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1973-03-30 第71回国会 参議院 大蔵委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年三月三十日(金曜日)    午後一時三十九分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         藤田 正明君     理 事                 嶋崎  均君                 土屋 義彦君                 野々山一三君                 多田 省吾君                 栗林 卓司君     委 員                 青木 一男君                 河本嘉久蔵君                 柴田  栄君                 津島 文治君                 中西 一郎君                 西田 信一君                 桧垣徳太郎君                 船田  譲君                 山崎 五郎君                 川村 清一君                 竹田 四郎君                 戸田 菊雄君                 成瀬 幡治君                 山崎  昇君                 渡辺  武君                 野末 和彦君    政府委員        公正取引委員会        事務局長     吉田 文剛君        大蔵政務次官   山本敬三郎君        大蔵省主計局次        長        長岡  實君        大蔵省関税局長  大蔵 公雄君        大蔵省理財局長  橋口  收君        大蔵省理財局次        長        後藤 達太君        林野庁長官    福田 省一君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    説明員        大蔵省関税局企        画課長      米山 武政君        国税庁調査査察        部長       磯辺 律男君        農林省農林経済        局国際部長    吉岡  裕君        通商産業省通商        局国際経済部通        商関税課長    寺田 恵一君        通商産業省重工        業局航空機武器        課長       加島耕之助君        通商産業省鉱山        石炭局金属課長 伊勢谷三樹郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○資金運用部資金並びに簡易生命保険及び郵便年  金の積立金長期運用に対する特別措置に関す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 藤田正明

    委員長藤田正明君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  資金運用部資金並びに簡易生命保険及び郵便年金積立金長期運用に対する特別措置に関する法律案関税定率法等の一部を改正する法律案、以上二案を便宜一括して議題とし、前回に引き続き、これより質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 竹田四郎

    竹田四郎君 まず、理財局長にお伺いいたしますけれども、今度の場合、五年以上の長期運用資金については議決の対象になる、五年以下のものというのは、対象にしないわけなんですが、具体的にその対象にしない金額というのは、四十七年末ぐらいでいいのですけれども、一体どのくらいあって、それは一体どのように使われているのか、五年未満のものですね。その具体的にどういうふうに使われておるかという内容を示してほしいと思うのですが。
  4. 橋口收

    政府委員橋口收君) 先生個人資料提出をいたしました資料と、ちょっと合っておりますかどうか、たまたま手元にございますのが、四十七年の十二月末でございますが、一年以下の運用は四兆四千百五十二億円。それから、一年超五年未満、千六百八億円。五年以上が十六兆九千五百七十五億円、合計いたしまして二十一兆五千三百三十五億円でございます。  いまお尋ねがございました一年以下の四兆四千億円の内訳でございますが、厚生保険特別会計貸付金が三千六百六十四億円、石炭鉱業合理化事業団貸付金が四十一億円、石炭鉱害事業団貸付金が九億円、地方公共団体貸付金が千百十七億円、国債運用が三兆七千八百七十五億円、金融債が千四百四十六億円でございます。
  5. 竹田四郎

    竹田四郎君 そこで、こういうものが、まあこの金額の幅、ワクというものがどのくらいになるかというのは、おそらくそのときに長期運用したものと、入ってくる金との差し引きが、まあこういうふうに使われるということになると思うんですが、結局、まあ言うなれば、一種のオペレーションに使っているというふうに見ていいと思うんですけれども、こういう形でかなり使われているということになりますと、いろいろ私は、金融市場におけるところの一元的な金融操作でなくって、目玉が二つあるというようなことになるおそれはないかということなんですが、その辺はどういうふうに処理しているのか。たとえば、運用部が持っております国債長期国債の場合を見ましても、たとえば、四十二年、四十三年の長期国債というものを見ていきますと、運用部の場合には、四十二年より四十三年の数字のほうが、長期国債保有額というのは少なくなっておりますわな。民間のほうは、逆に市中のほうは六千四百三十五億円から八千二百九十億円という形でふえている。こういう点から見ますと、どうもそうした金融操作というものにかなり利用できるだけの資金量だと思いますが、そういう点でどうも金融操作の根元が二つある。こういう心配が出てくると思うんですけれども、その辺はどのようにお考えになっていますか。
  6. 橋口收

    政府委員橋口收君) いま竹田先生からお示しがございました資金運用部資金のまあ資金の発生の系路と申しますか、それは機関に貸したものの回収金と、それから新規に集まりますまあ資金運用部資金——郵便貯金とか、あるいは年金資金でございますが、そのほかに、当初に長期運用予定額をきめますときには、たとえば、四十七年度で申しますと、郵便貯金伸びは一兆七千億円、年金資金は一兆四千億円と、こういう予定を立てておりますが、実際に年度の途中で郵便貯金伸びが大幅にふえると、あるいは年金資金は大体当初見通しとそう大きな変化はございませんが、他の特別会計余裕金とか積立金余裕がふえると、こういうまあ事情がございますと、やはりそれがいわゆる長期運用予定額以外のいわば余資と申しますか、超過原資と申しますか、そういうものになってまいります。したがいまして、いま先生がおっしゃいました長期運用予定額からはずされたものと、回収金プラス当初計画に対する超過分というのが、いわば資金運用部資金余裕金になるわけでございますから、そういうものにつきましては、まあ受け入れ預金が全部利息がついておりますので、当然運用しなければならないのでございまして、そのための運用の手段として、一年未満の投資あるいは運用というものがどうしても必要になってくる。  そこで、その次の問題は、いま先生がおっしゃいました資金運用部資金源泉というものと、あるいは流動性の最終的な源泉と申しましてよろしいかと思いますが、中央銀行金融操作と、そういうものとの調和をどうしたらよいかと、こういうお尋ねであろうかと思いますが、  〔委員長退席理事土屋義彦君着席〕 そういう問題がございますので、かつては金融二元化の問題として問題が取り上げられ、運用部金融操作的な行動をとることにつきましては、中央銀行のほうからいろいろ意見もございまして、現在は日本銀行を代理人といたしまして実際の国債の売り買いなどはいたしております。したがいまして、一年未満短期運用として長期国債を買う場合、あるいは短期証券はもちろんでございますが、そういう有価証券類を買います場合には、全部中央銀行を通していたしております。したがいまして、直接市中から債券類を購入する、こういう操作はいたしておらないのでございまして、まあ将来の問題といたしまして、かりに国債以外に、たとえば、地方債というようなものにつきましても、短期的な運用ということも検討いたしておりますが、そういう場合にも、やはり中央銀行あっせん機関として、中央銀行あっせんによって運用部資金債券類を買う。こういう周到な用意をいたしておるのでございまして、運用部だけの独自の判断で、中央銀行金融操作関係なく、買い出動とか、売り出動とか、そういうことはいたさないと、こういう方針で処置をいたしております。
  7. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうしますと、運用部資金あり方として、長期運用短期運用、こういうものは大体どういうめどで、短期運用長期運用の大まかな分け方、おそらくされていると思うのですが、ある一定金額めどというものを定めていると思うのですけれども、これは大体どのくらいを目安にして、いままでの平残でいきますか、年間平残でいっていいと思うのですが、実際そういう点では五年未満、特に一年未満資金というものは大体どのくらいの割合になっているのか。その点もひとつお知らせいただきたいと思います。
  8. 橋口收

    政府委員橋口收君) 資金運用部資金は、郵便貯金とか、あるいは年金資金をお預かりいたしておりますので、それぞれ郵便貯金あるいは年金資金から払い戻し要求がございます。そういう意味におきまして、一つの金融機関でございますから、お預かりいたしましたものを合同運用として、長期運用短期運用に分けて運用いたしておりますが、そういう各種資金源泉からの払い戻し要求もございますので、いわば支払い準備と申しますか、流動準備と申しますか、そういうものの用意が必要になってまいります。  それから、資金運用部資金につきましては、他の一般金融機関と違いまして、借り入れの規定がございませんので、万一の場合には、自分の所有する資産を処分して、現金を調達するということが必要になってまいりますので、かりに関東大震災というような不測の事故が起こりました場合に、郵便貯金に対して、貯金者がどういう反応を示すかというような問題もございますから、他の一般金融機関に比べまして流動準備を厚くする必要があるというふうに考えておりますので、現在一応の目安といたしましては、大体総資産の一割程度のものはいつでも処分できる資産の形で保有することが必要じゃないか。で、いまお話がございましたように、過去におきましては一割を割り込んだようなこともございます。実際に資金に対して長期運用要請が強くて、いわゆる財投計画をふくらましたようなときには、短期運用が一割を割り込んだこともございますが、大体の目安といたしましては、一割に目標を置き、現在は大体短期証券を二兆数千億円持っておりますから、短期証券だけで大体全体の一割になっている。そのほかに長期国債を一兆六、七千億円短期運用いたしておりますので、そういう点で申しますと、現時点では、われわれ一応の目標といたしております一割の流動準備をはるかにこえておるというのが、現在のポジションでございます。
  9. 竹田四郎

    竹田四郎君 ですから、まあ提案理由の中にもありましたように、有効に運用をする、有利な運用ということですね。有利な運用ということは、かなりの利益がそれによって生まれてくるというふうに普通考えてもよかろうかと思います。特にこれは資金の性質上有利な運用ということになりますから、相当全体の利益がここに積み込まれてくるという形だと思うんですが、短期運用するのと、長期運用するということになれば、これは当然長期運用するほうが有利な運用というものになってくるだろうと思うのですが、そうしますと、いま大体一割というのがめどだというんですけれども、これからの情勢を考えてみますと、はたして長期運用できるようなものが出てくるかどうか、そういう問題も一つあろうと思うんですけれども、短期運用金額が非常に高くなるということは、これは運用自体においても私はいろいろ問題が出てこようと思うんですけれどもね。その辺は一定制限というものが当然あってもいいんじゃないか。また、おそらくいまの局長の話の中で、何か天災地変がある、その場合の払い戻しというようなことをおっしゃっていたんですが、それは私は、短期のものだけですぐ払い戻しができるというものじゃないと思うのですよ、おそらく。もっと大きな措置をとられなければならない問題というものがおそらく出てくるだろうと思うのです。そうなってきますと、短期運用金額というものは、理財局でも大体一割ということをめどにしているならば、一割そのものがいいとは私はちょっと思いませんけれども、ある一定限度以内で運用するという規定があっていいんじゃないか、こういうふうに思いますが、そういうものがあると非常に運用のじゃまになりますか。たとえばいま一割を一応の目標にしていると、このようにおっしゃっていたんですが、実際にはいまの場合には二割ぐらいいっているわけですね、大体。それをたとえば、二割以内という形にすると非常に運用ができにくくなって損失がふえると、こういうような事態がありますか、ありませんか。
  10. 橋口收

    政府委員橋口收君) 竹田先生の御意見は、いわば金融常識にマッチした御意見であろうかと用いますが、実は資金運用部資金は、有利、確実汗運用のほかに、公共的な目的というものを任務として持っておりますので、実は長期融資短期運用と、利回りで申しますと、むしろ長期のほうが安いと申しますか、長期のほうが低いという、まあどちらかと申しますと、やや異常な現象を呈しております。実は長期運用といたしましては、昨年の八月までは六・五%、九月以降は六・二%ということで、ほぼ一律に運用レートをきめておりまして、短期運用は、短期証券利回り肝四・一二五%と非常に低くなっておりますが、国債短期運用で持ちますと、これは六・七%に回るのでございます。したがいまして、むしろ長期運用より短期運用のほうが利回りがいい、一般金融常識からは理解できにくいような、そういう姿になっておりまして、利回り採算の点で申しますと、長期に回す額というもののいわば最低限度と申しますか、あるいは短期運用最高限度と申しますか、そういうものをきめますと、実際には採算利回りは向上する理屈でございますが、いま御説明申し上げましたようなことで、資金運用部資金の場合にはむしろ逆の現象が生じております。そういう点から、採算角度からの配慮というものは、実はあまり必要ないのじゃないかと、それからもう一点は、短期運用限度額をきめますと、四十六年とか、昨年のように金融が緩和いたしました場合には、地方団体にしましても、実際に市中から安いレート資金の調達が可能でございますから、本来であれば、起債前貸しという形で資金需要があるところが、実際は需要がない。それから、一般財政投融資対象機関につきましても、やはり料金収入とか、あるいは事業収入とか、そういう利息のつかないお金というものを先に充当いたしまして、利息のつくお金は、年度後半あるいは年度末に寄せる、こういう合理的な行動と申しますか、そういう自然的な現象がございますので、やはり運用部立場で申しますと、年度を通じての資金余剰ということよりは、年度途中の資金余剰に対してどういうふうに対応するかというのが、実はより重要な課題でございまして、そういう点で申しますと、長短につきまして桓根をつくりますと、実際上短期運用というものが時期的に急増する場合がございますので、そういう場合には、実際に長期に回したくても回せない、まあ、そういうことを申してよろしいのかどうかわかりませんが、一般金融機関であれば、ある程度貸し込みと申しますか、押し込み貸し付けと申しますか、そういう行動がとれないわけでもございませんが、本来信用創造任務を持っておりません運用部でございますから、ことに政府関係機関に対して無理に融資を行なう、それによって利息をかせぐということは、事実上制約されておりますので、そういう点から申しますと、まあせっかくの御提案ではございますが、実際に長短桓根を設けて、そののりを越えてはいけないということでは、実際に運用部全体としての経営に非常に困難が生ずるのではないか、こういうふうに考えるものでございます。
  11. 竹田四郎

    竹田四郎君 確かに、そういう場合が出てくると思うのです。しかし、そういうものというのは、この運用部だけの話じゃなくて、日本金融全体がおかしくなっている。去年あたりは確かに日本金融全体が過剰流動性でおかしくなっていたわけなんですが、問題はむしろそこにあるわけですね。それが運用部のほうに余資が非常にたくさんだまっちゃってしまうということになるわけですよ。そういう意味では運用部資金というのは、要するに積極的なお金じゃなくて、受動的なお金なわけなんですね。だから、むしろ運用部資金のこれを直すということよりも、もっと基本的な金融政策あり方そのもの自体にメスを入れて、そちらを早く直さないと、こちらのほうへしわが寄ってしまうということだと思うのです。そういう意味では、私はむしろこういうところにそういう歯どめがあってこそ、初めて金融政策に対する対応のしかたというものがむしろ正しいものになってくる可能性がある。そういう意味では、私はこの点は、二割がいいかあるいは二割五分がいいか、三割がいいかわかりませんけれども、その辺はある程度限度というものを、五年以下のものについても、金額ではないけれども、一定限度というものを私はきめて、やはり金融政策全体の節度というものがひとっここから生まれてくるというようなものがあってもしかるべきだと思うのですがね。ほかのほうだけにまかせないで、これだけの大きな金というものを合わせ持っているわけでありますから、私はそのように思うわけでありますけれども、この点はいますぐそうだというお返事はおそらくいただけないだろうと私は思うのですが、もしいただけるならお返事をいただきたいと思うのです。
  12. 橋口收

    政府委員橋口收君) いまの御質問の中にもございましたように、自然に集まってくる資金でございますので、資金運用部立場判断でこれの受け入れを行なわないということはできにくいのでございまして、一般金融機関であれば、たとえば、預金が集まり過ぎるというときには、支店に号令をかけて預金集めを少し手控えろ、こういう措置が可能でございますが、運用部資金は間接の立場でございまして、郵便貯金が自然に伸びるという場合には、当然受け入れをしなければならぬ、しかも、それには利息をつける、こういう任務を負っておりますので、そういう点から申しまして、集まってきた資金というものを、いわばマネーフローと申しますか、そういう立場でどういうふうにするかという問題は確かにございますが、ただ、採算の問題とか、あるいは収益の問題という角度だけで申しますと、集まってきたものはどうしても運用して利息をかせぐ必要がある。ただ、その運用の形態が長期運用がいいのか、あるいは短期運用がいいのか、それが資金の循環全体としてどういう立場に立つか、そういう点で申しますと、昨年あるいは一昨年を通じて申しますと、運用部としては資金超過になっておりまして、いわゆる過剰流動性問題に対しては減殺要因と申しますか、消極的な要因と申しますか、そういう作用をいたしております。そういう資金超過になりましたものが、いわば短期運用になっておるわけでございまして、これはいわば経済に対して無色透明と申しますか、中立的な作用を持っておりますので、そういう限りでは、昨年、一昨年は資金超過と、これはまた情勢が変わりますれば、あるいは運用超過と申しますか、景気が停滞した場合には、財政投融資景気調整機能のいわば中心的な機関といたしまして、やはり長期運用に対して大きく傾斜をしていくと、その場合には、手持ちの長期国債とか、あるいは短期国債を処分して現金を調達すると、先ほど申しましたような支払いに対する流動準備だけでなくて、運用に対する準備という任務を含めまして、大体一割程度短期用資産は持つ必要があるんじゃないかということでございますので、まあ先生の御提案の御趣旨はよく理解できますが、運用部資金の、何と申しますか、経営立場と申しますか、最小限度要請としての有利確実な運用という立場で申しますと、なかなか資金に壁をつくりましてやりますと、実際、郵貯の利払いとか、年金に対する利払いに困難を来たす場合があるんじゃないかということが憂慮されますけど、まあよく検討はいたしますけれど、なかなかすぐ的確なお答えは申しにくいのでございます。
  13. 竹田四郎

    竹田四郎君 まあ私は、運用部資金というのはあまり大きくしないほうがいいと、モダレートなものでなければいけないという考え方でありますから、そういう意味では、当然にある程度制限は加えてもいいだろうと、こういう主張であります。  そこで、一体これだけの二十二兆に及ぶ資金でありますけれども、この資金を有利に運用しているというんですが、具体的にはどのくらいの各年度利益が出ているのですか。
  14. 橋口收

    政府委員橋口收君) 過去四十年度から申し上げますと、四十年度が五十四億円、四十一年度が十九億円、四十二年度が二十一億円、四十三年席が六十七億円、四十四年度が四十一億円、四十天年度が二十四億円、四十六年度が二十億円、四十七年度——四十八年度資金運用部資金特別会計添付書類として提出してございます四十七年度損益計算書では、損失の四十八億七千五百万円ということに相なっております。ただ、これは目通しでございまして、最近時点で計算をいたしますと、もっと赤字と申しますか、マイナスがふえるんじゃないかと、こういう見通しでございます。ちょっと御参考までに利回りを申し上げますと、運用利回りが、四十年度が六・四、四十一年度が六二二、四十二年度が六・三三、四十三年度が六・三六、四十四年度が六・三五、四十五年度が六・三三、四十六年度が六・三四ということでございまして、それに対して資金コストも御参考までに申し上げますと、資金コストは四十年度が六・二八、四十一年度が六・二六、四十二年度が六・三〇、四十三年度が六・二九、四十四年度が六・三一、四十五年度も同じく六・二一、四十六年度が六・三三ということで、四十六年度収支差額が〇・〇一と、万分の一ということで、非常に、何と申しますか、経営としては低空飛行いたしておりますが、四十七年度はとうとうそれが収支差額赤字になりまして、損失が出ると、こういうことでございます。
  15. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうしますと、有利な運用ということにはならないんじゃないですか。利益が〇・〇一%、運用部資金総額に対して〇・〇一%、四十七年度においては先ほどの話では赤字がうんと出ると、こういうことになると、有利な運用ということにはならないんじゃないですか。これでもやっぱり有利な運用というふうに理解すべきなんですか、どうなんですか。
  16. 橋口收

    政府委員橋口收君) いまから十四、五年前を振り返ってみますと、万分の一に相当しますところが、大体万分の二十六とか、万分の三十とかということでございまして、まあ千分の三、千分の二・六とか、そういうところでございましたが、これは昭和三十六年に国民年金制度が発足いたしますときに、国民年金積立金を、厚生年金と同じように運用部資金でお預かりをするということを厚生省当局と話し合いをいたしました際に、従来の七年以上の預金に対しまして六%の金利をつけておりましたが、それに対しまして当分の間、〇・五%までの特利をつけてよろしいと、そういう法律改正がございまして、それに基づきまして、昭和三十六年度から、七年以上の預金につきましては六・五%の付利をいたしております。これは郵便貯金、それから厚生年金資金、国民年金資金、いずれも一視同仁でございまして、その他の特別会計でも、七年以上の預金であれば六・五%という金利をつけております。その結果、どういうことが生じたかと申しますと、結果的には、いま御指摘をいただきましたように、まあ有利とはいいながら、実際には〇・五%分が郵貯特会、厚生年金保険特別会計に繰り入れられておりまして、その結果として、郵貯特会は現在千二百億程度積立金が生じております。それに反しまして、いわば本家ともいうべき運用部資金のほうが利益がだんだん減って収支の差額が小さくなってまいりまして、とうとうまあ四十七年度では赤字になると、ただ、運用部資金としては、前から特別会計の積み立て金を持っておりますので、現在大体七百四十億ぐらいの積立金がございますので、まあまあ四十七、八億から五十億程度赤字であれば、何とか当分はしのげると、しかし、四十八年度は、当初から赤字を見込むということは、資金運用部資金法の精神から見て困難でございますから、これは収支とんとんというふうに見込みを立てております。そういう点から申しまして、運用面、採算面につきましてもさらに検討を加えまして、従来以上に採算マインドと申しますか、有利な運用ができるようなくふうをする必要がございます。そういう点で申しまして、まあ一方に、課せられた公共性という任務がございますので、できるだけ安い金利で財投対象機関に対して融資を行なうと、昨年の八月に郵便貯金が下がりました際に、資金運用部資金の預託金利も〇・三%下げまして六・二%にいたしましたが、その際に、運用のほうも六・五%を六・二%に、〇・三%下げたんでございます。で、昨年も、運用のほうは据え置きか、あるいは〇・二%程度の引き下げにとどめて六・三%程度にして、〇・一%さやをかせいだらどうかということも資金運用審議会でいろいろ議論になったのでございますが、やはり郵便貯金の利下げということで国民一般に対して負担を与えるということであれば、その分は国民にひとしく還元する必要があるんじゃないかということで、預託金利を〇・三%下げましたのと同じ幅だけ運用のほうも〇・三%下げたんでございます。そういうこともあり、それから、かたがた金融緩和ということを反映いたしまして、四十七年度赤字になったのでございますが、こういう状態が今後継続することは適当でございませんので、四十八年度はぜひ採算面で改善を加えまして、少なくとも収支均衡するような状態にしたいと、こういうふうに考えております。
  17. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうしますと、厚生年金なり国民年金なりというものは、これはもうもちろん七年以上の長期運用ということで考えておると、こういうものは今後どんどんふえてくるわけですね。そうしますと、運用部資金というのは、ますます大きくなってくる赤字要因というものをかかえていくと、一応現在の段階ではそういうふうな方向しかないと、こういうふうに言えると思うんですが、どうなんですか。
  18. 橋口收

    政府委員橋口收君) いま御説明いたしましたのは、資金運用部資金預金、それから、運用の基本的な仕組みの問題でございますが、赤字が発生いたしました主たる原因といたしましては、やはり短期運用、ことに短期証券の金利が非常に大幅に下がったと、で、現在四・一二五%でございますが、大体過去二年半ぐらいの間に一・五%下がっております。したがいまして、一・五%だけ利回りが下がりますと、かりに二兆円短期証券を持っているといたしますと、一年間で三百億の損になるわけです。最近公定歩合の引き上げが云々されておりますが、かりにここで公定歩合に何がしかの調整措置が加えられますと、当然それに関連いたしまして短期証券利回りも向上いたします。あるいは国債その他の条件の改定ということも日程にのぼることが予想されますので、そうなりますと、その面から申しまして、運用部の収支というものは、が然改善されるわけでございまして、基本的なパターンとして、六・二%でお預かりをして、六・二%で運用をすると、こういう収支構造というものは、やはり運用部資金に課せられた公共的な性格から見まして、基本的に変えるということはむずかしいんじゃないかと。ただ、現在でも全部六・二%で運用いたしておりますれば当然赤字になりますので、各種の政府関係機関の中で、収益力のある機関、あるいは経済性の強い機関につきましては、六・七%とか、あるいは債券の発行という形で資金を流しております。債券の発行であれば、大体現在でも六・八%ぐらいに回りますので、そういうまあ、高利運用と申しますか、有利運用と申しますか、そういうものをまぜて、どうやら収支均衡をとっておるのでございまして、よその世帯のことを申し上げまして恐縮なんですけれども、簡保資金のごときは、有利運用、高利運用というものを、運用部資金より、まあ何と申しますか、多用いたしております。簡保資金は、いろいろ民営保険との競争の問題等もございますし、契約者配当とか、契約者貸し付けとか、いろいろな要請もございますので、運用部資金よりは有利運用の割合を高めております。で、まあ何と申しますか、そういうことも許されるような環境にあるのでございますが、私どものほうは直接お預かりするということではなくて、間接のいわば合同運用機関でありますだけに、なかなかこちらの都合だけで操作するということも——まあ操作するということも不可能ではございませんけれども、やはり公共的な任務から見まして、おのずから制約がございますので、そういう点から申しまして、やはり基本的には金利情勢によって、非常に大きな影響を受けると。で、最も基礎的な運用の形態、あるいは預金の形態としては、あまり利差をとるということは適当でないんじゃないかと。しかし、有利運用をもっと心がけるようにという御注意もございますし、それから、資金運用審議会なんかでもそういう議論が出ておりますので、先ほどもちょっと触れましたように、四十八年度の収支改善策の一環として、そういう問題も検討いたしてまいりたいというふうに考えております。
  19. 竹田四郎

    竹田四郎君 政務次官、あなたの、提案理由のときには「有利な運用」ということばがはっきり入っていましたね。現実に、むしろ有利な運用ということば自体が、四十年からずっと見まして、もうここ、四十七年まで含めて、どうもたいした有利な運用という形にはなっていないわけです。まあ、その運用部資金の法律にもそういうふうに確かに書いてあるわけですがね。これは、そういう言い方をするというのは、むしろこれは、国民が零細な預金を政府に預けておいて、うまく運出してもらっているんだというような、法律あるいはあなたの提案理由の説明、そういう点からいくと、実体と非常にかけ離れていることを言っていると、こういう感じを私はもう率直に持つわけです。ですから、むしろ、そういうことであるならば、私はもっとその内容を変えたらどうかと思うんです。そして、国の全体の経済構造をこうしていくためだ、国民の福祉をこうしていくために公共的に運用するんだというふうなことばに本来変えるべきであって、有利な運用ということでは、全く有利な運用をしていない。提案理由の説明のことばと相反した実体が出ていると、こう言わざるを得ないのですがね。そういう点はむしろ提案理由の説明を訂正なさるのが、もう実はここへくればしかるべきである、もっと考え方を変えるべきである、こう思うのですが、あなたのを二回読ませていただきまして、大体いまのような内容というのを、こんなこまかい数字ではございませんけれども、大体そういうものを感じとって、どうもあなたの提案理由の説明おかしかったと言わざるを得ないのですがね。
  20. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) 提案理由の説明の中にもあったと思いますし、資金運用部資金法の第一条にもありますが、先生はいま運用益のほうだけ言われますが、「確実かつ有利な運用」と、「確実」のほうが一つあるわけです。そして、しかも、法律の目的の中に「公共の利益の増進に寄与」する、こういう使命を持つ資金ですから、ただ、有利だけというふうに考えてはいけないのではないか、確実であり、しかも、それが公共の利益の増進に寄与するという性格もかね合わせなければいけない、こういうふうに考えておりますし、提案理由の説明の中にも、確かに「確実かつ有利」というふうに申し上げておったと思います。
  21. 竹田四郎

