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1973-08-28 第71回国会 参議院 内閣委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年八月二十八日(火曜日)    午後一時四十九分開会     —————————————    委員異動  七月二十六日     辞任         補欠選任      西村 尚治君     田中 茂穂君      佐藤  隆君     柳田桃太郎君      中西 一郎君     世耕 政隆君  八月二十七日     辞任         補欠選任      柳田桃太郎君     佐藤  隆君      田中 茂穂君     西村 尚治君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         高田 浩運君     理 事                 内藤誉三郎君                 中山 太郎君                 山本茂一郎君                 片岡 勝治君     委 員                 源田  実君                 長屋  茂君                 西村 尚治君                 星野 重次君                 町村 金五君                 上田  哲君                 鈴木  力君                 鶴園 哲夫君                 前川  旦君                 黒柳  明君                 宮崎 正義君                 中村 利次君                 岩間 正男君    国務大臣        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  山中 貞則君    政府委員        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        防衛庁参事官   大西誠一郎君        防衛庁参事官   長坂  強君        防衛庁長官官房        長        田代 一正君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛庁人事教育        局長       高瀬 忠雄君        防衛庁装備局長  山口 衛一君        防衛施設庁長官  高松 敬治君        防衛施設庁総務        部長       河路  康君        外務省アメリカ        局長       大河原良雄君        通商産業省貿易        局長       濃野  滋君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君    説明員        外務大臣官房審        議官       大口 信夫君        外務省アジア局        外務参事官    中江 要介君        大蔵省国際金融        局投資第三課長  松室武仁夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案について     —————————————
  2. 高田浩運

    委員長高田浩運君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る七月二十六日、中西一郎君が委員辞任され、その補欠として世耕政隆君が選任されました。     —————————————
  3. 高田浩運

    委員長高田浩運君) この際、一言申し上げます。  先般の防衛法改正法案審議に際して生じました混乱につきましては、委員長として責任を痛感しております。心から遺憾の意を表明いたします。  今後の委員会運営につきましては、委員各位の御協力を得て、五月三十日の各党間の申し合わせを守っていきたいと思っております。何とぞ委員各位の御協力をお願い申し上げます。
  4. 岩間正男

    岩間正男君 ただいまの委員長釈明について、党としての見解をはっきり表明しておきたいというふうに考えます。  第一に、遺憾であるということばを言われたわけでありますが、これはあくまでもことばなんです。実際はその裏づけというのはないわけなんですね。いままでのパターンを繰り返すというようなことでは、これはもうほんとうに国民に対しても相済まない問題である。したがって、これは行為で示さなきゃならぬ。そういうことでなしには、あのような不当な強行採決が慣例を破り、あるいは理事会運営をじゅうりんし、そういう形で行なわれた、そういうことに対して全く反省というものは、私は単なることばにすぎないというふうに思うんです。したがって、当然そういう立場から言うならば、さらに国会民主主義を守る立場から言うならば、あの強行採決は無効である。したがって、審査報告書は撤回する。こういう態度があって初めて私はこの遺憾ということばの具体的な裏づけがあって生きる。こういうふうに考えるわけです。これが第一点。  それからただいまの釈明書の第二項を見るというと、五月三十日の各党申し合わせによっていきたい、守っていきたい、こういうことを言っておるですね。しかし、これもはなはだごまかしのことばじゃないかと思うんです。一度これがじゅうりんされないで、五月三十日からこれが守られておるなら、このようなことばはこれは生きるかもしれない。ところが、五月三十日の、強行採決はしない、物理的審議拒否はしない、そういう申し合わせはこれは議長を含めての申し合わせであります。ところが、完全にこれは七月十七日の段階ではじゅうりんされておる。そのじゅうりんされておるものをまた守っていきたいという、そういう矛盾ですね。そういう上に立って今度運営するということになったんでは、これは全くまゆつばものと言われてもしかたがない面があるんじゃないかと思うんです。したがって、五月三十日のこの申し合わせを守るということは、具体的にはどういうことなのか、どのような保証があるのか、この点を明確にしなきゃならぬと思います。  第三は、第一でもちょっと述べたのでありますが、強行採決は再びしない、このようなことは何回も繰り返されてまいりました。そうして、そのあとに結局は議長の裁定などがあってまた審議はもとへ戻る。しかし、また必要があれば強行採決が行なわれる。強行採決をしないというのは、この次するまでしないということなんだ。こういう形で行なわれるようなことを、また再び繰り返すという事態が起これは、一体国会に対する国民の信頼というものはどうなるのか。今度の問題は、ことにいままでから考えまして次元が非常に違っています。それほどひどいものです。しかも三委員会が同時刻になされるというような背後のこのような一つの策謀というものまではっきり考えますと、この自民党のやったやり方に対して国民は非常な疑惑を持っている。ことに参議院は、そういう点では参議院の改革のために二年間営々として努力をしてきた。いままで繰り返されたそのようなパターンを破る、はっきりやはり民主主義を守り抜く。議会制民主主義を確立する最大保証であるところの民主的運営というものを身をもって守り抜く、それを実現する、そういうことになければならないと思うんです。ところが、このような委員長釈明によっては、全くこれは内容が乏しいのじゃないか。いままでの論議の中でも、一体今度の審議のしかた、これについてわれわれもずいぶん研究しました。こういうような強行採決をされた場合に、いろいろなやり方がこれはありました。しかし、そういうものにはもう例がないようなかっこうで行なわれた。  いままでのやつを振り返ってみますと、こういう場合には院議による再付託、あるいは審査報告書を撤回する。第三には議長委員長に差し戻す。第四には委員会において補充質疑をやる。第五は本会議において補充質疑をやる。こういうような処理のしかたをしたんでありますが、このたびの正常化確認申し合わせ書によって行なわれるこのたびの審議というものは、いかなる種類の審議なのか。いままでの五つの範疇にはほとんど入らないところの新たなる一つケースがここで展開されようとしておる、そういうことですね。したがって問題は、委員長が、当然この問題は有効の上に立ってこのような委員会を進めておるのか、その上に立っての補充質問という、そういう性格でこれは進めておるのか。あるいは無効有効はたな上げにしてそれをやるんだというようなことを言われておるわけですけれども、この見解を明確にしておいてこれは今後運営をすることでなしには、途中でまたこれはいろいろな問題について意見の相違が出た場合には一体どうなるのか。先ほどの発言の中では、また審議拒否というようなそういう事態が起これは、これは審査報告書は生きておるんだという発言もありました、ある理事発言。結局は、問わず語りにそういう実態が腹の底にあるのでは、これは真の民主的な運営というものは不可能だというふうに考えるわけです。  私たち共産党は、だからこのような一片のまことにもう申しわけ的な釈明などというもので、あの重大な事態を引き起こしたその問題の解決にはならないというふうに考えるわけです。したがって、このような釈明について了承するという立場には立っておりません。また、私のいま申しました意見について、委員長がいろいろ反論をされる、質疑という形をあえてとりませんでしたが、これについて当然これは見解を御披瀝になるのが私は必要だと思いますので、そういう立場に立って意見があれば聞かしてほしいと思います。  さて、われわれ共産党は、審議が再開される、そういう事態に立ってこれはどういう立場をとっているか。むろんわれわれはこのような主張をして、いままであの正常化確認事項というものには拘束されないという態度をとってまいりました。しかし、共産党は、具体的に審議が進行する、多数によって進行する、そういう現実の上に立って、あくまでこれはわれわれとしてはその中に入っていって審議をする。むろん審議を尽くすという基本的な党の方針から、当然このような道をとります。ただ、われわれは、今度の事件の解決の中でも最も合理的だということをいままで主張してまいりましたが、それはこの三委員会の問題は、時間をかけて問題を明らかにするまで審議に入らない。しかし、現在国民生活の問題が山積みされておる、あるいはまた日米会談の問題がございます。さらに金大中日本の主権をどうするかという重大な問題がある。このような問題については各委員会を開いて、そうして積極的にこのような審議をすべきである。この二段がまえということを主張してまいったわけでありますが、現実はこのような方向にまいっておりません。そういう態勢の中で、この内閣委員会が開会されるという中では、われわれはむろんこの中に入って審議をする、そういう立場をとるということをつけ加えておきたいと思うのです。  以上です。
  5. 高田浩運

    委員長高田浩運君) いろいろ御意見をお述べでございますが、国会運営をすみやかに正常化したいという趣旨のもとに、先般四会派合意がまとまったものであります。その線に沿って本委員会議事を進めておりますので御了承願います。
  6. 宮崎正義

    宮崎正義君 いま委員長からお話がありました確認事項の件につきましては、私ども公明党合意しておりません。したがって、前回強行採決ということは無効という立場の上に立っておりますということを発表をしておきたいと思います。  私ども、わが党が議長に申し入れをいたしまして、不正常なまま本会議をやるということは許されない、こういう私どもの申し出の趣旨に対して、そういうことをしないという旨の答弁がありましたので、私どもは従来国民生活法律というものは審議を続けるべきであるということを主張はしております。それにあわせまして議長回答等もありましたので、審議には参画をしております。そういう点もあらためて申し上げておきたいと思います。  特に、両院通じての内閣委員会というのは、この参議院なら参議院委員会方向づけをしていく一番大事なトップ委員会であると思うんです。そういう内閣委員会において、前回のような強行採決をやるような不祥事というものを起こすことは、まことに遺憾と思います。自後、こういうことのないことを私は要求をしておきたいと思います。
  7. 高田浩運

    委員長高田浩運君) それでは先ほどの理事会において協議いたしました結果について御報告いたします。  一、委員会は原則として定例日に開会する。  二、審議時間は常識の線で運営する。  三、防衛法改正法案のほかに、建設省設置法の一部改正案審査を行なう。  四、本日は防衛法改正法案について質疑を行なう。  なお、委員会の具体的な日程については、今後理事会において必要に応じて協議することになります。     —————————————
  8. 高田浩運

    委員長高田浩運君) それでは、これより防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案について質疑を行ないます。  順次発言を許します。
  9. 上田哲

    上田哲君 質問を始めるに先立ちまして、私も大きな不満と憤り、あわせて、きわめて複雑な心境で本席に立つことを明らかにしたいと思います。  言うまでもなく、四十日前、私は、この席でこのようにして正規の理事会の決定に基づく日程の中で、野党第一陣としての質問を続行しておりました。突然に自民党による単独強行採決によって、議場が混乱のるつぼと化しました。委員長釈明にあります文言をつぶさに検討いたしましても、私どもはこれを完全にそしゃくし、納得をしたのではありません。私どもがいまここであえて質疑に立つゆえんのものは、一にかかって、なおかぼそくも残るであろう議会制民主主義の活路を見出したいという念願にほかなりません。私自身国会に議席を有する立場で、議会制民主主義の大いなる蘇生にこそそのすべてをかけたいと念願をしておりますが、あらゆる側面からの努力はどのようにあるべきにしても、やはり最も求めらるべきは多数党における驕慢の戒めであろうと思います。多数党が自己の提出した法案の可決を求めることのあまり、いかなる理由であれ、多数を頼んで強行採決に出る、このことは議会制民主主義の死滅に足を運ぶものとして、後に大きく歴史の審判を受けねばならぬものとして、私たちは七月十七日午後三時半を深く銘記したいと思います。  特に、今回の強行採決が、これまでのしばしば行なわれた強行採決と質的に違うと理解するものは、少なくともこれまでの強行採決——こうした比較は好ましくはありませんけれども——それなりに時の勢いにそれぞれ身をまかされて、相とどめようとしながらとどめ得ない流れの中でぶつかり合うという、ある種の姿はあったようにも思います。今回は、強行採決が三委員会同時に時計の針を合わせて行なわれ、しかもその数分前まで、社会人生活の中で最も誠実をあらわす最大級表現をもって、与党責任者野党責任者及び質問者を欺罔したと解せらるべき言動があった。これが議会主義運営の中に取り入れらるべき何らの正当性のないことを強調するとともに、この点についての猛省を求めなければならないと思います。  さらにまた、少なくともこれまでの単独採決等では、これに反対する各野党審議を、少なくとも、俗に申せば野党一巡、このような形で尊重する風習だけは存置されておりました。今回は野党第一陣の質問をすらわずかな時間で問答無用にさえぎるということは、すなわち言論の府において言論の自由を多数党の力をもって封殺をするという姿であります。ファッショであります。このような姿に、他のいかなる理由はあれ、大きな反省が加えられないならば、議会主義はその命脈を断たざるを得ないと思います。  さらに第三点は、この強行採決が行なわれた後、その後の処理にあたっての与党側の強硬な姿勢であります。与党のすべてをのみ正しいとして、野党のすべての主張を封殺する形においてのみ事態の収拾をはかり得る。あまつさえ二百八十日の大長期延長をはかる、結果する。国会審議をすべき任務を負うた議員論議の場であることは言うまでもありませんけれども、しかし、イギリスの議会主義に学ぶまでもなく、少数党はその存在理由をかけてフィリバスターの権利を有します。多数党はみずから提出した法案のすべてを審議し尽くし、それを原案どおり可決することが議会主義の成熟であるなどという誤った見解の中で野党審議の促進を強制するがごとき態度は、議会主義とは似て非なるものであることを銘記していただかなければなりません。  こうした諸点を考えてみましても、今日の強行採決は、これまでたとえば私自身が経験をした何回かの強行採決ケースに比べても、はなはだ異常であり、ファシズムの姿を予知させる危惧を持たせます。議会主義ファシズムの姿と最も相離れていなければならないものであることは、各議員共通の理解であろうと推量をいたしますけれども、その限りにおいて、今回の七月十七日のあの暴挙が、日本議会主義に暗い鐘を鳴らすことのないために大きな反省の具とされることを特に委員長以下に求めておきたいと思います。  委員長発言の中で唯一の掬すべきものがあるのは、強行採決を非とされる認識であります。強行採決は、いかなる理由であれ、とるべきものでなかったという認識をこの発言の中にとどめておられることについては、先ほど来保証ということばがありますけれども、あくまでもこれを寄り切っていただきたいということを、せめてもの要望として強調しなければなりません。と申し上げるのは、このような時点では常に強行採決を非とされる認識を持たれながら、時に応じて、野党の出方によっては強行採決も正当な権利行使であるという論理の転換をおそれるからであります。銘記していただきたい。今時点においては強行採決は非なるものであるとの認識を表明されたのであります。この認識を転換されるときは、みずから議会制民主主義者である資格を放棄することであることを委員長は、与党は深く肝に銘じていただきたい。そのことにいささかの期待をかけて、大きな胸のつかえをまだかかえ込みながら、私は野党を代表する質問者として、このあとに続かれる同僚議員のすべての気持ちを代表し、さらに院の権威がはなはだしく失墜をしたことに大きな失望を感じている国民世論の声を大きく背中に背負って、質問を、与党に向かっての猛省を求める中で、始めていきたいと思います。これについて委員長の御見解を承ります。
  10. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 先ほど申し上げましたように、国会運営をすみやかに正常化したいという趣旨のもとに、先般四会派合意がまとまったのでありますので、その線に沿って本委員会議事を進めてまいりますので御了承願います。
  11. 上田哲

