運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1973-09-17 第71回国会 参議院 内閣委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年九月十七日(月曜日)    午後一時三十七分開会     —————————————    委員の異動  九月十四日     辞任         補欠選任      鶴園 哲夫君     小谷  守君  九月十七日     辞任         補欠選任      小谷  守君     鶴園 哲夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         高田 浩運君     理 事                 内藤誉三郎君                 山本茂一郎君                 片岡 勝治君     委 員                 源田  実君                 佐藤  隆君                 世耕 政隆君                 長屋  茂君                 西村 尚治君                 星野 重次君                 町村 金五君                 上田  哲君                 鈴木  力君                 鶴園 哲夫君                 前川  旦君                 黒柳  明君                 宮崎 正義君                 中村 利次君                 岩間 正男君    国務大臣        内閣総理大臣   田中 角榮君        建 設 大 臣  金丸  信君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  山中 貞則君    政府委員        内閣法制局長官  吉國 一郎君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        行政管理庁行政        監察局長     大田 宗利君        防衛庁参事官   大西誠一郎君        防衛庁参事官   長坂  強君        防衛庁参事官   岡太  直君        防衛庁長官官房        長        田代 一正君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛庁人事教育        局長       高瀬 忠雄君        防衛庁衛生局長  鈴木 一男君        防衛庁経理局長  小田村四郎君        防衛庁装備局長  山口 衛一君        防衛施設庁長官  高松 敬治君        防衛施設庁次長  鶴崎  敏君        防衛施設庁総務        部長       河路  康君        防衛施設庁施設        部長       平井 啓一君        防衛施設庁労務        部長       松崎鎮一郎君        環境庁自然保護        局長       江間 時彦君        林野庁長官    福田 省一君        建設大臣官房長  高橋 弘篤君        建設省計画局長  大塩洋一郎君        建設省都市局長  吉田 泰夫君        建設省河川局長  松村 賢吉君        建設省道路局長  菊池 三男君        建設省住宅局長  沢田 光英君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君    参考人        日本住宅公団総        裁        南部 哲也君        日本住宅公団理        事        播磨 雅雄君        日本道路公団理        事        三野  定君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国の防衛に関する調査  (長沼ナイキ基地判決問題に関する件) ○建設省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 高田浩運

    委員長高田浩運君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  国の防衛に関する調査のうち、長沼ナイキ基地判決問題に関する件を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 上田哲

    上田哲君 発足当時から疑義のありました自衛隊について、その後二十年間国論も大きく亀裂を生じてまいりました。さらに、政府の増強が相次ぐ中で、この自衛隊憲法合憲であるか違憲であるか、この問題はいずれ司法の場から一つ回答が出されなければならなかった、こういうことが、まず、内容のいかんを問わず、言われると思います。いずれはこの決定が、判断が出されなければならなかったという見解について、総理はどのようにお考えですか。
  4. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 自衛隊憲法に対して違憲であるか合憲であるかという問題に対しては、政府はもちろん違憲ではない、合憲であると、こういうたてまえに立っておるわけでございまして、裁判所判断あるなしにかかわらず、国会意思決定をしておりますし、政府もそのように承知をいたしております。
  5. 上田哲

    上田哲君 いまの、伺っておってよくわからぬのですが、非常に不明確な感じ国民が持っていたのは、いずれにせよ事実であります。これは、政府の側でも国民に十分に政府合憲論理解されているとはお考えになっておられなかったと思うんです。そういう意味では、裁判所一つ判断を出したということ自体は、このあと防衛論議がどのように進むにせよ、あるいはこれについて賛成、反対立場は当然あるとしても、一つ回答が出たということの意義というものはお認めになるのではないかと思います。
  6. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 自衛隊合憲であると国民の大多数はそう信じておる、私はそう確信を持っておるのでございます。しかし、長沼ナイキ裁判において裁判所一つ見解を示したという事実は認めております。
  7. 上田哲

    上田哲君 政府のこの長沼判決が出て以降の官房長官談話、あるいは自民党の幹事長談話というのを拝見をいたしますと、いまの総理のおことばの中にもちょっとうかがわれるんですが、何か裁判所がこういう判断を出したことが迷惑であるような感じが読み取れる。私は、やっぱり三権分立立場からいって、行政府の長とされても、その辺のニュアンスというのは、はなはだ国民に向かってよくないことではないかと思うので、再度伺いたいと思います。
  8. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は、新憲法下第一回に議席を得たわけでございまして、国会においてこの種の議論が二十有七年間にわたって行なわれておることはよく承知しております。また、選挙も、戦後新しい憲法になってから十一回行なわれておるわけでございます。総選挙。参議院の選挙は九回行なわれていると思います。地方議会選挙も七回か八回行なわれておると思います。まあ、地方議会選挙といえども、絶えず自衛隊論というのは論争になっておったわけでございます。社会党の皆さんが、演説の中の主題として国民に訴えておられましたから、その結果も明らかなごとく、国民は、私は、自衛隊合憲であるという考えに対しては確固たる結論が出ておると思っております。まず、これが第一です。  第二の問題は、長沼ナイキ訴訟と俗にいわれる判決において裁判所一つ判断をなされた。まあ、これに対しては政府事案当事者でございますから、この判決を不服として上級審に対する控訴を行なっておるわけでございますから、控訴審判断を待たなければならないわけでございます。しかし、このような判断が、下級審であるとはいえ、行なわれたということにつきましては、政府はその事実を認識をし、国民各位に対して、より以上、自衛隊国民のために必要なものであり、もちろん合憲であり、しかも、政府立場の正しさということは、これは行政責任として国民理解を得るように努力を重ねていくべきである、このように理解をしております。
  9. 上田哲

    上田哲君 政府合憲ということを強調されるのは、これは当然な立場でありまして、私どもが違憲であると従来の主張を繰り返すのも、これまた当然なところであります。まあ、そこはそことしまして、私は、せっかくの総理出席をいただいておるのでありますから、基本的な問題を一その立場お互いに尊重するだけではない、基本的な立場を、ひとつ御見解を承りたいと思います。  その立場でいいますと、長沼判決において最も留意しなければならないのは、私、三権分立立場の尊重だろうと思います。言うまでもないことでありますけれども、今回の長沼判決によって違憲判決が出たからといって、直ちに自衛隊の解散ということが招来されるものではありません。これは、国会決定行政措置というものがとられることによってそういう事態になるわけでありますから、このことが一つ。同時にまた、行政府としても、したがってそういう決定的な拘束がないとしても、行政府としては明らかに三権分立の一方の司法の場から初めてこういう判決が出たわけでありますから、これに対しては行政府としての明確な法理論上に立つ見解というものも出されなければならない。そこにお互いに相尊重し得る立場というものが存在しなければならないと思います。したがって、ここで合憲立場をおとりになる政府立場は百も承知でありますけれども、いまの三権分立のそういう立場で申し上げた意味での司法判断下級裁判所といえどもとおっしゃるが、初めての司法府の判断に対して行政府は十分にこれを尊重するという姿勢を持たれることが、まず第一の問題でなければならないと思います。その点をひとつはっきり伺っておきたい。
  10. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 三権分立というのは、御承知のとおり、独立お互い認め合うということでございます。そういう意味で、一般論から言いますと、下級審といえども、裁判が行なわれ、判決が行なわれた場合には、行政府としてこれに対して批判がましいことを言わないということは、おのずから三権分立基本的姿勢でございまして、いままででも政府はあまり言ってないんです。そういうところは分をわきまえているつもりです。今度は政府当事者であります。政府が行なった行政権に対して国民から裁判所判断を求めて提訴をされておるわけでございます。そして下級審といえども、第一審の判決があったわけであります。この判決は、政府考えとはまっこうから違っております。ですから、控訴をしたわけであります。控訴趣意書には、この判決を不服とする政府態度が明らかにされております。明らかにされなければ、二者択一しかないわけでございますから、判決に従うか、判決に従わないかということでございますから、判決に従う意思は毛頭ないということでございますから、だから、これはもう政府意思とは全く逆な判決であるという立場に立っておるのでありまして、行政府といえども、訴訟当事者でございますので、控訴をする場合には当然判決批判をする、政府の言動の正しいことを証明しなければならないという立場にあるということは事実でございます。また、あなたがいま言われたように、裁判所判決が、下級審判決といいながら、行なわれたということに対してどう思うかと、その事実は認識をいたしております。そういうことであります。
  11. 上田哲

    上田哲君 私は論理が逆だと思います。今回は政府被告であると、だから、被告として当然抗弁権行使するんだとおっしゃることは当然であります。しかし、それとは逆に、政府被告であるけれども、同時にやはり行政府でありますから、行政府としては司法府に対しての当然なのりを越えてはならない立場がある。違憲論を出した判決に対してそれを納得されないのは当然なことでありまして、反対されるのも自由であります。しかし、悪法といえども法なりということばがありまして、必ずしも適切な言い方ではありませんけれども、私たちも、反対法案が通っても、その法のもとに服しております。その意味では、法体系を尊重する、行政府として司法府を尊重するという姿勢は、その内容にどんなに批判を述べられるのも自由でありますけれども、これは画然として三権分立立場総理がきちっと守っていただくということは、私はやっぱりひとつ承っておきたいと思います。
  12. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 明確に言っているつもりなんです。裁判所が、判決が行なわれたという事実は神妙に認識をいたしております。神妙にというのは、先ほどよりももう一つ申し上げたわけでございますが、その事実は認識をいたしております。しかし、遺憾ながら、その判決には不服でありますので、上訴手続をとっておる。上訴の過程においては、政府のこの判決に納得しない理由を述べて最終的な判断を求める、こういう立場にあります。ですから、まあ違憲判決というものが出たからどうしなさいという言外のあなたのお気持ち、わかりますよ。
  13. 上田哲

    上田哲君 まだ、そこまでいってないですよ。これからです。
  14. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これはしかし、そういう問題じゃないんです。これは審級制度をとっておりますから、下級審判断が出たという場合には、政府拘束を受けないし——拘束を受けるというよりも、それに対して法的に控訴手続をとる以外にないわけでありますから、これは、それを認めないし、控訴手続もとらないというなら、これは問題がございますが、憲法の定めによって控訴手続をとっております。ですから、現在の段階においては、政府敗訴をしておる、敗訴判決下級審においてあったという事実を認識するという以外に政府はないわけであります。
  15. 上田哲

    上田哲君 私が申し上げたいのは、司法府に許する行政府のおのれを持する態度の問題を言っているのでありまして、今回の判決内容に直ちに服しなさいなんということを申し上げているわけではないんです。控訴されるのは自由であります。もっと具体的に申し上げれば、きわめてしぼって具体的に申し上げれば、違憲審査権行使の問題、統治行為論の問題というところにいくんでありますけれども、その前に一つ申し上げておきたいのは、私はやはり一つ混同があると思いますのは、法理論政治論混同ではないかと思います。これは総理にもはっきり申し上げたいんですが、私は、国の安全を守る、国の安全を守るためには、総理といえども私といえども、これはどちらが熱心であるかという点では競い合わなければならぬと思っております。そういう意味では、国の平和を守るという方法論については議論が分かれてしかるべきだし、私は、軍隊を持つという議論もあっていいだろうと思うし、もちろんわれわれはそれに対して軍隊でない方法をということを主張していきたいと思う。それは大いに議論を戦わさるべきだと思います。しかし、それは政治論であります。防衛構想を戦わすべき政治論であります。その政治論と、いまわれわれが共通に持っている憲法条文に照らして、論理解釈文理解釈、いずれからいっても、その憲法条文に照らして、そのことが違憲であるかどうかという判断は別なことでありまして、その部分をしっかり区別をしていかなきゃならない。で、今日われわれがどちらの側に立つからといって、その立場法理論そのものに対する見解を異にすると、法理論に対する見解を押しつけるということになってはいけないのだということを私は強調しているわけでありまして、この点は御同意をいただけると思います。
  16. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私とあなたの言うこと何も違わないんです。政府は、国民から提訴を受けた案件に対して静かに判決を待っておったわけでございます。で、判決は、初級審において政府敗訴になったという事実は認めております。しかし、これは審級制度をとっておるということを先ほどから申し上げましたが、初級審判決があって、それに不服の場合には控訴によって判決を求めなきゃなりませんし、控訴でまた不服のある判決が出た場合には最終審判断を求めると、これはもうそのとおりであります。国会もそうなっておるはずです。小委員会否決をされたものが委員会可決をされた例もございますし、委員会否決をされたものが本会議可決をされている例はあります。これはそういう制度になっておるわけです。石炭国管法のように、あれだけ国民的問題になったものが衆議院委員会において否決をされておりますが本会議においては可決をされておるということでございまして、これは委員会でもって否決をされたからその事実を国民政府国会議員認めるということ以外に判断のしようがないということは、以上申し上げたとおりです。
  17. 上田哲

    上田哲君 具体的に違憲審査権の問題についての御見解を聞くことで、話を具体化させていきたいと思います。  今回の判決は、違憲審査権というものの行使について非常に大きな示唆を持っております。これは統治行為論という問題との背中合わせの問題ですけれども、統治行為論ということばを非常にむずかしく使うものだから、法律専門家でなければわからぬみたいな感じになってしまっていますが、高度の政治問題というのは裁判所判断できるかどうかという、これは、私が申し上げるまでもなく、今日の法治主義考え方近代法治主義考え方というのは、できるだけその幅を狭めていかなきゃいけない、裁判所が手の触れられない問題が拡大すればするほど近代国家とは言えない、法治国家とは言えないということがあると思います。で、それについては、私も、いわゆる統治行為論に該当すべき政治課題があるだろうということは認めます。しかし、それを拡大するのか縮小するのかということであれば、近代法理論の方向というものは、わが国も法治主義をとる限り、これをできるだけ縮小していくということは国際的にも当然な考え方になっております。で、私は、今回のような自衛隊違憲論というものについての意見の分かれるところは、裁判所は当然これを憲法条文に照らして審査することのできる範囲に権能として持っておるというふうに考えるわけですし、そこは御同意をいただけないと、先ほど来介入するつもりはないという意味のことをおっしゃっているわけですけれども、行政府司法府に対して一定の圧力を加える結果になる。三権分立を侵すことになる。私はそこをしっかり御意見を承りたいと思います。
  18. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 三権はおのずから侵してはならない、これはもう三権分立基本でなければならない。で、違憲問題に対しては、これはもう新憲法制定時代から国会で問題になっておるわけでございますが、新憲法制定の当時、憲法裁判所という条文明定が必要であるという議論国会において行なわれたことは御承知のとおりであります。しかし、そういう明文のないままに今日に至っておりますが、しかし、まあ裁判所憲法に対しての判定を行なうことができるであろうということは通説になっております。なぜかというと、憲法に基づいて、憲法に背反する法律は無効であるという、その部分判定裁判所はするわけでございますから、その意味から裏返しにしても、裁判所憲法に対する判定を行なえるということはもう認められて、一般通説になっておると思います。われわれも、新憲法下第一回の国会議員として国会審議に携わってきたものの立場からも、憲法問題に対して判例を示すことは現在の憲法下における裁判所の権限において可能であるということでございます。ただ、それは下級審だけできまるのではなく、最終審決定を待つということはもう当然なことだと思います。ただ、統治権という発言がございましたから、これも私たちも過去の経緯から申し上げると、明文のない問題に対してすべてがやれるかどうかという問題に対しては、まだ、いまここで明言をできない部分もあると思うんです。これは、案件事案の状態によりまして、裁判所といえども判断を行なうことができない、行なうことができないというよりも、行なうことが適切でない——これは、戦後新憲法の施行された直後に、国会が混乱したりなにかして、いろんな案件裁判所に持ち込んだことがあります。議員自身が。いわゆる議員除名権の問題とか、党から除籍をした問題を持ち込んだ者がございますが、これは、新憲法のたてまえ上、国会において処理さるべき案件であって、裁判所が受け付けるような趣旨のものではないといって門前払いを食った例はあります。ですから、そういう事実問題が第二に存在します。第三は、あなたが述べた統治権という大きな国際上の問題とか、明文はないけれどもどこの国でも認められているというような問題、そういう問題が起きたときにどうするのか、それはやっぱり憲法に、国会は国権の最高機関であると明示してございます。それはもう唯一無二の立法府であり最高機関である、あえて三権分立の上に最高機関として決定をしておる、その条文が働くべきだろうと、こういうことになっているわけです。それよりももっと大きなものはどういうことかというと、最終的には国民判断をする、それは憲法にいう主権在民が最終的な決定機関になる、こういうふうにわれわれは理解をしておるわけです。
  19. 上田哲

    上田哲君 そうしますと、いまおっしゃることは一般的に私は非常によくわかります。とすれば、具体的に、今度の判決で、政策として自衛隊を保持することが適当かいなか審査判断しようとするものではないということをはっきり言っております。政策として自衛隊を保持することが適当かいなか審査判断するものではない、憲法明文に照らして自衛隊違憲であるかどうかを判断することは当然裁判所むしろ義務であるという言い方をしておるわけでありまして、その立場に立つ限り、違憲審査権内容自衛隊合憲違憲というのは当然に入ることだということを、被告の代表という立場行政府責任者として総理がお認めいただけると思います。
  20. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これ、砂川事件判決とは違いまして、これは、御承知のとおり、保安林解除というものがナイキ基地建設のために必要である——ナイキという装備そのもの憲法でいう自衛を越しているのじゃないか、そうすればそれを持っている自衛隊違憲じゃないかと、こういう段階的論法をもって、自衛隊違憲である、もちろんナイキ違憲である、だから保安林解除憲法に反する——こうではなく、ナイキ基地が公益上必要であるかどうか、公共のために必要なものかどうか、税務署の用地を確保するとか駅の駅舎の用地を確保するとか、同じ問題であります。これは公共性があることはもうだれも認めますが、ナイキというのは憲法のそのワクがございますから、ナイキ一つの限界を越している兵器ではないか、それが越している兵器だと思えば、それを持っている自衛隊はなお違憲であると、こういうふうな逆論をしての判決でありますから、政府はこれに不服であります。容認をしておりませんから上告をしているわけでございます。ですから、それは、こう、だんだんと推定をして判決が行なわれておるという事実は認識しております。また、それを言うことがそういう判断をした裁判官行為違憲だとだれも考えておりません。これはもう、司法権として判断を行なう場合、いかなるものを援用しても、それは裁判官の自由である、そういうことを認めるのが三権分立である、こう認めておるわけです。
  21. 上田哲

    上田哲君 もう一つの問題は、いま下級審だからということばがしきりに出るわけでありますけれども、司法独立というのは一審、二審、最高裁判決ということのグレードをつけるものではないということがあります。これは法務大臣もお認めになっているところでありますが、たとえば最高裁判決というものは下級審判決の積み上げの上にできていくというのが法体系でありまして、たとえば最近の尊属殺人とか、公務員の争議権都教組判決などというものも、積極的に最高裁のこれまでの判例をくつがえして違った判決を出す、それを受けて新しい最高裁判例が出るということでありますから、やはり司法独立を尊重するということは第一審の判決を尊重するというところから相ともに始まるということでなければならないと思います。まあこれは当然のことでありますけれども、念のために一言。
  22. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 当然のことじゃないんですから、これはひとつ明確にしておきます。そこが審級制度をとっているんです。ですから、あなたの言われるとおり、大審院判例はその後の最高裁判例によってくつがえされておるものもございます。また、最高裁判例といえども、同じ最高裁判所で構成が違うし、背景が違ってくるし、時代が変わってくるということによって、前の判例はくつがえされて新判例が明示をされておるということがございます。ございますが、あくまでも初級審から積み重ねてきて最高裁判例を行なうものではない。これはもう初級審控訴審でもって判断をされる場合には、初級審に事実誤認があるかないか、過去の判例に対して間違っておらないかどうかという問題が上級審において判断をされるわけであります。また、それが最終審に持ち込まれた場合は、より広範、より高度の立場によって判断をされる。これはもう積み重ねじゃ絶対にないんです。全く独立しているんです。ですから、裁判所所長が裁判官に予断を与えるがごとき書簡を出すと、憲法違反じゃないかという議論が行なわれるのであって、これはもう裁判所は、下級審、中級審、最終審と全く独立したものである、こういうことだけは間違いなくひとつ御認識をいただきたい。
  23. 上田哲

