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1973-03-02 第71回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会昭和四十八年二月二十六日(月曜日) 委員会において、設置することに決した。 三月一日  本分科員委員長指名で、次の通り選任され  た。       荒木萬壽夫君    木野 晴夫君       北澤 直吉君    黒金 泰美君       田中 龍夫君    灘尾 弘吉君       田中 武夫君    中澤 茂一君       安井 吉典君    山原健二郎君       安里積千代君 三月一日  黒金泰美君が委員長指名で、主査に選任され  た。 ————————————————————— 昭和四十八年三月二日(金曜日)     午前十時三分開議  出席分科員    主査 黒金 泰美君       荒木萬壽夫君    木野 晴夫君       田中 龍夫君    田中 武夫君       芳賀  貢君    安井 吉典君       山原健二郎君    兼務 安宅 常彦君 兼務 上原 康助君    兼務 小林  進君 兼務 楢崎弥之助君    兼務 金子 満広君 兼務 中路 雅弘君    兼務 近江巳記夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         防衛庁経理局長 小田村四郎君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         外務大臣官房長 鹿取 泰衛君         外務大臣官房会         計課長     梁井 新一君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省条約局長 高島 益郎君         外務省国際連合         局長      影井 梅夫君         文化庁長官   安達 健二君         厚生省援護局長 高木  玄君         水産庁長官   荒勝  巖君         通商産業省貿易         振興局長    増田  実君         運輸省航空局技         術部長     金井  洋君  分科員外出席者         外務大臣官房領         事移住部長   穂崎  巧君         大蔵省主計局主         計官      宮下 創平君         大蔵省主計局主         計官      禿河 徹映君     ————————————— 分科員の異動 三月二日  辞任         補欠選任   灘尾 弘吉君     奧田 敬和君   中澤 茂一君     井上  泉君   安井 吉典君     芳賀  貢君   山原健二郎君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   井上  泉君     中澤 茂一君   奧田 敬和君     灘尾 弘吉君   芳賀  貢君     安井 吉典君   寺前  巖君     山原健二郎君 同日  第一分科員楢崎弥之助君、近江巳記夫君、第三  分科員上原康助君、中路雅弘君、第四分科員安  宅常彦君、小林進君及び金子満広君が本分科兼  務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十八年度一般会計予算外務省所管      ————◇—————
  2. 黒金泰美

    黒金主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  私が、本分科会主査をつとめることになりましたので、何とぞよろしくお願いいたします。  本分科会は、外務省大蔵省及び文部省所管につきまして審議を行なうこととなっております。  審議方法は、お手元に配付いたしました日程により進めたいと存じます。あらかじめ御了承をお願いいたします。  昭和四十八年度一般会計予算外務省所管を議題といたします。説明を求めます。大平外務大臣
  3. 大平正芳

    大平国務大臣 昭和四十八年度外務省所管一般会計予算概要について御説明申し上げます。  同予算の総額は、八百七十六億八千六十六万四千円でありまして、これを補正後の昭和四十七年度予算七百三十七億九百八十五万三千円と比較いたしますと、百三十九億七千八十一万一千円の増加となり、一九%の増加率を示しております。また、前年度当初予算に対しましては三三%の増加率と相なっております。  申し上げるまでもなく、ますます多角化し、多様化する外交の要請にこたえますとともに、アジアを中心とする開発途上国に対する経済協力を充実強化し、国際文化交流を拡充し、わが国に対する諸外国理解を高め、在外邦人生活環境を整備すること、また、あわせてこれが実施のための外交機能を強化することは急務でありまして、そのための措置を講じた次第であります。  これをもちまして外務省関係予算概要についての説明を終わります。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げる次第でございます。  なお、時間の関係もございますので、お手元に配付してあります印刷物主査におかれまして、会議録に掲載せられるよう御配慮を賜わればしあわせと存じます。
  4. 黒金泰美

    黒金主査 この際、おはかりいたします。  外務省所管予算の詳細なる説明につきましては、お手元に配付されております印刷物会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 黒金泰美

    黒金主査 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  6. 黒金泰美

    黒金主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間は、これを厳守され、議事進行に御協力を賜わりますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましては、答弁はできる限り簡潔明瞭にお願いいたしたいと存じます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安井吉典君。
  7. 安井吉典

    安井分科員 まず、対ソ交渉の問題から始めたいと思うのでありますが、一般的にいまいわれているのは、どうも田中内閣大平外務大臣ラインにおいて、対ソ外交という側面で、前佐藤内閣あるいは福田外務大臣ラインに比べ、トーンダウンしているのではないか、そういうような評があるわけであります。私も、この間総括質問でも時間がありませんで、北方領土交渉については詳しい質疑をできないまままいっておりますので、きょうはそういうような問題についてお尋ねをしたいと思うのであります。  昨年、衆議院沖繩北方特別委員会根室地方に参りました。そのときも島よ返れという大会が開かれて、私どもそこに呼ばれて出席もしたのでありますが、その中でも、大平外務大臣は、就任をして、中国問題が終わらなければ戦後は終わらない、こういう表現をされておる。中国問題が終わっても北方領土問題というのがあるのを外務大臣は忘れているのではなかろうかという発言があって、それを支持する拍手が強く巻き起こりました。ですから私は、まず、現内閣がもう少し対ソ交渉に熱意を傾けるべきではないかということについてのお考えを伺っておきたいと思います。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 私ども対ソ交渉について熱心さが足らないのではないかという御指摘でございますが、対ソ外交であれ、対中外交であれ、対米外交であれ、その他あらゆる外交の局面において全力投球しなければならぬのが私ども任務でありまして、手を抜いていこうなんというつもりは毛頭ございません。また外交は、対ソ関係が新しく開かれたわけじゃないのでありまして、歴代の内閣から継承いたしまして、それを発展、充実させていくのが任務でございますので、そういう心得をもちまして対処しておるつもりでございます。  対ソ外交につきましていまあります問題は、申すまでもなく平和条約締結問題でございますので、これは機を移さず交渉に移っていかなければならないと存じまして、去年の十月ごろに第一回の交渉を開始いたし、ことし第二回の交渉をやる約束を取りつけてきておるわけでございまして、政府の全外交機能を傾けて対処しなければならない大事なことであると存じておるわけでございまして、安井委員におかれましても、格段の御鞭撻をお願いいたします。
  9. 安井吉典

