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1973-06-14 第71回国会 参議院 大蔵委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月十四日(木曜日)    午前十時十四分開会     —————————————    委員の異動  六月八日     辞任         補欠選任      長谷川 仁君     中西 一郎君      斎藤 寿夫君     桧垣徳太郎君      岩動 道行君     船田  譲君      今  春聴君     河本嘉久蔵君  六月十四日     辞任         補欠選任      青木 一男君     二木 謙吾君      西田 信一君     中村 登美君      徳永 正利君     鹿島 俊雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     理 事                 嶋崎  均君                 土屋 義彦君                 野々山一三君                 多田 省吾君                 栗林 卓司君     委 員                 伊藤 五郎君                 鹿島 俊雄君                 河本嘉久蔵君                 柴田  栄君                 徳永 正利君                 中西 一郎君                 中村 登美君                 桧垣徳太郎君                 二木 謙吾君                 船田  譲君                 山崎 五郎君                 川村 清一君                 竹田 四郎君                 戸田 菊雄君                 成瀬 幡治君                 山崎  昇君                 鈴木 一弘君                 渡辺  武君                 野末 和彦君    国務大臣        大 蔵 大 臣  愛知 揆一君    政府委員        外務政務次官   水野  清君        大蔵政務次官   山本敬三郎君        大蔵省主計局次        長        長岡  實君        大蔵省国際金融        局長       林  大造君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    説明員        外務省経済協力        局参事官     菊地 清明君        食糧庁総務部長  森  整治君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○アフリカ開発基金への参加に伴う措置に関する  法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————   〔理事土屋義彦委員長席に着く〕
  2. 土屋義彦

    理事土屋義彦君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  アフリカ開発基金への参加に伴う措置に関する法律案を議題とし、これより質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 川村清一

    川村清一君 私は、先般、列国議会同盟会議に出席するため派遣されまして、アフリカ象牙海岸国中心に数カ国を回って、アフリカ実態をこの目で見、この耳で聞いて勉強してまいりました。  アフリカは、世界後進国といわれ、開発途上国ともいわれておりますが、アフリカ実態は、開発途上国とか、単に後進国とか呼んで片づけられるものではございません。民衆生活は、われわれ日本人の生活から見て、常識で考えられないほどみじめな状態でございます。まことに失礼な話でございますが、これが一体人間生活かと思われるような生活をしております。同じ人間に生まれておりながら、生まれ場所が悪かったために、そのような不幸を受けておる人たちがおるということは、私は、人類の一人として、ほんとうに何とかしてやらなければならないと、こう強く心を打たれて帰ってきたわけであります。  これは、私一人だけではなく、おそらくアフリカを訪れた者はみなひとしくこのような心情になると思うわけでございます。一体アフリカには政治というものが存在しているんだろうか、こう疑わざるを得ないような状態でございます。アフリカ民衆の民度を高めてあげる、人間らしい生活アフリカ人たちに与えてあげる、これこそが世界政治家の任務であると強く感じて帰ってきたのが私の心情でございます。  私は、このような気持ちを基本にして、アフリカ開発基金への参加に伴う措置に関する法律案について、若干質問をしたいと思うわけであります。  そこで、まず第一にお尋ねしたいことは、日本政府は、アフリカに対して、基本的にどういう見方をし、どういうような考え方をもって外交の基本方針としておるのか。援護とか協力とかいうことを言っておりますが、その援護にしても協力にしても、どういうような考え方基本として、そういう政策を打ち出そうとしておるのか。この問題について、これは外務省でも大蔵大臣でもけっこうでございますが、政府一つ統一見解として、ここで明らかにしていただきたいと存じます。
  4. 水野清

    政府委員水野清君) 外務大臣をおやりになりました大蔵大臣もいらっしゃいますが、担当でございますので私のほうからお答え申し上げます。  アフリカ諸国に対する援助基本的な政策はあるのか、あればどういうことであるかという御質問であろうと思います。  わが国は、御承知のようにアジアアフリカ諸国のグループの一員でございまして、アジアアフリカ連帯性という観点から、アフリカ諸国との友好関係の増進ということに年を追うて努力をしていることは、先生も御承知のとおりでございます。  アフリカ諸国は、独立後間もないという特殊な事情もございますし、社会経済発展上種々の困難をかかえております。その解決のために、日本といたしましては、先進諸国からの援助要請されておりますけれども、これに応ずることは、アフリカ諸国の平和と繁栄を増進するということが目的でございまして、もちろん日本も、先進諸国と協調して、経済協力技術協力を各国との間に推進しておるわけでございます。  アフリカ諸国に対する経済協力にあたっては、特に、このアフリカ諸国は、いま先生お話がございましたように、単なる発展途上国といいますよりは、後発的な発展途上国という性格が含まれているわけでございまして、できるだけその経済援助技術援助条件をやわらげていく、ソフトな条件で二国間べースの協力を拡充しております。特に、今回御審議をお願いしておりますアフリカ開発基金などを通じる多国的な協力をさらにこれと並行して進めていきたい。二国間の経済援助は、経済援助としてやってまいりますが、それだけで不十分な点を補う意味におきまして、今回お願いしておりますようなアフリカ開発基金、こういうものを通じて多国間の援助も進めていきたい、こういう基本方針でございます。
  5. 川村清一

    川村清一君 南北問題の解決ということが先進諸国政治課題であると、こういわれておるわけでございまして、日本アジア開発途上国に対しては、相当援助の手を差し伸べておるということは承知しております。しかし、これとても純粋の援助ではなく、援助に名をかりて、むしろ金もうけに狂奔しているというのが実態でございまして、その結果エコノミックアニマルと評価され、現地人からも反撃を受けておるわけでございます。アジア諸国に対する協力援助相当力を入れておりますが実態はそうである。アフリカに対してはほとんど何もやっておらないではないかと私思わざるを得ないわけです。ただいまの御答弁によって、二国間協力ということで経済協力技術援助というようなことをされておるというようなお話でございましたが、だとすれば、現在までどのような二国間協定に基づくところの援助協力の手を差し伸べてきたのか、具体的にその実績を簡単にひとつここで報告していただきたいと思います。
  6. 水野清

    政府委員水野清君) お答え申し上げます。  アフリカ諸国に対して政府がこれまで行なってまいりました円借款供与のいろんなプロジェクトがございますが、ここで読み上げてまいりますと、昭和四十一年ウガンダに対しまして十億円の円供款を行なっております。また、タンザニア——非常に数が多くなりますんで、簡単に相手国だけを読み上げてみますと、タンザニア、ケニア——ケニアには第一回、第二回とやっております。それからナイジェリアは第一回、第二回とやっております。エチオピア、ザンビア、マダガスカルエジプトこれだけの入カ国へ対しまして、それぞれ最少限十億円から、多いところは百億円以上の資金供与をいたしております。
  7. 川村清一

    川村清一君 ただいまの御答弁によるアフリカ諸国に対する円借款の内容でございますが、このプロジェクトにつきましては、後ほどまた触れますが、いまの円借款の中で、アフリカ現地で強く言っておることは、私が、各地の日本大使館でいろいろ聞いてきたわけでございますけれども、とにかく日本借款金利が非常に高いという。これは西欧諸国フランスイタリア、イギリスなんかに比べて問題ないくらい日本金利が高いと、これが何とかならないかというのが、日本大使館方々の意見であったわけでございます。どうしてそれが高くなるかといいますと、これは原資が輸銀の金を使っておるわけです。資金運用部資金を使っておるために非常に資金コストが高いわけであります。そういう資金コストの高い金を使っておる関係金利が高くなる。開発国としてはとてもその金利にたえられないというのが実態なんでございます。ですから、もっと一般会計の金を資金に充ててもらいたいというのが強い要望であったわけでございます。この問題に対するひとつ御答弁と、もう一点は、いまのおっしゃったような程度では、これはもう問題にならない、かように考えるわけであります。それで、将来にわたっては一体どういう考え方を持っておるのかというようなことについても御答弁を願いたいと思います。
  8. 水野清

    政府委員水野清君) いま先生の、金利が高いというお話がございましたが、日本対外援助が、国際的に見てやや金利が高いということは事実でございますが、たとえば、先ほど申し上げましたように、昭和四十一年ウガンダ国に対して行ないました円借款のときには、五・七五%の金利で貸し付けをしておりましたが、その後大蔵省の御協力を得まして漸次改善をされまして、ことしの五月マダガスカルに対しまして四十二億の資金供与をしたわけでございますが、この金利は四%まで下げられております。金利の点については、いろんな国内的な条件もございますけれども、ともかく四%まで下げる努力をしているということを御了解いただきたいと思います。  それから、先ほど来申し上げましたアフリカ諸国に対します援助が、全体的に不足だということは御指摘のとおりでございますけれども、中には、やっぱりごく最近になって独立した国家が多いわけでございまして、それらの国からいろんな形で援助を求めてきているのも事実でございまするけれども、具体性がないような例が非常に多いわけであります。日本政府としては、あまり具体性のないものに対して、大事な国民の税金を預かっているわけでございますので、やはりその案を一つ一つ検討して、調査の費用とか、そういったことについてはもうもちろん援助をしておりますが、その調査の結果を見て借款を進めていく、こういうような形式をとっておりますので、まだ全般的には広がっていない、こういうわけでございます。漸次これは改善されていくだろうと思います。
  9. 川村清一

    川村清一君 御答弁を聞いておる限りにおきましては、日本政府は、アフリカに対する経済協力援助というものに対して非常に積極的に進めるんだと、また、進めてきたんだというふうに聞かれるわけでございますが、そうだとすれば、いま具体的な一つの例をもって申し上げますので、ひとつはっきりそういう考え方を、その処理の政策の中で示していただきたいと思うわけであります。  と申しますのは、これは新聞にもう連日のように報道されておりますので、政府は十分御承知のとおりだと思うわけでございますが、西アフリカでは六十年来の大干ばつで、いまや六百万人の人が餓死寸前にある。と、こういうふうに報ぜられておるわけでございます。国連の食糧農業機構FAO中心となって、食糧を送ろうということで世界に呼びかけておる、五月十日付で、加盟国にあてて、六月中旬から雨季に入り、援助物資輸送が困難になるために、四週間以内に総額一千五百万ドルの緊急援助をアピールしてきた、こう報ぜられておるわけでございます。外務省一体FAOからそういう呼びかけがあったかどうか。
  10. 水野清

    政府委員水野清君) 五月十日にFAOからそういう援助要請がございました。
  11. 川村清一

    川村清一君 外務省は、緊急援助用予算の中から四億円、百五十万ドルの拠出をきめたといわれておる。大蔵省と協議したところが、大蔵省は、日本関係の薄い西アフリカになぜ援助が必要か、賛成をしない。ついに話し合いがつかないまま援助の時期が七日で切れてしまった。こう報ぜられておりますが、一体それは事実でありますか。
  12. 水野清

    政府委員水野清君) 外務省のほうで決定いたしましたFAOに対する協力は、先生お話では四億円というお話でございますが、実際にきめましたのは二億六千万円でございます。そして援助決定の時期がおくれて間に合わなかったというようなお話でございますが、大体FAOからの要請は、六月十日前後までに回答をしてほしいというような要請でございまして、外務省として大蔵省と協議の上決定して、FAOへ、先ほど申し上げました二億六千万円の拠出を行なうという通報をいたしたのは六月十二日でございます。二日ばかりおくれておりますが、大体所期の目的期間内に協力回答をしたと、こういうふうに思っております。
  13. 川村清一

