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1973-06-05 第71回国会 参議院 外務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月五日(火曜日)    午前十時八分開会     —————————————    委員異動  六月四日     辞任         補欠選任      星野  力君     加藤  進君  六月五日     辞任         補欠選任      加藤  進君     星野  力君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     理 事                 佐藤 一郎君                 田  英夫君     委 員                 岩動 道行君                 大竹平八郎君                 木内 四郎君                 杉原 荒太君                 八木 一郎君                 小谷  守君                 羽生 三七君                 森 元治郎君                 渋谷 邦彦君                 松下 正寿君                 加藤  進君    国務大臣        外 務 大 臣  大平 正芳君    政府委員        外務大臣官房長  鹿取 泰衛君        外務省アジア局        長        吉田 健三君        外務省アメリカ        局長       大河原良雄君        外務省中近東ア        フリカ局長    田中 秀穂君        外務省経済局長  宮崎 弘道君        外務省経済協力        局長       御巫 清尚君        外務省条約局長  高島 益郎君        外務省条約局外        務参事官     松永 信雄君        外務省国際連合        局長       影井 梅夫君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        外務大臣官房領        事移住部長    穂崎  巧君        大蔵大臣官房審        議官       前田多良夫君        文化庁長官官房        国際文化課長   角井  宏君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送付) ○国際情勢等に関する調査  (北朝鮮の国連専門機関加盟に関する件)  (ニクソン米大統領外交教書に関する件)  (核防条約批准問題に関する件)  (北ベトナムとの国交樹立に関する件)  (わが国のアジア外交基本姿勢に関する件)  (発展途上国に対する経済協力問題に関する  件)  (アジア太平洋協議会に関する件)  (日中平和友好条約締結に関する件) ○千九百七十一年十二月二十日に国際連合総会決  議第二千八百四十七号(XX VI)によつて  採択された国際連合憲章の改正の批准について  承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○アフリカ開発基金設立する協定の締結につい  て承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨四日、星野力君が委員辞任され、その補欠として、加藤進君が委員に選任されました。     —————————————
  3. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案衆議院送付)を議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  4. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 昨年、在外公館の件が議題になりましたときにお尋ねをしたわけでありますが、現状在外公館における外務公務員の数がアンバランスの面もありましょうし、また、大使館によっては、非常にその数が少ないために、十分な機能が発揮できないということを御指摘申し上げたわけでございます。その点について、当時の福田さんは、できるだけそういう機能が麻痺するようなことのないように、十分配慮しながらそういう隘路については善処をすると、こういう御答弁があったように記憶をしております。その後、大使館の数もふえ、また、外務公務員のそれに伴う配置というものが、本省においても、最も効果的な活動ができるという、そういうことを前提にしながら進められていらっしゃるんだろうと思いますけれども現状いかがでございますか。現在の配置状況において十分な機能が発揮できるという、そういう体制に置かれているのかどうか。
  5. 鹿取泰衛

    政府委員鹿取泰衛君) 在外公館定員現状でございますけれども、四十八年、本年度におきまして合計千三百六十九名になっております。四十七年が千三百名でございますので、六十九名の純増でございます。  それで、その配置がどうなっているかということが問題になるわけでございますが、われわれとしては、大きな公館につきましては大体数が整っている。しかし、小さな公館についての問題が残っているという感じを持っております。たとえて言いますと、一番定員の大きい公館は在米、アメリカ大使館でございまして、定員が五十九名、それから中華人民共和国大使館定員が四十九名でございます。ただ、もちろんこれは定員でございまして、現在特に中華人民共和国の場合には順次人を派遣して充実をしているところでございます。大きな公館はこのアメリカ大使館中華人民共和国大使館でございますが、たとえば小さな公館になりますと、三名の公館とか四名の公館がございます。たとえばバチカンの大使館は三名でございますが、この場合は機能上三名でもまあ十分かと思いますけれども、四名の公館が現在二十七館ございます。たとえて申しますと、先般御承認をいただきましたモンゴル大使館中央アフリカ大使館総領事館で言いますと、たとえばマドラスの総領事館・ニューオルリンズの総領事館というようなことでございまして、この四名の公館、それからさらに五名の公館が四十八館ございます。この四名の公館とか五名の公館になりますと、やはりどうしても館内の事務を分担していきます場合に、やや無理が生ずることがございまして、特に非健康地不健康地と申しますか、環境の悪いところで館員を交代させて勤務させたい、休養に出したいという場合に無理が生じてくるわけでございますので、われわれとしては、今後こういう小規模公館充実をはかっていきたいと考えておる次第でございます。
  6. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いま御答弁ありましたように、昨年からこの一年間、四名ないし五名の公館相当数にのぼる、おそらくいま海外公館が百四十ぐらいあると思いますけれども、その中で、いまの数字ですと三分の一以上占める。こうなった場合、おそらく外務省としては機能的には何ら支障がないという、そういう含みもあってのことであろうとは思うんですけれども、しかし、四名ないし五名という場合には、出張もあるでしょう。出張があった場合に館員が二名ないし三名に減る場合がある。そうしたときに、また病気になる館員もいるかもしれない。そうしたことを考慮すれば、はたしてだいじょうぶかという、そういう不安がまあ考えられないでもないんではないだろうか。もしそういう事態が起こった場合にどういう対応策を立てられるのか。絶対安心して、大使館あるいは公使館としての、あるいは総領事館としての機能は麻痺しないという自信があるのかどうなのか、その辺はいかがでございましょうか。
  7. 鹿取泰衛

    政府委員鹿取泰衛君) 御指摘の点につきましては、外務省といたしましても、従来からいろいろくふうをして、何とか小規模公館、特に勤務環境の悪い公館勤務支障なくいくように、館員活動が円滑にいくように配意をしつつあるところでございます。特に、今年度の予算におきまして瘴癘地、気候の悪い勤務環境館員に対します特別の配慮予算を御承認いただきまして、勤務環境の悪い公館につきましては、たとえば休暇帰国制度の優遇をするとか、あるいはその国の中でも保養休暇の、保養先手当てをするとか、あるいは日本からお医者さんを派遣して健康管理をするとか、あるいは特に館員の宿舎の配置等配慮をするというような計画を立てまして、そのための経費を御承認いただいているわけでございますけれども、こういうような手当てだけでは不十分な点もございますので、何とか人的な定員の少ない部面をカバーするために、たとえば電信文書会計事務簡素化というようなことも一方ではかっておりますし、他方におきましては、現地補助員と申しますか、ローカルスタッフ充実するというような手を打っているわけでございます。
  8. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いまのお話にもございましたように、特に環境の悪いところには在外公館館員の数がきわめて限定されておる。それだけに心配があるわけですね。特に発展途上国における問題がおしなべてそういうありさまである。今後経済交流文化交流あるいは技術交流というようなものが積極的に展開されるということが当然予測されるわけでありまして、とりわけ、発展途上国においては積極的にそれに取り組まなければならないということになれば、現地からの情報というものも的確に外務省に入らなければならないということも言えるでありましょう。まあそういうことは常識的なことでありますので、それ以上のことは申し上げませんけれども、そういうことでいまたいへん困っているというようなニュアンスの御発言でございました。これをどう一体今後解消するための手を打たれていくのか、具体的な考え方がございますか。これから一年、二年先にはこうしていくのだという一つの方針、まあ総定員のワクのあることでありましょうけれども、その辺をどうアジャストしながらその辺の欠陥というものを、隘路というものを補っていくのか。
  9. 鹿取泰衛

    政府委員鹿取泰衛君) 御指摘の点につきましては、一つ定員上、在外公館定員増強重点小規模公館に置きまして、少なくとも一つ公館がある場合には六名ないし理想的には八名に持っていきたいという考えでございます。したがって、今後の予算定員増強をお願いする場合には、小規模公館充実というところに重点を置いていくというのが一つでございます。  それから第二の計画は、従来の考え方でいきますと、独立の公館というものは、すべて、館長以下書記官がおり、それから会計電信文書一つ公館で一単位でやっていたわけでございますが、たとえば中近東、あるいはアフリカにもあるかと思いますけれども、すべての国交のある国に公館を置くことは必ずしも必要でない。そういう場合には、ある大きな公館を拠点といたしまして、一つ出張駐在とか、あるいは一つのいわば分館というようなものを考えていったらどうかということをいま検討しております。これは、相手の国がそれを受け入れる場合に限るわけでございますので、必ずしもわれわれの考えているとおりにはいかないと思いますが、もし相手の国が、出張館員を置いてくれるだけでもいい、出張事務所でもいいという場合には、出張事務所を置きまして、その場合には会計電信事務というものは親元の公館でやるというようなことも考えているわけでございます。
  10. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 現実にいままでも伺っておるし、これは私からあえて申し上げなくても十分承知しているはずの、たとえば通信士が、あるいは会計担当館員が、通信士も兼ねたり、会計も兼ねたり、二役、三役をやっているという、こういう現実があるんですね。これでは実際に仕事はできないと思うんです。完全なオーバーワークですよ。そういう点、いま差し迫った、解決を迫られている問題がぼくはあるんじゃないかと、こういうふうに考えます。何といったって、言うまでもなく、出先の機関というのは日本の顔、日本を代表しているわけでありますから、そこにいろんな支障があるということは、それだけ非常に大きなマイナスをつくる。当然のことだと思うんです。  そこで、大平さん、いま官房長のいろいろ苦慮されているその問題を通じまして、大平さん自身としては、今後、そういう問題の解消にあたって、どのように取り組まれ、実現を期していかれるおつもりなのか、総合的に。その点をお伺いしておきたいと思います。
  11. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま御説明がありましたように、各省別定員が縛られております。で、これが、政府全体として総定員が内部において融通がきくというような仕組みでございますならば、まだ相当の弾力的な配慮が可能でございますけれども、いま各省別定員で押えられておりますので、それはまた、それはそれなりの理由があって、沿革があってやっていることでございますので、政府の政策としてとってきていることには私は異議を申し述べるものではございません。したがって、いま官房長からも申し上げましたように、鋭意定員増強につとめなければならぬと思います。その点につきましては、大蔵当局行管当局もわりあい御理解を持っていただいておりまして、ある程度の増員を確保することに成功いたしておるわけでございまして、このラインの努力を引き続きやってまいらなければならぬと考えております。  それから第二は、これまた官房長からも申し上げましたとおり、事務簡素化に一段とくふうを加えまして、少ない定員で能率よく仕事が消化できるような仕組み、システムというようなものをくふうしてまいらなければならぬと考えておるわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、国会はじめ国民の外交に対する御理解をいただきまして、それを背景にいたしまして私ども努力をしてまいることが第一でございますので、御支援、御鞭撻のもと、今後一段と努力を積み重ねてまいり、御期待にこたえなければならぬと思っております。
  12. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 その点は、いまお話がありましたとおりだと思いますが、これからも高度ないろんな要求がなされていくだろうと思いますし、それに対応できる在外公館配置というものがなされなければならないのは当然だろうと思います。もっと本腰を入れてその問題について取り組んでいただきたいものだなと、いかにささいなことであっても支障のないような運営ができるように配慮をしていただきたいものであると思います。  次に、これもいつも問題になることなんでありますが、在外公館におけるいわゆる外務公務員家族、一番何が困っているかというと、やはり子弟教育とそれから住宅の問題、まあ四十八年度の予算においては、やっと初めてその予算が組み込まれた、こういう段階になったことは、曲がりなりにもその点の配慮がなされたということでありましょう。しかし、現実的には、われわれが海外へ参りましても、まともにはなかなか遠慮しておっしゃれないこともありますけれども、いろいろ第三者あたりを通じてうかがうところによれば、相当苦労されておる。特に子弟教育においては、非常に深刻な問題として受けとめられているようであります。この点については、衆議院においても、相当こまかく検討もされ、また、議論もされたようであります。あえてその問題を繰り返そうとは思いませんけれども、やはりこの際、さらにその問題について確認をしておきたい、こう思うわけであります。  現在、在外公館職員方々の、要するに子弟の数というものがどのくらいになっていますか。
  13. 鹿取泰衛

    政府委員鹿取泰衛君) 職員が同伴しております子女のうち、私どもが一応学校に行く教育の対象になります年齢を六歳以上十八歳というふうに考えました場合に、その総数は千五十一名でございます。——失礼いたしました。同伴子女全部は千五十一名でございますけれども、先ほど申しました学齢と申しますか、六歳から十八歳の間の子女は四百三十四名でございます。
  14. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 この四百三十四名は、さらにふえることは当然でございましょう。現在千五十一名ですか、これが、年を追うごとに、あるいはこの数が倍加されることも予想されると思います。国別によって、それぞれ、その子弟教育の受け方というものが非常に格差があるんではないだろうか。欧米各国、あるいは東南アジア地域、あるいはアフリカと大まかに分けても、そういう国々を考えましても、大きなやはり差があるだろう。端的に申しますと、日本の現在の教育水準というものと、現在それぞれの地域において、あるいは補習学校に行っておられる方々の学力というものを含めて相当大きな開きがあるのか、大体同等にいっておるのか、その辺はどういうふうに判断をされておりますか。
  15. 穂崎巧

    説明員穂崎巧君) 御指摘の点の教育の差でございますけれども、現在、全日制学校が全世界で三十三校ございます。そのうち、まあ先進国と認められるものが数校ございますけれども、大部分はいわば開発途上国でございます。  そこで、どうしてこういう開発途上国学校をつくる要求が出てまいったかと申しますと、一つは、やはり開発途上国では学校の程度が他の国に比べて低いという点が大きな問題でございまして、そういうところから開発途上国学校をつくりたいという要望が出てまいっておるわけでございます。そこで、開発途上国の中の学校でも、先ほど御指摘がありましたように、日本学校と比べてもちろん差はございます。しかし、だんだんと先生もふえ、学校内容充実してまいりますと、日本学校にも劣らない学校ができておる。一例を申し上げますと、バンコクに学校がございますが、これはもうできましてから十五、六年たっておりますが、数年前に日本と同じテストをやって全校の生徒の成績を調べましたところ、日本学校の平均からいいますと相当上にあるというような結果も出ております。したがいまして、われわれといたしましては、こういう学校教育内容充実、特に先生充実をはかるということを目標にしてやっております。  それから、他の先進国でございますけれども、これは先ほどお話のありました補習校に行っておる生徒が大部分でございますけれども、これが実は、そういう国におられる父兄方々が、子供をとにかく、たとえば英語なりフランス語なり、せっかく外国へ来たんであれば外国学校へやりたいという希望もございまして、現地学校へやっておるわけでございます。ただ、日本へ帰りまして、日本での入学の便宜を考慮いたしましてそういう補習授業をやっておる、こういう状況でございます。しかしながら、いろいろな点から、日本へ帰った場合の進学便宜を考えまして、こういう先進国でございましても、現地に全日制学校をつくりたいという要求もぼつぼつ出てまいっております。もちろん、これらの学校ができました場合も、先ほど申し上げましたように、教育内容充実を漸次はかっていかなきゃならぬと、このように考えております。
  16. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いま全日制学校世界で三十幾つというふうなお話がございました。それで十分間に合うとは思いません。いま外務省のほうで試算もされているだろうと思いますけれども、どのくらいこれからふやせば十分——十分といかないまでも、現地在外公館方々希望を満たすことができるというふうに判断されていますか。
  17. 穂崎巧

    説明員穂崎巧君) 現在までのところ、開発途上国のほうは、大体日本人がたくさんおるところは全部学校ができております。今後の問題は、いわば先進国地域にこのような全日制学校をつくるかどうかという問題でございますけれども、先ほど申し上げましたように、たとえば今年度予算ではパリにつくることになっております。これが一つの刺激になりまして、あるいはヨーロッパの他の地域、あるいはアメリカ合衆国の中にそういう学校をつくりたいという希望が出てまいるかと思いますけれども、われわれといたしましては、まず第一に、現地父兄自分子供現地学校ではなくて、そういう全日制学校へやりたいという希望が出てまいりますれば、それを取り上げるということでやっておりますので、われわれのほうからこの地域幾ら学校をつくるというふうな計画の立て方はやっておりません。したがいまして、今後そういう学校をつくりたいという要望現地から出ますれば、われわれはこれに対応しましてこれを援助していく、このように考えております。
  18. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いま言われたように、確かに発展途上国、特に南米だとか東南アジア地域、この辺には日本人の進出、必ずしも外務公務員の方のみならず、商社マンの家族もいらっしゃるでしょう。あるいは海外移住された方もいらっしゃるでしょう。ということで、学校設立ということについては、わりあいにその条件が整う場合があるだろうと思うんですね。それ以外の、いわゆる先進国家において、これが非常に苦慮されているという反面があることをわれわれ聞いておるわけです。しかも、アメリカに例をとりますと、昨年も申し上げましたように、中学校あるいは高等学校あたりで、一カ月に要する月謝から他の教材費一切を含めて三百ドルから五百ドルかかる。それじゃ現在もらっている給料の中ではたして子供たちをそういう学校へ行かせることができるかどうか、当然ながら問題が起こるのは言うまでもないわけでありますね。むしろ外務公務員に例をとった場合に、一番多くそういう家族が行っていると思われる先進国家において、もっともっとやはり配慮すべき問題があるんではないか。ヨーロッパにおいてもしかり。いまパリの話が出ましたけれども外務公務員の方はしょっちゅう転勤もある。そういった場合に、はたして今度新しくつくられる場合でも、全寮制というようなものの仕組みをとられて、たとえ自分の父親が転勤する場合があっても、そこでずっと学業が続けられるような方法をとるとか、いろんなきめこまかい考え方も当然ながら起こってくるだろうと思うんです。そういうことを一切包含しながら、アメリカあるいはヨーロッパを中心として子弟教育については非常に頭を悩ましているということを聞いておりますだけに、もっと本格的に本腰を入れてこれと取り組まなければならないんではないか。むしろ先進国家のほうがいまとりあえず急を要するそういう問題があるんではないだろうか、こう考えますけれども、その辺の解決方法のめどはついておりますか。
  19. 穂崎巧

