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1973-03-14 第71回国会 参議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年三月十四日(水曜日)    午前十時七分開会     —————————————    委員の異動  三月一日   委員水口宏三君は逝去された。  三月二日     辞任         補欠選任      喜屋武眞榮君     青島 幸男君  三月七日     補欠選任        上田  哲君  三月十四日     辞任         補欠選任      渡辺  武君     加藤  進君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大竹平八郎君     理 事                 上田  稔君                 佐藤  隆君                 高橋 邦雄君                 西村 尚治君                 米田 正文君                 森中 守義君                 横川 正市君                 鈴木 一弘君                 向井 長年君     委 員                 小笠 公韶君                 梶木 又三君                 川上 為治君                 木村 睦男君                 楠  正俊君                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 古賀雷四郎君                 塩見 俊二君                 白井  勇君                 玉置 和郎君                 徳永 正利君                 中村 禎二君                 長屋  茂君                 林田悠紀夫君                 細川 護煕君                 山崎 五郎君                 山内 一郎君                 吉武 恵市君                 足鹿  覺君                 上田  哲君                 川村 清一君                 小林  武君                 瀬谷 英行君                 田中寿美子君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 安永 英雄君                 塩出 啓典君                 三木 忠雄君                 矢追 秀彦君                 木島 則夫君                 岩間 正男君                 加藤  進君                 青島 幸男君    国務大臣        内閣総理大臣   田中 角榮君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  三木 武夫君        法 務 大 臣  田中伊三次君        外 務 大 臣  大平 正芳君        大 蔵 大 臣  愛知 揆一君        文 部 大 臣  奥野 誠亮君        厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君        農 林 大 臣  櫻内 義雄君        通商産業大臣   中曽根康弘君        運 輸 大 臣  新谷寅三郎君        郵 政 大 臣  久野 忠治君        労 働 大 臣  加藤常太郎君        建 設 大 臣        国 務 大 臣        (近畿圏整備長        官)        (中部圏開発整        備長官)        (首都圏整備委        員会委員長)   金丸  信君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      江崎 真澄君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 二階堂 進君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       坪川 信三君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       福田 赳夫君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  増原 恵吉君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       小坂善太郎君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       前田佳都男君    政府委員        内閣官房長官  山下 元利君        内閣法制局長官  吉國 一郎君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        公正取引委員会        委員長      高橋 俊英君        公正取引委員会        事務局経済部長 三代川敏三郎君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛庁経理局長  小田村四郎君        防衛庁装備局長  山口 衛一君        防衛施設庁長官  高松 敬治君        経済企画庁調整        局長       新田 庚一君        経済企画庁国民        生活局長     小島 英敏君        経済企画庁総合        計画局長     宮崎  仁君        経済企画庁総合        開発局長     下河辺 淳君        外務省アジア局        長        吉田 健三君        外務省経済協力        局長       御巫 清尚君        大蔵大臣官房長  竹内 道雄君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        戸田 嘉徳君        大蔵省主計局長  相沢 英之君        大蔵省主税局長  高木 文雄君        大蔵省理財局長  橋口  收君        大蔵省証券局長  坂野 常和君        大蔵省銀行局長  吉田太郎一君        大蔵省国際金融        局長       林  大造君        農林大臣官房長  三善 信二君        農林省農林経済        局長       内村 良英君        農林省構造改善        局長       小沼  勇君        農林省農蚕園芸        局長       伊藤 俊三君        農林省畜産局長 大河原太一郎君        農林省食品流通        局長       池田 正範君        食糧庁長官    中野 和仁君        林野庁長官    福田 省一君        通商産業省企業        局長       山下 英明君        中小企業庁次長  森口 八郎君        中小企業庁計画        部長       原山 義史君        自治大臣官房審        議官       近藤 隆之君        自治省財政局長  鎌田 要人君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    参考人        日本銀行総裁   佐々木 直君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十八年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十八年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十八年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付) ○公聴会開会承認要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会開会いたします。  昭和四十八年度一般会計予算  昭和四十八年度特別会計予算  昭和四十八年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。  理事会におきまして、三案に対し、総括質疑は本日から七日間とし、その質疑総時間は千八十五分とし、各会派の割り当ては、自由民主党及び日本社会党はそれぞれ三百八十五分、公明党百四十分、民社党及び日本共産党はそれぞれ七十分、第二院クラブ三十五分とし、質疑順位につきましては、とりあえず本日は、お手元に配付いたしましたとおり、日本社会党自由局主党の順に各一名の質疑を行なうことに協議決定いたしました。  そのように取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 次に、公聴会開会承認要求に関する件についておはかりいたします。  公聴会は来たる三月二十九日及び三十日の二日間開会することとし、公聴会の問題、公述人の数及び選定等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 御異議ないと認め.さよう決定いたします。     —————————————
  6. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  三案審査中、必要に応じ、日本銀行総裁及びその役職員参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  8. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) それでは、これより総括質疑に入ります。足鹿覺君。
  9. 足鹿覺

    足鹿覺君 私は、日本社会党を代表して、昭和四十八年度予算の審議にあたって、当面の重要問題について、田中総理以下各大臣に対し所信をただしたいと存じます。  まず最初に、田中内閣政治姿勢といいますか、田中総理政治信条について伺いたい。  田中内閣が誕生したとき、国民の人気は確かに田中内閣に集まった。これは、あながち、佐藤内閣政策の行き詰まりと、一面国民からあきられたこととの反動ばかりではなかったと思う。あなたの人柄、庶民性、役人上がりでない党人ぶり、そして決断実行のキャッチフレーズで総理実行力期待したと思うのです。特に、日中国交回復国民期待にこたえたものであり、あなたが大きな歴史の流れを理解され、われわれの多年の主張と、与党内の心ある人々や、そして日中国交正常化のため、捨て石、埋めくさとなられた国民の願望を満たし、日中国交正常化を実現されたことはきわめて意義深く、高く評価するものである。  しかし、その後、田中内閣内政外交を通じて、なるほど田中内閣はやるなあという、そういうふうに国民が思うようなことがないことをたいへん残念に思います。たとえば、国際通貨政策の不手ぎわ、物価値下げどころか高騰する物価を押え得ぬ空虚な物価対策中身と違う誇大表示のお粗末な福祉政策農産物自由化推進農業破壊食管体制の崩壊と商品投機不当買い占めの横行、国土の乱開発の進行と、農地、山林等の大規模な企業買い占め、時代に逆行する防衛力整備と四次防の強行などなど、内外の重大問題に対する対応緊急課題にきめ手を欠き、いわゆる決断実行信条に対し、まことに失礼ですが、国民期待を裏切られた感を深くし、政治への不信感は強まるばかりではないかと私は憂えておるのであります。  首相は最近、ソ連、東南アジア等の訪問を計画しておられると伝えられますが、それもけっこうでしょう。しかし、いま指摘したような山積する内政問題と取り組み、真剣にこれを解決することが先決でありませんか、お伺いいたします。
  10. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私が組閣以来半歳余になるわけでございますが、その間の問題に対して御激励を受けましたことは感銘をいたしております。私は閣員とともに、国会の御意向や、また国民各層意見を十分聞きながら政策遂行に精力的な動きをいたしておるつもりでございますが、結果に対して、いま御指摘のような批判もあるかもしれませんが、いずれにしましても、非常に複雑多岐日本社会も高度化してまいりましたので、にわかに成果をあげ得ないという面もございますが、これは積極的な施策を行なうことによって国民の支持と理解が得られるような結果を得べく努力をしてまいりたいと、こう考えておるわけでございます。  一つ申し上げるのは、米ドル切り下げによる為替変動相場制に移行しなければならなかった時期等に対しましては、円対策等諸般政策をやってきたにもかかわらずこのような状態を迎えて、これが対応策に対してなまぬるいという御指摘がございますが、開放体制ということばは久しく聞かれておるのでありますけれども、真に国際化開放化に向かっておるわけでございまして、言うならば避けがたい一つの現象とも考えられるわけでございます。これが国民生活に悪い影響を及ぼさないように、適時適切なる施策をこれからとってまいりたい。しかし、政府だけで行なえるものではないわけでございます。これは国会の御理解も得なければなりませんし、また、御賛成や御意見も承らなければならないわけでありますし、国民生活影響のある問題でありますので、理想達成の過程においては幾ばくか経路を経なければならない問題も存在すると思いますが、政府は、国会の御意向を尊重しながら適切なる施策遂行全力を傾けてまいりたい、こう思うわけでございます。何ぶんの御支援をお願いを申し上げたいと、こう存じます。
  11. 足鹿覺

    足鹿覺君 私は、結論として、外遊もけっこうでありますが、国民生活に密着した内政問題のどれとどれに当面特に力こぶを入れるということを、この機会に明らかにしてもらいたい。
  12. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私はまだ外遊を決定いたしておるわけではございません。外遊は全く未定でございます。質問に答えていわく——行ったらどうか、行くならいつかと、こういうことでございますが、いま国会開会中でございまして、国会尊重立場からいっても、いま外遊をきめておるようなことではありませんが、行けるようなことがあれば、あるとしても、国会終了後時期を見て考える問題でございますと、明確にお答えしてあるわけでございますから、これはお間違いのないようにお願いしたい。  それは外遊も、内治、外交といわれておりますから、政治の上では外交も大切ではございますが、外務大臣もおるのでございますから、私はやはり内政にその重点を置いて、特に、田中内政専門だとさえ言われておったこともあるわけでございますから、これはもう内政に対して全力を傾けなければならぬ、これは私自身もそう思っております。  そういう意味では、いま言われております物価の問題、それから国際収支の問題、社会保障の問題、これらの問題に対しては、これは当面する問題を片づけていくだけではなく、もうことしの八月三十一日までには各省の四十九年度予算概算要求をしなければならないということになっておるわけでございますので、国会は五月二十日までといえば、八月の末までは二カ月余しか残っておらぬ、こういうことでありますので、これは四十九年度予算の問題に関しても、当面する問題の対策とあわせて検討を進めなければならない、こう思っておるわけでございます。
  13. 足鹿覺

    足鹿覺君 これからの質疑を通じて、内政問題にどう取り組むかを具体的に追及してみたいと思いますが、第一に、順序として、国際通貨問題について伺います。国民の素朴な疑問に答えてください。  東京市場も二日から今週一ぱい閉鎖という、かつてないきびしい状況でありますが、この責任はきわめて重大であります。再開の見通しはいかがでありますか、今日までとられた措置とあわせて伺いたい。
  14. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 今回の東京為替市場の一時停止は、ヨーロッパ状況が、御案内のように非常に急激にかつ不安定な状況でございますので、その余波を受けて不測な事態が起こってはたいへんであるということで閉鎖いたしたわけでございますから、ヨーロッパのほうも漸次鎮静の見込みでございますから、できるだけすみやかに東京市場の開場をやれる見込みがついてきたということを申し上げていいかと思います。それから、閉鎖中におきましても、特に輸出関連中小企業等についてはできるだけの配慮を必要といたしましたので、国内金融の面においてはもちろんでございますが、為替取り扱い等についても、可能な範囲におきましてできるだけの措置を講じつつある次第でございます。もうここ数日中に開けると思いますから、影響最小限度にとどめてまいりたいと、かように考えております。
  15. 足鹿覺

    足鹿覺君 衆議院における円問題の政府見解についてでありますが、二月二十日、衆議院予算委員会で、総理は円問題の政府見解を読み上げ、「まことに遺憾である」、「責任を痛感」あるいは「その対策に万全を期す」と言っておりますが、その中身がない、国民にわからない。どうも責任感じ方が間違っておるのではないですか。この点について総理国会を通じ国民に謝するには、過去の総点検をして将来を見通し、誤りなきを期するという心がまえでなければならぬと思います。総理にそれがないようです。これでは今日のこのむずかしい国際金融情勢に対処できるはずがないと思います。どんなことが遺憾であったと思いますか、お答え願いたい。
  16. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 第一次平価調整が行なわれてからまだ一年二カ月ばかりしかたっておらぬわけでございます。平価調整というのは多国間調整という新しい方式できめられたわけでありますが、これは例のなかったきめ方をしたわけでございます。しかも、平価調整の効果というものは一年ないし二年、ある場合には二年ないし三年かかるんだということが世界で通例言われておるわけでございますので、その後三次にわたる円対策実行してまいったわけでございますし、その結果、輸出は多少鈍化傾向になり、輸入は飛躍的に拡大をし、国際収支も均衡の方向に向かいつつあると、こう考えておったわけでございます。しかも、新聞等の報道するところによれば、御承知のとおり七月ごろには、秋には再び国際通貨の問題が起こるのではないかというふうに流布はされておりましたけれども、アメリカがこの時点において一〇%の切り下げを行なうということは、さだかに予想できなかった状態でございます。それがイタリー、スイス、西ドイツ矢つぎばやに起こった欧州市場の混乱によって、日本もついに変動為替相場制に移らざるを得なかった。移らざるを得なかった結果は、輸出を主体にする中小企業零細企業には相当な影響があるわけでございますので、国民影響のあるような事態ということに対して、まあわれわれが考えたよりも幾ばくか早かったということは事実でございます。そういう立場からも遺憾でございますと、こう述べておるわけでございます。で、また、遺憾でございますということをただ述べるだけではなく、政治責任を果たさなければならないわけでございます。それは影響する中小企業零細企業に対して万全な措置をとらなければならないわけでございまして、累次にわたって金融、また税の繰り延べ措置等諸般措置実行いたしております。で、また、基本的には、このような状態を踏まえて、将来的展望に立って考えるときには、輸出優先主義から国民生活重点政策を変更しなければならないということでございますし、また成長活用型、社会福祉充実等をやらなければならないということで、経済社会基本計画の初年度の数字に合わせて四十八年度予算を編成をしたわけでございます。そういう意味で、五カ年間には日本産業構造の改革から、基本的な考え方輸出増強重化学中心というようなものから国民福祉の向上へ、しかも知識集約的な、公害の少ない産業へというふうに、構造的にも経済政策方向の転換もはかってまいらなければならないと、このように考えております。
  17. 足鹿覺

    足鹿覺君 史上最大と言われる投機について伺いますが、御承知のように今回の通貨不安は、またたく間に全面的なドル危機に発展し、二月十二日には主要国通貨の再調整という事態になりました。この間、各国ドル買いささえ額は、きびしい為替管理のもとにもかかわらず、西ドイツで五十九億ドルわが国十二億ドルを筆頭に、八十億ドルと推定される史上最大投機の前に、一昨年の末のスミソニアン合意がわずか一年余でふっ飛ぶという空前の事態に発展したのであります。これは投機に基づくものでありますが、この投機を起こした原因は何とお考えになりますか。
  18. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 一口に言えばドル信認というものの維持がむずかしくなってきた、ドルが不信認であるということが一口に言えばその原因であると思います。したがいまして、これはひとり日本だけの問題ではなくて、国際的な経済を安定させるために、現在は何と申しましてもドル基準通貨でございますから、これの信認を回復するということについて、アメリカはもちろんのこと、他国も協力をして、この信認が回復できるようにするということがきわめて大切なことである。そしてそれについて知恵をしぼって各国が対処して行こうとしておるのが現状であると、かように考えております。
  19. 足鹿覺

    足鹿覺君 アメリカドル過信の問題でありますが、わが国の。政府アメリカドル過信を繰り返しておるということでありますが、これまでの政策誤り指摘いたしましても正確な答弁が出てこない、だからまた間違いを再三繰り返す、こういうことになっておると思うんです。結論を先に言えば、先ほども言ったように、米国のドル過信、これが日本政府国際通貨問題を誤らしめ、今日でも誤っておるのであります。将来の方向づけを誤らせておる根源だと私は思っておりますが、これを是正する御用意はございませんか。
  20. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは当面緊急の対策と恒久的の問題と、二つに分けて考えていかなければならない。この二つはもちろん相関連することでありますけれども、当面のところは、国際的な投機が続かないようにするということであるし、それから恒久的な問題としては、やはり国際通貨の安定ということについて、かねがね二十カ国蔵相会議等におきましてはずっと努力が続けられてきたわけでありますが、この際こういった事態が起こるについても、国際的な合意のもとにおいてドル交換性が回復できるようにする、あるいはこれがなかなかむずかしいということであれば、SDRを基準にするというような考え方、これらを中心にしまして、恒久的な対策をできるだけすみやかにつくり上げていくということが対策中心である、こういうふうに考えておる次第であります。
  21. 足鹿覺

    足鹿覺君 日銀総裁に伺いますが、あなたは三月九日から開かれましたパリ蔵相会議出席されたわけでありますが、その会議内容を報告してもらいたい。  なお、付言して申し上げておきますが、日銀政策委員が七名のうち一名いまだに発令になっておらぬ。この重大な時期に一名をいまだに補充しないというようなことが、いわゆる総合対策にも支障を生じはしないか。これに対する対策等もありましたならばあわせてお伺いいたしたい。
  22. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 三月九日パリで開かれました会議内容について御報告申し上げます。  この会議のコミュニケではっきりいたしておりますように、現在の国際通貨面における動揺に対してどういう方策をもって対処すべきかということについて意見の交換が行なわれました。そこで合意されましたことは、今度の動揺というものは、投機的な資金の移動によって起こったものであって、現在の各国為替相場のあり方が不適当であるために起こったものではないという認識において一致した点でございます。したがいまして、こういう投機的な資金の移動に対して、どういう具体的な対策を講ずればいいかということが今後のわれわれが解決すべき問題である。したがいまして、この具体的な対策につきまして、大臣会議の代理会議というものが下にございますので、その下部の会議において今後検討する、そういうことに相なりました。したがいまして、今度の特徴は、おととしのスミソニアンのときのような、為替相場の調整で問題を解決しようというものではなくて、投機的な資金の移動、これに対する対策重点を置くということが今度の特徴でございます。  それから、日本銀行政策委員、これは任命委員が四名でございまして、これのうちの一人の方が先月の末に任期が参りまして、それで退任されました。その後任につきましては、いろいろ主管庁であります大蔵省と御相談して、国会の御承認を得べく努力はしておるのでございます。この点については今後ともさらに皆さまの御了解を得て、一日も早く後任者の任命を見るように努力を続けていきたいと、こう考えておる次第でございます。
  23. 足鹿覺

    足鹿覺君 ただいまの御答弁の中に、投機対策中心に論議を行なったということでありますが、その点をもう少し詳しく具体的に、結論があればそれも承りたい。
  24. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいま申し上げましたように、問題の所在がこういうところにあるということははっきりいたしましたが、その問題についての具体的な対策につきましては、代理会議において具体的に検討していくということで本会議は終わったわけでございます。したがって、今後そういう問題についてはさらに、おそらくこの十六日にまた大臣会議が開かれますから、それまでの間に詰められていって、十六日の会議にまた上程されるのではないかと、こう考えております。
  25. 足鹿覺

    足鹿覺君 この大事なときに、細見さんがその会議に参画をして、日本立場なり意見を述べるんですか。
  26. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) こういう状況になっております。  先般行なわれました蔵相会議には私は出席ができませんでしたので、細見大蔵省顧問を大臣のかわりに出席をさせましたが、同時に、いわゆるGテンといわれるほうの構成としては、大蔵省の財務官が恒久的な代表代理という肩書きを持っておりまして、これは稲村財務官というのがその席にあるわけでございますから、ただいま話に出ております蔵相代理会議には引き続き稲村財務官がそこに出席しているわけでございまして、これには、今回の会議自体がいわゆる二十カ国蔵相会議、あるいはGテンといわれる会議と、それからECの蔵相会議とが合体したようなかっこうになっております、いわば拡大Gテン会議とでも申しますような性格がございますから、いま申しましたように、今回の、先般私が出席できなかった点についての代理としては細見大蔵省顧問を派遣し、それからGテンの蔵相会議の代理会議には稲村財務官がその衝に当たっておるわけでございます。これは機構上そういうことになっているわけでございます。  それで、ただいま蔵相代理会議のほうも、ECの蔵相代理会議も行なわれておるし、また拡大蔵相会議の代理会議も行なわれている。この代理の会議が、ただいまも精力的に当面の投機対策について積極的な活動をしているわけでございますが、そこで出ましたいろいろの意見を取りまとめて、十六日の蔵相会議で最終的な決定を見ることに計画されているわけでございます。したがいまして、これは日本だけの考え方できまるわけではございませんで、会議体としてどういうふうにしていくかということがきまるわけでございますから、ただいまのところ内容的にどういうふうな状況で進んでおりますか、必ずしもこまかい点まではつまびらかでございません。また流動的でもございますから その内容等については現在進行中である、と。それから日本側の態度としては、緊急に、この当面の投機抑制策が早急にとられるということ、そうして基本的にはドル交換性回復ということがもう一番大切なことでありますので、その線に沿うたような緊急対策各国協力ででき上がること、これを基本にいたしまして、技術的な面につきましても、いろいろと日本側としても協力をいたしておるというのが現状でございます。
  27. 足鹿覺

    足鹿覺君 パリ会議日銀総裁は、大蔵大臣の代理として何を発言し、何を御主張になりましたか、聞きたい。十六日の主要国蔵相会議愛知大蔵大臣出席すべきだと総裁が考えるならば、そこで愛知蔵相に何を主張さすべきだと考えておられますか。先ほどもその一端は述べられたようでありますが、パリ会議出席された総裁の感触から、愛知蔵相が一番言わなければならないのは何とお考えになっておりますか。
  28. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 九日の会議におきましては、いま会議内容として申し上げましたと大体同趣旨のことを申しました。いまの為替相場というものは、大体において合理的に成り立っており、しかもまた、日本は現状に対して備えるべく変動相場制を実施しております。そういうような上に立ちまして、投機対策ということが一番大事であり、そのためには議論だけであってはならない、行動が必要であるというようなことを申しました。こういうことで、各国協力して今後さらに一段と投機対策を進めていくことが必要であると、そういうふうに申し、さらにまた、今後われわれとしては、状況が安定すればできるだけ早く変動相場から固定相場に返りたい希望を持って声る。そうしてアメリカ政府ドルの、再度、この次もう一ぺんデバリュエーションするということはないといろいろな機会にはっきり宣言しておることを歓迎すると、こういう点を申した次第でございます。  今度の会議は、先ほど申し上げましたような、いまの為替相場制を維持しながら投機に対処していくという、こういうことを中心にして考えられました。さらに十一日、向こうの欧州の十一日の夕方から開かれましたECの蔵相会議で、六カ国の共同フロートが決定されました。こういう新しいECの行動に対しまして、EC以外の国々が——おもなものはアメリカ日本でございますが、そういう国々がどういう協調態度をとるか、こういう点がこの次の会議重点であろうかと思います。したがいまして、日本から出られます大蔵大臣としましても、こういう新しい事態に対する日本の態度ということを明らかにされることが必要であろうかと、こう考えております。
  29. 足鹿覺

    足鹿覺君 日本銀行総裁として、また大蔵大臣の代理として、いずれもたいへん重要な役割りをになって出席されたのに、あまり日本立場を十分主張されておらないように日本新聞等は伝えておるのであります。当時の新聞では、日本出席は飾りびなだといった程度の報道も見受けたのでありますが、いまの総裁のお話を聞きますと、相当な御発言をなさったと理解することもできぬでもありませんが、満足がいきません。たとえば、ECと力を合わせてアメリカにたてついて、今度の激しい投機中心である多国籍企業等に対してECと共同してこれを押える、そういう勇断、決断、そういうことを考えるべきではありませんか。それだけの腹なくして一体何ができますか。この点については総理の御所信も承りたい。
  30. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先ほど簡潔に申し上げたわけでございますけれども、日本としては、ドル交換性の回復ということ、それから、アメリカとしての資本の移動に対する抑制ということを中心とし、それからもう一つは、アメリカの国内の金融政策ということ、これも国際的な当面の状況に対してできるだけ協力的な対策でなければならないというような三点が中心であると思いますが、これらには多面的な問題がございます。もちろん、多国籍企業というもの、そしてそれが投機の原動力だといわれている点でございますが、この多国籍企業の問題については、当面非常に大きくこれが浮かび上がったわけでありますけれども、かねがねから、国際的にもこれは問題の点であり、ことにOECD等におきましては、特別の委員会をつくって、そこで実情の検討にまで入り込んだ検討がされていたくらいでございますから、これらに対して、やはりアメリカに対し、あるいは関連する国に対しても、日本としても、もちろんいま申しましたような線の上に立った主張を貫徹するようにこの上とも努力しなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  31. 足鹿覺

    足鹿覺君 日本の通貨当局として、日銀はあまりにも自主性がないのではないかということを私は思っておるのです。たとえば、一昨年の円の切り上げ、さらに、ことしのフロートから、やがて再切り上げ必至のこの状況のもとで、四十六年八月のニクソンショック以来、日銀当局は円再切り上げ防止のため何をやりましたか。過剰流動性づくりに協力しただけではないかとさえ言っても過言ではありません。佐々木総裁は政府に従順過ぎて、国民の利益をそこなっておるのではないか。もっと強い決意で、自主性を持って対処される御意思はございませんか。
  32. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 四十六年八月のニクソン大統領の新経済政策の発表のときには、日本経済はまだ停滞のさなかにあったわけであります。その前、約一年近く前から景気がだんだん下降してまいりまして、いろいろの金融緩和その他の手が打たれましたけれども、なかなかそれが効果が出ない。やや効果が出始めたと思われるころに、いまのような新しい事態に直面いたしました。したがって、その場合におけるわれわれの金融政策は、それだけ落ち込んできた日本経済をできるだけ早く回復させるということが非常に重要なポイントであったわけであります。その後、ニクソン大統領の新政策影響で、日本経済は、四十六年、年内ずっと停滞を続けておりました。四十七年に入りまして、春ごろからやや上向いてくるというような状況でございます。そのときには、われわれは、日本経済の停滞が輸入を落とし、それからまた輸出に対する圧力を加える、国内市場が不活発でございますから海外に市場を求めるということから、国際収支の黒字を大きくしておる、そういう判断で、景気の回復が黒字の縮小につながるというふうに考えておりました。その効果は必ずしも直接にはすぐ出てまいりませんでしたけれども、最近になってようやく貿易収支については輸入の増大がはっきり見えてきたのであります。日本銀行といたしましては、そういった金融政策のほかに、具体的な政策といたしまして、それまで輸出金融の優遇をずいぶんやっておりました。それによって日本輸出が伸びてきた。そういう特殊な輸出促進の金融制度は、すべてこれを廃止してまいったのであります。したがって、景気対策による国際収支調整ということは、十分われわれとしてはできるだけのことをやってきたつもりでありますし、それから過剰流動性の問題につきましても、そのときそのときの金融政策、たとえばオペレーションあるいは貸し出し政策によって調整してまいったつもりでございます。
  33. 足鹿覺

    足鹿覺君 最近の例では、米国のシュルツ財務長官ドルの断続切り下げ構想に、バーンズFRB議長——米国連邦準備理事会議長でありますが、これは強く警告しております。さらに、同じくニクソン大統領等が考えておると言われる、自主変動相場制に各国を追い込み、自国に有利な通貨改革の条件を引き出そうとするやり方にも、世界経済を停滞させ、ブロック化等を引き起こす危険な影であるとさえ警告しておるではありませんか。アメリカ自身のシュルツ財務長官ドル断続切り下げ政策に対して警告をしておるのです。もっと日本は自主性を持って対処すべきではありませんか。重ねて伺います。
  34. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 中央銀行といたしまして、金融政策の面その他あるいは国際通貨の問題等について、それぞれ自主的にいろいろ判断し、また、それによりまして、自分の行動、中央銀行としての行動もいたしておるわけであります。政府に対して進言をいたします場につきましては、アメリカ式のやり方もありましょうが、日本式のやり方もあるわけでございます。私といたしましては、必要に応じて絶えず意見は大蔵大臣に通じておるつもりでございます。
  35. 足鹿覺

