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1973-09-11 第71回国会 参議院 法務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年九月十一日(火曜日)    午後二時開会     —————————————    委員異動  八月三十一日     辞任         補欠選任      青木 一男君     小枝 一雄君  九月一日     辞任         補欠選任      杉山善太郎君     加瀬  完君  九月三日     辞任         補欠選任      鈴木  強君     伊部  真君  九月四日     辞任         補欠選任      伊部  真君     鈴木  強君  九月十日     辞任         補欠選任      渡辺  武君     小笠原貞子君  九月十一日     辞任         補欠選任      鈴木  強君     松本 賢一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         原田  立君     理 事                 後藤 義隆君                 中西 一郎君                 佐々木静子君                 白木義一郎君     委 員                 木島 義夫君                 増原 恵吉君                 吉武 恵市君                 加瀬  完君                 小笠原貞子君    国務大臣        法 務 大 臣  田中伊三次君    政府委員        防衛庁人事教育        局長       高瀬 忠雄君        法務大臣官房長  香川 保一君        法務省刑事局長  安原 美穂君        法務省人権擁護        局長       萩原 直三君        法務省入国管理        局長       吉岡  章君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君    説明員        警察庁警備局外        事課長      佐々 淳行君        外務省アジア局        外務参事官    中江 要介君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (人権擁護問題に関する件)  (刑法改正に関する件)  (金大中事件に関する件等)     —————————————
  2. 原田立

    委員長原田立君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告をいたします。  昨十日、渡辺武君が委員辞任され、その補欠として小笠原貞子君が選任されました。  また、本日、鈴木強君が委員辞任され、その補欠として松本賢一君が選任されました。     —————————————
  3. 原田立

    委員長原田立君) 検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、実はきょうは長沼判決もあったところでございますので、長沼判決に関連いたしまして法務省なり関係官庁に御質問さしていただきたいと思っておったんでございますけれども緊急質問関係などで、まあきょうはちょっと差し控えさしていただきまして、やはり防衛庁関係する少年人権問題、こういうようなことをお尋ねさしていただきたいと思います。   〔委員長退席理事白木義一郎着席〕  これはことしの一月の十九日、大阪で起こった事件でございますけれども高校二年生のある少年が、大阪市内で、学校へ行くのが気が進まなくて、その日自衛隊募集ポスターを見ておったところ、防衛庁自衛隊大阪地方連絡部広報課の人が出てきまして、そして自衛隊PR説明をしたあとで、二人の青年ですが、中へ連れ込んで自衛隊の試験を受けさせて体験入隊させたということで、まあこれは少年人権問題として当時たいへんに問題になっておったわけでございまして、大臣も御承知でいらっしゃるかと思うわけでございますが、その少年部落出身少年であって、いろんな意味での差別などで、家庭もおもしろくない、学校へ行ってもあまり肩身の広い思いができなくって、つい学業がいやになって、その日は学校に行かずに自衛隊ポスターを見ているところを誘い込まれた。そして結局その少年が、自衛官にすすめられて自衛隊の中にその日体験入隊をさせられて、そして十七歳の少年が父兄に連絡もせずに自衛隊の中にとどめ置かれたというようなことで、その家庭では、捜査願いを出すやら、保護願いを出すやらでたいへんな騒ぎになったわけでございますが、この件は大臣も御承知だと思いますが、この問題に端を発しまして、かねてから自衛隊の中で部落差別、やはり部落少年差別されているというような問題が大きくクローズアップされてきたわけなんでございます。大臣もこの解放運動の盛んな京都の御出身でいらっしゃいますし、特に人権問題については、弁護士としての長い間の人権尊重というようなことで戦ってこられた先生でいらっしゃいますので、まあ非常に部落問題についても御関心を持っていらっしゃると思うんでございますが、基本的に、大臣に、部落問題についてどういうお考えを持っていらっしゃるか、法務省としてどういう態度部落行政をやっていこうと思っていらっしゃるか、そういうことについて、ちょっと基本的な大臣姿勢についてお伺いさしていただきたいと思います。
  5. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 最初お話のございました未成年者自衛隊採用手続、これに際しましては、申し上げるまでもない当然のことでございますが、親権者親権が完全に行使できるような配慮を行ないました上で、手続を円満に進めていくべきものである。これに関連して申し上げますと、いやしくも部落問題等につきまして人権侵犯の起こるがごときことが絶対にないようと心がけていくべきものである、こう考える次第でございます。
  6. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは防衛庁のほうからも人事教育局長お出ましいただいておると思うわけでございますが、この問題、すでに大阪では大きく取り上げられておりまして、御報告も受けていらっしゃることと思いますが、こういうふうに、自衛隊員募集するのに非常に人が集まりにくい。今回長沼判決などが出てまいりますと、なおのこと自衛官を集めることがたいへんに問題じゃないか。われわれの立場とすると、集めること自身がまあどうかと思うわけでございますが、さしあたり当面の局長といたしますと、たいへんに隊員募集に御苦労なさる結果、またこういう事件が起こるような要素というものがますます強くなってくるんじゃないかと思うわけでございます。この事件の場合は、まあ何とかして自衛官を集めなければならないということで、初めは未成年者だということは知らなかったんでしょうが、家庭調査をして、すぐに十七歳でまだ年齢にも達していないということがわかったのに、家庭にも連絡せずにそのまま隊内に置いておいた、そういうことで、家庭の中で、あるいは本人の卒業した中学、あるいは行っている高校でもたいへんに先生方が騒ぎまして、そしていろいろ行くえを探したあげく、自衛隊の中にとめ置かれている、しかも自衛隊アルバイトをあっせんして、三永紙工という会社アルバイト自衛隊の隊内から通わされている、しかもその給料自衛隊のほうが受け取っているというふうな、全くあ然とするようなことが実際にこの一月に起こっておったわけでございますが、そのこと自体について、御担当局長としてどのようにいまお思いになっていらっしゃるか。また、いまも申し上げましたように、ますます自衛官募集というものがむずかしくなってくると、そういう問題が全国各地に起こってくる可能性があるんじゃないか。そういう事柄について、担当局長として、どういうふうに各地方隊員募集についての広報なり教育を徹底しようとお考えになっていらっしゃるか、お述べいただきたいと思います。
  7. 高瀬忠雄

    政府委員高瀬忠雄君) ただいま隊員募集につきまして御指摘がございましたけれども、確かに御指摘のとおり、自衛官募集の環境はきびしゅうございます。まあ適齢人口がだんだん少なくなる、あるいは進学率が高じてくる、そういったいろんな条件がございまして、むずかしくなっております。それで、たびたび新聞紙上などで募集の問題が取り上げられまして、指摘を受けておりますが、こういうことがあってはいけないのでございまして、まあ良識ある募集やり方、主として地連地方連絡部というのがございまして、そこで募集担当しておりますけれども、その担当員一人一人がみんな良識を持ちまして、そして国民に御迷惑をかけないような、批判を受けないような、そういった姿勢募集をしなくちゃならぬということで、日ごろから指導しております。ことに、いま御指摘のようなことがありましたその後におきましても、陸上自衛隊、これは募集担当のところでございますが、これに対しましても、特に配慮をして間違いのないようにやりなさいというような通達を出しましたし、それから、その後地連部長会議などを開きまして、そういうようなことがないようにということで指導をしておる次第でございます。
  8. 佐々木静子

    佐々木静子君 この事件が起こって、いろいろと各地連にそういう局長の方針が徹底されるようにお骨折りなすったということはわかるわけでございますが、しかし、現実にこの自衛官募集については、これは大阪は、ここにも未解放部落がいろいろあるわけでございますけれども、そういう部落青年がねらい打ちされているというのが現実でございまして、未解放部落出身の子弟が、部落内にある学校などがたいへんにねらい撃ちをされて、そしてその中で、自衛隊に入れば国家公務員になる、そして給料は高い、安定した生活と将来への飛躍が保証されておる、あるいは技術を一人一人身につけることができるなどというようなことを、ことさらに未解放部落青年たちに働きかけていることが非常に多いわけなんでございますけれども、そういうふうな事実は御承知なのか。あるいは、何かこれは現実にそういうことをやるということ自身部落差別というものを助長していくことにつながっていくんじゃないか。そういうことで、部落解放同盟としても、この自衛官勧誘問題ということを解放運動の大きな一つポイントとしていまこの問題を取り上げているわけなんでございますが、こういう問題が起こってから、特に部落差別自衛官勧誘というようなことについて、何か隊内で特に教育の徹底なり何なり特別な御指導というものをなすったことがあるのかどうか、その点をお伺いしたいと思うわけです。
  9. 高瀬忠雄

    政府委員高瀬忠雄君) 部落の問題につきましては、かつて自衛隊の中でも二、三この問題が起きたことがございまして、そのつど総理府あたりの御指導をいただきまして、そしてそういうことのないように日ごろから指導をしております。それから、私ども学校の中におきましても特にそういったコースを設けまして、そういった間違いのないような教育をするというような配慮もいたしております。  それから、ただいまのお話で、今回の事件が、特に部落対象にいたしまして特にまあ集中的にやったというようなことは全然ございませんで、私ども募集全国一斉に、同じようなレベル、同じような厚さ、同じようなやり方でもってやっておるわけでございまして、部落だから特にそこに集中的にやりましていろいろなことを言って勧誘をするというようなことはございません。で、現にこの一月の問題におきましても、これはそういった出身の方であるということは全然知らなかったわけです。いろいろ御指摘のように、あとで反省をいたしてみればまずいところもございましたけれども、そういった差別感とか、そういった気持ちでもってやったのでは全くなかったわけです。そういうようなことで、私どもの中におきましても、教育上も、具体的にあとで申し上げてもよろしいのですが、いろいろ配慮をいたしておりまして、そういうことのないように努力をいたしておる次第でございます。
  10. 佐々木静子

    佐々木静子君 この問題について法務省人権擁護局にお伺いしたいのでございますけれども、いまの、防衛庁のほうでは、特に自分のほうでは差別意識は持っておらないつもりであって、全国同じように取り扱っているんだというお話でございますけれども現実にこういうふうなことが、たとえば大阪府下を取り上げてみましても、たとえば和泉市の未解放部落青年たちが、いままでの勧誘で集中的に自衛官勧誘対象者としてねらわれている。そのためにまだ在学中の生徒たちがたくさんスカウトにこられて、解放同盟としても非常に迷惑をしている、そういうことで、自衛官指導者という方々人権意識が非常に希薄なのではないか、そういうふうなことから、いま解放運動一つの大きなポイントとして、この自衛隊勧誘問題というものを取り上げているわけでございますが、人権擁護局として、そういう問題を全国的に特に把握しておられるか。また、この事件人権擁護局は御存じだと思いますけれども、その事柄をお知りになって、どういう対策をお立てになり、現実行政の面でどういう指導をしておられるか、そういうことについてお答えいただきたいと思うわけです。
  11. 萩原直三

    政府委員萩原直三君) お答え申し上げます。  自衛官募集関係について全国的にどのような調査をしているかということにつきましてでございますが、その点については、私どもに格別の情報も入っておりませんし、いままでのところ調査しておりません。ただ、この問題につきましては、四十八年一月二十五日に第一回の確認会が開かれまして、七月二十五日の糾弾会まで、合計五会合が重ねられましたが、この会合の席には大阪法務局職員も出席いたしまして、その他諸般の情報を集めておりまして、この動きについては注意深く調査を重ねてまいったわけでございます。そうして、一応七月二十五日に自衛隊から自己批判書が出たという報告を受けておりまして、この段階に至るまでのいままでの経過を検討いたしまして、これを侵犯事件として立件するかどうかということをいま検討中でございます。ことに、事実関係が明瞭でございませんけれども先ほどお話しのように、十八歳未満であるということがわかった時点から一日、二日なお連絡部にとどめて置かれたというのはどういう事情であろうか、それから、この二人の少年のうち一人が同和地区出身者であるということがこのことにどういうふうな関連を持つであろうかという点について、なお調査を重ねていきたいと、かように存じております。
  12. 佐々木静子

    佐々木静子君 この事件は、偶然起こったというよりも、起こるべくして起こったというふうに私ども考えているわけでございまして、やはり自衛隊指導者方々人権意識が希薄であり、また青少年教育権利教育を受ける権利というものを本気になって考えておられれば、いまも人権擁護局長がおっしゃったように、十七歳であるということが判明してからあと、まだ二日も隊内に本人たちをとめて置いて、しかもアルバイトをさせてよその会社で働かせたというようなことも起こらないのじゃないか。また根本的には、この同和地区家庭というものの軽視というかべっ視、これがやはり意識の中に無意識のうちにもあって、だから子の親たちがどんなに心配しているかということについての思い自衛隊指導者の中にやはり至らなかった、そういうことも頭に置いてなかったのじゃないか、そういうとこら辺で、たいへんに今後大いに反省していただきたい問題だと思うわけでございます。これは、たまたまこれが一つ大阪で起こった事件でございますが、いま部落解放運動というものがだんだんと進んではまいりましたけれども、しかし、いまこの自衛隊勧誘事件一つを見ましても、まだ差別意識——人権意識が一般に希薄なことがいろいろあるわけでございますが、この人権問題を担当なさる一番責任の法務大臣といたしまして、今後、いま最初に御所信を伺ったわけでございますけれども部落問題についてどういう取り組み方をなさって、お考えになっていらっしゃるか、もう一度重ねて大臣の基本的な御姿勢を承りたいと思うわけです。
  13. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) いまのお尋ねでございますが、どうも私はこう思っておるのであります。部落問題、部落問題と、こう何だか特別に意識して取り扱うような行き方、これがたいへんよくないのではなかろうか。ごく普通平常な考え方に立ちまして、部落問題を特に人権侵犯のおそれのないように、差別観念のないように、ごく自然の形において差別をなくする方向というものをとっていくべきではないか、私のほうの法務省にもこれを申し聞かせておるのでございますが、事件を取り扱う上には、特に意識してことばを用いて差別問題の取り扱いはせぬように、ごく普通すなおな表現で、すなおな態度でこの問題を取り扱っていくようにすることが一番望ましいということを申しておるのでございます。
  14. 佐々木静子

    佐々木静子君 その大臣のお考えも十分にわかるわけでございますけれども、やはり未解放部落民というものが長い間、何百年という日本の歴史的な差別の中に置かれて、そしていま、憲法のもとに平等な人権が法のたてまえでは保障されている。しかし、長い間の慣習というものがまだ全国各地、特に未解放部落の多い近畿地方などには根強く残っているようなわけでございますので、それをただいきなり全く平等に扱うといったところで、これは長い間の根強く残っているところの社会的慣習なり意識というものはそう簡単に払拭できないんじゃないか、そういう意味からも、やはりほんとうの平等というものを確保しようと思えば、やはりこの部落問題というものをほんとうに理解したところの法務省人権委員その他、法務省、特にその衝に当たられる法務当局方々がやはり同和問題というものについて認識がなければ、これはほんとう人権というものは保障できないんじゃないか、これが私ども考え方なんでございますが、そういう問題についても積極的に大臣とすると、人権擁護立場から今後お取り組みいただけるかどうか、そのことを伺いたいわけでございます。
  15. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 御意見のようなことをちゃんと念頭に、胸の中に置きまして、ごく自然の姿の上でこれを公平に取り扱っていくという考え方に立っていきたいと思います。
  16. 佐々木静子

