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1973-09-20 第71回国会 参議院 法務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年九月二十日(木曜日)    午前十一時二十六分開会     —————————————    委員異動  九月二十日     辞任         補欠選任      鈴木 省吾君     川野辺 静君      竹田 現照君     上田  哲君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         原田  立君     理 事                 後藤 義隆君                 原 文兵衛君                 佐々木静子君                 白木義一郎君     委 員                 川野辺 静君                 木島 義夫君                 中西 一郎君                 山本敬三郎君                 吉武 恵市君                 上田  哲君                 渡辺  武君    国務大臣        法 務 大 臣  田中伊三次君    政府委員        防衛庁長官官房        長        田代 一正君        法務大臣官房長  香川 保一君        法務省民事局長  川島 一郎君        法務省刑事局長  安原 美穂君        法務省矯正局長  長島  敦君        法務省入国管理        局長       吉岡  章君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   田宮 重男君        最高裁判所事務        総局人事局長   矢口 洪一君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君    説明員        防衛庁長官官房        広報課長     西廣 整輝君        警察庁警備局外        事課長      佐々 淳行君        法務大臣官房審        議官       田邊  明君        法務大臣官房訟        務部長      貞家 克己君        外務省アジア局        外務参事官    中江 要介君     —————————————   本日の会議に付した案件検察及び裁判運営等に関する調査  (長沼ナイキ基地訴訟に関する件)  (人権問題に関する件)  (金大中事件に関する件) ○商法の一部を改正する法律案内閣提出衆議  院送付) ○株式会社の監査等に関する商法の特例に関する  法律案内閣提出衆議院送付) ○商法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係  法律整理等に関する法律案内閣提出衆議  院送付)     —————————————
  2. 原田立

    委員長原田立君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。  本日、竹田現照君及び鈴木省吾君が委員を辞任され、その補欠として、上田哲君及び川野辺静君が選任されました。     —————————————
  3. 原田立

    委員長原田立君) 検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 佐々木静子

    佐々木静子君 長沼質問に入る前に、ちょっと法務大臣につかぬことをお伺いするんでございますけれども、一昨日の法務委員会で、白木理事の御質問で、無実の者が間違って逮捕されて裁判にかけられるということがあって、そして無罪が証明された、そういうことで、白木理事政府責任を御追及になり、私もこれも全くごもっともなお話だと、白木理事とともに、気持ちの上では一緒法務省責任というものをお尋ね申し上げておったんでございますが、大臣お話では、翌日にでもさっそく被害者のところへ、被害者と言いますか、もと被告のところへおわびに行きましょうというお話で、私も、実は非常に何と申しますか、予想以上のお話でございましたので、さすがやはり法務大臣だけあると、たいへんに敬服したわけなんでございますけれども、いらしたんでございますか、どうなんでございますか。
  5. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 今明日にというお約束をいたしましたが、その日は夜に入るまで委員会がございまして、あんまり夜におわびに行くのもいかがなものかと考え、翌日、また衆議院決算委員会がございまして、午前十時お呼びでして、午後またおそくに至るまで委員会が開かれるということで、とうてい約束が果たせないということで、私が自筆のおわび状を書きまして、それにサインをいたしまして、秘書係長を派遣をいたしまして、本人が来るはずだがというおわびを申し上げました。  たいへん快くお受け取りをいただき、御了承をいただきました。丁重におわびをしてまいりました。
  6. 佐々木静子

    佐々木静子君 非常にまあ大臣が行き届いた——これはむろん検察最高責任者というか、監督者としてのお立場で行かれたわけでございますね。
  7. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) そのとおりでございます。
  8. 佐々木静子

    佐々木静子君 ところが、実は私も困ったことが起こっておると思うのでございますけれども、大臣の御答弁がですね、新聞にも報道され、またテレビにも乗りましてですね、私、そのこと自身はもう白木理事の足を引っぱるつもりも毛頭なければ、一緒にこれはけしからぬということで、この被害を受けた方に心からお気の毒だと思っておって、大臣お話を承っていたわけなんでございますけれども、実は方々弁護士から、自分も最近無実判決を受けた依頼者がいるんだけれども、これは国会を通じて言わなければ大臣おわびにきていただけないのだろうか、どうだろうかという問い合わせが実は何件も来ているわけですが、これは私なり白木理事が、まあそれに限りませんが、大臣にこの国会で申し上げなければおわびお越しにならぬわけですか。どうなっているわけでございますか。
  9. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 他の案件のことは一々私は承知をいたしておりません。政治家のことでもございます。国会で具体的な御質疑があった、まことに申しわけがないと考えた、こういうことでおわびに伺いましょうということになったのでありまして、他の案件を一々私は存じませんので、存じますればまたその時点考えることにいたしたいと思います。
  10. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、実はいまそれで大臣お尋ねしたんですが、検察最高責任者として、無実の人を起訴したことについておわびお越しになった。これは全国検察庁でいろいろとある事例でございますが、これはどうも——検察庁というところは非常に公平なところだと思う。ところが、ある人から言えば大臣が来てくれる、ある人から言ってもほったらかしだ。そこら辺のところは一体検察庁はどういうふうになっているのでございましょうか。
  11. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 先ほどから承っておりますと、検察最高責任者ということを盛んにおっしゃるのでありますが、私は検察最高責任者というよりは法務大臣という立場を持っております。検察最高責任検事総長最高責任でございます。ただ、政治をいたしております者の立場から申しますと、これはまことに申しわけのないことだということで、任意私がおわびに上がったということで、ほかのものを無視してこれだけという意味ではないのでございます。
  12. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、実はこれを担当しておった弁護士も、実はあの答弁を伺ってびっくりしたわけなんでございますけれども、それで、自分もずいぶんいろいろ事件はやってきたけれども、これは大臣無罪になったからといっておわびに来ていただくというようなことは前代未聞じゃないか。まあそれを、自分依頼者無罪になっておわびに来られたからといって腹を立てるわけはないけれども、何だか非常に、これだけおわびになるということはどうも何か、まあこれは法務省であってもけっこうですけれども、どうもそこら辺は、やはりわびるなら全部の方にわびてもらわないと困るんじゃないか。これはどういうことになっているのでございますか。それじゃ、これから国会議員から申し上げればおわびにいらしていただけるわけでございますか。
  13. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) そうねじってものをお聞きになりましても答弁のしようがないのでありますが、そういう申しわけのない事態があって、何かこれに対しておわびの道がないかという御質問がありまして、私は申しわけないことだと思うので、きわめて率直な気持ちで、単純な気持ちおわびに伺いましょうということでその処理を示したわけです。したがって、今後そういう事件があったら、私にかかわらずにどの大臣でもおわびに行くのかということまで私が拘束する力はない。私は、私の面前で、これはけしからぬことではないか、気の毒なことではないかという御質疑がありましたから、それに対して私は、しからばおわびをいたしましょうということになったので、そういう事案があることをお示しになるならば、その時点考えてみる、私は、ですよ。私以外の大臣がこれに右にならえをするということを私は言うておるわけじゃないんですね。
  14. 佐々木静子

    佐々木静子君 それで、結局この間の御答弁では、人をしてやらせようという御答弁じゃなくって、御自分がさっそくあしたに行くとおっしゃったわけです。いまも御都合を伺いますと、決算委員会で行けなかったので、かわりの者をやらしたというお話なんでございますが、大臣自身は、それでは近日中にここでおっしゃったとおりに行かれるおつもりなのか、あるいは自分が行くと言ったけれどももう代理で済まそうというおつもりなのか、どちらなんでございますか。
  15. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) おわびをしてまいりました。行きたいところだが、行く予定であったけれども、国会都合で行くことができないから使者を立てておわびを申し上げました。それで済んでおります。本人が、時間ができたらもう一ぺん行くということはございません。
  16. 佐々木静子

    佐々木静子君 実はこれは済んでおらないわけなんですね。というのは、無実で起訴されて無罪判決を受けているという人間がたくさんいるわけなんですね。それを一々知らぬとおっしゃれば私がまた一々、きょうはこういう事件がありました、きょうはこういう事件がありました、大臣どうなさいますかと、一々お尋ねをせなければいかぬわけですけれども、そこら辺、やっぱり法務省なんですからね。大臣が一国会議員としてお動きになるのはいいですよ。法務大臣として——いまも私だめ押ししたわけですよ、検察責任者としてなさったのですかということを伺ったら、そうだとおっしゃったわけですけれども、そうなれば、やはり一つを行くとなれば全部行っていただかないとこれは公平に反する。私はこのことについて白木理事の足を引っぱるつもりも何もありませんですけれどもね。実は方々からそう言ってきているわけです。こういうもっとひどい事案があったのだけれども、法務大臣はこれは来るのか来ないのか、それじゃあおまえ聞いてくれと言う。いや白木理事からじゃないと行ってもらえないのじゃないだろうかということも言っているわけなんです。しかし法務大臣がそういうことじゃ私だめだと思いますよ、もっと公正にやっていただかないと。事が検察のことであり、裁判に関することなんですから、そこら辺は、大臣おわびに行こうというお気持ちはこれは私は非常に高く評価しているわけです。普通の官僚出身大臣ではそういうことをおっしゃらなかったと思うわけなんですが、ただそこら辺で、やっぱり言ったことは実行していただかないといけない。  これはある新聞にも食言問題だと書いてあるわけです、きのうの夕刊に。そういうふうにまあ受け取っている人もあるわけでございますね。受け取りもできるわけですね。これは私自身も別に大臣を責めるわけじゃありませんけれども、方々からこのことについて問い合わせを受けているわけです。知らなかったとおっしゃるけれども、現に、これは起訴にはならなかったけれども、私も前に大臣にじかに伺っていますね。ある在日朝鮮人の人が、自分婚約者を殺されたのに、間違えて殺人容疑で逮捕されてえらい目にあった。ところが真犯人があの連続殺人事件の犯人で、自供したのでわかった。そのことを申し上げたけれども——これは法務省の所管じゃないかもしれません。そのことに対して大臣はどうされましたか。本国へ強制送還されたじゃないですか、私がちゃんと国会で申し上げたのに。心からの御同情を申し上げますとおっしゃったけれども、私は大村まで走りましたけれども、強制送還されたでしょう。もう二度とおそらく——これは日本法律ではなくて向こうの法律ですから、もう生きてしゃばへは出られないと彼は言っておりました。やっぱりこれは公平にやっていただかないと困ります。ある議員が言えばすぐにおわびに行く、日本人ならすぐおわびに行く、朝鮮人ならほったらかし、どころかきつい仕打ちをする。これは、この間のうちから大臣日本国民の側に立っていろいろといい御答弁をしていらっしゃるけれども、私はそのことだけでもはっきりした差別だと思うのです。この問題は大臣これはどうなさいますか。次々私のところにも、現に、うちのも非常に気の毒な状態で無実無罪になったのだけれども大臣に来てもらえるように話をしてくれるかどうかという要請が一ぱい一ぱいと言うとちょっとオーバーですけれども、四つほどあるわけなんです。これはどうなさいますか。
  17. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) お話を承って、私が知り得るならば、その時点判断したい。それは検察責任者というのじゃない。私がいま言うように、法務大臣として行きましたということでございます。検察責任者検事総長でございます。そういうことでございますから、ただ白木先生お話を承ってまことに申しわけがないと考えたので、率直にその非を認めておわびに行くということになったので、それ以外のものと区別をする意思はないんです。区別をするという意思をもってやっておるんではない。ですから、あらためて承る機会があれば、その機会に、その時点で私がそのことを承って判断をする以外にない、私以外の大臣が私の行動で抱束されるわけでもございません。私の一存でやりましたことでございます。私の一存で、その時点判断をしたいと思います。
  18. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、私がいまそのことをここの場で、この人とこの人とこの人というふうに名前をあげて、いま現にこういう問題で無実の者がえらい目にあった、こういう事例もあります、こういう事例もありますと住所、氏名をあげることもできますけれども、それはやはり本人さんにもう一ぺん了解を得た上のほうがいいと思いますので、次の委員会でそのことを申し上げて——これは何も済んだ問題じゃないんです、そのことでえらい目にあわされたというのは。何もおわびというものはその翌日に行かにゃいかぬもんでもない。事実そのことでえらい目にあって困っておれば、やはりこれは同じ問題だと思うんです、一月前であろうと現在であろうと。それはやはり同じように取り扱っていただけるわけでございますね、平等に。差別はなさいませんですね。
  19. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 先ほどからくどく申し上げるように、差別をする意思はないんです。知らぬのですから差別をするはずがないでしょう。差別をする意思はない。意思はないが、全部おわびに行くのかと言われると、その時点判断をすると。生きた人間の私ですから、知らないことの判断はできぬ。こういう事件があるではないか、おわびに行けと仰せになれば、その時点判断をして、それでは行きますとか行きませんとか、そのときに判断をする。法務大臣としての私の判断です。ほかの人に影響をもたらすことではございませんので。
  20. 佐々木静子

    佐々木静子君 それではその人の一人一人の名前を、おわびに来てほしいと言うている人の名前を次の委員会で申し上げることにしましょう。いま私が言っても何でございます。ただ、これきのうの新聞にも載っておりますように、大阪拘置所に収監中の在日韓国人ですね、盲腸炎で、それが手おくれになってたいへんにひどいことになっているのに、大阪拘置所の手当てが悪くて、そして生命は取りとめたけれども非常な損害を与えたということで、これは大阪地裁判決が出ているわけです、きのう。国相手にその韓国人から訴訟を起こして、一審で、国がやはりこのおわびに、在日——在日じゃありませんが、いま本国に帰っているようでございますが、韓国人に三百万円弱の金を払えという判決が出た、このことについて法務省はどのようにお考えでございますか。またそれに対するおわびの方法はどのようにお考えになっておられますか、大臣
  21. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) ただいまお尋ね案件は、判決は昨十九日の判決でございまして、判決原本がいまだ到着をしておりません。おそらく本日送達を受けるのではないかと見通されておるのであります。内容がわからない、新聞に書いてある以上のことは内容がわからないので、しばらく猶予を願いたいと思います。
  22. 佐々木静子

    佐々木静子君 内容がわかって、この判決文をお読みになれば、先日来、一審判決というものは吹けば飛ぶようなつまらぬものだというような意味の御発言があったんですけれども、白木先生お尋ねになったのも、一審判決無罪判決があったけれども、まだ確定はしておらぬのかしらぬですけれども、まあ上訴はしてないからそれは違うとおっしゃるかもわからないですけれども、これが判決新聞で報道されている——ごらんになったと思いますが——とおりだとすると、これに対するおわびは具体的にどういうふうになさいますか。
  23. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 判決送達を受けまして、その上で検討をしてみたい。いま判決がないんですからお答えのしようがないんです。
  24. 佐々木静子

    佐々木静子君 この間の刑事事件判決文はお読みになったんですか、記録も、大臣は。全部お読みになったわけですか。これはまだ読んでおられないとおっしゃるわけですか。読んで、この一審判決では大阪拘置所のやり方に不手ぎわがあった、十分の医療ができておらなかったためにこういう損害が生じた——これは私、国の判決ですからね、一審判決はつまらぬとおっしゃるけれども、これはやっぱり国としても尊重しなければならない。おそらく検討してとおっしゃるのは、これは国が負けたからというので、法務大臣はこれは控訴して戦うとでもおっしゃるのかもわからぬ。それじゃ同じように国の行為によって、一人の人間大臣が飛んできてあやまられる、相手人間はこれは傷をつけられてたいへんなことになったということで、人権侵害だということで、これは大阪弁護士会がやっている事件なんですよね。それに対しては検討してみる。おそらくこの検討してみるということばの中には、まだ控訴してでも争おうというのか、これは非常に大臣として不公平じゃないですか。もう少しやはり、差別はないとおっしゃっても、これは在日韓国人——在日ではないけど、韓国人だ。私どもはなかなか、大臣差別はしていないとおっしゃるけれども、この話を聞いた人は、やっぱりそこら辺に非常に一貫しないものを感ずるわけです。それでは判決文いつお手元に届きますか。
  25. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 先ほど申し上げたように、本日送達を受けるのではないかと思うのです。郵便屋が持ってくるんで、いつ受けるかということはそれは言えないでしょう。  それから、先ほどお話をだまって聞いておりますというと、いろんなことをおっしゃるが、一審の判決は吹けば飛ぶような、そんなこと言ったことはないのです。そんな不都合なことを法務大臣が言いますか。むしろ逆に、一審御判決は、私はいつも判決ということについては厳粛な考えを持っておる。この間の長沼裁判につきましても、何度も言うておりますが、厳粛に受けとめると、ただ控訴をした以上は、控訴の瞬間以後においては拘束力がないんだと、あなたの専門でよく御存じの既判力はないんだと、拘束力がないのだと、こういうことを言っておるだけなんで、吹けば飛ぶようななんていうことを申しておりません。ええかげんなことを言わぬでおいてください。どこの速記録にそんなことが書いてありますか。本日は裁判所もおいでになっておる。まことに悪いです、そういうことはね。よいかげんな話ではないのですから、これは、御留意を願いたいと思います。
  26. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま、吹けば飛ぶようなというふうには全然考えておらぬ、非常に慎重に承っている——じゃ、一審判決というものをどのようにお考えになっておるのか。私は前にお聞きしたが、吹けば飛ぶようなとはおっしゃらなかったけれども、これは非常に、それほど尊重しないでもいいというような趣旨のことに、要約すればとれたもんだから、この間の、一昨日、大臣にそうじゃないじゃないですかということを、大臣よりも主として防衛庁長官に申し上げたわけですけれども、それでは一審判決というものを大臣は非常に尊重して、まあそれをできるだけ履行していこうというふうな御趣旨の御姿勢でいらっしゃるわけですか、私が思い間違いしていたんです、そうすれば。
  27. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) それはあなたの思い間違いだ。そんなことを私は言うておらぬ。厳粛に受けとめるということは、その効力を認めて、その効力に従っていろいろ処置をするということとは違うんです。それは拘束力のある場合を言うんです。拘束力がなければ、ない拘束力に従っていろいろな善処ができるわけのものではない。御判決のあったことに関して厳粛にその事実を受けとめる、意味はよくわかるじゃありませんか。ただし拘束力がないのだから、拘束力があるようになったとき、すなわち判決が確定いたしましたときに善処をする、よくわかるように思うんです。おかしいですか。非常によくわかるように思うんです。
  28. 佐々木静子

    佐々木静子君 それが私のほうは全然わからぬわけですね、その厳粛に受けとめると言われてもですね。これはこの間も言ったように、厳粛に受けとめるとはどういうことなのかということをこの間から伺っているわけですよ。具体的に、まあ厳粛に受けとめる、まあ大臣は厳粛に受けとめたとは口ではおっしゃるけれども、実際は形の上で何も出てきてないわけですよ。  まあその問題はあとで、時間がもうありませんからこのあたりにいたしておきますけれども、これは検察に関する仕事とか法務に関する仕事、また裁判に関連した仕事というものは、やはり公平でなくちゃいけない、それもただ自分が心の中で公平だというだけでなくって、公平らしさというものが要請されているということは大臣もむろんおわかりだと思うわけです。ですから、今後無実無罪判決が出た人に対しては、私は、大臣おわびに行かれたということ、おわびにいま行こうとしていらっしゃること、あるいは使者にしろおわびにやったということ、これは私は何も批判しているわけではない。ただそれならば、全国同じようにやっていただきたい。公平にやっていただけることだけは約束できますね。どうですか。
  29. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 全国同じように無罪になった人のところへおわびに行くということはお約束ができません。その時点で、判決を承りましてその時点で私が判断をしたい、先ほどから申し上げておるとおりでございます。
  30. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは非常に不公平じゃないかということを言っているわけですよ。ある国会議員から言えばすぐおわびに行く、しかし同じような事案があるんですよ、いろいろと、全国では、たくさん。そういう取り扱いを、一国会議員こして動かれるならいいですけれども、日本政府を代表する立場——だから私最初に伺ったんですよ、大臣検察を管轄する、警察庁法務省まあ下にあるというわけじゃないでしょうけれども、不可分一体関係にあるから、そこの一番の長としておわびに行かれるんですねということを、どうですかということを伺ったら、そうだと言われたから、私はこれから先これはたいへんな問題が起こってくると思うから申し上げているんですよ。全国無実無罪判決を受けている人同は幾らでもいるわけですよ。またきょうもあるでしょう、たぶん。あしたもあるでしょう。それをどういうふうにこれからしていただけるのかということです。これは何も責めているんじゃない。私のところへいろいろ問い合わせがあるから言っているんです。
  31. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 私は法律上の義務があっておわびに行ったんじゃないんです。そんな単純な説明をせぬでもおわかりいただけると思うんですね。法律上の義務があって行ったわけではない。承りまして、私が生きた人間として感情を持っておりますので、その感情でこれを受けとめて、これは申しわけがない、何かおわびの道を講じてはどうかというおことばもあったので、なるほどと考えて、私が感情で受けとめた結果参りましょうということになりました。あるところにそういう事情で行ったから、あるところへは行かないから、公平ではないではないかということにはならぬのではないでしょうか。私の感情で受けとめて、これは行かなければならぬと思うところは私は行きたいと思う。そうせぬでよかろうと思うところへは行かぬでもよいと思う。判決無罪という結果が出たから、出たもの全部に同様にせよということはそれは当たらぬのではないかと、こう思うんですね。そういう処置をしたい、したがって具体的な事案があって、委員会で具体的な事案をひっさげて御説明になれば、その御説明を承って、これはおわびに行きたいと思うか行きたくないと思うか、そのときの判断を私がすればいい、法律上の判断じゃないんですから、一向差しつかえがないのではないか。不公平ではないかと仰せになることはそれはよく意味がわかるけれども、法律上の判断をするわけじゃない、感情で判断をしていくわけでありますから、これは申しわけがないと思ったときにはおわびをする——きのうも、おわびに行く以上は何か菓子箱くらいあったほうがいいんじゃないかということも考えたんです。まあしかし、いろいろ前例にもなろうと、これは単なるおわびがきれいでよかろうということで、私がおわび状を持たして、簡単な名刺のおわび状でございますが、それを持たしてやりましたという事情でございます。そういうふうに、将来ともにこういうことがあるではないかというお話を承れば、これはひとつ行きたい、これはそれに及ばぬのではないかということを私個人が、私の抱いておる心持ち、感情で判断をして行動をとる、一向不公平なことのないよう、行く行かぬは私の自由、行く行かぬは自由と言うとことばに角が立つが、行く行かぬは私の自由、行かねばならぬ義務があって行くのではない、こういう意味で、私の自由でございます。自由に判断をさしていただきたいと思います。
  32. 佐々木静子

    佐々木静子君 もう時間がなくて、私実はほかのことを伺うつもりでちょっとお聞きしたらもう持ち時間になってしまったので、もうなんでございますけれどもね、大臣、これは私も、最初から検察庁を統括しているところの法務省の一番の責任者として行かれたんですねと伺ったら、そうだとおっしゃったんですよ。前回も、田中議員個人に、私どもはあるいは田中さんという一人の方に対して、どういう感情をお感じかと伺っているんじゃなくって、検察のやっぱりの一番の責任者じゃないとすれば、それは検事総長だとすれば、検察庁というものを監督していらっしゃるまあ法務省の一番の責任者としてどうされるかということを伺ったのに対して、感情で、これはちょっと気に入ったから行ってやろう、この議員はいいから行ってやろう、あの議員はいつでも意地悪言うから行ってやるな、そんなことじゃ話にならぬですね。これは私は全国法律家がおこると思いますよ。ほっとかないと思いますよ。やはり法務大臣としてという立場にお立ちになる以上は、公正にやっていただかないと困ります。だから、行かれたことを私はとがめているわけじゃない、行かれる以上はこれから全部の人に行っていただきたい、そのことを申し上げて私の質問を終わります。公平にやっていただきたいということをくれぐれもお願いして私の質問を終わります。
  33. 白木義一郎

    白木義一郎君 いまのに関連して。  ただいま佐々木委員から御発言がありました件は、先日の委員会で、私から、私の発言がもとでこういうことになったわけでありますが、貴重な時間をさくことを非常におそれるものですが、私のあのときの真意は、ああいう人間であるから間違いはやむを得ない、しかし被害者もあり、それからその捜査に当たる人々も、それぞれ間違いですから、やむを得ない、しかし被害者もあり、またその責任を問われる人も出てくるわけなんです。そこで、二度とこういうことがないようにするには何が必要かということが私の言いたいことであったわけです。それはやはり最高責任者が、二度とこういう不始末を起こさないように、部下のエラーは自分責任である、二度と失敗を起こさないように、そういう決意を実は持っていただきたいと、そこから私が発言したわけです。それについて法務大臣が、あのときに私は、最高責任者としてはがき一枚なりあるいは使いの者をつかわして、そしてその責任のあるところを示していただきたい、こういうふうに申し上げたところが、法務大臣がすっくと立って、そしてあのような非常に人間味あふれる返事をしていただいたんでこういうことになったわけですが、現在の世情はそういう点が非常に欠けているんじゃないか。そこからすべてのひずみが、問題が起きてくる、こういうことに私は考えております。  そこで、謝罪ということになりますと、これはもう医者と病人のことであって、予防じゃなくて、病気になってから手当てをする、こういう違いがあるわけで、私としては、起きたことはもう起きたんですからやむを得ない。しかし、これからは起こさない予防的な相談を、また考えをしなければならないというのが私の真意であったわけですが、そこで今後の問題ですが、いま佐々木委員の言われたことも、これも当然なことだろうと思いますが、しかし、これがへたをすると通り一ぺんの習慣になって、そして形だけの問題になることを非常におそれるわけです。ですから、今後どうすればいいかということになると、法務大臣は、それを聞いたときに、今回と同じように名刺に書いてそうしてだれかに届けさせる、あるいは遠いところであれば役所の人間に郵送してそうして届けさせると言っているうちに、印刷になってしまう。こういうことになると、私が申し上げたこととと全然正反対に、それこそ法律をありのままに、そのまま法律を生かしただけであって、人同というものが見失われてしまうということを最もおそれるわけであります。そこで、今後の問題について、先日の発言のよりな、最高責任者が絶えずその国民の苦悩をいつも感じて、いかに対処すればいいか、これが現今の国民、人間の非常に欠けたところである、このように思います。これが一口で言えば国民不在の政治、あらゆる側にこれが出てきているわけであります。そこで、同じような立場に立った人から言わせれば、当然差別を感ずるわけです。しかし、同じ事件であっても、たとえば列車が転覆してたいへん被害者が出た。これは運輸大臣が直接弔問に行く、これは、もう当然のことであり、現在では習慣化しているわけです。こういうことが繰り返されることが非常におそろしいと私は思います。法律が先か、人間が大事なのか、こういう問題を私はここで申し上げざるを得ないわけです。しかし、現実に起きた問題は大臣として対処しなければならないし、またこういう佐々木委員からの発言もあったことでございますので、何とかひとつそういう、私の申し上げるようなことから、ひとつ今後お考えおきを願いたい。善処をしていただきたい。まあ、釈明みたいな、また要望みたいなことになりますけれども、私のことから貴重な時間をさくことになって非常に恐縮している気持ちを申し上げた次第でございます。
  34. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 今後の問題、昨日おわびに出ました以外の問題につきましては、私はまだ存じませんので、私の存じました時点において、おわびに行くことが必要かどうかということを判断をいたしまして、そのつど、その時点判断をして善処をしたいと、こう思います。
  35. 上田哲

