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1973-03-19 第71回国会 参議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年三月十九日(月曜日)    午前十時七分開会     —————————————    委員の異動  三月十九日      辞任        補欠選任       徳永 正利君    竹内 藤男君       木島 則夫君    栗林 卓司君       塚田 大願君    渡辺  武君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大竹平八郎君     理 事                 上田  稔君                 佐藤  隆君                 高橋 邦雄君                 西村 尚治君                 米田 正文君                 森中 守義君                 横川 正市君                 鈴木 一弘君                 向井 長年君     委 員                 小笠 公韶君                 川上 為治君                 木村 睦男君                 楠  正俊君                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 塩見 俊二君                 白井  勇君                 竹内 藤男君                 長屋  茂君                 初村瀧一郎君                 林田悠紀夫君                 細川 護煕君                 山崎 五郎君                 山内 一郎君                 吉武 恵市君                 足鹿  覺君                 上田  哲君                 川村 清一君                 小林  武君                 瀬谷 英行君                 田中寿美子君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 安永 英雄君                 塩出 啓典君                 三木 忠雄君                 矢追 秀彦君                 栗林 卓司君                 岩間 正男君                 渡辺  武君                 青島 幸男君    国務大臣        内閣総理大臣   田中 角榮君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  三木 武夫君        法 務 大 臣  田中伊三次君        外 務 大 臣  大平 正芳君        大 蔵 大 臣  愛知 揆一君        文 部 大 臣  奥野 誠亮君        厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君        農 林 大 臣  櫻内 義雄君        通商産業大臣   中曽根康弘君        運 輸 大 臣  新谷寅三郎君        郵 政 大 臣  久野 忠治君        労 働 大 臣  加藤常太郎君        建 設 大 臣        国 務 大 臣        (近畿圏整備長        官)        (中部圏開発整        備長官)        (首都圏整備委        員会委員長)   金丸  信君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      江崎 真澄君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       二階堂 進君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       坪川 信三君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       福田 赳夫君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  増原 恵吉君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       小坂善太郎君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       前田佳都男君    政府委員        内閣法制局長官  吉國 一郎君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        経済企画庁調整        局長       新田 庚一君        経済企画庁国民        生活局長     小島 英敏君        経済企画庁総合        計画局長     宮崎  仁君        大蔵省主計局長  相澤 英之君        大蔵省関税局長  大蔵 公雄君        大蔵省銀行局長  吉田太郎一君        大蔵省国際金融        局長       林  大造君        農林大臣官房長  三善 信二君        農林大臣官房予        算課長      渡邉 文雄君        農林省農林経済        局長       内村 良英君        農林省農蚕園芸        局長       伊藤 俊三君        通商産業省通商        局長       小松勇五郎君        通商産業省企業        局長       山下 英明君        通商産業省重工        業局長      山形 栄治君        中小企業庁長官  莊   清君        労働省労働基準        局長       渡邊 健二君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    参考人        日本銀行総裁   佐々木 直君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十八年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十八年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十八年度政府関係機関予算内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十八年度一般会計予算  昭和四十八年度特別会計予算  昭和四十八年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。  理事会におきまして、本日は、去る三月十六日パリで開催されました拡大十カ国蔵相会議に出席いたしました愛知大蔵大臣は、その会談を終え、十八日帰国いたしましたので、本委員会は、現在総予算総括質疑を進めておりますが、国際通貨問題の重要性にかんがみ、この際、緊急問題として取り上げ、本日一日間、集中的に審議を行なうことにいたしました。  その質疑時間は百三十分とし、各会派への割り当ては、自由民主党及び日本社会党はそれぞれ四十五分、公明党二十分、民社党及び日本共産党はそれぞれ十分とし、質疑順位は、お手元に配付いたしました質疑通告表順位にすることに協議決定いたしました。  そのように取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  それでは、愛知大蔵大臣報告を聴取いたします。大蔵大臣愛知揆一君
  4. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私は、去る三月十六日にパリで開催された拡大十カ国蔵相会議に出席し、昨日帰国いたしました。たまたま国会審議の重要な時期にあたり、多大の御迷惑をおかけしたことと存じますが、今回の会議は、すべての参加国国際協調精神にのっとり、力を合わせて当面の困難を打開するとの強い決意を示した点で、きわめて重要な意義を持つものでありました。また、私といたしましても、この機会に各国大蔵大臣中央銀行総裁と隔意なく意見交換することができましたことは、まことに有意義であったと考えます。予算案審議の途中にもかかわらず、私の出張をお認めいただいた皆さま方の御理解に対しまして、あらためて厚く御礼申し上げます。  御承知のとおり、一月末のイタリアの二重市場制度の導入、スイスの変動相場制移行に端を発し、西独への大量のドル流入を招いた国際通貨不安は、米ドル切り下げと、これに伴う各国の一連の措置の採用により、一たん平静に復したのでありますが、三月に入るや再び西独等へのドル流入の勢いが強まり、主要各国外国為替市場は、一カ月足らずのうちに二度までも閉鎖を余儀なくされるに至ったのであります。このような情勢にかんがみ、三月四日及び八日にEC蔵相会議、三月九日に第一回拡大十カ国蔵相会議が開かれましたが、明確な結論を得るに至らず、各地外国為替市場閉鎖のまま二週間以上を経過するに至りました。その後、EC諸国は、三月十一日に蔵相会議を開いて、六カ国の共同フロートを決定したのでありますが、国際的な投機に対処して、国際通貨情勢に安定をもたらすためには、全世界的な通貨当局間の協調が必要となり、この意味において、十六日の第二回拡大十カ国蔵相会議には一そうの期待が寄せられたのであります。  今回の会議におきましては、当面の国際通貨情勢の動揺が投機的な資金移動によって引き起こされたものであり、これを克服するためには、各国の緊密な協力に基づいた確固たる行動が必要であるとの点において共通認識がありました。このような認識に基づき、各国はそれぞれ率直かつ建設的な意見交換を行ないましたが、私からは、各国協力して現実的な為替相場体系を守るべきこと、各国とも、切り下げ競争等の破滅的な傾向を避けるため、国際収支節度を順守すべきこと、基本的には固定相場制度に復帰すべきであること、国際通貨制度長期的改革が緊要であることなどの点を中心として強調いたしましたが、これらの主張は、多くの国々から共感をもって迎えられたと存じます。  会議の結果について御説明いたしますと、一つは、各国は、まず、秩序ある為替相場制度を共同して守る決意を確認いたしました。二つは、各国とも、必要かつ望ましい場合には、市場に介入を行なう用意がある旨を表明いたしました。三つは、資本移動規制の問題については、各国とも協調的立場に立って所要の方策を鋭意検討することが合意されました。四つには、為替レート競争的変更の回避や、各国インフレ抑制が重要であることが、あらためて認識せられました。五つには、さらに国際通貨制度改革作業促進すべきことが合意されました。  以上のとおり、今回の会議の結果、各国通貨当局が一致協力して秩序ある為替相場制度を守るとの確固たる決意を表明したことは、当面の国際通貨危機を克服する上で適切な解決であったと考えられます。これにより、各地為替市場も、波乱なく、秩序ある再開ができるものと予想いたされます。しかしながら、長期的な通貨制度改革の問題は今後の問題として残されております。安定した国際通貨制度なくしては、国際通貨情勢の恒久的な安定は望み得べくもありません。今次の国際通貨危機を通じ、各国はこの点の認識を一そう深めており、従来にも増して国際通貨制度改革討議促進を重視するに至っております。わが国といたしましても、三月末に予定されております二十カ国委員会討議をはじめ、この問題の討議重要性を十分に認識し、これに積極的に参加していくことが必要であると考えられます。  以上御報告申し上げます。
  5. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これより質疑を行ないます。川上為治君。
  6. 川上為治

    川上為治君 大蔵大臣、まことに御苦労さまでした。  今回のパリ国際通貨会議は、大蔵大臣報告によりますと、非常に成功したということでありますが、また、東京の市場も再び開始されましたが、為替レートの安定が、世界経済の均衡ある発展に必要不可欠の問題であることは論をまたないのであります。ハリの通貨会議の模様について、これらに対する大蔵大臣所見を、詳細に報告願います。
  7. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいま御報告申し上げましたように、まず第一は、当面の投機的な要因による緊急対策といたしましては、今回の会議の結果というものは、相当効果があるものと考えられます。しかしながら、これだけでは問題の解決にならないわけでございますが、同時に、こうしたたび重なる、かつ、短期間における経験からいたしまして、かねがね国際的に討議をされておりましたが、国際通貨の基本的な安定について、もう早急に、いわばスピードアップして、各国で建設的な新しいやり方をつくらなければならないということが、経験を通じて、その緊要性というものについて非常な強い認識合意ができたということが、今回の一つ収穫であったと考えられるわけでありまして、先ほど申しましたように、二十カ国委員会——すでに蔵相代理会議が直ちに精力的に作業を展開することになりまして、これを二十六、七日の会議中心にして持ち寄りまして、さらに大臣レベルで煮詰めることをいたそうということが合意されたわけでございます。まあ、結局、見通しといたしましては、九月に、IMFのナイロビ会議というものが日程にすでにのぼっておりましたので、こうした場の会合というようなことが、従来期待されていたよりは、はるかに重要に、また、時間的の要素から申しましても、はるかに期待が大きくなった、こういうふうに考えるわけでございます。  具体的に、しからばどういう案が考えられるかということにつきましては、一つには、現実の世界通貨の唯一の基準通貨でありますドル信認を、どこまで、いかにして回復することができるか、これに対して、関係国の誠意のある建設的な態度というものがどこまで確立できるかということが一つであろうと思いますが、同時に、これも前からよく言われていたことでありますが、SDRというようなものを魅力のあるものにするということが、同時にやはり積極的に考えられなければならないのではなかろうかと、まあこういう点が中心になってくると思いますし、日本といたしましても、そういう点につきましては、従来からも研究もし、また、主張すべきところは主張もしてまいりましたが、いま申しましたように、国際的に重要さがますます増してきた、あるいは時間的な要素も非常に急がれている、こういうふうに認識されますので、こういった認識の上に立って積極的な協力をしてまいらなければならないと、まあこういうふうな感じを強くいたす次第であります。
  8. 川上為治

    川上為治君 国際収支黒字国ですね、黒字国は、資本流通促進策をとり、また、国際収支赤字国資本流通抑制策をとることが国際協調精神から見て望ましいと思いますが、パリ会議では、こういう点についてどういう結論があったのか、また、大蔵大臣はその結果をどのように評価されておりますか。
  9. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) パリ会議合意されましたコミュニケの上におきましても、ただいま御指摘の点は取り上げられておる次第でございます。具体的な細目等につきましては、それぞれの国が適切と考える措置をとることになったわけでございますけれども、このコミュニケの上でごらんになりましても、特に赤字国資本規制について、またアメリカ当局が、たとえば、すでに発表しておった考え方等については、いわばそれの解釈といいますか、その態度について、こうした国際的な状況を踏まえて、こういうふうな考え方であったのだということが明らかにされたという点なども、一つ収穫ではないかと思います。たとえば、資本流出入の問題について、コミュニケの第六項の中に、特に米当局としての考え方が明らかにされておりますが、「一九七四年末までに長期資本流出規制を段階的に撤廃するという計画」、これがかねてアメリカ態度として表明されておったわけでございますけれども、その意味というものは、アメリカの「国際収支ポジション大幅改善に時期的に一致するよう意図されたものであることを」米当局が強調したという点に、米側の本件についての態度の表明ということが見られるわけでございます。「これらの規制を全廃するまでの過渡的期間中に採られるいかなる措置も、為替市場状況および国際収支基調に妥当な考慮を払いつつ実施される」ものであるということが、さらにつけ加えられているというところの意味もおくみ取りをいただきたい、かように感ずる次第でございます。
  10. 川上為治

    川上為治君 今回の通貨危機の原因が、八百億ドルにものぼるといわれる米国対外債務で、つまり過剰流動性にあることは万人の認めるところであります。これを適切に処理されない限り、世界的なインフレ基調はおさまらず、また、通貨投機の続発も防止することはできないと考えるのでありますが、大蔵大臣はこれをどういうふうに考えますか。また、パリ会議ではこれが問題になりましたか。過剰ドルの凍結の問題についてはどういうふうになりましたか。その具体的な方法について承りたいと思います。
  11. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これも、このコミュニケにあらわれておるところで明らかでございますように、過剰ドルといいますか、たまってまいりましたドル資金等の問題については、「コンソリデーション」というような字も、この国際会議合意された中に出てきておる。これも一つの進歩であろうと考えられるわけでございます。この問題については、このコミュニケにも明らかでございますように、恒久的な国際通貨安定策として取り上げることにいたしたわけでございますから、多少の時間は、これはかかると思います。それから、これに対しましては、日本としても一つ考え方であるという意味においては、こういう考え方が出てきたことは適当であろうと思われますけれども、どういう形にすることが日本国益に沿うことであるか、また、一方から申しまして、世界通貨の安定という面を考え、かつ、ドル信認性の回復ということからいえば、交換性というものが非常に大事なわけでございますが、これとの関連で、コンソリデーションというものの中身をどうしたらいいかということは、非常に大きな、また大切な問題でございますから、この点については、わが国としても、過剰流動性の問題の処理が非常に大事なことでありますから、とくと、あらゆる面から検討して、具体的な案を早急にあらためて検討いたしたい、こう考えております。
  12. 川上為治

    川上為治君 最近におきまして、米国関税委員会が出しました多国籍企業に関する報告によりますと、一九七一年末の米国短期流動性資金は、全世界中央銀行国際機関が保有しております外貨準備の二倍強に当たります膨大な金額であります。その中で大部分が米国系国籍企業にあるといわれておるのでありますが、これが何の規制も受けずに動き回っておることが通貨危機の元凶の一つであると考えられますが、これを大蔵大臣はいかように考えておりますか。また、これに対して、米国政府はいかような措置をとろうと考えておるのでありますか、大蔵大臣
  13. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 多国籍企業の持つ資金が大きな撹乱要因といわれておることは、これは日本だけではなく、各国の認めている、指摘しておる事実でございますが、これに対しては、アメリカ側としても、非常に大きな、深刻な問題として取り上げざるを得ないということは事実であると思います。同時に、多国籍企業資金というものについては、もっともっと実態を的確に把握することも必要であると思いますので、たとえば、世界アメリカ影響下以外のところにも、この資金動きというものが見受けられるような動向でもございますから、かねて政府といたしましても、この多国籍企業のあり方、実態については、できるだけの掌握をしたいと思い、いろいろの手を尽くしておりますが、幸いにして、国際的に大きな要素として取り上げられてまいりましたから、国際協力の上に立って、そしてまた、関係の特に深い国々の善処を求めるという方向で具体策の検討に入るべきであると考えております。ともかく、先ほど申しましたように、今回そういったような問題について、少なくとも、問題の所在というものに対して、各国共通認識ができ、そして、それに対する対策を具体的に、積極的にやっていかなければならないという基本的な考え方合意ができたということは、当面の、そうした流動的、投機的な動きを封殺する上において、相当効果がすでに起こりつつあるものと、こういうふうに考えてもよろしいのではないかと思っております。
  14. 川上為治

    川上為治君 ただいま行なっておる変動相場制は、早晩固定相場制に移行しなければならないと考えますが、その時期はいつごろになりますか。特に中小企業者は、早く固定相場制になることを望んでおりますが、この時期と、そのレートはいかようになりましょうか。また、新聞に報道されておるところによれば、相当長期にわたって変動相場制は行なわれるものと見ておるようでありますが、これはいかがですか、大蔵大臣
  15. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 変動相場制については、これもまたコミュニケの上にも明らでございますように、日本を含む相当多数の国が変動相場制に現在入っておる。また、あらためて共同フロートヨーロッパ各国合意で行なわれている。これはもう事実の問題でございます。また、こうせねばならなかったということの背景や環境も、外国がひとしく認め合っていることでございますから、現在の状況においては、フロートをある程度続けていくということが必要である、また適当であると思いますが、しかし、これが本則でないということも、また各国それぞれが認識しておるところでございます。日本の場合におきましてもいろいろの条件が整えば、あるいはいろいろの環境についての準備が整えば、できるだけ早く固定相場制に移るという考え方は明らかにいたしておりますが、その条件あるいは環境が整備すれば、整えばということは、固定相場制は、ひとりわが国だけではなく、多角的に、国際的に約束が守られ、そして、一たんきまったならば、それをお互いに支持し合うということが、考え方だけではなくって、具体的なアクションによって保障されなければならない。そういう環境でなくって、早計に固定相場制をとるということは、何回もまたこれを繰り返さざるを得ないようなことになる。これは、国益からいっても、国際的な面から見ましても、非常に警戒を要するところでございますから、そういう点を取り入れて、変動相場制から固定相場制に移り変わるという時期は、よほど慎重に考えなければならない、かように存じます。  同時に、変動相場制下における中小企業等対策については、すでに数日前にも発表いたしました閣議の決定はもとよりでございますが、きめこまかく、あとう限りの万全の対策を展開しなければならないことは当然のことでありまして、政府といたしましては、考えられるあらゆる措置を、輸出関連中小企業に対しては手を打っていきたいと、また打たなければならないと、かたく決意をいたしておる次第でございます。
  16. 川上為治

    川上為治君 こうした、国際的な通貨不安がたびたび起こるということになりますと、そのつど、わが国の特に中小企業者は不安におびえ、倒産が行なわれるということになりますが、これに対して、国際的にも国内的にも抜本的な措置を講ずる必要があると思うのであります。この抜本的な措置について、総理大臣あるいは大蔵大臣所見をお伺いします。
  17. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 抜本的な措置というのは、結局、国際的な協力にささえられ、保障された固定相場制の採用ということであると思いますから、これは日本だけが、ひとり先行して解決できる問題では私はないと思います。したがって、そうした国際的抜本的な体制が一日もすみやかに整うように大いに努力をしてまいりまして、それとの見合いで国内的な措置をとるべきである。しかし、その間においては、ただいま申しましたように、中小企業に不安を与えないような問題あるいは条件等については、政府として、できるだけのことをしなければいけないと思います。  たとえば、今回の措置に際しまして、各地の、特に輸出関連中小企業が具体的に多くの問題を持っておられるような業種あるいは地域等に対しましては、金融機関等の相談所といいますか、いままでは、通産省を中心にした政府側の指導とか、相談を受けることを展開しておりましたが、さらにこれに補強いたしまして、金融機関側からも積極的に相談に応ずる、あるいは、為替の問題等につきましてはなかなかわかりにくい面もございますから、それらの点、手続等につきましても、親切に金融機関側からも相談に積極的に応ずるような、こういう措置も、それぞれの機関の協力を得まして展開をしていることも御承知のとおりだと思いますが、それらの点につきましては、何かと各方面からの御意見や御要請もあると思いますので、御意見をどんどん積極的にお寄せいただいて、これに対して政府のとるべき措置の足らざるところは、次々と補強してまいらなければならない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  18. 川上為治

    川上為治君 その中小企業相談所とか、あるいは為替相談所とか、そういうものは具体的になっておるのですか。
  19. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは大体変動相場制が続いておる間というような一応の期間を想定いたしまして、全国銀行協会の積極的な協力によりまして、先ほど申しましたように、さしあたり輸出関連中小企業の最も多くあります地方、それから業種等に対しましては、積極的にもう始めておるはずでございます。これは特に、正確な日付は忘れましたけれども、私からも直接に協力を要請し、またそのときには、すでに金融機関側もそういう点に注目いたしまして、準備を始めようとしておったところでございますので、もうすでに、ある程度のことは進んでおると思いますし、今後急速に、足らざるところは積極的に配置をしてまいりたい。特に、そのために専門的な知識経験を有するような人に地方にもしばらくの間とどまってもらって、そうして積極的に御相談相手になる、こういうやり方が中心でございます。
  20. 川上為治

    川上為治君 そういうことを積極的にやってもらいたいと思います。  この前の円の切り上げのときは、わが国の造船とか、あるいは中小企業者に対しては、為替差損の補償とか、特別融資とか、あるいは税金の徴収猶予とか、いろんな手を用いてこれが救済策に当たったのでありますが、今回は、中小企業については、去る三月の十四日に閣議決定がありまして、金融、税制等につきまして特別な措置がとられたことはまことにけっこうなことであります。今回もまた、造船やその他の大企業につきましても為替差損の補償をやるつもりでありますか、通産大臣の御所見をお伺いします。
  21. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 円の相場について決定的な措置がとられましたときに、これは政府内部で相談いたしまして処置をするということになると思いますが、おおむね前回行なったようなことをやりたいと考えております。
  22. 川上為治

    川上為治君 その金額はどれくらいになりますか。
  23. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まだどの程度の切り上げになるか、金額が、レートがきまっておりませんものですから、いま算定することは困難でございます。
  24. 川上為治

    川上為治君 円の切り上げということになりますれば、それだけ米国よりの輸入をしやすくすることになり、日本の物価は安くするのが一般の消費者の常識であります。円の切り上げとなっても物価は下がらない、特に最近は異常な投機等によりまして、ますます物価は上がる一方であります。何か、輸入品の価格を引き下げられない理由がありましょうか、抜本的な対策はないものでしょうか、経済企画庁の長官にお伺いします。
  25. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) おことばのように、円の切り上げによって輸入物価を下げるということは私どもぜひやらなきゃならないことだと思って努力しているわけでございますが、すでに金属素材、石油、石炭等の卸売り物価につきましては、二月中旬、下旬と引き続き低落をいたしております。また、輸入消費財のほうでも、パーカーの万年筆、これは二月二十一日以降一五%値下げになりました。また、家電製品、ことにGEの製品でございますが、これは三月十日以降平均一七・四%値下げになりまして、小売り価格の引き下げを見ておりますわけでございます。さらに、こうしたものを追跡調査してまいりたいと思いますが、何せ海外の物価高の問題がございますので、かなり原価が上がってくるという点もあるわけでございますが、引き続き極力努力したいと考えております。
  26. 川上為治

    川上為治君 最近の過剰投機による物価高と、それから円の切り上げに対する物価高と、そういうふうな関係はないですか。円の切り上げということは、物価は下がるべきものと思うんですが、どうですか。
  27. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 国内に存在する過剰流動性を何とか吸収しようということで、御承知のように、二回にわたりまして預金準備率の引き上げをやっておるわけでございますが、はたまた、さらにそれに加えて、全体の需要の適正化のために適切な措置をとろうということも、努力をいまいたしつつありまして、大蔵、日銀等の関係筋でいろいろ御相談をされておると承っておるのでありますが、そうした全体の需要を引き締めるということも一つでございますし、それから、何としても輸入をふやすということもこの際必要でございます。輸入の関税率の引き下げの法律が国会に出ておりますわけでございまして、われわれとしては、一日も早くこれを可決していただきまして、その輸入の促進をやりたいというふうにも考えておるわけでございます。
  28. 川上為治

    川上為治君 その関係ですよ、私が言うのは。過剰投機の、その物価が上がった原因と、それから円の切り上げによる低落ですよ、今度は。これと関係がありますか、どうですか。
  29. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 円の切り上げと申しますか、今日フロートしておるわけでございますが、これはやはり国内物価が上がっていくということになりますると、輸出はその面で伸びがとまっていくわけでございまして、また逆に、日本へは海外の品物が入りよくなってくるということで、輸入はふえていくわけでございます。その点で、このフロートというものは、国内の物価の調整にある程度役立つものであるというふうな関係を考えておるわけでございます。
  30. 川上為治

    川上為治君 この輸入の促進ということは、どういう具体的な方法でやったらいいですか。一向輸入は促進されませんね。ですから、輸入を促進するためにはどういう方法を用いたらいいですか。関税の引き下げとか、そういう点は、農産物については特に関税の引き下げということはできないわけでありますから、どうしたらいいですか、通産大臣。
  31. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはやはり総合的な政策で時間をかけてじわりじわり上げていくと、そういうこと以外にはむずかしいと思います。で、やはり関税の引き下げとか、あるいは輸入金融に対する特別のフェーバーを与えていくとか、あるいは国際的、国内的物価の段落差を利用さしていくとか、そういうような、いわゆる、いままでいわれているようなことを忍耐強くやっていく以外にはないと思います。
  32. 川上為治

    川上為治君 さきの中小企業金融対策はまことにありがとうございます。しかし、商工中金とか、中小公庫とか、あるいは国金とかいうものに対する融資は大体二千二百億でありますが、まだ足りないと思うのであります。この足りないときは追加があるんですか、どうですか。
  33. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 円の変動に応じまして、直ちに全国の調査を行ないました。それで、その各地の要望を積み上げまして、大体総額で二千七百億円程度の要望が出たわけでございます。そのうち五百億円程度は返済猶予という数字でございましたので、二千二百億円の融資額を決定いたしました。これは、前回の変動のときは千五百億円でございますから四〇%以上に当たります。大体これでいけるのではないかと思っております。
  34. 川上為治

    川上為治君 平常におきましても、中小企業の金利は非常に高いのであります。開発銀行の大企業に対する金利や、あるいは農業者に対する制度金融の金利は非常に安い。これに比較して中小企業の金利は割り高であります。それに加えて信用保証協会というのがあります。あそこでまた利子を取りますから、非常に高くなるわけであります。これを引き下げる必要はないですか、どうですか、通産大臣にお伺いします。
  35. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今回の金利は、中金等におきましては六分二厘にいたしましたが、前回は六分五厘であったわけです。これは大体財投コストととんとんでありまして、まあ財投と見合ってみますと、ぎりぎり一ぱいのところまで下げたわけでございます。  いままで農業金融等におきまして、非常な激甚災害を受けた場合に三%というのがございます。あるいは、最近法律改正していただきまして、中小企業の激甚災害の場合にも同じようなものがございます。しかし、これらはそういう激甚災害ということによって国あるいは県が利子補給を特にした緊急措置としてやって、金額も、農業の場合は百万、中小企業の場合は二百万、今度の円変動によるものは、もっと膨大な資金量を貸すということもあり、また、時間的にもかなり長期の貸し付けをするということになっておりますので、当面これでひとつがんばっていただきたいと思っております。情勢によっていろいろ変化がございますれば、それに対応する措置ももちろん考えていくつもりであります。
  36. 川上為治

    川上為治君 円の切り上げや物価の異常な値上がり等に関連して、預金準備率の引き上げや、また公定歩合の引き上げ等、政府はいろいろ金融引き締めをやっております。だが、この金融引き締めになりますというと、中小企業者に対する影響は非常に大きいのであります。その中小企業を振興させるための具体的な方策をお聞きします。
  37. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) お話のように、準備率の引き上げをやって、資金の総量規制をいたしますことが中小企業に影響があってはいけませんので、具体的に申しますと、たとえば、準備率引き上げの対象になる金融機関から中小庶民金融を性格とする金融機関を除くとか、あるいは預金量の制約を低くするとかいう点に考慮を加えていることは御承知のとおりでございます。それから、具体的な窓口規制等については、まあ私はかねがね言っておるわけでございますが、目的別、対象別に規制をきびしくするという意味で、御承知のように、たとえば十の商社、あるいは二十の商社というようなところを特定して、手形の買い入れ限度をつくる、あるいは特定のそういう商社に対しては特に融資の基準をきびしくする、他方においては、中小金融、あるいは国民の福祉政策に直接有効なものというところには規制を加えない、むしろ積極的な配慮をするというやり方をとっておる次第でございますが、なお、先ほど申しましたように、中小零細金融については、金融機関側からも具体的で積極的な相談に応じ、そして要請にこたえていこうということを展開しだしましたことは御承知のとおりでございます。さらに、なおこうしたことをやればいいというような御意見がございましたら、政府としては謙虚に、かつ積極的にその御意見を取り入れてまいりたいと、こう思っております。
  38. 川上為治

    川上為治君 その点は、銀行通達ですか、あるいは金融機関に対する通達ですか、それでやろうと思っているんですか。
  39. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 通達もございますし、それから準備率引き上げの対象からはずすというような場合、これは法令に根拠をいたしました通達とか政令とかの問題で、それぞれよるべき法令の根拠に従って手続を正確にいたしておるつもりでございます。
  40. 川上為治

