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1973-11-15 第71回国会 参議院 社会労働委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年十一月十五日(木曜日)    午前十時二十九分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大橋 和孝君     理 事                 玉置 和郎君                 丸茂 重貞君                 須原 昭二君                 小平 芳平君     委 員                 石本  茂君                 上原 正吉君                 川野辺 静君                 斎藤 十朗君                 寺下 岩蔵君                 橋本 繁蔵君                 山下 春江君                 小谷  守君                 藤原 道子君                 矢山 有作君                 中沢伊登子君                 沓脱タケ子君    国務大臣        厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君        労 働 大 臣  加藤常太郎君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        警察庁刑事局保        安部長      綾田 文義君        文部省大学学術        局技術教育課長  瀧澤 博三君        文化庁文化財保        護部長      吉久 勝美君        厚生省公衆衛生        局長       加倉井駿一君        厚生省医務局長  滝沢  正君        厚生省薬務局長  松下 廉蔵君        厚生省社会局長  高木  玄君        厚生省児童家庭        局長       翁 久次郎君        厚生省保険局長  北川 力夫君        厚生省年金局長  横田 陽吉君        社会保険庁医療        保険部長     柳瀬 孝吉君        運輸省港湾局長  竹内 良夫君        運輸省港湾局参        事官       高橋 全吉君        郵政省郵務局業        務課長      永野  明君        郵政省人事局長  北 雄一郎君        労働政務次官   葉梨 信行君        労働省労政局長  道正 邦彦君        労働省労働基準        局長       渡邊 健二君        労働省職業安定        局長       遠藤 政夫君        建設省住宅局参        事官       山岡 一男君        自治大臣官房審        議官       山本 成美君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度等に関する調査及び労働問題に関  する調査  (派遣委員報告)  (中医協の運営に関する件)  (インフレと社会保障に関する件)  (自治体病院赤字対策に関する件)  (社会福祉施設の栄養士及び調理員の処遇に関  する件)  (インフルエンザ予防ワクチン不足対策に関  する件)  (港湾労働問題に関する件)  (外国銀行の労使問題に関する件)  (郵政省労働問題に関する件)  (国立高専学療労働問題に関する件)     —————————————
  2. 大橋和孝

    委員長大橋和孝君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  社会保障制度等に関する調査及び労働問題に関する調査を議題とし、派遣委員報告を聴取いたします。小平君。
  3. 小平芳平

    小平芳平君 本委員会を代表して、大橋委員長寺下中沢の両委員、それに私、小平によりまして、去る十月十七日から四日間の日程で、北海道青森県下厚生労働行政実情調査をしてまいりましたので御報告いたします。  北海道調査は、ウタリ、すなわちアイヌ地区生活環境問題に焦点を当てて行ないました。北海道庁において、ウタリ福祉対策現状を聴取した後に、千歳市蘭越、平取町二風谷、白老白老現地調査をしてまいりました。  第一にウタリ対策の沿革は、明治三十二年に北海道土人保護法が制定されたことに始まります。この立法の趣旨は、ウタリ一般国民生活慣習に同化して、その生活安定向上をはかることを目途として、農耕、教育奨励策住宅、救療などの保護対策を講じることにありました。一方、戦後になって、昭和三十六年、財団法人北海道ウタリ協会が設立され、生活環境改善住宅整備子弟教育促進などウタリ福祉向上のための諸対策が進められてきましたが、結論的には、ウタリ社会的、経済的な諸問題を根本的に解決する対策が、必ずしも十分でないまま今日に至っているのが実情であります。  第二に、こうした中で、現在、ウタリ人口は、昭和四十七年の道庁調査によって、四千五百五十八世帯人数にして一万八千二百九十八人、百十五地区三十九市町村にまたがって居住していると推定されています。これらウタリ地区から年々転出する人が多くなり、地区人口減少が顕著にあらわれ、年齢構成転出者の多くが青年層であるため老齢化傾向にあります。このおもな原因は、青年たちが都会にあこがれるといった理由のほかに、居住地域に適当な就労の場がないなど地域での生活基盤脆弱性によるものが大きな原因になっております。その結果、老人世帯が多くなり、生活保護を受けている老人世帯が四千五百五十八世帯のうち約三百世帯、全世帯の六・七%という高い生活保護率になっていることがわかりました。  第三に、生活環境の問題があります。昭和三十六年度以降、不良環境地区整備事業によって、生活館共同作業場下水排水路地区道路などの整備が行なわれておりますが、現在でも未整備地区が多く残されております。たとえば、日常生活に必要欠くべからざる飲料水確保については、水道以外の水を利用している世帯が全体の一四・七%、六百七十戸を数え、浴場の場合は、居住地域が市街地から遠く離れた地区が多いために、公衆浴場等施設がない地区が全体の八六%を占め、さらに、住宅専用浴場設備を持たない世帯が約千百戸も存在していることがわかりました。これらの生活環境整備事業は現在、国の三分の一補助で行なわれるために、地元財政負担が大きく、思うように事業が行なわれず、国の補助率を三分の二にまで拡大するようにとの要望がありました。  第四に、ウタリ就業問題では、さきの道庁調査によりますと、世帯主の約四〇%、世帯員の六三%が農林漁業に従事し、そのうち専業農家二七%、専業漁家三七・六%の構成になっていますが、その大部分零細規模経営を行なっております。こうした専業になり得ない農林漁家に対して、適当な兼業、転業の機会を与えて、十分な生活収入の方途を講ずる必要がありますが、現状では現在の仕事を続けたいという希望が強く、転業にはかなり困難な問題を伴っております。  現在、ウタリ地区では観光ブームによる観光客相手民芸品木彫りを主体とする専業的家内労働と最近の庭石ブームの中で、庭石採取、販売が行なわれております。しかし、前者は小規模事業生産性が低く、最低工賃についても家内労働法第八条一項に基づいて、木彫りクマの種類によって完成までの作業全体が一個につき六十五円から百六十一円の間に置かれています。そこで今後、生産性を高めるために、共同作業所による共同利用、組織、協業化の促進をはかるかたわら、経営技術面の指導を行ない事業健全育成をはかる必要があります。さらに庭石については、資源が底をつき、国土保全自然保護観点から問題を残しているだけでなく、庭石ブームがいつまで続くか、先行き不安感を漂わせております。その結果、地元では、ウタリ世帯更生資金として、一世帯、一事業所に二百万円程度長期低利融資が受けられるようにと強く要望されました。  第五として、住宅問題があります。ウタリ住宅は、全体の八〇・三%、戸数にして三千四戸が自己の持ち家になっていますが、反面、住宅の質の面では厚さが四分から五分板でつくられた木造寒地不良住宅が大部分であり、しかも二八・七%が建築後二十一年以上経過した老朽化したもので、また、七〇%、戸数にして二千五百五十二戸が緊急に修理改築を迫られております。これは極端な例かもしれませんが、日高、十勝地方では、今日でも夜間、天井を見ると星空が見える不良住宅があるといわれています。しかし、ウタリ経済力脆弱性から新改築の困難な世帯が多く、さらに、現住地からの転居を好まないこと、土地価格の上昇から土地取得困難性などが重なり、住宅改善整備がかなり立ちおくれております。この実情から早急に住宅についても、長期低利資金政策融資促進するとともに、住宅地区改良事業法による改良住宅北海道福祉住宅などの建設によって十分な住宅供給をはかる必要に迫られております。  第六に、ウタリ子弟教育問題があります。ウタリ日本語文字を知ってから七十年を経過しましたが、教育格差を是正するために教育問題は無視できないものとなっております。進学が困難な大きな理由は、やはり経済上の問題にあり、このことは、義務教育就学奨励援助率が中学校で全道の二・八%に対して、ウタリは二九・八%と高い率になっていることでも理解できます。一方、高校への進学率では、全道の七三・五%に対して、ウタリは七〇%の世帯子弟高校進学を望んでいるにもかかわらず、四一・六%と低く、逆に、中卒者就職率は、全道の二〇・五%に対して二倍以上の四八・九%にも達しており、また、義務教育中の長欠児童数も多く存在するなど、以上のような実態から修学資金の拡充などきめこまかな政策的な配慮が必要とされています。一方、ウタリ経済的な貧困状態から、家族が多就業形態をとらざるを得ないこととなり、夫婦共働き世帯が増加しております。特に六歳未満の乳幼児をかかえた夫婦共働き世帯は、三百三十八と推定されており、早期人格形成期乳幼児に対する保育対策充実とあわせて、保育施設整備されれば夫婦共働き家庭生活水準向上につながるものと期待されます。  第七に、アイヌ語とその文化保存研究の問題が提起されました。現在、アイヌ語を十分に習熟している人が少ない中で、北海道文化財保護協会萱野茂氏は、三百五十時間にも及ぶアイヌ語の録音をみずからとり、それを活字に翻訳し、正確なアイヌ語保存研究につとめております。同氏の説明によりますと、こうした研究をしている国立大学は皆無といってよく、逆に、米国など諸外国でむしろ研究が進んでいるといった皮肉な現象が見られるといわれ、国による本格的なアイヌ文化保存と、研究資金の助成、さらに人材養成が望まれていました。  次に、私たち札幌市郊外にある札幌報恩学園を訪れました。ここは精神薄弱児を収容保護するとともに、教育を施すために、大正七年に設立され、現在二百三十人の児童が入園しております。ここでの問題点は、入園児年齢が年々低くなっていることと、重度の精薄児ダブルハンデのある子供たちが多く入園する傾向にあり、その結果、職員人手不足が顕著にあらわれ、現在の国の職員配置基準も五対一から三対一にするための増員措置要望されていました。  青森県について御報告いたします。まず、県庁において、各担当責任者から厚生労働行政実情を聴取いたしました。ここでの主要な問題点は、僻地医療農村の出かせぎ対策に集約されると思われます。現在、青森県下病院は、百九カ所、診療所八百二十八カ所、歯科診療所二百九十カ所が設置されていますが、その五〇%が今日でも木造建築であって、火災予防の面からも建物の近代化必要性があります。一方、医師看護婦充足状況は、医師人数が千六百二人、人口十万人に対して一〇八・八人の割合で存在していますが、その八五%が市部に集中していることから、地域格差が著しく支障を来たしております。看護婦は、県下で約五千人が必要といわれるのに対して、四千五百人程度しか集まらず、当地でも看護婦不足が問題になっております。こうした診療実態から、青森市町村立病院経営協議会では、緊急対策として、昭和四十三年以降、台湾から医師十五人、歯科医師五人の合計二十人、昭和四十八年四月に、韓国から医師二十八人、歯科医師二人の合計五十人を招聘して、現在、僻地医療に従事させています。これらの医師は、わが国医科大学教育されたために、言語、技術の面で、地域住民不安感を与えていないといわれていますが、地元医師会では、僻地診療日本人医師が従事しないことを問題視する声が出始めたといわれており、注目されるところであります。そこで、県では、僻地医療問題を解決する施策として、病院を適正に配置するために、県内を六ブロックに分け、各ブロック医療センターを設け、基幹病院整備地域内医療機関応援体制の強化など広域医療体制整備を進めています。さらに、医療センターには、弘前大学医学部県内国立県立の各病院が相互に連携をとり、医師の卒業後研修の中で、地域診療に従事させ、あわせて医師確保をねらい、すでに昭和四十六年度から、まず下北ブロック事業を行ない、他の五ブロックについても同様に、近い将来、実施する方針であるとの説明がありました。  次に出かせぎ問題に移ります。現在、県内に約七万六千人の出かせぎ労働者がいると推定され、これら出かせぎ労働者は、たとえば、新幹線、地下鉄工事などに多くが従事し、わが国経済成長にかなり貢献しております。一方、昭和四十七年度には出かせぎによる賃金収入を除いた失業保険給付額だけでも、百四十九億円の巨額に達し、出かせぎ労働県内の第四次産業とまでいわれ、県内経済を大きく左右する存在になっています。このように出かせぎ者が年々増加するおもな原因は、昭和四十五年度から実施された米の生産調整営農省力化による余剰労働力の増加、農村生活水準向上、さらに、他産業労働力需要の増勢など、社会経済情勢の変貌によって、農民がより多くの現金収入を求めているところにあります。しかし出かせぎにまつわる深刻な問題点が幾つか提起されました。たとえば四十七年の場合、一、労災事故で五十人が生命を失ったこと。二、賃金不払いではその四五%が未解決であること。三、過労等によって出かせぎ者及び留守をあずかる主婦の疾病が増加していること。四、千八百組にも達する夫婦共かせぎで、留任家庭家庭崩壊子弟教育問題が重なっていること。五、本来の生業である営農生活設計がずさんになってきていること、などがあげられます。したがって、これら諸問題を解決するためにきめこまかな総合的な出かせぎ対策の実行が望まれるところであります。  最後に私たちは、青森市内にあって、隣接して建てられている「県立あすなろ学園」と養護老人ホーム安生園」を訪れました。「あすなろ学園」は、手足の不自由な子供たちを療育しており、現在、入園児百人、通園児四十人をそれぞれ収容しております。ここで出された問題点は、子供たち機能訓練を施す作業療法が、現行社会保険診療点数に計上されていないので、これを保険対象にすること。さらに、作業療法による教材費を国の措置費として十分に予算化することなどでありました。  以上で報告を終わりますが、本調査報告関係資料、各地での要望書などを会議録の末尾に掲載していただきたいと思いますので、委員長よりお取り計り願いたいと存じます。
  4. 大橋和孝

    委員長大橋和孝君) ただいまの御報告について質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 小平芳平

    小平芳平君 今回ウタリ対策委員会として調査に参りまして、ただいま御報告をしたような調査をしてまいりました。  第一に、厚生大臣から、北海道の各市町村、あるいは北海道庁では非常にきめこまかな対策を立てております。事業費も三十五億九千万、それから貸し付け事業等を入れますと貸し付け事業で五十四億四千万というようなきめこまかな対策を立てております。それについては後ほどお尋ねするとしまして、明治三十二年の北海道土人保護法というものでウタリ対策が進められているという点、あるいは政府がどういう姿勢で取り組んでおられるか。北海道庁はじめ現地では非常に熱心に取り組んでおられることは報告いたしましたとおりですが、国の姿勢についてお尋ねしたいと思います。
  6. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 先ほどの御報告によりまして北海道の御当局が非常にきめこまかいウタリ対策につきまして施策を講じておられることを承りまして、深く敬意を表しておるわけでございますが、私どもといたしましては、このウタリ方々日本国憲法のもとにおいてひとしく平等な日本国民である、こういう基本的な考えに立ってウタリ日常生活というものを考えてみますというと、その生活環境において、さらにまた、その所得の状況等におきまして、一般世帯方々格差のあることを認めざるを得ないのでございます。そこで、私どもといたしましては、この格差を縮める、ひとしく日本国民である、こういう考え方に立ってこの格差を縮め、是正していくという方向に進んでいかなければならない、そういうふうな観点から生活環境整備社会福祉施設充実、こういったふうな面に力を尽くすべきであると考えておるわけでございまして、私ども年々必要な予算を計上いたしております。しかし、これだけで十分であるということをはっきりと言い切れないものもあろうかと思いまして、私どもは今後とも生活環境整備や、社会福祉施設充実、そういう方面に、関係各省とも十分緊密な連絡をとりながら、積極的に前向きに努力をいたしてまいりたい、かように考えておるような次第でございます。
  7. 小平芳平

    小平芳平君 北海道土人保護法という、これについては、どう考えますか。
  8. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) これは御承知のように非常に古い、明治三十二年にできた法律でございまして、その当時のウタリ方々生活の安定をはかるということを目的としてできた法律であることは御承知のとおりでございまして、この法律に基づきまして、いろいろ生活向上をはかっておるわけでございますが、現在のところ、実効のある規定と申しますと、給与地——以前与えました給与地の処分についての制限、こういったふうな条項だけが実は実効のある規定になっておるわけでございます。したがって、私どもとしては、こういう古い法律はやめてもいいのではないか、廃止したほうがいいのではないかと、こういう実は考えもあるわけでございます。そこで、先般、だいぶ前になりますが、これについて、廃止したらどうかということにつきまして厚生省だけできめるというわけにもまいりませんので、現地方々の、特にウタリ方々、あるいは北海道庁方々の御意見を聞くということにいたしましたところ、地元におきましては、やはりいますぐ廃止しないほうがいいのじゃないか、やっぱり存続しておいてもらいたい。先ほども法律的に申しますと、実効ある規定というのはほとんどないわけ、一カ所程度規定になっているわけでございますが、やはりこれは存続すべきだと、こういう意見がだいぶ根強いものがあるようでございます。そういうふうな地元の御意見も十分ございましたので、今日まで廃止になっていないわけでございます。したがって、この問題は私どもも廃止してもけっこうじゃないかと思いますが、地元にそういう根強い御意見もあるということであってみれば、やっぱりもう少し慎重な取り扱いをしていく必要があるのではないか、いまにわかにこれを廃止すると、そこまで踏み切るのはどうであろうか、こんなふうに考えておる次第でございます。
  9. 小平芳平

    小平芳平君 地元の御意見につきましては、私たちもいろんな意見を承ってまいりました。慎重にやるべきだという点も御趣旨はよくわかります。  そこで、今度は具体的に不良環境地区改善事業につきまして、この補助率を二分の一から三分の二に引き上げられたいということがかねがね出ておりますが、この点についてはいかがですか。
  10. 高木玄

    説明員高木玄君) 北海道庁なり、先ほど御報告にございました財団法人北海道ウタリ協会のほうからこのウタリ地区対策につきまして私どもいろいろな要望事項をいただいておりますが、その中にただいまお話のございました、この不良環境地区改善事業現行補助率二分の一を三分の二に引き上げてほしいという要望がございます。この点につきましては、現在のところは国が二分の一、それから北海道が四分の一、市町村が四分の一という負担割合で、この不良環境地区改善事業が進められておるわけでございますが、この国庫補助率を引き上げるかどうか、こういった点につきましては関係市町村財政状況等を勘案いたしまして慎重に検討してまいりたい、こういう気持ちでおります。
  11. 小平芳平

    小平芳平君 それは検討もけっこうですが、すでにもう不良環境地区改善事業は年々進められているわけです。で、なおかつ北海道庁からの新しい計画も出ているわけですから、早く結論を出すべきじゃないんですか、もっと。
  12. 高木玄

    説明員高木玄君) この不良環境地区改善事業昭和三十六年から進めてまいっておりまして、現在でも十年以上進めてまいって、これによりまして生活館でありますとか共同作業場、あるいは共同浴場、そういったような施設整備してまいっておるわけでございます。過去十数年にわたってこの補助率でまいりましたので、この補助率を引き上げることについてはもう少し私どもとしてはウタリ地区実態なり関係市町村財政状況というものを勘案して検討さしていただきたい、かように考えます。
  13. 小平芳平

    小平芳平君 もう十年以上もやっているにもかかわらず、もう少し実情を調べなければわからないというようなことはないでしょう。要するに、この二分の一から三分の二に引き上げられたいということについても、きのうきょう出てきている問題じゃないわけですから至急結論を出してください。結論を出すということは、要するに、厚生大臣から北海道庁、あるいは市町村で、現地で進めているこの対策について国も積極的にやると言っているわけですから、積極的に国がやるということはただことばだけの積極的でなくて、こうした具体的な問題を積極的に解決していかなくては意味がないわけでしょう。
  14. 高木玄

    説明員高木玄君) 御趣旨よくわかりますので、前向きに検討いたしたいと思います。
  15. 小平芳平

    小平芳平君 それでは次に、就業につきまして、先ほどありましたように、専業農家、漁家は少ない、少ないというか、要するに、農業専業漁業専業になり得ない方々クマ木彫りなどをやって非常に零細な収入しか得られない。これについては共同作業場をつくっておるところもありますが、これも実際見ますと、まだまだとても機械化された収入水準の高い作業とは言いかねるわけですが、こうしたものに対する援助はどういうふうに考えられますか。
  16. 高木玄

    説明員高木玄君) 先ほど申しました不良環境地区整備事業の中に共同作業場を設置するようにいたしておりまして、本年から新たに大型共同作業場補助対象にいたすようにいたしております。これによりましてこの共同作業場施設設備につきましては国の補助対象ということにいたしております。で、現在この共同作業場ウタリ地区全体で四十三カ所に設けられ、また本年大型作業場が一カ所設置される。こういう状況でございます。
  17. 小平芳平

    小平芳平君 ひとつ、厚生省不良環境地区整備事業を進めていく上においては実態をよく調べていただきたいですね。この共同作業場につきましても、何カ所といえば同じようなものが何カ所かできているように思いますが、実際見るとそうじゃないわけですから、ほんとうに共同というよりも五、六人が集まって作業しているという程度のところもあるわけですから、多いわけですから、それをどう機械化するというか、生産性を高めるかということを研究していただきたいということを申し上げたわけです。  それから住宅が非常に問題で、自分の持ち家で借り入れ金で住宅を建てている人もありますが、中には星空が見えるような、あの寒い北海道で見えるような、そういう極端な住宅もいまなお残されております。これは建設省から、建設省としてはどう対策を進められてきたか。
  18. 山岡一男

    説明員(山岡一男君) 従来は特にウタリのための対策といたしまして特別計上をいたさないで一般施策の中でいろいろなことを講じてまいっております。地域実情に応じまして公営住宅改良住宅、いずれも三分の二国庫の補助をいたします住宅でございますが、そういう賃貸住宅の提供をしてまいっております。ただその中で、改良住宅と申しますのは五十戸以上の不良住宅がまとまってあるところというところが地区対象になっております。これでは実際の実情から見ますと、もっと小さい十五戸とか二十戸とか、そういう不良住宅が集まっているところに対する対策といたしましては不十分でございますので、来年度から特別にそういうものについても三分の二の補助改良住宅が建設できるような施策を予算要求中でございます。で、関係省と相談中でございます。  それからなお、先ほど先生おっしゃいましたように、八十数%は持ち家でございまして、皆さんのためにやはり住宅の改修資金等が非常に必要であろうかと思っておりますが、現在のところ国が準備しておりますメニューといたしましては公庫の貸し付け金だけでございまして、個人貸し付けでございますと、木造の分では北海道では二百三十万円、これを十八年間五分二厘で貸すというのがございます。それから住宅の改修につきましては八十万円、六分、十年というメニューを準備いたしております。ただ、これでは償還のほうが少し高いということでございまして、ことしから道庁のほうで補助金を出しまして二%の金利で元利均等十五年償還、百万円までが限度で貸せるという貸し付け事業を始めておられます。これにつきましては非常にいい制度だと思いますので、これに対して今後国がどのように応援していくかということについて道とよく相談してまいりたいと考えておる次第でございます。
  19. 小平芳平

    小平芳平君 非常に時間がきょうは制約されておりますので間もなく終わりたいと思いますので、建設省に、住宅地区改良事業としての住宅は、先ほど御答弁になりましたように、拡大していかないとちょっと適用しがたいところがずいぶん見受けられました。それは先ほどの御答弁で了解いたします。  それから福祉住宅ですね、これは北海道独自でやる住宅だと思いますが、福祉住宅の比重が非常に高いですけれども道庁の計画自体も福祉住宅の比率が高いので、ひとつそういう点も考慮に入れて、先ほどの公営住宅改良住宅という線でいく場合ですね、なるべくこの福祉住宅が多いということも考慮に入れて進めていただきたいと思います。  それから次に文化庁の方、これは、アイヌ文化は日本では研究する者がなくて、アメリカへ行ったほうがアイヌ文化研究している人がいるというんですが、どうですか。あるいは国として取り組む考えがございますか。
  20. 吉久勝美

    説明員(吉久勝美君) ウタリ文化につきましては、御承知のように、きわめて歴史上、芸術上あるいは学術上価値の高い貴重なものがあるわけでございます。私ども文化財保護部といたしましては、これらの文化財というものを後世のためにりっぱにこれを保存するという目的のためにいろいろな面からその保存対策を講じておるところでございまして、それによって国民の学術研究あるいは利用、公開等にも資するべく施策を進めてまいっておるわけでございます。先ほどお話しのいわゆるウタリの言語につきましても、これを保存するためにいろんな遺稿の整理だとか、あるいは録音テープにとるなどの措置もやっておるわけでございますし、さらにいろいろ民俗史料につきましても有形、無形なものにつきましての指定ないしは選択制度を進めたいと存じておるわけでございますし、さらにいわゆる無形文化財といたしましての民俗芸能もいろいろ貴重なものがあるわけでございます。この点につきましては北海道教育委員会も審議会を設け、その中にウタリ文化部会というものを設けまして検討を開始しているようでございますので、それらと十分な連絡をとりながらその保存、公開、研究、利用に供すべく努力をしてまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  21. 小平芳平

    小平芳平君 そうしますと、先ほど申しましたように、北海道文化財保護協会萱野茂氏が三百五十時間にも及ぶアイヌ語の録音をとっている、これを活字に翻訳し、保存していこうという計画については国として応援しますね。
  22. 吉久勝美

    説明員(吉久勝美君) その問題につきましては、十分道の教育委員会と連絡をとりまして、国としての施策について十分検討を進めてまいりたいというふうに存じております。
  23. 大橋和孝

    委員長大橋和孝君) じゃ、私からちょっとお尋ねと希望を申したいと思うんですが、先ほど小平さんの報告、あるいはまた質疑の中にもございましたように、厚生省関係でだいぶまだ環境の整備やいろんなものがありますし、それから住宅関係の問題もあります。文部省関係のものもあります。あるいはまた就職云々の問題でもやはり労働省関係の問題もあるわけですが、これで現地を見せてもらって、現地の人たちが一番希望していることは国のほうでもう少し窓口を整理して、どのようにして援助充実していくか、これがばらばらなために非常にできにくい、むしろ北海道のほうで独自にやっておられる面のほうが多い、こういうような感を深うしたわけですが、これをなくするために、国のほうがもっと積極的にいまのような配分の、お金の負担の問題もありましょうが、もうそういうような小さな問題ではなくして、全体を早くこういうところでよくするために、国がもう少しある期間相当強力に力を入れて、そして徹底した施策を講じ、援助をし、そして充実するようにしなければならぬと思うのですね。そうするためにはどうしたらいいと思われるのか、それをひとつ大臣のほうで各省庁と窓口を一つにしてやるとか、どこが責任を持ってどこがどこと連絡をとってやるかというふうなものをやらなければいかぬ。それから現地からの要請では、審議会くらいをつくってもらって、そして、年次的にどれくらいのことでこれを完成さすと、どの程度までにするというようなことをもっとやってほしいというような希望があると思ったんですが、こういうことに対して大臣のお考え、それから、また、それをどういうふうに具現化していこうかという、その所信を伺いたいと思います。
  24. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) ウタリ対策の問題につきましては、関係各省それぞれ分担をする形になるわけでございますが、やっぱり関係各省庁とももう少し緊密な連絡をとるということが絶対に必要だと思います。そういうふうな意味で、先ほど来のいろいろな御報告を十分私も承りまして、こうしたことを頭に描きながら関係各省と緊密な連絡をどういうふうにしてとっていくか、そういうことについてひとつ慎重に打ち合わせをいたしまして考えてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  25. 大橋和孝

    委員長大橋和孝君) たとえばその連絡をとるやり方も、ウタリに対する審議会とか、そういうものまでは考えておられないのですか。
  26. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) そういう審議会をつくる必要があるかないか、そういう問題も含めて、関係各省と十分相談をいたしまして連絡を緊密にするようにいたしたいと思います。
  27. 大橋和孝

    委員長大橋和孝君) どうぞよろしくお願いいたします。  ほかに発言もなければ、派遣委員報告はこれをもって終了いたします。  なお、小平君の報告中に御希望がございました資料の会議録掲載につきましては、これを本日の会議録の末尾に掲載することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 大橋和孝

    委員長大橋和孝君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  29. 大橋和孝

    委員長大橋和孝君) 次に、社会保障制度等に関する調査について質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  30. 矢山有作

    ○矢山有作君 厚生大臣にお尋ねしたいんですが、きょうは非常に時間の制約を受けておりますので、私のほうも簡単にお尋ねしますが、御答弁のほうも簡単に要領よくやっていただきたいと思います。  まず、最初にお伺いしたいと思いますのは、中医協をめぐる問題ですが、中医協の紛糾がいまだに続いて正常な状態に戻っておりません。一体中医協の紛糾の原因は何だと考えておられるのか。さらにまた、これまでの経緯と現状、そういったものを簡略に御説明いただきたいと思います。
  31. 北川力夫

    説明員(北川力夫君) 中医協は、昨年の九月に次の医療費改定に向かって再開をいたしました。その後ことしに入りましてから、御承知のように、診療担当者側あるいは支払い者側両方からそれぞれ議題が出されまして、スライド制の問題と薬価問題、これについて本年五月まで毎月二回交互に審議が行なわれました。五月の段階で診療担当者のほうから最終的な個別折衝に入りましたときに、中医協会長の円城寺会長の不信任案が出まして、それ以後いろいろ正常化に努力を重ねてまいりましたけれども、現在までその状態が正常化されないままに至っているわけでございます。そういう意味でございまして、直接の動機は、昨年の五月の段階における不信任案を契機にして現在のような状態に入ったこと。それからまたそれ以後は、なるべく早くこのような事態を打開をするために、大臣をはじめ関係者がいろいろな努力をされつつ現在に至っておるということが現状でございます。
  32. 矢山有作

    ○矢山有作君 紛糾の最初の発端は、会長不信任案が診療側から出されたということでありますが、一体どういう理由で不信任案を出したのか、そこのところが大事なんで、その点を話してください。
  33. 北川力夫

    説明員(北川力夫君) いろいろな理由があるわけでございますけれども、またこれにはいろいろニュアンスの微妙な差異もあるかもしれませんが、私ども承知をいたしております範囲では次のような問題かと存じます。それはすなわち、最終的に支払い者側並びに診療担当者側に対しましてこの問題について個別の折衝を会長はじめ公益委員が行ないました際に、支払い者側のほうから、今回の大きな問題になっておりましたスライド制の導入の問題につきましては、医療の社会化と申しますか、医療の国営化と申しますか、そういうことが前提でなければそういう問題を採用するわけにはいかないと、こういうことの主張があったわけでございます。またバルクラインの問題につきましても、これを引き下げるべきであるという主張があったわけでございます。特に前段の問題について、円城寺会長のほうからそういったふうな主張が、支払い者側の主張が診療担当者側に伝えられたこと、会長としてそういうことを伝えたことが会長としての見識に欠けるのではないか、こういうふうなことがいわゆる会長不信任というふうなことになった主たる動機、原因であろうかと私ども承知をいたしております。
  34. 矢山有作

    ○矢山有作君 いまの御説明を聞いておりますと、会長不信任を出さなきゃならぬ理由は一つもないわけですね、これは。まさに一口で言うなら診療側にとって都合の悪いことが支払い側の委員から出た。それを診療側の人に会長が伝えた、それが不信任の理由というのは、これははなはだ不信任を出す論拠が私はないと思う。まさに診療側のかって気ままなやり方だと思うんですがね。そういう状態に対して、私は厚生省当局は明確な態度をとるべきだと思う。先般厚生大臣に対する公開質問状が武見会長の名前で出ておりますがね、それに対する厚生大臣の回答書があります。そこでこういうことを言っておりますね。「中医協が今日まで各委員の隔意なき意見の開陳を通じ、いわゆる診療報酬の適正化に努めてきたことは事実であるが、反面、関係者の間における意見のそご、対立等もあって運営の円滑を欠き、」云々と、こうなっておるのです。しかしながら、今回の中医協が不正常な状態になったことについてのいまの局長の話を聞いておると、これはもう不正常な状態を来たした原因は明らかに診療側にある。そういうことが明確であるのに、なぜこういうようないいかげんな回答のしかたをするのか。私はこういうときに厚生大臣がきちっとした見解を示すということが事態の収拾のためにやっぱり必要だと思う。こういうあいまいな、どこに紛糾の責任があるんやらわからぬような、支払い側にも責任があるんじゃないかということをにおわせるような回答書というのは、私は不都合だと思う。厚生大臣どう思われますか。
  35. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 今日まで長いこと中医協が存在しておるわけでございますが、三者構成の機関でございまして、その間にいろいろな意見の相違、そご、あるいは感情的な問題等もありまして、今日までときどき中断をしたり、正常な運営ができない、こういう事態が発生してきておりましたことは御承知のとおりでございます。そういう問題につきましては、私どももまことに遺憾とするところであるということを実は申し上げておるわけでございまして、私としては、どちらがいいとか悪いとかいう立場には私はないと思うんです。むしろ正常なる運営に努力することが厚生大臣としての私はつとめである、かように考えておるわけでございまして、私は今後ともどちらがいいとか悪いとか、そういうことを議論しておったのでは、とても問題の解決にはこれはなりません。やっぱり何としてでも正常な運営ができるように努力することが私のつとめである、こういうふうに考えておる次第でございます。
  36. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあ、それは厚生大臣のものの考え方だから私はとやかく言いませんがね。もののいい悪いを明確にしないことが時によっては事態をさらに混乱に導くこともあるということを私は認識しなきゃいかぬと思う。やっぱりいいことはいい、悪いことは悪いと明確にすることが、そのことが反省を求めて事態の解決を促進する場合もあるわけですから、一がいには私は言えぬと思う。やはり今回のような日本医師会側のやり方を見ておると、私はやはりものごとの理非曲直というものは、厚生大臣としては明確にして解決に向かっていくというのが筋道ではないかと思うし、また、そのことが解決を早めることにもなるだろうというふうに認識しております。  次に、お尋ねしたいのは、診療報酬の改定見通しはどうでございますか、年内にやるおつもりなのかどうか。この問題については、先般、公私立病院連盟の代表に対して厚生大臣はこれらの診療報酬改定は年内にやるということを言明しておられるようでありますけれども、お考えを承りたいと思います。   〔委員長退席、理事小平芳平君着席〕
  37. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 最近における病院、さらにまた診療所等の経営等を考えてみますというと、診療報酬の改定はできるだけ早く私は行なうことが適当である、かように考えておるわけでございます。しかし、診療報酬の改定を行ないますためには、厚生大臣が一方的にやるというわけにはまいりません。法律が現在あるわけでございまして、その法律に基づきまして、中央医療協議会の、いわゆる中医協の意見も聞いて厚生大臣が声めると、これがまあ、法律に定められた手続でございますので、その手続がまだとれない状況にありますので、年内にこれが解決できるかどうか、私もいまのところ確たる答弁を申し上げることはできませんが、私は一日も早く診療報酬の改定を行なうべき必要があると、かように痛感をいたしておる次第でございます。
  38. 矢山有作

