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1973-07-17 第71回国会 参議院 外務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年七月十七日(火曜日)    午前十時十三分開会     —————————————    委員異動  七月十三日     辞任         補欠選任      辻  一彦君     小谷  守君  七月十六日     辞任         補欠選任      岩動 道行君     二木 謙吾君      加藤シヅエ君     松本 英一君  七月十七日     辞任         補欠選任      長谷川 仁君     山崎 五郎君      松本 英一君     加藤シヅエ君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     理 事                          木内 四郎君                 佐藤 一郎君                 八木 一郎君                 田  英夫君     委 員                 今  春聴君                 杉原 荒太君                 矢野  登君                 山崎 五郎君                 山本 利壽君                 加藤シヅエ君                 小谷  守君                 羽生 三七君                 森 元治郎君                 渋谷 邦彦君                 松下 正寿君                 星野  力君    国務大臣        内閣総理大臣   田中 角榮君        外 務 大 臣  大平 正芳君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       前田佳都男君    政府委員        内閣官房長官  山下 元利君        内閣法制次長   真田 秀夫君        科学技術庁原子        力局長      成田 壽治君        外務政務次官   水野  清君        外務省アジア局        長        吉田 健三君        外務省アメリカ        局長       大河原良雄君        外務省欧亜局長  大和田 渉君        外務省条約局長  高島 益郎君        外務省条約局外        務参事官     松永 信雄君        外務省国際連合        局長       影井 梅夫君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        通商産業大臣官        房総合エネルギ        ー政策課長    荒川  英君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○原子力の非軍事的利用に関する協力のための日  本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を  改正する議定書締結について承認を求めるの  件(内閣提出衆議院送付) ○国際情勢等に関する調査  (田中内閣総理大臣の訪米及び訪ソ等に関する  件)     —————————————
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十三日、辻一彦君が委員辞任され、その補欠として小谷守君が選任されました。  また、昨十六日、加藤シヅエ君及び岩動道行君が委員辞任され、その補欠として松本英一君及び二木謙吾君が選任されました。     —————————————
  3. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 星野力

    星野力君 私は、日米原子力協定改正議定書の背景にあります日本エネルギー源の問題について、まずお聞きいたします。  今後の日本発電計画では、発電全体における原発依存度が急速に大きくなるわけでありますが、昭和六十年、一九八五年原発六千万キロワットの出力ということでありますが、その段階における日本発電の総出力はどうなりますか。
  5. 成田壽治

    政府委員成田壽治君) 昭和六十年における総発電規模は、これは総合エネルギー調査会計画、四十五年にできました計画でありますが、約二億四千万キロワットというふうになっております。
  6. 星野力

    星野力君 そうしますと、原発はその四分の一ということになるわけでありますが、次に、発電燃料その他の燃料、その他石油化学工業原料などで、石油の総需要量、これが一九八五年、あるいは一九八〇年があるならそれでもいいんですが、その数字を示していただきたいんです。
  7. 荒川英

    説明員荒川英君) このエネルギー調査会の六十年の見通しによりますと、成長率の差がございますが、石油では原油輸入量としては六億ないし七億キロリットルを消費するということになっております。
  8. 星野力

    星野力君 その年度における世界石油輸出可能量はどういうふうに見ておられますか。
  9. 荒川英

    説明員荒川英君) だいぶ先の見通しでございますので、なかなか予定が立てにくいわけでございますが、いまのところ大体いろいろなところでの意見が一致しておりますのは、昭和五十五年、五年ほど前でございますか、その辺になりますと、大体五十億キロリッター世界でトータルで供給できる。まあその当時の日本石油需要というのは、大体四億五千万キロリッター程度日本所要量であろうということになっております。六十年につきましては、そのあと五年になるわけでございますが、まあ少なくとも六十億キロリッター世界の総供給でございますが、これにはもっと多くて七十億キロリッターぐらい出るというような説もございますが、まあ常識的に言いますと、少なくても六十億キロリッター以上は供給可能の計算数字としては出ています。ただ、いろいろな不確定要素が幾つかございまして、たとえばOPEC諸国生産制限というような手に出るのではないかとか、それだけたくさん開発する資金が十分調達できるかとか、そういったような各種の問題がありまして、この辺がやはり相当確定的に出てくるということはなかなか言いにくい数字になっております。
  10. 星野力

    星野力君 一九八〇年の予想が大体五十億トン、八五年が六十億トン以上ですね、それは生産量ですか。輸出可能量を私はお聞きしておるんです。
  11. 荒川英

    説明員荒川英君) 輸出ではございません。供給量でございまして、全生産という意味でございます。輸出だけではございません。
  12. 星野力

    星野力君 私、やはり政府の統計からだと思いますが、一九八〇年の世界輸出可能量として十二億五千万トンという数字を拝見いたしております。総供給量じゃなしに輸出可能量として。八五年、それが若干ふえるといたしましても、先ほどの御発言にもありますように、一九八五年に六億ないし七億と、それから一九八五年をとりますと、おそらくアメリカ輸入予想量というのも五億トンをこえておると思いますが、かりに十五億トンの輸出可能量が一九八五年にありましても、そのほとんどをアメリカ日本——日本のほうが多いわけですね——輸入してしまうと、そういうことは一体可能でしょうか。科学技術庁長官、いかがでしょうか、その辺の見当は。
  13. 前田佳都男

    国務大臣前田佳都男君) その見通しいかんという御質疑でございますが、自信をもって的確にぴしゃりとお答えは、私もその点の主管でございませんので、お答えはいたしかねるのでございますけれども、確かにOPECの結成や、あるいは輸入国アメリカ輸入国としてますます輸入依存度がふえてくるというふうなこと、いろんな点から相当むずかしくはなると思いますけれども、その反面、石油開発というものも相当従来以上に、比較的深海といいますか、深い海のほうからもとるというふうな技術開発とか、いろんなそういう方面からの開発もいたしまするので、その点は私、実現可能だというふうに見ておるわけでございます。
  14. 星野力

    星野力君 科学技術庁長官は、大体科学技術的な見地からお考えになればいいわけで、そういう意味では、私のいまお聞きしておる問題について直接の主管ではないということになるかもしれませんが、直接の主管というと通産大臣でございますか、まあ通産大臣よりも、通産省の政府委員の方のほうがよく御存じと思いますが、私、ごく大ざっぱなことをお聞きしておるわけでございますけれども、しろうと考えで見当つけてみましても、日本石油資源確保という問題、これはきわめてゆゆしい前途が予想されるのじゃないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  15. 荒川英

    説明員荒川英君) 確かにおっしゃるとおり、一応計算上は今後昭和五十五年、あるいは六十年あたりの数字も、世界需給としては大体バランスするという計算は出てまいります。しかし、やはりこれから考えられます供給不安定要因というのがかなりございまして、特にやはり中東諸国の今後のいろんな紛争というような問題との関係もございます。あるいは、中東諸国石油代金をあまりにも多数蓄積いたしますと、むしろそういった蓄積をドルでしないで、資源を地面の下へためておくというかっこうで、生産抑制という傾向もあるのじゃないか。この辺が特に、特定の数カ国間に大きくこれからたよっていくという傾向が特に出てまいります関係上、そういった諸国の動静がほんとうにどういうふうに展開するかということによっては、かなり不確定要因が多いということは事実でございます。
  16. 星野力

    星野力君 計算上からすると、いろいろな困難があるということはお認めになっておられますが、問題は、これはやっぱり計算の問題だと思うのですね。そしてしかし、不安定要因があるから一がいにそう悲観する必要もない。いわば不安定要因に望みをかけておいでになるような状態で、これははなはだ心もとない感じがいたすのでありますが、この問題については、また午後外務大臣などにお聞きしたいと思いますので、先へ進みます。  原子力発電核燃料の問題について少しお聞きしたいのです。四十八年度分までは現在の協定で手当てされておるわけでございます。六十年、六千万キロワットの原発が稼働しますと、濃縮ウラン年間どのくらい必要とするのか。また、それまでに累積でどれほどの量が必要になるのか、ちょっとお理し願いたいと思います。
  17. 成田壽治

    政府委員成田壽治君) 昭和六十年における六千万キロワットの原子力発電に必要な濃縮ウランの量は、昭和六十年、一年間分離作業量にしまして約八千トン、一年間で八千トンでございます。  それから昭和六十年までの累積作業量の合計は、累積計は約六万四千トンに達する見通しでございます。
  18. 星野力

    星野力君 その場合必要量確保できる保証はあるのかどうか。よくいわれてますように、一九八〇年ごろからアメリカ供給能力資本主義世界需要に追いつかなくなるという話でありますが、どうですか。保証がございますか。
  19. 成田壽治

    政府委員成田壽治君) 六千万キロワットの原子力発電を動かすため、昭和六十年度八千トンの作業量濃縮ウランが必要ですが、これは現行協定によって、現在の日米協定によって確保されている量が相当あります。その上に今度改定協定によって四千万——従来の協定二千万キロワット相当分が、一応契約すれば確保できる態勢になっております。今度の改定によってさらに四千万キロワットを合わせまして、それで六千万キロワット分の濃縮ウランは、この協定がフルに運用されて契約されますと確保できるという形になっております。そのほか、昭和六十年といいますと一九八五年でありますので、アメリカのいまの三工場がいま九億ドルほど投じて設備増強計画をやっておりますが、それをもってしても、一九八二年、三年ごろになりますと、世界濃縮ウラン需要に追いつかないという状態になりますので、第四工場計画、これは日米共同で第四工場をつくる計画検討も行なわれ、またフランスでも、自分が持っているガス拡散技術を使って、ヨーロッパ等において新しいガス拡散法による工場計画もあり、また英国、オランダ、ドイツ三国間によって遠心分離法による濃縮ウラン工場建設構想もありまして、昭和六十年ごろになると、そういう国際的な濃縮工場も動き出す過程に入るのじゃないか。そういう面から、昭和六十年度以降においては、そういうものに対する期待考えられております。
  20. 星野力

    星野力君 アメリカで第四工場建設があり、フランス、EAESにおいても自国濃縮ウラン供給できる施設を持つようになると、こういうお話でございますが、それができましても、世界資本主義国だけを考えても、需要量というものが急速に増大していくという状態で、はたして議定書はできましても協定改定はできましても、その必要な量が確保できるかどうかということはやはり別問題ではないかと思うのであります。で、しろうと考えですけれども、そうなった場合、需給が非常に逼迫した場合に、各国の間で濃縮ウラン争奪戦が展開されるとか、売り手市場になる関係から値段が引き上げられるとか、そういう心配は要らないのでしょうか。
  21. 成田壽治

    政府委員成田壽治君) 石油のいろいろな供給上の問題、あるいは不安から、世界的に原子力発電がどんどん伸びてまいると思います。したがいまして、濃縮ウランは、これは各国とも非常に需要が伸びてまいりますので、アメリカの第四工場その他のいろいろな工場等建設されていっても、非常に需要の伸びに追いつけないという状態考えられるわけであります。計算によりますと、二、三年に一つぐらいずつ世界のどこかに九千トンぐらいの濃縮工場が必要であるという計算も出ておりまして、そういう意味からやはり多元化日本としては安定供給見地から濃縮ウラン供給源多元化ということを考えていますが、最終的にはやはり自分の国で濃縮工場を持つということ、自国工場を持って自給といいますか、ある一定割合自分濃縮ウラン生産によってカバーするというのが一番安定供給上も問題もありませんし、また、世界的なそういう競争入手ウラン濃縮獲得競争の対策にもなりますので、現在動力炉核燃料事業団を中心に昭和六十年には国際的に競争できるような遠心分離法による濃縮工場をつくりたいと、そういうプロジェクトでいま重点的に予算を投入して研究開発昭和四十八年度から始めたわけでございますが、プロジェクトとして始めたわけでございますが、いまそういう目途で馬力をかけて研究開発を進めておるのであります。
  22. 星野力

    星野力君 供給源多元化の問題それから国産化の問題、またあとでお聞きしたいと思いますが、どちらにしても濃縮ウランアメリカに依存する関係は非常に強いわけでありますが、そうなりますと、濃縮ウランを一手に握るアメリカ日本に対する発言力、これは経済的にも政治的にもますます強くなると考えなきゃいけないですが、そういう点の御心配はなさっておられないですか。
  23. 成田壽治

    政府委員成田壽治君) そういう問題も、懸念もありますが、ただ先ほど言いましたように、世界を見まして、いま濃縮ウラン相当規模供給できる国はアメリカ、これはアメリカ原子力委員会が三工場——軍用工場の転換でありますが、三工場をもって、いま年間一万七千トンの能力工場をもってこれしか期待できないと、それから先ほど言いました設備増強計画を早急にやって二万八千トンにするという計画もありますので、残念ながらといいますか、さしあたりはアメリカのこの三工場能力に依存するしかないと。これは日本だけでなくてヨーロッパ諸国も同様であります。しかし、三工場能力増をもってしても足りない時期に、いわゆる一九八二、三年の端境期以降においては多元化、いろいろ各国とも工場つくりますが、それまではやはりアメリカ供給に依存せざるを得ないというのが実情でございます。アメリカ協定等においても公平の原則によって供給すると、これは日本以外の国に対してもそういう態度でおりますので、まあ一九八二、三年ごろまではアメリカの三工場能力に依存せざるを得ないと。そして、依存しても当面問題はそれほどないというふうに考えております。
  24. 星野力

    星野力君 一九八〇年代の初めまではアメリカに全面的に依存せざるを得ない状態だと、こうおっしゃるわけです。それが実情だろうと思いますが、この期間というのは、経済社会基本計画を見ましても、日本経済成長を急速にさらに高めていこうという時代でありますが、いわば日本原子力発電のスイッチをアメリカに握られることになるわけであります。言いかえますと、日本エネルギー源アメリカに押えられてしまう。日本産業の生殺与奪の権をアメリカに握られることになりはしないかと思いますが、まあこれはお答え要りません。私、いままでお聞きしただけからも六十年、六千万キロワットの原発に必要な濃縮ウラン確保の保障というものは必ずしもたしかでないと思いますし、また、全面的な対米依存ということは日本にとって非常に危険な事態であるとも考えます。それらの点からも六千万キロワットの計画というものの妥当性に疑問があるんです。無理な計画ではないかと思うんでありますが、それもお答え要りません。あとでまたあわしてお答え願うことにします。  先ほど供給源多元化ということを言われましたけれども、濃縮ウランアメリカにたよらず他の国からも入れるといいましても、いまのところ余力のあるのはソ連だけだと思いますが、それにはソ連との間に協定を結ばなければいけないが、日ソ原子力協定検討に値するものかどうか、締結可能性があるかどうか、締結する考えがあるかどうか、もし何でしたら長官からお答え願いたいと思います。
  25. 前田佳都男

    国務大臣前田佳都男君) まず、現在濃縮ウランを提供する国は、先生御承知のように、アメリカ安定供給といいましょうか、その点におきましてはアメリカが一番その能力があるわけでございますが、先般ソ連原子力訪ソ調査団というのが行ってまいりまして、実はその報告も私聞きました。相当明るいニュースも聞いたわけでございますが、はたしてソ連供給能力というものがどの程度であるかということを実はまだ私のほうでつまびらかにはいたしておりません。この点につきましては、先般も外務大臣から御答弁もありましたように、外務省在外公館等を通じて、この点はいろいろ検討をしていただいておる段階でございまして、そういう調査の結果等を踏まえまして、そういうふうな点を外務省ともよく相談をいたしまして、どういうふうにするかということをきめたいというふうに考えております。どの程度供給能力があるかどうかということは、実はまだ私のほうでわかっておりません。この点はあるいは外務省から補足して御説明していただいてもけっこうだと思います。ただそのほかに、原子力だけじゃなくて、科学技術協力全体についての協定、この協定についても、現在両国間で実は交渉中でございます。現在は日本ソビエトの間で文化取りきめがございますが、その文化取りきめのもとで科学技術協力というものもいたしております。しかし、一そう科学技術協力の推進をはかってはどうかということで、ソ連との間におきまして科学技術協力協定締結につきまして目下両国で事実上交渉しておる最中でございます。そういうことで一応お答え申し上げます。
  26. 水野清

