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1973-06-27 第71回国会 衆議院 社会労働委員会地方行政委員会大蔵委員会公害対策並びに環境保全特別委員会物価問題等に関する特別委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月二十七日(水曜日)     午後一時五分開議  出席委員   社会労働委員会    委員長 田川 誠一君    理事 伊東 正義君 理事 塩谷 一夫君    理事 竹内 黎一君 理事 橋本龍太郎君    理事 山下 徳夫君 理事 川俣健二郎君    理事 八木 一男君 理事 寺前  巖君       大橋 武夫君    加藤 紘一君       瓦   力君    小林 正巳君       斉藤滋与史君    志賀  節君       住  栄作君    田中  覚君       高橋 千寿君    戸井田三郎君       登坂重次郎君    中村 拓道君       羽生田 進君    増岡 博之君       粟山 ひで君    枝村 要作君       島本 虎三君    田口 一男君       田邊  誠君    多賀谷真稔君       村山 富市君    石母田 達君       田中美智子君    大橋 敏雄君       和田 耕作君   地方行政委員会   理事 高鳥  修君 理事 三ツ林弥太郎君    理事 山本弥之助君 理事 吉田 法晴君    理事 林  百郎君       亀山 孝一君    谷垣 專一君       前田治一郎君    小川 省吾君       佐藤 敬治君   大蔵委員会    委員長 鴨田 宗一君    理事 木村武千代君 理事 松本 十郎君    理事 阿部 助哉君 理事 武藤 山治君    理事 荒木  宏君       塩谷 一夫君    柴田 健治君       塚田 庄平君    広瀬 秀吉君       山田 耻目君    竹本 孫一君   公害対策並びに環境保全特別委員会    委員長 佐野 憲治君    理事 登坂重次郎君 理事 小林 信一君    理事 島本 虎三君       大石 千八君    田中  覚君       戸井田三郎君    橋本龍太郎君       松本 十郎君    津川 武一君       岡本 富夫君   物価問題等に関する特別委員会    委員長 山中 吾郎君    理事 竹内 黎一君 理事 井岡 大治君       上田 茂行君    高橋 千寿君       羽生田 進君    荒木  宏君       庄司 幸助君    神田 大作君       和田 耕作君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         自 治 大 臣 江崎 真澄君  出席政府委員         文部省管理局長 安嶋  彌君         厚生大臣官房審         議官      出原 孝夫君         厚生省公衆衛生         局長      加倉井駿一君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省医務局長 滝沢  正君         厚生省薬務局長 松下 廉蔵君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省児童家庭         局長      穴山 徳夫君         厚生省保険局長 北川 力夫君         社会保険庁医療         保険部長    江間 時彦君         自治大臣官房審         議官      森岡  敞君         消防庁長官   宮澤  弘君  委員外出席者         環境庁長官官房         審議官     橋本 道夫君         通商産業省公害         保安局公害防止         指導課長    松村 克之君         中小企業庁計画         部長      原山 義史君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出第四七号)      ――――◇―――――   〔田川社会労働委員長委員長席に着く〕
  2. 田川誠一

    田川委員長 これより社会労働委員会地方行政委員会大蔵委員会公害対策並びに環境保全特別委員会及び物価問題等に関する特別委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が委員長の職務を行ないます。  健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。     ―――――――――――――  健康保険法等の一部を改正する法律案   〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 田川誠一

    田川委員長 本案の提案理由説明聴取につきましては、お手元に配付してあります資料により御了承願うこととし、直ちに質疑を行ないます。  申し出がありますので、順次これを許します。柴田健治君。
  4. 柴田健治

    柴田(健)委員 厚生大臣に、まずお尋ねを申し上げたいと思います。  政府管掌保険組合保険は省略いたしまして、国民健康保険組合赤字について、赤字を出しておる個々の市町村は非常に苦しんでおるということは御承知のとおりだと思います。それについて、私たち過疎町村に住んでおる現在の国民健康保険組合財政の姿というものを見たときに、何とかしてやらなければならぬという気持ちを強く持つわけであります。  なぜこういう赤字が出るのか、いろいろ問題はありましょうが、大きく分けて、過疎町村における所得の格差というものが大きく影響しておるということがいえると思うのです。これが第一点。それから第二点は、高度経済政策による労働力の配置がえ、都市に流れていく若年労働力、これらから農村に残されるのは、御承知のように年寄りが多くなる、大別すると、こういう二つが過疎町村における国保会計赤字を来たしておる原因ではないか、私たちはこういう判断をいたしておるところであります。  これを解消する、解決してやるにはどうしたらいいのかということから、厚生省として大蔵省なり自治省に呼びかけて、地方財政計画財政計画を再検討してもらうというような姿勢がとれないのであろうか、こういう気がいたします。特に過疎町村における低所得者の――町村固有財源の基本は町村民税ですが、この町村民税所得が低いために均等割りが多い。それから町村財政というものは伸びる率が非常に低いということが言える。そういうことからいうと、やはり低所得者層の多い町村に対する考え方、同時にまた、この保険会計赤字が出るものだから、市町村一般会計から繰り出しするのには、いろいろな問題がある。そういうことから保険税を上げなければならぬ。保険税を上げると所得の低い者も同じように上がってくる。そうすると、均等割りを受けておるような家庭も一万五千円も六千円も保険税を払わなければならぬということになるわけであります。  これはたいへんな、所得からくる苦しみというか、そういう保険組合に対する不満というか不信というか、ありがたい制度ではあるが、こうまで上げられてはたいへんだという心配がある。こういう点について、厚生大臣はどういう見解をもってこれに対処するか、これが第一点。  それから老人の問題ですが、厚生省は踏み切って老人医療無料化をやる、地方公共団体もそれにあわせてやる、国が全額持つならいいですが、都道府県なり市町村負担をかぶるわけであります。この老人医療無料化をすることによって、これまた市町村財政に影響を及ぼしておる。この点についても自治省話し合いをして、老人の多い、たとえば六十五歳以上の老人のおる町村は、五%以上は交付税算定基礎を変える、七%以上はどうする、一〇%以上、たとえば人口一万の町村で六十五歳以上の老人が一〇%以上をこした場合は、この地方財政計画の中で交付税算定を変えていく、要するに傾斜配分でもしてもらう、こういう措置をとらなければならぬのじゃないか、こう思うのです。厚生大臣見解を聞いてから自治大臣にお尋ね申し上げたい、こう思うのであります。
  5. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 市町村国保に対しては、すでに御承知のように医療費に対する四〇%の定率補助をいたし、さらにまた財政の苦しい町村に対しましては、五%に相当する額を調整交付金として交付する、こういうやり方になっておるわけでございます。この五%の調整金によって、いまお述べになりましたような過疎地域などには、できるだけ多くの予算を流すようにということをいたしておるわけでございまして、こういうふうな計画を立てるにはもちろん自治省ともいろいろ御相談をしていかなければならぬ問題がたくさんあるわけでございまして、私どもも今後とも自治省と緊密な連絡をとりながら、財政が不均衡な赤字が生じないように努力をいたしてまいりたいと考えております。  特に最近の赤字で実は非常に問題になりますのは、第二点にお述べになりました老人医療無料化に伴う問題が、近来特にきびしいようでございます。御承知のように、本年一月から七十歳以上の老人医療無料化を実施し、本年度寝たきり老人については六十五歳まで下げる、こういうふうなことになりましたために、御老人方々受診率が非常に伸びてきてまいっております。  これにつきましては、先ほど申し上げました四五%の総医療費に対する補助金のほかに、三十四億だったと思いますが、この老人医療受診率が増加することに伴うはね返り措置を講じておるわけでございますが、はたしてこれで十分かどうかというところが、まだちょっと見定めがむずかしい状況でございます。最近において六十五歳、一月から七十歳、こういうことでございますので、もう少し老人医療無料化はね返り状況を、推移の状況を見まして、はたしてこの三十四億で十分かどうかという問題、さらにまた来年度財政計画をどういうように立てたがいいか、その辺をもう少し研究していかなければならぬと考えておる次第でございます。  しかし、いずれにせよ市町村国保が非常に財政が苦しいことは十分承知しておりますから、今後とも自治省等とも十分緊密な連絡をとりながら、努力してまいりたいと考えておる次第でございます。
  6. 柴田健治

    柴田(健)委員 それでは自治大臣にお尋ねしたいのですが、いまの点で、国保会計赤字補てん一般財源から繰り出しをしているのは好ましい姿ではない、ほんとうは。ところが一方ではどうしても保険税率を上げるわけにはいかない。ある程度抑制をしながら、一般会計から繰り出しをしておるというのが過疎町村実態なんです。そういうことから、いまの財政援助はささやかなものですよ。  だから自治大臣として、そういう過疎町村における国保会計赤字補てんについて、そういう傾斜配分をするというような考え方があるのかどうか、思い切っていままでの基準財政需要額を変える。時代の流れも変わる、いままでは経済優先であり、経済効果優先にした予算編成。それが経済効果論をやめて行政効果論という立場予算編成を自治体からさしていくという、そういう姿勢の中で、この地方財政計画を抜本的に検討するときが来たとわれわれは感じておるわけですね。  そういう考え方から申し上げると、いまのような老人の問題についても、思い切って地方財政計画の中に大きく比重を占めさせるような手が打てないか、見解を聞きたいと思います。
  7. 江崎真澄

    江崎国務大臣 過疎町村の問題につきましては、これはもう国保の問題以外にもいろいろひずみが多うございます。したがって、過疎債であるとか、あるいは辺地債であるとか、それが離島であれば離島振興法に基づくあらゆる助成方途をとって、過疎町村応急対策に充てておるわけでございます。この国保そのものは、これは御承知のようにいま厚生大臣からも御説明がありましたが、制度的に国民健康保険料それから国庫支出金、これによって当然まかなわれるべきものであるという、私ども見解に立って今日に至ったわけです。  さて、そこで画期的にどうなんだということですが、いま政府段階では率直に申しまして、地方財政事情も非常に苦しくなっております。これは生活環境整備の要請もあります。あるいはまた最近の資材の値上がりによりまして、ただでさえ超過負担が議論されておりますときに、この傾向を助長するようないろいろな要因もございます。  そういうようなことで、地方財政全般充実強化をしていかなければならぬということで、いろいろ配慮をいたしてはおりまするが、今日ただいまの段階では、やはり制度的にこれは保険料保険税ともいいますが、それから国庫支出金で充当しかるべし。それから老人医療無料化につきましては、さっき厚生大臣から話がありましたように、三十四億円のとりあえずの特別臨時措置の動向を見きわめながら、今後厚生省とは十分相談をしてまいりたいと思います。今日の段階では、あまり前向きの御答弁ができないことを残念に思いまするが、しかしそういう御示唆のありました点については、十分厚生省話し合いながら今後の問題ということで検討をいたしてまいりたいと思います。
  8. 柴田健治

    柴田(健)委員 自治大臣は、この保険会計のほうはこれは厚生省のほうだ、こういわれるんですが、しかし、この保険会計のほうで負担をするときにはもう病気になっているんですよ。だから、一般地方公共団体任務からいうと、義務からいうと、やはり病気にならないようにいろいろな処置を講じなければならぬ、それは保険会計までいかない前、一般地方公共団体任務の範囲内でやらなければならぬ。それがいまふえておるわけですね、正直いうて。そこの段階までの考え方のけじめをつけなければならぬと私は思うんですね。節度がなければいかぬ。年寄りがおるんだからということで、われわれは言っておるんじゃないのだ、お年寄りに対するいろいろな処置、いろいろな金がかかっておる。特にまた今日公害問題で地方財政を非常に圧迫をしておる。環境保全の問題をもう徹底的にやるとするならば相当な金が要る。同時にまたこの水銀汚染なりPCB汚染で、健康診断をやるにしても相当の金がかかる。  これらを考えたときに、人間優先地方公共団体行政をやらせるならば、やはり地方財政計画を根本的に再検討するときが来たのではなかろうか、こういう気がするわけですね。いまのままの基準財政需要額を手直しをする気があるかないかということを聞きたいんです、もう一回。
  9. 江崎真澄

    江崎国務大臣 先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、示唆されまする意味につきましては、十分今後厚生大臣厚生省事務幹部とよく話し合いをしまして、これは検討をいたします。しかし今日の段階では、地方財政事情、ほかにもいろいろ要求が多いわけでございまして、決していま地方財政事情が十分と思っておりません。財源充実をはからなければなりませんが、今後の財源充実地方財政需要をどう見直していくかという問題について、よくひとつ検討いたしたいと思いますが、にわかにこれを交付税でまかなうということについては、ちょっとお答えをいたしかねる、これが率直なところであります。  しかし、今後の問題として、地方財源充実をはかる場面で、こういった問題もよく厚生省と打ち合わせてまいりたいと思います。
  10. 柴田健治

    柴田(健)委員 自治大臣、具体的に、先ほど申し上げたように、老人の多い過疎町村人口の一割以上を示しておる老人の多い町村ですね、これは早急に傾斜配分をして財政援助をしてやらなければいかぬのではないかという気がするのです。その一割以内は多少は財政のやりくりができるかもしれない。けれど老人が一割以上の町村は、これはもう早急に援助してやらなければ、それはたいへんな苦しみだと思うのですが、早急にこれだけでもひとつ傾斜配分措置を講ずるというお考えはありませんか。
  11. 江崎真澄

    江崎国務大臣 過疎町村対策についてはもう繰り返しになりますから申し上げませんが、いろいろな施策をしておるわけですね。その一環としてよくひとつ検討してみます。
  12. 柴田健治

    柴田(健)委員 割り当てられた時間が参りますから次に進みますが、厚生大臣、これも自治大臣と関連がありますから、ひとつ聞いてもらいたいのですが、自治大臣のほうの管轄で、消防庁は、広域市町村圏の中で広域常備消防組合の推進を近年非常に進められる、半ば強制的にというくらいまで末端では強引に推し進められてきた。私たちは、そう急がなくてもいいではないか、もう少しひとつ検討をして、十分関連的なものも総合的に積み上げて、そしてつくったらどうだろうか、こういう意見を申し上げたのですが、とりあえずつくらしてくれということで、どんどんつくった。広域常備消防組合をつくらした。岡山県でも、十の地域広域常備消防組合をつくるわけですが、いまできつつある。いま私たちの関係のある、津山圏というて、十五市町村面積は千三百六十平方、人口十六万八千、約十七万人です。それで十五市町村でありますから、広大な面積です。  それで、いま広域常備消防の中で主たる事業は救急業務なんです。明年度から本格的にその他災害出動をやるわけですが、いま設備や職員の募集等やっており、その隣には英田圏という消防組合ができる。西のほうには真庭圏消防組合ができる。こういうことで、美作地域には三十二市町村で三つの広域消防組合ができるわけですが、これを考えたときに、救急業務実態は、いま毎日十件ほど事故が発生しておるわけですが、昼より案外夜が多い、それから日曜祭日の日が案外多いということも言えるわけですね。大体七件から十件程度、十件前後の発生件数で、要するに常備消防という一つ組合はできた、輸送体制搬送体制はできたが、医療体制はゼロだ。  いま津山圏だけを具体的に申し上げると、十二の病院がある。その中で外科を担当する病院が五つある。そのうち一つは院長さんが病気ということで開店休業です。四つ病院当番医、たとえば何日の日曜はどの病院当番医になってくださいといっても、その当番医が全部拒否してしまう。理由は、私は日曜、祭日までやるような余裕はありません、看護婦もいなければ医者もおりませんと拒否してしまう。消防組合は、消防庁長官はどんどんつくらして搬送体制だけは完備したが、救急業務をやるとするならば医療体制が不十分なためにどうにもならない。だからけが人が出た、緊急の患者が出たという場合に、病院をそこらじゅう回らなければ、飲み歩くというなら一晩に二軒、三軒回っても気持ちよくていいが、けが人を二軒も三軒もあっちの病院こっちの病院、しまいには岡山のほうへ運んでくれ、こういうことでは行くまでに死んでしまう。  一方では医療体制考えずに広域常備消防組合をどんどんつくらしていくという、これは自治大臣、あなたの責任ですよ。こういう点をどういう方法で解決するのか、いま消防のほうは困っておるのですよ。救急業務はいやだ、けが人患者を、足が飛んだやつを二軒も三軒も連れて回って、当番医がいないから、その日その日に、急患が起きたら、事件が発生したら、あなたの病院ひとつ頼みますよ、こういって事前に連絡をいつもとりながら、お願いをしながらやっておるというのが実態ですよ。こういう点について自治大臣、どういう見解を持っておられますか。
  13. 江崎真澄

    江崎国務大臣 御指摘の点はきわめて深刻な問題だというふうに思います。いま御指摘になるように、市町村のいわゆる常備消防救急搬送をする、これを受け入れる医療施設がある、こういうところで理想的にその目的が達成されるわけでありまするが、実際医師不足医師はあっても看護婦不足、夜まで勤務することはごめんだ、なぜ自分だけが犠牲にならなければならない、これが一つの風潮だと思います。しかし一方からいうならば、国民救急業務に対する期待というものは非常に大きうございます。年々これは高まる一方であります。また人道的立場からいいましても、助かるものを搬送もしないで、そのまま置き去りにしてしまって、そこでなくなったということになれば、遺族の悲歎というものはいかばかりであろうか、これは推察に余りあります。したがって国民の期待する方向に沿って、消防庁としては厚生省研究会までつくりまして、実はこちらが救急搬送をする、厚生省からは救急医療施設指定をしてもらう、そうして両々相まって十分所期効果をあげるという努力をしておりまするが、津山における津山圏域消防組合場面は必ずしもうまくいっていない、私ども資料によってそういう説明を受けておるわけでございます。  実は救急告示病院というのは私的医療機関四つありますね。その他が三十三、公的医療機関が二つありまするが、これは結核病院であるというようなことで、どうもそこへかつぎ込んでも何とも手当ての施しようはないというわけでありまするが、これは厚生省側と緊密に連絡をとりまして、いまの救急告示病院四つをもっとふやす。それから来年からは、これは厚生省と打ち合わせておるところでありますが、国立、公立の病院はすべて救急病院になってもらうということで措置したいというふうに思っております。  助かる者がみすみす助からないということは、これだけの経済大国文化国家として、とにかく人道的に見ても通らないことでありますから、これはやはり推進しなければならない。ところがいま柴田さんが、承れば消防団長として非常に御尽力いただいておるわけで感謝にたえませんが、現場に即してそういう医療機関不足、いわゆる受け入れ体制不足をおっしゃることもよくわかります。したがって、これなどは自治省だけでは何ともなりませんので、厚生省十分打ち合わせをして、もっともっとこの指定病院をふやしまして努力をしてまいりたいと思っております。しかし、この根本には医師の絶対量の不足とか看護婦の問題とか、これはいろいろ医療全般の問題もございますので、こういった問題についても、これは厚生省側において万全を期していただくわけでありますが、今後に処したいというふうに思っております。
  14. 柴田健治

    柴田(健)委員 それに関連して、厚生省はどういう見解を持つのですか。
  15. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 医療供給体制のうちで一番緊急を要するものは、いまお述べになりました問題でございます。実はこの問題につきましては、御承知のように救急医療センターとか、告示病院であるとか、そういう制度をつくっておるわけでございますが、私としては、いま全国的に地域地域において具体的にこういう問題を一つ一つ解決しようという考えを実は抱いておるわけでございます。そしてそれによりまして、いま自治大臣もお述べになりましたが、国公立病院がその中核になる。あとは医師会方々協力をいただいて当番制を実施する。当番制の場合においても国公立病院の中の一部の施設を提供する。こういうふうなやり方をしないと、やはり救急医療施設というものは整備できない、かように私も考えておるわけでございまして、そうした救急医療施設のない地域一つ一つ洗いまして具体的にどの病院が中心になるか、そして医師会がどういうふうな協力をするか、そういうふうなことを具体的に一つ一つ地域についての医療供給体制を来年度までに何とかやっていけるように努力をしたいと考えておるわけでございまして、自治省とも十分相談しながらそうした整備をはかっていく、こういうふうにいたしたいと考えておる次第でございます。
  16. 柴田健治

    柴田(健)委員 自治大臣は具体的なことは一つ答弁ないのです。私は具体的にこれを申し上げている。たとえば厚生省のほうは救急医療施設整備五カ年計画という案がある。自治大臣知っておるわけですよ。それを具体的に自治大臣のほうも厚生大臣話し合いをして、たとえば津山にはいま結核療養所がある。もったいない施設がある。戦後結核対策として、そのときは重点的な結核予防立場から必要だということで療養所を設置された。しかし結核も十分配慮しなければならないけれども、いまは何としても、これだけの救急業務というものを地方公共団体に義務づけていく段階に来た。具体的に自治省としても厚生省話し合いをして、早急にあれを救急医療センターとして使えるようにする。そのくらいの具体的な答えが出てくると思って私は言わなかったのですよ。どうですか。  それはいまこの津山を中心として国道五十三号線、百七十九号線、百八十一号線、今度中国縦貫高速道が通るわけです。一つの交通の拠点になっておる。それで交通事故というものは毎日ふえていく。減るような方向じゃない。そういうときに公立病院一つもない地域広域常備消防組合をどんどんとつくらせてやる。わかっているはずだと思うのです。公立の病院がないのだ、どうするかということは、私は市町村長には、広域常備消防組合を急ぐのでも医療体制をどうするのか、いや、それは国がやっているのだと言ってだまくらかしておる。一つも前へ行かない。これは消防庁においても責任があるし、最高責任者の自治大臣にも責任がある。それから厚生省、二人で解決すべきだと思うのです。両方のことだからひとつ御答弁願いたい。
  17. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私からお答え申し上げますが、いま具体的な津山地区でございますか一市十四カ町村、しかも国立の療養所まであるというお話を承りました。実はそういうふうなことで、そういう具体的な地域地域において国公立病院を中心にして施設整備しよう、そういう考えなんです。でありますから、幸いおたくには国立の療養所があるということでありますから、それに外科の必要な施設整備する、あるいは外科の先生が国立病院におりますから、国立病院のほうから連絡をとりながら派遣する、あるいは医師会協力を得て輪番制をやっていくとか、そういうような施設を増大する措置を講じていきたいと考えておるわけでありますので、ただいまお述べになりました津山地域については、その療養所を中心として医療施設整備するように自治省とも相談して具体的な計画を進めるようにいたしたいと思います。
  18. 江崎真澄

    江崎国務大臣 直ちに厚生大臣が応諾をしてくれましたが、実はさっき私は具体的には国公立病院救急病院指定する、こういうことで両省の意見がまとまったという点、それから研究会を設けてというのは、いま御指摘のように具体的にそういう受け入れ施設の足りないところをどうするかというようなことを検討しておるわけでございます。したがって、いま津山結核病院等はわかりた、こういう厚生大臣の言い分でありますが、これは研究会一つ一つチェックしているわけでございますから必ず実現するわけでございます。これは十分緊密な連絡のもとに搬送と受け入れ側と両立して完全を期するようにいたしたいと思います。
  19. 柴田健治

