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1973-06-26 第71回国会 参議院 運輸委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月二十六日(火曜日)    午前十時九分開会     —————————————    委員異動  六月二十二日     辞任         補欠選任      加瀬  完君     瀬谷 英行君  六月二十六日     辞任         補欠選任      岩本 政一君     西村 尚治君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         長田 裕二君     理 事                 江藤  智君                 木村 睦男君                 山崎 竜男君                 小柳  勇君     委 員                 岡本  悟君                 黒住 忠行君                 菅野 儀作君                 橘  直治君                 西村 尚治君                 松平 勇雄君                 渡辺一太郎君                 伊部  真君                 杉山善太郎君                 瀬谷 英行君                 森中 守義君                 阿部 憲一君                 三木 忠雄君                 田渕 哲也君                 山田  勇君    国務大臣        運 輸 大 臣  新谷寅三郎君    政府委員        内閣審議官    栗屋 敏信君        経済企画庁総合        計画局長     宮崎  仁君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        運輸政務次官   佐藤 文生君        運輸大臣官房長  薗村 泰彦君        運輸大臣官房審        議官       原田昇左右君        運輸省海運局長  佐原  亨君        運輸省港湾局長  岡部  保君        運輸省自動車局        長        小林 正興君        海上保安庁長官  野村 一彦君    事務局側        常任委員会専門        員        池部 幸雄君    説明員        水産庁漁港部長  矢野 照重君        通商産業省通商        局市場第三課長  山田 勝久君        通商産業省通商        局市場第四課長  内田 禎夫君        通商産業省鉱山        石炭局石油業務        課長       根岸 正男君        労働省労働基準        局賃金福祉部長  廣政 順一君    参考人        社団法人東京乗        用旅客自動車協        会会長      川鍋 秋蔵君        全国自動車交通        労働組合連合会        書記長      金良 清一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○運輸事情等に関する調査  (タクシー事業に関する件) ○港湾法等の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 長田裕二

    委員長長田裕二君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  加瀬完君が委員辞任され、その補欠として瀬谷英行君が選任されました。     —————————————
  3. 長田裕二

    委員長長田裕二君) まず、参考人出席要求についておはかりいたします。  運輸事情等に関する調査のうち、タクシー事業に関する件について、本日、参考人として全国自動車交通労働組合連合会書記長金良清一君。東京乗用旅客自動車協会会長川鍋秋蔵君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 長田裕二

    委員長長田裕二君) それでは、運輸事情等に関する調査を議題といたします。  金良参考人川鍋参考人には御多忙のところ御出席いただきまして、ありがとうございました。  ちょっと速記とめて。   〔速記中止
  6. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 速記を起こして。  伊部君。
  7. 伊部真

    伊部真君 参考人として御出席をいただきましたお二人に対して、敬意を表します。ありがとうございました。  委員会のほうの段取りが非常にわからないために、たいへん御迷惑をかけまして、緊急においでをいただきまして、まことに申しわけないと思うのであります。  この交通行政については、諸般の環境悪化あるいは労働力の不足問題というふうな問題から、かなり大きな議論があるわけでありますが、特に一昨年の運輸政策審議会答申以来、七月の総合部会答申、八月の大都市交通におけるバスタクシー答申というものがあって以来、かなり内容に大きな変化を来たしておるというふうに思うわけです。そこで私は、形の上ではタクシーに対する国民世論というものは、かつてほどではありませんけれども、しかし内容的に見ると、非常に労使関係職場の実情も、私は荒廃をしている。これはいろんな原因があるんでありましょうけれども、このような状態が進みますと、車の需給関係というものが少しくずれてくると、かつての乗車拒否問題だとか、あるいは客選びの方向というものが非常に激しいなってくるのではないかという心配をいたしております。  そういう意味で、今日潜在的にあります東京都内における、あるいは大都市——名古屋大阪どもそうでありますが、オール歩合採用傾向、それからリース、この形はいろいろな形がありますが、私は、皆さんにおわかり願うのに便利なために、一応資料として、下関タクシー状態をここにお渡しをいたしました。これは一つの形でありますが、いろいろな形でリース問題が出てきております。あるいは名古屋大阪業界において——業界から出発したのか陸運局のほうから出発したのか、私もよくわかりませんけれども、しかし、いずれにしても、名古屋大阪議論があります企業内の個人タクシーの問題、特に名古屋の場合には、四月十日実施でしたか、を予定しておったけれども、いろいろな問題があっていま一応凍結しているという、こういう問題を考えますと、重要なタクシーの将来に影響を与えるような諸事項だと私たち判断をするわけです。加えて、最近の東京なんかで顕著にあらわれておりますのは、やはり通勤のラッシュに非常に影響されています相乗りの問題です。この問題についても、いろいろ議論があるところでありますが、これらに対する業界なり、あるいは労働者側なり、あるいは行政面なりという面で、どのような見解を持っておられるのかということについて、ひとつお伺いしたい、こういうことでお願いをしたわけであります。できましたならば、そこらに重点をしぼってお話をいただきたい。きょうは、実は二時間、午前中ということでありまして、あと法案審議の問題もありますので、時間の制限がございますので、参考人皆さんにまことに申しわけないんでありますけれども、この問題が非常に大きいのに二時間ぐらいでは、私のほうの質問も終わるということはとうてい不可能でございます。したがいまして、きょうと後ほどまた機会を持ちたいと思っております。そういう点をお考えをいただいて、きょう全部言ってしまわなけりゃならぬということでもございません。お含みの上で、ひとつ御意見を聞かしていただきたいと思います。
  8. 長田裕二

    委員長長田裕二君) ただいまの伊部委員質問に対しまして、両参考人から、それぞれ十分程度御意見を述べていただきたいと思います。川鍋参考人からお願いいたします。
  9. 川鍋秋蔵

    参考人川鍋秋蔵君) 川鍋でございます。ただいま伊部先生からの御質問は、大体、運輸省運輸政策審議会に出ておるリース式、いわゆる第二個人タクシーの問題、それからオール歩合の問題でありますが、私どもは、この審議会に出ておるリース式については、東京マンモス都市また地価の非常に高いところでの車庫貸し業のようなものに対しては、東京は大体において反対をしております。しかし全国的に見まして、地方地方事情もありますので、全乗連会長としてはこれを全面的に反対とはいえないわけであります。ただ、東京会長として言うならば、事情事情で、これに対しては反対だと、こういうふうに考えております。  企業内個人タクシーというものは、全くこれは、第一個人タクシー、第二個人タクシーと略称しておりますが、ほとんどのタクシー個人タクシーに移行しようという魂胆のもとの運輸審議会答申だろうと思うんです。この答申につきましても、私ははなはだ不満に思っておることは、われわれに一言の意見も聞かずにただあれは出してしまったというものであったわけであります。したがいまして、これは二重になりますが、地方事情事情によってやろうと思うところは、これはしかたないとして、東京だけはこれは反対しておるわけであります。  なぜ反対するかというと、全部個人タクシーにして東京タクシーが正常に戻るかというようなことを研究されたかどうかと。私はこの道に入って五十四年になります。五十四年間において、最初はあの関東の大震災のときに、陸上交通が全滅したときに、このときは警視庁の管轄であるが、十五分間で個人タクシーを許したものであります。ほとんどそのときに、全滅した陸上をになったものはタクシーであったと思うのでありますが、それから四、五年たって省線を復活し、バスが復活したときには、今度はタクシーというものにほとんど乗り手がなくなったわけであります。そして東京の、世界で言えば日本の玄関にぼろぼろのタクシーが走っておって、警視庁はこれを見かねて、世間からは雲助タクシーといわれておったのでありますが、これを三十台に統制、法人化せよという言明が下りましたので、われわれはそのようにまた法人化をしてきたわけであります。その後もいろいろなことにあって、今度は終戦後のどさくさのときに、民主主義の自由だからというので、これまた個人乱許乱設したわけであります。そしてまた個人はだめだと、三十台にこれを統制せよとこうなって、また今度は個人を許可せよと、どうもわれわれハイヤー、タクシー交通業に対して一貫性がない。そして、深くその病原をただして、原因はどこにあるかということをただして、これの行政を行なってもらいたいということが私の願いであるわけです。何でもかんでも、いわゆる経営者タクシーが悪いと。ちょうど二、三年前のときは乗車拒否はあり、また不当料金は取ると、全く都民から、あるいはマスコミから悪の権化のようにいわれて、その責任経営者運転手ばかりだと、こういうことになってきたのであります。そしてまた、ここで個人タクシーというものが生まれてきたわけであります。  これによって、私は、今日まで五十何年間に自動車行政が少しも進歩も前進もない、また実りもなかったことを考えるわけであります。こういうふうになったということは、何が原因でなったかということを深く研究した上で、行政はやってもらいたいと、強く要望したいのであります。  私からいわせると、この起こった原因というものは、十何年という長く据え置きにされた。それから、ちょっと忘れましたが、約四、五年たって一回上がったわけであります。それからまた四、五年たってあって、今度は昨年と、その一年前に上がったときは、これは何で誤算をしたか、上がらないときは赤字で困るから上げてくれと言うたところが、上がったとたんに赤字がふえたという奇妙なことが起きたわけであります。私はこれに対して誤算だと言っておるが、誤算をしたわけです。  そして私は、ちょうど十三年間全乗連と東京協会をやっておったのでありますが、そのときはもう隠居して、私のあとを引き受けた二人の、一年半ずつ二人で、これはまた会長職をやめて、再び私が出てこの料金適正化をした。このとき、いままではほとんどわれわれ業界に何の相談もなく秘密にされたものが、今度は私に相談をしてほしい、私の意見を聞いてほしいとお願いしたところ、私の意見をいれてくれ、去年の二月五日だと思いました、改定は。一年で上がったのでありますが、私の意見をいれましたのが、これが適正であったということが、現在、昼間は正常化されておる。こういうふうにいろいろな問題が起きるのは、あまりにも低料金で長く据え置いたという原因一つ。  もう一つ、このいろいろな問題が起きるのは、やはり適正な、車両が少なかったり多かったりするときに起きるんだから、個人タクシーもやはり適正な量にして、私どもは押えてくれと、もとの原点に返った、四十歳に返してくれと、こう私はいまお話をしておるわけであります。  タクシーというものは、適正な運賃であって、二年間ぐらいで上げて、適正な要するに車両があれば、今後は絶対に、三年前のあの悪の権化のようなことは、都民から絶対に私は起こらないと、この席で断言できると思う。  ところが、これまた個人タクシーは、いまだにわれわれが労働不足不足で、三千台から五千台駐車しておるにもかかわらず、二百台あるいは三百台と毎月のように許可しておるこの措置については、何を考えて陸運局がおるのか、私には判断をしかねる、また常識上も考えられない。われわれのほうはだんだんと労働不足でもって、そうしてまた個人タクシーが、われわれのようにシフト制といって昼夜交代マンモス都市交通を守っておるにもかかわらず、いわゆる個人タクシーは自由な営業をしておるわけであります。  こういうことになっておるということと。もう一つは、われわれ法人タクシーのいろいろな条件については非常に酷なんです。税制面においても、また負担金面においても非常な責任と義務を負わされておる。個人タクシーには何らこれもなく野放しにさしておくというこの差というものは非常に多い。自賠法においても、われわれ法人は十二万三千円という高額を取られ、個人タクシーは二万五千円、こういうふうなことで、この東京都内交通を守れと言うておるから、私は平等にしなさいと、あらゆる条件を、あらゆる税金、あらゆるものを対等にして、そうして個人法人共存共栄両方が発展して、これからのタクシーというものが市民から悪評が起こらないように、また諸先生方に御心配をかけないようにすることは、最後に申し上げますが、適正料金を二カ年ごとに変えることと、それから乱許乱設をしないこと。個人はことにそうです。乱許乱設をしない適正な台数にしておくことによって、私はいままでの五十年間の堂々めぐりの行政というものは、はなはだ間違ったことである。われわれも一緒になって、あるいは先生方にもいろいろ審議をしていただいて、適正な運賃、適正な車両乱許乱設両方ともやめてもらいたいというのが、私の言い分であり、そして個人も、せっかくできた個人であるから、共存共栄で正しい競争をさせて、平等な地位に立った正しい競争をさしていただくように、私も先頭に立って大臣はじめ、お願いしておる次第である。  以上です。
  10. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 次に、金良参考人にお願いいたします。
  11. 金良清一

    参考人金良清一君) 私は、ハイタクに働く労働者を代表して、伊部先生から出されました質問に、あるいはまた意見に、私たち立場から若干申し上げたいと思います。  まず、第一番目に申し上げておきたいことは、現在ハイタクの産業というものは非常に不安定性のある状態に置かれていることは、すでに御存じだと思います。この中で、とりわけ労働者賃金労働条件の低下ということがモータリゼーションの中から引き起こされて、まさに生活の困難な状態にいま置かれているということを、率直に申し上げておきたいと思います。  なぜ、こういったような状態が起こったかということを申し上げますというと、先ほどのお話にもありましたように、運輸政策審議会答申が出て以来、企業側法律の改正のないままに、たとえばリース制職場の中に導入するとか、あるいはまた労働省から出されている二・九通達違反をして、一銭でも営収をあげようとする労務政策というものが、労働者をますます労働強化に追い込み、ましてや安全輸送をになって働かなきゃならないという社会的、政治的使命を持っている私たち状態から見るならば、今日の労務政策なり、あるいはまた当局のいわゆる労働行政運輸行政には、かなり問題があるというふうに私たちは考えております。  そういう意味から、現状を打開していくという上で、審議会答申というものは、決して安全輸送並びに利用者の便を改善をしていくという道にはつながらないんじゃないか、このように考えております。しいて言うならば、今日の行政政策というものが、ただいまも申し上げましたように、企業不安定性や、そこから起こってきている労働者のみじめな状態というものをますます増大さしているというふうに考えます。  このことは、さらに進んで申し上げますならば、言うならば交通事故の問題であります。これは御承知のとおり、三十秒で一人の人がけがしますし、三十分に一人の人が死んでいるというのが、今日のわが国の交通事故からくる公害あるいはわれわれが命を大切にしなきゃならないという使命の上から見ても、非常に重大な問題だというふうに私たちは考えております。  そういう意味で、今日のハイタク問題を利用者のために、また同時に国民の命と生活を守る立場から、私たちがぜひ主張したいとするならば、やはり運輸政策審議会答申というものを、この際再検討すべきである。その上でハイタク事業改善なり、そこで働いている労働者賃金労働条件というものを改善するための抜本的な対策をとるべきじゃないだろうか、このように考えております。  まず、質問の第一点のオール歩合リースの問題でありますけれども、一昨昨年答申案が出てから、労働省調査においても、たとえば二・九通達違反あるいはまた二・九通達違反にからむ道路運送法上の疑義、こういったような企業というものが百社以上に調査の結果のぼっております。そして私たち調査でも、全国で百十九社という会社がオール歩合またはハンドル貸し的なものが現在実施されているのが実態であります。  そういう中で、私たちは、ここに資料を持ってまいりましたけれども、たとえば北海道で言うならば東日本交通、この東日本交通の場合には、形の上では二・九通達なり、あるいは労働省通達行政で指摘されているような問題を改善するために、たとえば基本給を名目的につくるとか、あるいは歩合を一率にするとかということが書いてありますけれども、実際には形の上のものだけでありまして、月に、われわれが想像もつかないような水揚げ責任額を押しつけて、それに達しなければ賃金が保障されない。こういう状態にあります。また同時に、本来道路運送法であらゆる規制があるわけでありますけれども、そういうものも一切無視されて、いわゆるハンドルを握る労働者水揚げさえ会社側の言う責任額を達成するならば、その管理上の問題については、自由放任に置かれている。こういう実態が実はあるわけであります。これを北海道一つ企業の例として申し上げたいと思います。  それから、新潟新潟日の出タクシーというのがありますけれども、ここも同じような経営をやはり現在やっておりますし、また同時に関連法規というものを、法律というものをほとんどたなに上げられて、運転者が自由に営収をあげる、あるいはまた管理をしていく。こういったような状態があるということを申し上げておきたいと思います。  それから、静岡では静岡タクシー、これも同様です。ここの場合は、水揚げが一定の責任額に達しない場合には、次の月に水揚げ責任額に達しなければいけない。具体的に言うならば、月に十五万円を水揚げ責任額とするならば、その人はその月に十二万円しかあがらないという場合に、残りの三万円というものはそのあくる月に働かなければいけない。水揚げを達成しなければいけない。そうしますというと、十五万円プラス三万円ですから十八万円ということになります。で、そこでは公休も取れない場合も起こってくる。有給休暇も取れない場合も起こってくる。こういったような状態が実は日常茶飯事のようにやられているというのが静岡タクシー実態であります。  もう一つは、京都でありますけれどもミナミタクシー、もう一つ桂タクシー、この二つ会社はもう数年前からリース的ないわゆる営業をやってきている。これについては労働省運輸省に、私たちはいわゆるハイタク企業民主化ということで、再三申し上げてきておりますけれども、いまだに改善がされてないというのが実態であります。  特に、この道路運送法上の問題でいいますならば、たとえばタコグラフだとかあるいはチャート紙だとか、こういうものは、本来企業側管理しなければなりませんけれども、実際には運転手自主管理をさせてきている。ですから、どんなにスピード違反で走ろうとも、あるいはまたどんな営業形態で仕事をしようとも、これについては全然企業側には責任がないし、ほとんど運転手に押しつけてきている。このことから見ても、いわゆるつまり水揚げさえ持ってくれば、経営のやり方というものは法律を無視してもかまわないのだということを、実際にもう数年間これは続いてやられてきているというのが実態であります。  もう一つ重要なことは、最近この会社では、本来は事業所というものが法律によって規定されているわけです。ところが、自分が家に持って帰る。持って帰っただけならいいんですけれども、相手との交代はどこか路上で交代する。こういうばかげたような実際の営業をやらしているというのが実態であります。  それからまた、山口県の防府タクシー下関タクシー、ここでは会社側がいわゆる還元方式運転手が認めなければ、いわゆる企業免許返上するということで、現在免許返上の手続をしております。これは労働省運輸省指導のもとで、いまのところ免許返上の受付はしておりませんけれども、しかし実際には、会社側がこの二つ企業労働者に対してロックアウトを加えております。そして現在働かれないような状態に置いております。また同時に、賃金もほとんど払われてない、こういう実態にいま下関タクシー防府タクシーの場合は置かれているということであります。  もう一つ、大分の場合、三隈タクシー、この三隈タクシーも、同じように、会社側がいわゆるオール歩合制を押しつけてきたので、これに反対して労働者がストライキをやったということを理由にして、運輸省に対して免許返上をやってしまったと、しかしこれは、先ほども言いましたように、運輸省労働省指導のもとで、いまのところ免許返上を認めておりませんけれども、逆に今度は、ここの経営者が新しく、はとタクシーという名のもとで免許申請をしている。現実にある、認可を受けている会社免許返上をして、形を変えて同一人物が、はとタクシーという株式会社の名のもとでいわゆる免許申請をしている。こういうばかげたような状態というものがハイタク企業の中には多くあるということを、私たちは指摘をしなきゃいけないんじゃないか、このように考えております。  そこで私たちは、まさに交通安全という立場と、いわゆる利用者の命を守るという立場から、今日の道路運送法を改悪をするんではなくして、むしろこれについては強化をしていく、その中で、法人に対し、あるいは個人に対しても法律の適用、規制強化していく、このこと以外にハイタク企業改善というものはあり得ないんじゃないか。そこで働く労働者賃金労働条件改善し、真に人の命を大切にしていくという、働く場というものを実現することは困難ではないだろうか、このように考えております。  そういう意味で、私たちはいま申し上げました幾つかの例というものは、百十九社調べた中で、特徴的な例として申し上げたんですけれども、そういう意味から、私たちはこのリースやオール歩合制度に対しては全面的に反対であるということを申し上げて、どうかひとつ、先生方のほうでも、この問題については真剣に取り上げられて、抜本的な改善対策というものを、お願いをしておきたいというふうに考えております。  最後に、現在ハイタク企業が苦しいという実態があります。これは先ほど全乗連の川鍋会長も触れられましたけれども、自賠の大幅な引き上げ、さらには物品税の引き上げ、あるいはLPG、そういうものの課税の引き上げなどで、経営が困難だということは率直にいえると思います。そういう意味で、私たち労働者法律改善をする中で、労働条件賃金改善を促進させるとともに、企業に対しては、抜本的な助成政策というものをやはり打ち出していただかなきゃいけないんじゃないか、このように考えております。  そういう意味で、私たちは若干の現状を申し上げ、そしてまた質問にありましたリース、オール歩合の事実を指摘するとともに、これに対しては全面的に反対であるということを申し上げて、すみやかに先生方が、先ほど言いましたような政策を打ち出していただくことを、特にお願いをしておきたいと思います。  最後に、一点強調しておきたいことは、いま運輸省がこれに対して、法律違反や法に基づかない営業形態なり、あるいは労務管理というものは違反であるということを、直ちに私は行政通達を出していただきたいと、このように考えております。そうしてまた、現実に道路運送法や、あるいは二・九通達や基準法に違反をしている経営者に対しては厳重な監督をする、そして取り締まりをする、そして悪質なものについては免許を取り上げる、こういう強硬な方法というものをぜひ取り上げていただきたい、検討していただきたいということをお願いをしておきたいと思います。  以上です。
  12. 長田裕二

    委員長長田裕二君) どうもありがとうございました。  それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
  13. 伊部真

    伊部真君 後ほどまた運輸省のほうからも見解をいただきますけれども、いま両者から御意見をいただきましたが、特にこれからのハイヤー、タクシーのあり方について、これは具体的な面では、一昨年の運政審答申というものについて川鍋会長からの御意見がありましたが、この問題につきましては、これからもひとつ討議をかわしていきたいと思いますので、そういう意味では、また協力をいただきますが、きょうのところは、ひとつオール歩合リース、当面具体的に町で起きている問題を中心に質問をしていきたいというふうに思いますので、御了解をいただきたいと思います。  私は、先般決算委員会でも指摘をしたのでありますけれども、オール歩合制度が最近とみに多くなりました。これは具体的に言いますと、私がときどき使っておるタクシーで具体的に出してみたいと思いますが、足立のつばめタクシー、八興、チャンピオン、それからきょう御出席川鍋会長が社長をしておられる日本交通、これらを見ました中で、私は端的に申し上げる。日本交通の場合は、私は非常に、これは企業の規模が違いますから、ほかの企業会社とは違う状態であります。ただ残念なことには、日本交通の中に春日町だけはこの歩合を施行しておられるということを聞きました。たまたま乗った車なんですが、私はまあそういう意味では、日本交通さんが全般としてオール歩合制度をとらずに、そして業界の中では指導的な立場も堅持しておられるという点では敬意を表するのでありますけれども、ただ春日町の場合だけそのことが出たのに非常に私もショックを受けているわけなんですけれども、いずれにいたしましても、オール歩合というのが、聞くところによると、実態的には全体の四割ぐらいを占めるのではないかというふうなことをいわれておるわけです。  私が乗ったそれらの車の状態を見ると、一運行、一連行というよりも一勤務ですか、いわゆる月十三日のその十三分の一を計算をいたしますと、あるところは一万九千円以上の場合は五五%、二万円以上の水揚げをしたところは五八%とか、あるいは二万二千円以上の場合は六〇%とかいう形というのが、全部ではありませんが、出ております。で、こういうふうなことは、明らかにオール歩合制であるし、累進歩合制であります。いわゆる二九通達でもそうでありますが、あるいは昭和四十二年、四十五年、いずれも運賃値上げのときに、経済関係の閣僚会議できめられた通達にも明らかにこれは違背をする。こういう事実について、行政当局はどの程度に掌握をしておるのか。この間労働省に聞いたのでありますが、会社のほうに問い合わせしたら、オール歩合ではありません、固定給が五万円とか六万円とかついております。ということで回答が返っております。しかし、これは形式でありまして、それは形の上でそうなっているだけであって、事実は違います。私は運転手個々に聞いているのです。そうしたら、どうなっているかというと、実態はオール歩合でやっているが、そうやると基準局だとか、あるいは運輸省のほうの監視が非常にきびしいので、したがって給料の調書は、固定給が何ぼで、奨励金が何ぼで、皆勤手当が何ぼで、差し引きオール歩合で出た水揚げ、出た金額をその分だけ引いて、残りを歩合に入れていくという形式をとっている、こう運転手は言っている。賃金台帳もそのようにしてある。賃金台帳と給料袋を見て、これは保障がされておる、いままでと形態が変わっていないというふうなことで、そのまま見のがすなら、これは事業内容をつかんでいないことと同じことです。私はこれらの会社運転手全部に聞いているわけです。それを単に、そうではありませんということで答えられるということは、私はこれは怠慢と言わざるを得ない。どの程度、実態として、職場の中に入られてどのような調査をされたのか、それらを含めてもう一ぺん労働省のほうと、それからもちろん、それは四十五年でしたか、以降、相互の通報制度をやっているわけですから、労働省運輸省のほうに通達をしているわけです。連絡をしてあるわけです。その実態と、それに運輸省はどういうふうに対処されたのか、そこらの点をひとつお答えをいただきたいと思います。
  14. 廣政順一

    説明員廣政順一君) ただいま伊部委員から御指摘の点でございますけれども、私ども決算委員会で労働基準局長からお答え申し上げたとおりでございまして、私ども事業所での調査の結果によりますと、オール歩合という形にはなっておらないということでございますが、なお私どもは、いわゆるオール歩合というのが決して好ましいものとは思っておりません。できるだけ歩合給部分を減らすということが望ましいことであるという立場に立ちまして、四十五年の一月に全乗連に対しても申し入れをいたしておるという経緯もあるわけでございまして、先生おっしゃいました点が、実際にどのように行なわれているかということについては、さらに私どもとしても調べてみたいと、このように存じますが、たてまえ上はいま先生おっしゃいましたような形ではなく、前回、労働基準局長から御答弁申し上げましたようなたてまえになっておるというところでございます。
  15. 川鍋秋蔵

    参考人川鍋秋蔵君) 委員長、私の第十のことが出ましたから、それについて釈明したいと思いますが、いかがですか、お許しになりますか。
  16. 伊部真

    伊部真君 ちょっと待ってください、あとから順序でお願いをしますから。  いまのたてまえというのじゃなしに、事実はどうなっておりますか、労働省のほうで調べられた内容は。  それからもう一つは、好ましいとか好ましくないということじゃなくて、オール歩合というのがそのまま実行されたらこれは基準法違反でしょう。居残りが時間外割り増しという計算になっているんでしょう。だから、そういう具体的に、実態としてどうなっておるのか、どう処理されるかということを、具体的にお答えを願いたい。
  17. 廣政順一

    説明員廣政順一君) 私どもの調べました限りでは、ただいまお答え申し上げたようなことでございますが、なおかりにオール歩合であると、すべてが歩合給だけであるという場合に、当然のことでございますけれども運転手賃金所得というものが非常に不安定になります。それだけに当然のことでございますけれども、労働基準法の二十七条の保障給の定めというのがございます。これは二・九通達でさらにこれを具体化いたして、固定的な部分が六割保障されていることということを二・九通達の中で義務づけているわけでございまして、その線に沿って私ども監督、指導を行なっているということでございます。
  18. 伊部真

    伊部真君 いや私はね、きょうは基準局長なり労政局長来てもらおうと思ったけれども、来れないということですからね、やむを得ぬことなんですけれども、そのことは知っているのです。私らは。二・九通達で六割保障せなきゃいかぬことも知っているし、あるいは基準法の精神からいってもそうだし、四十四年の十一月に出した、これは労働省運輸省が一緒になってやった通達なんかの内容から見ても、累進歩合というのはいかぬということは知っているのですよ。形式上はそうなっているということも、私は先ほど申し上げたように知っているのですよ。内容はどうなのかというんですよ。  その内容をつかむためにどのように手を打たれたかということが問題でしょう。そうでなければ、これはいま言ったように、電話一本かけて、あなたのところのほうは歩合はどうなっていますかと、いや、歩合制度はありません、固定給は七万円ですと、それで歩合はその間に何ぼですと言って答えたら、ああそうですかということでは済まされぬですね。現地へ行かれて調べても、賃金台帳を調べても、こういう形式になっていると運転手からもぼくは聞いているわけですよ。そんなことだけ、帳づらだけ見て、それでこれがいままでどおりの状態だと、ほかの産業並みの状態交通労働者タクシー労働者に適用されているというのは、これはもう非常に甘いと思う。  特に私は、申し上げておきたいのは、前回の決算委員会で、私のほうでも、具体的に先ほど申し上げた日本交通は、私はその後に乗った車ですから日本交通は申し上げなかったけれども、つばめにしても八興にしてもチャンピオンにしても、具体的にこういう事実があるが、調べましたか、と言うて具体的に指示してあるわけですよ。それに対しても、具体的内容を当然現地へ行って調べて、こっちで次の日には質問に答えられるという体制が、私は必要だと思うのですよ。それではいま申し上げたことをお答え願うのと、それから運輸省のほうに、その連絡はどういたしましたか、お答え願いたい。
  19. 廣政順一

    説明員廣政順一君) 私どもの調べました限りで、先ほどお答え申し上げておりますことで、一・乗務の賃金総額というものが、水揚げ高の五八%ということで、賃金形態につきましては、基本給が一乗務六千円、歩合給が営収から一万一千円を引いたものに五三%を掛けたもの、そして当然のことでございますが、深夜割り増しというものもそこで計算をされていると、こういう実態をつかんでまいってきているわけでございますが、なお、この点については、つばめタクシーということで運輸省のほうにも話はしてございます。
  20. 伊部真

    伊部真君 これは、いまの形では、先ほど説明したように、調べ方ですよ、問題は。常識からいって、いまタクシー運転手に聞いたらだれでもわかると思うのですよ。オール歩合で五八ないし六〇というのは常識ですよ。私はある会社——もう名前はあまりここで言いませんけれども、ある会社運転手は五五だから非常に不満だと言いました。いま日雇いといわれるような形で来る人はオール歩合で、これは五八ですね。業界相談しているというのは五八ですよ。五八は少ないとか多いとかいうことで、ちょっと問題があるそうですけれども水揚げに対して五八以外には何にも払っていないじゃないですか。オール歩合で五八で計算をしたものを逆算をして、それは固定給が五万円にすれば歩合のほうがふくれるから、その歩合の中に居残り分を何ぼ書いておいたらいいと、あとからこれは逆算して計算しているんでしょう、これは。だから形式上見たら、帳面見たら、賃金台帳を見たら、割り増しが入っておると、こうなる。  それくらいのことは、私は知っていますよ。五八%で水揚げが大体一カ月十六万か七万ぐらいだと言っているんですよ。十六万、七万を一番押えておいて、その中から固定給が何ぼやということで話し合って、そこへ入れていく。居残りはそこで何ぼ入れると、残るのはあたりまえですよ。それでもまだ歩合というのは残りますよ。この中には、ほとんど最近なんかは、それだけではなしに、年末一時金だとか夏期一時金だとか、退職金までもうなしにしてしまう、その分だけ毎月の給料に入れていくという形で、かなり形だけはふくれ上がっているんですよ。そんなことはもう運転手仲間では常識になっておるのに、労働省のほうは、またしてもいま言ったような形式的な、向こうへ行って賃金台帳見たらこう書いてあるからということで、満足して帰るというのは、私はわからぬわけですよ。あなた方自身が車にたまには乗って、私は労働省の何の何がしと言えば別ですけれどもね、運転手に聞いたらわかることですよ。そういう公然たる、事実上の、形式上ではなくて事実上の法違反が行なわれているのに、ただ形式上の取り締まりをやって、そしていままでが一割であったが、二割になり三割になり四割になって、このごろ四割ぐらいがオール歩合という形式になっている。これは明らかに今日まで労働省でも運輸省でもとってきた、いわゆる安全面からいって刺激的な歩合だと、あるいは累進歩合というのは好ましくないという方針にだんだん遠ざかっている現象じゃないですか。その現象に対して積極的に取り締まるという姿勢が欠けていると思うんです。  私が申し上げているのは、そういう形式じゃなしに基準局のほうの調べ方として、運転手はそういうところまで調べたのかどうか。調べ方に私は問題があるんじゃないかと、こう申し上げておるわけです。そういう意味では、東京なんかでは、いまの調べ方で十分だとお考えなのかどうか、それから先ほど申し上げた、運輸省に対してもどの程度、何件ぐらい通達をいたしましたか。
  21. 廣政順一