    上田哲君 こういう判断は私は非常に問題だと思うんです。これは明らかに下級裁判所は最高裁判所の下級機関ではない、そういう立場で、堂々と最高裁判所判例に対して、これにくつがえす判例を出していく、その判例を受けて、これを積み重ねて最高裁判例がまたでき上がっていく、これが法的構造なんでありまして、私は、やっぱり第一審を尊重するという立場はそこから出てくると思うんです。そうでないと、いま国民が受けているように、二審あるいは結審において第一審の判決は必ずくつがえるであろうということを政府が太鼓判を押しているような、ある種の予断を与えられているような気がする。こういう形では、最高裁判所長官も政府の、総理の任命になるわけでありますから、何か憲法法律に基づいて基本的人権が保持されると信頼しなければならない法体系が一番奥のところで信頼ができないのじゃないかという不信につながるということにもなる。そういうことのないために、私はやっぱり、いまの総理見解とはまっこうから逆であるということを申し上げておきます。  そこで、先へ進みますけれども、今回の判決の大きな根底となっている、憲法解釈の根底にある平和主義です。飛ばしてお伺いをしなければならぬ時間的な事情になっておりますけれども、今回の判決は、平和的生存権とでも称すべき一つ考え方、構想をいたしまして、その中で憲法九条の中には、基本的人権、平和的に生きる権利ということを包含しようとしています。私はこの考え方は正しいと思う立場ですが、そもそも、前文を含め、九条を含め、全憲法の流れの中にある考え方というのは、絶対平和主義とでも言うべき考え方であります。この考え方は、軍備を持つ立場からすると、軍備を持つことが積極的な平和保障論者であり、安全保障論者であり、軍備を持たないことはたいへん消極的な安全保障論者であるというような見解があるようであります。これはひとつ訂正していただかなきゃならないのですが、総理はそのようなお考えをお持ちでありましょうか。
  24. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 日本の憲法は全人類の歴史の上で画期的な憲法である、こうわれわれは評価をしているわけです。それだから、新憲法下に議席を持ったわけでございます。そういう意味で、平和を愛好し、それから専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永久に追放しよう、こういう大きな理想に向かって前進を続けておるわけでございますから、その意味では、先ほど申し上げたように、りっぱな憲法であり、全世界に推し進めていきたい憲法である、こういう考え方を持っております。しかし、それは事実や現実というものを全く無視をしたということじゃなく、事実や現実というものの上に立って平和と独立を確保していかなきゃならないという悲願に向かって努力を積み重ねると同時に、平和な日本の独立と日本の尊厳はあくまでも守っていかなければならない、こういう前提の上に立った平和宣言というものが九条を含めた新憲法の精神である。第三に申し上げたいことは、しかし、それは現実と理想との間にあるいろいろな、さまざまな、もろもろな問題がございます。ですから、この条文は、無防備、無抵抗という絶対中立主義というような考えを前提としたものではない、このように理解しております。
  25. 上田哲

    上田哲君 少なくとも、この憲法は積極中立主義というものをはっきり方向づけていると理解をいたします。その立場を是認されるのであれば、そのためにこそ、その憲法国会議員となられたという御発言がありましたけれども、そのような積極中立主義をおとりになる、それを認めておられるのであれば、軍事同盟保障政策というのは、やはり憲法の方向づけるところとは大きく隔たるものであった。憲法が方向づけている積極中立外交主義というものに対してこの二十八年の政治というものは憲法に対する怠慢ではなかったか。いかがでしょうか。
  26. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほども私は何回も申し上げておりますが、絶対中立、無防備、無抵抗というのじゃないんです。日本は現実の上に立って独立と尊厳をあくまでも守ってまいる、しかし、人類の平和のために高々と旗を掲げて平和のために前進をし、積み重ねを行なおう、こういう国の考え方を国の内外に宣言をしたことでございます。そういうことは、無抵抗、無防備、絶対中立というものとは全く違うものであります。あくまでも現実の上に立って、理想は高々と、しかもあくまでも現実を直視して、一歩一歩人類のために、日本の独立と尊厳を守るために前進を続けます。これが新憲法制定のときの宣言であり、大原則である、こう理解しております。
  27. 上田哲

    上田哲君 総理は第一回制憲議会から出ておるのだとおっしゃっています。第一回制憲議会のときにこの憲法を確定した考え方と今日の考え方、これは明らかに違っています。一つ一つあげるまでもありませんけれども、たとえば吉田茂総理の当時の発言を読み返して見るならば、自衛のためでも戦力を持つのは違憲であるというような発言が積極的に出ております。そのとき総理は席を同じうしておられた。明らかにそのときの解釈と今日の自衛隊に対する解釈というものは変わっているのではないかと思います。
  28. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 戦後の混乱期でございましたし、とにかく、この憲法は日本の国民国会判断によってできたものである、まさに自主憲法である、こう考えております。また、そう信じております。しかし、その過程において占領審のメモという否定できない事実があったことも国民すべてが認めておることであります。憲法の条章や条文に対してはメモランダムでもって非常にきびしく要求されたということも、これ、事実でございます。そういうような、これは憲法だけでなく、いま生きている法律の中でも、どう考えても日本語として読めないような、どこかの国の直訳だなあという法律条文がたくさん現存しておる事実を見れば明らかなことであって、二十五年、二十七年たっても、そういう事実はおおうべくもないものでございます。ですから、そういう過程においてメモをつくった人たちは、この文章はこうであると述べておる記録も私は承知しております。そして、それを受けて、こんな条文はだめですと、時の芦田憲法調査会長の発言も記録に載っております。その後、各学者や在野の学者が、この条文はこう読むべきであるというような議論のあったことも存在しております。しかし、現在のもう四半世紀の歴史の重さを加えた現行日本憲法に対する正確な解釈というものは国民の中にあまねく定着をしておるという考え方を私は自信をもって申し上げます。
  29. 上田哲

    上田哲君 つまり、二十年前の、あるいは二十五年前の、憲法が制定されたときの考え方としての、軍隊は持つべきじゃない、自衛のための軍隊も持つべきじゃないという吉田茂総理の発言に見られるような表現と今日の表現とは変わってきているということはお認めになるわけですね。
  30. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 吉田さんがどういうふうなお立場で、どういうふうな背景をもって、また、どのような質問を前提としてお答えになったか、よくつまびらかにしておりませんから、私はここでもってさだかなお答えはできません。できませんが、政府が一貫しておりますのは、警察保安隊をつくったのも、これを必要として議案を国会に提案をしたのも吉田内閣時代であります。それから、サンフランシスコ平和条約を締結したのも吉田内閣でございます。保安隊を自衛隊に改組をする法律案制度、法制の完備を国会に提案したのも吉田内閣でございました。でも、その当時の国会における発言というものは、その後の内閣は依然としてこれをずっと変わりなく御答弁も申し上げておりますし、答弁だけではなく、腹からそう思っておるから国会でもって申し上げておるわけでございますので、私は、いまあなたが指摘をされたような憲法に対する吉田発言というものをさだかにしておりませんけれども、憲法に対する解釈というものは戦後一貫しておると、こう私は理解していいと思うんです。これは私は、片山内閣、芦田内閣のときの与党でございましたから、私も社会党の皆さんと一緒に与党だったんです。そういうときでも、私は、いまとそんなに変わった憲法解釈があったということは、遺憾ながら、当時の片山内閣、芦田内閣の与党議員としても、そういうものは、いまの私の頭の中にありません。一貫しておると思います。
  31. 上田哲

    上田哲君 途中の変化がどんなに変わっているかということを全部申し上げる時間の余裕がありませんけれども、たとえば、明確に、戦力とは近代戦遂行能力だという発言もありました。たとえば木村国務大臣。自衛のためでも戦力を持つことは違憲であるという総理発言もありました。鳩山首相に至っては、軍隊を持つために九条を改正したいという発言もありました。いろいろな変遷があったことは、これはもう歴史的に明らかであります。私は、そういうものを全部すべて一言で申し上げるのは、この憲法がつくられたとき、制憲当時の総理が発言をされた正規の発言である、自衛のためといえども軍隊を持つことは違憲であるという考え方と今日の考え方は、やっぱり変わってきているんだということは認めざるを得ない事実だと思いますが、いかがでしょうか。
  32. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は、先ほど申し上げましたが、当時の、そのあなたがいまお読みになった憲法に対する政府の発言というものをさだかに承知しておりません。おりませんし、私たち選挙をずっとやってまいりました過程においていろんな議論をやってまいりました。やってまいりましたから、その過程において、憲法九条というものは平和を希求する民族の悲願であると、そのためには戦力はもとより、潜在戦力さえも禁止をするというような気持ちで読むべきだろうというような発言のあったことは、これは選挙の過程では、そういうことはありました。で、まあ特に社会党の皆さんと私たちがたもとを分かったのはそういうことでございましたが、社会党はそう読むべきであると言うし、われわれは、人類に幾ばくかの争いが存在する限り、みずからを守るということを憲法が否定するものであるはずがない、一体そんなところがどこの国にありますかと、こういうことで選挙を戦ってまいったわけであります。ですから、片山、芦田内閣時代御一緒であった皆さんともお別れをしなけりゃならなかったという歴史的経緯がございますが、いずれにしても、私の立場から言いますと、自衛のための戦力、国家の独立と尊厳を守るための必要最小限の自衛力というものを憲法は否定しておらぬ。だから自衛隊については、国はもちろん合憲であり、国民もこれを容認しておる、一貫してそういう演説をして当選してきたわけでございますから、私に関する限りは、そういう時代の変遷によって別々な憲法解釈を述べてきたという感じはございません。
  33. 上田哲

    上田哲君 少なくとも、今日政府が出されている戦力に対する解釈は、論理的に言えば循環論であります。同義反復であります。わかりやすく言えば、自衛力は自衛力を越えるものではないという、まことに妙なことばの言い回しになってしまうのです。  総理に率直に私はお伺いしたいけれども、防衛構想を軍によって進めよう、そうでないものによって進めよう、いろいろな意見があっていいと思います。しかし、いずれにせよ、今日三次防から四次防の中間に進んできている日本の自衛力整備計画なるものの実態からすれば、今日憲法学者の大多数が憲法違反であると言っている国論、そういう立場からして、この説明ではこのまま進めることは非常に不可能ではないか、いずれにせよ、そうした問題をもっとはっきりさせなければならない分岐点に来ているのではないかとお考えになっているのじゃないかと思うのですが、そこを率直に伺わせていただきたい。
  34. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は、いまの憲法というものは国民の間に定着をしておるし、自衛力というものは当然憲法が容認するものであるし、また、国民もそれを正しく認識をし、評価をしておるという立場に立っております。ただ、あなたが、そういっても、裁判所の一下級審であるとはいっても違憲判決が出ておるのじゃないかと、そういうことに対して一体全く国民の間に誤解や戸惑いが少しでも起きないようにするという考えはないのかと、こういうことで押し進められておると思いますが、それは、いま憲法を明確に自衛隊合憲でございますと改正すればいいですなという答弁もあるでしょう。しかし、私はそういう答弁をするつもりはないんです。まあ、このような、あなたのような発言が起こるという事実に徴しても、これは国民の生命財産と独立に関する問題ですから、これだけりっぱな憲法をつくってくれた先人は、もう少しそういうところを明確にしておいてくれればよかったなあという、しみじみたる思いはございます。思いはあります。しかし、二十五年以上も定着をしてきたこの憲法に対して、国民全体はわだかまりも持っておらぬし、すなおに、憲法上自衛権が認められるものであるし、自衛隊合憲であるし、国民のために必要なものであると、こう理解しておると私は思っているのです。ですから、これからどうしましょうというような問題は世論がきめる問題でございます。これは、学問的な面からいろいろなことをいって研究をする、憲法改正に対して条文的に検討するとか、いろいろなことは各党でもみなやっておったわけですから、自民党の政策綱領にもちゃんと書いてありますし、社会党の中にも、かつての憲法草案がございますし、共産党には、より明確な憲法改正草案があるわけですから、そういう意味で、学問的に政党がいろいろ研究することは、これは自由でございます。しかし、行政府の主管者としての立場で、あなたのいまの御質問に対して幾ばくかでも国民の間に誤解を起こさないようにするためにはどうすればいいのかという御質問に対しては、これはやはり重要な問題でありますから、国民がみずからのこととして、これはもう最高機関でありますから、国会よりもはるかに高い地位にある国民自体が考えていただける、そういう国民の趨勢というものを政府も議会も静かに見守っていくべきであろう、こういう考えなんです。
  35. 上田哲

    上田哲君 総理の御発言の中に、先人がもうちょっと考えておいてくれればよかったというような御発言がありました。やっぱり、いまの憲法を正確に解釈していけば、学問的な見解、それから国民一般の常識はきわめて一致する一点として、今日の自衛隊憲法違反であると、すなおにだれもが解釈をしております。この感覚をやはり総理も言い当てておられるのだろうと思う。やっぱりそういう見解をそのまますなおに言い当てていけば、これは憲法改正ということにならざるを得ない。で、今日まで、昭和二十九年以来政府は解釈改憲を行なってきた。鳩山総理が何とか改憲をしたいと言われる気持ちがあったのだけれども、実質的に必要な三分の二がとれなかった。そこで、条文の解釈をねじ曲げるという形の解釈改憲に終始されてこられたと私は思うんです。そこで、実態的に四次防というのが世界の数位の軍事力になってくるということになれば、やはり国民の目の前に無理になってくる。私は、その行きつくところ、憲法改正ということをお考えにならざるを得ない論理の上にいま乗っていると思うんです。一体総理は、そういう意味で、無理なく自衛隊増強をなされるために、自民党政府は、軍隊を強化しようというお考えも、これまた自由でありますから、その考えを実現をしていくために、どうしても改憲というところに踏み出されるのかどうか、ここのところをひとつしっかり承っておきたい。  それは、先般の十三日の本委員会質疑の中で、田中法務大臣は、将来のことはわからないが、改憲はやらないと言えばうそになる、理想として言えば、憲法ではっきり自衛のための手段を認めると明記するのが一つ方法である、いまのような解決を押しつけるのではなく、国民のコンセンサスが得られれば、はっきりさせるほうが理想的だということは腹中にある、ということを答弁をされておられます。これは、一つには、今日の自衛隊というのが憲法解釈の上で突き詰めることが無理である、通すことが無理であるということを認められたものであり、一つには、やはりできるならば、改憲ということを目ざしておられるのだということがあるはずであります。否定されるならばそこをしっかり否定していただきたいということが一つ。  それからもう一つ、もう時間がありませんので、まとめてもう一つだけ伺っておきますが、このような判決が出たわけでありますから、私どもは、やはり率直に今日までの自衛隊増強の無理を反省をされて、元来は直ちに控訴されずに、この判決に服されることが望ましいと考えております。しかし、控訴をされたにしても、たとえば、少なくとも直ちに今時点で防衛二法は撤回をする、あるいは自衛隊の具体的な縮小と申しましょうか、コントロールと申しましょうか、当面、三権分立立場からも、行政府司法府に対して明らかに法を尊重するという立場を示されるためにも、たとえば四十九年度概算要求の一兆一千五百七十億というような膨大な増強計画ではなくて、少なくとも今年度並みに押えるとか、その種の政治的配慮をなさることが正しいのではないか。大きく譲って、私はそこに一つ問題を詰めていきたい。  それから第三に、控訴審となっていく場合には、当然、本日まで政府側がその内容の開示を拒んでおられました、明瞭にされてこられなかった自衛隊戦力の内容、戦力とは何かということが大きな実態的な議論になると思います。先ほど来申し上げているような循環論の中で議論をあいまいにさせることではなく、この点について国民の前に明らかにされるということを、しっかりひとつお約束をしていただきたい。  以上三点、時間がありませんので、まとめてお尋ねをいたします。
  36. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 現在、改憲の意思はありません。これは明確にお答えをいたしておきます。改憲という問題は、これは民族的、国家的な問題でございまして、国民の成熟を待ってわれわれが動くべきものであるというふうに考えております。  憲法改正の問題は、確かに過去にはございましたし、過去に改憲できるような状態もあったわけです。それは、自由民主党が自由党と言った当時、三百名の議席を持っておったわけであります。その選挙には、在野第二党であった改進党は改憲論を国民の前面に打ち出して総選挙を行なったわけでございますから、衆議院において、現在の自由民主党がつくられるときの母体であったときの自由党と改進党合わせれば三分の二以上の多数があったわけでございます。参議院においては、御承知のとおり、申すまでもなく、自由民主党と緑風会を合わせれば三分の二、四分の三に近い勢力があったわけでございまして、改憲論を、改憲を実行する場合にはこの時期が最もよろしいという国民に強い発言があったことも事実でございますが、あえて改憲論を取り上げずして今日に至っております。今日はもう、憲法の条章のとおり衆参両院において三分の二以上の多数の発議によらなければ改正案を提案することができませんし、しかも、国民投票に求める前段階が不可能な状態でございますから、だから、改憲問題をするとしても勉強の城を出ないわけでございまして、自民党が勉強しているのも、皆さん各党が勉強しているのと同列のものである、このことでございまして、この問題に対しては、これは国論の帰趨を待ってわれわれがこれに対処しなければならないということの一語に尽きると、こう考えております。  第二の自衛隊……。
  37. 上田哲

    上田哲君 法務大臣の見解
  38. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 法務大臣がどのような状態で言われたかということは、ただ改憲に対して言われたのではなく、いろんな質問、質疑応答があって、その過程においてお答えになったと思いますので、これは、私と同じ内閣の閣僚でございますから、私の考えと同一でございます。
  39. 上田哲

    上田哲君 総理の腹の中にあるわけです。
  40. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、これは同一でございますから、主管者である私の発言と同断ということで御理解いただきたい。  第二は、自衛隊及び防衛二法等の処置についてでございますが、これは下級審であっても判断が出たんだからという御指摘はございますが、これは控訴もしておりますし、このような種類の法問題でありますので、裁判所の可能な限り早急な判断を求めたいということが、控訴決定しております政府の現在の心境でございます。しかし、それだからといって、初級審判断、二審の判決を待つまでの間防衛二法を取りやめたりというような考えは全くありません。それは、国民の生命財産を守る、独立を守るというポイントであるという防衛の重要性を考えますと、政府はこの判断を静かに待つとともに、政府考えが正しい、国民の大多数はこれを理解しておる、こういう前提に立っておりますので、遺憾ながら貴意に沿いかねるということで、防衛二法の成立に御協力いただきたい、こう考えます。  それから戦力ということについてでございますが、もう戦力問題は、自衛というものは憲法が許しておる、それは最小限でなければならない、ただ、最小限という憲法九条の認める範囲内を現在すでに越すおそれがあるじゃないかというようなお考え、われわれ政府や自民党は、そうではなく、憲法の定める自衛の力、自衛力の最小限のものであるという考えを、これはもうまじめにそう考えておるわけでございます。これはもう、違憲問題があるにもかかわらず、これを強行して得のある問題じゃありません。あくまでも専守防衛、だから相手というものやいろいろな情勢を考えながら、みずからを守る最小限ということを考えて実行しておるのでございますので、私は、戦力論に対しては、各国会ずうっと、過去から連続、国会で御発言がございままが、やはり地球の上をずっと見ていただいても、日本が持っておる自衛力は、これはほんとうに自衛力であって、憲法の禁止する戦力というようなものでないという認識を、まずひとつ明確に持っていただくとともに、日本は侵略をするとかいう気持ちは、これはもう一人もないと思うんです。みずからを守ろうという最小限の気持ちだけであって、脅威を与えたり侵略を行なったりという考え方はごうまつもない。これは私たちの子供も孫もそうだと思う。また、そういうような教育をわれわれはしなければいかぬのだ、こういう考えに立っておりますので、戦力論争がございますし、ほんとうに謙虚に耳を傾けておりますが……。
  41. 上田哲

