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1973-08-28 第71回国会 参議院 運輸委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年八月二十八日(火曜日)    午前十時十五分開会     ―――――――――――――    委員異動  八月二十四日     辞任         補欠選任      中村 禎二君     岩本 政一君  八月二十七日     辞任         補欠選任      菅野 儀作君     高橋 邦雄君  八月二十八日     辞任         補欠選任      田渕 哲也君     木島 則夫君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         長田 裕二君     理 事                 江藤  智君                 木村 睦男君                 山崎 竜男君                 小柳  勇君     委 員                 岡本  悟君                 黒住 忠行君                 高橋 邦雄君                 橘  直治君                 松平 勇雄君                 渡辺一太郎君                 加瀬  完君                 瀬谷 英行君                 森中 守義君                 阿部 憲一君                 三木 忠雄君                 木島 則夫君    国務大臣        運 輸 大 臣  新谷寅三郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  山中 貞則君    政府委員        防衛庁参事官   大西誠一郎君        経済企画庁物価        局長       小島 英敏君        経済企画庁総合        計画局長     宮崎  仁君        大蔵政務次官   山本敬三郎君        運輸大臣官房長  薗村 泰彦君        運輸大臣官房審        議官       原田昇左右君        運輸省海運局長  佐原  亨君        運輸省船舶局長  田坂 鋭一君        運輸省船員局長  丸居 幹一君        運輸省鉄道監督        局長       秋富 公正君        運輸省航空局長  内村 信行君        運輸省航空局技        術部長      金井  洋君        海上保安庁長官  野村 一彦君    事務局側        常任委員会専門        員        池部 幸雄君    説明員        警察庁警備局警        備課長      山田 英雄君        警察庁警備局外        事課長      佐々 淳行君        日本国有鉄道総        裁        磯崎  叡君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○運輸事情等に関する調査日本航空北回り四〇  四便乗つ取り事件に関する件)(東海道本線鶴  見・横浜間における貨物列車脱線事故に関する  件)(韓国に対する運輸関係経済協力に関する  件)(金大中事件に関しての海上警備に関する  件)(福岡県岡垣射爆場における自衛隊機の訓  練と民間機の航空安全に関する件) ○国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進  特別措置法の一部を改正する法律案について     ―――――――――――――
  2. 長田裕二

    委員長長田裕二君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  中村禎二君、菅野儀作君、田渕哲也君が委員辞任され、その補欠として岩本政一君、高橋邦雄君、木島則夫君がそれぞれ選任されました。     ―――――――――――――
  3. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 運輸事情等に関する調査を議題といたします。内村航空局長
  4. 内村信行

    政府委員内村信行君) 先般起こりました日航機ハイジャックの問題、この問題を国会で御説明するのは今回初めてでございますので、そのときの経緯並びにわれわれのとった態度についてまず御報告を申し上げたいと存じます。  まず事件の概況でございますけれども、まず第一の経過といたしまして、事件発生からドバイ空港着陸までの経過でございます。  まず日本航空北回り四〇四便、これはパリからアムステルダムを経ましてアンカレッジを経由、東京の予定の便でございます。これはB747型のJA8109号という航空機でございます。これがアムステルダムスキポール空港を離陸いたしまして約二十分後に、七月二十日の二十三時五十五分ごろ――これは日本の時間でございます。これから申し上げます時間はみんな日本の時間に統一して申し上げます。数人の者に乗っ取られたのでございます。同機はイタリア、ギリシアレバノンシリア、そういった各上空を経まして、アラブ首長国連邦ドバイ空港に二十一日の午前七時四十五分に着陸いたしました。同機には乗客が百二十三人乗っておられました。そのうち日本人が百十四人、それから外国の方が九人でございます。それから小沼健二という機長ら乗員が二十二人搭乗しておりました。同機アムステルダム離陸後起こった機内爆発事故によりまして外国人女性が一名死亡いたしました。これは犯人の一味ということが後に判明したわけであります。それから宮下チーフパーサーが負傷いたしました。しかし他の乗客には全然身体の異常はなかったわけでございます。  そこで、次に、そのドバイ空港着陸したわけでございますが、その駐機中の状況を申し上げますと、爆発して死亡した女性遺体、それから宮下チーフパーサーをおろせと、こういうことをハイジャッカーが申した。それが降機したほかは乗客乗員とも全部機内に閉じ込められた状態で、二十四日の午前五時まで、約七十時間ドバイ空港に駐機したわけでございます。そこでアラブ首長国連邦政府は、乗客、特に婦女子の釈放につきまして国防大臣がみずから犯人側との交渉に当たりまして、国防大臣みずからタワーに登りまして、直接犯人交渉をされたわけでございます。そのほか大統領、首相も二十二日午後にドバイ空港におもむかれたということであります。  犯人の人数及び国籍は当時不明でございましたけれども、その所属組織については、「占領下青年組織」というふうに自称しておりました。  犯人側からの要求に応じまして、食糧、水、氷、それから空調用電源等が提供されたほかには、二十二日午後から二十四日午前二時までの間に三回にわたり燃料補給要求がございまして、これを行ないました。燃料補給の合計は約二十二万ポンドでございます。二十四日の午前二時四十五分、犯人要求に応じまして、サウジアラビアを中心とする中近東とアフリカ付近のチャート三枚が手渡されました。犯人は、機内で死亡した女性遺体を返還しろということを強く要求いたしまして、遺体は同日午前四時に機内に積み込まれたわけでございます。外部からの犯人への連絡につきましては、その後、ドバイにいる間には、西独の市民と称する者からのメッセージがあったほかは、特段外部からの通信はなかったわけでございます。  次に、ドバイ空港を離陸いたしましてからダマスカス空港を経てベンガジベニナ空港へ参るわけでございます。その間の経過を申し上げますと、まずハイジャッカーは、病気で弱っておられた、年をとっておられる夫婦の方一組、これを降機させたあと、二十四日午前五時五分に離陸しております。これは、非常にドバイ政府その他に世話になったと、そのお礼であるというふうなことを犯人は申しておったわけでございます。その後ハイジャックされました機は、燃料補給のために二十四日午前八時四十五分ダマスカス空港着陸いたしました。十五万五千八百ポンドの給油を行ないました。午前十一時五十八分、同空港を離陸いたしました。  私どもは当時、ダマスカス空港に着きましたので、ここが第二の場所になりまして、ここで何とか乗客の解放を実現しようではないかというふうに考えておったわけでございますが、あとで聞きますと、ここは単なる燃料補給のためにテクニカルランディングを行なったというふうな性質のもののようでございます。なお、ダマスカス空港では三時間余駐機しておりましたけれども、その間、シリアアラブ共和国政府国務大臣軍司令官が直接に指揮をとりまして、空港に急行した秋山臨時代理大使とともに犯人の説得をいたしました。ぜひ乗客をおろしなさい、特に婦女子をぜひおろしなさいということを説得したわけでございますが、これは不幸にして成功しなかったわけでございます。  その後、ハイジャックされた機は、レバノンのベイルート、それからキプロスのニコシア、トルコのロードスギリシアミロス、各上空を経由いたしまして、それから北のほうに上がるのか、あるいは南に下がるのかということを非常に気にしておりましたが、結局南のほうに下がりまして、二十四日の午後三時三分、ベンガジにあるベニナという空港着陸いたしました。乗客乗員及び犯人全員がそこで降機したのちに、午後三時六分同機犯人により爆破されたわけでございます。乗客乗員のうち、脱出時に負傷された方が若干名ございました。しかし全員無事にホテルに収容されたわけでございます。ここで犯人四人は、リビア警察当局により現場で逮補され、一応事件の完結を見たというわけでございます。  そこで、ハイジャック発生以来、私どものとりました対策を一応御説明申し上げたいと思います。  運輸省といたしましては、二十一日の午前三時に航空局対策本部を設立いたしました。引き続き政府といたしましては、二十一日の午前十時に、運輸大臣本部長といたしまして、総理府総務長官、それから外務及び運輸政務事務両次官、警察庁長官日本航空社長を副本部長といたしまして、日航機ハイジャック対策連絡本部を設けました。そして同日午後一時に第一回の会合を始めたほか、二十八日までに六回の会合を開催いたしまして、関連情報を交換分析するとともに、救援対策について協議いたしました。なお、その本部会議を開きます間にも、常に警察外務省あるいは総理府方々、私どもと一緒になりまして、情報を常にとり、これを分析し、必要な指示をいたしたいというふうな状況でございます。  また、それから日本航空に対しましては、乗客留守宅に個別的に連絡をしまして、逐次状況の十分な説明を行なうように指示いたしました。  それから政府といたしましては、二十一日の午後十二時十九分発の日本航空特別救援機によりまして、運輸省から航空局審議官が参りました。それから警察庁外務省関係官ドバイ現地派遣いたし、また日本航空におきましては、社長を団長とする現地派遣団同機同地派遣をしたわけであります。このうち政府側派遣者及び朝田社長ら七人よりなる先遣隊は、二十二日の午前五時三十分にドバイに到着いたしました。なお、この特別救援機には、医師、それから看護婦、おのおの二名を同乗させたほか、医薬品、食料品等の所要の救援物資を積み込みまして、乗客等の健康に万全を期した次第でございます。  さらに本部決定に基づきまして、佐藤政務次官現地へ急行し、二十三日の午後四時五十分ドバイに到着いたしました。同地ではアラブ首長国連邦政府協力のもとに、同政務次官中心といたしまして、石川在クウェート日本大使、それから朝田日航社長等によりまして、人命尊重ということを最優先に考え、救援対策が講ぜられたわけであります。  それから、問題が解決しましてからベンガジに残された乗容等帰国の手配でございますが、ベンガジにおられた乗客等帰国のために、特別救援機ドバイ空港を離陸いたしまして、アテネ空港、及びトリポリ空港を経由いたしまして、二十六日午後五時四十九分にベナニ空港に到着いたしました。これはベンガジ空港滑走路ハイジャックされましたジャンボ機の着陸によって相当損傷しました。もう一本の滑走路はまた短くて、これも修理中であったために、ベンガジ空港には直接おりられなかったわけであります。それからまた、欧州にあった日航機のチャーター便として就航していたものを、帰国のために応援させることといたしまして、同機パリオルリー空港を離陸いたしまして、トリポリ空港を経由して二十六日午後六時十分にベニナ空港に到着いたしました。  これらの救援機のうち、第一番機は、ハイジャックされた機の乗客日航関係者等を乗せて、二十六日午後八時十三分、ベニナ空港出発いたしまして、南回りによりまして、二十七日午後四時四十三分東京に到着いたしました。また第二番機は、奪取された機の乗員、それから政府関係者報導関係者等を乗せまして、二十七日午前五時七分にベニナ空港出発いたしまして、北回りによって二十八日午前三時四十分に東京に到着いたしました。なおドバイ空港におきまして降機されました一組の夫婦の方、及び宮下チーフパーサーは、二十六日午後七時四十五分現地出発して、ガルフ航空及び日本航空定期便により二十七日午後十一時五十一分に帰国いたしました。これによりまして、お客さま方も全部日本に帰ってこられたわけであります。  その後関係国に対しまして、今回の被奪取機乗客及び乗員救援について、たいへんに協力をしていただきましたアラブ首長国連邦大統領、外相、国防相シリアアラブ共和国国防相、並びにリビアアラブ共和国革命評議会議長に対しまして、総理大臣名外務大臣名あるいは運輸大臣名をもちまして、七月二十六日に感謝電報を発送しております。  それから、ハイジャック防止法対策等の今後の問題でございます。日航機ハイジャック対策本部は、今回の事件を教訓といたしまして、この種事件再発防止を目的といたしまして、国内空港あるいは外国空港に、おける手荷物の開披点検、それから旅客ボディチェック、これを中心といたしまする警備検査体制を強化すること、それから内外の情報の収集、分析、連絡通報等体制を強化すること。また、ハイジャック防止のための国際協力の推進、この三点を内容とする決定を行ないました。  運輸省といたしましては、これに基づきまして、当面の緊急対策といたしまして、定期航空会社及び空港管理者等に対しまして、開披点検、あるいはボディチェック、それから空港保安委員会の活動の強化等措置実施方指示いたしますとともに、警察庁のほうに対しましては、これらの措置に対する強力な指導、支援を要請いたし、また各省庁に対しましても協力方を依頼申し上げたわけであります。  さらに、いま申し上げました上記の決定の趣旨に沿いまして、八月一日にハイジャック等防止対策連絡会議、これは総理府総務長官議長といたしまして、内閣総理大臣官房審議室長、それから警察庁警備局長、それから法務省の入国管理局長、それから外務省大臣官房長、それから私――運輸省航空局長で構成されております――の第一回の会合が開催されました。関係省庁によるハイジャック防止対策というものを総合的に検討することにいたしたわけであります。  なお、関係各省課長による幹事会を設けまして、細目を検討いたしまして、八月を目途に当面の対策を樹立することといたしました。連絡会議はその後一回開きまして、近々最終のものを開きまして、当面の対策というものを確立したいと思っております。  以上が大体の経過の御報告でございます。
  5. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 引き続いて、最近の列車事故について、磯崎国鉄総裁から報告があります。磯崎総裁
  6. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 昨日の東海道線事故につきまして御報告申し上げます。実は資料がまだ間に合いません。もう五分か十分したら参ると思いますが、とりあえず口頭で御報告申し上げます。  昨日、八月二十七日午前九時十八分、東海道線鶴見――横浜間の貨物線におきまして貨物列車が脱線いたしました。その状況を簡単に申し上げます。  第八三六一列車、これは新鶴見発東静岡行きでございますが、新鶴見操車場を定時に発車いたしまして、六十キロの速度でもって運転中に列車の後方からブレーキがかかりましたので、直ちに緊急ブレーキをとりまして列車をとめまして、すぐ調査いたしましたところ、貨車七両が脱線いたしておりました。そのうち二両が転覆いたしておりました。その他電車線を、いわゆる架線をつっております柱四基、それからコンクリートポールの柱二基並びに線路の上にずっと架線をつっておりますビーム、これが約四基落ちて東海道線の六線全部支障いたしました。急遽東京南鉄道管理局長中心といたしまして、事故復旧本部を設けました。復旧は非常に長時間要しましたが、一応京浜東北線は昨夜の二十一時におおむね全通いたしました。なお東海道線は、下り線は昨夜の二十一時、上り線けさ二時四十七分に復旧いたしました。本朝はおおむね順調に動いております。  事故原因につきましては、直ちに本社から副技師長中心といたしまして、関係者現地に当たらせまして、けさまで徹宵して事故原因を調べております。まだ正確にはわかりませんが、いわゆる競合脱線というものではなくて、ちょうど脱線いたしました現場付近線路工事を深夜やっておりました。それのあと始末の仕事をしておったようでございます。その線路保守に異常がなかったかどうか、並びに脱線いたしました貨車、これはワムの六〇〇〇〇型式という貨車でございますが、この貨車にはたして異常がなかったかどうか、これを現在取り調べ中でございます。競合脱線一つの要素といわれる列車のスピードには異常ございません。記録速度計によりますと六十キロでもって、制限速度以内でございます。  ただいまお手元にお配りいたしました資料の二枚目に簡単な略図をつけております。この略図の左側が東京方右側横浜方でございます。ここではちょうど京浜東北通勤電車東海道列車線を横断している場所並びに新鶴見から参ります貨物列車がここへ入ってまいります。そして六線になっているところでございます。すなわち左のほうから申しますと上が東海道下り、二番目が東海道上り、それから途中でまたいで、線路を越しておりますのが通勤電車の南行きと北行き、それから貨物列車下り上りと六本ございます。これは略図でございますが、貨物列車はこの乗り越しの少し左のほうからずっと、この図面で申しますれば下のほうへ入って新鶴見操車場へ入るようになっております。そうして、いま申し上げますとおり、八三六一列車、これが一番下から二番目の線路を走っておりますが、これが左のほうの新鶴見から参りまして、そしてちょうどバツのついておりますところに滝坂踏切というのがございます。その滝坂踏切を越しまして二十四キロ百十二メーターのところで線路に乗り上がった痕跡がございます。そこでたぶん乗り上がりまして、そして列車は、先ほど申しましたように急停車いたしましたが、八三六一列車はその図のとおり、上り本線に一両、これは十三両目の貨車、それから下り本線近くに一両、これは十四両目の貨車、このほか、これは図面には書いてございませんが五両脱線いたしております。したがって十三両目の貨車東海道線上り本線を支障いたしましたので、もちろん電車が通れなくなる。と同時に、この付近に六線をまたいでおります、架線をつくっておりますビームが四基、先ほど申しましたとおりはずれましたので、全部電車をとめざるを得なかった。ちなみに昭和三十八年の鶴見事故、これは二十三キロ八百で起きております。この図面乗り越しをくぐって東海道列車線がまっすぐになった「上4」と書いた信号機がございます。そのずっと下のあたりの二十三キロ八百で鶴見事故が起きたわけでございます。  前回の鶴見事故は今日に至るまで、いわゆる純粋の競合脱線としてはっきりいたしませんでしたが、今回はこの滝坂踏切工事をしておったということが、二十七日の晩から二十八日の朝にかけて明白になっております。これはいずれ東海道線通勤輸送改善のために、この貨物線を将来旅客線に使うという意味で、いま全面的な補強をしている最中でございますが、その工事の一端でございます。約六十ミリ滝坂踏切を上げるという工事をいたしております。それがちょうど列車の通過の直前まで、深夜やりました工事の若干の手直しをやっておったようでございますが、それが原因一つじゃないかというふうに思われております。  また、さっき申しました貨車ワムの六〇〇〇〇型式は、いま調べておりますが、その車両にも異常があったかどうか、これも調査中でございます。幸いに併発事故が起きませんで、これは鶴見事故の直後、当委員会におきましても種々御指摘をいただきました対策をとりまして、その対策が幸いに一応全部働いております。  こまかいことは省略いたしますが、その具体的な例といたしまして、下にちょうどその当時この付近を走っておりました四個列車についてどういう理由でとまったかということを簡単に書いてございます。一番初めの京浜東北線南行七四一C、これはこの図面の右の一番上に、新子安駅というところにある電車、これはもう現場を過ぎておりますから関係ございません。しかしこの電車出発信号機が直ちに消えたということを確認いたしております。またATS指示したということも確認いたしております。これは新子安出発直後でございます。現場には直接関係ございませんが、ここにいわゆる非常停止指示がいっております。それからその次の北行八一〇B電車、これは新子安の駅にちょうどとまっておりまして、客扱いの最中に、出発直前でございましたが、出発信号機が消灯いたしまして、そして停電いたしまして、同時にATSの警報が鳴ったということで、そのまま停止いたしております。それから東海道線旅客列車下り線八四三S、これは左の上のほうにございます。これは現地に差しかかる手前電車でございます。これは踏切警手が押しました非常ボタンによりまして、そこにございます特殊信号発光機というものが明滅いたしまして、同時に信号機停止信号を現示いたしまして、ここでブレーキをかけ、さらに貨物線の八三六一列車最前部にございます信号炎管が点火しているのを見てこの場所でとまっております。また最後の六一〇二列車銀河五五号、これはこの図面右側にある列車でございまして、これは最先端、二十四キロ六百四十メーターでとまっております。これはその手前に、二十四キロ九百のところに信号機に対する、何と申しますか、装置がございまして、それを踏んで、その信号機の赤によりまして当然とまる。と同時に、これは運転手前方を注視いたしておりまして、前方に土煙が上がったこと、並びに八三六一列車信号炎管が発火していること、それから非常に架線がゆれているということ、三つを発見いたしまして、自分で緊急停車をとりましたけれども、すでにATSが表示されておりました。  以上によりまして、一応鶴見事故当時いろいろ問題になりました問題は、この点では、幸いにいずれも関係職員の努力によりまして具体化し、功を奏しておりましたけれども、なお今後、こういう問題のないように――非常に幸いであったというふうに思います、私は。しかし今後こういう点のないように、十分、ことに工事施行等につきましては、十分注意しなければならないということを深く肝に銘じております。  なお、復旧がたいへんおくれまして、多数の方々に御迷惑をおかけいたしましたが、昨夜は、下り湘南方面お客さんは全部新幹線にお乗せいたしまして、小田原その他のところから戻っていただく、あるいは横浜から京浜電車に乗っていただく、私鉄のほうにも非常に御迷惑をおかけをいたしました。いずれにいたしましても、非常に大きな事故を招きまして、非常に申しわけないと存じますが、前の鶴見事故原因とは若干性格が違いまして、たまたま場所は近くでございましたが、原因はおおむね明白になるというふうに思っております。  以上、たいへん、いま会議中から飛んで参りましたので、まだ正確な結果は申し上げられませんが、中間的な御報告を申し上げたわけでございます。
  7. 長田裕二

    委員長長田裕二君) それでは、質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 森中守義

    ○森中守義君 それぞれ御報告を拝聴いたしましたが、それらの質問はあとにいたしまして、最初に、金大中事件関係をした海上の経路について、最初にお尋ねしたいと思います。  私どもが新聞の報道あるいは運輸委員会以外の、国会でのいろいろな質疑等から感じておりますのは、一つには金大中誘拐に対して、日本を出国した経路がどうも海上による、つまり日本のいずれかの港から釜山に上陸したらしい、こういうことを金大中自身がソウルで談話を発表いたしました。また韓国の捜査当局が、いま海上経路に捜査の重点を移している、こういうことがしきりに報道されている。つきましては、その事件発生後間もなくして、東京都内の交通網の一斉検問が行なわれた、あるいはホテル、旅館等の探査が行なわれた、あるいは空港がこれまたその対象になったというようなことで、かなり厳重な捜査体制がしかれたようですが、保安庁に警察当局から、何日の何時何分に海上におけるこの問題について、警備の協力依頼があったのか、これを受けて、保安庁はどういう警備体制をとったのか。そして、その後この問題に対していかような調査が行なわれているか。どちらかといいますと、いままでほとんど国会におきましても、出国をした海上の経路等が議論されておりません。したがって保安庁長官から、その後、今日に至る経過、もちろん田中法務大臣が、たしか参議院の法務委員会でしたか、日本の港に五メートル置きに人は立てられないと、こう言って、何か脱出の経路について、どうもこれという対策がなかったというような印象の答弁を行なったのが非常に印象的なんです。どういうような経過になっているのか、まずその辺のことを保安庁長官から御答弁いただきたい。
  9. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) 金大中氏の事件発生を海上保安庁が知りましたのは、八月八日の十六時五十分のNHKテレビ臨時ニュースで知りましたのが第一報でございます。したがいまして、私どもとしては、この臨時ニュースのときに、警察がすでに捜査に着手しておられるということを知ったわけでございますが、そこで私どものほうから警察のほうに対して詳細な問い合わせをいたしたわけでございますが、ニュースで発表せられました以外の格別の詳しい情報は、発生直後でございましてわかりませんでした。  しかし私どもとしましては、これが海上に及ぶということも当然考えられましたので、私のほうの当直のほうから、同日の夜、これは北海道と東北を管轄しております第一、第二の管区本部を除きます関東以西の各管区本部に、事件の概要といいますか、そのテレビニュースで知りました状況を知らせまして、そして管内のそれぞれの保安部署及び巡視船艇に対して、警戒を厳重にするように指示をし、特に沖合いに停泊している韓国船に対しては警戒を特に厳重にするようにという指示をいたしたわけでございます。  具体的な警察からの連絡といたしましては、翌九日になりますが、九日の十時ごろ、大阪府の警察の水上署から私どものほうの大阪海上保安監部に対して、この事件に関連して特に韓国船に対する警戒を厳重にしてほしいという要請がありまして、私どもさらに警戒をいたしたわけでございます。  そこで私どもといたしましては、十三日までに、つまり金大中氏が韓国で、帰ったということを記者会見されまして、自分の所在を明らかにされますまでの間に、七十五隻の船に、いま申し上げました各管区で立ち入り検査をいたしたわけでございます。この立ち入り検査の結果につきましては、格別の異常は認められなかったということでございます。したがいまして、私どもとしては、まず韓国船、特に韓国向けに出港する船の立ち入り検査を行なうということをやり、それからいろいろと警戒をしたわけでございますが、結果論といたしましては、これによって金大中氏が何といいますか、韓国に拉致されていくというのを事前に発見できなかったということでございます。ただ私どもも、いま先生のお話にもございましたように、金大中氏がいかなる経路で韓国に拉致されたかということにつきましては、もちろん拉致されて海上から韓国のどっかに上陸したのではないかという推測と申しますか、考え方が一番有力といいますか、そういう考えでございますけれども、はたしてそれに違いないのかどうかということにつきましても、実は私ども現在のところはっきりいたさない。それからどこの港から出たかということにつきましても、関西方面、特にいま大阪の港であろうということが、一般に一番有力であるといわれておりますけれども、これも大阪の港から出たということについては確認しておりません。これは金大中氏のいろいろな談話、それから金敬仁氏あるいは梁一東氏がいろいろのところで談話といいますかお話をされておりますが、それらの話を総合いたしましてもいろいろと符合しない面がございまして、現在のところ私どもは、どこからどういう経路で韓国のどこに拉致されていって上陸をしたのかということは、まだつかめておらないわけでございます。したがいまして、結果から見ますと、もし金大中氏が海上の経路をとって拉致されていったということになりますと、これは私どもの警戒の網をくぐっていったというふうに推定されるのが現状でございまして、現在までのところ、これ以上のはっきりした情報といいますか、経路その他私どもの捜査の進展はいたしていないというのが現状でございます。
  10. 森中守義

    ○森中守義君 警察庁の山田警備課長見えていますか、あなたがこの担当の課長であるかどうか、この目的で来てもらっておりませんので、ちょっとその辺、私も質問をしながら正確なお答えをいただけるのかどうかわかりませんが、いま保安庁長官のお話を聞いておりますと、警察から保安庁に海上関係における警備の依頼があったのは、表向きには、翌九日の午前十時、大阪方面でそういう申し入れがあった、こういうお話なんですね。そういうことになりますと、事件発生から約十七、八時間経過したあとと、こういうことになりますね。そこで保安庁長官はNHKのニュースを八日の十六時五十分だかに聞いて、それから自発的に警備体制に入った。警察庁からは別段海上関係の警備を強化してほしいという、こういう要請はなかったという報告なんですね。この辺のことが、どうも警察庁として事件に対する捜査の取り組みということが万全であったかどうか、かなり疑問に思うんですね。空港と道路についてはかなりシビアな体制がとられた、しかし海上については全然気が向かなかったのか、気がつかなかったのか、まさか海上から出ていくとは思わなかったのか、何とはなしに警察庁の捜査体制にどうも釈然としないものがある。どういうようにお考えでしょうか。  それと保安庁長官事件発生と同時に、警察庁から陸上も、それから航空も海上も、一体のものとして厳重な警備体制が要請されておったならば、自発的にやられたものと多少質的に、内容的に違った結果が出てきます、それはどうでしょう。まず警察庁から。
  11. 山田英雄

    説明員(山田英雄君) お答えいたします。  私、警察庁警備課長でございますが、本事件の所管は外事課において行なっておりますので、先生の御質問の点にもございましたが、直接所管しておりませんので、私が局内において承知していることを申し上げることで御了解をいただきたいと思うんでございますが、当日事件発生当初は、事件の本質が不明確であったことは事実でございますが、所要の緊急配備、高速道路における警戒、それを含めまして、出国する可能性も考えておったわけでございまして、空港並びに港湾に対する警戒措置関係都道府県警察に対して指示しておったと承知しております。したがいまして、港湾におきましては、平素から水上警察署並びに港湾を担当する警察署と、所管の海上保安部との間における緊密な連絡がございますので、その間における連絡が期待されておったのではないか、かように承知しております。
  12. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) 先ほどもお答えいたしましたが、私どもテレビのニュースでこの事件を知りましたので、警視庁のほうに同夜問い合わせをいたしたわけでございますが、何ぶん事件発生直後のことでございますので、先ほど私が申し上げましたような、テレビニュースで発表されたような事項以外に詳しい情報はその当時得られなかったわけでございますけれども、しかし私どもといたしましては、かねて海上保安庁と警察との間に業務の協定がございまして、それに基づきまして常時情報を交換する、それからそれぞれの官庁が犯罪の端緒を得て捜査をした場合には、他方はそれに対して、何といいますか、協力をするということでやっておりますので、私どもが独自に捜査をする場合と、それから警察から依頼があったからそれに基づいて捜査をするという場合の区別はございません。ただ御案内のように、私どもは海上保安庁でございまして、陸上に対して、海上に起こった犯罪を端緒を得て陸上に及ぶことはありますけれども、陸上の犯罪に対する捜査権を持たないものですから、私どもとしては当然海上だけの警戒あるいはいろいろの手配ということは、海上がどうしても舞台になるわけでございます。そういう面で、いろいろむずかしい点はございますが、私どもが独自に捜査する場合と、それから警察庁からの依頼によって捜査する場合とで、実際の私どもの警戒のしかた、その他に相違はございません。そのように考えております。
  13. 森中守義