    説明員廣政順一君) 賃金問題につきまして、労働基準法の違反あるいは二・九通達の違背ということがあるかどうかという点についての私ども調査のしかた、これがいま伊部先生御指摘のように、あるいは不十分な点があったかとも思いますけれども、ただ私ども監督指導してまいります段階で、オール歩合そのものが二・九通達に違背するかどうかという観点ではなくて、歩合制をとっている場合に、これが累進的であるかどうかということが第一点にあるかと存じます。  それから第二点といたしまして、オール歩合であるというときに、問題は保障給部分があるんだろうかという、その点について、私どもは調べてまいるということになるわけでございまして、オール歩合そのものがいいとか悪いとか、むろん先ほど申し上げましたように、全乗連に四十七年に申し入れましたような意味で、オール歩合が決して私ども好ましい形態だとかいい形態だとか、そのようには思っておりませんけれども、ただオール歩合だというそのことだけで、直ちに二・九通達違背ということで指摘できるかどうかという点になりますと、私どもは若干そこにまだ疑問を持っておるところでございます。ただ調べ方についての先生の御指摘、これは私どもも、十分今後とも注意してまいりたいと、こう思います。
  22. 伊部真

    伊部真君 答弁になっていないですよ、そんなのは。  私の申し上げているのは、具体的に一万九千円の場合に五五だとか二万円になったら五八だとか、具体的な問題を私は提示しているわけですよ。そういうものがいま町にあると言うんですよ。これは明らかに累進歩合でしょうが。だからそういう累進の問題について、これは明らかに二・九通達からもあるいは四十四年の通達からも違背をしている事実について、町でどんどんどんどんわかっているのに、なぜ労働省のほうではこれをつかめないのかということを言っているんですよ。まあいいですよ、それは。これからまだまだ私は、具体的な問題で追及していきたいと思うんでありますが、せっかく業者側の全乗連の会長さんもおいででありますんで、まことに申しわけないですけれども、全体的にそういうオール歩合の傾向についてお答えいただくのと、先ほど私、部分的になりましたけれども、日本交通の問題を申し上げましたが、ただ私が聞いているのは春日町だけでありますから、そこらの経過についても、ひとつ御見解をいただきたいと、こう思います。
  23. 川鍋秋蔵

    参考人川鍋秋蔵君) 伊部先生から御指摘がありましたが、これは何もかにも要するにわれわれが悪いとか、まあ伊部先生に悪いが労働省も悪いというようなことが、現状では通らないということを、私は申し上げておきます。私のところは旧日本交通と三十二年に五、六社買収した会社があります。そうして買収したと、そうしてみんな退職金をもらって、またつとめてくれよと言っても、やめるという人が多かった、どういうことをしたらいいのかと言ったらオール歩合にしてくださいと、こういう労働者の希望で、私のところはいま旧日本交通と第十日本交通——これは六社を買収した会社であります。そしてまた労働不足は御承知のとおりにわれわればかりではありませんが、特にこの法人タクシー労働不足というものは深刻であります。その上に、毎月毎月個人タクシーを許可して、いまや個人タクシーは、もう五、六十台で二万台とふくれ上がっておるわけであります。これが労働不足の非常な原因となっておる。  それからもう一つ、あっせん業というものがあるわけです。許されたあっせん業、われわれは新産別とこれを称しておる。そこに行くというと全部オール歩合でなければ来ないと言う、オール歩合でなければ行かないと、こう言うので、私のところは五社買ったその補充、それからもう一つ労働基準法に、法律だからこれは守れと、守っておることでありますが、一週間運転手が休むと、要するに支度金と失業保険二十三万もらえるんです。これが半年半年に有効であります。これが東京都内に何千人というものが移動しておるわけです。一週間休んで二十三万もらって、そしてまた隣ではもうネコの子も頼みたいような労働不足であるから、またお隣へ行って支度金もらう。まあ会社のほうは五万円出すか十万円出すかわからないけれども、いわゆるこういうふうに、二十三万というものを、一週間、これが半年半年目に有効なんです。私はこれを悪法と言っている。離職者奨励の法律だ。そしてわれわれのところでも、現在でも二百名ずつ年間三億かけて養成しております。それが二百名導入すると二百名移動する、いわゆる旅ガラス運転手とわれわれは言っておるんですが、これはいまの一週間休んだら二十三万円の失業保険と支度金がもらえるから、半年半年目にこれをやっていく方法と、それからいまの人たちは、大体において、この退職金とか、あるいはいろいろなものをあとでもらうということは、ほんとうにきらいな人が多い、旧日本交通は訓練しておるからつとめておるが、移動して歩く連中は、働いたら働いただけ持っていきたいんだと、こういう人が多いわけです。  わが春日町も、買収したときに、日本交通はこういう給料の方法だと言ったら、それはいやだ、そうしてオール歩合がよろしいと言う、そのほか新産別から来る者は全部オール歩合でなくては来ませんよ。これが職安と同じようなあっせん業者が許されておる。なぜこんなに人手不足で困っておるのに、あっせん業者をふやしておるのか——職安へ行けばまたもらえると、こういうふうにいろいろと裏で操作をしておる。だからこういうふうになって、いま労働組合の委員長——この人はもと私のところにいたんですけれども、だいぶ労働者擁護であるけれども労働者を擁護することは私も賛成であります。これは話が変わって個人タクシー企業タクシーになったらば、これはわれわれ企業も自然崩壊するが労働組合も壊滅してしまう、二つとも非常に悪いと思う。個人タクシーをふやし企業内をふやしておる——私はそれを唱えておるんです。  この間、春日町が私に、労働に対する交渉を受けなさいと言うから、私はしばらく、五、六年休んでおったんでありますが、単独で会いました。やはりそのときには、今度は考え直したか何かで、何で君たちは、君たちの要求の給料をやっておるのに、私のところへ来て、社長、労働者に会い、団体交渉に出ろって、どなって歩いておるから、私は三日目に、近所隣にあまりにも迷惑をかけているから、単独で会いました。会ったときに、何の要求だと言ったら、黙っておる。何だ、ぼくをここまで呼び出しておいて、何の要求があるんだ、完全なことをやっておるじゃないか。そうしたら帰りに、あと五分だと、帰るぞと言ったところが、旧日本交通の給料にしてください、こういうことを言った。それは君、できないじゃないかと。君のほうの第十にも四千人おるんだと、私のほうには六千人というものが旧日本交通にはおる。全部きまったものを——オール歩合でほかは全部きまって、これは第十ですよ——全部きまっておるものを、あんたのところの百二十名かそこらが不服だといったって、それはできないと言って、私は断わって、それだけになっておりますが、そういうふうに、オール歩合というものがこういう運転手は非常に好きだということがあるわけです。それから新産別の、労働省で許しているところが全部オール歩合でなければいかぬというんであります。  もう一つ、私は二・九通達に非常に不満を持っておる。いまのように、幾らを固定給にして、幾らを歩合にしろなんて、われわれ民間企業に、そのくれる方法まで関与する権限があるのかないのか。やはり民間業者は、やる以上は幾らか利益がなくちゃならぬということで苦心しておるにもかかわらず、こういう方法——赤字か出たって、これ、全然その責任は負わない。赤字のときは、われわれじゃないか。こういう、民間にいろいろなことをやれということを給与まで——これは法律で通るかどうか、私はわからぬが、民間企業にそれだけのことが、権限があるのか、これは私も研究していますが、そういうふうなことです。  そして私は、企業家の一員として、要するにオール歩合制というものと同じようないろいろな制度がなくては、やはり企業というものは絶対に立っていかないということを、企業家として私は言いたいと思う。企業家の、オートメーションとかなんとかやっておる、流れ作業、これ全部その責任においてやれよと。そうして機械は流れていって、やらなければ要するに流れちゃう。やはり労働者責任というものはあると思う。労働者はわれわれのところへ来て、普通であったら、全部月給にしたものは五、六社倒産しましたよ。そういう性質のものです。善良な労働者もおるが、下等の労働者もあるということを、伊部先生、よく御認識を賜わって、そうしてやっていただきたいと思う。  私のところは、この間も春日町で会いましたけれども、こっちがほしいと、そうして入ったとき、三年前からつとめたことにしてくださいよと、あらゆる要求をいれて、われわれは運転手の逃げるのをとめておる。それでもわれわれ業界には、三千五百台というものが休車している。どうかそういうことを労働者立場にも立って、企業家のわれわれの立場にも立って、両方とも共存共栄立場に立っていくような方法をお考えを願いたいと思う。われわれがいま、全く労働者不足でもって三千台、五千台というものが、これ、税金払って動かないんですよ。それでも個人タクシーをどんどんふやしておる。あらゆることがありますが、全くいま私どもは、労働者と経済の面から腹背に敵を受けて、今年一ぱいでほとんど自然倒産になっていくようなことであると断言しても過言ではないと、私は考えておりますから、どうかひとつ、先生方にもわれわれの経営立場に立ってもお考えを願いたいと、かように考える次第であります。  どうも失礼しました。
  24. 伊部真

    伊部真君 私は、いま川鍋参考人のおっしゃった点については、よく理解をしているつもりです。  で、やはりいま危険な状態というのは、表面には出ませんけれども、かなり潜在的にあると思います。その面の一番大きな点は、どうやって労働者を確保するか、学働者の魅力のある職場にどうしてしていくかということが一番大事なことではなかろうか。なぜオール歩合になるのか、あるいは、なぜ労働問題がいま言われたように大きな問題点となって、企業の存立にまで影響していくということになるのかということについて、やはりこれは、行政にあるものも、業界にあるものも、あるいはそこに働いている労働者も、一緒になって、私はその英知を結集して、将来への明るい光明を持たなければいかぬという観点で、私も必ずしもどこを責めてどこをという気持ちで申し上げておるわけではないのであります。  ただ、正直に申し上げて、私がオール歩合の問題で見ましたときに少し気になりますのは、やっぱりあるグループが動きますとそれが横へ広がっていく。私は、たとえば日本交通さんの場合のときでも、部分的に、いわゆる本体といいますか、本流の組合は、日本交通として四千も五千もおられるわけですけれども、そこの組合の場合には、わりあいに労使関係というものでも、あるいは秩序の面でも、保とうという努力があるけれども、それからはずれた少数のもののグループというのが、おれはもうオール歩合でけっこうだ、おれは退職金も要らぬからその分だけ回してくれ、そういう目先のことだけで考える。それを許していきますと、これは、やっぱり隣で働いている人は、そういう前提があるけれども、おれよりは一万円多い二万円多いというなら、やっぱりあっちのほうがいいじゃないかと、若い人はそう言う。いわゆる悪貨が良貨を駆逐するような形というのが、ずっと今日のオール歩合業界に広がった私は大きな原因ではないかと思うんです。  そういう意味で考えますと、これをもとに戻すことはたいへんに苦労でありますけれども、この姿は、私はいいことはないと思います。オール歩合で流されていることを、これを認めていったら、あるいはこれを放任していくということは、もうこの業界労働者が取り残されることです。あるいはこの業界自身が、私は全産業から取り残されるというふうに思うわけです。労働者条件をよくして、一週間に週休二日というふうな問題も議論されるような、そうでなければ若い人が入ってこないという状態の中で、この業界だけが旧態依然として——旧態依然というよりも、今日の状態に逆行して歩合制度にどんどんどんどん流されていっている。それも手のつけようがない。私は、その問題について、行政がそれに対して少し手をかしてやる、ブレーキをかけるというふうなことに、助けているならいいのでありますけれども、いまの行政というのは、あの運政審の答申の内容から見て、むしろその歩合がいいような感じを植えつけておる。明らかに運政審の答申の、あの企業運賃の自由の問題でも、リース制の問題にしても、名目は、いろいろ車両保有責任者だとか、あるいは運行管理責任者だというふうな名目は使っておるけれども、明らかにこれはリースの問題を合法化しょうということだし、オール歩合というものについて、陰に私はこれを助長するような傾向だというふうに思います。  これはまた議論は別でありますけれども、いずれにしても、そういうふうな問題から考えますと、私は非常に重要なことだと思うのです。こういう重要問題に対して、労働省のほうは、きょうは責任者もおいでじゃないし、どうもあいまいな形で、すっきりしませんが、しかし問題は、やっぱり運輸省が中心になってこの行政指導に当たらなければならないと思います。そういう意味で、こういう傾向に対して運輸省としての見解はどうお持ちなのか、それをお答えをいただきます。  それから、時間がないようですから続いて、いまの議論聞いていただいて、これからのタクシー業界というのはこのような状態で手をこまねいていっていいのかどうか。これは明らかに行政面からいっても、それは交通政策の面からいっても、あるいはいま行なっているオール歩合でどうにもならぬどろ沼にずっと入っていこうというものに対して、運輸省としてはこれはどういうふうに指導するつもりなのか。二年三年もう後退しっぱなしですよ。これをどういうふうに正常なものにしようとするのか。明らかに運輸省としての方針がなければいかぬと思う。その点についてお答えをいただきたい。
  25. 小林正興

    政府委員(小林正興君) ハイヤー、タクシーに限らず自動車運送事業は非常に労働集約産業ということで、したがって、この事業が適正に行なわれ、ひいては利用者の利便を確保するという法律の目的を達成いたしますためには、正常な労使関係あるいは労働条件改善ということが基本的に必要であるということが、先生の御意見と全く同じでございます。  そういった点から、従来自動車運転者の労働時間その他賃金等を含めました労働条件改善につきましては、労働省のいわゆる二・九通達というものを基準にいたしまして監督指導をいたしておるわけでございます。その二・九通達で、先生御承知のとおり、賃金形態につきましては六割以上の保障給というものが確保されるというのが基本的な指導の理念になっております。また歩合の歩率につきましては、極端に刺激的な制度でなくて、一定率にとどめるという、この二つの基本的な賃金形態についての考え方が明示されておるわけでございます。  したがって私どもといたしましては、当然この線に沿って個々の事業者を監督し、あるいは指導をいたすということでございます。先ほど来いろいろ各会社賃金形態が、オール歩合であるとか、あるいはないとかということについての御指摘がございましたが、そういった点につきましては、昭和四十五年に労働省と私どものほうとで相互通報制度という制度を確立いたしまして、それぞれの所管の法規に照らして監査をした内容につきまして相互に通報をいたし、それによって的確な監査、指導を行なっていきたいということで、現にそういった線で、それぞれ各地方の労働関係、労働基準局と陸運局との間に、そういった通報制度でやっておるわけでございます。運輸省といたしましては、当然労働基準法その他の労働関係の問題でいかがかと思われるような会社につきましては、道路運送法関係の法令、これは当然安全と利用者の利便の観点からの規制でございますから、直接その労働条件の内容に立ち至って監査をいたすのは私ども立場ではないわけでございます。本来、労使間で自主的に協議し決定さるべき事柄かと思うわけでございますが、一般的に申しまして、そういったいかがかと思われるような運営形態をとっておる会社につきましては、先ほど金良参考人が申されましたような、たとえば車両管理について、あるいは運行の管理について十分なことが行なわれてないというようなことも、あるいは関連して出てきやすいわけでございます。  したがって私どものほうの監督法規におきましては、そういった車両管理あるいは運行管理というものが適切に行なわれることによって、利用者の安全と利便の確保が来たされているかどうかということに最大の重点を置いて監査し、さらに指導をいたしていくと、これが私どもの基本的な考え方でございます。
  26. 佐藤文生

    政府委員(佐藤文生君) お答え申し上げます。  私は、運輸省の政務次官に昨年の暮れになりまして、いま先生が御指摘になりましたこのタクシーの将来についてどうすべきであるかということが一番心配でありまして、これにどのように運輸行政として今後の軌道修正をやるべきか、いまのままでいいのか、こういうことについて関心を持ちました。ただいま御指摘になったような点がやはり問題になるし、参考人の御両人のお話の内容がやはり浮き彫りになるし、九州において、私の県内の日田で、先ほど参考人が言われましたような、経営者がもう免許取り消してくれと、そして言うこともとめるわけにはいかない。いわゆるタクシーとしての、市民を中心にした足を確保しなくてはならぬ、しかし働いているタクシー運転手生活も考えなくちゃならぬ、そういったようないろんな問題点が集約されて出てきました。  そこで私は、タクシー企業にかかわらず、一つ企業というものは、いわゆる一定の水準があって、そこで働いておる人が生活の基本であるところの基本給を基礎にして、そうして人間の働く能力を十分に発揮していく歩合制というものが適度なバランスでもって持っていかれるということが、私は一番大切なところだと思うんです。そこでタクシー経営については、その地域における適正な免許と適正な料金というものを、収入というものを、これを常に考えていかなくちゃならぬと、こう考えております。  しかし国際的に見て、日本のタクシー料金が、先生御承知のとおりに、公共料金であるということで非常に低い地位に置かれておるということは、もう御承知のとおりであります。しかし一挙に、これをなかなか上げるわけにはいかないという現在の世情、しかし、このままでいいかどうか、そういうことを考えたときに、適正なタクシー料金ということを確保しながら、りっぱな企業というものが成り立つし、そしてそれが働く人に還元されていくと、こういうかっこうに持ってくる考え方というものをどう頭の中に整理していくかということが、一番現在の問題点であります。そこでとりあえず、私は現在のタクシー行政をながめたときに、法人タクシーが、ほとんども東京都内の三百社の中で来年、再来年にかけて経過できないというところまで現在追い込まれつつあるというこの実態をながめたときに、このまま放置するわけにはいかない、こう考えまして、いろいろな考え方がありますが、現在問題点になっているのは、個人タクシーが現在東京都内でも、私の記憶では法人が二万、それから個人がもう一万五千、そういうぐあいに、もう法人個人とが大体同じような数字になってきておる。それから横須賀あたりでは個人タクシーの許可をしましたところが返上に来た。要するに個人タクシーをもらったけれども営業ができない、こういうような実態まで起こってまいりましたので、そのチェックとバランスをとる時点が来た。  それから法人経営が成り立つためには、一体、適正な料金に思い切って一挙に上げると、また上げなさいという考え方もある。そうしてある程度の国際水準を持ってきて、そこで経営の基盤をつくるべきだという問題点に突き当たりました。  そこで、企業内に個人タクシー営業、いわゆる企業内の個人タクシー、たとえば日本交通であるならばそこに運転手の佐藤という人がおれば、佐藤日本交通タクシーというようなことで、企業内における個人タクシーをひとつ許可すべきじゃなかろうかと、そうすればそこに働く意欲と、それから企業内における一つの労務管理、いわゆる労働力の集約というものができるとか、これもまだ結論に達しておりませんが、そういう問題とか、あるいはまた千葉のある駅では深夜、バスがもう十時で切られる。国電が着くのは十時半だ、団地に行くのにタクシーしかない、待っておったと、そうすると二百五十円のところに一人が乗って、次一人が乗ると、こんなばからしいことはだめじゃないかと、相乗りの三人ないし四人が乗って、そして適正な料金で運ぶ制度も考えて、タクシー経営の基本をその辺からつくっていくことも考えなくちゃならぬじゃないか。こういったような一つの問題の壁にも突き当たりまして、現在いろんな問題点がありますけれども、そういう問題点を勘案しながら、企業内の個人タクシー、あるいは相乗り制度、こういう問題も考えなくちゃいかぬ。さらに一つの問題点になってきたのは、人の命というものが非常に大切になってくる風潮です。したがって経営者あるいはドライバーというものは、もしも事故があったときには補償しなくちゃならない。それもいまの自賠責では五百万円だ。それをはたしてこのままでいいのか。ところがフランスあたりでは三千万円だ、あるいは西ドイツあたりでは七千万円だ、スウェーデンに至っては十五億円なんです。その十五億円の人の命というものを補償する責任タクシー経営者なり、ドライバーにはある。それだけ掛け金を入れなくちゃならぬ。そうなってくると、そこに収入ということも十分考える行政指導を思い切ってやらないというと、経営者としての責任も、あるいはドライバーとしての責任も果たせなくなってくる。こういったような集約的な問題が出てまいります。したがって本日、委員会タクシー問題についてお取り上げになっていただきましたことを、私はほんとうに感謝申し上げると同時に、そういった問題点を解決する前向きな姿勢でタクシー行政というものに私たちは目を転じていきたい、こう考えている次第でございます。
  27. 伊部真

    伊部真君 私は、いまタクシー業界の問題点というのは、みんな感じているわけですよ。問題はそれにどう対処するかということだと思う。いま次官が言われた相乗り問題にしても、あるいは企業内個人タクシーの問題にしても、非常に問題が大きいです。法的にも問題だし、これで解決つけるのかどうかということになると、逆行するんではないかという意見もありましょう。私自身もあまり賛成しかねます。  しかしこの問題についても、もう少しやっぱり民主的に英知を集めるという努力をなぜしないのか。これは少なくとも相乗りの問題だとか個人タクシーの問題だけにしぼってもそうでしょう。労働省運輸省の間でも問題がある。意見がある。相違が出てくる。あるいは業界でも問題がある。あるいは労働組合の側にもいろいろ問題がある。いまそんなことの相違があるのに、何か思いついたからといってそれで強行するというふうな時代ではないですよ。あるいはまた問題点として、タクシー業界の問題については、そういう問題で解決つく問題ではないと思いますよ。少なくとも英知を集めて、業界も、あるいは組合も、そういう関係の人たちがみんな相談をしながら、これをどうするかという、そういう議論をすべきときじゃないですか。  私はそういう意味で、いままでの運輸省のやってきたことというのは、かなり私は批判があると思うんです。ですから、この点はひとつぜひこれからの行政の問題については、実行するのは現場の人たちですから、その気になってこの業界をよくするという気持ちにさせなければ、これは何もならぬのです。先ほど私が何べんも申し上げているように、形式があっても内容が全然違うというようなこと、そしてそれが手がつかないというふうなことは、それじゃ行政不在といわれてもしようがないと思うんです。法律があっても、それは実態がない、ていをなしていないといわれてもしょうがないと思うんです。だからそういう意味で、これからひとつぜひ、もっと民主的なというか、形を整えて、ものごとを、法律にしても、行政にしてもやっていく、特にタクシー業界のことはぜひそういうことをお願いしたいということを申し上げておきます。  いま、もう一ぺん議論を戻しますが、オール歩合と一連のもの、根は一つと言っていいと思うのは、リースの問題。リース問題は私も何回もこの委員会で取り上げておりますけれども、どうも形態もまちまちでありまして、したがって私がしろうとだから、こういう形態のときはどうだといって自動車局長に言うと、うまく逃げられてしまうんで、どうもリース制度というものについての確固たるものがつかめないわけです。  で、それに対してつかめないものだから、これがいいのか悪いのかという点についての議論も非常にかみ合わない。たまたま私は、きょう印刷物を現地のほうの人たちが持ってまいりましたので、それをプリントして見ていただこうということでプリントを出しました。  一つ下関タクシーの問題。もう一つは、名古屋陸運局企業内個人タクシーの問題ですが、これは時間的にちょっときょうは無理だと思いますから、ひとつこの下関の問題にしぼって申し上げ議論したいと思います。名古屋企業内個人タクシーの問題は後日に譲りたいと思います。  そこで下関の問題でありますけれども、これはいまのオール歩合と同じようなことなんでありますけれども、根が一つだと申し上げたのは、この業界は、いままで普通に固定給あるいは歩合給という形態での運営をしてきたのであります。ところが、ほかとの関係で刺激をされてか、リース制度の採用ということを経営者は思いついた。このリース制度の採用を思いついて、組合に提示したところが、組合のほうでは、これは困るということであります。そうしたら、それが理由になって争議が起こって、いまストライキに入っているということであります。形はそうなんでありますが、内容的に見ると——これをひとつ見ていただきたいのでありますが、これの二枚目から三枚目のところにありますが、一カ月に一人当たり九万五千円経営者に渡すんですね、持ってこいというわけです。これを基本経費と言います。それ以外に走行経費というのがあるわけですが、これは燃料だとか、あるいはタイヤ、チューブ、あるいは車庫使用料というのもあるんでしょう。これが何ぼかある。あわせてこれだけ出す。  で、特に私は、この中で基準法違反として明確であるのは、たとえば年休取ったら、その九万五千円に加算せいということです。これはうしろから二枚目のところに「年次有給休暇」の欄がありますが、「その支給額は基本経費に加算する。」とありますね。いわゆる九万五千円に、年次休暇を取った者は平均給与を足して、そして経営者に納めるということですから、これは明らかに有給休暇ではないわけですよ。これは労働省でも、明らかな基準法違反だと思う。  いずれにしても、こういうことになりますと、本人は九万五千円会社へ納める、あるいは走行経費が二万円としたら、十一万五千円納める。あと責任は本人になりますから、どうしても走り回るということになります。これは明らかにリース制度でありまして、これの内容が労使関係であるのかどうかというのも問題になるような非常に重要なことだと思うのです。  そこで私は、これらの契約をめぐって、大きな点では労働省のほうに幾つかの疑問があるわけです。きょう私は、責任者がおいででありませんから、きょう即答を求めようとは思いません。ひとつ回答を次の機会に出していただきたいと思いますが、この下関のこういう契約を結ばれたときに、これが労使関係と言えるのかどうか。労働者といえるのかどうか。たとえば争議が起きて、労働委員会に持っていく。これは労使問題であれば労働委員会で取り上げるでしょうね。その場合には、これは労使問題かどうか。そこは労働組合であるのかどうか。労働者であるのかどうかという認定をせなけりゃならぬでしょう。これについて、労働省としての見解はどうなのか。  それから基準法上からいっての労働者という立場であるのかどうか。この二つは非常に議論の多いところでありますから、私はきょうここで即答を求めるというのは、直接の責任者でもありませんから、ちょっと差し控えておきますが、いわゆる労働法上からいう労使関係労働者であるのかどうかということ、基準法上からいっても、同じ法を受ける労働者であると認定できるのかどうか。これは名古屋陸運局のこの企業内個人タクシーの場合でも同じようなことが言えると思いますから、その点も後刻ひとつ調べておいてもらいたい。調べるといいますか、見解を統一してもらいたい。私は私なりの見解を持っていますから。  さあ、そういう非常に背景としては重要な背景を持つわけであります。この判断というのは、たいへんに日本の労働界あるいは労使関係に重要な私は問題点を投げかけると思うんであります。ですから、単にこれは下関の問題だ、名古屋の問題だという問題ではないと思います。で、そういうことがいいのかどうかという問題もあるんでありますけれども、いずれにしても、こういうふうなことが出されて争いになりました。さあそこで、私は次官にお聞きするんですけれども、これは明らかに基準法違反の条項です。同時に、こういう形というのは、責任の所在が非常にあいまいですね。事故が起きたときの責任はだれが負うのか。これを見ると、何か個人経営しているようなかっこうに見せているわけでしょうね。そういう非常に問題が多くて、基準法にも違背をするし、あるいは道路運送法上による名義貸しであるのかどうかというものについても非常にデリケートな状態です。だれが見ても、これは好ましくないということだけは言えると思います。だれが見ても、どこから見ても、法上からいっても。  法律違反を含めた好ましくない業態というものを片方で提示をして、それを認めなければ、それをのまなければこの経営はもうやめだというのが、いまの下関タクシーの問題です。法律違反を明らかに天下に明示して、そうしてそれをのまなければ、おまえたちは争議やってもしょうがない、営業を停止する、こんなことが、いわば脅迫が、どうかつが、目の前で行なわれているということ。この見解に対しては、現地の陸運局長は、まあ現地のこの広島の陸運局長というのは、私は常々非常に敬意を表しているんです。非常に熱心に、この問題についても、あるいはその他の問題についても、行政面で非常に熱心にやられているということの努力は、私は敬意を表します。ですから局長の悪口を言うつもりはありません。むしろ局長は非常によくやっていただいて、努力をしているというんで、私は非常に敬意を表しているんでありますけれども、言わざるを得なかったんだろうと思いますけれども、この問題は、道路運送法上、あるいは運輸省の諸法規から見て法律違反ではないので、非常にこれはむずかしいという表現をされた。ただ免許を、そういう争議の途中にその免許取り消しの申請が来たけれども経営者のほうの言い分だけを聞くわけにいかぬということで、いまとめていただいているそうであります。だから、そういう意味では、行政上現地の行政官は非常に努力をされているし、善意を尽くしているということには、私もそれなりに評価をするわけですけれども、しかし、まあいずれにしてもこういうことが行なわれて、どこが無理押しをしているかということ、法律をどこが破ろうとしているかということは明確であります。誤った事業者の提案による長期ストが起こっている。長期ストになると、やはり生活に追われる労働者が弱くなることも当然です。そんなことが、これが方々で行なわれてきたら、たいへんなことじゃないんでしょうか。  で、これは一つには、やっぱりリース制度に対する本省の、あるいは運政審の答申を背景にしたやっぱりこの見解が非常に甘かったから、そこら辺がやっぱり業者のほうでつけ込んできたんではないか。つけ込んできたのか、そこへ活路を見出してきたのか、いずれにしても、そういうふうなことが背景としてあるんではないかというふうに思うわけです。この現状を私、その後知りませんが、こういう争議が起きていることに対して、御見解をいただきたいと思います。
  28. 佐藤文生

    政府委員(佐藤文生君) 具体的な話をお聞きしまして、一番いまのタクシー業界のむずかしい問題点が浮き彫りされてまいりました。先ほど言いましたとおりに、九州の日田のタクシー問題を最初から結論を出すまで私がいまフォローいたしておりますので、それと同じような、ちょっと状況は違いますけれども一つの活路を見出そうとする経営者労働者のいろんなそういう問題が出てきたように思いますので、これは具体的な問題でございますので、自動車局長に答弁さしていただきたいと、こう思います。
  29. 小林正興

    政府委員(小林正興君) だだいま伊部先生御指摘の下関タクシーの問題でございますが、現地の局長から私どもも報告はとっております。  それによりますと、この問題の一つ困難な点は、具体的な問題として労働争議が起きておる、それに関連いたしまして、会社側が事業の廃止でございますか、そういった意向も示されておるということでございまして、この下関タクシー問題のむずかしい点は、現実に労働争議が起きておるというこの解決、これが非常にむずかしいということが一つあろうかと思います。  それから一般的に、前段でお話がございましたこの新しい労働契約書ですか、これを結びかえるというような問題につきましては、直ちに判断いたしかねる点もあるわけでございますが、ざっと見た限りにおきましては、直接道路運送法の問題は、直ちにはこの契約書からは出てこないということが、あるいは現地の陸運局長が、新しい労働契約と道路運送法との関係について、下関タクシーの現実の問題の処理について、介入しにくい困難性を言ったのかと思うわけでございますが、と申しますのは、先ほど前段で御指摘のありましたような、こういった労働契約がはたして労働者とみなせるかどうかというような、非常に専門的な問題にわたりますので、私といたしましても判断いたしかねるわけでございますが、一般的に申しまして、労働者の地位が明らかであり、雇用者との間で労働契約が結ばれ、あるいは賃金規程が正当に定められるというような場合には、その賃金規程の中におきまして、いわゆる利益還元方式を採用しているというようなこと自体は、事業者に許された権限かとも思われるわけでございます。そういった点で、その前提が認められる限りにおきましては、道路運送法立場では、事業運営がこれと関連いたしまして、もろもろの法規に抵触する疑いがあるかどうかという点に問題が移るわけでございます。  先ほど来、オール歩合で話が一部出ましたが、そういった管理の形態をとっているために、事業者が本来やらなければならない車両管理あるいは運行管理というものが適切に行なわれていないという限りにおいては、これは道路運送法の問題でございますので、私どもは内容を具体的に把握いたしまして、適切な判断、処置をいたしたいと思うわけでございます。
  30. 伊部真