    川村清一君 五月十日付でFAOから加盟国にあてて、六月中旬から雨季に入るから、そうなると物資輸送が困難になるので、四週間以内に総額千五百万ドルの緊急援助を頼む、こういうアピールであります。五月十日から四週間以内ということになると、期限が七日で、それで七日で切れてしまったと、こう言っているわけであります。  それから、ただいま外務省政務次官は、四億円でなくて二億六千万円であると、こういう御答弁です。これは十二日の閣議では二億六千万円と決定したけれども、新聞に報道されておるのは、外務省は、最初百五十万ドル、四億円と、こう決定して、大蔵省と話し合ったところが、大蔵省が賛成しないので、切れてしまった。その後、御案内のように一こういうふらちな話があるかということで、社会党はじめ野党政府に対して、なぜ一体アフリカに対して援助をしないのだ、いまや六百万人の人が餓死寸前にあるんだ、なぜしないんだというようなことで政府をそこで突き上げた。その結果、十二日の閣議決定したと、こういうふうに報ぜられておるわけであります。これに対しまして、ヨーロッパ諸国の反響は早く、旧宗主国フランスをはじめ、西独、オランダ、ベルギー、英国あるいはアメリカ、ソ連、カナダはいち早く直接、間接に援助行動を起こしておるのであります。GNP世界第二位の経済大国を誇っておる日本だけは容易に腰を上げない。こういうようなことで、ずいぶん新聞を通じて世論の批判を受けたことは、外務省も、ここにおいでになる大蔵大臣も御案内のとおりであろうと思うわけであります。そうしてようやく十二日の閣議で二億六千万円、百万ドルを決定したわけであります。GNPの一%を対外援助資金に使うと大きく胸を張って大みえを切った政府は、一体どこの国の政府だ、新聞にそう書かれておりますよ。わが国軍事大国にはならない、経済力対外援助世界の平和と繁栄に貢献すると言ったのは日本政府ではございませんか。同じ地球上の人類が、六百万人も餓死するというのに、四十七年度の一般会計で六千五百億円も税金を取り過ぎている。この政府が、たった四億円の援助を出ししぶるのは一体どういうことなのか。この事実は、世界が何と言って評価しますか。ひとつこれは大蔵大臣からもこの間の事情を詳しくお聞きいたしたい。
  14. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは本件について報道がありましたことも、野党からお申し入れのありましたこともよく承知をいたしておりますが、同時に、政府本件を含む態度についてひとつこの機会に御説明しておきたいと思います。  そもそも、四十八年度の予算編成いたしますときに、日本政府といたしましては、特に、人道的の立場等について、あるいは世界的に緊急な事態が起こるようなときに、いち早くこれに対応することが必要であると、こう認めまして、大蔵省としては、積極的に、これは制度としてこういうものはございませんけれども、現行の制度の中で考え得る措置として、いわば外務大臣予備費というような趣旨で、十億円を経済協力費の中に組んでおるわけでございます。これが政府基本的態度でございますから、この西アフリカの問題につきましても、いち早くFAOからの外務省に対する要請にこたえて、外務省としては初めからこれに対応してしかるべき援助決定されるということになったわけで、私の承知しておりますのは、当初から、円にすれば二億六千万円——これはドルにすれば、約百万ドルでありますけれども、宗主国はじめ関心の深い国も非常に熱心ではございましたが、日本が正式に決定して返事をいたしましたのは六番目でございまして、それから、金額につきましては、百万ドル以上の協力をしましたのは西ドイツだけで、しかも、これは百五万ドルと百万ドルの違いでございますから、ほとんど日本としては最高位協力をいたしておるわけでございます。  そうして、かねがね予備費の支出につきましても、編成の当初から、こういう事態もあるであろうと、これに早く対応するようにするほうがいいということで、予算編成のときにもさような組み方をしてございますから、今回は、従来に比べれば、日本政府としては、非常に早く態度決定できたと思いますし、それから、その金額につきましても、私は、決して日本として恥ずかしい態度ではないと思います。十分国際的に信頼を得ているものと、私は、かように考えているわけでございます。  今後におきましても、そういうふうな基本的な姿勢で、かような不幸な事態が起こりましたときには、いち早くできるだけの対応をする。これが政府考え方でございます。  大蔵省の、たとえば、主計局等でどういう考え方をしたかというようなことが新聞に出ましたことも事実でございますけれども、これには多少の伝わり方に誤解があったのではなかろうかと思います。西アフリカは、地球上からいえば、日本からは遠い国であるということも事実でございますし、それから、飢餓状態が起こっておりますことも、相当広範囲にわたって、かつ相当期間にわたって起こっていると、この事実を、担当官が所見を漏らしましたことが、何か大蔵省が反対を表明しているがごとくに伝えられたわけでございますけれども、地域遠隔であって、しかも、飢餓状態がこういうふうな深刻であるということであれば、地域遠隔であっても、なおかつ日本としては積極的な態度をとらなければならないという、そこのところの取り違えというようなこともあったのではなかろうかと、かように存ずるわけでございまして、野党方々も、こういう点については非常な積極的な御姿勢を示していただきましたことは、政府といたしましても高く評価しておりますけれども、そもそも日本政府としてはそういう態度であり、かくのごとく実施をいたしたわけで、さようなことがあったからやったというわけではなくて、前々からも政府姿勢がそうであったということを明らかにしておきたいと思います。
  15. 水野清

    政府委員水野清君) まあ、ただいま大蔵大臣から御説明をいただいたことに、外務省としてちょっとつけ加えさしていただきますと、この御承知西アフリカ六カ国といいますのは、非常に日本としましては、実際に大使館が、実館が置いてあるのは、セネガルというところに一カ所ございます。日本大使館に対しましても、現状——援助をするにしましても、どういう現状であるかということを問い合わしたわけでございますが、六カ国といいましても、地域的には非常に広い、セネガル、モーリタニア、チャド、マリ、ニジェール、オートボルタというような、非常に広範囲のサハラ砂漠の、アフリカ大陸のまん中の不毛の地帯でありまして、情勢がわからないわけでございます。さらに、FAOに対しましても、状況を教えてもらいたいという要請をいたしました。このFAOからの報告書日本に到着をいたしましたのは、実は五月の二十六日と、こういうわけでございます。実際に、ただいま大蔵大臣からも御説明いただきましたが、西アフリカ六カ国に対する援助をきめましたのは、フランスが一番最初でございますが、これは実は、FAOを通じてではなくて、この六カ国は旧フランス植民地でございまして、いわゆる旧宗主国であるフランスは、そこの経済的な利権とか、いろんなものをみんな現在も把握しております関係から、こういうものに入らないで、直接援助をしていきたいと、先ほど御審議をいただいておりますアフリカ基金と同じようなやり方でございますので、フランスは非常に早かったわけでございますが、そのほか、EC諸国においても比較的まあ早かったわけでございますが、日本としましては、西ドイツ、スエーデン、オランダ英国、オーストリアの次、六番目に決定をしたわけでございまして、たとえば、日本と同じように相当額援助を期待されているカナダなどは、まだ検討していて回答が行なわれていない。あるいはデンマーク、イタリアなども、まだ検討中であると、こういう状況であることもひとつ御理解をいただきたいと思います。
  16. 川村清一

    川村清一君 ただいまのお話ですと、援助をした国の順序としては六番目だと、それから、援助額においては二億六千万というと、二番目ですか——というようなことで、日本は積極的にやっているんだというようなお話でございます。しかし、結果的にはそうなったと思うんですが、いいことはいち早くやったらいいんです。悪いことは一番あとでけっこうなんです。さんざん新聞にたたかれて、野党からも叱咤激励されて、しりをたたかれて、突き上げられてからやったんじゃ、二億六千万円を出しても、その金の価値が半分にもならないわけです。やっぱりこれは、個人の関係も同じなんですが、ほんとうに困っているときには、早く金をやることが、援助してあげることが、どんなにありがたいか、そのタイミングをはずしては何にもならぬですよ。私は、まあいま困っている六カ国は行っていないんです。しかし、北ではモロッコ、それから象牙海岸ガーナケニアエチオピア、それからエジプトと、こう歩いてきたんですが、しかし、モロッコへ行ったって、まあガーナあたりへ行って、ケニアあたりでも、家畜を見ると、私は、日本北海道ですが、同じ牛を見たって、北海道のホルスタインとアフリカの牛じゃ、とてもとてももうこれが牛かと思われるような牛なんです。羊しかり、ヤギしかりです。ですから、あの国でああいうような家畜状態なんですから、この六カ国の家畜はどうかと、この新聞に出ているとおりだと思うのです。私、この六カ国の干ばつの問題だけで、一つ新聞でこれだけの記事が切り取ってありますがね。これじゃ、これだけ報ぜられているのですから、もっといち早くやったならば、日本も高く評価され、それがまた大きな国益になって返ってくることを、いわゆる行政府として十分考えていただきたいと私は思うわけであります。  農林省がおられましたらお尋ねいたしますが、農林省の方来ていらっしゃいますか。——これはまあ直接農林省だけでやろうと思ってもできないことだと思うのですが、一応お尋ねしておきます。  米が余ってしょうがないというのが、これはもういままで農林省が口ぐせに言っておったことですね。七百万トンも米が余っている。この解決こそが農政の最重要事項である。そこで、今日まで米の生産調整というものにばく大な税金を費やしてきたのです。農民からも非常に悪く言われてきたんです。日本では、米が余っている。食糧が余って困っている。ところが、同じこの地球上で食べものがなくて、いま飢え死にしようとしている人が何百万人もいる。一体これはあなた、理解できないこと、ふしぎなことですよ。今日交通機関が発達して、地球の裏側でも簡単に行けるようになっている。アフリカまで行くったって簡単に行けるんですよ、私行ってきたんですから。どうしてそんなに困るほど余っている米があるならば、それを送ってやらないのかと、国民の素朴な感情としてだれでもそう思うと思うのです。アメリカは幾百万トンの爆弾をベトナムに落とした、この際日本は、幾百万トンの食糧アフリカの野に落としてやったらどうですか。そのくらいの気慨を持って、ほんとうに困っている、いま死のうとしている、この人たちをなぜ救ってやらないのか。いまや米は、そんなような米はないんですか、農林省
  17. 森整治

    説明員(森整治君) ただいま先生から御指摘ございましたように、過剰米の処分で、すでに計画も含めまして二百八十万トン程度、外国に援助あるいはKR等の関係で、延べ払い等も全部含めまして、そういうことで輸出なり援助なりを行なっておるわけでございますが、今年度に入りましてからは、非常に過剰米の売れ行きがようございまして、むしろ非常になくなってきておるという現状でございます。しかし、現在輸出余力からいたしますと、新規の輸出計画、今年度三十万トンに対しまして、現在まで、バングラデシュと韓国に対しましてはすでに二十五万トンの輸出を行なうことが内定されているわけでございます。残量はわずかでございます。そのほかに、インドネシア、フィリッピン等から大量にのぼります日本米の強い輸出要請がございます。しかし、まあ一先生御指摘の点につきましては、今後これらの諸国から、特に、日本米の輸出の要請があれば、その要請に応じまして、外務省関係各省と協議いたしまして、十分検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  18. 川村清一

    川村清一君 この問題は、また時間があればあとでお聞きすることにいたしまして、いま私が取り上げてまいりました問題はこの程度で打ち切りまして、法案の内容について若干お尋ねしたいと思うわけです。  今度できますアフリカ基金でございますが、この基金に対して日本は千五百万計算単位で出資するということになっておりますが、この千五百万計算単位というのは、変動相場制に移行している今日、日本円に換算すると、これは幾らになるんですか。
  19. 林大造

    政府委員(林大造君) 千五百万計算単位を円に換算いたしまして幾らになりますかということにつきましては、現在、御存じのとおり、円はフロート中でございます。したがいまして、その計算の方法はなかなかむずかしいわけでございまして、最終的には、この基金が発足いたしましてから、基金の定めるところによるということに相なっております。基金の協定の第十二条というのがございますが、この第十二条には、「いずれかの通貨の価値を他の通貨又は計算単位で決定することがこの協定の下で必要とされる場合には、その価値の決定は、基金が国際通貨基金と協議したうえで合理的に行なう。」ということになっているわけでございます。ただ、予算の上では、これはやはり一応の換算を行なう必要があるわけでございます。一ドル三百八円で換算した金額を、一応計上いたしております。
  20. 川村清一

    川村清一君 では、いまおっしゃったことは、私も重々知っているわけですよ。最終的にはそうなることは協定も読んでわかっておりますけれども、今日、ただいまこれを審議する、きょうの相場でもよろしい、三百八円なら三百八円でもよろしゅうございますが、三百八円にすると幾らになりますか、計算すればわかりますが、その点わかるでしょう。そうでなかったら、あなた、予算に出ない。
  21. 林大造

    政府委員(林大造君) 金額は、四十六億二千万円になります。
  22. 川村清一

    川村清一君 この四十六億二千万円という出資額は、予算のどこにあるんですか。
  23. 林大造

    政府委員(林大造君) 四十六億二千万円の金額は、三年分でございまして、したがって、第一回の金額は十五億四千万円になります。で、この金額の計上でございますけれども、これは法案で御審議をお願いいたしているとおり、交付公債で交付することになっております。したがいまして、交付公債で出資いたします場合には、その金額は  一般会計予算の歳出には計上されない。で、予算に計上されませんで、出資が基金のほうから現金化を要請されたときに、その現金化の金額といたしまして、国債整理基金のほうに、その国債の償還額の一部として計上されている、そういう姿に相なっております。
  24. 川村清一

    川村清一君 そこで、その点をはっきりしていただかないとちょっと困るんですが、同じような性格のものに、アジア開発銀行出資というのがあるんです。ところが、このアジア開発銀行出資というのは、これは予算にはっきり数字が出ておるわけです。  それから、ただいまの御答弁は、この出資は国債で出すので、これは予算面には国債整理基金の中に入っているということになろうと思うわけでございますが、そこで、国債整理基金のところを見ましても、債務償還費八億五千二百万ですか、八億五千二百二十一万二千八百三十円ですね、こういう数字が出ておりますが、その八億五千万の中に、十五億四千万ですか、その辺ですね、わからないんです。予算面見てもその金が、予算がどこに入っているのかわからない。それをひとつ説明してください。
  25. 林大造

