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1973-02-22 第71回国会 参議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年二月二十二日(木曜日)    午前十時六分開会     —————————————    委員異動   十二月二十七日     辞任         補欠選任      郡  祐一君     新谷寅三郎君      斎藤 寿夫君     矢野  登君   一月二十七日     辞任         補欠選任      西村 関一君     小谷  守君   一月三十日     辞任         補欠選任      新谷寅三郎君     大竹平八郎君   一月三十一日     辞任         補欠選任      黒柳  明君     浅井  亨君  二月三日   委員柴田利右エ門君は逝去された。  二月六日     補欠選任        松下 正寿君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     理 事                 佐藤 一郎君                 山本 利壽君                 森 元治郎君     委 員                 岩動 道行君                 木内 四郎君                 杉原 荒太君                 八木 一郎君                 加藤シヅエ君                 小谷  守君                 羽生 三七君                 渋谷 邦彦君                 松下 正寿君                 星野  力君    国務大臣        外 務 大 臣  大平 正芳君    政府委員        外務政務次官   水野  清君        外務大臣官房長  鹿取 泰衛君        外務省アジア局        長        吉田 健三君        外務省経済協力        局長       御巫 清尚君        外務省条約局長  高島 益郎君        外務省条約局外        務参事官     松永 信雄君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠選任の件 ○国際情勢等に関する調査  (昭和四十八年度外務省関係予算に関する件)  (今期国会における外務省関係提出予定法律案  及び条約に関する件)  (開発途上国に対する経済援助等に関する件)  (日ソ、日中の平和条約締結に関する件)  (ベトナム和平に伴うインドシナ経済協力等に  関する件)  (アジア地域米軍撤退に関する件)  (北ベトナムとの国交樹立に関する件) ○千九百六十一年の麻薬に関する単一条約改正  する議定書締結について承認を求めるの件  (内閣提出)     —————————————
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  議事に先立ち、一言申し上げます。  本委員会委員柴田利右エ門君には、去る三日急逝いたされました。まことに痛惜にたえません。ここにつつしんで哀悼の意を表したいと存じます。     —————————————
  3. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に、委員異動について報告いたします。  去る一月二十七日、西村関一君が、また同三十日、新谷寅三郎君が、同じく三十一日に黒柳明君がそれぞれ委員辞任され、その補欠として、現在小谷守君、大竹平八郎君及び浅井亨君が委員選任されております。  また、先ほど申し上げましたように、なくなりました柴田君の補欠として、去る六日、松下正寿君が委員選任されました。     —————————————
  4. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) おはかりいたします。  森君から、文書をもって、都合により理事辞任したい旨の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  現在までに本委員会理事二名が欠員となっております。この際、理事補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 御異議ないと認めます。  それでは理事に、長谷川仁君及び田英夫君を指名いたします。     —————————————
  7. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) この際、水野外務政務次官から発言を求められておりますので、これを許可いたします。水野外務政務次官
  8. 水野清

    政府委員水野清君) 昨年末の内閣改造外務省政務次官になりました水野でございます。  御承知のように、非常に浅学非才でございますが、諸先生の御指導を得まして、本委員会でも十分の御尽力を申し上げたいと、こう思っておりますので、よろしく御指導のほどをお願い申し上げます。     —————————————
  9. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に、国際情勢等に関する調査議題とし、昭和四十八年度外務省関係予算及び今期国会提出予定法律案並びに条約について概要の説明を聴取いたします。鹿取官房長
  10. 鹿取泰衛

    政府委員鹿取泰衛君) お手元にございます表に基づいて御説明申し上げます。「昭和四十八年度予算政府案外務省関係重点事項」という表でございます。  その第一ページの一番上に書いてございますとおり、四十八年度予算案は八百七十六億八千百万円でございます。これを前年度、左側に書いてございます四十七年度予算額六百五十九億四千九百万円に比較いたしますと、一番右側に書いてございますとおり、差し引き二百十七億三千二百万円の増加を示しております。伸び率は三三%でございます。  以下、表の中に入りまして、一番左の欄に項目とございますが、項目の一から御説明申し上げます。  1 経済技術協力拡充強化、これは四十八年度予算は二百九十二億五千六百万円でございます。その内訳を申しますと、(1)は無償援助拡充多様化でございます。総額は五十九億三千六百万円でございます。これをさらに二つに分けますと、従来からの継続プロジェクトに要する費用が三十二億三千五百万円でございます。第二は新規のプロジェクトでございまして、総額が二十一億円でございます。以上が無償援助のおもな点でございまして、次に(2)インドシナ難民救済十億円というのがございます。これは関係大蔵省所管に計上いたしましたけれども、項目の性質上、外務省大蔵省と協議して使用することになっております。(3)は海外災害等救援費でございまして、この総額も十億円でございます。これは従来海外災害等が発生いたしました場合、そのつど予備費をもって充当いたしてまいりましたけれども、それでは時間、時日を要しまして、海外諸国に比べてわが国救援の手がおそいという御批判が各方面にございましたので、来年度はまず十億円を外務省予算に計上いたしまして、さしあたってその十億円を使用して海外災害等援助に充てる。もちろん昨年の例などを見ますと、これでは不足をいたします場合が想像されますので、その場合には予備費をお願いするということを考えております。(4)は技術協力拡充でございまして、総額が百三十四億九百万円でございます。これは備考の右の下のほうに書いてございますように、おもな内容は、海外からの研修員の受け入れ、この人数は二千二百六十五人を予定しております。それからわが国専門家の派遣、これは八百五十一人を予定しております。  二ページに移らしていただきます。二ページの欄にも海外技術協力関係説明がございますけれども、上のほうは省かしていただきまして、まん中ごろに(5)多数国間協力拡充という経費がございます。その総額は四十一億二千九百万円でございます。この項目二つに分かれまして、第一は国連の諸機関を通ずるマルチ援助でございまして、その総額が四十億三千五百万円でございます。そのおもなものをあげますと、UNDP関係が三十五億四千二百万円、UNICEFが三億八千五百万円等でございます。それから第二のマルチのカテゴリーは、アジアにおける地域協力プロジェクトに対する援助でございます。その経費は九千四百万円でございまして、内訳備考の欄に書いてございます。  三ページに移らしていただきます。三ページの2 国際文化交流拡充、これが外務省の来年度予算の第二の柱でございます。総額が百七億二千四百万円。その内訳は、百億円が国際交流基金に対する出資金でございます。また七億二千四百万円が国際交流基金に対する補助金でございます。この国際交流基金につきましては、前年の国会において御承認をいただきまして、特殊法人国際交流基金が発足いたしまして、今年度予算では五十億円の出資を御承認いただいたわけでございますが、来年度におきましては百億出資することをお願いしたいわけでございます。大蔵省外務省との話し合いにおきましては、さらに次の年度で百億、その次の年度でさしあたり五十億、したがって両三年間に計三百億の出資に達するということにしております。  第三の重点項目が、わが国イメージ向上のための海外広報活動強化でございます。その総額は九億七千五百万円でございます。  第四の柱は、国際情勢適確な把握のための機能強化経費でございます。その総額は三億九千百万円でございます。内訳はそのページに(1)、(2)、(3)、(4)と示してございます。  第四ページに移らしていただきます。第四ページの一番冒頭に書いてございますのが外務省重点事項の第五の柱でございまして、在外邦人生活環境整備のための経費でございます。総額は十一億二千五百万円でございます。その内訳は、(1)にございますような海外子女教育充実経費でございまして、総額が九億七百万円でございます。それは二つに分かれまして、全日制校強化でございまして、総額が八億八千百万円でございます。すでに東南アジア中心といたしまして三十校の全日制学校があるわけでございますけれども、来年度におきましては三校追加いたしまして、パリ、ラスパルマス、ラゴスに三校新設したいと考えております。それから在外邦人生活環境整備の第二は、(2)の移住者自立基盤強化経費でございます。総額は二億一千八百万円でございます。内容は省略さしていただきます。  第五ページに移ります。第五ページの冒頭に書いてございますのが、外務省予算の第六の柱でございます国際問題に対する国民的関心にこたえるための体制整備経費でございまして、総額は七億二千六百万円でございます。以下、内訳を申しますと、(1)は国際情勢及び外交問題の国内広報強化経費でございまして、総額が三億六千四百万円。第二は外務省地方公共団体及び民間団体との連絡協調密接化経費でございまして、三億一千三百万円でございます。(3)に書いてございますのが、国内ニュース及び国内事情海外への伝達機能強化でございまして、これは単なる調査費でございますが、千九百万円計上してございます。(4)は外交史料館充実経費でございまして、これは外務省の飯倉の分室の一部でございます外交史料館充実させたいための経費三千万円でございます。  次に、第七の柱が外交実施体制整備のための経費でございまして、総額が百億九千五百万円でございます。この外交実施体制整備につきましては、人員機構の問題がございますので必ずしも金額の数字だけでは説明が十分でございませんので、以下、機構人員の数で御説明いたしますと、(1)が本省並びに在外公館機構整備及び定員増強でございます。まず本省におきましては、沖繩海洋博政府代表を一名新設いたします。それからアジア局次長設置いたしますが、これは定員上振りかえでございます。六ページに移りまして、右側備考の欄をごらんいただきますと、まず本省定員増強が十二人、さらに先ほど申しました沖繩政府代表を加えると十三人ということになります。  それから在外公館定員増強は七十一人でございます。しかし、御承知のとおり定員削減がございまして、定員削減はここに書いてございませんが、本省では十三名、在外では三十三名、計四十六名の削減がございますので、その結果、純増という数字は、それを差し引いた人数になるわけでございます。  次に在外公館新設につきましては、中央アフリカ大使館モンゴル大使館アトランタ総領事館設置を要求しております。(2)は在外職員勤務条件の改善の経費でございまして、子女教育手当新設等を要求いたしております。(3)は在外公館国有化の促進のための経費でございまして、総額が四十億八千九百万円でございます。その内訳は、右の欄、備考にございますように、在外公館公邸とか事務所国有化経費でございまして、その総額が二十四億一千万円でございます。それから公邸事務所以外にも館員の宿舎を国有化するという新しい構想を持っておりまして、そのための経費が十三億千二百万円になるわけでございます。  以下、こまかい点はございますけれども省略させていただきまして、第七ページの最後に書いてございますように、外務省所管合計は八百七十六億八千百万円、前年度六百五十九億四千九百万円に比しまして二百十七億三千二百万円の増加額を見込んでいるわけでございます。  以上でございます。  次に、第七十一国会提出予定法案について御説明申し上げます。一枚紙のものでございます。  外務省予算関係法案は二件ございます。その他が一件、合計三件でございます。  予算関係法案は、在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案でございまして、要旨は、まず在中華人民共和国日本国大使館及び在アトランタ日本国総領事館設置いたしまして、在中華民国日本国大使館、在台北及び在高雄の各日本国総領事館を削るものでございます。次に在セイロン日本国大使館名称を変更いたしまして、在スリ・ランカ日本国大使館に改めるものでございます。第三は、上に述べました新設在外公館在勤手当を設定するわけでございます。第四に、すでに設置されております一部公館住居手当限度額を増額するわけでございます。第五は、子女教育手当新設するわけでございます。  第二の予算関係法案は、沖繩国際海洋博覧会日本政府代表設置に関する臨時措置法でございまして、要旨は、昭和五十年に開催される沖繩国際海洋博覧会日本政府代表の任務、給与等を定めるものでございます。  予算関係でございません法律といたしましては、外務省設置法の一部を改正する法律案がございます。要旨は、アジア局次長一名を新設することでございます。  以上でございます。
  11. 平島敏夫