    説明員穂崎巧君) この点は、われわれが一〇〇%もちろん完全に現地在留邦人の意見を把握しておると申し上げる現状ではございませんけれども、いろいろ聞いてみますと、たとえばアメリカなんかにおいでになっている方は子供をとりあえずアメリカ学校に入れる、むしろ日本とは違った教育を受けさせたいという親の積極的な希望からそういう学校へやっている方もある、このように聞いております。ただ、だんだん上の学級になりまして、四年とか五年になりますと、日本に帰ってからの進学のことを考えますと、今度は逆に何とかして日本のそういう学校に入れたいという希望のあることも聞いております。したがいまして、われわれといたしましては、そういういろいろな希望があるということを取捨選択しまして、皆さんの一番希望する形で、そういう現地教育を実現するために、もう少しはっきりと皆さんの意向をつかまえていきたいと、かようには考えておりますが、現状のところは残念ながら一〇〇%完全にはいっておりません。しかし、今後の問題といたしましては、先ほど申し上げましたように、そういう皆さん希望をこまかく配慮いたしまして学校設立を検討してみたいと考えます。
  20. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 あまり時間もありませんので、はしょって申し上げますけれども、そういう学校設備が今度整備された場合に、一番問題になるのは教師の問題、それから日本のやはりレベルに近づけるというか、あるいはそれと同等ぐらいのところまで達する教育を行なっていくということになれば、当然教員の問題だとか教科書の問題が付随的に起こってくるだろうと思いますね。文部省としては、そういう問題についてどういう助成のしかたを今日までされているのか、今後またどういう取り組み方をされていくのか、その辺を伺っておきたいと思います。
  21. 角井宏

    説明員(角井宏君) 文部省といたしましては、外務省と協力いたしまして、本年度現在、在外日本人学校に対しまして、二百二十五名の教員を派遣いたしております。教材につきましても、昭和四十二年度以降在外公館を通じまして児童用の教科図書あるいは視聴覚教材等を送付してまいっております。昭和四十六年度からは、財団法人海外子女教育振興財団にこの事業を委託いたしまして、これらの教材のほかに、わが国の義務教育学校の教材基準に基づきます一般教材及び理科教材、これをそれぞれ日本人学校に送付しているような次第でございます。この教材整備事業は今後も引き続き努力してまいりたいと考えております。  それから教科書の関係でございますが、教科書につきましては、これも昭和四十二年度から外務省の御協力を得まして、在外公館を通じまして、これは日本人学校のみならず、全部の児童生徒を対象にいたしまして、教科用図書を送付いたしております。  それからこのほかに、教科書は先ほど申しましたように、補習学校にもいっているわけでございますが、あまねく、日本人学校以外は、補習学校を例外といたしますれば、全くいわゆるマン・ツー・マンの教育というものができないわけでございますので、それをカバーいたしますために、通信教育事業というのを四十七年度から海外子女教育振興財団に対して補助事業という形で実施をいたしているような次第でございます。
  22. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いずれにしても、いろいろまだ相当の障害が残っているという印象を受けます。伝え聞くところによると、ワシントン大使館あたりでは、地下室を利用して子弟教育に充てられていると、まことに涙ぐましい、そういうようなことも私どもの同僚議員から聞いております。また、衆議院でもそれを問題にされたようです。こうしたことは一刻も早くやはり解消しませんと、ここに並んでいらっしゃる皆さん方自身に関係する問題でありますだけに、もっとやはり本気になって取り組む必要があるんじゃないか。大平さんいかがでしょうか。その辺で最後の、今後の子弟教育という問題について総合的に御見解を伺って、時間も過ぎたようでありますので、終わりにしたいと思います。
  23. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 海外子弟教育の問題、外務公務員の同伴子弟ばかりでなく、在外日本人の御子弟教育全体につきましていろいろ御心配をいただき、御指摘をいただいたことを感謝します。  いま仰せになりましたとおり、教育は一番大事な問題でございまするし、これがまた在外勤務の成否にかかる問題と承知いたしております。したがいまして、教育施設、教育設備、教員の問題、教材の問題等につきまして、御指摘のとおりまだ十分じゃございませんけれども、私ども教育御当局の御支援を得ながら、一そう充実してまいらなけりゃならぬと覚悟いたしておるわけでございまして、一そう努力してまいるつもりでございますので、一そうの御鞭撻をお願いしたいと思います。
  24. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 別に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べ願います。  別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  26. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  28. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 国際情勢等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  29. 羽生三七

    ○羽生三七君 最初に、少し朝鮮問題をお伺いして、そのあとアメリカ外交教書、そのほか二、三の問題をお伺いしたいと思います。  このWHOに続いて、ILO総会があるわけですが、北朝鮮加盟問題についてはWHO総会でとった態度と同じ態度をとるように衆議院では答えられておるように思いますが、そういうことなのでしょうか、お伺いをいたします。
  30. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま御指摘の国際機関に対して、北朝鮮からの加盟申請があるとは承知いたしておりません。また、そういう動きがあるようにも私どもは承知いたしていないのであります。したがって、そのことをこの段階で論議することは、私どもとしては御遠慮申し上げたいところでございますが、しかし、万一これがそういう動きが出てきた場合にどう対処するかということでございます。そういうことのまたお尋ねでございます。  そこで、WHOの場合におきまして私どもがとった態度は、WHOに北鮮が加盟することが反対であるとか、あるいは北鮮に対してわれわれが敵視をしておるとかいうようなことでは毛頭ないわけであって、そういう問題は国連総会のほうで処理されて、その結果として、国際機関に祝福を受けて御加盟になる、そういう手順が望ましいのではないかというような考え方でやったものでございまして、他意はございませんという、そういう態度でございましたので、その考え方は誤っておったかというと、私ども別に誤った考え方ではないように思うておるということを衆議院でもお答え申し上げた次第でございます。
  31. 羽生三七

    ○羽生三七君 いまの外務大臣のお答え並びに衆議院の先日の答弁を新聞で知る限りにおいては、いまのお答えにもあったように、要するに、国連の専門機関であるこの種の総会で加盟問題を審議するのは不適当だ。そういう立場をとって、国連総会自体が何らかの決定をすることが適当であって、その決定を待つという方針と承知をいたしております。  ところが、私は実は見解を異にするのでありまして、問題は、国連自体が何らかの決定をする際に、日本自身がどういう態度をとるか。あるいは秋の国連総会でなくとも、たとえばさきのWHOの場合、あるいは近くのILOの場合、いずれの場合でも、日本自身がどういう態度をとるかということであります。国連の方針が決定すれば、それに従うのはこれはあたりまえの話であります。これは外務当局の答弁に私はならないと思う。したがいまして、国連の決定待ちということは、日本が従来どおりの方針をとることに変わりはないが、国連で結論が出ればそれに従うということなのか、それより前にも日本が自主的に何らかの方針をきめることもあるというのか、そこが問題のポイントではないかと思いますので、この点をお伺いをいたします。
  32. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この前の本委員会あるいは衆議院外務委員会におきましても申し上げておいたんでございますが、東独がWHOに加盟するに至った経緯——何回か足踏みをいたしまして、木元のほうで、東独問題の処理について展望が明らかになった段階で、全員の祝福を受けてWHO加盟という手順になってきたと、ああいうケースが私どもとして非常に望ましいんじゃないかと、そういうことを加盟国といたしまして、みんながそういう筋道を履修していこうじゃないかということが望ましいと思いまして、わざわざ提案国にもなってやったわけでございますけれども、結果はあのような始末になったわけでございます。しかし、私どもがとった態度がそれでは非常にけしからぬことであって、これはどうしても直さにゃいかぬものかといま言われますと、卒然としてそうでございますと言うわけにもなかなかまいらないわけでございますので、その問題につきましては、一つの手続の問題としてそういうように依然として考えておるというようにひとつ御了解をいただければと思います。
  33. 羽生三七

    ○羽生三七君 やはりいまの私の質問に対しては、的確な答えになってはおらないと、こう思います。  そこで問題は、日本が朝鮮問題を朝鮮全体としての立場でとらえずに、韓国重視、韓国第一の立場で考えて、北朝鮮の存在と国際情勢というものを軽視しておるという、ここに問題があると思うわけです。それで、アジアにおいては、むしろこの国際関係正常化の先頭に立たなければならぬ日本が、いつもむしろ、たとえたな上げ案という形にしろ何にしろ、結果的には阻止の、北朝鮮に対して加盟阻止の役割りを演じているという、これはまぎれもない事実で、まことに私は、これは結果論ですよ、主観的意図がどうあろうとも、結果はそうなっておることはまことに残念であります。いま東独の問題のお話がありましたが、東独と事情は確かに違います。若干事情は違います。けれども、東西ドイツ双方と日本国交を持つに至ったことは、これはまぎれもない事実であります。したがって、両朝鮮とも関係を持って、両朝鮮の間の対話あるいは関係の緊密化、それを願うようなそういう素地、糸口をつくるのがむしろ日本の義務ではないかと私は思う。そういう場合に、さきに列国議会同盟で北鮮の加盟が承認されて、さらにWHO加盟に続いて国連欧州本部の常駐オブザーバーという地位も、これ認められたようです。こういうふうに、国際世論の動向が大きく変わっておるときに、まだ日本は依然として、たとえ形式はどういう形になろうとも、実質上いわゆるたな上げ案という——進展を考えるかもしれませんよ。韓国が。あるいは日本がそれに同調するかどうか、それは知りませんが、依然としてなおそういう態度を持ち続けるのか。それとも根本的なやはり国際世論の動向を見て、あるいは朝鮮問題を朝鮮全体として把握して、新しい転換の糸口を日本がつくるのかどうか、この点が問題だと思うんです。どうもちょっと韓国にあまり義理立てが過ぎるような気がするんですが、もう少し明快にお答えをいただきたい。
  34. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 北鮮承認国がだんだんふえてまいりましたし、国際的な地位が高まってまいっておりますことは、御指摘のとおりでございまして、これは朝鮮問題を考える場合にわれわれが十分念頭に置かなければならない問題だと考えております。しかし、この朝鮮問題の主役は、何といっても南北朝鮮の方々でございまして、この南北朝鮮の間に、はしなくも対話が持たれるようになってきた。このことについては、たびたび国会を通じまして、政府といたしましても歓迎の意思を表明いたしておるわけでございます。  しかも、この対話は、平和的手段で、自主的に統一達成への道を探っていこうというようなことを志向いたしておるわけでございまして、この平和的かつ自主的という点が私どもをたいへん勇気づける方向でございまして、日本といたしましては、この平和的、自主的な統一への接近という問題につきまして、これをそこねないようにしなければならぬということを念慮しなければならぬと考えております。  第三の問題といたしまして、そういう状況のもとで、これから朝鮮政策の場合、国連その他でいやおうなしにいろんなケースにわれわれは当面するであろうと思うわけでございますので、いま申し上げたようなことを念頭に置きまして、今後十分、朝鮮半島における対話の進展はもとよりでございますけれども世界各国の動向も十分注意しながら事に当たらなければならぬと思っております。とりわけ、日本の態度というものは、日本の朝鮮政策というものは、全世界が注視いたしておるわけでございますだけに、われわれといたしましては、慎重の上にも慎重に対処いたしまして、誤りを来たさないようにということをひたすら念願いたしておるわけでございます。
  35. 羽生三七

    ○羽生三七君 これ、いずれこの秋の国連総会では、これは朝鮮民主主義人民共和国——北朝鮮が、国連の常駐オブザーバーの地位を承認される可能性は私は確実になってきておると思うんです。そうなれば、今日常駐オブザーバーの地位を認められておる韓国と同一条件になると思いますが、その見通し並びに見解を承りたい。
  36. 影井梅夫

    政府委員(影井梅夫君) 北鮮がWHOに加盟いたしました結果、ニューヨークに常駐オブザーバーを置くであろうという見通し、私どももそう考えております。現に北鮮は、すでにこれはジュネーブのほうに対しまして常駐代表を置きたいという申し出をいたしまして、おそらく最近のうちにこれは実現するだろうと思っております。また、ニューヨークにつきまして、いまのところそれがいつごろになるか、私ども正確な情報を持っておりませんけれども、やはり北鮮の常駐オブザーバーズオフィスが置かれるであろう。この常駐オブザーバーの地位の問題でございますが、これは国連憲章上のものではございませんで、従来の慣行といたしましては、当該国から国連事務総長に対しまして、専門機関に加盟したからニューヨークに常駐オブザーバーズオフィスを置きたいという申し出をいたしまして、これを国連事務総長が事実上の問題としてそういう地位を認め、認めた結果といたしましては、国連の諸種の会議にオブザーバーとして出席をすると、また文書の配付を行なう等の行為を行なっておるというのがこの常駐オブザーバーというものの性格でございます。
  37. 羽生三七

    ○羽生三七君 形式はいずれにあれ、実質的に北と韓国とが同一条件の上に立つという、こういうことになると思いますね。  そこで先ほど申し上げたことですが、日本はいつでも国際情勢の大勢がきまるとそれに従うと、非常にこれは無難であやまりのない道かもしれません。大勢がきまればそれに従っていくという、これは日本の伝統的な、私外交政策だろうと思いますが、情勢がここまできた場合には、たとえば韓国がたな上げ案が無理と考えて、そういう情報もあるわけですが、今度新しい何らかの決議案を考えるとか、いわゆる進展を考えるわけですね。そういうふうな場合に、日本がまた同じようにそれに同調する。結果的に世界の大勢がきまればそれに従うという、こういうことなのか。先ほど外相が劈頭に、決して北に対して妨げをするものではないということを言われておりましたが、そうであるならば、日本の意思そのものが問われておるんですから、日本の意思そのものをやはり明確にして、韓国に対するおつき合い、これもももちろん大事なことでしょう、日本としては。しかし、それも限度があることで、やはり朝鮮全体が朝鮮問題であるという、そういう理解の上に立って、この総会の決定を待って、すべて大勢がきまったらそれに従うというのではなしに、総会の決定に際して、日本が主体的な態度を示すべきではないか、強く私はそういう要請をしたいのですが、いかがでしょう。
  38. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 羽生先生言われること、私もよく理解できるわけでありますが、先ほど私申し上げましたように、朝鮮問題解決のかぎはやっぱり朝鮮にあるんだ。しかも自主的にやるという方向を打ち出しておられるわけでございますから、韓国がこの事態に対してどういうような考えで対処されるかということは非常に大事だと思うのでありまして、われわれとして交わりを持ち、濃密な関係を持っておるわけでございますし、接触の機会もたびたびあるわけでございますので、私といたしましては、まず、当事者である韓国側の御意向というようなものも十分聴取しなければならぬのじゃないかと考えておるわけでございます。問題は、朝鮮半島が平和と安定をかちうるようにすることが目的なんでございますので、それは、やはり朝鮮半島の方々がその気になってやっていただかなけりゃならぬことでございます。そういう雰囲気をそこなわないようにやらにゃいかぬというように考えております。
  39. 羽生三七

    ○羽生三七君 外相は、いまもお話がありましたが、韓国の首脳とも、昨日も会われたようですし、近く会談をされるようですが、むしろ積極的にいまの国際情勢の大勢を説いて、それで朝鮮半島全体が望ましい、また、日本としても願わしいような情勢に向かうことを説いて、それで、従来のような方針をやっても、私は結果的にはこれは通らないと思うのですよ。ですからそこらを十分説いて、日本の意思を伝えたらどうか。それには、またくどくなりますが、この問題の最後にもう一つ伺っておきたいことは、国連総会できまったらそれに従うというのか、その前にも日本の態度が従来と変わることはあるのか、ここが問題なんですから、これが私の、きょうのずっと質問のポイントなんですから、これについてお答えをいただきたい。
  40. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まず第一に、日韓の間がいろいろ接触の機会ございますので、十分意思の疎通をはかっていきたいと思っております。それから国際機関——WHO以外の国際機関の加盟問題でございますが、いま現実にそれが問題になってもいないし、なりそうにもございませんので、これについて、日本政府はどう考えておるというようなことを……。
  41. 羽生三七