    佐々木静子君 ぜひともそのようにお願い申し上げたいと思います。  そうしたら、この自衛官の入隊問題はこのあたりで打ち切りまして、次の問題に移りたいと思います。  これは本日の一流紙などでも大きく取り上げられている問題でございますけれども法制審議会で今度刑法改正に関しての意見が出されまして、そして特に改正刑法草案の第三十五章の「秘密を侵す罪」の中に今度三百二十二条企業秘密の漏示罪というものを新設されるというふうに審議会のほうで大体きまったというようなことが報ぜられておりますけれども、これはそのとおりでございますか、会長である大臣に伺いたいと思います。
  17. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 法制審議会ではまだ正式の答申を得るところに至っておりませんが、法制審議会に移しまして盛んに審議をしておる、こういう段階でございますので、お答えがたいへんしかねるのでございますが、事務当局から差しつかえのない限度でお答え申し上げます。
  18. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) いま大臣から申されましたように、法制審議会はいわゆる部会答申はございましたが、総会ではまだ刑法改正草案審議中でございまして、正式の答申はございませんので、いまのことも法制審議会として採用するということにきまったわけではございませんが、現在、審議は進行中でございまして、相当の条文審議は進んでおりますけれども、いま御指摘企業秘密示罪関係審議はまだそこまで至っておりません。
  19. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、法務当局とすると、この問題については全く白紙の状態であるというわけでございますか、あるいは法務当局としても何らかの腹案があるのかどうか、そのあたりを伺いたいと思うのでございます。
  20. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 現在は法制審議会総会審議中でございまして、審議会総会審議方向法務省でどの方向に引っぱっていくというような腹案は持っておりません。虚心に審議会審議経過、結果を聞きまして、政府案の策定ということになる段階でございまして、まだ審議途中でございまして、どういう方向に持っていくというような腹案というものは持ち合わせておりません。
  21. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは産業スパイの問題のほかにも、たとえば名誉に関する罪などにおいて、この公訴前の犯罪事件犯罪行為に関する事実を規定した規定についての削除というようなこととか、あるいは公務員機密漏洩というようなことについてもまた別に刑法で設けようという案が進められておるというようなことを各紙に報ぜられておりますが、それも同様でございますか。
  22. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 佐々木先生御案内のとおり、法制審議会には部会というものがございまして、総会から部会、今回の場合、刑法の場合は特別部会に、全面改正についての要否と、その要するとすればその内容いかんということで審議がありまして、その答申総会になされております。その特別部会で採択いたしました改正草案内容といたしましては、いま御指摘のように、名誉棄損につきましては、先ほど御指摘の、新聞協会指摘しておりますように、現行法に若干の修正を加えた答申がなされておりますし、公務員の機密漏示罪につきましては、国家公務員法等とは別に、刑法の中に国家公務員の機密漏示については処罰規定を設けるべきだという答申がなされておりますし、それから企業機密につきましても、今日の経済界の現状にかんがみまして機密漏示罪を処罰する規定を置くべきだという答申がなされておりますが、先ほど申し上げましたように、総会ではまだ審議中でございまして、答申がなされておらないというのが現況でございます。
  23. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは刑事局長も御承知のとおり、特に新聞協会などが、報道の自由との関係で強く反対要望しているところでございまして、そういう点を法務当局とするとどのように考えておられるのか、また御承知のとおり、やはり憲法で保障されているところの自由権の保障ということについて、日本弁護士連合会も、この法案については反動的な法案だということで強く反対を続けてまいっておりますので、そのあたりのことについて、これ、刑事局長としてどういうふうにお考えなのか、お答えいただきたいと思うわけです。
  24. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) いま法制審議会総会審議中でございますので、刑事局長という立場、つまり法務大臣補佐役という立場で、かくかくということを申し上げることはできるだけ差し控えたほうがいいと思いますが、何よりも新聞協会要望書というものは、その内容を虚心に読みまして、政府当局としてもよく考えるべきだと思いますが、さしあたり、昨日実は新聞協会編集部長に私直接お目にかかって要望趣旨をお伺いしたわけでございますけれども、その要望書は、次の法制審議会総会には、そのまま、各委員参考として、重要な参考資料として提出いたしましてごらんをいただくということのほかに、いつもやっておることでございまするけれども、各条文審議段階におきまして、各界各層意見の大要を、特別部会の結論だけではなくて、各界各層意見をできるだけ幅広く委員皆さん方にお知らせするということもやっておりますので、その中の一環といたしまして、新聞協会要望趣旨も、口頭でも伝え、それから文書としても提供するということにしたいと思っております。   〔理事白木義一郎退席委員長着席
  25. 佐々木静子

    佐々木静子君 この新聞協会要望というものは、これは単に新聞の取材に当たられる方々要望というよりも、これはやはり国民の世論というものの要望であろうと私理解するわけでございますが、まあこれ、私からお尋ねさしていただいてもいいわけでございますが、御専門の刑事局長のほうから、どういう点が問題であるというふうな要望が出されたか、かいつまんで御説明いただきたいと思います。
  26. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) きのうお会いしたところで提出されました要望趣旨は、簡単に申し上げますと、何よりもやはり新聞協会では、名誉棄損の罪の関係について非常に重要な関心を持っておられまして、現行法では「公然事実ヲ摘示シ人ノ名誉ヲ毀損シタル者ハ其事実ノ有無ヲ問ハス三年以下ノ懲役若クハ禁錮」ということになっておる名誉棄損につきまして、現在の法律の二百三十条ノ二では「前条第一項ノ行為公共ノ利害ニ関スル事実ニ係リ其目的専ラ公益ヲ図ルニ出テタルモノト認ムルトキハ事実ノ真否ヲ判断シ真実ナルコトノ証明アリタルトキハ之ヲ罰セス」、要するに名誉棄損に当たるような行為をいたしましても、公共の利害に関する事実で、それが公益をはかる目的に出たものと認めるときは、事実が真実であれば処罰しないということになっておる。その規定を受けまして、その第二項「前項ノ規定ノ適用ニ付テハ」——ここが新聞協会の問題とされるところでございまして、「未タ公訴ノ提起セラレサル人ノ犯罪行為ニ関スル事実ハ之ヲ公共ノ利害ニ関スル事実ト看做ス」、いわゆる公訴提起前の人の犯罪行為に関する事実を報道した場合に、それは名誉棄損の罰せられない条件である公共の利害に関する事実であるというふうにみなすというように法律上推定がありまして、まあある程度自由に報道ができるということになっておるところを、少なくとも現在法制審議会の刑事法特別部会答申によりますと、この第二項の規定を判除するということになっておる。それは新聞報道の自由から見て非常に重大な文障だから、それはぜひ復活してもらいたいというのが名誉棄損に関する一つポイントでございますし、もう一つ、判例ではそのようなことになっておるわけでございまするけれども要望によりますと、たとえ客観的には真実ではなかったということであっても、報道する者の側においてそれが真実であると信ずるに足る相当の理由があったというときには罰しないということを規定に入れてくれという御要望でございます。これにつきましては、刑事法特別部会答申ではそれは採用しておらないという点が、かつて要望しているのにその点が入れられていないのは遺憾であるということでございます。  名誉棄損につきましては大体そういうことでございまして、あと企業秘密の問題につきましては、今日公害等の問題が社会問題としてあって、企業の技術の欠陥等、いわばそれを知らせること、あるいは知ることは、国民の知る権利の関連においてもぜひ必要であるにかかわらず、企業秘密示罪を設けることによって、報道機関の企業の欠陥等に対する取材活動を制限することになりはせぬか。したがって企業秘密示罪というものは設けないでほしいという意見になっておると思います。  それから、企業秘密示罪の成立しない場合として、正当な理由とかいう規定があるけれども、解釈があいまいである、あるいは生産方法その他の技術に関する秘密ということばが概念としてはあいまいであるという批判もなされておりますが、結論は、取材活動の制限になるから、ないほうが好ましいという御意見であると伺いました。  最後に、公務員の機密漏示につきましては、さらに、現在すでに国家公務員法等に漏示罪規定があるにかかわらず、刑法の中にそれを取り入れるということは、いたずらに刑罰尊重と申しますか、公務員の機密漏示の罰則がいたずらに加重される感を免れないし、その結果、またいわゆる公務員による正当な情報提供までも抑制されることとなれば、国民のこうむる影響きわめて重大であるという意味においてこの規定反対という、以上大別いたしますれば三つの条文につきましての反対理由でございます。
  27. 佐々木静子

    佐々木静子君 実は、これでまだ法務省の御態度というものがはっきりきまっておらない段階でございますので、あまりここで論議をかわすのもまあ適当な時期ではないかと思うのでございますけれども、ただ案ぜられますのが、実はもう法制審議会でこうきまってしまったということになってから、新聞協会なりあるいは私ども国民が騒いだところで、これはまた——まあそのまま法案として出るとは私思いませんけれども、まあ手おくれになるというようなことも懸念されますので、ここで大臣にちょっとお伺いさしていただきたいのでございますが、先日来、刑事弁護士四十年の御経歴のある大臣として、まあ私どもも大いに法曹の先輩として敬意を表しているわけでございますが、まずこの第一点の報道の自由と、それから起訴前の犯罪事実についての報道の問題ですね、制限されるという問題、これは私も無制限に、確たる証拠もないのに、全く単なる容疑で被疑者扱いに報道されることによって、大ぜいの方々が、法律上じゃなくても社会的に葬られてたいへん迷惑されるというようなこともむろん存じておりますけれども、一面、こういう第一の問題、二百三十条ノ二の第二項でしたかの規定を削除されるということになりますと、そこに報道というものが非常に制約されるのじゃないか。場合によりますと、報道された新聞記者なり新聞社が犯罪を犯したというようなことになりかねない問題もこのままではしばしば起こってくるんじゃないかというようなことが懸念されるのでございますが、まず第一点について、法務省考えはまだまとまっていないにしても、大臣個人の、法曹の先輩としてどのようなお考えをお持ちか、ちょっとお述べいただきたいと思うわけです。
  28. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 報道の自由を結果において保障したような現在の規定は、よい規定でございます。これをどう思うかということを私ずばりここで言いたいのでございますが、法制審議会審議中である、しかも私がその審議をしてもらっておるという関係で、それを——結論が出てもそれに従うかどうか話は別でございますが、結論が出るまでに、おれはこう思っているんだということを国権の最高機関の席で私が述べるということ、少しぐあいの悪い——これは何でもないことのようですけれども、ちょっと先生これぐあいが悪い。何という大臣かということになりますので、申し上げにくいのでありますけれども、ただ、まあおそるおそる触れてみますと、私はこの現在の報道自由の結果を来たしておる現行法というものの立場はたいへん望ましい立場である。言論がしっかり、自由な立場で、しかし行き過ぎぬように、自由な立場で報道ができるようにしたいものだと、こう思っておるわけであります。法制審議会の結論が出ました上で、結果を拝見して、理由をもつまびらかに聞いた上で、善処をしたい、こう考えます。
  29. 佐々木静子

    佐々木静子君 大臣の非常にいろいろな立場を踏んまえての適切な御答弁をいただきまして、まあ在野法曹の大先輩としての大臣のこういう言論の自由を保障するという線も十分にお考えいただいているということを承って、私どもも意を強くしたわけでございますが、これも非常に答えにくいと思うのでございますけれども、この第二の問題で、企業秘密、まあ産業スパイ罪のようなものを新たに設けるとすると、これはいま刑事局長からも御説明がございましたように、公害企業の摘発というようなことがたいへんに困難になってくるんじゃないか、へたをするとこれは産業スパイ罪——第何条でございましたか、この改正案の三百二十二条に該当するということで、正義感からやられてもそれでやられる可能性が起こってくるんじゃないかということで、たいへんにいまの時代に逆行したところの法案ができるんじゃないかということで、たいそう心配しているわけなんでございます。特にこの欠陥商品などというものも、これも十分に私ども取り上げることができなくなってくると、これは消費者運動について大打撃を与えるのではないか、ひいては、結局このことによって迷惑を、この法律ができて迷惑をこうむるのは、公害によってまともに被害を受ける一般国民、あるいは欠陥商品を買わされたりして泣かなければならない一般消費者であって、これは著しく企業の利益、まあいわば財界の利益につながっていくんじゃないか、そういう意味において、いまのこの社会の動きと非常に逆行する反動的な法案じゃないかと思うわけでございますが、大臣ももちろん申し上げるまでもなくその点十分踏まえてお考えいただけると思うんでございますが、こういうふうな法案について大臣がどういうふうなお取り組みを、いよいよ政府案として出すときにどういう態度で臨んでいただけるのか、大臣の個人的なお考えというものをお述べいただきたいと思うわけです。
  30. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) いずれも答えのしにくいことばかり先生お聞きになりますので、答弁に窮するのでございますが、いま仰せになったように、私もそう思うのでありますが、国民生活に重大影響をもたらすものである、こう考えますので、答申を受けました上で、厳正公平な立場でひとつ慎重にこの問題は検討したいと、こう考えます。
  31. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは先ほどの大臣お話もありましたので、あまりここで論議をすることが適当でないかとも思うんですけれども、非常に重大な問題でございますし、これはもう国民生活全般にたいへんな影響を与えるものでございますので、どうぞひとつこれは企業の側に加担することなく、国民立場に立って、この公害企業の追放運動というものがこの法案ができることによってチェックされないように、また欠陥商品のために一般消費者や家庭の主婦が泣かなければならないような事態が起こらないように、これはいろんなお立場を乗り越えて、担当大臣として、き然たる態度でひとつ臨んでいただきたいと思うわけですが、そういうことをお約束していただけるでしょうか。
  32. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 仰せのとおり慎重な態度で検討をしてみたいと思います。
  33. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから刑事局長にお伺いしたいんですが、この最後の公務員の機密漏示罪のことですけれども、これは国家公務員法との関係ですね。いま裁判になって話題になっておりますいわゆる知る権利というようなことで、西山記者などが国家公務員法違反でいま裁判になっているわけでございますけれども国家公務員法という特別法があるにもかかわらず、なぜここに、刑法の上にこういう規定を設ける案が出ているのか、またそういうことについて、法務当局とするとどう考えておられるのか、これは局長としての御説明をいただきたいと思います。
  34. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 特別部会においてこういう案ができました理由といたしましては、まず最初に、どういう関係かということになりますと、この条文ができますならば、この条文内容は、公務上の機密ということになっておりますので、相当程度の高い、国家の重大な利益に影響のある秘密というものの漏示罪でございまして、いわば国家公務員法が一般規定であり、刑法規定はその中の特に保護するに値する機密の漏示ということでありますので、刑罰も重くなり、かつ特別規定であるという法律関係になると思いますが、そこで、どういう理由でできたかということにつきまして、私の特別部会での審議から聞いておりますところによりますと、要するにそのような程度の高い機密については、これを単なる、何と申しますか、行政犯ではなくて自然犯として保護すべきではないか、あるいは処罰すべきではないかということで、機密ということにしぼって、自然犯として規定すべきだということでございます。  なお、国家公務員法では、特別職の公務員につきましては全然公務上の秘密の漏洩は処罰規定がないのでございまして、そこのブランクも埋めるという補充的意味もあるというふうに聞いております。
  35. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはいま伺いますと、国家公務員法の場合が一般的で、この刑法の機密漏示罪が特別法というようなかっこうになるというお話ですが、これはちょっと刑法の体系とすると珍しい立て方じゃないんでしょうか。普通、刑法というのが基本的な刑罰関係をきめて、それに対して個々の特別法というものが普通つくられておるわけですけれども、そこら辺も法のスタイルとしてもまず特殊なのじゃないかというふうに私ども思うのでございますが、そのあたりはどうですか。
  36. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) 特別部会でその点の議論があったことは聞いておりませんが、私の理解するところでは、先ほどちょいと申しましたように、いわば公務員法が一種の行政犯とするならば、その中の程度の高いものがいわば国民全体の倫理の基準から言って反道義的な自然犯であるということに理解されるとすれば、刑法はそういう国民が全部納得する自然犯を規定するものだという意味におきましては、刑罰法規としてはその体系としての斉一性を害するものではないというふうに思いますので、たとえば道路交通法違反の罪が業務上過失ということに昇華いたしますと、それは刑法犯で規定しておかしくないというのと同様の関係になるのではないかと、かように、この場でそう思いますので、お答え申し上げます。
  37. 佐々木静子