  12. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 今期国会提出を予定しております条約二十一件について御説明申し上げます。お手元にお配りしてあります「第七十一回国会提出予定条約」の順に従って御説明いたします。  最初のポルトガルとの租税条約及びスペインとの租税協定は、所得税法人税等所得に対する租税の二重課税を回避するためのものでございまして、従来より各国締結してきております租税条約とほぼ同じ内容のものでございます。この二条約につきましては、目下それぞれ最後の詰めの交渉を行なっている段階でございます。  三番目のインドとの租税協定修正議定書につきましては、現行協定を若干補足する趣旨のごく簡単な改正案につきましてインド側より提案があり、これも目下鋭意交渉中でございます。  次に、米国との原子力協定改正する議定書について御説明申し上げます。昭和四十三年七月に発効いたしました現行日米原子力協定におきましては、昭和四十八年までに着工いたしますわが国原子力発電所に必要な濃縮ウラン供給が定められておりますが、その後のわが国発電計画の進展に伴い、昭和四十九年以降に着工を予定しております原子力発電所に必要な濃縮ウランを確保する必要が生じてまいりました。他方、米国におきましては、一九八〇年前後に予想されます濃縮ウラン供給不足という事態に対応いたしまして、現在各国との間に行なっております一定量濃縮ウラン供給を保証する方式をとりやめるとの新政策をさきに決定いたしました。米国はすでにこの新政策のもとにユーラトムとの間で新協定交渉し、実質的合意に達しておりますので、米国にとってユーラトムと並んで大口需要者でありますわが国に対しましても、新政策に合致するよう現行協定改正することを提案してまいりました。わが国といたしましても、昭和四十九年以降着工原子力発電所に必要な濃縮ウラン入手を確保するという観点から、米国提案に応ずることとし、先般来交渉を行なってまいりました結果、実質的合意に達し、近く改正議定書に署名する見通しでございます。この改正によりまして、わが国といたしましては、昭和五十三年までに着工を予定しております原子力発電所について必要な濃縮ウラン入手の道を開くことになります。  第五番目のギリシアとの航空協定でございますが、わが国南回り欧州路線の一環として、ギリシアへの乗り入れをかねてから希望しておりましたところ、ギリシア側もこれを歓迎するに至り、本年一月航空協定に署名を了したものでございます。この内容は、従来わが国各国と結んでおります航空協定とほぼ同じものでございまして、両国の指定航空企業が特定の路線において定期の航空業務を運営する権利を相互に許与すること、その業務の開始、運営に関する手続、条件等を定めているものでございます。  第六番目の国際連合憲章改正でございますが、これは憲章第六十一条を改正いたしまして、国連主要機関の一つであります経済社会理事会理事国の定数を現在の二十七から五十四に倍増する内容のものでございます。  経済社会理事会は、本来国連経済社会分野における活動中心になるものと期待されておりますが、近年国連国連貿易開発会議国連開発計画などの新機関が設けられ、大いに活用されていますので、これらと比較しまして経済社会理事会機能が低下しているうらみが若干ございましたわけです。最近の国連加盟国増加にも対応して、この理事会の規模を倍に増加して機能強化するという趣旨でこの改正が採択されたものでございます。  七番目のアフリカ開発基金設立協定でございます。現在アフリカにはアフリカ開発銀行がございます。この銀行アフリカ諸国によってのみ構成されておりますために資金源において限界があり、さらに融資条件においても、条件が通常の条件のみになっておりますために、その活動限界がございます。これを補足いたしますために、先進諸国からの出資を得まして基金を設立し、アフリカ諸国に緩和された条件融資を行なおうという趣旨でこの開発基金が設立されることになったものでございます。
  13. 森元治郎

  14. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 森君。
  15. 森元治郎

    森元治郎君 一々内容はいいですから、この程度で、二十一件、御説明省略したほうがいいと思います。
  16. 羽生三七

    羽生三七君 あらためて提案理由説明があるんですから、いいですね。
  17. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) あとは、その他何件でけっこうですから。
  18. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) その他十四件、合わせまして二十一件の条約提出を予定しているわけでございます。
  19. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 以上をもって説明は終了いたしました。  本件については、本日はこの程度といたします。     —————————————
  20. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に、千九百六十一年の麻薬に関する単一条約改正する議定書締結について承認を求めるの件、本院先議、これを議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。大平外務大臣
  21. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 趣旨説明に先立ちまして、去年の暮れ、総選挙が終わりまして、田中第二次内閣が発足するにあたりまして、引き続き外務大臣として外交をあずかることになりました。日ごろ各位から格別の御指導と御鞭撻をいただいておりますけれども、わが国をめぐる国際情勢が新たな局面を迎えておる今日、責任の非常に重大なことを痛感いたしております。今後一そうの御指導と御鞭撻をお願い申し上げます。  ただいま議題となりました千九百六十一年の麻薬に関する単一条約改正する議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  麻薬国際統制に関する基本的な条約といたしましては、千九百六十一年の麻薬に関する単一条約がございますが、近年麻薬乱用が世界的な社会問題となっている実情にかんがみ、一そう有効な麻薬国際統制の実現をはからんといたしまして一九七二年三月にジュネーブで国際連合の主催により同条約改正するための全権会議が開催され、九十七カ国の参加国わが国を含めまして七十一カ国の賛成を得てこの議定書が採択されたのであります。  この議定書目的は、国際麻薬統制委員会機能及び統制権限強化、同委員会資料収集源の拡大、麻薬犯罪を引き渡し犯罪とみなす規定の新設麻薬乱用に対する措置強化等にあります。  この議定書趣旨は、麻薬乱用がもたらす害毒を防止するための国際協力を増進する上で適切なものでありまして、この議定書締結いたしますことは、海外からの麻薬の密輸入が依然としてあとを絶たないわが国にとりましてもきわめて有益であると考えられるのであります。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  22. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 引き続き本案補足説明を聴取いたします。なるべく簡単にお願いいたします。松永参事官
  23. 松永信雄