    上田哲君 使い道だけじゃなくて、力そのものについての議論があるべきだということなんです。
  42. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いや、それはもう毎国会言っておるわけでございます。御発言がございますし、政府も何回もお答えをしておるとおりでございまして、これはひとつ御理解いただきたい。政府のためじゃないんです。独立国日本のためにひとつ御理解いただきたい、こういうことであります。
  43. 黒柳明

    ○黒柳明君 時間も短いですから、いま憲法問題で終わっておりますから、私も引き続き憲法問題で質問したいと思います。  総理は、ただいま憲法の解釈について——まず政府が違った見解は示してなかろうと、私はこう思う。これは私は、そういう個人の主体的なお考えでないか、こう思います。客観的に見まして。これは私もまた持ち時間が限られております。こう、過去の推移を見るまでもなく、近代戦を遂行するに足り得る力、また、いまの自衛のための最小必要限度、この二つだけをとってみて、はたしてこれは同じ解釈だと思いますか、総理内容は同じですか、この二つの政府見解というものは。いかがでしょうか。
  44. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 憲法で禁止をしておる戦力に自衛隊は該当しておりません、こういう考え方、大前提に立っているわけです。ですから、吉田元総理も近代戦遂行力と言うし、また侵略の目的たると自衛の目的たるとを問わず云々というように言っておるような記述もございますが、これは戦力という問題に対していろいろ議論をせられた過程の一節をここに記録しているわけでございます。ですから、憲法九条で規定しておりますものは、国際紛争を武力で解決をしないということを大前提といたしまして、そして戦力を禁止をしておるということでございます。しかし、自衛隊というもの、みずからを守る自衛権というものを否定するものではない。これは国際的にそんな国はないのでございますし、人類生きとし生けるものの常識であって、これは少なくとも明文があって自衛のためと——いかなることとを問わず、あらゆるものを持っちゃいかぬのだと、こういうことを言ってないわけです。そういう条文があればこれはもう問題でございますが、戦力というのは戦う力ということであって、これは子供同士のけんかの場合には、持てるものは戦力になりますし、竹やりも戦力になるわけでありますから。そうではなく、憲法九条で規定するものは、あくまでもこの憲法の大精神を貫く上での戦力を否定しておるわけでございますので、現在持っておる自衛隊はあくまでも専守防衛を任務としての自衛隊でありまして、九条にいう戦力ではない、この考え方は、これはもう大前提、それでずっと変わっておらないと思うのです。あなたが指摘されたような発言も吉田元総理はあったと思います。ありましたけれども、その吉田内閣が警察保安隊の提案をし、現行自衛隊法の提案をしたのは吉田内閣がやっているわけです。ですから、私たちはまあそのころは重要な職にございませんでしたから、さだかに、すべてだれがどこでどういうような質疑応答をしておるのかということはつまびらかにしておりませんけれども、私は、政府がとってきた自衛力に関する統一的な考え方というのは一貫しておる、これは侵略を絶対にしない、全く防衛的なものであるという考えには変わりはないと、こう思います。
  45. 黒柳明

    ○黒柳明君 若干私の質問と総理の御答弁が違うように私は思うんですけれども一近代戦を遂行する力、それと自衛のための最小必要限度、この内容は同じか。総理は同じだと結論をつけられたと思います。ただし、近代戦争を遂行する力、これは法制局にちょっと……。時間がありませんけれども、完全にこれはやっぱり核というものが想定されると思うのです。それと自衛のために必要な最小限。それじゃ核を除いたすべてのものはいいのか、こうなるんじゃないですか。どうですか、総理
  46. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 憲法で規定をしておりますものは、侵略をしないということが大前提でございます。国際紛争は武力で解決をしないという理想を高々と掲げておるわけでございます。しかし、現実的には局地紛争はあり得る、そういう現実に対処して自衛力というものは必要である、日本の持っている現在の自衛力はその自衛力の範囲内であり、国民の最小の負担でまかなうべきものだと、こういうふうな理解に立っているわけでございます。まあ確かに、ここだけ見てもよくわからないのです。わからないのですが、侵略の目的たると自衛の目的たるとを問わず戦力の保持は禁止されている云々という発言をさしておられると思いますが、近代戦ということを全然前提としないで自衛ということを考えれば、ある意味において、竹やりしか持っていかぬのか、こん棒しか持っていかぬのか、銃はいいけれども機関銃はいかぬというのか、機関銃はいいけれどもその上どうするのかという問題が出てくるわけです。これは、相手がどんどんと変わってくるという場合には、憲法のワクを踏まえながら、しかも自衛の目的は達成しなければならないということは、これはもう現実的な問題でありまして、私は議論の問題じゃないだろうと思います。
  47. 黒柳明

    ○黒柳明君 ですから、相手がどんどん変わってくる可能性がますますこれからあると思いますね。それに伴って、こちらもどんどんエスカレートする。五次防、六次防、ますます国民の税金は防衛にかかる、こういう見解、間違いないですね。
  48. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そこはちゃんと歯どめをしてるわけです。この間、提出をしたものをまた引っ込めろということで、政府はすなおに引っ込めましたけれども、四次防というものに対して、一体将来日本の持つ自衛力の限界、これはむずかしいんですと、むずかしくても出せ、こう言われたので、あらゆる知恵をしぼって想定をしまして、陸上、海上の艦艇の隻数さえも出したわけでございますし、また、日本が考えております自衛力の限界というものに対しては、こういう目標を立ててこういうものからその範囲内でなければならないということは明確に述べております。  もう一つは、憲法の禁止しておるとか禁止しておらないとかということは別にして、非核三原則、これは絶対に守ってまいります。兵器は輸出をしない、というようなことを原則にしておりますので、相手が大艦巨砲、それよりももっともっと大きくなるから無限大に大きくするというものじゃない。しかも、力だけではなく、外交の問題とか経済の問題とか、あらゆるお互い理解を深めるという人類の英知を傾けることによって自衛を全うし、日本の存続をはかってまいろう、こういうことでありますので、無限大になどということは全く考えておらない。
  49. 黒柳明

    ○黒柳明君 総理のおっしゃっている第九条一つをとっても、歴代内閣の解釈は変わってないというのは、これは無理なんです。変わらないのは憲法主権在民、人権尊重、平和主義、この大綱は変わらないんじゃないですか、過去も将来も不変に。ところが、憲法、生きものじゃないですか、憲法は。やっぱり時代時代に応じて変わらざるを得ないんじゃないですか。言うならば、憲法条文はある意味の形式じゃないですか、ある意味では。現に、戦争が終わって変わったじゃないですか。  だから法務大臣も、先日、十三日に、私の言うのは正直なんですよ、将来は言えないんですよ、変わるとも言えない、変わらないとも言えない、私は内閣一正直ですよと、こういうふうにおっしゃった。まあ内閣一と言ったかどうかわかりません。正直なんだよと、こう言った。確かに私もそう思うんですよ。だから、総理がおっしゃっていますね。変わらないというのはあくまでも精神、憲法の精神。ところが逐条解釈は変わっているんですよ。現に変わっています。それを変わってないといって、近代戦と自衛のための必要最小限度と結び合わせて、変わってない変わってないとおっしゃっているのは、総理お一人の考えなんです。無理にこじつけている。だから、憲法の逐条解釈も変わるし、これから条文だって、ある意味では形式だから変わる可能性があるんじゃないですか、これから何かのときがあれば、何かの動機があれば。どうですか。絶対不変のものですか、憲法というのは。そんなことはないでしょう。
  50. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お時間がないのでそういう御質問になると思いますが、あなたは先ほど、歴代総理大臣が言っていることに変わりはないかということでございますから、私の知る限り変わっておりません、それは憲法を踏まえる大精神というものに対する考えは変わっておりません、そうして、自衛隊憲法九条でもって禁止をしておる戦力でないという考え方も一貫しておりますと、現在持っておる自衛隊が最小限のものであり、憲法の容認する合憲的なものであるという考え方も変わっておりません、こう申し述べておるわけでございます。  一般学問論とでも申し上げましょうか、憲法条文というのは一切変わらないのかと。これは、新しい憲法に実際なったという歴史的事実もございますから、これは国民がきめることであるということであって、いまお互いも研究していますよね。私の政党でもまだやっているんです。やっている人があります。皆さんもみなおやりになっておる。いま皆さんがほんとうに野党連合政権などというときには、憲法をどうするかという問題が一番大問題になってくると思うんです。  そういうことで、お互いは勉強しておるけれども、政府がこれをどうするとかということよりも、やっぱり最終的には国民判断をすることであって、政府が将来こうあるべきものであろうというようなことを申し述べるものではないと、こう述べておるわけです。で、学問的な議論と、政府がいま政府の主管者として国会で答えなければならないものにはおのずから区別があるということは、これは御理解いただけると思うんです。私はそういう意味で申し上げております。
  51. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあ、国民国民がと。要するに、代表する国会で、わが党は絶対憲法を変えると、こういうことはありません。  いま国民国民と盛んにおっしゃいますんでね、それじゃ国民のほうを基盤にした論議にしたいと、こう思います。絶えず総理も、長官も、国民に愛される自衛隊、それから国民の支持する自衛隊にならなければいけない、当然国益を中心にしたコンセンサスを形成しなければ防衛論というものはうまくないと、こうおっしゃっておる。当然いまもそのお考えは変わりないと思う。これはもう質問、答えは必要ないと思います。ところが、もしそういうものが変わりないとするならば——先般もこれ、やったんです。長官と。いまのこの違憲論というものを踏まえて何らかのやっぱりコンセンサスを形成しようというならば、国民認識、それに対して政府がやっぱり目を向けなければならないときはいまじゃなかろうか。ほんとうにいまのまんま突っ走っちゃって、いや憲法に対する主観の相違だ、下級裁判所での見解だと言って、政府が、いまの自衛隊——だから、各所において地方公共団体がみんな、公共施設は貸さない、募集はしないと。どんどん、ますます国民から遊離する自衛隊になっておることは現実でしょう。どうですか、総理、これ、どう認識します。
  52. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は、国民は、黙っておっても、現実はちゃんと認識をしておられると思いますし……。
  53. 黒柳明

    ○黒柳明君 してない。
  54. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) しておりますから、戦後二十五年間も自由民主党の政権が続いているんです。
  55. 黒柳明

    ○黒柳明君 いや、それは飛躍だ。
  56. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これはもうそのとおりなんです。そうでなければ、これほどの大問題を、二十五年間、十一カ月に一回ぐらいずつ選挙が行なわれてきているわけです。これはもう衆議院選挙だけじゃありません。参議院の通常選挙も、とにかく地方統一選挙も、数えますと、四半世紀にわたって、その間には、いまよりももっともっと困難な社会的な世相を背景にして行なわれたときでも、みんな、自衛隊違憲論とか憲法論とか再軍備論とか、これを前提として国民に訴えて判断を求めてきたわけであります。ですから、長沼ナイキ事件に対しましても、来年はちゃんと参議院の通常選挙があるわけです。国民が、自民党を支持するとかじゃないんです。政策そのものに対して是か非なりかということは国民判断をされる以外にないと私は思うんです。ですから、国会において多数であるというようなことをもって申し上げておるんじゃありません。やはり、これらの問題の解釈そのものは国民がちゃんと判断をしておられると。何回国民判断をされても自分の説のみが正しいという判断には、遺憾ながら首肯しません。
  57. 黒柳明

    ○黒柳明君 私は何も、自分の説だけが正しいと言っているわけじゃないですよ。わが党も、必要最小限度の力を持とうと、こう言っているんです。決して自衛隊はまっこうからだめだと言っている党じゃありませんよ。総理、いいですか。ただし、客観情勢が全然違う。いまみたいな、こういう中で持つということじゃない。もっともっと外交、平和手段をどんどん進めていく、そしてそのある一定の時期が来たらば必要な力を持とうと、こういう党ですよ。いいですか、総理総理の私に対する答弁が、どうも、おれの言っていることは正しいんだという大前提でものを言っている。だから答弁がどうも食い違って、私のまじめな、謙虚な、一国民のほんとうの真心を代表しての質問とすれ違おうすれ違おうと、あいつの質問とかみ合うとうるせえから、すれ違っていこうというようなね、何か私は——まあ私の邪推かもわかりません。こう認識をします。  私がいま質問したのは、明らかに、あの判決以後、地方公共団体——国民の代表ですよ、ある意味においての。あるいは種々のところで、国民から自衛隊がまた非常に冷やめしを食わされることは事実じゃないんですか。これは、おれのほうが正しいんだ、おれのほうが選挙で勝っているじゃないか——これは別ですよ、総理考え方が。それに対してどう認識するんですかと、認識論だけです。私は賛否を言ってません。
  58. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 確かに、御指摘のとおり、ある地方公共団体は募集さえも中止をしておるということは報道で承知しています。はなはだ遺憾なことだと考えます。これは遺憾なことである。自衛隊の隊員に対する住民登録を拒否したという例もございます。まあ、これはもう法律違反でありますから、処置する方法がございます。これはしかし、法律の処置を待たずして良識的な解決が行なわれたということでありますので、私はやはり、これらの問題に対しましてはね、時も解決をするだろうし、また、国民的な世論というもので解決をしてもらえるというふうなことを考えております。ただ、この自衛隊の隊員募集という問題に対しては、委託業務をやっているわけでございますから、これは、そういう意味で、その住民登録を拒否したというような問題とは違います。違いますが、そういうような事態が現存するということは私も承知しておりますから、これは、自衛隊政府も、こういうことのないように努力を続けなければならないということが第二であります。  第三は、自衛隊の隊員という、ほんとうに日本を守ろうというために若い生命を自衛隊に置いている多数の諸君がおられるわけです。そういう諸君に対して今度の判決が及ぼす影響ありとせば、政府は、そういう問題が起こらないように全精力を傾けなければならない。これは、政府が中途はんぱな考えなら別ですよ。そうじゃないですから。政府は、諸君の任務は重し、ほんとうに必要なんだと、こういう前提に立っておるわけでありますから、これは自衛隊の隊員にいささかでも不安が起こらないように全精力を傾けなければならないことは政府の責務であると、こう考えております。
  59. 黒柳明

    ○黒柳明君 しかし、現実には、今度は、革新知事会あたりでもこの問題は相当、断片的な地方公共団体じゃなくて、やっぱり相当まとまった力になって反自衛隊運動が起こることは間違いありません。総理が具体的にどんな対策をとるのか、これはもうまるっきり未知数である。だから私は、国民に愛されるとか、国民に支持される、あるいは憲法云々といったってですね、ともかく、失礼ですけれども、総理独走、自民党独走、ますます国民との差は、この防衛論議、自衛隊の問題は離れて、水があいていくと、こういうふうに思っております。  時間がありません。統治行為について一、二、それからもう一つ、この国内の問題、さらに尾を引くでしょう、さらに国際的な問題でも尾を引くであろうわが国をめぐる防衛構想、それをまとめてお伺いいたします。  第一点は、統治行為ということは、五十九年ですか、砂川判決、あの前後を見ましても、これは国内の学説、学者の意見というのはやっぱり少数意見です。それを支持するのは。あくまでも政府自民党だけ、これが、ある意味においては自分の保身のために統治行為というものを先行さして、行政司法に介入するという一つの非常におそれを抱かせたわけです。国内的にはまだこれ、少数意見であると私は認識しておりますが、総理はどう思われますか。  また、私先ほどから言っている、総理も言っている国民認識、この国民認識は、またここで、いや自衛力の限界というものは司法ではさばけなないものだ、政治で解決するもんだと、ここに関与すると、さらに国民認識は、自衛隊に対して背を向けていく方向に入ると思います。行政司法に介入したんじゃないか、そういう素朴な感情が起こってくると思う。総理はこれ、どう思いますか。  最後にもう一点。すみません、時間ありませんものですから。約束の時間です。これは国内の意見、さらに尾を引くでしょう。最後に、国際的には、言うまでもなくキッシンジャー構想、これも、決して見のがせない国内外の大きなわが国をめぐる国防問題に発展すると思います。間もなく外務大臣が国連に行って、そうしてキッシンジャー補佐官と話し合うでしょう。はたして、政経と防衛とを分離した、だからわが国もヨーロッパみたいに歓迎するという原則でここに加入するのか、加入しないのか。さらには、間もなくソ連へいらっしゃる。当然、わが国をめぐってアジアならアジア安保構想という話も出てくるでしょう。そして総理の太平洋諸国の会議という問題も出てくるでしょう。そういうキッシンジャー構想、あるいはアジア安保構想——若干アジア安保の場合には内容は未知数ですけれどもね、キッシンジャーのほうが相当具体的にあらわれている。そういう国際的な、米ソ、キッシンジャー構想、アジア安保構想、そして総理の太平洋アジア諸国会議、ここらあたりの、これからの国際的な大きな日本の防衛について、総理が、当面、また国連において、ソ連を訪問したとき、どういうふうにこれを考えられるのか。あわせて、すみません、時間が過ぎますが、お願いします。
  60. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 三権分立基本はもちろん順守してまいっておりますし、行政司法に介入するような意思は毛頭ないということは明確にいたしておるのであります。ありませんから、法の定めに従って控訴をしておりますし、ちゃんと制度上を守っております。政府も、なるべく、御質問がなければこの種の問題に対しても発言をしないようにということで、私も、判決があったという事実は政府拘束するものではないという前提に立っておりますけれども、しかし、あった事実は、お答えをいたしましたとおり、認識をいたしておりますと、この述べておるわけでございます。で、この違憲問題に対しては、違憲裁判所であるという規定がないということで、いろんな問題があるにしても、裁判所はしかるべく決断を下される、最終審までには明確な決断が下される、こういうことを私は信じております。で、その上に、三権の中でもより優先をする立法機関、国権の最高機関という条文が働く立法府もあるわけでありますし、その上に国民の最終的な判断機関としての国民投票というものが存在をしますということで、私も、憲法の精神をみだるような気持ちは行政府としては全くないということをこの際明確にいたしておきます。  キッシンジャー構想やアジア安保構想、その他に対しての御言及がございましたが、日本は大前提として国連中心主義が外交の基調でございます。その意味で、国連がよりよい平和機構として完成をすることを望んでおりますし、日本も積極的にこれに協力をいたしております。国連が集団安全体制、全世界の集団安全体制ができることが望ましいことであって、究極の目的は人類の平和のために、沿うものだと私は考えております。しかし、現実はおおうべくもないものでございますので、現実的には、いかなる状態が起こっても日本の安全と国民の平和な生活が脅かされることのないように努力をしなきゃならないということを考えております。  キッシンジャー構想につきましては、これは、まだ内容はさだかにされておりませんが、日本、アメリカ、ヨーロッパの国々があらゆる面に対して相談をするということでございますから、これは私は、エネルギーの問題、国際通貨の問題、あらゆる問題に対しても必要なことでございまして、日本はこの考え方に対して基本的に賛意を表しておることは事実でございます。事実ではございますが、しかし、これが安全保障の問題、防衛力の問題等に及ぶような場合は、日本の憲法の制約もございますし、日本自体はこれにその面から参加をすることはできないということも明らかにいたしております。これは、新聞の報道するところ、アメリカ側でも、日本が参加をするという場合でも、防衛力を除いた面でお互いが世界の平和に寄与できる、拡大基調を維持しながら南北問題や人類の平和のために維持し、貢献できる状態においてのみ日本が協力をするということでございますので、基本的に同調しておるということは申し上げております。  ソ連が提案をしておると伝えられるアジア安全保障機構というものに対しては、これは、もう内容もさだかでございませんし、私がここで政府考えとして述べられる段階にないということだけは御理解をいただきたい、こう思います。  それからアジアの問題に対しては、各国がいろんな議論を持っておるということは事実でございますが、この問題に対しては、まず南北ベトナムの平和復興という問題に対してお互いが協力をし合おうじゃないかということでございまして、これは国連の既存機構、それから新しい機構が設立できるならば喜んで日本も参加をすると、こういう考えでございまして、平和のために日本の平和憲法の精神を全世界にあまねく及ぼしたいという悲願に立っての考え方である、こう理解をしていただきたいと思います。
  61. 中村利次