    伊部真君 まあこの問題は争議に関することですから、それじゃそのことはちょっと差しおくとします。これは下関の問題だけではないです。方々でこれは起きている、こういう形のものはね。ですから、そのモデルとして一ぺん考えていただきたい。そういう形で一ぺんこれを見てもらいたい。これ一読していただくとわかるんでありますけれども、給与規程がありますね、規程がありますが、四カ月ごとに一ぺん清算をして、そして利益還元方式で、いま言ったような九万五千円と走行経費で一人当たり十一万円なら十一万円を渡すわけでしょう。二人乗っておれば、二十二万渡すわけです。経営者のほうは楽でいいですね、一カ月に二十二万というのは、固定償却費だとか運行三費というものを全部計算をした上で、何ぼか利益をいただくわけですから。それは経営者としては、完全にもうかるというか、安定したものなんですね。  これは運賃が上がったとき、その他のときに議論があるのであって、経営者のほうは、これで賃金労働者ではないと、こういう言い方をしているわけですね。また事実、確かに四カ月ごとに計算しますと、さっき言ったように、固定給が何ぼあったってそんなものは形式になるわけでしょう。四カ月ごとに計算してプラスしたら足し、足らなんたら——次のときに足らなんたら見のがすなら話は別ですよ。足らなんだら次の計算のときに差し引くというのでしょう。ですから、主体は明らかに利益還元方式の九万五千円云々のこのシステムに優先されるわけでしょう。  こういうことは、明らかに私はオール歩合と結びついたものである。累進と結びついたものである。あるいは道路運送法の三十六条でしたか、いわゆる名義貸しの問題に結びついたものだと思います。法律的にも、私はこれは非常に大きな疑問を持つものであります。これもやっぱり好ましくないということだけは明らかだし、法律違反としてのにおいが非常に濃いと思うんです。こういう状態が各地に起きてくる問題について、たとえば契約の内容から見て運輸省のほうは、もしもこれが出た場合には認めるつもりですか。認める場合には、これは労働者として、従来の労使関係が存在するとしてこれを認めるものですか、あるいは個人がこの運行の責任を持っているというふうに見て、これをお認めになるのですか、その点をひとつお聞かせをいただきたい。
  31. 小林正興

    政府委員(小林正興君) 先ほども申し上げましたように、こういった形態の賃金の規定が合法的に成り立っており、事業者と従業員との間で、いわゆる労働協約が結ばれておるという限りにおいては、私どもといたしましては直接これをいい、あるいは悪いというふうに判断すべき立場にはないわけでございます。ただ問題は、ただいま先生が御指摘になりました道路運送法三十六条の名義賃しの規定に違反するかどうか、この問題につきましても、道路運送法の名義貸しの規定は免許制をとっておるたてまえ上、免許を有さない者が免許事業者の名義を不正に借りまして、名義料を払って自己の責任と採算において事業を営む、これの名義貸しを禁止する規定でございまして、したがって一般的には、名義を借りてそして事業をやる者につきましては、法律で定めた免許制をくぐっているわけでございますので、無免許営業というようなことで、私どもはこれに対して厳正な態度で対処してきておるわけでございます。  したがって、その際にも事業者と従業員との間に、雇用契約の中で、一つ賃金の制度として認められる限りにおいては、名義貸しの問題は出てこないわけでございまして、こういった点について、私どもとしては、道路運送法に定められた名義貸しの規定、先ほど来申し上げましたような日常の事業者としての管理責任のあり方そういった点について、疑わしい場合につきましては、具体的に監査をいたしまして、適切な処置をいたしたいと思っております。
  32. 伊部真

    伊部真君 この問題は、私はこれだけでは、ちょっと争点がぼやけますから、名古屋の問題を取り上げたときに、もう一ぺん具体的に申し上げたいと思います。  ただ明らかに、この内容を見る限りは基準法違反は明らかですね、年休の問題にしても、あるいは居残りその他の問題の書類の取り扱いについても、形式と内容とは違うわけです。私は決算委員会のほうでも申し上げて、渡邊局長のほうから法違反でありますということでありました。問題は、この基準法違反の場合は労働省の管轄だから運輸省のほうではそれは直接タッチできませんという形がずっと貫かれているわけです。何のために、やはり通報制度があるのか、明らかに基準法違反というものを、名義を借りて営業を行なおうとする者や、明らかに基準法違反というものが、基準局のほうで指摘をされている問題点については、通報を受けた運輸省は何をしているのか。それは労働省のほうの労使問題だから、それは私のほうと関係ありませんということで済まされるのかどうか。それじゃ何のために通報制度があるのか、何のために法は守ろうとされるのか、何を根拠にして法が守られておるのかということが問題になってくる。  だから通報制度があって、少なくとも労働法上でも違反があったら法律を守るという行政官庁は、当然私は、道路運送法違反がなくても基準法の違反があれば、これはいけませんよと、これは労働基準法違反のことだから、この内容を持ったものでは免許を渡さぬとか、免許上には重大な関心を持たざるを得ませんよ、というのが私は運輸省の見解でなければならぬと思うのですよ。また指導でなければいかぬと思うのですよ。ところがいまのところは、私ども道路運送法の問題はこうこうです。基準法の問題は基準局に聞きなさい、基準局に言ったら、私のほうは基準法違反ということで運輸省のほうへ嚴重に言ってあります。運輸省労働省の話し合いは、わりあいになごやかに話すもんだからあいまいな形になってしまう。だから問題はちょっとも片づかない。やっぱり基準法違反であろうとどうであろうと、どの法律違反しても、行政官庁としては違反している問題については、やはり指導し、嚴重にチェックしていくという姿勢がなければいかぬと思うのですがね。その姿勢がどうも私は欠けているというふうに思わざるを得ない。だから先ほど言ったように、私は、この問題もそうだし、先ほどから言っているつばめの問題にしても何にしても、労働省のほうでは違反ですと、こう言う、通報しましたかと言ったら、運輸省には連絡してあります。運輸省のほうでは何をやったかと言うと、そこからぷつっと切れてしまう。これじゃだめだと思いますね。  やっぱり行政は一本で、労働省であろうが運輸省であろうと、やっぱり法は守らすように、それこそ指導し、それこそ誘導していくという姿勢がなければいかぬと思う。そういうことがないから法があっても実体はないということをいわれるわけであります。その点、ひとつぜひ見解を、つばめの問題にしてもこの問題にしても、いただきたい、こう思います。
  33. 小林正興

    政府委員(小林正興君) 先ほどの説明、若干補足いたしますが、私は、こういった契約書自体で、直ちに道路運送法上問題があるかどうかという御指摘に対しましてお答えいたしたわけでございまして、労働基準法に明らかに抵触するというようなことが行なわれるものについて、これは労働省限りで、運輸省としては何ら関知することではないという意味で申し上げたわけでは毛頭ございません。こういった、お示しの労働契約の内容が適法であるかどうかという点については、第一義的に労働官署において判断していただきたい問題でございまして、そこにおいて、これが適法であるならば、このことは直接、経営者との間で結ばれた契約でございますので、そのことで名義貸しの問題は起こらないと、こういうことを申し上げておるわけでございます。そのほかに、経営者として当然順守すべき規定が、運輸規則等においてこまかく規定されておるわけでございますので、そういったことにつきましては、具体的に、個々に会社の内容について調査をいたしまして、道路運送法上の判断をいたすことを申し上げたわけでございまして、労働基準法違反であれば、当然これは労働省におきましても、しかるべき厳重な措置が講ぜられるわけでございますし、私どももそういった行政と同じ方向で、こういったものについての是正の問題あるいは事業の停止の問題等につきましては、適法、適正に運営されるように指導していく立場にあることは申すまでもないことでございます。
  34. 佐藤文生

    政府委員(佐藤文生君) 私、いま先生の質問を聞いておりまして、実は運輸行政全般にわたりまして、たとえば労使の問題、これは労働省でございますと、それからわれわれのほうは、国鉄であろうが、タクシー営業であろうが、バス営業であろうが、タクシーであれば道路運送法はこうこうであるとか、それから国鉄でいえば国鉄法の基準によってどうだということで、労働問題は労働省でございます。運輸省はそれに関知しませんと、こういう考え方が、ともすれば、御指摘のとおりにありがちなんでございます。運輸省のいままでのやり方を見ますと、私個人から見まして。  そこで、そういうことじゃ悪いんじゃないかということで、やはり労働問題で違反をしている問題がありそうだと、こういうぐあいに見られたときは、やはり運輸省責任を持って行政的に相談を受け、またサゼスチョンを与えていくという前向きな姿勢が必要であろうと思います。したがって労働問題は、これは労働省だから私どもは知りませんと、一定の免許の基準によって免許します。あとはしっかりやりなさいと、こういうやり方になりがちであるという運輸行政というものは、私は軌道修正すべきであると、こう考えます。したがって国鉄紛争の問題で、何が労使間でやられておるのか、それはあまりわれわれは知らないで、大きく浮かび上がって、労働省が出てからその内容を初めて知るというような、こういうようなことがあっては悪いわけです。したがって、タクシーの問題にいたしましても、バス経営の問題にいたしましても、労使紛争で労働省にいく前の行政指導の、いろんな面については、やはり前向きで相談を受け、指導していくという姿勢は、私は、とっていくのが正しいと、こういうぐあいに考えておるわけです。
  35. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 関連。  金良参考人にちょっとお伺いしたいと思うんで、いま伊部委員から何点か質問があって、そして労働省運輸省、それぞれ御答弁がありました。その中で、伊部委員のは具体的な事実を指摘をして言っているわけなんです。ところが労働省の答弁、それからいまの運輸省の答弁は、比較的きれいごとの答弁で言っているわけです。  たとえば労働省の答弁でも、調べました範囲ではといったような前提がついているわけです。だから、一体どの程度に調査をしたのかという問題がよくわからない。それからいまも、違反がございました場合はしかるべき措置と、こういうふうに言っておるわけです。しかるべき措置というのが実効のある措置なのかどうか、このことがわからない。だから、もう私どもしろうとの立場から聞いておりますと、議論がすれ違ってしまう。これは俗なことばに、すねに傷を持つということばがあるんです。伊部委員の場合は、一緒にふろへ入ってすねに傷があるのを具体的に見たと、こういうことを言っているわけだ。労働省側の答弁は、いや洋服をきて、ズボンをはいているところを拝見しましたら、ズボンの上から見たところでは、すねに傷があるように見えませんでしたと、こう言っているんだよ。それではしょうがないんですね。だからこういう点、ほんとうに傷があるのかないのか、ああいうきれいごとの答弁でよろしいというものなのかどうか、この辺がどうもわかりかねるわけです。だから専門の立場にある参考人から、実はどうなんだということ、きれいごとの答弁だけ聞いたんじゃわからないから、そのすねの傷というものをズボンをまくってみた場合、ほんとうにあるのかないのかといったようなことですね、それらの点について、参考人立場で証言をしていただきたいと思います。
  36. 金良清一

    参考人金良清一君) 瀬谷先生の質問にお答えする前に、先ほど、運輸省の佐藤運輸政務次官が、ハイタク労働者賃金のあり方については基本給中心の制度が望ましい、それでそれをやはり発展さしていくべきだということがありましたので、私は、ぜひ運輸省が関係産業を指導しなきゃならない、監督しなきゃならないという立場から強めてもらいたいということを、特にお願いをしておくと同時に、佐藤政務次官のお話は、全くわれわれは賛成をしたいというふうに思います。  で、いま瀬谷先生がおっしゃられたことなんですけれども、オール歩合あるいはリースをなぜ労働者反対をするのかということなんです。これは一触即発、命をかけて働かなければ自分の賃金が保障されない、そういう状態にあるからわれわれは反対なんです。もう一つは、国民がひとしく願っているものは何かといいますというと、特に面の交通では、つまり安全輸送を実現させなければいけない、交通事故から命を守らなきゃいけない、公害から守らなきゃいけないということが、たとえそれが働いている労働者であったとしても、国民的ないわゆる願いを実現させるためには社会的な任務があると思うんです。したがって私たちは、いまのオール歩合に逆行するような賃金制度というものはあってはならないし、もしこれを許すとするならば、ハンドル労働者が命を的に働かなければならないというだけじゃなくして、事故の増大によってたいへんな政治的な、社会的な問題になるんじゃないだろうか、こういうように思います。そういう立場から、私たち歩合というものに反対し、リースというものに反対しているんだということをよく理解をいただきたいと、こういうように思うわけです。  さてそこで、運輸省に関係して、山口の問題で道路運送法上の違反であるかないかという問題なんですけれども、私はここへくる前に、八年来、そういう違反の問題を全国自動車交通労働組合八万二千の組合員を調べて改善をしてもらいたいということを文書で提出してあります。そしてまた、全国交通運輸労働組合協議会の、いわゆる全交運の名のもとで具体的な文書というものを提出して、その改善をお願いをしてきております。どことここということを言う必要はありません。こういうことがあります。たとえば運転手が月に三万五千円を会社に払えば、あと一切は運転手の自由、これがまかり通っているんです。静岡です。会社名をあげろというならばあげますけれども、これは文書であげてありますから、あえて言いません。また京都のミナミ、桂タクシー、ここは七万五千円払えば、あと一切運転手の自由です。それだけではありません。還元方式リースや、あるいはオール歩合になったらどういうことが起こるかというと、先ほども言いましたけれども、一人の運転手が既定の労働時間と労働日数でまじめに働いて、せいぜい京都市内で二十五、六万が平均です。一番、よく働いた人で二十八万ぐらいです。  ところがミナミ、桂タクシー会社労働者リース制をやられておりますけれども、これは四十一万円月間かせぐんです。四十一万円の水揚げをあげるということは、うちへ帰るにも帰れない。女房や子供に会うにも会えないというぐらいな状態でなければ四十一万円はかせげません。こういうことがまかり通っているんです。  それから、つばめの問題が出ましたけれども、確かに賃金、給与形態の中では数字で書いてあります。しかし実際には、それは名目だけでありまして、運転手は異口同音、幾ら幾らかせいでこうしかならないんだということをはっきりと言っているんです。ここの運転手とわれわれは懇談をしました。何を言ったかといったら、魅力がないからしかたがないんだ、退職金も世間並みの状態じゃないからだめなんだということで、会社のいう方針にやむを得ずついているんだということを言っているんです。現実に。  それから私たちは、こういう問題をどうしたらいいだろうかということで、オール歩合の問題について実態調査しました。そのうちに、八五%がオール歩合反対なんです。現実にオール歩合をやられているところで、八五%の労働者反対なんです。確かに、川鍋会長もおっしゃられたように、ある事業所、一部の人たちはオール歩合に賛成しているところはあります。これはもう全く、三十七万人のハイタク労働者からいうならば、ほんの部分的なものなんです。多くの場合は、やはり安定した賃金制度、安全輸送のできる賃金制度、事故のない賃金制度ということを望んでいるということを、ぜひ私は理解をしてもらいたいと思うんです。  そこで問題は、どうしたらこの問題を解決できるかということは、やはり企業企業家として責任を持たなければいけない。つまり職場の中で、労働者かほんとうに定着する——確かにいまハイタクの中では、いろんな条件がありまして、大体一五、六%から二〇%労働不足であることは間違いないんです。しかし運転手がいないかといったら、そうじゃないんです。運転手はいるんです。来ないんです。私はそういう意味で、やはり世間並みの賃金、人間性、つまり地位の回復、こういうものを前提として、しかも安全輸送のいわゆる事業として認可を受けているんだ、公共輸送機関として認可を受けているんだという責務をやはり企業側が全うするようにしなければいけないんじゃないか。  その場合に、いまの企業家に対して一番大事なことは、行政当局がそれにふさわしい制度をやるということが最も私は望ましいと思うんです。運賃を上げれば逆に自賠保険を大幅に引き上げる、ガソリン税を大幅に引き上げるということでは、同じことを繰り返すわけです。だから私たちは、助成政策というものを抜本的に政府はとるべきであるということを何度も要求し、交渉し、今日まで訴えてきているけれども、それが実現できていない。  そこで一番問題なのは、あの運輸政策審議会ハイタク事業改善ということで取り上げておりますけれどもハイタク事業改善しようという政策を立案する、あるいは実施していく上で、使用者の代表や労働者の代表が一つも呼ばれてないというところに問題があると思うんです。机の上だけでは問題は解決できません。働いている労働者がいまどういう条件であるのか、そうして人はどういうことを望んでいるのかということを、当然私は運輸省運輸省として、われわれに呼びかけるなり、あるいはわれわれの意見を聞くなりして改善策をつくっていくべきじゃないか。私たちは、この問題についてわれわれを参加させてもらいたいということを何度も申し上げているわけです。  幸いに、佐藤運輸政務次官が、必死になって改善策をいま模索中だということでありますから、私はやっぱりあの答申というものを、この際たな上げしてもらって、あらためて、利用者の便にほんとうに真にこたえられるような、そこで働いている労働者がほんとうにまじめに働けるような政策を打ち立てるために、公労使三者構成でもけっこうですから、運輸省の中に委員会をつくるなり協議会をつくるなりして、抜本的な対策をとっていくべきじゃないだろうかと、私はこういうふうに考えます。で、私たちは、文書で、具体的な実例というものを、運輸省にも労働省にも上げています。  それで私たち、もう一つ強調しておきたいことは、確かに営業の問題については運輸省の所管であるかもわかりません。しかし公共輸送機関であるという名のもとで、道路運送法の施行規則の中には過労運転の防止ということがちゃんと明確にされているわけなんです。このことは、労働者労働条件や制度上の問題を抜きに、ただ運行の責任管理責任というだけで事が済むという内容ではないんじゃないか、こういうように考えます。そういう意味からも、私はやっぱり、昭和四十五年に通報制度がせっかく実現できたわけですから、もっともっと真剣な対策をとっていくべきじゃないだろうか、このように考えております。  私たち、確かに労働集約産業ですから、むずかしいと思います。しかし、われわれ自体が、この産業が維持されなければならないという場合に、水揚げの問題を通じて労働者が理解していることは、一定のやっぱり責任というものを当然達成すべきだと思うんです。それはやらなければいけないと思います。しかし、それにもまさるものは何かといったら、そこでいわゆる安全輸送が実現できる、交通事故防止が実現できるというような労働条件というものを実現させない限り、私は不安というものはそのまま持続するんじゃないか、ひいては国民に大きな不安を与えるんじゃないか、このように考えます。  そういう意味で、いまの瀬谷先生にお答えしたわけですけれども、私たち、現実に、上だけ見て何もなかった、これは労働省はかなりこの労働行面の問題については協力いただいております。これは事実です。ところがほんとうにその中身をつかまえてやっているかといったら、そうじゃないんです。去年からことしにかけての基準法違反ハイタク企業の中で調べたら、若干改善されたとはいうものの、他産業、中小企業から見るならばまだまだ多いということを認めているわけですね。ですから、われわれが指摘をしてなおかつリストを提出した以上は、もっと具体的な調査というものをやはり掘り下げていくべきじゃないか。そうすれば、あいまいな論議に終わらないで、的確なやっぱり結論というものを引き出すことができるんじゃないか、このように考えております。  私たちは、いつでも、その職場で働いておる労働者を、必要あればどのような機関にでも、参考人として出し、あるいはまた証人として出す用意があるということについても申し上げて、いまの質問にお答えをしておきたいと思います。
  37. 伊部真

    伊部真君 まだ相乗りの問題だとか名古屋の問題みな積み残しになってしまいましたけれども、最終的に、私は政務次官にひとつお願いをしたいんですが、一つは、いまもお話がありましたように、法違反であるかどうかということについても十分に掌握できていないというのが現状なんですね。いま言ったように、形式はそうだけれども実態はこうだというのは、私が事実、何も、つばめだとかなんとかいうのは、聞いたわけじゃなしに、自分が車に乗って調べたところでもそうですね。運転手がみんなそう言っているんですよ。運転手の名前まで私は聞いて、それはみんな知っているわけです。ところが当局のほうは、いや調べたら賃金台帳はこうですと、きれいごとに終わっちまっているわけです。これでは審議になりません。したがって、これはぜひ、運輸省労働省基準局が一緒になって、その実態をつかんでください。いまのような調べ方ではちょっと無理だと思いますからね。何らかの方法で——初めから予告してこうすぱっと行ったんでは、これは形式上のことですから。そうじゃなしに、ほんとうの姿はどうかということを一ぺん調べるような、そういう手を、運輸省労働省が一緒になってひとつ考えていただけるかどうか。これはぜひやってもらいたい。そうでないと、私らも論議が空論になりますからね。  それからもう一つは、私は、いろんな問題がありましょうから、きょう短兵急にここで、どういう形をというのはちょっと無理かもわかりませんが、いわゆるこのハイヤー、タクシー行政の問題、これは先ほど申し上げたように、答申の問題もありましょう。あるいは輸送改善の問題もありましょう。これらを含めて、やはりいま英知を集めるということが必要なんではないでしょうか。その意味で、どの委員会にどうせいというふうなことを、私ここで回答を求めようとは思いませんけれども、少なくとも、労使と運輸省とで定期的に何回か会合して、その問題について改善策を考えていくというふうな前向きの形をとるべきではないだろうか。聞くところによると、労働組合のほうからいろんな陳情に行ったり話に行くという、そういう形だけで私は満足してはいかぬと思うのです。やっぱり進んで、行政のほうが、使用者側にも意見を聞く、労働者側意見も聞くと。その上で行政に資していく。私はそのことが、何も拘束されるもんでもないと思いますから、少なくともその道は進んで求めていくというのが必要ではないかと、こう思うんです。ですから、この二つについて見解をいただいて、私は質問を終わりたいと思います。
  38. 佐藤文生

    政府委員(佐藤文生君) 先ほど私も申し上げましたとおりに、運輸省行政の中に、一番大きな柱として、やはり労使間のお互いの協力によって、お客さんといいますか、市民を中心にした運輸行政を行なっていくという観点から立ちますというと、労使協力によるところの円滑なる運行が各分野で行なわれていくということは重要なことだと思います。したがって、いま先生の言われたような一つの問題点が起こりましたならば、運輸省運輸省として労使間のいろいろな問題についてフォローしまして、十分に労働省と連絡をとりながら、その内容をまず運輸省がつかむ、そうして労働省にお伝えする、そして労働省の考え方をまた受けて行政指導をやっていく、こういったような、労働問題に大きく発展する前にやる分野がずいぶんたくさんあるわけであります。そこら辺が盲点になって、空白でありますというと、円滑なる運輸行政ができませんので、先生の御趣旨ということは、十分配慮いたしまして、十分に運輸省の出先機関を督励いたしまして、そういう問題について実態を把握していく、労働省と連絡をとりながらやっていくということで、前向きでやっていきたいと、こう考えております。
  39. 伊部真

    伊部真君 もう一点、委員会なんかの会合を持つかどうか。
  40. 佐藤文生

    政府委員(佐藤文生君) 委員会の会合その他は現在でもやっておりますが、さらに現状把握についての委員会の積極的な討論というものが行なわれて、それが運輸行政に反映するように考えていきたいと、こう思っております。
  41. 伊部真

    伊部真君 いまのは、私は、既存の委員会の問題もありますけれども、そうじゃなくて、労使と一緒になって今日のタクシー行政問題全般について議論をする場というものを定期的に持つべきではないかということです。
  42. 佐藤文生

    政府委員(佐藤文生君) 先生のいまの御質問は、新たなひとつ、いろいろな委員会を少しく何か考えてつくって、そして少しフォローして突っ込んでいけと、こういう御意見でございますか。
  43. 伊部真

    伊部真君 私は既存のいろいろな委員会がありますけれども、私はあんまり信用してないんですよ、正直言って。というのは、私は運輸行政の中の各委員会というのは、運輸審議会もあるけれども、学者としても、ほんとうにこの学者がたんのうな学者であるのかどうかということになると、的はずれの学者がたくさんおるし、運輸行政に財界の人だとか、そういう人がたくさんおったり、業界の人たちというのは力がないのか何かしらぬけれども、とにかくそれが、タクシーによらず、何の委員会でもそうですけれども、何の委員会でも、どうも場違いな人が非常に多い。そうして肝心な、たとえば貨物なら貨物でも、物流のほうのトラックをやっている人は全然入ってない。タクシーの場合でもそういう感じがどうもするし、いまお話があった業界のほうもあんまり信用してない。ぼくもそういうように思うんですよ。これじゃだめですよ。だからそれを改組してもらいたいと思うが、それでは非常にややこしいから、それならせめて、私は今日の業界は非常に緊迫した緊急な事態にあるわけですから、これはもう労使問題が中心になって、業界全体の問題がありますから、積極的にひとつ、形式はどんな形式でもいいです。運輸省と、少なくとも次官、大臣が入られて、そして経営者と労働組合と年に何回かは定期的に持つ、そして今日の状態について、国民の批判も爼上にのぼせよう、業界意見も爼上にのぼせよう、やっぱり組合の意見もそこにのぼせて、それをみんなが一緒になって、片方が取り締まるお上だとか、おまえは言うことを聞くんだというような立場はもちろんないと思いますけれども、そういうことでなしに、ほんとうに今日の問題をみんなが英知を集めて解決するという場を持つべきではないか、それは運輸省としてお考えになったほうがいいんではないだろうか、それはどう思いますか、ということです。
  44. 佐藤文生

    政府委員(佐藤文生君) ただいまいろいろな問題が出てまいりまして、かねてから私も、タクシー業界におけるいろいろな問題点が浮き彫りにされましたので、いま川鍋さんからもここで、政務次官、われわれの考え方を正式に今度は言うからよくひとつ聞いてくれと。それから労働者側の代表の方もおられまして、先ほどの意見もありましたので、そういった意味で、一応、大臣、政務次官、われわれのクラスで、局長も入れまして、年に何回か話し合いをする機会をつくりたいと、こういうぐあいに思っております。  それから形式は、どういう委員会にするかどうかということは、ここでお答えできませんけれども、具体的にそういう行動を起こします。これを申し上げましてお答えとしたいと思います。
  45. 伊部真

    伊部真君 では終わります。
  46. 長田裕二

    委員長長田裕二君) ほかに御発言もなければ、本件に対する本日の調査はこの程度といたします。  午後一時二十五分まで休憩いたします。    午後零時二十五分休憩      —————・—————    午後一時三十九分開会
  47. 長田裕二

    委員長長田裕二君) ただいまから運輸委員会を再開いたします。  この際、委員異動について御報告いたします。  岩本政一君が委員辞任され、その補欠として西村尚治君が選任されました。     —————————————
  48. 長田裕二

    委員長長田裕二君) 港湾法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  49. 森中守義

    ○森中守義君 前回、法案の大綱的なことを少しくお尋ねいたしましたが、きょうは、さらに継続いたしまして、少しく内容に立ち入ったお尋ねをしたいと思う。  新旧の、新旧というよりも現行法と改正案の目的条項にかなり大きな変化、変化というよりも、法律目的それ自体が一変をしているという、こういう感じを濃厚に受けるのです。つまり現行法では、港湾管理者の位置づけといいますか、非常に正確になっているのですね。ところが改正案によれば、これ自体が削除、しかも国家事業といいますか、あるいは国家目的というか、こういうものがきわめて正確に位置づけされている。こういうことになれば、俗説的にいわれる自治法の侵害ではないかという意見もさることながら、中央集権ということがきわめて顕著なものではないか、こういうように受け取るわけです。そうなれば、港湾法それ自体、在来の目的と改正目的というものが根底において変化をする、こういう実は判断をするのですが、どういったように認識すればよろしいのか、まずこの辺からお伺いしたい。
  50. 岡部保

    政府委員(岡部保君) この第一条の目的を改正いたしました点で、従来もいろいろと御議論いただいたところでございますが、私どもの考え方では、しばしば申し上げておりますように、現行法の目的、いわゆる「港湾管理者の設立による港湾の開発、利用及び管理の方法を定める」と、この「港湾管理者の設立による」というところが、昭和二十五年にできました当時の非常に大きなウエートを持っている表現かと存じます。と申しますのは、従来港湾の基本的な法律というものがございませんで、戦前にもいろいろ議論をされたところでございますが、昭和二十五年までついに基本的な統一された一つ法律というものができなかったわけでございます。それを昭和二十五年という時点でつくりました。それの非常に大きな点は、港湾管理者というものを設立するというところにあるわけでございます。それで、しかもその港湾管理者というのは地方であると、いわゆる地方自治体が中心——もちろんこの法文上では港務局という姿をとっておりますが、現実の問題としては地方公共団体がこの管理者になるという点が非常に大きなウェートであったわけでございます。   〔委員長退席、理事江藤智君着席〕  そこで今回の改正で、この「港湾管理者の設立による」というような字句が全く消えてしまいました。この点につきましては、ただいま先生の御指摘がございましたが、私ども決して中央集権とか、あるいは地方の自治権を侵害するとか、そういうような感覚は全くございませんで、むしろこの港湾管理者を設立するという問題については非常になじんできたと申しますか、もう各地方では港湾管理者というのはわれわれのものなんだという感覚が普通な感覚になったわけでございます。  そこで、むしろこの港湾の問題といたしましては、「交通の発達及び国土の適正な利用と均衡ある発展に資するため、」云々ということで、何と申しますか、非常に直接的な目的をここに記載したわけでございます。  また、いろいろな御議論の最中に、もう少し国民の福祉であるとか、そういうような点について触れるべきではないかというような御意見もございましたけれども、何と申しますか、ぴしっと直接いえるという問題を目的の条項に限定いたしたというような考え方でございますので、先生のおっしゃるような中央集権化であるとか、そういうようなことをベースにしてこれの改正をしたということは決してないわけでございますので、その点は御了解いただきたいと存じます。
  51. 森中守義

    ○森中守義君 これは由来、いかなる法律といえども、目的の条項というものがその法律の性格を証明づけるものなんですね。それでいま岡部局長のお答えからいけば、なるほどそうなのかという理解はできますよ。しかし、その法文上明定をされているものと、御説明のようなある種の精神解釈的なものにはかなりやはり段差がある。これは私は否定できないと思う。だから法文それ自体をこのとおりに読み上げていくならば、名実ともに港湾管理者の位置づけというものは消滅をしていく。あまり聞こえのいい言い方ではないけれども、やはり中央集権というような、そういう法律自体の性格が変わったし、ひいては法律効果も経過的にそういう方向をたどるのではないか、こういう実は疑念があるのです。  よって、その辺のことが心配のあまり港湾管理者グループであるとか、あるいはその外郭的な各種団体等からも、なぜ港湾管理者の位置づけを消滅させたか、中央集権化ではないかと、こういう実は意見が出るのは決して偶然ではない、こういうふうに思うのです。  そこで、そうであるとするならば、いま局長の言われる決して精神解釈ということに私は限定する必要はないと思うけれども、具体的に港湾管理者の地位が承継できるような保障条項がどこかにあるのか、残念ながら見てもないんです。だからこの際、ひとつ局長なり、あるいは大臣から、これは精神解釈だけじゃありませんと、名実ともに港湾管理者の位置づけは不変のものであるという、やはり証拠というものをお示しにならないと、港湾管理者あるいはこれの関係団体等においては釈然としないのじゃないですか。さもなければ、政令もしくは省令等によってそういう保障をするのかしないのか、どこかにこういう一条項が入っていなければ、法律の目的が変わった、性格が一変したというようなことで、将来長くこの種問題は具体的な事実関係を通してとかく紛争の要因をなすものではないだろうか、こういうふうなことが懸念をされるのです。よって、改正案のいずれの条項にいま言われるような管理者の位置というものは不変のものである、中央集権ではないのだというような証拠づけというものをひとつやっておいてほしい、いかがでしょうか。
  52. 新谷寅三郎