    政府委員松永信雄君) 簡単に補足説明をさせていただきます。  わが国における麻薬禍は、昭和三十年ごろから三十七年ごろまでにかけまして、たいへん大きな社会問題となり、麻薬禍撲滅の努力が重ねられました結果、大幅な減少を見るに至ったわけでございます。しかるに、近年麻薬乱用問題が再び欧米諸国におきまして深刻化するとともに、東南アジア地域麻薬事情も必ずしも好転いたしておりません。わが国においても、この二、三年来麻薬事犯が再び増加傾向を示すに至ったわけでございます。わが国といたしましては、かかる実情に照らしまして、国際性の強い麻薬犯罪の取り締まりを効果的に行ないますためには、国外からの供給を断つための水ぎわ検挙強化することはもとより、麻薬に関する一そう緊密な国際協力体制を確保するということが必要でございます。  以上の見地から、わが国といたしましても、麻薬の一そう効果的な国際統制をはかることを目的といたしますこの議定書に署名いたしたわけでございます。  以上、簡単でございますが、補足説明を終わります。
  24. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。     —————————————
  25. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 再び国際情勢等に関する調査議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  26. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私は、外務大臣に、日本経済協力の問題につきましていろいろと伺いたいと思っております。  これは非常に大きな問題でございまして、全部のことにわたって質疑申し上げるということは、時間も許さないことでございますので、その大体の傾向につきましてと、それからその中で、特に私が経験いたしました問題点、それが非常にささいの問題のように見えていながら、実は、日本海外経済協力に非常に欠けている点があることがそこに露骨に出ているのではないか、これに対して外務大臣の御所見を伺い、さらに、御指導をお願いしなくちゃならない、こう考えまして、御質問申し上げるわけでございます。  私は、昨年の秋に、七二年版経済協力白書として、これは通産省から出たものでございますが、これによりましていろいろ情報を見たのでございますけれども、まず問題点といたしまして、日本からの資金の流れ、これは七一年度の実績は二十一億四千百万ドル、前年度に比べまして一七・四%の増加、これはまあけっこうなことでございます。それから総額ではDAC加盟十六カ国の中でアメリカに次ぐ第二位の金額、これもまあたいへんよさそうに見えることでございます。しかし、政府の開発援助というのはほんとうは非常に少ないのでございまして五億一千七十万ドル、これはGNP比較が〇・二三%、こうなっております。DACの平均は〇・三五%でございますから、日本は経済大国でありながら、その中の、十六カ国の中の十三位というような低位にある。これは決して喜ぶべきことではございませんで、やはりもっともっとこの〇・三五%に近づかなくちゃなりませんし、全体の目標はたしか〇・七%でございますか、もっと高いものでございますので、少しでも早い時期にそこに到達するような努力をしていただきたいと思います。こういうふうに、DACの平均の中に日本が占めるのは、平均が〇・三五%に対して日本は〇・二三%というような低い比率が出ているというところは、どういうところにこういう問題点があるのでございましょうか。どうしてこういうところにもっとたくさんの日本の資金が流れなかったか。もちろんきょういただきました四十七年度外務省予算額では、四十八年度経済技術協力拡充強化ということを一番重点政策として予算を組んでいらっしゃる、ここでいま拝見したところでは、努力のあとは見られるのでございますけれども、問題は、数字とか、外務省発表によるいろいろいいことを言っていらっしゃるような表面の作文的な報告だけでは、実際の内面はそれに一致していないことが多いというようなことを聞きますので、それで、このDACの十六カ国の中でどのぐらい、最下位を占めるというようなことは、これはたいへん困ることでございまして、今後これをもっといい成績に上げていくのにどのような具体的な方針を考えていらっしゃいますか、それを伺いたいと思います。
  27. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御指摘のように、援助総額といたしましては、アメリカに次ぐ第二の地位を確立し、UNCTADで採択されましたGNPの一%を援助に充てるという大きな道標から申しますと、〇・九六までいっておりますから、額自体から申しますとほぼその額に近づいてきておりまするわけでございます。けれども、御指摘のように、質的な検討に入りますと、政府援助額が過小であるということは御指摘のとおりでございまして、一九七一年にGNPの〇・三%でございましたが、七二年を振り返ってみますと、それが〇・二二になっておるのでございます。つまり、GNP全体が非常に伸びました関係で、それに十分追いつけなかったという始末になっておるわけでございまして、〇・七%というところまで持っていくにつきましては、たいへんな努力が要るわけでございます。その間にずっと日本自体のGNPも伸びてまいるわけでございますから、たとえばことしの経済見通しでまいりますと、GNPが百十兆と仮定いたしますと、ここで四、五千億ドルがんばらないといけないといけないということで、それは日本の財政計画全体の組み直しを必要とするぐらいの大きな課題になると思うのでございまして、したがって、私どもといたしましては、財政計画を策定され、あるいは予算を見積もられる場合におきまして、対外援助というアイテムを特掲していただきまして、これに力点を置いた予算をお願いするように、これから鋭意努力してまいらなければならぬと考えております。事柄は、たいへん困難でございますけれども、鋭意そういう方向に努力してまいらなければならぬと決意をいたしておるわけでございます。  これは、額の面からでございますけれども、さらに、条件から申しますと、金利その他の条件が、これまた御指摘のように、他の先進国と比べまして相当まだ遜色があるわけでございまして、これは予算に計上いたします政府援助をふやすばかりでなく、輸銀あるいは海外協力基金等に対する資金の手当てにつきましても御配慮をいただきまして、もっとソフトな条件援助ができる体制をつくらなければならぬわけでございまして、そういう方向に、御指摘の趣旨を踏まえまして努力してまいるつもりであります。
  28. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 日本は経済成長が非常に速く、そして率が高いので、全体のGNPの総額が上がっていく。その中の、世界的に約束している一%に到達する努力、これは金額からいえば決してやさしいことではなく、それに対して懸命な努力をなさっていらっしゃることは、数字の上からあらわれたのを見ましても、わかります。しかし問題は、日本経済協力というのは、自分の国のことをまず考えてやっているようにどうも見えます。ほんとうに効果的な経済協力というのは、援助を受けるほうの側の自主性というものをほんとうに尊重し、それから援助を受ける、いわゆる開発途上の国というのは経済的には非常に劣っているかもしれません。文化的にも非常に後進であるかもしれません。しかし、それらの国はそれぞれ自力をもって立ち上がろうという意欲に燃えているのでございましょうし、それぞれのプライドというものは人一倍持っている国々ではないかと考えられます。そういうような国を、日本経済協力によって、これをほんとうの日本の国の友だちに獲得していかなければ、ほんとうの目的というものはないと思います。それは単なる金額とかいうことよりも、ほんとうに相手の国の人々が喜んでくれたのか、そうして、日本に対してほんとうに、お互いにさらに親近感を増して協力していこうという気持ちになっていってくれているかどうか、こういうところに非常に問題点がございますが、それがどうも日本経済協力では欠けているのではないかと私は思うわけでございます。それは特に、この発展途上国というようなものの情勢全体の見渡しというようなものを十分につかんで、そうしてそれに対しての問題点を指摘して、それに対して日本の協力というものを見合ってしていくということが、まずなされなくちゃいけないので、日本の都合がこうだとか、ことに日本援助は民間の援助が非常に多いので、それがややもすれば自分の国の利益のために、あるいは自分の国のもうけのためにさえやっているというようなことを、今日非常にたくさん世間で言われるようになった。これは、これだけたくさんのお金を使っていながら、実に日本のために不幸なことだと思います。これは、今度外務省のこの予算を大いに張り切ってお取りになって、これをお使いになるわけですから、その面から言っても十分に相手国とほんとうの経済協力、また、平和を建設するための協力、それから南北問題の解決のための大きな新しい形勢というような、こういうところに着眼してやっていただかなければならない。  で、私は、この資料の中で見ますと、発展途上国の経済成長の率が国際開発戦略の目標六%に昨年度はとどまった。前年度よりちょっと減っているというような事情でございますから、発展途上国の経済成長というのは決してあまりいい状態であるとは言えないわけでございます。そうしてその一方には、人口爆発という大きな問題がございます。これはもう発展途上国だけではなくて、先進国、地球全体の問題でございますけれども、特に経済成長していかなければいけないときに、この人口の爆発というような問題に直面してくるということに対しては、日本としても非常に重要視して考えていかなければならない問題だろうと私は考えております。特に、経済の成長がどのくらいになったかということを見るときの一つの尺度として、一人当たりのGNPがどのくらいになったかということを見るわけでございますけれども、それが七〇年度はGNP一人当たり二百四十ドルというのが、昨年度は二百四十七ドル、七ドルだけ上がったに過ぎない。こういうようなことが報告されているわけでございます。それから所得分配のひずみが非常に多いということも報告されております。これはやはり、発展途上国の社会問題として大きな問題であって、たくさんの日本から資金が流れていくときには、この点をよほど考えませんと、流れる資金がいやが上にもこのひずみを大きくしてしまう。この発表の数字によりますと、総人口の二〇%を占めるものは高所得層であって、そのシェアは所得の五七%をとっている。こういうようなことは、これは非常に大きな問題だと思います。また、総人口の二〇%に当たるものが最低所得層で、そのシェアはたったの五・七%にすぎない。これは、発展途上国に多くある、その貧富の懸隔がはなはだしいということ。そしてこの二〇%のこんな低いシェアしか持っていないような層が教育の問題、失業の問題、栄養不良の問題、こうした問題に悩んでいる。こういうことに対して日本がほんとうに分析、着眼して、そういうところへ手が伸びるようなそうした援助ということ、ここに重点を置くことが大切じゃないか。数字の上だけで成績がどうなったかということじゃなくて、ほんとうにこういうところへ手が届いてこそ、やはり日本というものに対する信頼感というものがウエートを増してくるのじゃないか、私はこういうふうに考えておりますので、その問題につきましては、特に政府でもいろいろ御指導していただきたいんでございますが、どういうようにこういうことについて考えていらっしゃるか。いま、私が御質問いたしました全体のことに対するお考えと、それからその中で特に人口爆発の問題に対してはどういうふうに考えていらっしゃるか、こういうふうにお答えいただきたいと思います。
  29. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりでございまして、経済協力、経済援助の問題を、相手、受益国の立場になって考えていかなければならぬ。日本の都合によってやるべきではない、仰せのとおりでございます。  御案内のように、戦後わが国は、国内経済におきましては、生産第一主幾と輸出第一主義を通じまして、経済の自立をいち早く達成せにゃならぬということできたわけでございまして、これが国内的にも大きな批判のまとになって、政策の転換が要請されておりますように、経済協力の面におきましても、わが国が輸出第一主義の国といたしまして、輸出に対する先行投資的な性格のものであるという非難を受けてまいったことを、私どももよく承知いたしております。国内が福祉重点、生活中心の経済に変えなければならぬように、経済協力面におきましても、相手国の立場に立った、ほんとうの意味の援助政策に切りかえなければならぬという認識におきまして、加藤委員の御指摘のとおり私ども考えておるわけでございます。また、それが日本はできる力を持ってきたというように思いますがゆえに、経済援助政策の推進に当たりましては、いま御指摘のとおりの精神で当たっておるわけでございます。  たとえば、援助資金をひもつきにする——与えた資金で物資を調達する場合に、日本から買わなければならぬという、そういうひもつき援助というものを漸次やめてまいりまして、もう政府としては全部やめてもいい、完全にアンタイの援助をしてもいいだけの腹をきめておるわけでございます。方向として、そういう方向に相当見るべき改善を加えていくつもりでございますし、また、それが私はできると確信しております。  それから、第二点といたしまして、いま御指摘のように、そのようにして援助してまいりましても、後進国のいま持っておる問題というのはたいへん深刻であり、複雑であり、とりわけ人口の増大、所得格差の拡大、病気その他いろいろな理由でなかなか経済が自立していくことがいつになるのか、全く絶望的な部面がないとは言えぬと思うのであります。そういうことをどのようにして打開していくかについての計画能力、行政能力、そういうものにも恵まれていないということでございますので、力点は、経済援助の額もさることながら、やはりそういう受益国の国々の人間の能力を開発していくための、いまでいうところの技術協力の面は、相当これから力点を置かなきゃならぬことだろうと思います。ところが、これもまた、先進国と比較いたしまして、一番見劣りのする部面でございます。われわれもやっておりますけれども、規模において、内容において、まだとてもこれは経済大国の名に値しないものであることは、私ども十分承知いたしておるわけでございまして、あくまでも受益国本位、受益国の立場に立っていろんな形での援助をくふうしていくという親切な態度に終始していきたいと考えております。  人口の問題は、確かに後進国が当面する最大の問題だと思うわけでございまして、アジア諸国におきましても、この問題の究明を組織的にやらなければならないというので、エカフェを中心委員会が設けられまして、日本におきましても、この間会議があったわけでございまして、この問題にどうして接近していくかということについて、寄り寄り関係国とエカフェの場を通じまして、共同の検討に入っておるわけでございます。事柄は、たいへんむずかしい事柄でございますけれども、回避できない問題でございますので、今後一そう精力的にやってまいらなければいけないと思います。こうすればいいという簡単な御答弁がいまの段階ではできる性質のものではございませんので、そういう方向で検討を始めて、これを精力的に進めてまいるということだけ、ひとつお聞き取りを願いたいと思います。
  30. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 ただいまの大平外務大臣の御答弁の中でも、日本援助についてとかくの批判があるということをお考えになって、今後ひもつき援助はもうやめる決意であるというこのおことば、これは非常に大切だと思います。どうかこれはもう必ずそういう方向で御指導なさるようにお願いいたします。  それからもう一つは、低開発国の問題、人口の増加の問題でございます。これは世界じゅう、先進国といえども、この問題に対しては、非常に今日は地球全体の人口が、どれだけ包容できるかということ。これは物資の問題、そしてナチュラル・リソース、天然資源の開発の問題というようなことが、もう底をついているのじゃないか、つき始めているのじゃないか。それから今日の高度の文化生活によって廃棄物というものが、非常にその量を年々増していって、その処分をどうしたらいいか、こういうような問題が、この人口の問題と密接に結びついておりますので、将来の地球全体が、われわれ人類がどうやって生き延びることができるかというような問題にまでこれを突き詰めて考えなければならない大きな、深刻な問題としてこれは考えていただきたいと思います。日本でもだんだんと御理解をこの節は高めておりまして、国連の人口活動基金も、年々外務省からこちらのほうに予算をとっていただきまして、ことしは、四十八年度予算では二百五十万ドルとっていただいております。これはたいへんけっこうなことだと思いますが、決して多過ぎるというわけではございませんです。これはどんなふうに使われているか、私はその内容のこまかいことにまでタッチしておりますものですから、これは非常に有効なお金として使われてまいりますので、今後ともこういうものはもっともっとふやす傾向で、来年は五百万ドルぐらいいただきたいという要求が出ているということも、どうぞ御記憶願いたいと思います。  それからこれは、ほかの国が非常に寛大にこのお金を出してくれるのでございます。それで日本でも、経済大国としての割合から言って、やはりこれは相当たっぷりお出しになって、非常に有効に使われるお金であるということを御承知いただきたいのでございます。  私、いまそこに「世界と人口」という資料を皆さまに御配付——大臣には差し上げなかったか——これは差し上げますから、どうぞごらんになっていただきたいのでございますが、アメリカなんかでも、ニクソン大統領が三年前に人口に関する教書というものを、非常に具体的なものを出しておりまして、それ以来、人口増加とアメリカの将来に関する委員会というようなものをロックフェラー三世——この方はもう戦争前のほんとうに初期から人口問題、家族計画に関心を持っていらした方で、この方が委員長になって、三回にわたる報告を出していらっしゃいます。そしてそれは、一つの結論をそこで出して押しつけるものではなくて、黒人あるいは若い学生、あらゆる階層の人たちのあらゆる意見をそこに網羅して、そしてそれをみんなで検討していって、それでよい結論を出すというようなやり方で、押しつけがましいやり方でないというところに非常に特典があるのじゃないかと思います。  でございますけれども、特にこの問題になっております開発途上の国には、この問題についての指導ということが非常に大切でございます。これは大切でございますけれども、ややもすると、おまえの国はあまり子供を産み過ぎるぞというように聞こえるみたいで、ちょっと、そういうようなことを言うのも感情を害するのではないかというように、非常にそこのところに注意が必要なんでございます。で、私もそういう経験をたくさん国際会議でいたしておりますから、それはよくわかるのでございますけれども、今日の段階になりましては、そういうことは遠慮すべきことではなくて、これはお互い地球に生存する人類全体の問題として、遠慮なく考えていかなくちゃならないという観点から、強くこの問題は推進しなくちゃならないと思います。  特に、日本の立場というものは、これはたいへんいい立場をとっております。それは私がいまここでるる申し上げることは必要ないと思いますけれども、日本が徳川時代から明治の初期まで三千三百万とか三千五百万とかいう人口で、少しもふえもせず減りもせずというような人口を持っておりまして、それから非常に徐々にしか日本は人口をふやさなかったわけでございます。そうして、日本が工業国として立国を始めたそのときの人口の成長率と、それから資本の蓄積力、こういうもののバランスというものが、いつも資本の蓄積のほうが人口の伸びよりも上回っていたということが、日本の経済的に非常に大きな点だということを人口問題の学者の方々が説明していらっしゃるわけでございます。これは全く理のあることでございまして、開発途上の国にはこういうことがまだあまり理解できていないかもしれませんけれども、日本も、そういうところを通ってまいりました時分にはいろいろ苦労をしましたとか、戦争前にはずいぶん産めよふやせよの国策でやりましたけれども、ああいう戦争をおっぱじめてひどいことをいたしましたとか、自分の失敗をも含めて指導するというやり方が相手国に納得してもらえるのじゃないか。そんなことで、この国連人口活動基金とか、それから日本における特に人口問題、家族計画の技術指導というものを私は非常に重要視していただきたいと思います。  で、きょう、この予算のお説明のこれを拝見いたしましたら、なかなかそういうことについてよく考えていてくださるので、これはたいへん心強いと思いましたが、日本の場合、開発途上の国から家族計画に関する、あるいは人口問題に関する技術協力の面で技術指導する場合には、海外から研修員というものが送られてくるわけでございますね。その研修員というものは、これは非常に大事な役でございまして、人口問題がどうだとか、家族計画がどうだとか言っても、結局、その技術を指導する人が開発途上の岡でどういうふうに働いてくださるかということによって初めてこれは成果を得ることでございまして、もしそれがなければ、幾ら口の先で理論だけ言ってみても、これはどうにもならない問題でございますね。  それで、いま日本でセミナーとかグループトレーニングとか、こういうことをやっていてくださいます。なかなか一流の先生方が熱心にやっていてくださいますから、その技術指導の面では満足を得ていると思います。私もそういうところに参加いたしますので、じかに、来られた方々とも会話をいたしまして、たいへんに皆さんに喜ばれているということを私は知っております。ところが、日本研修員に対する待遇というものは——これは大臣、御存じでございましょうか。たいへんにみみっちい待遇をしているのでございますけれども、これは一体、どういう根拠でこういう待遇をなさるのか。研修員の方たちは、普通に研修員としていらっしゃる方たちというのは、それぞれ、送られてくる国のほうでは保健所の所長とか、あるいは大学に学んで博士号を取っているとか、そういうような教育程度、ある程度社会的地位を持った方が送られてくるわけです。そういう方が勉強するのでなければほんとうに役に立ちませんので、来る方はそういうクラスでございます。その方々の滞在費というものは、一日十一ドル、三千三百円でございます。で、それは国際センターとかいう——どういう名前でございますか、市谷にございますそういうものにおもに宿泊をしていただくのでございますが、その宿泊所というものは、決してたいへんけっこうな宿泊所じゃございませんで、その宿泊料は一日一千百円、食費が全部で一千円というようなことでございまして、外へ出るタクシー代にもこと欠くようなわけでございます。私は、その宿泊所の部屋も見ましたし、それから食堂に行って食事もいたしてみましたけれども、朝二百五十円、昼三百五十円、夜四百円、同じメニューで、ほんとうに無味乾燥な食事を出されたのでは、一方で一生懸命勉強をしていただいても、休養の時間に、日本というのは何というけちな待遇をしてくれるのだろうという気持ちが始終研修員の方々の心の中に起こってくるのではないか。最後に、結論としてどんなふうでしたかというような話をしますと、結局、この待遇があまりにもつつまし過ぎるので、どうもこれが非常に不愉快であったというような発言がたいへん多いというようなことを聞いております。これは、ことばを私少し慎んで申しましたけれども、ほんとうに露骨に言えば、日本に対する反感にさえなっている。そういうふうでもって国へ帰られたのでは、これは友だちをつくらないで、恨みを持った人をまた帰してしまうようなことになるので、これはたいへんにまずいことだ。それがたいへんお金がかかることなら別ですけれども、わずかなことでこんなことは改善できるのでございますから……。  四十八年度は、研修員受け入れ事業の拡充費と・いうようなものをここへ出していらっしゃいますけれども、その拡充費は人員だけ拡充していらっしゃいますね。それで、これは、この滞在費のほうも拡充なすったのでございましょうか。どうでございましょうか。
  31. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) お答え申し上げます。  御指摘のように、研修員の待遇の問題は非常に大事な問題でございますが、片や研修員人数をもっとふやすという問題も、これまた非常に緊急な問題でございまして、年によって、あるときは人数のほうに重点を置いて予算の要求をするという必要もございますので、待遇の改善、人数の拡張ということの両方をねらうということもなかなかむずかしいものでございますので、今年は遺憾ながら待遇の問題につきましてよりも、むしろ人数のほうに重点を置いて予算の拡張をはかったというかっこうでございます。ただ、確かに御指摘のように、一日の日当というのは非常に少なく、十一ドルということになっておりますけれども、それからまた、センターの宿泊施設も、まあ一流ホテル並みとはなかなかまいりませんけれでも、極力そういうことで、メニュー等もなるべく変化をつけるように努力してやっております。諸外国の例と比べましても、それほど劣悪であるというようなことは申せないかと思います。  それから、ある程度身分の高い人が参ります場合には、一般の研修員の上に、高級研修員という制度がございまして、この人の場合は、そういう場合には、一般よりも相当高い日当を出せるということになっておりますし、また、国際センターに泊まり得ない場合には、それだけの必要に応じた経費を支出することもできるようになっておりまして、極力その待遇改善には、現在でも努力をし続けておるということでございます。
  32. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 ただいまの局長の御答弁は、私いただけませんです。それは、そういうような外務省予算のつくり方というのは根本的に反省していただきたいんです。ここでもって、今度研修員、いままでより二百六十五名ふやしたと、だからこういう事業をよくやっているというようなていさいをこんな形でもって示そうとなさる、それは実がないということなんです。さらに、二百六十五名よけいに研修員を呼んで、それだけよけいの方が不愉快な思いをして帰られるということは、これは日本外交として得になることですか、どうでございますか。
  33. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) まさに御指摘のとおりでございますが、予算の要求とそれから査定との関係で、いろいろワクなどをつけられますと、結局折衝をしている間に、どちらかをがまんするという必要に迫られるというような事情も御了承いただきたいと思います。確かにそれだけの人数の人間が不快な思いをして帰るということは、プラスではないと思いますので、今後ますます待遇改善には努力を続けていきたいと考えております。
  34. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それでは、ここでもって、そういうふうに予算をここで、委員会でどうこう動かすことはできませんから、ここに予算委員羽生先生もいらっしゃいますから、予算委員会のほうで大いにやっていただくように私お願いいたしますけれども、いま外務省としてできることは、何かの予備費があるでしょう。それでも少し何とか、書籍購入費とか、研究費とか、何かの名目でもって、十一ドルしかないというのに、そこに何とか上乗せができないものですか。それは誠意の問題だと思います。これは国連の普通のレベル、水準がどうなっているかということを御承知でございましょうけれども、この程度のクラスの方に対しては、一日の滞在費、日当も含めて二十ドルから二十五ドル支給しておりますよ。日本は、外務省がいろいろ公務員の出張費というものをおきめになるときに、一五%増というものをおきめになるときに、ニューヨーク、ワシントン、シカゴ、ジュネーブ、パリ、ロンドンとか、八都市をきめていらっしゃる。東京というのは、その八都市の中に入って、最も暮らしにくい都市でございましょう。そこへ来るのに、十一ドルしか出さないで、人数だけふやしたらそれでいいというような、そういう誠意のない考え方、これは私どうしてもいただけないんです。何か予備費か何かつけるということは、これ局長の裁量でできないもでございましょうか。
  35. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) 申しわけございませんが、私の裁量で予備費をつけるというようなわけにはまいりませんが、滞在費十一ドルのほかに支給しますのは、たとえば滞在一カ月未満の場合の支度料として一万円……。
  36. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 時間がございませんから、それはわかっておりますので、よろしゅうございます。
  37. 御巫清尚