    ○森中守義君 やはり聞いておるとすっきりしないですね。なるほど捜査の質と内容からいけば、依頼があったから、なかったからということで相違があろうとは思いませんし、またあってはならぬと思う。  問題は、出国をする場合に、空もしくは海以外にない、他に方法がないのですね。それならば、これはやはり警察庁のほうも、海上保安庁に捜査網の重要なかなめとして一体的な捜査体制をとるのが当然。これがどうもお聞きしているとない。いま山田警備課長の話だと、担当でないと言われるので、私もそのことをおもんばかりながら聞いているのですが、話の語尾のほうに、言われなくてもそういう職務を持っているんだから、保安庁は当然なこととして海上警備に当たるべきだという、こういう意図のようにもとれる。しかし、ここはやはり最高の責任者が、空もしくは海以外に出国はできないわけだから、やはり一体の体制というものが、どうしてもこの際はとられなければうそだった、こう思う。また保安庁長官事件直後の大騒動のときだからという断わりはありますが、しかし、これは保安庁としてみれば人ごとではないわけです。むしろ海上における防止の最大唯一の所管ですから、警察庁に何も遠慮は要りませんよ、みずから進んで警察庁に合同捜査をやろう、情報はどうだというような、そういう体制がとられてしかるべきだったと思うのですね。しかし、それでもなおかつ捜査網をくぐって脱出をしたということであれば別なんですが、しかし今回のこの事件は、何としても陸上及び海上において、そういう捜査体制に万全が期されて、なおかつその網をくぐって出ていったというようには受け取られない、というような気がして私はしょうがない。それで、これは次の機会なり、あるいはできれば午後ずっとこの委員会は継続されますから、警察庁の担当の課長なり局長を出してください。少なくとも保安庁との協議体制、合同体制というものが完ぺきであったかどうかということは非常に疑問がある。ということで、ぜひ午後から警察庁の担当部門の委員会への出席を求めて、この事件に対する警察庁に対する質問はちょっと留保しておきたいと思う。  そこで保安庁の場合に、第一管区、第二管区を除いたものは全部配置につけた、こう言われるのですが、これはどういう言い方をすればいいですか、緊急非常体制ということがよく観念的にいわれますが、こういう意味合いのつまり配備であるのか、用心せいよという軽いつもりであったのか、その辺の配備体制というものをもうちょっと具体的に聞かしてください。
  14. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) 私どもが管内の管区本部あるいは保安部、保安署等に対しまして配備を指令する場合には、いろんな、情報の確度等によりまして、いろんな段階があるわけでございます。今回のものは、先ほど申し上げましたように、金大中氏が東京のホテル・グランドパレスから何者かに不法に拉致されたというニュースでございまして、それ以外の詳しい情報はわからないということから、来日中の韓国人金大中氏が、本日午後、東京のホテル・グランドパレスから拉致、誘拐され、国外逃亡のおそれもあるとの情報がある。関係機関と連絡を密にし、情報収集に当たるとともに、即応体制に遺憾なきを期せということを、これは私どもの本庁からの連絡に基づいて第三管区の本部長から管内の各保安部長、保安署長及び羽田航空基地長に連絡をいたしております。これと同様の連絡は、先ほど申し上げました各管区からそれぞれ管内の保安部署に出しております。これを受けまして、私どもの巡視艇としては、かねてから巡視警戒の計画に基づきまして、それぞれの担任海域を哨戒いたしております。したがいまして、こういう情報が入りますと、何といいますか、たとえば待機しておる船をも動かすというような措置をとるわけでございますから、警戒を一そう厳重にするために、ふだんであればパトロールをしてない船をも警戒させる、あるいは夜、普通の退庁時間後でありますが、所要の職員が集まってきて、そしていろいろと陸上の警戒に当たる、あるいはもよりの警察署との連絡に当たるというような業務を遂行をしたわけでございます。  ただ再三申し上げますように、その情報というものがきわめて不十分で、たとえば私どもの一番確度の高い、何月何日ごろどういうような経路で、どういうようなところから出国の公算が強いと、その人の人相はどうだとか、あるいは人数は何人だとか、特徴はどうだというような、具体的な確度の高い情報がありますれば、重点を指向して、たとえばほかのところの警戒をやめてでもそちらのほうに重点を指向すると、あるいはほかの管区あるいはほかの保安部からその重点指向の場所に船を特に配備を強化するということもできるわけでございますが、今回の場合は、そういう非常にばく然としたいわば情報でございましたので、それぞれの担任海域において、海域の警戒を厳重にしろという程度の指示しかできなかったわけでございまして、実際の警戒もそのように行なわれた。したがって結果的にはこれを捕捉することができなかった、こういう状態であるわけでございます。
  15. 森中守義

    ○森中守義君 そうしますと、警察庁ももちろんですが、保安庁それ自体も事件の深刻さということに対する認識が十分でなかった、もっと深刻なものとして受けとめれば、いま少し警備体制についても強化できたと、こういうようなことに受け取っていいですか、つまり通例の事案というような認識のもとに一般配備についたという程度にすぎないということですか。   〔委員長退席、理事江藤智君着席〕
  16. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) 認識が甘かったのではないかという御指摘でございますが、私どもとしては、日本に滞在している外国の方が不法に何者かに誘拐されて拉致されるということでございますので、これは事柄としては非常に容易ならぬ事柄であると思います。ただ何べんも申し上げますように、どこに重点を指向して警戒をすべきかということについては、実はこれも結果論でございますけれども、まあいまのところ大阪といいますか、関西方面から海路で出たのではないかという推測が一番有力のようでございますが、その当時におきましてはどこから――もし海上を経路として不法出国をする場合に、どこから出るかということについては、なかなか見当がつかなかったというのが実情でございます。私どもの普通の常識では、不法出国等を行なう場合には、普通の開港であります大きな貿易港から正規の貿易船に乗って堂々と出るということは、まず希有のことでございまして、多くの場合は不開港から暗夜にまぎれて、たとえば正規の貿易船でないような漁船等を装ったような船で出るということが普通多いということから、どこに重点を指向して、どういう方面の、どういう船を警戒するかということについては、非常にはっきりした指示ができなかった、結果から見ますれば海路から出たであろうということでございますので、またこの事案の性質は、非常に外国人の日本国内における不法拉致、誘拐の事件でございますので、非常に重大な問題でございますけれども、いま申し上げましたような事情によって、結局、結果的に見ますと、かりに海路から国外に不法出国をしたということでありますれば、私どもの警戒の間隙をつかれたと、こういうことであろうと思います。
  17. 森中守義

    ○森中守義君 これは午後、警察庁の直接の責任者に来てもらって、一緒にお尋ねしたほうがいいと思う。ただ午後に持ち越すと言いながら、一言保安庁に申し上げておきたいのは、少なくとも、本気になって警備体制に入れば、それ相応の機動性を持っている、捜査能力を持っているわけですね、配備能力がある。しかし事案に対する認識があまり濃密でなかった。つまり一般的な受け取り方で警備に臨まれたというところに、一つの問題が残されているように思う。これはさっき長官のお答えの中からも、そういうようなことがうかがい知れる。しかし結果においては、ここまで国際級の世論を喚起する、二国間で必ずしも好ましい方向にいかない、国論は日増しに主権を侵害されたという重大なる関心が払われつつあるというような結果をもたらしたという、その一端の責任は、警察庁も保安庁も免れるわけにはいきませんね。そういう意味で、午後にもう少しこのことについてはお尋ねすることで保留しておきましょう。警察庁はぜひ担当者を出してください。  それから、これはここまできょうは触れたいとは思っていなかったんですが、ちょっと大臣、対韓援助、韓国援助の問題で少し運輸省所管について承っておきたいと思う。  在来、日本の開発途上国、こういう諸国に対する援助方式というものは、かなりいろいろな国際的な非難があり、批判がある。   〔理事江藤智君退席、理事木村睦男君着席〕 ことに、金大中がことしの二月でしたか、ある意味では朴政権に対する非難でもあるし、かたがた海外援助に対する日本政府の非難を、中央公論にかなり長文の論文を出したことがある。大臣お読みになったかどうかわかりませんけれども、非常に興味深い金大中の論文ですよ。  そこで開発途上国に対するわが国の援助というものは、いまやDAC方式からODA方式に変化を遂げる、GNPの一%が〇・七%に変わってきているんですね。しかし、ずっと在来、通産省あるいは企画庁、外務省等がまとめたものからいけば、援助の方式が非常に多元的であって、しかも個々的なケースが違う。韓国の場合には、たとえば円借款した場合に、据え置き期間あるいは償還の年限あるいは金利、こういうものが諸外国に比べてかなり優遇されているんですね。この辺に、私は一般的に対外援助の方式等について、なぜ日本は一定の原則は持てないのか、たとえば中国が持っている七原則というようなものを、当然日本政府は持つべきなんです。相手の国、相手の国次第で、いま申し上げるような借款の内容が違ってくる。しかも韓国はことさらに優遇されているんですね。で、こういう一般的な対外援助の内容を一つの根拠に踏まえながら、実は新谷大臣、なられてまだ韓国にこの問題でおいでになったことないようですが、前の佐々木さんあたりはちょこちょこ行っておりましたよ。したがって対韓援助というものが、二国間の外交政策の中に採用されるようになってから相当分厚いものになっている。もちろん有償無償合わせて五億ドル。この問題は別としましても、いろんな体系のものがある。いま運輸省が具体的に対韓援助をやろうとしている、あるいは要請されている内容、前回の閣僚会議、また延期になりましたが、今回の閣僚会議の中に韓国側が用意しているもの、日本側が用意しようというもの、その内容及び民間の企業が隊伍をなして、いま韓国になだれ込んでいる。しかし、そういう企業の進出も、関係省庁の認可もしくは許可を要するものが相当あると思う。こういう内容はどういうものであるか、まずその辺を、ひとつ大臣から概括的でけっこうですから、お示し願いたい。
  18. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 対外援助の問題は、全体としては運輸省の所管ではありません。したがって、これは外務当局または経済企画庁等の主管庁にお聞き願う以外にないと思います。いまの韓国の関係については、これは御承知でありましょうが、私のほうは海運協定を締結しようという問題が残っておるのと、それから過去において、昭和四十年六月、韓国に対して三千万ドルの船舶輸出を内容とする借款を供与しております。それから海運協定を今度は結ぼうじゃないかということになっておりますが、この際に、韓国側からは、さらに船舶輸出の関係で五千万ドルの信用を供与してもらいたい、こういう申し出があることは事実でございまして、日韓閣僚会議が開かれた場合には、この海運協定の問題この五千万ドルの船舶の輸出についての借款の問題、これがおそらく議題になったろうと思います。しかし、これにつきましては、海運協定の中で若干のまだ意見の相違があります。それから五千万ドルの新しい船舶輸出についての信用供与につきましても、信用供与の条件について、なお韓国側と折衝しなければならぬというようになっていると聞いております。この点については、いずれ閣僚会議が開かれるという前に、関係閣僚の間でいろいろ相談をしなきゃならぬということでございましたけれども、その段階に立ち至らないで閣僚会議が延期されたものですから、現在のところはこの二つの問題について、まだ最終的な詰めば行なってないということでございます。  それからなお、これは私の所管ではありませんが、過去において、漁業関係の漁業協力のための協定をしたこともあるようでございます。今度は、閣僚会議においては、もう少し全般的に韓国としては日本に対しまして経済協力を積極的に要請するであろうということは伝えられておりましたが、この内容については、私はよく、詳しくは知りませんし、これは関係省庁のほうからお聞き取りを願いたいと思います。
  19. 森中守義

    ○森中守義君 いま大臣のお示しの中身は、七二年の九月ですが、第六回の日韓定例閣僚会議において、それでいまお示しの五千万ドルの船舶供与ということを韓国側が強く要請した、日本側は、必要であろうというわけで協力を約束したということが通産省の報告に出ておりますね。これを示されたのですが、すでにこれは約束済みだと、こういっている。そこで船舶局長、この関係の実務的なことは一体どういうことになるのか。つまり運輸省がかかわりを持つ限界はどういうことであるのか、通産省、外務省はどういうことであるのか。その辺の実務関係をもう少し正確に具体的にお答え願いたい。  それから大臣、このほかに地下鉄の援助が一つあったと思うのですよ。官房の政策担当はだれかいませんか。運輸省の対韓援助の重要な項目は船舶と地下鉄であったと私は思う。どなたでもけっこう。ひとつ船舶局長から実務関係、いま大臣の言われる五千万ドルの船舶供与というものはすでに昨年約束づけられているというように報告が出ているので、これからの問題じゃないと思う。どうぞ答えてください。
  20. 田坂鋭一

    政府委員(田坂鋭一君) 先生のおっしゃるとおり、すでに、四十六年八月でございますから、第五回の定期閣僚会議におきまして、海運協定を前提にいたしまして、五千万ドルの船舶輸出のための信用供与の約束がなされております。そういたしまして、海運協定の進行の状況を見ながら、私どもはその五千万ドルの信用供与につきまして配慮をいたしてきたわけでございますが、今日まで海運協定の締結がまだ確立されておらない状況でございますので、最終的には決定をされておらない。そういたしまして、昨年の九月にはソウルで第六回の定期閣僚会議が行なわれましたけれども、そのときにも、このことはただいま先生の仰せのとおりに再確認されたわけでございます。そういたしまして、さらに海運協定の交渉を進行させますために実務者会議を行なうということでございまして、それは昨年十一月に行なわれましたが、まだこの実務者会議も思うように進展はいたしておりません。そういたしまして、今回閣僚会議が行なわれましたら、さらにこの点につきまして協議がなされるという予定であったことは、先ほど大臣から御答弁があったとおりでございます。  なお、信用条件につきましては、わが方と韓国側とでは若干の相違がございまして、これは大蔵省を中心にいたしまして詰める問題でございます。  以上でございます。
  21. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) ちょっともう一点。船舶局長の答弁と私がお答えした答弁と食い違うような印象を与えておりますが、こういうことを申し上げておるのです。五千万ドルの問題は、あなたが御指摘になりましたように、これは第六回の閣僚会議で大体合意に達しているということは事実なんですけれども、ただ私の申し上げたのは、海運協定がまだ締結されないということと、それからこの信用供与の条件が日本側の提示している条件と韓国側の希望している条件とがまだ開きがあるのです。これはやはり大蔵省もあることですから、関係省庁と相談をした上で、たとえば頭金をどうするか、据え置き期間をどうするか、延べ払いの期間をどうするか、それから利率をどうするかというような信用供与の条件がこれからきまる、今度の閣僚会議で相談した上でこれはきまっていくだろうと思うものですから、その事実をそのままで申し上げたわけでございます。五千万ドルそのものは前に合意されておる。しかし、それを実際に移す場合のいろんな貸し付けの条件というものがまだきまってないという状況ですから、ひとつその点、説明が不足でしたから補足しておきます。
  22. 森中守義

    ○森中守義君 地下鉄……。
  23. 木村睦男

    ○理事(木村睦男君) ちょっと森中君に申し上げますが、地下鉄関係の担当の関係者がまだ来ていないようですから、来ましてからお願いします。
  24. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 じゃあいま答弁できないわけですか。
  25. 木村睦男

    ○理事(木村睦男君) いませんから、来てから地下鉄問題はお願いします。
  26. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 森中委員からも質問があったんですが、大臣の御答弁では、経済企画庁並びに外務省関係だというふうにおっしゃったけれども、いつだったか私は忘れましたが、韓国のソウルの地下鉄援助の問題について、この委員会で私は質問した覚えがあるんです。そうなると、地下鉄の問題なんか、これは必ずしも外務省の問題とは言えないと思うんですね。だから地下鉄の問題等についても、これは一体どうなっておるのか。東京の地下鉄だって思うように進捗していないのに、韓国に対する地下鉄の援助ということは、ちょっと割り切れないものがあったので、この前質問した覚えがあったんです。そのことも、もしお答えできたら、いま答えてください。
  27. 原田昇左右

    政府委員原田昇左右君) 対韓援助の問題は、先ほど大臣から御答弁ございましたように、所管窓口といたしましては外務省の問題でございますが、私ども実態的な面で、運輸関係のプロジェクトの援助についてはタッチしておりますので、その関係上知っておる範囲でお答えさしていただきます。  地下鉄の問題は、たしか二、三回前の日韓閣僚会議で先方から、対韓援助全体の中で、ソウル市が大体人口五百万人ぐらいで、大阪圏ぐらいの規模になりますが、バスしか交通手段がないので非常に困っておる。そこで地下鉄建設計画を韓国としてはぜひ実現したいと、民生安定計画の一環としてやりたいから、日本協力してくれという依頼がございまして、それに対して、日本政府としては、まず第一回としては政府調査団を出して、ひとつ地下鉄計画のフィージビリティースタディーをやってあげましょうということになりました。その後、そのフィージビリティースタディーは実現されまして、専門家が行ってやりましたところ、どうしてもやはり地下鉄と国鉄、つまり、あそこは国鉄がまだ電化してない部門がございます。それから、国鉄線と地下鉄を結ぶ線が――国鉄同士が町の中で切れておりますので、地下鉄で結んでそれを相互に連絡するというようなプロジェクトはまず第一期計画として必要であろうということでございまして、それに基づいて、次の日韓閣僚会議で先方に対して、じゃあ資金援助をしようということで、総所要資金の、ちょっと金額的には忘れましたが、たしか総所要資金の六、七割であるかと思いますが、八千万ドル強だと思いますが、その程度の資金協力をいたすということになりまして、現在地下鉄の建設工事がそれに基づいて始められているわけでございます。技術的には、全部日本の技術指導によって行なわれておりまして、海外鉄道技術協力協会というのですが、JARTSという協会がございますが、JARTSがコンサルティングで、設計施工管理をやっております。工事日本連合と申しますか、日本の車両メーカー全部が一本になってこれを受注し、推進しているわけであります。ただ建設工事現地で行なわれているという状況でございます。
  28. 森中守義

    ○森中守義君 ちょっと大臣、これは確かに所管外のことなのでたいへん恐縮ですが、いわば閣僚の一人としてお尋ねしておきたいと思う。つまり相当長期にわたる援助政策が、今日あらためて、田中総理が日米会談の結果もっと深入りしようという方向にきておりますね。それでいままでのものをずっと見てきますと、ほとんど一次産業、二次産業、三次産業、こういう全産業部門にわたりまして、日本の援助を例外なく受けておる。また日本は進んでそれをやろうとしている。そのこと自体を、いまやっぱり洗い直す時期に来たのではないかというのが、金大中事件をめぐりまして、新たな角度から議論として起きている。ついては、運輸省関係のものにつきましても、いままでこの委員会で対韓援助問題はあまり議論したことはない。しかし、きょうこういうことを機会に、だんだん堀り下げていきたい、こういうふうに私ども思っている。   〔理事木村睦男君退席、理事江藤智君着席〕 そこで、これは資料からいきますと、明らかに日本からすれば出超、韓国からすれば対日関係は入超という、こういう記録がありますね。たとえば六九年に日本からの輸出は二一・四、七〇年が二八・一%、七一年が二四・五%と、出超、入超の関係資料として出ている。とにかく日本は韓国に物を売る、そのことが援助に結びついているのではないか。つまり、ひもつき援助ということがよくいわれますが、確かに韓国からすれば、日本からの輸入は多いですよ。約倍を占めている。これが日韓関係の、少なくとも韓国が日本に対する四十五年という併合時代の因果関係は別としましても、現在日本から物を買っているのではないかというような感じというものが、かなり濃厚ににじみ出ているような気がしてしようがないのですね。そういう貿易構造というものが日韓関係において、いま少し改善の方向にいかなければ、今日の体制というものは、感じとしては変わっていかぬのじゃないかというふうに思うのです。そのことが日韓閣僚会議の中で、ただいわば、日本政府も韓国政府も、きのうの朝日新聞の論調からいくならば、ともに身内意識が強すぎる、もっと詰めて言うならば、いずれもが反共国家であるがゆえに相互が依存し合っている。だから主権侵害等についてもけじめがないんだ、こういう意見が、きのうの朝日新聞で非常に特徴的なものとして出ている。私そう思う。日韓関係を、一体今日の閣僚の一員として新谷運輸大臣は、いま私が一例を示しましたような、そういう貿易構造という観点からも見直す時期ではないか、あるいは閣僚会議というものも変な意味の身内意識、相互依存関係ということで、一体主権の尊重というか、あるいは主権侵害というものが行なわれておりながら、これすらも政府は国内世論を抑制、抑止の方向に向かうということが、国家利益にかなうのかどうなのか。非常に私は重大な問題だと思うんですが、閣僚としてどういうお考えをお持ちですか。
  29. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 森中さんのいまの御質問の趣旨は非常に政治的なものだと思うのです。したがって、こういう国と国との関係、これに対して、この際どういうふうに改善措置を講じたらいいかということについては、運輸大臣からは政府を代表しての答弁はできない。これは外務大臣にお尋ねを願いたいと思うのです。ただ一般的に言えることは、韓国だけではありませんか、今日のような日本の状態でありますから、いまちょっとお話しになったような、まあ対外援助するについても、ひもつきの援助というようなことが過去においては非常にはやりましたけれども、これは今後絶対にしないということは、各閣僚とも了承しておるところでありまして、今日行なっておる、低開発国に対する、あるいは後進国に対する援助というものは、何とかしてGNPの一%に近づけたいという努力をしつつ、しかもその内容については、お話しのようなひもつきの援助は、これはやめなきゃいかぬということで、現実にはそういうふうに取り計らっていると思います。  ただ韓国のような場合には、何しろ隣の国であって、しかも日本からは、一番要求されるものは技術方面だと思うんですね。いまのお示しの地下鉄の問題にしましても、あるいは船舶の問題にしましても、これはいずれも技術的な方面の、何といいますか、援助、ことばを強く言えば、そういった方面において日本の技術を学びたいという希望が非常に強いわけです。こういったものは、いわゆる経済的なひもつきとは違って、技術の援助というものは惜しみなくやったほうがいい。こういう態度で運輸省は臨んでおることは事実でございます。その他の政治的な問題についてのお尋ねにつきましては、これは政府を代表して私からお答えする立場にございませんので、御了承いただいて、関係の責任を持っている大臣から十分お聞きとりを願いたいと思います。
  30. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 関連。  大臣ちょっと逃げたような感じですが、しかし今回の金大中事件について結論的に言うならば、海上保安庁は全くこれは逃げられたわけですな、結果的には。さっき森中委員からも質問がありましたけれども、あそこで誘拐されたということになると、国内で殺されるか、あるいはまた韓国へ連行されるか、韓国以外の外国に連行されるか、それ以外にないわけです。国内で殺されるかどうかという問題については、これは警察の仕事になるかもしれない。しかし海外へ持っていかれるという可能性は多分にあったわけです。そういうことになると、空と海に対して警戒を厳重にする以外に方法がない、歩いちゃ帰れないわけですから。そうすると空港か、あるいは港かということになる。空港の場合は場所が限られているわけですから、そうどこからでも飛んでいけるわけじゃない。ただ海の場合はどっからでも行けるわけです。そうなれば日本国中に警戒体制をしかなければならぬということになる。それはたまたま大阪あたりから出たらしいというのは、これは結果論ですけれども、大阪でなくたって、東京湾だってあるいは日本海だって、韓国へ通ずるルートはあるわけです。   〔理事江藤智君退席、委員長着席〕 そうなれば日本国中で厳重な警戒体制をとるというのは、これはやらなければならぬことじゃないかと思うんです。お話を聞いてみると、警察のほうからの連絡も即時にあったわけじゃない。翌日まで持ち越せば、たとえばこれはもう昔の話だけれども、下山事件なんというのは三越で行方不明になった、しかし翌日にはもう死体になっていた、こういうかっこうになっているわけでしょう。だからそういう点どうも少し手ぬるかったんじゃないかということになるんですよ。いまのような手ぬるい体制であれば、韓国と日本との間、これは密入国も密出国も自在にやられていたというふうに見なさざるを得ないでしょう。普通の人間じゃなくて誘拐犯人が、誘拐された人間と一緒に出て行ったなんということは、これは日本警察としてはたいへんな恥ですよ。まさかなれ合いでやったんだというふうに私ども信じたくないです。その点は警察庁の担当者から、もし見えたら十分に事情を聞きたいと思うんですけれども、海上保安庁にしたところで、この責任はやはり分担しなければならぬと思うんです。そういう手ぬるさというものをお認めになるのかどうか。  それから当然考えなければならぬことは、韓国の船舶をマークするということなんです。韓国の船舶というものについても、たとえばどれだけの船がどういう目的で出たり入ったりしておるということがつかめているのかどうか。つかめていないとすればまことにこれはルーズな話ですが、その点はどうでしょう。
  31. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) いまのお尋ねの問題について、海上保安庁のとった措置、これについてはさっき長官からお答えをしたとおりでございまして、海上保安庁としてはそういう情報を受けて、直ちに緊急の指令を出したということでございますが、結果的には現場の一線で働いている人たちが、そういう警戒体制をしいたにかかわらず、どっかで――事件のまだ内容はわかりませんけれども、とにかくどっかで裏をかかれたという結果になっておると思います。その点については非常に私も遺憾に存ずると同時に、私自身は司法警察に関しましての指揮監督権はありません。職務上の指揮監督権は持っておりません。これは検察庁が指揮をされるわけです。第一線の保安官及び保安官補というのがございますが、これが法律によって海上における司法警察官としての職務を行なうという規定がございます。そういう仕事をしておるんですが、私は司法警察権を持っているはずないんですが、しかし、そういった人たちの身分上の監督権を私は持っております。その意味におきまして、私自身も責任を感ずる次第でございます。  ただ、結果的に申しまして、あなたが御指摘になったように、非常に海岸線の長いところです。これは毎年巡視艇をふやしましたり、あるいは航空機等の増備をしまして、やっぱりコーストガードというものについては、毎年運輸省が骨を折ってきたわけですが、現在のところはこれが十分でない。おっしゃるように、港を中心にしては、密入国、密出国、それから禁止された品目の輸入とか、あるいは輸出とか、これは税関と一緒になっていろいろの犯罪の捜査に当たっておるわけでありますけれども、しかし港外になりまして、この長い海岸線全体にわたって巡視艇を置き、それから監視員を置いて、全部常時これを見ているということは、これはできないことはないと思いますけれども、これはよほど今後経費をかけて努力をしないと、そこまで到達し得ないのじゃないかという感じがします。これについては毎年やっておりますが、私はもう少しコーストガードというものに重点を置いて、巡視艇その他の警備体制をふやしていくことが非常に必要であるということは感じておりまして、四十九年度予算におきましても、この点は重点的に処理をしたいと思っておるわけでございます。  いずれにいたしましても、いまの問題については、こちらの海上保安庁のほうで警戒をしておったにかかわらず、その裏をかかれて、どっかから国外に連れ去られたということが事実のようでございます。その点については、今後とも十分反省をしながら、海岸線の警備について、もっと努力をしなければいかぬということを痛感しておるわけでございます。しかし第一線の人がそういった仕事を受け持っておるわけですけれども、身分上の監督をしておる私が、やはり最高の責任者であるということについては、私も自覚をしております。
  32. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 警察庁関係の担当者見えているんですか。
  33. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 外事課長が見えております。
  34. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 では警察庁関係の方にもちょっと質問したいのですけれども、事の重大性に対する認識において欠けておったのじゃないかという指摘が、森中さんからも端的に言われたわけです。結果的には取り逃がしたのですからね、これは。これだけ国際的にも大きな問題になるのに、海上保安庁に対する正式な連絡等もかなりおくれておる。  それからルートとすれば、これは国内の殺害事件ということになるかならないか、それに対する警戒はもちろん大事なことだけれども日本から外へ脱出をするということは、容易に想定されることでしょう。そうなれば海の警戒を厳重にする、空の警戒を厳重にするということはあたりまえのことなんです。海上保安庁で手が足りなければ、海上自衛隊のほうにまで協力を求めてでも、出入りの船舶について厳重な警戒をするというようなこともやるべきじゃないかという気がする。海水浴場からボートで脱出するなんてわけにいかないと思うのです、幾ら何でも。そうなれば、ある程度の船舶、それも韓国との往来の可能性のある船舶というふうにしぼられてくるわけです。それらの点で、はたして十分な警備体制がとられておったのかどうかという疑問が残るわけです。はたして遺憾なきを期したのかどうか。  それから、こういう一つの事実があると、韓国という国と日本との間は出入国というものが自在に行なわれるというふうな認識をわれわれは持ってしまいます。せるだけに、この問題に対する政府、特に警察庁の態度、今後の方針というものを、われわれは十分に明らかにしたいと思うのです。名前が金大中だからしようがないでは済まないです。その点、警察庁関係の方の意見も聞きたいと思うのです。
  35. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) 海上保安庁との連絡について御説明をいたします。  今回の事件発生をいたしましたのは十三時三十分ごろでございますが、警察に第一報が入りましたのは十四時十四分、宇都宮徳馬先生から警視庁の赤木警備部長に電話連絡があったのが、私どもが本事件を認知した端緒となっております。その後、一一〇番入電は十四時四十一分でございまして、これに基づき警視庁は直ちに麹町署員並びに外事二課員を現場に急行をさせました。十四時四十五分には、警察官がグランドパレス・ホテルの現場に到着をいたしております。簡単な事情聴取をいたしました後、とりあえず十四時五十五分に有線電話で、東京港を管轄をいたしております月島警察署並びに水上警察署に金大中氏の発見方指示をいたすとともに、羽田空港にも同様の手配をいたしました。  その後、事件発生が、すでに一一〇番入電の一時間十一分前であるということが次第に明らかになりましたので、すでに相当距離を逃げておるという判断をいたしましたので、警察庁といたしましては、十五時四十分、全国の六十一空港並びに港湾百十九港に対しまして、管区警察局を通じまして、主として韓国向けに出向する航空機、船舶の乗員乗客をチェックするよう指示をいたしました。その際に、海上保安庁、入管等の関係諸機関と連携を密にしてこの捜査を実施するよう指示をいたしました。  現場では、海上保安庁と警察の間には、それぞれ共助協定が実務上できておりまして、警察官は、御承知のように、法的には船舶に対する訪船は事実行為として事実上できますけれども、立ち入り検査権を持っておりませんので、私どもは海上保安庁の御協力は不可欠であるというふうに考えまして、この関係機関との連携を特に指示をいたしたわけでございます。ただ御指摘のように、海上保安庁本部に対する警察庁本部からの連絡は、この現地に対する手配を優先と考えてそちらに専念をいたしました関係で、事務的におくれました。この点は、今後、中央レベルにおける連絡の緊密化という点、反省をしなければならないと考えまして、先般設立されましたこの種の国際事件再発防止委員会、これは警察庁の内部に設立をされました、本件の教訓に基づきまして今後の対策を検討する委員会でございますが、この委員会におきまして、一つの反省、教訓点として取り上げたいと考えております。  この連絡によりまして、私ども韓国向けの船舶に関しましては、主として大阪港を中心といたしまして、十三日金大中氏がソウルにあらわれるまでの間、約三百隻の船についてチェックをしたという報告を受けております。  また、この全国的な手配に関しまして動員されました警察官は延べ二万四千名でございました。このうちの何名が空港あるいは港の検問、警戒に当たったかつまびらかでございません。と申しますのは、ホテルのチェック、あるいは高速道路の検問等を実施いたしましたので、このうちの何名が港に向けられたかさだかでございませんが、御指摘のように、本件は海外への連れ去りの可能性がございましたので、以上のような所要の措置をとった次第であります。
  36. 森中守義

