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1973-09-06 第71回国会 参議院 外務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年九月六日(木曜日)    午前十時十二分開会     ―――――――――――――    委員異動  九月五日     辞任         補欠選任      松下 正寿君     萩原幽香子君  九月六日     辞任         補欠選任      浅井  亨君     黒柳  明君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     理 事                 木内 四郎君                 佐藤 一郎君                 八木 一郎君                 田  英夫君     委 員                 大竹平八郎君                 杉原 荒太君                 矢野  登君                 加藤シヅエ君                 西村 関一君                 羽生 三七君                 黒柳  明君                 星野  力君    国務大臣        外 務 大 臣  大平 正芳君    政府委員        外務省アジア局        長        高島 益郎君        外務省経済協力        局長       御巫 清尚君        外務省条約局長  松永 信雄君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        警察庁警備局参        事官       中島 二郎君        外務省アジア局        外務参事官    中江 要介君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査  (金大中事件に関する件)     ―――――――――――――
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る八月三十日、小谷守君が委員辞任され、その補欠として田中寿美子君が選任されました。  また昨五日、松下正寿君が委員辞任され、その補欠として萩原幽香子君が選任されました。  また本日、浅井亨君が委員辞任され、その補欠として黒柳明君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 国際情勢等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 田英夫

    田英夫君 きのう政府のほうで問題の金大中事件関連をして、駐日韓国大使館金東雲一等書記官容疑が濃いと、こういう発表をされ、その任意出頭を求められましたので、この問題に関連をして御質問を申します。  まず、現在政府の、外務省の求めにもかかわらず、金東雲氏の出頭を拒否したわけですけれども、この韓国側態度に対して外務大臣どうお考えになるか、所信を伺いたいと思います。
  5. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私ども本件解明を通じて公明な解決をはかりたいという念願で終始いたしております。したがって、捜査当局の線上に浮かんだ人物につきまして、任意の御出頭を求めて調査を進めたいということを申し入れたわけでございますが、これに応じがたいという御返事をいただいたことはたいへん残念に思っております。先方は、応じがたい理由といたしまして、国際法並びに国際慣例上応じがたいということでございます。で、これは外交官特権を持っておる方でございますから、こちらの要求は一応外交官特権を放棄していただいて御出頭願うという、まあ論理的にいえばそういう筋になるわけでございますが、外交官特権は確かに先方が言われるように拒否することはできるものでございますので、先方が応じがたいという措置をとられたことは、先方のお立場上理解できるわけでございますけれども事件解明を進める上におきましてたいへん残念なことだと思っておりますので、私どもといたしましては、なお韓国政府に対して御再考を求めておるのがいまの段階でございます。
  6. 田英夫

    田英夫君 これはいまの日韓関係、特に政府がお考え日韓関係というものから考えて、その外交官、まさに政府人間がこうした事件関係をしていたということをはっきり公にして、しかもその出頭を求めるというところに踏み切られたということは、これは政府の御決意はなみなみならぬものがあると思います。またそれだけに捜査当局も自信を持ってこの容疑を、容疑というよりもむしろ警察庁のほうでは逮捕状を、普通の人間なら逮捕状を請求し逮捕をするという、そういう状況であるということまで言っておられる。こういう状況の中で、いま大臣言われたその外交特権というものが許されるのかどうか。国際慣例外交特権というものがあることは事実でありますけれども、同時にこの外交特権というのは自由な外交官活動をやれるように、同時に、国を代表する外交官の権威を守るためにあるはずでありますから、今度の事件のような、まさに強盗にひとしいようなこういう行為をやった人間外交官特権が認められていいものかどうか。こうした慣例、法律といっても、おのずから社会通念社会常識というものの上に立つべきだと思いますが、この点は政府はどういうふうにお考えになりますか。
  7. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 国際法外交特権派遣国は放棄することができます。しかし、外交特権を放棄しなければならない義務はまた逆に申しますとないわけでございまして、過去の、これを歴史的に見ましても、いわゆる刑事事件関連しまして外交特権の放棄を求めても外交特権を放棄しないということのケースがきわめて多いわけでございます。外交特権を放棄するということは希有のことに属するということが通例としては申し上げられると思います。
  8. 田英夫

    田英夫君 今回の事件は、いま申し上げたように、外交特権などというもの以前の問題であると社会常識上は考えざるを得ないわけですが、それにもかかわらず、韓国側外交特権を主張しておられるということはまことに遺憾でありますが、今後も引き続き韓国側がこの外交特権をたてに出頭を拒否した場合には政府はどういう態度をおとりになるつもりなのか。捜査上この人物出頭するということは絶対に必要であると同時に、これは国民感情としても、ここまで公になった以上、このまま出頭されないでうやむやに済む問題ではもちろんないと思いますが、これに対して出頭を拒否し続けた場合には政府はどういう対処をなさるのか、お考えを伺いたい。
  9. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) これは国際慣例にも関係いたしまするけれども外交官に対しまして今回のように任意出頭を要請いたしましてそれに応じてくれないという場合におきまして、強制的に出頭させるという方法はございません。ただ、国際慣例上、そのような場合にどのような措置受け入れ国はとることができるかということになりますと、従来の例によりますると、いわゆるペルソナ・ノン・グラータということでもって国外退去を求めるという慣例はございます。
  10. 田英夫

    田英夫君 国外退去を求めるのは今度の事件の性質、そして金東雲という人物がおかした行為から見てこれはもう当然の措置だと思うわけですが、それよりも以前に、これは政府として、特に捜査当局としてこの人物取り調べを行なうということは、これは絶対に必要なことだと思いますが、この点警察庁はどういうふうにお考えですか。
  11. 中島二郎

    説明員中島二郎君) いまお話のありましたとおり、金東雲氏の任意出頭方を繰り返し外務省から要求をしていただきたいと、かように考えております。
  12. 田英夫

    田英夫君 それは捜査取り調べをすることが絶対に必要であると私申し上げたわけですが、そのとおりですか。
  13. 中島二郎

    説明員中島二郎君) そのとおりです。
  14. 田英夫

    田英夫君 したがって、国外退去ということは、現在政府のほうのお調べでもそのようですが、私ども調査でも本人ソウルに帰っていると、こういうことのようでありますから、国外退去ということは実に形式的なことに、すでに本人の身柄は向こうにあると、そのままになってしまうということになるんで、実は韓国側の名誉のことを除けば、日本側にとっては実質的に何の効果もない、こういうことになってしまうので、いまアジア局長言われた国外退去というのは、もっと先の段階対処のしかただと思いますが、それ以外に当面のところどういうことをお考えになるか、そのお考え大臣から伺いたいと思います。
  15. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほどお答え申し上げましたように、韓国政府再考方を促しておるわけでございます。それに応じていただけるかどうか、それは私どもにはわかりません。けれども本件日本国内に起きた事件でございます。この事件解明しなければならぬし、それに公明な解決をしてまいるのは政府責任だと考えております。で、そういうことにつきましては、捜査当局におかれては、捜査をそういう制約のもとでもお続けになっていかれるものと私は期待いたしております。  で、外交上の処理につきましては、今後韓国政府がどういう態度をとられるか、よく伺った上で、どういうことをなすべきであるかという点につきましてはとくに検討してみたいと思っております。
  16. 田英夫

    田英夫君 今後の政治的な問題についてはあとで伺うことにいたしまして、当面のこの事件解明に直接関係をする問題についてまず伺いたいと思いますが、捜査当局ではこの金東雲書記官以外に韓国政府機関の人が他にも関与をしている、こういうふうに考えられているということが言われておりますが、具体的に伺いますが、さきにこの委員会でも私から氏名をあげて申し上げましたが、神戸領事館安潤璟という人物は現在の捜査状況の中で、その中に浮んできている人物なのかどうか。先日の委員会でお調べいただきたいということをお願いをしてあるので、この機会にお答えいただきたい。
  17. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 安潤璟氏につきましては、具体的な容疑情報がございませんが、金大中氏が、犯人たちアンの家に行けと言ったという話があるわけでございますので、そのアンの家との関係があるかどうかを調べている、こういう段階でございます。
  18. 田英夫

    田英夫君 これも名前をこの前あげましたけれども、同じ神戸領事館の領事である李台煕という人物、この人は例の西ドイツ事件のときに関係をしていた人でありますけれども、この人物について捜査名前があがっているかどうか、お答えいただきたい。
  19. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 現在、この事件につきましては鋭意捜査中でございますので、ただいまの段階でお答え申し上げるのが適当でないと思っております。
  20. 田英夫

    田英夫君 これは政府機関の人がやっているかどうかということを、ずっとこの国会でも、まあ質問の中で申し上げてきたことなんですね。政府機関人間関与をしているということは、すなわち日本国権が侵されたということになるという条約局長のお答えもはっきりあったわけです。まさに政府の今回の出頭要求ということの中からそのことが明らかになったと、こう断定せざるを得ないわけですが、大平外務大臣、この状況の中で日本国権が侵されたと、こう判断をされますか。
  21. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 私どもが現在までに承知しておりますこの事件状況といたしまして、日本国内におきまして不法行為があったと、その不法行為在京大使館館員が直接的な形で関係をしている容疑がきわめて強いという捜査当局の御判断であろうと存じます。その捜査当局判断を前提として考えました場合に、在京大使館員、これは韓国政府機関でございますから、その行為につきまして韓国政府責任があるということは、これは申すまでもないことであろうと存じます。ただ、その大使館員行為、行動が直ちに日本主権侵害に結びつくかどうかということは、現在の段階ではまだ断定することは即断ではないであろうかと、こう考えておるわけでございます。
  22. 田英夫

    田英夫君 これは政府のお考えはよくわかりますけれども国民の気持ちからすると、政府を代表してきている外交官日本国内であのような犯罪を犯すということは全く許せないわけですよ。そういう態度からこの問題を解明し、問題に臨んでいただきたい。こういうことからすると、いま捜査当局に伺った二人の人物についても、すでに名前があがってきている人物であります。この点、捜査上から、あるいは韓国との関係から、国会の場でも言えないということは、これはわかりますけれども、私は問題はそんなものじゃないと、もっと大きな問題だと、こう思わざるを得ないので、しかも金東雲氏の出頭を求めたということは、さっきも申し上げたように、これはなみなみならぬ決意があっておやりになったに違いないし、常識から考えても、指紋が一致するということは、これはいろいろな事件の問題にも私、関係したことがありますけれども、これは断定できる大きな材料である、こういう中で伺っているわけですが、中島参事官、さっきの安潤璟李台煕という問題については、なおかつこの席では明らかにできませんか。
  23. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 先ほども答えいたしましたとおり、現在の捜査段階で、だれだれに容疑があるということを申し上げるところまでまだ至っておりませんので、そういう答弁は差し控えさしていただきたいと思います。
  24. 田英夫

