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1973-08-30 第71回国会 参議院 外務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年八月三十日(木曜日)    午前十時八分開会     ―――――――――――――    委員の異動  八月三十日     辞任         補欠選任      小谷  守君     田中寿美子君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     理 事                 木内 四郎君                 佐藤 一郎君                 八木 一郎君                 田  英夫君     委 員                 杉原 荒太君                 加藤シヅエ君                 西村 関一君                 羽生 三七君                 渋谷 邦彦君                 松下 正寿君                 星野  力君    国務大臣        外 務 大 臣  大平 正芳君    政府委員        外務省アメリカ        局長       大河原良雄君        外務省経済協力        局長       御巫 清尚君        外務省条約局長  松永 信雄君        外務省国際連合        局長       鈴木 文彦君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        警察庁警備局参        事官       中島 二郎君        外務省アジア局        北東アジア課長  妹尾 正毅君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査  (金大中事件に関する件)  (キッシンジャー米国務長官就任に伴う日米関  係に関する件)  (沖繩米軍機SR71のカンボジア偵察行為に  関する件)  (日中航空協定に関する件)     ―――――――――――――
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  国際情勢等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 星野力

    星野力君 金大中事件についての韓国政府捜査資料が昨日発表されましたが、発表されたものは韓国側が二十八日に提供した資料の全部でありますか。
  4. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) さようでございます。
  5. 星野力

    星野力君 警察の方おいでになりますね。――それらの資料には、事件解明手がかりになるようなものが含まれておりますか。
  6. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 連絡を受けました捜査状況につきましては、車両捜査押収物についての鑑定、上陸後の犯人の足取り捜査の点につきましては捜査を継続しておると、あるいは鑑定に役立つ反応が検出されないとか、鑑定が不能であるとかいうようなことでございまして、捜査に直接役立つものはございません。ただ、船舶捜査につきましては、これも現在まで関係のある動向は出ていないということでありますが、きわめて詳しく船舶動きなどについて触れておりますので、この点はかなり捜査参考になると考えております。
  7. 星野力

    星野力君 要するに、捜査上の役に立つものなどは何にもないということだろうと思いますし、それはそのとおりだろうと思うんです。具体的なものは十一隻の船の名前だけでありまして、ほかには何一つはっきりしたものはない。おざなりきわまる資料であるということは、われわれしろうとの目からも明らかであります。要するに、時間かせぎのごまかしとしか考えられないわけであります。  ところで、日本警察捜査にしましても、私たちには理解のできないところが非常に多くあります。八月八日の事件発生から、十三日の金大中氏がソウル自宅にあらわれたあたりまでの期間には、この白昼、都心の人目の多い中で発生した事件について、目撃者証言者がほとんどあらわれなかったというのは、奇怪としか言いようのないことであります。事件発生後十日も、あるいはそれ以上もたってから、いろいろの目撃者情報提供者があらわれている。あり得ないことと思うのでありますが、どうしてこういうことになったのか、原因は何でしょうか、お答え願いたいと思います。
  8. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 目撃者証人が十日ぐらいたってから出てきたというお話でございますが、私どもといたしましては、捜査の当初から現場を中心に目撃者証人がいるかどうかという点について鋭意捜査をいたしているわけでございまして、中には、たとえば地下駐車場の向かいで車の出入りを見ております者が事件の直後に休暇をとって相当休んでからまた出勤をした、その後に事情を聞いたところ、地下駐車場本人の知っている状況について話をしたという、そういうようなまれな例外はございますが、特に目撃者証人の発見がおくれておるというふうには考えておりません。
  9. 星野力

    星野力君 ただいまのお答えでもおくれておることははっきりいたしておると思うんです。たとえば地下駐車場関係者休暇をとっておった。これだけの事件ですよ。休暇をとったって、これは海外に拉致されたわけじゃございませんから、日本の国内におる。捜査しようと思えば幾らもできることじゃありませんか。何か政治的な理由、あるいは外交的な理由で、十分に捜査しなかったのではないか。あるいはできなかったのではないかとさえ疑わざるを得ないのでありますが、そういうことはどうですか。
  10. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 私どもといたしましては、本件がいろいろ政治的な事情がからんでいるというようにも思われますので、警察といたしましては事実を客観的に究明する、できるだけ早く事実を究明するということを基本といたしておりまして、特に憶測を慎み、厳正な立場捜査をするという、そういう方針で当初から臨んでおります。
  11. 星野力

    星野力君 ホテル地下駐車場というのは、出入りの車をチェックしているはずでございますし、そこで手がかりになる情報を入手できなかったというのも、さっきのようなお話もありますけれども、まことに奇怪だと思うんです。よく新聞でも報道されました下四けたが二一九七の黒っぽい大型車に五人乗ってホテル駐車場を出たという証言が、報道面にあらわれたのは八月二十三日、八月二十二日に警察が確認されたように報道されておりますが、事実はそのとおりなんですか。
  12. 中島二郎

    説明員中島二郎君) ホテル地下駐車場におきましては、出入に際して下四けたの数字だけチェックいたしております。一台の車につきまして、警視庁管内だけとりましても、数十台から二百台くらいにまでなるわけでございまして、平均約百三十台の車があるわけでございます。現在、金大中氏が連れ出されたと思われる時間を少し幅広くとりまして、その間に出入した車三十台を抽出して捜査を進めておるわけでございますが、約四千台の車を調べる必要がございます。警視庁管内だけでも四千台の車を調べる必要があるわけでございますが、その一台一台につきまして、調べを念を入れてやっておるわけでございますが、中には調べにいったところが留守であるとか、中には車を転売してしまったとかいうようなこともありまして、力を入れてやっておるわけでございますが、なお、いま申し上げたようなことで時間がかかるという経過になっております。
  13. 星野力

    星野力君 だいぶ苦しい御答弁のようでございますが、その二一九七という車は事件関係があるんですか、ないんですか。
  14. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 二一九七につきましては、事件関係ございません。
  15. 星野力

    星野力君 それははっきりしましたか。
  16. 中島二郎

    説明員中島二郎君) はっきりいたしております。
  17. 星野力

    星野力君 警察として、いまこの事件捜査上の最大の困難はどこにございますか。
  18. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 何と申しましても被害者であります金大中氏、それから事件の起こりました際に現場周辺におりました梁一東氏、金敬仁氏が日本におられないということで、事情を聴取することができないということが、捜査上の大きな妨げになると思います。
  19. 星野力

    星野力君 わかりました。私の警察の方はよろしゅうございます。  外務省のほうへ移しますが、後宮大使が二十八日に金大中氏と会見いたしましたが、会見によって金氏が生存しておることはわかりました。一体あの会見の目的は何であったのか、生存を確かめるだけだったのか、伺っておきたいと思います。
  20. 妹尾正毅

    説明員妹尾正毅君) いろいろ取りざたされておりますし、お見舞いかたがた近況を伺うということでございました。
  21. 星野力

    星野力君 会見成果というようなものは、何かあげることできますですか、生存を確認したという以外に。大臣いかがでございますか。
  22. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国の内外でいろいろ安否が取りざたされておりました状況でございまして、大使が直接安全を確認したということは、一つの成果であったと思います。  それから第二に、金大中自身、できれば日本に参りたいという希望を表明されておるということが判明したこと。  それから韓国政府がそういうこちらの希望を受け入れられて、いち早く会見ができる事態について配慮していただいたことなどがそうではないかと考えております。
  23. 星野力

    星野力君 韓国当局がいち早く会わしてくれたと、こうおっしゃいますけれども、これはいち早くではございませんです。  見舞いのためと言われたんで、どんな見舞いのことばを述べられたのか。  それから会談内容というものを、実は詳しくお聞きしてみたいと思うのですが、私の持ち時間全部を使ってもできそうもないのでございますので、どうでしょうか、これはなるべく詳しい会見内容資料を、会話ですね、資料として提供していただけないでしょうか。  委員長、お取り計らい願いたいと思います。――じゃ、あとでそれを相談してきめてくださって、急ぎますから……。  大臣、お聞きのとおりに、警察当局としましても、金氏や梁氏の再来日ということが捜査上のきめ手であると申されておるのですが、金氏の再来日の実現について、政府の見通しいかがでございますか。
  24. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 捜査当局といたしましては、本件解明する上におきまして、金氏等から直接事情を聴取する必要があるということでございますので、われわれといたしましても、ぜひそれを実現させたいという期待をもちまして、執拗に韓国政府要請をいたしておるところでございます。ただいままでのところ、先方におきましても捜査中でございますので、ただいまの状況では応じられない。しかし応じない、絶対応じませんということは言うていないわけなんです。したがって、今後そういうことが、金氏を日本に迎えることが絶対不可能である、絶望であるというように私ども考えていないわけで、ぜひとも実現するように今後も努力したい。  また、見通しはどうかということでございますが、その点は、まだ残念ながらはっきりいたしません。
  25. 星野力

    星野力君 大臣絶望――再来日絶望でないと大臣は言われたのですが、大臣絶望されてはたまったもんじゃございませんですよ。  この問題、またあとでお伺いしますが、日本政府は、大体金大中氏の身体生命の安全に対する配慮の点で冷淡であったということがいわれております。金氏が十三日夜、ソウル自宅にたどりついた直後に、日本大使館に再度にわたって連絡を求めた、それに対して後宮大使は応じなかったということが報道されておりますが、事実でございますか。
  26. 妹尾正毅

    説明員妹尾正毅君) この点につきましては、後宮大使状況を確かめましたところ、最初電話の取り次ぎに出た者が様子がわからなくて、結局大使まで話が通じなかったということであったと了解しております。
  27. 星野力

    星野力君 十分後にさらに電話をかけたのに対しても、あとから連絡するという応答だけで、その後何の連絡もなかった、こういわれておりますが。
  28. 妹尾正毅

    説明員妹尾正毅君) その点につきましては、二回目の電話はかからなかったと、そのときの電話に出た者は報告しているという報告に接しております。
  29. 星野力

    星野力君 その辺の事実、これは私、疑問に思いますけれども、どうも大使の想度というのは理解に苦しまざるを得ないわけであります。東京から姿を消して世界の大きな問題になっておる事件、その主人公が突如としてソウルにあらわれたということは、大使館としてすぐにでも情報は入ったはずだと思うのでありますが、むしろ大使のほうから連絡を求めるなり、会いに行くなり、すぐしなければならぬ、これはそういう筋合いの問題だったと思うのです。面会するにも、十六日面会が官憲によって禁止される以前には自由に会えた、そういう状況もあったわけですが、その辺あまり接触するなと、政府から何らかの指示が現地の後宮大使のほうにいっておったというようなことはございませんか。
  30. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういうことはございません。後宮大使は、本件をめぐって、昼夜を分かたず最善を尽くしておられると、私は彼の行動に対しまして多としております。
  31. 星野力

    星野力君 政府から直接の指示は何もなかったと、こうおっしゃるのですが、そうなら、後宮大使というのは時宜の判断が非常に正しくなかったと客観的には言えると思うのです。  私は、この際大使を召還して事情を聞くなり当然すべきだと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  32. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 大使に一時帰京をさせて打ち合わせる必要が生じました場合には、そういたしたいと考えております。
  33. 星野力

    星野力君 時間がきたのですけれども、続けていいですか。
  34. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 羽生君。
  35. 羽生三七

    羽生三七君 委員長
  36. 星野力

    星野力君 委員長あともういけないですか。――じゃ、さっきの資料をひとつやってください。
  37. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 資料の点について。
  38. 妹尾正毅

    説明員妹尾正毅君) 二十八日夜の後宮大使金大中氏との会見の模様を御報告申し上げます。  会見は、二十八日夜八時二十分から八時四十分まで二十分間にわたり、金大中氏宅へ後宮大使が訪問して行なわれ、金大中氏の夫人、弟及び案内役となった警察署事務官警察官一名が同席いたしました。  会談の際の状況としましては、金氏は血色もよく、元気そうでございましたが、一般的に控え目の応酬に終始したということでございます。  会談内容といたしましては、まず大使から、「日本ではあなたの身柄について非常に心配しているので、日本大使として現状を見きわめるとともにお見舞いにきた」とあいさつをいたしまして、健康状態を尋ねましたところ、金大中氏は、「健康状態はよいが、血圧が少し低く、腹部に神経痛が少々ある」旨答えたということでございます。その後大使から、今回の事件のすみやかな解決を願う日本政府と国民の気持ちを伝えるとともに、日韓関係の維持についての考えを述べたのに対して、金大中氏は、「不幸な事件のため日本の皆さまに心配をおかけしたことは申しわけない。事件真相が究明されて、いままで築き上げてきた日韓間の友好関係がそこなわれないよう希望する」旨述べたということでございます。また、捜査協力のための再来日については、行けるようになればけっこうなのだがの趣旨を述べたということでございます。  そのほか、日本や米国についての社会時評のようなこととか、韓国反共精神などについての金大中氏の観察を金大中氏は語っていたということでございます。
  39. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 羽生君。
  40. 羽生三七