    川上為治君 窓口規制は、銀行通達とか、あるいは金融機関の通達とか、こういうものでは絶対に守られないと思います。でありますから、これをきびしくする方法はないものかといろいろ考えておりますが、なかなかないのであります。でありますから、これをもっときびしくやってください。  最後に申し上げたいと思うのでありますが、これに対しては総理や各大臣の御回答は要りませんけれども、私は中小企業問題をやってから約四十年近くなります。この中小企業は人口約四千万人以上——これは中小企業に依存してめしを食っておる者がですが、四千万人以上あります。これは日本人口の大体四割を占めております。貿易額においては四〇%を占めております。十年ぐらい前は五五%、あるいは六〇%ぐらいあったのでありますけれども、最近、後進国が追い上げてこういう結果になりました。でありますから、ほんとうに日本の重要な階層であると言うことができます。私は、この階層の振興と発展をはかることに一生を通じてささげてまいりました。振興と発展に尽くすことを一生の問題としてやってまいりました。ですが、なかなか思うようにいかないわけであります。そこでいろいろ考えたのですが、やっぱり中小企業大臣を、専任の大臣をつくることであります。中小企業の専任の大臣をつくりさえすれば、必ず中小企業問題の解決は大きく前進することができると思うのであります。これはアメリカでやっております。アメリカ中小企業大臣がおります。内閣直属であります。アメリカみたいな中小企業の問題であまりたいしたことはない国で、こういう大臣を専任につくっておるのであります。また、世界の国にも四つか三つかの専任の大臣があります。これに反対する通産省の役人は、税の行政とか、縦の行政、すなわち繊維、機械、あるいは鉄鋼とかいう縦の行政を乱すことになるからと言っております。これは詭弁であります。中小企業の行政は横の行政であります。金融とか、あるいは税制とか、あるいは組織とかいうように横の行政であります。現に農林物資は、農林省で縦の行政をやっております。また厚生省では厚生物資の縦の行政をやっております。これらの物資は合わせて大体五〇%程度であります。だから、残りの五〇%を通産省がやっておるわけであります。通産省から中小企業庁を切り離して一省をつくることは、私の念願とするところであります。私は、池田総理大臣のときも、本会議でこういう質問をしました。だが、採用されませんでした。決断と実行をやっておられる田中総理大臣は、この意見をよく聞いていただきたいと思います。実行してもらいたいと思います。どうかその点をお願いしまして、私の質問を終わります。
  41. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 答弁、よろしゅうございますか、要望で……。
  42. 川上為治

    川上為治君 答弁要りません。
  43. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて川上君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  44. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 横川正市君。(拍手)
  45. 横川正市

    ○横川正市君 まず最初に、今度の会合までの間に、実は私どもの判断としては、さきの日銀総裁あるいは細見顧問が出席をする時期に大蔵大臣は出席すべきではなかったか、十六日の会議に出席するときに、大体今月末の会議がきわめて重要であって、十六日の会議はいわばそれほど大きな意味はないんではないか、こういう判断をいたしておりました。その根本的な理由というのは、今回まあ取りきめをされました中での一つの重要項目とされております買いささえ、こういう買いささえそのものがどういう意味合いをなすものかについて、いまもって実はあまりそれほど大きな効果期待することはできないんではないかというふうに思っておるわけなんです。  この点について、あとで大蔵大臣から説明をいただきたいんですが、まず総理大臣にお伺いしたいのは、日米関係の今日までの推移を二つに分けますと、前段は軍事的な目的での要人の往来というのが非常に激しく行なわれておりました。まあ、そういう時期には日米関係はそのことに重点があったんだと思うのでございます。しかし、最近は経済関係の要人の往来が非常に激しくなってきたわけですが、その中で、日米経済合同会議等の会議の場所を通じて一貫して日本主張してきたものは、今日のこの日米関係の中でどういうふうに日本主張がいれられ、あるいはそのことが相手国に理解をされてきておるのか、この問題について、総理大臣、どうお考えでしょうか。
  46. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ、日米経済閣僚会議をはじめ、日米首脈会談等が随時行なわれてまいったわけでございますが、その間にも、アメリカとしては、まずニクソン新政策をとって、国内の景気浮揚、それからドル価値の維持というようなことに対しては相当強い国内政策をとったわけでありますし、それに対応して多国間調整も行なわれたり、お互いの国々協力し合いながらドル価値の安定と、また拡大均衡の維持というような面に対して各般の施策をとってきつつあったわけでありますが、二月のヨーロッパにおける通貨危機というような問題を契機にしまして今日がもたらされたわけでございますが、この間に、各国ともいろいろな方策をとってきたんです。アメリカは何もやらなかったではなく、賃金凍結とか、とにかく国内的には相当な政策をやっているわけでありますが、これが効果をあげ得ないという面があることは否定できませんが、ある意味において、アメリカの景気、国内的な態勢は外で見るよりも非常によくなっておると思うのです、私は。よくなっておるのにこんな問題が起こるので、何かやってるんじゃないかというような議論も起こるわけでありますが、これは、国内でやっているもの以外に、四半世紀において世界に散布されたドルの問題、それから欧州におけるユーロダラーの問題、その他いろんな問題があるわけです。特に、日本と違って為替管理制度の管理をしてない国、そこが投機に見舞われるというような問題もありまして、多面的な要素をもって今日に至っておると、こう理解していただきたいと思います。
  47. 横川正市

    ○横川正市君 私は、どうも相手国との折衝の中で相手国の考え方を十分理解しない、そういう状況下で日本の立場というものを主張してきておった、そういう不十分さというものが、まず両国間に非常に根強くあるんではないか、こういう点が考えられるわけです。  それからもう一つ。これはさきにもちょっと申し上げましたが、今度の大蔵大臣が出席をされて、そして各国の要人との間に意思の疎通をはかる機会があったということは非常にいい機会だったということを言われておりますが、私は実は、その点のいろいろな関係を、私どもは、あまり通貨関係は日常よく承知をいたしておりませんから、非常に拙速的に、いままで日本がどういう接触をしたかというのをずっと調べてみたんですが、その調べた中では、最近に至って、おそらく柏木顧問とか細見顧問、あるいは日銀の総裁が何回かの会議に出席をし、大蔵大臣が今回出席をしたという程度で、その問にアジアにおけるいろいろな情勢の変化も激しいし、ことにヨーロッパを中心とした通貨の激変も、これもまあ非常に驚きをもって迎えたわけなんですが、実は、そういうような動きに対して適時適切な手を打つほどに事前に情報の収集というものがあまりなかったんじゃないだろうか、その点が非常におくれておるんじゃないかという印象を非常に強くするわけなんです。そうではない、実はこういう手を打っておったがというのならば、その点の説明をいただきたいと思うのです。新聞に出ている、たとえば稲村さんの前回の会議から帰りましたときの記事に出ておるのを見ますと、非常に平穏無事で、どこからも問題がないし、日本に注文はなかったのだと、まあ、非常に驚きだというような記事を見せられますと、あれほどの変化がありますのに、とらえ方として、これは一体十分であったかという点を懸念するわけですが、これほどの激変する通貨情勢を的確に収集しておったと、こうお考えでしょうか、その点、大きな手抜かりがあったというふうにお考えでしょうか、お伺います。
  48. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 手抜かりがあったかどうかということにつきましては、いろいろの御批評もございましょうし、謙虚に政府としても反省すべきところは反省しなければならないと思いますが、しかし、なかなかよく情報をとり、われわれが判断いたしますのに、最近におきましては相当よく情報網もできていると私は思っております。具体的に申しますと、御案内のように、各国の主要国大使館にはその道の専門の者が大使館の機構の中に入っておりまして、そして、それぞれの駐在の大使の指揮監督のもとに、そして通貨関係あるいは為替関係の専門的な知識と、そしてそれに対応する各国の当局との間の連携というものはかなりよくとれておると思いますし、最近のような電信等の発達によりまして、一般的な状況等について、緊急の場合は、電話でも相当よく情報を、東京にも報告をし、あるいは活動をする基準というものもよく連絡がこちらからもできておるつもりでございます。それからなお、そういう点につきましては、先ほど申しましたような、一そう充実する必要性については、私もよく認識しておるつもりでございまして、今後ますます活動、機動力を発揮するようにいたしたいと思います。  ただ、私の今回も感じましたことを率直に申し上げますと、十六日の会議は、会議としては十一時から始まったわけでございますけれども、私自身といたしましても、当日は八時から、アメリカのシュルツ長官との会談をはじめとして、直接にいろいろな人とも話し合いましたが、この会議でどういうふうな国がどういうふうな意図を表明するか、ことにこまかい点等にわたりましては、もうぎりぎりの時間までも、それぞれがはっきりした意見を言わない場合もございます。問題がきわめて重要であり、また、きわめて多角的な判断を要する問題でありますだけに、なかなか的確な情勢というものがつかみ切れない場合もございます。同時に、先ほどもお話がございましたが、日本側は、日本側に対する批判がないということを、稲村財務官が蔵相代理会議に何べんも出ておりまして、これは率直に彼が受けた印象であろうと思いますが、私も、まさにそれと同じ印象を強く受けたわけでございまして、とかく、率直に申しまして、日本人は心配性でございますし、たとえば情報といいますか、新聞のことを特に申すわけではございませんが、何か日本アメリカからも、あるいはヨーロッパ側からも、ひとりで黒字国になっておって、これに対しての批判や批評が非常に多いんだろうと、こういうふうな感じ方を持ちますけれども、少なくとも今度のパリ会議におきましては、全体の会議においてはもとよりのこと、個別的な接触におきましても、日本のビヘービアが悪いのだというようなことは、私はついに一回も聞きませんでした。  そうではなくて、これだけの大問題の中で、そして日本という、これもいろいろの見方、御批評がございましょうけれども、とにかく経済的には世界の大国である。この世界の大国であるところの日本が、国際的な通貨安定に対していろんな知恵も出してほしいと、それから具体的の方策等について積極的な案も出し、また、国際的な協調の面において、行動においても積極さを出してほしいという、そういう意味での期待といいますか、ある種の私は信頼性であると思いますが、そういう点から申しまして、こういうときには、ぜひひとつ積極的な姿勢を示してもらいたい、たとえば、大蔵大臣が出席しないというようなことは、われわれの全体の建設的な場におきましてそういうことがあることは残念であると、こういうことは私も耳にいたしました。したがって、今後におきましても、国会の特別の御理解をいただいて、活動の機会におきましては、与えられる機会におきましては、十分日本としても協力の姿勢を示していただくことが、これは望ましいことであると、この機会に、お答えの機会を借りて申し上げてたいへん恐縮なんございますが、そういう意味での積極的な日本の姿勢を示してもらいたいということは、日本に対する批評というか、あるいは要請といいますか、そういう形での意見というものは耳にいたしたわけでございますが、この点については、先ほど申しましたように、従来からの日本として持っております情報網からもしばしば上申されてきた意見でございまして、これは私自身、はだに触れて確認したということに相なるわけでございます。
  49. 横川正市

    ○横川正市君 私は、いわば、こういうようなものが、諜報網というような意味でのことばで表現できない、たとえば情報という意味での意味合いにとどめておきたいと思うんでありますけれども、そういう面で限界説で答弁されるんではなしに、いま行なっておるものをさらに強化する意味で、通貨関係各国の事情というものをもう少し的確に承知できるような、そういう人的な、あるいは機構上のものを強化するということについては、大蔵大臣のお考えはどうでしょうか。
  50. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) こまかく御説明してしかるべきであると思いますけれども、先ほどは日本自体の機構あるいは人事の配置を申し上げたわけでございますけれども、国際機関に対しましても、御案内のように最近はかなり充実されております。たとえばIMF等に対しましては、日本が、中に職員として、あるいは理事者としてポストを持って、有能な人たちが相当たくさん、長期にわたって国際機関の人としても活動しておる。あるいは世界銀行でも同様でございますが、これは狭い意味の諜報というようなことではございませんけれども、そういった国際機関中心として働いている。その中心一つの地位に、有能なる日本の専門家が現に相当のポストに入っておるということも御理解をいただきたいと思いますし、また、そういうチャンスが今後ともふえるであろうと思いますが、ひとつ惜しみなく、有能なわれわれの同胞がそういうところに積極的に入って、そして通貨の問題で言えば、国際通貨の確立ということについて十分な貢献ができるようにいたしたい、こういうふうに考えております。私は弁解を申し上げているんでなくて、事実等について足らざるところがあったら十分反省をいたします。ただ、現状においては相当やっておりますという事実、同時に、私の率直な感想を加えて申し上げたわけでございまして、弁解がましく、へ理屈を言っているわけではございません。
  51. 横川正市

    ○横川正市君 こういう記事のあることは承知でしょうか、たとえば、日本西独に対しての要請をしたときに西独から断わられたという、そういう事実ですね。これは、細見顧問が西独を訪問して、日本西独為替市場の動向次第によっては、マルクがフロートすれば円もフロートするというようなことで協調をしようと、こう努力したが、西独はそれに対して、まあお断わりをするというようなことで、そのときの連絡のしようというのは非常に唐突な連絡のしようで、具体的には、西独としてはもっと日本西独との間の連携を密にしてもらいたい、こういう意思を持っておったようだけれども、それにこたえておらなかったということの結果だというような記事が出ております。これは今日もやはり一つの問題点だろうと思うのでありますけれども、個々にあげますとたくさんありますが、大体、日本が国際的には一人歩きをさせられているんじゃないか、記事面で言うと国際的な孤児と言っていますが、一人歩きをさせられるんじゃないか、そういう懸念が感じられるが、この点はどうお受けとめになられますか。
  52. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私は、印象として、国際的な孤児ではなくって、国際的にもっと日本が建設的に協力をする必要は大いにあると思います。また、それが世界的に日本に対する期待であると思います。  それから、具体的な問題につきまして御質疑でございますけれども、それぞれの国はやっぱりそれぞれの立場がございます。ですから、たとえばフロートの問題について、御案内のように、ドイツは、公式にドイツの大蔵大臣が表明しておりましたことが、ドイツとしての立場であったろうと思いますけれども、結果において、共同フロートであるとか、あるいはその際に三%のマルクの切り上げでもって共同フロートに参加したことであるとか、これは必ずしもドイツとして初めから望ましい選択であったかどうかということについては、私にも、その経過等についてはドイツ内部の事業の動きなどは捕捉できません。また、それは当然であろうと思います。その経過経過において、やはり通貨問題につきましても、当局者同士の各国との自由な意見交換ということはきわめて必要なことでございますから、そのある部分が、たとえば報道関係者その他の印象としてこういうふうに伝えられるということは、私は大いにあり得ることであると思います。しかし、通貨問題についての最終的の決定というものは、非常に重大な責任でもあり、また国際的な反響の中で決定しなければならないことでありますだけに、いわば特殊の性格の問題として、非常にその秘密を守らなければならないということも当然ある性格のものでございますから、そういう点も十分踏まえまして、先ほどから申しておりますように、今後におきましても一そう連携を強化する、そうして自由な意見交換というものはできるだけ多く持つべきである、そういう点については、今後も一そうの努力を日本政府としてやらなければならない。こういうふうに考えておる次第であります。
  53. 横川正市

    ○横川正市君 人的な強化をされるとすればですね、いま非常にいろいろな点でお働きになっている方々がどういう方かよく承知いたしませんが、各省に関係をするという意味の人的な配置でしょうか。それとも、経済界とか財界とか、あるいは金融界とか、そういうような意味の人的な配置をも含めておられるんでしょうか。また、将来強化するとすれば、その面も含めてその人的要素を充実しよう、こういうお考えでしょうか。
  54. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私は、いま通貨の問題に限定して申し上げておったわけでございますけれども、政府として、通貨の問題に限定して申し上げましても、政府としての立場から言えば、やはり在外公館を必要に応じて充実をする、専門家を、有能な人を、できるだけその国に駐在をして、その国の当局者その他と十分なコンタクトができている、こういうことが必要であると申し上げたわけであります。それからもう一つは、先ほど例にあげましたが、IMFとか世界銀行とかいうものは、やはり、このコミュニケにあがっておりますいろいろの事柄にしても、具体的に中心になって運営するべき立場にあるのがそういった機構でございますから、幸いに日本人は重要なポストに現在でも相当入り込んでおりますが、要請があれば積極的にそういうところに人材を派遣するということが必要であるということを申し上げたわけであります。さらに、広い意味で、通商関係あるいは商社との関係、その他ジャーナリストとの連携とか、いろいろあると思いますが、私は、それらについても積極的に日本側の体制はますます強化しなければならないと、こういうふうに考えます。
  55. 横川正市

    ○横川正市君 そこで、今度の大臣の出席をされた中で一番大きな問題は、アメリカがこの問題に対して従来いろいろ消極的であった点を一歩踏み出してくれた、それは将来一つの通貨安定策につながる前向きのものであると、こういうさらに判断をされたと思うんでありますが、この買いささえというのは、その国の自主的な判断によって——ケース・バイ・ケースということばが使われておりますけれども、買いささえをすると、こういうことなのですが、ドルの今日の状況から、アメリカが買いささえをするということはいわば一つの前向きな姿勢だと私どもも評価いたしますが、どういう形で行なわれようとするのか、その結果についてはどう判断をされておられますか。
  56. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まず第一に、今回の会議の印象を申し上げますと、アメリカがこの国際通貨不安に対して国際的な責任の認識というものを打ち出されたこと、この点が非常に印象的でもありますし、今後のいろいろの点においてよい影響が私はあると思います。  それから第二に、買いささえということのお尋ねでございますけれども、これも一つのあらわれで、必要に応じて、そして関係国間の緊密な話し合いをもとにして、その他いろいろの条件がこのコミュニケの上にもあらわれておりますけれども、資金的な問題についてもひとつ前向きの考え方をやりましょう——その一つとしてスワップということばがこのコミュニケの上に出ているということは、他のユーロダラー問題、資本規制の問題、あるいはドルコンソリデーションの問題というような、わがほうとしてもかねがねアメリカとの話し合い、あるいは国際の場において積極的な意見を展開しておりましたようなことが、少なくとも事柄として明らかにこうしたコミュニケの上に出ましたこと、あるいはまた、私がこの会議におきまして日本主張として、先ほど御報告いたしました五つほどの中心の点がございますが、その考え方あるいはことばがそのままこのコミュニケの上にも取り上げられているというようなことが、私はこの会議収穫であったんではないかと思います。しかし同時に、ほんとにわずか一日の会議での成果でございますから、たとえばスワップをどこの国とどこの国がどういう方式で、どういう条件で幾ら増額するかというようなことまでは——こうした急速にまとまった会議でございますから、原則がお互いに確認されただけでございまして、具体的に、あるいはそれぞれの国が自主的にやること、あるいは関係の二国間で相談し合わねばならないこと、あるいは、ものによりましては、こういう用意はいたしましたよと言うことだけで効果が発生して、実際上はそこまで具体的にやらなくともいいという性質のものもあると思いますから、そういう点からいえば、具体的にここにこう書いてある、各論はどうなっているのか、こまかい条件はどう話し合いができたのか、そういう点になりますと、抽象的ではないかという御批判は、これは免れないと思います。そういうものでございますので、これから、したがいまして問題によっては、たとえば中央銀行相互間で話し合うこともございましょう。あるいはまた、二十カ国委員会できめなければならない性格のものも具体的にもございましょう。二十カ国委員会は、主としてこれはこうした当面の措置の上に踏まえて、もっと建設的な国際通貨制度の確立ということが主題でございますから、あるいは二十カ国委員会ではそうしたテクニカルなこまかい問題は出ないかもしれません。二十カ国委員会には中央銀行総裁も出られない、出席しない人も相当ございますし、それから機構自身が、Cトゥエンティと言っておりますものは、もともと十カ国蔵相会議拡大されたものでございまして、蔵相間の会議である、政府が、主体の会議でございます。これに反して、十六日の会議蔵相会議と通称言われておりますけれども、蔵相並びに各国中央銀行総裁が今回も全部招請を受けたところは出席しております。こういうわけで、会議の性格ややり方も違いますけれども、長くなって恐縮でございますが、あらゆる場において、これからのこうしたコミュニケについての具体的な取り扱いというところは、ものによっては中央銀行総裁中心になって対応する、中央銀行総裁との間に取りきめが行なわれることも私は相当あるだろうと思っておるわけでございます。
  57. 横川正市

    ○横川正市君 今日までの推移の中で、スミソニアン体制がくずれたその責任というのは、各国のエゴイズムが大きな原因だとされておるわけです。そのエゴイズムが今度の会議の中で、たとえばブロック制になることを警戒し、世界共通的に通貨問題を解決する意思を表明したと言うが、一体、ナショナリズムはこの会合の中で全く除去されたとも考えられません。これが一つです。それからもう一つは、ドルの財産価値といいますか、ドルの将来性というものについての信頼感というのは、いま大体最悪の事態なわけですね。これはおそらく共通しておられると思うんです。ただ、キー通貨としてのドルをどうするかということは、前向きでみんなが知恵をしぼろうとしている問題なんですが、そこで、逆に言いますと、ドルの立場を持っているアメリカは、何らかの形でドルの信用性を回復するということになれば、いわゆる買いささえという具体的な一つの事例を踏み出したということになれば、自然的にドルの信頼性回復に努力をするということにつながると思いますけれども、そう考えてよろしゅうございますか。
  58. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 全くごもっともな御意見でございますし、その御意見のように、このパリ会議というものは、結論が——結論といいますか、認識において合意ができたと、こういうふうに考えます。率直に申しますと、これまでのような——これまでといいますか、ことにことしに入ってからの状況からだけを見れば、各国がばらばらになって、もうスミソニアン的考え方は崩壊してしまったんだというようなかっこうになって、ECはECの中でかたまろうとする努力は非常に顕著でございますけれども、各国がそれぞればらばらになってしまうと、先ほど申し上げましたように、平価切り下げ競争というようなことにでもなりますれば、もうほんとにたいへんなことになる。ですから、何としても基本はスミソニアン的なところへ持っていく。具体的にいえば、ドルがほんとうに信認が回復できれば、そして交換性というようなことが再び持ち得るならば、それも非常にけっこうなことでありますし、また、これとあわせてSDRあるいはそのほかの方法をあわせ用いればなおいいという考え方もございましょうが、そういう点についてとにかく国際的な協力が、もう一ぺん、こういう最近の不幸な経験に徴して、その反省の上にもう一ぺん、いわゆる一つ世界、ワンワールドということがこういう場合にスローガンとしていままでよく使われておりましたけれども、やっぱりそれでなければいけない、これは私も大いに主張したところでございます。日本は現にフロートしていることはフロートしているのですが、本来的には、もし関係各国がお互いに固定相場をつくったらばそれを守り合うという協力体制が必要である、しかもこれは具体的なアクションによってアシュアされたものでなければならない、それを前提にして国際通貨制を確立しようという、この考え方というものが合意された。そして当面の対策については、アメリカ政府もこの国際的な問題に対して責任を認識した。それが原則的にこのコミュニケにもあらわれたし、また会議全体に、満足と申しましょうか、いい雰囲気が出た、こういうことが申し上げられるのではなかろうかと思います。大体これでいまの御質問にはお答えしたつもりでございます。
  59. 横川正市

    ○横川正市君 その答えと、具体的な問題に入りますが、その前にちょっと……。  この前、総理とそれから福田国務大臣の答弁を聞いておりまして、アメリカドルの信用回復はということの背景に、アメリカの持っておる国力はという点で非常に高く評価をされている御答弁がありました。その点の考え方をもう少し具体的に、アメリカの国力のいわば底にあるものをどう判断をされているか、お聞きをいたしたいと思うんですが。
  60. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 最近の状況を率直に申し上げますと、各国ともに、ドルはこんなに信認されないというのはむしろおかしい、ドルは本来もっと強かるべきものである——おそらく、これは予断は許しませんけれども、そして同時に、これは各国意見がそれぞれ見方も違うかもしれませんから、期間的に申すことはできませんと思いますけれども、久しからずして本来の地位を回復するであろう、いつごろまでということになると、これはなかなかむずかしい問題ですから、その点ではいろいろの意見があるようでございますけれども、本来ならばドルは強くなるはずである、こういう観測が一般的に持たれているのではなかろうかと、私はそういうふうな感じがいたしたわけでございまして、この点は、御引用になりました総理や福田大臣のお考え、あるいは見込みと私は同じような考え方じゃなかろうかと、こういうふうに思います。
  61. 横川正市

    ○横川正市君 そうすると、このいまのドルがこれほどに信用を失った原因について、その原因というのは吸収する能力を、しかもすみやかに、持っておると判断する、こういうことですか。
  62. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) アメリカとしては、そのドルをみずから一〇%切り下げるというような措置をしましたから、そこで鎮静をするといいますか、国際通貨不安に対しても効果があると、こういう判断ではなかったかと思いますけれども、それがやはり今回の通貨不安を招いた、それは収拾ができなかった、その不幸な体験に基づいて、先ほど来、るる申し上げておりますような、たとえばスワップということばが出てきたり、あるいはコンソリデーションということばが出てきたり、あるいは資本規制についての、何と申しますか、国際的解釈、アメリカ態度についての願望を入れた国際的解釈が確立されたというようなところが出てまいりましたのは、やはりアメリカが当面のところは国際的な責任を感じて、こうこういうようなことはやるというかまえを示したと、こう評価さるべきではないだろうかと思います。同時に、当面のこの措置、それと恒久的な措置とは相連関して、逆行しないようにやるという考え方もまた、考え方としてはコンセンサスができたということになるのではないだろうかと私は思うわけでございます。
  63. 横川正市

    ○横川正市君 愛知さん、いままで日本アメリカに対して大体ものを言ってきた内容というのを読み上げますと時間がありませんから——八項目ぐらいあるわけですね。それは、少なくとも日本のいわばレート維持のための考え方を基礎に置きまして、アメリカにこれをやってもらいたいということを主張してきたものなんですが、たとえば、ホノルルで田中総理がお会いになったときに、一朝一夕にはいかぬ、しかしまあ三年ぐらい待ってくれれば日本期待にこたえられるのだがと、こういうお答えをして帰ってこられておりますけれども、急速にその後円・ドル関係が悪化をした、これは当面の問題として考えて、いわば徐々に日本が努力することによって三年後にはその点の問題は解消する、こういうふうに判断をされているところでしょうか。
  64. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いつも申し上げておりますとおり、ハワイ会談では、日米間の貿易不均衡があるわけであります。しかも、まあ四十六年度三十二億ドルもあったわけであります。それが四十億ドルになるようでは困るのだ、二十九億ドルぐらいにならないかという話をやっておったのです。これは日本にも日本の立場があるが、アメリカにもアメリカの立場があるので、アメリカ日本と同じ共通の立場に立っておる。それは縮小均衡には絶対に持っていかないように、拡大均衡を維持しよう、新ラウンドは維持していこう、南北問題には貢献をしよう、こういう基本を動かさないで、日米問のアンバランスはどうしてもやはり均衡のほうに持っていってもらわなければならない、こういう問題が一つございますし、もう一つは、国際的な新ラウンドを推進していくということになれば、当然各国問においても不均衡は是正していかなければならない、こういうことでありましたから、私は、日米間に対しては、あなたの言う二十九億九千万ドル、二年目には十九億九千万ドル——まあ二十億ドルを割れということですな、そういうことはわかるが、これだけ大きくなり複雑多岐になっておる日米問で、そう簡単に一年や半年で片づくものではないと思います、両三年以内に経常収支の黒字幅をGNPの一%以内に押えたいという諸般の政策を進めていきたい、こう思いますから、その過程において日米問の貿易収支も相当バランスをする予定でございます、こう述べておって、まあそうなら、これだけの日米間、それから日本国際収支全体がそんなに急激にうまくいくわけはありませんから、まあそんなことでしょうなということで理解を示したわけでございます。  それには、こちらのほうも、資本の自由化や輸入の自由化や関税の引き下げや国内景気の浮揚によって輸出力を国内に転化していくとか、いろいろなことをやっていかなければいけませんし、同時に、アメリカドル価値が維持できるような政策を続けなければならぬわけです。そのためには、物価の統制令を行なったり、賃金凍結を行なったり、向こうは相当な激しいことをやっているわけですから。で、まあ残るのは、と言いながら、年間百億ドルも百五十億ドルも海外から利潤送金が行なわれるということは、それだけアメリカ資本外国に出ておるのだから、だからもう少し、外国に出ていく多国籍企業に対する投資等も少し規制をしたらどうだと、具体的な話もしているのです。アメリカで持っておる——アメリカの海外で持っておる石油資本等、日本に一部、分けたらどうですかと。そうして多国間でもってやるということのほうがより合理的だと思うということで、新しい石油開発、新しい資源開発、新しい大きなプロジェクト等に対しては、日本を含めたいわゆる共同開発、ジョイントベンチャーでやろうと。で、けさもその一つが出ております。アメリカは石油に対しては非常にうるさい。いわゆる商品ではなく、国家安全保障会議の議題である石油というものに対しても、これ、民間がやるならば、チュメニに対しても協力をするだろうというのが、けさ初めて出ましたが、私が、サンクレメンテに行って石油問題を出したときに、ちょっと笑われたぐらいだったのですが、そんなことアメリカが乗るわけがないじゃないかということだったが、そうじゃないのです。やっぱり乗ってきております。それはアメリカの民間資本が自動的にやるのだからといいますが、国家安全保障会議の議題である石油に関して、政府と意思が全然無関係でやれるわけがないのです。いずれにしても、そういう方向でお互いが一つずつ自分でやれるものはやり、共同でやれるものはやろうということで話をしておったわけでありまして、まあそういう方向に向いておると私は考えておりますが、ただ、当面する問題としては、四十億ドルになっちゃいかぬというのが四十一億ドルになるというような問題があったので、それは、その問において高低はあるが、だんだんと効果を出していくものだと。日本は強弁しておるのではなく、日本はそういう施策を続けてきたわけですし、アメリカも続けてきたわけですが、まあ三年も待てないで一〇%の切り下げということを当面行なわざるを得なかったということであります。
  65. 横川正市