    政府委員(林大造君) これは「特別会計歳入歳出予定額各日明細書の中でございますが、大蔵省所管国債整理基金の五六ページの下と五七ページの上でございます。五六ページの下の右のほうに  「国債償還一般会計負担分」といたしまして八千四百四十九億円、合計で金額が計上されております。そのうちで、「予算繰入分」というのが右側の上の二行目に書いてございます。その「予算繰入分」が総計八百八十一億六千五百万円でございまして、その一部に、先ほど申し上げました十五億四千万円が入っているわけでございます。
  26. 川村清一

    川村清一君 先ほどは数字を読み違えまして失礼いたしました。八千四百四十九億ですね、そのうちの繰り入れ分、この中に入っておるということでございますが、そこで、これじゃ、入っているんだから間違いはないんですけれども、ちょっと不親切でないかと思います。これは昨年のと比べてみましても、昨年の予算よりは、ずいぶんこれ、ふえているのですね、ことしの債務償還費というのは。それから、この中で、一体、どれだけがどの項目に入っておるのか、ちっともわからない。そのほかの分はずいぶんこう何とか負担分とか、分担分とかと書いておりますからわかりますが、やはりこれはこういう新しい施策でございますし、最初の年ですから、せめてこういうものはきちっと予算面に明らかに示されるということが親切なやり方だと思うわけですが、どうですか。  それからもう一点は、どうして全部国債で、これ、支出するんですか。アジア銀行は一部現金で支出しておりますね。アフリカ基金にのみ全額国債ということは、ちょっとその辺がふしぎに思われるんですが、この点も説明していただきたい。
  27. 林大造

    政府委員(林大造君) 御質問の第一点でございますが、この予算書の各日明細書に掲げられております一般会計負担分の、その繰り入れ分の中の「予算繰入分」八百八十一億の内訳ということでございます。で、この件につきましては、確かに、御指摘のような点はあるわけでございますが、このアフリカ開発基金への出資というものは、従来の世界銀行に対する出資とか、あるいはいわゆる第二世界銀行に対する出資とか、あるいはアジア開銀に対する出資につきましても同様のものが大部分でございますけれども、法律で別に出資する金額を明示してあるわけでございます。で、この法律の規定によりますれば、ただいま御審議いただいておりますが、千五百万計算単位というのがその限度になっているわけでございまして、その計算単位の金額を、金(キン)を幾らにするということは、これは別に協定のほうで御審議いただきましたけれども、そこに金額として明白になっている。したがいまして、金額の範囲ははっきりと確定しているわけでございます。ただ、最初に御質問いただきましたとおり、現在、円がフロート中でございますので、そこに若干の、何と申しますか、これからもう少し様子を見なければきまらない部分があるわけでございますけれども、しかし、限度はこれで明らかになっているわけでございます。どのほうが親切かということにつきましては、これは予算制度全般に関する問題でございますので、私から全部をお答えいたしかねますけれども、しかし、何ぶんにも相手の国がどれだけ現金化を要請するかということもわからないわけでございますので、国債で出資するという分につきまして、法案のほうで別途御審議いただくことによりまして、その現金化分に若干のゆとりが出るということはお許しいただけるのではないかというふうに考える次第でございます。  それから第二点の、国債で出資するのはなぜかということでございますが、これは国によりまして、その国々の制度によりまして、国債で出資するところもあれば現金で出資するところもあるわけでございます。それで、アジア開銀の場合には、その一部は現金で出資してくれということになっておりましたので、この部分は現金で出資いたしましたけれども、アフリカ開発基金の場合には、全体を現金で払い込んでも、国債で払い込んでもよろしいということでございますので、従来の日本の例にならいまして、全部国債で交付するということにいたしたわけでございます。しかしながら、これは開発基金側におきまして現金を必要とするときには、いつでも現金化をするという性質の、いわばいつでも償還に応ずるという特殊の公債でございまして、何ら基金側に迷惑をかけることはないというふうに存じている次第でございます。
  28. 川村清一

    川村清一君 そう説明されるとわかるわけであります。そこで、予算のことでございますか良いわゆる財政民主化というたてまえから言っても、そういうふうに説明を受けなくても、予算面を見ただけでも一応わかるような、そういう予算をつくってもらいたいということを一応要望しておきます。  それから、確認しておきたいことは、国債で出しておるけれども、現金化してくれという要望があればいつでも現金化するんだということが一点。  それから、三分の一ですから、ことし十五億四千万、明年さらに十五億四千万、再来年十五億四千万、これははっきり予算を組むという、そういう確約が一つ。  もう一点は、ことしの分が、もし国債で出しておいて十五億四千万でなく、若干余ったとするならば、それは次年度に繰り越されて、明年の十五億四千万に、ことしの繰り越しされた分が含まった額でもって予算に組まれるのかどうか。この三点について確認しておきたいと思います。
  29. 林大造

    政府委員(林大造君) 御質問の第一点でございますが、基金側から請求があればいつでも現金化するかという点は、そのとおり、いつでも現金化するわけでございます。  それから第二点に、来年、再来年に同様に十五億四千万円を計上するかということにつきましては、そのレートにつきましてどうなるかという問題がございます。それから、現金化の要請が今年度にあるかどうかという問題がございます。で、いずれにいたしましても、その現金化をされる可能性のある金額、これは、債務償還すなわち、国債整理基金からの支出の金額として、その全体の金額の中に含めて計上することになります。来年の可能性のある金額については来年分として、再来年現金化の要請のある可能性のある分につきましては再来年度の予算において計上することになるというわけでございます。  その金額が幾らになるかということにつきましては、今後のフロートの状況、それから、基金が発足いたしまして、その最初の払い込みにつきまして、いろいろその計算単位の解釈のしかたについて議論があると存じますけれども、その経緯を見てそのときの時点できめる。いずれにいたしましても、その基金の運営に支障を来たさないように、協定で義務づけられ、また、本法案が通過の上、その本法案でお許しをいただきました金額の範囲内におきまして、その所要の金額を計上するということになると存じております。
  30. 川村清一

    川村清一君 十五億四千万という数字には必ずしもとらわれないわけでございまして、千五百万計算単位の三分の一でございますから五百万計算単位と、これをひとつ確認しておきます。  次にお尋ねしたいことは、アジア開銀の特別基金というのがありますね。このアジア開銀の特別基金の総額は幾らか。これに対してわが国の出資額は幾らか、これをひとつお知らせしていただきたい。
  31. 林大造

    政府委員(林大造君) 本年の二月の末のアジア開発銀行の特別基金の大宗を占めております——.中に特殊のこまかいものがございますが、大宗を占めております多目的特別基金の拠出状況でございますが、それによりますと、この金額は二月中旬の実勢レートで換算したドル基金の換算金額でございますが、全体で二億六千七百万ドルというのが、各国の拠出、コミット済みの金額でございます。で、そのうち、日本は一億八千百九十万ドルでございまして、その三分の二以上は日本が負担しているという状況になっております。
  32. 川村清一

    川村清一君 これに対比しまして、このアフリカ開発基金でございますが、附属書A表にある協定署名国十六カ国で九千六十五万九千計算単位、これが出資額の総額になっておりますが、この九千六十五万九千単位という単位は、いまのアジア開銀の多目的特別基金のいわゆるドルに換算して、比較して一体どのくらいになるのですか。
  33. 林大造

    政府委員(林大造君) ドルは一割切り下げられておりますので、したがいまして、この九千万計算単位を概略一割増ししていただけばいいわけでございます。したがいまして、一億ドルを若干上回る金額ということになります。
  34. 川村清一

    川村清一君 そこで、私はお尋ねしたいわけですが、もちろん、日本アジアにおける地域の一国でございますから、アジア開銀に対しては特に多く出資するということもわかるわけでございますけれども、アジア開銀の特別基金というのは二億六千万ドル、日本はその半分以上の一億八千万ドルも出しておるわけであります。ところが、アフリカ開発基金のほうは総額でもって一億ドル。そうしますと、あまりにアフリカ開発基金のほうはちっぽけなものである。少しオーバーなことばで言えばちゃちなものである、こう言わざるを得ないわけであります。こういうちっぽけな基金を設立して、そして政府がいま言われておるようなことが一体できるのか。アフリカの経済、社会開発のために大きな力になる基金というものが設立されるかどうかという点に疑問を持たざるを得ないわけであります。政府が、先ほど、外務省あるいは大蔵大臣からお話がありましたように、アフリカの開発ということに、そのような積極的な意図を持っていらっしゃるとするならば、それを目的としたこの基金の設立については、もっともっと積極的にやられていいんではないかと思うわけでありますが、どうですか、こういうちっぽけなな、ちゃちなもので目的を達成することができますか。
  35. 林大造

    政府委員(林大造君) 御指摘のとおり、日本経済協力の重点は、従来からアジア地域に置かれておりまして、したがいまして、アジア開発銀行に対する出資ないしは特別基金への拠出という面におきましても、日本が重要な大きなシェアを負担しているということは御指摘のとおりでございます。また、アジア開発銀行とアフリカ開発銀行、この基金の前身でございますアフリカ開発銀行とを比べてみますと、これはアジア開発銀行のほうは従来から域外の先進国の参加を認めている。また域内に日本のような先進国があるという状況を反映いたしまして、また、関係者の非常な御努力によりまして、その規模はかなり大きいものに相なっているわけでございます。したがいまして、特別基金につきましても、日本もずいぶん努力をいたしました結果もございますが、二億七千万ドルという規模に達しているわけでございます。また、その中で日本の負担、シェアも高い。これに対しまして、アフリカのほうはと申しますと、従来の歴史的その他の関係から、日本経済協力も、従来はアフリカ地域にはあまり向けられておりませんでしたし、また、アフリカ開発銀行の業績も、アジア開発銀行に比べますと、かなり小さいものに相なっているわけでございます。それで、この点をいろいろ検討いたしまして、今回アフリカ開発銀行におきましても、それとは別個に、ソフトなローンを与える機関、開発機関としてこの基金が設けられた。しかし、その基金の全体の規模は、非常に実際的なところから始められておりまして、したがって、御指摘のとおり、規模は現在のドルにいたしまして一億ドルそこそこというわけでございます。日本といたしましては、従来の経緯がございますけれども、これまで大きくなってきました以上、日本としてアフリカ地域に対しても積極的な姿勢を示すべきであるという考え方に立ちまして、関係国の中では、最大のシェアである千五百万計算単位という出資額を引き受けることといたしているわけでございます。これはカナダと並びまして最大の拠出国になるわけでございまして、この点におきまして、私どものアフリカ地域開発に対する積極的な姿勢が出ているということが評価されると思います。また、現にこの協定に署名いたしましたときに、アフリカ諸国から出ております会議出席者から非常な拍手を浴びたということも聞いておりますので、わが国の積極的姿勢は、アフリカ諸国からも評価されているというふうに申してよろしいと存じます。
  36. 川村清一

    川村清一君 そのアフリカ基金のほうですが、九千万計算単位のうち、日本が千五百万計算単位を出すわけでありますから、ですから、日本はその中においてはずいぶん積極的に協力しておるということにもなりますし、そういう意味においては拍手も受けていると思いますが、私の言おうとしておることは、日本の出資だけを言っているんでなくて、アフリカ開発基金全体のいわゆる原資というものが、わずか九千万計算単位。こんなものではどうにもならないんではないか。アジア開銀の場合には、このような大きな基金になっておるわけでございますから、せめてアジア開銀の特別基金程度の基金をつくるべきではないのかということを言っておるわけであります。そうでなければ、せっかくこういうものを設立しても、設立の目的を達成することができないんではないか、こういうことを私は言っておるわけであります。  それに関連して二、三聞きたいのでありますが、第一は、この協定の規定を読むというと、参加国は資金の追加ができるようになっておりますが、日本は将来追加する意思があるのかどうか。これが一点。  それから、その原参加国になるその中身ですね。現在アメリカが出資国の中に入っておらないのですが、これは一体どういうわけか。附属書Aの一の後段の条文は、アメリカ合衆国のために規定した条文であるとも受けとめられますが、アメリカを一体何でこんな特別扱いにしなければならないのか。アメリカ一国だけを入れるために附属書Aの一の後段の条文がつくられておるということは納得できないわけで、これについてひとつ御説明願いたい。
  37. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) いま、いろいろ政府委員から御説明いたしましたが、さらにつけ加えますと、このアフリカアジアとの比較ということについては、やはり両方の沿革とか、国際的な勢力関係とか、従来の背景その他にも御理解をいただきたいと思うのであります。たとえば、アフリカについては、何といいましても、従来からフランスが非常に力を入れておった。この基金ができても、現にフランスはこの基金にはいまのところ参加はしておりませんけれども、これは各アフリカ諸国に対して、二国間の援助ということについて非常な精力を注いでおりまして、それと、さらに広い国際的な協力で基金を発足させることによって、相互補完して相当な仕事ができるということをねらおうとした、この国際的な沿革や取り扱いの過程があったということをひとつ御認識いただきたいと思います。  そこで、ただいまの具体的御質問ですが、第一に、やはりこれは日本一国だけでどうこうという問題ではございませんので、今回この基金の発足に際して、日本が積極的に、タイミングから言いましても、いち早く参加国の中では第一級の具体的な体制を示しておるわけでございますから、今後におきましても、参加国がさらに積極的にふえて、この基金も増額ができるというような場合には、もちろん日本としては応分の積極的なさらに寄与をいたしたいと、私は、政府としてかような態度でしかるべきではないかと考えております。  それから、アメリカをなぜ特別扱いにしているかと、これも日本政府だけの問題ではもちろんございませんけれども、やはりこの基金をつくるに際しては、国際的な会議その他この協定その他ができます沿革から申しまして、やはり先進国の雄なるものであるところのアメリカは、何とかしてこれに引き込んでいかなければならない。いろいろアメリカの国内事情等もあったようでございますけれども、そういう点が国際政治的な面からどうしてもこれを誘引しなければならない。こういう沿革で、この基金のもとになる協定成立のとき以来の経緯がございましたので、まあ特別扱いにしておるのはおかしいじゃないかと、これはごもっともと思いますけれども、そういう国際的な話し合いの中から、こうした条文といいますか、これが生まれてきたと、こういうふうに理解をしておるわけでございますし、大国はどこの国も積極的に、現在ソ連も中国も参加しておりませんわけでございますけれども、まず、アメリカを誘引したいという気持ちが国際的に非常に強かったと、こういう状況でありましたことを御報告申し上げる次第であります。
  38. 川村清一