    ○国務大臣新谷寅三郎君) お話の点はごもっともだと思います。そこで、いま目的の問題で、これは私は目的のところでどういう表現を使いましても、これはここの法律がどういうことをねらって書いておるのだということですから、かりにここに港湾管理者という字があろうがなかろうが、この法律の各条をごらんになると、港湾管理者の位置というか、権限というか、それを現行法に比べて著しくこれを制限をしたり、制約をしたりというものはないはずです。  むしろこの間も、これは伊部先生だったかどなたかの御質問のときにお答えいたしましたが、今度のこの港湾法では、現行法を見ますと非常に強い規定があるんですね。たとえば四十八条のごとき、これは運輸大臣がきめまして、それで一方的にこうなければならないのだと、この法案についてはこういうふうにしなさいという港湾管理者のきめた計画も運輸大臣が変更を求めるというような、非常に強い規定があるわけですが、今度はそういったのをもっと具体的に、いわゆる民主的に近代的な法制にしようというので、港湾管理者を主体にして、ただ運輸大臣としては、全国の港湾に対する包括的な指導権というものは持っていることは、これは事実ですから、そういう限度にしておいて、あとの具体的な港湾計画、それからそれの実施というものは、港湾管理者を主体にして、すべて動かしていきますということを明示しておるわけです。三条以下に。  そういう点から見ましても、これは一例です。一例ですが、港湾管理者の地位を、位置づけを、これを低くしようとか規制をしようという意図は全然持ってない。で、今度また新しく規定を盛りましたような、環境の保全であるとか、あるいは安全であるとか、公害の問題であるとか、そういった問題についても、すべて港湾管理者が主になってやはり計画をお立てになる、それに対して、運輸大臣としては、それは全体の計画からいいまして、全体の計画の上から多少考え直したほうがいいという点があれば、これは注意はいたしますが、最終的には港湾管理者がきめるんだということで、その法制はでき上がっておりますし、港湾管理者がきめたものに対して、国としては、非常に公共性の強いところは、その部分国が補助をする、しかし主体は港湾管理者であるということは、各条文について明瞭にいえることです。  ですから、いま御心配のような点は、何かこう字句が変わったので、これは特別の意図をもってやったんじゃないかというような御懸念が出るのは一応もっともですけれども、全体を通覧してごらんになると、そういう意図はありません。むしろ港湾管理者というものを立てて、港湾管理者にりっぱな計画をさして、それに対して国が応分の援助をしていこうということで、港湾というものは整備をされる、それから運用されるというふうに考えておりますから、港湾管理者に対して新しくいろいろの権限を与えたりしている点はたくさん、方々にありますから、それはそういうふうな一条の問題ではなくて、全体をごらん願うとよくわかるんじゃないかと、こう思いますから、その点は了承していただきたいと思います。
  53. 森中守義

    ○森中守義君 局長の御答弁と大臣のいまのお話は大体同じようなものですが、決して私は、そういう御意見を否定するという意思じゃありませんが、重ねて問うておきたいのは、現行法の一条の中に、ことさらに港湾管理者というものが浮き彫りにされている。つまり、位置づけ、定着づけというのは何を一体根拠にしたものなのか。言うまでもなく、自治法の精神を踏まえ切ったものだという理解をしておりますよ。そうなると、これを消滅したということになると、いま各条項を見れば、そういう事実はないんだという大臣の御説明も理解できますけれども法律の目的条項に、自治体の一つの権能、権限として保障されている自治法をうたい上げている以上、これを消滅さしたということになると、いささか法案の体系からいって法律の体系からいってどうかなあという気がするんです。  ですから現行法の一条に、港湾管理者というものがことさらに定義づけられているゆえんは一体何なのか、これを御説明いただきたいのと、それと、いま一つは、四十三条の五項、これを大臣が言われる、いずれの条項を見てもそういう懸念はないんだよと、こういうことで包括的に各条章をお示しになりましたが、私はこの四十三条の五項の中で、一体条例というものは各管理者が画一的に、いわば一つの準則的なものをつくって、これで制定ができる可能性があるかないか。条例というものは地方議会等の意思によるものですから、必ずしもこういうものは画一的にはむずかしいのじゃないか。条例をつくれといっても、むろんこれは拒否ができる。こういう、実は全国の港湾管理者の中で、条例制定をめぐって凹凸が出てくるんじゃないか、こういうことが感じられるんですね。  それならば、一体その港湾管理者というものが第一条から抜けたことがいいのか、現行法どおりであるのがいいのか、これはやっぱり条例の制定をめぐって一つ議論になる可能性も出てくるんじゃないかというように思うんですがね。これは私は一つの例を示したに過ぎないけれども、こういう条例の制定等をめぐって画一的にできるという認識にお立ちなのかどうなのか。この具体的な一つの例示をもってお答え願いたい。
  54. 岡部保

    政府委員(岡部保君) まず先生の、最初の御質問でございます第一条の目的条文から「港湾管理者の設立による」という字がなくなったという点につきましては、先ほども私御説明申し上げましたように、私どもの考え方としては、昭和二十五年に現行法が制定されましたときの何と申しますか、社会的な背景を非常に強くバックにしておった一つの条文であるというふうに、私どもは理解をいたしております。また今回の条文で「港湾管理者の設立による」というのをそのままもしも生かしたといたしますと、たとえば今回新たに追加になりました港湾区域外の港湾の施設の問題でありますとか、これは安全基準の技術基準の問題でございますけれども、それからまた開発保全航路の問題、これは港湾管理者と直接の関係はないという問題がございます。そういうものをこの港湾法に含めること自体がどうであるかという議論はありましょう。しかし、それは別といたしまして、今回の含めたいという意味から申しますと、ただ港湾管理者の設立による云々という一つの文章では表現できなかったんではなかろうか、また別の文章に二段がまえ、三段がまえにしなければならなかったんではなかろうかという感じがいたします。そういうようないろいろな点でこういうことがあったわけでございます。  それからさらに、この現行法から新しい改正法に移りましても、あくまでも港湾管理者というものが地方公共団体のと申しますか、地方の自治の精神に基づいているんだという点につきましては、これは今回改正をいたしておりませんが、現行法の四条で管理者の港務局の設立という条文がございます。ここで明らかに、港務局というのは、いわゆる地方公共団体が構成すると申しますか、こういうところが設立するんだという、これは現行法の規定がございます。また港務局でなくて、地方公共団体が直接に港湾管理者となるというのは三十三条に、これも改正はいたしませんが、そのまま条文として残っておるわけでございます。  またさらに、港湾管理者の権限をむしろ強化したという意味では、十二条の港湾管理者の業務というものをふやしました。また三十八条の二ということで臨港地区の行為の規制権を与えました。また先ほど先生が御指摘ございました四十三条の五という、環境整備負担金という段階、これも一つの港湾管理者としての新たな権限を強化したというような意味で、私どもはあくまでも地方である港湾管理者、しかもその港湾管理者の権限を強化するというふうにつとめたつもりでございます。  そこで最後の先生の御質問でございますが、条例で云々ということ、これは私どもいろいろこれを考えるときに、港湾管理者とも相談をいたしました。その際に、こういう環境整備負担金を徴収するというのは地方公共団体として決して楽な仕事ではない。先生のおっしゃるとおりでございます。そこで、こういう点については、なるべく、ここでも書いてございますが、政令で定める基準に従って条例で云々ということにいたしておりますが、これはむしろ地方公共団体である港湾管理者の皆さん方の御意見は、なるべく政令段階で詳しく基準をつくってくれないか、そういうことによって条例というのを、なるべく画一的でもあるし、さらにつくりやすいというふうにしてもらいたいという御要望がございます。  ただ、あれをあまり、どこまでかけるかという問題がございますので、ただいま検討中ではございますけれども、先生のおっしゃいました御指摘の点は確かにあると思いますので、その点については十分注意をするつもりでございます。
  55. 森中守義

    ○森中守義君 いまのことなどは、各条項的にずっともう少し、疑点もありますから自後問いただしていきたいと思いますが、この改正案の一条の中で、「交通の発達及び国土の適正な利用と均衡ある発展に資するため、港湾の秩序ある整備と適正な運営を図るとともに、」、こういうことですね。これは具体的にどういうことをお考えなのか。ただいわれている大綱的な構想としてはわかる。もう少し具体的にひとつ御説明願いたい。
  56. 岡部保

    政府委員(岡部保君) なかなか具体的に御説明申し上げるのはむずかしいのでございますけれども、私どもの考えている内容と申しますか、いわゆる今回の法改正の主眼とした問題であるかと思いますんですが、いわゆる、しばしば申し上げておりますように、「港湾の秩序ある整備と適正な運営を図る」というところが港湾の整備の直接の目的であるかと存じますが、その整備というものがどういう姿であるべきだというところで、私どもやっぱり一番頭にありますのは、港湾の環境の問題でございます。港湾の環境というものを整備しなければならない、港湾の環境の保全をはからなければならないということ、これが一つの、何と申しましたらよろしゅうございますか、港湾の整備において非常に重要なウエートのあるところでございます。  ところが、そういう感覚だけではございませんで、たとえば港湾というものの国全体として見たときの一つのバランスの問題、いわゆる開発あるいは利用、保全の国全般として見た場合の一つのバランスの問題、あるいは変な国土の開発——近ごろ非常に問題にされておりますが、いわゆるアンバランスな国土の開発というものをむしろ避けるという意味で、ここで「均衡ある発展」という字句を使っておりますけれども一つのバランスのとれた発展というものを考えなければならぬ、そういうような開発、国土のこれからの進むべき道というときに、この港湾の整備と申しますか、港湾の進むべき道というのが非常に大きなウエートを占めておるという感覚で、ここに「国土の適正な利用と均衡ある発展に資するため、港湾の秩序ある整備と適正な運営を図る」という言い方をいたしたわけでございまして、したがって、どうもあまり御答弁にならぬのでございますけれども、また、具体的と言われましたのに、はなはだ抽象的な答弁で恐縮なんでございますけれども、私どもの考えておるところは御推察いただけるかと思いますので、答弁させていただきます。
  57. 森中守義

    ○森中守義君 幾ら推察してくれと言われても、言われないことは推察するわけにいかない。推量や推察でやっていくのは非常に危険ですからね。  そこで逆に、私のほうから具体的に少し申し上げてみたいのは、この一条というものが、さっきから申し上げるように、根幹的に内容を変えてきた。そこでいま、この前もちょっとお示ししましたが、こういうのがある。それから経済社会基本計画。この二つのものを私の手元で用意してあります。そこで前者の「日本列島改造論」の序文の中で「都市集中の奔流を大胆に転換して、民族の活力と日本経済のたくましい余力を日本列島の全域に向けて展開することである。工業の全国的な再配置と知識集約化、全国新幹線と高速自動車道の建設、情報通信網のネットワークの形成などをテコにして、都市と農村、表日本と裏日本の格差は必ずなくすことができる。また、ひらかれた国際経済社会のなかで、日本が平和に生き、国際協調の道を歩きつづけられるかどうかは、国内の産業構造と地域構造の積極的な改革にかかっているといえよう。」、こういっているのですね。それと経済社会基本計画とが表裏の関係にある。こういうように実は経済社会基本計画もなっている。これを受けているのですね。そこで岡部局長の言われる推理、推察というたぐいに実は私は踏み込んでいくのだが、おおむねこの目的の条項というのが、いわば国土の開発であり、あるいは過疎過密という問題であるとか地域格差であるとか、こういうものに当然つながったものでなければならない、この言い方からするならば。それならば前回の質問あるいは杉山君等の質問運輸省のお答えでは、「この問題とは無縁のものだ」、前回の私の質問に対しては、「結果においては結合される可能性があります」、こう言われる。「立案段階ではそうじゃなかったのだ、」こういう説明なんだけれども、必ずしも立案段階で別個のものではなかったが、結果において結合するという議論は、ちょっと私としてはいただきかねる気がする。ねらいがこの辺にあるんじゃないですか。  そのことをいま少し正確に割り切っておきませんと、これからの産業政策あるいは経済政策とか、ひいては貿易構造であるとか、しかもこのことがいま最大の問題である公害あるいは全体的な総合交通体系の問題と、きわめて緊密な関係がある、こう思う。だから、新しい産業経済の政策を展開する一つの緒にしようとするのであるのか、いやそうじゃないのだ、あくまでも港湾管理のより効率的な、より良好な維持管理をやっていこうという限界にとどまるものであるのか、それとも新たな政策展開を意図した港湾法の改正であるのか、この辺に一つの大きな私は、この法案それ自体のメリットを実は見出したいと、こう思っているのですが、いかがなものでしょうか。
  58. 新谷寅三郎

    ○国務大臣新谷寅三郎君) 私からお答えしたほうがいいように思います。  いまお示しの「日本列島改造論」、これは別にそのまま閣議決定されたものでもないし、政府の政策としてそれを取り上げたわけでもないのです。私もよく読みましたが、政策の方向としては、私たちも大いに傾聴すべきものがたくさんあると思いますが、今日まで発展をしてきました日本の経済、これを今後どういうふうに持っていくか、同時に国民生活というものを考えまして、国民生活をさらに発展させ、国民福祉を増進させるためにはどういうことを考えなければならないかということは、今度の列島改造論を待つまでもなく、経済社会基本計画においても、これは閣議決定してありますが、そこにおいても非常にはっきりとその方向を示しておるところでございます。  で、私どもはその列島改造論という著書があるなしにかかわらず、やはり国土の発展というものと国民生活の向上というようなことについては、絶えずやらなければならぬことはもちろんでございますが、まあ社会事情、産業事情、いろいろなものが変わってきますから、それに対応したような姿勢で臨まなければならぬと。港湾についてもそれは例外ではないわけでございます。  で、今度のこの港湾法の目的のところは、字句が変わったじゃないかと、こういうさっきから御指摘があるので、それに関連して申し上げると、そういうような方向で政策を実施していかなければならぬという場合に、一番目立つのは、とにかく二十五年に制定された法律ですね、いままでの法律は。で、非常にこれは、大いに貿易も発展するであろう、日本も海陸の接点としての港湾設備を大いに充実しなければならぬじゃないかという、産業成長の第一主義でもっていままでは書かれておったわけですが、それを今日の状況から見ると、やっぱり港湾というものの機能を時勢に応じて、もっと多様化していく。それから、もっとその機能を高めていくということはもちろん必要ですが、欠けておったのは環境保全であり公害の防止である、防除であるというようなことが非常に明らかになってきておりますから、そういう点を考えて、今度の港湾法の改正というものは、相当内容的には、これだけで十分じゃありませんけれども、やっぱり港湾を中心にしての国民の福祉というものを十分考えて予算も取り、それに応じた法文の整備もしていきたいという意図を持っておることは事実でございます。  そういう意味を含めますと、いままでの港湾というものは、ただこういうふうにして管理するんだよと、こういうことでは足りないので、およそ港湾というものはこういう具体的な目的に向かって進むのが、国民の福祉にもつながるし、日本の国土の発展というものにつながっていくんだという意味をもちまして、この第一条の規定をこういうふうに変えたのでございます。  でございますから、ちょっと御質問の趣旨と、あんまりはっきりと食い合いませんけれども、私たちの意図しているところは、そういうところであります。といって、港湾管理者のそれなら権限を非常に縮小したり抑圧したりしているかというと、そうじゃない。さっきも申し上げたようにそうじゃありません。国民の福祉ということが入ってないじゃないかという質問も、杉山先生から出ましたが、それはもうこういう公共事業では、国土の発展とか公共の福祉とかいうことをやるのは、これはもう公共事業の当然の責務でありますから、ここにそういう字句があろうとなかろうと、道路にしろ河川にしろ、すべての公共事業というものは、そういう方向に向かって前進するのが本来なんですから、特に字句は入っておりませんのですが、入っておりませんでも、それはもう港湾法では十二分に、生まれつきの性格として考えられておるところでございますということをお答えしておいたわけですが、いまの森中先生の御質問の趣旨も、具体的に言いますと、いま私が申し上げたようなことをお考えくださって読み直してもらうと御理解をいただけるのじゃないか、こう思うのです。
  59. 森中守義

    ○森中守義君 まあこれは、できるだけ物は大きいほうがいい。ただ、でか過ぎてしりがつづまらぬというところに、いままでの政策の欠陥があったわけですからね。何もことさらによけいなことを大臣も気を使われる必要はないと思う。やはり港湾政策もある意味では百年の大計をつくるくらいの、そういう雄渾壮大さが私はあってもいいと思う。ただ計画性に緻密さがなかったり、よけいな欠陥を生じるようになっては困るんで、私が言っているのは、より小まめにきちんとしたものをと、そういうようにとられてもらっちゃ困る。  そこでもう少し話を進めてみますが、宮崎局長、この基本計画の中で在来七・二%の年率の成長率を促してきたわけですね。これからの年率の成長率はどのくらい予測しているんですか。一説には一〇%だという説もあるんですがね。どのくらい予定しておりますか。
  60. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) この計画におきましては、従来の重化学工業重点、輸出重点の産業構造というようなものを相当大幅に変える。そして資源配分の点でも、ほんとうの意味で福祉充実に持っていこうというようなことを考えて、なおかつ国際的な協調も達成していくということで、全体の構成ができておりますが、そういう結果、成長率としては、この期間において大体九%程度ということが書かれております。  過去と比較しますと、過去十カ年で一〇・一%、過去五カ年で見ると一〇・九ということでございまして、それに比べると九%程度、付表では九・四という数字を出しておりますが、だいぶ低下をすると、こういうことを想定いたしておるわけでございます。
  61. 森中守義

    ○森中守義君 いまお示しのものは実績ですか、それとも一定の目標ですか。私は生産目標は七…二%だと承知しておったんですが、いまお示しの一〇・一、一〇・九、いずれもこれは実績を中心にした成長率のように受け取るのですが、どうなんでしょう。
  62. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) ただいま申し上げました過去十年とか五年の数字は実績のGNPの成長率でございます。七・二といいますのは、三十五年につくりました国民所得培増計画、この際に七・二という数字をとったことがございますけれども、実質はこのように伸びてしまった。その結果いろいろの問題が生じたことは御承知のとおりでございます。九・四と申しますのはこの計画期間、昭和五十二年度までの計画における想定成長率、こういうことでございます。
  63. 森中守義

    ○森中守義君 そうすると、いまお示しの九・四%というものは、三十五年の倍増計画における七・二%に匹敵するものである、意味合いとしては、そう理解していいですか。
  64. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) 計画の想定成長率ということでは、そういうことでございます。
  65. 森中守義

    ○森中守義君 そうしますと、七・二%の一つの計画を想定をしながら、実績においては一〇・一もしくは一〇・九、異常な高成長を示しているわけですね。そのことが今日の経済的なひずみ、あるいは社会的なひずみをつくり出してしまったわけですが、今回の九・四で実質はどのくらい想定するんですか。九・四%に対してあくまでも想定目標どおりに押えていこうというのか、ないしは七・二%に対して一〇%を上回ったということになれば、過去の経験からいくならば七・二、九・四という、二・二の上積みになっておる。そうなれば実績の一〇・一というのは相当高いものになる、高率なものになるであろう、こういったように経験的には見ざるを得ない。そういう数字をどういつだように見ておりますか。
  66. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) この計画における想定成長率といいますのは、たとえばこの倍増計画等においてはむしろ成長をどのようにして大きくしていくかということが目的でありました。そういう意味からいけば、パーフォーマンスとしてはむしろ計画以上にいったということも言えるわけでございますが、御指摘のように、たいへんいろいろ問題も別に生じてしまったということでございます。その後の計画として中期経済計画、経済社会発展計画というようなものがつくられておりますが、だんだん想定成長率を上げておりますけれども、資源の配分という点では、かなり国民生活、福祉というような面に重点が置かれるようになってきております。今度の計画ではその点がかなり思い切って転換をするということにいたしておりまして、成長率というのは、むしろ目標ではなくして、ここで考えておる政策体系、資源配分の転換というようなことを実施していく結果として、こういう程度になるであろうということに理解をしておるわけでございます。  しかし当然これは、経済の規模というものが想定とあまり大きく変われば資源配分の転換その他みな変わってしまいますから、大体この九%程度ということを目標にして運転をしてまいらなければならぬ。これはことしの二月につくったばかりでございまして、実質どうこれから変わるかということになると、現在のところ、この線で当然やっていこうとわれわれ考えておるわけでございます。ただいま非常に景気の回復が急速でございまして、瞬間風速一五%というようなことをいわれておりますけれども、これは今年度としては、ある程度計画の線よりは上回ってしまうと思いますが、五カ年間では、やはりこういった趨勢線に合わせていくということで運営をしてまいらないと、公害問題その他でいろいろ無理がくる、こう私は考えておる次第でございます。
  67. 森中守義

    ○森中守義君 七・二%を想定目標にした場合の貨物輸送総量の総ワクをどのくらい見ておったんです。それと新しい基本計画による想定をどういう量に見積もっておりますか。しかも、その中における内航海運、それから国鉄、トラック、こういうそれぞれのシェアをどういったように見積もっておるのですか。
  68. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) 倍増計画のときの貨物想定の数字をただいま手元に持っておりませんけれども、過去五カ年ぐらいで見ておりますと、たとえば貨物について申し上げますが、貨物のトン数の過去五カ年の平均伸び率は一四%程度であるということになっております。それに比べまして、今回の想定では一〇%程度の伸びになると、こう見込んでおります。トンキロで見ますと、過去五カ年一二・三%に対して九・七という程度に見込んでおります。旅客についてみますと、過去五カ年が人員数で見まして五・九ということになっておりますが、今回の見込みでは五・三ということでございまして、人キロで見ますと、過去五カ年九・四に対して六・五ということで、ある程度成長率も落ちますから当然のことでもありまするが、伸び率がダウンすると、こう見込んでおります。  そのうち、海運についてみますると、貨物につきましては、輸送トン数で見まして、過去五カ年の平均が一三・二でございますが、それに対して一二・六というふうな見込みを立てております。トンキロで見ますと、過去五カ年が一一・一に対して、今回のものが一一・三、大体まあ同じぐらいという見込みでございます。
  69. 森中守義

    ○森中守義君 いまお示しのその率じゃちょっとわかりかねる。そこで私のほうから逆に申し上げますが、田中さんの列島改造論の中で示されているものを引用しますと、こういってるのですね。「六十年に予想される貨物輸送量は低く見積っても一兆三千二百億トンキロ」、こういっている。むろんこれは、この所論からいきますと、いま企画庁のいわれる九・四でなくて、一〇%を標準としておりますね、一〇%を見ておる。これに対して〇・六だけ落ち込んだ基本計画のようですから、そうべた違いに食い違いが生ずるとも思えない、〇・六%ぐらいの落ち込みですからね。で、そういうものをずっと発展していけば、こういっておるのですね。「四十四年度にくらべて四・二倍の規模」になる。そして、「この一兆三千二百億トンキロの貨物輸送量を処理するためには、現在、全国貨物輸送量シェアで四二%を占める内航海運に全輸送量の半分、五〇%を分担してもらうことにする。」、つまり六千六百億トンキロ、これを海上輸送に依存する、こういっておる。それから「そうすれば陸上輸送は残りの六千六百億トンキロを処理しなければならない。ところが、現在の鉄道の輸送能力は最大限にみて六百億トンキロにすぎない。したがって、鉄道の貨物輸送能力を飛躍的に増強しなければ、残る六千億トンキロの貨物輸送はすべて道路に依存しなければならないことになる。そのためには実に二千七百万台のトラックが必要になる。」、こういっておる。ここに実は今回の港湾法改正と海上輸送の問題がどう結びついておるのか、これが一つの非常に重要な中身に私はなってくると思うのですね。  つまり田中論法でいくならば、一兆三千二百億トンキロの五〇%のシェアを海上輸送に持たせるのだ、そのために拠点港が必要であり、消費流通港というものが所々方々に開発されなければならない、それが地域開発に結びつくというような筆法なんです。  それで私は、一体こういう数字というものが、決して田中総理がかってにつくられた架空の数字とは思えない。企画庁あるいは運輸省であるとか通産省であるとか、まあそれぞれ関係諸官庁のデータを基礎にして出された数字だというように見るのですよ。こういうようになってきますと、七・二%時代においてこれこれである、しかも実質においては三%以上上乗せされたような状況であり、今回田中さんのいう一〇%から〇・六%は落ち込んだ計画であったにしても、七・二%と九・四%は二・二%違ってくる。相当大量な、おそらく輸送量というものが現実的に発生する可能性がある、それをどう荷さばきするか。であるならば、海上、国鉄、トラック、それぞれの部門にどういうシェアを持たせようとするのか、このことが港湾法の中にどのような仕組みとしてしかけられておるか、これをひとつ明らかにしてもらいたいと思いますね。
  70. 新谷寅三郎

    ○国務大臣新谷寅三郎君) いまの列島改造論にはいろいろな数字が出ておることもよく知っております。それからたとえば五年ないし十年先に、  一体日本の輸送需要がどういうように発展するであろうかということについては、御承知のように、たとえば私ども運輸政策審議会あたりでも、六十年ぐらいのシェアで、大体六十年にはこれくらいになるのであろうと、旅客はこう、貨物はこうというような数字を出しています。その他長期計画、策定しているいろんな計画がありますが、それぞれ前提条件が違うわけです。ちょっと前提条件が違いますと、すぐに相当大きな開きになってくることは事実でございます。そういう前提条件のもとにいま組み立てているわけです。数字を想定しているわけです。いろんな数字が出ております。いまお話しになったようなものもその一例だと思います。  で、われわれはそういったものを、やはり考えながら対処していかなければならない。それについては、分量が、たとえば、一兆トンになるとか、あるいは八千億トンになるとかというような、これはいろいろな前提条件を考えながら計算するものですから、それが必ずそうなるんだからこうしなきゃならぬというような、六十年までの非常に先を見て、具体的な数字的な計画を立てるということは、これはなかなかむずかしい仕事だと思います。また今日、そういったことまでやれるいろんな審議会とかいったものは、まあまあないんじゃないかと思います。  ただ私どもは、今度政府から出しております経済社会基本計画、この中では、一応の試算として、これにも前提条件があります。ありますが、経済社会基本計画にもその方針が書いてありますが、一応昭和五十二年度における各交通機関別の輸送量というのが試算として出ておることは事実です。まあ私たちのほうは、この間も申し上げたように、こういう数字が出てきまして、われわれも、この数字を出すについては、運輸省も一緒になって作業をしたわけです。ですから、こういったものを考えると、いまの港湾整備五カ年計画では、これは十分でないということで、この間も申し上げたように、政府の方針をきめてさえもらえば、四十九年度を初年度とする新しい五カ年計画をつくらなければならぬということをいま考えておるわけでございます。  この五十二年度の、一応の経済社会基本計画における各交通機関別の試算はどんなものかと、これはあなたの御承知のとおりだと思いますけれども、念のために申しますと、国内の旅客輸送については鉄道が四〇・八%、自動車が五四・二%、海運が〇・九%、航空が四・一%、国内の貨物輸送については、鉄道が一四・三%、自動車が四四%、海運が四一・七%と、こういうことが一応試算されておるわけでございます。  しかし、これがわれわれの当面の五十二年というものを考えた場合の一応の数字的な目標であるということは、これは申し上げなければならぬと思いますけれども、これを実行していく場合に、もう非常な世界的な意味で、経済情勢が変わりますから、それに応じたような具体的な政策を立てていかなければならないということでございまして、これは一応の目標でありますけれども、この世界の経済情勢の変動、それに伴う国内の荷動きの変化というようなものには、具体的にこれに対応するような計画を適時適切に立てていかなきゃならぬということは言うまでもないのであります。そういう一応の目標をもって計画を立てていこうという姿勢を持っておることだけは、はっきりと申し上げられると思うのです。
  71. 森中守義

    ○森中守義君 大臣、非常に重要な数字をお示しですが、それは一運輸省のカテゴリーの中における数字なのですか、それとも企画庁とか通産省とか、そういうところと協議の上で、いわば政府全体の一体的なものとしてとらえられたものですか、どうなんでしょう。
  72. 新谷寅三郎

    ○国務大臣新谷寅三郎君) これは、いま申し上げたような経済社会基本計画において一応試算をしたものです。それには通産、農林それから運輸、関係省がお互いに資料を持ち寄り、それからいろいろな前提条件を検討し合った結果、大体これはいまの予想し得る条件のもとでは、大体こういうふうなシェアになるだろうということを試算したものです。
  73. 森中守義

    ○森中守義君 港湾局長、いま大臣がお示しになったその海上輸送のシェアこれはいま港湾担当の責任局長としては、新しい港湾計画をつくる、その中で完全に消化できるという、そういうものになるんですか。それとも在来港にどのくらい継ぎ足さねばならぬのか、その辺が非常に重要な問題になってくる。在来港で、いま大臣がお示しになった海上輸送のシェアを消化できるのか、どのくらい不足するのか、その数字出ておりますか。
  74. 新谷寅三郎

    ○国務大臣新谷寅三郎君) この具体的に各港湾別にというのは、私持っておりませんが、この間もここで御質疑がありましたように、日本の港湾というものは、この運営の面でもまだ欠陥があります。それから設備面でも非常に不足なんですね。非常に不足です。ですから、いまの港湾における、この間も申し上げたんですか、滞船時間——各船のですね。とにかく平均四十時間というんですからね。平均にして四十時間待たないと荷役ができないという状態。これは非常に大きなロスだと思います。これは単に外国貿易だけじゃなしに、内航海運についても同じようなことが言えると思うんです。それだけ日本の海上荷動きに対比いたしますと、港湾設備も足りない、運営の面でも欠陥があるという、これは証拠だと思うんです。でございますから、それに追いついていけるかということになると、なかなかむずかしい問題を含んでおりまして、今度のこの改正案、それから港湾運送事業法その他背後地のいろいろな問題、そういったのを関連させて考えませんと、なかなか解消できない問題が、困難な問題が多い、これは御承知のとおりでございます。  で、そういったものにしかし取り組んでいくのには、やっぱりまず第一に、絶対に足りない港湾の設備というものに対して、これは国全体の立場からいたしまして、それからまたさっき申し上げたように、ただここをふやすといっても、やはり自然に受け入れるほうの地元の住民の反応もありますから、そういったものを考えながら、具体的にこれから計画をむしろあらためて立てていかなきゃならぬというような段階にあるんじゃないかと私は思っておるわけです。でございますから、数字的には何割ぐらいやれるとかいうことについて、私はちょっといまここで数字的にお答えするわけにはいきませんけれど、全般の方向としては、いま申し上げたように、第五次の港湾整備五カ年計画、かりに来年度からスタートするとしますと、相当に各地域地域の特殊の事情、それを勘案しながら、どの港湾に対してどのくらいの設備投資をしなきゃならないというようなことを具体的に考えて、今度はおくれておる港湾設備の何といいますか、充実にもっと積極的な力を入れていかなきゃならぬということだけは事実言わなきゃならぬと思っておるわけです。
  75. 岡部保

    政府委員(岡部保君) 先ほど先生の御質問のございました、私どもいま鋭意作業中の中途段階でございますけれども、私どもの考え方、大体の数字をお答えさせていただきます。  昭和四十六年で日本全国の港湾取り扱い貨物量、総数でございますが、これが約二十億トンでございます。これが、現在実は五十三年を目標にして考えておりますので、五十三年にどうなるかということで、約四十五億トンぐらいになるのではなかろうかという数字を持っております。で、これは、いわゆる先ほどお話ございました内航海運だけではございませんで、外国からの輸出入も含んでおります。したがって、これを外貿と内貿に分けまして、外貿を申しますと、四十六年実績が約六億トンでございます。これが十六億トンにふえるのであろうと、十億トンプラスになるであろうというのがこれに含まれておる。そういたしますと、その差し引きの内航海運で運ばれますのが、これが内航海運でございますので、港湾で申しますと、積んだ港で出で扱われ、揚げる港で入りで扱われるということで、海運で運ばれる量の約二倍にはなるわけでございますけれども、取り扱い貨物量としては十四億トンが四十六年の実績でございまして、これが約倍の二十九億トン程度になるであろうという考え方でございます。特にこのうちでカーフェリーによって運ばれる輸送量というのが相当に大きく伸びるという感じがいたします。これもまだ作業中でございますが、十四億トンのうちで実績は五億トンほどカーフェリーで運ばれております。その五億トンというのが二倍以上、これは十二億トンぐらいに伸びるんではなかろうか。そういたしますと、それ以外の内航海運で運ばれるのは倍を若干下回るぐらいの伸び率ではなかろうかというような考え方でございます。  そこで、これだけの貨物の伸びというもの、これが、もちろんどういうふうにたとえば地域配分、地域的にどういうふうな航路にどういうふうにのるかというような問題、これは産業の配分の問題もございますし、産業構造の変化というものが当然これに織り込まれていくわけでございますが、先ほど先生のおっしゃいましたように、現有施設で十分まかなえるものだとは私、とても考えられません。やはり相当に港湾施設を整備しなければならないということが前提になることであるかと存じます。
  76. 森中守義