    ○中村利次君 これは質問ではございませんけれども、先ほどからの総理の御答弁の中に、私、たいへん気にかかることがございましたから、まず最初にそのことに触れておきたい。  何回選挙をやっても自民党が絶対多数を制しておるんだと。そのとおりであります。しかし、これは、総理憲法違反の疑いがある現行選挙制度のもとでの絶対過半数でございまして、支持率からいけば五割を割って、あるいは四割台で衆議院で圧倒的多数をとられておるわけです。むしろ、憲法のすなおな解釈に従った正しい選挙制度の改正こそが、これは望ましいのではないか。これは関係ございませんけれども……。  それからもう一つ。現行憲法九条に対する歴代政府の解釈、国会答弁等は、制定当時から、年とともに、時とともに、少なくとも表現の上で変わってきておるということは、これはまぎれもない事実ですね。現在の自衛隊の呼称そのものが、警察予備隊で発足をし、それから保安隊になり、現在の自衛隊という呼称の変遷もあるわけでありまして、大体、百歩を譲っても、呼称程度の表現というものは変遷しておるということは、これはまぎれもない事実だと思うのです。これも、私はいま質問や議論の対象にしようとは思いません。  今度の長沼判決によって——現在の自衛隊政府合憲とされておるわけでありますけれども、長沼判決では、一審の判決ではございますが、これを明らかに違憲として、そして政府見解とまっこうから対立をしたわけなんです。今度の長沼判決では違憲審査権行使をしたわけです。最高裁の砂川判決では違憲審査権行使はしていらっしゃらない。そういう差はございますけれども、少なくとも、政府も、それから最高裁も、今度の長沼判決も、一致点がないかというと、私はあると思うんです。それは、国に固有の自衛権があるということ、それからその自衛権に伴う自衛措置については最終的には国民判断によらなければならない、こういう一致点はあると思うんですが、これは総理、いかがでしょう。
  62. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それはもう、そのとおりでございます。ですから、新憲法の改正に対しましては、衆参両院において三分の二以上の多数の発議を前提とし、しかも国民の直接投票によらなければならない、こう規定しておりますから、これはもう、憲法条文にいろいろな疑義があるというようなことがあって、それを明確にしなければならないという事態を前提にして考える場合には、最終的に決定されるのは、国会の議決でも何でもなく、国民の直接投票によらなければ判断は行なえないということは憲法明定がございます。
  63. 中村利次

    ○中村利次君 ちょっと私の質問の趣旨を総理が取り違えられたようですが、これは、改憲は確かに国民の直接投票による賛成を得られなければならない。この自衛措置、自衛権に伴う自衛措置そのものも、最終的にはやはりこれは国民判断によらなければならないという、これは、最高裁にしても、今度の長沼判決にしても、同じ意向でありましょうし、政府も同一意向である、私はこういうぐあいに解釈をしておるのです。
  64. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 自衛権に関する問題は、これは自衛権あり、それから憲法九条は自衛権を否定しておらない、自衛隊は九条の制限内のものである、そしてその予算、その構成その他は政府行政の権限だけでは行使しておらぬわけであります。国会の最終的結論をもって実行しておるのでございますから、これはもう、それで合憲であり、適法であり、これ以外に法律はない。まああなたは、これほど議論があったら、自衛隊合憲であるか違憲であるか、国民審査法のようなものをおつくりになってやってみたらどうだという御意見かもわかりません。そういう議論も確かに以前あったのです。国民投票法というものをつくって、いろんな議論があるときには直接投票によらなきゃならないという条文を援用して、そういう法をつくったらどうかという御提案がございましたが、それは国会の権能をみずから否認するようなものであって、憲法は、国会は国権の最高機関であると規定してあるのに、国会がみずから処理ができないといって、国民に未熟な状態における案件を持ち込むことは適切ではない、こういうことになっておるわけでございまして、いま全く問題ないと思うのです。
  65. 中村利次

    ○中村利次君 どうもこれはやはり議論がかみ合ってないのですよ。私はそういうことを言っているのじゃないのです。一致点もあるという……。  ですから、これは時間が短くて、なかなかそういうかみ合いの議論ができないというのが残念ですが、少なくともこういう議論長沼判決を契機として国会で行なわれているということは、私はたいへんにこれは意義のあることだと思うのです。だからこそ、わが田に水を引くわけじゃございませんけれども、私ども民社党は、防衛委員会等を持って、やはり国に固有の自衛権があり、それから自衛措置はこれはどうすればいいか、必要最小限度の自衛力はいかにあるべきかというような、そういうことを国民とともにやはり真剣に追求をすべきであると、そういうことを提唱してきたのですが、なかなかこれはものにならないのが残念ですけれども、たまたま一審ではあっても違憲判決でこういう議論が出ている。  そこで、再び私は総理にお尋ねをいたしますけれども、やはり国民の合意、それから与野党であっても、反対であっても、理解をする、いわゆる自衛の措置とは何だという、そういう議論というものを尽くすために——あるいはこれはシビコンの問題がありますよ。文民統制の問題が。議論は盛んにされますけれども、その実をあげているのか、あげていないのか、これもなかなか合意に達しない。そういうものを含めて、あらためて防衛委員会等をおつくりになって、国民の前に十分に審議を尽くすという、そういうお考えがないかどうかをお伺いしたい。
  66. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは全くただいまの御説には賛成でございます。これはこれだけ重大な問題であるという自衛力の問題でございますから、私はやっぱり、これは普通なら野党の方々から防衛委員会の設置——国防委員会でも防衛委員会でもいいと思うのです。そしてあらゆる角度から広範な議論をしていただくということが望ましい。これは、法律案を出して、法律案に付随して議論をするというだけではなく、私は、専門家も呼ばれて、また世界各国の歴史もありますし、百四十も国があるわけでありますから、その国の一つずつが、国民総生産に対して幾らの予算を組んで、どのような犠牲を忍んでさえもなお防衛力を必要としているかというようなことについて、もうちょっと勉強していただけばすぐわかるような例が凡百となくあるわけでございますから、そういう問題をほんとうにまじめに国会でもって議論していただく、そういうことは政府は多年望んでおることでございまして、これはもう御賛成を得られるなら、自由民主党提案といたしまして、国会法の改正案を提案いたしてもけっこうでございますし、政府は正式に国会に要請をいたしてもけっこうである。私は御説に賛成です。
  67. 中村利次

    ○中村利次君 たいへんどうも積極的な御答弁をいただいて、ぜひ私ども民社党はそうありたいと日ごろから主張しておりますし、こういう機会に強調をしておきたいと思う。  そういう意味で、自衛の措置について、たとえば今度の長沼判決では、危急の侵害に対し、たとえば警察をもってこれを排除する方法とか、あるいは群民蜂起の方法、あるいは財産没収、あるいは国外追放等が具体的に問題提起されておるわけでありますけれども、これは率直に言って、私は——私だけじゃなくて、はたして国民がこれで自衛の措置が足れりとするのかどうか、これは大いに議論のあるところだと思うのです。ですから、違憲判決としてまっこうから政府と対立をした長沼判決の具体的内容を見ても、日本の防衛、自衛権はいかにあるべきか、自衛権はこれはもうどこでも認められているのですから、それに伴う自衛措置はどうあるべきであるかということは、大いに議論のあるところですから、ぜひそういう場をつくるように積極的な御努力を私はあらためて要望したいと思います。  それから、もう時間がございませんから……。今度の長沼判決によって、地方自治体等で募集事務の返上等が相次いで起こりそうな状態ですね。それからもう一つは、もっとやはり問題なのは、自衛隊に対する応募者が非常に少なくなっていくんではないか、そういうことが非常に危惧されるわけですね。そういうことはあり得る。いまですら、どうも警察官もいろいろ問題を起こしておるようでありますし、自衛隊員も、本来ならば純真な青年であるのに、自衛隊員として不祥事件を起こしておる。まあ、失礼な話ですけれども、相当これは質が低下をしておるということがいわれておる。なおかつ、陸上自衛隊、これは今度十八万人にされようとしておるわけでありますけれども、これは私どもはナンセンスと考えられるほど——十七万九千人の定員ですら二万数千名、常に充足されていない、欠員状態にある。ますますそういう問題が今度は深刻化してまいりますと、この判決を契機として自衛隊のあり方等について見直す必要があるのではないか。その意思がおありかどうか。  もう時間がございませんから、私は全部ひっくるめてお伺いをいたしますけれども、そういう問題をいろいろ含めて、確かに私も、これは法律論からいけば、政府は高裁に上訴をされたわけでありますから、一審の判決拘束力がないということは、これは司法のたてまえからいって政府の主張されるとおりです。しかしながら、とにかくやはり一審の判決であっても、こういう長沼判決違憲であるという明確な答えが出た。なおかつ、現在の自衛隊そのものについても、国会において、あるいは国民世論において必ずしも——政府国民の大多数は支持するとおっしゃいますけれども、いろいろ問題がある。  そこで、長沼判決違憲と出たから、したがってこうするんだということになると、政府はそんなことは断じてやらないとおっしゃるでしょうけれども、そうじゃなくって、やはりいろいろ問題のある現在の自衛隊は、政府立場に立っても、少なくとも現状の程度に凍結をして、そして先ほど私が提唱いたしましたいろいろな自衛措置について国会でも議論をする、国民の合意も求める。あるいはそういう間には、数年たてば高裁から最高裁判決も出るでしょう、どういうことになるか。そこまで現在の自衛隊の装備、能力等について凍結をされる、それくらい謙虚なお考えがあるのかないのか、こういう点をお伺いをして、私の質問を終わります。
  68. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 自衛隊の士気に判決が及ばないように政府は努力をいたしてまいりたいと、こう考えております。まあ自衛隊というのは、恵まれない立場にある。これは給与、身分、あらゆる面に対して私はそう思います。曹士の階級というような、そういう尉官以下の諸君というのは四十歳足らずでもって定年だ、三十数年で定年だと。まあ人生の一番いい青春を自衛隊に籍を置くということで、社会に出てからも必ずしも、恵まれておりません。だから、制度上の欠陥ありとせば、それも直さなければいかぬ。私はそういう意味で、いま自衛隊という中でもっと教育制度を完備をしたりして、自衛隊から社会に移籍をする場合には、そのまま国民総生産に寄与できるように、また、みずからの家庭や自分の生活も向上し、確保していけるような、そういうほんとうにきめのこまかいあたたかいというか、当然なすべきやっぱり制度やその他の充実もはかっていかなきゃいかぬと、こうしみじみと感じております。  で、このような一部世論というか、国会でも議論をされておる、ある意味において日陰のような立場に置かれておるとさえいわれておる自衛隊の諸君が、ちゃんと応募をして、日々隊務に精励をしておるということは、やっぱり日本人の国を守ろう、平和な国を築いていこうという熱意の私はあらわれだと思います。そういうものに対して積極的に国会理解も得、国民理解も得ながら、身分や制度やその他に対しても努力を続けてまいらなければならないと、こう考えております。  それから今度判決があったのは初級審などと言わないで、凍結したらどうかという、そういう考え方もわからなくないのです。わからなくはありませんが、それ以上に大きな問題がある。それは自衛というものは国民の生命と財産に直接影響があるものである。独立と尊厳に直ちに関係をするものであって、政府が適法な措置をしなければならない。いささかも違法性や妥当性のない行為をとってはならないということは当然でございますが、しかし、政府憲法において、法律において求められておる公的職務、責務を果たさなければならないという立場から考えてみまして、いま自衛力そのものを凍結をするとか、もっと極端に言えば、防衛二法案も少し慎重に審議していただいてけっこうですというようになったらどうかという言外の御発言でございましょうが、それは重き政府の責務を果たすゆえんではない、こういう考えでございまして、先ほども述べておりますとおり、よろしくお願いしますと、こう申し上げております。
  69. 岩間正男

    ○岩間正男君 長沼判決は、自衛隊は陸海空三軍であり、憲法違反であるということを明快にこれは判示をしたのです。ところが、総理はこれに対して否定される。まあ上訴中でありますけれども、一体その根拠はどういうことなんですか。根拠をはっきりしてほしい。
  70. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 間々申し上げておるとおりでございます。これは、自衛隊は自衛のための力でございまして、憲法九条で禁止をしたものではない。長いこと国会で申し上げておるのでございまして、これはほんとうにそう信じ、事実そうである、こういう立場に立っておりますから、長沼判決を首肯するわけにはまいりません。
  71. 岩間正男

    ○岩間正男君 総理にお聞きしますが、世界の軍隊の中で、自分で自衛のための軍隊でない、自分は侵略軍だと、こういうことを規定した国というのはない。全部これは自衛のための軍隊だ、こういうふうに言っていると思うのでありますが、この点はいかがですか。何かこの例外の国はございますか。
  72. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 憲法九条にはどう規定してあるかというと、これは御承知のとおり侵略的な軍隊を持ってはならない、戦力を持ってはならない、こう規定しておるわけでございまして、国際紛争を武力で解決をしない、これはもう二つ合わせれば憲法九条が禁止をしておるものが何であるかということは何人も理解するところでございます。日本の自衛力というものは憲法九条で明記してある戦力ではないと、これは自衛のための自衛力である、こう述べておるわけでございます。また事実そうであります。あなたの言われることは、戦力という面だけから取り上げるといろいろな問題が起こってくるのです。子供同士のけんかの場合の戦力は小さい棒でも戦力になるわけでありますし、出刃ぼうちょうもときには凶器になり、戦力になるわけです。学生が多数棒きれを持って、これは戦力になるわけですから、そういうものは憲法九条で禁止をしておる戦力という考え方で解釈すべきでないことは言うまでもありません。国際警察というものは、警察という名前でも警察と軍隊というもののどこに差があるかと、これはいろいろ憲法制定当時から今日まで議論をしてきたことでございまして、問題となっているのは、自衛隊憲法九条に禁止をしておる戦力であるかないかということだけが議論になっておるわけでありまして、これは戦力論争としては学問的分野で戦力論争をやるべきであって、いま問題になるのは、自衛隊憲法九条で禁止をしておる戦力ではない、こう明確にしておるわけです。
  73. 岩間正男

    ○岩間正男君 飛行機三機ぐらい持っていても軍隊であるという世界の通念、そういう国もあります。そういう中で日本のいまの戦力、四次防を遂行すれば世界第七位の戦力を持つというその国が通用しますか、それは政府だけの解釈です。学界でもどうですか、多数意見としてこれは九条違反の戦力であるということは明確でないですか。政府はいままで進めてきた自分の自衛隊をとにかく増強してやってきた、そこをあくまで既定方針として遂行する、そういう立場に立っているからいまのような議論になっているのじゃないですか。いわば井戸の中の議論みたいになっていますが、国民国民がと言っていますが、国民がどう判断しているか、これについてもはっきりしているのじゃないですか、この正体を明らかにすればいい。いま持っている自衛隊の実態というものを明確にしたらどうですか。その点からも、今度の判決は、これが明らかにされているということは特徴的だ。総理はどうですか、判決を詳しくお読みになりましたか。
  74. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 自衛力というものは憲法九条で禁止をする戦力ではないというのは、保安隊法の設置のときから、自衛隊法設置のときから答えているのです。吉田さんが、与党の皆さんの質問で、大砲を持っても、飛行機を持っても戦力でないか、戦力でありません、こう答えている、はっきり。これは当時——ずっと一貫しておるところじゃありませんか。しかし、それは憲法の精神は自衛力は禁止をしておりませんと、これはみんな認めているでしょう。自衛力禁止とか——自衛力というものは相対的なものでありますから、相手に対して自衛が、完ぺきに守れるということでなければならないということであることはもう疑う余地のないことであります。ですから問題は、侵略をしない、侵略の意図は全くない、これはポイントなんです。憲法の。もう一つは、国際紛争を軍隊を持っていって、力でもって過去のような解決方法はとりません、こういうことを受けての憲法九条の規定であるというのは憲法制定時代から一貫しておる。国民理解しておる、憲法に賛成した国民判断はそこにあるのです。これは一貫しておるのであって、あなたと議論をするつもりはございませんが、政府考えていることはこじつけでも何でもない、全世界的に認められるものである、こう思っております。
  75. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういう答弁を繰り返しておられるのですが、全く先ほどから指摘されておりますように、この戦力論争というのは循環論です。自衛は戦力でない、戦力は自衛力でない、こういう循環をやって答弁をしておるわけでありますけれども、問題は、その保有する軍隊がいつ侵略軍に変わっていくかわからない、そういう性格を十分に備えているかどうかということが非常に大きな問題になっているわけです。この点についての一体検討、反省というものが十分にあるかどうか、これがいま大きな問題です。大体今度の判決に対する尊重のしかたがこれは非常に足りないと私は思う。今度の上訴の理由などというものの中でも、もうほんとうにこれを尊重する立場に立っていない。ところが、どうですか、今度はこれは民法の問題でありますが、刑法の場合だったら当然判決ができる、そうしてこれは刑事犯になる。そうすれば身柄は拘束される、さて上訴をする、上訴をすれば初めて保釈ということになるでしょう。しかし、保釈中といえども、これは非常に第一審というものに拘束されるんです。そういう前提に立てば、これは刑事犯ではございませんけれども、政府はいまいわば保釈中みたいなものじゃないですか。そういう立場に立って一体この問題を真剣にこれは考えているかどうか。私はこの点の態度というものは基本的に、もうこの前から論議をしてきておりますけれども、非常に十分でないと思いますね。どうなんですか、その点は。
  76. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 行政裁判と刑事裁判を一緒にしておるというようなところにもうもともとスタートから間違いがございます。そういう立場議論をされておればもう的確なお答えはできません。これはもう社会がこれを認めない、そういうことでございます。  それからまた上訴理由書は、控訴理由書はいま作成中でございますから、いずれ必要があればいつでも国会へお届けをいたします。お渡ししますが、私は先ほどから述べておりますとおり、遺憾ながら、ほんとうにあの判決そのものに対して、行政責任者である政府がこの行政訴訟を受ける立場であるというだけでなく、私の乏しい判断力からしても、私の乏しいほんとうに浅学短才の立場からしても、あのような判断は首肯しません。
  77. 岩間正男