    上田哲君 長沼判決が出まして以来、二週間ほどけみしました。その当時の政府の興奮ぶりもやや落ちつきを取り戻したと思います。何より大切なことは、この判決に対して、これを法理論的に見る見方と政治論的に対応するあり方と、この二つのあり方がしっかり区分されることであろうと思う。政府は、法務大臣の言われるように、被告という立場から大きく抗弁権を行使されることは当然なこととして、先ほど来の討議の中にもありますように、札幌地方裁判所判決控訴審によってその規範性をいささかも損することがないのは当然なことであります。拘束力を発揮し得ないだけのことでありますから。そういう意味では、法に対する、行政府と言わず、あるいは一般私人と言わず、法治体系における厳粛な姿勢というものが最もいま求められなければならないところであろう。とりわけ、政府が一方では控訴という手続をとり、大きくこれに対して反論をされるということとあわせても、なおかつ、三権分立の厳粛な立場を守って、法に対する姿勢を守られるということが望ましいと思うのであります。私は、この時点に立って、あらためて法務大臣からその基本的な姿勢について、御見解を承っておきたいと思います。
  36. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 先生のお話は、三権分立の大原則をよくわきまえてあやまちのないように善処をせよというおことばでございます。私もそのとおりに存じます。  一体一国会裁判内容がいいとか悪いとかを批判をすることは、三権分立の考え方から、間違いでございます。どうして間違っておるのかというと、裁判所判断に対しては、三権のうちの他の二権であります行政府、立法府というものは、これを尊重する立場に立つ。いやしくも非難攻撃するような立場に立つべきではございません。その原則だけから申しますと、国会で本日でもこの議論ができぬことになるわけです。ただ、一つの例外として許されなければならないことは、理の当然でございますが、本件は国が当事者である。農林大臣が被告になっておる、私はその代理をする責任者であるということでございます。その当事者という立場に立っております場合には、当事者は、これに対して負けた場合においては上訴手続が許される。上訴をいたしました場合に、上訴の理由はこういう理由なんだ、この理由は将来の法廷において、二審、三審の法廷においてこれを貫いていくんだ、こういう上訴理由を解明する、説明する、信念を持って述べる、こういうことは一向差しつかえはない。そんなことができぬはずはございません。理の当然であります。  第二審の法廷が開かれれば、法廷のそこに出て攻撃、防御の方法を繰り返すことが民事訴訟法で許された当然の態度であります。裁判長の面前でやれることなんです。でありますから、こういう攻撃、防御はしっかりやっていい、やるほどよいということばも当てはまるのではないかと思うくらいでございます。そういう意味から申しまして、私は、基本的な態度は、控訴理由ということにたいへんこだわりながら、控訴理由を申し述べ、控訴理由に関して所見を申し上げる、国会においてお尋ねがあればそれを申し上げるというこの態度以上のことはやるべきものではない。それは司法権の侵犯である、こういうふうに私は考えておりますので、そういう限度で、そういう方針でお答えをして今日に至っておるのでございます。  そういうことでございますから、一審の裁判に対しましても、厳粛にこれを受けとめる。厳粛に受けとめるという意味はどういうことかというと、これこれの内容、これこれの理由をもってのこういう裁判が下されたということを厳粛に受けとめて、厳粛にこれを認める、こういう態度を厳粛に受けとめておるというのであります。それならその効力を認めるのか——そんなことはだれも言うとりゃせぬ。既判力を持たず、拘束力を持たないものに効力を認めるなどということばは起こり得ないことでございます。そんなことを言うておるのではございません。厳粛に受けとめて、手続をとって、争うべきは争う、こういう態度でいくべきものであろう、国会においても、その限度を越えざる程度において御質問に対してお答えすべきものであろう、そのつもりでいままでもやっておりますが、今後もそういうつもりでやっていきたい、こう思っております。
  37. 上田哲

    上田哲君 法務大臣の御見解はきわめて初歩的な誤りと混乱をおかしております。三権分立に対する基本的なお考えのあり方、あるいは行政府としての判決に対する議論のあり方、あるいは判決体系に対する基礎認識、それらのすべてにおいてきわめて基礎的な誤りをおかしておられます。たとえば、判決内容について国会でこれを議論することができないなどということはあり得るはずもありません。私たちはそのようなことを一言も申し上げておりません。あってならないことは、独立した司法権の行使としての判決の提示に対して、その効力をくつがえすことを目的とするような議論を、行政の側から、あるいは最高機関としての国会の場においても議論すべきではないということであります。そのことに対する基本的な尊重の姿勢というものが、厳粛に受けとめるということの内容でなければならぬということを申し上げておるのでありまして、この際、国が被告の立場であるかどうか、抗弁権をどのように持つべきであるか、あるいはこういう抗弁の内容がどのような方向性をなすべきであるか、これはあなた方の内部の問題であります。抜き出して私がここで問題としたいのは、三権分立の一方の立場である行政府が、この一方の三権の司法権の行使である判決に対して、先ほど規範性、既判力といい、拘束力といい、ことばがたいへん乱れておりますけれども、規範性は厳として存在いたします。拘束力を発揮しないだけのことであります。この規範性に対してどのような政治的な姿勢を持つかということをしっかり持たねばならぬであろうということを私は強調しているのであります。これはおそらく議論がかみ合わないでありましょうから、私はこのことについての追及はいたしません。  具体的に申し上げる。先般の長沼判決についての田中総理の、同じ名前でありますけれども総理のほうの御答弁の中で、今日まで無理に無理を重ねてきた憲法九条解釈、私に言わせれば解釈改憲というべき十九年二カ月のあり方というものは大いに訂正さるべきである。そのとおりであるというお答えにはなり得ないけれども、しかし、少なくともこの無理を延長していくならば、改憲というところにロジカルには行かざるを得ないであろうということに対して、結論としては一切改憲はあり得ないという回答があったのであります。私はその三日前に、田中法務大臣から、腹の中では改憲である、でき得ることならば九条をそのように明記することが望ましい、いまやる気はないがと、こういう御答弁をじかにいただいておるわけでありますから、ここに速記もありますけれども、この点について総理にその見解とのギャップのありようをただしたのであります。総理の答弁は、私の見解をもって政府の見解とする、田中法務大臣の見解はこれに従うべきものであろう、これと矛盾しないものであろう、こういうことでありました。しからば法務大臣はこれを訂正さるべきである。どう思いますか。
  38. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 総理のおっしゃっておることと私の言うておることは抵触はないんですね。ちょっとも抵触はない。ただ、違うところは、どこが違うかというと、腹の中を言えば、憲法九条にむつかしい解釈などは要らぬように、現在の憲法九条というものに、最小必要限度の自衛は許してよいのだということを憲法で明記するのもまた一方法ではなかろうかと思う、それは憲法改正ということですが、腹の中ではそれも一つの方法ではなかろうかと思うんだという、その腹の中の話——本来腹の中の話というものは口で言わいでもいいんですね。言わいでもいいんだけれども、腹の中の話だってしたっていいと思う。国会で、ほんとうのことを、思っておることを私は包み隠さずに言う、これは私は国会答弁に対する具心だと思うんですよ。ですから私の腹の中で、むろん腹の中というんだから、個人の考えに違いありませんわね。内閣の腹の中ということはないですからね。それは私の腹の中ですから、私の個人の考えの中に、憲法ではっきりしたらどうじゃ、明記したら、という考え方は、一つの考え方ではございますまいか。私はそういうふうに思っておるんで言うたので、訂正というのはもってのほかで、訂正などする心はございません。また、訂正の必要のあるようなことを言ったんじゃない。個人として心持ちの中にあることをさらけ出して、包み隠さずほんとうのことを申し上げた。何かおしかりをいただいておるようでございますが、私は答弁をしながら、いまも私の思っておるとおりのことを思っている。これ訂正してみようかとか、修正をしてみようとか、取り消してみようとかいう心は私にございません。そういうことです。
  39. 上田哲

    上田哲君 しかられるのは田中総理のほうからでありまして、私はあなたの正直な態度をむしろ称賛をいたします。六感大臣というニックネームが出ておりまして、たいへん第六感でみごとに、たとえば金大中事件等の真髄を指摘されました。長年の経歴がここにさん然と光り輝いたものだと私は思います。いまもまたたいへん正直にものを申されまして、正直なことはこうべに神宿ることでありますから、当法務委員会の宝として私は大いに今後とも議事録にとどむべき珠玉の御答弁であったと思うのであります。  私は、そのことはそのことで大いに、これ以上の形容詞は持ちませんので、最大にひとつ腹の中を御開陳になったことはけっこうだと思います。どっちが本音だといったら、田中総理のほうが私は無理を言って本音を出されなかったと思うんであります。ちっともそれが矛盾をしておらぬとおっしゃるんだけれども、普通の常識でことばとことばを比べるならば、同じ田中さんでありますけれども、法務大臣と総理大臣の言われたことばは全然違うというのが常識であるということに私は理解をいたします。これはおそらく時間のむだになりましょうから争いません。争いませんが、一つ簡単にお答えをいただくために申し上げておきたいことは、腹の中で何を考えていてもよろしいのだという一般私人のモラルと、行動の規範としての議論と、法務大臣という行政府のしかも法務にかかわる管掌の最高大臣というものが、憲法に向かって腹の中ではこれを変えようと思っているのだということを、少なくとも国会で明らかにされるほど、いかにそれが正直であっても、正直はけっこうでありますけれども、うそをつくのでなく正直で言うのならそういうことがつい出てしまう、そうした本音を持っているということは、立憲政体の中でいいことであるのかどうかということについては、私ははなはだ疑義を持つものであります。  腹の中は何を考えておるか、それは別じゃないかとおっしゃるのであるならば、たとえば今回刑法の改正案の中で示されている騒動罪の予備罪というのは一体どういうことになるんでありましょう。腹の中できっとこれは何かをやるに違いないと思うからこれを先に逮捕しようということになる。腹の中が見えるということをあなた方のほうはお考えになっている立証ではないか。腹の中が見えないのならば、初めからこういう予備罪などということは出せないわけであります。腹の中に、それが見えなくても隠していてもつかまえようということなんでありますから、腹の中にこれが正直にあるんだよとおっしゃるようなことになるのであれば、これははなはだ私たちは今日の憲法に対して危惧を持たざるを得ないということになります。危惧を持つ持たないはだれのかってだということですから、これは争いません。時間を省略いたしますが、これはひとつこの面だけにしぼってお伺いをいたしたいのは、御訂正にならぬ、それはけっこうですから、御訂正にならぬと突っ張られることは正直なことでけっこうですが、そういうことを腹の中に考えておられる法務大臣というのが今日存在しているということは日本国憲法にとって正しいとお考えになるかどうかだけを一つお伺いします。
  40. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 私は、そういう気持ちを持っておるということは、正しい、正しくないというより、憲法下における大臣の行動として、発言として私はちょっとも差しつかえがないと思う。現行憲法のどこを否認するなどということを私は言っておるんじゃない。先生もそうおっしゃっているわけじゃございませんが、私はそんなことを言っておるんじゃないんで、憲法の改正ということは、先生、許されますからね。憲法の改正が許されぬものじゃない。憲法は不磨の大典じゃない。手続をすれば改正は許される。そこで私は、腹の中では、明記をちゃんとしてもよいではないかということを考えておるんだと、そのほかにことばも言うてあります、いますぐ改正をしようなどということを言っておるのではないのでありまして、将来国民のコンセンサスが得られる時期が到来するならば、その時期においてははっきり憲法を書き直すということも必要ではなかろうかと腹の中で思っておるんだということを言っておるんでありますから、これはどうも私は不都合呼ばわりをされるところはどこもないのではないか、おしかりはおしかりとして私はつつしんで承る心持ちを持った男でございますが、これは差しつかえがない。憲法改正を許されている、場合によっては憲法を改正したっていいんじゃないかと腹の中で思っておるんだと言うこと、ちっとも差しつかえがないのではなかろうか。大臣として不都合であるというおことばでございますが、私は不都合でないように思う。
  41. 上田哲

    上田哲君 御見解はよく承りました。私はそういうことが法治国体系として、あるいは行政府の初めて出された司法の判決に対する姿勢としては正しくない、好ましいものでないということを再三表明をし、しかし断固としてこれを変更されないという姿勢はしかと承っておきます。  時間を節約をいたしますが、私がきょう申し上げたいことは、たとえばこの問題と同じように、行政府が、初めて出された自衛隊違憲判決を受けとめて、ことばでは厳粛といいながら、政治姿勢としては何ら今日までの姿勢を変更しようとむしろしないことに努力をしておられる、この姿勢がはなはだ判決尊重、司法権尊重という姿勢を欠いているものであるということを申し上げなきゃならぬと思っているわけです。  そこでもう一つの問題に入りますけれども、たとえば防衛庁、防衛庁は、自衛隊判決は憲法違反であるということをまっこうから述べられている、いささかこれに対して身を慎むというか、なりほど控訴すればすべてまっ白ということにならぬのでありまして、控訴はすなわちその効力を上級審の判決が出るまで一時これを預からしめるというにすぎない。もしどこかで断面を切るならば、今日国民のすべては司法の判決は黒だということを信じていいということになるのでありますから、そういうことに対してかりにも李下に冠を正さない程度の政治姿勢というものは厳に守られなければならないであろう、こういうふうに考えるんですけれども、そういう姿勢は一般的にお持ちであるのかどうか。
  42. 田代一正

    政府委員(田代一正君) 防衛庁の受けとめ方といたしましては、過日長官からも話があったかと思いますが、一審たりとも、裁判の司法機関で行ないました決定でございますので、それは謙虚に受けとめるという立場でございます。同時に、この第一審判決で下されました内容がまさに自衛隊の存廃にかかわる問題でございます。それはまさに被告という立場のとらえ方がございます。そういうとらえ方といたしましてはまた別ないろんな考え方がある、こういうことじゃないかと思います。
  43. 上田哲

    上田哲君 最低限の反省や身を慎む態度があるべきだ。国民の大多数は防衛庁あるいは自衛隊の態度を合憲として支持しているというこれまでの言い方は、何分の一かの反省を持って見なきゃならぬということだけは政治姿勢として明らかでなきゃならぬと思う。にもかかわらず、たとえばいまNHKを除く全民放に防衛庁が十月第一週から全国十七の民放テレビ局で宣伝番組として出そうとしている番組があります。「防衛探訪」、防衛庁の表現によれば、「防衛の意義及び日本の防衛のあり方並びに自衛隊存在意義、必要性等について認識と理解を得ること」ということが政策の基本目的だそうでありまして、すでにニュージーランド、北海道のロケ撮影を終え、こういう形でこの番組は間もなくオンエアーするようであります。十七局、この膨大な番組というのは相当な経費もかかっておるわけでありましょうし、これまでいわゆる防衛庁提供番組というものが持っていたものに比べてかなり露骨な、かなり積極的な、これまでにない姿勢をうかがわしめるに十分なものであります。自衛隊違憲判決が出たということになるならば、ここまでの態度というのは当然リフレーンされてしかるべきであると私は考えるが、いささかも反省がここにないということは、これまでの考え方と非常に違っていると思う。必要があるならば、私はこの番組の内容あるいはこれに対する制作費等々、背景についても申し上げる用意がありますけれども、これについてどうお考えですか。
  44. 田代一正

    政府委員(田代一正君) 防衛庁といたしましては、ここ数年来、日本の正しい自衛隊の姿というものを国民の皆さんにPRするという角度でいろいろな広報活動がやってまいりました。その一環といたしまして、テレビの放映という問題がございます。ただいま御指摘の案件は、ことしの春以来いろいろ計画をいたしまして、現実にそれが放映になるという段階でございます。そういうことで、従来のものの考え方ということで、私どもの見方をもってしますならば、正しいほんとうの自衛の姿というものはどういうものであるかということが国民の皆さんに御理解願えるというためには、非常に大きな寄与をするのではなかろうかという観念を持っております。そういうわけで、今回の判決がございましたけれども、従来から考えておりましたこの計画を、だからといってここでやめるという気持ちは現在持っておりません。
  45. 上田哲

    上田哲君 たいへん、反省が少しもない。あなたのほうの出しておられるこの番組は、たとえば対象は青少年とする、特に無関心層を重視すると明記されております。あるいは、立案の態度は、今日各種の防衛政策について、または防衛力としての自衛隊について、各国民の認識と理解が得られない、各種各様の意見を抱き、共通の広場が見出せない状況にあるのが現状である。そこで自衛隊の存在意義、必要性等について理解を深めようとすることが目的であると書いてある。しからば聞く。少なくともこれまでただの一つも自衛隊についての合憲違憲の判決がなかった状態の中で、初めて裁判所が違憲であるということを出したことは、当然この番組の中の判断材料として公平に扱われなければならないと考えるが、これを中に入れますか。
  46. 田代一正

    政府委員(田代一正君) ただいまこの番組の内容でありますが、これはいずれも従来の防衛庁で考えてまいりましたいろいろな広報政策の考え方の延長として行なわれるわけでございます。そういうわけで、このたびの一審の判決がございましたけれども、私どもといたしましては、官房長談話にございますように、この一審の判決があったからといって、自衛隊の運営、防衛力整備の基本的な考え方について全然影響はない、従来どおりやってしかるべきであるという談話を出しております。そういう方針からまいりますと、このテレビ番組につきまして、別にこれを変更するという考えはございません。
  47. 上田哲

    上田哲君 おかしいじゃないか。あなた方は一方的に防衛庁があるいは自衛隊が合憲であるということのみを国民にPRするとすれば、非常に不公平であると思いませんか。あと七分しかないから簡潔に答えてください。
  48. 田代一正

    政府委員(田代一正君) 私もこまかい番組のことにつきましては十分知らなかったのでございますが、番組の詳細につきましては、あとになるに従いましていろいろな番組があるようでございます。たとえばいろいろな一問一答とかいうことがございます。おそらくこれは私どもがそういたさなくても、当然今度の一審判決というものをめぐる問題につきましては、そういう過程において取り上げられるのじゃなかろうか、こういうやに考えます。
  49. 上田哲

    上田哲君 取り上げられるのじゃなかろうかと言ったって、あなたスポンサーじゃないですか。スポンサーが、なかろうかっていいかげんな態度で、だれがやる。これは広告代理店は大広ですよ。大広に聞いてもよろしい。しかしあなた方の政策意図がここにはっきり書いてあるじゃないですか。いいですか。それを言えなければ、明らかに判決が出ているのです。拘束力はありません、それは控訴をしております、しかし、これは国民世論を動かしている大きな判断の材料であります。これのみオミットしている番組というのは明らかに偏向じゃありませんか。そのアンバランス性ということは認めるでしょう、これが一つ。認めるか認めないか。認めるならば、その番組をつくるのなら、少なくともそれを入れることは最低限ではないか。スポンサー、はっきりしてください。
  50. 田代一正

    政府委員(田代一正君) テレビ番組の後半になりますというと、何回か対談という番組等がございます。そういう番組の中に当然そういうことが考えられる。それから、前もってお断わりいたしておきますけれども、まだ詳細につきましては、契約はいたしておりませんので、ただいま先生の御意見等もございますので、たとえば山中防衛庁長官が対談をするとかいう番組があらわれるといたしましたならば、長官からも、こういった今回の問題についてもその対談の過程で触れていただくということを私たちとしてはお願いをしたい、こう考えております。
  51. 上田哲

    上田哲君 とぼけた答弁をしてもらっちゃ困る。何を言っていますか。まだ契約をしていない。十月第一週から出るのですよ。いま九月の二十日ではありませんか。私もいささかその道に知識を持っております。契約のサインをするかどうかということが決定的であるかどうか。いいですか。ロケも終わっている、ニュージーランドまで行っている、たまたまサインをしているかしていないか、十三回シリーズをもっと続けるかどうかという判断も確定していないから、あるいは制作費のこまかい詰めができていないから、二本目、三本目以降のタレントの動員もできていないから等々の問題はありましょう。契約ができていないからということで、たとえばその契約のおくれによって、十三回シリーズ、十月第一週から始まるという秋の番組改定のトップをもう既定の考えとしないでいいなどという理由があると思いますか。子供だましのようなこと言うのはよしなさい。いいですか。山中長官が出るか出ないかという問題は、山中長官は、長沼判決以来あらゆるところで出演を交渉しているが、長官は出てこない。出てこない態度を私は半分認める。いま謙虚な姿勢をとるべきだと思うからみだりに出ないのだと言われるから、私はそれはそれで受けたいと思っている。ひねって、ねじって考えようとは思っていない。しかし、そういうところには出ないで、この自分の番組だけには出るということはどういうことですか。これはおかしいじゃないですか。そういう議論をしてもらっちゃ困る。あなたは官房長ではないか。スポンサーではないか。契約ができていないなどという、とうしろうに向かって言うようなことを言ってもらったのでは、私はこの議論はこのままでは済ませませんよ。もっと幾らでもデータはある。すっきりなさい。スポンサーではないか。十月一週から始まるのではないか。  しからば尋ねるが、不備があるとなるならば、まだ契約も終わってないのだからやめる意思があるか。いいですか。やめる意思があるか。そしてもう一つ——時間がないのだからきちっと答えなさいよ、あなたはとにかくもう数年間やっているのだから。また向こうの部屋へ行ってやりますからね。いいですか。やめる意思があるのかどうか。やめるべきだと私は主張した上で言っているのだ。それから、その問題についてはほうはいとして反対の声も制作側で起こっておる。話し合いをきちっとするか。その話し合いが済まなければ強行しない。その点についてすっきりお答えください。
  52. 田代一正

    政府委員(田代一正君) ただいま担当者に聞きますというと、正式な契約はまだ済んでいないという段階だそうでございます。
  53. 上田哲

    上田哲君 そんなことはわかっていますよ。
  54. 田代一正

    政府委員(田代一正君) それから、やめるかやめないかというお話でございますが、私どもとしましては、この方針を変える考えは現在ございません。  それから、さっき申しましたいろんなまだ細部きまってない問題もございますが、長官が出るか出ないかという問題は別にいたしまして、やはり対談とかそういう番組もこの中に入ると思いますので、そういう段階には、当然ただいまの問題につきましても触れることがあるだろう、こういうことを申し上げておきたいと思います。
  55. 上田哲

    上田哲君 全然答えてないです。ちょっとメモしなさい、私が質問するから。いいですか。何べんも繰り返されるようだが、第一、いいですか官房長。委員長にお願いをしておくが、これだけ私が時間を空費しながら何べんも質問をしている。ちっともまともな答えがないとなったら、私は質問時間については御考慮いただかないと先へ進まないことになります。いいですか。しっかりお答えなさいよ。私は一生懸命協力しているのだ、前の時計を見ながら。全然あなたはまともに答えない。  第一、契約をしていないということを理由にされるが、それならば、この内容が不適当であるという判断をされた場合には廃止をすることがあるのかどうかということをすっきり——いいですか。そのことが第一点。  それから、そのことを実行されるかどうかということについては制作局を含めて非常に反対の声が強いのだから、それについては十分な話し合いを熟されることを前提として、やるならばやるということを考えるかどうか。  第三点、そもそも私はこれに反対だけれども、あなた方が強行されるという場合には、長沼判決というものを正当にこの中に含むべきである。このことを含まない、もしくはこれを不公平に取り扱うということは、はなはだバランスを欠くのみか、民主主義に対する放送のあり方を乱すことになる。マスコミの自由を乱すことになる。そうあってはならないであろう。  最後の問題、防衛庁当局はこれに対して基本的な、謙虚な姿勢を持っていないということは、実は防衛庁の広報番組というのが、こうした判決なり一連の国民世論の盛り上がりにもかかわらず非常にそうした問題を考慮しないで進んでいるということの一つの証左であります。単にこの問題のみならず、防衛庁のさまざまなPR番組等々について基本的にこの際検討をし直す用意があるかどうか、このことについてしっかりお答えをいただきたい。各項目についてきちっとしたお答えがなければ、質問時間については委員長に御再考いただくことを留保して、私は回答を待ちます。
  56. 田代一正

    政府委員(田代一正君) 幾つか問題が出ましたので、はしょって申し上げます。  廃止する考えはないかという第一問でございますが、廃止する考え、これをやめるという考えはございません。  それから機の熟するのを待って考えてみたらどうかという……。
  57. 上田哲

    上田哲君 そうじゃない。制作当局側も含めてちゃんと話し合うかと言うのですよ。
  58. 田代一正

    政府委員(田代一正君) それは、ただいま大広を通じて話をしているわけでございますが、そちら側から何らの意見もございません。そういう段階でございますので、私どもとしましては別に御異議はないものじゃないかというぐあいに考えているわけでございます。  それから長沼裁判、本件につきましてそれを正式に含めるかどうかということでございますが、これは一番最後の番組——十三回ございますので、最後の番組等でいろいろな対談が出てまいりますが、その過程におきましてこの問題に触れるということでやってまいりたいと、こう思います。  それから、謙虚な気持ちで今後一体広報制作上どういうぐあいにテレビ番組との関係考えるかと、こういう最後の御質問でございますが、私どもといたしましては、従来もそうでありましたし、今後ともやはりテレビの放映ということにつきましては、私どもの広報政策の大きな柱でございますので、従来どおりやらしていただきたいと、こういう気持ちでございます。
  59. 上田哲