    柴田(健)委員 とにかくこれは一日も早くやってもらわないと広域常備消防を進めて――あそこは津山圏だけでなしに英田圏真庭圏、阿新圏という拠点になるところなんですよ。岡山、倉敷まで出れない。どうしても行けない。この四つの圏の医療センターとして思い切った処置を講じてもらいたい。早急に実施できるような体制をつくってもらいたい。  それから医師会のほうももう少し――厚生大臣、これは私の意見ですが、どうもあれだけはおかしい。全国医師会の会長の武見さんに日本の厚生大臣はようものを言わぬのだろうか。とにかく末端の医師会協力願ってもひとつ武見君頼む、対策に困っているのだというようなことくらいは厚生大臣よう言わぬのだろうかという住民の声があるわけですね。武見会長がどんなえらい人か知らないけれども、あなた日本の厚生大臣でしょう。医師会協力を求めるくらいの権威を持たなければだめですよ。正直言って、国民は日本の厚生大臣はだめだ、こういう印象が非常に強いわけですよ。ですから、こういう点は十分踏まえて意見を申し上げておきます。これは正直のところ住民の声です。  それから自治大臣。中国縦貫自動車道路が四十九年十月に完成するといういま目標なんですが、これに対して救急業務、片方は有料道路ですね。そうして道路公団がやっているわけですが、市町村消防救急業務をやらせるというのはどうもおかしいという気がするのですよ。無料ならしようがないが、相手はもうけておる施設である。利益をあげておる。そういうことを考えたときに、道路公団と自治省はだいぶ話し合いをしているのではなかろうかと思うのです。この点について、あの有料の高速道路における救急業務はだれがやるのか。道路公団がみずからやるのか、地域消防がやるのか、どちらか、見解を聞いておきたいと思います。
  20. 江崎真澄

    江崎国務大臣 この問題は前からいつも問題になっておりまして、交付税等々で私のほうもめんどうは見ましたが、高速道路まで上がっていくのはかなわぬという非常な不満を聞いております。そこで建設大臣とだんだん調整をいたしまして、建設省においてもこれは専門の救急体制を持たなければなりません。これは人の問題もあります。そこで現在は、幹線道路としてすでに完成しておるものについては建設省側が責任を負う。それからまだ十分でないところは従来のやり方で、関係しておる道路地域市町村がこれを扱うということにしておりまするが、原則としては高速道路は建設省側で高速道路の要員によってやってもらおうということで話がまとまりまして、進めておるような状況でございます。
  21. 柴田健治

    柴田(健)委員 この点については、いつごろ結論が出るのかわかりませんが、大体目標としては建設省との話し合いはいつごろ結論が出るのか、その点を聞かせていただきたい。
  22. 宮澤弘

    ○宮澤政府委員 ただいまの問題につきましては、関係閣僚の間で交通安全基本計画がきめられておりまして、そこで高速道路の救急につきましては道路公団が自主救急を行なうという原則がきまっておるわけでございます。  ただ、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、そういう原則がございますけれども予算その他の関係でなかなか道路公団が十分な自主救急体制ができないというのが現状でございますので、先ほど大臣が申しましたのは、その原則を原則どおり行なわせるために、さらに自治大臣、建設大臣が話し合いをいたしまして、至急にその原則どおり全国に行くような手配をしよう、こういうことになっておるわけでございます。
  23. 柴田健治

    柴田(健)委員 終わります。
  24. 田川誠一

    田川委員長 佐藤敬治君。
  25. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 厚生省がまとめ上げました国民衛生の動向、これによりますと、わが国の有病率というのは年々高くなって、昭和三十七年には千人に対して五十四人、四十二年には七十二・二、四十五年には九十三・六と、こういうふうに年々高くなっていっているわけです。これは言うまでもなく高度経済成長の進捗率に従ってこういう有病率というのがどんどん出ていっておる。いわば高度経済成長というのが国民の健康を非常に阻害している、こういうふうに言うことができると思います。ここ十四、五年来の状態を見ましても、大都市においては精神障害であるとか、呼吸器の疾患であるとか、あるいは先天的な異常であるとか、こういうのが非常に急激にふえていっておる、こういうふうな状態になっておるようであります。こういうようなものは先ほど申しましたように、どれもこれもみんな現代の社会生活に非常な深いつながりを持っていると思います。  そこで、わが国の医療制度というものは結局健康保険制度というものに支配されておりますが、この医療制度なり健康保険制度なりというものが、こういうような社会の疾病を未然に防ぐように有効に機能を発揮しているか、こういう問題でございます。  わが国の医療体制というのは、一つは先ほどから問題になっております公的医療機関、それから開業医、この二つが大筋になって成り立っている、こういうふうに思います。しかしながら、その根底をなしているものは徹底した治療中心主義の医療制度である、こういうふうに思うのです。結局その医療中心主義というものがいろいろな問題を巻き起こしているのではないか。たとえば医者に対しては一点一点全部点数出来高払い、こういうので診療報酬がきめられていく。そういう結果、予防医療というのは全然目もくれないで、開業医はいわばもうかる治療に一生懸命専念している、こういうふうな結果がこの治療中心主義というものから出てくる、こう思いますが、大臣はどういうふうにお考えですか。
  26. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私が申し上げるまでもなく、健康を保持し、健康を守っていくためには、病気になったときの治療、これはもとより必要でございますが、やはり病気にならないような予防的な措置を講ずることが絶対に必要だと考えておるわけでございまして、私どものほうにおきましても、御承知のようにガン、成人病等につきまして予防検診を地域地域において行なっていくとか、あるいは乳幼児については無料の検診を行なっていくとかいうことをいたしておりますが、やはり病気にならないように予防ということが一番大事なことである、かように考えております。
  27. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 そのことはまずさておきまして、いま自治大臣に聞こうと思いましたら、自治大臣はおりませんので、厚生大臣の御意見をお伺いしましよう。  一方、開業医でなくて、いわばわが国の医療制度一つの柱をなしている自治体病院赤字の問題です。自治体病院は使命として考えられるのは、もうかることではなくて、高度な医療をやるとか、あるいは特殊な医療をやるとか、あるいは僻地の医療をやるとか、あるいはいま話のありましたような予防医療をやるとか、救急医療をするとか、いわば総体的に不採算医療、こういうものがむしろ非常に大きな要素をなしていると思うのです。元来、これはもうかる仕事ではないと思うのですね。この不採算医療を本来の任務としている公的医療機関、自治体病院、こういうものに独立採算を押しつける。ここのところに自治体病院の非常に大きな問題、いわば財政赤字の問題というものが出てくるというふうに考えられますけれども、私はこういうふうに思うのです。  いま自治体病院赤字の問題によっていろいろ苦しめられて、私ども地方行政におって、この問題を取り上げて盛んにやっておりますけれども、しかし、自治省あるいは厚生省あたりから赤字でけしからぬ、赤字でけしからぬといわれても、現在の公的医療機関赤字というものは、単に企業の内部、病院内部の経営の問題ではないと私は思うのです。  これはよくいわれておりますように、一つには医師不足の問題もあります。一つには設備償却が非常に過大になっている。最近の大きな検査設備や病院がりっぱになりますと、ますますその償却に困ってくる。あるいはいま話しましたような不採算医療、こういうようなものがいろいろからみ合って、そうして赤字が出てくるわけで、これらの問題は決して経営の内部だけでは解決できない外的要因だ、こう思うのです。  しかしながら、それでもなおかつ公営企業、いわゆる企業という名称がつけられるばかりに、赤字解消ということを至上命令として非常に強く迫られておる、こういうことだと思いますが、これは自治大臣の範疇に属しますが、厚生大臣としてどういうような感じを持っていますか。
  28. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 最近自治体病院が非常に経営が困難であるという事情については、十分私も承知をいたしておるわけでございますが、自治体病院に対しましては、法律の定めるところによりまして市町村、府県が、一般会計において援助する道が開かれており、さらにまた赤字につきましては自治省が特別交付税ということでめんどうを見るとか、いろいろな仕組みがあるわけでございますが、この赤字問題をどうやって解決するか、私は非常にむずかしい問題がたくさんあると思うのです。やはり適正なる診療報酬の決定が必要であることは、これは通常の業務の経営上当然のことでございますが、自治体病院が行なっております、たとえば看護婦の養成のような仕事、こういうものは、単に自治体病院看護婦を養成するというだけではなくて、国家的な立場における要請に基づいて行なっているというのがあるわけでございます。そういうような国家的要請に基づく事業もありましょうし、不採算医療の問題もありましょうし、そういうふうな問題について、私はやはりもう一回根本的に、これは自治体病院というのは市町村がめんどうを見る、特別交付税でめんどうを見るのだというたてまえだけでいけるのかいけないのか、やはりこの辺はもう少し具体的に検討してみる必要があるんじゃないか、こういうふうに実は考えておるわけでございます。  したがって、国会でも済みまして、もう少し時間的な余裕ができてまいりますれば、自治省ともこの自治体病院財政健全化といったようなことから、しかもその行なっている業務の国家的な要請、必要性、そういったふうなものともにらみ合わせながら、自治省と十分検討相談をしまして、何か具体的な方策がないか、そういうことを十分研究をしてみたい、かように考えておる次第でございます。
  29. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 私は、これはこの前の予算委員会のときも大臣にお尋ねしましたが、自治体病院の元来の目的というのは、さっきも言いましたとおり、決してもうけることではなくて、ほんとうに地域住民が必要としていること、住民に対するサービスが一番の問題だと思うのです。そういう問題からいけば、ただ病気になった人聞を治療するという問題ではなくて、もっと先に、いわゆる最近第三の医療といわれているような予防医療というものをもっともっと重視していかなければならない。これは単に自治体病院だけではなくて医療全般にいえる。そういう意味では、開業医にもいえるかもしれませんけれども、特に自治体病院はそういうことを本来の任務としていると私は思うのです。  ところが現実の問題として、いま言いましたように予防医療なんというものを忘れ去った現在の治療中心のわが国の健康保険制度あるいは医療制度というものは、一方においては開業医というものを全くのもうけ主義一本やりに追いやってしまっている。そしてまた一方においては独立採算制というものが公的医療機関というものを赤字解消にかりたてている。こういう状態で、その結果開業医というものと公的医療機関、自治体病院というものが全くすさまじいばかりの外来患者の奪い合いを始めているのです。さっきちょっとお話がありましたが、厚生大臣と日本医師会長のけんかも、このことにかかわりがあるのですね。こういうふうに、もうとにかくもうけること一点ばりなものだから、共通の目標である外来患者に的をしぼって一生懸命取り合いをやっている。その結果両方でけんかしてしまっている。そこに見られるものは何ら、医の根本である仁、いわばヒューマニズムというものが何も見られなくなってしまっている。商売の対象にすぎない病人というものが、一人でも病人が多ければいい、とんでもない、こういう考え方に取りつかれていると私は思うのです。  医は仁術というものが、算術になってしまった原因はここのところにある、私はこう思います。医療の荒廃だとか医療の危機だとか、こういわれていますけれども、この医療の荒廃とか医療の危機というものは、決して保険財政赤字とか公的医療機関赤字じゃなくて、医が仁術から算術になってしまった、ヒューマニズムが全然なくなってしまっている、こういうようなところに医療の危機なり荒廃がある、こういうふうに思うのですが、大臣の御感想をお聞かせ願いたい。
  30. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 日本の医療の発展のためには医師会の御協力をいただかなければならないことは当然でございまして、私、いま医師会と真正面からけんかしているなんという事態ではございません。あくまでも日本の医療というものを進展さすためには公私の医療機関がそれぞれの分担を果たしながら、相協力し合っていくというところに一番大事な問題があると考えておるわけでございまして、相互信頼、相互協力、その中に日本の医療の進展というものを満たすべきであると考え努力をいたしているわけでございます。特にお述べになりました予防医学の問題などは、ほんとうに国民医療の上からいえば最も大事なことでございます。  これはお尋ねがなかったのでございますが、健康保険制度におきましても治療についての給付ということが中心でございますけれども、やはり予防検診まで持っていくようにしなければ将来の理想的な姿ではない、かように考えておりますが、それにいたしましても、何しろ政管健保は赤字赤字で現在苦しんでおるわけでございますので、皆さま方の御協力をいただいて健康保険法の成立をいたしました暁には、予防検診のほうにももう少し力を入れたいと考えておる次第でございます。
  31. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 いま大臣非常にいいことを言われまして、非常に心強かったんですけれども、予防医学はこれから非常に力を入れていかなければいかぬ、こういうふうなお話で非常に力強くていいと思います。私は、先ほど申し述べたような日本の医学の荒廃なり危機なり、こういうものを救うために、あるいはまた先ほど言いましたように医療にヒューマニズムというものを取り返すために、提案を二つしたいと思う。  一つは、いま話したことですが、健保の制度に予防医療制度を大幅に取り入れなければいけない、こう思うのです。これは、大臣からいわせると、赤字を消したならば予防医療考えたい、こういうふうにいま言われました。しかし私は、逆だと思うのです。私は、現在のこの健保財政赤字の真の原因は実はここにあるのではないか、予防医療を忘れているからなのではないか、こういうふうに考えるのです。  というのは、開業医も、あるいは公的医療機関も、もうけ仕事に走って乱診、乱療、乱投薬、こういうことをすれば医療給付がどんどんふえて、ますます医療給付が増大して健保財政が圧迫されて赤字になってくるのは当然だと思うのです。そういう意味から私は、もっと予防医学に力を入れることによって、病気をもっと未然に防ぎ、あるいは軽いうちに治癒させることができれば、不要の薬をやることもないし、医者の労力も助かるし、重症患者に対する多額の給付をする必要もない。これが医療コストをダウンする最も近道だと私は思うのです。実は、非常に遠いように見えるけれども、これが最も近道ではないか、私はこういうふうに考えるのです。  特にPCB、水銀等に汚染されている問題です。きのう本会議で大臣は盛んに安全、安全を連発されていました。しかし、これが決して安全でないということは大臣が一番よく御存じだと思うのです。PCBなり水銀は、蓄積されればこれはもう必ず体内にとどまる。百二十日の半減期だか七十日の半減期だかよくわかりませんけれども、七十日にしても、七十日たたないうちに次のものをまた食えば、その差額というものは確実に体内に蓄積されていくのです。しかも日本じゅう総汚染の危険性もあるときのうも指摘されておる。こういうものがだんだん時間がたってくれば、日本じゅうの人間が、非常にたくさんの人間がこの問題で苦しむことは目に見えておるのです。  きのう、この公害の問題については、発生源があれば発生源に責任を負わせる、こう言いました。しかし必ずしも発生源がはっきりするとは限らぬのです。発生源がはっきりしないで公害患者がどんどん出てくれば、それは全部健保にかぶさってくる。健保財政というものは、いまどころじゃない、たいへんな赤字になると私は思うのです。  こういうふうに考えてきますと、この予防医療を急速に取り入れなければ、私はもう、いま程度の赤字どころではない、とんでもない大赤字になる、こういうふうに思うのです。しかも私は、この予防医療というものは決して長期的に見れば不採算な事業ではないと思うのです。私は長いこと市長をやって国保を取り扱ってまいりましたけれども、ある町で、保健婦をうんと思い切って増員したら医療給付が非常に減った、こういう実例があるのです。だから私は、この際むしろ、赤字がなくなったらば予防医療に力を入れるというんではなくて、赤字を消すために予防医療に力を入れるべきだ、こういうふうに考えますけれども、いかがですか。
  32. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 保険において予防医療を大幅に取り入れるという考え方については、私は基本的に賛成でございます。しかし、何しろ現在の保険財政が非常に苦しくて、医療費を払うことだけでもたいへんなことでございます。仰せのごとく、予防医療に力を入れれば、その結果として赤字が減るだろうし、疾病率が減って赤字が減るであろう、私も、そういうふうな考えになると思いますが、何しろ現在はその医療費を払うことで一ぱいなんでございます。手が一ぱいなんです。そこで予防のほうまで手が回らぬというのが実情でございますので、今回の法律が成立いたしました暁には、仰せのような方向に厚生省の健保の運営を持っていく、こういうふうに努力をしたいと考えておる次第でございます。
  33. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 私は、そこのところをどうももう一つ踏み切らなければ赤字の問題は解決できないと思うのです。発想の転換、発想の転換とよく言われますけれども、そこを踏み切らなければ転換をできないと私は思いますよ。  それからもう一つの提案は、さっき言いました公的医療機関、これは地域医療の中心である、柱であると思うのです。また、いま政府が盛んに強調しておりますところの福祉政策のにない手でもある、私はこう思います。そこで、先ほども言いましたように、こういう福祉政策なり地域住民の要求にこたえるために公的医療機関の独算制というものを廃止しなければ、私はほんとうの意味で住民にサービスするところの本来の使命を達成することができない、こういうふうに思うのですけれども、いかがです。
  34. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 地域医療の中核は何と申しましても国公立病院が中核となって、医師会協力を得てそれぞれの医療施設の体系的整備をはかることが中核、中心であろう、かように私は考えております。しかし、そういうふうな考え方で将来とも医療施設の体系的整備をはかってまいりたいと考えておりますが、独立採算とそれがすぐ結びつくかどうか、それは問題があると思いますが、先ほど来申し述べましたように、自治体病院の問題については、いまのような状態ではたして医療施設の中核的な役割りを果たし得るかどうか、そういろ点に非常に問題がございますので、ひとつこの問題は自治省とも相談しながら真剣に検討をいたしてまいりたいと思います。
  35. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 私はこう思うのですよ。一番先に申し上げましたように、公的医療機関というのはもうけるための機関ではないのです。住民にサービスして、開業医がやれないことをやるのが公的医療機関の使命だ、こういうふうに思うのです。この点では、さっきから同意されておりますので、そのとおりだと思うのです。しかし、独立採算制というたがをはめて赤字を解消しろ、赤字を解消しろと言って迫られるために、心ならずももうかる外来患者を引っぱってくる。そうすると外来患者を相手にしている開業医とまっこうから対立する。いつでも開業医と公的医療機関というのは仲が悪い。厚生省と日本医師会と仲が悪いのと同じようなものだ。いつでも対立している。この対立を解かなければ、私は地域医療体制というものは確立しないと思うのです。開業医とそれから公的医療機関がけんかしないように、仲よくするようにならなければだめだと私は思うのです七相反目して何もいいところはないのです。  それをやるために、私は、外来患者の取り合いをやめなければいけない。外来患者の取り合いをやめるためには、この独立採算のワクをはずさなければいけない。そして公的医療機関は外来患者は原則として扱わない。ただ保健所なりあるいは開業医なり、そういうところから紹介されて回ってきた救急患者なり、あるいは重症患者なり、そういう特殊なのは取り扱うけれども、その他の外来患者は原則として取り扱わない。そうすれば開業医とけんかすることはない、こういうふうに考えますけれども、この点についてはいかがお考えですか。
  36. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先ほどもちょっと申し上げましたけれども地域医療の中核はやっぱり国公立病院が中核になって医師会との協力を保つということが中心でございます。したがって、国公立病院、開業医、これは相互協力しなければ日本の医療は進展がない、私は仰せのとおりだと思うのです。この二つが相争っているようなことでは日本の医療は進展しない、かように私は考えておりまして、この点はもう先生と全くの同意見でございます。  そこで、公立病院市町村立あるいは府県立病院がそうした中核的な機能を果たすには、いまのような制度で十分かどうか、いまのような財政方式で十分であるかどうか、そういう問題について先ほどもちょっと申し上げましたが、そういう病院が国家的要請に基づいてやっておる仕事、そういう問題について国はもっとめんどう見る必要があるのではないか、こういうことを私は先ほど来から申し上げておるわけでございます。不採算業務の問題あるいは看護婦養成の問題、救急医療の問題、こういう問題について、単にそれは自治体の病院だから、赤字になれば市町村一般会計でめんどうを見、特別交付税でめんどうを見る、もちろんそれは独立採算制が基本でございますが、そういうやり方だけで十分かどうか、私も実は疑問を持っているのです。  そういうことで、この問題については、もうしばらくして自治省とも十分相談しながら、どういう方式でいけば一番いいか、それを私は究明し、検討してみたいと先ほど来申し上げておるとおりでございまして、何かしらいい方法を見つけるならば、それに基づいて来年度予算要求、概算要求までに案ができますれば、それに基づいて必要な措置をとる、こういうふうに考えているところが現在の段階でございます。
  37. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 ぜひひとつ真剣に考えてもらいたいと思います。  それから、医師不足という問題についてちょっと申し上げたいと思いますが、医師が非常に不足だ、こういうふうに盛んにいわれております。しかし私が調べたところでは、必ずしも私は日本の医師は外国に比べて不足ではない、こういうふうに思うのです。というのは、ここに厚生省ですか、自治省ですか、出したあれがありますけれども、アメリカの人口十万に対するところの医師の数は百五十三・四、イギリスが百十三・一、フランスが百十七・七、西ドイツが百六十二・七、ソ連は法外に多くて二百二十ですが、まず例外といたしまして、日本が百二十七・八、こういうふうになっている、これから見ますと、必ずしも諸外国に比べて日本の医師の数は少なくない。多少は少ないかもしれないけれども、私どもが実感として医者が少ないなと思うほどこの数字を見ると少なくないのです。なぜそれほど少なく実感として感ずるかということは、言うまでもなく地域的に偏在しているということで、勤務医が不足で開業医が非常に多い、これが最大の原因だ、こういうふうに思うのです。  こういうような意味からも、さっき申し上げましたように、ぜひとも開業医というものを地域全体の医療の体制の中に組み入れなければ、単に公的医療機関だけに地域医療をまかせておいたのでは、私はどうしても住民の要請にこたえることができない、こういうように思うのです。開業医がみんな繁盛しているかといろと、そうでもない。非常に閑散な人もたくさん知っています。しかし、その人が腕が悪いかというと、必ずしもそうではない。患者のあれは流行みたいなもので、多分に心理的なものに左右されるので、まだ私は開業医が十分余地がある、こういうふうに思うのです。こういう開業医というものは、ぜひともひとつ地域医療の体制の中に組み入れる必要がこういう点から見てもあるのではないか、こういうふうに思いますけれども、いかがでございますか。
  38. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先ほど来たびたび申し上げておりますように、地域医療の進展のためには国公立病院と開業医、すなわち医師会との相互協力、これがもう一番の根本である、私も同感でございます。
  39. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 もう一つ、この医師不足の問題について、先ほど救急医療の問題について公的医療機関をみな指定したいと自治大臣言っておりましたが、医者が不足なのでどうにもならないということも言っておりました。こういう問題について関連がありますけれども公的医療機関による外来患者は一体どのくらいあるか、これをちょっと調べてみますと、たとえば県立病院の場合を見ますと、北海道の場合は、極端な両端を除きますと全体の患者の中の大体六五・九五%、それから宮城県立では四九・四二%、福島県立では四三・七七%、それから市立病院を見てみますと、青森の市立病院六三%、秋田の市立病院は六九.四四、山形七六・四〇、熊本五二・七六、愛媛県のある市立病院が六三・四三、こういうふうに外来患者の数というものは公的医療機関で非常に多いのです。  そこで、先ほど私が提案しましたように、公的医療機関が外来患者を見ないとすれば、この外来患者を見なくてもいいのです。そうすれば、医者が大体平均すれば半分余ってくる。すなわち医者が倍にふえたと同じ結果になると私は思うのです。そうすれば、いままでよくいわれているように二時間待って二分間見てもらう、こういうような状態が解消されて、入院患者にもっともっと濃厚な治療をし、また医者はもっともっと自分でも勉強することができる、こういう余裕ができると思うのです。  これができないところは、なぜできないか。これはもう先ほどから私が強調しておりますように、独立採算制のワクに縛られているものだから、外来患者を引っぱってこなければ赤字が解消できないのです。だから私はこの独立採算をやめろ、こう言っているのです。これができなければ、私はどうやっても本来の使命を達成することができない、こう思いますけれども、もう一ぺんひとつこれに対するあれを……。
  40. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 仰せのごとくでございまして、先ほど来申し上げておりますように、国公立病院と民間の開業医というものが相互協力しなければ日本の医療の進展はない、私もさように考えておるわけでございます。いまのような患者の奪い合いということはあくまでも避けて、お互い診療所と病院というものが、その任務をそれぞれはっきりさせて、その機能を発揮させるようにしていかなければならない、こういうふうに私も考えております。  ところで問題は、その自治体病院財政再建について独立採算制をどうするかという問題なんですが、そこはいますぐ私にそれを踏み切れ、こう言われましても、これはいますぐというわけにはまいりませんので、その問題については、ひとつ十分自治省とも相談し合って、その分担を分けた上に立って、本来の機能が発揮できるような仕組みにするように検討をし、努力をしてまいりたい、こういうことでございます。
  41. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 どうも一つかみ合わないですな。まあそれは終わりましょう。ぜひひとつ検討していただきたいと思います。私は、それができなければ根本的にはだめだと思うのですよ。  それでもう一つ、この日本の医療財政、いわば健保の財政を論ずるにあたって、薬剤費という問題を除くわけにはいかないと思うのです。よくいわれておりますように、医療機関がメーカーから購入する価格、いわゆる実務薬価というものと診療報酬支払基金が医療機関に支払う価格、いわゆる薬価基準による公定薬価ですね、この間に約五〇%の差がある。結局実務薬価は公定薬価の半額だ、こういうふうによくいわれておりますが、これは事実ですか。
  42. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 お答えいたします。  先生も御案内のように現在の医薬品の価格は、自由企業のもとにそれぞれの取引条件によりまして、実際に病院が卸なりあるいはメーカーから購入いたします薬価は、いわば千差万別でございます。保険で薬価基準を制定いたします場合には、その実勢価格を全数調査によって行ないました薬価調査に基づきまして、その安いほうから数えまして九十番目のものまでが購入し得る価格ということで、いわゆる九〇%バルクラインという方式をもって決定をいたしております。  したがいまして、個々の取引の条件によりまして、数量あるいは支払いサイト、いろいろな条件によって個々の価格はまちまちでございますので、取引の実態を把握いたしました場合に、ときによりましては、いま御指摘のような、薬価基準の五〇%ぐらいで購入しておる場合もあるいはあるかと存じますけれども、その点は個々の取引の実態と薬価基準の制定方式との違いによる部分的な問題であろう、そのように心得ております。
  43. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 ほんとうに部分的な問題であればいいんですけれども、私はまあいろいろ調べてみましたが、ほとんどのいろいろな資料がこのぐらい違うということをいっているんです。ほんとうに部分的な問題でほんの一部だけが、こういうような部分もあるかもしれない――ほんとうにそうですか。
  44. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 薬価調査の方式は、中医協の御意見に従いまして、卸の部分につきましては全数、それから使用いたします購入側につきましては一定率の数をとりまして、購入側と販売側と両方からの調査をいたしておるわけでございまして、私どもはこの調査はほぼ実勢価格を反映しておるものというふうに考えておるわけでございますが、なお先生御指摘のような、実勢価格が薬価基準よりもかけ離れておるというような実態がだんだん多くなっておるということが、もし事実でございましたならば、それは当然その次の薬価調査に反映するわけでございまして、そういった実勢を反映いたしまして新しい薬価基準が制定されるということになるわけでございます。  ただ中医協の御意見もございまして、経済変動の激しい時期でもございますので、一年に一回の大調査のほかに、なお主要な品目についての追跡調査等も必要ではないかというような御指摘もいただきまして、四十八年度におきましては、そういった追跡調査の準備もいたしまして、中医協の御意見をいただき次第、そういった調査も並行していたしまして、なお実勢価格に近づけるような努力をする、そのようなつもりで努力をいたしております。
  45. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 よく医者に行きますと薬をたくさんくれて、それを全部飲むと、逆に薬によって病気になる、こういうふうにいわれているのです。医者に行くと、やたらに薬を一かかえくらいくれる。ほとんど飲まないで、みな投げておるのです。こういう事実を見ますと、必ずしもいま局長が言われたようなことであるとは私、思われないのです。国民も全部そう思っておるのです。いま追跡調査されると言われましたけれども、ぜひひとつこの追跡調査をして、その結果、はたして実勢価格とこれと同じであるのかどうか、この点をはっきりとひとつ発表していただきたいと思うのです。  それからもう一つ国民の総医療費に占める薬剤費の割合が諸外国では大体一〇%か二〇%にしかなっていないのに、わが国では四〇%こえている、こういうふうにいわれていますが、これは事実ですか。
  46. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 大体そういうパーセンテージでございますが、国際的に比べてみますと、いわゆる医療費の中で技術料をどういうふうに評価するかという問題が別途あるかと存じます。そういう関係上諸外国に比べまして、わが国の場合には技術料の評価が、現在中医協等でも御論議されておりますように必ずしも十分でない。むしろ今後技術料を適正に評価していくということが診療報酬適正化の一つの大きな問題でございます。そういう意味合いで相対的には技術料が低いために国際的な比較におきまして、先生おっしゃったような結果が出てくるかもしれませんけれども、それだけをもって必ずしも薬剤費が絶対的に高いということを言い切ることはどうかと思います。ただ私どもはいまおっしゃったように全体の医療費の中で四三%というような大きなウエートを薬が占めておりますので、そういう点は十分に注意をいたしまして、いま薬務局長から申し上げましたように薬価調査を十分にやって、実勢価格と薬価基準とを近づける、こういう努力を今後も十分に重ねてまいりたいと思っております。
  47. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 薬の点については先ほども申し上げましたように国民全体が非常な疑惑を持っているのです。薬屋のために何かうまくやられているのではないか、どうもすぐ注射をして、薬を一かかえもくれて何ほども飲まれない、こういうふうなことが盛んにいわれて、ほとんどの国民がそういうふうな考えを持っています。これはぜひひとつ究明して、どうであるのか、この点をひとつはっきりと発表していただきたい、こういうふうに思うのです。  大臣にお伺いしたいのですが、今回提案されておりますこの健保制度の改正案、これは当面の対策であるか、あるいは抜本策であるか、どっちなのか、ひとつお聞かせ願いたい。
  48. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私どもは保険制度の抜本改正をやりたいと考えておるわけでございますが、これをやろうといたしますと、関係者の利害得失相矛盾いたしまして、なかなか国民的合意を得ることが困難な状況でございます。そうした中にあっても、特に政管健保においては家族給付が五割に、今日まで長いことすえ置かれておるというこの事態は、何としてでも早く解決しなければならない、こういう考え方で立案をいたしておりますが、それは抜本改正を目ざしての一つのレールの上に乗ってのワンステップである、こういうふうに実は考えておるわけでございます。
  49. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 健保制度あるいは医療制度、これの抜本的改正という問題がもう前から繰り返し繰り返し唱えられておるのです。しかし毎度出てくる案というのは、政府のほうは一銭でも多く保険料を取り上げよう、そして払うほうは一銭でも少なく払ってやろう。またこれは当然のことだと思うのですが、患者のほうは一銭でも少なく支払って、給付は一銭でもよけい受けよう、それの繰り返しなんです。こういうパーセンテージを多少上げても下げても、事態は当座ちょっと変わるだけで、実際にいまのようなたいへんなインフレなんかから考えてみますと、すぐまたもとのもくあみに戻ると思うのですよ。  抜本改正はもっともっと、さっき言ったように、いままでの治療中心主義から、予防医療をもっともっと重視する。あるいは薬を重視するなら、先ほど話がありましたように、医者の技術を尊重するとか、あるいは開業医と仲よくして、地域医療の組織化をするとか、そして医師不足を解消するとか、あるいは公的医療機関の独算性を廃止して、ほんとうに本来の住民サービスに適応させる、こういうふうな荒廃した医療機関にヒューマニズムを取り返す、こういうことでなければ、私はどうしても現在の健康保険の赤字などというものは解消できない、こういうふうに思いますけれども、いかがですか。
  50. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 実は今日まで健康保険法の改正を国会に提案いたしますこと、ここ十年の間に八回目になるわけでございます。これは従来とも健康保険法の改正といいますと、料金値上げの問題とか、一部負担の増額の問題とか、そういうことばかりでございました。けれども今回は給付改善が中心の法律ということを御理解願いたいのでございます。すなわち今回は三十数年放置されておりました政管健保の家族給付を五割から六割に上げるということを中心としたもろもろの施策を講じており、これがやはり一番中心だと思いますので、その点はどうか御理解をいただきたいと思います。  そこで問題は、将来の抜本改正の問題ということになりますが、これを一つの足がかりとして各制度間の給付の調整をはかる、これが一番大きな今度の目標でありましたが、これを足がかりとして今後いまお述べになりましたような公私医療機関の調整の問題、あるいは医薬分業の問題、もろもろの問題が前途に横たわっております。そういうむずかしい問題に今後とも取り組みまして、国民医療充実のために今後とも努力をいたす覚悟でございます。
  51. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 最後に一つお聞きいたしたいと思いますけれども老人医療がさっきも話が出ましたように無料になりまして、非常にたくさん年寄り方々病院に押しかけて満員になって、普通の人はなかなか見てもらえない、こういうふうな状態があることは御承知だと思います。そこで、このままにしておかれないと私は思うのです。だからぜひ来年から、来年の予算老人専門の病院をつくる、あるいは少なくとも公的医療機関老人病棟を、ぜひ老人のもつくる予算を出していただきたい。このことをひとつお願いしたいのですが、確約していただけませんか。   〔田川委員長退席、塩谷委員長代理着席〕
  52. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 老人医療無料化の実施に伴いまして、老人受診率が非常にふえてまいったわけでございますが、しかしこのことは老人の健康を保持する上からいって非常に望ましいことだと私は思っておるわけでございまして、医療機関が忙しくなってお困りかもしれませんが、これは国民医療のためにしんぼうしていただきたいと私は考えておるわけなんですが、そこでいまお述べになりましたような公立病院老人ベッドをつくるという問題とか、あるいはそういう病院の近所に老人の特別養護老人ホームをつくって病院との調整をはかっていくとか、こういう問題が必要になってくるわけでございまして、国公立病院には例の規制のワクからもはずしてございますので、老人ベッドをつくっていただくように勧奨もし、国においてもそういうふうにいたしたいと考えておる次第でございます。
  53. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 終わります。
  54. 塩谷一夫