    ○岩間正男君 だから、私は具体的にお聞きしたいんですがね。だから、総理はあの判決を詳しく読まれたか、その上に立っているかと。あの判決を見れば違憲の理由はこれはいろいろ出されております。  第一に、先ほども問題になりました平和生存権の問題。平和に生きる権利というものはこれはもうはっきり確認されている。この憲法前文の精神は全条項を貫いている。ところが、ナイキ建設並びにこれに伴うところの保安林の解除というものは、全くこういう点ではもう平和生存権というものを脅かしている。こういう点がはっきり第一点。第二点は、自衛隊そのもののこれは内容になっています。たとえば治安出動の問題がありますね。第三点の問題は、日本の自衛隊はまさにこれはアメリカの補完部隊としての性格をあらゆる面から持っておる。これについては松前・バーンズ協定とかその他の六項目をあげてこれは詳細に判決をしているわけですね。こういう点についてやはり明確にするのでなければ、今日のこの判決に対応するという形には私はならないと思う。  そういう点からまずお聞きしたいんでありますが、治安行動の、出動の問題、今日、一体これはどうなっているんですか。これが明らかにされたのはいまから十二年前だと思います。安保闘争の次の年であります。あのときの予算委員会におきましてわが党がこの問題を明らかにしました。しかし、この内容というのは依然として今日国民の前に不明な形になっているじゃないですか。しかも国民のいろいろな民主的な運動、平和運動、こういうものの盛り上がりに対して、これが盛り上がると必ずこのような治安出動の問題が起こってき、訓練が強化されるというのが実情だと思います。そうして、このような訓練をやるためには当然教範がなければならぬ。ところが、この教範というものは何ら明らかにされていない。何を一体基礎にしてこれをやっているのか。さらにあの草案でありますが、草案によりますというと、この草案の中には、もう使用する武器はこれは銃剣だけでない。刺殺一つだけの問題じゃございません。もう戦車も出る。装甲車も出る。ヘリコプターも出動をする。さらに海軍とこれは空軍との協定も、一応これは出ているんじゃないですか。催涙ガスも使う。こういう形のいわば国民を対象とするこのような一体訓練、そういうものが許されるのかどうか、こういう点は非常にこれは明らかにされなければならない問題だと思うんです。この点について、この軍隊の性格、国民のいわば予算で、血税でまかなわれているところの軍隊が、国民を弾圧し国民を殺す訓練もこれはやっている。そういう面というものは当時から指摘をされているのでありますが、この点について、この実態というものは少しも明らかになっていないじゃないですか。これはどうなんですか。
  78. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いまのナイキ裁判でいろいろな判断をしておる、これはもう裁判の、独立した裁判官の権能でございまして、私たちがこれに対して批判を加えることはございません。ただ、判決という文章にあらわれたものに対して個人的見解いかんと問われれば、これは私は政府主管者としては当然のことながら、個人としても、どんな立場からしても首肯できないということを明確に申し上げる。これはもう向こうにも自由があるとおり、こちらにも自由があるんです。当然のことです。  それからもう一つは、治安出動というのをやるやるとあなたは言ってますが、これはもういままで全然やっておらぬじゃありませんか。これはもうどんな問題が起こっても、あの大問題が起こった宮城前広場事件、車が矢つぎばやに火をつけてひっくり返される、まさに騒然としておるときでも治安出動は行なっておらぬ、こういう事実、これは歴史的な事実がちゃんと証明しているわけです。しかも国民の生命、財産を守るための最小限の自衛力ということを前提にしてつくられておる自衛隊でございますから、これが治安出動等に対して遺憾なきものでなければならないということは、もう言うまでもないんです。あなたが言われるような状態で治安出動が行なわれれば、自民党などは一たまりもないということが事実でございますから、そんなことを考えるのがおかしいんです。事実ないじゃありませんか。あなた方は二十何年間ずっと同じ質問をしておられるけれども、一切そういう事実がない。歴史上明らかなところであります。
  79. 岩間正男

    ○岩間正男君 まだこれを使用したか、しないかということを問題にしておるのではない。自衛隊がそれをはっきりその内容で訓練をし、また訓練するための指針である教範のようなものをはっきり持っている。ところが、実際いままで国会論議の中でそのような教範というものは、これは何べん要求したって出されたことはない。訓練の内容について質問しても、これは出されていないのであります。こういう形で、隠された形になっておって、そうしてその軍隊が非常にこれはそのような不明な部分を持っている。これがどうして一体平和憲法とこれは照応するかという問題です。ここのところがやはり明確にされなければならない。これが一つ。  もう一つの問題は、これは対米従属的な軍隊、アメリカの極東戦略のいわば補完部隊としての、これはレアードのことば、そういうものでも明らかであります。それからアメリカの軍部のいろんな議会証言の中でも明らかな問題であります。そういう中で、たとえば松前・バーンズ協定一つをとってみても、あの松前・バーンズ協定というものは、具体的に言うと、この前の「よど号」のハイジャック事件のときに、はっきりやはりその背景にあったと思う。そこで、板付を立ったところのあの「よど号」が、実際はこれは平壌に着くまでの十数時間というものは、当時国会が開かれており、あなたもおられたと思うのでありますけれども、あの予算委員会においてこれが追及された。しかし、政府はあの空白について明らかにすることはなかった。はっきりアメリカは、第五空軍司令部は空を握っておった。しかし、そのような事態の中で日本はその詳細を知らなかった。この一つのことを見ても、これは松前・バーンズ協定というものがどのように一体、アメリカのこれは体制、そういうものを強化する、そういう中で組み込まれたところの日本の自衛隊や航空総隊、それからレーダー基地、こういうものがどんな役割りを果たしておるのか、どういう従属的位置にあるのか明確だ。これがどうして一体ほんとうに日本を守る軍隊であることができるのか。日本の空も海もそういう形での支配の中にある中で、ほんとうにこの自衛隊の性格というものは明確にされなきゃなりません。これが明確にならないで、そうして単に判決が不当だ、こういうものは絶対承服できないという形をとっておるんでは、私はこれは問題にならないと思うのです。だから、こういう点について、私は、時間がありませんので——一つ一つ実は詳細にやりたい。  だから総理、ここで最後にまた聞いておきますけれども、もう一度これは出てきてください。少なくとも十日あるんです。国会はまだ。論議は山ほどある。まだ二人しか質問していない、野党側は。七人これは残っている、質問者は。私はこのぐらい持っておる。これは少なくとも十数時間どうしてもたださなければこの防衛二法に対する態度は明らかにならない、そういう立場にいるんです。現にそういうことは、いままでこれは野党側の議員によって、さきに質問された方によって十数時間やられている、そうでしょう。そうしたら、そういう立場から明白にこれはしなければならないと思うのです。だから、当然これは日程もつくられるでありましょう。この委員会が終われば日程もつくられる、そうして明確にこれに対処することになると思うんでありますが、少なくとも総理は、また時間を十分にとって当委員会出席される確認をここで明確にされる必要がある。このことを含めて、先ほどからの問題について質問します。
  80. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お答えをいたします。  訓練の問題についてでございますが、訓練は有事の際にこれにこたえ得るように訓練はしておかなきゃならない。これは訓練しなければそれこそ責務を果たせないわけでありますから、訓練するのは当然であります。訓練計画その他実態を国会で明らかにしなさいということでございますから、これらは国会の所定の手続をとって、行政府と立法府、おのずからここにも三権があるわけですから、行政司法、立法、ちゃんと三権があるわけでございますから、これは憲法法律の定めに従って国会の機能を十分に果たされたいということであります。政府はこれを拒むような意思はありません。その意味で、時間が足らなければ防衛委員会の設置を提案いたします。でございますから、ここでどうぞ、そういうことをひとつお願いいたします。  それから国会に対して出席をするかどうかということは、これは手続をいただければ……。
  81. 岩間正男

    ○岩間正男君 あなたの気持ちはどうです。
  82. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国会議員でございますから、いつでも出てまいりますが……。
  83. 岩間正男

    ○岩間正男君 出てまいりますな。
  84. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは防衛二法とかそういうものとは関係なく、何でもひっからめて御発言されるようなことではなく、毎日でも御討議をいただけるわけでございますから、政府は、所定の手続を経て要請があれば、これはもう勇んで参ります。
  85. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめます。  三時四十五分まで休憩いたします。    午後三時三十四分休憩      —————・—————    午後三時四十四分開会
  86. 高田浩運

    委員長高田浩運君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  建設省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  87. 岩間正男

    ○岩間正男君 この前、この委員会決定で五時が来たものですから途中で打ち切ってはなはだ申しわけなかったと思いますが、きょうは質問を続行させていただきたいと思います。  私は、道路破壊の問題、特に観光道路での関係ですね、その問題をお伺いしたいと思うんですが、まずお聞きしたいのは、今日、富士スバルライン、それから南アルプススーパー林道、石鎚スカイラインは日本の三大自然破壊道路といわれているようでありますが、こうした観光道路による自然環境破壊の実態は具体的にはどのようになっていますか、お聞きしたいと思います。   〔委員長退席、理事内藤誉三郎君着席〕
  88. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) 観光的な色彩の強い着路によりまして周囲の自然環境が破壊されているということの御質問でございます。それでその実情がどうなっておるかということでございますが、観光道路の中でもただいまお話の出ました石鎚スカイライン、それから最初の富士スバルライン、これは私どもの所管しております有料道路でございます。それからスーパー林道は建設省の所管ではございませんが、その二本の道路について見ますと、確かに、工事の施行の問題あるいはルーティングの問題等で環境の破壊が行なわれているのがある程度見られるということが確かにございます。そのほかのものについての実態がどうかということになりますと、私どももできるだけ観光、特に国立公園あるいは国定公園等を通ります際には自然環境を破壊しないようなルートを選び、しかも工事の施行も十分注意いたしまして、環境が破壊されないというような形で工事を進めるように指導してございます。   〔理事内藤誉三郎君退席、委員長着席〕  実態がどうなっているかということでございまするが、実は観光道路というものは、これはどれが観光で、どれが観光でないかということは非常にむずかしい問題でありますけれども、大まかに申し上げますと、いま供用中の道路が、これは主として有料道路でありますけれども、若干観光的な色彩が強いというものが約七十路線ぐらいございます。全体が、供用中の百三十路線のうちの、厳密にいいますと六十八路線ですから、約半分ぐらいが現在ございます。それから工事中のものは、全体が七十路線のうちの観光的なものは六路線というふうにわずか一割以下になっておりますけれども、これは最近のようなそういう観光地に対する道路計画というものが従来よりもシビアになりましたので、比較的そういうものが少なくなっておる実態かと思います。
  89. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、具体的にこの三大自然破壊道路といわれている三つをあげたんです。そのうち二つが建設省の管轄だと、こういうわけですが、その二つについてもう少し具体的におっしゃっていただきたい、全般のことはいいですから。富士スバルライン、どうですか。これはどうですか。
  90. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) 富士スバルラインは、一番終点の標高が二千六百メートルでありまして、亜高山植物帯のところを通っておる道路でございます。この道路ができましたために風倒木が何本か出ております。ただいま私どもの調べでは風倒木は約五千本という推定でございます。立ち枯れが五千本ございます。それに対してもう二千本ぐらいは枯れた木を切りまして、植栽によりまして約三千本ほど植えてございます。そのほか芝張りをするとか、これ以上風倒木が進まないようなことをやっておりますし、また同時に、植生を行なった場合にどういう植生をやれば木がつくかというようなことも実験的な問題を含めましていまテスト中でございます。それと同時に、今後約一万二千本ほど植えるというような計画になっております。  それから石鎚のスカイラインでありますけれども、石鎚は……
  91. 岩間正男

    ○岩間正男君 石鎚はあとにしてください。
  92. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) はい、じゃ、以上でございます。
  93. 岩間正男

    ○岩間正男君 その前にお聞きしますが、車の年間利用数はどのくらいですか。
  94. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) 一日の平均が約五百台ないし六百台でございます。
  95. 岩間正男

    ○岩間正男君 年間です。
  96. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) いま調べておりますので、後ほど御返答いたします。
  97. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも破壊の状態について、これはもう少し具体的に調べられる必要があると思うんですがね。破壊の実情がわからなければこれに対する対策が十分できない。私たちの調べた程度では、三合目、これは亜高山性針葉樹林帯は、シラビソとかコメツガ、トウヒ、オオシラビソなどが非常に倒木している。立ち枯れの森林破壊が非常に極度にこれは深く入り込んでいる。五合目周辺になりますと、カラマツ林が一面に焼けただれたように立ち枯れている。じゅうたんのように敷き詰められていた高山植物類、コケ類も残らず死滅し、緑がすべて失われ、地獄谷を思わせる、こういう実情が報告されておるのでありますが、これはいかがでございますか。
  98. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) ただいまのお話、そのとおりだと思います。ただ、私どもの資料によりますると、先ほど申し上げましたように、何合目、何合目ということではなくて、一合目から五合目までの間で五千本ほど立ち枯れをしておる。そしてそのうちの二千本を四十七年度、四十八年度で切りまして、そのあとに三千本ほど植栽を終わった。そして今後まだ続けて植えるためにまたいろいろとテストをしておる。そしてまたその木もいろいろ、モミがいいか、松がいいか、いろいろな木の質によりましてどういうものを植えたら、また、どういう植え方をしたらいいかというようなことをあわせて実験をしながら進めていっているところでございます。
  99. 岩間正男

    ○岩間正男君 それでは次に石鎚スカイラインですね、これはどういう建設の企画になって、どういうふうにできているか、それからこれの利用程度ですね、そういうものをまずお聞きします。
  100. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) 石鎚スカイラインは愛媛県にございまして、延長が全部で十四キロちょっとでございます。そして、これが工事が終わりまして供用開始いたしましたのが四十五年の九月一日でございます。これは非常に地形の急峻な、しかも土質の悪いところでございましたので、たいへん工事には難航いたしまして、一部ブル等をヘリコプターで運んで上のほうからも同時に工事をやるというようなことで、非常にむずかしかった工事のようでございます。それに対しまして、その後の災害等によりまして、のり面が崩壊して、面河渓という渓谷がございますが、そこへ土砂が流出をしたりというようなことで、その後災害とともに自然破壊のことが論議されまして、それに対してまたいろいろ手当てをしておるところでございます。
  101. 岩間正男

    ○岩間正男君 破壊の程度はどうです。
  102. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) 破壊の程度は、昭和四十五年の八月に九号と十号の台風によりまして土砂が流出いたしております。そうして、そのときに約四万四千立米の土砂が流れたというようなことでございますが、その後まだ残っております土砂は搬出いたしましたし、それからそのまま自然に流れたのもあるようでございます。そういうことで現在はその土砂については一応取り除いてございます。それからそれ以外に砂防堰堤をその後四基ほど追加いたしました。これは高さが六メートルから十二メートルくらいのものでありますけれども、そういうものを現在つくってございます。それから実はこの工事をやりますときにも当初考えましたルートが非常にむずかしい、また環境に対して相当仕事がむずかしいというようなことでございましたので、ルートを変更して、それによってトンネルが何本か追加されたわけであります。それから同時にそういう緑の環境をこわさないように、工事中におきましても緑の種子を吹きつけるというような工事をやってございますけれども、それでもまだその後の災害等でさらにやられましたので、引き続き砂防堰堤を追加し、また、のり面あるいは植生というようなことを引き続きやるような計画になってございます。
  103. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも具体的に破壊の状況がつかまれていないですね。これは実地をごらんにならないで、地方からの報告、そういうもので非常に抽象的になっているんですが、これはどうなんです。全国でも最悪の自然破壊道路の例だといわれていますが、原生林のまん中に道路を通したため、山の乾燥化が非常に激しい、道路沿い幅二十メートルにわたってツガ、ウラジロモミなど針葉樹の倒木、立ち枯れが非常に進向している、斜面一帯の木も弱り始めている。さらにずさんな工事のため道路沿いの山はだは全線にわたってくずれ落ち、国の名勝に指定されている面河渓も土砂で埋まってしまった。ちょっとの雨で土砂くずれ、落石が起き、通行どめもしばしばで、全線が落石で非常に危険な状態におちいっている。また、入り口の猿飛谷付近は昭和四十六年夏の台風で道路の片側が陥没している。こういうようなことをわれわれの情報で手にしていますが、違いございませんか。
  104. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) ただいまのお話、ちょっと私も現地を見ておりませんので、いまのお話、違いないかと言われますと、違いないというふうに申し上げるだけの私は資料がございませんけれども、石鎚につきましては、そういう相当な破壊があったということは事実でございます。
  105. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは建設大臣にお伺いしますが、このような実情は地方だけにまかせておくのではなくして、私は建設省には多く人がおられると思うので、こういう実情を道路行政立場から、ことにテストケースとしてはこれをよく調べるということが必要だと思うんですが、こういう現状を視察され、そうして、それをさらに今後の道路行政に反映させるというお考えはありませんか。
  106. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 先生の御指摘は、まさにわが盲点をつかれておるという感じがいたすわけでございますが、ことに環境問題が大きく叫ばれておるときでありますし、県にまかせる、公社等にまかして許可だけすればいいというものではないと思います。そういう意味で、環境保全等につきましては、環境庁とも、また各関係省庁とも連絡をとり、今後そういうことのないように、また、許可する場合におきましては十分その利用計画等も慎重に審査してまいりたい、こんなように考えております。
  107. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうもこの問題で県当局は熱意がなさそうに思えるんですがね。去年の五月三十日の朝日新聞によりますと、地元自然保護団体の復旧措置の再三の申し入れに対して、県当局の回答は「破壊は台風などによるもので、渓谷を埋めた土砂は大水が出れば流れる」、これじゃまあ答弁にならないと思うんですが、こんな無責任な返答をしておるんですね。こういうものについては、これは本庁として県に対するどういう指導を行なわれておるのですか、こういうことはないですか。
  108. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) 石鎚につきましては、実は台風による復旧が先ほど申し上げましたように四十五年と四十六年にございまして、それで費用で約一億一千万何がしかを使ってございます。それから四十七年に八千五百万ほど入れております。それから四十八年、これは一応七千五百万の予定、それから四十九年度以降も約二億ぐらいやろうということで、この石鎚スカイラインはあまり採算性のいい道路ではございませんけれども、そういう意味でさらに砂防堰堤をつくり、そして、のり面の保護あるいは植生、それから山どめというようなものを続けてやるような計画になっております。
  109. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ、いろいろと対策をおとりになっていることをお聞きしたわけですが、ちょっとかみ合わないのですね、さっきから。私の質問にぴったりする御答弁をいただきたいと思うんです。そうでないと時間がばかにとるだけですから。つまり、県が非常に、何と言うかな、気のない返事、地元のそういう申し入れに対してほんとうに熱意のない対応のしかたをしているような、これじゃやっぱり破壊はますます進むだろう。したがって、本庁としてはこれに対してどういうふうにこれを指導されるか、こういうことをお聞きしたんですよ。簡単にその点を答えてください。
  110. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) これは県もこの石鎚の問題に対してはたいへん問題意識を持っております。したがいまして、これに対して十分な防護措置をやるということを考えておりますし、また私どものほうも、そういう意味では石鎚スカイラインは環境破壊のまず第一に常にその例示であげられるところでございますので、私どもも十分県を指導してまいりまして、こういう問題をなるべく早く解決したいというように考えております。
  111. 岩間正男

    ○岩間正男君 この問題で全国自然保護連合会——これは荒垣秀雄会長の連合会ですが、白石同県知事を自然公園法違反などの疑いで松山地検に告発した、こういうことはお聞きですか。
  112. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) 告発したことも事実でございますが、そしてその結果は不起訴になったようでございますけれども、決してこういう問題はいいことではございません。
  113. 岩間正男

    ○岩間正男君 行政管理庁の方、見えていますね。  行政管理庁がまとめた「自然保護に関する諸法律に基づく規制区域別破壊行為別分類表」、こういうのがあるようですが、道路の建設改良事業による破壊はどうなっておりますか。その中で自然公園法に基づく国立公園、国定公園、県立自然公園、この破壊だけでいいわけですが、ちょっとお答え願いたい。
  114. 大田宗利

    政府委員(大田宗利君) 自然保護の監察では、道路関係では全国で二十九件ございます。ただ、全国と申し上げましたのですが、対象といたしましたのは全国で二十四都道府県の二百カ所でございます。その中で二十九件、道路関係の指摘事項が出ております。
  115. 岩間正男

    ○岩間正男君 国立関係はどうですか。
  116. 大田宗利

    政府委員(大田宗利君) 国立公園関係では十五件でございます。
  117. 岩間正男

    ○岩間正男君 国定公園は。
  118. 大田宗利

    政府委員(大田宗利君) 国定公園は四件でございます。
  119. 岩間正男

    ○岩間正男君 県立自然公園は。
  120. 大田宗利

    政府委員(大田宗利君) 県立自然公園はございません。
  121. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、いまお聞きした分、その三つでは十九件、県立はないのですから国立と国定で十九件と、こういうことですね。
  122. 大田宗利