    政府委員水野清君) いま科学技術庁長官からお話がありましたように、外務省としては、ソビエト政府がどういう形で供給をしてもらえるのか、あるいは供給量、長期的に見通しがきくのかというようなことを調査をしておる際でございますが、先生がいま御指摘になったように、一九八〇年代になれば濃縮ウランというものは世界的に非常に不足がちになるということは想像はできることでありまして、決してソビエトからの濃縮ウラン輸入に対して初めから否定をしていくというような態度ではなく、むしろ積極的にこれを受け入れられれば受け入れていきたいという態度でございます。ただ問題は、いままでソビエト政府自由主義諸国に対して濃縮ウラン輸出しましたのはフランスにごくわずか輸出した例がありますが、それ以外はないわけでありまして、そういったことも私はソビエト政府の出方次第じゃないかと、むしろげたは向こうに預けられているんじゃないかというふうに考えております。
  27. 星野力

    星野力君 先ほど成田局長から濃縮ウラン遠心分離法による国内生産の問題についてお話がありましたが、先ほどの御発言は一九八五年、昭和六十年に企業としての工場ができるということでございますか。
  28. 成田壽治

    政府委員成田壽治君) 現在のプロジェクトによりますと、昭和六十年には量的にはそれほど大きくないのでありますが、商業的な濃縮ウラン工場日本につくることを目途研究開発をやっております。
  29. 星野力

    星野力君 どの程度能力のものを考えておられますか、まず。
  30. 成田壽治

    政府委員成田壽治君) ガス拡散法と違いまして、遠心分離法というのは需要にあわせて段階的に設備をふやしていけるという非常にメリットがあるわけでございます。それがまた遠心分離方式メリットでもあるわけでありますが、そういう意味昭和六十年度の実用プラント最初たいして、四、五百トンとか、最初は非常に少ないものから始まると思いますが、昭和六十五年ぐらいになると、日本で必要な濃縮ウランの三分の一ぐらいをこの工場の増設によって確保したいという、そういう願い、期待を持っております。
  31. 星野力

    星野力君 わかりました。  きのうの第九回日米貿易経済合同委員会におきまして、大平外務大臣からも濃縮ウラン日米共同工場についての御発言がありました。この話は進んでおるんでしょうか。
  32. 成田壽治

    政府委員成田壽治君) 日米合同濃縮計画につきましては、これは昨年のホノルル会談において鶴見インガソル共同声明におきましても、アメリカに第四工場共同でつくることについて検討するワーキンググループを、スタディグループをつくろうという申し合わせもありまして、現在日本ではウラン濃縮事業調査会という団体をつくりまして、これが電力業界、それから学識経験者あるいはメーカー等いろいろな関係専門家が入った、われわれESCといっておりますが、ウラン濃縮事業調査会、ここを窓口にし、アメリカでは去年はAECアメリカ原子力委員会と二度ほど、これは予備会談でありますが、ESCと打ち合わせをやり、現在はアメリカウエスチング・ハウス社、それからベクテルという会社、それからユニオン・カーバイド、この三社が共同一つ調査グループをつくっておりまして、この三社の調査グループESCが、これは商業的な話もありますが、両方で検討会を持っていろいろ詰めておるわけであります。しかし、これは日本民間団体向こう民間会社との間で話が行なわれているということで、これはいろいろまだ調査段階でありますが、いろんな技術的な、あるいは経済的な問題、あるいは立地問題等いろんな問題を詰めております。
  33. 星野力

    星野力君 まだ調査段階ということでございますが、構想としてはどこにこれはできるんですか。アメリカにできるんでございますか、日本にできるんでございますか、あるいはその他のところに設けるのか、それからまた、これはアメリカ企業になるのか、日本企業になるのか、その辺、構想としていかがですか。
  34. 成田壽治

    政府委員成田壽治君) 昨年の鶴見インガソル共同声明におきましても、アメリカ国内に第四工場をつくることについて同意した。したがって、アメリカ国内考えておるのであります。  ガス拡散法というのは、電力代が非常にかかりますので、日本のような電力料金の高いところは適当でない、立地的に適当でありませんので、アメリカは非常に石炭とか水力等、いろいろ非常に電力コストの安い地点、これは具体的にどこになるかわかりませんが、アメリカ国内における電力コストの安い地点をさがして、そこで隣りに発電所をつくり、その隣りで濃縮工場をつくる。具体的なサイトは立地の検討等でやって、まだ具体的にきまっておらないのであります。
  35. 星野力

    星野力君 そうなりますと、アメリカ企業アメリカ濃縮ウランの第四工場としてできるということでありますが、そうしますと、アメリカから買うのとはたいして違わない、同じことではないかと、日本が少し銭を出す、施設をつくるのに、というだけだと思いますが、そうしますと、この改正協定との関係ということも民間コマーシャルベースでもってきめていくということの中に含まれるわけですね。
  36. 成田壽治

    政府委員成田壽治君) 第四工場日米共同——いかなる形の共同の形態になるかというのは、まだ具体的に詰まっておらぬのでありますが、日本側としましては、ただ単に前金を払って買うというかっこうではなくて、日本も資本参加をして、これはまあ比率がどのくらいになるか、これはいろいろ問題ありますが、やはり日本共同工場をつくる。経営参加、資本参加の形でつくったほうが、安定供給の面からもメリットがありますので、われわれとしてはそれを期待しておるのであります。ただ、じゃ出資比率がどれくらいになるかとか、あるいはまた、アメリカの軍事機密の問題もありまして、共同資本参加、経営参加という場合にもいろいろこれから詰めるべき問題、たくさんあるのでありますが、形としては日本がただ購入という、長期契約による購入ではなくして、資本参加によって共同工場をつくるという形をとりたいという、ふうに考えております。
  37. 星野力

    星野力君 昭和六十年の原子力発電六千万キロワット、この計画につきましてはこれまでも若干科学技術委員会などでお聞きしたわけでありますが、軽水型動力炉の安全性の問題、あるいは排出される温排水の問題いろいろ未解決というよりも、温排水の問題などは全然解明されておらない問題であります。しかも影響の非常に大きい問題当然こういう問題をめぐって原発設置に対する反対、住民の反対運動というものは今後も予想されるわけでありますが、そういうところからくるところの立地の困難、用地取得の困難が考えられます。それからまた、使用済み核燃料の再処理の問題これは工場の再処理能力、そこから発生するクリプトン85などの放射性物質の除去の問題、いろいろございますし、さらに原発の廃棄物の処理の問題まあいずれもめどが十分には立っていないわけでありますが、たとえば一つだけでよろしゅうございます、廃棄物処理のめどはどうなるのか、一つその点だけでもお答え願いたいと思うのですが、それらの点からも六千万キロワット計画には非常な困難が伴うのではないかと思いますが、いかがでございますか。
  38. 成田壽治

    政府委員成田壽治君) 六千万キロワットの計画の達成というのは非常に御指摘のようにいろいろな問題があって、われわれもこの実現は相当いろいろな容易でない問題があると思います。御指摘の廃棄物の問題につきましても、現在は発電所を運転してできました廃棄物は、安全な形で発電所の構内の保管所に保管させておるのであります。これがまあかなり本数がふえてまいっておりますが、しかし構内においても、また周辺に対しても安全な形、厳格に守らせて問題ないようになっております。ただこれが将来いつまでも保管という形では解決にならないのでありまして、陸地処分、海洋処分等の方法がいろいろ検討されております。それで現在、今年もその関係の予算として三億ぐらいの予算を投じて研究機関、原研、動燃その他いろんな研究をやらしておりまして、昨年つくりました原子力委員会の長期計画におきましても、こういう発電所から出るところの低レベルの廃棄物の処理、処分については、昭和五十年代の初めごろまでには解決をつけると、そういう方向で研究開発を精力的にやるべきであるという、原子力委員会の長期計画でそういう方針を打ち出しておりますので、現在鋭意その解決をはかるべく研究開発をやっております。ただこれは日本だけの問題じゃなくて、アメリカソ連も、またヨーロッパ諸国も共通の問題でありますので、IAEAあるいはOECD等のいろんな国際機関においても共同で廃棄物をどうやって早く解決するかという問題、国際原子力会議の主要なテーマになって、いま国際協力の形でも非常にこの解決を急ぐべく研究をやっております。
  39. 星野力

    星野力君 廃棄物処理の問題は、ソ連アメリカも同じように持っている悩みであり、共同の課題だと、確かにそのとおりだと思います。が、しかし、コンクリートに詰めてどこかへためておくにしましても、ソ連アメリカは場所をたくさん持っておりますが、日本はなかなかそうはいかないんで、日本にとっては特にこれは差し迫った問題になってきておると思います。それに対して、昭和五十年代の初めごろまでには目鼻をつけたいと、こういうお話、現在まだ具体的な成果は得られない状態でございます。その点では科学技術庁の皆さん、また通産省にしましても、六千万キロワットのために非常な重荷を背負っておられるわけであります。先ほど申しました核燃料確保の保障という問題もありますし、それからいまいろいろあげましたような困難、そういうところから見ましても、六千万キロワット計画というのは非常に無理な計画、どうかすればこれはまぼろしの計画になる可能性が非常に大きいと思うんであります。そういうまぼろしの計画の上に将来の日本の電力需給計画を立てるというのは、これは大きな冒険ではないかと思います。私は高度成長そのものを考え直さなければならない。こんな状態で進めていったならば、非常に深刻な事態を招きはしないかと、こう思うんであります。これは政府全体の問題でございますが、長官からお考え聞きたいです。
  40. 前田佳都男

    国務大臣前田佳都男君) 先刻来の星野先生からの御指摘の点、立地の困難性の問題もわれわれは当面しておる問題でございます。安全性の確保あるいは環境等の調和の問題につきましても、今度公聴会等も考え、積極的にこれは取り組んで安全性の確保のためにも、さらにわれわれは取り組んでいきたいと、現在もやっておりますけれども、さらにこれを積極的に取り組んでいきますし、また廃棄物の問題は、確かに先生御指摘のとおり、これは非常に大きな問題であります。日本だけじゃなくて、外国も、国際的にもこの問題に取り組んでおりますが、ただ日本は土地が狭いからという先生の御指摘でありますが、狭いだけに一そうわれわれもこの点は勉強していきたい。そうして六十年、六千万キロワットの原子力発電の目的を達したいと実は考えてわれわれは鋭意進めておるわけでございまするが、先生経済成長率というか、高度経済成長というものを修正すればこの六千万キロワットはそんなに要らないんじゃないかというふうなお尋ねかと思うのでありますが、経済成長のことは、私がいまここでどう御答弁するという問題よりも、いずれにしましても、国民生活の水準がだんだん上がっていくわけでございまして、その場合におきまする電力の需要というものが平均現在年率九・五%前後で伸びていっておりますが、とにかく電力需要の伸び率というものが、依然として私は、生活水準が向上していく以上はやはりずっと続いていくものだというふうに考えております。その場合に電力エネルギーのもとである石油については、先刻来も御質疑のとおりOPECだとかあるいはアメリカ輸入局に転嫁していくとか、あるいは石油資源的にもだんだんと少なくなっていく、あるいは低硫黄の石油を求める、いろんな面から石油に対する面というものがだんだん少なく——分野が多少減っていくのじゃないか。その場合、結局次に出てくるものはさしあたりは原子力期待せざるを得ないという意味におきまして、原子力についても、クリーンエネルギーじゃないじゃないかというふうないろいろ御指摘もございますけれども、石油にかわるべきものとして原子力期待せざるを得ないというのが私は現在の情勢じゃないかと思うのです。その意味におきまして、昭和六十年度に原子力発電というものはやはり六千万キロワット程度のものは必要であるというふうに考えて、現在のところその考え方、その目標というものを改正するような考え方は持っていないわけでございます。
  41. 星野力

    星野力君 時間もなくなりそうですから、一問だけひとつお願いしますが、私はエネルギー問題に関連しまして、太陽エネルギーとか水素エネルギーの研究開発というのはちょっと遠い先のことになると思いますけれども、現在使われている石油あるいは天然ガス、それから地熱発電にしましても、現状はきわめて微々たるものでありますが、相当のこれは可能性も持っていると思いますし、それから石炭その他まだあると思いますが、そういうものを含めての総合対策、ほんとうに日本の経済の前途を見詰めながらの総合対策が必要だと思っております。私は石炭なんかにしましても、これは再評価しまして、政策転換が必要ではないかと思っておりますが、最後に通産省に総合エネルギー調査会というものを設けられているようでありますし、それらのエネルギー総合対策というものについての現在得ておられる方針ですね、大きな方針でけっこうですから述べていただいて質問を終わりたいと思います。
  42. 荒川英

    説明員荒川英君) 現在エネルギー調査会で立てております基本的なエネルギー対策の方向といたしましては三つほどございまして、一つは、やはりエネルギー資源の安定確保、量を間違いなくとってくるということでございます。その中身は幾つかございますが、石油、天然ガス、あるいはウラン資源等、やはり自主開発相当量を確保したいということ、地域分散をしたいという二と、それから緊急時に対する備蓄、消費規制の準備、国際融通というような準備をすること。さらにはやはり長期の問題でございますが、先生の先ほどおっしゃいました代替エネルギーの開発に力を入れる、こういったことが安定確保の大きな柱ではないかと思ってやっております。  それから大きな二番は、やはりきれいなエネルギーの問題でございまして、硫黄酸化物あるいは窒素酸化物、光化学スモッグというような大気汚染問題、それからさらにはやはり原子力関係のエネルギーでは放射能汚染、あるいは温排水、こういった問題についての、きれいなエネルギーをどうやって確保するかという、いわば公害安全立地対策といった系統のことが大きな柱である。  それからもう一つの大きな柱は、やはり世界のエネルギー供給、特に石油を中心とする将来の供給制約ということを頭に置きますと、エネルギーをできるだけ使わないでいきたい、省エネルギーという問題がございます。これは個々の家庭での節約という問題もございますが、技術的に、ある熱効率等が限界に達して——もう飛躍的にやはり伸ばすというような技術開発の問題でもございますと同時に、最後はやはり省エネルギー型の産業構造をつくっていく、省エネルギー産業構造という方向へものを進めなければいけないのじゃないか。現在そういったような大きな線に沿いましてエネルギー調査会のほうで、これは産業構造審議会との連携もとりながら具体策の策定をやっておる段階でございます。
  43. 前田佳都男

    国務大臣前田佳都男君) ただいまの星野先生の御質問にさらにちょっとつけ加えて私からも御答弁いたしておきます。  ちょうど七月九日に、総理大臣を議長といたします科学技術会議を開催をいたしまして、その科学技術会議でエネルギー科学技術部会というものを設置することにきめまして、今後のエネルギー技術に関する諸問題につきまして調査審議を進めることにきめたわけでございます。この本会議の、科学技術会議の方針に沿いまして、今後エネルギー技術開発に取り組んでいきたい。その内容につきましては、ただいま通産省から御説明をしたとおりでございます。
  44. 森元治郎

    ○森元治郎君 簡単に短かい時間で質問をします。  この前、大臣に申し上げたんだが、少なくも科学に関する限り、西暦だけ使ったらどうだという——御答弁がなかったんですがね、これは急に昭和七十五年だの、二〇〇〇年だの、とてもじゃないが……。  そこで急に前田さん個人でそうしましょうとも言えないがね。これはやはり昭和は九十年なんということも想像されないし、これはますます世界が小さくなってくる。どこの国も、中国でさえ西暦を使ってきている。少なくも科学に関する限り、まずこの辺から西暦一本でやってくれませんかね。たとえば田中総理がサンシャイン計画とか、はでなこと言っているが、これも昭和になってみたり、西暦になってみたり、どうです、検討してみませんか、これがまず第一問。
  45. 前田佳都男

    国務大臣前田佳都男君) この間の外務委員会で森先生から実は御指摘を受けましたとき、全く私ももう同感でありまして、西暦何年といいましても、すぐに昭和に直してぴんと何年かという、しょっちゅうポケットブックでも入れて、換算表入れておかないと、すぐに頭に出てこないのです。その点で、確かに私もこれは不便だなあと思って、使い分けせねばいかぬわけでありまして、その点先生と全く同感でございます。その意味におきまして、先生の御意見は非常にわれわれにとって検討すべき項目であると考えまして、一ぺんこれは閣議の席でも、こういうことを話してみようかと思っておりますが、とにかく先生の御意見は、まず科学技術のほうから先考えたらどうかというわけでありますが、科学技術は合理的でなくちゃいけませんし、そういうふうな、すぐにこの場で、じゃ西暦に全部取りかえますということはちょっとお答えできないと思いますけれども、この点は御趣旨を体して十分検討いたしたいと考えております。
  46. 森元治郎

