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1973-09-13 第71回国会 参議院 法務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年九月十三日(木曜日)    午前十一時十八分開会     ―――――――――――――    委員の異動  九月十二日     辞任         補欠選任      松本 賢一君     鈴木  強君  九月十三日     辞任         補欠選任      小笠原貞子君     渡辺  武君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         原田  立君     理 事                 後藤 義隆君                 中西 一郎君                 佐々木静子君                 白木義一郎君     委 員                 木島 義夫君                 原 文兵衛君                 吉武 恵市君                 鈴木  強君                 竹田 現照君                 渡辺  武君    国務大臣        法 務 大 臣  田中伊三次君    政府委員        法務大臣官房長  香川 保一君        法務省刑事局長  安原 美穂君        法務省人権擁護        局長       萩原 直三君        法務省入国管理        局長       吉岡  章君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局刑事局長   千葉 和郎君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君    説明員        警察庁警備局外        事課長      佐々 淳行君        外務省アジア局        外務参事官    中江 要介君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (国選弁護人報酬に関する件)  (金大中事件に関する件)     ―――――――――――――
  2. 原田立

    委員長原田立君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、先に、これは私とそれから白木理事と共同で発議しておりました刑事訴訟法及び刑事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案というのを先日来いろいろと御審議賜わって、ありがたく感謝しているわけでございますが、きょうはこの法案というもの自体は離れまして、一般裁判運営に関する問題として、私から法務大臣最高裁判所のほうに、若干、国選弁護に関する件についてお伺いさしていただきたいと存じます。  まず、法務大臣にお伺いさしていただきますけれども大臣の御答弁にも前にお触れいただいた件でございますが、国選弁護人に関する報酬がたいへんに低額である。そういうことから、訴訟記録のいわゆる謄写料というふうなものにも十分満たない場合も往々に起こってくるというのが現状なわけでございますけれども、そういうことから、私どもも再々大幅な価額の増額というものをはかるべきであるということをお願い申し上げているわけで、大臣からも先日は非常に心強い御答弁をちょうだいしておるわけでございますけれども、一番の責任大臣として、この問題についての率直な御意見というものを重ねてお伺いいたしたいと存ずるわけでございます。
  4. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) まず、国選弁護人に対する報酬がお説のごとく低過ぎるではないかという問題でございます。私も、諸般の状況から判断をいたしますと、お説のとおりこの報酬一般として低過ぎる、これを相当幅の増額をいたしますことは当然である、こう考えます。  それからもう一つの、謄写記録その他、検察庁においても裁判所におかれても、弁護人に対して便宜をはかるべきであるという便宜供与の問題でございます。これもいろいろございましょう。いろいろございましょうが、これもお説のごとく賛成でございますので、できるものから漸次全国的に実施していきたい、そうして、御要望に沿いたいと、こういうふうに考えるわけでございます。
  5. 佐々木静子

    佐々木静子君 在野法曹としてたいへんに、何十年も御経験の深い大臣でいらっしゃるだけに、非常に御理解の深いおことばを賜わりまして、ありがたく、ぜひそれが現実に、できるだけ早い時点に実現していただきたいとお願い申し上げたいと思いますが、同じ点について、最高裁判所のほうからお伺いしたいと思います。
  6. 千葉和郎

    最高裁判所長官代理者千葉和郎君) 国選弁護人報酬増額につきましては、これまでも努力を重ねてきたつもりでございますが、御指摘のとおり、現在の報酬額国選弁護人の活発な弁護活動に報いるには決して十分なものでないというふうに私どもも考えております。今後とも、国選弁護人報酬については、その活動にふさわしいものとなるように努力を重ねたいと思いますが、ことしは特に、格別に努力してやっていきたいと、かように思っております。
  7. 佐々木静子

    佐々木静子君 たとえば予算増額など、かなり考えておられるわけでございますか。どのような要求になっておるわけでございますか。
  8. 千葉和郎

    最高裁判所長官代理者千葉和郎君) 従来の経過を見ますと、大体一〇%程度しか増額になってきておりませんのですが、ことしはそれをもう少し大幅にふやして要求したいと、かように考えております。
  9. 佐々木静子

    佐々木静子君 直接この問題を、予算面におきましてはやはり法務大臣お力にあずかるところが多いと思うわけでございますが、具体的には、大臣とすると、ことしはさしあたり無理でも、来年は相当な増額責任をもって取りつけていただけるわけでございましょうか。いかがなものでございましょうか。
  10. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 予算獲得の問題でございますが、これはありのままに申し上げますと、私の所管でなくて、裁判所じきじきの御交渉が実を結んで結果が出ます。これを閣議に持ってまいりまして、閣議で決定して最終決定とするという筋になっておるのでございます。ございますが、何ぶん裁判所のほうと私のほうとは何かにつけて緊密な関係もございます。私は、この方面予算増額につきましては、裁判所の御要請の線に沿いまして、微力ながら側面から努力をしてみたい、こう考えます。
  11. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから、大臣の先ほどからのお話にちょっとございましたが、実質的にいろんな便宜をはかりたい、はかってあげたいというお話でございます。たとえば、私も、大臣の足もとには及びませんが、大臣の半分ほどの期間弁護士をやっておるわけでございますけれども国選弁護記録閲覧に参りましても、閲覧する場所も、あまり落ちついてすわって閲覧できる場所がないとか、閲覧室というものが検察庁につくってあっても非常に狭隘であるとか、また、コピーをするといってもなかなかそういうことが簡単にできない。そんなことで非常にむだな労力も使わなければならない、費用も高くつくということが現状でございますが、具体的にどういう方法をいま検察庁としたらお考えいただけるのか、具体的な方法をお述べいただきたいと思います。  たとえば、国選弁護事件で、これは捜査が終わってから国選弁護ということがきまる場合が多いとは思うのでございますけれども捜査記録を、調書をとるときに複写でとっておいていただければ、これはあまり労をかけずして一部多くできるわけでございますので、弁護活動というものもやりやすい、訴訟の迅速というようなことにもプラスするんじゃないかというふうに思うわけでございますが、どういうふうなことを具体的にお考えいただけるかということを、刑事局長からでけっこうでございます、どうぞお聞きをいたします。
  12. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 具体的に御指摘の、部屋が狭い、謄写閲覧場所が狭いという問題につきましては、庁舎スペースの許す限りにおきましてできるだけ広いスペースをさいて謄写閲覧における国選弁護人便宜に供したいというふうに思っておりますが、要するに、できる限り御要望の趣旨に沿って、できるものから極力実現していくということに尽きるわけでございますが、いま御指摘記録の作成、調書供述調書等を作成するときにそれのコピーをつくってくれないかというお話でございますが、これはまた人手を要することでもございまして、御案内のとおり人手が足りないで困っている検察庁でございますので、それは直ちに御要望に沿うというわけにはいきませんけれども、できるだけの余力が生じますならば、そういうことも考えてみたいと、かように考えております。
  13. 佐々木静子

    佐々木静子君 どうも前向きの御答弁をいただいてありがとうございます。  裁判所のほうにも同じような点につきまして、実のところはまだ検察庁のほうは謄写室というようなものがある場合が多いわけでございますが、裁判所の場合は、特に書記官室の横のほうのどこかあいているいすでもつかまえて、そこでこそこそと、何か隠れてこそこそと写してこなくちゃならないというふうなことが実に多いわけでございますが、これではほんとうの意味の弁護活動というものはとうてい期待できないというような現状でございますので、ひとつどういうふうなことを具体的にお考えいただけるのか、お願いいたしたいと思います。
  14. 千葉和郎

    最高裁判所長官代理者千葉和郎君) 現在の記録閲覧謄写室整備状況は必ずしも確実に、正確に把握しておりませんのですが、庁舎が次第に整備されてきておりまして、独立謄写室を持つところもだいぶふえてきております。それから、独立部屋がなくても、管理官室に仕切りをしまして、そこで落ちついて謄写閲覧ができるような設備を順次やっておりますが、御指摘のとおり完全ではございません。それらを含めまして、営繕の関係にもなりますので、それらの予算的な手当もいただきまして、逐次整備していきたい、かように思っております。
  15. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまお話にもございましたように、裁判所のほうもどんどんと新しい庁舎が建ちつつございますので、ぜひともそういう面にも御留意いただきまして、これは刊事局長の直接の御管轄じゃないかもしれませんが、最高裁全体としてぜひともそういう点にも、各下級裁判所御留意いただきまして、十分な謄写を、しかも弁護人の負担じゃなしにできるだけ訴訟活動が十分にできるだけの謄写を国としても確保していただけるように心よりお願いしたいと思います。  最後に、大臣に、やはりこれは予算要求権は直接最高裁がなさるということはわかるのでございますけれども、何といいましても法務省のバックアップ、特に大物大臣がおられるわけでございますから、大臣お力に負うところがたいへんに多いと思いますので、どうぞその点重々御留意をいただきたい。そのことについて、もう私のこの件についての質問は終わりたいと思いますが、最終的に法務大臣のお考えというものを結論的におっしゃっていただきたいと思います。
  16. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) いま裁判所からも御答弁をいたし、私たちからもお答えをいたしましたとおり、これを単なる答弁でなくて、実現できますように、微力ながら腐心したいと、こういうように考えております。
  17. 佐々木静子