    安井分科員 その状況の中で、昨日の本会議チュメニ油田開発の問題についてたいへん前向きな政府見解をお示しになったのを私もお聞きしていたわけでありますが、本来の領土問題に入ります前に伺いたいのは、それじゃ具体的に政府はどのような態度シベリア開発に臨もうとしているのか、その問題に対応しようとされているのか、それをちょっと伺います。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国資源政策はこれからますます重要の度合いを加えてくると思うのであります。わが国のように資源の乏しい国でなくても、アメリカにおいてさえもいま資源政策が非常な緊張を呼んでいることでございます。それから、資源保有国側態度がたいへん強くなってまいっておりますことも、安井さん御承知のとおりであります。  こういう段階におきましては、いままでのように、ひとり商業的手段で必要なときに必要な分量を買い求めてくるというようなことでいけないことは当然でございまして、相当長期の展望をもちまして、資源安定確保ということに及ぶ限りの措置を講じておかなければならぬと思います。  その場合、たとえばいま述べられました石油の問題にいたしましても、九〇%以上が中東地区からの輸入に仰いでおるというようなこともきわめて心細い次第でございまして、ひとりサイベリアばかりでなく、広くすそ野を広げて供給圏を確保していくということが必要であると思います。サイベリア日本に近い資源圏でありますし、そこに日本資源供給を仰いでまいりますことは日本の必要でもございますし、きわめて自然なプロセスであろうと思うわけであります。それは、全世界がそういうものとして理解していただけるものであると私も考えております。  問題は、そういう前提に間違いがないといたしまして、取り上げられているプロジェクトをどうこなしていくかという第二の段階の問題になってまいります。それはひとりサイベリアばかりでなく、どことの交渉におきましても、その。プロジェクト自体のフィージビリティーと申しますか、そういうものをよく固めましてまいる過程が必要でございまして、いま日ソ当事者の間でそういった問題について、鋭意折衝が行なわれておると承知いたしておるわけでございます。  しかしながら、わが国の場合、民間の当事者と申しましても、みずからの資力をもって長期にわたって大量の資本を投下していくというような力はないわけでありまして、終局におきまして政府がこれにバックアップしないとでき上がらないこともわれわれ承知いたしておるわけでございまして、したがって、このフィージビリティー・スタディー過程におきましても、政府は調査官を参加させまして現地の調査なんかに携わらせておりますことも御案内のとおりでございまして、このフィージビリティー・スタディーというものがある程度熟してまいりまして、政府が本格的な御相談に乗らなければならぬ時期が来るだろうと考えておるわけでございまして、当面、当事者間の折衝というものを見守っておるというのがいまの姿でございます。
  11. 安井吉典

    安井分科員 もっと御注文をつけたいのですけれども、本来の領土問題がありますので、その点はさらにあとで時間があれば詰めることにいたしまして、私は、領土問題について申し上げたいのは、どうも調子が上がらないというふうな状況で、何か強い国民の世論であるのにかかわらず眠り込まれてしまうのではないかというふうな心配があるわけです。そういうふうな関係からも、私ども国会立場でも、常に問題をさまざまな角度から提起して活発な論議を進めていくということも必要ではなかろうか。そういう立場から、きょうはこの北方領土問題の軍事的な側面からの問題点といいますか、そういうようなものを若干提起してみたいと思うわけであります。  一般的に、領土問題と軍事的な要素とは不可分なものだとされていますが、ソ連が、どう考えてもわが国拘束力を持つとは思えないようなヤルタ協定を持ち出して、千島全域の領有を主張しているのも、軍事上の千島の位置、そういうようなことも頭にあってのことではないか、私、そう思うわけであります。  そこでお伺いをいたしたいのは、歯舞色丹国後択捉、さらに北千島全体についてソ連軍事施設を持っていると私は思うのですけれども政府としてどのようにその状況を把握しておられるか、それをひとつ伺います。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 お尋ねの件につきまして、しかとしたデータは持っておりません。
  13. 安井吉典

    安井分科員 軍事施設があるということは間違いないと思いますが、それはどうですか。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 しかとした材料をもって国会で御答弁するような状況ではございません。
  15. 安井吉典

    安井分科員 アメリカ航空機が先年択捉島ソ連側につかまりて、強制着陸を命ぜられて着陸をしたという事実は当時いろいろいわれましたので、これはもう政府もつかんでおられると思うのです。ですから、そういう大きな航空機着陸できるだけの十分な飛行場もあるし、それから日本の漁船が拿捕されるわけですからね。そういう軍隊も配備をされているというふうなことだけは少なくとも考えられると思うのですが、どこまで政府は詳細なデータをお持ちかわからぬが、そういうことは言えるのじゃないかと思うのですがね。それはどうですか。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 択捉島飛行場があるという程度のことは承知いたしております。
  17. 安井吉典