    羽生三七君 金大中氏の事件が起こっているこのときに、ちょうどアメリカポパー国務次官補、それからベネット・アメリカ国連次席代表が先日韓国を訪問して金外相会談するなど、韓国首脳と活発に接触したようでありますが、その両氏が今明日、日本外務当局国連における重要問題について協議をすると伝えられておりますが、韓国とたまたま金大中事件の起こっておるこの時期に、打ち合わせ協議してきたアメリカ代表日本は何を協議をなさろうとするのか、まずこの点をお伺いしたいと思います。
  41. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) かねてから日米間におきましては国連政策につきましては事前に打ち合わせをする例になっておるわけでございまして、ことしの国連におきましては、朝鮮問題がおそらくたな上げという姿でなくて、実質問題の討議に入ることは避けられまいという判断を両国とも持っておるわけでございまして、したがって、国連における朝鮮問題につきまして前々から日米間では協議を続けておるわけでございます。いまポパー国務次官補は、承りますと国際機関担当次官補で、そういう国連対策を御担当になっておると聞いておるわけでございまして、われわれといたしまして、来日を機会になお続けてこの問題をフォローアップするということでございます。金大中事件とは関係はございません。
  42. 羽生三七

    羽生三七君 この問題はあとからもう一回触れさせていただきます。  次に、この金大中事件に関する昨日の韓国の発表は、これはいささかも問題の核心に触れておらないことは、もう先日来、指摘されておるとおりであります。また警察当局すらも全く参考にならないと言っておるようであります。一部には、この事件については日本韓国アメリカの三国のトップレベルですでに暗黙の了解ができているのではないかといううわさすら伝わっておるわけです。私は必ずしもそれが信憑性があるというわけではありません。そういううわさすら伝わっておる。アジア情勢現状から見て、ある一定の冷却期間を置いて、そしてタイミングを見はからって発表するんではないかと、そういう説すら伝わっておるんですが、これはもちろん私は信憑性がある問題とは言いませんけれども、それを疑われてもしかたがないようなさまざまな動きがあるように思えますが、外相の御見解を伺わせていただきます。
  43. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 第一、本拉致事件日本で行なわれた事件でございますので、日本政府としてこれを解明して、そしてこれに解決をもたらしてまいる責任があるわけでございます。で、これは日本政府自身責任でございますが、重要な参考人でございまする金大中氏等がいま不幸にして日本法域の外にあるわけでございますので、まず第一の仕事は、警察当局といたしましては、金大中氏等の再来日を求めて直接事件核心に触れた調査をいたさなければならぬということでございますので、ぜひともそれを実現いたしたいということで、いま努力をいたしておるところでございます。また、韓国法域の中に入りましてからの犯行につきましては、韓国政府捜査されておると聞いておりますが、このうち参考になるものはできるだけ詳細に提供を願いたいということを警察当局希望いたしております。したがって、政府といたしましては、先ほど発表されましたように十項目にわたる要求をいたしておるわけでございます。そのうちの四項目につきまして、不十分ながらきのう一応の中間的な材料の提供があったわけでございまして、これにつきましては、この評価につきましては、先ほど警察当局からも、一部参考になるけれどもどうも事件核心に触れた内容とも言えないということでございます。まだ御提供いただいていないものもたくさんあるわけでございますので、きのう、さらに私ども資料提供を督促いたしておるわけでございまして、われわれは事件解明をするということ、そしてそれに曇りない解決をせなけりゃならぬということがわれわれの任務だと思っておるんでございまして、日米間首脳がこういう問題で打ち合わせまして何かほどよい解決をなんというような、そんなふらちなことは毛頭考えておりません。
  44. 羽生三七

    羽生三七君 今回のような、何ら核心に触れぬ報告日本政府が満足しておるものではないことは、昨日来の田中法相、それから外務大臣の御答弁にもうかがわれますが、しかしその名も高い韓国中央情報部があの程度の調査しかできないとまともに考える人は私はだれもいないと思うんです。日本政府は重ねて徹底的な資料要求をすべきであるし、またなさっておるようでありますが、一番重要なことは、何にもまして金大本人がもう一回日本に再来日できることを実現することが私は基本的な問題だと思うんです。したがって、この捜査が片づくまではだめだということになればこれはいつ片づくかもわからない。際限のない――私は近いうちにこの結論が出るとは考えられない。非常に長引くんではないか、そうであるならば、金大中氏の来日だけは切り離してすみやかに、結論が出るのを待ってからでなしに、その過程においてでもこの問題の金大中氏の来日だけは切り離して別途に要求すべきではないかと思いますが、いかがでございますか。
  45. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほども申し上げましたように、警察当局といたしましては、重要な参考人としてぜひ再来日を願って核心に触れた調査をしなければならぬという強い要求をずっと持っておるわけでございまして、一日も早くそれが実現されることをわれわれは期待して韓国政府要請いたしておるわけでございます。韓国政府態度でございますが、韓国政府としてはいま捜査中でございますので当面応じがたいという態度でございますが、絶対応じないとはいままで言ったことはないということを先ほど星野さんの御質問に答えたとおりでございまして、向こうの捜査の御都合もあると私は思いますけれども、われわれといたしましては一日も早く再来日を実現すべきであるという立場から、執拗に要請を続けておるわけでございまして、この問題の解明をすっきりいたしまして、公正な解決をやるということは、日韓関係にとりましても非常に大事なことでございますから、私は韓国政府といたしましても、これに正当な配慮を加えていただくことを私は期待いたしております。
  46. 羽生三七

    羽生三七君 この金大中事件は南北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国及び韓国関係にも重大な影響を持ち始めたようであります。これはもう御承知のとおりであります。この問題は朝鮮半島自体の問題であるとともに、これは国際関係にも重要な影響があるし、国連自体にも私は今度の秋の総会等にも関連する多くの問題を内包しておると思っております。先ほど述べた米韓会談は、先ほど大臣もお触れになりましたように、これは今秋の国連総会に提起が予想される朝鮮問題についての打ち合わせであることは間違いないと思います。一説には、この金大中事件真相は朝鮮問題が片づくまでは明らかにされないのではないか、そういう説すら出ております。これは説でありますから、そういうことになるとは限りません。しかしこれはもちろんいま申し上げたとおり推測でありますけれども日本政府としてはこの韓国側調査結果を期限なしに、無期限にいつまでたっても待って、どんなに遷延しても待つという態度をおとりになるのかどうか、何か私はそう早急に結論が出るとも想像できませんけれども、この辺はいかがにお考えになりますか、お伺いいたします。
  47. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この問題は早急な解決が望ましいわけでございます。したがって、事態の究明を急がなければならぬわけでございまして、いつまでもだらだらやるわけにいかぬと思うのでありまして、ただいままでもたらされたわがほうの捜査に対する協力、決して満足はいたしていないわけでございまして、今後これ以上の資料提供できませんというてきたわけでもないわけでございまして、これから韓国政府といたしましても、私ども日韓関係の将来も考え、本事件重要性にもかんがみられて、実のある御協力が願えるものといま期待しておるわけでございまして、そしてそのために必要な資料提供を終始求めていっておるわけでございますので、いましばらくその先方協力期待をかけさせていただきたいと思うのでございます。しかし、いつまでもだらだらしていいとは私たち絶対に考えておりません。
  48. 羽生三七

    羽生三七君 昨日田中法務大臣は、この問題は政治的解決以外にはないと、こう言っておるようであります。それで外務大臣はいまも申し上げましたように、どんなに長引いても韓国調査結果を待つのか、あるいは法務大臣の言うように、政治的解決考えられることがあるのか、その辺はいかがでありますか、お伺いをいたします。
  49. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 田中さんのおっしゃる政治的解決というのがどういうことなのか、まだ打ち合わせを願っておりませんので、私もわからぬのでございますけれども、私はいま事態解明が第一だと思っておるのでありまして、それが解明されない限り解決の方策が立たないわけでございますので、まず解明を急ぐということをいちずに考えておるわけでございまして、それを踏まえた上で内外の納得のいく解決をやらなければならぬと私は考えております。
  50. 羽生三七

    羽生三七君 次の質問は、大臣はどうお考えになるかわかりませんが、私としては非常に重要に考えておることであります。これはどういうことかといいますと、韓国のような独裁政権下の調査については、われわれがある程度の方向を想定することはかたくありません。この前、一昨日の質問にも、私ちょっと関連で申し上げましたように、韓国調査とわれわれの想定とは全く食い違うことはないとは言えない。しかし私はそれをあらためてまたここで問題にしようとは思いません。ただ問題は、ある程度の想定をすることはできる。韓国調査というものが少なくとも政府関係機関が関与しておったとかどうとか、まあ日本で一般的に言われておるような結論が必ずしも出るとは思わないが、それはともかくとして、どのような調査結果が出ようとも、韓国当局調査が公表されれば、それが日本政府態度を決定する基本的な基準になるかどうかということです。つまり韓国調査内容がわれわれと食い違うとか食い違わぬとかということは、一昨日の私の関連質問で、外務大臣はしばらくその情勢を待つ、こういうお話でしたから私はあえて言いません。ただその調査の公表された結果が全くわれわれの考えと食い違う、おそらく日本当局の、おそらく大部分の人たち考えておることも食い違う。にもかかわらず、それが韓国の正式の調査結果であるならば、それが日本政府態度を決定する基本的な基準となるのかどうか。私はこれは大臣はどうお考えになるか知らぬが、私は一番重要な問題だと考えますので、大臣の見解をお伺いしたい。
  51. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私ども日本政府はすぐれた捜査当局を持っておるわけでございまして、しかもこの事件日本の国内で起こった事件でございまして、私ども日本捜査当局捜査に信頼を置いてそして判断すべきものと考えておるわけでございます。ただ、いま重要な参考人韓国にあられる、韓国捜査しておるということですから、参考資料としてできるだけ豊富な資料の御提供は求めなければならぬと考えておりまするし、重要な参考人につきましても直接尋問の機会を得たいということをわれわれは期待いたしておるわけでございまして、あくまでも日本捜査当局解明した事実というものを中心に日本政府としては判断すべきものと考えております。
  52. 羽生三七

    羽生三七君 必ずしも満足ではありませんが、私は大体の方向としてはそれで正しいと思います。そうでないと、これはおそらく日本のあらゆる階層の人たちがいろいろな疑惑を持っておるそのとおりの結果が韓国から公表された場合に、それが日本政府態度を決定する基準になったら私たいへんだと思いますが、しかし日本の当局の――当局か万全とは必ずしも私も信じておりません。おりませんが、しかし日本の当局の捜査がその判断の中心課題になるということになれば私は非常にけっこうなことと思いますので、その考えは貫いていただきたいと思います。  次に韓国の南北調整委員会の韓国側委員長である韓国中央情報部長でもある李厚洛氏というのですか、李氏が韓国中央情報部員は一人も関係していないと、一人でも関係していれば私は全責任をとると、こう言い切っているようであります。そうであるならば、韓国側の出す結論政府機関に関係はなかったという発表になることはおおよそ推測できるし、そういう布石をしておるのではないかとも言えるのではないかと考えられますが、こういう中央情報部長というような要職の人が何ら関係のないということを先に言ってしまって、一体あと韓国政府としてはどんな結論が出てくるのか。これはよその国のことだからわれわれがいまここで想像するわけにはいきませんが、これは大臣の御感想を承りたいと思います。
  53. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま私ども韓国政府に求めておるのは、この事件韓国がどのように処理しようとお考えでございますかということではないのでありまして、私ども日本捜査当局か必要とする資料提供を求めておるわけでございまして、日本政府としての判断を固める上におきまして事態解明を急がなければならぬという立場に立っておるわけでございまして、まあいろいろ韓国の国内におきましても、この問題につきまして、この問題はたいへんな問題になっておるようでございまして、この問題をめぐっていろいろな動きが報道されておるわけでございますが、それは韓国における情報としてわれわれは取り扱っておるわけにすぎないのであります。
  54. 羽生三七