    佐々木静子君 どうぞよろしくお願いいたします。  それでは時間の関係もございますので、次の問題に移らせていただきたいと思うわけでございます。  これは先日来大臣に非常にいろいろと御奮闘いただいております金大中事件につきまして、重ねて私、若干質問をさしていただきたいと思うわけでございます。  一昨日の法務委員会におきまして、主権侵害の問題で大臣にいろいろと私のほうからお尋ねさしていただきまして、きわめて示唆に富むところの御答弁をいただいたわけでございます。私ども最初考えておったのでは、国家機関人間が行なった場合は、そのことだけで公権力の行使というふうに判断できるんじゃないかというふうに考えておったわけでございますけれども職務行為という事柄について大臣お話があり、その職務行為ということは何かというようなことから、私が、人を拉致誘拐するような職務行為というものはあまりないんじゃないかとお尋ね申し上げましたところ、いやそういう職務行為もあるんだというお話で、そして、しかしその立証がどういうふうにしてつくであろうかと私も大臣にお教えいただいたわけでございますが、大臣のほうもかなりこれは確たる自信を持って、証明はつけるというふうなきわめて前向きの御答弁をいただきまして、たいへんに目の前が明るくなったような、これは私一人じゃない、全国民がそういう気持ちを味わったのではないかと思うわけでございますが、その後それを証拠づけるような資料というものがさらにかなり出てきておるのかどうか、その点についてちょっとお伺いしたいと思います。
  18. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 職務行為だということを立証するに足る証拠がその後あらわれておるかどうかという問題でございますが、理屈を言うようで恐縮でございますが、まだ事件は私のほうに送付されていない現段階でございます。警察第一線捜査当局のほうからお答えいただくことが適当であると思います。
  19. 佐々木静子

    佐々木静子君 お越しになったところでなにでございますが、警察の方でその後の、一昨日かなり前向きの御答弁をいただいているわけでございますが、その後私ども新聞情報では、ある程度また捜査をたいへんに御努力なすって進んできているということはお聞きはしておりますけれども現時点においてかなり前進しているのかどうか、経過を伺いたいと思うわけです。
  20. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) その後の捜査進展状況について御報告いたします。  昨日、新聞に出ておりますように、当時地下駐車場から関係時間帯に表に出ました三十台、このうち五台全国手配をしておったわけでございますが、二〇七七というナンバーの車がこの時間帯におったということはすでに確認をされておったわけでございますけれども、昨日までの捜査段階で、この二〇七七というナンバーの車は都内だけでも百六十一台あったわけでございますが、そのうちの一台、品川五五-も-二〇七七という車が、先般九月の五日に帰国をいたしました大阪総領事館劉永福という副領事の使用しておる車であったということが判明をいたしました。しかしながら、この百六十一台の二〇七七の車のうち、かなりな部分がすでにシロとなっておりますけれども、この問題の品川五五-も-二〇七七、この車が当時グランドパレスホテルにあった二〇七七であるのかどうか、この点について完全な裏づけができておりません。この点鋭意捜査中でございますけれども、この車は当日十時十四分に地下駐車場に入りまして、十三時十九分に出ておる。入庫をいたします際に、係員に対しまして、どちらの車ですかという質問に対し、住宅公団の者だ、宴会に出るのだ、こういうことをその車の運転者が言ったということになっておりますが、この該当ナンバーのものは住宅公団にはございませんし、当日の宴会に出ておらない、こういうことで、不審な車であるというふうに見ておったわけでございますけれども、これが現在のところ劉永福領事の車であったと断定する段階には至りませんけれども不審車両の一台として、現在その裏づけに急いでおるところでございます。
  21. 佐々木静子

    佐々木静子君 ナンバープレートの偽造といいますか、つけかえてくれというようなことであらわれてきた車がこれと一致するわけでございますね、どういうことでございますか。
  22. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) この車につきましては、日産のスカイライン二千CCというシルバーグレーの車でございまして、先ほど申しましたナンバーであったわけでございますが、現在車庫に入っておりまして、御承知のように車のナンバーを廃棄いたします場合には廃車届けが必要なわけでございます。その車につきまして、韓国大使館職員が参りまして、ブループレート――外交官ナンバーに変えてほしいという申し出があった、これに対しましてガレージの者が、そのためには廃車届けその他の手続が要る、こういうふうに申しましたところ、その手続を進めるということで、現在手続中である。すなわち劉永福領事の使用しておった民間ナンバーの車を今後は大使館用の車にしたい、こういう申し出があったと承知しております。
  23. 佐々木静子

    佐々木静子君 この大阪領事館劉永福についての調査ですね、それはかなりにできているわけでございますか。
  24. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) まず一点、訂正をいたします。私、いま大阪と申しましたが、横浜の誤りでございます。  この劉永福領事につきましては、九月の五日に出国をしておりまして、現時点、この事情を聴取したくも不在である、こういう悪条件でございます。現在、この車がはたしてグランドパレスホテルにありました二〇七七かどうか、現在裏づけ捜査を急いでおるところでございます。
  25. 佐々木静子

    佐々木静子君 この法務省がお出しになった出国者十三人の名簿の中に、神戸領事館の人は全然出ておらぬわけでございますけれども神戸領事館員がこの機会に移動したという事実はないわけでございますか。これは法務省警察庁、両方から伺いたいんですが。
  26. 吉岡章

    政府委員吉岡章君) 入管で調べました範囲では、神戸領事館員出国したという事実はまだつかんでおりません。
  27. 佐々木静子

    佐々木静子君 警察のほうは。
  28. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 警察のほうも、出入国管理に関しましては私ども所管でございませんで、そのつど入管のほうからお教えをいただいておりますので、同様、掌握しておりません。
  29. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはしかし神戸で、容疑者ではないというようなことになったのかどうなったのか知りませんが、安という人が問題になっておった。安は、出頭すると言っておきながらどっかへ行ってしまった。当時の新聞情報ではもう本国へ帰ったということになっておりましたけれども、その安はその後どうなっておるのか。それから李台煕という人ですね、この人のことについて捜査なすったことがあるかないか、その人はいまどうなっているか、そのことについて伺いたいと思います。
  30. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) まず、安についてお答えをいたしますが、この関西方面におります領事館員の安という人たちが取りざたをされるようになりましたのは、御承知のように金大中供述の中に、移送の途中、強制連行の途中、運転手に対して「アンの家に行こう」ということを言ったということを被害者金大中氏が耳にされておると、こういう供述がもとでございまして、さらに、神戸領事館安潤璟という職員が問題になりましたのは、田先生が、当委員会でございましたか、その名前をあげられたというところから始まっておるわけでございます。  安潤璟という職員は、神戸領事館経済担当の者でございまして、よく調べてみますと、三階建ての領事館の中に住んでおりまして、事実上管理人のような役目を兼務しておる者でございます。日常的には受付の業務をやっておるようでございまして、本人は、新聞に出ました段階で、非常に自分は心外である、この件についてはどこへ出てでも身のあかしを立てたいと、こういうことを新聞記者等にも語っておられる由でございまして、これに対して任意出頭をかけたかどうかということがこの前も問題になったかと思いますが、私ども安潤璟氏に関しましては、金東雲氏の場合のようなはっきりした証拠、指紋が一致したとか目撃者がいたとか、こういう確たる証拠を持ち合わせておりませんでしたので、正式の任意出頭をお願いするには不十分でございました。ただ、私どもの意向として、まあ新聞記者取材等機会お答えをいたしましたのは、もしも御本人が進んで出頭をして個人として捜査協力をしていただけるならば、これはたいへんわれわれとしては歓迎をすると、こういうことを申しました。その後出頭するかどうか待っておりましたんですけれども、やはり、何かこれは領事館全体の方針の問題のようでございますけれども個人としてでもいまこの時点出頭することはしないと、こういうことで、今日に至るも進んで私ども捜査に御協力をいただくという状況にはなっておりません。  それから、これはもうすでに出国してしまったのではないかと、こういう御質問でございますが、出国をいたしました安と申しますのはこれとは別人でございまして、安潤璟という人はまだ神戸におります。たまたま大阪総領事館安竜徳という人がおります。この人は総領事運転手のようでございますが、この安竜徳氏が出国をしておりまして、七日の日に伊丹空港から出国をしております。この安竜徳氏のほうにつきましても、具体的な容疑がない、これといったきめ手もないという段階で、この人については任意出頭云々ということはまだ取りざたされていない段階でございましたが、非常に話題になっておりました安潤璟氏のほうは残っておりますけれども安竜徳氏が出国をしてしまった、こういう状況でございます。
  31. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから、神戸領事館李台煕という人については御捜査していらっしゃらないわけでございますか。
  32. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 失礼いたしました。その李台煕かと思います。朴正煕の煕という字だと思いますが、この李台煕氏につきましても、本委員会でございましたか、外務委員会でございましたか、同じく田先生がこの名前をあげられたと、こういうことから、私どもといたしましては十分な関心を持ってその実情について調査をいたしておりますが、私ども承知しておりますところでは、本人アリバイがある、その関係のある七日、八日、この辺はどうもゴルフをしておられたと、ゴルフの署名であるとか、こういうものが残っておって、本人はそういうアリバイを、これは警察に対してではございませんけれども、いろいろの形で申し立てておると、こういうことでございますが、私どもといたしましては、十分な関心を持っていろいろ調べておるところでございます。
  33. 佐々木静子