    ○森中守義君 聞いておりますと、その事実経過をたんたんと述べられたので、事実経過それ自体を問題にしようとは思わない。けれども対策の原則になるものの考え方にどうもやっぱり問題がある。それは保安庁長官からも警察庁との間には特別な取りきめがある、こういう御説明を聞いたし、いま外事課長からも同様な趣旨ですから、それは中枢部を経由しようとしまいと、特定の事件に対して、いきなり海上保安部のたとえば管区本部長であるとか保安部長とか、そこにお話を入れられるのは決しておかしいとは思いませんよ。しかし金大中事件の論郭というのが、個々の内容、背景はともかくとして、少なくとも警察庁が金大中という人がどういう存在の人であるのか、通例の切ったとか殺したという事件とはちょっとこれは質的に違いますね。かなり国際的な反響を呼ぶであろうと、これは重大な事件だという、そういう勘は働かなかったんですか、それが問題だと思う。ですから、それはなるほど保安庁でも協定があるから、警察庁から話があれば、さあ出動だということになるでしょうけれども、やはり保安庁という縦の一つの行政機構なんだから、保安庁なりにこういう場合にはどういう対処をする、この事案についてはどういった対応策があるという、そういう訓練というものが平素積まれていると私は思う。  そこで今朝来、保安庁長官にお話を伺っていますと、NHKのニュースでわかったと、こう言われる。それで警察庁に聞いてみたけれども事件のどさくさで、これというような重みのある内容のものが把握できなかった、正確な情報がなかった。しかも正式には警察庁から、日が変わって八月の翌九日ですね、九日の十時に大阪の府警なのか、あるいは水上署かわかりませんが、どちらからか正式に話がありましたと、この間約十八、九時間経過している。これでは警察庁警察庁、保安庁も保安庁という、こういう言い方をしなければしようがないと思うんですけれども警察庁の保安庁に対する協力の要請あるいは共同でひとつ捜査網をしこうという発想に大きな間違いがあったんじゃないですか。それはいま確かに、文言の中でおそかったというようなことを言われたので、あえてこれ以上追及はしませんけれども事件の内容よりもむしろ輪郭とその性格、さっき瀬谷委員が言われたように、殺すのか海外に持っていくのか、この辺のことは立場が立場の人だから、やっぱり警察庁としては考えるのが当然じゃないですか。それならば空か海かどちらかしかない。空港に厳重な検問体制をしいたように、海上についても一番大事な保安庁に対して経過をある程度説明をしながら、ひとつ不敗の体制海上警備を依頼する。こういうことが完全に行なわれていない。率直に認めますか、その事実を。その考え方に非常に粗漏があった。一般の殺人事件とか、あるいは強盗事件とか、そういう事件と同様な扱いをしたのか、あるいはもっと軽微な扱いをしたような気がしてしようがないのですが、肝心の保安庁は忘れておったのですか。まずその辺から警察庁の意見を聞いておきましょう。
  37. 佐々淳行

    説明員(佐々淳行君) 海上保安庁へ直ちに連絡をしなかったという点につきましては、御指摘のとおりでございまして、私ども今後この種事犯が再発することのないよう努力をいたします際に、その問題は大きな反省点として取り組んでまいりたい、かように考えております。  本件の重大性に関する認識の問題でございますが、これにつきましては、おことばでございますが、私どもといたしまして、決して普通の殺人誘拐事件よりも軽視をして取り組んだということはございません。事件発生の後、約一時間十五分経過いたしましたが、三時十五分に警察庁は緊急配備を発令をいたしております。従来の考え方でまいりますと、刑事局の担当しております一般の誘拐事犯につきましては、被害者の生命の安全を守るために、通常緊急配備をしない、むしろ隠密裏に捜査をし、直ちに報道関係者と協定を結んで隠密裏に手配をする。これが従来の考え方でございましたが、今回の事件に関しましては、国際的な重要性あるいは金大中氏の救出のために、若干その考え方を修正をいたしまして、三時十五分に緊急配備を発令をした次第でございます。また三時四十分、先ほど申しました全国手配をいたしましたほかに、金大中氏が地方に連れ去られどこからか出国をする可能性があるということで、空港並びに港に対する手配を行なうとともに、いずれかのホテルに監禁をされておる可能性が大と見まして、八月の十日でございますが、全国の都道府県警察に対しまして金大中氏発見のために各ホテル、旅館の検査を下命いたしまして、全国五万四千軒ほどのホテルのチェックを実施いたしております。今後、関係官庁、この種事件発生いたしました場合には、外務省、法務省、海上保安庁その他関係官庁との中央における連絡を密にして、敏速な手配ができるよう、そういう仕組みを考えたいと、かように考えております。  それから、この件につきましては、海上保安部から御指摘がございまして、私どものほうからその点遺憾の意を表して、今後のより密接な協力をお約束したような経緯もございます。また事実、海上保安庁からは、直ちに、八日の午前零時から十日の午前零時に至る間、韓国に向けて出港をいたしました船三十五隻のリストをちょだいをし、捜査資料として活用さしていただく等、実務的には綿密な連絡をとっております。
  38. 森中守義

    ○森中守義君 これは衆議院等でもだいぶ議論されたようですが、初動捜査に大きな手抜かりがあったということは間違いない、こう私は思う。  そこで保安庁のほうでは、さっき長官が言われた話とはいょっと内容が違うのですね。保安庁本部に対してはずいぶん時間がおくれているけれども現場についてはもうすでにやっておいた、こういう外事課長のお話、しかし、これは保安庁の長官の命によるものと警察庁からの申し出によるものとには、保安庁の第一線の皆さんたちには多少の受けとめ方が違うという認識のしかたが正しいのか、いやそれは一つ事件であれば、本庁から言ってこようと警察庁から言ってこようと、差別なくやるという、こういう受け取り方が正しいのか、その辺はどうでございましょうか。いま警察庁では確かに遺憾の意を表明している。  それと先ほど両者から言われる両庁の特別の取りきめというものは、手持ちがございませんけれども、どういうものですか。そういうものがあるから別段本庁に言わなくても現場に言ったんだと、そういう意味にもとれるんですよ。内容はどういうものですか、あわせて御答弁をいただきたいと思います。
  39. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) まず前段の御質問でございますが、私も前回、先生の御質問にお答えいたしましたように、捜査に着手いたします場合には、それはこちらが自主的に着手した場合、それから警察から依頼があった場合、あるいは警察と私のほう、逆の場合あると思いますが、それによって力の入れ方といいますか、その心がまえが違うということはないと思います。ただ実際の捜査の実務におきましては、先生おっしゃるように主となってやるのと、副となってやるといいますか、その一方が捜査に着手してすでに捜査を開始している場合には、これに対して協力をするという立場、それが相互にあるわけでございますが、そういう意味で、何といいますか、警戒配備のやり方等について多少の異同といいますか、相違がある場合は現象としてあるわけでございます。ただ気持ちとしては、いわゆるこれはおれたちの本来の仕場じゃないんだとか、これは頼まれたからやるんだということは、私は第一線の諸君はないと思います。ただこういうことを指示する場合には、やはり私どもの本庁から私どもの出先に対しては、私どもの本庁から管区本部を通じて私どもの縦の線の連絡をすることのほうが、より明確に現場の実際の担当者にはぴんとくると申しますか、的確な指示が与えられるということは言えると思います。  それから第二の点でございますが、捜査の協定は、これはちょっといま調べないとわかりませんが、趣旨は先ほど申し上げましたように、海上保安官と――これは個々の海上保安官と個々の警察官というとらえ方をしておりますが、これが相互に連絡を密にして、そして互いに得た情報を交換する、あるいはそれぞれその得意とする分野におきまして、たとえば一例を申し上げますと、海事法令の励行というような、船舶法とか、船舶安全法とか、そういう海上において私どものほうが比較的その実情に通じているというような問題については、これはできるだけ、警察が先にこういう事案を発見した、つかんだ場合にも、私どものほうに積極的に通報をして、どちらかと言えば私どものほうがこれを専門的な立場から捜査をする。今度は逆に、青少年犯とか、いろいろそういう問題については、これは警察のほうが長年の経験と伝統においてやっておられるところでございますから、そういうことについては、私のほうがそういう端緒をつかんだ場合も、できるだけ警察のほうが主になってやると、そういうような具体的な情報の交換あるいは協力のしかたということを、お互いに確認し合った文書でございます。
  40. 森中守義

    ○森中守義君 これは計画的な犯行だと私は判断するのでね、だからしょっぱなから海上保安庁の本部に海上の配備体制をより完ぺきなものにしておれば、それで脱出がはばまれたかどうなのか、これはにわかに予断はできません。けれども、少なくとも緻密な計画のもとにやっていただけに、非常に困難であったろうと思うけれども、あるいは可能性があったかもわからない。この事実については、これはやっぱり一つ警察のこの事件に対する初動捜査の誤り、あるいは誤認というような、そういう言い方が妥当かどうかわかりませんが、大いにこれは責任を問われる問題だと思う。そういうことで、あと保安庁にもう少し聞きますが、外事課長、隣の法務委員会で待っているようですから、向こうが本職だから、向こうでよく説明してあげてください。また場合によったらこっちへ来てもらおう。  長官ね、これはいま三管区あたりからずっと情報が入っているのでしょう。さっき三百隻の臨検をやられたと。これは定期船あるいは貨物船等を含むものと思いますが、大体どうなんですか、こういう船をくまなく臨船臨艦の結果、発見できなかったと言われるんですが、これはやっぱり相手のほうが計画的にやっておれば、なかなか把握できるものじゃないかもわからない。つまり、おそらく深夜某港の沖合いでこういう行動が行なわれたという推理も成り立つわけです。そういったように、深夜に行動を起こそうということに対する対応策というのはとられたのですか。それともただ停泊している、あるいは航行中の船に停泊を求めて入ったということなんですか、その辺の警備上の実際をもう少し御説明を願っておきたいと思います。
  41. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) ただいまの先生のおことばでございますが、三百隻の船に立ち入り検査をしたというのは、これは先ほど警察庁のほうから説明がございましたように、警察庁警察官がやられた数字でございます。私どもの海上保安官がやりましたのは、冒頭申し上げました七十五隻の船に対して立ち入り検査をいたしております。  この立ち入り検査の状況でございますが、これは私ども海上保安庁法に基づきまして、海上保女官は、そういう船舶とか施設とかに立ち入って検査をすることができるわけでございますが、この立ち入り検査といいますのは、いわゆる令状をもらってやります捜索ではございませんので、そこにはおのずから限度があるわけでございます。したがいまして、そこに不審な人がいないかとか、あるいは不審な物が置いてないかとか、あるいは何か船の構造なり様子というものが、普通の常識的な貨物船なら貨物船というものと違うというような様子を見て、そうしていろいろ職務質問をするということでございますが、それ以上の強制的な措置ということはできないわけでございます。  この七十五隻に立ち入り検査をいたしましたものは、私どもがさっき申し上げました、さっきの三管区以下――先ほどちょっと失礼いたしました十管区十一管区を含めたように申し上げましたが、一管区と二管区とそれから十管区と十一管区は、これは手配しておりません。三管区から九管区までの各管区で立ち入り検査をいたしておりますが、その状況については、いま申し上げましたような、海上保安官が巡視艇に乗り組んで、あるいは岸壁に接岸してある船を訪問をして、そうして制服を着用して、自分はこういう者だということでやったわけでございまして、これをやる場合は、もちろんこの場合は九日の朝の十時に――大阪の例によりますと、大阪府警の水上署から連絡を受けておるわけでございますから、それ以後は夜間といえども立ち入り検査を実施をしておるわけでございます。そういう意味で、昼間たると夜間たるとを問わず、船に乗り込んで、こちらの身分を明らかにして、そうして質問をし、様子を見て、そうして船内の調査をするというのが立ち入り検査の状況で、今回の場合も、そういう立ち入り検査をやったわけでございます。  ただ冒頭に申し上げましたように、現在のところ、海路から、しかも関西方面から不法出国をした公算が一番大きいということが、まあことばは話弊がありますが、結果論的に考えられる――これも一つの推定でございますが、ところが実際にそういう立ち入り検査をしている時点におきましては、つまり八日の晩から九日あるいは十日ごろにかけましては、全国どこから出るかということにつきましては、これはなかなか推定つかないわけでございます。たとえば私どもでは大阪の例を申し上げましたが、そのほか今治の海上保安部とそれから今治の警察あるいは尾道の海上保安部は尾道の警察、それから名古屋、四日市方面においても警察との情報交換をやっておりますし、新潟、伏木、富山方面でも警察との連絡をやっておりますように、とにかくもし不法出国をするとしたら、どこから出るかということは、当時見当つかなかったわけでございますから、結果的に見ますと、かりに大阪から出ておるとすれば、大阪の立ち入り検査のやり方なり警戒のやり方等について、大いに反省すべき点があると思いますが、結局間隙をぬってどこからか出国をしたということで、これは私どもの業務の執行体制情報の収集体制等が万全ではなかったということを反省しておる次第でございますけれども、まあ立ち入り検査としては昼となく夜となく、その期間厳重な立ち入り検査を実施した。その在泊中の、目にとまった船は、いま申し上げました全部、私どもで七十五隻をやっておる、こういう状況でございます。
  42. 森中守義

    ○森中守義君 どうもすっきりしませんね。八月の九日の十時以前、十時以降、この辺が何か境になるような気がするんですよ。つまりさっき外事課長は、すでに現場のほうに連絡はしたと、こう言ってるんですね。ところがいま保安庁の長官は、それを受けてやってはいたんだが、本腰を入れたのは大阪の府警もしくは水上署から話が持ち込まれたあとだ、まあその前にやるにはやったんだが、いわば依頼ごとというような印象しか私は受けない。そうしますと、すでに十時前に出て、いたのかわからない。あとどういう船を点検しようともぬけのからであったというような、こういう感じがするんですよ。  ですから、これはやっぱり警察庁のほうも、縦で動いている保安庁に、横っちょから、ひとつ頼みますという協定をたてにやったことでいいのか悪いのかという、非常に大きな問題が一つあるということと、大阪の港外に停泊している船に出ていっても、さあ見てくださいというようなわけには――まあそういうものにはまさか乗り込ましていないでしょうからね。だからほんとうは保安庁に航空機もあればヘリコもあるわけですから、深夜に、九日の十時以前、八日の夜半に実際はそういう体制がとられてよかったんじゃないか。巡視船を総動員するとか、あるいは航空機、ヘリコプターも動員するとか、そういう一体的な体制がとれなかったところに、何とはなしにあと悔やみがある。そういう捜査網をしいて、それで何かこう破られたというならば、これはまた話は別ですがね。どうもやっぱり九日の十時を境に、その前、そのあと関係が、国会でもしばしば言われるように、警察庁に初動捜査の誤りがあった、保安庁も九日の十時前はさほど力点が置かれていなかった、置かれたのは十時以降であったという、どうも釈然としないものが、あと味の悪さとして残る、それが今日、この事件がここまで発展する原因をつくった要因をなしているように私は思うんですね。そんな感じしませんか。  そういう意味では、保安庁の平素の任務、警察関係のこういう事案に対する取り組み方、まあ韓国のCIAを責める前に、国内の警備体制にも問題があったというような気がするんですが、どう思われますか。
  43. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) 私ども海上保安庁としての立場からいろいろ反省をし、いろいろ検討をいたしますと、まず基本的に言えることは、私ども情報収集体制というものが非常に十分でなかったということを考えるわけでございます。したがいまして、先生の御質問にもございましたように、決して事態を私どもは軽視したわけではなくて、こういう外国の要人といわれている方が国内において不法に拉致され誘拐されたというような場合に、私どもかねてそういうことについて、もっとこの背景についても、あるいは身辺の事柄についても、相当詳しい情報を持っておりますれば、あるいは私どもの管下に手配をするのに、私どもの判断で、本庁の判断で、もっと具体的な、的確か、そして経路等についても、まあ幾つかの推定というようなことを加えることも、あるいは可能であったかと思います。これも結果論でございますけれども、そういう情報というものはきわめて不十分であったというようなことから、管内に対する手配についても具体性を欠いた手配しかできなかったということ。  それから先生の御指摘のように、現場におきましてもいろいろと立ち入り検討等をやったわけでございますが、私はやはりそういう的確な情報があれば、立ち入り検査をする場合にも、それなりに立ち入り検査のやり方があると思います。人数のそろえ方から、それからどういう立ち入り検査のしかたをするかという、その実施の方法、手順等についてもあるわけでございますが、やはり情報が非常に抽象的なもので、あまり具体性のない情報でございますと、どうしても立ち入り検査のしかたも弱いということになると思います。  それから航空機その他を動員して警戒体制をしけばというおことばでございますが、これは私ども、今回どういう経路でどういう船で出られたかわかりませんが、かりに普通の貿易船で出られたとすれば、これは瀬戸内海にしろ大阪湾にしろ、夜間といえども相当大小の船が走っておるわけですから、夜間飛行して確認しても、とてもこれは確認できるものではない。船の中でどういう状態で監禁をされているか、これは別ですけれども、外から見れば正規の貿易船が東西に瀬戸内海を走っているわけでございますから、かりに普通の正規の貿易船で拉致されたとすれば、これは飛行機その他で確認する方法は私はなかったと思います。したがいまして、もっと情報を的確に私どもは収集をして、そして重点的な手配をする、そして、それに基づいて幾つかの重点をしぼって厳重な警戒をしき、立ち入り検査をしたならばということは、いま私どもは非常に反省をしている点でございます。いわばことばは非常に適当でないかと思いますが、私どもの手配なり警戒のしかたが総花的であったと申しますか、そういう点は、いまの反省として考えているわけでございます。今後はそういう意味で、もっとそういう防犯上の重要な事案についての情報体制を確立をして、そしてもっと的確な手配をして、そしてこれを未然にキャッチするというような訓練といいますか、そういうことを私どもとしても少し検討しなければならないということを、いま痛切に感じておる次第でございます。
  44. 森中守義

    ○森中守義君 もうこれで終わろうと思っておりましたが、何かそういうことでは心もとなくてしょうがないですね。私はしろうとだから、実際の巡視艇の配備等が、機敏に、どういう状態になるのかよくわかりませんけれども、たとえば航空機で探査をする、どうもこれは怪しい船だというような場合には、大体進行方向は一定の方向を向いているでしょうから、その先のほうで巡視艇あたりが待ち受けて停船を命ずるというようなことはできるんじゃないですか。あるいは巡視艇を、大体韓国に向けていこうという方向に集結をする。そういう方法も問髪を入れずにやれば、これはできない話じゃないと思う。ただ総花的でできなかったということは、やはり事案に対する認識が十分でなかった、情報が不十分であった、こういわれるんだけれども、それはそれなりにわかるにしても、捜査のやり方としては私は、いろいろ検討すれば当然これは、問題があまりにも重要だという認識によって変わってくると思う。やることありますよ、それは。そういうこともこれから先できないということであれば、こういう事件発生をして、海上はもう野放しの状態ということになると、何のための海上保安庁かということになりゃしませんか。もうちょっときめのこまかな、何も防衛庁じゃないんで、戦闘配備計画などというものは海上保安庁ないでしょうけれども、こういう緊急不測の事態に対応する体制というものは、私は当然なこととして保安庁にあると思う。そういうものをこの際に発動できたかできなかったかというのが実は問題だ、こう思うんで、やろうとすればできるということに私はなると思う。どうなんですか、それできないんですか。
  45. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) 先生のお説、私もよくわかります。ただおことばですけれども、航行している船で、いわゆる変な船に変な人間がうごめいているというような船であれば、これは視認をしてわかるわけです。しかし普通の形をした、正規の貿易船の形をした船が航行している、この中に何か怪しい人がいるかどうかということは、これは外から見るというのはなかなかできません。それが、何丸という韓国に行きそうな船に金大中氏から金大中氏がどうも拉致されて中に監禁されているらしいというような情報があれば、それはその船のトン数とか特徴とか航路とかというものを推定して、そしてあらかじめ先生のおっしゃるように、巡視船あるいは飛行機でこれを待ち伏せして、そして停船を命じて立ち入り検査をするということは可能でございます。しかし何べんも申し上げますように、私ども残念ながら非常に情報が貧弱であったと、そういうことから先生のおっしゃるようなきめのこまかい手配ができなかったということに私どもの今回の、何といいますか、落ち度といいますか、失敗があったわけでございます。そういう意味で、私どもとしては、いろいろ反省をしているわけでございます。  そこで先生のおっしゃいましたような非常配備の訓練なり体制というものはあるかと。それは私どもはございます。またこれについての教育、訓練もいたしております。しかしながら今回は、そういう確度の低い、確度の低いというと悪いんですが、あまり具体的な情報のない、一般的な、いわば何といいますか、金大中氏が誘拐された、国外に出る可能性があるかもわからない、金大中氏というのはどういう人であるかという程度の情報しかつかめなかったということから、そういう網の目のこまかい配備ができなかったということでございまして、まあそういう情報の面、それから手配のしかたの面、それから立ち入り検査のやり方の面、それから私どもを含めて第一線の保安官等に至るまでの、この問題に対する取り組み方、これはすべていまとなっては反省すべき点が多々あるということを痛感をいたしております。  こういうようなことは、私ども今後再びあってはなりませんし、またこれを機会に情報の収集体制なり、手配のしかたなり、あるいは職員の訓練ということについて、あるいは関係機関との協力のしかた等についても十分検討をして、そしてこれを貴重な教訓としたいというふうに思っておりまして、私どもとしては、ことに第一線は第一線なりに彼らとしては十分に警戒をやったと思いますが、結果から見ますと海路をたどって脱出したということであれば、これはやはり私どもの警戒のやり方がまずかったということになると思いますので、今後とも私ども情報体制の強化、そういう点につきましても、いろいろとまた御指導いただきたいと思います。よろしくお願いします。
  46. 森中守義

    ○森中守義君 そこで保安庁長官、主権国家の海上保安をおまかせしているわけだから、その名に値するようなこれからの保安行政をやっていただきたいと思いますね。この事件一つの契機にして、警察庁にも保安庁から言うべきことは言うべきですよ。これは確かに警察庁もあまりよくない、この事件の一連の経緯からいいますとね。  そこで大臣、この議論は一件落着まで国会でも続くことになります。しかし、いままでの経緯から見ますと、内閣が一体となって、少なくとも金大中に日本に再度来てもらい事実究明に当たらねばならぬという世論に必ずしも合致した措置を内閣はとっておるとは思えない。おそらくきょう両院は、一連のこの問題で、相当それぞれ委員会で問題が提起されながら追及が続いていると思う。しかしあまり、慎重であることにこしたことありませんけれども、とにかく主権を侵されたという事実は何人も否定できないと思う。しかも特務機関CIAという、こういう国家機関かよその国の座敷にどろ足で上がって仏壇の前でしょんべんこいたようなものですよ。こういうことを相手の側にのみ立ち過ぎて、国論に背を向けるということはどうかと思うのです。  私は、少しこれはうがち過ぎた見方になるかわかりませんが、さっきちょっと申し上げましたように、朴政権に対して金大中はきびしい批判を持っている。同時に田中内閣に対しても、ある意味では同様な見解を中央公論あたりでは述べているわけですね。ことに援助方式、援助内容についてそういう意見を金大中は持っている。そうなれば朴政権が金大中けしからぬという、そういうことを考えるのと同じように、そこまで濃密なものじゃないにしても、あまり好ましい人物でない、日本政府の側からしても。そういう認識でこの事件にもしも内閣が当たっておるとすれば、これはたいへんだと思う。その人物の思想とか言動とかいうものは、この事件とは別個のものだと思うのですね。そういうことなどが、あまり沈黙を守り過ぎる、韓国の政府ベースに寄り過ぎますと、私が言ったような意見が出ますよ。そういうことを非常に私はおそれるのです。ですから、内閣でもむろんこれは傍観されているとは思いませんけれども、いま少し国論を国論とする、世論は世論とする、国会の意見を意見として積極的に閣内で運輸大臣も、これはやはり保安行政を預かってその長に立たれる大臣ですから、そういう立場からも、あるいは国務大臣という立場からもこの問題に取り組んでいかれるように特に私は希望しておきたいと思う。ひとつ御所見をお述べください。
  47. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 先ほど来関係政府委員からお答えいたしましたが、具体的な沿岸警備の問題については、今度はいろいろ教訓を得たことは事実です。これはなかなか容易なことじゃありませんが、私も努力をいたします。それから情報の収集でありますとか、犯罪捜査の方法等につきましては、さらに警察庁とタイアップしてやらないといけない問題でありますから、今度の事件にかんがみまして、これは両庁でも十分、今後の問題を考えて対処してもらうようにさらに協議を進めるようにしなければならないと思っておるわけでございます。  それから、あとでお述べになりました政治的な問題についての政府の配慮でありますが、これは事件の内容がまださだかでありませんので、いまから断定するわけにはいかないと思いますけれども、これは政府のほうでも、韓国政府に対して相当具体的な申し入れをしておるようでございますし、もしあなたのおっしゃるように、いやしくも主権が侵害されたというようなことになりますと、これは国家としてはゆゆしい問題であると、これは私も痛感します。いまお話の点は、私は主管じゃありませんけれども関係の閣僚に十分その点を申し伝えることにいたします。
  48. 森中守義