    佐々木静子君 これ、いずれにいたしましても、まあ法改正案が出るというのはそれなりの原因があってこういう立法が企画されるんだろうと思いますけれども、この三つの部分につきまして、この法案を先ほどから伺っておりましても、いずれも非常に反動的な要素の深い、反動的と申しますか、取り締まり的な、治安立法的な傾向の深い法案であるということは、これは私、聞いておりましてもひしひしといま痛感しながら伺ったわけでございます。そういう意味におきまして、これは昨年の春以来知る権利というようなことが大きく取り上げられ、国民の中にもたいへんな世論を呼んでおりますこの時点においてこういう立法を計画される、あるいはこういう案が練られているというようなことは、これはやはりいまの国民的の感覚から見ると非常にマッチしないものじゃないか。そういうことにおいて、やはりいまの日本憲法下、基本的人権というものを保障するというのがこの憲法の基本理念であるということから考えますと、この基本理念にこの三つの法案というものがいずれも反した法案のように私ども受け取れるわけでございますが、まあこのような法案を、これ、いま法務省があえて推進されるだけの必要があるのか、また、どういうわけでこういう国民反対するような法案を準備しなければならないのか、そういう点に私どもはなはだ納得のいかないものを感ずるわけでございます。そういう点について、まあいま法制審議会審議段階ではございますが、いずれこれは法務省の中において検討され、どういうかっこうでか法案として近い将来に取り上げられる可能性が多いと思うんでございますが、大臣、そのあたりどのようにお考えでございますか。
  38. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 佐々木先生、幾らかこの法制審議会手続に誤解をいただいておるのではないかと思うのであります。法制審議会刑法改正ということを諮問いたしましたときに、法務省法務大臣はこういうふうに刑法の改正をしたい、よって御意見を聞きたいという意味の諮問ではないのでございます。それですと、法務省反動的に何しとるんかと言われても返すことばがない。そうじゃないのです。刑法は改正する必要があるかどうか、必要だとお認めになるならば、いかなる改正をするがよろしかろうかということを、案を具することなく諮問をしておるというのが諮問のやり方でございます。特にそういうやり方をしており、案をちゃんとつくってこれでどうかと、これはいいか悪いかという諮問のしかたもございます。これも違法ではございませんが、この場合は、刑法改正の場合にはそういうふうにしておるわけで、私がやったわけじゃない、何年も前にやったことではございますけれども、そういうことでございます。  そこで、法制審議会でいろいろ、もうすでに数百回と言ってよろしいほど会議を開きまして、何度も会議会議を重ねて今日に至っておりますので、結論が出まして私に答申が来るわけで、その答申を判断をして、そうして政府案を立案をいたしまして、世に意見を問うて国会の審議を願うと、こういう形になりますので、やたらに反動的な準備を法務省がして、そしてこれを会議にかけておるわけではない。反動的な答えが出てきても、それは聞くか聞かぬかは政府の判断によるわけでございます。そんな窮屈なものではございませんので、よく心得を胸に置きまして、しっかり検討の上で善処をしていきたい。御心配のようなことのないようにいたします。
  39. 佐々木静子

    佐々木静子君 たいへんに適切なおことばをいただきまして、ありがとうございました。私もちょっと先走って大臣にお伺いいたしておりますので、実はこれは取り越し苦労で済めばこれほどうれしいことはないと思うわけでございますが、まあ答申がどういうことであろうと、それぞれの分野におけるエキスパートの方々が御熱心に討議されての上のことだと思いますけれども、しかし、非常に人権感覚の豊かな法務大臣がいらっしゃる限り、私どもはそのように極端な治安立法というものはできないと安心しておるわけでございますが、念のためにさらに大臣に御所信を伺ったわけでございます  たいへんにくどいようでございますが、このような、この三つの法案とも、これは国民を一方の面で代表しているところの日弁連が強く反対している条文ばかりでございますし、また一面、これはきょうの新聞にも大きく報道されており、また、きのうも刑事局長新聞協会がおたずねいたしましたように、また一面大きく国民の世論を代表しているところの新聞協会が、こういう法案じゃ困るということで、強い要望が出ているということを十分に御理解いただきまして、国民立場に立ってぜひとも善処されますように、心よりお願い申し上げたいと思います。  最後に、ちょっとこの件についての御所信を伺います。
  40. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 答申が得られますのは、法務大臣がいかなる改正が適当かということを諮問したので答申が来るわけでございます。答申はどうでもいい、おれの考えでやる、それならば答申を求めぬがいい。でございますから、そういう事情でございますから、答申をいただきましたならば、この答申に対してはえりを正し、極力この答申を尊重する努力を払いますこと、もう理の当然でございます。そういう努力を払うのだが、しかし、有力団体からいろいろな御意見がございます場合においては、有力団体の御意見ばかりでなく、一般国民皆さまの声も十分に聞きました上で、最後的に政府案を立案をいたしまして国会の御審議をわずらわす、こういう方針をかたくとっていきたいと思います。
  41. 佐々木静子

    佐々木静子君 単にエキスパートとしての御意見じゃなくて、大臣のお立場国民を代表するお立場として、どうぞひとつ国民立場に立ってこの問題を御処理いただきますよう、特にお願い申し上げたいと思います。  それから次、昨日、本会議で質問もございました、また前回三回にわたって当委員会でも質問さしていただきました金大中事件につきまして、若干、私、ほかの委員方々も御質問があるようでございますので、私はわずかな時間ちょっとお伺いさしていただきたいと思うわけでございます。  実は昨日、お隣にいらっしゃる白木先生はじめ各党からの代表者の本会議質問がございましたが、その質問の中で法務大臣が、これは単なる国家主権の問題という角度からばかりじゃなくて、これは金大中という方の人権問題という角度で考えなければならないという趣旨のように私承ったんでございますが、そういう角度での御答弁を法務大臣からいただきまして、やはり人権意識の強い大臣の御答弁だということで、いまさらながら敬意を表したわけでございますけれども、このあと人権の問題ということについて若干質問さしていただきますが、前段の議題になりました主権の侵害の問題について、若干、私、この答弁で十分に理解できなかったところをお伺いさしていただきたいと思うわけなんです。  これは、先般来衆議院における質問などの外務省の条約局長などの答弁では、国家機関が関係している場合にはこれは主権の侵害になるという趣旨の答弁があったように私も拝見しておったわけなんでございますが、きのうの本会議を伺っていますと、何だか非常にその主権の侵犯というところが、定義が変わってきているように私はっきり言うて思ったわけなんです。この主権の侵害の事実というものがまだ明らかになっておらない、これは大臣、まず法務大臣の御答弁を拝見さしていただいておりますと、これは全文がまだ私入手できませんので、新聞に要約されたところを拝見いたしましても、国家機関が関係したなら、それが上層部であろうとなかろうと、わが国の主権を侵犯したということになる、国家機関が個人を手先に使っても国家主権の侵犯となるという御説明があって、最後に、その場合に、その個人の行為が職務行為でなければならないというふうにお述べになったわけでございます。この意味が私もうひとつ十分にわからない。たとえば今度の場合ですと、金大中を拉致誘拐する、そういう職務は世の中にあまりないのじゃないかというふうに思うわけでございますけれども、そこら辺の職務行為というのが、この事件の場合具体的にどういうことをさしているのか、それをお教えいただきたいと思うわけなんです。
  42. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 私が答えをいたしましたきのうの答弁、これは同じことを衆議院でも、本会議でも言うております。二日間同じことを言うた。それはどういうことかと申しますと、国家の公権力を日本という他国の領土内において日本の了解もなしにかってに行使をする、ここに主権の侵犯がある、しかし、国家が主権の侵犯をすると言ったって、国家というものは抽象的なもので動きようがないもので、国家の主権の侵犯とは、ことばをかえれば、公権力の行使を代行する国家機関の介入ということがなければ主権の侵犯にならない、その場合は、上のほうがやっても、下っぱのほうがやっても、関係のない者を手先に使っても、みんな責任はあるのだ、しかし、国家の公権力を国家機関が行使をするということは理の当然だが、どんなことなのかというと、それは私的な行動でなしに、その国家機関の職務行為でなければならぬということを言っておるんですね。職務行為であれば、それが行き過ぎであっても行き過ぎがなくっても、当然にやったことでありましても責任があるんだと、こういうことを私は言うておるので、先生のいまの御質問を承りますと、おまえは職務行為ということばをつけ加えたというふうに——そうおっしゃらぬが、そういうお気持ちで仰せをいただいたと思うんでありますが、それはそうではございませんので、つけ加えたんじゃない、当然中にあることばから引き出したもの——つけ加えるというのは外から持ってくること、ことば自体の中から引き出して説明をするという場合は、つけ加えて言い抜けをしておるということにはならぬのではないかと思って、これは大事なところでございますから、委員会で申し上げなかったことであるけれども、理の当然のことを言うておることであるから、大事な衆議院と参議院の本会議において、お尋ねはなかったがこのことを私が説明をしておいたわけでございます。  そこで、いまの最後のお尋ねの、どういう場合に職務行為、職務行為でないということがあるのかと、こういうと——これは仮定の話ですよ。これが仮定でない、ほんとうに言うたということになると、えらいことを言うことになるんでありまして、仮定のことを言うのでございますが、たとえば問題になる一大使館の役人が、世に言われておりますように韓国CIAの任務を兼任しておった——CIAの任務とはどんなものかというたら、韓国に法律がちゃんとある。捜査もできる、人も拘引できる、取り調べもできる、逮捕もできる、司法警察官としての任務も持っている、法律によりますと。そういうものを兼任しておったといったようなことが立証されておるとかされていないとかいうことを私は言うんじゃない。そういうことが立証されたと仮定をいたしますと、これは重大であります。人を逮捕し、人の自由を拘束する権限のあったやつだ、そいつがやったんだということになりますというと、のっぴきならぬことになりましょう。どんなにじょうずに言い抜けをしましても、これは職務行為と違う、個人の行為だと、そういう寝言を言うことは通らぬ。職務を持っておるではないか、その職務の行き過ぎがあったとしても、職務をとった者に責任があると、こういうことになるわけですね、たとえて具体的な例をあげて説明的に言いますと。一般論をいたしますと。金東雲ということでなしにこれを言いますというと、一般論としてはこういうことになる。  そういう意味でございますから、私が、つけ加えたんでないけれども、説明として私が説明をいたしましたことは非常に重要な意味があるわけでございます。言い抜けのできる場合あり、できざる場合がある。兼任などという事態が表面に出てきて、これが立証されますと、言いわけは聞きにくいことになる、こういうことですね。説明が不十分かもわかりませんが、そういうことに考えてほしいんであります。
  43. 佐々木静子

    佐々木静子君 たいへんにわかりやすく御説明いただきましたので、私も、実は職務行為に関してという抽象論ですと非常に理解しにくくて、たとえば、これはおっしゃるとおり仮定の話でございますが、容疑者となっておる者がたとえば外交官とする。外交官の場合、職務行為ということになれば、これは人を拉致し誘拐するというようなのが職務行為の中に入る場合、外交官というものはまず常識的に考えてもこれはないんじゃないか。そうなると、これは外交官の場合は、かりにこれは人を拉致し誘拐する、あるいはこれは窃盗でも強盗でもかまいませんが、これは職務行為に入らなくなってしまうということで、たいへんに心配をしておったわけでございますが、いまの御説明で、一例をあげれば、CIAの任務と兼任だというようなことにでも、これ例をあげれば、そうなれば、これは職務行為なのだという御説明をいただきまして、私どもにもたいへんよくわかるわけなんでございます。  ただ、きのうの、これは法務大臣ばかりじゃなくって各閣僚の御意見を承っておりますと、じっとがまんをして待っておれば必ず解決するというふうな御趣旨の御答弁のように承ったわけなんでございますけれども、例がたとえば外交官とCIAと兼任している場合というような場合ですね、これ、じっと待ってて、兼任の事実というようなものがどういうふうにしてたとえば証拠づけられるのか。これは大臣も法律家としてのベテランでいらっしゃいますし、たとえばどういうふうな場合にそういう事実が立証されるのかということを、私、ちょっと頭が悪いものですからなかなか思い当たらなかったわけです。たとえば韓国政府が、この容疑者は外交官ということになっているけれども、実はCIAも兼務しているんだと、そうまあ言ってくれれば一番これは立証できるわけでございますが、いまのところはちょっとそういうこともなかなか困難じゃないか。あるいは御本人が出頭なすって、自分は外交官としての肩書きを持っているが、実はそれと同時にCIAの仕事を兼任しておるんだと立証してくだされば、またこれはたいへん手っとり早いわけですが、これも、客観的事実から考えても常識的に考えても、なかなかむずかしい。そういう場合にどういうことで立証できるのかということを考えますと、たいへんに私ども心細い思いがするわけでございますが、大臣はどのようにお考えでございますか。
  44. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) それは立証の道はあるんじゃないでしょうかと私は思う。  ただし、いま先生お尋ねのところを一歩前進をして私が答えをいたしますと、たいへん具体的な捜査に影響する。私のところにまだその事件が来ていない。昔のことばで言うと送局、検事局に送る。検察庁に送りますのは送致と申しております。事件は私の手元に送致されていない。したがって、捜査の具体的な事柄に関しては論及すべきでない。また私はいままでに数多くの発言をしておりますが、具体的捜査方針について論及したことは一口もございません。意識してそれはこらえております。言いたくとも言うてはおりません。そういう段階から申しますと、この場合に一歩進んでお答えを申し上げると、捜査の非常な重要な急所に触れることになるのではないでしょうか。  それから、政府の言うことを必ずしも私が弁解するんじゃありませんけれども、どうも先生はじめ皆さんの仰せになることも私はひとつ得心がいかぬのは、ずいぶん無理なことを仰せになっておるように——国会の発言を無理とは何だと、こう言われてみると私はおじぎせにゃならぬのですよ。先にこっちから申し上げておくんですけれども。そういうことでありますけれども、ずいぶん御無理を仰せをいただいておるのではなかろうかと思うことは、そんなに急いで捜査というものは進められるものでないでしょう、それは。本来捜査というものは機密のものです。密行ということばがございます。密行の原則、捜査は密行の原則である。秘密に踏み行のうていくべきものが捜査である。それを、これはどうだあれはどうだと仰せになりますというと、それも答えをしようと思うというと、その密行の危険な原則に抵触していってしまうようなことになるわけですね。それですから私は抽象的に申し上げるのでありますが、それは、このままだと職務行為の立証ができなくなるのではなかろうかという御心配は私は要らぬのではなかろうか、それは捜査官の腕に御信頼をいただいて、お待ちをいただいて、一定の時間がたてば解明すべきものは解明できる、ここらのところが真相の究明というむずかしいところなんじゃないでしょうか。徹底的にここを究明してみる、こういうことが必要ではなかろうか。  したがって、先ほどおことばのありました金君をはじめとして関係者が日本に来日をしてくれるということが非常に大事な捜査を前進せしめることになるが、必ず来てくれるものと確信を持っておりまして、非常なむずかしい段階ではあるけれども、この三君がおいでをいただくということはまだ絶望視はしていない、こういうようなのが現段階でございますが、かりに来てくれない場合でありましても——先ほど衆議院でその答えが当局からあったのでありますが、来てくれない場合であっても、日本捜査当局独自の捜査によってある程度の捜査は実があがる、そんなに非観したものではない。ただ何もかも発表しろ、国民だって知る権利があるではないか、こう仰せになるものでありますから、これならば確定して不動のものであるという段階に来ましたものを、金東雲君の問題につきましては、御承知のとおり、捜査当局は、機密の機密に関する事柄でありますが、もうあとはどんなにしても動かぬと見ておりますので、これは発表した、不動の姿勢に至ったものは一部発表をしておる。発表をしておりませんものは発表のできないものでございます。発表の段階までお待ちをいただく以外にはない、答えに当たらぬかもわかりませんが、そういうふうに考えるのでありまして、捜査の機密、それを具体的にあげていろいろ説明さすということについては、どうかひとつ御協力をいただく意味において、お許しを願いたい、こう考えるものであります。
  45. 佐々木静子