    佐々木静子君 捜査当局とすると、この李台煕という人ですね、これはKCIAだと確認していられるわけですか。
  34. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 前回の当委員会でも重ねて御答弁を申し上げましたように、現在までの捜査段階では、KCIA員であるということを確証をもって認定をいたした者はまだ残念ながらおりません。
  35. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは先日大臣にもお伺いしたのですが、KCIAだという辞令が別に出ているか出ていないか知りませんが、これはこういう辞令をもらったと額にかけているKCIACIAもだれもおらぬと思うわけなんです。また、自分CIAであるというようなことを胸のバッジにつけて歩いている人間もおらぬじゃないかと私思いますので、これは本人が自供するか、あるいは韓国政府が、実はこれがそうなのだと言うか、そのほかといえば人的証拠――証人による以外にないのじゃないか。大臣証人という動かせぬ証拠があるというふうな、これは李台煕じゃなくて、別の件についての御発言でございますが、この李台煕という人が、自分韓国CIAだと名のっておる、人に言ったことがある、そういうふうな情報警察はつかんでおられますか。
  36. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 秘密情報部員が、自分秘密情報部員であるということを、少なくとも公式に認めるということは御指摘のとおりなかなかないわけでございまして、現在までのところ、本人がそういうことを認めたということを私どもとしては確証をもってはつかんでおりません。
  37. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは警察出頭して本人が言ったということは私もないと思うわけでございますけれども、実は大阪神戸に住んでおる――ちょっと名前はここで申し上げることできませんが、数名ほどの人から、この李台煕自分KCIAだということを聞いたという人がいるわけでございます。主としてそれは皆CIAに入るように勧誘された、しかし結果的には断わったという人たちからの申し出でございますけれども。そうして、これは全部個別的な話ですけれども神戸韓国領事館に呼ばれて、そうして情報の提供を頼まれた。いい情報を持っていかなかったときに、非常におこって、なぐって領事館内でけがをさせられた、そういうことで負傷をした本人から、自分CIAに入るように頼まれて、入ろうかどうしようかと思っておったけれども、そういうことでけがまでさせられて、そうして、自分を単なる外交官と思って軽く見るな、自分韓国CIAかなりの幹部なんだという話を聞いておるわけです。そういうようなことが負傷された人たちから問題になって、実は自分もそういう目にあったのだという人が、私の知っている範囲だけでも数名おるわけです。で、そのことについて、この李台煕という人が、これはいまこの事件が起こってからじゃないですよ、起こるちょっと前ですよ、そのうちの一人にわび状を入れている。自分韓国CIAの幹部だというわび状じゃないですよ。負傷させて申しわけなかった、以後そういうことはしないというわび状になっておるわけですが、その負傷をさすに至るまでに、神戸領事館の密室に連れ込まれてかなり暴力をふるわれた。そのときの話に、自分はいまも言うように単なる外交官じゃない、CIAの幹部なのだ。それが、数人の人がそういう目にあっておる。私が知っているだけで数人だから、さらにもっとあるんじゃないかと思いますが、そういう点について神戸大阪方面の御捜査というものがどの程度できておるか、お尋ねしたい。
  38. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 私どものほうには残念ながらそういう被害申告が参りません。これは実は、こういう事件の一番むずかしい点でございますのは、なかなかかかわり合いになることをおそれまして、いろいろあちらこちらではそういうことを言っておられるということを耳にすることもあるわけですけれども警察にそういう被害の状況を訴えて出てくるということがなかなかないわけでございます。目撃者等がなかなか出なかったということについても同様でございまして、やはりかかわり合いをおそれてなかなか出てくれない、出てまいりましてもなかなか供述をしてくれない、こういうのが私ども捜査の一つの難点になっております。  ついでにその車のことを申し上げますと、わずか三十台の車がどうして割れないんだということをしばしば御質問を受けるわけでございますけれども、たまたまこれは車が下四けたの番号しか控えてなかった、あすこのグランドパレスの駐車場では下四けたの数字しかとっていないということから、このナンバーのものは、全国に、多いものは二百台ぐらいあるという事情もございましたが、たぶんそのときそこにおられた車であろうという車を突きとめて、その持ち主の方あるいは運転手の方に伺いますと、これまたかかわり合いをおそれて、自分はいなかったということを主張されると、こういう、私ども警察の立場からいたしますと、何とかもう少し協力をしてもらいたいというふうに感ずるようなやはり捜査上の困難性というのがあるわけでございます。ただいまのようなお話につきましては、私ども、本日こういうところで正式に伺いましたので、十分参考にさせていただき、調査をいたしたいと思いますが、なお、そういう被害者の方にはひとつ勇気を持って警察に申告をするよう御激励をいただければたいへんありがたいと思います。
  39. 佐々木静子

    佐々木静子君 ただ、実際問題として暴力を受けたのが韓国領事館内である、そして相手が、本人は、自分は外交官、副領事という肩書きだけれども、実際はCIAだと言っている。しかし、そういう場合に申告しても、警察は、調べに行くわけにもいかないし、本人を呼ぶわけにもいかないとおそらくおっしゃるだろうと思うんですよね。そうなってくると、申告したということだけがわかると本人たちどころにあぶない状態になる。そこら辺のところで、非常にいまのやり方では悪循環があるわけなんです。  で、私、これは直接事件関係のない夏谷進という人についても、先日来、外務省の中江参事官にもお伺いさしていただいた。そしてこれは初め帰化日本人というふうに聞いていたけれども、これは最初からの日本人で、日本にいる限りにおいては韓国の法律の適用を受けるわけじゃないじゃないかということで申し上げたわけでございますけれども法務省のほうでは、しかし、その反共法とか国家保安法はあるいは韓国以外の領土にも及ぶというふうになっておるのかもわからぬというふうなぐあいのお話だったわけで、実は私もあのとき刑事局長に、たいへん失礼ではございますけれども、これほど問題になっている反共法、国家保安法を、私もあのとき持っていて、その適用の範囲というものがすぐに浮かんでこなかったわけでございますけれども、その後、おそらくあのとき出席なすっていらした方は皆さん急いであの反共法と国家保安法をお調べになったと思うわけでございますが、適用の範囲はどうなっておりましたですか。これ刑事局長にお伺いいたします。
  40. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 外国の法律、まあ弁解のようですが、日本の検察が適用するのは日本の法律でございますので、外国の、韓国の反共法がどういう、領土の効力範囲として国外犯を処罰することになっているかどうかを職務として調べなければならぬということはないと思いますけれども、私の聞いているところでは、国外における犯罪についても適用があるというように聞いております。
  41. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはいま夏谷進さん、日本人も、そういうことで、あるいはそのことばかりではないかもしれないけれども、問題になっている。在日韓国人はもとより、日本に帰化した人についてもかなりな問題になってくるんじゃないか、こういうことで、これは人権擁護局にお伺いしたいのでございますけれども、人権擁護局にしてみても、日本人の人権だけで、日本にいる外国人の人権などはもうどうなっても、虫けらと同じでいいんだとはよもやお考えになっていらっしゃらないと思いますが、事件が起こってから一カ月半ほどたっておりますが、人権擁護局長は、この法律についてどのように御見解をお持ちですか。
  42. 萩原直三

    政府委員(萩原直三君) ただいまの韓国の法律については、申しわけございませんが、よく存じておりません。
  43. 佐々木静子

    佐々木静子君 日本には在日韓国人だけで六十万おるわけですよ。私どもの住んでおる大阪には二十万もおるわけですよ。これは四国で一番大きな都市の人口と匹敵するだけの人が大阪だけでも住んでいるわけですよ。日本人の人権もむろんですが、五万とか一万とか住んでいる外国人のそこの法律までは知らぬでも――これは私、そう事こまかには申しませんけれども、これだけ圧倒的に、日本にいる外国人と言えば、もとより韓国人、朝鮮人の方がほとんどである。しかも距離的にも一番近い。しかも金大中事件が起こって翌日にお尋ねして、勉強していないとおっしゃるならともかく、いまこの反共法、国家保安法というものがたいへん問題になり、しかも私どもがこれを一カ月声を大にして、いまの朴政権というものは非常に反民主的なおそろしいことをやっておると言っているにかかわらず、いま総理大臣にしても、韓国は民主的な憲法を持っている民主的な国だと言っているわけですよ。勉強もしないで、担当の法務省が、こんな薄い法律ですよ、ここにごらんのとおり反共法と国家保安法は。これもお読みにならないで、いや人権がどうの、やれ何がどうの、治安がどうのというようなことは、私、非常に無責任お話じゃないか、そういうように思うのですけれども大臣はどうお考えになりますか、いまのお二人の御答弁をお聞きになって。
  44. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) この韓国の国家保安法、こういう種類の法律が、日本国において起こったことにも適用があるという規定がありましても、韓国の捜査官が日本に来まして、日本で捜査を行なう、人を尋問する、人のからだを拘引する、こういうことを行ないまするには、主権国たる日本の承諾が要る。承諾なしにこれを行なうということは主権の侵犯である、こういうことになるものと判断をいたします。
  45. 佐々木静子

    佐々木静子君 外務省に伺いますが、いま韓国へ日本から、一カ月、商用あるいは観光客で何人の人が平均行っておるか、それを先に伺いたいと思います。
  46. 中江要介

    説明員(中江要介君) 外務省では通常、正確に把握しておりませんので、あるいは出入国管理当局のほうでは数字をお持ちかと思います。
  47. 佐々木静子

    佐々木静子君 じゃ法務省のほう、お願いいたします。
  48. 吉岡章

    政府委員吉岡章君) 私どものほうでも、ただいまの時点におきましては、一カ月どれぐらい出ておるかという数は把握しておりません。出入国のカードに基づきまして調べるということにいたすならば当然出てくる数字でございますけれども、現在ここに持っておりません。
  49. 佐々木静子