    羽生三七君 一番最初の問題にちょっと戻るのですが、先ほども述べた米韓会談ですね、それから続いてアメリカ代表日本へ来て会談をきょうからやっておるようですが、国連における朝鮮問題の討論であることは、朝鮮問題に関連しておることは、先ほどの大臣の御答弁からもおおよそ大体推察されるのですが、これはちょっと余談になりますけれどもアメリカ代表韓国との間ではいろいろな話し合いがされたようですが、これは金大中事件と直接の関係はありませんけれども、朝鮮問題の成り行きによっては、いわゆる在韓国連軍の撤退についてはアメリカが拒否権を行使することもあり得ると、こういうような話し合いもなされて、それからこれも想像でしょうが、日韓米三国の対国連戦略がおおよそきまっておるのではないかという、きまってきたんではないかという報道もされております。それはしかし想像ですから私あえて多くを申し上げません。ただ問題は、先日来議論がありましたように、金大中事件日本の主権にかかわる問題であるばかりではなしに、これは国際的にも大きな問題を投げかけておるし、さらに国連における朝鮮問題の討議にもきわめて深い影響を持つ性質の問題だと思います。そういうきわめて深い影響を持つ問題であるのに、このような時期に、民主主義が圧殺されて独裁が強行されておるような韓国と、たとえアメリカがその中間に介在しておるとはいっても、秋の国連対策をこの時期に、この時点で、金大中事件が片づかないのに国連対策協議するのは私はこれは行き過ぎではないかと、むしろ慎むべきではないかと、これは秋の国連総会に対する日米日韓米の単なる事務的打ち合わせと言われるかもしれませんけれども、これは事務的打ち合わせは基本的な打ち合わせにも私はつながると思う。しかも、金大中事件が国際的にも大きな影響力を持ち、あるいは国連の朝鮮問題の討議にも重要な影響を持つ時期に、あえて、それは事務的な打ち合わせかどうかは知りませんが、日韓米が朝鮮問題に関連して国連総会に備える討議をするということは、打ち合わせをするということは私は適当でないと、こう判断いたしますが、いかがでございましょうか。
  55. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 朝鮮問題が、今日のような国際情勢のもとで、来たるべき国連総会でどのように討議され処理されるであろうかということは、われわれ前々から関心も持ち、検討もしてまいっておるわけでございまして、これは朝鮮半島の平和と安定という高次元の目的から、朝鮮問題で問題になるであろう各アイテムはどのように位づけてわれわれの態度をきめたらいいかということでございまして、先ほども申しましたように、金大中事件とは全然関係ないことなんでございます。金大中事件というのは、先ほども申しましたように、いまこれ事件解明中なんでございまして、この解明を急ぐということしかいま考えていないわけなんでございまして、これが国連対策というようなものにからめていま私は考えるべきでないと思っておるわけでございます。
  56. 羽生三七

    羽生三七君 大臣若干私の質問を誤解されておると思うのですが、私の言うのは、からめて考えるのではなしに、こういう時期に、これは金大中事件というものが国際的にも大きな影響があるし、国連の朝鮮問題の討議にすら私は影響があると思うのです。ですからこれにからめて、日米韓あるいは日韓米とも言えますが、いま今明日は日米ですが、討議するのは私は時期的にも適当ではないと、こういうことを申し上げておるのです。からめてやっておるというのではないのです。からまろうがからまるまいが、どうせ金大中事件国連の朝鮮問題の討議にある程度の影響を与えると想定されるので、この時期にそういう協議をされるのは適当ではないのではないかと、こういうことを申し上げておるのです。
  57. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私が申し上げたのは、この九月下旬には国連総会が始まるわけでございまして、したがって、この問題はもうすでに待ったなしでくるわけなんでございまして、したがって、それに対するわれわれの検討は進めておかなければならぬと、日米韓も十分協議をしておこうということはちっとも私は差しつかえないことと考えておるわけでございます。
  58. 羽生三七

    羽生三七君 これは時間の関係もあるし、私はこれ以上申しませんが、国連総会が間近に迫っておって、それに備えて準備するのは一向差しつかえないといいますが、それはもちろん抽象的にはそのとおりです。しかし、金大中事件がその結果いかんによっては実は朝鮮問題に大きな影響を持つかもしれない、そういうことを私は申し上げておるので、それを頭に置いて考えるならば、必ずしもこの時期は適当だとは言えないと、こういうことを申し上げておるわけです。  時間もありませんし、あとこの金大中事件については田委員からさらに引き続いて詳しい質問がありますので、この問題はこれでひとまずおいて、次に一点だけ次の問題をお尋ねをしたいのですが、これは全く違った問題です。ロジャーズ国務長官のあとに新たにキッシンジャー大統領補佐官が国務長官に指名されたことはこれは言うまでもございません。そのサンクレメンテにおける指名後の初の記者会見でキッシンジャー氏は、ニクソン政権の残りの任期は、欧州及び日本との関係にこれまでより大きな重点を置くことになると、こう抱負を述べております。そういう抱負を述べておる。それからまたさきの、本年五月でしたが、アメリカの外交教書に盛られた対日関係の方針の基本的なものは、対日関係に関する部分は、これはキッシンジャー氏が主としてその方向をきめたと、こう言われております。しかもその構想は、日本に大国として責任を求めるという、そういう趣旨のものだと思います。こういう事情を背景としてロジャーズ国務長官にかわってキッシンジャー大統領補佐官が国務長官に就任したわけですが、日本に一体どういうことを求めようとするのであろうかと、また、これと関連して一緒にお尋ねいたしますが、外務当局は、キッシンジャー構想といわれる新大西洋憲章についても参加をきめられたように見られております。ただ、軍事的な義務は負わないと、しかし、この構想に参加するとも伝えられております。したがって、ロジャーズ長官にかわるキッシンジャー国務長官の新たなる就任、それが対日政策にいかなる影響を及ぼすであろうか、この問題について外相の所見をお伺いしたい。これは問題が金大中事件と違って場違いな感がいたしますが、当面の問題ですからお伺いさせていただきます。
  59. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) キッシンジャー氏は、大統領の特別補佐官として基本的な外交政策の立案と推進にすでにあたられておられた方でございまして、しかもそういう地位をそのまま保持されながら国務長官に指名されたということでございますので、まず第一に、アメリカの外交政策の基本はこれによって変わらないということが保障されると思うのであります。  第二に、いま羽生さん御指摘の、ヨーロッパと日本について特に力点を置くということが主張されておるようでございます。で、察するに、これはこれまでのニクソン外交が米中の和解とか、あるいは米ソの共存、互恵関係の発展というような点に相当エネルギーを費やされて、ヨーロッパ、日本という点、もう一度ここで見直してみる必要があるんじゃないかと、それをキッシンジャー構想という名において、ここ五年ないし十年の将来の展望に立ちまして先進民主工業国家間の新しい協力のガイドラインというようなものを構想されて、提示されたのではないかと思うのであります。この構想につきましては、すでにECやNATOとも協議が行なわれておるようでございまするし、日本とも相談したいということでございます。日本の意見もよく伺いたいと、自分たちの意見もよく申し述べたいということでございましたが、ただこの間、田中総理の御訪米の際に、十分これに割愛する時間がとれなかったわけでございまするので、われわれの了解といたしましては、新しい、大事な歴史の転換期であるし、グローバルな問題がたくさん出ておるわけでございますので、新しい協力の指針というようなものをひとつ検討してみようということについては十分理解はできますと、だからひとつ御協議には応じますと、つまり参加するという、また参加する実体がきまっていないわけなんでございまして……。
  60. 羽生三七

    羽生三七君 途中でございますが、それは新大西洋憲章のことですね。
  61. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ええ。そういうものに参加する客体がないわけなんですから、参加のしようもないわけです。いまの段階は、つまりキッシンジャー提言なるものについてあなたのほうの意見も聞かしてくれ、自分らの考えもよく述べますから一ぺん協議しようじゃないかというので、キッシンジャー氏と安川大使との間ですでに協議が始まっておるわけでございます。日米共同声明には、その点につきまして各国が受け入れられるようなものができることが望ましいという趣旨のことをうたってあるわけでございまして、いまの段階、そういうひとつ相談してみようという段階にあるわけでございます。参加云々の段階ではないわけでございます。
  62. 羽生三七

    羽生三七君 時間がないから結論をいたしますけれども、客体がないから参加ということは言えないと思います、確かに。ですが、いわゆるキッシンジャー構想に一枚加わるという、そういうことを質問なら、時間とりますので、そういう意味でよろしいですか。
  63. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それがすでにもう貿易にいたしましても、通貨の問題にいたしましても、資源問題にいたしましても、新しい協力のやり方がいろいろ模索されておるわけですね。つまり新しい協力のガイドラインというようなものがどういうものかということは、すでに始まっておるわけで、日本もそういうOECDとかCトゥエンティーとかいうような場を通じまして各国と協議しておるわけでございまして、こういう問題はもうすでに参加しておると思うのであります、そういう問題の討議には。ただ、今度できるかできないかわかりませんけれども、また、どういう姿でできるかわかりませんけれども、キッシンジャー構想といわれるようなものがどういう姿で各国の理解を得てでき上がるか、一つになるか、二つになるか、三つになるか、一つにまとまった姿でできないのか、そのあたりまだよくわからぬのです。しかし、その中の中身になる実体面におきましては、すでにもう各国で、各分野におきまして、私は新しい協力は始まっておるというように思うのでありまして、これからヨーロッパとも協議して、その反応もまだ私どもよく、アメリカ自身もまだよくつかんでいないようでございますし、私どももまだ伺っておりません。安川・キッシンジャー会談も、もう二回ほど行なわれましたけれども、今度御就任になりまして、いま、ちょっととんざしておるようでございまして、もう少しこれ討議、協議を続けてみまして、それでじっくり考えてみるべき課題でないかと私は思っておるのであります。
  64. 羽生三七

    羽生三七君 最後に……。  日本が先進国の一員であることは間違いないし、それからGNPでは世界のトップクラスの国である。したがって、日本アメリカ、欧州等のつながりがきわめて重要であることは、これは当然でありますけれども、しかし、日本がアジアの一員であることは、間違いのないこれも事実です。したがって、新大西洋憲章で日本が何かGNP大国になり、先進国のトップにおるということで、そのキッシンジャー構想の新大西洋憲章、まだできてはいないけれども、そういうふうなものに乗っかっていってアジアを軽く見るということにはならないかどうか、その辺の杞憂を私は持っておるんですが、その辺は間違いございませんか。
  65. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日本は、確かに仰せのように経済的な力を相当程度つちかってきておることは事実でございますけれども、われわれはそれを、これがヨーロッパにあるわけでもないし、アメリカの周辺にある国でもないわけでございます。確かに仰せのように、アジアに位しておるわけでございます。そのゆえにこそ、日本のことが問題性を持つのであるということはよく承知いたしておるわけでございまして、われわれがアメリカとつき合い、ヨーロッパとつき合っていくという場合に、そこにアジアがかりにいなくても一つのいすがちゃんとあるということを心得てわれわれ終始やっているわけでございます。その点は仰せのように、われわれの外交の基本にちゃんと踏まえたコンセプトを持ってやっておりますし、今後も気をつけていかなければならぬと思っております。
  66. 羽生三七

    羽生三七君 時間がきたので、これで終わります。
  67. 田英夫

    ○田英夫君 私は金大中問題にしぼってお尋ねをいたしますが、最初に、この期に及んでたいへん初歩的なことをお聞きするんで恐縮ですけれども警察庁に伺いたいのは、警察庁――政府のほうでは金大中誘拐事件というものを予想しておられたか、あるいはそういう、金大中氏の身辺に何事か起こるということの情報を持っておられたんじゃないんですか。
  68. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 予想はいたしておりません。私ども金大中氏に関して知っておったことは、韓国の前国会議員で、昭和四十六年に行なわれた大統領選挙に新民党から立候補して現朴大統領と争った人物であるということ、昭和四十七年十月十一日に国会議員の資格で来日以来、アメリカ日本との間を往来し、ことしの七月十日に三度目の入国をしたこと、ことしの七月には「独裁と私の闘争」という金大中氏の著書がわが国で市販されたこと、こういうことを承知いたしておりましたが、こういう事件が起こるということは全く予想いたしておりません。
  69. 田英夫

    ○田英夫君 それはきわめて公式な答弁だと思うんですが、私どもはそういうふうに、警察庁の日ごろの活動から考えて、思えないんです。いろいろな団体の活動について実に詳細にフォローしておられるし、その中に人間を入れるというようなことまでおやりになっていることをこれは常識としてみんな知っています。しかも事件の前に、在日韓国人の皆さんの中の一部に金大中氏が誘拐をされるというようなうわさ情報が流れていたことは事実であります。そういう中で、これを警察庁がつかんでおられないとこの公式の席で断言をしていいのかどうか。警察庁の幹部の方が在日韓国大使館の幹部の人と会ったということも言われている中で、中島事官がここでそれを断言をしていいのかどうか、あらためてお聞きいたします。
  70. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 在日韓国人の間に誘拐されるといううわさがあったということは、全く承知いたしておりませんでした。
  71. 田英夫