    田英夫君 他に、金東雲氏以外に韓国政府機関の者が関与していたということは言えますか。容疑です。疑いがあるかどうか。
  25. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 捜査過程で、外交官であるかどうかはともかくといたしまして、本件関係ある可能性のある人物ということで、何人かの名前捜査過程で出ているということはございますが、先ほど申し上げましたとおり、いまの捜査段階で、だれだれに容疑があるということを申し上げる段階ではございません。
  26. 田英夫

    田英夫君 それでは、かりにということで伺いますけれども、この安潤璟という人は、外交特権を主張できる立場にない人だというふうに判断をしてもいいですか。かりにこの人物事件関係をしていたという容疑が深まったという場合に、この人物領事館勤務はしておりますけれども外交官として入ってきている人ではないというふうに聞いておりますが、そうなると外交特権を主張できる人物ではない、こう判断してよろしいですか。
  27. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) ただいま御指摘がございました人は、領事館館員であると承知しております。したがいまして、領事館としての特権免除は享有しておりますけれども、いわゆる外交特権は与えられておりません。
  28. 田英夫

    田英夫君 若干捜査の問題で伺いますが、従来の考え方では、これは金大中氏がソウルで話したことが一つの大きな根拠になっているわけですが、東京から車で五時間ぐらい走って、そうして大阪と思われるところのインターチェンジで出て、ということから、大阪ないし近畿の海から出国をしていったというふうに考えられておりましたけれども捜査当局のお考えもそのとおりなのか、あるいは東京近辺を目隠しをしたまま車で走り回って、東京近辺から出ていったということになってくると、船の捜査というような問題も大きく変わってくると思いますが、その点はいかがですか。
  29. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 韓国側から送付されました資料によります金大中氏の供述要旨からいたしますと、阪神周辺という可能性が強いと思いますが、現在の捜査段階では、具体的にどの付近からということははっきりいたしておりません。
  30. 田英夫

    田英夫君 ソウルでの金大中氏は、およそ三日間はかなり自由に日本新聞記者の皆さんなどと話し合う機会があったわけですけれども、今回韓国側から送られてきたいわゆる金大中氏の供述の結果というのも、内容はほぼそのころのものと同じだというふうに言われておりますが、あの状況の中で、ソウル金大中氏が話したことがはたして正しいかどうか、ソウルにおける金大中供述というのは、特にその当初の三日間の比較的自由であった時点での金大中氏発言というのは、むしろかなり疑問があるように思うのですが、この点は捜査当局はどう判断しておられますか。
  31. 中島二郎

    説明員中島二郎君) エレベーターの中で若い男女二人と会って、その若い男女二人が七階でおりたというようなことなどの供述もあるわけでございますが、私ども調べでは、そういう人物は出てきていない。逆に三階から一階までの間、そのエレベーターに乗り合わせたという二人の男が出てきておるというような点で、供述に矛盾があるわけでございますが、そういう点につきましては、金大中氏の当時の状況からして、記憶があいまいであるのか、あるいはそうでないのか、そういう点につきましては、いずれ金大中氏の来日を求めて事実を明らかにしてまいりたいと、かように考えております。
  32. 田英夫

    田英夫君 問題の金東雲という人物についてのお調べの結果を若干伺いたいと思いますが、この外交官リストに載っている住所自体が全く架空のものである。そうした番地さえないものを載せているというあたりにきわめて疑いがますます濃くなるわけですけれども、これは実際には渋谷神宮前五の三七と、まあけさの新聞どもすでに報道しておりますが、これで間違いありませんね。
  33. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) 外交団リストに現在載っています金東雲氏の住所につきまして、ちょっと御説明さしていただきます。  この住所につきましては、昭和四十五年十二月に韓国大使館のほうから通報のございましたものを記載いたしまして外交団リストをつくったわけでございまするけれども、当時のリストでは渋谷神宮前五の三七の一と書いてございまして、架空住所でも何でもない、実際の住所がそのまま載っていたわけでございますが、その後、金東雲書記官一等書記官に昇格したために名簿の整理が必要となりまして、リストをさらに整理している過程におきまして、転記誤りがあったものと私ども考えております。しかし、この転記誤りがあったのに対しまして、さらに韓国側確認を求めて私どもリストを作成しておるわけでありますけれども、そういう事務的な過程において、誤りのまま、韓国大使館確認を得てリストが作製され続けてきた、そういうことの結果、現在のような間違いが起きたものというふうに私たち考えておりまして、最初から架空の届け出をしたということではないという点が、これまでの調査で明らかになった次第でございます。これは私どものほうの転記誤りがあったという結論になるように思います。
  34. 田英夫

    田英夫君 これはちょっと現実のあれとおかしいんじゃないですか。現場に、リストに載っている神宮前二丁目三七という、この三七の一ですけれども、その三七という番地さえないんですよね、私ども調査では。これはしたがって私は架空の申告をしていた。
  35. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) ただいま申しましたとおり、昭和四十五年、すなわち七〇年版の外交団リストによりますと、現住所どおり渋谷神宮前五の三七の一と正しく記載してございます。したがいまして、これは全く事務的な転記上の誤りというふうに考えざるを得ません。しかも、神宮前二の三七の一のマンション名前もないわけですけれどもマンション三百四号室というふうに書いてございます。
  36. 田英夫

    田英夫君 このリスト自体誤りというこの問題も、私ども疑いを深めている一つの問題でありますけれども、たとえば金東雲という人物がどういう出身で、どういう経歴の人間であるか、報道でもお調べになっているようですけれども、おわかりならここで明かしていただきたいと思います。
  37. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) 私どもでわかっておる範囲で申し上げますと、一九二六年三月六日に忠清南道で生まれたということと、それから一九六八年五月二十二日に駐日韓国大使館に着任いたしまして、一九七〇年十二月一日に一等書記官になっている、ということがわかっております。  そのほか、大使館館員になる前に新聞記者として日本にいたことがございまして、一九六三年十二月五日から大使館館員になるまでの間、新聞記者として日本にいたという事実はございます。
  38. 田英夫

    田英夫君 この人物KCIA人物であると判断をしておられますか。
  39. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) この点につきましては、私ども何にも承知いたしておりません。
  40. 田英夫

    田英夫君 捜査当局のほうではどうですか。
  41. 中島二郎

    説明員中島二郎君) その点につきましては、はっきりいたしておりません。
  42. 田英夫

    田英夫君 私ども調べでは、この人物在日韓国CIA関東ブロック責任者であるというふうになっておりますが、まあすでに報道などでも言われている韓国大使館金在権公使が全体を掌握している人物で、この金東雲という人が関東ブロック責任者である、こういうふうに調べの結果でもわかっておりますが、こういうことを全くおつかみになっていないのかどうか、あるいはここで言えないのか、その点を明らかにしてください。
  43. 中島二郎

    説明員中島二郎君) いろいろの話がございますが、はっきりしたことはわからないという段階でございます。
  44. 田英夫

    田英夫君 この前の委員会のときから、日本にいるKCIAリストを出していただきたい。これは前々回の委員会、前回の委員会と重ねてお願いをしている。衆議院の委員会でも社会党の楢崎委員からこのことを要求をしております。ところが、これに対して外務省からいただいた回答はわからないということだけであります。しかし、この委員会中江参事官調べますということを約束をされたはずであります。速記録にも載っているはずであります。これはお調べになるつもりがあるのかどうか。そうしてわかるのかどうか。いまの日本国民感情からすれば、こういう人たち日本国内外交官の顔をして入ってきて、そうして世間を騒がし、人命を危うくするような事件を現に起こしているわけですよ。こういう人たちは全部国外に帰っていただきたい、退去していただきたい、こう願うのがあたりまえだと思う。私も全くそのとおりだと思いますが、これは政府責任だと思います。こういう人間を入れて、しかもそれを外交官の顔を許しているということは政府責任だと思いますが、大平外務大臣この点はどうお考えになりますか。
  45. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 外務省といたしまして、関係当局からそういう点について資料がもたらされておればお答えできるのですけれども、いままでのところそういう通報に接していないのであります。私ども何とかそれがわかればいいと考えておるわけでございますけれども、われわれの手で調べるという立場にはないわけでございますので、さしつかえない範囲内におきまして、国内で得られた確かなるインフォーメーションはできるだけ正確に掌握いたしたいと考えております。
  46. 田英夫

    田英夫君 いままでの段階ならば、私はそれで、伺っただけで済まさざるを得なかったと思いますけれども、本日の段階では、まさにこれはもう世間常識から考えたらあり得ないことでありますけれども、まさか外交官として、しかも大使館勤務をしている人間がこういうことをやるとは全く想像もできないことをやっているわけですよ。捜査当局のはっきりした御判断任意出頭まで求めておる。そういう状況の中で、これがCIA人間かどうかもわからぬ、日本にいるCIAがだれであるかもわからぬ、これは全く国民に対してすまないという、そういう問題であるというふうに考えますけれども、いまの大臣のお答えからすると、私は政府がその責任を果たしておられるとは思われないわけですが、外務当局はこれを調べ立場にないならば、一体どこの部署が、官庁がこれを調べるのですか。
  47. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 協力を求めるという形で、相手国あるいは関係者に対して質問をする、あるいはその調査をするということはできると思いますが、最終的な意味、すなわちきめ手となる意味で、追求をして確認をする手段を私どもとしては持たないということだろうと存じます。
  48. 田英夫

    田英夫君 政府は破防法をおつくりになったり、いろいろの治安機関をおつくりになっている。警察庁もありますけれども、同時に公安調査庁とか内閣調査室とか、いろいろなものをお持ちになっている。これはまさに情報活動、捜査活動をやられるわけですけれども、そういう中で、革新陣営の中にはいろいろもぐり込んだりなさって非常に熱心に調査をされているようでありますけれども、こういう活動を現にやっている人たち調べるところがないという。これはもう、この前も私指摘いたしましたけれども、まことにこれは不都合であります。警察庁はどうお考えになりますか。
  49. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 前にもお答えいたしましたように、KCIA事件関連をしているということが出てまいりました場合には、厳重にこれを追及していく所存でございます。
  50. 田英夫

    田英夫君 全く無責任だと思いますね。これは国民の感情として、いまの段階でそんな態度ではほんとに許されない状況だと、こう言わざるを得ないわけですが、この点はひとつ重大な問題だと思いますので、質問をさらに保留をしておきたいと思いますが。
  51. 西村関一

    ○西村関一君 いまの田委員質問関連いたしまして、警察庁中島参事官に伺います。  いまのところでは、日本にあるKCIAの組織及び人名については調べ段階ではないと、こういう御答弁のようでありますが、こういう事件が起こらない以前におきましても、各国のいろんな機関員、アメリカのCIA日本にどういう働きをしているか、あるいはその他社会主義国の組織が日本においてどういう活動をしているかというようなことなどは、警察庁において当然ふだんから調べておかるべきだと思うのであります。その他、内閣の調査室でありますとか、公安調査庁でありますとか、いろいろありますが、それはまた内閣の側の責任でありますけれども警察庁としては少なくともそういう各種機関の全貌についてふだんから調べておかるべき性質のものじゃないかと思うのであります。ましてや、今回のこういう事件が起こって重大な容疑がかけられておるという現状におきまして、まだ調べ段階じゃないということは少しおかしいのじゃないかと思います。私は、この前の関連で、警察庁の警備警察の実態につきまして伺ったのでありますが、やはりいま中島参事官の言われたような御答弁で済まされるとお考えになりますか、重ねてお伺いをいたします。
  52. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 私どもといたしましては、金東雲書記官KCIA関連があるという情報がいろいろございますので、その点については鋭意調べをいたしておるわけでございます。関連があるということが出てまいりますれば、当然本件との関連についてきびしく追及していく、そういう考え方でございます。
  53. 西村関一

