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内藤誉三郎君 ちょっと政務次官、誤解があるようですが、私は宗教活動だとか宗教教育に援助しろということは毛頭言ってないんです。そのことは憲法上禁止されていることは私もよく了解していますが、私が申し上げているのは、宗教家とかあるいは教育家が世界恒久平和のためにやることはこれは宗教活動では私はないと思うんですよ。明らかに国際会議であり文化活動なんです。そういう文化活動にもっと外務省は理解を持ってほしいと思うんで、そういうことを申し上げたんです。
実は私、昨年の九月初めて、列国議会同盟の会議がローマであったんです。
議題は軍縮、環境保全、麻薬、低開発国教育援助等であったが、私はその際世界教育憲章の制定を
議題とするように提案いたしたんです。各国代表の演説を聞いておりましたところ、これら問題の解決はいずれも困難であると私は思いました。それはなぜかというと、結局個人か民族のエゴイズムに根本的な原因があるからです。各国民は国民である前に人間だと、教育の
制度や
内容は各国自由にきめられるべきものであるが、人間として世界共通の理想を持たなければならぬと思うんです。その世界共通の理想を
子供のときから、極端にいえば幼稚園の
子供から教えていく、そのためにひとつ世界教育憲章を制定したらどうか、こういう提案をした。たとえば、その中に盛ることは、人間と自然を愛すること、あるいは自由と平等を守ること、社会連帯公共のために奉仕すること、それから四番目に、世界は
一つ、人類は同胞であるという世界連帯観の確立というような
内容を持った教育憲章をつくったらどうか。これは
議題に採択されたんですけれ
ども、まだたくさん
議題があったので見送りになりましたが、この提案が、ことしチリで大会があるからもう一ぺんひとつ私自身は出したいと思うし、来年東京大会がありますので、少なくとも東京大会の
議題になるように外務省も側面からひとつ御支援をいただきたいと思うんです。
私、ローマの帰りにロンドンに参りまして、有名な歴史学者アーノルド・トインビー博士にお目にかかってこの
趣旨を
説明したところ大賛成でしたので、私もたいへん激励されまして、パリのユネスコ本部に参りまして、ユネスコの
事務局ナンバー・ツーのホッブスに会ってこの
趣旨を
説明したところ、ユネスコも大賛成だと、それならユネスコ本部で取り上げてくれないかと言ったら、これはやっぱり日本代表から取り上げるほうがほんとうだというようなことで、その場は帰りましたけれ
ども、私は外務省も文部省と協議されて、やっぱりユネスコというようなところで世界教育憲章の制定を
議題とされるように今後格別の御尽力をお願いいたしたいと思います。
次に、私は過去二回スウェーデンに参りました。いつ行ってもスウェーデンという国はいい国だと思いました。ストックホルムは風光明媚な水の都で、さすがに世界環境宣言が宣言されるのにふさわしい公害のない都、ノーベル賞が授与される文化のかおり高い国、男は六十歳、女は五十五歳になればだれでも
年金が与えられる、
年金で養老院の経費は十分まかなわれる、孫が来れば小づかいもやれるというほど恵まれた社会保障の発達した国でした。小、中、高等学校の教科書、教材、給食は全部ただ、小学校から大学まで授業料は徴収しないという、まことに恵まれた国であったわけです。しかし、まあ高福祉高負担でございまして、収入の三〇%ぐらいは税金または掛け金に取られるが、老後の保障が完備しているから働いている者に不満はないと、こういうふうに言われました。百年かかって土地をほとんど国有地に買い上げた国として、私はすばらしい試みだと。自由主義国で社会保障を整備した国として、たいへん私は、私の関心と注目を引いたのでございますが、特にこれからの日本の政治の方向に
一つの指針を与えてくれたような感じがしました。
ところが、私、一番驚いたことは、人口六百万、国民一人当たりの所得が米国に次いで世界第二位だと聞かされたのです。こんな寒い北欧でアメリカに次いで世界第二位。日本は二十番目ぐらいでしょうね。どうしてそんなに豊かなんだろうと聞きましたら、この国は二百年間戦争がなかったと。第二次大戦のときにドイツのヒットラーがデンマーク、ノルウェーを席巻したときもスウェーデンには侵入できなかった。同様に、スターリンもフィンランドを占領したけれ
どもスウェーデンは攻めなかった。それで今日まで戦争がないんだと。御承知のとおり、スウェーデンは永世中立を宣言している国ですが、強大な軍備を持っているから、侵入したら相当な犠牲を覚悟しなければならない、こういうわけでドイツもソ連もともに侵入できなかったと聞かされました。私は、やっぱりスウェーデンの強大な軍備のおかげでスウェーデンの中立が保障されたのだな、こう思って帰ってきたのでありますが、いまでもたいへん完備した社会保障と同額の、同じ額の国防費を計上しているそうです。私も詳しくは存じませんが、特に原爆に備えて市内には五千人収容できる地下壕が六カ所あって、平素は地下駐車場になっている。フランスの空軍よりもはるかに性能のいいすばらしい空軍を持っているということも聞かされたわけです。日本の自衛隊の航空機は八百機
程度ですが、スウェーデンはあの小さな国でもって千四百五十機だということで、ある面では日本の自衛力よりは強化されているのじゃなかろうか。
そこで、国の安全と平和を守るために自衛力というものは私は現段階では必要であると思いますが、外敵の侵入を排除できる
程度の軍備、すなわちスウェーデン
程度の軍備が必要であり、かつ十分であると思うのです。スウェーデンの軍備というのは、ドイツやソ連を打ち破るための軍備ではなくて、相手が攻めてきたら相手に相当な犠牲を覚悟しなければならないという専守防衛の軍備であり、ここに私は自衛力の限界があるように思ったのでございますが、これからひとつ
防衛庁長官に
お尋ねしたいのですが、自衛力にはどうしても私は歯どめが必要だと思うのです。一番大事なことは、自分の国は自分で守るというそういう国民の気概が必要だと思う、これが根本だと思います。最近、三次防、四次防でますますこの防衛費が拡大されているような印象を与えて、ずるずるとなしくずしに再軍備が行なわれ、戦争に巻き込まれやせぬかというような不安が国民の一部の中にあることは、これは私はいなめない事実だと思うのです。この国民的な不安というものを解消することが私は一番大事なことだと思うのです。
そこで、この自衛力の歯どめの具体策と申しますか、について、これから
防衛庁長官に
お尋ねしたいんですがね。何かこの三次防、四次防、五次防、六次防と防衛計画がどんどん雪だるまのようにふくらんでいくというような印象を与えることは非常にまずいのじゃないでしょうか。中身を見ればそれほどでないかもしれないけれ
ども、一般的にそういう印象を与えがちでございますので、私はこの辺でもう四次防、五次防という構想はおやめになったらどうでしょうか。そして陸海空の人員増加は、特別の情勢の変化のない限り今後は原則としてやらないという方針が確実にできないものでしょうかどうか。そして陸海空の人員の配置というものは、総定員法の総定員の中で、確かにシビリアンコントロールの原則がございますから、このシビリアンコントロールの原則を確保しながら、若干の融通ができるような道はできないものかどうか。私は、人間の数も大事だけれ
ども、もっと大事なのは少数精鋭じゃないかと思うんです。そのために私はもっと隊員の資質向上をはかるために思い切って待遇
改善が必要だと思うんです。こういう点について
防衛庁長官のお
考えを聞かせていただきたいと思うんです。