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1973-07-05 第71回国会 参議院 農林水産委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年七月五日(木曜日)    午前十時十五分開会     —————————————    委員の異動  七月四日     辞任         補欠選任      岩本 政一君     高橋雄之助君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         亀井 善彰君     理 事                 園田 清充君                 初村瀧一郎君                 工藤 良平君                 中村 波男君                 塩出 啓典君     委 員                 梶木 又三君                 河口 陽一君                 佐藤  隆君                 田口長治郎君                 高橋雄之助君                 棚辺 四郎君                 鍋島 直紹君                 温水 三郎君                 平泉  渉君                 堀本 宜実君                 足鹿  覺君                 杉原 一雄君                 辻  一彦君                 村田 秀三君                 吉田忠三郎君                 塚田 大願君    国務大臣        農 林 大 臣  櫻内 義雄君    政府委員        環境政務次官   坂本三十次君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        厚生政務次官   山口 敏夫君        農林省食品流通        局長       池田 正範君        水産庁長官    荒勝  巖君        通商産業省公害        保安局参事官   田中 芳秋君        中小企業庁次長  森口 八郎君        中小企業庁計画        部長       原山 義史君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君    説明員        環境庁長官官房        審議官      橋本 道夫君        厚生大臣官房審        議官       福田  勉君        運輸省港湾局機        材課公害対策室        長        加藤 勝則君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○連合審査会に関する件 ○漁船損害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○漁船積荷保険臨時措置法案内閣提出衆議院  送付) ○水産業協同組合法の一部を改正する法律案(内  閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 亀井善彰

    委員長亀井善彰君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  連合審査会に関する件についておはかりいたします。  運輸委員会に付託されております国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案について、同委員会に対し連合審査会開催を申し入れることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 亀井善彰

    委員長亀井善彰君) 御異議ないと認めさよう決定いたします。  なお、連合審査会開催の日時につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 亀井善彰

    委員長亀井善彰君) さように決定いたします。     —————————————
  5. 亀井善彰

    委員長亀井善彰君) 漁船損害補償法の一部を改正する法律案漁船積荷保険臨時措置法案及び水産業協同組合法の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 村田秀三

    村田秀三君 私は水産業協同組合法の一部改正について、主としてこの問題について、また、それに関連をする諸問題について質問をいたしたいと思います。  まず、今回の改正部分で重要な点は、信用事業を営むところの漁協組に対して手形割引為替取り扱い許可する、こういうことであります。そこでその基準についてお伺いいたしたいところでありますが、これは、先般本委員会におきまして、他の委員よりの御質問の中で基準は明らかになりました。その中で、私が一番関心を持たざを得ないと思いますことは、外国為替取り扱いについては貯金高が五億円、手形割引は十億円というその限界であります。で、この場合、長官説明によりますると、全国二千七百四十組合中、信用事業を行なう組合は二千九組合、その中で該当する組合の数は為替取り扱いについては百十九組合手形は四十一組合、この程度であるということを聞いたわけです。その中で私は非常に疑問に思うのでありますが、今回の措置必要性漁協組手形割引あるいは内国為替取り扱い許可する必要性、これはは法案提案理由の中にも明らかにされておるところでありますけれども、もう一度ひとつここであらためて答弁をいただきたいと思います。
  7. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) 従来こういった漁業協同組合におきましては、手形あるいは為替それぞれ業務を全然行ないませんで戦後、終始今日まで来たわけでございますが、御存じのように、非常に日本経済の高度の成長の影響を受けまして、単位漁協におきましても、従来のように一つ現金決済というふうな段階ではなくて、一般的な風潮の中で、手形なり為替業務を行なう経済発展性が見られているわけでございます。しかし、いきなり、信用事業を行なっているからといいまして、一挙にこういったことを行なうことにつきましては、やはりそれぞれの修練期間といいますか、がありますし、また、ある程度実力を伴っていないと、こういった現金取引でない取引形態となりますと、やはり不測の事態も起こり得るというふうに考えておる次第でございます。  しかし、やはり現金決済ではなくて、為替送金なり手形割引ということが、それぞれの取引相手先というふうなことから、どうしても必要性を生じてきていると。それが特に大型の組合といいますか、大量取引を行なう漁協ほどそういう必要性を生じてきておりますし、また、相手方というよりも、組合員の中にもそういった代金決済一つあり方としまして、為替なり手形による決済方法は非常に必要性を認められてきておりますので、今般こういった為替なり手形取引ができる道を開いたわけでございますが、相当最初の段階はしぼりまして、預貯金高が五億円なり、十億円なりの基準を設けて今後指導してまいりたいと思っている次第でございます。
  8. 村田秀三

    村田秀三君 ただいま答弁をいただきましたが、私の質問に対する答えでは若干何かもの足りないものを感ずるわけでありますが、率直簡明に言いまして、つまり提案理由説明の中におきましても、現在水協組は、内国為替取り扱いはできないのでありますが、「近年漁獲物県外水揚げ代金送金手段として為替取引の需要が増大していること等にかんがみ、」と、こういうことをいっております。それから手形割引につきましても、「水産加工業者遠洋漁業者等を中心として販売代金手形で収受する機会が増大していること等にかんがみ、」云々と、こうなっておりますね。つまり、いまいろいろと長官が申されました。しかし、限界を設けて徐々にというような意味であろうかとも思うのでありますけれども、この必要性考えてみた場合に、では、この五億、十億という限界を設けて一定の漁協組、全国的に分布地図を描いてみた場合に、どの程度になるか存じませんけれども、その送金網なり金融網といいますか、その範疇の中には、全然関係のしない地域等が私は出来するのではないかと、こう思うんですね。端的に申し上げまして、福島県の場合を見てみますと、これは四十八年六月に出されました福島漁業協同組合連合会資料でございますが、これに該当いたしますのは、為替取引では江名漁協、それから県鰹鮪漁協、この二つでありますね。それから手形割引については県鰹鮪漁協これ以外には存在しない、こういうことになるわけです。しかしながら、まあ、これは協同組合合併をすればいいのではないかということになるのかもしれませんが、その付近の中之作であるとか、あるいは小名浜であるとか、その基準に達しない、達しないけれどももう一歩のところで手が届くという漁協組があるわけです。  ここで考えてみますと、この為替取り扱いあるいは手形割引許可するその一つ理由としては、最近、県外の船が水揚げをするあるいは送金をする、こういうことが一般的な問題となっておるのであるから、これは許可をしなくてはならないという、そういう理由であるとするならば、これは小名浜であるとかあるいはは中之作であるとか、あるいは江名などというそういうところはこれは県外の船が相当水揚げもする。もちろん、そこの港の船がよその県で水揚げをするということもあるわけでありますから、必要性は相当にあるんだと、こう思うのですね。そうしますと、為替取り扱いはできるけれども、それが江名だけ、それから県鰹鮪漁協だけ、それから手形割引についてはこれは一カ所しかできないと、こういうことになるのですね。非常にこれはむしろ不合理じゃないか。新しくそういう取り扱いをさせて、そして事業運営といいますか、漁業者の利便をはかるといいますか、円滑にしようと考えているにもかかわらず、それでは、むしろこのクラスの漁協組はいろいろな支障が出てくるんじゃないかと実は私は思うんであります。  でありますから、私は、ここで積極的にひとつ御意見を申し上げまして考えを聞きたいのでありますが、一応の基準は設けられましたけれども、その前段となっております長官説明によりますると、優良な組合事故未然に防止する体制が整っておると見られる組合、こういうことも言っておるわけでありますから、その基準はその基準としてよろしいでしょう。しかしながら、優良な組合である、事故未然に防止できるであろう、そして取引上これは必要だと認められるようなところについては、先ほど職員に対して知識を与え訓練をすると、こういうことを言っておりましたけれども、監査体制強化すると同時に、職員に対する訓練もいたしまして、その基準にこだわることなく、ここはやってもよろしいんじゃないかという、そういう漁協に対しては、許可をするという、そういう手段というものがとれないのかどうか、とるべきではなかろうか、こういう積極的な意見を持っておるわけですが、いかがでしょうか。
  9. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) まず前段のほうのお答えでございますが、この為替手形二つに分けまして私のほうは承認いたしてまいりたいと、こう思っておりますが、御存じのように、為替の場合はほとんどこれは現金にかわる一つ送金手段として使いますので、ある程度預貯金高さえあれば、非常な危険性というものはそれほどないのではなかろうかと、こういうふうに考えまして、こちらのほうは五億円の水準と。それから手形のほうにつきましては、これは一つ手形取引でございまして、場合によりましては、いわゆる世間でいう不渡り手形をつかまされるという問題等もありまして、非常に危険性がどちらかというと、為替取引よりも多い場合が強うございますので、したがいまして、十億円という基準とともに、十億円の預貯金高がある組合はやはりそれはそれなりに人的にもまた組織的にも、ある程度しっかりしているという意味で、この手形取引を認める次第でございます。で、これにつきまして五億円と十億円の水準を設けまして、私のほうは承認いたしてまいりたいと、こう思っております。  ただいま先生のほうから御指摘になりました小名浜組合なり、あるいは相馬原釜でございますか、この辺はもう少しで為替取り引きができるところまでいっておりますので、これは私たちのほうの指導におきましても、為替送金等ができるようになるように、一日も早く預貯金をもうちょっとふやしていただくならば、まあ、あと一割もふやさなくてもいいような段階にきておりますので、すぐ為替のほうはできるのではなかろうかと、こういうふうに思っております。それから手形につきましてはなおまだ相当金額的にも幅がございますので、これにつきましては、為替取り引きを行ないます過程で代金決済がいままで往々にして為替送金ができないもんですから、多少市中金融機関のほうで取り引きが行なわれ、かつそれが預貯金という形で市中銀行に多少たまっている余地もあったと思いますので、こういう為替取り引きができまするようになりますと、逆に預貯金もふえてまいりまして、いずれ手形取り引きができるように急速に進むのではなかろうかと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  10. 村田秀三

    村田秀三君 もう少し努力をすれば、その基準に該当するであろうということ、これはわかります。中之作の場合は——これはもっとも古い資料ですね、四十六年度末ということでありますから。今日ではもっと伸びているんじゃないかとこうも思われます。現在、幾らになっておるかということについては、私もよくわからないわけでありますが、しかし、たとえば、の例を実は私は申し上げておるわけですね。現実の問題として江名がどうだ、小名浜がどうだと、こういうものの言い方ではないわけでありますけれども、少なくともなるほど努力をすれば、貯金高は一千万や二千万は上下するであろうと思われるけれども、しかし五億円なら五億円、十億円なら十億と、きちっと金額で切られた場合には、支障があるんじゃないかと、こういう意味のことを実は言っているわけです。だからここ一、二カ月あるいは一年で、それに到達するであろう可能性があるというところは、むしろ積極的に指導強化するなり、訓練をするなりして、そして取り扱い許可するようにしませんと、むしろ県外から参りました船が、たとえばこの場合、江名中之作、これはあるわけでありますが、江名のほうは——条件整備されて許可されておるから、いままで中之作に荷揚げをしておったけれども、江名にひとつ揚げようというようなことにでもなるとするならば、これはむしろ強化をするという意味ではなくて、後退をさせる結果になると、こういう心配ですね。つまり、信用度ということについて関係する漁協組はたいへん心配をしておるわけでありますから、そういう意味では単に五億円とか十億円とか、そういう数字にこだわることなく、その実態の中で適切なやはり運営水産庁はできないのかと、こういうことです。それについて真意のほどをひとつお聞かせをいただきたい。
  11. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) このただいま私たちの手元に持っております資料で、これは四十七年の三月末の資料でございますが、一応これを御披露申し上げたいと思いますが、小名浜は四億六千九百万円、それから相馬原釜が四億四千九百万円、それから中之作が五億六千八百万円、それから県鰹鮪が八億三千二百万円、それから江名が七億三千九百万円でございまして、この為替につきましては、中之作県鰹鮪江名が、まあ一応一つ基準を厳格に適用いたしますと適格である。こういうふうに理解している次第でございます。ただ、この小名浜相馬原釜につきましても、これも昨年の三月末の預貯金残高でございまして、この四十八年の三月末ということになりますと、全国的に大体まあ魚価も一四、五%ぐらい上がっておりますし、漁獲量もそう減っておりませんので、むしろふえぎみでございますので、あるいは四十八年の三月末ということで締め切らしていただいて、この法案成立後適用するという指導をいたしますと、あるいは両方ともこの為替取引の対象になるのではなかろうかと、こういうふうに考えております。  なお、それではこの指導基準というものは、どういうふうに考えているかということでございますが、私たちこれから県と十分相談いたしまして、この資格の適格組合を決定というか、承認してまいる次第でございますが、これらにつきましては、この当該単位漁協の希望なり、実力なりというものを十分に検討いたしまして、その辺につきましては、指導基準指導基準として見ながら、これは弾力的にある程度運用してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  12. 村田秀三

    村田秀三君 ただいまの答弁でけっこうでございます。私は、機械的に五億なら五億、十億なら十億というところに抵抗があったものですから、その漁協組体質なり実態を見てひとつ法改正目的が全国的に達成できるように配慮してもらいたいというほどの意味があるわけでございます。  で、次いでお伺いいたしますが、ただいまのお話でもわかりますように、合併をすれば、その基準に適合するんではないかというような例というものは、この福島県でも実はあるわけですね。そしてまた、この合併問題については前々から言われておりますように、三十五年から漁業協組整備促進法、四十二年からは漁業協組合併助成法、そして四十六年には再延長いたしまして今日ただいま合併について努力中である、こういう答弁もいただいております。また衆参両院におきましては、水産関係法案の上程されるつど、この漁協組合併については、数次にわたって決議がされておりますね。が、しかし、どうも努力はしているのだろうけれども、その成果というものが、はたして顕著であるかとするならば、この資料によってはなかなかそうは実は見受けられないわけでございまして、それを阻害する要因というのは一体何だろう。もっともこれは合併必ずしも適当であろうとは私どもは考えておりません。その組合がその地域にあって民主的に運営されるような条件が確保されることがもちろん前提ではありますけれども、しかし、体質強化するという点については、これは否定、反対するものでもないわけでありますから、そういう意味では、つまりその目的が達成される合併であるならば、積極的に推進すべきだろうとは考えております。なぜ合併できないのだろうかということについて、どう理解をしておるのか、分析をしておるのか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  13. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) 政府といたしまして、この合併促進法法律を提案いたしましたし、また、それにつきまして非常にまあ指導強化はいたしておりますが、御存じのように政府といたしまして、あくまでこれは組合間同士の自主的な話し合いによりまして、合併すべきものでありまして、強制的に、天下り的に上から強制いたしまして合併促進するものではない性質のものでございます。したがいまして、われわれといたしましては、今後とも経営の合理化という観点から基盤を強化するために、合併については促進はいたしますけれども、今後やはりそういう趣旨のもとに指導してまいりたいと、こういうふうに考えております。  ただ、合併がどうしても、やはりなかなかうまくいかない基本的な大きな一つ要因といたしましては、この漁業権管理権管理主体として漁協が持っておりまして、この漁協が持っております漁業権につきまして、合併と同時に、その漁民一つ共有財産である漁業権がどういうふうな形で併合されていくかということにつきまして、漁民の方々の間に非常に不安感が残っておりまして、この漁業権をめぐって最後まで、もう一つ漁協合併という形に踏み切れない要因が一番大きいのではなかろうかと、こういうふうに考えております。したがいまして、強制的に、また無理な合併をいたしましても、最後まで漁業権の問題が残っておりますと、やはりそれが一つ合併後の紛争の原因となりまして、あと漁協運営がうまくいかないということもございますので、この辺につきましては私のほうも十分に対処してまいりたいと、こういうように考えております。
  14. 村田秀三

    村田秀三君 いまお伺いいたしますると、その中で一番困難なのは漁業権の問題であると、こういうことのようであります。そのほかに、人間的な関係であるとか、地況であるとかということももちろんあると思うんでありますけれども、努力をする、指導するというのでありますけれども、この漁業権の問題が一番合併障害になっておるとするならば、その障害をどうひとつ克服するか、そのためには、その問題をどう整理をすればいいか、という具体的な方針がなければならないと思うんですね。しかもまた、この権利問題というのが、きわめて、その考え方といいますか、思想的なものといいますか、こういうものもやはり背景に当然あるのであろうと、こう思うわけでありますから、さような意味ではその障害である、それが一番障害である。しかしながら、その障害を克服して、漁協組体質強化をしながら生産漁民生活向上をはかって、国民的な経済向上に寄与するという目的達成のためには、具体的な何か方針があってもよろしいんじゃないかと思うんですね。具体的な理念があってもよろしいんじゃないかと思うんでありますが、その点はどうお考えでしょうか。
  15. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) この、ただいま御説明いたしました漁業権の問題は、あくまで一つ漁業法上、これは明らかに商法上のいわゆる物権というふうになっておりまして、基本的な漁民基本財産というふうな形になっておるわけでございます。で、特にその中でも一番関心が深い、こまかいことを申し上げますと、第一種共同漁業権というものが沿岸地先におきまして問題になるわけでございますが、こういったことにつきまして、正直な話、法的な手続上、三分の二以上の書面による決議というふうなこまかい規定までしております関係もありまして、一つのムードではなかなか合併というわけにはいかない。三分の二以上の、過半数といいますか、あれをとらにゃいかぬというふうな、つまり手続上の問題もございますが、やはり実態的には、この漁業権が非常に、戦後の漁業改革の際に、地元の漁民利益を守るという観点から、こういうことを考えておりますので、今後、こういったこの旧組合員既得権の保護をはかる観点から、一応特別措置は設けられている次第でございますけれども、やはり漁民自身には多少心配感があるわけでございます。今後、われわれといたしまして、漁業法あり方にも多少問題がありますので、これらにつきましては今後さらに検討してまいりたいと、こういうふうに考えている次第でございます。
  16. 村田秀三

    村田秀三君 今後検討すると、こういうことだけでは、前に進まないわけでありますが、どうも、私も、実は、この漁業権の問題についてはしろうとであります。しかし、あらためて漁業法等を見てみた場合に、むしろ私は——漁業法障害だと、こう言うのでありますが、どうもそれはおかしいという感じを実は持っておるわけです。  それは二つの面から言えるわけでありますが、一つは、つまり漁業権の存在する海域、それが二つ合併をする、こういうことになりますね。その場合に、定置網等については、これは、特殊な沿岸条件が必要でありましょうから、合併をいたしましたから二つのものが三つになるなどというようなことになるのかどうかということについては、私は、その事情にもいろいろあろうと思うんですね。あろうと思うんだけれども、しかし、合併をして全体でひとつその海域を生かしていこうというような考えに立って、そうして構造改善なり何なりを進めていくとするならば、むしろ利益をあげることができるというほうが多いんじゃないかという感じを実は持つわけですね。それから、漁協組体質強化をされるとするならば、いわゆる漁労機具等購入等にも便利であろうし、いわゆる設備をするための資金の貸し出しという点についても、またよい結果が出るであろうしというようなことで、いろいろ考えてみると、マイナスの部分というのはないんじゃないかと思うんですね。  そこで、これは、やった結果、ひとつよかったんだというような実例でもあるとするならば、それをやはり個別に理解をさせるような運動をこれは積極的に進める、こういうようなやっぱり積極姿勢がなければ、なかなか合併というのはむずかしいんじゃないかと私は思うんです。  それからもう一つは、漁業権は、確かに既得権でありましょうから、それは守らなくちゃなりませんけれども、この漁業権というのは一体何であろうかということをあらためて考えるわけでありますが、もとより、そこの人たち既得権であることは違いないのでありますけれども、それは国民全体のものであるはずなんですね、実際問題として。だとすれば、やはり、これは国民全体のために有益に活用する、活用できるような体制を整えるためにはこれが必要なんだというような、やはりそういう考え方もまた、一つ植えつけていかなければ、これは問題の解決ということにはならないんじゃないかという感じが実はするわけです。これはお答えは要りません。  そこで、この問題は、私もそう深く研究をしているわけじゃございませんので、この程度でやめますけれども、一つおもしろい問題を実は発見をしたわけです。私がいまいろいろ申し上げましたそのことについて、関連して考えてみるわけでありますが、サケ・マスの放流事業というのがございます。サケ・マスの放流事業は、これは私が申し上げるまでもありません、主として、これは内水面漁業、こういうことで理解をされておるようであります。しかし、そうではないところもあるようでありますけれども。しかし、このサケ・マスというのは内水面漁業であるのかどうかということですね。これはまあ遡河性魚族であって、川にのぼって卵を産んで、そして稚魚にかえって大洋に出て成魚となってまた川に遡上する。これは私が申し上げるまでもなく御存じのとおりでありますが、その大部分がこれは大洋であるわけです、北洋であるわけですね。そしてその捕獲は主としてこれは北洋であり、それからサケが産まれた河口付近の沿岸漁業である。この関係からいって、この内水面漁協組と、それからその河口湖に存在をいたします沿岸漁協組漁業権の問題これをどう理解、調和を保ったならばよろしいかという疑問を実は持つわけでありますが、それは水産庁ではどのようにお考えでありましょうか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  17. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) まず概略的なことを申し上げたいと思いますが、この日本におきまして、サケ・マスの放流事業というものは、非常に長い歴史を持っておるわけでございますが、当初はほとんど実際に自然な形で卵を採卵いたしまして、それを多少、稚魚をそこで育てまして、放流するという制度だったんですが、非常にこの技術が最近確立してまいりまして、この四、五年来急速にこのサケ・マスのふ化放流事業というものは脚光を浴びてきている次第でございます。政府のいたしております直轄の北海道のふ化場の問題、あるいは内地の東北、北陸地区のサケ・マスの放流事業——これは都道府県営でやっておりますが、これらにつきまして非常に最近回帰率が高いということで漁民の方々の間にも、やはりこの辺から、とる漁業からつくる漁業への一つの思想的な転換というふうなこともありまして、非常にこの放流事業についての期待が強く、また外国からもソ連なりアメリカでも、日本のこの放流事業につきましての評価は高くなっておる次第でございます。  具体的な数字等で申し上げましても、たとえば新魚一尾当たりの回帰数等につきましても、最近は、回帰率が三・三五%、それから新魚一匹につきまして回帰数が二十九・六匹、まあ三十匹近いというふうに非常に高くなっておりまして、したがいまして、この放流事業はどんどん最近やっておるわけでございます。その結果、沖合いにおきましても、相当とれるようになってまいりましたし、また、沿岸の定置にも相当サケ・マスが入ってくる、さらにそれを越えまして、川へも遡上してくるということでございます。この稚魚放流の形態は主として国の直轄なり、あるいは都道府県の補助事業というかっこうでやっておりますが、放流するのは、公共機関が放流する、それを帰ってきます果実を、利益を享受するのは、下流の漁業者が非常に享受されるというふうに——あるいは沖合いの漁民もそうでございますが、という形で、ただいまのところこの事業につきましては、私たちの耳には、非常にもっと大規模にやってもらいたいというふうなことを聞かされておる次第でございます。
  18. 村田秀三

    村田秀三君 それのいま概況を伺ったようなわけでありますが、サケ・マスの増殖事業については、後ほどまた積極的に触れてみたいと思うのですが、私がいまここでお伺いするのは、質問のしかたもあるいは悪かったかもしれませんが、サケ・マスの放流事業漁協組が、内水面の漁協組がやっておる。そして四年たって成魚となって還流、回帰してまいりました場合には、これはただいまおっしゃられたように、沖合いでもとれるであろうけれども、沿岸河口の漁協組、これは海区の漁協組ですね、そうしますと、この放流した漁協組は、まさに放流をしたのみであって、そして帰ってくるときには、一番最初によいところを、放流事業に手をかさない漁協組が漁獲をして、残った部分を、これは放流事業をやっております漁協組が、これは捕獲をする。こういう形というものが何かばらばらなものに感じられてならないですね。したがって、ここらあたりに、何か内水面漁協組沿岸漁協組とが合併をして、そして放流事業も積極的に効果的に進める、あるいは収獲も両方の漁協組が享受する、こういう関係というものは成り立たないであろうかと実は考えてみたのですね。だから、福島県の資料を私も実はとってみたわけですが、それを見ますと、これまた別に触れたいと思いましたけれども、この移入卵というものが相当に多い。つまり川でとったサケの子だけでは間に合わなくて、つまり北海道であるとかあるいはその他の地域から移入をしてふ化して放流をするということが多いわけです。そして問題点は何かといえば、例外なくどの水系においても、河口におけるところの刺し網によってサケの遡上率、回帰率が悪いのだということが言われておるのですね。だからここでは結局は親魚が川にのぼってくるところを全部とってしまう。のぼる親魚が少ないから卵がとれない。卵がとれないから放流事業が計画どおりにいかないという関係が出てくるであろうという、これは推定ではなくて実態ですね。だとするならば、これは宮古の例でありますけれども、どうも放流数を確保できそうもないということであるならば、その河口付近における定置網、これを廃止して、そしてどんどん遡上をさせてそして親魚の捕獲を増加させた。こういう例が報告をされておるようであります。もっとも、この場合は、内水面漁協組とそれから沿岸漁協組との区別はございませんで、むしろ海区の漁協組が放流事業をやっておるという例のようでありますけれども、この例から見て、もしもこの内水面漁協組と河口湖、沿岸漁協組合併をするかあるいはまたその放流事業、捕獲事業、漁獲事業、共同行動がとれるとするならば、経済効果というものももっともっと高まるのではないか、こういうふうに考えるものですから、そのこととあわせて先ほど来申し上げました合併することによってむしろこれは利益が高まるのだというそういう問題とあわせ考えて、この問題をどう考えたらいいのであろうか、水産庁としてはどう考えますかという、こういうことの質問であります。
  19. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) このサケ・マスのふ化放流事業につきましては、実際的な問題といたしましては、現在は都道府県知事が、沖合いといいますか沿岸漁業者とそれから遡上途中の沿岸漁民と、それから最終に上がってきます産卵地点の漁協との間の利害の調整といいますか、そういう調整は県がそういう調整をされておりまして、沿岸で、川口で全部とってしまうというふうなことにならないように、それぞれ調整をされておられるものと私のほうは思っている次第でございます。  また、第二点としまして、法律論といたしまして、海の組合と川の組合、内水面の組合合併することそれ自身は、法律論といたしましては何ら規制はございませんが、実際問題といたしまして、やはり漁民体質が違いまして、海の漁民と川の漁民とはやはり考え方も違いますので、実際の合併というものはむずかしいのではなかろうか。それよりもやはり現在都道府県が知事の段階で調整されております従来の調整をさらにもっと運営考えまして、協議会をもう少しかたい組織にしていきまして、運営強化していけばいいのではなかろうかと、こういうふうに考えている次第でございます。  実際問題としまして、一番川で産卵する地点の漁協——採卵し、かつふ化する事業は県営事業が多うございまして、県の委託みたいな形で、そういう地点での、最終遡上地点の漁協は委託みたいな形で事業を引き受けられておられまして、その辺を調整しながら県としましてはやっておりますけれども、やはり卵の、採卵が少ないということは、各県とも非常に問題になっておりまして、むしろ現在の時点におきましては、北海道が逆に非常に遡上する魚がふえてきた。サケ・マスがふえてきたということで、産卵量がふえまして、ふ化能力を越えてきておりますので、むしろ北海道から便宜上譲り受けているというふうに思っておりますけれども、今後独立採算的にやれるように、稚魚の放流がふえればやがて四、五年後には回帰率が年々上回ってきておりますので、相当な採卵が今後期待できるのではなかろうか、こういうふうに考えている次第でございます。
  20. 村田秀三