    上田哲君 非常に御答弁は不満足であります。時間の関係があるから多くは述べないけれども、少なくともおしまいから二つ目、四番目の点について言うならば、十三回シリーズの一番最後、四カ月後になったら入れることも考慮するなどということは、この番組に対する基本的な公平感覚を欠いております。そんなばかげた話があるか。  今日長沼判決というものが出てきた、この判決に対して被告である国が控訴されることは、当然な法的手続として、また権能として許されるけれども、しかし謙虚に受けとめる、厳粛にこれを見るという姿勢がことばとしてあるのなら、その判決というものに対してしっかりした——反論もけっこうだけれども、公平の立場でまず扱うというのが当然であって、一回目のいろんな——オープニング番組にそれが使えるかどうかなんというこまかいことは私は知らぬにしても、十三回目の一番おしまいにやるなんというようなことは、これは長沼判決に対する謙虚に受けとめるという姿勢は根本的になく、一方的に、はっきり申し上げればこのシリーズをてこにして長沼判決に反対する世論工作をする、そういう姿勢が明らかにあらわれている。形を変えたこれは政府の、行政府の司法に対する介入である、私はそう断ぜざるを得ない。マスコミが、言論機関がそのような行政機関の手に弄せられることははなはだ迷惑であり危険であります。私は、そのことを強く強調しておきますので、これをもっては了承をいたしません。  詳細は知らないとおっしゃるのだから、一体その十三回シリーズ番組はどういうものであるか、当然の問題として、資料としてすべてを、計画全般について、契約がないと言うのであるから契約が行なわれる日にちまでも含めて、具体的に資料として提出をしていただきたい。
  60. 原田立

    委員長原田立君) いまの資料要求ですけれども、いかがですか。
  61. 田代一正

    政府委員(田代一正君) 提出いたします。
  62. 上田哲

    上田哲君 一問だけ。たくさんお伺いしたいことがありますけれども、もう一つだけ関連をしておきますが、防衛庁、こういうことがあります。国民の自衛隊ということを言われるのだけれども、名前を申し上げてもいいが、これは迷惑がかかってもいけないから大まかな言い方にしておます。新潟県出身の某君であります。所属は某砲射中隊というところまで申し上げておきます。この某君が四年間自衛隊に勤務しておりますけれども、実家が農家でありまして人手不足、どうしても家庭を継がなきゃならぬというので、再三退官の願いを出しているんだが、どうしても聞き届けられない。こういう隊員が退官をする、退職をするということの自由はそんなに認められていないのでありますか。私はここに氏名、所属部隊、その他すっかり持っておりますが、個人の立場もありましょうから、そのことが受け合っていただけるなら、私はこうした名前についてはここでは出さないことにいたしますが。
  63. 田代一正

    政府委員(田代一正君) 私も各自衛隊の末端でこういうやりとりが具体的にどういうぐあいに行なわれているかということをつまびらかにしないわけでございますけれども、無理やりに引きとめるという態度は最近やってないという感じがいたします。特に親御さんともよく相談いたしまして、どうしてもそういう関係で困るということがございましたならば、やはりそれは聞かなきゃいかぬだろうということで最近はやっておるというぐあいに私は聞いております。
  64. 上田哲

    上田哲君 時間がないから私は簡単に言っているつもりなんですが、結論を聞きたいです。いま申し上げた程度では概略過ぎるけれども、四年間つとめた、まじめにやった。これは優良隊員なんですよ。だから私はいろんな立場もあるから名前も言わないけれども、この人が明らかに農家であとを継がなきゃならない。両親に農業継続の力がないので、退職をさしてもらいたいというのが理由であるならば、正当な理由として退職を認めますね。
  65. 田代一正

    政府委員(田代一正君) これはケース・バイ・ケースでございますので、後ほどまた上田委員……。
  66. 上田哲

    上田哲君 原則はどうですか。
  67. 田代一正

    政府委員(田代一正君) 原則としては、さっき申しましたように、親御さんその他に事情を承ってみて、どうしても御本人が帰らないと家業ができないとか、そういう状態になりますと、やはり私どもとしましては、その方がおやめになるということを承認せざるを得ない、こう考えております。
  68. 上田哲

    上田哲君 どうもちょっと——もうこれでやめますが、承認せざるを得ないとか、もしそういう言い方だったら、徴兵になるじゃないですか。何を言っているんですか。これは明らかに、当然に退職を認めますと言わなきゃいかぬのだよ、これは。そんなことを言っているから国民はますます自衛隊に疑惑を持つんでして、何年防衛庁にいるか知らぬけれども、自衛隊法読み直しなさい。明らかに、いま私が述べたような事由によるのであれば、退職を直ちに認めることが原則でありますと、原則でありますでいいですよ、個別なことは私は本人立場もあるから、これはあなたのほうへ資料を渡すから善処していただければそれでいい。そんな言い方を国会の議事録の中で、やむを得ないと考えますなんという言い方じゃ困る。法に照らして御答弁いただきたい。
  69. 田代一正

    政府委員(田代一正君) ただいま承認するというような表現を使ったのは、自衛隊法の四十条に「退職の承認」という欄がございまして、その法文に従いますと、退職を承認しないことは、こういうかくかくしかじかの場合には退職を承認しないことができるという法文上のことばがございます。そのことばを踏まえて私は答弁いたしたつもりでございます。
  70. 上田哲

    上田哲君 へ理屈を言わないですっきりしろよ、おこるぞ、おれは。
  71. 田代一正

    政府委員(田代一正君) そういうことで、ただいまおっしゃられたケースにつきましては、実を申しますともっと詳しくですね……。
  72. 上田哲

    上田哲君 だから原則を言っているじゃないか。
  73. 田代一正

    政府委員(田代一正君) だから、原則といたしましては、さっき申しましたように、非常に著しく家業が圧迫をこうむるとかいうようなことであるならば、それを、退職を承認するということになろうかと思います。法文上は、承認することが自衛隊の任務の遂行に著しい支障を及ぼすと認めるときについては承認しないことができるということでございますので、その逆の解釈等々から考えますというと、やはり私がさっき申しましたようなことでよろしいのじゃなかろうかと思います。
  74. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、きょうは時間がないので、ほんの三つ四つのことを端的に伺いたいと思います。大臣の御答弁も端的にお願いしたいと思います。  憲法八十一条には、これは専門家の大臣に、仏の耳に念仏ということになると思いますが、一切の法律、命令、規則または処分について裁判所は違憲審査権を持っているということが明記されております。ところが政府の例の統治行為論によりますと、高度の政治判断を要するものについては裁判所の違憲立法審査権は及ばないということを主張しているわけであります。一体憲法のどこにそういうことが書いてあるのか、まず伺いたいと思います。
  75. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) それは明文はどこにあるかというお尋ねでございますね。それは明文じゃないのです。三権分立の原則からきておる。三権分立の原則からいうと、そういう高度の政治判断を必要とする判断は、国権の最高機関がやるべきものだと。国権の最高機関がどうしてそんなことをやれるのかというと、それは国民がきめることだということですから、別論をすれば。国民から選ばれておる国会、その最高機関たる国会が、国民の意思と直接に深い関係のある国会がそういう大事な政治判断を要することは考えるべきものである。裁判所を侮辱するのじゃないのですよ、そうじゃないですが、裁判所というものは、国民から申しますというと間接的なものである。そういう国家機関にそういう大事な判断をやらすべきものではないのだ。憲法上の条理と申します、三権分立論の条理からいってそういうことが生まれてくる、そういうことでございます。条文はございません。
  76. 渡辺武

    ○渡辺武君 憲法に条文として明記されていないのです。しかるに、政府は三権分立の条理なるものを持ち出して、そうして憲法八十一条がはっきりと裁判所の権限として明記している違憲立法審査権、これの適用ができない範囲があるという立場をとっている。これは私は非常に重大問題だと思う。一体高度の政治判断を要する問題、つまり裁判所の違憲立法審査権の及ばない範囲、その内容は一体何なんですか。また、その範囲というのは一体どの範囲なんですか。それは法で特定されているものなんですか、どうなんでしょう。
  77. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) それは先生のおことばを妙に私が押し返すようで悪いのですけれども、特定されたりしている筋のものでないでしょう。重要な判断はそのつど判断をすべきものではないでしょうか。その判断はだれがするのかというと、それは裁判所がみずから判断をなさるべきものではないでしょうか、どうでしょう。ですから、裁判所にみずからそういう判断をしてもらいたい。第一審の判断は間違いなんだ。そんなことを裁判所が言っちゃいかぬのです。そういうことは裁判所判断すべき範囲外のものである、範囲内のものではない、範囲外のものである、こういう判断裁判所がして、その前提に立って御裁判をいただきたいということをこれから言うて出るのですが、まだできておりませんけれども、これからそれを言うて出るわけです。特にこれとこれとこれということはさまってあるわけではないのですね。きめようもないことである、こういうふうに御判断をいただけばよいのではないかと思います。
  78. 渡辺武

    ○渡辺武君 政府立場は、いまの法務大臣がおっしゃったこととは若干いままで違っておったんじゃないでしょうか。高度の政治判断を要する問題、あるいは国の防衛の基本に関する問題、だからこれは裁判所の扱う問題じゃないんだという議論を立てておられた。なるほどいままで裁判所の違憲立法審査権、これが及ばない範囲というものについて、全然裁判所が見解を示さなかったわけじゃないと思う。しかしこれは非常に特定された、個々の限定された条件のもとでの見解だったと私は思う。今回政府がとっている態度というのは、その及ばない範囲というものを、これを高度の政治判断を要する問題だ、これには裁判所の違憲立法審査権は及ばないんだと一般化している。そういう立場に立ったならば、これは憲法第八十一条にはっきりと認めている裁判所の違憲立法審官権を、これを一般的に否定していくということにならざるを得ないんじゃないでしょうか。どうでしょう。
  79. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 先生、これね、おことばですけれども、そんなに何でしょうか、自衛豚をめぐる問題は、そんなに先生のおっしゃるように低い問題でしょうか。これは国家の運命を決する最大、最高の大問題と違いますか。裁判所判断に属せざる問題がある、事項があるとすれば、これこそ、これがはまるんじゃないですか。最高のものじゃないですか。自衛権でしょう。自制権のない国家は国家じゃないんだ。それは人間の集団です。どうぞ御自由に侵略してください、自衛はいたしませんという国家なら主権はない。こういうことなのでありますから、何が自衛権か、何が自衛の範囲かということは、国家、国民の最高の問題、これにタッチしちゃいけません、タッチせずに裁判をしなさいということをこれから言うて出るんですよ。これが今度の控訴事件なんです。ですからたいへんな、憲法八十一条を修正する、けしからぬと、それに制限を加えるといったような問題とは違うのじゃないでしょうか。憲法をお読みになればわかりますように、法律、命令、規則、その他一切の政府の処分ということが書いてある。下のほうのことを書いておる。上のほうのことは書いてないでしょう、よくお読みになると。それがどうか、正しいか正しくないかということを裁判所自身に御判断を願いたい、しっかり頼みますということを言うんです。これからこれを言うて出るわけでございます。
  80. 渡辺武

    ○渡辺武君 それは重大な内容を持った答弁だと私は思いますね。それは専門家の法務大臣十分御存じだろうと思いますが、八十一条、明確に読んでみます。「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」こう書いてある。大体憲法というものは、これは、特に戦後の憲法は、戦前の政府のあの侵略戦争その他、あるいはさらに言えば日本の国民の基本的な権利についての著しい侵害、こういう状態を踏まえて、国家の行政、これを規範するものとしてつくられたものであるというふうに見なきゃならぬと思うのです。したがって、国家の行為一切、これについて裁判所が違憲審査権を持っているというのが憲法八十一条の根本の趣旨でなければならない。自衛の問題、これはなるほど大きな政治問題でしょう。まさに大きな政治問題であればこそ、これが憲法に合致するかどうかということを、これを当然裁判所が審査しなきゃならぬ。その権限を持っているというのが、これが憲法八十一条の根本趣旨でしょう。  しかも、時間がないから申しますけれども、憲法九十八条では、「この憲法は、国の最高法規であって、」云々と書いてある。憲法が明示しているその点こそは国がまさに守らなければならぬ最高の法規ですよ。憲法の八十一条で明記されているその問題について、高度の政治判断を要する問題だという一般論から、その適用は除外されなければならないという議論は、これは憲法八十一条にも九十八条にも反している。まさに憲法の上に行政府の必要、都合を置こうという態度じゃないですか。この点どう思われますか。
  81. 貞家克己

    説明員貞家克己君) 憲法八十一条との関係でございますが、御承知のとおり、最高裁で統治行為論をとりました判例が二、三ございます。それらによりましても、たとえば砂川事件判決におきましては、安全保障条約が問題になったわけでございますが、これは主権国としてのわが国の存立の基礎にきわめて重大な関係を持つ高度の政治性を有する問題であるというところから、それが違憲であるかどうかの法的判断は、純司法的機能をその使命とする司法裁判所の審査には原則としてなじまない性質のものであるというような表現を用いて判決をいたしております。さらにその一年後に出ました苫米地判決におきましては、衆議院の解散が直接国家統治の基本に関する高度の政治性のある国家行為であるということを理由として、同じく司法審査の対象外にあるという判断を示しているのであります。  これらを通じて考えられますのは、こういったいわゆる統治行為論というものの理論的な根拠といたしましては、司法権に内在する性質から見まして、そういった高度の政治的な行為が司法権の対象に包含されていないというふうに考えざるを得ないのでありまして、そういう観点から見ますと、憲法のたとえば司法の条項全般につきまして、司法権そのものにそういった内在的な制約があるというところからいたしますと、八十一条もあくまでその司法権についての規定でございますので、初めからそういった制約をこうむったものとしての規定だというふうに見ざるを得ないと思うのでありまして、この趣旨の統治行為論の必要につきましては、従来この長沼事件の第一審事件におきましても、あるいは砂川事件、これは刑事事件でございますが、砂川事件等におきましても、あるいはその他恵庭事件というような事件がございましたけれども、そういった事件を通じまして、国側あるいは検察側が一貫して主張してきたところでございます。  なお、法治主義が破壊される、八十一条がだめになってしまうという問題につきましては、まさに法治主義、さらに進んでは裁判所によるすべての行政その他の行為の審査権、まあ司法優位と一般に言っておりますが、まさにそういったたてまえをとりますからこそ、初めて統治行為の問題が生じてくるのでございまして、戦前の日本のように、行政訴訟についての列挙主義をとっております国、あるいは戦前のドイツのような国におきましては、統治行為論というものは少なくとも戦前はあまり聞かれたことがなかったわけであります。そういう必要が本来あり得ないわけでございます。いまのわが国でありますとか、あるいはアメリカあるいはフランスのように、行政に対する司法というものの、司法権の範囲が、審査権が大きいところにおきまして、初めてこういった統治行為論というものが生じてくるということに御留意をお願いしたいと思うのでございます。
  82. 渡辺武

    ○渡辺武君 まあ時間がないからやめておきますわ。全然茶坊主的見解じゃないですか。
  83. 原田立

    委員長原田立君) 午前の質疑はこの程度とし、午後二時まで休憩いたします。    午後一時休憩      —————・—————    午後二時十一分開会
  84. 原田立

    委員長原田立君) これより法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  85. 佐々木静子

    佐々木静子君 前回に引き続きまして、また金大中事件に関しまして質問をさしていただきたいと思います。  この間から非常に心配していることでございますが、どうも金大中事件に対する日本政府の追及というものが当初考えられていたよりも非常に弱腰になってしまって、いまや立ち消えというわけではないんでしょうが、形の上ではちょっと休憩、中断されたような状態になっているわけでございまして、いまも申し上げているように、私の尊敬しているところの法務大臣が非常に鋭い第六感で、事件が起こるや、この問題を取り上げていただいたにもかかわらず、何だかどこでどう引っかかっているのか、話が前に進まないということで、たいへんに歯がゆい思いを、これは全国民、全国民ばかりじゃない、アメリカやヨーロッパの人たちにおいてもたいへんに歯がゆい思いをしているようなわけでございますけれども、その後の、特に捜査官を交換するというふうな問題なども、金山前大使を通じて交渉しておられるという話ですが、どういう経過になっているのか、簡単に外務省と警察庁から伺いたいと思います。
  86. 中江要介

    説明員(中江要介君) 金山前駐韓大使の韓国訪問は、これは全く個人の資格で、金山前大使が関係しておられます研究所の仕事で行かれたということでございまして、事前にも事後にも、政府とは、少なくとも外務省とは何の打ち合わせもなくて、ただ日本政府がどういう態度で臨んでいるか、あるいは日本国内の雰囲気がどうであるかということは、これは当然踏まえて行っておられると思いますけれども、その内容については、政府の外交チャンネルでやっております交渉とは関係のないものという認識でございまして、新聞報道などでは捜査官の相互協力のようなことが報道されておりますけれども、外務省といたしましては、それについては何ら聞いておりませんし、具体的な内容も承知しておらないわけでございます。
  87. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) ただいま外務省から御答弁がございましたように、まだ韓国側から外務省に正式の提案がなされておりませんので、警察庁といたしましても、まだ具体的な検討段階に入っておりません。正式な提案がもしございましたら、その時点関係官庁と協議をいたしまして善処いたしたいと考えております。
  88. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、警察庁のほうはその後、一昨日でございますが、やはり金大中について質問さしていただいたわけですが、その後何か捜査上に進展はございますか。
  89. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) その後特に申し上げるべき進展がございません。
  90. 佐々木静子

    佐々木静子君 警察庁のほうもたいへんに御苦労なさって、いろいろと傍証を固めていらっしゃると思うわけなんでございますが、この問題で韓国CIAというものが非常にクローズアップされた。知っている人は前から問題になっておったわけですが、日本国民の間にもこのKCIAの正体というようなものが、これはみなが注目するようになった、そういうふうな事柄もございまして、いまCIAにいろいろとたいへんな目にあわされている人がたくさんいる。そのことで私もいろんな話を聞いておるわけですが、前回からも申しておるように、なかなか、それのことについて話を聞こうと思うと、たいへんにこわがって言ってくれない。それを重ねて聞こうと思うと、CIAというものがどんなにおそろしいものであるかということを日本の方がまだ知らないからそういうことを言うのだと、皆さんそろってお答えになる。そういうようなことで、私どもも聞きたいけれども聞けない。あるいは、これは私が聞いている話もあるのですが、これはぜひ秘密にしておいてほしいと言われているために、人に言うわけにはいかない、そういうふうな問題が実にたくさんあるわけでございまして、何とか日本の警察がしっかりとやっていただきたい。  これは前から言うていることなんですが、きょうは、遺憾ながらたまたまそういうことになったのかもしれませんが、在日韓国人の方の人権というようなものが十分に守られておらないというような話が午前中の事柄にも出てきたわけです。現に、在日韓国人の方が刑務所の中で盲腸で苦しんでいるのに十分な治療も受けられずにたいへんに苦しんで、そうしてそのために身体に障害を起こした、それによって国に訴訟を起こして、そうして訴えが通った、そういうふうなこともあるので、私はくどいようだけれども、法務大臣に、韓国人の方であっても、ちゃんと平等に、謝罪すべきことは謝罪してくれ、はっきりさっきからお願いしているようなわけなんですが、実際のところは、韓国人方々が日本国内においても十分な日本政府による保護が与えられないばかりじゃなくて、非常に差別されているという問題が多いわけですが、これは単に日本国内で差別されているという問題だけじゃなしに、KCIAによって日本国内でもいろいろな目にあわされている。  これは前回申し上げましたように、八月の初めにやはり大阪で在日韓国人の青年が自動車事故にあった。それはもっぱらの評判では、偶然の事故ではなくて、やられたのだ、形の上では事故死になっているけれども、殺されたのだというのがもっぱらのうわさになっている。これなども、聞き込んでいただけば、すでに捜査当局はその問題を、真相をつかんでいらっしゃると思うわけでございますが、この間ちょっと伺ってみました、東大阪にいる沈在玉という人ですね。そのことについて、何かKCIAのこととの関連においてお調べになったことがあるかどうか。前回はそれは知らないというようなお話でございましたが、その後何かお調べになりましたですか。
  91. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) 前回御答弁いたしましたように、具体的な事実関係が残念ながら私どもわかっておりませんので、その後捜査はいたしておりません。沈在玉さんという名前は、私どもこれまで聞いておりません。
  92. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは在日韓国居留民団の大阪府本部の副団長をしていた人でございまして、そして、それと同時に、大阪府布施支部の団長もやってきた人で、大阪における在日韓国人の中ではかなり有力な人だったわけですけれども、実はこの人が、これはことしの、ついこの間です、八月二十五日に大阪でなくなったわけなんです。これはなくなったのは、表向きは病死ということになっておりますけれども、これは相当に理由があって、まあはっきり言えば韓国CIAによって非常な拷問にあわされて、そして、結局それがもとで廃人のようになって、そのまま死亡したというのが彼を知る人たちのすべての一致した証言のようでございます。   〔委員長退席、理事白木義一郎君着席〕  これは、私はなぜ沈在玉さんの件を取り上げて言うかというと、実はほかにもいろいろあるわけなんです。ところが、ほかの方は、廃人のようになったとか、不具になったとか言っても、生きておられるから、やっぱり私のほうも何となく——まあこの方はもうなくなりましたので、遺族の方の御都合はありますけれども、まあなくなってしまったから、これ以上KCIAにこの沈在玉さんが苦しめられるということはまあないだろうということから、これは例示的に沈在玉さんのことを取り上げて申し上げるわけなんです。これはやはり日本政府としても考えていただきたいと思うわけなんです。で、何回も言うようですけれども、日本の中に六十万の在日韓国人があり、私の住んでいる大阪では二十万もいる。生野区などでは、韓国人の方のほうが多い町もあるわけなんですね。そういうところでこういうことが野放しにされているということは、やっぱりこれはたいへんな問題じゃないかと思うわけです。  これはもちろんソウルへ連れていかれて、そしてソウルで拷問を受けて、そしてまた、廃人になってから日本へ送り返されて、そして、結局日本で死んだという件ですけれどもね。この本人さんが生きれいらっしゃるときの話では、そもそもそういうことになったのは、自分が民団の副団長であって、彼はもう全く共産党きらいの人間だったところが、KCIAのほうは、何か総連の人とのつき合いもあるということ、ただそれだけのことでつかまえられて、それだけの目にあった。彼は総連の人とは全然つき合ったことがない、また彼を知る人もみんなそう言うわけでございますが、どういうことにしろ、そういうことで、この人が帰ってきたときの様子、姿はだれしも目をおおうものがあったというふうな周囲の人たちの、生きている間のことを知っている人たちの表現でございまして、また、この沈在玉さんが、これはソウルであわされた目ですけれども、零下九度の張り詰めた氷の上で十人近くのKCIAがさかさまにつり上げて、氷で頭を割るなどの行為を続けられたので、そして、九カ月にわたってそのような拷問を受けたために、精神面にも一時はもうろうとして、そして、結局体はだめになり、廃人となって日本へ帰ってきたというような話、まあこういう話を、これはでたらめを言える話じゃないわけです。これは東大阪でかなりの有力な人でもありますし、知っている人が非常に多いわけですから、そういう事柄もぜひ警察は注意を持ってお調べいただきたいと思うわけなんです。また、こういう事情もあって、これは私の察するところですけれども、まだそういうことになると皆さんが困るということになるんですが、やはり終戦の事情などもいろいろお調べになれば、だれがどうした、彼がどうしたというようなことも、これは明るみに出る部分も非常に多いんじゃないかと思うのですけれども、そういう点、この沈在王氏のことについての調査、いかがでございますか。
  93. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) 前回は東大阪の住人と、韓国の方ということしか伺いませんでしたので、現在まで調査をいたしておりませんけれども、本日具体的なお名前と事実関係の情報の提供をいただきましたので、さっそく調査をしてみます。ただ、ただいま御指摘の韓国国内における拷問があったかなかったかということに関しましては、日本警察の捜査権の及ぶ範囲外でございますので、この点は十分な調査ができるかどうか、お約束をいたしかねますが、日本国内においてそういうことがあったかどうか、この点につきまして事実調査をいたします。
  94. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはぜひ警察のほうで——これは例示的に申し上げただけで、これは私、この間七月の末から八月にかけて三人死んだといううちの一人でございますので、あとの二人はまだちょっと正式な御承諾をいただいておりませんのでその話を申し上げてないわけでございますが、これは実にたくさんこういうケースがあることだけは間違いないわけでございますので、ひとつ十分に御調査をいただきたいと思うわけです。  大臣にお伺いいたしますけれども、まあこういうことがやはり日本国——この拷問を直接したのはソウルのようですけれども、しかし、これがソウルでつかまっているのもあれば、日本の領事館から姿を消しているのもあるわけなんですね。そういうことにおいて大臣は、まあまあこれは聞きおくで済まされるのか、こういう問題についてこのままでいいとお思いになるのか、どういうふうにお考えになっていらっしゃるのですか。
  95. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) ただいまお話になりましたのをここで単に伺っておるわけでございます。それだけでこれをどうするこうするという直ちに軽々に判断をするということもむずかしい。いましかし、警察のほうにお話になって、警察は調査をしてみると申しておる、警察の調査の結果などをひとつ参考にしたい、追って適当な時期にお答えをいたします。
  96. 佐々木静子