    ○森中守義君 まあそれで一つの答えが出ましたね。現有、二十億トンの現行施設と、いまお示しの五十三年度段階で四十五、こう言われたわけです。しかるに経済社会基本計画からいけば、いま宮崎局長が言われたように九・四%。しかしこれは七・二%段階で約三%余り上積みされているのて、実質においては——九・四%名目に対してね、実質はどのくらい見るんですか。そのことがいま港湾局長が言われるように、五十三年度段階で二十億トンが四十五億トンになる、あるいはならない、あるいはオーバーするという、その辺の見通しがある程度はっきりしてくると思うんですね。要するに、名目九・四が実質においてどのくらい想定されるんですか。
  77. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) 成長率で九・四と申しておりますのは、これは実質でございます。名目では一四・六ということでございます。  なお計画については、いろいろ数字を御質問でございますので、申し上げておきますと、お手元に計画をお持ちのようでございますから、四七ページに「〔一四二三〕」というパラグラフがございます。ここに昭和五十二年度の交通需要は、四十六年度に比べて旅客一・五倍、貨物一・七倍という数字が示してございます。そして一四四ページ、そこに全体の倍率が書いてございまして、これは参考資料でございますが、そこにいま運輸大臣が申されました輸送需要のトン数、トンキロの数字があがっております。こういう形で一応この需要を想定した。その大要が前に、本文に書いてある、こういう関係になっております。  そして、いま御質問の海運について、たとえばどういうことになるかということになりますと、私ども計画といたしましては、四九ページに公共投資の部門別の配分額がございます。これで四十七年度価格で九十兆円という数字が示してございまして、港湾については三兆一千九百億という数字が示してございます。これに対応して、実はその前の計画、新経済社会発展計画、四十五年度から五十年度の計画でございましたが、このときには総体五十五兆円という公共投資額でございましたが、そのときにおける港湾の投資予定額は一兆九千億ということでございまして、したがって、相当これは現在できておる計画に対して増加をしていただかなければならないと思っておる次第でございます。
  78. 森中守義

    ○森中守義君 そうなると、結局またもとに一ぺん戻ってみて少し議論をしてみたいですが、海上、鉄道、それにトラック、これはさっき大臣のお示しのようなシェアでそれぞれやっていくのだということなんですが、さてこれ、国鉄に一ぺん見てみた場合、新しい再建計画ですね、この中にこれはきちんとうたいあげられているのですか、計画の中に入っているのですか。
  79. 新谷寅三郎

    ○国務大臣新谷寅三郎君) 国鉄の十カ年の再建計画の初めの五年間は大体これに基づいておる、斉合しておるわけです。で、あとの五年間はさらにこれを基礎にしていろいろな条件を入れて試算をしてあります。ですから、これはいま申し上げたようなことは、国鉄の再建計画には入っておるということです。
  80. 森中守義

    ○森中守義君 さて港湾局長、結局二十億トンから四十五億トンになった場合、在来ではとても無理だということになれば、当然新しい港湾施設の開発をやらなければならない。それが前回お尋ねした新しい計画に入るのか、現行のものをさらに見直していくか、こういうことになるわけでしょうが、これはいま想定されるものでは倍以上になりますから、相当なものになるであろう、そうなると、各地域における港湾の開発というものは何港ぐらい、しかもその投資としてはどのくらいのものを想定しているのですか。しかも開発せんとするそれぞれの地点があげられるならば、作業段階なので、いろいろ影響もありましょうが、可能な限りお示しいただければけっこうだと思います。
  81. 岡部保

    政府委員(岡部保君) ほんとうにただいま作業中でございまして、実はただいまちょうど各港湾管理者、各県、市から計画を出していただいていまヒヤリングをしている最中なんでございます。現段階で、私どものなまの問題で、ちょうどただいま半ば過ぎたごろでございまして、まだこれからあと半分ヒヤリングを続けるという段階でございますので、ここで現段階でどうであるということについての各地方の御要望あるいはわれわれがそれを取りまとめての考え方というものは、もう少し時間をかしていただきたいと存じます。したがって具体的にはちょっと申し上げられませんが、私どもの考え方では、先ほど、この基本計画の考え方では、社会資本の投資、事業別の公共投資額、三兆一千九百億という投資額がございまして、これと私どもの考えております。できれば改定をいたしたいという五カ年計画、これは四十九年度からの五カ年計画でございまして、ちょうどこの基本計画より一年ズレるわけでございます。したがって、そういうズレの問題、それからいつの単価の価格で表示するかというような問題がございまして、現在作業をしておりますから、現在の価格表示でまとめるということになりますので、この三兆一千九百億との斉合性というのは問題にはなりますが、現在まだそこまで詰まっておりませんか、大体私どもの考え方では、この五カ年計画のこういう公共投資の規模としては五兆円程度の一つの規模の計画というものをまとめたいというような考え方でただいま作業中でございます。  それで次に、それじゃどういうところに新しく投資配分をしていくのかという点について、ごく荒っぽく私どもの考え方を申し上げさせていただきますと、たとえば先ほどの二十億トンが四十五億トンになると申しましたときに、外国貿易でと言って六億トンが十六億トンになると申し上げましたが、外国貿易で非常に伸びるという点は、やはり輸入、いわゆる原材料輸入が大きいわけでございます。そこでこれは、ほんとうに産業構造、いわゆる問題になっております鉄鋼であるとか、あるいは石油関係であるとか、こういうものの従来どおりの伸びがあるのか、あるいはもっとそういう伸びを押えるべきなのか、これは全く産業構造の問題になってくると思います。ここの辺の問題がはっきりいたしませんと、この問題は相当に変化が出てくる数字でございます。  ただ内航海運でのと申しますか、内航での国内貿易の取り扱い貨物量というものは比較的、いわゆる国の一つの経済活動の伸びというものとパラレルに進みますものですから、それはそう変わらないのじゃなかろうか。そういたしますと、やはり国内に流通港湾というものを相当に整備しなければならぬ。ただ、その流通港湾を考えますときに、たとえば一つの極端な例を申しますれば、相当な都市がありながら現在港湾があまりないという地域もございます。それから現在港湾がございますが、何と申しますか、比較的、いわゆる公共的な港湾、埠頭施設が少ないというようなところもございます。そういうような新しく港をつくらなければならない、たとえば一つの例を申しますれば熊本市でございますけれども、熊本市というのがあれだけの一つの集積を持っていながら港が現在ございません。付近に三角港という重要港湾があるわけでございますけれども、そういうものをどういうふうにこれから考えていくかというのが、一つの例としてあげられると思います。決して先生のために言ったわけじゃございませんから、念のために申し上げておきます。そういう一つの例がございます。それから裏日本の港で、これからはやっぱり裏日本という日本海に面したところに相当な港を考えなければいかぬのじゃないかという考えを私どももいたしているわけでございます。  ただ、これはほんとうに新しく、新しい地点につくれるかどうか、あるいはつくっていいのかどうかという点、これはやっぱり地元の御要望というものを十分聞きませんと、何とも私ども申せませんので、いまそれのいろいろ御要望を伺っている最中でございます。そういうようなことで、いろいろな面でそういうことはいえますが、逆に、すでに過密になっておる東京湾であるとか大阪湾であるとかというところには、私どもの考え方では、いわゆる流通港湾で、その周辺の必需物資の出込りの港はもう少し整備しなければいかぬ。しかし、そこの通過交通になるような流通港は、そういう過密の湾内にはつくりたくないというような考え方が一つの考え方でございます。こういうように、いろいろな地域によって変わっておりますけれども、いろいろな考え方をまとめて、それと各地方から出てきます要望とあわせて、これからもう少し検討していきたいというのが偽らざる実情でございます。
  82. 森中守義

    ○森中守義君 港湾局長なかなか御丁重な御答弁で、早くきょうじゅうに終わってくれという意味のようにもとれる……。まあしばらく、あと一時間ぐらいで終わりましょう。  それで、いまのようなお話まで発展していくと、やはりその貿易港というのが、これからどういう日本の貿易体制をとろうとしているのか。通産省見えてますか。在来の原料輸入国が、これからかなり変わってくるんじゃないか。たとえばシベリア開発が進んでいく、あるいは中国貿易が進んでいく、何もこれは原料輸入に限らない。そうなると在来の太平洋沿岸ベルト地帯というものは、多少方向が変わってくるという、きわめて素朴な常識的な考え方が生まれてくるんですよ。そこで一体、大陸間貿易というものは、将来どういう発展の方向をとろうという見解をお持ちなのか、あるいはチュメニの油田開発によって、一体どういう地域にどういう方法で受け入れようとするのか、そういう見解はお持ちですか。
  83. 山田勝久

    説明員山田勝久君) 先に後段の御質問にお答えしたいと思いますが、チュメニの開発計画でございますけれども、これは先生もうすでに御承知かと思いますが、ソ連の西シベリア地区の石油を、年間二千五百万トンから四千万トン程度の規模、約二十年間にわたりましてわが国に導入しよう、こういう計画でございます。それを持ってくるためにはパイプラインが必要でございますが、いま原産地のチュメニ地区から約二千五百キロ離れておりますイルクーツクというところまではパイプが引いてございますけれども、それから先はいま何もございません。その先のナホトカまで約四千二百キロでございますけれども、これを日本からの、パイプあるいはコンプレッサーというものを、信用供与ベースで輸出して敷設しよう、こういったのがチュメニプロジェクトでございます。  そうなりますと、現在ソ連からは、直接日本海を通って原油は来ておりませんが、四千万トンという規模の油が、ナホトカにはきまっておりませんが、大体ナホトカ近辺からわが国にタンカーで運ばれてくる、こういうことになりますと、積み出し港は大体その辺ですが、受け入れのほうはまだ先の話でございますので、いろいろ産業構造あるいは産業立地あるいは需要その他勘案してきめられていくと思いますが、現在のところ、少なくともそういった規模のものが新しく日本海を渡ってくるということだけは申せますが、それがどこの港にということになります点は、まだ先の話だと思います。  それから前段のほうに移りますと、シベリア、あるいは中国あるいは朝鮮、そういった日本海をめぐる諸国との貿易がこれから相当伸びてくるだろうとは思っております。先の見通しというものは、私ども持っているわけでございませんけれども一つの参考資料として申し上げますと、昨年の三月に日本経済研究センターというところで、世界の中の日本、一九八〇年の日本の貿易はどうなっているかということを計算した結果がございます。これによりますと、日本と諸外国全般の貿易は、一九七〇年から八〇年までの十年間に、これはマクロでございまして、また金額でございますので、いろいろ価格の問題ございますが、大体五倍に伸びるだろう、輸出入ともに。その間、日本とソ連との貿易は十倍に伸びるだろう、ということは、現在よりも日本とソ連、そしてなかんずくいまシベリア開発関係というものがその中心になってくるわけでございますから、そういった点で、先生のおっしゃるように、少なくとも日本海のうちのソ連というものと日本との貿易関係は一般的な貿易の伸びよりも、もっと早く伸びるだろうということは言えるのではないかと思います。
  84. 森中守義

    ○森中守義君 それからもう一つ、中国問題としてお尋ねしたつもりなんだが、この中で特に申し上げておきたいのは、中国は中国でおれのほうにも油あるよと、こう言っているわけだ、御承知のように大慶油田がね。それで、これは港湾法とじかに関係のある問題じゃないけれども、なかなかこれは中ソ国境、中ソ関係等からいって、あるいはアメリカのシベリア開発、ことに天然ガス等も、だいぶ今回のアメリカとの会談等でも合意に達するであろうという観測もあるし、少なくともチュメニの問題は多数国間調整を必要とする問題なので、いまにわかに、現実的にすぐ港をつくらねばならぬ、受け入れるということには、ここ一両年はややむずかしいかもわからない。けれども、チュメニであろうと、あるいは中国であろうと、少なくとも受け入れる青写真程度のものはもはやとっておかないとなかなか簡単にいきませんよ。ことに今日、港湾法を審議している最中だし、私どもも一年、二年の港湾の展望というのでは、いわば法律改正案のたたき台にしたくない。かなり長期にわたる展望というものがなければ、一体港湾行政の将来はどうなるのか、さっき私は、入れものはできるだけ大きいほうがいいと、こう言ったのも、そうちょこちょこちょこちょこ法律の改正やられても困るし、あるいは計画が変更されても困るんで、できるだけ長期にわたる、しかも安定性のある政策の展開というものが必要だと思うんで、いまお尋ねする中国関係はどうなのか。ソビエトはわかりました。相当伸びるであろう。さて中国関係は、どちらかというと、現在の貿易体制ではやっと国交回復が先日行なわれたばかりですからね。いま友好サイドあるいはMT貿易等で、いわば不毛の段階に近い、在来いわれていた沿岸貿易というものは、この際急激に伸び上がる可能性がある。じゃその受け入れば大体どこにすべきかということになると、扱い量がどの程度まで見通すかという問題だと思う。できるならばソビエトは四十八年の実績がこれこれであり、年率どのくらい、どういう品物が行ったり来たりするのか、中国とは通商協定等結ばれて、これまた急激に伸びるでしょうが、それが一体どういうことになるのか、その見通しをちょっと述べてもらいたい。
  85. 内田禎夫

    説明員(内田禎夫君) 中国関係についてお答え申し上げます。  先生おっしゃいましたとおり、中国との関係、昨年国交正常化いたしまして、これから通商協定の交渉に入ろうというところでございます。実は中国との貿易につきましては、御承知かと思いますが、昨年ほぼ十一億ドルという規模でございます。   〔理事江藤智君退席、委員長着席〕 これは日本からの輸出が六億一千万ドル、輸入が四億九千万ドルで、合計いたしまして十一億ドルでございます。これが将来、貿易協定を政府間で結びまして増加をしていく場合に、どの程度になるであろうか、これにつきまして先ほど市場第三課長のほうからもお答えいたしましたように、通産省として公式の見通しは持っておりませんけれども、実は昨年の五月ごろに通産省の外郭団体でございます産業構造審議会、その国際経済部会というところで、七〇年代の通商政策についていろいろ御審議いただきまして、その中で中国との貿易につきましては、大体十年後には少なくとも四倍ぐらいの規模にはなるであろうというような見通しを、その審議会でつくっております。昨年の作業でございまして、一九七一年をベースにしております。大体一九八〇年代の初頭におきまして、四十億ドル台ぐらいの貿易にはなるであろうというのが、大体私ども、現在でも、何といいますか、堅実な見通しではないかと思っているわけでございます。現在十一億ドルでございますので、それが十年後に四十億ドル台になるということになりますと、大体年率にいたしまして一五%ぐらいの伸びをもっていくんじゃないかというように考えております。実は昨年、七二年の貿易量は、これは実はかなり高い伸びを示しまして、二五%くらいの伸びを示しております。  それから本年一月−五月を見ましても、やはり二五%から三〇%くらいの伸びが見られておりますけれども、この中には、だいぶ価格の上昇分というのが入っておりますので、実質的に見ますと、一体そのころ私どもが考えておりました年率一〇数%というようなところの伸びが、今後十年ぐらいの間の中国貿易の伸びというように考えたらよろしいのじゃないかと思っておるのでございます。  なおその場合に、現在の日本の港湾との関係でどうかというような御質問の御趣旨かと思いますけれども、中国との質易につきましては、実は昔、大陸貿易ということを申しておりましたけれども、日本海沿岸には、実はなかなか貿易がしにくい中国との地理関係になっております。間に朝鮮半島がございまして、中国の北部あるいは東北地方あたりから運んでまいります場合も、朝鮮海峡を通って日本海に行くよりは、むしろ太平洋岸に来るというケースが多いわけでございますので、その点からは、現在の貿易と港湾との関係をそう大きく変えるようなことには、中国貿易に関してはあまりならないのじゃないかというように考えておるのでございます。
  86. 森中守義

    ○森中守義君 これにあまり時間をとっているとあれですから。  港湾局長、いま通産省では、おおむね年率一五%くらいコンスタントに伸びるこういう見方。ただ港湾の立地条件としては、やはり太平洋沿岸のほうがよろしいと、こういうことのようですが、いま港湾局でお考えなのは、既存港をさらに充実拡張するという方法をおとりになるのか、あるいは新港の開発に方向を向けるのか、そういう基本になるようなお考えはどうなんですか。
  87. 岡部保

    政府委員(岡部保君) 私ども、いまのお話のございました実例で、たとえば北九州博多港が、今後日中貿易に対してどういう地位を占めるか、あるいは長崎港というのがどういう地位を占めるかというような、いろいろな具体的な問題として現在検討をしている最中でございます。  それで、確かに新しい港を、先ほども実例を申し上げたわけでございますけれども、新しい港をもって、たとえば五カ年の間に相当な貿易量をこなせるような新しい港をつくるということは、現実にはちょっとむずかしいと存じます。したがってさしあたりこの五カ年間で相当に伸びるであろう、たとえば対中貿易の量というものは、やはり既存の港でこれを拡張いたしまして、扱っていくというのがやはり主体になるわけでございます。したがって、たとえばこれは、従来の外国貿易港であります。太平洋岸といういまお話がございましたが、昔の例をもっていたしますれば、神戸あるいは大阪、こういうところが相当なウエートを占めるのだと存じます。  ただ私どもとしては、たとえば博多港であるとか、あるいは長崎港であるとか、そういうようなちょっと性格が、従来連絡港ではありましたけれども、非常に限定されておったというような港を、もう少し広げていって、そういうところを活用するということができないかという考え方を持っております。
  88. 森中守義

    ○森中守義君 そうしますと、新しい計画であろうと、あるいは現在のものであろうと、これはやはり新港の開発ではなくて、むしろ在来港の拡充強化、こういう方向をとるということですね。
  89. 岡部保

    政府委員(岡部保君) さしあたりのたとえば五カ年計画で申しまして、四十九年度から五カ年計画に新しく入ったということを仮定いたしますならば、四十九、五十、五十一と、最初の三年ぐらいは、ほんとうに新しい港の建設だけに追われます。非常によく進んで、第四年次あたりから新しい港が若干使える。むしろ、その次のたとえば五カ年間を考えますれば、その次の五カ年というところにほんとうのその港の価値が出てくるというぐらいに考えませんと、どうしても当初時間がかかるものでございますから、そのくらいでさしあたり伸びるというものについては、むしろ既存港の拡張をしていくということのほうが非常に現実的であるというふうに考えております。
  90. 森中守義

    ○森中守義君 なるほどね。それともう一つ、通産省にお尋ねしますが、これは新聞紙上等でおりおり散見する程度のもので、国会の中に具体的な問題としてあまり持ち込まれたことないようですが、例の東南アジアからの原油の輸入、これはどうもいま原油を輸入すれば、公害が多発をしていかぬと、だから原油国に行って製油をし、しかも関税調整をやれば、まあコストはそう変わらないというようなことで、精油品を持ち込もうと、こういう実は話がかなり財界等にもあるようだし、今回、中曾根さんが向こうに行ったのも、ある意味ではそういうアプローチに行ったんじゃないかというような話なども聞いておる。これはその真相がどの辺にあるのか、あるいは計画上そういうことが許容されるものであるかどうか、これが一つであります。  それと、かりに原油でなくて、精油にして持ってくるという場合、一体、今日のタンカーで役に立つのか。一説にはプロダクトキャリアというのを用いなければならぬ。それには数十万トンタンカーでなくて、一万トンぐらいでいいんだという話もあるんですよ。そこまでずっと広げた意見を申し述べていけば、一体、海上交通安全法というものでまかない切れるかどうか、日本の海は油船ばかりで身動きとれないだろうと、こういう実は話等もちらちら聞くんですけれども、この真相はどうなんですか。
  91. 根岸正男

    説明員(根岸正男君) お答え申し上げます。  御承知のとおり、原油市場は、昨今だいぶ変わってまいりまして、かつては買い手市場であったものが売り手市場に変わってきたというようなことから、今後、エネルギーの大宗を占めております石油をいかに確保していくかというのが非常に大きな問題になってまいったわけでございます。それで、特に中東原油、これもまた日本が輸入しております原油の大部分を占めておるわけでございまして、こういうものをいかにして日本のほうに持ってまいるかということがむずかしい状態になってきたわけでございます。それで、特に原産地のほうにおきましては、できるだけ付加価値をつけて輸出したい。これは当然な発想になるわけでございまして、そのために、現地で精製してその製品を持っていくようにということが、今後、相当出てまいると思います。そのために、ある意味の原油の確保という観点から、現地の製油所に資本参加とか、あるいは技術参加するという必要性も出てまいるわけでございまして、ただいまもそういう動きが二、三あるわけでございます。  その際に、将来の油の到着状況は、一体どういうふうになるかという問題になるわけでございますが、これは先生もよく御承知のことと思いますが、油は、これは一応、公害の問題に戻りますが、消費地で精製するほうが国民経済的に見て得なことは当然のことでございまして、やはり相当量の製品供給は国内の製油所で精製された製品で行なわれるという状態になるわけでございます。  それから原産地における精製、これもただいまいろいろイラン、あるいはクウェート等において話が出ております。あるいは東南アジアにおきましてはインドネシアにバタム島の近くとか、いろいろございますが、やはり精製規模から見ましても、まあ数十万、あるいはいまあります話では百万とか、そういう程度になるわけです。ですから、どうしても原油は持ってこなければならぬ、あるいは原油だけじゃ足りないので、製品を持ってこなければならぬという両方の形になるわけでございまして、それをどういうふうに今後、受け入れ体制を考えていくかということで、ただいま通産省としましてもいろいろ検討を重ねておるところでございます。  それからもう一つ、タンカー状態はどうなるかという問題でございますが、これは原油タンカーがだんだん大型化する傾向にあるということは事実でございまして、製品タンカーの場合にどういう運び方をするか。製品の場合は、そのロットの大きさが、これは御承知のとおり、場所によって数万キロであり、あるいは数千キロであるというようなことになりますので、いままで比較的小さいタンカー、製品タンカーというのは原油タンカーに比べますと小さかったということでございますが、先ほど申し上げましたように、原産地で相当大きな製油所ができ、かつまとまって出るということになれば、製品タンカーもある程度大型化する可能性もあるんじゃないかというようなことも考えられます。  そういうようなことで、将来どういう組み合わせが一番経済性が高くて、かつ安全性が高いかというようなこともただいまいろいろ検討しているところでございまして、ただ小型タンカーの問題が、世界的に見て十万トン以下のタンカーの発注がわりあい最近ふえておるという事実もございますが、これはアメリカが、御承知のとおり、ああいう状態になりましたので、おそらくアメリカの港というのはあまり大きい船が入らないというための現象じゃないかとわれわれは考えております。  そういうわけで日本の中では製品タンカーを今後どういうふうに考えていくかということが非常に大きな問題になるんじゃないかと思っておりますが、これもまた、運輸のほうともいろいろ御相談してきめてまいりたいというふうに考えております。
  92. 森中守義

    ○森中守義君 精油を輸入するのがいいのか悪いのか、これはまた一応議論もありますから、別なものにしましても、精油を輸入するという、そういう仮定の議論として岡部局長、船舶局長お越しいただいていないのでちょっと無理かと思いますが、いまの輸送能力というのか、あるいは船舶の構造からして、原油と精油はおそらくその輸送の技術、方法においてもかなり変わったものではないかというようにしろうとなりに考える。それで一説にいわれる数十万トンタンカーというものは精油の輸送には向かない、合わない。一万トン程度のものでよろしいんだと、こういう説が非常に強いんですが、この辺の見解、どうなんですか。しかも一万トンぐらいでよろしいんだというようなことになりますと、かなり船腹というものは大量なものになる、あるいは現在の造船計画というものもおのずから大きな変更を来たさざるを得ないであろう、こう思うんですよ。  それで、そういうようになった場合に、そういう幾つかの問題点と合わせて港湾の受け入れ状態がどうなのか。先ほど運輸大臣は、現在、荷役開始まで滞船が四十時間もかかる、こういう現状にあるというお話があった。これは今回の港湾法の改正によって、かなり短縮の方向にいくものであろうという期待を持つんですよ。ところがもしも精油が入ってくる、船舶がラッシュの状態になるという場合に、滞船時間は縮小されるのか、あるいはこういうものを受け入れる新しい特定の港をつくるのか、在来港でよろしいのか、この辺の見解、いかがでしょうか。
  93. 岡部保

    政府委員(岡部保君) ただいまの前段のお話の、いわゆる船舶としてどういうふうに考えるかという点については、私どもも知恵がございませんので、知識もございませんのでお答えをさせていただけないわけでございますけれども、後段の港湾の面から見てどういうふうに考えるかという点については、先生の御指摘のとおりで、私ども、もしもそういう大型化でなくて精油の輸送というものは比較的小さなタンカーであるといたしますならば、これはたいへんなことになると存じます。と申しますのはいまの原油もさることながら、精油で、いわゆるジェットオイルのようなものならよろしゅうございますけれども、非常に軽い揮発性の強い油というようなものでございますと危険度が非常に高くなります。しかも、これは先生の御指摘のとおり、非常な交通量が多くなる。したがって海上交通の安全という問題から申しましても、これはたいへんなことになると思います。  したがって、そういう場合に、備蓄基地と申しますか、そういうものを、どこかに備蓄をするというところ、それが比較的交通にあまり危険のないような地点を選んで備蓄基地をつくり、そこにためておいて、それからできるかできないかは別でございますけれども、たとえばパイプラインで輸送するとか、ほんとうにそういうことでも考えませんと、これはたいへんなことになると思います。  したがって、もしもそういうような動きがあるならば、そういう関係の問題だけでも、港湾屋といたしましては、これは日本全国の港をもう一度見直さなければならないという点は、御指摘のとおりだと思います。
  94. 森中守義

    ○森中守義君 そうすると、今回の改正案の中には、そういう将来の予測というのは、もちろんとらえられていないということに認識をする。  そこで通産省の場合、いまにわかにこれが現実的な油政策に結合したものになる可能性があるのか、単なる議論の段階であるのか、また相手国も、精油ということになると日本の二の舞いを外国に持ち込むようなことになりますから、そういう国家間の問題にもなるんですが、現実的なものとして検討する段階に来ているんですか。あるいは、そういう時期はやがて来るという認識を持っているんですか、いかがですか。
  95. 根岸正男

    説明員(根岸正男君) お答え申し上げます。  どのくらいの間でものを考えるかという問題になるわけでございます。それでまず後段のほうから申し上げますと、先ほども申し上げましたように、いまの状況で日本のエネルギー消費が伸びていくという状態を想定いたしますと、これはやはり何%ぐらいになるかということは非常に想定はむずかしい問題でございますけれども、いままで輸入しておりますのは、これは先生も御承知のとおり、国内の精製を主体にして、どうしても足りない石油化学用原料のナフサと、それからC重油の、これは特に低硫黄の燃料を主体としまして、C重油を輸入しておるというのが実態でございますけれども、そういう生産地精製というようなことが具体化してまいりますと、やはりほかの灯油とか軽油、そういう油脂をある程度やはり持ってくるのが必要だと思いますし、これらはまた公害対策燃料として枢要なものになると思います。  ただ、そういう原油のかわりに製品を確保するということで、原産地において精製をやったとしましても、これがいつから生産が開始され、いつから入ってくるかというふうな問題になるわけでございますが、ただいまのところ、大体五十三年以降になるのではないかというのが大体の状況でございます。またその製品の比率もまだ明快に全体としてどのくらいになる、あるいは先ほど港湾局長のほうからお話がありましたように、そういう製品の受け入れ基地というものをどう考えるかというようなことも、これから具体的な問題として検討しなきゃならぬ問題ということになると思います。
  96. 森中守義

    ○森中守義君 港湾局長、いま五十三年以降という、やや具体的な内容もあった。そうなると、この港湾法の二条ですね、定義の中で、港湾施設というものがかなりつまびらかに出ている。しかしいま、通産省が言われたような内容のことは、この該当事項にはないのですね。どういう形態のものになるのか、にわかに想像つきませんけれども、少なくともこれは現状における一つの施設の定義を施しているにすぎない。  そこで問題は、四十六年から五十年に通ずる現行の整備計画、これが見直しになるのか。あるいは新しく四十九年度から新計画をつくるのか、いずれにしろ、いま精油の問題というものは、まあ一つの転機を画するようなそういう状態に発展をする可能性があると思う。よって、このことを港湾行政立場から、どういったようにとらえていこうとするのか。あるいはとらうべきであるのか。少なくとも見直し計画、新計画、いずれかにそういう問題を一つの課題として考える必要が私はあると思うのですが、そういうことはどうなんでしょうか。
  97. 新谷寅三郎

    ○国務大臣新谷寅三郎君) これはいま通産省から御説明がありましたように、そういうふうな考え方がどこかにあるということは事実だと思いますけれども、そうしたらいつの時点でどういうふうに実現するかということについては、まだわれわれのほうにも具体的なものは何も入ってきておりません。  しかし、いまあなたが仮定の上に立ってというお話、これはそういうことは考えておかなきゃならぬと思いますから、きょうは船舶局長いないので、私の知っている範囲でお答えすると、船舶の構造自身についても、油の種類によると思います。油の性能といいますか、危険度というか、そういったものにもよると思いますけれども、それは安全基準というものはもっと高めないといかぬと思います。タンクそのものは、これは入れりゃいいんですから入ると思いますけれども、ただ隔壁をどうするかとか、いろいろの点において、安全の上からいっても船舶構造に、やはりこれに対応するような改造を加えないといけないものが相当あるのじゃないかと思うのです。これは油の種類にもよるし、まあ想像でございますけれども……。  それから、港湾関係についてはどうするのだというお話がいまあったのですけれども、これはさっき局長から申し上げたようなことをいまは考える以外にない。しかし、私は、国全体の方針として、そういうふうな形でもって必要な油を入れてこようという場合には、これはどこの役所か知りませんが、とにかく通産は通産、運輸は運輸、ばらばらやっておったんじゃこれはできっこないのです。私は前にも申し上げましたが、いろいろな工業都市ができる、そういう場合に、それに原料を運んだり製品を運んだりするような輸送手段というものを考えないで、かってにおやりになってもそれは困りますと、それから、これはいずれ国鉄のときに御審議願うと思いますけれども、団地なんかどんどんおつくりになる。しかし足のない団地じゃ困るじゃないかということを常に言っているのです。  で、今度の場合も、そういうふうな、非常にこれは、ある面においてはメリットもあると思います。ある面においてはデメリットもあると思います。そういった方向転換をする場合に、やはり各官庁が歩調をそろえまして、どういったものを、こういう理由によってどうしなきゃならないのだと、それには港湾施設はどうするか、船をどうするか、それから港湾に陸揚げしましてから先の国内における輸送手段はどうするか、そういったものをすべて総合して考えてからでないと、これはなかなか容易にはスタートできないというふうに考えるわけです。ですから、そういった面がもう少し具体化してきました場合には、関係省庁の間で具体的な検討をして、お互いの政策というものが調和されて斉合性を持ったようなものを得ないと、これは簡単には実行できないというふうに考えます。
  98. 森中守義