    塩谷委員長代理 島本虎三君。
  55. 島本虎三

    島本委員 ただいま健康保険法の一部改正法案についていろいろ質疑がありました。その中で、やはり私は一つだけ大臣に確かめておきます。と申しますのは、かつて何回か出したということを大臣はいまおっしゃっておられましたが、今回の場合特にお聞きさしたいのは、いろいろ健保連の反対のありました財政調整方式、それから医師会のこぞって反対のありました再診料の一部負担、こういうようなものを全部削除して、対象を被保険者にしぼったような形で今回は提案されたのが健康保険法の一部改正法案であります。  そうすると、いままで何回か出したということと、これはなかなか異質のものである、こういうようなことにも相なりかねないのでありまするが、いままで問題であったこの再診料の一部負担の問題と財政調整の問題 これらは必要がなくなって載せないのか、それとも必要があるけれども、今回は特にはぶいたのか、この点不分明にしてよくわかりませんので、解明を願いたいと思います。
  56. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 政管健保と組合健保との財政調整をはからなければならないという意見のありますことは、私も承知をいたしております。私もできるならば、これをやりたいのです。やりたいのですけれども、これを提案いたしますと、なかなかこれ国民的合意を得ることは、いま急速には困難だ、こういう考え方に立ちました。それから再診料の一部負担の増額の問題、これもあるいは適当かもしれませんけれども、いまのような国民医療の内容において、受診率が必ずしも高くない状態において、そういうことをやることが国民医療充実発展のために望ましいかどうか、そこに私は問題があるような気がいたすわけでございます。  特にその二つの問題のうちの財政調整、これはなかなか国民的合意を得ることは困難でございます。そこでそういう問題ばかりに夢中になっておりますというと、一番おくれておりまする政管健保の家族給付五割というものをいつまでも据え置かなければならない。これが中小企業の労働者にとっては不幸なことではないか。そこでそういう合意を得られない問題に夢中になって取り組むよりも、まず実施可能で緊急な問題を先に解決し、その段階においてそれが成立した暁において、こういう財政調整の問題、そういう問題に取り組んで、いわゆる保険制度の抜本改正に向かって進んでいくべきではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。  私としては、財政負担の公平ということをはかるならば、財政調整またやむを得ないのではないかというふうにも考えておるわけでございますが、それをいま直ちに取り上げるということになりますと、国民的合意を得ることはきわめて困難な段階にある、かように考えておる次第でございます。
  57. 島本虎三

    島本委員 その結果がやはり対象を被保険者に一本にしぼられた結果になり、そして給付が改善されたというこの重大な家族給付率の引き上げや、高額医療費の保険での負担や償還や、分べん費や埋葬料の引き上げ、こういうような三点の重大な給付の改善がはかられるのであります。しかし保険料の増徴が、そのほかに料率の引き上げや、標準報酬の上下限の引き上げや、特別保険料の新設や、弾力条項の新設等からして、当然金額にして約九百億、そして給付の改善のほうは約五百億とするならば、増徴のほうがよけいで給付のほうが逆にこれはもう少ないという結果になり、値上げであるというそしりを免れない。しかしながら、やはりこれはもう削除した対象を被保険者一本にしぼって国民に犠牲をしいる改悪法案である、こういうようにいわれないとも限りませんが、そうでないという根拠を明らかにすべきであります。
  58. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 先生は保険料と給付の改善だけを、二つだけを比較してものを仰せになりますが、今回の改正法案はもっと大きな問題があります。すなわち医療給付費について国が定率の補助をするという大きな問題、すなわち八千八百億の総給付費でありますならば、一〇%の八百八十億を国民の税金からこれを補強し、いわゆる中小企業労働者あるいは経営者のために給付の改善をやろうという非常に大きな問題を見過ごしておるのではないかと私は思うのでございます。したがって全般を見渡して御判断をいただければしあわせだと思う次第でございます。
  59. 島本虎三

    島本委員 それは迷いのほうの迷答弁であります。国民皆保険の現在、皆保険であるのに、保障の点において触れなくてもいいという論理は、これはございません。したがって皆保険であると、これは保障であります。保障である以上、国がいままで負担しなかったのは間違いでありまして、いまこれ以上三〇%も負担するのが、これが名答弁になるのであります。しかしながら、いまぐらいのやつを出して、依然として増徴のほうをよけいにしておいて、そしてこれをもって、まありっぱなものであるということにおいては、やはり国民は納得しないのでありまして、この点は十分に他の委員の諸君も御理解賜わりたいところであります。しかし、やはりこの問題は問題点であります。私としては当然改善すべき点を改善しないで、国民にしわを寄せたものである、このようなやり方はまずい。国で当然負担すべきものを負担しない、その赤字の累積がいま出てきている。こういうようなものに対して、当然国がよけい負担するから国民もよけい出すのが正しいのである、こういう論理を展開してくることは、社会保障の原理にももとりますので、この点は私の納得し得ないところであります。大臣の答弁は私は十分理解することができません。もう少し私はこの点は、理解するような答弁がほしいのであります。しかし、それ以上出ますか。――同じ答弁では必要ありませんから、次に移ります。  この前、公害病の認定患者の求償状態について質問いたしましたところが、百数十名であるというような答弁がございました。その後資料をちょうだいいたしましたところが、これはまたその数倍になっておるのであります。以前の答弁が正しいのですか、この資料のほうが正しいのですか。そうでなければ、前に私に答弁したのは、国会をあざむいたことに相なろうかと思いますが、この点、いかなる見解でございましょう。
  60. 江間時彦

    ○江間政府委員 お答えいたします。  先日、島本先生にお答えいたしましたときには、たしか百二十三名というふうなお答えをいたしたと思います。本日先生の手元に合計いたしまして人数では、政府管掌健康保険関係が二百九十九名、国民健康保険関係が六百六十二名という資料を差し上げたと思いますが、それは、前回お答えしましたのは、現実に求償権を行使した者の数を申し上げたのでございまして、本日の資料は、まだ求償してない者まで含めた数字でございますので、その食い違いがあるわけでございます。
  61. 島本虎三

    島本委員 求償した者というと、やはり百二十三名ですか。当然求償すべき者は、これはもうそうすると、九百六十一名ということになるわけですか。この点、少しおかしいじゃありませんか。
  62. 江間時彦

    ○江間政府委員 先日お答えしましたのは、現実に求償権を行使した者の数でございまして、本日差し上げました資料は、これから求償権を行使すべき者まで入っておるということでございます。
  63. 島本虎三

    島本委員 じゃ、これから求償権を行使するということになるわけですか。もしなるとするならば、これもやはり財政的に重大な影響をもたらす一つのポイントだと思うのであります。取るべきものを取らないでそのままにしておいて、赤字を出す必要はありません。したがって、これはもう億をこえる求償権になるのであります。いままで求償権をそのままにしておいて放置したということは、これはもう重大な怠慢であります。しかしながら、これはわかった。わかったけれども、そのまま放置しておく、これではいけないと思います。いついかなる条件において行使なさるのですか。
  64. 江間時彦

    ○江間政府委員 お答えいたします。  裁判によりまして、最終的に補償しなければならないものを確定するというようなこともございますので、債務者が確定次第すみやかに求償権を行使いたします。
  65. 島本虎三

    島本委員 これは特に公害認定患者の場合には、初めから全治の可能性のない人が多いのであります。したがって、その医療そのものの開発も現在まだ不十分なのであります。それを健保によってやる場合には、少なくとも薬でも、それから治療機関でも、これを行使するようにしてやらなければならない、こう思うのであります。しかし、それにしても、何の罪もない人が、日本の高度経済成長のいわば犠牲になっているのでありますから、そういうような点においては、もっともっとこれはあたたかい気持ちで、これを迎えるというのじゃありませんが、当たらなければならないはずなんであります。  こういうようなことがいろいろあるわけですが、はっきり認定され、そして求償権の行使でき得る人、これはいいと思います。これまでの、決定にならないままでまだ悩んでいる人が多いのであります。数は相当いるのであります。そういうような場合には、高額医療費ということに当然これはなるのであります。その場合には、長期疾病患者の場合には、これはもうやはり十分考えてやらなければならない問題であろうかと思います。これに対して、はっきりした何か救済策というか、対策というものがおありならば、厚生省から承ります。
  66. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 ただいま公害の疾病に関連をいたしまして、長期療養を要する方々についての高額療養費の支給の方法についてのお話がございました。家族の自己負担を伴いますものにつきまして、今回の改正で新しく高額医療費の支給を行なおうとしておりますことは、先生もいまお述べになりました公害という現代的な疾病ということも含めて、非常に実効性のある措置だとわれわれは考えております。現在のところは、すでにたびたび申し上げておりますとおり、一件につきまして三万円をこえる分について償還をする、こういうことで現在、制度考えているわけでございます。  なお、その支給の正確な額でございますとか、あるいは支給の要件でございますとか、そういったものは、いま御審議をお願い申し上げております改正案にもございますように、政令できめるということになっています。なお、政令をきめるにあたりましては、社会保険審議会の意見を聞くということでございますので、その段階におきまして、いろいろなきめのこまかい実施方法について十分検討いたしたい、このように考えております。
  67. 島本虎三

    島本委員 公害の場合はわかりましたが、しかし公害に準ずる人は意外に多いのであります。これは魚ばかりに微量重金属、ことに有機水銀が含まれているわけじゃありません。これは食べている人、食べない人、そのほかに今度は、農薬、それによる汚染、休廃止鉱山、また現に稼働している鉱山、これらからの廃液、いろいろ被害が各一般、各層、それから各界に及んでおるのであります。そうなると、いま答弁されたあなた自身も、大臣自身も、今後何年か後にこれは有機水銀中毒患者としてここに医療を受けなければならない、こういうふうなことにならないということの断定はできないのであります。ことに私なんかも、その被害者になる可能性さえあるのでありますが、そういうふうな点からしても、十分これに対する対策は講じておかなければなりません。  高額医療費については、長期の疾病患者の場合には、一定期間経過後は全額払い戻しにするような、こういうふうな制度は、一番あたたかい考え方であって、三万円ということに限定しないで、三カ月後は全額やるべきだ、こういう一つの発想もあろうかと思います。せっかく健康保険法の一部改正法案、それによって高額医療費という目玉商品を出した、どうせ出したならば、ここに画竜点睛を欠くことがないようにするためには、いまのように一定期間経過後は全額払い戻しをするような、こういうふうな一つの発想もあってしかるべきじゃないか、こういうふうに思うわけであります。この点大臣、いかがなものでございますか。
  68. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 高額医療やり方につきましては、私ども現在のところ、一件、一カ月、三万円ということを考えております。しかしながら、この制度につきましては、いろいろな意見があるわけでございます。いろいろな意見と申しましても、たくさんあるわけでございますが、たとえばガンとか成人病とかいうふうな疾病を限定して行なうべきではないかという説もあります。それから先生のように、三カ月ぐらいはいいが、四カ月目からは取らないようにしろという御意見もあります。それから世帯単位で取れといったような意見もある。まあこれは種類を数え上げてみますと五、六種類の意見がいまのところ出ておるわけでございます。  そこで、こういうふうな問題を踏まえまして、社会保険審議会において十分検討をしていただくわけでございますが、どうもやはりそういうことにいろいろな意見がありますが、一番直截簡明わかりやすいのは、一件、一カ月、三万円というのが私は一番わかりやすいと思うのです。けれども、私は、何もこれにこだわっておりません。虚心たんかい、社労の委員会における――成立しなければ話になりませんが、成立した後において、皆さん方の社労の委員会におけるいろいろな審議のそういう御意見、それも社会保険審議会に御披露いたします。そして関係各方面の意見も十分に承って、国民が一番喜んでもらえる方式はどういうものかということを頭に描いて決定をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  69. 島本虎三

    島本委員 十分この点は今後の検討課題であります。したがいまして、私はきょうは社会労働委員でありながら、きょうの場合は公害並びに環境保全特別委員会からの派遣委員であります。そういうような関係でありますから、公害関係に重点を置かれるのでありますから、この点はひとつあらかじめ御了承願っておきたいと思います。  まずそのためにも、いまの公害全体を見る場合には、やはりイタイイタイ病であっても、有機水銀の問題であっても、水俣病の問題でありましても、婦人の患者が意外に多いのであります。そういうように考える場合には、やはり妊産婦についての母子健康手帳交付後少なくとも毎月一回程度の健康診査を公費負担で完全にこれは実施してやる。対策としても今後はやはりそういうような一つやり方も望まれるのじゃないかと思います。当然これは市町村においてはこれを実施している向きもあるかのように承っておりますが、この件についてはいかがなものでございますか。
  70. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 妊産婦の健康診査の問題でございますけれども、御承知のように、いままでも保健所では無料でやっていたわけであります。それで問題は、保健所に行けない、また遠いとかいうような、なかなか利用できない方の問題がいままであったわけでございますけれども、この方々については従来低所得階層を対象として公費で健康診査ができるような道を予算上開いてきたわけであります。  で、いま先生がおっしゃいましたように、やはり健康診査というのは母子保健の基本をなすものでありますので、四十八年度からこの対象を拡大と申しますか、むしろいままでのありました所得制限の壁を撤廃いたしまして、医療機関に行っても公費負担で健康診査を受けられるという道を全階層に四十八年度から拡大したわけでございます。したがって、私どももこの方向と申しますか、それを今後ともさらに充実していきたいというように考えているわけでございます。
  71. 島本虎三