    上田哲君 四十日間の国会の空白が余儀なくされたわけでありますが、この四十日間に私どもは、とりわけ防衛問題にかかわりながら、わが国をめぐる非常に深い霧の存在に数多く気づいています。どうしてもこの霧を晴らさなければならない多くの問題が特にこの時期に集中したようにも思います。  その一つは、強行採決直後訪米をされた田中総理ニクソン大統領との会談内容であります。特定の議題なき首脳会談と銘打たれたこの会談が、それとは逆比例して、常にも増して共同声明文言が長いというまことに皮肉な結果になっているのでありますが、この声明内容をどのように読んでみましてもわかりがたいことが多くあります。  まず一点伺いたいのは、この日米首脳会談でいわゆる日米軍事問題、どのような範囲でどのような深さで語られたのでありましょうか。
  12. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 日米共同声明内容解釈等については、外務省で正確にやっていただきたいと思いますが、私ども立場から見まして、第八、「総理大臣大統領は、」——という表現で言われております、「国際関係の既存の枠組みが」、すなわち私どもにとっては両国共通の安全、日米安全保障条約というものに当たりますが、「アジアにおける最近の緊張緩和への傾向の基盤となってきていることを認識し、」——ということを頭にして、「日米相互協力及び安全保障条約のもとにおける両国間の緊密な協力関係継続アジアの安定の維持のための重要な要素であることを再確認した。大統領は、右地域において適当な水準の抑止力を維持するとの米国の意向を確認した。両首脳は、同条約の円滑、かつ、効果的な実施を期するための継続的努力に満足の意をもって留意し、日本における米軍施設区域整理統合のためさらに措置がとられることが望ましいことに意見の一致をみた」。これについて、その直前の米ソ間の核不戦に見られます国際情勢東西対立緊迫が一転して、いろいろの背景があったとはいえ、核不戦をその両国、あるいは複数、あるいは地域間の既定のワク組みを前提として、それにもかぶさって不戦の約束をしたというような大きなできごとがありまして、したがって、ここにも国際緊張緩和方向ということが出ておりますが、しかしながら、アメリカ日本関係においては、なお日米安保体制というものをお互いに尊重していこうではないかということは当然予測していたところであります。しかし、一番末尾に書いてありまする「日本における米軍施設区域整理統合のためさらに措置がとられることが望ましい」、こういうことで意見が一致したというのは、私のいままで当たっておりました感触では、両国首脳トップレベル間においてこのような表現が出てきたことは、非常にうれしいことでありますが、実は意外でありました。実務者の間においてはこれは常時協議され、最近その緒についているものではありますが、両首脳の間でそのことが取り上げられたということは、長い目で見て、日本自身のためはもちろんのこと、私どもが考えておる日米関係にも好影響をもたらすものである。したがって私どもは、この声明の、両首脳確認を得たものとして、その方針最大限に実現させるための作業を進めてまいりたいし、折衝してまいりたい、こういう気持ちを持っております。
  13. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 速記をとめて。   〔速記中止
  14. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 速記を起こして。
  15. 上田哲

    上田哲君 山中長官からすれば、沖繩問題の担当であられたような経緯から基地問題についての印象が強かろうと思うのですが、私の立場からすると、これはやはり日米軍事関係論からすれば各論の部分に属する。今回の日米首脳会談軍事面についての大きな特徴というべきものは、やはり日米軍事体制のさらに緊密化、もっと具体的にいえば極東地域における日本アメリカへの肩がわりの強化。原理とするところは、まさにトータル・フォース・コンセプトがきわめて具体的な形で肩がわりという結果としてあらわれてきたと、こういうふうに見ることができると思います。私はこれはかなり明確なエポックとなるべき時期に来ていると考えております。  そこで、さらに具体的にこれを質問させていただくならば、軍事肩がわりの問題としてどのように話し合いが進められたか。先般の参議院会議において、その訪米前に私自身田中総理にただした際には、総理からは、防衛分担金問題等は向こうから出ることはないだろうというようなきわめて楽観的な——事実においてはまさにその楽観説がくつがえされる当時の答弁があったのであります。現にこれはまた後の話題にもなろうと思いますけれども日本防衛産業界に核のかさ代を払おうではないかという意見が急速に台頭していた背景背中に背負っての日米首脳会談で、どういうことをまず考えて、あるいは田中訪米前に非常にたくさんの日米経済首脳ないし準首脳会談が積み重ねられた後での会談であったというような背景も考え合わせながら、今回の日米首脳会談でそうした日米軍事肩がわり問題というものがかなり具体的に進められたということは十分に推測、また確証を得ることができるところであります。その辺がどのように進んだのかということをもう少しく具体的に御説明をいただきたい。
  16. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これまた外務省説明してもらうべきでありますが、私の知り得る範囲、ということは、大体においてそのとおりであると私は思っておりますが、これは全く米側からも、もちろん当方からも、アメリカの極東における軍事機能の面においての肩がわり、あるいはそれを代替する——訪米前にいろいろと議論がされました各種手段等についても、あるいは防衛分担金といったようなダイレクトな表現においても何もなされなかった、こういうことは私は真実であろうと思いますし、そう思っております。
  17. 上田哲

    上田哲君 委員長外務省はどうなっておるんですかな、長官がちゃんと答えてくれればそれでいいですけれども
  18. 高田浩運

    委員長高田浩運君) いま呼んでおります。
  19. 上田哲

    上田哲君 ああそうですか。——答弁能力がいまあるわけですか。
  20. 大口信夫

    説明員(大口信夫君) 現時点ではございません。私、アメリカ担当でないものですから。
  21. 上田哲

    上田哲君 大臣がいれば十分ですな。進めましょう。  具体的に南ベトナムへの援助というのはどうなっていますか。
  22. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは私は逃げるわけじゃありませんが、これはもう完全に外務省マターの問題である、そう思います。
  23. 上田哲

    上田哲君 やっぱり答弁能力がないよ。
  24. 大口信夫

    説明員(大口信夫君) 私、中南米だけの担当でございますから……。
  25. 上田哲

    上田哲君 ちょっと待っていますか。
  26. 高田浩運

    委員長高田浩運君) ちょっと速記をとめておいてください。   〔速記中止
  27. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 速記を起こして。
  28. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 途中から参りましたので、あるいは前後の関係で適切でない点がありましたらお許しを得たいと存じます。  御質問は、先般の日米首脳会談におけるベトナムの援助に関する話し合いの内容いかんと、こういうことであるというふうに承知いたしますが、その点についてお答え申し上げます。  首脳会談が終わりまして発表されました田中総理大臣とニクソン大統領共同声明の第六項に「両者は、インドシナの復興を援助する決意を再確認した。」、こういうふうにございますが、実際の会談の中身につきまして私の承知いたしておりますところでは、アジアにおける平和と安定という見地からインドシナにおける和平協定が誠実に実施され、これに伴ってこの地域の永続的な平和が確立されることが望ましいと、こういう文脈におきましてインドシナの復興の問題についての言及が行なわれたというふうに承知いたしております。総理大臣は、かねて日本政府の基本的な考え方といたしまして、インドシナの戦火がおさまってこの地域の復興が促進され、人道的な援助が行なわれるということが望ましく、日本政府として基本的にその方向において適切な援助を考えていきたい、こういう政策を表明しておられるわけでございまして、その点が共同声明にうたわれておる点であるというふうに承知いたしておるわけであります。
  29. 上田哲

    上田哲君 日本政府及び総理の、いま言われるこの地域への復興援助という、この地域というのは南北ベトナムを含むという意味ですね。
  30. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 日本政府の考え方といたしまして、南北を含めたインドシナあるいはベトナムというものの援助をかねて考えているわけでございます。
  31. 上田哲

    上田哲君 ところが、この共同声明の文章の中には入っていないわけですけれども、具体的な日米首脳会談合意としては、南ベトナムのみに五千万ドルの援助が決定されているわけですね。
  32. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 和平協定が締結されまして以後、この地域の人道的な援助の重要性にかんがみまして、日本政府としてはかねてインドシナに対する援助の問題を真剣に考えておったわけでございますが、七月に政府の派遣いたしまする調査団を南ベトナムに派遣いたしまして、現地の情勢をつぶさに調査いたしまして、その際南ベトナムの政府から日本側の調査団に対しまして、具体的な援助要請項目というものが出てまいっております。これを受けまして、日本政府として南ベトナムに対して、南ベトナムの要請に応じて五千万ドルという援助を考えておったわけでございまして、それをこの首脳会談の際に田中総理から日本政府の考えとして米側に伝えたという事情というふうに承知いたしております。
  33. 上田哲

    上田哲君 そうなりますと、日本政府が南北ベトナムに援助しようという方針とはこれは違うわけですね。
  34. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) ただいま具体的に御指摘ございました五千万ドルと申しますのは、南ベトナムの要請に応じて日本政府として考えている数字でございまして、日本政府としては北ベトナムとの間の国交正常化の交渉を急ぎ、その上で将来北ベトナムに対しての援助も考えていくというふうに承知いたしております。
  35. 上田哲

    上田哲君 確認しますが、そうすると、北も同じようにやるのだということの一部だというのですね。
  36. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) この地域の援助の問題、私直接主管でございませんので、深くお答えすることは控えさせていただきたいと存じますけれども日本政府の基本的な考え方といたしましては、南北両ベトナムに対して援助という考え方を持っているというふうに私承知いたしております。
  37. 上田哲

    上田哲君 ところが、この五千万ドルが出てきた背景には、アメリカ側がサイゴン政府に向かって援助することになっていた巨額な援助資金がどんどん米議会で削減をされていく、さらに半分にしても見通しが立たないということの肩がわりとしての具体的な算術計算上の意味が出てきているわけです。この関連をどう見るのですか。
  38. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) アメリカの議会におきまして、米行政府の考えておりまするベトナムに対する援助要請額というのがいろいろな削減の対象あるいは審議の対象になっているという事実は一方にございます。一方、南ベトナム政府が日本に対しまして具体的な援助要請があったわけでございまして、日本側が南ベトナムに対しまして考えております五千万ドルの援助と申しますのは、南ベトナム政府の要請に基づきまして日本政府が考えた援助額であるというふうに私は承知いたしております。
  39. 上田哲

    上田哲君 南ベトナム側からどういう要請があるか。どうせまあ援助はほしいところなんですから、どこへ向かったって要請をするでありましょうけれども、その要請の意図がどういうふうにつながっているかということと、もう一つ前に、元来ならばアメリカ側からもっと巨額な援助をすることになっていた計画が挫折をしている、その分だけサイゴン政府が弱体になっている、そこへ日本政府からこういう形で——元来ならば北と南へ一緒にいかなければならないものが、特にサイゴン政府へのみこういう巨額な金が日米首脳会談の中で合意されている、出ていくということのつながりということは、すなわちアメリカの対南ベトナム、サイゴン政権援助というものの肩がわり日本側がしたのだという論理的な帰結になりませんか。
  40. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 米国のベトナムに対しまする援助につきましては、現在米議会におきまして援助額の審議が行なわれている最中でございまして、最後的にどの程度の額の援助が決定されるのかということは、今後の審議の結果を待たなければいけないというふうに承知いたしておりますが、ただいま御議論になっておられます南ベトナムに対する日本政府の援助額と申しますのは、それとは直接関連のなしに、南ベトナム政府の要請に基づき日本政府の立場において考慮されている額、こういうことでございます。
  41. 上田哲

    上田哲君 そういうふうなお話であるのなら、具体的に伺いたいのは、アメリカの議会でいまどのような決定が出るかわからぬがとおっしゃるけれどもアメリカ議会で、四分の一でしょうな、半分はだめになって、要求が半分に落ちているわけですから明らかにこれは大きなダメージを受けている、全体額からいって。そこで明らかに数字的にはそれを補う——補い切れるものではないけれども、補うものとしてここに五千万ドルという巨額な金が出てきた。あたかも議会に向かって大統領が苦しい時期に日米首脳会談が行なわれてこういうものが出ていったということになる。これはだれが考えたって、向こうから頼まれたほうが先だったみたいな話が——どんなにしたって、明らかにアメリカ側に削減された分を日本側が分担するということにならざるを得ないと思うのですが、そうでないと言うのなら、日本側がサイゴン政府に送る五千万ドルの援助の内訳を、アメリカ側のものとどういうふうに違うのかを明確に示してください。
  42. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 先ほど御答弁申し上げましたように、私、この南ベトナムに対する援助の直接の主管者でございませんので、詳しく立ち入ることは控えさせていただきたいと存じますが、米議会において現在審議されております南ベトナムに対する援助につきましては、上院における審議は別としまして、下院におきましては、まだ具体的な方向が出ておらないというふうに承知いたしております。したがいまして、先ほど御答弁申し上げましたように、米議会として最後的にベトナムに対します援助額をどういうふうにきめるのか、きめられるのかということは、今後の議会における審議を待たなければ何ともわからない点でございまして、その点につきましては、米行政府自体としても最後的にこうなるであろうという方向はまだ持っておらないというふうに受け取っているわけでございます。
  43. 上田哲

    上田哲君 私の質問に答えておられないが、アメリカ局長が、米議会においてサイゴン政府援助額が大幅削減になってくるという趨勢を御理解にならないはずはない。私が質問していることは、しからば日本のサイゴン政府援助の内訳、内容というのが、元来のアメリカ援助の内訳と態様としてどう違うのかということを立証してもらいたいと言っているわけです。まあ管轄が違うからというお話もあるようだから、それならば資料として出せますか。資料として出してもらえるのならそれでもけっこうで、後の機会に譲りますが、そこが同じ態様の援助内容であるならば、それは少なくとも第三者が見て、アメリカのサイゴン政府援助への日本肩がわりであると、形を変えた具体的な防衛分担金の割り当てであるということにならざるを得ないという見解についてどう思われますか、あわせて。
  44. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 私の承知しております限りでは、五千万ドルのベトナムに対しまする援助は、無償援助、有償援助合わせまして総額五千万ドルになりまして、たとえば無償援助の対象となりますのは、難民救済、医薬品、その他破壊された橋梁道路の復元と、こういうふうな内容のものであるというふうに聞いております。
  45. 上田哲

    上田哲君 全部答えてくださいよ。質問はいま二つしたんだから。アメリカのほうと中身は同じじゃないかということと、中身が同じだったらこれは防衛分担金じゃないかという見解をどう思うかということです。もっといまの話——五千万ドルの中身をちゃんと出してくれるなら、そのことはそのこととしてまたいただきたい。
  46. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 五千万ドルの内容につきまして、私はただいまのように了解いたしておりますけれども、これは主管のほうに相談いたしまして、資料が出せるのかどうなのか、それを相談いたしたいと存じます。  なお、米側の援助につきましては、これは従来から行なわれておりますいろんな形の援助を含めまして、当初米行政府としましては議会に対して総額たしか六億五千万ドルの要求をしておったと思いますが、上院審議の段階におきまして三億七千五百万ドルであったというふうに覚えておりますが、削減を受けております。しかしながら、下院におきましては、行政府の現在の見通しといたしましては、かなり削減額が回復されるというふうな希望を持っているというふうに聞いているわけでございます。
  47. 上田哲

    上田哲君 おっしゃるとおり、六億五千万ドルが三億七千万ドルになっているわけでして、多少のそれが復活があるにしたって、これは台の違った大きな削減が現実に目の前にぶら下がっている。そこには金持ちの度合いじゃ問題にならないかもしれないけれども、五千万ドルというのが日本から出ていくということになれば、これはもうそれがきまった場所が日米首脳会談であるということになって、防衛分担金の具体的な表示であると思わないほうがこれは客観的には無理ですよ、これはそのとおりだとおっしゃりにくいでありましょうけれども。  私は、そこで大臣に伺いたいのですけれども、こういう形の防衛分担金というのが、肩がわりというものが具体的に日本政府の肩に乗ってきている。なかんずく、先ほど来の議論で明らかなように、政府が従来明らかにしていた、南北区別しないで一緒にやるのだと言っていた方針に背馳して、サイゴン政府のほうにのみこういう形でいく。もっとひねって見るならば、いつもよりずらずらと長いばかりの共同声明の中にこのことだけは抜け落ちている。こういうことが非常に国民に疑惑を与えるものではないか。総理の、この種の要求は向こう側からないのだということばのつじつまを合わせるために、こういう無理な姿があるのではないかというふうに思われてなりません。政府の方針としてどのように御説明になりますか。
  48. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは私が閣議でこの五千万ドルが議題となりました際に承知した範囲でありますから正確であると思いますが、これは共同声明以前から南ベトナム政府の援助要請があって、日本政府としてはそれぞれの要請の中身について、これが妥当であるかどうかの調査団も派遣し、そしてこれが妥当なものであって、日本側がそれに応じ得る範囲のものであるものについて合意を見た金額が五千万ドルである。北側との間はまだ国交の問題等で具体的にそのような援助要請というものがないのだということで私は承知いたしておりますが、これは外務省の領分でございますので、質問は大臣ということでありますから私が一応答えます。
  49. 上田哲

    上田哲君 私は、これ、非常に大きな疑惑があると思いますけれども、もう少しほかの面から問題を展開していくことにして、この日米首脳会談で、防衛産業界からも非常に意見もありましたが、兵器輸入問題ですね。兵器輸入問題がどのように議論されたか、あるいはされなかったと言えるのか、今後それが国産化問題ともからんでどのような結果を招来することになるのか、概括的に御説明いただきたい。
  50. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 先般の日米首脳会談におきましては、ただいま御指摘ございました兵器の対米輸入問題については、全く話し合われておりません。
  51. 上田哲