    佐々木静子君 大臣お話を伺いまして、私どもも実はきのうの本会議の答弁で、各閣僚の御答弁を伺っておりまして、非常に重苦しい気持ちになったわけです。これはどうも、こうは言っておるけれども、結局はっきりしないままに、主権の侵犯ということも一応定義が非常にむずかしくなってきてうやむやになってくるんじゃないかということで、国民の一人としても非常に、何とかこれははっきりしていただきたい、これは私のみではない、本会議場にいた者ばかりじゃなく、テレビを見ている全国民もそう思ったわけでございますが、いまの大臣の非常に自信に満ちた御発言を伺いまして、何か明るくなったような感じがするわけですが、私、捜査の具体的のことについて伺っているわけじゃなくて、したがって、金東雲氏がどうのこうのというようなことも一切言っておらないわけで、抽象論として、ただ、職務行為、そしてそれがたとえば相手方政府も認めない、本人も自供しないというような場合は、これは抽象論としてですね、新たな道が開けるのかどうかということをお伺いしているわけですが、これは新たな別の方法で証拠づけができるというふうな御答弁と承っていいわけでございますか。
  46. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) それで、具体的な証拠づけが必ずできるとかできないとかということに私が触れることも遠慮をしたい、密行の原則でございますから。全力をあげて職務行為の立証ということにあらゆる角度から積み上げ捜査を行なっておる、決してそれは忘れてはいない。それからもう一つ大事なことは、そういう捜査を行ないます結果、いつごろにどういうことになるであろうかということを、これは申し上げられる材料もございませんし、申し上げる筋合いのものでもないわけであります。おことばの中にありますような、こうしておる間に、ついうかうかしておる間に確たるものがつかめないでうやむやになるのではなかろうかというような御心配がおことばの中に出てきておるわけでございますが、ただ一つここに明瞭に政府の立場を申し上げておきたいのは、本件を捜査の中途において、真相究明に徹底することなく、うやむやにこれを終始していくということは、本件については絶対にない、そういうことは断じてない、あくまでも真相の究明に時間をかけて、あらゆる角度から捜査の積み重ねを行ないまして、有無を言わさぬ段階にまで持っていく。これには時間がかかるが、国会の皆さまに対しても御協力をつつしんでお願いをする、こういう態度でございます。
  47. 佐々木静子

    佐々木静子君 大臣の力強いお話で、だいぶ愁眉を開いたわけでございますが、ただ、せくなというお話でございますが、この事件はたいへんむずかしい事件であろうということはわかりますが、普通の犯罪捜査でも、これは身柄というものがないからこうなっているのですけれども、普通の場合ですと身柄というものがあって、それはもう幾ら延ばしても二十三日間の間に起訴しないことにはこれどうにもならないわけで、この事件は起こってからもう一月以上もたっているわけで、決して捜査が速いとはこれはおせじにも私言えないのではないか、私が非常に勇み足であせりているということには、これはほかの事件一般から考えても当たらないのではないかと思うわけなんです。それからもう一つは、金大中氏がお越しにならぬからというお話、だから延びているということも言えるかもわかりませんが、これはたまたま金大中氏が生きて御無事でソウルへお帰りになったまでのことであって、たとえばこれが殺人事件であったというような、殺されたというような場合であれば、被害者というものはこれは永久に出てこないわけでございますから、それでもその限られた間に捜査をしないといけないわけでございまして、非常にこちらに来ていただけないという不都合がいま起こっておりますけれども、まあ元気で向こうにおられて、ともかく着かれた当初は電話も日本に何通も入っておる。それから供述書もたいへん不十分ながら韓国政府からこちらに来ておるという状態で、それも特におくれた事由には私は当たらないのではないか。そう考えますと、たいへんにこれは捜査当局も非常な御苦労していらっしゃるということは私も痛いほどわかるわけでございますけれども、何とかもう一ふんばりしていただいて、ぜひとも真相究明というものをやっていただきたいと思いますとともに、この主権侵害ということがたいへんにむずかしい定義にいろいろなってきておるというか、本来そうだったのかもわかりませんけれども、その立証のためにも、ぜひとも日本の捜査官憲の面目にかけてもしっかりやっていただきたいとお願い申し上げるわけなんです。  特に、最初に申し上げました、大臣人権問題としてこれをお取り上げいただいているということ、私、非常にありがたいことだと思うわけなんです。と申しますのは、この拉致誘拐された方がたまたま大統領候補という大もの政治家であったためにこういうふうに大きな問題になっておるわけでありますけれども、これは先日来私や同僚議員からもいろいろ質問さしていただきましたように、これはいま始まったことじゃなくて、いままでも何人かの方々は不法にこれは韓国CIAの手によって逮捕監禁されているということはこれは動かすべからざる事実でございまして、法務省からもそうした資料を私どももいろいろいただいているわけなんでございますが、これは外務省並びに法務省からいただきました、これ入国管理局からいただきました資料ですが、たとえばこの四十八年の七月、夏谷進さんという方が七月七日に伊丹空港から韓国に立って、その日に空港で逮捕された。この資料によりますと、スパイ罪、反共罪のように資料の上ではなっているわけでございますが、そういう事柄について、これは入管当局とするとどういうふうにキャッチしておられるのか、わかっていらっしゃることを述べていただきたいと思います。
  48. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 先般お手元に差し上げました資料によります事件は、いずれも、出入国の関係につきましては、成規の手続を踏んで出国いたしておりますしまた入国いたしておりますので、出入国の観点からはとりわけ問題はないということでございます。ただ、その間に、向こうに渡りました際にどういう処遇を受けたかということは、われわれとは違いまして、外務省のほうで調査中ということでございます。
  49. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、外務省のほうでは、たとえば、これはほかにもいろいろあるのですが、夏谷進事件というものを、どのような情報をつかんで、どのようにキャッチしていられるのか、御説明いただきたいと思います。
  50. 中江要介

    説明員(中江要介君) 外務省で承知しております夏谷進さんの件のあらましは、神戸市に住んでおられます日本国籍の方ですが、夏谷進さんという方が本年の七月七日に、韓国に渡りましたときに、スパイ容疑によって中央情報部の手によって逮捕されまして、八月七日にスパイ罪の罪名によって起訴されたと、こういうことでございます。外務省はこれを承知しまして、当然のことでございますけれども、邦人保護の立場から、裁判が公正に行なわれるように、弁護人の選定にあたって御相談に乗り、またその便宜を供与する、それから神戸の御家族に対して、実情はどうであったかというようなことをお知らせする、そういう措置をとっておるというのが実情でございます。
  51. 佐々木静子

    佐々木静子君 これ、実は法務省のほうに伺っておりますのは、法務省の資料によりますと、元韓国人、現在日本に帰化しているというふうな表示になっておるのでございますが、実は私、この夏谷進の戸籍謄本を取り寄せて調べてみたのでございますが、この表示が間違っておる。やはり純然たる日本人でございますね。こういう純然たる日本人。帰化した日本人でも、これは日本政府とすると人身の保護に当たらなければならない。これこそ何ら差別をつけるべき事柄じゃございませんですけれども、そこら辺で、この資料も違っているのじゃないか。  私、念のために、この家族の言う話と法務当局から伺った話が食い違いますので、戸籍謄本を調べたのでございますが、生まれたのは韓国でございます。もとの日本と一緒になっているころの朝鮮で生まれているわけでございますが、この人は韓国人ではなくて日本人なわけです、ずっと。そういうふうな間違いもあるわけなんです。そして、私ども考えますのに、七月七日に伊丹空港から立った。そして私が、これは家族その他から——家族にはお会いしておりませんが、この夏谷さんの身辺を心配する近しい人々から聞いているところでは、ソウル空港へ着いて、そこでもうCIAに逮捕されている。そうすると、われわれがスパイ罪で逮捕されるということは、日本にはスパイ罪はないのでございますから、しかもソウルへ着いてそれからスパイ罪をやるということも、これは空港へ着いてすぐ逮捕されているのですから、全く合点がいかないわけでございますが、そのあたりは外務省はどう考えていらっしゃるのですか、その点について。
  52. 中江要介

    説明員(中江要介君) 私どもが直接調べているわけではもちろんございませんで、私どもが聞いておりますところでは、その被疑事実といたしまして、一九六九年にシンガポールに行かれましたときに、北鮮のスパイという任務といいますか、そういう役目をとったのではないかとか、それから七一年の四月に、モスクワを経由しまして北朝鮮の平壌に行きまして、そこでスパイ教育を受けたのではないかとか、それから弟さんに当たる方と一緒にスパイ組織をつくろうと企てて、これが七二年の十月と言われておりますが、それがうまくいかなかったというようなことが疑わしい事実としてあげられていると、こういうふうに聞いております。
  53. 佐々木静子

    佐々木静子君 この件について警察のほうにお伺いいたしますが、これは兵庫県警の外事課、あるいはこの人の住まいであるところの葺合警察であるかもしれませんが、外事課が韓国のほうから依頼を受けて関係者の捜査に当たっているというような話を私ちょっと聞いたんですが、そのような事実があるのかないのか。あるとすると、この事件の被疑事実というものも警察当局はある程度キャッチしていられると思うんですが、どういうことで調べを受けているのか、述べていただきたいと思います。
  54. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) お尋ねの件につきましては、葺合警察署の者が夏谷さんの奥さんに当時お目にかかった事実がございます。これは韓国から、これは韓国の刑事訴訟手続法による通達のようでございますが、夏谷進さんが刑法違反並びに国家保安法違反で逮捕された旨の通知が七月の二十四日に外務省を通じて参りまして、この通達を御家族に伝達を依頼をされ、葺合警察署の者が奥さんにお伝えをし、かつその際に、一体これはどうしたことですかということで、事情をお伺いしたことがございます。しかしながら前回の、ことしの六月でございますか、田先生がこの問題を、外務委員会でございましたか御質問がございました際に、私ども調査統計官がお答えをいたしておりますが、インターポールあるいは外務省を通じて捜査依頼があった事実はございません。
  55. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは七月に逮捕されているんですが、六月にもうこの問題の捜査が始まっていたわけですか。
  56. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) 七月でございます。  それから、先ほど——私ども承知をいたしております御本人の身元について申し上げますと、御両親は韓国に居住をしておられ、昭和十八年の四月に養子縁組みによって日本人戸籍に入ったと承知いたしております。
  57. 佐々木静子

    佐々木静子君 そういう事実でございますので、私もこれは純然たる日本人だということを、純然たるということばはおかしいですけれども、元韓国人という表示になっているけれども、韓国籍、韓国人であったことはないので、ずっと日本人なんだということを申し上げたわけなんですが、そうすると、これは日本人がどこの国へ行ったり、あるいは共産国へ行ったりするのは、これ全く自由でございますが、そういうことが、日本人、われわれも共産国へは、これは自民党の先生方も行ってらっしゃる方多いと思いますけれども、行ったとか、あるいはこの反共法を見ますと、南北朝鮮の統一というようなことを口にすると、これは直ちに反共法でやられるのがいまの現状でございますけれども、日本人も、そういうようなことがスパイ罪ということで、ソウルへ行ったら、飛行機からおりるまでもなく、おりる前につかまるというようなことであれば、これは私、たいへんな問題じゃないかと思うんですよ。これはやはり、もっとこれ、外務当局としても、あるいは法務省になるのか、私この御管轄はわかりませんけれども、もっとこれ、真剣にこの夏谷問題、一例を夏谷問題にあげましても、取り上げていただかないと、日本人がシンガポールへ行ったり、あるいはいわゆる北朝鮮出身の人と出会ったり、これはもうここにいる人はみんなやっているんじゃないかと思うんですよ。朝総連系の人にも出会えば——われわれは共和国へも行っておりますよ。それがみんなスパイ罪だの何だのということで、韓国で何にもせぬ間に、着くか着かぬかのうちに逮捕されてCIAに連れていかれるというようなこと、これは私たいへん大きな問題だと思うんですよ。これは私、外務当局としてももっと——これも何だか知らぬけれどもこんな事件があったというような、こんななまちょろいことであってはとてもだめだと思うんです。  それで、これは法務大臣もよく考えていただかないと困るわけですけれども、たまたまこの夏谷問題というものがほんとうに氷山の一角として出ておりますけれども、実はこれは私の小さい範囲でわかっているだけでも、こういう問題がものすごくあるわけなんです。実は私の夫がソウルへ着いたまま、聞くところによるとKCIAにとらえられて裁判にかかっている、しかし自分はそれを言うことができない。それは、やはりいまお話にあったように、日本人であるけれども親が韓国にいるとか、あるいは娘が韓国に片づいているとか、そういうふうなことで、いま騒げば犠牲者の数がふえるばかりだから、もうあれは死んだものとあきらめてがまんしているというのが実は一ぱいあるわけなんです。そして、そのことをいずれは解決してほしいけれども、いまうっかりそのことを言うと、娘なり親なりあるいはむすこなりが、これはもう殺されるから、どうすることもできないけれども、何とかしてもらわなければ困るというのが、これはもう山のようにあるわけなんです。私が知っているだけで、ここに載っていないだけでも十指に余るほどあるわけなんです。これはもう言わないでくれ、言うと犠牲者がまたふえるから、もうあれは死んだ、もうむすこは死んだものとあきらめているとか、いろいろあるわけですが、これは在日韓国人がそういうことにあっていられるというのも、人道上もちろん許せないことですけれども、在日韓国人のほかに、帰化された日本人、そしていまのように最初からの日本人、そういう方々も同じような目にあっていられるわけなんです。これ、私、外務当局とすると、ほんとうに真剣に取り組んでいただきたいと思うんですけれども、外務当局はここに資料をおあげになりました、いただいておりますが、これしか御存じないわけですか。もっともっと実は把握しているけれども、いま申し上げたような関係で、名前も事件も公表できないので公表してないんだということなのか、あるいは全然御存じないのか、そこのところ、ちょっとおっしゃっていただきたい。
  58. 中江要介

    説明員(中江要介君) 先生のおっしゃいますような事件が、全然根拠もなしに突如としていつも起こるというようなことは、これはたいへんなことなわけでございますけれども、外務省として、それを年じゅう監視して見ているわけでもございませんので、外務省が承知する経緯というのは、事件が起きまして本人から何らかの訴えがある場合、それからまた、いまも先生がおっしゃいましたように、留守宅のほうで心配をして、あれはどうなったんだろうかと言われて調べてみる場合、それから今度は、韓国のほうで裁判所のほうの手続に入ってから、こういうことで領事事務として、日本の官憲の協力を得て、弁護人のあっせんのような場合もそうだと思いますけれども、そういうようなことで依頼がある場合、そういういろいろなことで耳に入ったものを整理したものがそれだけでございまして、それがすべてであるという自信は、もちろんこれはわからないんですけれども、私ども承知しているものはそれだけであって、知っているけれどもその累が御親戚その他に及ぶから差し控えているというものはないというふうに私は聞いております。
  59. 佐々木静子

    佐々木静子君 そういうふうなことで、これはほんとうに氷山の一角だと思うんです、私の知っている範囲では。これはもう覚悟して、親に害が、かりに親が殺されてももうかまわないということで出ているのがこの夏谷事件その他だと思うわけなんです。そうすると、夏谷さんの親がますます危険な状態になるということは、これは困りますので、私もそこまで言うのは行き過ぎだと思いますけれども、いろんな困難があっても、ともかく公にしてでもこの問題は究明しなくちゃならないということで名前を出しているのがこのケースだと思うんですが、これは全く氷山の一角であって、実にたくさんの多くの人たちが、死にまさる苦痛を味わっている。これは、いまもシンガポールでどうこうというような話がありますけれども、日本人なんですね。日本人が、これは韓国内で犯罪を犯せば、それは韓国の法律に触れるか知りませんけれども日本とか韓国以外の国で、かりにそれは韓国の国法に触れる行為であったところで、これは何も犯罪者じゃないわけなんですからね。そして、しかもこの人が韓国へ行ってから犯罪を犯したものでないということは、飛行機が着いて、その場でつかまっているんですからね、犯す時間もないんですよ。ですから、そういう事柄考えると、やはり外務省は、日本国民の権益のために、日本国民の権益というよりも、この夏谷さんの人権を守るために、もっと強い姿勢で臨んでいただかないと、もう第五、第十、第二十の夏谷事件は、一ぱいもうすでに起こっているんです。これをしっかり取り組んでいただかないと困ると思いますが、いかがですか。
  60. 中江要介