    竹田四郎君 だから、その有利ということばが実際の現状の数字とはなはだしく遊離しているということですよ。だから、その有利という字は抜かしなさいと、私は言っているわけですよ。そういう事態にもかかわらず、有利ということばをあえて現段階で入れているというのはおかしいじゃないか。確実とか、公共のためのほうは私は言っていませんよ、それをはずせとは言っていませんよ、いま。有利という文字だけおかしいじゃないかと。赤字を出していて、しかも、ここ四十年から見たってたいした、全体として見れば利益は上がっていないわけですよ。それなのに有利だという一〇…〇一%の利益というのは、私は通常的にも有利とは言えないと思うのです。しかも、赤字が出ているという状態ですね。だから、そういうことばは訂正なさったほうが私はいいだろうと思うのですがね。
  22. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) 私は、やはり確実で、有利で、公共の利益を増進すると、こういう三つの性格を持つべきであって、有利でなくてもいけないわけですし、しかも、赤字とおっしゃいましたけれども、七百四十億の積立金があり、しかも、公定歩合を六回も引き下げていった、そのために短期証券のほうが四・一二五%の運用になって赤字が出ている。今度引き上げられれば、短期証券運用益ももっとふえてくるはずになると思いますし、原則的には運用部資金そのもの赤字が非常に累積することもまずないのではないか。それから、長期の確実でしかも有利という条件というように御理解いただいたらどうかと思います。
  23. 竹田四郎

    竹田四郎君 そういうことばのあやでごまかされると、国民をごまかしているとしか私言えないと思うのですよ。七百三十何億の積立金というのは、これはあなたたちがかせいだわけじゃないわけです。あくまでも原資は、国民の零細強制的な貯蓄なんですよ。だから、これがあるから赤字を出してもいいんだということには私はならぬと思うのです。ですから、そういう点では私は、資金運用部が各関係機関に貸している金利、このものが、先ほどはいろいろあると言っておりましたが、まあ、私がいただいた資料そのほかにもあるのかもしれませんけれども、実際上六・七%で貸しているというのは、北海道東北開発公庫だけですね、長期貸付金としては。債券とかなんかは別でございますけれども。
  24. 橋口收

    政府委員橋口收君) はい。
  25. 竹田四郎

    竹田四郎君 しかも、この北海道東北開発公庫のおもなものというのは、おそらく炭鉱問題が大部分の金を占めているのだろうと私は思いますけれども、そのほかは全部六・二%で貸しているわけですね。経済性のあるもの、あるいは負担力のあるもの、こういうものは私は少なくとももう少し金利を上げていいと思うんですよ。同じ六・二%で一律に貸す必要はない。たとえば、住宅だとか、あるいは社会福祉というような面、労働福祉事業団だとか、そういうようなものについては、これは私はある程度はその会計だけを見れば赤字になってもやむを得ないと思いますよ。しかしたとえば、開発銀行などを見まして六・二%ですよ。しかも、造船関係にはそのほかに、その利子分の一部というのは一般会計から補給することまでやっているわけですね。こういうふうに考えてみると、このほとんどが六・二%で貸している。こういうあり方は直していいんじゃないか。しかも、いま日本経済構造、産業構造をどうのこうのしろという世論の非常に高いときですよ。二十二兆円のこのお金というものは、私はそういうものを変えていく上でも相当程度の力になり得る金だと思うんですよ。そうしたら私は、当然この六・二%というのは何らかの形で変えるべきだと思うんですがね。この点はいかがでしょうか。
  26. 橋口收

    政府委員橋口收君) 貸し出しの相手方によって金利に差等を設けるという問題は、実は私どもかねがねから持っている問題意識でございまして、いわば悲願でございまして、できればチャンスをつかんでそういうこともやりたい。ただ冒頭にお話がございましたように、金利は長短によって差等があるのが、いわば金融常識でございますから、長いものについては高く、短いものは安く、こういう考え方もかみ合わせる必要があるんじゃないかということがかねてから議論をされておるのでございますが、融資機関で申しますと、たとえば、国鉄とか、あるいは住宅公団とか、こういう本来助成を必要とするような機関に対する融資の償還期限というものは、実は長期になっておりまして、単に長短の区分だけで長いからといって、金利を高くするというのは、公共性という性格から見まして問題がある、こういう議論もございますので、実は長短の区分によって短いものを安く、長いものを高くするということはできにくいという事情にあるのでございます。  そこで、その次の問題としては、相手方機関の性格に応じて金利に差等をつけるということはどうか。現在やっておりますのは、先ほどもちょっと触れましたように、融資の形態か、債券の引き受けの形態か、手段によりまして金利に差等をつけておりまして、大体融資でやっておりますのが全体の九割、一割は債券の引き受けという形で、いわば有利運用と申しますか、高利運用をいたしておるのでございますが、したがいまして、たとえば、道路公団、有料道路のように受益者負担金の比較的取りやすい経営の安定している道路公団につきましては、債券の引き受けという形態を多用いたしております。そこで、同じ融資という形態で、相手方によって差等をつけることができるかどうか、これは今後の検討課題でございまして、できればそうしたいなという気持ちも持っておりますが、これはやはり各機関なり、各省から端的に申しまして相当な抵抗がございます。なぜ自分のところが上がって、ほかが低いのか。いま先生おあげになりましたような、たとえば、社会福祉事業振興会に対して安くするというような点につきましては、これはおそらく議論はないと思います。しかし、いろいろ境目の機関につきまして、どっちに入れるかというような問題でなかなか抵抗も強いんじゃないか。したがいまして、先ほど来申しましたように、何としましても、四十八年度は収支、採算というものに対して従来以上に神経を使う必要がございますので、期間の長短による方法と、それから相手方機関による方法とはどういう組み合わせができるか、それは今後の問題として検討したい。ただ、いま開発銀行のお話がございましたが、開発銀行は御承知のように現在ガリオア、エロアを返済するという任務を持っておりますので、開銀に対しまして高い金利で融資をいたしますと、ガリオアの財源が不足する、こういう問題がございますので、収益力のあるという点で申しますれば、開発銀行が最大の収益機関でございますから、現在百億くらいの納付金をいたしておりますので、理論上は金利を上げるということは可能でございますが、実は開銀の収益金で、ガリオア、エロアの返済をする、こういうたてまえにいたしておりますので、そういう点で現在六・二%で融資をいたしておりまして、これはガリオア、エロア返済につきまして今後別途御審議をわずらわす法案を提出いたしておりますが、そういう問題がひとつの、何と申しますか、制約と申しますか、阻害要因になっている。したがって、収益力だけに着目してやるということもいろいろな支障もございますし、北東公庫が六・七%になっておりますのは、かつて政府保証債を引き受けた、そういう経過から申しまして、同時にまた、収益力があるということで六・七%にいたしておりますが、そういう問題一切を含めまして、近く十分検討いたしまして成案を得たい。何らかの方法で収益改善につながるような措置を検討いたしたいというふうに考えております。
  27. 竹田四郎

    竹田四郎君 近く公定歩合の引き上げがあるだろう、こういうふうにいわれているわけですが、公定歩合の引き上げが幾らになるか、それはわかりませんけれども、公定歩合の引き上げがあった場合には、いまずっと並べてあります六・二%の金利、これはどういうふうにされますか。
  28. 橋口收

    政府委員橋口收君) 仮定の問題でございますが、公定歩合の引き上げに伴って、一般預金金利がどうなるか、預金金利が変わりますれば、おそらく郵便貯金の金利も変わるということになりますので、技術的な問題はいろいろ郵政省と詰める必要がございますが、いずれにしましても、郵便貯金特別会計の負担はそれだけふえますので、郵政省側としては預託金利を上げてほしいということを当然いって来られると思いますし、同時に預託金利を上げますと、運用部運用金利のほうにも手をつける必要が生じてまいりますので、公定歩合の引き上げを契機として、長短金利全体の見直し作業というものが必要になってまいりますので、とりあえず、昨年の夏に措置を講じました以前の姿に戻るということであれば、端的に申しまして六・二%の預託金利が、六・五になり、運用のほうも六・五になる、こういうことであろうかと思います。そこが、まあ定期預金の金利がどういうふうに変わるか、それに伴って郵貯金利がどうなるかということで、最終的に態度をきめなければならぬというふうに考えておりますが、まあ、そういう状態になりました場合には、やはり常識的な線で問題を解決するのが適当ではないかというふうに考えております。
  29. 竹田四郎

    竹田四郎君 いずれにしましても、この六・二%というものは、少なくともこのように一律の形でやるということは全く好ましくない。いろいろそのおのおのの利害関係者から、自分のところを引き上げてもらいたくないという希望というものは、これは常にあることだろうと思うのです。これは政務次官、公定歩合が動かされるこういう機会にこそ、こうしたものを一律な利率にしないで、それこそ国民が、もうかっているところに貸してやるのには利率を高くするとか、いまの長期短期も私はあると思います。   〔理事土屋義彦君退席、委員長着席〕 そうした国民の利害関係者が納得するのじゃなくて、原資は国民の大多数のものなんですよ。特定な金持ちが出しているわけじゃないのですよ。そういう点でありますれば、それは利害関係人は安くしてくれというのは、これは当然でありましょうけれども、しかも法律に「有利に」ということばが入っているように、もう少しその辺は、また「公共」ということばが入っているように、やはり日本経済自体を転換さしていく大きなてこにもなるわけでありますから、この辺はどうしても、そういう機会があるならば、このときにこそそうした問題を処理していかないと、そのままいけば、次の何かそういう機会でなければ、また機会がなくなってしまうということでありますから、公定歩合の引き上げというのは、新聞報道でありますけれども、まあ、その他の条件を見ても、近いというふうに思われているわけでありますから、この機会に抜本的にこういうものを直すべきだと思うんですけれども、政務次官どうですか。
  30. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) 一番しまいの使途別分類表で見ますと、(1)−(6)分類にあたるようなものは、国民生活にかかわる問題ですから、できるだけ安くしたいというふうに考えております。そのあとの基幹産業とか、貿易経済協力、そういう面について先生のおっしゃるような、そういう考え方も確かにうなづけるわけでありますが、事実問題としてはなかなかむずかしい問題もあろうかと思います。先生のおっしゃる意味はよくわかりますので、そういう努力はしてもらいたいと思うんですが、非常にむずかしい問題だと思います。
  31. 竹田四郎

    竹田四郎君 むずかしい問題をやっぱりここで切り開いていくということなんでしょう。大体財投というのは、もともと国会の審議なんかにしなかったのを、あえて審議にすると踏み切ったのですよ。これだけは私は一つの進歩だと思いますよ。だから、そういうふうになってきているんですから、いつまでも前のものを踏襲しているなどというものは、これは私はよくないことだと思うんですよ。世の中がこれだけ変わってきているのに、相変わらず昔と同じようなやり方を踏襲しているなどということは、それこそ国民から大きな批判を招く点だと思うんですよ。だから、すぐにひとつ、そういう抜本的な対策を、やっぱりこういう機会でないとできないと思うんです。行なうべきだと思うんです。やる意思はいまと同じようにむずかしいからやれませんか。
  32. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) 先ほど申し上げましたように、先生の御理解を得るような部面に使うものについては、これはそう有利を強く主張する必要はないわけですが、確かに一部そういうのもありますから、十分検討をいたしたいと思いますが、先生の御期待に沿うような成果があがるかどうかについてははっきりと申し上げるほどの自信はございません。
  33. 竹田四郎

    竹田四郎君 これだけ議論していても時間がなくなってしまいますから、これはひとつそういうふうな方向にやっぱり発想を転換していかなければ私はしようがないと思うんですよ。こんなばかなことはないと思うんですよ。私も、かなり段階的に違っているんだろうと実は思ったのですよ。しかし、資料をいただいて驚いたわけなんです。だから、どうしてもこれをやってもらわなくちゃいかぬと思うんですよ。私、全部を一律に上げろと言っているわけじゃないんですよ。だから、たとえば、福祉関係というのは、これは金利を安くしいていいと思う。その金利の安くした分は、どこかから補わなくちゃいかぬわけです。それは負担力のあるところから補わさせるということはあたりまえのことだと思うんです。これはひとつお答えは要りませんから、やっていただきたいと、こう思うんです。  それから、きのうのベニヤ合板の点に移りたいと思うんですけれども、きのう課長さんがお見えになりまして調査をおやりになったと、しかし、需給関係が非常にタイトだというお話だったんですが、しかし、需給関係がタイトだというんだけれども、それがはたして全部が実需なのか、実需が強くて仮需要というものがゼロなのか、実需と仮需要というものがかなり両方ともあるのかどうなのか、この辺はついに明らかにしていただくことができなかったわけです。需給がタイトだというんですけれども、その内容をひとつきょうはお知らせいただきたい。
  34. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 最近、昨年の大体十二月ごろでございましょうか、合板が非常に需要がふえてまいりました。というのは、木材の価格が上がりましたのはもっと前でございます。従来は屋根の下とか、あるいは畳の下に板を使っておった。そういったものが高くなったものだから、合板が急に使われ出したということもございます。非常に従来と合板の使用形態が違ってまいりして、そのための需要も相当ふえたということが大きな原因であるわけでございます。そこで、その合板の需要の広がり、それから実際の今度は需要の量、そのほかに建築着工量の伸びが相当昨年に比べますとふえたというふうな、大体二つの原因から合板が非常にふえておりまして、これを何とかして供給の面でこたえていくというために、生産量ないしは生産工場の生産量を上げるように努力を要請いたしましたし、また、原料になりますところのラワン材、あるいはまた合板につきましても、係官を韓国あるいは台湾等に派遣いたしまして、輸入量をふやすということで対処してまいったわけでございます。最近コンクリートワクなんかにつきまして、若干値下がりをいたしておりますけれども、まだ全体としては、ほかの木材の値下がり等おくれまして、低迷の状態ではございますけれども、そういう状況でございます。
  35. 竹田四郎

    竹田四郎君 長官ね、私の聞いたことに答えてくださいよ。そういうお話はきのう聞いたんですから。ここで時間をかけて再びお聞きする必要はないわけです。だから、いまの需給関係がタイトだと、需要が非常に大きいというのですけれども、その需要というのは実需であるのか、仮需要も相当入っているのか、あなたのほうは調査をいままでされたというから、その辺は一体どっちなんだと、どのくらいの割合に実需と仮需要とがなっているのか、お調べになったというのですから、その辺はおわかりになるはずなんです。
  36. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 私、実は不勉強で、実需、仮需という内容が正確にわかりかねますんですけれども……。その辺につきましては正確にはなかなか困難でございますけれども、昨年の十二月、ことしの一月に入りましてから、東京、それから静岡、それから名古屋等につきまして、合板工場につきましても調査いたしました。その結果を簡単に申し上げますと……。
  37. 竹田四郎

    竹田四郎君 こちらの質問よりはずれたことは聞きたくないんだから。
  38. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 一つは商社におきますところの原木の入荷量、それから、出荷量あるいは在庫量というものを調査いたしましたところ、商社におきます原木、これはやはり……。
  39. 竹田四郎

    竹田四郎君 そんなこと聞いちゃいないんだよ。
  40. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 失礼いたしました。  実需が確かにふえているというふうに、二社あるいは三社で調べた結果について申し上げます。
  41. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 長官、質問に対して的確な答弁をしてください。実需と仮需要の話ですからね。
  42. 福田省一

    政府委員(福田省一君) それでは、すぐ調査いたしまして検討いたします。
  43. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 資料持ってないんならば、そのようにすぐ調査して答弁をいたします、とか……。
  44. 福田省一

    政府委員(福田省一君) はい、失礼いたしました。
  45. 竹田四郎

    竹田四郎君 きのうもそういう話が出て、わからないということで、課長さんのほうからさっそく早急に調査をなさると、こういうお答えを私はいただいているんです。それはいつまでにやられるのですか。きのう、その点は私は聞いて、はっきりいつまでにその調査をするんだということを明確にしてくれということは、きのう要求してありますけれども、いつまでにそういう調査をやられるのですか。
  46. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 十二月、一月、調査しましたいまの結果につきまして、もう一度四月中には調査いたしたいと、かように思っております。実は失礼いたしましたけれども、在庫量の関係についての調査というふうに私承っておったものですから、たいへん失礼いたしました。四月中にはただいま御指摘の点につきまして調査いたします。
  47. 竹田四郎

    竹田四郎君 まあ、私は、きのうの議論は、仮需要ですね、いわゆる商社の買いだめとか、そういうものがたくさんあるんじゃないかということでお聞きしているわけですよ。だから、その点は長官が悪いのか、課長さんが悪いのか知らないけれども、どうもきょう長官がこちらにどういうことでおいでいただくということは、きのうの質問内容でおわかりだと思うのですよ。ところが、全然打ち合わせしないでここへ来られたんじゃ実は困るんですがね。それからもう一つ、きのう課長さんは、とにかく一枚三百円の線を守っていきたい、こういう御答弁だったんですが、それは必ず長官はそういうふうにおやりになりますか。
  48. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 非常にむずかしい問題でございまして、たいへんそういうことを課長が申し上げたとすれば、私からおわび申し上げておきます。できるだけ私たちは、その合板の価格というものを下げて皆さんに御迷惑をかけないように持っていきたいという要請を、商社等呼びまして再三私から申しております。でも三百円ということは、まあ統制経済ではございませんので、私から命令するとか、そういうことをもし申し上げたとすれば、たいへん失礼いたしました。できるだけその線は、下げるというふうに努力してまいりたい、かように思っております。
  49. 竹田四郎

    竹田四郎君 ですから、どのくらいの線までとりあえず下げるんですか。そういう行政指導をしていくのか、私は、そういう具体的な下げるような努力をしていきたいと思うとか、まあ、早急に——いまは四月中に調査すると言うから、その点はいいですけれども、早急に調査をするというような、そういうことばというのは答弁になっていないんですよ。具体的に農林省はどの線まで下下げられるのか、そういう行政指導をするんだというぐらいしてもらわなければ、三倍近く上がっているわけですよ。いま一部のものはちょっと下がったという話ですけれども、家具メーカーにおいては仕事が縮小している段階ですよ、いま。ですから、あんまりのんびりしたことを言われたんじゃこれは困るわけです。だから私は、課長さんは三百円という数字を出されたということは勇気があると思うのですよ、少なくとも、その線まで持っていきたいということなんですから。そういう目標を立てなければ、これはどうにもしようがないわけでしょう。林野庁の長官、その辺を私もう少ししっかりして勇気を持ってやってもらわなければ困ると思うのですよ。ただ単に、下げさせるように努力いたしますなんていうことばはむだですよ、答弁になっていない。その辺はっきりしてください。
  50. 福田省一

    政府委員(福田省一君) ただいまそういうおしかりを受けまして、たいへん私も恐縮に思いますけれども、行政指導としましては、注意しますと同時に、合板のメーカーと、それから建具等の需要者とも直接取引させる等の措置をとっていきます。なお、どれくらいが適正かということにつきましては、まあ三百円と一口に申し上げることはなかなかたいへんなむずかしい問題でございますので、私一存できめるということよりは、やはり関係されるそれぞれの権威者の御意見を聞きたいと思いまして、一月から実は木材価格の安定の検討会をお願いしているわけでございます。その中には、メーカーあるいは商社はもちろん、あるいは建設の関係の代表の人であるとか、直接の消費者という十七人のメンバーで検討を急いでおりまして、早急にそういった、合板のみならず製材あるいは木材全般につきまして、どの辺の価格にすべきであるかということの検討をいただいた上で、私の意思もはっきりさせたい、かように思っております。
  51. 竹田四郎

    竹田四郎君 特に私は、合板関係というのはたいへん問題の多い仕組みになっていると思うのです。きのうも、メーカーが三百ぐらいあると、したがって輸入量が、これがふえれば持ちこたえられないから下がってくるというお話だったんですがね、はたして私は、合板メーカーというものが、自分でそういう相場を立ててやっていけるというような、そういうような仕組みじゃないと思うのですよ。おそらくそのまわりには、商社が取り巻いている。こういうのが実態だと思うのですよ。十二月、一月と、もうたいへんな数量を輸入しているわけですよ。その数カ月前と比べますと六倍ぐらい、一年前に比べますれば十倍ぐらいのものを輸入しているわけですよ。それ以上下がってこない。何か問題があるわけです。公取関係の人お見えになっていますか、いませんか……。公取のほうでは、そういうことはお調べになったことがありますか、調べたことがないわけですか、どこからも話がないから。
  52. 吉田文剛

    政府委員(吉田文剛君) お答え申し上げます。  合板については、特に調べたことはございません。ただ、買い占めの問題に関連いたしまして、まあ独禁法から申しますと、商社等が、それぞれ自分の判断とリスクで買い占め、売り惜しみをするというような投機的な行為が、直ちに競争制限的な行為になるとは考えられませんけれども、共同行為、つまり協定してそういうことをやるということになれば、これは独禁法違反ということになると思います。しかし、そういう場合はきわめてまれではなかろうかと思いますけれども、現在数品目についてその実情を調査中でございます。つまり、そういう違反行為の疑いがあるかどうか、手がかりを得るための調査でございまして、これは、独禁法四十条の一般調査権を根拠として調査はいたしております。ただ合板については、まだ調査はしておりません。
  53. 竹田四郎

    竹田四郎君 時間がありませんからもうやめますけれども、これは林野庁もその辺少し手を入れて、これほんとうにその税率を引き下げるというのを反対したのは林野庁だそうですわな。反対しておいて、今度は輸入はたくさんになったら、それがもうべらぼうな、膨大な価格になっているなんていうことは信じられないのですよ。私は何かあると思うのですよ。だから、これはひとつ林野庁も、公取のほうも、もっと私は調べてもらわなくちゃいかぬと思うのですよ。こういうことが許されているのじゃ、国民は関税の税率を安くしてもらいたいというのを、林野庁あたりが反対して、高いところにしておいて、そうして高いものを供給しているということじゃ、こんなばかげたことは私はないと思うのですよ。この点ほんとうに林野庁もいいかげんなことではなしに、ぴしっと調べて報告してほしいと思う。これは公取も同じです。  以上で私は終わります。
  54. 野々山一三

    野々山一三君 林野庁長官、あなたきのう竹田君の質問に私が関連をして木材の問題で質問をした内容について御存じですか。
  55. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 林産課長が、御質問にお答えした内容につきましては聞いております。
  56. 野々山一三

    野々山一三君 メーカーが中小企業なんで、金もなし、手持ちも少ない、そこへ需要がふえた、だから、値が上がる、こういうのが課長の答弁なんですね。そこで、いまのあなたのちょっと触れられた、商社が買い占めをしているということについて、どうなのだということを具体的に質問したわけです。それでかくかくしかじか調査をしなさいということを言ったのです。答えてください。どういうふうに、具体的に言ってください。もしあなたが答えられなかったら、この委員会をとめてもいいから、議事録をすぐ持ってきて読み上げてください。あなたは一体何という地位にあるんですか。それに答えてください。  それから、なぜそういうことを言うか。私は不勉強ですけれどもと、何だ、開口一番。あなたは官職を言いなさい。自分の行政上の責任を明らかにいたしなさい。不勉強だったら、長官なんという地位があるんですから、公務員法にいうところの職務上の責任を果たすという、その義務を果たしているかどうか、そのことについてはっきり答えなさい。
  57. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 私、昨年から林野庁長官を拝命している者でございますが、たいへん答弁、失礼いたしまして申しわけございません。  林産課長から話の内容を聞きまして、私も御指摘の点につきましてはできるだけ調査をすると、しかも、四月中に調査をいたしたいと、ただいまお答え申し上げたわけでございます。  実は、この合板の問題につきましては、原木の輸入をいたしますところの商社と、それから、できました合板を扱いますところの商社と、これは重なっている点もございますけれども、いろいろ商社にも種類がございまして、数も多いわけでございますが、その商社が適正な合板についての価格を形成するように再三要望もいたしたところでございます。また、昨年の十二月、東京、名古屋、静岡等につきましても私たちは調査いたさせたのでございますが、その限りにおきましては、なおまた、全都道府県につきましても、ことしの一月に入りましてから調査を依頼したわけでございます。その結果によりましては、調査の範囲内ではそういう買いだめのような事実はないという報告を受けておるのでございます。なお追跡調査いたしまして、四月中にその結論を得たい、かように思っておるところでございます。
  58. 野々山一三

    野々山一三君 私がいま幾つ質問をしたのか、君は耳があるの。政務次官、私の質問したことに正確に答えているかどうか。あなた政府を代表してここにおすわりですから、正確に答えたかどうか、答弁しなさい。
  59. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) ただいまの野々山議員の質問に対して、長官必ずしも正確に答えていないと思います。
  60. 野々山一三

    野々山一三君 こういう状態でいかなる審議をしようとしても、私どもきょうかりにあした関税定率を上げようということでいますけれどもね、ものを言わぬほうが得だという態度じゃないですか。私は、こういうことでは法律を上げるわけにはいきませんね。審議なんという値打ちはないですよ、非常にわかりやすい言い方をしますと。長官、先ほどの質問に答えながら、いまつけ加えたことについて、あなたの見解を伺いたい。
  61. 福田省一

    政府委員(福田省一君) たいへん失礼いたしております。昨日林産課長に御質問がございまして、林産課長からお答えした内容について、私からもつけ加えて落ちました点を御答弁申し上げたいと思います。
  62. 野々山一三