    佐々木静子君 私、さっきから各三人の局長と参事官の御意見を伺っていると、私非常に日本政府が日本国民に対して無責任な御答弁じゃないかと思うんです。いま法務省刑事局長の、これ、前回及び今回のお答えでは、自分は調べておらぬけれども、聞いているところでは、たぶんこの法律は韓国外におる外国人にも適用するんだと思うというお返事なんですね。それに対して大臣は、まあしかしそうであっても日本まで捜査官憲は来ないからだいじょうぶだとおっしゃっているわけなんです。そして一方、日本は言論は自由、思想は自由、むしろ南北朝鮮の統一などというようなものは、反対している人間が少ないのであって、日本人の大多数は、南北朝鮮が統一されて友好的な、日本と平和な関係を結ぶということを歓迎、支持しているわけです。しかし、それはこの反共法、朴政権の反共法には触れるわけです。そういう状態で、そのことを日本人に知らさぬ、知らすも知らさぬも、一番の肝心の法務省の一番偉い方が、どうなっているか知らぬ。それもやぶから棒に伺って知らぬじゃなくて、このことを何回も伺っているのに、まだこの薄い法律を調べておらぬ。察するに、という御返事だけで。しかし、まあ日本へ捜査官が来たときには正式な日本の承諾がないとつかまえられぬから何の心配も要らぬのじゃと大臣はおっしゃるけれども、日本人が、韓国へ毎日どれだけの人が旅行や観光に行っているかということは、もうこれは各週刊誌に書きたてられている、それが私もいいとは必ずしも言えないけれども、まあいま現実にはそういう現状なんです。いまの皆さん方のお説を総合すると、行った者のうちの半分ぐらいが南北朝鮮の統一を支持しているということで、反共法違反で、ソウルの空港でぱくぱくぱくとつかまえられても、これは日本政府としては異議が言えぬということになるわけですね、そうすると。どういうことですか、大臣お答えを願いたい。
  50. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) おっしゃることはわからぬではないんですが、理論的に申し上げますと、先ほど申し上げたように、韓国の反共法なり国家保安法というものが日本に在住する韓国人にも及ぶということの規定は合理的に幾らでもつくれる。つくれるが、実際において母国である韓国の反共法、国家保安法に違背した行動があった場合に、これを適用するには、韓国に帰ってくるか、本人の任意の同意を得て韓国に連れ戻るか、帰ってきたのを捕えて調べるか以外にない。日本へ乗り出してきて取り調べをする、拘引をする、逮捕する、そんなことは許されぬ。やれば主権の侵犯である。こういうことでございますから、日本の立場から申しますと、そこをはっきりしておけば、韓国人が母国へ帰ると、帰ることは自由に帰れるわけでありますから、日本で判こさえもらえば百二十六の港、どこからでも帰っていける、自由に帰れる。これをとめる権利は日本にはない。お帰りになる、帰って調べを受ける、これは韓国の権利で韓国がやることだ。韓国の法律で韓国がやることだ。これ、日本からどうこう、それは危険なことじゃないかと、それで人権侵犯上いいのかというようなおことばもいかがなものかと思うんですね。韓国、自由にやってよろしい。日本の領土に来てやる場合においては日本の了解をとれ、こういうことになるわけで、日本の領土におらないで、日本におるやつが韓国に帰ってくる、来たらその瞬間をとらえて取り調べをするということ、これは韓国がおやりになる、韓国の主権でやる。そんなことはたいへんなことではないかと、日本におったことがあるではないかと、それはどうもそこまで日本の政府が言いかねる、責任も持ちかねる、帰って向こうでやることはしようがない。こっちにおる場合においては、日本の承諾なしに捜査はやらさぬ。司法警察権の行使は許さないんだと、こういうことでやると、道理は何か先生、合うておるように思うんですが、おかしいでしょうか。
  51. 佐々木静子

    佐々木静子君 大臣、ちょっと問題がはずれていると思うんです。私先ほど来ずっと申し上げているのは、夏谷進という人は日本人なんですよ、最初から。その最初からの日本人がですよ、反共法違反でソウル空港へ着くと同時につかまったという問題を言っておるわけです。それに対して、まあ夏谷進の場合はあるいはほかの犯罪容疑があったのかもわかりません。ところが、私もそれはいま大臣言われるように、最初韓国人で、帰化して日本人になった、そしてその韓国人である間に反共法違反のことがあったので、日本人だけれども、ソウルへ着いてつかまったんだと、空港でつかまったんだというふうに理解しておったわけなんです。  ところが、前回の法務委員会の問答では、韓国の法律の適用の範囲は、韓国の国内で外国人がこの反共法違反を行なったときには、それはつかまるかわからぬ、あるいは韓国の国民が韓国以外で反共法違反の行為を行なったらそれはつかまるかわからない、それはいま大臣おっしゃるとおりなんです。かもわからぬけれども、日本人がソウル空港でつかまるというのは、ソウルに着いてまだ何にもスパイ活動、反共法違反のことをやってないと常識的に考えられるわけですね。ソウル空港でつかまえるからには、令状持っているだろうと思うから。まあ、この夏谷の場合は何か別の件があるかもわからないんですけれども、そういうことがおかしいじゃないかと前回お尋ねしましたときに、刑事局長が、詳しくは読んでおらぬけれども、日本の法律でも、日本人以外に効力が及び、かつ日本の領土外で違反行為があったときには効力が及ぶ場合がある、ただし、それを外国の領土に乗り込んで行ってひっ捕えることはできないけれども、日本へ入ってきたときに捕えることはできるというふうに御答弁になったわけですからね。  ですから、それだったら問題ではないか、もっと日本人は真剣にこの反共法、国家保安法を調べておかないと、私の聞いているところでは――聞いているところって、これ調べたところでは、南北朝鮮の統一を支持するというふうなことを言っても反共法に触れるらしい。そしてそれは韓国人だけじゃなくて外国人にも触れるらしい。それが外国でそういうこと、たとえば日本人が日本でそういうことを言っておってもこの反共法に触れるらしいというのが刑事局長の御見解なんですよ。まあそれに対して大臣は、しかし韓国の捜査権、それじゃ警察が逮捕に来たとき日本政府は拒否したらいいじゃないかとおっしゃるけれどもね、日本人は一日に、私、何万か知らぬけれども、韓国へどんどん、もう飛行機満席、いつでも満席で、観光客やら商用の人がどんどん行っているらしいですよね。で、日本人のいま行っている人間はみんな朴政権万歳と叫んでいる人間ばかりじゃないので、むしろ日本全体から見るとそういう人はきわめて少ないわけで、そうするとそういう人たちがみんなソウルでぱくぱくぱくとつかまえられて、パクさんにぱくぱくつかまえられて、そういうときに法務省は何も手を打てぬことになるじゃないか。そういうふうなあぶない状態にあるのにですね、法務省の最高責任者が、まだ国家保安法も反共法も詳しくは調べておらぬが、というような状態じゃ、とてももう心細くてしかたないじゃないかいうことを申し上げているわけなんです。おわかりいただけるでしょうか、私の言うている趣旨。いかがでございますか。
  52. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) それ、おっしゃることよくわかると初めから申し上げておる。たいへんよくわかるんですよ、親切な考え方で。つまりね、日本人という立場におっても隣の国の法律をわきまえておってやればいいと、こういうことですが、日本人は、日本の国内においては、韓国のその国家保安法、防共法、これは守らぬでいいんです。守らなければならぬのなら、調べてよく教えておかなければいかぬことになる。それは守らないでよろしい。韓国人は日本においても、日本に住んでおる韓国人は韓国の法律は守らなければならぬのですよ、外国に効力が及びますから。日本人は韓国人じゃないんだから、お隣の韓国の防共法、国家保安法は守らないでもいいんです。守らないでもいいから、日本でそれに違反をすることがあっても問題はないんです。罪はゼロです。罪はゼロだが、日本でそういう罪はゼロであるけれども、そういうことをやっておった方、しておった、そういう人物が韓国の飛行場におりたと、おまえは日本におった日本人じゃけれども、おれの国の法律に違反をしたことをやっておったんじゃないかといって取り調べをするということは不法である。国際的に許されぬ。許されぬでも、しかし先生仰せのとおりそういうことが現実にあったとすれば、どういう救済の方法を講ずるかというと、けしからぬじゃないか、何をしているんだ、そんな国際法がどこにあるんだといって、日本は外交的ルートを経てこれに対して文句を言うて救済をするという道が筋になります。  それから日本の法務省、私は、法務省も悪いところがいろいろございましょうから、悪いところはしかっていただいて、私もこれえりを正して反省をしてやっていくのでありますけれども、あの韓国の法律を日本人に知らしめなければならぬという筋は、先生、出てこぬのですね。それ知らして、隣同士の仲のよい国のことですから、それは知らして大いによく理解をさしておくということはたいへん悪いことじゃないのでございますが、まあこういう席における理屈を申し上げますと、ちょっとそこまで無理ではなかろうか。そんなことせぬでも危険はないんだと。先生おっしゃるようなことがあったとするなら遺憾しごく。それは日本がぼんやりしておったらいかぬ。仰せのとおりにこれは韓国に外交ルートを通じて、何をしておるかということを厳格に申し入れるべきものでございます。これは反省の材料としてしっかり考えていかなきゃならぬものと思います。
  53. 佐々木静子

    佐々木静子君 もう時間がありませんので、私もうこれで終わりますが、これだけ金大中事件というものが騒がれている、しかもその一番の法務省のトップの方々が、ごつい法律ならともかく、こんな薄い反共法と国家保安法をまだ知らない、読んではおらぬ、まあほんとうかうそか知りません。私、優秀な方々だから、ほんとうはもう宙で言うぐらい読んでられるんだと思いますが、しかし、やはり責任者としてはしっかり勉強をしていただきたいと、そのことを申し上げて、私の質問を終わります。
  54. 吉岡章

    政府委員吉岡章君) 先ほど佐々木先生のお尋ねの数字でございますが、月別のやつはございませんが、四十六年と四十七年の一年間の数字は手元にございますので、ちょっと申し上げますが、四十六年に韓国に出ました日本人の数は八万二千四十六人でございます。それから四十七年に韓国に参りました日本人は十八万二百二十人でございます。
  55. 白木義一郎

