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鈴木強君 では、あとは
NHKのほうにちょっとお
伺いしたいと思います。きょうは文部者からも来ていただいておりますが、若干ひとつお待ちいただきたいと思います。
小野さんが
会長に御就任されまして、おめでとうございました。今後、あなたが
NHKの最高
責任者として
公共放送のリーダーシップをとっていただくわけですが、若干、私はあなたに対して御所信を承っておきたいのでございます。
御承知のように、
NHKは世界最大を誇る近代的な
公共放送として不動の
体制を築かれたと私は思います。その陰には歴代
会長あるいは全
職員の皆さんの不断の努力があったものと思いまして、あらためて私は敬意を表する次第でございますが、今後、この飛躍的な発展の中に出ておりますひずみですね、これは午前中に
木島委員からもいろいろと
会長に御
質疑がありましたが、
NHKの
運営の
あり方基本的な
あり方、こういうものについて二面やはりいろいろな批判があると思いますね。私たちは新聞や
テレビやラジオでも聞くのでありますが、特に新聞の投書欄なんかは相当綿密に私は拝見しておりますけれども、
一つ一つの
番組についてもいいとか悪いとかいう批判がもう一日ごし二日ごしには紙面に出てくるようなマスコミの時代、情報化の時代ですから、そういうことがあると思うのですね。
小野さんが副
会長当時いろいろと御苦労されたのですけれど、例の内幸町の
放送会館の跡地問題とかあるいは受信料の不払い等が新聞紙上で散見される。それからたとえば銀行の振替払い込み、こういうものも何か受信者の理解を得ない間に、知らない間に銀行から振りかえしているというような記事を見るにつけましても、やはり
NHKはもう少しそういう面において
経営の根本的な
あり方に対して反省をしてもらって、初心に戻ってやってもらう点が幾つかあると私は思います。
そういう
意味において、ちょうどこれは朝日新聞の六月二十九日の「天声人語」というのがありましてね、これちょっと参考になったものですから読み上げてみますと
——
「
前田天皇」といわれて、
NHKに君臨していた
前田義徳
会長が勇退することになったようだ。九年間、
会長の座にいて、その強い個性が
NHKを
一つのカラーに濃く染め上げた▼
NHKのことは、悪口をたたいた方が気持よいことになっている。年間
予算千二百億円。この間買った世界最大級のパイプオルガンは、パイプが七千六百四十本もあった。朝の時計
番組「北の家族」は二千数百万の人が見ている。その大きさに、民間
放送は歯が立たない▼しかもこの民放を、
NHKは「商業
放送」と呼び、
内部でも「商放」という言い方を守る。われわれ「
公共放送」とは同列にあらず、というお高い姿勢がまた反発をよぶ。金持でツンとして、しかも人に好かれようというのは、土台、無理な話だろうから、ねたみをまじえた悪口になる▼もっとも
NHKのすぐれた点をいわないのは、不公平というものだろう。とくに報道、海外
番組には、他の追随を許さぬものがある。ただ
NHKのカメラは、デモでも騒動でも、いつも遠くから撮るといわれてきた。遠景は、苦しんだり、喜んだりする人間の表情をなくし、万事をきれいごとにする▼アナウンサーも同じことで、眉(まゆ)
一つ動かさず無表情でしゃべる。こうした
NHK調は、よくいえば整然、逆にいえば血が通っている感じをなくす。
前田会長は、政府にも物をいうタイプの人だったが、それでも
NHK全体としては、官に弱く民に強いという印象は年々強まっていた▲昨年、英国国営
放送(BBC)の総支配人に会ったとき、「
放送の自由とは、少数
意見を人々に伝えることだ」と、ずばり語っていた。つづけて「意気地のない、政府の代弁者にはなりません」と
放送人の誇りを説明しているとき、
NHKのことが思い出されてならなかった。
こう書いてありまして、これはまあ天声人語で、お書きになった人の感じだと思いますが、やはりこれを読んでみまして、
国民が
NHKに感じていることが端的にあらわれている部面もあると思いますね。
会長が今度新しく就任されまして、新
会長として、さっきも申し上げたように、リーダーシップをとっていただくのですけれど、若干心配になる点は、これは新聞にも端的に書いてありましたが、
小野会長は
田中総理大臣が
郵政大臣当時の事務次官でございまして、
昭和三十四年に
田中郵政大臣の
人事異動の際に専
務理事として
NHKにお入りになりました。三十九年以来三期九年間副
会長をつとめられて、
前田会長とともに一番むずかしい時代の
NHKをしょってきたと思うのであります。特にあなたは財務、会計、営業の面においては非常にたんのうの士でありまして、その精通ぶりには私たちこの
委員会でも感銘いたしておりましたし、自他ともに認めていると思います。
しかし、そういういきさつがありますから、世間では、いまこの最後にありましたように
前田さんがかなり政府に対してものを言った。しかしだんだんと政府のほうから圧力が加わって弱まっていくのじゃないかという、そういう心配がございますね。これは
公共放送でただ
一つ取り柄があるのはそこにあると思いますね、何者にも介入されない、公正中立な協会であるという、ここにまあ
放送法の規定があるわけでありまして、私はいろいろと論評してある点について、そんなことはないと思いますけれども、世間は実はそう見るんですね、あなたが
田中さんに近いものですからね。あなたが
会長になって政府の思うようになるのじゃないかという、うがった
見方だと思いますけれども、私はそんなことはないと確信をいたしますけれども、そういう世論の声がありますので、このたび失礼だと思いましたけれども、その面に対してあなたがどういうふうな確固たる御所信を持っておられるのか、まずこれからちょっと
伺いたい。