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参考人(
久米三四郎君) 大阪の
久米でございます。
初めに私の
自己紹介をしておきますが、私は、大学で
放射能をつくって、サイクロトロンという
原子炉とは違った道具でございますが、それで
放射能をつくって、その
性質をいろいろ調べる、そういう非常に基礎的な仕事でございますが、それを二十年近くいままでやってまいりました。そういう経験から、
放射能を扱うというのはいかに困難なことか。われわれの
実験室は、
科学技術庁でついこの間も私
たちの
実験室に検査に来られましたが、いかに気をつけても、何となく薄よごれするんです、その辺が。ですから、絶対だいじょうぶにしてあっても、部屋の中ではたばこを吸ってはいけないとか、食べものを食べてはいけないとか、そういう規制をやるんですが、やはり学生なんかがやると必ず
事故を起こします。それはそんなに大きな
事故ではありませんから
新聞ざたにはなりませんが、いかに
放射能というのが扱いにくいものであるかということを骨身にしみて感じております。
いま、
板倉さんのほうから、だいじょうぶだという
お話がありましたが、
原子炉の中に入っておる
放射能というのは、われわれがそれこそ何百万年かかっても扱い切れないようなそういう
放射能でございまして、そういうものを安全に扱い得るという保障が私が、いままで
原子炉のいろいろなことを調べた限りでは、もうとても不可能ではないかと思っております。特にその場はおさめても、
あとにそういうものが
人類に大きなマイナスのおみやげとして残りますので、私は、はっきりと申しまして、こういう野蛮な
技術を
電力の
エネルギー源として
人類が使うというのには
反対であります。しかし、当面はそういうことをやっておられますので、現在の
原子力発電所がはたしてそういうものに耐え得るかどうかということを
科学者の一人としてチェックしょう、そういう
立場でやっております。しかし、現在の中ではやはり賛否というのは
国民の中でも非常にあります。特に
反対というのは
住民の方の場合に多うございまして、私も、
御存じの方があるかと思いますが、
伊方の
住民の方がこの間
行政訴訟を起こされまして、それで許可の取り消しを求めておられますので、それのお手伝いをするという、そういう役割を現在やっております。そういう
立場で、私
自身は非常に明確な
反対論者であるということを一番初めに申しておきます。
それで、きょうは、
辻先生のほうから
お話がありまして、
燃料棒の問題が最近問題になっているので話してほしいと言われたのですが、私は先ほど申しましたような経歴がございまして、
燃料棒というのを実際にさわったという
意味では
専門家ではございません。しかし、
伊方の問題を現在も裁判に備えて
いろいろ大ぜいの
科学者の
方々と
議論を進めておりますが、その重要な項目の
一つが
燃料棒でございますので、これまで私
たちが調べてまいりました結果の一部を御報告して議員の
皆さんの
参考に資したいと思います。
時間が限られておりますので、図面を使わしていただいて説明したいと思います。
〔図表一を示す〕
それで、
あとあと議論になりますので、
燃料棒といいましても抽象的に言っておられますとイメージがはっきりしませんので、図をかいてみました。棒と言いましても、見たところはずっ
ぺりした棒でございますけれども、あれを割った図がこれでございますが、一
番外側にいわゆる
被覆管——これからいろいろ
議論になると思いますが、
ジルコニウムの
合金でジルカロイと呼ばれておりますが、
ジルコニウムを主体とした
合金でできた
被覆管がございます。それから径でございますが、PWRと
BWRと違いますが、大体一センチから一センチ半ぐらいの非常に細いものでございます。厚みは〇・六から〇・九ミリでございます。何か、棒というと、がっちりしたものと思われますが、一ミリ
足らずの非常に薄いものでございます。これは厚くすることはできない。その中にいわゆる
燃料が入っておりまして、現在のところは、
酸化ウランと申しまして、
ウランの
金属そのものではございませんで、それを酸化した白い粉でございますが、それを
加圧して焼き固めて
ペレット状にしたもの、そういうものをこの中に径と同じ
程度の高さのものを幾つか順番に下から詰めてまいりまして、それで最後に上でふたをする、そういう構造になっております。で、この
被覆管とそれから