    佐々木静子君 大臣、あまりのんきにしていただいても困るわけでございましてね、現にこういう問題が、沈在玉さんの件については御調査なさるわけですけれども、たくさんあるということを私は申し上げているんですよ、いろいろと。これはいろいろあるわけなんです。ですけれども、まあ調査した資料を見て、感情で、まあ何かしようと思えばやろうか、そのときの気まぐれでどちらでもいいようなことを大臣に言われると、これはたいへんに困るわけなんでございますね、まあそうおっしゃらぬと思いますけれども。一国の法務大臣として、こういうことが日本国内で起こっているという事柄についてどういうふうに行政面で考えていられるかということをお伺いしているわけなんです。
  97. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 私の申し上げておるのは、事件が山ほどあるとおっしゃる、山ほどあると仰せになるだけではどうも答えのしようがない。何月何日どこで何の何がしがどういう被害を受けた、それが日本国の領土内であった、わが国の主権の及ぶ範囲内であったという事柄がわかりましてから法務大臣の意見を言う、これ筋でしょう。それわからぬか、いろいろあるんだと、これ一つでない、たくさんあるんだと、さあどうだというお話は、承ってびっくりするだけでございます。どうにもしようがない。法務大臣というものはものを言えば責任がある。でありますから、事が明白になりました上でないとどうこうという意見が述べられぬ。警察だって同様のことです。調べると言っておるんだから調べてもらって、それをひとつ参考にとって判断をしてみる。そういう先生仰せのようなことがあるとすれば、たいへん重大な事柄で、捨ておけるものでありません。しかし、どうするのかということは、具体的内容がわかってからでなかったら判断はできぬではないかと、こう言っておるんだから、よいかげんな話をしておるなどとおっしゃっては困るのです。よいかげんなことはないんです。
  98. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは法務省というのは、人権擁護局もあれば入国管理局もある。そんなにただ検察庁の直告の窓口のようなことを言われたら困りますね、大臣として。もっと誠意ある答弁をしてください。
  99. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 先生の仰せになることをちょっと私は理解がしにくい。検察庁は捜査をしております事件を警察から送致を受ける。それは事件が手元に来るわけです。もう一つは、送致を受けておらぬけれども、事件を捜査しておる途中において、こういう事件を新たに発見をしたという発見がある。これも一つの事件として取り扱わねばならぬ。投書がある、告訴がある、告発がある、これも取り扱わなければならぬ。そういう捜査の、一口に申しますと、端緒、妙なことばでありますが、捜査の端緒と申しております……
  100. 佐々木静子

    佐々木静子君 そんな話をしてないですよ、刑事訴訟法の話は。
  101. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 捜査の端緒がなければこれをどうするということを具体的に申し上げようがないではありませんかということをお聞きを願っているのですよ。
  102. 佐々木静子

    佐々木静子君 何も検察庁の話を私していませんですよ。あなた人権擁護局も法務省の中にあるんですよ。その検察庁無実判決を受けた人にあいさつ回りをするばかりが法務大臣の用事じゃないでしょう。
  103. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 人権擁護局があって人権擁護に乗り出すかどうかということもいろいろありますというお話だけでなしに、事が具体的に明白になってまいりませんと乗り出しようがない。これはどう処置をしたいということを法務大臣がここで申し上げるようなことができないでしょう。そこのところはひとつ御理解をいただきたい。何か逃げておるようにおっしゃるが、逃げておるのじゃないんです。
  104. 佐々木静子

    佐々木静子君 人権擁護局がですね、訴えのない事件について調べるというケースだって幾らだってありますよ。何ですか、大臣のきょうの御答弁は、全く誠意がないじゃないですか。それならそれでけっこうです。在日朝鮮人方々がどういうことに苦しめられておろうと、自分はもうそんなことはどうでもいい、とりあえず目先の利益のある人のところへは何をすっ飛んででも見舞いに行く、それが法務大臣仕事であるとおっしゃるならそれでけっこうです。そのように承ってよろしいですね。
  105. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) そういう受け取り方をしていただいては困ります。そんなことは言っておりません。   〔理事白木義一郎君退席、委員長着席〕
  106. 佐々木静子

    佐々木静子君 しかし、大臣先ほどからのお話はそうじゃないですか、そうでしょう。人権擁護は、これこういうことで非常に苦しめられているという話をしているわけですよ。警察のほうはそれならそれで自分のほうも一生懸命調べておる、これから調べるようにすると言っているわけですよ。大臣のいまの御答弁は、一国の法務大臣としてこれは話にならぬじゃないですか。検察庁の捜査がどうとか、警察から送致されぬとわからぬとか、これは検察庁の話ですよ。法務省には幾つも局があるでしょう。それについて調べることたってできるでしょう。入管局だって、在日韓国人が領事館の中で消えているケースも幾つもあると言っているわけですよ。それならそれで、消えた韓国人検察庁へ告訴するはずはないでしょう。ほったらかしにしておいていいとおっしゃるのですか。
  107. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 先ほど答弁を申し上げたとおりでございます。事が明白にならないと発動のしようがない、それは御理解をください。事が明白であって、行政上の処置をなし得る状況にあるのにほっておる、法務省は何をしておるかと、おことばごもっともであります。それを言うておるのですね。
  108. 佐々木静子

    佐々木静子君 事を明白にするのはだれなんですか、あなたじゃないですか。警察が明白にする場合もありますよ。しかし入管だって、入管のほうでは入管で調べなくっちゃならないこともあるし、人権擁護局は人権擁護局で調べなくっちゃならないこともありますよ。じっとすわっていて何が明白になるのですか。それならそれで法務省としても一生懸命取り組むぐらいのことはせめて言えそうなものでしょう。そういうことをやる気がないんですね、要するに。もう人権なんかはどうでもいいというわけでね、先ほどからの御答弁で。それならそれでけっこうですよ、はっきり議事録に残しておきますから。それでけっこうですよ。見えたようにテレビにだけ写って、そして自分のほうの関係のある、とりあえずの利害関係のある人のところだったら菓子箱でも持って見舞いに行こうかというふうな、そういう人気とりをなさる反面、声のない人のところにはほったらかしでいいと言われるならそれでいいです。議事録にはっきり残しておいてください。
  109. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 曲解をされることは迷惑しごくで、曲解をされぬように。どういう発言をなさるということはあなたの御自由ですけれども、曲解は困る。私はそんなことは言うておらぬ。あなたが仰せになったんですね。誤解のないように。速記録が明白に物語るでしょうからね。私はそんなことを言っておりませんよ。
  110. 佐々木静子

    佐々木静子君 明らかになればと言われたじゃないですか。明らかにするのは法務省仕事じゃないですか。それだったら法務省がしっかりなさらないといけないじゃないですか。第六感ばっかり働かしても、何もしなければ何にもならないんじゃないですか。第六感でものが片づきますか。片づくんですか、第六感で——それじゃ御答弁なしとしといてください。それで私の質問は終わります。
  111. 白木義一郎

    白木義一郎君 関連。  法務大臣、ちょっと申し上げておきますが、いま佐々木委員から、あたかも法務大臣と私の先般のことについて何か利益があったというような意味の御発言がありましたけれども、そういうことは全くないという御答弁をお願いしたいんです。
  112. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) たいへん誤解があってこんがらかっておるようですが、昨日のお話を承って私が率直に感じましたのは、検事がみずから進んで無罪の論告をしたと、こういう事件、まれに見るところでございます。これはよほどこちらのほうに手落ちがあったことに違いがない、言わずも知れたことである、まことに申しわけないことだということでおわびにあがろうということで、おわびの道を講じましたわけで、他意がございませんです。何か利害関係があって行ったんであろうなんというおことばは、これは佐々木先生が仰せになっておることで、私はさようなことは夢にも思っておりません。たいへん真剣、慎重に、はなはだしき被害者に対して御同情をいただき、私は私の気持ちの上で、心でこれを受けとめて、直ちにおわびをしようということにしただけのことです。それだけのことでございます。
  113. 佐々木静子

    佐々木静子君 私はこの事柄について白木理事とけんかしているわけでも何でもないわけですが、新聞紙上で拝見するところでは、その疑われた人が白木理事のなくなったおとうさんの会社の方である。それを聞いて法務大臣はあわててかけ込んだというふうになっているわけです。これは事実か事実でないかは私は知りません、いま。新聞記事で見るだけです。ですけれども、検察とか裁判というものはそういうものじゃないんですよ。これは在野法曹四十年ということをいつでもおっしゃるけれども、そういう御意図でなかったにしろ、世間の人が疑惑を持って見るようなことは、そういう誤解を招くようなことは慎まないといけませんですよ。現に私だけじゃありませんよ。その事柄について実はあの日の、一昨日の傍聴人の中からもあちこちからの問い合わせがありました。それから、いまも言っているとおり、弁護士の人からも問い合わせがありました。これはいわば社会から見れば良識のある人たちの声です。それから、率直に申し上げまして、検事さんからも怒りの声が起こっております。これは、やっぱり私一人の偏見じゃないですよ。私がヒステリーを起こしてかってなことを言っているようなことで片づけられちゃとんでもないことですよ。その点は多少はおわかりになりましたですか、私の言っている意味が。
  114. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 何か利害のあるものと仰せになるものですから、先生のおことばもそういう意味ではないでしょうけれども、ちょっと引っかかるんですね。利害があると、白木先生がどういう御関係にあるかということは、私は存じ知らぬことで、利害関係があると思えば菓子箱を持ってでも走るということは、幾らか、国会の御発言としてはいかがなものかと思うんです。議員さんの御発言ですから、つつしんでえりを正して承りはするんでありますけれども、ちょっとそのおことば、いかがなものかと思うんで、そこへ白木先生が立って、そういう関係がないと仰せになるから、私は、純粋に検事が進んで無罪の求刑をしたほどの事件である、これは申しわけのないことだという感じを強くいたしまして、私の気持ちで単純な受けとめ方をいたしました結果、これは申しわけがない、おわびをしようということになった、ただそれだけだ、利害とは違うんだ、そう言うてくださるなということを、私は言うておるんです、これ。何かこう話がだんだんと険悪になっておりますけれども、私は、話を険悪にしようなどという考えはないんですよ。そういうおことばがあるとちょっと一口言わんならぬでしょう、利害関係ないんだという。白木さんだって迷惑でしょう。どうかと仰せになると、私がやっぱり利害に関係がないんだと、こういう気持ち、単純な気持ちだったんだということを申し上げずにはおれないので、先生には悪いんですけれども、おそるおそる申し上げておきます。
  115. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまも同僚議員からお話があったように、もう少し御答弁のしかたがあると思うんです。それは幾ら御自分が純粋だとかなんとか言っても、相当な数の法律家が、あの発言は何だと言っているんですよ、現に。それに対してですね、それは大臣大臣のお考えがあるかもしれませんけれども、やはり、それ、そう言われるということは、大臣としてもやはりほめた話じゃないですよ。しかも、法務省部内の方からの、検事からの声ですよ、検事の方々がこのことを問題にしているわけですよ。それはもっと謙虚にお聞きにならないといけませんですよ。検事の方があなたに向かって面とはおっしゃれないでしょう。だから、私がかわりに言っているわけですよ、ほんとうのところを言えば。非常な怒りを持っていますよ、今度の何では。しかも、これは私利害があると言っているんじゃない。新聞紙によると——白木先生から何も聞いてないですよ。新聞によると、その被害を受けたのが白木理事のおとうさん、なくなったおとうさんの会社の人であったというふうに一流紙が書いているから、私が言っているわけなんです。だから、そういうことでいろいろと誤解が起こっている。その起こすようになったのは、やっぱり大臣があんまり調子のいいことを言われる。そして、白木理事は何も大臣に行ってくれと言ったんじゃないですよ。手紙を書くとか、使いの人とかと言いかけると、大臣、すっくと立ち上がって、いや私自身が参りますとおっしゃったんですよ。私もおりましたからはっきりわかっておる。それで、それがテレビなり新聞などに載って、ほう、田中大臣いうのは、ということになっているわけだ、ほめる人もあれば、法曹内部では、これはもう何という人だということになっているんですよ。それでいて、行ったかといえば、聞いてみると行ってないわけですよ。その話、そんなに、大臣、胸を張って私に言うて開かすほどえらそうな口してものの言える話ですか、どうですか。
  116. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 話がだんだん次元が低くなっておりまして……。
  117. 佐々木静子

    佐々木静子君 いや高うなっているんですよ。
  118. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 非常な憤激をしておると仰せになる。良識、常識から、申しわけありませんといってあやまりに行く手順をしたと、そんなに世の中の人が憤激、憤慨を——ちょっと聞いてください——そんなに世の中の人が憤激、憤慨をするような事柄であろうかとね。私のところには、あなたのお考えとは逆に、何としかしすなおな大臣じゃないかと、ちょっとこういう民主的な大臣は少ないと、えらいことをするんじゃなと、あやまりに行くのかと、本人が来るなら写真もとりたいなんと言うた新聞社もあるんです。たいへん高人気、どえらい人気。私もいろんな発言をしていろいろおしかりを受けたり、いろいろほめられたりしておるけれども、それは第六感演説みたいなものじゃないですね、これは、人気のいいのは。  しかし、行けなかったんです。今明日中に行くという約束をしたのに行けなかった。それはその日は六時、七時まで委員会があった。答弁は私がこれに、その答弁に当たっておる。翌日は午後の五時までやった。まさか夜おそく、夜の夜中におわびに行くわけにもいくまいということで、自筆の文章をしたためまして、丁重にその理由を申し上げておわびをいたしまして、御理解をいただいた。たいへん喜んでくださった、これで満足をしたと仰せをいただいた。そういうことでございまして、そんなに憤激をする、私の所管する検事が憤激しておる——一ぺん顔を見たい、どこを憤激するのか。憤激するようなことでなさそうな、行き過ぎたことでもなさそうな、検事がみずから無罪の論告をするなどというような事態があって、そのような重大な私は手落ちがあり、申しわけのないことをかけたところにはおわびに行こうとする心持ちになっておかしいことはないのではないかと、あなたの先ほどの御発言の中では、そのこと自体を否定するものではない、攻撃するものではないと仰せをいただいた。よくわかった話をしてくださるなと思って、私は得心をしておった。そんなに憤激すべきほどの行動でしょうか、これ。どうできょう。
  119. 佐々木静子

    佐々木静子君 これを憤激すべきことでないというふうにしか御理解できないとすれば、あなたはいま限り、法務大臣の資格ないと思いますよ、はっきり申しまして。検察のことが何一つわかっていられないですよ。あなたはきのういらっしゃらなかったのは、決算委員会で忙しかったからもありますけれども、検察部内からの猛反対を食って、行くに行かれなくなったんでしょう、そうでしょう。私はその事実もはっきり知っております。いかがですか、その点。
  120. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) そういう事実は、全くつくった話でありまして、事実はございません。私が行くことは私の自由であります。こういう事情の場合におわびに行くことをだれがとめますか。しかし、国会の時間の都合上行くことができなかったので、おわびを付記して秘書係長使者に立てた、こういう事情でございます。
  121. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま入ったニュースなのでさだかではありませんけれども、だれに対しての発表なのかわかりませんが、いま、この事件の弁護団が声明を発表したということなんです。これは自分たちが、弁護団が一生懸命にやってかちとったこの戦い、しかも一人の無実人間が人権を脅かされたことによってたいへんな苦痛のあったことですね、それを逆用して、法務大臣の人気かせぎにそういうことを利用するというのはとんでもないことだということで、この事件の弁護団がいま声明を発表したというニュースが私のところに入っているんです。大臣は、それはいろいろ見解はあるでしょう。しかし、一人よがりはやめてくださいよ。かりにも法務大臣なんですから、自分の人気取りのために金大中事件を利用し、第六感を利用し、そしてまた、今度はお見舞いに行くと言って利用し——自分の人気取りはまた別にやってくださいよ。ここの、法務大臣といういすにすわって御自分の人気取りをやられたのでは、法律家、法曹は、これは在朝在野を問わず、みんな泣いていますよ。ほんとうの話ですよ。泣いて検事は訴えましたよ、私に。その検事が悪いとあなた思われるのかも知らないけれども、大臣は少しは聞く耳をお持ちにならないと……。私はそれだけを申し上げておきます。  私の質問を終わります。
  122. 上田哲

    上田哲君 佐々木委員の御質疑を、また大臣答弁を承っておりまして、日本の法曹界の法灯いずこにありや、ゆらぎつつあるのではないかと非常に私は暗い気持ちがいたしました。いずれ法制審議会の騒動予備罪等について少しお伺いをしなきゃならぬ主観的、客観的情勢が高まっているという認識を強めたところであります。  しかし、それに先立って、お時間をいただきましたので、先ほど私が午前中に質疑いたしました防衛庁の番組の問題について、その後また判明したこともありますので、若干明らかにしておきたいと思います。  委員長からも再三の指摘がありましたように、防衛庁側の答弁まことにあやふやであり、明確を欠くのでありまして、時間の節約のために、能率的に責任ある御答弁をひとつてきぱきお願いをいたしたい。  そこで、まず第一にしていただかなきゃならぬのは、あなたは再三、先ほどまことに論理の取り違いの見当違いの御答弁であったけれども、契約が済ませていないのだということを、そのことがあるならば十月第一週から十三回連続のクルー制作で始まる番組についても契約がないということを言われたんであります。これは契約の問題ではない実体の問題でありますけれども、少なくともその発言は違っておる。代理店の大広と防衛庁の間には契約が済んでおるじゃありませんか。
  123. 田代一正

    政府委員(田代一正君) 隣におります広報担当の課長から聞きますというと、契約は了してないということでございます。
  124. 上田哲

    上田哲君 委員長からの御注意がありまして、金大中問題をやりたいわけなんですけれども、それに関連をして、いろんなつながりが出てまいりますからお伺いをしているわけですが、大広と防衛庁の間の契約は了しておる。知らないのですか、それとも契約が終わってないというのですか。
  125. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 御質問の点でございますが、私ども、官房長が申しましたような広報テレビをやるということにつきまして、各社に企画募集をいたしまして、企画の審査をいたしまして、大広さんの企画が一番よろしいということで、大広さんのやつを採用するという話はついておりますが、まだ契約はいたしておりません。と申しますのは、まだ中身をどういう形で実際にやるかということが具体的にきまっておりませんで、考え方としましては、木原美知子という人をレポーターにしまして……。
  126. 上田哲

    上田哲君 そんなことは聞いてない。契約の話だけしなさい。
  127. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 契約はまだ済んでおりません。
  128. 上田哲

    上田哲君 あなたは広報課長ですか。
  129. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) はい。
  130. 上田哲

    上田哲君 広報課長というのは一生懸命求めら別ないことでも話すのが任務だろうけれども、国会というところはそういう役目を求めていないのですから、聞かれたことに正確に答えればよろしいし、それ以外である必要もない。契約が終わっているか終っていないかということであります。  この契約は終わっています。具体的な書類を取り寄せるところまで実は間に合わなかったのです。出席代理店は電通、博報堂、大広、第一広官、万年社、協同広告、共同広告、東京エイジェンシー、東京PRセンター、三幸エイジェンシー、以上十社であります。六月の末日に防衛庁の統幕教育室で、防衛庁は陸幕の広報高橋三佐以下が出席をして説明を行なった。この話し合いがついていなければこのような制作が開始されるはずがない。はっきりあなたは契約と応募の採用というここを区別されたわけだけれども、具体的な商行為の認定行為としてはどうかしらぬけれども、事実二の商慣習としては、これは事実上の契約に当たるであろう。話をそこまで下ってもいい。私が言いたいのは、大広と防衛庁の間にはそういう契約を了しておるが、問題は大広と各放送局にあると思う。この場合は全国のUHFを含める十七の放送局と個別に契約を結ばなければオンエアしないりであります。そうですね。そのオンエアをするための契約ができないのです。なぜできないのですか。
  131. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 広告代理店になります大広と各テレビ局との間に契約ができるかできないひという点は、実は私どもの関知しない点であるわけでありますが、私どもは、広告代理店である大広に対して制作の契約と、それからそれを電波に乗せるという、放映するということを大広との間で私どもは契約するわけでございまして、大広はそれに基づいて、おそらく各社でやられることだと思いますけれども、その間の事情は私どもはまだ存じておりません。
  132. 上田哲

    上田哲君 不必要なことは答えるが必要なことは答えないのを防衛庁の広報課長の任務とするんですか。どういう内示になっているか知らぬが、国会へ出てきたら必要なことをもっと積極的に答えなさい。  私が聞いているのはそんなことではない。耳をかっぽじってよく聞きなさい。必要以上の金を使って、あまつさえ電波を壟断しようというこの段階に至って、そんないいかげん答弁では許されませんよ。私が聞いていることは、防衛庁と大広とは事実上の契約を了しておる。紙がどうなっているかということは、あなた方の大広がどうでもあることだから、これは紙を持ってきてこうだと言わない限りどうしようもないが、具体的な経過としては、商行為の慣習として上がっておる。そうでなければどうしてこれだけの、一クルー十三回、三月から半年もかかるような大きな仕事を、ニュージーランドまで行くような仕事を広告代理店が動き出しますか。そんなことは議論にはならぬ。  問題は、そこまで具体的に金を使い人を使い、フィルムが回っているのに、私が質問をしていることは、問題は、放送局の電波に乗せなければならないのは、大広という広告代理店、制作会社と各放送局との契約ができなければ乗せられない。それがなぜ契約ができないのか。九月の二十日ではありませんか。十月の第一週は目の前ではありませんか。一クルー十三回というのは、一回目がだめになったらすぐつながるものではない。番組改定期というのが必ず来るんです。そうすれば、一回目がだめになるということは全部だめになる。そんなことはできない状態になっているにもかかわらず、あなた方がさっき私への質問に対する逃げ口上として使った契約ができておりません。契約ができてなかったら困るのはあなた方ではないか。にもかかわらず、結論は、この放送を変更するつもりはありませんという答えではないか。ということは、契約にもかかわらず事態が進行しているということを裏書きしているではありませんか。そうでしょう。にもかかわらず、その出発点でなければならないはずの放送局と大広の契約ができないのはいかなる理由に基づくのかと聞いているのに、関知しないとは何事か。金を出しているところが放送を何よりもしてみたい——大広がしたいからやっているんじゃありませんよ。あなた方がわざわざ防衛庁に十社の広告代表者を集めて、わざわざ説明をして、手の上がるやつは手を上げろ、いい企画があったら持ってこい、そういうことで買い取った話ではないか。何もこちら側が自分のほうから持ち込んだ企画じゃない。あなた方がつくりあなた方が出す積極的なこのPR番組を、それがオンエアができないような状態になっていることを、関知するところではないというような答弁が許されますか、一体。  しからば聞くけれども、ほんとうに関知しないということで最後までいくのか。言えるならそう言ってごらんなさい。税金のむだ使い、監査請求もしなければならない。別な問題に問題は発展いたします。関知しないということを言い切るんなら言い切りなさい。法務省もそちらにいらっしゃるから。会計検査院も呼んで聞こうではないか。当然関知すべき義務があるではないか、内容のいかんを問わず。とすれば、この内容がなぜ具体的に契約事項にならないのかという事情を説明しなければならぬじゃないか。
  133. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) いま先生がおっしゃいましたように、企画としてはそういうように私ども決定いたしまして、できれば十月第一週からオンエアしたいということで進めておりましたが、何ぶんにもまだ先生がおっしゃるようなことがあるかもしれませんが、大広さんのほうと各テレビ局との間の、どことどこに放映できるか、何局でできるかということについて大広さんのほうから私どものほうにまだお申し込みがありませんので、契約ができない状況であります。したがって、十月第一週からはたしてオンエアできるかどうかということも疑問であろうかと思います。
  134. 上田哲

    上田哲君 ほうら、だんだん話が変わってきたじゃないか。官房長に聞きますよ、いいですか、今度は官房長ですよ。しっかり答えなさいよ。あなたは最後まで計画を変更せずまっすぐやる、十三回目には防衛庁長官でも出さなければならないということをさっき苦しまぎれに言ったじゃありませんか。計画を変える余地があるのか。あるならけっこうだ。こんなばかばかしい、国民に疑惑を二重、三重にするようなものは直ちにおやめになさいということを私はさっき五カ条にわたって、わからなければメモをとりなさいと言って質問をして答弁を求めたではありませんか。そのときにあなたの答えは何だった。あなたは広報課長の上に乗っかって、耳打ちをされながら答弁されているのだから、それが間違っていたというのなら答弁を撤回されて、放送が十月第一週からできるかできないかわからぬというところへ戻られるならけっこう、契約事項の問題なんか私は一々ほじくり返しませんよ。そんなところまで踏み込まない。もっといろいろなデータがいまあるのだけれども、そこまで踏み込まないから、やれるかやれないかわからぬというのなら、そういうことで話をお返しなさい。しかし、しろうとに向かって言うようなつもりでいいかげん答弁では許されないことを一本くぎさしておくが、十月第一週のオンエアというのが今段階において放送ができるかできないかではすみませんよ。そんなことは放送のシステムからいって、九月の二十日になって、十月の第一週の放送が一クルー十三回、数カ月に及ぶ番組ができるかできないかわからぬというようなことが九月の二十日になって、スポンサーのほうがわからぬ、広告代理店がわからぬなんという常識は絶対通用しないのだということを踏まえた上で、これを撤回する意思があるというのなら、そのことで御答弁をなさい。
  135. 田代一正

    政府委員(田代一正君) 私がけさほど御答弁申し上げましたことに関連いたしますが、私が申し上げたことは、防衛庁といたしましてはこういう計画を持っていて、こういう広報政策を持っていて、これを変える意思があるかどうかというふうに私は理解いたしましたが、私は変える意思はございませんということを申し上げただけでございます。私の答弁いたしました意味はそういう意味でございます。
  136. 上田哲