    川村清一君 アメリカが入っておらないということは、これはもう重大な問題であります。  特別扱いにしていることについては、またあとで申し上げたいと思いますが、さらに、アフリカ宗主国と言われておるフランス参加しておらないということ、これもふしぎな現象であり、納得できない問題であります。それから、いみじくもいま大臣がおっしゃいましたが、アメリカのほかに、いわゆる社会主義国の大国と言われておるソ連あるいは中国、これが入っておらない。これもふしぎな現象であります。ソ連や中国は、このアフリカ各国が独立運動をやっておったときにはずいぶん援助をしておった国でありますし、現在もソ連、中国はそれぞれ深い関係のあるアフリカ諸国に対していろいろな面で援助の手を差し伸べておるわけでございます。私は、ある国で、中国の人がたくさん参りまして、それで経済開発、技術協力といったようなものを、民衆の中に飛び込んで民衆と一緒に生活しながら献身的な努力をしておる姿を見てまいってきておるわけであります。こういうふうにして、アフリカの開発のために実際努力しておるソ連や中国がなぜ一体ここへ入ってこられないのか、そして入らないままにこの基金をつくったのかということが疑問に思われてしょうがないわけであります。アメリカはここには参加しておらないが、この協定の附属書のAにわざわざ一項置いてその問題が書かれておるわけであります。そして、ほかの国が全部出資額は計算単位をもって表示されておるのに、アメリカだけは「千五百万アメリカ合衆国ドル」というドル、「計算単位」でない、ドルということばでこの計算が書かれている。なぜ一体アメリカを特別扱いをするのかという問題、なぜフランス参加しないのかという問題、なぜソ連や中国がこれに参加しておらないのかという問題、これをひとつ明確にお答え願いたい。  これがはっきりしないと、こんなものに日本が入っていって、そうして国民の税金を千五百万計算単位も出して、ほんとうにわれわれ——金を出すことはいいんですよ、むしろこんなちっぽけなものではだめだ、もっともっと出せ、アジア開銀に出した以上のものを出せと私は言いたい。出せと言いたいけれども、出したそのものが、そういうようなさっぱりわけのわからないような性格のものでは、ちょっと賛意を表することができないわけなんです。この点をひとつ解明していただきたい。
  39. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 非常に率直に申し上げたいと思うんでお許しをいただきたいと思いますが、前段におきましては、なぜアフリカ基金に対してもっと日本は積極的に出ないのかと、こういう点が強調されたように私は承りましたし、それなりに私はたいへんけっこうなお考えだと思うわけでございますが、同時に、日本政府のとっているこの種の問題については——いわゆるワン・ワールド・エコノミーということを理念としていきたいわけでございますから、イデオロギーを越えてこの種の問題についてはどこの国も、ことに大国は積極的に参加をすべきものである、これから日本としても大いに呼びかけをさらに強くしていかなければならないと思いますが、同時に、それができないからといって、こちらが具体的なとるべき措置もとらないでおりましては、時間的な要素から見ましても、私はいかがかと思うのであります。ですから、それやこれやを勘考いたしまして、もっと強力に貢献すべきであると、御意見も踏まえながら、まず千五百万単位というようなところで踏み出すことが適当であり、これがむしろ日本の呼びかけを強力にするゆえんでもないかと私は考えております。  したがって、現在の段階で、御承知のようにユーゴスラビアは積極的に参加をすることになっておるわけでございますし、もう一段ここで、日本だけではなくて、アフリカに関心の本来深かるべきフランスをはじめ、そして現に御指摘のように、アフリカ諸国においては、中国も年来相当努力もしております、あるいはソ連も非常に深い関心を持っているわけでございますが、アフリカ諸国の開発に対してこれらの先進大国がほんとうにもっと協力してくれなければならない、こう考えております。  で、現在までの経過から言いますと、中国あるいはソ連は、率直に言っていまのところ消極的に見受けますが、アメリカのほうは、先ほど来いろいろけしからぬという御意見がある、これもごもっともな点もございますけれども、やはり現実的な段階的な状況から言えば、これはかなり実現性がある。おそらく近く態度決定できるのではないかと期待しているわけでありますが、そうしてさらに、今度は中国、ソ連にも呼びかけるということで、日本としてはその道を歩んでまいりたいと、こう思っております。こちらが協力具体性も示さずしてやっておくことよりは、日本がまずここまで踏み出して、そうして前段に御主張になったようなところを踏まえて前進することが、アフリカ問題に対する日本態度として望ましいことではないか、こういうふうに考えております。
  40. 川村清一