    ○田英夫君 だから警察が怠慢だとは言いませんけれども、いまのこの御答弁は記録に残っているわけですから、さらに私ども調査を進めますけれども、その問題はそれとして、先ほど大臣は、現在は事件解明を急ぐ、これが第一であると。しかもその事件解明は、韓国側捜査結果にとらわれるのではなくて、日本側の独自の捜査調査によって解明をしていくというふうにおっしゃったと思いますが、それでよろしゅうございますか。
  72. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) さようでございます。
  73. 田英夫

    ○田英夫君 これは外務省並びに警察庁がおいでになりますからお聞きするんですけれども日本独自の立場調査捜査を進めるということになればいろいろのことが想定される。何も韓国政府機関がやったと断定をして捜査をするわけではもちろんありませんし、そうあってはならぬでしょうけれども、しかし、そういうことも決して考えられないわけではありませんから、日本におけるいわゆるKCIAなりの政府機関の活動状況、あるいはそうした人たちがどこにどういうふうに存在をしているか、外務省立場から言えば、少なくとも在日韓国大使館の中でだれがKCIAであるかというようなことはつかんでおられなければならないと思いますが、この点は、私は実は六月のこの外務委員会でも、先週の参議院の法務委員会でもお尋ねをし、またそのリストを出してくれとお願いをしているわけですけれども、ついにリストはいまだに出てこないわけですが、つかんでおられないのか、つかめないのか。つかめないとなれば捜査の上で非常に支障があると思いますが、まず外務省とそして警察庁のほうから、それぞれのお立場でお答えいただきたいと思います。
  74. 妹尾正毅

    説明員妹尾正毅君) お答え申し上げます。  外務省では在日韓国大使館あるいは日本にある総領事館、領事館等にKCIAの出身者がいるかいないか、承知しておりません。それは先般お答え申し上げたときの時点から変わっていないということでございます。  で、その理由につきましても、文書にまとめまして資料の形でお答え申し上げておりますので、すでに御承知のことと思いますが、ただ一言申し添えたいのは、外務省としては、これは現在わからないということで満足しているわけではなく、さらにこの点に関する実態を把握するように努力を続けているということでございます。
  75. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 日本におきますKCIAの活動につきましては、警察といたしましては全く把握いたしておりません。  ただいまのお尋ねで、そういう活動がわからなければ捜査に支障があるじゃないかというお尋ねでございますが、本件との関連で具体的な容疑が出てまいれば、当然そういう点についても調査を進めなければならないと思いますが、現在の段階では調査をいたしておりません。
  76. 西村関一

    ○西村関一君 関連。  警察庁の警備局ですね、参事官は。――中島事官にお尋ねいたします。  先ほどから金大中事件に対して、何らこういうことに対する、もちろん予測はしてなかったし、懸念もしてなかった、こういう御答弁でありました。また、韓国の中央情報部の部員が日本でどういう活動をしているかということについても全然調べていなかった、こういう御答弁でありました。私の知る範囲において警備局――警備の仕事というものは大体においてそういうことを中心にやられるのだというふうに理解しておるんです。そういうことを中心に、つまり在日外国人の動静、その思想的背景、その関係しているところの団体、そういうことを克明に調べるのが私は警備警察の現在の任務――そのことのよしあしは別といたしまして、そういうことをやっておられるというふうに理解しているんです。しかし、いまの御答弁によりますと、全然そういうことはやっていない、またしたがって関知していない、こういうことでありますが、実は金大中氏はあの事件のありました当日の午前中に私と会見する約束だったのです。しかも、御本人は転々と滞在しておるホテルをかえておるし、場所も明示しておりません。事務所もわかりません。ただ、事務所の電話番号だけは私も知っておりましたが、それも向こうからの一方的な電話によりまして、八日の日の午前中にお目にかかりますという金大中氏御本人からの電話がございました。私が直接電話に出たのであります。それが時間については参ります前に申し上げますということでございましたが、十二時まで待ちましたけれども、私はほかの予定をキャンセルいたしまして金大中氏の来られるのを待っておったのであります。しかも、国会の中であるならば身辺の危険についても心配はなかろうということで、会館の私の部屋で会うという約束をしたのであります。ところが、十二時になりましても何らの連絡もなければ本人はあらわれてこないということで、私のキャッチしておりました、事務所であろうと思いますが電話をかけましたところが、秘書らしい人が驚いて、まだ行っておりませんか、当然先生のところへ行っておるはずでございますがということで非常に驚いた表情でございました。すぐに調べまして直ちに連絡をいたしますと言いながら何の連絡もありませんし、もちろん本人はあらわれてきません。そこへあの事件が起こっておるのであります。こういうことは参事官御存じでしょう、私との関係。おそらくそういうようないきさつがあったということは警備局ではキャッチしておられるでしょう。しておられないとすれば少しそれは怠慢だと思うのです。それほど警戒をしておるのです。そういうことを警備局では全然知らなかったということは私はおかしいと思うのであります。私は何もそういうことを警察に知らせる必要がありませんからそんなことは言っておりませんけれども、しかしこれほどの、金大中氏ほどの大ものの動静については、それこそ警備警察として十分キャッチしておられるはずだと思うのであります。そのことのよしあしは別でございますが、そういうことを全然承知しておらなかったということは私はおかしいと思うのです。そこへこういう事件が起こったということになりますと、警備警察は一体何をやっておったかということを言わざるを得ないのでありますが、いかがですか。
  77. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 警察といたしましては、金大中氏に関しましては野党の大統領候補者であったということ、また、朴政権の批判を行なっているということなどから関心を持っておったことは事実でございます。したがいまして、今回七月十日に入国をしてまいりました際も、銀座の第一ホテルに落ち着いたことまで確認をいたしております。その後、所在がわからなくなりまして、先生おっしゃったように、結果的には所々のホテルに偽名で転々とされたというようなことで、私どもとしては金大中氏の所在をつかむことができなかったという経緯になっております。したがいまして――したがいましてと申しますか、先生とその日に会うことになっておったというようなことにつきましては、全然承知いたしておりませんでした。
  78. 西村関一

    ○西村関一君 自後においてそういうことについての情報はつかまれましかた。
  79. 中島二郎

    説明員中島二郎君) ほかからそういう話は聞いております。
  80. 西村関一

    ○西村関一君 この問題はよろしいです、ほかからというのはどこからということは追及いたしません。しかし、いまの御答弁によりますと、どうもまことに警備警察たよりないという感じを受けざるを得ないのであります。大平外務大臣は、わが国の調査機関、情報機関は完ぺきに近いから信頼できる、こういう御答弁でありましたが、こういう、いま私は自分に関係のあることでございますから、警察庁の担当官に聞いたのであります。こういうことでは、はたして警察情報調査というものを信頼できますか。私は、その点に関して大平外務大臣の所見を伺いたいのであります。  実は、金大中事件はこれは韓国政府あるいは準政府機関あるいはその他のもの、これは調査を待たないとわかりませんが、どういうものが彼を白昼東京のどまんなかのホテルから拉致して、しかも日本の国道を自動車で走って大阪まで行って、大阪から船に乗せて外に待機しておったところの大きな船に乗せて韓国まで連れて行った。こういうことは私は事件真相を明確にしないまでもなく明らかにこれは日本の主権が脅かされた、私は韓国政府機関がやったという断定はもちろんいたしません。そういうことは慎まなければならないことだと思いますが、こういうことが公然と行なわれたという事実は否定できません。このことに対してわが国の警備警察はきわめてたよりない、わが国の警察体制というものはまことに信頼できないという印象を国民が持つのは当然だと思うのであります。事は明らかにわが国の主権の問題に大なり小なりかかわりを持つと思うのでございます。その点に対して、先ほどからの外務大臣の御答弁を伺っておりますと、真相が明らかにされるまではこれを見守っていかなければならない、韓国政府調査の中間報告は満足できない、さらに報告を求めるというくらいの御答弁しかありません。もっと主権にかかわるところの問題でございますから、こういう事件が起こった以上は、まず何よりも金大中氏を日本に呼び戻す。先ほど羽生委員からも強いお話がございましたが、そういう決意を持って外交の責任者であるところの外務大臣は当たってもらわなければ大問題だと私は考えております。関連でございますからこれ以上申し上げませんが、大平外務大臣の御所見を承りたい。
  81. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 第一に、わが国の警察当局に対する評価の問題でございますが、民主解放社会におきまして与えられた権限の中で公安を維持していくということはたいへんむずかしい骨の折れる仕事であることは十分拝察いたします。そして現在のわが国の警察当局が非常にすぐれた能力を持ち、実績をあげておられることに敬意を表しておるわけでございまして、にもかかわらずこういう不幸な陥穽があったわけでございまして、これは警察当局といたしましても反省されておると思いまするし、私どもといたしましてもたいへん残念なことと考えておるわけでございます。しかし、われわれの警察機関以外に頼むべきところはないわけでございますから、せっかくの誠実な任務の御遂行を期待いたしたいと考えております。  それから第二の主権侵害の問題でございますが、これは西村先生も触れられたように、もし先方の官憲が何らかの形において介入しておるということになりますと、主権侵害の問題が出てまいりますわけでございまして、さればこそ事態の究明を急いで真相を明らかにせにゃならぬとわれわれは考えておるわけでございまして、日本の主権は侵すべからざる主権として私どもはあくまでも擁護していかなけりゃならぬと考えております。  第三の問題は、金大中氏の再来日の問題でございまして、本件につきましては羽生先生にもお答え申し上げましたように、再来日をわれわれは強く希望いたしておるわけでございまして、今後もこれを要請してその実現を期してまいりたいと考えております。
  82. 田英夫

    ○田英夫君 先ほどの私の質問に外務、警察庁両当局からお答えいただいたわけですが、これを伺ってたいへん驚いたんですが、つまり日本政府はKCIAについて、在日KCIAの活動について全く調べていないということですね。これがはっきりしたと思います。そう考えざるを得ない、お二人の答弁から。一方で李厚洛中央情報部長はCIAは関係していない、もし一人でもいたら自分はやめると、こう大みえを切っている。羽生さんがさっき言われたとおりであります。向こうがそう言っている。日本捜査当局も何も調べない。世間の人はそこに大きな疑惑を特っていることは否定できない事実であります。これ、事件なんか解明できっこないんじゃないでしょうか。そういうことでこの金大中事件解明できると思ったら、国民は待っているし、世界の人もこの事件が明快に明らかにされることを注目していると思います。なぜ在日KCIAを調査しないのか、これが外交的な配慮とすれば、こんな間違った外交的な配慮はないと思うのです。  そこで、具体的な幾つかの事件をこの際確認をして、政府がどの程度韓国の朴政権、政府機関がやっていることを知っておられるのか、特に日本に関連をして二つ、三つの事例をすでにここでも、外務委員会でも項目だけはあげた問題ですけれども、お尋ねをしたいと思います。  すでに六月の委員会でお聞きいたしました帰化韓国人――日本人に帰化した沢本三次という人か三月十日にソウルで逮捕をされた、無期懲役という判決を受けております。これはもちろん外務省もご存じだと思いますけれども、これはご存じですね。
  83. 妹尾正毅

    説明員妹尾正毅君) 承知しております。
  84. 田英夫

    ○田英夫君 この事件でさまざまな問題点がありますけれども、これも当委員会ですでに出している問題ですけれども韓国政府は五月三十日にソウルで初めて公判をやりました。その日に同時に容疑内容なるものを発表をしておりますが、それに関連をして、この事件にはほかに日本人及び在日韓国人の四人の関係者がいるという発表をしておる。その中に日本人で中村正雄という人が、東京に住んでいる人ですが、これは発表されて韓国の新聞には写真入りで大きく報道をされている。ところが、これもこの委員会で申し上げましたが、この中村正雄という人のところに在日韓国大使館の朴載京という一等書記官が自宅にまであらわれて取り調べをしている。そのときに出席をしておられた中江参事官に、この朴載京という人物がCIAであるかどうかお調べいただきたいと、すでに六月ですから、二カ月前にお願いをしたけれども、いまだに御返事がない。これをまず早急にお調べいただいて、きょうじゅうにも私にお知らせいただきたい。いまこの委員会ですぐにお答えいただければ一番けっこうですけれども、そのことをまずお願いします。
  85. 妹尾正毅

    説明員妹尾正毅君) 朴載京氏がKCIAの出身者であるかどうかということにつきまして、きょうじゅうにお答えすることは困難かと存じます。
  86. 田英夫

    ○田英夫君 それでは調べられるのかどうか、確認できるのかどうか、日にちをかせばそういうことについて調査をすることができるのかどうか、これはいかがですか。
  87. 妹尾正毅