ペレットの間が、ものによって違いますが、〇・二ミリから〇・三ミリぐらい普通に詰めたときにはあいておる、そういう
状況のものです。そういうものが
原子炉のまん中にすわっておりまして、現在標準になっております百万キロでは大体四万本近い棒が詰まっております。
その詰まる
状態は、ここにちょっと上から見た図をかいておきましたが、これも
PR館等で
皆さんすでに
御存じだと思いますが、非常に密に詰まっておりまして、これが上から見た
燃料棒でございますが、その間隔がわずか三ないし四ミリぐらいしかない。その間を非常に高速で一次
冷却水というのがポンプで送られてきておりまして、それがここで燃えました
原子の火の熱を奪ってタービンのほうに行く、そういうことになっております。非常に狭い間隙を高速度で水が通っておる、そういう
状況を想定していただきたいと思います。これが
あとでいろいろ
事故の結果についての
議論になってまいります。
それで、問題は、この
被覆管でございます。これがいろいろ二重三重にというふうに
電力会社のパンフなどにございますが、それはうそでございまして、
ほんとうにささえておるのはこの
被覆管だけです。
ほんとうの
意味で物理的におおっておるのはこの
被覆管だけでございまして、この
酸化ウランの中でいわゆる死の灰が大量に先ほど私が言いましたように私
たちが一生使って
もとても使いきれないようなそういう
放射能が一ぱい詰まっておる。それが出てはならないので、この
被覆管で押え込んでおる、そういうことでございます。ですから、
周辺の
住民も、
国民の
皆さんも、結局はこの
被覆管、わずか一ミリ
足らずの
ジルコニウムの管に全部のあれをゆだねていると言って過言ではないと思います。で、これが普通の
状態で使ったらいいんですけれども、非常に高温で、しかも非常に強い
放射線が出ておる、そういう苛酷な条件でこれが使われるものですから、これから申しますようないろいろな
事故が起こる。これが
事故が起こりますと、結局ここから
放射能が漏れ出して
環境に出てくる、そういうことになる。それから
事故の前でも、普通の
状態でも、この
被覆管には現在の
技術では防ぎ得ない小さな穴があります。先ほど
板倉さんも言っておられましたように、まわりにまき散らされる
放射能はどこから出てくるかというと、結局、
通常状態でも
被覆管にあいている穴から、これはどうしても防ぎとめることかできないのでそれから漏れて、一次
冷却水に入り、それが
環境に出る、そういうことであります。その小さい穴が拡大されたのをこれから申します
燃料棒の
事故、そういうふうに呼んでおります。
〔図表二を示す〕
それで、
燃料棒の
事故にはどんなものがあるかということですが、これは私
たちのほうでやったまとめでございますが、種類といたしましては
燃料棒破損といわれている
状況とそれから変形とがございます。普通はあまりこちらのほうしかおっしゃらないでこの破損のことがよくそこらに書かれておりますが、変形のほうがむしろ重大であります。
それで、結果はどういうことになるかというと、破損というのは
被覆管が破れることでございますから、さっき言いましたように、そこから
放射能が漏れ出まして、それが一次
冷却水の中に入り、それが炉室に出て、やがて
環境に出る、そういうことになります。それから変形の場合はどうなるかといいますと、さっき言いました
燃料棒というのはまん丸いものでございますが、変形をいたしますとひずみます。それで、たとえば、
あとで申しますが、美浜の場合は卵形にひしゃいでしまう。そういう
状態が起こりますと、ここに書きましたが、丸いときはちゃんと間隔が保たれておりますが、これがひしゃげてしまいますと、こういうふうに間が詰まって閉塞
状態ができます。ちょうど腸閉塞のような形で。ですから、さっき言いましたように非常に狭い空間を高速で水を流しているわけですが、こういう詰まりができてしまってこういうところが水が通りが悪くなる、あるいは完全に通らない。そうすると、どういうことになるかというと、中から
原子の火がどんどん熱が出てくるわけですから、それがどこへも発散しないということで、そこが過熱
状態になる、そういう
状態が出てくる。それが変形の一番の結果でございます。そういうことが起こると、そこが一部分だけ焼いて落ちたようにまっかになるわけですから、そこが破損の原因になりますし、それから
事故が起こったときに一番大きなことは
御存じのように水が抜けてしまう。一次
冷却水の破断と申しまして失われてしまうわけですが、そのときに、
あとで都甲先生の