    ○羽生三七君 秋の総会です。
  42. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 申し上げるのは時期じゃないと思いますが、秋の総会対策は、まだ時日もございますから、しばらく、まあわれわれ十分検討さしていただきたいと思います。
  43. 羽生三七

    ○羽生三七君 そのしばらく時間をかせというのがおかしいんだよ。すぐ決断できる問題だと思うのですね。日本の基本的な意思の問題だと思う。ですから、その意思を私はきょう問うておるわけで、この種の問題がいつまでたってもきまらないということは、韓国の出方を見て、それにどういうふうに調子を合わせるか、などということが中心ではないかと。だから、やはり世界の大勢を見て、少なくとも国連の決定を、ちょうど中国問題そうでしたね。中国問題の場合でも反対の、阻止の役割りを果たしたが、結果的に国連できまって、それに従ったと、いつも日本が、むしろ日本は朝鮮問題にしろ、アジア全体の問題で主導的に平和への役割りを果たさなければならない立場にあるわけで、その日本が、いつも、むしろどちらかといえば阻害の役割りをやってきた。結果的には国連の方針に従ってはおるけれども、それはまことに残念である。だから秋の総会には時間があるし、ILOの今度の総会に、この問題が出るか出ないかもわからぬけれども日本の主体的意思は、その場合に従来と変わることもあり得るのかということです。これを聞いておるわけです。
  44. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 重ねて恐縮でございますが、目下鋭意検討中でございますので、しばらく時間をかしていただきたいと思います。
  45. 羽生三七

    ○羽生三七君 たいへん残念ですね。これ率直に申し上げてまことに無難な外交で、これはあまり、ほんとの意味において、私外務当局の答えにはならぬと思いますが、それはとにかく、次の問題に移ります。  ニクソン大統領はさきの外交教書で、日米安保条約の問題に触れまして、これは御承知のように、日米安保条約は両国の国際経済面での争いを除去する努力を日米両国に約束させており、両国の協力を強調しているのは偶然ではない。政治的決意を持った意識的努力がなければ、日米の経済的紛争はその同盟関係の構造を引き裂くこともできるものであると、こうまあ言っておるわけです。これは外務省のここに翻訳もありますが、若干文句は違っておるが、同じことであります。確かに日米安保条約の第二条では、「締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。」と、こううたっております。これもちろん経済上の均衡は望ましいことであるし、安保条約でも日米の経済協力は明らかにしてはおりますが、しかし同時に、私のここで特に主張したいことは、安全保障の本質は、経済上の問題と、ある意味で、独立の概念と意義を持つ性格のものではないかと思うんです。無関係とは申しません、経済と。しかし、ある意味では独立の概念と意義を持つ性格のものであると思う。貿易上の不均衡はそのときの状況によって波を打つものであるし、また、状況に応じてある種の調整を必要とすることはこれは当然であります。これは言うまでもありません。しかし、経済上のある時点における不均衡を口実に、安全保障の問題にからませて同盟関係の構造を引き裂くこともあり得るなどと言うのは、これは全くのどうかつであると思います。しかし同時に、これはアメリカの真意を実はありていに語っているようにも思えるわけであります。日米安保について私の基本的立場は、ここであらためて言うまでもありません。繰り返しません。外相も御承知のことでありますから、これはあえて申し上げません。ただ問題は、そういう思想上の立場は別にして、日本という全体の立場から考えても、いま申し上げたこの点は明らかに私は不当であると思う。安全保障上の概念と経済問題とは、これは関連する部分もありますが、本質上においては私はむしろこれは別個の概念に属すべきものであると思う。それをからまして同盟関係を引き裂くこともあり得るなんということは、これはどうかつか、そうでなかったら観念の混淆であると思います。まず第一に、この基本的な問題からお伺いしたいと思います。
  46. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 一応事務……。
  47. 羽生三七

    ○羽生三七君 しかし、これは政治的な問題でしょう。ことばの解釈の問題ではない。政治的な本質上の問題だと思います。
  48. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 教書……。
  49. 羽生三七

    ○羽生三七君 教書の文言上の問題ではない。精神に盛られた根本的なこれは問題だと思います。
  50. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあすべての条約、協定にいたしましても、根本はやっぱり締約国同士の信頼というものを基礎に置いておると思うんでございます。したがって、目に見えぬ信頼というものが基本のゆるぎないものである限りにおいて、そういう協定や約束というようなものが実効があがってまいるわけのものでございまして、信頼がない場合、たいへんかわいた関係になると思うんでございます。  で、日米安保条約は、御案内のように、安全保障上の取りきめとあわせて経済的な相互協力の約束をいたしておるわけでございまして、第二条に・そのことがうたわれてあるわけでございます。日米安保条約というものは、安全保障の取りきめが大事なのか、経済協力が大事なのか、どちらが重くてどちらが軽いのかと問われるならば、まあどちらも重いものであると申し上げるべきものと私は考えております。したがって、非常に経済関係の緊張が高まり、食い違いのみぞが大きくなってまいるということが同盟関係にとって望ましいものでないばかりか、同盟関係を危うくするものになりはしないかという指摘は、そういう意味で理解できると考えるわけでございます。しかし、教書にそれが書こうが書くまいが、そういう論理は一応理解できると思うのでございますが、問題は、この教書にこういうことを書かれたことが適切であるかどうか、これはいろいろ見方があるのじゃないかと私は思っております。
  51. 羽生三七

    ○羽生三七君 不適切とも考えられると理解していいですか。
  52. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあ、教書全体の検討をいま進めておりますので、この部分だけを云々するのはまだ早いかもしれませんけれども、この全体を評価する場合におきまして、これを通じてアメリカがこの時期にこういうラインで同盟国に呼びかけたということはなぜなのか、そういう点については、なおいろいろ検討しなければならないものがあるのではないかと考えております。
  53. 羽生三七

    ○羽生三七君 私も、この問題は全部一とおり読んで、さんざ考えた末のいまの質問なんです、これは。その部分だけ取り上げて言っているわけではないんですね。たとえば、その中の、ことばじりをとらまえるわけではないですが、この文句の中に、「一人前のパートナーとして扱うに至つた」なんと、まことに無礼千万なことばも出てきておるわけですね。これは全体として父権的な家父長的な態度はとらないと言いながら、全くもう父権的な家父長的態度です、この全体を貫くものは。そう理解できます。  それはとにかく、この問題に関連して外相は、これはずっと前の衆議院でのお答えだったと思いますが、これはアメリカの認識不足と言っておられますが、それは主として最近の貿易上の不均衡の是正がある程度進んできたということをさして言っておられると思うんです。つまり、あの教書を出した時点における国際収支の不均衡とその後の状況を見て、若干均衡に近づきつつあるという、それをさしておられると思いますが、私は貿易上の不均衡是正については、確かに円のフロートや、あるいはその後の輸出入関係からいって、相当改善されておるということは認めますけれども、問題は、先ほど申し上げましたように、経済上の問題で安全保障の基本政策を引き裂くこともできるというようなアメリカの認識そのものにあると思います。これは非常に私は重要だと思う。こんなものは、経済なんか波を打つようなもので、しょっちゅう変わります。これはあとからもお尋ねしますが、これは日米経済合同委員会でまたどういうことが要求されるかわからぬし、それからまあいまの黒字基調がどうなるかわからない。しかし、そんなことは経済の、ときによってあることなのにもかかわらず——これ、同盟関係と言えば安保条約のことですよ。私は、安保にはもちろん反対でありますが、日本政府の立場からいっても、そのようなどうかつを食って、アメリカの立場が理解できるなんという先ほどお答えがありましたが、これは私は全く了解に苦しむわけであります。  そこで、この教書が、日米関係について従来のように政治的な問題と経済問題とを分離して協議することを拒否している、ある意味においては。また、官僚的なマネージメント以上の高度の政治的判断を要求している、こう理解できます、この教書全体を貫いているものは。この場合、貿易上の不均衡を理由に日米安保にからませて過度の要求が持ち出されるような場合、これはあり得ると思います、このままでどんどん——黒字基調が変わってくれば別ですが。また、きょうの新聞見ると、輸出がだいぶふえておるようですが、そういうような場合に、この貿易上の問題にからませて安保と経済を包括的に話し合うような、そういうアメリカが基本的な方針をとってきた場合には、日本はどうされますか。つまり、安保問題と経済問題を一括して、ワンパッケージで問題にしてきた場合にはこれをどうなさいますか。私はこれは別個の問題だと思います。
  54. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この教書は、羽生先生も御承知のとおり、この教書の中にも、成熟した社会において意見の相違はあるものであるということでございまするし、また、われわれはこう思うが皆さんどう考えますかという相手考え方がそれに触発されて出てくることを期待している面も私はあるように思うのであります。したがって、大事なことは、全体として教書を十分勉強し、偏見を交えずに、一ぺん日本日本として評価をしてみることがわれわれのいまの仕事ではないかと考えております。  いま、あなたがおっしゃるように、これを跳躍台にして、どういう要求が出されるかもしれぬが、その場合には日本はどうするかというところまでいま私は考えては、そういう要求もございませんし、またそこまで考えが及んでいないわけでございますが、当面はこの教書自体を克明にひとつ勉強してみたいと考えております。
  55. 羽生三七

    ○羽生三七君 たいへん失礼な言い分ですが、この教書が出てからずいぶん長いことで、これ勉強してみてなんというのは私はどうかと思う。基本的な問題だと思いますね。  そこで、いまのことですが、経済上の不均衡があればそれは純然たる経済上の問題として処理すべきであって、これと安保問題ですね、これはあとからお尋ねしますが、安保の運営上の問題とか基地問題と関連させて処理するようなことは絶対にないと、こう理解してよろしゅうございますか。
  56. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 安保条約の成り立ち自体から申しましても、また、その運営から申しましても、日本の立場というものはちゃんとあるわけでございまして、われわれは、日本の立場というものに対しましてアメリカ理解を持っていないとは思っておりません。また、アメリカが経済の領域における意見の不一致というようなものを安全保障問題に転化してくる徴候があるかというと、私どもは、ただいままでのところ、そういうことはあるように思わないのでありまして、日本政府の立場は別に私は変わってはいませんし、アメリカがそれを理解していないとは思いません。
  57. 羽生三七

    ○羽生三七君 いま私が申し上げた問題につきましては、たとえば先日のアメリカとフランスとの会談で、新聞報道で見る限りでは、ポンピドー・フランス大統領がやはり同じことを言っておるわけですね。それは別個の問題であると、それは個々に話し合うべき問題で、一括して処理すべき問題ではないということを言っておるように新聞では伝えております。したがって、現在のところ、いまそういう要求アメリカが出していなくとも、将来、経済上の不均衡に関連をさせて、安保運営上の問題や基地問題等について特別の要求を経済にからませて持ち出したような場合には、それは別個の問題であって、貿易上の問題が不均衡であるがゆえに、特に安保運営上において譲歩しなければならぬというようなことはないと、そう理解してよろしゅうございますか。
  58. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申しましたように、それにからめて新たな防衛上の要求をぶつけてくるとも思いませんし、そういう徴候も全然ないわけでございまするし、私は、将来もそういうことは先方もしないと確信しております。
  59. 羽生三七

    ○羽生三七君 確信しておるだけでなしに、そういうことがあっても日本はそれは別個の問題と理解しておるかということをもう一度承りたい。
  60. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それは十分羽生先生も御承知のとおりに、日本には日本の立場がちゃんとあるわけでございまして、これを踏みはずすようなことは私はしてはならないと考えております。
  61. 羽生三七

    ○羽生三七君 さきにも申し上げましたように、アメリカが貿易上の理由で安保条約を引き裂くこともあり得る云々と言っておるのは、ある意味においてある種のおどしともとられますけれども、今日の日本の多数の国民感情を全く理解しておらないと思うんですね。私は絶対多数ということばは使いません。多数の国民の感情を理解しておらない。それで国民の多数は、アメリカがそれで安保の存在を引き裂くというならば、それならそれでけっこうといって歓迎する国民も相当数私はおるんじゃないかと思う。ですから、それはこの外交教書に盛られた単なることばのあやと言えばそれまでかしれませんが、いやしくも大統領が発する重要な外交教書の中にこの種の文言を使って、一人前のパートナーとして扱ってやるような、こういう文句まで入れておるということは、私は日本の国民感情というものを相当向こうが誤算をしておるのではないか。これは私のイデオロギー上の問題や主観の問題ではありません。これは客観的な事実として日本の国民感情というものを十分理解しておらないと思われますが、その点はどうお考えでしょうか。
  62. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これがいわゆるどこまで他国の国民感情を理解するか、たいへんこれはむずかしい問題で、コミュニケーション・ギャップというものはなかなか越えがたいものがあるようにしみじみ感ずるのであります。国内においてさえあるわけでございますから、国と国との間におきまして私はそれは避けられない面があるんじゃないかと思うのでありますが、問題は、そういうギャップというものを鋭意埋めてかかるのがわれわれの任務でございますので、この教書全体につきましてもそういう角度から十分検討を加えて、日米関係というものを適正な間柄に持っていかなければならぬと考えております。
  63. 羽生三七

    ○羽生三七君 それから、この教書ではまた次のように言っております。「日本は依然として安全保障を米国に依存することによって、その経済拡大に資源を自由に使うという特別の利益を享受している。日本を保護し続けているこの政治的関係は、経済面でのより大きな互恵主義を要求することになろう。」こう言って、経済面での譲歩を要求しているわけです。さきにも述べましたように、貿易問題に籍口して安全保障の本質に触れるのはこれは筋違いであるとは思いますが、それとともに、ここで私の言いたいことは、日米安保でアメリカは極東におけるアメリカの戦略基地としての日本の国土の利用で大きな犠牲を日本にしいているともいえると思います。したがって、アメリカが保護を強調して日本の譲歩を要求するのは、つまりアメリカが一方的に日本に利益だけを与えておるという、そういう発想に立ってのこの教書は私は理解しにくい。しかも、今日の国際情勢は、日本に対する現実に差し迫った脅威がいま存在するとは思いません。むしろ極東における平和と安全の名においてアメリカ日本の基地を利用することによって受ける利益、それが、むしろアメリカの利益のほうが大きいのではないかと思う。したがって、先ほど来のことを繰り返しますが、貿易や経済問題はそれ自身で解決すべき問題であって、そのカテゴリーの中で解決すべき問題であって、これに関連して、いま申し上げたように、日本にたいへんな恩恵を与えてやっておるんだから、貿易上でより大きな要求をするのは当然だと言っておることは、私はやはり筋違いだと思う。この辺はいかがでしょうか。アメリカ自身も大きなやはり利益を受けておると思う。
  64. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのように、安保条約も相互の立場、相互の利益を踏まえた上で相互が結んだ約束でございまして、一方のみが利益を享受し、一方のみが犠牲を払っておるというようには、私は理解いたしておりません。この条約の見方にはいろいろあるのでございましょうけれども、私といたしましては、その限りにおきまして、羽生委員の言われたことは十分理解できます。
  65. 羽生三七

    ○羽生三七君 そこで、この教書ですね、「日本を保護し続けているこの政治的関係は、経済面でのより大きな互恵主義を要求することになろう。」という場合、来月予定されている日米合同委員会というような場合、この場合で通商上の問題も問題になるでしょうし、それからおそらく外相とロジャーズ国務長官との個別会談も予定されるだろうと思います。そういうような場合に、何か特別の新しい経済上の要求が出されて——アメリカでいまこの拡大通商法も審議されているわけですね、そういうことがあるのかどうか、その後の日米間の国際収支の関係は相当改善されてきたので、もはや問題はないのか、まだ何かここでこの教書に関連をして譲歩しなければならないような問題があるのかどうか、この辺をお伺いいたします。
  66. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 今度の、来月予定されておりまする合同委員会は、従来十数回持たれましたものと別段性格上の変化はございません。すなわち、この合同委員会というのはそこで何かを決定しようというものではないわけでございまして、複数の閣僚が両国から出てまいりまして、出合って、同じテーブルについて二国間の問題あるいは両国が共通の関心を持っている問題につきまして隔意のない意思の疎通をはかろうという趣旨以上のものでないわけでございます。今度もそういうラインで、しばらく双方の都合で延び延びになっておりましたので、今度やらしていただきたいと考えておるものであります。ただ、従来非常に緊張度を高めておるといわれておりました日米間の経済関係は、その後の経過から、緊張が漸次緩和の方向をとっておりますので、ここで経済関係について抜き差しならぬ議論が、ホットな議論が展開されるように私は予想いたしておりません。むしろ、この秋予定されておりまする新国際ラウンドにどのようにアメリカは取り組んでまいるか、日本は取り組んでまいるか、そういう問題につきましてむしろ前向きの議論をしたいものだだと考えておるわけでございます。ただ、御指摘のように、せっかくの機会でございますから、アジアをめぐる国際情勢、とりわけ、ポスト・ベトナムに際してのアメリカ考え方というようなもの、またこれに対応しての日本考え方というようなものは隔意なく話し合ってみたいと思っております。
  67. 羽生三七