    上田哲君 あなたの官僚的発想としては、この番組の命運いずれに帰するかということよりも、官僚答弁として脈絡を何とか保つことができるならばよしとされるのだろうから、うまい、これは。ほめてもいい。なるほどあなたはこの番組を内容において、方向において変えようとすまいという願望を表明したのであったと言えば、なるほどそれはいいでしょうな。税金はそうはいきませんよ。防衛庁における官房長としての地位はそれぐらいのところで何とかなるのだろうが、これだって国民の税金なんだ。一兆に達せんとする四十八年度防衛予算の一部だ。来年は一兆一千五百七十億円になろうとする大予算の継続となるべき金だ。払うのはみんなだ。そんなものをあなたの、脈絡をただ論理的に合わせるだけの答弁のうまいまずいくらいでだましてもらうわけにはいかぬ。しかも、日にちは迫っている。放送局というのはそんなに簡単に、かぎを一つ取りかえるように、スイッチ一つ取りかえるように、九月の二十日になって十三回の連続番組というものが急に変えられるものではないし、そんな常識は通用しませんし、もっと大事なことは、広告代理店が納得しませんよ。広告代理店が納得しませんよ。もう一歩教えてあげましょうか。広告代理店の大広は、もしこれがだめになるのだったら——これはめとの話にからまるのだけれども、だめになるのだったら、放送料はどうなるのだ。それは防衛庁が万一の場合にはお払いはいたします、こういうところでいまからくもつながりつつあるというのが実態ではありませんか。広報課長、それくらいのことを知らぬことはないでしょう。よく話を聞いてしっかり答えなさい。私が聞いているのは途中の経過ではありませんよ。いま、論理的にはあれで話がつじつまが合ったようなつもりで御答弁をされたけれども——私はじくじくといじめているつもりはない。腹が立つ。腹が立つんだ、これは。私も言論機関の出身だから、マスコミというものとか、電波とかいうもの、番組というものを、役人が税金の使い方をふまじめにしながらこういう形で壟断ずるということは許せない。私ももと記者のはしくれとして、こういうことが一番神経を害する。だから、役人的発想でごまかしてくるんなら徹底的にやるから。私は、大きい声や単なる論理の言い回しで追及するつもりはないから、データで詰めるから、十分にこの裏に責任を持ちながらしっかり答えなさい。いいですか。もう一ぺん整理をしておく。  第一に、あなた方の発想や願望はともかく、この放送は実現しないで終わる可能性を、余地を残しているというのか。——言い回しはやめてもらいたい。そして、いま、大広と各放送局との間に契約ができないという理由は何か。そして、この契約ができず放送が実現しなかった場合に、それにもかかわらず、これまでの制作費、放送料というのは広告会社に支払うということになっているのか。それならば税金のむだづかいだと私は思うが——。私は具体的なデータを持っていますからね、いいですか、しっかりお答えいただきたい。
  137. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 二つの点に分けてお答えいたしますと、まず、制作費は税金のむだづかいというような御質問があったわけでございますが、御承知のように、官でございますから契約しない限り債務負担は起こりませんし、金を払うということは全く起き得ないわけであります。したがって、契約もしないで経費負担をするとか、そういったような事実は全くございません。  さらに、これがいつから放送できるかできないか。それから今後どうするかという問題でございますが、第一点は、この契約はおそらく二つに分かれようかと思います。一つは、そういうテレビ用のフィルムを制作する契約と、それから放映する契約という二つに分かれようと思います。何となれば、従来から——昨年、一昨年とそれぞれ五十回あるいは三十数回にわたりましてわがほうの広報映画を地方のテレビ局で放映しております。ところが、そういうふうに何度もやりましたので、手持ちの広報映画がなくなってしまったということで、今回、テレビ用の安上がりのそういう番組をつくりたいということで制作を一つ考えておるわけであります。したがって、それをつくることと、それからそれを何局に今度放映できるか。しかも、それは十月からのもの、一月からのもの、いろいろあろうかと思います。来年使う場合もあると思いますが、それとはまた別契約になろうかと思います。したがいまして、この十月直ちにできるかできないか、あるいはこの制作を中止するかしないかということになりますと、私どもといたしましては、ぜひ、こういう広報テレビ映画をつくりたいということと、ぜひ今後引き続き放映していきたいという気持ちには変わりございません。
  138. 上田哲

    上田哲君 あのね、どうしてあなた方は、こういうふうに一つ一つきちっと質問しているのにきちっと答えられない習性をお持ちなんですか。三つ一ぺんに聞くと完全に混乱をするようですね。一つ一つ聞きますけれども、いいですか、その一つ一つ聞く前のもう一つ前に、あなたはいつから広報課長になられたか知りませんけれども、聞いておきましょうか、いつから広報課長になられたか。
  139. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 昨年の五月からでございます。
  140. 上田哲

    上田哲君 昨年の五月からおやりになったらもう少し勉強してもらいたい。何をおっしゃる。番組を制作する費用と放送する費用とおっしゃった。
  141. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 電波料でございます。
  142. 上田哲

    上田哲君 そういう分類でありますか。防衛庁はそんなでたらめな金の使い方をしているのか。テレビが発足した二十八年以来今日まで——私は民放のほうじゃないから詳しくは知りませんよ。しかし、放送の常識として、放送料と電波料にきまっているんです、こんなものは。あとはその内訳にすぎない。そんなことを、いいかげんなことを言ってもらっちゃ困りますよ。だから私はさっきから、もしこれができないことになっても放送料は払うのかと、こういう質問をしているんです。そんないいかげんなことで、不勉強で答えられると思って出てきてもらっちゃ困る。そこで——いま、基礎知識のレクチュアをしているのだ。(笑声)時間をむだづかいして、向こうへ行ったりこっちへ来たりしてもらっちゃ困るから、私は、そういう要望についてのいいかげんなあっちゃこっちゃを整理してもらった上で聞いているんだが、私は、三つ聞くとまた混乱するから一つ聞きます。繰り返して聞くのは、これは放送しない、オンエアしないことになる余地を残しておるのかどうかということです。
  143. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) お答えいたします。  まず第一点の、先生いま御教示ありました電波料と制作費の問題でございますが、通常テレビでも二種類、御案内のことと思いますけれども、キー局を通じまして一斉に十数局なりがネットしてあるという場合は、当然その一つの番組で制作費、電波料というものが出てくるわけでございますが、今回の場合は中央のキー局を使わない放映でございますので……。
  144. 上田哲

    上田哲君 使えない、と言いなさい。
  145. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) したがって、制作したものについて個々のフィルムを貸与してそれぞれの地方テレビ局で放映するというばらばらな形になりますので、申し上げたように制作費と電波料と申しますか、放映の関係が別になるというふうに申し上げてあるわけであります。
  146. 上田哲

    上田哲君 放送料の内訳にすぎないじゃないか。
  147. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) それから第二点のことでございますが、私どもといたしましては、これを制作いたしまして全く放映の見込みがないということでありますれば、当然そういう契約はできませんので、放映されるという見通しが立った段階で契約をいたすということになろうかと思います。
  148. 上田哲

    上田哲君 じゃ、放送されないという余地も物理的にはあり得るというわけだ。  そうすると、問題は、代行はいい。これは応募したんですよ。認めたんだから。すでに金は使っているわけなんですから。——これはあとで問題にしますがね。代行はいい。しかし代行と放送局の間で話し合いがつくかつかないかが問題になるわけだな。キー局を使う場合と使わない場合がある——正確に言うと、キー局を使う場合と使えない場合がある。今回の場合はあとの場合じゃないですか。用語を正確に言いなさい。そうなると、今回は、あなたのほうは十七の放送局、UHFを含めて、一つ一つ契約をしなければならぬ、こういうことになる。この契約がうまくいかない理由は何ですか。
  149. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 各テレビ局との一つ一つの契約ということは、代理店になります代行とテレビ局との関係になろうと思いますが、現在代行から私どものほうに申し入れておりますのは、十数局というものが放映可能であるということで契約方を申し入れてきておるわけでありまして、その後放映がむずかしいという話は私どものほうには参っておりません。
  150. 上田哲

    上田哲君 参っておりません、と言うけれども、もうちょっと常識に返ってください。  いいですか。私はさっき四カ月とひょっと言っちゃったので失敗したのだけれども、半年ですな。十三回、半年にわたって十月から放送する。いいですか、その十三回にわたる大放送を、十月から始まるやつを、この九月の二十日になって、各放送局と契約ができておらぬということについて、スポンサーは契約ができていないでいいということになるのか、あなた。それじゃ怠慢じゃないか。防衛庁長官に対して相済まぬで、腹かっさばかなければならぬじゃないか。そんな業務怠慢、困るじゃありませんか。話をまじめに戻そう。もっとまじめに答えなさい。今日知らないということならば、あなたは責任を関わるべきことだ。税金ですぞ、これは。ほんとうに知らないのか。知らないのなら教えてやるしかないんだが、契約は現時点でできていない。これは間違いない。契約が現時点でできていない。しからば先行き不安があるんだということだけは物理的に認めざるを得ませんな。
  151. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 私どものほうには、実を申しますと、広告代理店のほうじゃなくて、たとえばマスコミ労連そのほかのほうから、とりやめないかといういろいろのお申し入れがあるわけでございます。したがって、そういう客観情勢としていろいろむずかしい問題があるということは私は存じております。したがって、実は広告代理店であります代理店のほうに、だいじょうぶということがもう少し確認されるまでということで、私どもが契約をやっておらない状況であります。したがって、代理店のほうからむずかしいとかそういった話は来ておりませんけれども、私ども自身がそういう情勢が完全に見きわめがつくまではやらないというかまえでおるわけであります。
  152. 上田哲

    上田哲君 あなたも将来法務大臣ぐらいにはなれるよ。  マスコミ労連なんというのありませんから、念のために勉強してください。  これは一つ一つの放送局を全部言ってもいいんだけれども、それぞれの放送局でいま契約ができないんだ。それを、これだけの巨費を投じ、これだけの無理を押そうとしながら、これで番組ができるかできないかにもうちょっと神経を使います、たとえば私企業ならば。税金を湯水のように使っているから、これが普通の常識なら十月から始まるシリーズに九月の二十日になってできそうもなくなってきても、それでもそんなに神経がぴりぴりしなくって、国会へ出てきても、つまびらかにいたしません、なんてことを言っていれば済む。これはとんでもないことですよ。  とんでもないことですが、そこらを幾ら追及しても、何とやらのつらに何とかだろうからこれ以上は申し上げないが、問題は何かといえば、長沼判決ですよ。長沼判決ですよ。長沼判決が出てきて、少なくともいかにコマーシャリズムとはいいながら、放送局の良心や言論機関の骨というものが、このような——あなた方、六月の末にみんな集めてこういう番組をつくらんかいと言って——これは入札ですからね、入札をした代行は言っていますよ、おれのほうは入札で勝ったんだと言っていますよ、責任者は。入札で勝った、コマーシャルベースの先端にいる番組制作の広告社はね。大手の広告社。そこでこれまでの企画のような番組でつくった番組をそのまま放送するというのでは、いかに何でも長沼判決がこれだけ明快に出ている中で、国論がこれだけゆれている中で、盛り上がっている中で、これは放送として、マスコミとして、成り立つまい。その良心が、この前の六月の段階からまっこうみじんに押してきたこの十三回番組に対して契約をさせないんですよ。これが実態ですよ。そう言ったら、いままで知らなかったと言っていた答弁が、いや、そんなことはありませんということになりますか。知らないんだから承るしかないでしょう。知らないんだ、知らないんだと逃げてくるから、知らざあ言って聞かせようということなんだ、これは。知らなければ教えてあげる。あなた方が考えているほど、いかにコマーシャリズムの先頭にあると言われても、民放の諸君の中に良心はありますよ。もう一つ言えば、これだけ国論が大きく長沼判決で動いて、それでも自衛隊ばっかりを前に押し出してぬけぬけとやるようなPR番組では視聴率が上がらぬだろうという計算もある。いいですか、実利と理念と二つの道から、この番組はいま行き悩んでいるのですよ。この問題についてはあなたは、関知いたしません、広告代理店にまかせております——きょうの答弁としての逃げ方ならそれもあるかもしれない。防衛庁は嘆くんじゃありませんか。国民は納税者としておこるんじゃありませんか。私はそういう態度は許せないと思う。基本姿勢のところだからちょっと抽象的なことを言うよりしようがないんだが、こういう実態なんです。だから契約が進まぬのです。それについてどう思いますか。こういう事態についてあなたはどう反省しますか。
  153. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 今回の番組の細部はきまっておりませんけれども、一応中身としましては、まず自衛隊の実態、こういうものだということをしろうとであるインタビュアーを通じて見てもらうということでありまして、しかもそれによって、全く自衛隊というものを知らなかった人が見た感じでいろいろ疑問を持ちあるいは関心も持つということに対して答えていこうということでありますので、番組そのものからいって、全く差しつかえないというふうに考えております。
  154. 上田哲

    上田哲君 そんなこと聞いていないじゃないか、ちっとも。じゃ、官房長。そんな答弁能力のない男と話してもしようがないから、あなたに聞いていく。  いいですか。担当者は、全然大事な一番接点で契約ができない、オンエアができなくなりそうだ、物理的にいって、あなたの最初の答弁にもかかわらず、このままいったら放送できないかもしれないという状況を認めている。しかし、それがなぜできないかということを知らない。そこで私はお教えをした。長沼判決以降、これでは出せないというのが各放送局の最後の抵抗なんです。こういう状態になっている。こういう状態になっていたら反省をし、一考をして、この番組の内容につき検討し直す、あるいは出さないということもやってみよう、ということが正しい道ではないかと思うが、この意見はどうですか。
  155. 田代一正

    政府委員(田代一正君) 代行とローカルのテレビ会社との関係がうまくいっていないということをいま御教示にあずかりましたわけであります。しかし、別にそこまで私個人聞いておりませんで、したがって……。
  156. 上田哲

    上田哲君 聞いてないから、いま聞いてどう思うかと聞いている。
  157. 田代一正

    政府委員(田代一正君) したがって、明確な答弁がいたしかねますが、私といたしましては、ただいま仰せのことがございましても、このテレビ番組の性格、ただいま西廣君からいろいろお話がありましたけれども、そういうことでございますので、なるべく地方のテレビ局が契約されるようにということをお願い申し上げるという立場にあるんじゃなかろうかと思います。
  158. 上田哲

    上田哲君 どうも、私は防衛庁の局長及び官房長、最高ブレーンの中で、あなたはもう少ししっかりしなきゃいかぬと思いますよ。防衛庁のぼくは各局長というのはね、わりにしっかりした人がいると思ってますよ。方向はいろいろ違うけれども、レベルとしてはいいと思いますよ。そんな答弁はありませんよ。もうちょっと火花の散るところでいつもやるんだ。あなたは二列目にすわっているからその程度しか言えないのかもしれぬが、もう少しすっきりしたお答えをなさい。伺うが、その内容というものがいま広報課長の話では何ら再考に値するものではないという話だったが、再考に値するような内容があるんだったら、それは考え直さなきゃならぬということは当然なことでしょうな。官房長、原則を聞いているんですよ。
  159. 田代一正

    政府委員(田代一正君) これは今後の代行を通じますいろんなお話し合いの過程で、どういう話があるかわかりませんけれども、そういった過程でいろんな御意見が出ると思いますが、そういった過程というものもやはり考えなきゃいけないのじゃないかというぐあいに私はいまの段階で考えておりますが、私どもの希望といたしましては、さっき申し上げたようなことに尽きるかと思います。
  160. 上田哲

    上田哲君 はい、三十センチぐらいは前進したと思う。じゃあ具体的に言いましょう。十三回も半年も先までよくわからぬけれども、一回目はどうなるかと言えば、ニュージーランドへいま護衛艦が行ってましょう。ニュージーランドへ親善訪問をしている自衛艦、これに木原美知子というタレントが行っておる。そして、何とまあこの最初の第一回のタイトルが、甘いことには、私の出会い、というメロドラマのような題名をつけて、甘くとろとろとろけるような題名をつけて、甘いマスクの女優を使って、ここで何をやらすかと言ったら、鉄砲までは撃たせないけれども、タンクに乗せると防衛庁が答えている。こういう番組ですよ。これが第一回目です。オープニング番組です、これは。さっき広報課長はまだ経費云々という話をされた。ニュージーランドまで行っているじゃありませんか。日ごろどれだけの関係にあるか知らぬが、広告代理店と。ニュージーランドまでタレントを出すような費用も、都合によっちゃ向こう側がしょいますか。この費用はどうなる。この費用が、その場合オンエアできなくなったらどうなるのかということが広報課長。この内容が正しいと思うのか——官房長。
  161. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) いま先生御質問のように、木原美知子がニュージーランドで自衛艦隊に会うというのが出だしにしたいという中身になっております。ただ、木原美知子がニュージーランドあるいは豪州方面に行くという仕事は、別に私どものこの映画の、テレビ映画、撮影のために行くということでなくて、何か用事があって行っておるということのようでございます。以上でございます。
  162. 上田哲

    上田哲君 費用を聞いているんだ、ぼくは。どうしてすっとぼけたことを言うんだ。そろそろ官房長後任をさがしなさい、だめだよ。日本語がわからぬ。
  163. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 私どもは役所でございますから、契約のないものには費用は一切お払いすることはできません。したがいまして、かりに、私も実情よく存じませんが、代行さんが先ばしって、契約が済まないうちにその制作費を投じておるということでも、それがもし契約がない場合には、当然私どもとしては補償はできないことになります。
  164. 上田哲

    上田哲君 官房長、中身の問題。
  165. 田代一正

    政府委員(田代一正君) もしそれが、この企画が実現しなかったときに、先行費用がかかっておるけど、それは一体どうするんだと、こういうお話ですか。
  166. 上田哲

    上田哲君 違うよ。あなたには番組の内容を聞いたんだよ。どうしてそんなにわからぬのかな。二人に同じことを聞く必要はないじゃないですか、忙しいのに。
  167. 田代一正

    政府委員(田代一正君) 私の聞いている話では、第一回の番組として、私の旅立ちということだそうでありまして、ニュージーランドへ練習艦隊が参りましたが、その交歓風景を中心にして放映をする、こういうぐあいに聞いております。別にそういうことはですね、非常におかしいとか何かそういうようなことじゃないんじゃないかと私は思います。
  168. 上田哲

    上田哲君 よし、わかった。わかったことの一つは、代行が先ばしってかってにやったんだから金は払わぬと。これはよく覚えておいてください。もしそんなところに防衛庁から金が出たら、重要な問題になりますからね。  もう一つわかったことは、木原美知子を連れていって、鉄砲までは撃たせないけれども、戦争に乗せるのは平気だと。これは平気なことだと考える感覚が防衛庁の官房長であるということがよくわかった。  第二回目は、いいですか、第二回目はあの長沼判決の九月七日の二日前の九月五日に、北海道の十一師団でしたかね、大演習をやった。重戦車を使い火砲を使い大演習を、長沼判決はもう一部には漏れたんじゃないかなどと誤伝されるほどに、まっこうから憲法違反の判決が下るんだというようなことが言われたようなときに、防衛庁長官がもう皆さんがそうお思いでしょうなどということを二日前に答弁しているような状況の中で、そのことを前提として、いかにもそこにプレッシャーをかけるように、最強北海道の十一師団を中心に、九月の五日からあの近くで大演習を行なったその十一師団を、その大演習そのものをオンエアするんですよ。こんなことが、いいですか、こんなことが長沼判決を受けとめた姿勢ですか。  第三回以降は、このようにして各部隊の内容を中心として紹介をするんだ。自衛隊の実態の紹介なんてきれいなことを言ってもらっちゃ困る。各部隊をそれぞれ中心に置いて、これから十三回、一回目の甘いオープニングを先頭にして、あと十二回はそういう形の部隊の実態を紹介する。そして、冒頭に申し上げたように、防衛庁のことばを借りれば、青少年を対象に、特に関心の薄い青少年にこういう問題を見せていこう官房長、そういう内容が、あなた、長沼判決を受けとめる自衛隊の、防衛庁の姿勢として正しいと思いますか。
  169. 田代一正

    政府委員(田代一正君) 私よく内容を知りませんが、私が聞いておる話では、第二回目は北海道にございます第七師団、これを紹介して、戦車とか装甲車とか、演習場での訓練風景とか、あるいは隊内生活とかいうものを客観的に放映するというぐあいに私は聞いております。  で、こういったことがいいか悪いかというお話でございますが、これもまたやはり現在の自衛隊、特に陸上自衛隊ということになりましょうか、その実態というものを客観的に放映するということでございますならば、決して非難に値する問題じゃない。やはり防衛論議はなやかなりしころに、そういった実態を見ていただくということもたいへん必要なことじゃないかと、こう考えます。
  170. 上田哲

    上田哲君 時間がもう来ましたのでね、再三御注意をいただいていますから、私はこれ以上はできません。できませんがね、幾ら言ったってあなたはその程度の立場で開き直るんだから、議論は平行線をたどるんだろうが、どうしてもそういう平行線では許しがたい問題は、集中的に申し上げれば、今度のこの企画の、今度のこの企画の大きさと中身の重要性は、よろしいですか、これまで防衛庁がつくった番組、防衛庁のつくった番組の性格は何かといえば、日本の防衛論あるいはまあ防衛構想の序章とでも言うべきものについて控え目なPR活動はおやりになった。しかし、今回のように自衛活動の本来の任務を中心として紹介するということをまっこうからうたっているようなものはない。いいですか、まさに今回とこれまでと決定的に違うのは、単に日本に自衛隊が必要だとか、必要でないとか、各国の軍隊がどうなっているかとかいうことじゃなくて、二十六万に及ぶ日本の自衛隊、十三方面隊のあの具体的な日本の自衛隊の内容について、その本来の任務、行動をそのまま紹介をする。戦前ならあるでしょう。戦前の映画館のニュース映画には、そういうのがあったでしょう。私たちは、いままで二十何年間、そういうものにはお目にかかってこなかった。なるほど観閲式に行けばそういうものは見られたでしょう。しかし、今日まで私たちの国の新聞やテレビや週刊誌には、特殊な場合を除いてはそういうものは登場してこなかったんですよ。自衛隊の本来の任務と行動の実態をそのまま宣伝、PRするというようなことをそれほど積極的に訴えてくるというのは、今日までなかった。こういう画期的な防衛庁PR策というものをこのような形で打ち出してくるということの問題が一つ。それから、これほど大きな反対の声がある。それにもかかわらず、あなた方はごうもそれに対して反省の色がない。なかんずく、長沼判決という自衛隊をもうまっこうみじん、何の疑いもなく憲法違反だとはっきり断定をした判決が出ているという中で、国論の割れているこのときに、平気で一方の立場を押し込んでくる、しかも、税金を使ってくる、その税金の使い方に対してまともな答弁ができるような責任者もおらぬ、こういう姿勢は、私は何かシビリアンコントロールだ、何が民主主義の自衛隊なのだ、あらためて原点に返って追及をしなければならない。そしてそれは少なくとも、あなた方のいかなる圧制のもとであれ、マスコミの中で一生懸命良心を守っている、そういう人々の気持ちに対してどんなに暗い気持ちを与えるのかということを、そしてそのようなやり方では、世論というものを自分の手に握りしめることはしょせんできないのだということに思い至るべきであるということを、私はやっぱりしっかり申し上げておきたい。これについてはあなた方のその程度の答弁しかない以上、私は徹底的に今後も追及することをはっきり申し上げておきます。そして、何べんか担当者たちがあなた方にこうした資料についての説明を求めても、いまのこの場ではなにかちょろちょろっとおかしな報告がありましたけれども、少し私の資料と違うところもあるように思います。データをしっかり出してください。すべてのデータをしっかり出してください。そのことも出せないようで、ある日、あるとき、われわれは茶の間のテレビで初めてこれを見るというような事態は、民主主義の放送のあり方では断じてありません。それを壟断ずるものは防衛庁であるということは、許されてしかるべきことではない。これは日本に自衛隊を認める立場も認めない立場も共通になければならぬところであると私は思う。そのことを私は強く反省を求め、要求をしておきますが、あなた方の答弁は時間のむだですから要りません。国務大臣としての法務大臣、このことをお聞きになって、一言の前向きのお約束をいただきたいと思います。
  171. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) ただいましかと承りました。反省の資料といたしたいと思います。
  172. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、在日韓国大使館の金在権公使の行動について伺いたいと思います。  この問題は、わが党の星野議員がすでに数回にわたって外務委員会質問をしておりますけれども、その際、法務大臣の御出席がなかったので、最初の事件のてんまつの概要を、大臣の御理解をいただくために申し上げてみたいと思うんです。  この事件は、いま申しました在日韓国大使館の金在権公使が、ある在日朝鮮人の会話を国家保安法違反あるいは反共法違反という疑いで盗聴をし、録音をしたという事件であります。さらにもう一つ、この録音された表東湖なる方が、現在反共法違反の疑いでKCIAに逮捕される危険にさらされているという事件であります。この件につきましては、一九七一年の三月十五日に開かれた在日居留民団第十八回中央委員会において、金公使自身が次のように発言していることから事実であることが明らかになったわけでありますが、その金公使の発言を読んでみますと、こういうことを言っておられる。前候補の支持者の中には反共法に抵触する人物がいる、同人の反国家行為を示す録音がある、いま公開すると選挙に干渉すると誤解されるから、選挙が済めば公開するという趣旨発言をしておるわけであります。  なお、この兪という方は、兪錫濬という方でして、これはこの三月十五日の直後に行なわれる予定になっておりました在日居留民団の全国大会で、その団長の選挙に立候補する予定の候補者だったわけです、この前という方は。それで、当時のこの居留民団の内部の情勢は、これはそのしばらく前に、従来の団長をはじめとする幹部がKCIAと結んだとも言われておりますけれども、いろいろな不正事件を起こした。で、このために従来の団長に対してこの前さんという方が対立候補として立候補されたという事情なんです。この前さんという方が金大中氏を支持するグループの一人という関係になっているわけであります。で、事は選挙運動にからんで起こった問題でありますけれども、しかし、いま金公使の発言読みましておわかりのように、反国家的行為があるという疑いによって録音をしたということになっているわけであります。  なおその後、同年の五月一日付でこの金公使が前候補にあてて書簡を出しております。その書簡の中でも、次のようにこの金公使自身が盗聴録音行為をはっきりとみずから認めております。読んでみますと、「国内から渡日した青年が思想的に不透明な言行をしているという情報があり、国家防衛目的上、物的証拠が必要とされたので公館は自らの任務を遂行しているうちに、全く予測もできない民団幹部を歴任した現団員が現われ、対話しているのが録音され、意外にも反国家的な発言をしていた事が明るみになったのが本録音の前後経緯であります。」、また、次のようにも言っております。「当公館では終始一貫事実そのまま留学生との対話内容を録音したといったのであり、」云々と、こういうことを言っておるわけですね。  ですから、これはもう金公使自身発言及び金公使自身の手紙で、国防上の目的あるいは国家保安法違反の容疑で盗聴録音したという事実は私は明白だと思う。これは日本にいる外交官が、日本の国内でただ単純に情報活動をやったというような種類のものじゃないと思う。で、そういうような行為、これは韓国政府日本の国内において司法権を行使した、警察活動を行なったということを意味するんじゃないかと思いますけれども、大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  173. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) ただいま先生御説明をいただきました、御丁重に御説明をいただいたのでありますが、この金在権公使をめぐる問題はたいへん具体的案件でございますので、一応事務当局から所見を申し上げます。
  174. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 金在権公使がそういうことをやったということを認めるというわけには、私どもはそういう資料を持ちませんので、まいりませんけれども、かりに渡辺先生御指摘のように、国家保安法の違反の容疑でもって職務行為として金在権公使が国家保安法の捜査のために録音なり盗聴行為をしたとすれば、それは常々申し上げておりますように主権の侵犯の問題が起こるはずであります。なお、目的のいかんを問わず、電話盗聴というような行為があったといたしますれば、これはわが国の法律の公衆電気通信法の違反ということに相なるというふうに考えております。
  175. 渡辺武