お話があると思いますが、緊急冷却装置というのが働いて水が入ってくる、それが
燃料をひたして過熱で溶けるのを防いでくれる、こういう仕組みになっているわけですが、その水が入るか入らないかというのもおととし以来の大論争の
もとですが、たとえ入っても、そういう変形があって至るところででこぼこしたようなところがあると、入ってきた水が通り悪くなってしまって、水は入ったけれどもその効果がないというようなことになって、ECCSいわゆる緊急冷却装置の効果を無効にしてしまう、これで変形
事故というのは非常に恐れられているわけです。
それで、そういうことを起こす原因でございますが、これは実はまだよくわかっておりません。どうしてかというと、普通の工業ですと、何かパイプがやられだとすると、取り出して顕微鏡でのぞいて何とかしてできますが、大量の
放射能があるところで起こった
事故ですから、いろいろな説明はされております。もっともらしい説明はされておりますけれども、いままでは、もう
発電所が動いておれば必ず
燃料棒事故が起こっておりますけれども、本当の
意味で原因がわかったというのはごくわずかであります。それは、中の
燃料を取り出してそれをしさいに金属学的に調べないととてもわからないわけですから、
あとはもう想像でございまして、福島の場合も水素がどうとか言っておられますが、あんなものは想像にすぎないので実証的なあれはないのです。しかし、数少ないそういう実証的な例から幾つかの原因が分類されております。実際はそれらが総合してさっき言いました苛酷な条件で起こっておると考えられます。
一つは、化学的なもの、これが実例は福島の一号で、この間衆議院に呼ばれたときに初めて見せられましたけれども、水素でやられる。それは、中の
燃料に含んでおった水が分解をいたしまして水素になる。その内部から
被覆管をやってしまう、そういうことです。これはアメリカのドレスデンというところの
発電所でしさいに調べてわかったというのですが、たぶんそれと同じであろうというようなことで福島も言っておられるのだと思いますが、これは
ジルコニウムと水素というものはある量以上になりますと非常に反応しやすくなります。それで、そこがやられて穴があいてしまう、そういう原因であります。それから第二が機械的と言いまして、これは
燃料が、後ほど申しますが、燃焼度が進んでまいりますと、中でだんだん核分裂でできてきたガスがたまってまいります。そうすると、
人間の腸がふくれるのと同じように
燃料がふくれ上がってきます。そういうふくれ上がってきますと、さっき〇・二ミリから〇・三ミリのすき間がありましたね、そのすき間では耐えられぬようになって、とうとう外の
被覆管をぐんぐん押すわけです。初めの間は
被覆管ががんばっておりますけれども、さっき言いました非常な苛酷な条件で使いますから、とうとうそれに耐えきれなくなってそこで破壊を起こす、そういうのが機械的な原因であります。それからその次は、これはもう両方の場合共通して起こっておりまして、
放射線、特に非常に高い密度の中性子でさらされておりますので、金属がやられて疲労いたします。ですから、つくったときはだいじょうぶでも、やがて使っておる間は時間がたてばたつほどこういうものに対する抵抗力は弱まっていくということになります。それで、実例は、先ほどの化学的なものは、まあ発表を信ずるとすると、福島の一号でありますが、これは想像であろうと思います。そんなにきちっと詳しく調べておられないので、ともかく穴があいたという事実を適当に解釈した。それから機械的なやつ、これは美浜の一号であります。これはもうれっきとして新聞発表ではピンホールということになっておりますが、私、衆議院で申しましたが、ピンホールという新聞発表は絶対に信じてはいけない。どうしてかというと、ピンホールというのは目に見えない穴でありまして、そんなものではないのです。それで、破損を起こせば、必ずそれは目に見えるような穴になります。美浜の一号の場合も、私
たちのほうに入った情報では、なんと、ピンホールどころか、
被覆管が裂けて、しかも裂けたかけらが
原子炉の底に沈んでいるというような、そんな
事故が起こっておるのに、発表ではピンホールというようなことになっております。そういうことのよしあしは別にしまして、原因は機械的な原因でございます。
それから変形の場合、これが非常に大きな問題でございますが、二つございまして、
一つは、
原子炉の中は、
御存じのようにPWRというのは加圧水型ですから、百五十気圧ぐらいのあれで詰まっておりますね。ですから、