    足鹿覺君 日銀総裁は−−政府の今日までの国際通貨問題への取り組み、さらに政府は将来の方針もあまり十分持っておらないように思います。通貨の番人をもって任ずる日銀総裁政府施策に対する見解と批判といいますか、こういう非常事態でありますから率直に言ってください。総裁の立場で、国際通貨改革と日本の利益擁護にどのような考え方をお持ちでありますか。この点をお伺いいたしたい。
  36. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 四十六年の五月にドイツがマルクのフロートをいたしました。そのとき私はたまたまスイスのバーゼルというところで開かれております国際決済銀行の中央銀行総裁会議に出ておりました。各総裁と直接いろいろ話をして、そのドイツのフロートに関連する問題を勉強してきたわけであります。そのときに私が非常に感じましたことは、日本国際収支がこれほどよくなり、貿易の点につきましても、戦後二十年間心配したような逆超のおそれがだんだんなくなってきたというこの事実において、いまこそ、輸出にいままで向いておった労力、資材というものを日本国民の生活の向上に向けるべきときが来たというふうに考えまして、私は、そのときに日本に帰りまして、すぐその点を申し上げたわけであります。それからあと、政府のほうでは、いわゆる円対策というものを数回にわたって発表されました。その中には、金融の面で行なうべきこともございまして、少なくとも私が申し上げられることは、金融の面で必要であったことは全部いたしました。しかしながら、具体的な貿易の、輸入の自由化でございますとか、等々の点につきましては、各方面のいろんな関係から必ずしもそれが十分に行なわれなかった点があったというように思います。その点は、私は欲を言えば、もっとやってほしかったという感じがいたしております。  さらに今後の問題につきましては、これはもう世界的な傾向でございますけれども、いまはインフレーションが至るところで広がっております。最近の日本における物価の上昇も、海外における物価高の影響もずいぶんあるわけでございます。それで、今後は一国だけでインフレーションを克服するということはなかなかむずかしい、そういう点から考えまして、今後政府におかれても、また、われわれにおきましても、ほかの国の政府、中央銀行とよく横の連携をとりながら世界的なインフレーション対策に乗り出していかなきゃならぬ、こういうふうに考えておる次第でございます。
  37. 足鹿覺

    足鹿覺君 自主性のない対米追随政策について政府に伺いますが、米国のドルが基軸通貨であるとか、現在でもそれにかわり得る国際通貨がない、二言口にはこういうことをおっしゃる。それはまあそうでしょう。私どもはわかっております。しかし、いまさら総理がそんな説明のしかただけをしておられる、蔵相もそういう言い方をされる、これはアメリカ政府の高宮が言っておることと同じでありませんか。そうではなく、日本政府ドルを過信し過ぎなかったかと、私はさっきからこのことについて聞いておるのであります。  で、ひとつ具体的な事実をもって伺いますが、過信はおろか、全く自主性のない、対米従属もはなはだしいと思う事実があるのでありますが、政府は思い当たることはありませんか。
  38. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 現状の御認識についてはよく御理解をいただいていると思いますが、その現状の上に立って、先ほど申しましたように、当面緊急に処理をしなければならぬことと、それと相関連して、やはりできるだけすみやかに国際通貨が安定するということ、これが何よりも望ましいことでございますから、これに対して、もうあらゆる努力をいたしつつあるわけでございます。  過去において何か思い当たることがないか、対米従属の例をあげろとおっしゃいますけれども、政府といたしましては、スミソニアン体制もそうでございますけれども、とにかく現状においては国際的な基準通貨ドルであるということ、それから日本としては、貿易上その他から申しましても、アメリカとの関係は一番深いわけでございますから、いろいろの面からいって、やはりドルが、まあ俗なことばで言えば、しっかりしてほしい、それに対してはこちらも協力をしなければなりませんが、まずアメリカとしても勇断をもって対処してもらわなければならない、こういう基本的な認識でございまして、別に、対米従属を特にやった具体的の例を思い出して話せと言われましても、何をおねらいになっているのか私にはわかりませんので、さらに御質問があればお答えをいたしたいと思います。
  39. 足鹿覺

    足鹿覺君 それでは申し上げましょう。  今度の通貨騒動の結果、日本円は変動制に追い込まれたことは周知のとおりである。政府ドル切り下げの情報を知ったのは、いつ、どこで、だれが、だれから入手したか、その経過を説明してほしい。
  40. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これはアメリカが自分の国の態度として一方的にドル切り下げを世界に発表したわけでございます。これは世界じゅうがあっと思ったことは、まあこれは御承知のとおりだと思いますので、特に日本に対してどうこうと事前に言ってきたことはございません。
  41. 足鹿覺

    足鹿覺君 シュルツ長官の声明の中には、円の変動相場制への移行が言明されております。私の手元にありますこの権威ある資料にもちゃんと載っております。いいですか。すなわち、それによりますと、「日本通貨当局は、円を変動させることを示唆した。われわれは円が政府の大幅な介入に依存せずに、国際収支の均衡を実現する目的に合致するよう、他の通貨との為替レート関係で変動することを固く期待している。」というものであります。このシュルツ長官の声明を御存じですか。
  42. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 承知しております。
  43. 足鹿覺

    足鹿覺君 しかりとすれば、さらにシュルツ長官が−−日米政府当局間で事前協議が行なわれたことは明らかであると、私どもはそういう情報を得ておるのである。それにしても他国の政府が、日本の円はドル切り下げのレベル、一ドル二百七十七円二十銭から変動相場制に移る、こういうことを言ったということはまことに不可解千万なことではありませんか。政府はこれを否定されますか。お認めになりますか。
  44. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) いまおあげになりましたような二百何十円でどうとかというようなことをアメリカ側から話してきたこともなければ、事前に相談したようなことはございません。日本が変動相場制度に移行いたしましたのは日本が自主的にとった措置でございまして、これは当然、こういうふうな激変のときにおきましては、日本としての、私はどなたがごらんになりましても当然とるべき措置であったと思います。そして、それなりの評価を受けておると思います。
  45. 足鹿覺

    足鹿覺君 それでは否定なさるわけですね。じゃ、ここにちゃんとした権威ある研究機関の、あなた方が米国と事前に示唆を受け、示唆をし、そして話し合っておるというそういう報道があるのですよ。重大ではありませんか。
  46. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) いま申しましたように、私は、前段においてシュルツ長官がそういうステートメントを出していたということは承知しておりますと申し上げておりますが、後段で言われたような為替レートに触れてどうこうというようなことは全然相談したこともなければ、したがって、先方がそういうことを公式に言っているというようなことは私は全然承知しておりません。
  47. 足鹿覺

    足鹿覺君 じゃ、前段は御肯定になるのですか。特に日銀総裁、「日本通貨当局は」とあるのですが、あなたもその通貨当局の一人でありますが、あなたも御存じでありますか、承認されますか、お認めになりますか、否定されますか。
  48. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 事、通貨の対外交換相場、そういうものについての決定は政府にございまして、中央銀行は全く関係ございません。
  49. 足鹿覺

    足鹿覺君 前段は一応御承知のようですね。そのほうが重大ではありませんか。「日本通貨当局は、円を変動させることを示唆した。われわれは円が政府の大幅な介入に依存せずに、国際収支の均衡を実現する目的に合致するよう、他の通貨との為替レート関係で変動することを固く期待している。」との声明は、あなた方がアメリカに示唆したんだ、内々でオーケーを与えておるのだ。これは知らぬ存ぜぬでは通りません。独立国としての権威と自主性のなさを、アメリカの言うがままに操縦されたことであって、私どもはこのような措置を了承するわけにはまいりません。
  50. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) それは、私としてはいただけない御観察であり、御意見であると思います、率直に申しまして。アメリカがとった措置あるいはヨーロッパで起こった状況に対して日本が自主的にとったのが変動為替相場であり、そしてこれがいわゆるフロートになったわけで、日本としてはこういたしましたということは、これは列国間の従来からの協調関係から申しましても、通報するのは当然でございます。その通報を受けて、そしてこういうことを期待すると言われておりますことは、アメリカだけではございませんで、その状況下においては、いわゆるフロートというものはクリーン・フロートであってほしい、これは、お互いの各国ともそういう場合に表明される、期待を持った言動が行なわれることは当然でございまして、現に今回の蔵相会議に対しても、どういうふうに日本はやっていくのだと、これは国会でもいろいろ御質疑もございますが、公に国会の場を通して、先ほど申しておりますが、日本としてはこういう主張をするのだ、これはもう事前に向こうにもよくキャリーされていると思います。日本が変動相場制に移ったときに、その通報と同時に、フロートに対しては日本としてはこういうふうなクレーン・フロートでやってほしいなと、いわゆる大がかりなインターベンショーン、介入というものはしないでほしいなというのは、外国側からすれば当然の私はコメントであると思います、それが実情なんでございますから。それに対して、いまお話しになったようなことは、私としては理解に苦しむわけでございます。
  51. 足鹿覺

    足鹿覺君 この情報機関の記事によれば、「「固く期待している」というのである。これによると、日米政府当局間で事前協議が行なわれたことは明らかであろうが、それにしても他国政府が「日本の円はドル切り下げのレベル(一ドル=二七七円二〇銭)から変動相場制にうつる」とのべた点は、あらためて注目しなければなるまい。」と断定しているんですよ。日本の最高ともいわれるこの種の権威ある情報がかくまで伝えておることをあくまでしらを切るつもりですか、事実と違うのですか、おかしいですよ。
  52. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) しらを切るとおっしゃいますけれども、私は事実を誠実に申し上げているだけでございます。そしてこれは、私が前段は肯定したというのは、シュルツ長官がステートメントを出した、あるいはそのステートメントはすぐこちらへも通報がございました。ですから、それはそのとおりよく存じております。しかし、後段は、なんでございましょう、シュルツとかアメリカ政府がこう言ったということではなくって、そうであったろうという観察ではないかと私は思いますが、半面、御承知のように、きょうこの瞬間でこういう問答がありますことも、アメリカをはじめ諸国には、もうそのまま、公になっているわけでございまして、日本の大蔵大臣がこう言った、あるいは日銀総裁がこう言ったということはこのままキャリーされているんで、これがそれならば事前にこういうことがあったに違いないかどうかというようなことを、今度はアメリカで受け取った人たちが、これは事前に、そういうことを日本の大蔵大臣が言うんならば、われわれのほうにもそういうことがわかっていたのかなというふうな観察をたとえばする場合もあろうかと思いますが、そういう種類のことではないだろうかと私は思います。
  53. 足鹿覺

    足鹿覺君 私は、この種のものは、やはり事、国際問題であって、研究機関がみだりな記事を捏造する、そういうことはできぬ、かように思います。先ほどあなたは、情報を知ったのはいつか、いつ、どこで、だれが、だれから入手したかと言ったら、それはないとおっしゃった。事前であるか事後であるか、その辺はこの場であなたがどうしても明らかにされないならば、私はこの際、この問題をはっきりさせるまで質疑を続行するわけにはまいりません。国民を欺瞞するもはなはだしいではありませんか。事実は事実として率直にお認めになって、そして、自主経済外交を今後やるんだと、こういう御言明を期待しておりました。いかがですか。
  54. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) アメリカドル切り下げをしたということは、その扱い方がどうであったかということはアメリカの問題でございますけれども、アメリカとしては、政府として決定をして、そしてそれを即時に世界じゅうに公表したのであって、事前に、私のほうは一割切り下げますよということを、特に日本に対して事前に相談をしてきたとか、あるいはこちらがそれに対して承諾をしたとか、そういうふうな事実は全然ございません。
  55. 足鹿覺

    足鹿覺君 納得がまいりません、いまの御答弁では。そんなばかなことがありますか。
  56. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  57. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 速記を起こして。  委員長から一言申し上げます。  ただいまの足鹿君の、質問につきまして大蔵大臣とのお話の取り合いに食い違いの点があるようでございますから、これは理事会の問題として、後刻理事会においてこれを協議いたしたいと思いますから、どうぞ質問を続けてください。
  58. 足鹿覺

    足鹿覺君 よろしくお取り計らい願いたいと思います、審議のほどを。  外為会計の損失額についてお尋ねをいたしますが、今日までのわれわれの主張を無視した結果が円の再切り上げとなった、しかも、これを防衛する手段が全く講ぜられていなかった、その事実はあとで記録によって明らかにいたします。一昨年の円切り上げと今回の円切り上げで、国の産業経済が受ける被害額はどうか。
  59. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ドル切り下げによりまして、たとえば日本銀行の保有しております外貨に評価がえがあり得ると思います、評価損が。しかし、これは現在変動為替相場でございますから、これは外為と同様に、外国為替基準相場が確定したときに評価損を計算するわけでございますから、変動相場中は現に基準となるべき公定の外国為替相場はございませんから、現在のところは、まだその処理の段階ではございません。  それから一般的に、民間がどれだけ損をしたか、あるいは得をしたかということが、これから変動相場が行なわれているこの影響というものが輸出の面にどうあらわれてくるか、あるいは輸入の面にどうあらわれてくるか、こういう状況については、いましばらく時間の経過を見なければ、これが日本経済、民間を含めて、どういうふうな影響、プラス・マイナスにあらわれてくるかということは、いましばらく時間の推移を見なければ数字的に御説明するような段階にはならないと思います。
  60. 足鹿覺

    足鹿覺君 評価損については、ちゃんと計算しておるが、公表ができないと言うんですか。フロート中で被害の計算ができないと言うんですか、どっちですか。
  61. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 将来、固定相場に復帰をして、そしてそのときにレートが変わるようでございますれば、その変わったレートによって評価損というものを正確に勘定しなければなりませんが、いまは評価がえをする基準になる公定の相場がございませんから、現在の期間中におきましては評価損を勘定することはできない、こう申し上げておるわけでございます。
  62. 足鹿覺

    足鹿覺君 さらに、この政府の外為会計と日本銀行が持っておるドルドル債権の損失額は、前回が幾ら、今回が幾ら、お示しいただくことも、これもできませんか。前回の分がないと……。
  63. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 従来、評価がえをいたしましたものは数字的にきちんと御説明ができるわけでございます。数字は政府委員から御説明いたします。
  64. 林大造

    政府委員(林大造君) お答え申し上げます。  前回の円の切り上げによりまして生じた評価損の金額でございますが、外国為替資金特別会計におきましては四千百四十七億円、日本銀行におきまして四千五百八億円でございます。
  65. 足鹿覺

    足鹿覺君 相当巨額なものですね。今回の分はいつごろになったら判明しますか。
  66. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 変動相場制から固定レートに切りかえるときに、これは決定されるべき性質のものでございますから、現在、何月何日と予定して申し上げることはできません。
  67. 足鹿覺

    足鹿覺君 約一兆円の損失を先回で受けているわけですね。今回はこれを上回るとも下らないことは明らかだろうと思いますが、まあ、あとでわかるような時期に、なるべくすみやかにお聞かせいただきたいと思います。  続いて、累積ドルの始末をどうするか。国民に対する責任をどうするか、この問題について伺いたい。  昨年一年だけでたまったドルがおよそ九十億ドル。しかも、累積した二百億ドルは、円に換算して、低目に見ても五兆五千億円以上の大金です。これが金との交換もできない。国内ではもちろん使用もできない。まことに矛盾きわまるところであり、国民には全く理解することができません。このドルをためるために、高度成長、輸出第一主義によって、いまやわが国は、国土は乱開発、買い占め、公害のたれ流しで荒廃の極に達しております。命と暮らしを脅かされ、国民生活は破局に瀕し、安い給料のサラリーマンや低い賃金の労働者諸君が春闘で賃上げを若干かちとってもインフレによって帳消しになってしまう。中小企業は、打撃で労使ともにつぶれていく。米価を三カ年据え置かれた上に減反をしいられ、政府の奨励で果樹を増産し、ミカンが実るようになった農家も自由化で泣かされ、飼料の今回の一万円以上の暴騰によって畜産農家は軒並みに牛を殺して売るという悲劇が起きておる。まさに、農民は断崖に立たされたと言ってもいいでしょう。インフレ政策で、貯金をしてもその価値が十年余りで半分になってしまう、この激しいインフレ、しかも、公共料金や諸物価の値上げを政府はあきらめようとしない。生活にこのようにあえぎ苦しんで得たものがこの始末では、国民は絶対に納得ができません。政府国民に対し、何をもって責任をとりますか。つまり、ばく大なこの累積ドルをどう始末するか、その基本姿勢を総理から承りたい。
  68. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ドル切り下げということによって、確かに数字的には円貨における損失ということが会計上は起こります。しかし、日本ドルを得なければならないということは、これはもう過去のことを申し上げるまでもなく、輸出をもって国是としてきた日本でございますから、日本人がつくったものを日本人が消費をするだけではどうにもならないわけでございまして、海外から膨大もない原材料を輸入をしてきて、これに国民的英知を加えて輸出をする。しかも、原材料を持つ国と持たない日本が自由な市場で競争をしなければならないというのは、過去も現在も奨来も、日本人に負荷された宿命でございます。ですから、輸出ができなかったときの、外貨がなかったときの戦後の日本人の生活がどんなであったかは、これはもう申し上げるまでもないわけでございます。ですから、日本は、どうしても国際新ラウンドを推進しながら、どうしても拡大均衡を維持するために努力をしなければならぬわけでございます。  そうすると、その中で人間はふえてゆく、人間がふえてゆけば国際的に流通する貨物の量は多くなる、多くなるものを、一年間に産出量はきまっておる金で決済をすることはできない。それでは何で決済をするのかということで、ドルとポンドが基軸通貨として世界の拡大均衡をずっとささえてきたわけであります。戦後の日本経済もこのような状態の中にあったことは、これはもう私が申すまでもないわけでございます。  今度は、まあいままで弱かった円というものが、今度はドル切り下げによって対ドル価値は上がったわけでございます。そういう意味からいうと、原材料を輸入しなければならない日本の現状から考えてみて、これは、切り下げられたということは計算上のものでありまして、アメリカアメリカ関係のところから来る原材料や品物は切り上げられた円で買えるわけでございますから、その意味では、安く物が入る。まあ普通のドルドルとして通用することは、これはもう申すまでもないわけでございます。それで、アメリカというものと日本状態は、その三〇%が対米貿易である。ドルの一〇%切り下げだけでも中小企業はたいへんな影響を受けるというのでありますから、アメリカ日本との交流がなくなれば、これは日本経済というものはどんなになるか、これはもう言うまでもないわけでございます。多様化をしなければならぬというけれども、三〇%に及ぶ対米貿易を他に急速に転換できるような状態にないことも事実でございます。  そういう意味で、ドル切り下げによる円価値の上昇というものに対しては、これはまあデフレ効果もあるわけでございます。普通からいえば、品物は下がる。これは物価の上から言ったら非常に寄与するわけでございますが、一時的な現象として物価が上昇しておるということは、まあドル切り下げだけではなく、いろいろな問題がからんでおることは事実でございまして、これはやっぱり物価対策物価対策として十分やらなければならないし、ドル切り下げのやっぱりメリットというものは、物価政策に、物価に反映をさせて、国民生活に反映をさせなければならないということを一つ考えております。  もう一つは、変動相場制に移行したこと。ドル切り下げによって受ける中小企業零細企業等の影響に対して遺憾なき政策を行なわなければならない、こういうことでありまして、政府諸般政策を行なっておるわけでありますし、これからも十分行なってまいるつもりでございます。きょうも一つ中小企業金融等に対して措置をいたしたわけでございますが、そういう意味でこのドル切り下げ、変動相場制移行というものを、やっぱり災い転じて福になすような施策をいかに行なえるかということが政府責任でございますし、これからも政府は十分その対策はとってまいりたいと、こう考えておるわけであります。
  69. 足鹿覺

    足鹿覺君 ただいまの総理の答弁はちょっと抽象的ですが、いままで世界じゅうからとやかく言われながら、汗水流してため込んだばく大なドルを生かすためには、私は、どうしてもアメリカドルの金交換性を回復させることを迫らなければならぬと思うのです。その条件について、政府はどう考えておりますか。総理
  70. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ドルが基軸通貨である限り、これは金との交換性を回復してもらわなければ非常に不安でございますから、これは当然そうしてもらわなければいかぬ。金の交換性ということが確保されれば、ドルがまた切り下げられるというようなうわさもなくなるわけであります。そういう意味でも、交換性というものの回復ということは強く要請をしております。これは、まあ六カ国の蔵相会議でも、ポイントはここだと思うのです。ただ、無条件で金の交換はできないわけであります。アメリカの持つ力、経済力というものは非常に大きいと思いますが、思いますけれども、金の兌換を停止をしたというには、それなりの理由があるわけであります。ですから、アメリカが持っておる金を、百億ドルの金だけはかえてしまって、あとはもうないのだというわけにもいかないでしょう。世界の金市場から金を集めて交換性に応ずるというわけにもまいりません。が、結局は、ドルの価値維持というものは、アメリカ経済が強くなるということと、それから多国籍企業のように海外に流出をしておる膨大もないドルというものに対して規制措置を行なう、というような問題が前提になるわけであります。  そうして、もう一つは、変動為替相場制から、ある時期には固定相場制に返ると思います。返ると思いますが、そのときには、少なくともドルというものを基軸通貨としていく以上は、あるものをたな上げするか、あるものをどうするかは別にしまして——これはアメリカだけの責任ではなく、そこに問題がありますが、アメリカは、あなたが指摘をせられたような文章にも書いてありますが、アメリカが、アメリカモンローのように域内だけでもってがちっとまとまってしまえば、アメリカドル交換性も、アメリカドル価値の維持もしごく簡単であろう。が、しかし、その場合には、第二次大戦と第一次大戦の間のように、世界は縮小均衡に向かって、南北問題などはもうデッドロックに乗り上げてしまう。だから痛しかゆしであります。そういうところにキーカレンシーとしてのドルの存在があるわけでありますから、アメリカ努力をするかわりに、お互いも努力をしようというのが、いまパリにおいて開かれておりますし、今月末の二十ヵ国の蔵相会議にもなるわけであります。スミソニアン体制も、そういうお互いが協力をして基軸通貨としてのドル価値の維持をしようと、こういうことで来ましたが、一年二カ月しかたたないときに、また一〇%も切り下げたので、今度はやはりアメリカに相当の責任を持ってもらわなければいかぬと。特に西ドイツは、一〇%も切り下げられて、その上にまた三%みずから上げているわけですから、これは非常に強い要求というものがヨーロッパでは出ておると思います。これは、私は詳細を聞いているわけでありませんし、これらの問題は、なかなか各国にも詳細には、きまる瞬間までには絶対に、影響するところ非常に大きいものですから、これは発表しないということでございますから、私も詳細は承知しておりませんが、日本でもやはりある意味における兌換、金との兌換というものはどうしてもやってもらわなければならぬと、こういうことはやはり西ドイツと同じように日本も主張いたしますし、欧州の六カ国が共同フロートをするということにでもなれば、これは当然そういうことが出てくると思うのです。  もう一つは、日本における過剰資金の吸い上げと同じように、ヨーロッパにあるいわゆるユーロダラーのような過剰資金をどうして一体吸い上げるか、アメリカがどのぐらいウェートを持つか、各国がどうするかというような問題も含みながら、最終的にはやはり金の兌換ということが問題になると思います。金とドルとの兌換ができないということになれば、何を一体基軸通貨にするかという問題が出てくる。金とは兌換できなくてもSDRとの兌換はしますということになるかもしれません。これは少し先走った話になるかもしれませんが、いずれにしても、何か結論を出さなければならない状態になっておるということは事実でありまして、これはアメリカ各国が真剣に共同の責任で、まあ、スミソニアン体制は共同の責任でやったんだから、今度はアメリカにウエートをかけて少しやってもらいたいということにならざるを得ないと思います。
  71. 足鹿覺

    足鹿覺君 いまの首相の決意なり所信は、相当実行してもらいたい。  そこで蔵相に伺いますが、この金交換の条件について諸説があります。アメリカがいやいやながら金交換性を回復するとなれば、その条件について、たとえばたれ流した七百億ドルの大幅たな上げ説というものも聞いております。それからドルをもう一度切り下げて、すなわち金の値段を大幅に引き上げて、アメリカが現在所有する金百億ドルを大幅に水増しをする、こういう説もありますね。私は金融の専門家ではありませんから断定はいたしません。こういう説もある。また、そのいずれでもなくして、他に何らかの方策はあるかもしらぬ。あるいはアメリカがあくまでドルの金交換を拒否する場合もないとは言えない。通貨当局の最高責任者として、蔵相は、その条件についてどう検討していられますか。
  72. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先ほど申しましたように、正確なことばで申しますと、ドル交換性と先ほど申しましたわけでございますが、それにはいろいろの方法論が、いまも御指摘がございましたように、いろいろの考え方があると思いますから、これらの点について、できるだけ早急に、債権国と言いますか、最もドルを持っている国々が理解できるような案ができ上がって、かつ実行に移ることが私は望ましいと思います。必ずしも金に限定するということもできない場合も、ただいま総理が御発言のとおり、ございましょう。そういう場合に、SDRというようなもので、交換性というものの手段、方法とすることも、あるいは考えられるかもしれません。それから、何ぶんにも金額が非常に大きゅうございますから、時期的にある部分をどうするというような方法論も考えられるだろうと思いますが、その辺のところをどう早急に詰めるかということについて、これはドイツもそのほかのEC諸国も非常に関心が深いところであり、日本としてはますますもって関心の深いところでございますから、これらの多数国がアメリカとの間に話し合いをして、そしてできるだけ早くできる、だけ望ましい姿で結論をつけるということが、実は九日以来のこの蔵相会議などで、必ずしも表面には出ておらぬかもしれませんけれども、こういう点の動きが、相当流動的に動き出しているということは私は言えると思います。何とかして早くこれを煮詰めたいというのが私の現在の心境でございます。
  73. 足鹿覺

    足鹿覺君 その条件について、アメリカがいやいやながら金交換性を回復する、その条件をやはり煮詰めて、そして先ほど総理の言われたような考え方もありますが、それらは、日本が最大の二百億ドルというものを持っておるのです。これからもふえるでしょう。それを、できれば具体的に聞きたい。何をお考えになっておるか。総理総理らしい御答弁になりましたが、蔵相はどうですか。
  74. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これはいろいろの考え方があり得る。最も好ましい条件でまとめたいということを申し上げておりますが、これを、しかし事柄の性質上、ある程度以上はまだ申し上げる段階でございませんし、そういう点が、またこの金曜日にも開かれます第二回目の蔵相会議などが一つのその促進の場になることを期待しながら、努力を新たにいたしたいと思っておるわけでございます。たとえば、最大の急速な被害者というか、影響を受けたのがドイツでございます。これは三百億ドル以上現に持っているわけでございますが、これらとの関係もございますから、ある場合においては、EC諸国と歩調を合わせ、ある場合におきましては、アメリカに対する大きな関係を持っております日本が、特に話し合いの場を持つとか、いろいろの方法で煮詰めてまいりたいと思っております。
  75. 足鹿覺