    ○渡辺武君 私ここに同じ金公使が在日居留民団の中央本部の団長の李さんという方に送った公文の要旨ですね、これについての資料を持っておりますけれども、この第六項にこういうことが書いてある。「当事者のペ・ドンホは「民団で公開するならば出席する」と民団中央組織局長に通報したといわれるが、政府機関が犯証物件を持ち出して外部で公開するような事例は世界どの国においてもみられない。」云々ということを書いているわけですね。これはちょっとお聞きになるとおわかりにならないかと思いますけれども、この事件が起こったあとで、金公使は、これは盗聴されたという当のペさんという方に対して、韓国の大使館の中でこの盗聴された録音を聞かせるから来なさいという連絡をした。もし来なかった場合にはこの録音に書かれていることが事実だということを認めたことになるんだと、ずいぶん私どもが聞いてもひどいことを条件としてくっつけて、そうして来るようにということを要求した。ペさんは、そういうところに行くということは、これはもう今度の金大中事件でもわかりますし、西独で起こったさまざまのKCIAの関係事件でもわかりますが、うっかり大使館へでも行ったらこれはたいへんなことになるということで、拒否した。そうしてこういう通知があったということを新聞記者会見で発表しておりますが、そのことについて言っているわけですね。その中でつまり犯証物件というふうに、録音について、犯罪を証明する物件だということを言っているわけであります。いま御答弁がありまして、もし職務行為としてやられたものであって云々ということで、日本の主権を侵害したことになるんだという御答弁がありましたので、さらにつけ加えて、これがつまり犯罪を捜査するその目的でこういう盗聴録音が行なわれたということを証拠づけるものとしてあなたにはっきり申し上げておきたいと思います。どうでしょう。この公使自身が、自分の口からも、書簡の中からも、公文の中でも、国家保安法上の容疑をもって盗聴録音したということをみずから語っている。明らかじゃないでしょうか、どうでしょう。
  176. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) 犯罪、ある行為の事実を認定するということは、非常に事柄が重要であるだけに、簡単にイエス、ノーということは私は軽率に言えないと思います。いまお読み聞きの犯証ということが、犯罪の証拠ということが書いてあるといたしましても、ただそれだけで、犯罪の捜査をやったんだというふうに一がいに断定することもなかなか危険ではないかというふうに思います。
  177. 渡辺武

    ○渡辺武君 この韓国関係の問題では、政府の当局どこもまことにあいまいきわまりない態度をとる。大体いま私があげたこれらの事実をお聞きいただけば、おそらく法務大臣だって、これはもう犯罪捜査の目的をもって盗聴録音したのだということは十分に御理解いただけると思うのです。大臣の御見解はどうですか。これは単なる諜報活動じゃないですよ。明らかにこれは司法活動、警察行為です。どうですか。
  178. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 刑事局長が所見を申し上げましたように、しかと先生の御説明とその資料だけで断定することはできかねるとは存じますけれども、大体において公衆電気通信法違反の疑いは濃厚である、これは言えるのではないかと思います。同時に、この問題は犯罪捜査行為に関連をしていると仮定をいたしますというと、ゆゆしき問題である。ゆゆしき問題とは、主権の侵害である。これはやはり仮定のもとの判断でございますけれども、そう御判断をいただくことは当たるのではなかろうか、こう思います。
  179. 渡辺武

    ○渡辺武君 それではもう一つの問題を伺いたいと思うのです。いま申し上げました金公使が李中央本部団長に送った公文の中でこういうことが書かれている。一番最後の第八項ですけれども、「したがって本件は、被疑者李東一とともに本国関係機関へ移課した。今後、当事者の表東湖は本国関係機関によって合法的に同事件に対する本人の反証と意見を開陳することができると信ずる。」公文の中にこう書かれています。つまり別のことばで言えば、この表東湖という方に対して韓国の関係機関が出頭命令なりあるいはまた身柄を拘引するなり、いずれにしても本国へこれを呼び寄せる、あるいは連れ戻す、こういうことをやる可能性が十分にあるという問題が起こっているわけであります。もし、かりに本国のKCIAなどからこの表さんに対して召喚状が来たというような場合、これまた韓国政府による日本の領域内における警察行動、司法権の発動だと見なければならぬと思いますが、その点はどうでしょうか。
  180. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 先生、この問題の判断ですがね。そういう犯罪捜査であるならばと、こういうことの仮定の条件のもとに話を——しかしその仮定の条件のもとに、仮定の話ではあるけれども、いやしくも犯罪捜査手続が日本国内において行なわれる、こういう問題でございます。これは重大事態でしょう、この問題自体が。それですから、先ほどから先生盛んに仮定を仰せになる、それが犯罪捜査であるならば、というように私のほうは答えていくのでありますけれども、結果だけをこうとらえるというと、それはここに主権の侵害があるではないかというえらいことが表に出てくるので、これは誤解を招く、答えにくいのでございます、誤解を招きますから。しかし犯罪捜査と認定をされる、その捜査を行なったものが犯罪捜査権がなければいけませんわね。犯罪捜査権のないやつがやっているということじゃ話にならぬわけでございます。職務行為と無関係ということになるわけであります。職務行為のあるそういう権限がある者が日本国内において犯罪捜査を侵したものと仮定するならば、そういう仮定のもとにこれを考えてみるならば、主権の侵犯ということも起こり得る、そういう場合は起こり得る。たいへん入念な答えでぴんとこぬのですけれども、そう言うよりしかたがないのですね、いまの場合の答えとしては。そういうことです。
  181. 渡辺武

    ○渡辺武君 大臣自身が認めておられるように、どうもぴんとこないのですね。端的にお答えいただきたい。韓国のKCIAがこの日本にいる韓国人——朝鮮の方ですね、したがって日本政府がこれを保護する義務を持っている。その方に対して召喚状を出しているという場合はどうですか。
  182. 安原美穂

    政府委員(安原美穂君) いまの場合であれば、理論的には主権の侵犯ということに相なると思います。
  183. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは、私ここに韓国のKCIAから表さんに出された召喚状の写しを持っております。あて名は「日本国東京都台東区上野町一−一一−七」「装束湖貴下」こうなっております。中身は、これは朝鮮語で書いてありますので、大臣もちょっとごらんになってもおわかりにならないと思うけれども、念のために手元で私これ専門家に翻訳してもらっておりますので、それを読んでみたいと思うんです。(資料を渡す)一番上にありますのが「第二一号」、二十一だけは数字ですからおわかりだと思う。それから「出席要求書」となっております。それから住所は「日本国東京都台東区上野一−一一−七」、それで「職業」これは書いてありません。その次が「氏名」となって「ペ・ドンホ」「年令(六三才)一九〇九・一一・一三生」、こういうことになっております。そうしてその本文のほうですが、一番最初に何字か消して判こが打ってあります。それは読みませんけれども、そのあと大きく、これは日本と同じ漢字ですから、「反共法」と書かれております。そのあとを読んでみますと、「反共法違反被疑事件に関して貴下の陳述を聞こうと思いますので一九七一年六月十五日九時までに当局捜査団に印章とこの出席要求書をもって来て下さい。」これが本文であります。日づけは「一九七一年六月二日」、差し出し人は——これが重要ですからよくお聞きいただきたいんですが、「中央情報部五局捜査団」その下に名前があって肩書きがついておりますが、その肩書きは「司法警察官」それからもう一つが「捜査官チョウ・クォン・ピル」、それで判こが押してあります。で、一番下は「ペ・ドンホ貴下」それで封書、こういうことになっているわけですね。お聞きのとおりのものが来ている。いま御答弁では、もしこれがKCIAの出した召喚状であれば主権侵害になるとはっきりおっしゃいました。この事実はどうです、主権侵害行為そのものじゃないですか。
  184. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 原文を拝見し、翻訳を拝見しておるところでございますが、これはなかなかゆゆしいですね、ゆゆしき大問題です。抽象的な話、仮定のもとにおける所見は、私が申し上げてどうということはないのであります。全くもう具体的も具体的、ずばりそのものの文章でございます。こういう文章に関する所見を申し上げるのは私の所管でなくて、厳格に申しますと、主権の侵犯問題は外務省でございます。外務省から一応答えてもらいます。
  185. 中江要介

    説明員(中江要介君) ただいま先生から具体的に出席要求書というものの、おそらくそちら正式のコピーかと思いますけれども、御提出になったわけですが、このペ・ドンホ氏に召喚状が出されたということは、先ほども先生の御質問の中にございましたように、昭和四十六年時代に新聞その他で私どもも承知いたしまして、もしこれが召喚状が事実問題としてペ・ドンホ氏に出されて、そしてペ・ドンホ氏がその召喚状に基づく自分の身の処理のしかたに困っておられるという状況ならば、これはゆゆしい問題だと、いま法務大臣も言われましたように、ゆゆしい問題であるというので、まずそういう事実があるかどうかについて、当時、在日韓国大使館のほうにペ・ドンホ氏に対する召喚状の発送について事実を確認方照会したわけでございます。で、その結果は、在日韓国大使館はその事実は承知しないと、そういたしますと、これは直送されたか何らかの方法で行ったのかと想像されたわけです。ところがそうしておりますうちに、ペ・ドンホ氏がその召喚に対してこれを六月十五日に拒否するという態度をとられまして、召喚には応じない、で、その後自由に活動しておられるという情報があり、他方、当該ペ・ドンホ氏から本件についてわが国のいずれかの関係当局にこういう筋の通らないふしぎなことがあったんだということのお申し出もなかったわけでございまして、私どもは、それでもしその召喚状が強制力を持って行使されるということになれば、これはまたその時点で問題になろうかと思いましたけれども、そのペ・ドンホ氏御自身がその召喚を六月十五日に拒否して、その後自由に活動しておられるということで、そのまま月日が約二年間過ぎたわけでございます。通常こういった訴訟書類が日本に郵送されてくることが全くないわけではございませんで、それがはっきりいたしましたときには、すでに調べましたところでも数件、日本はそれぞれの国に注意を喚起し、あるいは抗議をしておるわけでございます。そういう場合は、受け取りました日本の個人なり会社なりが、その件について、日本の当局に、こういうたとえば出頭命令を受けた、あるいは起訴状が来た、どうするかということで、正式にその当該者から相談がありまして、そしてそのものを、ただいま受け取りましたように、こういう現物を見まして、事実を確かめて、そして在日のそれぞれの大使館に対して注意を喚起し、あるいは抗議をし、そういう措置をとってきているわけでございます。で、いま問題になっておりますペ・ドンホ氏に対する召喚状の問題は、当時同じような、ほかの国についてあがった例と同じような処置を要するものかどうかについて一応調べましたところ、まず在日大使館はそれを知らなかった、本人はその召喚を拒否してそのまま自由に行動しておられるということでございましたので、現物の召喚状をどなたもお持ちになりませんでしたし、また当該御本人からも日本のいずれの当局にも本件について御接触がなかったということで、今日に至っておる、こういうふうに私どもの調べたところではなっておるわけでございます。
  186. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は言いわけを伺っているんじゃないんですよ。何という答弁ですか。本人が受け取りを拒否した、また本人から日本政府に何の申し出もなかった、だから何もしなかった、こんなばかなことありますか。私が伺っているのは、韓国のKCIAが日本の国内に居住している朝鮮の方に対して召喚状を出している。しかも、あなたが言うように、韓国の大使館さえそれを知らなかった。郵送されているんだよ、これ。これは明確に日本の領域に対して韓国が司法権を発動したということになるんじゃないか、主権侵犯行為じゃないかということを伺っている。法務大臣、どうですか。
  187. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 外務省の所見と私の見解は幾らか違うのでございます。これは人間が違うから、言うことが違っておかしいことはない。それで、これは外務省にもよく聞いておいていただきたいと思うのでありますが、本人が拒否をしたかどうか、拒否した後も自由なからだで迫害を受けずにおったかどうかということは、本件を法理論的に判断をする有力材料ではない、参考にはなるけれどもね。  そこで本件問題は、言いにくいというのはここでありますけれども、おどしがかかっておろうがなかろうが、呼び出し状の実態を備えておるものとの仮定で私は言うんでありますが、いま拝見をいたしました本文が呼び出し状だ、犯罪捜査に関する呼び出し状であるということが間違いがないならば、発送すること自体、日本政府の了解をとらずに、かって気ままにこれを発送する、それが送達された、そのこと自体重大事態でございます。そんなことを主権国日本が許すべきものじゃない。これは断固たる態度をとるべきものである。しかし、とるとらぬか、外務省がおやりになることですよ。それは私がやるんじゃないが、私は法解釈としてはそういう解釈をしなきゃいけない、こういうふうに私は解釈という見地から、少し出過ぎるようでありますけれども、私が判断をして御答弁にかえておきたい、こう思います。
  188. 渡辺武

    ○渡辺武君 政府の各機関というのは、法に基づいて厳正にやらなければならぬということだ。法をないがしろにすることは許されない。今回の金大中問題だってどうですか。まあ、法務大臣は第六感と申しましたけれども、その後にあらわれたいろんな事態からすれば、法的には明らかに主権侵犯行為になっている。それを韓国との友好ということを第一にしてその辺をあいまいにする、うやむやにしていこう、これが特に外務省の強くとっている立場じゃないですか。まあ、その点は抜きにしても、いま法務大臣の言われた法解釈、これは厳正なものだと私は思うんです。さすがに経歴何十年の方だと思いますわ。外務省としてどうします。
  189. 中江要介

    説明員(中江要介君) 私、先ほど冒頭に申し上げましたように、昭和四十六年の時点では、私どもは新聞報道を通じてしか本件を知らなかったわけでございまして、その事実がはっきり確認された上で判断をすべきであるということで、事実が確認されないままにいままで経過したわけでございます。で、ただいまお出しになりました召喚状ですか、呼び出し状ですか、それがもしその現物がございまして、それをもとにしてその当時の事実をはっきり確認することができますれば、これは当然私どもも法に従ってものを処理するということには全く異議のないところでございます。
  190. 渡辺武

    ○渡辺武君 その答弁ははっきり記憶しておきます。あなたのつけた条件を満たされるように私どもも努力しますわ。厳正にやってくださいよ。日本の主権に関する問題です。あいまいなことじゃこれはおさまらぬ問題ですよ。  なお、どうも外務省の態度があいまいもことしております。そのために念のために伺いたいことが一、二点あるんです。  このペ・ドンホさんですね。この方は、韓国政府から見れば、これは確かに犯罪の容疑者だろうと私は思う。しかし言うまでもなく、この方は日本政府の保護下に置かれている、日本に居住している人だ。こういう場合に、韓国政府がもしこのペさんを犯罪容疑で捜査する、あるいはその一環として召喚状を送るという場合ですね。これは国際法の原則に基づいてやらなきゃうそだろうと思う。どういう原則がありますか。
  191. 中江要介

    説明員(中江要介君) これはまず第一の原則といたしましては、そういう召喚状の送達ということはできない。これはわが国の主権と衝突する公権力の行使でございますから許されない。しかしそれができる場合がある。それは司法共助の約束がございまして、その国との間に訴訟書類の送達その他について合意があって、そしていまの場合ですと、日本国政府の了解、許可のもとに、その部分についての韓国の公権力が行使されるという場合にはこれは違反にはならないわけでございますから、そういう形で送達されるという方法はないことはないわけでございます。
  192. 渡辺武

    ○渡辺武君 伺いますけれども、日本に居住している韓国人、これのいわば犯罪人の引き渡しについて、私は日本はアメリカとの間では犯罪人の引き渡し条約があるということは聞いておりますけれども、韓国との間で引き渡し条約がありますか。またいまあなたがおっしゃったような共助の約束、これも取りかわされておりますか。
  193. 中江要介

    説明員(中江要介君) 韓国との間には逃亡犯罪人引き渡し条約はございません。それから司法共助取りきめもございません。
  194. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、そういう約束もない、しかも日本政府の許可も得ていないでやったというのが今回の事件の一つの特徴的な側面をなしているというふうに見てよろしゅうございますね。
  195. 中江要介

    説明員(中江要介君) もしその召喚状の送達ということが事実でございましたら、おっしゃるとおりだと思います。
  196. 渡辺武

    ○渡辺武君 それからもう一つ伺いたい。  いまのは、いま伺った点は、これは国際条約の原則をもう完全に踏みにじっておる、韓国政府は。そういうことでありますけれども、もう一つ伺いたい点は、この国際法の原則によれば、犯罪人の引き渡しを要求することができるその犯罪ですね。これは普通犯罪に限られる。政治犯罪については引き渡し要求はできないというふうに私理解しておりますけれども、その点はどうですか。
  197. 中江要介

    説明員(中江要介君) 犯罪人の引き渡しについて合意がある場合でございましても、先生のおっしゃいますように、政治犯罪人はこれを渡さないというのが国際法、国際慣行として一般に認められておる原則でございます。
  198. 渡辺武

    ○渡辺武君 いま私見ていただきましたね。KCIAからペさんに出されておる召喚状、反共法違反の容疑によりという趣旨のことが書かれておりました。反共法違反の容疑といえばこれは普通犯罪でしょうか。それとも政治犯罪でしょうか。私は政治犯罪というふうに思いますが、どうですか。
  199. 中江要介

    説明員(中江要介君) 私は刑事問題の専門家ではございませんけれども、反共法あるいは国家保安法というような法律の違反に問われている犯罪人というのは政治犯罪のように思います。
  200. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、このペさんの事件で韓国政府がやったこと、これは二重に国際法の原則をじゅうりんしている。たいへんなことです。それを何ですか、いままで外務省は。本人がまだ逮捕されないで自由だ、召喚状の受け取りを拒否した、そうして本人が何の申し出もない、だから何もやりませんでしたと、こんなばかなことがありますか。少し調べればこんな重大な主権侵害行為を行なっているというのは明々白々とわかるはずです。しろうとの私がちょっと聞いただけだってこれはたいへんなことじゃないかと思った。一体それで日本の外務省の役目を果たせますか。そんな態度でいるから今度のような金大中事件も起こるんじゃないですか。しかもこういう事件はペさんだけじゃないんです。いまだって起こっておる。私はここに九月八日付の朝日新聞の朝刊の切り抜きを持ってまいりました。ここには尹さんという方がこれがいままで反共法違反という疑いで刑を執行されたけれども、その後刑が軽いと検事控訴され、今年五月には東京の韓国大使館から内容証明つきで七月六日午前十時ソウル刑事地裁に出頭するようという召喚状が送られてきている、こういう状態です。それで尹さんは、店に知らない人が来たらKCIAがつかまえに来たんじゃないかと思って毎日落ちつかないでびくびくしてノイローゼになりそうだということを語っているという新聞記事が出ている。これは韓国大使館から回されてきた。この点どうですか。外務省に何か連絡があって、外務省の了解、承認、こういうものをあなた方は与えましたか。
  201. 中江要介

    説明員(中江要介君) ただいま御指摘の事実は私どもいままで承知をしておらないことでございますので、調べさしていただきたいと思います。
  202. 渡辺武

    ○渡辺武君 この事件も、もし日本政府の何の了解も得ないでやったということになれば、明らかにこれは主権侵害行為じゃないですか、どうでしょう。
  203. 中江要介

    説明員(中江要介君) 仮定の問題、私にとってはまだ仮定の問題になるわけでございますけれども、いまおっしゃったようなことが一般的に事実として存在いたしますれば、おっしゃいますとおり主権の侵害になります。
  204. 渡辺武

    ○渡辺武君 韓国の大使館、公使館というのがとんでもないことをやっているということが大臣おわかりいただいたと思うんです。しかもこのぺさんの事件は、金公使がKCIAと結びついて日本の国内で司法権を行使して日本の主権を侵害しているということをはっきり物語っているんじゃないでしょうか。そうでしょう。金公使が盗聴し録音をし、その資料に基づいて本国のKCIAがこれがペさんに反共法違反で召喚状を出している。金公使のやった行動というのは、明らかに本国のKCIAと緊密な連絡のもとにやっている、組織的にやっているということをはっきり物語っているんじゃないでしょうか。どうでしょう。
  205. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 先ほど申し上げますように、私の見解は、言いにくい見解を申し上げたとおりでございます。この具体的な事件が最終的にどういう判定を下されるかということは相当慎重な調査は一応要ることと思います。第一先生のところにあるようなそのリコピーは外務省にやってもらいたい、調査をする、そういう厳格な調査はどこがするのか、外務省がやるんです。法務省でやる機関はございません。犯罪捜査を指揮する立場にはありますけれども、この国際犯罪というものについての取り扱いは外務省がやる。だから外務省の御調査を期待する、強く期待をする、こういうふうに申し上げる以外にないのであります。ここはだいぶむずかしいところですからね、出過ぎた話はいけないんです。御理解をいただきたいと思います。
  206. 渡辺武

    ○渡辺武君 いや、処理を伺っているんじゃないんです。今度の事件は金公使が本国のKCIAと緊密に結びついてやっている、組織的な行為だ、そういうように判断する以外にないと思うんです。どういうふうに思われますかということを伺っている。これは大臣にも外務省からも伺いたいと思います。
  207. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 先生の御所論はよくわかります。よくわかりますが、この大事な判断は外務省からお聞きをいただきます。
  208. 中江要介

    説明員(中江要介君) 本件は、再々申し上げておりますように二年以上前の事件でございまして、当時は、ただいま問題になっております召喚状も現物が入手できませんでしたし、調査が不可能だったわけでございます。で、最近この問題にまた新たな——本日もその召喚状の写しを御提示いただいたりしておりますので、調べなければいかぬと思うんですけれども、現在までのところ、外務省も検察庁の御協力も得まして事実の調査をしましたところでは、事実関係がはっきりつかめないという状況なんでございます。したがいまして、事実関係がはっきりいたしますれば、その韓国の公権力の行使があったかどうかという問題、またその録音をとったということが捜査活動であったかどうかという問題、そういう問題もはっきりしようかと思います。
  209. 渡辺武

    ○渡辺武君 ペさんの問題についてあなた方十分調査してないと言ったわけでしょう。召喚状が来たということは新聞で知りましたと、しかし本人は拒否したという話を聞いたし、何にも言ってこないんで調査もしてなかったと、こういうことを言ったじゃないですか、そうでしょう。どうなんですか。いまは調査してみたところがまだはっきりしない——ちょっと答弁が食い違っているんじゃないですか。
  210. 中江要介

    説明員(中江要介君) 私が最初申し上げましたのは、当時は新聞に大きく出されておりまして関心を持っておったんですけれども、どうも新聞そり他で扱われているところから見まして、これは在日韓国居留民団の中のトラブルとして扱われている面が多かったわけでございます。したがって、その面については私ども立ち入ってどうするということもございませんし、その召喚状につきましては大使館を通じて送達されたものかどうかということは一応調べたんですけれども、あと召喚状そのものの入手ができませんでしたものですから、どういう形のものであるかもわからないままであったわけでございます。で、いまその召喚状の写しをお示しいただいたわけですから、できれば現物を手に入れまして、そしてその時点にさかのぼって事実をはっきりさしてみたいと、こう思っているわけでございます。
  211. 渡辺武

    ○渡辺武君 よし、それはやってください。
  212. 中江要介

    説明員(中江要介君) はい。
  213. 渡辺武

    ○渡辺武君 しかしね、ぜひここで伺いたいことがあるんです。先ほど質問です。いまだに残されている——金公使が録音し盗聴をした、反共法違反の疑い、あるいは国家保安法違反の疑い、いずれにしても国防上の疑いでと、こういうことを言っている。それで、盗聴し録音してその資料を本国に送りましたと、はっきり彼自身が出した公文の中に書かれている。それに基づいて韓国のKCIAから召喚状が本人のところへ来ている。この一連の過程を考えてみれば、金公使がこれが本国のKCIAと結びついてやったことだということははっきりしているじゃないですか。どうですか、その点を伺いたいんです。
  214. 中江要介