    上田哲君 兵器の輸入問題は今後増高する可能性なしと見ていいのですか。
  52. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これはこの共同声明あるいは日米首脳会談等の中身においては、大河原局長の言いますように、そういう話があったということは私も聞いておりません。しかし、いま早期警戒機あるいは次期対潜機、そういうものについて国防会議において国産か輸入かも全部ひっくるめて専門家会議できめる、こう言っておりますから、その結果どういうことになりますか、このことは予断を許しませんし、私どもとしても、防衛庁はそのようなことについて一切くちばしをいれないで全部おまかせをして、その決定に従うというつもりでおりますから、そのことが今回の日米会談の、あるいはからみ合ってそういうことが影響が出てくるであろうという、そういう感じは私としては受けておりません。
  53. 上田哲

    上田哲君 いまのお二人の話の中に、ちょっと食い違いといいましょうか、食い違いとは言えないにしても少しズレがあるので、今後のために伺っておきたいのは、四次防全体として支払いベースが総額九億ドル、対米八億ドルというような大ワクは変わらないのでしょうか。
  54. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) それはいまのPXLあるいはAEWというものが将来にわたっての要素として予見されるということを——どっちか一つですから、国産か輸入か——予見されるということを言ったわけでありますから、四次防に関する限り、対米についてこれ以上の私どもが予測いたしておりました範囲をはずれて、あるいは国会で御答弁説明いたしました範囲を越えて、今回の日米会談等の関係から、対米に対しての輸入が新しく品目なり数量なりでふえるということはないと、はっきり明言できます。
  55. 上田哲

    上田哲君 対米八億ドルというところで確認をしておきます。いいですね。
  56. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) よろしゅうございます。
  57. 上田哲

    上田哲君 そこで、この日米首脳会談共同声明の中で、もう一つ大きく、今回最も重大でなければならないと考えるのは第六項の朝鮮半島問題であります。日米両国は朝鮮半島の平和と安定のために貢献する用意がある。こういう表現になっておりますが、貢献する用意がある——貢献とは具体的に何をさしますか、用意とは具体的にどのようなプロセスを想定しておりますか。
  58. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 共同声明にもございますように、朝鮮半島において特に昨年来新しい発展が見られたわけでございまして、南北における対話の進展というふうな新しい情勢があるわけでございまして、こういうことを通じまして、この地域で平和と安定が促進されるということが望ましいということは、日米、基本的な考え方あるわけでございまして、そういう平和と安定の促進のために今後とも貢献していく用意があるという趣旨のことを、ここでうたわれているわけでございます。
  59. 上田哲

    上田哲君 この文章、それから今日の米韓旧軍事情勢というものを具体的に踏まえて語るならば、いまの御答弁のように、平和と安定のためにということよりも、むしろ逆に、軍事的連帯の強化のためにということのほうが正しいとだれでも認識をするはずであります。もっと言うならば、今回の共同声明の第六項にいう朝鮮半島の平和と安定のために貢献する用意というのは、この表現の強さからいっても、佐藤・ニクソン声明のいわゆる韓国条項の強化というふうに受け取るのが、きわめて具体的な時の流れの中での認識だと私は理解をします。  具体的にお伺いしたいが、しからば佐藤・ニクソン声明のいわゆる韓国条項に比べて、この貢献の用意というのは、それを強化するものですか、柔軟化するものですか。
  60. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明の中で韓国に関連して述べられております部分は、韓国の安全というものが、地理的に近接しておりますために、わが国の安全と密接に関連があるという事実認識が示されているわけでございますが、今回の共同声明では、朝鮮半島において、特に昨年七月の南北共同声明に示されておりますような南北対話という緊張緩和の動きが見られておりまして、そういう意味では一九六九年の共同声明の当時に比べまして、朝鮮半島の情勢が変化しているという事実はあるわけでございまして、そういう事実認識がここの関連であるということを申し上げたいと存じます。
  61. 上田哲

    上田哲君 朝鮮半島をめぐる緊張緩和はどうなっているのかということだけの説明ではこれははなはだ不十分であります。問題となるのは、米韓日を全体として見る場合の配置、その連携プレーとしての軍事体制、協力体制ということが問題になっているんじゃありませんか。つまり、具体的に言うならば、ニクソン・ドクトリンによって米軍は韓国からも撤退をする、撤退をしたいと、韓国はそれに対して一定の意思表示をしている。この中で日本の自衛隊がどのような役割りを果たすことになるのかということが、この平和と安定ということであり、貢献ということであり、用意ということではないのですか。
  62. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 政府の朝鮮半島に対する基本的な政策につきましては、国会等で従来明らかにされてきたとおりでございまして、韓国との基本的な友好協力関係を維持発展するとともに、北朝鮮につきましては、国際情勢等の推移を見守りながら、人道、文化、スポーツ、経済等の分野における交流を積み重ねていき、これによって朝鮮半島における平和と安定に寄与していくと、こういうことであるわけでございます。わが国といたしましては、このような政策が従来朝鮮半島における平和と安定に貢献してきたものと、こういうふうに考えているわけでございまして、昨年来朝鮮半島に見られます新しい情勢の動きに照らして、将来ともにこの基本的な考え方を続けていくと、こういう考え方を述べているわけでございまして、この平和と安定の貢献、それに対する用意ということは、御指摘のような軍事的な意味合いを持ったものでは毛頭ないわけでございます。
  63. 上田哲

    上田哲君 日韓米の三国の合同訓練というものは、これまでどのような経過になっておりますか。
  64. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 一回もございません。
  65. 上田哲

    上田哲君 これからもありませんか。
  66. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 計画するつもりはございません。
  67. 上田哲

    上田哲君 ニクソン・ドクトリンの軍事的な側面の原則であるトータル・フォース・コンセプトは非常に厳格に守られているわけです。その中では当然に日米韓という関連の中で全体の戦力力量というものが下降していないことが前提となります。しかるに、朝鮮半島、韓国から米軍は撤退をいたします。韓国の軍隊の増強の度合いはありません。そうすると、この全体のトータル・フォースは、日本側の何らかの形をもって埋めざるを得ないことになっていきます。そうなりませんか。
  68. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは私どもの米側から見たトータル・フォースというものの中で、日本の自衛隊というものがあり得る範囲というものは、これは越えることのできない線があり、きちんとしたワクがありますから、それを越えたものは日本側が応ずる前提が全く存在しないということになりますと、いま言われたようなアメリカ側が総合戦力構想を持ったにしても、日本においては、日米の関係から始まって、その周辺国における問題にも、日本のいま全く別個の連携できない、いわゆる俗に言う専守防衛というもののみの力しか持っていないということが、これは現在も過去も、そうして将来にわたっても守っていくわけでありますので、その戦力構想の中に日本の力というものが組み入れられていくことはないし、私どもはそれにまた応ずる意思はありません。
  69. 上田哲

    上田哲君 念のために申し上げるけれども、トータル・フォース・コンセプトは、日本を攻撃的な軍隊として、日本自衛隊を攻撃的な軍隊として規定することを前提としてはいません。専守防衛ということをのみ込んだ上でも、当然にその兵力として加算をしているわけですから、そのことは私は御説明にはならないと思うのです。で、日本の自衛隊が、国是の中で、つまり憲法の制約の中で、どこかへ出かけていくことができないということであったにもせよ、それを含めてトータル・フォース・コンセプトの具体的な骨組みはでき上がっているのであって、当然に、たとえば在日米空軍が韓国の基地と日本の基地とを交互交流する等々の事柄からしても、この関連を軍事的に否定するということは、むしろことばのあやにすぎないと思うのです。まあしかし、ことばの議論になってはいけ、ませんが、軍事的要素は全くこの貢献の用意という中に含まれないと言われても、たとえば直接の戦闘用兵器ではなくても、通信機器であるとか軍用トラックなどの軍需資材を援助するとか、あるいは開発援助、経済協力のかきねを越えて、そうして間接的な援助形態をとっていく、こういう形というものが皆無であると断言できますか。
  70. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 首脳会談のころであったと存じますが、米側から日本に対しまして、韓国に対し、たとえば通信器材、トラック、こういうふうなものの援助を求められるであろうと、こういうふうな報道があったのを記憶いたしておりますが、米側からはこの種の話を一切受けておらなかったわけでございます。
  71. 上田哲

    上田哲君 ちょっと私はよくわからなかったんですけれども、私がいま申し述べたような懸念は全くないという意味ですか。
  72. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) ただいま私御答弁申し上げたのは、新聞報道等によりますと、米側からそういうふうな具体的なものについて日本に対し韓国に対する援助要請があるであろうと、こういうふうな報道が行なわれておったわけでございますが、米側からはこの種の具体的な要請に全然接しておらないと、また、首脳会談でもそういうふうな話は全然出ておらないということを私申し上げたわけでございます。
  73. 上田哲

    上田哲君 私が申し上げているのは、具体的な直接的な軍事援助という要請ではなくても、たとえば通信機器の援助であるとかなどの軍事的援助とみなさるべき間接援助方式というものがとられることはないのですかと、それが皆無であるということを断言できますかと言っているんです。
  74. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 政府としては、かねて紛争を激化に導くような趣旨の輸出援助はいたきないということを申してきております。したがいまして、今後ともその種の援助は行なわないということは申し上げたいと思います。
  75. 上田哲

    上田哲君 その辺が非常にあいまいになってくるんです。私のほうも、これとこれだということをいま具体的な結果の問題として見せるわけにはいきませんけれども、その辺のところは、なるべくそういうふうにしないのだということでは今日の疑惑に答える答弁にはなりません。そういうおそれがないようにはこれだけの予防措置をとるのだということを明確にしてもらわなければ、いかなる資材も軍事用に使えないということはないのだという議論になってきます。そもそもこの問題の根底にある間違いは、政府の従来とってきている安保ワク組み論ということです。安保ワク組み論というものが緊張緩和の助長に役立ったのだという認識、そのこと自体に大きな問題がありますけれども、しかし、議論の共通の場を求めるために、安保ワク組み論を百歩譲ってとるとしても、今日、朝鮮半島に向かっては何らかの軍事的影響力を与えることに結果するような一方的援助というものは差し控えることが、ベトナム問題についても、朝鮮問題についても同じように重要なときに来ている。これが日本外交の基底でなければならぬと思うんです。  しかるに、ここで朝鮮半島の問題を、佐藤・ニクソン声明のときの朝鮮条項をさらに強化するような認識を与えるような貢献の用意というようなことを表立ってざくっと切り込んでいくということになると、これは私は非常に極東における不安要素を高めることにならざるを得ない。特に与党の一部には国連軍への軍事派遣ということを具体的に唱えている、公式に唱えておる部分もあられるようでありますから、そうした問題にできるだけ歯どめをかけることが大切だという認識にもし立たれるならば、いまのような御答弁ははなはだ不十分と言わなければならない。非常に狭い海域で境を接している朝鮮半島とわが国列島との間に軍事的な関連が、たとえば先ほど久保防衛局長が三国空間における軍事的連携はないのだと、今後もあり得ないと言われるけれども、たとえばフォーカス・レチナなどの作戦のときに韓国へ飛来したあの大空輸隊がちゃんと日本の基地に立ち寄っているではありませんか。逆なコースも可能になっていきます。これは三角点で連携プレーの基地を提供しているということは、もうこれはだれでも否定することのできない事実なのであって、そのような軍事的にきわめて連関性の強い範囲の中にあるわが国が、今日このような危機感のある朝鮮半島に向かって、できるだけその緊張を激化しないような方途を講ずべきであるにもかかわらず、まかり間違えばそういう可能性があるかもしれないというところに対して、まあその程度の心配はないようにするんだというようなことではいけないのだろう。もっと言うならば、その時期に何であえて好んでこのような強い表現声明を出さなければならなかったのかというところに非常に不安を感ずるわけであります。  その意味で、私がここで言いたいことは、具体的な紙をかざして、立証して、突くようなわけにはいかぬのでけれども、今日金大中事件等が発生をして、日韓関係が非常に微妙になっているにもかかわらず、両国アメリカを媒介とした軍事体制というものだけは、その影響を受けないということがしきりにいわれています。これはもう軍事専門家や軍事当事者の間では日常常識的なことばとして使われているのであります。皆さん自身もそのことを耳にされるでありましょう。こういうことを大きな安全弁としながら、経済関係の断絶ということがあるいは行なわれるかもしれないというような風聞を耳にしつつも、非常に強腰の姿勢が他の地から寄せられるということにもなるのではないかと私どもは危惧をします。そういう面で、一口で言ってしまってはしかたがないので、いろいろ申し述べたのだが、韓国に対して、朝鮮半島に対して、今回の共同声明に基づく軍事援助というものは、直接はもちろんのこと、いかなる間接的な懸念においても、いささかもこれは危惧を持たれるような形ではやらないのであるということをきちっと確認をしていただくことができますか。
  76. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 共同声明にもうたわれておりますように、両国政府が希求しておりますのは、この地域における平和と安定であるわけでございまして、日本政府としても、この地域の平和と安定に逆行するような措置をとるべきではないということを申し上げたいと存じます。
  77. 上田哲

    上田哲君 韓国から米軍の引き揚げがありますね。その引き揚げということは、すなわち、わがほう側の義務負担の増大ということにはなりませんね。
  78. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) シュレジンジャー国防長官がテレビ会見におきまして、一年ないし一年半後に韓国からの米軍の撤退があり得るということを言ったというふうに報ぜられておりますけれども、シュレジンジャー国防長官は、緊張緩和を前提としてということを言っているように承知いたしておりまして、米側がどういう状況において、どういうタイミングで具体的な米軍の撤退を考えているのかということにつきましては、必ずしも具体的なことが明らかにされておらないわけでございますが、いずれにいたしましても、将来朝鮮半島からの、あるいは韓国からの米軍の撤退というものがあるという事態を想定いたしますならば、これはこの地域における緊張の緩和がさらに進むということを前提としてのものであるということは当然考えられるわけでございまして、そういう状況のもとに、どういう米軍の配置体制というものが考えられるのかということは、その段階における問題であろうかと存じます。
  79. 上田哲

    上田哲君 その段階における問題だとは思いませんけれども、特に今日の問題としてはシュレジンガーが、あるいは米政府の見解として、今会計年度じゅうはないものだとしていたものを、今会計年度じゅうにもという言い方で、しかもその理由を韓国の独裁政権に対して制肘を加える、反省を求めるという立場においても撤退ということを考えるという表現が伝えられています。  この際、山中長官に伺うけれども、そういう軍事援助——軍事援助といいましょうか、軍事連携をそのような形で進めていたアメリカの国防総省すら、韓国の独裁形態に対する警鐘を打つという姿勢をそのような形であらわそうとしていると伝えられる以上、今回の日米首脳会談の中の声明で、貢献の用意というような部分についても、一番近くにある隣国のわが国が、これに類するようにとは言いませんけれども、やはりきびしい姿勢でその貢献の用意についても手綱を引き締める用意ありという姿勢を持つべきではないかと思いますが、いかがですか。
  80. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これはもう局長が言っておりますように、軍事的な肩がわり、あるいは共同の援助というものではないと、こう言っているわけでありますから、したがって、もっぱら国のそういう韓国に対する具体的な姿勢、援助内容、そういうものにかかってくるわけでありましょうし、いわゆる軍事的な意味における、日本側がこれからこの共同声明を受けて戒めていかなければならぬという点は、共同声明そのものが軍事的な問題に触れざる合意であるということでありますから、したがって、その点は私どもとしては特別に変化はないものと考えます。
  81. 上田哲