    ○矢山有作君 いまの御答弁で一つはっきりいたしましたことは、先般日本医師会から、職権告示によるスライド制の導入と不合理点数の合理化の即時実施の要求が出ておるはずでありますが、これは現在の法秩序を無視したものであるとして、この日本医師会の申し入れは受け入れられないということが、いまの厚生大臣の御答弁の中で私ははっきりうかがえると思います。そういうふうに解釈してよろしいか、それが一つ。  それから診療報酬の改定見通しについて、一体いつごろやれるのか。いまの中医協の状態の中では、皆目いまのお話ですと見当が立たない。年内にやりたいやりたいとは言っておいでになるけれども、年内にやれるのか年を越すのか、あるいは年を越して二月になるのか、三月になるのか、五月になるのか、いまの中医協の正常化について見通しがない限りは全然その目算が立たぬというふうに受け取られるんですが、そういう点は中医協の正常化の問題とあわせて、一体どこに目安を置いておられるのか、御答弁を願いたいと思います。
  39. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 職権告示という意味でございますが、私もよく、その意味がよくわかりませんが、私はやっぱり行政府の長として法律に従って問題を処理する、これはもう当然のことでございまして、中医協にかけないで一方的に厚生大臣が告示するということを意味するものならば、それはできないんじゃないかと私は思います。私は、行政府の長として現在ある法律に従って行動する、これは当然のことだと、かように考えております。  それから、見通しがさっぱりやみくもではっきりしてないじゃないかというお尋ねでございますが、確たる御返事ができないということを申し上げておるわけでございまして、診療報酬の改定についての必要性、これは私、先ほど申し上げたとおりなんです。診療報酬の改定はできるだけ早く行なうことが適当である、必要である、こう私は申し上げているんです。それがためには、中医協の正常なる運営がまず解決しなけりゃならぬ大問題でございます。大問題でございますから、まずさしあたり、あまり具体的なことを申し上げかねますが、実は針のむしろにすわったような気持ちで、日夜新聞を見ながら、皆さん方の御意見もかくあらんではなかろうかといったふうなことも想像しながら、実は真剣になって私は努力をしておるわけでございます。その努力がさっぱり形に出てこないじゃないかというおしかりならば、私もまことに申しわけない次第でございますが、非常な努力をしておることだけは御理解いただきたいと思います。そして診療報酬の改定ができるだけ早い機会に行なわれることを期待して努力をしておる、これだけは御理解いただきたいと思います。
  40. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあ、日本医師会の要求しておる現在の法秩序を無視して職権告示で診療報酬のスライド制その他をやれという、これはでたらめな話なんですね、こんなことを大会で決議をして厚生大臣のところへ申し込みをするというようなこと自体非常識きわまる話だと私は思う。だから、そういうようなやり方は厚生大臣としてやらぬということでありますから、これはあたりまえの話です。ところがですね、診療報酬の改定を早くやらなきゃならぬということは、現在の公私立病院関係者等の、これは非常に強い要望ですし、また、これをやらぬとどうにもならないような状態になると思うんです。ところがこれをやるのにはどうしても中医協の正常化が必要だ、大臣のおっしゃるとおりなんだ。そうすると、この正常化のために一体どういう目安を持っておられるんですか。正常化はしなきゃならぬということで。世論の動向を見ながら針のむしろにすわっておるような気持ちだとおっしゃっても、一体どういうふうに正常化していくのか、そのめどが立たない限り診療報酬の改定問題は一向に解決せぬじゃありませんか。だから中医協の正常化について、ではどういうめどを持っておいでになりますか、この方向からお伺いしたいと思います。
  41. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) これも矢山委員十分御承知のことだと思うんですが、これ、なかなか答えるのもむずかしい問題でございますが、中医協の正常化ということは御承知のように三者構成でございまして、三者がそれぞれ同じテーブルに着くということが大事なんですね。テーブルに着くということが大事なんです。そのテーブルに着くにはどうすればいいかということで、まあ、日夜苦労をしていると、こういうことでございます。しかし、私としてはできるだけ早い機会にそういう形に持っていきたいと思って努力をしておるわけで、いつまでがめどだとかいうようなことを答えろと言われてもいまのところなかなかむずかしい問題でございますが、そう私なまけているつもりはございません、実際。なまけてないんです、大いに働いているんですが、なかなかそこまで至っていない。これ、まことに私申しわけないと思います。申しわけないと思うんです。ほんとに開業医の方も、それから病院方々も非常に私は望んでいると思いますので、まあ、今後とも最大の努力をいたしますから、大いに御鞭撻をお願いいたしたいと思います。
  42. 矢山有作

    ○矢山有作君 それじゃ、大いに鞭撻しましょう。  とにかく診療報酬の改定は現在の国民医療の立場からいってどうしても避けられないんだと、そのためには中医協をどうしても開いてもらわなきゃならぬということで公式に会長に対して厚生大臣のほうから中医協の再開を申し入れたらどうですか。そうすれば、それによって事態がどうなるか、そういうふうな緊急の問題を打開するために中医協をどうしても開かなきゃならぬという申し入れをして、なおかつどこかの方面から中医協について難くせをつけて出席しないとかするとか、ボイコットするとかせぬとかいろいろな議論が出れば、そこで初めて中医協の紛糾は一体どこに障害があるのかということが明確になるし、また、その実態を踏まえて国民世論のほうもそれを解決するために中医協を開くべきだということで大きく盛り上がってくると思うんです。やはりこうなると、もううしろのほうで、陰のほうでだれか実力者と会ってごそごそしたって、これはもうとてもじゃないが解決しない。もう正面から中医協の再開申し入れをやったらどうですか、そして事態の推移を見ると。
  43. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) そういう矢山さんの御意見は御意見として伺っておきますが、厚生大臣としてはやっぱり正常なる運営について責任を持つということがこれは非常に大事なことでございますから、開いても一方側が出てこないということになれば、これは正常な運営はできないわけですから、やっぱりある程度はっきり見通しをつけてテーブルに着くということが大事なんですから、テーブルに着くという見通しなくして行動を起こすことは、ある意味から言うと、かえって事態を混乱させ、私は無責任のそしりを受けるんではないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。したがってテーブルに着くという見通しをはっきりつける、これがやっぱり一番大事なことだと、かように考えております。
  44. 須原昭二

    ○須原昭二君 関連。この中医協の再開問題は先般のたいへん論議を呼びました健保法の改正の審議の中で非常に私はこまかく、きびしくこの問題は指摘しておいたつもりです。しかし、今日なお中医協が再開をされておらない。聞くところによりますと十一月二十八日、これは何か自民党と医師会とが討論集会をされるそうですが、それ以前にはできない、それ以後だというお話を聞いているわけですが、その点はそうですが、それが一つ。  もし、そういうことの前提の上に立って中医協の対策が進められているとするならば、いまわれわれが予想いたしますのは、来年度の予算の編成が少なくとも十二月の二十日、おそくても十二月の二十五日ごろまでにはなされなければなりません。そういう点を考えますと、いまお話を聞きますと年内には改定ができないような見通しのような発言がございました。これは重大な問題です。もし、そういうことになりますと、十一月二十八日以降になるとするならば、審議は中医協でわずか一カ月足らずである。そういたしますと、来年の予算はつくれない、医療費の改定というものは見込めない、こういう段階になります。そういたしますと、先般、健保法の改正の際に審議をいたしましたときに私は申し上げましたように、少なくとも二年間停滞をしているんだから、医療費は一五%、少なくとも一五%以上のアップを見込まなければならない、これもまた早急にやらなければならない、こういうことを申しました。もし、一五%の医療費のアップを、少なくとも一五%のアップをしたならば、この医療の会計は千数百億の赤字が即時に出てくる。そうしたら、弾力条項の発動、これは当然関連的に生まれてくるではないか、これが重大な問題点であるということを私は予告しておきました。現実に、この予算の関連とそれに加えて弾力条項の発動という問題が、大きな私は関心事になってくるわけです。米が上がった、いろいろな物価が上がっています。ここのこういう国民の大きな世論の背景の中にあって、医療費の問題というのは、また弾力条項がすぐ発動されたという関連が出てくるわけです。きわめて重大な関心を持たざるを得ません。したがって、十一月二十八日というのは自民党と、そして医師会とのただ個人的な——公的といいますか、まあ、中医協からいえば一部の話し合いなんで、それが終わらなければ中医協に対して何もやらないというようなことは、私はどうかと思うわけです。したがって、少なくとも十一月二十八日——きょうは十五日ですからまだ二週間ぐらいあります。直ちに、十一月二十八日まで待つのではなくして、直ちに大臣は中医協に諮問を起こしたらどうか。諮問をしたらどうか。いま矢山先生からお話がございましたように、中医協を再開をする。諮問をする。そうすると再開をせざるを得ない。なお、医師会がそこに参加をしないというならば、これはあげてやはり国民の指弾を受けるであろうと私は思います。したがって、私は大臣がやはりここに決断を要する。いつまでも優柔不断であってはならないと思います。決断の時期が来ておる、こういうことを特に強調いたしたいと思うんですが、その点はどうですか。
  45. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 決断を迫られたわけでございましょうが、先ほど矢山委員の御質問にもお答え申し上げたのでございますが、私どもはやっぱり法律に基づいて行政府の長としては行動をしたい、まあ、これは当然のことでございます。したがって、現在ああいう不信任案が出ておる現段階において開いたときに、皆さんがテーブルに着いていただけるかどうか、これはやっぱり相当問題があると思うんです。そこで、問題はテーブルに着くということが大事なことでございまして、それはそういう御意見があることは私も承知しております。しかし、三者構成でございますから、正常な運営ということを大臣としては責任を持って果たす責任があると思うんです。そういう意味において、やっぱり同じテーブルに着くという見通しをつけて開く、これがやっぱり一番望ましい姿ではないか。その点においてはおまえはどうもしんぼうし過ぎると、こうおしかりを受けるかもしれませんが、やっぱりしんぼうしながら、三者構成の審議会でございますから、見通しをつけるまでやっぱり開くというのはちょっと無理ではないか、こういうふうに私は考えておるわけでございます。いな、むしろそのことが責任を果たすゆえんである、かように考えております。
  46. 矢山有作

    ○矢山有作君 ところでね、まあ、そういうような御答弁のような態度でおられると、私ども裏の話はどう進んでおるか知りませんが、いまのお話をそのとおりに受け取れば、いまの中医協の状態から見ていつ正常化されるのかさっぱり見当がつかない。そうすると、これはもう診療報酬の改定ということはとてもじゃないが予算までに間に合いやしないというふうな心配が出てくるわけです。しかし、まあ、あなたに幾らこれを聞いても、あなたのほうでは三者がテーブルに着く見通しがなければどうにもならぬのだと、それを待つのだと言うんだから、何かそれについての目算があるんだろうと思うんです。だから、そういうふうな事態が打開できる、三者がテーブルにつく、つかせることができる、そういうような打開の目算があるなら、私はこの際、率直に言っていただきたいと思います、それが一つ。  それからもう一つ、先ほど話に出ましたが、スライド制導入問題について、厚生大臣はたびたびこれをやるということを言っておられるようですね。それから武見医師会長の公開質問状に対してもスライド制導入をやるんだと、こう言っておられますが、それはやっぱりはっきりスライド制導入をやるんですか。
  47. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 目算と言われますと、確たる御返事ができかねるわけでございますが、私どもはこの三者構成として、三者がテーブルにつけるように最大のいま努力をいたしておるわけでございますから、いましばらく御猶予をお願いしたいと考えております。  なお、スライド制の問題につきましては、これはもうすでに御承知のように、なくなられた斎藤昇厚生大臣が武見医師会長と正式に約束をし、時の内閣総理大臣佐藤さんがこれに立ち合って確認をしておるという問題でございます。自民党政権下にありましては、当然その責任は、私は継承して行なう責任があると考えております。先般の国会においても、スライド制についてはできるだけ実現をはかるように努力したいということを社労の委員会でも、私、お答えしたことがございます。よその委員の方であったと思いますが、お答えしたこともございます。そういうふうなことで物件費、人件費に対応したスライド制というものは、やっぱりこの際、確立しておく必要があるんではないかと、こういうふうに考えておりまして、そのことを武見医師会長の御質問にもお答えをいたしておるわけでございまして、私の信念としてこれは努力をいたしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  48. 矢山有作

    ○矢山有作君 あなたの信念としておっしゃるのはいいんだけれども、スライド制の問題は、これはいま中医協で審議中の問題でしょう。したがって、あなたがスライド制導入ということについてそういうふうな確信を、信念を述べられたり、あるいはこの間、自民党の社会部会でもスライド制導入を実現させるということをきめておるようですが、こういうことをやるというのは、やっぱり中医協の審議に対して非常な私は影響を及ぼすと、中医協の審議に対して、むしろ介入することになるんじゃないかと、だから、あまり適当なやり方では私はないと思うんですがね、それが一つです。  それからもう一つはスライド制導入をやるというなら、私は、中医協正常化の問題と関連をさせてスライド制導入を諮問するという腹でおられるんですか、どうですか。
  49. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) スライド制につきましては、私はぜひ実現をいたしたいと考えておりまして、しかし、これも私が一方的にこういう方式でやるんだというようなことを言うわけにはまいりません。診療報酬はあくまでも中医協において御審議を願わなければならない問題でございますから、どういうふうなスライド方式をきめるか、そういうことについては十分中医協の御意見、御審議をわずらわしたい、かように考えておる次第でございます。
  50. 矢山有作

    ○矢山有作君 諮問されますか。
  51. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 諮問ということになるかどうか別といたしまして、諮問ということのほうがはっきりしていいと思います。中医協の御審議をわずらわしたいと、かように考えております。
  52. 矢山有作

    ○矢山有作君 時間がありませんから、次に移ります。  中医協の解体の問題で、最近いろいろうわさが出ておりますね。日本医師会は大会で中医協の解体を決議したといわれておるし、それから自民党の社会部会では中医協の解体については検討すると、こういうふうに言っているようだし、いろいろ話があるんですが、   〔理事小平芳平君退席、理事須原昭二君着席〕 中医協の今後のあり方で、大臣はどういうふうに考えておられますか。
  53. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 中医協の今日までのいろいろな運営にあたりまして、いろいろな摩擦あるいは中断、さまざまなことがあった経験にかんがみまして、政府としても、いまのような中医協の体系でいいのであろうかといったふうなことで、あれ、臨時医療何とか調査会といったふうなものに改組したらどうだろうかということを鈴木善幸さんが厚生大臣のときに改組案を国会に提案をしたこともございます。したがって、私どもは正常なる運営の形において診療報酬がきめられる、こういうことの上において、はたして現在の中医協でりっぱであるであろうかどうか、これはやっぱり相当考えなければならぬ問題だと思います。しかし、私、いま具体的に案を持っておりません。はっきり申し上げておきます。私は持っておりません。党のほうでいろいろ御検討なさるということであれば、それはいろいろ御検討なさるでしょうが、私としてはいまどうしたらいいといったふうなことは、案は持ち合わせておりません。しかし、いまのような形でいいのだろうかということについては、私はいつも紛議のごとはそれは考えています。それは考えていますが、私は成案をまだいまのところ得ていない、こういうことを、私、率直に申し上げておきたいと思います。
  54. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、あなた、日医に対する回答で、中医協の体制についても検討を加えたいというのですが、自分が一切成案がないのに検討を加えたいというようなことを公式に出すというのは、やっぱり問題じゃないですか。やはり少なくとも検討を加えるとかなんとか言うなら、こういう中医協のような重要な使命を果たす機関についての問題ですから、そう軽はずみに言うべき問題じゃないと私は思うんですがね。  もう一つは、もし、中医協の解体、改組の問題が、これが診療報酬の改定問題とからんでくるとすると、診療報酬の改定というのは、中医協の問題が片づかない限りどうにもならぬということになってきますから、当面の診療報酬の改定の問題と中医協の解体、改組の問題というのは、これは全然いまのところ関係がないと解釈していいんですか、その点、どうなんですか。
  55. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 先ほどもちょっと申し上げましたように、いろいろ、まあ紛議が生ずるわけでございますので、いまのような状態でいいのだろうかということも、これは一般的に考えておることは事実でございます。それと同時に、運営についても従来、御承知のように、建議方式でここ十年来ておるわけでございますが、こういう運営の面においてもやっぱり建議方式にこだわるという必要はないのではないかと、諮問方式に切りかえるということも一つの方式ではないかということも考えているわけで、そのことはもう回答にはっきり出しております。ですから、そういうふうないろんな問題を含めて、いまのような状態でいいのだろうか、これは私、考えなくちゃならぬのは当然ではないかと、かように考えております。  なお、党において今後中医協の改組についてどういう案をお出しになるかわかりませんが、その案が出ましても、これ、法律事項でございますね。法律通らぬうちはどうにもなりませんね。私は行政府の長ですから、現在ある中医協に関する法律に従って行動する、これは当然だと思いますから、その点は御理解いただきたいと思います。
  56. 矢山有作

    ○矢山有作君 だから、私の言っているのは、いま問題になっておる診療報酬の改定と、その問題とは関連をしてくると、診療報酬の改定問題などというのは中医協の体制の問題がきまらなければどうにもならぬことになってしまいますから、だから、現在起こっておる診療報酬の改定問題と中医協の問題とは関係がないでしょうねと、こう言っているわけです。
  57. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 中医協の改組は、とてもいまの診療報酬の改定にはこれは間に合いません。したがって、私はできるだけ早く診療報酬の改定が必要であり、緊急であると、こう申し上げておるんですから、この問題は現在の中医協において処理していただく、これはもう私、そういう考えでございます。したがって、将来どういうふうに改組になるかならないか、私はわかりませんが、それは別個の——別個というか、あとの問題になると思います。
  58. 矢山有作

    ○矢山有作君 それでもう一つ、診療報酬の改定をいつやるかというめどだけ、大まかにでも私ははっきりさしておきたいと思うのです、この際。年内にはやるというお気持ちですか、いまの状態ではどうしても年内にはやらぬという見込みですか、その辺はどうですか。
  59. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私はできるだけ早くやっていただきたい。それが必要であると、こういうふうに、私、考えておるわけでございますから、何とかまあ、知恵をしぼりながら、苦労しながら、なるべく早くできるように努力をすることが責任であると、私はほんとうに責任を痛感しているんです。そういうことで御了承いただきたいと思います。
  60. 矢山有作

    ○矢山有作君 どうも年内にやるのかやらぬのか、その一番肝心な点もはぐらかしてなかなか言えないようです。そこだけを言っておると私の時間がなくなりますので、次に移りますが、診療報酬の改定について、きょう、公私病院連盟は大体三〇%以上の医療費の引き上げを出しておるようですね。いま須原委員は一五%というようなお話をしておりましたが、医療費引き上げについて現在厚生省はどの程度の見通しを持っているんですか。
  61. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) これまた、むずかしい御質問でございまして、そういう目算がはっきりきまっているなら審議会にかけなくたっていいじゃないかということになるわけでございましょう。ですから、審議会の御意見も十分承って、最近における物価、人件費の上昇、これは十分やっぱり考えなければならぬ問題ですね。物件費、人件費の上昇、さらには看護婦の問題とか、再診料の問題とか、さまざまいろいろ問題がございます。そういう問題につきまして、中医協の御審議をいただいて厚生大臣がきめるというわけでございますから、何ぼが適当であるかということを答えろと言われましても、これ、私いま答える能力を持っていないことをはっきり申し上げておきます。
  62. 矢山有作

    ○矢山有作君 しかし、あなた建議方式だけでなしに、この状態の中で諮問をするということも考えておられるやに感じたからね、いまの質疑を通じて。それで諮問をするということが考えられておるんなら、諮問をするときに原案が要るわけですから、だから私はどのくらいな医療費アップを考えておるのかという聞き方をしたわけです。それはどうなんですか。それは何にもなしなんですか。   〔理事須原昭二君退席、委員長着席〕
  63. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) どういう形で諮問をするかということについてもいま考えておるわけでございますが、問題はいま正常化するということが大事なものですから、そちらに全精力をつぎ込んでおる、こういうことで御理解いただきたいと思います。
  64. 矢山有作

    ○矢山有作君 もう一つ、健保の改正で給付改善が行なわれるということは明確になったわけですね。先ほど話に出ておりましたが、弾力条項を四十九年度以降も発動するという考えですか。
  65. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) これは診療報酬がどの程度のアップで決着がつくか、その辺がやっぱり一番の問題でございましょう。しかし弾力条項の発動は国会においても慎重に行なえと、こういう御注意をいただいておるわけですから、慎重な配慮のもとに対処していかなければならぬと考えておるわけでございまして、やっぱりアップ率がきまらぬうちはいまのところ何ともこれは御返事がいたしかねることではないかと存じます。
  66. 矢山有作

    ○矢山有作君 もうこれで終わりますがね、時間がきたから。  とにかくこの中医協の問題、診療報酬の問題というものについては、これはいつ質疑をやってみてもこういう調子、のれんに腕押しというのか、さっぱり要領を得ぬわけです。私はもう少し国会審議の場ですから、厚生省何を考えておるのかということを率直に言ってもらいたいと思っていたわけですよ。特に中医協が正常化されない限り、もう診療報酬の問題どうにもならぬわけでしょう、大臣の答弁から察するところ。そうすると、少なくとも中医協の正常化についてはどうしようと思うということぐらいは出てこぬと、これはまあ、まさに国会の委員会というところは何をやっているのかわからぬということになりますわね。ただ、おしゃべりだけをやっている委員会であるということで国民もそれを了承し、みなもうおしゃべりをやる場所なんだということで認めるならともかくとして、私は国民にしても、そういうようなおしゃべりの場として認めておるんじゃないと思うのですよ。  やはり自分たちが一番大きな関心を持っておる問題がどう解決されるのか、どういう方向に解決されようとしておるのかということ、また、その問題について現にいまその責任者はどういう考え方を持っておるのだろうか、そういうことを一日も早く知りたいわけですよ。特に自分の生命——健康に対する医療問題ですからね。ですから私はもう少しまじめな、もう少し積極的な、具体的な答弁が聞けると思いましたが、きょうの質疑を通じてまさに失望いたしました、政府の姿勢に対して。まあ、今後私はこういうような、何も実らないような論議が国会の委員会の場で繰り返されることのないように私は強く要望したいと思います。国会の審議が実があるものになるかならぬかは一にかかって政府側の答弁のいかんにあるわけですから、この点をきびしく申し上げておきます。  以上、終わります。
  67. 須原昭二

    ○須原昭二君 関連。先ほどのことで、どうしても聞いておかなければならぬ。というのは、予算編成との関連です。何としてもこの医療費の改定を来年度の予算をつくるにあたってその編成の中に入れていく、この基本方針がなければだめです。それは年内にできるとかできないとか、三者構成ですから、その正常化が前提だとおっしゃいますけれども、これほど世論が高まっておる今日において、予算編成までにどうしても決着をつけるという不退転の決意がなければ私はだめだと思うのです。先ほども申し上げましたように、この健保の審議の際に少なくとも一五%以上、この一五%のワクを越えれば直ちに弾力条項の発動をせざるを得ない、こういうことを私は予言をしました。すでに財政当局も、もしこの弾力条項の発動をするならば、予算の当初からこれは出してこなければならない、こういうふうに私は仄聞をしておるわけでありますが、その問題が非常に重大な関連があります。したがって、予算の編成までに間に合わせるという不退転の決意があるかどうか、この点だけ明確にしておいていただきたい。
  68. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私は、先ほど矢山委員の御質問にもお答えいたしましたが、診療所病院とも診療報酬の改定が緊急に要望されておる問題であることは十分承知もしております。したがって、私も一日も早く診療報酬の改定が実現されることが望ましいことであり、緊急の問題であるということは私十分承知をいたしております。それから予算編成が十二月の末であるということも十分承知をいたしております。そういうもろもろの条件を踏まえながら、まず中医協において三者がテーブルに着くということにいまのところ全力を尽くしておる、こういう段階でございますから、ひとつ、もうしばらく御容赦をお願い申し上げたいと思います。
  69. 小平芳平

    小平芳平君 いまの大臣、中医協の問題ですけれども、先ほど来、両委員からの御質問に対して、ただ現状では具体的のお答えができないということで終始しておりますが、それでは全く健保を審議していた当時と変わっていないわけですね。ですから、もう少し、努力なさっていらっしゃるということは再三おっしゃるわけですけれども、努力なさっていらっしゃるとおっしゃる、しかし実際にいまどういうふうに困っているかということも重々御承知のわけですね。それにまた、健保審議の当時は、もう一つ大臣は中医協そのものの性格についても大臣から諮問をするとか、そういうようなこともお答えになっていたように記憶しているのですが、それすらいま諮問すべきだという意見に対してスライド制は諮問するわけですか、スライド制は諮問するというふうにもおっしゃっているし、あるいは何%引き上げるかというようなことについては諮問しないわけですか、その辺は中医協の性格と、大臣は健保審議のころと変わっておられるのかおられないのか、また、どういうふうに現在お考えになっていらっしゃるか、一点だけ伺っておきたい。
  70. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 診療報酬の改定につきましては、私は従来の建議方式にこだわることなく諮問方式を採用すべきであるという考えでございます。したがいまして、診療報酬の改定につきましては諮問いたしたい考えでございます。しかし、その場合に、どういう形の諮問をするかという中身の問題についてはいま検討をいたしておるところでございまして、まず、さしあたりテーブルに着くということに全精力をつぎ込んで努力をしておる、こういうふうに御了承いただきたいと思います。
  71. 小平芳平

    小平芳平君 そのテーブルに着くことが前提だということも重々わかります。重々わかりますが、いかにせんテーブルに着くのを待ちながらもう相当長期間になっちゃったわけですからね。しかも、現実に困っているわけですから、また、結局こうした現時点で打開できる道は、それを打開する責任は非常に現在の厚生大臣に大きなものがかかっているわけでしょう、責任がかかっているわけでしょう。ですから、そういう点、そうすると中医協が三者構成でテーブルにつくことに見通しがついた段階でスライド制を諮問し、それから率は諮問しないのですか。
  72. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 諮問します。
  73. 小平芳平

    小平芳平君 率も諮問します。しかし、中身は全然わからない、言えないということですか。
  74. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) たびたびお答え申し上げておりますように、三者がテーブルにつくということがこれはもう大前提なんですね。したがって、そのテーブルにつくという見通しがないのに諮問するというわけには私はいかないと思うのです、それは無責任だと思うのです。そういう意味において、テーブルにつくということに全力を尽くし、その見通しがついた段階においてスライド制並びに診療報酬の改定について諮問をいたしたい、こう考えておるわけでございます。  そこで、その諮問の際に何%というアップをどうのこうのというお尋ねがございましたから、そういう内容についてはいまのところはっきりした御返事はできませんと。そこで、そういう内容については今後とも十分考えてまいりますと、こうお答えをしておるわけでございます。したがって、従来のような建議方式にこだわらないで、今回は諮問方式に改めて諮問をして診療報酬の改定を行なっていくと、こういうやり方にいたしたいと、かように考えておる次第でございます。
  75. 小平芳平

    小平芳平君 それなら早く諮問すればいいと思いますがね。ちょっと私も限られた時間でありますので、昨今の異常な物価値上がりに、社会保障関係のいろんな面で重大な問題が起きております。で、厚生大臣、ある社会保障関係の専門家が集まった会合で、「インフレは社会保障の最大の敵だ」ということばが出まして、皆さんそのとおりだということだったのですが、厚生大臣としてやはり「インフレは社会保障の最大の敵だ」というふうにお考えですか。また、そうお考えなら、どういう努力をなさいますか。
  76. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私、社会福祉をおあずかりしている者として、インフレはまさしく社会福祉の敵である、私はさように考えております。したがいまして、もうすでに御承知だと思いますが、特にインフレの波に洗われ、非常に苦しい生活を余儀なくされる方々、すなわち生活保護世帯方々につきましては、去る十月一日から、ことしは一四%の生活扶助基準の引き上げをいたしたわけでございますが、さらに五%引き上げることにいたしまして、一九%ということに、前年度に比較いたしまして一九%のアップと、こういうことになるわけでございまして、インフレの影響を一番受ける生活の苦しい方々につきましてはそういう手を打ってまいったわけでございます。私どもは、あくまでもインフレは福祉の敵であるという考え方でございますから、一日も早くインフレがおさまるように、これは政府全般として強力な施策を講じていかなければならぬと考えておりますが、もしそういう状況になりますれば、そういう状況にふさわしい手を今後ともやはり打っていかなければならぬであろうというふうに考えておる次第でございます。
  77. 小平芳平

    小平芳平君 その五%を十月一日から引き上げたということは、これは生活保護関係だけですね。そのほかにも現にこういう事態が起きているということについて、また打つべき手がありはしないかという点についてはまたいろいろな観点から御質問申し上げたいと思いますが、最初にいま大臣の述べられた生活保護につきましても、こういうように物価上昇が激しくては一年間持ちこたえられない。それで、たとえば失業保険の場合などは賃金にスライドしておるわけですが、したがって、生活保護の各種扶助にしましても自動スライドをとるべきだという意見もかねて出ておりますが、こういう点については検討されますか。
  78. 高木玄

    説明員高木玄君) 生活保護法の基準改定につきましては、毎年これは十二月に政府の経済見通しが出ますが、その場合の国民一人当たりの消費水準経済見通しでつかみまして、それにプラスアルファをしていくということできめております。現在の生活保護基準のきめ方は格差縮小方式——一般世帯と被保護世帯との格差を縮めていくという方針でこの基準の改定をやっておるわけでございます。したがいまして、単に物価の上昇だけじゃなく、それ以上に積極的に一般世帯との格差を縮めていきたいと、こういう方針のもとにやっておるわけでございます。そして、ただ年度当初そういった経済見通しに基づきましてきめられる保護基準の引き上げ率が、一応ことしでいえば一四%という当初の引き上げを行なったのでありますが、先ほどからお話ございましたように、本年度は年度に入りましてから消費者物価の動向が非常に上昇を続けておりますので、年度途中ではございますが、特例措置として、緊急措置として五%の上積みをはかった。したがいまして、物価の動向等を見まして、その時点においては適宜適切な手を打つように今後とも努力いたしますが、保護基準全体の引き上げの率としましては、スライド方式よりもそういった格差縮小という面での保護基準の引き上げを今後ともはかってまいりたいと、かように考えております。
  79. 小平芳平

    小平芳平君 格差縮小ですね、もちろん格差縮小がいけないと言っているのではないのです。ただ、政府の経済見通しによってきめるといいますが、政府の経済見通しがとんでもなく狂っちゃっているわけでしょう。ですからそういう点を考慮すべきだと言っているのです。いかがですか。
  80. 高木玄

    説明員高木玄君) でございますので、先ほど申しましたように、年度途中ではございますが、十月一日から消費者物価の動向を見きわめて五%の引き上げをはかった次第なのでございます。したがいまして今後とも消費者物価の動向を見守りまして、この動向いかんによっては必要な措置を適宜適切に打ってまいりたい、かように考えております。
  81. 小平芳平

    小平芳平君 そうすると五%というのはいつの時点できめたのですか。それから今日までどのくらい上がっていますか。
  82. 高木玄

    説明員高木玄君) 引き上げは十月一日から実施でございますので、九月の時点できめました。九月の時点でつかんでおります全国総合の消費者物価の状況は七月分まででございます。そして、本年の四月から七月分までの消費者物価を対前年同期の消費者物価の動向と見ますと一〇・八%の対前年の上昇になっております。で、本年度一四%の保護基準の引き上げをきめました経済見通しにおきまして、前提となっております本年度の物価上昇率は五・五%でございますので、その差の五%をとりあえず引き上げたわけでございます。そして、今日までのところの、その後の七月以降の消費者物価の動向もわかっておりますが、大体におきまして全国総合の消費者物価の、本年四月から九月までわかっておりますが、対前年同期との上昇率が二・七%ということになります。しかし、先ほど大臣からもお話がございましたように、十月以降は五%上げましたので、年初の一四%を加えますと一九%対前年同期に対して引き上げになっておりますので、現在のところこの基準でいけるんじゃないか。なお、今後の状況を見まして、消費者物価の動向をよく見きわめまして必要な場合には随時手を打つようにしてまいりたい、かように考えています。
  83. 小平芳平

    小平芳平君 政府みずから米や麦を値上げすれば、早急にまたそういう時期が来るでしょう。あるいは灯油とか、そういうものが値上がりすればそういう時が来るんじゃないかと思います。ですから、もう少し制度的に引き上げていくものが必要じゃないかということを申し上げているわけです。それはそれで……。  次に、じゃ年金はどうですか。年金は四十八年十一月一日から施行されましたね。そうすると、五万円年金だというふうに言ったのは、一体いつの水準で五万円でそれを維持しようということなんですか。
  84. 横田陽吉

    説明員(横田陽吉君) 年金のスライド制の問題でございますが、御承知のように過般成立いたしました法律によりまして初めて消費者物価による自動スライド制が導入されたわけでございます。条文は附則の第二十二条でございますが、これ、お読みになると御理解いただけますように、保険給付については「総理府において作成する年度平均の全国消費者物価指数が昭和四十七年度の物価指数の百分の百五をこえ、又は百分の九十五を下るに至った場合においては、その上身し、又は低下した比率を基準として、その翌年度の十一月」——これは厚生年金でございますので、昭和四十九年の十一月になります。国民年金については一月、これは五十年の一月になります。——「以降の当該年金たる保険給付——の額を改定する措置を講じなければならない。」その措置は具体的には政令で定めると、こういうふうになっておりまして、四十七年度の上昇率、つまり四十八年三月末までの年度平均の消費者物価指数の上がった分だけが厚生年金については四十九年の十一月から、国民年金については五十年の一月からと、こういうふうな仕組みにいたしたわけでございます。したがいまして、この場合に、五%ですとか、六%ですとか、そういった上限はございませんで、五%をこえました場合にはスライド条項が当然に発動される。それからスライドして引き上がるその比率は現実の物価上昇率をそのまま使うという意味合いにおきまして一つのレールを敷いてございますし、それからもう一つは、何と申しますか、完全に受け身の形で上がった分を年金額に反映させる、こういう仕組みになっておるわけでございます。  この制度をつくります際には、すでに国会審議の際にいろいろ御質問等もございまして明らかにいたしておるわけでございますが、諸外国におきましてのスライド制の具体的な仕組み、そういったもの等も十分に勘案いたしまして、以上のような措置をとっております。したがって、問題といえば、現実に年金額が引き上がるまで相当の時間的な長さがあるではないかと、こういう問題でございますが、この点につきましては、年金制度というものはほかのいろいろな施策と多少異なりまして、レールを敷けばそのレールの上を走らせるというようなことによって長期的な見通し等も可能になり、そういった前提に立って制度を仕組むものでございますので、その点多少、いま緊急に非常に物価が上がっておるのに何とかならないかという、そういった観点からは多少の問題はあろうと思いますが、一つは年金制度に内在するそういった制度的な本質に基づく面もございますし、それからもう一つは現実の自動改定措置を講じます際のいろいろな手順その他に要します時間的な余裕というものもございますので、御了承いただきたいと思っておるわけでございます。
  85. 小平芳平