    島本委員 やはりその方面から先に留意して対策は万全にしておかなければならない、このことだけは特に私から要請しておきたいと思います。  ことに乳児の死亡率、これはもう最近齋藤厚生大臣になってからかなり改善されてきた、こういうふうにもいわれていると思われるのでありますけれども、しかし何と申し上げますか周産期の死亡率について見ると、まだまだ問題があるのじゃないか、こう思われるわけです。この死亡率について国際的に比較した場合に、日本は一体どういうようになっているのか。最近日本だけの問題で見るといいとか悪いとかと言うが、国際的に見る場合には相当日本もまだまだ率が満足にいっていないという点が多いのでありますが、この乳児率死亡率についてどういうようになっておりますか。この点だけ御発表願いたいと思います。
  72. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 最近各種の死亡率というものは非常に改善されてきたわけでございまして、国際的に見ましても相当改善のあとが顕著になり、また良好な部類に属するようになりつつあります。  しかし、いま御指摘のありましたように、周産期の死亡率でございますとか、あるいは妊産婦の死亡率でありますとか、こういった点につきましては、まだ諸外国に比較して高率な面もあるわけでございまして、したがって、そういう点については御所見の見地から今後とも改善、充実に大いに努力しなければいけない、こういうふうに考えております。
  73. 島本虎三

    島本委員 やはり健康保険法を改正してやっても、まだまだ妊産婦や乳児の死亡率が高い、こういうような点には十分今後も留意していかなければならない大きい問題だと思うのです。この周産期の死亡率及び妊婦の死亡率がまだまだそういうふうな状態にあるということ、今後はやはり政府としてもこれらの母子の保健の改善、これに関する一つの施策を強力に講じていかなければならない。これはあたりまえの話であります。当然具体策もこれはあるのじゃないか、こう思います。  それと同時に、地方自治体では乳幼児の医療無料化、これも進められていると、こう聞いておるのでありますけれども、この実施状況とあわせてひとつ発表してもらいたいのであります。
  74. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 現在乳幼児医療と銘を打ちまして地方自治体においてやっておりますのが、県としては二十一ございまして、市町村の数では七百五十七市町村でございます。  この乳幼児医療の私ども考え方でございますが、現在御承知のように、たとえば未熟児に対する養育医療でございますとか、障害児に対する育成医療あるいは療育の給付とか、小児難病に対する給付というような疾病を対象に現在公費負担医療を実施しているわけでございます。こういった特別の医療に対する公費負担というものは今後ともさらに充実をはかっていかなければいけないと思うわけでございますが、ただ、こういったもの以外に一般医療について公費負担というものをやるかどうかという問題につきましては、これはむしろ医療保障制度全般にかかわる問題になるわけでございまして、そういうようなことで今後慎重に検討していかなければいけないというように考えておるわけでございます。
  75. 島本虎三

    島本委員 そういうようにして周産期の死亡率、それと妊婦の死亡率、これはまだまだ世界的レベルから見ると、これは死亡率が高い、こういうふうな状況であるということはわかりました。  その際に、特に厚生大臣にお伺いしておきたいわけでありますけれども、けさほどの新聞で厚生省が新宣言をしたようであります。これは魚屋さんの抗議にこたえて、アジならば週四十六匹、サンマならば二十一・七匹、こういうようにして魚を食べてもまず安全と厚生省が新安全宣言を発したようであります。しかし、ほんの何日前ですか、二十四日ですか、これもアジならば十二匹、ヒラメなら一・八匹、セイゴならば十匹、ハマチならば一・六匹、サンマならば五・八匹と、こういうような一つの安全値を発表されたようであります。  何かの抗議があったならば、それが変わるような科学的な根拠というものは、いまやもう乳幼児の死亡率を見ても高い妊婦の死亡率を見ても高い、ことに水銀の場合には脳神経を侵しますから、それが蓄積された場合には、妊産婦、親だけではなく、子供に対しても、次の世代に対しても植物的な生存しかできないような子供を生ませる可能性があるわけです。そういうようになった場合には、現在までの死亡率の高い状態にかてて加えて、こういうような一つの安全宣言がある、この安全宣言も朝令暮改のようにぼつぼつと変わる、こういうのでは、厚生省の権威にかかわるのじゃないか、こういうように思うわけであります。  こういうような新宣言がアジなら週四十六匹という新数値を出した。この根拠について私どもとしては、はなはだこれに対する厚生省の自信のなさ、こういうような点をうかがわれるわけでありますが、大臣これはもう逆に公害病患者や今後の次の世代に対して重大な悪影響を及ぼす結果になりませんか。
  76. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 実は水銀の摂取許容基準というものを先般きめまして、魚についての規制値は〇・三PPMときめたわけでございます。すなわち〇・三PPMときめたことは、それ以上の汚染された魚は市場には出しません、廃棄いたします、こういう意味合いでございます。  それと同時に、それを発表いたしましたときに、同時に事務当局において一週間の献立表として参考にお配りいたしました資料は、すなわちすべての魚が〇・三PPM満度まで汚染しておるとした場合に、その汚染した魚は何匹食っても安全か安全でないかという資料でございます。すなわち、〇・三PPM満度まで汚染されている魚ならば、そう無尽蔵に食べられては困りますよという数字でございます。それは科学的なそういう水準なんです、全部が〇・三PPMまで汚染されておっても、これだけの魚は食べられますという数字でございます。  ところが実際はどうかといいますと、そうじゃないのであります。そんなに汚染されておりません。現在の魚は汚染されていないのです、東京の市場その他においても。すなわち、汚染されていないものもあり、あるいは規制値より少ないものもあります。ですから、その新聞は、きのう環境衛生局長がしゃべったか何かしたようでございますが、最近において先般ある程度調べた規制値からいうと、〇・〇八PPM程度だ、こういうことではなかろうかと思います。その数字は私もよく覚えておりませんが、実際の市場に出回っておる魚は〇・〇八とかということであります。そういうことであるならばもっと、十匹どころじゃない、何十匹食べても一向差しつかえないのであります。すなわち科学的な許容基準、許容限度というものは〇・三PPM、そういうふうに汚染されている場合でも、この程度の魚は食べられるということ。ところが、そんな魚はいま東京には一つもありません。〇・三PPMも汚染されている、そんな魚は東京にもどこにもありません。あるとするならば、いま問題になっている汚染地域の八つとか九つとかの海域だけの話であります。  そこで、昨日も、私どもは魚屋さんからの圧力によって発表をかってに変えたのじゃありません、〇・三PPMという数字は学者の諸君が内外の資料をまとめて科学的に検討した厳正なものでございますから、すなわち〇・三PPMという規制値というものは守ります、しかし現在はそんな魚は東京にはありませんということで、一般国民に心配をかけることは目的ではございませんから、実際の魚は心配ありません、こう言うたわけで、私はそれが正しいことだと思います。むしろ一昨日だか昨日ですか、事務当局が配った資料はあまりにも仮定的な話の資料で、国民にはわかりません。説明が不十分である。したがって、きのうは私も本会議の席上で、かりに〇・三PPM満度まで汚染しておる魚が全部占めたとしても、このくらいに食べられると申し上げたのですが、どうもその説明が不十分でございました、自今大いに注意いたしまして、国民にわかるようにいたしましょう、こういう答弁をいたしたわけでございまして、現実の魚は一つも心配がない。  いい機会でございますから、この機会に国民に向かってはっきり申し上げておきたいと思います。
  77. 島本虎三

    島本委員 いい機会でございますから、私もこの際に国民の前にはっきり言ってもらいたいのである。そうすると、新安全宣言によるメチル水銀〇・〇八PPMを基礎としたアジ四十六・二匹食べてもよい、また二十四日の発表による〇・三PPMを基礎としたアジ十二匹食べてもよいというこの根拠と、どうしてその魚を見分けつきますか。魚に書いてありませんよ。
  78. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 でございますから、この基準というものをきめましたのは、〇・三PPM以上の魚は市場には出さないという前提なんです。  すなわち疑わしき地域については監視体制を厳重にしきます。そして疑わしき魚は市場には出しません、この前提に立っておるわけでございます。したがって一般東京の市民の方々は、この魚を見て何PPMであるかわかりません。ですから怪しげな魚は東京には入れません。こういうことを信用しないというならいざ知らず、政府としては強力にこういう監視体制をしいて、疑わしい地域は八つですか九つですか、その地域の魚は厳重に監視をこれからやります。でございますから、そちらで規制しておるのですから、東京の方々は一々お調べになる――お調べになるといっても調べようがないんです、魚に書いてないんですから。ですから悪い魚は東京に入れません、こういうことをはっきり宣言をし、同時に東京の方々は安心して何匹でもお食べいただきたい、こういうことを申し上げておるわけでございます。これが現実でございます。
  79. 島本虎三

    島本委員 現実の結果は十七年前水俣病ができたときに、そしていろいろな資料が出ても、その資料を十分にもとにして患者に対する対策をサボリ、そしてこのような第一次水俣病が発生し、第二次水俣病が発生し、第三次の水俣病も発生する、この根源をつくったのも厚生省であります。したがって、厚生省がいまそれをはっきり言うならば、過去の批判の上に立って、反省の上に立って、そして今度のこういうような数値を出した、こういうのでなければならないと思うのであります。  したがって、私はその監視体制が確実だ、こういうようなことだとするならば安心でしょう。どういうような監視体制を講じて、そして国民が安心だということに、まくらを高くして食べられるか――まくらを高くして食べるのは、おかしいんですけれども、安心して食べられるか、こういうようなことになるのか、この監視体制だけははっきりさせないといけないので、どういうような監視体制を持っておりますか、はっきりさせてもらいたいと思います。
  80. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私どもが、今度の安全基準を設定するにあたりましては、水俣病について所管が厚生省にありました当時、厚生省がもろもろの施策を講じましたが、そうした今日までの体験についての反省、そういうことを十分に私どもはいたしておるわけでございます。  そうした反省の上に立って、今回、WHOの基準なり水俣病に対する研究の結果、あるいはサルに対する実際的な国立衛生試験所の実験、こういうことをもとといたしまして、水銀に関する各方面いろいろ意見を持っておられる方たくさんおられます、そういう最高権威者を全部集めまして、その最高権威者が意見の一致を見て発表する、非常に安全度の高いものとして安全率を見込んだのであります。学者の諸君の中にいろいろ意見のある方がありましたが、そういう意見のある方々を全部吸収いたしまして、水銀における最高権威者でありますその方々が責任をもって、ひとつまとめていただいた、こういうわけでございまして、科学的であり、しかも日本の学界において許される最高権威を網羅した研究でございまして、しかもその学者の中に一人の意見の相違もなかった、この事実は国民に知っていただきたいと私は思うのでございます。  こういう観点に立って基準を設け、その基準以上の魚は一切東京の市場には出しません、それがためには怪しげなる地域については監視体制を厳重にやります、こういうことでございますが、それじゃ監視はどうやってやるんだ、これについては環境衛生局長に今晩これから指示するつもりでございますが、厳重な、厚生省の職員だけでは十分ではございませんから、衛生試験所の専門官、それから各府県における衛生監視員、これを総動員いたしまして、できるだけ早い機会にこの九地域に常駐させて検討させてやりたいと考えております。  それだけのことを思い切ってこの際やろう、金も思い切って支出しましょう、予備金支出を出します。きのうも閣議の席上において三木環境庁長官から大蔵大臣に対して、何億かかってもかまわないから金は出してもらいたい、大蔵大臣も承知しました、こういう閣議の内容を申し上げることは適当でないと思いますが、国民に安心してもらう意味においていい機会でございますから、ひとつ申し上げておく次第でございます。そして思い切って、怪しげなる魚は東京に入れませんから、どうか御安心して召し上がってください。こう現実の姿で申し上げておるわけでございまして、この監視体制の強化に私も真剣に責任をもって命がけで働くつもりでございます。
  81. 島本虎三

    島本委員 命がけで働く、ことばはなかなかいい。いまのは名演説です。自分で言うほど名演説でありますが、監視体制がこれからであって、いまないのに、いまこれを食べていいというのは、十何年前の反省を込めての発言とは思われません。監視体制をはっきりさせているから、そういうような悪い魚は入ってきません。したがって、そういうような魚を安心して食べてもいいです。――監視体制はこれからです。ですから安心して食べてくださいというのは、少し論理の飛躍じゃありませんか。いま入っているやつはどうするのですか。わからんじゃありませんか。それと同時に、魚は一定の場所にとどまっていませんよ。泳いでいくのですよ。汚染地域から他のほうに行ってしまっているのです。そこでとれた魚に対しては絶対安全ですと思って、あなたは安全宣言をするのです。もしこういうふうに安全宣言以上の汚染があった場合には、十何年前の反省を込めての発言とは思われません。そういうことははっきり、監視体制はできております。したがって安心して食べてくれ、それならいいのです。いろいろな世界的な学者の一人の反対もなくきまった数値です。だから安心だ。そこまでは安心していいです。その安心であるという数値を込めた魚、これが食膳に供されるように、悪い魚が入ってこないようにという監視体制のもとに言われるならわかるのです。そういう点において、八地域だけだといったって、とんでもないものを安全だといって食わせられる。こういうことにならないという保証をはっきりしてください。
  82. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 全国的に保証と申しましても、基準をきめたばかりでございますから私もはっきり申せませんが、東京の市場にきょう入ってくるのは、どこからとれた魚が入ってくるか、それがわかるわけでございます。怪しげなる地域からは入ってこないということであれば、きょうあすのところは、まずそれでけっこうだと思うのです。そしてさらに科学的根拠をもって東京都民に安心をしていただくためには、明日実は東京中央魚市場において検体をいたします。その結果を国立衛生試験所でもってはっきりいたしたいと考えております。きょうあすのところは魚がどの辺から入ってくるか、怪しげなる地域から入ってくるとたいへんでございます。きのうも入っていないようでございます。そういうことを私は申し上げておる。急いで監視体制を強化いたしますから、いましばらくお待ちをいただきたいと思います。
  83. 島本虎三

    島本委員 いましばらくお待ちください。しばらくの間魚を食べないでください。それならいいですよ。安全ですから食べてください。監視体制のほうはしばらくお待ちください。それはおかしいじゃありませんか。  それはまだいいですよ。そのほかにとれた魚は、その場ですぐ揚げて市場に持ってくるような仕組みになっております。そうでない仕組みもあるのです。とれたものは他の市場にいっても揚げられるのですよ。県外市場にいってやれるのですよ。市場全部に対して一つ一つ点検される機能があるならばいいのです。ところが、特定の八地域のみ、いま要注意だ。これは持ってきちゃだめだ、それ以外のところはよろしい。じゃ、それ以外のところにいって揚げた魚は今度はどんどん入ってくるのです。そういうようなものに対する監視体制は十分なんですか。安全なんですか。これは安全性の問題ですから、重要ですよ。正直に言いなさいよ。
  84. 浦田純一

    ○浦田政府委員 まず実態から申しまして、東京をはじめいま現に流通市場によく出回っておる魚は安全であるといえます。しかし十分にその点を実証できないではないかとおっしゃっておられますが、これはいままで過去の調査結果が汚染地域を中心とした、つまりよごれておる魚ばかりを集めまして測定した。平均でも〇・〇八PPM、メチル水銀でございますけれども、それ以下であるということが一方では明白でございます。  それから魚は、確かに汚染地域だけに住んでいる魚ばかりではございません。回遊する魚も多うございます。しかしながら、いままでの調査研究の結果は、その場所に居ついている魚、そこに住みついている魚、そういった魚はわりに移動性はございませんが、そういったような魚に汚染濃度が高い、これはあたりまえであります。汚染の多い水なり、あるいはそこにいるプランクトンといったようなものを集中的に食べるわけでございますから、それは当然でございますが、そういったその場所に住みついておる魚の濃度が高いわけでございます。回遊する魚、瀬戸内海でも回遊する魚もあり、遠い外洋をはるかに回遊する魚もございます。そういった魚でもたまたま汚染地域に入ってくる魚もあるかもしれませんけれども、その汚染される度合いは〇・〇八PPMよりはるかに低いということは私は言い切れると思います。  したがいまして、東京都の中央魚市場に入ってくる魚、こういったものは〇・〇八PPM以下であるということははっきりといえると思います。  監視体制についてでございますが、実は大臣今晩指示するとおっしゃっておられましたが、内々には私にすでに御下命がございまして、私どもは関係の府県に連絡いたしまして、すぐに監視体制、抜き取り検査の準備に入るようにということを指示いたしております。これはどう申しますか、産地市場におきまして水揚げされてくる魚をそこで検査をする、つまり一種の水ぎわ作戦でございます。しかしながら、先生が御指摘のように必ずしも生産地からすぐその近くの市場に揚がるということではございませんようでございますから、その流通の形態というものも十分に承知をしておく必要がございます。したがいまして、その辺のところの基礎になるような資料も持ち寄りまして、二十九日に全関係府県を中心として重点的にやるということは、これは効率上からもやむを得ませんけれども、私どもは全国的にこの監視体制をどうやっていくか、それからさらに日常定期的な検査という体制をどうとっていくかということにおきまして、具体的にこちらのほうから指示する予定でおります。  また二、三日のところはと大臣申しておりますが、実はこの基準は非常に安全率を見ておりまして、このままほうっておいて五年、十年と長い先食べておっても、この規制値以下の場合には、これは絶対に病気になるということは御心配ないということでございまして、今日あすの問題ではございません。お気持ちとしては、ただいま直ちに検査を始めるということが当然のことでありますし、われわれもそうしたいのでございますが、正直に申しまして、そこまでは残念ながら、いまのところは体制が整っておりません。   〔塩谷委員長代理退席、田川委員長着席〕 この二十九日に会議を開きまして具体的にそういった点は指示し、国民の皆さん方がなるほど厚生省の言っておるとおりであるということを具体的な数字をもって、その結果をもってお示しすることができるようにいたしたいと考えております。
  85. 島本虎三

    島本委員 これはほんとうに大事な問題なんでありますから、もう若干許してもらいますが、いまそのために、母子保健の点から妊産婦並びに乳幼児の死亡率を聞いてみたのです。ところが乳幼児の死亡率や妊婦の死亡率はまだ世界のレベルからも高い、こういう報告があったわけです。そうなったときに今度の魚の安全基準というのができて、これによっても妊婦や乳幼児への配慮というようなものに対しては行政指導によるというだけであって、十分ではない。マグロだとか川魚とかこういうものは除かれている根拠、それに対して行政指導するというが、妊婦や幼児に対してどういうような行政指導をするのですか。こういうふうにして抜けているところがあったような状態で、安心して食べなさい、世界的な学者が一人も反対なしでやったのだから安心だ、こういうように言うことは、いまのような点を含めたら、まだまだ配慮が十分であるとはいえないじゃないか。私はその点をもう一度聞いておきます。
  86. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 マグロはすでに御承知のように外洋の魚でございまして、これは含有しておる水銀は天然の水銀でございます。この水銀につきましては、アメリカあたりにもいろいろ意見があるようでございます。これは心配ないじゃないか、こういう意見もあるようでございますが、そういう学説は別といたしまして、今回の規制措置は国内に一般に流通する魚を対象とし、汚染するおそれのある魚は排除し、同時にそういう地域の汚染源を除くということが中心なんです。ところがマグロはどうも汚染源を除くといっても、これは自然に持っておる水銀でございますから、規制値を設ける必要はない。すなわち一週間摂取許容量の範囲内にとどめれば人体に影響はない、こういうふうに判断をいたしまして、さようにいたしたものであり、河川魚につきましては市場性はございません。その地域地域の周辺の問題でございますから、国の基準としてではなくて、府県知事において国の基準に準じたものを検討していただければ差しつかえない、こういう判断でいたしたわけでございます。  さらにまた乳幼児、妊婦、それから魚の多食者、こういう方々については、汚染地域を中心として保健所が中心になって食の指導について十分当たっていくようにいたしたい、こういうふうに考えておる次第でございまして、汚染のおそれのある九地域からまつ先に保健指導をやっていく考えでございます。
  87. 島本虎三

    島本委員 もう二回もやめなさいというのが来ているのですが、これはちょっとやめるわけにいかぬのです、大臣。というのは、メチル水銀の含有量、微量ですけれども魚に蓄積されるのですから、それを親が食うのですから、もちろん子供も食べますけれども、それが親のからだはわりあいに何でもなくても、妊婦の場合には子供のほうに対してそれが影響するのですから、その影響するそのものは脳神経がおかされるのですから、生まれながらにして植物的な生存をしいられるのですから、こんなことはごうまつも心配ないというふうにしてやって、それがあたりまえなんです。少なくとも少しくらいはというのは、十七年前の厚生省のおかしたことの反省の上に立っているということばに受け取れないのでありますから、私はしつこくこれを聞いているのです。だれもが平均値以下の魚を食べているというのじゃないのです。やはり平均してそれだけだというのなら、それ以上の魚を食べている人も当然あるのです。平均以上の魚は当然あるのですから、それを食べる人だってあるのです。平均値以上の魚を食べる人もいるというのが危険だということになるのです。その人たちの安全性、いわゆるこれは絶対安全だということはいえないと思うのです。  これは大臣では無理ですから局長、こういうような平均をやった場合には、それ以上の人もあるのです。平均はそうだといったって、もちろんそれ以下の人もあるのです。それはわかるのです。それ以上のものを食べている者も安全だ、それをはっきりさしてください。
  88. 浦田純一

    ○浦田政府委員 今回の基準値は、一番根本になりますのは、一週間でメチル水銀としてどの程度まで摂食し続けても絶対に発病しないという量、そういった量はどれくらいのものであろうかというのが第一の考え方であり、基本的な考え方でございます。それはいろいろと過去の医学的な所見から、また現在行なっておりますサルにおける実験等から割り出した〇・一七ミリグラム毎週、これは成人五十キログラムの体重の方についてでありますが、それが根本的な考え方でございます。  要は、どうやってこの一週間の〇・一七ミリグラムをこさないようにさせるかということでございます。その意味から総水銀においては濃度として〇・四PPM、メチルにした場合には〇・三PPM以上のものを排除すれば、絶対に週間の許容限度をこすことはあり得ないという計算に基づいております。したがいまして、私どもは〇・三PPMあるいは〇・四PPMをこした魚は絶対に市場に出さないように努力いたしますが、万一個人的な好みその他で、釣りとかなんとかいうことでもって、あるいは口に入れる魚が〇・四PPMをこえているというようなこともあり得るかと思いますが、しかしそういったときでも心配ないし、〇・二PPMのメチル水銀、〇・四PPMの総水銀以上のものが市場に出回らないということを担保できれば絶対に御心配ないのでございます。  それから確かに妊婦あるいは乳幼児等に対ましして、この基準は慎重に扱わなくちゃいけないということで、しかもそれが数的に明確にされていないということは、先生の御指摘のとおりだろうと思います。これにつきましても、先ほど申しました専門家会議におきまして非常に慎重に、熱心に検討がされました。残念ながら数字的にいうわけにはいかない。しかし妊婦の方については確かに胎児への移行という問題もあるので、要するに疑わしきはきびしくするという考え方でもって厳格に、つまり、このような汚染のおそれのあるという魚については普通の方よりも摂食を控え目にする、ほかのたん白質でもって補っていただくといったようなことになるわけでございますので、これはむしろ非常にきめのこまかい食生活の指導をいたしまして、一週間の許容限度、妊婦の方に対しましてはそれが少し下回ると思いますけれども、いろいろと個別の食事指導によって目的を達していける、またそのほうが適切であるという判断でございます。  なお、引き続きこのような妊婦あるいは乳幼児に対する基準の問題につきましては専門の方々で御検討願うことになっておりますので、早く数的にも明確に示せるようにいたしたいと考えております。
  89. 島本虎三