    ○森中守義君 もう少し時間がいただける予定でしたが、あと小柳君が何か地元の関係できょう急に出発しなくちゃいかぬということのようですから、これでハイジャック関係は、たいへん関係者にお集まりいただいて恐縮ですが、次回にひとつ譲らしていただきたいと思う。  ただし資料を少し御提出いただきたい。国内の一種、二種三種空港、全空港の中で、ボデーチェックを開始して以来、刀剣銃砲ないしはこれに準ずるような物件の摘発が、どの空港でどういう種類のものが行なわれたか。それ以来現在に至るまでの摘発の内容と件数を空港別に整理していただいて御提出をいただきたい。それが一つであります。  総理府の加山参事官、対策会議がいま設置をされて、いろいろと対策を協議されているようですが、八月の末までに一つの方向が出るようであろう、こういう話があるんですね。ついてはどういう作業の段階にあるのか、どの辺に防止対策の方向を求めようとするのか、具体的に内容を資料として御提出いただきたい。  それといま一つは、ハイジャックの将来の展望ですが、私は、たとえば現金を目当てにしているもの、政治亡命、政府転覆、いわばこういう政治的な意味合い等々含めて減少の方向にいくと見るべきであるか、あるいは多発の方向にいくと見るべきであるか、その辺の視点から、国際的なハイジャックの将来の見通し、これをひとつ分析をしたものを御提出いただきたい。できるならば主要な発生事件の内容、そういうものを整備してください。  それから、モントリオール条約の――これは航空局長のほうがいいでしょうね。まだわが国はこれは批准が行なわれていないようです。ついてはモントリオール条約がいつ採択をされたのか、その内容、条約の全文、これを御提出いただきたい。  それと警察庁は、たとえばフランスとか、あるいはイギリスとか、アメリカとか、各国に外務省出向で大使館の一等書記官にだいぶ出しておりますね。こういう警察庁出身の一等書記官がどういう大使館に配置されているか。お名前までは要りません。どこの国に一等書記官もしくは二等書記官が行っているか、あるいは参事官として行っている、そういう警察庁が海外に出向している配置状況。  それから航空局長は、各運送会社の運送約款、これをひとつ御提出いただきたい。  以上の資料提出をお願いしておきまして、次回の委員会ハイジャック問題はお尋ねしたいと思います。
  49. 長田裕二

    委員長長田裕二君) いまの資料、それぞれお差しつかえなく提出できますね。
  50. 小柳勇

    ○小柳勇君 いま、岡垣射爆場の訓練が開始されまして、きのうから現地では町民やそれから民主団体がすわり込みなどを始めて基地撤去を要求しております。したがいまして、岡垣射爆場の基地撤去の問題が中心でありますが、撤去の話はあと防衛庁長官にすることにいたしまして、民間の航空路と訓練空域がダブっておる、こういう問題が先般新聞にも出ておりますし、また私ども調査いたしましたところ、ダブっておりますので、先般の雫石の事故もありました。したがってこれを確かめて、航空路のダブっておるものは早急に修正し、かつ爆撃訓練を変更してもらわなきゃならぬ、そういうふうに考えますから、その問題に限って質問いたします。時間が少ないので簡潔に要点だけ質問いたしますから、ひとつ簡潔に御答弁をお願いいたします。  まず第一は、防衛庁が告示いたしました第百三十号、空対地射爆撃訓練、これについて、その内容及びいま図が出ておりまするが、その地域の平面的なもの、あるいは高低的なもの、その説明を求めます。
  51. 大西誠一郎

    政府委員大西誠一郎君) 岡垣射爆撃場を使います自衛隊の戦闘機の訓練は、F86F及びF104ジェット戦闘機の機銃、ロケット及び小型爆弾の射撃訓練でございます。この射撃訓練は五月の十五日に地元の関係市町村と当局との間に協議が整いまして、下って七月二十四日運輸省当局と協議をいたしまして当該射場の区域について設定されました。この設定は七月三十日NOTAMをもって発せられております。その後自衛隊では、地元の運輸省の管制機関、すなわち福岡空港長とも文書を取りかわしまして、訓練飛行及び射撃場の使用につきまして十分な安全対策を講じて昨日から訓練を開始をいたした次第でございます。  その区域につきましては、ここに地図を用意いたしましたので御説明いたします。  ここに赤で囲みました区域は、制限区域として設定をいたしましたところでございます。それからここで紫で書きました部分は、この射爆場を使うために自衛隊の航空機か飛行をする、進入の経路でございます。それから青で書きましたところの円状の部分は、芦屋の飛行場の管制圏の部分でございまして、芦屋の飛行場を中心として一〇・五キロの範囲でございます。南側に緑で書きました部分はグリーン4の航空路でございます。さらにこの中央部を走っております茶色の経路は、福岡空港に進入をする民間機の進入の経路でございます。  以上が平面的な御説明でございます。  次は、立体的な状況を御説明いたします。  これは射撃及び小型爆弾の爆撃をする場合の航空機の高度を示した図でございまして、こちらのほうから上がってまいりまして、ここまで上がって、それから射撃を行なう。上の経路は急降下爆撃のパターンでございまして、この下の経路はロケット射爆のパターンでございます。そこで先ほど平面図で御説明をいたしました福岡空港に侵入する経路の位置でございますが、その経路は大体この辺に当たっておりまして、ここと接しているということにはなっておりません。それからもう一つは、この高度は当初、六千五百フィートまで一気に高度を上げまして、あとは逐次上昇して一番高いところで一万一千フィートまで上がる。   〔委員長退席、理事江藤智君着席〕 それから、急降下するというパターンになっておりまして、この間は徐々に上がるというような形の飛行をやることになっております。
  52. 小柳勇

    ○小柳勇君 そこで先般雫石の事故がありましたあと、航空交通安全緊急対策要綱なるものが四十六年の八月七日に運輸省と防衛庁の間で協定されました。この緊急対策要綱はこれに適用されるのか、されないのか。まずそれから。
  53. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私がちょうどそのときには、防衛庁で事故調査委員会をつくってもおかしかろうし、運輸省で設置するのもおかしかろうという話し合いのもとに、総理府でその事故原因調査委員会をつくりまして、それに関連をして、二度と再びこのことが起こらないようにするための回路を設けるなり、あるいはジェットルートに対する自衛隊の飛行機の、原則的に海上の演習空域を当てるというようなことを、整理した私自身がその責任者でもあります。したがって今回の件は、運輸省との間にいささかもそのような趣旨に反するようなことのないように、十分に注意して相談をさせた結果合意したものでありますので、完全にその趣旨に沿うものになっておるつもりであります。
  54. 小柳勇

    ○小柳勇君 これは航空局長に質問しますが、もう一つは、空制第百九十号の、四十六年九月二十日の「自衛隊の訓練空域及び試験空域にかかる暫定管制方式」についてという書面があります。この書面は、今度のこの爆撃訓練に適用されるのか、されないのか。
  55. 内村信行

    政府委員内村信行君) 私はされないと思います。と申しますのは、今度の場合のところを、私どもは訓練空域というふうには解釈しておらないわけであります。したがいまして、されないというのが私どもの解釈であります。
  56. 小柳勇

    ○小柳勇君 そこのところが問題なんですが、山中長官、山中長官緊急対策要綱を完全に適用される。これには訓練空域及び試験空域は完全にジェットルートの空域と分離すると、そう書いてありますね。山中長官はこれを完全に適用すると言われるのに、どうして運輸省は、この管制方式の適用はないというのですか。
  57. 内村信行

    政府委員内村信行君) 実は訓練ということばが非常に大きな意味で使われておりますので、ここに誤解が生ずるわけでございますが、訓練空域というものを設定いたしました趣旨は、つまり異種交通を分離すると、互いに違った交通体系を分離していく、これが基本的な思想でございます。すなわち航空機が随意にその姿勢とか高度とか速度を急激に変化をする、まあこういうふうな動きをするというふうなものは、これは一般の航空交通とは質的にも違うので、これは一つの囲まれた訓練空域の特定の空域の中でやってください。そういうことによって、一般の交通から分離をして、それによって一般航空交通を阻害しないようにし、一般航空交通の安全をはかるようにということが、この訓練空域の設定の趣旨でございます。したがいまして、同じ訓練ということばを使っておりましても、たとえば離発着訓練、あるいはタッチ・アンド・ゴーの訓練、あるいはローパス訓練というふうなものは、当然これは飛行場でやらなくちゃいかぬものでございまして、こういうものは必ずしも訓練空域でやられるものではない、こういった意味で、訓練ということばにいろいろ違いがあるのが一つの誤解の点かと思います。そこで私ども先ほど申し上げましたのは、今度の場合に訓練空域であるかどうかということでございますが、これは今度の訓練の内容、これは先ほど伺いましたとおりでございまして、射爆場に対して射爆撃訓練をやるということがその内容でございます。したがいまして、じゃあ飛行機はどう飛ぶかというふうなことになりますと、急激に姿勢を変更するとか、こうふうなきりもみをやるとか、宙返りをやるとか、そういったものでは全然ございませんで、一定のパターンを描きまして、これは四種類ほどあるように伺っておりますが、一定のパターンを描いて、こういうふうに行ったものが、ここに達したときには必ずこういうふうに急降下して爆撃をすると、あるいはこういうふうに回ったものは、この辺から、二千五百ぐらいの高度からおりていって、海面上で爆撃をやってからこう上がっていくというふうなことで、ちゃんとパターンがきまっているわけです。しかも、その一つのパターンについて、一時期に四機に限ってそういうことをするんであるということでございます。  それからまた、そういった飛行経路をどういう状況でやるかというと、これは当然爆撃訓練でございますから、MC状態、つまり有視界飛行状態でございます。それも通常の有視界飛行状態の場合には、五キロというふうなことになっておりますが、この場合には八キロというふうな指定のときに、八キロ以上の指定の場合に限っております。その場合に、地上物件をちゃんと確認をいたしまして、この点、この点、この点、この山からこの山に行くと、ここに行ったら一万一千フィートである。あるいはこの場合には七千フィートであるとか、こう回ってこの場合には五千フィートになる。あるいはこの場合には三千フィートで、こう行ってこう向けるというふうに、はっきりしたパターンによって、なおかつ地上の物件を完全に視認している、しかも芦屋のレーダーでもってこれを完全にウオッチしながらやっていくのだというふうなことが、事実をよく承ってわかりましたから、したがいまして、これは訓練空域ではない、なおかつ安全であるというふうに判断をしたわけでございます。
  58. 小柳勇

    ○小柳勇君 それは航空交通緊急対策要綱も適用されないと運輸省はとっておられるのですね。
  59. 内村信行

    政府委員内村信行君) この一項でいっている訓練空域には当たらないというふうに考えております。
  60. 小柳勇

    ○小柳勇君 そうしますと、この緊急対策要綱の第二項も、これは高さの制限ですが適用されないという見解ですか。
  61. 金井洋

    政府委員(金井洋君) 緊急対策要綱には第一項には訓練空域というものをつくってやらなければならないような訓練、それから第二項は管制区あるいは航空路の下千フィートのところでやってもいい訓練、こういうものがあるわけですけれどもも、千フィートのセパレーションであれば、その下を飛んでもいいという訓練もあるわけです。芦屋の場合はどちらに属するかといえば、しいて言えば第二項に近い飛行であるというふうに解釈して、今回の訓練飛行については防衛庁と協議した結果差しつかえない、支障がないということで了承した次第でございます。
  62. 小柳勇

    ○小柳勇君 だから、この対策要綱が適用されておるのですか、おらないのですかと聞いておるのです。
  63. 金井洋

    政府委員(金井洋君) この緊急対策要綱の趣旨に沿って運輸省は了承しております。
  64. 小柳勇

    ○小柳勇君 それでは、適用されたものと理解して話を進めていいですね。
  65. 金井洋

    政府委員(金井洋君) さようでございます。
  66. 小柳勇

    ○小柳勇君 わかりました。そこで、いま話が一緒になりましたが、ただ、グリーン4との関係がこれでは出ていないわけです、高低の問題ですからね。これはいま一万一千フィート及び七千フィートとありますね。高低の問題はあとでまた論議しますが、グリーン4との距離の問題横の距離――横の距離というやつは対策要綱、これには数字が出ていない、さっき適用しないとおっしゃったこちらのほうに出ているわけです。自衛隊の云々、これは技術部長の通達、じゃあ技術部長はこれはどう考えておりますか。
  67. 金井洋

    政府委員(金井洋君) その通達の趣旨は、先ほども申し上げましたように、曲技飛行だとか、非常に激しい姿勢あるいは高度、速度が激しい、あるいはひんぱんに変えるような飛行で、たとえば曲技飛行のように、一回の宙返りをして、次にどの地点に自分が行くのかというようなことが予測できないような飛行、そういうようなものは訓練空域をつくってやりなさい。したがって、その通達の趣旨は、そういった飛行態様の訓練飛行をする訓練空域は航空路の中心線から十海里離したいわゆる保護地域を設けてつくりなさいというものが、先ほど御指摘になった通達の趣旨でございます。  芦屋の場合には、先ほどから申し上げておりますように、そういう種類の飛行をするわけじゃございません。したがって訓練空域として指定する必要がなかったわけでして、グリーン4との距離、そういうものもその通達の趣旨に沿って設定する必要はないというふうに考えております。
  68. 小柳勇

    ○小柳勇君 それでは、射爆場を使用開始するときの協定といいましょうか、各省の協定に、さっき航空局長はいろいろ話し合いましたとおっしゃいましたが、それは文書にしてありますか。
  69. 金井洋

    政府委員(金井洋君) 航空局と防衛庁とは文書をかわしております。
  70. 小柳勇

    ○小柳勇君 どことどこ……。
  71. 金井洋

    政府委員(金井洋君) 防衛庁と航空局です。
  72. 小柳勇

    ○小柳勇君 その文書をあとで見せてください。  それから横の問題は、運輸省みずからがこれを捨てたんだから、そいつは論議しません。高さの問題を論議しましょう。意見を聞いておきましょう。高さがグリーン4の場合の最低安全航路は幾らですか、高さ。
  73. 金井洋

    政府委員(金井洋君) 板付から門司ポイントの近くまでは四千フィート、それから岩国のほうに行くに従って五千フィートと記憶しております。
  74. 小柳勇

    ○小柳勇君 わかりました。そうしますと、この安全対策要綱には高さが一千フィートの安全をもって訓練してよろしいと書いてあります。あの場合は一万一千行きますと、いまのグリーン4の安全航路以上飛んでいるわけです、高さが。だからさっき参事官がこの辺でございますと、こう指を急降下した辺を、まん中辺をさされましたけれども、これはまあ完全に絵にかいたように射爆訓練をしておる間は問題はないわけです。この間の雫石だってそうでしょう。ちゃんとコースどおり行っておれば事故があるはずはないのだから、コースどおりに行かないときに問題とするならば、高さが七千フィートも、一万一千フィートも、両方ともこのグリーン4の安全最低航路以上まで上がっているわけですから、この場合は、下なら、一千フィート低い高度ならよろしいと書いてある。その点はどう解釈していますか。
  75. 金井洋

    政府委員(金井洋君) その趣旨は、航空路の下を飛ぶ場合には、航空路には十海里という幅がありますけれども、その下を飛ぶ場合には最低高度から千フィート下はその幅に限られた範囲を飛びなさいということで、その航空路からはずれた空域は別に何千フィートであってもかまわないわけです。この射爆場で訓練する一万一千フィートというのは、当然航空路、グリーン4から離れた空域で一万一千フィートで飛んでおるわけです。
  76. 小柳勇

    ○小柳勇君 わかりました。いまちょうどあのパターンどおりにいけば、もうグリーン4のところでは高さはそうないのだから、関係ないから、したがって問題ないというようなことですね。  それでは、この告示に、「空対地射爆撃訓練を次のとおり実施する。」と書いてありますね。その訓練が射爆訓練だからよろしいというようなことで、このグリーン4との距離も大体はこちらの――あなたか適用しないと言った書面のほうでは五マイル、五海里距離がなければならぬと書いてありますが、あれはグリーン4から四・二しか距離がないように幅がありますね。で、現地でも心配しておるし、また私どもも心配するのは、この玄海侵入経路でジェット機が入っていく場合は、あの上のほうを通っているわけです。だからグリーン4は関係ありませんけれども、玄海侵入航路を通る場合は、あの射爆場の上ですよ、あれは。あれから横幅が五マイルですね、あの中心線から五マイルでしょう、横幅が。そうしますと、ちょうど射爆場の上を侵入経路は通っているのですが、それでも問題ないですか。
  77. 金井洋

    政府委員(金井洋君) 射爆場の上は通りますけれども、射爆撃するための自衛隊の訓練機というものは別な、射爆場からはずれた飛行パターンを飛んでおるわけです。そうしてちょうど福岡空港への侵入のための飛行機が玄海アライバルルートを岩国から玄海ポイントまで飛ぶ、こう飛ぶ経路の下あたりはちょうど射爆撃の目標物に爆弾なりロケットなりを当てるために、たとえば一万一千フィートから高度を下げて、四、五千フィートに高度を下げて、そうして発射する、その付近上空を一万二千フィートで通るわけでございます。それからもしかりに一万一千フィートほかの部分は一万一千フィートですけれども、この一万一千フィートにしましても、緊急対策要綱にいう千フィートのセパレーションがあります。そこで一つ問題になりますのは、ほんとうに一万一千フィートを維持することができるのか。間違ってそれを突き抜けるようなことはないかということがあるかと思いますけれども、私どもが知り得る限りにおきましては、射爆撃訓練というものは一定の高度と一定の角度で発射しないと目標物に当たりませんので、パイロットは高度維持ということには非常に関心を払っておりますので、一万一千フィートは維持されるというふうに考えております。  それからさらに、先ほど申し上げました繰り返しですけれども、急降下して爆弾を発射する地点というのは、五千フィートぐらいの高さであって、玄海アライバルルートの一万二千フィートからはずっと五、六千フィートのセパレーションがあるわけです。ただ、この問題につきましては、余分な不安を抱かせないというような考え方から、別な玄海アライバルルート、現在のアライバルルートと別な玄海着陸経路というようなものも、もし可能ならば設定しようということで、現在検討しております。
  78. 小柳勇

    ○小柳勇君 防衛庁長官が一時から内閣だそうですから、質問いたしますが、まだ高度の問題、幅の問題、あとで具体的に質問しますけれども現地の管制官が心配している。これは技術部長もほんとうは心配しておられるだろうが、防衛庁に少し肩を持っておるようだけれども現地の管制官など非常に心配しています。これはこういう規定をずっと照らしてみますと、これは適用しないとおっしゃればそれっきりですけれども、こんなのは実はつくらなきゃならぬのですね、射爆訓練する以上は。そうしてこれこれの状態ですから安心だというちゃんと通達を出してやるのがほんとうじゃないかと思うから、その問題が一つ。  それから五年間これから使いますということで出発しています。五年したら射爆場は撤去しますと言っておりまするが、いまもうすでに現地ではすわり込みをして、射爆訓練が、官報によりますと九月三十日まで実施するようになっておりますが、おそらく射爆訓練できないような騒然たる実情にありまするが、これは前の防衛庁長官には私、予算委員会で質問いたしまして、こんなりっぱな国定公園でなくて、海上でも、もう少し国民に心配させぬようなところに移すことにはできないかと言ったんですが、とりあえず五年間だけはひとつ使わしてくれということで出発しています。  長官として、この民間航空、ちょうどジェットルートになっておるところの下で爆撃訓練をやるというのか。それから地元の人たちは非常に反対をしている。しかもすわり込みを始めて、おそらく爆撃訓練はできぬのではないかという、そういう情勢にあるが、どういう対策を立てられますか。
  79. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) いまの両省相談をして心配がないようにしてあるのなら、そういうことを、通達というおことばでしたけれども、知らすようにしたらいいじゃないか、このことは確かにそうだと思いますし、事実運輸省航空局のほうで、その労をとっていただいて御説明はいたしてありますし、私も岡垣の地元の町長さん、その他とお会いをして、いろいろと話もいたしまして、向こうの御希望も聞き協力もしたい。私たちでできることはしなきゃならぬ。たとえ五年間といえども使わしていただくわけでありますから、やはり地元の御要望に最大限に沿いたいと思って努力しておりますので、そういう御相談も運輸省としてみたいと思います。  なおすわり込み等の問題は、自衛隊というものはいかなる立場の人であっても国民を相手にして危害を加えるおそれのある行為をすることは原則としてあり得ない存在でなければならぬと考えます。でありますから、そのようなことが、不則の事態を起こさないように、自衛隊は国民のいわば生命財産の安全のためのみ存在するのであって、それを逆に脅かすような存在であってはならぬ。このことは大原則であると思いますから、不祥な事態の起こらないよう全力を尽くすつもりです。
  80. 小柳勇

    ○小柳勇君 もう一問は、自衛隊の訓練空域及び回路図というのをいただきました。これにはなるほど訓練空域になってないんですね。しかし私は、爆撃訓練と官報にも書いてありますように、訓練する空域には違いないと思う。航空局長の解釈なんというものはまことに運輸省としてとるべきじゃないと思うんですよ。防衛庁がおっしゃるなら話はわかりますよ。民間航空路を守っていかなきゃならぬ運輸省が、こんな飛行で訓練になりませんから、パターンがきれいにいっているのは訓練空域じゃありませんという解釈は、私は間違いだと思うんです。したがって、これに訓練空域など書いてありませんが、訓練空域には爆撃訓練の空域もちゃんと明示して、そして民間航空路などとのニアミスが起こりませんように、安全の方向に措置すべきであると思いますが、いかがですか。
  81. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) そういう見方もありましょうが、私どもの訓練には、いろいろと離着陸あるいは試験飛行、その他の各種の訓練が含んでおりまして、訓練必ずしも訓練空域と概念が一致するものではありません。今回の場合には、まだ図面説明はいたしていないようでありますが、玄海進入路といわれておりますルートにも、横も一応は幅がとってありますしグリーン4についても中心線から、ほぼこの地点になりますと、板付のレーダーでキャッチしているところでありますから、そう中心線を離れていないグリーン4の飛行が行なわれているとすれば、中心からは十キロという離れた形になっております。でありますし、さらに芦屋の肉眼もしくはレーダーによって望み得る範囲内において、しかも肉眼で運航その他においても制限をもって直視し得る状態であらゆる角度からこれをやっておりますし、一方板付のレーダーからはこれを完全にキャッチしておる姿の中でやりますので、これは危険な状態になるようなことは、実際の訓練には、同じ訓練でありますが、民間の航空機に危険を及ぼすような心配はない。そういうことをもって、運輸省との間で相互にそれを確認し合ったということであります。
  82. 小柳勇

    ○小柳勇君 まあ、ことばじりとるようですけれども、そんな心配がないなら、航空幕僚長から各航空総隊司令官に書面がいっておりますが、ちゃんと細部の、小さいところまで注意してあります。そんな心配がないならこんな注意など要らないのですよ。やっぱり心配があるから、安全には安全をということで幕僚長から書面がいっているんですよ。  運輸省にもう一回聞きますけれども、これだけは特別でございます、爆撃訓練ですから特別でございますという考えは、私は間違いではないかと。しかも、ちょうど芦屋のところがグリーン4から分かれまして、そして玄海進入航路を通っていくわけですね、ジェット機が。しかも最低の安全の高さ約五千フィート、ところがあれは一万一千から七千で急降下爆撃するわけですよ。あぶなくないはずないんですよ。北九州の空は日本でも有数な、民間機が非常にふくそうして飛んでいると聞いております。したがって安全には安全の対策を立てなければならぬ。あの零石の事故があってせっかくできました対策要綱とか、あるいは技術部長のあれだけの管制方式に対する配慮などが、これだけは違いますという、そういう考え方については、私は納得できないが、運輸大臣の答弁を聞きまして、あとは注文いたしまして質問終わっておきましょう。運輸大臣の見解を聞きます。
  83. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 非常に専門的な問題ですから、政府委員から答弁させます。
  84. 内村信行

    政府委員内村信行君) 先生おっしゃられるように、私ども航空の安全、わけても民間航空の安全、これについては私はもう最大の熱意をもってやっておるつもりでおります。したがいまして、こういった公的な問題につきましても、十分詰めるだけ詰めてやりたい。ただ非合理的に防衛庁を圧迫するということはしたくございませんけれども、これはやっぱり詰めた上で、これなら安全が確保するという確信をもってやりたいというのが、私の本心でございます。したがいまして、この場合も、先ほどのようにパターンがどういうふうに動いていけるか、それから最大の高度の場合どのくらいになるかというふうなことを綿密詳細に、具体的にお話を伺いました。  そこでグリーン4との関係、それから玄海アライバルとの関係、この二つの問題があるわけでございます。グリーン4との関係は、先ほど技術部長が御説明いたしましたように、肉眼で視程のいいときに飛び、戸田山とか、あるいは城山とか、そういうふうなものを目標にしながら、その中を入ってまいるというふうなことで、この辺については安全を確保できるであろう。しかもグリーン4を横断してここに入ってくる場合があります。この場合は完全に三千フィート以下、つまりこの場合の航空路の最低安全高度がそこは四千フィートですから、三千フィート以下で入ってくるということでこの安全を担保しております。その辺を防衛庁とも完全に文書の交換をいたして約束をいただいております。先生も大体グリーン4の関係は御了承いただいておるわけですが、残るほうの玄海アライバルの問題でございます。これは実は現地のほうでもまだ若干の意見があることは事実でございます。したがいまして、私ども、なお現地のほうの実際の管制官といろいろ意見を詰め合わせております。一番その中で問題になっておりますのは、一万一千フィートのところでございます。一万一千フィート、それから玄海アライバルの高度が一万二千でございますから、通常は千フィートのセパレーションでこれはいいはずでございます。通常は千フィートセパレーションをつけておりますけれども、万が一にもこういうものが上へ上がってきて、それで一万二千、一万三千になった場合に一体どうするか、そういう場合が非常に困りはせぬだろうかと、こういうふうなことも現地一つの意見でございます。私どもとしては、やっぱり何と申しましても、現地の管制官というものが安心してつとめられないと困るわけでございまして、そういうことによって航空の安全が担保できるわけでございますが、そういう点については防衛庁にもお話をいたしまして、なおもう少し詰めて、よりベターな方法があればそれをとるということで考えておるわけであります。  そういった意味で、決して私も、先生の御趣旨とたがったことをやっておるわけでございませんで、先生の御趣旨は十分体して安全を確保することを目標としてやっておるつもりでございますから、御了承いただきたいと思います。
  85. 小柳勇