    小平芳平君 そんなに長く答弁してくれなくていいですから……。(笑声)  まず、じゃ、まとめて質問しますからね。第一点は国民年金と厚生年金は、一方は厚生年金は四十九年十一月、国民年金は五十年一月というふうにスライドの時期をなぜ変えるのか、その理由を簡単に御説明いただきたい。  それから第二点は、この生活保護の場合は経済見通しよりも上がった五%を十月一日からプラスするというのに、年金のほうは同じころ年金の法案を厚生省がつくって、それで、しかもレールの出発点がなぜ十一月一日であって上げる必要がないのか。よろしいですか。生活保護のほうは五%を物価上昇分として十月一日から上げたと、ところが同じ厚生省のやっている仕事で、年金のほうは厚生省が法案をつくっていた当時、五万円年金と盛んに言い出した当時は、それはもっと前ですけれども、かりに法案作成当時から考えますと、施行された段階でははるかにもう物価は上がっちゃっている。しかし、にもかかわらず、来年の十一月まで、あるいは再来年の一月までにくぎづけにしておくということはどういうわけか。以上二点について。
  86. 横田陽吉

    説明員(横田陽吉君) 厚生年金と国民年金につきまして時期を異にしている点は、御承知のように国民年金につきましても相当多数の方を相手に裁定行為その他がございますので、したがって、そういった事実上事務を処理いたします際に、たとえば社会保険庁の業務課等に相当の事務がある時期集中をいたすということ、それからもう一つは支給時期がそれぞれの制度によって異なるということ等を勘案いたしまして、その点からある程度ある制度は何月、他の制度は何月というふうにせざるを得ないという実情がございます。  それからもう一つは五万円年金制度なるものをつくりつつあった時期においてという御質問でございますが、御承知のように、この五万円年金は、おしなべて申しますと二・三倍の引き上げでございますので、その水準を設定したならば、あとは五年に一回を原則として財政再計算期における額の見直しということでやっておりますから、その間は物価上昇による実質価値の目減りだけを防止すれば年金としては相当実態に合った年金の支給ができるであろうと、こういうふうに考えておりましたわけで、五万円年金創設を考えておりました際は、物価上昇云々というよりは、水準においてこれが二・三倍、二倍ないし二・五倍、そういった水準にする必要性に非常に大きな重点を置いて制度をつくったわけであります。
  87. 小平芳平

    小平芳平君 事務が繁雑だから国民年金はスライドを二カ月延ばすとか、これは納得できませんが、納得できかねますが、先ほど諸外国の例を見て年間五%上界ということをきめたというのですが、年間五%以上という諸外国はどこですか。あるいはそれより低いところはどこですか。
  88. 横田陽吉

    説明員(横田陽吉君) この諸外国の例と申しますのは、スライド条項の発動要件が何%以上であるかということのほかに、年に何回スライドをするとか、それからスライドを実施いたします際のタイムラグがどういうことであるとか、まあ、いろんな問題があるわけでございます。一つ、二つ例を申しますと、たとえば年金制度が比較的整っておるといわれております国の一つとしてカナダがございますが、カナダにおきましては、前年度一%以上変動した場合は翌年一月からスライドをいたします。ただ、この一年と申しますのが七月から六月までの一年でございます。ただ、ここで御認識いただきたいのは、上げ幅は何%以上変動いたしましても、二%の限度内でしかスライドをしないと、こういうふうなしばりがあるわけでございます。発動要件は日本と比べましてゆるいのですが、上げ方が二%というアッパーリミットを設けておる、こういう例もございます。それから西ドイツ等におきましては、御承知のように完全な賃金スライドの国でございますので、物価スライドは実施いたしておりませんで、その場合問題になりますのは、タイムラグが新規裁定につきましてはおおむね三年半、既裁定につきましては四年半のタイムラグがございます。それからスウェーデンについて申しますと、指数が前回スライド時に比べ三%以上変動した場合、そのつどスライドということになっておりますが、前回スライド時でございますので、前回スライドを行なっておりませんと三%以上変動いたしましてもスライド条項は発動しない。三%という数字だけを見ますと、非常に日本よりも有利なスライド条項の発動のように見えますが、前回スライドしたときに限ってその時期に比べ三%以上というふうなことがございますので、現実問題としてはスライドがひんぱんに行なわれているようなことはないわけでございます。
  89. 小平芳平

    小平芳平君 もういいです。厚生大臣、いまの年金の問題、五年再計算ということは、大臣は年金改正のときの審議の過程で五年にはこだわらないと、二年でも三年でも必要があればやるということを言明しておられました。とともに、この年間五%ということもやはりこれからの動向いかんによっては、これは大臣がおっしゃるように物価安定に向かえばそれほどけっこうなことはないんですが、急激な物価変動が、急上昇があったような場合にはやっぱり年一回五%以上ということ自体も土台が変わってくれば当然検討しなおさなくちゃならないと思うのですが、いかがですか。
  90. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) いろいろ急激な変動があればいろいろ考えなければならぬであろうということは一般論として私も理解はできます。しかし、この厚生年金、これは法律が通ってまだ施行になったばかりでございますから、いますぐどうのこうのということはちょっとむずかしいのではないかと思います。しかし、急激なインフレになって消費者物価がものすごく上がるとかなんとかという事態になれば、いろいろそれは考えなければならぬ問題は私は出てくると思います。一般的には私はそう言えると思うんです。しかし、さしあたりいまのような状況、いまの程度であるならば法律に従ってスライドはやっていくというやり方でいいのではないかと思います。しかし、今後の推移は十分厳重に監視してまいりたい、かように考えております。
  91. 小平芳平

    小平芳平君 まあ、法律が施行されたばかりだと言いますけれども、しかし、実際に一番インフレの被害を受けているわけですから、それは一般論としてはそうだとおっしゃるですが、それが一般論でなくならないように今後の推移を見守るといいますが、物価安定に対する努力とともに、しかし現時点でも五万円年金といわれてから十一月、今月実施されたわけですから、ずいぶん目減りしているですね。ずいぶん目減りしている。しかもスライド制を導入ということも非常に目玉だとおっしゃっていたわけですが、実は来年十一月から、国民年金は再来年の一月までは現状固定ということになるわけですから、それはひとつ検討いただきたいと思うんですよ、いかがですか。
  92. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 確かに五万円年金を打ち出しましたのは昨年の暮れの選挙の前のころでございまして、その当時のいろんな賃金状況等を勘案して五万円水準年金というものを打ち出したわけであります。その法律がやっとことしの九月の末に成立する、十一月からやっと実施だと、こういうわけでございますから、おっしゃるとおり、それだけのあれが減っていることは私も十分理解をいたしております。したがいまして、今後年金法の改正というふうな場合においてはそういうことも十分やっぱり頭に入れて考えなければならぬ問題であろうと、こういうふうに私も理解をいたしております。
  93. 小平芳平

    小平芳平君 それでは次に、児童手当はどうなりますか。児童手当は、この実態調査をしたのは昭和四十二年に実態調査をしたわけです。昭和四十二年にやった実態調査児童手当一人三千円というものを出したわけですよ。ところが児童手当ができた当時から見ますと、そのほかのものはうんと大幅に福祉年金その他特別児童扶養手当等は、児童手当三千円のように固定されているんじゃないわけですよ。どうして児童手当三千円だけ固定しておくんですか。それが一点。  それから第六条のスライド制の規定というのはどういうことなんですか。この二点について。
  94. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) 児童手当につきましてはただいま御指摘がございましたように、調査の時点は四十二年でございます。それから実際に発足いたしましたのが四十七年の一月からでございます。先国会で成立いたしました改正によりまして今年度の十月から十歳まで支給範囲を拡大いたします。児童手当の内容といたしましては額と支給範囲とこの二つが柱になっておるわけでございますが、御指摘のように三千円が四十七年であり四十八年の実際の支給額になっております。私どもといたしましては、四十二年から四十七年までの家計費の上昇率を見まして、その度合いから見まして来年度の予算要求、概算要求といたしましてはただいまのところ四千円にアップいたしたいと、それからもう一点といたしまして、三年計画の支給範囲を、これは当然附則できめられていることでございますけれども、来年度におきましては十五歳までを支給範囲とするというように考えて現在その作業を進めておるわけでございます。  御質問の第二点の六条の規定でございますが、これは法律にもございますように、「国民の生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるため、すみやかに改定の措置が講ぜられなければならない。」、この趣旨を勘案いたしまして来年度の概算要求といたしまして三千円を四千円にしたと、こういうことでございます。
  95. 小平芳平

    小平芳平君 「すみやかに改定」となっているのがすみやかでないから言っているんですよ。範囲の拡大はこれは別問題であって、金額をなぜ三千円にしておくのか。それから四千円というのは、概算要求に出ています、四千円ということはね。それ以上に、結局概算要求を出した段階より考えようはありませんか、もう。もっと金額を引き上げるとか、あるいは第三子からとか、あるいは十八歳未満ですね、第一子が十八歳未満とかいう、そういうしぼりにしぼった児童手当ですよ、いまの現状は。それをもっと金額の面と範囲の拡大の面で考えられませんか。
  96. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) 御承知のように、児童手当法では、この児童手当というものを、児童を養育している家庭の生活の安定に寄与するとともに、児童の健全な育成と資質の向上、この二つが柱になっているわけでございます。で、ただいまのところ、先ほど申し上げましたように、来年度におきまして三千円を四千円にいたしますのは、そういった六条の規定等を勘案いたしまして行なうわけでございますけれども、支給範囲につきましては、御指摘のように諸外国等の例もございまして、必ずしも三子以降がいいかどうかという問題もございます。また年齢延長の問題もございます。そういった点を含めまして中央児童福祉審議会にもいろいろ御検討をお願いしている次第でございます。われわれといたしましては、四十九年、支給範囲が法律の附則によって完成しました暁に、さらにその内容等の改善について前向きに検討を進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  97. 小平芳平

    小平芳平君 その第六条によって変えると言いますが、四十八年度は第六条に合わなかったのですか。それが一つ。それから、第三子からといいますが、第三子からやっている国はどこどこですか。以上二点について。
  98. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) まあ、若干生活保護と違ったニュアンスを持っております児童手当の法律趣旨から考えまして、四十八年度におきましては額は据え置く。なお支給範囲の拡大というようなことを進めてきたのでございまして、この点については先ほど申し上げたことで御了解いただきたいと思います。  なお、支給範囲につきまして、第三子から行なっておりますのは、南アフリカ連邦と北ベトナム、それから日本、この三国でございます。
  99. 小平芳平

    小平芳平君 それについて厚生大臣はどう感じられますか、第三子から支給している国は南アフリカ連邦と、北ベトナムと、日本ですか……。
  100. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) この範囲の拡大については、私も、これは将来考えなければならぬ問題であるということを私も理解をしているわけでございます。しかし御承知のように、この児童手当の制度というのは去年から始まってこれは三年計画ということでやっているものですから、さしあたりの問題としては来年度中に、不満ではありますが児童手当制度というものが一応完全実施と、そこまでこぎつけて、それからもろもろの問題について改善措置を講じていくと、こういうふうにしたいというのが私の基本的な考え方であったわけでございます。そこで来年度は、さしあたりの問題としては、三千円、去年から実施して、四十七年、四十八年、三千円でありましたが、来年また三千円——三年計画の最後の年にまた三千円で据え置くというのはどうであろうかと、やっぱり最近における物価の値上がりもあることでもあるから、三千円を四千円というふうにしようではないか、こういうふうに概算要求をいたしているような次第でございます。したがいまして、御意見のある点については今後ともひとつ前向きに検討を続けていくようにいたしたい、かように考えております。
  101. 小平芳平

    小平芳平君 それでは次に、今回の北海道青森県に対する委員派遣の際にも提起された問題ですが、食費ですね、社会福祉施設における食費は一日幾らになっておりますか、具体的に御答弁いただきたいことと、国立病院においては一日食費は幾らになっておりますか。これこそ物価値上がりをまともにかぶって苦心惨たんしている実情を私たちは伺ってきたんですが、どうなっておりますか。
  102. 高木玄

    説明員高木玄君) 社会福祉施設に収容しております方々生活費と申しますか、食費なり日常諸費につきましては、先ほど御説明いたしましたように、法基準を五%十月一日に上げましたのと同時に、十月一日から五%これも同じく引き上げております。  そこで、具体的にその食費は幾らかというお話でございますが、食費と申しますのはいわゆる飲食物の原材料費でございます。したがって、人件費なり光熱費は全然別で、原材料費でございますが、特別養護老人ホームが二百七十二円、養護老人ホームが二百十八円、それから身体障害者の更生援護施設が一日二百八十二円、こういったような額でございます。それから児童の養護施設等につきましては、これは一日二百九十三円、それから乳児院が二百九十七円。具体的に申しますとそういったような額でございます。
  103. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 本年度の国立病院、療養所の患者の給食材料費でございますが、昨年が一人一日当たり二百四十九円でございますが、本年度二百九十円ということで、一六・五%を引き上げたわけでございます。  先生御指摘のように、最近の物価事情は先ほど社会局長からもお答えございましたような状態でございますが、実は四十七年度の給食の材料費が二百四十九円、このときに——診療報酬として病院に支払いを受けるわけでございますので、基準給食の改定がございまして、五十五点になりました。五十五点ということは五百五十円でございます。それに対して昨年、二百四十九円が四五・三%という定率になりましたもので、たいへん国会等でも御指摘を受けまして、われわれもこれをどうしても従来程度のベースに戻さなきゃいかぬということで、二八・五%というのは、従来、六・八とか六・〇とかという数字がほとんどの年度の経過でございますアップ率を、思い切って一六・五ということで上げさしていただいたわけでございます。もちろん予算というものがあり、それの予定したものが、物価が上昇するので非常に病院が給食の上で苦心しているということについては私は十分承知いたしておりますが、その点につきましては生活保護の改定が食糧関係だけでございませんで、総合的な物価の観点から五%という引き上げでございますので、われわれといたしましては、いま申し上げたような昨年度と本年度のアップの比較的高かったということも含みまして来年度以降の改善に努力することで、本年度といたしましては施設の材料購入その他の点で努力していただくことで本年度の物価の上昇と、額、病院給食との関係については処理いたしたいと、こういうふうに考えております。
  104. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) 児童家庭局の重症心身障害児施設、こういったものは御承知のように医療保険の扱いを受けておりまして、ただいま医務局長説明しましたように点数払いになっているわけでございます。重症心身障害児施設につきまして、この点数の中から食費の原材料費を四十七年度で調査したものがございますので、それを申し上げますと、平均三百二十五円ということになっております。
  105. 小平芳平

    小平芳平君 これはひとつ、大臣もあるいは各担当局長さんも知恵をしぼっていただかなくちゃならないことは、物価上昇の中でも特に生鮮食料品、魚介類等影響が激しいわけです。ですから、こうした二百何円ということで一食百円にも満たない額で一体どうやってみんなやっているかですね。あるいはこの前、国立病院で非常に食事がまずいという私は投書を見たこともありますがね。ですから、何か予算がそうなっているからしようがないというだけじゃなくて、御検討いただきたいと思います。  それから次に、もう時間がありませんので、難病のうち特定疾患に対する治療費の負担について。これなどは、四十八年度予算はもうとっくに成立しているんですから、この患者さんの負担をしているかと思うと、いまだにいってないところがあるのですね。県によってはいまだに治療費負担が行なわれてないというところもあるようですが、これはどういうわけですか、それが第一点。  それから専門病院は東京に集中している、何といいましても難病につきましてはね。そうした東京に専門病院が集中している場合、各県から東京の病院へ入院する、その場合の手続が非常に複雑で難病患者としてはもうたいへんな負担になるということ。  第三点は、診療券というものをもらうために病院で証明書を書いてもらうが、その証明書を書いてもらう代金が三百円というところもあるし、高いところは二千円というところもあるというのですが、こういうものは何とかならないのかどうか、あるいは半年で書きかえることになっているといわれると、半年でまた二千円出してその書類を出さなくちゃいけないというようなことになるんです。以上の点について。
  106. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) 第一点の、現在の時点においてまだ実施していない県があるのではないかという御指摘でございますが、私どものほうで各県に照会いたしまして押えておるところでは、すべての県がもうすでに実施をいたしておりまして、おくれた県につきましても四月にさかのぼって支払いをいたしておる、こういうふうに報告を受けております。  それから第二点の、県外の病院で治療した場合の手続等が非常に繁雑であるという御指摘でございますが、これは各県におきましてそれぞれ医療機関との委託契約あるいはその他の事務手続等によりまして自県内、自分の居住地以外の県で受診いたしました場合には療養費払い等の手続等をとらしておる県もございまして、御指摘のような点もあろうかと思いますが、この点につきましては、今後十分検討いたしまして、できるだけ事務の簡素化につきまして便宜をはかるように取り扱いを検討いたしてまいりたい、かように考えております。  それから第三点の、診療券と申しますか、公費負担の手続を得るために診断書等をまず医師に書いてもらう際に三百円から二千円の差があるという御指摘でございますが、これは公費の負担の決定以前の問題でございまして、医師がそれに対します判断料という形でいろいろ患者の方々に請求されるものでございまして、それを一律に私どもといたしまして幾らという決定はいたしがたいことでございまして、できるだけ患者の便宜をはかってもらいたいという程度のことにつきまして医師会等と相談してまいりたい、かように考えております。  それから一応私どもの事務手続といたしましては、半年に一回症状等の内容等につきまして御連絡をいただく意味におきまして、各医療機関から診断書をいただくという形をとっております。したがって、これも先ほど申し上げましたように、実際の医療費の公費負担という立場ではございませんで、いわゆる文書料でございまして、この問題につきましても、先ほど申し上げましたと同様に、その額の調整等につきましては、今後十分患者さんの重い負担にならないように指導してまいりたいと、かように考えております。
  107. 小平芳平

    小平芳平君 それでは最後に厚生大臣に伺って終わりますが、物価上昇もそうですが、弱い立場の方が非常に痛めつけられるような結果になるわけです。  私はもう一つ、たとえば福祉年金の支給制限の緩和などについてももっと厚生省要望したいことがあるのですが、ちょっと時間がなくなりましたので、たとえばここに、この方は東京の中野区の方です。この方は重症一級で入院中でもういつ死ぬかわからない状態なんです。そうして、おとうさんももう十年来入院しているのです。おかあさんが重症の方を看病しているのです。妹さんが一人働いているという方が生活保護を月二万四千円受けている。おかあさんが看病疲れで倒れたら付き添いを頼んだら一晩で七千四百円取られちゃった。これじゃとても付き添いを頼むわけにもいかないということで、死にそうな病人を病院に一人でほうっておく以外に手がなくなっちゃったわけです。ここの方が障害福祉年金をまとめて二十一万円受け取ったというのですから、相当過去の分までまとめて二十一万円がこの家庭に来たところが、それは一たんは二十一万円渡すけれども、それは収入として差し引くのだ、だから一銭も手をつけないで一応そのまま取っておけというようなことが起きているのですがね。こういうような実例を私は厚生省へたくさん持っていってひとつ訴えたいことがあるわけですが、こうした時代にあって、福祉中心といいながら、もうなおかつそういう実情にある方が東京のまん中にもいらっしゃるのだということを大臣よくお考えいただきたいと思うのです。
  108. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) いろいろ具体的に生活に困っている方々、いろいろな例があると思います。私どもも、できるだけそういう具体的な例につきましてはきめのこまかい一つ一つにふさわしいような解決策を見出すようにできるだけ努力をいたしてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  109. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 先ほど矢山委員から中医協の問題について相当突っ込んだ御質疑がございました。しかし、その答弁の中でどうも私ども感じるところでは、中医協問題は現在具体策も何もなくてどうにもならないということを感じたわけです。  そこで私は、中医協の問題について違った観点から二、三御質問を申し上げたいと思います。と申しますのは、医師会が中医協の解体を迫っていることは、医師にあらざれば人にあらずというようなたいへん傲慢な態度に私どもは見受けられたわけですが、この点大臣はどうお考えになりますか。
  110. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私は中医協、今回ばかりじゃありませんが、いろいろたびたび今日まで紛糾の例があったわけでございます。それぞれの立場において、それぞれの理由があってやったものと私は理解をいたしております。したがって、それはこっちが悪いのだ、あっちが悪いのだなんということを私は考えておりません。やはりそれなりの理由があって、それなりの紛争が起こっておる。それを何とか納得いただいてテーブルに着いて審議をしていただく、こういうふうに努力をすることが私の責任であるのだ、こういうふうに私は理解をいたしておるものでございます。
  111. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 現行の合法的ないまの中医協の制度を力で押し切って、直接与党と交渉するということは、政府を無視した態度と思いますが、政府はどう考えますか。
  112. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 医師会等といろいろ話し合いをする、これは私はあっていいことだと思うのです。しかも、政党政治のもとでございまして、まあ、医師会長から言わしめれば、いろいろ今日まで自民党といろいろ約束をしてきた四項目、さらに斎藤昇さんのときは十二原則、約束しているのにさっぱりやっていないじゃないか、自民党けしからぬ、こういう言い方をされているわけでございますから、私は政党政治である今日、医師会長が自民党とお話しなさる、私はこれはやむを得ないことではないかと、かように考えております。
  113. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 大臣はそういうふうにお考えになられたかもしれませんが、自民党が医師会のシフトに乗って公開討論会に応じたというのは、いまおっしゃったように政党としてはあるいはいいかもしれませんけれども、政府与党で、政府に大きな影響を与える立場で、どういう見識に立って応じようとしたのか、自民党のこのような態度に対する政府の見解をもう一度聞かしてください。
  114. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) これは党と医師会との公開討論会の問題でございまして、政府としては、とやかくのことを論評すべきものではないと考えております。しかし、現在のところ、御承知のように、政党政治として、自民党が日本医師会といろいろ今日までのお話し合いをしておるわけでございますから、私はそれはいけないのだというふうなことを言う筋のものでもありません。政党政治としていろいろ必要があったらいろんな話し合いをする、これは私はやむを得ないことではないかと、かように考えております。
  115. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 私どもが見ると、中医協をもう乗り越えちゃって、あたかも中医協をないがしろにしたような感じをたいへん強く受けたわけです。そこで政府の、中、医協を再検討するという齋藤厚生大臣の、武見会長に主張しておられたその立場から、どのように再検討なさるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  116. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) これは先ほどもお答え申し上げましたが、中医協が三者構成であり、利害対立がきびしいものがある、そういうふうなことで今日までいろいろな紛議が生じておることは御承知のとおり、今回ばかりじゃございません。そういうふうな例を踏まえて、中医協というのは、いまの形のままでいいのであろうか、こういうやっぱりひとつ疑問を持つことは私は当然だと思うのです。それからいままでのような運営でいいのだろうか、この運営の面についてもどうであろうか、これは私はいろいろ考えるのが、私は中医協が厚生大臣の諮問機関である以上、私は当然のことじゃないかと思うのです。こういう紛議を生じてもあれでいいんだ、投げておけばいいんだ、こういうわけには私はまいらぬ、やっぱりどうすればいいのだろう、いろいろ考えるのは当然だと思います。したがって運営の面においても、従来のような建議方式にこだわらないで、ひとつ今回は諮問方式でいきましょうと、こういうことを私は考えておるわけでございます。
  117. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 もしも中医協を解体するような方向になっては、私どもはたいへんだと思います。いままで長いこと中医協が続いてきたわけですが、いまおっしゃったとおり、中医協は三者構成になっておりますが、そこで、後ほど質問を申し上げるわけですが、最近の地方自治体病院がたいへん大きな赤字をかかえておりますが、私はこの中医協の中に、病院代表と、そうしていま医療問題で一番大きな問題になっているのは看護婦不足でございますから、看護婦さんの代表をむしろ中医協の中に入れて、中医協の組織を強化するのがほんとうの筋ではなかろうかと思いますが、その点いかがですか。
  118. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 中医協の委員の中に、病院代表、看護婦代表を入れたらどうかというお尋ねでございますが、法律によりますと、「医師歯科医師及び薬剤師を代表する委員」と、こうなっておるわけでございまして、私は行政府の長としてこの十五条の法律に従ってすべて行なっていかなければならぬ、こういうわけでございます。もちろん、この薬剤師を代表する委員は、医療に従事する看護婦、こういう問題の利益も十分代表しておるわけでございまして、医師会推薦の方々病院看護婦そのほかの医療関係の従事者、それの実態というものも十分踏まえながらその利益を代表しているものだと私は信じております。理解もいたしておるわけでございまして、この法律にこうあります以上、入れるというわけにはまいらぬのではないかと、かように考えます。
  119. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それは少しおかしい話で、いろいろな法律の改正案が出てくるわけでしょう。これだけ医療問題がややこしいときに、法律を改正して、私は当然看護婦代表などは入れるべきだと思います。そして、医療の代表が医師会推薦で五名出ておりますね。だからそういう方がいろいろ代弁をされるかもしれませんけれども医師会推薦のお医者さんが五名いるからいいんだということではなくて、やはり看護婦さんは看護婦さん自身の立場でいろいろ発言をして、さらにいまの医療問題をもっと適切にやっていくためには、私は法律を改正して看護婦代表を入れたっていいと思います。その点は、私もう一ぺん考え直していただきたいと思います。いま現在すぐに入れなさいといっても、それは法律がある以上、それを破るわけにはいかないでしょうと思いますが、今後どのように考えられますか。伺いたいと思います。
  120. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 看護婦さんには看護婦さんなりの重要な職務があるわけでございます。その点は、私も十分理解をいたしておるものでございます。しかし、医療というものは、あくまでもその主体性が医師にあるということは、これはもう御承知のとおりでございます。そういうふうな観点等もありまして、日本医師会の推薦する医師方々が、あるいは歯科医師会の推薦する歯科医師、あるいは薬剤師それぞれが医療の主体性を持つそういう方々でございますから、そうした看護婦さんや栄養士や、その他の方々の問題についても十分考えてやっていただいておるわけでございます。そういうふうなこともありますので、いま私は法律があるからこうできないというばかりでなくて、いまのところこれで十分ではないか、法律を改正する必要はないのではないか。やっぱり医療の主体性ということがどこにあるかということが、一番大事な問題だと思うのです。そういう考え方から、やっぱり現在の制度でその点は差しつかえはないんではないかと、こういうふうに考えている次第でございます。
  121. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 私の時間が一時十八分までですから、もうこれ以上質疑を繰り返しませんけれども、私はやっぱりいまの大臣の御答弁にはどうしても納得いたしかねます。そのことを申し上げて、いまの中医協の問題については質問をこれ以上繰り返しません。  次に、自治体病院赤字対策について御質問を申し上げたいと思います。先ほどもいろいろお話がありましたけれども、最近の自治体病院の赤字というものは、まことに目に余るものがございます。で、私のほうも兵庫県でございますけれども、去る六月に各市の助役が私のところにもいろんなことを言って陳情に参りました。ところが、その後なかなかこの病院の問題も解決がつきませんものですから、今度は現場におります自治体病院の事務長が八名先ごろ押しかけてまいりました。どうしてもこの自治体病院赤字対策をやってもらわなければ、制度を変えてもらわなければもうボーナスも払えないところもある、まあ、このように言って来られたわけですが、この陳情については、あるいは要望については厚生省のほうもよく御承知だと思いますが、今日まで自治省も厚生省もこの自治体病院の問題解決には、何か避けて通ってきたきらいがあるのではなかろうかと思います そこで、お伺いをいたしますが、いままでの赤字はどれくらいあるのか、昨年の赤字はどの程度あるのか、あるいはまた、今年度の赤字はどの程度見込まれるのか、お伺いしたい。
  122. 山本成美

    説明員(山本成美君) ただいま中沢委員から御質問のございました累積欠損金と申しますか、赤字の問題あるいは不良債務の問題と申しますか、この点でございますが、四十七年度の実績を決算によって見ますと、累積欠損金、まあ累積赤字と申しますか、これが六百九十四億でございます。それから不良債務額は約四百七十九億でございます。  四十八年度どういうふうになるんだろうかという問題でございますけれども、これはなかなかむずかしい推計でございまして、今年度のベースアップをどういうふうにいつごろから実施するかという問題はむろん響いてくるわけでありますが、診療報酬の改定問題等いろいろな要素がからんでまいると思いますけれども、大体まあ、累積欠損金で千億近くなるんじゃないかという感じがいたします。それから不良債務につきましても、大体七百億程度になるんじゃないかという、荒い予想でございますので、むろん実績はどうなりますか、さだかではございませんが、ざっと大ざっぱに言えということでございますればいま申し上げたようなことになるんではないかというふうに思っております。
  123. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 こういったような欠損と不良債務ですね、こういうものに対しては、これからどのようにしていかれますか。あるいはこれを利子補給をするとか、不良債務のたな上げとか、そういうような点で、これはただお金を出すだけじゃなくて、ひとつ国の制度としてこれをやっていかれるかどうか。
  124. 山本成美