    政府委員(御巫清尚君) その他いろいろ支給されておるわけでございます。
  38. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 じゃ、大臣にちょっと最後に伺います。  そういうやり方というのは、一体よろしいんでございましょうか。何か大臣の指導の面で、これ以上、こういうような日本が不評を買うような協力というものは、もうこの際やめて、翌日からもっと方法をおかえになるということはできないものでございますか。わずかのお金でございますよ。国際水準にも達しないような待遇というものはよろしくないと思います。
  39. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあ先進国——ドイツ、フランス、英国、アメリカ等々、同種のプロジェクトと比較いたしますると、まあ局長の言うとおり、一応日本の九万九千円という一カ月当たりの滞在費は、決して遜色はないわけでございますけれども、しかし、御指摘のように、なぜ日本が住みにくいか。この表づらだけで見ておって、遜色のない金額を提供しておるからいいというわけのものでも、これは御指摘のとおり、私はないと思います。もう少しこの表の裏に隠れたいろいろな事実関係をもっと精査いたしまして、せっかく日本に来られた方々が、満足をもってお帰りいただかなければ何にもなりませんので、そういうくふうをひとつ掘り下げてやってみたいと思います。  きのうも、実はこういうお世話をしておる御婦人の方が一人お見えになりまして、切々と、いま加藤委員が御指摘になったようなことを訴えられたわけなんでございます。それは滞在費そのものではなくて、日本の官庁その他のそういう方々に対する接待のやり方が親切味を欠いておる、どうも虫がおさまらぬというケースをずっと指摘されて、注意を喚起されたわけでございまして、そういうこともあわせてひとつとくと、その方々がせっかく日本に来られて、それだけの成果が、実りがあったという結果になるように、われわれもくふうをしていきたいと思います。
  40. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 終わります。
  41. 羽生三七

    羽生三七君 さきにベトナム、続いてラオスに停戦協定が成立したことは、まことに歓迎すべきことであります。  ところで、衆議院の予算委員会で、防備力の限界とかあるいは安保問題、盛んに論議されたようでありますが、きょうは、私、時間の関係で、ほんのわずかな時間しかありませんので、十分な論議ができませんが、さきに日中の国交が回復でき、続いていま申し上げたようなベトナムに停戦ができて、これからアジアの新しい安全保障のあり方とはそもそもどのようなものなのか、こういうことに対する日本の選択の時期に入ると思います。  ところで私は、きょうは、その安保の根本問題を論議する意思はありません。問題は、このアジアの安全保障を、日本を取り巻く安全保障をどのように確立すべきかという、そういう前提に立って考えた場合、たとえば日中の平和条約締結等が当面問題になってまいります。とりあえずは、航空協定その他の諸協定があるでありましょうが、根本的には、日中の友好平和条約というものが必要であろうと思います。その場合に、政府としては、日中不可侵条約をあわせて考えるべきではないかと、つまりこれは日ソにも関係いたします。これはあとから申し上げますが、そういうつまり日本の安全、日中国交回復後、ベトナム和平後のアジアにおける安全保障という場合に、ただ防衛力を強化するということ、あるいは安保は堅持するということ、そういうことだけでいいのかどうか。それから一歩出て、やはり日本を取り巻く周辺諸国との関係をどのように改善していくかということ、この問題が私は非常に重要な問題になると思います。これはまあASEAN諸国の動きもありますし、あるいはオーストラリア、ニュージーランド等の最近の動きもありますけれども、まあそれらのことはきょうは時間の関係上別にしまして、日中平和友好条約の場合にあわせて不可侵条約を取り結ぶべきではないかと考えますが、その時期はとにかくとして、基本的にそういう問題をお考えになっておるのかどうか、この点からお伺いいたしたい。
  42. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 安保条約を堅持するとか、あるいは自衛力を整備していくという前に、それよりも大事なことは、いま羽生委員が御指摘のとおり、各国との間の友好関係を増進していく、信頼を高めてまいる、そういう平和外交の営みのほうが大事だと考えております。日中の間に国交が正常化になったということは、アジアの安全保障の上からいきまして非常にこれは大事なステップであったと考えております。で、私どもは、せっかくこういう対話のルートができたわけでございますので、さしあたっては、緊急を要する問題としては、実務協定締結を急ぎたいと思っております。それで航空協定は、すでに先方からの案——こちらの案の提示に対しまして先方からの反論もございまして、今月末から具体的な折衝に入りたいと考えておりまして、経済、漁業その他、民間協定でやっている部分をできるだけ早く政府協定にもっていくということを、とりあえず急ぎたいと思っております。それからいま言及された日中平和友好条約でございますが、この点は、すでに去年の九月に発出されました共同声明の中にも、御案内のように、いわゆる平和五原則の中身がうたわれておるわけでございまして、相互の不可侵ということがおごそかに宣言されておるわけでございまして、これを、そういう政治的な声明の域を越えて、平和友好条約に目六体化して盛り込むかどうか。これは確かに、御指摘のように、平和友好条約の一つの大きな交渉上の問題になるだろうと私は思っておりますが、すでに、少なくとも相互不可侵という原則はもう相互は誓い合ったということは間違いないことでございますが、日中の間に不可侵の関係ができておるということは申し上げてもちっとも私は差しつかえないことであろうと思っております。で、平和友好条約について、それをさらに具体的なものにするかしないかの問題は、これは両国の間で友好条約締結交渉の段階で話し合っていきたいと考えます。
  43. 羽生三七

    羽生三七君 共同声明の中にその種の精神が盛られておることは、これは事実でありますが、ぜひそれを平和条約締結の際に何らかの形で盛り込むよう御努力をお願いしたいと思っております。  続いて、これと関連することですが、じゃ、中国とだけそういう関係ができればそれでいいかということになると、必ずしもそうではない。たとえば、ソ連についても、いままだ平和条約はできていない。これは言うまでもなく、領土問題がありますけれども、これは早急に片づくとは考えません、かなり時間がかかるでしょう。そうなれば、かりに一方で、日中で平和条約の中に不可侵が盛り込まれたとして、ソ連はそのままにしておくかということになると、私が私用身の考えから言いましても、まあ国際法上の問題でしょうが、平和条約締結前でも、日ソの間に不可侵条約を結ぶことは、必ずしもこれを妨げるものではないと思います。ですから領土問題がここ半年、一年の間に片づくとは思わない。したがって、平和条約は長引くかもしれません。片方の日中の間の平和条約は、実務協定が先行しますから、そうすぐというわけではないけれども、しかし、これはそんな予見することもできないほど遠い将来ではない。片方にできて片方にできないということは問題であろうと思いますので、もし、日ソに平和条約ができない場合でも、日ソ不可侵条約をあわせて、日中とのバランスの意味でも、また、バランスということばは語弊がありますが、日本の真の安全の意味でも、これを考えられてはどうかと思います。このことは、何かきのう新聞を見ますと、財界の大ものが、日本とアメリカ、日本とソ連、日本と中国——日・米・中・ソ等の集団安全保障条約を考えて、自分が大いにこれで働いてみたいなんて言っているのがどこかの新聞に出ておりましたが、これは一般的な常識だと思います。私は、いまここで安保廃棄とか、そんなことは言いません。そうでなしに、それに先行する一つのアジアの安全保障の条件を整える意味で、まず日中の平和条約の際にこれを取り結び、あわせてソ連においても同様なことを考えていく。これは実は、さきの福田外務大臣に、私この問題かなり詳しくやりましたときに、全く異議がないと福田さんは答えられておるわけですね。時期等は、これは別の問題ですが、原則的に全く賛成であると言っておられました。これは、ぜひそういう問題を考えていかないと、あとからベトナム問題に触れますけれども、この日本の安全保障とは一体そもそもどのようなものなのか。安全保障の論議が実は安保論議になっておるわけです。安保と安全保障とは不可分でありますけれども、もっと大局的な次元での安全保障ということを考えた場合に、いま申し上げたような問題は、私はこれは必要な前提条件になる。そういうことを除外して、単に防衛力のみの限界だけを論議しておってもこれは始まらぬ。衆議院は衆議院で、防衛力をこれ以上ふやすなという意味の、これは強い要望からああいうことになったのでありますが、私は、ここではそれも大事であるが、日本の安全を守る新しい安全保障のあり方を、みずから選択して、実行に移るべき時期にきておるのではないか、そう考えますので、日ソの問題についても、ひとつあわせて御見解を承りたい。
  44. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおり、私ども日ソの間に平和条約締結する、日中の間に平和友好条約締結するということの態度を、すでにそういう立場をとっておるわけでございます。そして、どちらが先でなければならないなどとは考えておりません。できるものから早くできればそれでいいと考えておるわけでございます。前外相が言われたとおり、私どもにおいても異論はないわけでございます。一九五六年の日ソ共同宣言の中にも不可侵の原則がうたわれておるわけでございまして、これを平和条約の形でさらに固めていこうということに対しまして、私どもは異議がないわけでございまして、鋭意その方向で努力していきたいと思います。仰せのように、大きなアジアの安全保障というものを考える場合におきましても、日ソ関係、日中関係というものは、やはり手がたく固めていくことが大事でございますので、そういう方向で私どもも努力をしてまいるつもりでございます。
  45. 羽生三七