    ○横川正市君 いまの問題と関連するわけですが、信用回復の道は、逆に言えば、日本アメリカ相当程度の協力を要請される道にもつながるのではないか。協力はいい意味のことばでありまして、相当日本からいろんな意味の、日本がいやであってもオーケーをとるというような、無理じいといいますか、ことばはあまりよくありませんが、そういうことも起こるのじゃないか。で、そのようなことが、一体今度の会議——これはまあ当事者ですから、愛知さんにお伺いしますが、おそらくそこまで話し合ってはおらないのじゃないかと思いますけれども、いわば接触の感じはどう受けとめてこられたかですね、その点。まあ、あまり具体的でないのは、申し上げると時間がなくなりますから申し上げませんが、いま日本側から出している項目があって、アメリカ側から日本へ出している項目はもうすでに御案内と思いますが、そういうものの中に、日本から協力をさせられるものとしてどういうお感じを受けてこられたか、お聞きいたしたいと思います。
  66. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 日本主張というものにつきましては、先般も当委員会で申し上げましたように、当面並びに恒久的な考え方に通ずるものとして、一つは、ドル交換性回復の問題、これにはいろいろの考え方がございます。たとえば、御論議がございましたが、金交換性ということだけを意味するものではございません。いろいろの方法があると思いますが、要するに、ドル交換性を回復するということであると思います。それからアメリカの国際的な資金移動について、これに対して、今回のような投機的な動き、大きな動きが誘発されたわけでございますから、これに対して十分備えを固めるということが一つ、固めてもらいたいということです。それからもう一つは、アメリカ自身の国内政策としても、金融政策等に関連しても、国際協調という観念でやってもらいたいということがあげられると思います。そうして、これらの考え方日本主張しておったことは、私は、考え方としては、このコミュニケの上にりっぱに登場していると思います。で、あとは具体的なやり方の問題にかかってきておると思います。  それから、日本の義務ということを御指摘になったわけでございますけれども、これは私は、一言にして申せば、累次にわたる円対策、これをやはりできるだけ実行することで、推進していくことであると思います。しかし、これはできることを約束する、できないことまでリップサービスでとやかくすべきものではない、そこに私は国益との関係があると思います。ですから、日本といたしましては、そういう点を十分わきまえて今後も臨みたい、こういうように考えます。  それから、さらに付言いたしますならば、私は、コンソリデーションというようなことは、本来あまり好ましいことではないと思いますけれども、これだけドル日本でたまっておりますから、やむを得ざる措置としては——このコンソリデーションの具体的な中身になりますけれども、この中身についても、ある種の日本としては協力が必要であろうかと思いますが、同時に、ドルが紙くずだというお説もあるけれども、現在でもりっぱな国際的な支払い手段でございますから、私は、このドル日本としてはもっともっと活用すべきである。ことに輸入等につきましては、私はもっともっと積極的にやっていくことがいいのではないか。アメリカからの輸入だけではなくて、もっとグローバルに輸入を促進する、あるいはドル自身を活用する方法は輸入だけではなくて、ほかにもいろいろいままでも考えておりましたけれども、こういう点について、もう少し日本側としても、場合によっては、従来の感覚で割り切れなかったようなことも相当積極的にいろいろの外貨活用策を考えるべきである。まあこういうふうなことが、私の現在の段階において考える一つ対策であり、これは協力であり、しかも日本国益にも通ずることであって、適切な考え方ではないかと、まあこういうふうに私は思っておる次第でございます。
  67. 横川正市

    ○横川正市君 ちょっとその前に、大蔵省の考え方は、何か情報によりますと、変動相場というものは当面の問題でなくて、相当長期に、これは適切な処置である、あるいは自由市場におけるところのいろいろな関係から見ても、生産力とかあるいは国力とか、そういった点から考えてみて、固定相場への移行は非常に無理であって、相当と言うのですから、二カ月や三カ月じゃなしに、長期に変動相場の中で通貨関係を勘案していったらどうかという意見と、それは困る、なるべく早く固定相場に移行すべきだという意見とがあるようなんですが、大蔵大臣としてはどういうお考えでしょうか。
  68. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私は、かねがね申しておりますように、変動相場制というものには、それなりにメリットもあります、デメリットもございます。したがって、私は悪いところばかりではないと思います、非常に妙味のあるやり方である。ことに、現在のような環境の中では妙味のあるやり方であると私は考えておりますから、これはある期間続けておりましても国益に反するなどとは考えません。同時に、せっかく今度のパリ会議でも、日本政府のかねがねの考えであるように、当面はこうした状況フロートする、変動相場制で対処するのが適当だと思うんだけれども、そしてこれをしばらく続けるが——ということは、このコミュニケにも書いてありますように、日本もフォア・ザ・タイム・ビーイングということばが使われております。しばらくの問というわけでございますが、同時に、これはしばらくの問のことであって、固定相場制というものが多数国問において適正な状況にきめられて、かつ、これをお互いに守り合うという保証が具体的になければ、これはこの中に指摘してございますように、相場の変更競争になるわけです。そういうことは国際通貨制を不安に導くことになり、一つ世界の理想に遠ざかるものでありますから、それは絶対にやるまい。これは国際的に合意ができたわけでございますから、その面からいえば、なるべくすみやかにそういう状態ができることが望ましいわけです。こういうふうな環境でございますから、何月まで続けるとか、何月以降でなければやれないとか、時間をあらかじめ日本だけが切ってこれをきめるべきものではない。適当な時期まで、しかし、なるべくその期間は短いほうがいい。ただ、それは、いま申しましたような条件環境が熟するによってきめなければならないことである、こう申し上げる以外にお答えができないわけでございます。同時に、東京の為替市場も今朝から開きましたが、開場の一、二時間の状況は、私も報告を受けておりますが、平静に開いておるようでございますし、大がかりな介入はしないで、しかし、為替に相当の乱高下があるというような場合には介入をする。この原則で、実需によって起こるところの円の実勢というものを見きわめていくということが現在日本としてとるべき私は一番いい方法であろうと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  69. 横川正市

    ○横川正市君 時間がないので、すぐ具体的な問題でお聞きをいたしたいと思うんですが、これは労働大臣の所管ですが、総理にお伺いしたいですが、たとえば、アメリカ日本一つの、ぜひこういうことは考えてくれということの中に、こういう項目があるんです。労働組合制度及び労働情件の低さが日本の競争条件を強めている、だから労働時間を、週休二日制の採用等はすみやかにやったらどうか、こういう提案が向こうからあるように私は承知をいたしておりますが、さてそれを国内で受けて、総理の考え方としては、いまの労働事情、労働条件、あるいは週休二日制というようなものにどのような取り組み方をされようとされておるか、お聞かせいただきたいと思います。
  70. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 週休二日制、労働時間の短縮等、正式な要求はありません。ありませんが、それは経済人同士で話をするときとか、いろいろなときに、日本の経済の強いのは、輸出力が強過ぎるのは、アメリカの間と比べてみれば、まだ労働時間やいろんな問題に対して問題があるんじゃないかという話は出るでしょうが、正式な要求などということはありません。これは、日本アメリカに対して、日本から鉄鋼をどんどんと輸入をしておりながら、生産性を上回る六%も賃金を上げるからよくないんで、それを押えなさい、こういうようなことを具体的に言うわけはないんでありまして、これは内政干渉になりますから、そんなことはないんですが、いま述べられたようなもの、アメリカとの経済人同士では、もっと国内に向けたらどうだというような話が出るであろうということは理解できます。ですから、アメリカの問題とは別に、労働条件の改善、それから週休二日制というような問題に対しては、間々申し上げておるように、週休二日制ということはできることが望ましい、政府もそれを推進しておる、こういうことでございます。しかし、推進をしておっても、やるならば公務員から一番先にやったほうがいいんだという議論に対しては、すぐ、じゃ公務員にやったら公務員をふやさなければいかぬという問題ではできないわけですから、じゃ、もっと要らぬ法律はやめたらいいじゃないかというような問題、付帯的にやはり前提条件を整備するためには、お互いが知恵を出さなければならぬわけです。しかし、方向としては、週休二日制を採用していく。基幹産業では一カ月に隔週休んでいるようです。だんだんとそういうものが出てきた。それから証券市場も外為市場も土曜日は休みだというふうに、だんだんとそういうふうになるわけですから、中には、議員が週休二日制をやったほうがいいんだということを言う人もあります。しかし、それは別でして、労働ということ、そういう問題をやるためには、議員は日曜日出てもやらなければいかぬというので、一般公務員とは逆なんだと、こういう議論もわれわれもいま中でやっておるわけでありますから、だから、そういう意味で、公務員をやる場合には、一体ほかの、人をふやさぬで、代替人員をつくらずやれるのかというような問題がありますし、それからもっと縦割り行政というもので、補助金の整理だとか、そういう問題もあるじゃないかという問題もあります。それから地方と国との行政事務の合理化をやる。これは地方税を——仮定の問題ですが、付加税にすれば、付加税にしなくとも、同じところで徴収すれば、何万人かすぐあくわけであります。いろいろな問題をやはり俎上にあげて——これは人員整理をするというんじゃありませんから。とにかく週休二日制というものをやれるような具体的なやはり状況というものを判断しないでやれるわけはないんです。それで、もう一つ中小企業、零細企業というものがいまこういう国際情勢にぶつかっておりますから、めどをつけなければいかぬ。いずれにしても、週休二日制というようなものは推進をしていこうということであります。労働条件の問題は、私は、お互い昔から比べれば相当よくなったと思うんですよ。思うんですが、国際的に見てみれば、日本ドルばかりためておって、依然として制度の上でもまだ問題がある。私は、問題は徐々に解決していくと思いますし、政府も施策の中で一つ一つの労使の問題に干渉するわけにはまいりませんが、やはり官公労の問題とか、いろいろな問題に対して、制度上これが待遇改善という問題に対しては考えていかなければならぬ問題だということで、積極的にこれに対処をしているというのが現状です。
  71. 横川正市

    ○横川正市君 通産大臣に。さきの円の切り上げが大体日本の貿易収支その他にそれほど大きな影響力を与えないで、いわば事なきを得た。しかし、これからはたいへんだぞというかけ声があるわけですが、その円の切り上げがどういう形で吸収されたか、御検討されたことがあるでしょうか。
  72. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 前回の円の切り上げの結果、一時的にはかなりのショックが実際ございました。しかし、ドルの蓄積は減らなかったということは、これはやはり出血輸出がかなりあった。これはどの国でも切り上げた当座は外貨は蓄積するものである、そういう原則が、やはり日本の場合にも適用されたのではないかと思われます。しかし、その後の趨勢全般を見ますと、輸出の量は減ってきておる、しかし、金額は減らない。これは輸出の値段がある程度高くなっても輸出ができた、そういう情勢がわりあい広い範囲に見受けられました。ですから、量は横ばいないし減ったというものもございますが、金額は減らない。そういう意味において、ドルの蓄積自体はそれほどまだ減らないで、増してきた。ところが、ともかく円対策が大事であるというので、去年の夏ごろから景気回復が緒につき始めまして、その景気回復の力を追っ手に受けまして、内需に転換した企業がかなりございまして、それが企業会計を維持してきたと思われます。あの景気回復というものがない場合には、中小企業の苦難はかなりあったと思いますけれども、昨年の八月以降の景気回復で救われて企業の利潤が出てきたと、そういうことがございます。それで、また中には、たとえば秋田のクリスマス電球のようなものは、たしか十八社ぐらいありましたが、そのうちの数社はいち早く韓国へ進出した。残りの数社は電子産業部門へ転換しようと、そういうことで転換したのもございます。あるいは神戸その他のケミカルシューズなどは、やはりあのころパンタロンがはやってまいりまして、構造転換をやろうというのでパンタロンに合うようなヒールの高い新しいくつの方向へ転換した、あのパンタロン流行というものに目をつけてうまく転換したのもございます。そういうように、やはり日本中小企業というのは、非常に頭を使って生き抜いていこうという雑草のようなバイタリティーがありまして、それがやはり非常に企業を救ってきたと、そういうように思います。今回の情勢を見ておりますと、やはり中小企業にはそれだけの決意があるように思います。前よりも、しかしかなり痛手はあると思います。何しろ二年間に約四〇%の切り上げになってきている情勢でございますから、これは前回に比べて、かさ上げがきている分だけはかなり骨にこたえてきているだろうと思うんです。そういう意味において、私たちは、円変動等によって常に喫水線を浮かんだり沈んだりしているような企業は、思い切って資金も出し、また誘導もしてあげて、構造転換の方向へ動いていただいて、再びそういう国際為替相場等で心配のないような方向にぜひ持っていっていただきたい、そう考えているわけであります。
  73. 横川正市

    ○横川正市君 まあ、ぼつぼつになりますが、労働大臣ね、私は、終戦のときは、日本は新しい日本をつくるための一つの意欲がありましてね、労使間の関係というのは、その意味では一つのの秩序というものを新しくつくろうとしたわけですね、治安維持法から脱却をいたしまして。ところが、政令二〇一号が出まして、当時のいわゆる日本の生産体制の中での労働力の供給とか、あるいは業務体制というものをつくるために、政令二〇一号というのが制限法規として、労働運動の制限法規として大なたをふるわれたんです、これは占領政策。ところが、いまの関係法規は、ほとんど政令二〇一号の精神を受けてつくられてきておるわけです。私は、言いかえれば、占領政策から脱却をするということは、この体制から抜け出すことだと考えておるわけですが、労働大臣のお考えはどうでしょうか。
  74. 加藤常太郎

    国務大臣加藤常太郎君) いろいろ雇用関係の問題については、過去はそういうこともありましたが、現状においては労使間でよく話して近代的な労働行政を進める方針で鋭意やっております。
  75. 横川正市

    ○横川正市君 占領政策がそのまま残っているのは労働法規の中に非常に強いんですよ。それは、思想的な点からいきますと戦前の治安維持法につながるものなんです。それほどに取り締まり法規というものは非常に過酷ですね。たとえば、憲法上の労働関係の三権についてという条項よりか公共の福祉のほうを重く見る。これは並列で見られる点については私は妥当だと思いますけれども、まあかりにですね。しかし、公共の福祉が優先して、労働三権がその下に制限を受けるというような考え方というのは憲法の条文に違反をすると思いますが、総理としてはどうでしょうか、その考え、どうお考えでしょうか。
  76. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 基本的人権が守られなければならないというのは、新しい憲法の大精神であります。しかし、社会公共のためにということも憲法の大精神でありますから、両々相まって、いかに調和をせしむるかということだと思うんです。それは、国際的な各国の例、それからその国の理想達成の過程において、だんだんと実現をしてまいるということであろうと思います。それは、あのように二・一ゼネストのようなものがあったりしまして、あの困難の中から自立経済という方向に進めなければ——まあ、それは占領軍自体でも、占領のために自国の通貨をどんどん投入することにも限界があったでしょうから、まあ第一次の占領軍政策の目標として、日本を一次産品国にしようというのを途中で工業国家として認めなきゃならない、そのためには賠償施設の撤去も取りやめる、マーシャルプランによって金もつぎ込むというような事態でありましたから、それは自立経済、その後国際経済へと転換をしてきた過程においてつくられた労働法規その他、理想的なものではないと、まあ少なくとも理想的な——考え方によっては、理想的過ぎるという人もあります。ありますが、しかし、そういう事態において、メモ政策の雄なるものであるという目から見れば、もっと新しい視野から考えるべきじゃないかという考えもあります、確かに。同時に、占領軍政策の中では、別なものもあるわけです。いまの地方自治体の問題や教育制度とか、いろいろな問題も、みなその当時の占領軍メモ政策として、まあ占領軍政策の是正ということを長いこと言いながら、定着をしてきておるわけです。もうすでに定着をしてきておる。定着をしてきておるが、その運用は妙を得て今日になっておるわけですが、ここらで洗い直してと言えば、みんな洗い直すわけです。必要なものから洗い直すということでありましょうが、まあ確かに文章の中でも、もう直訳文章がいっぱいあります。郵政省設置法とか、電信電話公社法とか、日本国有鉄道法というような、全くメモそのままの、日本文とは遠いような条文もあるわけですから、そういう意味でだんだんと日本に適合する、理想に合うようにしなきゃならないと、こういう考え方は私も賛成です。賛成ですが、いまの労働法規、労働関係法規そのものが弾圧的なものである、こういう見方は私はしておらぬわけですが、しかし、それは全然勉強しないというのじゃありません。専門家の審議を願っておるわけですから、そういう意味では公制審などでもいま勉強していただいておるということでありまして、だんだんと理想に近づいていくと、こう理解すべきじゃないですか。
  77. 横川正市

    ○横川正市君 通産大臣の、中小企業の第一次円切り上後の対策の問題は、これは一つ状況として私どもも承知をいたしておりますが、こういう意見があるわけですね。やはり日本の労働条件の劣悪さの中に吸収されたのではないか。そういう状態からいきますと、通産大臣、実はたとえば大企業とそれから下請企業との系列の中でどういうような改善策が持たれましたか。たとえば、請け負った者が他に流すときには一割とか一割五分のピンはねをする。これは経営費だとか計画費だとかいうかっこうでピンはねをする。それを受けたものを、今度また中間者がピンはねをしてまた下へおろす。ですから、二人か五人くらいな零細なところへ行くときは、実は請負価格の六割程度のものになって仕事がさせられる。その時点ではほとんど労働条件とか勤務時間というものは変わらない。その変わらないということは、実は日本の産業上の構造になっているわけで、その構造を変えなければならぬと、こういう問題にぶつかっておるわけですが、その点の状況をどのように把握されておられましょうか。
  78. 加藤常太郎

    国務大臣加藤常太郎君) 先ほどの御質問でありますが、現在の労働行政がどうも占領政策の遺産と、これはまあ基本権の問題はあの当時から引き継いでおりますが、現在はさようなことはありませんし、中小企業、零細企業、下請の問題、これは多少いろいろな複雑な問題が胚胎いたしておりますが、労働省としては、かような、いまお説のようなピンはね程度のことは、出先機関を動員いたしまして、さような非難のないように厳重に通達もし、厳重にこれが改善に努力いたしております。多少、大企業と零細企業、中小企業、こういうような問題の、賃金の格差のある問題、これも漸次縮小し、そして格差がないように指導をいたしております。いまの問題に対しましては、さような非難のないような方法でこれが改善に、いまどんどんと進めております。
  79. 横川正市

    ○横川正市君 構造上どういうふうにお考えになっているかということを通産大臣からお話し願いたい。
  80. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は、横川委員がおっしゃるように、そういう危険性は確かにあると思っています。それで、下請代金支払遅延等防止法等、あるいは公取等によりまして、ときどき書面審査とか立ち入り検査もやっております。しかし、円の切り上げがこの前ありましたときなどは、かなりショックがありましたために、おそらく中小企業の中でもさらに下請へ出している連中の中には、予防的に下請代金を切り下げたり、あるいは手形の期間を延ばしたり、そういうことがショックの精神的構造からきて、それで、そのために末端の下請のほうがかなり圧力を受けるという現象は私はあったと思っています。しかし、最近、去年の夏以来景気が回復するにつれてそれがまた戻ってきたと。一番末端になりますと、ちょうどゴムみたいに、外界の温度によって膨張したり収縮したりさせられて漂流していくという形が一番末端には確かにございます。ですから、そこがわれわれとしては一番関心を持って施策をしなければならぬところでございまして、それにはやはり輸出関係をやっておる中小企業の諸君が、そういう精神的ショックや予防的措置をやらぬでも済むような環境をつくるということが大事であると思います。そのためには、あらかじめ、資金について、あるいは税制について、こういう措置を講ずるから安心しなさいと、安心感を与えることが一つ大事であると思います。今回はそういう考えも持ちまして、かなり事前に、われわれのやる措置を予告的にも、また業者を集めましても周知徹底したところでございます。だがしかし、長期的に見ますと、そういう、さっき申し上げた為替関係で常に浮き沈みするような限界線にある企業は、この際思い切って構造転換してもらったほうが、長期的に下請関係も安定いたしますから、今度はそういう辺に思い切って力をいたしていきたいと思うわけでございます。
  81. 横川正市

    ○横川正市君 いまの問題と関連して、大蔵大臣、サムエルソンという教授が日本へ参りまして、そして日本の学識経験者、財界の人たちと懇談をいたしておりますが、その中で、日本人は、円切り上げという事態を日本経済の危機と受けとめず、生活改善のための一つの好機として積極的に活用すべきだという点を指摘をいたしている。これは他から指摘されるまでもなく、私どもの意思も、まあ政府の方針も大体同一方向をとっておるんですが、その同一方向をとっていながら、なおかつ具体的な問題で意見の相違が非常に大きく出てくる。こういう点で、私どもは非常に遺憾だと思うのですが、大蔵大臣考え方としては、いまのままの産業構造とか、いまのままの政府の施策の中で、第三次の円の切り上げというものは起こり得ると判断をしますか、それとも、もう対策は十分だから起こり得ないと判断をされますか、どうでしょう。
  82. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) その御引用になりました意見は、それなりに私は見識のある意見であると思っております。同時に、いま言及していただいたように、政府考え方自身も大体そういう考え方でおりますことは、しばしば申し上げているつもりでもございます。  それから第三次の円の切り上げというお話がございましたが、そういうことはあり得べからざることにすべきであると思います。その点が、先ほどるる申し上げましたように、相場の変動を累次やらなければもっていかないような国際通貨体制であっては困るという考え方が、今度のパリ会議合意にも出ていると私は思うわけでございまして、日本がしたがって変動相場制から固定相場制に切りかわります場合には、それらの点を十分に見据えて、もうそれ以上また変動が起こり得ないというようなことでやっていかなければなるまいと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  83. 横川正市

    ○横川正市君 まあ、相当の責任を感ずるということを二度表明してもらうようなことがないように、これは国内体制というのは整えなければいけない問題だと思うわけです。  そこで、いま日本で、国際通貨の安定をはかるために相当な責任を持つ、こういう国になったんだと、こういうことがいわれておりますけれども、それを具体的に言いますとどういうことでしょうか。たとえば、SDRに対する出資金の問題とか、あるいは今度きまったスワップ協定ですか、それから残高凍結問題とか、そういったいろんなことがありますけれども、それと別に、日本で公的準備用の金の保有について、これもまた一つ日本の国内体制としては必要だと思いますが、この点ではどのようにお考えでしょうか。先般、足鹿委員の、私どもからの質問に対しまして、複数以上の国の金を保有する、こういう処置をとったらどうかということに対しては、相手国が相当これに対して難色を示すというようなことが答弁としてありましたけれども、この点は、円建て、あるいは相手国の通貨建てで貿易が推進されることによって可能なことではないか。そのことによって一つの打開策ができないか。あるいは、いま金価格の問題が非常に動揺いたしておりますが、日本政府としては、金価格がこういうふうになっていることに対して、ほとんど発言らしい発言をいたしておらないんですが、この問題の考え方を明らかにしていただきたい。金保有についてどのようにお考えになっているか。それから日銀の差損金が相当出るわけですが、この取り扱いをどうするか、ひとつお聞かせいただきたい。
  84. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 外貨準備をどういう形で保有するかということについては、いろいろの御意見を伺っているわけでございますが、前に申し上げましたように、足鹿委員からのお尋ねは、一つは金、それから一つは多様化ということで他の通貨も入れたらどうかと、主として二点にしぼられたわけでございますが、金の問題につきましては、従来の経過はもう申し上げましたから繰り返しませんけれども、一口に言えば、日本外貨準備がここ二年間に急激な伸びを示した。したがって、二年前の状態では外貨準備が十分な額ではございませんでしたために、当時の外貨の運用とも関連いたしまして、たとえば担保として必要だというような考え方等もあって、なかなか金に向かうだけの余裕がなかった。ところが、余裕ができたころには、今度は国際的に外貨準備として中央銀行が金を買うというようなことについては自制しようという国際的な申し合わせのようなものができて今日に至っているわけでありますことを、るる御説明申し上げたわけでございます。これからどうしたらいいかということは、やはりそうしたいろいろの御意見も念頭に置きまして、国際的な通貨の、基準通貨のあり方とも関連して勉強しなければならないことである。ここで急にひとつ新しい意見というものは、私としては現在持ち合わせておりません。  それから日銀の評価損の問題は、これも従来から申し上げておりますように、現在変動相場制でございますから、日銀の評価損を出すときには固定レートが前提でございまして、固定レートがあらためて変わりましたならば、そのときに評価損を評価することにいたすべきであると考えております。そして評価損の処理につきましては、前回の場合と同じような処理の方式をとりたいと、こういうふうに考えております。
  85. 横川正市

    ○横川正市君 この三月十八日の記事によりますと、アメリカが、通商問題と在欧米軍の撤退、あるいは東西兵力の相互削減交渉、こういうような防衛問題を結びつけてこの問題を考えようとしているということが報道をされてるわけですが、その場合に、たとえば西欧では、そのことが持ち出されるということについては非常に大きな懸念を持っておるということがいわれておりました。そういう接触の度合いの中にこの種の問題がありましたか。
  86. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 今回の場合は、時間も限られておりましたし、当面の投機対策ということに集中し、かつ、これをできるだけ恒久措置の方向と背馳しないようにということに最大の重点が置かれましたので、いまお話しのような問題については、どこの国からも、この会議の議場においては意見もしくは意見がましいことは全然出ませんでした。しかし、私のこれは想像でございますけれども、各国はそれぞれの考え方があるように想像いたされます。やはりある国からいえば、他の国が非常に繁栄したのには、相当防衛上の負担もしてやっているからだというような考え方も持ってございましょうし、また、それに対応する国としては、どうしてもNATOというようなものは絶対に自国のために必要であると、米軍のプレゼンスが絶対に自国のために必要であるということを非常に強く支持といいますか、そういう意見を国策の基本としている国もある。そういう国がどう対応するであろうかというようなことは、意見、あるいは論議としてはあり得る性質の問題であろうとは思いますけれども、当面のところ、そういうものがテーブルの上に出てきているという事実はございません。
  87. 横川正市

    ○横川正市君 これはまあ、いわば報道とか、あるいは私見の域を出ないのかもわかりませんが、総理の見解を伺っておきたいと思いますけれども、いわば独自で守る能力を持たない国であるために、言ってみれば相当相手国から無理をしいられてもやむを得ないんだというような意思表示をされた——これはまあ、名前を申し上げませんが、政府要人がおるわけですが、そういうような考え方に対して、総理の御意見はいかがでしょうか。
  88. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ、どこの国でも安全保障に対しては、自国だけではなく複数以上の国々で集団安全保障体制をとる、これが一番合理的であり、効率的であると、負担も少ないと、そういうことになって、NATO、また別な意味でワルシャワ条約機構等も存在するわけでありますが、しかし、ヨーロッパなどは、ほかの国全体とアメリカというふうに見られるわけであります。そういう意味で、アメリカの駐留を許すということでアメリカの言うことを聞くんじゃないかと、こういう立場での御質問だと思いますが、しかし、そうじゃないんじゃないですか。アメリカは三十万の軍隊を引き揚げるということになれば、それは、それにかわる機構ができて、みんな各国がそうすれば引き揚げたいということでございますが、しかし各国は、アメリカに引き揚げてもらっては困ると、こういう強い姿勢をとっているわけですから、その意味においてはアメリカの負担のほうが多いのであって、アメリカがいなくなれば各国の負担のほうが自動的に増してくるということで、具体的な問題としてはいろんな問題があるだろうと思いますよ、国民感情の問題とか、いろんな問題。しかし、相対的な評価で考える場合にはアメリカのほうが負担が多い。だからアメリカは、アメリカとの協力が要らないならば、アメリカドルの価値維持などはそんなにむずかしい問題ではないんですなどということを、まあ半公式に言うわけですから。ですから、そういう意味では、まあ地球上が大体みなそうなっておるということだけではなく、アメリカと協定を行なっておる国が、アメリカの恣意によって相当制約を受けるとか負担を求められるとかいうことではなく、これはやはりアメリカのほうの負担が多い。これはもうほんとうにそうだと思うのです。日本も負担は相当ありますが、しかしやっぱりアメリカも、日米安全保障条約というものを実行していく過程においてはアメリカはそれなりに負担をしているわけです。ですから、具体的な質問になればまた議論もおありだと思いますが、結論的に言って、アメリカの負担が多いということはこれは間違いのないことだと思います。
  89. 横川正市