    島本委員 じゃ、これで私はやめます。まだまだこれでやめる段階ではありませんが、他の友党との関係もありますから、これでやめるわけであります。  ただ最後に一言だけ。  現在の流通機構の中で監視体制を現在の八カ所程度のものにし、不備のままで、いま新安全宣言を発したということは、やり方によってはこれが新たに国民に対する宣戦布告になる。そうならないように十分行政上の配慮をしてくれることを心から要請いたしまして、私の質問を終わらしてもらいます。
  90. 田川誠一

    田川委員長 庄司幸助君。
  91. 庄司幸助

    ○庄司委員 私は健康保険料の引き上げ、との問題についてお伺いするわけですが、この健康保険の診療費払いが年々増加する傾向があるわけですが、それと関連して、やはり公害による環境破壊があるわけです。  それでただいまの前の質問者の関連で五分間ほど、重要な問題がありますので伺いたいのですが、いま厚生大臣が汚染魚については水ぎわでも絶対撃退する、こういうねじりはち巻きの異常な熱意を示されたわけですが、私は、それがはたしてできるのかどうか、技術的な観点から一度伺いたいと思うのです。  それは水銀はどうかわかりませんが、PCBについて私の地元の宮城県の公害技術センターで、厚生省の委託で母乳の検査をやりました。その際ガスクロを扱う人がまず少ないということです。技術者が少ない。それからもう一つは、一検体について相当のエキスパートで大体二週間くらいはかかる。特にPCBは複雑でありますから、塩素の含有量によって型が六つくらいありますから、二週間くらいかかる。そうすると、いわゆる疑わしい漁場でとれた魚、これについての検査の期間が相当かかるということが憂慮されるわけですよ。ところがいまの流通機構からまいりますと、東京市場に入ってくる、これもスピードが速いわけです。なまものですから、そうしますと、そんなに期間をかけていれば魚が腐ってしまう、こういう問題もあるのですよ。何もかにも冷凍にできるわけでもありませんから、こういったいわゆる技術的な問題をどうするのか。つまり水ぎわで何ぼ撃退しようとしても期間が相当かかる、これじゃ売りものにならない、こういう問題点があるのですよ。そうすると、やはりフリーパスでどこか抜け道からまた出てくる可能性も出てくる。こういう歯どめがあるのかないのか、私はないんじゃないかと思うのですよ。  それからもう一点は、この問題についていうならば、怪しい漁場の属する各府県、こういうところでガスクロをそろえる。ガスクロだって相当金がかかる。それからガスクロを扱う専門的な技術者、これは相当の熟練が必要です。そういう人材が確保できるのかどうか、これもまた大問題になるわけですね。その点どうなのか、この二点を伺っておきたいと思うのです。
  92. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 ただいま御指摘がございましたように、各県の公害関係の検査施設あるいは技術者につきまして、まだ十分という体制に至っていないのは御指摘のとおりでございます。したがいまして、私どもといたしましては、本年度還元融資等を活用いたしまして、重要な都道府県の衛生研究所あるいは主要な保健所におきまして、そういう検査設備の購入に備えるよう指示をいたしております。それからまた検査技術者の研修等につきましても、早急に私どもの予防衛生研究所あるいは衛生試験所等の技術陣を動員いたしまして、研修を実施いたす予定にしてございます。したがって、直ちに現在の検査体制に間に合うかどうかということの疑念はございますけれども、できるだけ早急にその体制をとりたい、かように考えております。
  93. 庄司幸助

    ○庄司委員 答弁漏れがありますよ。期間の問題ですね。いわゆる一検体についてどれくらいかかるか、この点どうなんですか。
  94. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 PCBの検査は、御指摘のようにやはり二週間程度の期間を要することでございます。したがいまして、それをできるだけ早く結果を得るような技術基準と申しますか、そういうものもあわせて、やはりこれは国の段階検討しなければならないというふうに考えております。また一カ所に検体が集中いたしますと、やはり非常に期間が長くなるということもございますので、民間の検査機関等も活用しなければならないと思います。それらの体制等につきましては、十分都道府県と連絡をいたしまして、検査が十分に、すみやかに行なわれるように私どもは指導いたしたい、かように考えております。
  95. 庄司幸助

    ○庄司委員 厚生大臣、いまちょっと席をはずしていますが、ああいう勇ましいことをおっしゃったって、実際はどろなわだということなんですよ、世間でいうどろなわです、これは。何の保証もないじゃないですか。できるだけ早く、期間を短くすると、こうおっしゃっていますが、そんな技術的な保証はいまは何もないですよ。  そうするとPCBについて二週間かかる。その間、魚はどうするんだ。この問題の解決は何にもないのですよ。水銀だって相当かかるでしょう。この保証は何にもない。そうなれば、厚生省考えているようななまぬるい対策では、やはり国民の口にどんどん汚染魚が入ってくる、あるいはまた、漁民がせっかくとった魚をむだに結局捨てなくちゃならない、こういう実態が必ず出てくると私は思うのですよ。だから、そういうなまぬるい抽象的な答弁じゃなくて、もっと確信のある答弁はできませんか。お願いします。
  96. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生のお答えに、環境衛生局長おりませんけれども、先ほど来の論議を通じて、われわれ健康の立場から考えますときに、水銀の安全性についての、相当長期間の蓄積の問題を背景にして今回の基準値をきめたことに対する、安全の答弁がございました。先生の御質問は、そのような水銀の検査を水ぎわでやりましても、その結果が出るまでに日にちも要するじゃないか、そのときに国民の口に入っているんじゃないかということでございます。  これは確かに私も、いま御質疑を聞いておりまして、また答えた側との関連も考えますと、確かにそのような結果にはなりますけれども、しかし水ぎわで検査することによって、その時期の、あるいは産地等がわかりますので、その結果がカツオならカツオ、カジキならカジキ、そういう魚の種類によって一つの基準値を上回るものが発見できたという結果が、一週間後であっても、わかりましたことによる対策というものが講じられるという以外に、確かに、おっしゃるように、即時的に市場をとめる、あるいはその魚を廃棄を命ずるということと、現在の科学的な検査の結果とは、確かに先生のおっしゃるとおりでございまして、そういうような意味はあるというふうに御理解をいただかないと、現在の検査能力あるいは科学的な水銀、PCBの検出能力からいったら、おっしゃるとおりであろうと考えております。
  97. 庄司幸助

    ○庄司委員 この問題はこれでやめます、あとでまたあれしますけれども。  それで、私が御質問申し上げたい本来の論議は、本年二月十六日の審議会の答申で、「今日の医療保険の混乱の根本原因は、国民皆保険の前提条件である医療機関、診療報酬その他医療に関する諸々の体制の整備を怠ったことにあることを指摘し、医療制度に深くメスを加うべきことを強調した。」と、こういうことをおっしゃっているわけです。それで、私は常々感じている問題なんですが、いわゆる療養費あるいは診療費を保険機関からお医者さんに払う、これがやはり年々歳々ふえている。これが一つ赤字の原因にもなるわけですが、それと相まって薬価の問題もありますが、やはり病気を前もって防ぐ、予防する、この対策がやはり私は保険医療制度の非常に重要な問題だろうと思うのです。  それで私がいろいろ調べておりますが、現在の保健所の問題ですね、保健所のあり方の問題がやはり大きな問題となってクローズアップされつつあると思うのです。最近とみに保健所が対人サービスの面で機能の低下が叫ばれております。それが早期発見、早期診療の体制をくずしていっていることにつながっていると思うのですね。その点は、昭和四十六年三月に全国保健所の所長会議が持たれております。そして「保健所のあり方について」というパンフレットが出ておりますが、これはお読みになっていると思いますよ、厚生大臣はどうかわかりませんけれども……。  この中で指摘しているのは、医師、技術員の不足、これは目をおおうほどひどい、こういっております。それから「多くの公衆衛生従事者は一方では絶望感や挫折感にあえぎつつ、」「そしてこのままでは国民の健康でしあわせな生活を守ることが絶対的に不可能になろう。」とさえいっているのですね。さらにいろいろこまかい問題を指摘しておりますが、一つは保健所の医師不足の問題ですね。宮城の場合でいうと、十四保健所のうち、予防課長でお医者さんの予防課長がたった一人しかいないのですよ。これで保健所の機能が果たせるか、まるで衛生部の事務出張所みたいな扱いになるわけですよ、これでは。  それから保健婦の問題ですね。これも絶対的にやはり数が不足だ。しかも、その反面、保健婦活動についていうならば、生活の場における保健指導と、医療の場における医療指導と、学校、事業所等の機能集団での指導、こういう要求が多面的に増大している、こういうことがいわれているわけであります。  それでお伺いしたいのは、実は有病率が非常にふえているわけです。十年間で二倍ちょっとこえています。昭和三十七年を一〇〇とすると、四十六年二〇五ですから、こういう有病率をどんどん増大させた原因は、もちろん政府の高度経済成長政策が続いた結果だ。これは厚生省関係でも認めておられるわけですから。こういう有病率の増大、それとあわせて、やはり早期発見、早期治療、この体制が不十分である点にこういった問題が出てくるのじゃないかと思うのですよ。  それに対して、厚生省でも昭和四十三年からいろいろ保健所のあり方について討論なすっているようです。四十三年六月には、いわゆる基幹保健所構想を打ち出したですね。「保健所指導網の近代化について(案)」というものを発表しておられて、これが一つの混乱を巻き起こしている。いわゆる基幹保健所、これに機能を集中して対人サービスの面で非常に低下してくる。それから四十四年には保健所の増設を認めないという方針をとっておりますね。そうして四十六年の一月には、衛生部長会議のこの資料が出されて、いわゆる対人関係のものは保健所から市町村に移譲したらどうだ、こういう案さえ出てきて、去年の七月「保健所問題懇談会基調報告書」これは厚生省公衆衛生局の保健所課で出されたものですが、この中でも市町村移譲の方向が出されている、こういうかっこうで、厚生省厚生省なりにやはり保健所の対人サービスの面でいろいろ心配されたあとが見えるのですが、政策的には全く一定の方針がなくて混迷を続けている。この状況があると思うのですよ。  その点で、私は保健所問題というのが、実は健康保険料問題と密接な関連がある。この保健所問題に対する厚生省の方針がぐらぐらしてさっぱり固まらない。県や市町村もやはりそういう点で混迷しているわけです。この点、厚生省の基本的な考え方をここでひとつ伺っておきたい、こう思うのです。
  98. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 疾病の予防が治療にまさるという御指摘は、全くそのとおりであろうと思います。それで、ただいまいろいろお述べになりましたように、保健所に対します厚生省自体の方針に変動があるじゃないかということでございますけれども、従来保健所は大体伝染病感染症を対象にいたしまして、いろいろの施策をやってきたわけでございますけれども、御承知のように感染症疾患が減少いたしてまいりまして、それにかわるものといたしまして慢性疾患が大きくクローズアップされてまいったわけでございます。従来、たとえば結核を例にとってみますと、結核の集団検診、いわゆる早期発見によりまして結核対策が進められたわけでございますが、これはやはりその保健所管内の医療機関その他の事情から、保健所がみずからやらなければならないというような体制であったわけでございます。  しかしながら、先ほど申し上げましたように、次第に慢性疾患に疾病構造が変化してまいりますと、今後の保健所というもののあり方は、やはり地域住民の中からそういう情報を集めまして、それを総合した上で各対策を立てなければならないわけでございまして、その対策を立てるためにも、やはりきめのこまかい情報を確保するというためには市町村あるいは地区を中心といたしましたいろいろの施策というものの樹立が必要でございまして、そのためにやはり従来行なっておりました感染症対策よりも、むしろそういう慢性に経過をする疾病の各種の情報の蓄積ということに今後の保健所の仕事のあり方を向けていかなければならないわけでございまして、そこで、従来やっておりました感染症対策につきましても、直ちにこれを中止するというわけにはいかないわけでございまして、感染症対策をやりつつ新たな慢性疾患対策に移行をするという一つの方向転換の時期に来ておるわけでございます。  そういうことを踏まえまして、昨年、保健所問題懇談会から、今後の保健所のあり方ということで大体の基本的な事項につきまして御報告をいただいたわけでございまして、その趣旨を体しまして、私どもといたしましては、今後保健所がどうあるべきかということの基本的な考え方を衛生部長会議等を通じまして指示いたしますとともに、本年度は数地区を選定いたしまして、地域医療の問題を具体的にどう処理すべきか、どういう問題があるかということの検討を開始いたしたわけでございます。そうしてその結論によりまして、早急にやはり今後の保健所のあり方、先ほど申し上げましたような市町村を地区といたしましたいろいろの情報の収集、それによる対策の樹立、それを具体的にどう実現するかということの検討を加えつつ新たな保健所の編成を考えなければならないというわけでございます。  ところで、従来実施いたしておりました結核等のいわゆる感染症疾患に対します問題は、やはり医師全体の問題といたしまして、医学的に一応の診断基準あるいは治療基準等も確定いたしまして、対人サービス面におきまして従来働いておりました、保健所に勤務いたしておりました医師の興味を次第に失わせたわけでございますが、今後やはりそういう地区医療体系の中におきます医師の役割りというものを考えまして、保健所における医師の活動というものが魅力あるものでなければならないというふうに考えておりまして、それもあわせて保健所のあり方ということと、医師を確保するためには魅力ある職場でなければならないということも勘案いたしながら、今後の保健所のあり方について基本的にこれは変えなければならないという段階に立ち至って、先ほど申し上げましたように、衛生部長会議等を通じまして、その検討を私どもとともにやってくれることを依頼いたしておるわけでございまして、今後の疾病構造の変化に伴う保健所のあり方というものは、やはり従来の保健所の業務とは全く異なったものになるというふうに私どもは予想いたしておるわけでございまして、それをできるだけ早急に私どもといたしまして一つの基準を示したい、かように考えておる次第でございます。
  99. 庄司幸助

    ○庄司委員 それでその方向についてですが、たとえば「サービスの改善」これは基調報告ですが、「小規模で頻度の高い対人保健サービスおよび必ずしも高い技術を要しない環境衛生業務について、は、市町村の実施能力を勘案し、計画的に市町村に移譲」する、こう出ていますね。それから「保健所は、公害を含めた環境保健対策に積極的に取りくむべきである。」こう言っていますね。これはいまのPCB、水銀、そういった問題も出てきておりますから、当然そうなるんだろうと思いますが、いま宮城県なんかで進行しつつある方向は、いわゆる基幹保健所、あなた方のまだ提案でないやつをそのまま受け入れて基幹保健所をつくった、この基幹保健所にこの公害機能をくっつけて、そうやって対人サービスのほうはだんだん手抜きになっている。保健婦さんの間でも、基幹保健所の保健婦がえらくて地域保健所の保健婦は一段下だ、こういう扱いが進行しているのですよ。とれで保健婦さんの間でいま一大問題になっているのですよ。  これは御存じだろうと思いますが、こういう混乱を与えてはいけないだろうと思うのですよ、私は。当然公害問題に重点が移れば、とのいわゆる対人サービスの面は低下することは間違いないのですから、この低下を防ぐためには当然に私は保健婦の増員ですね、これを考えていかなくちゃならない。それが必要だろうと思うのですよ。ところが、それは市町村に移譲する、実情も勘案しと、こういうことばがありますが、しかしいまの市町村の実情で、保健婦さんをおまえのほうでやってくれといわれて、これはやれますか。厚生大臣、どうですか。これはぼくはやれないと思うのですよ。その点、ひとつどうですか。厚生大臣
  100. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 保健所のあり方については、ほんとうに真剣に検討を加えなければならない段階に私来ていると思うのです。先ほどもお述べになりましたように、保健所にお医者さんがいないというようなことでは保健所の機能を発揮できるわけはございません。そういうふうなことで、いろいろな保健所というものに対するいままでの社会的評価が低かったというふうなこともあったわけでありまして、なかなか思うように進展していなかったことは事実でございますが、こんなことでは、これはもうたいへんなことだと思うのです。予防医療の中核になり、さらにまた最近は公害その他の問題が発生してきている。これは地方医療の非常に大きな中心だと思うのです。そういうことに対する国のもう少しの力の入れ方、これが私は少し足りなかったんじゃないかと思うのです。  ですから私も、先般来実は公衆衛生局長にも言っているのですが、今後は思い切ってこういう医療供給体制の問題、予防医療の問題、予防医療の中核というのはまさに保健所ですよ。それがさっぱり機能が果たされてない。国民の期待にこたえ得ない、こういう状態ではどうにもならぬから、この際思い切って性格も考え、根本的なてこ入れをしなければならぬ。予算が必要ならば、来年度予算の概算要求で思い切って出しなさい、こう言っているのです。いまのような状態ではやはり国民の信用を失うと思うのです。そういうことも考えて私は再検討の時期に来ておるし、また新しい方向を目ざして本格的に力を入れなければならない時期であると私も考えております。その点は同感でございます。
  101. 庄司幸助

    ○庄司委員 保健所問題については、あとで機会あればこれはゆっくり二時間くらい私は討論したいと思いますけれども、きょうは簡単にそれくらいにします。  それで、いま大臣がそういうりっぱな御発言なすっていますが、それに逆行するようなことが、今度は厚生省の事務次官名で都道府県知事あてに通達が出ておりますね。厚生省発保五十一号、これは四十七年八月十五日付です。これまではいわゆる対人口割りで三千五百人に一人置けという、国保の保健婦ですね。これが対人口割りでなくなった。被保険者割りになった。これはたいへんな問題だと思うのですよ。そうすると、いわゆる市町村の保健婦さんはその地域国民健康保険の被保険者だけを対象にして保健婦活動をやるということになっちゃうのです、これは。そうすると、地域にはもちろん国保の方もあれば社会保険の方もあれば、政府管掌の方もあると思うのですよ。それが対象からはずされるという概念規定なんですね。これは非常に重大な問題です。  それからもう一つは、こういう通達が出た結果、一体都道府県の実態がどうなっていくのか、これをお調べになったことはないだろうと思いますよ。私は宮城県だけのことしかわかりませんが、いままでの国保の保健婦、岩手の沢内なんかは千四百人に一人ぐらい置いているのですよ。ああいう失礼ですが貧乏な村でですね。ところが全国平均でいったら、おそらく五千人以上に一人、こういう心細い数字です。宮城県の場合は大体五千八百人に一人ぐらいです。それで現在二百四十七名です。本来ならば四百十名を置かなくちゃならないのですよ、基準からいったら。それが今度のこの通達によって二百六十二名、これしか置けないというこの基準が出てくるのです。  先ほど厚生大臣が非常に前向きの御発言をなすっておりますが、一方でこういうことが発生している。この通達、これはもう撤回しなくちゃならないのじゃないかと思うのですよ。そうやってほんとうに地域医療を十分にやり、早期発見、早期治療をやり、そうやって健康保険の赤字解消にもつとめる、こういう側面がさっぱりだめになると思うのですよ。その点、ひとつ大臣、どうですかね、この通達の問題。もう時間もありませんから、簡単にお答え願いたいと思います。
  102. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 ただいま国民健康保険の保健婦の設置基準についてのお尋ねがございました。仰せのとおり保健婦の活動は、国保サイドもありますし、また保健所サイドもございます。お互いに連携をしてやっていくべきものだと思います。最近やはりそういうこともございますし、それから配置の実効をあげますために、やはり比較的衛生水準の高い都市部とそうでない農山村部に比べまして、やはり実態を見て、実情に応じて新しい基準をつくって配置をしていく、そして効率的な保健婦活動をやっていくということが国民健康保険の場合にも必要だと思います。  そういう意味合いで、私どもはただいまおっしゃいましたような新しい基準をつくったわけでございまして、できるだけいま申し上げましたような観点から適正な、効率的な活動ができるように配置をいたしまして、有効な活動を促進してまいりたい、このように考えております。
  103. 田川誠一

    田川委員長 質疑者に申し上げますが、この連合審査会のあとも引き続き社会労働委員会が開かれますので、各党で打ち合わせられた質疑時間をでき得る限り守ってやっていただくように御協力のほどをお願いいたします。
  104. 庄司幸助

    ○庄司委員 厚生大臣にもう一言、最後にお願いします。
  105. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 保健婦の活動を地域に即して合理的にということの通達のようでございます。私、実は見ておりません。昨年のことでございますから、私は昨年の十二月になったばかりでございますから、そこで見ておりませんが、やはりその地域地域において合理的に保健婦を活動させるということが必要であるわけでございまして、その趣旨にのっとっているのではないかと思いますが、もし不合理な点があれば改めるにやぶさかではございません。
  106. 田川誠一

    田川委員長 神田大作君。
  107. 神田大作

    ○神田委員 時間が限られておりますから、私のほうから簡単に質問しますから要領よくお答え願います。  まず第一に、各都道府県におきまして現在乳幼児医療に対する無料化地方自治体の経費と責任でもってなされておりますが、先ほども委員から言われましたとおり乳幼児の死亡率は非常に高い。そういう観点に立って、これは地方自治体にまかせるべき問題ではない。そのためにはやはり国でもって責任を持って無料化をやるべきじゃないか、いままでの地方自治体の負担をやはり国が引き受けるべきではないか。こういうふうに考えますが、これらの実態、それと厚生省としての考え方、これらについてまずお尋ねをいたします。
  108. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 現在地方自治体におきまして乳幼児医療無料化として実施しておりますのは二十一県七百五十七市町村でございます。  それで、先ほどもお答えいたしましたように、私どものこの問題に対しての考え方と申しますのは、一現在未熟児医療とかあるいは育成医療とか、あるいは小児難病の問題とか、そうした特別医療について公費負担の実施をしているわけでございまして、これにつきましては、さらに今後とも充実をはかっていかなければならないと考えておるわけでございますが、こういう特別の医療以外に、さらに一般的な疾病にまでもこういったようなものを広げていくというようなことにつきましては、むしろ医療保障全般の問題として慎重に検討しなければいけないというふうに考えているわけでございます。したがって、現在こういったものをやるというようなことは考えていないわけでございます。
  109. 神田大作