    白木義一郎君 最初に入国管理局長さんにお伺いいたしますが、今回の事件で、新聞等を拝見しますと、捜査当局がいろいろと捜査をしたいというような、あるいは参考意見を聞きたいというような人物が次から次へと帰ってしまう、そのことについてはどうしようもないのだ、現行法では。これも伺いました。  そこで、今回の事件を契機として、将来の問題としてこういう問題をどうこれから扱うか、対処するか。おそらく捜査当局だけじゃなくて、私たちも非常に無念の思いを持たざるを得ないわけです。それで、今度の問題には間に合わないにしても、将来において何か対策が考えられているかどうか、お伺いしたいと思います。
  56. 吉岡章

    政府委員吉岡章君) 現行入管令におきましては、御指摘のとおり何らわれわれとして手を打つことはできないわけでございますが、現在、今国会に提出してございます出入国法案によりますと、そういった重要犯罪の容疑者関係当局から通報を受けた際に、空港において二十四時間を限って出国を差しとめることができるような条文が入っております。
  57. 白木義一郎

    白木義一郎君 いまの局長さんのお話について、捜査当局はさぞかしわれわれと同じように無念な思いをされていると思うのですが、将来こうあってほしいというような捜査当局の考えをお伺いしたいと思います。
  58. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) 私ども捜査関係者の立場からいたしますと、たとえば非常に国際的なハイジャック事件等にも関係をするおそれがあるような虞犯性を帯びた人たち、こういうものも、現時点におきましては、現実に逮捕状が出ておるとか、こういうようなことがない限り出国は自由でございますし、外国人もそういう意味で自由に出入りをしている、身柄が拘束ができるような証拠がない限りこれを拘束することができないのがたてまえでございまして、現行の刑事訴訟法証拠主義の立場、これは基本的な人権を尊重するという現行法規のたてまえ上、私どもはそういう制約の中で最善を尽くしておるわけでございます。ただいま入管局長より御指摘のございましたような若干の改正でも進められますれば、私どもにとりましては捜査上大いな助けになるであろう、こういうふうに考えております。
  59. 白木義一郎

    白木義一郎君 大臣、いま実際にすいすい帰ってしまう、これは現行法でどうにもならないのだと、こういうことで、これは了解するわけですが、将来の問題としてこれは何とかならないかと、こう思うのですが、大臣いかがですか。現在は現行法でいく以外にないと。
  60. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 現段階は、いま警察から御答弁がありましたように、犯罪を犯して逮捕をされるような場合、これは押え得るのであります。それ以外の場合においては出国は自由、勝手に出て行ってもらっちゃ困るから、判こをもらえ、証印を受けて出よという、むずかしいことばで、証明の証と判この印でございます。判こをもらって出て行け、百二十六の港どこからでもかってに出て行ってよろしい、こういうことになっておるものですから、警察答弁のとおり道はございません。道はございませんが、何かこういう場合に考えられないかということでありまするが、まあわが国は、妙な理屈になるのでありますけれども、お気に入るまいと思いますけれども、これを申し上げてみますと、たいへん厳格な、厳格なというか高度の人権擁護の国なんですね。ですから、犯罪が証明されない、逮捕に値する犯罪がないのにかかわらず、自由に出て行きたいという者を、出て行くことを許さないのだという、取り調べの参考人として、重要参考人としておまえは出て行っちゃいけないのだということを規定することは、わが国のこの憲法下の日本の法制といたしましてはなかなかむずかしいのではなかろうか。しかし国際関係のことでもございまするので、日本がそうならアメリカもそう、韓国もそうということで、相互にそういう規則をつくりますれば差しつかえがないという理論も成り立つわけでございますから、いま先生仰せのような事柄について、しかと検討してみたい。ちょっと私の頭では、ここですぐこういうことにはからうことがよかろうという即答ができかねますので、重要な御質問でございますので、ひとつ検討の資料といたしまして、検討を加えてみたい。何かこれ、その道があってよさそうなものですね。日本の場合もそうですが、アメリカの場合も韓国の場合も、中共の場合も同じですね。向こうにそういう事情があったときにもそういうことなんでありますから、相互主義のもとに何か考えられる道がなかろうか、ひとつ検討してみたいと考えます。
  61. 白木義一郎

    白木義一郎君 この問題は将来の問題で、大臣の御答弁で了解いたします。  そこで、また繰り返しになるんですが、主権の侵犯の問題について、本会議で渡辺委員からの質問に対して、法務大臣はこのように答えられているわけです。国家機関関係していたなら、それが上層部であろうとなかろうと主権を侵犯したことになる、国家機関個人を手先に使っても国家主権の侵犯となる、その場合、その行為は職務行為でなければならない、これが先日の御答弁です。そこで、金東雲一等書記官というのは国家機関人間ではないのか、政府機関の人間ではないのか。いままでのお話ですと、大使館の人間とそれからCIAの機関の人間とは違うんだ、こういうようなふうにも伺えたわけです。で、まあ一般的に一国の一等書記官というのは国家の役人だ、当然政府の機関の人間だ、その立場にある人か起こした事件については職務行為といわなければならないんだ、こういう疑問があるのですが、その点いかがですか。
  62. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 一等書記官が犯人をとらえたり、取り締まったり、拘引をしたりするような本来権限を持っておるものであれば、国家の官吏でもあるし、そういう権限を持っておる、そういう職務があるということになると、これはぴたりそのままくるんですね、お説のとおり。一等書記官というものがどういう権限を持っておるかということは捜査の重点で、いろいろ調べておる。これが金一等書記官がということになりますと私がお答えしにくい、それは捜査当局からお聞きをいただく以外にない。しかし、一般法理論として申しますときに、その場合に職務行為とはどういうことかというと、一番簡単明瞭にわかりますことは、CIAの任務を兼任しておったなどということが何らかの方法捜査当局の手で立証されると、ぴたりきますね。それは、CIAというものの任務はどういう任務かというと、犯罪の捜査権を持った、司法警察官としての職務権限を持っておるのが韓国のCIA法――中央情報部法という法律が韓国にございまして、その法律を読んでみるというと、それは意外な法律でございます。これは悪口を言うのじゃないのですよ。よその国の法律の悪口を言うのではないが、私はびっくりしたからびっくりしたということを言うておるのですが、韓国中央情報部法という法律です。読んでみるというと、捜査権を持っている、司法警察だ――よく秘密警察などということは私もどっか委員会で一ぺん使ったことがありますが、その後は使っておらぬのでありますけれども、そういうふうに人が申しますほどにどえらいこれは法律内容のものでございます。法務省の連中もみな研究してびっくりぎょうてんしておる。えらい法律だなということになっておるのですね、これは。そういう権限を兼任をして、受け継いでおるということになったら、ぴしゃりです。これはアウトです、この話は。ところが私、それを証明できれば言うことないんです、それを証明できれば。  けれども、そんなにむずかしいことを証明せぬでもいいんじゃないかということを私が言っております――初めて私が私流で言うておるわけでございます。しかし、世の中の理論は私はこれを迎えてくれるものと思って言うのでありますけれども、そんなにぴしゃり証明できなくても、一体この問題になった犯罪というものはどういう犯罪だ、私的な、個人的な犯罪としてこんな犯罪が起こり得るか、この犯罪は職務的な犯罪じゃないか、国家の公権力の指示を受けなければ行なえない犯罪ではないか――恋がたきということを言うたのでございますが、恋がたきに行なった犯罪などというものじゃない、私的なものじゃない、これはどうも国家の職務行為というものに関連のある犯罪だ、ということを私は言うておる。政治的観測でございます。政治的にはそういうことが言える。政治的には証明の要らぬものである、証明なくして全世界どの国に持っていってもこの理屈は通る。職務犯罪でなければ起こり得ない内容を持った犯罪ではないか、こんな私的犯罪があるか、私的なうらみで行なう犯罪にこんな犯罪があるか、ということを私はまず政治的には判断をするのであります。  これを刑事訴訟法的な犯罪捜査という理論から申しますと、私の言うておることでは十全でない。やはり証明をしていかなければならぬ。少なくとも最低は、CIAを兼任しておったということがきめられれば言うことはありませんけれども、少なくともそうでなくとも、手先に使われたものである、別なことばで言うというと、国家公権力の意向をくんで行なった犯罪である、指示を受けた犯罪であるというようなことが立証されるならば、何もCIAであるということを証明できなくても犯行は成立をする、こう私は前回の委員会でも申し上げたのであります。そんなにくどくは申し上げませんが、前回もこのことは概略は申し上げた。政治的にははっきりしている。しかし刑事訴訟手続上はいま一段と立証が要る。それで時間がかかっておるのだ。あらゆる角度から捜査を積み重ねてものを言わそうとして努力をしておるのだ、これはいろいろ言いますと捜査のじゃまになる――国会の仰せになることをじゃまになると言うのではなくて、私が答弁することがじゃまになる。ですから、この辺はよいかげんがよかろうではないか――大事なことをよいかげんと言うのはおかしいのですけれども、ここで公の論議としてはよいかげんにしておかないと、捜査が行き詰まるんではないか。先ほどから警察当局がお答えになっておるのを私はこの捜査に関連をする人間として横合いで聞いておりますと、ずいぶんあぶないことをおっしゃっておる。あんなこと言うていいのかな、国会というところは、国会の御質問があるからお答えになっておるのだろうけれども、えらいことを言うな、あんなこと言うてええのかなというようなことも捜査官は仰せになっておる、私はひやひや思っておるのです。そういうことでございますので、どうぞ御了承をいただきたいと思います。
  63. 白木義一郎