    足鹿覺君 この段階ではなかなか明らかになさらぬでしょう、これ以上申し上げません。いずれにせよ、二百億ドルもの紙ドルを保有する日本政府の損失は大きいと思う。輸出してもうけることもけっこうです。しかし、そのもうけた金の始末も考えて、国民のためになるようにしてほしいというのが国民の声なんです。輸出優先主義の転換をはかれとわれわれが言うのは、ここのことなんです。総理いかがですか。この国民の声を聞いて、輸出優先を百八十度転換される御決意をひとつ承りたい。
  76. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま御指摘のとおり、輸出優先から成長活用型へ、もっと率直に申し上げれば、国民福祉優先へということに施策転換をしなければならないということで、もうすでにお示しいたしておりますように、経済社会基本計画におきまする五ヵ年計画の第一年度として、その数字に合わせて四十八年度予算の計上が行なわれたわけでございます。そういう意味で、これからは、御指摘になるような、ほんとうに国民のつくった国際競争力が、外に向けて強いだけではなく、国民にあまねく均てんするようにしなければならない、こういうことを施策の基本といたしておるわけであります。戦後は、やはり何としても輸出をしなければならないという状態でございましたが、ちょうど二年前まではその施策が続けられてきたわけでありまして、四十六年の一月の外貨保有高が四十五億ドルでございます。ですから、それからわずか二年の間に二百億ドルと、こういうことになったわけでございます。対外債務が非常に多かったのが、対外債権を有するようになったわけでございますから、日本の国力は非常に培養されたわけであります。ですから、この力をもってして、今度は、まあ飲まず食わずというんじゃありませんか、何とか節約をしながら努力をしてきた今日の国際競争力というものは、これはやはり国民に還元されなければならない。いままでは、持っておらない状態において、力のない状態において社会保障を拡充したり、まず取ることを前提にして、受け得るという予想のもとに先へ投資を行なうということになりますと、これはもう日本においてはいまのような状態ではなく、たいへんなインフレが続いたと思います。そういう意味ではなく、今度は外からも要求されるように外貨を保有し得たのでありますし、しかも日本の国際競争力はあるわけでありますから、ほうっておけばまた輸出に出ますから、内需にこれを振り向ける。社会資本はアメリカに比べてまだ四対一であります。ですから、社会資本の蓄積率を上げなければならない、社会保障を拡充していかなきゃならない。今度はそのもとの力や蓄積があるわけでありますから、今度こそできるんだと。ヨーロッパとよく比べますけれども、ヨーロッパは何百年間にわたって植民地から吸い上げた蓄積で今日の社会保障ができたわけでありますが、日本はとにかく形の上においてはヨーロッパと比肩するだけの制度ができましたので、今度は力もできたし、内容もよくなったので、今度は社会保障内容を充実できるように力ができたわけですから、これを軍事力に使うとか何かいろんなことであるならば、これはいろんなことを言われます。今度はそうではない、福祉優先にやりますと、こういうことを世界に宣言をしておって、しかもその一面、開発途上国に対して援助を続けてまいりますと、こう言っているのでありますから、世界的にも日本はいよいよ本格的になったなあと、こう評価されておるわけでありまして、その評価にもこたえなければならない、こう考えております。
  77. 足鹿覺

    足鹿覺君 問題は実行ですね。あなたの人気の出るのも出ぬのも、田中内閣短命説が出るのも出ぬのも、いま言われたことを実行するかどうかです。やりますね、ほんとうに。はっきりと言ってください。
  78. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は個人的毀誉褒貶などは考えておりませんが、公に持つ職責は完ぺきにこれを遂行しなければならない。これからはいよいよ決断実行だ、こう理解しております。
  79. 足鹿覺

    足鹿覺君 今後の国際通貨政策について伺っておきたいと思いますが、わが圏は、世界各地に進出しておる米系多国籍企業から四十億ドル以上も輸入をしております。この点を考えれば、日米貿易の不均衡は実質的には私は存在しないことになる。国際通貨不安の禍根は米国の交換性のないドルのたれ流しにあったと思うんです。加えて、多国籍企業が、現在米系のものが四百あるといわれておりますが、これの持っておるドルはきわめて多額にわたっておる。今度の激しい投機もこれに依拠しておることは間違いない。この多国籍企業の無秩序な世界進出などに対してその事実を突き、アメリカにこれが規制を求める。経済運営の節度を強く要求する御意思がありますか。
  80. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先ほど申し上げました、わがほうとしての基本態度の中にこれを含めて申し上げたつもりでございますが、多国籍企業に対する、要するにビヘービアを改めてもらうということ、特に最近のヨーロッパ市場における混乱はそこが大きな原因であったということは、これはもうヨーロッパ各国もその点においての認識は非常にはっきりしておる。これはすでに前回の蔵相会議等をめぐる動きにおいてもそれはあらわれておりますが、当然、わがほうといたしましても重大な関心を持って対処いたしたいと考えております。
  81. 足鹿覺

    足鹿覺君 どうも愛知さん、あなたのは抽象的でね。もう少し、異常事態ですから、迫力を持って御答弁をしてもらいたいと思うのです。  次に、金交換性回復の問題ですが、先ほども述べましたが、アメリカは世界の基軸通貨という特権を利用して、金交換を停止した紙ドルで世界の企業や物資を買いあさっておる。まさに力にものをいわせた軍票の乱発を思わせるような状態だ。だから、ECは、ドルの金交換性を強硬に要求しても、アメリカは知らぬ顔をしている。金の廃位などあるかもしらぬとうそぶく始末ですね。反省の色が見えないのです。政府はこの点に焦点を合わせて、腰を据えた、腹をきめた金交換性回復に努力してもらいたいと思います。これは先ほどの総理の御答弁で大体尽きておると思いますが、愛知さんが十六日おいでになるならば、この問題をやはり詰めずして問題は解決しないと思いますが、いかがですか。
  82. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 大いに腹を据え、かつ知恵を出して努力をいたしたいと考えております。
  83. 足鹿覺

    足鹿覺君 このような事態は私は起きることを予見できた。これはわが党が四十二年度の補正予算が審議されたときに、公明党、第二院クラブの賛成を得て附帯決議を提案しております。与党の反対で不幸にも否決されましたが、その附帯決議は、当時ポンドの切り下げがあり、ドルはまたベトナム戦争によって非常に弱い通貨になりつつあったという背景を踏んまえ、情勢の許す限り外貨準備の中の金保有を増加せよとの一項を入れておるのであります。それから以降、日本政府は金をふやす努力をなさいましたか。ドルの保有のみに急で、その努力を怠ったことをお認めになりますか。最近時点における政府の金保有を年度別に伺いたい。
  84. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 最近における金の保有高は八億ドル余りでございますが、年度別の数字は政府委員から御説明いたします。  それから、四十二年の当時のお話は私も記憶いたしております。当時の政府・与党の考え方としては、まだ外貨準備というものが十分の余裕がなかった。それから、その当時の外貨の運用としては、借り入れの担保というようなことを考えてやらなければならなかったような次第もあって、いわば流動性を多少考えておかなければならなかった。余裕もなかったということと、それから、その後余裕が多少出てきたころにたいへん事情が違って、各国中央銀行が準備としての金を買うことは自粛しようという申し合わせができるような状態になりましたので、遺憾ながら、あの当時の御意見というものが実行に移し得なかった。こういう事情もあったことも御理解をいただきたいと思います。
  85. 大竹平八郎

    委員農(大竹平八郎君) 政府委員、答弁補足がありますか。
  86. 林大造

    政府委員(林大造君) 日本政府の金の保有高を国際的な統計に照らして御報告申し上げますと、一九六七年、昭和四十二年の末でございますが、日本政府の保有金は三億三千八百万ドルでございました。その後、四十三年、三億五千六百万ドル、それから四億一千三百万ドル、四十五年末に五億三千二百万ドル、四十六年末に……
  87. 足鹿覺

    足鹿覺君 もう少しゆっくり。
  88. 林大造

    政府委員(林大造君) 失礼いたしました。  四十四年末に四億一千三百万ドル、四十五年末に五億三千二百万ドル、それから四十六年末に七億三千八百万ドル、四十七年末に八億百万ドルでございます。それから、最近はそのドル切り下げによりまして、約八億九千万ドルになっております。それで、したがいまして、まあ六七年当時から比べますと、約二倍半、三倍近くになっている状況でございます。
  89. 足鹿覺

    足鹿覺君 SDR……。
  90. 林大造

    政府委員(林大造君) SDRの金額を申し上げますと、これは最近その配分になった分でございまして、ごく最近の時点だけ申し上げますと、四億六千百万ドル、これは一月末の数字でございます。これは、その四十三年当時はゼロでございました。
  91. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) それでは午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十二分休憩      —————・—————   午後一時六分開会
  92. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、総予算三案に対する足鹿君の質疑を続行いたします。足鹿君。
  93. 足鹿覺

    足鹿覺君 ここで四十二年度以降の外貨準備の内訳を明らかにしてもらいたいと思います。各年度別に金、IMFのゴールドトランシュ、それから証券、預金に分けて数字を示してもらいたい。証券、預金は、ドルの部分がどのくらい、マルク債や預金がどのくらいか、各国通貨別に示していただきたいと思います。
  94. 林大造

    政府委員(林大造君) 四十二年からの計表は、現在手元にあるかと存じますが、とりあえず、四十六年一月、四十七年一月、四十八年一月の計数を申し上げます。  四十六年の一月末は、金が五億三千二百万ドル、外貨が三十二億五百万ドル、IMFのゴールドトランシュが五億二千万ドル、SDRが二億七千五百万ドル、合わせまして四十五億三千二百万ドルでございます。この四十五億三千二百万ドルが、午前に総理がお答えになりました計数に当たります。四十七年の一月は、金が七億三千七百万ドル、外貨が百四十二億二千八百万ドル、ゴールドトランシュが五億三千二百万ドル、SDRが四億六千万ドル、合わせまして百五十九億五千七百万ドルでございます。四十八年の一月は、金が八億百万ドル、外貨が百五十九億九千万ドル、ゴールドトランシュが六億四百万ドル、SDRが四億六千百万ドル、合計で百七十八億五千六百万ドルでございます。外貨の内訳はほとんど全部ドルでございまして、マルクでございますとか、あるいはスイスフランのような米国以外の国の通貨は、その通貨の発行国が外貨準備としてほかの国が保有することをきらいますので、日本政府としてもほとんどこれを保有していない状況でございます。
  95. 足鹿覺

    足鹿覺君 ただいま内訳を聞きましたが、四十四年三月二十九日、本院予算委員会において、同僚委員が、金を持とうにも、すでに日本政府は時期を失した、せめても外貨保有の一部をマルクにかえるようにして、不安なドルから少しでも遠ざかるように提案をしております。これも会議録に載っております。そのとき、当時の大蔵大臣でありました福田さんは、何と御答弁なさいましたか、御記憶がありますか。福田さんお忘れのことだろうと思いますから、あらためて申し上げますが、あなたは、「マルク債の取り入れとか、あるいは同じような意味合いにおきましてマルクの債券を持つ、あるいは預金を持つ、これは当然考えていいことだ」と答弁をされておりますが、当然のことをおやりになりましたか。田中内閣ができたのは去年のことであり、あなたが当時の責任者である、いかがですか。
  96. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先ほどもちょっと触れたわけでございますが、マルクその他に多様化したいという気持ちは、政府として、当時もあったわけでございますけれども、実は、マルクに限らず、米ドル以外の通貨の国は、他国の外貨準備の中に自国の通貨あるいはこれに準ずるものを持たれることを非常にいやがるわけです、ことばは悪いわけでございますが。そこで実際問題として、国際協調と申しますか、こういうことで国際通貨制度を守っていきたいという考え方から申しまして、他国の非常に欲せざるところを無理にやるということは控えておるというのが現状でございます。
  97. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私の記憶では、金の保有にアクセントを置いてお答えをしたと思うんです。金の保有につきましても、これを一挙に日本が買いますと、金価格の高騰をもたらすということで、国際社会からも批判をされる、そういうことがありますが、マルクにつきましては、希望としてはそうですが、ただいま愛知大蔵大臣からお話があったような事情、なかなかこれは困難であると、そういう事情でございます。
  98. 足鹿覺

    足鹿覺君 念のためにあなたに申し上げますが、記録ですよ、福田さん、「ドルが御不安のようなお話がありますが、私はドルというものにはそう不安は感じないのです。つまり、いま、ドルドルがといっていろいろの話が出ますが、これはベトナム戦争が終局するというときになりますれば、アメリカ国際収支は非常に肩の荷が軽くなる。これはドルの地位というものも確立される、こういうふうに見ておる。」問題にしてないんです、あなたは。ところが、どうですか、この今日のざまは。あなたの考えられておったことは全く逆に出ている。裏目に出てきておる。ですから、金であれ、マルクであれ、いわゆる三十億ドル程度の対米勘定ですね、それを他国の、アメリカ以外の取り引きについてもみんなドルで持っておられる。要するに、そこに保有外貨の多様化をどうはかっていくかということについて配慮が欠けておった、それに努力をしておらなかったということの証拠ではありませんか、いかがですか。もう一ぺん福田さん、あなたは当時を顧みて。あなたは次期の総理大臣なんてよく言われておるが、こんな見通しのないことじゃだめですよ。
  99. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、ドルは、長期的見通しとしますと、相当強い立場にある、こういう感じをいまでも持っております。ベトナム戦争が済む、そうしますと、非常にアメリカの荷は軽くなる。そこで、ドルの地位も強くなるであろう。これは国際的にそう見ておる。私どもも、その国際的見方というものは根拠がありそうだ、こういうふうに見ておるわけです。ただ、当面、ベトナム戦争は済みましたけれども、当面は荷が軽くならぬと、こういうようなことから、いまのドルに対する含みの見方、こういうものがあるのじゃないか、私は、ドルというものを、今後も世界の重要な通貨である、こういう立場をとる、これは正しい立場である、こういうふうに考えております。
  100. 足鹿覺

    足鹿覺君 われわれが、四十二年に付帯決議を、そうして四十四年に外貨保有の中身を変えよと、建設的で、国益を考えた現実的な提案をそのつどしておるのに、政府や与党はこれを実行していないばかりか、反対にドルだけを積み上げる外貨政策をとってきた。そこが問題であり、責任があるのです。反対党の提言を建設的に生かさなかったことに誤りの根本があると思いますが、いかがですか。今後はこういう態度をお改めになりますか。
  101. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私も四十二年当時の附帯決議の成立したものも、なかったものもあったようでございますけれども、当時の野党の御意見というものを振り返りながら、その希望と現実というものがなかなか合わないものであるということも含めて回想しているわけでございますが、今後のやり方におきましては、野党のいろいろの御意見等も謙虚に、建設的に伺ってまいりたい、こう考えております。
  102. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。  ただいま足鹿委員から御指摘がありましたように、通貨問題、国際経済については、既往からしばしば私たちは具体的な提案をしてまいりました。私も、その提案をした一人であります。しかし、そういう提案が積極的に取り入れられることなく、今回の事態を招くに至ったことは、まことに遺憾でありますが、それとともに、私がここで関連してお尋ねしたいことは、昨年の十一月の臨時国会の際に、小林議員の質問に関連をして、私が、円の再切り上げは絶対やらないと総理がしばしば、しかも力んで答えられるので、もし、そんなに言われても、なおかつ再切り上げになるような場合にはどうなりますかと言いましたところが、総理は、その際には重要な政治責任が、相当な政治責任が生ずると、こう答えられた。ところが、私はその際余裕を残して質問しております。どう余裕を残して質問しているかというと、そういう断固として円の再切り上げをやらないと言われても、もし切り上げをされるような場合には、政治責任の範疇に入るのですか、入らないのですかと余裕を持ってお尋ねをしておる。はなはだ失礼でありますが、私は、ある意味で、たしなめる意味で、そんなに力んでよいのですかという意味も含めて私はお尋ねしたつもりです。ところが総理は、相当の政治責任が生ずると、しかもそのあとに、これは相当なものですよと、つけ加えて答弁をされております。この問題については、衆参両院の本会議の緊急質問、あるいは衆議院予算委員会等でしばしば質問がありましたが、総理は、顧みて他を言うような形で答弁をされて、積極的に、ストレートにこの問題に答えられておりません。私は、人のあげ足をとる意思は毛頭ありません。問題は、必ずしも円の切り上げ問題ではないのです。場合によっては円の切り上げも、再切り上げもやらなければならないこともございます。これは生き物でありますから、流動しておるものでありますから当然であります。問題は、いやしくも一国の総理大臣が、相当の政治責任が生ずると言われたことを、ことばの重みというものに責任を感じないで、顧みて他を言うような態度で終始されることはよくない。やはりそうはっきり私に答えられたのですから、この機会に、先ほど申し上げましたように、いやしくも一国の総理大臣が重要な問題について発言されたことについて、ストレートに、何も答えられないような慣行をつくるのはよろしくない。これは円問題だけではありません。政治責任という重要なものの総理の発言の重みについて、私はこの機会に総理の率直な見解というものを承っておきたいと思います。
  103. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 当時の御質問は、私も明確に覚えておりますが、相当の政治責任が生ずると思います。相当の責任が生ずると思いますと、こう明確に答えております。それは、先ほども申し上げましたように、まだ円平価の調整が済んでから幾ばくもたたない状態でございましたし、先ほども申し上げましたように、調整というような問題が起こるにしても、あのような状態において突然アメリカドルの一〇%切り下げというような状態は予期しておらなかったわけでございます。そういう意味においては、目標を誤ったということで遺憾の意を表したわけでございます。  それからもう一つは、あの種の問題に対しましては、これは切り上げが起こるかもしれませんなどと答えられる案件でないことは、これは御専門である羽生さん十分御承知だと思います。これは私も、公定歩合の問題で、この席で公定歩合の引き上げは絶対にいたしません、考えておりませんと、こう答えまして席に帰ったらメモが参りまして、いま公定歩合の引き上げが行なわれましたというので、特別発言を求めて、ここで御了承いただいたことがございますが、これは影響するところが非常に大きいものでありますので、少なくとも円平価の調整問題が起こり得ると思いますと、それから起こったときにはこう対応しますということは、絶対に言えないものであるということだけはこれは御承知いただけると思います。そういう御質問がございましたので、相当な政治責任が生じますと言ったのは、まあそれを言ったために非常に安定したと思います。外為市場も非常に安定したということがございますが、政治的な面から見ると、いまおしかりを受けるような、言わずもがなであったかというような、それはよくわかります。わかりますけれども、これは、いまも西ドイツ状態におきましても、絶対に切り上げない、変動相場制には移行しない、こう西ドイツ経済相は言っておるわけでありますが、その二、三日後には三%の切り上げが行なわれる、共同変動相場制に移行せざるを得ないという問題もあるわけであります。これは対外的な問題にしてもあるわけでありますから、まあそのような御質問にはお答えできませんと、こういうことは申し上げられないので、これはやはり政府が当時基本としておった政策に対しては絶対に行ないません、絶対に行ないません、ということでとどむべきであったと思いますが、そのときには、政治責任はどうなるかという御質問があったと思います。あったので、それは相当なものになると思いますと、こう、すなおにお答えをしたわけでございますが、これをもって、国会でもって行なう発言に対して慎重でなければならないということは、御指摘をまつまでもなく、そのように考えております。したがって、御理解いただきたいと思います。
  104. 羽生三七

    ○羽生三七君 そういう場合には、再切り上げを招来しないようにあらゆる施策を講じて全力をあげて努力する、でいいんです。ですから私は、いま円切り上げの問題だけで言っておるのじゃないのですよ、必ずしも。こういう席上で、相当な政治責任が生ずるというような発言をされて、あと顧みて他を言うような弁解がましいことではなく、これは率直に陳謝されるのが私は筋だと思う。だから、そういう意味で私は申し上げているのです。  それから、この機会に、続いてもう二、三点お尋ねしたいと思いますが、今度蔵相が行かれるかどうかわかりませんが、十四カ国なり二十カ国蔵相会議に出られた場合に、何を、これだけは絶対に達成したいという、その主目的はそもそも何であるのか。ECあるいはアメリカ等と国際協調をとることは必要であります。だが、日本としてはこれだけは主張したいという、それは何か。先ほど日銀総裁投機の問題に重点をしばっておられますが、もちろんそれもあるでしょう。しかし、投機の問題は結局のところドルのたれ流しにあるのですから、それにはどうするのか、あるいは先ほど足鹿委員指摘されたように、ドル交換性回復はどうするのか、あるいはスミソニアン体制そのものはどうなるのか、新たなる通貨体制とはそもそもどのようなものなのか等々問題になるが、これだけはこの国際会議に出て日本は絶対主張したい、あるいは提案したい、貫き通したいという提案はそもそも何か、これをお示ししていただきたい、これが第一点。  それから次は、やはりいま聞いておりまして、足鹿委員の御質問の中に、二百億ドルの金の対策についてお尋ねがありました。これは率直に申し上げて、日本が赤字を生ずるまでは、この二百億ドルは直接に日本内政の財源には使えないものじゃないですか。ところが、一部には、その蓄積外貨を社会保障社会福祉等の財源に転用すべきであるという議論が、これは相当ありますよ。これは非常に誤解が生ずる。その誤解の生ずるもとは、やはり政府がこの外貨について、二百億ドルがそもそもどういう性質のものかを明確にしておらない、これが一つあると思います。たとえば、GNP万能、輸出第一主義の日本経済の軌道修正をして福祉経済に転換をしなければならぬということは、これは今日では国民のコンセンサスを得られておる問題であります。したがって、そうではあるが、外貨の蓄積いかんにかかわらず、これは内政上の問題としてやらなければならぬことであります。そういう意味で、この内政上の問題としては、賃金アップとか、あるいは生活条件の改善とか、あるいは国際収支の改善、これは国際的な問題にもなりますが、国際収支の改善とか、いろいろあります。ありますけれども、そういう条件を創造することは大事であるが、早急にやらなければならないが、しかし、この二百億ドル内政の財源にすぐ使えるわけではない。ストレートに使えるわけではない。間接的にはいろいろな方法があります。ところが、これは使えるがごとく多くの人は錯覚を持っておる、また、政府の答弁も、先ほど聞いておると錯覚を起こさせるような答弁になる。二百億ドルは簡単に内政上の財源に使えないということを明らかにする必要があると思う。これが第二点。これはメモしておいてください。  もう一点だけ。次に、保有外貨のドル財源をどう使うかであります。私は、一つの問題提起というか、提案をしてみたい。というのは、これは全くの私見でありますけれども、日本平和基金というような——これは仮称であります。試みのこれは称号でありますが、日本平和基金というようなものを創設してはどうか。これは、いまインドシナ地域に対する援助問題等もしばしば議論されておりますけれども、これも重要であります。だがしかし、財界ペースの援助ではなしに、あくまでも日本の平和意思を明白にして、経済侵略とかエコノミックアニマルというような批判を受けることのない、そういう条件を日本みずからが創造し、積極的な意思を明らかにし、あるいは具体的な建設的な計画なり構想を持ちながら、この日本平和基金というものを創設されてはどうか。しかも、それは十億ドルとか二十億ドルというような額でなしに、相当額を積み立てて、これで世界に貢献をしてはどうか。これは単にインドシナ地域だけではない、発展途上国全体に適用する問題として、ぜひこういう問題も考えていただきたい。そうでないと、この二百億ドルは赤字ができるまでは直接的には手のつかない金であります。間接的にはいろいろなやり方があるでしょう。しかし、この二百億ドルを持ってきて、早く社会保障に回したらいいじゃないかというような議論でなしに一これはできないのですから、現実には。いま申し上げたような提案を積極的に御検討願う意思はないかどうか。  以上三点、逐次ひとつお答えをいただきたいと思います。
  105. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まず、第一の点から申し上げますと、二十カ国蔵相会議は、御承知のような歴史と経過をもちまして、十から二十に広がって、そうして二十カ国蔵相会議並びに代理会議等が、相当機構的にも機能的にも動き得るような体制になりましたので、これの活用といいますか、この場において日本としても大いに主張すべきことは主張し、成果をあげたいと考えておるわけでございます。  これは先ほど足鹿委員のお尋ねにもお答えいたしましたが、当面の対策は、何といっても、先般の会議の共同コミュニケにもありますように、今回の場合は投機資金対策ということが重点になっておりますが、これは恒久的に二十カ国蔵相会議の線でも考えられておったドル交換性の回復ということが基本的に一番大切なことであって、これにはやはり恒久的な対策と、その線に沿うた当面の対策と、まあしいて言えば二つに分けられると思いますけれども、そうして、その内容は具体的にどうかと言えば、金との兌換ということは理想的でございましょうが、必ずしもそういけない場合には、たとえばSDRを中心に考えていくということもございましょう。そして、ともかく国際的に新しい基準通貨の体制をつくりあげたい。しかし、そうは言うものの、当面のところはドル信認が回復するように、あるいは投機が起こらないように、これを押えつけていくということに集中した対策が一番必要なところである、こういう考え方で明後日の蔵相会議にも臨みたいと思いますし、ひいて、日本政府としては、今月末に行なわれることが予定されております二十カ国会議におきましてもそういう基本線を貫いて、できるだけ早く結論が出るようにいたしたい、こう考えておるわけでございます。  それから第二は外貨の問題で、これの使い方、その使い方について、外貨はそれ自身はすぐ国内で福祉対策等に使えないではないか、この点が一つの御指摘の問題であると思います。なるほど外貨は直接園児に分配するということはむずかしいかもしれませんけれども、たとえば、輸出が非常に多くてドルがたまって、そしてこれが円資金として国内の金融にも相当影響があるわけでございますが、それに着目をして、たとえば適度の公債を発行して資金を吸収する、そして、その公債が福祉国家建設の方向に傾斜的に使えるように、いわゆる財政の配分機能とでもいうようなものを活用してこれを国内に大いに活用するということは、この御審議を願っております四十八年度予算の基本的な考え方の中にもこれが出ているわけでございます。  それから外貨の直接の活用、これはいろいろの面で考えられているわけで、たとえば、輸入を大いに活用して、国内的にも物価の値上がりを防ぐという点においても直接的な国民に対する効果があるやり方であると考えます。  また、御指摘のような基金、平和基金というような構想も私は大いに考えてしかるべきではないかと思いますが、さしむき、今回の予算案におきましても、たとえば、これは額が問題にならないとすぐおしかりを受けるかもしれませんけれども、国際文化交流基金というものに対する相当の出資をいたしましたり、それから海外経済援助につきましても、なかなか目標どおりには急速に進みませんけれども、できるだけ早く七〇年代中にはいわゆるODA、政府としての援助というものが、援助の少なくとも〇・七%の目標に達するようにと。いまのところGNPに対して一%という目標はほぼ達しておりますけれども、政府の直接援助ということになりますと、現在の予算その他の関係で申しますと、昨年度〇・二二とか二三であったのが〇・三の基準はオーバーすることになると思いますが、これは将来ともにこの面で活用していかなければならない。  それから、インドシナに対する問題等は外務大臣からお話し願ったほうがよろしいと思いますけれども、財政当局としても、国際的な協力というような組織ができ、機能するようになりますれば、できるだけ財政当局としても協力をしたいと、積極的なかまえをしておるわけでございます。  それから、これは私見の域を出ませんけれども、御承知のように、第二外為構想、あるいはそれに類するような考え方もいま政府部内でも一生懸命知恵をしぼっているところでございますが、要するに、これは外貨の活用ということであります。それから、場合によったら、予算制度としましても、一ぺん円の歳出を通さなければ外貨が活用できないというところが一つの制約でございますが、これはまあ非常にむずかしい問題であり、また、国会でいろいろと御意見を拝聴したいところでございますけれども、こういった構想も私は積極的に国民的に取り上げ、考えていっていいのではないだろうかと、こういうふうに考えておる次第でございます。  たいへん広範な、三点の御質問とは申しながら非常に広範な問題提起でございますから、これだけでは十分にお答えしきれないように思いますが、なお御質疑がございましたら、お答えをいたしたいと思います。
  106. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと、平和基金構想だけ総理からお答えください、第三点の。
  107. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま申し述べましたように、一つの構想でございますし、国際的にもそのような提案があります。また、何カ国かでやろう、また相当な国々を集めてやろうということもあります。日本においても、日本だけでやってはどうかというものもありますが、外貨の活用そのものに対しては慎重に考えなければならない問題でありますので、いま大蔵大臣が述べましたように、皆さんの御意見も十分拝聴しながら、国民が集積をした汗の結晶でありますから、効果のある、メリットのあるやり方ということを考えなきゃならないと、こう思って、せっかく勉強してまいりたいと、こう思います。
  108. 足鹿覺