    上田哲君 これは非常に歯切れも悪いし、姿勢も弱いと思います。金大中事件が起きて以来、初めのころは少し——初めのころに比べると、どうも政府の姿勢がだんだん歯切れが悪くなってきたということをいまも感ぜざるを得ないんですが、今回のこの貢献の用意についても、軍事要素を含まないのだということを再三にわたって国会で強調されるということの意味を私はむしろ重視しておきますけれども、正文にはそのようなことはちっとも書いてないわけです。だからその発言を私は大いに受け取っておきたいのですが、それならばこそ、アメリカの軍事援助であれ、韓国独裁政権への一定の制肘を加えようということを言っておるときに、わが国の——軍事援助じゃないのですから、もっとやりやすいわけでありまして、もっとすっきり、韓国の独裁政権、あの専制のありように対して、隣国民主国家としてのありようを示すということは私は政治の見識としてもあってもいいと思うんです。しかし、抽象論であるよりも一歩踏み込んで言うならば、政府は従来金大中事件に関して、これが主権を侵犯するものであるならば経済関係を切るということを、それを含みに一定の意思表示を果敢に行なうということを明言をされております。  この機会に国務大臣としての山中長官に伺いたいのでありますけれども、その事態よりもすでに今日韓国政府は、日本国会論議に対してさえ発言——われわれにとってはこれは穏当でないと感ずる干渉的発言を行なっております。これはKCIAがどのように動いたというようなことの推定よりも、さらに大きく公然たるフォーマルな主権の侵犯であると私は思います。あまつさえ読売新聞の特派員の記事について、この日本の報道を批判し、その支局を閉鎖し、特派員を国外追放するというような形になっているときに、主権の侵犯を口にするのであるならば、日本国政府は、もうこれ以上の主権の侵犯はないのだという立場で断固たる姿勢を今日とるのでないならば、国会におけるわれわれの論議は、一体どのような権威と立場において進展することになるのかというところにくると思います。  私が言いたいことは、そのうしろにもっと強固な日米韓軍事体制のきずながあるということ。日本が韓国からその援助の手を引くということは、アメリカへの思惑でできないのだというような安心の中で水が逆流して、韓国の極右姿勢が日本に向けられ、こともあろうに、国会論議に対して中傷的干渉が加えられるということになるのであっては、特に防衛庁長官の任務も重かろうと私は思うんです。まあそこのところはお答えが出ようはずもありませんから、その部分はあえて私の心証としてつけ加えるとしても、もう一ぺん申し上げる。日本国会論議について韓国政府が干渉して中傷を行なう、また、日本の正規の報道機関の記事についてこのような措置がとられる、まさに主権の侵犯ここにあると私は思うのです。この際、日本国政府としての十分な態度をとるべきだと思いますが、いかがですか。
  82. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 金大中事件で私に心がまえというものを聞かれてもちょっと困るわけですけれども、主権の論争でいえば、私ども防衛庁、自衛隊が考えている主権とは、私たちの国の安全と平和というものを危うくする領海、領空もしくは直接国土への急迫不正の侵害、あるいはまた間接侵略の形態をとった侵害というものがあったときに対応するのでありまして、その意味における主権の侵害というものは、今回は当てはまらないと私は思います。法治国家としての独立国家の法形態の中の主権の議論であって、私の立場における主権の問題は今回の場合には存在しないであろう、そう思います。
  83. 上田哲

    上田哲君 非常におかしな論議でありまして、まさにシビリアンコントロールをどこかに置き忘れてきたのではないか。国務大臣としての、シビリアンコントローラとしての防衛庁長官に私は伺っているのでありまして、おれのところは鉄砲が攻めてこなければ関係ないのだというような発言国会の中でまかり通るのであっては、これはたいへんなことになるのです。私は防衛庁長官としての山中大臣自身に伺っているのではない。日本国政府を代表する国務大臣の一人として、国会の場における議論としての責任ある答弁を求めているのは、今時点において、私ども国会議員の一人としていま発言の場を得ているこの機会に、韓国の今日までの言動を、日本国政府は主権の侵犯があれば容赦はせぬという言い方をされてきた。その主権の侵犯ということであるならば、今日韓国政府が日本国会論議に対して行なっている発言というものは主権の侵犯ではないのかということを判断を求めている。これは防衛庁長官だから答えられないという話とは全然違う、次元の一つ高い問題であります。あるいはもっと基本の問題であります。その立場において、もし防衛庁長官がこれを主権の侵犯と考えるのであるならば、内閣の構成員の一人としてどのような態度をとられるかということを、閣僚として私は見識を問うているわけです。
  84. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) まあ、お気持ちはわかりますが、閣僚としての見識を問われても、事件は法務省の問題、これらの問題の交渉事は外務省、全体の、外務省の交渉についての政府の姿勢は内閣全体を代表して総理、官房長官という形でいま行なわれておりますから、総理が、個々の大臣がみだりに、発言表現等には注意するようにと言われております。テレビ対談等で言われたそうでありますから、私の所管のどこかにひっかかっている問題ならば、これは答弁逃げるのはひきょうでありますけれども、私自身の個人の国務大臣としての見解防衛庁長官でないものとして言えという立場では、ちょっとお答えいたしかねる範囲かと思います。
  85. 上田哲

    上田哲君 山中さんにしちゃ、それはね、やっぱり間違いですよ。何かのアクシデントがあって、あなたが総理の代行をなさることもあり得るでありましょう。そうして総理の代行を具体的に指名されていないときは関係がないのだということでは閣員構成員としての意味はないでありましょう。国務大臣としての立場は、当然に防衛庁長官の上にあるべきものです。そうして委員会制度というものは、常に国務大臣としての見識を各議員から求められるべき場であります。そういう意味で私は、一番基底にあるべき主権の侵犯ということの認識を問うているのでありまして、防衛庁長官であるから、たまが飛んでこなければ主権の侵犯にはならぬという表現がもしこの場から明らかにされていくことになれば、日本の閣僚の見識の狭隘さが問題になるでありましょう。私は山中長官にそのような認識を持ちたくないのであります。堂々たる見識を、日本の主権を背中に背負った立場で、このようなことが許されるのかどうかということを、しっかり御回答をいただきたいのであります。
  86. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私に何か言わしてやろうというお気持ちはよくわかります。(笑声)しかし、国務大臣立場で自由奔放に答弁しろと言われても、それぞれやはり自分の任命された職責というものに基づいて、関係があるならば答弁を逃げ回るようなのはひきょうである。しかし、この事件は関係がありませんので、したがって、国会論議に対する主権の侵害あるいは言論への外国の干渉等のことばでもって、そういうことを君はどう思うかと言われても、それはいわゆる政府として、あるいは対外姿勢ならば外務省として、事件ならば法務省として処理して、当たっておりますので、個々の閣僚が全く関係のない事件に意見を表明することを差し控えたい、こう言っておるわけでありますから、決して見識がないとか次元が低いという問題ではないと思います。
  87. 上田哲

    上田哲君 行政権の行使については、閣僚は連帯してその責任を負うということが書いてあります。国会に対してその責任を負うということが書いてあります。  法制局、来ていますか。
  88. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 知っています。
  89. 上田哲

    上田哲君 いや、法制局がいるでしょう。
  90. 角田礼次郎

    政府委員角田礼次郎君) 憲法の、国務大臣は「連帯して責任を負ふ。」という規定は、いまおっしゃったとおりであります。
  91. 上田哲

    上田哲君 それを十分に知悉した上で、いま言いたくないのだと言われるならば、これはしかたがないですな。しかたがないですよ、これは。私は非常に残念であります。  念のために伺いましょう。ここで、この主権問題について日本国政府が韓国に対してとってきた経過はお尋ねすることはできないのですか。
  92. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) まさに私の所管外のことであります。
  93. 上田哲

    上田哲君 では、答えなければならない最低の問題として、一言だけ伺っておきます。  国権の最高機関である日本国会論議に対する韓国政府からの批判は許せないと私は思うけれども、御意見はいかがですか。
  94. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 当然、内閣として判断をし、外交ルートを通じての折衝が行なわれるだろうと思いますし、また、そのような意向も官房長官等の談話の形で表明されていると思います。
  95. 上田哲

    上田哲君 これ以上やってもむだですな。これは長官、もっと日本政府はしっかりせにゃいかぬと思うんですよ。みだりにものを言うとあぶないことになるんだ、あるいは総理がTBSかどこかでそういうようなことを発言されて以来、またきゅっと何となく毛穴が縮まったような感じが私どもには受け取られる。これはよくないです。日本国会の権威というものは、われわれも含めて、やはり閣僚がこの際大きくそれぞれの分野から積極的に発言をされることが、軍事侵略などを放棄したわれわれの国のやはり、平時における最大の勇気でなきやならぬと思います。いろんな立場はおありであろうけれども、できるだけ今日、日本国の政治の権威、このことに対して積極的な発言をされるように期待をしておきますし、あまつさえここに、軍事的要因のかね合いから、あるセクションが拘束を受けるような雰囲気、こういう雰囲気が起きないことを私は心から念願をするんです。これはまたもう少し事態の進展の中でデータをあげ得るような状態があるならば、少し突っ込んでお話をしたいと思いますけれども、そういう見識をやはり私は山中長官に、国務大臣の勇気として求めておきたいと思います。  先ほど来いろいろ出ておりますアジア地域の問題になるんですが、ちょっと外務省に聞いておきますが、軍事的な協力、支援というのはしないのだ。しからば、経済的な交流発展ということは当然な努力にならなきやならない。となれば、ここで北ベトナムあるいは北朝鮮、そうした国々との経済交流の促進ということは、これは遅疑逡巡をしていては先ほど来の主張が全く内容を失ってくると思うんです。  そこで、もうしぼって伺いますけれども、この地域に対する輸銀の問題です。一体これはどういうふうに方向づけをしていくおつもりですか。
  96. 中江要介

    説明員(中江要介君) 北ベトナム及び北朝鮮に対する輸銀の使用に関しましては、いままで再々外務大臣も御答弁になっていると思いますが、日本政府としてはケース・バイ・ケースに考えていくという姿勢で、このケース・バイ・ケースということばが非常に否定的に使われる場合と肯定的に使われる場合があるんで誤解を招きやすいが、文字どおりケース・バイ・ケースでやっていくのだというのが大臣の御方針でございまして、北ベトナム、北朝鮮、いずれにつきましてもその点は同じでございまして、具体的なケースが出てきましたところでケース・バイ・ケースに考えていくと、こういうことでございます。
  97. 上田哲

    上田哲君 この問題については、もう一つ同じようなケースが、ちょっと飛びますけれども、キューバがありますから、あわせてお伺いをしますけれども、特にその中で北朝鮮の貿易事務所、この東京設置はどうなりますか。たとえばイギリス、フランス、西ドイツはもう持ってますね。
  98. 中江要介

    説明員(中江要介君) 外務省といたしましては、現段階で北朝鮮に貿易事務所を設置するということは時期尚早である、こういう考えでございます。
  99. 上田哲

    上田哲君 それじゃケース・バイ・ケースなんて言ったって、やらないということじゃないですか。やろうという芽がないではないですか。
  100. 中江要介

    説明員(中江要介君) 先ほどケース・バイ・ケースと申し上げましたのは輸銀使用の問題でございまして、貿易事務所の設置といいますと、これは一つのエスタブリッシュメントということで、それの処遇の問題、そこに派遣される人間の取り扱いの問題、そういったいろいろ複雑な問題もございまして、いま北朝鮮にこういったたぐいの事務所を置くということを検討するには、まだ時期尚早であるというのが私どもの判断でございます。
  101. 上田哲

    上田哲君 ところが、その輸銀のケース・バイ・ケースというのは、これはいままでのケース・バイ・ケースよりはもう少し前向きになっておるんだという言い方をきれるんだけれども、ちっとも前向きになっていないではありませんか。たとえば、申請がないからケース・バイ・ケースと言ったってしょうがないんだという御答弁があり得るらしいけれども、申請を受け付けないところで押えてしまって書類を受け取らなきゃ、これは記録には残りませんね。積極的にこれはオーケーだよということにならなければ進んでいかないではありませんか。  だから、具体的に聞くよりしかたがないんだけれども、たとえば北朝鮮に大型プラントの輸出の輸銀の使用を認める、その腹はありますか。
  102. 中江要介

    説明員(中江要介君) 外務省では、目下、その件についてイエスかノーかを言うところまで検討が進んでいるという状態ではございません。しかがって、その具体的な申請の内容について、さらに審査といいますか、調査が進みました段階で決断することになろうかと思います。
  103. 上田哲

    上田哲君 じゃ、わかった。具体的なケース内容についてやるんですね。
  104. 中江要介

    説明員(中江要介君) 申請がございましたら、これは当然やるのが責務だと思います。
  105. 上田哲

    上田哲君 わかりました。そうすると申請は受け付けるんですね。申請を受け付けて、ケース・バイ・ケースでこれをオーケーにするかしないかということになるんですね。いまのところは初めから受け付けないわけだ。窓口で返しちゃっているわけだ。窓口で返しちゃって、これで申請がないからケース・バイ・ケースと言ってりゃ、それはやりようがないですよ。生徒がいないんだから教えようがないんだと言っていればそれまでのことで、入学させないんだもの。こういういいかげんなことはもうだめですよ。特に、一方で日米首脳会談なんて、鳴りもの入りであそこまでやってきたのだから、もうこれは、国会答弁でここのところは済むんだけれども、これまで。もういいんじゃないですか。  いまはっきりしておきたいんだけれども、書類を持ってくれば受け付けるんですね。
  106. 中江要介

    説明員(中江要介君) 手続的には、書類を受け付けるのは外務省でございませんので、それは……。
  107. 上田哲

    上田哲君 そんな言い方をしないで……。通産、来てましょう、通産……。
  108. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) お答え申し上げます。  ただいまの先生の御質問——まず問題が二つに分けられると思います。  一つは、まず延べ払い案件でございますので、設備等につきましては輸出の承認の申請が出てまいります。これは私どもは受け付けるものは受け付けております。  ただ、おそらく先生の御質問は輸銀の金を使うかどうかであろうと思いますが、輸銀はお金を貸してくれという申請がございましても、政府の方針がきまるまで、それはちょっと待ってくれということで保留になっておるというのが現状じゃないかと思います。
  109. 上田哲

    上田哲君 まだそのままいくんですか、これからも。
  110. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ただいまの件につきましては、外務省からも御答弁がございましたように、今後の国際情勢等の推移等をいろいろ勘案しながら、関係各省の間でどういう取り扱いにするかはこれから十分検討していきたい、こういうふうに考えております。
  111. 上田哲

    上田哲君 じゃ、具体的に聞きましょう。  東洋レーヨンのタオル工場はどうなりますか。
  112. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) タオル工場の件につきましては、私もそういう計画があることを担当の局のほうで伺っておりますが、まだ申請書は受け付けていないと、たしか私はそういうふうに記憶しております。
  113. 上田哲

    上田哲君 だから、これも受け付けないで終わってしまうケースになるんですか。
  114. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 通産省といたしましては、どこの国とも経済関係を友好裏に伸ばしていきたいという基本的な考え方を持っておりますが、この輸銀使用という問題につきましては、当省だけでは片づかない問題がございます。政府全体の問題として、国際情勢の推移等を見ながら十分検討していくということでございます。
  115. 上田哲

    上田哲君 そこで、外務省なんですね、外務省がオーケーと言えばいいわけですよ。通産省は全部知っているんですよ、来ているの。受け付けてないんだったら、ほんとうに来ていないんだったら、知ってるわけがない。受け付けるということは、オーケーになったときしか紙は通らないという、話はもう全部前にできるといういきさつがあって、それでケース・バイ・ケースなんていうことばでごまかしちゃっているわけです。どうしてだめなのかと言えば、どこでも大体話はついているらしいんだけれども、大蔵省にどうも何か徳川時代の何とか代官みたいな人がいるらしくて、だめだよと言っているらしい。代官さんの顔を知りませんけれども、もういいんじゃないですか。ぜひひとつ、その辺のところがなぜいけないのかというところを聞かしていただきたい。  あわせて伺いたいのはキューバです。これはたいへんなインバランスですね。これはもう私も一ぺん行ってきましたけれども、ほんとうにこれはのどから手が出るような状況ですよ。日本を尊敬しておりますよ。何でいけないのかと言えば、さる日、中南米在外大使館が全部集められて、アメリカさんのオーケーが出るまではだめだよと言われているという紙が回った。その紙が失効したという話がまだこない。だからホワイトハウスに向かって、カストロなんかのいるキューバではあれだけのインバランスでありながら、どうしてもここのところを手を出すわけにいかないのだということになっている。このことがほんとうでないのか、ほんとうなのか。もし、これがほんとうでないというのなら、もう何もここのところをとびらを閉じておく理由は私はないと思うのですけれども、きちっと答えてください。
  116. 大口信夫