    政府委員(大田宗利君) はい。
  123. 岩間正男

    ○岩間正男君 それじゃ十九件の内容は、これはどういうことになりますか。その名前あげてください。
  124. 大田宗利

    政府委員(大田宗利君) 特別保護地区が五件でございます。それから特別地域が八件でございます。それから普通地域が二件、これが国立公園関係でございます。それから国定公園関係では特別地域が四件でございます。合計十九件でございます。
  125. 岩間正男

    ○岩間正男君 名前です。具体的に、国立公園ではどういうところがありますか。
  126. 大田宗利

    政府委員(大田宗利君) ただいま代表的な事例だけしか手持ちがございませんので、代表的な事例を申し上げますと、十和田八幡平国立公園における道路建設。その次に富士箱根伊豆国立公園内における富士有料道路の建設でございます。それからただいまいろいろお話に出ました石鎚国定公園内における有料道路の建設でございます。それが代表的なものでございます。
  127. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうです。国立公園では大雪山一カ所、さっきの十和田八幡平が四カ所、あと全部一カ所ですが、陸中海岸、富士箱根伊豆、日光。それから上信越高原、これは二カ所。中部山岳、吉野熊野、瀬戸内海、阿蘇、全国的に破壊が指摘されているわけですね。国定公園では妙義荒船佐久高原、八ケ岳中信高原、これは二件。天竜奥三河、こういうふうに聞いておりますが、違いますか。
  128. 大田宗利

    政府委員(大田宗利君) ただいまのちょっと日光だけは何か対象に出しておりませんのですが、あるいはそのほかはそのとおりではないかと思いますが、いま手元に持っておりませんので。
  129. 岩間正男

    ○岩間正男君 これも、どうなんですか、報告なんですか、それとも現地に行管から行って調べているんですか。どうなんですか。
  130. 大田宗利

    政府委員(大田宗利君) これは行政管理庁の出先機関が現地に参りまして調べたものでございます。
  131. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは行管のどこで扱うことになりますか。
  132. 大田宗利

    政府委員(大田宗利君) 監察局でございます。
  133. 岩間正男

    ○岩間正男君 監察ですか。
  134. 大田宗利

    政府委員(大田宗利君) 監察です。
  135. 岩間正男

    ○岩間正男君 その監察の地方派遣部隊なんですか。
  136. 大田宗利

    政府委員(大田宗利君) 出先の局が全部現地で調べております。
  137. 岩間正男

    ○岩間正男君 この報告は、年度にそういう問題が起こったとき、これはどういう報告の形をとっておりますか。
  138. 大田宗利

    政府委員(大田宗利君) 監察のやり方といたしまして、まず本庁で計画いたしまして全国調査をする、いわゆる中央計画監察と申しておりますが、この自然保護につきましては、これは全国的に調査したものでございます。それから現地でそういう問題がありますときに本庁に報告する地方計画監察というのがございます。ただいま御説明申し上げましたのは本庁で計画いたしました、全国的な調査をいたしました中央計画監察で報告が上がってきているものでございます。
  139. 岩間正男

    ○岩間正男君 この原因は行管庁としてはどういうふうにつかんでおられますか、自然破壊の原因ですね。
  140. 大田宗利

    政府委員(大田宗利君) 道路関係で勧告いたしましたのは三件ございます。  それで第一点は、道路建設に関する協議の問題じゃないかと思います。たとえて申しますと、環境庁と建設省と協議なさいますときに、協議の基本的な事項というものをもう少し具体的にきめておられればやはりある程度こういう問題は防げた。基本的な問題と申しますと、たとえば特別な保護地区をどうするか、あるいは幅員の制限をどうするか、あるいは道路舗装の方式をどうするかというような協議内容をもう少し具体的におきめいただいたら、ある程度防げるのじゃないかというふうなことで、これも勧告いたしております。  それから第二は、工事方法あるいは修復の措置の問題でございます。これはたとえて申し上げますと、土砂の捨て場はどういうふうに確保するか、あるいはダイナマイトを使用制限するかどうか、それから、のり面の芝張りをどういうふうに確保するかというような修復の問題、これを自然保護が十分はかられるようなことでやはり実施すべきだと思います。  それから第三点は、これは今後の問題でございますが、国立公園、それから国定公園の公園計画の見直しの問題でございます。先ほどいろいろ問題が出ましたように、道路をつくりまして自動車の利用の台数が非常にふえたというところもございますし、そういうこともございますので、公園計画にのっております道路計画を一回見直しすべきじゃないか。そういうような三点の趣旨をそれぞれ勧告という形で指摘してございます。
  141. 岩間正男

    ○岩間正男君 念のために、その勧告の内容ですね、これは資料でいただけますね。あとでいいですが、いただけますね。どういうふうに行管としてやっておられるか。
  142. 大田宗利

    政府委員(大田宗利君) 提出してけっこうでございます。
  143. 岩間正男

    ○岩間正男君 建設大臣にお伺いしますが、自然破壊の元凶というのは、これは道路と林野庁だとさえいわれていると思うのです。建設省は道路の建設にあたってこの破壊を防止するためにどのような努力を具体的にしているのか、また、なぜ道路が自然破壊の元凶といわれるような状態になったのか、この原因をこれははっきり科学的に突き詰めていく努力をされているのかどうか、こういう点をお伺いしたいと思います。
  144. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) 自然破壊の元凶が道路であるというふうにいわれております。これはそういう国立公園内あるいは国定公園内に道路をつくりますと、どうしても全く手をつけないというわけにはまいりません。したがいまして、私どもはルートをきめますときに、どういうルートを選び、どうすれば一番そういう環境の破壊が少ないか、またそれが目立たないで済むかというようなことをまずルートの選定のときに第一に考えます。  それからまた、実際の仕事をやります場合にも、先ほど申しましたように、たとえば片側は山でありますので、片側をカットして片側にバンクする、盛土するというような例がたくさんございます。そういうときにカットしたものがそのまま谷底へ落ちてしまう、落としてしまうというようなことも、かつては往々にして見られたのでありますけれども、最近はそういう余分なもし土砂があるとすれば、それはちゃんと車に積んで捨て土する。そしてまた捨て土の費用までちゃんと費用に対しては見るというようなことをやっております。また、のり面に対しても緑を植えるということはもちろんでありますけれども、のり面以外に、最近は特に道路のちょうどのり面とカットしたのり面と道路との間の路肩に当たるところ、そういうようなところにも芝を植えて緑をつくろう、あるいはまたその沿線に植樹をして、たとえばモミジの多いところであればモミジを植えるというような、その地方の特色の木を植えるというようなことをやったり、これは道路をつくる限り全く環境の破壊はありませんということはできないと思いますが、できるだけそういうものを少なくした道路計画なり施工の方法をとっているところでございます。
  145. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 国立公園なり国定公園というようなところに観光を目的とする道路をつくるというようなことについては、一応いま一回いろいろの意味考えてみなければならぬ、こう私は思っておるわけですが、実は私も出身地が山梨県でありまして、山梨県は観光資源が財産で、ほかに財産というものがない。そういうことになると、ここに、山岳地帯に道路をつくってお客さんにも来てもらう、また山も見てもらう、こういうような考え方がきょうまでの観光道路をつくる考え方だったと私は思うのですが、はたしてそれがいいのか、それをまず検討しなければならぬ段階に来ているのじゃないかということを感じます。
  146. 岩間正男

    ○岩間正男君 そこで、建設省にさらにお聞きするのでありますが、県や地方道路公社の観光自動車計画の許可にあたっては一体どのようなチェックをしているのですか。これは環境庁まかせだけでいいのですか。この問題はどうでしょう。
  147. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) 先ほど申しましたように、最近観光道路というものが非常に少なくなってございます。しかし、まだゼロではございません。そういう場合にどういうふうにチェックしているかという御質問でございますが、私どもはこれが国立公園あるいは国定公園等を通ります場合には自然環境保全審議会がございます。これに一応パスしたものでなければ、また同時に環境庁の承諾を得たものでなければ建設省としては認可をしないということにしております。
  148. 岩間正男

    ○岩間正男君 だから、私が聞いているのは、環境庁だけでいいのですか、環境庁が許可したからそれでもういいと、こういうことだけでいまの道路破壊を防ぐことができるかどうかという問題があると思うのです。これは、許可権というのは県の有料道路、それから地方道路公社の有料道路、これは全部建設大臣にあるんじゃないですか。
  149. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) 有料道路の許可権は建設大臣でございます。ただ、私が申しましたのは、許可権者である建設大臣が許可をするにあたりましては、十分そういう環境破壊にならないようなルートであり構造であるということをチェックいたします。ただ、それは自分のことでございますので、ほかのたとえば自然環境保全審議会あるいは環境庁という、建設省以外のところの了解も得てやるということを申し上げたわけでございまして、建設大臣が許可します際には当然そういうことを考慮に入れた許可ということになるわけでございます。
  150. 岩間正男

    ○岩間正男君 この法律には、これは許可基準というのがはっきりきまっていますか。これは県の有料道路の場合は道路整備特別措置法第八条ですか、それから地方道路公社の場合は道路整備特別措置法第七条の十二、これで許可するんだと思いますが、この部分に明確なこの許可基準というものがありますか。
  151. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) 許可をいたします場合には、ただいまの道路整備特別措置法に基づいて許可をいたすわけでございますけれども、その場合の許可基準といいますのは、道路は当然道路構造令に合った規格でなければなりませんし、これはまた有料道路でありますために将来の交通量、そしてまた料金とのバランスの問題というようなことをすべて勘案してきめるわけでございます。特に許可基準でどうこうということのこまかい規定はございません。
  152. 岩間正男

    ○岩間正男君 そこのところが問題だと思うんですね。これは道路整備特別措置法第八条、これは一項から六項まであるようですね。この中できめられているのは、道路管理者は建設大臣の許可を受ける、それから道路の新設、改築、料金の徴収ができる、これがあるだけでしょう。そしてこれに関する手続条項が定められているだけであって、さっきから問題にする破壊の原因、こういうものに対して十分に追及するという、そういう条項はないわけでしょう。  それから道路整備特別措置法第七条の十二、これは地方道路の場合でありますが、これは一項から七項まである。内容は地方道路公社が建設大臣の許可を受け新設、改築、料金の徴収ができるとあり、他の項はこれに伴う手続条項を定めているので、いわば手続上のこれは措置の問題であって、内容に深く立ち入っていまの非常に大きな問題になっている自然破壊の問題そのものをチェックする、そのチェックするところがない。つまり、ここにはいわば指導監督というものが十分できないわけでしょう。いまの破壊からこれを守るという、そういう点で積極的なこれは努力をすることができないでしょう、この法律では。どうでしょうか、建設大臣。
  153. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) これは特別措置法はそういう有料に対する手続上の法令でございます。しかし、これは当然道路法の道路でございます。したがいまして、道路法の道路をたまたま有料でやる場合はこの条項を使うわけでありますけれども、道路法の道路をたとえば有料でない公共でやる場合であっても同じように、ルートをきめ、それをやるのは建設大臣でありますけれども、特にそういうものを規定する基準というものはございませんけれども、そういう環境の破壊にならないというようなものを当然考えておるわけでございます。したがって、これはたとえば先ほどもちょっと話が出たかと思いますけれども、大雪山の道路等につきましては、これは有料ではございません。一般の公共道路でございますので、そういうものも同じように、やはり道路法の道路をどこにつくるべきかという問題としてそういうものがチェックされるわけでございます。
  154. 岩間正男

    ○岩間正男君 環境庁にお伺いしますが、これは江間さんですか、こういう場合に環境庁としてはどういう指導をされておられますか。意見を聞くということですが、その意見をどういうふうに出しておられるか。
  155. 江間時彦

    政府委員(江間時彦君) 先ほどから先生が御指摘になりましたように、数多くの道路におきまして自然破壊を伴いながら建設が行なわれるということにつきましては、非常に遺憾に思う次第でございます。  先ほど来行管から御指摘を受けた内容についても話題に出たところでございますが、率直に言いまして、現在まだ道路を許可するにあたっての客観的な審査基準というのはございません。しかし、われわれ、行管に対しましても、御指摘を受けましたお答えの中に、協議及び承認の審査基準についてはできるだけ早くつくりたいということを答えておる次第でございまして、当面はわれわれが持っております審議会で十分検討していただく、こういうことをやっておりますが、それに加えて客観的な審査基準も早急につくっていかなきゃならない、こういうふうに思います。
  156. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうもそういう点が十分に環境の上から考えられる自然保護の立場からされるんでありましょうが、これに対するやっぱり科学的な検討は環境庁もこれはやる必要がある。しかし、何といってもこれを許可する建設省がもっとこの問題を明らかにする必要があるんじゃないですか。いまのやり方では道路構造や採算制の面からのチェックだけ、これで許可を決定しているようですが、そういうことではこれはほんとうに公害を食いとめるということができなくなってくるんじゃないでしょうか。で、何よりもこのような原因を抑制するということが第一の問題だと思うんですね。そうなれば当然、この道路の起案者に事前の調査を十分にさせる、道路の新設によって起こる環境破壊の予測をこれはさせる、これを科学的にさらに検討する、専門家の意見も聞く、その上に立ってこれを許可するか、それから許可しないかの前提に加える。この点を厳密にしないと、とにかく漫然と、しかも手続上の問題だけでこれをやっておるから今日の破壊というのは起こってきた。だから実際はこのような自然環境を破壊したのは林野庁だと、林野庁が逆に大きなその責任を問われるという形になっているんじゃないですか。この点について、行政はほんとうにやはりもっと実態に即応した、そして自然破壊を十分に守れるようなそういう措置を具体的にとる必要があると思いますが、建設大臣いかがでしょうか。
  157. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 行管からも勧告もありますし、また先生の御意見もまことにごもっともな意見だと私も思います。また実際問題として、きょうまでいろいろの自然破壊というような問題が起きておる。建設省が許可権があるわけでございますが、当面県公社というようなものがその実態の中心になっておるというようなことで、そういう関係がややもすればおろそかになっておるということもあろうと思います。そういう意味で許可をする基準というようなものが法文化されていくことは、土台をしっかりつくる上においても必要なことだと、前向きでひとつ検討してみたいと思います。
  158. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはわれわれの提案になるわけですが、環境破壊に対する予測ですね。これは第一に開削幅による直接影響の問題があると思いますね。幅が非常に広い、そういうことによって起こってくる影響の問題。第二は、自動車の計画交通量に対応する排気ガスの与える影響、これが、今日非常に大きな問題になっているところじゃないかと思います。第三には、大量のマイカー観光客やバスの流入による鳥獣やそれから植物、生物への影響、これはことに最近は植物の乱獲というようなものが非常に大きな問題になります。珍しいということで、どんどんどんどんとっていく、そのために非常に珍重なそのような植物が、ことに原生植物などがなくなってくる、あるいは絶滅にさらされるということが起こってくる。第四には、自動車道が総合的な観光開発として行なわれるときは、それによって起こるトータル的な地域的な影響というものを考える必要があるんじゃないか。一つ一つやってたんじゃだめだ、総合的にどのようなやっぱり公害が発生するのか。  これはわれわれの気がついただけの問題でありますが、もっと専門的にこれを調査されれば、これらの基準というやつをはっきり打ち出して科学的に私は設定することができるんじゃないか。その上に立たなければ、これは何といってもこのような排気ガスとの対決ということは非常に一つの大きな問題になる。それから道路の開削幅とか深さ、そういうものに、地下水との問題が非常に起こってくるわけですから、これを科学的にもっと明確にすることなしに現在の道路による自然環境の破壊というのはこれは食いとめることができないんじゃないか。よほどここでしっかりした方針を確立する必要があると思いますが、いかがでしょうか。
  159. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) お説のとおりであります。十分ひとつ検討してみたいと思います。
  160. 岩間正男

    ○岩間正男君 それから先ほども申しましたが、調査計画の段階で専門の学者及び地域住民などの代表で構成した調査機関を設け、科学的な調査を厳密に行ない、そうしてこれを立証し、自然環境の保全につとめるべきである。まあ何といっても計画については住民の意見を十分に取り入れるということ、何といってもそれを守る一番大もとはやっぱり住民の理解とこれに対する協力だ。そこに住んでいる人は何よりも自然、自分の郷士を愛しているんですから、その人たちの協力というものは非常に重要だと思いますが、この点いかがでしょうか。
  161. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 私はいつも申し上げておるわけでございますが、道路をつくるにいたしましても、対話のない道路というものはあり得ないと、できるだけ話し合いでこれを解決していくということでありますが、ことに自然環境という問題でありますので、十分今後ともその点については注意してまいりたいと考えております。
  162. 岩間正男

    ○岩間正男君 だから、いままでの官庁の独善主義というのはどこにでも残っているわけですけれども、それだけではとても自然を守り切れなくなってきている。どうしても自然の中に一番深い関係を持っている地元民ですね、自然を最も愛している地元民、そして自分の郷土として愛している地元の人たちがもっと積極的に意見を出し、それを取り上げて、そして検討して、それを住民の納得のもとにこれをやっていくということが基本的な方針じゃないかと思います。その点、じゃ、太郎杉の問題がありましたけれども、これはずいぶん道路行政の問題と、それから地元民の太郎杉を守る会、こういう地元民の大きな民主的な組織というものが結局あの日光の、単に太郎杉だけの問題じゃありませんが、自然を守り通した。これは私たちはよく公判のいろいろな記録をもらったり、絶えず関心を持ってまいりましたが、結局高裁で切るべからずという判決を出され、そうしてこれは政府側もこれに対して了承すると、こういうことになって非常によかったと思うのでありますが、こういう点からいうと、太郎杉を切らせなかったというこういう動き、こういうものは尊重されていいんだと思いますが、いかがでしょうか。
  163. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 私はこの問題につきましては告訴され裁判ざたになっているという話を承ったわけでございますが、いま自然環境破壊、自然環境の保全ということが一つの大きな政治の題目になっておるときでして、あのような太郎杉を切るということは、これは政治の逆行だという考え方を持ちまして、判決の前に、あれは切ることはいたしませんと私も委員会で申し上げたわけでございますが、当然私はそういう考え方で今後とも道路をつくる、この観光道路等の問題等につきましてはそのような考え方で進めなければならない、こう考えております。
  164. 岩間正男

    ○岩間正男君 これと関連してお聞きしたいのですが、懸案中になっている、長野県が計画している美ケ原ビーナスラインですね、それから新潟県が計画している妙高スカイライン、これらの有料自動車道路について建設大臣の許可はどうなっているんですか。申請が出てくればどうするつもりですか。
  165. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) 初めに長野県のビーナスラインを御説明いたします。  ビーナスラインと申しますのは、長野県が霧ケ峰それから美ケ原、これをやっております有料道路でございます。もう霧ケ峰のところはすでに開通いたしております。そして美ケ原の線につきましては、これはもうすでに昭和四十五年に長野県から事業の申請が参りまして、建設省で許可を与えておったものでございます。ところが、その実施に際しまして自然環境保護の問題から環境庁とそれから長野県とでいろいろ調整をいたしまして、その許可をいたしましたうちの一部、和田峠から扉峠までの八キロほどはこれはその合意に達しまして仕事はやってもよろしいということで工事を現在やっております。それから扉峠から先はまだ調整がつきません。いろいろとルートをまた変えるというような問題も引っくるめまして現在協議中でございますけれども、地元の長野県もそれに対してはわりあい強い意向を持っております。したがいまして、これは調整がついてから着工ということで現在は中止しております。
  166. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは何ですか、申請が向こうから出されて、それで一部は許可した。しかし、あとの問題についてはこれは反対運動が地元であるわけですね、そういうことで許可が宙ぶらりんになっているんだと思いますが、申請が出てくればこれは許可すると、こういう立場ですか。この内容というものは検討されましたか。
  167. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) これは計画は四十五年に出たんでございます。そのときは許可しております。ただ、その後こういう自然環境破壊の問題が非常に強くなってまいりましたので、許可になったうちの一部は工事をやっているけれども、あとの残りにつきましてはまだ調整がついておりませんので、工事をやっていないというのが実情でございます。
  168. 岩間正男