    足鹿覺君 愛知さん、ひとつ具体的に伺いますが、円を固定相場に戻すのと、変動相場制を続けるのと、その利害得失はどんな点にありますか。やっぱり国民はよくわからないのです。御所見があれば承りたい。いずれも利害得失があると思いますが、固定相場に戻す、ないしは固定相場制が理想だというのであれば、政府のタイミングは私はおくれておるのではないか、こうにも心配をいたします。いかがですか。
  109. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 固定相場と変動相場とどちらがいいかということについては、いろいろの考え方があって、私は、利害得失、にわかに学問的に申し上げるほどの時間的余裕もないかと思いますけれども、同時に、ここの問題は国際協調の上に解決しなければならない問題でございます。で、今般のこのヨーロッパの通貨危機に際しても、列国はやはり固定相場制度でいったほうがよろしいという基本的な考え方では一致しているようでございます。しかし、それにはそれなりに、相場がつくられたら、またこれを一年ちょっとでもって変えるとか、また、その後はどうなるかわからないというようなことでは不安定要素がふえるばかりでございますから、よほどしっかりした協力体制というものの保証がなければ、にわかに各国ともに固定相場をきめきれないのではないだろうか。そこで、基本的な考え方は一致しておりますけれども、当面とられた措置はむしろ逆なんでございまして、先ほど総理も言われましたが、たとえば西ドイツにおいては、今度の騒動が起こって、あれだけの買いささえをやって、ずいぶん迷惑をしたことだろうと思いますが、相場は絶対に動かさない、フロートもしないということでやっておりましたが、やはり結局共同フロートにいかざるを得なかった。その点は、ある意味では理想からは逆な方向に、とりあえずの措置としてはいったというふうに私は理解できるのではないかと思います。したがって、日本といたしましても、やはり戦後長く続いた制度ではございますし、それから商売のほうからいいましても、固定相場であるほうが安心できるわけでございます。変動相場にも利点は私はいろいろあると思いますけれども、やはり将来、長い目で見ますならば、適当の時期に固定相場制度に返ったほうがよろしいと、しかし、その時期なりレートなりは、ただいま申しましたように、よほどしっかりした見きわめ、あるいは保証というものがなければ、そして国際間の協調というものがささえにならなければ、これをはっきり掌握しておかなければ、にわかに決断はできないという性格の問題であると思います。  私は、まあ、大ざっぱに申しますと、こういうふうな考え方でございます。
  110. 足鹿覺

    足鹿覺君 私がいま申し上げたことは、なぜかと言いますと、このフロートの時期をつかまえて、アメリカからの貿易をからめて円の切り上げ幅をできるだけ高くしょう、二〇%に近づけるという動きがあることは、これはもう天下周知の事実です。フロートを続ければ、まさに足元を見透かされる。切り上げ圧力が強まるのは必至でしょう。閣僚の中には円フロートは長く続けたほうがいいとの意見もあると聞いております。たとえば小坂企画庁長官はそういう御意見をお持ちだというやに聞いておりますが、ここでその閣僚間に意見の差異を明らかにされよというような意図ではありませんが、やはり国民立場日本立場、こういう立場から考えて日本が固定レートにしようと考えても、アメリカがかってにドルの引き下げをやられれば、これはどうにもならぬ。いまのところ、アメリカのあまりにも一方的な態度が私どもは少し納得がいきません。そういう意味からは、実勢相場でやはり現在のフロートを長く続けていかざるを得ぬのじゃないか、好むと好まざるとを問わず。こういう点、いかがですか。小坂さんの意見も聞きたい。
  111. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 現状におきましてはフロート制が私はよろしいと思います。その点は御意見と同じでございますが、これはアメリカが要請したからそうしたんだというようなことでは全然ございませんで、むしろアメリカのみならず、日本の固定相場を、早く返ってもらったほうが国際的に安定するというふうに、期待している国のほうがあるいはむしろ多いんじゃないかと思うぐらい。いまフロートしておるのは、私の考えでは、これは国益のためであると、同時に、これはあまり長く続けないで、適当の時期に関係国との間の協力体制の上で、協力しながら固定相場制に復帰をするというのが望ましいと思いますが、現状においては、御案内のように、幸いにしていわゆるクリーンフロートでいま閉鎖中ですからなにでございますけれども、もうすみやかに為替市場は再開をしたいと思っておりますが、変動相場制に移行いたしましてから以降も、幸いにしてクリーンフロートで、そして実勢相場がそんなに乱高下しておりません。こういう状態がある程度続くならば、この変動相場制というものもいろいろの害もありますが、当面のところはむしろこのほうがいいと、そして、これでしばらく——まあ変なことばですが——時をかせぎながら、他国との協調の上で固定相場制度に返るように、その時期はそんなに長くかからないようにという考え方で処理できれば幸いであると、こう考えております。
  112. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えを申します。  基本的には私は大蔵大臣がお述べになったと同じ考えなんでございますが、やはり基軸通貨としてのドルが一体交換性を回復するつもりがあるのかないのかと、あるとすれば一体それは非常に急いでやるのかどうか、これが根本的な認識でございまして、どうもいまの状況では、アメリカはそれほどに決意が固まっていないのではないか。まああるとしても、現実のステップとしてはそれほど強い行動をとってないように思われまするから、したがって、日本としても急いで日本だけが固定相場に復帰しなければならぬというようなことを考えることは意味のないことであって、やはり実勢に従ってフロートを続けていって、そして落ちつくべきところへ落ちつかしたほうがいいのではないかというのでございます。
  113. 足鹿覺

    足鹿覺君 先ほどちょっと決済通貨の多様化の問題のときに言い間違えておりますので、補足をし訂正をしておきますが、貿易の九〇%以上をドルで決済しているといった異常に高いドル依存度を低めることによって容易にドル切り下げをやらせないためにも、この際、どうしても必要な政策をとらねばならぬ。対米貿易はともかく、それ以外はできる限り円ないしは相手国の——中国の元決済のように、相手国の通貨を使い、決済通貨の多様化をはかることが私は大事だと思う。有効な政策だと思う。対米貿易がわが国輸出の三〇%であるのに比べて貿易の九〇%以上がドルで決済されておるというこういう偏向は、即刻改めなければならぬ。総理、これは基本問題ですから、その点だけはきっぱりとここで御所見を述べていただきたい。
  114. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御指摘のとおり、円建ての貿易はだんだんと拡大をしておりますし、また拡大をしなければならないわけでございますが、まあ、円が国際通貨に近くなって国際的に流通をするようになっておるというところに、円建てでもだんだんと拡大がしてきておるわけであります。ところが、いままでは、戦後四半世紀にのぼっての国際的な基軸通貨としてはドルとポンドしかなかったわけであります。ポンドは実勢がだんだん悪くなりましたので、ドルよりもまだ基軸通貨としては地位を低くしております。まあ、ドルはあらゆる貿易の決済手段に使われておるわけでありますが、ほかの国とのもの、特にいま御指摘あった円元決済、これは中国との間には円元決済をやることになっておりますし、各銀行もみなそういう契約をしておるようでありますが……
  115. 足鹿覺

    足鹿覺君 朝鮮もマルク決済である。
  116. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ありますが、これはよその国では自分の通貨を出したがらないというところもあります、先ほどから言いまして。だから、国際通貨でもって決済をしようということでもって、自国建ての通貨を出さないというためにもやむを得ずドル決済をやっているところもありますし、それから流通範囲が非常に狭い。その国の通貨をもらっても買う物がないというものもあるんです。ですから、なかなか円建ての貿易を拡大をするということはこれはもう事実でありますが、いま、各国別の通貨でもってすべての決済をして保有通貨の多様化をはかっていくということはなかなかむずかしいということだけは、これは事実なんです。ですから、いろんなことがあっても、ドルを何とかして基軸通貨としての交換性を復元しようということで、アメリカにも大いに迫ると同時に、西ドイツなどは三百億ドルドルをかかえながらも、また、ヨーロッパ各国も共同フロートをしながらも、何とかしてその結論を見出そうということをやっているわけであります。だから、ドルにかわるものということは、もう十年来——三十九年のIMFの東京総会以来検討を続けられておるのですが、ついに今日を迎えておるということでありまして、まあ、ドルだけではそれも困るので、もっと多様化しなければならぬ。多様化する実態はやはりお互いの間でもって検討しなければならないということでもって、日本が当面考える問題は円建てでもって行なう。つまり、いままでなどは第一回の通貨調整で非常に損をしたという造船などはみんな円建てに切りかえられましたから、今度は為替差益が出るわけであります。そういう問題もありますので、今度の問題を契機にして、やはり各国が検討しておる問題であり、日本も可能な限りいろんな問題に対して現実的に円元決済ももう少し日中問ではやろうということになっておるわけですから、そういうような問題、可能な限り……まあしかし、そうかといって全く流動性のない金を、どこの国の金も、払ったらそれを持っておるのだというわけにもまいらぬわけですし、ですから、そこらをひとつ実際的な問題として検討を進めていきたいと、こう思っております。
  117. 足鹿覺

    足鹿覺君 ぜひ御検討願いたい。  先へ進みまして、通産大臣に主としてお尋ねをいたしますが、輸出と国内価格の二重価格をどうして解消するか。つまり、これがうまくいかないとドルをためないわけにはならぬ、現在のところ。通貨の多様化も方針としてはけっこうだけれどもなかなかそう簡単にはいかないという総理の御所見。そこで、私の資料によりますと、米国へ輸出される価格が国内価格よりべらぼうに安い商品を一、二例をとって申し上げますと、十九型コンソール・カラーテレビの場合、工場原価を一〇〇したとき、輸出価格は一三四・八であるに比し国内価格は四一二・五です。ですから、ちょうど三倍以上になる、三倍以上。しかも、自動車の場合はですね、一五〇ccの乗用車で工場原価を一〇〇とし輸出価格は一二〇。国内価格は二八〇だから二・三倍になる。しかも、排気ガスの規制装置は国内に売るものにはしてないし、輸出自動車にはしてある。こういう国民をないがしろにしたというか、国民大衆をですね、いわゆる無視して輸出優先に傾くことは是正されなければならぬと思います。この点について通産大臣の御所見を承りたい。是正なさいますか。
  118. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまのような傾向は確かに過去にございましたし、それは是正されなければならぬと思います。  一番大きな点は、一つは物品税——税金の関係が一つございました。それで国内価格が非常に高まったということがありましたことと、それから問屋から小売りに至る流通の段階の手数料その他が国内の場合にはあったと、そういうこともございます。しかし、昨年以来、貿管令の対象にいたしまして、テレビ及び自動車の輸出の量的規制も始めました。そのために、テレビ及び自動車の輸出は非常に目立って、いま減りつつあります。貿管令はこのまましばらく維持していこうと、そう考えておりますが、われわれがもう一つ考えてきたことは、内需を振興してそして輸出から内需のほうに転換させるという政策をやってまいりましたが、確かに御指摘のとおり、その価格面においてチェックする、そういうことは非常に重要であると思いますので、私たちは、御構想を取り上げて、具体的にどういうふうに実施するか、検討してみたいと思っております。
  119. 足鹿覺

    足鹿覺君 御検討願うことはけっこうですが、私はすみやかにこのような極端な二重価格はやめるべきだ。それが結局ドルをこれ以上ためないためにも当然とるべきことであるし、国内の内需を優先していくという考え方にもつながってくると思う。ぜひひとつそういう方針をすみやかに実施に移してもらいたい。  実質的にアメリカヘの輸出が減っておるとおっしゃいますけれども、それは現段階でそういう傾向が出ておるにすぎないと思う。で、たとえば輸出を押えるための、輸出制限のための輸出税というようなことも考えられないことはないが、どうですか。
  120. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 輸出税あるいは輸出課徴金というような構想は、われわれとしてはとりたくない構想でございます。まあ、輸出に固執するわけではございませんけれども、そういうふうなチェック方式よりも、むしろ輸入を増大して拡大均衡に持っていきたいというのが一つの基本的な立場でございます。しかし、輸出税あるいは輸出課徴金というような形でやるよりも、全般的に量的規制をしようというので、貿管令によりまして一定の基準を設けて、そうして輸出寄与率の多いものについて自制させる、あるいは通産省が介入して量的規制を行なう。そういうことをやったわけでございまして、そういう方策のほうが私たちは適当であると考えます。
  121. 足鹿覺

    足鹿覺君 輸入を拡大というお話がありましたが、輸入品の価格が下がらないという声は御承知のとおり強い。いわゆる輸入品価格の追跡調査をあなたはするとおっしゃいましたが、その調査の結果、実績はどうですか。
  122. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 輸入品価格の値下がりのための施策といたしまして、輸入関係団体、流通団体等に対しまして、円高相場によるメリットを消費者に還元するように、まず集めまして、要請をいたしました。  それから第二に、主要輸入材につきまして、当該輸入業者から、価格形成の実態、問題点を把握するために、あとで申し上げる品目につきましてこれを調査し、また、情報提供を行なわせておりまして、その第一回の結果の発表は、三月の中旬から下旬にかけてやれると思っております。  第三番目は、消費者モニター価格による追跡でございます。これはときどきスポット調査を行なう。そして公表する。  第四番目は、輸入品に関しまして消費価格問題懇談会を必要に応じて行なう。それで、対象品目といたしまして、前回は十一品目でありましたが、それにさらに追加いたしまして、腕時計、万年筆、カラーフィルム、エアコン、ゴルフクラブ、ライター、安全かみそり、乗用車、化粧品、ネクタイ、書籍のほかに、今回は電気冷蔵庫、じゅうたん、石油ストーブ、ハンドバッグ、羊毛、綿花、原油、鉄鉱石、銅鉱石の二十品目について調査を実施することになっております。三月中下旬には第一回の報告ができると思います。
  123. 足鹿覺

    足鹿覺君 ちょっと、いまの御答弁は、速過ぎてよくのみ込めなかったんですが、まあ、大体の御努力になっておる点を認めて今後の経過を見ましょう。  さらに伺いますが、やや長期の観点に立てば、貿易構造を、特に米国ないし米ドル偏重の輸出構造を改める。つまり、中国、ソ連、朝鮮民主主義人民共和国諸国との交易を重視していく。たとえば、畜産用飼料が暴騰して困っておりますが、これらを切りかえていく。こういうことをお考えになっておるでしょうね。どうですか。
  124. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本が輸入します物品について徐々に方向を転換さして多元化していく。そういう政策はいまとりつつあります。シベリアの開発とか、そういう方面に積極的な姿勢を持っているのもその一つのあらわれでございますし、中国等に関しましては、飼料あるいは油脂、そういう面について非常に期待をしておりますし、東南アジアについてはメーズ、トウモロコシ等の開発輸入等にも心がけておるところでございます。
  125. 足鹿覺

    足鹿覺君 政府は、最近北ベトナムとの接触を進め、近く——いつごろか知りませんが——承認するという態度のようでありますが、朝鮮対策はこのままでよいのですか、あわせて承りたい。外務大臣、いかがですか。
  126. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 朝鮮半島の問題は、わが国外交にとりまして最重要な問題の一つでございまして、私ども慎重に対処いたしておるわけでございます。で、北朝鮮の問題でございますが、たびたび申し上げておりますように、北朝鮮との間におきましても各種の交流は漸次的に拡大してまいりたいという方針を踏襲しておりますが、幸いに貿易も一億ドルのオーダーをこえてまいりましたし、人の交流も相当しげくなってまいっておるわけでございまして、こういう健全な傾向は漸次拡大してまいりたいと思いますけれども、いま御指摘政府の承認というようなことにつきましては、いまのところまだ考えておりません。
  127. 足鹿覺

    足鹿覺君 一九七二年一月の日朝貿易促進合意書締結以来一カ年の日朝貿易の発展には目ざましいものがあります。これは通産大臣外務大臣もお認めになるでしょう。どうですか。
  128. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 確かにかつての五千万ドル台から一億ドルをこしまして、非常に目ざましい数量増加を示しております。
  129. 足鹿覺

    足鹿覺君 これも、日朝友好促進議員連盟の代表団を超党派で送ったことからこの問題に大きく前進を見た、民間の経済交流にとどまっておる段階ではもはやない、すみやかに国交正常化と結合した国家間の交渉へと推し進めていかなければならぬと考えておりますが、外務大臣は、この前の臨時国会でも同様の御答弁、いまも同様の御答弁、一方、北ベトナムとの問題には意欲的でありますが、なぜ北朝鮮の朝鮮民主主義人民共和国に対してはそういういわゆる消極的な態度に終始されるのでありますか。もう少し熱意のある御答弁を承りたい。
  130. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 朝鮮半島をめぐる国際情勢、とりわけ南北の対話の進展、そういった状況を真剣に見守っておるわけでございまして、私どもといたしまして、まだ政府の承認ということを踏み切るというまでの決心はついていないわけでございます。
  131. 足鹿覺

    足鹿覺君 全くあんたの答弁は木で鼻をくくったというような御答弁ですね。そういうことでは困ります。少しはエチケットを考えていただきたい。そういうことで、外国に対しては、アメリカとの話はそういう態度ではないでしょう。(「そうだ、そうだ」と呼ぶ者あり)何ですか、一体。政府は、朝鮮に貿易事務所を設置するために調査費を四十八年度予算に計上し、朝鮮との通商関係の改善にかなり意欲的に取り組まんとしていることは、米ドル偏重輸出構造を改める見地からも私は評価できると思います。これを本格化するためには、輸銀資金の使用問題に対し通産大臣の積極的姿勢を強く求めます。臨時国会でもケース・バイ・ケース、前向きという御答弁をなさいましたが、この点について一歩前進した御答弁を期待いたします。
  132. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 朝鮮との貿易は、先ほど申し上げましたように一億ドル台を突破するぐらいにふえてきております。そういう関係で、通産省といたしましても、情勢によっては係官を派遣する可能性が出てくるかもしれぬと、そういう感じを持ちまして今度の予算に出張旅費を計上してあるわけです。その出張旅費をどういうふうに使うか、単なる短時日の出張で先方といろいろ状況調査をやるのか、あるいはさらにその人間が長期滞在に切りかわるのか、そういう点は今後のいろいろな情勢変化を見詰めながら対処しようと、ともかくしかし、そういう方向に次第に時代が開けてきているということを意識しましてそういう旅費だけは計上して時期を見ておると、そういうことでございます。
  133. 足鹿覺

    足鹿覺君 輸銀問題……。
  134. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それから輸銀につきましては、これは前に御答弁申し上げましたが、遺憾ながらその程度で、南北の融和状態、交渉の進展状態、そういうことを見詰めながらケース・バイ・ケースで処していこうと、そういう考え方に立っております。
  135. 足鹿覺

    足鹿覺君 昨年来、相互に日朝人事往来が活発になってきております。七一年の日本からの朝鮮への渡航者は約三百人、七二年には延べ七百五十人にも増加した実績に見ましても、われわれがかねて要望してまいりました、その窓口になった朝鮮対文協の康良煜委員長の訪日の実現が私は少なくとも必要であろうと思う。本年これを実現をしたい、これは心ある人の念願であろうと思います。法務大臣外務大臣の御所見を承りたい。
  136. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 重要な人物の入国でございますから十分検討してみたいと思います。
  137. 足鹿覺

    足鹿覺君 検討してみたい……。  外務大臣、いかがですか。
  138. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま仰せがございましたように、彼我の間の人事の交流は漸次拡大を見ておりますこと、御同慶にたえません。ただいま御提案がございましたお方の入国の問題につきましては、法務省から御協議がまだございませんけれども、私といたしましては、文化、経済、学術、スポーツ等の交流につきましてはできるだけ措置していきたいという考えで法務省にお答えいたしておるわけでございますが、政治的な意味を持った交流につきましては、ただいまのところまだ消極的な考えを持っております。
  139. 足鹿覺

    足鹿覺君 総理からは、朝鮮民主主義人民共和国との国交正常化に対する見通し、お考えをまだ明らかに聞いておりませんが、いかがですか。
  140. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 外務大臣述べましたとおり、これ、朝鮮半島の問題なかなか重要な問題でございまして、国際情勢の推移、南北の話し合いという事態の推移を見守りつつおるわけでございますが、その間何もしないと言うんじゃありません。いま申し述べましたように、スポーツ、文化、学術、経済——経済の面は一年間で倍以上になったわけであります。そういう意味で、人間の交流も御指摘になったようにだんだんと大きくなっておるということで、いますぐ北朝鮮を承認をするというような段階には至っておりません。
  141. 足鹿覺

    足鹿覺君 総理並びに関係閣僚に伺いますが、これからの産業構造政策ドルの変動制移行に伴う姿勢でありますが、変動制への対応力は大企業は十分に備えておると思います。円決済も可能とする実力すら持っておるとさえいわれております。一番困るのは、対応力のない特に中小企業対策であろうと思います。石炭対策に対しましては、政府は相当過去において大きな実績を示しております。本年度予算にも相当考慮しておられるようでありますが、これらの対応能力のない、いわゆる企業間格差の著しいものに対しましては、今後どのような基本政策をもって臨まれるか。一例をあげますと、住友化学は二百六十円、対ドル二一%の円の切り上げに備えて体質の切りかえをスピード的に進めておるといわれております。先物レートで体系を整備中であり、大企業の輸出第一主義は私の見るところではあまり転換しておりません。こういう実情を踏まえて、いわゆるこのたびの国際通貨問題は、日本産業構造あるいは企業間格差、地域間格差を拡大をしていきこそあれ、あなたの主張、列島改造の構想とはほど遠い事態が現出しつつあると思います。この点をいかように今後対処されますか、総理の御所見を承り、特に通産大臣の御所見を承りたいと思います。
  142. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) こういうような平価調整の時期というものは、確かにいろいろな企業間に格差が生まれたり、変動が生まれる時期でもございます。特に、中小企業が非常な苦難におちいるということを最もわれわれ心配いたしまして手当てしておるところでございますが、一般の産業の個々の企業間につきましても、そういうおそれはございます。しかし、一面においては、鉄鋼とか、あるいは自動車とか、あるいはプラントとか、特に造船、そういうようなものは相当ドル債権を持っておりまして、これらがドル切り下げによってまた非常に苦しむと、こういう事態も出てきているので、非常に乱反射しているというのがその状況であります。われわれといたしまして、特にまず第一に手当ていたしますのは中小企業対策でございまして、これらにつきましては、金融上、税制上、保険上あるいは構造転換の上について、今度は思い切った措置をいま講じておるところでございます。それから造船やプラント等につきましては、これは円の平価調整が決定したときに、ある程度の措置をまたやらざるを得ぬだろうと思っておりますが、全般的に申し上げれば、やはりいままでのような重化学構造、輸出あるいは成長本位という面から、福祉型の情報産業あるいは知識集約型の産業に切りかえているときでございまして、その方面の政策をかなり強く推進してまいりたいと思っておるところでございます。
  143. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま通産大臣が述べましたが、しかし率直に申し上げると、ある時期、平価調整を乗り越えて輸出が依然として伸び続けるであろうということは一つの現象として考えられると思います。それは国内的に急速に転換できないという問題があるわけでございまして、それはしかし、ある意味では、いままでのように利潤を得た輸出が続くということではないと、こう思います。長期的に見ますと、相当やはり体質改善を要求される、これは全産業ともそうだと思うんです。それはそうでしょう。一年半もたたないうちに三百六十円から三分の二近くになるわけでございますから、そんなに国際競争力が無限大に強いわけではないんです。ですから、そういう意味で、一時的な現象としては、私は輸出は依然として続くというようなことがあっても、それは半年とか、ある限られた期間であって、輸出はやっぱりダウン傾向におちいらざるを得ないということは、これはもう否定しがたい現実だと思います。でありますから、いまも通産大臣述べましたとおり、過去のやり方でもってやっていくというわけになかなかいかぬと思います。そこへもってきて公害の問題が起こってまいりますし、労働需給の逼迫の問題もございますし、また、生産性の中で賃金の上昇率を吸収できないような企業も出てまいります。そういうのに、また海外からの要請もあって、現地でもって相当な投資が行なわれて、二次製品を入れるというようなものにもなってくると思います。そうしなければ輸入も拡大しないし、国際的な協調もできないということであります。そうすると日本輸出はどうなるかというと、重化学中心の工業よりもやはり知識集約的なもの、少ない材料によって付加価値の高い輸出品を出すというものにならなければならない。これは目標としてはイギリス型の工業からスイス型の工業に、これはもう理想的でございますが、一ぺんに変わるものではない、これはしかし相当誘導政策を行なうということで変わっていかなければならぬと思います。  それから問題は、当面する中小企業零細企業でございますが、これは協業化を行なったり、いろいろなことが将来的にはございますが、しかし、私は対策に対しては、一時の円平価の調整のときにやったいろいろな施策がございます。制度も延長すればそのまま法律が生きてまいるというものもございますので、税制、財政金融その他情報提供等々、万全の措置を講ずるつもりでございますし、いままで講じてもおります。きょうもまた、三機関に対するものとか、いろいろなことをいま検討いたしておるわけでございますが、いままでよりも一番考えなければならぬのは、転廃業を余儀なくされるということがどうしても起こってくると思うのです。これはもうどうしても起こってくると思います。そういう転廃業の面に対して手厚い再就職をやったり、職業訓練をやったり、それで膨大もない借金をかかえておるものを、どう一体整理をしてやるのかというような問題がございますから、そういう新しい面に対して万全な対策をとっていくということであろうと、こう思っていま政府は鋭意検討いたしております。それでまた業界からも希望をお出しなさい、政府だけでもってやるのでなく、希望をお出しなさい、こう言っておるのですが、なかなか転廃業となりますと、しばし待ってくださいと、なかなかたいへんであります。ですから私は、対米輸出の大半を占めておる洋食器の燕の、——新潟でございますが、第一回目のときには全然転廃業しなかったのです。今度は三分の一はやむを得ぬ、やむを得ぬということはわかるのだが、さて腹をきめるまで、しばし待てと、こういうことでございまして、腹をきめるまでの間のつなぎ的な措置は十分やっておるわけです。やっておりますが、転廃業という問題に対しては、やはり石炭にとったような再就職とか職業訓練とか、新しい産業に対してのやはりめどをつけてやるとか、そういうきめこまかい永続できるようなやはり転廃業ということに対して、政府も、地方公共団体もあらゆる角度から応援をしなければならない、こう思っております。
  144. 足鹿覺