    ○神田委員 これはいま考えておらないと言うが、実際問題として二十一都道府県でもう行なっておる。こういうふうに地方でもって、こういう大きな負担をしょって、これをやらなくちゃならぬということで実際に実施しているんだ。これを厚生省が全般的な問題であるといって考えておらないということは、老人医療無料化と同じでございますけれども、やはり日本の医療行政の点から見ましても、これは片手落ちになるのではなかろうか。   〔田川委員長退席、竹内(黎)委員長代理着席〕  今後われわれは次代の後継者を育成するという意味合いにおきまして、やはりりっぱな乳幼児、りっぱな子供を育てていくということは非常に大事なことであるからして、そういう観点に立って、厚生省としては前向きに考えるべき段階に来ておると私は考える。そうすれば、日本全国一律にそういうことが実施できる。ある県ではやった、ある県ではやらぬ、こういうような不手ぎわな行政はないのです。そういう点において、大臣としてこの点どうお考えになるかお尋ねします。
  110. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 乳幼児並びに小児医療につきましては、先ほど来お話のありましたようにガンとか療育医療とか、そういうふうな形においては一部実施をしておるわけでございますが、乳幼児の医療を全部無料にするということは、現実的には相当な数の市町村でやっておるわけなんですが、実はこれは医学者の中にもいろいろ意見があるらしいのでございます。  と申しますのは、乳幼児医療の問題は、お医者さんに行けばただなんだといったふうなことで、安易にお医者さんのところへ行って薬をもらってくるということになれば、これはたいへんなことじゃないかという考え方が一部にあるのです。特にいまの若い方々は、小さな子供の医療ということについて十分の自覚があるだろうかといったような説も一部あるわけなんです。そういうようなことで、何でもただならばいいんだ、お医者さんに行けば、薬をもらってくればいいんだということになってはたいへんなんで、やはりこれは母親がもう少し子供――小さな赤ん坊ですから、子供に対する愛情ということでよく見てやらぬといかぬのじゃないかということが医学者の中にも相当あるわけでございます。そこで、医学者の中ではそういうただ、ただにすればいいということではなしに、一番大事なのは健康検診だというんです。だから健康検診はひとっことしから無料にしましよう、こういうやり方にしたのです。  そういうことで、医療の本質からきているいろいろな意見もありますので、私はいますぐこれをやりますと言うわけにはいかない。もう少しやはり乳幼児医療というものの本質、こういうことを十分に検討してから考える必要があるんじゃないかなという――私、これは率直な意見です。私も医療がただだからいいじゃないか、それだけで割り切れるかどうか、そこにやはり少し問題があるようなことを承っております。ですから私も、そう医療担当者から言われてみて、それはやります、ただならけっこうな話だからやりましょう、こうすぐいけるかどうか、もうちょっと私にも研究さしていただきたい、こういうように考えております。
  111. 神田大作

    ○神田委員 母親の愛情とかなんとかという問題、これは筋が違うと私は思うのです、その愛情と医療費無料化の問題とは。零歳児というようなものは実際問題として育てにくいんです。またいまのようにおかあさんがほとんど働きに出ておる。子供は保育所なり、あるいはどっかに預けて働きに行っておるというそういう勤労者の方が非常に多い。私は、統計的に調べてあるかどうかわかりませんが、ゼロ歳の乳幼児を無料にした県とそうでない県と比較してあれば、あるいはその死亡率とかそういう点もお尋ねしたいと思いますが、これは必ず差が出てきていると思います。そういうふうに愛情を持って育てられる環境的に非常によい家庭と、そういう環境でない家庭とあると思う。  そういう意味合いにおいて私は子供を大事に育てていくという観点に立って、これは国の責任で検討すべきであろう、こういうことを申しておるのであって、前向きにこれを考えるという厚生大臣の言と考えますから、私はこの点はこの程度にしておきますが、ひとつ御検討を願って、そして地方自治体の負担も軽減すべきであろう。これは無料でやっておるところと無料でやってないところと、そういうふうに同じ日本の国民に差別をつける筋合いのものではなかろう、こういうように思いますので、国全体としての立場に立って御検討を願っておくべきであろう、こういうように考えます。  次に、分べん費の問題ですが、今度二万円から四万円にしましたが、分べん費というものは現在もう十万程度かかっておるわけです、実際。健康保険で四万円では低過ぎるんじゃないか。子供を産むという母親に対する国の行政として、かかっただけは国でひとつ――皆保険をやっている以上は、分べん費というような大事な費用は国で見てやるべきじゃないか、健保で見てやるべきではないか、こういうふうに考えるのですが、この点はいかがですか。
  112. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 分べん費の問題は、四十四年の法律改正の際に、先生のいまお述べになりました二万円――いわゆる最低保障でありますが、最低保障額を二万円にしたわけでございます。今回の改正では、その最低保障額を本人につきましては四万円、それからもう一つは、最もケースの多い配偶者でございますが、配偶者は現在一万円でございますけれども、この配偶者の場合にも本人と同様四万円まで上げる、こういう改正をしたいわけでございます。  この基準の額のきめ方につきましては施設によりましても、また地域によりましても、いろいろ差があると思うのでありますが、私どもは今回の四万円という積算にあたりましては、国公立病院で現実に分べんに要する経費がどれくらいかかるかということについての調査をいたしまして、現在の健康保険の診療報酬の点数で計算できる分はそれをとりまして、またそれ以外のいわゆる介助料とか胎盤処置料とかそういったものにつきましては慣行料金等も勘案をいたしまして、全国的に地域的なものも考えまして標準的なものとして四万円というものを設定をいたしましたので、大体これで必要な経費はまかなえるではないか、私どもはこのように考えておる次第でございます。
  113. 神田大作

    ○神田委員 これは基準が、私検討した基準とだいぶ違っておる。私らのほうでは分べん費は十万円かかる、こう考えておるのです。調査しておるのです。あなたのほうでは、それはそんなにかからぬ。こういう問題は実際において調査の段階において何らかの食い違いがあるんじゃなかろうか。いま一度こういう点はよく御調査願って、健保適用という以上は少なくとも、月給から相当差し引かれて健保というものをやっておるのですから、あるいはまた月々積み立てをしておるのですから、こういう点については愛情ある行政をやるべきであろう、こういう点についてお考えを願いたい。  次に、市町村の診療所の問題ですが、市町村の診療所の問題は、だいぶ各診療所とも赤字ですね。医者が居つかない。医者が半年ぐらいでかわっていく。なぜかわっていくか。これはばく大な、たとえば三十万、四十万というような月給を払っていても、それでも大学を出た若い医者が、来て半年ぐらいでかわっていく。患者もだんだん少なくなっていく。そのために診療所というものは全国的に廃止されておる。これは実際にそうなんです。  これらの診療所というものは無医村地帯に多いですね。医者がいないから町や村で診療所をつくる、そして医者を苦労して呼んでくる、半年ぐらいしていなくなっていく、これを繰り返している。そのために、とてもやり切れないから廃止してしまえといって無医村になっていく。この診療所に対する対策と無医村の対策、この問題について厚生省はどのように考えておるか、まずお尋ねいたします。
  114. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 確かに僻地の無医村などにおきます診療所、約四百ただいまございますが、これに勤務する医師方々の意識調査と申しますか、一つの統計が厚生行政の研究費で最近まとまりまして、たいへん参考になる御意見が出てまいったわけでございますが、その一つに、やはり自分の時間というものに余裕がとれない。自分一人で診療所を責任を持っておるために、年間の学会に出たいとか、あるいはいろいろ研究会などにも出たいというときに、それに対する対策が十分でない。それから道路の改善、その他環境条件の改善はどうしてもやってもらわなければならない。もちろん給与の問題等もございますけれども、給与の問題等については、かなり市町村も苦心して高額の給与を出しておられる実態もあるわけでございます。  もう一点は親元の病院と申しますか、自分の勉強になるような病院というものを持って、そこと場合によっては最近発達した通信設備あるいはテレビ装置等によって、いろいろ自分の見ておる患者実態病院相談しながら診療できるような新しい開発をしてもらいたい、こういうような御意見が出てまいっております。  先生の御質問にお答えする基本的な方策ということは、なかなかむずかしいのでありますけれども、従来はどちらかというと僻地に診療所をつくって、そこにお医者さんを確保することを考えましたが、それが非常に困難になってまいりました。要は無医地区なり僻地は、医療を確保すればいいのでございまして、医師をそこに確保するということが非常に困難になってまいりました。  したがって、われわれとしては、今後の対策といたしましては、やはり親元になる病院というものを充実することによって、そのお医者さんと親元との結びつきをし、あるいは先生方のいま御希望に出ましたように診断、治療あるいは研究等に出向く留守の間のかわりを、その親元病院医師を派遣してやってやるというふうにして、先生の御指摘のように現在いる僻地の医師をのがさないようにすることがきわめて重要なことでございますから、もちろんそういう方策を講ずることが、また今後自治医科大学等ができてまいりまして、若い医者が僻地等に勤務するようになります環境条件を整えるためにも、われわれはやはりそういう通信網の開発を利用するとか、あるいは親元病院と僻地医療機関とを結びつけて、そこに親近感と責任を果たせるような医師としての満足感をできるだけ与えるようにする、こういうような努力をする必要があると考えて、ただいま立案中の医療供給の五カ年計画の中では、僻地診療部というようなものを相当大きな病院に設置して、これに助成し、医療器具あるいは通信、いわゆる医療情報システムと申しますか、そういう新しい通信器具の開発というようなものを兼ねて僻地医療の確保に努力いたしたい、こういうように考えております。
  115. 神田大作

    ○神田委員 この問題はいま申されたようなことでもって充実をはかるということでありますが、診療所そのものが、医者が居つかないという問題は、いろいろいま言われたような問題もあるでしょう。同時に私は、市町村が相当の負担をして医者を見つけて、しかもその医者が半年くらいにかわってしまって、住民とのいわゆる一つの交流も薄くなっていく、こういうような問題について、長く同じところにいてもらうというような方策をするためには、やはり国でもって相当の負担をして優遇する、そこに何年かいた医者に対しては優遇してやる方法を考えるとか、あるいは公的機関による出張所というような形にして、たとえば日赤病院とか、あるいはまた済生会病院というような身分にして、そして出張所という形にしてやっていくとか、何らかのくふうをしない限り、山の中の不便なところに何年もいろといってもなかなかおらぬですよ。  この点について、ひとつ抜本的な対策考えてもらわないと過疎地帯はますます衰微していく。急場に間に合わないから、生きる病人も死んでしまうようなことになってくると思うのですよ。この点について万全の措置を講ずるべきではなかろうか。この際、特に強く私は主張するわけでありますが、これらについて厚生大臣はどう思いますか。
  116. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 無医地区における医療機関の問題、これはむずかしい問題でございますが、緊急に解決しなければならない大きな問題だ、かように考えております。そこでこのやり方については、実は各町村ごとにいろいろな事情の違いがございますので、そういう無医地区については各町村ごとに特殊な事情を十分頭に描いて町村ごとの具体的計画をいまつくらせるというやり方にいたしております。  といいますのは、一つやり方は、近隣の開業医の方々が――医師会になるわけですが、そういう医師会協力のもとに交代でそこに行ってくださるという方式、これも一つでしょう。それから国立病院がやはり中心になって、もし近所に国立病院があるならば、国立病院では傘下町村、自分の管内の無医村は引き受けますというようなことについて、国立病院からお医者さんを日をきめて派遣していく、こういうようなやり方もありましょう。それから公立病院からそれを派遣するというやり方もありましょう。  こういうふうなことで各町村ごとにいろいろな事情があると思いますので、一律には行かぬと思いますが、具体的に医師がその地方に一定のときに行って、そして住民の診療に当たるような仕組み、こういうようなものを具体的にきめよう、こういうことで、いま現実に各町村ごと、府県ごとに打ち合わせをいたしておりまして、その計画をもって今後無医村対策充実をはかっていく、こういうふうにしたいと考えておる次第でございます。
  117. 神田大作

    ○神田委員 次に私は、私立医大の問題について、これは非常に重要な問題だと思いますが、私立医大に入学するためには、数千万、二千万、三千万というような金を入学金とかあるいは設備資金として寄付しなくちゃならぬ、こういう制度、これは私立医大ばかりではなく、たとえばほかの私立大学の場合も、額は少ないけれどもあるわけですね。こういうような教育制度は――こういう入学金とかあるいは設備資金に、入学するためにばく大な金を寄付しなくちゃならぬという――それでは私は金がない者は医大や歯科大に入れない、金を持っている者だけ入る、こういうことをやったのではりっぱなお医者さんができるはずはないと思うのですね。  この問題に対して国民も重大なる関心を持っております。日本が教育の機会の均等だなどといって、金でもって学校へ入るなんということを一体いつまでやっておるんだ、これはどういう人であっても、その能力があれば、その能力に応じて大学に入れる、そういうことでなければならぬ、人命を預かる医者の場合なんかは特にそうだと思いますが、この問題について厚生大臣どう考えますか。
  118. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 私立の医科、歯科大学におきまして、入学時にかなり高額な寄付金を取っておるということは事実でございまして、私どもも大学の設置の認可にあたりまして、入学を条件とする寄付金はもとよりでございますが、入学時に高額の寄付金を取るようなことが絶対ないようにということを重々注意をしておるわけでございますが、依然としてそういう事態があとを絶たないということは、まことに遺憾なことでございます。  こうした事態が起こっておりますのも、やはり医学教育にはあるいは歯学教育には相当大きな金がかかるわけでございます。そうした事態、実態にかんがみまして、文部省といたしましては、四十五年度以来経常費の補助を私立大学に対して行なっておるわけでございますが、医学部につきましては、特に重点といたしまして、その予算の積算をいたしておるわけでございます。その完成した医学部の定員一人当たりにいたしますと、約七十万八千円の補助金が支出されております。これは私立大学全体の学生、定員一人当たりの補助金額六万一千円の約十二倍でございまして、そうした補助を行なっておる次第でございます。  総額といたしましては、医学部の場合でございますが、経常費の補助が約六十九億円、それから研究設備の補助が約三億五千万円、それから設備費の補助が約一億八千万円、合計七十四億という補助をいたしております。また、歯学部につきましても、詳しくは申し上げませんが、総体といたしまして、約二十三億の補助をいたしておるわけでございますが、しかしながら、ただいま御指摘のような実態が依然としてあとをたたないことは、私どもきわめて遺憾に存ずるところでございまして、これが具体的な対策につきましては、鋭意検討してまいりたいというふうに考えております。
  119. 神田大作

    ○神田委員 これは重大な問題でありますし、もう長い間懸案の問題でありますから、いまさら検討するというようなことではない。国立の医大をつくるなり――そういう寄付金を取らなければならぬ、そういうこと自体がここに政治の一つの貧困であり、行政一つの怠慢であると思います。そういう政治が一体あっていいんですか。何千万出さなければ医科大学に入れないというようなことが平然として行なわれる、公然と行なわれる。そこでもって収賄とか汚職などが出た大学なんかもあった。教授が大学に入れるべき寄付金をふところに入れてしまって、そのままにしてしまった、そういうばかな話があった。これは私立大学、特に医科大学等においては厳重な対策を速急に講じて根本的に直さなければ、これは日本の医療問題にも大きな影響を及ぼすと思うのです。厚生大臣どう考えますか。
  120. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 最近、私立の医科大学等において多額の入学時寄付金を行なわしめるということは私も聞いておりますが、こういうふうな状態が続きますと、私は入学学生の素質が非常に低下するのではないかと思っているのです。実はこういうことを考えてみますれば、国民医療上非常に嘆かわしいことであると考えておりまして、文部省も勇断をもって対処していただきたい、私はさように考えております。
  121. 神田大作

    ○神田委員 それでは時間もありませんから最後に、健保の一番問題になっておる、いわゆる弾力条項を削るべきだというわれわれの主張、並びに家族給付を七割にするというような橋本私案も出ていましたが、これは来年の十月からである、それはちょっとぼくは来年の十月まで待てというようなことじゃなしに、本年十月から実施すべきじゃなかろうか。一年も、長い間の五割でもって、健保との比較で国保が七割、しかも政府管掌が五割だというようなことを長い間やっておった。これは速急に十月から実施、それから弾力条項等はとって、この問題ができたら、やはり国会にかけて審議してちゃんとやるべきであろう、そういう緊急事態については、やはり厚生大臣の独断的なことであっては私は困ると思うのです。そういう意味合いにおいて、この問題がいま健保の審議の非常に問題点になっておるようでございますから、このことについて大臣の所感をお尋ねしたいと思います。
  122. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 政府提案は家族給付を五割から六割ということにいたしておるわけでございますが、橋本私案というものが出ておりまして、七割を来年ということのようでございますが、これは私がとやかくのことを批判すべき立場にはありません。国会の議を待って決着をつけていただく問題でございます。ただその場合にお願いしたいことは、七割給付ということになりますと、相当膨大な金がかかるということだけを十分頭に描いて国会において審議をしていただきたい、私はさように望むものでございます。  それから弾力条項の発動でございますが、これは先生御承知のように、短期保険というのは、みなこういう制度を持っているのです。これは健康保険に昔あった。あったのですが、いつぞや改正のときに忘れてしまったということを聞いておるわけでございます。これは御承知のように、短期保険と申しますと失業保険、それから医療保険で申しますれば国家公務員その他の共済組合、全部あるのです。労災保険にもございます。  こういうようなことで、いろいろな弾力条項というのは行政執行上いろいろな場合に備えて収支とんとんがとれるようにしておくということが――いい悪いは別ですが、保険制度をとっている以上はやむを得ないことであるわけでございます。そういうような事態を踏まえて、私どもはこの規定は必要であると考えておりますし、しかも皆さま方のいろいろな御意見がございますので、よその制度よりももっと強くしぼっておるのでございます。すなわち、上限については千分の七十三を八十までしか動かしません。八十まででございます。こういうふうに上限もしぼり、しかもまた社会保険審議会の意見まで聞く、こういうやり方をしておるわけでございます。よその短期保険における弾力条項については上限、下限の制限などはございません。国家公務員共済組合などにおいても、そういう制度はございません。  そういうふうなことで、私どもは国会の皆さま方の御意見も十分承りまして、上限を縛り、発動する場合についても慎重に運用いたしますと、私国会で答弁をいたしております。そういうふうなことでございますので、今日までのいきさつでいろいろ御意見もおありかと思いますが、短期保険というものの運用にはぜひ必要であるという御認識のもとに御協力賜わらばしあわせだと考えておる次第でございます。
  123. 神田大作

    ○神田委員 時間がありませんから、私は大臣の考えもそれはわからないことはないが、しかし健保というものに対する国庫補助率というものを〇・六%だとか、〇・四%とか、あるいは〇・七%ぐらいの弾力条項をやって、そして健保がいま通過するかというような瀬戸ぎわに来て、これは私は、国庫負担金を多少増しても、そういう急場の場合はまかなえるんじゃないか、そしてあとでもって――これはどうせ抜本的な改正じゃないのですから、暫定的な改正でありますから、そういう問題にこだわらないで、与野党で話し合いのつくものは話し合いをつけて、そして通していくべきではなかろうか、こういうふうに考えます。私の意見だけを述べまして、時間でありますから、終わります。
  124. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 次に、岡本富夫君。
  125. 岡本富夫

    ○岡本委員 公害特別委員会と社労の連合審査でありますから、まず公害の面からお聞きいたしますが、公害の認定患者、これは四十四年にできまして四十五年から実施しておりますが、これが現在累計何人の方が認定を受けて、そして医療費とかあるいはまた介護手当、こういうものをもらっておるか、これをまずお知らせいただきたい。これは環境庁から……。
  126. 橋本道夫

    橋本説明員 いま先生から御質問ございました、現行の公害健康被害救済特別措置法によります患者数は、四十八年五月末現在で、水質関係、つまり二つの水俣病とイタイイタイ病でございますが、九百六十二人、大気関係、慢性気管支炎等の四つの疾患ですが、一万三百三十二名、合計一万一千二百九十四人でございます。
  127. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、時間があまりありませんから、率直に入りますけれども医療費あるいはまた介護手当、こういう基金というものは、財界からの寄付金とそれから政府予算、これが半分ずつでできておるわけでありますが、四十八年現在でどれくらいの費用がかかっておるのか、これをまずお聞きしたい。
  128. 橋本道夫

    橋本説明員 ただいま先生から御質問のありました四十八年度予算ベースでどれくらいの予算がかかっておるかと申しますと……。
  129. 岡本富夫

    ○岡本委員 四十八年だけじゃなく、いままで支払った全部。
  130. 橋本道夫

    橋本説明員 従来までの、四十七年度までの支払いは九億九百二十万九千円というところでございます。うち救済法の負担関係が三億九千五百十一万五千円というのが、四十四年度から四十五年度、四十六年度実績、四十七年度は見込みでございますが、医療費の総額はそれだけでございます。
  131. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、いま聞きますと九億九百万ですか、このうち三億九千万というのは、これが四十五年、四十六年、四十七年度はまだ全部ができてないわけですね。四十七年度も入れてですか。
  132. 橋本道夫

    橋本説明員 いま申し上げましたのは、四十七年度は実績見込みでございます。まだ確定ではございません。
  133. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、まだ見込みでございますけれども、三億九千万余ですから、まず四億円といたしましょう、この中で保険で支払った分、これは幾らになりますか。国民保険、社会保険、組合保険、船員保険、いろいろございましょう。
  134. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 現在、四十八年六月の時点で判明いたしております中で、私ども承知いたしておりますのは、政府管掌健康保険と国民健康保険でございます。いまお述べになりました共済組合とかあるいは健康保険組合等につきましては、いまの段階で正確な数字がわかっておりませんので除外をいたします。その二つの保険について申し上げますと、保険で給付をいたしました額は、政府管掌健康保険並びに国民健康保険の両方で約二億五千八百万でございます。
  135. 岡本富夫

    ○岡本委員 国民保険あるいは社会保険、政府管掌保険でありますが、それで二億五千八百万、ここで、企業に求償した額、これは幾らですか。
  136. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 やはり同じ時点の数字でございますが、それぞれの保険に求償規定がございますので、その結果求償をいたしまして保険のほうに返ってまいりました額が、両方合わせまして一億二千三百万でございます。
  137. 岡本富夫

    ○岡本委員 会社ごとに言ってください、どこの企業から何ぼ入ったか。
  138. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 まず新潟水俣病関係は、昭和電工でございますけれども、このほうは政府管掌健康保険で百六十九万四千円、それから国民健康保険で一千百三十六万四千円であります。それから富山イタイイタイ病は、三井金属鉱業でございますが、この分が政府管掌健康保険で四百四十三万八千円、国民健康保険で五千六百七万八千円であります。それから四日市ぜんそくの場合は、昭和四日市石油株式会社以下六社の分でありますが、このほうは政府管掌健康保険の場合には現在のところまだ返納はございません。国民健康保険の場合には二千七百五十三万七千円であります。熊本水俣病の場合は、チッソ株式会社ですが、このほうはやはり政府管掌健康保険の場合にはまだ返納になっておりませんで、国民健康保険の場合に二千二百十三万七千円、以上であります。
  139. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますとチッソからは政府管掌健康保険の求償は入っておらぬ、要するに金が入ってない。それから四日市の四つか五つの工場からも入っていない。これはなぜ取らないのですか。
  140. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 これは先生も御承知かと存じますが、いろいろ地元の話し合いも何回もございまして、いろんな返還のケースがあるわけでございます。それで、現在のところ、-四日市の場合も熊本の場合も、いずれも話し合いがまだ十分に煮詰まってない段階もございます。話し合いがつき次第求償する、返納するということが、ほぼ約束ができ上がっております。
  141. 岡本富夫