    説明員妹尾正毅君) 何ぶんにもある範囲外交団リストでは外交官の通常の職務の肩書きで載っている方ばかりで、そういう人たちがKCIAの出身者であるかどうか、こういうことにつきましては、私ども限りではわからないわけでございます。ただしたがって、外務省限りでできることというのは非常に限られておるわけでございます。そういう意味で、私どもだけでお約束申し上げるのはむずかしいということを申し上げているわけでございますが、確認するということにつきましては、いろいろの方法があり得るのではないかということで、現在せっかく努力をしているところだということでございます。
  88. 田英夫

    ○田英夫君 私が問題だと思うのは、中村さんという人は現在も一市民として仕事をしておられるのですね。韓国側は一方的にこの人は指名手配だという、指名手配といってるのですよ。六月の委員会で警察庁の国際刑事警察機構担当の方においでいただいて、指名手配の手続がきているかどうか。当然日本人である中村さんを指名手配して逮捕するためには国際刑事警察機構を通じて警察庁で、日本警察が逮捕をしなければならないはずでありますが、六月の段階ではその手続がきていないという御答弁があった。中島事官いかがですか。この中村正雄という人物、沢本三次事件に関連して、その後国際刑事警察機構を通じて手配があったかどうか。
  89. 中島二郎

    説明員中島二郎君) そういう事実はございません。
  90. 田英夫

    ○田英夫君 いまだにないのですよ。五月三十日に発表していながら、いまだに手続をしていない。現に中村さんは一市民として活動しておられる。これは日本人が他国の政府に一方的に犯人扱いをされて、そこの外交官が自宅にまであらわれるという状況になっていて、それをそのまま放置していいのですか。人権の問題じゃないですか。御本人が現に言っておられますよ。戦々恐々として毎日を送っている。しかも雲をつかむようで全くわからぬ。確かにこの人はつかまった沢本三次さんの会社に一緒に仕事をしていた重役さんです。一日本人が、ただ一方的に外国政府から指名手配だといわれて、しかも調べてみたら何の手続も来ていない。これは外務省としても、すでに私六月に指摘をしているんですよ、放置しているのがおかしいじゃないですか。市民の人権を守るという最も基本的な立場から、こういうのが政府の役目じゃないですか。大臣いかがですか。
  91. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 本件はすでに田委員から本委員会で御質問をいただいた問題でございまして、中村氏と大使館員との接触がそういう尋問とかなんとかいう種類のものであったか、そうではなくて普通の面接であったかということにつきましては、われわれが伺ったところでは、そういう権力的な性質を帯びるものではなかったというように、私はそのように御答弁申し上げたと記憶いたしておるんでございますけれども、なおそれと警察等にどういう御連絡を申し上げたか、そのあたりの経緯をよく調べて御報告いたします。
  92. 田英夫

    ○田英夫君 これはぜひお調べいただきたいと思います。現にソウル大使館には警察庁の方が書記官として行っておられるわけですから、韓国側にむしろこっちから積極的に問い合わせて、なぜ指名手配という発表をしたのか、容疑は何なのか、そういうことをむしろ積極的におやりいただくのが外務省のお仕事の一つだ。市民の、国民の安全を守る上で非常に大事なことだと思います。在外大使館は観光客のあと始末、遊びに行った人のあと始末でたいへんお忙しいという部面があるようですけれども、そんなことじゃなくて、こういう一市民の安全を守ることが非常に大きなことじゃないかと思うんです。沢本事件に関連しては、ただ一つあげただけでもこんな問題もあるわけですけれども、沢本さんという人は帰化した日本人です。その日本人が反共法というきわめて世界にも類例を見ないような特異な法律に違反といって引っかけられている。それは反共法というのは北朝鮮に行っただけで懲役五年という判決を受ける。そういうものを日本人に適用するというところにもこれは非常に問題があると思います。これは条約局長おいでですけれども、法律的にいって韓国で法律違反をやったら現地の法律に、たとえ外国人であっても触れれば違反として取り扱われる。たとえば日本にいる外国人が交通違反をやれば道路交通法違反に引っかかるのは当然でありますけれども、それとはややこれは事の性質が違うのじゃないだろうかと、こう思えてならないので、反共法という法律の性格上、この点はどういうふうにお考えになりますか。
  93. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) ある国がその領域内にあります自国民あるいは外国人につきまして、刑法によって裁判管轄権を行使するということ自体はその国自身の問題でございますから、そのことにつきまして私どもといたしましてどうこうということは言えないと思います。ただいま御指摘がございました沢本さんが、すなわち日本人である沢本さんが、単に北鮮に行ったということだけで韓国で罪を問われるということであったのかどうか、私は実はその沢本さんの事件内容を知りませんので、ここで確定的なことを申し上げるわけにはまいりません。ただそのこと、すなわち、一日本人が北鮮に行っただけで韓国の国内法上罪を問われるということは、私はちょっと考えられないと思います。したがいまして、沢本事件自身についての私どもの見解は、その内容を承知いたしませんと申し上げられないと思いますが、もし沢本さんの判決に対する、まあ判決なり刑の執行が不法、不当なものであれば、当然これは外交上の措置もとらなければならないと存じております。まだ私どもの承知している限りにおきましては、沢本さんはその裁判を受ける際に、私どものほうのこれは領事職務ということになるかと思いますが、弁護人の選定なり裁判を受ける手続におきまして、政府といたしましては、できる限りのことをいたしましたし、また沢本さんはその判決につきまして、いまその判決の結果に対して控訴されたのかどうかということも私よく承知しておりませんけれども韓国の国内法に従って手続をとられているのだろうと思います。その過程におきまして、やはり政府として韓国に申し入れその他の措置をとらなければならないという事態が出てまいりますれば、当然そういう措置をとるということは申し上げておきます。
  94. 田英夫

    ○田英夫君 この沢本さんかどういう――沢本さんの起訴状なるものは発表されておりませんが、容疑内容というものは私どもも一応手に入れておりますけれども、実は先日の委員会でも申し上げたとおり、ことしになってからだけでも十数件という在日韓国人あるいは帰化された日本人、そういう方が相次いで韓国へ行って逮捕されている。こういう事件が実は起きております。私はなぜこの委員会でこういうことを繰り返し申し上げているかといえば、韓国現状というものをよく知っていただきたいということなんですよ。そういう意味から、きょうはここで名前も申し上げられないし、詳しい内容を申し上げられないのが残念でありますけれども、一人の在日韓国人の人が私のところをたずねてきて、相談を受けましたけれども、これはまさにKCIAにスパイ容疑で逮捕されて、これは全くほかにあまり例のないことですけれども、釈放されて帰ってきた人物であります。どういう取り扱いを受けたか詳しく聞きました。これは驚くべきことであります。もちろんこの人物は北朝鮮に行ったこともない。天地神明に誓って行ったことはない。そういう人物がソウルで用事を済まして飛行場から飛行機に乗ろうとしたところでKCIAに連行をされて拷問を受けております。もう初めから北へ行ったということを前提にして、どういう経路で行ったか言いなさいと、二日ぐらいおいて言わなかったら、そこから拷問が始まった。その詳しい内容も聞きました。相次ぐ逮捕事件というのはこの一つの例を見ても、そういう形で、結局釈放されなかった人はそのままその向こうの言われたとおりにならざるを得ない状況で刑に服してしまっている、こういう状況だと思わざるを得ないのでありますが、すでにこれも報道されていることですが、北海道大学の助手であった金喆佑という人がこの六月にやはり韓国を訪問している最中に向こうで突然逮捕をされた。これも北朝鮮スパイということになっておりました。しかし、韓国側が発表いたしました内容並びに発表になっておりませんが、起訴状なるものを私も手に入れました。その起訴状を翻訳をしてもらって読んでみますと――読んでもらって、北海道大学のその金さんの周囲にいた人たちに検討をしてもらったところが、そこにあがってくる容疑の日付にはいずれもアリバイがあります。これは外務省のアジア局のお力添えで、現在そのアリバイなどの資料を持って北海道大学の方がソウルについ数日前に渡られました。何とかしてこれを韓国側に官憲に提示をして、あるいは弁護士の手から渡してもらってあかしを立てたい、こう願っていまソウルに行っておられますけれども、この金さんのケースは日本の国家公務員であるという点が特異な一つの特徴であります。この点については先日の委員会で文部省の方にお尋ねをいたしましたけれども政府の、文部省の金さんに対する取り扱いは私から言わせればきわめて冷たい。こういう事情で逮捕をされていった人の給料を断ってしまうというようなことをやっておられるわけで、この点も残念でありますが、これはきょうは触れませんけれども、こういう事件も起きているし、さらに帰化した日本人で夏谷進、こういう人物か――これは非常に最近です。七月の二十四日にやはりソウルで逮捕をされている。これも北朝鮮スパイという容疑であります。これが一番近いケースだと思います。あるいは、先日の委員会でもお話しした崔相龍という人物がやはりごく最近逮捕をされている。この人は東京大学の法学部を出た人で、すでに求刑が出ておりますが、懲役六年ということであります。しかし、容疑の内容さえも発表になっていない、起訴状も発表になっていないので全くわからないのであります。おそらく東京大学に在学中に坂本義和教授のもとで韓国におけるアメリカ軍政の研究というのを博士論文としてまとめている。その結果でおそらくこれがひっかかったのではないかと、こう周囲の人たちは見ているようでありますが、となれば、日本の国立大学で公式に博士論文として教授の指導のもとに書いた論文が原因で逮捕されて懲役六年というようなことがあっていいのかどうか。日本が国費をもって留学生を迎えて勉強をしていただいた。こういう留学生こそこれから将来の日韓関係を正しく発展さしていくために非常に役立つ人たちだと、そういう人たちが相次いで、実は東大関係だけでも――きょう名前をあげませんけれども、あげることが実はできないんですけれども、御本人たちがこれが公表されることを恐れておりますから。東大その他大学留学生だけでも相当CIAに調べられた人がいます。念のため申し上げると、現在東京大学だけでも韓国の留学生は百十八人おられる。こういうことはまことにいいことだと思うんです。しかし、その人たちがその留学中に書いた博士論文がもとで逮捕されるというようなことになるならば、安心して勉強もできない。しかも、これは日本の国立大学でありますから、政府責任を持たなければならない問題だと思います。こういう問題が相次いで起こっているというこの実態をひとつ大平さんもよくお考えをいただきたいという意味で、きょうはほんの二、三の例ですけれども、申し上げたわけです。これからの日韓関係を正しく発展さしていこうということについては、大平さんも当然そう思っていらっしゃるし、私どももそう思っているわけです。そういう中で、いまの朴政権がやっているようなやり方でいいのかどうか、そういう政府を相手にしていていいのかどうか、ここのところが私どもにとって非常に心配なわけです。この金大中事件というのはそういう問題を大きく投げかけたと、こう思うんですが、そこできわめて具体的なことですが、やや仮定の問題になりますけれども、時間がありませんので、ずばりお聞きいたしますが、大平外務大臣金大中氏は帰ってくると、こういうふうにお思いになりますか。
  95. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そう希望をいたしているわけでございますが、必ず再来日があるという確信はただいままだ持っておりません。
  96. 田英夫

    ○田英夫君 そこで、仮定の問題ですけれども金大中氏が再来日した場合には、日本政府はどういう形で受け入れられるのか。日本には政治亡命という制度の法律がありませんから、この間アメリカから来日されたときには四十五日間の特別在留許可という形になっているようでありますけれども、その程度の短期間の在留しか認めないのかどうか、この点は大臣どういうふうにお考えですか。
  97. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 再来日要請いたしておるゆえんのものは事態解明ということでございまして、重要な参考人として警察当局が直接聴取したいということでございまして、具体的に再来日が願えるということに相なりまするならば、そういうことも勘案いたしまして考えてみなければならぬと思いますが、いまその場合にはどうするかということにつきまして、まだ確たる方針は立っておりません。
  98. 田英夫

    ○田英夫君 これは、そこでもまた政府の朴政権に対する外交的配慮というものが働いてはならないというふうに考えて、私はあえて御質問をしているわけです。  金大中氏が朴政権を批判している、そうして日本を舞台にしてそうした反対運動を続けてきた人であることはわかりますけれども、国際的な慣例、通念として、政治亡命を求めてきた人は受け入れるというのが常識だと思いますが、日本には法律的な制度はないにしても、金大中氏が韓国へ帰れば身の危険があるという現実の姿は、これは否定できないと思うんです。その場合、日本はこの金大中氏にかなり長期間日本にとどまることを認めるのか、それともどうもやっかい者だからアメリカへでも行っちまえというような態度を、つまり取り調べが済めばどこかへ行ってくださいという態度をおとりになるのかどうか。ここのところはひとつ大きな政治的な問題だと、こう思って御質問をしたわけですが、その点はいかがですか。
  99. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) きのうも衆議院の外務委員会でその点に関連しての御質問がありましたわけでございますが、わが国の出入国管理法ではそういう場合に明記的な規定がないようでございます。これは私からお答えするよりは法務省のほうがしかるべきだと思うわけでございますけれども、従来、亡命の場合におきましては、本人の意思を確かめまして、つまり、その人を日本政府として日本政府の意思に従ってどこへやるとかということではなくて、御本人の意思を十分確かめまして、御本人の意思を尊重して処置するということを従来やってきておるわけでございます。亡命というようなことを希望されるかどうかもわかりませんし、日本政府としていえますことは、政治的に曲げた自分かってな、政府のかってな処置をしない、そんなことをするということを毛頭考えていないわけでございます。
  100. 田英夫