    ○西村関一君 それは前の答弁と同じことなんです。私の質問は、ふだんからそういうものをちゃんとつかんでおくべきじゃないか、そういうことについては必要がないというお考えですか、御答弁ですか。
  54. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 今回の事件が起こりますまでに、KCIAによって違法なことが明らかに行なわれたという事実を私どもとしてはつかんでおりませんので、現在まで、この事件が起こりますまでは、日本におきますKCIAの実態を調べるというようなことはいたしておらなかったわけでございます。
  55. 西村関一

    ○西村関一君 その答弁で私は満足しませんから伺いますが、そういうことは、社会主義国の機関に対しても同じ態度でやっておられるのかどうか。それから韓国政府機関であるからそういう必要がないんだというふうに受け取らざるを得ないような感じがいたします。そういう点。  それから一体警備警察というのはどういう任務を持っているのか。これはこの前も私は伺ったんでありますが、警備警察の任務の内容等も、この際はっきりこの場で御答弁を願いたいと思います。
  56. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 警備警察は、御承知のように、社会的背景のある運動に関連して起こる警察事案についてこれを処理するということで、警察法の責務であります犯罪の予防、被疑者の逮捕、その他公安の維持に当たると、こういうことでやっておるわけでございます。社会主義国と韓国との関係につきましては、こうした警察法の責務に照らして処理をいたしてまいってきているわけでございます。
  57. 羽生三七

    ○羽生三七君 先ほど来、田委員から事実関係について詳細な質問がありましたが、しかし政府関係が、日本政府関係が明確な答えができない一つの理由は、韓国があらゆる問題について日本要求を拒否しておることだと思います。ところが、なぜ韓国日本要求を拒否しておるのか、この問題を考えてみますと、私は、きょうの新聞にも若干出ていますけれども日本政府が今回の事件によって対韓政策の、日本の対韓国政策の根本は変えないという、こういうようにはっきり言われておる、その基本的な前提があると思う。だから、このような問題に対して韓国が依然としていまのような態度をとり続けるならば、場合によったら経済援助問題、対韓経済援助問題の本質に触れるような問題、さらにそれ以上いろいろな外交上の処置にも触れるという、そういう触れるべきであるという説も出ておるんです。出ておりますが、日本政府としては、やはり今回の事件にもかかわらず対韓政策の本質は変えないと言っておるんです。だから、その前提があればこそ、韓国日本要求を拒否していると思うんです。ですから、事と次第によっては対韓政策の変更もあり得るという、そういう日本政府態度が出てこない限り、私は韓国は依然として日本のいかなる要求にも拒否を続けるのではないかと思う。これは基本的な問題だと思うんですね。ですからこの韓国の出方、あくまでもこういうような状態を続けるならば、日本は対韓政策について十分に考え直さなければならぬということを日本政府がある程度腹をきめなければ、どんなことがあっても対韓政策の本質は変えないという、その前提から出発しておったら問題の解決にはならないと思う。おそらく田委員もこれからそういう問題に触れると思いますけれども、先ほどの事実関係を聞いておって、すべて日本が明確に答えられないのは、韓国がすべての材料の提出を拒否している、その根本原因はいま申し上げたことにあると思う。この基本的な問題について大平外相の所信を承りたいと思います。
  58. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 事件解明されなければならぬ。それは解決のベースをつくるわけでございますので、その解明政府としても急いでおるわけでございます。で、その解明に当たりまして、韓国政府協力を必要とする部面がございますので、要請をいたしておるわけでございます。で、羽生さんはそれを一切拒否しておるという御表現でございましたが、そうではなくて、これまでに幾つかの要請に対する答えがあったわけでございますが、今後残されたわれわれの要請事項について、よこさないとは言ってないわけでございまして、これからどのように御協力が願えるか、私どもはできるだけ充実した解明を行なうにつきまして、韓国政府の今後の一そうの御協力を期待いたしておるわけでございます。  第二の点、対韓政策の問題でございますが、まあこういう不幸な事件が降ってわいたわけでございまして、この事件は、たびたび申し上げますように、まず全貌を解明して、それを踏まえてこれに対しましての処理を考えなけれやならぬのは当然の道行きだと思っております。で、いまその解明の道程にあるわけでございますので、そういう段階で基本政策を云々するなんということは、私は軽率じゃないかと考えておるわけでございまして、いまできるだけ早くこの事件解明し、解決を急がなければならぬというのがいまわれわれの立場でございます。
  59. 羽生三七

    ○羽生三七君 いま一点だけ。若干の資料の提出はありました。あるが、それは日本国民のだれもが新聞で知っておる程度のことしか韓国日本通報しておらぬわけですね。これをもって韓国日本要求に応じておるとするならば、だいぶ私たちの考えと懸隔があるわけです。もっと本質的な問題に触れるような資料提供があれば格別でありますが、これは私は今後といえどもそれを期待することはもう困難だと思います。したがって、本質的には韓国の出方次第によっては根本問題に触れるようなところまで発展する可能性を十分持っておると思いますが、これは単に私がそういう見解を持っておるということにとどめて、さらに金大中氏の再来日問題についてもお聞きしたいことがありますが、これは田さんのその質問に触れた際にひとつもう一回関連を留保さしていただきます。
  60. 田英夫

    田英夫君 いま羽生委員が言われた金大中氏の再来日の問題についてお尋ねをしたいと思いますが、この問題は、当初から政府要求をされていた。しかし、まさにこれこそ韓国側が応じていない問題でありますが、しかし、捜査上から言っても、日本国民感情から言っても、あるいはほんとうの意味日韓関係というものを正しく発展さしていく上から言っても、金大中氏の再来日というものはどうしても必要である。同時に、今回の大使館員関与していたという問題が明らかになったこの段階では、これは単なる捜査に対する協力という意味での来日ではなくて、本来の原状に復するという意味で、こういう不当なことを政府機関人間がやったという、まあまさに国権が侵されたというこの事態の中では、原状に復帰させるという意味で、たとえば韓国側が条件をつけていると言われる捜査当局とだけ会わせると、国民やあるいは政治家やマスコミの人とは会わせないというような、そんなことであってはならぬので、日本に帰ってそれまでと同様に、八月八日以前と同様に自由な活動ができるような状況で帰さなければならない、こう思いますが、その点はいかがですか。
  61. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その点につきましては、かねて御案内のように、日本政府から韓国政府に御協力方申し入れてあるわけです。それに対しまして、捜査中であるので応じかねるというのが今日までいただいておる御返事でございます。それ以上この問題について発展が見られていないわけでございますけれども、問題は、事件解明を急がなければならないと、それはできるだけ充実した正確な解明をやらなければいかぬわけでございますので、捜査当局として、金大中氏ほかお二方から直接事情を聴取したいということは当然のことだと思うのでありまして、私どもといたしましては、引き続き要請し、韓国側の御協力を求めてまいりたいと考えております。  それから第二の原状回復ということでございますが、先ほど条約局長からも御説明申し上げましたように、本件と主権とのかかわり合いの問題でございますが、主権というのは、御承知のように、まあ一国の排他的な管轄権の中で他国の公権力がその国の承諾なしに行使されるということでございまして、この事件韓国の公権力が働いておるかどうかということはまだ解明されていないところでございまして、また、主権にどうかかわり合いを持つかという点がまさに非常に大事な究明点であろうとわれわれは考えておるわけでございまして、そういう解明を待って、田さんの言われる原状回復論とかなんとかという問題がそういうことと関連して出てくるか出てこないか、そういう問題になるのではないかと私どもは見ておるわけです。
  62. 田英夫

    田英夫君 その辺の認識が基本的に私は違うと思うのです。捜査当局がきのうあれだけの決意をされ、それを受けて政府出頭要求されたというこのことは、まだ政府機関関与しているかどうかはわからないという言い方で済まされる状態ではない。これは特にいまの政府大平さん含めて政府の皆さんのお考え韓国に対するお考えという現状を踏まえた上でそこまであえて決意をされたということは容易ならぬことだと、こう思いますから、なおさらいまの大臣の御答弁は基本的な認識がいささか違うと、本心を言っておられないという気がしてならないのですが、政府のほうでは、後宮大使が十日ほど前に金大中氏に会われたわけですけれども金大中氏のソウルにおける現状をどの程度つかんでおられるか、この点はいかがですか、健康その他。
  63. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど条約局長の答弁の中で、金東雲氏が大使館員であるということで、それの嫌疑が濃厚になってまいったということでございますので、その限りにおきまして、韓国政府責任はあるだろうということを言ったわけでございまして、で、そのことと、それからその人物を通じまして韓国政府の公権力がどう働いたかという問題は第二の問題になるわけでございまして、その点は、おことばでございますけれども、私ども事案をできるだけ正確に、公正に処理してまいる上から申しまして、そんなことではなまぬるいじゃないかとおっしゃいますけれども、事案は事案としてやっぱり正確に把握せねばなりませんので、そういう点がまさに問題点であると、したがって、主権とどうかかわり合いを持つかということについていまこうだと断案を下すわけにはまいらない状況であるということを正直に告白いたしておるわけでございます。  それから金大中氏の近状につきまして、この前、後宮大使が面談の機会を得たという以後につきましては、私は承知いたしておりません。
  64. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。  いまの田委員質問に対するお答えで、韓国の公権力ということばが出てきて、それが解明されなければ何とも言えないというお話がありましたが、この金大中氏が何も問題がなくて韓国におって、そこで日本で再来日を希望した場合に韓国が拒否する場合、これはわかります。しかし不法な暴力で拉致されて、日本の主権にかかわる問題として論議されておる際に、そういう関連で再来日を要求する場合に、その場合に韓国の公権力が優先をするのか、この日本の主権の立場から再来日を求める立場のほうが優先するのか、それを解明しなければ答えができないということでは、もし韓国の公権力が優先するということになれば、韓国が拒否する限り金大中氏の再来日は不可能ということになります。ですから、それは私は法律上の問題の解決ではなしに、日本の基本的な、日本という国内で起こった不法な行為であるから、それは優先的に日本がそれを取り調べる権利を持っておるという、その基本的な立場に立たぬ限り、問題の法律的解明をやらなければ何とも言えないということじゃ、金大中氏の再来日は絶望的なことになるんじゃないかと私は杞憂するので、この点は明確にしていただきたいと思います。
  65. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) ただいま大臣が申されましたのは、実は原状回復ということから大臣のお考えを述べられたのだと存じます。主権の侵害があったという前提に立ちまして、それじゃその侵害された法益を復旧するためにどういう措置を講ずるかというものの中に、実は原状回復ということが含まれてまいると存じます。現状はその段階ではございませんで、捜査段階でありますことは御承知のとおりでございまして、その観点から金大中の再来日を強く要請しているということでございますが、私どもとしましては、金大中の再来日の要請が受け入れられてそれが実現するということに非常に強い希望と期待を持っているわけでございます。現状のまま推移すれば、金大中の再来日は実現しないというふうに考えているわけではございません。
  66. 羽生三七