    足鹿覺君 時間の関係で、これからこの問題の締めくくり的な問題になりますので、総理から直接伺います。  政府には、いままで伺ったところではいろいろ御検討にはなっておりますが、これといった将来の経済、通貨についてのビジョンが十分確立されておらないと見受けました。ただ、アメリカのかさの下に入っておればという考えのようです。今回のECの行動を見ましても、もはや第二次大戦後のドル帝国主義に絶縁状がたたきつけられていると私は判断いたします。日本政府だけではないですか。このような決意、腹、主張、こういうものをよく吟味をされ、米国の言いなりになり、ドル帝国主義の旗持ちを手伝うというような考え方ではないでしょうが、そういう態度を改めてもらいたい。最近、蔵相が十六日の会議に出張を強く希望を持たれておるということが伝わっておりますが、どうしても出席をさせなければならぬとお考えになる首相の理由、その会議で蔵相に何を日本として主張させるお考えであるか。これは蔵相の意見ではなくして、総理自身の責任において御答弁願いたい。同時に、九月のナイロビIMF総会に何を主張せんとされておりますか、この点もあわせてお聞きしたい。
  145. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) IMFの臨時総会に対してどういう主張をするかということは、これからまだ国際的ないろいろな変化がございますから、いまにわかに申し上げられません。しかし十六日、あさってからという会談には、衆議院予算委員会でも、こんなに国民が注目をし、こんな重要なときに、この間なぜ愛知大蔵大臣自身を派遣せずして細見顧問を派遣したのかという、たいへん強い御意思の表明がございました。そして、国会も大切である。大切ではあるが、国益を守るために国会理解を示さないなどということはないのだから、事情を述べて国益を守りなさい。しかも機動的にやらなきゃいかぬものを、相手がやったら、その情報をつかんでから検討しようというような、いつでも相手待ちというようなやり方は、国益を守るゆえんではない。だから、大蔵大臣自身出張して意見を述べたりしなければならないと、こういう強い御意見もございましたが、しかし、何ぶんにも年度総予算の審議中でございますので、参議院に送られて、参議院の御承諾が得られ、御意思がわかれば、それは出張させるのにやぶさかではございませんと、こうお答えをしておったわけでございます。それは腹の中では、まあいままでもほんとうにきまるというなら、これは大蔵大臣出張しなけりゃならぬと思っておりましたが、今度の起こってきた問題は、突然起こってきた問題であります。しかもヨーロッパにおいて起こった問題が、三月末の二十カ国蔵相会議の前夜祭のような色彩を帯びてきたというところに大きな問題がございます。ですから、当面する問題だけではなく、長期的な問題も引き続いてもう検討の段階に入ってきた。ですから、先ほどもお述べになったように、変動相場制を続けるのか、いつやめるのか、固定相場制になるのか、なる場合には、アメリカが再引き下げをしないという保証があるか、円の交換性はどうするのだ、それは何十%だけを保証できるのか、そういう問題を具体約に主張しなければならないし、各国の間で主張されるような懸念がありますので、今度はやはり大蔵大臣に出ていってもらって、やっぱり日本の主張というものは十分やらなきゃならぬ。まあ三月の末までに——末の会議ですべてが決定するとも思いません。しかし、三月の末には、四月になったらどうしようというくらいな話がきまらないで、このままだらだらといくとも思いません。各国では、とにかく十カ国や六カ国だけではなく、ほかの開発途上国はなお困ってるわけです、このためには非常に困っておる。こういう問題がありますので、拡大すれば拡大するほど、話を早くきめろと、こういうことになると思いますので、大蔵大臣出席を、許可が得られるならば、という考えで考えておるわけでございます。  で、その場合には、申すまでもなく、アメリカの支配下に入っている——かさのもとと言うのじゃありませんが、アメリカはやっぱり三〇%のシェアを持つ得意であることは間違いないのです、実際において。日本の貿易の相手国としては、ほんとうに動かすことのできない大きなものでございますから、だから、アメリカにしゃんとしてもらわなければいかん。アメリカというのは、先ほど福田大臣が述べたように、力は強いと思うのです。現実的にも、外でもって、はかっているほどではない。これは相当なものだと思ってはおりますが、何ぶんにも、二十五年間でもって世界にばらまかれたものを、アメリカ責任だけですべて回収しろというのか、お互いがどの程度の分担を持って、その事態の収拾をはかり、長期の安定をはかるかというところが、なかなかむずかしい問題だと思うのです。ですから、そういう中で国際的な流動性を確保しながら——確保しなければ縮小均衡になりまして一番困るのは日本ですから、ですから、やはり縮小均衡におちいらないように、始まるニューラウンドというものは継続していけるように、しかも流動性を確保しながら、そしてこれを機会に基軸通貨を何にする、こういう問題というものは、どうしてもやはり十年間もんできた問題でありますが、最終的な段階——まあこれで終わったというのではありませんが、そういう状態だと思いますので、日本は国益を守りながらも、拡大均衡という日本の基本的な利益を守らなきゃいかぬ、それで当面の問題も解決しなきゃいかぬ。こういうことでございまして、具体的には相手の意見も聞きながら、日本意見も十分述べられる。やっぱりオウム返しにパーンと述べられるのは、大蔵大臣が行ったほうが一番述べられるわけでございます。本省の請訓を待たなければ、日本側の腹は言えませんということでは困りますので、まあ今度は大蔵大臣出席できれば一番いいことだと、こう考えております。
  146. 足鹿覺

    足鹿覺君 今後の国際通貨政策の質問を締めくくるにあたりまして、総理にいま一問、基本的な大きな問題を伺いたい。  従来ASPACがありまして、大洋州を含む反共連盟的な機構がありまして、日本がそのリーダーシップをとっておることも御承知のとおり。しかし、中国が日本と国交を正常化し、ベトナムの平和協定が成立をし、大きく条件が変わった今日、私は新しいアジアを構想して、少なくとも通貨問題の一面から見ましても、今後の日本が平和的に生きていくためには、ASPAC構想をいま一応再検討をし、日本、中国、ベトナム、ソ連も含めていいでしょう、アジア諸国民との平等互恵、平和五原則によるアジア地域経済圏を構想し、その方向努力する以外には私はないのではないかと思う。やはりそのためにはASPACの問題が一つ私はあると思います。また、ほかにも条約上の問題もありますが、この点について、首相の基本的な姿勢、御所見を承って、この問題を打ち切りたいと思います。
  147. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあASPACは、それなりの存在理由もあり、設立理由もあり、また効果もあったわけでございますが、これを解消してどうするという議論も存在をいたしております。おりますが、日本が言い出して、日本が主導権をとってASPACをどうするという問題ではなく、やはり盛り上がる力ということで、ASPACはおのずから変貌していくだろう、こう思います。  ただ、率直に申し上げると、ベトナムの問題に対しても、パリにおいて会談が行なわれましたが、アジアの問題をアジア以外の人たちがやっておるということだけで、アジアを知る者はアジア人だと思うのです、やっぱり。アジア人がアジアを一番よく知っておるし、アジアのことはお互いがやはり協力してやるべきだと思います。ヨーロッパには拡大ECが結成をされ、またEFTA諸国との間にも、緊密な連絡がとられて、しかもイギリスさえも一月一日には拡大ECに加盟をした。西ドイツがあれだけ強い力を持ちながらも、今度の円問題に対しては共同フロートをやろう、こういうことになっておりますし、金本位制でもってあれだけ独自の立場を貫いてきたフランスも、それに同調するというような状態でありますから、アジアがいままでのままでいいのだというわけには私はまいらないと思うのです。そういう意味で、施政方針演説の中で、アジア平和会議というようなものの可能性を検討していきたいということを述べたわけであります。これはアメリカでも、イギリスでも、西ドイツでも、入ってもらって一向差しつかえないのですが、やっぱりアジアとして将来の平和ということを考えるには何らかの機構ができることが望ましい。それは今度のベトナム復興という問題に対して国連が中心になろうとか、いろんな会議がありますが、やはり日本が一枚かまなければ、ベトナム復興というものに対しては日本がやっぱり相当のウエートを持っていると思うんです。日本はアジアのために、民生安定のために、また経済復興のために全くひものつかない援助をやりましょうと、こういうことを言っておるんですし、経済侵略など全然考えておりません、新しい日本の姿を見てもらういい機会だと、こう言っておるわけでございますから、あんまり出しゃばっていくと、また日本経済的に何したのだということになりますし、まあタイムリーにアジアの機構というものはつくられると思います。だから思いますが、熟柿の落ちるのを待っているんじゃないんです。いろいろ外交ルートを通じたりして、またいろいろな意見も述べております。アジア、まずベトナム復興というものがまつ先の問題でありますが、アジア、太平洋地域の全体の何らかの国際的な機関、会議というものは必要である。ASPACと密接な関連を持たないで、ASPACをやめてどうするかということではなく、ASPACはASPACの問題としましておのずから解決点が出てまいりますから、そういう問題とアジアの平和的な機構というもの、これは前向きに参加してまいりたいと、こう考えております。
  148. 足鹿覺

    足鹿覺君 自由化と農業問題、米買い占め、山林原野、農地の買い占め問題について、以下若干伺います。  自由化と農業問題に対する首相の構想は、去る二月二十日、総理は輸入自由化を推進するため、農産物については二重価格制を採用し、国内商品には、食管会計に特別会計を設けて買い入れることにしてはどうかと閣議で発言をされ、櫻内農林大臣が検討をされておると言われておりますが、二重価格制度については、その中身いかんによっては、私どもは大いにけっこうだと思います。これをやり通す具体案ができましたか、御検討の状況総理の構想を伺いたい。なるべく総理にひとつ御答弁を願いたい。
  149. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 百二十品目もあったものが三十三品目になったわけでありますから、相当な自由化の努力を続けてきたことは事実であります。しかし、自由化いまだしという声が世界的にございます。それはなぜかというと、これも一つはドルが蓄積されたということ、国際収支が大幅な黒字であるということからくる批判だと思いますが、いずれにしても、資本の自由化、それから関税の引き下げ、それから輸入の自由化を強く迫られておることは事実でございます。また、南北問題というもっと大きな問題から考えてみると、一次産品は、これは完全自由化、無関税、こういう原則に対して原則を承認しておるわけでございます。が、しかし承認しておるからといって、国内的な一次産品の遅滞を無視して自由化が可能なわけではありません。ここまで要求されながら、できなかった自由化でございますから、最後に、よほどの理由があるということを考えてもらいたいということを各所で、外国には述べておるわけです。何でもかんでもやれるわけじゃありませんと、こういって述べておるわけですが、やっぱり対外的にも対内的にも自由化は進めなければならない。期日があっても、いろいろな方法があっても、自由化は進めなければならないという考え方だけは、これは訂正するわけにはいかぬと思います。しかしそれには前提がございます。国内産業が保護されるように、しかも生産農民が、しょうがないだろうなあ、と言うぐらいの理解が得られるような、国内態勢がやはり整えられないで、急遽自由化に踏み切ることは政治の上では責任を果たすゆえんではないわけであります。ですから、そういう意味で、自由化という方向で何品目かを考えてみてくれ、こういう品目に対しては、場合によれば、食管の中に特別勘定をつくってもいいんじゃないか、事業団でもって国内産品を買い上げておって、それを備蓄に回すというようなことでもいいんじゃないか、いろいろな問題が考えられるわけです。考えもしないで、まずだめだと、こういうことではなく、いろいろな角度から考えたり、また生産農民の意見も聞いたりして、それでもだめであるというなら、それはもうどんなことをしたって、これは貿管令で出すものを押えても、できないものはできないということになるんでしょう。これは自由化をしないでワクを拡大しておりながら、だんだんだんだん消費者価格が上がっていって、それで必ずしも生産農民の手取りが確保されておらないものもあります。そういうようなものに対してもっと安定的な、牛乳の不足払いというようなものもあるのですし、いろいろな問題に対してもう少し考えられないか。自由化というのは外圧だけではなく、いわゆる消費者価格にも反映させるという問題、安定供給という問題、しかも生産農民との調整というものをはかるために、あらゆることを考えてみようということで、政府ではいろいろなことを考えているのです。考えているのですが、これは、やるというときには、少なくとも黙って告示をしてしまうというようなやり方ではなく、これはもうあらゆる面から見て完ぺきに近い、完ぺきだと言えばいいわけでございますが、それは完ぺきというのはなかなか申し上げられないので、いずれにしても、相当な施策が行なわれるということを前提にして、そうして成案を得たら自由化の実行をしたい。こういうことでございまして、それを裏返せば、相当なことができなければ、まだ引き続いて検討するということにもなるわけでございますが、私の国会における発言というのは、相当に海外では影響がありますので、自由化は進めてまいります、必要な諸対策は十分検討しております、こう述べさしていただきたい。具体的な問題は農林大臣から。
  150. 足鹿覺

    足鹿覺君 農林大臣は、総理の指示を受けて具体的にどのような構想を御検討になりましたか。昨日の本院、農林水産委員会においては、満場一致——与野党一人の異議もなく満場一致農畜水産物の自由化反対の決議が採択されました。おそらく農林大臣もお聞き及びでありましょう。いかに今後自由化に対処されますか。この超党派の決議を尊重して今後対処されますかどうかということについて、ただいまの首相の答弁を踏まえて、あなたの御所信を伺いたい。
  151. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 最初に、先ほどお尋ねの二月二十日の閣議の検討を命ぜられたことでございまするが、それはさっそくに省内に伝達をいたしまして、検討をさせております。その場合に、私としては、大体のめどを、三月一ぱいぐらいに詳細検討せよと、こう言っております。それというのは、何といっても現在の残っておる品目が、農林水産物で御承知の二十四品目でございます。それぞれ一つずつについて、ただいまお話のございましたような、食管で扱うがいいかどうか、あるいは二重価格制をどういうふうにとるかどうかというようなことを一つずつ検討する。あるいはまた地域地域の実情を勘案しなければならぬということになりますと、そう簡単に国内対策が出てまいりませんから、ある程度の期間を置いて検討を命じたわけであります。その間に私としては、必要なことにつきましては、中間的にいろいろ報告を受けております。たとえば現在の残存品目についての内外の価格状況であるとか、あるいはフランスや西ドイツやイタリアやイギリスやアメリカ等の主要国の農林水産物の残存輸入制限品目の詳細、実態というようなもの、そういうようなものを逐次求めてはおりまするが、しかし最終的には大体今月の終わりをめどに、省内の作業が終わってからこれを詳細に検討してみたいと、こういう考え方に立っておるわけでございます。それから、ただいまの参議院におきます決議につきましては、直ちに私ちょうだいをいたしました。なお、鈴木政務次官より見解を申し上げておることも承っております。これはこれで尊重してまいりたいと思うのでありまするが、先ほど総理からお答えを申し上げましたように、農産物——閣議の発言は農産物だけではなかったわけですね。貿易の自由化、資本の自由化について具体的な対策を講ずるようにということであったわけでございますが、私も田中内閣の一員として、また、従来の日本政府の姿勢として、貿易の自由化ということは大きな理想であり、国際的に約束をしておるということは認識をいたしております。そして、総理からもお話がございましたように、四十四年の末に七十三の農林水産物の制限品目のございましたのが、四十四年から四十六年に七回、四十五品目をこれをはずし、昨年は二回、四品目をはずし、その上に、御承知の枝番というものを十四も減らして努力をしてきておると、これは四十三年の十二月の末に、両三年中かなりの分野で自由化をするということを日本政府は国際的に表明しておる、それに沿っての誠心誠意の努力であるということ硬いまの数字でもおわかりであろうと思うんであります。そして第三次の円対策がとられまして、田中内閣の最初の閣議において大蔵大臣の発言で、この第三次円対策の確認が行なわれました。それで、私もそれを受けて、当時一応の検討をいたしましたが、なかなかのむずかしさがあるということを痛感いたしたのでありますが、あらためて、二月二十日の閣議で、さらに検討するようにということでございまするので、先ほど申し上げたような措置をとっておると、こういうことでございます。
  152. 足鹿覺

    足鹿覺君 昨日の本院の農林水産委員会の決議は、農林大臣としては尊重し、今後施策の根本となさいますか。あなたがお出しになった「今後の農業生産推進の方向」、「農産物需給の展望と生産目標の試案」、これは去年の十月、これはことしの一月、閣議にも農政審議会にも何にもかかったものではありませんが、少なくとも国民はこれに多くの期待を持っておると思う。言うことと、することが違ったのでは困ります。その点いかがですか。
  153. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 昨日の決議は、私承知をしておりまするし、また、農林の責任の衝にある者といたしましては、そのことは十分念頭に置いてこれからの行動をとってまいりたいと、こう思っております。それからこの「農産物需給の展望と生産目標の試案」等についていまお話がございましたが、農林省といたしましては、これを尊重いたしまして、そして、私の農政の重要な指針として従来もこの国会での答弁でしばしば引用を申し上げておるところでございます。ただ私は、この試案ができましたときに、一つだけ意見を言っておるんであります。この試案の中におきましては、ちょうど国際的な食糧の逼迫した状況、それからなかんずく、飼料が不足しておるという実情がございまして、飼料の点だけは自分として若干の意見があるということを、これもしばしば申し上げておるところでございまして、その他の基本的な方向については、今後におきましてもこの試案を中心にやってまいりたいと思います。
  154. 足鹿覺

    足鹿覺君 総理は、この二つのものですね、これは御承知になっておりますね。大事な問題ですよ、これは。
  155. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういうものが存在をいたしておることを承知しております。
  156. 足鹿覺

    足鹿覺君 内閣の方針として御承知になっておるんですね。
  157. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 閣議決定案件ではないようでございますが、衆議院でも御指摘を受けましたので、農林大臣がお答えをしておるものでありますから、そのような方向で農政を進めてまいりますと、こういうことでございまして、それは閣議決定の案件ではないようでございます。農林省が書いたもののようでございます。
  158. 足鹿覺

    足鹿覺君 閣議でも決定しておらない、農政審議会にもかけておらない、しかもこれはこの方針で行くんだ、一方においては二重価格制をやるんだと、片っ方では自給を主としていこうとしておる。その手段方法を掲げておる。一方においては、あなたは、二重価格制で輸入の自由化をはかろう、農畜産物をやろう、だから、きのうの反対の決議となった。相矛盾しておるではありませんか。一方においては二重価格制を指示し、一方においては、主管省は自給をたてまえとしていく。このような私は無定見なやり方は、農民が納得をいたしません、広く消費者も納得しないと思う。いかがですか。
  159. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 自由化を行なうと、行なうという方針はすでに決定をしておるわけでございます。しかし、何でもかんでも無理やりにやろうというのではなく、自由化ができる体制を整えてからやろうと、国際的に少なくとも宣言をしておる日本政府の基本方針を変更するわけにはまいらないわけであります。これはもう国益を守るために、そうあるべしということで決定をして述べておるのでございますから、これはもう当然そのラインは守らなければならない、これはもう国際信義の七においても当然のことでございますし、そうすることが国益を守るゆえんである、こう考えたわけでございます。しかし、農林省としては、これは所管省としていろいろなことが勉強されると思います。そうして、自給率を上げていきたいという問題も、天下の情勢から見ても当然自給率を上げなきゃならないし、いろいろな問題があることも承知をいたしております。ですから、私は、二重価格制度でもってすべてを自由化しようと言っているのじゃありません。自由化をしなければならないという方向はすでに定まっておるんだが、なかなかいろいろな事情があってできないことは承知をしておるが、もっと自由化をするにはどのようなことをするのか。まあ農産物そのものを全部自由化しても五億ドルぐらいであると、こういうんでしょう。そうすれば、五億ドルというものに対して一体どういう政策をやれば自由化ができるのか。それから、どうしてもできないものもあります。米のようなものはできません。ですから、そういう意味で、自由化をするならば、どのような制度をつくり、どのような政策を付加すれば自由化はできます——しかし、これは全然できませんという問題も出てくるだろうと思います。ですから、私が自由化を指示したことと、農林省が、農林省として自給度を上げていこうというような考え方というものは、私は矛盾をしないと思うんです。あなた方が農林委員会で全会一致できめたものというものは尊重しなきゃならないということも多少わかります。わかりますが、しかし、納得ができまして、そうしてそういう政策がとられるなら、自由化もいいじゃないか、やむを得ないなあということになれば、これは何も別々な考えではないわけであります。無理やりに、何もしないで自由化しようというのじゃありませんから、自由化をしなければならないという基本的な理念に立って、自由化が行なえるにはどのような具体的な施策を必要とするか検討なさいと、こう言っているのですから、これは仮定の問題として検討をしなければならない、私の指示と農林省のその作文が全くばらばらなものであるということはないわけでございます。
  160. 足鹿覺

    足鹿覺君 まあ非常に苦しい御答弁のようですが、あなた方が、とおっしゃいましたが、私ども野党だけじゃありませんよ。与党の皆さんが大賛成なんです。よく耳にとどめておかれるがよかろうと思うのです。  食糧の安定的供給こそがまず福祉への道の前提であるという立場に立って、農政の基調転換について総理に伺いたい。  これまでの農政は、安いものは外国からという点に基調を置いてきた。その典型は、畜産の場合では、わが国は飼料基盤を全面的に外国に依存し、アメリカ中心にしてきた方針は転換さるべきである、かように思います。その結果、畜産と耕種部門が分離をされ、地力収奪農法が全般化し、土地生産力が破壊される一方、他方では、海外の穀類の豊凶がそのまま配合飼料の価格に響くという他力本願の状態に立たされております。飼料はいま約一万円近い騰貴を続けておりますが、トン当たり。一トン当たり千円上がりますと、卵については一キロ三円上がる、ブロイラーは二円五十銭上がる、牛肉は四円上がる、豚は三円上がるんですよ。これが一万円。農協が基金をもって放出をしておりますが、ある程度軽減されるでしょう。あなたはこの問題に対しても重大関心をお持ちになったと聞いておりますが、このように、このたびの飼料暴騰で畜産農家は破滅する寸前、消費者は卵、ブロイラー、豚肉、牛肉の大幅値上げで台所が大きな脅威を受ける。このような事態に対処して、農政の基調の転換は、——このごろの世論の動向を見まするに、食糧は足らないかすかすよりも余ったほうがいいという世論形成がなされておることは傾聴すべきことでありましょう。したがって、当面するこれらの問題に対し、私は基本的に発想の転換を、特に世界の穀類の不足状況から見てなさる必要があろうと思いますが、いかがですか。
  161. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国際分業を進めたいという、進めなければならないという国際要請はございますが、その国際要請はそのまま是認するとしても、やはり主食やそれから農産物、えさのような問題に対しては、両面から考えていかなきゃならないと思うんです。  その一つは、安いものは外国から何でも買えばいいんだということでは、いま、えさ自身がアメリカ以外にはみんな不作であります。そういう意味で、アメリカに対して農協の会長が行っても、ことしの秋には増反をしますからできますが、いまはだめですと、こういうことを言われておるような状態。そういう現実がありますから、やはり自給度というものを一〇〇%に持っていく、すべてのものを一〇〇%に持っていくというわけにはまいらないでしょうが、自給度というものを上げていくということは、やはり当然考えなきゃならぬわけでありますし、国際的波動に対応するためにも、やはり自給度を上げるということが政策の中で重点的に考えられなきやならない。それで備蓄という問題も当然考えられなきゃならぬわけであります。石油なども、もういま灯油自身の配給もできないというような状態もあるのですから、石油は、これはもう自給自足できなくとも備蓄が必要であるということで、飼料とかあらゆるものに対して、やっぱりぎりぎりではなく、ある程度のものを持ってなきやならない。この間、ドレーパー氏が参りましたが、これはもう地球上でも人間がふえていって主食問題はたいへんになる、こういうことでございます。公害問題がいろいろ言われているが、主食の問題というのはほんとうにたいへんになる、こういうことでありますから、農産物の自給度を上げるということに対しては、やはり新しい視野と角度と立場から、もう一ぺん見直しをやらなければいかぬのだろうと、こういう気持ちでおります。
  162. 足鹿覺

    足鹿覺君 政府は米投機対策に食糧庁、公取委員会、国家公安委員長が主宰する警察庁等を動かし、権力的にこの規制を行なわんとしておる。実態調査はできましたか。公安委員長なり、公取委員長の現況を伺いたい。  問題は、商社の姿勢にあります。自主流通米さえなくなれば、政府が全量買い上げさえしておれば、商社の蠢動する余地はなかった。物統令三十三条を撤廃しなければこういう事態はなかった。あなた方みずからが食管の運営を誤ったからこういう事態になった。ある商社はこう言っております。米の買い占めはやっておるよ、どんどん買いまくったよ、だけれど今度の円の実質切り上げにしても、商社は大損だ、その穴を埋めるのに大豆や米に手を出してどこが悪い、土地や市況商品に対する融資を押えると言ったって、金にしるしがあるわけじゃなし、今後もどんどん買っていくつもりだと、本音を吐いていますよ。このようないわゆる商魂たくましいというか、いわゆるこういう人たちは、やはり一つの商業哲学によって、もうけるためにはあらゆる手段を弄する。そういう道を開いたのは政府自身である。これを買い占めを規制をして立法をする。私は矛盾していはしないかと思うのです。このような社会責任も何も考えない商社の手出しのできないためには、米の全量買い上げ、自主流通米をやめる、これが根本ではありませんか。この基本を踏まえて食管制度を厳格に運営する姿勢をお示し願いたい。
  163. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 足鹿君、時間が参りましたから……。
  164. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) いま自主流通米から御批判で、権力的な調査をしておるのではないかというふうにいろいろお話があったわけでございますがね。私は、先生もお詳しいのでたいへん恐縮なんですが、自主流通米も、これは自主流通計画にのっとってちゃんとした流通経路に乗せていますわね。そうであれば、たとえば昨年の暮れで政府が一体管理米としてどれぐいら押えておるかと。そうしますと、これは詳しく申し上げます。四十三年ものが五十六万トン、四十四年ものが百三十万トン、四十五年ものが五十二万トン、で、四十六年は不作でこれが非常に少なくて九万トンで、四十七年分は十二月で四百五十八万トン、それでこれは合計すると七百五万トンというものはちゃんといまの食管の上で政府の管理下にあるわけですわ。ですから、いまお話しの問題点は——よく聞いてください。問題はモチ米に出発しているんですよ。モチ米は需給がアンバランスで六万トン不足しておるということが原因でモチ米にまず手がついたと。その手がついたのが未検米ですね。それに手がついていまこういうやみで、食管法による調査で摘発するようなものが出てきたわけでございまするが、しかしながら、本体はただいま申し上げたとおりに、全部流通経路にちゃんと食管法のたてまえ上で乗っておるわけですから、ただ、いろいろと御意見があるのは、政府の売り渡した米が、これがある程度のマージンがついて、上・中・並・下というように現在市中に出ておると。その価格の点が御批判があるかと思うのでございまするけれども、しかし、食管法によって完全に米というものは流通経路に乗せるようにちゃんとなっておるのですから……。(「なっていないよ」「違いますよ」と呼ぶ者あり)
  165. 足鹿覺

    足鹿覺君 農林大臣、そんな認識では困ります。政府は、食管法を存続させながら、その運用を緩和し、政府と民間の二本のパイプのうち、民間のパイプを太くする政策を現在とっておるではありませんか、きたではありませんか。昨年の四月、物統令を廃止することにより——全量買い上げであったときは、国の管理物資であって、商品ではありません。それが、物統令の廃止と同時に、米の商品化が実現した。これは、あなた方の行政のワクを越えて商品化されれば、これが投機の対象になることは、これは買い占めをやっても、罰則の撤廃をしたのであります。あなたは、政府の管理下にあるとおっしゃいますが、そのたてまえだけであって、実態はそういうものではありません。あなた方の二本のパイプをつくったことに矛盾がある。だから、運用の態度を改めなさいと。まず、商社の米の買い占めも、現状を取り締まることもけっこうでありますが、そういう道を開いた政府みずからが食管運営の姿勢を正し、食管を堅持し、自主流通米を廃止し、消費者を守るために二重価格を堅持していくことが政府責任ではありませんか。それこそ、福祉農政、福祉経済成長のための農業の果たす役割りをつとめることになるのではありませんか。農林大臣、あなたは、この問題については、わずかな時間のやりとりでは尽きませんが、そういう御認識では、絶対にこの米投機を取り締まることはできません。根幹を投げておいて、だんだん商品化を進めておいて、何ぼ警察力を動員し、公取を動員しても、それが何の役に立ちますか。十分に御反省を願いたい。総理も、とくとこの点については構想を転換され、食管制度を堅持して、その健全な運営に努力されたい。この点について総理の御所見を承りたい。
  166. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 食管の根幹は維持しておるわけでございますし、これからも維持してまいります。  それから自主流通米制度というのは、もう申すまでもなく、国民の嗜好に合うような良質米を生産するということでありますから、これにはそれなりの合理性があるわけでございます。問題は、やはり、政府が持っておる量が多いということであれば、投機はおのずから起こらないわけでございますから、生産量の拡大というような問題に対しても真摯な検討を続けてまいっておるわけでございます。少なくとも、主食が投機の対象になり、国民に対して配給を欠くような事態を起こさないために、万全の態勢をとってまいります。
  167. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 足鹿君、いま一問です。
  168. 足鹿覺