    説明員(中江要介君) まさしくその点が先生のおっしゃるとおりですと、これは非常に重要な問題なんですけれども、その前提になる事実につきまして、すべてについてはっきりした事実関係調査ができていない段階では何とも申し上げることができないというわけでございます。
  215. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは、なお移りますがね、この金公使という方は、これはKCIAの第七局の責任者をやっていたというふうに言われている人であります。第七局といえば、私どもしろうとでも、KCIAの国外での組織だということは、これは常識的に承っております。しかも、この方は金大中事件が起こったときに、一番最初グランドホテルにかけつけた方だと言われている。その一番最初かけつけたそのいきさつも非常に疑問が多いんですよ。たとえば捜査員に対して、金公使は、午後二時ごろ梁一東氏から事件を伝える電話が大使館にかかり、すぐホテルに向かって、午後二時二十分過ぎに到着した、こう言っている。二十分過ぎといえば二十分をちょっと過ぎたくらいのところだと思うんですが、これがもし事実だとすれば、港区南麻布の韓国大使館からグランドホテルにまで、いまの日本の交通事情でいって、二十分とちょっとぐらいで行けるものだろうかどうだろうか非常に疑問が起こる。何か事前にこの事件を知っておって、電話がかかるまでもなく、彼はすでにその現場の近くにいたんじゃなかろうかということを疑わさせる。金大中事件にもこの金公使がからんでいるんじゃないかという疑いは非常に濃厚であります。こういう疑点について捜査当局、調べたことはありますか。
  216. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) お答えいたします。  金在権氏の金大中事件に関する関与のしかたにつきましては、前回この当法務委員会でもお答えしたとおりでございますが、ただいま先生御指摘のように、梁一東氏からの電話通報によりまして、現場にとるものもとりあえず行ったと、それで金大中氏が連れ去られた、こういうことを聞いて、それはすぐ警察に知らせろ、こういうことを言ったと、パトカーが到着をいたしましたのは、前回も御説明をいたしましたように、二時四十五分でございますが、そのパトカーの到着を見て自分は帰った、こういうことを事件後、個人として、任意に捜査に協力をするという立場で、捜査本部の捜査員に対しまして供述をいたしております。それ以外の事実関係につきましては、現在のところまだ明らかになっておりません。
  217. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間も何ですから、そういうような状態じゃ困るですね。そうでしょう。いま私がここで召喚状を、実物の写しを持ってまいりましたので、外務省もちょっとこれから十分調査しましょうというようなことなんですけれども、法務大臣、もしそれが事実とすれば、重大な主権侵犯行為だということをはっきりここで言明されている。以前にもこういうことをやった男が、今度の金大中事件にも非常に密接にからまっているわけですよ。世界でも有能と言われる日本の捜査当局が、いまだにそんなことをこの国会答弁する、とんでもないことじゃないでしょうか。  もっと徹底的に調査してくださることを私ははっきりいま要望するわけですが、なお最後に、よく法務大臣は、これは金東雲の事件が起こったときに、私は本会議で大臣質問しましたところが、なるほど韓国大使館の一等書記官というのは、これは政府機関の要員だけれども、彼の犯したことがはたして職務行為かどうかわからないから、だから主権侵犯行為とは断定できないのだということを盛んに言っておられた。私はこの法務大臣立場は間違っていると思う。しかしその点については、これはきょうは時間がないので、詳しくはやるわけにはいきませんが、私どもの党の正森議員衆議院で、法務大臣のいらっしゃる前で、この点についていろいろ伺ったと思う。政府機関の要員であれ、あるいは私人が犯した行為であれ、外国でその国の国民が犯した犯罪については、そこの国の政府は無過失の責任を負わなきゃならぬ。これが国際法の大原則です。職務行為であろうと何であろうと、これは関係なしですよ。その点ははっきり申し上げておく。  しかし、きょうはこの金公使が自分の職務としてこういう行為をやったということを証明する資料があります。それを申し上げてみたいと思う。ここに私持ってきましたのは、韓国の大統領行政命令第一六六五号であります。これは韓国語で書いてあります。そこで、私はこれを翻訳していただきました。最初にお願いしたいのは、これは外務省の北東アジア課に尋ねましたところが、七三年版の韓国六法全書に載っている。で、ここに書かれていることは現在も生きているということでありますので、これの翻訳した資料を、これを御提出いただきたいと思います。これを最初にお願いしておきます。  それではこの大統領行政命令の一六六五号に何が書かれているか。第一条に「本令は、中央情報部法第二条第二項の規定により、情報および保安業務の調整・監督に関し必要な事項を規定することを目的とする。」と書かれている。詳しいことは省きますけれども、この「情報および保安業務の調整・監督に関し必要な事項」というものの中に、国外情報というのが含まれている。つまり政府の機関で国外にある機関、正式にいえばこれは大使館、公使館だと思います。ここが行なう情報捜査の活動、これは韓国のCIAの調整監督のもとに置かれなければならぬ、こういうことがはっきりと書かれている。金公使のやったペさんその他に対する政治犯罪の捜査を目的とした盗聴録音、あるいはそれを資料としての韓国CIAからペさんに対する召喚状、これらは金公使の職務行為として行なった活動を重要な構成要素として行なわれているということが言えるんじゃないかと思う。その点法務大臣どう思われますか。
  218. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) にわかに即断できませんが、大事な御説明、御意見でございます。承っておきたいと思います。
  219. 渡辺武

    ○渡辺武君 もう一言。これはきょう資料としていただいたこの韓国の中央情報部法、これを見ても明らかだ、中央情報部法の第二条の第一項第五号、「情報及び保安業務の調整・監督」というのがKCIAの業務の一つとしてはっきりとうたわれている。この「情報及び保安業務の調整・監督」というのが、これがいま大統領行政命令の第一条のこの目的の中で、先ほど私が読みましたところに該当するわけです。法体系として見れば、はっきり韓国大使館、公使官の要員のやった行動、これは韓国政府機関の職務行為としてやったものであるということが、はっきりとこれで確認できると思うんです。この点を十分に考えていただきたいと思う。この立場に立って問題を処理していただきたいと思う。これは金大中の問題もそうです。今度の表さんの問題もそうです。その点を特に強く要望しまして、私の質問を終わりたいと思います。  答弁があればひとつ、外務省からは聞かなければいかぬ。
  220. 中江要介

    説明員(中江要介君) ただいまの御指摘の中央情報部法、それから大統領行政命令一六六五号については、私詳細に存じておりませんが、外務省として関心を持ちますのは、韓国の大使館員、これは外交官として、また領事館員は領事官として国際法上認められている職務を行なうということが守られるべきだと思います。したがって、それ以外の職務を自国の法律に基づく職務行為としてわが国で行なったとすれば、これは、おっしゃるように、主権の侵害になる、こう思います。そういう観点に立って、まず事実関係をはっきり把握した上で、適正な判断をして、措置をとっていきたい、こう思うんです。
  221. 原田立

    委員長原田立君) 本件に対する質疑は本日はこの程度といたします。     —————————————
  222. 原田立

    委員長原田立君) 商法の一部を改正する法律条、株式会社の監督等に関する商法の特例に関する法律案、及び商法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律整理等に関する法律案を便宜一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  223. 上田哲

    上田哲君 商法の一部改正案について御質問をするわけでありますけれども、私は大蔵委員会へ行くんじゃないかと思っておりましたら、法務委員会へ来たわけであります。元来その面に詳しくないから、初歩的なこれは質問であるのかもしれませんが、何で法務委員会でこれをやるのか。主管省が法務省である理由が私にはまずよくわからぬのであります。何で大蔵省じゃないんですか。何で法務省でやるんですか。ちょっとそこから御説明をいただきたい。
  224. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) そういうふうに言われると、私もはっきりしないんでありますが、先生、これは商法の改正法律案という、それから商法改正案の特例法が一本、この二つを実施する上に三十二、三の法律を廃止しなければならぬものですから、廃止、訂正をするための法律の三本を一本にしまして、商法改正、その関連法案ということになりますと、この商法の担当は法務省でございます。商法を適用して運営をしておりますのは、会社の関係、その会社から税金を取るのは大蔵省でございますが、その会社に適用される商法法務省関係と、こういうことで、商法並びに関連法の改正ということで、私のほうが所管しておるという事情でございます。
  225. 上田哲

    上田哲君 どうもまだよく——まあ大臣も、私もよくわからぬと言われるんだから、その説明を聞いているほうがわかるというのは無理な話ですけれども、何かどうもよくなじまぬですな、感じは。大蔵委員会でおやりになったらどんなもんでしょうか。そのほうがぴったりくるんじゃないかという私は感じがするんだけれども、何か法務省が出てくると、取り締まり当局が商行為について目をぎらぎら光らしているような印象がある。これは印象ですけれども、これからその辺を一つ一つ聞いていかなければならぬのですが、そんな感じを払拭するためにも、どうもこれは見当違いじゃないかという気がするので、ちょっとその辺を……。
  226. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) ちょっとおそれ入りますが、ここにこの専門家がおりますので、局長でございます、民事局長がちょっとお答えをいたします。
  227. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 法務省は民事、刑事、行刑、まあそういった関係仕事を担当しておるわけでございまして、その民事の関係では、国民の私生活に関する問題、これを、法律を立法するとか、登記事務を行なうとか、そういった関係で所管しておるわけでございまして、その関係で民法、商法、民事訴訟法、そういった民事関係法律法務省の所管になっております。今回の改正は、ただいま大臣が仰せになりましたように、商法の改正とそれに関連する整理法、特例法の御審議をお願いしておるわけでございますので、そこで法務省の民事方面の所管事務の一環といたしまして、この三法案も、所管する法務省が提出し、したがって国会においても法務委員会で御審議を仰いでいる、こういうことでございます。
  228. 上田哲

    上田哲君 どうですか、法務大臣、わかりますか。
  229. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) わかったようなわからぬような話でございますが、先生、一口に申しますと、民事、刑事は法務省の所管、これは設置法で明らかであります。商事とは書いてないんです。書いてないが、いま局長が申しますように、この民事というのを広く解釈をしまして、商事も民事だと、死傷事件でもなく刑事事件でもない、こういうことでこれを民事と読みまして、そして民事、商事は法務省の所管と、こういうことでやっておるものとぼんやり解釈をしておるわけでございます。
  230. 上田哲

    上田哲君 ぼんやり解釈するところから審議が始まるというのも妙な感じがするのですが、まあそういうことになっておりますから、この場でひとつお伺いをさせていただくのですが、ぼんやり所管がきまるというにしては、どうも中に込められている改正要綱というのは意外にぎらぎらした感じがするのですな。まあ法は高度の常識の結集でなきゃならぬと私は確信をしておりますけれども、大体商法なんというのは、その中じゃかなり高度な技術を含められている。まあもちろん基本法ですけれども、あるわけで、よほどな知識が要るものだとは思いますが、今回の改正案の骨子は、どうもそういう常識をかなり越えるものがたくさんあるような気がいたします。これは私がたまたま手に触れた、まあほうり込んであったんですけれども、「「商法改正」反対国民会議趣意書」と、こういうのがあるのです。「消費者、労働者、中小企業ほか国民の生活を圧迫する商法改悪を阻止しよう」「商法改正反対国民会議準備会」と、こう書いてあります。  中を見ますと、まあ全部読むことは省きますけれども、途中を省いて、「政府は、これによって大企業の粉飾決算が防止でき、又大企業の倒産によって不測の損害をこうむる従業員や下請先や大衆投資家を保護するのだと宣伝していますが、本当にそうでしょうか。事実は全く逆で、この法律が通ると大企業は、その公表利益を増やしたり減らしたりすることが、今まで以上に簡単にできることになります。実際の利益を隠して水増しの利益を発表すること(いわゆる粉飾)は、大衆投資家をあざむくために今までもしばしば行なわれたことですが、それにも増して危険なのは、公表利益を実際の利益より減らして発表すること(いわゆる逆粉飾)です。逆粉飾は、なぜ行なわれるのでしょう。大企業が、一般消費者からの商品値下げ要求や、労働者からの賃上げ要求や、下請業者からの値上げ要求や、大衆株主からの増配要求を抑えるために外なりません。逆粉飾は、又、大企業の減税、インフレにもつながり、国民は重税と高物価にあえぐこととなることも必至であります。」こう、まだいろいろ書いてありますがね。  だとするとこれは重大なことであります。この立場に立つ限り、これは今回の改正案には絶対に首肯することができぬということになるんですがね。いま読み上げたこの趣意書、どういうふうにお考えになりますか。
  231. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) あらゆる商法改正をめぐる反対の文書、世論というものにはえりを正して耳を傾けておるのでございますが、いま先生お読みになりました文章に書いてあることは、まさに間違っておる。一々、一つ一つ間違いである。むしろ反対のことである。どうしてそういう文章が出てきて反対会議が行なわれるのか、いささか合点がいきにくい。まあそれ全部先生御質問と受け取って答えをいたしますと、時間がどんどんかかりますので、これから先生のおことばをいただきまして、一つ一つの項目について、私でできませんことはほかの者から御説明をさせまして、御了解をいただきたいと存じます。  そこに書いてありますことは、さような事実はございません。めっそうな話である、こう私は考えております。
  232. 上田哲

    上田哲君 よくわかりました。ここに書いてあるようなことはめっそうなことであると、ということを裏返して申しますと、ここに書いてあるようならばこれはたいへんなことであるということであるというふうに私も受け取りましたので、大臣も事の重要性を十分に御認識になっていらっしゃるという立場で、仰せのとおりひとつ具体的にお伺いをしてみたいと思います。今度の改正案によりますと、監査制度が改正される、そこで親会社の監査役、会計監査人が子会社に立ち入り調査ができることになりますね。親会社が子会社に立ち入り調査をする。その親会社、子会社ということばもはっきりしてくるわけでありまして、これもどうもあとからいろいろ出てくると思うのですが、どうも私は中小企業——子会社という名前での零細企業べつ視の発想に立っておるのが、   〔委員長退席、理事白木義一郎君着席〕 今回の改正の基本思想ではないかという気がするのですよ。まあそうであったらたいへんですな。そうでありますとこのパンフレットのようなことになるわけでありますから、であるかどうかということをお尋ねするわけでありますけれども、私はどうもそういうふうにしか考えられない発想と用語がある、親会社と子会社というのは、親鳥がひな鳥をこうやってあたたかくかかえていくという話ならいいけれども、この改正案をずっと読んでいくと、何でも小さな会社の営々として努力をしていく、たとえばパテントを吸い上げ、企業秘密を吸い上げ、聞かなければばっさりというような感じもぷんぷんにおってくるのであります。そこを伺いたい。  そこで、この立ち入り調査ができる——私も立り入り調査ということばは大体本能的にきらいなんですけれども、その立ち入り調査が行なわれる。子会社の監査役は、たとえばパテントの場合ですね、子会社のパテントなどをぜひとも守ろうと思うことがあり得ますね。たとえ、五〇%の資本出資を親会社が握っているから親子というのだそうでありますけれども、であっても、これはどうしてもわが社で一生懸命つくったパテントだから、わが社の利益のために、将来の発展のために守ろうというのが大臣、当然のことですね。ここまでは正しいですか。
  233. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) お説のとおり正論であると存じます。  審議官から御説明をさせていただきます。
  234. 上田哲

    上田哲君 そこまでが正しいと。何とかしてこのパテントを守ろうとするのだけれど、親会社から立ち入り調査が行なわれると、そうするとどうしても守ろうというのが正しいならば、断固として立ち入り調査に対して黙ってしまう、言わない、黙否する、とした場合にどうなりますか。
  235. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 大臣官房審議官から答弁をいたさせます。
  236. 田邊明

    説明員(田邊明君) お尋ねの問題は監査役及び会計監査人の子会社に対する調査の問題でございますが、先生があげられるような例の場合には、法律案の上では、もしそれをしいて親会社の監査役なり会計監査人が調べようとすれば、それは権限の乱用でございまして、子会社の取締役は敢然としてこれを拒否して少しも差しつかえない、そういうたてまえになっております。
  237. 上田哲

    上田哲君 そうしますと、もう一つの場合が出てくるのは、どうも乱用であると言われても、実際問題として具体的なケースになれば、それは乱用ではないかとパテントを握りしめる子会社が言ったとき、これは乱用である、それは悪かったと、すそをひるがえして帰っていきゃいいですけれども、資本の力は強いですから、そんなことを言ったらあしたからおまえの息の根をとめるんだという声が出てくる場合もあり得るでしょうな。そういう場合に、いたしかたなくうそをつく、私はこれは正当防衛ないし緊急避難だと思うのだが、どうですか。
  238. 田邊明

    説明員(田邊明君) 具体的な設例を引かれたわけですが、うそをつく、消極的な抵抗ということも考えられると思います。つまり、パテントの内容について答えをしない、あるいは消極的に黙秘してしまうという場合、あるいはパテントはないと答える場合、いろいろあろうかと思いますけれども、それは一般原則上の先生のおっしゃるような正当防衛とか緊急避難の法意で解決できると思います。
  239. 上田哲

    上田哲君 解決できるというのはどういう意味ですか。ちょっとくどいようですけれどもね、つまり黙秘し切ってしまったら罰せられませんね。罰せられませんね。これはひとつ確認をしておいてもらいたい。これからもそういう事態も起き得ないではないんですから。そうなると、立ち入り調査に対して罰せられないぞということを大きい声で言えないとこれ困るんですから。罰せられないですな。それから、うそをついたとしてもこれは緊急避難、正当防衛の範囲に入ると考えていいわけですね。
  240. 田邊明

    説明員(田邊明君) おっしゃるような場合には正当防衛の緊急避難に当たる場合だと思います。ただ、この権限というのは、条文にございますように、親会社の監査をいたしましたときに親会社の監査の必要上調べるという場合、立法の趣旨としては、親会社が子会社を利用して不正を働いている節がある、その場合に親会社の監査役なり公認会計士としては、ぜひとも子会社の業務執行面あるいは会社経営の面で調べてみないとその確信が抱けないというふうな場合にこの権限を認めているわけでございまして、先ほど読み上げの文章とは逆に、子会社を保護する思想から出てきた規定でございます。
  241. 上田哲

    上田哲君 どういう思想から出てきたかということは要らないんです。これは立法趣旨としては、あなた方の文章をお書きになるまでのところでわかるんですがね、問題は具体的な実施の部分での問題をお尋ねしているわけですから、発想はそうであっても結果が逆になることがあるだろうと思う。たとえば、親会社が必要と判断すれば立ち入りができるんでしょう。そうですね。親会社が一方的に必要であると判断し得るわけですね。子会社がこれは困ったと思うと何だろうと、親会社が一方的にいこうと思えば入っていけるんだということになると、これは親会社のかなりな、それは乱用であるということが一方にことばとしては語られるけれども、乱用の危険大いにありということにならないかということです。
  242. 田邊明

    説明員(田邊明君) 必要性の判断は、親会社の監査役もしくは公認会計士たる会計監査人、これが判断をいたしますわけでございます。その判断をする人たちの仕事の対象になっているのが先生のおっしゃる親会社でございます。つまり、親会社の経営人の業務執行を対象として調べていくうちに……
  243. 上田哲

    上田哲君 何ですか。
  244. 田邊明

    説明員(田邊明君) 親会社の経営執行を対象として調べていると、その過程でその執行上問題があるというふうに監査人が判断いたしまして、これは子会社を調べてみないとわかんないというときにこの権限を使う、そういう意味で、その必要性の判断は監査役なり公認会計士がする。それは場合によっては先生の言われるような乱用の問題の出てくることももちろん考え得るわけでございます。
  245. 上田哲

    上田哲君 乱用が出てくるというんですね。私が心配するのはそこなんですよ。乱用が出てき得るではないか、あまりにも。一つ出てきたって困るんですけれどもね。予想しがたいケースが発生する場合は、これは立法の責められるべき理由はありません。しかし、当初から乱用の危険があることに対して何の防御策もとらぬということはあり得ないわけですからね。その乱用の危険があり得るというところから初めから始まってもらっちゃこれ困るわけです。弱いんですからね、これは。そこで、乱用の危険がそれほどあるではないか、そこのところがたいへん私は不備に感ぜられてならないし、危険が大きいと思えてならないんです。そこをもうちょっと突っ込んでお話をいただきたい。
  246. 田邊明

    説明員(田邊明君) ことばが適切でございませんが、権限を認めているという上での権限乱用の危険というのが理論的にはあり得ると、こういう意味で申し上げているわけでございますが、監査役なり公認会計士がどういう意図で先生の例にあげられるような子会社のパテントというふうな機密を知ろうとするか。この法律案考えている場合は、そういうことは全く希有であろうというふうに考えているわけでございます。つまり、理論的に考え得るけれども実際問題としてはそういう乱用というふうなことは起こらない、そう考えているわけでございます。もし、これが親会社の取締役に与えた権限でございますと、おっしゃるようなことが出てくるかもしれません。親会社の取締役だちの権限行使をチェックする監査制度の上で認めた権限で、つまり監査役なり公認会計士という人たちがこの権限を行使するというたてまえにしているものですから、そういう乱用というのは出てこないだろう、こう半与えているわけでございます。   〔理事白木義一郎君退席、委員長着席〕
  247. 上田哲

    上田哲君 私は、非常に心配する具体的なケースは、この立ち入り調査が行なわれる、子会社は必死に自己の利益の中で立てこもろうとする。ところが大きな出資の力でぐいと押えられる。この場合には、とにかく懸命に黙秘をまずしようとする。しかし実際問題としてなかなか黙秘というものは、日ごろの商行為もあるわけですからできるわけではなかろう、こうなると、しょうがないから苦しまぎれにうそをつく、これは私は正当防衛ではないかと申し上げた。緊急避難だと申し上げた。その緊急避難、正当防衛の範囲に入るだろうとおっしゃるが、実際問題として、これはおそれながらと訴え出て話をオープンにすりゃ緊急避難だっていう認定はどこかでくるかもしれぬけれども、話はそこまでいっちまうまでにつぶれてしまうわけです。吸い取られてしまうわけです。となりゃ、まあしょうがない、あしたのこともあることだから、長いものには巻かれろというのが大体普通の感じじゃありませんか。心配するのはそこなんです。そうなると、いたしかたなく、まあ泣く泣くというのか、結局は皮を切らして肉を取るとでも言うのか、そんな立場でついついほんとうのことを言ってしまうというような話になるということになる、そこをとらえて、大臣衆議院段階で、良心に従って真実を伝える場合には罪にはならぬというようなことを言っておられるわけですね。一体ほんとうにそうなのかどうか。私は、さっきから、それはもう全然処罰されることはないよというお話ですから、このお話はしっかり確認をしておくことにいたしますけれども、しかし、大臣が、良心に従って真実を伝えれば罪にはならぬと言われたということが、そういう事態が起こり得るということと、それから実はそうでもしなければ守り得ない実態があるのだという二つを実は逆に証明されたような気がするわけですよ。私が心配しているような状況、ケースにならないのかどうか。大臣はそのことを実は言い当ててこういう発言をされたのではないか。そこをまとめてひとつ大臣から御意見を承りたい。
  248. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) お説のように考えまして発言をしたものでございます。たいへんこの点は微妙な説明も要りますわけで、民事局長から一言発言をさしていただきたいと思います。
  249. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) この子会社の調査権の問題でございますが、これはいろいろな問題を確かに含んでいると思います。多少誤解もあるんではないかという感じがいたします。まず権限乱用の問題でございますが、先ほど権限乱用かどうかという点は子会社の監査役にはわからないんではないかと、親会社のほうの監査役あるいは会計監査人が判断すべきことであって、子会社のほうはわからないんではないかというような前提でお尋ねがあったんではないかという感じがいたしますが、これは客観的にその職務の必要に基づいて子会社の調査権の行使がなされているということがはっきりしない場合には、子会社の監査役としては、どういう点で必要ですかということを釈明してもらう、その職務上はたして必要なのかどうかという点を説明してもらうことはできると思います。また、その説明の結果、どうもこれは要件がないのではないかというふうに認められます場合には、それを拒否できるのです。
  250. 上田哲

    上田哲君 語尾がわからぬ。
  251. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) つまり、子会社の調査をなし得る要件ですね、つまり、親会社の監査役なりあるいは会計監査人がその職務の必要に基づいて子会社を調査しているのかどうか、調査しようとしているのかどうかという点ですね、その点について疑問があれば、子会社の監査役としては釈明を求め得るし、職務に関係のないということがはっきりすれば調査は拒否できるであろうということをまず申し上げておるわけでございます。  それから、先ほどのパテントの問題ですが、これにつきましては、パテントの内容まで立ち入って調べるということが実際に親会社の監査役なり会計監査人が調べる必要が生ずる場合があるであろうかと申しますと、そこまでの必要が生ずるということはこの規定としては予想していない。したがって、そういう問題はまず起こらないであろう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  252. 上田哲

    上田哲君 そんな話はないですよ、よくわからない、私には全然。ライオンのおりの中に入って、私が言っているのは、ライオンというのはわれわれを食うのではないかと言っておる。あなたの説明は、いやライオンがわれわれを食わないことを想定をしておると言っておるのですよ。これは全然法律論じゃない。これは一方的な状況の、何というのですか、論理学では何とかというのですよ、ぼくは忘れちゃったけれども。こんなものはまるで説明にならない。パテントをどうして親会社が子会社に対して説明を求めるということを想定しないのですか。子会社がいまこの改正で一番心配しているのは、パテントをとられると思っているのですよ。何を言っているのですか、そんな程度の人が一生懸命になって、誤解であるのではないかと思います、なんて頭を振ってですね、冗談じゃありませんよ、普通に言えばこれはおふざけでな、というのですよ。そんな程度の中小企業の不安を背中にけっぽりながらそんな説明をしてこんな立法してもらっては困る。  ちょっとお待ちなさい。訂正するのですか。冗談じゃない、こんないいかげんな説明をされて。何が誤解がおありだという——そんな誤解だとか何とか言っている程度の話で説明をされて、これを強行されては困る。いいですか、刑法ではないけれども——刑法をきょうやりたかったのですが、商法というのもたいへん大きな商行為をがぼっと押えていく機関ですからたいへんなんですよ。これが弱者の救済ということをちゃんと考えておくというのはどこまで考えていくのかということが法体系の中に組み入れられてなければ、どっちの立場に立つなんて私はイデオロギッシュなことを言っているのではない。言っているのではないけれども、その全体の調和がなければなり立たない、経済体系は滅びますよ。一番危険な状態を、それをミニマムに押えながら説明をしてくれなければ、少なくとも立法の場合の説明にはならぬ。何を言っていますか、パテントを立ち入り調査することがあり得ないという想定に立つなんというような子供だましのようなことを言いなさんな。ライオンは腹が減っても絶対に人間を食わないという保証がどこにあるのだ。あなたの言っているのはその程度の稚拙な話だ。IBMでもゼロックスでもソニーでも、あれはもともと小さい会社だった。その小さい会社が小さなパテントを一生懸命大事に盛り育て、そして大きくなってここまできた。ソニーに賛成しようと言っているのでないし、IBMに賛成しようと言っているのではないけれども、少なくともそういうときには、親会社がこんな形で持っていくところはなかったのですよ、少なくとも。今回心配されているのは、日本の九割を占めるまあ中小企業、名前だけの株式会社、今度の改正による子会社になるところがそういう努力をしても先の夢がなくなってしまうのではないか、大きな企業系列の中に吸収されるための法改正ではないかという不安を持っているのですよ。その不安に対してこたえなければならないのに、この中でどう考えたって、先ほどの説明のように、その立ち入り調査の必要は、大きいほうが上から見るというのですよ。そうでないのだということが、たとえば拒否することができる、小さいほうが大きいほうに向かって拒否することが自由にできるという保証がどこにあるか。だから四次防つくっているのではないですか。それが自由にできるというのは——完全に克服されるならば弱肉強食なんてことばはないのですよ。現実に弱肉強食の世界ではないですか、商行為の世界というのは。だからここでそういう不安があると言っているんです。具体例でいろいろいきますけれども、やがて。いきますけれども、それはあなた、立法の説明としては筋が通らな過ぎる。そういうことを期待しておらないのでありますというのは、打ち切り精神ですよ。そういう打ち切り処置で立法の説明をしてはいかぬ。そんな精神でこんなものが法改正されたらえらいことになります。  そちらから手があがったから、答弁能力のあるほうからやってください。
  253. 田邊明