    説明員(山本成美君) この赤字の処理の問題でございますが、まあ、大きく分けまして私ども二つあると思います。一つは、過去に生じた赤字をこのままほうっておいていいのかどうかという問題が一つと、それからもう一つは、将来に向かって赤字がふえないようにどういうふうにしてやるかということだろうと思います。前者につきましては、これは人によってはたいへんあと向きの行政だというふうなおしかりもあるのでございますけれども、私どもは、やはりこの辺で自治体に勤務する管理者以下職員がほんとうに意欲を燃やして仕事をするというためのケリをつけるという意味では不良債務のたな上げの問題は必要なんじゃないか、こういうふうな考え方でおります。  それからもう一つ、将来の赤字阻止の問題でございますけれども、赤字がふえるのをどうしたらいいか、これはたいへんむずかしい問題でございまして、赤字の出てくる原因そのものがたいへん複合的な理由から成り立っておるものでございますので、これだけやればいいというふうな妙案はなかなか出にくうございます。しかし、私どもがやり得る材料というものは、なるべく早くたくさんこなしてみたいというふうなことを考えておりまして、そのために、たとえばでございますが、離島でございますとか、あるいは辺地でございますとか、あるいは開業医の方もなかなか御活動してもらいにくいといったような地域につきまして、採算を度外視してでも医療確保をやらなければいかぬ、あるいは公衆衛生活動もやらなければいかぬというふうな公立病院につきましては、まずもって何とか手をつけてやらずばなるまい、こういうふうな考え方で目下検討しておるところでございます。これにつきましては、厚生省の御協力も十分いただいておりますので、なるべく早く結論を出しまして、来年度の予算要求に間に合うように何かしたいと、こういうふうなことでやっておりますので、御了承いただきたいと思います。
  125. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 厚生省はどう考えておられますか。
  126. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 医療機関の赤字といういま先生の御質問は、自治体病院ということでございますが、実は日赤、済生会等もまあ、医療法の公的病院として、四十八年度初めて二億八千万の——特殊部門、いわゆるガン、僻地というような特殊な部門の赤字をかかえている病院、その実績等を見まして、そう多額のものでございませんけれども、約百二十何カ所かの日赤、済生会と厚生連関係の病院に一億八千万の特殊部門に対する補助ということで出したわけでございます。これは決して運営上の赤字の補助というわけではございません。そういうまあ実績もあるわけでございますが、一般的に言って、病院の赤字というものは、公私を問わず基本的には診療報酬の問題とかかわり合いがあることはこれは言えると思います。しかし、国全体の医療機関のあり方というもの、あるいは個々の施設の運営費、運営の状況等を見ますと、たとえば人件費の占め方というものも個々に非常に違いがある。あるいは一人一人の、極端な話が、ある診療科の医師を非常に高給で雇っておったけれども、そのために赤字があった。つい最近聞いた話ですけれども、その医師がやめて、たとえば耳鼻科とか眼科がやめてしまったために、その患者があまり多くない診療科でかえって赤字が緩和されて、黒字にもなりませんけれども、というような、非常に個々の施設ごとの微妙な問題が赤字という要素になっておるわけです。私は、基本的にはやはり診療報酬の適正化という問題があると思います、医療には。これはあると思いますけれども、個々のたとえば国立だ、自治体だ、あるいは日赤だ、済生会だといって公的のものを取り上げて、一々これに運営の是非を問わずに赤字を補てんするということは、わが国の医療全体を進める上から私はできない。したがって、本年度特定な部門に対する運営費、特殊部門に対する補助を出したという、この範囲のことを私は自治省その他との御相談、あるいはいろいろ自治省でも研究会をお開きになって検討していただいております。そういう範囲について、われわれわが国全体の医療の確保と運営の適正という全体をながめて、これがやるべきことであるという結論に進めば、私はやる必要はあるというふうに思っておりまして、その点については、まあ一つの事例が日赤、済生会等でございますし、そういうものを踏まえながら、この自治体病院の運営ということ、単なる赤字にとらわれて運営そのものがやはり適正にいかないということは好ましいことではございませんし、そういう点で十分自治省と相談しながらやっていきたい、こういうふうに考えております。
  127. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 きょうのこの社会労働委員会の日の設定はほんとうにいいチャンスだったと思う。それはなぜかといいますと、やがて予算が組まれるわけですね。そして自治体病院やらその他の病院、そういうところも赤字をかかえているところはほんとうに血を吐く思いですね。ですから、きょうのこの社会労働委員会が設定されたということは、そして、そこでみんなが中医協の問題、いろんな問題に触れて議論をするということ、たいへんよかったと思うのですね。  そこで、いまお話がありましたけれども、先ほど自治省のほうから話があったように、山間僻地だの、あるいは救急病院だの、あるいは老人病棟だの、こういったような、いわば不採算病院ですね、こういうようなところがことに赤字がひどいわけです。先ほども言ったように、今年度末では一千億に近くなるだろうとか、不良債務は七百億に近くなるだろうとかというお話です。これはたいへんな費用です。ちなみに、一昨年から四十七年度にかけての累積欠損金ですね、これは三〇%増加です。ところが、一千億になりますと、これは三〇%をはるかにこえたまた赤字になるわけですね。こんなに赤字がふえてくるわけですから、いまちょうどこの時期に、自治省と厚生省といろいろ相談をなさって、ぜひともこの赤字解消には本気で取り組んでほしいと思うのです。といいますのは、地域住民は、なるほど自分のそばにお医者さんがおればそこに飛び込んでも行きますけれども、さて入院をしようかとか、少し何かややこしい病気だとか、あるいはガンだの何だのといいますと、やっぱり市民病院だの県立病院に行こうかと、そういう地方自治体の病院が一番たよりなんです。ところが、その病院がたいへん赤字になったり何かして、どうやら入院するベットもなくなってしまった。こういうふうなことになるとやっぱり地域の人は一番困るわけですね、一番信頼しているんですから。  そこで、先ほど日赤や済生会の病院の話がございましたけれども、いろいろ予算を見ますと、そういうところには厚生省はいままでも相当なやっぱり補助やら出しておりますね。ところが、今度私が取り上げたのは地方自治体の病院でございますから、これにも同じような配慮をなさっていただきたい、あるいは運営費の問題でもめんどう見ていただきたい、このように私考えるわけでございます。  そこで、自治体病院は、最近そこでお医者さんが働いておられますと、二、三年ないし四、五年になりまして、そのお医者さんにいろいろな患者さんがつきますと、どうも自治体病院をやめて開業をなさるお医者さんがたいへん多いという話も私は聞きました。そして目でも見ております。こうなりますと、一体地域住民が信頼をしている自治体病院というのは開業医をつくるためのトンネル病院みたいな感じで、こういう点も多少は赤字の原因になっているんではなかろうか、このように思いますけれども、私は、自治体病院が運営できるようにぜひしなければならないし、一体自治体病院というものの位置づけはどうなっているんだろうかという疑問すら起こるんですが、この点をどうお考えになりますか。
  128. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 確かに若い先生方がいきなり開業しても自信がない、したがって、どこかの病院で勤務している。そして自信がつくとある程度独立して自分で仕事をしたい、この意欲は、私は、いまのわが国の医療制度の中ではこれは否定できない、あるいは制限することは基本的にはむずかしい問題だと考えております。しかしながら、その先生方のそういう開業をしてしまう。先生の御趣旨はおそらくそうするとかえって病院がその先生に患者を取られたり、困って赤字の原因になるという要素も御質問の中にあるかどうかわかりませんけれども、開業するということと病院側の赤字問題と、私は、何かそこに特殊な条件がないとお答えしにくい問題でございますし、私は赤字に即つながるということの理解はなかなか、——医師の獲得は困難だ、したがって、住民の期待するような診療確保が持てない。だから先ほどお答えしたように、赤字要素から見ると、かえって医者がいなくなったほうが人件費がかからなくなって黒字に近くなってきたなんということではございますけれども、しかし、地域の医療から考えたら眼科医がいなくなるということはたいへんな問題であるということを踏まえてのお尋ねだと思うわけでございます。そういう意味で医師がいなくなるということ、それから特に公的病院の給与その他民間の開業医との収入格差、こういう問題は基本的にあると思いますけれども、私は、やはり個人の開業しての努力というものと、あるいは勤務する医師の給与というものには、これはもう基本的になかなか解決しにくい格差というものはやむを得ないと思うんです。したがって、病院側はやはり医師の研修に役立つとか、あるいは勉強に役立つとか、あるいはそういうあまりにいろいろなことにこだわらずに自分の良心に従って医療ができるというような面を踏まえる意味でも、公的病院あるいは教育病院の育成ということが今後のわが国の地方医療の、特に地方の医療の確保の上には非常に重要な問題であるというふうに考えておりますので、自治体病院も当然含めて、やはり各県に若いお医者さん方の研修病院というものをもっと公的資金を投入して育成する必要があるというふうに考えております。
  129. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それからもう一つの問題は、自治体病院のほうでは看護婦さんの養成にも相当のお金をつぎ込んでいるのですね。こういうところにも私は相当の補助金を出してやらなければならない問題があろうかと思います。せっかくいまの研究病院もなければならないというようなことでございますから、自治省が先ほどたいへん前向きな答弁をしていただいたわけですが、今後力を合わせて何とかこの自治体病院が立っていけるように、制度の面からも、補助金の面からも、予算編成の前に十分検討をしていただきたいと思うわけでございます。  そこで、こう一ぺん中医協の問題に戻るかもしれませんが、やはりそういった自治体病院が立っていくためには、診療報酬を改定しなければならないと思います。そのためには齋藤厚生大臣、どうか十分な努力をして、中医協を早くレールに乗せて診療報酬の改定をするように努力をしていくべきだと思いますが、再度決意を伺いたいと思います。
  130. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 先ほどもたびたびお答えいたしましたように、病院診療所ともに診療報酬の改定が必要であり、また緊急を要する問題であると、私は理解をいたしております。したがいまして、一日も早く三者構成の中医協が同じテーブルに三者とも着くということが一番大事な、いまさしあたりの問題でございますから、その方面に全力を尽くしておる次第でございます。今後とも私は、真剣になってこの問題の解決に努力をいたしたいと、かように考えております。
  131. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 時間がありませんからその次の問題に移っていきたいと思います。  まず、それには質問の通告をしておきましたように、老人福祉施設における常勤の栄養士、調理師についての質問でございます。  これは、福祉施設で働いている保母さんや看護婦さん、そういったような職員、そういった人たちの員数不足によって過重労働になっていたり、あるいは休暇も意のままには取れない、こういうような問題があちらでもこちらでも起こっている現状は、この委員会でも、予算委員会でも再三いろいろな委員が指摘をしたところでございますからもう厚生省も十分承知だと思いますが、ここで幾ら老人福祉だの心身障害児福祉だのと号令をしてみても、こういう職員がなくなってしまっては私は福祉問題はそこからくずれていくと、このように再三私自身も指摘をしてまいりました。  そこで、一例として申し上げたいのは、最近私のおります兵庫県の西宮市というところで、重症心身障害児の施設で、名前を言えば砂子療育園というのですが、そこでついにそういう問題が起こってしまいました。一昨日の朝のNHKの「こんにちは奥さん」、このテレビであるいはごらんになったかもしれませんが、この砂子療育園の職員不足の問題を放映をいたしておりました。私も時間の許す限り見たわけですけれども、三分の一から四分の一の入園児を三十日目とか四十日目ぐらい、家に帰すわけですね。ところが御承知のように、兵庫県というのは瀬戸内海から裏日本まであるわけですね。日本海まで。新大阪と東京の間は新幹線で走れば三時間十分です。ところが、西宮から但馬の山奥まで走りますと車で四時間とか四時間半とかかかるわけですね。そういうところに三十日間とか四十日間とか子供を帰されて、あるいはそのたびに親がこれを迎えに来たり送りに行ったりするということは並みたいていのことではないわけです。そして、ここはごたぶんに漏れず先ほどいろいろ話がありました辺地とか、あるいは過疎地域なんです。そういうところに行きますと、郵便ポストもない、もちろんお医者さんなどはおりません。そういうところに帰されてしまったということは非常に大きな問題だと思いますね。特に車で連れて帰る四時間の間にでもおしめを一緒に積んだり、氷のうを積んだり、いろいろしながらこういう子供を連れて帰る、こういうようについに一つの大きな実例ができてしまったわけですね。もちろん、ここには多少思想的な問題もからんでまいりまして、さらにややこしくなっておりますのでたいへんな問題になっておりますけれども、しかし結局は、そのしわ寄せというのは、みんなそこに入っている子供とかあるいは親にしわ寄せがされるわけです。そこで、何とか早くこれを解決をしたい、こう私どももその成り行きを見守っているわけです。  そこで、初めの老人福祉施設の栄養士さんの問題に移りますけれども、この間この栄養士さんたちもおそらく厚生省にも陳情に行かれたから内容をよく御存じだと思いますけれども、十五、六名見えました栄養士さんの顔を見ておりますと、たいへんまだ情熱に燃えて、何とかして老人福祉施設をうまく自分たちの力で、老人の皆さんにはおいしい食事を、そうして病人には病人らしい食事をということで意欲に燃えておられました。しかし、いまの砂子療育園の例を申し上げましたように、もしもこの人たちもその過重労働の問題や、あるいは調理師さんの員数の不足やなんかから休むわけにもいかないということで、この人たちまでが情熱を失ってしまったら、老人福祉施設は一体どうなるのかしらんという感じがするわけです。ですから、まだ情熱を持っている間に、早く何とか人数をふやしたり、そして過重労働にならないように手を打つべきだと思います。再三こういう問題申し上げたわけですけれども、特にきょうはまた調理師さんの問題についてその点で御質問申し上げたいと思います。  そこで、特別養護老人ホームの調理師さんあるいは養護老人ホームの調理師さんの一体人数はいまどうなっておりますか、伺いたいと思います。
  132. 高木玄

    説明員高木玄君) 現在の老人ホームにおきまする調理員の配置基準でございますが、養護老人ホームについて申しますと、定員五十名の施設について調理員三名、それから特別養護老人ホーム同じく三名、それから五十一名から九十名までの施設も同じく三名でございます。それから九十一人から百十人の施設につきましては、本年一名増員いたしまして四名——養護老人ホーム、特別養護老人ホームとも四名配置することにいたしております。なお、百四十人をこえるような施設につきましては調理員が五名配置される、こういうような配置基準になっております。
  133. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 彼女たち要望は、養護老人ホームで、五十名まで四名、二十五名増すごとに一名増にしてほしい、で、特別養護老人ホームでは、五十名まで五名、二十名増すごとに一名、こういう要望が出ておりますが、いまのお話とはずいぶんかけ離れております。いまのお話では、養護老人ホームが五十名に対して三名、五十一名から九十名までも三名と、こういうことではとってもやりきれたものではないと思います。  そこで、調理員の方は、ある朝、朝食がいつもより時間がおくれているのでよく調べてみたら、その朝食をやる方は全部宿直員がやっておった、こういうような話を私は聞きました。その宿直員がやらなければ朝食作業がなかなかできない。なぜかといいますと、調理員が八時間の労働ではどうしても昼食と夕食しかやれないんだ、特に老人ホームでは夕御飯が五時ごろに済んでしまうわけですね。それくらいに済ましてもらわなければ、あと始末をして帰るのに八時間労働ではできないということなんです。ですから、いまの数字とあの人たち要望とはずいぶんかけ離れております。これをもっともっと前向きに人数をふやして、重症心身障害児の施設なんかで働く人がもう腰痛を起こしたりなんかしてみんなやめてしまうということがないように、老人ホームのこの調理師さんの問題だけでも、とにかくいま情熱を持っている間に解決をしていただきたいと思いますが、それは検討ができるかどうか、お答えを願いたいと思います。
  134. 高木玄

    説明員高木玄君) 収容施設におきまする給食、これは入所者の処遇上最も大事なことと考えております。特に老人ホームにおきましては、入所している老人の方々は食事が何よりの楽しみでございますので、こういった給食業務の充実ということを私ども考えなければならぬと思いまして、本年度予算におきましては、定員八十名以下の小規模の老人ホームに、非常勤ではございますが、栄養士を必ず一名ずつ配置する予算を計上いたしましたし、また調理員につきましては、全部で六百九十八人の増員をはかったところでございます。しかし何と申しましても、いままでのこの社会福祉施設職員充実につきましては、直接処遇職員、つまり寮母さんとか、指導員といったような直接入所者を処遇する職員充実のほうに力を入れてまいりました。しかし、それもある程度進んでまいりましたので、今度はこの方面に力を入れたいということで、現在この給食業務の充実について、各施設ごとの給食のあり方、職員の配置につきまして基本的な研究を進めております。その研究の結果を待ちまして年次計画で整備してまいるようにしたいと、かように考えておるわけでございます。
  135. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 いま小規模施設にも非常勤の人を置くことに今度は予算を措置していると、こういうお話でございましたけれども、その八十名以下の小規模施設には、非常勤でなくて当然常勤の調理師さんを置くべきだと思います。それには栄養改善法の九条の二、これは昭和二十七年につくった法律でございますけれども、その中で八十名以下というのはこれは努力規定になっておりますね。これをきちんと、——もう昭和二十七年からですから——この法律を直して、そしてこれは当然常勤の調理師さんを置くべきだと思いますが、その点はいかがですか。
  136. 加倉井駿一

    説明員加倉井駿一君) ただいま御指摘がございましたような栄養改善法の第九条の二の問題は、集団給食施設全般につきましての規定でございまして、当然この規定によりまして一応努力目標を定めてございます。ただ、法の趣旨といたしまして、取り締まりではなくてむしろ指導を重点にいたしておりまして、その指導に基づきまして各施設におきますいろいろの方、特に給食関係の方々の必要人数等はおきめいただく、まあ、これが趣旨だと存じます。したがいまして、私どもといたしましては、一応の努力目標でございますし、また、収容施設におきます給食というのは非常に収容者の方々にとっては重要な問題でございまするので、できるだけその実情に沿って職員の増員方につきます御努力を願うというのが私どもの立場でございまして、個々の施設をあげてどこの施設には何名置かなければならぬというような規定に改正する段階ではないと思っておりますので、その点、またいろいろ問題もございますので、検討さしていただきたいと思っております。
  137. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 もう時間がありませんから最後ですが、——いま私はちょっと一つあやまちをいたしました。その小規模施設のは、常勤の調理師でなくて栄養士のことでございます。  それでは最後に、先ほど小平委員から、北海道青森に視察に参りました報告がございましたが、私もその視察について参りましたが、そこでやっぱりいろんな施設を私も見てまいりましたときに、そこで働く人たちに「あなた方は何が一番ほしいですか」と伺いましたら、「第一に人手がほしいです」、「その次は何がほしいですか」と質問したら、「第二にはベースアップでございます」と、まあ、こう言われるぐらい人手があの人たちはほしくって、かわり手がなくてもうたいへん困っておるわけですね。先ほどからいろいろくどく申し上げておりますけれども、ぜひとも員数の確保、そして増員、こういう点についてはこれから努力をしていっていただきたいと思います。  それから、給食の問題も先ほどから出ておりますけれども、これだけ生鮮食料品が値上がりをしている中で自分たちの過重労働も顧みず、特別養護老人ホームが一日一人二百七十二円、養護老人ホームが二百十八円というようなたいへん低い原材料の中でやりくり算段もたいへんでございます。ちょうど予算要求の前でございますから、この点もさらに配慮をしていただいて、そういうところで働いている方あるいは調理師さん、栄養士さん、そういう方々があんまり苦労をしないでもやれるように、そしてまた、あるいは隣近所の施設共同購入するようなこともいろいろ考えなければならないかもしれませんけれども、そういうことも考えながら、あそこで働く人たちが情熱を失ってしまってやめてしまうことのないように、第二の砂子療育園のような問題が起こらないようにぜひとも検討をしていただく、十分配慮をしていただくように心から要望をいたしまして、私の質問を終わらしていただきます。
  138. 藤原道子

    ○藤原道子君 関連して、簡単に御質問したいのでございますが、私は、いま健康を悪くして静養中でございますので、あまり委員会に出ておりませんけれども、この間新聞を見ましたら、国立久里浜養護学校というのができるのですね、今度。ところがここに身障児を三十人ばかり入れるのだそうですが、これに対して看護婦さんが七人、それから保母さんが七人というものを集めようとして努力したけれども、ついに看護婦さんは一人も集まらない、いよいよ看護婦なしに養護学校を始める、こういうことが新聞に出ているのですね。これは、一体いま一番問題になっておる心身障害児、その世話をするのに看護婦が一人もなくて、そして初めてつくる国立の久里浜養護学校が始めてよろしいのでしょうか。私は、看護婦の不足については昭和二十三年から議会で騒いでいるのです。改正法案を何回か出している、ところが一向に看護婦の養成が進まない。いま皆さんの御質問聞いていても、われわれの要求したことがきょうまで通っていなくて、いままたこういう問題になっている。しみじみいま考えたものですから突然質問さしていただくのですけれども看護婦がなくて学校を始める。子供の世話は一体どうしておやりになるか、この点を聞きたいことが一つ。  それから、いま看護婦が足りなくて病床閉鎖のところがずいぶんありますね。国立第一病院だって千床あるのに四百三十床しか使っていない。原因は、看護婦がない。入院したくても病室がない、病室はあるけれども看護婦がないから入院が許されない。これに対して、厚生省看護婦の養成を一体どういうふうに考えていらっしゃるのか、看護婦を何とかできる見通しがあるかどうかとあわせまして、国立久里浜養護学校の今度の開校に対して一体看護婦がなくて始めてもいいのか、これについてもちょっと御質問をいたしたいと思います。
  139. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 国立の久里浜の問題でございますが、実はこの国立養護学校は文部省所管のものでございまして、国立で初めて久里浜に文部省が、養護学校の国立タイプというのは初めてなんでございます。かねて運営の問題についてわれわれも直接相談を受けていませんでしたが、今回、先生のお手元に持っておられる新聞が出ましたものですから、私、すぐ私の国立久里浜病院というのが近くにあるはずでございますので、そこへすぐ何とか応援できないか、同じ国立関係でございますし、何か応援できないかということですぐ調べさせましたところが、うちの、厚生省関係の久里浜病院看護婦の不足数がただいま十五名ぐらい不足している、とても病院の責任を放棄してまで応援が、お手伝いをすることはできません、こういう返事で、私も実はたいへん困ったことだと思っております。この問題自体についての文部省関係者との直接話し合いはまださせておりませんが、この問題につきましては、養護学校に勤務する看護婦でございますから、いろいろの勤務の職責があると思います。単なる病院に勤務する看護婦と違うと思いますので、そういう意味で保健婦の経験者等も必要でございましょうし、あるいは年齢的にあまり考慮をする必要がないならば、場合によっては国立関係の人でそういう社会的に一たん文部省のほうに移ってもいいという人があればそういう人をお世話するとか、これは、いずれにしても文部省の御事情を聞きながら、できるだけ、一人もいないということではたいへんでございますので、何とか協力してお世話できるようにいたしたい、こういうふうに考えております。  それから看護婦の問題全体につきましては、お答えすれば問題はたくさんございますけれども、先生にかねがねお答えしましたように、この問題につきましてはいろいろ一つの変遷がございますが、いまのような状態を招いた以上、看護婦の処遇をはじめ養成施設の増加あるいはナースバンクをつくって潜在看護婦の登録制あるいは勉強のチャンスを与えるとか、あるいはさらに通信教育による准看の進学課程への促進というようなもう総合政策を、予算上もまた対策の幅においても、予算上も従来ない予算を増額して要求いたしておりまして、私としてはぜひ実現する方向で努力いたしたいと思っております。
  140. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、きょうは簡単にしておいていずれあらためて質問いたしますけれども、いつも看護婦の養成はするすると言いながらきょうまでしていない。大臣、ほんとうに看護婦の養成を国の費用でやってもらいたい。いま非常に重労働だから、看護婦さんの腰痛症が非常にふえている。いま文部省の関係だと言うけれども、養護学校が初めてできるのに保母さんを七人、看護婦七人、——保母がたった三人集まっただけで、看護婦はゼロなんです。それでこういう学校を開いて、集めた子供たちはどうして見てやれるのか。こういうことが非常に胸に痛くなったものですから、きょう質問をちょっとさしていただきましたので、またいずれ詳しくは伺いたいと思うのですが、看護婦の養成だけは真剣にやってほしいが、どうなんですか、大臣。
  141. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 看護婦の養成の必要であり、緊急に処理しなければならない問題であることについては、先生と私も同意見てございます。したがいまして、来年度におきましては、できるだけ国費を傾倒いたしまして看護婦問題に決着をつけるように努力をいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございまして、この問題は真剣に取り組む考えでございます。
  142. 藤原道子

    ○藤原道子君 真剣にやってください。
  143. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 真剣に取り組む考えでございます。
  144. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、大臣の御都合で時間があまりないようですから、簡単にお聞かせを願いたいと思っております。  先ほどから中医協の問題、診療報酬改定の問題等についての大臣の御答弁を伺っておりまして、たいへん心細いというふうに率直に思います。  そこで、まず第一に、大臣にお聞きをいたしたいのは、国民医療については一体だれが責任を負うのかという点を、これはまず大前提として明らかにしていただきたいと思うわけです。
  145. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 国民医療に対する行政的責任は、厚生大臣が負うべきものと考えております。
  146. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 まず、そういう上に立ちまして先ほどからのお話を伺っておりますと、医療機関あるいは開業医の先生方、たいへん強い要求があるということをおっしゃっておられましたけれども、私はそれだけではなくて、いまの国民医療の状態というのはきわめて大きな破壊の状態、荒廃の状態にさらされていると思うわけです。その点で、これは時間がありませんから私のほうが申し上げておきたいと思いますけれども、たとえば、最近、ことしでございますけれども、この三カ月の間に、大阪の東成区という所ですが、開業医の先生で低診療費のために看護婦も雇えないというふうな状況で、先生と奥さんとがずっと診療を続けておられて、これは五十歳前後の奥さんが、三カ月の間に、引き続きお医者さんの奥さんが三人ぼくぼくなくなっているわけです。大問題です。これは、先生もたいへんな重労働であると同時に、奥さんが看護の仕事も、家事の仕事も手伝ってやっておられるというふうなこと。夜間往診に行くといえば、奥さんも当然起きなければならぬというふうなことで、これはたいへんな医療機関の中で大問題になっておるわけです。そういう結果はどうなるかといいますと、それでは奥さんがなくなったから看護婦さんを雇って診療を続けられるかというと、診療が続けられないので、やむなく開業をやめざるを得ないというふうにいわれておるわけです。あるいはたまたま娘さんのおられる御家庭で、結婚前のお嬢さんが臨時的にお手伝いをなさるというふうなことで、やっと診療体制を保っていくということです。そういうことになったら、一体患者さんの診療に対する要望にこたえ切れるかどうか。これはこたえられない。犠牲は全部患者がかぶらなければならぬということになっているわけです。  あるいは病院関係では、これは先ほどからのお話では、診療報酬改定の問題について少しも明確にお答えになっておりませんけれども、ことしの年末のボーナスが支払えないという病院がずいぶんたくさんあります。そういう状態になってくれば、これはもういやおうなしに看護婦さんをはじめ医療従業員はやめざるを得ない。そうしたら、病院は閉鎖したくなくても病棟を閉鎖しなきゃならない、あるいは病院を閉鎖しなきゃならないという事態にも追い込まれざるを得ないという事態が来ているわけです。  また、歯科医師に至っては、これは東京都の実例が先ごろ新聞紙上に発表されておりましたけれども生活保護患者の診療を指定医がどんどん返上しておられるんですね、指定医が。いま東京都全体では歯科医師の中の三分の一以下になった、日野市では一軒も生活保護患者の歯科の診療を担当する先生がいなくなったという状態が起こってきております。  あるいは救急病院の返上というのが東京都でも、これは全国的にそうですけれども、次々起こって、東京都の消防庁のお話では、交通事故にかかってもすぐに入院できると思ってもらっちゃ困るというふうなことがいわれる。そこまできているわけです。  こういう状態というのは、これはまさに当然責任を負わなきゃならない厚生大臣みずからの責任だと思うんですが、こういった点を解決をしていくためにどうなさいますか。
  147. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 先ほども矢山委員その他の方々にお答えいたしましたが、看護婦不足の問題、お述べになりましたような医療荒廃のいろんな実例等々については、私は私なりにある程度承知をいたしております。したがいまして、こうした事態を解決するためには診療報酬の改定が必要である、かように私は考えておるわけでございます。したがいまして、診療報酬の改定が必要であり、しかも緊急な問題であるという認識に立ちまして、一日も早くこれが実現するように努力をしていかなければならない。こういう考え方のもとにもろもろの努力を続けている、こういうことでございます。
  148. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それは先ほどお伺いをいたしましたが、そのお答えは、七十一国会の九月十四日にお伺いをしたときと全く変わっていない。他の委員もおっしゃったように全くその域を出ていない。だからこそ危機が一そうに深刻化しているということを申し上げているわけです。  で、厚生大臣が、公私病院連盟に対して、十一月一日から実施することに賛成である、十一月一日実施不可能になった場合に私にも考えがあると、十二月を絶対に越えさせないということをお約束なさっているんですね。これはもう、から約束ですか。どうなさるんですか。
  149. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 先般公私病院連盟の方がおいでになったとき、陳情を承りました。できるだけ早く正常化のために努力するというふうなことを申し上げておきました。  それから十一月一日というお話は、私は約束をいたしておりません。十一月一日から実施するなんと約束はしたことはございません。
  150. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは私は立ち会っておりませんから、おっしゃったのか、おっしゃらないのか知りませんけれども、公私病院連盟では、そういうふうに厚生大臣がお答えになったと、絶対に十二月を越えさせないと確約をしたというふうに、正式に文書を発表しておられます。  で、その不可能になった場合に、私にも考えがあるというふうにおっしゃっているんですけれども厚生大臣のお考えというのは何ですか。
  151. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) まあ、私もだいぶ前のことでございますから、どういういきさつでどういうふうにお答えしたかわかりませんが、中医協が混乱をしておりますが、これを正常化するためにはいろいろ考えておるということを申し上げておるわけでございます。
  152. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それは、もう時間の都合がありますから、ちょっとそのことについては触れたいんですが、おきますが、中医協問題について、先ほどからの他の委員の皆さんにお答えになった内容からいきまして、若干お尋ねをしたい。  その再開にたいへん努力をしておるのだということをおっしゃっておられます。これは九月の十三日にも同じお答えをなさった。で、まあ、どのように努力をされたか、裏舞台の努力なので、国会のこの正式の審議の場ではわからない。これはわかるようにやはり明確にされるべきであるというふうに思うのです。
  153. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 国会の場においてわかるようにということでございますが、非常にデリケートな問題でありますから、一々具体的に私申し上げることは差し控えますが、先ほど来申し上げておるように、私は診療報酬改定の必要性を認めているのですよ。認めて、一日も早く何とかしなければならぬと、こういう考えなんです。そのために努力している。その内容について一々私はお答え申し上げることは差し控えさしていただきます。
  154. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、ときどきの厚生大臣の御発言に基づいてお尋ねをしたい。  支払い側の皆さん方から中医協再開についての要望が出た。で、けさの朝刊によりますと、十一月二十八日の自民党との公開討論会以前は開けないというふうにお答えになっている。そうすると、十一月二十八日以降なら開けるめどは立っておられるのですか。その辺はどうですか。
  155. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 昨日でございました、昨日の夕方支払い側七団体の方々がお見えになりまして、一日も早く再開するようにという申し入れをいただきました。で、私はそれに対して、この問題は、皆さん、私がお答えにならぬだって、もう先生自身御承知だと思うのですが、政党政治でありますから、自民党に対して四原則、十二項目をなぜやらぬのかといったふうないろいろ話をしておるわけでございます。したがって、この討論会は、やっぱり中医協問題解決のための一つの段階でもございますので、私はその前は開けないであろうということを申し上げたわけでございます。そんならそのあといつ開くのだ、こうたたみかけられての御質問でございますが、いま確たる返事はできません。しかし、私は一日も早く事態を正常化するように努力していかなければなりませんし、努力をしておるわけで、今後とも努力を続けると、こういうことでございます。
  156. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうすると、十一月二十八日以降も開けるかどうかということについては確約できない、しかし努力はすると、こういう御見解でございますが、先ほどからの話の中で、今度は、再開をされた中医協に対して諮問を行なうというふうにおっしゃられた。これは私は当然だと思う。法律上もそのことはちゃんと明記されておるわけですから、当然こういう重大な事態に差しかかっておるおりに、責任を負わねばならない厚生大臣としては諮問をなさるのが当然だというふうに思います。  そこでお聞きをしたいのですけれども、諮問をする際に、先ほどスライド制についても諮問をしたいというふうにおっしゃっておられたのですが、それではスライド制についてはどういう要素を——要望としては「物価・人件費にスライド」というふうに言っているわけですが、どういう、要素をスライド制については加味をしていくのか。率は言えないとおっしゃったのですから、率は言わなくてけっこうです、言えなかったら。しかし、スライド制は諮問をしたいというふうに明確にお答えになっておられるわけですから、その内容としては、どういうものを、どういう基礎数字をお用いになるのか、そういう点を明確にしていただきたい。
  157. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) かつて斎藤昇厚生大臣と日本医師会長との了解事項がございまして、「診療報酬を物価・人件費にスライドしていく」ということが記されておるわけでございまして、「物価・人件費にスライドにしていく」というスライド方式についてどういう方式を確立したがいいか、それについて諮問をいたしたいと考えております。
  158. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうすると、スライド制を実施するにあたっての尺度をどうしたらよろしいかというふうな諮問のしかたであって、尺度をこういうふうに使ってやっていただきたいという諮問のしかたじゃないんですね。
  159. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 先ほども申し上げましたように、スライド方式の確立について諮問をするわけでございます。
  160. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと、ちょっと不安になってまいりましたので——診療報酬の引き上げについて諮問をなさるというわけだけれども、そうしますと、その諮問の、引き上げの内容についても、これは諮問をなさるのですか、なさらないのですか。
  161. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 診療報酬の改定についてはどういう内容の諮問をするかということについては、いまはっきり申し上げることはできません。
  162. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そこでたいへんなんです。で、中医協の円滑な連営のために責任を負わなきゃならぬということで、責任を負うというふうに先ほどから再三おっしゃっておられるんですが、まず、それでは事務当局にお伺いをしたいんですけれども、たとえば診療報酬の改定について一五%、二〇%、三〇%——要求は三〇%以上なんです——をアップをするためには来年度の原資は幾ら要りますか。
  163. 柳瀬孝吉

    説明員(柳瀬孝吉君) 診療報酬の引き上げ一%相当額が約九十五億円ぐらいになるものと思われるわけでございまして、したがいまして、その中で給付費の国庫補助が一〇%ございますから、それを差し引きますと、一%当たり約八十五億円程度を要することになるわけでございます。したがいまして、一五%かりに引き上げという場合にはその財政影響額は約千三百億円、それから二〇%になりますと約千七百億円を要するという見込みでございます。
  164. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それは診療報酬、いまの計算でいきますと、一〇%をアップするのに八百五十億、二〇%をアップするのに千七百億、三〇%の増額をするためには二千五百五十億、その計算でいったらね。これはいまの保険財政から言いましてまるまる赤字になりますか、あるいはそれがどの程度赤字になって残りますか。
  165. 柳瀬孝吉

    説明員(柳瀬孝吉君) これは収入との見合いにおきましていろいろと不確定要素が非常に多いわけでございますので、現段階でまだはっきりした見通しを申し上げるまでに至っておりませんけれども、大体標準報酬の上限の引き上げ、あるいはベースアップの状況によって標準報酬がどの程度増収になるかというふうなことが相当関連してくるわけでございまして、その状況によりまして、それがいわゆる診療報酬の引き上げを別にいたしまして、どうなるかという見通しでございますが、これは来年度、まあ、トントンよりもある程度余裕が生じてくるというような状況になるのじゃないかというふうな予想をしております。
  166. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと、二〇%のアップをして千七百億要っても、千七百億はまるまるの赤字にはならない、こういう御意見でございますね。
  167. 柳瀬孝吉

    説明員(柳瀬孝吉君) ただいまのところの大ざっぱな予測では、そういうふうに考えております。
  168. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと、三〇%という要求で話を進めていきたいと思いますが、二千五百五十億、若干の余裕が出るというのは、余裕はどの程度出るのか知りませんが、その余裕を見込んで、そうして保険財政を改正された法律どおり運営をいたしますと、大体弾力条項はこれは政治的な問題があるから慎重に扱うというのはすでに大臣も答えておられるのですよ。私はそのことは抜きにして、法律どおりストレートに計算すると、弾力条項はどの程度引き上げたらかっこうがつきますか。
  169. 柳瀬孝吉

    説明員(柳瀬孝吉君) 先ほど申し上げましたように、収入との見合い等もございますので、それから四十九年度のいわゆる増収分がどの程度になるかという見込みの問題もございますので、いまの段階でどの程度引き上げるということが必要になるかどうかということは予測が非常にむずかしい問題でございます。
  170. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そんなむずかしくないはずでしょう。もっと単純計算で勘定をしていただいたらいいんじゃないかと思いますが、それじゃ、保険料について千分の一を上げたら金額は幾らになるんやと、その弾力条項を〇・一%上げた場合の政府関係の財政の影響額が幾らあって、〇・一上げたら総額として算術計算では幾らになるんやと、そのことを計算しておるのでしょう。それを言うていただいたら、これは自動的に計算できるのです。
  171. 柳瀬孝吉

    説明員(柳瀬孝吉君) 保険料率を千分の一上げますと、四十九年度の標準報酬の伸びを考慮いたしますと、大体百三十億円前後になるものと見込まれておるわけでございますが、これに保険料率を千分の一上げます場合に、連動する国庫補助保険給付費の〇・八%の相当額でございますが、これを、大体まあ、それが約八十億円ぐらいになる。したがいまして、その両方入れますと、大体二百億ないし二百十億円ぐらいになるというふうな見込みでございます。
  172. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これプラスまた総医療の一〇%国庫負担というのがこの聞きまりましたね。だからそれよりちょっとまだ上がると、しかし、いまおっしゃった二百十億程度の原資ということで計算をいたしますと、たとえば二千五百五十億で若干の余裕があるとしても、これは弾力条項千分の八十までしかきめてないのです。これを突破すると思うのですが、どうでしょう。
  173. 柳瀬孝吉