    村田秀三君 漁協組合併問題というのは事実上、非常にむずかしかろうとも私は思っております。思っておりますが、サケ・マスの場合は、実は一貫作業であるはずなんです。これを切り離してはならないはずであります。いま水産庁は、これは県が調整をする、こういうことでありますが、もう少しやはりこの辺積極的にしないと漁協組合併がかりに不可能だといたしましても、一貫事業であるところの事業の共同行為ですから、経済的にも。私が聞きます限り、内水面漁協組が申し入れをするのか、あるいは自主的に沿岸漁協組がするのかわかりませんが、多少の寄付金程度のものは、内水面漁協組に出しておる例もわずかではあるが、存在する。こういうことを実は聞きました。しかし、その程度で、どうも私は不十分だろうと思うのです。したがいまして、もう少しやはりその辺のところを、系統づけて水産庁として積極的に指導をおろしていかなければ、県にまかしてあるとか、県が調整するなどといっても、前進をしない。こう実は考えておりますので、これから増殖問題について若干質疑をいたしますけれども、それと関連をいたしましてもう少しやはり積極的な姿勢というものが望まれるのではないか、こう実は思います。  そこで沿岸サケ・マス漁業振興対策について実はお伺いをいたしたいと思います。七月の一日の新聞であります。サケ・マスの宮古市場、岩手県の宮古市場の漁税について報道されておりましたが、サケは十キログラム九千四百円、昨年より二千百円高いということです。マス四千五百円、昨年より千八百円高いということであります。そうして、魚影は薄いようであるけれども、結果的には宮古だけで昨年より四億円水揚げが上回るだろう、こういう報道がされておりました。  それから、これは六月二十七日の朝日でありますが、サケだけは人気急上昇、新宿の伊勢丹は売り上げが二倍強、池袋の西武においても二割から三割の売り上げが伸びておる、こういうことであります。これは汚染魚の影響であります。そう明らかに書いてある。そこで、何もこの新聞がありましたから申し上げるわけじゃございませんけれども、また、汚染魚は汚染魚のままでおいてよろしいということじゃございません。水域を回復する努力は先般来もずいぶんと論議をいたしておりましたから、きょうは特に触れませんけれども、少なくともサケ・マスに関する限りは、確かに汚染問題とば切り離して考えることができるだろう、こう思います。北海道の苫小牧あたりは、だいぶん最近よごれておるようでありますし、またむつ小河原湖あたりの開発がうわさどおりに展開されるとするならば、はたしてどうなるものやら、懸念されるものがないではございませんけれども、少なくともサケ・マスに関しては、汚染問題を考える必要がない。少なくとも、親魚がのぼってきて、採卵をいたしまして、二、三カ月たって放流をするならば、あとは四年間大洋、北洋、きれいな水の中で成長をして、そうして戻ってくるわけでありますから、これは心配はないわけですね。そういう意味からするならば、私自身が、あらためてそれを考えておるということになるのかもしれませんが、もっと積極的にサケ・マス放流事業というものを、展開をする必要があるんじゃないか。先ほども話ありました、とる漁業よりもつくる漁業、こういうことでありますけれども、いまさら私が申し上げるまでもないと思うのであります。  漁業白書によりますと、四十六年のサケ・マス類の生産は十三万九千トン、その際、日ソ漁業交渉の割り当ては九万五千トンであります。そうして、この十三万九千トンのうち四十六年には、サケ七・九万トン生産をされておることになっております。そうすると、その中で報告をされておりますのはサケ類の沿岸定置網の漁獲高は二・三万トン、こう報告されている。サケ類とこうなっておりますから、はたしてこれはサケばかりであるかどうかは存じませんが、いずれにいたしましても、水産庁からちょうだいいたしました資料を見てまいりますると、四十六年は、サケ類の河川において捕獲いたしました数量と、沿岸定置網で捕獲いたしました数量を見てまいりますと、大体二・六万トンの計算ができるのであります。そう考えてみますと、北洋北洋、日ソ漁業交渉と、こう言いますけれども、実は北海道、本州において少なくともサケが二・五、六万トンいま生産されておるという事実は、これはあらためて見直さなければならない事実だろうと思うんです。  結局、これは福島県でもまだあるようであります。自然にのぼってきて、そして自然に帰っていく。放流事業が行なわれていないにもかかわらず、サケがのぼっておるのではないかと見られる河川はあったようであります。そういう例もあろうかと思いますけれども、この二・三万トン、このサケは、少なくとも、北海道、本州で放流事業をしておるから、これだけの生産をあげることができたんだと、私は理解してもよろしいんじゃないかと思うんでありますが、そうしますと、これは欲が出てくるわけですね。いままでのやり方でさえ、この程度であるならば、これはやりようによっては、もっともっとひとつ生産をあげることができるんじゃないか、こういう感じを持ったわけでございまして、そういう意味からひとつ質問をいたすわけでありますが、いま水産庁がとっております放流事業に対する具体的な施策、そしてまた、今後どうしようとしておりますか、このことについてお伺いいたしたいと思います。
  21. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) 先ほども申し上げましたように、最近におきます、サケ・マスに関しますふ化、放流の研究なり技術体系が非常に向上してまいりまして、ふだんどうも漁民の方々にはあまり信用されないんでございますが、このサケ・マスの放流事業に関する限り、非常に経済効果が端的に出てきておりまして、放流した分に見合いまして三年後、あるいは四年後には回帰してくるサケが非常に多いということは事実でございまして、最近の回帰量からいたしましても、これは飛躍的に数字が増大しておりまして、最近の放流だけでも約七百万尾近い放流を実際はいたしておりまして、十年前の三十七年ごろに比べますと、三十六年は二百九十万尾、約三百万尾で約二倍の現在放流をいたしまして、この効果が非常に出てきているわけでございます。  これにつきまして、私のほうといたしましても、今後、北海道、東北、北陸を中心といたしまして全面的に、このサケ・マスの放流事業をいたしたいというふうに、もっと飛躍的に拡大してまいりたいと、こういうふうに考えている次第でございまして、ただいま申し上げましたサケと申しますのは、大体シロザケを中心としましたものでございまして、まだそのほかの高価なベニ類等につきましては研究段階でございまして、主としてシロから始めまして、ゆくゆくはあらゆるサケ類に及ぼしてまいりたいと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  22. 村田秀三

    村田秀三君 考え方はわかりましたが、具体的に予算措置なんかも含めてちょっとお答えをいただきたい。
  23. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) まことに申しわけありません。いま質問を失念しまして……。
  24. 村田秀三

    村田秀三君 結局予算措置ですね。
  25. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) この北海道のサケ・マスのふ化場の予算といたしまして、事業費設備費入れまして、四十八年度予算におきましては六億一千百万円の予算を、これは北海道の分でございます。それからこれは北海道が大体本場が一つ、支場が六カ所、それから事業場が四十一カ所ございまして、これは一応水産庁の直轄事業でございます。それから、さらには本州の、内地でございますが、内地の分の予算が四十八年度におきまして、補助金といたしまして四千七百万円を出しておりまして、対象県が青森、岩手、宮城、福島、茨城、秋田、山形、新潟、富山、こういうふうな、まあ大体関東以北の各県に、この放流事業を助成をいたしておると、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  26. 村田秀三

    村田秀三君 私も実は驚いているわけなんですが、この予算としては、北海道の場合は六億一千万、研究所を持っておるという関係もございますし、国として相当な施設を持っておるからやむを得ませんが、しかし、この本州の補助費四千七百五十四万、言ってみれば、わずかこれだけの予算で、そして極端な言い方をするならば、サケ二万三千トン生み出しておる、こういうことが、これは言えるんじゃないかと思うのですね。まあそういうことで、今後もっともっと飛躍させるためには、どうすればいいかということについて、私なりにひとつ考えてみているわけでありますが、もとより私は専門家じゃございません。いろいろ専門家の書かれたもの等について、また福島県にもそういう水系がございます。現場に行って漁協組の方にいろいろ聞いてきたこともございますから、それらをもとにして考えるわけでありますが、飛躍的に拡大をさせるためには、どうすればいいかという問題であろうと思いますね。ただいま北海道が重点になっておりますけれども、これは北海道がいままで重点的にやりましたから、北海道のこれは生産高が高いわけでございまして、本州におきましても、ただいま言われましたところの各県において積極的に北海道と変わりない施策というものが、事業量というものがあるとするならば、これはまあ、もっと東北、北陸においても生産をあげることができる、こう実は理解するわけであります。  その中で、やはり何といいましても放流量の拡大、これが必要なようであります。なかなか水産庁のほうで、一がいにどうするということが言えないようでありますから、私から意見を申し上げてみたいと思うのでありますが、この放流量の拡大をさせるためには、まず親魚の捕獲数を増大させなければならないことは言を待ちません。先ほど福島県の例を引いて申し上げましたが、福島県は四十七年度において実に四百万粒、これは県外から移入をいたしております。そうしますと、親魚の捕獲を増大させるためには、先ほど来漁協組合併問題の中でも触れましたように、つまり内水面漁業と河口沿岸漁業組の調和、調節というものが、まさにその目的に従って機能的でなければならないということですね。もっと積極的にやはり調節をしなくてはならないと思います。てだてをしなくちゃならぬと思うのでありますが、いまはそれには触れません。触れませんが、その親魚の捕獲をふやすということ、そしてふ化槽を完備するということ、これには相当な資金が必要になってくることは当然であります。  それから先ほど技術の開発がだいぶ進んだというお話がございました。実は私は最近の川はよごれておりまして、回帰率というものがむしろ低下しているんじゃないかと思って、いろいろ資料をちょうだいしたわけでありますけれども、それがここ二、三年むしろ率が高まっておる。高まっておることは、確かに技術の開発があったということが承知できるわけでありまして、それにはえさを与えて、ある程度成長させて放流をするという、そういうことだそうでございまして、この給餌放流というのが回帰率を高めている一つの要素である。きわめて大きな要素であろうということが報告をされておるようであります。そうしますと、ただいまの水産庁の計画では、給餌が約四割、無給餌が六割と、こういう予算の立て方になっておるようでありますけれども、この予算を全量給餌をして放流するというような対策を講ずる必要がある、そう実は思うわけであります。と同時に、若干の期間これは飼養しなくてはならないわけでありますから、この給餌施設を完備しなくてはなりません。飼養池の造成、稚魚池の造成、これにもまた、相当多額の金がかかるだろうということも予想をされるわけであります。そして、現在、四十八年度は給餌で四十七銭、それから無給餌で三十二銭のこれは補助でございまして、それぞれ国が二分の一ずつ補助金を出しておるわけでありますが、これを全量給餌をする、そういう施策というものが必要であろうと私は考えております。  それから次に、やはり何といいましても、河川環境の保全と整備、まあ川のよごれは、さほどじゃない。北海道の千歳川の例なんかも引きまして、とにかく、サケは、自分の生まれ故郷に帰るためによごれた水もかいくぐって、新しい水の生まれ故郷に帰ってくると、こういうような話もございますけれども、しかしながら、何といってもやっぱり河川の汚染を防止するということが必要であろう。それが回帰率を高めることにつながるであろうという、そういうことから、この流域下水道の完備、つまりその川の水をよごさないために必要な流域下水道の完備というものも考えてみなくてはなるまい。こういうことをひとつ考えるわけです。  それから三番目といたしましては、新しい川の開発といいますか、先ほども少し触れましたけれども、放流をしていないけれども、現在、のぼっている川があるようであると、だとすれば、これは新しい川を開発することは決して不可能ではない、こういうことであります。そういうことも含めまして、この際、サケ・マス放流事業の飛躍的な躍進をはからねばなるまい。そういうことで考えておるわけでありますが、幾つかの点をただいま申し上げましたけれども、こうした考え方に対して、水産庁といたしましては、どのように今後対処されるか、いま私が提案を申し上げました、提起をいたしましたことについてどのように考えるか、ひとつ水産庁考えを聞きたいし、また、この際、農林大臣からもひとつ承っておきたいと思います。
  27. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) まず、お尋ねの点でございますが、私たちといたしましても、先ほど来申し上げておりますように、サケ・マスのふ化放流事業というものは、非常に将来性があるというふうに考えておりまして、今後、非常に積極的に進めてまいりたいと、こう考えておる次第でございます。したがいまして、特にサケ・マスの放流技術で開発されました大きな問題点といたしましては、いわゆる先ほど御指摘がありました、えづけをして放流するということがやはり非常に効果的であるというふうに、私たち、理解しておりまして、日本ではこういう形でえづけしてふ化放流しておるが、ところが、ソ連のあたりでは全然そういうことをしていない。天然放流に近い形でやっておられるというようなことで、日本の技術をソ連にもう少し提供したらどうかというようなこともございますが、現在、いわゆる餌料をして放流しているのが四〇%ぐらいでございます、全体といたしまして。これを将来六〇%ぐらいまで、さしあたり当面の問題として餌料をふやして、六〇%ぐらいの率にして逆に自然のふ化放流のほうを四〇%ぐらいにしてみたいと、こういうふうに考えております。  さらに、御指摘のように、サケというのは、川が少しでもよごれますと、ほとんど回帰してこないと、やはりきれいな水のところしか回帰してこないということで、世界的に文明が進みますと、やはり回帰性が非常に落ちてくるということで、サケ・マス全体の世界的な流れの中でも、やはりソ連のシベリアの開発とか、あるいはカナダ、アラスカの開発というようなことが、おのずからサケ・マス資源の減退に通じているのではなかろうかという学説もあるわけでございまして、日本におきましても、一時は非常にサケ・マスの遡上する川が減ってまいりまして、非常に問題になってきたんでありますけれども、この二、三年来、東北方面あるいは北陸方面では、農薬等の規制もございまして、川も多少きれいになってまいりました関係からか、非常に遡上がよくなってきたというふうに思っておりますので、今後とも河川を維持するという、あるいはきれいにしていくということにつきましては、ただいま御指摘のように、下水道の完備も含めまして、今後ますますサケ・マスの河川の維持管理につきましては、都道府県知事とよく協議いたしましてきれいにしてまいりたいと、こういうふうに考えております。これとともに、戦前の一時には利根川までサケ・マスは相当遡上してきておったんでございますが、最近では、およそむずかしくなってきておりますが、この辺を踏まえまして茨城県の那珂川あたりは相当遡上も可能性があると思いますので、今後含めまして、各河川で美しい川につきましてはこういった放流事業を整備してまいりたいと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  28. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) ただいま、せっかく私からも意見を述べよと、こういう御指摘でございました。三点についての御提案あるいは御激励でございましたが、私は、ただいまの御意見につきましては、内水面漁業振興の一環といたしましても、また、自然環境の保全という上からいたしましても、たいへん意義深い御意見をちょうだいいたしまして、いま長官のほうから申しましたように、今後ますますサケ・マスのふ化放流事業の積極的な取り組み、あるいは御意見のございました新しい河川の開発、また河川の環境整備につきましては、鋭意努力をしてまいりたいと思います。
  29. 村田秀三

    村田秀三君 そこで、これまた御意見を申し上げたいと思うんですが、このサケ・マスは北海道だけだというような感覚を私、初めは持っていたようなわけでありますが、こうして見直してみますと、これは、本州においても施策がよろしければ、北海道に変わりない効果を——変わりないということは少し言い過ぎかもしれませんが、相当これは生産量を増加させることができるという気がするわけです。それはまた、これは岩手県の例を申し上げるわけじゃございませんが、その岩手県の津軽石川の例でありますけれども、四十七年度は、十勝川に次いで全国第二の遡上率を見ることができた。約十万尾、一つの河川でですね。そういうふうに報告されておるわけです。そうして、岩手県といたしまして、六十年度までに三万トン生産しようという計画を持っておるというのであります。三万トンということがはたして可能かどうかは、いろいろ問題があるにせよ、少なくとも、これが話半分で一万五千トンでありましても、全体の生産量から見た場合に、相当ウエートが高いんじゃないかと思うんです。やりようによっては、できるんだという、そういうことだろうと思うんです。したがって、先ほど来、北海道は六億一千万、その他はこれは七千万とちょっとですか、そういうことではなくて、この本州についても、水系別にあらためて調査をいたしまして、そうして積極的に国が乗り出すということで、これはどういう表現をしますかは別にいたしまして、サケ・マス資源増大再生産計画というようなものでもつくって——何か特別な具体的な施策というものを立てる考えがあるのかないのか、それを聞いてみたいと思います。  また、そうして、サケ・マスの放流事業は、水産資源保護法の中に、これは書かれてあるんです。掲げられてあるわけです。つまり、北海道は、国が全部これはやるんだと、それから本州については補助をする、こういうことになっておるようです。どうもこれはやはりおかしいんじゃないかと思うんですね。保護じゃないんです、増殖でなければならない。だから、水産資源保護法の中で、北海道は研究する、放流事業をやる、国が全部金を出す。本州は、これは微々たる補助をする。こういうことでは、私は、これから飛躍的に施策を立てて増殖をはかりますということにはならない。何かうまい方法はないものかと、こう思っておるわけでありますが、その辺のひとつ御意見をお伺いしたいと思います。
  30. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) サケ・マスの増産施策と申しましょうか、あるいはサケ・マスの増殖事業と申しましょうか、むしろ、サケ・マス増殖事業を本州の河川において大いに振興する、こういうふうに受けとめるほうがよろしいのではないかと、かように存ずるのでございまするが、大事な国民にとってのたん白資源の確保、こういう見地からいたしまして、最近のような汚染魚の問題によって不安感を与えておる際でございまするから、ただいまの御意見につきましては、積極的にわれわれとしても取り上げ、推進をしてまいりたい。明年度以降の予算措置の中でぜひ努力をしてまいりたいと思います。
  31. 村田秀三

    村田秀三君 ただいまの大臣の発言でありますが、にわかに四十九年度どうせよということにもならないかとも思いますが、ひとつ、積極的に取り組んでいただきたい、こういうことについて御要望申し上げておきます。  それから、これまた抽象論議にならざるを得ないんでありますが、どうも水産庁と私どもの考え方、そうしてまた現在までの体制の中で、相当にズレがございますので、なかなか、思うようにここでの論議は進まないと思いますけれども、もう一つは、内水面漁業全般について考えてみる必要があるんじゃないかと思います。内水面漁業の中には、ウナギの養殖であるとか、さまざまあるでありましょうが、しかし、一般河川、その河川ごとにも漁業組が存在をし、そうして内水面漁業協組連合会が各県にも存在するやに聞くわけでありますが、しかし、最近、この内水面漁業協組というのが、どれほどの活動をしておるのか。漁業法に定められたところの、つまり事業というものを行なっておるのであろうか。こう見てまいりますると、どうも全く不十分であると実は言わざるを得ない。そして、特定の名称は控えますけれども、とにかく、その河川の流域にある工場に行きまして、排水が顕著であるなどという工場に参りまして、補償金を取る。あるいはまた、たとえば発電所のダムがあって、そうして当初は、ダム建設の際には、魚道を設備したけれども、いつの間にかその魚道が閉塞をされておる。それについては、補償金はちゃんと取ってある。こういうような話をいろいろと聞くわけであります。  そうしますと、この内水面漁業におけるところの一般水系の漁業権漁業協同組合、これについてあらためてひとつ考えてみなくてはならない時期にきておるのではないか、実はこう思っておる。漁業権が設定されておって、その河川は、その漁協そのもののものではないわけです。付近住民のものであります。これが、単に遊戯の、つまり、レクリエーションの場として考えられたといたしましても、やはりこれは地域住民のものであるわけでありまして、戦後二十数年たっておりますから、この辺で、内水面漁業、一般河川の漁業協同組合の活動に対して、あらためてひとつ点検をいたしまして、そうしてその本来の目的が進められておるのかどうか、こういうことについても点検をして、そうして是正すべきものは是正すべき時期ではなかろうか、こう実は考えるわけでありますが、ひとつお考えを伺いたいと思います。
  32. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) この内水面漁業の実態でございますが、おおむね最近の、四十七年の統計におきましても十六万五千トン、こういうふうになっておりまして、このうち内水面のいわゆる漁業といたしましては十万九千トン、それから養殖業のほうがこれは年々多少ずつふえてまいりまして五万五千トンというふうになっておるわけでございまして、内水面漁業というものもそれほど、むしろ最近におきましては昭和八年の十万八千トンに比べますとこの十年間にやはり多少増加している。それも養殖業のほうが非常に増加しておりまして、昭和三十八年は二万三千トンだったものが五万五千トンというふうにふえてきているというふうに御理解願いたいと思います。  一方、この内水面漁業はこういうふうに非常にスケールが小さくございまして、一千万トンの魚の日本の総漁獲量のうち十六万五千トンということで非常に規模が小さい。したがいまして、それを反映いたしまして内水面漁業も御指摘のように非常に弱体といいますか、この組合が海の組合と違いましてこの漁業に専業するという漁民も非常に少のうございまして、何らかの形で兼業的な性格の漁民の方が非常に多いということで、そういうことを代表いたしましてこの漁協も弱体になっている、こういうふうに御理解願いたいと思います。  内水面漁業の主たる役割りというものは何であるかといいますと、結局漁業の秩序の維持と資源の維持、増殖ということが中心でございまして、こういった漁協を背景といたしまして稚魚の放流なり、産卵場の造成なり、あるいは密漁の取り締まりというようなこと、あるいは遊漁料の徴収というようなこと等を中心といたしまして、今後内水面漁協が十分やっていけますように、その経費につきまして財政面の立場からいろいろ充実をはかるように指導してまいりたいと、こういうふうに考えている次第でございます。
  33. 村田秀三