    白木義一郎君 いま大臣は、どえらい法律があると、どえらい法律だとおっしゃいましたけれども、そういうどえらい法律のある韓国は非常に民主的な政府であり国家であると言うておるのとちょっと矛盾してこやしないか。  それはまあそれといたしまして、先ごろ私の家に隣の子犬が庭に入ってきて、そして子供の古い運動ぐつを、どうでもいい運動ぐつですが、くわえていたずらして帰っちゃった。そしたら、お隣の御主人がさっそく謝罪に見えたわけです、ブドウを持って。それでこちらも非常に恐縮しましてね。で、実は引っ越したばかりであってまだまだお隣、御近所とはまだそう、全然といっていいくらいおつき合いがなかったわけです。それで、こちらもさっそくお返しにそうめんを持ってごあいさつに行ったわけです。それから非常に親しくなりまして、いまはもう犬も子供も自由に出たり入ったりと、こういうことがあったわけです。  そこで今度の問題も、これは国民全体そうですけれども、この韓国との友好促進という問題が大きな焦点になっていろいろと進められ、あるいは心配をしているわけでありますけれども、ほんとうの友好関係はこういったようになってこそ進むんであって、現在のような状態では、まあ犬がやったことじゃないか、それも知らない、どっかののら犬でしょうというような隣の返事だと、これはなかなかおつき合いが進みにくいわけです。  というようなことでですね、実はけさ新聞を拝見しましたら、「天声人語」ですか、ここに非常に大事なことが載っているわけです。これはもう、一度御紹介しておいたほうがいいと思います。「このところ警察に対する風当たりが強い。「強すぎる」と警察はご不満だろうが、市民は警察を頼りにしているだけに、警官の不祥事が起こると、きびしい目で警察を批判しがちだ。ともかく対警察への市民感情は、複雑に屈折して、ややこしい警察には、うかがい知れぬ秘密があるように、市民は思う。たしかに警察とは、内部的にかばい立て意識の強いところだ。新聞記者が、いちばん取材しにくいのは、警官の起こした事件である。法の権威にかかわるから、つい内輪にということになり、その度が過ぎて、秘密性が強まる若い人は、警察というとジュラルミンのタテを思う。いやおうなしに襲いかかってくる、圧倒的な力と、重いクツ音。あの力に巻き込まれたものにとって警察のイメージは、一般とはまるで違ったものになっているはずだまた別にテレビに登場する刑事――警官のイメージがある。人情味に厚く、仕事熱心で、金がなく、強く、命をかけて犯人を追う。そしてほとんど例外なしに、刑事は勝つ。悪は善の前に屈する。警察学校に入りたての若ものでさえ、刑事をあこがれるそうだ警察当局は「警察を正しく理解してほしい」という。しかし、警察に対するイメージは、人みなそれぞれに違う。イメージの違いによって、正しさの基準も変わる。警察は「正しく理解して」という前に「警察を信頼してほしい」と、いうべきなのだこどもが川に落ちた。警官が飛びこんで助ける。「警官が人を助けるのは当然じゃないか。当然のことをなぜもてはやすのか」などと、いう人もあれば、「警官だから、それができた」とほめる人もある。見方はさまざまだが、共通した心理はある。「せめて警察だけは、頭から信頼したい。させて欲しい」という祈りに近い気持ちなのである。」これはこの日本人全体の気持ちを非常にたくみに表現したことだろうと思うのです。  で、こういう考え方の立場で今度の事件をみんな見ているわけですけれども、だんだんだんだんその理解から、あるいは信頼から遠のいていく。で、いま一生懸命御説明がありましたけれども、車をさがす、あるいはその犯行の行なわれた車がはっきりして、そして明らかに犯行に使われたんだというようなところまでいっても、その先がずうっとぼけて、結局みんないなくなっちゃった。それ以上はどうしようもない。くつがなくなっちゃってそれでどうにもならない。お隣は知らぬ顔、お隣の子犬のやったことじゃないですか、失礼なことを言うな、何を根拠にそういうことを言うんだというような隣であると、とてもじゃないがうちとしてはおつきあいができない。ところがさっそくブドウを持ってこられたんじゃ、これはもうこっちからお返しを持っていかなきゃならないのが、これがおつきあいだと思うのです。  それからもう一つは、こういう状態で進んでいきますと、要するに第一線は必死になって捜査に当たるわけです。しかしその苦労が将来これはぼやけてくる心配があるんじゃないかというようなことですと、警察全体に大きな影響が出てくる。それがいろいろなところにひずみになって、結局は接点は国民との接点になる。普通は任意出頭なんていうと、いやいま忙しいんですというと、来なきゃ連れにくるよと、こういうのが一般のふだんの警察なんです。それが今度の事件では帰っちゃった、ぜひお帰りくださいというようなことで、もう繰り返しですから、非常に国民は不満であり、また、警察に対してそれこそ理解どころじゃない、不信感を深めている。これが大きな国内に目に見えない波紋となって、いろいろな治安の問題あるいは生活問題等にからんで不幸な日本に進んでいくという心配の上からこういうことを申し上げるんです。  で、もしこれから金東雲書記官がまた帰ってくるというときに、これは入れられるのか、入国しても今度は外交特権で何も手が出ないというようなことになると、踏んだりけったりというようなことになりゃしないか。それからそう言っているやさきに、相手の外務大臣は日本を通り越してアメリカへ行ってしまう。ちょっと方向が違うんじゃないか。そういうことを見ていますと、何だこれは、ちょうど二号さんと三号さんが仲たがいが激しくなって、三号さんがウオーターゲートだんなのところへかけ込んでいくような感じを持つわけです。だんなは、まあまあ、わしからうまく言っておくよというようなことを、漫画家だと、かかざるを得ないというような現状なんです。  そこで、ほんとうに韓国と将来ともりっぱな友好関係を結んでいくというたてまえでいけば、これじゃ、この状態じゃ話にならないと思うのです。かえってお互いに不信感を深め、結局は両国民が気まずい思いをしなければならない、こういうことになりはしないかと思うのです。そこで問題はいま大臣がおっしゃったように、金東雲書記官がCIAのメンバーであるということになれば、これはもう言うまでもないことですが、しかし、いやしくも大使館に派遣されている人間が、その容疑としてはその配下の職員等を使って起こした事件という線が非常に強い。それでもこういうことでいかなくちゃならない。外務大臣は二十三日にアメリカへ行く、それまでには重大決意をすると、こういう報道がありますけれども、その点を含めて、外務大臣が国を留守する、その決意について少し大臣から御説明を願いたいのですが。
  64. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 何度もくどく申し上げておりまして恐縮をしておりますが、このままでいくとしりすぼみになってしまう、何だか警察の能力が足らないようなお話をいただいて、私はどうも聞くにたえぬ心持ちでこれを承ったのであります。そうじゃないでしょう。関係者は全部国外に脱出してしまったのだ、現場に到着したのは、一時間以上を過ぎてから現場に到着をせざるを得なかった、現場に到着したときには犯人の関係者は東京都内にはいなかった、そういう悪条件下です。関係者は全部国外逃亡。おそらく有史以来わが国の捜査当局がこれほど苦心をした事件はないと思います。えらい事件だなという観測をしておりましたが、とうとうやり上げた。指紋の照合ができ上がった。目撃者があらわれた。大成功じゃないでしょうか、先生。私は心の中では拍手をする気持ちでこれを聞いた。ただ、これだけでそんなら主権の侵犯が立証できるのか、断固たる態度が、わが国として重大決意ができるのかというと、内閣総理大臣、外務大臣が仰せのとおり、私も同感であるが、そうは簡単にいかぬ。職務行為の立証が足らぬ。もう政治的にはわかっておるのですよ。第六感ということばで笑われてひやかされておるわけでありますけれども、第六感ではぴたりわかっておる。わかっておるのだが、これを国際法の上にのっとって刑事訴訟手続上犯人だということを立証するためには、現状でいかぬ。これは総理、外務大臣がおっしゃっておるとおり私もそう思っておる。これを一段とあらゆる角度から捜査を積み重ねまして、職務行為である、いやしくも手先によったものである、本来は任務はなかったかもしれぬが、これを行なうについては私的なものではなかったのだという立証ができていく、ここで初めて凱歌をあげることができるようになるので、私は捜査当局の非常な苦心と努力というものに対しては、同情をもってあたたかい気持ちでこれを見守ってやりたい。そして、ひとつ腕によりをかけてこの捜査の目的を達成せしめてやりたい。やがてこの事件は私のほうに送致になる事件です。人間のからだがおろうがおるまいが、犯人がおろうがおるまいが、書類は検察庁に送付されるもので、任務は私のほうが負わなければならぬ立場に立つ事件で、非常な関心を持って見ておるわけでございます。それでございますから、どうか先生、そう仰せにならずに、いましばらくひとつあたたかいまなざしをもって、しっかりやれという態度でこれを見てやっていただきたい。しりすぼみになることがきまっておるようなこと仰せにならないで、ひとつこれを見てやっていただきたい。効果あがりません。  それから、金君をはじめとして三人の関係者もまだ絶望のものではない。外務大臣も幾らか自信があるようなことを言っておりますが、私はまた別の角度でそう思っておる。これは必ず戻ってくるものだ、時間がかかるだろう、こう考えておるのでありまして、これも絶望のものではない。そうすれば、いままでの捜査に加うるに関係者が返ってきて供述をしてくれるということなら、案外捜査は進むのではなかろうか、こういうふうに見ておるわけでございますから、どうぞ御同情をいただきまして御協力をいただきますようにお願い申し上げます。
  65. 白木義一郎