    ○横川正市君 まあ、その問題を今度はさかさまにいたしますと、アメリカの通貨不安の最大の原因というのは何かと。これはやはり集積された黒字を海外へ流出したということが大きな原因だと。それは何だと。もちろん経済援助もありますけれども、軍事的な一つの出費の超大型が問題になってきている。そういうその事実の上に、今度は日本の場合をとってみますと、国内の経済ということが、これがまあ問題になりまして、そして通貨不安ということは日本経済に相当大きな影響力がありますから、これは困るという態度をとるわけです。いわば相互的にそこにはかみ合わない一線があるわけで、私はまあ、いまアメリカのやっていることを横暴だ、けしからぬという言い方をしながら、実はそうではなくて、恩恵を受けたんだからしかたがないという、こういう考え方とか、こもごもあるんではないかと、政府の中にそういうことがあって、なかなか最終的な判断がつきかねるのではないかという意見があるんだが、その点では、政府の責任者としてはどうお考えでしょうか。
  90. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは、アメリカは、これは歴史的な問題として、国際連盟をつくってみずから入らなかったわけですから、だから批判を受けたわけです。まあ各国はみんな歴史の上で明らかになっておるように、たいへんな苦労をしたわけですが、アメリカはその間に世界で保有する金の七割も保有したわけですから、アメリカは、その意味では、そのときには非常にドル価値は高かったわけでございます。しかし、そういうことはやっぱり限界がある、アメリカだけがぬくぬくというわけにはまいらないということで、ついに第二次戦争の幕引きには、アメリカみずからがヨーロッパに兵を出さなければいかぬ、参戦をし、今日四半世紀にわたって三十万の軍隊を駐留させなければならないということになったわけであります。しかし、アメリカが駐留しておる過程において、戦勝、戦敗両国とも相当な疲弊をしたわけでありますが、しかし、その過程において経済の復興をなし遂げて今日にまいりました。日本も戦争には破れましたが、まあ対米賠償を払わかったとか、主要国に対する賠償を払わなかったとか、それからまあ、各国に比べてみても非常に少ない防衛費というものが今日の繁栄の基礎をなしておるということは、これはもう何にしても否定できない事実だと思うのです。ですから、そういうことはアメリカ側としては言いたいところでしょうが、しかし、それは世界の趨勢であると、持てる者がやっぱりやるんです、ということでですね。しかし、いま日本が強い強いと言っても、日本の社会制度を見てごらんなさいと、社会資本の蓄積率は四対一じゃありませんかと、アメリカまでいくにはまだ十五年もかかるんですと、こう言ったものですから、日米経済閣僚会議では相当荒っぽい議論だと、になったというんですが、これは数字を全部あげて述べるわけです。しかも、経済的にいっても、それはアメリカの多国籍企業から四十億ドルも買っておりますから、五一年から六一年の統計を見れば、アメリカの統計をとってもまだ日本のほうが逆超ですと、こう言うと、では多国籍企業から買う石油は要らないんですかと、こう言われるから、要らないものではないが計算上はこうなると、こういうのが、各国の間には全部そういう話し合いはありますが、結論的にはやっぱりアメリカ相当長い間蓄積をした経済カというものが、まず一つには第二次戦争の幕引きに使った。その後四半世紀、やはり共同防衛というような立場で非常に大きな支出に応じておるということ、それから開発途上国に対して——これはまあアメリカだけじゃないんです。米ソ両国ともやってますから、バランスのためにも当然やらなきゃいかぬでしょうし、これは相当な大きな投資が行なわれた、あとは多国籍企業として国内から出ていったと。こういう問題がまあやっぱり大きな除くことのできない今日のドル不安とか通貨問題の一つの原因であるということは、これは否定できない事実だと思います。
  91. 横川正市

    ○横川正市君 いまの問題は、また別なところでさらにひとつ詰めて論議をしなきゃならぬ問題だと思いますが、そこで企画庁に。  企画庁の組織規定の各項目の中にいろいろなものがあるわけなんですけれども、その計画が今度の新しい新経済発展計画となって出されました。実はこれは皮相的なものの見方なんですが、前の発展計画と今度の発展計画との違いがどこにあって、そして、前のやつはそれほど私ども計画どおりいかなかったと思うんですが、今度の場合には一体それはどういうふうに進められようとされるか、まあそれを一つですね。  それからもう一つは、物価を下げるということの目的のために——まあ前回私予算をやりましたときに、木村さんの質問に、約六千億——七千億近い金が大体各省に分散しておりまして、それが今度の場合は一兆円近い金がある。その計画をされた金が実は物価を引き上げるという作用をしているということが指摘されて、当時企画庁長官は、もう全くそのとおりだという認め方をしたわけですが、そういうような点の歯どめというものは、今度の計画の中にはどのように生かされておるでしょうか。
  92. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まず、今度の計画との違いでございますが、まあ名前が示すように、いままで発展計画になっております、今度のは基本計画。これはもう発展の段階はこれで一応ひとつ構想を新たにして、新たな発想では、国の基本を見直そうではないかということにあると思うんでございます。私は、成長は一体だれのための成長であるかと、やはり国民自身のしあわせを招来するような計画でなきゃならぬので、そのためにはやはり環境というものも資源というものも有限であるんだから、この有限なものを最も国民のしあわせのために使うというのが今度の計画の主であるべきであると考えておりまして、さようなことで一貫しているつもりでございます。したがいまして、この公共投資の伸び率でございますね、それから個人消費、それから住宅投資、そういうものが伸び率が大きくて、一方、産業投資、そういうものがいままでよりもダウンしている、伸び率がスローダウンしているというのが特徴だと思うんでございます。それからもう一つ、基本的には海外の収支、経常収支の伸びを国民所得の一%に均衡さしていくというような、そういう点もございまするが、やはりこの計画としては、いままでと違うところは、毎年フォローアップをしていこう。いままでは計画をつくって何となく来たわけでございますが、今度は、一年たったら必ずそれを見直して、計画との違いはどういうところにあるのかという点を見直してはその点を修正していこうというところが、一番私はこの基本計画の特徴であるというふうに思っておるわけでございます。  それから第二点の、いままでの中期計画、あるいは新経済社会発展計画、あるいはその前の経済社会発展計画、そういうようなものの中のいろいろな数字につきまして、いままで中期経済計画は計量モデルを使ってひずみを是正するということをやっておりまするのでございまするが、このひずみ是正というような考え方は、結局、発展に伴うひずみなんでございまして、こちらのほうはもう、たとえば空気中の汚染をどうするとか、水中のBODをどうするとか、そういうふうな、現在ある大気のよごれ、あるいは水質のよごれというものを大体半分ぐらいにこの五年の間に持っていこうとか、そういうような点がおもになっておる点で、いままでとは違うように考えておりますわけでございます。  それから第二点、何でございましたか。
  93. 横川正市

    ○横川正市君 物価の抑制策のために使われた予算、これが逆に物価を引き上げた原因をつくっておったのですね。今度はそれをどう手直しされたか。
  94. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 従来、大体六項目くらい物価抑制のための予算をあげておるわけで、これが一兆三千二百億とかいうふうに言っておるわけであります。これを、結局、日本一つの物価の弱点というものは低生産性部門にあると、その低生産性部門といわれるものの生産性を上げていくということが大事である、そのためにはまた流通機構の整備も必要である、あるいは労働関係の流動性を増すことも必要である、そういうような点で予算づけをしておるわけでございますね。これが物価の引き上げにという点は、私はちょっとよくわからないのでございますが、結局それが不十分であったということなんじゃないかと思うのでございます。で、そういう点についての予算を一そう増強するということによりまして、ことしのところ十分とは申せませんけれども、今後さらにこれを進めていくようにいたしたいというふうに思っておるわけでございます。
  95. 横川正市

    ○横川正市君 時間がないので……。これは実は私ども論議をいたして、論議をするわけですから答えが出る、答えが実は具体的に実証されて満足する、いまは満足しなくても。しかし、実証されないで逆な方向に事態が動いていく、これはもう絶対とめてもらわなければいかぬ問題だと思うのですよ。ですから、できるものと、できないものとを判別するだけでなしに、具体的に答弁されて、こうしますというやつは前向きに実証される。これを、時間がありませんから、まずもって総理にお願いしておきます。  そこで、通産大臣にお聞きいたしますが、実は私ども、一例をあげると、たとえば週休二日制というようなことを、——日本の官僚というのは、これはもう世界で最優秀なんですよ。最優秀な人に、日本の今日の状態の中で週休二日制を実施するとすればこういうプロセスがありますというやつを一回書かせてみたらどうですか。結論からいえば、私は書けないだろうと思う。なぜ書けないかというと、これは能力を持っているけれども、みがいておらないからなんです。これをやはりみがかせるという方向で、私はそういうことを明確に出させるぐらいのことをやったらどうか。で、行管長官がいまいろいろな点を再点検するということを言っておりますが、官僚のやるべきことを、そういう調査会とか審議会が隠れみのになつておりまして、実際やるべきことをサボタージュしている、こういう点が多いのじゃないかと思うのですよ。有能な能力があるわけですから、もっとやはりこれをみがいて使う、こういう方向が必要だと思うのですが、これは将来の問題——いまは期待できませんが、産業構造の変換をするという、こういう問題では非常に重要問題ですが、これは実は私どもも別に能力があるから申し上げるわけじゃありませんけれども、言ってみれば、一つのいろんな意見をここで戦わすいい場所ですから、国会というものを一の中心として特別な機関をつくって産業構造改善についての論議をする、こういうような場所を持ったらどうかと思うんですけれども、御意見はどうでしょうか。
  96. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 同感でございます。いまやはり日本の産業構造というものは世界的な経済情勢の変化に応じて一つの分水嶺に差しかかってきておるので、次にどういう山づくりをしていくかという点について国民的合意を確立する必要がございます。現在、産業構造審議会でそういうことをやって、専門家によってやってもらっておりますけれども、むしろ、国民代表によってそういうことをあらゆる方面から論議していただいて、国民全体の課題として投げかけるほうが適当である、そう私は思います。でありまするから、国会におかれてそういうような措置をおとりいただければ、われわれは喜んで協力申し上げたいと思うわけです。
  97. 横川正市

    ○横川正市君 最後に、これは日本側からアメリカに、こういう点について提案していただきたいということを申し上げたいと思うんでありますが、これは当然努力をされるだろうとは思いますが、これは大蔵大臣の答弁でそれは承知いたしますが、たとえば、先ほどの質問にありました多国籍企業等のたれ流しているような悪弊について、一体日本アメリカに対して相当発言する必要があるじやないか。あるいはアメリカのインフレの抑制策についても同じような意見を申し述べる、そういうことが必要ではないか。そして、私自身は敵視政策をとるわけじゃありませんが、アメリカの地位というものを私どもは考えれば考えるほど、かくあるべきだという点については率直にものを申すべきだ、かように思いますけれども、大蔵大臣意見をお伺いいたしたいと思いますし、もし総理が御意見がありましたらお聞かせいただいて、終わりたいと思います。
  98. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先ほどもちょっと触れましたように、今度のパリ会議合意につきましては、かねがねの日本側の主張、要請が私はずいぶんよく取り上げられたと思います。ユーロダラーの問題につきましても、たとえばユーロカレンシー市場というものについて、その不安定性を減ずるための方法が精力的に検討されるであろうことが合意された。それから米国へのユーロカレンシーの流入を促進するために可能な行動が検討されるということ、あるいは、わざわざ関係国のインフレ対策ということが表明されたというような点、これらは、関係各国いずれもそうでございますけれども、特に日本の場合は、こうした面にこれらの事項が取り上げられたということをさらに一そうの足場といたしまして、日米両国間の問題としても大いにアメリカ側の前向きの努力というものを期待して対処いたしたい。また、アメリカに対しましては、先ほど来いろいろおあげになっておりました御要請、それから日本としての、こうしてもらわなければならぬという点については、もうあらゆる機会を通して、これからも当方の主張を貫くように最大の努力をしてまいりたい、こういうふうに考える次第でございますが、同時に、こちらとしても、アメリカに限らず、関係友好国の立場というものも十分理解して、そしてこちらがむずかしいことでも国益を害しないでうまくやれる方法を考えて、協力をしてやるべきものはやる、できないことははっきりできないという態度を表明いたしたい、こう思っております。
  99. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 日米の間には友好関係を保持しているわけでありますし、日本だけが国際収支対策をやるのじゃなく、アメリカ側もやらなければならぬわけでありますから、向こうもどんどん要求してもらいたい、こちらもどんどん要求いたしますよということでございますから、これはもう当然のことであります。  もう一つは、十カ国や二十カ国の公的機関でこれだけの処置をとるわけでありますから、当然アメリカ側に対して要請できることは、これはもう議論の対象になります。  もう一つは、国際機関としてIMFで国際収支上の問題に対しては個別にコンサルテーションを行なうわけであります。ですから、日本に対しては対日コンサルテーションを毎年一回ずつやってくるということでありますから、今度はアメリカ側も問題を持っているわけでありますから、こういう国際機関が当然アメリカに要請すべき具体的施策に対しては要請するという幾つかの問題があるわけでありますので、それらの機会を通して、お互いが国際収支の安定的な方向を確保するために、言うべきことは言う、こちらも行なうべきことは行なうということを貫いてまいりたい、こう思います。
  100. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて横川君の質疑は終了いたしました。  午後一時四十五分まで休憩いたします。    午後零時四十六分休憩      —————・—————    午後一時五十二分開会
  101. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を続行いたします。足鹿覺君。
  102. 足鹿覺

    足鹿覺君 緊急にまずお尋ねいたしたいのでありますが、先ほどの横川委員の質問に対し、通産大臣は、二回にわたる円切り上げで四〇%程度になるので、中小企業の打撃は大きい旨答弁をされましたが、そうしますと、前回一六・八八%ですから、差し引きずると二三%です。四〇%程度とは言っているから、幅はあるでしょうが、これから見て二〇%以上の円切り上げを予想しておるということになりますが、大蔵大臣、通産大臣、両大臣から御説明願いたい。
  103. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は目の子算用で見当を申し上げたのでございますが、この前は約一七・八%でございました。それから今度は、アメリカドル切り下げが一〇%ございまして、それを合わせると二七、八%になると。それで、今度、いま言われているようなことを一応頭に置いてみると、一二、三%悪くなるといかれるかもしれぬ、そうするとまあ四〇%前後になるのだろうと、それは一応の目の子算用として申し上げたところでございます。
  104. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ただいま通産大臣からお答えしたような次第でございますが、同時に、先ほど私が申しましたように、いま変動相場制であって、固定相場にいつ返るか、そのレートをどの辺に置いたらいいかというようなことについては、現在考えを持っておりません。
  105. 足鹿覺

    足鹿覺君 次にパリ会議と前回の私への答弁の食い違いについてお伺いいたしますが、前回の私の質問に答え、総理は、非常に意欲的に、金とドルとの交換性回復をアメリカに要求すると述べられた。今回のパリ会議で、蔵相はそのことを主張されましたか、各国からはどのような反響がありましたか。
  106. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) その問題は、本日午前にも御説明いたしましたように、今回の会議は、当面の投機を押えるために集中した対策が論議されたわけでございますが、同時に、これもドル交換性回復ということにつながった考え方でやらねばならぬわけでございますから、ドル信認を回復するために交換性を回復するということについては、日本ももちろんでございますし、ほかの国も期待は非常に大きいわけです。具体的などういう手段方法によって交換性を回復するかということについては、二十六、七日に行なわれる会議、あるいはそれ以外におきましても、要するにこれは主として恒久的な対策の一環として取り上げらるべき問題である、こういうふうになっておりますから、その辺についてはまだ十分の相談あるいは主張というものはなされておりません。
  107. 足鹿覺

    足鹿覺君 愛知さんは、十四日の夜の記者会見で、「ドル信認回復のためにはドルと金との交換性回復が必要であり、これを米国に対し主張する」と、特にこれは「田中首相とも打ち合せた上で」ということを記者会見の際述べておられますが、四十八年三月十五日の各紙は報道しておるのであります。それが、ただいまのような御答弁では、私は満足できません。ところが、十五日パリ発の毎日の歌川記者の報告では、これです、「欧州の報道では日本米国に対しドルの金に対する交換性回復を要求すると伝えられているが、これは誤解である。」とあなたは言っていらっしゃるではありませんか。言行が不一致じゃありませんか。
  108. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) その報道は私は見ておりませんが、前段でおっしゃったように、総理がこの委員会で発言を公にされておる。私もドル交換性ということが何より大事であるということを言っております。それが公式なことであり、また、それに基づいて行動いたしておるわけでございます。ただ、交換性回復ということには、午前中も申しましたように、金とドル交換性ということだけが唯一の道であってそのほかにオルターナティブがないという種類の問題ではないということはしばしば申し上げておりましたが……
  109. 足鹿覺

    足鹿覺君 そういうことを聞いているのじゃないですよ。
  110. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) いや、だから、その報道は私は見ておりませんから、見せてください。それは私は責任を持ちません。
  111. 足鹿覺

    足鹿覺君 責任を持ちませんて、首相と打ち合わせの上じゃないですか。
  112. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは、ですから、私がいま前段で申し上げたとおりです。これは私も見ました。——いや、ぼくが言っているのは、そのヨーロッパからだれだれ特派員とか……。
  113. 足鹿覺

    足鹿覺君 ヨーロッパのはここにあります。
  114. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) だから、それは私は見ておりません。
  115. 足鹿覺

    足鹿覺君 じゃ、ごらんなさい。これ、あんた、ていねいでしょうが。ちゃんと見せてあげます。
  116. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) いまざっと見ましたが、それはその名前を明らかにしている人の報道であって、これは公式の官報でも何でもございませんから、私の言うていることとキャリーのしかたにニュアンスの相違があるように思われます。そこに取り上げられていることは、ただいま私が申したことと何にも違いはございません、基本的には。今回の会議ではドル交換性の問題が議題には直接ならないので、そこできまるようなものではないという趣旨がそこに出ているようでございますが、それならばそのとおりでございます。
  117. 足鹿覺

    足鹿覺君 いずれにせよ、日本では威勢のいいことを言い、国会で答弁したことを貫くようなことを言い、外国の土地を踏んだら、とたんに百八十度変わったことを言うということでは、大臣の見識を疑われます。御留意を願いたい。——総理、この問題について御答弁を願えますか、あなたと打ち合わせ済みだというのだから。
  118. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国会で強いことを言って、外国へ行っては強いことを言わないということはありません。国会で言っていることはちゃんとやります。
  119. 足鹿覺

    足鹿覺君 やっていない。
  120. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それは、ちゃんと事を分けてお考えになればすぐわかることじゃありませんか。いま愛知大蔵大臣が言っておりますとおり、ドルの価値維持のためには、まず金との交換性も考えなきゃいけないと。だからそういうことを主張いたしますと。金だけではなく、SDRとの交換性という問題が起こってくる可能性もあります。全部が全部交換しろといっても困るでしょうから、どこか、各国がどの程度共同して、一体その新しいものに対して、新しいどういう調整をした後、どういうものに対して交換性を回復するということになるのか、具体的な問題は詰めていく過程においていろいろ方策はございますと、こう述べているんです。ですから、今度のパリ会談では、ドル交換性というよりも、いま共同フロートにしておるものをどうするのか、アメリカも共同で介入するのかしないのか、こういうふうな方向をきめるだけの問題でございまして、ドルの本質的な議論にまでは立ち至らないで、市場の問題だけに限った会議でございましたと、こう述べているんですから、よくおわかりになると思うんですがな。
  121. 足鹿覺

    足鹿覺君 私は別に違ったことを言っておるんではないんです。田中首相とも打ち合わせた上で明らかにされたパリ会談に臨む骨子のうちに、この国会で問題になった金交換性の問題が載っておるんです。これを主張なさって、そしてパリへ着いたとたんに、いわゆる金・ドル交換性回復要求は誤解であると、こういう少なくともニュアンスのことを述べられた。新聞記者がこのような重大な問題に対して受けとめ方が違うということは私は信用できません。そんなことはあり得ないと思うんです。だから、あなたに申し上げたわけであります。いずれにせよ、前回の私の質問に対する答弁は、間違いなく金とドル交換性回復を前提にしたものです。私は会議録を調べ、後刻さらに政府を追及いたしますが、こんな重要な問題でネコの目の変わるようなことでは困ります。国会の論議が無意味であると思います。国会軽視ではありませんか。総理、いかがですか。
  122. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ドル価値の維持をはからなければなりません。そのためには交換性の回復がどこの国からも求められることは事実でございます。日本もそれを求めてまいらなければなりません。金の交換性もございますが、すべてに対して通用しておる金全部に対しての問題もあるし、まあ、そこは具体的には言い過ぎになるかもしれませんが、これは凍結とか、いろんな問題もあるでしょうし、そういう過程においていろいろな問題はあるでしょうが、交換性というものが回復されればドル価値は維持できるのでございますからと、事を分けてちゃんと御答弁を申し上げております。  そして、金と同じもので金と同じ効力を持つものを——SDRは金を主体にしているわけでありますから、金だけではなく、SDRとの交換性の問題も起こると思います、その他もろもろの問題が起こると思いますと——もろもろの問題というのは、ある国が共通でもってこれを保証するということになれば、それも金交換性と同じ効果を出すわけでございますから、そういう問題に対しては、ドルの価値が維持できるような具体的な問題として十分日本も要求してまいりますし、各国も要求し、要求するだけではなく、そうなるようにお互いに協力してまいりますと、こう述べているんですから、ここ何も違いはないのです。今度のパリ会談ではそういう問題に立ち至らず——私も報告を受けましたが、立ら至らず、まず当面する問題だけにしぼって、たった一日ですから、たった一日の会議でございまして、具体的な問題は追ってきめることにして、とにかく基本的な問題に対して共同声明のように合意をしたというのでございますから、何にも違いはないのです。国会で述べているとおり、誠意を持ってわれわれもやりますし、また、やらなければ国益を守れない、こういうことでございます。
  123. 足鹿覺

    足鹿覺君 それでは伺いますが、蔵相は、パリ会議の共同コミュニケにある過剰ドルの凍結に協力すると言っておられます。その条件によっては日本の大きな損失となり、アメリカの立場を擁護することになると私は考えますが、どういう条件で凍結するのか、金と交換することを条件とするのか、過剰ドルの残高を凍結するというが、その基準は何か、どこにあるかを示してもらいたい。
  124. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) いわゆるコンソリデーションについての考え方は、公的通貨残高の借りかえまたは固定化の提案は十分かつ早急に注目するに値するものであるという点について合意ができたわけであります。ですから、午前中にも御説明いたしましたように、コンソリデーションということばがここに出てきたということは一つの注目すべきことであります。しかし、午前中にもはっきり申し上げましたように、コンソリデーションということ自体については、日本国益ということから考えまして十分に考えなければならぬことでございますから、この具体案の作成は日本だけでできるものではございません。国際的な合意、相手方の合意ということが必要でございますから、その案をつくるときに、つくる過程においては十分日本の立場というものを貫いてまいりたい。その具体案については、まだできておりませんから、申し上げる内容はございません。
  125. 足鹿覺

    足鹿覺君 問題はユーロダラーであります。これはどうして凍結をするか、凍結を要するのはこれであって、われわれは、金との交換性のない、交換のない凍結については納得することはできない。ただいまの御答弁では納得はできません。
  126. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 納得されるかどうかは、どういう案ができて——それができた、あるいはできなかったときに御批判をいただきたいと思います。  それから前段ではユーロダラーのことをお話しになったのですか、もしそうだったら、またお答えいたします。
  127. 足鹿覺

    足鹿覺君 問題はユーロダラーが問題だと、問題の一つだと言っているのです。これをどうしますか。
  128. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ユーロダラーについては、随所にこのコミュニケでも出ております。たとえば、投機資本移動を鎮静させることの重要性が指摘されて、そうして最近生じている巨額な資本移動の源泉と性格とをさらに完全に理解しようとする意図を表明して、したがって、その実態というものをほんとうに究明しなければならぬということでもありますし、それからユーロカレンシー市場については、市場の不安定性を減ずるための方法が精力的に検討されなければならないということが合意されたわけであります。それから米国は、米国へのユーロカレンシーの流入を促進するために可能な行動を検討するであろうということが合意されたわけでございます。
  129. 足鹿覺

    足鹿覺君 では先に進みますが、いずれにせよ、パリ会談は時間も短かかったようでありますし、問題を今後に残しておる。問題の焦点については基本的な方向を一応打ち出した程度であって、われわれの期待したほどの成果はなかった、かように思います。  そこで、ドル切り下げ、円の変動制移行と日米の事前協議の事実関係を明らかにしたい。  私は、三月十四日、総括質問のうち、日本通貨当局が円の変動相場制移行を示唆したとの記事を引用して大蔵大臣に質問したのに対して、大蔵大臣は、シュルツの声明は知っているが事前に相談したことはない、円変動相場制移行日本が自主的にきめたと答弁されましたが、御確認できますか。
  130. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まさにそのとおりでございます。同時に、御案内のように、この種の問題については関係国当局間においては自由な意見交換が精力的断続的に持たれなければならないということも、午前中、むしろ積極的にもっとやれという御激励をいただいてたいへん感謝しているくらいでございまして、そういう自由な意見交換が積み重なって、そしてそれぞれの国が自主的な立場をとってやっているわけでございまして、御指摘のドルの一〇%切り下げというものは、アメリカとしてはIMFに一方的に通告するだけでその効果が発生されるわけでございます。したがって、アメリカ政府として決定をした、かようにIMFに通告をすることにしたということは直ちに日本政府にも通告がございましたし、日本政府としては、アメリカがそうやったことに対して、国益からいって対応するベストの措置として、当方の考え方によって自主的にフロートに移ったことは、先ほども御説明したとおり、ただいまもはっきり申し上げているとおりでございます。
  131. 足鹿覺

    足鹿覺君 それでは事実関係を聞きますが、大蔵大臣は、米国財務長官ボルカー氏と二月八日にお会いになりましたか。
  132. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) それはすでに公知の事実でございます。
  133. 足鹿覺

    足鹿覺君 ボルカー氏に会う前に田中総理に連絡をとっているでしょう。総理は連絡を受け、いかような指示をお与えになりましたか。
  134. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは、その当時本会議でもたしか御答弁申し上げておると思いますけれども、何しろ、ヨーロッパへ急遽行く、その前に日本に立ち寄るということの連絡がありましたのは、立ち寄った数時間前でございます。そして、先方の都合がそういうことですから、わずかの間滞在しただけで、すぐドイツへ向けてたちましたから、短時間会いましたことは事実ですけれども、事前の通告がさような数時間ぐらいなときに、話し合うといっても、そこからどういう結果が出てくるかということについては御想像におまかせしたいところですけれども、あらかじめ議題のきめ方もしない、しかも旅行の途次ということでございますから、特に御報告を申し上げるような内容のものでなかったということは御想像願えるとおりだと思います。
  135. 足鹿覺

    足鹿覺君 大蔵大臣は、どこでボルカーさんと会われましたか。会われたのは、あなたお一人ですか。
  136. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 会いましたのは第一公邸でございます。夜、何しろ九時過ぎでございました。
  137. 足鹿覺

    足鹿覺君 あなたお一人ですか。
  138. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 財務官が同席していたと思います。
  139. 足鹿覺

    足鹿覺君 そのボルカーさんとお会いになって話されたことを、差しつかえない範囲で発表していただきたい。
  140. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ドイツを中心にしてヨーロッパが、通貨問題がなかなか思うようにいかない、自分も財務省の次官として、その中に行っていろいろと調査もしたいし、当局者とも会って意見を聞きたいと。日本に立ち寄りましたのは、日本側からヨーロッパのほうをどう見ているだろうかと、ただ単なるそういう点を中心にした自由な意見交換でございます。
  141. 足鹿覺

    足鹿覺君 愛知蔵相とボルカーのやりとりは、新聞雑誌はもちろん、私が調査したところでも、ほとんど一致しております。ボルカーは円の単独切り上げを迫り、ドルに対し二〇%程度切り上げを要請したでしょう。愛知さんはこれを拒否し、変動相場制にしたい旨を述べたでしょう。いかがですか。
  142. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) そういう具体的なことは全然ございません。
  143. 足鹿覺

    足鹿覺君 その会議で、ボルカーは、ドルの一〇%切り下げを提案しておるでしょう。ドルと円が両方一〇%ずつで、あいこでいこうということだったではないですか。
  144. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 一〇%とか十何%とか、そういう具体的な話は全然出ておりません。また、そのときの環境や来方からいって、そういうことを、そんな短時間の予告で、そしてわずかの時間の間できめられるものでしょうか。
  145. 足鹿覺