    羽生三七君 きょうは時間の関係上、この種の根本的な問題を十分論議しておるいとまがありませんので、ただ要望にとどめて、ぜひ積極的に、単なる、この委員会の進行上、ただことばのはずみでそういう答弁が出たということでないように、基本的なひとつ姿勢として十分堅持して進行していただくことをお願いをいたしておきます。  次に、ベトナム援助計画に関連する問題ですが、私は、このベトナムにかかわらず、ラオスその他カンボジアも停戦がされれば、平和が訪れればそういうことでしょうが、このアジア地域各国に対する援助計画を立てる場合に一番必要なことは、ベトナム戦争に対してとった日本の態度の反省から出発することだと思うんです。ベトナム戦争とは一体そもそも何であったのか、アメリカはもちろんみずからきびしく問いただすべきでありましょうし、また、日本自身も深く反省すべき問題だと思っております。特にわが国とベトナム戦争との関連は、わが国に全く敵意もあるいは侵略的意図も持っておらないそのベトナムに対する史上類例のない残虐な爆撃が、あるいは攻撃が加えられた。飛行機の場合は、現在では、最近ではなかったですけれども、しかし、いずれにしても、そういう激しくかつ野蛮な攻撃が日本を基地として行なわれた、その戦略的な基地になっておった。戦車の輸送も最近まであったと、こういうことを考えると、ある意味では、日本がこれに加担してきたと言われてもしかたがない。それを遂行せしめたものは一体何なのか。日本をしてそうせしめたものは一体何なのか。これは私はほかならぬ安保条約だと思います。これは特に極東条項ですね。安保が戦争の抑止力と、こう言われますけれども、抑止ということの意味がいかにあいまいなものであるかということは、あるいは疑問に満ちたものであるかということは、いまの一例でこれはおわかりになると思う。これは戦争への協力という事実がこれを明確に証明しておると思います。  ところで、大臣も御存じだと思いますが、私は毎朝見て通っているのですが、自民党本部に「祝ベトナム停戦・つぎは復興開発に協力しよう」という横幕がかけられております。けっこうなことですが、はたしてベトナム戦争に対する反省なり歴史的意義、特に日本にとってベトナム戦争とはそもそも何であったのか、そういう反省を十分した上で、さあ今度は経済協力だと、こういうのでありましょうか。悪いことではありませんが、そういう反省なしにこのスローガンが掲げられておるとするならば、再び私は財界ペースの、いわゆる経済協力になって、現にタイその他で起こっておるような反日気分というものを一そう激化する可能性が十分あると思うんです。したがって、これから日本がベトナムはじめ諸国に経済援助協力等をしていく場合に、ベトナム戦争とはそもそも何であったのか、日本がこれに対してとった態度は適正であったのかどうかという基本的な反省なしに、ただドルが、外貨が余っておるから、それを減らすために少し協力してやろうというような、そういう安易な協力姿勢であっては私はたいへんだと思う。この基本的な問題に対してどういうふうにお考えになっておるのか、まずこの点をお伺いしたいと思います。
  46. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ベトナム戦争が日本にとって何であったかという課題は、たいへんむずかしい課題でございます。仰せのように、安保条約との関連で間接的に関与せざるを得ない立場にあったのでございまして、もし、ベトナムから完全に日本が清潔な立場を維持しようとすれば、安保条約の極東条項をはずさなければならぬと、安保条約の極東条項というのは、安保条約の二大柱の一つでございまして、安保条約という一つのまとまった全体の半身を削り取らなければならぬという、重大な日本にとっては選択の問題になるわけでございまして、日本政府は全一体としての安保条約を守ってまいることが日本の国益であるという判断に立ちまして、その結果として、ベトナム戦争に間接的に、反射的に関与せざるを得ない立場にあったわけでございます。したがって、この問題につきましては、日本の立場で考えますと、安保条約にからむ問題として評価していかなけりゃならぬ問題だと思うんでございます。けれども、日本政府は、たびたび申し上げておりますように、全体としてのベトナムの紛争のことでございまして、個々の軍事行動、たとえば北爆を支持するというようなことは申し上げたつもりはないわけでございますばかりでなく、両当事者に対しまして、たびたび早期解決を要請してまいったわけでございます。だからといって、われわれが安保条約との関連においてベトナム戦争との関連を持ったということが消されるわけじゃ決してないと考えておるわけでございまして、そういう立場にある日本として、この問題に対しましては、お説のとおり対処していかにゃいかぬと思うんであります。  そこで、戦後の協力の問題でございますけれども、したがって、日本がいま経済的実力がふえてきたから大いに助けてやろうなんという援助の押し売りをする立場に私はないと思うんでありまして、全ベトナム、もっといえば全インドチヤイナ、インドシナ半島全体の国々から日本に対して御要請がある場合、それが戦後の置かれた困難な立場から十分理解できるものでございますならば、われわれとして応分の協力をいたそうという姿勢で臨んでおるわけでございまして、出しゃばって、援助の押し売りをしようというような立場は、決してとっていないわけでございます。
  47. 羽生三七

    羽生三七君 バンコクにおける東南アジア大使会議に出席した法眼外務次官が、現地で、北ベトナム承認問題については、するかどうかの問題ではなく、いつやるかの問題だと、こう述べておるようですが、外務大臣も同様の見解と理解してよろうしゅうございますか。
  48. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ベトナムの問題を考える場合に、われわれが指針といたしておりますのは、この間、長い紛争、いろんな曲折のあったあとできましたパリ協定というものを頭に置いてやらにゃいかぬと思うんでございます。で、あの協定は、ベトナム人民の主権を尊重して、それから南ベトナムの人民の自決権を認めておるものでありまして、あのベトナムというのが一つの国とは言っていない。一方自決権を認められた南ベトナムの政権があって、それから別に北ベトナム並びに解放政府があるという、たいへん複雑な仕組みになっておるわけでございますが、それがあるがままのベトナムの実体であろうと思うんでございます。したがって、私どもといたしましては、そういう一つの実体を持ったサイゴン政府があるわけでございますので、それと国交を結んでおるわけでございますけれども、そういう制約を持ったサイゴン政府であるということは、遺憾ながら認めざるを得ないと思うんでございます。したがって、一方の北越に対しましては、われわれは接触を持ちまして、何らの前提なく、いろんな問題を率直に話し合う機会を持ちたいと思っておるんでございます。で、いまそういう接触を先方ととっておるわけでございまして、遠からず私は返事がくるだろうと思うんでございますが、そしていわばノンコミッタルなベースでいろんな問題を話し合った上で、北越自体の意向というものも十分明らかにしなければならぬと思います。と同時に、自余の国々、国連の態度、それからいろいろ、われわれが考慮に入れにゃならないいろんな問題があろうと思うんでございますが、そういったいろいろの材料を十分消化した上でこれの取り組み方を考えようというわけでございまして、いつごろどうするという、まだ決心はついていないわけでございますが、とりあえず、そういう接触から始めてみようというのが正直なところ、いまの立場でございます。
  49. 羽生三七

    羽生三七君 わが国がこの戦後処理の場合、これは南ベトナムに対する戦後処理の場合ですね、南ベトナム政府を全ベトナムを代表する政府として取り扱ってきたことはこれは御承知のとおりでありまするが、しかし、現在のこの諸情勢、客観的な諸情勢は、これが消滅したものと私は理解をしております。つまり、南ベトナムが全ベトナムを代表する政府という、そういう、これは協定にも外交文書の中にもどこにもありません。ただそういう方針で取り扱ってきたと、私はこう理解しておるんでありますが、したがって、もうそういうことがいまの、今日の条件下では完全に消滅したものと思われるので、したがって、北ベトナムとの国交樹立に何らの支障は、これはないと思います。したがって、日本としては北ベトナムと国交を樹立して、そして南北ベトナムによい関係が樹立されることを期待しながらベトナムに対処すべきではないだろうかと思う。南北ベトナムに対処する基本的な姿勢というものはそれでいいんではないか。当面やはり北ベトナムとも、これは相手が認めなければやむを得ませんが、相手が歓迎するならば北ベトナムとの国交を樹立して、そして南北ベトナムのよい関係ができることを期待しつつ問題に対処していく、これが基本的な姿勢であるべきだと思うんですが、その辺はどうですか。
  50. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まず、先ほど申し上げましたように、北越との接触を持ちまして、前提なくいろんな意見の交換をしてみたいということは、既往において南ベトナム政府日本が結びましたいろんな条約もございまするし、いろんな関係というものが北とのかかわり合いを持つ上において一体障害になるのかならないのか、北ベトナムの意向はどうなのかということをまず確かめなければならぬと思うわけでございまして、前提抜きで、ざっくばらんに一ぺん話をしてみるというところから始めてみたいと考えておるんでありまして、それに別段の支障がなく、北越のほうも前向きで対処するということでございますならば、明るい展望が開かれてくると思うんであります。こちらからはばむ理由はないということでございます。
  51. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、三宅課長がハノイを訪問して、それらの問題について北ベトナム側の意向を打診しつつ、相手の意向によってはいつでも北ベトナムと国交を持つことにやぶさかでないと、こういうふうに理解していいわけですか。
  52. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 正確に申しますと、相手の意向をまず確めるということ、そしていままでの、既往の南ベトナムとの関係の評価がいろいろ行なわれるだろうと思うのでございます。それを一応十分消化していかなければならないと思います。同時に各国、いまの北ベトナム承認している国、南ベトナムを承認している国、ベトコン政府承認している国、いろいろございます。で、各国の北越に対する態度というようなものも日本は十分参考にしなければならないと思いますから、あなたの言われる北越の意向というものを十分承知すると同時に、各国の動静というようなものも十分踏まえた上で考えさせてもらいたいと考えております。
  53. 羽生三七

    羽生三七君 この問題は、またいずれおりを見て十分お伺いしたいと思います。  ところで、インドシナ援助問題に関連して、先日、来日したワルトハイム国連事務総長に対して、田中総理が、インドシナ経済の人道的援助国連を窓口として一本化することが望ましい。それからもう一つは、日本はこのために国際会議開催の便宜を供与する用意がある、こう報道されたと伝えられておりますが、また同事務総長に対して、国連中心とするインドシナ復興資金にとりあえず予備費から五千万ドル拠出する旨も事務総長に伝えたという、こう新聞には報道されておりますが、このとおりでございますか。
  54. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それは正確でないわけでございます。ワルトハイム総長は、国連としてスタッフを設けて、インドシナについての援助、国際的な援助というものはどうすべきかという点は研究しているということでございます。それでもし国連が、関係当事国ばかりではなく、関係国の理解を得て国連が乗り出す環境ができれば、国連というのは平和維持勢力としての一番グローバルなマシナリーでございますから、そういう状況ができましたならば、日本としても積極的に国連援助計画に御協力を申し上げる用意はあるということでございます。金額を幾らにするというようなことは、コミットいたしておりません。
  55. 羽生三七