    安井分科員 全くそういうところに手が回って  いないのか、あるいはおっしゃりたくないのか、どっちかわかりませんが、いずれにしても軍事施設をあの島々の中に持っているということだけは、どうも間違いなさそうだと私は思うのです。政府否定はなさらぬということではないかと思うのです。  沖繩アメリカは返した、だから次はソ連千島を返す番だという宣伝が盛んに行なわれているわけでありますが、これは実は沖繩返還千島返還とは次元の全く違う問題であって、沖繩のほうは平和条約の第三条だし、千島のほうは、いわゆる北方領土問題は第二条(C)であるわけですから、全く根拠が違うし、それから私、こういう観点からも問題を見ることができると思うわけであります。つまり、なるほどアメリカ沖繩返還したが、これは基地つき返還であります。しかもその基地たるや、ちょっと類例のないような濃密な、過度の密度を持った基地つき返還です。基地つきアメリカ沖繩を返してくれたから、ソ連のほうも基地つき日本に返してくれたら、これはあいこになるということかもしれませんが、そんなばかなことを考えている人は一人もいないのではないかと思います。ですから私は、この領土問題の解決のために、軍事的な要素を考慮の外にしてなかなか交渉は進まぬし、解決の道というのはなかなかむずかしいことになりはしないか、こう思うのです。その点どうお考えですか、外務大臣
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 私が申し上げられますことは、日ソの間で、日ソ関係をより安定した基礎の上に置くという意味で、日ソ両国とも平和条約締結という道標を共通に持っておるわけでございます。平和条約となりますと、安井さんの御指摘領土条項というものは大事な柱になってまいるわけでございますので、領土関係が画然としないと平和条約は成り立たぬと思うわけでございますので、そういう意味で、北方領土問題というものをわが国としては問題にしておるわけでございます。  それで、たとえば世上よくいわれる不可侵条約というような問題につきましても、そういう基盤がないとワークしないわけでございますので、軍事的側面というものが結果として関連があることもわかりますけれども、問題のとらえ方は、平和条約をちゃんとしたものにしてまいる上におきまして、領土条項をちゃんと踏まえるということに力点を置いて問題に当たらなければならぬのじゃないかと思います。
  19. 安井吉典

    安井分科員 私が申し上げているのは、平和条約の根幹をなすのは領土問題だ。それはもう間違いありません。ただ、領土問題の解決のためには、その領土に付随する軍事問題を処理するということが非常に重要な問題になるだろうということを私は指摘しているわけであります。特に、基地つき北方領土返還というのは、これはもう考えるわけにはいかぬわけですからね。そういう側面からも、その点は私は大事な問題ではないかと思います。  そこで福田外務大臣は、私ども日米安保条約ソ連領土返還のネックになっていはしないかという指摘に対して、ソ連返還する北方領土には米軍基地提供しないということ、アメリカ提供を求めてきてもそれは拒否するというふうに、明確にその点はおっしゃいました。さらにまた、日本自衛隊の派遣についても、返還領土にはいたしませんということも言明された。これは防衛庁長官もそのときちょうどおられて、自衛隊はやりません、こう言われました。その後私は、これもたしか沖繩北方特別委員会だったと思いますが、大平外務大臣就任直後であったと記憶しておりますが、福田外務大臣のそのような方針について同様にお考えですかと聞いたら、まああまり語尾は明確でなかったかもしれませんが、大体肯定的な御意見を示された。それでは、その返ってくる領土日米安保条約適用除外にするのかと、私はさらに突っ込んでお伺いしたら、いや、そこまでは考えておりませんというのがあのときのやりとりではなかったかと、いま思い出すわけでありますが、その点間違いありませんか。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 その御理解のとおりでございまして、北方領土が返ってまいりました、施設権日本のものになりましたら、自動的にこれは日米間に結ばれておる安保条約がカバーしておる領域になるわけでございます。それで、それを否定するわけにはいかぬと思うのであります。  問題は、しからばそういう立場において、日本政府アメリカに新たに軍事基地提供することになるかならぬかという第二段のことになりますと、福田さんも言われたようでございますけれども、私どもとしては消極的に考えておるという趣旨のことを言ったわけでございます。
  21. 安井吉典

    安井分科員 つまり、たとえアメリカ提供を要求しても、米軍に対する区域及び施設のそれには応じないと、こういうことですね。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうことについては消極的な気持ちでおりますと申し上げたわけでございますし、いまも変わりありません。
  23. 安井吉典

    安井分科員 その消極的というのは、否定をまた否定する意味ですか。そうすると肯定になりますがね。つまり、提供の要求に対して消極的だと、こういう意味ですね。ちょっとその辺、あぶないから……。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 さようです。
  25. 安井吉典

    安井分科員 そうですか。まあ大体前にお伺いをしたニュアンスをそのまま持ち続けておられるような感じでありますが、しかし私は、むしろこれは積極的に主張していかれることのほうが、どうも領土交渉を有利に導く道ではないかというふうな気がいたします。  で、一九五八年の日米安保条約改定交渉のころから六〇年の改定の前後にかけて、ソ連日米安保条約の調印に激しく反対の意を表明した時期がありました。そのときのグロムイコソ連外相の、当時駐ソ大使であった門脇さんへの覚え書き等も非常に激烈なことばで、日本領土から全外国軍隊の撤退というようなことがなければ、歯舞色丹返還も困るのだというふうにとれるような、時間がありませんから詳しく読みませんけれども、そういうふうにとれるような表現がその中にあることも御承知のとおりです。そこでわが党も、安保条約の廃棄にからませて領土交渉を進めていくという主張もあるわけでありますが、私はきょうは、ある学者が、むしろその際こういう主張をしたらいいのではないかという説もありますので、それについて一体どういうふうにお考えかということを伺ってまいりたいと思うのであります。その考え方は、むしろ千島全体を、南千島中千島、北千島といわずその全域を非武装中立地域設定をしていく、そういうことで軍事的な色合いの全くない返還ということで話し合いを進めていくということはどうだろうか、こういうことです。これは法律的にもいろいろ問題もあるし、いろいろな立場から議論のあるところだと思うのですが、何かちょっとユニークな提案ではないかというふうな気もします。つまり、先ほど来の大臣の御答弁の中でも、少し歯切れは悪いけれどもアメリカにも基地として提供しないのだ、ソ連の現在あると思われる基地も当然撤去してもらう、日本自衛隊もやらぬ、こうなれば、それ以外の国の軍隊の来る可能性考えられないわけでありますから、まさにこれは非武装地帯がそこに出現する、こうなるわけです。それならむしろ中立宣言をしてきちっとしたものにするのだということにすることのほうが、アメリカ側にしても本来日米安保条約があるということで、アメリカも、要求すれば、基地が置ける状態アメリカはあきらめなければなりません。それからソ連のほうも、軍事的な要因が全くないということになれば、千島全体も返りやすくなるのではないか。そういう状態になれば、あまり例がない方法かもしらぬが、むしろ中立宣言をあの地域全体にする。一つのおもしろい考え方ではないかとも思うわけでありますが、突然な提起でどういう御答弁が出るかわかりませんが、いかがですか。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 私が承知している限りにおきまして、ソ連側といたしましては、そもそも日本との間の領土問題というのは、もう解決済みだという態度に終始しているわけでございまして、一九五六年当時と少しも変わっていないように思うのです。あなたのいま御提案のような、こういう条件が満足されれば云々というところまでいっていないわけでして、この問題は、そもそももう過去完了の問題で、何でいまごろ持ち出すのだという態度でずっと終始しておるのです。非常に保守的です。ただ、平和条約締結はやろうじゃないかということは積極的です。それをかみ合わせてみると、結局、一九五六年当時の仕分けに従ってやろうじゃないかという態度から一歩も出ていないように思うわけでございまして、条件交渉に応ずるふぜいは読み取れないのです。  しかし、これも第一回をこの間やったばかりでございまして、ことしまた第二回をやってみるわけでございます。今後、相当忍耐強くやらなければならぬ課題だと思うのでございまして、いま御提示されたような考え方ばかりでなく、いろいろ御献策いただきますことは私ども十分拝聴して参考にいたしたいと思いますけれども、いま受け取る感じでは、どうもそういう段階になかなか先方は踏み込もうとしない状況でございます。
  27. 安井吉典