    説明員(大口信夫君) キューバにつきましては、北鮮と御承知のように事情が違うわけでございまして、すでに日本とは外交関係がございますし、大使も交換になっておるわけでございます。したがいまして、キューバに対して輸銀を使わせないというような方針をきめておるわけではございませんし、また貿管令等の規制措置はしておらぬわけでございますが、ただキューバをめぐります国際情勢に独特なものがあるわけでございます。御承知のような米州機構、OAS、これはアメリカを含めまして、キューバを入れて二十四カ国でございましたけれども、キューバがいま脱落しておりますので二十三カ国。このOAS、米州機構が一九六四年にキューバと断交をいたしまして、その後も、六七年の決議におきましても、大臣会議の決議におきましても、キューバに対して政府の融資とか保証をするような国に対しては、この行為を非友好的とみなすというような決議もしております。また、アメリカの対外援助法によりますと、これは日本だけではございませんが、いかなる国でもキューバに援助をしたものは、その国に対して援助を停止するという規定もあるわけでございます。そういったきびしいキューバをめぐる国際情勢というものを日本の業界も比較的よく承知しておられまして、相当慎重に対処しておられるんじゃないかと思っております。  最近、御承知のように、キューバに対するこのOASの国際情勢が多少緩和のきざしを見せております。すなわち、かねてからキューバと国交のありましたメキシコをはじめといたしまして、その後チリ、ペルー、最近はアルゼンチンといった国が国交を回復いたしました。また昨年六月には、OASの総会で、ペルーの発議に基づきまして、ひとつ国交回復しようじゃないかという決議案が出されましたけれども、反対十三、賛成七、棄権三という票数でもちましてこれは否決されたわけでございます。  まあ、そういうことで、いろいろ述べましたけれども、結論的にはなおOASのキューバに対する従来の政策は変わっていないと言わざるを得ないのでありまして、われわれといたしましては、そういった国際情勢のさらに進展を待って対処していきたいというように考えております。
  117. 上田哲

    上田哲君 その進展を待って対処するということですがね、見通しですよ。経過は私も大体わかっています。で、さっきのポイントは少しずれているのだけれども、それはちょっとおきますから、見通しはどうなんですか、対処の方針
  118. 大口信夫

    説明員(大口信夫君) いま申し上げた国のほかに若干島国等の小国、あるいはエクアドルとかベネズエラといったような国もだんだんキューバと国交を回復する機運にありますので、私は担当者として、比較的時間の問題ではないかというような感じがいたしております。
  119. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 四十五分まで休憩いたします。    午後三時三十六分休憩      —————・—————    午後三時四十五分開会
  120. 高田浩運

    委員長高田浩運君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  引き続き質疑を行ないます。
  121. 上田哲

    上田哲君 大蔵省——やってください。
  122. 松室武仁夫

    説明員松室武仁夫君) 大蔵省の投資三課長でございますが、先ほど御質問のございました北朝鮮及びキューバに対する輸銀使用の問題につきましては、大蔵省といたしましても、通産省及び外務省から御答弁ありましたように、今後ケース・バイ・ケースということで検討するということで、答弁は同じでございます。
  123. 上田哲

    上田哲君 では、そうした前向きの努力、時間の問題だという御答弁もありましたから、時間の問題として、きわめて早い時期に輸銀の使用という段階に至ることを具体的に期待をしながら別の問題に入ります。  SR71問題について伺います。今月の十六日にアメリカの国防総省筋によって、戦略偵察機のSR71が沖繩の基地から停戦後のカンボジアへ偵察飛行に飛び立ったと、こういうことがブリーフィングの中で明らかにされました。この超優秀の偵察機SR71が沖繩から飛び立ったということ自体が戦闘作戦行動の一環であるわけですし、安保条約の事前協議の対象として、また、カンボジアへ向かったことが安保のいう米軍駐留目的の極東の範囲を越えるものだという立場から非常に重大な問題を含んでいると思います。戦闘作戦行動の一環として当然事前協議の対象になるはずだという点について、まず見解を承りたい。
  124. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 事実関係からまず申し上げたいと存じます。  十六日の国防省における記者会見におきまして、沖繩から発進したSR71がカンボジアの上空の偵察を行なったというふうにとられる報道があったわけでございますが、この点につきまして米側に確かめましたところが、まず、十六日の国防省の記者会見におきましては、SR71がカンボジア上空の偵察を行なったかどうかということについての発言が行なわれおらない。また、かりにSR71がカンボジア上空の偵察を行なったとして、それが沖繩から発進したSR71であるかということについても全く言及がないということでございまして、記者会見の事実関係について確かめました限りにおきましては、ジェームズ中将という国防省のスポークスマンに対しまして記者団から質問がございまして、その中でジェームズ中将は、非武装の偵察がカンボジアで行なわれているということを一点うたっております。  もう一つ、記者団の質問が、SRのような高度偵察を行なう飛行機がその偵察を行なっているのかという質問に対しては、その事実関係を自分は知らないという答弁をいたしておるわけでございます。したがいまして、これについてわれわれといたしまして米側に照会いたしました限りで、米側といたしましては、沖繩のSR71がカンボジアの上空の偵察を行なったかどうかということについて、その事実を確認しないということを回答してきているわけでございます。
  125. 上田哲

    上田哲君 問題が二つに分かれるんですがね。非常におかしいことは、国籍不明機ならともかく、米軍のSR71がカンボジアへ行ったか行かないかがアメリカによって確かめられないはずはない。それからもう一つは、そのことがあったとするならば、それは一体、たとえば戦闘作戦行動の一部であるとか、事前協議の対象であるのかどうかという論議、これはやっぱり二つ立てておかなければならぬと思うのです。  まず、第一点ですけれども、どうして確認するところではないなどという妙な言い方になってくるんですか。
  126. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 米側は、かねてこのような行動については、そのつど事実を明らかにする立場にないということを言っているわけでございます。ただし、沖繩に駐留しておりますSR71の行動については、これは安保条約のワク内において行なわれているものであるということをあわせて言っているわけでございます。
  127. 上田哲

    上田哲君 このジェームズ中将のブリーフィングで話題になりましてね、これはたいへんなことだということで日本外務省はさっそく見解を明らかにしたと。どうもまだアメリカ側が何にも言わない間に外務省が事前協議の対象にならないとか、極東の範囲を越えないとかというふうな意見を表明するということ自体が私はたいへんおかしいと思うんです。そのことはどうですか。
  128. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) SR71につきましては、沖繩返還の当時以来、沖繩に駐留しているということにつきまして種々国会で御議論があったところでございます。そういうふうな経緯を踏まえまして、私どもといたしまして、かねてSR71の行動につきましては深い関心を持ってきたところであるわけでございます。  八月の十六日に、たまたまそういうふうな、先ほど来申し上げております報道がワシントンからありましたので、直ちにその事実関係を照会し、先ほど御答弁申し上げましたような回答があったわけでございますが、外務省におきまして記者団からこの問題について照会がありました際に、米側としてはそういうただいま申し上げているようなことを回答してきていると。しかしながら、万が一SR71が沖繩から飛び立ってカンボジア上空の偵察を行なっているという事態があると想定して、このような事態は、米側が説明しているとおり、安保条約のワク内のものと考えられると、こういうことをコメントした経緯があるわけでございます。
  129. 上田哲

    上田哲君 そこで、その二つ目の問題に入るのですけれども、じゃ、そのことがあったとして、どうしてこれが事前協議の対象にならないのですか。それはもう明らかに重要な戦闘作戦行動の一部であると理解しなければならないと思います。なぜそうじゃないんですか。
  130. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 安保条約にいう事前協議の対象となります戦闘作戦行動のための施設・区域の使用につきまして、従来政府として、偵察行動は、偵察活動は安保条約にいう事前協議の対象とならないという立場を一貫してとってきておりますので、SR71が偵察行動を行なっているという限りにおきましては、これは事前協議の対象となる行動ではないと、こういう解釈を従前ずっととってきているわけでございます。
  131. 上田哲

    上田哲君 水かけ論にはしたくないんだけれども、偵察行動がどうして戦闘作戦行動の一部であり得ないのか、ここのところがはっきり明確にならないんですよ。特にSR71というような、これだけすごい性能の偵察機が戦略行動の重要な一環をなしていないなんてばかなことはあり得ないんです。そうでなければ、また何で政府が沖繩におけるSR71の存在にそんなに神経をとがらさなければならないのか、これはたいへんおかしいことになりませんか。だから、どうしてこのSR71の偵察行動というものが戦闘作戦行動の一部ではないということになるのか、そこをひとつ明確に説明してください。
  132. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 安保条約にうたわれております事前協議の対象となるものにつきましては、昭和三十五年以来国会において議論が行なわれてきているところでございます。その間政府といたしましては、戦闘作戦行動のための米軍による施設・区域の使用ということに関する態度を一貫して申し上げているわけでございまして、偵察行動は、その意味における事前協議の——戦闘作戦行動そのものではなく、したがって事前協議の対象になる行動ではないという解釈を一貫してとってきておるわけでございます。
  133. 上田哲

    上田哲君 念のために、じゃ、そのSR71の性能を言ってみてください。
  134. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) ジェーン航空年鑑によりますと、高空航行可能高度は二万四千メートル、その高度におきます最高速度はマッハ三と、こういう性能を持っているとのことでございます。
  135. 上田哲

    上田哲君 二万四千メートルの超高空ですから、対空砲火で撃ち落とされる心配もなければ、カンボジア上空なんか一時間で飛び回ることができる。これは完全に戦闘行動の一部をなしているものですよ。三十五年以来云々とおっしゃるけれども、明らかにこれは、もうこれだけの高性能の偵察飛行というものが戦闘行動の一部をなさないなんていうことになったら、議論にならないと思うのですが、たぶんこれは水かけ論になるんでしょう。  もう一つ伺っておきたいのですが、この際、極東の範囲というのはどうなっていますか。
  136. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 安保条約によります極東の範囲につきましては、昭和三十五年の国会以来種々御議論があったところでございますが、政府といたしましては、極東の範囲に関しまする統一見解を出してございまして、今日、その見解はもちろん変わっておらないわけでございます。
  137. 上田哲

    上田哲君 それをもう一ぺん言ってください。
  138. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 政府の統一見解によります極東の範囲と申しますのは、かいつまんで申しますと、日米両国が平和と安全の維持に共通の関心を特に有している地域でありまして、こういう地域は大体においてフィリピン以北、並びに日本及びその周辺の地域であるというのが極東の範囲に関する政府の見解でございます。
  139. 上田哲

    上田哲君 そうしますと、カンボジアはそのうちどの部分に属しますか。
  140. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) カンボジアは極東ここにいっております極東そのものではないと言えますが、日本といたしまして、安保条約の適用上、平和と安全の維持に無関係ではないというふうに考える地域であります。
  141. 上田哲

    上田哲君 そうすると、極東の範囲外に出ていくわけですね。この仮定の場合になりますけれども、極東の範囲外のところに行くということになるわけですね。カンボジアに偵察飛行なり、あるいは爆撃飛行なりが行なわれるということになれば、このことはおかしくありませんか。
  142. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 極東の周辺地域という観念がございますが、これはこの地域の平和と安全が日本にとって無関係ではないというふうに考えられる地域でございまして、今回のいま御指摘ございましたカンボジアは、まさに日本としてこのように考えている地域であります。
  143. 上田哲

    上田哲君 周辺地域という考え方が非常にあいまいでしてね、そんなことを言い出したらどこまででも行くことになるわけで、政府は、米軍の出動範囲が、相手方の攻撃や脅威の性質によって必ずしも極東に限らないという見解を述べたことがあるわけですが、こんなことになってきたら、前協議というのは一体どれだけの意味を持つことになるのか、非常に私はここは危険だろうと思うのです。特にこのSR71などという、あなた方自身気持ちの悪い魔の飛行機だと思っているような超優秀の偵察機が、極東の範囲ということを一定のワクにしていたはずなのに、そこから飛び出してどんどん飛んでいく、全く歯どめがなくなってくるということになりませんか。この際、こういう報道が実際に確認されるところでなかったと言われるけれども、われわれにとっては、たいへんあいまいな表現でまたうやむやにされてしまつたと言う以外に、この問題に正確なコメントが与えられたとは思えない。SR71は、たとえば、本土にはないのですか。沖繩ではどうなっているのですか。それからこちら側がSR71について、こうした結果論の問題だけではなくて、常時どのような、チェックといかなくてもマークができるのですか。
  144. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) SR71は沖繩の嘉手納に駐留いたしております。本土にはSR71は駐留してないというふうに了解いたしております。また、このSR71の沖繩における駐留につきましては、沖繩返還交渉当時からの問題でありました関係上、政府としては、SR71につきまして、先ほど申し上げましたようにかねて深い関心を持っているわけでございまして、米側に対しまして今回直ちに照会いたしましたのも、そういう背景のもとに行なったわけでございます。
  145. 上田哲

    上田哲君 SR71の偵察行動というのは、私はもう明らかに疑惑の点だけからいっても事前協議の対象に含めるというぐらいの外交方針がなければ、国民の疑惑に答えることにはならぬと思うのです。そういう立場をとろうという意思はありませんか。
  146. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 事前協議の対象となるべき行動につきましては、先ほど来御答弁申し上げておりますように、昭和三十五年以来真剣に国会等で御蔵論いただき、また政府として取り組んでまいりました問題でございます。偵察行動そのものにつきましては、事前協議の対象となるべき戦闘作戦行動とは考えないというのが一貫した政府の統一見解でございまして、その意味では、SR71も偵察行動を行なっておるという意味におきまして、戦闘作戦行動の対象となる事前協議の主題ではないというふうに考えておるわけでございます。
  147. 上田哲

    上田哲君 じゃ、伺いますが、SR71などというたいへんな超性能機が停戦後のカンボジア上空を飛んでいるということが、アジアの緊張にとって好ましいことだとお考えになりますか。
  148. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) SR71がカンボジアの上空を偵察行動を行なっているかどうかということについて、事実関係確認されておらないわけでございますが、いずれにしましても、政府といたしましては、ベトナムの和平協定が関係当事国によりまして誠実に実施されて、この地域の和平が文字どおりすみやかに実現し、永続する平和が達成されるということを深く希望している次第でございます。
  149. 上田哲

    上田哲君 とすれば、好ましくないのだという表現として受け取るわけですが、とすれば、事前協議の対象に含めようという外交手順を踏むということでないにしても、そのようなことが日本の国土である沖繩から、たとえ米軍基地といえども、そうした地域に飛んでいくというようなことがないように最大の手を打たなければならない、そのための外交手段を何らかの努力目標にしたいものだというようなことには歩み寄ることはできませんか。
  150. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) SR71が沖繩返還交渉当時から問題になっておりましたことは、一つには、これが国際法に違反した行動を行なっているのではないかという疑念が国内に持たれておったわけでございまして、政府といたしましては、この点の疑念につきまして米側にそのつど照会し、米側は国際法に違反するような行動を行なっておらないということを確言してきているわけでございます。
  151. 上田哲

    上田哲君 国際法に違反するかどうかの問題ではないんです。アジアの一国としてわれわれはアジアの安定、平和ということを希求するために、そのような魔の飛行機が停戦後のカンボジア上空を飛ぶなどというようなことがもしあるならば、これは好ましくないことは言うまでもない。あなたもそれを間接的にお認めになった。しからば、そのような事態が事前にチェックできるようなものとしての外交努力というものをなさるべきではないか。これが安保条約にいう事前協議という項目にそれを含めるということは外交努力としてむずかしいにしても、そういうことをこのような、たとえブリーフィングのミスリードかもしれないけれども、問題が提起されたことを契機に、日本の外交努力として、そのようなところに一歩、半歩踏み出すことがいま必要だという認識を持たれないかということです。
  152. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 私どもといたしましては、インドシナ地域にすみやかに真の平和がもたされるということを常に希求しているわけでございまして、政府が北ベトナムとの国交正常化のための交渉を現に行なっておりますのも、そういう方向への一つ努力というふうに考えているわけでございます。
  153. 上田哲