    ○岡本委員 チッソは、これは四十三年に公害病に認定されて、そして日本窒素から出た水によってこうなっているのだという原因がはっきりしておる。そうすると、公害の認定をして、そうして保険で給付するならば、今度は政府が先に、まあ政府管掌でありますから、政府が立てかえ払いをしている。そうならば、政府がチッソに対して、立てかえ払いした分だけは要求するのがあたりまえじゃありませんか。大臣いかがですか。
  142. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 ただいま申し上げましたように、要求はいたしておりまして、ただ現地で話し合いの部分があるかどうか、正規にと申しますか、正規に話し合いがつきましたら、必ずこれは政府のほうに返すということは約束ができ上がっておることを申し上げたわけでございます。
  143. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、チッソの患者の皆さんは、チッソからもらった賠償額の中から、今度は保険で払ってもらった分だけは政府に払うわけですか。そういう話し合いになっておるのですか。そんないいかげんなことを言っちゃいけませんよ、あなた。
  144. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 いま申し上げましたように、また先生もお述べのとおり、保険で求償することになっておりますから、企業に求償することになっております。
  145. 岡本富夫

    ○岡本委員 要するに昭和電工あるいはまた三井金属、こういうのははっきりしているから、保険で要するに政府が立てかえた分は求償して、そうしてまた政府の中にお金が入ってくる。ところがチッソあるいは四日市、これは患者とそれから企業との関係ないですね。政府が立てかえて払ったものですから。政府の金というのは国民の税金ですよ。私は、こういうやり方をしておいて、そうして政府管掌保険赤字であるから、それは値上げをするのだ。企業の肩がわりをしているんじゃないですか、これは。しかも四十三年からですよ、認定されたのは。もう五年ですよ。大臣、もしもあなたが田中総理の車代を立てかえた場合、あなたはそれを返してくれと言うのはあたりまえでしょう。自分のことだったら言うけれども国民の金だったら知らぬ顔しているのはおかしいじゃないですか。これはいかがですか。
  146. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 これは求償権を発動するのは当然であります。
  147. 江間時彦

    ○江間政府委員 御説明いたします。  確かにこの案件は早くからそれらしいということはわかっておったわけですが、われわれといたしましては、判決を待たなければ、最終的にだれが責任を負うかということはきめかねるわけでございまして、判決の結果を待っておったということもございます。それから、確かに実際にわれわれが会社から金を取り立てるのがおくれていることは事実でございますが、ただ、医療そのものはすでに患者に対して給付されておるわけでございまして、そうして実をいいますと、われわれの立場は、患者さんが会社から別に取り立てなければならないお金があるわけでございまして、われわれも会社から取らなければならないわけでございますが、そのときに債権の取り立ての順位といたしまして、どちらかというと、患者さんが会社から取り立てるべき現金給付のほうを先行させたほうがよろしいという面もあるわけでございまして、確かにわれわれ、これから会社にできるだけ早く保険財政に積み立てることを主張いたしまして話し合いを進めるわけでございますが、そこら辺は判決の結果がかなりおそかったということと、それから患者さんが取り立てるべき債権との優先順位ということも考えまして、若干おくれていることは、やむを得ないと思うわけでございます。
  148. 岡本富夫

    ○岡本委員 おかしなことを言いなさんなよ。裁判の判決を待って――裁判の判決、もう早く出ているじゃないですか。もしもこれ、国税であってごらんなさい。もうすぐ差し押えだ。いま政府管掌保険赤字だから値上げをしよう。これはわずかな額に違いないけれども、そういったものをきちっとしておいて、そうしてこれだけ赤字だ、これだったら、企業の肩がわりを一般国民にさせるんじゃないですか。けしからぬよ、あなた。いまいみじくも厚生大臣は、自分で貸したやつだったらすぐ取り返す、国民の金だったらほうっておけ、ほうっておくんじゃないですけれども、これははっきりしなければ、ぼくはこういうのはほんとうにずさんだと思う。われわれが指摘しなければそのままになってしまっている。  私ほんとうをいえば、これは一つ一つ熊本県に聞いてみた。どれぐらいの支出でどうなっているのだ、あるいは新潟県にも聞いてみた、まだこまかい資料は来てませんが。だから、四十三年、四十四、四十五、四十六、四十七、もう五年ですよね。国民の金、要するに保険の金でどんどん払っておるから痛いことも、かゆいこともない。赤字だ、それを国民に転嫁する、こういうずさんなことで私はならないと思う。  大臣、いかがですか。これは、ことし大臣になったから知らぬなんていけませんよ、前の大臣からのつながりなんだから。私はこういうことでは、今度の保険料の問題あるいはその他も細心の注意を払ってないと思うのです。大まかなどんぶり勘定だ。これはひとつ社労委員会ではっきりしていただきたい。要求いたします。それはそれとして、大臣、もう一度決意を……。
  149. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 どうも承っておりますと、だいぶおそいようでございまして、不自然でございますので、できるだけ早く求償させるようにいたします。
  150. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、結局公害病になって公害の認定をした人たち、またそうして公害の人たちの健康をあれするときには、どうしてもこういった政管健保あるいは国民健康保険ですか、こういうところにしわ寄せがくるわけです。したがって厚生大臣は、公害防除、公害に対するところの対策については、一番あなた、力を入れなければならないと私は思う。環境庁だから私関係ない、こういうことではいけない。直ちに自分のほうのふところ、ふところというとおかしいけれども、関係してくるわけですから。  そこで四日市の話が出ましたからあれですが、この間から見てますと、水俣の問題もそうです。水俣の患者もそうです。企業との、チッソとの交渉、あの姿をテレビで見てますと、もう行政なんか要らないですよ。もう住民と企業、被害者と原因者、加害者との直接交渉でしょう。あれは諸外国から見ましたら、日本は何をやっているのだと思われる。環境庁長官が入ってやってまいりましたけれども、会わしていろいろやっていましたが、厚生大臣はそういうような被害者の立場に立って、あるいは企業との間をあっせんして、そして一日も早く解決できるような、そういうことをもしも申し込みがあったらやってあげられるような決意はありますか、いかがですか。
  151. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私はああいうふうな問題はなるべく早く解決することが望ましいと思うのです。もし厚生省所管でそういうふうなことがありますれば、私もできるだけ中に入って解決のあっせんをする、これはもう当然のことだと思いますし、私もそうしなければならぬ、かように考えています。
  152. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで大臣、一つお願いがある。そういうことがあればひとつ中に入ってあっせんをしようと言われますが、これだけたくさんの手紙が来ているわけであります。  これは三重県四日市の公害のぜんそく患者の皆さんからでありますが「私は現住所に二十五年ほど前から住んでおります。そしていま公害のぜんそくにかかって働くこともできない、非常に苦しんでおります。」中間は略しますが、「どうか一日も早く企業と患者話し合いをできるようにひとつ厚生大臣にお力をかしていただきたい。お願いしてください。」こういう手紙なんです。  いまあなたはそういう場合に中に入ってでも話をしてあげようというあたたかいことばがあったのですから、もしもこういった患者のほうから、公害の皆さんから話がある場合には、あなたひとつ犬馬の労をとっていただけますか、いかがですか。
  153. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 公害の問題は環境庁所管でございますから、これは私が直接中に入るというわけにはまいらぬと思うのです。私が先ほど申し上げましたのは、厚生省所管にもあるので申し上げているので、ですから、これにつきましては環境庁のほうに私も連絡をいたしまして、環境庁のほうで十分その中に入りて解決していただくように、私も環境庁に十分連絡をしてお願いをいたしたいと思います。
  154. 岡本富夫

    ○岡本委員 大臣、所管というところで逃げなくて、先ほど私が話しましたように、ここの公害、四日市の企業からまだお金を取っておりませんね。求償もしておりません。これは全部厚生省が立てかえておる。これは所管でないわけじゃないですよ。そうでしょう。そうするとぜひ厚生大臣にひとつお願いしたい。患者の味方になって、環庁境に連絡をとってなんて言わずに、あなたひとつ勇断をふるって、一ぺんくらい、よし、わかった――わかったの角さんでは悪いけれども、ひとつよしやろうというくらいに患者の皆さんのためになってあげる。そうしたら私は早く解決すると思うのですよ。そうでなかったら、もうどんどん死んでいくのですよ。もう国民の皆さんは厚生省に健康を保持してもらえるのだというように、非常に思っておるかどうか知りませんが、厚生省をたよりにしているわけです。もう一度ひとつ決意をお聞きしたい。
  155. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 非常に厚生大臣たよりにされておるようでありますが、(「大ものだから」と呼ぶ者あり)大ものでございませんで、小ものでございまして、これは環境庁の仕事なんでございまして、なるほどそれが認定されたときに保険で金を払っておった場合に、求償を発動するとかなんとかという場合はいたしますけれども、その事態を解決するのは私ではなくて、環境庁の所管でございますから、やはり行政というのは筋を通してやりませんといけません。これはそういう意味において、私もお気の毒なそういう問題については環境庁によく連絡をとりまして、あっせんをしていただくように私からもお願いいたします。
  156. 岡本富夫

    ○岡本委員 こればかりやっていると時間があれですから、とくとひとつ懇談をして、向こうは副総理だからというので遠慮をせぬでひとつやってください。  そこで、この間水銀の汚染魚に対する許容基準が発表されました。これは二十六日、きのうですか、その前に一ぺん発表されましたね。二回発表されているわけですが、どちらがほんとうでしょうか。
  157. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 私どもが今度発表いたしましたのは、水銀につきましては週間摂取許容量を〇・一七と定め、魚の濃度についての規制値を総水銀で〇・四PPM、それからメチルならば〇・三PPM、これが発表の全文でございます。その発表文全文について参考資料として魚の献立表みたいなものを資料として出したわけでございます。それがおとといの朝刊に出ましたヒラメ何匹イワシ何匹、こういうものでございます。その数字は、その新聞にそういう性質がよく書かれているかどうか私よく存じませんが、すべての魚がかりに許容基準である〇・三PPMであるとしても、これだけの魚は毎週食べてもけっこうでございます、これだけ汚染されている魚でも健康上影響はありませんという数字を出したわけでございます。それは汚染されておる最高度のものを食べてもだいじょうぶ、こういう意味の数字を出したわけなんです。  しかし、それでは実際に市場で売られている魚はどうかという実際を見ますと、〇・三PPMなどという高い濃度のものは、いまの市場には流れておりませんということでございますので、国民が心配するといけませんので、たしかきょうの新聞に、朝日新聞か何かには、実際市場に売られておる魚の濃度のPPMは〇・〇八程度でございますから御心配要りません、こういうふうに出ておるわけでございます。  すなわち、さきの魚が何匹とかいう数字は、最高度に〇・三PPMと汚染されている魚でもこれだけ食べても影響はございませんという、仮定の話で心配はありませんということを申し上げたのですが、何かそれを見まして国民は、ああ魚はこれっきり食ってはいけないんだなというふうに誤解するといけませんので、実際汚染度のぐあいは市場においては〇・〇八でございますから魚は一つも心配はございませんということを、たしかけさの朝刊あたりに出たものではないかと思うのです。  どうも新聞に出ますときには、いろいろな仮定で言うていることが一番大事なんですが、それが出ていないために――それは出ているか出ていないか私はわかりませんが、最初に出たときに〇・三PPMという最高度の濃度のものでもこれだけ食べられる、最悪の場合のことをいっているのです。ところが、それを見ましたら、イワシは何匹しか食えないのかという調子で心配するものですから、それはそうではございません、実際の魚の汚染度はずっと低いのですから御遠慮なくたくさん食べてください、〇・三PPM以上の汚染の魚は東京の市場には出しません、こういうことをつけ加えているのです。  そういうわけで、今回のPPMの基準の発表に際しての説明が不十分であったということは、私は率直に認めます。率直に認めますから、私のほうも率直に資料は訂正いたします、国民の心配ないようにいたします、こういうことで、きょうの朝刊あたりはそういうふろになっているのではないかと思います。しかもそういういろいろな条件をちゃんと書いてくれております。ところが最初のものは、どうもそういう条件が書いてあるのだかないのだか、いま記憶はございませんが、はっきりしてないために、非常に誤解を受けて、どうも魚は食っちゃいかぬのだという調子に誤解を受けたことは、私もまことに不注意であった、この点は反省をいたしております。
  158. 岡本富夫

    ○岡本委員 大臣、反省していただきましても、国民は――これ二十五日の朝刊でしたね、二十五日に、小アジが十二匹ですか、マグロのさしみは四十七切れ、それで、これは二十七日、きょうのあれですね、私は率直にもっと丁寧に発表すればよかった、いまおっしゃられたことに対しては、まあ了としますけれども国民の皆さんというのは、大体この新聞、こまかくしまいまで見るのじゃないのですね。ほんとうにひょっと見ただけ。たとえば二十五日のこの新聞、安全基準きまる、これが出たとたんに、魚屋さんは三分の一にばあっと売り上げが減ったそうです。すし屋さんには客が来なくなった。これは厚生省がじゃましておるみたいですね。まあこれを今度改められるとおっしゃるわけですけれども、非常にこの点については私は遺憾だと思います。  そこで、先般、公害委員会に対してあなたのほうから、魚介類の水銀暫定基準の設定の意義を正しく理解されるように周知徹底をはかるというような刷りものが来たのです。これについて、よく政府のほうで、新聞がうまく書いてくれないとか、記者の皆さんのあれが違うんだとかいうようなことをちょいちょいおっしゃるような場合もあるのですけれども、それはニュアンスも変わるかもしれないですけれども、したがって、この魚が安全である、あなたのほうからはっきり責任を持って言えるわけですから、それならテレビあるいはまた総理府の広報室ですか、ああいうところでどんどん一週間に三べんも四べんもテレビなんかで知らせていく、周知徹底していく、こういうことが私必要だと思うのですよ。  この間も見ていたら、行政管理庁のことを、福田行政管理庁長官が出てやっていましたけれども、あれ聞いていると、行政管理庁というのは何をするところかと思ったら、どうもあちこちどこへ行ったらいいかわからないというときには、あそこへ聞きにいったらいいのかということがわかったようなていのことでしたけれども、いずれにしましても、これから一カ月ぐらいの間は、もう徹底して安全宣言をあなたのほうでやる、こういうことをやりますか、どうですか。
  159. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 新聞に書いてくれないとかなんとかということは私は申しません。ほんとうに私のほうも不十分だったと思うのです。率直に私認めております。仮定の数字で、最悪の場合でもこのくらい食えるなんてことが出ますと、最悪の場合でもなんていうものじゃわかりませんから、何匹と出ちゃうと、ああ何匹以上食っちゃいけないんだ、こうなるわけでございます。そこで実は、最近における市場の実情にかんがみ、魚は心配ありません、汚染の魚は東京の市場には入れておりません、したがって、御遠慮なく食べてくださいという大臣声明をきょう出すことにいたしておりますし、同時に、いま御注意いただいたようなテレビ、ラジオ、新聞、もう一カ月でも二カ月でも何カ月でも引き続き、私はほんとうに国民に誤解のないようにPRに全力を尽くしたいと考えております。  要するに、私どもの最初のお配りした資料はどうも不十分であったと私は率直に認めます。そして国民に、心配ないように、こういう機会に私も何べんもお答え申し上げることが、国民に私はわかっていただけることだと思います。テレビ、ラジオ、ほんとうに一カ月でも二カ月でも、国民に心配ないように、この風潮を鎮静させるように努力いたしたいと思います。
  160. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、もう一つあなたのほうではっきりしてもらいたいことがありますのは、PCBの安全基準なんですね。これは水銀だけですからね。よく聞かれるのは、水銀のほうはまあどうですかというから、今度きょう厚生省からこういうふうに出たからだいじょうぶです、PCBはどうですか、こういうことになるわけですわ。PCBに対しての安全宣言といいますか、これはどうしますか、いかがですか。
  161. 浦田純一

    ○浦田政府委員 PCBにつきましては、すでに製造は昨年来中止されており、使用の規制も行なわれておるということは、先生も御案内のとおりでございます。また、それに伴いまして、PCBの食品の中における暫定規制値というものも昨年八月にきめてあるところであります。さらに、この適用の食品の範囲を広げる、それから、そのとき宿題になっておりました妊婦、乳幼児、こういった方々への適用をどうするかという問題について、早く結論を出すということでございまして、その後必要な調査などを進めております。近くまた専門家の会議を招集いたしまして、その後の新しい事態に応じての基準値、規制値の作成について意見を徴したいと考えております。
  162. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと大臣、まあ水銀のほうはわかりました、PCBがまだあぶないです、こういうのが一般国民の皆さんのあれですが、大体これの安全宣言といいますか、この二十七日、きょう出されたようなのはいつごろ出るのですか。それでなければどうも魚屋のほうも困っているのじゃないですか。
  163. 浦田純一

    ○浦田政府委員 PCBに関しましては、すでに規制値がきめられておりまして、それによるいろいろな手は打っておりますので、いま今後の問題としてやることは、そのときに問題になりました妊婦の方々あるいは子供の方々への適用をどうするか、あるいは野菜、米などについての適用をどうするかということでございますので、これについては早急に結論を出すように、専門家の御意見を聞いてまいりたいと考えております。
  164. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうもはっきりしませんね。PCBも実は、これは先国会におきまして私もずいぶん論議したわけでありますが、このPCBも、JASという規格で政府が許可しておるのですよ。だから政府に責任がある。したがって、高度成長政策のときにばんばんやったわけですが、アメリカあたりじゃ早くから禁止されておった。しかもこれは国会において決議をしておる。ですから、この前に安全基準を出してから、これはもういいんだというんじゃなくて、最近、たとえば六月二十二日、横浜生協ですか、「近海魚の仕入れ中止PCB汚染に強行策 安全性確認されるまで」こういうふうなものがたくさん出ているじゃないですか。また、兵庫のあれは高砂沖、このあたりも、PCBの濃度の濃い魚がたくさんふえておる。  したがって、これもひっくるめて、前にやったから、もうだいじょうぶだというんじゃなくして、やはり私ははっきりと厚生省のほうで一緒にやってあげなければ、水銀はいいけれども、PCBがあぶないかもしれぬ、その辺の配慮が私は欠けておるのじゃないか、こういうように思うのです。そこでだいじょうぶだろうと言うたところで、国民のほうは心配なんです。
  165. 浦田純一

    ○浦田政府委員 PCBの対策につきましては、すでに環境庁を中心にいたしまして、各省の会議を持っておるわけでございます。対策本部を持って進めておるわけでございます。それで、厚生省立場といたしましては、食品を通じてからだの中に入ってくるPCBの量を極力減らす、絶対安全なようにいたしますということでございます。それの理想的な形は、もちろん使用というものを規制する、あるいは製造を中止するということでございますが、それらの手はすでに打たれております。問題は、その手が打たれるまでに出てきておるPCBの対策でございます。これは私どもは環境庁あるいは関係省庁にお願いいたしまして、できるだけそういったところの浄化作戦をしていただく、またそこはひとつ漁獲も禁止していただくというふうなことでもって措置しておりますので、おっしゃるような心配はないと思います。
  166. 岡本富夫

    ○岡本委員 通産省、PCBはこの前の国会でも、早急に回収をして、そのあとは使わない、それから回収をして早く処理しなさいというような国会決議もしたわけでありますが、いま厚生省から言われたようにきちっとその処理ができておりますか、この点についてひとつ明らかにしてもらいます。
  167. 松村克之

    ○松村説明員 お答えいたします。  PCBにつきましては、先ほどお話がございましたように、PCBそのものの生産は昨年の春に中止したわけでございます。これは先生御承知のとおりでございます。それから、PCBを使いました製品といたしまして開放型の用途につきましては、これも生産、使用の中止をいたしております。あとPCBとして現在つくっておりますものは、御承知のように新幹線用トランスだけでございますが、これにつきましても、現在関係の新幹線当局のほうで技術開発を進めておりまして、本年中にはこれを中止することができる、こういうふうに考えております。
  168. 岡本富夫

    ○岡本委員 全部で五万トンあまりあったのですが、その中でいまPCBを、要するに油性のものそのものを、製造元のほうに送って分解して処理するということになっているわけですが、いまどことどこでやっておりますか。
  169. 松村克之

    ○松村説明員 お答えいたします。  PCBを熱媒体等の形で、油性といいますか油状で使っているものにつきましては、これをPCBのメーカーに返却いたしまして、ここで処理するということにいたしております。したがいまして、メーカー二社で焼却の施設を建設いたしまして、ここで焼却するという体制になっているわけでございます。
  170. 岡本富夫

    ○岡本委員 きょう、これは通産省だということで、厚生大臣あまり気合いが乗らぬそうでありますが、一ぺんあなたも閣僚の一人こして――病気になれば、これはまた保険が必要になってくるのですよ。しかもそういう病気を起こしてはならないわけですが、私どもは公明党の調査団として、実は日本コンデンサそれから東洋レーヨンの滋賀工場に行きました。東洋レーヨンの滋賀工場に参りますと、鐘化から四十一年に五トン購入し、それから使用禁止になってから十八トン、三年間で自分のところの東洋レーヨンの滋賀工場でこれを焼却しているのですよ。焼却炉を見に行きましても、そのままぱっとたいている。こういう危険な焼却をやっているのです。私どもが行って向こうで調査したからわかった。通産省、それから環境庁も厚生省もよく聞いてもらいたいのですが、われわれが行って調べなければわからない。大体行政は何しておるかということになる。けしからぬじゃないですか。これはどうしますか。
  171. 松村克之

    ○松村説明員 いまお答えいたしましたように、油状のPCBについては、これを焼却処理するというととが最も安全であるということでございまして、したがいまして、私どもといたしましては、PCBのメーカーに専用の焼却場をつくりましてここで焼却させるということが基本でございます。  ただ、先生いま御指摘がございましたように、PCBをそういう個別の工場で焼却するということにつきましては、その焼却に際しまして十分な安全性がとれるかどうかという点につきまして、環境庁のほうにもお願いいたしまして、PCBを焼却する場合の排出基準について御検討をいただいたわけでございますが、今後通産省といたしましてはその排出基準に合うといいますか、その排出基準よりも、さらにきびしい制度を持った専用の焼却工場、こういうところで焼却する体制を現在とっているわけでございます。
  172. 岡本富夫

    ○岡本委員 こういう姿を見ますと、政府のとっている対策というものは、まことにお寒い限りで、そして魚は安全であります、こういうことになれば非常に矛盾しているじゃありませんか。私はもう一度、こういった各PCBを使用したところに立ち入り検査をして、こういうことのないようにしなければ、いかに通達をしたところで、PCBが約五万トン以上、一説によれば七万五千トン、こういうことではもう何年かたったなら、どうなりますか。いかに厚生省で安全宣言したところで、次々とこういうものが暴露されてくれば、これは魚があぶないということになるじゃないですか。だから厚生大臣、きょうはあなたしかいないのだが、さっそく会議を開いて――これは環境庁の問題だ、こういうことでほっておけませんよ。あなたのほうは安全宣言するのだから、それならその方面も、きちっと政府として調査をしてやらなければならない。こんなずさんなことでは話にならないと私は思うのです。  そこでもう一つは、私ずっと調査に参りましたら、今度の水銀の問題あるいはPCBの問題で、漁業者は先ほど話がありましたように、つなぎ資金とか言っておりますけれども、専業者あるいは小売り業者あるいはすし屋さん、こういった中小企業に対して、中小企業庁はどういう考えで、どういうように救済していくか。中には、すし屋なんかだめだから転業しようと言っている。小売りの魚屋さんも転業しようと言っている。こういったきめのこまかい対策をあなたのほうで立てるつもりがあるかどうか、ひとつ……。
  173. 原山義史