    ○岩間正男君 環境庁、いかがですか、この問題。
  169. 江間時彦

    政府委員(江間時彦君) ビーナスラインの問題につきましては、いま建設省が御説明いたしましたように、扉峠までは工事が進められているわけでございます。それから先のことにつきましては目下審議会でまだ正式に諮問をいたしておりません。——事実上審議をやっていただいております。いつ結論が出るかということにつきましては、ちょっと私のほうまだめどがつかないということでございまして、強力にこれを推進したいという方もございますし、強力にこれに反対したいという方もございます。
  170. 岩間正男

    ○岩間正男君 妙高スカイラインのやつはどうですか。
  171. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) 妙高高原道路につきましては、これは新潟県がやっておる道路でございますが、妙高高原町から赤倉まで行く全体が約十八キロ三百メートルという道路でございます。これは上信越高原国立公園という中を通っております。これは計画ができましてから実は審議会等をまだ通っておりませんので、私どものほうは現在まだ許可はいたしておりません。これはもともとこの国立公園の中に道路計画がありましたので、その道路計画をルートを少し変えましてやったらいいじゃないかということで始まったものでありますけれども、最近の環境問題とかというのが非常にむずかしくなりまして、まだこれは環境審議会を通っておりませんので、私のほうとしては審議会を通らなければ許可はしないという方針でございます。
  172. 岩間正男

    ○岩間正男君 ここがさつき私がお聞きしたのとこれはかみ合ってくるわけですけれども、許可するしないの問題で、四十五年といいますと、もう三年前の公害問題がこれほどまだ騒がれない時代であったわけです。ですから、そのときの許可するについての前提条件としての具体的な調査ですね、こういうものは徹底していない。そういう時代にこれは許可という形で形式的な手続上の許可がされたわけなんですよ。ところが、実際たいへんな事態がこれは起こっているんだから、自然環境を守るという重大な問題、これは民族的な課題でもあるわけですから、そういう点からいえば、環境庁も関心を持って、これは現在許可はしていない、こういう形ですね。そうしたら、建設大臣もこれは許可すべきでないというふうに思うのですが、どうですか。
  173. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 円満な解決がはかられない限り、許可はいたしません。
  174. 岩間正男

    ○岩間正男君 円満な解決というのは、地元でほんとうに話し合いで合意に達するということですか。
  175. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 話し合いも必要でありますから、それも含めまして円満な解決がはかられなければ許可しない、こういうことでございます。
  176. 岩間正男

    ○岩間正男君 建設省独自のやっぱり調査は進めますか、進めませんか。
  177. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) これは先ほど県とそれから環境庁の自然公園審議会云々と申しましたけれども、建設省は当然よそ見をしているわけではございませんで、そういう場合にやはりルートの問題がございますので、必ずその中に入り、建設省としても十分な指導をしてまいりたいと思っております。
  178. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは原木がだんだん枯れて、それがこう最初は道路のこれは地下水がなくなって、だんだん枯れていく、それがどんどん進行していくらしいですね。地下水が、側溝なんか掘るんで、そこのところにどんどん流れる。そうすると非常に、何といいますか、水の保有量がこれは失われる。それはとてもいままで考え及ばないような自然の大きな力というのがあったわけですから、それに対する抵抗が起こって破壊するわけですから、抵抗が起こって——その辺なんかの調査というのは、もっと時間をかけた、そうしてほんとうに実態に即応した、そういう調査でなければ基礎にならぬと思うのですね。だから、破壊を予測するというその予測のしかたがもっと科学的になされなければ、目先だけのそういうもう資料とか都合のいい統計——許可するために何かもうそのようないわば合理化するようなものでやってくると取り返しがつかない。その点はやっぱりほんとうにこれは自然を愛するという立場、いや愛するどころじゃない、これを守らなきゃならない。もう民族の大きなこれは財産ですからね。そういうことを、ことにこれは日本の場合は考えますね。これは外国に行ってみても、フランスやドイツを見れば、西ドイツあたり行ってみても、これは都市の問題でありますけれども、全く自然に対する施策というのはもっともっと真剣に考えておるでしょう。そうでしょう。だから、これは今日やっぱり政策転換の中で大きな問題になっているのですから、超高度成長政策にほんとうに民族の将来をまかせるというようなことは、たいへんなことになることは明確に出てきている、結論が。そうすると、いまのうちにこれに対してはっきり対決しておく、これはどうしても建設省の私は一つの任務じゃないかというふうに考える。建設大臣、いかがですか。その辺の抱負を聞かしていただきたい。
  179. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 先ほど来からいろいろ先生からも御指摘の幾つかの問題点があるわけでおりますが、許可基準というような問題につきまして、相当掘り下げた問題点を考えなければならないと私は思います。そういう意味で、十分道路局にもこの問題を許可するにあたりましては、環境保全という問題で、現在の大きな政治問題ともなっておることでありますし、万全を期する方途をこれからもって対処してまいりたい、こう考えております。
  180. 岩間正男

    ○岩間正男君 時間もないようですから急ぎますが、これは地方道路公社の中には、自然破壊を防止するために、通行はバスだけを認めて、マイカーの乗り入れを禁止するところが出ていると思うのですね。たとえば富山県の道路公社でやっている立山・黒部アルペンルート、こういうところでやっていますが、これはどうですか。
  181. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) 富山の立山のアルペンルートにつきましては、これは立山から、桂台というところから室堂までが約三十キロございますが、そのうちの起点側と終点側の一部が有料道路になっております。そしてこれはその中がまだ舗装ができておりませんので、現在舗装あるいは駐車場というような工事をやっております。その他で、いま一般のマイカー、乗用車は通行をやめております。バスだけしか通しておりません。これは、現在一日の交通量が、まあ一日交通量が六十台くらいでございますので、こういう工事が終わった場合にもずっとこのマイカーをストップするのか、ちょっとそこら辺はまだこれからの問題でございますけれども、現状としては確かにバスだけしか通してない、そうしてマイカーをストップしているというところがございます。
  182. 岩間正男

    ○岩間正男君 こういうやり方は、これは奨励していいのじゃないでしょうか。そうすると、当然地方道路公社とか県などはこれは収入の減少が起こる。そういう受ける負担増については、国は道路建設資金の利子補給などをするような、その他一定の助成を考えてもいいと思うのですが、どうでしょうか、そういう方法は。
  183. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) これも確かに車は途中でとめて一それから先は専用のバスで通すという考え方もあろうかと思います。ただ、この立山のアルペンルートがそれに具体的にはまるかどうかは、これはもう少し検討さしていただきたいと思います。と申しますのは、いま言った有料道路の区間よりさらに上のほうにつきましては、現在、専用の道路がありまして、専用バスしか通ってないし、あとはロープウエーだけ、あとは反対側はやはり電気自動車という特殊なものしか通れないような構造になっておりますので、ここの場合にどこでマイカーをとめるかということは、今後検討さしていただきたいと思います。
  184. 岩間正男

    ○岩間正男君 尾瀬沼の問題について聞きますが、これは、尾瀬沼の自然環境破壊で問題になっている主要地方道沼田−田島線については、前の大石環境庁長官が、一の瀬より奥は遊歩道にすることで群馬県とも了解をつけていると思うのです。国立公園内になるわけですが、そこで建設省は、遊歩道についてどのような見解を持っていられるのか、これもお聞きします。
  185. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) 尾瀬につきましては、実は福島県、これは沼田−田島線という主要地方道でございます。これは尾瀬の湿原地帯のすぐ横をずっと突き抜けた道路が設定してございます。その設定された道路につきまして、改良工事をやろうということで始まった工事でございますが、福島県側はほとんど峠付近まで、これは沼山峠まででありますけれども、できております。そうしてあと群馬県側がまだだいぶ残っておりまして、ただいまお話の大清水から三平峠というところまで一応かつて厚生省からも許可をもらいまして、承認をもらいまして、そして工事をやるということで始めたわけでありますけれども、環境庁等から環境破壊に関連して待ったということになりまして、実は現在一の瀬というところまではよろしいということで、一の瀬まではよろしいのですが、それから先は工事はストップしております。ただ、一の瀬から岩清水までが、実はその工事がストップになりましたときに、すでに道路をつくっておる最中でありましたので、途中でとめたのでは、のり面から岩が落っこちてくるということもございますので、幅はそのまま、工事のときの幅にしたまま、のり面というような危険なものについては防護措置をするということで、一の瀬と岩清水の間はそういうような防護措置を講じております。一の瀬まではだいじょうぶだということでありますので、引き続き一の瀬から手前のほうを工事をやるつもりでございます。それから先、福島県につながりますまでは湿原地帯を通る計画でありますけれども、もともと道路はそうなっておりますけれども、これはそれをよけましてまた迂回した道路で行けないかどうか、これを検討中でございます。また、県とそれから環境庁とも話し合いをして、話がきまればそれについてやる、きまらなければ着工しないという態度でございます。
  186. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは遊歩道として了解しているのでしょう、建設省は。どうなんです。環境庁は、この点どういうふうに了解しておりますか。
  187. 江間時彦

    政府委員(江間時彦君) 私らのほうは、既定方針どおり一の瀬に駐車場を設けまして、それまでしか車を入れないというつもりでございます。
  188. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはどうですか、建設省ははっきり了解しているのですか、この大石環境庁長官時代きまったやつですが。
  189. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) はい、私どものほうも、ただいまのところは一の瀬までであり、一の瀬から先はのり面の手当てをしているということでございますが、それから先のことについては、そういうふうな話がつけばやるということでございますので、いまのところはまだ話がついておりませんので、自動車は一の瀬までということになるわけであります。
  190. 岩間正男

    ○岩間正男君 つけばやるというのはどういうことですか、ちょっとわからぬ。話がつけばやるというのは、遊歩道でなくするのですか。
  191. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) まだ県当局も相当これには、やはり何とかほしいということでございますので、いまの段階では一の瀬までということを了解しておりますけれども、まだ今後県のほうもそういうことで、何とか代替ルートでいけないかということでいろいろと検討しているところでございます。
  192. 岩間正男

    ○岩間正男君 この一の瀬までの了解ついているところですね、それから主要地方道としてこれは了解ついているにかかわらず、将来の予算をつけているということなんですが、ここはどうなんです。了解して遊歩道で認めるなら、これは主要地方道としての予算をつけているのはおかしいじゃないですか、これはどうなんです。そこのところは何だか矛盾してすっきりしない。環境庁長官がやめてしまうと何だかもとに戻るような印象に受け取られるのですが、いかがですか、それは。
  193. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) 先ほど申しましたように、この道路は群馬県から福島県のほうへ突き抜けている主要地方道でございますので、その途中に尾瀬があるということでありますので、やはり道路整備としては、これは主要地方道としてつながなければならないということでございますので、ただその場合に、どこをどういうふうな通り方をするかということの検討をしているわけでございます。
  194. 中村利次

    ○中村利次君 政府から提案をされた設置法の一部改正案は、一つには日本住宅公団の監理官の定数に関することと、もう一つは筑波研究学園都市に関することなんですけれども、これは住宅行政に関する事務運営の整備をして、結果して制度の簡素化ができるとすれば、これはまことにけっこうな話でございまして反対する理由はないわけです。ところが、それじゃ心配の種はないかというと、これは大ありでございましてね、住宅行政そのものが、道路行政もそうですけれども、相当のこれは曲がりかどに来ておるのではないかと思いますね。国民的要求からすれば、公的住宅の量のみでなくて質、それからやはり土地の値上がりだとか、建築資材の値上がり等々賃貸の家賃に関する問題もある、あるいはまた最近非常に多くなった地方自治体との関係、ただ単に公的住宅をつくればいい、ことに公団住宅の場合なんか、公団住宅をつくればいいということだけではなくて、上下水道から公園、緑地帯等の環境あるいは学校、幼稚園、保育園、こういう問題がからんできて、地方自治体との間になかなか話がうまく進まないということもだんだんふえつつある。そういう状態の中で、たまたま四十九年度の公的住宅の建設計画を建設省として発表されたわけでありますけれども、これによりますと、四万五千戸近い住宅をふやして五十八万九千五百戸ですかの公的住宅を建てようとなすっておる。その中で、公団住宅だけは前年度並みの八万戸ということでございますけれども、これはしかし前年度そのものが当初計画の八万八千戸から途中で七万戸に計画ダウンをされて、それですらどうも大部分がなかなか実現できないという状態にあるようでありますけれども、まず最初に、そういう点はこれはどうなんですか。ただ建設計画を、まだまだ不十分にしても、国民の期待を考慮してお立てになる、しかしながら、なかなか実行が伴わないという点について、どういうふうにお考えになっておるのか、まずお伺いしたい。
  195. 沢田光英

    政府委員(沢田光英君) まさに住宅公団を含めまして、公共直接の供給をいたします住宅の問題はピンチに立っているということでございます。特にそのピンチに至っておりますのは、大都市周辺、特に東京周辺の一都三県、それから大阪のほうにそろそろこれも波及し始めておる。かような状況で、この基本的な原因はやはり土地に関する問題がまず一つございます。これは土地の値段の問題も一つございますが、さらには土地を利用する際に、関連公共公益施設を先生おっしゃいますように、町づくりのようなかっこうで完全に整備していかなければならない、そういう時代になったわけでございますが、その負担が地方公共団体にかかっていく、そこで地方財政の問題として地方のほうで非常に困る、かような問題が一つございます。さらには、大きな次元で水の問題こういう問題で、その県の人口計画、そういうものになかなか合ってこない、そこで人口増というものを基本的に困ると、こういうふうな非常に大きな段階の問題があろうかと思います。  こういう幾つかの問題があるわけでございますが、こういう問題に対しまして、国の特に公的資金でやります住宅政策基本は、やはり五カ年計画、これは四十六年から五十年までで現在第三年目でございますけれども、これをやはり完成する、それが当面の目標でございます。そのために一、二、三年とこうやってきたわけでございますが、その途中にそういう問題が起こった。特に計画戸数といたしましては、一応はその五カ年計画を完遂すべくあるペースで歩んでおりまして、計画上は私どもは達成できるような予算を組んでおります。しかし、四十七年の終わりあるいは四十八年の状況を見ますと、特に公団の東京周辺あるいは都営住宅、そういうところで、実際に計画をやっても、仕事ができない、あるいは一年、一年半、二年とおくれていく、かような問題がございます。これをやはりおくれないようにして、この五年計画のおしまいまでには何とかペースを回復したい、かようなところに目標を置いて、新年度の予算も編成をしておる。かようなことでございますが、しかし、基本は長期的に見ますれば、やはり土地問題あるいは公共投資の問題、こういう問題を、長期的に新しい制度なり何なりを整えまして大規模に展開していく、こういうものが長期的に住宅の建設なり何なりを推進するわけでございますが、緊急にはやはり関連公共公益施設の予算を増額して地方公共団体の財政負担を少なくする、あるいは地方公共団体と公団その他との話し合いをよりさらに密にして、そごのないようにしていく、あるいは公共住宅建設に際しまして国公有地をいままで以上に活用していく、そういう緊急対策はいろいろやっておるわけでございますが、しかし、この四十七年、四十八年はだいぶペースはおくれるであろう、こういう予想でございますが、私どもはそのように、いま申し上げましたような緊急対策あるいは長期的には抜本的な土地対策、いろいろ建設省といたしましても、いま審議会等に出して答申をいただいて新しい制度を検討中でございます。そういう波に乗って長期的には回復していきたい、かように考えておるわけでございまして、長短の二方法によってこういうものをやはりやっていかなければならない、かように考えております。  さらに、そういうものと、先生の最初におっしゃいました公団監理官一名減の問題でございますが、これは直接関連はあまりないというふうにお考えになっていただいたほうがいいと思いますが、公団が発足いたしまして十七年になります。発足当初、これだけの初めての公団でございますから監理官が二人おる、ところが、十七年の間に公団の自主管理体制というものも整ってまいりました。あるいは建設省の住宅局におきましてもそういう計画をやります課ができております。さらには五カ年計画をやる課ができております。さらには技術的に大量生産の技術あるいは資材、労務、そういうものからコストを低減するための課もできております。そういうことで全体の中でこの際二人なくてもいい体制になってきたということで下げておりますので、全体の住宅政策の問題とはちょっと次元の違う話として今回改正をお願いしている次第でございます。
  196. 中村利次

    ○中村利次君 これはわかりました。全般の住宅政策についてお答えをいただいたとおりになっていけば、これは私どもはまだまだ国民の要望にこたえて量質ともに不十分ではないかということだけで終わる。ところが、そうじゃなくて、なかなか計画がやはり実現できない。これはなぜかという、その理由、原因の探求がはたして実態に即して行なわれておるのかどうか、それがないと四十九年度に何十万戸あるいはその中で公団何万戸というぐあいに計画をお立てになってもまた来年実はどうも達成できなかった、これは私は原因探求があるでしょうけれども、しかし十分でないとか、あるいはこういう理由で計画達成はできなかったから、したがって四十九年度はこういうことをやる、こういうことをやれば達成できますよという具体的なものがおありになるのかどうか。これは何も公団住宅だけでなくて公営住宅なんかでもなかなか計画が達成できないで、首都圏ではですよ、いろいろな悪条件のもとで計画がついえ去る、計画どおりいかない、こういうことが現実に起きているんですね。ですから私は、そういう点についてのやはり適正な原因の追求と、それに基づいた、したがって今度は四十九年度はこういうぐあいにして計画を達成するんだという、そういうものをぜひお聞かせ願いたいと思う。
  197. 沢田光英

    政府委員(沢田光英君) 四十九年度の問題といいますと、これは相当緊急の処置でございます。先ほど私が申しましたように、四十九年度以降の基本的な問題が一つございます。しかし、まあ基本的な問題でも四十九年度から制度、予算として発足をする、こういう問題になろうかと思います。そういう問題につきましては、基本的な問題はおもに宅地をいかに開発し、いかに供給していくか、これは公共住宅用の宅地だけではございません。一般の民需用のももちろん含んでおるわけでございますが、そういうものがただいま私どものほうの都市局を中心にそういう制度化がはかられておりますし、あるいは予算も計上するというかっこうになっております。さらに、宅地開発だけではなしに、長期的には再開発によりましてやはり都市の住宅の環境をよくし、あるいは一定のものの住宅確保ということも長期的には考えなければいけない。したがいまして、再開発制度につきましても同じように抜本的なものを考えて提案をしようとしておるわけでございます。  ただし、それは長期的な問題でございますから、短期的にどういうことがあるか一つ公団に例をとって申し上げますと、公団は、実は現在四十八年度につきましては、四十七年度からもそうでございますが、四十七年度、四十八年度分の土地は当初から全部持っております。持っておるけれども、なかなか建たない。そこに原因があるわけでございまして、それはやはり地方のいわゆる一都三県のほうが主でございますが、そこでいわゆる団地お断わりというふうなムードが出てきておる。それは先ほど申し上げましたような公共投資の問題であり、水の問題であるというかっこうになってきております。したがいまして、水の問題は水の問題でこれも長期的な問題になるでしょう。しかし、私どものほうは建設省の所管ではございます関連の水、道路、こういうものの公共事業というものに関しましては相当集中的に問題の個所に対策を打っていくという体制を急遽とっております。と同時に、予算的にはやはり全体の関連公共施設と、こういうふうなものに対する金を大幅に増加する、こういう措置をひとつとっております。同時に、それを受けて地方公共団体と交渉をし、調整をしていく機関をつくらなきゃいけない、かようなかっこうで公団の中に地方と関連公共につきまして話し合います部を実は新たにつくってございます。これによって監理官は減りましたけれども、定員はふえております。公団の定員はふえております。そういうことでとりあえず切り抜けながら、困難な時期を長期的に脱していきたい、かように考えております。
  198. 中村利次