    ○小柳勇君 わかりました。私はこの空制第百九十号は適用されるものと思っておったし、それからさっき参事官に、運輸省と防衛庁との取りきめの書面はありませんかと聞いたらないとおっしゃるから、これとこれで両方で話はきまっておるものだと思ったが、あるとおっしゃるから、それを出してください。あとでまた、それを見た上で論議いたしましょう。でないと問題になりません。  それで最後に、参事官に通告しましたように、築城の航空自衛隊でエンジン調整したものを試験飛行するようなときに、ちょうど朝の十時四十分から十一時二十分ごろまで、おもに試験飛行をしているようですが、日航の一一二〇便などとニアミスをおかす危険もあるようでありますから、この点について、特に築城の航空隊に対して注意をしておいてもらいたい。そして書面などで、安全な方向をとるような通達を出してもらいたいと思いますが、いかがですか。
  86. 大西誠一郎

    政府委員大西誠一郎君) 築城飛行場における点検整備後の確認飛行につきましては、直ちに航空安全対策要綱の試験飛行には該当いたしませんし、また現地においてはたいへん詳細な運用要領をきめまして、福岡の空港当局とも十分な連絡をとって民間航空の安全に遺憾なきようにいたしております。しかしながら、先生の御指摘もございます。私どもも絶対不安があってはなりませんので、さらに万全を期する意味において、指示を出すように取り計らいたいと考えております。
  87. 小柳勇

    ○小柳勇君 質問を終わります。
  88. 江藤智

    ○理事(江藤智君) 他に御発言もなければ、午前の質疑はこの程度とし、午後二時十分まで休憩いたします。    午後一時十分休憩      ―――――・―――――    午後二時二十二分開会
  89. 長田裕二

    委員長長田裕二君) ただいまから運輸委員会を再開いたします。  国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案について質疑を行ないます。順次発言を許します。
  90. 加瀬完

    ○加瀬完君 前回の質問におきましていろいろと御説明を伺ってまいったわけでございますが、政府側の答弁は必ずしも明確徹底というわけには受け取れませんでしたので、重ねて何点か確認をしてまいります。  第一は、交通料金は物価対策の内容として考えるという立場はとったのかとらなかったのか。これは運輸省並びに経済企画庁両方からお答えをいただきます。
  91. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) 昨年御審議いただきました改正案が廃案となりまして、今回あらためて再建法、運賃法を国会に提出するに際しまして、いろいろと具体策を検討したわけでございます。  昨年運賃改定ができませんでしたために、国鉄の財政につきましてはさらに大きな赤字に増大したわけでございますが、今回運賃改定するにつきまして、これを昨年よりも大幅に改定してお願いすべきじゃないか、こういった議論もわれわれ事務当局の間ではいろいろと検討したわけでございますが、現下の国民生活、国民経済に与える影響という面を十分に配慮いたしまして、昨年と同じ率でお願いするということにおきまして、私たちとしましては、今回の法案御審議につきまして、物価というものについての配慮というのは十分いたしたつもりでございます。
  92. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) ただいま秋富局長が言われましたように、もし物価対策の観点が全然ございませんでした場合には、おそらく現在のような案ではなしに、もっと大幅な値上げ案ということになったろうと思います。その意味で、私どもといたしましても、できるだけやはり物価対策の観点というものを考慮したつもりでございます。
  93. 加瀬完

    ○加瀬完君 そこが非常に抽象的なんですよ。物価対策を考慮せずに、いわゆる国鉄の独立採算制ということだけをたてまえに運賃改定をするならこれだけになったんだと、しかしながらこれでは全然物価対策なり公共料金の抑制なんという意思が入らないので、当然国鉄側からすれば料金の改定の幅というものはもっと大きかったんだけれども、物価対策として政府がこれだけ金を出して上げ幅がこれだけ縮まったんだと、こういう明確な数字が出なければ、物価対策を考慮しなければもっと上がったでしょう、考慮したからこれだけになりましたということでは説明になりませんよ、少なくとも経済企画庁としての説明にはなりませんよ。  これは両者に伺いますが、一体、物価対策というものを考えるのは経済企画庁ですからね、国鉄当局なり運輸省当局が物価対策というものを先に考えて運賃改定というものを考えなくてもいい筋ですから、そこで国鉄なり運輸省なりとして考えた一体初めの案というものはどういうものか、それに政府としての物価対策を加えて運賃改定の縮まった幅というのはどれだけなのか、こういう数字で説明してくれなければ納得はできませんね。
  94. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) もしすべてを運賃増収にお願いするということにいたしますと、約四七%の実収率でございませんと国鉄の財政はやっていけないわけでございますが、そういったようなことはとうていできないものでございますから、実質一五%ということにいたしまして、その他につきましては国の財政助成を昨年の廃案に比べまして大幅に増加したという次第でございます。
  95. 加瀬完

    ○加瀬完君 経済企画庁はいかがですか。
  96. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 常識的に申しましても、四七%というような数字は、ほんとうにこれだけ実収を上げようと思いますと、改定率としてはもっと高いということになりますので、四七%というものが一五%になりましたのが全部物価対策というふうにはなかなか申せないと思います。その意味で、先生おっしゃるように、厳密に何%分が物価対策かということはなかなか申し上げかねる数字であろうと思いますけれども、物価対策の観点を重々加味してこういうような実収率に削減したというふうに御理解いただきたいと思います。
  97. 加瀬完

    ○加瀬完君 田中内閣は物価対策ということを大きな柱に掲げているわけでしょう。それならばあらゆる場面に、特に公共料金などには物価対策というものがはっきりと打ち出されなければならないはずなんですよね。あなたのおっしゃるのは、少なくとも専門家としての御答弁にはならない、われわれが話をする常識論です。だから物価対策はないと言うんですよ、私は。物価対策ということをほんとうに考えているならば、特に公共料金、国鉄の運賃についてはこれだけのことを国鉄側が主張したけれども、これだけは政府が負担をすることにして、これだけに縮めたんだというものが明瞭に出なければ物価対策にならない。しかし、それは議論になりますからいつまでも繰り返しませんが、少なくとも政府は独立採算制オンリーという国鉄財政のあり方というものは修正したわけですね。利用者負担とともに政府の財政負担というもので国鉄財政をまかなっていくという立場をおとりになったでしょう、そうでしょう。これは経済企画庁もお認めになりますね。
  98. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) そうだと思います。
  99. 加瀬完

    ○加瀬完君 そこで、この運賃水準の適正化、安定化というものを考えたわけですね。これを一つのスローガンにした。適正化、安定化というものは、利用者負担だけにはまかせないで、政府の財政負担でまかなう面というものも大幅にこれからふやしていくんだ、こういう前提で適正化、安定化というものを考えたでしょう。去年の考え方とことしの考え方では、これは大蔵省も当然そうですけれども政府の国鉄財政に対する考え方というのは変化しているわけですね。その上に物価対策というものが大きく出てきている。当初において考えた物価対策よりもいまではもっと物価対策が必要になってきている。そういうときに、いまもってその物価対策としての数字を明らかにしないというのは、これはもう物価対策ということを口では言っているけれども、具体的には物価対策は何にもないということですよ。  まあ議論はやめまして、自民党が大幅な財政支出を国鉄に対してするという発表があるわけですから、そこで大幅というのは何を基準に大幅というのか、こういう質問を私はこの前したわけですけれども、明瞭でありませんでした。大蔵省なり経済企画庁なりはこれから財産負担を政府で大幅にやっていくというその大幅というのは、いままではさっぱり出さなかったけれども、よけい出すということなのか、何を基準に大幅というのか。この前も例に出しましたように、道路にはたくさん金を出しましたけれども、今度は道路以上に国鉄によけい出すということでそれを大幅というのか、この大幅の内容がはなはだ不明確ですよ。大蔵省でも経済企画庁でも大幅というのは何を基準に大幅の支出を国鉄にすると、こうおきめになったんですか。
  100. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) 昨年廃案になった案に比較して、政府の出費においても財政投融資等においても大幅に援助することにしたということで御理解いただきたいと思います。
  101. 加瀬完

    ○加瀬完君 その内容が国鉄の財政再建に見合う合理性があるということになりますか。去年はさっぱり出しておらなかったけれども、ことしの計画ではそれから見れば大幅ですと、だから国鉄の財政再建が成立するという保証はどこにもないんですね。赤字財政というものを解消する内容というのが備わっておらなければ、大幅と言ったって、赤字をかかえている国鉄の財政から見れば一つも大幅にはならないわけですね。去年に比べて大幅なんという、こんなずさんな計算がありますか。  国鉄の現在の貧困な財政状態を見て、これが再建、独立できるような数量というものを想定して、それを上回るということでなければ実質的な大幅ということにはならないでしょう。そういうことにはなっておりませんから、私は、去年と比べて大幅というようなことは、確かに去年と比べれば大幅かもしらぬけれども、内容的に国鉄の財政再建を補うことにはならないということで、はたしてそれで国鉄再建をこれから計画していく合理性というものがどこにあるか、こういう新しい疑問というものを持たざるを得ない、そこで聞いているんですよ。
  102. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) 昨年廃案となりました再建案を御審議いただきましたときに、一つの問題点といたしまして過去債務の問題でございますが、昨年の廃案におきましては、政府管掌債務並びに政府保証債務、四十六年度末のものでございますが、これを十カ年間たな上げしようという案を御審議いただいたわけでございます。その際に、国会におきます審議といたしまして、それ以外のその他債務、すなわち全債務をたな上げすべきであるという御議論が衆参両院におきまして行なわれたわけでございます。この点を十分私たちも反省いたしまして、今回の案におきましては、四十七年度末の全債務三兆七千億円をたな上げの対衆としたのが一点でございます。  次の点は、昨年、工事費の金利助成でございますが、四・五%という案で御審議いただいたわけでございますが、そのときに三・五%ないしは三%に工事金利がなるようにすべきだという御意見、御審議を承ったわけでございますが、この点につきましても私たち十分反省いたしまして、政府出資一五%並びに工事費の金利助成を三・五%までに下げ、実質上工事費の金利を三%に下げるというふうに、この点も十分国会におきます御審議を尊重いたし反省いたしまして、いたしました。  こういう点におきまして、昨年の案におきましては十カ年間に二兆円の財政助成をするといいますものを、ことしは国鉄だけにつきまして三兆六千億、これに鉄建公団の借料の軽減ということでさらに一兆、合計四兆六千億の財政助成をする、こういう意味におきまして、先ほど大蔵省からの御答弁がございましたように、大幅な改善を行なったという次第でございます。
  103. 加瀬完

    ○加瀬完君 それは合理的と言えますか。去年国会でいろいろ意見が出たから、それが今度の内容としては多く盛られている、意見を取り入れたということもわかりますがね、それが国鉄再建の最高の合理性であるという裏づけはどこにもないわけですよね、保証は。しかも去年と比べてふえたというだけで、いま問題になっているのは、こういう状態の中で二三%か幾らか運賃値上げをすることが合理的かどうかということが前提としてあるわけですね。運賃を二三%なり二四%なり上げなければ、あとはこれだけでまかないがつきますという前提に立っている、あなた方の計画は。しかし、われわれのいままでの質問では、その二十何%の運賃値上げそのものが一体合理的かどうか、物価対策というものから考えて、今回運賃を値上げするのはどうかということがいろいろと議論をされたわけだ。  私どもが注文をつけたいのは、いままでは、運賃の値上げでまかなわなければまかないはつきませんよという突っ放した考え方で政府はあった。今度は、利用者負担だけにまかせておいては国鉄というものは成り立っていかないから、政府も財政負担をしますよという新しい態度が出てきた。そんなら政府が財政負担をする幅というものはどういうものであるか、財政負担をする場合というものや、条件というものはどういう条件であるかということが新しく今回の財政再建については検討されなければならない。  ところが、どういう場合にどれだけ金を出すかとか、いままで、この前も指摘をいたしましたように、国鉄が公共サービスとして負担していた分は戻してくれるのか、これに対する補いをつけてくれるのか、こういう条件が一つ一つ検討されて、これだけの基準で射政負担をしますということは一つも具体的には出てこない。これでは財政負担をいたします、その財政負担というのは去年と比べて多くなりましたよというどんぶり勘定じゃありませんか。財政負担をするというのは、国鉄当局、運輸省当局とすれば、それならば、これは当然国が出すべきものですから、これだけは国が持ってくれなければ困りますよというものがなければならない。そういう具体的なものもいままであまり出てこない。しかも出す側の、あるいは出させる基準をつくる側の経済企画庁なり大蔵省なりは、去年と比べてふえていますというどんぶり勘定。これで政府が国鉄の財政再建について財政負担をいたしますという責任を果たしているということになりますか、それを私どもは言っているわけですよ。  去年とことしは違っているんです。政府が財政負担をいたしますというんだから、それならばこれだけのものを政府は財政負担をするのが当然だという要求が国鉄側から出ているはずだ、運輸省からも出ていなければおかしい。それに対して経済企画庁なりあるいは大蔵省から、こういう基準で出しましょうとか、こういう場合はこう取り上げましょうというものが検討されなければならないはずだ。  当然出すべきものよりもよけい出した場合、理論的にも大幅にということばが言えるわけだ。一つも出さなかった去年と幾らか出したことしと比べて、去年より大幅だということでは、政府がいままで国民に宣伝をしておりました国鉄財政は国の責任で赤字を埋めてまいりますということにはならない。その点を私ははっきりさしてくださいと言うのですよ。
  104. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) ごもっともだと思いますが、ただ政府でこういう再建案を出しましたのは、結局、これは前にも何べんも御説明しているとおりですが、短い年度ではなかなか再建計画はできないんです。いままで何しておったんだというおしかりもあるかもしれません、それは今度の案の中で相当に反省をして出しているつもりでございますが、とにかく十カ年間に国鉄財政を再建するんだというのが、これはもうわれわれの願いであり、目的なんです。そういたしますと、先ほど来関係各省からも説明いたしましたように、ここで急激に物価のことも考えないでただ国鉄が再建されればいいんだ、単年度に再建されればいいんだというわけにはまいりませんで、いろいろの経済情勢、社会情勢というものを踏まえながら十カ年間に国鉄の財政が再建されるのには少なくともどういうことをしなきゃならないか、こういうことが問題になるわけでございます。  本来、国鉄の運賃の改定率につきましてもいろいろ議論のあるところでございますけれども、昨年も実質一五%という案を出しておりまして、物価情勢が非常にきびしいものですから、少なくとも学問的理論的にはいろいろの見解が出るかもしれませんけれども、われわれ政策担当をしております者としては、昨年出したそれをあまり上回るというごとはいまの経済情勢から見まして適当ではない、こういうことからこの運賃改定の率というものは昨年出したものにとどめておこう、こういうことを決心したわけでございまして、そういたしますと、あとはどうするかということですが、結局、これは政府ができるだけ助成の率をふやして、そして十カ年間に再建できるような財政状態をつくり上げていく以外にはない、こういうことから今度のような案を生み出したわけでございます。  加瀬さんのおっしゃるように、いろんな要因があるわけです、赤字を出している要因がいろいろございます。それについて個別的に、たとえば赤字線をどうしたんだとか、あるいは公共負担をどうしたんだとか、こういったことで一つ一つ、いまあなたのおっしゃるように、何か助成の基準でもつくって、それを上回ったものは当然政府が助成すべきじゃないか、こういうのも確かに一つの行き方かもしれません。しかしそういうことを考えてまいりますと、国鉄の営業の収支というものが状況によって非常に変わってくるわけですね。そういう点を考えますと、なかなか個別的に原価を見て一つ一つそれに対する助成率を考えていくというふうなことはむしろ政策的には不適当であって、全体としまして国鉄の財政が再建されるような政府の助成策を考えていくのがむしろ大局的に見たら適当である、こういうことから、従来とっておりましたような方法で総合的に再建計画に必要な助成のワクをきめてきた。  それについても利子はどうするんだ、出資はどうするんだと、いろいろ問題があります。これも一つ一つは問題でございましょう。しかしそういったものを、いま申しましたように、総合いたしまして、やはりこれは一つの政策でございますから、政策的にそういったいろんな要素をかみ合わせまして、結論として十カ年目には国鉄が財政再建をして機能を回復し得るような状態をつくり上げる、こういうことで今度の案を出しているわけでございますから、この点はおっしゃっていることと私は違いはないと思うんですが、ただ方法論として非常にお考えになっているところと違う点があることは私もそのとおりだと思います。そういうふうに御了承いただきたい。
  105. 加瀬完

    ○加瀬完君 政府は、国鉄財政再建計画というものをお立てになったわけですね、もう一つのスローガンとして交通関係料金の安定というのも国民に約束しているわけですよね。再建計画も必ずやります、交通関係の料金も安定させますということになれば、去年と同じような形で国鉄運賃を上げるということには再検討の要が当然出てきておるわけですよ。ですから、重ねて言いますけれども、財政負担と利用者負担のあり方というものはどう検討したのだと、その検討の結果をここで明らかにされなければ答弁にならない。  もう一つは、国鉄運賃はしかし上がったのだ、交通関係料金の安定といいながら国鉄料金は上がった、それならばその国鉄料金を上げる要件というものはどういう場合で、どういうことなのかということがやはり国民の前には明示されるべきだ。それがはっきりしておりませんから、さっき言ったように、どんぶり勘定では困る、こう申し上げておるわけです。たとえば国の財政負担の基準というならば、建設費はどうするのか、公共サービス分はどうするのか、国策上赤字線を残しておかなければならないところのその赤字分の補てんというのはどうするのか、こういう具体的なものが幾つか出て、これは財政負担をするのだ、あるいはまたどういう場合料金を上げざるを得ないから料金を上げるのだ、あわせて料金を上げる――あとから質問しますが、条件というものを明示されて、そうしてこういう計画になりましたということにならなければ、言っていることと計画されていること、これからやろうとすることがばらばらなんですよ。しかしこれは運輸大臣の責任じゃないと思う、私は。  政府の財政当局――交通関係料金の安定というのは少なくとも経済企画庁が知らないままにこういうことが公表されるはずはないでしょう、これはどういうことなんだ。それと今度上げる国鉄運賃というものはどういう説明をつけられるのか。あるいは財政負担ということであれば、経済企画庁なり大蔵省なりがもっと明確な基準というものを示さなければおかしいじゃないか。くどいようですけれども、そういうことが財政負担をするときめた初年度にはっきりしませんと、来年はインフレになる、結果として国鉄がさらに赤字になる、幾ら出せばいいかという基準はあらためてまたどんぶり勘定になるということでは、国鉄十カ年の再建計画というのは見通しは全く立ちませんよ。それでは政府が責任を持って国鉄の赤字解消をいたしますということにならない。ですから、財政当局、経済企画庁なり大蔵省なりに私はもっと明確な答弁を求めているのです。
  106. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) 加瀬委員のおっしゃいますように、赤字閑散線の問題とか国鉄の公共料金の負担の問題とか、そういうことを積み上げてやるやり方も一つあるかと思いますが、長期収支の試算が出ておりますが、全体として国鉄の財政基盤を強化するように国のほうも援助する。しかし公共料金といえども料金体系の一部でありますから、いつまでも押えていくというわけにはいかない。そこで一般の利用者にも負担をしていただく、国鉄自体にも合理化をやっていただく、そういう形の上に長期収支の試算をつくり上げまして、五十七年度には単年度で償却後の益金を出す、こういう形になっているわけでありますから、必ずしもどんぶり勘定とは言えないというふうに考えるわけです。
  107. 加瀬完

    ○加瀬完君 それでは重ねて聞きますが、国鉄運賃を上げる場合というのはどういう場合ですか、あるいはどういう要件の場合には国鉄運賃はこれだけ上げるという基準を、大蔵者としてはおとりになっているんですか。
  108. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) 公共料金は上げないでいくということは、実は、本来的にはできない。人件費も上がりますし、物件費も上がるわけですから……
  109. 加瀬完

    ○加瀬完君 そんなこと聞いてませんよ、私の聞いたことにお答えくださいよ。
  110. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) そこで十カ年間に四回上げるという前提に立って、総合的な収支を考えていくというやり方をとっているわけであります。
  111. 加瀬完

    ○加瀬完君 それはあんたの説明を受けなくてもこの報告書を見ればわかる。どういう要件の場合に上げるということになるのか、これを聞いているんですよ。  四回上げるということはわかった。しかし、どういう場合、どういう要件が備わったときに国鉄の旅客運賃なり貨物運賃は上げるということの前提に立っているのか、この基準がきまらなければ、上げるべきか上げないほうがいいかわからないでしょう。そうすりゃね、足りないから上げましょうということじゃ、いままでのどんぶり勘定と少しも違わないじゃないか。  国が財政負担をするというからには、財政負担の前に、一応独立採算制的な運営というものをやっているわけだから、どういう場合に運賃は値上げをするのか、しかしどういう場合には運賃の値上げというものではなくて国が財政負担をしなければならないのか、こういう基準が明確にならなけりゃ、出す場合も幾ら出すかということもはっきりしない。どういう根拠で政府は金を出すのか、どういう根拠あるいは要件で運賃を上げるのか、これが財政当局で明確になっておらなくて対策が立ちますか。
  112. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) 私は、交通料金というのは本来長期的にとめておくべき性質のものではない。国鉄も企業体でありますから、努力をしていく上に、やはり上げるという場合が当然あり得るわけで、しかし上げることは国民に対して時節柄物価を押えていかなきゃならぬという空気がありますし、また国鉄がいま赤字で非常に財政の基盤がくずれている、そういうものを総合的に再建するために政府が出資をしたり補助金を出したりするというのがたてまえでありまして、国鉄料金は絶対に押えていかなきゃならぬ、そういう性質のものではないというふうに私は考えております。
  113. 加瀬完

    ○加瀬完君 だれもそんな性質だと言っておりませんよ。当然上げなければならないときには運賃値上げというのは必要になってくる、上げるべきであろう。しかし、それにはどういう場合なりどういう要件なりというものがそろわなければ、上げていいか上げて悪いかという判断の基準がないではないか。  それから利用者が運賃によって負担をすべからざる場合、しかも国鉄の運営が財政的に苦しいという場合は、これは政府負担をするということになっているんだ、政府負担をしなきゃならない。じゃその政府負担をするという場合は、どういう条件のときに政府負担をするかということが明瞭にならなければ、財政当局としての金の出しようがないでしょう。適当に運賃を上げる、足りないところを出そうというならいままでと少しも変わりがない。そんな不明確なことではこの国鉄の財政再建というものはできるはずのものではない。そのぐらいのことは専門家のあなた方が知らないはずがない。  上げるなと言っているんじゃない。どういう場合に上げるのか、上げる基準をはっきりしろ、運賃を上げてはならないと、政府が金を出さなきゃならないというときはどういうときだ、それをはっきりしろ、こう言っている。
  114. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) 十カ年と長期収支の試算にありますように、国鉄を総合的に十カ年の間に再建する、そのために年度ごとに政府の助成金なり工事の補助金なりというものを十カ年計画できめているわけであります。現状においては、それにのっとって助成をしていく、その間に四回の運賃値上げが織り込まれている、こういうふうに御理解いただきたいと思います。単年度だけではなしに、十カ年の総合的な中で問題を考えていく、その計画は長期収支の試算としてできている。こういうわけであります。
  115. 加瀬完

    ○加瀬完君 具体的に伺いましょう。  あなたがおっしゃるように、運賃値上げを永久にしてならないと私ども申し上げているわけじゃない。それじゃ、大蔵者としては、どういう場合は運賃を上げなければならないと御認識なのか、どういう場合は運賃値上げによらないで政府が金を出さなければならない場合だとお考えなのか、具体的にひとつお答えをいただきましょう。
  116. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) 加瀬委員は単年度だけで問題を言っておられますけれども、今度の場合には国鉄の長期再建を目標としておるわけでありますから、十カ年間にわたって政府はそれぞれ年次を追うて助成金なり補助金を出す、その間に四回の運賃上げがあって、総合的に十年後には償却後の益金を出す、こういう計画になっているわけであります。
  117. 加瀬完

    ○加瀬完君 それじゃ、その計画に従って御質問をしましょう。  その計画では、どういう場合は運賃を値上げするという内容としたんですか。逆に言うならば、運賃値上げはこういう場合にしなければならないということで運賃値上げをきめたんですか。それから十カ年で幾らかずっと出している、それはどういう条件の場合出すということでその十カ年計画の政府出資というのをきめたんですか。
  118. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) 料金の値上げは四十八年、五十一年、五十四年、最後に五十七年、四回運賃値上げを計画しているわけであります。
  119. 加瀬完

    ○加瀬完君 ちょっと速記をとめてください。――そんな答弁じゃ質問をしたってだめですよ、一つもかみ合わないじゃないですか。もっと質問に正しい答えができるような説明員でも何でも出してくださいよ。
  120. 山本敬三郎

    政府委員山本敬三郎君) 加瀬委員は個別的に言われますけれども、こちらは十カ年の総合計画で考えているわけですから、そこで十カ年間に運賃値上げをし、かたがた政府が出資をしていく、こういう形になっておりまして、具体的に何年になったらどうなったから上げる、こういうことではないと思います。
  121. 加瀬完

    ○加瀬完君 しかし何にも条件なしに、どれだけの金額をいつ出すという計画はできないわけでしょう。四回に出すということは別に異論を申し上げませんよ。しかし十カ年め間に四回運賃を上げるというならば、運賃を上げる前の想定があるでしょう。それから政府がいろいろ金を出すというならば、どういう条件で金を出すんだということがなくて、ただ十カ年を四回に割り当ててこういう年次計画にしたんだということでは説明がつかない。  というのは、あなた方のほうでは、田中総理大臣がはっきり言っていますけれどもね、こう総理大臣は言っているのですよ、国有鉄道は「国有鉄道法制定の根本にさかのぼって考えるべきである。」ですから、政府負担というものがもとで国有鉄道というのは運営されるのが当然だと、こう詳しく言えば御説明なさっているのですよ、おたくのほうの総理大臣は。政府が財政負担をするというたてまえをとっているわけだ。それなら財政負担をする要件なりたてまえなりというものがなけりゃおかしいじゃないかと、また幾ら金を出せば、財政負担ということになるかという基準がなければ、どんぶり勘定と言われたってしようがないでしょう。また、それがきちんときまらなければどうにもならないというので、私は具体的にさっき申し上げたんです。  たとえば建設費なら、建設費というものについては全部国が持ちます、こういうことになればそれは一つの基準になる。あるいは赤字路線というものに対しては、公共サービスのためにやっているんですから、これは国が出します、こうきまっていれば赤字路線の分は赤字にならない、国が出す、こうはっきりする。あるいは公共サービス分は国が負担をしますよというならば、それは今度は国からもらえるなということもわかる。そういうことが一つもなくて、ただ大体十カ年で再建計画を終わるとすれば、このくらいずつあてがいぶちみたいに政府の金を出していけば何とかなるかなという計画では、計画としては私どもは認めるわけにはいかない。十カ年計画は最後に赤が残るという計画ですか。その基準がなければおかしいじゃないか、こう言っているんです。
  122. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) 国鉄の現在の財政状況の悪化ということを反省いたします際、大きな問題の一つは、新しい経済情勢、輸送情勢というものに対応する国鉄の近代化ができてないために、輸送力の伸び悩み、したがって運輸収入の伸び悩みということが一つの大きな原因でございます。同時に過去におきますばく大な長期債務、この圧迫といいますものがある。それから今後建設いたします工事、これが鉄道の性格といたしまして懐妊期間が長いために、その金利の圧迫ということ。第三にはいわゆる人件費これが予期以上に高騰しているということでございます。  で私たちといたしましては、十カ年間に国鉄の体質を近代化いたしまして、いわゆる国民経済あるいは国民生活の一端をになう重大な使命を十分に果たし得るというように体質を改善いたしますとともに、十カ年後に財政再建をいたすためにはいかにすべきかという点につきまして、十カ年の長期にわたりましていろいろ検討したわけでございます。  まず第一の運輸収入の増大でございますが、このためには、国鉄の体質の改善さらに輸送力の増強、こういうことによりまして国民生活、国民経済に貢献するとともに、国鉄自身の運輸収入の増大をはかろうというための近代化の施設をいろいろ行なうというための投資でございます。その金利が国鉄財政の負担にならないように、この金利の軽減をはかるということでございます。第二におきましては、過去におきまして、これはいろいろと先般も御指摘がございました国鉄に対する政府の出資が少ないということもございまして、その過去債務の負担というものを軽減いたしますために、四十七年度末の全債務をたな上げする、こういうことによりまして過去債務の圧迫を軽減する。さらに人件費の高騰に伴いますコストの増大、この点につきましては、国鉄自身が企業努力によりまして、また合理化努力によりまして、そういった面の経費の軽減をはかる。  こういったいわば三本柱――と申しますのは、最後の残りの分については、いわば公共企業体でございますので、やはり独立採算ということがたてまえでございますので、これにつきまして国民の利用者の方々にぎりぎりの点におきます応分の御負担をいただく。第一が国の財政助成、第二が国鉄自身の企業努力、第三が国民の利用者の方々に応分の御負担をいただく、こういった三本柱で国鉄の財政再建をはかろうとしたものでございます。  この際に、過去におきましては、四十四年の現行再建計画におきましては国の助成はわずか二千億でございましたものを、昨年の廃案におきましては二兆の財政助成、今回の案におきましては四兆六千の政府助成というふうにいたしたわけでございます。  先生の御指摘のように、個々の項目をとらえまして、たとえば公共負担の問題あるいは地方閑散線の問題あるいはその他のいわば国民への公共的サービスとして行なっている問題、こういった個々の項目をとらえて助成すべきだという御意見、これも十分私たちといたしまして拝聴いたさなければいけない御意見と思っておりますが、現在までとっております再建方策、また今回御審議いただいております再建方策におきましては、そういったものを総合的に見まして再建をいたそうという考えでございます。
  123. 加瀬完