    上田哲君 どうしようもないですな。私の言うことは共感できませんか。
  154. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) SR71が非常に危険な存在であり、これが事実関係確認されておらないまでも、伝えられているようにカンボジア上空の偵察行動を行なっているということがきわめて望ましくないことであるという御発言というふうに伺いますが、その点につきまして米側は、事実関係確認しない、また国際法に違反してない、安保条約のワク内においての行動であるということを確言しているわけでございまして、政府といたしましては、この地域の平和、和平の到達ということを強く希求しているわけでございます。
  155. 上田哲

    上田哲君 そのような希求を米側に日常的に強く要求をしていくという姿勢を持ちますか。
  156. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 米側自体としてもインドシナ、あのベトナムの和平協定の調印ということを通じまして、調印を行ないまして米軍の撤退を行なってきたわけでございますから、すみやかにこの地域に文字どおり永続する平和の到達ということを考えているということは間違いないと考えますが、その方向でさらに関係国の努力が行なわれることを期待したいと思います。
  157. 上田哲

    上田哲君 米軍の駐留目的にいう極東と米軍出動の範囲は同じですか。
  158. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 在日米軍が日本にあります施設・区域の使用を認められますのは安保条約に基づいて行なわれ得るわけでございます。したがいまして、在日米軍が日本にあります施設・区域を使用しての行動というものは安保条約のワク内に限られることは当然であります。
  159. 上田哲

    上田哲君 施設じゃないですよ。米軍出動の範囲ですよ。
  160. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 出動の範囲というのがいかなる態様をとりますか……。
  161. 上田哲

    上田哲君 極東の範囲と出動の範囲ですよ。
  162. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 私が御答弁申し上げておりますのは、米軍が出動いたします際に、日本にあります施設・区域を使った形での出動ということになりますれば、これは安保条約のワク内で行なわなければいけないという点は当然のことでございます。
  163. 上田哲

    上田哲君 そうなれば、沖繩から出ていってカンボジアまで行くことはいけないわけですね。
  164. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 私が先ほど御答弁申し上げましたように、カンボジアは日本にとりまして、この地域の平和と安定に無関係ではあり得ないと考えられる地域でありまして、そういう意味におきまして、SR71が日本にあります施設・区域を使用することは許容される行動であるというふうに考えているわけであります。
  165. 上田哲

    上田哲君 完全に論理の矛盾が露呈してきたわけです。そういう態度が私は全く対米従属であり、だからこういうブリーフィングが出た場合に、あたふたと米側の発表がない前に、事前協議の対象にならない、逸脱をしていない、こういう発言になってきたものと思います。これはやっぱり、もう根本的にその姿勢を改めるべきときが来ているんですよ。明らかに三十五年当時の古証文を出すような形で今日解釈論を振り回していること自体が、新しい性能の飛行機に対応できなくなったというようなこともあるわけでありまして、やっぱりそのような御答弁では私は非常に不満であります。間違っていると思います。論理の矛盾にやはりもっと明確に対処さるべきだとも思います。そのことを強く指摘して、対米従属関係といわれてもしかたがないこの姿勢から、もっとしっかりした姿勢で、こうした懸念を緊張緩和アジアの中で解消していくように強く要請をしておきます。  次に、F4EJの空中給油問題を先般質問いたしましたけれども、例の二点給油問題で一定の決着を見ました。過日の予算委員会で、総理が、空中給油はできないように改装ずる、こういう答弁をされたんでありますけれども、伺っておきたいのは、その後、この総理答弁はどのように具体的に実行されましたか。
  166. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) F4EJの空中給油装置につきましては、先般先生の御質疑に対しまして総理からお答え申し上げました趣旨に沿いまして、その趣旨と申しますのは、地上給油の用には供されるが、空中給油の用には供されないように改修をするという方針に沿いまして、その後技術的検討を続けてまいりました。現段階におきましては、これは新しく地上給油のリセプタクルをつくらなければ新しくその場所に装置すべきものができない。すなわち、現在F4EJに対しまして輸入してまいります空中給油のリセプタクルの口径、あるいは長さ、機能等を見ますと、全くこれは新しい地上給油装置をつくりませんとこれに入りません。したがって、現在、F4が持っております現在の地上給油の受け口をそのまま適用するということが構造上できませんので、実は新しい給油口を作製することにしております。そのためには現在航空機の製造上の措置といたしましてECPという措置がございます。これは技術変更指令でございますが、この技術変更指令を関係の業者から防衛庁のほうに現在提出をする準備を進めております。この変更の改修の方針につきましては、防衛庁内部におきまして長官の御了承を得まして、いまのような方針に基づきまして新しいものをつくりまして、それが技術的に開発されたあとに、大体つくり始めましてからリードタイムが約一年ちょっとかかりますが、したがいまして、来年の後半にはでき上がりますが、その段階におきまして、その段階にあります製造中のもの及び保有のものにつきまして全部その新しいものをつけてまいる。それからまた今後、たとえば昭和五十年度予算等におきまして計画しております数機、すなわちF4にしますと全機で百二十七機に四次防中なりますが、百二十七機全部にこの新しい地上給油用の受け口をつけるという方針で現在作業を進めております。
  167. 上田哲

    上田哲君 F4EJはそういうことで、総理の約束どおり、不徹底な面もありましょうけれども、とにかく進んでいるということで了解をしますが、あの際にも少し問題にいたしましたけれども、ここでSR71とも関連して出てくるRF4E偵察機、これもたいへん高性能の偵察機でありますけれども、あのF4EJの議論のときにも地上の二点給油が必要なんだということが最後のよりどころになって、いろんな架空な数字も出てきたわけですが、少なくともRF4E偵察機に関しては、地上二点給油というのは必要はないのだということは当時も確認をいたしました。まさにこれはアメリカのSRではないんでありまして、わが国のRF4Eが領空侵犯をしたり、アジアの緊張を激化させるようなことになってはならないというためにも、これは二点給油の必要は全くない。説明の方法はあり得ないわけです。RF4Eについては二点給油はしない、空中給油装置をとらないということでいいですね。
  168. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) これは私からも御説明申し上げましたが、当時申し上げたのは、RF4Eは確かにF4EJほどの必要性は少ないでありましょう。しかしながら、RF4Eが一たん偵察から帰ってきて再び飛び立つ場合に、二点給由をやったことのほうがより早く回転率を進める。特にRF4Eの場合に機数が非常に少ないということ、それからまたRF4Eの場合に武装を持っておらないという脆弱性を持っておるということで、地上待機の時間をなるべく少なくするということは望ましいことであるという趣旨を申し上げたつもりでございます。したがいまして、F4HJについて空中給油装置を剥脱する、同様にRF4Eについてもその点はやむを得ないと思いますけれども、地上給油の二点装置については存続きせるような方向で検討さしていただきたいというふうに考えます。
  169. 上田哲

    上田哲君 これは私はF4EJのときにも縦深性がどうかというようなことば説明があってたいへん不満でありましたし、論理としても成り立たないと思いましたけれども、いまの場合も防御装備を持たないというようなことは偵察機はあたりまえですけれども、偵察機なんですから、偵察機の性能からいって、普通の戦闘機、攻撃機が飛行場で待機をしているときに攻撃を受ける可能性の問題と全然これは意味が違うと考えるのは常識だと思います。しかし、F4EJとの関連において、最低限これもF4EJ並みに空中給油をふさぐ、こういうことは間違いないこととして確認ができるわけですね。
  170. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) そのように措置いたします。
  171. 上田哲

    上田哲君 私は、それならほんとうにわずかな差、このわずかな差を、誤差ではじいてこれだけ違うじゃないかと言えば幾らでも理屈はつくのですけれども、やっぱり無理やりに名目上の地上二点給油方式を残しておくというようなことではなくて、すっきり改装をされるべきだと思うのですよ。これは念のために伺っておきたいと思います。
  172. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) それは方法論の問題で、地上二点給油の必要はないという御見解と、機数も少ないものであるから、地上において急速な給油速度をもって再行動できるということの性能を欲するということにおいては、やはり基本的な問題は別として、そのことについては御理解を願える範囲ではなかろうか、そのように思います。
  173. 上田哲

    上田哲君 私は、RF4Eが空中給油装置を持たないということは、これは憲法上の問題にもなるのだから、F4EJでああいう結論が出ているのですから、ここまでは共通認識としてあたりまえだと思うので、やはりRに関してはぜひ空中給油装置そのものを除去して輸入することができないものかと思いますよ。これはひとつ今後の課題にして、少なくとも空中給油装置そのものはないということをはっきり確認をして、議論を先に進めますけれども、問題となっているキャップ運用ですね、キャップ運用はやるのですか、やらないのですか。
  174. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) キャップ運用と申しますのは、特定の地域の上空でもってあらかじめ待機をしているというような飛行形態を申すものでありますが、これは言うまでもなく、地上から要撃する時間を節約するという意味であります。したがいまして、運用効率上はきわめて有用な一つの方法であります。したがって、これをやらないというふうには私どもは申せないと思います。しかしながら、現実問題といたしましては、F104にしても、F4にしましても、航続時間が必ずしも多くありませんし、総機数がそれほどございません。したがって、事実上は特定の時期、特定の空域、そういうものに限って使用されることがあり得るというのが実態であろうと思います。
  175. 上田哲

    上田哲君 これは背中の穴はアメリカで改装して持ってくるのですか。こちらへ持ってきてからやるのですか。
  176. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) RF4Eは、御承知のとおり大型機でございまして、しかも胴体と主翼とが永久結合というような形をとっているものでございます。したがいまして、これを輸入する形式で昨年十一月に日米間で交換公文を結んだわけでございます。輸入という形になりまして、しかも大型で、主翼と胴体が離れられないということになりますと、結局輸送するには、非常に大型の船を使うか、もしくは、みずから給油を受けながら飛んでくるしかないわけでございます。海上輸送のほうにつきましても検討はいたしましたが、とてもこれだけのものを運ぶ船がなかなかございません。したがいまして、空中給油を数回受けながら日本に到達する以外に輸入の形式がないわけでございまして、そういう形で日本に飛んでまいりますので、ただいま答弁いたしましたように、RF4Eにつきましても、F4と同じような形で、空中給油装置を取りはずしまして、二点給油可能な地上受け口をつけるべく現在考えております。したがいまして、日本の国内に入れましてから新しくこれもそれに合ったものを開発しまして、十四機すべてに入れかえようというような方針を現在考えております。
  177. 上田哲

    上田哲君 そういう改装には二通りあるようですね。TO方式というのとECP方式というんですか、テクニカル・オーダー方式とエンジニアリング・チェンジ・プロポーザルというんだそうですが、つまり大改装を必要とするTO方式なのか、大改装には至らないECP方式なのか、そのどちらになりますか。
  178. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) 先ほどの御答弁で申し上げましたとおり、ECPの方式をとるという形でございますので、いわゆるこの運用上の指令を内容といたしますテクニカル・オーダーではございませんで、あくまでも技術的な変更指令というような形のものでございますので、これはF4の場合にはライセンス先でありますマクダネル・ダグラスと三菱重工との間の了解だけで、特別にこれに関しまして新らしく何らかの経費を払うとか、そのような形をとる必要はなく、日本国内で改装が可能であるというような形のものでございます。
  179. 上田哲

    上田哲君 ECP方式をおとりになるんでたいしたことはないし、金もかからぬという話なんだけれども、実際には機体とか搭載機器とかエンジンを含めてやっぱりいろいろいじるわけですね。これはあのへその穴をどうするこうするという程度の話とは違うはずですよ。特に高性能のものですからね。これが非常に安全上の問題も出てくるんだと私は思うんです。ちょっとこのいまのECPだからたいしたことはないんだと。ほんとうに経費はかからないのか、そして構造上幾つかの問題が出てくるんではないかという懸念を持たなくていいのか、私はちょっとそこに議論があると思います。
  180. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) ただいま先生の御指摘のとおりでございまして、実はこの改装は、形式上はECPという形を、技術指令という形をとります。このFCPというのは、簡単と申しますけれども、技術的に簡単という意味ではないわけでございまして、たとえば、タグラスとの、ライセンス先との非常にやっかいな、たとえばライセンス料に関係してくる問題でありますとか、あるいは向こうから技術者を呼ばなければ手がつけられないというような程度のものではない。日本の国内で、日本で地上給油装置をつくっておりますから、その地上給油装置をはめるということで改装が可能であるという意味で、ECPという形式をとっておるというふうに申し上げたわけでございます。ただ問題は、御指摘のとおり、非常に高性能で、しかも速度の速い飛行機でございますので、たまたま先般事故も起こしたような経緯もございますし、非常に安全上の観点というのは、特に受け口が機体上部の表面についているものでございまして、まあいつこれがたとえば開いてしまうとか、飛んでいる最中に開いてしまうとかいうようなことが起こりますと大事故につながりますので、私どもはその安全上の観点というものは技術的な面から最も重視しておりまして、そういう面からいいまして、安全上あるいはその経費上、もしくはまた技術的な容易さか、むずかしいかというような諸点を勘案いたしましてこれまで検討してまいりましたが、おおむねその開発の目安をつけた次第でございます。経費の点でございますが、やはりできるだけこれは私どもとしましては効率的な経費でやりたいということは、当然予算上の措置でございますから考えております。ただ問題は、御指摘のとおり、安全性がいかに確保できるかという点は最重点として現在の改装工事を考えております。
  181. 上田哲

    上田哲君 自衛隊の飛行機が最近よく落ちるわけでしてね、しかも落ちたからというわけではないが、一機二十億円をこえるようなたいへんな飛行機がどんどん落ちていく。それが実は、そういう性能上の問題、それから改装上の問題ということに対する何か責任の欠落とか、大きなミスが伏在しているのじゃないかということが私は気になるんですよ。これはまあわれわれのほうは自衛隊に賛成の党ではありませんけれどもね、だからといって、国費をかけている、あのたいへんな札束が飛んでいるような飛行機が簡単に落とされてたまるものかというぐらいの議論はあるでしょうから、ちょっとまあ表現としては適切でないけれども、議論をしていいだろうという意味で言っているのですが、そういう意味で、先般の因縁の飛行機ですけれども、五月一日の鹿島灘上空で訓練中の第七航空団所属のF4EJファントム三〇四号機、この爆発墜落事故というのがある。これなどは実に不明瞭な状態のまま今日に至っているということだと思うんですよ。これは例のノックダウンの二号機です。七月の十三日ですか、事故調査の概要というのが発表されているんですけれども、その概要、これは概要でけっこうですけれども、大体私どものほうわかっているつもりですが、ポイントをちょっと説明してください。
  182. 大西誠一郎

    政府委員大西誠一郎君) 先般の事故は、機体がほとんど海没いたしましたし、また搭乗員も二人とも殉職をいたしましたので、原因を特定するということには至りませんでしたけれども、目撃者の——目撃者といいますのは同僚の飛行機に乗っておりましたパイロットの証言と、それから米軍におきまして過去に発生をいたしました空中火災あるいは空中爆発の事例等を総合的に勘案いたしまして事故の原因を推定をいたしましたところを申し上げますと、エンジンの損傷あるいはブリード・エア・ダクトの破損が発生をいたしまして、それが燃料系統を破損し、大量の燃料の漏洩を引き起こしたと、あるいは燃料系統の破損とそれからエンジンの破壊あるいはブリード・エア・ダクトの破損というものが同時に複合して起こったと、そのいずれかによって空中爆発に至ったものではないかというふうに推定をいたしております。
  183. 上田哲

    上田哲君 これはほんの一部が出てきただけですね、ぐさっと中に刺さってあとどうしようもないと。そこで、その原因調査というのがどういうふうに行なわれるのかというのが私にはよくわからぬのですよ。つまり操縦者がベールアウトもできないぐらい瞬間的に起こった事故、アメリカ軍でもあまりこういう事故はないというケースでしょう。これが報告によれば燃料系統の破損、ブリード・エア・ダクトの破損及びエンジン損傷云々というようなことになっているんですね。これはどういうわけですか。
  184. 大西誠一郎