    ○羽生三七君 これに関連して、予定どおりならば来月末に予定をされておる田中首相の訪米ですね、外務大臣も同行されると思いますが、そういうような場合に、一体何を中心に話し合いをされようとするのか。先ほど私申し上げましたアメリカ外交教書等に関連をして安保やあるいは——これは安保という場合は運営上の問題、基地問題等もあると思いますが、そういうことに関連して、経済上の問題なり安保上の問題について何か新しい重荷を背負わされることは絶対にないのか、全く単なる相互の理解のためということなのか、新しい重荷ということばは語弊があるかどうかわかりませんが、そういう心配は絶無かどうか。何かあの外交教書、あれはまあ年中行事に出した単なる恒例の印刷物だというように片づければそれまでですが、もっと違った意味で理解するならば、あれとの関連で何か問題はないのか、この辺はどうお考えですか。
  68. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日米間はあらゆるレベルで間断ない対話を続けて意思の疎通をはかろうじゃないかということに相なっておりまして、一年ぶりで日米首脳が会われるということもきわめて自然な道行きだと考えております。とりわけ、最近欧米首脳の間に一連のサミットトークスが持たれたようでございまして、そういった状況を背景といたしまして、両首脳の間で当面の政治、経済の問題につきまして懇談を遂げていただく必要が私はありはしないかと考えておりまして、いまあなたが御心配の、これを契機として新しい荷物が背負わされるとかというような性質のものであるとは私は考えておりません。
  69. 羽生三七

    ○羽生三七君 そこで、日本世界の情勢のこの大きな変化の中で依然として、率直に申し上げて安保至上主義といいますか、安保オンリーの立場を取り続けておる。で、アメリカの言う、そういう中でアメリカの言う新しい大西洋憲章、あるいはソ連の提唱しておるアジア集団安保の問題、それから近くはASPACの自然消滅、ASEAN諸国の動向等いろいろな動きが——特にまた先ほども外相のお話がありましたが、ポスト・ベトナムとの関連もあって、アジアにはいろいろな考えなければならない多くの国際的要因が存在しておると思うんですね。そういう場合に、日本は何らかの抱負を持っておるのかどうなのか、ただ漫然と従来の方針を踏襲していくというだけなのか。こういう新しい国際情勢の中で日本が何らかの抱負を持って国際問題を処理していかれようとしておるのか、その辺、抱負があったらお聞きしたいと思います。
  70. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日本といたしまして、いまのアジア情勢をどう見ておるか、また、アジアの将来というものはどうあるべきであるかというようなことにつきましては、当然考えておかなければならぬわれわれの任務であろうと思います。その場合に、日本が何ができるか、何ができないかということも、十分踏まえてかからなければならぬ問題でございまして、それだけの少なくとも用意を持って、これは対米ばかりでなく、それぞれの国との接触にあたりまして先方の理解を十分取りつけていく努力をしなければならぬと考えております。
  71. 羽生三七

    ○羽生三七君 最後に一、二お伺いしたいことは、いまも申し上げましたように、これは実質上ASPACは自然消滅みたいなことになりましたですが、これは自然消滅と日本政府ももちろん考えておると思いますが、それでいいのかどうか。それで日本はこれにかかわる新しい機構を考えているのか、あるいはこの種の組織はもう必要はないと考えているのか、その辺はどうでしょうか。
  72. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ASPACにつきましては、たびたび本委員会でも御質疑がありまして、私からいまの段階で総会を持つということは必ずしも適切でない、これをどうするかという問題は、日本だけできめられる問題でないので、自発的な組織でございますので、メンバー各国のコンセンサスが出てくることを期待しておるんだという趣旨で御答弁申し上げてあったんでございますが、この間、そういうラインで一応総会無期延期の措置がとられたようでございまして、これが、こういう姿で将来どういう結末になってまいりますか、さだかな展望は持っておりませんけれども、少なくとも当面総会を持つというような環境ではなかろうと考えております。  それからアジアの地域協力として新しい構想を持っておるかというお話でございますが、アジアの地域協力機構といたしましては、国連傘下のいろいろの機構がございまするし、また、東南アジアでASEANというような仕組みもできておることは御案内のとおりであります。国連系統の国際機関につきましても、漸次充実が見られておることでございますが、国連以外で、それでは別個の第三の仕組みを構想しておるかと言うと、まだその域に至っていないわけでございます。その可能性というものを検討は怠ってはならないと思いますけれども、いまの段階で御提示申し上げるようなものを私は持っておりません。
  73. 羽生三七

    ○羽生三七君 私は、ASPACの再版というような、従来のようないわゆる反共同盟的なものをまた再びつくるべきではないし、またつくられるような客観的な条件も存在しておらぬと思うんですね。新しい機構がもし必要であるならば、むしろ平和共存を基礎とした、力の均衡政策というものを否定した新しい七〇年代にふさわしい価値あるものが創造されなければならぬ、そういう意味なら、私はアジアに新機構ができることは必ずしも否定しませんが、従来のようなものの再版を新たにまた志向するというようなことは私は反対ですが、その辺のお考えを承りたいと思います。
  74. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 羽生委員と私もほぼ共通の理解を持っております。
  75. 羽生三七

    ○羽生三七君 最後にもう一つ、二つですが、時間がありませんから簡単に伺いますが、核防条約に関連をしてわが国と国際原子力機関との間で保障措置の協定の予備交渉が開かれるというように聞いておるんですが、この本筋の条約の批准というものは一体どうなるのか。これは調印ができてからちょうど三年になりますですね。ですが、この条約の批准問題は日本外務省としてはいまどういうふうに考えてどういうことになっておるのか、お伺いをしたいと思います。
  76. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは御案内のようにNPTを署名いたしましたときの政府声明で三つの注文がついておるわけでございます。まあ一つは、御承知の核保有国の軍縮の状況。第二は、日本のような非核国の安全保障の問題。第三は、核の平和利用について実質的に平等な地位を確保するというような意味の、三つの条件がついておりまして、第三の平和利用について、他の国々との間で実質的な平等が保障される必要があるということについて、われわれといたしましては、ユーラトムと国際原子力機関のこの問題についての交渉を注目いたしておったわけでございますが、御案内のように、合意ができたようでございます。これより前に、国際原子力機関のほうでは、日本要求なんかもずいぶん組み入れた一つのモデルをつくりまして、そのラインに沿ったユーラトムと原子力機関との間の保障協定というようなものもでき上がったようでございます。したがって、いま御指摘のように、日本として原子力機関とそういう状況を踏まえて交渉、予備交渉をやってみようという決意をいたしまして、近く開始さしていただきたいと思っております。しかしそれは、政府声明のうちの三つの最後の部分だけの問題でございまして、一、二の問題につきまして、いま自由民主党のほうで特別委員会が持たれて御検討をいただいておる段階でございます。したがって、原子力機関とのほうの保障協定のほうがどうなりますか、それの結末も合わせて吟味を願って、それで国会のほうにどういう出方をいたしますか、十分政府与党内で検討をしていただかなけりゃならぬと思っております。もっとも原子力機関との予備交渉、つまり予備交渉というのは昨年からすでにもう瀬踏みはやっておるわけでございますから、今度やるのはいわば正確に言うと再開の姿になると思いますが、それでひとつ詰めてみたいと思っております。
  77. 羽生三七

    ○羽生三七君 そういうまあある意味において技術的な問題も重要ではありますが、これはまあ余談ですけれども、私、昨年訪ソした際に、ポドゴルヌイ最高会議幹部会議長とかなり長時間会談をいたしまして、その際に、核を持つ国が核を持たない国の安全保障についてはどう考えるのか。この問題については、みずから先に核を使用することはないということを一九六〇——あれは何年でしたか、ジュネーブでコスイギン首相が発言しておるわけですね。ですから、その発言はなお今日も生きておるかと聞きましたら、もちろん生きているという答えがありました。その後、私、ソ連の外務当局の首脳部にも尋ねましたが、同じ答えでありましたが、そういう問題も、単に技術的な問題だけじゃなしに、そういう問題も十分検討した上で、やはり、もし正当と思うならば、やはり批准すべきものは批准するということではないかと思うんですが、これはまあ私の感想だけを申し上げて、最後に、これで終わりますが、北ベトナムとの国交樹立問題は、もう障害はないと思うんですが、これは近くそういう手続きがとられるものと理解をしてよろしゅうございますか。いかがでしょうか。
  78. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのように、格別障害あるようにも思えないのであります。したがって、遠からず両方合意する場所で交渉をやってみたいと考えております。いつごろどこでというところまでまだきめていないわけでございますけれども、羽生先生おっしゃるとおり、重大な障害は私はないと思っております。
  79. 羽生三七