    川村清一君 ただいま大蔵大臣からいろいろ御答弁がございまして、政府の考えていらっしゃることもわかったわけでございますが、この協定の第三条の3の規定によって新たに参加することができるわけでございますから、ソ連とか中国とか、いわゆる世界の大国であり、社会主義国を代表する国でございますから、こういう国が入らなければ、ほんとうアフリカの社会的、経済的な開発を目的とした基金の意義というものが薄れてくるわけでありますから、この点ひとつ努力してもらいたいということを強く要望したいわけであります。  時間がございませんので、最後に私が意見を申し上げてお考えを聞きたいわけでございますが、先般の列国議会同盟の会議でいろいろ議論されたわけでありますが、その中で、世界の平和と繁栄は何によってはかるか、これは、何といいましても、まず、後進国の国民を第一に飢餓から解放すること、第二に疫病から解放すること、第三に文盲から解放すること、この三点を解決することが、世界の平和と繁栄の最大の要件であるということに大体各国の意見は一致しておるわけでございます。  そこで、私が強く主張したいことは、いままでも二国間協定でもってずいぶんお金が出されておるわけです。しかしながら、その金がどういうふうに使われておるかということなんであります。これはある新聞に書かれておったことでございますが、アフリカの今日の干ばつ、餓死者を数百万も出すという、こういうおそるべき事実が生まれてきた、その背景には何があるか。これはフランスをはじめとする西欧諸国の新植民地主義と、アフリカの現地政府の便乗した政策によって進められた人為的なものである。こういうふうに論評をしておるわけであります。その内容は、開発優先主義であり、日本のいわゆる高度経済成長、GNP第一主義の小型版、これを政策の柱としてやってきた、それを背景としてあらわれた事実である。こういっておるのであります。このような開発の結果、地域格差が生まれ、都市は農村を犠牲にし、一部の特権階級がふえ、外国の会社及び現地の協力者がただ肥えていっている。そのゆがんだ繁栄の陰で、農民大衆は貧困になり、土地はやせ、農業生産が低下している、この事態ができたんだと、こういっておるわけであります。  これを読んで私もつくづく思ったのでありますが、たとえば、アビジャンであるとか、ナイロビなどの都市に参りますと、よくまあアフリカにこんなりっぱな町ができたものだと感心するわけであります。そのようなりっぱな都市ができておるのです。しかし、その町の周辺に行って現地人生活を見たり、その町から一歩農村地帯に足を踏み入れていくというと、民衆生活はまさに貧困そのものであります。象牙海岸国のアビジャンにある大統領の官邸は実に堂々たる豪壮なものであります。しかしながら、それから一歩農村地帯へ入っていきますと、民衆生活、その民衆はどういううちに住んでいらっしゃるか。もう日本で言うと、鶏小屋か犬小屋みたいなところに住んでいる。これが人間生活かと思われるような生活をしておられる。これがアフリカ実態なんです。したがって、こういう面に金がかけられて、融資した金がただ単にこういうものに使われておる、いわゆるプロジェクトに向けて流されていくわけでありますが、それによって会社がもうかるとか、現地には日本の商社がたくさん行っていますが、大商社がそれで腹を肥やすとかいうようなことに使われるならば、これは何にもならない。いま、最初に申し上げましたように、まず民衆を飢餓から救うこと、ですから、農業開発が要る。もし水の問題が解決するならば、アフリカはあれだけの広い土地を持つ。農業は非常にこれは発展しまして、食糧危機から解放されると思うわけであります。疫病から解放する。この点は外務大臣のお耳に入れておきたいんですが、私は、外交官というものは実にはなやかなものだと思っておったんです。ところが、アフリカへ行って、日本大使館へ行って日本大使館につとめておられる職員を見たときに、考えてごらんなさい、毎日あれを飲んでるんですよ、マラリアの予防薬を毎日飲んでおる。朝口をすすぐときに、忘れないように薬をそこに置いて飲む。私たちも日本を出てからあそこを去るまで毎日薬を飲んでおった。一年以上も飲んでおったら頭がぼけてくるというじゃないですか。ああいうところで勤務しておる在外公館の職員に対して十分考えてやってほしいことと、そういうような地域の住民をどう疫病から解放するか、そういう面にお金が十分使われてしかるべきだと思いますし、モロッコは千四百万の人口のうち千二百万が文盲だというんです。私も昔、教育の仕事をやったものですから、一緒に行った劔木先生は元の文部大臣でございますから、同じ車に乗って、どこに学校があるんだ、どこに学校があるんだと行って見ましたが、行く先々どこへ行ったって学校なんか一つもない。これが実態である。  その基金はけっこう。そうして、その基金の金がそういう方面に十分使われまして、ほんとうアフリカ民衆が幸せになれるように、もっともっと日本政府は力を入れてほしいということを強く申し上げて、政府の御見解を承って、私の質問は終わりたいと思います。
  41. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは外務大臣から御答弁申し上げる筋であろうかと思いますが、一々ごもっともでございます。飢餓から疫病から文盲から解放する、これはもうアフリカに対してのみならず、後発開発途上国に対する共通の私は課題であると思いますから、政府としては、各国の協力をより一そう求めて、その方向へ向かうべきものである、こういうふうに考えるわけであります。  それから、具体的に申しますと、それだからこそ、こういったような国際機関のいわゆるマルチの協力というものが、二国間の援助だけでなく、これを補完するものとして非常に私は意味があると思うんです。これが基金のまた性格であり使命であると思いますから、これに対する日本の積極的な体制を具体的に示す一つの拠点として、私は、与野党あげて御賛成をいただきたいと思います。  それから、日本の商社等の関係の問題もございますけれども、基本的な考え方は、経済協力についてはやはり日本政府一つ基本的な主張として、アンタイイングということ、これをやはり基調にすべきものと思っておりまして、これは累次の国際会議等でも日本基本的な態度は表明し、かつ、できるところから、各国の協力を得て、相ともにアンタイイングで、同時に、先ほど来御指摘のありました条件をソフトにするということについても、これからできるだけ考えてまいりたいと思います。  それから、基金の金が何に使われるかということについては、国際的な機関でございますから、基金の理事会というか、総務会というか、ここで決定されるべきものでありますから、農業を重点にすべきであるという御見識等については、しかるべく筋を通して、日本としてのそういった主張は、これからも努力をしてまいりたいと思いますが、同時に、やはりいわゆるインフラストラクチュアですね、これに重点を置くということが必要な点ではなかろうかと、政府としてはかように考えておる次第でございます。
  42. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、最初大蔵大臣に、発展途上国に対する経済援助の問題でまとめて若干お尋ねします。  まあ政府は、十一日に発展途上国に対する経済援助の四十七年度実績、一九七二年度の実績を発表したわけでございますけれども、OECDのDACの勧告によって、大蔵大臣も、従来から、GNPの一%を一九七五年度までに援助をいたしたい、また政府の開発援助も〇・七%にしたいと、このように抱負を述べておられましたけれども、今回は、GNPの異常な伸びとか、あるいは予定していた援助がちょっとおくれたとかという理由はあるそうでありますが、それにしましても、四十六年度は実績が〇・九五%に対して、四十七年度は〇・九三%、政府開発援助も四十六年度の〇・二三%に対して〇・二一%、このように比率からいえば後退しているわけです。で、大蔵大臣の非常に強い姿勢にもかかわらず、なぜこういう事態が生じたのか、これが第一点でございます。  それから第二点としまして、ほんとうに一九七五年度までに一%ないし〇・七%の経済協力をなすんであるならば、これは一九七五年のわが国GNPは約四千億ドルと想定されておりますので、経済協力総額は四十億ドル、政府開発援助は二十八億ドルというような膨大な金額になります。で、これをほんとうに効率的に運用するためには、もっともっと明確な援助の理念と、また援助計画というものが必要であろうと思いますが、それをきちっと立てられるお考えがあるのかどうか。  それから第三番目には、従来から言われておりますけれども、非常にわが国の場合は、政府開発援助も少ないし、また条件も悪いわけです。そういう条件を、ほんとうに欧米先進国並みに無利子とか、五十年返済なんかのソフトな援助というような方向で具体的に検討されているのかどうかですね。やっぱり東南アジアあるいはアフリカ諸国から、この援助条件が非常にシビアなので、わが国は非常に評判が悪いわけです。それとともに、せっかく援助してもらっても、いろいろな弊害が生じているという問題もあるわけです。そういう問題に対してどうお考えになっているのか、まず、その問題をお伺いしたい。
  43. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 二、三日前に、昭和四十七年中における開発途上国に対する資金の流れについて数字を発表いたしました。これは、御指摘のように、私は、非常に残念に思っておりますのは、GNPに対してODAが〇・二三の前年度から〇・二一に比率としては落ちました。これは日本政府としてはまことに残念なことでございます。実は額から申しますと、非常にふえているのでありますけれども、やはり比率をとってみますと、GNPの伸び方が急激で、かつ、大きかったために、比率におきましては、政府の意図表明に反する結果になりました。この点につきましては、ほんとうにあらためて努力を新たにしなければ国際的にも申しわけないことであると、かように考えております。  この原因については、いろいろ詳細に申し上げたいこともございますが、これはかえって弁解がましくなるんで——私は、何としても政府の直接援助というものを、ほんとうに大努力でふやしていかなければならないと思います。四十八年度におきましては、予算編成の上においても、この点を十分考えたつもりでございますが、さらに、まだ年度は始まったばかりでございますし、それから、特に、国際機関等に対する協力については、これから、たとえばベトナムの援助というようなものも当面大きく出てきております。国際機関としての援助というようなことについては、政府としてもできるだけの努力を実績の上にあげたいと、こういうふうに考えております。  それから、第二に、条件の問題ですが、これは必ずしも政府全体の考え方でございませんで、私見でございますけれども、私はしばしば開発途上国人たちといろいろ協議する機会がございますが、ある意味から言えば、無利子で五十年とか、あるいは百年とかいうようなことは、借りるほうの立場になってみた場合に、必ずしもこれはよいことかどうかわからないと思うのです。ことに二国間の援助でもって、そういう全くそろばんを無視したような援助をしたり、受けたりということは、それこそ政治的な意図というものを思わせるものではなかろうか。私は、受けるほうの側が、具体的なプロジェクトで、そして自助努力ということも考えて、また、できるだけソフトな条件に与えるほうはしなければなりませんけれども、やはりこれは援助を受ける側としても、なし得る限りは、たとえば、借款の場合であれば、これを適度に返済しなければならぬという、そのささえがあることによって双方のためになるのではなかろうか。ですから、何十年無利子というようなところまではいくべきではないと、私見といたしましては、私はさように考えております。ただ、これは援助を受ける側も、ほんとうに真剣で、与えるほうも真剣で、そしてプロジェクト中心に具体的な成果を全うにあげ得るように努力をするということが、言いにくいことであるかもしれませんが、日本らしい態度でなければならないと、私はこういうふうに考えております。
  44. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ、無利子五十年という問題はさておいても、私は、従来の日本援助というものが、非常にきびしいということから見て、これをやはりソフトなものにするということは、大臣もお認めだと思いますが、いまは元利返済のために新規援助額の大半が非常に食われるとか、あるいは一部の国では、わが国援助の寄生虫じゃないかと、こういう反発も強いわけですから、その点をさらにお伺いします。  それからもう一つは、先ほどお尋ねしましたように、一九七五年度においては、非常にきびしくなると思うのですが、それをほんとうに約束どおりやられるおつもりがあるのかどうか、一%ないし〇.七%ですね。その場合のほんとうの計画をこれからどのように立てようとなされているのか。  それからもう一点、さらに追加してお伺いしたいのですが、このうち、政府開発援助アフリカに対する援助というのは非常に少ないわけです。一九七一年度を見ますと、いわゆる構成比で二・五%にすぎない。これは民間の合わせたもの六・八%とか、あるいは輸出入・六%とか、輸入五・六%とか、そういうものと比べても、極端にこれは低いわけです。その点をどうお考えになっているのか、この三点をお伺いします。
  45. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ODAの比率の問題は、これは御案内のように、何年度までに〇・七にするというふうには、日本政府としては意図表明しておらないのでありまして、このターゲットをできるだけ早い機会に成就したいというのが、日本政府の意図表明でございますし、他の主要国も大体において同様でございます。しかし、他の主要国と肩を並べて、できればそれよりも早くこの比率を上げて〇・七に近づけるようにいたしたいと考えております。しかし同時に、これがなかなかむずかしいことで、GNPの伸び方が今後におきましても相当の比率で伸びるであろうと思いますから、実額において相当な額になる。これは長期的に展望いたしまして、何とか新しい努力を積極的に講じなければならない、こういうふうに思います。  同時に、これは日本側としても、国民的な御理解と、御協力がなければなかなか達成ができない。ことに、政府の直接援助の問題は、日本の国内におきましても、福祉国家建設という大命題のもとに財政需要も非常に広がっておりますので、それらとの関係を見ましても、比率はもちろんのこと、実額としても飛躍的に援助額が多くなることについては、国民的な一段の御理解と御協力がいただきたい。政府としてはかように考えております。  それから、アフリカに対する考え方は、先ほど来政府委員から申し上げておりますように、歴史的に見て、日本が再建途上に歩み出しましてから、対外的には、何と申しましても、賠償の問題をはじめといたしまして、近隣諸国、それから、東南アジアというところとの関係がきわめて密接でありまして、日本の国力から申しましても、とてもインドから向こうのほうの、いわんやアフリカまでには、なかなか関心を寄せ、成果をあげることができなかったわけであります。これからの問題であろうと思います。これはやはり国際的にも、日本の経済活動、特に、援助問題は、南北問題の解決ということに広く目を向けて、地域的にも東南アジアとかいうようなところに限定しないでいきますということは、きわめて最近のことでございますから、いよいよこれを具体的に進めていく、ようやく今日その段階になったものと思いますが、先ほど来強調しておりますように、アフリカ開発基金などに示したような日本政府態度というものを、今後とも大きく踏み出していかなければならない。  それから、アフリカに対しましては、二国間の援助の問題も、実はいろいろの問題はございますけれども、これも一方において日本政治的な意図をかりそめにも疑られないような、あるいは二コノミックアニマルというようなそしりを受けないような方法で、具体的なプロジェクト中心で二国間援助を進めたい。マルチの援助とあわせて、プロジェクト・バイ・プロジェクト努力を建設的に積み上げてまいらなければならない。こういうふうに考えておるわけでございます。同時に、そういう考え方でございますから、年度計画でアフリカに対して来年度は幾ら、再来年度は幾らというふうなもくろみというものは持っておりません。具体的な積み上げによって成果をあげるべきものである。かように存じます。
  46. 多田省吾

    ○多田省吾君 それから、先ほど西アフリカの大干ばつに対する援助の問題で、川村さんからも詳しく質問がありましたので、私は、一点だけにとどめますけれども、先ほどからの御答弁を聞いておりますと、最初から百五十万ドル、四億円じゃなくて、もう外務省も、大蔵省も、最初から二億六千万円、百万ドルの予定だったと、あるいは六番目に早くて、二番目に大きい額だというようなことをお述べになっておりましたけれども、私は、そういう御答弁には非常に納得できないものがある。  で、今度の場合は、時期的に見ましても、五月十日から、FAOから要請があって、四週間以内というお話だと聞いておりましたが、六月七日が期限切れだと思っていたところが、外務省では、いや六月十日前後でいいんだというような御答弁です。そうしたら、やはり私はPRも足りないし、またいろいろマスコミあるいは新聞等においても、読者欄なんかでも相当これは強く要請されていたところですから、その辺はもっと私は、日本軍事大国じゃなくて、経済をもって、またほんとう世界の平和と繁栄のために経済協力もやっていくんだという国是を持っている以上、そんな六番目に早かったなんということは、私は、御答弁にならないと思うのです。これはもっと早くすべきだと思うのです。  それから、額の問題でも、すでにFAO要請以外に、アメリカだって食糧で千八百万ドルとか、EC諸国だって三月にすでに千九百万ドル、あるいは、まあフランスは旧宗主国のことですから、これは問題外としましても、ソ連だって輸送機を仕立てたりして相当自主的援助は早くやっておるわけです、また額も大きいわけですね。ですから、私は、百五十万ドル要請されたら、百五十万ドル——四億円をきちっと、三分の二なんかに値切らないでやるべきだと、このように思うのですが、その辺の事情をひとつもう一回御説明いただきたいし、また、この西アフリカの問題は、こういう干ばつ基金という問題もありますけれども、非常に砂漠が拡大しまして世界の環境問題にもなっておるわけです。特に、六月五日から十一日までは環境週間ということで、外務大臣大蔵大臣も、六月五日にはノーカー・デーで、歩いて国会に来られたというような実績もおありなんですから、もっと世界の環境ということも考えれば、前向きに早く検討すべきではなかったかと、こう思いますけれども、その点をもう一回お尋ねします。
  47. 水野清

    政府委員水野清君) 多田先生お話のように、実はこの西アフリカ援助の問題は、外務省としては、六月七日という一つ努力目標に対して、数日のおくれをとりましたけれども、私は、やるべきことはやってきたと思うんでございますが、ただPRが非常に足りなかったと。積極的に新聞報道関係にも、こういう経過でこうだったというような説明をしないでおいたということについては、私も、御質問のとおりだというふうに思っております。  この経過を申し上げますと、先生も御承知のようでございますから、簡単に申し上げますが、五月十日にFAO、国連の食糧農業機関でございますが、これがローマで会議を開きまして、西アフリカ六カ国の干ばつの被害がひどいし、人間の餓死者あるいは家畜その他が病斃死するようなものが非常に多いようだからということで、国連として、FAOとして、千五百万ドルを目標にサハラ信託基金というものをつくりたい、こういうことを決定したわけでございます。そして日本に対しても要請をしてきたわけでございますが、先ほど百五十万ドル要請があったろうというお話でございますが、どこの国に対してもそういう積極的な要請はしておりません。日本に対しても百五十万ドル、これは報道の間違いでございます。報道のほうでそういうふうに想定をなすったわけでございますが、日本としては先進諸国が大体どのぐらい出すかということを見ながら、西ドイツが百六万ドル出しておりますが、日本の為替レートの関係で百五万ドル、円に直しますと二億六千万というものを、先ほど外務大臣が御答弁申し上げていただいたわけでございますが、これも外務省が自主的に決定したわけでございます。緊急援助資金として本年度予算に十億円の予算が計上されておりますから、その中から二億六千万ドルを外務省が自主的に決定をしてFAOに通告をしたと、ただその時期が数日おくれましたのは、先ほども申し上げましたが、現地が、御承知のようにアフリカの中央部で、ほとんど——日本の在外公館はセネガルに一カ所しかございませんし、FAO自身もあまり現状を正確に把握をしていない。その報告も知らしてほしいということを頼んでおきましたところ、ようやく五月の二十六日にFAOから大体の被害状況は到着をしたと、日本大使館のほうは、もうそのころには参りましたけれども、もちろんセネガルの首府の周辺だけでございまして、奥地のほうは全くわからない。六カ国の国境といっても、奥のほうはチャドとかオートボルタとかいうような、サハラ砂漠の中で、国境すらはっきりしないようなところでございまして、そういうところでございますので、正確な現状もわからなかった。現在も正確な現状はわからないわけでございます。おおよそのことがわかる。そこで、こういう金額決定してローマのFAOへ通告をしたと、こういう過程でございます。ただ、その間に説明が不十分であったということは、私も痛感をしまして、省内にも、もう少しこういう問題についてきちっと説明をしないから、新聞に非常に誤解を受けるような記事が掲載されたのであるということを、幹部会で申したわけでございますが、決して世間でお話のあるほど手おくれであったとか、要請金額をちびったというようなこともないわけでございます。どうか御理解をいただきたいと思います。
  48. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に、時間もありませんので、アフリカ開発基金の問題で一点だけお尋ねしたいんですが、アメリカが必ず参加するという保証、見通しがあるのかどうか。アメリカは最近非常に海外経済援助については削減しているような傾向が毎年ございます。それから、まあ共産圏諸国の中でユーゴスラビアだけが参加しているが、他のソ連、中国等の参加の見通しはどうなのか。  それから、協定によりますと、アフリカ開銀及び八カ国以上の参加国が批准書を寄託したときに効力が発生することになっておりますが、発効の見通しはいつごろと見ておられるのか。
  49. 菊地清明