    白木義一郎君 そういうふうに再三おっしゃっているから、実は私のところの隣で起きた事件のことをお話ししたわけです。  それはそれとして、テーマは、韓国と日本がもっと仲よくなっていかなくちゃならない、この事件を通してですね。それで申し上げているわけです。ですから、それと同時に、いま「天声人語」の考え方も、国民としては政府あるいは警察当局を信頼したいんだと、そういうことで繰り返しこの委員会も行なわれているわけですが、それがさっぱり政府が国民にまで届かないわけですよ。次から次へ問題が発表されているわけです。それで、最近は金東雲一等書記官から私はスパイの手ほどきを受けたと、こういう人が出てきた。ここまで民間では進んでいるわけです。その人物について当局はいま捜査をされているかと思うんです。それをひとつお知らせ願いたい。  それから、これはいま関連質問ということですが、ちょっとお待ち願って、これもけさの新聞ですが、KCIAが、韓国へ学校の先生が呼ばれて見学してきた、ところが、それについて帰国後も身辺保護及び諸般事項の分析をする、こういうKCIAの考え方だ。とすると、先ほどの大臣の御説明のように、もう日本の中へ――日本の国の法律は守ってもらわなければならない、当然だ、あたりまえの話ですが、しかし外国はそんなことは一切おかまいなしなんだ。うちのほうを見て帰ってきて、そして何言うかわからないからあとくっついていってちゃんと調べ上げるんだ、それ言うわけにはいかないから、身辺保護をするんだ。まるで日本の警察がないような新聞の報道が出てくると、ますます国民は心配し、迷ってくるわけです。で、時間がおありにならないようですから、この一点と、それからいまの当局の捜査の点だけお伺いしておきたいと思います。
  66. 佐々淳行

    説明員佐々淳行君) ただいま御質問の、スパイの先生であるという記事は、九月八日の朝日新聞の記事であろうかと推察をいたしますが、この記事によりますと、朝日新聞情報源は匿名のAさんという在日韓国人となっております。記事の中にもありますように、Aさんの名前を出しますと韓国にある家族に危害が及ぶと、こういうことで匿名にしたものと思われます。朝日新聞の記事につきましては、本人が匿名を希望してこういうことを申し立てている、このことは間違いのないことだと思いますけれども、私どもといたしましては、このAさんなる方が御協力をしていただけませんと事実関係の調べようがないわけであります。この警察証拠主義のたてまえというのは、先ほどから申し上げました証拠主義のたてまえで申しますと、こういう供述というのは伝聞になりますので、伝聞供述では私どもは判断ができない、こういうことでございます。  それから、先ほどの御質問に関連をいたしまして、車が犯行に使われたものということで特定をされておるのにうやむやになっておるという御趣旨でございましたが、念のため申し上げますけれども、この車が犯行に使われたということはまだ確証を得ておりません。先ほど私申し上げましたように、二〇七七という車がこの時点にグランドパレスにあったということが確認されておるということと、品川五五-も-二〇七七という車が劉永福氏の使っておった車である、この二つが確認されておりまして、この二つの結びぐあいにつきましては現在鋭意捜査中ということにお答えをいたしておりまして、私どもがすでに確証を得ていながら、その者が出国していくのを野放しにして見のがしておるということでは毛頭ございません。その点、念のため申し上げます。
  67. 白木義一郎

    白木義一郎君 大臣――KCIAの、学校の先生の身辺の保護までするという発表があった……。
  68. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 刑事局長からちょっと……。
  69. 中江要介

    説明員(中江要介君) 外務省でもいま先生御指摘の記事をけさ拝見しまして、これはどういうことであろうかというので、東京でも、それから現地にも訓令していま調査しておりますが、ただ、現在までにわかったというのは、この記事にございます先生方というのは、日本と韓国との間の教員交換計画のもとで韓国を訪問された方で、この計画は日本では主として文化庁の所管でやっておられますので、文化庁とも緊密に連絡して、事実についていま調査しておる、こういう段階でございます。
  70. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 先ほど佐々木先生から御質問のありました反共法の地域的効力範囲につきまして、私の承知しておる限り、反共法も、反共法規定の犯罪が国外で行なわれた場合には、韓国民のみならず外国人すなわち日本人を含めて適用があると承知しておる、という御返事を申し上げたわけでありまするが、あとで資料をただいま取り寄せまして当局で調べております、反共法あるいは韓国の刑法総則との関係においてその問題をやや具体的に御説明申し上げて御理解をいただきたいと、かように思いますので、あえて発言を求めた次第でございますが、反共法自体に、その反共法あるいは国家保安法自体に、外国にいる犯罪に適用があるかとか、何国人に適用があるかということは規定してございませんで、韓国の刑法の総則というものがございまして、刑法の総則は、佐々木先生御案内のとおり、特別法に特別の規定がなければ特別法についても総則的な働きをする。したがってそういう意味におきまして、韓国の刑法の総則を見ることによって、反共法あるいは国家保安法が、何人に対して、どの地域において適用があるかということが明瞭になると、かようなことになるわけでございます。  そこで、韓国の刑法の総則を見てまいりますと、第六条というところに、(大韓民国および大韓民国国民に対する国外犯)という規定がございまして、それによりますと、「本法は大韓民国領域外で」つまり日本を含め、領域外で、「大韓民国または大韓民国国民に対する前条に記載する以外の罪」――前条というのは内乱の罪とか、どこのでも、日本の刑法と同じような規定でございますが、その「以外の罪を犯した外国人に対し適用する。」こうありまして、つまり大韓民国または大韓民国国民に対して犯した罪というのが国外で行なわれた場合には、国外で犯した外国人に適用するという規定がございます。したがって反共法という規定の罪、あるいは国家保安法の罪が、大韓民国または大韓民国国民に対する罪であるという解釈が確立しなければ、反共法あるいは国家保安法が外国において行なわれた外国人に対して適用されないということになるわけですが、これは聞くところによりますと、韓国の判例で、反共法の罪あるいは国家保安法の罪は韓国に対する犯罪であるということで、外国人に対しても適用がある、外国で行なわれたものにも適用がある、こういうことになっているわけであります。したがって抽象的には、反共法の罪を犯した者が、日本でそういう罪を犯しても、反共法の規定の適用があって、韓国の主権の中に入ればそれによって処罰されることがあり得るという抽象的な結論になり得るわけでありますが、幸いにいたしまして韓国の刑法の総則には、「ただし、」と、ただし書きがございまして、「行為地の法律に依り犯罪を構成しないときまたは訴追もしくは刑の執行を免除する場合は例外とする。」、かような規定がございますので、具体的に日本に当てはめますと、日本の法律によってその行為が、反共法で罪とされる行為が、処罰されないような行為であるならば、それは外国で行なわれた場合には外国人に対しては適用がございませんということに相なるわけでございます。したがいまして、私の考えるところ、北鮮との関係において韓国に気に入らないような言動をいたしましても、そのこと自体は、日本の法律や言論は自由でございますので、それは処罰に値しない行為になるということで、普通の言論的な自由の関係から行なわれております犯罪――行為で、それが韓国の反共法に当たるようなことでございましても、日本の法律で処罰しないようなことにとどまる限りは、日本人が韓国に参りましても処罰はされないということに相なるわけでございます。  要は、結論から先に申し上げれば、日本の国民が、日本の法律をよく心得てその節囲で言動を行なっている限りにおきましては、韓国でも処罰されないということになるので、まあ先走るようですが、韓国の法律を周知、宣伝しなくても、日本の法律をよく知っていただいて守っていただければ日本人は安心である、かようなことになると考えるわけであります。
  71. 佐々木静子

    佐々木静子君 法務省責任あるお立場から非常に御鮮明な理論をお述べいただきましてありがとうございました。  それで、私とものほうの――いま私、もっと勉強していただきたいと申しましたけれども、実のところはなかなかこちらも勉強したくても韓国の現在の法律というものは入手しがたい状態でございますので、韓国の現行刑法と、それから先ほど大臣がびっくりなさったとおっしゃる中央情報部法ですね、二つを委員会にちょっと御提出いただきたいのでございますが、お願いできますね。
  72. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 幸いに私どもの手元に資料がございますので、提出いたします。     ―――――――――――――
  73. 原田立

    委員長原田立君) この際、委員の異動について報告いたします。  本日、小笠原貞子君が委員辞任され、その補欠として渡辺武君が選任されました。     ―――――――――――――
  74. 渡辺武

    渡辺武君 大臣、お時間がないようなので、端的に伺います。  現在韓国で監禁されている金大中氏の生命の安全、それからまた自由、これについては日本政府がそれを保護する義務を負っているというふうに考えますが、どうでしょうか。
  75. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 金君が自分の意思で韓国に帰ったものでございますと別でございます。おのれの意思に基づかず、誘拐略取された、日本の刑法のことばで言いますと。拉致された、こういう事態であります限りは、どのような苦心、努力を払いましても、主権の侵害を証明して、したがって原状回復を要求をいたしまして、からだを無条件に戻しまして、そうしてこの自由人権の擁護を行なわなければならぬものだということで、捜査当局が苦労をしてくれておるわけでございます。
  76. 渡辺武

    渡辺武君 そうしますとですね、その日本政府が保護する義務を負っている人物を、現在韓国の政府が、これがとらえて、自宅に監禁同然の状態で置いておく、こういう状況だと思うんですね、現在の状況は。この場合は、日本政府が保護する義務を負っている人物を韓国政府が監禁しているということでありますから、この点どういうことになりますか、韓国政府が日本政府の主権を侵しているということになるんじゃないでしょうか。
  77. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) この点を外務省からお答えを願います。
  78. 中江要介