    野々山一三君 そんなことを言っているんじゃない。その前に、聞いたことが何だったのか、順序よく答えなさいよ、順序よく。
  63. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 各商社別の生産地別のラワン材、ラワン原木買い占めの量がどれくらいあるかという御質問でございますが、国内におきましては、すでに木材の在庫状況等、流通の現況調査を実施したのでございますが、その間におきましては、買い占め等による極端な流通の停滞は認められなかったのでございます。また海外において、今回の合板価格の高騰に結びつくような不当な買い占めなどの事実があるということは聞いていないのでございますが、現在、現地の実情調査のため、係官を三月派遣しておるところでございます。  それから、合板の価格はどのような手段で、いつごろ、どのくらいの価格で安定させようとしておるかというふうな御質問の問題でございますが、合板価格を鎮静させるために、政府といたしましては、需要の増大に対応しまして供給量の増大をはかるように、業界に対しまして生産量の増加を要請するとともに、主要な対日輸出国でありますところの韓国と台湾からの輸入の増大につとめることによりまして要請を行なったところでございます。その成果も漸次あらわれつつございまして、合板の原木も本年に入って順調に入荷していることから、今後ともこの傾向が続くとすれば、すでに針葉樹製材が最高時の価格から二五ないし三〇%、品目によってはそれ以上に下落していることから見まして、合板価格も下がってまいるというふうに一応判断しているものでございます。
  64. 野々山一三

    野々山一三君 あなたまだ、答えたと、それで私の質問に答えたということになるのですか。ほかに答弁漏れはないのですか。私の言っていることがわからぬのですか。つまり聞いたことがわからぬのですか。あらためて政務次官、長官に一ぺん、私が聞いたことあなた伝えてください。
  65. 福田省一

    政府委員(福田省一君) おしかりを受けました点は、私何をやっているかということにつきましては、御回答申し上げたわけでございますが、完全に職務を果たしているのかどうかという御質問も受けまして、それにつきましては私も最善を日くしてこの問題の解決に努力してまいりたいというふうに、お答え申し上げたいと思います。
  66. 野々山一三

    野々山一三君 あなたはまだ私の質問に答えていませんよ。公務員法上にいう職務遂行の義務というものを果たしているのかどうかということにまず触れているでしょう。私は至りませんけれども十分に努力をいたしますとは、何も法律に書いていることを私は聞いているわけじゃない。非常に出口の話なんだけれども、根本の問題ですよ。答えてないでしょう。これ時間がかかるだけだから、あなたみたいな人呼んでいるんじゃだめなんだな。これだから、竹田君の言うように、調査、調査、調査という話じゃ意味がないということになるのでしょう。私は、あなたのところの課長さんにきのうも言ったのだけれども、たとえば、日本国内へ上がってきたものをどうこう、あるいは輸入を促進いたします、増加をいたしますと言ってみたって、私自身がきのうはっきり言いましたけれども、人を便って、あなたのほうの国の指摘をされるところに現に人間をやって、港に木材が積んであって、それを買っている商社がどこであってということまで全部調べてきているのです。それが日本へ来ない。値が上がる。当然供給が不足だから、需要がふえるから値が上がるということになっている。だから、そういうことについてこまかく調査をしなさいということを前提にして私は聞いておるわけですよ。その話は全然きょう私は繰り返すのはいやだからね。聞かなくたってあした答えなさいということにしてある。四月から調査するという話だけれども、値が上がっちゃってから調査したって、くその足しにもならぬというお気持ちはないでしょうか、たいへんずばりな言い方で恐縮なんですけれどもね。  そこで私は、木材全体の政策をどうするかという政策あるいは計画、そういうものを含めて対処しなければいけないでしょうと。そこで、それ以前の問題として、買い占められていると総称的に言いましょう。そういう現物を私どもはちゃんと調べてきてやっているんです。申し上げているんですよ。そして、そのメーカーだけが力が弱いからなかなか材料が持ち得ないんで、それが需要が増してくるに従って値が上がるということではだめなんだから、そこのもとに及んでまで調査をするということを含めて、私は、調査計画なり方針なりを示しなさいということをきのう言って、きょうに至っているんです。それなのに、あなたのお答えはちっとも答えられていない。これはきのうの話からきょうに続いている話ですよ。そこで、たいへんいやな言い方をしたけれども、あなた、私は努力いたしますと、これからの話ばっかり、らしく言ってみたところで信用できないですね、というふうに言うのは間違いでしょうか。そこんところをよくもう一回つけ加えたから、頭に置いて、私の質問にまだ答えていない部分についてもっと率直に答えなさいよ。あらためて伺います。
  67. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 先ほど申し上げましたのは、国内の問題でございまして、御指摘の外地の調査の問題につきましては、係官も実はインドネシア、フィリピン、マレーシアに派遣しております。ただ、従来は情報はすべて商社を通してだけ持っています。私は、その点で不十分でございますので、直接係官も派遣したわけでございますけれども、なかなか現地、特に南方材だけにつきましても、輸入量の大半を占めているものでございますから、この実態を調査するということはなかなかたいへんではございますけれども、一応、先般係官を一名派遣して調査しております。できるだけ直接向こうの政府とも折衝し、その状況を把握するとともに、実態の把握につとめたいと思っておるわけでございます。なお、南方からの主要輸入国の対象としてはインドネシアでございますので、米材、ソ連材を含めまして政府間でその見通し等についての交渉をいたしたいと思っておりますが、現時点では係官を一名派遣してございます。
  68. 野々山一三

    野々山一三君 関連質問で長くなってあれですけれども、これからやりますというのはあなたのお答えですか。調査をやりますというのは、結論的にいえばそういうことですか。
  69. 福田省一

    政府委員(福田省一君) まあ、早急に実情をできるだけ早くしたいということで一名出しておりますけれども、全体的な調査なり外材対策につきましては、今後国内材含めて外材につきましても調査いたしたいと、かように思っております。現時点ではとりあえず一名派遣して実情を調査しているところでございます。
  70. 野々山一三

    野々山一三君 買い占め問題で一例を申し上げますけれども、この間、私は、モチ米の買い占めの問題について若干の質問をいたしました。その結果、きのう、おととい、さきおとといあたり新聞でも出ているように、現にこれだけは確かにあったと、そうしてこれは告発しました。この商社ですということは、ここでは言いませんけれども、ずらずらとわずか一週間から二週間くらいの間に、その調査の結果が市民の前に、国民の前にあらわれているわけですよ。そのことをあなたは御存じないでしょうか、あなたは農林省とは関係のないお役所でしょうか、と言いたくなるんですね。そこで、私は一言に申し上げるけれども、たとえば、モチ米でああいうふうに調査をされた一たとえば、と言いましょう、何回も繰り返すのはいやだからですよ。そういうような具体的な調査方針を示しなさいよ。そうして、その結果は、少なくともこんなものは、私に言わせると二週間でちゃんとわかります。あなたのほうの役所が何人かいらっしゃるうちで、一人で調査しているというけれども、わしなんか一人だよ。一人でもちゃんと現物の話ができますよ。もし必要だったら、これ幾らでもお見せします。だから、あなたが長官としてそういう十分な責任を果たしている仕事をやっているかと言いたくなるわけですね。おわかりですか、私の言っていることが。そういう意味で、あらためて先ほどのモチ米の例のごとき調査方針というものを、ここで明らかにしてもらいたい。そしていつまでにやりますと、その結果をいつまでに報告します、というようにならなければ、竹田君の心配される木材、合板の問題だって解決しない、そういうふうに考えるのは無理でしょうか。あなたのもう一ぺんあらためての見解を伺いますよ。よそでやっているんだから。同じあなたのところの関係の農林省でわずか二週間くらいでばたばたとやった、あれだけで十分ではないけれども、やっているんですよ。あの例を引用してみればすぐわかる。あらためて伺います。
  71. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 国内材、外材を含めまして、早急に調査をいたしまして、先ほどは四月中にと国内材の問題を申し上げましたけれども、外材の問題を含めて調査完了して御報告申し上げたいと思います。ただ、おことばを返すようでございますけれども、実はあのラワン材というのは、いま雨季でございまして二カ月か三カ月しかもたぬはずのものでございます。非常に腐りやすいという問題もございますから、私は、おことばを返すようでありますけれども、そんな大きな買い占めはないんじゃないかと思うのでありますが、あるいは間違っているかもしれませんので、そういった点を含めまして速急に調査して、四月中に御報告申し上げるように準備いたしたい、かように思っております。
  72. 野々山一三

    野々山一三君 あなたがことばを返すから、私も返しますよ。私は、何もラワン材ということを言っているわけじゃないですよ。ブナだとか、そういうものを一ぱい私のほうは調べていますよ。あなた方の態度というのは、私は文句を言うようで申しわけないが、何か都合のいいほうの、腐るようなラワンのほうに話を持っていく。私の調べているのは、全部違うものをも含めて調べていますから、それを対象にして私は質問をしているわけです。そういうことばで返されるんだったら現物でいきましょうか、私と一緒に。ぱっぱっぱっとわかりますよ、ということをあなたもう一回よく考えなさいよ。そうしていまの答弁を訂正しなさいよ。で、いつまでに、私は、たとえば、少なくとも三週間なら三週間以内に結果を調べて報告いたしますというふうにおっしゃる気持ちはないかということを申し上げるんです。あらためて聞きます。
  73. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 御指摘の点、よくわかりました。たいへん申しわけないと思います。至急、調査方法を打ち合わせまして、先ほど申し上げた四月中には完了するようにしたいと思います。
  74. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 財投と関税関係について質問をしてまいりたいと思いますが、まず、事務的な面と、今後の政策等の問題について理財局長に三点ほど質問をしてまいりたいと思いますが、その第一点は、この際、いろいろと資料作成等のいわば審議の便宜供与等についてのいろいろなお話があったんですが、そのときにも若干出ましたけれども、整理をして三点ほど伺っておきたいと思うのですが、その第一は、四十八年度財政投融資計画原資による区分、これの資金運用部資金、いわゆる新法の運用に基づく原資の内訳額がずっとあらわされておりますが、この中に、公募債借入金ですね、これが予算総則の中で従来こまかく金額がきめられておる。しかし、地方債については、何らそういう規制措置がないんではないか、これはどうなっているか、その点がまず第一であります。  それからもう一つは、政府保証債、あるいは政府保証借入金等がございますが、これの財投の対象、これは今後どうなっていくのか、対象に入るのか入らないのか、その点が一つ。  それからもう一つは、「その他」の一兆六千百五十九億、これはこの前私が局長に質問をいたしまして、回収金あるいは決算剰余金等となったわけですが、次回の年度計画の中には、そういう項目を明確に起こして、予算説明の中に掲記をされるのか、その三点について、まず、質問をいたします。
  75. 橋口收

    政府委員橋口收君) 第一点は、地方債の取り扱いでございますが、なかんずく、公募地方債はどうなっているかということでございますが、これは御承知のように、地方団体の発行する債券でございまして、地方団体の債務になるのでございますが、四十八年度から財政投融資計画の様式を変更いたしまして、実は、これは予算の説明の一二二ページ以下に様式の変更に関する説明書きがございますが、これの一一四ページに、その取り扱いについての説明をいたしております。で、四十七年度までは、いま先生がおっしゃいました「公募債借入金等」という欄がございましたのを、「政府保証債・政府保証借入金」に改めたのでございます。で、これは、この公募債借入金の中に、従来は公募地方債、それから住宅公団の政府保証のない借入金というものを含めまして、公募債借入金という欄にいたしておりましたが、これは地方債の公募につきまして、かつては起債懇談会というような制度を設けて、政府が強力にあっせんした時代のなごりでございまして、現在は公募地方債の発行団体もふえ、公募地方債につきましては、当該地方団体と引き受けシ団との間で話し合いで成立をいたしておりますので、政府の関与する資金と申しますか、政府のあっせんする資金という範囲にはもはや入らないのではないか。それから、住宅公団の政府保証のない借入金も、これは他の国鉄の縁故債などと同じように、住宅公団がいわば実力で生命保険、信託会社等から借り入れをいたしておりまして、従来は政府があっせんをいたしておりましたが、いまやその必要がないというふうに性格が変わってまいりましたので、今回は政府がはっきり保証するとか、あるいは政府が管理する資金、そういうものについて、まあいわば、何と申しますか、財投計画の純化をはかる、そういう見地から公募地方債を除外いたしました。これは地方団体の欄で申しますと、自己資金の中に入ってくる計算でございます。  それから政府保証債でございますが、これは一般会計の予算総則で政府が当該機関それぞれにつきまして、どこまで政府保証をお許しいただきたいということを国会に御審査をわずらわしまして、それについて御承認をいただきました範囲で政府が保証行為をするということで、これは財投計画の中に入っております。  それから第三点は、「その他」の問題でございますが、これは御承知のように、昨年までは郵便貯金と厚年、国年の三種類だけ、おもなものということで資金運用部資金の内訳項目として掲記をいたしておりましたが、昨年国会の論議の際、この三つを足しても資金運用部資金の合計額には達しない、したがって、はっきり「その他」という欄を設けるべきであるということを、衆議院の予算委員会でもって御指摘いただきまして、今年度から「その他」という欄を設けたのでございますが、さらに、この「その他」が相当ふえてきておりますので、この内訳を示せという御注意もございまして、これは資料なり口頭で御説明いたしておりますが、来年以降の問題といたしまして、「その他」欄の内容につきましても、さらに説明なり解明なりについて努力、くふうをいたしたいというふうに考えております。ただ、これはいずれも資金運用部資金というものの中に入るものでございまして、性格的には合同運用、合同管理ということでございますので、いわばその内訳項目である、その内訳項目の中でも、さらに「その他」の内容につきましては、十分御理解いただけるような表現上なり、あるいは表示上のくふうはいたしてみたいというふうに考えております。
  76. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 関連。  そうすると、公募債借入金と地方債については、これから財投計画からは全然はずれちゃうのだ、それじゃ、地方債は各自治体がかってにやればいい、地方財政計画との関係は政府が一応チェックするわけでしょう、その点はどういうことになるのですか。いま話を聞いておると、われわれは公募債借入金の中に地方債は入るという理解をしておったのです。今度はこれを抜き出して出した。地方債というものは、財投計画資金の中から全然無関係、全然ないというのが。その辺のところ、ちょっといまの答弁を聞いていると、全然はずれるような気がする。
  77. 橋口收

    政府委員橋口收君) いまお尋ねのございましたのは、地方債全体の問題でございますが、これは財投計画にも示してございますように、四十八年度で申しますと、地方団体の発行する債券は一応の計画といたしまして、いまお話がございました地方財政計画との関連で申しますと、二兆二千五百三十億でございます。そのうち資金運用部資金融資をいたしますのが九千九百三十億、簡保資金融資いたしますのは二千六百七十億ということでございまして、この合計が一兆二千六百倍ということでございます。これは財投計画に入っております。財投計画からはずれますのは、市場公募地方債でございまして、これは発行団体ももな府県とか、あるいは政令指定都市に限定されておりまして、四十七年度までは八団体でございましたが、四十八年度からは十八団体にふやす。これは先ほども申し上げたように、いまや地方団体は、それぞれ起債事務、発行にも習熟をいたしてまいっておりますし、それぞれ公募地方債につきましては、引き受けシ団というものが形成されて、いわば自己努力で発行いたしておりますので、政府があっせんしたり介入をしたりするという性格のものではございませんので、まあ、金額的に申しましても四十七年度は八百億、四十八年度が千二百億程度のものでございます。大宗を占めますのがやはり政府資金でございまして、政府資金の一兆二千六百億は従来どおり財投計画に計上いたしております。
  78. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 「その他」のところで今度あがってくるのは回収金という項目が出てくるのか、「その他」の中で。「その他」という項目がないと思うから、回収金という項目が出てくる。あるいはその決算余剰金というようなかっこうで預託されると、これはなかなか容易なことじゃないと思うのですが、しかし、実際に船員保険だとか、労災だとか、それから失保なら失保というような項目でこのくらい食うだろうという予想であがってくるというふうに理解していいものなのか、「その他」という項目じゃあがりようがないのだから、どういう形式になるのか。そういうものが今度のいわゆる法律できまるところの郵貯なり簡保とは全然別のものですね、別のものなんです。ですから、そういうものがこの法律に基づかずに、それがこう財投計画の中につなげて出してこられるのか、法律事項じゃないのだからという形にはずされちまえば、たいへんなことになると思うのだが、そこら辺の調整を、どういう解釈でこれを入れてこようとされるのか、これは法的根拠はないわけだと思うのですが、そこら辺の、片方じゃ剰余金は資金運用部資金に回してやれという、そちらのほうのことはあるけれども、財投計画そのものは今度の法律案にはないわけですから、そこら辺のところのかみ合いがちょっとわかりかねるから、ちょっと念のためにお尋ねしておきたいと思います。
  79. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 ついでに、いま局長から地方債を確かに運用上ははずす場合もあり得る、そういうことはケース・バイ・ケースで、私はいろいろ出てくるだろうと思うんです。しかし、いまのように原資のここでいう四十八年度財政投融資計画からくるそういうものから一切政府保証債、政府保証借入金、それから、いま答弁のように、全体はずすということになれば、どうも私はわからないのは、運用法の第七条との関係ですね。一つは、国債でしょう。二つは、国に対する貸付、三、四、五、六、七、八と、こうありますが、具体的に列挙すると国債とか地方債、あるいは政府関係機関の債券及び貸し付け、あるいは銀行、農林中央金庫、商工組合中央金庫、それから電源開発株式会社の発行する社債、こういうものになっていくわけでしょう、具体的には。そういうものを常時はずすということであれば、これは七条の関連でどういうことになるのですか。
  80. 橋口收

    政府委員橋口收君) 最初に、成瀬先生の御質問にお答え申し上げたいと思いますが、財投計画は、御承知のように、毎年毎年どういうところにどういう投資をするかということでございまして、その投資をする分野につきましては、それ自体の持つ資源配分的な機能と申しますか、財政的資金の配分という国権の最高機関に御審議をわずらわすことが適当なようなものにつきまして、今回法律によりまして、機関ごとに国会に提出をして、御審議をいただくと、こういうことになったのでございまして、いま問題になっておりますのは、そういう投資をやる財源と申しますか、原資と申しますか、それがどういうふうに形成されるかということでございまして、その原資は大きく分けますと産投会計、運用部資金、簡保資金、政府保証債でございますが、特に大宗を占める資金運用部資金の原資の内訳としまして、新規に純増と申しますか、新規に伸びる、新たにふえる資金としては、郵便貯金と厚年、国年の資金受け入れというものをおもなものとして特に掲記をいたしておりますが、そのほかにも、いまの御質問の中にございましたように、船保とか労災とかいろいろな資金がふえてまいります。それから、過去に貸したものの回収金も生じてまいります。ただ、これは総資産の増減要因ではございませんで、従来の債権が現金に変わったものでございますから、前々回もお答え申し上げたかと思いますが、本来であれば純増分と申しますか、ふえた分だけがどうなるかということが、ほんとうは資金運用部資金立場で申しますと問題でございますが、しかし、経済に与える影響ということで申しますならば、単にふえた分だけではなくて、いままで貸したものが回収になって、それを短期運用しないで長期運用するということであれば、これはやはり経済に対して、影響を与えるということで、それも含めまして、財投計画に計上いたしましたものにつきまして、国会の御審議をわずらわすのでございますから、あくまでも御審査をわずらわしますのは運用の面でございまして、その運用の可能な原資なり財源というものが、どういうふうにして生まれてきたかということの説明が原資の見込みになるものでございます。   〔委員長退席理事土屋義彦君着席〕  それから、戸田先生お尋ねは、資金運用部資金法の第七条の関係でございますが、ここに書いてございます第七条の第一号から第十一号までのもの、これは長期運用であれば、これは全部今回の法律の対象になるのでございまして、たとえば五号の地方債、これは資金運用部地方団体にどのくらい貸すかということでございまして、現在まで六号のほうを使っております。地方公共団体に対する貸し付けということでございまして、資金運用部資金がどのくらい地方団体に貸し付けをするかということは、これは財投計画の内容になってまいりまして、四十八年度では先ほど申し上げました数字で申しますならば、九千九百三十億というのが資金運用部資金による地方団体に対する貸し付けでございます。これはもちろん財投計画の中に入っております。
  81. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 質問を進めていく意味で、ひとつ信憑性を確認しておきたいんですが、政務次官、これは過日の予算委員会で、一応同僚田中寿美子議員が——大蔵省の理財局資金課で発行している財政投融資資料としてある書店で売っておったんです。これは信憑性ありますね、どうですか。これちょっと資料使わしてもらうから。
  82. 橋口收

    政府委員橋口收君) これは理財局資金課でいわば編さんをいたしました印刷物でございますので、いま戸田先生お持ちの分はどれであるかちょっとわかりませんが、この前、田中先生から御質問がございましたときに、ちょっと拝借をさせていただきまして、見ました限りでは、どうも贋物ではないようでございます。本物というふうに一応確認をいたしておきます。
  83. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 ちょっと問題だな、そうなりゃ。そうするとこれは詐欺行為か何かになるんじゃないですか、いま言ったように贋物と違うと言うんでしょう。
  84. 橋口收

    政府委員橋口收君) 本物という意味でございます。贋物ではないという意味です。
  85. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 贋物ではない……。(「贋物と言うからわからないんだよ、にせものと言えばいいんだよ」と呼ぶ者あり)  信憑性があるんですかどうですか、その点だけ確認しておきます。
  86. 橋口收

    政府委員橋口收君) それは予算委員会でもお答え申し上げましたように、私のほうのいわば資金運用部資金とか、政府保証債に関する資料だけではございませんで、相手方の機関と申しますか、そういう機関に関する資料が大部分でございまして、そういう意味では各機関から好意によってあるいは協力によってちょうだいしたものを、実はそのままそこへ載っけてございますので、その資料自体について編さんをしたという、作成したという責任はございますが、しかし、その資料自体はよそからもらったものを実はそのまま載せているものでございますので、その資料自体に信憑性があるかということになりますと、それはそれぞれの機関の責任でつくったものでございます。ただもちろん、そこにどこの責任とかいうようなことは中には書いてございませんけれども、そういう性格の資料でございます。
  87. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 問題なんですね、やっぱり。政務次官、大蔵理財局資金課ですよ、これはやっぱり大蔵省として、そういういまの局長の見解だとすれば、私はやっぱり適当な法的措置をとってしかるべきじゃないか、これでしかし金とって売っているんですからね。田中議員が一万幾らで買っているんだからね、どうなんですか。そういうことになれば、まさしく役所名を盗用したか、何か、そういうことになるんじゃないですか、どうなんですか、政務次官。
  88. 橋口收

    政府委員橋口收君) 政務次官からお答えいやします前に、ちょっと申し上げますと、それはいま戸田先生のお持ちのものはちょっとはっきり確認できませんが、先ほど申し上げましたように、にせものではなくて本物が、つまり役所の文書管理の徹底を欠いているために、何らかの理由によって外に出たものだという意味でございます。三月十五日に田中委員から御指摘をいただきまして、多少経過を申し上げますとさっそくまあ調査をいたしました。これはそのときも古本屋の図書目録に出ているということでございまして、私どももどうも不敏でそこまで目が届かなかったのでございますが、なるほど幾つかの古本屋の図書目録に、財投資料何年版というようなものが出ております。そこで実際に職員がその古本屋に参りまして、いろいろ質疑応答と申しますか、そういうものがあるかというようなことであると、ただ取り寄せるには多少時間がかかるというような話を聞いてまいりまして、目録にも出ておりますし、それから本屋さんに直接聞きましても、そういうものがあるということでございますから、これは申しわけないようでございますが、大蔵資金課でつくりました資料が何らかの経路で外に出ている、どうして出たかという経過につきまして、まあ断定はできませんが、一応の推定はございますが、まあその推定について、いますぐ申し上げるのはちょっと差し控えさせていただきたいと思います。
  89. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 本来ならば、この審議をとめて私はこの信憑性を明らかにしたいと思うんです。これは、いまから資料をこれ使わしてもらって私は審議を進めるというんですからね。委員長もいないから、委員長と理事会でこの取り扱い等について明確にしてもらって、質問は続行します。——一応これ使わせてもらいますから。  そこで、まず第一は、財政運営についてですけれども、新しいこの運用法、これの第二条ですね。前段がありまして、以下ずっとまいりまして、「以上にわたるもの(次条の規定により運用することができるものを除く。)」、これはすなわちこの第三条をさしているわけですね。第三条というのは、「長期運用予定額の繰越し」ですね。で、この第三条でいきますと、少なくとも四十八年度財政投融資計画、これはあくまでも年度計画ですね。四十八年度、あるいは四十七年度、四十六年度という年度計画ですね。この年度計画からいけば、この第三条は私はちょっと制定がおかしいじゃないかと思うんですよ。それで、この資料が出てくるんですけれども、残高表を見ますると、いいですか、これは大蔵省からもらったやつがありますけれども、たいへんな残高が残っているんです。この残高表によりますと、資金運用部資金財政投融資対象機関融通残高、これは昭和四十八年一月末現在ですから、おそらくこの数字は三月末までくると若干の異同はあるだろうと思いますが、この資料でもって発表させていただきますと、特別会計で一千八百六十三億、政府関係機関で九兆三千九百四十七億、日本国有鉄道、国民金融公庫、中小企業金融公庫等々ずっと十一項目、その他までございます。三の公団、事業団等、これは三兆五千五百四十六億と、こうなってますね。で、総額において十六兆三千九百八十七億、このくらいの残高があるわけですね。これは次年度に全部繰り越し運用されるわけでしょう、この第三条でいくと。そうじゃないんですか。繰越金はそうするとどのくらいになってますか。四十八年度一年でいいです。
  90. 橋口收

    政府委員橋口收君) これは、いま先生からお尋ねがございましたのは一月末の残高でございますから、これはこれだけ貸してしまっているということでございまして、資金運用部資金特別措置法でございますので、年々の長期運用予定額と申しますか、年々の財投額がどうなるかということでございまして、四十七年度で申しますと、現在額が約六兆——まあ四十八年度でちょっと申しますと、五兆六千億が資金運用部資金でございますから、それが四十八年度中にどうなるかということでございまして、それが幾ら繰り越しになるかということでございます。  繰り越しの額でございますが、大体四十六年度から四十七年度に繰り越しになりましたのは、運用部で申しますと七千百九十六億円でございまして、四十五年度から六年度への繰り越しが三千五百八十三億円でございます。これの取り扱いについての規定が第三条でございます。
  91. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 わかりました。前のやつちょっと誤りまして申しわけありません。  いま、局長が言われましたように、四十七年度の繰り越し七千百九十六億ですか、これが四十八年で入っていくわけですね。ですから、結局、上半期は繰り越し金で運用されるという部面が出てくると思うんですね。そうすると、私は、常時その繰越金が上半期で使われるから、新年度分のいわゆる財投資金というものは、またこの後半に使われて、同じような循環でいくと。だから、どこかでこの繰り越し金の二年運用というやつを、結局二年にまたがるわけですから、そうでしょう、だからこれをどこかで断ち切ることが必要じゃないか。それは確かに、経済変動とか、あるいは計画、実行ペース、いろいろ変動のあることは私もわかりますよ。だけれども、これ、一兆円に近い、七千百九十六億円ですから、これが次年度、四十八年度にそのまま繰り越しされていくということになりますと、私は、やっぱり少し問題じゃないかと思うんですね。だから、これがこの第三条でやられるということについては、こういう弾力条項を設けておくこと自体が制度上として一体いいのかどうかですね。  私は、こういうものは断ち切って、やっぱりその年度計画でもってぴっちりきめていくと。これは一般会計予算と同じようにですね。そうして、それでもって、余ったりなんかしたら、今回国会の審議ないし議決の対象としたんですからそのつどやっぱり明記をしてはかっていくと。このシステムを確立すべきじゃないかと思うんですね。そういう繰越金を明らかにして、これはこういうことに使っていきますよと、年度別に。まあ、あらかじめ予算の査定段階でもう一年前にやっているからいいと、こう言うかもしれませんけれどもね、事これは大衆の零細貯金であり、そういう資金が土台になっているわけですから、やっぱり明確に責任を持つという立場でもって、そういうシステムを一体確立できないのかどうか。三条の疑念についてひとつ回答していただきたい。
  92. 橋口收