    ○森中守義君 これは大臣、いま、先のことをそう心配するなというような意味合いでもあるし、まあそのときはそのときで運輸省だって一言あるというようなことですから、まあいいんですがね。しかしやはり、十年、二十年先というようなことでもないようだ。五十三年というともう目の前にきている。おそらく新計画を四十九年から、港湾局長意見だと、見直しか新しいものかと、こういうことなんですが、どちらにしても、もう直近のその計画の範疇の中に入ってきているんですね。これは無視できない。ただし、そのことを可とするか否とするか、これは非常に基本的な問題があります。  そのことは、私はいまここで議論しなくて、あくまでもそういうものは可とするという状態になった場合に、港湾がどうなるか、こういう議論ですが、それはいま大臣の言われたようなことでけっこうですけれども、慎重にこれは扱っていくべき筋合いのものであろうし、まさに港湾行政としては一つの転機をつくるんじゃないだろうかというように思いますので、ひとつ速記録にもきちんと残っておりますから、これから先、港湾問題の議論一つに残しておきましょう。  そこで、いま少し議論を進めますが、先ほど岡部局長の答弁で、大体主要な受け入れ港としては、在来港を拡充強化したいということのようですけれども、事大陸間貿易になると、太平洋まで持っていくのに相当かかるだろうし、なるほど、日本海沿岸では、さっき御指摘のような状態だと思う。しかし、もう一つ何かある。——九州がありますよ。これは博多と長崎二つあげられたようなんだが、まあ隣に小柳君おりますがね、決してそっちがいかぬと言うんじゃないが、さっきお話の中にあった三角がある。これを忘れてもらっちゃ困る。三角は非常に重要港ですよ。  そこで、新港についてはあまり気を向けていないようなお話ですが、熊本新港が昨年たしか調査費がついたと思います。熊本新港と三角港といえば十キロありませんよ。非常に隣接した地帯だ。しかも三角港というのは、先般来、たしか町長あるいは議長あたりが、背後地がないというのでどうも三角港は捨てられそうだといって、だいぶ岡部局長に泣きつきに来たはずですがね。背後地は幾らでもありますよ。だから三角港は一体どういう性格のものにする、熊本新港はどういう性格のものにするというその価値を明らかにしてほしいし、いま現地で渦巻いているのは、どうも新港ができると、三角港は捨てられるんじゃないか、明治百年以来、東南アジア、あるいは大陸貿易に幾重にも幾重にも貢献をしてきた三角港が、新港のためにそでにされたんじゃ困るという、非常に素朴で真剣なあれがある。せんだってなどは、知事に質問状を町長と議長が出しておるんですよ。沢田知事もおりおり来まして、その調整に苦慮しているようですが、まさか新港をつくるがゆえに三角港は漁港に格下げするということじゃないでしょうね。まあそれをちょっと聞いておきましょう。
  99. 岡部保

    政府委員(岡部保君) ただいまの三角港についての考え方あるいは三角港と熊本新港というものとの関連性、これについての御質問でございますけれども、私ども決して、熊本新港をつくったということによって三角港は従来の地位を捨ててしまうということは、毛頭考えておりません。  私どもの考え方は、熊本新港は、これは先ほども申しましたように、実際に整備にかかりましても、これはいささか時間がかかります。ほんとうにその動き出すまでにいささか時間がかかるわけでございますが、動き出しましてからも、この主体の機能と申しますか、機能分担と申しますか、そういうものは、やはり国内の流通的な港湾であるということをまず第一点に考えたい。それで三角は、従来の、いわゆる、それこそ先生のおっしゃった、昔からの外国貿易をしておったという港としての地歩をそのまま引き続いて進めてもらいたい。まず大きく申しますれば、外貿中心であるのと内貿中心であるのとが、一つの機能の大きな差であるというふうに私どもは考えております。したがって、いまの、たとえば外国貿易に伴う税関の問題であるとか、そういうふうな多少のいろいろな施設、そういうものも、すでに三角にはちゃんとできております。そういうものを活用するべきであるというふうな私ども考え方で、いまの性格を特にひん曲げてしますということは、毛頭考えておりません。  ただこれから先、この熊本新港がだんだん整備されていき、それから三角も、現在一部整備をいたしておりますが、そういうものが進んでいったときに、若干は距離は離れておりますけれども、それでも何キロというオーダーでございますから、一つの港として考えるべきなのか、あるいはやはり別々の港として考えるべきなのか、そこの辺については、まだ私ども確たる考え方をまとめておりません。これから先の港勢の伸展というものによって考えたいというのが実情でございます。
  100. 森中守義

    ○森中守義君 まあこれは、お答え次第では、私の質問は終わる予定でしたが、来週に持ち越すかもわからない。  それで、いま三角のほうから、外港をつくってほしいと。ついては直接、調査費を早くつけてくれと、こういう陳情が来ておりますね。そこで地元あるいは三角港の在来の港湾としての貢献を、あるいはその立地条件等を十分お考えであり、しかも新港によって混迷を続ける三角の皆さんに安心をしてもらえるという一つの証拠として、よろしいと、それならば四十九年度予算で外港の調査予算をつけましょうと、こういう約束がいただけるならば、きょう私はこれを終わりますが、どうですか。
  101. 岡部保

    政府委員(岡部保君) どうも、こういう場所で御返事を申し上げるべきなのかどうかは存じませんけれども、私の所管しております予算の考え方で申しますれば、三角の問題、これはほんとうに笑い話で済む問題じゃございません。したがって、そういう意味での調査費は、ほんとうにつけるべきだと私は信じております。
  102. 森中守義

    ○森中守義君 まあ非常にけっこうな答弁でした。  そこで、これはひとり三角だけでなくて、全国的にこういうケースは生まれてくると思うんですね。同じ県内で、しかも港間がそう長い距離でない場合、在来港というのは、新港ができるということになると、何とはなしに、どうも取られるんじゃないだろうか、おれのほうは漁港に格下げになるんじゃないかと、こういう心配がありますよ。それで熊本県に、現実にそういうものが存在するわけですから、新しく新港を開発しょうという場合には、この辺のことをよく港湾管理者と協議をされて、そういう懸念はない、旧港は旧港、新港は新港でそれぞれの位置づけをして、国、社会のために貢献してもらうんだというようなことを、できるだけ懇切丁寧にしていただきたい。これは、ほかにそういう例があるかどうかは知りませんが、新しい整備計画の中にはそういうのが間々出てくると思うのです。これは駄弁ですが、特にお願いしておきたいと思いますし、いま外港の調査費をつけるべきだということで、ぜひひとつそれはもう、四十九年度予算の概計の際にも、一ぺんちょっと私ものぞかしていただきたい。  それともう一つ、企画庁おいでになっていますからお聞きしておきたいんですが、さっきの成長率からいった場合に、一体どういうものを中心に生産をするのか。これは通産省も、両方から、何を中心に日本経済をやっていくのか、産業を進めるのか、この基本計画では依然として鉄鋼であり石油であるということがあげられておる。この方針に変わりありませんか。ちょっと通産省の人……。
  103. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) 産業構造の面では、この計画において非常に大きく方向転換をしなければならないだろうということが書いてございます。ただ、五カ年計画でございますから、現実の産業構造IO表等で算出したもので見ますと、それほど大きく変化が直接には出ておりませんけれども、方向としてはいわゆる知識集約型の産業というものが非常に大きくなってくる、そして省資源、省エネルギー型といいますか、公害を出さないというような形でもそういった方向に進まざるを得ないわけでございますし、先ほどかち御議論の資源の問題、こういう点から見ましても、当然そういう形に産業構造は変わらなければならぬ、こういうふうなことを示しておるわけでございます。で、その点はこの計画の中では、昭和六十年ないし六十五年を目ざしました長期展望がございますが、この長期展望においてそういった形を相当明確に出しておるわけでございます。またこの五カ年についてもそういった方向がかなり出てくるということでございまして、たとえばこの基礎資源型の産業——鉄鋼、石油精製等については、従来の伸びに比べますとかなり伸び率が落ちるということを示しております。電力についてはなかなかそう簡単にいかないわけでございまして、若干は従来に比べるとGNPとの関係では伸び率が落ちますけれども、しかし、かなりやはり伸びるということでございまして、これをどうするかということがかなり大きな問題であるということが指摘がしてございます。  まあいずれにいたしましても、産業構造といたしましては、ただいま申しましたような方向でかなり大きく変わっていく、この五カ年間が、言ってみれば転換の踊り場みたいな形になるだろう、こういうふうに考えておる次第でございます。
  104. 内田禎夫

    説明員(内田禎夫君) ただいま経済企画庁の宮崎局長のお答えになられましたとおりでございます。私どものほうといたしましても、長期的にはやはり知識集約型産業構造、特に省資源、省エネルギー型ということで、どういう形でこれから持っていったら一番よろしいかということを具体的にいま検討いたしております。しかし、やはりここ数年間の傾向といたしまして考えれば、やはり従来の資源エネルギー産業というものは基礎として重要でございます。これは将来とも重要でございます。特に先生お尋ねの、いろいろ港湾の整備等から考えれば、そちらのほうの関係ということも当然十分な手を打っておかなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  105. 森中守義

    ○森中守義君 その問題は、エネルギー資源の開発であり、こういうものを中心にする限り、やはりその気になりますのは、かれこれ十年ぐらいになりますね、例の新産都市計画、この当時には全然いまの公害などというものは議論の中になかった。ただ存在したのは、当時水俣の奇病と称された時代のものです。そこで各自治体とも、いかにして新産都市を誘致するかということで、大騒ぎになった時代がある。しかるに十数年経過した今日、もたらされたものは公害である。  そこで新しい発展計画の中に、いま予見をされないけれども、新産都市時代に予見しなかった今日の公害と同じような公害の内容の、質の変わったようなものが発生をする可能性が私はあると思う。それをどういったようにいまから予防していくのか、あるいは予見し、予測しながら防止するとか、この辺の見解については企画庁あるいは通産省、環境庁も見えていますか、環境庁は将来の新しい経済政策の中に、おそらくは発生する可能性があるであろうと思われる公害問題をどうとらえていくか、これについてはどうお考えでしょうか。
  106. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) この計画では、公害環境問題ということを非常に重視をいたしておりまして、第一の課題としてこれを掲げておるわけでございますが、特に従来問題になっておりました大気汚染での硫黄酸化物、それから水質汚濁でのBOD、CODにつきましては、この計画の期間に大体半減するということを目標として具体的にうたっておるわけでございます。  しかしながら、大体環境公害問題というのは、いまお話しのように、新しい物質、新しい問題というのはこれからいろいろ出てくることも想定されます。したがいまして、そういったことに対して、十分に事前に措置をしていくというたてまえでやっていかなければならぬ、またこの長期的な面からも環境容量といいますか、全体の汚染の量というものをつかみながら、そしてそれをどう押えていくかというようなことも考えていかなければならぬ、こういうことが考えられております。環境庁のほうでも、この計画とは別途に、長期にわたっての環境の目標ということを作業しておられるわけでございまして、この計画にも一部を取り入れさしていただいたわけでございますが、さらにこれは検討を進めていただきまして、そういった面での課題が出てくれば、この計画の中でも言っておりますが、いわば計画のフォローアップということを申し上げておりますけれども、新しい課題に対応するように政策をつけ加えて、あるいは内容を場合によっては一部修正をしていくということで対応していきたい、こう思っておる次第でございます。
  107. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 昨年の暮れに中央公害対策審議会の企画部会から、環境保全長期ビジョンの中間報告というのが出まして、環境政策をこれ以上強化することなく経済成長がこのまま推移するとするならば、環境破壊は飛躍的に増大をするというような見通しが出されております。そこで私どもは、やはり今後の経済政策等の推進にあたりましては、環境保全という目標を掲げまして、これを大幅に取り入れていただくということでなければならないというふうに考えておりまして、先般決定を見ました経済社会基本計画の中でも、環境保全の面は強く配慮していくというふうに考えておるわけであります。  さらに今後の問題といたしましては、先ほど企画庁の局長さんからお話ございましたが、具体的に企業の立地にあたりましては自然のアセスメントというものを強化をいたしまして、環境の破壊のない、むしろ環境が良好に保全されるというような企業立地を私どもは促進をいたしたい、かように考えておるわけでございまして、過去の例をそのまま繰り返さないということをかたく決意をいたしておるわけでございます。
  108. 根岸正男

    説明員(根岸正男君) お答え申し上げます。  産業において新しい製品をつくるとき、あるいは新しい工程を導入するというようなときに、確かに反省すべき問題がたくさんあったと思います。  それで、先ほど先生が御指摘になりましたのは、テクノロジー・アセスメントをいかにやるかという御趣旨だというふうに私どもとっております。当然、今後、新製品の開拓あるいは新しい工程の導入というときには、現実的なそういうアセスメントを行なって、今後公害のないようにやってまいりたいというふうに考えております。既存の産業におきましても、当然いろいろな基準がございますが、それはもう当然守って、きっちりとやるということは当然なことだと思っております。
  109. 小柳勇

    ○小柳勇君 関連して質問いたします。  一つは、経済企画庁の総合計画局長見えておりますから、これはあとの私の、あさってになるかどうかわかりません——あさっての質問に関連してお願いを申し上げるんだが、鵜崎県知事時代、昭和四十一年に経済企画庁に有明海の底質調査を依頼しておるわけです。水銀の含有量など。それで、ここに概数など説明がありますけれども、経済企画庁が調査した資料を私は持っていませんので、あさっての論議に必要でありますから、その資料をお調べになって、四十一年のとき及びその後も、亀井知事になりましてからも依頼をして、水銀含有量、有明海全部を調べているようです。したがって、その資料を御提出願いたいと思うがどうですか。
  110. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) 御承知のとおり、昭和四十五年まで、国民生活局におきまして、水質保全行政を経済企画庁がやっておったわけでございまして、いま御指摘の調査は、そのときに実施したものと思いますが、現在この事務は全部環境庁に移っておりますので、資料もおそらくそちらに行っておるのではないかと思いますが、岡安局長にちょっとお聞きしてみましたが、まだわからぬそうでございますから、よく御相談をいたしまして、もし私どものほうにございますれば、もちろんこちらから提出いたしますし、あるいは環境庁のほうに行っておるのであれば、そちらから出していただくように、御連絡をいたしたいと考えます。
  111. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 私どもも過去のデータを企画庁から引き継ぎまして持っているわけでございますが、いままでに私どもの調べました範囲内では、昭和四十五年八月に熊本県の公害課がやりました水俣水域水銀環境汚染調査報告書というのはございます。有明海というお話でございますが、もう一度よく調べてみたいと思います。
  112. 小柳勇

    ○小柳勇君 私のは古いガリ版刷りなものですから、正確な資料がほしいわけです。これによりますと、福岡県の矢部川の沖から大牟田川沖、それから三池港周辺まで有明海の底質調査をやっておるわけです。その数字も、概数出ておりますけれども、これはガリ版刷りの古いものですから、これで論争しても、それは違いますと言われたら恥なものだから、お願いしておるわけでありますから、それをひとつよく調べて資料の御提出を願いたいと思います。あしたの夕方までに出してもらえればいいです。これはガリ版刷りがありますから、比べるだけですから、正確なものをお出し願いたいと思います。
  113. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 調べまして、ありますれば御提出をいたします。
  114. 森中守義

    ○森中守義君 さっき申し上げましたが、三者とも、いずれも概念のお答えであって、私の胸にかちんとする答弁でない。  そこで、具体的に少し申し上げてみますと、きのうの閣議の何か決定で、危険水域をもう一回見直すんだと、こういうことのようですね。そこで、ちょうど前の運輸大臣のときでしたか、海底のヘドロの処理は、実施官庁は運輸省だと、こう言ってここで言明をされた。むろんこれは港湾法あるいは海洋汚染防止法、この所管官庁が運輸省だから、まさにそのとおりだと私も思う。  そこで、いまさらその危険水域を政府が洗い直すということも、これはどうかと思うんですが、まずヘドロ除去のための調査はもちろん、その実際の工事施行ですね、こういうものはいま個々ばらばらにやってみようとしてもなかなかできないと思う。連日のように漁家は漁家で大騒ぎ、いつ一体まともな海に戻るのか、まさにこれは重大な国家的な問題ですよ。これをいま汚染防止法だ、あるいは港湾法だという、そういう意味で、ひとり運輸省が現行法のもとに実施官庁でこれをやっていこうというには、いささか重荷であるというよりも、政府一体の認識に欠けるところがあるんじゃないか、こういう私は考え方を持つ。  そこで有明、不知火あるいは瀬戸内、至るところにこういう問題があるわけですから、何かここに画期的な一つの方法を持続的に計画的に急速に実働に移る時期に来ていると、こう思うんですが、これについては水質汚濁防止法、これを環境庁で何か指定しているんですね。これをもう少し組織的な計画的な措置はできませんか。私はいままで見ていると、関係の委員会調査に行くわけです。転々と見て回る、地元の陳情を受ける、自治体の意向を聞いている。そこで国会に大臣を引っぱり出して、どうするんだというようなことがいままでのパターンなんですね。このパターンをずっと繰り返していっても片づかないし、海は戻りませんよ。そこで何かいい知恵がないかというのだが、当然、仕事をやるには金がかかる。しかもそれを誘導していくにはどうしても特別な立法が必要じゃないかというように考える。いまさら何の危険水域の調査だという、新聞でもだいぶひやかしたような記事が方々に見える。いまさらに、という言い方をしているんですね。しかし、そうは言ってみたところで、やらなければしょうがない。それならばヘドロ処理等のための緊急措置法でもつくって、これを一つのよりどころに関係省庁が協議をしながら組織的、計画的に行なっていく、こういう時期に来たと、こう思うんですが、一体これは運輸大臣の専掌事項になるのか、あるいは環境庁との共管になるのかわかりませんけれども、こういうことのお考えはどうなんでしょうか。
  115. 岡安誠

    政府委員(岡安誠君) 先生のお話のとおり、環境対策といたしましてもヘドロの処理の問題は非常におくれておりまして、したがいまして、調査等既存のデーター等につきましても、必ずしも組織的なデータがあるような現状ではございません。しかし、まあ非常におくれたことは残念でございますので、おくればせながら、いろいろ調査をいたしておりまして、たとえばPCBにつきましては、昨年全国の一斉点検をいたしまして、ある程度の状況は把握できたのでございますが、水銀につきましては、今月中にも全国総点検を発足させまして、ヘドロの汚染状況等を把握いたしたいというふうに考えております。  調査によりまして現状が把握でさましたら、次の段階は除去する場合の基準というのが必要でございます。これも環境基準というような高度の水準のものは、なかなか現在、直ちに設定することは困難でございますので、実は私ども現在、とりあえず暫定的な汚染ヘドロの除去基準というものをつくりたいということで、水銀につきましては、近くこれを設定をいたすというつもりでございます。順次有害重金属に広げてまいりたいというふうに考えております。  実施は、やはり従来からの専門官庁でございます運輸省なり建設省にお願いをするということで、運輸省におかれましても、最近特に新しく公害防止のためのヘドロ処理の事業費をお取りになりまして、本格的に事業を開始いただいたわけでございますけれども、建設省におきましても来年度から、ひとつ計画的なヘドロ除去のための浄化事業を発足させるというふうにきまっておりまして、私どもは今後、関係省庁と相談をいたしまして計画的に、かつ早期にヘドロ対策を実行いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  116. 岡部保

    政府委員(岡部保君) ただいま岡安局長お話のとおりでございまして、最近環境庁を中心に、いわゆる水銀等汚染対策推進会議というもので、私どもも参加いたしまして、いろいろお打ち合わせをしているところでございます。  そこで、確かに先生のおっしゃるとおり、ヘドロの処理ということだけを取り上げましても、たとえば水俣港の問題であれば、私どもほんとうに責任をもっていたしますと申し上げるわけでございますけれども、これが範囲が広い海域になった場合にどうしたらいいかという点で非常に問題ございます。河川あるいは港湾区域外の海域については、建設省が何とかひとつしようということで、いま建設省の決意の表明があったわけでございます。そこで、いままでの関係もございますので、これから建設省と十分お打ち合わせをして万遺漏ないように進めていきたいという考え方でございます。
  117. 森中守義

    ○森中守義君 その決意はたいへんけっこうだが、ところが実際動き出すのは、現行法ではなかなかとらえにくい。特にいま政府で考えられているのは、原因者負担というのが原則なんだ、けれども、自治体も加えて、国、自治体、原因者、三者等で財政負担をしようじゃないか、こういう話があるわけですね。さて、それならばどこがどのぐらい持つかという、こういう問題等で、なかなか簡単にまとまらない。しかし財源がきちっときまらないで仕事だけ先行する、あとで清算しましょうというわけにはいかぬと思うんですね。これも一つあるでしょう。  それと、水産庁にあとお尋ねいたしますが、いま現実に存在するのは、患者の救済というのはありますよ、ところが漁労に従事する人たちの救済の方法はない。漁業禁止をやった場合に、とりあえずつなぎ資金を出しておこうとか、無担保、無利子で一年間貸しておこうとか、何かちっともその辺がはっきりしないのですね。だからといって、そういう実害をこうむっておる漁労者というものは、昨今の人口構造からいきましても、たいへんな高年層である。平均すれば五十歳ぐらいになるんじゃないでしょうか。こういう高齢者が魚をとる。で、そうなると、たとえば従前の炭鉱の閉山のときには、雇用促進事業団的なものをつくってでも一応処理できたわけですが、今回のこの場合はそう簡単にいきません。そうかといって漁区を変えようとしても、やれ漁具だ、あるいは漁船だ、しかも今日のむずかしい漁業協同組合法あるいは水産資源法なり、こういう関係から漁区というのは非常にむずかしいのです。簡単にいきませんよ。そこで限定をされた患者にとどまらないで、広く漁業に従事する人にまで及んでいるわけですから、こういう救済の措置も講じながら、緊急措置法的なものをつくって処理していかなければ、だんだん社会不安が増大する、魚は食えない、こういうような今日の状態を放置できない、そのために、さっき環境庁の局長お話でも一通り了解できますけれども、もっと基礎になるような、ヘドロ処理等も中心にした緊急措置法というようなものをできるだけ早い機会に国会に提出をして、十二分の財政の裏打ちをしながら、除去の体制、救済の体制というものをとるべき時期に来ているのではないか、こういうように私は思う。  よって運輸大臣、これは他に関係の閣僚がおられませんので、きのうの会議等のあとでやりますけれども、一ぺんこういうのを閣議の中で出してみたらどうですか。そうしませんと個々的に部分的にやってみても始末つきませんよ。海は戻らない、もとには。それと港湾局長に、水俣のヘドロ等はずいぶん深刻に検討してもらっておりますけれども、もっと全国的な規模で政府一体の上でとらえて、しかも今日の産業政策の大きな落とし子みたいなものですから、これを自治体等に責任を持てとか、そこにも責任の一端があるということは、ちょっと問題だと思う、国の責任ですよ、これは。閣議で大臣まとめてくれませんか。
  118. 新谷寅三郎

    ○国務大臣新谷寅三郎君) これは御承知のように、最近非常に問題になっておりますので、政府としては、何とか早く解決の方途を見出さなければならぬということで、努力をしておりますが、新聞等にも出ましたように、環境庁長官が中心になって、まず第一には、今日のような状態になるまであまり手を打てなかったということについては、これはいろいろ責任問題もあると思いますけれども、とにかくいま人体に非常に影響のあるというような状態はほうっておけない、いま最後にお述べになったように、それによって各方面に非常な生活不安が起こりまして、何とか救済しなければならぬというような状態が、あちらこちらに見えるわけです。  でありますから、これについては、これは別に法律によったわけではないですけれども、環境庁長官が中心になって、関係各省の局長を集めまして、とりあえず、まず一番大きな影響を与えておる水銀の問題をつかまえて、具体的にどうするかということについて、関係各省の意見を大体まとめられたわけです。これは環境庁のほうから御説明になったほうがいいかもしれませんが、とにかく大急ぎで具体的な対策を実施しよう、これに基づいて。一応の成案ができておりますから、これをもとにして取り組んでいこうということです。おそらく予算がないと思います。これは予備費を出すと思います。  それから、いまおっしゃったような、水銀だけじゃなしに、まだまだほかに有害物質があるはずですから、そういったものを順次非常に危険な区域、地域から調査をしていきまして、具体的に処理をしていこうというかまえ方です。  それから、根本的に言うと、おっしゃるように何かやっぱり法律が要りますね。法律が要ると思います。私のほうは特に港湾に関するヘドロの処理ということで、非常に環境庁とは関係が深いものですから、私も環境庁長官とはこの問題について、しばしば御相談をしているわけですが、まだ政府の最終的な態度はきめたわけじゃありませんけれども、環境庁長官も基本的な対策が要るんだということを述べておられますから、関係各省で具体的な問題を進めながら、将来の基本的な対策について関係各省で十分相談をいたしまして、最近の機会に、国民が安心していただけるように、国民に安心してもらえるような、そういう対策を打ち出す必要があると思っております。関係各大臣とは、そういう方向で、至急に私も促進をしてもらうように話をしたいと思います。
  119. 森中守義

    ○森中守義君 これは大臣、せっかくのお答えですので、それでもいいんですが、まだこの会期はあと一カ月近くありますからね、それでにわかに法制局にいろいろ技術的なことを検討してもらったりなんかしましても、そう手間のかかるものではない。だから、この国会に——あくまでもこれは仮称ですよ、緊急措置法というのはね。しかし緊急性があることは、これはもう言うをまたない。だから本来ならば、これは他の法案に先んじても出すべきだと思う。これこそ、その内容がみごとなものであれば、これはもう超党派で直ちに国会で成立させますよ。そういうことで、この会期中を一つのめどに検討していただくよう、特にこれは要望、要請ということにもなりますけれども、お願いしておきたいと思いますから、閣議でもさっそくやってもらえませんか。
  120. 新谷寅三郎

    ○国務大臣新谷寅三郎君) この問題は、閣議でも再々問題が出ておるのです。それで、まだ閣議で議論をするような程度のものではありませんけれども、素案のようなものは環境庁にもあるようです。ほんの素案のようなものは。ただそれを各省の連絡会議にかけたり、あるいは閣議に出すというような程度のものには、まだ至っていない。非常にこれはむずかしい問題が多いですね、むずかしい問題が。  それで具体的に、たとえばできるだけ早く国が予算的措置を講じるとか、あるいは困っているところには融資をするとか、そういったことは、これはわりあいに簡単だと思うんですよ。ただ将来にわたって、影響がずっと波及しますから、そういったものをどうするかとか、あるいはどの程度の安全基準というものをこしらえてやるかとかということになってくると、これはほんとうに一片の法律、規則ではまかなえないような部分がたくさんあるわけです。そういうことのために、まだそういったのが固まってこないというんですが、御趣旨は私も同感です。早くやったほうがいいです。どうせやらなければならぬです。と思います。ですからその点は、関係の閣僚にも御意見のあったところを伝えまして、促進するように骨を折ります。
  121. 森中守義

    ○森中守義君 ぜひそのことは、すみやかに実現するようお願いをしておきます。  港湾局長、少しこまかな質問ですが、この改正案の二条に示されている港湾施設、十四項までその施設をすべき必要事項を書いてありますが、いまの港でこれだけの必要事項を備えている港がありますか。
  122. 岡部保

    政府委員(岡部保君) いまの先生の御質問、要するにこういう改正もし、新たにこれだけの港湾施設をつけ加えたと。そういうつけ加えた施設をすべて満足するような状態にある港があるかという御意見かと思いますけれども、これにつきましては、いわゆる大港湾においては、満足するべきかどうかという点についてはちょっと問題がございますけれども、この新たに追加した施設もすでに備えておるという港がございます。ただ私の知っております限りで申し上げれば、いささかそういう点で欠けておるのではないかという点が、やはり環境関係の施設でございます。たとえば港湾公害防止施設ということで、防止用の緩衝地帯でありますとか、そういうものが十分であったかどうかという点については、もちろんある港ございますけれども、とても十分だったとは申せませんし、それから「廃棄物処理施設」というところで、いわゆる廃棄物の、たとえば沈船を焼却する焼却炉を持っておるのは、残念ながらまだわが国には二港しかございません。そういうような状態でございます。また「港湾環境整備施設」ということで、緑地等これから大いに整備いたします。部分的にはもちろんあるわけでございますけれども、十分な緑地であるというようなことにはとても申せない点がございます。また「港湾厚生施設」につきましても、先日も御質問ございましたが、港湾労務者の厚生施設が比較的整備されておっても、船員関係の厚生施設があまり整備されておらぬではないかという御指摘もあったような次第でございまして、そういうように、どうも完全に、私の知る限りで、これを十分満足させている港というのは、どうもあまりないんではなかろうかという感じがいたします。
  123. 森中守義

    ○森中守義君 それでこの二条を受けて、十二条の「業務」、この場合に、いま局長の言われるように、新しく付加施設をやらせようと、こういうわけなんで、完全にこれだけのものが設備されているものはおそらくないと思う。そこで二条を受ける十二条において、何年間ぐらい、これだけの義務づけられたものをやらしていくのか。その際における財政の裏づけはどうなのか、これはどうなりますか。
  124. 岡部保

    政府委員(岡部保君) はっきり何年間で、一応このくらいならばという満足できる段階に到達できるという計画、いろいろ港湾管理者と相談しておりますが、まだ十分できておりません。もう少し時間をかしていただきたいと存じます。ただ、いずれにいたしましても、ここに新たに、いま申しましたような環境関係が非常におくれておるという点ございますので、そういう面の業務として整備をするというものについては、財政面で、できる限り私どもとしては、いわゆる国庫補助の道を開きたいということで、予算要求も昭和四十八年度の予算の際にいたしたわけでございます。  そこで、この十二条の「業務」で新たに追加になりました点で、たとえば「廃棄物埋立護岸」でございますとか、「海洋性廃棄物処理施設」の整備というようなものにつきましては、補助の道が開かれたわけでございますが、六号の「港湾区域内に流出した油の防除に必要なオイルフェンス、薬剤その他の資材を備える」というような業務、これについて、この備蓄をさせるために国が補助しょうということで要求いたしました予算は、残念ながら認められるところまでまいりませんでした。あるいは第二号の「港湾施設を良好な状態に維持すること」、これは特にどういうことということはございませんが、カッコ内での、いわゆる「(港湾区域内の水域の清掃)」、こういう清掃の業務について補助をしようという道を開こうといたしましたのですが、残念ながら、これも認められるところに至りませんでした。この点につきましては、私どもとしては、四十八年度は残念ながら実施はできませんでしたが、四十九年度以降において、これはもう一度予算要求をいたしまして、もう少し財政当局とじっくり話し合って、実現するほうに向けたいということで、これから進むつもりでおります。
  125. 森中守義

    ○森中守義君 これはしかし、せっかくのお答えですが、法律の改正はする、しかも義務づけはする。しかし何年度までに、何年以内にこれこれのものが設備されなければならぬという拘束条項がないというのは、はなはだ法案としておかしいんじゃないですか。必要であればこそこういうものをつけなければいかぬ、ことに環境保全ということが新しい付加設備の中に出ているわけですからね。ただ改正案でうたい上げていけばいいんだ、あとは財政の状況によって逐年可能な限りやっていこうという、こういう緩慢なことでは、あまり適当でないし、しかも港湾管理者との間にどういう話になっているのかわかりませんけれども、やはり法律上調整しようとするならば、大体いいことなんだから、これは何年度ぐらいまでにやってしまおう、たとえば三年とか、通例長くて五年、しかし一般的にこういう公共性の強い設備をやっていこうというなら、五年ということはないようですね。まず通例としては三年ぐらいじゃないか。ですから政令、省令等がたくさんいわれておるので、実施計画の中に、こういうものをうたい上げる、義務づける、そういうことを省令の中にでもこういうものを入れ込んでおく必要があると思う。そういう意味で、いま局長の答弁だと、可能な限り、できるだけ、しかも財政当局ありということで、やや岡部局長の答弁にしては珍しい答弁をしている。いつも積極的な答弁だがこれはあまり積極的でない。この際三年なら三年ということを約束しておいたらどうですか。
  126. 岡部保

    政府委員(岡部保君) どうも歯切れの悪い答弁でまことに申しわけございませんけれども、ほんとうのところ、私ちょっと三年でこれを整備するんだという自信が実はないんでございます。と申しますのは、先ほども申し上げましたように、いろいろな意味で財政補助が可能であれば、可能であればというか、財政補助を認められていれば私も相当に強気な考え方で管理者を説得いたします。しかし残念ながら、どうも一部の補助は認められましたけれども、補助を認めるところまで達しなかったものについてこれを——もちろん業務ですから決して義務というわけではございませんけれども、むしろこういうことをやれるんだという感覚で法定はされておるわけでございますけれども、しかし先生のおっしゃるとおり、実質上はこういうものを備えるべきだという意味でございますので、したがって国庫補助が認められていれば相当そういうことを言えると思います。残念ながらどうも、財政負担はお手伝いいたします。それだからこれだけ三年間にひとつ整備しなさいということが言えない点がまだ残っておりますものですから、非常に歯切れの悪い答弁をいたして申しわけないんでございますけれども、これは、むしろ財政負担をできるようにするということが先の段階だと思いますので、この点を努力いたしまして、それでなるべく早い機会にやるということを申し上げたいと存じます。
  127. 森中守義