    羽生三七君 北ベトナムは、二月二十六日からパリで開かれるインドシナ和平国際会議国連事務総長が議長となることを拒否しておるようです。これからもうかがえるように、北ベトナムは、元来インドシナ問題に国連が介入することを非常にきらう態度をとっております。援助の受け入れについても国連方式を望まないで、むしろ二国間方式を望んでいると伝えられております。また、キッシンジャー補佐官のハノイ訪問後の共同声明にもありますが、アメリカと北ベトナムは、二国間の、アメリカ・北ベトナム合同経済委員会設置して、北ベトナムの経済開発に当たると、こう言っておるわけですね。  政府は、今国会での田中総理の施政方針演説で、アジア・太平洋の国際会議を提唱し、かつまた、一方では、インドシナ援助国際協力のワク組みの中で行なう旨を再三表明しておられるわけです。現在では、この両者がからみ合っておるわけです。国際会議とか、国際的な関係というのと、二国間の方式というものがからみ合っておるわけです。しかし、実際問題としては、この援助北ベトナムの受け入れる方式でいくことが望ましいと思うのか、北ベトナムのその態度から見て、あるいは国連中心援助、あるいは多数国間の援助、これがいいとお考えになるのか。なぜこれを私がお伺いするかといいますと、北ベトナムは必ずしも国連方式、あるいは多数国の共同方式というものを、あまり歓迎しておらないような節が見受けられるので、その場合に、私はどちらがいいという判定はつきかねます、これは北ベトナム自身の意向もあることでしょうから。この場合は、日本としては大体どういう方向を考えておられるのか、この点を承っておきたいんです。
  56. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 諸般の事情は、ワルトハイム総長もよく知っておりまして、非常に用心深い表現で、国連は、もちろん北ベトナムをはじめ当事国の十分の理解のもとでやらないと、これはできることではないんだと、非常にわれわれとしては、国連の当然の機能としてやらなきゃいかぬことについて、一応の用意はしておる。しかし、これが実を結ぶに至るかどうかという点は、当事国がこれを受け入れるかどうか、それから世界の祝福を受けるかどうかという点にかかっておるのであって、いまそういうことを検討しておる段階だということでございます。  で、田中総理の言われたのは、いま国連が、そういういろんな手順を経て、国連が乗り出して実のある仕事ができるようになるというのであれば、国連を通じてわれわれは積極的に貢献していく用意はありますよということを申し上げたわけでございます。  で、私ども日本政府としては、要するにあそこの復興計画というのは、よく一国のなし得る仕事ではないわけでございまして、世界の理解と祝福の上に立ってやらなきゃとてもできる仕事ではないわけでございますから、何らかの国際的な、当時国の理解が十分行なわれた上に立った国際的な仕組みができて、そして日本はそれに応分の参加をするという姿が一番望ましいのではないかと考えております。しかしながら、これは基本的なワク組みの問題でございますが、たとえば非常に差し迫った緊急援助をどうするかとか、それからいままでインドシナ半島でいろいろ日本が手がけた、この戦火のためにやんでおるプロジェクトもあったり何かするようなことは、この二国間でそういうことにかかわりなくやって私はいいと考えております。
  57. 羽生三七

    羽生三七君 南ベトナム政府は、法眼外務次官がサイゴンを訪問した際に、平和への移行とともにアメリカからの援助削減が予想されるということで、米国のそれを肩がわりする日本援助を要請したと報道されておるわけです。ベトナム戦争の本質を考えるならば、私はアメリカが主たる責任を負うべきだと思う。日本がみずからの見識に基づく援助以上のアメリカの肩がわり的な援助を引き受けるべきではない、私はそう思います。また、最近の報道を見ておると、アメリカの国内事情も、サイゴン政権への財政的援助が制約されるような状況が、特に上院外交委員会等で起こっておることは、周知のとおりであります。それを日本に肩がわりさせるというような動きも、たとえば、いまのサイゴン政府が法眼外務次官に要求したことも、そのあらわれの一つではないかと思うし、アメリカにもそういう動きが今後起こるのではないかと思う。この間、キッシンジャー大統領補佐官が東京へ来て、田中首相と大平外相と会われたときにも、そういう話が出たのか出ないのか知りませんが、私は、いずれにしてもアメリカの肩がわりをするような意味での責任を日本が負う必要はない。それは主たる責任はアメリカにある。日本日本の見識に基づく必要な援助を与えるべきで、与えるというか、供与すべきで、協力すべきで、少なくとも、アメリカの国内事情に制約されたような意味での肩がわり的な援助の義務はない。アメリカ自身がそれはやるべきことであるということを強く私は言うべきだと思う。また、そういうことをいまアメリカが言ってきているかどうかそれは知りませんが、しかし、少なくとも諸般の事情はそういう傾向が十分あるので、私は日本は毅然たる態度をとってもらいたい。いかがでありましょうか。
  58. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いままで、アメリカから、インドネシア半島に対する援助について、自分のほうのやるべきことを日本に肩がわりしてくれというような要求は一切ございません。法眼次官がサイゴンで話をしたときもそういう話はございません。それからキッシンジャー補佐官と私どもの会談におきましても、一切そんな話はございません。羽生委員がおっしゃるとおり、あくまで日本が自主的にやることでなければならぬわけでございます。ただ、アメリカの新聞を見ておりますと、日本インドネシアの復興に援助の手を差し伸ばしてくれることを歓迎するというような趣旨のことは、高官の談話として出ておるようでございますが、それ以上の日本に対してどうこうしてくれという注文は一切ございません。私どもはそういうことを聞いて、もしかりに、今後アメリカがどう言ってくるのかわかりませんけれども、あくまで日本の自主的な判断でやってまいるつもりでございます。
  59. 羽生三七