    ○羽生三七君 それは根本が私は間違っておると思うんです。金大中氏が再来日して、その結果、十分な調査ができなければ問題の解明にならない。それができたらという前提でなしに、それができなければ問題は解明できないのですから、金大中氏の再来日で原状に戻すことが、かつての事件前の当時の原状に戻すことが事件解明の最大のかぎであって、それを実現しなければ、先ほど来論議されておるようなことは雲散霧消してしまう根本問題だと思う。ですから、何はとにあれ金大中氏の再来日を実現して、その調査の結果さまざまな問題が起こってくるかもしらぬけれども、その起こるも起こらぬも、根本が調べようがないんですから、私はその前提が金大中氏の再来日を実現することにあると思うが、これはいかがですか。
  67. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 金大中氏は本件については被害者の立場で、直接現場で被害を受けた方でございますから、その方から直接聴取するということは調査上非常に大事なことだと思うんでございます。しかし、それだけで全部が解明されるわけでは決してないと思うのでございまして、それは一つの大きな材料に違いないと私は考えます。で、その点につきましては、今後とも鋭意実現方を要請してまいりたいと考えておるわけでございまして、本件の全貌は、そして特に大事な主権とのかかわり合いの問題は、また本件の全貌を明らかにする上においてあらゆる手段を講じまして解明していかにゃいかぬ課題であるとわれわれは考えております。
  68. 田英夫

    田英夫君 先ほど金大中氏の近況について伺ったのですが、政府のほうでは最近の状況についてはつかんでおられないようでありますが、私どものほうで金大中氏にきわめて近い筋からの非常に確度の高い近況の情報によりますと、健康がかなり悪いということであります。これはひとつ人道的な立場ということからも厳重にお考えいただきたい、重要な問題としてお考えいただきたい。  さらに、いまの状態は非常に不安な状態である、こういうふうに漏らされています。健康が悪くて精神的に非常に不安である、これは当然かもしれません。特に健康の問題については、連行されるときの問題を含めまして、かつての自動車事故の後遺症は若干あるようですけれども、本来非常に健康な人だったそうですから、何らかの原因があったのではないかと推測される。  さらにもう一つ伺いたいのは、今度来日される場合に、家族の皆さんは一緒に来られることを強く望んでおられるようであります。奥さんと一番小さい三男の一緒に住んでいる男の子――九歳の男の子であります。こういう問題について再来日を求めるときには、全く捜査上の問題だから金大中氏一人だけを受け入れるのか、家族の皆さんも来日を希望されるならば受け入れる用意がおありになるのかどうか。  二番目に、金大中氏のほうの希望としては、できれば日本の警察当局が迎えに来るという形で日本に帰れたら非常に安全だと思うと、ここまで言っておられるのでありますが、こういう問題についてどうお考えになるか、こういう希望を受け入れる用意がおありになるかどうか伺いたい。
  69. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほども答え申し上げましたように、本件につきましては、先方政府に御協力方を要請いたしておるわけで、現在のところ捜査中であるから応じかねるという返事をいただいたままになっております。今後も引き続き要請を続けてまいるつもりであると、それがいまの私ども立場でございます。
  70. 田英夫

    田英夫君 いま申し上げたのは、重ねて申し上げますけれども金大中氏に非常に近い筋からの希望であり、むしろ日本政府へのお願いであると受け取れることでもあるわけです。こういう点をひとつ十分お考えいただきたい。このことは、金大中氏があのような形で連れ去られたということは、その国にいる外国人の安全を守ることはその国の政府責任であるという国際的な原則から考えて、金大中氏があのような目にあったということは、その責任の一端を日本政府が負わざるを得ないわけでありますから、これを原状に返すと、そのときに本人の希望を入れるというのはきわめて当然のことであると思いますので、この点はひとつ私からお願いをするのはたいへんおかしいかもしれませんけれども、そういう連絡を入手いたしましたので、この機会政府お願いをしておきたい。
  71. 西村関一

    ○西村関一君 関連。  ただいまの田委員からの御発言に関連をいたしまして、私は人道的な立場からいまのような要望があろうとなかろうと、政府としては当然人道上の立場からでもこういう点は十分に考慮すべきものだと考えます。伝えられるところによりますと、日本政府韓国民の国民感情を配慮しなければならない。金大中事件関連して韓国民の国民感情を刺激するようなことをしてはいけないというような配慮をしておられるということでございますが、私は、政府がとっておられますところの日韓親善、日韓友好、これは南北を連ねまして私どもとしてもこの点については異存のないところであります。朝鮮半島におけるところの韓民族の同胞の国民感情が刺激され、アジアの隣邦でありますところの朝鮮民主主義人民共和国並びに大韓民国に対して好ましからざる感情的な影響を与えるということを政府が心配しておられるとするならば、その点に関する限り、政府のお立場も私はわからぬじゃないと思うんでございますが、しかし、このいま起こっておりますところの金大中事件をうやむやにして、遠慮に遠慮をしながら、打つべき手も打たないということでは、真の日韓友好にはならない、政府の言われるところの日韓友好にはならないんじゃないか。大韓民国の国民の心ある人たちといえどもそのことを望まないと判断をいたします。むしろ、すすんで政府がこの不幸な事件解明に努力せられると、強く韓国政府要求せられるということこそ韓国にあるところの韓国民の、あるいは日本にあるところの韓国人たちの感情を刺激するどころじゃなくって、むしろ安堵させることになるんじゃないか、私は人道上の立場からそういう配慮を政府がせられることを期待するものでございます。一口も早く金大中氏がいま話のありましたような形で、希望せられるような形で日本に来られるように、政府の一段の御努力を願いたいということを私も関連として要望をし、政府の御見解を承ることはいたしませんけれども、そのことを田委員質問並びに要望にこたえまして関連して申し上げておきたいと思います。
  72. 田英夫

    田英夫君 もう一つ具体的なことをといいますか、政府が御存じかどうか伺いたいことがあるんですが、在日韓国大使館に――この外交官リストにも載っておりますが、金寅洙という人ですかね、このリストだと金東雲氏と同じページのまん中よりちょっと上、ほぼまん中辺に載っております。この人がことしの七月に朴政権のやり方に反対をしてといいますか、日本を去って本国に帰国すると言って出国して実はアメリカに亡命をしたと、こういう情報がありますが、ほぼ同じころアメリカでも御存じのとおりワシントンでそうした在米韓国大使館員の亡命事件がありましたけれども、こういう情報がありますが御存じかどうか。
  73. 高島益郎

    政府委員高島益郎君) 私は存じておりません。
  74. 田英夫

    田英夫君 これは外交官としてここにすでに登録をされている人物でありますから、そういうことになればかなり問題だと思うんですが、私どもも情報ということで耳に入っているわけですけれども、いま御存じないならばひとつこれは御確認をいただきたい、こう思います。  次に、当面するこの状況の中で、先ほどから大臣からもお答えいただいたことですけれども韓国政府機関人間がこの事件関与をしていたというこの状況の中で、政治的な問題として伺いたいのは、まず第一に、この九月半ばから開かれます国連総会の問題であります。伝えられるところによると、ニューヨークで日米韓の関係者の会議が田中訪米直後に行なわれる、そして先日はポパー国務次官補が韓国日本を相次いで訪れたということの中で、三国間で国連対策が協議をされているわけでありますが、しかし、一方でこうした事態が起こっているのであります。まさに朴政権の政府機関員が不法を働いたという事態が明るみに出てきたわけであります。この事態の中で、伝えられているいわゆる二つの朝鮮の国連同時加盟という提案を日本も提案国になってなさるのかどうか。もう日が迫っておりますから、当然日本政府もその点については決意といいますか、御決定をなさっていると思いますが、日本政府は二つの朝鮮といわれる同時加盟提案を、表現はどうあろうと、そういう提案をなさるおつもりがあるのかどうか、承りたいと思います。
  75. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ことしの国連総会で朝鮮問題――おそらくまあ実質的な討議が行なわれるであろうというように想定いたしまして、その場合、私どもとしてどう対処すべきかということは、御案内のように、かねがね検討いたしておるところでございます。で、この問題は朝鮮半島の平和、統一、安定というような立場から、高次な目的のために朝鮮問題はどうあるべきかという視点に立って検討いたしておるわけでございますので、本件と直接関係を持っておるものとは考えておりませんし、本件とからまして考えるべきものとは私は思っておりません。で、いまの同時加盟でございますが、朝鮮半島の自主的な平和的な統一が達成されることは望ましいことでございまするし、それが南北朝鮮の道標になっていることにも敬意を表するわけでございますが、現実の問題として、そういう道標に達する歩みといたしまして、南北両政府が国連に加盟するということになればこれは歓迎すべきことではないかと考えておるわけでございます。この問題は南北両当事者がどう考えるかにかかる問題でございまして、日本政府としてはそういうことが実現することは望ましい方向でないかと考えておるんでございまして、それを今度の国連総会でどういう形であらわすか、そういうことにつきましては目下鋭意検討中であるという段階です。
  76. 田英夫