燃料棒が外から一生懸命押されてしまう、それでひしゃげてしまう、そういうことです。それから、
BWRの場合は、七十気圧
程度でございますから、それがいまのほうが少ないとされておりますが、そういう外かちの一次
冷却水の圧力で押されて、それでひしゃげてしまう。初めはがんばっておりますが、金属がやっぱり疲れてまいりますから押されてしまう、それで卵型になる。それが美浜の一号で起こりました。これは実はもう去年おととしアメリカで起こっておったのに、日本ではだいじょうぶだと。側で日本でだいじょうぶだかわかりませんが、やっぱり科学というものは正直で、国を越えて日本でもちゃんとそれが起こったという、あの有名な
事故でございます。それから、もう
一つ、これはわりあい新しく去年ぐらいから言われておりまして、
燃料の密度が、密度というか、詰まり方が、非常に温度か高く——温度だろうと言われておりますが、はっきり原因はまだわかっておりませんか、収縮
現象を起こしまして
燃料が移動する。そうすると、さっきのすき間がよけいできて、それで外から押されていくものですから変形する。これは、ついこの間、AECが命令を出しまして二五%出力を減らせ、そういう命令を出したあの原因でございます。これについては、原因その他よくわかっておりませんで、現に日本の扱っておりますのは東芝がたぶんそうだと思いますが、ジェネラル・エレクトリックの代理店のようにして売込んでおられますが、それのレビューにも、これは原因がよくわからない、しかし
BWRについてはだいじょうぶであろうというふうに書いたその矢先、AECで中止命令が出たという、そういうことになっております。
〔図表三を示す〕
それで、結論でございますが、
燃料棒の
事故は大したことはないという
意見があります。これは、この間のジェネラル・エレクトリックのあれでAECから命令があったときに新聞で拝見したのでございますが、日本の
原子炉安全
専門審査会の最高責任者の方が、新聞で、あれは本質的なものではない、
原子炉全体の
安全性にかかわるようなもりではないと、そういうふうに言っておられますが、非常に危険な
考え方であろうと思います。私は、
燃料棒の
事故は原発にとって本質的であると思います。第一、これは原因が本質的なものです。いままではまだ例が少なかったので、つくったときにちょっとミスがあったものが出たのだろうというようなごまかしのあれがありましたが、先ほどの原因なんかを考えますと決してそうではないので、かなりこれは本質的であります。
酸化ウランというものを使い、
ジルコニウムというものを使う以上は、それをしかも非常に苛酷な条件で使うということにすると、本質的な
事故であって、多少の
技術的な改良をいたしましてもあぶない曲芸的な
技術にすぎないというふうに私は思います。第二、それは
放射能漏洩を増加します。これはもう当然のことでございまして、原発の
放射能がどこから出てくるかというと、その源が
燃料棒でございますから、この源が拡大するわけですから、これはひいては外界に対する漏洩がふえることは明らかであります。第三、それを防ぎとめることができると
皆さんはおっしゃいますが、防ぎとめればその分だけどこかに結局ふえるわけです。どこにふえるかというと、それは放射性廃棄物がふえていく。現に美浜でも
事故が起こるたびにドラムかんの数がどんどんふえていっておるじゃありませんか。ですから、
燃料棒の
事故が起これば、必ず放射性廃棄物の量がふえるという形ではね返ってまいります。現在、これをどこにほうっていいか全然当てがないのに、それがどんどん原発の敷地に積み上がっていくわけです。第四、重大
事故が起こったときに規模が拡大いたします。先ほど申しました
燃料が変形しておるときに一次
冷却水が抜けるというような
事故があったらどういうことになるのか。いまの
原子力委員会の安全審査では、水が抜けるとやがて三十秒ほどしたら水が入ってきて、ひたって、めでたしめでたし、だいじょうぶ、だから安心しろと、こういうことになっておりますが、その水が入ってきても、詰まっておって通らないのです。そうするときにどういうことが起こるかということは、予想もつかないので、そういうのは審査にもなっていないわけですけれども、いまのコンピューターの
計算の基礎そのものをゆるがしてしまうようなことになります。第五、これは経済性と非常に関係があります。
原子力発電所というのは
研究のためにやっておるのでありません。あるいは趣味のためにやっているのでないので、
