○
説明員(
藤岡眞佐夫君) 国際収支の問題と国際通貨制度の問題とそれからフロートの問題、その三つについて簡単に御
説明申し上げます。
まず国際収支でございますが、最近の実情は、これは先生よく御存じのことと思いますけれど、三月ごろから様子が変わってまいりまして、まあ従来黒字
対策を一生懸命
努力してまいったわけでございますが、二回の実質的な切り上げと、それから国内の
景気の振興と相まちまして、貿易収支が変わってまいりまして、で、一−五月の数字で申し上げますと、貿易収支が十五億六千八百万
ドルの黒字ということになっております。前年の同期が二十九億
ドルの黒字ということでございますから、黒字幅は非常に減ってきた。なお、私
ども、国際収支を、国際比較をいたします場合に、よく経常収支の
項目で見ておるわけでございますが、それはことしの一月から五月までで四億
ドルの黒字、昨年同期は十六億
ドルの黒字であったわけでございますから、たいへんまあ減ってきたわけでございます。ただこれは、減りましたからそれでは今度はたいへんかという御懸念かと思いますが、まあ黒字が非常に多くて、何とかしてこの黒字を減らして、
日本自身のためにも、また国際的な協調のためにも尽くしたいということで
努力してまいった、その
効果がようやく出てきたわけでございまして、ここで急に、黒字はこの程度減ったから従来の
政策を変えなくちゃいけないということにはすぐにはならないんじゃないかという気持ちでございます。
それから第二番目に、国際通貨制度の問題でございますが、これは昨年のIMFの総会以降Cトゥエンティというコミティーをつくりまして、そこで通貨制度の改革の論議を進めておるわけでございます。五月の下旬に——最近でございますが、五月の下旬にCトゥエンティの代理会議をいたしまして、従来通貨制度改革の主要
項目について一通り当たってまいったわけでございます。で、それまでの論議の結果を踏まえまして、いま事務局のほうで通貨改革の案、原案みたいなものを作成しつつあると聞いております。それを見ましても、もし大臣会議をする必要がございますれば大臣会議を開くというふうな段取りを
考えておりまして、一応いまのところはそのナイロビのIMF総会までに何らかのまとめをしたいという気持ちでおりますが、まあ七月かに行なわれます大臣会議の結果を見ませんと、どこまでりっぱな案がまとまるかということについてはいままだ予測は困難だという現状でございます。
それから三番目に、フロートの問題でございますが、まあ
日本の場合には二月の十四日に
ドルの切り下げ、それから欧州主要通貨の現状維持と相まって、国際収支不均衡を是正する一つの手段としてフロートに移行したわけでございますが、その後三月十九日からマルクの三%切り上げとともに、ECの幾つかの国がいわゆる共同フロートに移ったわけでございます。二月の通貨
調整は確かに従来のような基礎的不均衡を為替相場によって面していくというタイプであったわけでございますが、三月の通貨危機は、
ドルに対する不安といいますか、スペキュレーションに基づいた危機でございまして、その収拾の一つの形として、多くの国がフロートに移ったということでございまして、
日本はたまたまその前からフロートをしておりましたので、同じようなフロートを続けたわけでございますが、通貨制度の面から見ますと、このフロートの意味は若干異なってきたんではなかろうかと思います。通貨制度のたてまえから言いますと、私
どもはどちらかと言えば、安定した、
調整可能な固定相場制をとるほうがいいんではないかというふうに感じておりますが、とにかくヨーロッパのほうがいわゆる共同フロートいたしまして、ヨーロッパのほうから言えば、自分たちは相互の通貨は固定化しているのだ、フロートしているのはアメリカのほうだという感じを持っておりますし、あるいはアメリカのほうは、逆に
ドルのほうは従来どおりで、ヨーロッパのほうがフロートを始めたのだと、こう言っているのかもしれません。したがいまして、円は非常に微妙な
立場にあるわけでございまして、固定相場に——いま申し上げましたように、長期的な問題としては固定相場がいいのかもしれませんが、いますぐ戻ろうとしても、じゃ何にひっつくのかというふうな問題もありまして、いまたまたま全面フロートで、二、三カ月間小康状態があったわけでございまして、通貨改革への意欲も若干衰えたのかもしれませんが、現状としてすぐに固定相場に戻るというのはむずかしいんではないかと思っております。