    説明員(柳瀬孝吉君) つまりこれは収入がどの程度増収があるかという問題との関連がございますのと、もう一つは単年度で四十九年度だけの収支だけじゃなくて、昭和五十年度にはどうなるかというようなこともやはり考えて、単年度だけで処理をするということだけで処理をするということになりますと、まあ、相当なあれになりますが、短期の借り入れ制度というのもございますから、四十九年度のある程度の赤字を五十年度に借り入れ金によって処理をするということもできるわけでございますので、その辺がどういうふうに動いてきますか、もう少し様子を見ないと、はっきりしたことは申せないと思います。
  174. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、計数上の単純計算をしましたのは、大臣が諮問をなさるといういうふうにおっしゃった、たいへん関連が深いので、特にお伺いをしたのです。といいますのは、大臣がたとえば諮問を、診療報酬引き上げについて三〇%引き上げたいということで諮問をなさったとします、   〔委員長退席、理事須原昭二君着席〕  その場合に、いまの法律がストレートに適用されて、たとえば千分の八十まで保険料を引き上げなければならないというふうなことがひっついて出た場合には、先ほどからそのためにたいへん苦労をしているのだとおっしゃっておられる三者がテーブルにつくというやつが、ついたとたんにパーになるという心配を感じているわけです。ですから、大臣が診療報酬引き上げについての諮問をなさるという場合には、当然これは現在の、いまの社会の状態の中で被保険者にこれ以上負担かけないということの原則の中で諮問をなさらなかったら、これはせっかくテーブルにお着きになっていただいた三者の皆さん方が円滑に審議が進むかどうかというのがきわめて不安定だというふうに思うんですが、その点について大臣どうですか。諮問をなさる場合には、これは診療報酬は要求にできるだけ近い内容であり、しかもそのはね返りが被保険者に負担がいかないような内容になさるおつもりがあるかどうか。それがなかったらせっかく再開した中医協、まただめですよ。
  175. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私は何%という数字、率を示して諮問するとかなんとか何も言うていないんですよ。何も言うてないんです。そこで、私は診療報酬の改定については中医協において十分御審議をいただいてからきめると、こういうふうに申し上げておるわけでございます。しかし、ここで考えておかなければなりませんことは、診療報酬というのは保険において運営される、すなわち全額国費だけじゃないんですね。保険料負担ということは当然ついてくると、これは当然じゃないでしょうか。そういうことも十分考えて適正なる医療費というものを中医協においておきめいただく、こういうことでございます。
  176. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は適正な診療報酬をきめるということが現状では急務だという点は、これは厚生大臣もお認めになっておるので、それは必要だと思うのですけれども、それが全部法律どおりの形で再度被保険者にはね返るというふうな形になるなら、これはおそらく三者がテーブルにお着きになってもまとまる話がまとまらなくなるであろうというふうに思うんです。   〔理事須原昭二君退席、委員長着席〕 これは去る七十一国会のときにも申し上げましたが、諮問をすると、口を出すと、口を出す場合に、それに必要な金もつけて出さないと円滑な運営はできないであろうということを申し上げた。今度だってそうですよ。その辺を明確になさらないとたいへんな問題になるというふうなことを心配しているわけです。いま大臣は、保険の範囲内、保険の財政でというふうに言われた。保険財政の中で適正な診療報酬を片や請求し、支払い側はできるだけ負担増にならないことを主張するから、これはまとまる話がまとまらない、円滑な運営ができないというのが過去のにがい経験じゃないですか。それをもう一ぺん繰り返すというのでは、これは中医協再開がなされたとしてもきわめて心細い限りです。その点については少なくとも緊急是正、当面のこの急場をしのぐための緊急是正について政府が特別の考えを持ってこれは諮問をなさるということでなければ責任を負うという形にはならないというふうに思うんですが、どうでしょう。
  177. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私は法律に基づいて行動するわけでございまして、先般成立いたしました健康保険法その他によって診療報酬がきまっていくわけでございます。まあ、緊急是正といいますか、今回のだけは何か国でみんな出せと言わぬばかりのようなお話に承るんですが、そうすることはむしろ法律違反になる。法律に従って私は行動する、こういうことでございます。
  178. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 少なくともこの物価高とインフレでたいへん深刻な事態にさらされておる勤労者が、これは診療報酬を引き上げると、そのかわりに保険料ひっつけて上げるんですということでは、これはもうとても責任の負える体制にはならないということだけは明らかです。その点についてこれは法律どおりというふうにおっしゃっておりますので、私は法律のワク内でもほんとうに解決をしようという御意思があればできないことはないというふうに思います。というのは、たとえばこれは幾つかの問題はあると思いますが、二つだけ申し上げておきたいと思うのですが、公費負担医療の問題の健康保険におんぶをしている金額、これを解決するという問題を一つ考えるべきだ、これだってずいぶん大きな財源です。それからもう一つは、先ほど藤原先生もおっしゃいましたけれども看護婦の養成について、これは全部あれですよ、民間の養成所では保険の診療報酬で看護婦を養成しているというのが現状です。厚生省がごく蚊の涙ほどの補助金を出しておられますけれども、こんなものは全く蚊の涙にひとしい、少なくとも看護婦の養成については診療報酬をさいて看護婦の養成費に充てなきゃならんという制度は改めるべきです。そうすれば、これは診療報酬はまるまる診療報酬として運用できるわけですから。そういう点について改善をするということであれば、何もおっしゃるように法律違反にも何にもならないと思うのですが、その点はどうですか。
  179. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 看護婦の養成といったふうな問題につきましては、先般の社会労働委員会等においても十分お答えをいたしてまいったつもりでございますが、きわめて重要な国政でございます。したがいまして、看護婦養成の問題につきましては、できるだけ国の金は出すようにしなければならない、そういう考え方で努力をいたしておるわけであり、来年度の予算においてもそういう方向に努力をいたす考えでございます。しかし、そういうことと診療報酬と保険料との関係というものは法律でちゃんときまっていることなんですね、法律で。ですから、法律できまっているとおりのことを私はやらざるを得ないんです。法律と違ったことでやれとおっしゃって、今回の診療報酬改定は全額国でお出しなさいと言わんばかりの、——まあ、そう言っているかどうかわかりませんが、と言わんばかりのお話であるというならば、むしろそうすることは法律に違反するではございませんかと申し上げておるわけでございます。
  180. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、言わんばかりのとおっしゃるから特別に申し上げたいと思うのですけれども、診療報酬を適正化するということで被保険者にその負担増のはね返りをさせるような診療報酬の適正化というのは正しくないと思う。少なくとも被保険者にはね返らないような内容の診療報酬の適正化を行なうべきだ、そのことを国民が望んでいるということを申し上げておきたい。その中身については全額国庫負担にせよとは申し上げておりません。当然これは保険料の賦課割合等について資本化と労働者との賦課割合の変更等、これは法律改定を要しますから直ちにはできないですよ。しかし、将来の問題として当然考えなきゃならない。しかし緊急是正の解決については当面被保険者にはね返らせない内容を持つ緊急是正でなければならないということを特別に申し上げているわけです。  それから、いま私がお尋ねをした中で、公費負担医療の問題でございますけれども、これはたとえば公害患者については新しい健康被害補償法によって健康保険におんぶしていた分が来年の実施される時期からは肩がわりされるわけでしょう。結核予防法にしても精神衛生法にしてもその他難病対策にしても、そういうふうに公費負担医療について健康保険財政に全部おんぶしている分をはずしてみなさい。どのくらいの費用になりますか。概算でけっこうです。
  181. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 公費負担についての保険でおんぶしている分というのは幾らあるかということでございますが、私、いま手元に資料がございませんから、それはお答えできませんが、こういうものはそれぞれ法律に基づいて自己負担分を公費にするというたてまえでございまして、かりにあなたのような御意見によって法律改正するといたしましても、これは間に合わんわけでございます。したがって、私は現在ある法律のもとに緊急な診療報酬の改定をやるべきである、こう申し上げているんです。
  182. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間がもうありませんから、最後に申し上げておきたいと思うのですけれども、私はいま法律改正をしなければならないものをすぐにやって、そしてやりなさいと申し上げているんじゃないんです。緊急是正について必要な措置というのは被保険者にはね返らない措置を行なう、その後必要な措置については政府がこれを当然やるべきことをやっていくということでおやりになったらよろしいと思うんですよ。私がいただいている資料によりますと、公費負担医療の政府管掌健康保険にはね返っている分、これはずいぶん大きい金額なんですけれども、五千六百八十四億、四十六年度調べですね。そういうばく大な金額になっている。こういう大きなばく大な金額があるとすれば、これは当然厚生省として検討して、これほど窮迫している社会保険におんぶをさせるということからどうしてはずしていくかというふうな知恵を働かさなければいかぬ。当然そういうことは将来の問題として検討を行なうべきだ。当面の緊急対策について、こんなものを検討して、それができませんと、やれませんなんというふうなことを言ってほしくはないんです。そのことを申し上げているわけで、その辺を明確にしていただくと同時に、いま、いよいよ重大な段階に差し当たっておりますが、十二月中に診療費改定をどうしてもおやりになるのかならないのか、それを最終的にお聞きをしてこの問題については終わりたいと思います。
  183. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) これは先ほど来、矢山先生、須原先生、皆さんにお答えしましたように、私としてはできるだけ早い機会に診療報酬の改定の実現をはかってまいりたいということをお答え申し上げておきたいと思います。  それから、なお診療報酬の問題に関連して、被保険者に負担がかからぬようにとおっしゃいますけれども、現在は保険制度であるということを十分頭に置いて御意見をお述べいただきたいんです。
  184. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それは厚生大臣に言われるまでもなく、私もよく承知の上で申し上げておりますので、御了解をいただきたい。そして、いまおっしゃったように、できるだけ早くやりたいというふうにおっしゃっている。しかし明言をできないということになりますと、冒頭に申し上げましたように国民医療がたいへんな状態になっている。医療機関がたいへんな事態が起こってきている。特に年末年始を控えてどういう事態が起こらないという保証はないんです。起こってくる事態は、これはもう解決がいつになるのか、それはお答えにならないのだからわかりませんけれども、いかなる事態が起こっても厚生大臣の責任であるということだけ申し上げておきたいと思います。
  185. 須原昭二

    ○須原昭二君 きわめて緊急な課題で時間をお借りをしてお尋ねをいたしたいと思うんです。時間の関係がございますから、簡明にひとつお答えをいただきたいと思うんです。  というのは、いま西日本を中心に猛威をふるっております集団かぜの問題、特に私も名古屋、愛知の出身ですから当該地に入るわけでありますが、連日報道関係が非常にこの危機を伝えております。特にこのインフルエンザのワクチンが不足をしているということが非常に話題になっているわけです。特にきのうでしたか、厚生省の発表によりますと、現在は供給不足ぎみだが必要なワクチンはちゃんと確保している、こういう報道が出ております。しかしながら、私、名古屋をきのう調べましたら、名古屋市の衛生局は昨日十四日にワクチンを販売する五つの代理店を集めて今後の入荷状況を話し合いました。そういたしますと、全国的にワクチン不足で、国立予防衛生研究所の検定待ちという状況だそうでありまして、結論はきのう出じまいです。したがって、きょうから愛知におきましては、中・小学校、高等学校含めてですが、特に中・小学校の接種は全部全面的にきょうストップしておるわけです。一般は実は引き続きやるということを言っておりますが、きのう夜調べてまいりますと、名古屋には十四の区がございますが、その一つの区であります千種という保健所がございますが、きのう一日で一般接種の希望者が実に昨年の冬季に比べて約六倍です。六百五十三人がきのう保健所に詰めかけておるわけでありますが、手持ちは、持っているワクチンはわずか五百本足らずです。これでは厚生省が言っている、ちゃんと確保している、計画は立っている、御心配なくとおっしゃっておりますが、現地ではきわめて不安を抱いておるわけでありまして、この際、明確にひとつ事態を明らかにしていただきたい。この緊急な供給体制をどう緊急に取り計らうのか、この点をひとつお尋ねをしておきたいと思います。
  186. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) インフルエンザワクチンの問題につきましては多少時間的なずれによります一部の不足がございましたために、全般的な不安をおかけしておりますことは、まことに申しわけないことと存じております。で、全体の供給の状況でございますが、インフルエンザワクチンは、御承知のように、A型のウイルスと、それからB型のウイルスとの混合ワクチンになっております。この春このB型のビールスのうちで抗原構造の違っております、通常B−73型といわれておりますビールスが新たに発見されまして、抗原構造の違いのために、このビールスのワクチンに加えませんと効果が減殺されるという事態が生じまして、至急そのウイルスを同定いたしました上で、その株を各ワクチンメーカーに予研から配付をいたしまして、ワクチンの製造にかかったわけでございます。その際のワクチンの所要量といたしましては、約二千万ミリリットルを予定いたしまして、各メーカーにそれぞれの能力に応じて引き受けてもらっております。二千万ミリリットルと申します量は、昨年の特別対策その他一般対策の実施の実績と、それに基づきましてのことしの流行を想定いたしまして、この春、各都道府県からの予防接種の実施計画、それに要しますワクチンの量を集めまして、それに基づいて算定いたしました量でございます。なお、毎年ある程度の検定不合格品もございまして、そういったことも考慮に入れての量でございます。したがって、ことし製造いたしました量は、大体ことしの流行を予測いたしましての所要量を満たすだけの量でございますが、ただ、そのビールスの同定がおくれました関係もございまして、仕込みに入ります時期が例年よりは若干おくれております。そういうような関係でこの冬の初めの十月、十一月におきます予防接種にあたりまして、若干例年とは時期的なずれが起こりましたために、一部の地域では、先生御指摘のようなワクチンの不足を来たしまして御心配をかけておる点はあるわけでございますが、そういった時期的なずれの問題と、それからもう一つは、現在流行しておりますのは、これは公衆衛生局からあとから御答弁申し上げると思いますけれども、大体B−73、B型がおもでございまして、これは数は多うございますが、比較的症状が軽いわけでございます。それに比較いたしまして、例年の例によりますと、一月から二月にかけて流行いたしますA型のビールスによりますインフルエンザが症状が重いというような状況もございまして、一方インフルエンザワクチンの効力は比較的持続が短期間でございます。これは先生御案内のように、三カ月ないし四カ月といわれております。そういったこともございまして、実施計画といたしましては、できるだけ十一月末から十二月にかけて行なうことが望ましい。そういうようないろいろな要素もございまして、十月、十一月におきましては若干品薄ぎみのところがございます。それからもう一つの要素といたしましては、一部のワクチンメーカーにおきまして検定の不合格品が出てきております。これは先ほど申し上げましたように、例年も考えられる例でございますけれども、ただ、地域的に片寄りがございましたために、一部の地域でそれが運悪く比較的流行の多い地域のメーカーに当たったという関係もございまして、地域的な偏在もあったわけでございます。そういうようなことから若干御心配をかけておるわけでございますけれども、いま申し上げましたように、大体流行状況も予測し、各都道府県の状況も把握いたしまして計画をいたしましたワクチンの生産は順次順調に検定が終わっておりまして、大体毎週十ロット程度の検定がなされております。したがって、それといま申し上げましたような時期的なズレがございました関係で、例年はやっていないことでございますけれども、ことしは一〇%程度の量をメーカーの直接取引からはずしまして、厚生省の指示によって不足ぎみの地域に回すという措置もとっておりまして、したがって、メーカーと直接注文いたしました際に手に入らない量につきましては、都道府県から私どものほうに連絡が来るわけでございます。その時期にメーカーから報告を受けておりますいわゆる保留分につきましての割り当てをするという体制をとっておるわけで、それが……
  187. 須原昭二

    ○須原昭二君 短く短く。
  188. 大橋和孝

    委員長大橋和孝君) 要領よく答弁してください。時間がない。
  189. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) はい。  時間的なズレによりまして、御連絡がありましたときにすぐにあっせんができない、二、三日ぐらいのズレがあることがございますけれども、全体の状況といたしましては、特に小・中学生、それから保育所、幼稚園というような子供を対象といたします予防接種特別対策につきましては大体順調に実施が行なわれておりまして、二、三日のズレの程度で実施が進んでおる、今後ともそういう状態で御迷惑をかけることはない、このように考えておる次第でございます。
  190. 須原昭二

    ○須原昭二君 二、三日の幅で何とかなるという簡単な御答弁で信頼したいのですが、そういう体制ではないわけです。集団かぜが下火になっていくならいいんですが、まだ峠を越してないのです。これからまだふえるのです。そういう状態で名古屋市では、私は具体的に申し上げてもいいんですが、時間的にありませんから、もう数校全面休校、そしてクラスの休学が、全面閉鎖がたくさん出ているわけです。こういう状態で、もう、きょう現実に接種をストップしているのです、ないんですから。一般のほうでももうほとんどなくなっているわけです。やはり各地においてアンバランスがあると思うのですね。したがって、その備蓄に対してその時に応じた緊急体制といいますか、応急体制というような配給体制をしく必要があると思うのです。その点についてどうなっているのか。何か二、三日、二、三日とおっしゃいますけど、現地ではそう受け取っておりません。その点の手配はどうなっていますか。
  191. 大橋和孝

    委員長大橋和孝君) 趣旨についてびしっと答えてください。よけいなことを言う必要はない。
  192. 須原昭二

    ○須原昭二君 簡単に。
  193. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) ただいま御答弁申し上げましたように、ある程度の量につきましては、メーカーと市町村との直接の取引から除外いたしまして、厚生省の指示によって出荷するという体制をとっております。その量は、十月一日から二十一日までは五%、その後、流行状況を見まして、一二%の量を保留いたしております。その保留いたしました量と、それから都道府県知事から連絡が参ります所要量等を見合いまして、流行状況等を勘案いたしまして、公衆衛生局と相談の上で必要量を出荷するという体制をとっておる次第でございます。
  194. 須原昭二

    ○須原昭二君 その出荷体制をとっておられると言いますが、現地では、見通しはまっ暗だと言っているのです。ですから、ない県は、ない指定都市は、直ちに皆さんで調査して、たとえば、西日本ではやっているというなら、東日本は低位なんですから、こちらのほうからすぐこっちへ持っていくというような、そういう応急の体制を直ちにしけということを私は要望しているのですが、それはできますか。
  195. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 各県から御要望がありました際に、先ほど申し上げましたように、検定の上がり方と見合いまして、できるだけ緊急性の強いところへ配分しておるところでございますが、いま先生の御指摘もございますので、さらに各県と十分な連絡をとりまして間違いのないような配分をするような体制を至急強化するようにいたしたいと思います。
  196. 須原昭二

    ○須原昭二君 要望だけ申し上げておきますが、何か二、三日というような安易なお考え方でありますが、現地ではそういう認識はありません。ただいまから連絡をとってやっていっても官庁のお仕事というのは一週間も十日もかかるのです。ですから、大臣、ひとつ、これは緊急に対応していただきますよう要望しておきます。
  197. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) はい。
  198. 大橋和孝

    委員長大橋和孝君) 本調査に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  199. 大橋和孝

    委員長大橋和孝君) 次に、労働問題に関する調査について質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。   〔委員長退席、理事須原昭二君着席〕
  200. 矢山有作

    ○矢山有作君 きょう、私は労働問題について二つばかりお伺いしたいと思います。  まず、最初にお伺いしたいのは、神戸港湾労働に関連をする問題でありますが、十月の十五日から始まりました全国港湾の中央団交再開と三・二二協定の実施を求める深夜荷役拒否闘争の中で神港労連加盟の上津港運労働組合の組合長の永井稔さんの投身自殺と推量される不幸な事件が発生をしております。  そこで、これをめぐって、それぞれ運輸省なり労働省なり警察庁では関連のある省庁としてそれらの情勢について把握しておいでのことと思いますので、その点についての御報告を求めたいと思います。
  201. 遠藤政夫

    説明員(遠藤政夫君) ただいま矢山先生から御指摘のございましたように、港湾労使の中央団交をめぐりまして十月の中旬から一部の部分ストライキに入っております。その後、この関係からといわれておりますが、十月の二十九日に上津港運労組の委員長の永井さんが投身自殺をされたという事件が起こりましたことを現地からの調査承知いたしております。この関係につきまして、先般私のほうへ全国港湾の組合の幹部の方が見えまして、こういう事態に対し、まことに遺憾なことでございますが、労使関係の問題でこういう事態の起こらないように、今後十分私どもも注意をし指導をしてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  202. 竹内良夫

    説明員(竹内良夫君) 運輸省といたしましては、いまおっしゃった線と同じようでございますけれども、その点の情報につきまして事業所を監督する立場、そちらのほうから地元の海運局に対しまして関係当局と連絡を密にして実態をつかまえてくれということを指示してございます。現在、中身のことについては完全に実態を把握するには至っておりません。
  203. 綾田文義

    説明員(綾田文義君) 永井さんの自殺事件の概要と警察措置につきまして兵庫県警からの報告に基づきまして概略御説明を申し上げます。  永井さんは十月二十四日の午前九時ごろに家出をされたのではないかというふうに推定されますが、警察が捜索願いを受理いたしましたのは十月の二十九日の午後九時半ごろでございます。このいきさつは、関西汽船から通報がありまして、兵庫県警の水上署の派出所のほうへ通報がありまして、どうも投身自殺をしたらしいので船内に遺留品その他があるから来てほしいということで派出所の巡査が急行いたしまして、そうして立ち会い人のもとで遺品、それから、これは手さげかばんなどでありますが、その中には遺書が六通あったようでございます。それから関西汽船にも迷惑をかけた云々というようなこと、それからせびろの上着に永井というネームがあったようでございますが、そういうことを確認いたしまして、七時半にすぐ帰署いたしまして、それから上津港運のほうへ、会社へ電話連絡をしたところが従業員であるということが確認されまして、そうして直ちにこの妹さん——実の妹さんの永井穂さんという方がおられますが、この方に連絡いたしまして、この妹さんから警察のほうへ捜索願いが出たわけでございます。そこで、水上署では、直ちに管内に手配、及び近畿管区内、これは翌日でございますが、手配を電送でいたしまして、そうして、身元不明の死体について照会しろというふうな連絡をしたわけでございます。一方、当日、二十九日の夜七時半ごろから、同じく三十日、二日にわたりまして、水上署の警備艇二隻で海上を捜索いたしております。海上保安部においても同様に海上捜索したようでございます。そうして、その後、三十日以降は警察、保安部で、通常の勤務を通じて遺体発見につとめていたところでございますが、十一月の十二日の午前六時ごろに、大阪府の泉南部の海岸で身元不明の死体を発見したという、これは漁師からの通報がありまして、そうして、大阪府警におきましては、阪大病院に頼みまして解剖をしたわけでございますが、その結果は、外傷がなくて溺死であると、死後約二週間というようなことでございまして、これは通報その他に基づきまして、永井さんであるということが確認をされたわけでございます。  大体、概要と警察措置は以上でございます。
  204. 矢山有作

    ○矢山有作君 港湾労働というのが、いかに非近代的な労使関係にあるかということは、私よりも、この前の港湾労働法等の審議を通じて、労働省当局、運輸省当局も十分承知のはずなんです。そこで、この事件が起きて、私の一番頭に浮かんだのは、これはまた、港湾労働の中に暴力的なものが芽ばえてきたんではないかということを非常に心配をしたわけです。特に、御案内のように、一九五六年には、神戸港で起きた暴力手配師による労働者の撲殺事件があります。六五年には、神港労連の大利委員長が自殺した事件があります。また、六七年には、大阪港で警察官の面前で、争議中の組合幹部が暴力団に刺殺されたという脇田事件というのがあります。こういうような一連の事件が私の頭に浮かんできたわけです。私は、その点については、運輸省も労働省も警察関係も同じではないかと思う、普通なら。ところが、いまの報告を聞いておりますと、そういうような港湾労働をめぐる労使関係の問題について目を向けて、実際、こういう事件が起こった背後に何かあるんではないか、また、特に激しい不当労働行為でも行なわれておるんではないかといった点に目を注いでの調査というか、そういったことは一向に行なわれてないようですね、いまの報告を受けた感じでは。特に、私は、七日に社会党の調査団として現地調査に出向きました。そのときに、業者関係にも会うし、そして神港労連傘下の労働組合の諸君にも会って、今度のストライキをめぐって、業者側がどういう態度に出たのかということをつぶさに聞いてまいりました。そうすると、やっぱり私の予想したとおりです。非常な不当労働行為が行なわれておる。たとえば、会社側の役員が二人、三人おるところに、組合の役員を一人引っぱり込んで、神港労連は左寄りだと、こんな組合から脱退してしまえというようなことを強要するような言辞を弄したり、あるいはストライキをやるんなら解雇するぞ、こういうようなおどしを加えた。あるいはストライキをやるんならやってみろ、やる以上、覚悟しておるだろう、おれにも覚悟がある、こういうような、いわば脅迫的な言辞を弄して、このストを破ろう、組合を分裂させよう、そういう動きが非常にあったということが訴えられました。こういう点を労働省としても運輸省としても、この不幸な事件をめぐって関心を持たれなかったんですか。関心を持ったとするなら、その点について、一体どうであろうかと調べてみる気にならなかったのでしょうか。こう言うと、労働省は、不当労働行為は労働委員会の問題ですと、こういう言い方をするかもしれない。しかしながら、労働省の任務は少なくとも労働者保護にある。であるとするならば、こういう不幸な事件が起こったら、その背景に労働者保護に反するような、労働者を圧迫し、これを痛めつけるようなことがあったのではないかという、そういう立場から、やはりそれ相応の行動に出るのが私は当然だと思う。その点はどうなんですか。
  205. 遠藤政夫

    説明員(遠藤政夫君) この港湾の労使関係につきましては、この春以来の労使関係正常化をめぐって、先ほど御指摘のように、十月中旬からストライキに入っておりますが、ただいま問題提起されております永井委員長の所属しておられました上津港運労組につきましても、その後、この問題が起こりまして、私ども現地調査を求めましたところが、その報告によりますと、現在もこの上津港運労組はストライキに参加しておりますということでございます。この永井さんの死亡事件に関連して、ただいま先生がお話しのような、業界から圧力がかかったとか、あるいはそれによってストライキが左右されたというような事実はないような報告を受けておるわけでございます。
  206. 矢山有作

    ○矢山有作君 それは、ストライキに組合が参加しておるということと、組合がストライキに参加しておるから委員長に対して業者側からの何らの圧力もなかったと、そういう即断はこれはできないんです。そういう短絡的な発想をするところに問題を解明しようとする姿勢が生まれてこぬのです。これは運輸省にしたところでそうでしょう。運輸省は業者に対して非常に強い権限を持っておる。そうするなら、港湾労働法の審議以来の経過を踏まえたら、運輸省はもっとこの問題について、労使の正常化の問題について、責任を持って対処しなければならぬはずなんです。そういう点の姿勢が抜けておるじゃありませんか。現地調査に行きましたところが、神戸海運局からは港運課長なるものが出てまいりました。何にも知らない。中央から、一体労使の正常化をめぐって、運輸省からどうしろという指令を受けておるのだと言っても、何もそんなことは知っちゃいない、何もやってないということです。これではやはりこういう不幸な事件の発生を防ぐことはできぬと思うのです。特に、私は、永井さんが書き残された遺書の写しをここへ持っておりますが、この遺書の内容を見てみると、明らかに業者側の圧力がきびしかったということが書いてある。私はね、労働省が、こういう事件が起こった、業者のところに行って、おい、不当労働行為をやっちゃおらぬか、やりました、そんな者はだれもおりゃしませんよ。私は現に調査に行って、上津港運の重役の諸君と会いました。その問題をいろいろ聞いた。不当労働行為をやったと言うわけありません。そういうことがあるかないかというのは、そう表から通り一ぺんの調べ方をしたのではこれはわからないのです。こういう不幸な事件を起こしたのだから、一体労使関係の背後に何があるんだろうか、労働者保護というなら、そういう点に注目をして、組合の幹部なり組合員と密接な連絡をとりながら、非常な会社側の圧力や不当労働行為があったのではないかということを調査をして、そして、それに対応する適切な今後の方針を出すということが必要なんじゃありませんか。今後この問題について、労働省なり運輸省として、どういう方針で臨まれるのか。調べてみたが、不当労働行為はないと言っておるから、そのままでどうも打つ手はないというのか、どうなんですか。
  207. 竹内良夫

    説明員(竹内良夫君) いま先生のおっしゃいましたようなことが一部の新聞に報道されておりました。それは私どもも十分拝見いたしまして、港湾運送事業者の不当労働行為の犠牲になったんではないかというような趣旨が述べられておったわけでございます。私どもも、そういう点を監督の立場からやはり把握しなくちゃいかぬということで、地元海運局に対しまして、その事情を明らかにするように申し伝えているわけでございますが、当局といたしましては、関係の警察とかあるいは労働省のほうと連絡をとりながらその実態を十分把握していきたいというように考えているわけでございます。ただ、このことは、その神戸のことにつきましては、そのような形で何とかしてやっていきたいと思うのでございますけれども、この港湾運送事業実態の中には、確かに先生のおっしゃるような面がいろいろあるんではないかという気がいたします。で、根本的には、やはり運輸省として、労働問題は労使間の問題ではございますけれども、いろいろの紛争の裏に、やはり日本港運協会と申しますか、日港協と申しておりますが、この日港協の中で、互いの意思が分裂したり、あるいは協会運営のまずさに起因している面があったり、あるいは労使紛争の解決の第一歩としての日港協の中の正常化をはからなくちゃいけないというような面がございます。  で、私どもといたしましては、この日本港運協会の中の正常化というものをまず第一番にやりまして、そして労働者の諸君とも責任を持って話し合えるような体制をつくるのがまず第一番であるというような感覚に立っております。それで、前国会の終了以降、私どもといたしましては、日港協の幹部に対しまして、現在会長もいないわけでございますが、会長の選任をすることとか、あるいは事務局の強化の問題であるとか、あるいは協会運営の民主化方策等につきまして、協会再建上の問題点を具体的に指示いたしまして、日港協を早急に再建するよう要望しております。この結果、日港協の中には、いわゆる再建の機運が盛り上がりまして、現在、政策委員会というものをつくりまして、その再建策に現在取りかかっている段階でございます。運輸省といたしましては、その間、再三幹部に対しまして進捗状況等を求めまして、今後指示していきたい、今後はさらにこの再建案の早期実現を確保するように努力していきたい、このように考えている次第でございます。
  208. 矢山有作

    ○矢山有作君 労働省………。
  209. 遠藤政夫

    説明員(遠藤政夫君) 労使関係の正常化につきましては、ただいま運輸省からもお答えございましたように、私どももこの八月以来労使双方といろいろと御懇談をしながら正常化の努力を続けてまいりました。協会側のただいまお話のような内部事情もございまして、十月の十五日からこの労使の団体交渉再開のためのストライキが行なわれるということで、そういう事態が起こらないように協会が事業者団体側にも働きかけ、組合側とも相談をしたりいろいろ手を尽くしてまいりましたけれども、残念ながらこういうストライキというような事態に立ち至りまして、その過程におきましてこういう不幸な事態が起こったわけでございますが、こういった不祥の事件につきましては、その実態を今後さらに報告を求めました上で、私ども今後再びこういう事態が起こらないように最大の努力をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  210. 矢山有作

    ○矢山有作君 労働省のほうも運輸省のほうも、まあ、今度の事件の実態把握はある程度やるというつもりのようですがね、実態把握をやるためによっぽど出先のしりをたたくなり、あなた方幹部が直接行ってやらなかったら、私が七日に行ったときに、出先の諸君と会ったときの空気では、実態把握などというような熱意も何もないですよ、これは。こんなことだったら、あなた方のほうは実態把握実態把握と言ってるが、いま港湾局が正直に言われたように、事件発生以来もう何日もたっている、それなのに、実態把握を指示しているが、いまだに実態把握ができぬのですというのが、これは私は正直な報告だと思う。こんなことになってしまうのですよ。だから、実態把握をして、不当労働行為があったとするなら、そういうことが二度と起こらぬように根絶するために、労使関係問題の正常化に積極的に努力するとか、あるいは業者に対して指導するとかいうことをやるんなら、やはりもっと実態把握を本気でやらなきゃ、やれませんよ、それは。このような問題については私はあなた方のほうに、大臣としては政治的な責任もあるし、それから行政当局としては行政的な責任があると思いますよ。  この前の七十一回国会で、港湾労働法の一部改正の審議の際に、港湾労働の労使正常化の問題が議論されたでしょう。そのときに現在の労使間の不正常な状態を克服するのには、どうしても三・二二協定の順守なり中央団交の再開が要るのだ、こういうことで当時三・二二協定の順守と中央団交の再開を必ず実施するという確約書が、日港協の会長代行高嶋四郎雄氏から労働大臣あてに提出されたはずです。そしてさらに、それだけではというので、労働省の職安局長と運輸省の港湾局長の連名で、その確約書の実現について責任を持って努力するという念書が大橋委員長あてに出され、さらにそれだけではというので、委員会の審議の場で、労働大臣、運輸大臣両方とも念書のとおり実現をはかることについて大臣として責任を持って対処する、ここまで言われておるのですよ。いかにこの港湾労働についての労使関係の正常化が重大なものであるかということが認識されておるからここまでやられたのだ。一体その後の努力が——これだけ国会に対して誓約をした、その誓約に報いるような、そういう真剣な労使間の正常化に対する努力が行なわれたのですか。いま私は港湾局のほうからの話を聞きまして、なるほど話を聞く限りにおいては一応やったということになるようです。しかしながら、私は国会の場でこういうふうにやりましたといって説明だけして、何ら効果があがっておらぬその現実を糊塗することはできぬと思います。そういう点どうなんですか。私は、もっともっと強力な指導をやらなければ、あなた方の行政的な責任が果たせないじゃないですか。確約書を入れさせ、そして、それを補強するために念書まで入れた、大臣が言明した。その念書はその場限りのもの、大臣の言明はその場限りのものですか、これが第一点。  それからもう一つ、私はこの確約書が入れられたときの状況というものをあなた方から正直に話してもらいたい。この間、現地調査に行きました。現地調査に行ったときに、中央にも出ておられる、まあ名前は言いますまい、あえて。某という、ある会社の社長の方がこういうふうに言っておられました。六月二十八日に確約書を出したというけれども、そんな確約書なんかわれわれ知っちゃいないと。機関で一つも論議したものでもないし相談を受けたものでもない。したがって、あんな確約書が入っておるからといってわれわれの責任を追及されたって困るのです、こういう言い方をしていますよ。一体これはどうなんです。少なくとも一つの組織である、その組織の代表者から確約書が出てくるときには、その組織を代表するものとして確約書を出すのですから、その組織の傘下の人はこれは承知しておらなけりゃならないし、それによって拘束されるはずです。ところが何も聞いていないと言っておる、平然と。一体この間の事情はどうなんでしょう。
  211. 高橋全吉