    説明員(中江要介君) 私どもももちろん日本国籍を持っておられる方の人権を、日本国内はもちろんでございますけれども、国外でも十分守られているかどうかについては責任があるという覚悟で取り組んでおるわけでございますけれども、これはもう先生も御承知のように、その相手の国が、内外人平等適用の国外犯罪というものを法律の制度として持っておりますときに、その法律制度そのものを争うということはなかなかこれはむずかしいことでございますので、せめてできる最大限は、その法律の適用について誤りがないかということを監視する、で、その人が十分、これはまあ私が申し上げましたのも、シンガポールに行ったというだけじゃなくて、シンガポールに行ったときに、北鮮のスパイに組み入れられたのではないかという容疑を持っている、そうしてそれがほんとうにその容疑のとおりであるのかどうかというのは、やはりこの場合ですと、韓国の法廷で、はっきり白なら白、黒なら黒というところを争っていただく、その成規の手続で、人道的な取り扱いのもとで十分な裁判が行なわれているかどうかという点について、私どもはその夏谷さんの事件に限らず誠心誠意やっておるつもりでおるんですけれども、冒頭に申し上げましたように、違った法体制のところでの事件でございますので、ちょっと歯がゆいような印象をお持ちになるのは当然だと思います。私どもももっとそれを感ずるわけですけれども、まあそこはやはり限界があるというところは御了承していただきたいと、こう思うわけでございます。
  61. 佐々木静子

    佐々木静子君 いや、いまの答えで私納得いかないのが、かりにシンガポールでですよ、向こうの言うとおり、北鮮の人と出会ってですね、まあ北鮮のどういう人か知らないけれども、頼まれた。あるいは私、いま言いましたように、南北統一を主張すること自身がもう反共法に触れるんですから。たとえば東京へ南北統一を支持する方があらわれて、まあ私なら私が、それは非常にけっこうなことだ、私も努力しようと言うたとしますね。言うたとしますって、たいていの方は、これ政治家の方は言うておられると思いますが、政治家じゃなくても一般の平和を愛する日本人は。これが向こうの反共法に触れる——それはまあいいんですよ、向こうの法律は、人のとこまで、これは主権に介入することはいけませんから。ただ、いまのお話ですと、シンガポールで北鮮系の人に出会ってスパイを頼まれた。それが、そういう日本人が何で法律に触れるんですか。日本は、これは思想信条全く自由であって、スパイ罪も反共法も何にもないわけですから、かりに頼まれようと頼まれまいと、何も逮捕される理由はないんじゃないですか。どうなんですか、そのあたり
  62. 中江要介

    説明員(中江要介君) 私どもは、日本の法律によって逮捕される理由は全くないということはもうそれははっきりしておると思うんです。で、韓国が韓国の法律で、しかもその法律が国外犯の規定になっておって、それが内外人平等適用ということになっておりますものを打ち破るという、つまり基本の問題でございますけれども、そこにまではなかなか立り入り得ないので、その壁の手前ででき得ることというのは、身のあかしを韓国の手続のもとで立てていただく、それに日本政府としてはできるだけの御援助をする、こういうことに認識しておることを申し上げようと思ったわけでございます。
  63. 佐々木静子

    佐々木静子君 私、そのおっしゃる意味が全くわからないわけですよ。韓国の法律は、韓国内には適用しますけれども、韓国以外の国で韓国の法律に触れる行為をやったところで、それは全く自由じゃないですか。しかもこの人が韓国人だというなら、また属人主義でその人にその韓国の反共法が触れるんだというような理屈も成り立つかもわからない。私はそうは必ずしも思わないんだけれども、まあかりにですよ、そういう譲歩した見解をかりにとるとしても、この人はれっきとした日本人じゃないですか。日本人が韓国以外のところで、これは北鮮に加担しようと、何しようと、全くこれは自由な合法的な行為であって、これを韓国がひっ捕えるなんというようなことは、もう考えただけでもけしからぬことじゃないですか。どう考えていられるんですか。それに対してもっと日本政府はき然とした態度をとってもらわなけりゃ話にならぬのじゃないですか。
  64. 中江要介

    説明員(中江要介君) 私のことばが、ことばじゃない、御説明の中で、ちょっと足りないところがあったと思いますのは、私は被疑事実を先ほど申し上げましたが、この被疑事実の間に二度夏谷さんは韓国に行っておられるんだそうです。で、今度は三回目の訪韓ということで、そのいまの、反共法じゃなくて、刑法と国家保安法でございますけれども、適用になっておりますのは。その法律に違反した事実が発生したところがどこであるかということについては私はちょっといま申し上げなかったわけですが、いずれにいたしましても、この韓国の法律によって、外国においても犯罪になる行為、これは日本刑法でも、外国で犯しても日本刑法に触れるもの、つまり国外犯という範疇はやはりあるんだろうと思うんです。ですからその部分について、先生がおっしゃるように韓国の外であった事実について全く不問に付するべきであるということを日本政府が韓国政府に対して申し入れる、厳重に文句を言うというのは、どうも法体制の違いといいますか、向こうの立法権の中に入っていくということになるんではなかろうか、こういうことを申し上げたわけなんでございます。
  65. 佐々木静子

    佐々木静子君 何べんも話を繰り返すようですけれども、先ほど御説明になった、その前に韓国に行って反共法違反の事実があったということは、いまの、あったということも考えられないではないという御説明があったので、その問題は保留して、韓国の法律はその韓国以外のところでも適用するんだというようなお話ですけれども、そういうことはあり得ないじゃないですか。しかも日本人ですよ。どこから考えたって、日本人が、それは韓国へ行って韓国の法律を犯したならそれはわかりますよ。日本人が韓国以外のところで韓国の反共法に触れようが触れまいが、それを韓国がひっ捕える権利はないでしょう。
  66. 中江要介

    説明員(中江要介君) 私が専門外のところへだいぶ口を突っ込んだきらいがございますので、刑事法規の一般的な御説明を刑事局のほうでしていただけると思いますので……。
  67. 安原美穂

    政府委員安原美穂君) いまのお考えは、日本刑法の第二条に国外犯ということがございますことは佐々木先生承知のとおりでありまして、「本法ハ何人ヲ問ハス」日本人であると外国人であると問わず「日本国外ニ於テ左ニ記載シタル罪ヲ犯シタル者ニ之ヲ適用ス」とありまして、通貨偽造とか、公正証書不実記載とか、有価証券偽造とか、そういう罪、内乱の罪、外患の罪という、通貨偽造の罪というようなものが規定してございます。これは要するに、どこでこういうことが行なわれようと、日本の通貨を偽造したというようなことを、外国人が、たとえばフランス人がフランスでやっても、それは日本刑法の犯罪になります。ただ、御案内のとおり日本刑法日本国内でしか実現できませんので、そのフランス人が日本に来た場合におきましては、日本裁判権の対象になってこの刑法が適用になるというのが国外犯の規定第二条の実現のしかたでございます。  したがって、フランスにおるものを、日本の政府が乗り出していって、フランスで、おまえは日本の通貨を偽造したからやるというのはまさに主権の行使の問題で、できませんけれども、そのフランス人が日本の国内、つまり主権の範囲内に、中江参事官の言う立法権の、いわゆる向こうの法律圏の中、日本の法律圏の中へ入ってきたときには、それは処罰できるというのが刑法第二条の考え方でございますから、したがって、いまのことを韓国に持っていくならば、私は韓国の反共法というのはどういう規定か知りませんけれども、かりにその規定が、たとえば韓国の反共法は何びとを問わず韓国外において犯した者にも適用するという規定がございました場合には、日本人がそういうことを日本で犯した場合に、韓国の主権の中へ入っていきますならば、韓国の反共法によって処罰されるということは、もうこれは国際的にも刑法の通念でございますから、そういうところへ入っていったということによって適用されるということは、これは韓国の主権の行使としてしかたがない。  問題は、中江参事官の申しましたように、不当な適用があるかどうかということを国民保護の立場から韓国にある日本の領事が見るというのがたてまえであろう、かように考えますので、中江参事官の言っていることは間違いではないと、かように考えます。
  68. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの御説明でございますけれども、しかしこれは私もここへ持っておりますが、全部を見るひまがないので、それが外国においても適用があるかどうかという問題は、いまちょっとすぐにはなんでございますけれども、しかし、この日本人が、常識的に考えても、韓国以外のところで北鮮系の人と出会っておったとかなんとかいうことがあって、そうしてその人が韓国へ墓参りか何かで行った、そうして空港でつかまっているというような状態であるならば、これは非常に問題であるということは、これは刑事局長といえどもお認めになると思うわけなんで、そこら辺のところが、犯罪事実も被疑事実もまだはっきり中江参事官のほうで把握しておられない。いつのときにどういうことをしたということで問題になっているのかということも、いまあとになって、その前にも韓国へ行ったらしいとかいうような御発言があったわけですけれども、あるいはそのシンガポールでやったことが、国外犯にも適用がされて、しかも外国人にも適用されてこういうふうになっているのかどうかということの釈明も済んでおらないというような、弁護人の依頼のお世話までなさっているわけですけれども、そこら辺はやはりもっと基本的にしっかりと究明なさっていただかないと、そうして、もうすでに起こっているのですよ、第三、第四の夏谷事件が。もしそういうことで、日本政府もこういうことを黙認するということになれば、これは日本のように思想信条の自由というものを保障された日本におって、その後向こうへ行ったと同時に、そういうふうなことで、まあ通貨を偽造するというのは、これはどう考えたって破廉恥罪ですよ。それは常識で考えたって、そこの国の貨幣を混乱さすようなことは、わかり切った話ですよ。ですから通貨偽造と、北鮮の人と出会ったとかなんとかいうのとは全く次元の別の話で、これはもっとはっきりと究明なさらないとたいへんな問題になると思います。一般的に外務省はこういうことについて、非常にいろいろお忙しいとは思うけれども、あまりにも弱腰じゃないかと私は思うわけなんです。こういう第五、第六の夏谷事件がすでに起こっておりますが、このまま黙認したならば、しかも法務大臣お話では、入国するときはむずかしいけれども、外国へ連れて出るのは簡単だというふうな日本の警備体制になっているとすれば、これは日本でも、つかまえてソウルへ行ってしまえばもう何をされてもしようがないというようなことになっているような状態らしゅうございますので、これはやはり日本としても、もっときっちりやっていただきたいと思いますね。いかがですか。
  69. 中江要介

    説明員(中江要介君) 御質問の御趣旨はよくわかりますので、なお一そう在外日本人の保護には万全を期して、努力したいと思います。ただいまの夏谷進さんの件につきまして、先ほど疑わしいと思われている容疑事実というものを申し上げました第三番目のところは、実は韓国に夏谷さんがいらっしゃいましたときに、その実の弟にあたられます全寿殷という方、その方を韓国で抱き込んで、韓国の警察内に北鮮のスパイ組織をつくろうという企てをされたということが、これが七二年の十月ということになっておりますけれども、それが容疑事実の主たる要因だというふうに聞いております。これは事実であるかどうか、それは私どものなかなか承知するところでないのですけれども、要するに真実が曲げられないように、できるだけのことを、弁護人のあっせんその他のみに限らず、絶えず在韓日本大使館の館員を動員しまして、御趣旨に沿うように、日本人の利益を守っていきたい、こう思います。
  70. 佐々木静子

    佐々木静子君 ぜひそのようにお願いしたいと思います。そしてその夏谷事件についてのその容疑事実を、いまおっしゃったようにもし外務省ではっきりわかっていらっしゃるのならば、それをぜひとも資料として参考までにお出しをいただきたいとお願いを申し上げたいと思うわけです。  最後に、大臣、一例を、夏谷事件を掲げたわけでございますが、これは日本人がそういうことで、いまも第三の事実というものを初めて伺いましたけれども、たとえばシンガポールで北鮮人と出会ったとかいうようなことでも、これはつかまえることができる。ソウルにさえ着けばつかまえることができる。これを日本政府はこのまま黙認しておったのでは、すでに第二、第三が起こっているのですが、これはゆゆしい問題ではないかと思いますので、これは大臣、特にきのうの本会議での御発言でも、人権という問題を特に大臣、実は法務大臣だけでございまして、人権ということをおっしゃっていただいたのは。私、非常に敬意を表しているわけですけれども、この人権擁護立場において、大臣はどのような姿勢で取り組んでいただけるか、最後に御所信をお述べいただきたいと思います。
  71. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) ごもっともな案件でございます。この問題は人権擁護立場にも立ちまして、最善を尽くしてまいりたいと存じます。なかなかむずかしい問題でございますが、最善を尽くしてまいりたいと思います。
  72. 白木義一郎