    足鹿覺君 愛知さん、あなたはこの二月十二日、十五日の日経の記事をお読みになりましたか。「その時円の運命は決まった」、「切り上げ・変動制迫る」、「ボルカー〃隠密訪日〃を推理する」という記事であります。あとでごらんください。続いて十三日、十四日、十五日、朝日新聞は、ロンドン高橋特派員より電報を送っております。「なりふりかまわぬ米国の立場」という十五日の朝日の記事もあります。また、これに関連をいたしまして、産経新聞、読売新聞、すべて、大体全部の新聞の一致した見解が述べておられる。さらに、「エコノミスト」の二月二十七日号、これには克明に、その場の雰囲気が「巧妙をきわめた米国の通貨外交」ということで、小見出しの「意表ついたパンチ」ということで、はっきり載っておる。さらに「ダイヤモンド」の二月二十四日号にも、「エバリー ボルカーに振り回された魔の一週間」という題で、明らかに私がいま述べたことも書いてある。そして最後に、先日問題にいたしました「経済の進路」という研究誌の中で、あなたたちが円の変動相場制に追い込まれたという断定記事を載しておるのであります。  これら各新聞雑誌の一致した愛知・ボルカー会談の内容をあなたは否定なさるのですか。
  146. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私が当事者で、会った当事者で、この国会の、国権の最高の機関の場で公に申しておりますことを御信用いただけないのはたいへん残念でございますが、そういう話をきめたことなんかは全然ございません。その環境まで私申し上げておるのでありまして、私は、立ち寄りますという連絡を受けたのは数時間前なんです、その会いました時間よりも。そして、そういう場合に、国際的な問題が、そんな重要な問題が、そこでどうということはあろうはずがないということを御理解いただきたいと思います。  そして、現に、先ほど来言っておりますように、この前も申し上げましたように、一〇%切り下げることにしたというのは、アメリカ政府が、そういうふうな決定をいたしました、IMFに通告することにいたしましたということで、友好国である日本に対して——たしかそのときは直接私受けた電話ではございませんが、電話で連絡を受けた。そこで、こちらとしては、それに対応して——あなたは追い込まれたと言われるけれども、アメリカがそういう措置をとったことに対して、日本日本として守るべき国益の上に立って自主的な判断で、まず市場閉鎖をして、それから変動制に移ったということの事実は、もう明らかな周知の事実でございます。何も、これが押しつけられたとか、対米屈従だとか、そういう感覚で論ずること自身が私はおかしいのではないかと思うのでありまして、全世界が、アメリカが一〇%のドル切り下げをきめてすぐ発表したということは、あのときに全世界が驚いたというのも事実であろうと思います。そして、そういう瞬間的な他国の動きに対してとるべき最善の方策をとるというのは、これはまた当然のことではないかと思います。私は、そういう立場、信念で、日本の変動制相場というものを最善の選択であると考え、そしてそれを決定、実行に移したわけでございます。
  147. 足鹿覺

    足鹿覺君 大蔵大臣、あなたは、日本のマスコミは記事を捏造しておるとおっしゃるのですか。
  148. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私は、記事を捏造だなんて、いま言ったでしょうか。私は、私のやったこと、やらなかったことを、この国会という国権の最高機関で御答弁申し上げておるわけであります。
  149. 足鹿覺

    足鹿覺君 捏造を否定するならば、さらに、話の内容が私が指摘したことと違うなら違う、そして、どこが違うかということを御指摘願いたい。
  150. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) マスコミといいますか、報道界の方々は、特に日本の報道の方々はまことに世界で有名な有能な方々ばかりでございますから、こういうふうなこともあろうかということのイマジネーションによって記事を書かれる場合が非常に多いわけでございます。先ほど毎日新聞——申し上げていいと思いますが、十四日ですか、その記事に大きく、表題が、二〇%切り上げがきまったかのように報道されておりますけれども、政府といたしましては、その表題に対しは何らこれは責任を持たない、それと同じことでございます。
  151. 足鹿覺

    足鹿覺君 それは記事によりけりです。これは予想記事なんかとは違うですよ、これ、私が一連のお示ししたものは。予想記事じゃありません。事実経過を報道したものでありますが、これはお認めになりませんか。
  152. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 事実として、フロートを採用したことは事実そのとおりで、だれしもがよく知っていることでございます。
  153. 足鹿覺

    足鹿覺君 ただいまの答弁は、日本の大新聞や一流の経済誌の一致した報道や記事を全く事実無根と言うにひとしい、きわめて重大な発言だと私は受け取ります。絶対に承服できません。国民はマスコミを通じてのみ事態を知ることができるのであります。しかるに、これを秘密にすることにより、新聞報道と蔵相の言動が著しく異なるということは、国民は何を信じたらいいのでありますか。御所見をあらためて承りたい。
  154. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 国民は国会を通して政府考え方所見に対して批判をし、また、それで理解をしてもらう、私はかように考えておりますから、国会では何でも詳しく御答弁を申し上げているつもりであります。
  155. 足鹿覺

    足鹿覺君 愛知さん、あなたは、前回の私の質問で、いつ、どこで、だれが、と聞いたのに対しまして、あなたは知らぬ存ぜぬの答弁でしたが、ただいま、ボルカー氏に大蔵公邸で会った、稲村財務官を伴って会った、首相の指示も受けたということをお認めになったじゃありませんか。あのときの事態はまさに食言ではありませんか。
  156. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私は、何をおっしゃっているかわからないんですけれども、私は継続して、先般の御質問にお答えしていると同じことをお答えしているわけです。
  157. 足鹿覺

    足鹿覺君 あなたの国会答弁は不親切きわまるものでありますとともに、態度が第一悪いです。(笑声)今後多弁を慎み、問題の本質をそのままずばり答えるべきだと私は思います。  結局、愛知さんとボルカーの話し合いが済んだ二月八日、ボルカーがボン、ロンドン、パリ、ヨーロッパ諸国を尋ね、日本は円をフロートするとふれ回わり、根回しを十分にした。十二日に細見氏をヨーロッパに派遣したわけでしょう。ボルカーに手のうちを見せ、十分に根回しをされたあとで、どういう切り札を出しても日本に有利な交渉ができますか。
  158. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 態度が悪いというおしかりは拳々服膺いたしますが、しかし、私の申し上げることを全然理解を示さずして、そしてその報道だけを国民がただ一つのよりどころにしておられるのだということになると、これは参議院の議事の上の権威にも私はかかわるのではないかと思います。私は、ボルカーに要請されて、そうしてそのときボルカーが一〇%切り下げをきめたんだというようなことを言われますけれども、そんなこと絶対にございませんですよ。ないんですから、ないと申し上げておるわけでございまして、これを御信用いただけないということになりますと、私は態度は変えますけれども、申し上げることはどうしても御満足をいただけないと思います。出だしが違うんですから、お前の言うことは信用しないと、こういう出だしで御追及いただくんですと、私はやっぱり繰り返し繰り返し同じことを申し上げざるを得ない。
  159. 足鹿覺

    足鹿覺君 あなたは、この前の質問に対して、この問題に関する情報は、いつ、どこで、だれから受けましたかと私が聞いたことに対して、全くノーコメント。だから私は指摘しておるんです。  私の指摘した日米問の事前協議の実態が、ただいま述べたとおり明らかになりました。シュルツの日本通貨当局の円の変動相場制移行の声明をするに至ったこれが実情であります。したがって、あなたの私に対する前回の答弁は、国民を欺瞞し国会を軽視する重大な食言であると私は断じます。許せません。前回の答弁を取り消され、今後国会に対する態度を改められるかどうか、御所信のほどを重ねてお伺いいたしたいと思います。
  160. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) いつ、どこでということでございますと、これは、御答弁、いまも申し上げているとおりでございまして、アメリカ政府が決定をして、すみやかに連絡をしてきた、それはその当日でございますから、それ以外には、いつどこでと、先ほど私が申し上げましたが、私が直接電話には出ませんでしたが、たしか電話であったと記憶いたします。先方がこういうふうにきめたということの電話での通報があった。おそらく、これは米政府として決定をし、そうしてIMFに通告をする、その前後の瞬間であったと思います。
  161. 足鹿覺

    足鹿覺君 こんな重要な問題でネコの目が変わるような政府の答弁、そんな態度と答弁では国会で論議することの権威にかかわると思います。国会の軽視であるのみならず、先ほどのパリ会談のすれ違い答弁といい、十四日の私の発言に対する御答弁といい、これは、前段は、二十日に会議録が印刷されるそうでありますから、理事会において十分精査され、今後の予算審議をどうするか、一検討していただくこととし、本日の質問はこの程度にとどめますので、委員長並びに理事各位の御善処を求めます。委員長、いかがでしょうか。
  162. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 次の機会に理事会にておはかりいたします。  これにて足鹿君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  163. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 鈴木一弘君。
  164. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 パリ通貨会議で決定をされてきたわけでありますけれども、この合意された事項については、先ほどからずっと御答弁を伺っておったわけでありますが、私は、今回の国際通貨危機、御答弁のように、短期資金による市場撹乱、これははっきりしております。しかし、日本がかかえている現実の問題は、百七十億ドルをこえるという外貨、金を加えれば百九十億ドルをこえております。そういうドル過剰という問題、基礎的な貿易の不均衡をどうするかという問題が大きな問題である。そこでどうしても違っているわけでありますが、そこで、今回の共同コミュニケ、これを拝見いたしますと、短期的な投機の対象の問題が非常に重点を置かれて書かれている。これは、日本政府にとっては、ドル過剰というものを軽視して、そうして投機さえ起こらなければいいというような態度は、日本としてはほんとうはとれないわけです。ところが、そういう問題については非常に軽く扱われてしまった。こういう点についてはどういうふうにお考えですか。
  165. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 午前中も申し上げましたように、御指摘のような問題が、日本としては非常に大きな問題でございます。そして、その問題も今度のパリ会議コミュニケにも出ておりますように、そういうことを踏まえて、さらに今後の話し合いをする場合の基礎というものが、多数国間の間の合意の上に出てきたということを、私はよかった点ではないかと考えておるわけでございますが、終局的に、いま御指摘のような問題がケリがつきますのには、まだ若干の時日がかかると思いますし、また、そういうことをやってまいりますためには、今後もいろいろの機会がある。この機会をできるだけ活用して、そういうところを煮詰めていきたいと考えておるわけでございますし、たとえば、当面の投機対策にいたしましても、その対策が、日本が意図しているようなところと逆行するようなことが出てはたいへんでございますが、幸いにして、日本が意図し、将来ともに考え、かつ、そういう制度を確立していくための基本的な考え方については、関係国すべての合意ができたということは、私はよかった点ではないかと、こういうように思っております。
  166. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 大臣も認められたようでありますけれども、今度の、ずっと先ほど答弁から伺っていますと、まあこの共同コミュニケ、非常にアメリカが譲歩したという観点が強調されていました。しかし、いま一つは、やはりはっきりと投機的な問題にしぼられているというようにしか感じられないわけです。悪くいうと、ヨーロッパの国々アメリカとの間には貿易の上に基礎的な不均衡がないわけでありますから、そうすると今後の問題は、そういう基礎的な不均衡のある国に対しては、これは独自に処理をしろと、こういう観点で、アメリカとヨーロッパの諸国とが共同して日本を締め上げてくると、こういうようなことが感じられるわけです。これは共同コミュニケの中にも、スワップ協定の拡大、これの問題についてもはっきり投機的な資金による市場撹乱に対しての問題にしぼられている。基礎的不均衡に対してスワップを発動して買いささえるという義務はないと、こういうふうに受け取らざるを得ないわけです。そうなりますと、日本アメリカの問には基礎的不均衡があるわけでありますから、これは日本だけが不利になるような感じの共同コミュニケになっているんじゃないか、こういう観点がするわけですが、その辺の感覚はいかがでございますか。
  167. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは何べんも言っておりますように、当面のところは、もうほんとうに火がついたような状況でございますから、これを取り静めるということに関係各国の努力が集中した。そしてわずか一日間でここまでこぎつけた。これが現実の状況でございます。で、それはたびたび私が申しますように、しかし、火のついたような緊急を要する問題ではあるけれども、それに対する取り組み方が、日本の立場において、あるいは将来の国際通貨の安定のために逆行するような行き方であってはいけないということがまず第一であって、その点については、このコミュニケの中に、その考え方というものは随所に私は出ていると思いますし、ことに結び方も、それを念頭に置いた結び方であることも御承知のとおりであります。「国際通貨の安定が、究極的にはインフレを抑制しようとする各国の努力」ということにも出ておりますし、そして一番最後の結びは、秩序ある国際通貨取りきめを維持するために国際的に責任のある計画を始動させていかなければならない、それから、これらの作業はIMFの二十カ国委員会のワク組みの中で促進され、早期に結論に達することがわれわれの共通の関心事である、ということで結ばれているわけでございます。そして具体的には、要するに国際的な資本移動に対し、どういう措置をとるか、あるいは吹きだまったドルに対してはどういう措置をとるかという点について、スワップの問題とか、あるいは米側への資本の流入については制約を排除するために適当と思われる措置を講ずる、あるいは、一九七四年末までに長期資本の流出の規制を撤廃すると言っておったんだが、これはこれこれこれこれのことを考えて逆に抑制をすると申しますか、そういう気持ちのあらわれというものがここに出てきておるというようなことで、随所に、将来に対する関係各国の共同の基本的考え方、そしてこの緊急措置と、それへの結びつきということを念頭に置いてまとめられたものであると、私は参加いたしまして、その点に特に留意をいたしたつもりでございます。
  168. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 私は、これから先、二十カ国蔵相会議が行なわれる、秋のIMFの総会がある、こういうことではっきりとわが国が不利になっていくよう立場に追い込まれないような、そういう総体的な措置というものをこれはぜひとらなきゃいけない、そういうようにしていただきたいと、このように思うわけです。  次に、交換性の回復の問題。先ほどからずっと出ておりますが、米国が一九七一年の八月にドル交換停止を突如として行なった。そのときに、同時に、スワップについてもこれを凍結して、ドルとほかの通貨との交換性ということが停止されたわけです。今回のいわゆるアメリカ国際収支のたれ流しから始まったという問題にも、言いかえれば、交換性を停止したとたんに、これではもうドルは自由の身であるということでドルがたれ流しになっていったということは、これは間違いないことだと思います。そこで今回は、買いささえのためにスワップ協定を守らせるとかいうことになってきたということは、非常に限定されたものであるけれども、部分的な交換性の回復だと、こういうふうに見られるわけでありますけれども、ドルと金、あるいはドルとSDRの交換性回復という問題、これは先ほどからもだいぶ答弁があったようでありますけれども、パリ会議が当面の危機回避のためのものであったと、こう言うならば、二十カ国委員会では、その点の主張わが国としてはどうなさるんですか。これは大蔵大臣、先ほども多少ありました。委員会の答弁では、ドルと金、あるいはドルとSDRとの交換主張するというようなことがありながら、パリ会議では、そういうものがなかったという点がありますから、そういう点を踏まえてみれば、この二十カ国の委員会のときには、これは当然主張されなきゃならない問題だと思います。その点はいかがでございますか。
  169. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ドル交換性回復ということは、先ほども御指摘があり、私も公に会議前からも言っているくらいのことなんでありますから、これについては、もう機会あるごとに、今回の場合でも、そういう点には十分触れているわけでございます。そして、ただいまスワップを活用する、あるいはワクを広げるというふうにアメリカ態度が変わったというか、前向きになったということは、これはまあ理論上の問題で、またいろいろの御意見もあろうかと思いますけれども、いまこれは交換性回復に一歩を進めた考え方であると、限定されたことであるが、と言われましたことは、私も非常に問題のポイントをついた御意見である、かように存ずるわけでございまして、そういう点に触れて、今回の投機対策も、アメリカ側態度が国際的な責任というものを考えて——必ずしもこれは従来はそうでなかったような点もあったと思いますが、態度というものが、責任のある態度に変わったという印象を強く受けましたことは、これからの話の進め方によりどころがとにかく一歩進んできたというふうに私は評価をいたしておるわけでございます。したがいまして、そういう感覚に立って、交換性というものは、金との交換性というものが一番望ましいものであることは当然でございますけれども、しかし同時に、交換性ということは、SDRに結びつくことも金と直接間接の関係が出てきますから、これも一つの方法であるということは、理論上の問題として考えられると思いますし、それからさらに、他国の通貨との結びつきがスワップによってより強くなるということも、またある意味においての交換性の回復ということにつながる、そこの点を御指摘になったと思いますが、そのとおりであると私は考えます。
  170. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 私は、今後の二十カ国委員会等ではどういうふうにこれを要求していくんですかということを伺っているわけなんです。
  171. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 日本としては、毎々言っておりますように、その交換性の回復ということに一番の重点があると思います。  それから、これも午前中に率直にお答えしたわけでありますけれども、コンソリデーションということは、場合によりましては、日本としては有利でない場合がたくさん考えられるわけです。ただしかし、残存した、ことに日本とかドイツのような場合におきましては、やはり場合によってはコンソリデートするということも一つの方法として取り上げてしかるべきであると、かように考えましたので、コンソリデーションの問題もここに登場したわけですが、これは具体的な方法になりますと、よほどしっかりかまえてこの話し合いに乗っていかなければならない。それともう一つは、アメリカとしての資本の出入について考え方をやはりきちんとしてもらわなければならないと思います。同時に、日本としては、とにかくドル相当たくさんあるわけでございますし、現状においてもりっぱな国際決済手段でございますから、このドルを積極的に活用して輸入の増加をはかるとか、あるいはドル資金それ自体の活用をはかって日本国益を守る、あるいはこれを広げていくということがますます真剣に考えられなければならないと、こういうふうに思っておるわけであります。
  172. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは総理大臣に伺いたいんですが、この委員会での交換性回復に対しての総理大臣のいわゆる答弁の感触は、ドルと金との交換、それからドルとSDRの交換、特にニュアンスとしてはドルと金との交換ということに一番ウエートがあったようにわれわれは受け取っているわけです。ところが、今回のパリ会議結論は、スワップの拡大という、いわゆるドルと他国通貨との交換性回復という、こういう形ですから、それはいままでに出てきてなかった問題です。本委員会の答弁の中には、交換性の問題では総理のことばから出てこなかった、私はそういう点、認識の甘さがあったんではないかと思うんでありますけれども、その点はいかがでございますか。
  173. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御質問の趣旨は、ドル価値の維持ということをはかるために具体的にどういう問題があるかと、どういうことをやればそのドル価値は維持できるのかと、日本ドルをたくさん持っているんですから、だからドル価値を維持しなければならない、その中には、まず第一番目に考えられることは、金との兌換を停止をしたことであるから、その交換性をはかるということになれば、それはドル価値が維持されることであるということでもって、もう間違いないことでありますから、そういうことは要求をするかと、それは日本だけじゃなく、ほかの国もみな要求するわけでございますと、こう答えているんです。それで、それはしかし、ドルと金だけではなく、金と同じような価値を持つ、場合によっては、基軸通貨の役目を求めようとして設置をされたSDR、そのものとドル交換性という問題も過程においては出てくると思いますと、こう答えているので、これは日本がただ米国との間でもって交渉するという交渉条件じゃないんです。各国がみんな交換性を確保するためには具体的にアメリカに求めなければならないもの——アメリカだけでできないものがあります。これは、アメリカだけではできないものがありますから、それはどうするかと、それは、場合によっては、全部が全部できなくても、一定のものに対しては金の交換性をやろうというような場合、アメリカの責任だけではできませんから、参加国二十カ国とか、いろいろな人たちの協力を得なければならないわけであります。そういう問題、具体的にはその過程において、段階において、条件において全部違うんです。違いますが、いずれにしても、金との交換性ということが実現をすればドル価値が維持されることは間違いないし、交換性をやめたからドル価値が下がってきているわけでありますから、これは日本も要求しますし、ほかの国もみんなそういうことを求めるでございましょうと、しかし、具体的にはいろんな問題が存在いたしますと、こういうふうに理解いただきたいんです。SDRはその一つ。あとは、いまいろいろございましたが、外貨の多様化ということをなぜはかっておらなかったと、それは他国通貨といえば、ドル以外の通貨を他に持たれることをいやがる、西ドイツのマルクもスイス・フランも、みなそうでありますから。そういうようなことを言っておったんでは、これはアメリカに求めるだけでもって、幾ら求めてもできなければだめなわけですから、お互い問でスワップを発動したり、拡大をしたりしていくことも一つの手段でございますと、だからそういういわゆるドル通貨の安定、それから投機の排除というものに効力を有すると思われるようなことは各国全部してやろうじゃありませんかと、こういう大ワクに対して今度は合意に達し、共同声明になったわけでありますから、これは非常に成功であると愛知大蔵大臣が述べるのも、各国もみな、まあとにかく収穫はあったと、こう言うことは、もうこれはあたりまえだと思うんです。  ですから、これから二十カ国の蔵相会議でなかなかこれはすべてのものまで片づかぬと思うんです。そうすると、九月のIMFの年次総会ということもあるでしょう。それまでには、まあ、専門家会議とか代理会議とかでいろんなものを続けていくと思います。できなければ、また、それから引き続いても考えられるということでございまして、これは相当やっぱり長きにわたって理想的な世界の基軸通貨をどうするか、それから国際流動性を確保しながら基軸通貨をどうするかという理想的な問題と、そこまではなかなか——十年やってもできなかったわけですから、現にこの基軸通貨であるところのドル価値の安定をどうするかと、こういう問題でございまして、これは政府が答えていること、また、皆さんの御質問に答えていることに何の違いもないんです。これは交渉条件がどうこうというんじゃなく、当然出てくる問題でございますと、日本各国とみんなしてそういう問題が実現できるように、要は、最終的にはドル価値が維持されるということが目標なんですから、だから私の答えの中には、それはドル価値を維持するというには、ある時期にもっと別な方法が考究されるかもわかりません。これはまだ具体的な問題ではありませんが、それは各国も保証する、こういうような、いろいろな手が打たれますから、その中で一番わかりやすく、一番簡単なのは、金との交換性が確保されることでございます。全部が全部にできませんから、そこらには、何か話し合いが行なわれるんでございましょうと、こういうすなおな見方で申し述べているわけです。
  174. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは日銀総裁のほうになりますか、アメリカの連邦準備制度の中のスワップの未利用残高は、一番新しいので、どのぐらいになっておりましょうか。
  175. 佐々木直

    参考人(佐々木直君) 一番新しいところで、総額百十七億三千万ドルに相なっております。
  176. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは利用限度額です。だから、いま利用されていない残高はどのぐらいか、昨年の九月八日で九十九億六千万ドルになっておりますが、どちらがほんとうなんですか。また全額残高となっているわけですか。
  177. 佐々木直

    参考人(佐々木直君) ただいまのお話の分は、いま申し上げました総額の中から引かれておるものを、実際に実行されているものを除きました残りが九十九億ドルございます。
  178. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 この九十九億ドルの中からアメリカが買いささえに出動できるとしたら、一体どの程度が見込まれるということになるわけですか。たとえば、九十九億ドルのスワップ取引による未利用残高が残っている、アメリカの連邦銀行に、それの中からアメリカが買いささえに動くとすれば、一体どの程度の金額が買いささえに使える見込みなんでしょうか。
  179. 佐々木直

    参考人(佐々木直君) 理論的に申しますと、いま申し上げました百十七億ドル全体がそういう目的に使われるのでございますが、これは各国との契約の総額でございます。しかも、現実に為替市場における投機資金の攻撃を見ますと、特定の通貨に限られておるのが実情でございます。結局、まあ具体的に考えられますのは、欧州の二、三カ国、そういうことになりますと、そういうところとの共同によりまして投機資金と相対しますのは、その数カ国との問の契約の分、金額に限られるということに一応理解されるわけでございます。したがいまして、今度のコミュニケの中にスワップのワクの拡大ということが入れられましたのは、そういう特定国に対する一時的な多額な投機が行なわれますときには、いまある契約では足りないだろうということを考えた上での今度の発表であると、こういうふうに理解しております。
  180. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そうすると、特定の通貨というと、マルクであるとか、スイス・フランであるとかということになるだろうと思うんですが、その総額だと、どのぐらいになりますか、大体。
  181. 佐々木直

    参考人(佐々木直君) いまお尋ねのございました西ドイツとの契約が十億ドルでございます。それからオランダ銀行との間は三億ドル、それからスイスの国民銀行、これはやはりスイスの中央銀行でございますが、こことの契約も十億ドルでございます。
  182. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 まあ、こうなりますと、米国が買いささえができる金額というのが二十三億ドル、あまりにも少額で、いわゆる国際的な投機筋というものを鎮静させる効果は出てこないのじゃないか。そうすると、今回のただ一つ収穫であると思われるスワップ協定の拡大ということになるわけでありますが、いまのままでは、これはただの気休めにすぎないということになるんじゃないですか。その点はいかがの判断ですか。
  183. 佐々木直