    安井分科員 いまの中立化地帯ニュートラルゾーン考え方は、最近はないけれども、歴史的には、ウイーン会議議定書による上部サヴォア地方のシャブレー、フォーシ二一両州をニュートラルゾーン設定をした例もありますね。もう一つは、これは間近な例なのですが、ポーツマス平和条約によって樺太、それからベルサイユ平和条約によってライン川沿岸、これを中立化地帯設定をした等の例があるようです。ごく最近はあまりないようですね。ですから、一つ考え方であり、ヤルタ協定だの平和条約第二条(C)項だの、そういうふうな非常に処理がむずかしい、またあいまいな次元論議を乗り越えて、東西冷戦はいま新しい段階に入っているとはいうものの、ちょうどアメリカソ連の中間の千島列島全体に平和なスクリーンをずっとつくり上げていくという、これは全く新しい提案にもなると思います、考え方によっては。単なる領土問題というよりも、何かそういう新しい提案として進めていくこともおもしろいのではないか。これは私どもの党の決定でも何でもないし、私どももこれから、おもしろい考え方だというのでもう少し検討してみようかと思っているわけでありますけれども一つの提言ではないかと私はいま考えております。特に、あの根室へ行ってみてよくわかるのですけれども、すぐ目の前に国後択捉の大きな島が並んでいる。歯舞色丹などについては、これはもともと根室市の一部なんですからね。合併前は歯舞村だったが、歯舞村の役場は根室の突端にあるわけですし、役場の一部が島に点在している。それが向こうの領有になっている状況だから。国後島は千五百平方キロですから、沖繩が千二百五十四平方キロ、だから国後の島だけで沖繩の本島よりも大きいのです。その向こうの択捉島は、その沖繩の三倍の広さがあるわけですからね。そういうでっかいのが目の前にあるという状況。いま木材がたいへん足りなくて、重大な公共事業等もピンチに襲われているのは御承知のとおりなのですが、あの島には木材資源はたくさんある。さらにまた、瀬戸内海をはじめ日本海の沿岸の漁業は、公害でどうしようもないような状況になっているが、ここには公害のない漁業資源がきわめて豊富にある。  こういうふうな状況にあって、しかもそこがいつまでも外国の扱いである限り、漁船の拿捕という安全操業問題が常に次々と起きてくるのは当然であります。  そういうふうな状況の中で、このソ連基地なり基地状況がどうかということについて、外務大臣は少しも明言されませんでしたけれども、すぐ目の前にあって、しかも北海道には質量ともに日本の最強の自衛隊が配置されている。米軍基地もあった。レーダーサイトも根室にある。すぐ目の前に、いかなるものかわからぬが、ソ連基地もあるかもしれないという状況です。沖繩は二千キロも先なのですけれども、ここはもう目の前ですよ。そういうふうな状況のもとで、いまのいわゆる領土問題というものは起きているわけですから、だから私は、領土問題からの軍事要素というものがやはり最大の問題点になるのではないかと思うわけです。ですから、火薬のにおいのない返還、そういうふうな形をぜひとも実現していかなければならぬのではないか。ややもすれば眠り込まれそうな領土問題で、先ほどの大臣の御答弁でも、向こうは全くその気がないのですよというだけではこれは済まぬのです。すなわち、それをどうするかということになると、これは相手がある問題ですから、なかなかそうはいかぬにしても、やはりいろいろな角度から問題提起をしていくということが必要ではないかということで、眠りこけようとするのを起きなさいよというような意味で、私はきょうはひとつ問題提起をしたわけです。ぜひいろいろな角度から問題解決、前進の道を見出していただきたいと思うわけであります。  ですから、やはり経済協力だとか、文化交流だとか、そういうようなものをどんどん積極的に進めていくという、そういう中からまた糸口も開けてくると思う。だからチュメニの問題も、経済と領土問題とはからみ合わせるべきではない、これは明確でありますけれども、しかし、どんどん交流を深めるということは、私は非常に重要な問題だと思う。だから、外務大臣もやはり今度ソ連にも行くべきだと思うのです。中国へ先に行ったので、向こうで評判悪いのかもしれませんけれども、しかしそういうことを言う問題ではないと思う。どんどん向こうに行っていただいて話を進めるべきだし、それから総理大臣もぜひ行くべきだと思います。この間の予算の一般質問でもその問題提起がございましたけれども、重ねてその点を伺っておきます。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 まあ日ソは永遠のネーバーでありまして、いかにかして分別を出して、友好的な共存を続けてまいらなければならぬことは当然であります。そうして、そのためにあらゆる努力を払いまして、両国の関係を親密なものにしてまいる努力を惜しんではならないと考えております。私も去年参りましたが、ことしもまた参る約束をいたしておるわけでありまして、そういうのは決していとうつもりはないわけでございます。  それから、経済協力の案件もどんどん進んでおるわけでありますし、貿易も非常に着実な前進を来たしておるわけでございますので、こういった関係領土問題にかかわりなく、どしどし進めていかなければいかぬと考えておりまして、そういう努力の過程の中で相互の信頼というものがだんだん固まってまいる、定着してまいるようにやっていかなければならぬ、こういうふうに思っておるわけでございます。今後もそう一そう努力をしていかなければならぬと考えております。
  29. 安井吉典