    ○森元治郎君 これ、持っていないと、とても話がいつのことかわからないのですね、いつでもこれを。先の話なんですから、近ごろは話が大きくなって。それはそれでけっこうですが。  そこで、保障措置に関して、まず原子力機関との話とか、そういうことは別として、国内措置として、私は十分知らないが、核管理センター、駒井さんがやっている。しかし、査察の機関というものがまだできていない。これが三十三人ぐらいの優秀な査察員などを置く政府機関の査察機構などをつくろう、こういうことは非常におくれている理由は、政府が一体核防条約でも批准して、そちらの方向に進むのか進まないのかもはっきりしないので、こういうものを国会に法律として出していくということは差し控えているのかどうか。国際的信用を査察の信頼度を高めなければならぬということは、長期計画の中にもえんえんとうたってあるわけですよ、どこでも。高めねばならぬということを言っているが、やっていることはずっとおくれているんですね。それは廃棄物の処理とかそういうふうな問題は別にして、少なくも査察を委託されて外国からも信頼のできる、核の移動を計量できる、信頼性のあるもの、これはすみかに法律的措置、立法措置をとって進むときにきたと思うのですが、どうでしょうか。
  47. 成田壽治

    政府委員成田壽治君) われわれ日本国内の核物質の管理、計量、この業務の強化拡充は、これはNPJ入る入らないにも関係なく、従来から強化拡充をはかってきております。たとえば原子力局の、これは保億障措置というのは一次的には政府の責任でやるべきでありますので、原子力局に保障措置室という機構をつくってもおります。ただ、政府の職員の数というのは、若干ずつふやしておりますが、なかなか画期的には人をふやせないという事情もありますので、昨年の四月に財団法人として核物質管理センター、これをつくりまして、そしてここでいろいろ政府の査察事務の通常的なルーチンワーク的なものをやらせられないかどうかという検討、それから査察のやり方についてのいろんな技術的な研究等もやらしております。ただ、核物質管理センターというのは、いまのところ単なる財団法人、公益法人でありますので、査察という国家業務をどこまで委託できるかという、いま法律的な検討をやっておりまして、これを大規模に委託、この核物質管理センターを活用して査察業務をやらせるためには、あるいは規制法を直して、その根拠づけの規定を入れる必要があるんではないか、あるいはその場合には単なる財団法人じゃなくて、特殊法人としての性格を持たせないといけないかどうかという法律的な問題をいま局で検討しておりまして、これは原子炉等規制法改正の問題の一環として検討しております。近く結論を得て、必要な場合には法的措置も講じたいというふうに考えております。
  48. 森元治郎

    ○森元治郎君 必要な場合というのは、必要な場合はもうきたんで、少なくも時間的に次の通常国会くらいには出せる段階にあると思うんですが、どうでしょうか。
  49. 成田壽治

    政府委員成田壽治君) われわれ保障措置に関してはなるたけ早く、できれば次の通常国会にも成案を得れば出したいと思っておりますが、ただ規制法全体の改正、保障措置だけでなくて、いろんな点で改正問題がありまして、これを全体の問題をいまつぶしておるところであります。したがって、できれば来年の通常国会に出したいと思っておりますが、全体とのからみの問題もありますので、核物質管理センターの査察業務に関する法的根拠、あるいは必要な場合は特殊法人にするというような形のものが、はっきり確約はできないのでありますが、なるたけ早く成案を得て法的措置を講じたいと考えております。
  50. 森元治郎

    ○森元治郎君 そこで、大臣、保障措置に関しては原子力機関と、簡単に機関、機関とこれから言いますが、機関と話し合いを進めて、大体ユーラトムと同じというわけにもこれはいかないが、何しろ向こうは国の数は九つもあって一つの先進国家群だ。群対極東の一つの国、日本では、平等というわけにもいくまい、若干ね。いずれにしても煮詰まってきたように思うんです。大臣の御判断は、いまの予備の話し合いで、もし政府が核防条約を承認しようという腹さえきめれば、いまの予備的な交渉——予備交渉というのはありませんけれども、予備的や交渉を本格的な交渉に切りかえられる時期にきていると思うのですが、どうですか。
  51. 影井梅夫

    政府委員(影井梅夫君) 長官の御答弁に先立ちまして、現在までにわが国とそれから原子力機関との間にどのような交渉が行なわれ、現在どのような状態にあるかということを御説明申し上げたいと思います。  わが国と原子力機関とのこの核防条約に基づく保障措置協定の交渉、これは昨年の六月から開始しておりますが、御承知のとおりに昨年六月から、ちょうどその時期にユーラトムが同じく原子力機関との間に保障措置協定の交渉をやっておりまして、わが国といたしましては、このユーラトムそれから国際原子力機関、この間の保障措置協定と実質的な平等性を確保したいという理由もございまして、この交渉を見守ってきたわけでございます。原子力機関とユーラトムとの保障措置協定、これは今年の四月五日に成立いたしました。この両者の間の保障措置協定の仕組みというものがかなりはっきりわかってきた。これを受けまして、わが国は、今年の六月から、わが国と原子力機関との間の交渉を促進したいということで、六月の初旬、たしか六月六日からわがほうの交渉団を原子力機関に派遣いたしまして、原子力機関、ユーラトムとの間の保障措置協定一つの基準といたしまして、わが国の基本的な立場を打ち出したわけでございます。  ただいま森先生御指摘のとおりに、ユーラトムはこれは国家群でございまして、わが国の場合には、これはわが国一国の自主査察、自主的な保障措置体制であるということで、そこにおのずから形式的には相違が生じてくる。しかしながら、実質的にはユーラトムが原子力機関との間に成立させましたこの合意、これに同じものを獲得したいというのが私どもの立場でございます。  そこで、ただいま森先生から御指摘のございました、いままで日本がやっております予備的な交渉というものをもう本格的な交渉に切りかえる時期ではないかという御指摘でございますが、御承知のとおりに、これを核防条約そのものに基づくいわゆる本格的な交渉ということに切りかえますと、これには本格的な交渉を開始いたしましてから十八カ月以内にこれを完結しなければならないという一つのタイムリミットがつけられているわけでございます。わが国といたしましては、原子力機関との間になるべく早くこの保障協定を成立させたいとは考えておりますけれども、他面、先ほど申し上げましたとおりに、ユーラトム、原子力機関間の保障措置協定と実質的な平等性を確保しなければならないという要請がございまして、まずこの基本的な立場を十分に原子力機関に了解してもらう。この了解を得ました後に、ユーラトムが得ました保障措置協定をにらみながら、種々技術的細目にわたって詰めていかなければならない。これを行なうにあたりましては、なるべく早くこれを完了したいというふうには考えておりますけれども、技術的細目の面でどのような問題点が生じて、それを解決するのにどのぐらい時間がかかるかわからないということも現実でございますので、現在の段階におきましては、わが国と原子力機関との間の交渉、これはタイムリミットのつきません予備的な交渉ということで当分続けてまいりたいというふうに考えております。
  52. 森元治郎

    ○森元治郎君 もう判こで押したような答弁で、聞いているのつらかったよ。  それは、私が聞きたいのは、もう実質的なユーラトムと大体同じくらいのところで持っていけているように思うんで、その点を聞いているんです。まあ条約関係じゃなくて、やっぱりそれは専門家がやらなければだめだな。
  53. 成田壽治

    政府委員成田壽治君) 現在、IAEAとの交渉は予備交渉で、まだ具体的な話には入っておらない。問題のユーラトムとIAEAとの保障措置協定はことしの四月に発効しましたので、これからこれとの平等性を追求するかっこうで交渉を進めたい。それで、NPTのモデル協定におきましても、これは一国でやる場合と多国間でやる場合の区別というのは入ってないのでありまして、やはりその国の核物質管理体制の有効性が十分信用できるかどうかという、有効性いかんということでありますから、われわれは日本国内体制だけによっても十分整備すればユーラトムに近いものがかちとれるというふうに考えて、これからの交渉を進めてまいりたいと思っております。
  54. 森元治郎

    ○森元治郎君 大臣ね、大平大臣はこの前、モデル協定ができたときに、できたあとのこの外務委員会で質問したときには、党の政調部会ですか、政調の原子力関係のところでせっかく努力中で、いずれ結論が出たならば、それをもとにいきたいんだと、核防条約の批准のほうですよ、どの段階なんですか。やっているんですか、甲論乙駁して。自民党のその関係、何部会というのか、原子力部会か何か、核防条約については何をやっているんですか。国会対策ばかりやっているわけじゃないだろうから。
  55. 前田佳都男

    国務大臣前田佳都男君) ただいまの点につきましては、政府調査会の中にNPT小委員会というのをつくりまして、佐々木義武君がその委員長になりまして、目下検討中でございます。
  56. 森元治郎

    ○森元治郎君 その検討中という話は昔から聞いておるんだがね。一向、やっているのか、やってないのか。おそらくやってないんだと思うんですよ。それにたよっていると外務大臣が言うんでは、これいつのことかわからない。おそらく、先ほど私が伺った核物質の査察の機関ですね。政府は特殊法人、政府の息のかかった特殊法人みたいなもので出したいと言ったって、進めの号令かければ、もうすぐにこれは役人のことですから、待ってましたとそれも進む。保障措置協定についても、進めの信号があればだあっとたちまちいく。そしてこれを国会に承認を求めるとなれば、おそやく保障措置協定も、あるいは先ほど申した核物質査察の機関に関する立法措置なども一斉に首をそろえて、何とぞ御承認を願いたいと出てくるんだろうと思うんですね。もうポイントは政府の決断なんだが、これは前田さんは技術長官であると同時にこれは国務大臣であり、自民党の有力な方ですから、これをいつきめるんだ、いふまで待っていれば方向がきまるんですか、いつまで待っていれば。何を待っているのか。じんぜん日を過すというほうなのか。あるいはやはりこれを持つんだという権利だけは留保しておこうと言って入らないのか。入るまいと日を過ごしているのか。これは決断はもう目前だと思うんですよね。その点どうでしょう、大臣として。
  57. 前田佳都男

    国務大臣前田佳都男君) 一体、この政務調査会で何をしておるのかという先生の御指摘でございまするが、われわれはその平和利用という点からだけこうものごとを見ておるわけでございますけれども、いろんな面から検討をしておるようでございまして、その点どういうふうに能率があがって、どういうふうに進んでおるかということをいま明確にお答えできないのは残念でございますけれども、その先生の御指摘の趣旨もよく私閣議には報告をいたしまして、この問題、積極的にひとつ取り組むように、この外務委員会の空気というものをよく伝えたいというふうに考えております。
  58. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。  いまのお答えの中に、科学技術庁としては平和利用ということを中心に考えておるが、いろいろな議論がありましてという、そのいろいろというのは、まだ日本も核保有の権利を留保しようというような考えの議論も出ておるんですか。そういうことだというと、これはなかなか問題だと思うんですが。
  59. 水野清

    政府委員水野清君) そういう意味で各種の意見があるというわけじゃなくて、私もかつてその小委員会に所属をしたことがございますが、核保有についてフリーハンドでいたいという意見の方もいらっしゃる。しかし、そういうことを言っても、実際には、現実にはそういうことはあり得ないんじゃないかと、これは一つの各議員の個々の御意見がいろいろ出てきて、その調整がつかないということでございます。また、対外的にもこれをいま早急に結論を出さねばならないわけでもありますけれども、もう少し議論を熟していったほうがよかろうというふうに、党内では考えられているようであります。
  60. 羽生三七

    ○羽生三七君 フリーハンドということは、場合によったら日本も核保有を、余地を残しておいてもらいたいということで、そのことを絶対ないというならフリーハンドということばは出てこないわけなんで、それは非常に私は問題だと思うんですが、どうでしょう。
  61. 水野清

    政府委員水野清君) 非常な小数意見でございますけれども、軍事的に核を持つということではなくて、これから核エネルギーの利用というのが非常に多極的になっていくのに、この協定に縛られていくということは、将来の予測しがたい問題が出てきたときどうするかというような意見があるわけであります。同時に、いままで一番懸念をされておりましたのは、外国機関からの査察の問題で、一時的に非常に査察がきびしかったということが、先生も御存じだと思いますがありましたので、その面で縛られたくないという意見もあるわけであります。
  62. 森元治郎

    ○森元治郎君 これは何かの機会に私は……。その前に、大臣個人のお考えはどうでしょう、核防条約、進め。
  63. 前田佳都男

    国務大臣前田佳都男君) 前田個人の考え方を言えというお考えでございますが、これはやはり私も田中内閣の閣僚の一人として、個人の考え方ということは、ただ感じというふうなもの、いろいろ感じは持っておりますけれども、その感じは言うべきじゃないと思いますので、その点はひとつごかんべんを願いたいと思います。  やはり党の政調会とかそういうところでいま審議しておるようでございまするので、その審議をできるだけ急いでいただいて、そして結論を出したいというふうに考えております。
  64. 森元治郎

    ○森元治郎君 これはやったことないんだが、NPT小委員会の委員長さん、そういう方を参考においで願って、どういう審議を、どういうお考えなのか伺うことも、これ、委員会としてはできるんだろうと思うが、どうでしょうか、委員長。これは理事会か。やっぱりこれ聞かぬとね、ただ黙って金庫の中に入っているみたいで、全然外から見えないんですよね。論議しているなんて、論議なんかしてないんですよ、全然。してないから、こう日がたっていっているんですよ。これやっぱり一ぺん聞きたいんですがね。いつか、科学技術特別委員会ででもいいし、委員長さんにおいで願って聞いてもらいたいと思う。  これは委員長、その小委員長さん、責任者の方に御意見を伺う機会をつくってもらいたいと思いますが。
  65. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) けっこうです、機会をつくります。
  66. 森元治郎

    ○森元治郎君 それから最後に一うだけ、条約承認とそれから核防条約第三条による保障措置協定、これは条約が先に出てあとから協定が成立してもいいんですか。協定は条約の前に、イニシアルといいますか仮調印、国会に出す前ですから、そういうふうになるのか、手続をちょっと聞いておきたい。
  67. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 条約の規定から申しますと、どちらでもよろしいかと思います。すなわち、批准をいたします際に保障措置協定が成立しているか、あるいは批准した後に保障措置協定についての交渉が行なわれて、したがいまして、その後に保障措置協定が結ばれるということも差しつかえないと思います。  ただ日本の場合は、署名に際しまして、批准の実質的な前提条件といたしまして、保障措置協定における保障措置の平等性、特にユーラトムとの実質的な平等性確保ということが前提条件になっておりますから、批准に際しまして保障措置の内容が少なくともかたまっていることが必要であろうと考えております。
  68. 森元治郎

    ○森元治郎君 はい、けっこうです。
  69. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これから伺いますことは、むしろ科学技術特別委員会で行なったほうがよろしいかと思いますけれども、せっかくこうした協定改定が出た際に関連としてお尋ねをすることも意義があるであろうと、こういうことで若干補足的に伺っておきたいと思います。  いままでは一貫して、またきょうの答弁をずっと伺っておりましても、将来わが国のクリーンエネルギーの確保という問題については、原子力に最も大きな期待をかけなければならない。また、その方向で今後も進むであろう。と同時に、それに関連して、それに必要な濃縮ウランというものについての供給源アメリカに依存する以外にはない。これがもう一貫した政府考え方であろうかと、こう思います。先般も申し上げましたように、この問題についてはたいへん影響力が大きい。特にこの安全性の問題、それから環境破壊の問題、とにかく後退は絶対許されないというような非常にきびしい条件を持っているだろうと、こう思います。ところで、昭和六十年までに六千万キロワットの出力を予定をしているわけでありますけれども、経済成長が今後逐年伸びることによって、その六千万キロワットというものは、はたして妥当な数字であるかどうか、これも非常に問題があろうかと私は思うんです。おそらく六十年ごろになれば、いや足りなかったと、今後五年、十年後にはさらに一億を越さなければならない、あるいは二億というふうな数字が当然のことながら予測されることであろうと、こう思います。そうしますと、必然的に考えられる問題は、この狭い日本列島において、一体幾つ原子力発電をつくれば間に合うのかという素朴な疑問がわいてきますね、専門家でなくても。それでなくてもいま石油コンビナートであるとかあるいは火力発電所というものを考えた場合でも、もうこのまま推移すれば日本列島全部を取り巻いてしまうであろう、そういう施設によって。一体公害問題については、いま非常に騒がれておる反面これというきめ手がないまま現在進捗している。そういう二律相反する問題を通してどんどん進めていいものかどうなのか。いつもこれは議論の対象となりながらも、これというきめ手がないままに今日まできている。一体これでほんとうにいいんだろうか。これからますます需要が高まるその発電量というものについて、原子力にたよらざるを得ない。しかし一方において、ただいま申し上げたように一すでに科学技術特別委員会においてもしばしば議論が繰り返されてまいりましたように、この安全性という問題の一つを取り上げましても、しかとこうであるからこうだという断定的なそういう結論がないままにきているきらいがありはしまいか。たまたまアメリカにおいても公聴会等を通じて、この安全性の問題がしばしば議論になって、いま世論が沸騰している。そしてそれに加えて有名なオークリッジ国立研究所の研究員あるいは原少力委員会の規制官というんでしょうか、そういう人たちまでが最近この安全性について疑問があるというようなことを裏打ちする証言を行なっているというふうに伝えられておるわけであります。今度ひるがえって日本の現在設置されております原子炉、これを考えた場合に、まぎれもなくこれはアメリカで設計されたものをそのままこちらに持ってきているんではないだろうか。日本独自の開発ということは、いままでは考えられなかったんじゃないかと思うと、当然いまアメリカでそういう世論が沸騰している。もう一ぺんこの問題について見直す必要があるんではないかという感じがいたしますけれども、この点はどうでしょうか。
  70. 前田佳都男