    政府委員橋口收君) これは、資金運用部資金の性格から御説明を申し上げて御理解をいただくことが必要ではないかと思うのでございますが、資金運用部資金は、いま先生からお話しがございましたように、約二十二兆円の残高でございまして、これは財政法第四十四条のいわゆる「資金」として、大蔵大臣の責任において管理運用するということになっておるのでございます。なぜそういう「資金」という制度が法律上設けられ、資金運用部資金あるいは外国為替資金あるいは経済基盤強化資金というような、歳入歳出外現金と申しますか、そういうものが戦前から、あるいは新憲法のもとにおける新財政法においてもそういう資金が認められておるかと申しますと、これは御承知のように資金のかたまりでございますので、本来、会計年度区分とか、あるいは会計年度独立の原則から申しまして、年々歳々毎日毎日入ってくる資金であり、それがまた払い出されたり、あるいは運用されたり回収されたりということでございますので、年度に区切って財政処理するというものに本来なじまない性格のものであると。それから、一本一本の取引につきましても、予算統制と申しますか、個々の取引で、有価証券を売ったり買ったり、貸し出しがあったり回収があったり、あるいは預金受け入れたり払い込みをしたりと、こういうことでございまして、一本一本の、予算統制になじまない性格のものとして、行政府の責任において管理する資金というものが財政法上認められておるのでございまして、それが資金運用部資金の性格でございます。が、本来会計年度区分等にはなじみにくい資金でありますもののうち、特に五年以上の長期運用予定額につきましては、やはり財政的資金の配分という性格を持っておりますので、国権の最高機関としての国会の御判断を仰ぐことが適当だということで、いわばその資金運用部資金のうちの特殊な部分と申しますか、異例な取り扱いを適当とする部分につきまして、特にこういう措置をとったのでございます。  資金運用部資金全体としては、まあたいへんことばが悪いんでございますが、本来繰り越しを予定している性格の資金でございますので、そこで毎年度、どういうものを繰り越すかという、本来会計年度独立の原則で処理をされるべき一般財政でございますならば、それの例外として、繰り越し明許費ということで、事項ごとに指定をして、国会の御承認を得て、繰り越しをするという性格でございますので、一般予算は会計年度内に歳出をするのが原則であり、繰り越しが例外でございますが、資金運用部資金の場合は、いわば繰り越しが本則と申しますか、繰り越しが原則でございまして、会計年度内の処理という、あるいは会計年度独立の原則に従うということはむしろ例外的な取り扱いにならざるを得ないのでございまして、そういう点を法律上明らかにするために、法律上の繰り越しの制度ということで御審査をお願いをいたしているわけでございまして、かりに繰り越し明許費のような取り扱いをするということになりますと、これは端的に申しまして、全部の事業が繰越し明許費として事項指定をお願いをしなければ、実際に財投対象機関としての、猶予期間あるいは融資期間というものは動かないわけでございます。で、いま繰り越しがたいへん多いという御指摘をいただいておるのでございますが、それは確かに多いのでございまして、これは一時的な金融情勢とか、景気情勢に基づく原因のほかに、本質的な問題はいま申し上げたようなことでございまして、しかも毎年度計画が対前年比相当ふえてまいりますので、どうしても同じ率で繰り越しをしましても、金額がふえるということでございまして、しかも、そのうち大宗を占めますのは実は地方団体でございまして、地方団体は出納整理期間にいろんな財政処理をするという経過がございますので、大体四月−五月にほとんどの資金が出るのでございます。したがいまして、四十七年度から八年度へ繰り越しが予想されます地方団体は、おそらく八千億ぐらいになるんじゃないかと思います。それと同じように、前年度から四十七年度に繰り越されたものの六、七割は地方団体に対する融資でございまして、そのほかの機関もございますが、地方団体はそういう財政処理という原則があり、しかも、他の財投機関はどうしても年度後半に借り入れをし、しかも事業の執行の終わらないものにつきましては、明年度に繰り越しをして借りる、こういうことでございますので、この点は、第三条による無制限繰り越しというものは適当でないというおしかりをいただいておるのでございますが、これは財政投融資の事業の性格と申しますか、財政投融資対象機関の性格から見て、これはいわば本質的な問題を含む問題ではないかというふうに考えておるのでございます。
  93. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 局長の答弁あったんですけれども、どうも私納得いきかねるんですが、それはいいです。しかし、そういうことですから、いろんな不祥事態というようなものも考えられるようないろんな問題が出てくると思うんです。  で、YSの関係についてちょっとお伺いしたいんですけれども、YSの量産体制に入ったのはこれは何年からですか。内容をちょっと説明してください。
  94. 加島耕之助

    説明員加島耕之助君) YSの生産依頼を日本航空機製造との間でやっておりますが、三十四年に日本航空機製造ができまして、三十四年から開発に着手いたしまして、三十七年に初飛行いたしまして、型式証明をとりまして、三十九年に初号機を納入いたしておりまして、それから量産に入って今日に至っております。
  95. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 そのYSの開発構想についてどういう経過があったんですか。
  96. 加島耕之助

    説明員加島耕之助君) 三十年代の初めから日本に航空機産業を振興しなきゃならないというような声が、内外に、役所あるいは業界から、ほうはいとして起こりまして、三十二年に輸送機設計協会という財団法人が誕生いたしまして、財団法人でどういう飛行機をつくったらいいのかということを検討いたしまして、その検討の結果、当時、世界の市場を含めまして、DC3という商業機が飛んでおりましたが、その代替期に当たっておりまして、その代替機としてかなりの量の民間航空機の需要があるだろうということで、その辺に焦点を合わせまして設計研究をいたしたわけでございます。その設計研究の結果百四、五十機の需要が想定されるという結論に至りまして、三十四年に、先ほど申し上げました日本航空機製造が政府出資の会社として誕生いたして、開発にタッチしたわけでございます。
  97. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 その役所関係と業者関係というのは、具体的にひとつ説明してください。
  98. 加島耕之助

    説明員加島耕之助君) ただいま先生お尋ねの役所関係と業界という話でございますが、当時、通産省、それから国内のエアラインを監督しておられます運輸省等の専門家の方にもお入りをいただいて検討をしたと私存じておりますが、国内のエアラインが、当時、DC3あるいはDC4等の小型機を使って運用をいたしておりまして、この代替期に来ておったのがその当時の状況でございます。
  99. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 通産省と運輸省の具体的な担当課長局長を言ってください。業界も言ってください。
  100. 加島耕之助

    説明員加島耕之助君) 通産省の担当課は、当時から現在の重工業局に航空機武器課というのがございまして、ここが担当いたしておりました。それから運輸省につきましては航空局がございまして、航空局でエアラインの関係の業務をやっておられると思いますが、そこで監督をしておられる方々の御意見なども拝聴して、民間等も含めまして、総力をあげてそれに取り組むということでスタートをしたように承知いたしております。
  101. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 これ一は度衆議院の予算分科会で横路議員が問題にしてますから、内容の重複する点は、私、申し上げません。それから、その他いろいろ資料一ぱいありますが、きょうは時間がありませんから、いずれ詳しいことはまた別に聞いてまいりますが、ただ問題になるのは、私は、この資料によりますと、この発足当時から、御存じのように「日航製に対する財政資金昭和三十六年度−四十七年度)」、これは通産省からちょうだいした資料ですけれども、この出資金が産投会計で四十二億円出ているわけですね。それから、補助金は一般会計から五十九億、小計百一億でしょう。それに政府保証社債が百四十九億、政府保証借入金で四百六十九億、輸銀融資でもって三百三十七億、小計九百五十五億で、開銀融資が四十五億。こういうことで、もっぱら政府資金をもって会社の運営というものをやられてきたわけですね。いま言われますように、百八十機当面の量産としていきましょうと、こういうことですから、専門家に聞きましたら、百八十機ではどうしたってこれは黒字体制に持っていくような、採算のとれるようなそういう生産状況じゃない、やっぱり三百機まで持っていかなければだめだというのが、私が聞いた専門家の話なんです。それにもかかわらず、日本航空機製造として損益計算書ないし貸借対照表、あるいは日本航空機製造株式会社のYS11量産資金計画及び実績、こういうことになっておりますが、この借入金等を見ますと、一貫して赤字体制でしょう。全部この借入金でやっているわけですからね。だから、こういう内容があらかじめわかっておって量産が百八十機までしかいけないという——三百機あたりまでいかなければ採算がとれないという。それで、今日までこれを継続して、結局は、YXに今度いこうというんでしょう。こういう無計画な内容に、いま言ったように財投から多くの金が出ているというようなことは、私はどういう一体解釈をとったらいいのかということになるのですね。これはひとつ理財局長、こういう点が出てくるんだと思うんですよ。だから、もう少しやはり私は、年度計画として財投の融資方式をとる場合については、厳格にやっていかないと、これは結局あれですよ。中身を先ほど聞きましたけれども、国内需要が七十数機、国外の市場に売りさばいたものは七十四機、それから、各省、役所で買ったやつが三十何機あるんですよ。そして会社経営赤字だ。財投でもって資金を持っていく。今度飛行機を買うのに、同じように融資してやっているんですよ。だから、何ということはない、政府が会社経営をやって、そして買うときも当該会社に全部融資をしてやって、そしてこれをやっているんですからね。こういう財投の融資なり、実態というものについて一体どういう考えを持つのか。大蔵省は一体、それに対して指導監督、そういうものをぴちっとやっていないのかどうか。業界の各会社名も全部わかるわけですからね。きょうは時間ありませんから、その中身には入りませんけれども、そういう一つの財政投融資運営をやっているんです。これは国民の零細な貯金ですからね。前から何回もずっとやってこられましたよ。こういうでたらめと思われるような融資状況があっていいのかどうか。大蔵省は一体どういうふうに考えますか。
  102. 橋口收

    政府委員橋口收君) いま先生からお話ございました中の計数の問題は、あとでちょっと資金課長から補足させていただきたいと思いますが、これは、最後にちょっとおっしゃいました、国民の零細な貯蓄が投入されているというのは、これは先生御承知だと思いますが、郵便貯金とか、あるいは資金運用部資金というものは一切使っておりませんので、郵便貯金者に迷惑をかけるというようなことはございません。これは先生よく御承知であろうかと思います。  それから産投会計からの出資は、御承知のように四十二億ございますが、そのうち四十億は、例のMSA協定と申しますか、昭和二十九年にできました日本とアメリカとの経済援助協定に基づいて贈与された経済援助資金融資をいたしたものが回収になりまして、それの再投資として、経済援助資金特別会計から日航製に対して出資をいたしたものでございまして、これは財政投融資計画とは関係のないものでございます。その後産投会計から二億出資をいたしておりますことと、それから、経済援助資金特別会計は四十二年度末で廃止されまして産投会計に承継されておりますので、現在は産投会計から四十二億出資になっている、こういうことでございます。  大蔵省の監督について御指摘がございましたが、これは端的に申しまして、日航製が赤字であるということが判明いたしましたのは、これは通産省にたいへん悪いんでございますが、比較的最近のことでございまして、端的に申しますと、通産省から大蔵省への連絡は、赤字はない、収支とんとんであるということを言っておられたのが四十五年ごろの実情でございまして、監督大臣としての通産相からは、そういう御連絡を受けておりまして、そのころから少し様子がおかしいんじゃないかということが、問題として両省間で討議され、その後日航製の再建問題につきましては、主として主計局が中心になりまして、最初の航空機製造の援助のほかに、いわば最終処理と申しますか、そういうことにつきまして、いまおおよその見当がつき、四十八年度予算でもある種の経費を計上して国会の御審査を得ておるところでございまして、産投会計から出資をいたしておりますだけに、最終的に日航製がこういう状態になったということは、たいへん申しわけないことであると思いますが、ただ、国だけが責任を分担するという体制はとるべきではないということを大蔵省はかねがね主張いたしておりまして、国も民間もあげて日航製のYS11の開発に伴う損というものは公平に分担すべきである、こういうことを大蔵省としては主張いたしておりますので、おおよそそういう方角に向かって進んでいるというふうに考えております。
  103. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 確かに、局長が厳密に言う意味合いにおいては、運用部資金の金は入っていないですよ。郵便貯金とか、簡易保険とか、そういうものは入っていませんけれども、産投なり、あるいは政府保証社債なり政府保証借入金なり、これらはやっぱりすべて国のお金ですからね。そういうものが特定の航空機製造会社に対して、一面では多分の赤字会社でありながら、融資をしつつ、購入するときにおいてもまた一面で恩典を与えている。非常に不明朗じゃないでしょうか、そういう融資のしかたというものは。それはどういう考えを持ちましょうね。不明朗じゃないですか。これはこまかい数字はいま言いませんよ、言いませんけれども。
  104. 橋口收

    政府委員橋口收君) これはだいぶ昔のことになりますので、いろいろ申し上げるのは恐縮でございますが、たしか航空機工業振興法という法律ができまして、その法律に基づいて日航製というものが成立をし、同時に、経済援助資金特別会計の法令によりまして、日航製に対する出資ということがあげられておるのでありまして、いわば当時としては政府全体として日航製を援助し、YS11の開発を軌道に乗せるということを使命としてやったのでございまして、今日の時点になって考えますと、いろいろ反省すべきことは多々あるのでございますが、ただ、その当時は、政府全体として日航製というものを核として日本に航空機工業を育てようと、こういういわば善意に出たものでございまして、その間あるいはその後の経過においていろいろ不十分な点、あるいは販売の面、生産の面、管理体制の面について不十分の点のあったことは、これは事実でございまして、そういう点につきましては、大蔵省全体としまして、今後こういうことが二度、三度繰り返されることがあってはならないというふうに考えておるのでございまして、いまお話がございましたように、政府保証で民間から資金を調達いたしておりますから、本来であれば、政府保証の実効を要請されてもしかたのないような経営状態であるのでございまして、そういう形ではなくて、やはり官民協力して最終的には処理をする。こういうことで、まあ、将来における戒めとしてこういうことが二度あってはならないというように考えておるのでございます。
  105. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 まあ、了承するのですがね。一応会計検査院でも、いま局長が答弁したような内容の監査事項の報告があります。ただ問題は、やっぱり今後もYXの開発にいくというのですから、きょうはそこまで入るわけにいきませんから、ひとつ構想なり、今後の見通し、そういうものに対しての融資体制、その資料をこまかくひとつ提示をしてください。  それから、当面三百六十億に近い欠損未処理があるわけですから、そういうものの処理方式を一体どうするのか。これは通産省がやっぱり担当省でしょうから、その資料はあとでひとつ提示をしてください。
  106. 加島耕之助

    説明員加島耕之助君) ただいま先生から御要請のございました資料を整えまして後刻御提出いたしたいと思います。
  107. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 それからもう一つ、理財局長に質問しておきたいのですけれども、弾力条項、百分の五十ですね。これは衆議院でもだいぶ問題になっていろいろやっているようでありますから、私はこまかいことは言いません。ただ、現行百分の三十を百分の五十にふやした……。いまはなかったですか。百分の五十ということで設定したのですね。百分の五十。それでいいんですね。
  108. 橋口收

    政府委員橋口收君) はい。
  109. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 そうしますと、いまの繰越金等の問題と含めてちょっと試算をしてみたんですけれども、百分の五十ということになりますと五兆六千億、それに対して二兆八千億見当金額にして大体出る勘定ですが、これは理解が違っていましょうか。それから簡保の場合は約三千七百億くらい、郵便貯金の場合は二兆八千億、このくらいの弾力条項から金額が生まれてくるのだと思いますが、その金額についてはそういう理解でいいですか。
  110. 橋口收

    政府委員橋口收君) これは、何と申しましょうか、まあ局限的な計算をいたしますといま先生がおっしゃいましたように資金運用部資金は四十八年度五兆六千億でございますから、全部五割弾力がかぶったという場合には二兆八千億ということになります。それから簡保資金もおっしゃるとおり三千七百億ぐらいということになるのでございますが、ただ、全体につきまして五割を弾力を発動して処理をするということは、これは現実問題としては考えておらないのでございまして、それは原資の面から申しましても二兆八千億を直ちに捻出するということは困難でございます。それからまた、二兆八千億をかりに追加いたしましても、それこそいま先生から御指摘がございますように、ほとんど全部が繰り越しになるのでございまして、これも年度内に消化をするということは困難でございます。全体について五割まで、各機関ごとの五割を全部同時に発動する、あるいは年度内に発動するということは、これは考えておらないのでございます。むしろ、各機関につきまして必要な限度において弾力を発動する場合にも、その最高の限度が五割ということでございまして、これは現在、政府保証債につきましても昭和四十六年から五割の弾力をちょうだいいたしておりますし、それから政府関係金融公庫につきましても借入金につきまして、これは昭和三十三年度から五割の弾力をちょうだいいたしておるのでございまして、そういう他の例等から見まして五割ということに設定をしたのでございまして、いま申し上げました政府保証債、あるいは各種金融公庫の借り入れ金の弾力につきましても全体の五割を発動したというような例はございませんし、むしろ個々の機関で申しますと、たとえば、商工中金等につきましては従来五割以上に弾力を発動した例もございますので、機関ごとに実績等から見て差等をつけるのが一番望ましい方法でございます。実際問題としてそこまで問題を煮詰めるということも困難でございます。かりに中小企業対策等につきまして五割以上必要とするというような経済状態が招来いたしました場合には、これは補正措置をお願いすると、そういう覚悟でございますので、いまの局限的な計算としての二兆八千億というようなことを念頭において五割にしたものではございませんことを御理解いただきたいと思うのでございます。
  111. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 こまかいことで申しわけありませんが、この弾力条項に基づく運用資金の使用方については、やはり資金運用審議会等を通じてやるということになるのでしょうか。それが一つ。   〔理事土屋義彦君退席、委員長着席〕  それからもう一つは、こういう弾力条項で予想される——どういうものが具体的にそういう事態というものが発生するのか。だいぶこれ一般会計予算の三〇%近い、第二の予算といわれるくらい膨大な七兆円近い金を実際組んでいるわけですからね。それがなおかつ年度途中でもってそういう弾力条項を発効させるような事態というものは一体想定されるのかどうか。かりにいま局長等が考えられているような、そういう事実行為というものが前途あるというならば、そういう問題についてひとつ具体的に示していただきたいと思うのです。
  112. 橋口收

    政府委員橋口收君) お尋ねの第一点の弾力条項を発動いたしました場合には、これは当然資金運用審議会の議を経て措置をいたします。理財局だけで措置をするということは法律上もできないことになっておりますので、これは全部資金運用審議会の御承認を得て措置をするということになります。  それから、弾力対象事業と申しますか、これは従来の例で申し上げますと、大体補正予算のある場合には年に三回ぐらい、ない場合には年末中小金融対策による追加等、それから、年度末の技術的な補正と、二回が通例でございまして、補正がある場合には三回と、四十六年度景気対策ということもございまして前後七回の追加をいたしておりますが、四十七年度も補正と合わせて年末対策を入れて三回でございますが、今日まで追加をいたしておるのでございます。まあ通例考えられますのは、年末の中小金融対策、それから、補正がございますと、補助の裏としての起債、当面そういうものが考えられるのでございまして、過去四十六年、七年ごろの実績で申しますと、年度途中に、たとえば、上下水道の事業が非常に進む、そういう場合に、補助のつかない部分の起債に対して政府資金融資するというような場合がございます。そのほか住宅関係、道路関係等が過去の例でございます。四十八年度はもちろん先のことでございますので申し上げにくいのでございますが、相当大規模になっておりますので、格別の事情の変化、中小金融対策等を除きましてはそう大きな弾力の発動ということはなくて済むのではないかというふうに考えております。
  113. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 関税関係、時間がありませんけれども若干質問しておきたいのですが、まず、昨年も関税定率を改正をして、ことしは国民生活に関与する関係輸入品、きょう資料持ってきておりませんけれども、私の記憶ではおおむね百十億減税、物価に効果波及部面というものは〇・三という寄与率ですがね。ことしは五十億そこそこですね。だから、それから推定すれば、もちろん品目によりますけれども、その半分ぐらい、常識的に考えて、こういうふうに考えるわけですけれども、そういう考えで、理解でいいのかどうか。  それから、何ぼ関税局長ががんばったって、物価波及効果というのはゼロですね、むしろ上がったのです。たとえば、そば一ぱい食べたって、あの中身見たら日本製品は水となまネギぐらいですね。あとはみんな向こうから来ているわけです。そばがいまはとにかく三〇%ぐらい上がっているでしょう。これはこの前もいろいろ問題になったんですけれども。だから、そういう波及効果が一応数字的には出るのだけれども、実際の問題としてそれがさっぱり効果があらわされずに逆の方向にむしろいっている。この原因は一体どこにあると思いますか。
  114. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) まず、戸田先生の御質問のうちの第一点でございますけれども、御承知のように、昨年の十一月に一律二〇%引き下げをやりましたときには、その対象となりました品目が、大体関税の、消費者物価指数の全体の総数に対します、一万分比で申しますと、その対象になりましたのが、一万分の三千十四が対象になっているわけでございます。さらに、引き続いて今回御審議をお願いをいたしております対象品目に関しますると、消費者物価指数の一万分比で申しますと四百六が対象になっているわけでございまして、昨年の十一月と今回のを合わせまして、私どもの理論的な計算値でございますけれども、これは関税を引き下げますとそれが直ちに輸入物価の引き下げに対応をする、全部が波及をするという計算でございますけれども、大体私どもの計算をいたしますのは、その半分が、要するに消費者物価に影響をするという計算をいたしまして、合計をいたしまして、昨年度の本年度に対しまする消費者物価指数の下落率が〇・二六、それから本年度の、四十八年度の効果といたしまして〇・一八と、こういうふうな計算をいたしております。  さらに、関税をせっかく引き下げても末端の消費者物価に響かないではないかと、これはもう私どももまさしく非常に残念に思っている事柄でございまして、せっかく関税引き下げ——ある程度国内産業にもがまんをしてもらいまして関税を引き下げ、いわゆる国際分業の観点から国民生活関連物資の引き下げをやりましても、それが末端価格に響きませんと、せっかく引き下げた効果がゼロになってしまうということを私どもも痛感をいたしておるわけでございまして、この点に関しましては、担当の経済企画庁あるいは通産省あたりにも、しばしば私ども、物価担当官会議等におきまして、その関税を引き下げたあとの個々の品目に関しまする追跡調査というものを少し本腰を入れてやってもらうことを要請をしておりますし、経済企画庁のほうでも、最近相当真剣になって勉強をしてもらっておると考えております。
  115. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 これは何も関税局長自身の責任を追及しているんじゃなくて、政府全体、国全体の問題ですから、しかし、その部署部署で、最高、努力するところはしてもらわなくちゃいかぬのですから。まあ、何といっても、私は国内の流通体制がやっぱりいけないと思うんですね。総代理店制を含めて、やっぱりその辺から抜本的な追跡調査をやって、どこに一体隘路があるのか、これをやらなければ、幾ら関税減税をやってみても私はもう焼け石に水だろうと思う。ことに、いま国内のこういう経済状況の中で、もう商品投機までどんどん発展しているといういまのような状況の中で、私は、数字的にあらわれてきた物価波及効果なんていうものはとても期待できない。だから、そういうことだけに、そういう面を通じて、ひとつ全体的な対策ですね、これはもう総理に陣頭に立ってもらわなくちゃいけないわけですけれども、そういうことでひとつ要望しておきたいと思うんです。  それからもう一つは、特殊関税制度、これはいままで発動したときないでしょう。だから、関税定率の引き上げその他の操作によっていま十分やっていけるような状況なんですがね。この制度は私は無意味じゃないかと思うんですけれども、残しておくような、何というんですかね、期待するものがあるんですか。その点一点、ひとつ聞かしておいてください。  それから、時間ありませんから終わりますけれども、理財局長にもう一点だけ。この財政投融資計画日本輸出入銀行——まあすべてそうだとは私は言いません、それは運用がありますからわかる部分もありますが、四十八年度資金運用部資金として四千八百五十五億、こういうことになっているんですね。いまやっぱり外貨準備高が二百億ドルを突破するんじゃないかというような状況まできておって、何とかこのドル蓄積のやつを取りくずしていかなければいけない、今後の貿易関係では、何とかドルのふえないような対策をとっていかなければいけない、こういうことだと思うんですね。あとで大蔵大臣が参りますから通貨関係はそのときにしますけれども、そういう事態の中で、このくらい融資をやるわけですね。日本開発銀行は三千八百五十七億ですか。これ、妥当な数字かどうかということに疑問を持つんですがね。もう少しそういう部面は自前方式に変えていったらどうなのかということなんですがね。各輸出業者の自前方式に持っていって、やっぱり政府が各般の諸情勢でもって介入しなければいけないというなら、そのときにコントロールをしていくと、こういうことで行政指導その他を強めてやっていくということが大事じゃないかと思うんですけれども、この辺の見解はどういうふうに一体考えられておりますか。
  116. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) まず第一点の問題は、関税局関係の御質問であろうと思うんで私お答えいたしますけれども、御承知のように、今日までは日本の関税水準がかなり高い水準にあったわけでございますけれども、かつ、いろいろな品目に関しましても、要するに輸入の自由化の進捗度がほかの国に比べて少ない面があったわけでございますが、今日、日本はかなりの程度輸入の自由化の進捗が進んでおりまするし、さらに、関税水準それ自体も、西欧諸国に比べまして、遜色がない程度にまで全体として引き下がっているわけでございまして、世界の開放体制に乗ります日本立場といたしましては、今後といえどもこの方向をさらに推進をしなくてはならないと。推進をするにつきましては、やはり、国内のある特殊な産業部面におきまして、外国からの輸入が急増するというような場合、あるいは場合によりましては、国内産業に対する衝撃が非常に強いというような場合には、緊急関税というものをかけまして、いわゆる関税障壁を一時的に高くいたしまして、外国からの急激なショックを緩和をするということを考えなくてはならない。要するに、自由化を進め、さらに関税水準を引き下げる半面におきまして、それに要する衝撃が非常に強い場合には、それに対する対応策をも準備をしておく必要があるということで、むしろ、今日までの関税水準が高かったときよりは、これから開放体制に進むに際しましては、逆の、特殊関税、緊急関税というものの制度が弾力的に発動される用意をいたしておくということは、これは一つの非常に有力な手段であると私ども考えておるわけでございます。
  117. 橋口收