    田英夫君 いまの大臣のお答えは、この時点でまだお考えというのはたいへんおかしいと思うし、また金大中事件関係がないという御判断もたいへんおかしいと思うんです。  それは、まず第一に南北が同時に加盟することは好ましいというふうにおっしゃいましたけれども、朝鮮民主主義人民共和国は、この六月二十二日の金日成主席の発言でもはっきりしているように、南北がそれぞれ別々に同時に加盟するということにまっ正面から反対をしておるわけです。高麗連邦共和国という形で一つで加わろうじゃないかということをはっきり言っているわけです。つまり、二つの当事者のうちで一方は反対をしているわけですよ、別々に入ることに。こういう状態の中で、第三者であり当事者でない日本が、これにとやかく言い、一方が入らないと言っているのに、二つ入るのがいいと思うというようなことを言うのは、まさに他民族に対する干渉であり、朝鮮民族の皆さんが望んでいる姿をじゃまするものだと、こう言わざるを得ない。  また、金大中事件と無関係とおっしゃいましたけれども、そうではなくて、まさに、なぜ金大中事件が起きたかといえば、現在の韓国政府にとっては金大中氏は好ましくない人物であるからこそ政府機関人間までが関与をしてああした行動をとったと、こう考えざるを得ないわけですが、しかし、一昨年の大統領選挙で、金大中氏が、朴政権のあらゆる選挙干渉にもかかわらず――その選挙干渉の内容についても私は金大中氏自身から詳しく聞きましたけれども、そうした干渉にもかかわらず九十万票という差にまで迫ったのは、これはまさに韓国国民の皆さんが、あれだけの、まあいわば弾圧のような形のものまで受けながら、南北の平和統一ということを強く望んでおられる。金大中氏が掲げた平和統一というそのスローガンを強く支持した証拠だと、こう判断をするのが当然であり正しいと思います。  したがって、そういう状況の中で統一ということを望んでいる以上は、韓国国民も統一を望み、北側も一つになって入ろうと、こう国連問題に対して考えているこのときに、アメリカや日本政府が、いわばよそ者が朝鮮民族のこうした願い、多数の願いにそむくような行動を国連の場でとるならば、これは悔いを千載に残すどころか、朝鮮民族に対する非常な干渉であり侮辱的な行為であるというふうにさえ言っていいと思うんですよ。このことはしたがって、当面のこの事態の中できわめて重大であり差し迫った問題だと思います。きょうは六日ですからあと十日余りで、もう二週間もない状況の中で国連総会が始まる。今月中にはこの朝鮮問題というのが直接国連の舞台にのぼってくるでしょう。そういう状況の中できめておられないというのは、私は本心を言っておられないと判断せざるを得ないし、いま私が申し上げたようなことは、残念ながら日本の多くの国民の皆さんも、そして朝鮮民族のほとんど大部分の方も、腹の底では同感をしてくださる問題だと自信を持っております。この点は政府は厳重にお考えいただきたいと思いますが、あらためて所信を伺いたいと思います。
  77. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それは田さんの御指摘を待つまでもなく、国連に加盟する加盟しないは、それぞれの政権が判断されることでございまして、われわれの手を越えた問題であるわけでございます。ただ、朝鮮問題がこの国連総会で討議されるという場合に、日本も加盟国でございますので、日本として朝鮮半島の安定平和という立場からどういう考えを持っておるかということを表明することは少しも差しつかえないことと思うのでございます。それで、われわれはそういう立場に立ちまして、日本としてはこういうことであってほしいという希望を表明することまで差し控えるということは、あなたとは若干私は意見を異にするわけでございます。  で、国連総会は仰せのように差し迫っておりますが、どういう決議案の形でそれを実行してまいるかというようなことにつきまして検討をしておるということでございまして、総会までにはちゃんと筋道立てて処理してまいりたいと考えております。
  78. 田英夫

    田英夫君 そのお考えは、残念ながら、いまの朝鮮半島をめぐる韓国と朝鮮民主主義人民共和国の国民態度、そしてそれぞれの政府態度という中で、御判断が違うと思う。おととしの選挙の問題、そしてこの六月二十三日の金日成主席の演説という中で、残念ながら政府のお考えは違うし、たいへんこれは悔いを千載に残す結果になるということをこの際警告をせざるを得ないと思います。  同時に、先日の田中訪米の際の日米共同声明の第六項に朝鮮の問題が登場をしております。この条項は、現在の、つまり朝鮮の問題について日米両国は関心を持っているという意味のことでありますが、関心を持つのは当然でありますが、その条項がいまのようなお考えの裏づけで行なわれているとすれば非常に重大である、こう言わざるを得ない。つまり、朝鮮民族の多数の意思を無視して、日本とアメリカ政府が、自分たちにとって都合のいい、自分たちの考えている方向へ朝鮮半島を持っていこう、こういう考えを持っておられるとすれば、非常に問題であると言わざるを得ないんです。  時間が参りましたので、最後に一つ伺っておきますが、いまの、このきのう起こりました事態の中で、日本国民は、ほんとうにお隣の朝鮮民族との長い平和、友好を望んでいる気持ちからすれば、いまの韓国政府というものに対してやはり批判を持たざるを得ない状態だと思います。いまの政府、向こうの政府の送り込んできている外交官という人間がそういうことをやるようなそういう政府、そして私がこの委員会でもしばしば取り上げてまいりました在日韓国人の人たちを不法に逮捕をしていくというやり方、そして現在、だいぶ前に逮捕された徐勝きょうだいなどは家族との面会もこの三月からは許されないという状況のようであります。からだも非常に悪い。そういう例はあげたら切りがないほどたくさんあります。在日韓国人の皆さんは、安穏に、安んじてこの日本の中で生活できないというふうに漏らしておられます。  こういう状態の中で、その韓国政府というものに批判の気持ちを持たざるを得ない。決してこれは韓国国民に対してではなくて、韓国政府に対して持っているわけです。この区別は、さっき西村委員の言われた意味からも関連して非常に重要である。しかし、あの朴政権は何らかの手を使って韓国国民の中に反日感情をあおるようなことをつくり出さないとも限らぬ、あえて私は申し上げます。そういう状態の中で、日本国民の率直な気持ちは、この事件に関して韓国政府日本国民に対して陳謝を求めたい、こういう気持ちに結集をしていると思いますが、韓国政府に対して陳謝を求めるお気持ちがあるかどうか、最後に伺いたいと思います。
  79. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日韓の間には長い歴史を通じまして不幸な事件が数々あったわけでございます。今回もまたこういう不幸な事件が出まして、両国民は深く心を痛められておることと思うのであります。われわれは、いまや対等、平等の主権国家として公明なおつき合いを長く続けていかなけりゃならぬ意味におきまして、この不幸な事件はやっぱり公明な解決をしていかにゃいかぬと考えておるんでありまして、そのラインに沿いまして政府として鋭意つとめてまいりまして、国民の期待にこたえなければならぬと思っております。いま韓国政府に陳謝を求めるかどうかという問題でございますが、先ほど冒頭にもお答え申し上げましたように、金東雲氏の任意出頭に応じがたいという御返事をちょうだいしておりますが、いま御再考を求めておる段階でございまして、今後事件そのものの捜査の進捗を見、韓国政府態度も見守りながら、われわれとしては国民の納得ができるようなことを、なすべきことは当然なさにゃいかぬと思っておるんでございますが、具体的にいまこういたしますという言明ができる段階ではございませんで、公明な解決を期して鋭意つとめておると、そしてなすべきこと、なすべからざること、それは十分心得てやってまいるということで御了解をいただきたいと思います。
  80. 黒柳明

    黒柳明君 私も昨日の捜査当局の発表は当然政府当局と相当話し合い、また韓国の事情というものを十二分に察知しての発表だと思いますし、大多数の人がもうきのうの警察庁の発表によって韓国の何らかの公的権力がこの事件に介在していることはほぼ間違いないと断定してもいいと、こういうふうに私も思うわけですけれども、まだまだこれは最終結論が出たわけじゃないわけですが、そこでいま盛んに大臣は公的権力は介在してないからということを繰り返しておっしゃっていらっしゃいました。また反面、両国の友好関係をそこなわないように、また公平な処置もしたい。きのうの記者会見でも同趣旨なごとをおっしゃって、いまこの席でもおっしゃっているわけであります。しかし、その両国の友好関係をそこなわないというのは、これは一方的なものじゃだめだと思うんです。あくまでも両国だと思うんです。韓国のほうもこちらの誠意に対して友好関係をそこなわないように全面的に努力する。しかも、ある意味においてはその当事者は向こうなんですから、こちらじゃないんですから。しかも、そういう中において外務大臣みずからが金大中さんの再来日について応じない、不満であるという発言もされた。また、昨日の金東雲さんの大使を通じての拒否、これもまさか大臣はけっこうだと思っているんじゃないと思うんです。遺憾だと、こう思っていると思うんですね、幾ら外交特権があるからといって。そうなると、この両国の友好関係というのはどうしてもこちらの友好関係を強くしておきたいという一方的な意思が何か強いように思われる。そういう中において公平な処置をするというのは何かむずかしいんじゃなかろうか。やっぱり公平な処置というのは、若干の友好関係もそこなわれてもこれはやむを得ないという結果も出る場合もあるんだと、こういう大臣が、あるいは政府が前提で腹をきめて、そうして友好関係を、というならば話わかりますけれども、いまのこの一カ月余の段階においては、どうもこの友好関係というのは韓国政府からは、日本政府が口で言うほどは行動によって示されてない。その中において万人が納得するような処置を講ずる。これがどういうものであるかというと、何かこちらもそれをでき得るならば時間を延ばしてそして友好関係をつなぎとめるために何とか努力する、まあ悪いことばか知りませんけれども隠蔽をしていくんだと、こういうような私は感じに受け取らざるを得ないんですけれども、この友好関係と事実関係を適切に処置していくと、この二つの関係、しかも適切に処置するという判断において当然友好関係というものがそこなわれる可能性もあるんじゃなかろうか、こういうふうに私は思うんです。いかがでしょう。
  81. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりでございまして、両国の親善友好関係は両国の努力でやらなけりゃならぬわけでございます。ところがこの両国にとりましてこういう事件が降ってわいたわけです。両国の友好親善関係を維持してまいるという観点から申しますと、この事件はまずつらいことだけれども真相を解明して公正な解決をはかる以外に分別ないんじゃないかと思うのであります。一時はつらくても、そういうことをすることによって長続きのする親善友好関係が維持されるんではないかと私ども考えておるわけでございます。したがって、そういうラインで今日まで捜査当局も熱心に捜査されておりまするが、韓国側から御協力を求めにゃならぬことにつきましては求めてきておるわけでございます。ただいままで得ておる御協力につきまして、決して私ども満足はいたしておりませんけれども、今後引き続き求めてまいりまして、事件解明をやり公正な解決にこぎつけるということをやらなければならない。そのことが末長き友好関係の基礎をつくることにほんとうはなるんだということにつきまして私ども一貫した考え方で処理いたしておりまするし、私どもの意図するところは、先方に対しましても再三お伝えを申し上げておるわけでございまして、今後も鋭意努力してまいるつもりでございまするけれども、もう目的は仰せのとおり友好関係の維持発展のために本件解明を急ぎ、公正な解決を期するということで一貫していきたいと考えております。
  82. 黒柳明

    黒柳明君 私は何も日韓の友好関係をこの事件でぶちこわせと、こう言っているわけじゃありません。当然これはもうどこの国とも友好関係を持続することはあたりまえです。ただ、いまくしくも大臣が、一時はつらいけれどもと、こう、私はことばの端をとるわけじゃありません。その一時つらいということばは、どうしても友好関係を持続しなきゃならないから適切な処置をどうしてもとるのがつらいんだと、友好関係が優先して、適切な処置がどうしても従的になっているんじゃなかろうか、私はこういう判断をせざるを得ない。それがくしくも、「一時はつらいけれども」と、こういうことばになってあらわれたんじゃないかと思うんですけれどもね。その点いかがでしょう。
  83. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 事態の究明と公正な解決本件についてやることが友好関係につながるということで、両者は矛盾するものでないばかりか、私はこういう道行きをずっと続けて公正な解決にこぎつけることが友好関係につながるんだということで、別とは全然考えておりません。
  84. 黒柳明