    国務大臣前田佳都男君) 原子力発電の目標は相当大きい。どんどんと進めようとするけれども、その立地の安全性についても配意が足りないんじゃないかというふうな御指摘だと思います。いろいろ御指摘がございましたけれども、確かに渋谷先生御指摘のとおり、現在の原子炉は、外国製のものが多いわけでございまして、その点で自主技術開発ということに鋭意取り組んでいるわけでございます。まだ十分にその効果は発揮しておりませんけれども、その点におきまして、外国においても開発された軽水炉が相当故障があるから、日本でもその故障があるのではないかという御指摘もございましたが、事実そういう御指摘に該当するような事故といいましょうか、そういう事故もまああったわけでございまして、その点はわれわれもきびしい姿勢で通産省とも、ともにいろんな技術検査等をやりまして、きびしく取り組んでおりますが、何にいたしましても、そういう原子炉の、たとえ点検をするにしても一々外国から人に来てもらって、青い目の人に点検をしてもらっているということ自体が非常に芳しくない。しかし、それも現在まだ原子炉の保障期間中であるという関係から、外国の人がきているようでありまして、その点につきましても、自主技術開発ということに現在も、本年度の予算においてもそういう面で相当取り組んでおりまするが、今後の原子力行政を進める場合におきましても、そういう点に重点を置いて進んでいきたいというふうに考えているわけでございます。
  71. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 専門家といいましょうか、こういった方々の御意見をずっと伺ってみますと、安全というものについては絶対と申しませんね。これは学者の良識だと思うのです。おそらく九九%は安全である。しかし、地域住民にとってみればこれは絶対を要求しますね。この辺が非常にこれから問題になるであろう。事故というものは予測しないときに起こることは、もう過去のいろんな例証が示しておりますように、ただこの原子力発電についてはどんなささいな事故でもこれは絶対許されない。これこそ絶対がつくだろうと思うのですね。となると、安全性については今日まであらゆる手段方法を講じて調査といいますか、やってこられているのだろうと思いますが、いままで実物実験というようなことはおやりになったことがあるのですか、安全性について。
  72. 成田壽治

    政府委員成田壽治君) まあいろんな実験、これは従来は軽水炉をアメリカでつくりましたので、アメリカのメーカー、あるいはアメリカ政府の研究所等の実験データはもらっておりますが、最近は日本の原研等においてもROSA計画等いろいろな実物大ということではありませんが、大体同じ形のモデルをつくって、それによって安全性の実験を原研を中心に現在やっております。また外国におけるそういう実験に対しても日本が原研等を参加させて、そういう実証データをもらうようにさせております。
  73. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これは当然当局のほうではもう関知していらっしゃることだと思いますが、去年でございましたか、アメリカにおいて実物実験に先がけて電気ヒーターか何かを用いて行なった結果、六回やって六回とも実験に失敗しているという、こういう結果が出されておりますね。そうなりますと、やはり安全というものに対する不安感というものはぬぐい去れないというおそれはないのかどうなのか、この点どういうふうに解釈を、判断をされていらっしゃるのか。
  74. 成田壽治

    政府委員成田壽治君) アメリカのアイダホの原子炉実験場における、これは一昨年の五月ごろでありまして、これが実験やって、機能すべきものが機能しなかったという、これがECCS問題——緊急炉心冷却装置の問題として大きく取り上げられた問題でございます。それで、この点は日本からも原子力委員会としては調査団をやり、いろいろ検討させて、現在はそういう実験で、これは非常に小型な電熱器を使っての実験で、大型の場合は違うという意見もありましたが、しかし、その実験の結果、最悪の場合を考えて、そういう働かない前提でも十分であるかどうかという、非常に安全サイドをとった安全基準を日本においても採用しまして、非常に、その装置が働かなくても十分であるようなきつい条件を暫定基準として、暫定指針として使って、その後の原子力発電所の申請に際しては、ECCSについてはそういうきびしい基準で合格するものを許可しているわけでございます。
  75. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 原子炉メーカーの言によれば、二重、三重の事故防止装置をつけているがゆえに絶対安全だと、おそらく日本原子力委員会においても、それを無条件に、うのみと言うと言い過ぎかもしれませんけれども、承認許可を与えていると、こういう経過がずっと繰り返し続けられてきているんであろうと思うんです。ただ、われわれがしろうと的に考えましても、炉心を冷やす、いわゆる冷却水が何らかの故障でそれがあふれ出ると、そうすると、この炉心自体がから回りして、それが過熱して、そして何らかのそこに予測できないような事故が起きないという、そういう保障は一体あるのかという問題も当然考えられるんですけれども、その点も絶対保障し得るというのか、実際起きてみなければわからないというのか。しかし、これは論理的にはおそらくいろいろ詰めた段階で傍証をきちんと並べながら、だから大丈夫であると、こういうふうにおそらく結論を出しておられるんだろうと思いますけれども、何となくその辺がやはり安心できないという面がやはり心の中に残るような気がしてならない。この点もどういうふうにわれわれとして整理をして、今度、地域住民を納得させる場合に、こうだから絶対大丈夫なんだと、安心してくださいと言い切れるかどうか、そこで初めて世論の形成ができて、原子力発電というものがいろんなところに設置されるということになりはしまいかというふうになるんですけれども、その辺はどういうふうに判断されているかですね、これは、きょうはおさらいをしているつもりで、私、伺っておりますので、あしからず。
  76. 成田壽治

    政府委員成田壽治君) 最近の原子炉の安全装置というのは、非常に何重もの安全装置を使い、そして一つのものが働かなくても別のものが働く、他動性といいますか、非常に独立をもって、そういう安全装置を厳重にやっておりますので、われわれは、そういう炉の安全面の心配はないというふうに常識的には考えております。ただしかし、いろんな確率で、絶対ゼロという確率論としてはないんでありまして、それで冷却剤の喪失事故等につきましても、重大事故、仮想事故、そういう事故を想定しまして、それで仮想事故の場合は、何レムの放射能が外へ出て、これが一般大衆に支障にならないように、考えられないような事故を仮想事故として想定して、そして一般大衆にその場合にも重大な支障のないように、たとえば人の住まない地域、あるいは低人口地域等を考え、それは全部発電所の構内におさまるような、そういう形で安全を期してやっておるわけであります。ただ、先ほどお話ありましたように、科学的に見て絶対確率ゼロであるという確証はないので、これは九九・六七というふうに、なるだけ安全性、ゼロに近いような形にしていくために、原子力予算においても安全性の研究というのは一番重点的に置いて、そしてそういう安全性の研究を追求しながら、発電所、エネルギー事情、対策上どうしても原子力発電所は必要でありますので、そういう確率で安全性を、ゼロに近づくような研究をどんどん進めながら原子力発電をつくっていかざるを得ないというのが日本の現状だろうと思います。また、実際の運転におきましても、構造上は安全でありますが、運転のいろんなミス等によって、非常に最近、いろんな事故的な事故等の障害も起きておりますので、この点も地元民に対して非常に不安感を与えているという現象が見られておりますので、保安教育といいますか、施設の総点検といいますか、運用上の配慮についてもいま徹底的に強化したいというふうに考えております。
  77. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 先ほど申し上げた中で、将来のことはなかなか即断できないだろうと思いますけれども、しかし、現状の経済成長率を考えた場合に、のべつに電力需要というものが必要に迫られてくるという、そうすると、一体政府としては、将来計画の中にいろいろ描いていらっしゃる原発の設置計画、現状ではとにかく間に合わない。けれども、もう限られた国土でございますので、はたしてどうかという問題が一つありますね。どの辺を一体最終目標にされているのか、これは最終目標ということ自体がたいへんむずかしい問題だろうと思います。  それともう一つは、その需要に応じて供給が進んでいく、それなりに並行して設置計画というものがこれからもふえていく。考えようによりましては、おそらく、ほとんどの地域住民が何らかの形で原発の、あるいは原子力研究所あたりの置かれている、その一番接近した地域住民というようなことになりまして、いま申し上げておるような安全性というような問題にからめまして、一体、どういうことになるんだろうという問題が起きますね。一番早い話が東海村ですよ。これは私から申し上げなくても、あの辺の地域住民は、もう実に接近した場所に、絶えず公害の脅威に脅かされながら生活をしておる。いま、もう時間もありませんので、こまごましたことを取り上げて云々するわけにはまいりませんけれども、東海村一つあげましても、たいへんな状態にいま追い込まれているというふうに考えますと、将来もう極端な例を申しますと、東京であるとか、大阪であるとか、名古屋であるとか、そういう大都市においてもまことに近接した地域に入ってくるということになりますと、これは非常に大きな問題ではないかということが一つ。そういうことを今度避けようと思う場合には、あるいは、一ころたいへんやかましく指摘されましたように、国立公園であるとか、そういう指定された公園緑地地帯までつぶしてまでも原子力発電所を設置しなきゃならぬと、こういう問題。この辺をどう一体これから整理しなければいけないのかということがございます。これに対する一つの答弁を締めくくりでいいですから、まず伺っておきたい。  それからこれも再々いままで議論されてきておりますように、現状としてはアメリカから濃縮ウラン供給受ける以外には方法がないと、しかし、もう先般来ソビエトにおいてはブレジネフ書記長あたりがそれとなく日本に対して濃縮ウランの提供もやぶさかではないというような、きわめて意味深長な発言もある。ところが、先ほどの前田さんの御答弁によれば、はたしてどの程度供給能力があるのかつまびらかでないし、現在何とも答えるわけにいかないと、まあそのとおりでしょう。しかし、全体のバランスをとるためにも、あるいはアメリカ一辺倒ということを避ける上からも幅広く——これは大平さんの答弁にございましたね。そういう供給能力のある国からは将来ともに受けることは十分考えているという、たいへん幅の広い考え方を明らかにされてます。そこで、おかしいと思いますのは、知らないから、わからないから何ともいま政府としては取り組むことはできないんだという問題点ですね。なるほどソビエトとの間には平和条約がまだ締結されてないという面でいろんな障害はあろうかと私は思うのです。しかし、それに先だって、たとえばこれはあとで総理にもまた表現を変えたことでお尋ねをしようと思っているのですが、科学技術協定というようなものと取り組んで、人事の交流であるとか情報の交換であるとかいうものを先行してやる必要が大いにあるんではないだろうか。一々向こうの出方を待ってからこちらが手をつけるのではなくして、いま必要に迫られているという日本の一面から考えた場合、国情を勘案すれば当然そうしたことも必要に迫られてくるんではないだろうかという問題、これを伺って、もう時間が過ぎているようでありますので、終わりにしたいと思います。
  78. 前田佳都男

    国務大臣前田佳都男君) いろいろお尋ねをいただきましたが、まず最初は、生活水準が向上してまいりまして電力需要というものがどんどんふえていく、それに対して供給というものを進めていくというその姿勢、どんどんと進めていっていいのかどうか、日本列島が原子力発電で一ぱいになるという御表現じゃなかったと思いますけれども、とにかく相当込んでくるのじゃないかというふうな御質疑だと思います。その点につきましては、従来も原子力の安全性ということについては一生懸命に勉強してきたつもりでございますが、先ほど政府委員からもお答えいたしましたように、さらに安全性の確保ということについては原子力行政の基本姿勢として真剣に取り組んでいきたいと同時に、環境との調和という点も、国立公園の御指摘もございましたが、環境との調和という点にも重点を置きまして、先生御承知の公聴会というふうなものも今度踏み切ったわけでございまして、そういうふうなことも制度も設け、そういう現地のなまの声を聞くというふうな姿勢をとりりつつ、国民の理解と協力を得るように、原子力発電所ができて非常に不安でたまらぬというふうなことがないように、そういう姿勢で進めていきたいと思っております。  それから次に、ソ連濃縮ウラン供給でございますが、これは先ほど、私、ソビエト供給能力がはたしてどの程度であるかということは現在実はわかっておりません。ほんとうにわかっていないわけでございまして、その点は外務省の出先公館等ででもお調べをいただいておるようでございますが、いずれにいたしましても、先生御指摘のとおり、現在アメリカ一辺倒でございます。現在自由主義世界供給能力があるのはアメリカだけでございまするので、どうしても売り手市場になっちゃいけない、そういう考え方は御指摘のとおりでございます。その意味においてソ連濃縮ウランを提供することができるというニュースは、ニュースだけでも非常に明るいニュースであると思っております。その点は私も非常に希望を持っておるということをお答え申し上げたいと。  なお、技術協力でございますが、現在は文化取りきめというものが日本ソビエトの間にございまして、この文化取りきめのもとで積極的に科学技術協力というものを行なっておりまして、そうして科学者をお互いに交流をいたしております。しかし、さらに今後は一そう協力を推進するために、科学技術協力協定というものを締結するように、いま日本ソビエトとの間で交渉をいたしておる最中でございます。
  79. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後一時五十分まで休憩いたします。    午前十一時五十六分休憩      —————・—————    午後二時開会
  80. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、松本英一君が委員辞任され、その補欠として加藤シヅエ君が選任されました。     —————————————
  81. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 国際情勢等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  82. 羽生三七

    ○羽生三七君 総理は、近く渡米をされて、ニクソン大統領等と会談されるわけでありますが、今回の訪米の主たる眼目は何なのか、また、どのようなことが中心の議題となるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  83. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 一つには、去年のハワイ会談を契機にいたしまして、題がたくさんありますので、できるだけひんぱんに意見の交換を行なおうということにいたしたわけでございます。  御承知のとおり、日米両国を合わせますと、世界の自由陣営の約四〇%を占めるというような状態でございますし、日米間には特に貿易問題その他一、二年間懸案の問題もありますので、お互いに話し合うことによってできるだけ解決をいたしたいという前向きの姿勢が確認されておるわけでございます。そのために、もう一年になりますので、この機会に日米首脳会談を行ないたいということでございます。  特に、貿易問題もございますし、それから国際通貨の問題もありますし、それから新しい通貨制度や流動性確保のためにどうするかという問題もございます。また、日ソの間にも交渉を続けております問題もありますし、また、米ソの間でも話が行なわれた直後でもありますので、そういうものをフランクにお互いに話し合う、また、向こうの話し合いの内容も聞きたいというようなことを考えておるわけであります。
  84. 羽生三七

    ○羽生三七君 一部には、今度渡米の際に、総理は、日米間の理解を深めて、コミュニケ−ションギャップを解消することに努力をしたいということをいわれておるようでありますが、現段階における日米間のコミュニケーションギャップとはそもそも何なのか、お伺いしたい。
  85. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) アメリカ日本というのは、隣国でもありますし、共通の利害関係にあるにもかかわらず、どうもアメリカ人が日本をよく理解しておらぬ面があると、こう思います。  特に、貿易面などに対しては、どうも日本状態を理解しておらぬ。理解しておらぬということは、日本が宣伝をしたり実情を訴えたりするということに欠けておるのかもしれません。この間の大豆やオレンジその他一次産品の自由化問題等の討議をするために、こちらから農林次官を派遣したりいたしたわけでありますが、どうも日本の農業規模、アールとヘクタールが間違えられておるというぐらいなギャップがあるわけです。第一、七反歩や一町歩でこのようなときに農村経営ができるわけがない、やっていればそれはもうまさにふかしぎだと、こういうことですから、これはもう相当なギャップがあることは事実であります。  そういう問題、特に私も数字をあげて述べておりまして理解が深まっておるはずでありますが、やはり二年間ぐらいの片貿易、バランスの問題だけが議題になっておりますが、そうではなく、五一年から七一年までの二十年間をとればようやくバランスがとれたところだというようなことを数字をあげて述べるということになると、非常によく理解するわけです。だから、ヨーロッパはよく知っておるが日本はよく知らぬと、占領の六、七年もやっておったにしては知らな過ぎるなというところもございます。  そういう意味で、やっぱり日米間の問題というものをお互いに指摘し合って、フランクに話し合いをしなければならない、これが両国の利益を守るゆえんであると、こう考えております。
  86. 羽生三七