    政府委員橋口收君) 輸出入銀行につきましての御注意でございますが、確かに、おっしゃいますように、経済の復興、産業の開発、貿易の振興という時代から大きく時代環境が変わってまいってきておりますので、輸出入銀行の運営自体につきましても、お話がございましたような観点から改善、強化をはかる必要があるというふうに考えております。また、現実にもそういう状態にやや近づきつつあるのでございまして、計数的に申し上げますと、昭和四十五年度は、輸出入銀行の資金計画のうちで、輸出の占める割合が七七%でございましたが、四十八年度計画では五四%ということで半分ちょっとになってきております。それに対しまして、輸入投資というのが四十五年度は一五%でございましたのが、四十八年度は三二%というふうに変わってきております。それから、借款が八%であったものが一四%というふうに、資金の構成と申しますか、輸出のほうから輸入投資のほうに大きく重点が移ってきておるのでございまして、船舶等も四十七年度は二千七百億でございましたのが、四十八年度は千九百九十億というふうに、むしろ、絶対額でも下がってきておると、こういうことでございまして、輸銀の内容、実態につきましても、やはり、時代の変遷とともに変化があらわれてきておるのでございます。こういう傾向はますます推進する必要があると思われますし、また、船舶等につきましては、すでに過去において契約の成立したものが、資金化すると申しますか、資金需要になって出てまいるものがございますので、これを直ちに切るということは困難でございます。そういう面で、全体としてはかなりまだ大きな資金を必要といたしておりますが、全体として内容も変わってまいってきておりますし、また、今後ともそういう方角に一そう強く推進しなければならないというふうに考えておるのでございまして、かつては船舶プラントというものが日本の国際収支をささえる大きな柱であったのでございますが、御指摘がございましたように、様子も変わってきておりますから、従来以上に強化して輸銀を育成するという必要はかなり薄れてきているのじゃないかというふうに考えておるのでございます。
  118. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 関税の問題を中心に若干お伺いいたします。  最初にお伺いしたいのは、今回、関税定率法の一部改正ということで御提案でございますけれども、それも含めて、片方では国際通貨制度の現状、それから今後の、はっきりはわかりませんけれども、想定される見通し、そういったものをどうひっくるめて関税問題を考えていかれるのか。たいへんばくとした質問のようですけれども、いわばものごとの裏と表といいますか、たいへん密接な関係にあると思いますので、関税問題に取り組んでいく基本的な考え方ということをひとつお伺いしたいと思います。
  119. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 確かに非常に先生の御質問、今後の私どもが関税に取り組んでいく面におきまして基本的な問題であろうかと思いますけれども、まず、日本立場といたしましては、要するに日本が今日まで自由貿易、いわゆる自由貿易に関して一番利益を得ておりましたのは日本であったかと思います。したがいまして、国際ラウンド、新国際ラウンドに対して臨みますに際しましても、要するに、世界的に全般的に世界の自由貿易が拡大をされる方向に新国際ラウンドが進むということが日本にとって国益になる、日本利益になると、こういう考え方が、まず基本にあると思います。それから、世界の現実といたしましては、御承知のように拡大ECの発足に伴いまして、ECはECとしてある意味においては、いわゆる経済のブロック化と申しまするか、そういう方向に進む、可能性としては可能性があると考えておりまするし、さらに新聞紙上等に最近あらわれておりますように、近くアメリカの議会に提出されるであろうところのアメリカのいわゆる新通商法案と申しますものは、ある意味におきまして、これは米国の国内対策もあろうかと思いまするけれども、かなり保護主義的な色彩のものになる可能性を秘めていると思います。したがいまして、しかしながら、アメリカが現在考えておりますところの新通商法案の内容と申しますものは、やはり新国際ラウンドに対して臨むその政府の権限をもらいたいということで、議会に提出をされるものと考えているわけでございまして、こういったようなことで、新国際ラウンドに関しましてアメリカといたしましては、かなり積極的な姿勢で臨むというふうに私ども考えているわけでございまして、むしろそのEC、拡大ECというものを頭の中においてアメリカは考えている面があると思います。したがいまして、基本的な態度といたしましては、私どもはアメリカに対してもちろんかなり言い分は持っておるわけでございますけれども、むしろアメリカとある程度歩調を共にいたしまして、新国際ラウンドを推進することによって、世界がさらに自由貿易の拡大の方向に進むものであれば、その線に乗って私は、日本としてはこれに対処をするのが基本的に国益に合致をするのではないかと、かような基本的な考え方を持っておるわけでございます。
  120. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 新国際ラウンドに臨む姿勢は同感に思います。ただ、そこにいく前に少し問題点を整理しながらお伺いをしてみたいと思うのですけれども、現在は国際通貨は概してフロートしている。将来の方向はわかりませんけれども、一応固定平価への復帰ということはうたいながら、レート調整可能なという意味ではフレキシブルな為替レートに指向しているように思います。そうなった場合に、従来は国内産業保護ということで関税はそれなりに役割りを果たしてきた。今後はどうかというと、おそらくこういう流れになるんじゃないか。関税というガードによって国内産業を守る。結果として輸入抑制という姿が出る。これが日本のように黒字要因になりますと、それは関税に問題が提起されるんではなくて、じかに為替レートが変わってくる。実質的に関税引き下げの効果が生まれてしまう。こういう流れに、まず、くることを想定しておかなければいけないと思うのですが、その点はいかがでしょう。
  121. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 先生が御指摘になりますように、私どもも関税の引き下げの経済的効果と申しますものと、それから、円レートの切り上げと申しますか、あるいはドルの切り下げと申しまするか、要するに為替レートの変動、かりに日本が円レートの切り上げの方向にそのフロートが働くとするならば、やはり関税引き下げの経済効果と同じ効果があると思います。したがいまして、私ども今後の、要するに関税率の問題を考えます場合に、フロートしている円レートというものを度外視をして、国内産業に対する影響を考えませんといけないという問題は確かにあるわけでございまして、今後私はフロートして、特にフロートをいたしております間は、関税率の今後の経過に関しましては、かなり慎重に国内産業に対する効果というものを考えながら、これを考えていかなくてはならないというふうに考えるわけでございます。
  122. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 問題は、その慎重ということの中身だと思うんです。やっぱり従来とは局面ががらっと変わってしまった印象がするんですけれども、そこで、関税のほうはわりあいにそう変えないでかりにやったとしても、さっき申し上げたような結果になって、為替レートの変更ということで、実質関税引き下げ効果が出てしまう。これが同じことなのかというと、違うと思います。違う点をかりに二つあげますと、一律的にきく。もう一つは、そのことによって円が実勢以上に高く評価される。これはイコールにならない。これをじゃあどうさばいていったらいいんだろうかという疑問が残りますけれども、この点はいかがですか。
  123. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) たしか私ただいまレートの問題と関税の引き下げとは同じ経済効果であると申しましたけれども、一方は一律的であり、関税の引き下げの方向は個別の企業の問題であろうと思います。したがいまして、私どもが今後関税の引き下げの方向で検討をいたします場合に、個別の企業ごと関税対象品目が約二千数百あるわけでございますけれども、個々の品目に関しまして、やはりその関税の引き下げの及ぼしますところの影響というものをやはり慎重に考えながら、関税の引き下げを考えていかなくてはならない。この点が一番いままでよりもより重要になっていくと思います。  ただし、今日まで、御指摘のように、関税というものを設けることによりまして国内産業を保護している。すなわち、今日までの関税のあり方は、主として生産者の立場に立った関税ということが言えたのではないかと思いますが、これからの関税のあり方と申しますのは、昨年の十二月に関税率審議会におきまして私ども答申をいただいたわけでございますが、その中にも含まれておりますように、やはり生産者の立場というものを無視するというわけにはまいりませんけれども、むしろ消費者の立場ということからする関税ということも、ある程度考えていかなくてはならないときがきているのではないかと、かように考えております。
  124. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 ことばじりでお伺いするようですけれども、消費者のための関税というのは、具体的に数字で表現しますとゼロということです。そこで、ある程度とつけ加えられましたけれども、簡単に言うとそういうことなんだと、そう理解してよろしいですか。
  125. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) おっしゃるとおり、消費者の立場からすれば、関税は最終的にはゼロになることが望ましい、こういうことであろうと思います。
  126. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そこでお伺いしたいのは、そうは言っても生産者の立場を無視はできない。とは言いながら、何%あったら国内産業を守るという効果が今日の国際通貨制度の中で期待できるのか。現在の暫定税率を含めて拝見しますと、一〇%前後あるいは未満というのが非常に多いわけです。問題は、一〇%という関税率が国内産業をガードする役割りを持っているんだろうか。お伺いする理由を幾つか申し上げますと、国際的なインフレのスピードというのは、六ないし七ぐらいかもわかりませんが、一年でそれだけ物価水準が動くということは、一〇%というのは、ガードになるようでならない。ほかの変化の影響をもろに受けてしまって、通貨調整で決着が迫られるということになると思います。そうすると、一〇%というのは、従来の歴史的な経過をしょいながら、国内産業保護だと言ってやってきたんですけれども、事ここに至ると、一〇だろうとゼロだろうと、及ぼす効果はほとんど違いがなくなってくるんじゃないか。いわんや、五%ということになりますと、どの程度意味があるんだろうかという気がするんですけれども、実際生産者、国内産業に対して保護的な役割りを果たしていける水準として、五とか一〇%という関税率が働いてくるんだろうかという点はいかがでしょうか。
  127. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) まさしくその問題は私もあると思います。しかしながら、今日まで長い歴史の過程を通しまして、いわゆる国内産業の保護ということで一〇%であるとか、さらには二〇%であるとかいう関税率が設定をされているわけでございまして、これはきわめて相対的なものでございまして、今回のような円レートの調整がございました場合に、かりにこれは一五%、今日までよりはドルに対して円レートが切り上がったということであれば、関税率一律に二〇%引き下げよりは、はるかに国内産業に及ぼしますところの経済効果というものは大きいわけでございます。したがいまして、そういうところに五%なり一〇%の関税をかけておいても意味がないではないかという御指摘かと思いますが、さらに意味がないからといって、この円レートの調整があったあと追い打ちをかけるように関税の引き下げを行ないますと、それだけ国内産業に対する一時の衝激が非常に大きいと、こういうことに相なる面があるわけでございまして、こういう意味におきまして、私ども、円がフロートをしておる最中には、関税の個々の品目の引き下げに関して、いままでより以上に慎重な国内産業への配慮を必要とすると申し上げましたのはその意味でございまして、いわゆる二重効果ということにもなる面が現実問題としては出てまいると思います。したがいまして、その意味におきまして、関税が持っておりまするところの国内産業の防御、そういう機能は依然として私はあると考えておるわけでございます。
  128. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 円レートが大きく動いている中で、五%にしても一〇%にしても、上積みにきくから慎重に対処せざるを得ない、これはおっしゃるとおりだと思うんです。ただ、その五%とか一〇%とかいうものをある程度長い期間をとらえてみた場合に、はたして国内産業保護としてきいているガードの高さなんだろうかということはひとつ考える必要があるんだと思います。局面ががらっと変わったというのは、従来はおしなべての関税障壁で守ってくるというかまえは各国ともとっておりました。ところが、これを乗り越えて通貨変動が来るということになると、アメリカの通商法案がその方向を目ざしているように、また先ほど緊急関税ということでお触れになったように、セーフガードというものを例外的にどうやってつくっていくかというのが、どうもこれからの関税政策の中心になりそうな気がするんです。ひとつそういったものを前提に置きながら、じゃ今日二重にきくから慎重にするかということがほんとうに慎重な対処かどうかをやっぱり一ぺん考えてみたい気がするのは、いまの円レートがフロートしたということをどう政府は説明してきたかといいますと、円の実勢を慎重に見定めたいんだ、片方の関税というのは、新国際ラウンドを迎えて、おっしゃったように、日本もまたあるイニシアチブを発揮していかなきゃならぬということは、下がるということです。いまの瞬間では、なるほど二重にきくとは言いながら、実勢以上の円の切り上げに追い込まれることは極力避けたいということから考えると、実は関税を五%、一〇%持っていたほうがいいのかどうかということは、あらためて今日の課題として考える必要があるんじゃないかと、そう思いますけれども、いかがですか。
  129. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) 私は、関税局長からはなかなかむずかしい問題だと思うんですが、確かに、円レートと結びつけての問題になってくる点で、実は関税政策というのはあらためて考えていかなきゃいかぬ。日本経済の持つ輸出競争力というものが、過重に評価されてしまうというような形はとるべきではない。しかし一面、はたしてどういう事態が出てくるかわかりませんから、緊急関税制度のようなものは、制度としては残しておかなければいけない、そういうふうに考えまして、その点では先生と同じように考える次第でございます。
  130. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 緊急関税制度はもうそれでけっこうなんです。ただ問題は、従来は三なり五なり一〇なりというものを、全部についてつけるのをあたりまえとして関税へは取り組んでまいりました。いま申し上げているのは、ゼロをあたりまえにしてセーフガードを例外にする、こういう関税の仕組みに変えていかざるを得ないんじゃないか。やっぱり気分的にはほしいんだといっても、国際通貨の変動を考えたら結局もとのもくあみで、しかも、それは円の実勢に違った数字が出てくるということと一律にきく。一律にきくということは個別産業対策が打てないということです。で、いま関税ゼロというとずいぶん大ざっぱなという話に聞こえるかもしれませんけれども、それが一番国益にかなうんじゃないか。その意味で、いま次官がおっしゃった話につけ加えて確認したいのはここの部分なんです。だから、緊急関税、セーフガードが必要なんだというぐあいになってくるんじゃないかと思いますが。
  131. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) 関税の法案を御審議願っている局長としては、非常に答えにくいと思いますが、田中総理が、非常に大胆な発言をしたというところも、先生と同じように、これからの関税制度というものは円レートがどう動くかということと結びつけて、いままでとは違う発想で考えなければならぬ段階に来たということを総理は意味したと思うわけですが、局長立場では、法案をかかえておる際ですから、なかなか先ばしったことを申し上げられない、こういうことを御理解いただきたいと思うんです。先生と同じようなことを総理が発言しておったということをお考えいただきたいと思うんです。
  132. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) ただいまの栗林先生の御質問でございますけれども、私ども長期的には、やはり最終的には少なくとも製品関税に関しましてゼロにして、世界の自由貿易の拡大という方向に向かって日本がリーダーシップをとるという姿勢は非常に重要な問題であろうと思います。新国際ラウンドに臨みまするに際しましても、これは直ちに製品関税をゼロにするということはあるいはできないかもしれません。しかしながら、日本の現在置かれておりまする立場から考えますると、ゼロにするのがいいのか、あるいは輸出入というものの手数料と申しまするか、そういうことで名目的な三%なら三%、五%なら五%というものを一律に掛けるのがいいのか、こういう問題はあるいは残っているかもしれませんけれども、いずれにいたしましても、相当低いところの名目的な関税率を残しておいて、そのかわりに例外的にセーフガードの意味におきまして、ある品目、業種によりましては非常に高率の関税をかけて関税障壁を設けるということは一つの考え方であろうかと思います。ただし、その場合に、どの産業を関税障壁を設けて防御し、この産業は自由にしてほっておくのか、ある程度のこういう産業別に対する保護の度合いにもきわめて強く関連をしてくる問題でございますので、かなり現実問題としてはむずかしい問題かと思いますけれども、長期的な観点から申しまして、だんだん製品関税というものをゼロの方向に持っていくという努力は日本の国益に合致するものであると、かように私も考える次第でございます。
  133. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 どの産業をガードの対象にするかは、おっしゃるように、総論賛成、各論反対の国ではむずかしい。これは続けてお伺いしますけれども、いままでの御説明であらかたわかった気がしますけれども、確認しますと、新国際ラウンドに対して日本として臨む姿勢というのは、自由貿易で一番利益を受けている国は資源がない日本だ、それを考えますと、従来以上にそこの中でイニシアチブを発揮していかなければいけない。しかも、国際ラウンドが議論されるスアージというものはフロートしている、そうすると、そこでゼロと言うかどうかは別にして、それを有力な将来の想定として頭に置きながら、今後の関税政策は政府として新国際ラウンドを含めて取り組んでいきます、こう理解してよろしいですか。
  134. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 少なくとも関税率の問題に関しましては、先生のおっしゃるとおりの姿勢で新国際ラウンドに臨むのが一番日本の国益に合致するのではないかということを私は考えておるわけでございます。もちろんこの新国際ラウンドが始まりますまでの間に、関係者と日本の臨む姿勢というものは十分に協議をいたしたいと考えておりますけれども、個人的には私、先生意見と同意見でございます。
  135. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そこで、各論のほうに伺うんですけれども、通産、農林、おいでになっておると思います。  まず通産省にお伺いしたいのは、関税がゼロになるかどうかは別にして、そちらの方向に日本としては歩いていかなければいけないということを想定した産業政策を現在検討し、実施していかれますか。検討過程があったら、あわせてお伺いしたいと思います。
  136. 寺田恵一

    説明員(寺田恵一君) ただいまの質問にお答えいたします。  通産省といたしましては、昨年の秋に関税の一律二〇%引き下げということを実施いたしました。これは新国際ラウンドに臨みますところのわがほうの積極的な姿勢を内外に表明するというのが、その意味でございましたわけでございますが、さらに長期的には、先生が御指摘されましたように、わが国の産業を関税によって保護するという従来の方針から、国際的に太刀打ちできるような形の産業構造に持っていくという方向を通産省としては考えなければならないということでざいます。したがいまして、ただいま先生の御質問に対しては、そのとおりであるというお答えをさせていただきたいと思います。
  137. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そのとおりだということは、そのとおりなんですけれども、問題はそういうコンセンサスをどうやってつくっていくのか、御担当のお仕事の範囲から離れていたら離れていたというお答えでもけっこうですけれども、問題は、私が理解する限りでは、そういう選別をする審議会もないはずだと思う。そういう中で、どうやってコンセンサスを求めながら、しかも、選んでいくのか。日本の産業構造の一番いけないといわれるのは、あらゆるものが全部そろっている。一つの例を申し上げますと、スコットランドの特産品であるウイスキーでさえ、日本では国産で、しかも、うまいものができると、こういう仕組みになっているわけです。そこの中で、どれを捨ててどれをガードしていくのか、これはよほどのコンセンサスが裏づけにないとできない仕事である。そのための環境づくりも含めて、どういうぐあいに取り組んでいかれるのですか。そのとおりだとお答えでしたから、お伺いするんですけれども。
  138. 寺田恵一

    説明員(寺田恵一君) ただいまの問題は、通産省全体として考えなければならない問題でございまして、通商局の関税課長といたしまして、その問題にお答えすることはむずかしいと存じます。ただ、もしもそういう問題を通産省として取り組まなければならないとする場合には、たぶん産業構造審議会という場がございますので、この場で取り組んでいくことになるのではないかと思います。ただ、これは私の所管外のことでございますので、そうだというふうにお答えは申し上げかねるわけでございます。
  139. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 あとであらためてまたお伺いしますけれども、いま通産省に申し上げた同じ質問を農林省にお伺いいたします。
  140. 吉岡裕

    説明員(吉岡裕君) 先ほどお話しのございました五%ないし一〇%というのは、保護水準としては非常に問題にならないようなものではないかという点につきましては、私ども農林水産物を所管しております者としましては、相当なやはり意味があるというふうに考えざるを得ないと思います。と申しますのは、現状のような非常に国際価格変動の激しい時期、あるいは通貨レート自体が非常に変動しております時期をとってみますと、なるほど五%ないし一〇%というものはわずかなもののように考えられますが、これが通貨レートも安定をし、かつ国際市況というものも安定をした正常な状態を考えてみますと、やはりこの五ないし一〇%というものは、国内の産業にとりましては、相当の意味を持つ数字であるというふうに私どもは考えております。したがいまして、農産物につきまして五ないし一〇%をゼロの方向に持っていくのが当然にいいんだというふうには私どもは考えておらないのでございます。と申しますのは、農産物の場合には、関税のほかに、国際商品協定のようなものもございますし、国内には価格安定制度というふうなものをいろいろ仕組んでございまして、こういうものと、関税というものは、非常に深いかかわり合いを持っておるわけでございます。したがいまして、国際的にも農産物の関税というのは、工業製品とは違った扱い方がされておりまして、この前のケネディラウンドにおきましても、工業製品につきましては一律五〇%カットということがございましたが、農産物につきましては、ポジリストと申しまして、やれるものについて相互に交渉し合うという方式をとっております。それから、特恵制度におきましても、農産物については同じようなポジリストの方式をとっており、先回の、したがいまして、一律二〇%カットの際にも、加工食品については同じような考え方をとりましたが、一次産品である農水産物につきましては、個別にできるものからなるべくそこは生産性を高めていくことが望ましゅうございますので、できるものについて下げていく、こういう方式をとったわけでございます。したがいまして、次期国際ラウンドにおきましても、物のそれぞれの性格に応じまして、国際的な交渉を通じまして、できるものについて下げていくと、調整をしていくということについては、単に、日本のみならず、欧米先進国を含めまして、大体コンセンサスができておるという現状でございますので、私どもといたしましては、そういった線に沿って次期ラウンドその他関税問題には対処していきたい、そういうふうに思っておるわけでございます。
  141. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 農産物についてポジティブリストの対象になる、したがって、セーフガードといった場合に、まず有力な候補になる産業分野であることはおっしゃるとおりだと思います。ただその前に、通貨問題が今日のような混乱した状況がなくなって、やがて安定したらば五%ないし一〇%というのは有力な保護障壁になっていくんだと、いまお答えでございましたけれども、どういう根拠で今日の国際通貨が、やがてあなたが想像されている内容で、昔の安定度に復帰すると判断されたんですか。
  142. 吉岡裕

    説明員(吉岡裕君) これは私がお答えするのが適当かどうか存じませんが、私どもの承知しております範囲では、日本はいずれは固定レートというものを目ざして、国際通貨の調整に臨んでいかれるものであろうというふうに理解をして申し上げたわけでございます。あるいはこれは、大蔵省その他通貨当局からお答えいただくのが適当かと思いますが、私は一応そういうふうに理解したわけでございます。
  143. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私がお伺いした理由は、この種の問題は、将来の情勢判断ですから、やっぱり省庁の違いを離れて一つのそろった見方がなければいけないんじゃないか、希望的な観測からすると、日本もまた固定レートに復帰して、昔のような安定した商売をしてみたいもんだと思いますし、みんな気持ちは変わらないと思うんですけれども、ただそういくと、裏づけるような動きもなければ、資料もない、少なくともわれわれが見る出版物で理解する限りでは、今日はそういう方向にいっていそうもないし、それが改善される見通しが非常に暗い、これは見方の問題ですから、ここで議論はいたしません。ただ、かりの前提をつけて伺います。もしかりに、通貨レートというのが、今後も不安定なものであるとすると、五ないし一〇というのはおっしゃったガードとしての役割りを果たさなくなるかもしらぬ。そのときに、農産物についてはこれはガードするんだということを言うためには、言えるようなたたずまいをまわりにつくる必要がある、その意味で、ある部分は、ゼロか、びぼう的なパーセントになるかは別にして、そこまで踏み切っておく必要がある、仮定の前提を置いた質問ですけれどもそうはお考えになりませんか。
  144. 吉岡裕

    説明員(吉岡裕君) たとえば、変動相場制のもとにおきましても、極端に非常にフレながら動くということではなくて、二百六十五円とか、そういう一つの水準を持ちながら日々フロートしていく、こういうのが実態であろうと思います。そうしますと、この前も、たとえば、ドルが一割切り下げられたということが、非常に通貨面あるいは貿易面で意味をもちましたように、フロート制のもとにおきましても、農産物貿易などを考えた場合に、一割というものはやはり相当な意味を持つだろうということを私は申し上げたつもりでございます。そこで、しかしながら、そういう保護水準あるいは国内の価格水準と結びつきました農産物の関税制度というものを、いつまでもそのままでいいというふうに考えているわけではございませんで、できるだけ消費者利益も考えれば、生産性を高めていって、究極的にはなるべく関税を下げていくということが国民経済上も望ましいことは当然でございます。したがいまして、農業関係におきましても、単に保護障壁をめぐらしておるということではなくて、構造改善その他の事業を通じまして、生産性を高める努力をしておるわけでございまして、そういうものと見合いながら、関税についても適正な水準に持っていくように年々努力をいたす、こういうことで進んでまいりたいと思っているわけでございます。
  145. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 五%、一〇%ではなくて、一五%以上の品目をかりに拾ってみますと、圧倒的に農産物が多いわけです。例を申し上げますと、たとえば、粉乳は二五から三五%くらい、ミルク、クリームは二五%、バター、チーズは三五と、あえてあげるに及びませんけれどもそれぞれ並んでおります。で、農産物であるから当然のことですけれども、国民生活に対する影響度というものはより直接的にきいてくる。したがって、いまお答えのような、だんだんと下げていきたいんだと。そのだんだんと下げていきたいんだというのは、ある程度計画を持って、五年なら五年、三年なら三年という計画を持って提示していただけるものなんでしょうか。なぜかというと、努力したいというのは簡単なんですけれども、あと三年、五年でやっていくんだということは急速に具体性が出てくる。やっぱりものごとというのは、目標を一ぺんきめてそこに向かって努力するということがなければいけないと思うんですけれども、いま一五%以上として乳製品なりグレープフルーツなり茶なり云々とたくさんございますけれども、こうしたものは、ある年次計画を組んで下げていきます、そうしたものは近い将来お示しいただけるんでしょうか。
  146. 吉岡裕