    安井分科員 いまの段階で、対ソ交渉外交日程を外務大臣は持っておられませんか。まだ明確になっている日程はありませんか。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 第二回の平和条約締結交渉をモスクワでことしじゅうに開くということでございます。しかし、目下国会開会中でございますから、国会が終わりました段階で具体的な日取りをきめたいと思いますが、モスクワで第二回の交渉を持ち、外務大臣が訪ソするということだけは双方承知しております。
  31. 安井吉典

    安井分科員 もう一つ、きのうから日ソ漁業交渉が始まっておりますので、そのことについてちょっと伺っておきたいと思います。  モスクワと東京と、両方で始まったわけですが、きょうは水産庁は来ていない。——それでは水産庁ではなしに、外務省限りでお答えが願える点についてお答えいただきたいと思うのでございますが、その交渉の中で、ソ連側は相変わらず相当強い態度で臨もうとしているように伝えられております。しかし、サケ・マスは一年置きの、ことしは豊漁年ということになっているわけですから、一昨年の九万五千トン以上を確保してほしいという国民的な希望は当然ではないかと思います。しかし、むしろ逆に、禁止区域の拡大だとか、規制強化だとか、そういうふうな方向を打ち出そうとしているように伝えられておりますし、特に昨年問題になった抱卵ニシンの禁止段階から、さらに進んで索餌ニシンまでを漁獲制限しようという打ち出しをするのではないかというようなことも伝えられております。いずれにいたしましてもこれは交渉ですから、一がいにいまどうこうというわけにはいかぬと思いますけれども、よほどしっかりした態度日本政府は臨んでいかなければならぬのではないかと思っております。その点についてひとつ伺います。
  32. 大平正芳

    大平国務大臣 日ソ漁業交渉でございますが、これは三つのカテゴリーに分けて行なわれるのでございます。一つ日ソ漁業委員会、これは一九五六年の日ソ漁業条約に基づいて、サケ・マスを対象とする日ソ漁業委員会の間で行なわれる交渉でございます。本年は第十七回目の会議が三月一日から東京で開催されております。二つ目は、一九六九年から毎年モスクワで開催されていましたけれども、今度五回目の交渉になりますカニ交渉、これは三月一日モスクワで開かれております。第三番目というのは、日ソのツブ交渉でございます。昨年の政府交渉の結果、新たにツブも規制の対象とすることになりましたので、本年、第二回の交渉を三月一日からモスクワで開催しております。  この交渉につきまして、御承知のように、例年日ソの見解が対立いたしまして、妥結に至るまで相当長期間、二カ月内外の期間を要しておるわけでございますが、政府としては、北洋漁業の安定した操業を確保するため、最大限の努力を払ってまいらなければならないのは当然でございます。いま御指摘のように、しかし漁獲量の決定、規制措置の強化がことしもまた主要論点になることと思います。サケ・マスにつきましては、本年はマスの豊漁年でありますので、少なくとも豊漁年に当たる一昨年の水準を何とか確保したいと考えております。カニ、ツブの漁獲量でございますが、これは資源状態からいたしまして、各水域につきまして昨年程度の水準はどうしても確保しなければならないと考えております。いま御指摘の各魚種の規制措置につきましては、科学的に見て妥当と思われる規制措置をとるという基本的態度で臨みたいと思っております。
  33. 安井吉典

    安井分科員 大体の態度の御表明があったわけでありますが、いずれにしても、毎年毎年交渉のたびに規制は強化され、日本側は後退に次ぐ後退、日ソ漁業交渉というと、ああまた百日交渉、マラソン交渉で、最後はそういうところで幕かというふうな感じを私ども受けるわけです。ぜひともそういういつものやり方でないようなところでおさめてもらいたいものだと思うのでありますが、水産庁長官もお見えですから、その点どうでしょう。
  34. 荒勝巖

    荒勝政府委員 日ソの漁業交渉につきましては、先ほど来御指摘のように、非常に長期にわたる交渉でございまして、日本側といたしましても、かねてからこの漁業協定を数量の交渉について毎年行なうというのは少しおかしいんではないか、長期間協定というのも少し行き過ぎでございますが、少なくとも二カ年くらいの単位で、豊漁年、不漁年を合わせた二カ年単位くらいで漁業交渉をするのが妥当ではないかということで、相当前々からソ連側に申し入れしまして、この漁獲量の決定について強く要望しているわけでございますが、ソ連側立場として、こういったものについては毎年というふうに姿勢をくずしませんで、今日に至っていることは残念でございますが、われわれといたしましても、なお今後機会をとらえて、御指摘のように安定した操業が守れるように交渉をいたしたい、こういうように考えている次第でございます。
  35. 安井吉典

    安井分科員 いつもの長期交渉の結果、出漁期がもう目の前に来て、そこでもうこれで涙をのむというふうな形、こういうパターンが続いてきているわけです。いま大臣や長官がおっしゃったが、資源状況はそう毎年変わるわけでもないんですから、ある程度の期間を見込んだ漁獲交渉の妥結があってもいいように思うのだが、なかなか向こうさんのほうが承知してくれないからそういうことになっているのではないかと思いますけれども、漁獲期が近づくまでずるずるいって最終決定というふうな、そういうあり方から脱出できるような何か知恵があってもいいような気がするのですがね。当面、交渉の当局者にとってみれば、なかなかそうはいかぬのかもしれません。私どもわきから見ているようなものではないのかもしれませんけれども、何かそのパターンから逃げて、新しい方向に行けるようなくふうはないんですか。これは大臣にもあるいは長官にも伺います。
  36. 荒勝巖