    ○羽生三七君 アメリカは、さきの外交教書の中で、日米の経済の不均衡問題に関連をして、これと安全保障問題をからませて、これはアメリカの言うことですが、われわれの経済のいさかいはわれわれの同盟関係の結びつき自体を断ち切ることになりかねない。ある意味では、どうかつ的な問題提起をしておるわけです。それで、経済と政治とが、ある意味では相互に関連し合っていることはこれは当然であります。しかし、安全保障の概念と経済は、それぞれ別個のカテゴリーに属するものであることもまた間違いのない事実だと思います。  今日、日米間の国際収支は相当大きく改善されましたが、アメリカは、逆に今度は、大豆あるいは鉄くず等の規制を行なって、矛盾したふるまいをしておる。しかも、そういう際に、安全保障と経済とをパッケージで問題提起してくることは不合理であるというこの問題を、やはり日米会談の際に率直に提起して、貿易の不均衡かあれば——これは安保条約のことですが、これを引き裂くこともあり得るなんという発言をすることは、非常な筋違いだと思います。  したがって、今度の日米会談の際には、この外交教書の基本的な問題に触れてやはり話し合いをなさるべきだと考えますが、いかがでありましょう。
  87. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御指摘のとおり、話題には当然なる問題であります。しかし、アメリカ側がみずからの立場で外交問題を述べるということと、お互いが両国の立場に立って会談をするということは、直接同一視する必要はないと思います。アメリカと共通の立場に立っておるということは、アメリカ考えておるような域内で固定をするような状態を避けて、ケネディラウンドを推進し、引き続いて今年から東京で開かれるニューラウンドの推進ということに対しては、アメリカ日本も共通の考え方を持っておるわけです。それでまた、ドル問題にしても、国際通貨、新しい通貨ができるまでキーカレンシーとしてのドルを守らなければいかぬという考え方も、これは日米共通の問題であります。また、新しい通貨ができるまで——まあSDRを育てていく、新しい通貨を求めなければならないとしても、お互いが協力しなければできないことでございます。ですから、そういう意味で、日本アメリカ、拡大ECは同じ立場に立っておるものでありますから、アメリカの外交教書の表現というものにとらわれないで、日本日本の立場で十分フランクな態度で会談を行なうということでありますから、結論はおのずから生まれる。両国に大きなそごはないという自信を持っております。
  88. 羽生三七

    ○羽生三七君 それはわかりますがね、私の言うのは、そういう問題とからめて日米安全保障の基本的な問題、この日米の安保に触れておるわけですね、それは引き裂くこともあり得ると。はっきりここに——これは外務省が翻訳した全文ですが、あるんですね。
  89. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) わかります。
  90. 羽生三七

    ○羽生三七君 そういうことは明らかに私は不合理だと思うのです。ですから、貿易とか経済と政治とは、ある意味では密接な関連を持つことは事実であるけれども、ある意味ではまた、別個のカテゴリーに属する問題である。これをそういう形で言うことは、安保の基本問題は別として、私は外交上適切な問題提起ではないと考えますが、この問題には、当然基本的な原則問題ですから触れるべきだと思いますが、いかがでありますか。
  91. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御指摘のとおり、区別をして話をするつもりでございます。ですから、具体的に例をあげて言えば、大豆や木材や、そういう一次産品の自由化の問題とからめて防衛問題をどうするとかいうことではなく、日米安全保障条約は、これは共通の利害に立っておるわけですから、これはこれでもって堅持をしてまいりたいという気持ちは、これはもう私たちの気持ちであり、アメリカも同等だと思います。また、日本アメリカの間にある経済的な不均衡の問題とか、またアジアの開発途上国に対する援助の問題とか、いろいろな問題があると思いますが、これは、相関関係がないということは言えませんけれども、しかし一つのものが、経済問題がこうなら防衛問題がこうとか、防衛問題がこうだから経済問題がこうでなければならぬとかということではないのであって、おのずから別の問題として個々に取り上げて話を進めると、こういう基本線は堅持をしてまいります。
  92. 羽生三七

    ○羽生三七君 それから、あとから日ソ問題でお尋ねする場合に若干関連することですが、アメリカは、さきに田中総理が述べられたアジア・太平洋諸国会議に、昨日の日米経済合同委員会の際に、ロジャーズ長官が賛意を表されたと承っております。これは、この日米首脳会談の議題になるのかどうなのか。また、いままでも、これについてやはりあの際述べられたと同様の所信を総理はお持ちなのかどうか、これを伺います。
  93. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私が施政方針演説で述べましたのは、これは御承知のベトナム問題の終局という問題によって起こるベトナムの復興という問題がまず取り上げられなければなりません。しかし、長い間、南北ベトナムは十七度線を境界にして紛争を続けてまいったわけでございますし、表向きはアメリカと北ベトナムというようなことでありますが、内実は世間周知のとおり、ソ連あり中国ありということで、なかなかめんどうな問題である、東西の縮図があそこに出ておったんだということは事実でございます。しかし、むずかしいという背景があっても、ベトナムの民生安定や経済復興を直ちに手をつけなきゃならないということは言うまでもありませんし、せっかくとびらを開きかけた平和というものを恒久的なものにしなければならないというためにアジアの人たちが努力をするということもまた当然であります。そういう意味で、国際会議を提唱すると言いたかったわけでございますが、提唱するといっても、これは、うまく行くということは、御承知のとおり、アメリカ、中国、ソ連、それからヨーロッパの先進工業国、旧宗主国であるフランスなどが参加しなければ意味がないわけです。しかしこれは、なかなか現実問題としてはむずかしい問題も想定されますので、その可能性について検討すると、こう慎重にかまえたわけでございます。しかし私は、いまでも、特に大洋州諸国、ニュージーランド、豪州等、アジアの問題に対して太平洋関係国が集まってなるべく早く援助の手を差し伸べたいという希望も表明されておりますし、そういう意向もありますので、日米会談が行なわれることを機会に、アメリカもやはりどういうふうな状態でインドシナの復興というものを実現していくのか、待っていられないので、そのつなぎとして国連を使うのか、第二世銀を使うのか、アジア開銀を大幅に拡充していくのか、いずれにしても議題にしなければならないということは当然考えております。
  94. 羽生三七

    ○羽生三七君 それからもう一つアメリカの問題で、アメリカがこの問題に関心を示しておるということは、これは日米というワク組みの中で、アメリカ日本に対して責任の分担を求めるという、そういう意思も含まれておるんではないでしょうか。その点はどうでしょう。
  95. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) アメリカは、まあヨーロッパに対してもNATO諸国に対しても、分担を求めておるという立場からいって、日本も経済力が強大になったのだからという気持ちはあるかもしれません。しかし、NATO条約と日米安全保障条約は全く性質を異にするものであるということは私が申し上げるまでもないことでございます。アメリカは、日米安全保障条約を必要としておる日本状態は理解しておりますし、また、アメリカ自体も日米安全保障条約に対しては評価をしておるのでありますので、アメリカ自体がヨーロッパ諸国に対して求めるようなことを日本に求めることはない、私はそのように理解をしております。私はいままででも、これはニューヨーク・タイムスでもワシントン・ポストでも、またアメリカの各界の代表が来ましても、日米安全保障条約とNATO条約との違いということは非常に強く主張しておりますし、アメリカ側もその間の事情はよく承知をしておるという立場から、こういう問題で両国の議論が紛糾する、すれ違いの議論が起こるという懸念は全く持っておりません。
  96. 羽生三七

    ○羽生三七君 日米会談でいわゆる——いわゆるです、いわゆる安保ただ乗り論等が出てきて、今度の首脳会談の機会に、新たなる何らかの防衛分担上の負担を求められることはありませんか。
  97. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これも、ただ乗り論というのは、アメリカが言っているのか、日本で先回りして言っているのか、私はさだかにわかりませんが、ただ乗りじゃないんです。世界の平和に寄与し、貢献しなければならぬのは人類共通の責任である。しかも、日本よりまだアメリカのほうがうんと国民総生産も国民所得も資本蓄積も高いんですから、やっぱりそういう意味アメリカ世界の平和、民主主義や自由諸国圏の体制を守ろうという立場はこれは一貫しておるのであって、日本が安保条約にただ乗りしているなんということはありません。これは十分私は説明ができると思いますし、安保条約ただ乗りではなく、国会でも御指摘を受けるように、基地も提供いたしておりますし、基地の合理化のためには税金で負担をしておる面もあるわけでありまして、そういう実情を十分理解すれば、やっぱり日本というものはパートナーとしてよき国であるということはよく理解できると思います。
  98. 羽生三七

    ○羽生三七君 だから、新たな負担はないということですね。
  99. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 新たな負担など、全く考えておりません。
  100. 羽生三七

    ○羽生三七君 次に、日ソ間の会談の議題は主としてどのようなものをお考えになっておるのか。たとえば領土問題とかシベリア開発問題とか、これは一般に伝えられておるし、また想像のつくことでありますが、総理が主として中心議題となさる問題は何なのか、これをひとつお聞かせをいただきたい。
  101. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは、このごろ五極と言われておりますように、日本アメリカ、拡大ECの三極関係、それに中国、ソ連を合わせて五極とも言われておるわけです。これは日本が思い上がって五極のうちの一極をになっておるわけではありませんが、世の中がそう報道しておるわけでありますから、それなりの理由はあると思います。ですから、やっぱり平和の維持とか、また国際的な問題を討議をする場合でも、どうしてもこれらの五極の一極でも全く交渉なしでものを考えるわけにはいかぬわけであります。アメリカとは交渉は常にございます。日中の間には国交の正常化が行なわれたわけであります。またヨーロッパ諸国とは、秋に訪問いたします。そうすれば、日ソの間には、隣国であり、懸案の問題があるわけでありますので、当然訪問をして、まず日ソの間にそのコミュニケーションをひとつ開こうと、これが一つです。  第二は、平和条約を結びたい。お互いに平和条約を結ぶことが望ましいということが第二だと。平和条約を結ぶには何か。これは領土問題を片づけるということでなければ平和条約は結べませんよということだけは、これはお互いが理解し合わなければならない。  シベリア問題は、いま問題になっている問題であって、これは両国が書簡を交換したり接触を続けたり、民間でもっていまいろいろ接触を行なっておりますように、両国の利益が合致をする方法でシベリアの資源の活用をはかろうということでありますし、この問題に対しては、私がサンクレメンテで会談を行ないましたときにシベリアの資源開発を議題にいたしたわけであります。その当時はあまり、唐突の感で、アメリカ側もあまり乗り気でないような感触だったんですが、その後、回を重ねるたびにシベリアというものに対して日本が関心を持つということはよく理解できるような状態になってきたことは事実であります。それだけではなく、アメリカも関心を示してきている。これは商務省の案件ではなく、石油等、これは国家安全保障委員会の所管物資でございますが、大統領府で取り上げて話をするというような事態がだんだん起こってきたことは御承知だと思います。ですから、そういう意味で、シベリア開発が軌道に乗るという過程においては、アメリカも一枚かむというような事態が、この一年半でもって急展開しているわけです。  そこで、米ソの首脳会談が行なわれたわけでありますから、シベリア開発の具体的な問題プロジェクト別にざっくばらんに話ができると。いままではチュメニに対して、アメリカも一枚加わったらどうですかと、こう言っても、なかなか返事もしなかったわけですが、しかし、日本には返事をしなかったけれども、ワシントンにおいては米ソの首脳の間でそういう話が行なわれておるようでありますから、そういうものを一つずつ詰めて話をすると。まあモスコー訪問したら必ずそこで何か決着をつけてくるという考えよりも、もう二十五年、四半世紀もかかっている日ソ間でありますし、これはやっぱり息を通わせようと、これがやっぱり一番大事なんだと、こういう考え方を主題にしております。
  102. 羽生三七

    ○羽生三七君 この日ソ会談に臨む場合、中心議題はいろいろあると思いますが、いまお話しの領土問題、シベリア開発問題等いろいろあると思いますが、一方、ソ連はアジア集団安保問題を提起してくることは、これは間違いないと思います。これについて外相は、先般この委員会で時期尚早と、この見解を述べられました。ただ私は、この問題は、ただ単に時期尚早というだけでは説得力がないんではないかと、こう思います。すなわち、それが時期尚早とするならば、それなりのわがほうの見解を十分披瀝する必要があると思います。  言うまでもないことですけれども、ソ連はさきに西独、続いてアメリカとの会談、これに基づく協定を結んで、さらに先ごろは全欧安保会議と、このところ積極的に新たな安全保障構想をグローバルな形で打ち出しております。こういう情勢を背景としてアジア集団安保を指向していることは、これは間違いないと思うのです。この場合、日本としては、それは時期尚早として片づけるだけではなしに、最近の国際情勢に対応する日本外交の方向、あるいはアジアの安全保障に対する日本の見解なり構想なり、その方向の明示が必要ではないかと思います。  要するに、ソ連が提起してくるであろう問題について、日本としても問題を回避することなしに、賛否は別として、相手側の意見を聞くとともに、日本日本としての主張を積極的に述べるべきであると思いますが、この問題に関する総理の見解をお伺いしたいと思います。
  103. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 外務大臣が述べたとおりだと思います、現段階におきましては。これはソ連がアジア安全保障会議を提案をしておりますが、具体的な提案はないわけでございます。北朝鮮に対して一体どうするのか、インド亜大陸やインド洋に対して一体どうするのか、また、ベトナムは北だけではなく、南も含めて援助機構に賛成をするのかどうか、中ソの問題をどうするのか、こういう問題がありますので、これはなかなか、アジアの問題はやっぱり三番目に提起されただけに、一番むずかしい問題だと思うんです。これは、ヨーロッパでは御承知の独ソ条約が行なわれ、日本も東ドイツを承認しておるというようなことが行なわれております。まあこれはアジアに比べては政情も安定しておりますし、NATO条約やワルシャワ条約というものも固定をしておって、ベルリンの壁が取り払われる取り払われないは別にして、話し合いが進む素地があるわけです。それから米ソ首脳というものは、これは核の問題とか、いろんな問題でお互いに角突き合わせないで、まあ話し合いをしようという気持ちになることは、これはそうじゃなく、いままで黙ってお互いが軍事拡張をどんどんどんどんやっておれば、これはなかなかたいへんな状態であるということで、軍縮とかいろんな、そういうところまでいかないにしても、いずれにしても話し合いをしようということは、両国の首脳が腹さえきめればできる話であります。しかし、アジアの問題はヨーロッパや米ソ首脳の会談とは違って複雑多岐であり、非常にむずかしい問題だと思います。それだけに、アジアの問題がほんとうに軌道に乗れば、人類の平和というものはもっと大きく曙光——曙光というよりも大きな輝きになると思います。ですから、まあ私のほうから言い出さなくとも、提案者であるソ連側は、アジア安全保障機構に対して相当提案をしたり議論をしてくることは、これはもう想像にかたくありません。そのときにどういう提案を日本が示すのかということよりも、いま申し上げたように、一体その中ソ間の国境紛争は現状で固定するんですかとか、日本には少なくとも四つの領土を返してもらわなければならないという事情もございますから、こういうものをずっと述べまして、それがやっぱり回答になる。それでやっぱりアジア安全保障体制というもののはしりはどうするのかというと、南北ベトナムに対してやっぱりこちらのほうは、日本を含めて国連が中心でもよろしい、また別な機構でもけっこうです、私も提案しておるんですから。ですから南北とも区別なくやろう。それで北に対しても承認というような姿勢で、私たちはいまパリかどこかで交渉を始めようというように前向きの姿勢をとっているわけですから、それに対して提案者であるソ連が、私たちが北ベトナムに対して考えているような前向きの姿勢で、南ベトナムに対しても参加しましょうということになれば、提案しておるアジア安全保障構想のそれに一歩踏み出すわけです。そういうことを具体的にものを詰めていけば、もう十分日本の主張はできるし、主張というよりも、日本考え方を述べ得る、こういうことを考えておるわけです。
  104. 羽生三七