    説明員(菊地清明君) まず、第一の御質問のアメリカの加入の見通しでございますけれども、これは一九七〇年にロジャース国務長官も、このアフリカ開発基金には、アメリカとして積極的に参加したいということを申しておりますし、ただし、たまたまこの作成の段階におきまして、アメリカがまだはっきり加入の意思を表明するという段階までに至っておらないということで、現在のような状況になっておりますわけでございますけれども、私たちといたしましては、アフリカ諸国の強い希望もございますし、それから、アメリカの政府の考えも、いま申し上げたとおりでございますので、十分加入の可能性はあるということを考えております。  それから、先生御指摘の第二点のユーゴは、すでに参加しておるわけでございますが、その他、ソ連、中国に関しましては、先ほど大蔵大臣からも御説明ありましたように、基金協定に道は開かれておりますし、それから、このアフリカ開発銀行の総裁が、この基金のほうの設立の最初の段階から、ソ連、中国等接触しておりますので、これは十分に手続は踏んでいるというふうに見ておるわけでございます。  それから、第三点の御質問で、今後の協定発効の見通しでございますけれども、御案内のとおり、この七月の、来月の初めにザンビアのルサカという首都で、このアフリカ開発銀行のほうの総会がございますけれども、これをめどに、協定の発効までこぎつけようということでございます。それで、発効の条件は八カ国、五千五百万計算単位ということでございますけれども、現在はっきり批准書を寄託いたしましたのはカナダだけでございます。御案内のとおり、カナダはたいへん大口でございます。その他わが国が、ただいま御審議を行なっております加入措置法の成立をまって、批准書の寄託の手続きをとる段取りになると思います。  で、こういう次第でございますので、私たちといたしましては、この七月初めごろ開催されますルサカの会議までに、大体発効の見通しをつけたいというふうに考えております。現在のところはっきり一まあ、御参考までに申し上げますと、カナダ、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、英国オランダに、それからわが国といった、こういった国が寄託可能性が非常に強い、これで大体五千六百万計算単位になりますので、まあ、私たちといたしましては、この時期までに発効するということを強く希望しているわけでございます。
  50. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 最初に、例の西アフリカ干ばつ被害の問題ですけれども、二億六千万円出すということになりますが、サハラ信託基金への緊急援助FAO中心につくられたものに出すということになりますが、この場合と、アフリカ開発基金の場合と——アフリカ開発基金の場合は、このような法律案あるいは承認を求めるという二つの議案が出ておりますけれども、サハラ信託基金の場合は、これは同じ援助であっても、そのような法律的手続きはどういうふうになるのでしょうか。
  51. 水野清

    政府委員水野清君) 先ほど川村先生にも、先の委員にもお答え申し上げましたとおり、この基金は、本年度予算外務省の中にあります緊急援助費十億円の中から支出をしているわけでございます。サハラ信託基金といいましても、このアフリカ開発基金というような、こういう各国の理事をきめてどうするということではなくて、これは国連のFAOの機関の設けた基金の単なる名前でございまして、FAOに寄付してほしいと、大体千五百万ドルを目標とするんだと、それを、千五百万ドルの名前をサハラ信託基金というふうに言おうと、こういうような関係でございまして、外務省として、政府として随意これを支出できるようになっておるわけです。その中から二億六千万円を寄贈するということを通告したと、こういうことでございます。
  52. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これはもう、西アフリカ干ばつ被害は、フランスの開発が、非常に乱開発があったということ、大きな樹木を切り倒して、新たに落花生畑にしたとか、いろんなことがあって、それが原因で今回のようなサハラの一つの天候の問題がからんでくると、ああいうような干ばつ状態が出現したとしか考えられないわけです。先ほどずっと伺っておりましても、私はもう少しフランス、もとの宗主国であったフランスが、かなりアフリカからは、まあ搾取ということばは激しうございますけれども、かせいでいることはもうはっきりしていますから、そういう点から、このアフリカ干ばつ等について、当然このFAOから言われている緊急援助に対しても、はっきりと支出させるように、わが国からも、OECD、いろんなところもございます、そういうところから強力に言うべきであると、これはあたりまえのことだと思うんです。これが一つです。  それからいま一つは、このアフリカ基金、この法律のほうでありますけれども、この当初出資額を見ていくと、ベルギーが三百万計算単位、それから、オランダが四百万計算単位、イギリスは五百二十一万計算単位、つまり、アフリカ植民地を持っていた国々があまりにも少ない。フランスなんかゼロですよ、当初出資額は。私は、ここで資料としてお願いしたいんですが、こういうアフリカ植民地を持っていた国々が、どのぐらいアフリカから現在までに富を持っていったか、その計算を国別にもらいたい。それが一つ。  いま一つは、そういうような旧宗主国、いまでもベルギーあたりに行きますと、家ができない、富が十分ないというときに、出かせぎでコンゴへ行って帰ってくると、土地も持てる、家も持てるという財産家に変わると、こういうことを言われております。三年ぐらい行ってくればもう一財産できる。いまだに続いているわけですよ。そういう搾取——じゃない、一般的に言って。こういうところから見ると、ベルギーあたりが三百万計算単位しか出さないとか、イギリスも五百二十一万計算単位しか出さないとか、フランスがゼロだなんてこんなばかなことはないと思うのです。当然強力に要請して、それが終わらなければ持つ必要ないじゃないですか。そのぐらいに私は思う。当然まあやらなければならないことだから、わが国としてはしなければならないと思いますけれども、当然アフリカでもって自分の国を栄えさした国々が、負うべきものはもっと負ってもらいたいわけだ。この点日本政府としても、どういうふうに持っていくのか、強力に言わなければいけないと思う。ですから、この基金の問題と、さっきの環境破壊の問題、二つの問題についてお伺いしたい。
  53. 水野清

    政府委員水野清君) フランスや旧植民地を持っておりました宗主国が消極的だということは先生御指摘のとおりであります。しかし、これは外国のことなんでありまして、ある意味で私どもはいろんな形で要請はいたしますけれども、なかなかむずかしい。特に、フランスという国は、御承知のようにフランス連合をつくっておりまして、旧宗主国植民地関係は、現実には独立をした諸国がありましても、そこの鉱山権であるとか、企業の経営権というものを握っているわけであります。それだけにフランスは、ともかくアフリカ全体にやるよりは、自分の植民地であった独立した国に対しておもに二国間援助でやっていきたい、こういう形態をとっているわけです。  そこで、もちろんフランスだけでなくて、ベルギーにしましても、ポルトガルにしましても、イギリスにしましても、そういう傾向は否定をできないわけでありますから、そういう形でいつまでも二国間援助というものを——まあこれは外国、それぞれ独立した国がやっているわけでありますから、日本が干渉することはできませんが、世界中で集まって、むしろ国際機関をつくってマルチの援助に前進さしていくと、それがこのアフリカ開発基金の私は精神であろうと思います。そういう意味で、発展的にこの機関ができてきたというふうに御理解をいただきたいと思います。  それから、旧宗主国が、アフリカ諸国から収奪した利益というものは、ちょっといまここでは簡単に出ないわけでありまして、後刻資料として出すなり、御説明をするなりさしていただきたいと思います。
  54. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは大蔵大臣わが国のこういった経済援助関係全部ひっくるめて考えられますのは、アフリカとか、あるいはアジアの民族の側にわれわれは立ってものを判断をし、また、発言をしていくべきじゃないか、そういう点で、アフリカにしても、アジアにしても、長い間の植民地政策で、もっともっと本来なら発展すべきところもしてないという面もあります。教育のおくれていることも全部それに含まれてきているわけで、そういう点からいま少し援助についても、あるいはそういう対外的な姿勢についても、有色人種というと語弊があるかもしれませんが、こちらの側に立つというような姿勢、こういうものを貫いてもらいたいと私は思うのです。それがこれからの新しい世界をつくっていく日本の役目でもあろうと思います。その点、大蔵大臣からも、援助の問題にからんで承っておきたいと思います。
  55. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) これは、前々から申し上げているところでございますけれども、いま仰せのとおりの態度政府としては進んできておるつもりでございますが、ここ数年来の各種の国際会議等における日本の主張というものは、まさにその点に重点を置いておるわけでございまして、大きく言えば南北問題の解決日本が大きな役割りを持つという主張でございますし、それから、最近におけるたとえば、国際通貨問題の扱い方などについても、昨年でございますか、リマ会議等に示されておるような後発の開発途上国等の考え方というものを、先進国の中では一番理解し協力する態度を示しておることも、これはもう列国がよく承知しているところではないかと思いますが、こういう考え方を持っているわけでございますから、援助協力のやり方等についても、日本らしい行き方、これをぜひ特徴づけて、かつ確信を持って進んでまいりたい。しかし、そのためには、いろいろこちらから見れば不本意なところもございましょうけれども、やはりわが身の振り方といいますか、ビヘービアをできるだけ具体的に示すことが必要なんであって、いろいろ御質疑を受けておりましても、日本国民がみんなが同じような気持ちを持っている、こういうふうに私は理解をするわけでございますが、これをやはり国会を通じてもその意図が正しく表明されることがほんとうに望ましいことではないかと、こういうふうに考えます。     —————————————
  56. 土屋義彦