    ○羽生三七君 終わります。
  80. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 最近のたいへん激しい世界情勢、とりわけ、アジア情勢の変化に伴って、当然のことながら、日本が果たさなければならない役割り、責任というものは非常に重くなったというふうに理解されるわけです。ところが、先ほどもいろいろ議論を聞いておりまして、政府外交姿勢、とりわけ、アジアに対する考え方というもの、非常に消極的じゃないかという印象を強く受けるわけです。待ちの外交というのか、あるいはいろいろな情勢の変化を静観しながら、当たりさわりのないように、傷がつかないようにというような、後ろ向きの考え方と取り組み方というもの、非常に疑問に思うわけです。大平さん自身も、かねてから言われておりますように、また、政府自体としても自主外交というものを積極的に今後展開をしていくのだというような考え方をしばしば述べられております。はたしていままでの一貫したやり方、特に中国との国交正常化が開かれて新たな転換を迫られておりますときに、許されるだろうか。はたしてそういう姿勢がそのまま貫かれているだろうかという疑問を抱くわけです。先ほども問題になりましたWHOの北朝鮮の加盟承認の問題にいたしましても、このままで推移していきますと、また逆重要事項指定方式のような思わぬ失敗を日本がかぶらないとも限らない、こういうことも考えられましょう。それからまた、ASPACの問題にいたしましても、これからまた検討中である。一体どういう展望に立って今後わが国外交の展開というものを考えているのか。この際思い切った外交政策の転換を政府自体としてはおやりになるべきではないだろうか。いままでのような後ろ向きというか、まあ非常に抽象的な言い方かもしれません。むしろ——外交というものは相手があると先ほどもおっしゃった、当然のことです。それだけに、相手があるだけに、もっともっと積極的に対話の場所を設けながら、新しい一つ環境というものを整備していく、そこに日本としての大きな役割りがあるのではないだろうかというふうに、いまもこうやりとりを聞いておりまして、しみじみ感ずるわけです。どうでしょうか。これからもおそらくアジア情勢というものは予測もつかないような変化もされていくでしょう。その時間的な速度というものはきわめて早いのじゃないか、われわれの想像もつかないようなスピードでもって展開される。そういうときに、一体どういう情勢の分析をし、それにどう一体対応していくか、それは当然それはおやりになっていらっしゃることであろうとは思いますけれども、はたしていままでの、従来のような考え方を踏襲しながら貫いていいんだろうか、私は素朴にそういう疑問を抱くわけです。したがいまして、基本的な問題の一つといたしまして、抜本的に政府自体の外交方針というものを転換する必要にきているのじゃないかと、そういうもう時期にきているのじゃないかというふうに考えられますけれども、いかがなものでございましょうか。
  81. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあ渋谷さんのお話を伺っておりますと、政府のやり方というのはどうもすっきりしない、隔靴掻痒の感がおありのようでございまして、私もあなたの言われることをよく理解できるわけでございます。ただ、政府の立場というのは、すべての国と友好関係をそこなわないでやりながら、新しい情勢に間違いなく対処してまいらなければならぬことでございまして、政府の方針は確固不動で、へんぽんとひるがえる旗のようにもうはっきりしておるのだということが、はたして外交的な実効をあげていく場合に適切かどうかということを判断した場合に、それは必ずしも適切でないという場合もあるわけでございまして、そこが現実外交権をおあずかりをさしていただいておる政府の立場の持つ制約であろうと思うんでございます。問題は、外交的な成功、実効をあげてまいることが大事なことでございまして、それに対してどういう時期にどういう手段を選択、配列してやってまいるかというところにむしろわれわれは非常に苦心をいたしておるわけでございます。また時期的に、いまの段階で政府の方針を宣明申し上げるのがいいか、適切でないかという判断も、また非常に重大なんでございまして、国会のお立場からいうと、すでにもう政府としてほぼ考えがまとまっておるんだったら、ここではっきりと言ったほうがいいじゃないかと言われる場合に、いろいろなことを考えまして、まあこの時期は御遠慮さしていただいたほうがいいんじゃないかという場合もありますことを、あわせて御了解をいただきたいと思うんでございます。要は、大きな方向を誤らず、国益をそこなわないように手がたくやってまいれと、逆にわれわれが相当はでな外交を展開しておると、皆さま方からそういう軽率なことは困るじゃないかというおしかりを受ける場合も私はおそれるわけでございますので、政府の立場というのはそういう立場にあるんだということをひとつ御了解をいただきたいと思います。
  82. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 たいへんうまいお答えだと思うんですね。手がたくと言えば非常に聞こえがいいし、また一方において、じゃ政府自体がはでな外交を展開した過去の経過があったであろうか——少なくとも私の記憶には鮮明に浮かび上がってこないわけであります。しかし、政府といえども、基本的には世界平和を目ざすという、そういう立場から、あらゆる国々と平和的な折衝を展開していく、これはあるはずであります。ということは、やはり等距離外交というものに一つの基本を置かれて、そして今後のいろんな国交を通じた日本の国益に合致する、そういう行き方をこれからも強力に進めていこうということであるとするならば、たとえばこの北朝鮮の場合についても、かつての中華人民共和国についてもはたしてそういう姿勢というものがとられたであろうか。中国の場合はいままで敵視政策をとっていたじゃないかということで、たいへんな評価を政府は受けてきました。ところが、米中は接近した。それにならうかのように日中国交正常化の道が開かれた。おそらく、そういう行き方でいきますと、北朝鮮の場合も同じではないか。まあベトナムはいま進んでいるようでありますけれども、その他のいわゆる社会主義国家と目されるような国々に対しては、特にアジアを中心とした区域については、そういうような行き方というものがなされはしまいか。そうすると非常に日本としてはへんぱな行き方になるおそれはあるだろう。もちろん全部が全部そうだとは思いません。全部が全部そうだとは思いませんけれども、そういったところにぎすぎすした日本外交姿勢というものがあるんではないかということ、むしろもっと積極的にやらねばならない問題が、日本の責任という範囲内において必ずあるはずである。先ほど指摘されておりますようなASPACの自然消滅に取りかわるべき問題にいたしましても、これからのアジア地域の繁栄を期するためには、一体どういう形のものが望ましいだろうか、もちろん国連という存在もございましょう。けれども、アジアはアジアとしての解決を迫られる問題というものはたくさんあるはずなんでございますね。国連にあるその機能というものにたよれない、アジア自体でその解決をしなければならないという問題がひそんでいるはずであります。そういうことを前提に考えた場合に、もっとそれを切り開くための道として日本がイニシアチブをとることも決してはでな外交でもなければ何でもない。むしろあたりまえのことをどうしてあたりまえにやれないだろうかという気持ちすら起こるわけなんです。その点を申し上げておるわけでありまして、その意味から、もっともっと積極的な姿勢を基本的に示すべきではないか、こう考えるわけです。いかがでしょう。
  83. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申し上げましたように、渋谷先生のおっしゃる、言おうとされる気持ち、外交のあるべき姿ということは、私よく理解できるのです。ただそれをどういう手順で、どういうタイミングで運んでまいるかという手段と時期の選択というのが、われわれにゆだねられている問題でないかと思うのでございまして、それにつきまして、あるいはごらんになっておって隔靴掻痒の感がされるかもしれませんけれども、向いている方向に間違いがなく、あげる成果に間違いがないものであれば御理解をいただきたいと思いますし、そういうものでない限りにおいては、びしびし御批判をいただかなければならぬと私は思うのであります。われわれの立場、役割りというものには、政府政府なりの立場を持っておるということに対しては私から御理解をお願いしたところであります。
  84. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 次に、まあ時間の制約もございますので次に移りますが、しばしば当委員会においても議論の対象にされてまいりました発展途上国における援助計画の今後のあり方について伺っておきたいと思うのであります。  いままでもしばしば指摘がなされてまいりましたように、相手から要請があって初めて日本が腰を上げると、言うならば受け身のそういう援助に終始してきた感が強いのではないか、とにかく相手から何事もなければこちらとしては相手の事情もわからないし、まあ簡単に言えばそういうようなことになって、ともするとGNP一%までは援助額を引き上げるんだと言いつつも、一向にその実効があがっていないという現状ではないかと思うんでありますけれども現実に最近の例を見ましても、大平さん御承知のとおり、もうGNPに対する援助比率がきわめて低下しておりますね。最近だけでもずっと低下しております。こういった一体実態をどう受けとめて、そしてこの発展途上国に対する経済協力を中心とした援助というものを推進しようとおやりになるのか。いろいろいま問題点が出てきていると思うんです。それをどういうふうに整理されて、これからの一つ日本としての基本的な援助政策というものを推進されていかれるのか。やはりその一年前の考え方と、それから現在一年たった今日においては、そのあり方というものがやはり変化してきていると思うんです。その変化に対応して、それに見合った援助というものがなされなければ、せっかく発展途上国において期待し得る援助というものは日本から望めないという批判が出ないでもない。こういう点をこれからどう整理をされながら進められていかれるのか、それを伺っておきたいと思います。
  85. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあ日本の経済協力政策、受け身に終始していやしないかという点でございますが、これはひとつ御了解を得ておきたいのは、援助の受け入れ国側の立場に立って、その経済の自立、民生福祉というものに何か寄与するところがなけりゃならぬわけでございますから、主体はあくまでも受け入れ国側の立場というものを主にせにゃならぬという意味で、日本が受け身に回るのは私は正しい態度だと思うんでございます。ただ、あなたの言われた趣旨は、経済援助、経済協力計画全体について、主体的に、自主的に、日本でそういう要求があった場合には、受け入れ体制をちゃんとかまえておけという御趣旨でございますれば、私はそのとおりだと思うんでございます。で、その点から申しますと、確かにこれまでの日本の経済協力というものは、量的には相当伸びてまいったことは事実でございますけれども、これはその条件において必ずしも先方の要求とかけ離れておることが多くて、あるいは日本の輸出の先行投資じゃないかとかいうことが云々された。つまり、条件がきびし過ぎるということであったのではないかという批判について、いやそうじゃなかったと私は言い切れないと思うんでございます。それからとりわけ、政府援助はあまりにも乏しいじゃないかと、これは数字的にも歴然としておるわけでございまして、先進諸国に比べましていかにも見劣りはしておるわけでございまして、その点はそうでないと強弁することは私はできぬと思っております。したがって、日本はしかし、経済力を漸次身につけてまいり、援助能力も漸次増強してまいったわけでございますので、まず条件の緩和ということにつきまして先進国と比較いたしまして、各国が理解できるところまでは早いところもっていかなけりゃならぬと考えておりますし、それからとりわけ、政府援助は量的にまずこれはふやしていかなけりゃならぬということもよく自覚いたしておるわけでございまして、その方向で努力をいたしておるわけでございます。それからさらに、援助をひもつきにしがちでございましたことは御指摘のとおりでございますが、今後は、むしろいま全部の援助についてもうひもつきをやめてしまおうじゃないかということにつきましては、むしろ日本が主役になりまして、いま唱道いたしておる状況でございまして、まだ国際的には一般的なアンタイイングという制度ができていないわけでございますが、われわれはあらゆる機会を通じて、もう一般的にひもつき廃止しようじゃないかということを、むしろ日本のほうから積極的に発言をいたしますのみならず、現実のプロジェクトにおきましても、アンタイイングにするということをどしどし進めていっているわけでございます。したがって、日本が経済の自立をみずから達成する段階におきましては、いろいろなことが言われたわけでございまして、ある程度までやむを得なかったことと思うのでございますけれども、漸次これからはそういった点を是正しながら、相当世界的な理解と期待にこたえられるだけの経済協力、私は持っていくように努力しておりますし、また、それを持っていくだけの力が日本にできたと思うのでございまして、そういう方向に鋭意進めて御期待に沿わなきゃならぬと思っております。
  86. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 外務省でもすでに試算済みだと思うんですけれども、特に昨年度の例を引き合いに出しますと、確かに、前年度に比しますと伸びてはいるのですね。けれどもGNPのほうがはるかに伸び過ぎているために追いつかないと、援助比率が。ところが政府としては基本的には一つの目標があるわけですね。その目標に到達するにはなかなかこれからたいへんなことではないだろうかと。先ほども申し上げたように、もう援助比率そのものがすでにダウンすることは確定的とも見られている。これはいつまでいっても目標に達成しないというようなことになりはしまいかと。いままで政府が立てられた目標に向かって援助比率というものをはたしてアップできるのかどうなのか、その辺の見通しはどうですか。
  87. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 先生指摘のように、一九七二年の実績は目下まだ集計中で、公表の段階に至っておりませんけれども、いま私どもの手元に参っております暫定的な数字を引きますと、いわゆるその政府の直接やっております政府開発援助の数字で一九七一年には〇・二三%であったものが、おそらく大体〇・二一%くらいに下がるであろうと、これは絶対数で申し上げますと七一年の実績は五億一千万ドルであったのが七二年には大体六億ドルをこしておりますので、約二〇%くらい増しておるわけでございますが、御指摘のように、GNPとの対比でいきますと数字が下がってまいる。したがいまして、先行き、さらにこういう傾向が続きはしないかということがおそれられることは事実でございますが、わが国の予算の制度の関係から、この政府の直接の援助と申しますのは、どういたしましても政府予算の中で組むものがほとんど全部でございますので、その長い先の見通しというのを、予算が単年度制であるということから、必ずしもあまりはっきりしたことを申し上げるわけにはまいらないわけでございますが、外務省なり主管官庁が予算要求いたしますときには、やはり少し先のことを見通して、少なくとも現在のところ、DAC、OECDの開発援助委員会のメンバーになっておる諸国の平均の政府直接援助でありますところの〇・三五%ぐらいのものになるべく早く到達するというところぐらいの目標を立てまして要求をしてまいるというのが目下のところの大体の方針でございまして、それ以上のことはなかなか、いろいろ予算をつくります上の問題とも関連いたしますので、はっきり申し上げられないというのが現状でございます。  全体——先生の御指摘になりました一%と申しますのは、いわゆるその援助の総額でございますが、これにつきましては、一九七一年度におきまして〇・九六%というところまでまいりまして、ほとんど目標に到達するかという状態になったわけでございますが、この点につきましても、これもまだ集計中で、はっきりした数字は出ませんが、若干下がるのではなかろうかというふうに見られております。これはむしろ、輸出の際の延べ払いとか、そういうようなものが入っておりまして、昨年のこの通貨の変動による影響が、比較的一時的な影響がおもであって、これはまた今後の通貨の安定とともに盛り返してくるであろうというふうに推測されております。
  88. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 先ほど御答弁の中で、要請があって、それからこちらが始動すると、動きを開始すると、受け身のそういう立場というものが一番望ましいんだというお話がございました。先ごろ、当時の三宅南東アジア第一課長が北ベトナムに行かれたとき、これは明確かどうかは私はわかりませんけれども北ベトナム側のほうからは、日本として将来どのぐらいの援助をしてもらえるのかというような話をされたというふうにわれわれ聞いておるんですが、逆なんですね、そうなりますと。北ベトナムとしては、日本としてはどのくらいの額まで援助が可能なんだと、むしろこちらが、まあそれも要請といえば要請かもしれません。むしろそういうことになれば、日本としてはもっとそういう問題を通じまして、受け身であろうと、そういういろんな関係性がありますので、あえてここでどっちが正しいとか、どっちがうまくないということは言いません。しかし、そのためには、各地域の国々の実情というものを十二分に掌握しておく必要があるであろう。はたして現在の機構、いわゆる在外公館を通じてのいろんな調査もあるわけですけれども、はたしてそれで十分な実情調査というものはできるのかどうなのか。その実情調査というものと、それから相手国からの要請というものがはたして一致するものなのかどうなのか。その辺が非常にこれからも問題であろうと思うんです。それで、出先のほうから入ってきた分析結果の調査によれば、これはとてもじゃないけれども相手国には出せる額ではない、あるいは出せる援助ではない、こういうふうになるのか。無条件に、あるいはその相手国の要請に応じて、そのまま日本がその要請にこたえるような援助をするのか。その辺の関連と今後の見通しですね、どんなふうに進めていかれるのか。
  89. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 北ベトナムの場合、三宅課長に対しまして、御指摘のような、質問と申しますか、あれがございましたことは私も報告を受けておりますが、日本は、これに対しまして、三宅課長の一行は何ら返事をする立場になかったということも事実でございますが、わが国が、過去におきまして、あるいは今後もでございましょうが、援助をやってまいります上で、そういう援助の総要請額が先にきまって、その中で援助の金額といいますか、プロジェクトの数なんかをきめていくやり方をやってきておりませんで、むしろ逆に、わが国が相手国にとってこういう分野のプロジェクトでいま相手国が計画しておるようなものが適当であると思うような、そういうプロジェクトと申しますか、事業計画と申しますか、そういうものを選んで、それに対してわが国が援助の手を伸ばす、あるいは商品援助なんかの場合もございますが、そういう個々のものを積み上げていって、結果的に総額がきまってくると、そういうようなやり方を従来やっておりますし、今後も大体そういうふうなやり方のほうが適当なのではなかろうかと思っております。  そこで、御指摘のように、在外公館等を通じます実情の調査ということと今後の見通しというのがはなはだぶつかってくるような感じになるわけでございますが、プロジェクトなどの場合、あるいはまた、世銀等が主催いたします協議グループというようなものでは、大体において受け取り国側から説明をよこしてまいりまして、その説明在外公館が取り次ぐなり、あるいはそういうグループでの説明を受けて、それをこちらで検討いたしまして、それに基づいてこういうプロジェクトを取り上げるとか、このくらいの商品援助を与えるとかいうふうに決定していくというのが従来のやり方でございまして、その点については、それほど情報がいままでわが国が援助を与えます場合におきまして不足しているというふうな事実はないかと存じております。
  90. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 この問題については、まだこれからも問題点が出てくるであろうと思いますので、次回にしたいと思いまするので、最後に二つだけ確認しておきたい問題がございますので伺っておきます。  一つは、北ベトナムとの国交樹立交渉を踏まえまして、三つの条件が北ベトナムのほうから出されている。その中の一つが、一番問題になるのではないかと思われることは、賠償問題。しかし、政府としては、すでに三十九年、サイゴン政府を通じてそれが完了しているという理解、認識に立っている。で、でき得ることならば、その賠償問題ということよりも、むしろ、賠償にかわるべき援助——経済援助を通じて、北ベトナム政府には了解を得る方向であるというようなことが伝えられておりますけれども、この問題についてはどういうふうにこれから取り上げられ、そして解決への方途を考えておられるのか。これ一点。  それから第二点は、先ほどもちょっと問題が出ましたが、核防条約の早期批准という問題がございますが、大平さんは少なくともことしの秋ぐらいには批准をしたいという考え方をいままで衆議院外務委員会等においても述べられておったと思うんです。ところで、最近、英国を中心として西ドイツ、オランダが濃縮ウランの共同開発を手を結んでやろうということがきまったと。こうなりますと、これも申すまでもなく、核保有国の英国が関係しているということになりますと、さきにすでに合意を見ております国際査察制度のワク外に置かれる。すると西ドイツやオランダはたいへん、同じような利益を享受することができる、非常にうまい話だと思うんです。そうなってきますと、日本は一体どうなるんだろうと、たいへんこれからきびしい国際査察というものを受けなければならない状況下に置かれてくることは必至ではあるまいか、この辺の見通しと、いま申し上げたようなことに関連する今後のあり方、こうしたことがいま起こっている事態を踏まえて、それでもなおかつ、ことしの秋ごろにあるいは予定をされております早期批准というものに踏み切るのかどうなのか。  この二つをお伺いして私の質問を終わりにしたいと思います。
  91. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 第一が、ベトナムの賠償問題と北越に対する援助問題でございますが、この間三宅君、ハノイ訪問の際に、こちらから先方に申し上げましたのは、国交交渉というものは無条件でいきたいという申し入れをいたしましたことは事実でございます。という意味は、ベトナムに対する賠償問題というようなものがつまずきの石になるというようなことでは困るので、そういう趣旨で、無条件に話し合いたいということでございまして、先方は万々承知したという御返事はちょうだいいたしておりませんが、私どもの印象では、これが重大な支障になるとは考えておりません。  で、北越に対する援助問題でございますが、これは国交樹立前におきましては赤十字等を通じまして緊急援助を実行をいたしておりますことは事実でございますが、本格的な援助はどうしても国交樹立後になると思いますが、その場合の考え方、一体マルチの援助なのかバイの援助なのか、そういうような点について大体の感触は伺ってまいった程度でございまして、具体的にプロジェクトというようなものを踏まえての御要請というようなものはまだ受けておりません。経緯はそうなっております。  第二の点につきましては、国連局長から御説明いたします。
  92. 影井梅夫

    政府委員(影井梅夫君) ただいまの核防条約の批准の問題でございますが、先ほど大臣から御説明がありましたとおりに、保障措置制度につきましての交渉、この実質的な再開、実は明日からウイーンで行なわれる予定にしております。これに関連いたします問題は、ユーラトムと原子力機関との間の協定、四月五日に署名されておりますが、これとの実質的な平等性を確保する。ところで、ユーラトムは小さい一種の国際機関である。これに対しまして、日本は国内査察制度を持っておる。この日本の国内査察制度、これとユーラトムが行ないます査察、これを実質的に平等な基礎に置きたいということからいたしまして、技術的には問題がないわけではない。したがいまして、これがなるべく早く片づけばいいのでございますが、どのぐらい時間がかかるかわからないというのが現状でございます。なるべく早く原子力機関との間に交渉を成立させたいと思っておりますけれども、ただいま申し上げました理由によりまして、技術面で問題がないわけではないというふうに考えております。したがいまして、現段階におきましてこれがいつ成立するかということは、ちょっと予測できないということでございます。  それから、先生指摘の第二点でございますが、核兵器国たるイギリス、これにドイツ、オランダが加わって濃縮工場をつくった場合に、ドイツ、オランダ、これは核兵器国たるイギリスの一種の特権と申しますか、これが均てんして非常に有利な地位を占めるのではないかという御質問の趣旨かと思いますが、これは実はドイツそれからオランダがどういうふうな形態でイギリスと共同研究をしているか、言いかえますと、それぞれの国がどのぐらいの管理権を持っているかということの詳細が実はわかっておりませんので、いまのところ何ともお答えできない。ただ、原則と申しますか、基本的な考え方といたしましては、核防条約のこれは第三条第一項の後段でございますが、「この条の規定によって必要とされる保障置は、当該非核兵器国の領域内若しくはその管轄下で又は場所のいかんを問わずその管理の下で行なわれるすべての平和的な原子力活動に係るすべての原料物質及び特殊核分裂性物質につき、適用される。」という規定がございますので、基本的な考え方といたしましては、ドイツ及びオランダ、それぞれの領域内に設けられますこの濃縮ウラン工場、これに関しましては、このドイツ及びオランダがそれぞれ核防条約に正式に加入いたしました後においては、原子力機関による査察を受けるというのが原則ではあるまいかというふうに考えております。
  93. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 午後二時まで休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      —————・—————    午後二時七分開会
  94. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国際情勢等に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  95. 森元治郎

    ○森元治郎君 三十分の時間ですから、短く質疑を打ち切れるような種で質問したいと思います。  まあ、大臣のこれからの御予定ですね、七月アメリカ、八月……。どんな御予定ですか。七月アメリカ、八月の終わりころにソ連に行きたい、これは総理も一緒、それから秋には、十月ころと言うんだが田中さんのヨーロッパ訪問とか、それから下って年末ころ東南アジアとか、大臣もそれについて行かれるんでしょうが、その御予定を伺います。
  96. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これからの外交日程でございますが、七月の三十一日と八月一日、日米首脳会談、ワシントンで予定されております。これはきまっております。それから八月下旬から九月にかけてソビエト訪問——モスコー訪問を先方に申し入れておりますが、まだ最終的な返答には接しておりません。それから九月下旬から十月の初めにかけて英独仏三国への総理の御訪問を計画いたしておりまして、一部はきまっておりまして、全部はまだセットされておりません。  その他につきましては、まだモーションを起こしていないわけでございますが、東南アジア等につきましては、それを終えたあとでお考えいただきたいと考えております。
  97. 森元治郎