    村田秀三君 全国的にひとつの総点検をするという答えにはならないようでありますが、これは全国一律ということにはならないと思います。私は福島県の例を概括的に申し上げたわけでありますから、なんでありますけれども、どうもやはりその目的に必ずしも沿っておらないというふうに普通は見るわけですね。私の言っていますのは、つまり同じ内水面でも養殖漁業、これが増加をしておる、こういうことでありますが、まあ養殖漁業というよりも一般的な問題として私はとらえて観念づけておるのかもしれませんが、どうも最近あまり何といいますか、よい話は聞かされないわけですね。そういう意味で申し上げたわけでありますけれども、ひとつこの辺についても今後何とか検討をして、そしてその目的が達成できるようにきちんとした指導をしてもらいたい、こんなふうに思います。  そこで、一つの例を申し上げるわけでありますが、これは福島県であります、恐縮でございますけれども。喜多方市の慶徳町川前、これはヘラブナの群棲地帯。阿賀野川のこれは水量を調節するためにきわめて曲折しておりましたところの河川をカットいたしまして、そしてできましたところの河川につながる沼とでも申しましょうか、そういう個所でございまして、ヘラブナが群棲をいたしておりまして、今日ではきわめて有名になっておるわけでありますが、その群棲地も長年の土砂の堆積等でだんだん埋まってくる。したがって、これに対しては何とか手立てを講じてほしい、こういうようなつまり地元住民の声である。これに対して、漁協組がどういう対応のしかたをしておるかということについては、いま特別に申し上げませんけれども、後日図面をもって詳細に御説明申し上げまして具体的な対処をいただきたいと思いますが、阿賀野川の上流地点を再度河水を流入させて土砂の堆積を防止する、こういう措置をとったならばよろしいのではないかというような意見がずいぶんとあるわけであります。これについては、地元の市から水産庁のほうに陳情されているやに聞くのであります。河川の問題でありますので建設省の問題にもなるわけでありますが、こういう問題のときには少なくとも水産庁といたしましても、その解決のために、まことに小さい問題かもしれませんけれども、積極的に対応する姿勢というものをひとつ持ってもらいたい、これは要望でございます。どうもやはり内水面漁業といいますと、これは水産庁の仕事ではございません、これは県にまかせてありますというようなそういう印象を持つわけでございまして、そういうことでなく積極的に対応する姿勢をとってもらいたい、これをひとつ要望を申し上げておきたいと思います。  さらにもう一点、これは終わりの質問になりますけれども、最近沿岸漁場の汚染問題についてはだいぶやかましく言われております。PCBであるとか、水銀であるとか、そういう問題もさることながら、最近、ごみの問題についてはどこでも手を焼いておるというのが実情ではないかと思うんです。瀬戸内海では沿岸漁民が漁船を繰り出して海底の清掃をするというようなお話もございますが、これは福島県でも例外ではございません。昨年はじめて小名浜沿岸付近の漁民が、ある船全部出しまして清掃を行なった。昨年、私も本委員会で若干触れて、それに対して何とか助成できないかというような意見を申し上げた記憶を持つわけでありますけれども、なるほどことしは補助金をつけるということについて、これは決定をされておるようであります。ところが、最近、私が聞きました話では、水産庁として清掃事業の実施要綱なるものをいま作成中だと聞くわけでありますが、地元の漁協組に聞きますと、実は七月が休漁期である。六月末から七月にかけてこれは漁場の清掃をいたしたいと考えておるんだけれども、実施要綱ができるまでは待ってほしいという連絡もある、補助金をもらうためには待たざるを得ない。いっそ補助金がなければもうすでに終了をしておるところだ。こういうような話がありまして、どうも実際と行政庁の作業とがタイミングが合わないんじゃないかというような意見が出てきているんですね。  そこでお伺いしますが、この実施要綱なるものは、いつこれは作業を完了してでき上がるのか、そしてまた、そういう地元の意見に対応して、水産庁といたしましては、どのように対処なさるか、これを聞いて私の質問は終わりといたします。
  34. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) 最近、沿岸の各地におきまして、農林省の立場からは非常に申し上げにくいのですが、農業用のビニールが相当、川なり海面に流出いたしまして、これが網にひっかかったり、あるいは船のスクリューにひっかかるということで、水産庁といたしましても、この清掃事業をやはりやらなければならないということで、今後、予算は年々増加いたしまして、この海面の清掃事業をいたしたいと思っています。なお、ただいまお指摘のように、四十八年度からこういう事業を開始いたしました関係で、多少補助要綱が少し立ちおくれというか、おくれぎみでございますが、ただいまお指摘もありましたので、早急にこれは関係方面と交渉いたしまして、近日中に実現できるように努力いたしたいと、こういうふうに思っております。
  35. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 ちょっと関連いたしまして、一言だけ伺っておきます。  農林大臣でけっこうですが、あるいはまた水産庁長官でもけっこうですが、御承知のように、過般、北海道の根室沖地震がございました。そのときに各党から調査に行ってきたわけです。私も現地に社会党代表で調査に行ってきたわけでございます。被害の状況は、幸い人身的な災害がなくてたいへんけっこうだったんですが、漁港であるとか、あるいは荷揚げ場、あるいは道路、あるいは下水路等々の被害もございましたが、これらはいずれも、たとえば漁船の場合でも、ほとんどもう漁船の損害補償法に入っておりますから、その適用を受けますから問題ないんです。  ところが、これは初めてのケースだと思いますけれども、今度審議されますけれども、積み荷の共済制度というものがございませんし、保険制度もございませんね。問題になっておるのはやはり、サケ・マスが約三百トン、厳密に言うと三百十五トンでありますが、価格にして一億五千万程度の損害をこうむっているんであります。いろいろ調べてみますと、北海道の保健所がその流された鮭鱒について廃棄命令を出しておる、こういう問題です。一体この揚げ荷の補償というものは、どういうことでなされるのかということがいろいろ問題になりまして、これは各党とも陳情を受けたはずです。同僚の高橋君も、たしか行ったんじゃないかと思うんですがね。これは、漁民とすれば大きな問題なんですね。御案内のとおり、漁業従事者は、漁家との契約は、つまり漁獲をされた段階でもう歩合給になっていますから、したがいまして船主は当然その段階で支払わなきゃならぬわけですね。歩合給になっておりますから価格見積もりして支払うと、こういう問題です。さて荷揚げして、まだ市場に渡らない前に、津波で流出をした、こういうことなんです。  流出したものについては、これはかなり収集できたのではあるけれども、今度は逆に保健所から業務命令で廃棄処分命令というものが出た。ですから、この補償の方法はないわけですよね。かりにこの保険法が通っても来年度から実施ですから間に合わないと、こういう問題がありまして、当日、総理府のたしか副長官ですかな、政府側から調査に行っておりまして、これについては持ち帰って検討すると、こういう事柄が地元の新聞に出ていたわけで、農林大臣としてこれはどういうふうに扱うか。私は、これはちょっといま調査しているのでありますが、業務命令で保健所が廃棄命令を出したわけですから、それを踏まえて国家賠償法の適用で何か救済の道はないか、こう考えているのでありますが、その辺の見解をこの機会に聞かせていただきたいと思います。詳しいことは、なお、この積荷保険法を審議するときに私は質問したいと思っています。
  36. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) 私から一応最近の経過を御説明いたします。  ただいま御指摘のように、その北海道の根室地震におきまして、漁港とか、あるいはそのほかの漁船とか、こういった設備その他の漁具等につきましては、それぞれの法律に基づきまして、すぐ復旧なり補償が行なわれるわけでございますが、サケ・マス約三百トンというふうに報告されておりますが、これが水揚げされた後、津波をかぶってその辺に相当部分は流出し、相当部分は水につかってその辺に四散したというようなことで、最後は、ただいま御指摘のように保健所から廃棄の指摘もあったようでございますが、これにつきまして、道並びに地元のほうからも相当御説明も承りましたし、陳情も承りまして、中央でだいぶんいろいろ検討したわけでございますが、これにつきましては、ただいまの時点におきまして、やはり現在の時点で国としてのごめんどうを見るということは、なかなか実際問題として非常にむずかしいのではなかろうかと、こういうふうに考えている次第でございます。
  37. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 もう一つ……。  たいへん困難なようなお話ですが、たとえば水産庁は汚染魚の廃棄命令した場合がありますね、瀬戸内海で。ああいう場合の、農林大臣、農林省としてその辺は補償するというようなことが言われましたな。こういう関係はどうなっておりますか。汚染された魚の廃棄処分をした場合の補償。たとえば、その結果ですわな。それと保健所が、つまり津波——大体十二月からきておりますからヘドロをかぶるわけですね、港内にある。そういう関係で汚染された、あるいは腐敗するという観点に立って廃棄命令を出している、行政的に。いわゆる類似しているんじゃないかとぼくは思うんですが、どうですか、大臣。
  38. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) ただいま水銀等PCBによって原因者が明確な場合の汚染された魚につきましては、それぞれ、たとえば敦賀湾の東洋紡なり、あるいはそのほかの瀬戸内海におきます魚につきましても、原因者におきましてこれを買い上げまして、原因者負担の原則ということで、ただいま、みな廃棄しているような次第でございます。国としては、この問題については、ただいまからいわゆる天災融資法に準じた措置ということで、資金の融通を行なうということで、いま処理している次第でございますが、北海道の場合におきまて、これがやはり多少地震という事情があり、また、そのサケが食品に適してないというようなことで、保健所のほうで残りのものにつきまして一種の廃棄処分になったのでございますが、これはそういう意味で片一方のほうは公害という原因者が明確でありましたけれども、こちらの場合は天災ということで原因者負担という形の相手が明確でないので、この問題についてなかなかその処理がむずかしい。はなはだ申しわけないんですけれども、もう少しスケールの大きい地震というふうな場合には、あるいは天災融資法の発動というようなことも考えられたかもわかりませんが、幸いにして北海道、非常に根室沖の地先だけに限定された地震でありました関係で、総被害額が天災融資法の発動要件には至らなかったというふうなこともございまして、この問題についてその処理が非常にむずかしくなっておる次第でございます。
  39. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 つまり、汚染魚についてははっきりしてますわな、原因ははっきりしておる。つまり公害魚であるからということですね。じゃ、この地震の場合だって、原因ははっきりしていると思うんですよ。原因はこれは天災でしょう。そんななまぬるいことを考えているから、漁民は救われないわけですよ。本来、いまあなたも申されたように、地震が大きければ天災法の発動ということになるわね。しかし、地震の大小にかかわらず、これは天災ですよ、そうでしょう。それによって、それが基因となって漁港が破損したりあるいは道路が決壊したり、あるいは漁船が破損したりしてるわけですね。それぞれやはりたまたま現行の法律に該当する、あるいは共済に加入してる等々でこれは救われる。その他の漁港あるいは道路、荷揚げ等々は公共物であるから公共事業で、それぞれ該当するから、これはすみやかに回復できるということになる。問題は、市場で魚のせり市をやっておったわけでしょう。ある漁獲されてきたものが、大多数はまあ、せりの市場に入っている、まだせりに入らない前のものが不幸にして津波に流失されたと、原因ははっきりしてる。ですから、つまりこの被災額によって天災法が今回適用されなかった。しかし、いずれにいたしましても、天災に準ずる扱い方をするということでしよう。ですから、そこのところは非常に疑問点が残るところじゃないんですか。  汚染魚だって原因ははっきりしてるんだよね、だから廃棄命令出すと。この場合もそのおそれあるから廃棄命令を出したわけです。その原因は、一方においては地震、一方においては公害による汚染だと、こういうことだけなんですからね、全く運用だけじゃないですか。大臣、どうなんですか、こういうことは。もうちょっとこれはねぇ、検討してみるとか、あるいはその廃棄命令出すというんですから、それの源になる国家賠償法というのがあるんですから、もうちょっと被災をした、損害を受けた漁民の立場をもうちょっと考えて農林省考えるべきものじゃないの、これ。
  40. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) まず原因というほうは、それは確かに汚染魚の場合はPCB、水銀による汚染を受けた、それからいまの場合は地震によると、原因はそれでよろしいわけですが、原因者負担というのは、その原因を起こした者。この地震のほうは自然現象、片方はいまのソーダ工場とか何か原因を起こす工場がある。そうすると、そういうものについてはそこに負担の責任がある。こういうことでございますが、いまのお話を聞いておって、私の感じますることは、天災でたいへんな被害を受けて、そのために漁民の方がお困りになっておる。その場合に、北海道庁でそのお世話をするとか、その該当の市町村でお世話をすると、かりにそういう前提を置きます、そうした場合に、不時の支出をいたした場合でございまするから、したがって、これについて自治省のほうに御承知の特別交付税の扱いをしてもらうというような、そういう一応の順序が考えられるわけでございまするから、私は、いま農林省の関係から言うと、いろいろ困難性ございまするが、一応お話を承っているとそのようなことは考えられると、こういうふうに思うのです。したがって、調査団に行かれた副長官も検討するとか、考慮するとか言われたことでございまするから、私もこういう問題は地域救済をしてもらう。そうして、それに対してのめんどうを見ることをひとつ軌道に乗せてもらいたい。われわれの立場からも、漁民のことでございますから、そういうことが言い得るわけでありまするので、農林省自体としては先ほど来長官の言われることだと思いますが、いま承っておってそういうことが頭に浮かびますし、従来そういうことであったと思いまするから、私としてもひとつ推進をしてみたいと思います。
  41. 亀井善彰

    委員長亀井善彰君) 吉田さん、陳情もありますから……。
  42. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 はい。大臣のお答えで了といたしますが、農林省自体としては制度的にないとしても——行政命令が出たわけですね、廃棄処分をしなさいと。出なければ、漁民はある程度それは収集できたわけですよ。ですが、廃棄命令出ておりますから流出された三百トンというものはもう全く手をつけなかった。収集して、この食用に供しない場合は魚かすができるわけですから、それさえもできなかったということですから、それは命令が出たからです。いいですか、これは行政命令なんですからね、廃棄処分命令ですから。そうすると、そういうものは農林省に制度的にないとしても、いま大臣の答えられたような国家賠償法という法律があるでしょう。そういう面を検討しながらどの程度の補償するとか、あるいは補助金になるのか、あるいは見舞金になるのか、私はよく知りませんよ。そういう点はやはり漁民の保護の立場に立って水産庁あたりが積極的にそういうものを洗って、各省庁に連絡をとりながらめんどうを見てやるという姿勢でなければいかぬですよ、長官。そうでしょう、検討してみてくださいよ。
  43. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) ただいまの御意見を踏まえましてよく検討さしていただきます。
  44. 亀井善彰

    委員長亀井善彰君) 暫時休憩いたします。    午後零時八分休憩      —————・—————    午後一時三十九分開会
  45. 亀井善彰

    委員長亀井善彰君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き三案の質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言願います。
  46. 足鹿覺

    足鹿覺君 漁業三法に入る前に、当面しておる重要な問題であります大豆問題について二、三重要な点をお尋ねをいたしたいと思います。昨日も、現在における商社別、在庫別、倉庫別の大豆の在庫状況を調べて資料として出してもらいたいということを言い、ゆうべ宿舎まで農林省がおいでになって、いろいろ説明を受けましたけれども、それが明らかになりません。非常に残念でありますが、目下のところトータルも十分でない、こういうことのようでありました。いずれにせよ、この資料は出していただかなければならぬと思っておりますが、大体十月末の大豆の不足は十万トンというのが農林省の結論であり、私も、昨日の説明を一応了承して昨夜はおそくまでやったわけですけれども、別れました。ところが今朝の新聞を見ますと、昨日、関東大豆卸商組合連合会が、十月末在庫は十二万トンないし十六万トンであるということを確認をし、「品不足にはならないことを確認した。」と伝えております。「このため関係団体は今後とも大豆相場の高騰を避けることを申し合わせた。」と伝えてありまして、そうであれば私どもも別にいまのところ苦に病むこともなかろうと思っておりますが、たった夕べ十二分に時間をとって懇談しても十万トンは足らない、商社別在庫数量はつかめない。こういうことで別れた直後でありますので、その差があまり大き過ぎる。したがって、私はきょうはこれをやらないつもりでおりましたが、これは非常にポイントになるところだと思いますので、この際、農林大臣の御所見を、なぜこういう大きな差が出るのか、農林省の調査が不徹底なのか、あるいは大豆卸商組合連合会というもののゼスチュアなのか、その辺の点をひとつ御所見を承りたいと思います。
  47. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 最初に今後の需給の見通しでございますが、この前御説明申し上げましたように、七月末在庫が四十七万トン、八月中に到着する予定のもの、これは五〇%削減後の見込みでありまするが、それは十六万トン、この中でいまの対米関係が十四万トンであります。その他から二万トン入ります。九月中に到着予定は、十八万トンを少し切れます——十八万トンといたします。対米関係は十六万トン、その他の国より二万トン。そこで一応九月末におきましては在庫は二十一万トンの見通しということを前回申し上げた次第でございます。九月以降アメリカよりの積み出しについては、別段の意思表示は米側ではしておりませんので、現在アメリカ側から七万トンその他から一万トン、八万トン入る予定にしておりまして、十月末在庫で一万トン不足するということを従来申し上げております。十万トンでなく一万トン不足する。  そこで前回から問題になっておりますのは、六、七月にわが国へ入荷するもの、これはほぼ積み出し済みという表現で六十七万トンと申し上げたのがこの委員会でも問題になったのでございまするが、六月分につきましては、すでに実績で四十一万トン入っております。この内訳は米国が三十八万トン、中国より三万トンでございます。これははっきり、この数字はきまりました。それから二十六万トンが七月到着の予定のものでございまするが、昨日米国における通関実績の集計が在米大使館より報告がございました。ただいま申し上げた二十六万トンの内訳は米国二十四万トン、中国二万トンでございました。この二十四万トンの中身がはっきりいたした次第でございます。六月二十七日現在、二十三万三千トンと、こういうことになっております。したがって七千トンほど当方の見込みと違っておるのでございまするが、ほぼ積み出し完了と見られるもの六十七万トンというのが、いま申し上げた数字の集計でいけば六十六万三千トンと、こういうことに相なったわけであります。そう大きく狂ってはおりません。  そのあとの規制対象、あるいは九月以降米国積み出しの分は、先ほど申し上げたような次第でございまして、私どもの持っておる、われわれは正確であると考えておる資料からいたしまして、やはり一万トン程度の不足を来たすということに相なるのであります。「日本経済新聞」に出ておりましたこの数字につきましては、記事をお読みいただきますとおわかりのように、関東地区の大豆卸商組合で組織する関東大豆卸商組合連合会は四日、商社、製油メーカーを交えての会合で供給力を検討した結果、大豆の十月末在庫は十六万トンあると、こういう推定を言われたようでございます。実はこの新聞記事をそのまま、このように推定をしたものと受けとめて私の所見を申し上げまするに、何ぶんにも局部的な卸商連合会が、どの範囲の商社、製油メーカーを交えての検討をされたのか、もちろんこういう数字を言われる以上、根拠なく言われたものではないと思いまするけれども、責任を持って私がここで所見を申し上げるについては、一部の地域的会合での見解と、したがってこれは参考にとどめる以外にないと、このように思うのでございます。  まあ好意的に見ますれば、流通段階に一体どの程度あるかということは、見方によって相当差が出てくると思うのです。で、そういうものはこまかく掌握はしにくいところでございまして、そういうような点がこういうような一応の推定を示されたと思うのでございまするが、こういう大事な国会の委員会のことでございまして、ただいま私から御報告申し上げておる数字は、皆さん方のほうからは商社別ということを言われまするが、六月分については通関の実績それから七月分の、アメリカ六月積み出し分はアメリカにおける通関実績でございまして、御信用を得たいために、もう少し詳しく申し上げまするならば、八日までに二百三十七万四千ブッシェル、十五日までに百九十八万六千ブッシェル、二十二日までに百八十二万五千ブッシェル、二十七日までに二百三十八万ブッシェル、合計八百五十六万五千ブッシェル、トン換算二十三万三千トン。相当信頼すべき根拠に基づいて申し上げておる次第でございますので、御了承をいただきたいと思います。
  48. 足鹿覺

    足鹿覺君 これは、全国情勢は商社別、倉庫別の実数がつかめない限り、そのトータルをしてみなければわかりませんので、大臣のおっしゃるように、関東地区における組合の想定したものである。これは商社に直結しておることは間違いありません。したがいまして、おおよそのことは見当はつくのでありますが、そうだと断定する私にも材料はありません。したがって、いまの、大臣が述べられたことに対しては、六月二十七日現在における向こうの積み荷状況は、今度審議官が渡米いたしますならば、きちんとその実数を把握して帰られ、そして大体今後の確実な見通しがつき得る、その自信がつくと思います。さらに来たる十日には、アメリカの七月一日付の作付作況調査報告が出るわけでありますから、来年度の新豆等の作況想定もつくわけでありますので、その点についても、そのころまでにはひとつ正確な数字をお示しいただきたい。審議官が渡米をし、帰ってくるのはいつごろになりますか。
  49. 池田正範

    政府委員(池田正範君) 渡米調査団が帰ってまいりますのは、七月の十三日の予定でございます。
  50. 足鹿覺

    足鹿覺君 では、やむを得ませんので、これに時間を食ってもいけませんから次に移りますが、いずれにしろ、当面はとうふ、その他関係流通業者も、加工業者も自粛をしておるようでありますが、値上げの動きはない。まことにこのままの姿勢でいってほしいと思います。しかし、値動きを監視するということは、これは最近の世論にかんがみましても、圧倒的にその世論が強いことは御承知のとおりであります。したがいまして、この際、先日成立をみました投機規制法、いわゆる生活関連物質の買占め及び売惜しみに対する緊急措置法に基づく第二条の点につきまして、農林省は政令の準備がまだおくれておるという話でありますが、私どもの考えとしては、大体法律を出すときには、関連する政令はあらかじめ予定して出すべきものであり、一つの案を、従来の審議の過程においては、これを見てわれわれは法案の審議をやったことはありますが、最近は政府は少し怠慢になりまして、政令をなかなか出さない。これは国会軽視にもつながると思います。昨日も、いろいろと話しましたが、政令がまだできないから、大豆を指定することはなかなかむずかしいという一点ばりの答弁を課長クラスでいたしておりますが、第二条には「買占め又は売惜しみが行なわれ又は行なわれるおそれがあるときは、」とあるわけでありまして、すみやかにこの政令を閣議決定をし、倉庫の立ち入り検査等必要な、法に基づく措置を講じられることが必要であろうと思いますが、大体閣議決定の見通し、またそれに基づくいま私が指摘したような問題に対する大臣の御所見をこの際明らかにしていただき、せっかくの、われわれは、あまい、網の目の大きい法律であると思いますけれども、でも、やはりこれを活用していくことは何らわれわれ異議はございません。その点につきまして、大臣の今後のすみやかなる決断を求めたいと思いますが、御所見を承りたい。
  51. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 政令がおくれておることで、ただいま御批判をいただいたので、恐縮に存じておりまするが、今回の場合のように、各省庁にまたがっておりますために、作業がおくれておるのでございまするが、明六日金曜日に法律の公布をいたします。そして、来週十三日に政令を公布をいたす。そういう予定でございまして、明日法律の公布後に、関係の最も深い通産省と農林省におきまして、それぞれ別個に指定品目について内定しておることを申し上げる予定でございまするが、せっかくの御質問でございまして、詳しくは明日申し上げる予定でございますが、大豆は当然、今回の指定品目の中には取り上げて入れることにいたしております。
  52. 足鹿覺

    足鹿覺君 この問題に関連しまして、実は畜産関係には非常に大きな問題が前途に暗く横たわってきたのであります。これは、カナダが大豆、なたねなどの輸出規制をやる、こういうことになり、さらに油の輸出規制をやるという報道もいたしておりますし、特にそうなりますと、農業から国民の消費生活には全面的な大きな影響が出てまいります。といって、このアメリカの今回の禁止措置についても調べてみますと、大統領に輸出規制の特別立法権を付与するということについては、否決されたけれども、アメリカの六月十九日の下院の金融委員会におきまして、輸出管理法を、一部修正をして、大統領に現在よりも強力、かつ、柔軟に対応できる権限を与えることになったというわけであります。したがって、今後この問題は、相当われわれは重視し、長期にわたって、この発動に対しては、深い関心を持って、特に経済外交の立場から、この対応を政府が誤ってはならぬと思うわけであります。  昨日のわが党の杉原委員の本会議質問の際に、日米経済会議が十六日から開かれる。そういうときに、その際に、アメリカ側と折衝したいという御答弁が総理からあったようであります。では、——油脂協会すらも、アメリカの国際的不信行為に抗議をするといって、業界は端的に怒りをぶつけておる。あなた方はどのような姿勢で日米会議に対処される御所存であるか。このような問題に対しては、あまりにも一方的であり、いわゆる強行措置であるので、まずこれに抗議するとともに、その交渉の姿勢——基本的には何を元へ戻すのか、いわゆるこのような暴挙は再びやらせない、またやらないという確認をとりつけようというのか。十六日といえばもはや目睫に迫っておりますが、その辺の政府として、農林大臣としての御所信を——特に飼料問題にも関連をいたします。非常に事は重大でありますので、十分対処していただきたいと思いますが、この際御所信があれば承っておきたいと思います。
  53. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) ただいまの御質問の中で、私として、非常に重要なことに触れられておると感じたのであります。それは今回の米側の規制措置が直ちにカナダに影響をした。それはまた、日本にも影響のあることでございまするし、さらには他の諸国にも同じような反響が起きはしないかということを、きわめてわれわれとしては心配をしてながめておるわけでございまするが、いまのところ、カナダの大豆、なたねの規制ということで、また、カナダは日本に対して好意的な意向をもあわせ表明しておりまするので、この点はでき得るならば、それが杞憂に終わってもらいたいと、こう思っておるのであります。  それから、大統領の権限問題についてお話がございました。議会はあらたなる権限付与措置の必要がないということに相なり、また、それに基づいて大統領が今回の行動に出た。こういうことは今後にも、たとえばトウモロコシについても考慮されるのではないかということが、すでに明白に打ち出されておるようなことでもございまするので、大統領がどのように権限を行使してくるのかということについては、細心の注意を払っていかなければならないと思うのであります。  次に、アメリカに対する抗議の問題でございまするが、これは今回の発表後に、非公式に直ちに米大使に対しての抗議はいたしております。ただ、私が正面切っての行動をとりませんでしたのは、少なくとも、アメリカ大使が私のところに参り、今回の措置について、長い取引先の日本の立場というものは十分考えて、アメリカとしては措置をするであろうと、こういうような趣旨の発言をされ、また私に対して、私からいろいろと抗議をいたしたことにつきアメリカ政府にこれを必ず伝達をすると、大使がこういう明言をして帰られておるのであります。したがって、私は、その回答を本来ならば先方はすべきである。しかるにその回答はなく、今回の一方的な予想外の五〇%を制限する、こういう措置になっておりまするので、私は現在一応の非公式の抗議はいたしましたが、アメリカ側の出方を厳重に注目をしておるという姿勢にあるわけでございます。しかしそれだけではいけない。こういうことで、事務次官より公使に対して正式に当方の指摘したい点、抗議したい点はすでにやっておるところでございます。  それから昨日の総理の答弁を引用してのお尋ねでございました。来たる十六、十七日に日米経済委員会閣僚レベルの会議を持つことはすでに決定をいたしておるわけであります。一時、農務長官は出席をしないといわれておりましたが、いままでのところ出席をすると、こういうことでございます。したがって、総理は総理レベル、また、私は私のレベルにおきまして、今回のこのような重要問題でありまするから、当然この合同委員会におきまして腹蔵のない討議をいたしたいと、このように考えておりまするし、おそらく国際的な需給関係についての相互の情報交換、それに基づくお互いの見解、さらに、当面とられておるアメリカの規制措置に対する当方の見解、先方の見解、それらに基づいての協議になるであろうと思いまするが、よい機会でありまするので、日本側の考え方を率直に申し上げ、問題点は指摘をし、抗議すべきことは厳重に抗議をする考えで臨むことにいたしておる次第でございます。
  54. 足鹿覺