    黒柳明君 警察庁のほうは金東雲さんの来日の拒否ですね、あるいは金大中さんの来日の拒否、これが拒否し続けられた場合ですけど、大臣がさっきおっしゃっていた公的機関が介在したかどうかということを最終的に明確に断定するきめ手の可能性はありますか。来日しない――日本の官憲の手によってじかに、まだまだ事件は拡大すると思いますよ、発展すると思いますよ。だけれども、いまの段階において、この再来日あるいは調査を要請しているこの両氏がもし来ない場合において、公的機関が介在したことを断定できるような調査に至るまでの可能性というものは確信は十二分にあるんですか。
  85. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 私どもといたしましては、現場を中心といたしまして車両の捜査であるとか、あるいは出国の経緯について船舶の捜査であるとか、遺留品等からの割り出しとか、いろいろまだ基本的捜査として鋭意続行中のものもございますので、仮定の問題でございますが、そういうような場合には与えられた条件の中で最善を尽くしていくと、こういう覚悟でございます。
  86. 黒柳明

    黒柳明君 当然最善を尽くされ、これからも尽くしていくと思いますけれども、まずいまのところは来日しないんではなかろうかと、さらに金東雲さんに対しては要請すると、これはもういま大臣もおっしゃっているとおりであります。しかし、当人の取り調べなくして最終的に幾ら努力しても、実際に公的機関関係したという可能性が、その最大の努力の中に出る可能性がちょっとでもあるかどうか。努力はいままでもする、これからもする、あたりまえです。法的に見てどうですか、こんなことあり得ますか。
  87. 中島二郎

    説明員中島二郎君) これからの捜査の進展状況によることでございますが、可能性がないということは現在の段階で申せません。
  88. 黒柳明

    黒柳明君 そこで、可能性はないとは言えない。そうすると、たとえ来日しなくても、当人を直接調べなくても、公的機関が介入したと断定できる要素はあると、こういうことでしょう。私はそんなことはまずないと、可能性は。可能性ですから、断定できるものじゃないと思いますよ。しかしながら、まずそれは不可能であろう。そうなると、もうこの段階において、先ほど田委員から話ありました、羽生委員から話あったように、きのうも記者会見で外務大臣おっしゃった対韓の基本的な政策、これがいまの段階においては確かに公的機関が介在したという断定したものが結論が出ていない。だから政策は変更しないんだ、だけどもうこの段階にきて、きのうの発表の段階で、仮定の事実たりといえども、もう大体万人が見て公的機関が介在したんではなかろうかというのが相当断定的に、またきのうの捜査本部の本部長の話にもそういうニュアンスが非常に強かったです。この段階で事後処理、事後対策というものを当然外務省は検討すべき段階にきていると思うんです。どうすべきか。いや、まだ結論が出てないんだから公的機関が介在したかどうかわからないから――おとといまではよかったと思うんですよ。きのうの発表以来は、もう少なくとも、いや、結論を待つまで――結論はいつ出るんですか。来日だったって、するかしないかわからない。しなければ、まずうやむやで終わるんじゃないですか。そういう段階において、友好関係をそこなわないでもきびしくこちらはこれに対処することはもう当然だ。そのためには事後処理を、もし来日しない場合にはこうするという対韓の基本政策を再検討をする段階にいまきていると思うんですが、変えない、変えない、この一辺倒ではたして結論が出るまで終始しますか。公的機関が断定した、しないという結論が出るまで変えないんだと終始するですか、いかがでしょう。
  89. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いまお尋ねの点は、二段階に分けて御理解いただきたいと思うんです。一つは、公的機関関与しておるのではないかという嫌疑は濃厚になったということでございまして、したがって、金東雲氏の任意出頭を求めたわけなんです。問題は、公権力がその人物を通じて行使されたかどうか、そういう点がまださだかではないわけでございます。それで私ども、まあ理想的な状態から言いますと、事態の全貌が、もう洗いざらい全貌が明らかになりまして、それでそれに対して韓国政府の対応が見られて、その上で日本政府として対韓政策をどう考えるかという道行きがその本来の道行きなんでございますが、あなたが仰せのように、本件は国際事件でございまして、韓国政府の御協力を求めなければ完ぺきを期し得ない調査なんでございます。それについて、問題は韓国政府の御協力にかかる面も相当あるわけでございます。それが得られるか得られないかまだわからぬという状態なんでございますから、もとより日本捜査当局としてはベストを尽くして、そういう制約の中でもぼくは最善を尽くしていただけるものと思いますけれども、そういう状態で、十分洗いざらいもう解明し尽くされて、それに対する先方の対応措置も間然するところなくとられたということで考えるというようなぐあいに、あるいは手順よくそういう道行きになるかならぬか、これはいまからの問題でございまして、わからぬのでございまして、いましばらくこの推移を見ておりまして、それで先ほども田さんにお答え申し上げましたように、私どもといたしまして両国民が甚大な関心を持って憂慮を込めて見ておる案件でございますので、これに対しまして日本政府としてどういう措置をどの時点でとってまいるかということにつきましては、十分これは検討していかなければならぬと考えておりますが、いまこうし、その次の段階でこうするというまだ確たる構想を立てていないわけでございまして、仰せのように、政府としてなすべきことはなすべきときにちゃんとやらなければならぬという一気がまえは持っておるわけで、せっかく検討を続けておる段階でございます。
  90. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると大臣は、金東雲さんが私的な行動あるいはグループを結成して何かやった。その場合と、これを公的機関が指示した場合とは違うんだと、ケースは。こういう御判断ですか。大使館員は、これはあくまでも個人的な行動であると、こういう可能性があると、あるいは公的な指示なりあるいは組織なりがからんでいるかもわからない、こういう判断ですか。またこの両者はまるっきり違うという判断ですか。
  91. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いや、大使館員関与されたことについての嫌疑は濃厚になったということで、その限りにおいては韓国政府責任は免れまいというのが私ども考えだと。しかし、その次に、その人を通じて公権力がどういう態様において働いたかということがまさに主権にかかわる問題になってくるわけでございまして、その点はさだかでないということを言っておるわけでございます。
  92. 黒柳明

    黒柳明君 だけれども、すでに本委員会条約局長は――アジア局長だったですか、これはもう一下部機関でも、大使館員でも、私的な行動でも、これはあくまでも、この事実が判明したら主権の侵害になると、これはもうちゃんと述べてますよ。違うんですか、大臣のお考えは。大臣のお考えは、公的機関がこれは関係した場合と違うと、大使館員容疑は濃厚になったけれども、これはあくまでも公的なものと考えないという判断ですね、そうなると。私的なこともあり得るという判断ですね、大臣どうでしょうか。
  93. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いや私は詳しく……条約局長から説明させますけれども……。
  94. 黒柳明

    黒柳明君 いやいやそんな詳しくなくてもいいんですよ。ぼくも頭悪いから簡単なほうがいいんですよ。
  95. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 公的機関が、つまり大使館員という資格を持った方が関与された嫌疑は濃厚だと言うておるわけです。たびたび申し上げるように、その人を通じて韓国の公権力がどう働いたか、その人、その態様がよくわからないんです。働いたものかどうか、働かなかったものか、それが主権とのかかわり合いを論ずる場合には、それをはっきりしないといかない、それがはっきりしないと……。
  96. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、主権が侵害されたと――すみません、どうも。
  97. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私はいま主権が侵害されたと断定はいたしておりません。
  98. 黒柳明

    黒柳明君 だから主権が侵害されたという断定の根拠は、金東雲さんが私的にこういう犯行を行なったということが判明してもだめだと、何らかの公権力――まあ私はその大使館員の金さんが、それと公権力とどういう関係があるのか非常に和むずかしい。まあ時間がないから――要するに金東雲さんの私的なグループを結成したり、私的な行動であると、これは主権の侵害ではないと、この犯行は。こういう大臣判断に立っているわけですか、どうでしょうか。
  99. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 私が先般の委員会で申し上げましたのは、国家の機関が私人として行動した場合においても、その行動の責任は、その所属する国が負うべきものであるということを申し上げたわけでございます。したがいまして、本件について考えました場合に、大使館員日本における不法行為に直接的な形で関与したということが想定されておりますから、その前提に立って考えました場合に、韓国政府責任をとるということは、これは免れないことであろうと存じます。ただその場合に、すべての国家機関による不法行為が直ちに主権侵害になるということではないということをさっきお答え申し上げたわけでございます。大臣の御答弁もその趣旨で申し上げていることだと思います。
  100. 黒柳明

    黒柳明君 すべての――確かにそうでしょう、いろんなケースを総合すれば。だけれども、このケースは当然いま条約局長のおっしゃったことは、要するに公的機関大使館員がこういう犯罪をやったことは、それが断定する結果が出れば、これはもう主権の侵害になるんですよ。そうすると外務大臣がおっしゃったように、要するにその大使館員容疑は濃厚だということは、主権が侵された容疑は、事実関係は非常に疑いは濃厚になったという、断定せざるを得ませんね、どうですか大臣
  101. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 主権の侵害は、先ほど大臣が申されましたように、公権力の行使によって相手国の同意なくして権限行為が行なわれたということでございます。したがいまして、それはその人間そのものが権限に基づいて行なった行為であるかどうかということが重要な要素になるわけでございます。
  102. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、ここで主権の侵害が侵されたかどうか、重要な――濃厚であるかどうかということは、それが個人的な行動であるかどうかという判断なんですか、この金東雲さんが、公的な行動であるか、個人的な行動であるかということなんですか。だってね、もう大体客観的情勢は、この人が私的にやったとしてでも、公的機関館員ならば、これは主権を侵害されるということに断定される、判断できるということが前提でしょう。しかも、この人の容疑が濃厚だというのでしょう。もうこの人が私的に動いたなんということは考えられないんじゃないですか。公的な機関館員――そんならもうはっきりいまおっしゃったことは、これはもうへまをしたら、これは――これで時間がきちゃったからだめ、なんということ、もう言わせませんよ……。もうはっきりこの段階において主権が侵されたという事実関係疑いは濃厚になったと、どうですか大臣大臣の答弁を……。
  103. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私はまだそういうことは言えないと考えております。
  104. 黒柳明

    黒柳明君 どうしてですか。だって矛盾するんじゃないですか、いま条約局長のおっしゃったことと……。
  105. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 法律的に見ますれば、現在の状況から出てまいります結論といたしましては、主権の侵害が行なわれた可能性はあるということだと思います。
  106. 黒柳明

    黒柳明君 そうでしょう、主権の侵害が行なわれた可能性がある。まあ日本語というのは非常に幅が広い、ニュアンスがいろいろある。大臣いいですか、主権の侵害が行なわれた可能性がある。私はこれを容疑が非常に深いと言っておる。同じようなものじゃないですか。どこが違いますか。可能性と。いまの条約局長大臣の答弁、それじゃ食い違っていますか。大臣は主権の侵害が侵されたという容疑、私は容疑は濃厚だと言いましたね。大臣はそんなことはないと。だけれども条約局長は、主権を侵害されたという可能性はあると、同じことじゃないですか。濃厚だということと、可能性があるということと、どこに違いがありますか。
  107. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 可能性はあると申し上げましたのは、したがって、当然のことでございますけれども、主権の侵害があったと断定することはできないということです。
  108. 黒柳明