    説明員(高橋全吉君) いま先生御指摘の点でございますが、実は確かに六月二十八日でございますか、高嶋代行から確約書が出てまいりました。私どもは、この確約書は、少なくとも天下の協会でございますから、正規の機関を通してこの確約書が文書としては出たものだと思っておった。ところがいま先生が現地でお聞きになったように、協会内部の正規の手続をとっていない。そこに問題が、いわゆる協会のごたごたにさらに輪をかけた、こういうことでございまして、それではいけないということで、実はちょうどこれは運輸省内部のことでございますけれども局長の更迭がございまして、私みずから、先ほどちょっと局長が申し上げましたように、会長が現在おりません。それで三人の副会長が会長代行というような変則な形で運営されております。そこで私は、個々に会長代行を呼びまして、一体どういうことになっておるのかという事情を聞きながら、それで早くこれをまとめるように。したがいまして、先ほどちょっと局長説明にありましたように、政策委員会なるものができ、それに対しまして三人の会長代行が、一体運営をこれからどうしたらいいかということで政策委員会にいろいろ諮問しました。その諮問の形が九月の半ば過ぎに出てまいりました。それを三人の会長代行が取り上げまして、意思統一をはかって、理事会なり、あるいは総会を開く、こういう段取りを実は三人で相談し合ったのでございますが、たまたま一人の代行の方が九月から十月にかけて一カ月以上ちょっと入院されまして、なかなかその相談ができないというような事態もございまして、それでは組合に対しても、あるいは第三者に対しても、協会としての誠意がないではないかということで、実は十月末に局長のもとに三代行を全部そろえまして、それで日港協の組織のあり方についてひとつ早急にまとめるように再度プッシュをしたわけでございます。それで、先生がおっしゃいましたように、実は協会内部の運営のしかたが非常に民主的でないというところに一つ問題点があったようでございまして、したがいまして、それから尾を引いて労使の関係がなかなかうまくいかないということでございますが、運輸省といたしまして、ともかくいろいろ事情を三代行に聞いてみると、協会内部の、いわゆる足もとを固めなければ、労働組合とも、労働者の皆さんとも話し合いができないような状態だというふうに私たちは判断したものですから、先ほど局長が申し上げましたけれども、いま言ったようなことで実は協会を指導してまいってきたわけでございます。
  212. 矢山有作

    ○矢山有作君 もう少し立ち入って聞きますが、この確約書が出るとき、日港協と直接折衝して、確約書を出さすようにしたのは運輸省ですか、労働省ですか。
  213. 遠藤政夫

    説明員(遠藤政夫君) 私は八月に参りましたので、その間のこまかい正確ないきさつは十分には存じておりませんが、運輸省と御相談の上、労働者のほうで協会側と御相談したように聞いております。
  214. 矢山有作

    ○矢山有作君 運輸省と相談の上、労働省のほうで折衝して取ったと言うなら、あなた、事情をつまびらかにせぬと言うけれども、これは重要な問題なので、つまびらかにしてもらわなければ困る。労働省は、日港協の内部が非常にごたごたしておるということは承知だったわけですね。そういう中で確約書を出さしたわけでしょう。そうして、局長名の念書までつけた。大臣の言明まで付加した。そうすると、これが将来どんな重要なものになってくるかということは自覚しておるはずなんです。そうすれば、日港協の中で機関の決定を経て確約書が出たのかどうかということを確認しなかったのですか。
  215. 遠藤政夫

    説明員(遠藤政夫君) 先ほど来運輸省から御答弁ございましたように、現在の日港協の内部では会長が不在で、副会長が会長代行という体制をとっておるわけです。そこで、対外的にはこの会長代行が対外折衝に当たっておるわけでございます。私どもは、こういった確約書が機関決定によって出されたかどうか、そこまでの確認はいたしておりません。代表者から出されたものでございますので、日港協の意思として受け取ったわけであります。
  216. 矢山有作

    ○矢山有作君 これはね、あえて言わしてもらうならば、あなた方港労法の審議の方便として出さしたのではないのかね。私は確かな筋からそれを聞いておりますよ。港湾労働法の審議を進めていくのには、うるさい野党委員を納得させなければならぬと、確約書が要するのだと、とにかく確約書を出してくれ。そうせぬと港湾労働法の審議ができない。それで出さしたのではないのかね。そういうことで、確約書を出さしたのは法案審議の方便として使っているから、その確約書を実行するための、熱意のあるその後の処置というものがとれなかったのではないか。否定できますか。もし明確に否定されるなら、私はそれに対して違いますぞというところまでいきますよ。もし、そういう心配があるなら心配があるような答弁をしなさい。明確に否定するなら、さらにもっと話を進めていきます。
  217. 遠藤政夫

    説明員(遠藤政夫君) 私は、国会で港湾労働法の一部を改正する法案が審議されます際に、労使関係の正常化が前提であるという諸先生の御指摘もございました。私どもは、この港湾労働法の一部改正によりまして、港湾の業界が使用者側の共同連帯の責任において、港湾労働者の雇用を確保していく、この点につきまして、現行の港湾労働法の規定におきましては、いろいろの欠陥がございます。その欠陥を今回の、先般の改正によって補っていこう、と同時に、港湾の労使関係が、従来のこの港湾労働法が、十年前に制定されます以前から、非近代的な態様を持っておりましたことは御承知のとおりでございます。港湾労働法の制定によりまして、これの近代化が進められてきております。こういったなおかつ不十分な点につきまして、近代化をし、正常化をすることがどうしても緊要な問題であることは、これは十分承知いたしております。この両々相まって港湾労働問題の解決をはかっていきたい、かように考えておりましたが、残念ながら、先般の国会におきまして、この一部改正法案が成立を見ないような状態になったわけでございます。その後も引続きまして、私どもはこの港湾労使関係の正常化のために、先ほど来運輸省からも御説明がありましたが、私どもでも関係の団体の代表者、その他いろいろの人たちを呼びまして、その正常化のための努力を最大限続けてきたつもりでございます。
  218. 矢山有作

    ○矢山有作君 大臣、ちょっとほかのことを一つ聞いておきましょう。運輸省は四月に業界に対して料金の値上げを認めておりますね。この料金の値上げを認めるのには、それ相応の理由というものがあって認めたと思うんです。それはどういう理由から、その当時料金値上げを認めたのですか。
  219. 高橋全吉

    説明員(高橋全吉君) 四月二十三日に料金の値上げを認可しておりますが、その理由は、現行料金は昭和四十六年の五月に変更されましてから二年を経過しておりますが、その間、人件費を中心とした物価の値上がりということで、これが適正な収支を補うために料金の申請を認可したわけでございます。
  220. 矢山有作

    ○矢山有作君 抽象的な言い方だから、私のほうから具体的に言いますが、料金の引き上げを認める背景には、その当時例の運輸政策審議会の四十八年三月二十日の答申等もあり、それから、また三月二十二日に全国港湾と日港協との間の協定もあり、それらをやっていこうと思えば、やはり労働条件の改善をやらなければならぬと、その趣旨に従っていくなら。したがって、そういうことのためには料金値上げも必要なんであるというなことが、強力な私は背景になっておったと聞いておるのですが、その点間違いなんですか。
  221. 高橋全吉

    説明員(高橋全吉君) 間違いではございません。答申が出まして、われわれはこの料金アップを、答申を受けて、申請が出てまいりましたので、その答申の線に沿って、実は申請どおりでございますが、料金アップを認めたわけでございます。
  222. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、申請どおり料金アップを認めた背景というものは、答申なりさらに三・二二の協定を実施する必要上認めた、こういうことになるわけですね。
  223. 高橋全吉

    説明員(高橋全吉君) はい。
  224. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうしたら、運輸省としては、これはますます、あなた方が確約書に対して念書をつけた。このことを実行せにゃならぬ重大な責任が出てきますよ。労働条件の改善のために、料金値上げを認めた。ところが料金値上げだけはやらしたが、あと労使間の正常化どころの騒ぎではない。料金値上げだけ食ってしまったから、四月二十五日にはもう三・二二協定も破棄です。そんなもの実行できるかい、中央団交もやめだ、これではまるで食い逃げではないですか。そういうようなことをやっておるのに、運輸省は、強力な監督権限を持った運輸省は打つ手はないのですか、業者に対して。もっと強力な指導すべきではないですか、どうなんですか。
  225. 高橋全吉

    説明員(高橋全吉君) いま先生からお話ありました件でございますが、実は三・二二協定というものが有効であるということ。それから、さらに協会内部の分裂がございまして、脱退をすると、たとえば船内業界が独自に協力をつくりまして、脱退するというような動きもございまして、その際私どもは脱退はまかりならぬと、それから三・二二協定は有効であるということを再三申し述べております。したがいまして、これは横浜、神戸でございますけれども、この船内協を中心としました業界におきましては、深夜荷役とか、あるいは時間外労働、時短こういうものはすでに三・二二協定の内容をほとんど取り入れましたものをお互いに確認し合っております。したがいまして、たとえば深夜荷役を削減すればそれだけ賃減りするわけですけれども、賃減りなしというようなことを労使間で話し合って確認し合っておると、こういう情報をわれわれ得ております。
  226. 矢山有作

    ○矢山有作君 それは私も現地で聞きました、しかし、三・二二協定の実施については、これは賃金の月額保障の問題もこれは未解決ですし、また深夜作業の問題も未解決なんだ。業者はただ八・七・五〇のこれだけを実施しておる実施しておるると、こう言っているわけですよ。しかし、三・二協定そのものの実施には至ってないんだ、まだ。この点はあなた、業者の話だけ聞かないで、ちゃんと関係しているもう一方の全国港湾の話もちゃんとつかまなきゃいかぬよ。業者の話だけ聞いておったら、業者は三・二二協定まるでやっておりますなんて言っておるわ。まるでやっておりますと言うから、じゃあ、どういうふうにやってんだと言うて突っ込んでいくと、八・七・五〇はやっている。しかし、月額最低保障もやってなきゃ深夜作業の打ち切りもやってない。だから、そういうふうな業者の一方だけの話だけ聞いて三・二二協定をやっておりますという理解はこれはやめてもらわなきゃいけない。それと、いまあなた方も認められたように、この料金引き上げを認めた背景というのははっきりしたんだから、そうすれば、ただその船内団体が日港協から脱退するのはいけませんよと、協定の破棄はいけませんよと、それ言うだけじゃしようがないではないですか。言うだけならだれでも言いますがな。言うて、監督官庁である以上は、言うて、それが効果をあげるのかあげぬのかということが問題なんですよ。言うだけならあなたそこらの小学生だって言いますよ。そんな言うて効果がないことを言ったんでは、官庁のいわゆる立場も無視されてくるわけですよ。言う以上は効果のあるような言い方をするということが大事なんです。その点どうなんですか。ただ言うだけでじゃしようがないんですよ。
  227. 高橋全吉

    説明員(高橋全吉君) いま、先生の御質問のお話でございますが、実は先ほど来私申し上げておりますように、船内協の問題もございますけれども、とにもかくにも三人の代行からいろいろ話を呼んで聞いてみますと、協会内部のいわゆる考え方のもつれと申しますか、あるいは感情のもつれと申しますか、そういうものが非常に錯綜しておりまして、それで私どもといたしましては、まず、日港協自身の、協会自身の足もとを固める必要があるだろうということを実はわれわれ直感的に感じましたので先ほど来のことを申し上げておるわけでございまして、実はその船内協につきましては、さっき私がちょっと申し上げましたけれども、これは脱退は取りやめますとはっきり言いましたし、それから三・二二協定も有効であるということも彼らは認識をしておるはずでございます。それで、これは再三私のところへ参りまして、あるいは呼んだこともございますけれども状況というか、彼らの考え方なり、あるいは各それぞれ話し合い、協会内部の話し合いの模様などを逐一私ども報告を受けてまいってきたわけでございますが、その過程においてそういう話が出ましたもので、私からこれはきびしく脱退しちゃいかぬというようなことを申し述べたわけでございますが、とにもかくにも先生おっしゃいますことは事実でございますが、日港協のいまの体制がなっていないということで、足もとをともかくまとめたいというのが運輸省としては最大の眼目といたしまして鋭意いまプッシュしておる段階でございます。   〔理事須原昭二君退席、委員長着席〕
  228. 矢山有作

    ○矢山有作君 それで前の労働省に話を戻しますが、労働省は運輸省と相談をしながら確約書を入れたんだから、そうすれば、その当時日港協の内部事情がどうあったかということを御存じないはずはない。確約書を入れて港湾局長と職安局長が念書に判こをついて委員長あてに出して、大臣がその実現に責任を持つと言うた。これは並みたいていの問題じゃないですよ。そこまで行っておるなら、——そこまで行くのはわかり切った話なんだ。そうすればはたして日港協の業界からして機関決定を経て出されてきて、これが将来実効性を持ってくるのかどうかということは、あなた一応頭に置きながらあの確約書を持って戻らなければいけなかったんじゃないですか。当面、港労法の審議を早く始めてくれさえすればええわと、判こをつかして確約書を取ってきたら念書をひっつけて委員会に出せば審議は始まるわいと、これでやったんではないですか。そういうようなことをしておるから、労働省のその後の労使正常化に対する姿勢が全く腰抜けで何もやっていないといっていいんですよ。一体何をやりましたか。いまのあなたの話を聞いてみたって実のあることは何にもやってないじゃないですか。しかも、あえて言わせてもらうなら、労働省のその衝に当たっておった幹部の中には、全国港湾の幹部に対して、港労法の審議が進まぬ、つぶれそうだ、もうもうこれで二度と港湾労働のことは知らぬぞというような暴言まで吐いたのがおる。そういう暴言を吐くような意識があるから、確約書を道具に使って港労法の審議だけ軌道に乗せればあとは知らねえと、労使間の正常化も何も知ったこっちゃないというのが労働省の態度じゃないですか。これはけしからぬですよ。労働大臣どうですか。私が言ったのが間違いなら間違いと、そこではっきり言ってください。それを言わせてから労働大臣の話を聞いてもよろしい。
  229. 遠藤政夫

    説明員(遠藤政夫君) 八月以来私、国会開会中まだ委員会におきまして法案継続中でございましたが、この間におきましても業界、日港協内部の関係者、会長代行その他再三にわたって私面談いたしまして、中央団交の再開について努力をしてほしいと申し入れをし、要請をしてまいりましたわけでございまして、決して何もしなかったわけではございません。
  230. 矢山有作

    ○矢山有作君 いまの私の言うたことは否定なさらぬな。否定なさらぬということを前提に置いて大臣の御答弁を願います。
  231. 加藤常太郎

    国務大臣加藤常太郎君) まあ、港湾関係は近代化がおくれておるということはもう御指摘のとおりで、何といったって労使関係を確立して正常化に戻して、港運協会のほうも三・二二の協定も、賃上げ、中央団交、これもやってもらいたいというのが労働省のこれはもう既定方針であります。そしていまの確約書、念書の問題はちょうど衆議院のほうは通過いたしましてこちらへ来て、三・二二協定も実行しておらぬじゃないかと、その実行しておらぬ段階でこのような審議はしてはいかぬと、こういうような矢山さんからも指摘もありましたので、私も当然と思いまして、やはりこれが労働の関係のほうは当然労働省、業者のほうの関係は運輸省と、二元的な役所が指導をいたしておるんでありますが、私はいまでも間違っておらぬと思います。おしかりをこうむるかもわからぬけれども、やはりかような問題、いろいろの問題を労働省は合理的に解決するには日雇い港湾労働者の就労機会の確保という点からいっても港労法の改正をやりたいと、私はやっておったほうがいいと思いますが、この念書、確約書もこれはもう当然やるべきことは理想のことでありますが、やはり私どもこのときの率直な考えを言いますと、港労法を通してこれをやらぬというのでは困るから、これは労働省は運輸省と交渉して、港運協会のほうもこれはやってもらわなくちゃ、当然なことだからと、これを通すために念書を入れさすというような気持ちは、いま遠藤局長はそのときには局長でなかったんでありますが、道正に命令いたしまして、確約書も中央港運協会の高嶋会長代行が入れたことも間違いない、念書を入れたことも間違いない。また、労働省の道正と時の運輸省の港湾局長の岡部君がこれを確約したと、私も当然この港湾労働法の改正を通すためには、これに対して大臣としてもこれはもうやるのが当然という意味で私も言明いたしました。しかし、少し違うのは、確約書、念書、これはやるべきは当然で何も間違っておりませんが、あの当時の関係は、大臣の言ったのも港湾労働法改正が通った場合にはこれは大臣としてやりますけれども、なかなかこれが万一通らぬという場合にはということは考えずしてあのときに私は確約いたしたのでありまして、しかし、それをここで言う気持ちは全然ありません。やはりいいことはいいと言うので、いまから私がじだんだ踏んでもいたしかたないので、今後正常化についてはいまの永井さんの問題等も契機といたしまして、中央団交の再開、近代化、正常化、これはいまの話をお聞きいたしておりますと、もう少し監督官庁のほうも足らないような感じがいたしますので、矢山さんの御指摘のような方向に沿って、神戸の問題に対しましてもこれが不当労働行為があるかないか、——これは提訴もないようでありますけれども、提訴がないからといって等閑視することは監督官庁としても私はどうかと思いますので、現場の安定はもちろんでありますが、ことによっては中央からも派遭いたしまして真相の究明、今後の対策に対しましても万全の方途を講じますことは、これは行政指導として大いにやっていきたいと思います。いまちょっとかぶりを振りましたが、私はかような立場、男でありますので、あのときの経過はそういうような経過であったことは間違いありませんが、しかし、確約書が、内容がかっこうだけというような気持ちでは私はごうも感じておりませんし、念書も、当然やることがいいことで念書を入れた、しかし、両大臣は港湾労働法を通すためにはこれはもう約束せにゃいかぬぞ、こういうような私の気持ちでそこで約束したのがそのときの心境であります。少しかぶり振りますけれども、私も率直にそのまま申し上げたのであります。
  232. 矢山有作

    ○矢山有作君 大臣のことばの中には聞き捨てならぬことばがありますよ。どうも全部を聞いておると何を言ったのかわけわからぬけれども、問題は、焦点はここなんですよ。確約書、念書、そして、それに伴う大臣言明が港湾労働法を審議し、通すための道具であったような感じの答弁に私はあなたの話をとったわけですよ。というのは、確約書や念書、あなたの言明、そのとおりにいかなかったというのは、港湾労働法が通らなかったから、通らなかったという段階ではどうもその確約書、念書をそのとおりにはというような口吻に聞こえたわけです。そうなると確約書なり念書なり、それに関連する大臣答弁は港湾労働法を通すための方便として国会で使ったのであって、港湾労働法がつぶれた後においてはわれ関せず、こうなりますよ、極端に言うたら。そういうふうに私は聞いた。それだったら大臣、許せぬ。これは港湾労働法が通ろうが通るまいが、港湾労働には一番大切なこと、——港湾労働だけではない、労使間の問題としてこれは一番大切なことなんです。労使双方が協定を結んで中央団交やるんだという、そういう協定をやったら、その労使双方間の協定は守っていくというのは、これは港湾労働以前の労働の全体に通ずる普遍的な原則なんだから、そこのところを踏まえおってもらわぬとおかしいんですよ。そうであるとするならば、確約書でいう中央団交の再開と三・二二協定の順守、これは当然な話なんです。これは港湾労働法が通ろうが通るまいがこの線に沿ってやらなきゃいかぬし、また、それをやらせるような行政上の責任、政治上の責任が六月二十八日の確約書、念書、さらに大臣言明で生まれておるんですよ。そこのところを間違ってもらっちゃ困ります。もし、あくまでも大臣が港湾労働法を通すためにあれはやったんだから、港湾労働法がつぶれた段階ではどうもなあと言うならこれは大問題です。そこのところをはっきりしておいてください、あんたのためにも。
  233. 加藤常太郎

    国務大臣加藤常太郎君) それは取り方によって違いますけれども、あのときの模様は各委員とも十分御承知のとおりで、審議するのには三・二二の協定もやらぬようなことでは審議もできないと、それは当然だというので……
  234. 矢山有作

    ○矢山有作君 審議だけじゃないんですよ。
  235. 加藤常太郎

    国務大臣加藤常太郎君) いや、そう言われたからそれは当然だというので、労働省は運輸省と相談して、会長もおりませんから高嶋会長代行に交渉をした。で、確約書が入った、これではもう少ししっかりせぬから両局長は念書を入れたと、大臣どうですかと言うから、それはけっこうでありますというので、いま言ったように、方便で約束したのではこれはもう絶対にありません。しかし、あのときには、要は改正法が通ったってこれは労働省が得するのじゃなしに、労働省は、労使一体化、改正することが労使関係の正常化に一番いいという信念があったもんでありますから、信念に基づいて、当然港労法を通す場合には大臣もそういうことを確約しなくちゃならぬというような気持ちで確約したので、方便というような気持ちではありませんが、そのときの事情はいま私が申し上げた事情であったと。いま矢山先生から、いや、それはおまえ、方便だけで通したので、あとはもうわしは知らぬと、こういうような御質問でありますが、そういう意味ではないと。そのときの事情は、これはもう皆さんもいらっしゃったんだから、そのとおりで、私、正直なほうだから言ったとおりを、要らぬことを言いますが、もうそれであったと、こういうことを申し上げたので、今後、——それは、いまの港湾協会のほうの気持ちがどうであったか、これは知りません。しかし両省とも大体その方針であったと。ところがいま永井さんの問題も出、いろいろなことが出ましたので、今後われわれも、いまお聞きいたしておりまして、これに対しましても、これを転機として、中央団体交渉を再開して、正常な、そうしてこれは悪いのでありますけれども、どうも港湾関係のほうはほかの業界に比べまして近代化がおくれておるということも、これはいなめない事実でありますので、御趣旨に沿ったような方向に行政指導いたしますことは、これはもうお約束いたします。
  236. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、念のために私のほうから言いますから、それで間違いなかったら間違いないということで、簡単に答えてください。要するに、その当時の事情として、中央団交再開、三・二二協定を順守するという確約書が労働大臣あてに出て、それに対して念書がついて、労働大臣はその実行について責任を持つと、こういうことを言われた。それは、なるほど港湾労働法の審議に関連してそういう手段が講ぜられたものではあるけれども、しかし、そのことは労使間の正常化のためには当然やらなければならぬことなんだから、港湾労働法が成立しておろうと成立してないと、このことを実行する責任は労働大臣にも運輸大臣にもありますよと、こういう確認でよろしいか、それが一つです。簡単に、それでよかったらいいと、そう言っていただければいいです。
  237. 加藤常太郎

    国務大臣加藤常太郎君) 矢山さんからの御質問でありますが、労使の正常化はもう当然で、あの線で大いに責任を持ってやらなくちゃならぬと。ところがなかなかそのとおりに完全にいくかいかぬかはこれはわかりませんよ。
  238. 矢山有作

    ○矢山有作君 そこで、これで終わりますが、少なくとも確約書が入り、それに安定局長、港湾局長が念書を書き、その実現について大臣が責任を持たれたわけだから、今後の問題を見てますよ、われわれは。今後どういう手段を弄してどうされるかというのを。人身事故まで起こっているんですから、一人の人命が失われておるんですから、その背景は何であったのかといえば、こう、うことが実行されないで、労使間が不正常なままにあるということが最大の原因なんだから、したがって、具体的にこの事件をめぐって不当労働行為があったのかなかったのか、その問題。さらに今後あなた方が労使間の正常化のためにこの確約書の線をどういうふうに順守していかれるのか、これは私どもは今後十分注目したいし、そして、この事件の解明はまだこれでは済んでおるわけではありませんから、先ほど職安局長なりあるいは港湾局長がおっしゃったように、業界を十分指導し、地元実態をつかんで労使正常化のために積極的に手を打っていただくということを希望しておきます。  これで私の質問を終わります。
  239. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは大臣、たいへん時間が少ないそうでございますので、ごくかいつまんでお伺いをして、基本点だけお伺いをしておきたいと思います。  まず第一に、日本における外国資本、外国銀行等について、治外法権ではないとは思いますけれども、国内法規を守るのかどうか、守らせるのかどうか、その点まず最初にお伺いをいたしたいと思います。
  240. 加藤常太郎

    国務大臣加藤常太郎君) これはもう外国の銀行、その他商社でも同様で、治外法権でもなく、日本の法規を尊重することは当然であります。何ら規定の外ではありません。
  241. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、そういう原則の上に立ちまして、在日外国銀行、特にチャータード銀行、オランダ銀行、マーカンタイル銀行、インド銀行という比較的在日外国銀行の古い銀行なんですが、これらの銀行における不当労働行為、あるいは基準法違反等々がございますので、そういった点についてお聞かせをいただきたいと思います。  外国銀行関係では労働組合が昭和三十四年の七月に結成をされて、その後、昭和三十六年ごろから一、二年の間に百五名にわたる労働組合員、活動家等の解雇が行なわれてきておりますが、そのほとんどは労働委員会の裁判等で解雇が無効だというふうな判定がなされてきているわけでございます。こういう上に立ちまして、最近に至りましてまたいろいろと諸問題が起こってきておるわけでございます。  そこで、時間の関係がありますから、これは去る十一月十二日に「外国銀行外国商社労働組合、チャータード銀行大阪支店従業員組合」という連名で労働大臣あての「申入書」が提出をされておりますが、これにはこういうふうに書かれている。「外国銀行は、本年の賃金の引き上げについての団体交渉を正当な理由なく拒否しつづけ、十一月に至るも解決を放棄、遅延させております。又、退職金や職業病等の団体交渉についても同様に拒否しつづけ、職業病被災者の生命と人権がそこなわれ、また基本的労働条件の向上に重大な支障を生み出しております。  さらにチャータード銀行及びオランダ銀行に於いては、労働組合所有物の不法な持ち去り、労働組合の争議掲示物の一方撤去や労働組合の活動に不当な介入を行っております。  また労働組合脱退を条件として、大量に職制への「昇格」を行うなど、前記の団交拒否の労務政策を中心にすえたいわゆる労働組合の破壊を一貫してつづけております。」というふうな内容の大臣に対する申し入れが参っておりますが、一つ一つ申し上げますと時間がかかりますので、端的に申し上げたいと思うんですが、まず第一に、いま申し上げた四つの銀行とも四十八年度の賃金闘争はいまだに未解決で団交拒否だ。そこで、団交の拒否というのはまさに憲法の二十七条でも、労働組合法の七条等、まあ、労働基本権の全くのじゅうりんだというふうに思うんですけれども、その点について労政局長の御見解を最初に伺っておきたい。
  242. 道正邦彦

    説明員(道正邦彦君) 現在、わが国において営業しております、いわゆる外国銀行の数は四十行でございます。そこに就労している従業員は三千人に達しております。で、多くの銀行におきましては労働組合が結成されておりますが、中には、ただいま御質問ございましたように労使間の紛争が長引いていろいろ問題を起こしているのがあることは事実でございます。で、御指摘のように、四件につきましてはただいま地労委に不当労働行為の申し立てが行なわれております。いかなる場合にも不当労働行為はあってはならないわけでございまして、地労委の場あるいは中労委の場等を通じまして円満な解決を見るように期待しておるわけでございますが、労働省といたしましても、現在外資系企業の実態を全国的に調査をいたしております。しかしながら、御指摘の四行につきましては緊急を要するとも思われますので、近く使用者を呼びまして事情を聴取したいと考えます。
  243. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 第二番目に重大だと思いますのは、オランダ銀行の大阪支店でのケースでありますが、職業病認定患者の要求に対して、H・A・プロンクという支配人の名前ですが、その名義で、全く労働基準法、労災補償の基本的な精神をじゅうりんするような見解が出されています。これは原文を読みますと、回答書にこう書いてある。「銀行は労働基準法、労働者災害補償保険法の規定を上廻った要求事項は受諾する意思のないことを重ねて申し上げておきます。」というふうなことが書かれているわけですが、まず、この回答をどう思うかということなんですね。労働基準法の定めというのは最低であって、それ以上の改善をする、しなければならないということが法規定の精神。ところがそれ以上の、要求は、これはもう一切受諾する意思がないということをのっけから文書でもって回答しているというふうなこと、さらには、まあ、労働基準法関係のことに関連いたしますので、あわせて申し上げておきたいんですが、大阪の労働基準局が本年の二月に在阪の外国銀行調査を行なっております。これによりますと、たいへんな労働基準法違反、安全衛生法違反等が出ておりますが、おそらく基準局では、労働省ではそのデータをもう御承知だと思いますが、時間がありませんから簡単にその大阪における労働基準局の調査では幾つの銀行で何件の違反事項があったかということを、あわせてお聞かせをいただきたい。
  244. 渡邊健二

    説明員(渡邊健二君) 労働基準法は外国銀行等にも適用があることは当然でございまして、われわれ基準監督機関といたしましては、国内の事業所と同じように、これら外国銀行につきましても監督し、違反があれば是正をさせておるところでございます。いまお尋ねの大阪の件につきましては、ことしの一月に大阪の基準局が、他の銀行や証券会社等の非工業的業種に対する監督の一環といたしまして、外資系銀行十行についても監督を実施いたしたのでございますが、各行ともにいずれも何らかの違反が発見されております。  で、おもなものといたしましては、三十二条の労働時間関係とか八十九条の就業規則関係とかあるいは労働安全衛生法関係等々につきまして違反が発見されておりますので、これに対しましては文書をもちまして是正勧告を指示いたしておりますし、その後、さらに二月には集団指導も実施して基準法を守らせるよう努力をいたしているところでございます。  それから初めにお尋ねのオランダ銀行の回答云々のことでございますが、基準法は最低条件であることは当然のことでございまして、一条の第二項では「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。」と、かように書いてございまして、使用者たる者は労働条件の向上につとめなければならない、これはもう一般的な当然の原則であろうと思います。その回答がどういう意味であるかいま伺った限りではよくわかりませんけれども、組合から交渉について要求が出ていることについて、いまそれらについてはそれ以上改善はできないということであれば、これはまあ、労使関係上の問題でございますが、もし改善の努力をする気がないんだということであれば、先ほど読みました基準法一条二項の精神に決して沿っているものとは言えない、かように考えます。
  245. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いまの基準法の問題につきましては、文書で回答するのに基準法を上回った要求事項は受諾する意思がないというふうなことを表明するというのは、もう労働基準法の基本的な精神をじゅうりんするという態度と言わざるを得ない。  それから先ほどお話がありました団交権の拒否——労働組合法のじゅうりんについては、これは確かに提訴はしておられますけれども、これは労使間で話がつかないから提訴をしているんであって、当然労政局として労働省としての行政指導の強化によって解決をすれば、これは提訴は取り下げればいいわけですから、いたずらに提訴しているということで介入を遠慮するということは避けていただくほうが適切ではないかというふうに思うわけです。  で、時間がありませんので、最後に大臣にお聞きをしておきたいと思いますのは、いまの若干の、ごく簡単な質疑でも明らかにいたしましたように、まあ、この外国銀行で憲法にも労働組合法も労働基準法も安全衛生法等のじゅうりん、違反というのがたいへんたくさんあらわれております。大阪の基準局管内では十の銀行で、先ほど言われましたけれども、私がいただいたデータによりますと八十六件の違反があるというふうな状況になっておりますが、外国資本が日本の国内において営業していく場合に少なくとも治外法権や特権を与えていないという原則の立場に立つならば、当然日本の国内法というものを厳格に守らせるように指導監督を強化する必要があろうと思います。その点でひとつ最終的に大臣の見解をお伺いをしたい。
  246. 加藤常太郎

    国務大臣加藤常太郎君) 沓脱委員からの御質問のとおりで、やっぱりこれ、外国系でありますと、どうもことばの関係や何かで監督その他指導の方針が徹底せぬうらみもありますので、なお十分配意いたしまして、十分御趣旨が徹底するように出先の機関も督励いたしますし、ことによったらまあ、たいした数じゃありませんので、本省のほうからも責任者に通達を出して、やはり日本におる場合には基準法なりそういうことを本国の指令ばかりをうのみにせぬように、日本国内のいろいろな法規をひとつ順守してくれと、こういうことをよくこれは指導いたしますから。やはりこれは忘れがちになりますので、いい御指摘でありますので、十分その趣旨が徹底するように計らいたいと思います。
  247. 須原昭二

    ○須原昭二君 実は、私はきょうは特に郵政省の中における郵便外務員、いわゆる郵便配達人、これの労働条件の問題について若干質疑を重ねたいと思うわけですが、不幸にして労働大臣緊急的な石油問題の閣僚懇談会だそうでございますから、実はあと五分ぐらいしかございません。したがって、労働大臣に若干冒頭に御見解だけ先にお尋ねをいたして、自後質問を展開を続けてまいりたいと思います。  そこで、問題点は、この間、南太平洋ですかの小さな国のトンガ王国の王様が日本へやってこられまして、トンガの王様のお話では、あのおくれた国でも休日、祭日は働くと罰せられるということを日本で記者会見をされたときにお話があったことを記憶いたします。沖繩返還協定を結ばれまして、沖繩の外務員は、郵便配達人は、返還までは日曜日、祭日、もちろん元日を除く二日、三日は配達はしなかったわけです。これが、返還をされたら今度は内地と同じように祭日も働かなければならない、正月三カ日は働かなければならないと、こういう労働条件が悪化といいますか、強化されている現況にあります。特に、いよいよあと一カ月半ぐらいたちますと新しい新年がやってくるわけでありますが、年賀郵便について、プライバシーにわたるようでございますが、労働大臣。大臣は大体何通ぐらい出されて、そして必ず郵政省が言っておるように大体十二月の二十日か二十一日までに投函されると思いますが、いつもそのようにされておるかどうか。これが第一点。  時間の関係がございますから、第二点は、週休二日制を目途として一生懸命労働省は各方面にPRをなされております。いま郵便配達、郵便の外務員は日曜日はだいぶん善処されてまいりましたが、いまなお祭日はだめなんです。働かなければならない。祭日が休日と重なった場合は振りかえ代休をことしから実施をいたしておるわけですね。にもかかわらず、こういう状態にある。週休二日制を早期実現をはかられる労働省として、このような郵政当局のあり方についてどのようにお考えになるのか。所見だけ冒頭に承って解放にいたしたいと思いますから、どうぞ。
  248. 加藤常太郎

    国務大臣加藤常太郎君) もう週休二日制の問題は当然で、これはもう経済社会基本計画でも期間内にやれという方針で、労働省が目玉商品として各省に通達も出すし、二日の問題は閣僚懇談会も開いておりまして、最近また人事院の勧告もあったりいろいろするので、なお、これが実施は既定期間中より早くなるような感じがいたします。いろいろ業種によって、中小企業とか零細企業、なかなか困難な問題もありますが、これはもう立場によっていろいろありましょうけれども、立場によっても変えられないこれは世界の情勢であり、経済発展から今度社会の福祉の問題、人間尊重、福祉優先という考えからいっても間違っておらないので、今後強力に推進いたします。  大臣は郵便どないしておるかと、実は私のんきなほうで、全部秘書まかせでどうなっておるか知らぬのでありまして、はなはだ申し上げかねるので、国会の答弁でありますから、的確なことを申し上げなくちゃならぬのですが、実際はもう知らぬのであります。  次に、正月の問題でありますが、これはなかなかデリケートな問題で、私の気持ちを申し上げると、これまた郵政大臣との関係もありますので、これはここで賛成だとはなかなか言えないので、私、郵政大臣ときょうもさっそくおりますから大いに考えたらどうだ、こういうふうな程度はよく話合ってみたいと思います、これはもう率直な意見が。しかし、大勢は考えなくちゃならぬというような感じもいたしますので、ここで労働大臣どうだ、賛成か、反対かと、こう言われると、ちょっとこの管轄の関係もありますので、十分御趣旨を尊重するような方向で対処いたしたいと思います。  以上で……。
  249. 須原昭二