    説明員(中江要介君) まず、金大中氏の現状につきましては、先生も御承知のとおり、八月の二十八日に後宮大使が直接お目にかかって、いろいろ事情を話され、健康状態についても御報告がありました。その後どういう状況にあるかについては、毎日毎日見張っているわけではございませんけれども、その後韓国の政府当局と接触している限りでは、特に異変があるという情報は得ておりません。いま御指摘の、日本政府が日本で保護をすべき立場にあった人がいま韓国の領域内にいるんだけれども、その状態を憂えてこれを保護する措置をとるべきではないかという問題でございますけれども、その点は、非常に残念ながらここに国境の壁がございまして、韓国の領域内に日本の、それこそ公権力の行使かなんかで、韓国の管轄権を排除して日本の公権力のもとで金大中氏を保護するという措置は、これは韓国政府の了解がないとできないということでございます。その点について、日本政府は、いまそういう日本の公権力によって韓国内におられる金大中氏を保護するということについて韓国政府の了解をとるという手続ではなくて、むしろすべての問題の根幹になっている真相の究明というところに重点を置いて折衝しておる、その真相の究明のために、捜査当局は、金大中氏がもう一度日本に来ていただくのが一番いいと、その線で鋭意交渉しているという現状でございます。
  79. 渡辺武

    渡辺武君 私の伺ったのは、まあいま御答弁のあった点も私の疑点の一つでありますけれども、しかし、いま伺いましたのは、日本政府が保護する義務を負っている人物を韓国政府が監禁しているわけですね、そうでしょう。その場合、そして、返してくれというのに返さない。その場合、韓国政府は日本政府の主権を侵害しているんじゃないかということを伺っているんです。
  80. 中江要介

    説明員(中江要介君) これは主権ということばの意味がいろいろ広く使われておりますので、そのとりようがいろいろあろうかと思いますけれども、国際法上、日本という国と大韓民国という国と、国と国との関係で主権の侵害があったかどうかというときの主権という厳格な意味からいたしますと、これは韓国の管轄下に入っておられる金大中氏のいまの状況が、保護をしなければならない日本の義務をさせなくしているという意味で主権を侵害していると、こういうふうには、国と国との関係で言う場合の主権には入らないと、こういうふうに外務省では考えておるわけであります。
  81. 渡辺武

    渡辺武君 法務省の見解はどうですか。
  82. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) これはいろいろ見解があってよいんだと思いますが、私は少し違うんです。  本人の意思が日本におりたいということで、日本に存在をしておったのが金君でございます。それを拉致した。拉致したのは、これは韓国の国家機関で、職務行為として行き過ぎて拉致をしたんだと、こういうことが立証されるということになりますと、その努力をしておるわけでありますけれども、現段階においてはそうは言えないんだが、それを言おうとして最大の努力を払っておるわけでございますが、かりにそういうことが証明できたとすると、主権の侵犯であり、主権の侵犯はいつ起こったのかと、こういうと、拉致された八日の、一時三十分がほんとうらしいんでありますけれども、一時三十分の瞬間に主権が侵犯された。その主権の侵犯がずっとこう継続している、自動車に乗って、小舟に乗って、大船に乗って、また小舟に乗りかえて上陸をして、自動車に乗って、どっかでその目隠しをとって部屋の中に入り、このからだが日本に戻らぬ限りは主権の侵犯は今日なお瞬間、瞬間に継続しておる。主権侵犯の継続の現状現状ではなかろうか。ですから、先生が、家に置いてあると、家以外は出さぬのですから。それは実際は外務省がおっしゃるように、きげんよくおるのかもしれぬけれども、それはきげんよくおるのかおらぬのか、見ておらぬのですからわからぬ。後宮君がちょっと行って見たというだけのことです。それ以外はどうなっているのかわからぬのがほんとうでしょう、それは。どういう圧力がかかっておるのかそれはわからない。とにかくこれを日本に復元をして、主権の侵犯が立証されて、きげんよく無条件に戻ってくるまでは主権の侵犯という事態は継続している、ずっと継続している、一カ月継続しておる、こういうふうに私は判断をしております。外務省の御意見とあまりたくさんはかけ離れておりませんが、少しニュアンスが違う。私はそう見ておるわけです。
  83. 渡辺武

    渡辺武君 再度伺いますけれどもね。つまり金大中氏を拉致して、そして韓国へ連れていった、それが韓国の政府機関の行為であると、私どもはそう思っております。その点についてもなお大臣にいろいろ伺いたい点があるんですけれども、かりにその問題を離れて考えてみても、つまり何者かが韓国に金大中氏を連れていった、この金大中氏については日本政府が保護の義務を負っている、その保護の義務を負っておる人物を韓国政府が監禁して、返せと言っても返さない、この事実ですね。この事実そのものは、これは韓国政府の、日本政府の主権に対する侵害じゃないかということを伺っているのです。どうでしょう。
  84. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) そのことだけとらえての判断は、先生、むずかしいんじゃないでしょうか。現に自宅に軟禁されておるのか、監禁されておるのか、居住しておるのかそれはわからぬけれども、現にとにかく間違いのない点は、日本におった者が本人の意思に基づかずして韓国へ帰って、韓国の自宅におる、これだけは間違いないんですね。
  85. 渡辺武

    渡辺武君 返さないんですよ、返せと言ったって。
  86. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 返さないというのは、何で返さぬのかと、こういうことだ。それは日本へ返ってきたのについて、どういう犯罪がそこに成立をして、その犯罪によってこちらへ来ておるということになるのですから、その犯罪の根源を確めなければならぬ。根源を確かめようということになると、いま私の言うたように、最初の一時三十分の瞬間から今日まで主権の侵犯状態、わが国統治権の侵害状態というものが今日まで継続して一カ月あまり続いている、それが現状である。そこだけ切り離して、これだけを主権の侵害じゃないか――それはそうでしょう、切り離したら。継続しておるんだから、三十日間のどの瞬間をとらえても主権侵犯でございましょうね、からだがもとへ戻らぬ限りは。ですから、先生の仰せになることは決して無理でない。瞬間をとらえたら、瞬間、瞬間全部が主権の侵犯であり、その主権の侵犯の継続であると、こういう私の意見とあまり違わぬのじゃないですか、先生のおっしゃっていること。同じことを言うとるんですね。
  87. 渡辺武

    渡辺武君 時間がないから、あらためてその問題はもう少し伺いたいと思いますが、最後に一言伺います。  金大中氏について、生命についても、どうも後宮大使がお目にかかったときも元気だった、だからだいじょうぶだろうという趣旨のことをおっしゃいましたけれども、もうすでに一カ月以上監禁されておる。これはだれもが懸念を抱いているところだと思うんですよ。特に韓国政府のいままでのやり口から考えますと、これは反共法、国家保安法などにひっかけて処罰するかもわからない。暗殺するかもわからぬですよ。そういう危険さえ十分に考えなきゃならぬと思う。その場合に、日本政府は返せと言っているからそのうち返ってくるかもわからぬというようなことで国際的な義務を果たせるかというんですよ。どういうふうにしますか。返せと言っているということは知ってます。はっきり伺ってます。しかし、金大中氏の生命と自由の保護について日本政府はどういう具体な措置をとっていますか、それを伺いたい。
  88. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 私が政府を代表してお答えをいたします、大事なことでございますから。  それはね、ほっておるんじゃないんですよ、先生。返せと言うても返さぬこと、先生御存じのとおり。返さないと言っても返してみせるという段階がなきゃならぬ、それが政府の現段階でございます。それには、主権の侵犯ではないか、主権の侵犯であれば原状回復の義務が国際的にある。主権の侵犯だというためには単なる私のかってに言うておるような政治判断ではいかぬのだ。刑事訴訟手続の上から、国家の公権力が職務行為としてタッチした結果拉致したものであるという証明が必要だ。この証明ができるかどうか。外務省参事官のおことばをかりて言うと、事の真相を究明することに全力をあげている。それが究明ができたら主権の侵犯が成立をする、原状回復は当然である、国際的に許されない、その強力な段階を推し進めていくためには、いま警察努力をしてくれておるあらゆる角度からの捜査を積み重ねる以外にない、こういうふうに先生、御同情と御理解をいただきたい。ようわかるでしょう。ぜひそう考えて、そうしてしばらく警察にまかしてください。おかしいことはしません。途中でうやむやにするなんということはもう断じてございません。どうぞ御安心をいただいて、しばらくおまかせをいただきたい。
  89. 渡辺武

    渡辺武君 外務省のほうは、韓国政府にその問題についてはどういう措置をとっていますか。
  90. 中江要介

    説明員(中江要介君) 先ほど申し上げましたように、真相究明のための努力は、これは日夜を分かたずやっているわけでございますが、金大中個人の地位につきましては、後宮大使が先般一時帰国されたときに、たしか記者会見か何かでおっしゃったと思いますが、韓国政府は、いま先生御指摘のように、この機会に反共法なり国家保安法なりというような別の法律で別件逮捕をするというようなことはない、という心証を得ているという報告があったわけでございまして、そういう意味で、いまのところ真相究明に最重点を置いて、金大中氏についてはその間別件逮捕のような不祥なことが起こらないようにという、わがほうの何回かの申し入れなり交渉の結果として、別件逮捕はないという心証を現地の大使は得ていると、こういう状況でございます。
  91. 白木義一郎

    白木義一郎君 それでは、中江さん、ひとつ先ほどの件について、次の委員会で詳しく御説明を願いたいと思います。また、大臣もまだ承知をなすってないようですから、よく大臣にも相談なすって、ひとつお示しを願いたいと思います。
  92. 原田立

    委員長原田立君) 速記をとめてください。   〔午後一時十五分速記中止〕   〔午後一時五十二分速記開始〕
  93. 原田立

    委員長原田立君) 速記を起こしてください。  本件に対する質疑は本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十三分散会