    白木義一郎君 昨日の参議院の本会議、非常に各党とももの足りない感じをしたかと思います。さらに、その前の衆議院の本会議もさることながら、昨日の当院の政府の御答弁は非常に不満である。その中でも、いま佐々木委員が触れられました法務大臣のこの主権の侵犯の定義といいますか、それについて、私どもも実はおやつという感じを持った、それについていま御答弁がございました。しかし、これはお二方とも有能な弁護士さんであって、先輩、後輩の間でもあって、佐々木先生は非常に大臣の答弁を了とされたようですが、私はしろうとですから、どうも大臣の答弁じゃもう一つしっくりしない。  そこで、職務行為でなければならない。そうすると、この一等書記官はりっぱな韓国の大使館員である。それが大使館員やあるいは領事館員を使って、そうして今回の事件を起こしているという容疑、それについては冒頭に、大臣は、この席で非常に確信ある発表をされたわけです。ただし、これは某国、某国の政府機関である、しかも法務委員三十年、刑事事件関係の弁護人としては四十年のキャリアの上から、某政府機関が介入していると、第六感であるけれども絶対にそう思うと、そういう確固たる御発言があった。私たちも非常に意を強くして、そうして伺っていたわけです。ところが、日がたつにつれてだんだん様子が変わってくる。ここでは非常に法務大臣として頼もしい。ところが衆議院の本会議では、何だか別な法務大臣がものを言っている。参議院の本会議に来てみたらもっとお行儀のいい大臣になってしまったというのが私の率直な感じであります。  そこで、端的にお伺いしますが、このりっぱな韓国の一等書記官がやったということになると、主権の侵犯にならないのかどうなのか、その点、まずお伺いしておきます。
  73. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 私の答弁が何か後退をしておると言わぬばかりのおことばでございますが、(「こっちがとったんだからしょうがない」と呼ぶ者あり)しかし、あなた、そうおとりになるということはまことに妙な話で、その速記録をお読みをいただきますとわかりますように、一つも違うことは言うてないんですよ。職務行為が伴わなければならぬのだということは条理の上から当然言えることではないかということを衆議院でも参議院でも申し上げておる。しかし、お前の言うような条理は相立たぬと仰せをいただく場合は話は別でございます。条理は立っておるじゃないか、国家機関の行為、それは私的なものでなしに、職務行為でなければならぬのだということは、こんなことは理の当然のことで、佐々木先生のおことばに対しても私は反論をしたのでありますけれども、それはつけ加えることばじゃない。説明をしているのだ。つけ加えたもので、つけ加えられた部分だけがあとへ引っ込んでいくのだというようなことをお考えいただきましては、私の真意でないのです。そういうことでございます。国家機関でなければならぬ、国家機関でなければならぬと同時に、それは職務行為でなければならぬのだ、私的な行為じゃいかぬのだということは当然のことで、それらの後退とか何とかいうことのお気持ちがあるようでございますけれども、私はさらに一口申し上げたいことは、この問題は、この捜査が完了して、真相が究明されて、そうしてその国家機関の行為であるということになりましたときには、主権の侵犯問題が起こるわけです。これは日本と韓国だけの問題ではございますけれども、世間の評価を浴びる問題であります。日本という国は無理なことを言うものだというその非難攻撃を受ける余地のないように、行き届いた万般の準備をして理論構成をしていく必要がある。お前のところは堂々たる一等書記官たる官吏なる者がこれをやっておるじゃないか、それはこういう筋から職務じゃないかと、それは職務行為と言わずして何だという立証をせなければならぬ、その立証ができないでやいやい言いますことは世界から笑われる、私はそういうふうに強くこのことを考えるのでございます。決してつけ加えて、引っ込むものじゃない、引っ込まない、これは。  それからこの立証、そんなむずかしいものじゃありませんよ。この立証はそんなむずかしいものじゃありません。大使館員としては、人を逮捕し、人を監禁し、人を拉致する、そういう仕事はないかもしれぬ。しかし、そういう権限がある者にそそのかされ、本来そういう任務を兼ねておったものだという立証ができる場合においては、ぴしゃりいける。そんなにむずかしい立証じゃありません。非常な苦心をして捜査に手を尽くしておる段階でございますから、ひやかさないでおいていただきたいという感じでございます。おまえの言ったことは引っ込んでいくのかと、そんなことは殺生やね、それは。殺生です、それは。関西のことばで殺生ということばがある。それはもうたいへん、せっかく私が力を入れて論じておることに、おひざ元の参議院に行ったらそういって小言を言われた。おまえ引っ込んできたじゃないかということを言われたという、それは政治家にだって楽しみというものがありますよ。第六感働かして言うたことが命中にだんだん近くなってきておる、それはどうかというときに、おまえは引っ込んだじゃないかという話は心外である。あまり言うと委員長からおしかりがあるかもしれませんから申し上げませんが、そういう趣旨でございますから、どうぞ私の言うていることをすなおにとっていただいて、これをぜひ立証さしてもらいたい、こう考えます。
  74. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 関連。  ちょっとお伺いいたしますが、いま白木委員からお尋ねがあり、佐々木委員から詳細なお話があったのですが、そうして佐々木委員は十分御了解をなさった。白木委員はそれではまだ十分な御了解がないようなことでありますが、私は多少ここでもって疑問に思っておることは、いわゆる公権力の行使であれば、主権の侵害であることはもちろんであります。これはもうだれも疑わない。ただ、本件のごとき不法不当の行為は、職務遂行行為だというようなふうには私はとれない。そういうような職務行為というものはあり得るわけがない。そこでもって、法務大臣が、いま、職務行為であればこれは主権の侵害だと言ったわけでありまするが、本件は、いわゆるそれがこういうようなふうな不法不当な行為であるから、直ちに職務行為だとは言われないんじゃないかと、こういうようなふうに思う。ただ問題は、私は、公権力の行使をされておるその過程において、そして職務を逸脱した行為ではないかと思う、本件は。いわゆるほんとうの、本来の職務行為ではないが、職務行為を逸脱してこういうようなふうな不法な行為が行なわれたんじゃないかと、こういうようなふうに思うのであります。その場合に、これが主権の侵害になるのかならないのか、そこをはっきりお伺いいたしたいのであります。
  75. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 職務行為というのは、これは理屈を申し上げるんじゃありません。当然のことをこれも言うのでありますけれども、問題になっておる本人がそういう職務を持っている、そういう職務行為をするという意味ではないんです。その場合ももちろん含まれるんであるけれども、自分は職務は持ってない、国家機関であるということは厳然としておるけれども、自分はそういう職務は持ってない、自分は一等書記官だ、こういうことがある。しかし、そういう職務を持っておる、たとえて言うんですよ、これはたとえて言うんですから差しつかえないのでありますが、たとえて言えば、KCIA、司法警察官たる職務を持っておる、犯人を逮捕する職務を持っておる、尋問をする職務を持っておる、そういう者にやれと指示された、私が本会議で手先ということばを使った、手先に使ってということばでございますが、やれと指示を受けた。本人がCIAを兼任しておればなおさらでございます。兼任はしていないんで、厳然とした一等書記官だけれども、指示があった、指示がないのにやるはずないですね、これ。指示がないのにこんなむずかしいことをやる者はおるものですか。その指示を受けてやったのだということになれば、まさに職務行為だ、これはもう非常に明瞭になってくる。この証明は、そんなに先生方考えをいただくほどむずかしい証明じゃないのじゃないでしょうか。立証捜査の上から、技術面からいったってそんなにびっくりぎょうてんして引っくりかえるようなむずかしいこれは捜査は要りませんよ。証人で、証言でいける。そういうことが現に捜査当局においてすでに捜査に達しておるかおらぬか、私は触れられぬ。私は捜査官じゃない。それは触れられません。これも第六感ではうかうかこんなこと言っちゃいかぬのですね。それでございますから、そこのところはあまり皆さん露骨に具体的に追及なさらずに、だいぶんこれは急所にはまることでございますから、どうか捜査機関の腕を信じて御声援をいただくことが望ましいと、こう思うのでございます。
  76. 白木義一郎

    白木義一郎君 自民党からもプロの先生が御発言があって、私の本心からいえば、もっともっと後藤先生なんかも真剣に日本国民の代表としてこの問題に取っ組んでいただきたいくらいであります。アマチュアの私が夢中になって、大臣をひやかしただなんて言われても、やらざるを得ないような現状なんです。  これはさきに申し上げたとおりに、さきに法務大臣が非常に確信のあるお話があった、それが前提なんです。ところが、政府全体はもうがまんの子であった、その中で法務大臣も一緒にがまんの子になっちゃったような感じがしたから、ふだんのここでの法務大臣と比べるとちょっと後退だと、こういう感じをしたと率直に申し上げただけで、一国の法務大臣を公の席上でひやかすなんという気持ちは毛頭ございません。  そこでお尋ねしたいのは、この一等書記官がやったということになれば、これは侵犯にならないのか、これをまずお聞きしたい。要するに、政府から言われてやったとかあるいは単独で一等書記官がやった犯行であるとか、まあありますけれども、とにかく、一国の外交官がやったとなった場合は、これは職務行為にならずに、侵犯にはならないのかどうですか、この点をお伺いしたい。
  77. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 白木先生ね、反問をするようで悪いんですけれども、一国の純然たる外交官がこんなことをやりますか。何ぴとかから指示を受けたか、何らかの事情があって加担をしたということ以外にこんなことはやれないでしょう、純粋に見て。私はそう思う。あり得ないことです。一等書記官が人を拉致した。そんなことはあり得ないことです。それを権力ある国家機関の指示、命令その他の考え方とどこで結んでいくかという問題があるだけで、非常にむずかしい問題ではあるけれども、捜査の実態からいってそんなに技術的にむずかしい問題ではない。起こり得ないです。個人としてやったのであって、個人として恨みのある犯罪なら別ですよ、相手が恋がたきであったという場合は、なるほど、切ったであろう、なぐったであろうということは考えられる。個人的な事情で本件のごとき犯行を犯すわけがない。横合いからか、背景か、どこからか知らぬけれども、必ず指示を受けておる。受けずにやれるわけがない。こう判断をしていって間違いがないのではなかろうか。しかし、これは詳しく言うていくと捜査の機密にぶち当たりますね。それ、だんだんしゃべっておると、だんだんいろんなことを言うということになってくるので、ここが参議院のこわいところでございます。(笑声)
  78. 白木義一郎

    白木義一郎君 それでは次に、この一等書記官はCIAのメンバーであったかどうか。もしメンバーであったとすれば、これはいま大臣の確信をもとにした推測の上から、これはとても単独であんな大事件ができるか、そんなはずはないと、ぼくもそのとおりだと思いますが、それはそれとして、純然たる書記官兼政府機関であった場合には、これは主権の侵犯に当然なりますね、どうですか。
  79. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) いまるる説明をいたしましたような、直接間接に職務行為として行なったと認められる場合においては、まさしく主権の侵犯となると……。
  80. 白木義一郎

    白木義一郎君 そうしますと、先ごろから当委員会でいろいろ質疑が行なわれたわけですけれども、結論として、わが国、あるいは捜査当局は、わが国におけるCIAの活動については、ほとんど情報といいますか、あるいは的確な資料等を持ち合わせてないような御答弁が続いておりました。しかし日本の捜査当局が、外国のそういう情報機関が活躍しているとしたら、それを全然野放しで、何にも存じませんと、犯罪があれば当然これを捜査したりいたしますけれども、それがない以上は資料も何もございませんと言われても、しろうとはちょっとうかがえないわけです。まあ知っていても言えないということもあるでしょうけれども、常識からいいますと、大使館の一等書記官、いろいろ出先の方々もおつき合いもあったでしょう。そうすると、当然これはその人の身分、平素の行動等はよく知っているはずだと、こう一般の国民は思わざるを得ない。そうしますと、どうしても、だんだんはっきりしてきますと、法務大臣のあの第六感は非常に重みを帯びてくるわけです。国民としては非常にたよりになる決意発表である、こういうことなんです。  そこで、これは言えといっても無理でしょうけれども、一等書記官はCIAでなかったかどうか、お尋ねします。
  81. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) 私どもが現在までの捜査の過程で確認をいたしまして公表をいたしましたことは、金東雲一等書記官が本件に関係している重大な疑いがあり、そう疑うに足りる十分な証拠があるという段階まででございまして、金東雲一等書記官の背後関係、あるいは大使館の中における職務分掌、あるいは何らかの形で指揮命令があったかどうか、こういう微妙な点につきましてはまだ明らかにされておりません。そのために私どもは、外交特権保持者であることを重々承知の上で、同人の任意出頭を外務省を通じてあえて求めたような次第でございまして、この金大中事件の捜査というのは、この金東雲書記官の解明ということが一つの重大な問題であることは申すまでもございませんが、全捜査の過程の中において、それでは私どもが全貌を解明するに立ち至ったかと申しますと、残念ながらようやくその緒についたという段階であると言わざるを得ません。  まだまだわからないことはたくさんございます。六人の男が金大中氏を誘拐をした、こういうことでございますが、私どもが確信をもって現段階申せますのは、金東雲書記官が何らかの形で関係があったということでございまして、残余の五名、あるいはそれぞれの移送ルートの途中でこの事件に関与したと見られます共犯者、あるいはこれを輸送いたしました車、船、一時金大中氏を閉じ込めておきましたアジト、こういうようなものにつきましては、これからの捜査にまたなければなりません。その意味で、捜査の現段階におきましては、金東雲氏の背後関係についてはいまだ明らかでございません。
  82. 白木義一郎

    白木義一郎君 そうしますと、現段階では、この書記官はCIAのメンバーではない、しかしこれから捜査の進展によって、どうなるかわからない、こういうように伺ってよろしいですか。
  83. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) 先般来の当委員会におきまして繰り返しお答え申し上げておりますように、捜査官は予断や憶測を持って捜査することは禁物ということで、あくまで事実に基づいて真相を究明していく、こういう姿勢を変えておりません。その意味で、ありとあらゆる可能性、容疑性のある人物、団体等につきまして徹底的にその背後関係を捜査してまいりたいと考えております。
  84. 白木義一郎

    白木義一郎君 ですから、そうおっしゃるだろうと思いましたから、現段階では、一等書記官はCIAのメンバーであるという線が出ているんだとか出てないんだとかおっしゃっていただくと非常にわかりがいいんですがね。これは最初から政府はがまんの子でいいかもしれないですけれども、一番がまんの子であるのは国民なんですから。それは頭のいい先生方はおわかりかもしれませんけれども、そうでないわれわれは、途中までいくと不明瞭になるわけです。  そこで、これから捜査のこともおありでしょうから、現段階ではCIAのメンバーとは言えないとか、こういうふうにおっしゃっていただくと、そうか、ということになるんですがね。
  85. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) 非常に明快な答弁をすることができればどんなにしあわせかと思うのでありますけれども、まことに残念でございますが、現在の捜査の段階では、そうであるともそうでないとも言えないという段階でございまして、今後の捜査、先般来申し上げておりますように、何ものにもとらわれず私ども真相を究明してまいる所存でございます。事実をつかんだ段階で再び公表させていただきます。
  86. 白木義一郎