    足鹿覺君 どうもたいへんすみません。  そこで、最後に、もう時間がありませんので、お許しをいただいて一問だけさしていただきますが、最近の企業の土地の大買い占めです。大体五十万ヘクタールといわれておる。主として山林原野、農地に至っている。大体全国で五十万ヘクタールといわれております。乱開発であります。土地投機の進行は、農地の面積減に及んでいきまして、自給率達成に大きな支障になることは明らかであります。三十年代当初の農地の転用は年間数千ヘクタール、三十年後半は万単位、三十七年当時の農地は六百八万ヘクタールであったものが四十六年は五百七十四万ヘクタールと激減しております。  企業の土地買い占めの例は、ここにありますが、なかなか証拠はつかめません。開拓地をねらって、これは鳥取県でありますが、一斉にブローカーが入って、そして農地法三条、農地法五条に反する行為をてん然としておる。しかも、この契約書の中には、「本物件の所有権は売買代金全額の授受が完了すると同時に売主から買主に移転するものとし、登記権利者の名儀を第三者に変更することがあっても売主は異議なくこれを承諾する。」という一項がある。明らかにブローカーです、これは。このような状態が、鳥取県の各地、岡山、広島、島根、中国縦貫道の完成を見越して標高三百メーターから五百メーター程度の開拓地を中心に買いあさりが進んでおる。これはおそらく全国同様なことでありましょう。農地法三条、農地法五条、一体これは眠っておるのですか。自治大臣国家公安委員長も十分お聞き取りをいただきたいが、大規模な土地Gメンというようなものをつくり、これらの違法なブローカーや、これを使う大企業の山林原野、農地の不法買い占めに対して大規模な摘発をやらない限り、日本列島改造は、国土を荒廃せしめるのみならず、山林を買いますと、保安林だけは残しますが、あとは全部買い占められたならば、その保安林の役は一体どうなりますか。農地にしてみても、農林大臣の権限なくしてすでに金の授受が行なわれ、開拓者は下山しております。こういう状態を放置して日本列島改造などを論ずることは、国民は納得できないです。農民をそういう心境に至らしめたことも確かに問題はありますが、この問題に対して、岡山県川上郡備中町においては、一村の八〇%を占める農地がすでに買い取られておる。鳥取県においても千二百ヘクタール以上の土地が買いあさられておる。こういう状態について、総理、農林大臣、自治相、公安委員長の御所見を承って、時間がまいりましたので、失礼をいたします。
  169. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) なるべく簡潔に願います。
  170. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 足鹿委員に申し上げます。  御指摘になった事例は、私のところにも報告が参っております。売買予約や農地法の許可を条件としてそのような売買契約を締結したということについては、まことに遺憾であります。そこで、お話のごとくに、今後におきましては、都道府県あるいは市町村あるいは農業委員会と緊密な連絡をとって、あらかじめそういう行為を摘発していかなければ、契約してしまったあとでは非常にむずかしい問題になりまするから、その辺のところは、足鹿委員のおっしゃるとおりに私どもも考えております。  それから山林原野の関係につきましては、これは先般来本会議でも申し上げたと思いまするが、森林法の改正を近くお願いをいたしまして、取り締まることのできるように措置をいたしたいと、かように存じております。
  171. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 御指摘の点は、きわめて重要であります。そこで、今度、総合的な土地対策政府として樹立しようというわけで、いま結論を得べく努力中であります。もう最後の段階です。そこで、御承知のように、土地は合理的に利用されなければなりませんから、そういう乱開発、買い占め、こういったものを排除するために、各県ごとに土地の利用計画を策定する、そして一定規模以上の土地の取引につきましては県知事に届け出制をとる、また、土地がことさらに投機的に動く場所等々は指定をして、県知事がこれに対して認可をする、許可をする、こういう形、場合によれば、開発は停止する、売買停止も行ない得るというようなことで、目下、関係各省庁、最後の結論を得べく努力中であります。こういう形になりますと、従来の思わく的なまた投機的な土地の買い占めといったようなものは、相当排除されるものというふうに見ております。  それからあとは国家公安委員長としてでありまするが、この土地の問題は、もとよりこれは関係機関の行政指導に待たなければなりませんが、たとえば農地を無許可で売買するなどということがありますれば、これは取り締まりの対象にしております。四十七年度には四百二十五件に及ぶ事犯があったことを御報告申し上げておきます。
  172. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 以上で足鹿君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  173. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 次に、塩見俊二君の質疑を行ないます。塩見俊二君。
  174. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 私は、自由民主党を代表いたしまして、当面の経済問題につきまして、若干の私の提案を含めながら御意見をお伺いいたしたいと存じます。  まず、最初に、昭和四十八年度の予算についてお尋ねをいたしたいと存じます。  明年度の予算は、私は、社会福祉の向上に大きな第一歩を踏み出した予算であるということで評価をいたしておるのであります。また、同時に、今回の予算が、この社会福祉の向上のほかに、国際協調の推進、また物価の抑制という柱を加えまして、この三つを柱といたしまして国家の資源なり所得なりの配分を転換をいたしまして組まれました最小限度の規模の予算であると思うのであります。また、この予算は、先ほど申し上げましたとおり、物価対策に一兆円をこす予算が組まれておるのでありまして、物価抑制型の予算だと私は理解をいたしておるのであります。  しかしながら、今日までの国会を通じまして、明年度予算がインフレ予算ではないかという議論がしばしば繰り返されたのであります。私は、今日においても、その議論が絶えていないと思うのであります。私は、こういうふうな議論は、むしろインフレ・マインドをあふりまして、非常に重大な物価情勢になっておる今日、これは非常に好ましくない影響を与えはしないかということをおそれておるのであります。  したがって、この際、最初に、明年度の予算の性格と申しますか、明年度の予算は、物価を押える予算であり、上げる予算ではないという点につきまして、大蔵大臣並びに総理大臣の御所見をまずお伺いをいたしておきたいのであります。
  175. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 四十八年度予算につきましては、予算の説明等におきましても政府の見解を申し述べたわけでございますが、その後いろいろの論議で、いま御指摘のように、インフレ予算であるというような批判が相当行き渡っておる、まことに私も残念に思う点でございまして、あるいは政府の説明が足りなかったり、あるいは説得力が十分でないかと、まことにじくじたる感じを持っておるわけでありますが、いまお話がございましたとおり、福祉の向上と物価の安定と国際収支の均衡、この三つを柱にいたしておりますことは御案内のとおりでございますし、その同時達成に最大限の努力を重ねておる次第でございます。  同時に、私は、率直に申しまして、少なくとも予算がインフレの性格を持っているものではない、断じてそうではないと確信をしておるわけでございますが、物価の問題、これには国内、国感いろいろの原因もあるように思われますけれども、いわばインフレ・マインドといったような感じがびまんしておりますから、その中に入って、予算もインフレだからと、こういうふうな感じが率直に言ってみなぎっているのではないかと思われます。  そこで、御承知のことばかりでございますけれども、端的に二、三の例を申し上げますと、まず、一つは、膨大な予算ではないかという批評に対しては、なるほど二四・六%の増ではございますけれども、中央・地方を通じての財貨サービスの購入の比率というものは一六・六%の伸びでありまして、経済成長率に見合ったいわば中立的なものであるということを指摘いたしたいと思います。  それからその次に、公債を出すから、そしてその公債の量が多いからインフレであると一つの論点にされておりますけれども、公債につきましては、前年度当初の予算の依存度一七%を下回っておりますことも御承知のとおりでございますし、現在のような、いずれいろいろと御意見も伺えると思いますけれども、金融情勢等からすれば、この程度の公債の発行によってむしろ資金を吸い上げて、これを財政主導型で福祉向上の面に向けていきたいということを考えておるわけでございまして、いわゆる市中消化、そして建設公債、この二大原則は確立をし、これを順守しておりますことも御承知のとおりでございますから、この面からのインフレ論というものは私は承服することはできないわけでございます。  さらに、歳出の面では、ただいま御指摘のとおりで、物価の安定ということについては、総合的に、低生産部門の生産性の向上や流通機構の改善という面にわたりまして一そう総合的な対策を展開したい、こう考えまして、特別会計を通じますれば一兆三千五百二十六億円、前年度に比べてほぼ三〇%増の歳出を組んでいるわけでございます。  こういったような点と、輸入政策の活用、新しい土地税制の創設、金融面における過剰流動性の吸収、融資の規制、多角的な政策手段を活用しまして総合的な物価安定対策実行していこうというかまえでございますから、これらを総合して四十八年度予算は、まさに御指摘いただきましたように、インフレとは無関係である、かように確信をいたす次第でございます。
  176. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 次に、特に予算編成後におきましても、日本経済は非常に激動を続けておるのであります。予算編成後におきましても新しい事態が次々に出てまいっておりまして、非常に早期な二月十四日の円のフロート制移行、あるいは現に外為市場が閉鎖中である。さらに、この円の動揺につきましても、今後相当長期に続くのではないか。あるいは物価問題にいたしましても、株式から土地に始まりまして、生活必需物資まで広がったこの投機の問題その他につきましても、むしろ本年になってから深刻さを増してきておる。私はかように考えるのでありまして、この予算と同時に、予算の執行なり運用なりにつきましても慎重な配慮を望みたいのであります。財政投融資につきましては、すでに機動的な運営をはかっておられるところでございまするが、明年度になりましても、私は、単に金融政策だけにこの重荷を経済全体としてかけるということでなく、予算と財政と金融というものが相補完をして、一体になって、変動する経済に対処していかなければならぬと思うわけであります。  そういうふうな観点から、あるいは国債発行の時期でございますとか、あるいは公共事業の計画等につきましても、適時その時代の情勢をよく見ながら、機動的な運用もはかっていかなければならぬじゃないか。あるいはまた、特に重大になりました中小企業の構造改善を含む対策、あるいは物価対策というようなものに対しましては、時期を失せず、すみやかに予算の補正措置を講ずるというようなことを大胆に執行いたしまして、この流動する情勢に対処し、そして経済の安定と国民生活の安定、そういうところに注意深く慎重に、かつ大胆にこの予算の執行を行なっていくべきものだと、そういうふうに考えまするが、大蔵大臣の御所見を伺いたいのであります。
  177. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まことにごもっともな御指摘でございますので、財政投融資を含めまして、機動的、流動的な運営に当たりたいと考えております。  それから公債の発行につきましても、政府対民間の収支状況をよくにらみまして、たとえば、四月、五月などは散超期でございますから相当額の発行を予定いたしますけれども、揚げ超期にはもちろん発行額を減少するというような、機動的な、時期に対応するような具体的な措置をとってまいりたいと思います。  それからお尋ねの中にも出てまいりましたが、ちょっと時間をいただきましてこの際申し上げたいと思いますが、特にこの国際通貨情勢の変化の状態で一番大切なことは、輸出関連中小企業に対する対策でございます。この点についてはすでに二月の中旬以来、下請取引の適正化とか、金融の円滑化とか、あるいは納税の猶予制度の活用、あるいは中小企業輸出にかかる為替予約の円滑化、あるいは外貨預託というような緊急措置を打っておりますが、実は、本日の持ち回り閣議におきまして、総合いたしましてあるいは数字をあげまして決定をいたしましたので、その二、三を御紹介いたしたいと思います。  まず緊急融資の実施につきましては、政府関係中小企業金融三機関によりまして、輸出関連中小企業者に対する滞貨、減産資金、その他経営の維持安定等に緊急な必要資金、それから転業資金にかかる長期低利の融資につきまして、融資規模として二千二百億円、そして融資条件の緩和、融資限度の別ワクの設定と特利の適用、それから財政措置といたしましては、一般会計から商工組合中央金庫に対して六十億円の出資を行なうことをはじめ、これら三機関の融資資金につきましても、実情に応じて所要の財源措置を講ずることといたしました。沖縄の振興開発金融公庫の融資についても、遺憾なきを期したいと考えております。  それから既往融資の返済の猶予、その中には、昭和四十六年当時に実行いたしました緊急中小企業対策、それから繊維関係の特別融資等についての返済の猶予、それから設備近代化資金等につきましても返済の猶予を実行いたします。  信用補完措置につきましても、輸出関連中小企業者のうち、信用力、担保力に乏しい者につきましては、信用補完の拡充措置によりまして、中小企業の経営の安定と事業転換のための金融の円滑化をはかることにいたしまして、保険特例措置の新設、保険限度の別ワク、保険料率の引き下げ、てん補率、適用の期間等についてそれぞれくふうをこらすことにいたしました。これらに関連して必要な財政措置といたしましては、たとえば信用保険公庫に対する出資四十億円、あるいは信用保証協会に対する助成措置というような点については、財政上の援助措置をいたすことにいたしました。  税制上につきましては、今後二年間、欠損金の繰り戻し制度による還付を既往三年間にさかのぼって行なうことを認めるということをすることにいたしました。  それから事業転換の円滑化でございますが、この点につきましては、中小企業振興事業団の事業転換融資、さらに中小企業金融公庫、国民金融公庫等を通じまする事業転換の貸し付け、あるいは償却の特例など、財政金融及び税制上の制度の一そうの活用をはかることといたしました。  また、中小企業信用保険の特例措置など、これらの措置を講じますために、あるいは臨時措置についての法律の有効期間延長のために立法措置を行なうものもあるのでございまして、これらの点につきましては、国会に御協力をお願いいたしたいと考えております。
  178. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 予算に関連をいたしまして、この際、暫定予算についての考え方につきまして、大蔵大臣にお伺いをいたしておきたいと思います。  昨年十二月、総選挙がございましたにもかかわりませず、翌年度の予算が例年どおり一月末日に国会に提出せられました政府の御労苦に、私はまず敬意を表するのであります。その後、衆議院におきまして熱心な討議が行なわれまして、本日から参議院が審議に入ったわけでございまするが、四月一日の新会計年度まで、計算をいたしますると、本日を含め日曜日を含めて、わずか十八日間の期間しかないわけでございます。私は、参議院は参議院としても実のある審議をして、国民にこたえなければならねと思うのでございまして、こういつたような関係からいたしまして、暫定予算というものを、私個人はこれはもう必至ではないかと考えているのでございまするが、お差しつかえがなければ御見解を承っておきたいと思います。
  179. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 政府といたしましては、現在御審議をいただき始めました四十八年度予算を、一日も早く成立させていただきたいと考えておるわけでございまして、現在、本日が十四日でございますが、まだこの時点におきましては、暫定予算の編成ということは考えておりません。何とぞ、参議院における円滑な御審議を切望申し上げる次第でございます。
  180. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 それでは次に、物価の問題につきまして一、二お尋ねを申し上げたいと思います。  最近の物価情勢は、非常にきびしい状況に相なっておるわけでありまして、私は国民の皆さん方、特に台所を預かる主婦の皆さん方に至るまで、この物価の問題にむしろ関心が集中しておるようにも思われるのであります。ところが、最近の物価情勢は、非常に私はきびしいと判断をいたしております。卸売り物価にいたしましても、ことしになりましても、一月が一・五%、きのうの日銀の発表によりますると、二月もやはり前月比一・六%の上昇を続けておるのであります。あるいはまた外国の物価の上昇、大体六%前後にほとんど定着をしておるように思うわけでありまして、これはやはり国境を越えて日本物価を大きく脅かしていると私は思うのであります。あるいはまた最近の生活必需物資の投機的な暴騰、そういうふうな問題等も重なりまして、政府経済見通しにおいて予測した以上に私はきびしい状況ではないかと思うのであります。また、最近発表されましたいろいろの金融機関、経済研究所の予測を見ましても、いずれも政府の見通しを上回っておるというふうな状況であります。  しかしながら、私は、政府の掲げました見通しの、卸売り物価二%あるいは小売り物価五・五%、これは単なる私は予測であると考えないのでありまして、ぜひともこの程度の水準に日本物価の上昇を押えたいという、政府努力の表現であると私は考えまして、私はこの政府の態度に大きく評価をし期待をいたしておるのであります。  そこで、経済企画庁長官にお伺いをいたしたいと思いまするが、現時点に立って、こういつたきびしい情勢の中で、なおかつこういう上昇率の範囲にとどめるというような今後の見通し、あるいは、それを実現するためにはこういうふうな積極政策を行なっていかなければならないという、その積極政策等につきまして、まず御見解を承りたいと思います。
  181. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 最近の物価の情勢というものは、ただいま御指摘のごとくに非常に高騰傾向でございまして、これは国内のみならず、国際的にもさような状況であることは、ただいまの仰せのとおりでございます。  政府といたしましては、この物価の情勢に対処いたしまして、何とかいたしまして、この今年度の見通し、卸売り物価二・二、消費者物価五・三というところを達成し、また明年度の見通しである卸売り物価二・〇、消費者物価五・五というところに押え込みたいという政策努力を傾けたいと思っておるわけでございまするが、御承知のように、消費者物価につきましては、季節的な商品等の非常な好調な出回りを反映いたしまして、十二月におきましては、昨年度に比しまして四・五というところに押え込めたわけでございまして、この三月末においても目標の五・三以下であろう、おそらく五・一ぐらいでとどまるのではないかと考えておるわけでございますが、ただ、卸売り物価のほうが非常にどうも高騰しておりまして、これは特に毛糸、羊毛というような、ああいう海外の物価影響もございまして、かなり全体への影響の強い物価が上がっておりまして、これを何とかこの三月末の二・二というところへ押え込みたいと考えておりますが、これはかなり困難な情勢であるわけでございます。  そこで、ちなみに海外の状況を一応申し上げてみたいと存じまするが、非常に最近の輸入物価、私は、今度の実質上の円の切り上げでもって相当に輸入物価が下がるということを期待しておるのでありますし、追跡調査その他によってできるだけこの実現をはかりたいと思いますが、何せ非常に海外の輸入物価が上がっておりまして、実数を申し上げますと、昨年の六月ごろでございますと非常に落ちついておりまして、四十五年を一〇〇といたしまして、六月で九四・五、前年の同月比でマイナスの七・二であったものが、その後四十八年の一月になりますと一〇六・九で、前年同月に比しまして一二・九というぐあいに上がってまいっておるわけでございます。一方、国際商品相場指数で見ましても、十−十二月の騰勢というものが非常に強くなっておりまして、これは前年の同期に比べますと、三三・八という異常な高騰を見ておるわけでございます。月別で見ましても、この一月になりまして四五・六と急上昇をいたしておるのでございます。御参考までに申し上げますと、昨年の六月におきまする前年同月比は五・二%であったものでございますが、十倍近く上がっておる、こういう状況でございます。  私ども、この輸入物価を下げつつ国内物価も下がるようにするには、何といっても全体の資金のだぶつきといいますか、過剰流動性を退治するということがもう絶対に必要である、こう考えておりまして、やはり金融操作による引き締めを心がけておるわけでございまして、これが先般、御承知のような二回にわたりまする銀行の預金準備率の引き上げというものにもあらわれ、あるいは日銀の窓口指導によりまする、土地への貸付あるいは輸入商社の手形の限度を設けましての割り引きの停止というような、いろいろな指導をやっておるわけでございますが、どうもまだそれが足りぬのじゃないかというふうに見られる面もございます。ただ、いま御承知のように揚げ超でございます。財政的には揚げ超の時期になっておりますので、その点を、日銀あるいは大蔵省御当局において、あまり妙な影響が出ないようなさじかげんを慎重に考えて措置をしておられるのだと思いますが、どうも時期によっては、もう少し締めていかなければならぬ状況ではないかというふうに思っておりまするわけでございます。  それから、一部に非常にインフレ・マインドをあおるような事象がございまして、土地の問題、株式の問題、あるいは木材に始まりまして大豆にいったり、あるいは最近は繊維類、生糸あるいは羊毛、綿花、そういうようなものにもだんだんございまして、これに対しましては、商品市場に対するいろいろな警告措置等も行ない、また党のほうともいろいろ御相談をいただきました結果、不当なる売り惜しみとか買い占め、そういうものによって暴利をむさぼるようなものに対する、ある種の措置を法律によって行なおうということをきめたりいたしておるわけでございますが、いろいろな手だてを尽くしまして、何とかこれを——国民のもう一番根本は物価でございますので、働いても物価が上がってしまってはどうにもならぬ。福祉政策をやっても、やろうとしても、物価が上がってしまったのでは実効が失われるということでございます。何とかこの物価の問題に対して、総力をあげて取り組みたいと考えておる次第でございます。
  182. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 ただいま企画庁長官のお答えをいただきましたとおり、私は、当面、日本の最大の政治課題は物価の問題ではないかと思うのでありまして、国民の不安を除くと申しまするか、鎮静させるためにも、この際、物価に対する総理の決意のほどを一言お伺いしておきたいと思います。
  183. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 具体的の問題は、いま大蔵、経企両大臣から詳しく述べましたが、ことしの問題は、やはり物価の抑制ということでございます。  申すまでもなく、輸出を内需に転向しようとすれば、どうしても国内景気を上昇させなければなりません。また、社会保障を拡充するとすれば、これも皆ある意味では物価上昇要因ということにつながるわけでございますが、その中で、反対に物価を押えなければならないというところに、この予算の非常にむずかしさがありますから、執行の段階においては十分注意をいたします。  それから、そこに一つだけ、非常に悪いこと悪いことと言われますけれども、物価面には、その運用いかんによればプラス要因をもたらすであろう変動相場制の問題があるわけでございますから、輸入政策の活用をやるということによって、物価は押えていかなきゃならぬわけでございます。だから、そういう意味で、財政、金融、両面から、物価面に対しては十分な配慮をいたしてまいりたい、こう考えます。
  184. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 ただいま総理大臣から、円の切り上げと申しますか、円の上がりに伴って輸入物資の価格が下がるであろうと、それを期待するというお話がございましたが、私は、確かにこの問題に真剣に取り組んでいかなければならぬと思うのであります。いま物価問題につきまして国民の明るい面といえば、この輸入物資が値下がりをするのではないだろうか、こういう点に明るい面としては集中しておると思うのであります。どうしてもこの値下がりを実現をしていかなければならぬと思うのであります。  私がちょっと試算をいたしましたが、かりに、明年度の経済見通しによる輸入額二百五十二億ドルでございまするが、これが一五%の切り上げになれば三十七億八千万ドル、二〇%の切り上げになれば五十億四千万ドルというような膨大な輸入物資の値下がりが、数字上計算をされるのであります。前回の切り上げの際におきましては、輸出国の価格の値上げあるいは流通過程においてこれが吸収されたというような、いろいろな問題がございましたが、今回は、もう前回の経験にも徴しまして、これがストレートにひとつ国民の消費物資の価格に影響する、これには万全の努力政府側にお願いを申し上げたいと思うのであります。  つきましては、これの対策として、たとえば売り惜しみ、買い占めというふうな問題につきましては、価格調査官というものを置いて、専門にこれが監視に当たるというような御計画のように承っておるのでございまするが、こういったような輸入物資につきましても、そういう制度を設けるといなとにかかわらず、特に特別の専門の職員を配置して、そうして輸入物資のトレースに当たっていくというような積極的な対策が私は望ましいのじゃないかと思っておるのであります。  さらに、ついでにお尋ねいたしますが、特に政府の直接管理する物資、あるいは米でございますとか、あるいは酒でございますとか、あるいはたばこでございますとか、こういったような政府の統制のきく物資につきましては、ストレートにこれが国内の価格に反映していくというようなことについて、格段の努力を願いたいのであります。さらに必需物資等につきまして、値上がりの多いものというものは、関税の引き下げ等も並行してこの際措置をとって、そうして輸入物資の価格の引き下げを実現をしていく、そういうふうな措置をとってほしいというふうに私も考えるのでございまするが、こういった点につきまして、関係の大臣からお答えをいただければ幸いに存じます。
  185. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 前回の昭和四十六年の二八・八八%切り上がりましたときには、大体一%ぐらい影響があるであろうと考えておったのでございまするが、流通機構の過程におきまして〇・五%ぐらいが吸収されたというようなことであったかと思うのでございます。  今回は前回の経験を生かしまして、ただいま仰せのようにストレートにそれが消費者に均てんするように、円の切り上げの効果が消費者物資の値下げに直接あたりまするようにつとめたいと考えておるわけでございまして、特に、政府が直接いたしまするたばこであるとか、塩であるとか、小麦であるとか、そういうものについてはできるだけ早くその結果を出すようにいたしたいと考えておりますが、小麦につきましては、これは食管の中に入ってくるわけでございますから、これをどう扱うかということも農林大臣にお願いいたしましておりまするが、やはり六月ごろの、この食管をきめまする際には当然これが数字的にあらわれて、消費者に還元されていくものだと考えておるわけでございます。  ただ、この際できるだけ輸入をふやしていかなきゃならぬということでございまするが、やはりこれには完成品の輸入というものをもっと考えていいのではないかというふうに考えております。いま日本は先進工業国のタイプになってきているわけでございまするが、日本の原料輸入が輸入の中において占むる比重が圧倒的に多うございまして、製品輸入は大体二八・五%ぐらいになっております。これが、アメリカの場合は七〇%をこえておりますし、イギリスも五六%ぐらい、フランス、西独は六二、三%になっておりまして、日本はこれに対して著しく製品輸入が低いのでございます。こういうものをもっと入れることによりまして、消費者物価の安定にも寄与することができるのではないか。さような方向について、できるだけ関税審議会のほうの、輸入関税の面についても御心配を願いたいといっておるわけでございます。いずれにいたしましても、先ほどちょっと触れましたように、原料の海外における市価が非常に上がっておる、そういう点を考慮いたしまして、できるだけたくさん輸入するということが必要であろうかと思います。  ただ、一つ、立ちましたついでに申し上げておきたいと思いますのは、この際輸入の全体の価額が、総額がたいへん上がっておりまして、この二月の初旬ごろで見ますと、大体前年の同期に比べまして、十日単位の数量でございますが、大体六割六分ぐらい上がっているのであります。輸出が二割四分ぐらいの増でございますので、だいぶ、その点でいいますと一昨年の為替調整の効果があらわれてきているといいますか、それと同時に海外物価影響もあらわれて、日本は非常に輸出が多くて輸入が少ないという形が、漸次この際修正されつつあるような傾向があらわれているということを申し添えておきたいと思います。
  186. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 関税につきましては、すでに一律二〇%の引き下げを行ないましたし、今国会でも、物価に特に関連のある三十二品目について引き下げの御提案を申し上げておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。  それから政府のいわゆる管理物資でございますが、製造たばこ、それから塩、酒というようなものについては、何とかひとつ努力を新たにして、御趣旨のような結果にするようにいたしたいと思っておるわけでございます。  ただ、たとえば塩で申しますと、たしか百七十万トンぐらいの消費のうちで七十万トンが輸入でございますが、輸入価格の六割が海上運送費なんでありまして、その輸送料の値上げというようなものがございます点が気がかりでございますけれども、積極的な努力をいたしたいと思います。
  187. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 通産大臣に、この問題で一言お伺いしたいのでございまするが、円のフロート制に移行してからちょうど一カ月ばかりたったわけでございまするが、この間における輸入物資の値下がりの傾向といったようなものを把握しておられるようでございましたら、この際、承りたいと思います。
  188. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほどお答え申しましたように、三月の中・下旬に一応のトレースの発表ができると思いますが、まあ顕著なものは、たとえばパーカー万年筆のようなものはかなり下がりました。それから石油製品、石油等も一部下がり始めましたが、最近OPEC攻勢でまた前途を心配している、そういう状態でございます。しかし、それ以外の品物は、いまのところはわりあいに、それほど顕著に下がるという状態にはいっておらぬようでございます。これはわりあいに現地生産品の値が高い、綿糸にいたしましても毛糸にいたしましても、天候その他の事情で、需給状態が国際的にも逼迫しておりまして、輸入物資については原価が下がらないと、そういう情勢で拍車が加えられているというのが現状でございます。
  189. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 価格調査官というような構想を何か、特に通産省が一番関係が深いと存じまするが……。
  190. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 何でございますか。
  191. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 輸入価格のトレースをする専門の者を少し置いて、そういう方法を講じたらどうかということを先ほどお尋ねしたのですが、その点、もしお考えがあれば承っておきたいと思います。
  192. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 輸入価格のトレースにつきましては、これはすでに発動しておりまして、円がフロートしましたときから、すでにいろいろ各方面に手配をしております。  それで、先ほど申し上げました四段階のいろいろな対策を講じたわけでございます。輸入団体に対する指示とか、あるいは係官によるトレースとか、あるいはモニターによるスポット調査とか、そういうようなことを一々指示しておりまして、それから商品につきましては、これは抜き打ちといいますか、係官が突如入っていきまして、その値段を調べてみる、そういうようなこともやっております。それから情勢によりまして、需給関係の協議会を開きまして、そして輸入業者に対して、品物の状況を見て通産省からも警告を発すると、そういうこともいま考えてやっておるところでございます。
  193. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 私は、次に、四月一日から輸入が自由化されることになっておりまする金地金の価格の問題についてお尋ねをいたしたいと存じます。  金地金の輸入の自由化という問題は、円対策の一環として政府で決定せられた問題でございまするが、これが、従来の状況からいたしますると、外貨減らしになることはもちろんでございまするが、同時に、かりに従来どおり、一オンス三十八ドルとか四十二ドルとかいったような水準でございますると、私は同時に国内価格の引き下げになり、二重の成果をあげるものと期待をいたしておったのであります。しかしながら、御承知のとおり、最近、金の価格が暴騰するというようなことがありまして、九十ドルをこえる、あるいはこえた市場に日本の商社も介入しておるというふうなうわさすら実は出ておるような状況であります。もともと日本の金の価格は高かったわけでありまして、長い間一グラム六百六十円、一オンス七十七ドルという水準で経過をしてまいっておったのでございまするが、そういうふうなことで、存外高い金の価格に国民はなれておる。と同時に、品不足のために大判小判が非常に高い値段する、あるいは密輸入の金の延べ棒が異常な価格で取引をされるというような下地もあるわけでございまして、かりに九十ドルで仕入れた金が国内に輸入されるというようなことになりますると、私は国内の金の価格が上がりはしないか。また、この金は特別の商品でございまして、国際的にも非常に関心が深いわけでありまして、日本の金価格が上がったということは、国際通貨の問題にもいい影響は与えないじゃないかと、こういうふうな心配もあるわけでございます。したがって、四月一日から自由化になった後のこの金の価格、あるいはこれの対策、これは慎重に考えておかなければならぬ問題だと思うのでありまして、この点について、大蔵大臣のお考えを承りたいと思います。
  194. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 御指摘のとおり、本件については、政府といたしましても慎重に扱ってまいりたいと思っております。いままでの考え方は、日本の民間の金の需給関係は、御案内のように、外国からの供給に待つだけと申してもいいくらいでございますから、民間の輸入量がふえて、そして供給が相当ふえますれば、日本の国内の価格も国際価格を基準にしてきまるというのが考え方でございまして、これが輸入自由化についての考え方でございましたが、状況を、ただいま御指摘のような点もございますから、十分慎重に見守りながら、異常な状態が万一でも起こることが予想されるようなことになりましたら適切な措置をとらなければならないと、こういうふうに考えております。
  195. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 特に、慎重な御配慮をお願いをしておきたいと思います。  次に、ドルの問題についてお尋ねをしたいと思いまするが、午前中来、足鹿委員政府の間に、非常に広範な問題にわたりまして、熱心に論議がされたわけでありまして、私は午前中からの引き続いての論議とできるだけ重複を避けながら、若干の質問を申し上げたいと存じます。  まず、市場の再開の問題についてお尋ねをしたいと存じます。日本の外為市場もヨーロッパの市場閉鎖と歩調を合わせて閉鎖になりまして、かつてない長期の閉鎖を続けておるわけでございます。今回の閉鎖原因につきましては、先ほど足鹿委員の質問に対しまして、日銀の総裁は、今回のヨーロッパの通貨の動揺は、従来と違って、アメリカドルに対する不信あるいは投機資金——過剰ドル投機、こういうふうな点に問題があるということを指摘されておりましたが、私も全く同様に考えるわけであります。したがって、ヨーロッパの市場再開につきましては、どうしてもアメリカドル信用の回復への努力あるいはヨーロッパの市場再開後の新体制につきまして、新しい通貨の体制につきまして、EC諸国あるいはアメリカ等の了解がなければ、なかなか再開の見通しがつかないだろうというふうに考えておったのでございまするが、わりあい早い機会に、十九日再開ということにきまりまして、十六日の十五カ国蔵相会議ではこれが結末がつくのではないかということで、私どもも喜んでおるわけでございます。  そこで、日本の外為市場の再開の問題でございまするが、午前中の大蔵大臣の御答弁を承っておりますると、必ずしも十九日——再開の日は十九日でなくてもよろしいと、ヨーロッパがそういうふうにきまれば、その前でも再開の機会があるんじゃないかというようなニュアンスを含めたようなお答えにも受け取れたわけでございます。確かに、閉鎖のために中小企業者やその他輸出関係業者にもいろいろの不都合が生じておるわけでございまして、私は一日も早い再開が適当かと思うのであります。再開の時期、それからさらに、そこで警戒しなければならぬと思いまするのは、この再開の場合に円に対する投機の気配があるのかどうか。あれば、これもなかなか問題でございましょうが、その点もあわせてお伺いをいたしておきたいと存じます。
  196. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 東京市場の再開は、ヨーロッパ市場の動向を見詰めながら最終的には決定をいたしたいと考えておりますが、たとえば十九日を待たなくとも再開の可能性があるかというお尋ねでございますが、これはなるべくすみやかに開きたいという、政府としては気持ちでございますから、可能性はあり得ると思いますが、しかし、こちらも土曜はもう休みということになりましたわけでございますから、来週早々からということになる見込みのほうがずっと強いというふうに考えております。  それから、開始いたしましてからの市場がどういう見込みだろうかということにつきましては、今回は閉鎖期間が少し長引きましたから、実需による輸出手形のたまっておるようなものもある程度あろうかと思いますから、そういう点から申しまして、市場がどういうふうな動きになるであろうかということについては大きな関心を持っておりますが、しかし、ヨーロッパのほうも、とにかく一時平静に帰するということであれば投機資金の動きも心配が一応なくなりましょうし、また日本としては、御案内のように、ヨーロッパにないような為替管理が厳として存在いたしておりますから、投機資金で撹乱されて異常な状態が起こるということはまずないものと、また、ないように十分注意して開きたいと、こういうふうに考えております。
  197. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 それでは次に、固定相場にいつ復帰するか、まあそういった問題についてお尋ねをいたしたいのであります。  十六日の蔵相会議におきまして、まあヨーロッパの当面の通貨の混乱というものはこれで回避をすることができると思うのでございまするが、しかし同時に、すでに明らかにされておるように、ヨーロッパはおおむね変動相場制に移行すると、こういうふうな状況になっておるわけでありまして、いつ固定相場に復帰できるかということはますます混迷をしてきたように思うのであります。したがって、固定相場に復帰するというためには、どうしても私は月末から開かれる二十カ国蔵相会議あるいはこの秋に開かれるナイロビのIMFの総会、こういうふうな期間までに、各国とも十分な協調と精力的な努力をいたしまして、アメリカドルの信用性の回復あるいは過剰ドルの扱い、あるいはでき得べくんば今後の新しい通貨秩序と申しますか、通貨体制についておおよその見当がつくというときでなければ、各国がそろって固定相場に復帰することは非常に困難じゃないかと、こういうように私は考えるわけでございます。大蔵大臣が、しばしば、最も適当な時期に固定相場に復帰するのだということを答弁なされてまいったのでありまして、その当時におきましては、予算成立のときではないか、あるいはわりあいに早い機会に固定相場に復帰できるのじゃないか、こういうふうなのが一般の予測であったと思うのでございまするが、その後の情勢の変化によりまして、私は相当幅を持った長期の期間の間に、大蔵大臣の言われる最も適切な機会を選ばなくてはならぬではないか、こういうふうに想像されるわけでありまして、私は相当に国際通貨が、体系的に、秩序的に安定をするという見通しのついたころが、あるいは最も適当な機会ではないかと私は思うわけでございまするが、大蔵大臣の言われる最も適当な機会ということは、一体どういうふうな現時点でめどを持っておられるか、お伺いをいたしたいと思います。
  198. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 経過をたどってみますと、アメリカが突然、と申し上げていいかと思うのですが、米ドル切り下げをいたしまして、これに対応する処置としてこちらは変動相場制をとったわけでございます。ところが、その後あらためてヨーロッパで通貨不安が起こって、そうしていろいろの経緯や、また各国のそれぞれの当時の予想からいえば、変動相場制というようなものに必ずしも踏み切りたくなかったところもあるのではないかと思いますけれども、いわゆる共同フロートということで足並みが一応そろいました。これは新しい事態でございます。で、そういう新しい事態がさらに起こりましたから、日本としては変動相場制をもっと長く続けてもいいのではないだろうかというような意見が出てくるのは、私は一つの見識でありますと申し上げていいのではないかと思います。しかし、先ほども申しましたように、先般の、先週金曜日の会議、その後の代理会議などの状況をいろいろ聞いてみますと、やはり、基本的には各国とも固定相場制へ早く復帰するほうが望ましいという空気が一方においては非常に強いようでございますから、日本といたしましても、それらのことも十分わきまえてといいますか、日本のとるべき態度を間違えないようにしなければならない。そういう点から申しましても、私も幸いに出席の機会が与えられますならば、会議の場においてももちろんでございますが、いろいろの各国責任者と個別的にも意見を自由に交換することが、今後の日本のとるべき措置については非常に有力な参考になるのではないか、こういうように思っておるわけでございまして、いずれまた、状況の見方等がもう少しはっきりいたしてまいりますれば、随時、当委員会におきましても御報告をさせていただきたいと思っております。
  199. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 ただいまの大蔵大臣の御意見に私非常に賛成をするわけでありまして、やはり変動相場制からできるだけ早く固定相場制に復帰して、世界全体の通貨秩序が確立をするということにつきましては、世界各国が共通の問題でございまして、これがブロック化や保護貿易化するということは、非常に私は世界の不しあわせになると思うわけでありまして、大蔵大臣におかれましても、会議出席をせられ、あるいは今後におかれましても、各国と協調して固定相場制に一日も早く復帰できる、そういう体制の確立に御努力を賜わりたいと思う次第でございます。  それから、この機会に二、三点お伺いをいたしておきたいと思うのでありまするが、このドル、通貨の問題はまさに国民生活に非常に直結をする重大な問題でございまするが、どうもなかなか専門的で、技術的で、国民理解をしがたいというような点があるんではないかと思いますし、また現実にこの重大な国際通貨外交にごく少数の専門官が出て外交をやっておる。まあ今回は大蔵大臣出席をせられるということで、私はまさにこれは総力をあげて取り組まなくてはならぬ問題だと思いますし、同時にまた、国民のこれに対する御理解あるいは国民協力というもののもとに進めなくちゃならない、やはり外交の重大な問題の一つだと考えるわけでありまして、そういうことでございますので、この機会にそういった会議に臨む、あるいは今後の国際通貨に対する考え方につきまして、外交上差しつかえない限りにおいて、以下申し上げることにお答えをいただきたいと思うのであります。  まず第一は、アメリカドルの不信ということが、これは非常に大きな問題であろうと思うのでありまして、この不信を回復するために、日本政府としてはアメリカにどういうことを望んでいくのか、どういうふうにしてもらいたいというふうな要求を出すと申しますか、向こうの理解を得てひとつ信用回復のために努力してくれといった、具体的にどういうふうなことを望むか、まずお伺いをいたしたいと思います。