    ○森元治郎君 北京——中国の訪問の何か予定はありますか。
  98. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いまのところ総理の中国訪問の予定はございません。それから私自身もいずれ参りたいと考えておりますけれども、いつ参るというところまでのお話にはなっておりません。
  99. 森元治郎

    ○森元治郎君 すべてこれらの国々とは大きな懸案をそれぞれかかえておられるわけですね。ソ連のほうは平和条約を中心とし、アメリカとは経済あるいは防衛あるいはキッシンジャーが言い出した例の新しい大西洋憲章の構想、ソ連では集団安全保障問題、たくさん重要問題、どれも緒につこうとしている段階。中国とはさしずめ実務協定、日中航空協定をいまやっているところ、そして平和友好条約に進む、これも大きな問題。平和友好条約のほうはどうですか。そうせかないようなんですが、あれだけ日中共同声明ができれば、あれを骨子として条約文につくりかえることはいとやすいことだと思うんですが、作業は全然しておらないようにも見えるし、どうなんですか。日中平和友好条約締結について急ぐ必要もないけれども、できるものならつくってもいいんじゃないか。日中航空協定が片づかなけりゃだめという、それほど厳重なものでもないと思う。どうですか。
  100. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 共同声明によって明らかなとおり、各種の実務協定の締結交渉をやるということ、それから平和友好条約の締結交渉をやろうということは両国で合意を見ております。それで、いまとりあえず実務協定の締結を急いでいるわけでございます。で、そういう取り運び方につきまして、日中双方に意見の違いはございません。つまり、実務協定をまずやろうということにつきまして、意見の違いはございません。それから平和友好条約はそのあとでなけりゃならぬという、仰せのとおりそういう約束もございません。で、おりを見てということになっておるわけです。
  101. 森元治郎

    ○森元治郎君 どうも実務協定をまずやろうというんですが、これ並行してもいいし、むずかしくなければ、早く共同声明を条約の基礎の上に確立するということは、これ大事なことだと思うんですね。あれだけできれば、根本方針については両者完全な了解ができたんだから、あれでいいんだ、来年でも再来年でもいいんだでは、やっぱりだめなんで、これを私はすみやかに、実務協定もさることながら、どんどん進められてはいかがかと思うんです。どうでしょうか。
  102. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういう考え方もあり得るし、また、それに対して私も反対ではないわけでございますが、とりあえずのことといたしましては、せっかく手がけておりまする各種の実務協定を何とか早く仕上げたいというのが当面の任務じゃなかろうかと考えております。
  103. 森元治郎

    ○森元治郎君 そのせっかく手がけている日中航空協定、案外根本原則でつっかかっちゃって一向に進まない。打開に自信がありますか。ここでもこの前伺ったが、もう大臣の決心いかんでいくんだが、なかなか踏ん切れないで、さすがの大平さんのじょうずな答弁も中国には通じないようで、やっぱりこれはイエス、ノーの太い線の答えがないと航空協定できないと思うんですね。台湾は中国の領土であるという立場をとる中国を理解してこれを尊重するという、尊重するのなら結論ははっきりしているのじゃないかと、そこでまあごく簡単なようでつっかかっている。最高責任者の断にかかっている。交渉は現実はこれは決裂の状態だと思う。もし日中間がもっと仲悪かったら、決裂と新聞は書くですよ。おそらく新聞があんまり書かないのは、それから世間も騒がないのは、何かおだやかに早くできてほしいという好意的な希望が朝野にありますから、見守っているので、ほんとうは交渉は断絶状態だと思うのですが、どうでしょうか。
  104. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおり、政府の首脳の決断にかかっておると思います。その際、国の内外を通じまして、一応納得が得られる措置をやってまいる上におきましては、相当デテールにわたって技術的な問題、行政的な問題を固めておく必要があるわけでございますので、そういう点についていま検討を進めておるわけでございまして、私自身そんなに険しい状況にあるというようには判断いたしておりません。
  105. 森元治郎

    ○森元治郎君 大体いつごろきまりそうですか。もうこちらの答えいかんによってはきまりますからね。自分の領土から飛行機が飛んで行くものを、従来どおり日本が取引して、お互いに飛行機飛ばしっこやっておるのは、向こうとしてはがまんできないのだろうと思う。だから向こうの願望に合うことを提示すれば、もうあしたにもきまるもので、いつごろとわれわれは予想しておったらよろしいのですか。
  106. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 具体的な日どりのめどということを申し上げる自信はまだありませんけれども、できるだけ早くやりたいということで、いま鋭意努力中でございます。
  107. 森元治郎

    ○森元治郎君 その航空協定、実務協定あっさりできそうでて、どっこいやってみるとつっかかっているというように、日中関係はそこらで戸惑いをしている。日ソ——ソビエト訪問についても、これまたなかなか容易ならぬ交渉になりそうだ、話し合いが。平和条約、どんぴしゃりつくるということもむずかしいような情勢。  そこで私が話を今度落として、そういう情勢のときに外務大臣がかわっていいかどうかという問題ね、外務大臣。だいぶくたびれておる自民党内閣、なんともやっていけない。大平君にひとつ幹事長でも頼んでやろうというようなことが大体空気が紙面ではずっと出ている。外交何も、なったばかりで一年、一向動かない。すうっとかわってしまったら一体これはどうなるのか。大臣はお呼びがかかっても、この重大外交、手がけた外交をやり通すつもりですか。これは党の御命令とあればといって、すうっといっちまうのですか、どうですか。(笑声)その辺、聞いておかないと、これ。相手だって、あなた、そんないついっちまうかわからないものを本気になって話しませんよ。
  108. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 目下外交に専念いたしておりまするし、ほかのことを考える余裕は目下ありません。
  109. 森元治郎

    ○森元治郎君 それは、きょうは外務大臣の現職でありながらそれはよかろうなんてことを言えるはずはないけれども、これはやっぱりしっかり、これはいまスタートですからね、みんな。日中も日ソも。そしてまた、あまり政府も触れたがらない、みんなも知っているんでしょうが触れたがらない中ソの関係だって、簡単にアジアは平和だって言うわけにいかない、なかなか緊張といいますか、きびしい状況があるようです。そこに位する日本、対中、対ソ外交、非常な重大な時期だと思うんです。もう朝から新聞見たって、韓国の芸能人をソ連政府がビザを発給したというかと思うと、ソ連の軍艦が台湾海峡に来たと、それは台湾政府に通告したらしいとか、変に動きがある。中国は中国でまた、フィリピンや東南アジアのほうの自由陣営の国にもどんどん手を伸ばしてきてる。ソ連もまた、フィリピンのほうにも手を出してきてるというふうな、なかなか、われわれじっとしてますが、目先が非常に静かであるが、なかなか動きは険しいものがあると私は判断する。こういうときに当たって、日米と懇談する際にもさようなやっぱりアジアの情勢、世界の情勢も踏まえつつやらなきゃならぬので、ちょっと増原君にかわって山中君てなわけにいっちゃ困るんでね、これはじっくりと腰据えてやってもらわにゃ困ると思うんです。目下専念してると言うから、引き続き専念して、あまりうろちょろしないで、外交のスタートを——中ソとの入り口はできたんですから、しっかりやってもらいたいということです。  第二点は、安川審議官、今度は駐米大使にきまったわけですね。安川前審議官外務省の。駐米大使に起用することにきまったんですね。
  110. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 目下手続中でございます。
  111. 森元治郎

    ○森元治郎君 それはアグレマンですか。——アグレマン。  私が見てね、安川君も個人的に知ってるが、西山・蓮見事件といいますかね、あの事件で、当時外務審議官であった安川君が謹慎というんですか、あとでだれか向こうの省の当局のとった正式な名前を伺いますが、一応宅控えといったようなところでおったわけですね。ついこの間と思ったが、実質十カ月以上になりますか。駐米大使にぽんと飛んでいく。こいつは少し、謹慎であったか宅控えであったかにしては早過ぎるというか、私らのいわゆる世間の常識からいえば、ああいう、御本人にはお気の毒であっても、やっぱり監督不行き届きというのか、そんなことで退いた場合は、しばらくわきにいて、あれもあのへんぴなところにいちゃかわいそうだと、もうそろそろというのでひのき舞台に返ってくるというならいいが、ちょっとわきのほうの隣の部屋にいたと思ったら、もう君出てこいよというようなことではね、少し早過ぎやせぬかと思うが、どうですか。——しめしがつかぬよ。
  112. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 彼の人柄、能力はすでに定評があることと思いまするし、いまのような局面で出盧をわずらわすのが適当でないかと判断いたしております。
  113. 森元治郎

    ○森元治郎君 必要だという気持ちはわかりますが、必要だからと言って、そこがそのつらいところなんだな。ほんとうなら大臣が引っ張り出したいのだと、だが、ちょっとと、こういうふうになりそうだけに、必要だと思ったらそいつ連れてきてぽんと持っていったんじゃ、一体何のために外務審議官から官房審議官に下がったのかな。何のために下げたのですか、下げないでうっちゃっておいたっていいじゃないですか。下げた者を今度は特命全権大使——AクラスのA、アメリカにぽんと、どうも私らぴんとこないね。——これは何のためにそんなら、あれは懲戒と言うのですか、何と言うのですか、官房の人知っているだろう、正式な。官房いないの……。大臣は御存じないですか、どういう宅控えをさしたのか。辞令は、辞令と言うか。
  114. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私といたしましては、適材を適所にということで、熟慮の末、目下手続を進めております。
  115. 森元治郎

    ○森元治郎君 だれか知らぬが、消息通らしき人は、自民党、大平さん、これはみんな財界の関係の人はよく知っているし、おとうさんの第五郎さんだったかな、せがれをいつまでもああやっておいたんじゃかわいそうじゃないか、大平君、なんて言われると、それもそうだなという気にもなるし、財界が応援団だから、応援団のほうも適当に配慮しなければならない。しかも、本人はなかなかできるということでやっちまえと。これはやっぱり私は間を置くべきだと思うのですよ。吹っ飛ばされた牛場君も、駐米大使の更迭の時期は前に幾らでもあったと思うのですよ。いろいろな過去の、佐藤内閣からずっと見ていて、時間も長いし、それからやる手口も同じになってきているし、もうそろそろかわってもいいなと思っているのにずっときた、ぽかんときた。ああなったんでは、大平さんがせっかくこれからニクソンと会談をしようとか、重要な問題を控えたときに、いまいる大使、どこに顔を出しても、もう帰るそうですね。御苦労さん、みたいな話になっちゃって、さっぱり向こうも落ち着いて耳に入らないんじゃないか。人情ですよね。もうあしたかあさって帰るやつに何もそんなに一生懸命になって教えることもないし。そこの更迭のぐあいももう少しまずかったんじゃないか。日米会談でも終わったあとでいいんじゃないか。わずか一カ月前くらいに大使更迭するというのもどうかな。これは大平さんの領分に入るようだけれども、外から見ていて少し何かあせっている、まずいなという感じがするのですよ、人使いの面からね。人はみんな気持ちよくじょうずに、一生懸命になって大平さんのために、外交のために働こうという気を起こさせなければだめだ。これからは、何だ、少しくらい悪いことしたって、あるいはまずいことしたって、なに、ちょっとわき向いていればいいのだ、ということになっちまうと、何のために譴責したか、慎めと言ったのだか、意味がないことになる。やはり綱紀粛正と言うか、筋を立てるためには、つらいこともがまんしてやっていく。それはそう言われれば、大平さんのような答弁に、私は熟慮してこれが適当と判断して出盧を促したとなるでしょう。それはいわゆる形式的な答弁であって、これは自重してやらなければ活発な外交はできないと思う。いかがですか。それを伺って三十分終わります。
  116. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 人事問題、いまるるお話がありましたように、けじめをちゃんとしなければなりませんし、情理とも兼ね備えたものでなければならぬと思いますし、とりわけ、全体の士気に関連したことと思うのでありまして、森先生の言われますこと、理解できないことでないばかりか、十分私どもといたしましても傾聴に値する御発言であると思います。そういった、御指摘になったような点につきましても、私は私なりの判断をいたしまして、決意をいたしたことでございますので、御了承願えればしあわせだと思います。
  117. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 本日の調査はこの程度にとどめます。     —————————————
  118. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 千九百七十一年十二月二十日に国際連合総会決議第二千八百四十七号(XX VI)によって採択された国際連合憲章の改正の批准について承認を求めるの件、アフリカ開発基金設立する協定の締結について承認を求めるの件、いずれも衆議院送付、以上二件を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。大平外務大臣。
  119. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ただいま議題となりました千九百七十一年十二月二十日に国際連合総会決議第二千八百四十七号(XX VI)によって採択された国際連合憲章の改正の批准について承認を求める件につきまして、提案の理由を御説明いたします。  国際連合の第二十六回総会は、一九七一年十二月二十日に国際連合の経済社会理事会の構成国の数を増加する国際連合憲章の改正を採択いたしました。  国際連合の経済社会理事会は、国際連合の主要な機関一つとして、経済的、社会的分野等における国際協力を促進する重要な任務を有するものでありますが、その構成につきましては、さきに一九六三年に改正が行なわれ、現在は総会によって選挙される二十七の加盟国で構成されております。今回の改正は、その後の加盟国の増加に対応し、また、経済的、社会的分野等における活動が増大した国際社会の現状に対応するために同理事会の構成国の数を二十七から五十四に増加するものであります。この改正により、さらに多くの国際連合加盟国が経済社会理事会に参加することとなり、同理事会の機能が強化され、経済的、社会的分野等における国際協力が一そう促進されることが期待されます。  わが国は、経済的、社会的分野等における国際協力の促進が国際の平和及び安全の維持に果たす役割りの重要性にかんがみ、従来より国際連合及びその専門機関のこれらの分野における活動に積極的に参加してまいりましたが、わが国がこの改正を批准することは、国際連合を通じてこれらの分野における国際協力を推進する上で有益であると考えられます。  よって、ここに、この改正の批准について御承認を求める次第であります。  次に、アフリカ開発基金設立する協定の締結について承認を求めるの件につきまして提案の理由を御説明いたします。  アフリカ諸国は、一九六四年にアフリカ開発銀行を設立しましたが、同銀行は、通常の貸付条件による融資を行なっておりますので、緩和された条件による融資を必要とする国に対する融資活動には制約があります。このため、一九六六年以来、経済協力開発機構の開発援助委員会に参加する先進国アフリカ開発銀行との間で同銀行の活動を補足するための措置について検討が行なわれた結果、新たな国際金融機関設立することが合意され、昨年十一月二十九日に象牙海岸共和国のアビジャンでアフリカ開発基金設立する協定が作成されました。  この基金は、国際的に一そうの協力が必要であるとされております後発開発途上国の多いアフリカ諸国を対象とした機関で、既存のアフリカ開発銀行の活動を援助し、緩和された条件による融資活動を行なうことによりアフリカ諸国の経済的、社会的開発に貢献しようというものであります。協定は、基金の設立、目的、資金、業務、組織及び運営、特権及び免除等について規定しておりまして、わが国は、本件基金に当初出資として千五百万計算単位を出資することを予定しております。  わが国は、開発途上国に対する経済協力の重要性にかんがみ、従来より、各種の国際機関を通じ、また、二国間の経済協力を通じて開発途上国の経済的、社会的開発に貢献すべく努力してまいりましたところ、わが国がこの協定を締結することは、わが国のこの基本政策にも合致するものであり、また、わが国とアフリカ諸国との友好関係の促進にとっても有益であると考えられます。  よってここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。  以上二件につき、何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  120. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 引き続き補足説明を聴取いたします。松永条約局参事官。
  121. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) ただいま提案理由の説明のございました二件につきまして、簡潔に補足説明を申し上げます。  最初に、国連憲章の改正につき、経済社会理事会が取り扱っております経済社会の諸問題については、それぞれ各種の専門機関が専門分野において活発な活動を行なっているわけでございますが、経済社会理事会は、みずから特定の問題を取り扱うとともに、これらの各種専門機関活動を調整する機能を果たしております。  今回の改正は、この経済社会理事会の構成を、国連加盟国の増加に対応したものとするとともに、経済的、社会的分野における諸活動が増大しました国際社会の現状に対応したものとすることを目的として行なわれたものでございます。五月三十日現在、すでに七十二カ国によって批准されております。  次に、アフリカ開発基金設立する協定について、アフリカ開発基金は、アフリカ開発銀行の活動を援助することを目的としたもので、このアフリカ開発銀行は、同銀行加盟国の経済的開発及び社会的進歩に貢献することを目的としておりますが、その資金量にはおのずから制約があり、緩和された条件による融資につき、必ずしも満足のいく活動が行ない得ないという状況にありますので、これを援助するために、本件基金を設立することとなったものであります。  なお、本件基金協定を国会に提出いたしました後に、三月一日にスペインが、また、三月二十九日にはユーゴースラビアがそれぞれ本件協定に署名いたしております。  以上で補足説明を終わります。
  122. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) それではこれより両件の質疑に入ります。質疑のある方は、御発言を願います。
  123. 田英夫