    足鹿覺君 大体お気持ちはよくわかりましたが、先ほどのお話のように、七月六日にいわゆる投機防止法を公布し、七月十三日には政令を決定をする、大豆もその中に入れる。こういうことでありますので、第二条の適用については、先刻来の質問によって御承知のような状態でありますから、多分に国民生活を圧迫する要因を持ついわゆる「おそれ」のある案件でありますので、ぜひ早急に措置を講じてもらいたい。特に飼料の場合は古々米が全く今度は払い下げ措置がない、代替措置がありません。したがって、事のいかんによっては日本の畜産がほろぶかもしれぬ、これをそのまま放任すれば。したがって、えさの値上がりをやれば肉類は大暴騰をいたします。おそらく私の計算では、トン当たり一万円以上上がります、全くこのままの姿勢でいけば。これはたいへんな問題になりますので、肉類が上がり、卵が上がり、またとうふも上がらないという保証はない。こういうときですから、十三日政令公布がきまれば、いままでの手おくれを挽回して、国民生活に必須のたん白資源である大豆製品及び日本の畜産を左右する飼料対策等、万遺憾なきを期せられるよう重ねて強く要請をし、本日の大豆問題に対する緊急質問はこれで終わります。  そこで、本来の漁業三法について伺いますが、私は法案そのものというよりも、目下問題になっております汚染魚の問題によって動物性たん白問題が非常な危機に直面をし、国民は不安におののき、いわゆる漁民は生死の間をさまよう、生業を奪われ、あるいは魚類業者、魚屋さんは商売が上がったりである、これを運搬する運輸業者も上がったりである。その及ぼす影響がきわめて大きいので、そういう見地から今回の三法をもってしてはとうていこの状態に対応できない。これはもう言うまでもありませんので、ここに今日に至った背景について、これを踏まえながら、まず第一に動物性たん白源の供給の見通しと確保対策について承っておきたいと思う。  昭和四十六年度の国民一人当たりの一日の動物たん白摂取量は三十三グラム、うち魚介類は十七・三グラムであります。全体の五二・四%を占めておるのであります。農林省が昭和四十七年十月に作成しました「農産物需給の展望と生産目標の試案」は、十年後の動物たん白質の供給量は約四十八グラムと、約五割が増加すると見込んでおったにもかかわらず、魚介類はその中で一・四倍に増加すると見ておる。しかも、これはいまの状態で沿岸漁業のいいところがすべて全滅するというような状態では全く見通しが甘いと言わざるを得ない。これに対する農林大臣の御所見はいかがでありますか。去年のたった十月つくられたものが——きょうや、きのうこの魚問題は起きた問題ではありません、したがって、この生産目標をこの際大きく再検討され、農政審議会にも付議しておられるようでありますが、いかようにこの時点に合わせて動物たん白質、植物たん白質の自給率を向上する施策をお持ちでありますか、この際御所見があれば承っておきたい。
  55. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 動物性たん白質の場合、四十六年度におきましては、水産物が五二・四%、畜産物が四七・六%ということで、水産物のほうが供給源として多く実績が出ておるわけでございます。しかし、現在の国民の食生活の嗜好上の多少の変化をこれをとらえて推定をした結果が、五十七年度におきましては水産物による動物性たん白質の摂取量が少し下がり、畜産物によるほうが少しふえるではないかということで中間値をとりますると、五〇・六%が水産物、四九・四%が畜産物、こういう推定に立っておるのであります。  今回の汚染魚の問題から、ただいまの足鹿委員の御質問考えまするときに、はたしてこの五〇・六%の割合にいけるかどうかという御懸念をお持ちになったのではないか。この公害問題に発足をしての汚染問題でございまして、この公害については国会におきましても、また国民の中におきましても、このような状態ではいけないということで、これはもうほんとうに改善をあらゆる努力を払ってする。しこうして、その公害をなくすということにはっきりした方向があるのでございまするから、きょう現在において水産物の摂取量が非常に降下してはおりますけれども、いまのような方向からいたしますれば、このような事態は緊急の事態であると、このように受けとめても皆さん方に御了承をいただけると思うのであります。したがいまして、五十七年度の見通しにつきましては、水産物の資源確保、畜産物の生産奨励という諸施策をこれはもうしばしば申し上げておるところでございますが、生産基盤の整備、構造改善事業あるいは価格安定制度その他を使いまして、そうしてこの目標に遺漏のないようにつとめていくわけでございまするので、ただいま変更の余地があるかないかということにつきましては、この際におきましては、特にこのように変更するというようなことは考えてもおりませんし、そのような現実にお示しする何ものも持っておらないわけであります。しかし、農政審議会に対しまして、国際的な食糧事情の逼迫を勘案して長期見通しをあらためて検討してもらいたい。それについてはこの十月の試案というものをひとつよく見直してもらいたいと、こういうことを申し上げておる段階でございまするので、また、でき得べくんば年内にもその結論を得たい。こういうことでこの農政審議会の御意見によりましては、私どももまた考えをまとめてみたい、このように思っておるような次第でございます。
  56. 足鹿覺

    足鹿覺君 あとでこの問題につきましては具体的にまた伺います。  そこで大きな問題をひとつ提起して大臣の御所見を承りたいのでありますが、内外をめぐるわが国漁業の情勢はきわめてきびしいものがある。専管水域の問題にしましても、沿岸漁業の壊滅状態にいたしましても、大きな問題であります。特に、中小漁業は資源悪化の傾向がだんだん深まりつつある。一方、遠洋漁業は海洋会議に向けて、これは来年の春ですか、どこであるか私は失念いたしましたが、海洋会議でラテンアメリカ、アジア・アフリカなどの諸国は漁業専管水域を二百マイルなどに設定を主張しております。日本漁船を締め出す態度といわざるを得ない。中国、AA諸国の主張もこれを支持しておる。ソ連は必ずしも同意はしていないが、充実した漁業資源調整体制の口実に、二百マイルが設定されても有利となるよう画策をしておると私は見ております。アメリカは、軍用艦船の通航を認めれば二百マイルの設定を支持すると、こういう虫のいい考え方を持っておる。ところがわが日本の場合は、正式には専管水域は三マイル、領海を十二海里としておることは御承知のとおりです。これは明らかに世界の漁業専管水域二百海里に比べますと孤立状態である。しかも、先般来しばしばソ連の船が宮城県の沖に来てサンマの漁をしておる。これを見ても、いかんともしがたい。一方、ソ連へのカニの漁業の出漁についてはきびしい規制を受けておる。私は、このような専管水域の問題に対して、これをこのまま放置していいかどうか。いわゆる国際会議である来年の春予定されておる海洋法会議に向けてわが日本はどういう考え方と主張でもって対処していくのか。大体、海洋法会議はお互いの意思交換の場であって、その承認を受けられなければ専管水域を延長するという性質のものではあるまい。日本のいろいろな各種な条件考えてみて、漁業専管水域を国際並みにすることに、あえて私どもは疑念を持つ必要はなかろうと思う。日本の海が荒らされて日本の出先は締め出される、これはきわめて重大な問題でありますが、どう対処されますか。
  57. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 明年サンチアゴで予定されております海洋法会議は、きわめて重要であることは言うまでもございません。すでにこの会議を前にして、たしか五回であると思うのでありますが、準備会議が行なわれまして、ただいま御指摘がございました各国の出方は、それらの準備会議を通じて一応察知されるところでございます。南米諸国が二百海里の領海を主張しておる、アジア・アフリカ等の発展途上国の大多数も、最大限二百海里に及ぶ水域につき漁業等に関し管轄権を有す排他的経済水域を主張しておると、こういう二とに始まりまして、アメリカ、ソ連等の出方については足鹿委員のおっしゃったとおりでございます。現在わが国は公式的には領海三海里の立場をとっておるのでございます。現在わが国と同様の立場をとっておる国は十五ヵ国ございます。四海里から十海里までが七カ国十二海里を主張する国が四十一カ国、そのほかに十二海里の漁業水域を主張するものが十八カ国となっておりまして、十三海里から五十海里あるいは五十海里から百三十海里、二百海里とさまざまでございまするが、二百海里の主張国が十一ヵ国ある。  こういう状況にあるわけでございまするが、ただいま申し上げた数字でもおわかりのように、現在最も多くの国が採用しておる領海は十二海里ということで、これがもし国際的な合意が成立するということでありまするならば、それは日本としても、その成立を支持することにやぶさかでない、こういう態度をとっておるのであります。いずれにいたしましても、このような状況のもとに開かれる国際海洋法会議のことでございまして、日本の従来の遠洋漁業に対しまして、これによって大きな影響のあることは当然でございます。したがって、今後における遠洋漁業につきましては、国際協力をあらゆる面でしていかなければならない、こういうことで、先般、国際漁業協力財団、これを設置いたしまして、また、予算措置も四十八年度の予算の中でしていただきまして、こういう財団を活用しながら、国際協力の実を上げながら、これからの遠洋漁業に支障のないようにいたしてまいりたいと、このような考えに立っておるわけでございます。
  58. 足鹿覺

    足鹿覺君 厚生政務次官が何か火急な御用事があるそうでありますから、ちょっと農林大臣への質問をここで切りかえまして、厚生省当局に伺います。  政府の水銀汚染に関する安全基準についてでありますが、どうも私はこのたびの厚生省のとられた措置は必ずしも適切でなかった。しかし、非は非として改められるということの態度については国民は率直に受けとめておるものもあると思います。万事やはりそういうふうに間違ったことは間違ったこととして、これを改めていくということは——私は人間である限り、あやまちなきということはありませんから、いたし方がない。そこで特にこの安全基準を、一般の成人男女と、妊婦、乳幼児に適用することの可否については、私は非常な大きな疑問をもっておるのです。むしろ妊婦、乳幼児については危険基準というものがあってしかるべきである、こういうふうに私は思っておるのであります。つまり一律にこれを考えることは、少し無理があるんじゃないでしょうか。たとえば水俣病にいたしましても、世界に水俣病という名前が新しく生まれたわけでありますが、あの患者の悲惨な状態を目のあたり見まして考えさせられることは、幼くして母の胎内から被害を受けた子供、またおかあさんというものの姿は特に胸打たれるものがあります。そういう点から、児幼児の場合は危険基準を〇・〇〇二PPM程度が適当ではないかという説もわれわれは聞いており、検討の余地があると思われます。つまり一般の成人男子とは違いまして、妊産婦及び乳幼児、この人たちに対する基準の立て方、またその指導のしかたというものについては、もっと配慮があってしかるべきだと思う。これはきわめて政治的な大きな不安を、いま国民が感じております問題でありますので、政務次官のこれに対する御方針を明らかにしていただければ幸いだと思います。
  59. 山口敏夫

    政府委員(山口敏夫君) 今回の厚生省のとりました措置につきまして先生の御理解、またたいへん恐縮をしておるわけでございますが、御指摘のとおり、週間の摂取許容量等の問題あるいは安全基準等の中におきまして、いわゆる妊産婦をはじめ幼児も一般成年も同じ安全基準という形は、まことにもって大ざっぱなそしりがあったことは深く反省をしておるわけでございます。特に私、先般都下のある団地におきまして、主婦の方々、いわゆる国民の方々と率直にこの魚の安全基準の問題につきまして話し合いをいたしましたときも、いわゆる妊産婦の方々が必要以上に、いわゆる動物たん白といいますか、カルシウムといいますか、そういう意味で胎児のすこやかな誕生を祈って魚を食べておるわけでございまして、そういう点からいたしましても、特に国民の皆さま方の健康と命の問題を考える厚生省といたしましては、安全基準等の中におきまして、特に妊婦あるいは乳幼児等の鋭敏なひとつの感受性を十分考慮して行政的な指針を発表しなければならない、かように思っておるわけでございます。そこで、各市場等の魚介類等の安全監視を進める一方、現在御承知の安全メニューの問題がたいへん食生活の上で混乱を招いたわけでございまして、これを出し直すという形で大臣が国会でも答弁をしておるわけでございますが、また、軽々に、不安、あるいは混乱を解消するがために、時間を急ぎまして、その結果として、さらに混乱の上乗せをはかるということも適切ではないということで、ただいま安全メニューの問題につきましても、どういう形で、今日の水銀の暫定基準を国民の皆さまの食生活の中でわかりやすくおろしていくかということにつきましても、省内で連日協議をしておるわけでございます。  また、いま先生御指摘の、いわゆる妊産婦はじめ胎児、乳幼児等の基準につきましては、いわゆる専門家会議というような形の中で、小児科の先生でございますとか、あるいは産婦人科の先生でございますとか、学者、専門家の方々にも十分御相談に乗っていただきながら、ひとつ行政指導の方向で、別な形でいわゆる母子保健の立場から安全基準の問題につきましても一つ方針を出したい、かように思っておるところでございます。
  60. 足鹿覺

    足鹿覺君 そうしますと、私のいま指摘した点については同感であると、学者その他の意見を聞いて妊産婦、胎児、乳幼児については特別の配慮をもって基準の設定については検討し、対処すると、こういうことですか。
  61. 山口敏夫

    政府委員(山口敏夫君) 御指摘のとおりでございます。
  62. 足鹿覺

    足鹿覺君 特に御善処願いたいと思います。胎児は、母体のへその緒を通じてしか水銀の排出はできません。そういうものを同じ基準で、安全基準率でいくということは、これはもはや是正されてしかるべきだと、この点を特に御留意になって、実施をすみやかに期待いたします。  そこで、これと関連をしまして、まあ消費者の言い分として、この週刊読売に、全漁連の池尻さんと、読売新聞の編集長ですか、だれか解説部長さんの対話が載っておりまして、なかなか微妙なところもあるわけです。  要するに、安全な魚までが売れなくなった。つまり、消費者は何の標識もない、どこでとれたか、その標識もないものを買って食う気になれな、ところが、生産者や魚屋さんの面から言えば、それを一々とれた先を標識をし、またそれを調べて説明をする力もなければ、能力もない。したがって、非常な大きな混乱が起きておる。そこで、出回っておるものは安全だという証明をどこでつけるか。厚生省は基準をお出しになることはけっこうなんですが、安全メニューをお出しになることもけっこうなんですが、同僚の工藤君も先般本会議でこのことをずいぶんお尋ねになったわけですけれども、あの本会議質問を聞いておって、どうも私ども齋藤さんの御答弁が工藤さんの聞かんとするところに、急所に触れていない。それでは厚生行政とはならない。これは厚生省のみならず、環境庁にも、農林省にも私はみんなまたがる問題でありますから、厚生省だけを責めるわけではありませんが、安全メニューの問題からこの混乱が起きたのでありますが、あなたは新進気鋭の政治家として、何かこれに対する一つのアイデアはありませんか。
  63. 山口敏夫

    政府委員(山口敏夫君) 先ほどもちょっと触れましたように、また安全基準の〇・三PPMあるいは〇・四PPMというものが、いわゆる子供さんや御家族の食卓を預かる主婦の立場からいいますと、大体どの程度の実生活においては許容量になるかと、当然素朴なそしてまた切実な疑問が出てくるわけでございまして、それに対して〇・三PPMというのは、大体アジにすれば何匹、あるいはスズキにすれば何匹なんですよという、いわはその善意の説明かたいへん——すべての魚か〇・三PPMに汚染されておるという、その前提の上で発表いたし、その出し方あるいはその進め方につきましては、私どもといたしましても率直に混乱の責任をきわめて重大な認識として反省をしておるわけでございます。しかし、その後のいろいろ御批判もございますが、あくまで国民の皆さま方の健康と命の問題でございますから、基準そのものにつきましては、原則につきましては、あくまで医学的、科学的な判断の上に立った原則をこれを曲げるわけにはもちろん、いかないわけでございますが、同時に、この安全確認の問題につきましては、いわゆる産地市場におきまして〇・三PPMに押えるといいますか、以上のものは絶対に流通市場には出さない。こういう点の監視体制を一そう強化しておるわけでございますし、同時に、いわゆる流通市場、いわゆる魚市場におきましても、各保健所でございますとか、衛生局等を中心に、随時抜き打ち検査やあるいは監視体制を滞りなく行なうことによりまして、少なくとも市場を通じて消費者の手元に届く魚については十分安全性を確認するところでございますと、こういう立場に立って、いま国民の皆さん方に、消費者の方々にも御説明をさせていただいておる、こういうことでございます。  したがいまして、この厚生省の一つの姿勢やあるいは方針に対する国民の皆さま方の信頼と御理解をいただかなければ、私どもの説明もまた、あいまいになるわけでございますので、その辺の原則は、あくまで医学的、科学的な立場における原則は守る。しかし同時に、生活の中における、暮らしの中における実生活の運用の面においては、厚生省の立場からも魚の安全基準につきましては、誠心誠意、監視体制等の関係の中で、ひとつ国民の皆さま方の食生活の安全をはかっていくと、こういう二段がまえで根気よく今日の混乱の責任収拾にあたりたい、かように思っておるわけでございます。
  64. 足鹿覺

    足鹿覺君 要するに、主産地における、荷揚げ場における検査体制、監視体制の整備ということで、汚染魚は廃棄してしまう、市場に出回っておるものはみんな安全だと。こういうことをするために必要な措置は何ですか。いまのは、あなたのは、抽象的でよくわからないですよ。どうしますか。
  65. 福田勉

    説明員(福田勉君) ただいま政務次官が申し上げましたように、産地市場における水際作戦と申しますか、産地市場でその基準以上の魚は一切出さないということが最も大切な、必要な措置でございますので、去る六月の二十九日に、全国の課長会議を招集いたしまして、問題になっております、汚染されていると思われます九水域——これは環境庁で例の対策会議の際にきまった水域でございますが、そこの水域につきましては、必要な産地市場で検査を実施するということにいたします。そのやり方につきましては、先生御承知のとおり、一つの湾、たとえば有明湾でございますと、有明湾に産地市場が十幾つかございますが、そういうような産地市場におきまして、必要な魚種全部でございます。必要な魚種あるいは必要な水域、地先、これをすべて取り上げるような検査をいたしまして、これは地方衛生研究所、あるいは地元の大学、あるいは民間の検査機関等に検査を直ちに委託いたしまして、そこで検査結果が出ますれば、それをすみやかに公表いたしまして、基準以上のものを出ないということにいたしたいと思います。また、これらにつきましては、現在予備費を要求中でございまして、国におきまして検査機器の整備並びにやはり技術を伴いますので、隣県からの技術者の応援等もここで求めたいということで、現在、各県と協議を進めているところでございます。  なお、そのほかに一般の流通市場におきましは、当然、いままでも検査をしているわけでございますが、さらに強化をして、検査結果を発表して、もし、そこで出ましたならば、生産地の、水産地のほうへ直ちに連絡いたしまして、そこの検査も実施するということにいたしたいということで、鋭意、進めておるところでございます。
  66. 足鹿覺

    足鹿覺君 少し具体的になりましたので、そこでもう一つ伺いますが、いわゆる検査体制を、機器を整備する。各産地市場において水銀、PCB検査機器を設置するということになりますと、これはどれぐらいな数になるか知りませんが、その充実を期するということのようでありますが、これはけっこうでありますからぜひやってもらいたい。ところが、現状は各地域漁民が、大学の研究機関か、会社組織に依頼しておるのが現状であって、いわゆる検査の結果が明らかになるのに、とても時間がかかってしょうがない。まあ最新で地の利を得たところであり、いい機械の備わっておるところは、二時間もあれば出るという話であります。しかし、実際にあたってみると、われわれが現地で調べてみますと、いや一カ月から半年もかかってから、やっとこさで出るという声も聞くんです。  これでは困りますから、この際、山口政務次官ですね、この機械は二千万円もするという話で、国産はまだできていない。アメリカ製のガスクロマトグラフィーとかという、やかましい名前のついたもので、これを——一台二千万円ですよ。そうすると、十台で二億円ですか、百台で二十億、千台では二百億かかりますね。少なくとも千地区ぐらいにこれを配置して、そして各主要産地市場において二時間もかかったならば、その結果が出る。こういうふうにしてやれば、これは私は汚染したものは全部捨ててしまう。出ておるものは安全だと、こういうことにつながってくると思うんです。それなしには、私はうまくいかないと思う。私もこういうことには詳しくないのでいろいろ聞いてみますと、検体をまずガスクロマトグラフィーにかける前にすりつぶして乾燥して燃焼させると、それの光を見ておれば、これが水銀であるか、あるいはPCBであるかということがわかるということなんだそうです。ですから、そう手数のかかる検査技術ではない、機械さえ整備すれば、ある程度熟練をすればやれます。訓練もそうむずかしいことではないと思う。それを千台置いて二百億ですか、まあその程度のものが国民をして安心せしめていくと、それからいわれなくして汚染魚のレッテルを張られておる漁民の不安も解消できると、魚屋さんもこれで救われるということであれば、これは何をおいてもやらなければならぬことではありませんか、いかがですか。
  67. 山口敏夫

    政府委員(山口敏夫君) ただいま、先生の御指摘のいわゆる水銀の分析機器につきましては、正直のところ、私も初めてこの委員会出席の前においても説明を受けたわけでございますが、当然国民生活における動物たん白の吸収、特に魚の安全につきましては、業者とか、あるいは魚屋さんだけではなくて、国民自身がその栄養源におきましても、きわめて切実な一つの混乱を来たしておるわけでございますから、できる限り、そうした安全性の確認、また国民の皆さんの食生活の安全というものをはかる意味におきましては、そうしたガスクロマトグラフィー等の機械も含めまして、早急に検討をし、水銀分析につきまして強力な安全性確保のための措置を講じなきゃならないと思いますし、また、帰りましてから、大臣ともよく先生の御指摘の趣旨につきまして前向きに検討し、必要性を十分考え、進めていきたい、かように思っている次第でございます。
  68. 足鹿覺

    足鹿覺君 これをおやりになりませんと、厚生省が現在考えておられる八月末までにやるといっておる三千水域の汚染調査を実施されたら、最悪の事態が起きてくるんですよ。で、漁民はもとより、関連産業、消費者対策が確立した上でないと、これはなかなか大問題になる。ですから早くやっていただくことはけっこうですが、何千水域にわたるなまはんかな確信のない調査を幾らやってみてもしかたがない。したがって、いま言った検査機器を充実し、監視体制を整備すると、そのための予備費・人件費各地方自治体との協力体制、そして漁民・漁連・民主的諸団体の協力を求めて、そして国民の合意と協力を得てやらなければ、官庁だけで、この大事業をやろうということは、私は、なかなかむずかしい。そういう今日の世論でありますから、あなた方が世論を浴びて総理に要求し、強力な施策を講ずれば、これは農林省、環境庁、通産省といえども、みんな関連しておるわけでありますから、大きな力が結集できると思います。ぜひそれをやっていただきたいと思いますが、さらにひとつ御決意を促し、御所見があれば承って、お急ぎのようですから、ほかにもありますけれども、あとは環境庁で代弁してもらうことにします。
  69. 山口敏夫

    政府委員(山口敏夫君) 先ほどもお答えさしていただきましたように、今日の魚の安全性とその確認、また、国民の皆さんの食生活の混乱というものは、早急に、いま一刻も早く解決をしなければならない絶対的な使命を帯びておるわけでございますので、先生のただいまの御指摘につきましても、十分前向きに検討をさしていただきたい、かように申し上げておきたいと思います。
  70. 足鹿覺