    政府委員大西誠一郎君) この事故は、現象的に申し上げますと、瞬間的に桃色の炎が出て爆発をしたということが一つわかっております。で、このような形態の事故というのは非常に特殊でございまして、自衛隊の従来の航空機の事故の中にもございませんし、米軍でも瞬間的な空中爆発は二件しかございません。そこで、ただわかることは、何らかの原因で発火をしたものがあると、それからその発火を拡大をした原因、つまり燃料というものがある。したがって、そういう観点からものを考えてまいりますと、エンジンそのものの破損が、エンジンのまわりにたくさん燃料系統のチューブが走っておりますので、そういうものを破壊をするということが一つ考えられます。  それからもう一つは、ブリード・エアというのは、エンジンに空気を圧縮して熱くなった空気を送ってまいりますけれども、その空気を一部機体の中のいろいろの機能を動かすために使っております。その空気を伝達をするチューブが何らかの形で破損をして、そこから熱い空気が出る。一方、機体の中には燃料系統のいろいろのチューブが走っておりますので、そういうものと接触をすることによって爆発を誘発するということは飛行機の構造上考えられることであります。したがいまして、そういう飛行機の構造上から、専門家のいろいろ知識等をかりまして、およそ考えられる原因をいろいろ詰めて、そこまで詰めていったと、そういうことでございます。
  185. 上田哲

    上田哲君 簡単に言うとコナン・ドイル方式ですな。たくさんのあり得べき原因をあげて消去法で消していったわけでしょう。これであるといって突き詰めていって当たったんじゃないですよ、これは。尾翼の一部しかないものを、さわりようがないんだから、瞬間的に飛び出すこともできないで落っこった飛行機を、これはもうどうしようもないですよ。だから一般的な原因を、だあっと並べて、これは違う、これは違うと消していって、残ったのがこれだということでしょう。そうでしょう。
  186. 大西誠一郎

    政府委員大西誠一郎君) そのとおりでございます。
  187. 上田哲

    上田哲君 だから、これはコナン・ドイルがやった方式ですよ。消去法ですよ。消去法で二十三億円がやられちゃった。これは保証の切れた翌日だそうですな。念のために聞いておきましょう。
  188. 大西誠一郎

    政府委員大西誠一郎君) そのとおりでございます。
  189. 上田哲

    上田哲君 実は運命的ですね、これは。だから、これはやっぱり使用目的について言えば、党派の立場ではいろいろ議論はありますけれども、国費のやっぱり大切な保存という観点に立つならば、これはこんな程度の調査の結果ではもうやりようがなかったのはわかりますよ。やりようがなかったのはわかるのだけれども、これでは次の安全対策が出てくるのかということになると、これはたいへんあぶない、不安感がありますね。これはそういうふうにお考えだろうと思うのですよ。そこで、まあつかみようのない方法をもっとやらなければいかぬじゃないかと言ってしりをたたいてもしかたがないので、それなら、この問題がどういうふうに次の安全対策に生かされるのか、あるいは生かされているのかというふうに考えてみますと、どうも私は納得できないのです。  つまり、いま製造中の二十機について一斉点検をやったわけでしょう。これも時間を節約して先に申し上げれば、一斉点検の結果出てきたものを軽微な不ぐあいと呼んでいるわけですね。防衛庁というところは妙なことばを一ぱいつくるところで、これ、よくわからぬですよ、耳で聞いただけでは。ぐあいのいいことに不をつけて、軽微な不ぐあいと言う。この軽微な不ぐあいというのがいろいろ出ているわけですけれども、この一機二十三億七千万円、たいへんな飛行機のいろいろなところをさがしてみたら少しずつ軽微な不ぐあいが出た。しかし、少なくともこれはコナン・ドイルよりは意味がありますよ。一般的なたくさんの理由の中からみんな消していって、これに違いなかろうと、これ以外考えられないなんというような当てずっぽうみたいなことよりは、少なくともここにこれだけの損傷があるというのを見つげたのなら、それ以外に理由が見つからないならば、これは軽微な不ぐあいではなくて、重要な不ぐあいということになるんではないですか。その辺の取り上げ方というところが不徹底で、つまり徹底を欠いているということは、こういう性能の高い飛行機についての検査なり整備なりということの体制の不備をあらわしているんじゃないかと私は思うのだけれども、いかがですか。
  190. 大西誠一郎

    政府委員大西誠一郎君) ただいま消去法で原因を詰めたということを申し上げましたが、もちろんその過程におきましては、当時残っておりました航空機の一斉点検をやりまして、幾つかの不ぐあい事故を発見いたしました。それと、先ほど申し上げましたように、航空機の構造上考えられ得る原因との関連を追及いたしまして、従来TOできまっておりますところの整備点検の基準をさらにきびしくして、具体的に申し上げますと、ある事項につきましては百五十時間で点検をする項目の対象としておったものを五十時間にする。それから、ある項目につきましては、部隊の点検の段階では取り上げていないというようなものを新たに加えるというようなことを具体的にあげまして、部隊の整備及び会社の生産段階においていささかも遺漏がないように指導をいたしたわけでございます。
  191. 上田哲

    上田哲君 二十機についてのその欠陥の度合いは、資料をくれますか。
  192. 大西誠一郎

    政府委員大西誠一郎君) 差し上げます。
  193. 上田哲

    上田哲君 幾つもどうも不審な点があるのだけれども、何らかの不ぐあいということで、ブリード・エア・ダクトの破損等となっているのですが、これがよくわからない。それから、まとめて申し上げれば、そのあと出てくる安全対策として具体的な対策というものは一向に出てきているように思えないのですよ。私に言わせれば、どうも自衛隊とメーカーがきわめてずさんな点検、検査をやってお茶を濁してしまったのではないかという気がしてならない。各部隊における新規点検項目の追加というのがあるはずなんですが、これの中身は何か。生産段階における点検確認方法の改善というのは具体的にどういうことであったのか。項目はこういうふうに抽象的にあがっていますけれども、そのことの内容をちょっと説明してください。
  194. 大西誠一郎

    政府委員大西誠一郎君) 先ほども申し上げました、残った飛行機の総点検において発見をいたしました不ぐあいが軽微であるという問題でございますが、これはそれ自体大事故につながるものではないという判断をいたしたわけであります。しかしながら、それを放置された場合には大事故につながるおそれがないとは言えないという意味において、将来の安全対策上の対策を講ずる上において参考にするというような趣旨でございます。  そこで、部隊における点検整備の強化の具体策でございますが、エンジン室の配管、配線の点検の強化の項目の中で、燃料、作動油配管等の損傷等の点検間隔を百五十時間から五十時間ごとに短縮をいたしました。同時に、配管、配線等の接触点検の間隔につきましても、同じように百五十時間から五十時間に短縮をいたしております。  次に、燃料系統の点検の強化につきましては、これは加圧漏洩試験、つまり通常でありますと、目で見て燃料が漏れているかどうかを点検するわけですが、それに圧力をかけて、そういう状況のもとにおいて燃料が漏れているかどうかというものを点検をする試験は、新たに項目として加えまして、百五十時間ごとにやるということにいたしました。同様に、燃料油送配管の漏洩試験につきましても新たに加えております。  それから第三番目に、加圧ベント系統の点検につきましても、新しく百五十時間ごとにやるというふうにいたしております。  それからブリード・エアの系統の点検につきましては、加圧漏洩試験を従来九百時間ごとにやっておりましたのを、その間隔を詰めまして三百時間ごとにやる。  以上のような項目につきまして、具体的に点検をざらにきびしくやるという措置をとったわけでございます。
  195. 上田哲

    上田哲君 どうも問題はメーカーだと思うのですよ。そのメーカーにある九機について点検して欠陥が発見されたのが五件ある、こういうふうに聞いておるのです。その原因は、製造、組み立て段階、エンジン、機体部分で生じている。結局これは三菱とか石川島播磨、これは私はその辺のところが無責任だと言ってしまえば簡単なことになるのだと思います。一体、防衛庁は、そういう欠陥を見過ごして領収してしまうような体制があるのじゃないか。これは山中長官が就任されて、駐在官事務所の問題をさっそく整理をされた。これは私はいいことだと思います。おかしいのです、これは。行ってみると、全く用もないのに、これをつけたのが入ってきてじっとしているというのは、どう考えてもこれはおかしいので、一ぺん指摘したことがありますけれども、これは整理されるという着眼は私は評価します。しかし、これをどこか近くの外へ出すのですか、いろいろおやりになるんだろうが、そのことを評価するにしても、やっぱりどうも産軍癒着と言ってしまっては簡単過ぎるけれども、メーカーというものの言いなりに——と言っても言い過ぎかもしれぬが、結果的にはメーカー側がその欠陥というものを十分に防衛庁側から指摘を受けて、場合によっては突っ返されてというような状況にはなっていない体制、このことは駐在官の問題だけでは済まない後遺症として残っていると現在思うんです、私は。  ここまでくればF4EJなんというのは全く欠陥飛行機ですよ。外国の数字を聞いてみても、たいへん日本の事故のケース、あるいは二十機を調べた場合のデータからいっても、これは欠陥飛行機がぶんぶん飛んでいる、何が防衛かというような話にもなってくると思うのですが、落ちられる下のほうはたまったものじゃないし、国費の高額な意味からいっても放置できないということで、ひとつこういう形で、今後こういう事故が本来ならば未然に防げるはずのものが防げずにくるということを根絶できる自信があるのか、メーカーに対するそういう意味での監視を強化しなければならない根底的なことがあるのではないのかという点で、まずしぼって伺います。
  196. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは私も、私の就任前の事故でありますけれども、その事故を完全に究明しない限り飛ぶことももちろん許されないと思いましたし、国費の乱費はもちろんのこと、貴重な人命を奪い、あるいはそのままほっておけば他の人の死傷にも連なるおそれがあるわけでありますから、一番着目しましたのは、この墜落した飛行機がノックダウンにかかるものであった。完成品の輸入したものについてはそういう事故はいまのところなかった。そしてその後のライセンス生産にかかるものでもないし、ノックダウン八機という、いわゆる部品を入れて組み立てるという特殊な形態の問題で、ライセンス生産ならばこれは完全に——ライセンスは外国のものであっても、日本人の技術、そういうものによって初めからつくられていくわけでありますが、ノックダウンとなりますと、向こうでつくられたものをこちらのほうで組み立てるという、いわば簡単なやり方をとった場合に、それに慣熟していなかったというようなことに原因があるならば、とことん企業側に責任を迫るつもりでおりましたし、そのことを事故原因調査の残りのノックダウン機についてきびしく命令しました。それらを点検さしたのですが、ノックダウン形式であったから事故が発生したと見られる点、したがって、それが見られたならば企業の責任において、国費と自衛隊の生命がこの事件においては失われたという問題を、責任を追及するというかまえでおりましたけれども、それらの理由による事故であるのではないかという、そういう点が発見できなかった。その点は、私自身も言われるまでもなく、まず一義的には、私どものほうに納入する側の企業のほうの問題が一番やはり大事な問題であると考えて、この点検は厳重に命じました。今後は、まだ納入以前のものも検査をいたしましたし、これらの検査は今後も引き続き行ないますし、納入いたしまする場合、国産のものであっても、ライセンスのものであっても、いずれにしても、企業側が自衛隊に納入する際に、企業側のミスによって大失態をしでかすようなことは絶対にないようなきびしい検査納入というものを実行さしていきたい、こう思っております。
  197. 上田哲

    上田哲君 長官の方針はそれでけっこうだと思います。それを受けて具体的にちょっと伺っておきたいのだけれども、業界の責任というのはどうなのかということです。これはつくっているものが責任をとらないということはないですからね。そこに甘いんじゃ防衛庁としてはぐあい悪い。これはもうはっきり三菱と石川島播磨なんですから、機体とエンジンなんですから。これはさっきもちょっとお伺いしたけれども、メーカーにある九機についての五件の欠陥部分と、それについてどういうような責任をとることになっているのか。また、今後私はそういうことがしつかり体制的にできないなら、メーカーからの納入なり飛行なりは全部ストップすべきだと、これらのことがなければならぬと思うんですよ。その点が具体的にはどういうふうにされるのか。
  198. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) もちろんこれは納入もストップさせますし、納入後企業側の責任においてこれが発見できたというものがあったら返納もいたしますし、返却もいたしますし、また今後それらの企業に対して、これはいろいろといままでの過程においての生産で企業が特定されていたという問題で問題はありましょうが、そのようなことにおいて企業側の反省というものが足りないという場合には、途中であっても、これはいろいろ問題はありますが、打ち切らざるを得ない。すなわち、その企業のモラルというものが、どうしても責任体制のもとに私たちが承認しがたいものがあるというものがありますれば、その企業に対しての発注なり、途中で契約を打ち切る手段も講ずる以外にはないだろう、そのようなきびしい姿勢を貫いていくつもりです。
  199. 上田哲

    上田哲君 これに関連して、長官は、前に本会議答弁ででも、業界が兵器国産化ということに非常にあからさまな野望というような表現があるのに対して、けしからぬという意思表示をされておる。これは私はたいへん痛快だと思うのです。そして、まあ聞くところによると、あまり業界とは接触されぬという主義を貫いておられるという。このことはたいへんけっこうだと思うから、これはそうでなくともいろいろと黒いうわざが流される相手方でありますから、この辺のところをきちっと守っていただくこととあわせて、こういう責任体制ですね、これをきちっきちっと押えていただくということをお願いをしたいと思います。これは装備局長はありますか、いいですか。
  200. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) 先ほどの先生の御質問一つ答えておりませんでしたのでお答えいたしますが、私ども、納入するに際しましては、会社側での適切なフライト、適切な十時間以上のフライトは確保しますし、また当庁の検査官自体も、現場におきまして納入前に数時間のフライトもいたしますし、その点の私ども関係業界との密着とかそういうような点は全くなく、厳正にやっておりますし、それから今回また五件発見されました内容につきましても、これは全部会社側に戻しまして、むろんこれは全部会社側の負担でし直すということで、今後とにかくいま長官から御指摘になったような諸点をきわめて厳重にやりまして、一そう会社側の姿勢をきびしく正さしたいというふうに考えております。
  201. 上田哲

    上田哲君 これと関連をして、装備品価格の値上がり問題というのがやはりたいへん重要になってきていると思います。特に航空機価格の値上がりというのがこの数年著しいわけですけれども、先般の予算委員会でも数機種の価格表の提出を求めて、なぜこれが値上がりするのかということを説明を求めたわけです。その内容を見ても私は防衛庁は価格査定がきわめて甘いじゃないかと、これはまあ風説をそのまま信じて国会質問事項にはいたしませんけれども、その甘さということを基底においていろいろと産軍癒着というようなことがいわれるのであります。特に航空機のコストは外国、アメリカからの輸入部分が多いわけですから、これはドルの割安によってコストがむしろ低減しなければならない、にもかかわらず、趨勢としては値上がりということで、まあそれも驚くべき値上がりということで、ついこの間まで二十億だったものが二十三億になるというふうな形です。この辺をどう説明するんですか。
  202. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) 航空機の値上がりにつきまして、他の品物との値上がりに比較しまして一般に航空機が高いという御指摘でございますが、御承知のとおり、現在の航空機は非常に高性能のものが多いために、結局これを製造する企業に対しましてもかなり高度の技術要求をいたしますし、また非常にその部品その他、使用する機械、設備類の多いものでございますから、当初からかなり多額の設備投資を必要といたします。それからまた、これに携わります従業員等につきましても、きわめて高度の技術水準を要求するという観点からいいまして、普通の一般市販品等と比べますとどうしても全般的に値上がりが顕著になってくる。これはわが国のみではありませんで、各国ともこの装備品調達関係者はその値上がりの大きさに非常に苦労するわけでございますが、特に私ども聞いておりますところでは、航空機関係アメリカでも大体平均しまして年七、八%ずつの上昇率は示しておるということでございます。  特にわが国の場合には、できるだけ航空機の機体を長もちさせましてかなり長期に使いますが、したがいまして、航空機の寿命を一ぱい一ぱい使う関係から、それに搭載する航法装置でありますとか、あるいは通信機器でありますとか、このような搭載装置をできるだけ近代化することによりまして、機体は古くなっていくけれども、性能をできるだけアップしてカバーしていく、こういうような姿勢を現在とっております。つまり一機種がかなり長い間実は使われてきておるわけであります。現在の段階では機体関係そのものの値上がりも加工費等の関係から上がりますが、特に航法装置でありますとか、電気通信機器でありますとか、このようなものは技術的に現在世界では日進月歩でありまして、この中にはやはり日本ではとてもできない部品等の購入も含まれますし、そういう点からいいまして、実は機体、搭載機器ともに値上がりがかなり大きいものでございまして、この装備調達に関しましては、私どもも非常に実は苦労を毎年重ねておるわけでありますが、関係業界からのコスト計算というものを見ますと、とても私どもが現在査定しておるような比率では実はないような実態を出してまいります。  たとえば大体航空機の場合には加工費が約半分以上を占めるわけでございますが、現在の航空機業界は、御承知のとおり造船業界に属する企業が大半でございまして、最近の賃上げの率は、四、五年平均しますと約一八%以上になってまいります。私どもは実はこの査定は一八%では決して認めていないわけでございますが、やはりそれでも少なくとも半分以上の伸び率は認めませんと、どうにもこれは機体そのものの購入に差しつかえますので、その点はきわめて厳正に加工費の伸び率の比率はとっております。また、材料費等につきましても、最近のこの一、二年、かなり材料費が上がっておるわけでありますが、私どもはこれは政府がきめております社会経済発展計画に基づきます大体平均二形程度の材料費の伸び率を将来に対しましては見込んでおりますし、実はその点、かなり査定としましてはきびしくやっておるわけでございますが、それにもかかわらず、実は七、八%程度の実質的な値上がりを毎年避けられない。  ただし、航空機の場合には概算契約をとっておりまして、大体四年平均ぐらいの概算契約でございますが、大体納入直前に中途確定という段階がございます。中途確定条項というのを契約につけておりますが、この中確段階できわめて厳正なまた価格査定をもう一ぺん加えます。この価格査定は概算契約を上回ることは決してありませんが、下回ることはあるということで、さらにそこでもう一ぺんふるいを実はかけております。このような処置をしながらも、平均しまして七、八%のどうしても値上がりが続いていくという点が航空機全般に対して言えることでございます。
  203. 上田哲