    参考人(佐々木直君) 確かに、いまございます金額は、最近大きく動きました投機資金のスケールから考えまして、決して十分ではございません。したがいまして、今度のスワップ契約の拡大ということは、これに対して必要十分な金額を、その機に応じて拡大実行するという決意をあらわしたものだという意味で、非常に歓迎されたわけでございますし、それからまた、こういうものは、これだけの用意を各国政府側がするということによりまして、投機筋に対して脅威を与える、相手の防備が固くなってきておるということについての、向こう側の行動の制限をするという意味の、心理的な効果相当あるものだと理解をしております。
  184. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 アメリカの使えるスワップのワクの拡大ということは、完全に合意をされたわけですね。
  185. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 「このような操作に必要とされる資金を十分に確保するため、既存の〃スワップ〃ファシリティーの一部の拡大が考慮されている。」ということが共同コミュニケ合意でございますから、その点については非常にはっきりと態度がきまったということが言えることはもちろんでございます。
  186. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 米国自身が必要に応じてスワップを拡大するという意向におそらくなるだろうと思うんですけれども、そうすると、スワップを拡大しなければならない必要性がある、ないの判断は、アメリカ自身にまかせられているということになるのですか。それとも、強制力をこのコミュニケで持っているわけですか。
  187. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) この点は、こういうことに相なります。各国とも必要かつ望ましい場合には公的な介入ができるわけです。その場合には、「自国市場において、自己のイニシアテイヴにもとづき、市場状況にてらし、弾力的に行動しつつ、」——そこの次ですが、「かつ売買される通貨の国の当局と緊密な協議のうえ、市場に介入する用意がある旨を述べた。」ということがその前段にございますから、こうした介入ということが認められた、そうして、その介入をやるその場合には密接な協議をして、それによって相互間の信用供与、ファシリティーの利用によってまかなわれる、しかし、その場合に必要とする資金が十分でない場合には、スワップのワクを拡大する、こういう順序に相なるわけでございます。ですから、介入自体はそれぞれの国のイニシアチブで行なわれるということがあり、また、スワップその他の資金の供与については、いまの具体的の御質問の例で言えば、米国とあるいはドイツという間の、これは具体的には中央銀行間のいろいろの打ち合わせというふうなことが内容になると思いますけれども、そういう順序によって、現実の資金供与が行なわれる結果に相なるわけでございます。アメリカ政府としては、その場合に、スワップのワクを拡大するということが、このコミュニケにおいて表明された、こういうふうに御理解をいただければ幸いでございます。
  188. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 私が心配するのは、いまのお話ですと、アメリカと、それからたとえば一国が売り浴びせられた場合には、その被害を受けた国と、その双方の国の協議の上でスワップのワクの拡大が行なわれる、こういうことですね。
  189. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは、いま読み上げましたとおりのことで、ただいまの御質疑の内容と大体同じだと思います。ただ、こういうスワップというようなものの協定の実施の方法について、一つ一つの取引といいますか、トランスアクションに一々協議という意味ではなくて、そこが原文でいえば、クロースコンサルテーションということばが使われているわけでございまして、大もとのところは緊密に相談をしなきゃなりませんけれども、一つ一つの発動等について個々に相談をするということになっていないというところが特徴でございます。
  190. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そうすると、大もとのところは、この共同コミュニケで、スワップの一部の拡大が考慮されている一はっきりここに書かれておりますね。しかし、個々の問題になると、やるかやらないかは、そのとき、そのときまかせであると。その両国間の合意がなければわからないし、アメリカが前の、一九七一年にニクソン大統領が、かってにいままでの協定を全部やめて、金とドル交換制を停止した、こういうようなかってなことができるというのと同じようなことができるわけですね。そうするど、これは砂上の楼閣という結論になるんですけれども、どうなんですか。
  191. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) そういうふうに、何と申しますか、お考えになれば、そういうことも観念的にはあり得るということになりましょうけれども、しかし、これはマルティの間で、全会一致で、そしてこれを世界に公表して、そして先ほど私が申しましたように、必ずしも従来はそうでなかったその責任を感じて、アメリカが積極的にこういう態度に出たということは歓迎すべきことでもありますし、こういう態度をとったからには、自国のかってによってこれをまたひっくり返してしまうというようなことは考えられないと思うのであります。といいますのは、もう一つ理由がありますのは、今度の合意というものは、必ず緊急に、原則として次のステップに移ろうという強い意欲が示されておりますから、そういう共通の危機感というものを持って、そして各国が建設的に守るべきところは十分協力していこうというところが、この全体の空気でございますから、そういう環境の中においてこういう約束ができたということについては、これは、これは実際砂上の楼閣であろうとおきめつけいただくと、この全体の空気から申しますと、はなはだ関係者一同としては、残念な御感想だなと、これは率直に申しまして、そういうふうな感じが受け取られるのではないだろうかと思います。何としても、きめたからには、誠実に、そのときの状況に応じて建設的に各国がアクションをとる、それは約束されたのであると、こういうふうにいたしたいと思いますし、日本といたしましても、その基本的な考え方合意の上に立ち、かつ、こうした環境の中において、日本としては、さらに努力を一段としていく、またその足がかりもできたと、こういうふうにわれわれとしては考えているわけであります。
  192. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 それはよくわかりますけれども、しかし、アメリカ自身が、やはり拒否権をいろいろ出したり、協定を破ったりということがあります。スワップについても、拡大についていやだなんということになると、これは何にもなりませんので、その点は強く今後も約束は約束として果たさせるようにお願いをしたいと思うんです。  それから、先ほどの答弁では、アメリカの連銀のスワップの残高は九十九億ドル、しかし、現実にマルクであるとかスイス・フランとか、こういうことで、あるいはオランダのギルダーでささえるとなれば二十四、五億ドルということになってまいります。それが出動できるぎりぎりの額だと。それではもう、おそらく話題には出たと思うんですが、この投機資金というのは、一体何億ドルぐらいあるのですか。それに対してこのスワップ協定の拡大は、一体どこまでやればいいんだというような、大体の話し合いというものができていたんですか。それとも、投機筋を鎮静させるには、ただ拡大をすればいいんだと——リップサービスじゃありませんけれども、そういうことをまず言うことで鎮静をさせようと、こうしたんでしょうか。その辺のところを伺いたいんですが。
  193. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは何ぶんとも、多数国間の問題でございますから、総額で幾らをどうするというようなことは、この会議では話が出ておりません。これはスワップも活用しようということで合意ができたということで、政府といたしましても、一応この点については満足しておるわけでございます、その限りにおきましては。同時に、たとえばフランスその他フランスと近い国々は、この会議の直後に、日本の為替管理というようなほどのものではもちろんございませんけれども、資本の流入阻止というようなことについては、必要な措置を講ずると言っておりましたから、そうしてまた、非常な精力的な努力が続けられておるはずでございますから、もうすでに今日、十九日の市場の再開にあたりましては、そういうふうな措置も、各国各国措置をとる、こういうことがこの一つの反応として、もう具体的にあらわれているわけであります。  それから一方、ユーロダラーというものにつきましては、先ほど来申しておりますように、このコミュニケだけでも、随所にユーロダラーとか、ユーロ市場ということばが出ておって、これの実態を見きわめ、この動きを抑制する、そしてアメリカとしては、ドル切り下げに伴って公に発表しました資本の流出の規制緩和についてまで、これは今後の情勢に応じて制限の撤廃をやるべきものだという方針の転換までここで約束ができたわけであります。  それから一方、ドル資金米国への還流については、これを促進するような措置をするということも約束されているわけでございますから、受けるほう、出るほう、両方が必死の努力をして、そうしてまた、先ほど日銀総裁からも言及されましたが、スワップの拡大までもやるということを、決意を表明して、実行を誓ったということが総合的に、当面のところ、国際的な過剰流動ドル資金と申しましょうか、これの跳梁は私はまず規制されるというふうに見ておりますし、それがなければ、特にヨーロッパの為替市場は本日開くことはできなかったと思います。これはそれぞれの当局が相当の確信を持って、再び投機資金の乱入によって撹乱されることはないであろうという自信を持って一斉に開場することになったのが今日の状況であると思います。  そうすると、この前だって各国がそう思っていたが、また起こったではないかという御質問がさらにはね返ってくると思いますけれども、今度の場合は、前回、前々回のようなことではなくて、相当私は、建設的な成果があがったのではないだろうかと、ただいまのところはそういう予測をいたしておるわけでございます。  それから御質問以外になって恐縮でございますが、本日東京では為替市場を開きまして、時差の関係からいえば、まだいまの時間では世界じゅうで開いているのは日本だけでございますが、幸いに、きわめて平静な状況でございまして、異例の閉鎖期間がございましたから、出来高は相当の額に達すると思いますけれども、大体閉鎖前と同様の平静な動きが行なわれておるようでございまして、この点は政府として評価しているところでございます。
  194. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは、くどいようなんですけれども、やはりドルのたれ流しによって巨額なドル債務をアメリカはつくったわけです。そういうことからドル不信が出てきた。となれば、スワップについても、関係国当事者双方間で協議をして発動するというのではなくて、米国自身に発動の義務を課すというようなことが私どもは必要ではなかったかと、そうすることが必要じゃないか。シュルツ財務長官も、パリ会議以後、われわれも市場介入の義務はないということまで強調していますから、そういうことを考えると、なぜ課さなかったのかという点が非常に心配になってくるわけでありますが、その点の議論はなかったわけでございますか。
  195. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 介入をある程度、場合によっては積極的にしなきゃならぬということがこの会議で確認をされたということが、このスワップのワクの問題よりももっと以上にと言ってもいいくらいな、一つの緊急措置として合意が取り上げられたことがその基礎にあるということが一つと、それからもう一つは、まあ申し上げるまでもないところでございますけれども、スワップの取りきめというのは、一言にして言えば、各国中央銀行間で一定金額の自国通貨を相互に預け合いをするわけですね。それが御承知のようにスワップ協定でございまして、これはある一つの国に義務として何ぼ出せと、あるいはそのワクをふやすんだとかいう観念ではございませんところが、このスワップというものの内容でございます。したがって、このコミュニケの上でも、介入をする、介入のために必要な資金についてはいろいろ考えると、そうして必要の場合にはスワップ協定のワクも広げると、こういう二段がまえ、三段がまえになっておるようなわけでございまして、こうした特殊の取りきめでありますことも御理解をいただきたいところと思います。
  196. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 今度の共同コミュニケで、スワップの問題で私は非常に心配なのは、アメリカとECの間にはいわゆるレートに不均衡は存在しない、こういう、先ほど申し上げたような貿易の不均衡がないということ、そういうことがあります。そういうことから見ても、今回のは投機資金による場合のスワップの一部拡大ということが出ているわけでありますけれども、日本の場合のように、貿易のいわゆるリーズ・アンド・ラッグズという問題がありますけれども、そういうようなものを主としたドル売りには、これは、介入といいますか、アメリカの連銀は介入しないんではないか、こういうふうに考えられるんですが、その点はどういうふうに解釈したらいいですか。
  197. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) その点も非常に重要なポイントをおつきになっているわけですが、このコミュニケは当然日本に適用ございます。日本としては、必要と認め、自国において、自国の市場について必要とするときには、自分のイニシアチブによって介入をする。そうして、そのために、先ほど申しましたいろいろの段階はございますが、スワップのワクを拡大するということは、これは特定の国だけにアプライされるものではございませんで、日本も当然その対象になりますから入るわけでございますから、必要の場合に、先ほど申しましたように、日本の場合でしたら、日銀とニューヨーク連銀との間に技術的な話し合いというようなものも当然今後進めておいてよろしいわけでございます。同時に、日本はこういう点におきましては、これもいろいろの御議論や御批判があると思いますけれども、為替管理法というものが非常に詳細に規定をされております。そうして、現に今日為替市場が平静に、長い閉鎖の問にかかわらず、行なわれておるということは、やはり輸出を中心にした実需の輸出輸入の関係が取引のほとんど主たる内容であると、こうしていわゆる介入を大がかりにやらないで平静に持続するというのがいわゆるクリーンフロートの本則とするところでございますから、一定の期間、もし相場に乱高下が起こるというようなときには介入をいたしますけれども、現在のところ、スワップのワクを広げてその資金をすぐ活用してドルを買いささえるとかなんとかいうことは、日本の場合においては、ただいまのところ、すぐこれの出動することを予測するという場面はあまりないのではないだろうかと、私は大体そういうふうな考え方を持っておるわけでございます。
  198. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そうすると、大蔵大臣が予想される、いわゆるスワップを拡大しなければならないというようなときは、どういうような状況なんですか。いまの変動相場制というのが、アメリカから言わせれば、日本との貿易の不均衡というようなことから出ているとなれば、それが改善するまでは向こうは合意しないんではないかと私は心配をするわけなんですけれども、その点はいかがでございますか。
  199. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) いま申しましたように、当然スワップの限度拡大ということは日米の間においてもやり得る体制になっておるわけでございます。それから為替管理のことを申しましたが、ちょうどここ数日、先週も閉鎖を続けたゆえんのものは、まずだいじょうぶとは思いましたものの、こういう世界的な動乱の過程においては、われわれが予測できないような、また、為替管理法も何といっても完ぺきなものではございませんから、どこかで何かのわれわれの知恵を越すような投機筋の動きがあってはこれはたいへんだ、また、そのこともあり得ることであるという考え方閉鎖をしておったようなことも御理解いただけると思うのでございますが、したがいまして、どんなときに具体的にそれではスワップを活用するかということについては、ただいまこうこういう場合ということは申し上げかねますけれども、これが適用ができるんだと、あるいは発動し、ワクをどのくらいふやしておいたらいいか、あるいは技術的な打ち合わせばクロスコンサルテーションとしてどういうことをやっておいたらいいかということは、技術的な面も相当ございますし、十分ひとつ備えを固めておきたい。これはスワップも日本がもちろん対象に考えられた合意であるということと、それから具体的な援用はいつどういうふうにしたらいいかということは、ちょっと分けて考えさせていただくべき筋ではないだろうか、こういうふうに考えております。
  200. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そうなりますと、これは具体的な問題になってきますから日銀総裁にひとつ伺いたいんですが、スワップの行き方とすれば、一年後には返済をするといいますか、そういうことになっていると思いました。そうしますと、はっきり申し上げて、わが国アメリカの連銀と今後取りきめをする場合には、一体、その取りきめ期間一年後に戻ってくるとなりますと、一ドル幾らというレートでやっていこうとするのか。それはまさか変動相場に合わせてというわけにはいかないと思います。当初三百八円なら三百八円で計算して十億ドルアメリカの連銀に送った。それが一ドル二百何円になったというふうにはいかないだろうと思いますし、だから、そういう点はどういうようなふうにお考えになっていらっしゃるんですか。
  201. 佐々木直

    参考人(佐々木直君) もともと、スワップ取引というものはきわめて短期な国際収支の波動に対して考えられた手段でございまして、したがって、最初は期限が三カ月でございました。それが途中で一年間ということに延長されたわけでございます。したがいまして、実はこの制度ができましたときには、その期間中に為替相場が変動するというようなものの考え方はあの中に入っておりません。したがいまして、スワップがたとえば十億ドルなら十億ドルの限度一ぱいに契約されまして、それが実行されてしまったということになりますと、双方に違う通貨で十億ドル相当の残高が残ります。この両方の残高をどういう決済のしかたをするかということにつきましては、いまのところ何も取りきめがございません。普通ならば、そういう場合は、あらかじめ一志決済をしておきました後において、その為替相場の変動額を調整するという考え方が、いままでは基礎としてあったと思いますが、今後これをどういうふうにするかということにつきましては、今度これを具体的に発動するときによく相談をしなければいけない点であろうかと思います。
  202. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは平価の問題になってくるわけでありますけれども、同じことが例のドルの固定化の問題にもつながってると思います。そのコミュニケの中でも、ドル残高の凍結を——凍結といいますか、固定化を緊急に検討すると、こうなっております。で、先ほどかちの答弁では、どうなるかということはまだはっきりしていないと、こういうふうに伺ったんですが、この点はどういうふうに大蔵大臣会議では発言をなさってておられますか。
  203. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) この点は、午前中にも御説明いたしましたように——もとが英仏両文で出ておりますから、たいへん恐縮でございますけれども、フォア・ザ・タイム・ビーイング、日本としてはフロートを続けるということがここにあるだけでございまして、これは現実そうやっている、そして事実また政府は今後もしばらくの間はこれを続けていくのが適当だと考えておりますが、それはなぜかといえば、午前中にお話も出ましたけれども、固定相場制度ということは二国間だけの問題ではございませんで、多数国の間できめたならば、それを維持するということに参加国相互が義務と協力と責任を感じて、具体的にその体制を守るというだけの私は保証がなければ、また切り上げとか切り下げとかの競争で対処していかなければならぬような事態が起こることは、これは世界的に防がなければならないと、こういう考え方がこの会議の中でも相当私は支配的であると思いますし、そして、それがまた日本としての立場であり、主張もしたところでございますから、その考え方がこのコミュニケの中に取り上げられているということは私はよかったと、こう考えておるわけでございます。したがって、日本側の主張考え方、これは、いま申し上げましたようなことで今後処理ができる、そして、これについては国際的にも、ただいまのところ、そういう考え方で建設的に、かつできるだけすみやかにそういう体制を確立しようということが同時に合意されていると、こういう関係でございます。
  204. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 ちょっとその前に伺いたいんですが、この共同コミュニケの中に、IMF加盟国によるユーロ市場ですか、「ユーロ・カレンシー市場への公的準備の放出に対する制限ということも行なわれるであろう。」と、これがございます。この、「公的準備の放出に対する制限」ということは、先ほど大臣からは非常に日本はクリアでやっているというお話がありましたけれども、外国の各中央銀行は公的準備を放出してユーロダラーとして使っていたという、そういうことなんですか、これは。その点、ちょっとこれ、わからないんで伺いたいんですが。
  205. 林大造

    政府委員(林大造君) お答え申し上げます。  「IMF加盟国によるこれら市場への公的準備の放出」と申しますのは、「IMF加盟国」と申しますのは、十カ国蔵相会議の加盟メンバーばかりではなく、そのほかの非常に広範囲なIMFの加盟国を含むわけでございます。で、それらのIMF加盟国の中には、多額の公的準備を持っておりまして、その相当額をユーロダラー市場に放出しているところもあるわけでございまして、そういうものも含めまして、全体のそのIMF加盟国の公的準備の放出に関する制限の問題を検討をしようという趣旨でございます。
  206. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 それは、どことどこですか。日本はどうしてこの「公的準備の放出」をやらなかったんですか、いままで。
  207. 林大造

    政府委員(林大造君) 現在問題になっておりますのは、たとえば産油関係の国の公的準備であるとか、そういうふうに、先進国ばかりではなく、それ以外の国の公的準備も、世界的に見ますと多額にのぼっております。その動きもやはりいろいろ研究しなければいけないわけでございまして、日本はユーロダラー市場に放出しておりませんけれども、そのほかの国も大体におきましてそのようなことはしていないはずでございまして、したがいまして、これは今回の会議参加国以外のものを含むところに重要な点があり、したがって、関係国という表現ではなく、「IMF加盟国」というふうになっているわけでございます。
  208. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 関連。  いまの答弁に関連してですが、日本はしていなかったと。だけれども、この文章によりますと、諸外国——いまIMF加盟国と言われましたが、ユーロ市場への放出を公的機関がやっておったわけです。結局日本は、国益という立場から考えますと、こういうことをやってこなかったために相当ドルがたまった。結局それは凍結をされてしまう、固定化されてしまう。諸外国は、こういった公的機関からユーロ市場ドルを放出して、そうして自分たちのたくわえも減らす、それによって、こういった会議が行なわれた場合は自国が非常に有利になるわけです。日本の場合は、それとは逆に、結局日本は、前回円が切り上げられたにもかかわらず、国民が一生懸命努力をして、さらに輸出も伸びた、ドルがたまってきた。片方の国は、そういうことの努力もしないながら、あったドルはそういうふうに投機をしてしまっておる。自分のところの残高を減らしておる。結局日本は、要するにドルにくっついていっておるために、またそういうようなこともしなかったために、こういった会議においてはえらいマイナスになっしまっておる。国益という立場から考えますとそういうことになってしまう。この辺がやはり、ここで規制をすると、こうなっておりますが、今後、はたしてこれが守られていくのかどうか、その点は非常に私としては疑わしい感触を持つわけでありますが、こういった、日本としていままでやらなかった、こういったことに対してはどう大蔵大臣はお考えになりますか。また、今後投機というものが完全に規制されるのかどうか。それに対する監視はどういうふうにしてやっていくのか。その点、お伺いしたいのですが。  それから、関連して、まことに恐縮ですが、ちょっと問題がずれますけれども、これは総理にお伺いしたいんですが、先日の委員会で私が質問いたしましたことにも関連いたしますが、きょうの為替市場は、先ほど大蔵大臣から落ちついておると言われましたが、今後じりじりと円が高くなる可能性もあります。もし今後ずうっと上がっていった場合、今年度の予算の執行を総理は慎重にすると言われておりますが、昨年度補正を組まれた。これはドルに対する円再切り上げ回避のための補正予算、内需をふやすと、こう言われたことでありますが、それもいまは裏目に出てきております、結局は。その点は先ほどの委員会で総理もお答えになったと思いますけれども、そういった場合、ことしの予算の執行は、こういった状態の中にあってどのような姿勢で慎重にされるのか。また、今後もし円がじりじり上がっていった場合、はたして補正という事態が考えられるのかどうか。  その二点をお伺いします。
  209. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ユーロの問題について、日本は公的資産もユーロに積極的に放出すべきであったではないかと、こういう御意見でございますが、この点は遺憾ながら政府としてはさように考えておらないわけでございます。なぜかと申しますと、やはり国際通貨の基準がドルである。この信認を回復するということが日本としても好ましいことであるし、やはり、まともに考えればこれが世界の経済を維持繁栄させるゆえんである。そして、このユーロダラーなるものの実態が現実の投機資金中心であって、これがこれだけの騒ぎを引き起こした全部とは言えませんかもしれませんが、相当の原因になっておると。そこで、このユーロ市場というものに対しましては、先ほど来るる申し上げておりますように、まずその不安定性というものを封殺するために精力的な検討が加えられなければならない、あるいはアメリカへの還流をできるだけ促進しなければならないというようなことが、この会議のコンセンサスとして取り上げられておるわけでございまして、こういう際に、もしかりに日本がこういうところに出動しておりましたならば、それこそどういうふうな国際的な評価を受けたであろうかというようなことも十分御理解をいただきたい点であると、かように私は考えるわけでございますし、これはIMF等で資料を出させればすぐわかることでございますが、私はあえてこの参加国で、どういうところが公的な資金を放出をしていたか、その額はどうかというようなことは、あまりこまかにわれわれから御説明することは、この際は御遠慮申し上げておいたほうがいいんじゃないかと、こういうふうに考える次第でございます。
  210. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 予算執行に関しましては、影響を受けるであろう中小零細企業に対しては、すでに四十七年度の予備費及び財投の追加をやったことは御承知のとおりでございます。でございますので、あとはこの予算の成立を待ちまして、四十八年度の予算執行をやりながら、事態の推移を見てまいらなければならぬわけでございます。そうして、中小企業、零細企業その他に対して、必要があれば予備費もございますし、財投の追加も四十八年度の財投としてできるわけでございますし、また、年度末までの間にどうしても補正を必要とするような状態があれば、補正を、御審議をわずらわすこともやぶさかでございません、必要があれば補正もいたしますと、こう述べておるわけでございます。でありますので、現在のフロートの状態において補正をしなければならないというような——この種の場合は、減額をするというんじゃなく、補正をしなければならないと、中小企業や零細企業に補正を必要とするということになるわけでございますが、それは第一次は四十七年度でやりました。それで第二次は、予算執行の過程において第二次の問題は十分対処できると思いますと、しかし、補正の措置もとる必要があればとります、こう述べておるわけでございます。あとはもう予算に関しては——しかし、物価問題、その他いろんな問題が起こった場合の予算執行の状態でありますが、それは事態の推移を見ながら予算執行には慎重を期してまいりますと、こう述べておるわけでございます。
  211. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 まあ大蔵大臣が——私どもこの公的準備放出の問題をやれと言っているわけじゃありませんからね。その点は誤解してとられたようですから、そこは訂正しておきます。  それから、この共同コミュニケの中に「公的通貨残高の借り換えまたは固定化」——いわゆるコンソリデーションを「固定化」と大蔵省は訳されているようですが、この固定化という意味でありますけれども、これはアメリカの対ドル残高に限定したそういう凍結なのか、それとも、現在の平価、いわゆる欧州通貨対ドルではドルの一〇%切り下げ、マルクがさらに三%切り上げというふうになっております。日本ドルでは、フロート後の平価ということになるのか、それともフロート以前の三百八円ということになるのか、そういう平価まで含めて、いわゆる固定化すると、こういう意味なんですか。どちらなんでございますか。両方入っているのか。残高の固定化という、コンソリデーションということなんですか。
  212. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) コンソリデーションということ、固定化ということは、これは考えようでございますけれども、よほど、このやり方は、日本としても注意深く案をつくったり、相談をしなければならないと思っておりますので、現在はまだその成案を、こういうふうな案が一番いいというものを持ち合わせておりませんで、今回の会議に、とにかくコンソリデートするということも一つの方法であるということがここに取り上げられた、それだけに現在とどまっておる次第でございます。
  213. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 もし、ドル平価の現状固定でこういったと、そうして将来にドルがさらに一〇%減価された、値打ちが下がってきたと、そういうふうになったときには、これは、固定化されたときの平価というのは、もうすごく損をしてくる感じをわれわれは受けるわけでありますけれども、その残高だけの凍結が行なわれる、いわゆる固定化が行なわれたと、そういうときには、一体どういう問題が起きてきますか。それで、片一方減価してきた、ドルは切り下がってきた。われわれは損をせざるを得ないわけですけれども、そういう点はいかが対処していく気持ちですか。
  214. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まず、現在、ドルが使えるお金であるわけでございます。そうして、これを使って国民生活に役立たせるようなことを大いに考えていきたいということは、先ほど来申し上げているところでございますが、一方において、残高について、とにかくこれが一方からいえば、あまり使われださないほうがいいという点からいえば、固定化という考え方が出てくるわけでございますから、やはり日本としては国益中心に考える。それから、一ぺん、たとえば固定化した場合に、それを今度は返してもらうというか、これを有効にするために、どのくらいの期間で、どういう条件でということになってまいりますと、これは、現在の私の気持ちとすれば、国益に害のないようにということを何としても中心に考えて具体案に入らなければならない。ちょっといまその具体的な、こういう考え方ということを申し上げるまで、まだ構想が練れておりませんので、その点は御理解いただきたいと思います。
  215. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 もう一つは、「公的通貨残高の借り換え」というのは、これは何をしていくということですか。アメリカの中期債等をさらに多く買うという約束みたいなことなんでしょうか。
  216. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 中期債というより、むしろ、この問題の性格からいえば、相当長期の債券ということは考えられるんではないかと思います。しかし、これも、そういうこともあわせ考えられる方法として取り上げられておるわけでございまして、具体的にどういう期間のものを、どの幅でということになりますと、これは条件等について、やはり日本の立場というものからいって、ある程度の……。まだいま具体的な構想を申し上げる段階ではなく、やはりこれまた真剣に考えていかなければならないと思います。こまかい条件等について、いまこういう考えであると申し上げるだけの準備は、まだそういう点から持ち合わせておりません。
  217. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 アメリカの海外に対する債務が約八百億ドル。他国の公的機関が持っている短期のドル資産だけで六百億ドルと、こう言われておるわけですが、ドルを持っている国、特に日本の場合は、この大蔵省の資料によれば、ことしの二月で百九十億ドル、その外貨準備高の中の外貨だけで百七十億ドル。で、これを全部見ていきますと、大蔵省の資料をこの委員会でいただいておりますが、各国のこの外貨準備高と金との比較を見てみると、ドイツに続いて日本ドルは持っているわけです。ドイツが三百億ドルぐらい、その次は日本です。ところが、ドイツの場合は、それの約一割に当たる四十億ドルをこえるものが金である。わが国の場合には、とにかく二百万ドル近い中からわずか八億ドルですか——しか金がないということになります。そういうことで、もし固定化をされると、一番被害を受けるのは日本とドイツということになるわけですが、特に金の保有の少ないわが国が最大の被害を受けるということになると思うんですけれども、その点はどういうことになるんですか。
  218. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 鈴木君にちょっと申し上げますが、いま二百万ドルと言いましたが、二百億ドルですね。
  219. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 二百億ドルです。
  220. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) そう訂正いたします。
  221. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まさにそういう御指摘の点が、日本としてどうすべきであるかということについては、非常に真剣に考えていかなければならぬことである、こう思っております。やはりドイツが第一、日本が第二の問題をかかえているわけでございますし、どのくらいの幅でコンソリデートするか、する場合に。やはり多国間の話し合いの問題ではありますけれども、結局は少数の国の相互のやり方をいろいろながめながら、日本として最もよき方法を選ばなければならない。御指摘のような点を十分考慮に入れて、これからの立案、あるいは関係国との間の話し合いということに十分心得て臨みたい、そうしなければならないと、こう考えております。
  222. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 まあ、われわれが前からこれを、外貨だけじゃなくて、いろんな、SDRであるとか金であるとか、そのほかの多くの形の準備資産で持つようにということを主張してきたわけですね。ところが、残念ながら、現在あけてみるとそれが行なわれてなかった。これは、一つ政府の失敗というふうにしかとるわけにいかないわけです。そうすると、その様相は、いわゆるフランスのように、百億ドルの中に三十八億ドルも金を持っているところとは、もう相対的にうんと違うわけです。アメリカは特別でありますけれども、非常にそういう違いが出てくる。そういう状況で、わが国が一番不利になるというのに、どうしてこの公的通貨残高のコンソリデーションという提案を——これは私は当然ここへ何か条件をもう一つわが国としてはっけてくるべきじゃなかったかと思うのですが、つけないで大蔵大臣がのんでこられた。私は責任が非常に大きい感じがするのですけれども、その点はいかがでございますか。
  223. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 同時に、しかし、ドル基準通貨として信認を回復するということについては、私は、日本のためにも積極的なできる限りの努力はしなきゃならない。そういう点から申しまして、先ほど来コンソリデーションというものについての考え方を申し上げているとおりでございまして、これから具体案の段階になりましてから、十分ひとつ考えてまいりたいし、また、御指摘のような御意見につきましては、十分積極的に理解をし、また、その線で努力をいたしたいと思います。
  224. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 総理大臣に伺いたいんですが、田中総理は、この委員会での質疑応答のいままでの中に、昭和四十五年までは四十億ドルであったと、その台であった外貨が、四十六年——一九七一年、その年に急激に百五十億ドルになった、四十七年に百九十億ドルになった、したがって、政府の外貨政策に誤りがあったという批判は間違いであるというような、そういう趣旨の答弁をしておられます。で、どうして四十六年に百五十億ドルと、急に百億ドルもの外貨がたまったか。これははっきり申し上げて、ニクソンの無謀な金とドル交換停止とか、そういうIMF体制というものをこわしたということまで、そういういろいろなこと、があってこうなってきたわけです。だから、最初のときは、円・ドルの平価は三百六十円ですよ。それが現在はすでにもう大きくくずれているわけです。だから、その点、総理大臣のおっしゃったことは、私は、ほんとうを言えば、これはアメリカのせいであって、日本の問題じゃないんじゃないかと、それなのに、さらに固定化を求められるということは、これはひどいことじゃないかと、強く抗議を申すべきだと、こう思うのですが、その点が一つ。  時間がありませんから、最後に、大蔵大臣、当然これはこれから、もし固定化をされるとなれば、そういういままでのいきさつから考えて、一ドル三百六十円ということでコンソリデーションされるべきじゃないか、それができないとしても、一六・八八%引き上がったときの三百八円で保証させると、どちらかにこれはするべきじゃないかということを思うわけでありますが、その点をお伺いして質問を終わりたいと思います。
  225. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは、私が述べておりますのは、外貨が急増しておるにもかかわらず金が非常に少ないじゃないかとか、それから、国内体制の整備というもの、すなわち、社会保障の拡充とか、そういうものがおくれておる、そのためにこうなったんじゃないかと、こういう御質問に対して述べておるわけであります。ようやく四十六年一月には四十五億ドルになったわけでありますと、その中で、金とかいろいろなものを引きますと、実際は輸入代金の三カ月分にもならなかったわけでございまして、それはもっと積み増さなきゃならないような状態でございましたと、いまふえたのは、近々二年の間に急激にふえたわけでございますと、こう言っておりまして、そういう意味で、金にかえるということもそうそう急にできなかったのでございますと、それから、国内体制の整備というものに対しても、第一次の平価調整を行なった直後でございまして、まあ平価調整のメリットというものは、二年ないし三年かかるのであって、やはり事態の推移というものを見ながら国内政策を整備しなければならなかったわけでございまして、これからは急速に整備してまいりますと、こう述べておるわけでございまして、これはやはり事実をそのまま述べておるわけであります。まあ、実質的に申し上げますと、第一次平価調整が行なわれるような、ニクソンショックから平価調整が行なわれるような一年半ちょっとであります、一年と四分の三ぐらいの間、そのぐらいの短い問に、このぐらい貿易収支が拡大されるというふうにはちょっと考えなかったわけでございます。だから、そういうものとか、景気の浮揚度が非常に早かったとかというような問題は、私たちが考えておったよりも、日本の産業の力、輸出力というものは非常に大きかったということは、これは否定できないことでございます。もう一つは、先ほど通産大臣述べましたが、出血輸出というものもあったでしょう。これは国内に振りかえられないというような状態で、どうしても輸出をせざるを得なかったということで、そういう面は、中小企業や零細企業に相当出てくるものだと思います。  しかし、いずれにしても、こういうことになったのは、アメリカの責任だから、アメリカに対してもっと強く言えという姿勢でございますが、これに対しては、アメリカの通貨だけではなく、ドル世界の基軸通貨であるということで、これはどうしても守らなければならないという共通の立場にあるということで、アメリカと外交折衝でもってお互いが片づけるような問題ではなく、基軸通貨がドル以外に別にできるか——できればいいんですが、できないとしたならば、やはりドル価値の維持というものに対して共同の責任を持っていかなければいかぬ、しかし、あくまでも、そうなれば、アメリカの言うことをまるまる聞くのじゃないか——それはそうじゃありません。これは二十カ国、十カ国、六カ国の中で、アメリカ、が負わなけりゃならないものに対しては、アメリカにも責任を持ってもらうし、われわれ自身も努力しなきゃならぬものに対しては努力をしてまいる。ドルというのは、どうしてもこれアメリカだけのものではなく、世界の大半に影響を持つものでありますので、そういう意味で要求もしますが、こちらも協力をする、こういうことが前提でございます。
  226. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) コンソリデーションの問題につきましては、御案内のコミュニケの上にもありますように、注目に値すると、それからこの件は、従来二十カ国委員会でも議論が行なわれているところであるというような注釈、風鈴づけにいたしまして、その結果合意をいたしたわけでございます。日本だけがことさらに損をするというようなことのないように、今後最善の努力をいたしたいと思っております。
  227. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて鈴木一弘君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  228. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 栗林卓司君。(拍手)
  229. 栗林卓司