    説明員(吉岡裕君) ただいま御質問のございました日本の農産物の関税水準でございますが、これは現在大体平均税率に直しまして一五・六%くらいになっております。ただ、この中には、特別の理由のございます砂糖、バナナといったような高関税のものが含まれておりまして、この砂糖、バナナを除きますと、五・九%という関税水準になります。これは国際的に見ましてもいわばおかしくない、恥ずかしくない水準でございまして、たとえば米国、これは非常な農産物の輸出国でございますが、関税は、農産物については五・一%、英国が七%、ノルウェー等が三・四%、これは低うございますが、ECをとりますと、これは、御承知のように課徴金制度を関税のほかに合わせて取っておりまして、この課徴金の分を関税に直しますと二五%という異常に高い税率になっております。したがいまして、私どもとしては、現在の日本の農産物の関税水準は、幾つかの例外を除けばそう恥ずかしいものではない。特に穀物とかいう主要な農産物についてはほとんど関税はゼロ、しかも、輸入制限はない、こういうことになっておるわけでございます。  そこで、先ほどお話のございました幾つか高い関税のものについて、関税が唯一の保護手段になっておる場合と、輸入制限等と結びつけて関税が設定されておるというふうなものとございます。そこで、輸入制限等とくっついております場合には、関税を下げてみましても、直接にそれが消費者のメリットにならないということもありまして、そういう輸入制度とあわせて関税というものを考えていかなければならない。それから、関税だけが保護水準になっておりますようなものにつきましても、たとえば、先生がおっしゃるように、一つの計画をつくって、そこへ何年かで持っていくという計画がつくられれば一番いいと思うのでございますが、御承知のように、国内では一方いろいろインフレが進行しておる。また、国際的には農産物と申しますものは非常に価格変動の激しい産品でございまして、そういうものを前提にいたしまして、何年か先に関税水準をゼロにしていくとか、あるいはここまで下げるということを年次計画という姿でつくり上げることは非常にいま困難な産品であるということで、やはり毎年毎年できるだけ下げるという方向で努力をしていくというより、目下のところ方法はないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  147. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 深くさらに突っ込んでお伺いするつもりはありませんけれども、これは農林省のほうか、関税局かわかりませんけれども、国際交渉をする場合に、取引材料として使われるものというものはあるんですか。この中で農産物というのは、そういう危険性、可能性というものは今後あまりないんですか、その点いかがですか。というのは、外国に比べて全体の水準はまあまあのところにいっているんだ、あとは国内の価格支持政策も含めていろいろの組み合わせがあるのでそう簡単にいかないのだ、今後はそういう国内的配慮だけでやっていっても、日本全体とすると大きく国益をそこなうことはない、そう理解していいのか。そうではなくて、あるものについてはたいへんなバーゲニングパワーを持った税率なんだという部分があるのか、その辺はいかがですか。
  148. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 農産物の関税につきましては、今日まで私ども各国とバイラテラル、あるいは多角的な交渉の場におきまして、日本の農産物の関税が非常に高過ぎるということで、各国から不満を持たれたことはございません。ただ、今回御審議をお願いいたしておりますが、バナナの関税等は、要するに世界的な水準から比べましても非常に高い、いわゆる六〇%という季節関税がかかっておるわけでございまして、今回の改正案で五%ずつ二年間にわたって一〇%引き下げるというお願いをしてございますけれども、これに関しては、日本としては幾ら何でも高過ぎるのではないかというような話は私どものところにまいります、外国からの大使館員等から文句を言われることはございましたけれども、一般的に日本の農産物が非常に関税が——むしろ自由化の問題に関しましては言われますけれども、関税水準それ自体に関しましては、バーゲニングパワーを持つとか、あるいは高過ぎるというような不満はあまりないように感じております。
  149. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 これは農林省にお願いしたいのですけれども、農業の場合は、情勢変化に対する対応が非常にむずかしい、時間がかかるという面があるようです。いまのお答えで、国際交渉の結果、ある日突然にという可能性があるものはそうはないということから、まず安心したわけですけれども、そうはいっても、通貨変動でまとめて大波を食らうことはあるわけでございます。その意味で、むずかしい問題はたくさんあるということはよくわかりますけれども、だからより先に先を見た対策を今後ともぜひ御検討いただきたいと思います。  時間がありませんから次の点に移りますけれども、特恵関税とシーリングワクの問題について、そこの中に、電子計算機の部分品及び付属品というものが入っております。これは特恵関税として取り上げられてくる理由というのは、これは私の理解が間違っていたらその点直していただけばいいのですけれども、この種の電子機器については、市場で流通するわけではないんです。したがって、需要先は大体きまっておる、幾ら買うかということは、そこの生産計画できまる。なるほどそれをつくっておるのは特恵受益国であるかもしれない、物事の性格がちょっと違うような気がする。そこまで含めて、この特恵関税の対象に入れて無税扱いをするんですか、その点はいかがでしょうか。
  150. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 御承知のとおり、基本的に特恵関税の特恵税率の適用に関しましては、いわゆる鉱工業産品に関しましては、原則として特恵税率はゼロ、特殊なものに関しては一般税率の二分の一にとどめておるものがございまして、農産物に関しましては原則として要するに特恵の対象といたさないわけでございますけれども、要するにいわゆるポジリストによって特恵の対象にいたしておるわけでございまして、いまの御指摘の電算機の部分品と申しますものは、いわゆる原則ゼロの範疇に入るものでございまして、そういった意味において特恵の対象になっておると、こういうことであろうかと思います。
  151. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 原則ゼロ、これは今回の改正案でゼロになったわけですね。ですから、従来ですと、電子計算機の部分品及び付属品は七・五%の税がついている。これは特恵としてついている。それが今回無税になる。たてまえ無税といいながら、それを変えたいきさつというのは、別にこれは国内市場に対して撹乱要因を持つわけではない、ごく制限された取引である。普通理解している特恵というものから少しはずれているんじゃないか。勘ぐるようで恐縮ですけれども、これとシーリングワクの拡大というようなことをつなげて考えますと、何か電機産業のための一つのチャンネルをつくったのだと読めないわけでもない。その点でお伺いしている。
  152. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 実はそういう意味ではございませんで、この電算機の部分品に関しましては、今日までいわゆるセンシティブ品目ということで二分の一にとどめている品目の中に数えていたわけでございますが、現実問題として後進国、要するに特恵受益国から日本に対して、特に電算機の部分品が輸入をされる——韓国から若干実はあるわけでございますけれども、こういうものは、日本の国内産業に対して別に何らの影響はないということからいたしまして、センシティブ品目の二分の一にとどめておく必要がない、こういう判断から、これをゼロにいたしたわけでございまして、現実問題といたしましては、非常にわずかなケースでは韓国からの輸入がございますが、これはいわゆる特恵の天井ワクの拡大というような問題とは全く無関係で、現実はその天井にとても達しない量の輸入しかないわけでございます。
  153. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 くどいようですけれども、従来は七・五%だったわけですね。それを今度無税にしたのは、いろいろ調べてみましてどうもまずいから直すのですか。
  154. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 一番最初に申し上げましたように、鉱工業産品に関しましては原則がゼロでございます。いわゆるセンシティブ品目のみ二分の一にとどめる、それから二分の一が七・五%に相当するものでございますから、今日の段階に至りましては、その電算機の部分品というものは、特恵の適用の中から考えまして、原則に戻しましても一向に日本の国内産業に対する影響はない、かような判断から、原則に立ち戻りまして、鉱工業産品は原則ゼロという原則にのっとって今回改正をお願いをいたしておる、こういう次第でございます。
  155. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 わかりました。将来その方向で鉱工業産品の五〇%引き下げ品物がさらに下がっていくんだし、たてまえはあくまでゼロなんで、いわばその整理の一環だと、こう理解しておけばよろしいですか。——わかりました。
  156. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 現在二分の一、五十七品目昭和四十七年度まではあったわけでございますが、今回六品目、原則に立ち戻りまして、四十八年度は五十一品目に、いわゆるセンシティブ品目はなったわけでございます。
  157. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 最後に一点だけお伺いします。  関税を下げてもちっとも物価に響かないじゃないか。これは、先ほど局長からもたいへん残念だというお答えでございました。そこで、こういう調査検討をしたことがございますかと伺いたいのですけれども、実際に末端の小売り価格に変化を期待する場合に、関税の引き下げ幅、これが実際は問題になってこないのだ。なぜこんなことをお伺いするかといいますと、末端の商店で、正札を出す場合、必ずしも積み上げてきたコスト計算だけで出すわけではなくて、値段の見ばえというやつがあるわけです。九十九円じゃどうも書きづらいから百円なんだと。そこになおかつ五円下がったと言わせるためには、関税の下げ幅というのはある幅があるじゃないか、これまでは原材料の輸入の場合には、一%でも直接きいたわけです、コストに入ってくるわけですから。今度は流通過程を経て、末端の商店のところで出す場合に、一%、二%だと、かりに、たとえば、百円のものが従来一〇%の税率で百十円についていた。一%下げて百九円と書くかというと、まず書かないと思うのです。その意味で、従来は原料輸入がどちらかといえば、主の関税政策でしたけれども、これからは完成品輸入が多くなって、しかも、末端の消費価格までストレートできかせていきたい、そうなると、下げ幅というのは、ある程度ジャンプする必要がある、その面で御検討されたことがありますかを伺いたいと思います。
  158. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 非常に貴重な御意見でございまして、率直に申し上げまして、今日までいわゆる関税の引き下げ幅のジャンプによって、要するに、小売り商の心理に影響する問題であろうかと思いますけれども、そういう意味の検討をいたしたことはございません。しかし、非常に貴重な御意見でございますので、私どもこれから少し勉強さしていただきたいと思います。
  159. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いま申し上げたことは、日本でもあまり研究がないのだそうです。そうは言っても、消費者心理とか、小売り商の心理ということを考えないと、結果が生まれてこないわけですから、新しい分野だと思いますけれども、しかるべく御検討をぜひお願いしたいと思います。  以上で終わります。
  160. 多田省吾

    ○多田省吾君 関税定率法等の一部を改正する法律案につきまして若干質問いたします。  提案理由の説明によりますと、「最近における内外の経済情勢の推移に対応し、対外経済関係の調整、国民生活の安定に資する等の見地から、」とこのようにおっしゃっているわけでございますけれども、この内容、これは従来の円対策の一環としてやるということなのか、あるいは日米貿易不均衡の解決も考えているのか、またどのくらいの効果を考えているのか。あるいは「国民生活の安定」、これは当然物価対策等もおっしゃっているのだと思いますけれども、大体その効果をどの程度考えておられるのか。また「対外経済関係の調整」、これは非常に大きな問題でございますが、根本的にこれをどのように考えておられますか。
  161. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 今回御提案をしております関税の改正案は、昨年の秋にいわゆる第三次の円対策の一環といたしまして関税の一律二〇%引き下げをいたしたわけでございますが、それに加えまして、特恵関税制度の改善等を行なって、開発途上国との間の経済取引を拡大すると、これが一つの柱となっております。それがいわゆる提案理由の中にありますところの「対外経済関係の調整」ということに符合をいたすわけでございまして、他方物価問題といたしましては、物価の安定等国民福祉の向上の要請にこたえますために、生活関連物資の品目に関しまして、関税の引き下げをはかっていただきたい、かような提案をいたしておるわけでございまして、こういったような措置全体といたしまして、やはり日米貿易の不均衡というものに対しまして、これだけで解決するという問題ではもちろんございませんけれども、私どもの感じでは、前回の十一月の関税の一律二〇%引き下げと、今回お願いいたしておりますところの関税の引き下げと、この二つを合わせまして、貿易に関しましては、輸入効果といたしまして、約三億ドルの輸入増大効果があると、かように考えておるわけでございます。
  162. 多田省吾

    ○多田省吾君 質問が方々に飛びますけれども、ただいま開発途上国との関係で特恵関税の提案をしたというお話でございますが、この特恵関税供与によって発展途上国産品と競合するということが非常に大きな問題になってきます。特に中小企業においては、合板だとかいろいろな問題がありますけれども、局長はこの程度の改善によって、わが国の関連中小企業等に対する影響はどの程度に考えておられますか。
  163. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 特恵関税のワクの拡大、あるいは関税率の引き下げをいたしますについては、事前に通産省なり関係の省と十分に話し合いをいたしまして、今回提案をいたしておりますところの特恵関税の改正に伴いまして、日本の中小企業に対しましては影響がないと、かよう九品目についてのみ特恵の税率の引き下げ等を御提案いたしておるわけでございます。
  164. 多田省吾

    ○多田省吾君 今回の改正によって、関税率の引き下げ等による減税額が五十三億円であると、このように見込んでおりますけれども、積算の根拠ですね、それをまずお伺いしたい。
  165. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 今回の提案をいたしておりますところの関税改正によりまする減税見込み額は、御指摘のように五十三億円と私ども試算をいたしておりますが、これは、関税率の引き下げあるいは関税制度の改正につきまして、個々にいわゆる昭和四十八年度の輸入見込み額、あるいは関税率の引き下げの幅等を勘案をいたして算定をいたしておるわけでございまして、今年度の関税収入全体は五千六百二十四億円でございますが、こういう、これがなかりせば五十三億円さらにこれに上積みをされたであろうということでございますが、その内訳といたしまして、四十八年度の減収内訳は、特恵関税制度の改正に伴いますものが八億円、それから、生活関連物資等の関税引き下げに伴いまする減収額が十八億円。それから、通関の簡素化に伴いますものが二十億円、制度改正に伴いますものが七億円、合計五十三億円と私ども計算をいたしておるわけでございます。
  166. 多田省吾

    ○多田省吾君 この法案を立案した段階においては、今回の国際通貨の変動ということは想定してなかったと思いますけれども、このフロート制から固定相場制に向かうのは秋以降ではないかという観測も出ておりますけれども、そういったことは問題外としましても、このただいまおっしゃったような関税収入の見積もりというものが、こういう変動相場制移行によって当然変更が予想されると思いますけれども、これは考えておられるのですか。
  167. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 御指摘のように、確かに私どもが御提案をいたしておりますところの法案を作成する段階におきましては、今日の相場の変動は予想いたしておらなかったわけでございますが、変動相場制のもとにおきまするところのレートの水準であるとか、変動相場制の期間であるとか、あるいは国内経済に及ぼす影響、特に関税の場合には、レート変更に伴いまして輸入が増大をするという面もあるわけでございまして、それに伴ういわゆる関税収入の増加になる要因もあると、こういうようなあまりにも不確定な要因が多いわけでございまして、現在の段階におきまして、年度間を通しての輸入に及ぼしますところの影響、したがって、関税の税収見積もり、こういうようなものを的確に把握することは非常に困難でございますので、現在これを変更するという考えは持っておりません。
  168. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほどもお話が出たようでございますが、わが国の非関税障壁といわれる残存輸入制限三十三品目のうち、二十四品目は農産物。そのうち水産物もありますけれども、いままで大きな理由があって残存したわけでございますが、アメリカが最も強く要求しているのがオレンジ、果汁、牛肉、この三品目だと思いますけれども、これは予算委員会等においても総理等もいろいろ答えられているようでございますけれども、農林当局は、これをどう考えておられるのか、まず農林省からお尋ねしたいと思います。
  169. 吉岡裕

    説明員(吉岡裕君) ただいまお話のございました三品目は、現在米から他の成長作物に転換をしようといたしますわが国農業にとりまして、非常に重要な基幹的な産品でございますので、その三品目等について、自由化を行なうということはきわめて困難であるというふうに考えております。
  170. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵当局にお尋ねしたいのですが、この二十四品目の農産物の残存輸入制限を全部自由化したとしても、巷間、五億ドルほどの改善しかできない、対アメリカは一億ドル程度である、このようにもいわれているわけでございますけれども、その辺どうなのか。  それから、いま農林省が非常に消極的なことをおっしゃっている。われわれもこれは早急にやるべきじゃないと、このように考えておるわけでございますが、大蔵当局の御見解を伺いたいと思います。
  171. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 今日まで、御指摘のように、現在残っておりますところの残存輸入制限品目二十四品目、特にその中の二十品目が農産物でございまして、四品目が水産物でございますが、今日まで残っておりますというのは、それはそれなりに理由があって残ったわけでございます。したがいまして、これを自由化するかどうかということは、非常に高度の政治的な判断を必要とするものであろうと私ども考えておるわけでございまして、事務当局といたしまして、これに対してとやかく申し上げる立場にはございませんが、やはり主管官庁であるところの農林省が、国内産業に対する影響というものを主として判断をすべきものであろうかと思いますが、大蔵省の立場として考えます場合に、やはり現在日本の置かれておりますところの国際情勢、国際経済の中における日本立場を考えますときに、できるだけやはり日本の姿勢としてたたずまいを正すという意味におきましては、やはり自由化の方向に進むべきであろうかと思います。したがいまして、もし何らかの財政手段あるいはその他の方法によりまして国内産業への効果が、波及が非常に少なくて済むという手段がとり得ます場合には、やはり自由化の方向で基本的にこれは検討をする必要があると、かように考えておるわけでございますが、個個の具体的な品目を、何をいつ自由化するということの判断は、やはり農林省が中心になって判断をすべきものであると、かように考えておるわけでございます。
  172. 多田省吾

    ○多田省吾君 外務省や大蔵省はなるべく自由化したい、こういうように考えているわけです。そして政府あるいは与党首脳としては、アメリカから特に強く自由化を求められているオレンジを目玉としまして、これにトマトケチャップあるいはトマトソース等を含む合計五品目程度を自由化するような意向で、早ければ四月中にも実施したいというような考えもあるようでございます。そしてこれに対する生産者救済措置として、八百億円から一千億円程度の財政資金を投入して万全の対策をとるというようなことも報道されておりますけれども、これは非常に、この程度でも私どもはむずかしい問題じゃないかと思いますが、農林当局としては、政府のこういう考え、こういう生産者の救済措置がとられれば自由化もやむを得ない、こういうお考えに立っているのかどうかですね。
  173. 吉岡裕

    説明員(吉岡裕君) ただいま先生のお話のありましたようなことが、直接論議されておるのかどうか、私ども事務当局は承知いたしておりませんが、先ほども申し上げましたように、この農産物の自由化の問題は、単に財政上ただ金を配れば済むというものではございませんで、やはり長期にわたって生産性を高めながら、国際競争力をつけていく、そういう過程でいろいろ考えるべき問題であろうというふうに考えております。したがいまして、このような対策の問題は、長期的な観点から慎重に検討をしなければならない問題であろうというふうに考えております。
  174. 多田省吾

    ○多田省吾君 ここでは幾ら議論してもそういうお答えしか返ってこないと思うんですが、まあ食糧全体のことで若干国際部長の御見解を承っておきたいんですけれども、最近、国際的に非常に農産物が不作でございます。ソ連等も非常な——アメリカから小麦輸入をしております。また、北半球が年々非常に温度が下がっておるというようなことで、ここ数年間不作が続くんじゃないかというようなこともいわれております。ですから、わが国のいわゆる農業問題に対する考え方も、もう一回再考しなければならない段階にきていると思います。一方、ヨーロッパ諸国、特にフランス等においても、農産物を相当日本以上に保護しているわけです。これは独立国として農産物は、工業との国際分業の立場で安い農産物を輸入していけばいいというような考えは私は絶対納得できないわけです。そういう観点から、わが国の需給率が、総合的な需給率が年々下がっている。ここ数年間の需給率の減少はどの程度になっているのか、まずその点をお伺いします。
  175. 吉岡裕

    説明員(吉岡裕君) 需給率を総合需給率という姿で見ますと、昭和三十五年八九という需給率でございましたが、これが四十年度八一、四十五年度、まあこれ一番最近時点で正確にわかっておりますものでございますが、七五、こういうふうに下がってきております。
  176. 多田省吾

    ○多田省吾君 そうしますと、四十八年度あたりにおいてはもう七〇%前後に下がってきているような、このように受け取られるわけでございます。まあ、この問題は一応おきまして、日米間の貿易収支の不均衡というものが、工業製品の急激な輸出増によって生じたものでございます。これは先ほど申しましたように、農産物の輸入自由化という日本農業の犠牲によって是正したとしても、たいした改善ははかれないわけでございます。また的はずれでもあろうかと思います。もう二十四品目全部自由化しても年間五億ドル、アメリカに限れば一億ドルといわれているような貿易収支の改善では、年間六十億ドル以上といわれる不均衡是正は全く役に立たないわけです。これによって日本国内では七十三万人に及ぶ大きな被害を受ける、また立ち上がれないという結果も出ます。アメリカをはじめ欧米先進国、特にフランスやイギリス等も国内農業には大きな手厚い保護を加えて、輸入制限品目はわが国の二十四品目以上でございます。ですから、わが国だけが国内農業を破滅してまで自由化する理由というものは見当たらない、このように考えられますけれども、農林省は先ほどお答えになりましたから、この観点から、ひとつ大蔵省にもう一回御見解をお尋ねしたい。
  177. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 全般的に確かに日本の現在の国際収支の黒字のあれが、製品の輸出に主因があるということは御指摘のとおりだろうと思います。日本といたしましては、やはり輸出をある程度抑制し、輸入を増進をすることが必要なことは基本的にはそういうことを考える必要があるわけでございますが、ただ単にその国際収支という対外不均衡という問題だけではございませんで、やはり輸入の自由化と申しますものが、その国内の物価に対しまする影響、あるいは経済の効率化というものに対して役立つという点、こういったようなものを勘案をいたしまして、輸入の自由化を推進をすることは、やはり基本的に考えていかなくてはならない問題であろうかと考えておりますが、御指摘のように、農産物の場合、特殊な品目によりましては、相当多数の農民の方々がこれによって影響を受けるという品目もあるわけでございまして、やはり品目別に検討をいたして、自由化を進める場合にもする必要があろうかと考えております。何をいつ自由化をするかということに関しましては、やはり先ほど申し上げましたように、主管省であるところの農林省の意見が中心になりまして、政府全体として検討をいたすべき問題だ、かように考えておるわけでございます。
  178. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほども物価に対する影響という問題で質問がありましたけれども、関税率の上げ下げということが、物価政策の中でどの程度有効性があるかどうか、これは非常に疑問だと思うのです。その結果、経企庁あるいは通産省も追跡調査をしているというようなことを予算委員会でも答弁されておりましたけれども、もう一回念のためにお尋ねしておきたいのですが、先般の一律二〇%の引き下げによります国民生活関連物資に対する、物価に対する効果というものがどの程度あったのか、現在までの調査項目、またその結果についてひとつお答え願いたい。
  179. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 実は企画庁が参っておりませんので、私が知っている範囲におきましてお答えをいたしたいと思います。関税の引き下げと申しますものは、直接その輸入品の価格の低下をもたらして、さらにそれが割り高な国産品が輸入品に代替をされるという直接的な価格引き下げの効果がございますほかに、輸入品の供給が増大をされますと、全体の需給が緩和をされまして、国内産業の効率化をさらに促進をする、こういうような物価安定の効果があるはずでございますが、御指摘のようになかなかこれが末端価格に影響を及ぼさない、先般の関税一律二〇%の引き下げの結果につきましても、消費物資を中心に現在企画庁で追跡調査をやってもらっておるわけでございますが、先般のその関税の引き下げの効果につきましては、企画庁が、私の記憶によりますと、約十五品目の追跡調査を現在やっておるわけで、できるだけ関税の引き下げの効果が末端に及ぶように現在私どもからも非常に強く企画庁にも要請をしておりまするし、また物価担当官会議ということで、私どものほうからも人間を出しまして、これが効果があるように現在努力をしておるわけでございますが、その数字につきましては、私ども現在手持ちをしておりませんので、後ほど企画庁から先生のところにお届けいたしますように、私のほうかう連絡をいたしたいと、かように考えております。
  180. 多田省吾

    ○多田省吾君 最近輸入品で問題になっているものに豚肉があるわけでございますが、豚肉が非常に高騰している。それで国民感情を非常にさかなでしているような姿がありますが、その中でも大手商社の豚肉脱税問題というものが非常に大きく報道されておりますけれども、この悪用されたスライド関税のからくりというものを御説明願いたい。また、どの程度これが脱税問題があったのかですね、これを簡明にひとつお答え願いたい。
  181. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 御指摘のように、豚肉の関税に関しましては、若干複雑な関税機構になっておりますので、ちょっと図式をもって企画課長に御説明させたいと思います。
  182. 米山武政

    説明員(米山武政君) ちょっと図式をもちまして御説明させていただきます。  これが豚肉の関税制度の仕組みでございますが、これは実は、豚肉の価格安定制度の上に乗ったものでございます。この黒い線が輸入価格でございますが、現在豚肉の価格安定制度と申しますのは、国内の取引価格、それから、豚肉の生産状況等を勘案しまして、大体どの辺に価格を安定さしたらいいかというのを毎年きめるわけでございます。  で、きょう現在のところは、この枝肉で一キログラム四百円というところが、これは中間価格になっておりまして、これより一割下の三百六十円より下がった場合には、畜産振興事業団が無制限にこれを買い上げる。しかし、それより、この中間価格より一割上がった四百四十円をこえそうなときには、今度は畜産振興事業団がその買い入れた肉を放出する。こういう制度になっておるわけでございます。この制度に関税制度が乗っておりまして、現在は、この四百円の線まで、ここから低い価格で入った場合には、差額関税で全部取ってしまいます。この四百円をこえる場合には一〇%の関税がかかる、こういうのが普通の関税制度になっております。これにさらに関税定率法十二条で、著しく豚肉の価格が騰貴し、あるいは騰貴するおそれがある場合には、その一定価格をこえた場合には、それを免税してやるという制度になっておりまして、その一定価格は、大蔵大臣の告示で出ることになっておりますが、いま免税するのが三百八十円の線です。ですからこの三百八十円より上で輸入されますと免税になりますし、三百八十円より下の場合には、三百八十円まで差額関税を取られるわけです。したがいまして、輸入者としましては、三百八十円より高く輸入されたようにインボイス等を改ざんしますというか、直しますと、差額関税が免除と、こういう制度になっておりまして、この三百八十円を境にしまして、これより高い値段の場合には免税、これより低い場合には三百八十円まで差額関税を取られる。したがって、この三百八十円より上の価格で申告しますと税が免除される。この辺のからくりを利用しましたものでございます。よろしゅうございましょうか。
  183. 多田省吾