    ○原山説明員 お答えいたします。  確かに先生御指摘のとおり、該当水域で漁獲された魚介類を取り扱っております鮮魚商とかあるいは市場仲買い人、水産加工業者等につきましては、漁民と同様、売り上げの減少等でかなり大きく被害を受けて非常に困難な立場に立っておるというふうに承知しておりますが、現在これらの被害の大きい中小企業に対しまして緊急融資制度を設けるというふうなかっこうで、関係各省で鋭意検討を進めておるところでございます。  具体的な検討の内容といたしましては、関係各省庁間で特別の緊急融資を行なうというふうな点では意見の一致を見ているところでございますが、融資対象の範囲、すなわち被害を受けた程度をどの程度に定めるべきかというふうな点、あるいはこれらの関連で金利その他の融資条件をどうするかというふうなところでいろいろお話し合いしているところであります。早急に結論を得て一日も早く実施に移していきたいというふうに考えているところでございます。
  174. 岡本富夫

    ○岡本委員 これで終わりますが、もっともっと質問しなければならぬのですけれども厚生大臣、あなたは閣僚の一人として、いまごろこれは検討しておる。私行きましたら、おかゆを食べていましたよ。五月二十二日の発表以来どうにもなりませんというようなところがたくさん出ております。ですから検討ばかりしてもらっても話にならない。安全宣言と同時にその宣言もあなたのほうでしてあげてくださいよ、一緒にテレビでやるんだったら。そういうくらいにして、国民の皆さんが安心し、またいろいろと生業できるように――このままでいきますと、ますます政治不信になると思いますよ。それを強く要求いたしまして終わります。  委員長、どうもありがとうございました。
  175. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 津川武一君。
  176. 津川武一

    ○津川委員 大臣、きょうは治療というものを本来の医学の立場に立たせる、学問的にさせる、そのことによって窮迫している医療費赤字を少しでもなくする、そういう立場から若干の質問をしていきます。  この間水俣病を見るために、少し熊本や水俣を訪ねてみました。そして水俣市立病院で水俣病患者を入れるリハビリの病院施設などを見て回ったのですが、その際、市立病院の分院、リハビリの病院で五百ベッド、これは非常に大きな病院です。この中でケースワーカーがたった一人。手足が麻痺し、ことばが麻痺しておる患者さんたちを入れておるその病院で作業療法、それを担任している人がたった一人。  こういう場合の医療の本質は、たとえば水俣病でいうと、どんなところに住んで、魚がどうで海がどうで、まわりがどうで、どのくらい食べたかなどということをお医者さんが知らないと、ほんとうの治療にならない。ところがお医者さんが、現在の状況で人が足りなくて、それをやっておれない。また治療が終わって退院させたときにいろいろなことを、作業だとか気をつけなければならぬこと、これを見ないと再発して、また来ます。こういうことを防ぐとすれば、ケースワーカーが非常に必要なんです。いま日本で良心的な医療をやっておるところでは入院患者三十名ないし五十名に一人のケースワーカーを置いてあります。  こういうことが絶対に必要な治療、治療の重要な構成部分なんですが、残念ながらこれがやられていない。なぜかというと、医療単価の中にケースワーカーの仕事に払うものが入っていないからです。本来の医療をやろうとすれば、ケースワーカーと作業療法士、これに当然支払いすべきだと思う。これが一つ。  もう一つ、ケースワーカーを置いた場合に、精神科の場合、これも発病にいろいろな条件があります。これもお医者さんがつかまえなければならぬ。退院したときに、再発させるかさせないかは家族や環境や作業や仕事や、また職場の人間関係が決定的に必要になってまいります。とすれば、これを見る人たちがなければならない、これを見る人たちがあると療養の期間がうんと短くなる。本来の医療が行なわれると同時に、あの長い一年半だとかそういう療養期間がうんと縮まります。  私も計算してみたことがありますけれども、五十人の患者にケースワーカー一人置いて作業療法士一人つける。そうすると十三日入院期間が短縮する、それ以上節約できる、こういう人たちを一月、二月短縮することは、このことによって可能です。再発を防ぐ上においても可能であります。  したがって、ケースワーカーや作業療法士たちの仕事を医学の中に、治療の中に認めて、大胆にこれを取り入れる必要があると思いますが、この点いかがでございますか。大臣、私がお話ししたととろで状況がわかったと思いますが、いかがでございますか。
  177. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 ただいま水俣病の問題に関連をいたしまして、お尋ねは診療報酬の現行の点数の中にケースワーカーの分がありませんとか、あるいはまた作業療法についての評価が十分でない、こういうことだと思います。  作業療法につきましては、確かに先生御指摘のとおり、現行の診療報酬の中におきましても、たびたびの改正でそれなりに改善はしてまいっておりますが、現在まだ現行のような状況で、私どもは決して十分だとは思っておりません。特に現在のようなリハビリテーション医療ということが総合医療の一環として非常に重要視される世の中におきましては、こういう問題は今後の大きな検討と申しますか、今後ますますその評価を高めていくべき問題であろうかと思っております。これは現在の診療報酬の改定問題、これは中医協において十分に審議を尽くされるわけでございますから、今後の重要なテーマの一つだろうと思います。  それから、もう一つのケースワーカーでございますが、このほうは、おっしゃるとおり患者さんが自分たちの治療上の問題とか治療費の問題とか、あるいは家庭に残された人々の問題とか、こういったことについて病院側と心おきなくいろいろな相談をするという意味におきまして、きわめて重要な仕事でございます。  先ほどの作業療法の問題あるいはケースワーカーの問題、それらを通じて在院日数が短縮されていく、こういうことも私どもは日本の入院医療をより効率的にしてよくするためには、きわめて必要なことだと思っております。ただケースワーカーの問題は、現在、おっしゃるとおり診療報酬の中に直接には入っておりません。これも今後の、先ほども申し上げました中医協における診療報酬の一般的な検討一つの課題でございますので、そういう意味合いで今後十分に中医協の場で検討していただくようにやってまいりたい、かように考えております。   〔竹内(黎)委員長代理退席、田川委員長着席〕
  178. 津川武一

    ○津川委員 大臣いま聞いたでしょう。あのような状態で、しかも水俣病を扱うリハビリの病院で五百人入院しておるベッドがある。払われてくる作業療法の支払い、ペイされておるもの、作業療法士一人雇わない、厚生省は払ったといっておるが。そこで治療の本来の姿はこの作業療法、ケースワーカーの仕事を取り入れるところに今日的な問題があるのです。このことをまず明確にしていただきます。大臣もこう思うかどうか。
  179. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 確かに日本の医療の中でそういうものが診療報酬の中で評価されてないわけでございまして、将来の方向としてはそういう方向に向かっていくべきものである、かように考えます。
  180. 津川武一

    ○津川委員 診療報酬でなくて医療の本来の姿として、それが厚生省当局、大臣になければならない、これが第一の問題なんです。この点どうです。
  181. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 将来の医療の方向としては、そうあるべきものである、かように考えております。
  182. 津川武一

    ○津川委員 将来でなくて、いま直ちに厚生大臣はそういう治療をするという方針をとるべきだと思うのです。私たち人間にとって何が一番大事か。病気にかかったときに、その病気を取り除いてくれる最大のことをするのが国家の責任です。現実にそれがやられていない。とすれば、将来考えるなどじゃなく、医療の本質としてそうあるべきだという認識を持っているか、この点いかがです。
  183. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 さように私も考えておりますが、この問題は先ほども保険局長から話のありましたように、診療報酬とのかね合いが出てくるわけでございますから、中医協において十分検討していただきたいと思います。
  184. 津川武一

    ○津川委員 そこで、これが医療の本来の姿であるという認識に立てば、それをじゃましているものは何か。これが単価に組まれてないことなんです。したがって、そういう認識が出れば単価に組むことが当然だ。しかも単価に組むと、局長も言われているように全体の医療費が下がる、このことも間違いないことなんです。下がるという認識に立っているかどうか。ほんとうにやってみたのかどうか。ほんとうにやってみると、かなり医療費が浮く、こう思うわけです。したがって大臣、単価に組み入れることをあなたの一つの発意、責任としてやる、こういう態度がほしいし、要求されている。そのために単価が上がるようだったら、いまの医療財政ではやれないのだったら、とことん検討してみる。たくさんの例もない、そういう作業をしたのはないというんだったら、ぼくらが提示してあげてもよろしい、こういうことなんです。いかがでございましょう。
  185. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 いまのお話は、ケースワーカーについて診療報酬の体系の中に組み込んだらどうだろうかという御提案だろうと思います。作業療法のほうはすでにいろいろ御批判があって、なお今後改善する余地はありますけれども、点数表に現在組み込まれております。  ただ作業療法でなくてケースワーカーの問題につきましては、現在の診療報酬の体系が、先生もこれはもう十分御承知のように個々の医療行為ごとに技術料を評価しておりますと同時に、その結果全体の医療費として医療従事者の人件費とか物件費とかその他の経費をどういうふうに適正に評価するかというような、そういうかっこうをとっておりますので、ケースワーカーというものをつかまえまして、ケースワーについてだけ直接的な形で点数表に組み込むことのほうがいいか、あるいはそのケースワーカーがやっております個々のいろんな仕事を別々に評価をして、一般的に診療報酬の中にそれを盛り込んでいくのかどうか。これは私ども非常にむずかしい問題でございますし、また先ほど申し上げたとおり本来、この問題は中医協のほうで十分に検討してもらうべき問題でもございますので、新しい医療の進歩におくれないように、いろいろな面を考慮しながら今後の中医協の検討の課題として十分ひとつ御審議をいただく、このように考えております。
  186. 津川武一

    ○津川委員 大臣、いかがでございます、ケースワーカーの件。
  187. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 十分中医協において検討していただきたい、かように考えます。
  188. 津川武一

    ○津川委員 中医協で検討すること、ちっとも差しつかえありません。だけれども見てみれば、いままでの実態は――厚生省がその気になって中医協に答申を求める、ここのところが大事なんです。中医協にあずけるというんじゃなくして、そのつもりで中医協に答申を求めるというのでなければ、私は返事を強制するわけじゃないけれども、それは言い逃げだ。そして作業療法に対して少ないながら出している、これから検討すると言うが、五百ベッドに対して一人の作業療法十分の単価しかきてない。  もう一つ精神科の領域です。この精神科の場合にずっと見てみると、いままでの生活から環境から職場から家庭からみんな洗わなければならない。これを一人やるとすれば二時間からかかる。これをやっていると、入院させていても治療が始まるまでたいへんなことなんです。実際うちの事情を調べてみると三日も四日もかかる。こういう体勢でないと治療が始められないのです。だから治療が始められるような形をとって、滞院日数、通院日数を縮める。ここに基本的な医療の本質がある。大学病院を見てごらんなさいよ、治療が始まるのが何日たってから始まるか。ここで患者を治療もせずに、ほったらかしておく状態をどうして克服するかということなんです。しかも精神科の領域については、患者と話しているその対話の分は払われているが、実際に外に連れていって作業する分にはまだ払われていない、こういう状態なんです。  ここに医療のほんとうの姿に帰るという基本姿勢がある。私はおまけとしてこれをやると医療財政が楽になる、こう言っている。皆さんは、これは健康保険の財政にからんでいる、だいぶある、そのことが気になるらしい。皆さんがそれを気にすることは、これはいいですよ。だから基本的な立場から、まず医療の本来のあり方、こういうことを聞いているわけです。ここにそういう点での専門家がおればいいけれども、いなかったら、大臣私の話を聞いていかがでございますか。
  189. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 精神病患者の治療に際しまして作業療法の必要なことは私ども非常に重視いたしております。したがいまして私どもといたしましても、精神病患者の作業療法の問題につきまして実態調査も実施いたしまして、その結果につきまして中央精神衛生審議会において現在基準的なものを取りまとめております。  なお、私どもといたしましては、この作業療法につきましては、やはり精神科医療において非常に重要な部分であるということに立ちまして、現実には各病院の犠牲においてこの作業療法が実施されているということも重々承知いたしておりまして、できれば何らかの形でこれがはっきり表に出るように私どもは御援助を申し上げたい、かように考えております。
  190. 津川武一

    ○津川委員 そこで、ことばじりを決してとらえない、作業療法が重要だ、ここはいいですよ。いまは日本の、世界の精神神経学界で精神科医療の根本、第一義は作業療法だというこの認識はお持ちでございますか。
  191. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 持っておるつもりでございます。
  192. 津川武一

    ○津川委員 それならば大臣、この一番の根本の医療が行なわれるような体制が組まれないで、それ以下のとは言わないけれども、投薬することも大事ですよ、いろいろな治療をすることも大事だけれども、これはいわば第二義だ、これには支払われている、第一義のものに支払われてない、この認識を大臣持っていただきたい。この認識のもとに医療体系というものを直していただきたい、こう思うわけでございますが、これは大臣、聞いても聞かなくてもいいかもわかりませんけれども、この点はいかがです。
  193. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 その点は十分認識いたしまして努力いたしたいと思います。
  194. 津川武一

    ○津川委員 となれば、精神科治療において、精神衛生法の第二十九条強制収用、自傷他傷の心配のある者、世の中に大きな迷惑を及ぼして火をつけたり人を刺したりする危険のある人、また自殺したりする危険のある人、これを扱うのが精神衛生法の二十九条、これは強制収用なんです。そこでその状態がとれてくる、そして早くこれをなおしたい、うちの人と対話させたい、出ていって子供の顔をちょっと見させてみたい、そしてうちの商売をちょっと手伝わしてみたい、こうなると急速に治療が進み、なおる。これを精神衛生法の二十九条で外泊ができないのだな。これを作業療法に出すことができない。ここで本来の医療が行なわれていない。われわれがこれをうちに連れていって、家族と談話させるために外泊させると、すぐ監督官庁から、何をやっているのだ、こういうことなんです。ここでも本来の医療がじゃまされておる。したがって、入院させなくてもいい患者が入院している。入院するかわりに薬もやる。そこで保険財政が非常に赤字になるのだ。  そこで、精神衛生法の二十九条を根本的に考え直さなければならないことは、あとで問題にするとして、実際に出していいかどうかという点。これは治療医である、主治医である、鑑定医である人たちが十分わかる。これをやっていないところで、最近の放火、看護人殺害事件、こういうものが出ているわけなんです。この点、大臣考えていただいて――これは精神衛生法の二十九条で、二人の鑑定で入れた。そういう鑑定医の資格を持っている人たち病院にいる。いなければ二十九条患者は扱わせない。したがって、これは主治医の判断にあずけて、危険のある状況はなくなったと見て、なお作業療法、薬餌療法が必要とある場合、これをやらせるように厚生省から指導すべきだと思うのですが、この点はいかがですか。
  195. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 御承知のように、二十九条によります措置入院患者措置疾状がなくなれば、これは直ちに措置解除するということになっております。しかしながら、御指摘のような、たとえば外泊とか作業療法、これはもちろん精神障害者の治療過程におきまして、対人関係というのは非常に大切でございます。したがいまして、その症状によりまして外泊あるいは院外の作業療法にやること自体も治療の一環だというふうに主治医の方が認められた場合には万全の措置をとって、やはり治療の一環として措置すべきである、かように私ども考えておるわけでございます。ただ、専門家でない都道府県段階の職員がしゃくし定木に解釈すること自体につきまして、私どももできるだけ是正いたすように指導いたしたい、かように考えております。
  196. 津川武一

    ○津川委員 各県の実情を調べてみました。かなり違うのです。共通しているところは一本あるのです。本省がそういっているからというのです。ここのところ、われわれが話し合いを進めていくと、だんだんゆるんでいく。話をしないとまた返っていく。  そういう過程の中で、いま話した中央審議会、あの機構を厚生省は縮小しようとしている。精神病の患者は自分を主張できない。したがって家族がかわってやってくれなければならぬ、ケースワーカーがやってくれなければならぬ、看護者がやってくれなければならぬ、医者がやってくれなければならぬ。この病院と医者と看護人とケースワーカーと家族との結びつきがいま大きな問題になって全国にいっている。こういう体制のときに、あの中央審議会をあなたたちは一部局に縮めて今度やってしまうでしょう。中央のやつを何だかんだ一緒くたにしよう。これは拡大すべきときなんですね。  そこで大臣、精神衛生法をこういうふうに運営することはいかがでございますか。主治医が――二十九条は必要だとして、強制収容しなければいかぬという鑑定医たちが、みんないるところに収容しているのです。この鑑定医の判断にあずけて、どこまでこれを保護室に入れておくか。一般介護病棟に出すか、作業療法に出すべきか、外泊させるか、この判断は主治医にあずけて、そこで必要であれば地方にある審議会がこれをチェックすればよろしい。こういう立場はとられませんか。いかがです。
  197. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 非常に専門的なことでありまして、私もそういう知識はあまり持ち合わしておりませんから、公衆衛生局長から答弁させます。
  198. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 御指摘の点非常にごもっともでございます。ただケース・バイ・ケースによりまして非常にむずかしい場合もあろうかと思いますが、原則としては先生のおっしゃるような方向で検討いたしたいと思っております。
  199. 津川武一

    ○津川委員 とすれば公衆衛生局長局長名でいまのような意味の通達を出してくれますか。
  200. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 非常に重要な問題でございますので、やはり一応審議会の御意見を伺わせていただきまして、その上で御趣旨に沿うような方向が出れば、通達を出しても差しつかえないと思っております。
  201. 津川武一

    ○津川委員 その次に、この間、私水俣に行ったことをここに書いておって、厚生省がこれを写し取ってくれたそうですが、私も大臣に直接差し上げますけれども、たくさんのことは、あした環境庁長官三木さんにお尋ねするとして、一つだけ。  認定の委員会を二カ月に一ぺん開いて、大体一回開いて八十人、次の二カ月には認定申請する人たちが二百人くらいにふえてくるのです。そうすると、これはたいへんな話で、環境庁長官の話だけれども、認定を申請して認定がきまると、また治療が始まるわけです。その間に死んでしまう人がだいぶいるのです。これに私もびっくりしました。そこで認定を申請したら、とりあえず医療を開始すべきであると私は思うのです。これも医療財政を少なくする重要な方法でもあると思うのですけれども、一番大事なことは、認定申請したならば、あとで却下になる場合もありますけれども、その場で直ちに医療を開始すべきである。こういうふうに思うのですが、これは大臣の所管でしょう。
  202. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この取り扱いは、ほかの一般に公費負担している医療は、何か認定されたあとでないと、その支給対象にならぬ、そういうことが医療の上で非常に阻害しているんだ、一般論ともつながっておると思うのですけれども、別に私のほうの医療機関運営の立場からいって、疾病があった場合、そういう患者さんが医療を受けること自体は、私はいまの健康保険なり国保なり国民皆保険の現状では、それを受けられると思うのですが、これをどういうふうにさかのぼって取り扱うかという問題だろうと思うのです。  医療を受けること自体は、それぞれに必要があれば受けられるのですが、そのあとこれが認定されない場合、される場合に、さかのぼって、それがどう取り扱われるかというかなり事務的な問題になると思いますので、これは環境庁のほうの認定の取り扱いとの関連が出てまいります。そういうふうに考えております。
  203. 津川武一

    ○津川委員 医務局長、そうはいかないのだよ。認定申請していると、医療機関でも一切保険を適用しないのです。現実にそうなんです。覚えているでしょう、交通災害でも。だからだめなんだ。医療がとまる。そこのところに問題がある。  そこで厚生大臣、私まだ認定前の患者さんに何人か接してみました。そうしたら、自分たちのからだで十九項目、手足がしびれるとか、記憶力がなくなったとか、奥さんのところに行けなくなったとか、いろいろな水俣病患者に出てくるよだれが出るとか、ことばが不自由になったとか、自分が診断しているのです。ところが開業医のところに行くと、これが水俣病として診断しないのだよ。開業医のところに診断基準がないのだ。患者のほうが覚えている。したがって今度は医者が不信感を持たれる。鹿児島大学の井形という教授がたくさんの症状を集めて、これだけ集めれば水俣病だ、こういう一つの指標をつくっている。あの地域に五千とか一万とか、水俣は水俣病だけです。今度第三の水俣病が出てくる。そうなってくると、たくさんの患者が出てくるわけです。この診断基準をつくることが一つ。  二つには、治療指針を出さなければならない。何だかわからないものだから、一生懸命あっちこっち治療している。みんな当てはまらない治療をしている。ここでも医療財政を食っている。だから一番損なことを厚生省はやっているんだ。一番得なことをやりなさいということを言いたい。そこで、診断基準をすみやかにつくろう、治療指針というものを。あまりお医者さんに足かせ手かせを加えるのなら、ぼくも反対しなければならぬけれども、一応の診断基準は出されたほうが患者さんも得だ、お医者さんも得だ、医療財政も得をする、こういうことになるわけなんです。大臣、これはいかがでありますか。
  204. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 水俣についてのそういう実態を私よく存じておりませんが、十分ひとつ検討いたしましよう。
  205. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 診断基準につきましては、研究費をもちまして診療基準の確定の研究というのが水俣市立病院大橋先生を中心に進められております。先般の会議におきましても、われわれ国立病院等から応援体制を求められた場合、医師全般がこの問題に対する認識が必ずしも十分でない。したがって環境庁に、医師の水俣病診断認定に関する講習会の必要を、要求をいたしております。  われわれといたしましても医師全体がこの問題に対する的確な判断ができるようにしていただくことがきわめて重要でございますし、これがまた可能であったならば診断基準あるいは治療基準、治療については私は非常にむずかしい問題があろうと思います。たとえばスモンの場合高圧酸素等を思い切って使ってみたら案外効果があったという事例もございますので、従来の形式にこだわらずに新しい治療法を試みることも必要であろうと思うのでございます。研究費がございますので、その点は環境庁のほうでも続いて推進すると思います。
  206. 津川武一

    ○津川委員 皆さんのあげ足をとるつもりは私には毛頭ないのだけれども、その市立病院なんだが、水俣市の胎児性の子供さんが、おかあさんのおなかで水俣病にかかって小児科に入院している。ところが水俣の市立病院は、さっき問題になった日常の診療に手一ぱいなんだ。あなたはそこでやるといっても、これはできないのだ。だから、そういう通り一ぺんの話ではなくて、個々具体的に行動に移してほしい。このことを申し上げて、あとあした重要な――日本が世界で一つといっていいほどよごれている水俣の地帯なんで、国際的な例として徹底的にこれを調べあげる、研究する、こういう点。それから森永ミルクのことがあった。十四年間ほったらかしておいて、いまになって患者になってくる。だからいまのうちに軽いものまで拾いあげて、そして蔓延しないように、症状が重くならないようにしなければならぬということをここでもう少し議論したかったのですけれども、あしたこれは公害で環境庁相手にして問題にしてみたいと思います。  終わります。
  207. 田川誠一

    田川委員長 以上で、本連合審査会における質疑は終わりました。  これにて散会いたします。    午後五時四十三分散会      ――――◇―――――