    説明員(田邊明君) パテントの問題でございますが、まず親会社の監査役なり公認会計士が親会社の監査をいたしております過程で、子会社のパテントを調べる必要があるというふうな事例が一番問題になるわけでございますが、ところが、子会社が本来独自に持っているパテントというのは、もちろん独立した子会社の所有でございますから、これを親子会社の関係にあるといって当然に公開する必要はもちろんございません。おそらくそういうケースが出てくるのは、むしろ悪い、親会社の業務執行上悪い例として出てくる。それは、実質は子会社がパテントをとっておりながら、親会社の財産の計算上あるいは財務計算上といいましょうか、その本来の特許権を親会社の所有として計上し、評価しているような場合が考えられるわけでございます。実質はそうでないんですが。これを監査役が調べていった場合に疑問を持った場合でございます。はたしてこれは親会社のものなのかどうかわからないという疑問を持った、必要書類ももちろん備わっておりましょうから、それを調べた結果そういう疑念を抱いたら、まず子会社に照会できるというのが法律のたてまえにしてございます。つまり、当該特許権は親会社の特許権として計上されておるけれども、子会社のものではないのかという問い合わせができる。この場合に子会社は、いやそれは子会社独自でとった特許権で親会社のものであるはずがない、こういうふうに答えれば問題はまず解消するだろう。しかし、それでも監査役の疑念が払拭されない、あるいは子会社が全然報告しないという場合に初めて子会社に行って、はたしてその所有関係はどうなっているかということを確かめる権限を与えているわけでございます。つまり、この例からわかりますように、法律考えておりますのは、親会社が子会社を利用したその種の不正を働らくおそれがある、その場合に権限を行使して子会社を確かめた上で親会社の姿勢を正すというのが法律趣旨であるわけでございます。先生が危惧されるような、全くそういう関係なしに子会社のパテントの内容だけを調べる目的で照会を発したり、あるいは出かけていって調査をするというのは全くこれは権限の乱用でございますから、その場合には当然拒否できるはずだというふうに考えるわけでございます。
  254. 上田哲

    上田哲君 だから私は危険だと言うんです。そういうロジックの中で、本来子会社に属すべきものを親会社に属すべきものとして運営しているではないかというような疑いが起きるというふうに考えたという理由の中で、親会社が子会社に立ち入り調査をするということは、親会社の一方的な専断事項でしょう。だから実はそれと全然逆なことであっても、親会社は、と思う、と言えば法規に照らして入れるということになるわけですよ。だからいまおっしゃるようなことがそのとおり行なわれるというのは、あまりいいことばではないけれども、法解釈上はいいことばではないけれども、すべての監査人その他は、関係者は聖人君子の集まりであるというような、こういうことを前提にしておかなければならぬという奇妙な法理論に帰結をしてしまうと私は言うのですよ。血の出るような戦いをしているわけです。そろばんの玉が一つぽつんと上がっているようなところでやりとりをしている、しかも、小さいほうからすれば、大きいほうに向かってたいへんなやっぱり生存競争の頭打ちをやっているわけですよ。そういう中で五一%以上の出資をしているでかいところが、具体的に首根っこを押えているでかいところが、いまあなたの説明のような理由によっていまここで立ち入り調査するんだと言われたら、逆に言うなら、子会社のほうが親会社のほうに立ち入り調査権でもない限り、これは拒否はできぬのですよ。だから、私が言うのは、法の全きを期するためには、このための子会社に、子会社は拒否をできるとあなたはおっしゃる、拒否はできるのだという権能をどこかに与えておけばいいのではない、子会社がその拒否ができる権能を全からしめなければならない。実質問題としてできないのに、健康にして文化的な生活を営む権利があると書いたって、政治がそれを保障しなければ空文に期すると同じような論法の中で、子会社というのは実質的に守られないという危険に今回の法改正はさらされることになるのではないか。  ぐるぐる回りになると困るから、そうは思いませんという話だけになってしまうと、ライオンは絶対に食いませんという話ばっかりになっちゃうから、これでは困るから、私が聞きたいのは、この法改正の補完要素としてあるなら伺っておきたいのは、子会社保護のためにそういう拒否権とでも言わるべきものがどういうふうに子会社の権能に完全に帰すべきものとして保障されているのか、そこをひとつはっきりしていただきたい。
  255. 田邊明

    説明員(田邊明君) 子会社が親会社の監査役の権限乱用に対して対処する方法と申しますのは、一般的に商法のみならず民法あるいは刑事法、こういうもので解決するというたてまえになっていると思います。  ただ、先生が御指摘のように現行法下では五一%以上を所有する親会社が、いわゆる大株主権の行使として、例にあげられたようなパテントの内容をみずから探知するという作業にまあ出ていると。それは、現行法上そのものが大株主の権限として会社の帳簿関係の閲覧権というものを認めていることが一つの前提でありますし、それといわゆる事実上の支配権、大株主のする事実上の支配権として、最初におっしゃった子会社の取締役の任免権まで握っている、そういう手を使って実は先生がおっしゃるのは不正行為がすでに行なわれていると。今度の改正が考えているのは、その不正行為を、取締役じゃなくして、法律の上で監査役といういわば独立的な機関にチェックする権限を与えようと、こういう趣旨で立案されているわけでございますから、ただ、御指摘のように子会社が拒否権を発動するような権限行使の規定がどこにあるかとおっしゃいますと、この商法そのものには具体的な規定を置いておりません。それは間接的に、親会社の監査役がもしそういう権限乱用をすれば、それは民事上もしくは私法上の責任を負うことになりますし、その手段が刑事上の犯罪になる場合にはもちろん刑法上の処断を受けると、こういう仕組みになっているわけでございます。
  256. 上田哲

    上田哲君 単独法の改正ですからね、完結すべき商行為に対しての法理念ですからね、私はやっぱり、最終的には憲法までいけば助かるよという話ではこの法律改正案の説明にはならぬと思うのです。  いまおっしゃるように、やっぱり、あなたのおっしゃるところが、それをチェックすることだというところの半分は認めてもいい、そういうところはあってもいい。しかし、そのチェックするのだという命題の中で、結果論的には子会社がそうした親会社からの吸収の場にさらされるということのみに終わるということであれば、子会社にとってはですよ。あるいはその危険が露出するということであれば、これはたいへんこの改正というものは危険であるといわなければならない。私はそこのところを言っているわけですけれども、これは御理解いただけますか。
  257. 田邊明

    説明員(田邊明君) 御指摘は十分理解いたします。
  258. 上田哲

    上田哲君 理解していただくなら、やっぱりここのところはさっき読み上げたことの中の危惧というのは、やっぱりその部分は当たっているということに私はなると思うんです。  ひとつ側面を変えて伺いたいのは、大臣、おとといですか、本院において、中小企業者の範囲の改定等のための中小企業基本法改正という長い法律を上げました。これは一口で言えば大企業と中小企業のマーケットを分けようという、言ってみれば中小企業の保護改正といいますかね、そういう趣旨があったと思うんですよ。いま私が半分だけというふうに限定していたけれども、その危険を指摘した部分とこの中小企業者の範囲の改定等のための中小企業基本法改正との理念のギャップが私はどうも開くような気がする、そこをどういうふうに御説明になりますか。
  259. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 先ほどから御説明を申し上げておりますように、子会社を悪用して、悪用しちゃいけないんですけれども、子会社を悪用して親会社が違法、不当、不法なやり方をしておるという場合に、手を入れて調べるというのでありますから、先生のお説もまことによくわかるのでありまして、かりにこれが社長なり取締役なり会社の監査役がこれを調べていくというようなことになりますと、乱用のおそれは多分に出てくる。そこで、先ほどから説明いたしますように、調査をいたしますものはだれがするのかというと、会社執行部でなしに、これは会計監査法人、監査法人がこれをやっていくようにしていく、監査役も含んでおるのでございますが、監査法人——公認会計士または監査法人、これがやっていく。こういう立場をとっておるわけでございますので、執行部、社長を中心とする執行部が取り調べていくというようなことではございませんので、幾らかそこに安全弁があるのではなかろうか、こういうふうに考えるのです。ただ一つそこに一歩進んで申しますと、先生御心配のような心配がなくはないのは、その監査法人とはどういうものなのかというと、社長以下の会社執行部が選んで報酬を払う、そういう一体監査法人ではないかと、こう詰めてこられると、ここに一抹の不安はないとは言えないのでありますが、制度といたしましては、その執行部にやらすよりは、厳格な資格を持っております公認会計士、会計監査法人あるいは会社の厳格な監査役という立場の者にこれをやらすということでセーブできるのではなかろうかということが、その法の制定をいたしました内面にございます。そういうことでございます。
  260. 上田哲

    上田哲君 中小企業基本法の関係をちょっと。
  261. 田邊明

    説明員(田邊明君) 中小企業関係法の改正は、いわゆる中小企業者の範囲を改めた立法でございます。で、この商法との関係から申しましても、実は法制審議会の答申は、資本金一億円未満の会社をいわゆる中小会社と考えて、一億円以上のものについて、いわゆる公認会計士の監査を義務づけるようにという答申を得たわけでございます。立案の過程で、お示しの中小企業基本法の改正との関連において、この一億円の切り方を、商法も一億円以下を中小規模の株式会社として立案いたしました。そういう意味で、二つの法律は中小企業者の範囲としてはおおむね合ったということになっております。ただ商法のほうは、中小規模の株式会社を今度の立案では大会社とは異なって、先ほど来御指摘のような監査役の権限については区別をいたしまして、つまり一億円をこえる会社の監査役は会計を含む業務一般の監査権限を与えましたが、一億円以下の会社については、現行法どおり会計のみの監査をする、こういう扱いにいたしてございます。  それから、問題になっております子会社調査権というものは、すべての株式会社に認めております。その理由は、一億円以下の会社の間においても意外に親会社、子会社の関係が多くなってきておるわけでございます。したがって、中小規模の会社についても、中小規模の会社の子会社の保護という観点からは、監査役に子会社の調査権を認めておる。そういう改正案になっております。
  262. 上田哲

    上田哲君 そこでね、今度の改正によりますと、すべての商人に貸借対照表と損益計算書をつけさせるということになりますね。「商人」という規定が商法に古くからあるわけですけれどもね、すべての商人に貸借対照表と損益計算書をつけさせる。これはたいへんなことだと思うんですが、これは何をねらっているわけですか。
  263. 田邊明

    説明員(田邊明君) 現行法のたてまえは、先生御承知のとおり商法三十二条以下で、一般の個人商人も含めて、法人も含めまして、商人たる者はいわゆる日記帳、現代風に申しますと会計帳簿と財産目録と貸借対照表をつくるべしという規定を持っておるわけでございます。改正法は、このうち株式会社を含めまして全部の商人について、財産目録の作成は廃止いたしました。それにかえて、御指摘の損益計算書というものの作成を義務づけたわけでございます。この考え方は商法三十二条以下の商法考えている、いわゆる商業帳簿の体系を整備するという目的から出ておるわけですが、そもそもの考え方は、商人たる者はみずからの経営成績を判断し、将来の繁栄に備えるという意味で、これらの帳簿を備え、みずから記帳するというたてまえを持っておるわけでございます。つまり、商法は商人自身の財産計算をみずから明らかにさせておくというたてまえで立法がなされておる。そのたてまえを受け継ぎつつ、財産目録を廃止するとともに、損益計算書というものの作成を義務づけることになったわけでございます。
  264. 上田哲

    上田哲君 みずからの営業活動を記録せしめるなんというのは、簡単に言えば要らぬお世話ですよ。これはもうとにかく超大企業に、たとえば私は三菱重工なんというような人殺しの兵器をつくっているところはね、これはもうひとつぜひ立ち入り調査権でも持って見に行きたいと思いますね。なんせ防衛庁から兆と名のつく金が入っているんですから、税金の使い道がどうなっているかというようなところで、見に行くのは、これはもう国民の立ち入り調査権があってもしかるべきだと思うけれども、この一億円以下と、今度はすっかり線を引かれた、一億円だってたいへんなことなんだが、もっとずうっと下の小会社という名前にもならない零細企業に、一体営業活動の内容を明記せしめるなんというのはね、小学生にだって日記をちゃんとつけろと言って日記がつけられますか。三菱重工なんというのは、国からのあれだけのたくさんな金が来たのをいいかげんに使ってもらっちゃ困るというぐらいのことは、社会的な意味から言ってもありますよ。しかし、まああなた方が今度改正された全部つけなさいと言っているところの零細企業なんというところが、そんなに社会的に注目を集めなきゃならないような内容を経理的にも持っておりますか。財産目録をいままで必要だったのが、これを撤廃せしめたなんておっしゃるけれども、財産目録なんていうりっぱな名前に値するものがないからですよ、それは。冗談じゃないんですよ、これは。財産とは何かという議論をしたいぐらいなもんでね、財産目録なんて言ったら神だなが高くつくような、そういう連中がずうっと毎日生きているわけだ。そこに財産目録なんていう死んだ法律のことばを消すのは、これはあたりまえなんでありましてね、それにかわってこちらをと、いままでリンゴを与えていたけれども、これからはミカンにするという話とはちょいと違うんだ、これは。いままではリンゴも何も与えてないんだ。リンゴもなかったんだ。そこへむりやりにミカン代を払えというような話になるんだから、私はこれは非常に平衡を失すると思うんですよ。だからね、どうも全体として零細企業に対する、大企業と比べるべしというのは、私はここにどうも流れているように思えてならぬのだが、これは水かけ論になるでしょう。なるでしょうがね、大臣、この貸借対照表と損益計算書、こんなものをつけるには複式簿記が要るわけですなあ。大臣、複式簿記というのを知ってますか。
  265. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) よく理解しております。
  266. 上田哲

    上田哲君 さすがに法務大臣でありまして、では法務大臣のお宅には家計簿はありますか。
  267. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 申しわけがないことでございますが、家計簿は多分ないのではないかと思います。(笑声)
  268. 上田哲

    上田哲君 まあ、家計簿がないというのは、大臣のところでは、家計簿というのは、大体計画支出をしていかないと月の終わりには赤字になっちゃうからということでありましてね、がぼがぼ入ってくるのがたくさんあるところは要らないんですよ、これは。だから、大臣のうちには家計簿が要らないという理由が、それが一つとね、それから、まあどんなにそれを計画支出をしていこうとしても、まあつけにくいものですよ。たいへんなことです。だから、そういうことを考えますとね、貸借対照表だ、損益計算書だなんというのは、これはたいへんなんでありましてね、単に高等学校の商業科を出たからつけられるなんというものではないのです。そのときは何とかなりますが、卒業すれば三年して忘れてしまうもんですよ、しょっちゅうやってなければ。少なくとも私はそう思うほかありません。したがって、私はこれで株式会社や商人になることはできないなと思いましたな、今回のこの改正を見れば。つまり、商人になる道、株式会社、商工業を行なう道を閉ざしたのが今回の改正だと言ったっておかしくないぐらい、私はやっぱりこれは無理があると思うのだな、無理が。私は、だからみずからの営業内容を明記せしめるべきであるというのが目的であるというなら、てにをはは違っているかもしれませんよ。そういう趣旨であるのなら、これは要らざることだから、撤廃なさるがほんとうにそうした零細企業を生き生きとして生かしていく道だと思うんだけれども、いかがですか。
  269. 田邊明

    説明員(田邊明君) 商法のたてまえは、先生の御指摘によれば、現行法自体が個人商人にも貸借対照表まで義務づけているというところが問題となるのであろうと思いますが、先ほど申し上げた、商人たるものは商工業を業とする限りは、みずからの計算内容を明らかにしておく必要があると、そういう趣旨商法の総則ができておる。ただ、株式会社につきましては、商法はこれをせつ然と区別いたしまして、この種の帳簿の作成義務違反に関しては罰則をもって臨むという態度を持っておる。で、個人商人に関しましては、原則は罰則を設けておりません。ただし、その帳簿をつけていないような乱雑な経営の結果破産に至ったというふうなときに、初めて破産法で罰則が働く。こういうたてまえでございますから、つまり他人に迷惑をかけたときに、その帳簿を備えないということを問責されるというたてまえでございます。  それと、もう一つ付加いたしますと、現行商法でも非常に古い時代にきまった線でございますけれども、元手が二千円以下の商人を小商人と唱えている。これらについては、いま取り上げているような商業帳簿の作成義務というふうなものを課していない。同時に、商号を登記するような権限も与えていないというのが現行法のたてまえでございます。ただ、この二千円以下というのは、非常に現在の貨幣価値から見ると問題にならないような額であるわけでありますが、これが実は会社法にもはね返る問題で、株式会社に最低資本金を日本商法はきめていない。それとの関連で、法制審議会でも将来の大きい問題としてこの問題を検討するという課題に残しておるわけでございます。現行法のままでまいりますと、資本——元手が二千円に満たない商人、今度の改正の結果でも損益計算書の作成は義務づけられない。たてまえはそういうことになるわけでございます。
  270. 上田哲

    上田哲君 夢物語を聞いているようでね、あなたもしかし資本金二千円に満たない人はなんて言ったって、しょうがないでしょう、これは。そんなこと、まじめに言っているつもりがあるんですか、一体。そんな話をしていたんじゃ、そんなことを太平楽あげている間に町ではそろそろ涼しくなってくる。ガード下のくつみがき屋さん困っちゃう。中小企業は泣くんですよ。説明が足らぬな説明が。それはいかんな。説明のための説明として、二千円というのもないよりは使ったほうがいいだろうと思っても、それはぼくは説明としてはふまじめだと思うのです。そういうことはあるかもしれないけれども、説明力にはなりませんね。  そこで、私は申し上げたいんだけれども、たとえば株式会社だと、株式会社にはそういうものはしっかり課しているんだと、もとの商法がそのものが悪いんじゃないかというなら、もとの商法が悪いで、商法自身を変えればいいんでしてね。悪いほうに変えることはない。悪い商法を足がかりにしてもっとまたうまいぐあいにバネにしょうなんというのは、これは意地きたない根性ですよ。これはおやめになったほうがいい。だから、戻るならどこまで戻ってもかまわないけれども、たとえば青木一男先生がこの前質疑されているのを私読んだんですが、なかなかりっぱだ、これはやっぱり先見ですな。これはりっぱなことだと思うんですがね。その答弁が実におもしろい。みんなかぶとぬいじゃっていますね。その中にやっぱり告白しておられるのは、どうもあの区別、そして小さな株式会社というものを何とかまあまあ株式会社とは名がついているけれども、実際にはこれは株式会社というのも少し僣称に属するというような、そういう言い方になっているわけですよ。で、私はその考えはいかぬと思うのですよ。株式会社なんといったって、そこらのおじさんたちがみんな社長になるわけです。社長というのは昔は違い人ということの別称であったわけです。このごろは社長というのは町のおやじさんの大体別称になったんです。わざわざ社長になればうれしいから社長になったんじゃないんです。これは苦しい税金対策なんです、みんな。苦しい税金対策、税金がひどいからですよ、もともとは。これは政府が悪いんだ、だけれどもね、そこまで戻るとずっと戻るから、その途中でやめますけれども、とにかくその税金対策だということはぬぐうべからざる実態ですよね。だれが好んでめんどうくさいわざわざ定款をつくり、親戚みんな集めて登記をして株式会社なんかつくりますか。そんなことまでさせるのが——一心太助がこれはてんびん棒かついで魚売っていればりっぱに食えるという世の中がいいんですよ。それを一心太助が社長になっちゃうというのはね、これはどう考えたっておかしいんですよ。(笑声)そうでしょう。わかりやすく言うんだ、法律というのはしちめんどうくさいことを言うのがコードじゃないんだから、私はそう言うんだ。そういうふうにしているというのはやっぱりひずんでいるからそこに結論がいくんですな。だから、それを逆に言うなら、いまの株式会社を、大きな大きなたいへんな株式会社を、つまり独占と呼ばれたり、大企業と通常言われている、買い占めなんかができるような株式会社と、名前だけの株式会社、一心太助が社長になっているようなものとを一緒にしてはならぬのであって、ならぬという意味はこれをべっ視しろということではないのであって、こういう名前でなければこの税法上生きていけない零細企業は別途な優遇措置を講ずる、これがほんとうの姿だと私は思うんです。そうじゃありませんか。ここは一般論、政治論ですから、一言でいいです。
  271. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) お説はたいへんよく理解ができます。そこで、改正法でも中小企業会社というものを、まあ線の引き方はいろいろございますが、一億で線を引かしておりまして、一億以下のものについてはむずかしい手続は要らないように、会計監査につきましても、五億以上のようなまねはする必要がないというように、いろいろ一億以下の会社、これはわが国の会社が百一万余りあります中で百万を占めておる。先生先ほどのおことばのとおり九割以上占めておりますが、それに対しましては、このたびの改正についてもできるだけ負担が軽くなるように、一切の付属書類の作成その他につきましても配慮をいたしまして、簡単に手続がとれるように配慮をしておるわけでございます。
  272. 上田哲

    上田哲君 そうなってないのですよ。全部要るんですよ、貸借対照表と損益計算書をつけなければならない人は、数字はどのくらいになりますか。
  273. 田邊明

    説明員(田邊明君) 百万余りになります。
  274. 上田哲

    上田哲君 百万余りの人がこれ、要るのです。そしてこれは株式会社ならば罰則だ、そうでないのは罰則まではいかないのだとおっしゃる。しかしこれやらないと見積もり課税が来るわけでしょう。そうすると、こういう方向にはみな無知ですよ。一々みな顧問弁護士や税理士を持っているわけじゃありませんからね。そうすると、ほいほいやっていると見積もり課税がぽこっとくる。見積もり課税というたいへん苛斂誅求の税額がぽこっと来ても、実はもとはといえばおまえは損益計算書も貸借対照表もつくってなかったから、だからこういうことになるのだというロジックの上に、あれよあれよと持っていかれてしまうという非常に困難な状況がここにあると思うのですよ。私は問題だと思う。
  275. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 先生仰せのように、貸借対照表も損益計算書も、さらには営業報告書もまた利益配分案も、この四種類のものは、現行法上もつくらなければならないたてまえになっておるのです。先生お説のように、これは無理ですね。小さいところに、現行法を直せばいいというおことば私、たいへん得心できるのでございますが、たいへん無理でございます。無理でございますが、無理である、ないにかかわらず、現行法の上ではこの四種類の、一口で申します商法上の計算書類というものはつくらなければならぬことになっておる。しかしつくらなければならぬことになっておる上に、今度は五億以上のものについては、公認会計士、会計監査法人の承認を受けて監査を経なければならぬというたいへんめんどうくさい、また一面金のかかる手続をとらなければならぬ。そこで、これは五億以上ということに限りまして、一億以下というもののほとんど全部のものについては、そういう負担はかけない、こういう配慮はいたしておるのでございます。
  276. 上田哲

    上田哲君 無理だというようなおことばもあるし、もとまでさかのぼろうじゃないかという点は、たいへんものわかりがいい感じがしますよ。大体よほど対決法案ががたがたしない限り、どんな修正だってしませんからね。これはまあ修正しないでしょう、たぶん私が幾ら説得しても。だから少なくとも私はそうなれば反対としかなくなっちゃうのだけれども、英断をもっていまのようなことを、まだ間に合うのだからひとつ御訂正なさるもいいと思うのだけれども、少なくとも私の考え方の根底になるのは、これはたとえば複式簿記なんというものは要求してないのだとおっしゃるけれども、複式もつけないで貸借対照表、損益計算書をつくれなんということはたいへんな至難なことになるわけですから、そこまではいってないよと言ったって、言ってるのと同じになるような非常にむずかしいくびきがきているわけです。まあ簡単に言って、このままいくと、ラーメン屋さんでもくつみがき屋さんでもみんなつけなければならない。家に帰ってつめの中にあるどろを落としながら一生懸命書かなきゃならぬという姿が目の前に見えるわけです。こんなことをしたら、みんな消化不良になっちゃいますよ。とにかくさっきおっしゃるように、一番究極の方針が、営業をするならば商人たるものは自分の営業内容について明確にしておきなさいということであるんなら、自分の手法で、自分の目盛りで、今日はこれくらいのものだということをやっておきなさいというせいぜいの行政指導だ、それくらいでいいじゃありませんか。義務づけたり法制化する必要はないと思うので、少なくともその見解まではおりておいてもらいたいと思うが、どうでしょうか。
  277. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) よくわかりますが、何ぶん現行の商法の上では、無理ではありますけれども、複式簿記を採用することを要請しておるのでございます。そういうたてまえを踏まえてこの改正案をつくっておるものでございますから、そこに不合理に近いものが出てくる、こういうことでございます。しかし、これはこういうことをこういう席で申し上げておしかりを受けることになるおそれがあろうと、こうびくびくしながら言うのでありますけれども、ありのままに申し上げますと、四種類の計算書類は一億以下の会社、すなわち中小企業会社といえどもつくらなければならぬことにはなっておるけれども、金のかかる、時間のかかる、手続のめんどうくさい公認会計士の監査は要らない。もう一つは、株主総会を開きます場合に事前に株主総会に送付をする義務も実は一億以下のものには負わしてございません。そういうことでございますから、そんならどうでもいいのか、そう言われると、こういう席において答えはできかねるのでありますけれども、一億以下のものについてはたいへんルーズな考え方に立っていきましても、えらいむずかしいことにはならないように実はできております。いろいろな義務が免除をしてございます。そういうことでございますので、この運営にあたりましては極力中小企業者が不便のないように、めんどうなことにならないようにこれを指導していくつもりでございます。
  278. 原田立

    委員長原田立君) 諸般の事情により暫時休憩いたします。    午後五時四十分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