    ○多田省吾君 ですから、そういう制度がある限り、また第二、第三の脱税事件が続発するんじゃないかと、これは税関の現場の官吏もそう言っているわけでございますけれども、特に先方の輸出業者と、こちらの国内の輸入業者が手を組んで、初めから脱税する考えをもってやられた場合は、これはどうしようもないのじゃないかと、お手上げじゃないかということですけれども、この点はどのように考えておりますか。
  184. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 確かに今回の脱税事件につきましては、先方の輸出をする人間と、それから、日本におきまする輸入をする人間がしめし合わせまして、先方の輸出する者が出しますところのインボイス価格と、輸入申告書の金額を一致した金額で、現実に買った値段よりも高い価格で買ったかのごとくよそおって、インボイスを受けておりましたので、これは現実問題といたしまして、なぜ発覚をいたしたかと申しますると、税関の行なっておりますところの事後調査で、そういう行為を行なったという証拠を見つけまして、それによってイモづる式にだんだんと多数の商社も同じようなことをやっているということで発覚をいたしたわけで、新聞紙上等にも出ておりますけれども、ある商社の担当者が、これは関税の制度が悪いのであるというようなことを言っておったわけでございますが、これは悪いことをしようと思えば、いかなる制度のもとにおいても、私は、悪いことは、脱税しようという人間はあると思うわけでございまして、制度論に問題をすりかえて、顧みて他を言うのは、非常にけしからぬ態度であろうと考えておるわけでございます。と申しますのは、この豚肉関税の制度と申しますものは、豚肉が高いときには免税をして、比較的安い値段で消費者の手に渡るように考えられておるわけでございますし、また海外の価格が安い場合には、差額関税を徴収をすることによりまして、国内の養豚業者を保護をする、この両面、裏表の作用をなす制度でございまして、考えようによりましては、この制度が的確に運用されれば、非常にいい制度ではないかというふうに感ずるわけでございます。したがいまして、その脱税をした者が、関税制度それ自体が悪いのであるというようなことを申すのは、非常にけしからぬわけでございますが、御指摘のように、今後といえどもインボイス価格を改ざんをする、あらかじめ、輸入をする者と輸出をする者がしめし合わせて改ざんをするような場合には、非常にこれは見つけにくいわけでございますが、今回の経験もございますので、私どもといたしましては、今後海外における市況その他に関しましても、十分にひとつ調査をするように努力をいたしまして、こういうような事件がまた起こらないように、やはり事後調査あるいは中間のときの審査を厳重にすると、かような態度で対処していくのが一番効果があるのではないかと、かように考えておるわけでございます。
  185. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ私も、局長のおっしゃるように、当然、法がある限りは、それをモラル的にも、法律的にも順守すべきことは当然でございます。今回は、やはり国内の消費者とか、あるいは国内の生産者等も、こういう制度がいたずらに輸入業者だけを太らせたと非常に悲憤慷慨しているわけでございます。大きなショックを受けたんじゃないかと思うんです。しかし、そういう脱税されやすいような仕組みをそのまま野放しにするよりも、少しでもそれを、そういう脱税されないように改善することもまたひとつ考えなくちゃいけない。こういう観点から質問したわけでございますが、このたびの業者ぐるみの脱税事件は、丸紅とかあるいは三菱商事とか、大手商社を含めて国内商社十五社あるいは海外輸出入業者の代理店七社、あわせて二十二社に達している、このように報道されております。その金額も、四十六年にこの制度が適用されてから、本年三月まで判明したものだけでも三億円をこすといわれておりますけれども、大体その内容はどうなっているのか、ひとつここで簡明にお答え願いたいと思います。  今回の輸入豚肉の脱税につきましては、一つには、スライド関税の脱税。二つには、関税の脱税で得た所得の不正申告による所得税の脱税。三つには、国内の豚肉加工業者も、大手商社の架空申告の事実を知って不当な利益を得ております。こういった各種の不正手段による所得税、法人税の脱税も考えられますけれども、こういう業者の輸入総量あるいは不正所得に対して、国税庁——いらっしゃるかどうか、どの程度その実態を把握しておられますか。この二点をお尋ねしたい。
  186. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) まず、第一点でございますが、現在、これ、調査をいたしておりますのは東京、横浜、神戸、大阪の四つの税関において調査をしておるわけでございまして、相当今回の場合、私どもといたしましては、本格的に、徹底的にこの調査を遂行するということで、実はある商社に関しましては、トラック三台分ぐらいの書類を押収をいたしまして、現在鋭意調査を続行中なわけでございます。したがいまして、現在、新聞等にいろんな予測の金額が出てきておりますけれども、私どもでも一体、全体の金額がどの程度になるかということの数字はまだ把握をできていない段階でございまして、この事件に関しましては、私どもできるだけ早く徹底的な調査をして結論を出したいと、かように考えておるわけでございます。
  187. 磯辺律男

    説明員(磯辺律男君) こういった豚肉の輸入に関連します法人税の脱税の問題につきましては、私ども新聞紙上等でそういったことで関税を逋脱しているというふうな情報を得ましたので、特に豚肉の輸入量の多い大手業者等に対しましての調査を行なったわけでございます。この場合一般的に申しますと、輸入業者が真実の輸入価格より高い価格で輸入をしたといったような場合でございますと、その真実の価格と、その高くつけ足した輸入価格の差額というのは、当然に架空原価を計上いたしますので、その限りにおきましては、法人税の脱税につながるということになるわけでございます。ただ、いままで私どもが調査いたしましたのが、大手輸入業者約十二社、それから近く調査を予定しておりますのが十一社程度ございますけれども、いままで私どもの知り得た範囲内におきましては、大部分の輸入業者は架空に計上しました架空原価に相当する金額を、別途また雑益あるいは雑収入で計上しておるというようなことになっておりまして、その総合の収支じりにおきましては、これはとんとんになっておるということでございまして、いままでの知り得た範囲内においては、これが大きな法人税の脱税ということにつながるケースはまれではないかと見ております。
  188. 多田省吾

    ○多田省吾君 そうしますと、ますます計画的な脱税ということになってしまいますけれども、その点はどうですか。
  189. 磯辺律男

    説明員(磯辺律男君) 雑益に計上いたしますのは、一応支払いまして、海外の輸出業者のほうからバックされまして、それを計上したわけでございます。したがいまして、当然こういった経理が行なわれておることは、日本の輸入業者と、それから、海外の輸出業者との間のあらかじめ通謀した取引であるとわれわれは考えておるわけであります。一般的に申しまして、こういった海外取引にからみます不正経理というのが最近遺憾ながら非常にふえてまいりました。私どもとしては、こういったものは一つの典型的な不正計算の事例でございますので、今後、法人税の調査等にあたりましては、十分に着眼点の一つとして、こういった問題についての調査を綿密にやっていく考えでございます。
  190. 多田省吾

    ○多田省吾君 そうしますと、これは完全に海外の業者と国内の輸入業者との間の計画的な脱税ということになります。今回も摘発したわけでございますけれども、その摘発をますます強めていく、ないしは脱税されないように仕組みをもっと改善する必要もあるかと存じますけれども、これはどうお考えですか。
  191. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 御指摘のように、差額関税いわゆるスライド関税制度と申しますものが実施をされております場合に、海外の業者と結託をいたしまして、あらかじめ脱税をする目的をもってそのインボイスを改ざんをするというような行為をやられました場合には、これは非常に確かに見つけることがむずかしい問題であろうかと思います。その点で、こういった差額関税と申しまする制度それ自身の持つ脱税誘発意欲と申しますか、誘発の要因というものがございますが、先ほども申し上げましたように、何と申しましても一番大切なのは、いわゆる納税思想の確立、納税のモラルの問題が基本的な問題でございまして、今回のような事件を契機といたしまして、業界側も相当強くこれは反省をしているきざしも見えているわけでございます。と申しますのは、その事件摘発以後、豚肉に関しまする関税収入が急激に増大をしているというような現象も見えているわけでございまして、こういったようなことで、徹底的にこういう事件を追及をすることによって、やはりモラルの向上にも役立つと、かように考えておるわけでございますが、制度そのものの持ちますメリットとデメリットがあるわけでございまして、国内の養豚業者の保護と、国内の消費者の立場と、こういうようなものに対して、二面のあわせ持つ効果というものも考えなくてはなりませんので、十分にそのあたりも踏まえましてひとつ研究をさせていただきたいと、かように考えているわけでございます。
  192. 多田省吾

    ○多田省吾君 これは大きな問題ですから、大臣にお伺いすべきでございますが、その機会がございませんので、局長に若干お尋ねしたいんですけれども、まあ三月二十六日のワシントンにおける愛知・シュルツ会談なんかでは、報道されているところによりますと、アメリカは当面の通貨危機よりも、むしろ対日貿易の赤字が最大の悩みであると、こういう観点から、六月の日米経済合同委員会の話し合いを待つ余裕もないというような姿で、強硬にセーフガードあるいは輸入課徴金等対日通商上の強硬措置をとってくる。当然オレンジあるいは電算機、IC等の自由化を強く求めてくるんじゃないかと、このように思います。ですから、ただ単に円切りを求めるだけじゃなくて、あくまでもそういう輸入課徴金というような強硬手段も、あるいは自由化を強く求める手段もあわせてもうやってくることは目に見えていることでございますが、まあわが国に二百億ドル近くの外貨がたまり、しかも年々日米貿易の不均衡というのは増大しているわけでございます。そういう観点から、私は、まあいたずらにアメリカに対する報復措置とかそういうことだけを考えるんじゃなくて、まあ、先ほども申しましたように、農産物の輸入自由化をしたところで、対アメリカの不均衡是正はたった一億ドルと、こういう現状でございますので、もっとほかの方法を考えなくちゃいけない。まあ、これは私の意見じゃありませんけれども、中には、アメリカに対して、日本が多国籍企業をアメリカの中につくればいいじゃないかとか、アメリカの土地を買えばいいじゃないかという極端な議論さえ起こっておりますし、あるいは円切りが幾ら二〇%程度になろうとも、輸出を極端に減らさなければ、同じ量の輸出では二〇%のドルがかえって増加して入ってくるだけですから、二〇%の輸出減になっても、入ってくるドルはとんとんでございます。もうこれは減らないんだから。  それからもう一つは、わが国が発展途上国に対するやはり政府間援助というものをもっと強めなくちゃいけない、あるいは資源問題等で、あるいは公害問題等で問題になっております志布志湾とか、あるいはむつ小川原地区につくろうとしているところの石油コンビナートなんかは、東南アジア等に公害をなくしてつくるようにしたらいいじゃないかというような大きな議論も数多くあるわけでございます。また、国際分業といっても、いままでのような、日本が農産物を輸入して、工産物を輸出するというようなそういう国際分業のあり方は、私は絶対いけないと思います。そうじゃなくて、やはり国際協調というのは、もっと幅広く発展途上国を含めて、やはり日本が生き延びる道、また日本が発展途上国に対して相当援助をすると、自主的な援助をするという考えにも立たなくちゃいけないし、こういった観点から、政務次官でもけっこうですが、一体、対米貿易あるいはこれからの国際協調に関して、どういう考えを持っておられるのか、あらあらひとつお答えを願いたい。
  193. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) 御質問が非常に多岐にわたっておりますけれども、一つは、やっぱり世界経済の中における日本の持つ地位ということについての自覚は考えなければいけない、昨日も申しましたけれども、一年間に八十億ドルも、九十億ドルも、二年も続けて輸出超過になるということは、相手方から言いますと、世界経済の撹乱要因になっているという考え方もとられるわけであります。ことに対米貿易の問題でありますけれども、これも理論的にはっきり輸出を多少押えていくか、輸入をふやしていくか、どっちかの手を何らかの手段方法を講じてやっていかなければ、これを縮小することはできないという段階になっておりますから、問題は非常に深刻な問題になってくるわけであります。だからといって、直ちに農産物にしわを寄せていいかといいますと、それは日本の農業のほうが非常に対応が困難な状況でありますから、直ちにしわを寄せていいということにはならぬとは思いますけれども、しかし、農業のほうでも、やはり農業のほうが保護されることは、他の中小企業やその他のほうへと円切り上げという形ではね返ってくるという考え方をとっていただくことは、私はフロートした時代に一番いまわかりやすいことでありますから、農業関係の方にも御理解いただきたいというふうに考える点であります。  それからもう一つは、発展途上国との問題は、対米関係だけでなしに、今後ますます重大になっていくのではないか。たとえば、ベトナム特需がなくなっただけ、相手方の国際収支は苦しくなってくるのは当然でありますから、そういう意味で、やっぱり日本の国際社会における地位というものを考えていかなければならぬ。それから、ただに農産物や中小企業の問題だけではなしに、やっぱり輸出増が一つの大きな問題でありますから、通産省にはいろいろ御意見がありましょうけれども、何らかの形でやっぱり輸出をもチェックしていくような方法もとらなければならぬような事態、深刻な事態に実は臨んでいるのではなかろうか。そういうことをやっていきませんと、自由貿易のメリットを一番受けてきた日本であり、そうして世界がブロック化したり、国際貿易が縮小したりいたしますと、資源のない日本がバイタルな運命に入っていく、こういう事情にありますから、そういった広い意味での国益ということを考えて、一つ一つの問題に対処していかなければならぬだろう、こう考えています。
  194. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、いまの政務次官のお答えにはちょっと不満がある。そういう時代だから、日本の農業に対しても御理解いただきたいというようなことで、一番わかりやすいからということで、自由化をはかるということは、ちょっとこれは問題じゃないかというように思いますね。だから、いまいろいろおっしゃいましたけれども、やはり根本は、日本の産業構造にあると思うのです。やはり生産第一主義、あるいは利益第一主義、これにおちいったから福祉がおろそかになって、どうしてもちょっと日本の産業構造がある一面において強過ぎた部分が出てまいりました。私は何もローマ・クラブが言っているように、成長率ゼロなんということは申すつもりはありませんけれども、資源問題ともあわせて考えた場合、これは大きな問題になると思うのです。この前も予算委員会等では、いまの石油輸入二億キロリットルから一九八〇年ですか、七・五億キロリットル、こういった田中総理の日本列島改造論にあるような姿は当然とれないわけです。こういった資源問題から考えましても、私はいまのようないき方でわが国がいくならば、しわ寄せが全部農業とか中小企業にかかって、いつまでたっても改革はできないのじゃないか、このように思います。それをわかりやすいから、もう農業には、農業者には目をつぶっていただいて、自由化をはからなければならないという論法、それをやったとしても、対アメリカはたった一億ドルではありませんか。根本的に私は、こういった問題に対して、政府のお考えには同調できないわけです。まあ、これはまた大臣にもお尋ねしなければならない問題でございますかう本論のほうに入ります。本年の初頭に、国際経済の激動の中にあって、輸入の拡大あるいは物価抑制政策の上から、また対米貿易不均衡是正という立場から、関税率を機動的に上下に変動できるような行政府の権限として与えるべきであるというような強い意見が財界あるいは与党の一部にありましたけれども、現在においては当時の時点とも状況は大きく変わっております。こういう考えはないと思いますが、関税当局は基本的にこういった考えに対してどういう御見解を持っているのか。また、現行法で十分やっていけると考えているのかどうかですね。
  195. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) 先ほど申しましたのは、私は、基本的な問題では先生のおっしゃるとおりです。しかも、初めて日本の財界で産業計画懇談会が、資源及び公害という点で、日本の成長の方向には非常に限界がある、大きな転換をしなければならぬ。私は財界から、これだけの意見が出たということは非常にめずらしいことであり、私たちは非常に評価しなければならぬと思います。ですから、基本的には尾崎教授が言いますように、闘牛的な経済構造を乳牛的な産業構造に変えていけ、私はそのとおりだと思います。ただ、当面の日米の不均衡をどうするかという問題については、農業を私は犠牲にせよという意味ではありませんけれども、しかし、農業に携わる方も、やっぱり自分たちのほうが保護してもうえる、そのためにはどこかへはしわがいくというようなことも考えて、早く新しい事態に適応するような努力をしていただきたい、こういうことを実は申し上げたわけであります。
  196. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) ただいまの関税率の変更権限を行政府に与えるという問題でございますが、現在でも行政府自体におきまして、緊急関税の発動その他行政府に権限が与えられている面もあるわけでございますけれども、ただいま先生が御指摘になりましたのは、おそらく関税の一律引き下げであるとか、いわゆる引き下げ権限というものを行政府に与えるという面でございますが、この問題に関しましては、物価対策、その他の面におきましても、ある程度研究に値する課題ではあろうかと考えてはおりますけれども、やはり憲法上の租税法定主義の問題であるとか、あるいは国会の審議権の問題とも深く関連をする問題であると私ども考えておりますので、この点に関しましては慎重に考えたいと、かように考えておるわけでございます。
  197. 多田省吾

    ○多田省吾君 その問題と関連しまして、関税定率法の第六条には「複関税」、第七条「報復関税」、第八条には「相殺税」、第九条及び九条の二には、「不当廉売関税」及び「緊急関税」等、国民経済上緊急な必要が生じた場合、その必要に応じて政令によって税率等も変更できるという政令委任の制度が設けられておりますけれども、対外関係の状況に応じて行政府の権限において税率変更ができることになっておりますが、これは具体的にどのようなときに発動するのかお伺いしたい。
  198. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 御質問の、わが国が持っておりますところの特殊関税制度を大別をいたしますと、二つの範疇に分けることができるかと思います。  まずその一つは、複関税ないしは報復関税でございますが、この複関税、報復関税と申します制度は、わが国の輸出品等に対しまして不利益な取り扱いをする国の生産物に対して課しますところのいわゆる割り増し関税、こういうものでございます。すなわち複関税は、わが国の生産物に対して関税上の最恵国待遇の便益を与えない国の生産物に対して課されておるものでございまするし、報復関税は、わが国の輸出品等に対して、第三国の輸出品からよりは不利な取り扱いを差別的に行なっている国の生産物に対して課せられることができることになっておるわけでございます。  それから、相殺関税、不当廉売関税及び緊急関税、この三つの特別関税は、いずれも国内産業に対する損害を一つの発動の要件といたしておる割り増し関税の制度でございまして、これらの制度の発動に際しましては、国内産業の損害要件のほかに、次のような要件を満たすことが必要になっておるわけでございますが、まず相殺関税につきましては、生産国または輸出国で直接または間接に補助金を相手国から受けていること、相手国の中で。それから、不当廉売関税に関しましては、不当廉売の事実が現実問題としてあること。不当廉売と申しますのは、輸出国の国内向けの価格よりも安い価格で販売をしていることでございます。それから、第三番目の緊急関税につきましては、外国におきまする価格の低落、その他の原因によりまして輸入が急激に増加をして、国内産業が損害をこうむると、こういうようにそれぞれ発動の要件が異なっておるわけでございます。  以上の特殊関税制度を、今日まで確かに発動された例はないわけでございますけれども、全般的に輸入の自由化が進展し、さらには関税の引き下げが行なわれると、こういうような場合に、海外におきまするところの価格の低落、その他の原因によりまして、国内産業が不測の損害をこうむると、こういうような事態が生じることも将来において予想されますので、私どもといたしましては、関税率審議会の中にも特殊関税部会というものを昨年の十一月に設けていただきまして、これに対して弾力的に対応し得るような体制を整えてまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  199. 多田省吾

    ○多田省吾君 ちょっとアルミについて一点お伺いしておきますが、アルミ精錬業界では、通貨調整で非常に追い込まれまして、一昨年のドル・ショック当時の四十六年十一月から、半年間に前年度同期より輸入が四〇%ふえたと、今回のフロート及び予想される円再切り上げ等がもし行なわれるとすると、相当の輸入増が推定されるということで、アルミ精錬業界でこれ以上の輸出増による業界の悪化を防ぐために、緊急関税発動あるいは特恵供与適用の停止、こういったことを要請しているようでございますけれども、どう考えておられるのか。  この特恵供与については、アルミの場合は、発展途上国に対しては四・五%で、供与ワクが年間六万一千トンでは、特恵を停止しても輸入抑制をさほど期待できないと、このように思いますけれども、第二点としてこの点をどう考えておられますか。
  200. 伊勢谷三樹郎

    説明員伊勢谷三樹郎君) お答えいたします。  ただいま先生が御指摘になりましたように、最近におきましてアルミニウムの輸入が漸次増大しつつあるのでございます。その原因は、大きく分けまして二つございまして、一つは、ここ二、一年の世界のアルミの需給というものがアンバランスになりまして、非常な供給過剰で国際価格が低落してきたということが原因の第一でございます。第二には、一昨年の暮れに円の切り上げがございまして、その影響によりまして、さらに、国内の価格に対する影響が大きくなってきたということでございます。  で、どのような影響があったかということを具体的に申し上げますと、従来平均販売価格でおよそトン当たり二十万円で売っておりましたものを、二万円下げるというような状態が発生してまいりました。で、一方輸入のほうは、四十六年の輸入量に対しまして、四十七年は五〇%ぐらい増加したというような現象になってきたわけでございます。その結果といたしまして、国内の生産の操業率は八五%にまで下がりまして、またそれによるコストの上昇ということが非常に大きな痛手になってまいったわけでございます。ことしの二月になりまして、ドルが一〇%切り下げられる、それと、最近の通貨調整ということによりまして、理論的に申し上げますと、この影響によりまして、さらに、輸入価格は、もう二万円安くなるということでございます。一番新しく出ております二月の通関統計によりますると、一番安いものでトン当たりCIFジャパンで十二万三千円というような価格がすでに表示されておりますが、こういうような価格に対抗いたしまして、国内の価格をどこまで下げられるかということが最大の問題でございますが、コストは、先ほど申し上げましたように、操業率が下がることによりまして、逆に上がりぎみであるということを考えますと、このような輸入価格の低落にはもはや追随できないであろうということが予想されます。したがいまして、これに基づきまして、輸入量が急激に増大するのではないかということが予想されております。このようなことが事実これから起きますかどうか、その辺のところはまだわからないわけでありますが、どうも私どもの予想といたしましては、輸入の急激な増加が起こるであろう、これによりまして、国内のアルミ生産者が受けます打撃は相当に大きい、経営が困難になるのではないか、そういうふうに思っております。
  201. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ、大蔵大臣の、この特別国会の冒頭の財政演説の中にも、なるほど政務次官おっしゃるように、基本的には、輸出優先の経済構造を改めることが最も肝要である、このようにおっしゃっておりますが、これは当然です。だけれども、これはいままで輸出優先の経済構造を改めなかったというところから、いろいろなひずみが生じていると思います。ですから、いま申しましたように、非鉄金属とか、農業とか、あるいは中小企業とか、弱い部門が大きなあおりを受けて、いまたいへんなわけです。これはもうだれしも総論としては関税の引き下げを推進する、あるいは輸入を増大する。まあ、大綱的には反対する人は少ない。しかし、各論になりますと、いろいろな影響が出てくるわけです。こういう産業構造にしてしまったこと自体に対しても、これは問題が生じているわけです。ところが、政務次官は、先ほど政府の方々はみんなこのように考えているんだということをおっしゃいましたけれども、だけれども、私は、報道だけですから直接は聞いておりませんが、小坂経企庁長官がああいう産業計画懇談会の意見というものは、お年寄りのお遊びだと、こういうような意見を吐いたというようなことが新聞に出ておりましたけれども、そういう考え方がもしありとすれば、これは大きな問題である、このように思います。ですから私は、いま現在できることといえば、やはり外貨減らしのためには、いろいろたいへんな問題もありましょうけれども、発展途上国に対する政府援助をもっとふやすと、いまの〇・二%なんというんじゃなくて、やはり一%近くまで政府援助をふやすとか、これは緊急にできるわけじゃありませんか。だから、公害等も考えれば、そういう発展途上国に、もう日本においてはとうていできないと思われる石油コンビナートなんかも、どんどん公害をなくした上で向こうにつくるのを援助するとか、こういったことも資源問題の上からも考えなければならないことじゃないかと、このように思いますけれども、どうお考えですか。
  202. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) 私は、産業計画懇談会のことを言いましたので、そういうことばがお出になったかと思いますけれども、私は、やはり日本経済はオールラウンド・プレーヤーであってはいけないのではなかろうか、いままであまりにもオールラウンド・プレーヤーであり過ぎた点があるのではないかということが一つと、それから、おまえはそう言うけれども、事実は政府の責任ではないかとおっしゃいますが、私の記憶では、昭和四十三年ごろから、日本の輸出構造は明うかに変わってきた、これは世論がそう認めておったにもかかわらず、当時政府ではまだ黒字は定着しない、こういうことを重ねてきたために、対応が非常におくれてきたということで、その点は政府の責任なしとしないと思います。しかし、産業構造を変えるということは、言うはやすくて、行なうは非常にむずかしい問題だという点もまた御理解いただきたいと思うわけであります。それから、余ったドルをすぐに発展途上国へ持っていけばいいじゃないかと言いますけれども、発展途上国のほうの事情を考えてみますと、そのためにはかなりの準備がやっぱり必要な点があるんじゃなかろうか、ただ持っていったことが、はたして発展途上国のプラスにだけなるんだろうかと、こういう点も考えていかなければなりませんので、そう簡単に余ったドルをさっそく持っていくというわけにもなかなかいかないところにむずかしさがあるんではなかろうかと、そういうふうに考えます。
  203. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、関税問題について伺いたいと思います。七一年秋の第二十七回のガットの総会に、日本も提唱者の一人になりました新国際ラウンドですね、これはどんなふうに進んでいて、今後の見通しはどういうふうになるのか。  それから、またついでに伺いますが、前回のケネディラウンドの場合と比べてこの新しい国際ラウンドの、何といいますか、討議のおもな中心点ですね、これはどんなところに置かれていますか。
  204. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 新国際ラウンドは、昨年の十一月に第二十八回のガット総会におきまして、まあ本年中に交渉を開始する、七三年中に、日本で申しますれば昭和四十八年中に交渉を開始をするということが確認をされまして、交渉準備委員会というものができ上がったわけでございますが、その交渉準備委員会の作業をいかに進めていくべきかということで、過去におきましてすでに二回会合が持たれましたけれども、この七月にその最終的な交渉準備委員会におきまして、これは七月に相当長い期間、約二十日間ぐらいジュネーブにおいて交渉準備委員会が持たれるわけでございますが、その場におきまして、新しい国際ラウンドで、交渉の内容を、議題を一体何にするかと、こういうことが七月の交渉準備委員会における議題になりまして、ここで一応各国のその交渉の議題に関しまするところのコンセンサスが得られました後におきまして、九月に日本において行なわれる予定になっておりますけれども、ガットの大臣会議が日本で行なわれまして、その大臣会議におきまして、準備委員会におきましてつくられましたところの交渉内容というものが認められましたならば、そこにおいて新しい国際ラウンドが九月以降において発足をすると、かような段階になっておるわけでございまして、現在、したがいまして、そのまだ内容それ自体がはっきり、いかなるものを内容とするかということの議題それ自体が最終的に固まっておりませんものですかう、このケネディラウンドとは一体どういう差があるかという点に関する御質問でございますが、これは今後の交渉の結果によりますので、はっきり特色を明らかにできませんけれども、昨年の十一月のガットの総会におきまして工業品並びに農業品を対象として関税と、非関税障壁と両方を議題といたしますこと、それから、開発途上国問題に対する解決策を考慮すること、それから、多角的なセーフガードシステムを再検討すること、この三つは議題にしようではないかと、こういうことで一応の合意——合意まではまいりませんけれども、一応そこまで話が進んでおるわけでございます。
  205. 渡辺武