    黒柳明君 当然そうですよ、そんなことは。
  109. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 大臣がおっしゃっておられることも、それと全く同じようなことであろうと思います。
  110. 黒柳明

    黒柳明君 だから私は――私は日本語そんなにへたじゃないと思いますよ。容疑が濃厚であると、可能性が強いと、同じじゃないですかと言ってる。それを大臣はいまは私はそう思いませんと言うことは、条約局長と意見が違うじゃないですか。私は何も断定したと――先ほどから、日韓関係をこの事件で阻害するなんということは望んでませんて、友好はあくまでも持続しなきゃならない。私だってそうですよ、大臣以上にそう思っていますよ、強く。しかしながら、現実は現実です。あくまでも適切な処置を講じる。その場合において、もうこの段階において主権が侵害されたという可能性が強い。私は容疑が濃厚だ。同しことじゃないですか。大臣は否定した、条約局長は肯定した。どうなんですか大臣、もう条約局長はいいですよ、大臣おっしゃってください。
  111. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日韓関係大事であればあるほど、やっぱり正確にやらなければいかぬのです。嫌疑が濃厚だとか、可能性があるとかいうので、それではこうする、これは断定するなんということをやったらたいへんなんですよ。
  112. 黒柳明

    黒柳明君 そんな必要はないでしょう。
  113. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) だからそういうことではなくて、大使館員関与をしておった嫌疑は濃厚であるということと、その館員を通じて韓国の公権力が働いたのか働かないのか、働いたとすれば、どういう態様において働いたかという点をわれわれは見きわめる必要があるんじゃないかということを申し上げておるわけで、それを正確に把握しないと、主権にかかわる論争は私はちょっと正確じゃないわけで、日韓関係を大事だと――あなたと同じように大事だと思うがゆえに、私はくどくど、くどいようでございますけれども、断定はいたしておりませんと申し上げておるのです。
  114. 黒柳明

    黒柳明君 大臣のおっしゃること、よくわかるんです。非常に明快です。いつもこうくにゃくにゃっとくるんですけれども、いまの点は非常に明快に私わかりました。私は公的な機関が介在したかどうか、それはおいていいと思うんです。大臣いいですか、私も明快に言いますよ、そこまで議論発展させません。いまの大使館員ですね、公館、そこに所属している一館員、その人がこういう犯行を行なったという事実関係が濃厚になった、それ自体でいいんです。いいですか、もうここでやりますと、あんまり、もう時間になります。公的機関が介在したかどうかというのは別でいいんですよ、そんなことは。それを調べることは必要です。私もそれは早くそれがどうなるか知りたいんです。だけれども、その段階の以前、いまの段階――わかんなくてもいいんですよ。その段階において、この大使館員がこの事件関与して、非常に容疑が濃厚だという段階において、もう主権が侵されたという可能性が強いという条約局長の答弁、これはそのとおりだと思うんですよ。大臣、これは否定できないと思うんですよ。そこだけでいいですよ。
  115. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 松永君が可能性があるということを言うて誤解を生んでいるようでございますが……。
  116. 黒柳明

    黒柳明君 誤解じゃなくて……。
  117. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私はいま、そういう嫌疑が、関与した嫌疑が濃厚であるということが、いままでのわかった事実なんでございます。それでこの事件の全貌は、まだずいぶん解明されなければいかぬことがたくさんあるわけでございまして、問題は、おそらく黒柳さんは、その確実になったこと、嫌疑が濃厚になった段階で、この事件関連して、何か対応措置をとるかということであれば、それはそれとして考えていかにゃいかぬわけでございますが、この事件、いまの時点でもって主権が侵されたと断案を下すことは、私はまだそういうことはできないと考えます。
  118. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) たいへん恐縮でございますが、ちょっと補足させていただきたいと思います。  私が法律的に可能性があると申し上げましたのは、それは法律的に見た場合のことでございまして、じゃ実際に可能性があると見ているかと言われますと、そこはわからないというお答えしか申し上げられないと……。
  119. 黒柳明

    黒柳明君 私もルールが、あと一分、ひとつ共産党の星野先生が受け継ぐならぼくは受け継いでやってもらいたいです。おかしいですよ、そんな話は。私はもし社会党の先生方がこれ許していただけるなら、こんな答弁で、要するにだから私は友好関係が先行しちゃって、適切な措置があとからついていくからどうしてもそこに苦しい段階が、いまからあって、一時じゃなくて、これからまだあるんですよ。それが先ほど羽生先生、田先生が指摘した事実なんですよ。そんなわからない答弁、いつもの私だったらあと一分でそれこそあれをするんですけれども、ルールがあります。これは国会のルールですから、これは守ります、あと一分で。おかしいですよ、いまの答弁は。外務大臣いいですか。この事後措置をどうしようとかああしようとか、そんなことを言っているんじゃない。もう主権が侵されたという可能性が濃厚であり、間もなく断定する可能性もある。それを踏まえて私は基本政策、友好関係、これも必要だ。だけれども、そのあとの検討までしなきゃならない。だからきのう大臣が間もなくその時期はくるでしょうと言っているじゃないですか、記者会見で。大臣だって腹の中は法務大臣とそんなに違ってないと思う。事実関係というものをイの一番にやっぱりキャッチされている当事者ですから。ですから法務大臣の第六感以上にもっと確実な情報を持っているんだけれども、どうもそこが慎重な答弁にならざるを得ないと。こういう関係で終始しているんじゃなかろうか。それがかえって国民感情をあおり、世界の世論をあおって、日韓関係をうまくない方向にいま持っていきつつありますよ。そのことも大所高所に立って大臣がほんとうにこれ考えていただかないと非常にうまくない。  すみません、最後にもう一問。最後に一言すみません。捜査当局ですね。あのきのうの発表というもの、うんとあったんですけれどもなくなっちゃった、時間が。きのうの発表はいつごろあれわかってたんですか。ああいう事実関係は。指紋が一カ月もかからなきゃ事実関係が照合できないということは常識的には考えられない。やっぱり韓国との友好をどうしても結ぶ関係で、こちらが善意で向こうをつっ突いてたんだけれどもこれはだめだと。向こうの善意感じられないというて発表したんじゃなかろうか。きょうのマスコミの方の判断はそうですが、私もそう見ざるを得ない。もう指紋の照合なんか相当前にわかってたんじゃないですか、どうでしょう。
  120. 中島二郎

    説明員中島二郎君) いままでの捜査の後半期に、エレベータに一緒に乗って金大中氏及び犯人と思われる者を目撃した者の申し出がございまして、その後、金東雲書記官に次第に焦点がしぼられてまいったわけでございます。その後、金東雲書記官新聞記者の前歴で日本に入国していることがわかりまして、いろいろな形で努力して指紋を入手して、二二一〇号室に遺留された指紋と合致をしたと、こういう経過になっておりまして、したがって、指紋の点につきましては、時期的には九月に入ってから、ごく最近の段階で明らかになった、こういう経過でございます。
  121. 星野力

    ○星野力君 大臣金大中事件についてはきょうのこの委員会でもいろいろ論議はありましたが、韓国政府機関関係しておることが明らかになったといっていいと思うのであります。もっと正確に言えば、輝国政府機関自体のこれは恐るべき犯罪行為であるということが確定的になったといってよろしいと思うんであります。私たちが当初想像したとおりのことが事実となってあらわれてきておる。金東雲一等書記官出頭拒否してきたわけでありますが、一体これからどういうふうに対処なさるか。八月の二十四日に政府は、「第七回日韓定期閣僚会議を「田中首相の訪欧、訪ソ後、両国の都合のよい、なるべく早い時期」まで延期する」と、こう発表された。また大臣は、その日の記者会見で、「日韓閣僚会議の延期は、対韓政策の基本が変わることを意味しないのはいうまでもない。」あるいは「閣僚会議前にも、日韓間では不変の状態が続くのであり、経済協力などすでに約束したものはもちろん、新しい援助の約束も事務当局間で進められることは当然だ。」こう語っておられます。しかし、金東雲一等書記官出頭あるいは金大中氏自身の来日がどうなるかにかかわらず、また完ぺきの調査ということを言われました。私、完ぺきの調査なんかいまの政府態度でできるはずはないと思うのでありますが、それから韓国政府態度からできないと思いますが、これらの方針は当然こういう事態のもとで変更されなければならぬと思うんです。大臣の二十四日に語られたような方針は変更されなければならぬ、そういう段階にきておると、こう思うのですが、いかがでございますか。
  122. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま事態の解明をいたしておるわけでございまして、星野さんが御指摘になったように、外交官の身分を持った者が関与した嫌疑は濃厚になったということは言えると思いますけれども、あなたが後段に言われたことまで断定的に言える段階でないということは、これは黒柳さんと私とのやりとりでお聞き取りいただいたとおりでございまして、私どもといたしましては、問題の人物任意出頭を求めて、きのうは先方が応じられないという返答でございましたが、なお再考を求めておる段階でございます。今後の推移を見ながらこの事件解明を急いで、解決を急いでいかなければいかぬと考えておりまして、この段階におきまして、対韓政策の変更について何にも考えておりません。
  123. 星野力

    ○星野力君 私は、二十四日の談話で言われたような日韓の基本的な関係には変更がないとか、これまでの援助は続けるし、新しい援助もこの期間やっていくんだと、こういうことを言われた、その点に当然変更があってしかるべきだ、そういう段階にきておるということを申し上げたんですが、変更しないと、こうおっしゃるんですか。
  124. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 対韓政策の基本を変えないと、変えるつもりはないということをいま申し上げておるわけでございます。しかしながら、まあわれわれはどの政策をやるにいたしましても、やっぱり国民の理解と協力がなければ実を結ばないわけでございまして、この基本政策の具体的な推進展開にあたりましては、当然のこととして、国内の世論というものに目をおおうわけにはまいらないと考えております。
  125. 星野力

    ○星野力君 非常にえんきょくな言われ方をしておるんですが、世論の要求もあり、これは変更せざるを得ないなと、こういうことを言っておられるんですか。
  126. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 一つ一つの政策が実を結んでいくためには、国民の理解と協力が要るんだということでございまして、そういうことは対韓政策ばかりでなく、どの政策につきましてもその推進展開にあたって当然考えなきゃいかぬことでございまして、対韓政策もその例外ではないと申し上げておるわけです。
  127. 星野力