  200. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まず、何といいましてもドル信認を回復するためには、これ以上切り下げドルがやらないということを一段と明確にすることであると思います。そして、交換性の回復について一段も二段もはっきりした態度を示してもらうことであると思います。それから、資本の移動、流出等については、これはたまたま今回のドル切り下げのときに、同時にこの議論がアメリカ側からほぼ公式的に流れたわけでありますけれども、資本の流出を阻止するというようなことはむしろ解除していく。これは日本のみならず、関係国としてはたいへん困ることでございますから、そういう点を含めて、アメリカ自身の資本の移動ということについて抑制的な態度をとってもらうことが必要であると。それから、やはりアメリカ自身としてもドルの還流ということもほんとうに積極的に考えてもらう必要がございますから、アメリカとしての金融対策、国際協調の線に沿うたアメリカ国内金融対策ということが要望される点であると思います。大体大きく分ければこの三つであると思いますが、この第一の点については、まあ何と申しましょうか、バリエーションが非常にたくさんあるわけで、当面の措置、それから恒久的な措置、それからその手段、方法についてはいろいろ技術的に考えられる点がありますが、それらの点については、十分その各国との協力関係の上に、アメリカとしても要請にこたえるように、そして話を煮詰め、コンセンサスをはっきり求めることが最も必要なことであると、こういうふうに考えておるわけでございます。
  201. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 次に、八百億ドル以上だといわれておりまする化けもののような巨大な過剰ドルが世界の市場をはい回っておるというのが現状ではないかと思うのでありまして、やはりこの過剰ドルに対する処置というものをつけていかなければ、国際通貨というものは安定をしないというように私どもは考えておるわけでございますが、こういったこの過剰ドルの処理といいますか、管理といいますか、こういったものについてのお考えがあれば、ひとつお伺いをいたしたいと思います。
  202. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) この点につきましてはいろいろの考え方があって、それらの中には相当の、全世界にわたる相当巨額な金のことでございますから、これをどういうふうにして、将来のことも考えながら、交換性回復という線の上で、河と申しますか、保証を取りつけるようにするということが基本線だろうと思いますが、それには、まあジャーナリズムの上にもいろいろの説が出ておりますようなわけで、どういうやり方をとったならば一番いいかということは、やはり関係国間の合意が一番望ましい方法、そしてみなが、アメリカを含めて合意ができ、かっこれを責任を持って行ない得るような、そういう方法を具体的に探求し、かつすみやかに実施に移すことではないか。これらのバリエーションのある、幅のある、あるいは選択のできるいろいろの方法論等につきましては、必ずしも一つの案ということに膠着いたしませんで、目的が達成できて、列国間の合意ができるような、そういう線を早く取りつけることではないか、こういうように考えます。したがいまして、これでなければならないというような考え方をあまり固定的に初めからきめてかかりませんで、いま申しましたような方向で取り上げていくことが妥当ではないだろうか。二国間の交渉でございますれば、また方法論ももう少し具体的に考え得ると思いますけれども、関係国が多数であり、そうしてその中が必ずしも同じような考え方だけでもない。しかも当の、一番何といいますか、当事者であるのがアメリカであるという、非常に複雑な環境になっております。しかし同時に、日本はドイツと相並んでのいわば大株主でございますから、そういう点での地位をわきまえて、国益を守り、かつ列国の協調を求めながら進んでいくことにいたしたいと、まあ基本的な考え方で抽象的になって恐縮なんでございますが、そういうふうな考え方で対処したいと思っております。
  203. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 次に、前回の二十カ国蔵相会議においても議題になっておるようでございまするが、この平価変動のルールといいますか、適当な客観指標をもって、やや機械的に平価の変動を行なうのだと、こういうようなことが論議せられておるようでございますが、その客観的な指標、その旭そういうようなやり方について、日本側はどういうように考えておるか、お差しつかえがなければお聞かせいただきたいと思います。
  204. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 適当なルールと、それに従っての責任のある態度並びに具体的なやり方をお互いが保証し合うということが一番必要でございます。やはりこれも何々案、何々案といわれて呼ばれておりますように、一番、一見簡単そうに見える、たとえばそれぞれの国が外貨準備ということを基礎にした指標として、そうしてこれこれのことを各国が順守する、それに反すると制裁をするというような、きわめて単純明快な、ある意味からいえば明快な案などもございますが、そう簡単な問題ではないので、そういうような案に日本として軽々に乗るわけにまいらないことはもちろんでございます。もっと複雑で、そしてよるべき指標、ルールをつくるのならば、いままでもいろいろの検討が二十カ国委員会でも検討されておりますが、これまた国益を守り得る限りにおいて各国が協調し得るようなルールというものができれば、これはたいへんしあわせなことだと思います。そういう方向に向かって各国がより建設的に努力することが望ましい、まあ、こういうふうに考えておりますが、これは、先ほど申しましたように、相当恒久的、長期的な問題に相なるかと思います。
  205. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 最後に、これも長期的な問題だと思うのでございまするが、結局私は、このブレトンウッズ体制というものは、なかなかこれはカムバックする体制ではないのじゃないか、将来の新しい秩序というものをやはり各国協力あるいは人間の英知で編み出していかなくてはならぬのじゃないか、かように考えるわけでございまして、したがって、金あるいはドル、あるいはSDRあるいはその他の準備資産、こういうふうなものをどういうふうに一体組み合わせて新体制をつくるのか、あるいはその他の方法があるのか、こういった問題が当然私はこれからのIMFの重要な議題になろうかと思うのでございまするが、こういった将来の新しい通貨と申しますか、新しい体制といいますか、こういうふうなことについてのお考えを承っておきたいと思います。
  206. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ずうっと戦前からの歴史を振り返ってみましても、ポンドが国際通貨でなくなった、そのときからドルというものが基準通貨になってきた。そしてブレトンウッズ体制ができた。ブレトンウッズ体制以降においても、もうすでに国際通貨基準通貨問題ということについてはその当時の著名な各国の学者、権威者などもずいぶんいろいろな研究をされたけれども、結局、実際問題としてはドル基準通貨としてということになったのが大体IMF体制であると、こう理解してよろしいのではないかと思います。  それからSDRというものが東京総会のときに考えられ、実現されてきた。まあ、こういったような過去をずっと振り返ってみますと、やはりSDRというようなものがもっと魅力のあるものになって、そうしてこれが何らかの形で現在よりはもっと強力に中心になるというような線が結局いま考えられ得る選択ではないかというふうにも思いますけれども、これはやはりドル交換性問題などと関連いたしまして、もしドル交換性というものが各国期待するようにはっきりするならば、当座はそれでもいいということにまた戻ってくることにも相なります。相互相関連しておるということだと思いますが、ただ、こういったような複雑な、しかも世界が一つになって——一つの世界ということがこれらの問題のときにいつもいわれる標語でございますが、こういったワン・ワールドというようなことが一つのスローガンになって各国が何とかしていこうというような情勢でございますから、それこそ人類の英知を集めて国際通貨新体制というものが確立できることは、これはまことに望ましいことであると思います。
  207. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 次に、日米貿易の問題についてお伺いをいたしたいと思うのであります。  私は、今日までの日米貿易の不均衡の問題を通じまして、どうも基本的に日本考え方アメリカ考え方の間に相違がある、そういうことから問題を複雑にしている点がありはしないかと考えるのであります。  まず、その違いの一つは、日本では、この円の問題とそうして貿易の問題、これは裏表の問題として、まあ、いわば一つの問題として考えておる。ところが、アメリカの場合におきましては、この両者を別個の問題、独立の問題として考えておるのではないかという感じがするわけであります。たとえば、前回の円フロート制に移行いたしましたときに、日本の場合におきましては、これは両者一体の問題だから、いままでの円対策というものは円の切り上げを防止するための対策だ、したがって、実質上円の切り上げになったフロート制に移行した場合におきましては、どうも円対策は熱心にやらぬでもいいのじゃないかというふうな気迷いが若干あったのではないかという感じがするのであります。しかしながら、その際に、あのシュルツ長官が正式の声明を出したわけでございまするが、その公式声明の中で明らかに日本を指さして、場合によっては関税の引き上げをやるのだと、あるいはセーフガード制を採用するのだというような非常にきびしい態度があのフロート制のときに示されておるわけでございます。どうもこのあたりに若干の食い違いがあるのじゃないかという感じがいたしておったのであります。  さらにもう一つの違いは、アメリカは非常にせっかちで、きわめて近い機会、急速に日米間の貿易を均衡させなくちゃいけない、そういうふうなせっかちな考えを持っておるのじゃないかと思うのであります。しかしながら日本の場合におきましては、やや長期的な観点、たとえば田中総理がニクソン大統領とハワイ会談を行なわれた、二、三年後には均衡をはかりたいというふうなお話があったということも承っておるのであります。やや長期的な観点で日本は貿易の不均衡を是正をしたいという考えと、そごに違いがありはしないかと思うのであります。私は日本の考えが正しいと思います。即座に貿易の不均衡是正はできるものではないわけでありまして、やはり長期的な均衡をはかっていくべきだと思います。と申しますのは、私はぼつぼつ——円がいつまでも強い、日本輸出競争力がいつまでも強い、そういうことは私は一つの幻想にすぎないということがだんだん明らかになってくるのではないかと思うのであります。これは前回の円の切り上げ幅と今後予想される円の切り上げ幅、合計いたしますると、私は三五%前後になるのではないか、これは非常に大きな切り上げであるわけであります。また日本の場合におきましては、すでに総理大臣も明確に申されておりますとおり、輸出優先から社会福祉の向上に政策を大きく転換をするのだと、こういうふうな日本の態勢でございますし、あるいは輸出優先の租税その他の優遇措置はこれでなくなってきた、卸売り物価はだんだんだんだんと高騰してくる、あるいは賃金の引き上げや週休二日制、こういうふうなものの実施等を含めまして、日米貿易の均衡の条件といいますか、円対策の効果と相まちまして、私はこの効果がいまから出てくるのじゃないかと思うのであります。したがって、やや長期の観点に立って両者の不均衡の是正をはかっていくというこの考え方のほうが日本としてはとるべき考え方であり、また政府の御方針に私は賛成をするものであります。  したがって、こういうふうな点につきまして、アメリカとの関係につきましても十分な理解をいただく、アメリカ理解してもらう措置——保護貿易等に堕して日米両国が不幸になるということは、これは絶対に避けなければならぬと思うのであります。先ほどもお話がありましたとおり、約三割のシェアを日米貿易が持っておる。急に他の市場に転換するといってもこれは不可能であります。したがって、日米貿易が縮小均衡の方向に行くということは、これは絶対に私は日米両国のために避けなければならぬと思うのであります。したがいまして、こういったような長期的な観点に立ってもう少し見ておってくれ、均衡はするのではないか、あまりせっかちなことを言って、やれ関税の引き上げやセーフガード制を採用するとか、そういうようなことはひとつやめてもらいたいというような態度で私は日米間が相互に理解をして、そうして貿易の縮小均衡というような道は避けていかなければならぬように感ずるわけであります。こういう私の私見を交えての考え方でございまするが、この点についてお伺いをしたいと思いますが。
  208. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 塩見先生のお考えに私も非常に共鳴するところがございます。日米通商問題というのはいま非常に重要な段階にきていると思います。アメリカが拡大通商法案を提出いたします。そのときにどういう条項を中に盛るかということは、日本アメリカの貿易通商関係の死命を制するような重大な問題がはらまれる危険性もなきにしもあらずでございます。それで、まあアメリカにはアメリカの言い分があると思いますが、また日本にも日本の言い分があります。ただアメリカが通貨と通商を別々のものとして考え、そして通貨は通貨、通商は通商でおのおの解決しなければならぬという立場を持ってきていることはこれは歴然としておりまして、われわれは、通貨がこれで済んだから通商はこれで終わりだという考えを持ってはならないということを私たちも明確に自覚しております。ただ、先生お説のように、アメリカはわりあいにせっかちの感がありまして、田中総理もハワイでは両三年の間に解決したいというゴールを示されたと思うんですけれども、アメリカ側の事情がいろいろございまして、こういう急激ないろんな変化が出てきたわけでございます。しかし、やはり日米間の問題はある程度の時間をかけなければ解決することはできないということは経済論理の上から見ても明らかでございまして、その点は彼我よく理解し合っていかなければならぬ問題であるだろうと思います。それで、アメリカには挫折感がかなりあって、そういうエモーショナルなショックからも政策が多分にきていると思いますので、われわれとしては忍耐強く理解してもらう努力を今後もしていく必要があると思います。  それで、具体的な方途といたしまして、私は、拡大通商法案がたぶん五月ぐらいには——早けりゃ四月の終わりぐらいには出る可能性があると見ています。その前に、できるだけわがほうの政策をよく先方に理解してもらって、無用な経済戦争を起こさないようにいろいろ日本に対する理解を深めておく必要があると思うんです。繊維問題でわれわれは苦い経験をいたしましたが、ああいう問題がほかの問題でも起きては困るわけです。それには、わがほうがやるべきことをやっぱりやると、あるいはどの程度の時間的経過の中でどういうことが行なわれるということを向こうによく知ってもらう、また先方に対しても、先方がドルに対してどの程度の措置を、責任ある措置をやってもらうか、あるいは保護貿易や自由貿易に関して先方がどういうけじめをつけた行為を日本やECに対してやってもらうか、そういう理解をし合うということがいま一番重要なときであると考えまして、われわれは通産省の範囲内におきまして、それぞれエバリーさんとかそのほかの適当な人にいろいろそういう意思疎通を内面的にもやっておるところでございます。日本側としては、やはりアメリカ側の要望である自由化——資本並びに貿易の自由化、この問題についてやはり誠意ある回答を出さなければならぬ段階であると思います。私らそういう考えを持ちまして、ICやコンピューターにつきましては、日本産業の基幹に当たる重要な問題ではありますけれども、関係各省の御協力を得て国内対策に万全を期しつつこの問題も踏み切ろう、そうしてある程度、長い間アメリカ日本に要望してきた要望を満たしてやろう、そういうことも一面において考えております。また資本の自由化につきましても外資審議会に諮問がすでに行なわれておりまして、この問題についてもある程度の回答は出てくるものだろうと思います。そういうような具体的にわれわれが行なうべきことも行ない、われわれの政策目標も先方に示し、また、われわれも先方に対しては——繊維問題やあるいはそのほかの問題がガットとからんでもう出てまいります。そういう諸般の問題につきましても要望すべきものを要望し、特にガットの精神で自由貿易の精神を最大限に貫くという政策を法律の上にも、あるいは行政執行の上にもそれを担保しておくということが私たちは必要であると思いまして、最善を尽くしてまいりたいと思っております。
  209. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 総理大臣もあわせて御意見を承りたいと思うのでございまするが、ただいま通産大臣からも日本の今後とるべき態度につきまして御説明がございましたが、私もそのとおりの、まあ賛成を申し上げるわけでございます。やはり日米貿易にあたって私は率直さというものが——この不均衡是正に率直さというものが必要ではないかという感じがするわけであります。すなわち、ややもすると、外圧がくれば日本は何とでもなるんじゃないかというふうな印象を与えることは、ぜひともこれは避けなければならぬと思うのであります。そうして、よくいわれる総論賛成、各論反対というような煮え切らない態度につきましても私は反省をしなければならぬと思います。したがって、私は、貿易の自由化、資本の自由化あるいは関税引き下げ等につきましても、このものはこういう理由でやはりできないものはできない、やれないのだということをもうはっきり言ってしまう。やれるものは大胆な処置をとる。そうしていろいろな不都合が出れば、単に金融措置のみならず財政的措置も講じて思い切った国内対策を行なっていくというふうに日本の態度を明確にして、もちろん一ぺんにはいかぬでしょうが、いま通産大臣の言われるように一定のプログラムを踏んでやらんけりゃならぬというという場合にはプログラムの説明もする。あるいは、総理大臣が先ほど申されました、このいろいろな条件が熟すればというようなお話がございましたが、それは条件がこのものは熟する機会がないといえばもうこれはやれないのだと、条件が熟する機会にはこういう手を打っているんだというようなことを、率直に日本の態度を明確にして、そうしてアメリカに対しては要求すべきものは勇敢に大胆に要求し、そうしてお互いに率直な話し合いでこの日米貿易という問題は解決していかなくてはならぬじゃないかというふうなことで、日本側におきましてもやはりそういった問題につきまして反省すべきものは反省をし、明らかにすべきものは明らかにすると、こういうふうな態度が望ましいのではないかと私は思うのでございまするが、総理大臣の御所見を承りたいと思います。
  210. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま通産大臣が述べたとおりでございますが、いままでは関税の引き下げの問題も自由化の問題も、お互いが協議をしながら、相手からもとりながらこっちもやろうというような、一つの手のうちを見せないでいろいろなことがやられておったわけであります。まあ特恵関税の問題や関税政策においては、もう特にOECDの場において、どこの国が何を下げるにはこっちも下げようというようなことの手段に使われておったわけですが、今度はやはりそういうような状態ではないということで、私もハワイ会談では基本的な姿勢は述べたわけです。日米間はとにかく一番大切な間柄である。これはアメリカ日本両方の共通な利益を守るためにも正常化をはからなければならないので、日本も真剣に考えるからアメリカも真剣にひとつ理解をしてほしい。それには、これだけ日米間の貿易量が大きくなっており、貿易量だけではなく経済関係が複雑になっているときに、これを急に旋回できるものじゃない。だから、もう両三年のうちに基礎収支の均衡をはかろうと、こういうことで理解をしたわけでございますが、まあアメリカ日本とは、やっぱり国民性の違いもありますし、いろんな、国情のむずかしさもあるようです。それは三年と言ったけれども、その後の情勢は、私たちから見れば、ニクソン新政策の効果は相当あらわれておると思っておるんです。アメリカ経済もよくなっておると思っています。思っておるにもかかわらず、一〇%の切り下げを一挙にやってくる。とにかく政策はドラマチックにと、こういう一つのモットーを持っておるのか、だからそういうところに、日本人はじみだが堅実に解決をしていこうという考え方と、まあ多少、実情も違いますが、国民経済に対する考え方政策に対する考え方自体も違う。これは実勢を見ながら、公定歩合の上げ下げに対しても〇・二五%ずつ上げたり下げたりという日本と、上げるなら最高まで上げるし、下げるときには思い切って下げると、そういう、政策実行上にもいろいろな、まだ日米間で詰めなきゃならない問題がたくさんあると思います。しかし、今度はこのような状態を迎えておりますから、日本も、いま御指摘があったように、やれるものはやれる、やれないものはやれない。私は、やれないものはやれない、電算機はやれませんと、こう言ったんです。日本の頭脳までアメリカの一社のIBMにまかすわけにはまいりませんと、こういうことを言ってまる二年半ばかりがんばってきたわけでございますが、しかし、中曾根通産大臣——電算機、ICに対しても、期限もあるし、施策も必要だが、自由化に踏み切らざるを得ないと、こういうところまできておるわけでありますから、日米間で理解を求めるということよりも、もう日本がやらなければならないものに対しては、一括してやっぱり踏み切っていくと、それが国益を守ることである。しかし、それをやるには国内対策は十分やらなければならないんだと、こういうような状態を迎えたものだと私自身は理解をしておるわけであります。でありますから、アメリカ人も小出しにどうするというのではなく、日本の実情把握に対して、ひとつ十分考えてもらうようにということを述べておるわけであります。
  211. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 私は、るる申し上げましたのは、日米関係の貿易が縮小均衡におちいると、これは日米両国の親善のためからいっても、あるいは世界の貿易が保護主義化し、あるいはブロック化することを、これを防ぐ意味におきましても、友好親善の中で縮小均衡にならぬように、これはもう最善の努力をひとつお願い申し上げたいと思うのであります。  次に通産大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、ただいま的確な材料がないかもしれませんが、私はやはり考慮しておかなければならぬ問題だと思いますのでお尋ねをいたしたいと思います。それはポストベトナム、ベトナム戦争後のベトナム周辺国と申しますか、特にベトナム戦争による経済的な影響を受けたベトナム、タイ、そしてフィリピン、台湾あるいは韓国も含めまして、香港、これらの地域との今後の貿易関係についての見通しの問題でございます。これら六ヵ国の、実は日本からの輸出貿易は、日本の貿易総額の一四%を占めておる。非常に重大な市場であるわけであります。しかも、これらの六カ国に対する日本の出超額は二十三億ドルと、これは非常に膨大な出超額に相なっておるわけでありまして、これが日本の外貨準備の増加にも大きな影響を与えておるのではないかと思いまするが、いずれにいたしましても、非常に比重の高いこの地域との貿易であるわけでございます。  そこで私は、この二十三億ドル輸出超過が可能であったということのためには、ベトナム戦争によるアメリカの直接の戦費なり、あるいはその他の援助なり、そういったようなものが相当に影響をしておるのではないか、そういうことによって放出されたドルというものが、日本との貿易の決済のためにこれら諸国では役に立ったんじゃないかと、こういうふうな感じが実はいたしておるのでございまして、   〔委員長退席、理事米田正文君着席〕 ただ、的確な資料は持ちませんが、こういったものが今後変化をするんじゃないか。もちろん、アメリカの極東の軍事戦略につきましては、われわれはつまびらかにすることはできません。しかし、少なくとも、ベトナムからアメリカ兵が全部撤退をする、あるいはタイの作戦基地が縮小になるんでございましょう。あるいは韓国の軍隊も引き揚げてくるといったような、いろんな意味におきまして、相当にドルの放出額は減少してくるんじゃないか、こういうふうに考えますので、これらの地域との貿易のまあ見通しといいますか、予測といいますか、相当にこれは減少するおそれがありゃしないかというような感じもいたすのでございまするが、まあそういう予測なり、あるいは今後海外援助は増加してまいると思うのでありまして、そういったような関係ともにらみ合わせながら、これらの地域の貿易関係等についてお伺いをいたしたいと存じます。
  212. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 東南アジアの諸国は、一つにはアメリカのベトナム戦争の終息に伴う不安、ドル収入の二不足という危惧があると思います。もう一つは、いまの世界通貨調整の上からくる輸出入の障害、これは間接的にもかなり響いているものであるだろうとわれわれ考えます。そういうときでもありますから、日本としては、東南アジアの諸国との親善提携をさらに緊密にしていくために、よほど東南アジアの事情をよく、深く考えて、その人たちの身になっていろいろな施策をやっていく必要を痛感しております。  で、東南アジアとの貿易関係を数字で申し上げますと、一九六八年に日本輸出が三十三億ドルであったのが、五年後の七二年には、倍の六十一億ドルにふえております。日本の輸入は六八年に十八億ドルであったのが、これも二倍半ぐらいの四十億ドルにふえております。それで合計して、一九七二年には輸出入で百二億ドル。百億ドルを突破している地域というのは、世界じゅうでもそうないところでございます。そういう意味において、経済的な提携はきわめて緊密でございます。その地域が、いまのような二つの理由で不安におののいておるということでございますから、先進国としての日本は、あらゆる面において深い考慮をもって政策をやっていく必要があると思います。  とりあえずは、ベトナムの復興援助をわれわれがかなり思い切ってやってあげる必要がある。これは単にコマーシャルベースの問題にあらずして、国策として現地の人本位を考えた政策を思い切ってやる必要があると思います。私、先般タイへ参りましたときに、タイの閣僚が、やはりベトナム復興に対する日本協力をかなり目算しておりまして、その相当部分をタイから買ってくれと、あるいはタイに参加させよと、そういうような御要望もございました。これはフィリピンにもございますし、あるいはインドネシアにもあると思われます。そういう意味において、日本のベトナム復興というものが周辺地域を潤すという面もございますから、これはかなり思い切った数字を出さなければいけないんではないかと、そういうように思います。  それから第二は、開発援助と申しますか、開発輸入の問題につきまして、これはいまインドネシアの石油とか、あるいはタイのメーズとか、あるいは漁業産品とか、いろんなことが考えられておりますが、これらをさらに積極化する必要があると思います。  それから第三番目は、特恵関税の問題がございますが、この問題についても、いまのような事情をよくわれわれが了知して、あたたかい措置を施していく必要があると思います。  いずれにせよ、インドネシアあるいはタイあるいはベトナム、フィリピン、東南アジアの諸国は日本をあてにしているところが非常に強いと思います。先般、大体その地域における日本のプロジェクトについては、いわゆるLDCアンタイイング——発展途上国内部においてビッドに参加して、日本だけが独占的に物を売るということをやめて、その発展途上国が参加したビッドを行なう、いわゆるそういうLDCアンタイイングに踏み切りました。またタイにおいては国際関係のプロジェクトについてば日本が自分だけで入っていくということをやめまして、これは一般的アンタイイングに踏み切って入札を認めたわけでございます。そういうようなアンタイイング化、日本のひもつき援助をやめていく、そして現地の各国の参加を求めると、そういう形に前進していくときでもあると思いまして、その政策を進めていきたいと思います。
  213. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 次に、土地と株式の問題が、異常暴騰を通じまして非常に大きな問題になってまいったのでございますが、まず私は、株式の問題についてお尋ねをいたしたいと存じます。時間がありましたらほかの問題にも入りたいと思っておりますが、まず株の問題につきましては、まあ確かに私はこれは異常暴騰だと思います。昨年の一月から十二月までに株価は二倍に暴騰しておるというようなことで、これは正常なる実勢を反映をしたものであるというふうにも理解ができないのであります。また、特に私が非常に気になりますのは、ダウ式株価の平均が、日本が円のフロート制に移行した二月の十四日に百二十八円も上がっておる。この間、欧州市場がさらに一週間の市場の閉鎖を続けるということがきまったその当日におきまして、四千円台に下がっておったダウ平均が五千円台を回復する。どうも日本経済動向に注意を払っておる外国のあたかも神経をさかなでするような異常な暴騰が、高騰が続いておるということでありまして、私は、やはり基本的には、まず第一に、株式に対する節度と申しますか、全体の節度というものもまず考えてみなければならぬ重要な問題ではないかということを痛感いたしたのであります。  この株式の暴騰の原因につきましては、過剰流動性がその原因である、黒字から出てくる流動性あるいは銀行の貸し出しの増加による流動性、この流動性が原因であるということがいわれておるのでありまして、私もこれには全く異存がないのでございます。しかしながら、これだけに原因を求めていいのかどうかということにつきましては、私はいささか不審があるのでありまして、ほかの原因もありはしないかと思うのであります。  すなわち、私はまずその一つの原因は、昨年の非常な特異現象といたしまして、法人の株式の売買が非常に多かったわけであります。大量であったわけであります。たとえば株主安定工作のための売買、あるいは系列化のための売買、あるいは時価発行による売買、こういうふうなものが非学に多く行なわれ、また、かねては一つの投機として、過剰流動性を背景にした法人の株の売買ということで、大型株を中心にして非常な大量の株が法人によって売買をせられた。したがって、一口に言えば、私は昨年の株価の形成というものは、これは個人株主を抜きにした、まあ法人株価だということを一口に言っても差しつかえないような状況ではなかったかと思います。もちろん私は、この株主安定工作も、あるいは系列化も、あるいは時価発行も、それぞれりっぱな意味を持っておると思うのでございます。しかしながら、こういったようなものが集中をして法人の手によって売買された。これが非常な株価の引き上げの、暴騰の一つの原因ではなかったかと思います。しかしながら、これはまあそういう経済情勢だからしかたがないといえば、これはしかたがないかもしれません。しかしながら、こういったような大量の売買が株価を異常につり上げたという事実につきましては、私どもはやはり反省をし、証券行政としても、これはひとつ十分に考えてやるべき問題ではないかと思うのであります。  それはそれといたしまして、こういうふうな大量の株式が売買をされる時期でございますので、私は、公正なる株式の価格というものが形成をされるということが、これは日本経済の全体の立場から見ましても、あるいは国民の株式に対する信頼の問題からいたしましても、特にこういうふうな機会には、これは注意を払い、そうして、こういうふうな機会に、さらに市場なり、あるいは運営なりにつきましても、改善の道を常に尋ねていくというふうな態度でなければならぬと思うのであります。もちろん協同飼料の問題のごときはきわめて希有の例で、とやかく申し上げる問題ではございませんが、しかし、やはりこの株式の価格の形成につきましては、十分に国民の信頼にこたえ得る体制というものを、常に改善をしていかなければならぬと思うのであります。  そういうふうな観点から、私は二、三大蔵大臣にお尋ねをいたしたいと思うのであります。新聞の伝えるところによりますると、いわゆるこの証券会社の、何と申しますか、アンダーライターの部分とブローカーの部分を、これをひとつ分離しようじゃないかというふうに大蔵省が考えておるということが新聞に伝わっておるのであります。ところが、同時に別の新聞には、業界においてはいまその時期ではないんだというようなことも伝えられておるのでございまするが、こういった両部門の分離の問題について、大蔵省ではどういうふうにお考えになっておるか、その点をまずお伺いをいたしたいと思います。
  214. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 証券界の問題につきましては、私も実は就任以来、特に意を用いてまいっておるつもりなんでありますが、株価の公正な形成ということを中心にし、あるいは法人の持ち株あるいは売買が個人の証券投資に比較して非常にふえておるというような状況、それからさらに時価発行の問題とか系列化問題とか、あるいはまたそのほかいろいろの点が指摘されるわけでございますが、それらの点については、現在の法令のもとにおいてなし得る限りの行政的な監督指導、あるいは証券会社等についての自粛の要請、それからさらに金融機関の株式に対する融資の相当徹底した制限、いろいろのことをやってまいっておりますけれども、最近においては刑事事件の疑いを受けるような事件まで勃発しましたことば、ほんとうに残念に思っておる次第でございます。なお一そう意を用いてまいりたいと思っております。  そこで、いまのアンダーライターとブローカーとの関係の問題でございますけれども、たとえば時価発行増資が非常に盛んになってまいりましたような関係から、証券会社のアンダーライターの機能が強化といいますか、発揮されるようになりました。したがってアンダーライターの業務とブローカーの業務を証券会社が兼営、併営していく、これによって弊害が生じつつあるということが指摘されているわけでございます。で、この点につきましては、現在は、行政指導といたしまして、アンダーライターとブロ−カーの業務の区分を明確にするための措置を検討しております。たとえば同じ証券会社がブローカー業務とアンダーライター業務とをやっております場合も、事実上、まずその間に壁を置くようなやり方、こういうようなことを手始めにまず指導していく。将来の体制としては、理想的にはこれは分離すべきものだと思っておりますけれども、実情はいま直ちにそこまではいき得ないようにも思いますけれども、御指摘の点については、当局としても十分関心を持ち、またこれが乱に流れないように徹底した指導をいたしておるつもりでございます。
  215. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 いまの問題につきましては、いろいろの整備すべき他の条件等もございましょうし、いま直ちにということは無理かもしれませんが、しかしやはり私はほんとうに国民の信頼を得るためには、なかなか両部門を形式的に分けただけでは、情報管理というものは、これはむずかしいのじゃないかというふうに考えますので、今後におきましては進んで両部門をはっきり分けると同時に、あるいはまた別会社でこれを運営するというふうな方向について御検討をいただきたいと思います。これは希望として申し上げておきたいと思います。  それから、いままで常に問題になりておりまして、問題になりながらまだ何となくうやむやになっておりますし、またこの前の証券取引審議会の答申等を見ましても、なかなか歯切れの悪いような表現が用いられておりまするが、例の取引法第六十五条を改正して、こういったような大量の株式の取引をされるという現状から見まして、やはり金融機関を株式の取引に導入してくるというようなことを、もう少し積極的に、前向きに検討していくお考えはないのかどうか、お伺いをしておきたいと思います。   〔理事米田正文君退席、委員長着席〕
  216. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 金融機関と証券業務との関係で取引法の六十五条を改正してはどうかと、具体的な御提案でございます。  従来、公社債の発行市場におきまして銀行が大きな発言力を持っていた実績がございますので、そういう御提案も理解できるわけでございますけれども、あの六十五条ができましたときの趣旨は、むしろ証券と金融を分離して預金者保護をはかりたいと、こういう気持ちで立法されたわけでございますし、当時はそのことが経済民主化に資するゆえんであるというふうなことであの条文がつくられたわけでございます。ところで、非常に金融業と証券業との間の関係の基本に触れる問題も含んでおりますので、私どもとしてもたいへん重要な要素を含んでおる問題でございますから、今後いろいろの角度から検討いたしまして結論を出したい。実はこの点もだいぶ考えたんでございますけれども、いますぐにこれを法律の改正までいくかどうか、これはまた逆に、いま申しましたような立法の趣旨等から見て、かえってこの時期にはたしてそれが適当であるかどうかというようなためらいも実は持ちましたものですから、もう少し各方面からのいろいろの考え方を総合して詰めて結論を出したい。多少の時間がかかりますかもしれませんので、この点は御理解いただきたいと思います。
  217. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 それで、株の問題につきましてもう一問お願いしたいと思いまするが、これは個人株主に対する考え方、また個人株主に対する育成保護、そういった問題についてお伺いをしたいのであります。  現在、個人の株主数が約一千七百万人おるわけでございます。これは社員株主からあるいは中小企業、農民あるいはサラリーマン、その奥さんあるいはお手伝いさんに至るまで、非常に広く普及をいたしておるのであります。ところが持ち株数はだんだん減少してまいりまして、昭和二十五年には約六〇%が個人株主であったわけでございまするが、特に昨年来の法人の持ち株数の増加等によりまして、大体昨年末はこれが大かた半分、三三%程度に減っておるということがいわれておるのであります。私は、しかし、それだけ減りましても、なおかつ一千七百万人の個人株主というものは存在をしておるわけでありまして、しかも、この資本市場の健全なる発達というためには、やはりこの個人株主の健全なる資金の吸収というものが非常に逆に大きく評価をされなくちゃならぬわけでありまして、この資本市場の育成のためにも、この個人株主の存在というものを特に重視して、そうしてこれの育成保護に当たらなければならぬと思うのであります。そういうふうなことからいたしまして、どうも最近まだ私はこの個人株主に対する証券業者その他の態度に遺憾の点があるのじゃないかと思います。これは、個人株主はなかなか経済の実勢なりあるいは個々の会社の内容にはうといのでありまして、大体は株式の投機には不向きな方々が多いわけでございます。つい勧誘員の安易な情報によって株を買うという方々も非常に多いわけでありまして、私が驚きましたのは、この二月三日から十六日までの期間で値上がりの最高五十社をとってみますると、何とぞの中に二十四社の無配の会社がある。そうして、これはどういうわけかといいますと、株主安定工作のためだ、こういうふうな説明がされておるのでございまするが、こういうふうな状況からいたしますると、この個人株主についての勧誘の態度、節度というものにつきましても大いにひとつ厳重にこれは考えていかなくちゃならぬ問題だと思うわけでありまして、この点について従来から大蔵省も証券業者の指導に十分意を尽くしておると思うのでございまするが、しかしながらなお私は現状におきましては十分でないというふうな感じがいたしますので、こういったような業界の勧誘の態度、安易な情報の提供というようなものにつきましては、特に節度を求める行政が望ましいと思うのでございます。この点ひとつ大蔵大臣からの御意見を承りたいと思います。
  218. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 御説はもう全くごもっともで、そのとおりでございまして、個人の健全な証券投資というものがもっと積極的に望まれなければならないわけでございますが、どうして今日のような状況になっているかといいますと、いろいろな原因はございましょうが、もう率直に申せば、ちょっとしろうとでは手が届かないような状態になった。まあ株価の変動というふうなものも非常に一いまのところ、変動というよりは株価が高い、それから法人の持ち合いその他も多い、こういう状況で、個人がなかなか手が出ないという状況もあろうと思います。同時に、これは証券会社の、いわゆる個人の顧客に対するビヘービアの問題が大いに監督指導されなければならないのでありまして、個人の投資家に対する勧誘等に対しては、もっとほんとにまじめな個人の投資家の立場を考えた説明や勧誘というものが確保されなければ、なかなかこれを発展させることもできません。先ほど申しましたように、これらについては当局の指導ももちろん大切でございますが、率直に申して、証券会社のビヘービアをもっと自粛してもらわなければならぬ。大蔵省といたしましてももう再三にわたって自粛の要請もしておりまして、それなりに相当の効果は上がってきているように思いますが、なお一そうこれらの点については努力を新たにいたしたいと思っております。要は、一面において公正な株価が形成されるようにしていかなければなりません。半面においては、先ほども御指摘になりましたような、たとえば時価発行というようなものが節度を失ったり、あるいはときに違法なことまで行なわれがちなような風潮に対しましては、これは厳粛な規制をやっていかなければならない。本来ならば、時価発行も決して悪いことではないと思うんですが、これは節度あるやり方がその基本にならなければならないわけでございまして、ときには商法にさえ触れるかのような態度が時価発行自体に行なわれるようなことがあってはたいへんなことでございますので、そういう点については徹底した監督をやり、そして一面個人の投資家等に対してはまじめな親切な勧誘を行なうということにしなければならないと思います。  ただ、もう一つつけ加えますと、たとえば投資信託とかなんとかの方面を見ますと、必ずしも個人の投資家が急激に減ったとばかりは言えないので、そういう方面からは個人の投資意欲というものがあらわれているか、あるいは維持されているという見方も一面にございますことも一言つけ加えておきたいと思います。
  219. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 株式の問題につきましてあと二、三お尋ねをしたいと思いましたが、時間がないようでございますので、次に公債の問題について一、二お伺いをいたしたいと存じます。  まず、国債の問題についてお伺いをいたしたいのでございまするが、先ほど大蔵大臣から御説明をいただきましたとおり、現在の国債は建設国債、また市中消化の原則を貫いて、そうして発行されておるものであり、またそれが資源または所得の配分を変えて、社会福祉その他の方面にその資金が運用せられるというようなことにつきましては、私も全く同感でございます。  ただ、私がここで一つ申し上げたいと存じまするのは、今度のこの経済社会基本計画を見てみましても、なお今後相当の長期間国債が相当多額に発行されるという、そういうふうな数字に、計画になっておるように見えるわけであります。そういたしますと、私は日本の国債問題につきましてはもう一つ別な観点からここで基本的に考えていくべき問題があるんじゃないかということを考えるのであります。これはまあ日本が戦時国債の苦い経験をなめまして、昭和三十九年までは国債のない財政をやってきたわけでありまして、四十年に赤字国債、四十一年から建設国債が継続して発行されておるのであります。そういうふうなことで、この国債はそれなりに社会資本の充実なりあるいは社会福祉の向上なりに有力な役割りを果たしてまいりましたが、これが累増してまいりますると、私はもうすでにGNPに対する国債残高の割合ももうヨーロッパの水準を抜いておるのではないかと、私は間もなくアメリカ、イギリスの水準も抜くのではないかと、こういうふうなことも考えられますので、したがってこの国債につきましては、租税負担の関係、あるいは新経済五カ年計画との関係、あるいは国債残高の管理運用の問題、こういうようなものを含めまして、私は国債を減らせというわけではございませんが、そういうものを含めまして、そうして基本的に国債のあるべき姿というようなものをまあ審議会でも設けて、この五カ年計画と並行して、そうして国債が、管理運用の面におきましてもあるいはその効果の実現の上におきましても、租税負担との関係において適正な規模をやるためにも、基本的にこのあたりで御検討をいただいたらいかがかと思うのでございまするが、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  220. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 公債については、冒頭にもお答え申しましたように、ことしの発行の限度を昨年度の依存度よりも比率を少なくいたしましたのも、そういったような考慮からでございまして、まあすでに公債に対する依存度は欧米に比べるとかなり高い水準に現実にございますので、今年度は先ほど申しましたような趣旨ではありますが、これ以上はふやすべきでないと、こう考えたわけでございます。  それから、将来につきましても、償還のことも考えなければなりませんし、今後におきましても、公債の発行ということについては、節度のある、またそのときの財政需要あるいは金融情勢、経済政策全般の考慮の中でその適正な規模をきめてまいりたいと、こう考えておりますし、一方におきましては、これがほんとうに市中消化という原則が貫かれるためには、たとえば金融機関だけではなくて、できるならばくふうをこらして個人に対する市中消化というところまで考えるべきではないだろうかというふうに、将来の考え方としてはそんなふうに考えております。
  221. 塩見俊二