    ○羽生三七君 なぜ私がこの問題をお聞きしたかというと、ソ連が提起してくるであろうということとともに、総理がアジア諸国会議を提唱しておる以上、これはグローバルな形の一つの輪として、問題の一つの輪として述べられたと思うのですね。ソビエトも同じことだと思うのです。ですから、アジア諸国会議を提唱しながら、ソビエトのいわゆる集団安保については——賛否は別ですよ、私は賛成しようとか反対とか、そういうことじゃないんです。少なくともそれに対応するだけの日本の外交方針とか、基本的な姿勢というものを打ち出さなければ——たとえば、日ソ会談か双方望ましい形で話し合いが進まないと、それぞれが自分の中心議題を出して一方交通で、そして一番最初に総理が言われたように、お互いの間の忌憚なく話し合えるような、いわゆるコミュニケーションというものの糸が、糸というか紐帯が非常に薄らいでしまうという、それが私は今後の日ソ関係のために好ましくないと。したがって、たとえ賛否は別としても、相手が問題を提起してくれば、それに対応するだけのこちらがやはりかわるべき外交方針なり、あるいは基本的な違いがあればその見解の違いなりを積極的に述べないと、問題を回避するだけでは決してこの日ソ会談というものは成功しないと、単に一方的なすれ違いの交渉に終わるという危険を感じますので、この機会に、そういう基本的な問題についての、つまり会談に臨む姿勢ですね、そういうものもあわせてひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  105. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 会談に臨む姿勢は、四半世紀に以上交流がございますし、年々歳々日ソの交流も拡大されておりますが、しかし、より一そうに、平和のためにも、また、日ソの経済交流や友好親善のためにも、お互いが胸襟を開く必要がある。ほんとうにフランクにものをしゃべれるような両国にならなければならない。こういうことが一つの目標ですし、それから、私は通産大臣就任以後、公式、非公式を問わず、何回か招待を受けておるわけでありますが、なかなか訪ソする機会がなかったということでございますが、その後、いろんなソ連側の提案もあり、時は熟したという気持ちで今度訪ソするわけでありますし、訪ソを受諾したわけであります。ですから、今度の会談がすれ違いに終わるということは考えておりません。アメリカソ連の間でさえあのぐらいな協定ができたのですから、日ソの間は、違う意味で、米ソの会談よりもある意味においては具体的に実のあるものができると思うんです、具体的には。日本も、シベリアという大きなものを対岸にしておるわけでございますし、シベリアには少なくとも遺骨収集、墓参には行きたいという大きな期待が国民の中にあるわけです。ですから、そういう意味で、私は、核兵器の使用禁止というようなドラスティックな協定をつくるというわけにはいきませんが、日ソ間の話し合いというものは実りあるものだと、こう自信を持っております。
  106. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう一点だけ。チュメニ油田開発の場合に、アメリカの参加を前提としてお話しになるんですか、アメリカの参加が得られなかった場合も想定されておるわけですか。その点はどうですか。確信を持ってアメリカの参加が得られるとお考えですか。
  107. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) チュメニ問題ばかりではなく、ヤクートの問題とか、六、七プロジェクトございます。これ全部ひっくるめて考えますと相当な金額になります。なりますが、ちょうど十年、私が大蔵大臣在職中に一つのめどをつけなければならなかったウジミナスの製鉄所というのがございますが、あのぐらいの規模になるわけです。日本の海外投資に対する一つプロジェクトということになると、大体そんな気持ちがいたします。ですから、チュメニやヤクートの問題等は、日ソの間で話し合いがつけばそのとおりやりましょうと、政府石油は引き取りますと、これは二千五百万キロリッターないし四千万キロリッターを十年後ずっと送ろうというのですが、これはその当時の石油の消費量から考えれば四%ないし五%程度のものでありますので、これは石油輸入先の多様化という面からいっても、どうしてもそれは条件さえ折り合えば話をつけますと、政府は責任持ちますと、こうまで言っているわけですから、これは、問題は両国の間で詰まらぬはずはないんです。向こうは三十億ドルのうちの三分の一、十億ドル程度日本が拠出することが望ましいと、こう言っておりましたが、その後、全部計算をすると五十億ドルぐらいになるというふうな意見もあります。これは通産省からも人を出し、民間ミッションも行って、お互いにデータを突き合わせて現地視察をやっているわけですから、この結論は出ないはずはないんです。また、これに対してアメリカ民間企業、ガルフ等が一〇%、二〇%参加をするということもソ連側も知っておりますし、こちら側もソ連とのいままでの接触状態で、毎度述べておるわけです。これは日本よりもアメリカのほうが金を持っておりますから、やはりそういうほうがいいですよと、こういうことです。しかも、西ドイツが参加してもいいというようなことがソ連側から出たというようなことを契機にして、アメリカ側との話し合いというものが非公式に行なわれておることは事実です。ですから、そういう意味で、アメリカ側も政府自体が日本アメリカでもって共同開発をするところもあるし、日本アメリカソ連の三国で開発するところもあるし、チュメニ等に対してはやはりソ連、それから日本、それからアメリカ民間資本の参加、これは認める、こういうような状態になっていますから、これはもうソ連側もいやなことを言うとは思いませんし、それからアメリカ側も拒否をするというような事態にない。特に米ソ首脳会談を契機にして私はそう考えておるわけです。あとは、埋蔵量がどうとか、確実に供給保証が行なわれるかどうか、それからバンクローンにするかどうかというような問題が残っておると思いますが、ソ連のチュメニだけじゃなく、いままで一国がやるということはやはりよくないことであって、やはりお互いがジョイントベンチャーでやるというようなことが産油国の理解も得られることですし、まわりの国の理解も得られると思うのです。そういう意味で、真剣に考えてきたことであって、これは日ソ間の話し合いというものがデッドロックに剰り上げるようなケースのものではない、こう考えます。
  108. 羽生三七

    ○羽生三七君 終わります、時間の関係で。
  109. 森元治郎

    ○森元治郎君 いま伺っていると質問者羽生君と打ち合わせ不十分で、同じような問題になってしまいました。  さきに総理の手元に差し出した質問書以外に触れるかもしらぬが、お答えができないような無理な御質問はしないつもりです。だから、気を楽にして聞いてください。  私は、総理が鳩山さん以来十七年ぶりでモスコーに出かける、首相とか、総理とかいいますが、私はそこへ出かける田中さんを一国の宰相、そんなような気持ちで見ているわけです。ただ私は、若いときから外交問題、ことにソビエト問題は裏表十分、相当知っていると思うのだが、不安が一つあるのですよ。総理は頭がいい、回転が早い。ところが、ソビエトというのは、もう何回かお話ししてわかるように、しっかり下から練り上げてきた理論構成で、正面からトラ戦車のようにひた押しに押してきます、ひた押しに。それはちょっと頭の早さなんかでとてもかわし切れないくらい押してくるのですな。そのときに私心配なのは、時間は、連中は、夜中であろうと、八時間であろうと平気でありますから、おそらく二、三回おやりになるでしょうが、わかった、わかったという角さんであってはとても交渉できないと思うのです。御自分でも、あるいはお隣の大平さんからもいろいろ言われているでしょうが、その点、まず一つ伺っておきます。
  110. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) わかった、わかったということは、これは国内では言いますけれども、国益を守るということから考えて、そんな簡単な応待はいたしません。これは私も越後人でございまして、根は鈍重でございますから、それはもう、しかも日ソ間に懸案のものはだれでもわかっているように、平和条約を結びたい、平和条約の前提は領土問題である、領土問題は全島の返還を求めるというのではなく、四つの島である。しかも、鳩山訪ソによって二つの返還は確定しているわけです。あと国後、択捉はどうなるかという問題があるわけでありますから、こういう問題にそう早合点をするようなことは絶対にありません。そういう問題に対しては、なぜ四島の返還を求めなければならぬのかと、日本国民はどう考えておるんだというような問題に対しては、すなおに、率直に述べたいと、こう思います。だから、向こうがねばり強くやっているから、しびれを切らして簡単に応対をするというような懸念はございませんので、誤解ないようにお願いいたします。
  111. 森元治郎

    ○森元治郎君 それで安心しました。ただじっくり、相手の言わんとするところ、これを理解するには相当のがまんをもって聞かないと、あとで静かに考えてみると違ってしまったというようなこともあるので、じっくり聞くということも今回は大事だと思う。私は、日ソ平和条約締結その他友好親善確立という大目的ではありますが、何しろ根回しというものは全然日ソ間にない。民間交流もない。ソビエトロビイスト、ちょうど台湾にはたくさんの台湾を知っている人があり、中国を知っている人はあるけれども、文化的にも歴史的にも、人の国の領土で両方はけんかしたことはあるけれども、人民は深くつき合ったということもない。こういう特殊な関係、しかも、今度の交渉に臨むにあたってキッシンジャーさんに相当するような人も、事前に十分な話し合いも行なわれていない。ぽつんと乗っかかっていくわけですね。非常にこれはそういう意味で環境的には御苦労、たいへんなことだと思うのです。  そこで私は平和条約締結、四島返還といういまのお話がありましたが、おかしなことは、去年平和条約の交渉、話し合いをしましょうと、一月にグロムイコ外相が来たときに話し合いができた。それから大平さんは去年の九月に行かれた。その間にもだんだんやっていると、領土を含むのか含まないのか——われわれ常識的に見て、国際的常識で見て、戦争やったあと始末が平和条約であると思うならば、もし土地の問題で何らかのごたごたがあれば、当然これは乗っかって、自動的に乗っかってくるものだと理解する。それを一月にグロムイコが来られたときに平和条約交渉、ソビエトがいよいよこれに乗っかってきたと喜んだけれども、領土問題を含むのだという念押しをしたのかしないのか、しても答えなかったのかどうか、それが平和条約交渉の議題なんだと、こう向こうが出たのか、これは田中さん無理であれば、大平さんでけっこうでありますが、そのときになぜ詰めないのだということ、その間ずっとやってきて、入る入らないで両方で疑心暗鬼で今日まできてしまった、一年半。ちょうど三木さんが外務大臣のときに、コスイギン首相と会ったときに、この際中間的な措置として、私は思いつきだが一つのことを考えているんだと言ったときに、これも詰めないで帰ってきてしまった。私は三木さんを激しく攻撃した。思いつきというなら、まことにけっこうだから伺いましょうとなぜ出ない。これ詰めるところが詰めてないんですね。この点はどうでしょう。
  112. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その点について私の理解しておるところを申し上げます。かねて本委員会でも御報告申し上げておるとおり、日ソ両国とも平和条約は締結したいという希望を持っておることは一致いたしておるわけでございます。  それから、平和条約を結ぶにつきまして、御指摘のように、領土条項というものがあるということもこれは当然のことでございまして、先方は、私の理解するところでは、歯舞、色丹、までの処理を通じて領土問題を解決したいという希望を持っておるのではないかと思っております。私どものほうは、いま総理からお述べになりましたように、四つの島の返還を求めておるわけでございまして、領土問題が宙に浮いておるわけでなくて、領土問題のとり方が違っておるというところに問題が所在しておると了解いたしておるわけでございまして、問題の焦点はそれをどう詰めるかにかかっておると私は思います。
  113. 森元治郎

    ○森元治郎君 そうすると大臣、向こうも平和条約は領土問題があるということは公式の場で認めておるのですね。いままで領土問題はもう解決済みということを、最近言わなくなったにしても、領土問題ということには触れない。平和条約を結ぶについては領土問題というのはあるんだということは認めたのですね。そして向こうは歯舞、色丹という二つだと、こっちはいや四つだと、こういうふうにいま伺ったのですが、そう理解してよろしゅうございますか。
  114. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そのように理解いたしております。
  115. 森元治郎

    ○森元治郎君 領土問題を考えるときに、四つだ二つだと算術みたいなことがよく行なわれますが、私は、千島というのはお互いに特殊なところでありまして、国際法とか条約論とかはもう別にしても、一ぺんもお互いにけんかしたことも何もないのですよ。国際紛争の地というのは、先祖代々住んでいて、取った取られたのもう年じゅう繰り返しが紛争の地なんですね。この辺は、千島のわれわれの問題としている地域は、安政元年、一八五五年に初めて日魯間に国交が開けて条約関係ができた最初であります。そうしてお互いに、住民といってもたいへんな住民はいないけれども、仲よく今後やりましょうというので協定を結んだだけの話で、向こうが譲ろうと何しようと、何にもメンツもそこなわないし、損害もないし、これをもって日本国民がきゅう然としてソビエトと全幅の親善を重ねえいくのだというなら、非常にこれはやさしいことではないかというふうに私は思うのですね。ただ一つ、その交渉にあたって、四つよこせ、何よこせという表現もありますが、やはり明治の人は偉いと思うのは、この五五年の日魯条約の文章が私は非常に好きなんで、これはロシア語とフランス語とオランダ語と日本語でありますが、こういう気持ちで折衝してもらいたいと思うのは、第一条——これは二条くらいしかありませんが、「今より後両国末永く真実懇にして」と、こういうのだね。いい表現だ、これは。漢文、国語の力のある人が書くのですね、こういう文章は。ねんごろにいこうと、こういう気持ちが私はソビエト側の気持ちをいささかは動かすのではないかと思うのです。  時間がありませんから一方的にやります。  そこで、そういう態度で臨むということが大事だと思うし、発想の転換といいますか、これは私かねがね個人として、私はポツダム宣言を受諾したときの東郷外相の秘書官でありまして、ああこれは台湾は中国へいくのだな、朝鮮は独立だな、千島、あれはそこから向こうがいくのかなと、ポツダム宣言受諾のときに考えた。ところが、現実はそうではなくなってしまった。こんなような気持ちとしてはわれわれはそれを持っていたのですね。その後いろいろ占領下にありましたから文句は言わなかったけれども、こういうことを振り返って、どうしてもこれを私は放すことはできないと思うのです。そうして、この条約にもありまするように、四つ返せという言い方もいいが、要するに、ソビエトは不可侵条約、内政不干渉とか、いろいろ言ってきますが、その中には、不可侵なんという場合に、どこから、自分の国の境がわからないのに、どこまで一体侵していいのか悪いのか、わからないわけですわね、これは。だから、不可侵というなら境、地境をきめなければならぬ。この条約なんかのつくり方、ものの発想のしかたはたいへんすべての問題から、うんと上のほうにいきましてウルップ、択捉の間を境とすると。なかなかいいんですね、どっちがどう持っているんだとか何とか言わないで、ここだと、境は。ああいうようなやわらかい発想のしかたも対ソ交渉上には必要だと思うんです。一体その軍隊というものは、スターリンがかりに出先のソビエト軍隊へとまれと号令をかけても、第一線の兵隊まで届くにはこれは時間かかるんです。そして、それが私は——これはよくソビエトの方にも言うんですが、ずるずるときたんだと思う、ずるずると。これは向こうのメンツを考えてずるずるきたんだろうと思う。さあ、きてしまったけれども、もう自分の行政区画に入れてしまった、いまさら引けないと、そう簡単に。国民に向かって、なぜ引くと言われたときに、なかなかこれは弁解が苦しいという立場もわかる。向こうの立場も私はそういう意味でわかると思うんですよね。ですから、この辺をもって境とする。向こうは思わざる戦争という不幸な事態がずるずると歯舞、色丹まできたと、こういうふうに私は理解して向こうの考慮を求めるべきだと思うんです。  そうして、総理に伺いますが、領土問題を含む平和条約締結に持ち込めるかどうか、これは非常にむずかしいとさっきお話もありました。  それともう一つ質問をあわせます。ソビエト側はたとえばアジア安全保障の確立こそ日ソ関係の基礎であり、領土問題のごときはその中の小さい問題である。領土問題の解決を示唆するような意味のことがいわれている、向こう側からは。こっちはもっとドライで、懸案、すなわち領土問題を解決することが、懸案の解決が、日ソ関係の永続的な基礎になるんだといっておる。こういうことを総理はどんなふうにその間に折り合う道か——折り合う道。向こうは大きいアジア安保というような構想日本協力していくならば、その中で平和のムードの中で領土問題も落ちつくところへ落ちつくんじゃないかというのが向こうの腹のようですね。こっちはあれだけ取ればいいんだという、この間に折り合う道がないかどうか、おそらくこういうことは向こうと折衝されるときに必ず問題に出てくると思うので、総理の腹ですね、腹。こまかい条約論や何かはもう抜きにして、腹だけを伺います。
  116. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほども述べましたように、ヨーロッパはだんだんと理想に向かっておるようです。また米ソの間でさえも、これはもう東西の代表として四半世紀余にわたって対峙を続けてきたものが、会談を行ない、協定を行なうということでありますから、前進であることは間違いありません。しかし、これらの問題に比べてアジアの問題はなお複雑多岐のものであって、困難な問題が存在をいたしますと先ほど述べておるわけであります。アジアの問題が平和に、ほんとうにアジアにおける平和が定着するような状態になれば、それは人類の理想達成に大きく歩を進めるものであろうと、こう述べておるわけです。ですから、ヨーロッパにおける安全保障の問題とか、ソ連が提起をしておる問題というものと同じような表現であっても、非常にめんどうな問題であるということだけは私も述べておるわけでございます。しかし、姿勢としてアジアの平和を守るためにお互いが英知を出し合おうという努力を続けることはもう異存はないんです。全く異存はない。ですが、ただ過去のワク組みの上で現在の平和というものが維持されてきたし、また、よりよい道を探求しつつあるという現状に徴して、提案に対して直ちにこれに対案を示すというほど簡単な情勢ではないと思いますという政府も現状認識をすなおに分析をして述べておるわけでございます。ですから日ソの問題として取り上げることは、平和を希求する考えにおいては全く変わりはありませんよと、お互いに勉強し、努力をし、きっかけをつかむように努力をしましょうと。これはもう原則的に何ら異議のないところであります。  その第一の段階は、日ソの間が平和条約、四半世紀においても結ばれないということ自体やはりよくないじゃありませんかと。これはやっぱり結べるようにお互いが努力をすることが平和への近道だということになります。日ソの平和条約を結ぶとすれば、これは固有の領土であるんだから、これはどうしても北千島まで全部とは言いませんと、南樺太云々をいうのじゃありませんと、これはどうしても四つの島は何とか考えてくださいよということは、これはもう理の当然、押せ押せ議論で当然の話だと思うのであります。国の中には、川北千島全部の返還を求めざれば平和条約を締結してはならないという大きな勢力のあることもこれは事実なんですから、こういうことを話して理解を求める。私はそういう意味ソ連としても理解ができると思うんですよ。あなたは先ほど言いましたが、島というのは動かないから、ここらでもってこう線を引くことは、外交的にも人類の英知としても非常に一つの方法だと言われましたが、これは中ソの間というものは川のまん中をということですが、川動きますから、ですからめんどうなんです、これは。六千キロ、七千キロに及ぶ川のまん中というのは時々刻々に動いているんです。ですからそういう意味では島のところに線を引くということはこれはだれだってわかると思うんですよ。そういう問題をざっくばらんに話しまして、何か、二つの島でもって日本が何とかできるんじゃないかというような誤った観念があるとすれば、少なくとも日本にはそういうことはありませんよと、遺憾ながらありませんということだけはもう私は事実を述べるつもりなんです。ですからそのためには今度の会合で平和条約に対する協定ができないとかいうことであっても、これはねばり強く、お互いがほんとうに相手を理解できるまでその事実を述べ合う。これはソ連もあれだけの大きな国ですが、日本にとっちゃやっぱり、これこんな小さな島ですから、だからまあこれは国論統一という面から見るとたいへんな大きな問題であるということは、私は事実を述べ、心情を吐露すれば、大国ソ連がこれを理解しないはずはない、こういうことで、まあしかしむずかしいことだと思いますけれども、しかし誠意を持ってやりたい、こう思います。
  117. 森元治郎