    ○田英夫君 いま御説明がありました二つの案件の、主としてアフリカ開発基金の問題について質問をしたいと思います。  最初に、大臣に伺いたいんですが、日本政府の対アフリカ政策といいますか、まあ政府の対米、あるいは対中国、対アジアというようなさまざまな政策がある中で、アフリカというのは地理的には日本から非常に遠いというようなことで、アジアに比べてどうしても関係が薄いのは当然かもしれませんけれども、同時に、いわゆるアジア・アフリカという関係の中で、開発途上国という意味からすると、日本としてはひとつかなり重点を置いて対処していい地域だと思うんですが、大臣としてその点、基本的にアフリカというものをどういうふうにお考えになっているか、まずお伺いします。
  124. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) わが国といたしましては、東北アジア、東南アジア、西南アジア等に沿革的にも深い関係があるだけでなく、経済協力の分野でも圧倒的に多くの部分をその地域にさいてきたわけでございます。今後もこの大勢には変わりはないと思うのであります。しかしながら、わが国といたしましては、信条、体制のかきねをこえて、できるだけあらゆる国と友好関係を保たなければならぬと考えておりまするし、わが国の経済力の充実に伴いまして、その他の地域アフリカあるいはラテンアメリカ等に対しまして、もっと進んだ理解と協力をいたさなければならぬと考えておりますし、また、そういうことをなし得る能力を身につけてきたように思うわけでございます。したがって、アジアに対する協力を減らすという意味ではなくて、それと並行いたしまして、アフリカ、ラテンアメリカにつきましても、いままでよりは進んだ協力体制をとっていかなければならぬと考えております。ただ、アフリカにおきましては、御案内のように、人種問題にからむもろもろの問題があるわけでございますので、われわれといたしましては、そういう問題に対する対処のしかたも非常に慎重に処理することといたしまして、今日までそういうラインで協力の進展が徐々に見られておるわけでございます。また、現に個々の国々からも、直接、間接、具体的な案件を提示してのアプローチが行なわれておるわけでございますので、われわれとしては、できるだけこれにこたえる意味合いにおきまして、努力をいたしておる最中でございまして、今度の御提案申し上げました基金に対しましておもなる出資国の一つになりましたゆえんのものも、そういう趣旨にほかならないものでございます。
  125. 田英夫

    ○田英夫君 私は、そういう点をまず伺ったのは、まあいまアメリカも、あるいはソ連も、中国も、それぞれの立場からアフリカを見ていると思いますし、たとえば中国の場合は、かつてアジア・アフリカ、ラテンアメリカというところ、特にAAというアジア・アフリカというところに非常に重点を置いた一つの友好関係をつくり上げて、アジア・アフリカグループというものをつくり上げていたのはひとつ注目されていたわけですけれども、それぞれアフリカに対して立場を持っていると思います。中ソの場合はかなり競争的な状況で、まあアフリカに対して接近をはかっているということも見えているわけですね。そういう中で、ずばり申し上げて、今度のアフリカ開発基金というものは、私どもが見ると非常にアメリカ寄りのものである感じが強くするわけですね。そうすると、けさからの質疑応答の中でも問題になっておりました非常に自主的な外交姿勢がないじゃないかという感じをここでまた持たざるを得ない。そうではなくて、日本は独自のアジア政策、独自のアフリカ政策というものを持っていてこうするんだ、こういう姿勢が示されている中でここに加わっておられるということであれば、了解できるわけなんですが、そういう意味で実は伺いたかったので、いまのお答えでは非常に抽象的ですけれども、そういう立場をもうちょっと説明していただきたい。
  126. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど私が申し上げましたことは、アフリカにおいて日本が主役を演ずる立場では私はないということもあわせて御了解いただけると思うわけでございます。しかしながら、開発途上国、とりわけ、後発国の問題というのは、できるだけ多くの国の理解と協力、さらには祝福を得てやることが望ましいと思うのでありまして、言いかえれば体制、信条等のかきねががんじがらめに設定されるというようなことはあまり望ましくないことでありまして、私どもといたしましては、できるだけ多くの国が協力する、しかも受益国側の願望に合致するというような条件がございますならば、これに参加するということは一向差しつかえないばかりでなく、望ましいことだと思うわけでございまして、特定の立場をもって当たると申しますよりは、受益国の側に立ちましてできるだけ多くの国の協力が得られるような仕組みが考えられてしかるべきじゃないか、それに日本も協力するにやぶさかでないという姿勢で、必要で十分でないかと私は考えております。
  127. 田英夫

    ○田英夫君 いま大臣言われた主役を演ずるべきではない、そういうつもりはないという意味のことを言われたわけですが、これは考えようによっては、地理的な関係その他によってそういうことも言えるかもしれませんが、同時に、中国はかなりかつてですが、独自のアジア・アフリカ政策というものを打ち出して、ある程度成功しておりました。そういう中で、日本がいまアジアの中で最も大きな経済力を持っているという現実の中で、しかもさっきもお話がありました人種差別、アパルトヘイトの問題などを見てくると、やはりアフリカの人たちがアメリカあるいはヨーロッパのかつての植民地国のことも考えて、日本に対してやはり特殊な感情を持っているというふうに思えるんで、ここのところはちょっと私は積極的に考えるべきじゃないかと思うのですが、そこで、いまお触れになったアパルトヘイトの問題、衆議院でも議論になっているようですけれども、これは基本的に反対という態度を政府がとっておられるといいながら、実は南アフリカ共和国に対してかなりの量の経済的な貿易を、輸出入を伸ばしている、そのままにしているという現実がありますね。この点、大臣、基本的にどうお考えになっているのか。ここのところは、アフリカ政策をアフリカの人たちから、つまり受益国とおっしゃいましたけれどもアフリカの人たちから見た場合に、この日本政府の態度というのはなかなか納得できないと思うんですが、いかがでしょうか。
  128. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは正確な事実をまず突きとめていただいて、それから評価していただかないといかぬと思うのでありまして、日本の南ア政策というものは、日本といたしましては、非常に厳重に通常貿易のワク内に限っておるつもりでございます。言いかえれば、投資という分野にわたることのないように注意をいたしてきておるわけでございまするし、日本と南アとの貿易の増加は、他の地域との貿易の増加のテンポと比較いたしますと、むしろ少ないわけでございまして、こういった事実について正確な御認識をいただかないといかぬと思うのでございますが、何か日本が通常貿易のワクをこえたことをやっておるのじゃないかというような疑惑が一部にあるようでございます。たいへん残念だと思っておりますけれども、私どもとしては、できるだけ正確なインフォーメーションを流して彼らの正確な理解を、わが国の公正な立場に対する理解を深めていきたいと思いますが、なお、中近東フリカ局長が見えておりますので、ひとつ這般の事情をもっと説明いたさせます。
  129. 田中秀穂

    政府委員(田中秀穂君) 国連におきまして南アのアパルトヘイト非難の決議はいろいろなされておりますが、これは御承知のとおり、総会決議でなされております。もちろん、こういった決議はわが国としても尊重する次第でございまして、大臣からただいま御答弁がありましたように、わが国は南アとの経済関係につきましてきわめて慎重に対処いたしております。すなわち、通常の貿易のワク内にこれをとどめる。南アに対する投資、あるいは経済協力、技術協力というようなものは一切行なっておりません。また、一連の国連安保理事会決議に従いまして、南ア向け武器弾薬等の輸出はもちろん厳に禁止いたしております。  一方、南アとの貿易がふえるというのもまた事実でございますが、わが国の貿易総額とこれを比べますと、その伸びのパーセンテージが、南アとの貿易における伸びのパーセンテージが、輸出入合計いたしまして、一九七二年には四・三%。これに比べまして、わが国の貿易総額、輸出入合計におきましては一九・一%と、こういうような数字が一応出ております。われわれといたしましても、南アとの通常貿易ではございますが、これが無限に拡大していくということは、必ずしも望ましいこととは考えておりません。なるべく慎重にこれを扱っていきたいということで、アフリカにおきますこの人種問題の様子を機会あるごとに民間の業界の方々などに御説明いたしまして、慎重な行動をお願いいたしております。
  130. 田英夫

    ○田英夫君 アパルトヘイトの問題は、アフリカのことを考えるときには、非常に基本的に大切なことだし、特に日本が有色人種であるということを考えたときに、アフリカ政策を進めていく上で、このことをむしろ基本的に考えないといけないんじゃないかという気がするわけです。  私自身、実はだいぶ前ですけれども、南アフリカ共和国へ参りまして、このアパルトヘイトの実態を見ておりますので、これはもう実際行ってみると、非常に驚きますが、とにかく法律で映画館に一緒に入っちゃいかぬとか、それこそ駅のベンチも違う。それで全部ユーロピアンとカラードという表示できめられている。郵便局の入り口からして違う。窓口が違うだけじゃなくて、入り口まで違う。町自体がもう完全に仕分けをされている。これはもう人道上から見てどうしようもない状態です。これは日本では意外に知られておりませんけれども、実態は行ってみるとよくわかりますけれども法律できめているわけですからね。  その上に、私が驚きましたのは、その黒人の指導者、といっても、これはもちろん地下の——地下といいますか、表へ出ているわけではなくて、指導者なんていったらすぐつかまるわけですが、その人に会うと、日本はなぜわれわれを援助してくれないのだと、こういうことをはっきり言っております。こういう実態は、外務省の出先きの方はどういうふうに報告しておられるかわかりませんけれども、さっきから私が、アフリカ現地の人が日本に対してどう考えているかを基礎におかないといかぬということを申し上げたのは、その体験からなんです。ただ、同じカラードだからということではなくて、その指導者ははっきりと、日本人はカラードのチャンピオンじゃないか、有色人種のチャンピオンじゃないか、どうしてわれわれを援助してくれないのだということを言っていたわけです。何もそれをそのまま聞き取ることはないかもしれませんけれども、そういう基礎の上に立って考えるべきじゃないだろうか。中国の場合なんかやっぱりそういう精神が基礎にあるように思います、基本的な政策。  ですから、いま田中局長が言われた貿易の問題にしても、日本の一般的な貿易の伸び率に比べて南アに対する貿易の伸び率が少ないという説明は、南アに対して決して援助をしているのじゃない、アパルトヘイトに反対という立場を妨げるものではないという、こういう説明にちっともならぬと思うのですよ。基本的に私は、国連でもしばしば決議されているように、南アに対しては一切やめるというのがむしろ基本であるべきだ。にもかかわらず、実際南アフリカへ行ってみると、町かどのつまらない雑貨屋でおもちゃを売っているのを見れば、メイド・イン・ジャパンと書いてあるのですよ。そういう状況を向こうの人が見ていたら、これは日本アフリカに対してどういう政策を打ち出しても、アフリカ開発基金に積極的に入っていっても、これをまるまる受け取ってはくれない。現に国連の場でアフリカの人たちが、総会でこの決議が議題になるたびに日本は棄権をするし、これについて日本に対して名指しで非難をしてきているわけですね。これは当然だと思うのですよ。そういうことがあるから私が申し上げているんで、このアフリカ開発基金というような形で、御趣旨は全く私どもも賛成ですけれども、この基本的な態度が変わらない限り、残念ながら、せっかく国民の税金からお金を出すにもかかわらず反対せざるを得ないという、そういう結果になってしまうわけです。せっかくお金を使うのに非常に残念なことだと思うので、この点を実は十分お考えいただきたい、こう申し上げたいわけです。  そこで、少し具体的な問題についてお尋ねいたしますけれども、さっき、アメリカ中心じゃないだろうか、こういうことを申し上げましたけれども、この出資ですね、「原参加者」というところに名前がずらっと並んでいて、そこへアメリカが入っていますね、アメリカの名前があがっている。ところが、出資金の割り当てのところにアメリカの名前が出てこない。この辺の事情は一体どういうことなんでしょうか。附属書のAです。
  131. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 御指摘のように、附属書のAの1のところの「原参加者」という中には、アメリカの名前が入っておりますが、2のところにはアメリカの名前が出てこないということでございますが、これは、アメリカはそもそも開発基金協定が討議をされております段階におきましては、かなり積極的な賛成の意向を表明して、参加の意思をも固めてきた模様でございましたんですが、協定を作成しております段階に至りまして、アメリカの国内事情からはっきり参加をするということを明示することがだんだんむずかしくなってきたという事情が、アメリカの国内問題として出てまいったようでございます。で、一方、基金の側といたしましては、これに参加する国が一つでも多く出てくることが望ましいし、また、アメリカが参加すれば現在のカナダとか日本とかいうのと同じように、相当大口の出資をしようというようなふうに予想されておりましたので、これも何とか確保したい。そこで、いろいろ手続の関係から、アメリカのそういう予想される参加ということ、なるべくそれをとめておきたいという基金の希望というものの両者を折衷いたしましてこういうような規定を設けたというのが実情のようでございます。そういうかっこうなものですから、当初出資というようなことをはっきりアメリカの分に書けない一方、若干時間がずれても原参加者という立場をアメリカも享有できるようにしておこうという趣旨から、こういう規定ができたものと了解しております。
  132. 田英夫

    ○田英夫君 そのアメリカの国内事情というのを、おわかりでしたらもう少し詳しく説明していただきたい。
  133. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 主として、対外援助問題に関しまするアメリカの議会の最近の、どちらかといいますと、やや批判的な態度というものが原因でございまして、すでにアフリカ開発基金の問題が出てまいります以前に、たとえばアジア開銀に対します特別基金の出資であるとか、第二世銀に対します出資の問題とか、そういう多くの似たような機関、国際金融機関に対します出資の問題が、前に多額の拠出の承認を議会に政府は求めておりますわけで、この開発基金に対します出資の要請を議会に行ないましても、それらの先に出ておりますものがまだ通っておらない現状で、どうしても時間がかかるというような事情があるように聞いております。
  134. 田英夫

    ○田英夫君 アメリカは非常にかってだと思うんですね、こういうやり方。この前の委員会で御質問いたしましたミクロネシアの場合も、経済援助というのですか、私は賠償だと思いますが、日本アメリカと同額ずつ、十八億円ずつ出すということをきめておきながら、アメリカの議会の承認がないからといって、三年間ですか、出資が延ばされてしまって、ようやく今年度から、日本の四十八年度予算から出されたということをこの前指摘いたしましたけれども、このアフリカ開発基金の場合も、国内の事情はあるにしても、非常に主要な出資、これは、日本とカナダとアメリカというのは三つの大きな出資国のようだけれども、そのうちの一つがそんなことで抜けてしまうという、出さないという可能性も残っているわけですか。
  135. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) この附属書Aの1に書いてあります期間の間にアメリカのもし批准が行なわれなければ、アメリカは原参加者という資格はとれないということになるだろうと思います。
  136. 田英夫

    ○田英夫君 原参加国でなくて、いわゆるおくれて加わる参加国になるということなんでしょうけれども、もう一つ原参加国のところで、ずっと見ていくとフランスが入っていない、そういうことに気づくわけです。ヨーロッパの主要国の中で。これはどういう事情ですか。
  137. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) フランスにつきましては、従来フランスもアメリカとは非常に深い関係にございまして、元フランスの領土であった国がたくさんございますが、そういう国に対しましてかなりいわゆる二国間での援助を主としてやってきておりまして、そういう立場からフランスはいまのアフリカ開発基金というようなかっこうの多数国間のものについてまで手を出さないというような態度をきめておるようでございます。
  138. 田英夫