    ○加瀬完君 二兆が三兆に伸び、三兆が四兆に伸びたところで、それが国鉄の財政再建を保証するということにはならないわけですよね。  私が言うのは、そういうどんぶり勘定で政府の財政負担というものの基準というものをきめていってはだめなんだということです。これだけのものは当然政府負担にすべきだという条件がきまれば、たとえば建設費による赤字あるいはいままでの利子による赤字あるいは閑散線による赤字、公共サービスによる赤字、こういう幾つかが赤字の原因で、しかもそれは運賃負担、利用者負担にすべきではなくて、国の財政負担にすべきだというものが明確になれば、それが五兆になろうが八兆になろうが、数字にかかわりなく全部財政負担、国持ちということになれば、将来の赤字というものはなくなっていくわけですよ。そうでなければ、三兆を国が出したところで四兆の赤字をかかえる、四兆出したところで五兆の赤字をかかえる。赤字の何分の一かを政府が負担するということでは、国鉄の赤字解消あるいは再建計画というものはいつまでたったってできませんよ。  だから、いままでは財政負担を政府がすると言わなかったけれども、今度新しく財政負担を政府がいたしますと言ったのだから、それでは財政負担をする基準というもの条件というものは、こういうもので財政負担をすべきであるということをここできちんときめておけば、将来の赤字というものはなくなるわけだ。それをきめなければ国鉄も怠慢ですよ。またどういう場合に幾ら出すという基準もなくて、財政再建の足し前をするというだけでは、確実に財政再建ができるという政府の責任というものはどこにも立ちませんよ、それを言っているんですよ。  それから、ことばじりをとらえるわけではありませんが、公共企業体は独立採算制というばかな話はないですよ。公共企業体は独立採算制では立っていけないと総理大臣も言っているじゃないですか。いままでは公共企業体のような国鉄でありながら独立採算制だけでやってきたところに、この財政再建計画を十カ年でやってもまだ赤字が残るというような事態になってしまったわけだ。ですから公共企業体といいますか、国有鉄道のようなものは独立採算制ではやっていけないんだという立場を政府がとってくれたんだから、それで財政負担をするということになったのだから、それならこれだけのことは財政負担でやってもらわなければ国鉄は立っていけませんよということを、運輸省としては当然主張すべきではないですか。国鉄当局はいままで主張しておった、たびたび。これは国鉄だけにまかせるのはひど過ぎますよ、国が出してくださいと言ったけれども、なかなか出さなかった。幸いに今度財政負担をしますと言ったのだから、それでは財政負担というものはこういう基準ですべきだということをあなた方のほうで明確にしていけば、赤字解消というものははっきりめどがつきます。それを詰めなくては私はだめだと言うのですよ。  しかも十カ年計画というものは、十カ年ずっとインフレが続くとは言いませんけれども、ことし一年でもどういう状態になりましたか、あとで質問をしますが、大体物価上昇は消費者物価五・五%ぐらいだろうと押えて、こういう運賃体系をつくった。これが一四%になり一五%になったら、運賃体系というものはまるきり見込みが立たないんですよ。経済状態のいかんにかかわらず、これだけのものは政府が負担をすべきだということをきめておいたほうが、国鉄側にとっては私ははるかに再建計画の進捗にはプラスになると思うのです。これは国鉄総裁どうですか、私の意見に賛成でしょう。
  124. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 非常に私むずかしい立場におりますけれども、先ほどからのいろいろの御質問を承っておりますと、結局端的に申しますれば、一種の哲学がないじゃないかと、運賃を値上げするにしても。あるいは政府が援助をするにしても哲学がない、理論がないじゃないか、こういう御意見だと私は思います。  確かに今回の計画には、率直に申し上げて、そういうところがあります。これを逆に裏から申しますと、私のほうから申しますれば、結局、今度の政府措置というものは、主として先生の御主張になった数項目の中の工事資金の利子については、一つの哲学を持ってやっていただいたと思います。  と申しますことは、過去債務は再建債という妙なやりくりがございますけれども、一応結果的に申しますれば、資金負担なしに過去の債務はなくなったということでございます。すなわち再建債を貸していただいて、その分の利子が補給されるということは、資金的に見れば国鉄の負担がなくなったということでございます。すなわち三兆七千億の過去債務については一応負担が資金的にはなくなったということでございます。それから将来の十兆五千億やります工事につきましては、結果的には三%の利子までめんどうを見る。まあこの三%については、理論的根拠があるかどうかは別といたしますが、一応現在の社会の中で一番安いと思われる三%まではひとつめんどうを見よう。まあこれも三%のよしあしは一応別といたしますと、これは出資を含めまして三%になりますので、これも一つの理論としては一応あると思います。三%のよしあしは別でございますが、現在の社会では三%というのは最低の利子だというふうに考えますれば、今後の工事資金について三%までめんどうを見ていただいたということは、これは一つの理論があると私は思います。  問題は、先生のいままでおっしゃった中で、いわゆる経費補助がないということでございます、そこの問題だと思います。ですから、今度は、先ほど大臣もおっしゃいましたように、いわゆるドイツ式の補助の方式と英国式の補助の方式、いろいろございますが、まあ先生のおことばをかりれば、どんぶり勘定だということでございますが、いわゆる英国式にまとめて一本というふうなやり方と、それからドイツ式に利子はどうだ、あるいは公共負担はどうだ、赤字線はどうだ、こういうやり方と二つございましたが、そのうちで今回の政府のやられたのは、どっちかと申しますと、イギリス風のまとめて一本というふうなやり方でございます。したがいまして、それを裏から見ますと、私のほうでは主として工事資金についてのめんどうはほとんど見ていただいたというふうに言えると思います。  しかし先生のおっしゃったいわゆる経費補助でございますね、たとえば公共負担の問題とか、あるいは赤字線の経営の問題とか、これについては、これを裏から項目的に見ますと入っておりません。しかし政府としては、それはイギリス式の一本の補助だというふうな見方をされておると思いますので、その点、確かに私どもといたしましては、項目別にしたほうがはっきりすることは確かでございます。しかしやはりそれには非常に計算の基礎もむずかしいし、また毎年毎年非常に変化が大き過ぎる。実際申しましても、二年前の決算を基準にする以外にないということで、非常に違ってまいりますので、そういった点を実は私どもこの案をつくる過程でずいぶんいろいろ政府とも議論をさせていただきましたが、一応まとめて一本というイギリス式のほうが財政的にもやりやすいし、また国鉄としても非常にこまかい計算なしに全体として一本というほうがいいんじゃないかというふうな御議論でございまして、一応そういうふうに納得したわけでございます。したがって先ほどの御議論、確かに理論的に申しますれば、項目ごとのドイツ式のほうがやり方がはっきりといたしておりますけれども、今回の措置は、主として工事資金の利子補給中心といたしました助成であるというふうに結果的には考えられるということでございます。
  125. 加瀬完

    ○加瀬完君 日本の財政というのは一本で補助をするという形式が多いんですね。しかし実際に国鉄の場合赤字全部が埋められてくるのかどうかということになると、非常に疑問がありますね。私は地方行政に長くおりまして交付税をいろいろ伺ってきたんですけれども、交付税は法律からいえば下の必要経費というものを積み上げてきて、そうして入る税金というものと差し引きをして、足りない分は交付税で埋めるということになっていますけれども、その交付税は必要経費というものをまかなうというたてまえはたてまえだけれども、実際はその何%かがいつもちょん切られておりますね、これがまあ大蔵省に悪いですけれども日本の財政当局のやり方ですよ。まあ出すほうも大体山をかけて出す。だから五割くらい山かけたんだから、六割くらい切れというような悪習慣が慣習となって残ってしまったというきらいがありますけれどもね。  特に企業体ですから、国鉄は。これだけ赤字が出ましたから、このくらい――たとえば百億赤字が出ましたから百億埋めてください、こう要求しても、おまえのほうは企業体じゃないか、もっと運賃上げろということになると、当然政府の出すべきものが運賃に肩がわりをされるということになりまして、国の財政負担の原則というのは名前だけで、それはたいへん目減りがしてくる、そうであってはまた国鉄が赤字を背負って運賃に転嫁するということになりますので、私は項目別に当然財政負担をしなければならないものというものをきちんときめるべきだ。トータルとして出すにしても、そういう積み上げてきたものでこれだけの赤字が出たんだから、トータルとしてこれだけ出すというなら話はわかるけれども、何にも積み上げないでやるならば、百億要ると、まあ五十億でがまんしておけということになってしまえば、国鉄が国の財政負担によって赤字が解消されるという時期はいつまでたったって来ません。それを指摘しておるわけですよ。  そこで、これは経済企画庁に伺いますが、経済企画庁は物価対策の庁でございますので、経常費が赤にならない場合でも運賃値上げは自由にしていいという考えか。若干意見を差しはさむならば、国鉄経常費が赤にならない限りは運賃値上げはさせないという一つの原則というものを認めるわけにいかないか、これが一点。  次は、本年度のように物価抑制の必要がある場合は、公共料金は据え置くべきじゃないか、こういう原則は経済企画庁としては考えられないか。なぜ私がこういうことを言うかといいますと、前々回の運賃値上げの場合は、経済企画庁は反対と意思表示をしました。こういう物価上昇のときに公共料金は上げるべきでない、したがって経済企画庁としては国鉄運賃の値上げには反対だという意思表示をしました、時の長官は。それよりもいま物価の変動が激しく大きい、こういうときに上げなければならない必要がどこにあるか。  もう一つ第三番目としては、公共サービスが目的であります公営企業のサービスを低下させてまで、企業機構を縮少したり、人員を整理したりするということははたして妥当か。  この三点について、経済企画庁のひとつ考え方を承ります。
  126. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 第一の点につきましては、やはり原則的には、そういう経常費が黒である場合には運賃値上げを認めない。これはほかの交通料金一般につきましてもほぼそういう原則をもってやっておるわけでございます。  それから第二の、経済企画庁としてこういう事態だから当然反対すべきではないかという御意見、ごもっともな点もあるわけでございます。私どもも物価だけの観点から申し上げますと、当然そういう考えもあるわけでございますけれども、まあ前回も申しましたように、なかなかやはり政府の政策というものが一つの政策ですべてを割り切るというわけにはまいらない点がございまして、国鉄の最近のような異常状態というものは確かに放置することができないという点もございまして、こういう案がきまります前の段階では、もちろん先生おっしゃいますように、政府の中でいろいろな意見があって議論が行なわれた結果、こういう案がまとまったわけでございますから、政府一体の原則もございまして、まとまった以上は私どもはやはり本案を支持する、そういう立場でございます。  それから第三のサービスの点でございますが、これは程度問題でございまして、確かに苦しいからといって人員をどんどん削減して公共サービスが質的に低下をするということになりますと、これはもう本来の目的にはずれるわけでございますから、そういうことがあってはならぬと思いますけれども、公共サービスの質的な低下が生じない限り、合理化につとめていただくということは、これは当然必要なことであろうというふうに思います。
  127. 加瀬完

    ○加瀬完君 ひとつ質問をはしょって経済企画庁に直接に聞きますが、物価上昇率が当初見込みと大きく変わってきているわけですね。経済企画庁は、田中さんのおっしゃるように、インフレではありません、インフレになる見込みはありませんと、いまもってそういう御見解をお持ちですか。
  128. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) インフレーションという定義は人によっていろいろな定義がございますから、自分の定義に基づいてある人はインフレであると言い、ある人はインフレでないと言うわけでございまして、私どもインフレであるかないかということを一義的にきめることが実はそれほど大きな意味があるとは思わないわけでございまして、むしろやはり一番大事なことは、現在のような異常な物価上昇というものがあるということは現実でございますから、これを何としても一日も早く正常の状態に戻さなければいけない。そのために全力をあげなければいけないということでございます。
  129. 加瀬完

    ○加瀬完君 物価上昇率が異常な状態だということはお認めになりますね。民間の研究所等が政府の見込みをはるかにオーバーする物価上昇見込みというものをいろいろ出しておりますけれども、たとえば日本商工興信所ですか、二本柳専務という方は、卸売り物価が一二%、一三%ということになってくると、消費者物価は三〇%、四〇%ということも考えられるという発言もいたしております。おたくのほうの前の次官の矢野さんですか、秋には一四%をこすであろうと警告をしておりますね。  これに対して、四十八年の四月二十二日には、田中総理は十月か十二月には物価は下がると、こう言っている。四十八年の五月十八日、これは市議長会での田中さんの演説ですけれども、引き締めの効果を確信しているので物価は下がるとこう言っている。ところが、おたくのほうの矢野前次官は秋には一四%以上上がるだろうと言っている。遺憾ながら、これは田中さんの意見よりも、おたくのほうの経済企画庁の前次官の意見のほうがほんとうのものだということにだんだんなりつつある。こういう状態をあなた方はお認めになるでしょうな。物価上昇の異常な状態というのは、前次官の指摘したように、ことによると秋には一四%ということも可能となってくるというほど異常であるというふうに解していいでしょう。
  130. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) まず、消費者物価と卸売り物価の関係でございますけれども、世間に卸売り物価の上昇率が三倍ぐらいになって消費者物価にはね返るという議論もあることは事実でございますけれども、これはまあ非常に俗論と申しますか、過去の統計を見ますと、十年間ぐらいの平均で見た場合に、日本の場合卸売り物価が大体一%台の上昇率でございまして、それに対して消費者物価のほうは、まあ上がったときもございますけれども、平均すると五%台ぐらい、両者の上昇率の間に約三倍ぐらいの違いがあるということからきた議論でございまして、全く長期的な平均上昇率というものと短期的な波及力というものを混同した議論でございます。  したがって私どもは、現在、卸売り物価が前年度同期比一〇%以上上がっているわけでございますけれども、これが直ちに消費者物価が三〇%になるというようなことは毛頭考えておらないわけでございまして、現実に、卸売り物価と消費者物価の実質的なタイムラグにつきましても昔は一年から一年半ぐらいおくれるということもございましたけれども、最近のように、これは卸売り物価の上昇の内容いかんによって変わってくるわけでございまして、ことしの初めごろ経験しましたような繊維原料とか食品、そういうものが卸売り物価上昇の中心であった場合には、非常に早く消費者物価に波及しておるわけでございまして、まあ半年以内、三カ月から六カ月ぐらいの間で波及しつつある。すでに現在の消費者物価上昇は、その相当大きな部分が卸売り物価上昇の影響を受けているというふうに考えております。  それから田中総理の発言と矢野前次官の発言のギャップでございますけれども、これは物価のはかり方の問題でございまして、物価指数の物価のはかり方には、前月比、つまり前の月に対してどれだけ上がっているかというはかり方と、前年同月に対してどれだけ上がっているかというはかり方があるわけでございまして、田中総理が秋になれば物価が下がるだろうと言いましたのは、卸売り物価の場合で、しかも前月比の場合というふうに私どもは理解しております。  卸売り物価は前年同月比では現在一四、五%まで上がっておりますけれども、しかも同時に現段階ではまだ非常に上昇の勢いが強くて、前月に対してすら相当の勢いで上がっております。したがって私どもは、現在、今月末を目途に総合的な物価対策を強力に行なおうということで、きょう公定歩合の引き上げも行なわれましたし、月末には総合物価対策が閣僚協議会で決定される手はずになっておりまして、現在、内容を固めておるわけでございますけれども、今回やはり相当強力な対策が行なわれますので、それでなくても過去四月以降行なわれてまいりました金融引き締め措置その他の効果がぼつぼつ効果を出し始める時期でもございますから、これは世間の評論家などでもかなりそういう意見が強くなっておりますが、ようやくこれから卸売り物価には変化があらわれるであろうという説がむしろ多数説になりつつあるように思います。  その意味から申しますと、秋に卸売り物価が前月比で下降に転ずる、横ばいにだんだん近くなっていくということは十分予想されるところでございます。ただ、そう申しましても、前年同月に対しては依然として相当高い水準になるということはいなめない。ただし今年の終わりから来年初めにかけますと、一年前の卸売り物価はどんどん上がっておりますから、前年同月比のほうの上がり方もどんどん少なくなっていく、二けたから次第に一けたになっていくというふうに思っております。  それから矢野前次官が申しました一四%云々という数字は、これは卸売り物価ではなくて消費者物価の問題であり、しかも前月比ではなく前年同月比の問題であります。現在すでに前年同月比が東京で一二%ぐらいになっておりますので、消費者物価のほうは、実は、卸売り物価が横ばいにだんだん近づいていきましても、すぐにこれが消費者物価に波及するということでございませんで、どうしてもタイムラグがございます。そういう意味から申しますと、消費者物価の上昇率は前月比では最近むしろ四月ごろが一番成績が悪くて、その後少しずつ上がり方としては鈍っているのでございますけれども、去年のいまごろがほとんど横ばいでございましたために、前年同月比は一一%、一二%というふうに少しずつ上がり方が高まっているわけでございまして、矢野さんはむしろ世間に対する警告的な意味を含めて、政府も財界も国民全部一体となってインフレに立ち向かわないと一四%にもなる可能性がありますよということを警告したわけでございまして、まあ一四になるかならないかは別といたしまして、前年同月比では一二、一三という数字が出る可能性は十分あるように思います。  ただ、卸売り物価のほうは、先ほど申しましたような理由で、だんだん上昇率が鈍り、横ばいに近づいていくといたしますと、これは当然ややタイムラグをもって消費者物価に波及いたしますから、年度末から来年にかけての消費者物価状況は現在よりもいい形になるというふうに確信いたしております。
  131. 加瀬完

    ○加瀬完君 田中総理は別に卸売り物価だという説明一つもしておりませんよ。  卸売り物価が全然動かないときでも、いままでの日本の状態では消費者物価は上がってきた。卸売り物価がこんなふうに上昇してくるときには、当然、これは三〇%に上がらないかもしれぬけれども、一五%なり一六%なりというふうに上がる可能性というのは消費者物価においては十分懸念される。  問題は、あなた方は五・五%で消費者物価を押えると、こう言った。五・五%で押えられるという前提で、国鉄運賃でも国鉄の財政再建計画でも編成されている。五・五%に押えられますか。
  132. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 今年度のCPIの対前年度上昇率を五・五に押えますことは、ほとんど不可能であるというふうに思います。
  133. 加瀬完

    ○加瀬完君 ですから、財政計画がまるきり政府は見通しが違ったわけですね。これは大臣に言わないであなたに言ったって悪いけれども、五・五%で消費者物価を押えられるという前提で公共事業なんかうんと予算を盛った。公定歩合なんか幾らやったって総需要が押えられなければどうにもならないという意見が出て、総需要を押えるという立場から、今度は、きょうの発表がありましたけれども、公共事業を押えているんでしょう。政府は責任をとるべきですよね、ほんとうならば。五・五%がそれに十がつぐほど物価が上がっちゃって全然予算を組んだそのものの運営がつかないということになったら、これは政治責任ですわね。  しかし、ここでそういうことを論ずるわけにはまいりませんが、問題は、そういう物価対策というものが全然裏目に出てしまったわけですから、違った物価情勢の中で再建計画を進めようといったって数字が合わなくなりますね。少なくも四十八年度の経済見通しというものは全然役に立たなくなってしまったということは、これはお認めになりませんか。説明は省きましょう。卸売り物価二%ぐらいにしか考えてなかったでしょう、消費者物価は五・五%。こういうものがまるきり狂っちゃったんですから、経済見通しは五・五%という前提では立っていかなくなったということはお認めになりますか。
  134. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 五・五%はなかなか守りにくくなっているということは、先ほどお答え申し上げたとおりでございます。
  135. 加瀬完

    ○加瀬完君 民間設備投資は一四%くらいに押えようとしたんでしょう。ところが現実には二一%にふくれ上がっているんじゃありませんか、これはお認めになりますか。
  136. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 実勢は二割強というところになっておりますので、実は、現在、設備投資の調整につきましても検討を進めているわけでございます。
  137. 加瀬完

    ○加瀬完君 こんなに狂っちゃっては何を目標にあなた方は経済運営をこれから進めていくんですか、進めようとしても進める方法がなくなっているんじゃありませんか。これは局長さんに聞くのはたいへん失礼だけれども、大臣がいないからあなたに聞くんだ。
  138. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 物価や国際収支につきましては、なかなか年度初めにつくりました目標と現実の動きがずいぶん違っていることはおっしゃるとおりでございますけれども、全体の成長率等につきましては、実は、一〇%台の成長率という目標に対しまして、ことしの一-三月のあたりは速報によりますと一五%台というような非常に高い成長率で、明らかに過熱状況でございましたが、その後各種の政策も行なわれ、さらに現在何といってもまだ年度上半期の最中でございますので、ようやくこれから各種の総需要抑制政策その他が効果を発揮してまいりますと、年度平均といたしましては、成長率がかなり一-三月のころに比べますと下がってくるということが当然予想されるわけでございまして、まあ本年度の改定見通しがどのくらいになるかということは、私担当の局でもございませんし、責任あるお答えはできかねるわけでございますけれども、非常に大幅に狂うというふうには予想していないわけでございます。
  139. 加瀬完

    ○加瀬完君 まああなたは答えにくいでしょうけれどもね、最初考えました経済見通しというものをいまでは政府も変えてきているわけですね。たとえば公共事業を大幅に縮小する、その他の総需要も減らしていく、こう経済見通しを改定しなければ、どうにも物価対策が立っていかないという状況になっているということはお認めになるでしょう、現に政府はそうやっているんだから。
  140. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) それはそのとおりでございます。
  141. 加瀬完

    ○加瀬完君 地方財政対策がいま非常に問題になっていますね。たとえば鉄鋼とか塩化ビニールとか、こういう建築材料がはね上がってしまいまして、学校を建てようとか公営住宅を建てようとしたって最初の予算ではどうにもならないということで、請負業者は請負を放置する、こういう状態が各地でひんぱんに起こっているということはお認めになりますね。
  142. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 聞き及んでおります。
  143. 加瀬完

    ○加瀬完君 ですから、最初に運賃改定を考えたころとは経済状態がまるきり変わっている。経済状態が変わって経済見通しを改めなきゃならないというときに、半年前の計画のままの運賃改定なり再建計画なりというものをやっていったって、これが現実にマッチする要件を備えているとお考えですか。
  144. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) ことしの経済情勢が確かに、特に本年度上半期あたりの動きが年度の初めに考えましたものとかなり狂っていることは事実でございますけれども、先ほど申しましたような理由によりまして、こういう異常な状態がこれから長きにわたって改善できないというふうに私どもは考えていないわけでございまして、現在、大わらわでこれを改善するように努力しておりますし、これは十分に可能である。先進国の場合に比べますと、日本の場合のインフレーション的傾向というものはまだまだ発熱度は高いんですけれども、病態としては重症でないというふうに思っているわけでございまして、したがって国鉄再建計画のバックになっております十年間を考えます場合に、基本的に現在のような経済情勢の変化が、中期的長期的な意味で、日本経済の前提が大きく変わってしまったというふうには考えていないわけでございます。
  145. 加瀬完

    ○加瀬完君 逆のことも言えるでしょう。初年度の四十八年度だけを押えてもこんなに経済変動が激しいということであれば、十年間には、四十八年度と同じような経済変動の激しい時がまた来るということも予想されるでしょう。そうなってまいりますと、十年計画というものを立てても、経済安定という保証はどこにもないわけですから、十年間の。立てました、また改定をいたします、修正をいたしますということにならざるを得ない、こういう内容をもまた含んでいるということになりますよね。  だから将来のことは当然変化があるという見込みを立てるなら、変化に応じて国が財政負担の責任というものを明確にする姿勢がなければ、これは再建計画が進捗するという保証にはどこから見たってならない。しかも大体卸売り物価は三倍に消費者物価にはね返るといわれている。そして全体の経済見通しを立て直さなければならないというときに運賃値上げをしたって、その運賃値上げというものにはさっぱり国鉄の財政再建に見合うような合理性というものがなくなってきてしまった。また、そういう経済見通しを誤ったような政府は国民負担の運賃値上げを決定する権利をすでに失っていますよ。  それは批判になりますからおくとしても、経済見通しの安定さえも得られないような状態の中で、国鉄だけいじったってどうにもならないじゃないですか。また政府が金を出す財政負担の分はとにかくとして、このような物価情勢のときには、物価対策からいっても公共料金というのは押えられるだけ押える、こういう新しい方法を当然考えられなきやならない。まあ極端なことを言って恐縮ですけれども、いまの政府には物価対策というのはありませんよね。その物価対策のめどもつかないような政府が運賃を改定する資格は私はないと思います。少なくもいまの状態で運賃をどうこうするというのは妥当を欠きますよ。経済企画庁、そうは思いませんか。
  146. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 先生の御意見でございますけれども、私は、やはり先ほど申しましたように、現在は短期的な理由によってかなりの変動が起こっているわけでございますけれども、長い目で見ました場合に、それほど基本的に日本の経済情勢が変化をしているというふうには思わないわけでございますので、確かに政府見通しの誤り、物価見通しの誤り等につきましては、関係者といたしまして反省しなきゃいかぬわけでございますけれども、これをもって国鉄の計画自身をきめる時期ではないというふうに言う必要はないというふうに思います。
  147. 加瀬完

    ○加瀬完君 巷間、卸売り物価は一対三の割合で六カ月後にはね返るという説がありますね、これはあなたはさっき否定されたけれども、こういう説すらある。そこで少なくも経済企画庁としては、上昇をやめない卸売り物価をそのまま消費者物価にはね返らせないためには、どういう方法を講じなければならないかという手だてが当然講じられるべきですよね。しかし、その手だては幾つか講じているかもしれませんけれども、全然これは効果なし。消費者物価の上昇というものを完全に押えるという手は全然ないでしょう。これは日銀の総裁も言っていますね、公定歩合なんか押えたところでこれは物価を押えることにはならぬ、こう言っている。  こうなってまいりますと、いま国鉄の運賃を上げても差しつかえないと言うけれども、それじゃ今後十年間の物価変動というものをどうとらえたか。あなた方は一年間の物価変動のとらえ方というものでもう資格を失っている、落第だ。これからの十年間の物価変動というものをどう押えたか。その物価変動というものを見通した上でなければ、十年間にどれだけの国鉄運賃を上げるということをきめるわけにはいかないわけだ。そういう検討の上に、十年間四回これだけ、あるいは財政投資はこれだけというものをきめたのですから、十年間の物価変動の見通しというものをどう推定したのか、それを承りましょう。
  148. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) 十年間としてという期間について、政府できめた物価見通しというものはございませんが、本年二月に策定をいたしました経済社会基本計画におきまして、御承知のように、消費者物価は四・九、それから卸売り物価は二・三という数字で、一応今後の五十二年度までの五カ年間の政府としての計画をつくったわけでございます。それでその後につきましては、成長率もさらに若干鈍化をするということがこの計画でも想定されておりまして、そういうことから物価の面でも若干この期間よりはさらに下がっていくということをわれわれとしては考えておる、こういう状況でございます。  今度の国鉄の再建十カ年計画では、そういった点も織り込んでつくられた、こういうふうに承知をいたしております。
  149. 加瀬完