    ○中村利次君 長期的な計画は、私はぜひこの計画が実現するように期待をしたいと思いますけれども、短期的な、当面、たとえば四十九年度の計画の実行についてはいまお答えがございましたけれども、そうしますと、地方自治体あたりの要望にこたえて、先ほど申し上げましたような、そういうものをセットした都市づくりといいますか、公団づくりといいますか、新たなそういう構想に基づいてやっていこうと、こういう計画だというぐあいに受け取ってよろしいですか。
  199. 沢田光英

    政府委員(沢田光英君) 大体の考え方はさような方向だと思います。ただ、やはり公共団体が考えておりますセットの大きさでございますね、範囲、こういうものといまの公団の持っている機能とがぴったりいく面もございますし、まだ足らぬ面もございます。したがいまして、方向といたしますと、最近ではやはり団地の中の学校、道路そのほか下・排水、こういうふうなものはもちろんでございますが、さらに、その周辺の団地ができたことによって必要が生じてきております保育所だとか、あるいは公民館だとか、そういうほかの地区の人が同時に使うこういうものに関しましても、公団は処置を公共団体と協力していくというところまで発展してきております。しかし、まあこれでもなかなか足りないというところも個所によってはございます。したがって、それはその場その場で御相談でできる限り公団はそういうものの処置をしていく。一言で申し上げますれば、だんだんと住宅都市というものに近づいていくというかっこうでございましょう。
  200. 中村利次

    ○中村利次君 これはそういう方向でいかなければもう住宅行政そのものが行き詰まりになると考えられますので、やはりそういう方向を強めていかなければならないと思いますね。  ただ、そうなりますと、これは先ほどお答えもいただきましたように、これは予算も大幅にこれをふやしていくということ、やはり家賃との関係が当然出てくるわけでありまして、これも最近の建設省で公表されたのは三万円家賃時代ですか、これは二DKで三万円ですから、三万円をこえるという傾斜家賃で何とか納得をしてもらおうという方針のようでありますけれども、これは日本は国民総生産は二位だとか三位だとかたいへんに経済大国になっておるようでありますけれども、実際勤労者の所得、それからその所得の何%が福祉国家として家賃に充てられるのか、そういう点を考えますと、これは二DKで都市部のあれなんかは四万円をこえるという、周辺地区でも三万円をこえるということになりますと、容易じゃありませんね。そういうものの関連はどういうぐあいにお考えでしょうか。
  201. 沢田光英

    政府委員(沢田光英君) 先ほど申し上げました関連公共公益施設のうち、公団がいわゆる負担する分、負担金の分は家賃にはね返ってこようかと思います。そのほかたとえば長期的に融資をすると、公共団体に低利で。こういうものでございますれば返ってきますからそれは原価に入らない、あるいは関連公共建設省が直接補助金を出すというものは入ってこない。しかし、そういうふうなことでございますが、やはりだんだんとそういうものの負担が大きくなってきておりまして、お説のように四十九年度の予算というものは土地費も上がり、建築費も上がっておりますから、やはり三万円というふうな声が聞かれる、かようなかっこうになってきております。これに関しましてやはり傾斜家賃なり何なり、こういうふうなものでできるだけこの負担を軽減させるという方向でとっておりますけれども、土地の値上がりなり資材の値上がりというふうなものが非常にひどければ、現在の住宅公団の、あるいは公共住宅のやっております原価主義による家賃、こういうふうなものはやはりそれに従って上がっていくわけでございますから、異常な値上がりが繰り返されるようでございますれば、そういう制度に関しましても考えなきゃいけないということになっておりまして、実は建設大臣から住宅対策審議会のほうにそういう公共住宅の家賃はそういう背景でいかにあるべきかという諮問をしてございます。それに中間的ないわゆるお答えといたしましては、いろいろ考え方はあるけれども、国の金を投ずるなり何なりいろいろあるけれども、収入を一応めどにして、それによって家賃をきめていく、原価による方法でない方法も検討に値する、こういうものが出てきておりまして、それをもとにいまいろいろと審議会で鋭意検討中でございます。こういうものは公共住宅のいわゆる制度の抜本的な改正になります。したがいまして、慎重に、しかもかなり急いで検討しなきゃならぬ事項でございます。そういうことでいま一生懸命勉強しておるという事態でございます。ただし、現在の三万円家賃というのは、たとえば公団の金利を下げるとかあるいはその傾斜家賃、傾斜をさせる度合いを長く深くしてこれを下げるとか、こういうことによって四十九年度は三万円を大幅にこえないようにというふうな予算要求で、やはり二DKではなしに三DK以上を供給したい、の割合をかなりふやしたい、かような要求を概算要求では出しておる次第でございます。
  202. 中村利次

    ○中村利次君 確かに質的の面でも改善をしようという方向性があるようであります。これはまあけっこうですが、問題は、はたして勤労者の所得で負担にたえられるのかどうか。住宅はないんだから、もうたえられようとたえられまいとやむを得ない、入るんだと。それでもまあ公団住宅なんかに入れる者は、いま日本の現状からいったら、しあわせだといわれておりますが、そのしあわせな人たちがやはり負担にたえられるかどうかという議論をしなければならないところにこれは重大な問題があると思いますね。大いにこれはひとつ検討を要望したいと思いますけれども、しかし、幾ら検討をした、ひねくってみたといっても、建築資材が値上がりをした、土地がじゃんじゃん値上がりをしていくというのではこれはどうしようもない。これはただ単に住宅行政だとか建設省の所管問題ではなしに、政府自体の姿勢とそれから行政に重大な関係があるわけでありますけれども、最近、たとえばきわめて最近でも、埼玉県なんかで建設業者なんかにひとつ手持ちの土地なんかを吐き出してもらって、それも適正価格で、そして公営住宅を建てようという、そういうことが報じられておりますけれども、具体的にそういうものも含めてお考えになっておるのかどうか。これは商社活動だとか不動産業者のありようについてはいろいろ議論のあったところで、まだ国民世論からいっても相当なやはり意見があり、不満があると思いますよ。建設省で公表をされましたのは大体三十何%土地が値上がりをしたと、こうなっていますが、少なくとも東京周辺では、去年からことしにかけて、数カ月に二倍からはなはだしきに至っては三倍というようなところが、ああいう何と言うんですか、公表されるような、そういうのに出てこないまことに困ったあれがありますね。ですから、購入価格で損をされないように、とにかく福祉国家の国民の要望にこたえて、そういうものを吐き出してもらうという方法考えれば相当効果はあると思うのですけれども、そういう点はいかがですか。
  203. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 住宅の家賃問題等につきまして、土地が上がった、あるいは資材が上がった、それだから毎年値を上げなくちゃならぬということは、姿勢としてはこれは芸にならぬじゃないか。  実はきょう住宅宅地審議会がありまして、そこでも私こういうことを言ったわけでございますが、何とかこれを食いとめることを考え、なおかつ毎年毎年住宅へ新しく入る人に格差が出てくるというようなあり方はどういうことになるかということも考えてみなくちゃならない。そういう意味で、ひとつこの面については私も十分に考えます。また建設省自体も十分に考えるが、審議会でも十分ひとつこの問題について御審議願いたい。私は愛知大蔵大臣にも、この点については国で持つべきじゃないか、ある程度のものを。とてもこんな物価高のときに、あるいは公団、あるいは公営住宅等はやってみても、実際問題これを全部住む人に負担させるということはこれは酷だ、何とかこの辺で考えるべきだ、それが私は政治だと思う、という話で、強く大蔵大臣にもお話を申し上げておるわけですが、なかなかこの壁は厚いと私は思います。しかし、勇気をふるってこの問題についても取り組んでひとつまいりたい、こんなような考え方でおります。
  204. 中村利次

    ○中村利次君 建設大臣の政治の姿勢については私は賛成です。これは、しかし政府全体的なあれとしては、まともな構想、考え方があっても、なかなかそうはいかないところに国民の信頼にこたえ得られないいまの実態があると思います。まだいろいろ具体的にお伺いしたいことがございますけれども、いまの大臣の答弁で政治姿勢の問題としてはまことに納得できるような御答弁もありましたし、あるいは時間的にもできるだけこれはやはり節約をしたいと思いますので、次に移りますけれども、住宅行政と同じように道路行政もまたたいへんにこれはむずかしい。  先ほどからいろいろ質疑応答の中で明らかにされましたように、道路はこれは国民がやはり要求をしておる、車ばかりふえて、あと追い行政なんていうものは困るという気持ちがある。ところが、つくれば、つくろうとすると、やはりこれは環境の破壊からあるいは騒音公害その他いろいろ——いまどきはオキシダント発生まで関連をして、地域住民の利益に反するいろんなむずかしい問題が起きているわけですけれども、そういう点についても、たとえば先月の二十六日でしたか、私の地元の調布のインターチェンジで、市長はじめ市会議員全員、実力で閉鎖をするという実力行使事件があった。これは実力閉鎖といっても、車両に対して、運転者に対して協力を求めるという、そういうことであったようでありますから……。ところが効果はどうも、ぜひ御協力くださいというのに対して、運転者はクラクションを鳴らして通り過ぎるという、まさにこれは何と言うんですかね、国民同士で地域の人たちと、それからそこを通行する人たちとが、まあいがみ合うということばは当たらないでしょうけれども、相反する立場に立ってそういう事態が現出をしておる。こういうことは、たとえば水俣湾の漁民の皆さんによる実力封鎖、あるいは東京湾の実力封鎖等々いろんな面でそういう実力行使というのが出ていますね。本来ならこれは全く望ましいことじゃない。まして労使の紛争解決の実力行使じゃあるまいし、営業権を侵害するような実力封鎖というのは本来好ましいことじゃないんだが、それをやらなければ生きていけないという、そういうところに私はやはり政治不在なんというものが議論をされざるを得ない原因になっておると思うんですよ。  このあれはどこですか、いま問題になっているのは、あれは烏山、八百メーターばかりですけれども、これは道路公団としては、現在、ただいまでも新聞報道等によれば、こうして十月一日から着工する、地域住民の皆さんは、いやいやそういうことじゃ困ると、あくまでも初めの約束どおり話し合いをつけてからやれと、そういう間にも、地元の調布では、また現状のままだったら実力行使をこれは繰り返すんだと、そういう状態が改まってないんですがね。これは今後道路をおつくりになる場合でも、そういうものはつきものだと思うんだが、これもやはり徹底的な原因探求と、やはり国民同士がいがみ合いをするとか——道路公団と地域住民の皆さんとの利害の対立ならまだしも、よってもって、その結果として国民同士がどうもクラクション鳴らして突っ走っていってしまって、何ともやるせないようなそういう状態をつくるような原因はなぜあるのか、こういう点についての私は反省と、それから徹底的な原因の追及と、それから対処、対策、いかがでしょうか。
  205. 菊池三男

    政府委員(菊池三男君) ただいまの高速道路の烏山地区で、まだ工事ができませんで、そのために調布のインターでおりた車が県道を通る、あるいは裏道を通るということで、たいへん地元の調布の方には御迷惑をかけておるということは事実でございます。先日、二十六日の日に、ただいま先生からお話しございましたように、調布の市、それから議会、皆さんが総出で交通をとめたというようなことになりまして、たいへん私どもも申しわけないと思っております。しかし、やっぱりこれを最終的に解決いたしますには、どうしても烏山の地区が早くできて、そして通過交通が高速道路の上を流れるということがやはり根本的な解決の問題だろうと思いますので、私どもも誠心誠意烏山の、北烏山の地区の方々と話し合いで解決したいということで再三いま話し合いを進めております。まだ解決のめどがついておりませんけれども、できるだけ地元の方との話し合いによって早急にあの地区の工事をやりたい。しかし、やりましても、やはり一年とか、一年半の工事の期間がございますので、その間は調布のインターからおりる車もたくさんあると思います。また、首都高速道路のほうも新宿から高井戸までが間もなくつながるということになりますと、さらにふえる可能性がございますので、そういう点について、さらに御迷惑をかけることがないようにわれわれは十分交通解析をしたい、そうしてそれに対処したいということで、地元の方と交通に対する協議会を持って、その問題をひとつ一緒に考えてまいりたいというふうに考えております。
  206. 中村利次

    ○中村利次君 インターの取りつけで合意に達しられるのかどうかですね。それからもう一つは、やはりそういうぐあいになかなか解決がつかない。ところが、調布の地元に対して道路公団がおとりになった対策は、あそこの出口のところを一車線にされて——ところが、こいつは行って実際にためしてごらんなさい、一車線にしたことによって、当然の結果としてあれは流れが悪くなった。流れが悪くなって、あそこへずうっと行列です。地元の、困るんだと、やめてくれということにこたえようとなすって、実は逆な結果が出ているんですね。あそこのインターチェンジによって、あそこへ来る車両がたまって、どうも何というのですか、排気ガス、あるいは騒音、そういうことでもう地元は困っているんだと、ところが、そういうのがひどくなっていますよね。ですから私は、やはり要望にこたえたつもりで打つ手が、実はこたえることにならないで、かえって逆効果になるという事態も——私は悪くしようと思っておやりになったのじゃないだろうということは確信しますがね、結果としてやはり運転者のいらいらはつのる一方、これは交通事故にもつながりますよ。それから地元のほうはそれじゃ何とか改善されたか、改悪にはなっても、改善はされてない。やはりこういうものを抜本的に解決するには、烏山地区ですか、これのやはり合意による解決以外にないと思うんですが、どうもインターの取りつけで合意できるのかできないのか、あるいは、それじゃだめだと言っているそうですけれども、いまさら計画がよかったの悪かったのと言ったってしようがないですけれども、何か具体的に現実的な解決の方法をぜひ見つけていただかないと、これはますます問題が大きくなる一方ですよ。
  207. 三野定

    参考人(三野定君) ただいま烏山問題、御指摘をいただきました。昨日も第八回の四者協議会というのを地元で開きまして問題を詰めておるわけでございます。かなり技術的な問題も専門的な小委員会をつくって急いで詰めようというような方向に向いておりますし、私どもは前進をしているというふうに判断をいたしておりますです。まだまだそう簡単にはいかないかもしれませんけれども、この分ならば何とか円満な話し合いにこぎつけられるのではなかろうかというふうに思っておりまして、今後とも精力的に話を詰めていきたいというふうに考えております。  解決の方法といたしましては、いろんな案を検討いたしました結果、現在提案しているもの以外には、もうこれ以上いいものはなさそうだということでお話を申し上げておるわけでございまして、まあ関連しますいろいろな問題もございまするので、しばらく時間はかかると思いますけれども、必ず円満な解決にいくものというふうに考えております。  なお、またその間、調布の問題が依然として残っておるわけでございまして、現在私どもが調布市議会の御要請に応じていろいろ研究をいたしまして、警察のほうとも御相談をいたしまして一応ああいう規制措置をとったわけでございますけれども、これについても先生からいま御疑問が出されておりますんですが、これ全体につきまして、先般私ども総裁ともども市を訪問をいたしまして御相談の結果、調布市、それから調布市議会、それに建設省の関東地建、それから警視庁並びに私のほうの公団、この五者が相寄りまして、名前はまだはっきりきまっておりませんが、たとえば調布インターチェンジ周辺交通問題協議会とでもいうようなものをつくって具体的な措置を相談しようということで、九月の二十日、来たる二十日に第一回を開くという運びになっておりまして、これは関東地建の局長に招集をしていただきまして、司会をしていただきまして、市長、議長並びに警視庁の交通部長、それに私のほうから担当理事が出るということで、その辺のお話し合いをいたすことになっております。なかなかむずかしい問題も含んでいるかとは思いますけれども、話し合いでできるだけ解決をいたしたいと、こういうふうに考えております。最近の情報はこういうところです。
  208. 中村利次

    ○中村利次君 これは私が一つ取り上げたこの例が道路行政一般にやはりそっくりそのまま当てはまると思うのですね。ぜひひとつ、これ以外にはないとお考えになることであっても、あるいはそれ以外にあるかもしれませんし、ぜひ円満な解決を期待しますし、それから総裁と一緒に行ってインターの実態をごらんになったというお話でございますけれども、あれは行ってごらんになればわかりますがね、地元にとっても、あそこを閉鎖してくれという理由の決して改善にはなっていないということは一目瞭然でしょうし、加えて今度は運転者のいらいらが高じて相当のものだと思いますので、これはひとつ善処方を。一つの例にすぎません、道路行政の。  最後に、筑波研究学園都市は、これは東洋に誇る、東洋一のものをつくろうというもので、私どももこの内閣委員会から、これは科技庁のあれで去年でしたか、行って見ましたけれども、東洋一の研究学園都市をおつくりになること自体まことにこれはけっこうだと思います。メーンストリートは五十メートルぐらいありまして、これはりっぱにでき上がるという気がいたしました。ところが、あそこは水戸街道というのですか、あのクロスするあれなんか二十メートルです。もう去年行ったときに混雑していますね。ところが、その道路の周辺なんというのは田んぼですね。あれは道幅を広くしようと思えば自由にできたはずなんです。これがどうも日本人の島国的発想といいますか、これは失礼な話ですけれども、やはり今日以降思い切った、そういう点、東洋一として誇り得るような機能を発揮できるような、まあ五十年、五十一年になって開設をしたら、ほとんど幹線道路に入っていくのにいらいらが始まるというようなことでは、何ともこれはやはりお粗末だという感じを率直にいたしました。  それからもう一つはですね、本法案の審議過程でもいろいろ議論をされましたけれども、やはり土地の値上がりがある、これはそういうこともあり得るでしょうが、そこに集まってくる、いろんな私はあると思うんです。ほんとうに誇り得る研究学園都市を建設しようというんでしたら、これも狭い島国根性を捨てて、たとえば研究学園都市の周辺には思い切ったグリーンベルトを設けるとか、やはりもっと、何というんですか、誇り得る研究学園都市にふさわしい計画というものがほしかったという感じを非常に強く受けてます。大臣いかがでしょう、こういう点は。
  209. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 私も筑波学園都市は視察いたしまして、まことに計画が雄大な計画であるという感じの反面、ここをこうすればよかったなというような点も痛感をいたしました。そういう問題につきましては、まだこれからやれるところは、改良すべき時間もあることでございますから、またそういう面につきまして十分検討して対処してまいりたいと、このように考えてます。
  210. 中村利次

    ○中村利次君 これは私はここでこまかくああだこうだという質問をいたしません。ぜひできるところは思い切った、まあまあ発想の転換時代に入っているわけでありますから、ぜひそういう改善をやっていただきたいということを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  211. 高田浩運

    委員長高田浩運君) ほかに御発言もないようですから、本案に対する質疑は終了したものと認めます。  これより討論に入ります。——別に御発言もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決を行ないます。  建設省設置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  212. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
  213. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 私は、ただいま可決されました建設省設置法の一部を改正する法律案に対し、自民、民社の両党共同提案にかかる附帯決議案を提出いたします。  まず、案文を朗読いたします。    建設省設置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、筑波研究学園都市移転職員の生計費が、生活環境施設の未整備のため著しく増嵩している実情にかんがみ、筑波研究学園都市移転手当の増額を図るべきである。   右決議する。  本決議案の趣旨は、案文によって明らかでございますので、説明を省略いたします。  以上でございます。
  214. 高田浩運

    委員長高田浩運君) ただいま内藤君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  215. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 全会一致と認めます。よって、内藤君提出の附帯決議案を全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、金丸建設大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。金丸建設大臣。
  216. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 本法案の御審議をお願いして以来、熱心な御討議をいただき、ただいま議決されましたことを深く感謝申し上げます。  審議中における委員各位の御意見については、今後その趣旨を生かすようつとめるとともに、議決された附帯決議についてはその趣旨を十分尊重し、今後の運用に万全を期し、各位の御期待に沿うよう努力する所存でございます。  ここに本案の審議を終わるに際し、委員長をはじめ委員各位の御指導、御協力に対し深く感謝の意を表し、あいさつといたします。ありがとうございました。
  217. 高田浩運

    委員長高田浩運君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  218. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十分散会      —————・—————