    足鹿覺君 まだ厚生省にはだいぶありますけれども、しようがありませんから、関係官だけで……。あなたはお引き取り願ってけっこうです。  そこで、先ほどの質問へ、もとへ戻しますが、補償問題であります、農林大臣。これは環境庁にも関係がありますし、通産省にも関係がありますが、もちろん厚生省にも関係あります。あなた方は天災融資法を発動して五十万円の融資をなさっておる。このものについては無利息にすると、で、原因が明らかになったときには責任者が償う。こういうことで当面を切り抜けようとしておられますが、漁民のほうからいえば、魚屋さんに何ぼ融資されるかはまだ定かではありませんが、二百万円説もありますが、これは中小企業の所管になると思いますが、借りたものは戻さにゃならぬですよ、あくまでも。融資で事を済ますということは、私は、いまとりあえず、おとりになったその窮境の措置としては、万やむを得なかったと思いますが、もはや根本的にこれを切りかえなければならぬ段階にきておる、もうここまでくれば。  したがって、その補償方式は、私の質問がスムーズに進むにために具体的に申し上げますと、二十九年にビキニ環礁において放射能を浴びたマグロの補償のときの全額補償が二十九億円、当時の金にして。だから、いわゆる放射能汚染マグロ廃棄の際のビキニ補償方式をとるべきではないか。これは具体的なものなんです。よその国のやった水爆実験の放射能を浴びて、日本の多くの人間が汚染をされ、かたわになり、死に、そしてマグロを廃棄した、これを日本政府が償った、こういう状態だ。いわんや、今日の魚の汚染は、いわゆる高度成長の合成化学の工場や、あるいはその他の海水を汚染し、毒物を排出する企業のもたらしたところなんです。したがって、これが全面的な補償の任に当たることは言うまでもありませんが、その補償の方式は、融資した五十万円を肩がわりをするなんというようなことでは、これは問題になりませんよ。大臣、応急措置としては私は御努力は認めますが、いま漁民が腹を立てておるのは何だというのは、あなた方の配慮が全然通じない連中が腹を立てておる。通じませんよ、これは。何だっておれらが借金を負わねばならぬのだと、こういうことになるんです。そのところに、私は、汚染原因者が判明するまでは漁民及び関連産業の損害賠償は政府の代位弁済をとるべきだと思うのです。原因者が判明したときには政府が企業に対して損失補償を請求することは当然ではありませんか。大臣、いかがですか。踏み切られないとこれは昭和の漁民一揆ともいうべき今日の騒然たる状態に対処できなくなるんではないでしょうか。いかがですか。
  71. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) このことはしばしば申し上げておるんでありまするが、本来でありまするならば、原因者負担の鉄則のもとに、すでに原因者のわかっておるものについては、個々に交渉が行なわれて、解決も見つつあるわけであります。しかし、原因者が明確にならないその段階をどうするか。そこで、緊急措置としてのつなぎ融資と。しこうして、そのつなぎ融資も、これは原因者がわかりますれば、元本・利息ともに原因者が負担をすると、そういう措置をとったのであります。これはもういま申し上げることで尽きるのでございます。多種多様の影響を受けておりまして、どのような補償をするかということも明確にできません。もし、ほんとうに国家が補償をするという足鹿委員の御見解をとるといたしますると、その補償の具体的な方法等につきましては、相当な検討をしなきゃならない。ある時間的な関係というものが、これまた、被害を受けた方々の御不満を助長することは予測にかたくないんであります。  そこで、原因者負担の鉄則である、この原因者がわかるまでの間をその融資措置をしていくのであるという方式をとったのでありまするし、また、その融資措置というものは、すでに明快にされておりますように、三分の利息と通利との間については国は直ちに見る。三分の利息につきましては、企業者団体のほうにおいてある積み金をして、何らかの措置をもってこれは迷惑をかけないようにする。しかも、この利息の支払いは、一年据え置きのことで、現実の問題ではないのでございます。ですから、このつなぎの緊急措置ということが十分理解されますならば、私は、被害者の方々におきましても御了承が得られるものと思っておるわけでございます。
  72. 足鹿覺

    足鹿覺君 環境庁と通産省に伺いますが、いまの大臣の御答弁は、緊急にとったんで、加害者がわかれば、原因者が判明したときには、政府はこれは全額を要求して戻させるんだ、一応筋は通っていますね、だけれども、私は少なくとも環境汚染の原因は明確になっておるんです、現在の場合この問題になっている水域は、ですから、代位弁済制度というものをやはり私はつくっていかなければならぬと思う、これは漁民に対しては一応五十万円でもこれはまああれでしょう、しかし、先日二、三日前のテレビで、NHKテレビであったかどうか忘れましたが、魚の運搬の中小企業の百二、三十人の従業員を使って運搬業をやっておった社長が、すっかり輸送が途絶したために自殺をして死んでいますね。私は非常なショックを受けたのです。この汚染魚の問題、公害のたれ流しの問題が、直接の被害は農民に、そしてその地域の住民をかたわにし、死におとしいれ、そして関連産業の魚屋さんを休業させ、さらに運輸業の中小企業者にまで及んでいる。国民は言いしれぬ不安におののくというようなこういう状態になっておるわけですね。一体、通産省や環境庁は農林省とも相協力なさって、まず損害額をすみやかに実施されていかなければならないではありませんか。そうしなければ問題解決しないと思うのですよ。いま言ったような具体的な問題、いま大臣がおっしゃったのは漁民に対する救済措置を一応言われた。私はわかりますけれども、納得がいきません。代位弁済制度というものをやはりとっていくべきだと思うのです。融資ということで当座をしのぐということはいままではしかたがなかったが、三省協議してやはり制度として打ち立てていくべきだ。いかがですか。
  73. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) いま先生の公害による被害者の損失をどういうふうに補てんをするかという制度のお話でございます。私どもも公害被害者の損害につきましては、原則はやはりPPPということを曲げられないということを考えております。これを曲げますとやはり公害の処理する方向が誤ってくるおそれがあるというふうに実は考えておるわけでございます。ただ、先生御指摘のとおり、加害者がはっきりしない場合、そういう場合には被害者が加害者から補てんを受ける期間、相当な期間が生じてしまうわけです。いわゆるタイムラグが生ずるわけです。それらに対してどういうふうに対処するかという問題は当然残ります。そこで、政府といたしましては、現在今国会に公害によります健康被害者の損害の賠償の制度につきましては法律提出いたしまして、いわゆる複合汚染その他に対処するためにPPPを貫きながら早急にタイムラグを埋めるという方針のもとに現在制度を仕組んでいるわけでございます。残りますのは先生御指摘の財産被害または生業被害につきましての損失の補てんの問題でございます。これはなかなかむずかしい問題ではございますけれども、やはり御指摘のとおりの問題でございまするので、私どもは健康被害者に対する措置に続きまして、財産被害並びに生業被害に対します損害の救済制度というものを早急に打ち出したいというふうに考えております。そのつなぎといたしましては、先ほど農林大臣がお答えいたしましたとおり、私どもはつなぎ融資というものもこれはやむを得ないし、緊急に必要であろうというふうに実は考えておりまして、できればほんとうの意味の確固たる制度をできるだけ早く樹立するということにいたしたいと思っております。  それから、緊急の措置といたしまして、私ども今回の水銀並びにPCB等によります魚の汚染の問題につきましては、やはり原因を早急に究明をいたしたいというふうに考えておりまして、すでにいろいろ問題がございます九水域のみならず、全国の水域につきまして緊急に調査を開始いたしております。それの結果によりまして原因を究明いたしまして、損害等につきましては当然都道府県等指導いたしまして、あっせんその他の措置をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  74. 田中芳秋

    政府委員(田中芳秋君) 通産省といたしましても汚染源を早く明らかにするということがただいまの社会的要請の一番の強いところと考えまして、ただいま汚染源と考えられます工場につきまして総点検を実施いたしておるのでございます今月中には私どもの調査をまとめあげたい、こういうところで鋭意努力をいたしておるわけでございます。  なお、環境庁のほうからお話がございましたように、こうしたものにつきましてはやはり財産被害に対します制度を確立し、こうした被害者救済に即刻手が打てるような形をとる必要があるので、環境庁に協力しつつこういう制度の確立につとめてまいりたいと、かように考えております。
  75. 原山義史

    政府委員(原山義史君) 今回の水銀、PCB汚染によります被害は、漁民だけではなくて、確かにそれを取り扱うお魚屋さん、あるいは場合によればすし屋さんまでいろいろ被害を受けておるということは先生御指摘のとおりでございます。そのため私ども六月二十七日に私どもの大臣から閣議で報告いたしましたように、これを取り扱うのを主として行なっておる中小企業に対しては緊急融資を実施したい、内容としましては、国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫の三政府関係機関を通じまして二百万円の別ワクの制限を設けまして、うち五十万円は三%の利息によって低利の融資を行なうということを決定して現在鋭意融資必要金額等を詰めておるところでございます。
  76. 足鹿覺

    足鹿覺君 この肝心なことに答弁されないんです。岡安君。環境庁の三木さんにもただの十分でもいいから来てもらいたいということをだいぶ——こちらのレクチャーのときだけは熱心に来るけれども、おれの言い分は大臣に伝えましたか、政務次官も大臣もお見えにならないとは一体何事ですか、わが農林水産委員会を軽視するんですか。この重大な問題をわれわれが審議しておる際に、何ですか一体。三木さんはどういう事情で来れないんですか、政務次官は何ゆえに出席されないんですか、明らかにされたい。
  77. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 私は農林水産委員会で先生の御質問があるということで急拠参ったわけでございまして、大臣なり政務次官がどういうことで欠席されたか、ちょっと私、現在承知いたしておりませんので、直ちに調べて御連絡いたしたいと思います。
  78. 足鹿覺

    足鹿覺君 あなた方の政府委員室から私のところに質問のレクチャーに来たんですよ。そのときに、本日はきわめて重要な問題を質問する。農林大臣は終日出席になるけれども、厚生省は政務次官を送っているじゃありませんか。必ず大臣または政務次官、みな多忙なからだだから一がいには言わないが、三木さんにはただの十分間でもいいから来てほしい、できなければ政務次官を送ってください。通産大臣にも政務次官はぜひ送っていただきたいということをレクチュアに来た際に……。人にものを言わしておいて、自分たちは責任を果たさない。そういうことであれば、今後われわれはレクチュアをしませんよ。そういう怠けた態度がありますか。承知まかりならぬ。政務次官を呼びなさい。三木さんにもう一ぺん交渉して、ただの十分でも御出席を求めてください。委員長、御善処を願います。
  79. 亀井善彰

    委員長亀井善彰君) すぐ連絡してみてください。
  80. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) いま連絡しておるそうですから……。
  81. 亀井善彰

    委員長亀井善彰君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  82. 亀井善彰

    委員長亀井善彰君) 速記起こして。
  83. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 関連質問ですから、ごく簡単に、しかも端的にお伺いしたいと思いますが、これはどこの省に答えてもらうといいましても、なかなか責任がない。大臣は農林大臣一人しかおいでになりませんから、農林大臣からお答えをいただいたらと思いますが、答えられない場合もあると思いますが。私は八水域ないし九水域になりますか、環境汚染地域での漁業をやめたらいいと思う。やめさす、漁業を禁止する。それは漁業者は困ると思いますので、その間、政府からそれに対する補償はしてやる。だから環境汚染水域では魚はとっておりませんということを国民にはっきりと——何々PPMとなんて言うてもこれは私らにもよくわからぬ。いま足鹿君、相当の機械を買うて、しかも二千台、二千五百台、三千台買うて検査をしてやったらどうかというのですが、汚染区域で漁業を禁止する。もう汚染しておるところ、指定されたところでは魚はとっておりませんということが国民にはっきりわかるようにする。あとのものは食料にして差しつかえございませんなんというような、厚生省来ておいでになるかどうか知りませんが、何回か、あれは間違うておりましたなんというようなことで、似たような間違うて訂正が、また似たような訂正をしておるので、わからないのですよ、あれ。ですから、もう汚染をしておるところの魚はとりません、とっておりませんということをやって、そこの漁業者には補償をしてやる、国が補償をしてやる、何カ月かかるか知れませんが。そしてその原因を除く。その原因というものがわかるまでなんというような頼りないことをいってるから、こういう問題が起こると私は思う。原因なんというものが全然わからないはずないと思う、私は。通産省おいでになると思いますが。そこでその他の漁獲物については、どこで漁獲をいたしましたという、水揚げのときにその漁獲地を明記して、それが小売り店にまで表示をされて、どこでとれたアジでございます、どこでとれたサバでございますということが、はっきり明瞭にわかるように、大衆に指示のできるように、以前と同じような安心して食用に供せられるようにすることがよいと思います。これはわかりよい話でないと、いまは非常に混乱していて、一般大衆がわかりにくいというところに問題があると私は思いますので、そういうようなことはいけませんか。
  84. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) これは環境庁のほうからお答え願うがいいと思うんですが、いま国民の食生活の上から、この日本列島の全域を順次魚体についての検査をしよう、これはもう一般的に汚染しておるとか、汚染してないということでなく、まず順次全国調査をしよう。そしてもう根本的に国民が安心のできるようにしようという一つの理想論があるわけです。しかし、その理想論をやるためには相当長年月が必要であるから、そこで過去に魚種によって何らかの疑いを持たれたような地域を優先して調査してみたい。だから調査地域をしぼって、それでその地域は本来いえば発表しなくてもよかったんですよ、どこどこをやるということを。それをたいへん正直にどこどこを優先して調査するといったので、それが国民のほうでは、そこはもう汚染地域である、そこの魚は汚染魚であるというそういう受けとめ方が行なわれた、これはきわめて遺憾なことなんであります。  それから調査を優先しようとするところでも、そこは、そこでとれている魚が全部疑わしいのではないんです。たまたま従来でもそういう検体を選んで検査をしておる。たとえば、大分湾のような場合に、河口でウナギにその汚染のものが過去にあった。しかし今回の調査のときにはここは優先してやろうというようなことで、ここはほかの魚には従来何ら別状はないんですね。しかし残念ながら、調査するといったら、そこの魚はもう汚染されているんじゃないかということで売れなくなる、騒ぎになる、こうなったんです。そういうわけで調査水域というものを、そう神経質にお考え願わないほうがいいとは思うんですが、またそのことを農林省のほうの立場からいえば、われわれはどちらかといえば、そういうものを供給する立場、その漁業者の立場でございまするから、何をよけいなことを言うかと、かえって刺激的なことにもなってはいけませんから、それは九水域を優先して調査する、それはけっこうでございますねと、こう軽く受けとめておるわけであります。  したがって、これらの水域の漁民の代表の方が見えて、その後その県の段階で調査して、何にも疑わしきものもないのに、われわれは汚染地域のような扱いを受けて迷惑だというお話も承りました。それはほんとうにお気の毒だ、早くそれでは国としても裏づけをしようというようなことでございます。  それから、現に汚染問題が起きたところでは、そこで工場もはっきりしているところは、もう原因者は明白なんですから、漁業者との間で話し合いが進んで、そして補償ももらっておる。それから今度は汚染魚はそれぞれ具体的に措置されておる。たとえば山口県の徳山曹達のような場合、漁業者が魚を持っていって、それで工場の中へ埋める。幾ら、じゃあ補償を払おうとか、いうようなことにも、具体的にはっきりしているものは、なっておりますね。兵庫県の高砂におきましては、鐘紡との間にそういうことがある。でありますから、私らのほうから見れば、いま現在もし、ほんとうに汚染のところがあって汚染魚があるというところは、それはもう魚をとっておらないんです。われわれの行政指導としては、自主規制ということであれば、とっておらないし、また問題であったものは原因者との間で話し合いが進んでおる、こういうことでございます。  その他の点についてはどちらかというと、魚の種類によって——魚の種類というと、かりに汚染源の疑わしい工場のある近くで、底魚とか、根づきの魚などにそういう疑わしきものが、ときに出るんですね。それがもう何もかもいけないようなふうに印象づけられておるわけでございまして、いまお話のように、汚染水域は漁業を禁止している。その汚染水域ということは、いまわれわれとしては特定はしておらない。調査をしようというところが、汚染水域という断定はしておらないということが一つ考えいただきたい。それからかりに問題がある、それはあくまでも原因者負担であって、現にはっきりしているものはすでに交渉が成立をして、補償も行なわれている、こういう事態でございます。
  85. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) ただいま大臣から総論的にお話ございましたが、たとえば水銀は今回新しく特定調査地域といいますか、問題水域といたしまして調査を緊急に行なうということになったわけでございますが、PCBのほうにつきましては、少し調査が早く終わっておりまして、先般特定水域につきましてきめたわけでございますが、そのときの発表の段階におきましても、たとえば九州の、というふうな表現をおよそ使いませんで、大分川の川口の天然ウナギについて、これはPCBは三PPMをこえるから、これは摂取することは差し控えられたい。あるいはとることを差し控えられたいという表現をとったわけでございます。その結果、また、そのほかの地区の、たとえば福井県の地区の東洋紡のPCBの汚染地区もそうでございますし、すべて早く地区を限定し、特定魚種を限定しました関係で、相当この補償問題も、非常に大臣がお話しになりましたように、まあ全量その地区の魚を買い入れる。非常に汚染の強いところは全量企業のほうで一定の水準で買い取って、また流れ出さぬようにコンクリート詰めにして埋めてしまうということが決定しております。  それからまた、その汚染源がどうもいつまでもPCBでございますので変化しない、といって海水を全部入れかえるというようなこともできませんし、という地点につきましては、これは埋めてしまうということで、たとえば兵庫県の高砂港の港は矢板を打って、近く埋め殺してしまうということで、このPCBの汚染問題の対策はそれぞれの地区で、それぞれのくふうをこらされながら、企業が原因者負担の原則に基づいて全部これはいまのところ片づいていく方向で動いております。これはいずれ遠からず、もうPCBは再び流すこともございませんので、この汚染の中心点をまあ壊滅といいますか、処理すれば、あとはいずれきれいになっていくものと、私たちのほうは考えている次第でございます。  それと同様な方向で、水銀につきましても緊急に今回調査いたしまして、早いものは七月中に、おそいものでも九月中には何とかそれぞれの問題水域を調査いたしまして、汚染の地先と、それから汚染魚の種類は徹底的に調べますとともに、原因者につきましても、同時に、これは相当確定されるものと私のほうは理解をしておりまして、そうなりますと、ここで原因者負担の原則によりまして、当該汚染地区の魚をどう処理するか、あるいはその汚染地区をどう埋め立てするか、どういうふうにあとを清掃するかということが急速にきまってまいると思っております。  また、そういうふうに関係各省、相協力いたしましてこの問題を推進してまいりたい、こういうふうに思っておりますので、これは全面的にその当該地区の魚が全部汚染しているというふうなことにはおそらくなりませんで、現在でも大体そういうふうに特定魚種のみが汚染しているんではなかろうかと思っておりますが、ただ工場の排水口の地先五百メートル前後はあるいは場合によっては全面的な禁止になるかもわかりませんが、他の地区、その遠くの地区につきましては、たぶん魚種だけを限定することになるんではなかろうかと、こういうふうに思っている次第でございます。
  86. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 いま大臣のお話や、それから長官のお話、よくわかります。わかりますが、私がおじておっかながっているというんじゃないんですよ。国民が魚を食わない、いわゆる市場で売れない、そういう問題があるわけですよ。ですから、それを安心してもらいまするためには、汚染地区において漁業を禁止するという処置をとりましたということのほうが一番手っとり早く、しかもよくわかりやすい事柄ではございませんかと、こう言っておるんですよ。それは、私らは漁業者でもなければ、そういうお話のようなことを聞きましてもまたわかりませんし、また自分自身がさほどに心配していないんだから。だから早く国民に理解を求める方法として、汚染地域での漁獲はいまやめております、こういう態度をとることが一番安心をせしめる方法ではないか、こういうことなんですよ。
  87. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 現在問題があると、明らかにそばに工場があって疑わしいというところでは、それは文字どおり、もう自主的に規制をしておるのであります。そういうものがいま入荷してくるんではないんです。それから厚生省のああいう基準が出ましたが、これは御承知のように、継続的にその汚染したものを食べたときに被害があると、まあ、こういう汚染したものはあまり召し上がらないようにという、そういう意思表示が、国民のほうにはそうでなく、もう一般的な魚も何もいけないようにとられておる。ですから、今後におきましては正しく報道され、正しく理解されるように、私ども関係者が鋭意つとめる。同時に、おっしゃるような、ほんとうに汚染のおそれがあるというようなところでは、これはもう文字どおりの自主規制が行なわれておるということを御承知願いたいと思います。
  88. 足鹿覺

    足鹿覺君 環境庁政務次官もおいでになったようですが、政務次官、ずいぶんお待ちしておりました。  二重の質問になるんですがね、まあ、お聞きになったかどうか知りませんが、漁業補償の問題については、汚染者、原因者が判明するまで漁民及び関連産業の損害賠償は、政府の代位弁済制度をとるべきではないか。それは農林省にしろ、通産省、中小企業庁にしろ、それぞれ、天災融資法その他の国民金融公庫からの融資等によってそれぞれ手当てはしていらっしゃる。しかし、それはあくまでも応急措置であって、いわゆる漁民の感情なり魚屋さんの感情一あるいは運搬業者の感情としましては——ここへけさ私が買ってきて読んだんですが、こういう雑誌がある。これに、ある新聞社の論説委員と全漁連の池尻常務との対話が載っておるんですが、「公害源断つことのできない政府」というところで、池尻という全漁連の常務はこういうことを言っておる。——全漁連というところは決してわれわれには近寄らぬところだ。大体自民党の皆さんのほうに近い。それはそういう体質を持っておるところなんですが、個人的には私も知っていますよ。だけれども、体質としてはそういう体質を持っておる人が、「われわれは魚が売れなくて漁業を休んでいる、加害工場はヌクヌクと煙を上げて操業している。これが異様に見えないところに、政治の良心までがマヒしている証拠がある。」と言っているんですよ。——いいですか。「つい先日も岡山の水島地区で漁業者実力で工場の操業停止をさせましたね。あれは国民のいまの気持ちを率直に表現している。したがって、政府もすみやかに総点検して、違反企業の操業停止をするというところから、はじめて漁業者との交渉の対等の場ができると思うんです。」と、こう言っておる。  そこでこれに対してわれわれは、まずよその国の水爆実験で、マグロが放射能を受け、人間が死に、漁師が死に、あるいはかたわになった。あのビキニ補償方式をとって、いわゆる政府の代位弁済を行なう。方式は、全額政府補償という形にして、沿岸漁業及び関連産業の補償をやるべきではないかと、こういうことについては大体、岡安君のほうからも所見が述べられた。農林省も御異存はないが、将来そういう方向へ持っていく。通産省もそういう方向へ持っていくということなんだ。あんたのところだけが——岡安君の発言で不満ではありませんが、きょうは特に大事だから三木長官に十分でも顔出しをしてもらいたいと伝えた。できなければ、次官に御出席を願いたいということを伝えたにもかかわらず、連絡がなかったんですか。ちょっと参考のために聞いておきますが、こういうことですと審議が幾らでも延びてくるのです。いいですか。われわれは審議引き延ばしなどということは考えておりませんが、ややともすると、野党が審議を引き延ばすというようなことを言うけれども、そんなことはありません。したがって、われわれからレクチャーはうんとこさと取って帰って、そしてあなた方は答弁要旨をつくる。その連絡がきょうあったですかなかったですか。そういうことじゃ困りますね。どうですか。
  89. 坂本三十次

    政府委員(坂本三十次君) たいへん連絡が不行き届きの点がございましたんでしょう。私ただいま承りましてかけつけてきたようなわけでございまするが、いろいろ手落ちの点はおわびを申し上げます。  そこで、ただいまのその漁業被害の点について、とりあえず政府が代位弁済のような制度を設けろというお気持ちに対しては、私もほんとうに一日も早くすっきりとしたその補償ができることはほんとうにこれは望ましいことだと思うております。しかしまあいろいろPPPの原則などもございまして、それからまた制度的にもいろいろとまだ煮詰まっておらぬ点もございまして、とりあえず融資という形でこの場はつないでおきまして、そして後ほどこのPPPの原則できびしく適用をして、補償に充当できるものは充当すると、こういうことで環境庁もおるわけでございます。まあただいま代位弁済のような制度とおっしゃいましたけれども、これは汚染に対する原因の程度に応じて金を先に取っておけばよかったと、そういう制度をつくっておけばよかったというような法律ができるまででも、私どもそういう気がいたしまして、この間からそういう委員会をつくりまして研究はいたしておりまするけれども、いまだ結論の出ておる段階でもございません。とにかく健康被害に対する補償の法律案は今国会に提出をいたしておりまするが、この生業被害、財産被害のほうにつきましては、いまだ環境庁は検討中の段階でございまして、一連のいままでの事件をながめてみまして、これは非常に手おくれであったなという反省の念を禁じ得ないものがございます。早く補償のできるような制度をつくりたいという気持ちは持っておりまするが、いまだに煮詰まっておらぬ段階でございまして、今年度から調査を開始をいたしまして、そうして法律的な検討を早めまして、そして四十九年度からこの調査をまた拡大をいたしまするし、それから制度化の準備もいたしたい。初めは四十九年度から検討にかかると言うておりましたけれども、そうはいきませんのでさっそく今年度から検討にかかり、来年度に至りましては制度化の準備をやって、五十年度には法制として仕上げたいという気持ちをいま持っておるわけでございます。  しかし、確かにおっしゃるように手おくれの感がございまするが、長年の蓄積を見のがしたという、そういう行政の油断というものに対してつくづくと反省をしておるわけでありまして、こうなった以上は一日も早くひとつ取り返して、制度化をして、漁民の皆さん方にいまの融資の不安定の段階から制度化をして、補償すべきものは補償をするという制度を一日も早くつくりたい、早く繰り上げてやりたいという気持ちでおるわけでございます。
  90. 足鹿覺