    ○田英夫君 このことは、幸いにして金大中氏が再来日できるという状況、また私もそれを強く望みますけれども、そうなった場合に非常に重要なことだと思いますし、これからの日韓関係考えたときにも非常に重要なことだと思うんです。つまりはっきり申し上げれば、現在の朴大統領の率いるあの政権の姿というものをよしとするのか。そういう形で日韓関係を朴政権との間で続けていくことがいいとするのか。それとも、そういう民主主義を破壊するようなさまざまな行動をとり、昨年の十月以降の維新体制でさらに独裁的な傾向を強めているそういう隣国政府というものは望ましくないとするのか。これは、外務大臣のお立場からは、このお席で非常に言いにくいことであるということはよくわかりますけれども、少なくとも民主主義というものさしではかったときに、答えは明瞭だと思うんです。その意味で、たいへん失礼ですけれども政府・自民党の中にも、今回の問題について、そして朴政権というものに対しての態度に、かなりの大きな差があることをこれはだれも認めざるを得ない。それは何がものさしかと言えば、イデオロギーのものさしではなくて、民主主義というものさしを持っておられるかどうかということだと思う。たいへんこれは政府や他党のことを申し上げるようで恐縮でありますけれども、しかしそれは、たとえば社会党とか共産党とかいうような形のイデオロギーの問題ではなくて、民主主義というものさしではかったときに、これからの朝鮮半島と日本との関係をどうするかという、そういうところにある。これをいま考える重大なときになっているんじゃないだろうか。その意味で、さっき羽生先生が言われた国連の問題も一つの当面する大きな分かれ道だと思うんです。そのような朴政権の二つの朝鮮という考え方に日本政府が力をかして、従来と同じように、アメリカと一緒になって国連の中で多数派工作を今回もやるというようなことがあるならば、これは非常に重大なことである。  きょうはこの問題について御質問いたしませんけれども、すでにきょうからポパー国務次官補来日を得てそういう話し合いが行なわれているようでありますが、そういうことに関連をして、きょう指摘をいたしました朴政権のやっている幾つかの事実、これはまだまだ尽きないのでありますが、そういうことに関連をして、金大中氏の取り扱い、国連での態度、こういうことで、国民は注目をし世界も注目をしていると思います。  この辺をお考えいただきたいということをお願いをして質問を終わりたいと思います。
  101. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 資料のことなんです。  この前資料の提出を委員会を通じてお願いいたしまして、ただいま皆様のお手元にも配付されました日韓の経済関係資料でございますけれども、与えられました資料は非常に不備でございまして、私が最初お願いした目的を達しておりませんので、もう一度あらためてお願いしたい。  これは、民間の経済活動なんかについてのほんとうに具体的なものをもっといただきたいと、こういうわけで、もう一度お願いすることをどうぞお願いいたします。
  102. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 外務省の方おわかりですか。
  103. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 民間の部分をもう少し詳しくという御趣旨でございますか。
  104. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 はい。依然これは抽象的でござ  いまして、これでは十分と思いませんので、もっと内容を非常に具体的に、それから民間の各どう  いうような企業体がどういうところでどんな事業をやっているか、そういうようなことまで詳しく名前をあげて……。そういう資料をいただきたいと、こういうことでございます。
  105. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) よろしいですか。
  106. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) はい。
  107. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 私も金大中事件について若干触れさしていただきたいと思いますが、すでに事件発生以来三週間余りを経過しまして、この間、衆参両院においては、それぞれ当該委員会においていろんな角度からその究明と政府の対応策についてただされてまいりました。しかし、現時点において見る限り、何となく重苦しい空気というものがぬぐい切れない。そういう印象がきわめて強く映るわけであります。  先ほどもいろいろ質疑応答を伺っておりまして、やはり先日の外務委員会において行なわれた答弁以上のものは何も出ない。さてこれから一体見通しがあるのかないのか、それすらも確たるものはない。しかし大平さんとしては、何回かの御答弁の中で、これからも執拗に努力をし、できるだけ早い時期に解決をしていきたい、このままにするようなことは絶対しない。これがおそらく集約的な御答弁であったろうと私記憶をしております。  その点に関する限りは、私どもとしても、ぜひそれを推進していただきたい、こう思うんでございますけれども、何せ、現状におきまして、犯人も逮捕されていない、これからの韓国側としての捜査状況が一体どういう進展を遂げるのか、これも全然われわれには見当すらもつかない。ただ憶測と仮定に立った論議を進めていく以外には方法がございません。はたしてこれでいいのかというふうに感じざるを得ないわけでございます。  昨日、韓国政府のほうから出された回答を見ましても、政府としても非常に失望の色を禁じ得なかったということでありまして、私どももやはり同感だと思うわけであります。こうしたことの繰り返しというものがおそらく今後も続くんではないだろうか。一体政府が望んでいるような方向に韓国側協力がはたして得られるんだろうかと。もし得られるとするならば、今後具体的にどういう方途に立った手段といいますか、同じ努力をするにいたしましても繰り返しのことではやはり反応は非常に弱いと私思うんですね。その突破口を開くためには、いろいろ試行錯誤もおやりになったろうと私思うんです。そういう観点に立てば、これからの努力のしかたというものについても、いろいろ、いま大平さん御自身の構想の中におありになるんではないだろうか。たとえば今回こういう回答があった、じゃ次にどういうふうな内容のことを、またどういう角度からいろんなことを踏まえつつ要求すべきであろうかというような、いろんな想定されていらっしゃることがおありになるんじゃないか、そういう判断の上に立って努力をし、早期に解決できるという見込みをお持ちになっていらっしゃるのかどうなのか、その点はいかがでございましょうか。
  108. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) かねがね申し上げておりますように、当面の急務は事態の早急な解明であるということ、これを踏まえないと解決の方針が立たぬわけでございますので、これを急ぎたいと思っているわけでございまして、わが国の警察当局は独自の捜査を進めておるでございましょうけれども、重要な参考人がわが法域内にいないということでございますので、残念ながらどうしても韓国政府がいま調査中で、捜査中でございまして、それの材料をできるだけ豊富に迅速にちょうだいしなければならぬということで努力しておるわけでございますが、ただいままでちょうだいしたものでは満足すべきものではないわけでございまして、捜査当局とよく連絡をしながら、われわれとしてはどしどし提供を求めていくことでございまして、それを精力的に進めてまいるというのがいま当面の急務であると私は考えておるわけです。で、先ほど申しましたように、それがどういう結果になりますか、それを踏まえないと、これをどのように解決するのかという目安が立ってまいらないわけですが、ただ私といたしましては、日韓関係という国と国との間柄というものは、先ほど田さんからも御指摘がありましたけれども、公正な関係でなけりゃならぬと考えております。また、外交が孤立した関係でないわけでございまして、国民の理解協力が得られるような状況でないと外交的成果なんというものは期待できないわけでございますので、私といたしましては、その解決にあたりまして公正妥当な解決、曇りない解決をして内外の納得を得なければならぬということをいちずにいま考えているわけでございます。いま捜査の過程でございますので、どういう姿になるかということにつきましての展望を明らかにすることは残念ながらできないというのがいまの状況でございます。
  109. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 警察庁の方に若干お伺いしたいんでありますが、おそらく警察庁当局としてもこの三週間余りにわたっての状況調査というものは相当進んだと私思うんです。そして、何がしかの結論というものを得ていると、ただし、その結論は確証がないためにいわゆるその真相、いままでしばしば繰り返されてきた真相の究明というところまではいかない、そういういま段階にきているんではないだろうか、このように思うわけです。先ほど来からもお話ございましたように、日本警察能力というものはたいへん優秀だという評価がございます。したがって、ただ手をこまねいて韓国政府からの回答待ちということで今日まできているはずは絶対あり得ないと。その上に、さらに十項目日本側としての要求項目が出されております。それはいま申し上げましたように、それに対する回答はたいへん不満足な内容であった。この十項目についてことごとく、その内容のいかんはまた問題がございましょうけれども警察当局として、まず不満は若干残るにしても、その回答いかんによっては、この十項目にことごとく答えてくれたということになれば、その真相というものは究明できると判断してよろしいんでしょうか。
  110. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 十項目要求に対する回答の程度、内容によるわけでございますが、相当程度の回答があればかなりの進展は期待できるものと、かように思っておりますが、いずれにいたしましても、被害者である金大中氏や、事件現場関係しておられる梁一東、金敬仁両氏の来日を得て事情を聴取するということがありませんと、捜査の基本的な進展には相当な障害がある、かように思っております。
  111. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そういたしますと、そのきめ手と申しますか、犯人逮捕いまだならずという状況に置かれても、金大中氏と梁一東氏あるいは金敬仁氏ですか、の来日を仰いでそして事情調査を進めない限りは、この真相の究明ということにはならないと、したがって、この三人の方々のやはり来日を待つ以外にはもう方途はないと、こういうふうに判断してよろしいんでございますか。
  112. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 事件を立てます際には、いずれにいたしましても被害者の自由な状況においての供述がありませんと、これをもとにして事件を立てることはできないわけでありまして、したがいまして、金大中氏に来日をしていただいて事情を聴取して事件を立てるということが現在の段階において私どもは基本であろうと、かように考えております。
  113. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま警察当局の方がお述べになりましたように、どうやらそれがきめ手のようでございまして、さらに自由な環境のもとに供述されたものでなければ信憑性に欠けると、こうなりますと、たいへんこれからこの問題の解決、進展というものは、はたして私たち希望する方向に進むんであろうかという、どうしてもその疑惑がぬぐいされないと、このように思うのでございますが、その点の判断は、いま警察当局のそれはもう基本的なやはりお考え方だろうと思います。われわれしろうとでもやはりわかります、それは。そういうやはり基本的な立場に立った場合にどうしてもその辺がキーポイントになるということでありますれば、このお三人の早期の再来日というものが望まれてならないという結論になろうかと思うんですが、現状としては非常にむずかしいと、はたしてそれも可能性があるとは全然考えられない現状ではないかと、大平さんとしては急転直下この問題について解決されるという、これもやはり仮定の上でございますからそういう質問すること自体も控えなければならぬと思いますが、その辺の見解をどのようにお持ちになっていらっしゃるか。
  114. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 捜査当局捜査立場から申しまして、お三方の再来日ということが不可欠のことであるという御意思を受けまして、外務当局といたしましては、先ほども申し上げましたように、韓国政府に対しまして強く要請をしてきましたし、今後もこれをやってまいりたいと考えております。これはしかしながら、渋谷さん御指摘のように、ただいまの段階で必ず再来日がお願いできるかどうかという点についての確信は持てないわけでございますが、しかし問題を早く解明いたしまして、そして公正な解決をするということは、まことに日韓関係にとっては非常に大事なことだと思うのでありまして、その点につきましては、先方政府におかれましても私はいろいろ考えられるべきことであろうと拝察するのであります。したがって、私どもこの期待を捨てないでその実現に努力してまいりたいと思っております。
  115. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 中島さんに重ねてお伺いしますが、これもたいへん初歩的なお尋ねかもしれませんけれども、この種の被疑者、被疑者といいますか、容疑者を取り調べるに要する期間というものは常識的に何日あれば済むのでしょうか。状況によってもいろいろ違いがあろうかと思いますが。
  116. 中島二郎