    ○渡辺武君 このケネーディラウンドは、名前の示すとおり、アメリカが主唱国ですね、今度の新国際ラウンドは、ジャパンラウンドと当時も騒がれたように、日本も提唱者の一人になっているわけです。しかし、やはりこの問題についてアメリカがどういう方針を持つのかということが相当決定的な影響を与えるんじゃないかという気がしますけれども、この間の三月二十二日でございましたか、アメリカ大統領が国際経済報告をやっておりまして、その中に、この新国際ラウンドに触れているんじゃないかと思われるような点がありますけれども、その要点をおっしゃっていただきかいと思います。
  206. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 御指摘のように、この三月に、アメリカのCIEP報告、すなわち国際経済政策委員会の報告がアメリカの議会に対してなされまして、これは近くアメリカの国会に提出されるであろうところの新しいアメリカの通商法案の内容をおよそ暗示をしているように私どもも受け取っております。したがいまして、アメリカが、一体いかなる通商拡大法案を提出いたしますかということは、最終的には決定をいたしておうないわけでございますけれども、CIEPの報告の概要を御説明をいたしますことによって、私どもの感じを申しますと、まず、関税に関しましては、関税の無制限の引き上げの権限と、引き下げの権限、両方関税に関しましては大統領に授権をすることを望んでおるようでございます。ただし、この場合、諸外国から完全に互恵的な譲許を得ることを前提とした大統領の引き上げ権限と、引き下げ権限、こういうものでございます。  それから次には、行政府が非関税障壁を軽減するための交渉を行なうことの権限を要請いたしておるわけでございます。その非関税障壁の内容といたしましては、工業規格であるとか、関税評価であるとか、あるいは関税分類であるとか、表示の要件であるとか、行政手続、こういったようなものを含むものでございます。  さらに、輸入制限の権限の問題でございますが、これに対しましては、セーフガード、いわゆるセーフガードの発動要件で、その主たる、この報告によりますると、今日までのアメリカの通商拡大法案が持っておりましたところのセーフガードの発動要件と一番違っております点は、国内の輸入の増大が、国内産業並びにそのアメリカの労働者に対する重要な損害またはその輸入がその主たる原因であるという、重大な損害を与えるプライマリーコーズであるということを、今度の新しい報告書の中では非常な特色といたしておるわけでございまして、先般の通商拡大法案の中ではプライマリーコーズではなくて、メジャーコーズ、要するに非常に大きな原因であるということが必要であったのが、これは単独かつ最大と申しますか、プライマリーコーズでも、これが前よりは若干この点が容易に発動が弾力的にできる、こういうような権限を大統領は要請をすることになるのじゃないか、こういうふうに予想をされるわけでございます。  さらに、第四番目の問題といたしましては、国際収支を理由といたしますところの、輸入制限の全般的な増減の権限を大統領に付与してもらいたい、こういうようなことが、主たる先般のCIEPの報告の内容であろうか、かように私ども解釈をいたしておるのでございます。
  207. 渡辺武

    ○渡辺武君 関税の問題について、特に農産物を重視するというような趣旨の記事が新聞に出ております。  それからまた、いまのこのセーフガードの発動の条件ですね、その中でも、市場混乱を何か測定する客観的な基準といいますか、そういうふうなものを設定して、非常にやりやすくするのだというような記事も出ておりますが、その点はどうですか。
  208. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 新聞紙上に確かに農産物のこと、私も記事として読みましたけれども、私どもが読みました限りにおきましては、CIEPの報告書の中には、農産物を特定をして、それに触れておる点は見当たりませんでした。これは推測の記事ではないかと私どもは推測をいたしておりますが、ただアメリカが非常に、御承知のように農産物に関しましては比較的優位の立場にあるわけでございまして、特にECの農産物に対する取り扱いに関して非常な関心を持っていることは事実でございますけれども、このCIEPの報告の中には、特に農産物を取り上げまして、あれした条項はないように私どもは考えております。  それから、この市場撹乱の条項はCIEPの報告書の中には確かにございましたけれども、その市場撹乱ということの判定と申しますものが、今日まで市場撹乱を受けたという、要するに産業の側からの立証が非常にきびしい立証を必要といたしたわけでございますが、このCIEPの内容を私どももよく読んでみますと、まだどういうことを一体考えているのかがわかりませんけれども、市場撹乱の判定に関しまして、いままでよりは要するに弾力的と申しまするか、市場撹乱をもたらしているということの判定の弾力化ということを考えているように感じまするが、これはアメリカ当局の意図もまだ私どもは直接聞いているわけではございませんし、新聞紙上で読んだ限りでございますから、いまのところは確たるお話はいたしかねます。
  209. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、いままである程度ガットの総会などで議論されてきたんですけれども、次のラウンドの議題のおもな項目、これをアメリカが、次の新通商法案の中にやはり同じように盛り込んでいこうという動きを示しているということもわかりますが、特にこのアメリカが、いま御説明を伺いますというと、かなり日本などの立場から見てみますと、きびしい措置をとろうというような動きをとるんじゃなかろうかという点が、非常に懸念されるわけです。  それで、まあそういう立場に立って幾つかの点を具体的に伺いたいのですが、非関税障壁ですね、これがガット総会でもかなり強調されているようですし、それからまた、アメリカの大統領の報告の中でも非常に強調されているようですけれども、一体この非関税障壁というのは、どういうものなのか、特に、日本に関連したおもなものというのはどんなものが考えられるか、その辺どうでしょう。
  210. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 今度の、おそらくそのガットの新国際ラウンドにおきましては、非関税障壁の問題と申しますものが議題の対象になろうかということは予想されるわけでございますが、実は、各国がガットに対しまして、まあ事前の段階におきまして、これが相手国の非関税障壁であるというその申し入れをしているわけでございますが、何か私どもの聞いておりますところによると、まあ世界じゅうを合わせて約八百種類ぐらいにのぼるところの非関税障壁というものを、各国がそれぞれ申し入れているそうでございます。わが国が持っておりますところの非関税障壁であるといって、まあ外国から指摘をされておりますところの非関税障壁と申しますもののおもなものを申し上げますと、残存輸入制限、あるいは輸入承認を必要とするということ、あるいは輸入担保金制度、さらに輸入の標準決済方式、あるいは政府調達、国家貿易と、まあいろいろなこういった補助金であるとか、そういったいろいろなものを、外国から見ました場合に、これが非関税障壁であるというようなことを申し入れられているように私ども聞いております。
  211. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、これはかなり大きな問題だという感じがしますですね。前のケネディラウンドのときには、主として工業製品の関税引き下げということが中心テーマだったと思いますが、特に、アメリカが農産物の問題を非常に重視してですね、これはまあ確かにECに対して非常に大きな関心を持っているということはわかりますけれども、同時に、やはり日本にとっても、この問題は軽視することのできない非常に重大な問題だと思うのですね。特に、日本の残存輸入制限品目、この中では農産物が最も大きいと、そうしてまたこれを自由化した場合に大きな打撃があるということは、農林大臣自身が認めていらっしゃるところですから、非常にこれは大きな問題だと思うんです。その上に、いまの御説明によりますと、国家貿易主義も、これが非関税障壁の中には入る、こういうことになりますと、いまの農産物で国家貿易の対象になっているのは、これは小麦でしょう。そのほかにありますか。
  212. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 現在日本の国家貿易は十ございまして、また小麦、大麦、米、たばこ、塩、そういうようなものが国家貿易になっております。
  213. 渡辺武

    ○渡辺武君 そういうことですから、これまでが非関税障壁の対象になって、これの軽減緩和ということが、次の国際ラウンドのおもな議題になってくるということになりますと、私は、日本の国内産業を救おうという見地からしても、これは非常に大きな問題じゃあるまいかという感じがするわけですね。  それで、なお少しいろいろ教えていただきたいのですが、いまおっしゃったガットの議題の中にも出ているようです、多角的セーフガードの条項の再検討という問題ですね。これはアメリカでも非常に強調しているようですけれども、これは一体どういうことを意味しているのですか。
  214. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 一番最初のいまの国家貿易が非関税障壁、確かに一応非関税障壁ということになっておりますけれども、ガットの場合におきましては、国家貿易というものは非関税障壁にはならないということに、一応のコンセンサスができておりますが、ガットで議論をされます場合には、国家貿易はおそらくその対象にならない、かように私どもは考えておるわけでございます。  それから、多角的セーフガードの問題でございますけれども、この問題は、やはり全体的な世界貿易の輸入の自由化、あるいは世界貿易の拡大の方向、関税の引き下げという方向に進む場合に、国内的に、国内の産業が非常に損害をこうむるおそれがあるときに、現在御承知のように、ガットの二十三条によりまして、現在でも要するにセーフガートの——失礼いたしました、セーフガートですから、ガットの十九条によりまして、現在でもセーフガードの規定があるわけでございますが、アメリカの立場といたしましては、このセーフガードの発動というものを、いまよりももっと容易に、その発動をし得るような国際的なコンセンサスを得るようにすべきではないか、簡単に申し上げれば、アメリカの主張いたしますところは、そういう点にあるわけでございまして、これがおそらく今度の多角的セーフガードの問題、いかに国際的なコンセンサスを得るかという問題は、これは今回の新国際ラウンドにおきますところの非常に大きな各国の議論の対象になるところであろう、かように考えておるわけでございます。
  215. 渡辺武

    ○渡辺武君 そのやりやすくするということになりますと、アメリカが、日本からの輸入品に対して、これは市場を撹乱しているというようないろいろな理屈をつけて、そうして緊急輸入制限をやるという可能性が十分に、いままでよりももっと大きくなるということじゃないかと思うんですね。で、これは私しろうとでよくわからないんですけれども、いままでは、アメリカがセーフガード条項を発動する場合は、どういうような条件で発動したわけですか。
  216. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 現在までアメリカが発動いたしましたところの緊急関税は、ガットの十九条、ガットの十九条に適合した条件のもとにおいて、緊急関税は発動していると私どもは考えております。
  217. 渡辺武

    ○渡辺武君 ガットの条件はどういう条件が必要なのか。
  218. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) ガットの十九条によりますと「締約国は、事情の予見されなかった発展の結果及び自国がこの協定に基いて負う義務」これは関税譲許を含んでおるわけでございますけれども「の効果により、産品が、自国の領域内における同種の産品又は直接的競争産品の国内生産者に重大な損害を与え又は与えるおそれがあるような増加した数量で、」その自国内に輸入されるときにはこれを発動し得ると、こういう条項になっておるわけでございまして、その「損害を防止し又は救済するために必要な限度及び期間において、その義務の全部若しくは一部を停止し、又はその譲許を撤回し、若しくは修正することができる。」と、こういうような、十九条では条文になっているわけでございます。
  219. 渡辺武

    ○渡辺武君 それは確かにそうだと思うんですけれども、具体的に発動する場合、相手国との協議が必要じゃないでしょうか。一応相手国が合意しないと、このセーフガード条項というのは発動できないと、こういうことになっているんじゃないでしょうか。
  220. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) もちろん第一段の段階としては協議をすることになっておりますけれども、なかなかこの協議と申しますものは、整わないことが多いわけでございまして、協議が整わなかった場合には、セーフガード条項の発動をするわけでございますが、その場合には、いかなる場合におきましても、その代償といたしまして、ほかの産品の関税の低減であるとか代償を提供しなくてはこれを発動ができない。まあ今日までアメリカがセーフガード条項を発動いたしました場合には、すべての場合において、その代償を提供してセーフガードを発動してきた、こういうのが実態でございます。
  221. 渡辺武

    ○渡辺武君 そこに私は、今回のアメリカの考えの一つのポイントがありはしないかという感じがするんですね。とにかく輸入制限をしよう、しかしながら、相手国と協議しなければならぬ、そうして相手国との協議が整わなかった場合は、これはガット加盟国団の裁定を仰がなければいかぬ。協議が整った場合でも、相手国に対してやっぱり多少の譲歩をしないと、この条項は発動できない。かなりこれは制限がきびしいですね。そのきびしい制限をゆるめて、そうしてセーフガード条項の適用をやりやすくしよう、こういうような方向がいまアメリカからぐっと出ている。  こういうことになりますと、もし協議が整わなかった場合でも、アメリカは相手国の意向いかんにかかわらず、かってに、これは市場を撹乱しているからということでセーフガード条項を発動して、そうして輸入制限措置をとるという可能性さえほの見えるんじゃないか。これは非常に大きな問題だと思いますがどうですか。
  222. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 私どももまだアメリカの最終的な態度はわからないわけでございますが、私どもがCIEP報告書その他を読みました範囲内におきまして、アメリカが考えておりますところの多角的なセーフガード条項と申しますものも、いわゆる多国間の協議というものは必要だとアメリカ自身も考えておるわけでございまして、おそらく今度の新国際ラウンドにおいて議論になりますのも、いかなる監視機構をこれに対して設けるかということが非常に大きな問題になると思いまして、アメリカ自身が、ほかの国との協議なくしてかってに発動し得るようなセーフガード条項というものを考えているわけではない、かように私どもは考ているわけでございます。
  223. 渡辺武

    ○渡辺武君 アメリカがガットの主唱国ですから、みずからガット条項を踏みにじっていくと、形式的にもね、そういうやり方をとるか、それともまた、一応形式的には国際的な監視団のようなものをつくってやっていくという道をとるか、これはいろんな道があり得る。しかし、いずれにしましても、アメリカが緊急輸入制限をやりやすくするという方向で、ガットのセーフガード条項を見直そうとしているという基本的な方向は私は変わらないと思う。  日本は、もう化合繊のあの輸入禁止問題で、この点については大きな痛手を受けた。これがさらにやりやすくするというような方向で出られたらたいへんなことですよ。時間がないので、その点深くも追及しないで次に移りますけれども、ひとつその辺はよくお考えいただきたい。  それからもう一つ、先ほどおっしゃった、国際収支を理由にした輸入制限ということを言い出しておりますけれども、一体この国際収支を理由にした輸入制限というものを、アメリカのような大国がやる権利があるかどうか。私はこれは非常に疑問です。なぜかといえば、これはIMF協定でもそうですけれども、為替制限をするのは、戦後、つまり敗戦で非常に荒れ果ててしまった日本のような国が、これがいわば過渡的な措置として為替制限をやることができるんだということになっておった。原則自由化ということは動かなかった。ガットでも私は同じことだと思う。そのガットの十二条の適用国、これは、だからアメリカ以外の国であったのが、いままさにアメリカが、国際収支の赤字を理由にして、そうして輸入制限をしようということを公然と言い出してきている。そういうことが一体できるのかどうだろうか。この点どう思われますか。
  224. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) おっしゃるとおり、一回十一条国になりました国が、ことにアメリカのような大国が、要するに十二条に逆戻りをすると申しまするか、輸入制限を条件にして輸入制限ができるような体制になるかどうかというのは、これは御指摘のように非常に大きな問題だろうと、私どもも考えております。ただ、アメリカが、現在の国際収支に関しまして、非常に敏感と申しまするか、非常に重大な問題であるというふうにアメリカ自身が自覚をしていることはもう御承知のとおりでございまして、何か、メンツをかなぐり捨てているという面がほの見えるわけでございます。  したがいまして、どういうことを新国際ラウンドの場においてこの問題に関しましては持ち出すか、私ども、ちょっと見当がつきかねるわけでございますけれども、要するに、私どもといたしましては、アメリカに対して日本立場からして言うべきことは、そういう場におきましても、二国間においても多角的な場においても、言うべきことは十分に言いたいと、かように考えておるわけでございます。
  225. 渡辺武

    ○渡辺武君 これは重大ですよ。アメリカ自身がガット条項を公然とじゅうりんする、いわばそう言っても差しつかえないですわ、これは。国際収支上の理由で輸入制限をやるんだということをはっきり言っているんですからね、あなたの先ほどの御説明のとおり。そんなばかなことは私は考えられないと思う。不当な措置ですよ、これは。しかも、どうですか。国際収支上の理由で輸入課徴金を、しかも、差別的に課するというようなことを、新聞で書いているわけですね。これは日本目標にしたもんだということも盛んに書き立てられているわけですけれども、その上に、数量制限もやるのだということもいっているようですね。その点どうですか。
  226. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) どうも、その点の問題になりますと、私ども直接の専門家でございませんのではっきりいたしませんが、最近ワシントンから大蔵大臣お帰りになりまして、大蔵大臣の、先方の首脳部と話をされました感覚としては、アメリカが日本に対しまして差別的な課徴金をかける、こういうようなことを具体的に考えているとは自分は思わないと、こういう感じを受けたと、こういうような話を大臣はしておられましたし、また私どもも私どものレベルで、先般エバリーが日本に参りましたし、これはまあときどき——アメリカの大使館の連中なんかの、いわゆる行政府の感覚でございますが、こういったようなものも、アメリカとして、新しいガットの交渉に臨むために、大幅な権限を国会に要請をする必要があるので、その内容に関してはいま検討中であるけれども、新聞等に出ているように、具体的にいますぐ日本に対して差別的な課徴金を行政府としてかけることは絶対にやるべきではないと考えている、というような話はいたしておるわけでございまして、こういう点に関しましては、新聞紙上等で受けますところの印象と、アメリカの行政府が現実問題として考えておりますところとは、若干違うようなのが実態ではないかと、かように考えるわけでございます。
  227. 渡辺武

    ○渡辺武君 それは、いろいろ政治上の考慮ということはあると思います。私は、いまおっしゃったようなところに種々の理由があるんじゃなかろうというふうに思いますけれども、その点はとにかくとしまして、しかし、これはガット条項上どうですか、国際収支上の理由で課徴金を課すことができるということをいえますかな。
  228. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) いわゆるガット税率が設定をされております品目に関しまして、輸入課徴金をかけるというようなことは、私どももの解釈ではガットの二条に反するというふうに理解をいたしております。現在のガットの二条に反すると解釈いたしておりまして、輸入課徴金を一方的にかつ差別的に課するというようなことは、これはガットの第一条に、そもそもの原則に反すると、かように考えているわけでございます。
  229. 渡辺武

    ○渡辺武君 おととしのこの輸入課徴金問題が起こったときに、日本政府はガットに、これはガット条項違反だということを提訴したと思いますけれども、その結論はどうなりましたか。
  230. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 確かにガットにおきまして、アメリカが課徴金を課しました場合に、八月の十五日にアメリカは課徴金を発動したわけでございますが、八月の二十四日、二十五日にガットの緊急理事会が開かれまして、このアメリカの輸入課徴金に関しまして協議を行なった。討議をしてその結論が全く出ていない間に、課徴金が撤廃をされてしまったと、こういう現実がございまして、当時アメリカは非常に、これはもう非常事態であって、要するに、ガット条項の上をいくものであるというようなことで、アメリカは課徴金を発動をしたわけでございますけれども、これに対しましては、日本ももちろんでございますが、ヨーロッパ各国もけしからぬということで、ガットにおきましては議論が行なわれましたが、結論が出ない間に課徴金が撤廃をされてしまったと、こういう結果でございます。
  231. 渡辺武

    ○渡辺武君 もうちょっと——大体時間がないんでもう少し詳しく伺いたいんですけれども、この辺であれしますけれども、しかし、一方で貿易自由の原則だなどと口で言って、そして新しい国際ラウン下にも参加するという態度をとっているアメリカが、他方でもって自分の国だけは輸入制限をやると、しかも、いまのこのセーフガードの問題にしても、輸入課徴金の問題にしても、これはガット条項上からしても、非常におかしいと思わざるを得ないような措置を平気な顔をしてとろうとしている。これはもう国際的な経済政策における力の政策だといって私は差しつかえないと思う。別のことばで言えば、おれの言うことを聞かなければ輸入制限でやるぞと、こういう態度でしょう。乱暴きわまりない態度といって差しつかえない。しかも、こういう国がどうせ討議の中心になるんだけれども、それを承知の上だと思う、日本政府は。なぜ、一体みずから新国際ラウンドなんというものを提唱したんですか。その理由が私はわからない。こんなことでアメリカの言うとおりになっていけば、これは、日本はたいへんな打撃を受ける。輸出入ともに大きな打撃を受ける。いま私がほんの二、三点を質問しただけでその辺は明らかです。どうしてこんな国際ラウンドなんというものを提唱したんですか。その点を伺いたい。
  232. 大蔵公雄

    政府委員大蔵公雄君) 今日まで、日本経済体質と申しますか、そういうものからいたしまして、要するに、世界の自由な貿易の拡大と申しますことは、日本の国益に合致をしていたということは実態であろうかと思います。今後といえども、要するに、日本は今後さらに世界の貿易が自由に拡大をするという方向に進むべきではないかと、進むことが日本の国益にも合致するものと考えられるわけでございまして、ほんとうに、要するに新国際ラウンドが目ざすところのものは、日本の思うような方向にまいりますならば、私は、これはやはり新国際ラウンドを提唱してもおかしくはないと考えております。ただし、各国とも、いまの関税の問題もそうでございますが、やはり最終的には自国の利益ということを主体にいたしましてそれぞれが議論をし、なおかつその中で、世界ができるだけのコンセンサスを、合意を得るような方向でやはりある程度妥協をしていくということも、これは世界貿易の伸展のためには必要な面もあるわけでございまして、各国が自分の主張だけをいたしておりますと、これは、やはり世界は要するに貿易戦争という事態に相なるわけでございまして、私どもといたしましても、先生御指摘のように、アメリカがCIEPの報告の中に盛られておりますようなことを、現実にこれを実行をいたすということになりますると、日本としても相当文句をアメリカに対して言うことがあるわけでございます。したがいまして、私ども今後その新国際ラウンドの場、あるいは二国間のバイラテラルなその交渉の場、その他におきまして、日本の主張すべきところは十分に主張をし、わが国の国益という観点からの交渉を進めたいと、かように考えておるわけでございます。
  233. 渡辺武

    ○渡辺武君 あと二つだけ質問いたします。  ついでにちょっと伺いたいのですが、何か新聞によりますと、通産大臣、日本の自由化の問題も、アメリカがこういう態度をとっているのじゃ考え直さなきゃならぬというようなことを言ったそうですが、通産省としてはどういうことを考えていらっしゃるか。
  234. 寺田恵一

    説明員(寺田恵一君) 輸入課長がおりませんのでかわって答えさしていただきますが、自由化の問題は、これは、むしろ長期的に世界の自由貿易を維持するために、一そう推進していかなければならない問題であろうと思っております。したがいまして、基本的に自由化を進めていくという方向につきましては、通産省は全くこの方向で進みたいと思っております。  ただ、いかなる時期に、いかなる品目について自由化するかという問題につきましては、そのときの情勢により、あるいは多少影響を受けるかもしれません。それは大臣おっしゃいましたように、アメリカの態度がどうであるから、自由化をどうするというようなことにつきましては、これは大臣の真意をよく確かめてみなければならない問題であろう、こう考えます。
  235. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間が来たので最後に一問だけにしますけれども、私は、この問題は、やはり大きな国際的なスケールで見ないと、事の本質はわからないという感じがするのです。  日本が新国際ラウンドを提唱した当時、これはECに関税障壁があって、そうして日本の輸出についても特別な対日輸入制限をやられている。何とかこれを打破しなければならぬということを、盛んに宣伝されたわけですね。ところが、なぜ一体、日本がそれほどこのECの問題を取り上げるのか、これを考えざるを得ない。というのは、日本は対米貿易では非常に大きな黒字を出して、アメリカから盛んに攻撃を受けている。そこで、そのアメリカの攻撃をかわすためには、いま対米貿易に向けているこの輸出を、これをECのほうに振り向けざるを得ない。ここが、私は一つの眼目であろと思う。つまり、対米貿易の黒字を減らすというその手段として、ヨーロッパ諸国への輸出の増強、そのためにはECの関税障壁の打破、そうしてそのためには新しい国際ラウンド、こういうことで、この日本が提唱者の一人になった、こういういきさつじゃないでしょうか。つまり、ケネディラウンドのときには、アメリカが主たる提唱者になった。しかし、今度の新国際ラウンドは、いわばアメリカの身がわりになって日本が提唱者になったというところに事の本質がありはしないか、こう思うのです。  御承知のように、アメリカは、いまドル問題で非常に深刻な事態に当面している。そのドル危機の最大の原因はどこにあるかといえば、これは一言で言えば、アメリカの海外に向けての軍事支出、あるいはまた、かいらい政府などに対するアメリカ政府の経済援助、これがアメリカの国際収支赤字の最大の根本的な原因。しかしアメリカは、この点については触れようとしないで、事をもっぱら貿易問題で解消して、そうして貿易黒字国の日本、これは何とかしろということで盛んに責めている。ドル危機を解消するために日本の負担で解消しよう、あるいは日本以外の国の負担で解消しよう、これがアメリカの基本戦略でしょう。まさに、日本政府の新国際ラウンドの提唱というのは、このアメリカの、いわば国際経済政策におけるニクソンドクトリンの線に沿っての行き方だというふうに見ざるを得ない。そういうことであるがゆえに、日本の農業や中小企業に、非常に大きな打撃があると、もうすでにアメリカの提唱の中でその点がはっきり見えておるにもかかわらず、これはもう前からわかっているはずですよ、そういうことになるというのは。それなのにもかかわらず、新国際ラウンドの提唱者になる、こういうことでしょう。こんなことで一体ほんとうの意味の国益を守れますか。大きな国際経済政策の一つとして、こういう重大な関税政策、この点については、私は政府の政策の根本的なやっぱり再検討を必要としている時期じゃないかというふうに思いますが、その点どうですか。
  236. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) 先ほどから伺っておりましたけれども、私はこまかいことは全く存じません。しかし、歴史的に見ましても、貿易自由の原則というのは、強者の論理であって、かつてイギリスが言い、アメリカが言い、いまアメリカは経済的にはベトナム戦争もありましょうし、アメリカの国内の経済の対応性の弱さもありましょうし、いろいろありましょうけれども、非常に苦しい立場に立って、必ずしもガットをつくり、IMFを提唱したような、それにふさわしい態度に出ていないのは事実だと思います。しかし、一面からいきますと、アメリカの国際収支の非常な赤字の責任の一半は日本にあるというのは、ヨーロッパ諸国も認めている事実だと。こういうふうに考えていきますと、日本にとってはやっぱり貿易が自由であるということが、資源のない国でありますだけに、バイタルだといたしますと、ヨーロッパのECのブロック主義というものも、なるべく早く出てこないように、そして世界が保護貿易主義に戻っていかないようにということを考えることは、日本が一番深刻な事情にある。そういう点から、当面の問題としては、世界の世論が認める程度に、日本も苦しい中でも努力をしていきながら、そうして、しかし、世界の貿易を保護主義にしたり、ブロック主義にしない、それを考えていくことは、私は日本の国益にかかわる問題だと、こういうふうに考えますので、手続の問題等存じませんけれども、そう一方的にアメリカの言うとおりばかりではないと。ことに愛知大臣がこのごろ国際会議へ出ましても、アメリカに対してどしどしものを申している。しかし、そのものを申していること自体の裏づけがないんですから、どうしても裏づけをつくっていくためには、世界の第三国が評価するようなところまで日本も努力をしていった上で、世界の自由貿易というものをある程度守っていくということが一番国益に沿うゆえんだと、こう考えます。
  237. 藤田正明

    委員長藤田正明君) 両案に対する本日の質疑はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時五十四分散会