    ○星野力君 大臣しきりに公権力のかかわり合いということを言われましたが、大使館一等書記官というのは公権力そのものではございませんか。ここまできますと、私は断定的に言いましたが、これをほぼ確定的と、嫌議が濃厚と、こういうふうに言い直してもいいんですが、だれがやったか、この事件を。日本の主権がその結果著しく侵害されたという点で、事件の性格というものはこれは明らかになったと思うんです。そういう段階において、いまの大臣の御答弁のようなことでは国民世論の支持も得られないと思うんですが、いかがでしょうか。
  128. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まだ第一に明らかになっていないわけでございまして、その点、あなたと私との意見が違うわけでございます。先ほど申しましたように、この事件事件として究明を急ぎ、解決を急いでいかなければいかぬということで、いま一心不乱に努力をいたしておるわけでございまして、対韓政策等をこのためにいま変えるというようなことは考えていないと申し上げているわけです。
  129. 星野力

    ○星野力君 公的権力ということを言われましたが、一等書記官が公的権力そのものであるということはお認めになるのかどうか。  それからまた、大使館員がこれにかかわっておること自体が主権の侵害であると、こういうふうにお考えになっておるんだろうと思うんですが、先ほどからお聞きしておると、何かいろいろ言いのがれを言っておられるように思うんですが、どうですか。はっきり、簡単でよろしいです。
  130. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 大使館員行為、行動、すべてが公権力の行使であるということは言えないと存じます。その当該行為が権限に基づいているかどうかということがやはり重要な問題点であろうと存じております。
  131. 星野力

    ○星野力君 どっちにしても、いずれにしまして、その点が明らかにならぬでも一等書記官関係しておる、あるいはほかの大使館職員関係しておるという場合には、これは主権侵害でしょう。あなた、この間そう言っておられたのだ。会議録見ればそう書いてある。
  132. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 大使館員不法行為すべてが主権の侵害に直接的につながるものではございません。そこにやはり権限に基づく行為であるという要素が決定的な重要性を持つということになると存じます。
  133. 星野力

    ○星野力君 私、あなたのきょうの答弁というのは前回の答弁と違っておると思うんですよね。それからまた、田中法務大臣ははっきりと政府機関の一人でもがこれに関係しておれば、これは主権の侵害だと明言しておるんですよね。大臣どうですか、こういうふうにきわめて重大な問題について政府内部の意見の不一致がある。私たち、このままじゃこの問題をほんとうに審議していくことできないのじゃないかと思うんですが、いかがですか、この点は。これははっきりしておりますよ。お一人、お一人の、あなたと前回の条約局長と、また、あなたとそれから法務大臣との答弁違っておる。主権侵害というきわめて重大な問題について、どうでしょうか。
  134. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私にお聞きいただいておる限りにおきましては、私が申し上げたとおりなんで、私の意見は先ほど黒柳委員にお答え申し上げたとおりでございます。
  135. 星野力

    ○星野力君 あなたも国務大臣、田中法務大臣国務大臣、その間でこういう重大な問題について意見の不一致があるということになると、これはどういうことになりましょうか。
  136. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 田中法務大臣本件について打ち合わせをいただいた経緯がございませんので、田中さんがどういう場合にどういう文脈においてお答えになったか、私よく存じませんので、田中さんの御意見についていま私がコメントすることは控えたいと思います。
  137. 星野力

    ○星野力君 この問題は、あれでしょうね、ぜひ政府部内で見解を統一して示していただかなきゃならぬ問題だと思いますよね。大臣、それやっていただけますね。
  138. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私はあなたに求められるまでもなく、外交的処理をやる場合には本件が裁判所にかかっていろいろやる最後の終結まで待つわけにはいきませんから、やはり行政府としてこういう状況のもとで本件をどうとらえて処置するかという基本は、あなたのおっしゃるように、政府としてちゃんとこの事件の法律的な問題点は十分究明して、その上に立って私は外交的処理をしなければいかぬと思っておりますから、仰せのとおり、政府がこういう意見もある、こういう意見もあるが、おれはこうするというようなことではいけないと考えております。
  139. 星野力

    ○星野力君 私、いろいろ質問を用意したのですけれども、そういう御答弁、先ほど来の御答弁のために少しひっかかってしまって、もう時間がなくなってしまったのですが、一つだけお聞きしたいのですが、このような事件の発生については日本政府としても私は責任があると思う。その責任をどのように感じておられるかをお聞きしたいのであります。主権が重大に侵害された嫌疑もきわめて濃厚だ、こう言ってもいいのですが、そういう事件であります。韓国政府は一九六七年の西ドイツでの事件で苦い教訓を与えられたはずなのにもかかわらず、性こりもなく日本で同じようなことをやったわけであります。それというのも、日本政府がこれまで日本国内における韓国特務機関の暗躍を野放しにしてきた。在日大使館を根城として、外交特権をたてにして、いわばギャング一味の跳梁を許してきたという事実があると思うのです。かれらの跳梁を知りながら見ないふりをしてきた。同じような事件というのはこれまでも数多くあったと思うのですが、政府もそれを知っていたはずだと思うのです。先ほど大臣、これは降ってわいた事件だということを言われました。私もことばじりをつかまえるわけじゃございませんが、これは降ってわいた事件でなしに、政府のこれまでのそういうような態度措置、その中にこういう事件の起きる日本側の原因があったと思うのでありますが、そういうことも含めて、この事件に対する日本政府責任というものをお感じになっておられますか。
  140. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど西村委員の御質問にもありましたが、こういう事態の予防のために政府は何ができるか、できないかという問題が問われておると思うのでございます。私ども外務省立場から申しますと、外交関係のある問題につきまして確たるインフォメーションをいただいて、御通報をいただいて、それをわれわれは踏まえて配慮していかなければいかぬわけでございますが、われわれに関する限り、KCIAというものにかかる案件としての通報はいままで何にもございません。  警察当局でございますが、先ほどお答えが警察側もありましたように、一つ事件があって、権限がある範囲内において捜査が進められるというのがいまの警察当局のお立場であろうと思うのでございまして、事前にあらゆるところに警察の目が光っておるなんというのは警察国家でございまして、日本はそんな制度では、私はそういう方面の専門家じゃございませんけれども、そんなことになったらたいへんだと思うのでございます。日本政府におきましては、やはり国会から与えられた権限の範囲内でやるべきことをやり、やるべきでないことはやっていないと思っておるわけでございまして、しかし、こういう事件が起こったということにおきまして、一般的に政治的な責任は私はやはり政府が感じなければならぬ、負わなければならぬ問題だと思っております、それにもかかわらず。そこで、この問題についてわれわれは起こった以上はこの解明を的確にいたしていかなければいかぬと思います。うやむやにしてはいかぬと思います。そして解明された事実を踏まえて公正な解決をはかっていくということが、いま政府がこれにこたえる道であろうと思うんでございまして、政府がこれをうやむやにするというようなことがあったらなおいけないわけでございます。その点は厳に政府としては誤りなくやっていきたいと念願しておるわけでございます。しかし、この事件は一方国際的な事件でございまして、韓国側の御協力を得なければできない面がたくさんございますわけでございます。韓国には韓国の主権があり、韓国自体のポリシーがおありでございまして、韓国がどのようにわれわれのほうの要請にこたえていただけるかは韓国の問題でございますけれども、私は日韓両国が、黒柳さんにもお答えいたしましたように、長い友好関係を公明に続けてまいるためには、この事件をなるべく早く究明して、公正な解決を早くはかるということに両国が協力するということが望ましいと考えて、そういう趣旨で精力的に外交折衝を続けてきましたし、今後も続けてまいるつもりでございます。
  141. 星野力

    ○星野力君 委員長、もう一問――簡単ですからお願いします。
  142. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) もう、大臣の非常に大事な用がおありですから、時間が過ぎておりますから――それじゃもう一つ。答弁を入れて一分だけにひとつ……。
  143. 星野力

    ○星野力君 大臣、この種の事件というのは、たとえばKCIAの手によって在日韓国籍の人々が蒸発したとか拉致されたとかという事件、この委員会でもこれまでに十数件に及んで報告されておりますし、論議されておりますし、それらの中には日本政府も直接、間接に関与した、知っておった、それに対して処置した事件というのもあるわけでございますから、大臣が知らないと言われるのもこれは事実に反しておると思いますが、いまのようなことで、時間ございませんから一問だけ。  この前私が金在権公使、かつて本国では金機関と名のってKCIAの七局長をやっておった人物でありますが、この金公使が日本国内で警察行為をやっておるということについて質問いたしまして、それについては調べるということでございましたが、その結果をお答え願いたいのであります。
  144. 中江要介

    説明員中江要介君) 在日韓国大使館金在権公使について、いま御質問のような事実があったという報告は受けておりません。また、そういうことについて外務省としては調べる権限もございません。
  145. 星野力

    ○星野力君 だめですよ、これじゃ。この前の委員会でははっきり調べると、韓国大使館にも聞くというから、聞いただけで、そんなことありませんといわれただけではいけませんよと念を押して、調べるとはっきり言われたんだから――調べる権限もない、調べる意思もない、これじゃばかにした話ですよ。そうじゃありませんか。
  146. 中江要介

    説明員中江要介君) 御質問の趣旨は、金在権公使がどういう活動をしておられるか、どういう身分の方かということを……。
  147. 星野力

    ○星野力君 じゃありません。
  148. 中江要介

    説明員中江要介君) ではなくて……。
  149. 星野力

    ○星野力君 具体的な事例をあげて、盗聴機をしかけたり聞き込みをやったり、そのことを本人が公開の席や、本人の手紙でもって公言しているのです。
  150. 中江要介

    説明員中江要介君) どうも失礼いたしました。金大中支持派の候補者を追い落とすために盗聴録音事件を起こしたのではないかという御質問でございました。それにつきましては、事件の真相については承知しておりません。ただ、昭和四十六年六月十五日付の新聞報道によりますと、韓国通信社社長が反国家的言動をしたということで韓国に呼ばれたという事案がございまして、この方の反国家的な言動が録音されたのではないかという民間関係者の間にうわさが広まって、これが元で在日韓国居留民団の間でトラブルがあったということは聞いておりますけれども金在権公使が盗聴機をつけて云々ということについては承知しておりません。これが……。
  151. 星野力

    ○星野力君 この次にします。
  152. 羽生三七

    ○羽生三七君 質問というより、前回の私の質問大臣はお答えになって、最終的には日本の警察当局捜査結果が判断の材料、すべての判断の基準にする、そう明確に答えられて、再質問にもさらに明確にそのとおりだと、こう答えられております。そうすると、きょうの初めからの皆さんの御質問及び答弁を聞いていると、結局韓国当局答えがない限り、日本としてはどうしようもないという、こういう結論ですね。そうすると前回の、韓国がどういう結論を出そうとも、最終的にはその判断の基準は、基本的には日本捜査当局の見解である。日本捜査当局が万全かどうかということは私は疑問だということはこの前申し上げましたが、しかし、韓国捜査当局が必ずしも万全の報告をしてよこす可能性というものはほとんどない。その場合に、判断の基準はやはり日本自身が客観的にあらゆる条件を総合して、日本自身が結論を下すべきものであると私は信ずるし、また、そのとおり大臣答えられましたが、それでよろしゅうございますか。
  153. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そのとおり承知しております。
  154. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 本調査に対する質疑は本日はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後零時三十八分散会