    白木義一郎君 そこで、きのうも江崎長官は、はっきりと、警察当局は確信を持っているという答弁がわれわれの前であったわけです。この金東雲書記官がはっきりとこの事件に加担しているという確信、それはいいんですけれども、それから先がまたぼけちゃったわけです。  そこで大臣国民不在の政治ということばがありますけれども、今度ぐらい国民不在の政治がはっきりしたことはないじゃないかと思うんです。それは、韓国との友好を維持していく、あるいはもっと進めていくためにはじっとがまんするということもわかりますよ。だけれども、一番大事なのは国民に対する姿勢だと思う。ところが、国民はいろんなことを聞いたり読んだりしておりますけれども、政府のあり方に対してはどうしても割り切れない。その政府の総責任者はコンピューターつきのブルドーザー、そのブルドーザーが、コンピューターがこわれたのか、ブルドーザーがエンコしたのか、このくそ暑いときに、まずハイジャックがあった。これはみんな徹夜でテレビにかじりついていた。いよいよ月が明けて八月になったらば、この事件が起きた。ずっとほうりっぱなしだ。そうして一月もたって緊急質問。私は実は恥ずかしかったんです。国民は何も言いませんよ。だけれども、腹の中では、何が緊急だ、いまさらと、こう思っているに違いないのです。  そこで、こういう問題については超党派でいかなきゃいけないと思うのです。こういう問題で野党だ、いや与党だとかごちゃごちゃやっていると、一番迷惑するのは国民なんです。外交問題ですから。ふだんは外交は大平にまかした、それはけっこうですよ。だけれども、ここはそういうわけにはいかない。私の責任だとはっきりとした最高責任者のあり方があれば、こんなにもつれたりもたついたりしなかったんだろうと思うのです。これはなぜこんな——直接関係のないようなことですが、あなたも将来総理大臣を志望していらっしゃると、こう伺っているので、もし幸いにしてそうなったときにはと思って、申し上げるのです。  それは、為政者というのは、第一に耳を傾けて大衆の声を聞かなければならない。これはおわかりのことと思います。こういう事件については、最高責任者は直ちに国民にはっきりとした責任者の態度を明確にしてやるべきだと思う。たとえば、この事件はまだ捜査中ではっきりしてないけれども、しかし、こうなったときは皆さんの政府はこういたします、こうじゃなかったときはこうせざるを得ませんというようなことが国民はほしいわけです。それを田中総理は最初にやったわけです、列島改造論でばあんと。それで国民は一応ついていったわけです、事のよしあしは別にいたしまして、小選挙区制をやるぞと、これも国民がおうと思って乗り出したわけです。  その総理大臣が、しかもお隣の韓国で、うんと応援もしましょう、お金も幾らでも出しましょうと言っている相手の人たちに、東京のまん中で変な事件を起こされた、それに対してじっとがまんしている。これじゃ国民はいやんなっちゃいますよ。だから、中には、あんなホールインワンなんかやるから、もうあれで角さんのつきはおしまいになったんじゃないかと、佐藤総理大臣はあれからもうすぐ退陣した、あるいは総理大臣は、昔戦争中に朝鮮へ行っていた、終戦と同時にぱっと帰ってきた、何かあるんじゃないかとか、あるいは、今太閤と言われるが、太閤秀吉は朝鮮政策であれから落ち目になった、だから角さんもこれがせいぜいじゃないかとか、そういういろいろんな憶測を、じっとがまんの子で、しているわけですよ。こういうことが起きてきますと、昔長崎で一人の暴徒が中国の国旗を傷つけた、そのときにすぱっとした態度をとられた、最近では、台湾で日本の自動車会社がPRでちょっと勇み足をした、そしたらすぐにそういう二つの中国を認めるような会社の自動車は中国の人間は必要といたしませんと言われて、びっくりして、ちょうど重役が行っていて盛んに言いわけをした、そういうことも国民は知っているわけです。  ですから、今度の事件の解決には非常にいいタイミングがあったのです。それは、事件発生当初に春日委員長が現地へ行っていたわけです。あのときに総理大臣が、春日君、民社党のこともあろうけれども、ここはひとつあなた、日本の代表としてソウルにとどまっていてくれ、これはもう与野党もないんだ、そうしてこっちはこっちで成田さんどうだろうかとか、あるいは竹入君、あるいは宮本さん、あるいは法務大臣、あなたは相当確信あるけれども、あなたもひとつお知恵拝借だと、そうしてこれを、それこそ日韓の友好の大きな方向へ持っていけるチャンスがあったわけです。それもしない。それじゃなければ、テレビへ出るなり、あるいは、選挙のときは東京中がらがら声でぶったんですから、せめて数寄屋橋くらい行って、この事件はこうなんだというような態度であれば、国民もがまんいたします。そういうことがなければ、これは国民を無視した態度だ、そこらにいるのは虫けらだ、そういうふうにしか思っていない、こういうことになるわけです。しかもしょっちゅう閣議をやっている。ですから、私が大臣に望みたいのは、ここでの大臣のはっきりとした確信、態度をどうか今後閣議の中にあらわして、そうしてこの問題を納得がいく解決、解決しなければならないことはきまっているじゃないですか。その納得いく姿勢国民に反映をさせなければならないのが政治であり、責任者の態度だと思います。そういうわけですから、どうかひとついまからでも、おそいんですけれども、しかしおそいと言っていられません。最高の知能を集めて、そうしてこの解決に当たっていただきたいことを申し上げて、私の質問を終わります。
  87. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 きのう参議院本会議での法務大臣の答弁を聞きまして、やっぱりいま白木さんがおっしゃったように、佐々木さんもおっしゃったように、私もおやっと思わざるを得ませんでした。先ほどからの議論を伺っておりますと、佐々木さんは了解されたようにおっしゃいましたけれども、私は了解するどころか、明るい希望が持てたどころか、ますます不安を感じざるを得ないようになりました。  と申しますのは、大臣の発言でも、八月二十三日の段階では、上下を問わず国家機関のメンバーがやったということになれば主権侵害であると、非常に簡潔におっしゃっていた。九月十日になれば、国家機関の職務行為として行なったかどうかということに具体的に焦点がしぼられてきました。また専門家の松永条約局長も、二週間ほど前には、私的の形であろうと、政府機関の関係者であれば政府関与と見ると答弁されていました。それが六日の参議院の外務委員会では、大使館員の行為、行動が直ちにわが国の主権侵害と結びつくと断定、即断することはできないというふうに、非常に簡単に、簡潔におっしゃっていたことだけを見ても、やはり受ける側としてはもう後退したなと、いよいよ問題が大詰めにきて、焦点が合わさってきたら、この焦点を避けるために後退したというふうに見られるのは無理ないと、そう思うのです。  先ほど大臣の、なめていらっしゃるというようなことがありましたけれども、私に言わせればこちらが全然なめられているのじゃないかと、ちょっと残念な気がいたしました。そうしてまた、きょう私衆議院の法務委員会をずっと傍聴させていただきました。そこでやっぱりわが党の正森議員が国際法上の立場からこの問題を追及していましたですね。そこで、たとえ私的な行為であろうとも、政府機関が関与した場合には無過失責任を負うということも、それをお認めになっていらっしゃいました。こういうふうに、私的な行為であろうとも、国家機関が関与してやった、そういうことについては国際法的には無過失責任を負うんだ——非常に、正森さんですから、具体的に正確に質問、追及されていたときに、聞いていた答弁では、政府側は全く答弁になっていなかったということから見まして、そういうあの質問の答弁、あの態度を見て、ここにいらしたという態度としては私たちを全然なめていらっしゃるんじゃないかと、そういうふうに私はたいへん残念に思いました。  しかし、いろいろとお話が進んでまいりますと、さすがに大臣らしいおもしろいところも出てきまして、ちょっと評価を変えました。たとえば、先ほど、金東雲一等書記官がこういう拉致するというようなことは個人的にはあり得ないとはっきりおっしゃいましたですね。まさに個人的には、だれが考えたって、証拠があろうとなかろうと、考えられない問題ですね。こういう大きな事件を個人的なことでは解決できない。そうすると、だれかに、先ほど大臣もおっしゃいましたように、だれかにそそのかされたかだれかに依頼されたかというようなことしか考えられないというふうにおっしゃいましたね。そうすると、それは、だれかがそそのかすというのも、これまた個人的な、私的な人から頼まれるということはない。そうすれば、やはりそこに国家機関が介入せざるを得ない、介入したんであるということのはっきりした問題が、そこに結論が来るんだなと、やっぱり何十年の法務委員であり何十年の専門弁護士だなと、そういうふうに私はそこで感心したわけなんですよね。  そうすると、私的ではあり得ない、だれかにそそのかされなければならない、そそのかした者も私的な者としてそそのかすわけがない、当然そこに国家が介入しているということになれば、まさにこれは主権侵害の問題と密着してくるということに結論としては私はなるんだなと、先ほどから伺っていたわけなんですよね。ただ、そのときに、それとの結びつきをどう証拠立てるかということについてはっきりすればどんぴしゃりだとおっしゃいましたですね。そうすると、もう大臣考え方としては、個人的ではない。だれかにそそのかされた、そそのかした者も個人的ではない、これは当然国家が介入しているというふうになるということまで認められて、そこのどんぴしゃりのところを捜査するから自信を持っているというふうに承ったわけなんですね。それでよろしゅうございますね。——うんと言っていらっしゃるからいいと思って、時間がないから進めさせていただきます。そういうことで、私はここのところで、大臣なかなかしっかりがんばっていただけるかなと、ちょっと期待を持ったわけなんです。  そこで、この問題はそこで確認させていただいて、次に具体的に伺わせていただきたいと思うんですけれども、私もたいへんこういう事件おもしろいものですから、いろいろ読ませていただいたり、また私どものほうで調査をいたしました問題なんですけれども、この事件の直前に、神田の登山用具店からリュックサックを買ったということがございますね。それで、それには領収書が出された。そこの店員が、十五、六歳の若い者だったけれども、リュックサックを買うのに領収書を出せというようなことはあまりなかったから非常に印象に残ったということを証言していますね。それから、その領収書に畑中金次郎という名前を書いて持って帰ったというようなことが私のほうではわかったんですけれども、それはそのとおりだと思うんですけれども、その点はいかがでございますか。警察庁ですか、これは。
  88. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) お答えいたします。  この金東雲一等書記官が本件に関与をしている重大な疑いを持つに至った一つの要因というのは、御指摘の目撃者の証言でございます。ただ、畑中金次郎というサインをしたかどうか、あるいは、これがまあ領収書を取ったということは事実のようでございますけれども、そういう、将来金東雲一等書記官が万一、万一と申しますか、何とかそうしていただきたいと思っておりますが、任意出頭に応じていただいた場合に、御本人に当たらなければならない捜査上非常に微妙な点がございますので、そういう捜査上の微妙な点にわたりましては、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  89. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それじゃああれですか、領収書を取ったということはわかっているわけなんですね。——わかっていないんですか。私が聞きたいのは、その証人によれば、その若い子によれば、領収書を出しましたと、そして領収書は畑中金次郎という名前を書きましたということは証言しているわけなんですね。それは、そちらのほうではそこまで、領収書をとったのか、名前が書かれていたのかということについては捜査していらっしゃるのか、しているんだけれども言えないのか、その辺どうなんですか。
  90. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) 捜査はいたしておりますが、その事実関係についてはここでは差し控えさせていただきます。
  91. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 差し控えられることはやぶさかではないんですけれども、私のほうで調べたところではそういうことなんです。領収書を取っています、そして名前も、ちゃんと畑中金次郎と書いてあるんですね。そこで私もおかしいなあと思ったんですよ。私もこのごろ、物価高いですから、家計簿つけるのに何に使ったかわからないから、買いものしますと領収書をもらいますよ。しかし自分が買ったものに小笠原貞子殿なんて書かせる必要ないんですよね。そうすると、畑中という名前で領収書を書かしたというところが、私は、たいへんこの問題が捜査をしていくのに大事なきめ手じゃないか。つまり自分がリュックサック買うのだったら何も自分の領収書に名前を書く必要はないですよね。だから、それを畑中金次郎という名前を書かしたというのは、その領収書を自分が買ったんだという証明をどこかに出さなければならないということがあるから、領収書を取り、名前を書いたということになると思うんですよね。私はそういうふうに推理しているんですけれども、どうでしょうかね。
  92. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) 先ほどお答えいたしましたように、現在捜査中の事件であり、かつ非常に捜査の微妙な機微に触れる点でございますので、たいへんおみごとな推理と伺って感心はいたしますけれども、私どもといたしましては、その問題については発言を差し控えさせていただきたいと思います。
  93. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 おみごとな推理と評価いただいただけに、やっぱりそこが問題ですね。大臣もそういうふうにごらんになりますでしょう。そういうふうにごらんになれば、結局証明書を韓国の政府関係に出したんだということになれば、ここでもぴしゃりというのが一つまた出てくるわけですよね。そういうふうにやっぱりお思いになりますでしょう——そうですね。はい、どうもありがとうございます。それじゃ、まあ私はそういうふうなことで、さっき白木さん、しろうと、しろうととおっしゃいましたけれども、やっぱり弁護士何十年だとか、法務委員何十年だとか、何とか学者なんというのは、やっぱりそういう専門のめがねがかかっちゃっているんですね、何十年の中で。だから非常に複雑で高度な反映をするわけですよ。だからそういうときは、やっぱりしろうとの直観というのは非常に私は大事だと思うんですよね。だからそういう意味で、ばかにしないで、やっぱりいろいろなところの情報というものを尊重していただきたいと、そういうふうに考えるわけです。  それじゃあ次に移らしていただきますけれども、今度の事件というのは非常に組織的であり計画的で、たいへんな事件だと私は考えたわけ——考えたわけじゃない、みんなもそう言っているし、ほんとうにたいへんな事件だと思うんですけれども、犯人グループも金東雲一等書記官だけではなくて、きわめて大がかりなものだということがわかっていると思うんです。で、もう事件からほんとうに一カ月も経過してしまっているわけですよね。そうすると、捜査当局として、大体全容というものがどの程度のところまでいっているのか、それから大体人数は、新聞によるといろいろなことが書かれていますけれども、大体どういうような人数が考えられているのか。言えないということもあるかもしれないけれども、私たちは新聞にも出ているのである程度わかっているのですけれども、そちらとしてはどういうふうに見ていらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。
  94. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) 私ども承知しております限りでは、現実にグランドパレスホテルから金大中氏を誘拐をしたグループは六人というふうに考えておりますが、これも、私どもの得ましたのは金大中氏の供述の要旨でございまして、まだ御本人から残念ながら事情を聞く機会を得ておりませんので、一応六人と承知をして、それをもとに捜査をいたしております。そのほか、この金大中氏のソウルに帰りましてからの記者会見の内容その他から総合いたしまして、人数は二十名前後という数字が出ておりますので、私どもとしてはそういう数字を一つのめどに、捜査をいたしております。
  95. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そうすると、たいへん御苦労なすって、法務省のほうから二千人からのリストをもらって、そしてだんだん洗っていって、そして三百人も残って、二百五十人は関係ないと、最後は五十人だというので、新聞で私が見たところですけれども、それからまた二十人というところまで、だいぶ狭められてきたというところですね。いまの段階では六人のそのグループと二十人程度というところまで来ているのですね。
  96. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) 現在までの捜査の過程では、ほぼ間違いないと私どもが確信しておりますのは金東雲書記官一名でございまして、そのほかいろいろ新聞に取りざたされておりますが、私どもが公表をしたのは一つもございません。いままで私どもが公表いたしましたのは、金東雲書記官の任意出頭を求めた際の記者会見内容及び大津のインターチェンジでの目撃者が出た、この二点のみ公表いたしまして、それ以外は私どもから出た情報ではございません。
  97. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それじゃ、この犯人グループというのは、それぞれ金大中さんを尾行していた、それから具体的に拉致した、そして移したというように、支援隊だとかいろんなグループに分かれて行動したと伝えられているし、実際そうだろうと思うわけなんですけれども、金東雲さんの犯行容疑というものは、いま言ったような拉致とか移送とか尾行とかといういろんな中でどの役割りを果たしていたというふうにいま見ていらっしゃいますか。
  98. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) 捜査の過程で入手をいたしました金東雲一等書記官の指紋が犯行の現場であるホテルの部屋の遺留指紋と一致をしたということ、それから、事件の前後に複数の目撃者がいるということ、こういう事実から、あるいは実行行為に直接参加した可能性もあるというふうに考えております。
  99. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それじゃ、そういうことで、実は金東雲さん自身がこの金大中拉致事件のやっぱり一番のキャップだというふうに私たちも見ているし、一般ではそう見ているわけなんですけれども、そちらも当然そういうふうに見ていらっしゃるわけですか。
  100. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) 先ほどお答えいたしましたように、背後関係、組織がどうなっておったか、あるいは計画がどういうものであったか、指揮命令系統がどうであったか、資金がどうだったと、こういうような問題につきましては、現在捜査中で、まだ明らかでございません。
  101. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それじゃ、この犯人グループ、金東雲とともにいろいろ実行面を担当したグループがいるわけですけれども、この人たちが事件前後に来日しているというのがたくさんいるわけですね。そして不審な韓国人グループというのがそこで明らかになってくる。そうすると、出入国のときにチェックをするというのがたいへん大事な問題として、ここで出てくると思うのですけれども、警察、そして法務省の入管局のほうでこの出入国をチェックしていくという作業、どれくらいの程度でやられているのでしょうか。
  102. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 私のほうの出入国当局といたしましては、犯罪捜査と直接関係ございませんので、事件前後の韓国人の出入国につきまして特別に配慮をしてチェックをしたということはございません。ただ、事件が起きましたあと、その前後、たとえば八月五日から八月十一日までにどれくらいの韓国人がわが国に入ってきたかということは、数としてはチェックいたしております。
  103. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 その数だけじゃなくて、数として調べたその人たちについて、これはどうなのかというようなことは、警察のほうとの関係で、どうなっているのですか。数だけわかって、数だけ入ってきました、だけじゃちょっと話にならないわけですね、こういう事件を捜査する場合には。だから、その八月の五日から十一日までに何人入ってきましたということになるわけでしょう。そうすると、その人たちはこういう人たちだというのがわかるわけですね。それはどこへ提供して、それをどういうふうに捜査に役立たせる、というようなことができるのですか。それともなすったのですか。
  104. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 入管当局といたしましては、数だけをチェックいたしまして、もし捜査当局において必要がございますなら、入ってきた人たちのいわゆる出入国カードというものを見ていただく、ということになるわけでございます。
  105. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それで、警察庁のほうへ回るわけですね。
  106. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) 事件前後の出入国状況につきましても捜査をいたしておりますが、その内容につきましては差し控えさしていただきます。
  107. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 みんな、差し控えさしていただく、になっちゃう。  それじゃ、その中で八月二日——確認できません。八月二日だろだと思いますけれども、韓国から対日経済使節団一行十三人というのが入国しているということなんですが、事実でございますね、入管局のほう。
  108. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 八月二日に入国しました韓国人の総数は百三十四名になっておりますが、調査しましたところ、経済視察を目的とするものは見当たっておりませんので、経済視察団がこの日に入ってきたということは、われわれとしては確認いたしておりません。
  109. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それじゃ、経済使節団一行十三人というのは全然確認されていないわけですか。それらしいものもないんですか。
  110. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 入管サイドで調べましたところでは、確認いたしておりません。
  111. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それじゃ、そのリストをもらって、警察の捜査本部のほうでそれをお調べになって、そういう関係はないということですか、それともあやしいというようなのがありますか、経済使節団として入っている十三人は。
  112. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) 新聞報道にそういう趣旨のものがございますが、私どもといたしましては、そのグループが特に容疑性があるという具体的な事実関係を掌握しておりません。
  113. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いま、そのグループが具体的な容疑性があるとは認めていないとおっしゃいましたね。そうすると、十三人というそのグループそのものがあったということはわかっていらっしゃるわけですね。「そのグループ」といまおっしゃったでしょう。
  114. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) 先生のいまおっしゃいましたグループというものがあって、それを調べておるか、という御質問と承りまして、そういうグループそのものを掌握しておりませんと申し上げたわけでございます。
  115. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 掌握していないというのは、先ほど入管のほうでおっしゃいましたね、百三十四人二日に入っていると。二日とは断定していないんです、私のほうは。その前後に何人か、リストが出たわけですね、入管のほうから。そうしましたら、その中から経済使節団というような形のものはなかったんですか。それは私は新聞で見たわけですよ、九月六日の「毎日」に、視察が目的だったが、視察の行動は一切なく、行動に不審の点が多かったと言われる、という記事を見たのです。だから、当然、そういうのが新聞に出ているんだから、新聞社、全然架空のことを記者が書くわけじゃないから、だからそういうのがあるんじゃないかというふうに推察できますよね。新聞にも出されているのだから。だから八月八日前に何人か来たというリストを法務省の入管のほうからおもらいになって、そしてずっと、おたくの捜査はそれを専門にやるわけでしょう。捜査をやっていって、そういう経済使節団と言われるようなものは全然もうないと、これは白紙だと。この記事は全く架空の記事だというふうにお思いになりますか。
  116. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) 私ども、先ほどから申し上げておりますように、公式にそういうことを私どもが発表したことはございませんし、あるいは新聞に出ましたいろいろなことにつきましても、捜査の端緒という意味で、その情報につきましては十分活用させておりますけれども、いまお尋ねの特定のグループについて容疑性があるというような事実関係はまだわかっておりません。
  117. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そうしますとね、またその次に進んでくるんですけれどもね、この一応経済使節団があるという新聞記事が出ますよね。その新聞記事によりますと、経済使節団の中には、在日韓国貿易関係の準政府機関の幹部で、大使館の参事官クラスの地位を持つLという人、ある新聞によるとAというふうに書いてありますが、そういう人がいた、この人物が金大中の拉致事件の総指揮者で、金東雲にも命令できるというふうに出ているわけですよね。そうしますとね、全然こういうものがなかったのにそういうものがどこから出てくるのですかね。大臣、どうですか。全然なかったのにこういうふうに新聞に出ているという——どこかにないと出てこないと思うのですよ、幾ら新聞記者がベテランでも、第六感でここまで出ないですよね。どういうふうに見たらいいでしょうね。おたくのほうで言いにくかったら、大臣の第六感でどういうふうなことというふうに。私もそうなるとわからないですがね。この辺のところ、ちょっと大事な問題だなと思って見ていたんですけれどもね。まあおたくのほうから。
  118. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) 御指摘新聞記事の根拠が何であるのか私もわかりかねます。
  119. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そうですか。大臣、どういうふうにお思いになりますか。ベテラン、答えてもらわなければ私、わからなくなるわ。
  120. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 私もわかりかねます。
  121. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 わかりませんか。
  122. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) ええ。
  123. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 たいへんふしぎですね。大臣もわかんない、そっちのほうもわかんない。だけれども新聞には非常に具体的にこう書かれていたと。わからないという中に、捜査上のことで言えないこともあるのかなあと私は考えますけれども、まあそれでは、その経済使節団というのはわからないと言われればそれっきりなんですけれども、きのう法務大臣、本会議で、金東雲一等書記官は政府機関であるが、その犯行が職務行為として行なったか私人として行なったか判明しないから、主権侵害だとは言えないと、きょうもさっきからおっしゃっていますね。金東雲以外にも犯人グループの中に韓国の政府機関ということがはっきりすれば、やっぱりまたこのような言いのがれというのはできなくなるわけですね、金東雲以外にも。そういうような金東雲以外にも政府機関がある、いるというような捜査上の線は出てきませんか、いまのところの段階では。
  124. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) その点は何ぶん捜査の秘密に属することでございますので、お答えいたしかねますが、私どもといたしましては、事実をもって、事実を積み重ねて、真相がわかりました段階で、そういう該当者が出ましたならば所要の法的な措置をとる所存でございます。
  125. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そこで、またこれは、私、新聞記事なんかでも見ているんですけれども、ふしぎだなと思いますのは、この事件がだんだん捜査当局、追及が進んでいくというと、金東雲さんはさっさと帰っちゃった。それから韓国の大使館の大使、公使館員を含む十数人、私らから見ていれば当然重要容疑者グループになると思われるような者がどんどん帰っていますね。帰国してしまっている。これでは幾ら調べていこうと思っても、非常に捜査はますます困難になるんじゃないか。先ほど衆議院のほうで、法務大臣なかなかいいことをおっしゃっていましたよね。断固としてやるんだと、何とおっしゃいましたかね。うやむやに終わることなく全力でやる覚悟である、悪条件下、それから窮屈な立場で、一生懸命やる、しばらく捜査当局を信頼してほしいと、こうおっしゃっていましたよ。私これを聞いていて、確かに悪条件で窮屈な状態になったんですけれども、こんなにどんどんどんどんみんな帰っちゃうのを何にもとめておかないで、犯人と目される者はもういない。その容疑を固めたいと思ったのがみんな帰っちゃったというふうなことになってしまうと、もう御自分のほうで窮屈な状態をおつくりになっていらっしゃるわけなんですよね、私に言わせれば。そこで、現在までに、こういうふうな韓国関係のそういう、簡単に言えば容疑者として調べたいと思われるような者がどんどん出国している状態がどれくらいいたというふうに、そちらのほうでおつかみになっていらっしゃいますですか。
  126. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) 先ほど来お答えいたしておりますように、私どもの現在の捜査の段階では、金東雲一等書記官一人でございまして、それ以外の者につきましては、これに対して任意出頭を求める、外交特権保持者の場合、任意出頭を求めるとか、あるいは特権保持者以外の者について令状請求その他の手続をとるに足るだけの十分な証拠をつかんでおりません。
  127. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そうすると、そういう韓国大使館関係の人たちがもう十何人出たというのは、これは全然、捜査する上でこういうのは容疑がないから帰ってもしょうがないんだということなんですか。
  128. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) すでに十数名が出国をしておるということにつきましては、出入国管理は私どもの管轄でございませんが、入管よりいろいろ教えていただいて、その帰国の理由等につきましても、何とか、たとえば用務のために帰ったということであるならば、どういう用務であるのか、そういうようなことを何とか把握したいというふうに考えておりますが、残念ながら任意出頭を求めても、外交特権保持者は出ていってしまう。任意出頭をかけられるだけの十分な証拠もないのに、それらの人々について、足どめをする理由がないし、また足どめをする具体的な方法がないんでございます。
  129. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そうですか。それじゃもう時間も参りましたけれども一つだけまた聞かせてほしいんですけれども、さっき衆議院のほうで指紋の問題が出ましたですね。あの指紋が金東雲の指紋と合致したというのが、おたくのほうの捜査で明らかになったわけでしょう。その合致した指紋というのが、先ほどの中ではその左人さし指の指紋だということなんですね。合致したというのはどこではっきりしたんですか。
  130. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) 捜査当局のほうで指紋を照合されて、合致したものがどういうことであるかということは、入管のほうでは存じませんが、金東雲氏のほうの指紋を、外人登録法の関係で、入管にたまさかあったわけでございますが、それは右手の人さし指の指紋でございました。
  131. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 左手でなくて。
  132. 吉岡章