    理事土屋義彦君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、青木一男君、西田信一君及び徳永正利君が委員辞任され、その補欠として二木謙吾君、中村登美君及び鹿島俊雄君が選任されました。     —————————————
  57. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 時間がありませんので簡潔にお尋ねしたいと思います。  いま、御提案の、アフリカ開発基金に関する法律案については私は賛成したいと思います。ただ、賛成する理由というのは、金がなくて困っているんだ、大いに出してやればいいじゃないかという単純な気持ちなんです。じゃ、金を出してやればいい、物的に援助してやればいいのかということになると、どうも大切なことが一つなおざりにされているのではないかという気がいたします。そういう観点から二、三お伺いしてみたいと思います。  最初にお伺いしたいのは、資金的な援助あるいは物的な援助だけで、よい結果というのがほんとうに出るんだろうか。例をあげてお考えを伺いたいと思いますけれども、現在、西アフリカあるいはインドで深刻な食糧危機に悩んでいる国がふえてまいりました。理由としては、もちろん天候不順もあります。しかし、もっと基本的な問題というのは、人口の増加率のほうが、食糧の増産率よりも高くなったということが指摘されているわけです。じゃ、一体なぜそうなったんだろうかと考えてみますと、こういう点が指摘されていると思います。  それは、普通、先進国が開発途上諸国援助をやる場合には、医療対策というのが一つの柱になっております。人道上の見地からいっても、これは当然必要なんです。医療対策をやりますと、どういう結果が出るかということになると、出生率がふえて死亡率が減ります。当然のこととして人口がふえる結果になります。ところが、問題というのは、この医療技術というのは、開発途上諸国人たちが自力でつくり上げた技術ではないということです。いわば技術なり技術者を移植する形での医療対策が行なわれてまいりました。じゃ問題は、農業の分野でそれが通用するかということになりますと、これはもう御承知のように、医療とは違いますから、技術あるいは技術者の単純な移植ということでは農業問題は解決されません。何が必要になるかということになりますと、インドであればカーストを初めにした社会制度そのものの改革が必要になるでしょうし、教育に対する重点的な施策が不可欠の前提にもなると思います。ただ問題なのは、これには時間がかかる。しかも、日本ではあまり実感がない問題ですけれども、開発途上諸国に多い宗教問題ということを考えてみても、この時間のかかり方というのはなかなかもつて相当なものだと覚悟せざるを得ない。にもかかわらず、人道上の見地から開発途上諸国援助の一環として医療対策が進められている。それ自体は悪いことではありません。もう積極的にすべきだという主張が成り立つでしょう。しかし、結果がこれどうかということになると、その結果は、人口は急速にふえるし、農業のほうは、それをささえる、新しい医療技術をささえる文化基盤がないから、農業のほうは従来のおそいスピードでしかふえていかないことになる。そうなりますと、人道上の見地というところから入っていった先進諸国援助なるものが、結果とすると開発途上諸国食糧危機をビルトインするだけになるんじゃないか。比喩由的に申し上げますと、開発途上諸国に全く無関係の活動をほうり込むわけですから、ガン細胞を移植するのと同じことにならないか。これが実は開発途上諸国援助のこわさだと思うのです。したがって、今度の御提案も含めて、資金的、物的援助は当然やるべきだと思いますけれども、さらにつけ加えてというよりも、より基本的な問題として、開発途上諸国のためになる援助というのは一体何なのかということをやはり考えていかなければいけないと思います。  そこで、お伺いしたいのは、開発途上諸国から先進国になりつつあり一ある見方ではなったといわれているこの日本政府として、こういう問題についてどういう対処をしていかれるのか。資金を与える、物的援助をする、これは当然なんです。しかし、これだけですと、ほうっておけば、開発途上諸国にガン細胞を移植するだけの結果になりかねない。じゃ一体何をしたらいいんだろうか。まあここまでのところで大臣の御見解をひとつお伺いしたいと思います。
  58. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 非常に雄大で、かつ長期的な大構想のもとのお考えですから、簡単にはお答えできませんが、基本的なお考えには私も全く同感でございます。ですから、資金的な援助だけでは目的はとうてい達せられないでしょう。しかし、そうかといって、やはり資金的な援助というものがすべての根幹になる。そこで先ほども御指摘あったように、病気を退治する、飢餓を退治する、あるは文化的に文盲を退治するというようなことが、やはり特に後発開発途上国に対する、先進国とこのごろはいわれておりますから、あえて先進国の一つと申しますが、日本の立場ではないだろうか。それには、ですから、資金の使い方についても、マルチの場において、アフリカ開発基金にいたしましても、日本相当拠出をすれば、それだけ、まあ今後きまることでありますけれども、理事会の一員にも登場できるでございましょう。発言力はそれだけ大きくなると。そういう点をよりどころにして、外交機関の活動はもちろんでございますけれども、日本としても衆知を集めて、広範にわたる構想が着実に一つずつ実現できるようにしていくということでやっていくことが基本的な心がまえであろうと、こういうふうに考えます。
  59. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまの大臣のお答えのとおりなんですけれども、お答えの中にもありましたように、問題は、結局人だと思うのですよ。人を出していくのかいかないのか、またいけるのかいけないのか。これは何も、今回の御提案のことに限って、人ということになりますと、具体的な問題になりますけれども、そうではなくて、金も出す、物も出す、同時に人も出していく。開発途上諸国のお役に立つ人材をたくさん育てていきますというのが、もし真剣に開発途上諸国援助に取り組むのなら、日本政府として考えていかなければならない。  そこで、先ほど来、政府とすると、他国に先がけて開発途上諸国援助という問題を重要に考えてまいりましたというお答えなんでございますけれども、じゃ一体海外に人材を出していく、あるいは使える人材を育てていく、そういった面で、従来政府が積極的に取り組んできたんだろうかというと、どうも疑問に思える面が多過ぎると思うんです。そこで、理事にも当然出てまいりましょうしということで、人も出ていきますということを、いま、大臣、当然のこととしてお認めなんでございますけれども、じゃ、出ていく人たちが何に一体困っているのか。それは、自分の子弟の教育を一体だれがしてくれるのか。帰ってきたらどこが受け取ってくれるのか。しかも、外に行った場合に、帰ってきて自分のポストは一体どうなのか。これは公私を問いません。これがどこに行っても結局は腰のすわらない日本人の海外進出になって、金は出すけれども、定着をしないんです。ひもつきとかなんとか言われても、定着をしている民族のほうがより感謝をされるし、根づいた対策になっているということになりますと、お伺いしている点がたいへん小さいとお思いかもしれませんけれども、人を出すんだということがもしかりに重要だとお考えになれば、当然のこととして、出す環境整備ということを、これは具体的に政府としておやりいただきたい。これはそれぞれの分野、自主的にやれということでは、とても解消できないと思いますので、大臣の御見解をあらためてお伺いしたいと思います。
  60. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) その点でございますと、これは私も全く同感であるというだけではなくって、従来いろいろの点で努力をしてまいりましたし、それなりの成果が私はだんだんあがってきていると思います。たとえば、在外の子弟の教育の問題については、義務教育を中心にして、政府としてできるだけの援助をしておって、これもやはりこれまでの経過がございますから、これまでどうしても日本人の多いところが中心にならざるを得ませんから、全世界に行き渡ってどうというような大それたことを言えるわけにはまいりませんが、しかし、一々これは資料について御説明すればよろしいんでありますけれども、東南アジア方面を中心にいたしまして、最近の在外の学校教育というものが非常な成果を私はあげていると思います。もっとこれは努力しなければなりませんが、たとえば、教員の補充の問題なども、これはよく御承知ですからあえて申し上げませんけれども、たとえば、ある国のある地点における小学校については、母校となるような、日本国内のたとえば学芸大学というようなところが中心になりまして、よい先生を継続的にその地点に供給するというか、派遣をしていただくというようなことも制度上あるいは慣行上、だんだん確立してきておるわけでございます。ただ、そういう場合にも、ある国によっては、御案内のように、外国の学校の正規の学育をやるということを制度として認められない国も相当ございますから、そういう場合においては、たとえば、大使館の付属機関というようなかっこうで、事実上成果をあげるとか、まあいろいろのくふうをいたしております。  で、私は、基本的に、在外活動をする方々が、単身で赴任するということは弊害があると思うんです。その点は、私、かねがね外務省におりましたときにも痛感いたしまして、日本人のビヘービアをよくする、そうしてほんとうに現地の方々と溶け込んでよい仕事を日本人らしくしていただくためには、家族を連れて、子供さんを連れていって家庭生活をやっていただくということがどうしても必要であるとかねがね考えておりますので、その方面には、それなりの私も努力をしてまいったつもりでございます。  一方、ある程度以上の青年子女になりますと、国内における教育、それから継続的に上の学校へも入れるような施設や、あるいは制度が必要であって、これは民間の方々にも非常な御協力をいただいておる。たとえば、前のアジア銀行総裁を長年やってこられた渡辺君というような方も非常に熱心に、中心になって、民間的にも政府の意図や事業に非常な協力をされておるわけでございまして、この方面も従来よりは相当の成果があがっていると思います。しかし、今日ここでの問題は、アフリカでそんならおまえ何をやっているかと言われますと一言もございません。こういう点については、情勢の発展や、あるいは先取りを考えながらさらに拡充していくことにできるだけの努力を続けるべきである。どうかひとついろいろの面で御協力をいただきたいと思います。
  61. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 よろしくお願いしたいと思うんですけれども、せっかく御丁寧なお答えがありましたので、つけ加えて一つだけ御見解を承りたいと思います。  いまお話しのように、たくさん日本人が行っているところは対策を打ちやすいんです。しかも、どちらかというと、地方的な言語でない国に行く場合には、そこでお子さんが育った場合でも、何がしか自分の将来の道というのは見つけていけるかもしれない。ところが、もうその地方しかないローカル・ランゲージのところになりますと、いやあ日本人も少ないわ、自分の子供はどうするんだと言いながら、何となく中途はんぱな日本人になっていっちゃうんじゃないか。しかも、そういったところに、実は開発途上諸国援助ということでは、そこの文化の中に食い込んだ理解できる人をどうしても育てなければいけない。  それやこれやを考えますと、単身赴任は弊害だというのは全く同感だと思います。その環境づくりとして、これはどういう形でつくったらいいか、具体的に考えているわけではありませんけれども、一つは、条件として、全寮制の学校はやはり要るのではないか。これくらいなら知っています。外地に行っている間お子さんのめんどうを見ますという全寮制の学校がひとつ要るのではないか。それから、そういう開発途上諸国人たちが、気軽に日本に来て学べる国際性を持った大学がどうしても必要なんではないか。また、行った人たちが帰ってきたときに、日本の縦割り社会の中ではなかなか、という心配を取り除くための、何がしかの、外に向かって開かれた国際機関というものを政府の力をもってつくっていかなければいけないんじゃないか。  たまたま三つを申し上げましたけれども、よろしかったらこの点の御見解もあわせてお伺いしたいと思います。
  62. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) たまたま私も同感申し上げている点にお触れいただきましたので、ちょっとこまかくなりますが申し上げますと、子女の教育関係の四十八年度予算で申しますと、外務省予算の中に九億八千九百万、ちょっと十億でございますが、これで全日制の学校が九億六千三百万円、派遣の教員が二百十七人。それから文部省関係では、千二百万円ですが、これは教科書の無償配付を在外の学校に対してもやっております。それから文化庁の関係では、教材の整備、通信教育の補助で八千万円。合計いたしますと、子女の教育関係で十億八千二百万円。これは四十七年度の七億三千万に比べますとちょっと五割増の予算を計上いたしております。  それから、御本人のほうの関係ですけれども、たとえば、海外技術協力事業団で委託されて、それぞれの企業から派遣されて仕事をされておる方々に対しては、企業に対する給与の補てんの経費を六億七千万円ほど計上をいたしておるわけでございまして、親元企業の籍を持っておる専門家についても、その身分や派遣中の待遇についてやはり政府としてできるだけの考慮をするというたてまえにいたしておりますし、また、外国のほうの国際機関等に派遣される国家公務員につきましては、身分、給与を保障する特別の法律ができましたことも御承知のとおりでございまして、こういう点につきましては、ずいぶん財政当局としても配慮をいたしてまいりましたが、今後もますます十分の配慮をいたしたい。かように存じておる次第でございます。
  63. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間があまりないので端的に二、三問お伺いいたしたいと思います。  今度のこのアフリカ基金は、低金利で、しかも、五十年という非常に長期のものである。特に、アフリカ開発銀行を通じて、構成国が議決権の半数を握るというような点を見ますと、いかにも被援助国の利益に沿った、あるいはそこの自主性を尊重しているというような装いはとられているようです。しかし、これをしさいに検討してみますと、私は、非常に危険な内容がこれに含まれているんじゃないかということを感ぜざるを得ないわけです。率直に申し上げますと、アフリカという地下資源の豊富な国、したがって、いま資源問題が非常に発達した資本主義国にするどく問題となっているときに、ここをどうしても開発しなきゃならない、帝国主義の利益の方向に沿って開発をしなきゃならぬ。しかし、最近のOPECの動き、あるいはリビアにおける石油会社の国有化の動きなど、民族主義の高揚が特に大きいわけですから、できるだけアフリカ諸国を刺激しないような形でそれを遂行しなきゃならないというところに、このアフリカ開発基金の一番大きなねらいがあるんじゃないかという感じがするんです。一言で言えば。したがって、新しい形における集団的植民地主義の機構だといって差しつかえないというふうに考えます。  そのような点から幾つかの問題を伺いたいんですが、まず第一に、この第十六条の5によりますと、「貸付金は、貸付けが行なわれた通貨又は基金が決定するその他の自由交換可能通貨で償還する。」ということになっております。で、現在、アフリカ各国の通貨は一つとして自由交換可能通貨はないわけでありますから、アフリカ諸国は、借りた金の返済を行なうためには、輸出などを通じて自由交換可能通貨を手に入れて、そうしてそれで返済しなきゃならないと、こういうことに必然的になってくると思うんですね。私は、これは一種のひもつきじゃないかというふうに思います。いまインドその他が、まさに借りた金の返済に困って、そうして各国の、債権国のコンソーシアムで、いわば債務奴隷的な地位に落とし込められているという実情がありますけれども、まさに、この自由交換可能通貨で支払わなきゃならぬという、こういう条件のもとで、アフリカ諸国もやがてはそういうところに落ち込むんじゃないかということを案ずるわけですけれども、その点どんなふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  64. 林大造

    政府委員(林大造君) 貸し付けは交換可能通貨で行なわれるわけでございます。で、通常ドルとか円とかマルクとかスイス・フランとか、その他の通貨で行なわれる。で、その場合に、やはり国際機関といたしましては、金融機関としての性格もございますし、当然そういう通貨で貸し出された金額が同様に自由交換可能通貨で償還されるという原則をとるのは常識的なところでございまして、このことは、世界銀行とか第二世界銀行のようなグローバルな開発金融機関、マルチの開発金融機関、あるいは地域的な開発金融機関、アジア開発銀行でございますとか、あるいは米州開発銀行でございますとか、すべて同様な原則で運営されているわけでございます。  で、場合によりましては、二国間の経済協力につきましては、例外的に債務国の通貨で返済してもよろしいという規定が置かれることもございますけれども、しかし、このアフリカ開発基金のような、多国籍の開発金融機関といたしましては、自由交換可能通貨で償還されるというのは当然の原則ではないかというふうに存ずるわけでございます。  このことは、今回のこの開発基金発足にあたりまして、関係各国が合意をいたしたわけでございまして、その関係各国の合意の中には、当然のことながら、アフリカ域内の多数のアフリカ開発銀行の構成国も入っているわけでございます。そのような合意を尊重して、基金が健全な経営の基礎の上に立って運営される、また、そのような資金に対する域内の諸国からの需要も当然非常に強いというふうに予想されているわけでございます。
  65. 渡辺武