    ○森中守義君 局長、そこが問題なので、港湾管理者、これはつけなくちゃならぬ、あるいは望ましいと、こう法律でいわれながら、財政負担はありません、いずれだんだんにやっていこうと、こういうようなことでは、これは実際管理者になると困るんじゃないですか。これが実は、全然財政負担等がきちんと法律事項としてきまっていない。だから各港湾管理者は、非常にその狭隘な火の車のような状態の中から、こういうものを義務づけられたんじゃにっちもさっちもいかぬ、こういう声は強いんですよ。  だから最初に申し上げたように、港湾管理者の権能を侵すものではない、そういう大臣局長のお答えだから、そういうものかなと思いながらも肝心な財政の裏づけがない。これでは意味をなさない。これはひとつ、できるだけ財政当局も説得をして全額国庫負担、財政負担——助成金、補助金というものじゃない。いわんや融資であってもならぬ、融資ということは返さなければならぬ金だからね。これはひとつ、まるまるやったらどうですか。さっき議論の中で、新しい港湾整備計画に五兆という数字も出たようですが、新しいものをつくるには惜しみませんよ、在来のものをよくすることにはあまり気が向かぬという財政当局のものの考え方も問題なんだけれども、この辺は、ひとつ全力をあげて、港湾管理者に負担はかけません、これこれのものは港湾の良質化のためにどうしても必要だということで、全額負担、三年間に仕上げる、こういう約束をいま大臣してくれますと、私は直ちに質問やめますよ、これは。どうですか。
  128. 岡部保

    政府委員(岡部保君) どうも御満足いただける回答ができませんので、まことに恐縮でございますけれども、先生のいまおっしゃいましたおことばにどうもことばを返すようになりますけれども、私、全額国が持って、財政負担をしてつくるというのは私は行き過ぎのような気がするのでございます。と言いますのは、やはり港湾管理者というのは、自分の港のためにやる仕事でございますから。ただ、それに対して国が全く財政負担を一部でもしないというのも、まことにこれはだらしのない話でございまして、やはり補助をするというのがたてまえであるというふうに私は考えております。したがって、この補助化を実現するように最大の努力をすることはお約束させていただきます。
  129. 森中守義

    ○森中守義君 それはそういうことかわかりませんが、補助は九九・九%であることを望む。  そこでもう一つ。さっきちょっと申し上げた四十三条の五項、ここの条例の問題ですが、これは一体、画一的にできるという見通しがあるんですか。先ほどの御答弁では、いやこれは、この条項を議論する際に十分港湾管理者の意見を聞いてある、できますという、こういう意見だったと、こういうんですが、間違いなく準則どおりできるものかどうなのかということ。  それから企業負担の問題で、企業が拠出を拒んだ場合にどうなるのか、これも企業次第、事次第ではそういうことはあり得ると思うんですが、そういう場合の罰則などは考えていないんですか。
  130. 岡部保

    政府委員(岡部保君) ただいまの前段の御質問でございますが、先ほどもお答え申し上げたわけでございますが、確かに港湾管理者といろいろこれを相談しております際に、港湾管理者から、できるだけ条例というものが、先生のおっしゃるとおりで、できるだけ条例で、場所によって食い違いがあったり、あるいは条例で実際に徴収する事務というのが非常に手続がむずかしい、そういうむずかしさをなくなすようにという御注文があることは事実でございます。その際に、でき得る限り、むしろ政令で定める基準というのをなるべく具体的に定めてもらいたい、それで条例の、要するに何と申しますか、あまり自由にいろいろ裁量するという範囲をなるべく減してもらわないと、こういうのは逆にやりにくいんだという地方の声を伺っております。したがって、これは現段階でまだこれの最終的な政令の案というのはできておりませんが、ほんとうに具体的に事務をつかさどります港湾管理者の動きやすいように、しかも先生がおっしゃったとおりに、条例が場所によってまちまちにならないように、そういう意味で、この政令の基準というものを定めていかなければならないという考え方で進みます。  それから第二点の、もしも企業が負担をしなかった場合にどうなるかといいますのは、これは拒否をされたといたしますれば、ちょうど地方税を徴収いたしますような手続によりまして、これは地方自治法によっての規定と同様な扱いで徴収もすることができるという判断に立っております。
  131. 森中守義

    ○森中守義君 まあこれは、むずかしく議論していきゃ切りがないけれども、元来政令で基準を定めて条例をつくらせる、これ自体がやっぱり法律的には問題がありますね。条例というのは、言うまでもなく各自治体固有の権能だから、それを政令はこういうものなんだ、これにならってつくってくれということになると、これはやっぱり自治権を侵害するということをいわれてもこれはしようがないじゃないか、私はこう思うのです。  だからこの前から、政令並びに省令を出してくれと、こう言って約束をもらっていたが出されちゃいない。一体どういう内容のものなのか、それがわかりません。よって私は、ものの根本的な考えとしては、政令等によって条例を定めさすべきものじゃない、明らかにこれは自治権の侵害だというように基本的には考える。ですから、あとはそういう自治権、これを侵すのじゃないかという、こういう危惧の念がこの条項の中には多分にありますよ。法制局段階でどう言ったのかわからない。むろんそう言えば、いや、いやならばつくらなくてもいいんだ、ちっとも拘束したり抑制しようという意思はないのだという逃げ方も政府にはあるでしょう。けれども、法体系としては必ずしも政令をこさえてそれに従わせしめる、つくらしめるということは好ましい行き方ではない。この辺が自治権の侵害という一つの論拠になってもちっともおかしくないと、こう私は思うのです。  それで大体、四時半近くになりましたが、政令、省令が出ておりませんので、まあこれは出たあとに再度質問をすることにいたしまして、本日は局長の答弁を求めて、政令、省令、出ることを待ちながら、もう一回質問するかどうかを私も考えてみたい、こう思うのです。
  132. 岡部保

    政府委員(岡部保君) ただいま御質問のございました、政令でどういうことを考えているかという点についての、資料をまだ提出してございませんが概要を御説明させていただきたいと存じます。  まず港湾環境整備負担金として事業者が負担いたします費用の範囲、負担割合、負担する事業者の範囲等の基準をこの政令で定めるというつもりでおります。  そこで、この事業者が負担する費用の範囲及び負担割合というのは、まず港湾区域内の当該水域に隣接する地域内の公共空地等における汚染のための工事に要した費用あるいは環境の整備のために整備する施設の建設または改良に要した費用の二十分の一の費用、これは法定耐用年数が二十年に満たないものの費用については、当該法定年数で割った額の費用あるいは前号に掲げる工事に要した費用にかかわる借り入れ金の利息、港湾の環境の整備のための施設の維持管理に要する費用等の合計額の二分の一以内の額ということを考えております。また負担金を負担する者は、当該港湾において港湾運送事業を営む者または当該港湾の臨港地区内に立地する工場または事業場を営む者であって、敷地面積が一定規模以下の者、あるいは年間収益が一定額以下の者、その他小規模な者を除いた以外の者を負担する者といたしたい。  港湾環境整備負担金の額といたしましては、当然徴収対象者の年間の総生産額でありますとか、従業員数でありますとか、敷地面積等の共通の指標のもとに、それぞれのものがたくさんあるわけでございますから、そういうもめの負担率、シェアをきめまして徴収すべき額をきめるというような、何と申しますか、徴収する場合の対象範囲あるいは負担割合、負担する事業者の範囲等をなるべく一つの基準として政令で定めたい。  そこで、これによってあとは、港湾管理者に条例によって徴収をしていただくというかっこうに持っていきたいという考え方でございます。で、この点につきましては、一応の基準というものを、いま私が申しましたようなことで考えておりますが、港湾管理者としてはいろいろ御注文があるようでございますので、まだまだこれは相当に詰めていかなければいかぬのではないかという感じを持っておる次第でございます。
  133. 森中守義

    ○森中守義君 まあ、いま政令の大綱的なお話を承りましたが、やはり耳で聞くもの、目で見るもの、だいぶ趣も違います。さっき申し上げたように、その政令、省令案はあとで拝見をいたしまして、質問を継続するかいなか、これはひとつ理事会のほうにも申し上げて、きょうは私はこの程度で終わります。
  134. 長田裕二

    委員長長田裕二君) それでは理事会でお話を願うことにして、質問を継続いたします。
  135. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 それでは、この港湾法の問題について、重複する問題をなるべく避けて私は質問したいと思います。  先ほど環境保全問題あるいは港湾管理者が設置すべきいろいろな問題点が出ましたので、この問題から私は始めたいと思います。  特に運輸大臣の趣旨説明の中で、「第一に、港湾の環境の保全をはかるため、水域の清掃、廃船の除去、廃棄物埋め立て護岸等の管理運営などを港湾管理者の業務として明示する一方、」云々とこうありますけれども、これの具体的な、先ほど一部触れられましたけれども、港湾管理者の財政負担というのは非常に増大してくるのではないかと思うのです。こういう問題についての具体的な問題について、一つ一つ私は伺いたいと思いますけれども、まずこの問題についての運輸省等の方針を伺いたい。
  136. 岡部保

    政府委員(岡部保君) ただいま先生おっしゃいましたとおり、また先ほど森中先生にお答え申し上げたとおりでございまして、確かに私ども、今回環境問題というのを、相当に港湾整備事業として取り上げるということで踏み切ったわけでございますが、残念ながらまだまだ十分の段階ではございません。たとえば具体的な例で一つ言わしていただくならば、いわゆる沈廃船の処理という問題、これは港内で非常に問題になっております。こういうものに対して、いわゆる沈廃船は港内を非常によごしてもおりますし、交通に不便を来たしておるというような問題もございます。そういうものの引き揚げの問題について、当然私ども、沈廃船除去の予算化と申しますか、補助化を予算の段階で要求もいたしましたし、いろいろやりましたのですが、残念ながら四十八年度においては補助が認められなかったというような問題がございます。これは一つの例でございますが、そういう点で、必ずしも満足いたす状態ではございませんので、今後ともそういう面で、財政負担の拡充ということに努力していくつもりでございます。
  137. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうしますと、廃船の問題ですけれども、具体的に廃船の除去をどういう方向で進めていくのか。あるいはこの廃船処理施設の現状あるいはこの沈廃船等の問題を除去するためには大体どの程度必要なのか、これについての計画を伺いたいと思います。
  138. 岡部保

    政府委員(岡部保君) まずいま申しました沈廃船を引き揚げるという意味ですが、何と申しますか、港湾の清掃事業みたいなものでございますが、そのものについては補助は認められなかった。ただ沈廃船を引き揚げたものの処理、廃船を処理するというものについての、いわゆる廃棄物の処理施設というものは、四十八年度から新たに補助対象として認められることになったわけでございます。  そこで今回の法改正で、そういうものの根拠規定も入れたわけでございますし、現実に四十八年度の予算において実施をいたすことになるわけでございますが、まず廃棄物の処理施設といたしましては、引き揚げました沈廃船を焼却する炉というものが現存しておりますのは、まことにお粗末な話でございますが、横浜港と大阪港二港でございます。それから破砕施設と呼んでおりますが、引きちぎってばらばらにしてしまうというための施設を持っておりますのが神戸港でございます。それ以外の港については、こういう沈廃船の処理施設というものをまだ持っていないわけでございます。あとは、こういう特殊の施設は持っていないで、埋め立て地などで焼却をしておると、ただ何と申しますか、野焼きというんですか、焼いておるというような問題でございます。  そこで私ども、昭和四十八年度予算といたしましては、廃棄物の処理施設として六億三千万の事業を実施するという考え方でただいま予算化もいたしましたし、現在実施の準備中でございます。これ以外に、やはり廃棄物の問題ではございますけれども、その処理をするということではなくて、いわゆるごみの処理のために、東京港と大阪港でございますが、ごみ処理の埋め立て地の護岸というものに補助を新たにするということで、これが約八十八億の事業を四十八年度実施するという考え方でございます。  これに対して全国的にいまいろいろ要望を伺っておりますが、各港、相当に御要望はあるようでございます。したがって、これはとりあえず四十八年度に対しては単年度予算で要求をいたしましたが、現在今後五カ年間でどのくらい要望があるかというのを資料を集めているところでございます。  これ以外に予算化いたしましたのでは、いわゆる環境整備事業と申しますか、港湾の緑化の予算がございます。これは一つの環境問題として新たな予算を取ったものでございます。大体処理施設ではいまのような状態でございます。
  139. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうしますと、たとえば廃船の処理施設が現実に横浜と大阪だけしかないと、いわゆる瀬戸内海等の沈船は相当あるといわれておるわけですね、新聞等の報道を見ましても。この問題に対する処理のしかたですね。運輸省としては、まあ本年度の予算から見ても、港にはそういう処理施設を置くような考え方は持っていないわけですね。たとえば瀬戸内海あるいはその他予想される沈船の多いところ、廃船の多いところについての具体的な処置は、四十九年度からどういうふうにとっていかれるのか、それについて。
  140. 岡部保

    政府委員(岡部保君) やはり沈廃船というのがどういうところに多いかと申しますと、大港湾いわゆる東京、横浜、名古屋大阪、神戸、北九州、こういう港がやはり沈廃船は多いわけでございます。  そこで、こういう港におきまして、四十八年度の補助対象になりましたところで、従来ございましたのは非常にわずかでございましたが、それ以外の港でも焼却施設を新たに設けていこうということで予算の要求がございまして、相当な数の港に焼却施設を設けることにいたしております。ただ、これは比較的こういう沈廃船というのは大きなものでございますので、まとまった施設になりますが、他の小さい港になりますと、むしろ沈廃船と申しますよりは、そこで扱う木材の皮であるとか、そういうものの焼却のほうが先になりますので、比較的小さな焼却施設というものを整備するというものもございますので、非常に大きさにおいてもいろいろな変動がございます。ただ相当な数で、各港について整備をしていく段階でございます。
  141. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 それじゃ、それとあわせて、この水域の清掃等に、これはまだ予算が相当必要じゃないかと思うんです。それとあわせて、海洋清掃船を何か三隻つくるような計画になっておりますけれども、これの運用等についての具体的な計画を、あわせて御答弁願いたい。
  142. 岡部保

    政府委員(岡部保君) 確かに、いまおっしゃいました海洋の清掃というのは、これは非常に重要な問題でございます。そこで、一つ申し上げなければなりませんのは、いわゆる海面の清掃でございますが、港湾区域内の清掃という問題につきましては、これはちょうど沈廃船の引き揚げが補助化ができなかったと同様に、港湾区域内の海面清掃、海洋清掃の補助化は残念ながら四十八年度ではできませんでした。ただ海洋の清掃でございますので、港湾区域内とそれの外側の海洋とは続いておるわけでございまして、そういう外部の清掃というものに従事するための清掃船というものを、むしろ法制的な問題といいますよりは、少しでも清掃できるような体制にもっていきたいということで、これは国の出先機関、港湾建設局の事業といたしまして、海洋の清掃船を三ばいつくって、これは瀬戸内海にこの三隻を配置するというつもりで、ただいま作業船整備費という予算の中で、一隻約一億の予算をもって三隻建造するということを考えております。これは、いわゆる港内の清掃につきましては、大港湾におきましては、従来、清港会とか、いわゆる公益法人でございますが、等々、あるいは直接港湾管理者が持っておるところもございますが、そういうようなところの清掃船が、小規模のものがございます。したがって、むしろその港湾区域外のものにまず清掃船を建造しようというほうに踏み切った次第でございます。
  143. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうしますと、この海岸清掃船というのは、これは瀬戸内海だけに限定をして、その後はまた新たな建造計画は持っているんですか。
  144. 岡部保

    政府委員(岡部保君) 四十八年度におきましては、瀬戸内海に限定をいしました。それで実は、技術的にもどういうものをつくったらいいかという問題もまだございます。したがって今年度、この三隻の建造に踏み切りまして、いいものができるという自信がつきましたら、当然今後、まだ必要な地域、たとえば東京湾でありますとか大阪湾でありますとか、そういうようなところにも建造していくということは、継続して行なうつもりでございます。
  145. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 これのまあ具体的な専門的なことは私たちあまりわかりませんけれども、この処理能力ですね。どの程度の能力があるのか、あるいはこの瀬戸内海で、たとえば三隻の清掃船を置けば瀬戸内海の沈船等は大体どの程度処理できるのか、この点について伺いたい。
  146. 岡部保

    政府委員(岡部保君) この清掃船、現在考えておりますものは、海上に浮遊しておるごみの処理でございます。したがってごみを集めまして、それを船に収容して、それで焼却場所へ持っていくというようなかっこうになるかと存じます。したがって、たとえば大きな沈船を引き揚げるとか、そういうものについての能力はないというわけでございます。  それからもう一つ、これはよけいなことかもしれませんけれども、海底にビニールの布などが非常に沈んでおると、そういうものを当然除去しなければ海洋の清掃には十分にならないという点がございます。そういう能力のものも、まだ現在、技術的に非常にむずかしいものでございますから、今回のでは、とうてい不可能だと思います。したがって、三ばいをつくって、これで十分もう瀬戸内海はきれいになるかと申しますと、どうも決してそういうものではないと思います。ただ、これは能力といいましても、一体一日にどのくらいの能力があるかというような点についてははっきりいたしませんので、ここで具体的な数字をあげられませんけれども、少なくもこれを配置することによっていままでよりもよくなると。それで、それの様子によってほんとうにもっと整備するか、あるいは別の機能を持ったものにするか、そこの辺を考えていきたいという考え方でございます。
  147. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 まあ私は、この程度では沈船とか廃船の処理なんか形だけだと思うんです。積極的にこれは進めなきゃならないし、それ以前にやはり、この廃船の除去あるいは水域の清掃あるいは護岸等の管理運営に港湾管理者の、先ほどからいろいろ議論になっておりますけれども、財政が相当負担になってくるんではないか、これはもう予測されるわけです。  したがって、たとえが横浜港なら横浜港、東京湾なら東京湾の港湾管理者がどれだけ負担増になるか、どの程度予測をしているのか。これは運輸省としても全然考えないでこういうものを義務づけたのでは、私はないんじゃないかと思うんですね。したがって、たとえば東京あるいは横浜等の大きな港の港湾管理者としての負担がどのくらい増大してくるのか、これについての考え方を伺います。
  148. 岡部保

    政府委員(岡部保君) たとえば、いまのお話でございますが、現在水面の清掃というものが補助対象にできなくてまことに申しわけない次第でございますけれども、そういう水面清掃事業というのに一体どのくらい金がつぎ込まれておるかという点についてちょっと御紹介申し上げますと、昭和四十六年度で約二十一港が水面清掃事業を実施いたしておりまして、一億三千万ほどの事業費を費やしております。それから四十七年度には一港ふえまして、二十二港で一億九千五百万ほどの事業を実施いたしております。  したがって、必ずしも十分な清掃であるとは私申しませんが、現在でも二億程度の仕事を二十数港でしておる。各港に平均いたしますれば、約一千万程度の事業を年間いたしておる。そういうものに対して、たとえば寄付金でやっております清港会でありますとか、あるいは管理者が直接財政資金を投入しておるということでございます。  したがって、こういうものを補助事業にすれば、いまよりもう少しよけいな費用といいますか、事業の量が拡大すると思います。しかも、半分であるとか、二分の一であるとか、三分の一であるとか、国の補助が出るわけでございますから、現在の負担と、そう管理者の財政負担としてはそれほど変わらないんではなかろうか、むしろ国庫補助をすることによって事業費が拡大されて、従来の管理者の財政負担程度のもので済むのではなかろうかという考えでございますので、私どもとしては、できる限り、これを何とか補助対象にしていきたいという考え方でございます。  また、さらに今回の法改正をお認めいただきますと、例の、先ほども議論ございました環境整備負担金というものを民間企業から徴収できるという点もございますので、いま考えております程度のものであれば、それほど港湾管理者の財政負担が大きくふえるということはないんじゃなかろうかという考え方に立っております。
  149. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 私は港湾管理者の財政基盤の問題について、あとで具体的に伺いたいと思っておりますけれども、まあこの一つの問題を取り上げましても、港湾管理者の負担というものは少しずつ増大されてきているわけです。港湾管理者の経理内容を調べてみれば赤字港が大半ですね。ほとんどですね。こういう点からいっても、国がどんどん新しい事業を押しつけてくる。まあ港湾管理者としてはやらなければならない問題点では確かにあると思うのです。しかし、こういう問題について、きょうは実は主計官を呼ぼうと思っておったのですけれども、時間等の関係もありまして呼んでおりませんけれども、なぜ四十八年度に、こういうふうな問題を提案するときに、予算措置が全然とれないで、この措置が全然できなくって、こういうものを義務づけていること自体が、私は運輸省がちょっと大蔵省になめられたと言うと語弊かもしれませんけれども、あまりにも態度が弱過ぎるのじゃないかと思うのです。その点について、運輸大臣からひとつ御意見があれば承りたい。
  150. 新谷寅三郎

    ○国務大臣新谷寅三郎君) 港湾管理者の財政負担がだんだん重くなって、圧迫しているのじゃないかということ、その点は私も同感です。これは財政当局とは、予算折衝の際にも、そういう見地から折衝してみたんですけれども、予算の額はふえているのです。で、新しい事態に応じてやるべき新しい仕事というものは財政当局も認めて、それは追加して初めの段階に比べますとだいぶふえていることは事実ですけれども、おっしゃるように、補助率を全体的にもう少し上げてやらないと困るのじゃないかという点は確かにあるのです。  この点は、いま申し上げたように、全面的にもう少し強く要求しろということですが、先ほども申し上げましたように、第五次の港湾整備計画を四十九年度からやろうとしておりますから、このときには、だいぶ先ほどから御議論のありましたような環境整備でありますとか、あるいは公害の防除でありますとか、いろいろ港湾自体の、いままで考えておったような機能のほかにやるべき仕事が相当ふえてきておりますので、われわれも努力をして、補助率の引き上げについて、もう少し港湾管理者の財政圧迫を刺激しないような程度に考えなければいかぬと思っておりますが、これは四十九年度の問題になります。  しかし何も考えなかったかというとそうでもないのです。さっき森中先生からいろいろお話がありましたように、いろんな環境整備についての負担金なんかは新しく考えましたり、まだ未解決でありますけれども、船からの負担金に類するようなもので、入港料その他の問題、そういったのは、やはり対象にいたしまして、財政負担を少しでも軽くするようなことはできるだけやっておりますが、ただ残っておるのは補助率の引き上げの問題これはこれから努力いたします。
  151. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 それでは次に、四十八年度の港湾環境整備事業の予算について一部お伺いしたいと思うのです。  特に、港湾環境整備事業として東京をはじめ各港に整備事業が計画をされているわけでありますけれども、具体的に海浜とか緑地あるいは広場、こういう点について、どういうふうな補助率あるいは港湾整備をはかろうとしておるのか、この事業を進めようとしておるのか、この点についてお伺いしたい。
  152. 岡部保

    政府委員(岡部保君) いわゆる港湾環境整備事業というワクでございまして、港湾の埠頭の緑化と申しますか、緑地を整備するというような事業につきまして、昭和四十八年度には事業費で約二十五億の事業を実施いたしております。これは港数といたしましては四十九港でございます。当初、管理者は四十港程度の御要望でございましたが、さらにその後追加されまして、四十八年度実施をいたしますのは、四十九港の港に対して約二十五億の事業を実施するわけでございます。  そこで、これの補助率と申しますか、国がどのくらいこれを負担するのかという点につきましては、補助率は二分の一でございます。国が二分の一を持ちます。ただこの際、用地費、いわゆる土地の取得のための補助というものにつきましては三分の一、それ以外の上物いわゆる植栽でございますとか、そういうものについては一切二分の一の補助率でやる。そういう率のきまりましたのは、いわゆる都市公園等とのバランスがございまして、そういうような姿になった次第でございます。
  153. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうしますと、たとえば本年度の事業の東京あるいは名古屋大阪ですね、こういうところについては大体何年計画でこういうものが整備されるか、地元の東京港あるいは名古屋管理組合等の関係もあると思いますけれども、大体補助率二分の一あるいは用地は三分の一になっておりますけれども、大体何年を見越して、たとえば海浜とか緑地、こういう広場の環境整備をはかろうと考えているのか。
  154. 岡部保

    政府委員(岡部保君) 実はそこの辺につきまして、少し長い目で見るのをどういうふうにするかという点につきましては、むしろ現在、先ほども御説明申し上げましたように、各港湾管理者の今後の長期的な計画というもののヒヤリングをいましている最中でございます。したがって四十八年度予算というのは、これは新しい項目でございますので、管理者のほうでも若干の戸惑いがございまして、ほんとうの見通しがまだ十分ついた計画でございませんでした。したがって、いまもう一度、たとえば五カ年でどのくらいまで進め、さらにその後もっと進めるならどういうふうな考え方を持っているかというのを、いろいろ管理者の意見を聞いている最中でございます。  それで一つ例にとって申し上げれば東京港、これは相当膨大な港湾の緑化計画を持っておられます。ただそのうちで、どこまでを都市公園で実施し、どこまでを港湾の緑地、いわゆる環境整備事業として実施するかという点について、東京都自身の決断がまだついておりませんでした。その辺を十分つけた上で、これから話を伺いましょうということでいま話を伺っている最中でございます。したがって本日の御質問に対しての具体的なお答えにならないわけでございますけれども、この点については、もう少したちますと、各港湾管理者の考え方が固まってくるということでございます。
  155. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 これは私は、今後の補助対象として非常に重大な問題だと思うんですね。たとえば五年あるいは十年かかった場合に、相当緑化運動——緑地を相当各港湾でも計画してくると思うんです。この場合に、財政補助が二分の一というふうになっておりますが、すでに四十九港、その他これは相当出てくると思うんです。この場合に、何年とも期限もきめないで、そしていつごろできるかわからない。これに対する財政補助二分の一と、こういう実態になってくれば、この環境整備事業に予算をつけていることがはたして妥当なのかどうか。私はつけるべきだと思うんですけれども、無計画に、ただ出発させる意味の涙金をつけたような感じでスタートさせているような私は計画ではないかと思うんです。この点についての考え方はいかがですか。
  156. 岡部保

    政府委員(岡部保君) ただいまの、先生の手きびしい御批判でございますけれども、四十八年度の事業については、おしかりを受けなければならない内容ではないかと、私自身も考えております。四十八年度、確かに新しい考え方で実施をしようということに踏み切りまして、港湾管理者に連絡をとりまして、いろいろ御意見を伺ったわけでございますけれども、決して、要求されるサイドにしても十分考えがまとまりませんでしたし、私ども自身の考え方も十分なものであったとは申し上げかねます。  それで、たとえば主要港において一体緑地の現状がどのくらいなのだという面積的の考え方を申し上げますと、臨港地区の中での緑地率というものが、主要港におきまして平均いたしますと、全国的に申しますと〇・二%程度でございます。もうとてもじゃないが緑地があるなどというオーダーではございません。そこで臨港地区の中で比較的多いところ、これが千葉港は比較的多くて約一五%が緑地でございます。ところが名古屋などに至ってはほとんどございません。ゼロといっていいと思います。神戸あたりでも〇・一%程度でございます。それで私どもの考え方としては、四十九年度以降の五カ年計画で、とても臨港地区内の一〇%までの線というまではまいりませんけれども、少なくも五%以上にはするべきではなかろうかという考え方で、計画を練っていくつもりでおります。最終的な姿としては、やはり二〇%くらいにまで持っていきたいというのが一つの希望でございますけれども、これは具体的に申して、そこまで行き得るかどうかという点は、ちょっと私自信がございませんが、そのくらいのことを考えていることは事実でございます。したがって今回、五カ年計画を新たに編成しょうと考えておりますので、そういう段階で、各港湾管理者の御意見を承った上で、ただいまのような線になっていないとすれば、もう少し緑地を大いに進めるべきであるというふうに考えていきたいという考え方でございます。
  157. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 まあ確かに東京港あるいは千葉港と比べれば、面積あるいは事情もいろいろ違いますので、一がいに何%という基準は、私は引けないと思うのですね。しかし、この計画を進めるにあたって、新五カ年計画ですか、その中で全部この緑地地帯を終了させるという、そういう計画のもとにこの整備事業を進めていくのかどうか、あるいは次の新しい五カ年計画でも、この緑地の問題は解決できないと、そういう見通しでこの補助事業を進めているのかどうか、その点について伺いたい。
  158. 岡部保

    政府委員(岡部保君) まことに、いまの私の自信があると申しますか、こうなるのではなかろうかという見通しから言わしていただきますならば、今回新たに編成しようと思っております五カ年計画で満足するところまではとてもいかないのじゃなかろうか、これは一律に申せませんけれども、たとえばまず五%をこせるようなところまでいくのがせいぜいではなかろうかという感じを持っております。
  159. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 この問題は先行きの問題ですから、これ以上詰めてもあれですから……。  続いて、廃棄物の処理施設の整備事業について。たとえば埋め立ての護岸あるいは焼却あるいは海洋性の廃棄物の受け入れ、これは国の補助が四分の一です。それから廃油処理施設の補助は二分の一と、こういう補助率の率のきめ方といいますか、何を基準にしての補助率なのかどうかですね。その基準についてちょっと御説明願いたいと思います。
  160. 岡部保

    政府委員(岡部保君) 一般に申しまして、こういう補助率というのを新しく認めますときに、これはどうも大蔵省的なことを言って恐縮でございますけれども、大蔵省と話をいたしておりましたときに非常に痛感いたしますのですが、新しい補助事業というものを認める際には、どうしてもほかの事業との関連が非常に強く影響いたします。  そこで、たとえば先ほどもちょっと触れましたが、緑地をつくるという際に二分の一に補助率はいたしまして、用地取得は三分の一にしたということは、これは都市公園法に基づく都市公園の補助体系と全く並ばせられたわけでございます。それから、ごみの廃棄物の埋めたて護岸でありますとか、海洋性の廃棄物の処理施設でございますとか、これが四分の一、十分の二・五という補助率でございますが、これにつきましては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律によって実施をいたしております。ごみ処理施設の補助率、これが四分の一でございます。これに右へならえをさせられたということでございます。したがって、こういうような別の例がございます際には、どうしてもそういう傾向が出てまいります。で、あと廃油処理施設でありますとか、あるいはしゅんせつ、いわゆる港湾公害対策事業というようなものにつきましては十分の五でございますから、これは一般の港湾整備事業とそう変わらないというようなかっこうでございます。したがって他のものとのバランスでこういうふうにきめさせられたという点を、御了解いただきたいと思います。
  161. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そこで、特に二分の一の補助率になっているこの廃油処理施設の問題について、具体的に何点か伺いたいと思いますけれども、この廃油処理施設の整備計画といいますか、基本方針はどういう点に置いているのかどうか、この点について伺いたい。
  162. 岡部保