    羽生三七君 時間の関係でこれで終わります。
  60. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 まず一つは、先日来日いたしましたキッシンジャー氏との会見が行なわれたわけですが、大平さんは記者会見の際に、おそらく差しつかえない範囲での言明をされたのだろうと私は思うのですけれども、やはりベトナム援助に対して日本がきわめて積極的な姿勢を示しているということを通じて、まあ日本にやはり協力方の要請があったという趣旨のことを記憶しているのでありますけれども、それ以外にどういうことが話し合われたのか、まだ公表できる段階じゃございませんか。
  61. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま、渋谷委員の言われた前段のベトナムの援助という話は一切ございません。それからキッシンジャー氏との会談は、ハノイ訪問、北京訪問の経過並びに結果の話があったので、私ども、それを拝聴したということが一つでございます。それからもう一つは、当然、日米経済関係の調整問題、これはキッシンジャー氏のアジア訪問と関係がないことでございまして、総理大臣から大統領に対しまして開放経済、拡大均衡の方向に世界経済を持っていくことの路線をくずすようなことがあっちゃ困るということと、日本に対する差別待遇というようなことは新聞紙上で時々ちらほら見えておるけれども、それは困りますよという趣旨の伝達をキッシンジャー氏に依頼したということに尽きるわけでございます。  で、キッシンジャー氏のハノイ、北京訪問につきましては、私は申し上げる自由を持っておりません。
  62. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま最後の締めくくりのお話の中に、いま経過と結果については話をする自由を持っておりませんと、こうおっしゃったんでございますね、間違いございませんか。  まあ、実は、私どもとしては、経過はともかくとして、その結果がどうであったのか。米国自体が今後アジア地域に及ぼすいろんな影響力を踏まえた上でのあり方というものを、どういうこれから方針でもって臨むのか、おそらく北京にもあるいは事務所設置というようなことも伝えられているようでありますし、こうしたことからアメリカのアジアに対する考え方も相当急速に、しかも弾力的に変貌していくんではないかということが想像できるわけですね。実はそういうことについての結果が、どういうふうな話し合いの途中でなされたか実はお伺いしたかったわけであります。ただ、その後キッシンジャー氏との会見が終わってからいろいろ取りざたされている話の中で、米軍が台湾から第七艦隊及びいわゆる台湾に駐留している地上軍をできるだけ早い機会に引き揚げるという話であるとか、あるいは去る十八日ごろですか、米国の上院においてフルブライト委員長から指摘された韓国の問題、韓国についてもいろいろきびしい評価を最近しているようであります。で、韓国からも軍隊を引き揚げたいと、こういうような、あるいはその韓国に対する基本的な政策を変更すべき時期に迫られているというような判断を持っているやに伝えられておるわけであります。これも考えてみると、ベトナム戦争の終結、あるいはラオス、カンボジアの平和への足がかりという急速な進展とともに、そういうことが、われわれとしても、これはこのアジア地域の一員として十二分に常識的にも判断できる問題だと思うんです。そうすると、事実上もうアメリカといたしましては、これ以上アジア地域にきらわれきらわれながらとどまっている必要もなかろうし、そうでなくても、いままでの米国の軍事費というものはたいへんな額にのぼるという国内的な問題もございますでしょうし、そうしたことを考えた場合に、今後日本が、よく肩がわりということばが使われておりますけれども、それが適当であるかどうかは別問題といたしまして、そういう一連の最近のベトナム戦争終結に伴ったアジア地域の情勢の急変にあたりまして、やはり日本の防衛力の強化というものがまたぞろ頭をもたげてくる可能性と危険性というものがありはしまいかというふうに、これは私どもの判断でございますから、どんなものであろうかと、国防会議議員の一員である大平さん自身もこうした問題については特に御検討されておると、こういうぐあいに思いますけれども、その辺の、最近の趨勢から、あるいはキッシンジャー氏との——まあ細かい経過、結果についてはお話しできなくても、いろいろそういうような内容というものを踏まえた上で、そういうことは将来においても起きないのか、起こるのかという問題、いかがでございましょうか。
  63. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) キッシンジャー補佐官との会談の内容を申し上げる自由を持っていないと先ほど申し上げましたが、もとより補佐官の報告で私どもが何らの示唆を受けなかったというわけではございません。私どもはそういうことも十分念頭に置いて、日本アジア政策を考える場合の一つの材料として考えておかなきゃならぬと思っております。それ以上御報告する自由は持っておりませんが、ただ明らかなことは、ベトナムの紛争の解決を通じまして、米軍が六十日以内に完全に撤退するということは明らかになったわけでございます。で、そういうことで一体今後の、ポスト・ベトナムにおけるアジアの安全という問題の行くえはどうなっていくのだろうかということにつきましては、あなたと同様に私もいろいろ考えさせられておるわけでございます。これは申すまでもなくアジアの問題というのはたいへん大きな問題であり、世界の中でも一番大きな問題だと思うのでございますので、私どもといたしましては、これはアジア人だけでなくて、米・中・ソその他各国の協力が得られないと、アジア問題というような問題について実のある成果を得るなんということはできないと思います。したがって、非常に精力的に世界各国の意向というものを十分くみ取っていかなけりゃならぬし、各国との間のいろいろな対話をしげく張りめぐらしていかなけりゃならぬと基本的には考えておるわけでございまして、そういう中からアジアの安全が定着する方向に何をしたらいいか、何をしちゃ悪いか、そういう分別をだんだんつけていかなければならぬと考えております。で、それでは日本の防衛力はどうするのかという問題は、すでに答えが出ておるわけでございまして、四次防というものをきめて国会の御審議を願っておる以上に、また新しい日本防衛構想をもって臨むというようなことは、全然考えていないわけでございまして、その点は何らの計画もございませんから、そのように御理解をいただきたいと思います。
  64. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまの御答弁の中にもありましたように、米軍は二カ月以内の撤退はすでに報道されておるとおりでございまして、まあしかし、それ以外のラオス、カンボジアあたりにもまだ米軍が駐留しているという実情があります。しかし、おいおいおそらくアジア地域からもう全軍の撤退ということが決して不可能な情勢ではなくなってきたのではないだろうか。おそらく北京を訪れたキッシンジャー氏にいたしましても、どういう話し合いがなされたか、それはわれわれとして予測もできないことでありますけれども、しかし、これから米中関係の正常化ということを軸にして考えた場合、当然そのベトナム問題を含めて先ほど申し上げたように、台湾からも撤退するであろうし、緊張緩和の一環として、また韓国からも引き揚げるということは当然予想されるのではないか。その点については、政府としては、どういう御判断をお持ちなんでありましょうか。
  65. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申し上げましたように、ベトナムからアメリカが引くということは確実になったということだけが明らかな事実でございまして、朝鮮半島、台湾という点につきましては、情勢が急に変わったというように私どもは理解しておりません。
  66. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 日本がこういう環境の中に置かれていることを考えた場合に、これから果たさねばならない役割りというのは非常にやはり重要だということは、大平さんもとより十分御理解されていらっしゃることだと思うのであります。日本としても、いままで、ベトナム戦争終結に対して、何らこれという役割りも果たさなかったという、そういう前後の事情を踏まえて思いますときに、せめて、今後の恒久的なアジア地域の繁栄と平和ということを願うためには、やっぱり日本が何らかの形で積極的に助言をするなり、あるいは主張を通すなりという、その立場があってもいいんじゃないか。そういう意味で、とりあえず、可能性のある問題としては、米軍のアジア地域からの全軍の撤退を要求するということも、これはやはり必要な条件の一つになってくるんではないだろうか。もちろん日本の基地にまだ残留しております駐留軍を含めてと、こういうことでありますが、この点いかがでございましょう。
  67. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) それはたびたび政府からも申し上げておるとおりでございまして、戦後、アメリカがヨーロッパとかアジアに軍事的なプレゼンスをやったということは、確かにこれは冷戦の産物であったと思います。そうでないなんということを強弁するつもりはないわけでございます心しかし、そういう関係の中から、ヨーロッパにおきましても、アジアにおきましても、いわゆる緊張緩和の芽が出てきたわけでございます。で、私どもにとって大事なことは、せっかく芽ばえかけた緊張緩和の状態をますます確実なものにしていく、できたらこれを定着さしていくということが一番いま大事なことだと考えておるわけでございます。そのために米軍のプレゼンスがじゃまになるか。あるいは、そのなるかならぬかという判断において、いま渋谷さんの御意見とは違うわけでございまして、私は、ヨーロッパにおいてそうであるように、アジアにおきましても、現状をできるだけ変えずに、手がたく守りながら、せっかく出かけた緊張緩和の芽を定着させていくようにやってまいることが賢明ではないかというように判断して、安保条約もそのまま堅持していくほうがよろしいんだという判断に政府は立っておるわけでございますので、米軍の撤退を、全面的な撤退を求めるというような意図は政府にはございません。
  68. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 この問題について、後日またあらためて申し上げたいと思います。  北ベトナムに対する戦後復興ということが先ほども質疑の中にございました。また、これから日本としていろいろくふうをしながら窓口を設けつつ、北ベトナムに対しても復興援助を惜しまないんだという、いままでもそういう御発言がございました。われわれも、過去において、戦災とかそういう痛ましい経験を持っておりますだけに、これは何といっても、考えていたのではいつまでたってもらちがあきません。具体的にいろいろこれからの折衝もされるでしょうし、すでにもう三宅課長を派遣もされていると。そうした一連の行動を通じて、政府としても、これからなし得る方法というものをお考えになるだろうと思うが、先ほど答えの中に、受益国の立場というものを十分尊重しながら、できるだけその要請に基づいた合理的なそういう援助の方法をしたいというお話でございました。それはごもっともだと思うのですが、ただ、われわれとして常識的に——これはもう常識で一切割り切れる問題ではもちろんございませんが、やはり戦後復興というものについては、一体どういうものが必要かということは、われわれも経験者の一員でありますので、こうこうこういうようなものについては早急に、金じゃなくて、やはり実のあるそういう経済援助というものを、あるいは復興援助というものの手を差し伸べる。そういう必要性、またそういうような用意があるというような点についての、日本政府としての外国に対する意思の伝達、あるいはまあ何らかの形でなされていると思うのですが、多少は、要請があるなしにかかわらず——じゃ要請がなかったらやらないのか、まあ紋切り型になるかもしれませんけれども、おそらく政府としては、要請があるなしにかかわらず、せめても、そういう地域に対する先進国の役割りを果たそうという決意でもってお進みになるのじゃないだろうか。  多少具体的に、いま抱負として、どういう形の援助を、これから大体どのくらいの期間——まあ期間といっても、これも一がいにきめるわけにいかないでしょうけれども、短期間の復興援助ではとても——しかも第二次大戦で使われた爆弾の三倍も使われてめちゃくちゃになっているわけですから、われわれ現地を見ておりませんし、もう想像をはるかに越えるような惨状であろうと私は思うのです。そうした地域の復興というのは、相当努力も必要でしょうし、お金もかかるでしょうし、また時間もかかるだろう。いろんなことが考えられます。そうした糸口、突破口を何とか日本として、せめていままでなし得なかったことに対する心づかいといいますか、そういう真心ある何らかの方法というものを急速に進めていくわけにはいかないのだろうか、いけないものだろうか。その具体的ないま考えていらっしゃることを、再確認ということになるかもしれませんけれども、お示し願いたいもんだと、こう思います。
  69. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど羽生委員の御質問にも答えましたとおり、援助の押し売りをするつもりはないわけでございます。先方から要請もないのに出っぱっていくというような考えはないのです。おそらく私は、先方から要請があると思います。でその場合、さしあたっての人道的な緊急援助というようなものが一応考えられるわけでございますが、その次の段階では、その国の、受益国の経済をともかくきょうさしあたって維持していくという場合に、ほかの国がどのような力をかすかという問題があろうと思います。それから第三は、さらに復興開発というような段階があるのじゃなかろうかと思うんです。これは、観念的に考えてそういう段階があるのじゃないかと考えますけれども、現実の事態は、渋谷委員も御指摘のとおり、いま非常にこんとんとしておりまして、そういうカテゴリー別にきちんと仕分けができておるような状態では決してないわけでございます。  それから、これに取り組む国際的な姿勢としても、どういう仕組みが考えられるのかというような点についても、模索の段階を出ないわけでございます。だから、そういうことは、いまからの事態の進展に応じて日本も考えていかにゃいかぬことでございますけれども、さしあたっての問題といたしまして、そういういろいろな国際的な仕組みができる、またもくろみが立つというようなことを待っておったのでは、受益国としてもそれまでは何にも手がつかぬ。こわれた橋は直さにゃいかぬ、こわれた住宅は屋根をつくらにゃいかぬとか、現在全然動いてない工場はともかく動かさなきゃいかぬ。道路はこわれておるから、除隊をされた方々のその日の労賃を確保するためにも、あわせてその道路を直さにゃいかぬとか、いろいろな問題がぼくは出てくると思う。そういう問題につきましては、現地の大使を通じまして、現地政府からそれぞれお話があると思いますので、そういうことを予想いたしまして、四十八年度予算にはとりあえず十億円緊急援助費を組んでございます。しかし、その際、財政当局との話し合いでは、これは一応の腰だめであって、将来もっと要るかもしれませんよ。国際的な大きなプログラムがもっと進行するようになったらまた別だけれども、この人道的な緊急援助のカテゴリーの中でも、これで済まされるような事態ではないかもしれぬから、その際にはそれぞれの財政的措置をこのほかに考えてくれ。それは財政当局も了解をいたしておるわけでございますから、そういうような点は、いろいろ大きな仕組みが考えられる前にも、二国間のベースでそれぞれ考えていけばいいことだと思いまするし、現地の大使もそういう感覚で仕事にはかかっておると私は思います。
  70. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 願わくは、先ほどのお話にもありましたように、それが将来ともにひもつき援助でないように。あるいはまた、タイあたりで見られるような日本商品のボイコット、これも一連の日本に対する不信感というものから起こってきた一つの現象でございますので、やっぱり日本の信用というものをアジア地域において回復するということは、非常に重要な意義があると思いますね。したがいまして、いま申し上げたように、できるだけ早い機会に何らかの方法を通じてこのベトナムに対する復興援助、そういう手を差し伸べるということは当然必要なことであろう。この点についても、重々に綿密な計画をもって強力に推進をしてもらいたい。大平さん御自身も、いままでのいろいろな機会を通じての御答弁、たいへん積極的な姿勢を持っておられるので、どうかそれを最後まで貫いてほしい、こう思います。  これに関連いたしまして、申すまでもないことなんですが、特に南、後進地域の国に対して日本が手を伸べなければならない国というものは、やっぱり非常に多いと思うんです。少なくとも私がいま頭の中にある国柄を見ましても、インドにいたしましても、バングラデシュにいたしましても、スリ・ランカにいたしましても、たいへんな窮状でございますね。あるいは内乱という、そういうような突発的な国内情勢の急変というものにも常に不安感を持たなければならない。かてて加えて、生活程度というものはきわめて低い。おそらくインドネシアやあるいはあの周辺の地域にも、これは共通した問題がございます。また、広く目を広げてみれば、中南米あたりについても同じようなことが言えるかもしれません。いままで日本が非常に信用を失墜した経済援助のあり方というものについて、たいへんきびしく指摘もされてきた経過もありますので、やはり当然いろいろ洗い直していらっしゃるだろう、こう思います。その洗い直された結論をもって、今後特に後進地域に対する経済援助のあり方というものを明確にされていかれるだろうと私は思うのであります。いままでは、金さえというような、非常に極端な言い方かもしれませんけれども、金さえやれば何とかなるのじゃないかというようなことから、いろいろな誤解が生まれてきたり、また経済侵略が行なわれ、あげくのはては、またまた軍事侵略というようなものがあり得るのじゃないかというような不安感さえ——こういうことは今後絶対、どんな状況の変化があっても、少なくとも東南アジアの地域の人たちに与えてはならぬ。具体的にいま一番望んでいることは——われわれはわれわれの立場で調査もしました。やっぱり一番実りのあるといわれているのが、具体的なものでもって差し上げることがその国にとって一番喜ばれる援助のあり方ではないか。たとえば病院であるとか学校であるとか——それもやっておりますと言われればそれまでかもしれませんけれども、実際はもうとにかく微々たるものでありまして、民間の協力を仰がなければできないというようなことではなくて、いままでもしばしば、GNPの一%ぐらいは後進地域に対してそういう援助の手を差し伸べていくんだという、そういう基本的な姿があったわけでありますが、もっともっと実りのある援助を通して、新しい世代のアジア地域の繁栄というものが考えられないものかということを、最近非常に疑問に思って考えている場合があるのですけれども、いままでいろいろなそういう角度から指摘をされてきている点については、政府としても十分それをのみ込んでいらっしゃると思う。で、今後、いまベトナムの問題を中心に申し上げましたけれども、特に東南アジア地域の後進国に対する援助のあり方というものを積極的に進めなければならないという、そういう点から、どんなふうな方法をこれから具体的な行動の中に展開されていくおつもりなのか、これをこの機会に、締めくくりとして一ぺんきちんとお伺いをしておきたいと思うのです。
  71. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど加藤委員の御質疑にもお答えしたのでございますが、全体として経済援助総額そのものにつきましては、相当の前進をみたわけでございまして、別に恥かしい金額ではない。しかし、質的内容に至ると、政府援助という、非常にソフトな贈与を主体とした政府援助がいかにも乏しいということ、それから条件がどう見てもまだハードであるというようなことでございますので、そういう質的改善という点にまず力点を置いていきたいと考えております。  それから基本的な精神は、申すまでもなく、先ほどもお答え申し上げたとおり、受益国側の立場に立つということを主体にして考えなければなりません。したがって、援助はあくまでもアンタイでいきたい。資金を供与してどこからでも買いつけられるという姿において、受益国の選択にまかせるというおおらかな態度でいかなければならぬと考えております。しかし、この日本援助の、もう大半どころでない、ほとんど全部が東南アジア地帯に集中しておるわけでございまして、アフリカ、中近東、東欧圏、西アジア、それからラテンアメリカ、そういった点は東南アジアに比べては相当手薄なんでございまして、最近ずいぶんそういう地域からも御要望があるわけでございます。東欧圏あたりが一体後進国なのかどうかということは、一つの問題でございましょうけれども、いずれにせよ、こういう地域的に、東南アジアだけに片寄っておるということでなくて、量がふえていくに従いまして、やっぱりグローバルに援助していくという姿勢でいきたいものだと思うわけでございます。しかし、あくまでもそういう国々が自主的な計画に基づいて経済の自立を達成していくということ、しかも、それは既存の政権の維持というようなことではなくて、ほんとうの意味で民衆の利益になるようなものであって、それに対して日本が御援助できるという仕組みに持っていきたいものだと思っているわけでございます。そのためには、先ほど申しましたように、日本の財政計画自体の中にこれをひとつ、一つのいすを与えていただかないと、なかなか思いはあっても実効があがらぬというようなことになりますので、そういう方面の打開もいまからわれわれの仕事になってきたとしみじみ感じておるわけでございます。個々の国々の事情につきましては、それぞれの事情もございまして、一々御説明申し上げる煩を省きたいと思いますけれども、大まかな感じとしては、そういうことでひとついきたいし、また、それができる日本になったというように私は考えております。
  72. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 最後に一点だけ。  これは全然問題が違うんですが、確認でございますので、イエスかノーでけっこうでございます。  一つは、東京とピョンヤンの間に直通電話の開設がもうすでに進められているというふうにわれわれ伺っておりますが、事、実かどうか。それからことしの秋に北朝鮮との間に貿易のための覚え書き事務所を双方に設定する用意が進められているというふうに聞いておりますが、そういうことはいかがですか。この二点だけ、イエスかノーでけっこうでございます。
  73. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 前段のほうは、国際電電会社ですか、民間のほうと、北鮮との間でそういう話が行なわれていることは事実でございます。後段のほうは、いまそういうことは考えておりません。
  74. 星野力

    ○星野力君 私もベトナムをはじめとするインドシナ諸国への援助方針についてお聞きしたいんです。  先ほど御説明のありました四十八年度外務省予算の中に、インドシナ難民救済十億円が計上されておりますが、先ほどの大臣のお話ですと、これがさしあたってのいわゆる緊急援助であり、その後に二段、三段のいわゆる復興援助を考えておられるというふうにお聞きしたんですが、そのとおりであるかどうかということが一点でございます。  それから内外の新聞に、日本政府は二十億ドルの国際的なインドシナ復興基金を設けて半額を日本が分担するというような構想を持っておるということが報道されておりますし、また、沢木ニューヨーク総領事がニューヨークの新聞記者に、日本は、インドシナ復興援助で、昨年、ニクソンが示唆した五年間七十五億ドルを上回る支出をするであろうというようなことを言明したという新聞報道もございますが、これはどうなのか。とりあえず、その二点お聞きしたいんです。
  75. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 第一点のことは、先ほども御説明申し上げましたとおり、人道的な緊急援助というものは、国際的な計画がきまり、あるいは国際的な機関ができるとかなんとかいうことにかかわりなく、援助の要請がございますならば、二国間ベースでとりあえずやる場合もあるだろうということを想定いたしまして、予算に計上いたしたものでございます。したがって、ベトナム援助という全体から考えますと、別途、大きな計画が国際的にできますならば、それに応分の協力をする立場に日本はあると思いますから、御質問の第一点につきましては、外務省予算大蔵省予算等に計上してございますものは、とりあえずのものであるというように御理解をいただきたいと思います。  それから第二点の二十億ドル計画とか七十五億ドルをこえるものなんというのは、全然私どもは関知していないわけでございます。
  76. 星野力