    ○加瀬完君 卸売り物価二・三、消費者物価四・九、こういう御説明がいま通りますか、一体。御説明よくわかりました、数字もわかりました。しかしこういう御説明を承りましても、なるほどな、こんなら将来の見通しは明るいなと、こううなずくでしょうか、国民が。私はうなずけない。  いまさら卸売り物価を二・三で押えるとか、消費者物価を四・九に押えるといったって、このことしの状況を見れば、こういう想定というものは噴飯ものだという受け取り方をする国民が多いのじゃないでしょうか。大体、くどいようですけれども、ことしの経済見通しというのをまるきり違ってしまったのでしょう、あなた方は。一年の見通しが半年たつうちにこんなに狂ってしまって十年の見通しを言われたって、十年ならだいじょうぶだろう、確率は長いから間違いない、こういう心証を私ども受けるわけにはまいりません。
  150. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) 確かに今年度上半期の状況というのが非常に異常な状況であるということは、先ほど物価局長からるるお答えを申したとおりでありますけれども、この計画においてわれわれが考えました点は、たとえば過去十カ年で見ますと、消費者物価は三十六年から四十六年五・六、卸売り物価が一・二ぐらいでございます。この期間における実質成長率が約一一%でございまして、今回と計画期間において九・四、だいぶ下げておりますから、そういった点からいきますと、マクロに見ますと、物価の見通しというものは過去の勢から見てもそんなにおかしくはない。当然、これはモデルを使って斉合的に出したものでございますから、われわれはそう考えておるわけでございます。  ただ、非常な物価上昇が生じてしまった、これがどういうふうに収束できるかということがいま当面の問題でございまして、私どもも、できるだけ早くこういった長期の計画の線に戻ってもらわなければ困る。そのためには、成長率そのものもいま行き過ぎておりますから、これもある程度押えてもらわなければならぬ、これが公定歩合その他の政策になっておるわけでございます。また直接の物価対策というものについては、強力な手を打っていただかなければならぬ。そういうことによりまして、五年間あるいは十年という期間をとってみれば、この例から見ましても、こういった計画の想定した線に大体近づけていく、そういうことをしなければならぬ、またそれは必ずしも不可能というわけではない、十分成算はあり得る、こう思っておる次第でございます。
  151. 加瀬完

    ○加瀬完君 あなたの願望はわかりますよね。日本国民としても、インフレというものをそういう形で収束させなければならないということも、これは同感だ。しかし、いままでの過去が五・六%なり一・何%なりという数字なんですね。しかもいままでよりはるかに物価上昇率というものは高くなっている。そしてその経済基盤というものは一つも改まっておりませんね。御丁寧に、日本列島改造論というもので日本列島改造という大きな作業がこれから行なわれるということになれば、これは公共事業の拡大以上にインフレを助長する要因というものがふえてきますよね。  そういうこれからの動きについて、もう一つつけ加えるならば、いわゆる基幹産業というものが急に終息するという見通しはないでしょう、あるいは輸出産業というものが衰亡するという見通しはないでしょう。そうなって、どうして二・三だの四・九だのなどという数字が予想されるのですか。将来のことは、しかしあなたのおっしゃるように、なるべくそういう願望のとおりにしたいという希望はどなたも同じでありますから、あまり触れないとしても、いまのような経済政策を推していって、そういう結果が出ますか。  本年度の予算編成の前後から見たって、明らかに間違っているのでしょう。昨年十月あたりの時点からしても、ドルの影響というものが来るだろうと、企業が相当縮むのじゃないか、それを縮ませないためには、公共事業というものをふやそうじゃないかという考え方がそのままさらに公共事業の拡大となって四十八年度予算になった。ところが、やってみたら、物価上昇で、公共事業自体も、やろうとしたって、さっきの地方自治体のことで申し上げたように、動かない。また公共事業をとめなければ総需要がますます拡大してますますインフレ傾向が助長されるということになって、自分の計画したものを自分の手でやめなければならないのがいまの田中内閣の状態でしょう。  これは経済企画庁だけの責任とは言いませんがね、インフレをつくった内閣が、つくった要因は少しも改めないままに、これから長期計画で二・三%におさまります、四・九%におさまりますと言ったって、信用するわけにまいりません。いまの物価上昇率というのをとめなさいよ。とめるわけにいかぬでしょう。経済担当者は資格を失っているわけですよ。資格を失っている者がこの国鉄再建計画をつくったり、運賃改定をもくろんでいる。見通しのないもくろみですよ、これは。  しかし、これ以上申し上げますと議論になりますからやめまして、問題を移しますが、話は変わりますけれども、財政当局も国鉄当局も、政府のキャップである総理大臣の考え方というものと必ずしも私はマッチしていないと思う。国有鉄道は「国有鉄道法制定の根本にさかのぼって考えるべき」だと、こう総理はおっしゃった。根本にさかのぼってということであれば、国有鉄道法の制定の根本というものはどういうことであったかということをもう一回われわれはあらためて見直さなければならない。これは国民に安い料金で鉄道の便宜を与えましょうということが当時の内閣総理大臣西園寺公望の国会における国有鉄道法の説明の中に出ている。低廉に鉄道交通の便宜を与えようという考え方が大もとですよ。ここだけは私も賛成だ、田中さんの意見に。だから国がもっと金を出して国民の負担を軽くしようという考え方。  にもかかわらず、今度の再建計画なり運賃改定というのは田中さんのような考え方になっていませんよ。田中さんがそうおっしゃるならば、運賃改定の幅はもっと狭めて、政府はもっと金を出していいということになるわけだけれども、御説明、御提案はそうなっていないけれども、これは閣僚としての新谷大臣、これは衆議院でそう答えたんですからね、この点いかがでしょう。
  152. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) この田中総理の御発言のときに私もそばにおったわけですが、いろいろな御議論がありましたが、そのときに田中総理の言われたことは、先ほど来加瀬さんがお触れになったような問題、つまり現在の日本国有鉄道法ですね、これは公共企業体として生まれているわけなんですけれども、しかしその後、公共企業体ということで独立採算制ということでは単純にはもうまかない切れなくなってきた。そこで国有鉄道というような考え方も衆議院で議論があったわけです、もとのように国有にしたらどうだと、こういうような御議論があったわけです。そういう中で答えられたことばだと私は記憶しておるわけなんです。  結局、公共負担等が非常にふえていきまして、純粋の公共企業体、独立採算制を中心にした公共企業体というような形ではなかなか経営がむずかしくなってきた、それで公共的な問題については国がもっと積極的に援助をすべきである、こういうふうな意味で、その場合に答弁をされたと私は記憶しておるわけです。
  153. 加瀬完

    ○加瀬完君 田中答弁をもう一回申し上げておきます。  「これから、道路、鉄道、港湾、航空という総合的な交通体系の中で考えなければならないという新しい事態を踏まえて、」こう言っておりますが、これはそのとおり受け取ってよろしゅうございますか。次に「国鉄が物を運ばないと日本の経済そのものが立ち行かないという状態が」明確である。日本人が生活していくためには国鉄投資は絶対的なものであり、不可欠なものである、これは道路や他のものにかえることはできない、こう発言もいたしておりますが、これもお認めになりますね。そして政府が相当な責任を負うべきもの、こう結んでおります。そして国有鉄道は独立採算制だけでやれるものではない、こういう見解も明らかにしております。  運輸大臣も国鉄の当局も、この総理のお話を承ったことと思いますし、この構想で今度の再建計画なり運賃改定なりというものをお考えになったと考えてよろしゅうございますか。
  154. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 先ほど私がお答え申し上げた趣旨で、総理もお答えになっていると考えております。したがって、いまお述べになりましたような点につきましては、原則的に私もそう思いますし、今度の再建十カ年計画というものも大体そういう考え方で案をつくったことは間違いありません。  御承知のように、公共企業体といいましても、いつも例に引くんですが、電電公社もそうですね、しかし電電公社は国鉄と違って、公共負担というものはありますけれども、これは特別に国が助成をして経営を維持しているというような措置はとっておりません。しかし国鉄については、社会事情の変化、経済事情の変化等が非常にきびしく響いておりまして、このままの状態では国鉄が国有鉄道法にも書いてありますような使命の達成がむずかしいということが明らかになってきましたので、これはやっぱり国民経済、国民生活全体から見まして非常に憂慮すべき状態であるということから、電電公社とは全然違いますけれども、国有鉄道に対しましては、同じような公共企業体、法律上はそういうふうに位置づけされておるわけですが、実際の状態がそういうふうになって、影響が非常に国民生活にも国民経済にも大きなものがあるから、これは特に、総理が答弁されたといっていまお読みになりましたが、そういう趣旨でもってわれわれは今度の案を立案し、提案をしているというふうに御理解いただいてけっこうだと思います。
  155. 加瀬完

    ○加瀬完君 それから、この国鉄運賃というのはたびたび世論の矢面に立って甲論乙駁激しくもまれておるわけですね。したがいまして国鉄当局や運輸当局だけでなくて、経済企画庁なども、国鉄再建というものに対する各方面の意見というのは十分御承知だろうと思いますので、一、二ひとつ伺ってまいりたいと思います。  国鉄再建案について「私ならこうする」という特集がありました。その中で、東大の助教授の根岸隆さんは「赤字の多いこと、必ずしも値上げが許される根拠とはならない。」こういう意見を言っております。これに対して、これは国鉄じゃなくて経済企画庁どう考えますか。「赤字の多いこと、必ずしも値上げが許される根拠とはならない。」こう東大の根岸助教授は、要約すれば、発言しているわけですけれども、これはどうお考えですか。
  156. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 純粋に民間の企業でございますと、赤字の場合は直ちに値上げをしないと企業として成り立たなくなるということがございますから、比較的両方の問題が直ちに結びつくわけでございますけれども、国鉄のような公共企業体の場合には直ちに一〇〇%結びつくというふうには思いません。ただ、赤字の場合には、やはり値上げをせざるを得ないようなファクターがそれだけ強まっておるということは事実だろうと思います。
  157. 加瀬完

    ○加瀬完君 根岸さんは、国鉄赤字を税金で穴埋めすることは当然考えられていいのではないか、税金でカバーすべき面と利用者が負担すべき面をはっきりと区別すべきである。利用者負担は列車電車で直接お客を輸送する経費――人件費でありますとか動力費、車両の維持費及び減価償却費にとどむべきで、鉄道建設費、ホーム、駅舎費などは税金を充てても何ら支障のあることではないではないか。また累積赤字もどれだけが利用者負担分か税金でめんどうを見る分かを明確にして、その上で値上げの可否をきめるべきだと思うがと、こう言っています。それから通勤通学などの定期分は税負担が補助されて当然ではないか。ローカル赤字線も地方住民の生活に欠かせないものであるならば、これは住民サービスの点から残すべきである――今回は、これは満たされたわけであります。手小荷物の値上げ二九・五%というものも国民サービスの点からすれば考慮されるべきではないか。そのかわりグリーン車、新幹線、特急、寝台などの料金というものは、特殊な者が使うんだから、上げてもいいんじゃないか、こういうような御意見を発表しております。  これを運輸大臣はどうお考えになりますか。
  158. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 実は、たくさん各界の御意見を私は集めて持っております。これについて、いま一つ一つあなたのおっしゃったことを一項目ずつは……。
  159. 加瀬完

    ○加瀬完君 それはいいですよ、感想としてね。
  160. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) これはさっきも申し上げたように、公共企業体でありますけれども、国鉄の公共企業体としての内容といいますか、現状が非常にいまでは変わってきておる、法律の制定当時から考えまして変わってきておる。そのために何とかして赤字をなくするということはもちろんのことなんですけれども、赤字をなくして一体どうするんだということですが、目標は、国鉄はやはり日本の交通の大動脈で、もしこれがその機能を発揮しない場合を考えますと、これはたいへんな影響があるということでございますから、この赤字解消と同時に、終局的な目的というものは、国鉄が輸送機関の中核体として機能を十分発揮するようにしようということが主でございます。  そのためには、先ほど来いろいろ御議論いただきましたが、あらゆる方法を考えまして、その結果を十年間に実現しようというので今度の提案をしておるわけですが、その案を立てます場合に、部分的に申しますと、いまおっしゃったようないろいろな意見が出たと思います、私もそういった議論をいたしました。しかし全体といたしましては、先ほど包括的にお答えいたしましたが、そういう方針でこの十年間の計画案を立てまして、そうして公共的な負担でありますとかいろいろな問題、たとえば建設費は国が持ったらいいじゃないか、こういうようなことが端的に言われますけれども、これだけでは国鉄の赤字解消には役に立たない。やはり建設面もありますし経営面もありますし、それからなお建設をしていきまして、これはひとつぜひ御理解をいただきたいと思うのは、何のために投資していくんだと、これはやはりいま申し上げたように、国鉄の体質を変えまして、そうして一方から言うと国民に対して非常な輸送サービスの向上をするわけですね、と同時に、それは国鉄の財政再建というものに非常に大きな働きをするわけです。そういう機能が今日、私はなくなったとは言いませんけれども、非常に失われてきつつある、こういうことが心配なんです。  でございますから、建設投資をやって、そのこと自体は非常にお金のかかることであり、国鉄全体としては建設投資に政府の金をつぎ込まなかったからこんなことになったのだとこうおっしゃるのです、一がいに。そうではなくて、そういった部分もありますよ、そういった部分もありますけれども、いま申し上げたいのは、国鉄の機能を回復するのに、たとえば貨物部門なんかそうでしょう、どうしても早く建設投資をやって設備の充実をして、そうして国民の満足されるような、国民の要望に沿うような貨物輸送というものを早く実現することが国鉄の財政再建にもう欠くことのできないものだ、こういうふうな態識を持っておるわけでございます。   〔委員長退席、理事江藤智君着席〕  ですから、個々の問題について一つ一つお答えいたしませんけれども、そういった問題については、そういう御議論があるということは十分了承しておりまして、そういった問題と、この案をつくります場合にも、原則的には一応われわれとしては取り組んで、関係各省とも協議を進めたというふうに御理解をいただきたいと思います。
  161. 加瀬完

    ○加瀬完君 いま大臣からお話のありました点は、力石定一法大教授が「まず貨物でかせげ」という意見を出していますね、国鉄のやり方はまずいというのですよ。  こういう自動車時代になったときに、自動車と列車の貨物の分担区分というものは行政指導なり行政対策で十分できるはずだと。ですから、たとえば中長距離は鉄道、近距離は自動車ということにすれば、貨物が少なくなることはないんじゃないか。それで自動車資本に押されるかどうか知りませんが、自動車を野放しにしておいて、公害はまき散らすは、道路はこわすは、ところがさっぱりそういう負担はしないは、それで貨物は国鉄分を幾らでものみ込むは、こういう形にしておいて貨物の赤字だけを云々してもおかしいじゃないか。なぜ総合交通体系という形で行政指導をして、貨物で国鉄が思い切ってかせげるような対策を立てないのか、こういう指摘をしておりますね。特に貨物が赤字といわれているのですけれども、それでは赤字でなくなるようにする対策というものは、総合交通対策としては基本的には検討されたかもしれませんが、具体化しておりませんね。これはやはり一つの問題点じゃないでしょうか。
  162. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 問題点でございます。問題点でございますから、いまもちょっと一つの例として申し上げたわけですけれども、これは国鉄のほうから詳しく御説明をするといいかと思いますけれども、貨物部門が特に設備投資もいままでおくれてきたのですね。どうしても旅客のほうに設備投資が集中しまして、貨物のほうがおくれてきた。その一方で自動車による貨物輸送というのが非常に伸びてきたものですから、今度は二重に国鉄は十分なサービスができない、一方で自動車のほうはどんどん伸びてくるということで、貨物のほうの輸送シェアというものが非常に激減してきたということは事実でございます。  これは、しかし、本来そうあるべき姿じゃないと思うんです。これは回復しなきゃならない。これは国民に対する輸送サービスの面からいってもそうでございますし、国鉄の財政再建という面からいってもそうなんです。これを何とかしょうということで、いま総合交通体系の面から何もしてないじゃないかとはおっしゃらなかったけれども、何もないじゃないかというような意味のことをおっしゃいましたけれども、いままでもやってないことはないんです。ある程度やっておりますけれども、これを全国的に組織的にやってもらわないと、いま申し上げたような貨物輸送の面において国民の需要にこたえることができないし、国鉄の財政再建にもつながってこないということで、貨物につきまして特にシステムの改善をいたしまして、これからこの法律案を通していただいて、これを基礎にして貨物部門にする投資をうんとふやして、輸送需要に対応するような施策を練らしていこう、実行しよう、こういうのが一つのやはり今度の再建計画のねらいでございます。  これはよく言うのですが、西ドイツのレーバープランみたいに、税金をちょっと何とかして片方押えたらいいじゃないかと、こう簡単に私はいかないと思います。しかし総合交通体系の中で希望されておりますように、こういう貨物輸送の面を改善しようということは一つのやはり総合交通体系の中における大きな誘導策だと私は思っているんです。これを推進さしていただくと、財政再建にもつながってくるし、国民の期待にもこたえられる。  さらにこれに加えて、まあこれは国鉄総裁を前に置いて少し言い過ぎかもしれませんが、貨物輸送の面において、特に何といいますかサービス面、こまかいサービス面、これがどうも乏しいと、サービスをもっと充実してもらいたいということをわれわれは希望しているわけなんですが、国鉄もその気になって非常にこの点については力を入れようということでございますから、そういったものと相まちまして、設備の改善それからサービス面を充実すること、相まってここ何年間には、そういう努力を続けることによって、貨物部面におけるわれわれの期待する結果がだんだん出てくるようにできるというふうに私は確信しておるわけです。
  163. 加瀬完

    ○加瀬完君 それで、総理構想と、いま幾つかあげた各種の国鉄再建案というものは非常に符合していると思うんです。  たとえば根岸さんは国鉄赤字を税金で穴埋めという説を出していますね。総理は、国鉄は独立採算制だけでやれるものではない、こうおっしゃっている。それから総理の言う政府が相当の責任を負うということは、応分の財政負担をする。こういうことでありますから、今度の総理構想というものは、問題点で指摘された点をある程度私は受け入れていると受け取っていいと思うんです。  それから国鉄による貨物運搬の将来性ということは、力石さんの言う「貨物でかせげ」ということとも同じですわね。しかし再建計画には具体的にはこういうものは何も出てない。それから総合的交通体系というものを総理は主張しているわけでございますから、そういう点からいうならば、先ほど申し上げました中長距離は鉄道、近距離は自動車、こういう主張も当然政策として政府が取り入れていい問題ではないかと思う。それから、そうなればトラックを規制するとかマイカーの規制、こういうような問題がいろいろと出てくるわけでございますが、そういうものまでも含めて国鉄財政というものの裏づけを考えるという形には今度の再建計画はなっていない。  ですから、そういう点からいうと、総理構想そのものがずばりと実現をしているとは今度の再建計画ではなっていない、検討の余地があると思う。総理構想というものを生かす点からいっても、相当これは検討の余地があると思うのです。逆に言うならば、十分それぞれの識者の意見というものを受けて、それを消化した形で再建計画ができているということにはなっていないと思いますが、どうでしょう。
  164. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 国鉄のこの十カ年間の再建計画自身、いまお話しになったような方向で、これは総合交通体系の中で書かれているような部分を取り入れまして、計画をされていることは事実でございます。  いま私は貨物輸送の面を申し上げましたが、都市間の輸送の問題でございましても、大都市における通勤通学の輸送の確保の問題でも、国鉄だけじゃございません、これは。国鉄だけじゃないんですけれども、国鉄としてなし得ること、またなすべきことについては、この十カ年間の再建計画の中で十分に考慮をして盛り込んであるつもりでございます。  ただ、いまおっしゃったのをもう少し分析してみると、総合交通体系では単に鉄道だけじゃなしに、このほかには地下鉄もありますし、民鉄もありますし、自動車輸送もある、中には航空のことも考えなきゃならぬというようなことで、各交通機関によって特色がございますわね。そういう交通機関がお互いに特色を発揮して、そして書いてあるとおりに言いますと、望ましい分担関係をつくる、それにだんだん誘導するように持っていくのが交通政策じゃないか、こういうことを指摘しておるわけでございますね。その点について、国鉄の再建計画からいうと、たとえばいまおっしゃったトラックをどうするかとか、あるいは旅客輸送についてマイカーをどうするんだ、こういうことはここでは書けないわけですね。それはまた別個の全体の総合交通体系の中で考えていかなきゃならないということでございます。  私どもは決してそれに対して憶病ではないんです。そういった問題につきましては、これは運輸省だけでは処理できない問題ばかりでございます。積極的な考え方でそういった問題にいま現在取り組んでおります。この案を立案いたします当時から、これは関係各省交渉しながら進めなきゃいかぬという考え方で、交渉を続けておるわけでございます。おそらく四十九年度の計画ができますときには、こういった問題のあるものを具体的な政策として取り入れることができるんじゃないかということを、私は、運輸大臣としては、自分だけではできませんけれども関係各省との協力においてそういうことを期待してよろしいんじゃないかと思っておるわけでございます。
  165. 加瀬完

    ○加瀬完君 ですから、総合交通体系というものは大きな基盤にあって、その上に乗っかって国鉄の財政再建計画も位置づけられなければおかしいわけですよね。しかし総合交通体系というものがありませんから、やはりこれを築いて、その上に国鉄再建計画というものを乗せていただくように私はしていただきたいと思うのです。それにしても、単に運輸省なり国鉄当局だけではなくて、政府全体が国鉄再建なり総合交通体系というものに対する世論というものを十分受け取っているとは考えられませんよ。  そこで、私も質問をするについて幾つかずっと前のほうから拾ってみました。こういう意見が出ておりますので、時間の関係上ただ読み上げますので、ひとつ御参考になる点がありましたら、国民の声として聞いていただきたいと思います。順序不同で申し上げます。  黒字の旅客運賃を上げるのは不合理ではないか。物価インフレ抑制政策をどう配慮したのか。これらの点については国民の生活への配慮としての交通対策という点が欠けている。国鉄の計画にはビジョンがない、国鉄運賃はいつも政府主導型でよいのか、国鉄計画は大量の人員整理というものを前提に再建策を立てているが、当局は国鉄運営について人の問題をどう考えているのか。経済企画庁は物価を押えるためには国鉄運賃と米価を押えなくてはといままで主張してきたのに、今回は政府の方針は変わったのか。また政府部内は不統一なのか。運賃改定ではいつも利用者の減少をもたらしているが、これを防ぐには競争私鉄線の値上げを認めざるを得ないことになる。国鉄が上がる、私鉄が上がる、これではインフレ抑制政策にはならないではないか。国鉄当局は国鉄職員にどういう将来への希望と士気を高める対策を考慮しているのか。レジャー道路に巨額な投資を行ないながら、通勤輸送等の投資がサボタージュされている、政策の不公平ではないか。国鉄再建策に対して、政府は何も適切な手を打たないではないか、その責任についてはどういう考え方を持つのか。総理の発言のごとく収入がふえるなら、その一部で済む運賃値上げは了解が得られるはずだということで物価対策が立つのか。公立企業体、公共事業と言いながら、他の公共事業や政府関係事業と比べて財政措置が不公平という点についてはどう思うか。公営交通は市民の生活手段である、いわば警察や学校、消防と同種のものと考えるべきではないか。それならばもっと財政投資はふえてもいいではないか――こういうような幾つかの意見が出ております。  いずれにしても、いままでの政府の政策は企業優先か福祉優先かといえば、企業に重点が置かれたわけですけれども、これからは福祉優先というならば、こういう国民サービスの国鉄などには金を出すという考え方が基本的に是認をされたわけでありますから、その金の出し方というものを国民も期待するし、国鉄なり運輸省当局も金の出させ方にもっと責任を持ってもらうべきではないかと思うわけです。  そこで、いま国民の希望の一、二を申し上げたわけでございますが、問題はまた逆に返りますけれども、この再建案なり、あるいはこの運賃の改定の案の中には、国鉄の必要とする財政を政府にどう負担させるかということが何にもないわけですね。ことばを変えて言うならば、先ほどに逆戻りしますが、国鉄が幾ら望んでも財政当局がだめだと言えば国鉄には金がいかないということになるわけだ。しかし総理大臣は、独立採算制でやるべきものではないと、政府が当然の財政負担をすべきだとはっきりしているわけです。それならば負担のしかたというものを法律の中できちんときめないのはおかしいと、私はこう思うわけですよ。第四条では再建計画は国鉄がきめ、運輸大臣の承認を受ける、こうなっている。そして運輸大臣は大蔵大臣に協議するということになっている。大蔵大臣と運輸大臣の協議で、大蔵大臣を運輸大臣が押し切るというわけにはいかない、いままでの慣例上は。持っているのは大蔵大臣だから、出さないと言われればそれまでだ。経済企画庁長官は、この場合は、国鉄運賃を上げるか上げないか、政府から国鉄に対して幾ら金を出させるか出させないかというときには、これは協議の中には入らないのかどうか、まずこの点を伺います。
  166. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) ただいま法律をお読みでございましたが、まさにそのとおり、第四条におきまして、再建計画をつくりますときには、これは法定上大蔵大臣とは協議いたしますけれども、経済企画庁とは別に協議する定めはございません。
  167. 加瀬完