    ○森元治郎君 それじゃあと一問で、お願いします。  シベリア開発など大きな問題たくさんありますが、要するにこの日ソ会談、非常にわれわれ期待している会談の締めくくりが大事だと思うのですね。成功すれば拍手かっさいであるし、思うようにいかなかった、いろんな場合がある。そのときのその成り行きいかんというのは、ある人はがっかりしちゃって、もうとてもだめだという人も出てくるだろう。それからソビエトに対して不信感を持つ人もあるだろう。ですからやはり最後は平和共存で、いかなることがあろうとも平和共存でいくんだという、しかも今後引き続きそれが引き継がれていくというような形がお帰りになるときにはっきりしてあることを私は非常に強く要望をするんです。そうしないというと、いろんなデリケートな後遺症が残り、アジア平和、安全などなどにもいろんな支障を来たすおそれもあるので、平和共存で今後ともいくんだという締めくくりをやってもらいたい。これを伺って終わります。
  118. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 今度の訪ソによって結論が明確に出るということは私自身も期待できないかもしれませんということは初めから考えております。しかし、四半世紀の間に鳩山訪ソが行なわれただけであるということから考えてみましても、せっかくの招待でもありますし、時は熟した、こちらから出かけようということであります。あなたががっかりする人もあるだろうというようなことのないようにという御注意は、よく私も理解をいたします。今度私がモスコーまで使いしたのですから、来年中にはどうぞひとつ皆さんのほうからもおいでいただきたいということが合意できれば、これはがっかりもしないわけですし、お互いの会談は前進をするということを意味すると思います。しかし、あんまり粘り強くといっても、やっぱり四半世紀もたっておりますと、あなたがさっき指摘されたように、二つの島にはもう基地があるとかいろんな施設があるとかという問題よりも、そこで生まれた人が成人をするというような、その人たちにはみずからの故郷になるという、また大きな問題が生まれてくるわけです。だからやはりタイムリーに解決すべきものはする必要があるんだろうというような問題は、すなおに述べてきたいと思うんです。そういう意味でせっかくモスコーに使いしながら、日ソの間がいまよりも悪くなるというようなことは絶対にしないつもりでございますし、使いしただけそれなりの両国の親善は深まり、懸案の解決に一歩近づく、こういうことを期待したいと思います。
  119. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 二日間にわたって開かれた日米経済貿易合同委員会、まだ正式な共同声明は拝見しておりません。しかし、おそらくいままで伝えられたところを集約いたしますと、日米が協力して、特に後進国に対する経済援助あるいは国際的に不足を告げているエネルギー資源確保の問題、あるいは将来の展望に立ってこれをどうするか、また先ほども御答弁がありました国際通貨の問題を今後どうするか、あるいはインフレ対応策をどうするか等々、おそらくそういった事柄が議題とされて、共同声明の中に盛り込まれるのではないだろうか。また同時に、総理が訪米される際におきましても当然のことでありますが、いま申し上げた問題は、日本としてもたいへんな外交課題としていろんな影響力を持つ。それだけにむしろ日米間においては、二日間というこの日程自体も、はたして物理的にこれだけの多くの問題をニクソン大統領との間において合意を得られるものかどうなのかという心配一つあります。  それからいま取り上げたような問題は、これはもう非常に解決を急がれているという事柄だけに、総理としてもたいへんな決意を持って臨まれるに違いないだろう、こういうふうに思います。その辺の総理としてのいま申し上げたような非常に窮屈な日程の中で、結論が得られるという決意をお持ちになって臨まれるのかどうなのか、まずそれから伺っていきたいと思います。
  120. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 去年のハワイ会談の前にはサンクレメンテの会談もあったわけでございます。その前には日米合同委員会がございました。その都度大統領と会っておるわけです。またハワイ会談後は、民間団体民間団体、学術団体は学術団体政府ベースとしては日々日本は通関日報を持っておりますから、そういうものを提示をして絶えずコンサルテーションを続けようということになっているわけです。専門家会談を開催しておりますし、また合同委員会もいま行なわれておるわけであります。そういう意味で、日米の首脳会談で懸案の問題が二日間の日程でこなせないという考え方は持っておりません。これは時間的に相当延ばしてもけっこうですし、日ソの間でもあのような長い会談をしましたが、米ソの間の首脳会談に比べればもうパイプは十分通じておるわけでございますし、問題はもうすでに提示をされております。それに対する具体的な解決方法もお互いが理解しているわけでありますから、米ソ間というものよりも非常に効率的な会談ができるということを考えております。特にハワイ会談で示した数字的な日程まできちっともうこなしておりますから、両三年間でこういたしますといったものが一年半でこれを達成しておるということもございますし、それから日本の資本の自由化やそういう問題に対しても具体的に実行いたしておりますし、あとはもう今度木材をどうしてくれる、逆な状態になっているわけです。大豆は一体どう保障してくれるのかという問題もございます。ですから経済問題その他に対しては、もう話は詰まっておると考えていいと思います。  ただ、日米間のコミュニケーションをどういうふうにして拡大をしていくか、アジアに対する、特にベトナム問題等どうするかという問題とか、そういう問題等に対しては、もう基本的な意見の不一致は全くありませんから、現実問題としてどうするかという問題でございますし、基地の整理縮小という問題に対しても答えは出しつつありますし、まあ大西洋憲章といわれた例の問題ここらの問題に対して、アメリカ側の考え方、ヨーロッパ諸国の反応、それからソビエト首脳の反応、そういうものに対してアメリカはどう考え日本に一体何を、求めるのか、日本が一体どのような状態協力できるのかできないのかというような、そういう面が時間がかかるかもわかりませんが、二日間の日程でこなせないというものではないと思います。
  121. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまの御答弁を伺っておりますと、日米間においてはきわめて円滑な話し合いの中で、事務レベルにおいてもそうであろうと思うんですが、進んできておる。要するに田中総理とニクソン大統領は最後の結論を下せばいいんだ、まあ率直に言えばそういうような受け取り方をしたわけですが、しかし、それにしては突如として大豆の輸出制限であるとか、木材の輸出制限であるとか、そういう問題が起こってくる。それはいまも言われましたように、それは現実的な問題として、ケース・バイ・ケースでこれは処理していかなければならぬというお考えだろうとは思いますけれども、こういったところに、もう少しく日米間の意思の疎通があれば、事前にこうした問題の解決があったではないかという問題が一つ残ります。  それからもう一つは、昨日もロジャーズ長官が、皮肉って言われたのかどうかわかりませんけれども、依然として国際収支が不均衡であるということを暗にちらつかせたという問題もございます。そうしたようなやはり懸案になっているような問題というものが、いままで円滑に話し合いというものが進められているならば、事前に幾らでも表面化しない前に、こうした問題の処理というものはなされたんではないかという一つの疑問。  それから第二点は、いまもちらっと御答弁の中にございましたけれども、特にインドシナ地域における戦争というものは、不幸にしてまだやみません、はっきり申し上げると。八月十五日をめどとして爆撃を停止するというような言明は、ニクソン大統領しておりますけれども、はたしてそれがきわめて可能性の高い問題であるのかどうなのか、そういった問題をとらまえて、日本政府としてはどういうアドバイスができるのかという問題、こうしたまだ疑問の点がぬぐい切れない、これは二点ですね。  もう一点申し上げますと、先ほど私ちょっと触れましたけれども、特に開発途上国に対する経済援助、これは日米協力して今後とも推進しようではないか、おそらくそういう話し合いがなされたであろうし、また首脳会談においてはそうしたようなことも話し合いの一つの課題として持ち込まれるであろう。ところが七月十四日ですか、米国の上院の外交委員会では、対外経済援助に対して大幅な削減をしておりますね。下院ではどういうふうなきめ方をするか、これはまだ問題としては残るでありましょうけれども、少なくとも上院においては、半分ぐらいに対外援助を減らしておる。対外援助ですから、必ずしもアジア地域とは限らないわけであります。そうなってくると、あるいは日本がそれを肩がわりしなきゃならぬのかという問題が起こらないでもない。こうした問題については、将来、特に御熱心な総理として、アジア地域に対する経済援助、これも積極的に取り組むという、そういうお立場から、日米の協力がどういう程度のものであるのか。もしアメリカ国内事情としてどうしても削減しなければならぬという場合には、日本としてその分を引き受けてやるというような方向に行くのか。いま申し上げた三つの点ですね、これをあわせてひとつ御答弁いただきたいと思います。
  122. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 事前調整があれば、木材とか、それから大豆の緊急輸出停止、くず鉄の問題など起こらないんじゃないかと、こういう御指摘でございますが、うまくいっているんです、実際。アメリカはまあずうたいが非常に大きいですから、そういう意味日本ほど的確にいかないかもしれません。しかし、木材に対しては法律案をもって全面禁止をしようというような提案がされておるわけですが、そうではなく、事前に話し合いをしたために、対前年度の一〇%減でもって話をつけようと。これはまあアメリカ政府としては、法律案が三本も出ておるときに、最低考えても一五%という減でございましたが、木材が上がっておるときにそんなことできるわけはないじゃないですかということで、事前交渉を行なって一〇%という自主規制で話をつけたわけであります。そのかわりに、カナダから入れている場合も、日本とカナダは輸出入ぶつかっておりますから、そういう場合ひとつカナダとの間は日本がよく交渉するように、アメリカも乗ってもらいたいということで、うまくいっているわけです。大豆に対しては、まあ日本が少し買い過ぎたという面もあります。一時三十万トンばかりよけいに買ったということで、戻してくれというような問題があったわけです。これはまあ日本だけじゃなく、ほかの国との問題もあり、大豆の輸出禁止ということになったわけですが、しかしその後、日本の在庫の問題とか、八月までは持つということは数字はよくわかりましたので、九月からは日本の大豆に対しては特別に出しましょうということになっておるわけでございまして、これは二国間の外交問題から考えてみると、ちょうど利子平衡税を適用しましたときに、日本とカナダに対しては特別に考えましょうと。ただ、新年度の生産目標が立たないうちはある程度の規制を発表すると、前提とすると。しかし、特恵を与えなきゃならないような国はそれから早急に解除しようということになっておりまして、大豆の問題に対しても大体愁眉を開ける状態になっておるわけです。ですから、アメリカでも、まあ国会の問題とか、いろんな新しい事態に対処して行政府がやらなきゃならない問題があることは理解できるわけでありまして、日本実情を十分理解をせしめて、日本の国民に影響が及ばないようにというためにはお互いが努力を続けておるわけであります。日本にもそういうことはあるわけです。日本にも同じように、今度逆に、どうもあの状態では二十五品目ぐらいまで自由化をしなきゃならない。まあ一品目だけやりまして三十二品目になったわけです。ところが、あと残る農産品に対しましては、これはどうもできるようなできないような、努力をしますと言っておりましたが、その後の状態から考えたら、どうも調べてみたらオレンジはできませんというようなことで、こちらも情勢の変化に対応しまして実情を述べて理解を求めておるわけですから、これは両国の間で、まあ国民的感情に訴えるようなことがなくて事務ベースで詰められるような状態になっておるということは、一年前に比べて相当前進をしていると理解していただいていいと思うんです。  ベトナムの援助との問題とか、これは先ほど申し上げたようにアメリカだけの問題じゃなく、国連を通じて一体どうするのか、第二世銀を通じてどうするのか、アジア開発銀行を通じてどうするのか。いわゆる新しい機構というものを日本が提案した場合それをアメリカものむのか。その場合、ヨーロッパはのむにしてもソ連との話し合いはどうなったのかという問題は当然出てまいりますから、これはアメリカ側としても相当関心のある問題であるとともに、日本としても十分意思の疎通をはかってまいりたいと、こう思います。  それから対外援助が削減されて、二五%の削減ということが報道されておりますが、これは、そのかわりに日本が肩がわりするということはありません。これは全くない。ただ、日本が、DACの平均的な数字よりもはるかに下回っておるという現状、それから特にひもつきでないアンタイイングの推進という面から見ますと、日本はちょっとおくれておると。DACの平均数字が、〇・三二%でありすでに〇・四%になっておるというのに、日本は、〇・二三%だったものが〇・二%に下がっておる。まあ、これは特異な状態でもあります。そういうような事態もありますので、これは先進工業国から言えば指摘をされるものもあるでしょう。あるでしょうが、しかし、UNCTADの会議で、アメリカができないと言われた、この七〇年代末にはGNPの〇・七%まで無償援助を広げたいという声明をしておるわけですから、そういうような事態を前提としながら、お互いに国際機関を通じて援助するものはどうである。また、国際機関というものがアンタイイングということを進めるなら、これは二国間だけでもってできないので国際機関を使わなきゃならぬわけです。ですから、アジア開銀に対しては五〇%の負担を認めるということを実行しているわけですから、そういう問題を述べれば理解はしますし、日本自体がアメリカ国内情勢によって削減されたものの肩がわりを自動的に行なうということではなく、あくまでも独自に、独自な立場で、しかも、国際的なルールまた責務というものを果たしていくという考え方で対外援助は増大してまいるということの姿勢を明らかにいたしたいと、こう思います。
  123. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それからいま申し上げておる話に関連しまして、エネルギー資源確保について、おそらく話い合いの対象となるであろう濃縮ウラン工場新設、おそらく、あるいはジョイントベンチャー方式によるものか、そういう形になるだろうと思います。そうした場合に、場所の設定、また規模、それから資本協力、そうした問題まで具体的に話し合われる用意があるのかどうなのか、これが一点。  それからもう一点。これは全然話が違うわけですが、しばしば国会の論議を通じて問題視されてまいりました基地の縮小とそれから米軍の削減、こうした問題については新しい一つの課題として提起される用意はないのかどうなのか。この二点。
  124. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) エネルギー問題のうち石油に対しては話をいたしております。その具体的な問題としては、ジョイントベンチャー方式でやっていこうということで、アメリカが持っておるものを日本に譲り渡すという二ともありますし、もうすでにアメリカ日本と英国との間に話がついて、ヒース総理の訪日を契機にADMAの三〇%獲得ということが実行されたわけであります。日仏の間にも話が行なわれております。同じように、先ほど御質問がございましたチュメニ油田に関しても、アメリカから参加を求めるということが前進しているわけですから、石油問題に対しては相当な前進がございます。それから濃縮ウランの問題に対しては、八五年日米ともエネルギーの一〇%ということを目標にしておったわけですが、二〇%以上に上げなきゃいかぬと、二〇%よりも二五%にもあげなきゃいかぬという状態であることはもう明らかでございますが、しかし、濃縮ウランの問題とか核融合の問題とか、それからまたいろいろな問題があるわけです。ソ連もこれを提供してもいいという問題もいま提起されておりますし、しかし、少なくともこの濃縮ウランその他の問題に対しては日米の間で合同してやるということが一番望ましい姿だと私は思っておるんです。しかし、アメリカだけの予算でもってやるということはできないわけでありますから、日米で合同研究をやるとか、それから放射能やいろいろな、いわゆる公害というものに関して、やはり日米間で勉強する、開発も勉強もお互いがやるということに対しては、機関とか予算の問題が当然からみます。今度、四十九年度予算には当然計上しなければならぬ問題が起こってくると思いますので、これらの問題に対しては相当話を詰めたいという考えでございます。  それから基地の再配分とか、再編成とか基地の縮小という問題は、現に関東計画が行なわれ、沖繩県計画が行なわれまして、日米間では前進をしているわけですが、より一そう日本国民の期待に沿われたいということは、これはもう当然話としては出る問題でございます。これは理解が得られる、こう思います。それだけに、具体的に絶えず出先で検討を続けて、両国両国首脳がこれを事前に理解できるような体制を整備していきたいということは強く述べるつもりであります。
  125. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 時間がまいっておりますので……。
  126. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 もう一問で終わりますから……。
  127. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 総理の日程、時間のあれがありますので、ちょうどあなたの持ち時間が一ぱいなんです。
  128. 星野力