国民のエネルギー生産という非常に経済性に関係したことであるということは
委員の
皆さんも
御存じのとおりでございます。ですから、こういう問題は経済性と非常にかかわっております。
たとえば、ここに書いておきましたが、いろいろなことがございまして、特に大きな問題では出力密度、これは一定の体積の中からどれだけのエネルギーを取り出すかというそういう量でございます。体積であらわしたり、あるいは線の長さであらわしたりしますが、そういうものは、できるだけ大きければ大きいほど経済性がよろしい。どうしてかというと、同じ百万キロワットをつくるのでも、この密度が小さいと、大きな
原子炉の容器を使わなければならない。これは
技術的にも非常にむずかしいですし、それだけコストがかかる、そういうことであります。それから
燃料もそれだけたくさん要りますから、
燃料費もたくさん要る。
原子力発電所というのは
燃料費が安いということが唯一のメリットになっているわけですが、それが怪しくなってくる。しかも、大量の
燃料を使うと、それの再処理の
対策というたいへんな事業がうしろで待ち受けているわけですが、それに対する負荷を大きくするということで、経済的にできるだけ出力密度を上げたい、そういうことになっているわけです。それから燃焼度の問題でございますが、これも
燃料をとことんまで燃してしまいたい、同じ装てんした
燃料ですけれども徹底的に燃してしまいたい、燃焼度というものはそういう量でございますが、そういうものをできるだけ高めたいというのもこれは経済的要請です。それから
原子炉のあちこちには
燃料が大体出力というのがなかなかうまく均一化いたしませんのででこぼこいたしますが、経済的にはどの
燃料も全部完全に燃え尽くすというふうにやっていきたい。だから、それを平坦化と申しますが、そういうこともやりたい。それからもう
一つは、
放射能の検出レベルといいまして、破損しますと一次
冷却水の中へ
放射能が出ます。そうすると、それをモニターしておって、あ、いまやられたということがわかってすぐ
原子炉をとめるという操作が必要なわけですが、それが少々出ておっても、小さい穴があいてから大きくなるまで時間がかかります。ですから、普通は、それを見ながらきわどい曲芸的な
運転をやりまして定期検査まで持ち込んでいくというそういうことをやりますが、そのレベルは
ほんとうはできるだけ下げるほうがいいのですが、それを経済的にはなるべく上に上げていく。さっき言いました美浜のような場合は、さやの一部が取れて下へ落ちているというような事態が起こっておるのに、それを、たぶん
平常運転時も
発電所はわかっておったと私は思うのですけれども、まあまあいいということで押し切ってやっておられるということの例だと思います。これは非常に危険なことです。それを
安全性の面から見ると、それは書き忘れましたが、出力密度はもちろん小さいほうが
燃料棒の破断が少ない、それから燃焼度も少ないほうがいいという、これは原因がはっきりしませんが、
現象的にはその相関関係は非常に明確であります。それから分布を平坦化することによって、燃焼が一斉に弱って、
事故が起こったときに同時に一ぺんにそれが起こる。いままでは、一万本入れても〇・一%
程度であるというようなことが文献にはございますが、ああいうのにだまされてはいけません。あれは出力密度の非常に小さいやつの、いまからまだ数年前のデータにしかすぎないのでありまして、最近のようにどんどんと経済性を上げていった炉についてのそういう確率的なあれはまだ出ておらないわけです。
一般に言えることは、そういうふうにむだなく燃せば燃すほど同時に
事故が多発するという可能性が十分あるわけです。それから
放射能検出レベルについては先ほど言いました。これはまわりのものについてはできるだけ下げていく、ちょっとでも異常が認められたら
原子炉をストップするというのが本命でございますが、そんなことをしておったらいまの美浜のように有効率が三〇%を切るというようにまさに経済性が破綻してしまうので、これをできるだけ上げるというようなことになる。したがって、経済性と
安全性というのは非常に矛盾があるということでありまして、
国民の側から見ると非常に心配だ、それから
電力の側から見ると少々のことを押し切ってでもやらぬことには石油よりずっと
原子力のほうが有利だ有利だという日ごろの宣伝が成り立たなくなる。そういう
意味で、この
燃料棒、
燃料評価というのは原発にとって非常に本質的であると私は思いますが、この点は議員の
皆さんにぜひ御考慮をいただきたいと思います。