠雄

    三木忠雄君 しかしながら、その保管されている、たとえば富山の婦中町にある倉庫の中に、一PPM以上の米もですね、まあ判定が出たあと、一PPM以上であったということで買い占めてありますけれども、それは実際にマークもされていなければ何もされていない。倉庫の実態、私見てもそうです。こういう実態が、あまりにもこの食糧、特に米に対する保管の態度というものが、行政当局である食糧庁の扱い方が私はよくないんじゃないかと思うのです。総理、全体を通じて、このカドミウム汚染米についてもっと真剣に政府は考えなければならないんじゃないかと思うのです。どう思いますか。
  664. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 有害な米が消費者に渡るという事実に対しては、これはもう絶対に避けるべく、万全の対策をとらなければならぬということは、もう言うをまちません。  さっきの話にちょっと行き違いがあるようでございますからこの際申し上げておきますが、この富山県から千何トンか送られた米は、四十五年、六年産米はカドミウム汚染米だという認定がなかったわけでありまして、これは配給されたわけであります。四十七年度産米は、十二月の六日になって、県がこの倉庫の米は汚染米であるということを発表したわけであります。それで農林省は、もう十二月の六日ですから、急遽押えようと思ったら、別なところへみな送られておったと。別なところへ送られたものを送られ先を調べて凍結をした。そのときには愛知の二十一トンだけはもうすでに売却済みであったということが事実でございますから、これはあとの千トンばかりの米は、いま述べたように、凍結をしてあるはずであります。これが凍結をしてないということになったらたいへんなことであります。ですから、これはもう現認すればすぐわかる話でございますから、これはもう直ちに調べて納得がいくようにできると思います。  二十一トン売られたものに対してはどうかと、これははなはだ遺憾である。再びかかることをなしてはならない。しかし、それは農林省も食糧庁も、そのときにはわからなかったわけでありますから、県がもう少し早く発表してくれればよかったわけですが、県が十二月の六日に発表したというところに、もうすでに、その前に送られたものが二十一トンさばかれておるということであって、結果的には国民が消費をしたことであって、はなはだ遺憾でありまして、再びそういうことのないように、機構に欠陥があれば、これはもう十分、万全の対策を講じなければならぬ、こう思っております。
  665. 三木忠雄

    三木忠雄君 これは、総理の発言も、現実に実態を知らないからなんです。私、この併票箋で、実際に実態を調べますと、運送と売却を間違えるわけはないと思うのです、処理のしかたをですね。私たちが調査したときに、あわてて、「売却」と書いてあったのを「運送」に直したんです、事実は。なぜそこまで食糧庁はやらなきゃならないかということなんです。そういう問題でも、私はこまかく、時間も限られておりますので、やりませんけれども、そういうふうに、あまりにもずさんな管理をされているという点については、もっとしっかりした態度で臨んでいただきたいと、これは要望しておきます。
  666. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 三木君の残余の質疑は明日行なうことにいたしたいと存じます。  明日は午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十五分散会