    栗林卓司君 まず、大蔵大臣にお伺いしますけれども、いつ固定平価制度に戻るかという時期の話は別にして、いつの日か固定平価制度に戻りたいという先ほどの御見解もございました。では、どういう条件が整備されれば固定平価制度に戻れるとお考えになっているのか、具体的に伺いたいと思います。
  230. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 今回の通貨不安で非常な影響を受けた国々も含めて、固定相場に復帰したいという考え方相当強いということを認識いたしましたが、それには、一たんきめたならばそれが守られて、相次いでまた予想しない事態が起こらないようにと、これがもう一番大切なことではないかと思います。それには、具体的にというお尋ねでございましたけれども、関係各国が相互に責任を負って守れる体制を協力し合う。で、これが、具体的な行動ということまで合わせた、お互いに保証し合うというような体制が最も望ましい体制である。それには基準通貨というものの確立のしかた、あるいは、いままでの観念での基準通貨だけの観念ではいかぬ場合もあるかもしれません。そういう点を中心にして二十カ国委員会が精力的にこれから協力していこうと。その状況を見ながら日本の立場というものも自主的にきめるべきであろうかと、こう考えております。
  231. 栗林卓司

    栗林卓司君 各国政府態度ということでお答えでございますけれども、投機資金についてはどのような条件があればとお考えですか。
  232. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 投機資金のようなものが、先ほど来言っておりますように、実態が掌握され、これに関係する諸国が、ユーロダラーのような、要するに原因が起こらないように、たとえば早急な還流を本国に向けて行なうとか、これ以上出さないとか、あるいは当面それに対して介入で守るとかいうような方法論、態度はこのコミュニケにあらわれておるわけでありまして、これによって当面のところは回避できると、これがわれわれの考え方でございます。ですから、この投機資金については当面のところはまず小康を得るであろう。そうして今度は恒久的な策で、こういう事態が今後起こらないようにするのにはどういうふうな方針をきめて各国がこれを守るか。やはり、いま前段で申し上げたような姿勢を各国が守り合うということが私は必要だと思います。
  233. 栗林卓司

    栗林卓司君 投機資金に対していろいろ努力をされるというのはけっこうなんですけれども、成果が期待できるのかできないのか、問題はそこのような気がいたします。投機資金をかりにユーロダラーと読みかえてもいいと思うんですけれども、一体これを持っているのが、主たるものがどこなのか、一応あげていただきたいと思います。
  234. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 多国籍企業ということがいわれておりますが、先ほどの質疑応答にも出ておりますように、今日では、ある種の国では公的な資金まで放出していたといわれるような状況でございますから、こういうところを的確に掌握して——これはもう日本だけでやれるわけではございませんことは御承知のとおりだと思いますから、   〔委員長退席、理事米田正文君着席〕 その気になってやって成果をあげるようにするということを、ほんとうにこれは世界的に協力していかなきゃならないことであると思います。
  235. 栗林卓司

    栗林卓司君 いまおあげになったほかにあえて追加をいたしますと、産油国政府、共産圏諸国政府、そして保険会社云々と並びますけれども、問題は産油国政府。一年間で五百億ドルになんなんとするドルが流れ込んでいる。これは過剰ドルの吸収どころの騒ぎでは私はないと思います。にもかかわらず、これが対策がほんとうに打てることが期待できるのか。判断の問題ですが、あらためて伺います。
  236. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) なかなか微妙なところでございますが、先ほど御指摘をいただいたように、このコミュニケの上にもIMF参加国というような知恵のある表現が使われているというようなところは、やはり、みんな今回の会議参加国は、それ以外の国々に対しても積極的な国際的な責任ということを考えてやってもらいたいと、そういう具体性並びに信頼性ということを何とかこれから取り上げて対策を講じたいというのが願望でございまして、やれるのか、やれやしないじゃないかと、まあ言われてしまえばそれきりのことであって、私はやっぱり非常にむずかしい問題であると。これは経済政策だけの問題ではなくて、モラルの問題でもあると思います。これを、ほんとうにイデオロギーを越え、あるいはその国の経済的優位性というものをある程度制約をみずから加えてもらったような協力姿勢というものが出なければいけないと、こういうふうに考えるわけでございます。
  237. 栗林卓司

    栗林卓司君 モラルのことばが出るようになりますと、よほど事態はむずかしいと覚悟せざるを得ないと思います。ただ、反道徳的な立場で投機資金が動いているのかと言いますと、実はお答えの中に出てくるんだろうと思ったんですが、ドル信認が回復されない限り海外の過剰ドルの問題も解決できないし、なぜ投機資金が動くかとなりますと、ただ、遊んでいるお金を動かすというのでなくて、あぶないドルはなるべく持ちたくない、準備資産のポジション改善もしたいんだということが片面にあって、風が吹くとドル投機が吹き荒れるという現状になっておるんじゃないか。したがって、もとをただしますと、ドル信認の回復ということがないと実は投機資金対策もできないし、それが出発点であり、終わりなんではないかと、そう思いますが、いかがですか。
  238. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) その点は第一のお答えのとき申し上げたわけで、基準通貨としてのドルということを考えなければいけない。それの信認の回復ということ、それが回復できそうもなければ他の手を講ずるよりほかない。これはやはり、いま、だれでもの専門家の常識から申しますと、ドルがだめのようなら、もうSDR、これをもっと建設的な魅力のあるものにしたい、あるいはその両方の抱き合わせかと、およそそういったような考え方でございますが、しかし、今回の私の印象としては、これまで続いてきて、そしてほかのオルターナティブがなかなかいままで理論的にできなかったから、やはりひとつドル信認の回復ということについて、そしてアメリカも責任をだんだんはっきりしてくるようになってきたこの機会に、ドル信認回復ということについて最善の努力をしようではないかという空気が強い、こういうふうに私は認識をいたしております。
  239. 栗林卓司

    栗林卓司君 ドル信認回復といった場合に一番焦点になるのは、米国国際収支が改善されるかされないか、ここだと思いますが、いかがでしよう。
  240. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) それは一番基本でありますし、それから、そういう点から見ると、午前中にも申し上げましたように、アメリカはもちろんですけれども、各国が本質的にはドル信認はもっと回復すべきであると、これは、この際アメリカ自身の国際収支対策あるいは国内の経済政策その他万般を入れてみて、この努力と国際的な協力体制ができて交換性相当程度回復できるような具体策ができればこれでやっていけるというのが大体のみんなの考え方じゃないかと思いますので、わざわざ、「インフレ」という字が出ておりますのも、そういう点を配慮した一つの焦点であると、こういうふうにお考えいただいていいんじゃないかと思います。
  241. 栗林卓司

    栗林卓司君 問題は、アメリカ国際収支が改善できるかどうかということですけれども、従来の経過をたどりますと、一九六三年一月、米国大統領が初めて国際収支の赤字をなくす決意を正式に表明いたしました。一九六五年七月、当時のファウラー財務長官が一九六五年末までには赤字を半減する、六六年には全部なくすと言いました。一九六八年一月、ケネディ大統領がサンアントニオ計画を発表いたしました。そして一九七一年八月、ニクソン大統領が新経済政策を発表しました。そして昨年、アメリカは未曾有の赤字を出しました。なおかつ改善できると判断される積極的理由がございますか。
  242. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) どうも私から御答弁申し上げる範囲を越えているように思いますが、その前に、やはりアメリカ状況から言えば、一口に言えば、外国の側から外国通貨当局が持っているドルの残高は、要求があり次第、金かあるいは要求国の通貨にかえるんだということが、いわゆるIMF協定などからいいましても交換性の基本なんですね。ところが、米国自身の公の準備に比べて、公の債務の量がはるかに大きいわけでございますから、米国として交換性の要求に応じ切れないというのが一九七一年のいわゆるニクソンショックといわれる交換性の停止に至った経緯であると、こういうふうに思いますから、これはもう直接の最近の状況でございますから、それらに触れてアメリカも少しここで一生懸命になってもらいたいし、あるいはまた、日本はじめ関係国協力をしてやらなければいかぬのじゃないか。そうすると、貿易量その他からいって圧倒的に関係の深い、私は日本措置というものが非常に大きなシニアを含むわけでございますから、これも午前中に申し上げましたが、累次にわたる円対策あるいはそれにさらに追いかけて日本自身としてやるべきことを、何かあれば積極的に考えてしるかべきではないだろうか、こういう印象を今回も強く受けたわけであります。
  243. 栗林卓司

    栗林卓司君 米国国際収支は、米国のことですからと言うにしてはあまりにも問題が大きいし、その見通しによって日本の政策も変わってくると思います。その意味で、ほんとうに改善できるのか、あらためてまた伺いたいのですけれども、通産大臣に伺います。  石油危機ということがいわれております。そこの中で、これは今後米国国際収支にどのような影響を及ぼしていくとごらんになっておりますか。
  244. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) アメリカの一部の推定でございますが、大体七二年におけるアメリカの石油の輸入費用、ドルは四十五億ドルぐらいであると推定されていますが、七五年前後になると百五十億ドルから二百億ドル近くになるのではないかと、こう推定されております。したがって、七五年前後からアメリカドルの流出ということは石油一つ考えてみてもかなりのものが出てくるんではないかと思われます。
  245. 栗林卓司

    栗林卓司君 外務大臣にお伺いします。  現在、アメリカは海外駐留費約三十五億ドル、後進国援助五十億ドル、オーストリアからのソビエトヘの投資が年間約十億ドル、開発途上諸国への投資が十億ドル。しめて約百億ドルのお金を出しておりますけれども、これを近い将来手控える国際環境の変化があると御判断になりますか。
  246. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) アメリカ政府は、いろいろなコミットメントは大事にせにゃならないということは繰り返し申しておりますけれども、同時に、これを漸次整理していかなければならぬという政策の方向も打ち出しておるわけでございまして、いまお尋ねの件は今後アメリカ政府決意にかかるわけでございますけれども、ドルがこういう衰退した状況にある以上、アメリカとしてもそういう方向に処置すべきはずでございますし、また、それはある程度私は期待していいのではないかと考えます。
  247. 栗林卓司

    栗林卓司君 私がお伺いしたのは、そういうことが手控えられるような国際情勢の変化が近い将来期待できますかという、判断です。
  248. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ヨーロッパもアジアも全体として鎮静の方向に向かっておるわけでございますので、期待できないと断定するよりは、期待できるという方向に私はかけたいと思います。
  249. 栗林卓司

    栗林卓司君 見通しがむずかしいということで伺っておきます。  では、通産大臣に重ねて伺いますけれども、アメリカの産業別国際競争力の現状はどうなっていると御判断になりますか。
  250. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やっぱり、カナダ、日本等に赤字がかなりあるようでありまして、これはいろいろな理由があると思いますが、一つには、アメリカ国内におけるインフレーション、あるいはコストプッシュ的影響、あるいはアメリカの多国籍企業の外資の流出、まあそういうようないろんな理由によって国際競争力及び外資の事情というものが悪くなってきておる。もう一つは、やはりアメリカの国内の労働者の気分といいますか、日本が最近買っている工作機械や機械類の中には、かなり手抜きしたようなものがあるといわれておる。あるいは、アメリカ国内においても、月曜日に生産された自動車は買うなと、日曜からにかけて非常に労働者の気分が弛緩しているために欠陥品が多いと、こういうふうにいわれておるようです。そういう点で、やはり何か精神的なものもアメリカ国内にあるのではないかという気もいたします。
  251. 栗林卓司

    栗林卓司君 私がお伺いしたのは、産業別に見たアメリカの国際競争力はいかがかという質問です。
  252. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 詳細は政府委員に答弁していただきますが、一番弱いのはやっぱり繊維であるだろうと思いますし、造船なんかも非常に弱い。一番強いのはIBM等を中心にするコンピューター、電算機の世界で、あとは、農産物は御存じのように海外に対してかなりの強い輸出力を持っておる。それから機械類になると、いままでは強かったんですが、これが次第にいま食われておる。それで、電機製品とか、あるいは自動車類とか、あるいは鉄鋼とかそういうものも、御存じのように日本その他によって次第に食われてきている。そういう状態で、非常に最高級のIBMのような電算機と、わりあいに一次産業の農産物でもっておって、中間製品では後退していると、そういう時代に入ったと思います。
  253. 栗林卓司

    栗林卓司君 長々しい質問に、ありがとうございました。  総理に伺います。  ドル信認問題から米国国際収支は何とか改善の道を歩まなければいけない。ところが、現在から含めて将来を展望すると、その道はとてもけわしそうだ。そういう中で、アメリカに、先ほどの質問もありましたが、何を求めておいでになりますか。また、その求めたものをアメリカは十分受けてくれると御判断になれますか。
  254. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ、ドル問題に対しては、ケネディ大統領が開拓精神を思い出せと、ニューフロンティア精神を説いたあのときからずっと起こっておるわけでございます。  米国経済がどうなるのかということでございますが、私はこの問から申し述べておりますとおり、当面するアメリカの経済、それから長期的に見たアメリカ経済という二つにやはり分けざるを得ないと思います。当面する経済を見ますと、世界じゅうの金の七〇%も保有したという時点においてアメリカの社会構造が成り立っておりますから、そういう意味ではなかなか締めづらい。これは鉄鋼の賃金値上げを一つ見てもわかるわけであります。もう鉄鋼だけは日本との協定をして制限をすると言っておりながら、現実問題としては入れざるを得ない。生産性が上がらないということでありますから、入れざるを得ない。アメリカの官庁の建築物に対しても日本の鉄鋼を使っておる。これは一つアメリカの断面を見せたものだと思います。しかし、そうでありながらも、一面においては生産性を上回る賃金の引き上げということをやらざるを得ない。まあ、いろいろな面から見て、アメリカ相当強いニクソン政策を行なっておりますが、しかし、直ちに効果をあげるというほど簡単なものではないと思います。社会的な混乱の一面も報道されておりますから、非常にたいへんだと思いますが、しかし、多国籍企業というものに対してはやはり特段の政策を行なわなきゃならないんじゃないかというような面はまだ残っておると思います。  それで、アメリカの経済の大きさというのは、とにかくソ連に対して二千八百万トンの小麦の輸出ができるんですから一できなかったらたいへんなことであります。だから、そういう面から見ても、いずれにしても、まあ、これから国内体制を引き締めれば、いまよりもいいものになるということは言えると思うんです。それで、いまヨーロッパ炉非常に協力的なのは、ヨーロッパには三十万もおるわけでありますから、そういうものが、どの程度、一体どういう形で解決するのかということになれば、これは相当なメリットが生まれる可能性は持っておるわけであります。また、ベトナムから引き揚げる、いろいろな問題も行なわれております。そういう意味で、私は、いますぐというわけにはまいらないけれども、長期的に見てアメリカの経済というものは、やっぱり世界的に見て最大の大きな力を持っておるということだけは、これは否定できないものだと、こう思います。  ですから、アメリカの経済がよくないということだけで、孤立化、ブロック化し、世界を縮小再生産に巻き込むということは絶対に避けなきゃたりませんから、そういうものを避けながら、それと、アメリカには応分の負担と寄与をさせながら、そしてアメリカ国際収支を直しなさいと、こう言っているところに、われわれも協力しますからと、こういう実態があるわけでございますので、現実面と長期面ということを分けて判断していくべきだと思います。
  255. 栗林卓司

    栗林卓司君 問題は、その締めるという意味で、アメリカ協力して——「協力」って変なことばですけれども、やってくれるのかどうか。われわれの経験ですと、国際収支が赤字になる、たいへんなんだ、みんなでがんばろうというのがコンセンサスになってまいります。それがアメリカにあると言えるのだろうか。御存じのように、賃金物価凍結令も、いろいろ事情はあったでしょうけれども、今回は撤去しまして、第三局面といわれる、どちらかというと非常にゆるやかな経済運営に変わりました。昨年一年間、かつてない赤字を出しながら、ニクソン大統領の一月三十一日経済報告によると、昨年は米国経済にとって実によい年であった、この書き出しがら始まります。この辺のズレをどうお考えになりますか。
  256. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) あれだけの大きな国でございから、やはり国民の理解を得なければならないし、そうドラスチックな締め方ということはできないんだと思います。賃金、物価の凍結ということをやったわけですが、とてもそういうことが、長く続くわけはないと思うんです。ただ、アメリカに対しては、やっぱり善意なお互いの協力ということにアメリカにこたえてもらわなきゃいかぬと、こう思っておるんです。アメリカは、一面から言えば、これは、必要な状態においてアメリカ協力をして、それで戦後の、第二次戦後の四半世紀にわたって、ほとんどアメリカの犠牲によって世界拡大均衡というものを維持してきたじゃないか、そのためにドルも流出をしたんだから、といって、今度は相当ドラスチックに各国協力を求めるというように出るんじゃないかというふうに、経済雑誌にはそういう論評でもって書いている人もありますが、今度アメリカがみずから一〇%切り下げました。あれは私は、あの当時の日本のずうっと経済論調を見ておっても、これは、ことしの秋ごろには避けがたいかもしらぬ、そのときには、日本の円の切り上げだけではなく、相手にも応分の負担をさせるべきだった、しかし、なかなかアメリカは聞かぬぞという議論でありましたが、まあ唐突過ぎるぐらいにアメリカがみずから一〇%切り下げるということで、今日まで一カ月ばかりの日がたっているわけです。そして、日本フロートして、比較的に、結果論から見ると、うまい状態でずうっと来ておるわけですが、しかし、今度の第二回のものは、アメリカさえも予期てしおらなかったのだから、アメリカはまさか出まいと、こういった論調の中で、アメリカみずからも責任を負いますと、こう言って共同声明になったんですから、やはりアメリカも非常に深刻な状態、自分で果たさなければならない責任を果たす、そのかわりに、共同でもってやらなきゃならないものは共同でやろうと、こういう姿勢に立っていることは理解をし、評価をすべきだと思います。
  257. 栗林卓司

    栗林卓司君 実は、そこでお伺いしたいんですけれども、一〇%のドル切り下げというのは、応分の負担ではなくて、為替ダンピングではなかったんですか。どうお考えになりますか。
  258. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういう、あんまり戦術的なものとは考えておらないんです。あの事態において、イタリーの問題から、それからスイスヘ、西ドイツヘ、しかも西ドイツや日本——特にヨーロッパにおける西ドイツは、あの時点において六十億ドルをもうすでに買いささえをし、二百五、六十億ドルドルを持っておったわけであります。そういう状態において、しかも対米の収支は均衡しておると、こういう状態の西ドイツがあれだけの犠牲を払ったときに、しかも西ドイツは固定相場を守ります、フロートはしませんと、こう言っているときに、アメリカはやっぱり誠意を見せたんだと、みずからの責任をまず第一に果たしたんだと、こういうふうに理解すべきじゃないですかな。戦術的にああいう挙に出たというふうには考えておりません。
  259. 栗林卓司

    栗林卓司君 伺いますけれども、為替ダンピングというのはどういう内容のことばでございましょうか。
  260. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 為替相場を切り下げることによって自国がさらに、何と申しましょうか、輸出を大いに促進したりすることを意味することが通例のことばかと思いますけれども、特にどういう意味でおっしゃっておりますか、もう少し内容をお聞かせいただければお答えのしようもあると思います。  それから資本移動につきましては、これも御承知のとおりのことですから多くを申す必要はございませんけれども、私は、今度のパリ会議で、アメリカ相当考えたなと思われることの一、二としまして、資本の流出については楽にするんだという考え方があったのがおかしいと、私は率直に言って思います。その点を、見ようによっては十分な字句は使われなかったという御批評もあろうかと思いますけれども、すでに発表した政策を展開する、逆行させる、あるいは資本の流入については、これはユーロダラーの関係などもございますから、当然とわれわれから見れば言えますけれども、流入についての制限的措置はやらないという趣旨が出ておりますですね。こういうところにやはりアメリカ自身の政策の転換ということも、やはり国際通貨問題についての責任の認識というものが一つの国としてあっても、やりにくいことだと思います、お互いに政治をやっておりますと。こういうところにも踏み切りが出たということは歓迎していいことではございますまいか、そういうふうな私は印象を受けました。
  261. 栗林卓司

    栗林卓司君 後半の話は別にして、為替ダンピングでお伺いするんですけれども、二月二十二日、ニクソン大統領の議会報告、そこの中で、円の切り下げに触れて非常に短いコメントが載っています。理由として言っているのは、ドル切り下げによりわれわれは国際市場において有利な価格競争力を持つことができると——これはそのまま為替ダンピングではないんでしょうか。
  262. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 為替を切り下げることによって輸出競争力をふやすという点が為替ダンピングであるかどうかという問題ですが、そういうことの前に、われわれ国際収支黒字国の責任ということを言われまする場合に、赤字国も責任を感じろという主張をしておったわけでございます。そういう点は、基礎的な不均衡があれば、赤字国もまたそれに応じた為替の変更を考えるべきであると、こういうことを言っておったわけでございますから、そういう点から見ますと、この措置は為替ダンピングの挙に出たということは言えないというふうに考えます。
  263. 栗林卓司

    栗林卓司君 私はことばじりで申し上げているんじゃなくて、あんまりきれいごとでこういった問題を理解すると、かえって間違うんじゃないか。ですから、重ねてそれでは別な聞き方をしますけれども、アメリカ国際通貨問題に取り組む、国際通貨の改善に取り組む第一の目的は、ニクソン大統領は、何だと言っておりますか。御存じの方、どなたでもけっこうです。
  264. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 国際的にそれぞれの、たとえば通貨にしてみれば、均衡のとれたものであるべきであると、こういう考え方中心であるようであります。  それから、よけいなことを申し上げるかもしれませんけれども、一〇%切り下げは戦術ではなかったかという、さっきお問いがあって、私お答えする機会がございませんでしたけれども、これは私は、今回のこういう環境の中にあっていろいろ意見交換なんかをしてみましても、まさかそうだと言うこともできまいとは思いますものの、一〇%切り下げればこれでおさまると、ほんとうにこのときには思ったようでございます。それだけに、これはやはりもっと真剣に、深刻に考えなければならないという考え方の過程が今度のような態度にあらわれてきた、私はすなおにそういうふうに見ております。一〇%おれのほうが切り下げでもすれば、これで均衡がとれるんだろうと、そして、それで平静になるであろうと、ほんとうに真剣にそう考えたように私には理解ができたわけでございます。
  265. 栗林卓司

    栗林卓司君 先ほど私が申し上げたかった第一の目的と、ニクソン大統領が少なくも昨年のIMF総会で述べた第一番目は、来国の国家利益ということでございました。しかし、それは当然だと思うんです。批判がましく申しているわけじゃございません。どこの国でもそうだと思います。しかも、米国が果たしている事実としての役割りを考えると、ほうっちゃおけないということにもなるんでしょう。ただ、先ほど来総理のほうから、アメリカはずいぶん犠牲を払ったんだというお話がございました。そこで、コンソリデーションということについて大蔵大臣にお伺いしたいんですけれども、これは、金の公的準備高と現在流通している過剰ドルとの額の見合いを想定した議論でございますか。
  266. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは、先ほど申しましたように、御案内のように、二十カ国委員会、それの代理会議あるいは専門部会などで、このコンソリデーションということがときたま取り上げられておる。その中には、実はいろいろの考え方がございます。それを真剣に検討することは意味のあることであるということが合意されただけでございまして、これもまたいろいろのお疑いをお持ちかもしれませんが、コンソリデーションという字が、注目すべき、検討さるべきものである、そして、これはすでに二十カ国委員会でも話が出ている問題である、という注釈つきで、そのコンセンサスがコミュニケの上に出たのでございます。したがって、コンソリデーションのやり方や幅や性格を話し合ってここに書いたものではございません。また、そういう意味で、コンソリデーションという方式を考える、検討に値するということに賛成をいたしたのでございまして、これは国益を守って、その具体案の中については、アメリカがどう考えるか、それをここで議題にして御検討いただくこともけっこうでございましょうけれども、日本として十分国益が守れるようなものをこれから私はいろいろのバリエーションを持って、腹案として、そして二十カ国委員会その他に臨みたいと、こう考えております。二十カ国委員会が二十六日にございますけれども、そこでも、こういう具体案をというところには、問題の性質が非常にそれぞれの国にとって重大なことでありますだけに、そう簡単に内容的な合意ができるとは思いませんけれども、できるだけ考えることについては協力していきたい、こういう態度でございます。
  267. 栗林卓司

    栗林卓司君 具体的内容は今後でございましょうから、お伺いしません。ただし、それが出てきた経緯として、質問を別なことばで言い直しますと、ドル過剰流動性ということを頭に置いて出てきた議論でございましょうかとお伺いしました。   〔理事米田正文君退席、委員長着席〕
  268. 林大造

    政府委員(林大造君) お答え申し上げます。  コンソリデーション考え方が出てきました経緯につきましては二つございまして、一つは、ただいま御指摘の非常に多額の流動的な公的なドル資産があるということがございますが、より、何と申しますか、前向きの国際通貨制度改革関連で取り上げられております問題は、アメリカ国際収支で赤字を出したときには、ドルの債務をふやすのではなくて、何らかの、SDRとか金とか、何でも、あるいは相手方の通貨でもよろしいんでございますが、準備資産を決済として黒字国に引き渡すということが必要である。逆に黒字のときには、そのかわり準備資産を取得しなければならない。黒字のときに単に現在多額にあります対外的な債務が減るだけでは、これは黒字のときには全然準備資産がふえませんで赤字のときにだけ引き渡すというのでは、これは準備資産による決済というもの自体が成り立たない。したがいまして、現在多額にのぼっておりますその対外的な公的な流動的な債務、これを何らかの形で固定化いたしませんと、現在いろいろの案が出ております資産決済、金とかSDRとか、そういうものによって米国がその赤字を決済するという構想そのものが前進しないということが国際通貨問題の専門家の問で取り上げられまして、いろいろな案が出ているという状況でございます。
  269. 栗林卓司

    栗林卓司君 お答えの前段は過剰流動性で、後半はアメリカにどうやって、たがをはめるかという、ごくふうのようですけれども、重ねてお伺いします。ドル過剰流動性関係があって出てきた議論でございましょう。これは投機対策ともからむし、いま非常に悩んでいる問題ですからお伺いするわけです。
  270. 林大造

    政府委員(林大造君) それは、私が申しました第一の点と第二の点とは相互にある程度のからみ合いがあるわけでございまして、やはり第二の考え方が出てきますゆえんのものは、やはりアメリカに多額の公的な債務が——いわゆる国際流動性というのが非常に多額にのぼっているという事実があるわけでございます。
  271. 栗林卓司

    栗林卓司君 大蔵大臣にお伺いするんですけれども、冒頭お伺いした投機資金の問題、その解決のためのドル信認アメリカ国際収支問題、こうながめてみても、結局、いまさしあたって問題になっているものは、一つドル過剰流動性なんだ、それはまた別に引き揚げていくんだと、そういうコミュニケにもなりましたということなんですけれども、一つは、この点で御意見があったら伺いたいんですけれども、学者の意見によりますと、現在の国際金融制度を前提にする限り、アメリカ国際収支は赤字にならざるを得ない、これはトリフィンもリュエフも、全く違う立場からですけれども、同じことを指摘しておりました。それと、いまの過剰流動性の問題をからめて、いまの解決というのは非常にむずかしい道程が必要なんだという気がいたしますけれども、その辺の御判断はいかがでしょうか。
  272. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) そこが実に問題のところでございます。その前提の学説は、これにはいろいろの批判がありますが、しかし、われわれとしては、現実の政策の上で、はたしてアメリカドルが今後とも基準通貨たり得るものであるかどうか、それには考え得るあらゆる信認回復の方法を考えて、それが具体的に各国が見て、これだけのことをやれば信認性が回復して国際通貨の基準として十分やっていけると、こういう見通しがつけば一番いいし、それを一番願望しているというのが実際的ないまの各国考え方であるように思います。しかし、それには、まだいまの段階では十二分の成案が得られない場合も予想していかなければならない。そうなると、考え得る問題としては、SDR中心あるいはこれとの結びつきをもっと魅力のあるものにするということが実際的な見通しかなというところではないかと思います。確かに、そのおっしゃることの意味が、私はよくわからないのです、率直に申しまして。したがって、私の答弁申し上げておりますことは、ちぐはぐであるかもしれませんけれども、大体そういうことを御指摘になるんだとすれば、いま申し上げたとおりです。
  273. 栗林卓司