    政府委員(岡部保君) 廃油処理施設につきましては、現実にございます施設で、大きく分けまして三つの種類があるかと存じます。と申しますのは、港湾管理者が廃油処理施設をつくるケース。それから石油精製工場等、石油を扱います企業者がこれをつくります際と、それから全く廃油処理を業とする事業者がつくります場合と、この三つがあるかと存じます。  そこで現実の計画といたしましては、大体大きく分けましてタンカーのバラスト水、これが非常に油を含んだ水でございます。それから一般の船のビルジ、これがやはり油を含んだ水でございますが、それからあとはタンククリーニング——タンクをクリーニングするときに出ます。こういうような問題で、たとえばタンククリーニングの問題というのは、これは大体が造船所であるとか、そういうような特殊なところに限られますし、それからバラスト水の非常に大量なのは、たとえば油の精製工場に油を積みに行った船が出すわけでございます。そういうような限定がございますが、いずれにいたしましても、そういう民間事業でできるところは民間事業でこういうものをつくらせる。ただ、いわゆる取り締まりをきびしくして、ちゃんと共同便所はここにつくるからたれ流しはいけませんよというような考え方でございますので、そういうものができないで、いわゆるビルジが主体であったり、そういうようなところでは、どうしても港湾管理者が施設をせざるを得ないという問題になってくるわけでございます。  したがって、そういうような考え方でどのくらいの必要量があるかということで、一応計画をいたしまして、まず現段階でほとんど各港についての廃油処理施設は整備されたという段階でございます。ただ、もちろんこれとても廃油処理の需要量がこれからふえてくれば別でございますけれども、いままでの想定にいたしましては、大体ほとんど整備が終わったという段階でございます。
  163. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうしますと、今度の法律によれば漁港も漁港管理者として新たにこの廃油処理施設を設置すると、運輸大臣に提出するということになっていますね。この計画を考えますと、石油精製業者、専門業者、港湾管理者——漁港のほうも港湾管理者でありますけれども、どうもばらばらのような感じを私は受けるわけです。何か共通したような問題が、どうもないような感じを受けるわけですね。運輸大臣のところへ届けるのは確かに共通はしているだろうけれども、この運営、あとで収支の問題いろいろお聞きしたいと思いますけれども、どうも一貫性がないような感じがするんですけれども、この点についてはいかがですか。
  164. 岡部保

    政府委員(岡部保君) 確かに、現実に一番何と申しますか、効果のあがるようなところにつくる、そのためにはつくらせる主体が、たとえば石油精製業であったりというようなことを考えましたために、先生のおっしゃったような意味での若干の御批判はあるかと存じます。ただ現実には廃油処理事業というものは相当に、いわゆるたれ流しを禁止するということで、公共性の高いものでございますので、一般的にいわゆる許可制といたしております。したがって、これはすべて運輸大臣が審査をするということで、先生もおっしゃいましたように一本化されておる。それから港湾管理者については、地方公共団体またはこれに準ずるものであるということで、いわゆる何と申しますか、審査して、ということよりも届け出制という段階にしております。それから今回の法改正の一部にございますように、漁港の問題が、いままで港湾管理者と同じような管理者の立場でありながら、一般私人と同じような段階でございましたので、これを港湾管理者並みに届け出制にするということが法改正の趣旨でございます。したがって漁港管理者は、やはり届け出をすれば済むということにいたした次第でございます。  いずれにいたしましても、許可または届け出の受理というものは運輸大臣が全般的に調整をいたしておりますから、したがって、こういう、もとで一つにしておるという点で、私どもは、何と申しますか、整理ができているんだという考え方に立っておる次第でございます。
  165. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 水産庁お願いします。  この漁港で廃油処理施設を今後設置していくといいますかね、この計画をしているようなものはどういう計画がありますか。
  166. 矢野照重

    説明員(矢野照重君) 漁港におきましては、率直に申し上げて、従来は廃油処理施設はございませんでしたし、また利用する漁船の形態等からしまして、その必要性もなかったということでございますが、最近廃油による公害の問題等が出てまいりまして、漁港につきましても、こういう問題について真剣に取り組む必要が生じたということで、今回御承知のように、海洋汚染防止法の改正、またその附則におきまして、漁港法の一部改正をしていただきまして、正式に廃油処理施設も漁港施設として取り扱うということで、現在御審議願っているわけでございますが、とりあえず主として三百トン以上の漁船が利用されるとみなされます三種漁港並びに特三漁港、これ合わせまして現在百九港ございますが、これらにつきまして、四十八年度から始まります五カ年計画、いわゆる第五次漁港整備計画の中におきまして、この百九港につきましては廃油処理施設を全部設けるということで、現在の整備計画の中にもそれに必要なワクを入れてございます。とりあえず初年度の四十八年度におきましては、漁港管理者が行なう事業としまして、焼津、銚子の二港だけにつきまして施設を設置する予定にしております。そのあとの港につきましては、四十九年度以降、残る四カ年間に全部設置したいということで考えております。
  167. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 これは漁港で、あと五カ年で百九港、廃油処理施設を設置される計画だそうですけれども、実際にこの運営費ですね、廃油処理施設は設置したけれどもあとでちょっと運輸省のほうに港湾管理者のほうの採算等も聞きたいと思いますけれども、具体的にたとえば千葉や静岡県の焼津とか銚子ですね、こういうところであれば廃油処理施設の計画も幾ぶんうまくいくんじゃないかという、これは私の個人的な考えですけれども、小さな港等にこういう廃油処理施設等を設置して、実際に運営の収支が合うかどうかということなんですね。そういう問題に対する補助の体制等も考えていくのかどうか、この点についてお伺いいたしたい。
  168. 矢野照重

    説明員(矢野照重君) お話のとおり、確かにつくることはともかく、あとの維持運営というものが非常に問題になっております。そういうことで、四十八年度におきましても、とりあえずその点が比較的に財力から見てやっていけると思われる二港にしぼってやったわけですが、今後これを管理者がやるのか、あるいは一部利用する組合等に委託したほうがいいのか、そういう点いろいろ問題ございまして、その点につきまして、どういうふうに今後持っていったら一番いいかということにつきましては、現在漁連等とも打ち合わせながら検討しておる段階でございます。
  169. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 私は強い要望として、水産庁長官あるいは運輸大臣のほうも直接は関係ないでしょうけれども、やはりこの港湾管理者等の経営等も含めまして、この廃油処理施設はつくらすだけはつくらしているけれども、実際に運営費が赤字になっているというのがほとんどだと思うんです。  特に漁港等になりますと、小さな漁業組合の組合員等に運営費まで上乗せされるような結果になりかねないと思うんです。そういうことで、この百九、今後五カ年でやられるというこの問題についても、大幅な私は、運営費の補助を考えた上の設置というものをやっていかなければならないのじゃないかと思うんです。この点について、もう一度伺いたいと思います。
  170. 矢野照重

    説明員(矢野照重君) 確かに非常にむずかしい問題でありまして、現在の銚子、焼津等につきましては、この点につきましても、組合も非常に積極的にやろうという意欲を燃やしておりますが、確かに三種の漁港の中にも財政的に貧弱な港もございますし、その点はわれわれも非常に頭を痛めておるところでございますが、現在こうしたらいいというはっきりした方針といいますか、これは残念ながら現在はまだ出てないということでございますが、これにつきましては、早急にとにかく結論を出して、運営が円滑にいけるようにやりたいと思っております。
  171. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 港湾局長に伺いますけれども、この石油精製業あるいは専門業者、港湾管理者等の、今日までのこの廃油処理施設を設置してから、実際収支状況、経営状況はどういうふうに把握されていますか。
  172. 岡部保

    政府委員(岡部保君) まず全般的に通じて申せますことは、四十五年、四十六年、四十七年、年々処理実績というのはふえてきてはおりますけれども、処理能力から申しますと、非常にまだまだ余力があるという段階でございます。これがただいま先生の御指摘の収支という問題にはね返って、専業者でごくわずか利益を出しておる業者がございますが、それ以外はすべて、たとえば四十六年度のデータを持っておりますが、赤字であるということが申せる次第でございます。  そこで大体、港湾管理者、特に港湾管理者のが問題でございますが、港湾管理者の個々の報告を聞いておりますと、四十六年度はまだ海洋汚染防止法が施行されて間もなくのことでございますので、少なかったという点があると存じます。しかも近々非常に取り締まりもきびしくなってきて処理量が非常にふえてきております。したがって、たとえば港によりましては、横浜市の場合などは処理実績が処理の需要見込み量に対して一〇〇%以上に四十七年はなったという話も聞いておりますし、また廃油処理料金につきましても、これは東京湾で千葉、川崎、横浜の廃油処理料金というのが本年五月から、バラスト水についてでございますが、トン当たり四十二円という単価がトン当たり五十円と値上げをいたしております。こういうようなことで、収支はだいぶとんとんになるような姿になってきつつあるということでございまして、いままでの実績を申し上げればほんとうに非常な赤字であったということはもう明白でございますが、これから各港ともだいぶ収支のバランスがとれてくるんではなかろうかという考え方に立っておる次第でございます。
  173. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 私が見た資料で、たとえば岡山あるいは静岡に至っては、四十六年から四十七年に至って減っているわけですね、実際に。四・九%あるいは四・八%ですよ、需要見込みの量の。こういう点。あるいは岡山県は三・二、六・五とまあ少しふえておりますけれども、いずれにしても一割に満たないですね。こういう点では、相当運営費というのが赤字になってくると思うのです。こういうものについて、当初こういう計画を立てるときにもつと、運輸省は書類だけ受け取ったのかどうか知りませんけれども、これは相当考えなければならない問題点じゃないかと私は思うのです。片や専業者がやっておる瀬戸内海のタンククリーニングですか、これはもう最初の計画から二七八%ですね、こういうふうに、非常にこの地域では上昇している、ここは収支とんとん合っている。こういう点を考えますと、やはりこの廃油処理施設の設置の問題について、考え直さなければならない問題があるんじゃないかと思うのです。このまま放置しておけば地方の港湾管理者の財政負担というのは相当一般会計から繰り入れなければならない問題が起こってくるんではないかと思うのです。この点についてはどうお考えになりますか。
  174. 岡部保

    政府委員(岡部保君) 確かに、先生の御指摘のとおりの問題点をはらんでおります。したがって私どもある意味では、たとえば先ほど御指摘のございましたような岡山なんかの問題で申しますれば、需要見込みが比較的小さかった。これはもう少しバラスト水が多いんではなかろうかといっていたのが、わりに量が少ないというような具体的な報告も承っておりますけれども、そういうような見込み違いという点がございます。  したがって、これを今後運営面でどういうふうに考えていくかという点について、私はどうも運営費に対して補助をするということ自体は、あまり考えるべきではなかろうという気がいたしております。むしろこういうものは建設費の補助ということで考えるべきだという気持ちでいまもおるわけでございますけれども、なかなかそういう点では、先生の御指摘のとおりの問題がございますので、たとえば先ほどもいろいろ議論のございました清掃事業との均衡などから考えても、どういうふうにこれを扱っていったらいいのかという点について、これからもう少し検討さしていただきたいと存じます。
  175. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 これは最初の補助のときから、二分の一の補助をするときから、やはり計画がずさんだったというのか、これほど、まだ二年間だから最終的な結論を私はつけられないと思うのです。しかしながら、こんなに差があるという問題は、ちょっと計画としてはあまりにもずさんではなかったか。あるいは海上保安庁長官いらっしゃるからちょっとお聞きしたいのですけれども、取り締まりが甘いと、こういうわけにはいかないと思うのですね。取り締まりがこの地域だけ特別に甘かったために廃油処理が少なかったと、私はそんなことは言いたくないのです。これはどう見ても全国平均に海上保安庁が取り締まりをやっているはずだと思うのです。  ところが岡山とか静岡だけこういうふうな極度な見込み違いがあるということについての考え方、これについて運輸省はどういうふうに査定をしたのか、その問題を伺いたいことと。海上保安庁長官として、ちょっと伺いたいんですけれども、実際にもっとこの廃油処理の事業は、海上保安庁でびしびし取り締まっていく体制によって、もう少し上昇していく見通しがあるものなのかどうか、こういう点について、お伺いしたいと思います。
  176. 野村一彦

    政府委員(野村一彦君) この廃油処理施設の利用状況が非常にまちまちであるということは、先生の御指摘のとおりでございます。また私のほうも、いま御指摘になりましたような、岡山県等の廃油処理施設の利用が少ない。この原因は何であるかということでございますが、私は他に比べて取り締まりが手ぬるいために、その辺で油を流して、処理施設を利用しないということではないのではないか。——これは地元の県知事さんとも瀬戸内海の海洋汚染防止対策会議のときにも、私どもの担当が出まして、その点詰めたわけでございますが、私どもとしましても、瀬戸内海でいいますと、あの辺は一番取り締まりを強化しておるところでございまして、また問題が非常に、交通安全上も海洋汚染防止上も多いところでございまして、むしろ一番取り締まりを強化しているところでございますので、その原因は別にあるんではなかろうかというふうに考えております。そういう面で、今後、せっかくできました施設を利用されるように、私どもも取り締まりの面から、さらにきびしく追及していきたいと思っております。
  177. 岡部保

    政府委員(岡部保君) 確かに先生の御指摘、先ほど私も同意の御意見を申し上げたわけでございますけれども、まだ設置されましてから非常に日が浅いという点で、ある港においては、先ほども申しましたように相当に収支がバランスとれるような傾向にあるところがございます。ただ先ほどの実例をおあげになりましたようなところについては、とても当分収支が成り立つはずがないということは、確かに見込み違いと申しますか、非常に誤りをおかしておる点があるわけでございます。そこの辺の問題も含めまして、もう少しこれは検討さしていただきませんと、どうもここで、こういうふうなことをしなければならないというふうな点を、具体的にちょっと申し上げるところまでいっておりませんので、御了解いただきたいと存じます。
  178. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 個々の問題は、もう少し港湾局で検討していただきたいと思う。私はこういう問題は、非常に地方の財政負担から考えても、これは大きな問題になってくると思うのです。  それともう一つ、いまのは処理能力の問題ですけれども、これは専門業者と港湾管理者とのバラストのトン当たりの金額が違うのですね。これは確かに港湾管理者の公共団体と専業者との間にいろいろ差はあると思うのです。しかし、あまりにも差があり過ぎるのじゃないかと思うのです。たとえば百五十円のところがあれば、港湾管理者のところでは四十二円という、こういうバラスト一トン当たりの処理にしてもそういう差があるというのは、これは私、この港湾管理者のほうを値上げしろというわけじゃ決してない。これで間に合えば一番いいんですけれども、あまりにも、たとえば百五十円と四十二円という、こういう差を考えたときに、港湾管理者の処理も少ない、あるいは金額的にも安いとなれば、赤字はますます増大してくるのじゃないかと思うのです。  特に岡山県の一つ例をあげれば、岡山とこの瀬戸内海タンククリーニングの差を調べましても、ますます赤字が岡山県は増大してくるのじゃないかと思うのです。こういう点について、金額の調整といいますか、こういうことはやれないものかどうかですね。
  179. 岡部保

    政府委員(岡部保君) ただいまの、いわゆる料金の問題でございますが、民間の廃油処理事業者の処理料金、これはバラスト処理料金は平均百二十円ほどでございますし、ビルジの処理料金は平均千二百円程度でございます。これは運輸大臣が認可しておりまして、当然適正な原価であるということで認可をいたした次第でございます。  これに対して、港湾管理者の場合に処理料金が非常に安い、と申しますのは、バラスト水の処理料金が平均五十円強でございますし、ビルジの処理料金は平均五百六十円ほどでございます。ちょうど二分の一弱かと存じますが、そういうふうになっておりますこの理由、これは管理者の場合には運輸大臣に届け出ることになっておる次第でございます。それで、これは港湾管理者が整備いたします廃油処理施設につきましては十分の五の国庫補助を行なっております。民間の処理施設に対しては、もちろん開発銀行等の融資などでお世話しておりますけれども、こういう補助があるということで、償却費等これは少なくて済むということで、こういう差ができておるのが事実でございます。  したがって、どうもこういう算定の根拠に誤りがあると申しますよりは、やはり先ほど申しました見込み違いというほうが大きくきいておるんだと存じます。したがって、この点については、もう少し検討をさせていただきたいと存じます。
  180. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 私、きょうは料金の問題でこまかくいろいろ論議はしたくありませんけれども、運輸大臣、この運営費の問題、確かに見込み違いの問題が私は歴然とあらわれてくると思うんですね。この問題については、たとえば赤字を解消するまでこういう地方の港湾管理者に対して、運営費の赤字分を国で補助するという、そういう考え方にはいきませんか。
  181. 新谷寅三郎

    ○国務大臣新谷寅三郎君) 先ほど政府委員からお答えをしたように、運営費のほうの補助ということは、なかなかこれは補助制度にしても乗りにくいのじゃないかと私も思います。ただ非常に赤字で困っておるために、処理能力がより低下するとか、設備が完全に回らなくなって、本来の目的が達成できないとかいうようなことが、あるいは起こるかもしれませんから、そういったものに対しては、これは自治省ともよく相談しまして、こういったものに対しては、たとえば、融資をするとか、そういった方法は考えられないことはないと思いますけれども、しかしこういう処理施設が非常に利用率が低いという原因、これは港湾ごとに違うと思うのですけれども、まあ見込み違いといえば見込み違いですけれども、最近船のほうのこういう問題に対する取り組み方、まあ昔はそんなに厳重に考えていなかったのが、だんだん意識が普及してきまして、やはり全体のためには、廃油はこういうところで処理するのだというのが高まってきたので、場所によりましては、非常に利用率が高まってきておるということは事実でございいますから、これは海上保安庁の取り締まりということにも関係があると思いますけれども、だんだん船のほうもそういう点を自覚をしてくるだろう。そうなると処理施設の利用率も高まるだろうということを、われわれは期待をするわけですが、船は減ることはありませんで、ふえるばかりですから、その点は、ひとつこれからも、個々の港湾について事情を調べますけれども、多少いまは利用率の低い点がありましても、これは将来ともそういう状態であると考えられない。だからつなぎの何か方法はないだろうか、そういったことは考えられると思います。これはひとつ港湾管理者のほうと具体的によく相談をさしてみたいと思います。
  182. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 それはぜひともやっていただきたいと思うのです。これは私、数字をちょっとにらんだだけでも、あまりにもこういう計画の段階から、ちょっとこれは間違いがあったのじゃないかと思うのです。確かに間違ったとは言わないと思うのですよ。しかし、この問題は分析すればするほどここまでいかないと思います。一割も満たないんですから。いま二年間やりまして、これからふえる傾向であれはいいけれども、当初の計画自体がずさんだった、これを監督できなかったという点は、やはり運輸省責任は免れないと思うのです。この点についての、やはり補助というか、いま運輸大臣が答弁されたようないろんな方法で管理運営が将来とも続いていけるような方向で、一般会計からの繰り入れなり、相当、地方財政が圧迫されたことにならないように、私はしていただきたいと思います。  それからもう少し、油の問題が出ましたので、ちょうど海上保安庁長官いらっしゃるので、この油の処理システムの研究開発、それから防除資材の研究開発の状況についてお伺いしたいと思います。  どういうところへ発注して、具体的には処理の研究がいつごろまでに完成するのか、この点について。
  183. 原田昇左右

    政府委員原田昇左右君) お答え申し上げます。  油処理材につきましては、本年二月に関係各省庁と協議いたしまして、流出油処理材の使用基準をきめまして、これに適合したものについて使用を認めておるわけでございますが、この基準の中にも技術の進歩等を勘案して必要な見直しを行なうという旨が定められております。  そこで四十八年度におきましても日本海難防止協会、社団法人でございますが、ここに委託いたしまして分散性能の評価、魚あるいは海藻類への毒性等を研究することにいたしております。これは予算額として二百七十八万円計上いたしております。それからオイルフェンスとか、その他の防除資材につきましては、国みずから海洋における油防除技術に関する研究という事業を本年度予算で、約二千二百二十八万円程度でございますが、これを計上いたしておりまして、また高性能の流出油回収船及び大容量の油水分離装置の開発研究、これは予算額で二百七十九万円でございますが、これを行なうことにいたしております。  なお四十七年度には、民間企業の研究に対して補助をいたしております。たとえば海面の漏油回収装置の実用化、これはオイルフェンスと回収装置がくっついたものでございますが、こういったものに補助をいたしております。それから油濁海面の遠方からの探知システムとか、あるいは油が流れたとき、ブイのようなものを置いておけば自然に、そこを油が通ると警報装置が働くといったようなシステムについて、総額事業費で八千万円、   〔委員長退席、理事江藤智君着席〕 補助額で一千百十六万五千円程度のものを、四十七年度に防除技術開発費として民間の開発を助成いたしておる次第でございます。
  184. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 四十七年度あるいは四十八年度の二百七十万とか三百万、この程度で実際に油の問題に対する研究開発ができるのかどうか、こんな点で実際に油の、いまこういう問題が起こっている中で実際に研究が行なわれるかどうか、あるいはりっぱにやれるかどうかというものを考えたら、これは研究開発のどうしても費用は削減しがちだと思うんですけれども、もっとこういう問題こそ私は予算をしっかりつけて、油の研究等に真剣に取り組んでいくべきじゃないかと思うんです。これは、運輸大臣、どうですか。
  185. 原田昇左右

    政府委員原田昇左右君) 御指摘のように、予算額は必ずしも十分でございませんので、今後われわれも大いに努力したいと考えておりますので、ぜひ御支援のほどをお願いいたしたいと思いますが、しかしながら、この油処理剤の予算額につきましては、これは民間が開発をやっておりまして、この予算をもちまして基準をつくるということ、あるいは評価をするということに主眼を置いておるものですから、この背後にある民間の開発費を、まあ民間の創意くふうを大いに活用して、国はそれを誘導するための評価なり基準をつくるということでございますので、これだけで開発をしておるというわけではないわけでございます。ひとつ、よろしくお願いいたします。
  186. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 よろしくお願いしますじゃなしに、もっと積極的に、たとえば一つの例が、私も研究開発については積極的に応援しますよ、具体的にやるべきだと思うんですよ、こういう問題こそ。こういう問題で漁民が、たいへん原因不明で、いろいろひき網とか地びき網とか真珠の養殖等で苦しんでいる漁民が、あるいはそういう人たちが大ぜいいらっしゃるわけです。やはりこういう問題に対する処理という問題について、国はもっと積極的に取り組まなければならないと思うんです。一例が、日本海難防止協会に油の処理剤の試験研究を委託しているんですよ。金額は二百七十八万円です。私、金額の多い少ないで論じたくありませんけれども、はたしてこういう海難防止協会が油の試験の研究ができるのかどうか。確かにこれは、受けてどこかに委託せざるを得ないと思うんですね。こういうふうなやり方で幾らやってみたって、これは油の研究どころか、日本海難防止協会の研究ができるだけじゃないかと思うんです。こういう点を、もう少ししっかり——私はこの油の処理剤の試験研究に取り組むなら取り組む姿勢が運輸省の中にないと思うんですね。こういう外郭団体のことは、私はあとでいろいろ聞きたいと思っていますけれども、あまりにもこういう問題が、委託研究で、ごまかし程度の形をつけて、それでさも国民には研究をさしているという姿の見せかけになっているのではないか。こういう、私は、言い過ぎかもしれませんけれども、そういう点がなきにしもあらずだと思うんです。こういう点については、やはり積極的に研究開発するという運輸省の姿勢が私はあらわれてないと思うんです。その点についていかがですか。
  187. 原田昇左右

    政府委員原田昇左右君) 日本海難防止協会では、油の処理剤についての研究を行なうために、油処理剤の専門委員会を設けておるわけでございますが、委員長は東大の名誉教授の桧山先生でございます。その委員会におきまして、学識経験者とか水産関係者等によって審議を進めておるわけでございます。この協会は、そもそも海難防止及び船舶等による海洋の汚染の防止に関する事項をその業務内容としておりまして、これに基づいて、以前から海洋汚染防止関係の技術開発あるいは開発調査を行なっておるわけでございまして、かなり蓄積がございます。それから油処理剤につきましても、水質汚濁対策委員会というものがございまして、かなり基礎的研究が進められております。また本年二月の流出油の処理剤の使用基準の制定に際しましても、その研究の一部を分担するなど、かなりの実績を持っておりまして、役所で全部これを引き受けるというよりは、むしろ広く民間の知識経験を活用し、さらに関係官庁の、あるいは大学の頭脳もこの中に入れて総合的に、まあ民間の、あるいは関係者の知恵を出していただくという点では、こういう協会に委託したほうが、むしろ役所でしょい込むよりは能率的ではないか、こういう判断のもとに行なった次第でございます。
  188. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 それにしても、これだけの予算で海難防止協会にいろいろやったって人件費とか会合費だけで終わってしまっていると思うんですね。具体的な研究というのは、どういう結果をもたらすかということになれば、私はいろいろ意見は出るかもしれない。しかし、ほんとうに油の処理についての具体的な研究成果というものは私は出てこないんじゃないかと思うんですよ。どうでしょう、これで油の処理に対する具体的な提案した項目は責任をもって出てまいりますか。
  189. 原田昇左右

    政府委員原田昇左右君) この油の処理につきまして、全般的には海難防止協会に委託しておるわけではございません。油処理剤についての分散性能の評価、これは本年二月にまとめました処理剤の使用基準がございまして、それをさらに今後の進歩を勘案していろいろ分散性能の評価をしたり、あるいは魚藻類への急性毒性を研究するというような、そういう部分に限って海難防止協会に関係者を集めまして、有識者を集めて、いろいろ民間で開発し、あるいは大学の研究所等でやっておりますのを集めまして、ここでいろいろ調査研究をいたすことにしておるんでございますが、そのほか油の処理技術としては、オイルフェンスあるいは回収船とか、その他各種の方法がございまして、これについては別途国みずからも行なう予算あるいは民間に対する補助金といったようなもので開発を進めたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。  なお世界各国でも、この分野については、目下技術開発が非常に行なわれておる分野でございまして、なかなかまだ成案が得ておらないわけでございます。これについては日米の運輸専門家会議でも情報交換をいたしておる次第でございます。
  190. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 それでは次に、港湾の公害防止対策事業について二、三点伺いたいんですけれども、汚泥しゅんせつの事業について具体的に——今後いろいろ港湾との問題が、あるいはPCBあるいは水銀汚染等の問題でしゅんせつ事業は相当多くなってくると思うんですけれども、港湾局として、この問題はどういうふうに考えていらっしゃるのか。
  191. 岡部保

    政府委員(岡部保君) 確かに先生の御指摘のとおり、いわゆる有毒なヘドロでございますか、汚染されたヘドロの処理というものが非常に必要になってきておるわけでございます。そこで現在、運輸省といたしましては、港湾区域内でそういうようなヘドロというものがあります。たとえば水俣湾の例がございますが、そういうような汚染海域のヘドロの処理という問題につきましては、まず、ひどい汚染のところは埋め殺してしまうということが一つの考え方で、ただいまいろいろ検討をしている最中でございます。そこで比較的汚染の少ないところはしゅんせつをいたしまして、その汚染されたヘドロをその埋め殺すというところに投げ込んでしまうというような処理方法が一応考えられておる次第でございます。ただ、現実には、その掘りますときに二次汚染、いわゆる掘りますときに拡散したためにまた水を汚染するというようなおそれがあるといけませんので、そこの辺の工法については、現在も検討している最中でございます。  ただ何と申しますか、ポンプ式のしゅんせつ船で、しかもカッターと申しておりますけれども、海底をかき回すような道具のついていないようなポンプ船でしゅんせつすれば比較的拡散がないんだというような問題も現在いろいろ研究されておりますので、そういうような工法を今後も活用していきたいという考え方でございます。
  192. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 四十七年度では田子の浦をはじめ七港だったんですけれども、四十八年度は十二港ですか、そうしますと四十九年以降、相当いま港は問題になっておりますね、これについての事業計画ですか、これはやはり四十九年からは相当ピッチを上げなければ、この水銀汚染とかPCBの汚染、これの問題を解決することはできないと思います。これに対する運輸省の取り組み方はどういうふうになっていますか。
  193. 岡部保

    政府委員(岡部保君) 確かに先生おっしゃるとおりで、相当ピッチを上げませんとすぐにこのヘドロの処理というものはできません。したがって、相当なこれに取り組み方をするつもりで考えております。ただこの問題、一つには事務的と申しますか、事業を実施するに至る際に、いわゆる事業者負担法の規定で、PPPの原則で、どれだけ原因者である企業に事業費を持たせるかという問題等がございます。そういうものがきまらないといけないということ。それから先ほど申しましたように工法で、やはり普通のきれいなものをしゅんせつし埋め立てるというときと違いまして、相当に神経を使わなければいけません、というような工法に対する感覚、そこいらを克服して、しかもピッチを上げなければいかぬということでございます。  ただ一般的に申しますれば、これは予算面では、たとえば国費の予算が十分確保できるかどうかという点では、事業者負担を除いた額を管理者と国で半々にするというような金額でございますので、比較的予算面では小さな額で事業ができます。その事業者負担というのは非常に大きなウエートで出てまいりますので、したがって予算面でのそれほどの心配はございませんで、むしろ実施の際に、そういう二次公害のようなものが出ないように、それで水俣にいたしましても、本年度何とか第四四半期には着工して仕事をするつもりでおりますけれども、たとえば本年度はほんの着工程度でございますけれども、水俣湾の問題だけにしても、一年で完全にできるかといいましたらちょっと私自信ございません。一年以上かかると思います。したがって四十九年度内にはとても処理は終わりませんで、五十年度までかかるということが、私は想定せざるを得ないと思いますので、一刻も早く手をつけたいという考え方でいま努力をしておるところでございます。
  194. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 予算の問題を最後に——航路整備事業、特に東京湾口と関門航路の問題、私たち毎年々々関門航路等の問題でいろいろ陳情を受けるわけですけれども、この航路整備事業として、東京湾口あるいは関門航路の航路整備事業を運輸省として具体的にどういうように計画を持っていらっしゃるのかどうか。
  195. 岡部保

    政府委員(岡部保君) ただいま航路の整備事業ということで現在実施をいたしております事業では、ただいま御指摘ございましたように、関門航路が一番大きな事業でございますが、これにつきましては、将来計画として、水深十三メートルまでは掘り得る、と申しますのは、あそこに海底トンネルがございますので、それ以上には深く掘れないという逆に下から押さえられる条件がございます。したがって、あそこの航路というものを最大掘るにいたしましても十三メートルであるということで、しかも航路の法線等なかなかむずかしい点がございますので、これは年々、鋭意改良中でございます。  ところで東京湾口の航路という問題につきましては、これは残念ながら、予算化は現実にいたしておりますけれども、現在まだ着工いたしておりません。と申しますのは、湾口航路で、まず一つには第三海堡というかつての御台場でございますが、海堡を除去するというものと、それから第一海堡、第二海堡の間に新しい航路を掘るという事業と二つ大きく分けてあると存じます。そのうちの第三海堡の除去というのをまずやるべき仕事だと思っておりまして、これは実はだいぶ前から計画をしておりましたのですが、現実にまだ漁業補償が了解を得られておりません。したがってただいまも漁業補償の折衝中でございます。これが漁業者の同意が得られれさえすればすぐに第三海堡の撤去にかかるという考え方でおります。  それから第一海堡と第二海堡の間に新しい航路を掘るという問題につきましては、漁業補償の問題も大問題でございますし、また他のいろいろな計画、堀った土をどういうふうに処理するのかというような問題等々いろいろございますので、もう少し先に実施するというかっこうになるかと思います。
  196. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そうしますと、たとえば四十八年度に二千万ですか、予算がついておりますね。これは五カ年計画で、四十六年から五十年までの航路整備事業で東京湾の航路整備事業としてやっていくのかどうか。あるいは新港湾五カ年計画ができますと、それに繰り入れての計画になるのかどうか、この点について。
  197. 岡部保

    政府委員(岡部保君) 実は先ほども、まだ着工していないと申し上げましたが、今年度の予算は二十億をつけておるわけでございます。一応まだ着工できないという段階で、保留されているという姿になっております。そこでこれは、従来の五カ年計画におきましても、少なくも第三海堡の撤去はやってしまうというつもりで計画を立てておったわけでございますが、その計画が延び延びになっております。したがって今回の、たとえば四十九年度から五カ年計画を改定するとすれば、当然その中には、少なくも第三海堡の撤去は全部織り込むつもりでおりますし、その次の段階のどこの辺まで織り込めるかというのが、これから検討する課題になるかと存じます。
  198. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 まだ進めますか、ちょうど区切りがいいのですが……。
  199. 江藤智

    ○理事(江藤智君) 委員長としましては、審議を尽くす意味で、もう少しやっていただきたい。   〔理事江藤智君退席、委員長着席〕
  200. 長田裕二

    委員長長田裕二君) どうぞひとつ質疑をお続けください、お願いします。いま六時七分過ぎですから、いましばらく御質問をお続けください。
  201. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 理事会一任。
  202. 長田裕二

    委員長長田裕二君) もうしばらく、六時半まてお続けください。——いましばらくお続けください。——理事同士の話し合いは話し合いとして……。  それでは、本日の審査はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時十三分散会      —————・—————