    星野力君 私の質疑時間は十分でございます。二つのことだけぜひお聞きしたいと思います。総理の御答弁簡明でけっこうでございます。昨日、第九回日米貿易経済合同委員会でロジャーズ米国務長官は、基調演説の中で、日米間の安全保障関係について、アメリカはアジアの平和と安全を促進する責任をより多く分担する余地が日本にあると考えておる、こう言い、日本にそうするよう促すアメリカの意思を述べております。これは重大な問題であると思いますが、二週間後にニクソン大統領と会談される総理には、ロジャーズ長官発言意味はもとよりよくおわかりのはずであります。日本政府としても当然検討しておられると思います。そこで、具体的にアメリカ日本にどのような安全保障上の新しい責任の分担を促しているのか、促そうとしておるのか、総理の考えをお聞きしたいのであります。
  129. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ニクソンドクトリンに明示されておりますとおり、お互いはお互い相応な努力をすることによって世界の平和維持に寄与し、貢献をされたいという考え方は一般的であり、これは言うことは理解できます。しかし、アメリカ日本に対して求めるという立場、これは日本が経済的に大きくなったからそれ相応な努力をせられたいということを望むのは、これは自然だと思います。がしかし、アメリカがNATO諸国に求めておるような防衛分担金とか、そのようなことを日米安全保障条約の締結国であるがゆえをもって日本に求めるということはない、これは確信を持って私は申し上げられると思います。それは協定自体が全く異質のものであるということであります。ですから、日本の憲法や日本状態において、アメリカの軍事力の肩がわりになるということがあろうはずはありません。これは全くない、これは明確に申し上げられます。そうすればまた平和維持というものは力の均衡だけではなく、外交的な努力を続ける、お互いがコミュニケーションを重ねるということも事実でございますし、国際機構に参加をするということもメリットのあることでありますし、また日本が経済的な、技術的な面で開発途上国の民生の安定に寄与し、生活のレベルアップに寄与できるようなことを行なう。まあ分相応な協力をするということは、これはもう当然なことなんです。ですから考えられるのは、日本もできる部面で協力がされることが望ましい、こういうことであろうと思います。
  130. 星野力

    星野力君 問題はアジアの平和と安全ということでありますが、総理の御答弁では、日本は経済大国になってその余裕もあるのだから、経済の面あるいは外交、政治の面でその任務をもっとやれ、こういうふうにとれるわけでありますが、なかなかすなおにそのとおりというふうにも納得いたしかねるわけです。ニクソンの外交教書その他を通じて、これはアメリカは一貫して言ってきていることでありますし、それからアメリカ政府の指導者の中でもずいぶんこれは物騒なことばでこのことを言っておるものもあるわけであります。日本の財界の一部ですら核のかさ代を払うべきだという論が出ております。アメリカがあるいはそれを言っておるのか、核のかさ代を払えと言っておるのか、あるいはもっと具体的に、いまあなた御否定なされましたけれども防衛分担金の支出を要求しておるのか、あるいは四次防からさらに自衛隊の増強をやれというのか、いろいろのことを考えられるし考えざるを得ないのでありますが、安保条約に基づいて日本は基地提供をやっておるが、あれですら国民は非常な苦痛をなめ、非常な犠牲をしいられておるわけであります。その上にさらにいま申しましたようなこと、あなたは御否定なさいますけれども、今度のワシントン会談において新しく何かを引き受けてこられるということになると、これは国民はたいへんな迷惑でございます。そんなものは一切引き受けてこないと、そうはっきり確言できますでしょうか。
  131. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 憲法上の制約がございますし、日本は核を持たない、持ち込ませない、つくらないということも明言しておりますし、だから軍事力とか防衛力増強ということでこたえるということはできないということは、もう申し上げるまでもありません。これは衆参両院でもって述べておりますように、四次防というものは国民の生命と財産を守るために必要不可欠のものであり、最小限のものであり、憲法の許容する範囲のものでございますと、こう述べておるわけでありますし、もうすでに防衛力の限界というものも過去の問題になりましたが、その中でも陸上兵力十八万は増強いたしません、こういうことも述べておるわけでございますし、そういう問題で特別な問題を引き受けるというような状態にないということは、これはもう申し上げるまでもないことであります。日米間で言えることは、日米安全保障条約を守って日本の平和を維持していくとともに、アジアの平和にも寄与しておると思われる日米安全保障条約を守っていきたい、そして日本が可能な限り、財源内一ぱいに開発途上国の民生安定や平和維持のために必要な拠出には応じていきたい。こういうことを述べるだけでございまして、国民が許容しないお荷物をしょってくるという懸念は全くありません。
  132. 星野力

    星野力君 別の問題でございます。  日本政府は、ベトナム民主共和国と国交樹立を目ざして政府間交渉を開始されることになりましたが、それについてお聞きしたい。  一月二十七日にベトナムに関するパリ協定締結されましてから、ヨーロッパの資本主義諸国やカナダなどが相次いでベトナム民主共和国を承認しました。日本が北ベトナムと国交樹立するのに私は賛成でございます。しかし、日本とベトナムとの関係は、ヨーロッパ諸国やカナダとベトナムの関係とは違って、はるかに複雑なものがございます。日本は一九四〇年に仏印進駐をやりました。その後、そこに居すわってここを大東亜戦争、いわゆる大東亜戦争の南方作戦の大拠点として一九四五年の敗戦に至ったわけであります。ベトナム民主共和国の歴史を見ますと、この期間のベトナムへの侵略者、ベトナム人民の最大の敵は日本帝国主義者であったと、こうしております。また、日本政府アメリカのベトナム戦争の最大の協力者であったということは、これは別の現実であります。こういう歴史的な現実が日本・ベトナム国交交渉に一つの困難な問題を提起していると思うのでありますが、この点についての総理のお考えはどうかということが一点でございます。  それから、何といってもベトナム人民に対して日本は加害者でありまして、加害者の側に反省がなければ国交樹立をかりにやったとしましても、両国の真の友好関係を切り開くことはできないと思うのでありますが、総理のお考えはどうかというのが第二点でございます。  仏印進駐後、仏印当局との間に日本政府は幾つかの協定を結びました。協定とはいっても、敗残のビシー政府の出先機関を武力で圧迫して押しつけたこれは一方的な協定、したがって、協定の内容もきわめて略奪的なものでございます。ここに外務省からいただいたいろいろの資料がございますが、仏印の自家消費を除いたすべての農産物は日本に提供しろというような内容のものでございます。一九四三年、四四年に結んだこの米に関する協定などもここにございますけれども、仏印の「輸出シ得ヘキ剰餘全量ヲ日本ニ引渡スコトヲ約ス」、どちらも第一条ではそういうふうになっておるわけであります。そして一九四三年には最低百十二万五千九百四トンの米、翌四四年には九十万トンの米の供出が約束させられ、それらは市価の十分の一ぐらいの値段で日本へも買い取られて、日本へも実際に運ばれておる。四十二年には八十何万トンというものが運ばれている。翌年も運ばれておる。こういうことが主要な原因、私、全部の原因とは言いませんけれども、一九四五年の春には北ベトナムだけで二百万人の餓死者を出しておる、こう書かれております。これはかつての日本がベトナム人民に加えた行動の一つの例であります。これはまさしく侵略であったと思うんですが、そうはお考えにならないか、これが三点でございますが、この点について総理のお考えを聞きたいんです。
  133. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 北ベトナムとの国交の回復問題につきましては、パリ協定締結をせられたことを契機にしまして日本も接触を続けておるわけでございます。この問題に対してはしかるべく結論が出されることを期待いたしております。  それから北ベトナムに対して日本が仏印進駐という歴史的事実に徴して、そういう謙虚な立場で考えなきゃならないという御指摘でございますが、仏印進駐ということも歴史的事実でございますし、バイアス湾の敵前上陸とか、トンキン湾の上陸とか、いろんな歴史的な事実がございまして、いろいろ御迷惑かけたということはあります。ありますが、過去の問題をとらえて、そういうものだけを前提として友好親善ということを考えることも一つ考え方ではございますが、世の中は急進展をしておるわけでありますし、御迷惑をかけた中国との間にも日中の国交の正常化が行なわれておるのでございますから、まあ日本でもってよく言われる、アジア人としてはよくわかる恩讐をこえて、とにかく現実に対処して、できるだけの日本が経済復興、民生安定のために必要な協力を行なうということで国交の回復にも前向きであり、またベトナム、南北ベトナム全土の民生の安定、経済復興、そういうものに対しても可能な限り最大の努力をしてまいるということが私は正しいことだと考えておるわけでございます。  ベトナムに対して侵略したということを御指摘になりましたが、これは日本が二次大戦においていろいろなことがあったということは、これはもう歴史的な事実でございます。日本もその後、謙虚にこれらを反省して新しい憲法を制定し、再びどんなことがあっても国際紛争を武力で解決しない、こういうことを宣言しておるわけでございます。少なくとも人類の歴史の上に、平和のために日本が貢献をしようという新しい姿勢を明らかにしておるわけでございまして、あまり過去にとらわれずに、昔は何代か境争いとか、いろんなことでもってごたごたがあっても、もうすべてを水に流してお互いに婚姻関係を結ぼうということもあるわけでありまして、これはやっぱりあまり加害者である、加害者であると言うことよりも、ベトナムの復興、ベトナムの民生安定に日本がいかなる寄与をするかということによって評価されていかなきゃならぬもんだと、こう考えております。
  134. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめます。     —————————————
  135. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 再び原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  136. 森元治郎

    ○森元治郎君 条約上の関係でちょっと……。  問題は、昨年結ばれた濃縮ウラン供給ワクの拡大に関する取りきめについてであります。それじゃ大臣の時間もないから大至急やりますがね。この前、昨年のこの濃縮ウランのワクの拡大の取りきめは国会の承認をやったほうがいいんじゃないか、そうしたら政府の答弁は、これは政府限りでよろしいという判断であるということですれ違ったんだが、たまたま調べてみると、この問題について私が昭和四十二年の第五十五国会で質問しているのですね。その答弁が——答弁に立ったのは説明員高島条約局参事官、いまの条約局長、それは大西洋のまぐろ条約十三条1にある「新たな義務を含まない改正」であっても、一たん国会で承認した条約文を訂正するものである以上、国会の承認を求めることになるのではないかとただしたるところ、高島説明員は、そういう「「新たな義務を含まない改正」につきましても国会に提出する、国会の承認を得た後受諾するということになろうかと思います。」と、こういう答弁があったわけですね。私この取りきめと比較してみた場合に、百六十一トンという現行協定のワクを三百三十五トンの濃縮ウランとかえた、これは一つの実質的なやっぱり改正、百六十一トンというのは、もうこれは死んでしまった、抹消、抹殺されて三百三十五トンになった。であるから、やはりこれもこのまぐろ条約にいう「新たな義務を含まない改正」というものに適合するのじゃないか、こういうことです。
  137. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) ただいま御指摘がございました大西洋まぐろ保存条約の第十三条の規定に定めます改正でございますが、これは条約本文自体の改正手続を定めたものでございます。そしてその改正の内容がそれによって新たな義務を伴う場合と伴わない場合とに分けまして、効力発生の態様を区別して規定したものでございます。今回、問題になっております日米原子力協定第九条に基づきますいわゆる濃縮ウラン供給ワクに関する政府間の合意、これは条約改正、すなわちこの協定の形式的な改正を伴わないで政府間で取りきめるという趣旨の規定でございます。したがいまして、条約締結はいわば形式的な行為でございますから、その条約を形式的に改正いたします場合は、まぐろ条約の場合のごとく、一字あるいは一句を改正するという場合におきましても、国会に提出いたしまして、御承認を得て改正の手続を進めるというのが妥当であると考えております。日米協定の場合には、協定自体を改正するという手続をとっておりません。この点が違うかと思います。
  138. 森元治郎

    ○森元治郎君 時間がないと言われるとどうも、大平さんせかせかしてるから……。  それからもう一つ濃縮ウランのこのワクの拡大に国会の承認が要らないと言うんなら、このけつのほうにいくと条約文がおかしいと思うんだよ。それぞれの法律上及び憲法上の手続に従って合意されるという、この規定は要らなくて、アメリカだけがそれじゃ原子力法に従って向こうが手続とりましたよという書面が日本に来たときに効力が発生すると、向こう側だけ書けばいいのに、国会に出すような出さないような、こういうもの、何で条約の専門家入れたの。これはアメリカだけの義務にすればいいんですよ。これを堂々と書いてるからわれわれが主張するわけですね。その間は少しこれは——出すつもりがないんだから、国会の承認を求めるつもりがないのに、それぞれの憲法上の手続、法律上の手続というのはよけいなことだと思う。
  139. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) ただいまの点は確かに御指摘がございましたごとく、この法律上及び憲法上の手続に従ってという字句は、アメリカ原子力法上、供給ワクを拡大する合意をする場合は、アメリカの上下両院の原子力合同委員会に三十日間さらすという規定がございます。したがいまして、それがアメリカ側の法律上の要件になってるということから挿入されたわけでございます。しかし他方、いま御指摘がございましたような点につきましては、問題点につきましては今後なお十分研究してまいりたいと思っております。
  140. 森元治郎

    ○森元治郎君 それはちょっと条約技術上まずいよな、これはまずいと思うのだ。まあいいや。  それで最後、衆議院のほうでこれは、こういうものはやはり国会に提出しろと藤井委員長が言ったら、大平さんが、外務委員会理事会に御報告しますと、委員長に頼まれたとおり答えたわけだ、オオムがえしに。やはりこれはもし報告するなら理事会ではなくて委員会に報告するのが筋だと思うのですよね。この点は御理解になると思う。いかがですか。
  141. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国会の御審議を十分していただくこと、それから案件の審議に支障のないようにすることが本旨でございますので、いま仰せになりましたことも十分政府として検討さしていただきます。
  142. 森元治郎

    ○森元治郎君 終わります。     —————————————
  143. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 委員異動について御報告いたします。  本日、長谷川仁君が委員辞任され、その補欠として山崎五郎君が選任されました。     —————————————
  144. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 他に御発言もなければ質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  145. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  146. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、本案件についての審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  147. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 御異議ないと認めます。よってさように決定します。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十五分散会      —————・—————