    栗林卓司君 将来、新しい基準通貨が必要になるかもしれない、したがって、それはSDRということも考えられる。で、私がお伺いしたいのは、当然そういう制度改革議論をしていかなければいけないんですけれども、その途中のところでドル中心にした固定平価というものに一ぺん戻る可能性がはたしてあるんだろうか。私がお伺いしている理由は、このまま変動相場制が常態化していかざるを得ないんじゃないか、そういう材料ばかりあるように思えるものですから、先ほど来お伺いしているわけです。
  274. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) それは私の説明のしかたがうまくないのかもしれませんが、そうであればたいへん恐縮なんですけれども、こういうわけなんでございます。  現状においては、フロートをした国はフロートをするということに十分の理解ができる、いわば、これは国際的にフロートが公認されたわけです。そして、介入も公にやる場合があるということ。その線だけを強調されるならば、ECはブロック化する、日本日本で独自の行き方をする、あるいは先ほど御指摘があった中近東は中近東で独自の行き方をするでしょう。それでいいのかというこの反省が非常に強いんです。ですから、当面とった措置が逆行するように見えるけれども、ここで大事なことは、やはりドル中心にした固定相場制度をみんなで守り抜いていくようにしよう、そして、それの延長線の上にドル基準通貨として何とか立ち直らせるようにするというのに対してわれわれが精力的な努力をしていこうというのが、このコミュニケにもあらわれておる、あるいは底にある考え方なんですね。なるほど、いまだけやったことは世界じゅうが封鎖経済になるようになるんではないか、なるほど当面はそうなんです。しかし、そのときにやっぱり基本の思想というものをはっきりさせておかなければならないというところに、このパリ会議の私は意味があったし、そこにコンセサスができた。したがって、その線ができれば一番いいのでありますから、日本としても精力的な努力をして貢献していきたい、こういうふうに考えておるわけです。
  275. 栗林卓司

    栗林卓司君 いま大蔵大臣が言われたのは、日本政府としてこうありたいという願望だけではなくて、今回、会議にお出になって、いろいろ各国首脳と会われた結果得た情勢判断で、各国ともその方向に今後歩いていくんだ、くどいようですけれども、そういう御説明ですか。
  276. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私が申しましたのは、私の願望ではないんでございまして、私の願望も含めまして、そういう気持ちがこの中には非常にはっきりしておるし、それから、個々に話し合いましても、そのことを強調しております。たとえば、第四項におきまして、「秩序ある為替相場制度を共同して確保するとの決意を重ねて表明した。」ということもございますし、それから最後のところも、先ほども指摘いたしましたけれども、「秩序ある国際通貨取極めを維持するための国際的に責任ある計画を始動させるであろうことを確信する。」と、一方において、そうした作業がほかのいろいろの機構をいまつくるよりは、IMFの二十カ国委員会のワク組みの中で促進され、早期に結論に達することが共通の関心事であることを強調した、この意味は、私がいま御説明したとおりです。ドル中心にしてとは書いてございませんけれども、現在まで考えてき、あるいはつくられたワク組みの中で早急に取りまとめをしようということに決意が表明されたわけでございますから、そのことがいいか悪いかは御批判にまかせますけれども、ここにあらわれたことは参加国共同のコンセンサスでございます。
  277. 栗林卓司

    栗林卓司君 くどいようですけれども、ドル中心にということはよくわかるのですけれども、それはドル中心に固定平価を想定しながらとなるのかどうかで、くどいようですが伺います。  これまでアメリカ主張してきた国際通貨改革案の一番の骨になる部分というのは、フレキシブルな為替制度でありたい——これが変動相場と似ているかどうかは別にして、フレキシブルでありたいということを繰り返し繰り返し言っておりました。ですから、ドル中心ということはいいとしても、アメリカが固定平価の方向も含めて合意をしたということでございましょうか。
  278. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) そのとおりでございますが、もう一ぺんそれじゃ繰り返して申し上げますと、先ほども申したのでございますが、第九項目にもこのことははっきりしていると思います。「為替レート競争的変更の回避の原則を遵守することを再確認した。」、それから「全ての参加国の利益のために、これらの原則を維持するべく現存の国際経済協力機構を用い続けるという決意を表明した。」と、あらゆるところにいま私が御説明した思想が出ている。そのことがけしからぬのだという見解もあり得ると思いますけれども、事実として、今回みんなが喜んでこのコミュニケを採択しましたことだけは事実でございます。
  279. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 栗林君、時間が参りましたから。
  280. 栗林卓司

    栗林卓司君 時間が参りましたし、今後のことですから、これ以上重ねての御質問はいたしません。  ただ、最後に一つだけ、実は、資本移動のことについて御意見を伺いたいのですけれども、一九七四年までに利子平衡税を含めて撤去する云々の御説明が先ほどございました。ただ、そういう主としてドル資本の海外移動ということについて御見解を伺いたいのは、たとえば、資本の自由化で入ってまいります、それは裏付けのない、いわば交換性の保証のないドルが入ってきます。そう考えますと、海外の資本移動について規制する場合に、あわせて、日本なら日本資本自由化で入ってくるというのなら、そのドルはあくまで何らかの質の保証がなければいけない、こういう御議論は、今後、国際会議の中で主張していかれますでしょうか。
  281. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) いまのお尋ねは、資本の自由化ということが逆行するという御趣旨であると私はかってに理解してお答えいたしますけれども、同時に、やはりこの中にも強調されておりますことは、国際的な、本来、資本も物も自由であるべきであるということが繰り返し強調されております。先ほど申しましたように、暫定的な措置はこうやるけれども、本来こういう姿であるべきである、それに向かって大きな努力をしようというこの考え方からして、日本として資本の自由化をするということは、当然この基本に従う考え方であると思います。そうして一面において、ただいまアメリカとしても先ほど来るる申しましたように、一ぺんきめた、あるいは声明したことを撤回したというのではなくて、逆行するということをお約束したわけでございます。こういうことでございますから、大勢としては資本の自由化、物の自由化、そうして世界一つというところに進んでいこうということを、もうくどいほどこの中でも、話にも出ておりますし、私自身も主張いたしましたし、それで合意ができたわけでございますから、資本の自由化を日本として今後考えていくということは、私は当然やってしかるべきことであると、こう思っております。  それからアメリカ資本の流入等について、当面、状況によりますけれども、そういった状況下においては十分注意しろよという御注意については、十分注意をいたしてまいりたいと思います。
  282. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて栗林君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  283. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 渡辺武君。
  284. 渡辺武

    渡辺武君 まず、総理大臣に伺います。  今回のパリ会議の結果を、総理大臣としてどのように評価しておられますか。
  285. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 非常にめんどうな状況にあった通貨問題に対して、アメリカ日本も参加をしながら、一応の方向をきめて、これから努力をしようという共同声明にこぎつけられたことはたいへん意義あることであって、評価できることだと考えております。そうでなければ、混乱が続きますし、場合によってはブロック化が進む、縮小均衡へという危険もあったわけでございますが、そういう面に対しては従来どおりの方針を守って、これが問題解決のためにお互いが協力をしよう、努力をしようということで、具体的な事例をあげて共同声明に運び得たことは、一つの評価ができると、こう思います。
  286. 渡辺武

    渡辺武君 今回のパリ会議の一番大きな成果は、アメリカドルの買いささえを行なうことを認めたというところにあるのだというのが先ほど来の御答弁でございました。しかし、この措置がかりに実施されたとしても、投機の抑制に効果があるものかどうか、これは私は非常に疑わしいと思います。先ほど別の委員からも質疑がございましたけれども、私も重ねてこの点を伺いたいと思うんです。  で、大蔵大臣日本銀行総裁は、この措置がどれほどの効果があるとお考えになっていらっしゃるか、お答えいただきたい。
  287. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 当面の国際的な投機的な活動はこれによって抑止されると、そういう意味効果があったと思います。  それから、私の御答弁申し上げた中で、アメリカが介入するということが最大のメリットであるというふうにお受け取りになったようでありますが、それも一つでございますが、たとえば、いまお話し申し上げておりましたような、アメリカとしての資本の流出、流入等に対する考え方関係国等の要請等にこたえ得るような方向に切りかわりができた、それからユーロダラー資金の跳梁ということに対して、はっきりした対策をいろいろの角度から打ち出そうということに合意をしたというような総合的ないろいろの問題が取り上げられ、これはジャーナリスティックなことばで申しますと、従来からこの通貨不安でもって言われていたような少なくともことばは全部ここに出てきた。そういう意味で総合的な対策をとらなきゃならないという合意ができまして、さらに国際的な通貨制度の確立について邁進していこう、それから世界経済としては一つ世界ということをスローガンにして、資本も物も自由な交流ができる、これが最終の願望である、これに対してできるだけすみやかに努力をしていこうと、こういう点が総合されて、私は、メリットがあったかなかったかということを御批判を仰ぎたいと思います。
  288. 佐々木直

    参考人(佐々木直君) ただいま大蔵大臣からもお話がありましたように、スワップの拡大というのは、国際通貨面における動揺の対策一つでございます。ただ、このやり方が持っております特徴は、国際通貨市場における急激な投機的な資金動きに対して、当面すぐそれを受けて出ていく力を持っており、それだけの機動性のあるという点に特徴がある。したがって、これもその使い方によって十分効果をあげ得るものと、こう考えております。
  289. 渡辺武

    渡辺武君 機動的な効果があるというふうな御答弁でございましたけれども、しかし、これは今度初めてきまったことじゃなくて、アメリカは、これまでもドルの買いささえなるものを私はやってきたと思うのです。どうでしょうか。
  290. 佐々木直

    参考人(佐々木直君) 一九七一年八月、新経済政策がアメリカにおいて発表されました後、しばらくこのスワップ取引を休んでおりました時期がございました。動いておらなかったのでありますけれども、その後、アメリカとしては、このスワップ取引を活用するという意向はあまり表にあらわしておりませんでした。今度のマルクの動揺の場合にも、アメリカはある程度ニューヨーク市場ドルの買い入れをいたしておりましたけれども、しかしそれは、今度決定を見たような精神のもとにおける買い入れとは見られなかった。今度は、それを、スワップのワクを拡大してもやろうという意味でのアメリカの前向きの姿勢が表明されたところに意味があると思います。
  291. 渡辺武

    渡辺武君 前回、このアメリカドルの買いささえが、ドルにしてわずか三億ドル程度のマルクを出してドルを買いささえたという状況です。私は、この前回の例を見てみましてもわかるように、今回、スワップを拡大してまでもやろうというふうには確かに言っているようでありますけれども、しかし、これはあまり効果のないものじゃないだろうかというふうに思います。特にこれはアメリカの財務長官のシュルツが、アメリカとしては買いささえの義務はないんだというようなことを言っておりますけれども、アメリカとしてこれは義務的にやらなければならぬことになっておりますか。そうじゃないんでしょう。
  292. 佐々木直

    参考人(佐々木直君) アメリカが、他国通貨をささえるために自国通貨を買い入れる、そういう義務があるとは私も思いません。しかしながら、世界の通貨秩序を維持するために、こういう国際会議の席におきましてこういう態度をきめたということは、そういう国際的な協調のためにはアメリカも一緒にやる用意があるという態度の表明であると、こう考えます。
  293. 渡辺武

    渡辺武君 あのパリ会議の終わった直後の記者会見で、アメリカのボルカー財務次官補が、これはアメリカのヨーロッパ諸国に対する好意だと、こういうような趣旨のことを言ったという記事がありました。アメリカのやることというのは大体この程度のことじゃないだろうか。決してこれは義務的なものじゃないし、手を縛られていない。もしそうだとするならば、前回もあまりきき目のなかったことを、これから先もそうきき目、があるとはとうてい私は考えられないと思うのです。  特に、ここに私はアメリカ関税委員会が出した、アメリカの国際企業の問題について書いた報告の外務省の要約を持っておりますが、ここに、「二千六百八十億ドルもの流動性資産が、いかなる公的機関の規制も受けずに動きまわっているわけであり、このほんの一部が移動しても通貨危機を容易に発生させうる潜在力をもつているわけである。」、こういうことが書いてある。その大多数がアメリカの国際企業の持っている短期資金だというふうに言われているわけであります。それほどの短期資金が、政府の統制に服さないで、あっちこっちと利ざやを求めて動いているというような状況のもとで、いまのスワップ拡大というようなことで、はたしてほんとうにきき目があるものだろうかどうか、もう一度これを伺いたいと思うのです。
  294. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) いま日銀総裁からも言われましたが、私が今朝以来申し上げているとおりの考え方でございまして、この蔵相・中央銀行総裁会議で、しかも十をこすような会議アメリカ政府の意図を表明し、かつそれを共同コミュニケに入れまして、これを全会一致で、アメリカが賛成をしたということは従来になかったことであり、そして、もうそろそろヨーロッパ市場も開く時間になると思いますけれども、おそらくこうした体制、先ほど申しましたように、スワップだけが対策ではございません。  もうあまり同じことを申し上げるのは恐縮ですから、多くは申し上げませんけれども、資本の流入あるいは流出、あるいはユーロダラーそのものに対する全世界的な抑制措置というようなことが、いろいろの点から取り上げられているというようなことを総合して、さしあたりのところは、投機資金の跳梁という、それによって起こるところの通貨不安は、さしあたり鎮静するものと私は見ておりますことは、先ほど申し上げたとおりでございますし、また、東京市場におきましても、もし国際的に何らかの不安が、まだ大きな要因があれば、何らかの不測の状態が起こったかもしれませんが、本日、平静のうちに正常な姿で東京市場は閉場いたしました。こういう点からごらんいただきましても、当面の国際通貨不安というものは一応平静に帰した、こういうふうに見て間違いないんではなかろうかと思います。それなりに、くどいようですが、スワップだけではございません、ほかの措置をあわせて、列国が一人の異議もなくまとまったこの体制というものが、それなりの成果なくして終わるものとは私は考えるべきではないと思います。
  295. 渡辺武

    渡辺武君 スワップだけが唯一の措置でないと強調されておりますけれども、これがどうやら実効があるかもしれないと思われるたった一つ措置としてしか、あのコミュニケを見ると、考えられないですね。あとはアメリカの金利の引き上げくらいのものでしょうけれども、これだって、金利の差を追って流動するというよりも、為替差益を取ろうということで大きな投機をやっている短期資金ですから、とうていこんなものは実効があるとは私は考えられない。  そこで、結局のところ、アメリカは義務を負ったわけじゃないし、ボルカーが言っているように、ヨーロッパ諸国に対する好意というようなことでこの措置を承認した、というようなことで、結果として出てくるものは、EC諸国の要求をいれたかのようなジェスチャーを示しながら、実際のところは、西ドイツのマルクも含めて、主要国の通貨を全体として変動相場制に入れたというのが、今回のパリ会議の現実的なおもな結論じゃないでしょうか。  ところで、伺いたいと思うのですけれども、日本やECが変動相場制に移って、そのことによって事実上各国の通貨が切り上げられるということは、アメリカにとって通商上有利であって、そうしてそれがほかの国にとっては不利な条件になると思いますが、どうでしょう。
  296. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先ほどもちょっと触れましたけれども、多国間において、正常であり、そして守られるような体制の固定相場制というものが相互に確立するということが一番私は望ましいことであると思います。したがって、当面の措置としては、アメリカは一〇%の切り下げで鎮静すると思ったに違いないと私は思うのであります。それから各国は、それぞれの判断によって、日本はもとより変動相場制に入りましたし、ときに閉鎖もやったわけでございますけれども、それぞれが同じような理想を持ちながら、同時に、しかし当面の緊急措置としては、あるいは見方によっては逆行するかもしれないというような措置をとりましただけに、これは暫定的な投機対策である、やっぱり本元は、しかるべき状況における固定相場が望ましい。これはそれぞれの国の立場からいってそうであるということで、まあアメリカが悪玉であるという前提に立ってのお考えはまた別にあると思いますけれども、世界全体が安定するようにという考え方をとる者から申しましては、やはり一日もすみやかに、十分な論議を通して、固定相場制をどういうふうに動かしていけるかということを建設的に考えていくべきである、こういうふうに思います。アメリカのために固定相場制に返るなどという考え方はございません。
  297. 渡辺武

    渡辺武君 アメリカの立場をるる擁護されておられるようですが、私は客観的なことを聞いているのです。  現在、ドルを除いて主要国の通貨が全面的に変動相場制に移っている。このことは、通商上アメリカにとって有利であり、そしてそのほかの国にとって不利な状況になっているんじゃないかということを伺っている。
  298. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは、各国がこれからどういうふうな体制をとるかわかりません。切り上げるところもありましょうし、現状で固定相場に返る場合もありましょう。そういうふうなこと、あるいは切り下げの場合もあるかもしれません。ともかくも、各国の立場からいって、現状では変動相場制が自分の国のためによろしいという判断でとっておるのでありまして、実勢がそれによって出てまいりますれば、おのずから安定してくるわけであります。これがアメリカにとって有利だから各国をしてフロートさせたんだというふうな経過では客観的になかったことも御承知のとおりであると思います。
  299. 渡辺武

    渡辺武君 アメリカドル一〇%切り下げによって円は一一・一%ばかり事実上切り上がったわけですね。その後変動相場制に移って、そして市場閉鎖直前には二百六十八円にまでドルは下がってきているわけですね。これは日本の輸出貿易にとっては非常に不利じゃないでしょうか。そしてまた、アメリカの対日輸出にとっては有利な側面ではないでしょうか。
  300. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 実勢のレートというものが切り上がっておりますから、それは理論的に言いましても輸出には不利である。ですから、中小輸出関連事業等については、できるだけの広範な措置をしておるのは御承知のとおりでありますが、一面から見れば、輸入のほうも見ていただかなければならない。何でもかんでも日本だけがアメリカのために痛めつけられたというふうには必ずしも考えられないんじゃないかと思います。  それから、理論的に言えば、こういった状況はむしろデフレ的な要因ができたわけでございますから、その要因というものを日本国益のためになるように、輸入政策とか、物価政策とか、その他の点に的確にあらわれるようにできるだけの努力をする。そして成果がそのほうからあがれば、これは日本としての国益につながるものだと、理論的にはかように考えます。
  301. 渡辺武

    渡辺武君 私の伺ったことにお答えいただきたいと思う、端的に。日本が円を事実上大幅に切り上げざるを得なくなっている。これはアメリカ日本に商品を輸出しようという場合に有利じゃないでしょうか。
  302. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ですから、それはいまお答えしたとおり、輸出という面から考えれば、日本の輸出には不利であって、アメリカの輸出にとってはよくなる、それは確かにおっしゃるとおりです。
  303. 渡辺武

    渡辺武君 今度のパリ会議のあとで、たちまち日程にのぼっているのが、スミソニアン体制以後の新しい国際通貨体系をどのように構築していくかという、いわば恒常的な対策だと思うんです。それがドル以外の主要国の通貨が変動相場制に移った、実際上それぞれの国にとっては不利な、アメリカにとっては有利な体制のもとで今後の国際通貨体制の協議が行なわれる、こういう状況がいま生まれているんじゃないでしょうか。
  304. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 御質問の要点が私よく理解できませんでしたから、もう一度お願いいたします。
  305. 渡辺武

    渡辺武君 各国の通貨がフロートした、そのことは、それぞれの国とアメリカとの関係で見てみれば、アメリカにとっては通商上有利であり、アメリカ以外の国にとっては不利だ、そういう条件が生まれてきているわけですね。そういう事情のもとで、今後の国際通貨体系をどうするかという会議が開かれるということになっているんじゃないかと、こういうことを伺っているんです。
  306. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私は必ずしもそう思いませんけれども、あなたがそういうふうな御意見をお持ちならば、それはそれなりに伺っておきたいと思いますが、私は、これから二十カ国委員会等を通じて、お話のように、何とかよい、確立された国際通貨制度というものができるように努力をしていくべきものである。それはアメリカのためにもいいことでしょう、日本のためにもいいことでしょう、その他の国のためにもよいようにしたいものだと、こういうふうに考えるわけです。
  307. 渡辺武

    渡辺武君 それでは次に移りますが、この共同コミュニケを見てみますと、各国が平衡操作をやる場合、関係国と密接な協議を行なって為替市場に公的に介入するという趣旨のことが書かれております。このことは一体どういうことなんでしょうか。たとえば、日本の場合で言いますと、日本がかりに円の平衡操作をもし行なう場合にはアメリカと密接な協議を行なうと、こういう趣旨でございますか。
  308. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) この点も先ほど申しましたが、「各国とも必要かつ望ましい場合には、自国市場において、自己のイニシアティヴにもとづき、市場状況にてらし、弾力的に行動しつつ、かつ売買される通貨の国の当局と緊密な協議のうえ、市場に介入する用意がある」、この介入操作につきましては、それぞれの国が自主的にイニシアチブに基づいてやるわけでございます。弾力的に行動するわけでございますが、この各国通貨の当局が密接に協議をして云々というのは、その次の数行を飛ばして、「このような操作に必要とされる資金を十分に確保するため、既存の〃スワップ〃ファシリティーの一部の拡大が考慮されている。」というところにつなげてお読みいただくともっと意味がよくわかると思います。要するに、スワップの動かし方というようなことについては、申すまでもないところですが、日本の場合で言えば、日銀と連銀との間に相談がなされるということは当然でございますし、緊密な連絡が必要だ、同時に、一々のトランスアクションなどについて双方が承認し合ってどうこうというようなことではございません。基本的なやり方、あるいは幅、あるいは条件といったようなものは、これは通常の場合、中央銀行相互間において密接な協議をして行なうべきものである、かように考えておりますが、そのままをここに書いたものでございます。
  309. 渡辺武

    渡辺武君 それでは、逆にアメリカがこの円相場についてドルの買いささえを行なう場合には、日本と密接な協議を行なうというふうにも理解していいですか。
  310. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ここに書かれているものを日本にアプライして申し上げますならば、東京市場においてどういうふうな介入をするかというふうなことについては、当然自分のイニシアチブによって弾力的に運用するということに相なるわけでございます。その資金等の関係において、スワップを活用するというような面については、日本銀行と連銀当局は十分に協議をしながら操作をしてもらうということに相なるわけでございます。
  311. 渡辺武

    渡辺武君 各国が自主的に介入するということを言っていると同時に、各国とも市場の動向に即応し、かつ関係国と密接な協議を行なった上、弾力的な姿勢で臨む考えである、ということでセンテンスは切れているのですよ。ですから、日本銀行が平衡操作をやる場合に当たって、それは自主的だということでやるけれども、同時にまた、これはドルとの関係ですから、アメリカとの協議をするということになっているんじゃないですか。
  312. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは、いまお断わりといいますか、申し上げましたように、あとのほうのスワップと拡大活用ということがここに関連しておりますから、特に「緊密な協議のうえ、市場に介入する用意がある」ということに相なっておるわけでございます。その意味は、「売買される通貨の国の当局」という字とあわせてお読みいただければよく御理解ができると思います。
  313. 渡辺武

    渡辺武君 どうもおかしいですね。それじゃ重ねてもう一つ伺いますが、アメリカがスワップを拡大して、そして円相場についてドルの買いささえを行なう場合、その介入点について日本政府と協議するということじゃないですか。
  314. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは、いまあらためて読み上げましたとおり、これは各国ともそれぞれのイニシアチブにおいて弾力的に運用し介入するかどうかということを自主的にきめるわけでございます。
  315. 渡辺武

    渡辺武君 それではアメリカが、円がどのくらい切り上がったところで介入するかどうかということは、アメリカの自主的な判断だと、こういうわけですね。
  316. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 自国の市場において、つまりいま申し上げましたように、日本の場合に例をもってすれば、東京市場でどうするか、介入するかということは、それぞれの国のイニシアチブにおいて弾力的に運用するということが行なわれるのは、もうこれは当然で、当然のことを書いてあるわけでございます。
  317. 渡辺武

    渡辺武君 そうしますと、当然のことだと言われますけれども、今度の共同コミュニケにわざわざこういうことばでうたわれている。この点は、われわれとしては重要視せざるを得ないと思うのです。あなた方のおっしゃっているように、緊急的な効果があるのだという、そのドルの買いささえ、これがアメリカが自分の判断でやるということになってくれば、円をどのくらい切り上げた状態のもとで介入するか、ドルの買いささえをやるかというようなことはアメリカの判断によってきまってくる。これは結局、円レートそのものについて、アメリカがそういう形で介入し得る可能性を持っているということを意味するのじゃないでしょうか。
  318. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 日本が東京の市場でどういう操作をするかということは、イニシアチブによってきめることは当然であり、当然のことが書いてある。同時に、その方法論として、スワップというものを増額したり、これを資金の調達の方法として使うような場合には、スワップというものは、御承知のように、日銀と連銀との間の預け合い協定なんですね、相手のあることなんですね、契約に基づいた。したがって、そこから資金を供与するというときには、相互預け合い勘定をどう利用するかということですから、相手との間に緊密な協議をするということは当然なことである。今度の介入の場合には、そういうことをやるように、何どきでもできるぞということが合意として表明されているところが、スワップの拡大までをやらなくとも、現実にやらなくとも投機退治には非常な効果があると期待されているわけでございます。したがって、それらのことをいろいろと考え合わせて、こういう文書になっているわけでございまして、介入をどうするか、自分のほうで、どういう資金で、かってにやる場合には、何もそういうことに拘泥する必要はございません。  同時に、日本としては、相場の乱高下等を防ぐためには介入を必要とする場合があると、しかし原則的にはクリーンフロートでいく方針であるということは、もう内外に示されてある明確な政府の方針でございまして、それに従って日本自身がやることについては、これは自主的にやっていくべきものであると、かように考えております。
  319. 渡辺武

    渡辺武君 時間がないので、次に移らざるを得ませんが、今後いわば恒久的な国際通貨体系の問題が協議されていくと思いますけれども、アメリカがこれについてどういう方針を持って臨もうとしているのか、この点を伺いたい。
  320. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) アメリカが終局的にどういう方針を持っているかということは、これからの相談で漸次わかってくるでしょうし、またアメリカ考え方も、現に持っている考え方がわれわれとの会議等によりまして変わるということもあるわけでございますから、アメリカがどういま考えているかということは、私としてはまだ捕捉しておりませんし、見通しがどうなるであろうかと——わがほうとしては、何べんも言っておりますように、ドル交換性ということを中心にして問題を取り上げなければ解決の方途はないし、日本としては、それ以外の考え方は、SDRの活用という以外には、ただいまのところは考え方がございませんと、こういうことはしばしば申し上げているとおりでございます。
  321. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 渡辺君、時間が来ましたから、いま一問。
  322. 渡辺武

    渡辺武君 はい。  アメリカが今後どういう方針で臨もうとしているかというのがわからぬというのは、ちょっとおかしいことじゃないですか。いままでもアメリカ政府は、国際通貨体制についてアメリカ政府なりの方針を発表している。たとえて言えば、通貨の問題と通商の問題は抱き合わせて解決すべきだということを執拗に強調している。今度も新通商法を国会に上程しようとしておる。そのことによって外国に対する輸入課徴金その他の制度をつくろうと、こういうことで通商問題を通貨問題にからませようとしてきているわけです。  ところで、アメリカドルの危機の一番大きな原因であるこのアメリカ国際収支の赤字、その要因を私は大蔵省でこうして調べてもらってみますと、一番大きな要因は、アメリカが海外に軍事基地を置き、あるいはまたいろんな力の政策を進める、そのための軍事支出が二十六億七千二百万ドル、これは昨年の一月から九月まで。それからアメリカ政府が海外のかいらい政府などに出す経済援助その他、これが四十四億六千四百万ドルで、これを合わせて七十一億三千六百万ドルにも及んでおる。これが最大の赤字の根源になっておる。貿易収支の赤字は五十二億二千三百万ドル。大きいことは大きいけれども、しかし、アメリカの力の政策に基づく海外支出が最大の要因になっておることは明らかだと思う。まずこれを解決することが今後の国際通貨問題を解決する最大のポイントだと思う。この点について、日本政府はどういう態度を今後とろうとなさるのか、その点を伺いたい。
  323. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 資料も差し上げてあるようでございますから、それに基づいてのお話しのようでございますが、まあ私の見るところは、一九七一年以降の悪化の原因というものは、やはりアメリカの民間の輸出の不振にあったと、これが最大の原因ではないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  324. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて渡辺君の質疑は終了いたしました。  次回は明日午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十四分散会