    政府委員(吉岡章君) あ、左手でございます。
  133. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そうしますと、その左手の人さし指の指紋とそれから今度の捜査の中での金東雲の指紋が、その二二一〇号から出てきたというのとが合ったわけなんでしょう、合ったわけですね。そういうことになるわけでしょう。指紋が幾つか出てきた、その指紋が金東雲かどうかということを照合するためには照合するものがなければならないわけですよね。その照合するものは、いまおっしゃったように、はっきり言えることは、記者時代に来たかつての指紋と一致していたということは、もうこれは確実に言えることですね。ほかの指紋はどこと照合したかわからないけれども現実に持っていた指紋と照合したということになれば、そことが一致したということになるわけですね、捜査上。
  134. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) 対照指紋、遺留されておりました指紋と照合をいたしました対照指紋は、本物の金東雲書記官のものであるということは間違いございませんし、それが二二一〇号室に残されておりました遺留指紋と合致したということは事実でございます。
  135. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 その本物であるという、二二一〇号と照合した本物だということになったのが、記者時代のときの左手の指紋だと、外人登録のときの、ということに理解していいわけですか。
  136. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) 私どもは、金東雲氏を特定する捜査のほぼ最終の段階におきまして、日本政府が公的に保存をしておりました間違いなく本人のものである指紋、これを刑事訴訟法の手続によりまして関係官庁から入手をいたしまして、照合の結果、合致をいたしたものでございます。
  137. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 その照合によって合致したというのは、いつそれをおとりになっているわけ。
  138. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) その照合の対照指紋、これは本来犯罪捜査の用に供さないということで、外国人管理のために関係官庁において公的に保管しておられました指紋でございますが、写真面割りあるいは目撃者の証言等によりまして金東雲書記官が本件に関係があるという重大な疑いが出ました段階で、刑事訴訟法百九十七条二項の規定に基づきまして、正式な手続を経、例外的なものとしてちょうだいをいたしたものでございます。
  139. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 私、むずかしい専門的なことはわからないのですけれども、私がなぜ聞きたいかといったら、鑑定したというのが、その指紋をもらった、その公的なものをもらったというのが何月何日の段階だったかということを聞きたいのです。
  140. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) その日にちにつきましては、捜査の過程の日にちが明らかになることがあまり——捜査の秘密上困りますので、最終段階に申し上げたいと思います。
  141. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 最終段階と言われると困っちゃうのですけれども、私たち見れば、当然元記者時代にもあった指紋だ、そしてぴしゃっと合うことはできる、そんなむずかしい手続もしないで。そうすれば、最終段階でなくても、八日に事件が起きたわけでしょう。そうして指紋が残っていて、そしてそれと合わせればもうその時点で、最終までいかなくても、そこで当然、指紋が合っていれば非常に有力な物的証拠だということになるわけですね。そうですね。そうすれば、何でそれを九月の五日まで延ばして、それで発表したかというところが私は疑問だったわけなんですよ。もっと早く、当然いままでの外人登録で指紋もあったのだし、八日の段階で指紋が出たのだから、これと合わせれば、金東雲の指紋であるということがはっきりすれば、そうしてもっと早くやれば、十日に帰っちゃって十七日にまた来たのにほうっておいて、十九日にまた帰しちゃって、そうして九月の五日の段階で、金東雲の指紋が出た、それだから出頭せいなんて、帰しちゃってから出頭せいなんと言うのは、まことにちょっとその辺がやっぱり、私がどうも心配だと言った、そこに何かの政治的な動きがあるのではないかという疑問が一まつどうしても消せないんですよ。それで、時間の催促をいただきましたからもう終わりますけれども、こういうような疑問というのは、いまみんな持っているんです、だれもがね。だから、それをどうしても早く解明していただきたいということになれば、やっぱり捜査の捜査本部ですね、三井さんもたいへん確信を持っていらっしゃるわけだから、この確信でもって断固としてやる、法務大臣も断固としてやると言っていらっしゃるその断固がずっと続くような保証してもらわなかったら、断固がくずれちゃうわけですよ。私もしろうとだから、全然そういうむずかしいことはわかりませんけれども、私、松本清張さん好きなものだから読んでいますけれども、かつて下山事件のとき、自殺説とそれから他殺説とで特捜本部二つできたでしょう。他殺説のほうは消えちゃったでしょう、そして人事配置なんかされちゃって。そういうことになれば——断固がんばっている人にいつまでもがんばってもらわなければうやむやになるということをみんな心配しているんですね。だから、もうそういうような、三井さんも、みんな捜査本部がんばっているのだ、そういうことに対して何らかの政治的な圧力というものが絶対かからないように、かからないようにというところをしっかりと守ってもらいたいということですね。そして、大臣としてもき然とした態度で、口ではなくて実行でそれを示してもらいたいということを私は切に最後に要望したいと思うんです。その辺のところを保証をしていただいたら終わりたいと思うんです。
  142. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) たびたび申し上げておりますように、本件が捜査の中途でうやむやに終わるようなことは絶対にございません。さようなことのないように全力を尽くして相真究明のためにつとめたい。先ほども白木先生からおことばがありまして、答えがなかったので申し上げる機会がなかったのでありますけれども、何が大切だと言っても国民ほど大事なものはない。国民に、本件について御期待に沿う道は、真相を究明して犯人はたれかということを明白にするということであろうと思います。うやむやには断じていたしませんから、どうぞこの点は御信頼をいただきたいと存じます。
  143. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 だいじょうぶですね。
  144. 佐々木静子

    佐々木静子君 ちょっと大臣に一言お伺いさしていただきたいんですが、きょう当初にお伺いしようと思っておりました長沼判決について、閣議で飛躍上告をおきめになったというようなことは事実でございますか。
  145. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) こういうことがほんとうでございます。  閣議できょうは報告するということになりまして、概略の報告をいたしました。敗訴の理由として、判決理由を私が読んでみると、その大部分は憲法問題が理由となっておる、そういうことであるならば、本来は何をおいても飛躍上告をすべきものである、筋として。しかし、飛躍上告をするには相手方たる原告の承諾が要る、この承諾は、私の第六感で見るところ、得られそうにない、結果においては、控訴の手続を踏む以外に道はなかろうと思う、近く準備ができ次第この方針で臨みたいので閣議の御了承をいただきたい——了承、ということになりました次第でございます。そういうことでございます。
  146. 佐々木静子

    佐々木静子君 正式には国のほうから原告代理人に、民事訴訟法三百六十条あるいは三百九十三条の二項、つまり飛躍上告についての同意をしてほしいという要請があったという情報を受けておるわけでございます。私も、いま大臣も言われましたように、これは簡単に弁護人は同意をしないんじゃないか、これは弁護団の判断にゆだねたらいいと思うのでございますが、聞くところによりますと、何百人もいる原告本人にこれを個々的に、飛躍上告の意味とか民事訴訟法を解さない一般の原告に個別的に国がお当たりになるやもしれぬというような風評がいま立っているわけなんです、北海道で。万が一にもそういうことをやっていただくと、これは全くやみ討ちになる。これは国がまさかそういうふうな高姿勢な、こういう重大な裁判にそういうむちゃなことはなさらないと私思うわけでございますが、これは大臣として、法曹のお一人である先輩の大臣として、担当弁護人の意見を十分にお聞きになった上でなさるということ、これは間違いございませんね。お約束いただけますね。
  147. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 間違いはございません。訴訟代理人たる弁護士を通じて申し入れを行なっておる、個々にやるようなことは断じていたしません。
  148. 佐々木静子

    佐々木静子君 その御答弁をいただいて私のほうも安心いたしましたが、その御答弁どおり、どうぞひとつよろしくお願いいたします。
  149. 原田立

    委員長原田立君) 本件に対する質疑は本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十分散会      —————・—————