    上田哲君 艦船の値上がりも近年非常に著しいわけですね。特にDDH、DDGの値上がりがたいへん激しいと、その事情を簡単に。時間もありませんから。
  204. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) 艦船につきましては、ただいま先生御指摘のDDHというのは、四十五年度ぐらいまでのDDHは、これは一番艦、二番艦と、実は二艦、大体同規模程度の船体で推移してまいりましたので伸び率はそれほど、実は一〇%をおそらくはこえておりません。ただ船型が非常に、実は今回予定しておりますDDH、四十九年度に予定しておりますが、これはこれから予算を請求いたしまして予算審議をお願いをいたすわけでありますが、このDDHはかなり船体規模が大きくなりますし、そうしますと、いままでのDDHと言いながら実は一番艦になってしまいまして、そういう点からいいますと、新しい全く仕様書をここで設定するわけでございます。大体一番艦の場合には、全般的に実は上がってまいります傾向がございます。それからまた現在のDDHにつきましては、対空防御をできるだけ実は強化したいということを考えておりまして、短SAM、つまり艦対空のミサイルをこれに搭載する準備を進めておりますが、実はこれはアメリカ国内におきます値上がりがかなり大きいものでございまして、その点の短SAMの搭載ミサイルの値上がり分がかなりございます。私どもはまだ概算要求の段階で、これから出すわけでございますので、その点は予算全体の規模等から十分まあ財政当局とも詰めて、できるだけ効率的、経済的な調達のしかたを考えたいと思っておりますが、実は今回の先生御指摘のようなDDHは一番艦に当たるというような特殊性があるという点がございまして、幾ぶんまあ値上がり率が高い。  それからまた現在の艦船の加工費でございますが、加工費は大体艦船の場合に六割ぐらい占めるわけでございますが、私どもの大体いままでの加工費の伸び率は一〇%前後というようなかなり低い段階の査定を加えてきております。現状ではこの一〇%前後の実は加工費上昇率ではなかなか船体自身の調達も実態にそぐはないという点がございまして、実質的にはやはり一八%以上になるような賃金上昇率がございますが、これはやはり製造の慣熟度等を十分勘案いたしまして、それをうんと下回るような数字で考えざるを得ないと思いますけれども、やはり一〇%前後の加工費の伸び率ではなかなか維持しがたいという点から、幾ぶん実態に合わせるような加工費も考えてまいりたい。このような諸点から、幾ぶんいま御指摘のDDHにつきましては値上がりが高いというような御批判を受けたのかと思います。
  205. 上田哲

    上田哲君 約束の時間がもう来ましたので、まとめてちょっとやっておきます。どんなに高くつくかという話を聞いてもしかたがないのですが、たとえばいまミサイルという話がありましたけれども、ミサイルの国産価格というものも非常に外国製品に比べれば高い。沖繩で買い取った米国製のミサイルは、国産の何分の一かというぐらいのものであったはずだ。どうして国産をするか、これは理屈はいろいろあるでしょうけれども、あまりにも差があるというのは、これは少し検討の要があるのじゃないかということがあると思います。  もう時間ですから、きょうのところは、もう一つだけでまとめておきたいのは、いま話題になっている戦車ですね。六一式戦車、六一戦車が四十八年の単価が大体七千八百万から八千二百万というぐらいだと、ところが、例の一括購入のやつですね。一括購入のやつが二億七千万、これはもうべらぼうに値段が違う。お伺いしたいのは、さっきのミサイルの話もいいけれども、しぼってお伺いしたいのは、何で一括購入でなければならないのかということ、どのくらいの意味があるのか、このメリット、デメリットの問題が一つと、あまりにも二億七千万円というのは高いじゃないか、どうしてこんなまあべらぼうに高いタンクを、われわれはもともと要らないと思うのだけれども、こんなにたくさんカメの子の親分のように増さなければいけないのか。同じようなものが外国でどうなっているかと言えば、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなんかでも、国産単価では大体一億から一億五千万くらいのものでやっていると思います。アメリカのXMOというのが、これが大体百万ドル、三億円ぐらいだったのが、あまり高過ぎるじゃないかと、それからまあ性能が初めの計画どおりじゃなかったというようなことで、議会でこれは切られた。議会で切られたというのは、やはり一つの意味があると思うのですけれども、そこで大体いまのアメリカも、イギリスも、フランスも、ドイツも、一億から一億五千万ぐらいでやっている。こういうのを考えてみますと、二億七千万円というのは、これはどう考えても意味がわからないという感じがいたします。こういうことを、この値段をどうしてそんなに突っぱらなきゃならないのか。どうもそこまで高い値段ということになってくると、いろいろやっぱりいわれる根拠をみずから与えることになってしまう。李下に冠ということになり得るテーマだろうと私は思うんですよ。こういうちょっと庶民の感覚からは考えられないようなけたの違うものの、しかもその単価の値上がり、そして外国製品と比べてもびっくりするような格差の大きざ、こうした問題をやっぱりきちっと説明をしていただかなければならぬと思います。
  206. 山口衛一

    政府委員(山口衛一君) ただいま二つのおもな点につきまして御質疑があったと思いますが、最初の一括発注というような考え方でございますが、この点につきまして御説明いたしますと、現在六一式戦車を約五百六十両程度までこの四次防期間中にこれまで買っていたものを総計しますとなりますが、私どもは、この六一式戦車の場合には昭和三十六年度あたりからの開発でございまして、実は非常にもう戦車全体が旧式化してまいってきております。各国の戦車の現状、性能に比較いたしましても六一式戦車の性能がかなり最近相対的には低いような状況になってきております。したがいまして、三十九年度から新しい新型戦車の開発を始めたわけでありますが、これまで何回か試作をいたしました。最初の試作は四十三年度に二両いたしまして、次に四十五年度にさらに四両の試作をいたしました。この四十五年度におきます試作のときの実は単価を算定いたしますと、一両当たり約三億一千万程度になってきておるわけでございます。当然試作段階でありますから、これは試作のための特殊の費用がかかっております。したがいまして、このような費用をそれから差し引きまして、それからまたこれを量産に入ると仮定した場合に、量産の場合のいわゆる慣熟度といいますか、労務費の逓減分、こういうものを差し引きまして、それで実は四次防策定の段階におきまして、四次防の初年度の四十七年度の時期の価格で換算した場合にどのくらいになるだろうかという換算をしますと、約二億円程度ということを、実は先般、昨年の国会でも実は御質疑がありまして、お話しした経緯がございます。四十七年度段階で実は二億程度のことでございまして、私どもはこの四十七年度から、来年度もし調達することが許されるとしますと、四十七、四十八、四十九と、この契約まで二年間あります。それからまた戦車の場合にはかなりふえてまいるわけであります。戦車の場合には年限がそれからまた何年かたってくるわけであります。このように最初に試作をしましたときのベースを考えまして、これを基準に実は価格を今後算定せざるを得ないわけであります。  このように価格形式をとる場合に、一括発注ということを考えますと、それぞれ毎年ばらばらに実は発注を続けてまいりますと、まだ開発から、これから初めて量産に入る段階におきまして、非常にいろいろと内部でコストの変動等、あるいはどのような金がかかるかという点の算定がどうしてもなかなかつきません。それからまた工員の慣熟度等の算定もなかなか適切にできません。このような点から私どもは、役所側としまして、一定の比率で加工費を見まして、加工費の上がり率を見まして、また材料費の値上がり率を算定いたしまして、これはあくまで官側で査定を加えるということで、それからその間、大体数年の間、大体生産がほぼ安定するまでの間不確定要素をある時期でつかまえて、できるだけ効率的な値段で調達をさせるというためには、できれば長期の契約にしておきまして、途中で中途確定というような段階を設けたほうが私どもとしましては最も効率的に調達しやすいという考え方をとっているわけであります。したがいまして、一括発注の場合には、むしろ防衛庁としましては、防衛庁側の調達に有利だという実は判定を加えて、従来から開発初期の装備品につきましては、大体原則としまして一括発注というような形式をとってまいったのであります。業界筋におきましては、単年度で契約したほうがむしろ望ましいというような声すらもあるように実は聞いております。いまのような考え方から、実は開発初期の段階におきましては一括発注というような形式をとりたいというふうに考えた次第でございます。  それから第二の点でございますが、二億七千万円というような概算契約のはじき方が、そこに何らか非常に大きい誤差があるのではないか、またアメリカのXM803が、かつてアメリカ議会におきまして百万ドルをこえたということで開発中止になったという経緯があることは実は承知をいたしておりますが、先ほど御説明いたしましたとおり、私どもとしましては、やはり六一にかわるべき戦車としましては、現在のアメリカあるいはヨーロッパ等の戦車は、車の幅及び重量の点からいいまして、日本内地でとても使えるような戦車ではございません。これは輸送もできませんし、また非常に道路のほうにおきましても、とてもこれは使えない状況でございまして、外国品をすぐ輸入するということもほとんど不可能に近いような物理的な事情がございます。したがいまして、私どもとしましては、いままでやってまいりました試作品の価格をベースにいたしまして、これに対しましてできるだけ私どもも効率的な査定を加えまして、また会社側にも今後できるだけコスト上の合理化をはかるように努力をさせまして、安い値段で引き取りたいというふうに考えておりますが、これは予算が前提でございますが、調達をしたい。実はその場合にやはり二億七千という数字が、これはまだ予算の段階でございませんで、私どもとしまして計算上試作品単価からそういうような概算をいたしました。今後できるだけやはり政府としての予算案を策定する段階までの間に関係省とも十分打ち合わせをし、また調達予定のような会社とも十分検討いたしまして、できるだけコスト引き下げがどの程度まで可能であるかというような検討を今後十分続けてまいりたいというように考えております。  一言つけ加えさしていただきますが、アメリカにおきますXM803の場合には、量産は三千両という前提で百万ドルというような算定が出たそうでございまして、わがほうの場合の現在の百六十両とはだいぶ実は生産ロットが違うように思います。またヨーロッパ等におきます戦車も、現在の段階では大体少なくとも千両か二千両というのが生産ロットの基準になっているようでございます。
  207. 上田哲

    上田哲君 最後に。  ずっときょうお伺いしてまいりました流れの中で、今回の日米会談で、この兵器問題についてしぼって言うなら、大体四次防期間中には、対米八億ドルのワクから動くことはないという御説明もありました。そうなると国産化ということになだれをうって、ぐっと広がってくるという傾向も、これはもうすぐ見えることであって、その中で国産化というものを点検していくと非常に価格の増高ということが目につく。これはインフレの一般価格の増高ということの傾向値の中にも含まれることは言うまでもないけれども、しかし、どうも大きな値上がりというものが軒並みに進んできている。国産化ということが、いまの三千両と百六十両というお話がありましたけれども、三千両つくったほうが安くなることはわかっているけれども、逆に言うなら百六十両だけを、ヨーロッパはみな千両体制だとおっしゃるのだから、ヨーロッパの一千両量産体制というものでやってもらえばいいんでありまして、わざわざ戦車を百六十どうしてやらなければいけないのかという議論がそこに出てくるはずであります。そういう立場からいって、どうもこれだけの大きな差が出てきているということは、これはやはり駐在官事務所を引き払うとか、いろいろな努力はそれなりに評価するにしても、この際何としても、この膨大な親方日の丸の装備費二兆円台を持っている四次防が進行しているさなかにおいて、政府当局ががっちりひとつその辺の綱紀を粛正する、また欠陥車については明らかにこれは責任をとらせるというようなことがないようなことでは、これは一般業界との比較においても許されないことになるだろう。また、いまちょっとことばじりをとらえるようですけれども、二億七千万円は、これはたたけるのじゃないか、大いにひとつたたいてみたらどうだ。安かったら買ってよろしいと言うつもりはありませんがね。ありませんが、そんなばかばかしいものを、防衛庁納入の高品であればそのまま黙って右から左へ行くというような感じを少なくとも改めるということは最小限の努力でなければならぬだろう。綱紀粛正ということをまん中にうたいながら、これは今後の産軍体制のあり方について、長官からひとつしっかりしたこのいまの数字を踏まえた御意見も承っておきたいし、それから、まだたくさん、半分以上も残っておりますけれども、きょうは何か初めのいきさつががたがたしたようで、私の時間が非常に削減されておりますから、質問事項は次回に多く留保するということを申し上げた上で、きょうはここで御答弁をもらって終わることにいたします。
  208. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) わが国の兵器産業は、本会議であなたにお答えしたとおりです。輸出三原則等も制約はありますし、また通産大臣の承認を得なければそれらの三原則以外の国にも出せない。したがって、原則として承認を出しておりませんから、今後もその方針は堅持しますし、輸出をできないで兵器を生産するということは、これはもう国に対して売る以外にはない、しかも国は防衛庁である。防衛庁以外に買ってくれる人はいないという特殊な産業であるということは、私は産業界は非常に謙虚でなければならぬと思うのです。こういうような環境の中のわが国の軍需産業、と呼んでいいかどうかわかりませんが、兵器産業。その場合に、私が一ぺんお答え申しましたとおり、いまのわが国のそれらの関係業界の人たちは、どうせおれたちのものしか買う先はないんだからという裏目の姿勢をとっているのではないか。これははなはだ不愉快であって、その言動も気に食わないところがあります。したがって私のときに、私たちの国における防衛産業というものがどういう姿でなければならないのか。一機、一台といえどもそれは国民の税金であがなうしかないのであって、したがって、普通の商売でいう収益性とか、量産でもって外国に販売して国内の価格を少し安くするとかということの通常の概念の適用しない唯一の業界だということを考えて、私は反省も促しておりますし、また議論等も、激論等もかわしたこともありますが、まずこれらの関係を私自身がはっきりした姿勢をとって、その姿勢をもって下部への範としたいと思います。そして、もうすでに申し渡してありますが、いろいろ積算を相談をしている間に何人かが関与いたします。その場合に、関与した者のだれであっても、企業等にもし先輩等がおってその関係で漏れたという場合に、犯人が突きとめられた場合はそれは処分しますが、突きとめられなかった場合は、それにタッチした者全員を処罰するということまできびしく申し渡しておりまして、共同連帯責任ということまで言っております。したがって今後——いままでに私はあったとは言いませんが、今後そのようなことが、特殊な業界と防衛庁でありまするだけに、私はえりを正し過ぎても過ぎることはない。利益がないからいやだというなら、それはやめてもらえばよろしいんです。そういうことできびしい姿勢で臨むつもりでありますから、その点は私も御指摘どおりにやりますので、しばらく御注目いただきたい、監視していただきたい、そう思います。
  209. 高田浩運

    委員長高田浩運君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十四分散会      —————・—————