    ○須原昭二君 労働大臣、非常に正直な御答弁で、まあ、年賀はがきは秘書官にまかしてあると、秘書官にまかしておけば、秘書官はやっぱり慣例どおり郵政省が指示する十二月の二十一日ですか、二十日ですか、きめられた期間に、年内に投函されると思います。そういう慣例をひとつしいていただきたいということを要望し、いま一つは、この正月二日、三日、祭日の問題については、後ほど多くをお尋ねをいたしますから、議事録を読んでいただくなり、あるいは政務次官もお見えになりますから、後ほど聞いていただきたい。ぜひともこの点は実現をしていただくように、各関係庁と協議をしていただきたい、かように思います。  どうぞ、御退席いただいてけっこうです。  そこで、労働大臣の大体の意向がわかりましたから、質疑を続けてまいりたいと思います。まず、もとへ戻って、いま郵便の外務員、郵便配達員ですね、配達員の全国的に欠員が非常に多いと私は聞いておるわけでありますが、とりわけ、大都市においては非常に欠員が多くなっておる、欠員状態は非常に悪いと、こういうことを実は聞いております。したがって、僻地から若者を集めてきて、大都市の寮生活をやらせるなり、しかし、独身寮、家族寮はございますが、独身寮へ入っている若者は、結婚すると郷里へ帰っていくというような、そういう傾向が強いわけで、特にそういう欠員が多く出る原因というものはどこにあるのだろうか、いろいろ私も私なりに調べてまいりました。しかし、よく考えてまいりますと、やっぱり若者にはあの仕事のかっこうはあんまりよくないと、かっこうがよくないという端的な一つの気分があるでありましょう。また、従来、中学校の卒業生から採用しておりましたが、もはや進学率が高くなって高校から卒業生を採用しなきゃならない。高校を出て郵便配達、それも賃金が高ければいいけれども、非常に安い。日曜日も祭日も正月三日間も働かなければならない。都市の中においては都市公害と称して、オキシダント、光化学スモッグ等によって健康をむしばまれていく、過密な交通地獄の中で精神がすり減らされる、こういう労働条件が起因をしておるのではないかと実は思うわけですね。そこで今日、定数と欠員との実数について、充足率について、どのようになっておるのか、まず簡単でいいですから、御説明を願いたいと思います。
  250. 北雄一郎

    説明員(北雄一郎君) ただいま、手元に正確な数字がございませんが、大体のことを申し上げますと、大都市の郵便の外勤職員につきましては、現在、内勤職員に比べまして給与上も格差を設けましております。それからお示しのように、寮等も完備しておりまして、居住地を離れて採用された人は必ず独身寮へ入れるように、そういう設備もいたしております。その他いろいろ配慮をしております。  そういう中で、大都市につきましては毎年三月期におきまして、主として、当該年の学卒者、これもお示しのように、大部分が現在は高卒者の人たちでありますが、この人たちを大都市の郵便外勤向けに見越して採用ということをしております。すなわち、四月以降の生ずるであろう欠員というものがあるわけであります。これを三月段階におきましてカバーできるような数字の人を採用しております。その結果、ただいま、はっきりした数字は持っておりませんが、大都会に限って申し上げまするならば、郵便の外勤職員は全体として、個々の局では欠員があるかもしれませんが、全体といたしましては欠員がないと、こういう状況にございます。
  251. 須原昭二

    ○須原昭二君 いま充足率ゼロ、充足率はもう完全だと、こうおっしゃっておるわけですが、個々の郵便局においては非常に欠員が出ているわけです、全体にわたって。出ているということですから、ひとつ、これは私たちも確たるデータがほしいわけですから、各郵便局、さらにまあ、こまかい欠員が出ている局はどれだけあるのか、この点、ひとつ定数と欠員との実数についての差、これをひとつ一覧表にして資料提出してください。お願いいたしておきたいと思います。  何といっても、いま年じゅう募集しているところというのは、自衛隊とバーとキャバレーのホステスと、それから郵便外務員ですよ。充足をしている、充足をしていると言われるけれども、年じゅう募集しているじゃないですか。この実態からいっても、何かいまの北さんの御答弁は、私は現実に合っていないような感じがするわけですから、データをひとつ出していただきたいと思っております。  それから二番目は、この際、私は特に要望しておきたいことがあります。特に外務員の場合、まあ、労働基準法では年に一回の健康診断ということになっているわけですが、年に一回では、私は少ないと思うのです、外務員に限って。とりわけ、春夏秋冬、年四回やれと私は言いませんけれども、少なくとも年二回ぐらいにやはり外務員はすべきだ。たとえば御案内のとおり、大気汚染の拡大が引き金となったと見られる呼吸器疾患が、昭和三十五年から昭和四十五年、十年間に日本の国では四倍にふくれ上がっているわけですね。あるいは息詰まるような過密都市、あるいは町に出れば交通地獄といわれるような、こうした精神的な不安から、精神病患者というのが実は四倍にふくれ上がっているわけです。ですから、まさにこの二つのスモッグの中に、あるいは交通の過密の中で、それを走って歩いておる郵便外務員というのは健康を阻害されていると思う。たとえば大都市のハトなんか、解剖してみると肺がまっ黒だと、こういわれておるわけですが、これと同じような現象ですが、私は郵便外務員の中にあると思うのです。ですから、この際、質問ではございませんが、年に一回の健康診断は、郵便外務員に限ってひとつ二回ぐらいやるような積極性を示されたらどうかと思うのですが、その点はどうですか。
  252. 北雄一郎

    説明員(北雄一郎君) 先ほどの資料の関係でございますが、全国の、全局と申しますとたいへんでございますので、そこは大体御要望趣旨に沿えるような何か資料を出したいと思います。  年がら年じゅう募集というお話ございましたが、それは必ずしもそうではございません。ただいま、いろいろ郵便局にたれ幕なんか下げておりますのは、あれは年末の非常勤職員の募集のたれ幕でございまして、本職のたれ幕ではございません。  それからただいまの郵便外勤職員につきまして年二回健診をしたらどうかということでございますが、ただいま御承知のように、年一回、全職員について健康診断をやっております。その結果を内外勤別に分析を実はいましておりませんが、これをいたしまして、それによってやはり特定の地域についてはそういう必要があるということであれば、そういう地域の外勤職員について年二回ということを考えるにも、これはやぶさかではないつもりでございます。
  253. 須原昭二

    ○須原昭二君 データのことはそれでけっこうです。  それからたれ幕がかかっているというのは、それは非常勤だとは思うけれども、定員が私は非常に狭いんじゃないか、だからアルバイトなんか常時採用しなきゃならないのではないかというような感じがするわけですが、その点はひとつデータを出していただいてから御検討さしていただきます。  さらに、大都市の中におけるところの、過密都市の中における郵便外務員は、とりわけ、早急にひとつ実施をしていただくように要望しておきたいと思います。  そこで進んでまいりますが、日曜配達の廃止問題です。これは祭日にも関係ございますが、まあ普通局と集配特定局がございますが、それの中で、現在、まだ日曜配達を廃止していない局がどれだけあるのか、未実施局の局がどれだけあるのか、この点はひとつ御答弁をいただきたい。計画としていつまでに完全に実施をするのか、これが二番目。  三番目は時間の関係がございますから総括してお尋ねしてまいりますが、こうした日曜配達をやめたことによって、日曜配達廃止を実施したことによって世論はどういうふうに向いているのか。世論はこれに賛成だったのか、反対なのか、つかんでおられたらひとつ御報告を願いたい。
  254. 永野明

    説明員(永野明君) 日曜配達の実施状況でございますが、普通局につきましては大部分が済んでおりまして、現在全国で二十八局だけ残っておると記憶しております。地方の郵政局に幾つかずつこれがあるわけでございますが、それぞれの郵政局の中で地方本部、組合の地方本部でございますが、そこと話をいたしまして可能ならば順次本年度中に実施していくと、こういうふうな段階にいまのところなっております。  それから特定局につきましては日刊紙を扱っているという局が非常に多いわけでございまして、そういった扱いの率等を基準として見ながら順次実施していくと、こういうふうな考えでございまして、これにつきましてはまだかなりの期間を要するであろうというふうに思っております。で、そういった実施結果の世論の評価といいますか、こういったことにつきましてはいまのところ格別そのために不便が多くなっているとかといったような強い反対もないように聞いております。
  255. 須原昭二

    ○須原昭二君 ひとつ早く実施をしていただきたいということと、世論の動向でありますが、これは私も、サンケイだったと思いますが、サンケイ新聞、ことしの七月の二十一日、世論調査の結果が出ております。九〇%近く日常生活に不便を感じてない。だから大部分方々がこれに賛成をされておる、けっこうだということになっておると思いますから、これはひとつぜひとも進めていただきたい。  そこで、続いてお尋ねをしたいのは祭日の配達廃止の問題です。この点はどうなっているのか。ポストの取り集め、収集ですね、これは日に四回のところを二回にするというような方法で暫時狭められているというふうには聞いておりますが、廃止はしていない、こういう現況でありますが、祭日の配達廃止についてどのように考えられておりますか。
  256. 永野明

    説明員(永野明君) 祭日の郵便の配達につきましては、現在のところ平日一日二度配達をしておる市内区域につきまして一度配達にするということがもう長年これは行なわれております。  それから取り集めにつきましては、ただいまお話がございましたように便数を若干減らすというようなことも長年すでに行なわれているわけでございますが、祭日の配達をそういった一日一度をやめて廃止をしたらどうかという要求がことし関係の組合から確かに出されております。私どももいろいろと実情を見ながら検討はしておりますけれども、現在のところ日曜の場合と違いまして、祝日の翌日の郵便配達物数、これが現在月曜と違いまして祝日の翌日の配達物数が非常に多いわけでございます。日曜配達の場合には土曜が半日でございますので、比較的差し出し物数が少ない、日曜も少ない、こういうことで月曜が平日に比べて二倍というふうな大きな数字になっていないわけでございますが、祝日の翌日につきましてはやはりかなり企業活動等もまだございますので、翌日の配達物数が二倍に近いといったような実態もございまして、なかなか実施をするのも困難なのではないかというふうに思っている次第でございます。
  257. 須原昭二

    ○須原昭二君 先ほど申し上げましたように、振りかえ休日が実施をされておりますね。一般的には日曜日はお休み、祭日でも日曜と重なった場合はその翌日をまたお休みと、こういう振りかえ休日制度が実施をされているわけです。これに逆行して郵政局は沖繩が返還されてから、従来沖繩は返還前は休日はお休み、日曜は休み、祭日もお休み、こういうふうになっておったわけですね。今度日本へ返還をされたら今度は労働強化になっているわけです。こういう現況を考えると、先ほど労働大臣にもお尋ねをしたんですが、トンガの王国でも、あんな小さな国でも休日、祭日は休みなのだ、働いた場合には罰するということにきめているという話を聞いて、私はこれは日本はトンガ以下だなあと実は思ったわけですが、この祭日を廃止する気はないのですか、具体的に。どうですか。
  258. 永野明

    説明員(永野明君) 先ほど申し上げましたように、祭日の翌日の郵便物数が非常に多いということでございますので、その辺に対します人の配置といいますか、そういった点で非常に困難性があるということと、もう一つは祭日につきましては曜日の関係が一定しないわけでございまして、日曜と連続する場合もございますし、その中間に入るというようなこともございまして、なかなかそういった日の翌日に対します郵便業務運行のいろいろな体制がとりにくいというようなむずかしい点がございますので、また、先ほども申しましたように、労働組合からの要求も出ておりまして、ただいま交渉段階にあるというようなことでもございますので、慎重に検討いたしておる、こういう状況でございます。
  259. 須原昭二

    ○須原昭二君 業務量の関係からいって、あるいは人を配置をする融通性の問題からいって困難性がある、これは私は技術的な問題だと思う。技術的な問題、本質の問題ではないと思う。やろうと思えばやれるのです。あとから申し上げますが、やはりこれは国民の皆さんに、労働大臣に私はあなた年賀郵便をいつポストに入れますかと聞いたのはそこにあるわけですよ。やはり国民の協力を得れば、事前にPRをすれば祭日の翌日にばっと来るようなことはない、そういうときはおくれますよと予告をすれば前もって出すですよ。そういう技術的な問題が欠けておる。いま検討されておるということでありますが、ぜひともこれは諸外国並みにやはりきちんとすべきだ、この点は要望して、次の問題点に入っていきますが、次は技術的な問題です、これ、まさしく。  年賀郵便の元旦持ち出し通数と申しますか、この統計がもちろん郵政局にあると思いますが、四十六年四十七年の統計をひとつ出してもらいたいと思います。全国の十二の郵政局の単位でひとつ統計を出してもらいたい。私もちょっとこれは的確かどうか知りませんが、調べてまいりましたのですが、元旦の持ち出し通数、たとえば東京が十九億九千九百九十一万九千通、四十六年。四十七年が二億一千六十二万六千通、こういうふうに実は出ているわけです。全国の平均でいきますと、十四億九千八百三万三千、これが四十六年。四十七年が十六億九百五十六万七千、こういうように元旦持ち出しの通数がきまっています。年度別結束率という専門用語だそうですが、これを見ますと、すなわち十二月三十一日正午までに投函されて元旦に配達されるものの率をそういうのだそうでありますが、この年度別の結束率を見ますると、東京なんかは四十六年は一〇〇・四%、四十七年は一〇〇・一%、全国平均を見ますると、四十六年は一〇〇・六、四十七年は一〇〇・四と、私の東海を見ますると、四十六年が一〇〇・三、四十七年度が一〇〇・三、常に一〇〇%以上なんですね。したがって、あらかじめ国民に周知徹底をするならば、正月の二日、三日を配達をやめても予期するのは大体元旦に全部配達をされるという数字が出ているわけです。年賀状の全体の八〇%が元旦にこれまで配達されているわけです。残りの二〇%は何かといえば、出しおくれあるいはまた返り年賀といって、年賀状もらってもう一ぺん自分が見て、今度はああ年賀状をもらったから出さなければいけないという返り年賀ですね。こういう数字なんです。したがって、あらかじめ国民に二日、三日は配達をやめますと、こう言えば、年賀状全体の結束率はもっと私は高まってくるのじゃないか。そうすれば、正月の二日、三日というのは配達の要はきわめて少なくなる、国民の協力と納得が得られる、こういうふうに私は断定したいと思うのですが、その点はどうですか、どうお考えになっていますか。
  260. 永野明

    説明員(永野明君) 年賀状の関係の資料の関係でございますが、ただいまお読みの資料は大体正確だと思っておりますが、東京の十九億というのは一億九千の間違いだと思います。
  261. 須原昭二

    ○須原昭二君 一億九千です。間違いです。
  262. 永野明

    説明員(永野明君) この関係の資料、後ほど出させていただきたいと思います。  年賀はがきの差し出しの関係でございますが、私ども、できるだけ元旦にたくさんお配りするというような趣旨から、十二月二十二日までにできるだけ出していただきたい、こういうPRを過去十年以上やってまいっております。テレビ等も使いまして相当多面的にやっているつもりでございますが、それでも全年賀郵便物の中で約四三%ぐらいが十二月二十二日までに差し出されるというような状況でございまして、年賀の特別の取り扱い期間として十二月二十八日までということになっておりますが、それまでの期間でも全体の七四・二四%というような数字、それから三十一日まででも八三・五八%といったような数字になっておりまして、一六%ほどは正月から出されるといったような状況でございます。こういった数字は年々努力をしておりますが、なかなか目立った変化は示しておりませんので、そういった二十八日以降等に出されるものが正月に入りまして、特に二日、三日、四日といったような時期に重なるわけでございまして、なかなかそういうふうな多数の年賀はがきを一日に集中するということはむずかしいのが実情でございます。
  263. 須原昭二

    ○須原昭二君 その業務量の問題と人員の配置の問題でむずかしいとおっしゃいますが、やはり労働者の立場からいいますと、世界の流れであり、時代の趨勢であり、正月三カ日はやはり人並みに休みたいというのが人間の本能ですよ。この点を先にするか、やはり業務量が多いのだ、人員の配置が悪いのだ、したがって、これは困難だといって打ち切ってしまう問題と、どちらを重心にとるかということが一つの問題点になってくるわけです。そこで、やはりこの段階においてこの世論をどうつかんでおるかということが一つ問題点になってくるわけです。とりわけ労働条件からいえば、たとえば交通機関のように三百六十五日、まあ、夜中は別としても走らざるを得ない、あるいは電報のように緊急性がある、あるいは速達のように緊急性があるものはやむを得ないとしても、一般業務はやはり人並みに休ませてやるのが私は当然ではないかと、こういうふうに実は思うのですが、そういう点は郵政省はそういうことは考えないのですか。
  264. 永野明

    説明員(永野明君) 郵便関係の職員につきましても正月三カ日等を休みたいというごく素朴な人間としての感情といいますか、これは私どももわからないわけではございませんけれども、また一方年賀はがきを元日に大体八〇%受け取っているけれども、まだ二〇%ほど二日、三日等に期待したいという、そういう国民の皆さんの強い要望も一方あるわけでございまして、また、年賀はがきだけでなくて平常信、これも平常よりも若干減りますけれども、二日、三日ともあるわけでございます。まあ、そういったふうなものを国民の皆様に配達をするということが私どもの一方のまた責任でございます。その辺をいろいろと考え合わせる必要はあろうかと思いまするが、まあ、現在の郵便の利用の実態といったようなものを、正月の二日、三日、四日といったようなころのものを考えますときに、なかなか正月は休みたいという、そういうふうな考え方ばかりで配達をやめるといったようなこともできないのではなかろうかというふうに思う次第でございます。
  265. 須原昭二

    ○須原昭二君 やはりいま、皆さん下部のほうは御存じないかもわかりませんが、都道府県の中で、正月の二日、三日は配達を廃止しようじゃないか、こういう地方議会がどんどん議決していますね、御案内でしょう。そういう国民の中にやはり働く者の立場として、お互いに働く者の立場はわかるわけですから、郵便外務員はしようがないんだ、あれは年賀状だからしようがないというものの解釈でやっぱり打ち切るべきではないと思います。ですから、これは早急にひとつ御検討いただくこととして、そのためにやはり郵政省もサービス機関でありますから、国民の意向を無視してやるわけには私はまいらない。したがって、郵政省は正月二日、三日の年賀はがき配達廃止の問題について国民の世論、そして職場の声、こうしたものを調査されたことございますか。
  266. 永野明

    説明員(永野明君) いまのところ、特別にそのための調査はいたしておりません。
  267. 須原昭二

    ○須原昭二君 そういうことが、やはり上から、上意下達といいますか、そういう傾向になりがちになるのではないかと思うのです。郵政省以外で、たとえば総理府だとか、あるいは報道関係だとか、そういうもので世論調査したことがあるように私は聞いておりますが、御記憶ありますか。
  268. 永野明

    説明員(永野明君) 官庁の関係としましては、この問題につきまして調査をしたということは聞いておりません。
  269. 須原昭二

    ○須原昭二君 官庁は私も調べたのですが、ない。そういたしますと、この間、先ほど申し上げましたようにサンケイ新聞が世論調査やっていますね、四十八年七月二十一日、紙面一ページをあけて出ているわけですね。正月二日、三日はやめてもよい七四%。こういう世論調査の結果が報告されておることを知っていますか。
  270. 永野明

    説明員(永野明君) サンケイ新聞の「一〇〇〇人調査」といいますか、これが七月と、ごく最近十一月でございましたか、調査結果が発表されておるということは承知いたしております。
  271. 須原昭二

    ○須原昭二君 承知しておられるとするならば、人並みにやはり休みをくれというのが働く者のほかならぬ気持ちと私は察しておりますが、そして、郵政省は職場の意向をどう見ておりますか。
  272. 永野明

    説明員(永野明君) 労働組合を通じまして要求が出ておるということを先ほど申し上げましたが、かなり職員は正月にひとつ休みたいといったような考え方は多いんではなかろうかというふうには思っております。
  273. 須原昭二

    ○須原昭二君 そういたしますと、サンケイ新聞の数値からいっても国民の世論もあまり反対に強く出ない。たとえばやめてもよいというのが圧倒的多数を示しておるといえる。それから、いま、お話も聞きましたように労働組合のほう、職場の中でも二日、三日は休みにしてくれと、こういう空気なんですね。そこで、先ほどいろいろ言われておりますが、具体的に言って郵政省は正月二日、三日の年賀配達を踏み切れないこの理由、基本的なもの、これは何ですか。
  274. 永野明

    説明員(永野明君) 先ほど正月の三カ日に年賀はがきを、あるいは通常郵便物をできるだけ多く受け取りたいといったような国民の世論、感情というものもあることは事実でございますが、もう一つつけ加えますと、正月の二日、三日に、もし配達を休んだ場合、四日に二日、三日分のものが四日の分と同時にかぶさってくるわけでございます。これが平常の郵便物は普段よりもある程度少ないわけでございますが、年賀はがきの量となりますとやはり全年賀はがきの三・五%程度が二日、三日も三・五%程度、四日も同様でございます。そういったものを四日に処理をするというふうに考えますと、通数にして約三億通、平常の郵便物の十日分近い数字になるわけでございます。これを四日に一挙に解決するということが、まあ二日、三日とおくれているわけでございますので、国民の皆さんのサービスにこたえる私どもの基本的な考え方であると思いますが、なかなか三億通十日分ということになりますと、これを国民の皆さんにお配りするのはむずかしいんじゃないかという点が一番大きな問題でございます。これを四日だけでなく、四日、五日というようなことでうまく片ずくかと申しますと、その辺もなかなか困難でございまして、非常勤もまたこういった時期になりますとむしろ休みたいといったようなことでどんどんやめていく時期でございます。四日以降の郵便の配達が全般的に非常に乱れてきて、したがって国民の皆さんに迷惑をかけることが多いんではなかろうか、こういったことから二日、三日を休んでもらうということは非常に困難であるというふうに考えておるわけでございます。
  275. 須原昭二

    ○須原昭二君 サンケイ新聞を読んでみますと、そういう理由はあまり表面に出てこなくて、やはりここにも書いてありますように、サンケイ新聞の調査によれば郵政省当局が一番心配していることは伝統的な正月の慣習をこわすことで、いわゆるいま言われる国民のサービスを阻害をすると、こういう心配で国民の反発を受けるのではないかということが、このサンケイ新聞の当局のお話が出ているわけです。私はそうは実は思わないわけです。サンケイ新聞の調査によると、長年の年賀のしきたりをこわす理由で反対論はわずか全体の四%です。全体の四%なんです。そういう数値からいっても、私は国民はあまりぎゃあぎゃあ言わないのじゃないか。問題は業務量をどう消化するのか、人員をどういうふうに配分するかという技術的な問題にかかっておると言っても私は過言ではない。そうすれば、郵政省はやろうと思えばやれるんです。やろうと思えばやれる。やる気持ちがないからやれぬのじゃないですか。外の問題ではない、中の問題じゃないんですか。その点は明確にしていただきたい。
  276. 永野明

    説明員(永野明君) ただいま申し上げた数字につきましては、まあ、外と中というふうに分けますと、あるいは中の体制の問題かとも思いますけれども、言ってみれば物理的にかなり無理な負担になるといったような段階にまで来る数字でございますので、きわめて困難ではないかということを申し上げておるわけです。国民の皆さんに非常な迷惑をかけるのではないかということを心配しているわけでございます。
  277. 須原昭二

    ○須原昭二君 だから、私は冒頭に労働大臣にもお尋ねをしたように、やはり二日、三日はやめますよと、早く出しなさいよと、このやっぱり国民に対するPRをどんどんやれば、こういう一挙にぼっと出てくるようなことは私はないと思う。そういう努力を一面おざなりにしているところに問題点があるわけではないだろうか。  もう一つ、長年の年賀のしきたりをこわすという理由を正面に掲げられますが、私はいつも思うんです。昔の年賀郵便というのはちゃんとこう消印があったわけです。消し印があったわけです。だから、どこの局を回ってきても、消し印が押してあるから重みがあるわけです。いまじゃ全部印刷して、私がこれをこのまま投函すると、何も手をつけずにぱっとよそへ行くわけですね、相手のところへ。何も消し印も押していない。もう印刷済みですよ、これね。こういう伝統的な、郵便事業としての伝統的な、四十九年の一月一日名古屋の〇〇局というような消し印がばんと押されていると何か重みがあるけれども、何にも重みないですね、これ。もう一ぺん投函してもまた行きますわな。こういうことを片っ方でやっておいて、それで長年のしきたりだ、伝統だと、これでは通りませんよ。長年のしきたり、伝統とはいえ、週休二日制が叫ばれている今日です。日曜日はもちろん、祭日は当然休みにするのはあたりまえのことです。もちろん、それは速達やポストの収集はまあ例外としても、日曜日、祭日ともに正月の二日、三日も人並みに郵便外務員も休みを与えるべきである、こういうふうに私は思うんですが、どうも答弁がはっきりいたしません。各年度ともずっと調べてまいりますと、年賀郵便の結束率は非常に高いわけです。業務は正常に運行されているんです。年賀状の中の全体の八〇%強が元旦にこれまで配達されているわけです。あとから出てくるのはおくれたってしようがないじゃないですか。これは国民も了承しますよ。先に出しなさいというやつを、あとで年が明けてから投函すれば、ああおそくなるのはあたりまえのことと思うですよ。そういうPRが一面なされておらないところに何か技術的な問題だというような、また内部の問題としておまえたちが働かぬからしようがないじゃないかというようなことで逃げておられるんではないかと思うんですが、その点どうですか。
  278. 永野明

    説明員(永野明君) 長年の伝統をこわしたくないといったような理由がサンケイ新聞に書いてあるのも私承知しておりますが、その辺の見方がどこから出てきているのかはちょっと理解しかねるわけでございまして、やはり年賀はがきを年末から正月にかけて出すか出さないかという問題は、私どもの問題よりも国民の皆さんの年賀に対する考え方、まあ、その意味での伝統ということかと思いますが、最近の私どもの受け取り方としましては、個人通信というものが非常に平生減っておりますが、年賀はがきというものはそういうふうな中で個人通信の最たるものになりつつございます。そういう意味で年に一ぺん知り合いの方に新年を賀するという意味と同時に、平生のごぶさた等をわびるとかいったようなことを一度で片づけるといいますか、そういった趣旨にも使われつつあるというふうに見ておりますが、その辺の感覚で非常に年賀はがきを出そうという実際の需要がふえているというふうに私どもは見ているわけでございます。そういったふうな国民の皆さんのならわしなり感覚なりということを考えますといたしますと、私どもはそういったものをすなおに受け取りまして、できるだけの配達をしてこれにこたえるということが私どもの責務ではないかというふうに思う次第でございます。
  279. 須原昭二

    ○須原昭二君 すれ違いの答弁されちゃ困るんです。  そこで本質の問題は、お宅がそうおっしゃるなら私ももう一ぺん聞かなきゃいかぬのですが、私は郵政省の年賀はがきの発行枚数をずっと調べてまいりますと、四十六年十二億八千万枚ですね、十円が。十一円が五億枚、十一円というのはずっとその後、あの当時四十六年は七円、八円でありますが、いまでいう十一円は寄付金つきの十一円は五億枚ずつです。十円のやつをずっと調べてまいりますと、前の七円、いまの十円のやつをずっと調べてまいりますと十二億八千、十四億六千、四十八年、ことしは十八億ですよ。業務量が多い多いといって片一方で心配しながらみずからたくさん刷ってどんどん買ってくれというような状態というのはどういうことなんですか。四十六年が両種を合計して十七億八千万、四十七年が十九億六千万、四十八年が、ことし売っているのが二十三億枚。片一方で業務量が多くなっては困る困ると言っておきながらどんどんどんどんこれをふやしている。こういう状態をどうお考えになりますか、矛盾しているんじゃないですか、どうですか。
  280. 永野明

    説明員(永野明君) 年賀はがきの発行枚数につきましては、ただいまおっしゃられたとおりでございます。ことし二十三億、昨年十九億六千万、その前年が十七億八千万という数字でございますが、実際に年賀はがきを私どもが引き受けます場合には、私どもが発行しますお年玉つき年賀はがきのほかに私製はがきとかあるいは官製の一般はがきとか、こういったものがつけ加わっているわけでございまして、ただいまの四十六年度にしましても、その発行枚数よりも相当多くの年賀はがきが私どもの引き受けになっておるわけでございます。その翌年にしても同じようになるわけでございますが、そういうふうな意味でお年玉つきの年賀はがきがほしいけれども買えないという声がまた非常に強いわけでございます。そういった声を私どももくみ取りまして、できるだけそういうふうな御要望にこたえたいということで、年賀はがきの発行枚数はふやしてきている、こういうふうなことでございます。
  281. 須原昭二

    ○須原昭二君 そうすると、お宅のほうの年賀はがきというのは、そういう国民の意向の、あまり音信不通のやつに年に一回ぐらいは手紙を出しておこうというつもりの、それを手だてしていると、こういう意味ですか、この郵政省が出されておるところの年賀はがき発行の目的は。これは明確にしておいていただきたい。
  282. 永野明

    説明員(永野明君) 先ほど申しましたように、正月に年賀はがきを出したいといったような考え方といいますか、これはかなり明治の初めからあったようでございまして、そういった習慣を国民の皆さんが現在でも非常に根強く持っておられる。そういったふうな必要、需要というものにこたえて年賀はがきを発行していると、こういう考え方でございます。
  283. 須原昭二

    ○須原昭二君 私が言いたいことは、業務量が多い多いといって非常に困っておられる。側面においては年賀状をどんどん印刷して売っておる。この矛盾が私はわからないということなんです。そして紙不足の今日、官公庁はみんな虚礼を廃止しましょうといってみんな通達が出ているじゃないですか。そろそろ国会の中にも年賀はがきやめましょうという、ちゃんとやめましょうという申し合わせをするんじゃないですか。そういう状態の中で郵政局だけ、はい、えらいたくさん出してくださいといって売っているという現象はおかしいと、まさに大量生産大量消費のこの原理がここの中にまだひそんでおる。それからもう一つ、年賀はがき発行の目的はそういう国民の一年間音信不通であった、一年に一ぺんぐらいこの機会に手紙を出しておこうという、その便宜をはからっているとは言われるけれども、年賀はがきの「お年玉つき郵便葉書及び寄附金つき郵便葉書等の発売並びに寄附金の処理に関する法律」に基づいてあなたはやっているのでしょう。それをさっき言わなければいかぬですよ。そこで私は問題にしたいのは、この法律の第五条第二項との関係ですよ。社会福祉の増進の一助にするということでこれは出ているんですよ。あなたの理由と違うんだ、これ。国民にサービスするんじゃないんだよ。しかもそれは昭和二十四年ですから、戦争が終わった直後のあの悲惨な状態の中で、やはり戦後間もなく廃墟の中から立ち上がったんだから社会福祉の団体が非常に金に困っておると、したがって、そういう寄付金をひとつこういう形で浄財を集めようということで出発しているんだ、あなたの答弁と違っているんだ。そこで言いたいことは、世界で第二番目のGNPのこのわが日本が、経済大国になった日本が一円の寄付金ですすから、五億円ですよ、たった五億円です。あれだけ苦労して五億円、しかも法律の第七条第二項によれば、寄付金の処理にあたっての経費、百分の一・五の額を除くと、こうなっていますから、七百五十万が経費となって四億九千二百五十万円が寄付金に充てられるわけです。従来これはどのような団体に寄付されているんですか。
  284. 永野明

    説明員(永野明君) 従来、昭和二十四年以来かなりの額になっておるわけでございますが、大ざっぱな色分けを申しますと、社会福祉事業に七五%ほどが配分になっております。それからガン、結核、小児麻痺等の研究治療に一五%、それから原子爆弾の被爆者の研究治療等に五・五%、その他交通事故、水害の人命救助等が若干配分の対象になっております。
  285. 須原昭二

    ○須原昭二君 世界で第二番目のGNPになったこの経済大国の日本でこんなささいな金をこま切れにしてばらっとばらまいているわけですね。厚生省からお話を聞きたいんですが、ほんとうにこれが貴重な財源ですか。私から言うならば、郵便募金管理会というのが何かあるそうです。この郵便募金管理会というのは常設機関になっている、どのような構成になっているか知りませんが、理事長が一人おってそして理事が三人以内で監事が二人以上という法律になっておりますが、何かこの人たちのためにやっているような感じがしてならないわけです。この人たちの人件費をつくり出すためにこれをやっているような感じがしてならないんですが、その点はどうですか。
  286. 永野明

    説明員(永野明君) かつて郵便募金管理会という組織がございましたけれども昭和四十三年に解散いたしまして現在は存在いたしておりません。
  287. 須原昭二

    ○須原昭二君 いまどういうことをじゃ、やっているの。
  288. 永野明

    説明員(永野明君) いますべて郵政省の郵務局業務課で寄付金の配分関係、監査関係すべてやっております。
  289. 須原昭二

    ○須原昭二君 そうするとこれ、法律は違うんですか。これは違法じゃないの。法律にちゃんとそれ書いてある。郵便募金管理会という機関を通じて実は郵政省と管理会とが協議してそして郵政審議会にかけてきめると、配分は。こう書いてあるんです。そうするとあなたたち法律どおりやっていないの、どういう意味なの。
  290. 永野明

    説明員(永野明君) お手元にどういった資料が渡っているかちょっと承知いたしておりませんが、ただいま申し上げましたように、現在は郵便募金管理会は存在いたしておりませんで、昭和四十三年だと思いましたが法律その他の改正をいたしましてその事務は郵政省の郵務局業務課で現在は行なっているわけでございます。
  291. 須原昭二