    荒勝政府委員 かねてからただいま御指摘のように、もう少し日ソの漁業交渉がスムーズにといいますか、安定的に行なわれるようにということで、機会をとらえてこれにつきましてはソ連側に申し入れをしているわけでございますが、昨年の夏イシコフソ連漁業大臣が来日したおりに、赤城前大臣からこのことににつきましても、ひとつ安定的な操業ができるようにということと、それからさらにソ連側が、日本がいわゆる遡河性の魚種であるサケ・マスについて沖合いでとることばかしを考慮しているということに対しまして、日本側といたしましては、とるだけでなくて、ソ連のサケ・マスの遡上の河川あるいは産卵する湖に日ソ共同してふ化場をつくって、大いに北洋におけるサケ・マス資源の繁殖、増殖ということについて共同の提案等をいたしておりまして、そういったことについて当時は、非常にソ連側も乗り気で、さらにその後十一月前後には、それらの点につきましての技術者が向こうから日本にも来日いたしまして、さらに今後交渉を続けるということになっているわけでございますが、その点につきまして、今回の交渉に際しまして、日本側からあらためて、ふ化場等を今後ふやしていこうという提案をする予定にいたしている次第でございまして、そういったことから、資源の安定的な拡大ということも今後努力することによって、数量の確保をいたしてまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  37. 安井吉典

    安井分科員 いまおっしゃったその人工ふ化の拡大は、私はこれは大事な問題だと思うし、特に日本の技術が優秀ですから、やはり政府も思い切ってお金を出すべきだと思う。そういうふうな中でそれを拡大していく、あるいは共同ふ化場というふうに持っていくとか、そういう努力を続けるということが一つあると思います。いずれにしても、毎年毎年同じようなことをやっていて、何か能がないじゃないかというふうな批判もあるわけですよ。さきに言ったように、これは実際その局になってみればなかなかそうはいかぬということはよくわかりますけれどもね。ですから、これから新しい局面も開くという御努力をひとつ願っておきたいと思います。  そこで、日ソ漁業交渉そのものではない外的な要因として、来年海洋法会議が行なわれるための準備会議交渉期間中に行なわれる問題が、どういう影響があるのかとか、あるいはまた、時によっては同時に行なわれるかもしれない日中漁業交渉等のぶつかり合い、こういうようなものがいろいろ影響がありはしないかというふうな心配も聞くわけでありますが、その点、政府はどういうふうにとらえられておられるか。そういうふうないかなる障害も乗り越えた態度でお進みをいただかなければならぬと思うのですが、いかがですか。
  38. 荒勝巖

    荒勝政府委員 海洋法会議が一応ただいまのところ明年開かれるということに予定されておりまして、それのための準備会が、いままで約四回ほど開催されまして、逐次その会議を通じまして、海洋法に対する海外の各国の姿勢が明らかになっております。さらにこの三月には、ニューヨークでまた海洋法会議のための準備会が開かれることになっておりまして、外務省はじめ農林省からも、これにつきましては人を出しまして、日本側の立場をあらためて強調するということになっておるわけでございます。  その中で、われわれといたしましては、この海洋法会議につきましては、逐次世界の、特にラテンアメリカあるいはアフリカ、アジア諸国が、漁業専管区域といいますか、経済区域として二百海里等を要求しておりますので、そういったことにつきましては、その不合理性を究明しながら日本立場を守ってまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございまして、これらはこの秋、またさらにジュネーブでも海洋法会議のための準備会が開かれるということで、そういう会議を通じまして、各国のコンセンサスが進められてまいることになると思いますけれども日本もそういった中で日本立場主張してまいりたい、こういうふうに思っているわけでございます。  なお、中国との漁業交渉の問題につきましては、先般田中総理が北京に行かれましたときの共同声明の中で、日中の漁業協定を締結するという趣旨のことも声明されておりますので、日本側としても、これらにつきましては、ただいま十分に検討を続けている次第でございます。  さらに、先般日本側の政府のほうも北京へ行く機会がありました際に、水産庁からも次長を同行させまして、北京側に打診をしたわけでございますが、日本側といたしましては、現在日中間には民間漁業協定というものが締結されておりまして、これで日本側の西のほうの漁民の方々は一応安定した操業ができているわけでございますが、この六月二十二日で民間漁業協定が切れることになっておりまして、この切れることと相並行しながら、日本側といたしましては、早急に漁業交渉について、政府交渉について開始いたしたいという意向を持っておるわけでございます。一応いまの段階におきましては、大使が両国で正式に交換され、また向こうで大使館活動をされる段階におきまして、あらためてこの問題を正式に取り上げてまいりたい、こういうふうにいまのところ考えておるわけでございます。  大きな意味では、国際的な海洋法会議の問題と、あるいは日中の漁業協定の問題がからんでいるかもわかりませんが、われわれといたしましては、海洋法会議は海洋法会議として整理し、また日中間は一つの、一衣帯水といいますか、同じ共同の漁場を持っているという立場から、共同の資源の保存と両国の国益の立場を踏まえながら、相互理解立場で、日中の間は交渉を進めてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  39. 安井吉典

    安井分科員 私が、特に申し上げている気持ちは、それぞれ別な会議であって、日ソ漁業交渉とは本質的なかかわり合いはないわけですから、たとえば漁業専管水域二百海里説などが強く出されてきて、それが交渉の中に、こう微妙な空気を吹き込んできたり、あるいは日中交渉が、これもまた微妙な国際情勢で逆な投影をしてきたり、そういうふうなことをやはり一つ一つ払いのけて、漁業交渉というのは基本的には資源問題ですから、そういう科学的な基礎に立っての交渉というたてまえをぜひとも貫いてほしい。そういうことをいろいろ申し上げているわけであります。それについてはどうですか。  それからもう一つ、あわせて、もう時間がなくなりましたので——。安全操業問題の交渉も昨年日本案を提示したままになっているように思うのですが、そのお見通し、これをあわせて、これは大臣から伺います。
  40. 大平正芳