    ○田英夫君 この附属書Aのところをずっと見てくると、国の名前が上がってくる中で当然気づくことは、これは衆議院でも取り上げられておりましたけども、社会主義諸国がユーゴースラビアを除いて全く入っていない、このことですね。しかも、それでは社会主義諸国はアフリカに対して無関心なのかといえば、全く逆であって、先ほど申しましたように、中ソがある意味では競うようにアフリカに対してさまざまな接触をしている。こういう現実の中で、アフリカ開発基金がそういう社会主義諸国をなしにしてつくられている。しかも、西側陣営といわれる国の中でその最も主要な国であるアメリカが実は入るのか入らないのか、金を出せるのか出せないのかあやふやであるというような基盤の弱さを持っている。そうなってくると、私、そこで大臣の最初の御答弁と関連をしてくるわけですが、そこで日本が主役を演ずるのだ、非常に積極的にこのアフリカ開発基金の中心的存在になってやるのだ、こういうお立場ならこれはまたわかるのです。アメリカはなくても、ひとつ日本を中心とした国々でやっていこうじゃないかというのはわかるのです、社会主義諸国がなくても。ところが、アメリカはあやふやであって、日本もまあ主役じゃない、ワン・オブ・ゼムだ、こういう態度でいると、ほんとうに実効を上げることができるのだろうか、こう思うのですが、この辺の見通しはどうなんですか。
  139. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 先ほどの大臣の御答弁の中の、主役を演ずるということばの意味と、このアフリカ開発基金の討議の段階におきましてわが国の果たしました役割りとは、ちょっと関係があるような、ないようなものでございますが、この経緯から申し上げますと、このアフリカ開発銀行というものがございまして、これは非常に資金の量も乏しいし、条件も緩和されておらないというようなことから、域外国にも呼びかけて、もっと条件の緩和された援助をとれるようにしたいというのが起こりでございまして、その呼びかけました直接の相手方は、先ほどの提案理由の説明にもございましたように、OECDの中の開発援助委員会というところでございまして、そこでカナダがかなり大きな積極的な役割りを果たしましたが、わが国もこの開発援助委員会の有力なメンバーでございますし、最初のほうから討議には積極的に参加して、いろいろ注文もつけたりしてまいったわけでありまして、この基金の成立に至ります経緯におきましては、まあ主役と言えるかどうかわかりませんが、相当程度に積極的な態度を初めのほうから示してまいったという経緯がございますので、今後もカナダと並んで大口の基金を出します国となりますれば、自然とわが国のこの基金の活動に関します発言力も相当大きなものとなるものと期待されております。
  140. 田英夫

    ○田英夫君 そこで、その出資の問題ですけれどもね。衆議院でも非常に問題になりましたけれども、千五百万計算単位という出し方になっているわけですね。これは日本とカナダの場合が同額ですけれどもアメリカは千五百万ドルという形で出せる。そうなってくると、ドルが非常に弱くなったということがここで非常に大きく関連をしてきて、日本が出す場合千五百万計算単位というのは、すなわち千五百万ドルになっちゃっているけれども、ならざるを得ないわけですね、これは。その点はどうですか。依然として変わりないわけですね。
  141. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 日本がといまおっしゃられた……。
  142. 田英夫

    ○田英夫君 ええ、日本が出す場合。
  143. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 日本はその附属書A項の2のほうの当初出資という規定によりまして、千五百万計算単位を出すということになりますわけでございます。
  144. 田英夫

    ○田英夫君 したがって、千五百万計算単位ということは、もとのドル、三百八円ですか、その金額によるのか。これはいま大蔵委員会で審議しておられるようですけれども、この出し方にも問題がありますけれども、三回に分割して三年払いで出資するということのようですけれども、この計算の根拠は、ドルの単位は一体どうなりますか。
  145. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっとそれに関連して。計算単位というのはどういうことなのか、ちょっともう少し詳しく。
  146. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 計算単位と申しますのは、この協定をちょっとごらんいただくと出てまいりますのですが、協定の「定義」の項がございまして、第一条の中の、このお配りしました協定文の二ページでございますが、「「計算単位」とは、純金〇・八一八五一二六五グラムの価値を有する一計算単位をいう。」と、こうなっておりまして、このむずかしい〇・幾らという字が出ましたのは、この当時、純金一グラムの値段が三十八ドルという計算になっておりまして、それを逆に割った数字でございます。それをすべてのこの協定の中での計算の基準というふうにしまして、各国の出資額の計算等はそれをもとに計算をされておる。そこで、いま田先生お話の、日本が出す場合はどういうふうになるかということは、そのいまの協定の一六ページに第十二条というのがございまして、「通貨の価値の決定」、この中で、「いずれかの通貨の価値を他の通貨又は計算単位で決定することがこの協定の下で必要とされる場合には、その価値の決定は、基金が国際通貨基金と協議したうえで合理的に行なう。」ということでございまして、IMFとこの基金とが協議した結果が出るまでどういう形できめられるか、まだはっきりはさまってはおらないという実情でございます。  先ほど間違えました。一オンス三十八ドルでございます。訂正いたします。
  147. 田英夫

    ○田英夫君 このきめ方は、IMFと基金で話してということがここにありますけれども、基本的に非常に問題が、疑問が残るのは、アメリカのドルが非常に弱くなって、特にこのところ連日新聞で金とアメリカのドルとの計算が出ておりますね。そういう中でIMFがきめるにしても、日本の場合はかなりそこのところで、当初この協定に調印をしたころに、比べて出資をする金額が変わってくる結果になるのかならないのか。それからアメリカの場合は、これは計算単位じゃなくて、ドルで払うというのですね。そこのところでアメリカは非常に有利であって、その他の国は不利になる、そういう結果になりませんか。不利、有利というのはおかしいけれども
  148. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 前段の日本の払う、つまり何といいますか、価格の表示、価値の表示につきましては、いまのこの計算単位のもとになっております金のお値段というものがもとになって、いまの十二条の規定できめられますので、あるいは表示した価格というのが上がったり下がったりするということは考えられますが、それが有利であるのか不利であるのか、その辺はそのときになってみないとわからないかと存じます。  それからアメリカにつきましても、この附属書Aの1に書いてございますのは、千五百万合衆国ドルというものを払い込めば原参加者の地位を、そのことと、それから一九七四年の十二月三十一日までに署名し、批准する、そうなれば原参加者となるということが書いてありますので、アメリカがもし議会でこの協定の手続が終わりまして参加をしますということになれば、当然にどれだけ計算単位というものがアメリカの当初出資であるかということが、その段階できめられるということになるかと存じます。
  149. 森元治郎

    ○森元治郎君 関連して。  附属書かどこかにアット・リースト千五百万ドル、アット・リースト、なんでそんなものくっつけたの……。
  150. 田英夫

    ○田英夫君 附属書のA項の1ですよ。
  151. 森元治郎

    ○森元治郎君 なんでそういうのをくっつけるのですか、どういう意味で……。
  152. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 日本語で「以上」と訳してございますが、その字の意味は、まさにそのとおりで、ここに書きました千五百万合衆国ドルが最低の金額であるということを意味するというふうに存じておりますが……。
  153. 田英夫

    ○田英夫君 アメリカの場合は、そうすると、重ねてお聞きしますけれども、千五百万ドルを払うとは限らないわけですか。
  154. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 千五百万ドル以上を払うということ……。
  155. 田英夫

    ○田英夫君 そうすると、日本は同じようにこの割り当て額でいくと、千五百万計算単位ですけれども、これは千五百万ドルとは限らない、こういうことになりますか。
  156. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 現状においては、そういうふうに申せるかと思います。
  157. 田英夫

    ○田英夫君 確認しておきますけれども衆議院の段階で出ておりましたけれども、いま大蔵委員会で審議中のその出資の方法というのは、三回払いで、国債で払うということは、そのとおりですか。
  158. 前田多良夫

    説明員(前田多良夫君) そのとおりでございます。
  159. 田英夫

    ○田英夫君 これは私どもちょっと疑問に思うのは、国債というものの性格から考えて、こうした日本が国として開発基金に金を出すという、まことにけっこうなことだと思います、その趣旨は。そういうものを国債で支払うということはおかしいのじゃないか。なぜこれ、四十八年度予算の中できちんと、予算の中で払わないのか。
  160. 前田多良夫

    説明員(前田多良夫君) 御指摘の国債で出す趣旨でございますが、これはアフリカ開発基金に限りませず、アジア開発銀行に対する出資あるいは拠出並びに世界銀行あるいは第二世銀に対する出資等におきましても、国債で出すのが通例でございますが、その趣旨は、これは約束額というものをまず証書として出すわけでございますが、現実にその金がキャッシュとして、現金として必要になるのは必ずしもいつになるかわからない。そこで、先方のこの基金が、現金が必要になるつど、日本側に請求をして、その請求のあるたびに日本側が現金を払うと、こういうことによりまして、現金の支出がその分だけあとへ繰り越される。そういう意味におきまして、まあ必ずしも当初必要のないものは出さない、こういうことでございます。  それから、第二点の予算上処理されて、予算に載っかってないという御指摘でございますが、これは国債整理基金特別会計という特別会計の中で、国債償還費というものが組まれておりますが、その国債償還費が四十八年度におきましては八千五百二十二億千三百万円組まれております。これは四十八年度予算説明の第六三ページでございますが、この八千五百二十二億一千三百万円の中に三分の一の五百万ドル分の償還費といたしまして十五億円を見込んでおるわけでございます。
  161. 田英夫

    ○田英夫君 それにしても疑問が残るのは、そういうふうにアジア開銀の場合にしても、すべて国債でというやり方ですね。この辺はどうも疑問が残るんですけれども、この問題は一応別にしてですね、話がやや戻りますけれども、基金の十五条の四項ですか、四項で、この融資の条件が決められてますけれども、そこで気になるのは、「参加国又は構成国の領域内で生産される物品及びそれらの領域から提供される役務をそれらの領域内で調達するためにのみ使用される。」、そういう一つの条件をつけていると思いますね。これはよく考えてみると非常に危険なことになるんじゃないだろうか。つまりこのお金を出している側、日本がそういう意図があるかどうかは別としても、ひもつきになる可能性を非常に持っているんじゃないですか。ここのところの条項、この規定というのは、どういうふうに考えたらいいんですか。
  162. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) まさにその基金の融資によります、その調達の範囲をこういうふうに決めますと、すべての国からではなくなるという意味で、御指摘のように、あるいはひもつきということが言えるかもしれませんが、それだけの範囲に置いておるということで言えば、特定の国にひもつきにしたというのではないという意味で、何といいますか、中間的なかっこうでございますが、こういうようなやり方がほかの国際的な金融機関世界銀行でありますとか、第二世銀でありますとか、これらはもっと範囲が広いわけでございますけれども、それからアジア開発銀行などでも採用されておりまして、要するに、できるだけ多くの出資国や拠出国の参加を確保して、つまり参加すればその国が調達先にもなるというので参加を慫慂するための目的が一つにはあるものと考えられております。
  163. 田英夫

    ○田英夫君 これは、日本の場合ですね、こういうことが書いてあることを悪用しまして、ただでさえアジアではすでにエコノミックアニマルであるというらく印を押されている。タイではもう去年はだいぶ日貨排斥運動といっていいような、日本品排斥運動のような形の運動が起こっているし、お隣りの韓国でもいろいろ問題が起こっている。アジアではすでに日本に対してはもうエコノミックアニマルであるというのが常識のようになっている。そこへもってきて、今度アフリカに対して、この開発基金の問題、とかく日本がそこへ出資するということだけに目を向けがちでありますけれども、出資するということは開発途上国に対して援助をするんだという、まことにきれいでけっこうですけれども、実はこれが政府のここへ出資することが誘い水になって、この十五条の条項を受けて、日本の企業がここで、アフリカを舞台にして、この条項をたてにして、日本品をここへ、日本が品物だけでなくて、プラントだとかさまざまな、そういう投資だとか、そういう形で進出をしていくという、この十五条が窓口になるのではないか。そのずらずらっと原参加国という名前があがっている中で、西側の国がほとんどですけれども、この中でそういうことをやりそうな国というのは実はあまりないのでね、日本がそれをもっぱらやることになるのじゃないだろうか。アフリカ開発基金というものが、実は、表向きはたいへんきれいごとだけれども日本の進出の主役にならないと大臣おっしゃっているけれど、実は陰で経済進出では主役になってしまう、こういうおそれを、私はこの条項を読んだときに実はそういう気がしたのですが、大臣この点はひとつ大臣からお考えをお示しいただきたい。この条項は非常に危険だと思いますが、日本現状からすると。
  164. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 少し技術的な点をお答えさしていただきますと、アンタイドで援助をいたします場合でも、援助をします国からは調達をさせないというようなことには普通ならないわけでございます。したがいまして、日本がこの基金にお金を出しまして、日本も調達先ということになると、日本もその他と一緒になるということは、これはまず普通のできごとじゃないかと存ぜられますし、もし、日本の品物なり、まあプラントとおっしゃいましたが、そういったものがこの開発基金の参加者、つまり銀行の構成国足すことの基金の参加国というような範囲で十分に競争力があれば、つまり安いし優良であるというようなことであれば、日本のものが出ていくということにもなるかとも思われますが、それはお値段も安いと、それから調達も早いというような諸種の条件があって、それによってそのほかの、たとえばカナダであるとか、そういった国の品物と競争して調達先となるということを意味しておるので、必ずしもエコノミックアニマルとすぐに批判を受けるようなものではないのではないかというふうに存じております。
  165. 田英夫

    ○田英夫君 まあ、あまり時間がないのですけれども、いま外務省の当局側としてはそういうお答えが出てくるだろうと思うのですよ。しかし、率直のところ、いまの日本の企業のやり方を見たときに、ここにこういう規定があれば、しかもこの原参加国というところに名前が並んでいる諸国を見ると、悪口で言うのじゃなくて、日本と西ドイツぐらいじゃないですか、経済的にもぐんぐん進出しようということを考えるようなのは。特に日本のいまの大企業のやり方、企業の進出のやり方というのを見たときに、いまの局長のお答えは、事務当局といいますか、のお答えとしてはそういうことが出てくると思うし、また、この協定をつくったときの気持ちからすれば、なるべく出資国を多くするために出資国に有利な条項を入れようという気持ちがあったのも、これはさっきからの答弁を拝聴しててそのとおりだと思うのです、その限りでは。しかし、そこで最後に大臣に伺いたいのは、こういう中で、この基金に日本が出資をしていくという中で、日本の企業の現実の姿を見たときに、これはここから先は政治ですからね、事務当局ではなくて、政治として大臣はこの点をどういうふうにお考えになり、また、どう対処されるのか、この点をお伺いしたい。
  166. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど渋谷委員の経済協力問題についての御質疑がありました際にも御答弁申し上げましたとおり、ひもつき援助の問題につきましては、私は日本は比較的進んだというか、最も進んだというか、そういういまスタンスをとっておると思うのでございます。OECDその他におきましても、もうゼネラル・アンタイイングでいこうじゃないかということの主唱者になっておるわけでございます。もうひもつきにしようなんというさもしい根性は毛頭ないわけなんで、この案件は、したがって、いま御巫君からも御説明がありましたように、できるだけ参加者を募る場合のてこにしたのではないかと思うのでございまして、日本としてはそうそのことについて興味を感じていないわけなんです。ただしかし、そう政府が言いましても、現実のビジネスでございますから、業界のほうでそういう、これを好餌として、あるいは指弾を受けるようなことがないという保証はないじゃないかという御懸念でございますが、その点につきまして、どこまで政府の目が届きますか、私は十分自信のある答弁はできませんけれども、御趣旨の点は政府としてもあらゆる機会を通じまして徹底してまいりたいと考えておりますので、万々仰せのような御心配のないようにはいたさなければならぬと考えております。
  167. 田英夫

    ○田英夫君 時間がまいりましたので終わりますけれども、この点はひとつ、このアフリカ開発基金のこの問題につきましては、私どもも十分検討をいたしまして衆参で議論もいたしました。残念ながら趣旨は、アフリカ諸国が発展するためにということで、日本が協力しようじゃないかという趣旨はまことに賛成なんですけれども、先ほどから幾つかの疑問点を出してまいりました。そういう中で、どうしても賛成しかねる面が残ってしまうわけで、討論のようになってしまいますけれども、自然成立という時間切れも控えておりますので、長い突っ込んだ疑問点の解明ができないままに残りますけれども、その点ひとつ、いまも申し上げたような点は十分御配慮いただきたいということをお願いして終わりたいと思います。
  168. 森元治郎

    ○森元治郎君 いま田さんが日本との関連の質問であったのですが、このブラック・アフリカ——誇り高き最近の若いアフリカ諸国、指導層は軍人であり、独裁者であり、みな欧州あたりで教育を受けてきたごく一握りの人、これが基金が活動が始まって、この国はそれぞれその金を利用して仕事をするでしょうが、どうも人民一般の生活水準の向上というほうにはつながらないで、アフリカの大だんなさまが横断的に手をつないでやることになりはせぬかという心配もあるんですが、どうですか、見通しは。
  169. 田中秀穂

    政府委員(田中秀穂君) アフリカ現状は、ただいま御指摘のように、軍事政権が非常に多い、これは独裁的な色彩を帯びた政権が多いということは事実でございますが、現在、アフリカ諸国の当面しておる現状と申しますのは、早く国の基礎をつくりまして、国の開発に励みたいと。現在、多くのアフリカ諸国が当面しております一番の問題は、一つは部族問題、一つは経済的な貧困の問題でございます。そのうち一番大きな要素となっておりますのが経済的な貧困の問題で、このアフリカ開発基金の目的もこうした問題を解決し、あわせて部族問題の解決、融和ということにも資し、おのおおのの国の安定をはかるということにあると思いますので、各国の指導者もその観点から、このアフリカ開発基金が成立いたしまして、これから援助を受けるということになりますれば、そうした観点から大いに努力をするということを確信いたしております。
  170. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 両件に対する本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後三時三十六分散会      —————・—————