    ○須原昭二君 この点はひとつ保留しておきましょう、時間がありませんから。  そこでこれはいずれにしてもこの制度は昭和二十五年の元旦から始まっているわけですね。終戦直後のあの廃墟の中から立ち上がったころではともかくとして、今日の状態のような日本の財政事情からいって、こんな財源を当てにして何かもっともらしいことをやっているようなものの考え方は私は時代おくれだ。同時にまた、業務量がたくさんあって困っておるという側面の中で、こういうものを促進をしていくということは、かえってお互い業務量あるいは人員の配置からいってもたいへんなことだと思う。ですから、この際抜本的にひとつその点を考える意思はないのかどうか。課長さんではこれはここで答弁ができないかもわかりませんが、——政務次官お見えになりましたな。どうですか。
  292. 葉梨信行

    説明員(葉梨信行君) この問題は郵政省の所管でございますので、私ども意見を申し上げる筋合いではございません。
  293. 須原昭二

    ○須原昭二君 あなたは労働省か……。それは失礼いたしました。ひとつ、政務次官ね、御陪席をいただいておりますから、せっかくの機会ですから、どうぞ、その意思をぜひとも通じていただきたい。少なくとも、やはり労働者も人間の子ですよ。やはり時代の流れが、休日、日曜日も祭日も休む。そうすれば正月の二日、三日は——元旦は出ても、一日はしようがないけれども、二日、三日は休ましてくれというのは、やっぱり人の子の気持ちですよ。これにこたえていくということが私は郵政省としてとるべきだと思いますから、ぜひともひとつ関係のほうへ御協議をいただくように、労働省の立場からいっても、労働者の立場を守るという立場から、ひとつ御協議を願いたい、こういうことで、実はきょうはもうやめておきます。  あと時間が五分ぐらいですから、最後に北人事局長にお尋ねいたします。  郵政マル生は終わった、こうよくいわれておりますが、まだ続いておると私は思います。端的な、具体的な例を出しますから適切なひとつ処置をとってもらいたい。郵政職員が、たとえば刑法二百四条の暴力傷害事件を起こし、裁判の結果、有罪と確定した場合、行政処分はするのですか、しないのですか。
  294. 北雄一郎

    説明員(北雄一郎君) 有罪にもいろいろございまして、禁錮以上の刑に処せられれば、その方は国家公務員法の規定もございまして失官するわけでございます。当然その地位を失うわけでございます。それから、そういったことでない場合、要するに禁錮未満といいますか、の場合には、状況によりまして、それ以前に行政処分が済んでおる場合もございますし、それを見て行政処分をする場合もございます。
  295. 須原昭二

    ○須原昭二君 口頭注意というのは行政処分ですか。
  296. 北雄一郎

    説明員(北雄一郎君) 国家公務員法にいうところの行政処分ではございません。
  297. 須原昭二

    ○須原昭二君 そういたしますと、禁錮以上の者、いろいろありますが、少なくとも事件の内容として、これは四十六年の十一月の二十五日、名古屋の中郵便局において起きた事件でありますが、主事の西村茂樹さん、この人が片山弘さんに暴行を加えて傷害を与えた事件です。ちょうどこの数日前です、四十八年の十一月の七日。裁判というのはようおくれるもので、二年もたってからですが、名古屋地方裁判所二十号法廷で判決が出ました。刑法二百四条に該当する。罰金は一万円。——一万円というけれども、私は客観的にこの事件を見ておりますが、実は客観的に見て刑が軽過ぎると思う。軽いと私は判断をしますけれども、明確に罰金一万円になったことは確かです。問題は省の行政処分です、あり方です。これに対しては本人の西村君に口頭で注意しただけです。具体的に言いましたが、これは適当ですか、適当でないですか。
  298. 北雄一郎

    説明員(北雄一郎君) 実は、ただいまその件につきまして私承知をいたしておりません。また、処分権も本省にございませんで、地方にございます。したがいまして、どういう内容の事案について、どういう判決が出まして、どういう行政処分をしたのか、私のほうで調べたいと、かように思っております。
  299. 須原昭二

    ○須原昭二君 それは処罰する権限が郵政局、本省にはございませんことはよく知っております。したがって、客観的にあなたが上司として上から見たときに、これが適切であるのか、適当でないのか、これは御判断を願いたいと思うわけです。少なくとも、われわれ郵政マル生を追及してきた立場でして、従来見てまいりますと、まあ、全逓の職員ならば、全逓の組合員であるならば、起訴されただけで、直ちに少なくとも停職一カ月ないし一年以下の行政処分が実は発令されております、現実に。この西村さんというのは実は全郵政なんです、全郵政の支部長です。そして当局と一緒になって第二組合をつくっていった男なんです。こういう、官側には功労者だから処分しないということなんですか。どうですか。
  300. 北雄一郎

    説明員(北雄一郎君) 先ほど申し上げましたような次第で、私、具体的な案件を全然存じておりませんので、何ともお答えいたしかねますけれども、ただ、処分いたす場合に、むろんその客観的な事実に基づいて処分をするんでありますから、したがって、組合の所属等によって行政処分の軽重を来たすということはあり得ないことだと存じます。
  301. 須原昭二

    ○須原昭二君 起訴にならなくても、裁判事件にならなくても、なぐった、けったということでそれでもう処分を受けているんですよ、現実には。堂々と起訴され、そして有罪で、判決が下って、たとえ量刑は安くても一万円と罰金が科せられた以上、私は当然行政処分はあるべきだと。口頭の注意だけで軽く済ましていくということはまさしく私は第一組合と第二組合の差別と偏見がいまなお郵政省に温存されている、この証左である、第二組合を育成するあらわれだと私は断定してはばからないわけでありまして、北さんは名古屋の具体的な例だからわからない、こうおっしゃいますけれども、ひとつ早急に御調査をいただいて、的確なる指導をしていただきたい。そういうことをやらない以上は、全逓敵視と見られたマル生はいまなお私は続いていると言わなければなりません。西村君のごとき事件に対しては、適切な、的確な、差別のないやっぱり行政処分を行なうべきである。——差別ということについてどうお考えになりますか。
  302. 北雄一郎

    説明員(北雄一郎君) 組合の所属いかん等によりましてあるべからざる差別をなすということは、これは当然よくないことであるということは当然そう考えております。
  303. 須原昭二

    ○須原昭二君 その差別をしてはいけないということはよくおわかりになっている。現実に見ると、われわれは差別だと思います。偏見がある。第二組合を育成するあらわれだと私は言ってもいい。だから、職場の中で、あの人は罰金を受けて、判決がおりておるにもかかわらず、胸を張って歩いている。こっちは、ちょっと部内で幹部にものを言っただけで、ちょっと突っからかしただけで、一カ月、一年以下というのはあまりにも差別が強過ぎる、こういうことが職場の中で大きな声になっているわけです。これでは職場の業務の正常化はもちろんのこと、明るい職場は私は確保できない、そういう立場から御質問をいたしておるわけでありますが、実態をつかんでおられない。したがって、これは残念でございますが、直ちにひとつ名古屋郵政局を通じて御調査を願い、しかるべき結果について御報告を願いたい。  以上申し上げて質問を終わりたいと思います。
  304. 矢山有作

    ○矢山有作君 時間が非常におそくなりましたので簡単に申し上げます。  これは問題の発生は、岡山県の津山工業高等専門学校の中で起こっておる問題ですが、この問題を調べておるうちに、文部省の国立高専の学寮制度並びにその運営自体に関連をしてくる問題だと思うんです。したがって、時間があれば、そういう学寮の制度なり運営の問題にまで入っていきたいわけですが、時間の関係でそこまでいかなんだ場合は単なる労働関係の問題としてひとつ解決をしていただくように、その点だけでとどめておきたいとも思います。  実は昨年から津山工業高専の学寮の炊事人の方の組合があります。その組合と学校当局との間でべースアップの問題をめぐって争議が続いておるわけです。で、大体文部省の指導によれば、寮生四十人に対して一人ぐらいな炊事人を置くということになっておるんですが、実際はその炊事人の確保がなかなか困難なようです。これは労働条件がきわめて劣悪であるということが最大の原因のようですが、非常に確保が困難だ。そういうところから非常に過酷な労働をしいられるというところから、労働基準法違反の問題も相当たくさん起こっております。私はこの実態調査をしたときに、津山市にある労働基準監督署のほうへも、こういう具体的な基準法違反の事件があるから、実態調査をして、それに対する所見を私のほうへ十一月の十二日ごろまでにはひとつ連絡をしてもらいたいということを言っておったわけでありますが、何の連絡もいまだありません。そういう労働基準法違反の問題が多発しておるということと。もう一つは、実はこれは、私はこんなことはいままで聞いたことがないのですが、争議最中である、その状態の中でいままではその学寮の炊事人の雇用は国立工業専門学校長何のたれべえということで雇用されておったわけです。したがって、私は学校長が個人的に学寮の炊事人を雇用するとは考えられぬので、おそらく学校長というその立場、つまり国の機関としての立場から雇用したものであろうと、こう解釈しておるわけです。そうすれば当然国との間で雇用関係が生ずるはずであると、こういうふうに解釈しておりました。ところが、そういう形で雇用されておったのが争議最中、突如として四月一日をもって雇用主を変える、雇用主は学校長ではなくて、この津山工業高等専門学校に付置されておる北辰寮という学寮の後援会、この学寮後援会を三月の二十四日の日に急にでっち上げました。そして津山工業高等専門学校北辰寮後援会、そこでこの学寮の炊事人は雇用したことにする、こういう申し渡しを一方的にやっておるわけであります。当然、それは身分関係について、雇用関係について根本的な変革だというので、組合のほうではこれを拒否しております。こういう実態なんですが、これに対して労働省のほう何らかの連絡を受けておられるか。また、文部省としてはこれをどう考えておられるか。それから労働省としても、こういうふうに、争議中に雇用主を一方的に変えるというようなことに対して、どういうふうな見解をお持ちになるか。ひとつ伺いたいのです。  そこで、念のために、申し落としましたので、一つだけつけ加えますと、実は夕ベ組合のほうへ電話をして様子を聞いてみました。そうしたら、労働基準監督署のほうから組合のほうへ、こういうことを言うてきた。それは雇用主が変更されたということについては、これは大きな問題だから見解の表明ができない、こういう連絡があったということであります。これらに対する所見を伺いたいと思います。
  305. 渡邊健二

    説明員(渡邊健二君) 初めの基準法違反の点についてまずお答えを申し上げますと、津山の労働基準監督署が国立津山高専の寮の炊事婦の方の基準法違反について、先生の御指摘を受けまして調査をいたしましたところ、基準法三十六条の協定なしに時間外労働をさせたり、あるいは女子に禁止されております二時間をこえる時間外労働をさせていたり、あるいは休日労働をさせていた、あるいは時間外の割り増し賃金の算定の方法が正しくなかったといったような基準法違反の点が発見されましたので、これにつきましては十一月の十三日に文書で是正勧告をいたしております。なお、先生から十二日までに結果を御連絡するようにというお話があったのにして来ないという御連絡を昨日受けましたので、その点、私ども聞いておりませんでしたので、さっそく地元の監督署に聞きましたところ、調査がおくれて十二日よりもおくれたけれども、十三日に勧告をしたので、きょうにも先生に御報告するつもりでおくれておったんだと、こういうような結果を聞いております。  それから雇い主が変わった云々については、私のほうも経緯をよく、詳しくまだ把握いたしておりません。おそらく監督署も十分経緯を把握してないんじゃないかと思いまして、それでよく調査をして、その上で判断をしたいということを申し上げたんだと存じます。
  306. 瀧澤博三

    説明員(瀧澤博三君) 一つは雇い主が変わったという点について事情を御説明申し上げたいと思いますが、学寮の寮費の関係につきましては国庫のほうで三百円の寮費を徴収しておりますが、これは建物とか、それに当然伴って必要な運営費等という考え方でございまして、その他光熱水料、それから炊婦等の雇い上げのための賃金、そういったものは個人負担と申しますか、受益者負担という考え方からこれは寮生に負担していただくという考え方で実は進めているわけでございます。  そこで、炊婦の雇い上げでございますが、結局寮生負担ということでございますので、法律的にぎりぎりで申し上げますれば、これは寮生が集まって、その代表が雇い上げるという形にするのがいま一番すっきりしているわけでございますが、それではなかなか扱いにくい点もございますし、四年制大学の場合と違って、そうはっきりした学生の団体も必ずしもないわけでございますので、かなりの高専では校長名で雇い上げをしているという実態がございます。これは先生御指摘のとおりでございまして、したがって、その校長の身分、雇い上げしている校長の立場と申しますのは、法律的にぎりぎり申し上げますと、これは国の機関として雇い上げているということではございませんで、国の機関としてかりに校長名で雇い上げているとすれば、これは当然国庫から賃金を払わなければならないわけでございますが、実態は校長が学生全員になりかわって校長名で雇い上げ、その賃金は学生が支払う金の中から払っていくということでございます。そういう校長名でやるということが、非常にいま法律的なぎりぎりの問題になりますと、いろいろまあ問題がありましょうと思いまして、実態としてはそういうやり方が非常にスムーズにいっているという面もございまして、便宜そういう方法が行なわれていたわけでございますが、問題になるおそれが非常にあるということで、最近ではまあ、学生といってもこれは高校段階でございますから、学生名ではなくて父兄が後援会という名前で父兄の代表が後援会の代表という名前で雇いあげているという形をとっているところがふえているわけでございまして、そのほうがいろいろ問題を起こすおそれが少ないのではないか。むしろ、そういう形のほうが望ましいのではないかと私どもも思っているわけでございまして、津山の場合にもそういう考え方から雇いあげする人の名義を変えたということでございます。まあ、組合対策云々ということは、毛頭ないものと私ども理解している次第でございます。  それから、基準法違反の点でございますが、これは私どものほうでも津山の校長その他から事情を聞きまして、一、二時間程度の超勤があり、あるいは休日に勤務させているという基準法に違反するという実態があったようでございまして、この点、私ども指導の行き届かないところでございまして、まあ、たいへん申しわけなく思っている次第でございまして、さっそく学校のほうに指導をいたしまして、現在ではそういうことはまあないというふうに私ども了解しているわけでございます。
  307. 矢山有作

    ○矢山有作君 基準局長、あなたの直接所管であるか所管でないかは別として、いまのような話聞かれてどう思われますか。基準法違反の問題については認めたようですがね、争議最中に雇用者は学校長の名で雇用しておる、学校長名で雇用したら、文部省の役人がそれは国の機関としてじゃないと言い張っても、これはやっぱりそういう事例が出ておれば、これは国の機関としての雇用と解釈するのがこれ常識ですよね。ところが、そうじゃないと、寮生の雇用なんだけれども実態は。寮生がおさめた金で雇っておるのだから、寮生の雇用なんだけれども、便宜校長の名前を使ったのだと、こういう言い方です。しかし、それはそれでもよろしい。それはそれでおきましょう。おいたにしても、校長名で雇用しておいて、都合が悪いから一方的に雇用主を後援会に切りかえるというようなことが相手の、組合側の同意なしにやれるのですか、こんなでたらめなことが。
  308. 渡邊健二

    説明員(渡邊健二君) ただいまのお話だけでは私どもよく経緯がのみ込めませんけれども、もし、国家公務員からそうでない者に切りかえるとか、あるいはいままで雇っておったのと事業主がかわると、実質的に雇用主がかわるというような場合には、雇用契約、当然相手方と話し合いをして雇用契約の変更が必要になってくるかと思います。ただ、ただいまの文部省のお話を伺っておりますと、どうも寮生が金を出しておる、一種の基金みたいな寮費を出しておる、その基金の、預かっておる基金の預かり——基金をなしておる一つの団体のようなもの、寮生の団体のようなもの、それを預かる代表者がかわったというようなもし意味でございますと、雇い主の実態は寮生の寮費という金の、基金みたいなものでございまして、その代表者がちょうど会社で社長の交替があったようにかわったということでございますと、これは別に雇用関係の変更ということにはならない。そのどちらに当たるかは、もう少し詳しく事情を聞いてみないと、いまここでにわかに御意見を申し上げることができないと存じます。
  309. 矢山有作

    ○矢山有作君 それじゃ、文部省に聞きますが、学寮はどういう位置づけなんですか。学寮の管理運営の責任者は、だれになっていますか、これが一つ。  それからいま基準局長から言われた寮生の金を集めて、それを管理しておるのはだれなんですか。これは管理しておるのがもし後援会というものであるというならば、基準局長の言ったような理論も成り立つわな、しかし、寮生の金を一体徴収して管理しておるのはだれですか、その二点。
  310. 瀧澤博三

    説明員(瀧澤博三君) 最初に寮の性格でございますが、高等専門学校の場合は高等教育機関の一つと位置づけられてはおりますが、これは高校段階からの生徒を扱うわけでございまして、年齢の関係もございまして、一般の大学の寮よりは教育機関的な性格が強いものというふうに私ども考えているわけでございまして、寮の管理というものは一種の教育機関の一環であるという考え方を持っているわけでございます。したがって、当然その管理権というものは国が持っているということでございます。ただ、何と申しますか、寮における生活の一切を含めて、その経費を国が負担するという考え方はとっておりませんで、まあ、一部個人負担というものを考えているわけでございます。  それから、その寮生が出した金の管理でございますが、これはいろいろやり方が学校によって違うかと思いまして、完全に把握しているわけではございませんが、後援会をつくってやっている場合には、後援会が学校のほうにその金の管理を委託しているというような形で、事実上は学校の職員が金を管理しているということになっていると了解しております。
  311. 矢山有作

    ○矢山有作君 あんた、いいかげんなことを言うんじゃないよ。学寮の管理運営の責任者は学校長だろう、これははっきりした。それから寮生から金を取って、一体どこが管理しているのだ、現実には。現実には君、学校当局が管理しておったのだろう、この北辰寮後援会というのは三月二十四日にできたんだよ。それで四月の一日の日に雇用主を後援会に切りかえるというのだよ。実態的にあなたが言ったような、後援会が金を管理して、そうして、実際のその事務を学校当局にまかしておったという形態じゃない。これは明らかにあなた雇用主の変更じゃないの。文部省ともあろうものが、労働者を使用するについて、こんなでたらめなことをやっていいんですか。もし、炊事人の方が、国の雇用でないというなら、学校長の管理運営の権限は及びませんよ、これには。一体どうするのですか、それ。あなた方のほうも、そこら辺の身分関係が明確でない、まあ、悪く言うならインチキをやっておる。そのインチキを自覚しておるからこういうことになっておるのじゃないの。「学寮における経費の負担区分について」ということであなた方がきめておるわね、そこを見ると、「寮生が負担すべきもの」 「イ 人件費 寮生の炊事のための炊事人の手間代」これは「寮生が負担すべきもの」としておる。ところがいま言うように、寮生が負担すべきものであるならば、実質的に寮生が雇ったことになる。もしそうなってしまったのでは、これは学校長の管理運営権が学寮の中に及んでいかぬ、それを心配しておるから、あなた方が「(ただし、学寮の給食形態の如何を問わず、炊事人は、学生・生徒の個人的使用人として扱うことは適当でなく、学校の営造物管理に服するものであることの趣旨を徹底すること。)」という奇妙きてれつな注意書きまでつけておるのだ。こういうおかしな雇用形態をとっておって、学寮というものを、教育施設の一環とみなして管理運営の万全を期せられますか。そこのところどう考えておるのですか。
  312. 瀧澤博三

    説明員(瀧澤博三君) 学寮全体としての管理運営の責任は、当然これは学長にあると、私ども了解してやっているわけでございますが、その運営のやり方につきましては、たとえば食堂等につきましては、民間の業者に委託してやるという形をとる場合もございますが、ただ、その場合、民間の業者がその寮の食堂等の経営に当たる場合につきましても、その全体の管理運営の責任は当然学長がとっているということでいかなければならないのではないかと考えているわけでございます。したがって、その寮生が負担することになっております炊事人の経費、これにつきまして、まあ学長が公務員という立場でこれをここまで管理しているというわけではございませんで、まあ、学生にそこまでまかせるといっても実際問題として非常にむずかしい面がありますので、学校のほうで便宜その会計なり経理なり、そういった面での管理を学校の職員が事実上手伝っていると申しますか、そういう形で運営しているわけでございます。
  313. 矢山有作

    ○矢山有作君 議論を散らしますまい、議論を散らすと焦点がぼけてくるから。今度の場合の学寮の問題は、またゆっくり時間を持ってやらしてもらいます。ただ、いまの問題に焦点しぼって問題を論議してください。  よろしいか。ベースアップの問題をめぐって昨年から争議中なんですよ。時限ストを打ったり、いろいろ争議の最中なんだ。その争議の最中に、三月二十四日に突如として後援会を結成をさせるように働きかけて、後援会を結成さして、四月の一日付でもって後援会雇用に切りかえたという通告を組合にしておるんだ。それまでは学校長名で雇用しておった。このことがどうなのかということです。それで実態は、基準局長いまおっしゃったように、寮費の徴収は寮生からやって学校が管理しておったわけです。学校が管理をし、学校長の名前で雇用しておった。寮生から徴収した寮費は学校が管理をし、そして学校が管理をしておるというんだから学校が払っておったんでしょう。そして学校長名で雇用しておった。それを三月二十四日に突如として後援会を結成さして、四月の一日に後援会の雇用に切りかえましたと、こう言って組合に通達しておるわけですよね。それは組合側は当然拒否しますよ。私どもは最初から学校長に雇用されたんです、後援会に雇用された覚えはありませんと、こう言っているわけだ。これ、一体どうなんですか。私はね、聞いたことがないんだ、こんなようなこと。争議最中にそんなことやっている。大体基準局長、内容はわかったでしょう。実態的な賃金の支払いの問題も、くどいようですが、いま言うように寮費を寮生から徴収して学校が管理して、そして炊事人に払っておった。そして雇用名義は学校長名で雇用しておった。突如として三月二十四日に後援会を結成さして、四月の一日付で後援会雇用にしましたと、こう言っておるわけです。それはいまの議論を聞いて御承知のとおりです。そんなこといいんですかね。私はとんでもない話だと思う。どうですか、基準局長の見解は。
  314. 渡邊健二

    説明員(渡邊健二君) ただいまの先生と文部省の方とのお話し合いのやりとり伺っておりましたが、私どもどうも伺っておりまして、まだ必ずしもすっきりよくのみ込めない点もございます。たとえて申しますと、それまで学校が管理しておったという場合の寮生が出した金でございますね、これが国がすでに受け入れた、いわゆる国の金なのか。そうだとすると、学校長がそれを管理し、それによって炊事婦を雇っていたというのは国の機関としてやっていたことになるわけでございますが、先ほどの文部省のお話を伺っていると、どうも寮生の集団の金があって、それを学校長の方は国の機関という立場でなしに、いわば私的な立場で預かって管理し、その立場で炊事婦を雇っていたというようにもとれるようなお話であったように思います。そうであったといたしますと、その四月一日以降も実態は寮生の集団が出しました金でございまして、それを管理する人が私人であった学校長からその後援会の会長という人にかわったということで、実態は寮生の集団が出したその金の一つの財団と言っちゃ少し大げさでございますが、その金の基金みたいなものであったというふうにもとれます。その辺はどうも金の性格等、いまのお話では出ておりませんでしたので、ちょっと私ども聞いておりまして、どちらなのか、にわかにまだ判断しきらぬという感じをいたしております。
  315. 矢山有作

    ○矢山有作君 基準局長ね、役人同士のかばい合いを基礎に置いて、雇用主を争議最中に切りかえたのをかばってやろうかという見地に立ってものを言えば、いまのようなきわめて巧緻な理論展開ができる。ところが、雇われておるほうは、津山工業高等専門学校長何のたれべえ、職印が押してある、それで雇われているんですよ。それで、給料は学校の事務室から支払いをしているんですよ。こうなれば、雇われたほうの人間は、学校雇用とあくまでも解釈していますよ、これは。それを一方的にじゃ後援会雇用になぜ切りかえるんですか。後援会雇用に切りかえないで、あくまでもそういう論法で組合のほうを説得すべきじゃないですか。後援会雇用に切りかえたということは、事実上国の雇用になっていたんだと、ところが、国の雇用になっていたんだけれども、ベースアップだ、何だ言って争議をやられるから、うるさいから後援会雇用に切りかえちまえと、後援会雇用に切りかえれば、組合と後援会のけんかで学校は関係ない、つまり国は関係がない、それをねらったとしか考えられぬでしょうが。もし、そうでないとおっしゃるんなら、最初判こをついて雇用したそのままの状態で、いま基準局長がいみじくも言ったような論法で組合を説得したらどうですか。そうなりませんか、逆説的に言えば。頭をひねらんきゃわからぬかね。つまり基準局長が言うたように、寮生の集団が金を出したと、しかし、これは便宜的に学校が管理しておるので、あくまでも寮生のものだという解釈に立ち、そしてこちらが言いおるように、学校長の名前で雇用しておるが、それは寮生にかわって学校長という名前を出しておるだけなんで、実態はあくまでも寮生が寮生の金で雇ったもんですと、それでたまたま寮生というわけにいかぬから後援会の名前に切りかえたんだと、こうおっしゃっている。それならそれで、あくまでも後援会の名前に切りかえないで、学校長名で雇用しておるが、これは学校長として、国の機関として雇用したんじゃありませんと、これは生徒の代理人として、生徒のかわりに便宜的にやったんですと、金の支払いも生徒から集めたものを便宜的に学校が管理して支払っておるんだと、給与の支払いも雇用も全部国じゃありません、あくまでも寮生がやったんですということで説得しなさいよ。なぜ後援会に切りかえる。そうならぬか。
  316. 瀧澤博三

    説明員(瀧澤博三君) これは先生おっしゃいますように、結局学生から集めた金というものは、決してこれは国庫収入になるわけではございませんで、そのまま私的な金として校長先生が言うなれば個人的な資格で預かり、それを経理して炊事婦のほうに支払うという考え方でございます。したがって、ただ、確かに個人的な立場の校長先生であるか、国の機関としての校長先生であるか、それは雇われる側にいたしますればわからないことであるということは無理もないことかと思いまして、そういう点で、こういう従来の方式にかなり問題があるということは言わざるを得ないかと思っているわけでございます。したがって、むしろまあ、そういう関係でむずかしい問題があるとすれば、はっきりともう校長先生の名前を使うことをやめて、後援会の代表者の名前で雇ったほうがよろしいんではないかという考え方でこういう切りかえがなされたと聞いている次第でございます。
  317. 矢山有作

    ○矢山有作君 切りかえがなされたと、あんたしごく簡単に言うけれどね、学校長名で人を雇って、都合が悪くなったから後援会に切りかえるというのはこれは何だ。しかも争議最中だよ。労働争議の最中にそんなことをしていいのかね。基準局長、その点でどうですかね。まあ、中の理屈は抜きにしましょうや。とにかくあんた、人を雇っといてね、——学校長名で雇っておるんだ、職印までついて。それを今度は争議最中ですよ、相談も何もなしに一方的に後援会にしましたという、そんなことできるのかね。これは労働契約として基本的な変革でしょう。一体どうなんですかな、これは。この間の移行を法律的にどう解釈してよろしいのですか。あなたの巧緻な理論でひとつ説明してくれませんか。
  318. 渡邊健二

    説明員(渡邊健二君) この問題、最終的には雇用契約がだれとだれとの間にあってそれがどう変わったかという問題だと思いますが、最終的にはこれは民事上の問題ではないかと、私さっきから伺ってそういうふうに感じておるわけでございます。したがいまして、最終的にはもし争いになれば裁判所の問題だと思いますので、これについて私見を申し上げますことはこの際差し控えたいと思いますが、ただ、もしそういういろいろな経緯があって、変わるにいたしましても、そういう点についてはよく当事者間で話をして、そして、そういう事情を相手方、労働者にもよく話をしてやるのが通常労働者との間の関係をうまくするためには適当なことであって、もし事前に何にも話がなしにいきなりやったとすれば、やり方として適当ないいやり方であったとは言えないのではないか、かように感ずるわけでございます。
  319. 矢山有作

    ○矢山有作君 だから基準局長、どうなんですかな、法律的な解釈からいえばどうなるの。とにかく中身の実質はどうでもいいから、学校長名で雇用しておったのをこれは都合が悪いというので後援会名の雇用に切りかえたといえば、法形式的にいうなら、学校長名で雇用しておるのだから被雇用者との間の雇用関係そこで切れるわな、法律的にいえば。切れちまいはしないか、どうなんですか。つまり強制的に解雇した形になりはしませんか、どうなんだろうね。それで今度は新しい雇用者が生まれたわけだ。被用者のほうで望まぬのに新しい雇用者がぽこっと出てきちゃった、これは法形式上の解釈でいったらどうなるんだろう、ここのところ、ぼくもこんな例初めてだからな、文部省ともあろうものがこんなことをやるとは思わぬからね。そこまで調べる余裕がなかったから、どういうふうな法解釈していいかわからぬのだ。
  320. 渡邊健二

    説明員(渡邊健二君) 先ほども申しましたように、これは最終的には雇用関係の法律上の性格として、民事上の……
  321. 矢山有作

    ○矢山有作君 だから、あなたの見解を聞かしてください。
  322. 渡邊健二

    説明員(渡邊健二君) 問題になる点ではないかと思いますので、断定的には私ども申し上げる立場にございませんが、個人的な感じから申しますと、たとえば国の機関として雇っておったんであって、国家公務員からそういう団体の雇用になったんだというと、一ぺん国家公務員としての契約が切れて民間としての雇用、こういうことになるかと思います。しかし、さっき申しましたように、前の雇用が、寮生の集団が出しておる金、それが一種の基金みたいなものであって、それが雇っておったんだ、たまたまそれの管理の責任者が私人としての学校長であった、それが今度は後援会の会長になったんだということでございますと、基金を預かる担当者が、いわば基金の理事みたいな人がかわっただけということになりますと、実質その寮生の集団の基金に雇われておったという実質の関係は継続しておる、単なる代表者の変更だ、こういう理論になると思います。どちらの判断をすべきかは最終的にはやはり民事上の問題ではないかというふうに考えるわけでございます。
  323. 矢山有作

    ○矢山有作君 しかし、それは雇い主のほうのそのときの都合によるかってな解釈であって、被用者のほうからみれば、たとえば国の機関としての校長でないとしますか、個人の校長でもよろしいわ、個人の校長でもいい、とにかく校長に雇われておった、それが今度は雇用者がかわってくるのですからね。これは被用者のほうから見れば雇用形態というのは全然変わってくるわけですよ。金がどう、支払いがどうとかこうとかいう、そのことは被用者には私はわかっていないと思うんです。だから、表面的な雇用関係は全然変わってきますよ、校長が雇っているのと後援会が雇っているのでは。後援会などというものは単なる任意団体であって、法人組織にもなってなければ何にもなってない。こんなものは権利能力何もありあしない。もし、そういうものに雇われるとするなら、これは労働条件としてはたいへんな変革になるわけです。校長個人に雇ってもらっているならまだ責任の所在がはっきりする。後援会などというものは責任の所在もはっきりしないでしょう。そこらで見ると、私は労働条件、いわゆる雇用条件といいますかね、雇用関係といいますか、そんなものはたいへんなこれは変化が起こると、したがって、それはやはりあなたが言われたように一方的にやるべきものではないのじゃないか。これは最終的な結論を出すのは、それは裁判になるでしょう。しかしながら、そういうでたらめな問題が文部省で起こっておるということです。それで、しかも学寮の炊事人の法的地位の問題については、これはいまも話の端に出たように、これはたいへんな問題があるわけです。学校長名で雇用しておるというなら普通の常識的な解釈としては、国の機関としての雇用だと解釈するのが普通です。したがって、これは国との間の雇用関係が生まれてくるはずです。ところが、賃金の支払いの形態を見るとそれはそうではない。寮生から集めた金で雇っておるのだから、その賃金支払いの関係では国との雇用関係があやふやになってくる。だから身分関係が非常に不安定な状態にあるわけです。そうすると、これは正常な運営ができておるときなら、まだそれなりに押しきっていけるでしょうが、もし事故が発生した場合に、これはどういう取り扱いになる、どこが責任を持ってくるのか、これはたいへんな問題に発展していくわけです。しかも、事は学寮ですよ。三百人なり四百人なりの寮生を置いて、めしを食わして寝さして暮らさしておるところなんです。もし、そういうところで寮生自体に被害の及ぶような事件が起こったときに、事故が起こったときに一体最終責任はだれが持つのか。国の関係はない。炊事人の雇用は後援会がやっておるんだと。もし、たいへんな事故が起こった場合に後援会が最終的な責任を持つんですか。食中毒が出て五十人ほど死んじまった。後援会が最終責任を持つのですか。国はわれ関せず、知らぬ、と言って逃げるのですか。  またもう一つ、そういう場合、その事故が雇われているほうの炊事人に起こった場合、国の責めに帰すべき学寮の中で。その場合に国との補償の関係どうなるか。国家公務員でない、国の雇用関係ないから国は知らぬと言ってけ飛ばすのですか。そういうふうに考えてくると、いまの身分の不安定な状態に学寮の炊事人を置いておくということは非常な問題があるわけです。しかも、学寮をあなた方は教育施設の一環だと言っている。大学の寮とはおのずからまた違った面があるということをあなた方自身が言っている。大学の寮は単なる福祉施設である、厚生施設である。高専の学寮は教育施設の一環だと言っている。その教育施設の一環の学寮の大事な部分をになっておる炊事人を、これをそんな身分不安定な状態に置いていいのかということです。これはもう時間がないからこれでやめておきます。しかし、この問題は私は津山高専だけの問題ではない、全部の国立高専に通ずる問題ですよ。あなたがいまおっしゃったように、国との関係の雇用にしておくと争議が起こったときにめんどくさいから、任意団体に切りかえていっている。そういう指導を文部省はやっているはずだ。業者委託のほうへ持っていくような指導をやっているはずだ。そういう学寮のあり方が基本的に問題点を含んでおる。しかし、このことはまた別に時間をとってあなた方に話を聞かしてもらいます。しかし、少なくとも今度国立高専で起こっておる問題は、いま言ったような労働基準法違反の事件が多発しておる。しかも、文部省はどういうふうな言い抜けをされようと、雇用主を争議最中に一方的に変更しておる。これらの問題は組合が納得するはずはない。そうすれば、この徹底的な究明ということになれば、いまの状態の中では裁判しかないかもしれない。文部省がそういうふうないいかげんなことやれるということは私は非常に心外だ。このことだけはきょう言っておきまして、これでやめます。
  324. 大橋和孝

    委員長大橋和孝君) では、本調査に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  散会いたします。    午後五時十分散会