    ○加瀬完君 私は非常に不合理だと思うんですよ。運賃値上げというのは、これは物価対策上非常に重要な問題だ。そこで経済企画庁長官が入って、現状においては運賃値上げは物価対策上これは困りますよと言えば、運賃値上げはとまるということになる。しかし、これはもうきめたら承知をしろよというやり方だ、中に入らないんだから。国民の生活というものを考えて、その反応を企画庁長官から聞くということにはなりませんよね。運輸大臣と大蔵大臣が話をするわけです。ですから大蔵大臣がノーと言った場合でも、協議をするということにはなるけれども、あなた方の大臣が要求をすることが通る、こういう保証があるのか。
  168. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) 今回の財政再建促進特別措置法並びに運賃法の改正に先立ちまして、これを閣議決定するにつきまして、十カ年間の再建計画の基本につきましては、本年の二月二日に、その骨子につきまして、全閣僚の御協議をいただきまして、閣議了解という形で、この点につきましては内閣全部の思想を統一して国会に御提出した次第でございます。
  169. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 関連。  いままで加瀬委員の質問の中で、どうしても堂々めぐりの点になっているのは、赤字と、値上げと、それから独立採算制ですね。これは一つのセットみたいになっているわけですね。だから、この考え方としては、独立採算制であると、したがって赤字になったら応分の値上げはやむを得ない、こういうことなんですよ。そういう形になっていると、十カ年計画であろうと五カ年計画であろうと、これはいつまでたったって同じことの繰り返しになるのじゃないかという気がいたします。特にこの赤字の問題と独立採算の問題なんですけれどもね、新幹線の建設資金なんかの場合は、これはどう考えてみても独立採算制という制度のワクの中における国鉄にしょわせるには無理じゃないかという気がする。これはこれから建設をしようという東北新幹線、先般も私指摘いたしましたけれども、北海道の新幹線計画もちょっとテレビで発表になりましたね。東北新幹線は八戸通って青森へ行く、それから青函トンネルをくぐって北海道へ渡って、室蘭を通って札幌へ抜けると、こういったような計画。それから九州の新幹線の場合は、熊本のほうを通って鹿児島へ行くと、こんなような構想が発表になっておりました。しかし、こういう新幹線というのは、簡単にペイするとは思われません。特に青函トンネルなんかの場合ですね、あれだけ、五十キロもの長さでもって海の底にトンネルを掘るんですね、こういうものは簡単に元が取れるもんじゃないでしょう。その建設資金も膨大だし、それからその利子だってこれはばく大なものになるわけです。また四国に橋をかける、そこへ新幹線を通すというのだって、これはやはり青函トンネルと同じくらいにかかりは大きいと思うんですよ。これもまた普通のところと違って青函トンネルなんかの場合は、途中に停車場をつくるわけにいかないんですね、別荘地なんというものは期待できないわけです。そうすると、これは全然、このかかりというものは国の政策として見なきゃならぬということになる。  四国の橋の問題だって、どこにこさえるかわかりませんが、たとえば淡路島に鉄橋をかけるというようなことになると、これはまたたいへんなもんです。これらの費用というものは、どう考えてみても、これは政府が負担をしてやっていくということでないと絶対に採算が合うものじゃないというふうに思うのは常識ですよ。だからこれらの新幹線の建設計画あるいはまたトンネルだとか、長い橋だとか、こういうものは建設費を当然政府が見てもいいんじゃないかということになる。そうしないと、これは幾らそろばんをはじいたって元とは取れないということになる。そういう点を考えてみるならば、赤字だから値上げでカバーするという考え方は、この辺で断ち切っていいんじゃないかという気がする。  それともう一つ、合理化の問題があるんですけれども、合理化の問題にしても合理化の実態調査を実は委員会として少しやったほうがいいんじゃないかという気がする。これは先般私が川越線でもってちょっと実際に行って見たんですけれども、夜になると駅長一人になるんです。で、上り線下り線とで列車が行き違いになる。そうすると、タブレットの授受等があるから、その駅長が、一人しかいないんですから、列車扱いしなければならない。その間、おりたお客は改札口を通るけれども、改札口はだれもいないわけです。無人なわけです。その改札口にはボール箱を置いて、そこへかってに切符を入れていくわけです。三両ないし四両編成の気動車からおりるお客が百人やそこらいると思うんですけれども、一人しかいない車掌だから、車掌が切符を回収することはできない。全部無人の改札を通っていく。そうすると、たとえば乗り越しお客はおつりがなきゃ困るというような場合は、駅長が列車扱い済むまで待っちゃいられないから黙って通っていっちゃう。不正なんというのは幾らだってやりほうだいだというサンプルを私見たような気がする。私、全部見てきたんですから、着いてから発車するまでのところを。そうすると、正直な人はみんな切符を置いていく。しかし何も置いていかないで、パスも見せないですっと通る人が大部分ですよ。人員を整理するというのが至上命令かもしれないけれども、たった一人の駅長が何百人もの乗降客がいるところに配置されれば、これは入るべき金も入らない。乗る客のほうだって切符を買うことできないんだから、そのまま乗っちまう。あんなくらいならただにしてかってに乗せたほうがいいくらいだ。それから八高線なんかの場合も、この間八高線の幹部の話を聞きましたら、合理化をしたい、どことどこの駅では貨物を廃止します、どことどこの駅は手小荷物を廃止しますと。合理化の結果というものは利用者にとって得るところ何にもないですね。不便になるだけなんです。貨物を廃止しますといったら、トラックでもって、どっか遠くへ行かなきゃならぬということになる。手小荷物だって同じですよ。それから出改札も、場所によっては夕方五時までにします、暗くなってからあとはやらぬというのです。こうやって、人間を何十人か浮かして、そうして車掌の充当をするのだ、そういうことを言っておりました。  こういう合理化計画具体的な一つ一つの例を見ますと、利用者にとって不便になることばかりです。それから収入の面でもみすみす収入を逃がしてしまうというようなことが多いのです。こういうことをやって、しかも十月のダイヤ改正、この十月のダイヤ改正は、一時間あたりの列車を見ると、特急はふえるけれども、各駅や急行はふえない、こういうような形になっておりますね。こういう形でもって合理化を行なうということは、一体利用者にとって何をもたらすかということを考えてみたらいいのです。国鉄の収入も当然減る。それから利用者も不便になる。ちっともいいことはないじゃないですか。こういうことを現にやっているわけです。それは一体再建計画の趣旨に合っているのかどうか、当然考えるべきことじゃないでしょうか。そういうことを、まず私は加瀬委員の質問に関連してお聞きしたい。  それから今後の問題としては、合理化の実態調査というものをやった上でもう少し審議を深めるということがいいのじゃないか。あまりにも合理化の内容というものを知らな過ぎるのじゃないでしょうか。もう少しこの合理化の具体的な内容というものを委員会として掌握をする必要があると思うので、それもこの現地調査の中に入れた上で、さらに委員会の審議をやるというような方法が、むしろ委員会の内容を充実するためにもいいのじゃないかというふうに考えますので、以上の点についてちょっとお伺いしたい。
  170. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 初めの御意見でございますが、つまり独立採算制、赤字、それから運賃値上げ、それから政府の助成、こういったものの関連性でございますね。これがもう昔のようじゃないじゃないかというお話、これはことばの問題でございますが、先ほど来加瀬さんに申し上げておりますように、昔、日本国有鉄道法が公共企業体としてでき上がった当時とは、これはもう非常に状況が違う、政府の政策も変わってきておるということは、御指摘のとおりでございます。ただしかし、理屈を言いますと、公共料金でございますから、やはりこれは慎重に扱わなければならぬということは言うまでもないのです。そこで赤字、黒字という、これは計算のしかたにもよりましょうが、赤字になって、国鉄の財政状態が悪くて、国鉄がもうどうにもならないというような状態でないと、運賃改定というのは提案ができないと思うのです。やはりその前提としましては、国鉄の財政事情が非常に悪化して、利用者のほうにも相当に負担を願わないと再建はできないという状態になった場合に、初めて運賃改定の案が出せるというふうに考えております。その点は、内容は変わってまいりましたけれども、その基本的な方針としては変わりはないと思います。  そういうことでございますから、運賃改定にあたりましても、先ほど来いろいろ御議論をいただきましたが、そういう方向でわれわれとしましては日本の経済状態、全体の経済政策の中でこれはやるわけでございますから、国鉄の赤字そのままを運賃改定に持っていくというようなことは、これは考えられません。十分に、いろいろな状況を政策的に把握しながらこの改定率をきめていくということにならざるを得ないのでありまして、言いかえますと――言いかえますというよりも、あなたのお話を率直に推測しますと、そういう状態ならば、もっと政府が思い切って一般会計から金を出したらどうだ、こういうことになるわけでございますが、これも限られた財政状態でございますから、おのずから限度があると思います。国鉄も企業をやっておるのですから、できるだけ企業努力をして、そうして一般会計からの助成というものについては最小限度にとどめて、しかも国鉄が十分に機能を果たせるような仕組みを考えてもらわなければならぬと思う次第でございます。  それから人員の整理の問題でございますが、これはむしろ国鉄のほうから具体的にお聞きくださったほうがいいと思います。私のところに出ております報告では、こういう理由で、この部分で、この分野で、この職業分野でこういうふうに人員の整理はできます、それで、いまおっしゃったような、またさっき加瀬さんがおっしゃったような、サービスダウンにならないように持っていくことができるという報告が来ておるのでありまして、全体の計画としては、国鉄の出しておる計画を了承しておるわけでございますけれども、具体的な個々の問題についての人員の縮減の問題は、これは国鉄当局から具体的に説明を十分聞いていただいたほうがいいかと思います。
  171. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 先ほどの瀬谷先生の御質問でございますが、前半は大臣のおっしゃったとおりでございます。具体的な合理化の問題どの駅がどうということは、いまここで具体的に答弁申し上げるあれではございませんが、私どもといたしましても、百年間やってきたサービスがそのまま全部今後とも維持できるとは必ずしも思っておりません。やはりある程度省略するものは省略するということもやむを得ないことと同時に、やはり鉄道そのものの変わり方、たとえば貨物輸送にいたしましても、いまのように各駅でもって貨物輸送を扱うということはほんとうに不合理でございます。しかも速度がおそいというようなことで、やはり貨物輸送そのものを合理化しなければ全体の貨物がよくならないというふうな立場から近代化をしていく、その結果駅がなくなるということも出てくるわけでございます。しかし、あくまでも合理化のための合理化、人を捻出するための合理化ということよりも、やはり仕事自体が新しい時代に即応したような仕事のやり方をする。国鉄に限らず世の中全部が非常に新しい省力的、人を省いた仕事のやり方になっております。やはり国鉄といたしましても、それと同じようなことをやらざるを得ないということが現在の合理化の進め方でございまして、合理化するためにだけ、人を減らすためにだけ合理化するということよりも、やはり仕事そのものとマッチさして合理化さしていきたいというふうに思っておる次第でございます。
  172. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いまの問題ですけれども、私は具体的に例をあげて言ったんですけれどもね。たとえば合理化だ合理化だと言って人を減らす。駅長たった一人で列車扱いをして、切符を売って、切符を受け取ってということは至難のわざですよ、どう考えてみても。収入を上げなさいと、こう言うけれども列車上り線から来る、下り線から来る、すれ違いをするんです、単線ですから。うっちゃらかしていて衝突したら困るんだから、そうすればどうしてもタブレットの授受だとか列車扱いに駅長は専心しなければならない。そうすると、その間おりるお客は、正直な人は箱に入れていきますよ。正直でない人はと言っちゃ悪いけれども、入れていかない人だって一ぱいいますよ、私は見てたんだから。そうすると、やがてそれを繰り返していけば、ばかばかしくって正規に切符を買う気にならないというのが出てくるんじゃないかという気がしたんです。これは正直に、見ていようと見ていまいと切符は買って、置いていくものだという倫理的な気持ちがみんなにあれば別ですけれども、必ずしもそうじゃないと思うんですね。そうすると、そういう状態で、おそらく収入というものをもっと上げろと言うほうが無理じゃないでしょうかね、そういう状態で。切符だって買おうと思っても買えないんですから。だから、あそこまで徹底して人間を減らして、しかも収入を上げなさい、これは無理な話ですよ。人間を減らすということは収入のダウンも覚悟するということじゃなきゃいかぬ。そうまでして人を減らすということがはたしていいのかどうかという問題もあります。  それから貨物だけじゃなくて手小荷物まで全部やめていく。しかも、営業係数から見ると、八高線にしても川越線にしてもそんなにひどいものじゃないですよ、これは。それは、営業係数は二〇〇かそこらですから、これは赤字かもしれませんけれども、北海道あたりに行きやあ幹線並みですよ。それだってやりようによればもっと収入を上げることはできる。そういう状態にあるにもかかわらず、みすみす人間を節約したいために収入もダウンならざるを得ないようなことを政策としてとっているということを指摘をせざるを得ない。だから、その点について国鉄として反省をする必要はないのかどうかということを私聞きたかったのですね。そうまでして人を減らすということのほうがむしろ収入の増加をはかるよりも大事なことなのかどうかということですよ。これは考えるべきことじゃないでしょうか。ちょっと私は納得がいかなかった。だからそれと関連して、この合理化の実態というもの、利用者がはたしてどんな思いをしているかということを委員会としても、これは現地調査をやったほうがいい。それをしないで、やはり机の上の論議だけで、かくあるべきであるということだけでいったんではほんとうの審議にならぬという気がする。だからその点は理事会でもって、むしろ実態調査をやって、その実態調査に基づいた審議が行なえるような方法を考えてもいいんじゃないかということを私は提案したい。
  173. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) いまの瀬谷先生のお話は理事会のお話だと思いますから、その点私御答弁するあれではございません。全体としてやはり合理化ということ、それは日本全体のいろんな方面の仕事を見ましても、やはり省力化あるいは機械化、合理化等が行なわれておるわけでございまして、国鉄だけが非常に人を昔のように冗漫にかかえてやるということはできない、これはもうどなたも御納得いく点だと思います。ただその場合に、いま具体的におっしゃったような、たとえば駅長一人で云々と、これはたぶん私の推測では、運転取り扱い駅として運転取り扱い、行き違いのために人を置いてある。あとは無人駅と同じふうに扱っておるんだと私は思いますが、具体的な駅名を存じませんので、ちょっと正確にお答えできませんが、列車扱いしながらもっと収入を上げると、これはできないことはよくわかっております。したがって、おのおののそういう簡単な駅については、この駅はこういうことをするんだ、この駅はこういうことをするんだということを明確にきめて仕事をさしているはずでございまして、いまのようなことがございますれば、具体的な駅名を承って、間違った点があったら訂正したいというふうに思っております。
  174. 森中守義

    ○森中守義君 関連。  企画庁と加瀬質問のやりとりを聞いていましたけれども、どうも少し釈然としない。先ほど鉄監局長から、大蔵省と運輸省の協議はあったと、企画庁とは形の上では別段やる必要はないのだと、そういった趣旨がやりとりの中にあったようです。  そこで、確かに法律的にはそうであるかもわからぬけれども、企画庁の場合に、運賃の問題はこれを物価関係のらち外ということで全然タッチしなくていいものかどうなのか、運賃は物価の対象にすべきものであるかどうなのか、この辺の見解どうですか。――聞いていましたか。
  175. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 恐縮でございますが、ちょっと終わりのほうを聞き漏らしました。恐縮でございます。
  176. 森中守義

    ○森中守義君 よく聞いておきなさいよ。かなり正確に言ったつもりですよ。困るな。こういうことですよ。大蔵省と運輸省との間に法律的には協議ということが運賃にはある、こう鉄監局長の答弁の中にもある。しかし運賃というのが今日の物価関係で非常に重要だと私は判断をする。そこで物価を担当する企画庁において、何らこの問題に関与する必要はないという見解であるのか、あるいは表向きに運賃を物価問題として関与すべきという見解であるのか、これはどうですかと、こう聞いている。
  177. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) ただいま森中先生の御質問につきまして、――ちょっとその前に、加瀬先生の御質問の際に、再建計画、いわゆる財政再建促進特別措置法に基づく第四条の再建計画、これについては運輸大臣の承認ということが必要なわけでございますが、それは運輸大臣の承認を必要とするときには大蔵大臣に協議するというふうに法的になっておるわけでございます。経済企画庁についてはどうなっておるかと、こういうお尋ねのようでございましたので、私は、法的には大蔵大臣との協議はございますが、再建計画につきましては経済企画庁とは法的には協議ということはございませんと、こうお答え申し上げたわけでございまして……
  178. 森中守義

    ○森中守義君 そうすると、運賃については法律的には関係ないの。
  179. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) はい。運賃につきましては十カ年計画、これにおきまして先般御説明申し上げました、いわゆる再建計画につきまして、二月二日に閣議了解をいたしておるわけでございますが、その中の内容におきまして、運賃の問題についても、その内容の一つをなしておるわけでございます。このことにつきましては、経済企画庁長官も閣僚の一員とされまして、閣議了解に参加しておる次第でございます。
  180. 森中守義

    ○森中守義君 そうすると、包括的に閣議了解ということで、企画庁長官国務大臣として参加しているから了承したものだと、こういう意味ですね、わかった。そうだとすれば、その前に財政当局と運輸省が再建問題で協議するのと同じような意味合いで、事運賃については、企画庁に表向きに閣議了解以前に個有のものとして協議の必要はないのかと、こう聞いている。それは法律的にはない。
  181. 秋富公正

    政府委員秋富公正君) 法的にはございませんが、この問題については、昨年出しました廃案の以前から十分連絡いたしながらいたしてまいりましたし、今回の再建計画、運賃法改正につきましても、事実上今回の案につきましても十分協議してまいりましたし、また今回の法律提出につきましても、閣議決定という形で経済企画庁長官の参画をいただいておるわけでございます。
  182. 森中守義

    ○森中守義君 それは実務的なものとしては大体わかる。運輸省が所管をしている、たとえば航空運賃であろうと、あるいは自動車の運賃であろうと、実務的には企画庁といろいろ協議していることは、それは知っている。そのことは、もう一歩進めて、法律的に表向きに協議の必要はないのか、こういう意味合いですがね。実務的にはわかるけれども、しかし運賃など、非常に物価に重大な影響があるので、ただ法律に基づかないで、物価を担当する企画庁は経済調整をやっているわけですからね、そういう省庁との間に正式に協議をする必要はないのか。こういう意味を聞いているんだし、むしろ、これは企画庁のほうに、そういうものは事物価問題だから承認を与える、認承するというのはあたりまえだと、こういう考えであるかわかりませんが、もう少し正確にその辺の区切りをつけるために法律上のものとして取り扱う考えがあるのかないのか、こういうことを私は実は聞いているわけなんですがね。
  183. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) 現在、公共料金につきましては法律に基づかないんでございますけれども、閣議決定に基づいて物価対策閣僚協議会というものが設けられまして、これに公共料金の重要性に応じて閣僚協議会にかけるもの、それから閣僚協議会にはかけないけれども企画庁に事前協議にかけるとか、あるいは事務的に報告するものとか、ランクづけができておりまして、これは法律に基づかないんですけれども、実質的には十分企画庁の意見を取り入れて認可をいたしてもらっているわけでございます。  この国鉄運賃につきましては、これは法律に基づくものでございますから、一そう重要なものでございまして、法律には基づきませんけれども、十分事前に相談を受け、協議をいたしておるわけでございまして、現在の形で特に支障はないというふうに考えております。
  184. 森中守義

    ○森中守義君 これはせっかくの答弁だけれども、大体閣僚協というのは何だ。閣僚が、たとえば経済閣僚会議をつくるとか、任意に閣内でつくられたものであって、国会との関係、少なくとも法律事項の機関じゃないです。で、そういう任意な機関をもって承認をされたという、あるいはそこで取り扱っているとか、議論をしたという意味では国会では承服しがたい。それとも内閣法に基づいて、あるいは行政組織法に基づいてきちんと経済閣僚会議というものが正規な内閣の機関として国会が認知していれば別ですよ。そうでないものをつくっておいて、それでやりましたから、あるいは全閣僚の閣僚会議できめたということであれば別でしょうがね。あまり閣僚協なんというものは、残念ながら国会で権威あるものとしては受けとめたくない。そこで問題なのは、実務的に弊害がない、事前に各種公共料金等はそれぞれ企画庁に相談があって、それで諸般の経済事情あるいはその見通し等をもって合議をし、承認をしているとか、認知しているということのようですけれども、これだけじゃやっぱりまずいですよ。私は個人の意見としましては、やはり法律上運賃及びその他の料金、こういうものについては、きちんと正規に諮問機関等の議を経てくる場合もありましょうけれども、企画庁はこれに対する応諾を与え得るような、そういう実は物価に対する責任を持つという意味で、折り目をつけたほうがいいんじゃないか。そのために立法措置をとったらどうですか。こういう見解を持つんですが、この問題で、私の時間もありますんで、もう少しそのときにお尋ねしたいと思いますが、たまたまいまの問題は、少し加瀬質問及びこれに対する答弁の中に、私は聞き漏らしの点もあったようですが、疑問が多かったので、あえて関連質問で聞いたわけですが、どう思いますか。
  185. 小島英敏

    政府委員(小島英敏君) この運賃法に関しましては、これは法律でございますから、はっきりと閣議決定があり、その段階で企画庁長官も関与しているわけでございまして、しかも、その前に実質的な御相談を受け、たとえば先ほどの、昨年廃案になりましたものが本年そのまま御提出するというような場合には、やはり企画庁の意見を十分取り入れていただいて、前年並みに押えていただいたというような事情もございます。  あと、その他のものにつきましては、おっしゃるように、閣僚協議会というものは、法律に認められたものでもございません。閣議決定に基づく政府部内の約束としてできた組織でございますから、国会に対しては非公式のものでございますけれども、実質的にこれがございますために、各個別の法律で一つの所管官庁が単独で料金等を認可することになっておりますものにつきましても、企画庁に協議をし、閣僚協議会にかけるということで、実質上のチェックが十分できておると思いますので、特に現在の段階でこれをすべての法律に立法化するということは考えていないわけでございます。
  186. 森中守義

    ○森中守義君 その辺が実は問題なんですよ。加瀬質問の中にありましたように、卸売り物価は二・三、一般消費者物価は四・九だと、こういう出し方をしているわけですね。しかし、その辺のことをもう少し整理をして、きちんとしなければ、まさかそういうことはあるとは思いませんけれども、企画庁が好み好みに応じたり、何か気分的なもので、これは了承しもよかろうとか、これはひとつ意地でも突っぱってやれとか、そういうようなことが間々あるんじゃないですか。たまたま私どもの耳にも、どうもあっちの場合にはうまいことやってくれたけれども、おれのほうについてはいやだと言ったというような話が、これはやっぱりあるんですよ。ありますよ。それで加瀬さんが言われるように、一定の原則というものが物価問題になければ、これはどうしても物価対策になりませんよ。じゃあ一体、原則をつくるのは何なのかといえば、これはかなり詳細な指数を整理をして、物価の動向がこれこれだから、この範囲ならばよかろうとか、悪かろうとかということが法律事項としてきめられておく必要がある。それが穏当な調整機関としての私は仕事だと思う。立法措置をつくるのに何がためらいがありますか。まあこれ以上この問題はつきませんが、またいずれこの問題につきましては聞きましょう。けれども、それはどう少し感覚を改めてもらわなければ、企画庁の役人の一存でよかろうとか悪かろうとかきめられちゃ迷惑する。法律に準拠してやりなさいよ、だめですよ、そういうことは。これだけひとつこの際意見として私は申し上げておきたい。
  187. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 議事進行について。  企画庁長官の出席を求めた上で、加瀬質問についても明らかにしてもらったほうがいいのじゃないか、こういう気がいたします。出られないものはしようがないけれども、やっぱりこの問題は大蔵大臣なり経済企画庁長官の本物が出てきて、そして答えてもらう必要があるということが一つ、そのことを注文をしたいと思います。それから現地調査等のこともありますので、この辺で本日の審議は考えてもらいたいと思います。
  188. 江藤智

    ○理事(江藤智君) それは理事会でまた後刻御相談いたします。それからいまの御要望も考えますが、もう少し質問を……。
  189. 加瀬完

    ○加瀬完君 じゃ、あとの答弁の希望だけ申し上げておきます、はっきりしないから。
  190. 江藤智

    ○理事(江藤智君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  191. 江藤智

    ○理事(江藤智君) 速記を起こして。
  192. 加瀬完

    ○加瀬完君 いま瀬谷さん、森中さん、いろいろ御質問してくださいましたのは、この第四条の再建計画というものがございますね。再建計画は国鉄がきめ、運輸大臣の承認を受けるということになっています。そして運輸大臣は大蔵大臣と協議をすることになっていますけれども、経済企画庁長官とは協議をするということの必要はないということになっていますね。   〔理事江藤智君退席、委員長着席〕 そうすると、物価対策というものを抜きにして再建計画というものがきめられるのじゃないか。この再建計画の中には運賃だってあるわけですから。そうしますと、金がほしいのは運輸省なり国鉄、金を出したくないのは大蔵省。そうすると、大蔵省の出し惜しみの分だけはもう一回運賃に転嫁されてくるというおそれがある。すると総理大臣の言う、財政負担は応分にしていくと、独立採算制というものだけで国鉄はやっていけないと、こういう御趣旨も、この第四条に限っては生きてこないことになる。それじゃ、そのほかに大蔵大臣なり運輸大臣なりに法律的に財政支出を制約させるような機関があるかというと、何にもない。また繰り返すようですけれども、森中委員の指摘のように、どういう場合どれだけ出すかという、こまかいきまりも何にもない。これでは、一応筋道は立ったけれども、国鉄が満足するような財政負担を政府がするかどうかというのは非常に疑問になる。  したがって私は、この再建計画に国民の世論を反映させるために財政支出なり運賃の改定なりについて、国鉄財政再建審議会といった、法律に基づく機関をつくって、これの意見というものが政府が聞き入れなければならないというように制定をすれば、法律上――この再建法の中でもとこでもいい、これは幾ら政府が負担をすべきだ、この際は運賃は上げるべきでない、あるいはこの際は運賃は何%上げるべきだという客観的な世論を反映しての、国民世論を反映しての客観的な意見というものを出せる。出したならばそれについて政府が責任をもって財政支出に応ずるというたてまえをとれば、ほんとうの意味で、私は国鉄というものの財政再建ははかどってくると思う。運輸審議会があるじゃないかといいますけれども、御承知のとおり、運輸審議会ではこの機能を十二分に発揮するというわけにはまいりません。ですから、そういう機関を運輸審議会のように運輸省の機関としてではなく、政府の機関としてつくるべきだと思いますが、こういう機関をつくって、公正、公平な立場で国鉄財政に対する方針というものを出すということが、今回の再建対策のうちでは一番必要なことだと思いますが、こういうものを政府としておつくりになるというお考えがあるかどうか。これは政府としてということですから、運輸大臣単独のきょうの御回答ではなくて、経済企画庁も、大蔵省も、それぞれの責任者と協議をして、この次にお答えをいただきたい。そのお答えによって、私はもう少しこの問題を詰めて質問をしたいと思う。くどいようですけれども、このままではどんぶり勘定ですよ。余ったらくれてやろうと、足りないところはもう運賃上げろということの繰り返しでは、いつまでたってもこれは国鉄の再建はできませんので、単に運賃を上げてはいけないというようなけちな考えで申し上げているわけじゃない。ほんとうの国鉄の再建策というものを考えるならば、政府が財政負担をすべき条件はこうと、運賃によってまかなうべき利用者負担はこうということを、だれかが客観的に判定をして政府に要望する、政府はそれに対して財政支出の責任を負うと、こういう仕組みができなければどうにもならないと思いますので、せひこれは実現をさしていただきたいと思いますので、新谷運輸大臣に、政府としてのそういう御態度を、この際おまとめいただきたいと思いますので、その点を御要望を申し上げまして、質問を次に残したいと思います。委員長よろしくお取り計らいをいただきたいと思います。
  193. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 加瀬さん、この問題はあとにして、ほかの質問に移っていただけませんか……。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  194. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 速記を起こして。  運輸大臣、ただいまの質問に対する答弁をお願いします。
  195. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 関係閣僚との間で意見を調整してこいと、こういう御注文ですから、調整の済まないままで私の意見を申し上げておきたいと思いますが……。
  196. 加瀬完

    ○加瀬完君 それは聞かないですよ、そういうことは。
  197. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 速記をちょっととめて。   〔速記中止〕
  198. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 速記を起こしてください。
  199. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 加瀬委員の御質問の要点を、ちょっとここでわからないところがあるんでお聞きいたしますが、国鉄の財政再建審議会のようなものを政府につくったらどうだと、そこでは運賃を含めて財政再建に関するいろいろな問題、いろいろな重要な問題を審議して、結果は政府が拘束されるようにしたらどうだと、こういうような御発言があったと思います。そうなると、これは諮問機関ではなくて決議機関だということになるのですか。
  200. 加瀬完

    ○加瀬完君 行政機関。
  201. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) 決議機関。
  202. 加瀬完

    ○加瀬完君 ええ。
  203. 新谷寅三郎

    国務大臣新谷寅三郎君) そうして、それはもし、運賃その他再建計画についてはいま法律がございますね。その法律の関係において国会は拘束されるんですか、されないんですか。その点はもう一つはっきりおっしゃらなかったけれども、こういった機関については、一体諮問機関か決議機関か、これはもう根本的に問題になるところだと思います。  それから国会との関係はどうするかということも、これは重要な問題だと思います。それについて加瀬委員のお尋ねになった趣旨、これは関係各大臣と話し合ってこいということですから話し合ってきます。私は私の意見を持っておりますけれども、きょうは言わぬほうがいいとおっしゃるから言いませんけれども、いまの点を関係各大臣に話すについて明らかにしておいていただきたいと思います。
  204. 加瀬完

    ○加瀬完君 これは国会は別に拘束しませんよ。政府を拘束すると、政府はその答申に基づいて案を出して、出された案は国会で当然審議をすると、こういうたてまえでありますけれども、私がこういう審議会なり委員会なりというものを必要とする理由は、現状では再建計画でどれだけの財政負担というものを、運輸省要求をしたところで、大蔵省が反対をする限りは、運輸省要求をそのまま受け入れられるという形にはなりません。そこで政府に、総理府なら総理府にそういう委員会なり審議会なりを置いて、そこで注文をつけられたものは政府は聞かなければならないということになれば、これは運輸省と大蔵省という関係で、取ったり取られたりという形がなくて、公平な合理的な判断に基づいて財政再建の、もろもろの条件というものが満たされてくる可能性のほうが、はるかに現状よりは強いではないかと、こう考えるからであります。
  205. 長田裕二

    委員長長田裕二君) ほかに御発言もなければ、本日の質疑はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十八分散会      ―――――・―――――