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委員以外の議員(
和田静夫君) 私は、
日本社会党、公明党及び民社党を代表し、
医療法の一部を
改正する
法律案の提案理由を御
説明いたします。
「おらが病院づくり」、これは経営難から統廃合へと進む全国の自治体病院関係者が、住民とともに立ち上がるときの合い
ことばであります。彼らは統廃合反対、住民
医療の確保の運動の中で、すでに、自治体病院のあるべき姿について、きわめて鋭い問題提起をしております。それは、第一に、民間病院でやれないことをやること、第二に、民間病院でやっている悪いことをやめること、第三に、患者にとってよいことを率先してやること、というものであります。
民間でやれないことをやるとは、診療だけでなく、研究及び各種
医療担当者の研修などを一体的に運営して、高い技術
水準を維持することであり、無医地区への
医療供給に責任を持つことなどでありましょう。民間でやっている悪いことをやめるとは、必要もない薬剤の過剰投与や差額ベッドをやめることであり、また患者にとってよいことを率先してやるとは、患者を各科でたらい回しするのでなく、一人の患者のまわりに各科の
医療担当者が集まるシステムを採用したり、外来の待ち時間を少なくしたりすることでありましょう。
これらは、いずれをとってみましても、公的
医療機関としては当然の
機能であり、
医療の公共性を発揮するための最低の条件というべきであります。しかるに、今日の公的
医療機関は、その定義や基準が全くあいまいで、実態としては、何ら私的なものと変わりがないのみならず、公私の間で患者の奪い合いさえ行なわれる一方で、公的病床規制という奇妙な束縛までも受けているありさまであります。
公的
医療機関というならば、それは
医療供給の中心的な役割りをになうべきであり、採算を度外視して、必要かつ十分な
医療を提供すべきでありましょう。ところが
政府は、公的
医療機関といえ
ども、独立採算の原則の中に放置し、これに対する国の財政責任は、全く果たそうとしていないのであります。
すでに
政府は、四十九年度を初年度とする
社会保障計画を立案中であり、この中で、
医療供給体制の
体系的整備を行ない、自治体病院などを地域
医療の中核にするとしております。しかしながら、いうところの中核的
機能とは何であるか、またこれに対する国の財政責任はいかにして確立するのか、今日に至るもなお明らかにされておりません。私
たちは、ここに本案を提起し、今後の
政府施策の
基本とすることを要求するものであります。
次に本案のおもな内容について御
説明いたします。
本案は、去る七月十日、本
委員会において
社会、公明、民社三党の共同提案になる
医療保障基本法案の
精神にのっとり、地方公共団体、日赤、
社会福祉法人その他公益を目的とする法人が開設する病院を公共病院として位置づけ、国立病院及び公共病院の
機能、公共病院の人員及び施設の基準、公共病院等に対する国の補助を定めることによって、
医療供給における国と地方公共団体の責任を具体化することにしております。
まず、国立病院および公共病院の
機能については、1包括
医療の供給、2
医療に関する教育研究、3オープン・システムの三
機能を必須のものとし、特に
厚生大臣の指定する特定公共病院は、この三
機能のほか、救急
医療または無医地区への
医療供給を担当するものとしております。
公共病院の施設及び人員については、このような
機能上の条件と対応して、新たに基準を設けることとし、たとえば、現行法第二十二条で総合病院が有すべき施設としてあげている諸施設のほか、作業療法室、理学療法室、栄養指導室、
医療相談室などを、すべての公共病院が必置とすることにしております。
次に、公共病院に対する国の補助についてでありますが、まず、地方公共団体が開設する公共病院の設置及び整備に要する費用については、その二分の一を、公共病院の一般的な運営費については、その一部を、公共病院が行なう各種
医療担当者の研修修練に要する費用については、その全額を、特定公共病院の救急
医療または無医地区の
医療のための人員の確保及び施設の整備に要する費用については、その全額を、それぞれ国が負担することといたしております。
公共病院以外に対しても、救急
医療または無医地区における
医療を供給する病院、診療所については、救急
医療または無医地区に
医療を供給するに必要な費用の一部を補助することができることとしております。
なお、現行法第七条の二に定めるところの、いわゆる公的病床規制については、公共病院に採算を度外視した
医療供給を義務づけ、これを中心とした
医療供給体制の再編を目ざす立場から、完全撤廃することといたしました。
以上をもちまして、本案の提案理由
説明を終わります。何とぞ、慎重御審議の上、一日も早く成立を期せられんことをお願いする次第であります。