    ○渡辺武君 貸せるほうの立場から考えてみれば、それは当然のことだと言えるでしょう。そうしてまた、金を借りたい、借りたいというふうに考えているアフリカ諸国からすれば、その点で合意をするということも、これは十分考えられると思うんです。しかし、いままでの実績を考えてみなきゃならぬと思うんですね。私は、この交換可能通貨での返済ということだけが、たった一つの理由だというふうに言うつもりは少しもありませんけれども、しかし、従来交換可能通貨で返済しなければならぬということで金を借りた、その結果としてどういうことになっているのかと言えば、たとえば、世界銀行の一九七二年の年次報告によりますと、発展途上国の対外債務残高は、これは一九六一年には二百十六億ドル、ところが、それが十年後の一九七〇年には六百六十七億ドル、三倍に急増しているわけですね。アフリカの場合でも、一九七〇年には百七億ドル、六一年が三十三億ドル、これまた三倍以上に急増する、こういうような状況です。そうしてこの対外債務を返済するために、輸出を伸ばして何とか交換可能通貨を手に入れなきゃならないということで、だから、輸出に対する債務返済比率を見ますというと、非常にその比率が大きくなって、発展途上国全体では、六一年に六・三%、それから七〇年は一〇・九%というような状況でその比重が急増している。これが、被援助国の経済状態を非常に苦しくさしている大きな原因になっていることは、私が詳しく指摘するまでもないと思うんですよ。まさに、返済ができなくなって、そのために各国のコンソーシアムなどで、国内経済についてのいろいろな要求を受け入れざるを得ないというような事態で、債務奴隷の地位に落ち込んでいる。そういう被援助国の立場に立って、この問題は私は検討しなければならぬと思う。そこのところの考慮を全然なくして、いわば金融業者の立場に立って、当然のことだと言って、こういう条件を押しつけてくる、この点に私は、この基金の第一の危険な点があると思う。こういう点をあなた方は避けられるという自信がおありですか。
  66. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 金融資本ですか、そういうようなやり方の金融資本、帝国主義的な行き方にならないようにするのがこの仕組みであって、先ほども御指摘がございましたように、従来的な金融の考え方や手法からすれば、借りるほうの立場のことも考えて、かつ資金を供給するべき立場にあるほうの債権の保全ということも、協力の内容として期限とか、金利とか、いろいろの条件をできるだけ受けやすくするというところに、私はくふうがあるわけだと思います。  しからば、こういう方法以外に、速急にアフリカ人たちの福祉を考えた場合にどういう手があるか。先ほども私、私見を率直に申し上げましたけれども、それならば、ただで金をくれてやるというやり方がいいかもしれませんが、それこそこれはひもつきどころではなくて、全く右向くも左向くも、政治的にもイデオロギー的にも属国になってしまうではないか、私はこういうふうに考えます。
  67. 渡辺武

    ○渡辺武君 先ほども申しましたように、やっぱりアフリカ諸国の最近の民族主義の高揚というものについては、各独占資本主義国、帝国主義国が非常に大きな脅威を感じている。したがって、一定の部分的な譲歩はするでしょう。しかし、基本的にはやっぱり帝国主義の利害を貫いていくというところに、いま私が指摘したような問題点が出てくる一番大きな原因があると思う。  で、時間もないので私はなお次の質問に移りますけれども、この協定の第十四条には、アフリカ基金資金の使用についての規定がありますけれども、端的に伺いたいんですが、この融資対象の選択ですね、これの基準は一体どういう基準で選択されますか、どういうプロジェクトに融資するかというような点ですね。
  68. 林大造

    政府委員(林大造君) 御指摘の第十四条の「資金の使用」の規定でございますが、その基本的な方針は、第十四条の二項に規定してあるわけでございます。当該地区の必要に照らして開発上の優先度が高いと認められる目的のために、また特別の場合は別といたしまして、その他の通常の場合には、「特定の事業計画又は事業計画群、特に、一国又は地域の全部若しくは一部に関する総合計画の一部を構成するものに対して行なわれる」、そして基金が承認した特定の事業計画に対して転貸するような場合、その場合もよろしいわけでございまして、その場合には、その国の開発銀行等に対して融資を行なってもよろしいという規定がございます。この基本方針にのっとりまして、具体的に基金がいかなる方針で融資を行なうか、きょうもいろいろ諸先生方から御指摘がございましたとおり、農業を優先してはどうかとか、あるいはインフラストラクチュア関係の融資に重点を置くべきであるとか、いろいろな考え方があると思います。それらの点につきましての具体的な内容は、基金が発足いたしましてから、基金の中で方針がきめられるというふうに理解いたしております。
  69. 渡辺武

    ○渡辺武君 私の伺いたい点は、つまりそれぞれの被援助国が、自国の経済を自主的に発展させるという立場からつくった開発計画なり、経済の発展計画なり、これがそのまま受け入れられるか、それともまた、この基金の中に一定のやっぱり審査、査定機関があって、そしてその審査、査定に基づいてやられるのかということなんです。端的にお答えいただきたい。
  70. 林大造

    政府委員(林大造君) それは他の国際開発、地域開発金融機関と同様に、そのようなプロジェクトの評価をして、その適否をきめる手続は当然踏まれるわけでございます。
  71. 渡辺武

    ○渡辺武君 ですから、たとえば、他の国際金融機関との協力というようなこともこの中に書かれているようですが、かりに世界銀行や第二世銀などと協力して、調査し、あるいは査定するということになれば、従来の例と同じように、やっぱり出資国、つまり帝国主義、独占資本主義国の利害がその査定の中に貫いていかれるということに私はなっていくと思う。もしかりに百歩譲って、被援助国の自主的な経済計画を尊重してやるというふうにしたとしても、さっき私が指摘しましたとおり、借りた金を交換可能通貨で払わなきゃならぬわけですよね、そういう義務を負っているわけですから。どうしても援助国が買ってくれそうないろんな物資、これの開発に重点を置くような計画を被援助国のほうでも立てざるを得ない。こういう関係になってくると思うんですね。こうなってくると、やはり各国の自主的な経済的発展というのが、そういうことを通じて事実上阻害されてくる。こういうことにならざるを得ないと思いますが、どうですか。
  72. 林大造

    政府委員(林大造君) アフリカ開発基金、今後発足することになりますが、その基金がいかなる融資方針をとるかということにつきましては、もちろんその他の国際開発金融機関の例を参照としながら、独自に決定されることになると思います。また、その貸し付け対象の選定にあたりましては、各国の計画を十分に尊重しながらも、しかし、独自の観点で審査を進めていく、その場合に、その国の、貸し付けを受ける国の将来の国際収支というようなものも、もちろん一つの観点になると思います。そのようなことから、プロジェクトの性格によりまして、直接間接その迂回度はいろいろあると思いますけれども、その国の国際収支が次第に改善されて、そして経済は生きものでございますから、対外的な国際収支の中から、所要の資金を調達して返済に充てる、また、当然のことながら新たな借り入れも将来は行なわれるでありましょう。そのようなことも十分に見通して審査がされるわけでございまして、私どもといたしましては、この基金の審査機能も十分に発揮されますように、理事会その他の機関を通じてできるアドバイスはできるだけやっていきたいというふうに考えております。
  73. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間がなくなりましたので、あとはまとめて二、三問伺いますから、ひとつまとめて御答弁いただきたい。  一つは、いまの御答弁伺いましたけれども、やはり結局のところは、審査過程においても、あるいはまたプロジェクトそのものの事実上の動きという点からしても、私は、被援助国の自主的な経済的発展ということではなくして、まさに、援助国の利害関係というものが中心にならざるを得ないという感じをぬぐい去ることはできないのです。たとえば、このアフリカ開銀の一九七一年十二月末現在の融資実績を見てみましても、道路、電力、鉄道、石油設備などの融資額が非常に圧例的に多いのですね。農業肥料などの融資額が非常に少ないのですよ。すでに、つまり議決権の半分は握っているというアフリカ開銀でさえも、いわばこの産業関連、重化学工業というようなところが投資の重点になっているわけですね。これを一体、これらの開発をやるための設備資材というようなものを、アフリカ国内で生産できるかというと、そういうことはできない。結局よその国から、つまりアフリカ基金の場合でいえば、出資国から買わざるを得ない、こういう形になっている。これはやはり帝国主義諸国が、アフリカ市場を拡大する一つの有力な、てこになると思うのですね。逆に言いますと、さっきも言いましたように、そこで開発した資源を輸出して、そして交換可能の金をかせいで返済しなければならぬ。こういう仕組みになるわけですから、ますます旧、この旧と言うとなんですけれども、帝国主義諸国に、市場的に輸入輸出両面から依存せざるを得ない、こういう関係になっていくと思うのですね。ですから、そういう意味で、これは表面は非常に債務国に有利のように見えながら、結局のところ帝国主義の利害関係を貫いているというようなものになっているのではないか、これが質問したい一つの点。  もう一つは、十六条ですね、十六条を見て見ますと、「基金は、」これはちょっと飛びまして、「融資を行なうに先だち、参加国と同様に当該構成国が第十一条4及び第八章の規定を実施するために必要なあらゆる行政的及び立法的措置を自国の領域についてとったことを確認するものとし、融資は、その行政的及び立法的措置が維持されること」を条件とするというふうに規定されております。  時間がないので端的に申しますと、融資したその資産ですね、これは没収されないということをここで融資の条件としているわけですね。あるいはモラトリアムその他はやらないということも条件としているわけです。これは独立国の主権に対するはなはだしい侵害だと思う。金貸せるほうからすれば、貸した金の返済を確保するために当然のことだということの論理になるでしょうけれども、しかしながら、これは国連憲章にもきめられたやはり民族の自決権というものについてのはなはだしい干渉になるのではないか、そうして結局そういうことを条件として融資をするという慣習をつけるならば、いまOPECあるいはさっきあげたリビアなどで起こってきている石油企業の国有化その他等々の動き、これを民間企業についても制約していくというその突破口を、この協定によって開いていくという性格を持つに至るのではないかと思いますけれども、その点どうですか。
  74. 林大造

    政府委員(林大造君) 二点お答え申し上げますが、第一点は、その審査の過程におきまして、援助国の立場に立った融資活動、被援助国の立場を無視したような援助活動が行なわれるのではないか、それはアフリカ開発銀行、現在ございます銀行の融資実績を見てもわかるような気がするという御指摘でございますが、実は、このアフリカ開発銀行は、比較的ハードな条件による融資活動を行なっております関係上、したがいまして、その融資の種類もおのずと運輸とか、電力とか、比較的収益性の高い業種に片寄る傾きがございます。このようなことであってはいけない。やはりもっとソフトな融資活動が行なえるような基金をつくりまして、そしてそこからもっと違う、より農業に重点を置くとか、あるいはいわゆるインフラストラクチュアに重点を置いたような融資活動が行なえるようにしようというのが、今回の基金設立の趣旨でございまして、先ほどからの御質問にも御指摘がございましたように、後進国に対する経済協力は、被援助国の立場に立って行なうべし、日本もそのような精神を体して行なうつもりであるということでございますから、この開発基金の設立、それに対する日本の積極的な参加ということが、被援助国の立場に立った融資活動を進めることになるというふうに存じております。  それから第二点でございますが、十六条の六項の規定でございます。この規定は、多国の参加いたしますこの基金が、融資活動を行なうにあたりまして、このようなことをしようということでございまして、ほかの国際金融機関にも例のあることであり、また、域内の諸国が集まりましたアフリカ開発銀行におきましても、同様な趣旨の規定がいろいろと行なわれているわけでございます。で、これらの規定は、決して被援助国、被融資国の主権を制限するという趣旨ではなくて、大ぜいのものが寄り集まって仕事をする場合には、ある程度お互いに協調して、自分かってなことを言うのを、ある程度制限しながら、一つの共同作業を行なっていこうという共同意思のあらわれとして、このような規定は必要なものである。また、それが過去の実績になっているというふうに存じて、私どもこの規定に賛成いたしている次第でございます。
  75. 土屋義彦

    理事土屋義彦君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 土屋義彦

    理事土屋義彦君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようでございますから、これより直ちに採決に入ります。  アフリカ開発基金への参加に伴う措置に関する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  77. 土屋義彦

    理事土屋義彦君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 土屋義彦

    理事土屋義彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  次回は、六月十九日午前十時開会することとしし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十三分散会