    説明員中島二郎君) お話しのように、状況によっていろいろ異なるわけでございまして、一がいに申せないわけであります。また、伝えられるところによれば、梁一東氏、金敬仁氏らと供述の食い違いがあるかのごときことも伝えられておるわけでございますので、その辺のからみ合いなども考慮する必要があるわけでございますが、状況によりますけれども、一つの考え方としては一週間程度というお答えもできようかと思います。
  117. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 おそらくいまの御答弁は相当幅を持った、いままでのいろんな経験の上にお立ちになってその期間を言われたのだろうと私は思うのです。そうすると、もうすでに三週間経過しております。しかも、しばしば指摘されておりますように、韓国情報部等をはじめとするそうした機関の取り調べというものは非常に綿密をきわめ、精細をきわめるということであれば、もうすでに終わっている段階ではあるまいか。そうすると、金大中氏はじめ三人の方々の来日については、ほかに支障になるような問題は起こらないのではないだろうか。これも単に、相手のあることでございますから、断定的な結論を申すわけにはいかないにしても、もう終わっているのではないかということが一つあります。それからもう一つは、報道等を通じまして伝えられておりますように、特に金大中氏の奥さんをはじめとする家族の方々が悲痛な叫びをもって何とか日本の方々に助けてもらいたい、むしろ悲壮なそういう訴えをされております。こうした点をからみ合わして考えますと、現在置かれている環境というものが、たいへんやはり御苦労されているのではあるまいか、したがって、日本としてこういう事柄を踏まえつつ何とかもっと手が打てないものだろうかというような感じを私のみならず多くの方々が抱くであろうと、こう思いますけれども、先ほど来の御答弁にございますように、なかなかそれは困難である、努力はするけれども、その突破口となるべき道しるべというものがはたして見つかるかどうかというようなことのやはり繰り返しになりましょうか。
  118. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そのことを実現する方法といたしまして、われわれがいまやっていること以外に道はないわけでございます。ほかにいい知恵があればでございますけれども、現実に韓国内に御本人たちがおられるわけなんでございまして、それをどうしてもよこしてもらわなければいかぬということでございますので、先方政府の納得が得られなければならぬわけでございますので、われわれといたしましては精力的に韓国政府要請し続けていくという以外に方法はございません。
  119. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いずれにせよ、日本の主権侵害という問題に発展するかどうかという非常に重要な問題点をはらんでおりますだけに、できるだけやはり早い機会に、大平さんおっしゃっているように解決をすることが日韓両国の友好をさらに推し進める上からも非常に重要なかぎになるであろう、それは将来のことはわかりません、少なくとも現時点においてはそうしたようなことをわれわれとしては望みたい、こう思うわけであります。  で、もう一つ、たいへんこまかいことで恐縮なんですが、これも中島さんにちょっと確認ということで、あるいはもういままで御答弁があったかもしれませんが、お尋ねをしておきたいんですが、あの事件が起きましたグランドパレスホテル、ここにはガードマンの警備体制が敷かれているんではないかと思うんですが、この点どうなっておったんでしょうか。
  120. 中島二郎

    説明員中島二郎君) ホテル側でガードマン会社に警備を依頼いたしております。
  121. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そのガードマンの所属する会社及び責任者はどういう方でございますか。
  122. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 綜合警備保障会社でございまして、責任者の名前は私いま存じておりません。
  123. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 われわれ一般的な常識として考えれば、このガードマンそれ自体は、その宿泊する客の人命等についての警備を含めて業務というものが行なわれるように考えているわけでございますけれども、その点について実際は手抜かりがあったといえば手抜かりがあったかもしれません。そういう点についての警察庁としての判断はどのように受けとめられていらっしゃるんですか。
  124. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 実態を申し上げますと、そのホテルでは十三名のガードマンが二交代制二十四時間勤務で警備に当たっている。勤務方法は受付、用度、待機、巡回を交互に行なっておりまして、事件当日も確実に巡回をいたしておるわけでございます。たまたま事件のあった二十二階は午後一時十五分ごろガードマン一人が巡回をいたしております。このガードマンに事情を聞きましたところ、この一時十五分に回ったときには全く変わったことを目撃していないということを申しております。
  125. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 私ども調べによりますと、このいまおっしゃられた綜合警備保障会社ですか、ここの責任者は村井さんという方のようですね。この方は元内閣の調査室長をやっておられた方というふうに伺っております。その点のお調べも全然なさっていらっしゃらないわけでございますか。また、やる必要はございませんか。
  126. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 社長はたしか村井さんだと承知いたしておりますけれども
  127. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうしますと、実際は御存じないんじゃなくて、お知りになっていらっしゃったということで、まああるいは公表をはばかるのかどうか。まあそれ以上のことは私この機会には申し上げたくございません。  ところで、いままでもしばしばもう言われてきておりますけれども金大中氏が拉致されて以後、少なくとも一時間後でございますか、警察当局のほうに連絡がいっているようでございます。それは詳細に私述べません。しかし、実際にこの動きを始められたのが相当おくれてからですね、麹町の署員の方が現場に到着されたのが、事件発生が十三時四十分、十四時五十分に麹町の署員の方が現場に到着されている。それで、警視庁の方が緊急配備につかれたのが十五時十五分、もうそのころには相当遠くまでおそらく行ってたんではあるまいかと。しかし、それにしてもですね、港湾であるとか、あるいは空港、そういったところに緊急配備が敷かれたわけでございますので、何らかの捜査の手というものが伸びなかったのかどうなのか。まあ私はしろうとでございますから、その点は判断できない面もありますので、かいつまんでその辺の経過についてお知らせをいただきたいと、こう思います。
  128. 中島二郎

    説明員中島二郎君) 当日の二時十四分ごろ宇都宮徳馬氏から警視庁の赤木警備部長に事件発生連絡があったのが第一報でございまして、この第一報に基づきまして現場にかけつけてまいっておるわけでございます。で、二時四十一分に趙活俊氏から一一〇番が入っております。この一一〇番の入った段階ではすでに活動を開始いたしておったわけでございまして、現場到着はその後になっておりますが、現場にかけつけるようにという指示はその前に出ておるわけでございます。で、三時十五分に緊急配備が発令をされておる。こういう関係になっておりますが、通例の事件でございますと、二時十四分に第一報が入れば直ちに無線で全庁的に手配をすることができるわけでございますが、これが連れ出し事件であるということで、誘拐事件ということになりますと、普通何らか後に要求をすると、人質として要求をするということが多くあるわけでございまして、そういう事件であるかどうかということが最初の段階でよくわからなかったということがございまして、無線で手配することをやめて有線で連絡をしておったために現場到着がおくれたということが一つございます。もう一つは、金大中氏の地位等からいたしまして、無線で連絡することが適当であるかどうかという配慮もあったわけでございます。無線で連絡いたしますと、非常に多くの人が知るところとなってしまいまして、事件を秘匿することができないわけでございますので、その点で現場にかけつけるのに若干時間がかかった、こういう経緯になっております。三時十五分に――かけつけましてからいろいろ緊急配備をいたしますには、金大中氏の人相、特徴、それから犯人の人相、特徴、それからどういう手段で、たとえば車であれば、どういう色のどういう種類の車で、どういう方向に行ったのかというようなことぐらいを調べましてから手配をいたしませんと、手配の実効が上がらないわけでございます。したがいまして、そういう点について現場に到着した警察官が急いで調べまして手配をいたしたのが三時十五分ということでございまして、残念ながら第一報自体が事件発生後、事件発生が一時から一時半までのころといたしますと、すでに約一時間近く経過いたしておるわけでございます。さらにそういうことで、事件の特質等からいたしまして、無線連絡でなくて有線でいろいろ手配をしておったということでおくれたと。さらに、緊急配備をするには緊急配備をするに足る内容がなければいけませんので、その内容を集めるというのに時間がかかって、三時十五分に緊急配備をしたと、こういう経過になっておるわけでございます。  警察庁といたしましては、その後三時四十分に、事件の国際的な性格からいたしまして、海外に連れ出される可能性もなしとしないということで、全国の空港六十一空港、それから港湾に対しまして警戒と検問をするよう指示をした次第でございます。
  129. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまお伺いしておりますと、初動捜査と申しますか、これに別に手落ちがあったのではないという、御答弁から少なくともそういう印象を受けるわけでございます。緊急配備の点についてもいろいろ苦心をされて、配慮をされながら手を打たれたんだろうと思いますが、しかし、いかんせん相当まあ時間のズレがあるということ、この点についてはやはり疑問が残るところであるまいかというふうに感ずるわけでございます。  それから、これに関連しまして、こういう不幸な事件というものは、まあもちろん今後あっては絶対ならないと思いますし、たとえば今後あるいはこれに類似したような問題が、日本という現在の社会構造の中から見ますと、ないとは言えない、可能性が十二分にあるかもしれない、そういう土壌があります。したがいまして、まあおそらく警察当局としても、今回の事件を契機にいろんな反省をなさっていらっしゃるだろうと思いますし、いろんな手落ちについてはこれから改めるところは改めるということになっているだろうと思いますが、やはり今回のようなことを繰り返さないような体制をぜひともおつくりになっていただく必要があるのではないか、このように思うわけでございます。  いずれにせよ、大平さん。こうして伺っておりますと、何せ、いつ決着がつくのか、まことに雲をつかむような状況であることはいままでも繰り返し述べてきたとおりでございます。まことに待っているほうもつらいことだろうと思いますし、折衝に当たる政府当局としても、ときには歯ぎしりするような思いもあろうかと私思うのです。しかし、いずれにしても、御答弁にもございましたように、このまま隠蔽するというわけにはいかないしろものでございます。特に先ほど私お願いを兼ねて申し上げましたように、金大中氏御自身の身の安全ということも考慮に入れながら、ぜひとも近い将来、これもごく近い将来に再来日するような強力な折衝をぜひともとっていただきたいものだというふうに申し上げておきたいと思うのであります。またいずれ、この経過と相まってお尋ねを今後してまいりたいと、こう思います。  まだ若干時間があるようでございますので、ちょっと気になる問題を二つばかりはしょってこの際お尋ねをしておきたいと思います。  一つは先般来からたいへん問題になっております沖繩を基地とする米戦略偵察機SR71が依然として八月十五日以降においてもその行動が継続されているという点がございます。この点は当然事前協議の対象になるように私ども判断をします。と申しますのは、かつて外務大臣であられた福田さん、あるいは愛知さんのいままでの国会答弁をずっと広げてみましても、明確にそのことがうたわれているように思うんでありますが、この点はどうかということをひとつこの際確認をしておきたいと、こう思います。
  130. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 事前協議のことにつきまして御答弁いたします前に、まず事実関係について御答弁いたしたいと思います。  ただいまの御質問は沖繩にあるSR71がカンボジアの上空の偵察をやっているではないか、こういう点が前提での御質問でございますが、この点につきまして米側に照会いたしました限りでは、そもそもこの記事のもとになりました十六日の国防省における記者会見におきまして、沖繩のSR71がカンボジア上空での偵察行動を行なっているということについての発言はなかったわけでございます。その記者会見における質問は、カンボジアで偵察行動が行なわれているかということについて国防省のスポークスマンは、偵察行動そのものは行なわれているということを答弁いたしております。またSR71がこの行動をやっているかということにつきましては、国防省スポークスマンは、その事実について自分は承知しておらない、こういう答弁の報道をいたしておりました。したがいまして、米側に照会いたしました限りにおきまして、米当局はこの新聞報道は推測記事であるということを申しております。  それからその次に、かりにこの報道が事実であるといたしまして、沖繩を基地といたしますSR71が、かりにカンボジア上空の偵察行動を行なっているという事態が仮定されるとしまして、それは事前協議の対象になるではないか、こういう御指摘に対しましては、偵察行動につきましては、政府は一貫いたしまして、これは安保条約に言いますところの事前協議の対象となる行動ではないと、そういう見解を説明しているわけでございます。当時の福田外務大臣が御答弁申し上げたということにつきまして、私どもの承知しております限りにおきまして、SR71が国際法に違反した行動を行なっているというふうなことがもしあるとすれば、これは許しがたいことである、こういうことを御答弁になっているというふうに承知しているわけでございます。
  131. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 最後の個所でございますが、これは昭和四十七年六月七日、衆議院の沖特委員会での答弁、これはもうすでにお調べになっていらっしゃると思いますが、ここで福田さんはこうおっしゃっている。補給、偵察にしろ戦闘作戦行動と密接不可分なる関係にある場合は、安保条約第六条に基づく事前協議の対象となる。それからそれにさかのぼって昭和四十六年五月十五日、愛知さんは、やはり沖特の連合審査の際に、他国を刺激する、あるいは領空、領海等あるいは何か接触をするおそれがあるようなものについてはそういうことが現実に起こらないような保証を取りつけると、ということは、やはり事前協議の対象となるという言い方をなさっていらっしゃる。いま大河原局長がおっしゃったこととだいぶ問題点が相違するんではないか、こう思いますが、その点はいかがでございますか。
  132. 大河原良雄