    足鹿覺君 おくれては来られたが、なかなかいい御答弁をされてたいへんけっこうでした。  そこで、これは農林省、通産省、運輸省、環境庁、厚生省、皆さんに伺いますが、先ほど来からおそろいになるのを待っておったわけですが、まず損害額の調査をすみやかに実施することが私は必要だと思うんです。水域の調査もさることであり、それから監視、検体の検査機器の整備充実をはかるということは、先ほど厚生省からも言明がありましたが、まず漁民、魚屋、関連産業、つまり加工流通、すし屋、食堂、こういうふろに漁民三百万といわれますけれども、すでに一億の国民に広がったこの問題、そして一般国民は不安におののいておる。こういう状態でありますから、魚の損害額はどうか。  運輸省においては、重要港湾あるいはその他、一説には、瀬戸内海は半分くらいもうヘドロ化しておるだろうといわれておる。そういう港湾のヘドロのしゅんせつあるいは締め切り、締め切りのできないところは徹底的なしゅんせつをしていかなければなりますまい。また、公害の拡散を避けながらやっていかなければなりません。  それから通産省は、先ほど言った、われわれは魚が売れなくて漁業を休んでおるのに、加害工場はぬくぬくと煙を上げておる。これに対して、違反企業の操業停止を求めておるんです。ところが、けさもテレビで言いましたが、徳島の東亜合成化学と漁民との合意書が成り立った。三億五千万円の補償で、次が周囲をきれいにする、今後水銀被害を補償する、こういうことなんです。これがテレビで出ました。私はすぐにメモを取ったんですが、どういう経緯で出たのか、おそらく政府は介入しておりますまい。おそらく知事のあっせんによるものだと解します。このように地方自治体の長は、公害を持った地区は血みどろの努力を知事さんはしておられるわけです。中央のあなた方は、操業停止に関する問題や環境保全や水質の汚濁防止の問題について、どれだけの思い切った措置を講じましたか。各省ばらばらで今日まできておることを、私は非常に遺憾に思います。この際、総合的に見た汚染調査と並行して、損害額の調査をやるべきであると思いますが、農林大臣をはじめ運輸、環境、厚生、通産の御所見を承りたい。そうしなければ対策は立ちませんよ。
  91. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 足鹿委員のおっしゃるとおりでございまして、そういうこともございますし、また現に汚染のおそれのあるところも残り、損害の進行中と見なければならぬところもございます。調査の結論を得るには非常に困難性があるかと思いまするが、当然やらなければならぬと思います。その間を一応応急の措置をとっていくと、これは先ほどからお答えをしておるとおりであります。
  92. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) 損害額の認定につきましては、非常に次から次へとなだれといいますか、全国的に問題が広がってまいりまして、十分にまだ私のほうで掌握いたしておりません。さらに魚価下落に伴う損害額の認定ということになりますと、非常にむずかしい問題があるんではなかろうか、こう見ております。ただ問題といたしまして、私のほうでとっております調査方法といいますのは、まず第一点に、第一義的には、当該被害が出ました——被害というか問題の起こりました地先に所在しております漁業協同組合員の数を認定いたしまして集めまして、それに大体さしあたり五十万円ぐらいの融資ということを考えましたのは、大体百四、五十億円ぐらいを第一義的にまず考えたのでございます。ところが、その後、当該地先の漁業協同組合だけでは十分対応できない、ますます魚の取引が不可能になってまいりまして、たぶん、その汚染地区を含む県の海水は、その地区の魚はおそらく大体操業停止というふうなかっこうになっておりますので、それらを含めますといわゆる水俣湾から八代海、有明海それから瀬戸内海に面します原因のあります県、あるいは日本海の一部、こういうふうに限定いたしますと、大体五万漁家から五万五千漁家ぐらいに、私のほうは一応この被害、これは二次被害というようなかっこうでございますが、問題水域を含む漁家数で、これが大体五万五千前後というふうに見ておる次第でございます。
  93. 加藤勝則

    説明員(加藤勝則君) 港湾に堆積しております汚泥の除去につきましては、昭和四十七年度から港湾公害防止対策事業として国庫補助を行なっております。昭和四十七年度は全国で六港において実施いたしましたが、四十八年度におきましては、この六港を継続して行ないますほか、新たに水俣港等、六港のしゅんせつ事業を行なうこととしております。  で、また、水銀等汚染対策推進会議において、全国的な規模で環境調査を行なうことになっておりますが、この中で汚泥の調査も行なわれることになっておりますので、その調査の結果、必要とあれば、さらに引き続いて汚泥の除去計画というものを立てていくということになります。それから、先生御指摘のように、こういった汚泥の除去につきましては、二次汚染を防ぐということがたいへん大切なことでございますので、関係各方面と御相談し、あるいはまた学識経験者の方々にも御意見を承りながら、二次公害の起こらない方法を検討しながら進めていくというふうに心がけております。
  94. 福田勉

    説明員(福田勉君) 厚生省といたしましては、先ほど先生から御意見を賜わりましたように、いわゆる問題水域におきます検査、これに重点を置きまして直ちに実施いたします。この場合におきましても、御指摘賜わりましたように、従前、県の費用でもちまして機械類あるいは人件費等をまかなっていたのでございますけれども、今回は国の費用でもちまして、これらを完全に整備いたしたいというふうに考えているわけでございます。  なお、そのほかの問題につきましては、厚生省といたしましても、対策推進会議等の方針に従いまして極力つとめたいと思っております。
  95. 坂本三十次

    政府委員(坂本三十次君) ただいま足鹿委員から、第一線の、知事をはじめとして、現場の連中は血のにじむような公害対策で苦労しておる、中央の官庁はしっかりせよ、というお話でありましたが、おっしゃる気持ちはようわかるつもりであります。この公害問題、環境問題というのは、いままでのいわゆる縦割り行政ではとてもやり切れたものではございませんので、先般からいわゆる各省の連絡会議を開きまして、そして三木長官が議長となりまして、緊密な連絡と責任体制を明確にいたしまして、いろいろと対策に取り組んでおるところでございます。普通、環境庁の受ける協議といいますると、こういう仕事をするがどうだ環境庁、そこでイエスとかノーとか言う、そういう意味の協議が多いのでございまするけれども、このたびの、環境庁が議長になりましたこの各十二省庁の連絡会議というものは、現下の問題を取り上げて、今度は環境庁のほうが積極的にイニシアチブをとりまして、そして各省にこの仕事をひとつ責任を持ってやってくださいということで、縦割り行政の壁をぶち破って、意欲的にこれからもやっていきたいと思うつもりであります。そういう意味で、いままでの消極的な連携ではなしに、積極的にひとつ各省庁共同のもとでやっていきたいと思いまするので、どうぞひとつ御理解と御鞭撻を賜わりたいと、こう思うわけであります。
  96. 田中芳秋

    政府委員(田中芳秋君) 通産省といたしましても、今回の被害がかなり広範囲にわたりますところから、やはり政府に設置されております推進会議、これによりまして各省の分担とその責任をはっきりし、そのもとに早急に損害額の調査に取り組むべきであるし、また、通産省としてもその方向で処理をいたしたいと、このように考えております。
  97. 足鹿覺

    足鹿覺君 以上で各省の答弁しておる問題についての考え方はわかりました。  環境庁政務次官坂本さん、やはり先ほどの御決意のように、違反企業の操業停止から始まって、被害者の広範な救済、補償に至るまで、なかなかこの仕事はたいへんな仕事だと思います。それだけに、私は、三木長官にただの十分でも出てきていただいて、このことだけは長官の御決意を承りたかったのでありますが、ぜひひとつ、困難ではありましょうが、この問題を断固として推進していただきたい。でないと、政治不信は高まるばかりです。何の罪、とがもない漁民や、一般国民が被害を受けて、違反企業だけは、補償金や周辺をきれいにいたします、今後の被害は補償いたします。これぐらいなことで、ぽつりぽつりと交渉のあったところだけが解決して、力のない漁民はそのまま泣き寝入ってしまう。こういうことでは、私は、政治に対する信頼感というものはゼロになると思う。いわゆる漁民の団結に依存をし、地方自治体の長の努力に依存をして、会議に専念しておる時期ではない。基本的な基準を定め、違反企業は、どことどことどこがそのきらいがあるならば、これに対してどういう措置を講ずる、直ちに改善命令を出す。また合意書に達するまでに中間報告を求め、これはあくまでも任意の交渉であるが、その交渉内容が適正でなく、著しく適正でないとか、あるいは問題があるような場合には、これに行政的な指導を加えて、そしてその正鵠を保つというようなことに至るまで、やはり中央官庁としては、環境庁としては配慮になってしかるべきだと思う。十分、三木長官にお伝え願いまして、この次の機会には、われわれは漁業三法を審議しておりますが、いまの日本漁民にとっては、この三法の範囲内では食うことも、飲むことも、生きることもできません、こんな改正では。問題の本質をそれている。こんなことで、われわれは漁民が救われるとは思っておりません。あるはなきにまさるという程度に過ぎません。だがしかし、これは総合官庁の中心勢力である、中心的存在である環境庁が中心になられて、そしてこの漁民や魚屋さんや中小企業や国民が一番いまおののいているこの問題に対して安心を与え、そして、ところを得せしめることが私は政治だと思う。それを早急にひとつ樹立していただきたい。われわれも決してこういう問題に党利党略は考えません。虚心たんかいに協力をいたしますから、ぜひひとつ長官の決断を求める、求めたということをお伝えください。
  98. 坂本三十次

    政府委員(坂本三十次君) 御趣旨を体して、長官にしかとお伝えをいたします。
  99. 足鹿覺

    足鹿覺君 それでは環境庁に二つばかりお尋ねをしたいんでありますが、ここへわが党が五月三十一日「公害に係る事業者の無過失損害賠償責任等に関する法律案」を出しておりますが、これは必ずしも水質汚濁からくる問題のみに限ったものではございません。土壌の汚染、騒音、震動、地盤の沈下、悪臭、大気の汚染に至るまで、すべてのものに対して無過失損害賠償法の制定を法案として提出しておりますが、政府は、一時この問題に熱意を示したかのごとくでありましたが、いつの間にか影を没したように思いますが、現在どういう経過をたどっておりますか、これをお聞きしたい。
  100. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) いま先生から御質問のございました公害の無過失責任の問題でございますが、本件につきましては、健康被害につきまして六十八国会で大気汚染防止法の二十五条できめられ、また水質汚濁防止法の十九条で健康被害についての無過失責任が決定されたわけでございます。この一年間に私どもはこれを受けまして、まず法的な責任というものにつきましての根拠ができたもんでございますから、健康被害についての損失を補償するという法案をとにかくつくろうということで、当初は二、三年の歳月を要するということでございましたが、これは早めまして、昨年十月より準備を始め、本国会に健康被害補償法案というものを提出したわけでございます。そういうことで、この一年間は、昨年国会で決定されました大気汚染と水質汚濁防止にかかわる健康被害の無過失責任ということを受けた制度をつくるということに最大の力を注いだわけでございます。  次の問題は、先生の非常に御関心を持っておられる財産被害または生業被害というようなものに対して無過失責任の問題がどうあるかというところが、先ほど政務次官からお答えをいたしましたように、この次の財産被害あるいは生業被害にかかわる公害の損害賠償制度あるいは公害の損害を補償する制度を、どういうぐあいにつくるのかというところの問題を検討する場合に、大きな問題になるというように思っております。そこの中で、この法的な責任の問題につきましては、無過失責任の問題が一番大きな問題でございまして、これは昨年大気と水質の無過失責任条項を国会で御審議願って通過されましたときに、衆参両院の特別委員会の、委員会としての附帯決議がございましたように、無過失責任の範囲を財産——健康被害に限らず財産被害にまで広げるべきであるというような御趣旨を私どもは頭に置いて、これから検討しなければならない。ただこの問題は、この財産被害、生業被害ということを無過失責任にするということは、同時に、公害のいろいろの、基本法の七つの公害の種類がございますが、そのあらゆる公害現象について無過失責任にするかどうかということもかかわってまいりますきわめて重大かっ複雑なものでございますので、本件につきましては、今後財産被害につきましての損害賠償を制度的に保障する場合の重要事項として検討いたすということで、現在私どもは法律のいろいろの分野の専門家グループが寄って、この問題の検討を始めるという下準備を始めているというのが現在の段階でございます。
  101. 足鹿覺

    足鹿覺君 もう一、二で環境庁を終わりますが、水銀汚染九水域、PCB十四水域の復旧計画をお考えになっておると思いますが、現在の推移、その内容、今後の見通しはどうですか。
  102. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) まずPCB関係でございますが、PCBにつきましては、昨年環境庁中心になりまして、関係省庁と合同で全国総点検をいたしました。その結果、問題のある水域につきまして水産庁が中心になりましてことしの初めから調査をいたした結果、先般発表になりました八水域というのがPCBで問題のある水域になったわけでございます。そこで、私どもは概査のときに指示をいたしておりますけれども、PCBで汚染をされている海域につきましては、排出工場等原因を明らかにすることが一点。  それからもう一つは、PCBによりまして汚染をされているヘドロにつきましては、暫定的に一〇〇PPMという基準をつくりまして、それをこすものにつきましては早急に埋め立て、またはしゅんせつをするようにというふうに指示をいたしてございます。後段の埋め立てまたはしゅんせつにつきましては、すでに問題のヘドロ地域につきましての大部分につきまして、事業が完了いたしておりまして、残りのところにつきましては、現在計画中その他でございます。  それから、水銀につきましては先般全国の総点検、特に有明、八代海につきましては濃密な調査を行なうということで指示をいたしてございます。その調査の内容といたしましては、水質のみならず、底質、魚介類、プランクトンそれから工場調査、その他諸般にわたる調査をいたしております。その結果、魚類等におきまして先般、厚生省から出されました基準値をオーバーするものにつきましては、漁獲の自主的な規制その他をやると同時に、ヘドロにつきましては、これも環境庁が先週、中央公害対策審議会から答申を得まして、水銀を含む底質の暫定除去基準というのができまして、水銀につきましては、数式によりましてそれぞれの海域で数値をはじき出すことになっておりますが、たとえば水俣におきましては、トータル水銀で二五PPM以上の水銀を含むヘドロにつきましては、これを除去すべしということになりましたので、これらにつきましては、水俣湾は運輸省、それ以外の河川、海岸等につきましては建設省におきまして、計画を樹立し、早急に浄化作業に取りかかるということにいたしておるわけでございます。  水俣湾につきましては、今年度中に着工を目ざしまして、今年中には試験工事を行なうというような計画がすでに樹立されております。それ以外の河川、海岸につきましては、今年中に計画を樹立しまして、来年度、建設省から新たに浄化対策事業として予算を要求し、対策を早急に実施するというようなことになっております。
  103. 足鹿覺

    足鹿覺君 それでは農林省に戻りまして、一、二を尋ねて質問を終わりたいと思いますが、大臣、いまからだいぶ前でありますが、昭和二十六年水産資源保護法が制定をされました。これは議員立法だったと思うのです。議員立法というものは、あんがい予算のつかぬものでありまして、私も苦い経験を、長い国会生活で受けておりますが、やはりこれをこのとおりやっておったら、今日のような状態は起きなかった。また同時に、私どもが超党派でつくりました沿岸漁業等振興法の運用を、これと裏表の関係で運用がなされておったら、私は今日のような状態はなかったと思う。  事の内容に深く入ることは、本日はもう長くなりますから私は一切省略いたしますが、いわゆる臨海工業用地造成のために、漁場は減っていく一方。そして大事な漁場のみならず、モ場やアマモの消失面積がどんどんふえていく。構造改善事業をやっても、資本の物的生産性は、漁業用の固定資産額の千円当たりの漁獲量は各階層とも大幅に減少しておるのが今日の現状であります。つまり、漁業に金がかかるわりに魚がとれなくなっておるというのが今日の現状であります。  政府の漁業政策は、漁労技術のみを推し進めて、漁船機関、漁船装備は充実したが、資源の管理への配慮が全く欠けていたため、漁業資源を食いつぶす結果を招き、機械化貧乏という現象となってあらわれておる。これはまことに遺憾な状態であります。このために、下層漁民の脱落化を促進し、上層階層の漁家の生産費の増大と資本の物的生産性の低下という経営の悪化を招き、家計を圧迫するということのために、漁業に対して魅力を失なわせておる。このような悪条件の中で、現在残っておる漁民は、ダイヤモンドのようなとうとい存在であるということをあらためて農林大臣は認識をされ、そしてこの人々の成り立つように対策を講ずべきである。つまり、言うならば、漁業水産資源保護法と沿振法を中心に忠実にこれを実行し、現時点において転換すべきものは転換をしていくべきではないか。両法案をもって解決がつかないとするならば、新しい情勢に対応する沿岸漁業対策を確立すべきではないか。こういう情勢の中で、漁民はややもすれば汚染から漁業被害、漁業被害から人体被害と、いわゆる公害激化にさらされて、これに対して、補償でせめて解決をして、そして脱落をしていくというのが現状ではないでしょうか。これに農林省がおわかりにならないはずはないと思う。いわゆる水産資源保護法と同時に、沿振法をこの際再検討し、再認識をし、新しいこの段階にいかに対応されるかということをお尋ねをいたします。こまかくこれを追及する予定でありましたが、一括してお答えを願いたい。大臣が御無理であれば、荒勝水産庁長官からいさいを、委曲を尽した御答弁を願いたい。
  104. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 包括的に私から一応お答え申し上げます。  お話のように、沿岸漁業振興法、水産資源保護法、これを十分に活用をいたし、沿岸漁民の振興のために寄与するということにつきまして、まあ私ども十分やってはおるつもりではございましても、なかなかそういかない面があると思います。特に、私としては、まあこれからの漁業をただ、とる漁業ではいけない、つくる漁業という認識を持ちたいと、資源の保護もしたいということを繰り返し申し上げておるのでございまするが、その趣旨から申しまして、ただいま足鹿委員の御指摘のような、漁場、モ場、そういうものがどんどん消失しておるのではないか、またせっかくの構造改善事業をやっても十分な効果が上がっておらないではないかと、こういう御批判をちょうだいいたしたのでございます。そういう実情もあることは否定ができないと思います。ただ、過去十年間を振り返ってみまして、一体沿岸漁業の皆さん方の所得の状況はどうであるのかというようなことをまあ一応検討してみますると、やはり所得の伸びはある程度ございます。ただ、しかし、一面、零細漁民の方々が所得も十分でないというので、いわゆる兼業漁家的な存在になり、ときにはお話のように、せっかく漁業を続けたいと思いながらも、脱落をせざるを得ない面もあると思います。これらの点を十分われわれとしても検討いたし、反省をすべきところは反省し、お話のとおり、この沿岸漁業振興法や、水産資源保護法にのっとっての水産の今後の振興の上に、われわれとして、全力を尽くすのはわれわれに与えられた道であると、このように認識をしておる次第であります。
  105. 足鹿覺

    足鹿覺君 最後に、各省よくお聞きとりをいただきたいと思います。ここに、私の手もとに「日本漁民闘争史年表」というのがあります。これはある篤志家が、私に贈られたもので、最近の状況は今日に始まったことではない。これは、正保元年からの年表でありますが、これを読んでみて私は、まことに感深いものがありました。その二二ページに次のような一項がある。現在、問題になっておるところの兵庫県の高砂の公害の歴史であります。  明治三十五年三月二十五日、「兵庫県高砂町の漁民、三菱製糸高砂工場のワラパルプ製造は魚族の成育を害するので廃止せよ、と要求して不穏の形勢となり、翌二十六日漁民三百人が工場附近をデモ行進す。(三菱製紙六十年史)」より抜粋をしておる。このような事件が、これに全部記録されておる。すべてこの種のものです。明治から現在まで、漁民は、漁民の戦いというか、漁民の要求といいますか、悲惨な状況といいますか、そのほとんどが公害との戦いであります。現在となって問題となっておりますPCB汚染、いま述べたような高砂市の沖合いで鐘淵化学や三菱製紙での問題が起きておる。その前年にも起きておる。このとき高砂町の漁民は、工場へ先ほど述べたように押しかけている。工場は、漁業組合に対して二千五百円(当時の金です。)寄付して、「将来如何ナル不漁其他ノ故障相成リ候共当組合ニ於テ決シテ苦情申出ザルハ勿論」あとは長くなりますからありませんが——との差入証をとっている。このとき毎日新聞の記者であった有名な木下尚江は、この流毒問題の根源は企業と高砂町とが癒着して漁民を弾圧してきたことにあると論陣を展開しております。木下尚江と言えば、いわゆる明治における心ある士としてはだれ知らぬ者もございません。自来六十年後の今日もまた、これに輪をかけたような同じことを繰り返しておるにすぎません。  私はいままでいろいろこまかいことを申し上げ、失礼なことも申し上げたかもしれませんが、大臣も、この「日本漁民闘争史年表」を一ぺんお目通しを願って、歴史の教えるところに従って、このたびのような漁民一揆とも言うべきことから騒然とした状態が何に起因したか、これはいろいろ見る人によって意見がありましょうが、高度成長、企業優先が今日をもたらし、明治年間からの公害と漁民との関係をさらに悪化さしたことは疑う余地もありません。したがって、大きな発想の転換をし、国民の政治不信をこれ以上つのらせることなく、漁民や関連産業をこれ以上圧迫することなく、大きな決意を持って対処していただきたい。私どもは今回提出された水産三法に対しては、あえて異を立てるものではありません。しかし、その背景があまりにも深刻であり、あまりにも漁民や関連業者の状態が悲惨であるために、あえて本日法案に直接関係ないことでありましたが、所見を述べてお尋ねをいたしたわけであります。  最後に大臣の、このいま私が述べたことに対して御所見があれば承り、私の本日の質問を終わる次第でありますが、どうかひとつ、この時点において、再び日本漁民史に、このようなことが起きないことを、私は政府が適切な対策をとることを強く要求をいたしておきます。よろしくお願いをいたします。
  106. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) まことに御所見は私としても切々として承ったような次第でございます。特に私も、通産省のほうにその職を奉じた一人でございまして、おっしゃったことは私としてもよく反省してみなければならない点であります。文明がどんどん発展をしておるときに、それに比較してのモラルの向上というものが、どの程度までいっておるのか、特に産業界におけるところの新しいモラル、新産業道徳のようなものが必要であるということは、私が通産省におりますときに、公害事業団を初めて厚生省との間で発足をせしめ得ましたときに私が国会の場を通じて申し上げたところでございまして、ただいまの足鹿委員のおっしゃったことはよく私としても受けとめて、今後の施策を行なう上に、私の心がまえの一つとして持ってまいりたいと思います。
  107. 辻一彦

    ○辻一彦君 だいぶ時間が過ぎましたから、私なるべくは短くやるようにしたいと思います。  そこで、いま足鹿先輩のほうから公害の問題に触れられましたので、あした時間をとって本格的に取り上げたいと思いますが、ちょっと私おととい福井県の漁民大会が開かれて、たいへんな人が集まって、その非常になまの声がありましたので、いまの足鹿委員の問題に関連して二、三点だけお尋ねをしてから本論に入りたいと、かように思います。  おととい県民会館にぎっしり詰まった福井県の漁民大会がありましたが、そのときに、漁民の声として、自分たちは、営業停止を食っている、もう仕事ができないのだと、しかし公害企業はなお仕事を続けて操業をやっているじゃないか。なぜ、これをとめることができないのだ。こういう感情も含めての非常にきびしい声があって、そういう中で、一体国は何をやっているのだという、非常に私たちもきびしい批判をその席で受けたわけであります。  そこで私は、長官にちょっとお伺いしたいのですが、国がいまさしあたっての対策としてつなぎ融資をやっておりますが、さっきは、第二次を含めて五万円ないし五万五千というふうに大体お考えになっておられる。それが私の福井県の敦賀湾ですね、ここでは大体該当するのは千ぐらいじゃないかと、もしあの限界でいけば。しかし越前海岸、若狭湾に被害を受けた漁民は三千戸程度である。そうすれば、敦賀湾水域とその周辺というふうに限界を置いた場合に、三倍程度——あとの倍以上の漁民がこの対象から緊急つなぎ融資にもはずれることになる。詳しいことはあすやりますが、有明海でも三万漁家と言われますが——あの熊本、佐賀、福岡、長崎ですね、三万漁家と言われましたが、もし九州の有明海に三万漁家があるとすれば、私は五万や五万五千は九州と四国との周辺でこのワクは足りなくなるのではないか、五万五千という数字はどういうところから御判断になっておるか、この点をまず伺いたいと思います。
  108. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) 詳細なことは別といたしまして、一応各県別に被害漁家数を検討さしていただいておりますが、たとえば福井県の場合を取り上げますと、敦賀湾水域を一応当たりまして、湾中央部、湾奥部というあたりの漁業協同組合を拾いまして、そこの組合員の数で出しておりまして、そういう意味で一次的な範囲というふうに考えております。ところが、最近の現象は単に、たとえば敦賀におきましても、湾内にとどまらず、湾外まで相当漁業取引が停止といいますか、水揚げが実質的に不可能なような形になりまして、相当漁民の方に影響が出ている。したがいまして、それを拾う——拾うというと失礼でありますか、そういう要望にこたえるかどうかというのがいまの時点の議論でございます。
  109. 辻一彦

    ○辻一彦君 この五万五千というのは、いま言ったその周辺を拾い上げるというか、含めた数ですか、含めてない数ですか。
  110. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) その五万ないし五万五千前後と先ほど申し上げましたが、これは周辺も多少周辺の外延ぐらいまでということで計算をしておりまして、問題がさらに全県にまで広がってしまっている例もございまして、そこまではまだ拾い上げていないというふうに御理解願いたいと思います。
  111. 辻一彦