    ○塩見俊二君 時間がなくなりましたので、最後に地方債の問題についてまとめてお伺いをいたしたいと思います。  地方債はだんだん増加をしてまいりまして、私は、この住民福祉の向上といいますか、あるいは地方住民のニードその他等を考えまして、やはり今後地方債につきましても相当の増額をしていかなければならぬというふうに考えるのでありまして、したがって地方債の運用につきましてもいろいろ改善をはかっていったほうがいいんじゃないかという問題も幾多あろうかと思うのであります。  時間がありませんので項目だけ申し上げまして、お答えをいただきたいのでございまするが、まず第一点は、やはり財投の引き受け額をもう少しふやしたらどうか。財投の原資というものは大部分が地方の零細な金を集積したものでございまするので、できるだけふやすように努力してはどうか。  それから、やはりこれはちょっと基本的な問題でございまするが、現在縁故債は銀行で借りておるというふうなことでございまして、これを何らかの方法で、地方の資金を集めておる農協の資金を、場合によっては利子補給をする等によって、銀行から農協にこの縁故債の資金の流れを変える必要があるのじゃないかというふうなことも考えられるのであります。  あるいはまた、地方団体の財政力は三千の市町村みな違うわけでありまして、したがって、こういうものにつきましては県ごとにまとめてひとつ公募債なりあるいは財投の引き受けを実現する、そういうふうなくふうはできぬかどうか、これらの点についてお伺いをいたしたいと思います。
  222. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 御指摘の点はたいへん自治省としては力強い御指摘なのでございますが、まあこれは中央・地方の財政、非常に深い関連もありまするので、大蔵省と十分相談をして、今後対策をしなければならぬ問題だというふうに思います。  で、この地方債の計画につきましては、若干は昨年より上回ったわけです。昨年は五五・六、それが今度は五五・九%、四十八年度限りという公営交通の再建債を除きますると、五七・七%の伸びとなる。金額的には三千億円伸ばしたわけですが、これは総体の事業量がふえまするから、どうも非常に苦しいわけであります。しかし、今後、御指摘のように、郵便貯金であるとか、簡保であるとか、全国から広く国民各階層の金を集めたのが原資になるわけでございまするので、御指摘のような形になっていくことが望ましいと思いまするので、なお今後大蔵省とよく折衝をしてまいりたいと思います。  それから、農協等の系統資金を使ったらどうか、これは田中総理も土地対策閣僚懇談会で御指摘になっておられます。われわれ自治省といたしましても、特にいま急務中の急務といわれる同じ公用地の中でも、住宅用地については、これは早く網をかぶせるといいますか、手当てをする必要があるわけです。そういうためには、特に住宅を必要とする地域は、首都圏をはじめ近畿圏、中部圏といったような指定都市を含む大都市圏に集中しておるわけですから、これは縁故資金を使うこともできます。あるいは御指摘のような金利の高い農協の系統資金を使うという場合に、政府の六分五厘程度の安い資金と、農協などの八分ないし八分五厘ぐらいになるものもありましょう、その資金との差額を何とかして利子補給をしてもらう、これはそう大きな金額でもないと思います。そうして大至急住宅用地を手当てする、これはぜひ望ましいということで、大蔵大臣にも協議を申し上げておるというのが現況であります。御期待に沿えるような形で、大蔵省側も努力をしておってもらいまするので、何らかの結論を得たい、努力中でございます。
  223. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 以上で塩見君の質疑は終了いたしました。  明日は午前十時開会することとして、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十四分散会      —————・—————