    ○星野力君 大臣が関知しておらないことを外国におる日本政府の代表が、わざわざ新聞記者を呼んで話をしておるというのも、これも不穏な話だろうと思うのでありますが、大臣おそらく逃げておられるんでないかと思います。まあ、それはそれとしまして、ベトナム援助とかインドシナ復興援助とかいうことがいろいろ言われておりますが、それらの援助がどこへ向かってなされるのかということが問題だろうと思います。大臣自身、昨年十二月サイゴンを訪問されてグエン・バン・チューと会談されておる。ここでも経済援助についていろいろ約束ができたということも新聞には出ておりますし、また、最近では法眼次官がチャン・バン・ラム・サイゴン外相などと会談されておる。ここでも、日本はこれまでどおりの援助をサイゴン政府に対して続けるということを約束したということが報道されております。おそらく事実だろうと思います。サイゴンを日本外務大臣、高官が訪問すれば、先方としては援助を要請する以外話はないんだろうと思いますが、サイゴンに対してどのような援助をお考えになっておられるか。簡単でよろしゅうございますからお答え願いたいと思います。
  77. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 従来、南ベトナムに対しましては若干の経済援助をいたしてきました。それからそれが戦火のために中断されておるものもございます。したがって、こういった従来からすでに着手しておるものなどにつきましては、引き続き考えていっていいと思っております。しかし、全体の復興、開発援助というような大きなことにつきましては、先ほど御説明申し上げたとおり、相当の国際的な規模でやらないといけないわけでございまして、日本は、それらができた場合は応分の協力をしなければなるまいという姿勢でおるわけでございます。  それから私のサイゴン訪問によって援助の約束をしたと、将来の援助についてコミットをしたというようなことはございません。
  78. 星野力

    ○星野力君 具体的にお聞きしたいんですが、ここに計上されております難民救済援助ですか、十億円、これをどこへ向けて使われるのか。一体難民というものはどういうものを考えておられるのかをお聞きしたいんです。
  79. 吉田健三

    政府委員(吉田健三君) ただいま御質問の十億円は、来年度予算におきまして、インドシナ地域特別援助費という形で出ておるわけでございますが、これは、インドシナ半島全地域の住民を対象にしたものでありまして、そこらの戦乱によって災害を受けておる住民たちに対する緊急の人道的な援助と総括的に考えておる、こういうことでございます。
  80. 星野力

    ○星野力君 このベトナム、南でも北でも、ラオスでも、カンボジアでも、おびただしい戦争による被害者、犠牲者というものは出ております。しかし、政府が必要な救済対策を講ずれば、いわゆる難民にはならないわけであります。地震など天災による難民とはこれは違うんであって、いわば政治的な難民といっていいかと思います。だからベトナム民主共和国にはそういう難民はいないだろうと思いますし、南ベトナムやラオス、カンボジアの解放区にもこれはおらないんではないかと思います。そうしますと、難民救済というのは、南ベトナム、ラオス、カンボジア——親米政権の支配地域、そこに対して行なわれると、こういうふうになると思いますが、要するに、必要な対策を怠っておる政権への援助ということになろうかと思います。  で、時間がございませんから、まとめてお聞きしますが、難民はどうして生まれたか。これは、戦火を避けて都市などに逃げ込んだ難民というのは、これもあろうと思いますが、その一方では、アメリカや親米政権の平定計画、あれによって故郷から追い立てられて、平定村に収容されて難民化しておる人たち、この数がおびただしいんでないかと思いますが、それらの人は、和平協定も成立して戦火もおさまりつつある状態の中で、故郷へ帰りたがっておる、それに対して帰さない。政策として親米政権はそういうことをやっておる。その手助けをするようなことをやるべきではないと思うんであります。サイゴンならサイゴンの政権がやればよいことであります。政府予算の八〇%も軍事費に使っておるこんな軍事独裁政権を助ける、手助けをするようなことは、やるべきではないと思います。人道的とか緊急とかいう、こういうことをおっしゃっておりますけれども、本来これはそれぞれの政府のやるべきこと、それをサボっておる政府に対して手助けをやるようなことは、何も急いでやる必要はないと思うんですが、いかがですか。
  81. 吉田健三

    政府委員(吉田健三君) それぞれの地域における政権の、政治の状態という問題の以前の問題でございまして、たとえば国際赤十字その他から切々たるアピールが来ているわけでございます。やはり動乱地帯であり、いろいろな要素がからまって、現にその地域における住民が非常に苦しんでおられる。医療品、食料品、住宅、そういった問題に対して、緊急に食料、医療品、あるいはトタン板等を送って、人道問題としてこれを解決していくということが当面の問題でございまして、まあ全体の難民の数も正確にはわからないんでございますが、現実にああいう戦火の中で気の毒な人が発生しておるという事実に目をおおうことはできない。それに対する手を差し伸べる、こういう考え方でございます。
  82. 星野力

    ○星野力君 パリ協定によりまして、このインドシナの平和への戸口が開かれたわけであります。その道を、ベトナム、インドシナの真の平和、永続する平和へ通ずるように日本政府は協力すべきであります。この真の平和のためには、当事者間の話し合いによって、協定が厳正に完全に実施されるようにならなきゃならぬのですが、そういう情勢の中で一方を援助すること、これをへたにやりますと、民族の統一や和解を妨げる、協定の実施を妨害することに通ずるだろうと思います。  まあ緊急援助十億円、こう申しますが、実際言うとこれは大した額じゃないんですね。ノルウェーのような小さな国でもいち早く二百四十万ドル——十億円は三百万ドルくらいでございますが、二百四、五十万ドル、ノルウェーも供与を申し出ております。十億円は経済大国としては恥ずかしいくらいの額であり、実際の物的効果というものはそれほど期待できない、いわば政治的な効果をねらっておるんだと、こう見られてもいたし方ないような金額だと思うんですが、この程度のことはサイゴン政権がやればいい。それぞれの親米政権がやればいい。難民といいますけれども、故郷に帰りたがっている者を帰せばいいのでありますが、こういうような援助は、ことに和平協定締結後、直接的な内政干渉になるおそれも非常にあると思います。民族の統一や和解を妨げる結果になる。だからやるべきではない、急いでやるべきじゃないと申し上げたいんであります。先ほどいろいろお話もありましたけれど、アメリカの役割りの部分的な肩がわり、アメリカの手助けをやるような援助であってはいけないし、それから二段、三段と復興援助を考えておられるようでありますけれども、日本の商品と資本のための呼び水的役割りの援助であってはならないことは言うまでもないんでありますが、民族自決を尊重して、ほんとうにこの民族の統一、和解を妨げないように援助の問題も考えていっていただきたいと思うんであります。そうでしょう、日本政府というのはベトナム、インドシナに対してこれまで何をやってきたでしょうか。あの仏印進駐では、侵略ですね、略奪をやった。人命と財産に大きな損害を与えた。そして今度、アメリカの侵略戦争に対する協力でございましょう。ベトナム和平には、何の手助けもしなかった。先ほど大臣、個々の、たとえば北爆を支持したようなことはないと、こうおっしゃいましたけれども、一九六五年二月ですか、あの北爆が本格化したときに、当時の佐藤首相は、報復爆撃はやむを得ないものと考えるということを、ことばでこれを支持される態度を表明されました。大平大臣自身、十二月十八日から二十九日まで続いたあの戦史空前の大規模な残虐な北爆に対して あたかも和平を前進させるための手段である、前進的な意味を持っておるということばを使ってあれを肯定されておる。言いかえますと、ベトナム、インドシナに対して、日本政府というのは、これまで何一ついいことをやったことはないですよ。悪いことばかりやってきた。その反省に立って今後の外交もやっていただかなければならぬし、また、援助の問題も考えていただかなければいけないと思うんであります。いかがでしょうか。
  83. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほどからもるる申し上げておりますように、ベトナム戦争に対するかかわり合いができたと、そういう立場に置かれておったという日本の立場を申し上げたわけでございます。これは隠すことができない事実でございます。しかし、私どもはベトナムに和平が早く到来いたしまして、その和平が定着するということをたえず祈念してまいったのでございまして、それが今度ああいう姿においてパリ協定ができ上がったことを歓迎しております。したがって、いま御指摘のように、いまからベトナム政策を考える場合、あのパリ協定の取りきめが順守されて、インドシナ半島に和平が定着していくような方向になるように日本政府は考えなければいかぬと思うのでありまして、それをはばむ、あるいはそれをじゃまする、そういうことは考えてはならないと思うわけでございます。  それから第二点は、現地の政府の責任であることは申すまでもなくそのとおりでございましょう。私どもも現地政府がそういうことをやることにつきまして、御要請がある場合に、それが人道的な緊急の援助であるということでやむを得ない措置であるという限りにおきましては、応分の協力を申し上げるということを考えておるわけでございます。しかし、援助を決して押し売りするつもりはないわけでございまして、あくまでも受益国側の、当事国側の御意向を十分念査いたしまして、その御意向に沿ったように考えてまいることは当然と思っております。
  84. 星野力

    ○星野力君 パリ協定以後、ベトナム民主共和国を承認する国が、外交関係を樹立する国がふえておりますね。カナダ、バングラデシュ、スイス、ニュージーランドその他あったように思いますが、日本政府はどういうふうに考えておられるのか。先ほど、ベトナム民主共和国の意向をまず確かめてからというお話もございました。そのための接触も考えておられるのか。考えておられるんだと思いますが、たとえば三宅課長という名前も出ておりますが、三宅課長はいつベトナム民主共和国を訪問されるのか、今度はどういう資格で訪問されるのか、その辺のことをひとつお答え願いたいと思います。
  85. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど羽生議員の御質問に答えて、とりあえずは北越側と接触をまず持ちたいと、そのための下打ち合わせをやっておるわけでございまして、どういう時期にどこで先方との接触ができるか、それは先方の返事がこないとわからないわけでございますが、私どもとしては遠からず先方の返事がいただけるものと期待しておるわけです。  それから、三宅君のことでございますが、これはすでにハノイに外務省の係官として訪問をした経緯を持っておるわけでございまして、外務省の所属の者としての立場で先方と接触をさせたいと考えております。
  86. 星野力

    ○星野力君 ベトナム民主共和国との外交関係の樹立ということは早くやるべきことだと思いますし、そのことは私たちも要望する次第ですが、そのためには、先ほども申しましたけれども、これまでのベトナム人民に対する日本政府の態度に対する反省、これがしっかりやられなければならないし、その点からも現在なお続けておられる反共政権への傾斜といいますか、一辺倒の行き方、これを根本から考え直さなければならぬと思います。そうでなければベトナム民主共和国との外交関係の樹立それ自身もむずかしかろうし、真に実りあるベトナム民族と日本との関係というものが将来打ち立てられる保障もあるまいと思うのであります。大切なことは、ベトナムをはじめインドシナ諸国の人民の民族自決の原則を尊重して、パリ協定の実施を妨害しない、それが厳正、早急に実施されるように協力していくこと。断じて民族の統一や和解を妨害しない立場で外交は進められなければならぬということだと思いますし、北と南の二つの国家が、あるいは南北の共存が固定されるようなそういう状態を日本政府は願望しておられるようなことが、大臣やその他の外務省高官の談話なんかにも新聞報道で見る限り出るのでありますが、そうではなしに、ほんとうにパリ協定が原則的に最も大事な原則として取りきめているところの民族の統一、和解、これを決して妨害するようなことはやらない、そういう立場で外交は進めなければいけないと思うのでありますが、その点を最後にお聞きして、時間も乏しいからまた次に続けてやりたいと思いますので、お願いいたします。
  87. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりでございます。パリ協定というものをあくまで尊重して、その実施を確実なものにしていく方向で日本外交を進めてまいりたいと考えております。その道からはずれないように心がけてまいる所存であります。  北ベトナムとの接触におきましては、先ほどお答え申し上げましたように、先方にもいろいろ御意向があると思うわけでございます。いま御指摘のような点は、いろいろ先方からの御意向をまず聞きまして、それで十分こなれた理解の上に立って、パリ協定が実のある成果を得られる方向で、私どもはこれからの対処する方針を固めてまいるつもりでございます。
  88. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 本調査に対する質疑は、本日は、この程度とし、これにて散会いたします。    午後零時五十八分散会      —————・—————