    大平国務大臣 漁業問題の本体が資源問題であるということ、そしてそれは科学的なデータに基づいて公正にやっていかなければならないという趣旨、よく了解できることでございまして、政府としてもそれを踏まえて事に当たるつもりでございます。  それから安全操業問題につきましては、去年の秋、こちらから一案を提示してあるわけでございまして、私が訪ソいたしました場合も、それについての回答を求めたわけでございますが、なるべく早く回答をするという返事はちょうだいしたのでございますが、いまなおまだ先方からの対案の提示が見られない状況でございます。なお督促をしておるところでございます。
  41. 安井吉典

    安井分科員 それじゃ終わります。
  42. 黒金泰美

    黒金主査 次に、芳賀貢君。
  43. 芳賀貢

    芳賀分科員 大平外務大臣お尋ねします。  第一は、昨日の三月一日から東京とモスクワにおいて日ソ漁業交渉が開かれております。東京においての漁業交渉は、一九五六年に締結された日ソ漁業条約に基づいた一九七三年の第十七回日ソ漁業委員会交渉ということになるわけであります。これは十七回目ですが、過去の毎年の漁業交渉の中においても、一番大事な基本的な問題というものが、なかなか解明されないで今日に至っておるわけです。それは、漁業条約の一番中心をなす目的、精神は、もとより公海における漁業ですからして、公海における漁業の原則の上に立って、まずその公海の海域における海洋資源を両当事国の間において十分それを培養するということを基本にして、科学的な根拠の上に立って両国の経済発展に寄与するために、この漁業交渉というものは運営されておるわけです。ところが、大事な科学的な調査、その結論に基づいた漁獲量やあるいはその運営の方針というものは、いまだに明確になっていないわけです。しかも日本側においては、毎年ソ連側の一方的な資源論に押されて、毎年の漁獲量が減少しておる、あるいは禁漁区域が拡大しておるというような状態であります。  特にことしは、日ソ講和条約締結の年であるという国民的な期待もあるわけでございますからして、漁業条約が日ソ共同宣言とともに、一九五六年に鳩山総理大臣がモスクワに出向いて、そうして締結した経過もあるわけですからして、この点はことしは政府としても明確な方針を明らかにしてもらいたい。同時に漁獲量の問題については、ことしは幸いにして豊漁年に当たるわけですからして、一昨年の一九七一年の豊漁年には九万五千トンの漁獲量を妥結しておるわけですからして、そういう実績を基礎にして、これをどうするか。  一方モスクワにおいては、三月一日から、これは五年前に漁業条約からカニ漁業あるいはツブ漁業がはずされて、この点については、日ソ政府交渉ということになって、ことしが第五回目ということになっておるわけですけれども、これについてもソ連側は、カニ漁業あるいはツブ漁業については、これは大陸だな資源であるということになれば、この漁業というものは公海漁業ではない、そういう一方的な主張を行なっておる。これに対する日本側の有力な反論というものはないままに毎年毎年押しつけられておる。むしろ恩恵的な決定を受けておるというような状態で推移しておるわけですからして、同時に開かれておる二つの漁業交渉にあたって、基本的にはことしはどうやるか。具体的な内容については、荒勝水産庁長官出席しておられますので、補足的にまた説明を聞きたいと思います。
  44. 大平正芳

    大平国務大臣 いま安井委員の御質問にお答え申し上げたわけでございますけれども、いまの三つの漁業交渉にあたりまして、例年見られる日ソ間の対立の見解で長い交渉期間を要していることはたいへん残念でございますが、政府としては、北洋漁業の安定した操業を確保する意味合いで最大限の努力を、芳賀委員がお示しになりましたような科学的な根拠を踏まえて、最大限の努力を払ってまいりたいと思うわけでございます。そして妥結漁獲量目標につきましても、サケ・マスにつきましては、一昨年の目標を下らないところでどうしても確保しなければならないという決意で当たっておる次第でございます。もっとも、三月一日に交渉は始まったばかりでございまして、この推移を見ながら政府としても、今後一そう努力を重ねてまいるつもりでございます。
  45. 芳賀貢

    芳賀分科員 大臣、それじゃ答弁にならぬでしょう。もう十七回目の委員会ですからね。たびたびの委員会において、たとえば科学的な共同調査の結果に基づいて漁獲量の決定、あるいは資源の増殖をどうするかというようなことについて明確な結論が出ておらないのですね。特にわれわれの主張は、長期的な取りきめというものをするべきではないか。毎年毎年同じような交渉をやって、長いときには百日交渉といわれておるわけですからして、その場合には、必ず五月から操業開始のサケ・マスの漁期をずらさなければならぬ、あるいは四月から始まるカニ漁業の漁期がずれ込んでいくというような、そういう混乱を毎年味わっているわけです。だから、三年とか五年を一期とした見通しをちゃんと立てて、そして豊漁年、不漁年を基礎にしたそういう長期的な、持続的な方針というものを立てる必要があるわけなんです。それをただ鋭意努力しますじゃ、これは全然方針がないじゃないですか。
  46. 荒勝巖

    荒勝政府委員 十七回の会合を重ねておるわけでございますが、日ソ委員会が始まりましたときこま、サケ・マスの資源状態等につきましても十分補足されないまま両国間のサケ・マスの分配論が中心の議論になりまして、ソ連側は、サケ・マスは陸上といいますか、沿岸部でとったほうが大きくなってそのほうが有用であるといい、日本側は、沖合いでの捕獲のほうが、待機している間のロスを防止することができるということで、沖合いでとったほうが、サケ・マスの資源にとっては有利であるという議論が、これはいまだに対立した議論でございます。その間におきまして、日ソ双方で相当に長年月をかけて、毎年毎年資源状態の把握には相当両国政府とも力こぶを入れて調査している次第でございます。毎年開かれます、最近五年ほどの委員会の経過を見ましても、資源問題の議論に、双方の資源学者が約三十日近くかかって常にこの問題について、サケ・マスにつきましても、そのサケ・マスの中でもベニはベニ、シロはシロ、ギンはギンというふうに、マスはマスというふうに、相当長期間にわたって両方のデータを出し合って議論しているわけでございますが、ある部分につきましては見解の一致を見るものもありますが、またある部分につきましては、技術者の意見ではありますけれども、何となくそれぞれの国柄を反映いたしまして、見解が非常に違うという場合もございます。場合によりましては、日ソ間の共同の発表のときにも両論併記、日本側は資源状態はいいという意見を言い、ソ連側資源状態は悪いと言ったというような形で、両論併記という形で、結局結論を得ないまま、あとは漁獲量の決定というふうな形になっておりまして、ただ単に初めから漁獲量交渉だけではございませんで、やはり技術者の立場に立って相当長い間資源論争を行ない、またあらかじめ毎年技術者の交換を行ないまして、両国のそれぞれの領土の中、相手の領土の中での調査を、お互いに便宜をはかって調査しておりまして、資源状態については、相当両方とも科学的立場に立って議論が十分尽くされておるけれども、見解の統一がなかなか困難である、こういう状態になっております。
  47. 芳賀貢