    ○辻一彦君 これにきょうは時間はかけませんが、この間もちょっと申し上げましたが、福井県でいえば越前海岸——敦賀からはかなり離れています。しかし、日本海のまん中に船で二十四時間行ってイカをとってくる。そのイカが一箱千二百円が三百円、四百円というふうに何分の一かになると、こういうふうに魚価低落の影響は非常に私は広範にわたっている。しかも北陸の魚というので——敦賀の魚ではない、福井県の魚ではない、北陸の魚というので、大体名古屋、神戸、大阪、京都等の市場では、やはり魚価暴落の影響を受けておる。こういう点を考えると、全国の具体的な数字をずっと検討してみたならば、かなり私は、この幅を広げなければ、救済の対象になり得ないと思うのですね。そういう場合に、数字をこれから調査をされると思いますが、きっちりと押えてこの幅がきまった場合に二百五十億というワクに拘泥せずに、これを大幅に広げる用意が一体あるんですか。この点でどうしても打ち切るというような考えですか、その点はいかがですか。これは長官並びに大臣から伺いたいと思います。
  112. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) 普通の場合でございますと、たとえばこういう天災融資法の発動というふうな場合には、被害金額を確定いたしまして、そして政府としては閣議で方針を決定と、こうなるのが通例でございますが、今回の場合、天災融資法ではございませんが、準ずる措置ということで取り上げたにもかかわりませず、閣議にはかります際には、金額等あるいは融資総額というもの、あるいは利子補給額も確定せずに、閣議で大臣から御報告願って、閣議の決定といいますか、了解というふうなかっこうになっております。と申しますのは、その背景といたしまして、この汚染問題が相当広範囲に広がってきた。しかもその汚染自身が広がっているんじゃなくて、汚染ということを理由といたしまして漁業の実質的な取引の停止、あるいは魚価の暴落というふうな形で漁民の方々に対して非常な影響が広がってきたというふうに理解しておる次第でございまして、実質的に、私たちのほうでもそういう意味で、閣議に請議します際に、そういった問題を確定することができない。いまの時点におきましては確定することができないということで、これは相当融資額につきましては将来弾力的に対処することあるべしという考え方のもとに、こういう異例な閣議了解事項という形になっておりまして、この問題につきましては、まだ今後とも計数整理の上、また被害県の需要金額等も整理いたしまして、この問題については弾力的に対処いたしたいとは考えてお次第でございます。
  113. 辻一彦

    ○辻一彦君 大臣にお伺いしたいのですが、前回の委員会におきましても、事態の推移を見て十分考えていかなくてはならないと、こういう御答弁であったんですが、事態は、ここ半月間急速に水銀、PCBの汚染等その影響範囲は広がっておる思いますが、今日の事態の動きを見ていまの点に関連して大臣どうお考えになっておりますか。
  114. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) ただいま水産庁長官よりお答えを申し上げたとおりでございまして、全く今回の措置は緊急そして異例の措置として、しかし、金額もあるいは融資額もそういうことが全くの不明確のままでは、これは閣議で発言もできない、了解を得るわけにはいきませんので、当時の一応の推定を根拠にして私より発言をし閣議の了解を得たと、こういうことでございまして、ただいま水産庁長官お答えを申し上げたような今後の措置をとり得るものと、こう思っております。
  115. 辻一彦

    ○辻一彦君 じゃもう一点伺いますが、長官のいまの御答弁というのは弾力的に考えていかなくてはならないということと、この事態は非常に広がってくるから、十分このワクの拡大を将来考え得ると、こういうように解していいんですか、大臣。
  116. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 現在、当該県の詳細な報告には接しておりません。まだ集計ができておりませんので、ここで仮定で申し上げにくいと思うのでありまするが、事の性質が天災融資法に準じて今回の被害漁家等に対する措置としてお願いをしておるのでございまして、実態が著しくわれわれの想定とかけ離れておりますればそれは別に当然検討すべきことだと思います。
  117. 辻一彦

    ○辻一彦君 まあこの問題はあす集中的に、時間があるようですからそこに譲りたいと思います。  で、いまもお話しがありましたように、日本の、私はこれはもうたくさんの委員の皆さんが論議をされましたが、漁業は外は遠洋漁業、この領海の海域を広げられる、これによって漁場が狭まってくる。国内では沿岸漁業が公害、海の汚染等によって漁場が狭められていくと、そういうことで私は日本の漁業にとってはたいへんな時期に直面をしておると思います。で、国内の沿岸の公害問題はあすに譲るとしまして、先ほども問題が出ておりましたが、国際的な漁場、言うならば遠洋漁業の問題であります。これについて先ほど大臣答弁で三海里、十二海里あるいは二百海里説等をとる国の数が一応発表されましたが、この資料を見ますと、百海里に、多くの国が領海をとった場合には、七〇%の遠洋漁業の資源が減る懸念があると、二百海里になれば、八〇%資源を失って壊滅的な打撃を受けると、こういうようにもいわれておりますが、世界じゅうの開発途上国を中心に、多くの国が領海拡大という形で、わが国からすればいわゆる漁場がどんどん狭められていく、こういう中で、どういうように対処していくか、先ほども論議が出ておりましたが、いま一度伺って二、三点をお伺いしたい、こう思います。
  118. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) かりに二百海里の領海あるいは排他的な経済水域ということになりますれば、著しい影響がわが国の遠洋漁業の上にあることは論を待たないところでございます。したがいまして、それに備えるために、現に海外漁業協力財団をつくって、各国との間にどのような成約ができましても、なおその中で、わが国の漁業が継続されるようにいまから配慮をしていこうと、また、国際協力の実をあげようと、こういう方針を立てておるわけであります。それから、そのようなきびしい条件下にありましても、われわれとしては、日本国民の動物性たんぱくのどういう場合にありましても五〇%からは必要なのでありまするから、そのためには、三年前からお願いをした海洋水産資源開発センターというような、そういう機構によりまして、広く世界の海洋における未利用の資源、新たなる資源の開発につとめる。こういうことで、御指摘のような国際的な非常に困難な諸条件を克服するために、あらゆる場合に対処しての努力を続けておると、こういう次第でございます。
  119. 辻一彦

    ○辻一彦君 いままで日本の商社が外国へ行って活動したのを見ると、利益をあげればいい、売ればいいと、こういうやり方が非常に強くて、端的に言えばタイ国等でああいう親日国の中でも大きな批判、排撃を受けたと、こういう事実があります。また、石油やその他の資源、鉱石等の資源確保にしても、大量に日本が買い集めるということでいろんな批判がありますが、遠洋漁業の場合にも、やはり他国の沿海近くに出てかなりとれるだけとるという、こういうような乱獲のきらいもなかったとは言えないと思うんです。こういうような中で、ほんとうに国際協力によって遠洋漁業の漁場を確保するという道は、いままでのやり方からして私は容易ではないと思うんです。そういう中で具体的に言うならば、やはりこの開発途上国とのいろんな経済協力、港や漁場を一緒につくるとかいろんな問題があると思いますが、こういうことを具体的にまず民間やあるいは政府でどういう努力をする考えなのか、この点はいかがですか。
  120. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) 多少大まかな話になりますが、北半球のほうは日米加、あるいは日ソ、あるいは北大西洋漁業条約というふうなそれぞれ、あるいは近海では日韓漁業条約あるいは最近におきましては、日中漁業の政府間協定というふうに、多少何となく秩序立ってきておる次第でございます。しかし、これも年々それぞれの相手国との話し合いの過程で、必ずしも楽観を許さないような形で非常に漁場相手国の、沿岸国の発言権が高まってきておる、こういうように御理解願いたいと思います。南半球という方向につきましては、かつてまあ距岸三海里あるいは十二海里の領海学説のもとに、日本の漁船が相当進出しまして、相手国のまあ漁民なり相手国の国民感情を多少まあ無視したような傾向があったわけでございます。しかしながら、こういった最近の国際的な、国連海洋法会議を前にしまして、沿岸国の漁業管轄権の発言権が非常に強まってきていることは先ほど大臣から御説明申し上げたような次第でございますが、私たちといたしましては、今後は、いままでのように、単に沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へという単に漁場の進出という形では、やはり問題はもう限界にきたというふうに理解しておりまして、今後は、この問題につきましては、進出という考え方よりも、漁業協力という形で、こういったアフリカ諸国あるいはラテンアメリカ諸国のような発展途上国におきましては、相当、資本もそれから施設も非常に乏しく、極端なことをいえば、無動力船で漁労をやっておられるような国々でございますので、こういった国々の要望に応じまして施設なりお金を貸す、あるいは技術も援助するという形で、漁業協力という形で日本の漁業が確保され、かつ、日本へ持ち帰りまして、国民たん白の確保に資するように努力してまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。  これらにつきまして、やはり相手国も日本と提携を結んでいきたいと、単に、排日的といいますか、日本の入ってくることはすべて反対であるという姿勢ではございませんで、最近、ラテンアメリカ諸国なり、アフリカ諸国との間で、実質的に、民間漁業者との間で、相当提携関係の話が進んでおりまして、これらにつきましてわれわれといたしましても、それはそれなりに実質的に援助を申し上げておるところでありますが、さらに、今回、先ほど大臣からもお話がありましたように、海外漁業協力財団が設立されましたので、これを契機といたしまして、相手国の要望に応じまして、外務省の国際援助費と相からめながら、いわゆる設備投資的な、あるいは港をつくったり、鉄道、港湾をつくるというようなことは、その援助という形でいたしまして、それから、多少経済採算に乗るかもわからない、船をつくるとか、製氷・冷凍設備をつくるとか、かん詰め工場をつくるとか、あるいはそういった乗組員の技術研修所をつくるとか、といったことにつきましては、非常に、無利子もしくは低利の融資を行なうことによりまして、相手国との間の漁業協力関係を深めてまいりたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  121. 辻一彦

    ○辻一彦君 いま、長官から海外漁業協力財団についてのお話もありました。新聞でも報道されておりますが、たとえば、最近、「ソ連やイタリアなどの漁業国が多額な経済援助を見返りに国家間の漁業協定を結び漁場確保を図ろうとしており、実績を上げ始めた。この点、水産業界では、国家間ベースでのわが国の出遅れを心配、特に最近三十万ドルの経済協力を代償にペルーと漁業協定を結んだソ連の動きを恐れている。」と、こういう報道がこの間されておりますが、目ざす方向は、私はわかりますが、いま各国がやはり日本と同じような状況に直面して、遠洋漁業といっても十分な開発国との協力をしなくては成り立たないと、こういう観点から、かなり本格的に乗り出しているというように考えます。それに比べて、わが国の場合、財団がこの六月ごろに発足するということでありましたが、出おくれの感じはかなりしますが、たとえば大豆をあるいは飼料を南米で確保しようとしても、内陸から港まで運ぶ運賃と海上の運賃が同じだというところで、港湾、鉄道等に協力しなければ、そういう飼料確保も困難であると、こういうことも言われておりますが、ここらの農業開発の問題なんかとあわせて、いまの海外漁業協力財団、いま伺いますと、中身がかなりよく似ていると思うんですが、そこらの関係はどういうように考えておられるんですか。
  122. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) やはり、発展途上国との間の漁業協力関係でございますので、相手国からいろいろ御要望が出ておりますので、その御要望を整理しますと、ただいま申し上げたような一連の施設なり事業ということになりますので、非常にこれは似ていると思います。ただ、ソ連と日本の場合は、国家の差がございまして、ソ連は、政府プラス日本でいえば漁業会社・公団といいますか、そういったことで、両方が一緒になったような形でいまやっておられるわけでございますが、日本の場合は、この事業団のほかに、別途、大企業自身が海外との間に漁業協力をされまして、そしていろいろな形で相手国との間に合弁会社をつくるとか、あるいは向こうに借款という形で、この返済がどういうことになりますか、それらは多少まだつまびらかにされておりませんが、そういう形で向こうへ進出——進出といいますか、合弁事業を始めておられるということで、それらでは補うことができない。まあ極端なことをいいますと、むしろ、少し小さな、カツオ・マグロの漁船グループ、あるいはイカ釣りのグループ、あるいはそのほかのエビのグループ、こういった方々がそれぞれの地先で漁業をされるにあたりまして、相手国の要望もありますので、それをこの事業団から立てかえ払いといいますか、希望に応じて、適切な事業であるならば、日本の漁場が確保できるならば、そういった資金を応援いたしたい。こういう形で設立されたものでありまして、これだけで海外漁業協力関係が結ばれるとは思っておりませんので、大企業は大企業なりの自己の責任負担ということも、このほかに別途あると、こういうように御理解願いたいと思います。
  123. 辻一彦

    ○辻一彦君 そこで、この漁業協力財団の中心は外務省というように聞いておるんですが、水産庁は、一体その中で、あるいは農林省がどのぐらい中心的になっているのか、その点いかがですか。
  124. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) 外務省には、別途、いわゆる無償援助のお金の分につきまして、国際協力事業費でございますか、これは先ほど申し上げました経済採算に乗らないような港づくりとか、堤防づくりとか、あるいは道路づくりとかというふうな、取りつけ道路でございますが、そういった系統は外務省の経理にお願いする。それと相呼応して一体的に、農林・水産庁の所管といたしまして、海外漁業協力財団が今回設立されまして、これは農林省の専管ではございますけれども、当然に外務省と相呼応して一体的に進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  125. 辻一彦

    ○辻一彦君 事情はわかりましたが、これはよほど力を入れてやらないと沿岸も漁場は狭くなるし、国際的にも狭まって、先ほどのお話でありますが、たん白源の確保という点からも、たいへんな事態になるのではないかと思います。その点で、明年度、この構想を大きく発展させるようなお考えを具体的に持っておられるのか。大臣、この点はいかがですか。
  126. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) これは、今回、私どもからいえば、足がかりをつくったという一応の考えも持っておるようなわけでございまして、これは年々拡大をしていきたい。本来、言うと、必要に応じてと申し上げたいのでありますが、そうでないもっと積極性を持った拡大を考えておるわけでございます。
  127. 辻一彦

    ○辻一彦君 それから、国際漁場の問題に関連してもう一つ、日中漁業協定が、民間協定が一年延期になりましたですね。本来ならば、この政府間協定が早く結ばれなくちゃならないわけですが、この政府間協定がおくれている事情というものを、そういうものはどこにあるか、この点いかがですか。
  128. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 昨年の日中の国交回復に伴いまして、貿易や、あるいは航空や、それから漁業や、実務協定が次々と結ばれなければならない。そこへわがほうの大使館の開設も本年になってからでございまして、準備に相当手間どっておったというのが正直なところ言えると思うのであります。また、従来、民間協定もあったということが、多少安易に流れたかと存じまするが、両国の間で専門家会議を行なおうということで、つい先だって、水産庁の安福次長を向こうに派遣をいたしました。初めて会議を持ったのでありまするが、これはもとよりこの政府間協定をやる前提ではございませんが、専門家同士の意見交換をしようということでこういう会議を持ちました。したがって、私どもは、そういうことによって間接的な促進の効果もあるんではないか、でき得る限り早く両国の間が政府間協定を結んで、正常な漁業が行なわれることは好もしいわけでありまするが、何ぶんにも国交回復後早々でもあり、他の協定との関連、大使館の設置等から見まして、この六月二十二日までには間に合わなかったと、こういう実情にあると思います。
  129. 辻一彦

    ○辻一彦君 去年の水産関係法案審査のときに、私、中国と日本が大正エビの資源の共同養殖を、これは非常に大事だから取り組んではどうかと、こういう質問をして、これは水産庁は具体的に、係官を中国に送って取り組みたいと、こういう御答弁があったんですが、その後ある時期にはかなり進んでいるということも聞いたんですが、この経過がどういうようになっているか、わかれば御報告いただきたいと思います。
  130. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) このエビを中心といたしまして、東海、黄海で、いわゆる日本側の持っております養殖技術、あるいは栽培漁業といったものを中国側にもぜひ導入したらどうかということにつきまして、今回も中国へ参りました交渉団からその話の提案をしたわけでございますが、中国側といたしましては、どうもやはりいまの段階で直ちにこの問題に協力体制をつくるというふうな段階には、まだ、心の用意といいますか、そういった用意がないようでございまして、日本側からは強く主張いたしましたが、今後やはり何回か繰り返して交渉を行なって話し合いをし、また中国側からも、日本の養殖技術というものをごらんになる過程で、あるいはこの問題に取り組むような形になるんではなかろうかと、こういうように思っておる次第でございます。
  131. 辻一彦

    ○辻一彦君 二月の当時の新聞ですが、民間における日中漁業協定の協議のために江口日中漁業協議会長が行ってますが、その帰ってからの談話に、養殖とか資源開発については中国と日本の間にいろいろな意見、ニュアンスの相違が見られたと、こういうようにちょっと出ておりますが、エビの養殖等の、資源の共同養殖に対してどういう意見の相違があるのか。この点はいかがですか。
  132. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) 端的に申し上げますと、養殖とか、栽培とかというふうなことをするよりも、中国側としては、取らないほうがいいんだという考え方をお持ちのようでございまして、その辺につきまして、それは一つの理屈ではございますが、最高に能率を上げて海の資源を利用するということでは、やはりこういう養殖技術のほうが最大漁獲量はあげ得るというように私のほうは考えておりまして、これらは今後、今回向こうへ調査団が行きまして、いろいろあたりますと、やっぱり技術体系も相当違いますし、そもそもの根底の考え方も多少違うようでございまして、この辺をやはり技術交流という形で話し合いを進めないと、多少次元が少しみな、それぞれ考え方が違うというふうに御理解願いたいと思います。
  133. 辻一彦

    ○辻一彦君 日本のほうにあけるエビの増殖技術というものについては、大体だいぶいろいろな段階を踏んでおるわけですから、十分な確信はあるわけですね。
  134. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) エビの養殖技術につきましては、終戦直後から非常に多くの学者の方々あるいは研究陣の長い時間をかけての、約二十年近い開発研究の末、ようやくこの四、五年前から具体的なルートに乗ってきたと、こういうふうに御理解願いたいと思います。その結果、多少見切り発車みたいな点もございましたが、瀬戸内の栽培漁業の開発ということで瀬戸内海方式という形で発足いたしましたが、その後、放流結果等からわれわれ判断いたしまして、エビの技術につきまして——エビあるいは伊勢エビ、その他タイ、まあ高級魚のほうから逐次技術は確立してきておりますけれども、十分にこれらにつきましては、今後エビの魚価が高い限りにおきましては十分対応できるのではなかろうか、こういうふうに見ておる次第でございます。
  135. 辻一彦

    ○辻一彦君 では、日中の専門家会議を続けて開き、相互の技術の交流を行なう、このことについて具体的な話し合いはできておるんですか。
  136. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) 今回の安福次長が団長で行きまして、向こうでいろいろな点について初めて同じテーブルにつきまして話し合いをしたわけでございまして、今回は主として日本側が中心となりまして資料の提供あるいは日本側が見ておる東海、黄海の魚族資源の状況等についての説明を主といたしましてしたようなかっこうになっております。これらにつきまして、今回の会合が非常に有益であるということは中国側も高く評価しておりまして、今後でき得れば継続的にこういった両国の専門家の間の会合を設けるということについては異議はないようでございますが、具体的な日程等につきましては、今回は何も定めずに帰ってきておるような次第でございます。
  137. 辻一彦

    ○辻一彦君 まあ日中間の問題はいろんな問題がありますが、漁業を通して具体的に結びつく私は大事な足がかりになるんじゃないか、こういうように考えますが、継続して努力をして説得もし、相互の交流もぜひ実現をさせて、これがひとつ実現するように今後とも御努力をいただきたい。そういう点で、大臣、一そうの努力をお願いしたいと思いますが、いかがですか。
  138. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 私も詳しくは今回の派遣団長の安福君から聞いてはおりませんが、国際儀礼上からも今度は日本側で中国側を呼ぶということになると思います。向こうが都合がつけば、当然来日をされるものと思いまするし、また、その後におきましてはまたわがほうがたずねると、こういうようなことで、双方においてそういう機会に技術的に、あるいは専門的な問題について協議もし、意見を交換していく、そういうことによりまして、将来の両国の漁業の上に成果をあげていくようにつとめることは当然のことでございまして、私は安福次長の報告を受けたときに早速に、今度は中国側をお呼びしようではないかというふうに指示をした次第であります。
  139. 辻一彦

    ○辻一彦君 二つ目に、日ソ漁業関係の問題ですが、去年の六月の上旬ごろですね、当時の赤城さんが農相時代ですが、日ソの資源についてのサケ・マスの共同養殖事業が非常に具体化をする可能性がある。こういう御発言があって、昨年の夏八月ごろに予備交渉でかなりな合意に達したということを聞いておりますが、その後あまり進展していないように思いますが、これは一体どういうようになっていますか。
  140. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) 昨年、赤木・イシコフ会談におきましては、非常にイシコフ大臣も、この問題につきましては、姿勢は前向きのようであったとわが水産庁当局は見ておりまして、わざわざイシコフ大臣、北海道まで行かれまして、養殖場までごらんになりまして非常に高く評価して帰られた次第でございます。その後、日本側といたしましても、これらにつきまして、再三にわたりましてソ連側の来日、あるいは日本側からも向こうへ訪ソしてでもこの問題を詰めようということで、再三にわたって呼びかけておりましたところ、いろいろな事情で説明が具体的でないまま延び延びになっておりまして、今回の春の日ソ漁業交渉に際しまして、日本側からあらためて、この日ソ漁業委員会が終わり次第、この共同養殖事業について話し合いをしたいという申し入れをいたしました次第でございます。しかしながら、ソ連側としては、この会議が終了後、あるいはそういった会議に応ずるような姿勢を示しておりましたが、結果的には、やはりまだいまだ向こうの水産担当の専門家の間では、日本側の養殖技術を非常に高く評価しているようでありますが、いずれにいたしましても、ソ連側の領土内での日ソの合弁的な事業というようなこともありまして、それらの問題が十分に、向こうの国内問題として完全に議されていないのではなかろうか、こういうふうに判断している次第でございます。
  141. 辻一彦

    ○辻一彦君 御存じのように、サケ・マスの漁獲規制は逐年やはりきびしくなる一方ですが、それには、資源の問題が私は当然からんでいると思いますが、そういう意味でも、かなりなところまできているこの経過ですから、一そうこれは進めてもらって、ぜひ日ソ間で、サケ・マスについての共同養殖の仕事が具体化するように、さらに積極的に努力をする必要があると思いますが、この点いかがですか。
  142. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 日ソ共同増殖事業につきましては、私も非常なる関心を示しておる次第でございます。ただいま御指摘のございましたように、北洋漁業問題の相互の常に関心を持っておるのは、一体資源状態はどうあるのか、またどうなるのか、そしてその資源問題が一番の根本になって、両国間の交渉が行なわれておるという実情からいたしまして、わがほうにおきましては、ただ、とるだけではないのである。こういう共同増殖事業によって資源をふやしていくんだ、これはソ連側においても、当然受け入れていい私どもの主張であり、意見であると、このように認識をしておるのでございまして、今後におきましても、でき得るならば、すみやかに日ソ間の共同増殖についての意見の一致を見て実現をはかりたいと考えておる次第でございます。
  143. 辻一彦

    ○辻一彦君 近辺諸国のこととしてもう一つ、朝鮮民主主義人民共和国——朝鮮との間の漁業関係はどういうようになっているのか。私の福井県では、この四月に、知事を団長に十二名の代表団が行きましたが、県漁連の会長が副団長として出席をして、先方の漁業関係の代表といろんな話をして、非常に友好的な、また、今後かなり具体的な話をしてまいったんですが、政府のほう、水産庁は朝鮮との接触はかなり具体的にあるのかどうか、この点いかがですか。
  144. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) この北朝鮮との間におきましては、まだ国交も回復してないいきさつもございまして、およそ水産庁といたしまして何ら接触をした経験も実績もございません。ただ、日本の、日本海周辺の漁民の方々が、特に春のサケ・マスのシーズンになりますと、奥深く、北はいわゆる沿海州まであるいはさらに片一方のほうでは北朝鮮の沿岸沖深くまで入り込みまして、ここで朝鮮側の、北朝鮮の漁民と一緒に同じ場所で漁業をやっているやに聞いておる次第でありますが、やはりこういった海の上のことでございますので、いつ天候異変が起こるかもわかりませんので、できますれば、緊急避難の道について何らかの手が行なえるならばと、こういうふうに希望している次第でございます。
  145. 辻一彦

    ○辻一彦君 その点で政府として朝鮮のほうと今後接触を積極的に漁業関係ではかっていこうという考えはないかどうか、この点、いかがですか。
  146. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 御存知のような最近の北鮮、韓国をめぐる国際情勢にあるのでございまするから、わが国としても、広く各国との友好関係増進につとめたい。こういうことにつきましては、私としてはそのような熱意を持っておる次第でございまするが、現在のところ、これはもうそのまま申し上げてよかろうと思いまするが、北鮮との関係において経済的な交流をどうするのか、あるいは文化的な交流をどうするかというようなことを具体的に爼上にのぼせて、政府内部におきまして、いろいろ協議をした事実はないのでございまして、ただ私としてのただいま感じを申し上げた次第でございまするが、国際情勢が非常に変化をしておる実情からいたしまして、何らかの進展を望みたい、また、そのためには、国会議員の方々の北鮮訪問というようなこともございまして、その間に先方の考え方もだんだんに把握できることと思いまするので、そういうことによって事態の改善と申しましょうか、友好的な促進考えてみたいと思う次第でございます。
  147. 辻一彦