    政府委員大河原良雄君) 安保条約に申します事前協議の対象となりますものは、戦闘作戦行動のために日本の施設・区域から発進するということがその対象になるわけでございまして、偵察活動そのものは、ここに言われております戦闘作戦行動のための日本における施設・区域からの発進、したがって、事前協議の対象となる発動というふうには政府は一貫してとっておらないわけでございまして、ただいま御指摘ございました沖繩国会当時の外務大臣の御答弁は、その点と何ら食い違っている点はないわけでございまして、福田外務大臣が当時御答弁になっておりますことは、国際法に違反して、たとえば他国の領空侵犯を行なっているというふうなごときことは許されないことであり、万が一こういうふうなことが行なわれるような場合には厳重な措置をとるということを御答弁になっているわけでございまして、その点につきましては、今日私どもも全く同じ考えでございます。米側はその点につきまして、現在沖繩に配置されておりますSR71の行動は、国際法並びに安保条約のワク内において行なわれている旨確言いたしておるわけでございます。
  133. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま確認をしておいた段階にとどめておきます。  もう時間がありませんので、最後に一点だけ、これは大平さんにお伺いいたします。かねてから問題になっております日中航空協定、先般アメリカからお帰りになった直後であったかと私記憶しておりますが、今国会中には明確にきめたいというふうにおっしゃっておりますが、その後具体的にお進みになっているのか、いつごろをめどとしてこの日中航空協定が結ばれるのか、それだけを伺ってきょうの質問を終わりにしたいと思います。
  134. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 本件につきましては、できるだけ早く仕上げなければならぬと考えておるわけでございますが、ただいまいつまでに決着をつけるということのめどを、確たるめどをいま持っておるわけではございません。急ぎたいと考えております。ただ、今国会が延長になりましたので、私の記者会見におきまして、今国会中は何にもしないかということではなくて、今国会中におきましても時間をむなしゅうしたくないということを申し上げたわけでございます。
  135. 星野力

    星野力君 国家主権の侵害という問題に関連してお聞きしたいのです。外国の国家機関が日本国内で秘密な方法で情報活動をやる。たとえば盗聴器をしかけて他人の会話を録音したり、個人の行動、身辺をいわゆる聞き込みで調査したりするのは、日本国内で警察行為を行なうことでありますから、日本の主権に対する侵害であろうと思うのですが、いかがですか。
  136. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) ある外国の機関が日本の国内におきまして、その機関がその国の法律に基づく、権限に基づく行為を行なったからといって、直ちに主権の侵害ということになることはないと思います。すなわち、外国の機関が日本にあって、日本の憲法あるいは法令のもとにおいてこれを犯してその権限を行使するという場合は、主権を侵害するということになると思います。
  137. 星野力

    星野力君 個人の秘密の会話を盗聴器をしかけて秘密に録音するということは、これは憲法違反ではございませんか。人権に対する侵害でありますから、こういうことを外国の機関がやったとしたら、これは当然主権に対する侵害であると思いますが、いかがですか。具体的な問題としてですね。
  138. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 具体的な問題につきまして、それが日本の法令に違反するかどうかということを私の立場からお答え申し上げるということはできないと思うんですけれども、しかし一般論としまして、日本の法令のもとにおいて日本でその行為が違法行為である、あるいは犯罪であるとされている場合には、当然それは日本の法令に違反した行為であるとして主権を侵害したということになると思います。
  139. 星野力

    星野力君 ただいま私があげたような場合は、これは日本の憲法にも違反しておるし、当然そういうことを外国の政府機関がやれば日本の主権に対する侵害であると、こう理解すべきだと思います。あなたの、ただいまの条約局長のお答えからもそういうふうに考えてよろしかろうと思うのでありますが、その問題はそれとしまして、別の問題をお聞きしますが、在日韓国大使館の金在権公使は、元いわゆるKCIAの七局長をやっておられた人と思いますが、間違いございませんでしょうか。
  140. 妹尾正毅

    説明員妹尾正毅君) 外務省ではそのようなことは確認いたしておりません。
  141. 星野力

    星野力君 公使という肩書きの人のその程度のことも調べておられないのでありますか。
  142. 妹尾正毅

    説明員妹尾正毅君) 承知いたしておりません。
  143. 星野力

    星野力君 まあそうお答えになっておるのだろうと思いますが、これは間違いないことであります。しかも、七局長当時の姓名は金在権ではなしに金基完、それを確かめる写真などもわれわれは知っております。一国の公使が本国在職中とは別の名前で他国に外交官として赴任しておる。変名でございますが、こういうことは外交官には普通一般にあることでございますか。
  144. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) いま変名でということを仰せられましたが、氏名を変更するということはやはりその国の法律によるのだろうと思います。合法的になされている場合には、名前が違った名前で赴任するということは、これはあり得ることであろうと思います。
  145. 星野力

    星野力君 金公使の場合だけではないのですね、この韓国の場合は。日本韓国の領事館、領事部幾つかございますが、総領事館等もございますが、そこにいわゆる情報領事といわれておる人たちがおる。ほとんどがKCIAの前職を持った人たち――前職というか、現職もおそらくそうだろうと思いますが、彼らの多くが本国におるときとは名前を変えて赴任しておるという事実を私たち幾つか知っておりますが、こういう事態は尋常ではないと思いますが、いかがでございますか。
  146. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) いまの場合、大使館の館員、日本にあります公館に赴任しますその国の外交官あるいは領事館員についてのお尋ねだと存じますが、韓国政府がどういう人間を館員に任命するかということ自体はその国の政府の自由でございますので、私どもとして、その人間が韓国政府から通報された氏名以外の氏名を持っていた、あるいは持っているということについて追及する手段は持たないわけでございます。
  147. 星野力

    星野力君 まあ、そうおっしゃるけれども、私はやっぱり尋常じゃない。何か背後に暗いものを感ずるわけですね、日本でも二つ名前があるということはありますから。まあそれはよろしゅうございます。  いま申し上げました金公使が盗聴機を使って、日本国内においてでありますよ、金大中氏を支持する人物の会話を録音したことをこれは公然の席で明言いたしております。日にちも明確になっておりますけれども。また同じく金公使がある人物への手紙の中でこう言っております。国家防衛目的上物的証拠が必要とされたので、公館はみずからの任務を遂行するために盗聴、録音をやった、はっきり書いております。あります、ここに。写しがございますが、こういう事態をどうお思いになりますか。
  148. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 外国にあります公館員が、いわゆる一般的な調査活動あるいは情報収集の活動を行ないますこと自体は差しつかえないと申しますか、行なわれていることでございます。その場合に、ただ違法な手段をもってその活動を行なうということは認められないと存じます。現在御指摘がありました、御質問のありました点につきまして、私どもはその事実を承知しておりません。
  149. 星野力

    星野力君 どうですか、私たちその事実を皆さんがお知りになるために協力することもできますが、事実であった場合どうでしょうか。違法ですか、違法でありませんか。
  150. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) まあ仮定でございますので、全く仮定の問題としてお答え申し上げることをお許し願いたいと思います。  いま仰せられましたような場合があったとすれば、それは私はやっぱり適当な情報ないし調査活動であったとは思いません。
  151. 星野力

    星野力君 これは事実でございます。ひとつ外務省として事実をつかんでおられないということならば、事実を確かめていただきたいと思います。  大臣いかがでしょうか。これは事実でございますが、こういう事実がある以上、そのような外交官の日本からの退去を求めるのが当然でないかと思いますが、いかがでございますか。
  152. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私どもは、いま御指摘になりました問題を承知いたしていないわけでございまして、御提示になりました案件につきましては、外務省として事実関係をまず調べてみたいと思います。
  153. 星野力

    星野力君 事実関係をお調べになりますですね、そうですね。
  154. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 在日韓国大使館について後ほど照会をしてみます。
  155. 星野力

    星野力君 事実関係をほんとうにお調べになるなら、そういうことを向こうに照会して、その事実はないと、こうしらっぱくれることだってこれはあり得ることですから、そこで調査完了ということでは不十分と思いますので、その辺も腹に入れて、これはほんとうの真実を求めると、今度の事件だって、これは直接間接に私は関係あるだろうと思うんですが、調べていただきたいということを申し上げて、時間がないから先へ進みます。  主権侵害ということは、何も金大中氏の拉致事件で初めて問題になるべきものではないんであります。アメリカのCIAの日本国内での活動はきょうはさておくといたしても、KCIAもふだん日常的に日本の主権侵害をやってきたわけであります。きておるわけであります。それを日本政府はきょうの先ほど来の御答弁からもわかりますように、そういうことを何も調べておらないということで、実際は御自由におやりなさいという態度で放置してこられたと思うんです。そういう意味では金大中事件というものの起きる温床は日本の国内に用意されておる、そう思うのであります。一九六七年でございましたか、例の西ドイツの事件、多数の学生らがKCIAによって本国へ拉致されたあの事件でありますが、韓国政府はあのときでもあの事件がKCIAの行為であるということは公式にはなかなか認めなかったのであります。現在の中央情報部長である李厚洛氏の前任者である第三代の韓国中央情報部長の金炯旭氏、この人が西ドイツ事件の当時の情報部長であって、たしかミュンヘンオリンピックの任務にかこつけて現地へ乗り込んであの事件を指揮した人物でありますが、御承知と思いますが、現在アメリカにおって、アメリカで大地の架橋という著書を出版いたしました。昨日の読売新聞にもそのごく一部分が紹介されておりますが、その中に、昨日読売新聞に紹介された部分ではないんでございますが、西ドイツ事件に取りかかる前に金炯旭部長が朴正 大統領にその事件報告しておる個所がございます。大体自叙伝的なものを書いておるわけですが、こう言っておるんですね、「私は決心した。そして朴大統領に報告した。朴大統領は私の決心を聞き快く承諾を与えてくれた。」「果敢に処断しろ」と朴大統領は言った。「私は、勇気百倍して、本部に帰り、細密な作戦を練った。同時に国内にいる嫌疑者を逮捕する一方、対外作戦計画を作りあげた。」云々、こう書きまして、作戦計画なるものが詳細に述べられております。その中には、学生らを北回りの飛行機、南回りだと着陸地が多くて逃亡されるおそれが多い、北回り、アラスカ回りで連れて行く、こういう計画になっておりまして、ソウルへ運ぶ途中、「日本では、捜査要員の協力を得ること。」、こういう文句が入っておるんですね。KCIAと日本捜査当局とは、KCIAと日本警察や公安調査庁と関係ないようなことを言っておられますが、向こうでは日本捜査要員の協力を織り込んで作戦計画を立てておる。まああの事件の当事者の書いたこの本から見ましても、朴正煕政権というのは、こういうことをやる政府なのであります。このことをはっきり腹においてこの事態に対処していただきたい。私が申し上げるまでもなく、その辺のことはとっくに御承知ではないかと思いますが、あらためて申し上げたいのであります。おそらく韓国政府政府機関が関係していることがよほどはっきりした証拠で事実として知られても、それを認め、発表するという態度に出るということはないんではないか、こう考えられます。だから先ほど、大臣先日来言っておられるように、向こうの報告、向こうの態度、向こうの発表を待つというようなことではとても真相に迫る発表などは期待できない。この事件真相解明することはできないと私は信じます。真実を明らかにするためには、捜査当局としては金氏の来日を求めて、拘束を受けない、自由な環境で金氏なりあるいは梁一東氏、金敬仁氏に調査協力してもらうことがどうしても必要だと言っておられる。それなら政府金大中氏の再来日、それも早期に実現するためにこれは最善を尽くさなければならぬ、そういう客観的な事態だと思うのですね。二十四日に外務筋の記者会見ですか、おそらく次官が記者会見やって述べられたのでしょうが、あの中には金大中氏の再来日には必ずしもこだわらない、そんなことを言っておられますね。ああいう態度でどうしてこの事件解明することができるでしょうか。並み並みではないこれは外務省としては決意が要る問題だと思うのですが、その決意、御意思、おありになるでしょうか。
  156. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) たびたび国会でも申し上げておりますとおり、捜査当局捜査に当たりまして、重要なる参考人として事情を聴取しなければならぬ、それは非常に不可欠のものであるということでございます。何としてもそれを実現いたしたいと考えまして、先方協力を求めてきたわけでございまして、今日まで実現するに至っておりませんが、今後も強く要請してまいるつもりでございます。
  157. 星野力

    星野力君 事件真相が究明されないまま、あるいは韓国政府の一方的な発表だけで金大中氏の、まあ不吉なことを申しますが、生命が断たれる危険さえこれは推測される事態であります。そのような結果になりますと、これは日本政府金大中氏を見殺しにしたことにもなりますし、それだけでなしに、日本政府金大中氏を売り渡したとさえ、これは言われかねない問題であります。日本政府としてはそのような危険さえある、考えられる事態にどう対処しようとなされるのか、もう一度お聞かせ願いたいと思います。
  158. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) たびたび申し上げておるわけでございまして、事件解明を通じまして内外の納得のいく公正な解決をはかりたい、ただいちずに私はそう願い、そういうラインで努力をいたしているわけでございます。
  159. 星野力

    星野力君 時間がきましたから、じゃ続きはまた来週にします。
  160. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 本調査に対する質疑は本日はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後一時八分散会