    ○辻一彦君 私も去年の八月に、朝鮮のほうに参議院の社会党の議員団で参りましたが、金日成首相にもお会いした、四時間ほどお会いした機会がありますが、いろいろな話に触れましたが、日本は、朝鮮が二つにこうなっているのだから、両方平等につき合いをするようにしてもらいたい、こういう私はお話をいろいろの角度から伺ったわけです。そういう点で、ぜひこれから積極的に朝鮮民主主義人民共和国の漁業面における交流といいますか、つながりをつけていただくように努力を願いたいと思います。で、開発途上国いわゆる南米だとか、アフリカのそういう遠方の国もたいへん漁業として大事でありますが、隣りの中国、ソ連、朝鮮と、こういうところとよい関係を結んでお互いに協力し合って漁場を確保する、資源を共有する、こういうことが日本の漁業の伸展の上にも非常に大事な点ではないかと考えます。そういう点で水産庁、大臣のほうも御努力を願いたいと思います。  そこで大臣に私は、沿岸漁業における資源問題栽培漁業センターの問題について若干伺いたいと思います。瀬戸内にいまお話しのように、栽培漁業センターが設置をされておるわけですが、大体瀬戸内でどういう種苗を生産をしてどのように生かされておるか、簡潔にひとつ御報告いただきたいと思います。
  148. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 瀬戸内の栽培漁業にいたしましては、昭和三十八年度からこれを行なってまいったのであります。すなわち、栽培漁業センターを設置いたしまして、クルマエビ等高級魚介類を対象に、放流用種苗の生産及び放流を実施してきたところでございます。その実績は、昭和四十七年度で申し上げまするならば、クルマエビ一億五千六百十万尾、マダイ九十三万八千尾、ガザミ千九十三万四千尾、カレイ百六万二千尾、カサゴ、メバル二百万尾。  こういう技術開発が、種苗及び技術開発の成果が、ただいま申し上げた数でございますが、漁獲量と種苗放流の実績を申し上げますると、昭和四十四年が、これはクルマエビの漁獲量と種苗の放流実績でございますが、五百三十ミトン、八千四百三十一万尾、昭和四十五年が四百九十七トン、一億二千九万尾、昭和四十六年が七百八十一トン、一億四千七百十一万尾、こういうような実績にございます。
  149. 辻一彦

    ○辻一彦君 生産された種苗は十分な対価を払えるだけの採算性についてはどういうふうになっておりますか。
  150. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) これは御存じのように、この種苗の、瀬戸内海の栽培漁業センターをつくりますときには、御存じのように、多少実験的あるいは試験的な面がありまして、技術的には確立したけれども一体経済採算として合うかどうか、十分自信が持てないというふうな不安感が多少ありましたので、全額国庫負担ということで、設備並びに運営費につきまして、国庫負担で実施してきた次第でございます。年々、大体、ただいま運営費といたしましては、一億三、四千万円前後でこういうクルマエビなりマダイ、カレイ、カサゴ、ガザミといったものを、種苗をつくりまして、それぞれの地先に放流しておるということでございまして、放流の結果、漁獲量が、クルマエビにつきましては先ほど申し上げたように多少傾向的にふえてきておりまして、水産庁の分析では、これは、少なくともこういった魚種については大体成功したと、こういうふうに見ておる次第でございます。
  151. 辻一彦

    ○辻一彦君 もちろん放流ですから、これはそんな詳しい、採算が合うかどうかの計算ができるわけではない、そういう性格のものであると思います。しかし、大体こういうのは、かなりな公共性というか、あるいはかなりなリスクというか、放流をするとか、そういうことを考えれば、リスクというものが伴うので、もともとあまり採算が合わぬと考えていいものじゃないか、こう思うんですが、この点どうなんですか。
  152. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) やはり相当前にはこういった放流ということは、およそ経済採算というか、科学者の一つの研究手段というふうにしか考えられてなかったのでありますが、先ほど御指摘もありましたサケ・マスのふ化放流事業も、非常に最近、餌料を多くやることによりまして、回帰してくる率も高くなってきたというようなこともありますし、一般的な一つの水産技術としまして、十分にふ化放流というものが、地先の漁獲量の増大に寄与するというふうに私たちは断定いたしまして、今回こういったことを日本全国に普及せしめていったらどうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  153. 辻一彦

    ○辻一彦君 私も全体に寄与する、これはもうそのとおりだと思いますね。ただ、そこだけの独立採算というか、採算を考えた場合には、これは公共性、あるいはかなり広範囲に放流していく、そういうリスクから言って採算を合わすということはかなり無理なんじゃないか。それが沿岸漁業全体の漁獲にプラスして大きな成果があるということは十分わかりますが、そこだけで採算が合うというようにはなかなかいかない性格のものでなかろうかと、こう思うんですが、いかがですか。
  154. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) 純然たる民間だけの費用でこういった、失礼な話ですが、金魚を飼うとか、ニシキゴイを飼うとかいうふうな形でされるとなりますと、あるいは経済採算という形では無理かとも思いますが、やはり国なり県なりが関与いたしまして、一定の投資といいますか、経費を持った上でこの稚魚を放流いたしますれば、漁民の方々といたしましては、十分に利益を享受される機会は今後恵まれるのではなかろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  155. 辻一彦

    ○辻一彦君 私も、漁民に大きな利益が、プラスが出るということ、これはそのとおりだと思いますね。ただリスクの点から考えて、こういうのは、やはり事の性質上、国が施設や運営の面において大部分の責任を持つと、こういうことが私は必要じゃないかと思うんですが、この点はどうなんでしょうか。
  156. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) したがいまして瀬戸内海方式のときには一〇〇%こういった施設等につきましては、国が持って、一つの財団法人を、県を主として会員といたしまして財団法人をつくりまして、瀬戸内海の栽培漁業センターというものを兵庫県知事に一応理事長になっていただきまして運営している次第でございます。これらにつきましては、全額国庫負担という形で現在行なわれております。ただ今回、日本海で五カ所採択いたしまして実行することになったのでありますが、これにつきましては、この瀬戸内海方式と異なりまして、各県ごとに一つずつセンターをおつくり願いまして、国といたしましては、最高の補助率の七五%を持ちまして、あと二五%は県でひとつ持っていただいて、そして国と県との共同事業という形で、こういった放流事業を始めたいというふうに考えておる次第でございます。なお、したがいまして、今度は県が主体になられますので、試験放流といいますか、こういう放流事業につきましても、極力地元地先の県の漁民の方々が利益を享受するような形で、水産庁といたしましては、放流魚種につきましてあまり遠くへ行かないような魚を中心といたしまして、魚種を限定して指導してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  157. 辻一彦

    ○辻一彦君 瀬戸内方式と日本海方式が変わっている、その変わっている理由は、いま御答弁になったわけですが、放流等におけるリスクや公共性等を考えると、私は、日本沿岸の各府県が、この栽培漁業センターを誘致するのに非常に熱心であった、こういう事実があります。しかし誘致には熱心でありましたが、やはり国が今後の運営であるとか、維持等について、瀬戸内海と同じように責任を持って、基盤が確立して、実際的にももう府県に渡してもいいと、そういう段階になるまでは、国の責任でやるべきでないか、少なくも運営や維持は国が見ていくということを考えるべきでないかと思いますが、この点はどうですか。
  158. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) 瀬戸内海におきましては、初めから瀬戸内海を一つ単位として認めまして、そして各県でそれぞれいろいろな御希望もあるわけでございますが、これにつきましては、やはり瀬戸内海という一つ単位でございますので、こちらで放流してもあちらへいくかもわからないというような、利益の享受がよその県にいくかもわからないというようなこともありまして、こういったものは、やはり全額国庫負担かなというふうなこともありまして、全額国庫負担にさしていただいたんですが、しかし、非常にまあ経済採算としましては、クルマエビなりカレイなりというものは、非常にうまくいっておるというふうに私たちのほうは、先ほども申し上げましたように理解しておりまして、したがいまして、この瀬戸内海におきましても、クルマエビの養殖の生産費は、これはちょっと私忘れたんでございますが、四十六年度からは、もう採算に乗ったということで、クルマエビの生産費については二分の一の国庫負担という形で現在もう実行しておりまして、もう大体クルマエビにつきましてなり、今回、日本海で採択いたします魚種は、ほぼ成功すること間違いないというふうに私ども判断いたしておりますので、この補助率で、最高の補助率で十分じゃなかろうかと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  159. 辻一彦

    ○辻一彦君 まあ設備といいますか、これについてはすでに決定したことですが、先ほど大臣の答弁にも三十八年からで、採算に乗ったのは四十六年と、かなり時間がたっておりますね。日本海における五つの栽培漁業センターが採算的にも合うようになるには、かなりの時間が私はかかるんじゃないかと、そういう時間というものは、この維持、運営にはかなりな経費が伴いますが、こういう点についてやっぱり国が考えていくと、こういう考え方を打ち出すべきじゃないかと思うが、この点大臣いかがですか。
  160. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 日本海における五カ所の栽培漁業センターは、とりあえず二カ年継続事業で設置をすることにいたしておるんでございますが、昭和五十年度以降の運営維持費につきましては、昭和五十年度の予算要求の際に解決すべき問題であると考えておりまして、その際、慎重に対処をしてまいりたいと思います。
  161. 辻一彦

    ○辻一彦君 まあ五十年ならまだちょっと先ですが、私は、いま瀬戸内でやったクルマエビの養殖体験がそのまま日本海に当てはまるだろうという長官のお話ですが、まあそうかもわかりません。しかし、また新しい問題を、新しい魚介類をその地域に沿う形で開拓をしていく必要があるだろうと思うんですね。しかも、日本海に五つといえば、一つの県に特定されるものではない。やはり少しかなり横にも広がるべき性格のものであると思いますし、そういう点で、五十年度にこの問題を具体的に検討されるときに、基盤が確立をするまではこの維持運営については、国が大きな責任を持って努力してもらう、こういう方向で考えていただきたい、このことについていま一度伺ってこの問題は終わろうと思います。
  162. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 今回の栽培センターで扱います生産予定の魚種は、まあその当該県中心と、こういうふうに思える魚種だと思います。まあ私、島根県ですが、マダイにアワビ、山口県がマダイにカサゴにメバルと、こういうようなことでございまするので、そういう考え方で県も意欲を持ってこの事業を行なう、また、七五%の補助率の決定の際におきましても、県はもうそれでけっこうなんである。こういうことで相当活発な誘致の動きもあったことを記憶するのでございまするが、お話しの運営費あるいは維持費のことにつきましては、若干のまだ時日と余裕もございまして、先ほど申し上げたように、慎重に検討したい。この二カ年の間の推移を見ながら考えたい、こういうふうに思う次第でございます。
  163. 辻一彦

    ○辻一彦君 長官、この日本沿岸五カ所のセンターは、まあいまのようにそれぞれ特徴を持っておると思うんですが、大体大まかにいって五つのセンターにどういう特徴づけというか、どういう重点の置き方をする考えか、この点いかがですか。
  164. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) 先ほど来、大臣が申し上げましたように、この日本海の栽培方式につきましては、各県と十分に協議しながら、いまどういう魚種を普及すべきかということで検討しておりますが、まあ私あまり専門家でないのでわかりませんが、大体この考え方といたしましては、やっぱり日本海のほうは全体として瀬戸内海と違いまして海がきれいであるということ。特にまた、将来も汚染というものが発生しない地点を選びまして、日本でも中高級魚であまり遠くへ行かないものというようなことで、それほど大きな見解の相違はいまのところございませんが、県別には多少普及されるべき魚種について違いがあるようでございますが、これは先ほど来、大臣が申されたとおりでございまして、大体その線でいまのところそんなに大きな魚種について特色の違いはない、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  165. 辻一彦

    ○辻一彦君 この栽培漁業センターは、九州それから沖繩等も将来拡充していく必要があると思うんですが、この点、九州のほうは何カ所かつくられておるんですか。
  166. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) この私たちのほうのいまの手元のスケジュールといたしましては、今回日本海を採択したと、この次はまあ北太平洋地区を大体採択いたしたいというふうに考えておる次第でございます。それから、さらに中部太平洋地帯に参りまして、この辺になりますと、多少魚種の選定なり、あるいはこの汚水といいますか、海の汚染状況もありますので、だいぶこれは問題になると思いますが、中部太平洋地区も設定いたしたい。さらに、九州地区から南のほうへかけまして新たな栽培地区も考えておる、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  167. 辻一彦

    ○辻一彦君 これ、栽培センターとはちょっと違うのですが、いま観光地に遊漁制度といいますか、釣りやいろいろ観光で、レジャーで来る人がたくさんおります。この人たち漁民との間にいろいろなトラブルが出ております。たとえば、これは若狭湾、福井県の越前海岸、福井県の例でありますが、本職の漁民そこのけの、アクアラングというんですか、ライトを先につけて、そして、ボンベを背負って水にもぐって、まあ三十分も。貝や魚類をありたけ持っていくと、こういうことで、非常に漁民が、あるいは漁協が困っている例があります。  これは福井県の漁連でもこの例として、昨年一年間で漁業者以外の人たちに採捕されたサザエは、貝ですが、約三十万個、四、五千万円になるだろうと、こういうようにいわれておるんですね。この問題は、去年私もちょっと取り上げて、地方では、それぞれ規制をしているが、国としてもこの遊漁問題ですね、これと本来の漁民との間の調整を何らかの面から考える必要があるんじゃないかと、こういうことを提起をしておいたんですが、その後、具体的にこういう問題が水産庁としてどう対処されておったか。あればですね——あるいはいまのところ十分になければ、今後どういうようにする考えか、この点、あれば伺いたい。
  168. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) 沿岸漁業者と、特に零細な沿岸漁業者と遊漁者との間のトラブルが都市周辺の近郊県から問題になりまして、たとえば神奈川とか静岡というようなあたりは、ただいまたいへんな問題になっておりまして、さらにそれに漁船か、モーターボートかわからぬようなかっこうで、非常にこの問題が普及してきておるわけでございます。われわれといたしまして、やはりほうっておくわけにいかぬということで、もっとこれは詰めて考えなければなりませんが、一方的に遊漁者を排除するということもまいりませんので、こういった遊漁者との間の共存共栄の体制をつくる必要があるんではなかろうかということで、いろいろと都道府県の調整規則、あるいは海区漁業調整委員会の指示、地元の遊漁関係者との協議会というようなもので、この辺を指導してまいりたい、こういうように思っております。  四十七年の五月に、この辺の遊漁と漁業とのいわゆる専業との間の調整を行なうことといたしまして、四十七年の五月に水産庁といたしまして調整の通達を出しまして、遊漁者の関係者に対しましての広報活動なり協議会の運営なりそういったことをよく県として指導するようにということで、この海面におきます遊漁と漁業との調整についての制度の整備をはかる際の基準というものを、別添でつけまして、一応指針を出しておりますけれども、この問題はやはり相当こまかくきめたんでございますが、今後さらに水産庁といたしましても、もっと具体的にあるいは指導する必要があるんではなかろうか、こういうように考えている次第でございます。
  169. 辻一彦

    ○辻一彦君 これは昨年通達が出たということですが、もう少し具体的になお指導を強くやってもらうように願いたいと思います。  そこで、先ほど村田委員からも、ごみの問題がありましたが、実は一昨日福井県で漁民大会があったときに、こういう声か出まして——河川の上流では、国や県が草を刈ったりごみを整理したりして、行政で川にごみを落としている場合がある。それを下流の漁民が今度は船を出して全部さらって海をきれいにしなくちゃならない。非常に矛盾があるじゃないかと、こういう声が強く出て、私に一ぺん、きょう船を大量に出していまごみを全部拾い上げているから見に来い、というお話でしたが、私それはできずに上京しましたが、先ほどもお話があったけれども、いまこういう形で漁民自体が船を出してごみをさらったり、拾ったりしてきれいにしている。こういうものを何かもっと国のほうで強力に援助するとか、具体的な指導するとか、そういうことが積極的にできないのかどうか、この点どうなんですか。先ほどでは要綱が近日つくられるということですが、つくるとすれば、具体的にどういう内容で、いつごろはっきり指導できるのか、この点どうですか。
  170. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) 最近この海の汚染ということが非常に問題になりまして、その中にも特にごみが一つの問題でございますが、これが大体昔のように自然に海に出ますと分解するようなごみではなくて、ビニール系の、農業用のビニールの系統が非常に多くなって、海面にいつまでも浮いておりまして、漁労にとって非常に重大な支障を来たしております。したがいまして、水産庁といたしまして、これにつきまして予算を計上いたしまして、ことしから初めて海岸の地先の漁場の清掃事業の補助金というかっこうでとっておりますが、これは今後とも日本じゅうに及ぼしまして、一年に何度か清掃できるように補助事業として実行いたしてまいりたい、こういうように考えております。なお、これは、ことし初めての制度で、補助金の補助要綱が多少おくれておりますが、これにつきましては早急に、できましたら七月中に出しまして、漁業者の方に御迷惑をかけないように考えている次第でございます。
  171. 辻一彦

    ○辻一彦君 時間が迫まりましたが、最後にこの法案の内容について若干お伺いしたいと思います。  一つは、漁業共済と保険事業関係でありますが、水協法によって共済制度と保険制度の二本立てになっておりますが、漁協あるいは府県段階では、この二つの一本化云々の声もありますが、この点についてどう考えておりますか。
  172. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) 漁業共済制度とそれから漁船保険制度のことだと思いますが、この漁船保険制度と漁済制度は、中央の特別会計は一本になっているわけでございますが、この系統機関といたしましては、それぞれ別々になっておりまして、実際問題といたしまして、そういうふうに、現実になっているわけでございます。これにつきまして、目的なり制度なりそれぞれ漁業災害補償制度と、それと漁船保険制度との間には相当やはり実態的に違いもありますし、過去のいきさつもございますので、いま直ちにこの合併という一つの御意見もございますが、政府といたしましては、この関係者の意見も十分聞きながら、この問題についてなおひとつ検討さしていただきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  173. 辻一彦

    ○辻一彦君 漁船保険加入率が、出されている資料では、全体で四十六年で四七・七%、こうなっておりますが、二十トン未満の場合ですね。これはどういうふうになっておりますか。
  174. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) 二十トン未満の動力船及び無動力船を含めたものの加入率は四六・七%で、若干減っております。また、二十トン米満の動力船だけで見ますと、六二・一%になっております。したがいまして、二十トン未満の加入率が全体の加入率より低いのは無動力船の加入率が低いというふうに御理解願いたいと思います。無動力船の加入率は、これは無動力船と申しますのは、非常に小さな船でございまして、これは加入率は極端に悪くて、四・四%というふうに御理解願いたいと思います。
  175. 辻一彦

    ○辻一彦君 小型船を所有する漁民ほど資力も乏しい。だから、災害を受ければやはり非常に困るわけですね。そういうのが加入率があまりよくないようですが、どういう事情か、あるいはこれを加入率を引き上げていくために、具体的にどうする考えか、この点いかがですか。
  176. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) こういう小さな船の国庫の負担率というか補助率は六〇%で、最高の補助率をとっているわけでございますが、この漁船の方々がやはり零細であるということの関係もありまして、保険金をとられることもあまり好まないということが一つ。  それからもう一つ、まあ非常に小さいだけに、自分の自宅の地先からほんとうに日帰りといいますか、そういった方々が多いので、あまり大被害はないというふうに、楽に気楽に考えられまして、あまり加入されないというふうに御理解願いたいと思います。
  177. 辻一彦

    ○辻一彦君 てんま船でこぐような場合は別として、動力船でも二十トン以下が六二%というと約四〇%が未加入ということになっておりますが、これは資力の乏しい人が船が災害にあえば、痛手もまた非常に大きい、こういう点から極力行政指導等によってこの加入率が高まるように努力を願いたい、こう思います。  次に再保険の剰余金についてですが、四十二年から四十六年の五年間に、かなり大きな剰余金が出ていますが、その実態ですね。これはなぜこれだけ大きい剰余金が出るのか、そこらはどういうことになっていますか、いかがですか。
  178. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) 国の再保険料率というものをきめるに際しまして、過去十カ年間の危険率を計算いたしまして、三年ごとに再計算いたしまして設定することになっております。したがいまして、これはほとんど計算方法が統一されておりまして、変更しないんでありますが、結果的に見ますと、設定後の実際の危険率より、きめた危険率のほうが高かったというふうな関係で、結果論といたしまして、剰余金を生じている次第でございます。これらにつきまして、それはなぜかと申しますと、いわゆる加入隻数が年々増加しているということと、漁船が大型化いたしまして、また漁船の機能等が向上いたしまして、あまり損害率がそんなに悪くないというふうなこと等がありまして、また、漁民自身の安全操業につきましての心得が、意欲が高まってきたというふうな点等もございまして、年々安全率というものがよくなってきているというふうに御理解願いまして、その格差が結果的には、今回の三十五億というふうにたまってきた、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  179. 辻一彦

    ○辻一彦君 これから先、保険料を引き下げていく考えですか、どうなんですか。
  180. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) 結果的には、従来も年々漁船の危険率が減ってきていること、あるいは漁船数がふえてきているというようなことから、計算上出しております保険料率は、実質的にはわずかではございますけれども、年々下がってきておりますし、われわれといたしましても、今後料率は下げるよう努力してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  181. 辻一彦

    ○辻一彦君 静岡の焼津あたりに行きますと、大型船が多い、だから、保険は大体年間十五億円くらいは持ち出しになる。こういうことを言っておりましたが、しかしまた、今度は小型漁船の多いところでは、違った形になると思うんですね。ここらの調整をどういうようにしておられるのか、その点いかがですか。
  182. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) やはり漁船の大中小によりまして、それぞれの体質が違ってくるわけでございますが、たとえばいまも御指摘の焼津は、主として大型、この漁船保険といたしましては、百トン以上千トン未満のマグロ船を中心といたしまして加入されているわけでございますが、これはよほどの事情がない限り、一船でも事故があればたいへんな被害金額になりますので、保険に加入されたほうがやはり所有者としてはいいと思うんですが、その結果、結果的には掛け金のほうが掛け捨てといいますか、そういった場合がふえるというふうに御理解願いたいと思います。
  183. 辻一彦

    ○辻一彦君 四十八年度に保険中央会へ三十五億交付の予定になっておりますが、これは十分有効に活用される保証がありますか。
  184. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) 今回この法案をお認めいただきますと、三十五億円を漁船保険中央会に交付することになっております。そのほかに、前にお認めいただきました十二億円を合わして四十七億円を基金といたしまして、漁船保険の振興に寄与するように、その果実をもって運営にあたってまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  185. 辻一彦

    ○辻一彦君 漁船の積荷保険の臨時措置法について二点だけ質問したいと思います。  一つは、これは新種保険ですが、この漁船積荷保険と民間に貨物海上保険というのがありますね、それから漁獲共済とありますが、この三つの関係はどういうようになりますか。
  186. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) この積荷保険は、国が制度として今回認めまして、漁船保険中央会が再保険機関として、暫定的に五年間積荷保険を実行いたしますことになった次第でございますが、民間の貨物の海上保険につきましては、従来からすでに商業ベースでやっておられまして、それと今回のこの新種の積荷保険とは従来どおり両者併存という形で行なわれることになるのではなかろうかと、こういうふうに思っておる次第でございます。  ただ今回の法律に基づきましてこの新しい積荷保険制度を実行いたしますのは、これは年間通算で積荷保険制度を実行するということになりました関係で、民間のほうでやっておられましたのが、これは一航海ごとと、一漁期ごととなっておりましたのと競合いたしますので、あらためて民間のほうも一漁期ごとというふうに四月から改善されたように聞いております。  なお、この漁獲共済との間には多少、本質的には全然異質のものでございまして、漁獲共済は共済の責任期間中の操業にかかる漁獲金額が、過去一定年間の漁獲金額を基準として定める共済限度額に達しない場合の損失について共済金を支払う収穫保険でございますので、多少制度として違いますので、保険という意味で名称は似ておりますけれども、中身は相当違うものだというふうに御理解願いたいと思います。
  187. 辻一彦

    ○辻一彦君 最後に、焼津でこの間こういう声があったのですが、航海に出てから五、六十トン程度の漁獲をしたときに、いろいろな事故が起きる場合がある。そういう場合もあるので、出航のときから責任を持つ、そういう形にできないのかと、こういう声がありましたが、これは私どもちょっと十分わからないのですが、いかがですか。
  188. 荒勝巖

    政府委員荒勝巖君) これは先ほど申し上げましたように、保険期間は多分一年の期間を通じての保険になりますので、まず出て行かれるときに漁獲物のみならず、出航のときのいわゆる餌料でございますとか、それから人間の食料品、油こういったものも保険の対象になっておりまして、途中で漁獲物がありますれば、それも保険の対象になるということで、航海途中におきます保険も当然に、これは対象になる、こういうふうに御理解を願いたいと思います。
  189. 辻一彦

    ○辻一彦君 先ほど御答弁のとおり、ことしが三十五億、前の十二億、再保険の剰余金、こういうものが交付をされて、運用益によって、漁民あるいは保険事業の拡充のために使われるということですが、これは言うならば、零細な漁民からあるいはまた大型船から、いろいろありますが、とにかく上に上がってきた保険金でありますから、十分ひとつその運用に間違いのないようにしていただきたい、この点について大臣から一言伺って終わりたいと思います。
  190. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) お話しのとおりでございまして、運用益によって各種の事業をやるのでございますが、これについて間違いのないように、また、有効に使われるように心がけることは当然のことと存じます。
  191. 亀井善彰

    委員長亀井善彰君) 三案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十九分散会