    芳賀分科員 ソ連側資源論については、毎年サケ・マスについてもニシンにしてもカニにしても、資源が減少の方向にある、非常に悲観的な説をあげておるわけですね。日本政府としては、資源問題についてはどうなんですか。これらの魚族が資源的に、ソ連の言うように減少の傾向にあるのか、その点はどうなんですか。
  48. 荒勝巖

    荒勝政府委員 従来からの立場でございますが、マスにつましては一時の最盛期から比べますと、まだあまり回復はしていないとは思いますが、一時の、一番最悪の事態は相当去った。それで逐次マスにつきましては資源状態は回復してきておるのではなかろうかということで、去年にいたしましても一昨年にいたしましても、マスの回遊量というものはそう悪くはなかった。まさにおととしのように豊漁年を反映して非常によかった。ことしも、おととしの豊漁年に対して、それほど劣っていないという姿勢は十分お答えできるのではなかろうか。これにつきましても、ソ連はそれほどたいした異論は言わないのではなかろうか、これは私のほうの一方的な見解でございますが、そういう見解を持っております。  ただ、ベニにつきましては、ソ連のほうでも非常な関心を持ち、また同じサケ・マスの中でも価値がわりあいに高いということもございまして、日本側も相当な関心を持っておるわけでございますが、これにつきましては、資源状態というものは、五年、十年ほど前に比べますと、相当に悪化してきておることはお互いに認めざるを得ない。ただ悪化の状態が、ソ連が言うほどひどいものであるのか、日本側の科学者が言うようにそれほどよくないという程度のものかということが見解の分かれるところでありまして、ソ連側といたしましては、たいへんに悪化しておるということを強く主張しておりまして、われわれのほうとしても、資源がよくなっているというふうには認めていないというようなこともありまして、昨年の場合にも休漁区域というものをある程度拡大いたしまして、資源の保存にやはり協力しておるという姿勢を示しておる次第でございます。
  49. 芳賀貢

    芳賀分科員 外務大臣お尋ねします。  いま水産庁長官から説明がありましたが、もう一つの問題は、一九七一年から抱卵ニシンの全面的な禁漁、それからオホーツク海の北部においてはこれもニシンは全面禁漁という、こういう取りきめが行なわれたわけですが、これも永久に禁漁というわけではないのですから、資源的に一時停止をするという、そういう意味を持っておるわけですからして、この点についても、日本側の資源調査の結果に基づいて、いつまでもいつまでもニシンが漁獲できないなんということではいけないと思うのです。この点については、ことしはいかなる主張を行なうか。  もう一つは、これは日ソ漁業委員会の第二回の委員会、つまり五八年の委員会のあとで、日本側がオホーツク海の公海においては、一万トンの漁獲量と引きかえに、わがほうからオホーツク海におけるサケ・マスの漁業を停止するという、そういう申し出を行なって、そして自来十数年にわたってオホーツク海の公海においてはサケ・マス漁業が停止されたわけです。これもやはり資源的な調査の結果に基づいた場合に、永久停止、永久禁漁ということではないわけですからして、今回の交渉の場合においては、やはりこの問題もわがほうから議題に提案をして、そうしてオホーツク海におけるサケ・マス漁業の再開の問題等についても、国益を守る立場から積極的に取り組む必要があると思いますが、その点は外務大臣としてはどう考えますか。——だめだよ長官、何でもあなたがやるのじゃ、外務大臣は要らぬじゃないか。
  50. 大平正芳

    大平国務大臣 ことしの交渉の議題の整理がまだついていないのでございますが、これに臨む日本側の心組みにつきましては、水産庁長官から説明させます。
  51. 荒勝巖

    荒勝政府委員 抱卵ニシンの点でございますが、アジアにおきますニシンがやはり資源的に非・常に悪化してきているということは、なぜ悪化したかという原因については、日ソ双方ともまだ十分な原因は把握していないわけでございます。ただ事実上漁労の数量が、戦前等の最盛期に比べますと非常に減ってきておるということが議論の中心になるわけでありますが、ソ連側といたしましては、日本の乱獲が大きな原因だということを主張し、日本側としては、原因は不明だが、多少いわゆる海況の異変が大きな原因ではなかろうかということを瞬く主張しておりますが、海況にどんな異変があるのかということは、日本側としてはまだ十分原因は掌握していないのが事実でございます。  したがいまして、昨年の漁業交渉におきまして、こういった抱卵ニシンにつきまして、一応日本側としてはソ連側の言い分を聞いて漁獲はその期間停止する、そのかわり索餌ニシンのほうは産卵後の話でございますので、とってもいいではないかということで、オホーツク海でやはり従来どおり索餌ニシンのほうはとっているわけでございますが、これは肝心なカズノコが入っていない、卵が入っていないということで、経済性が非常に少ないということは、先生のほうも十分御存じのことと思っております。これにつきましては、ことしもさらに交渉をいたすわけでございますが、向こう側はたぶん、やはりこの抱卵ニシンの禁漁時期については、従来と同様の姿勢でくると思います。日本側といたしましては、これにつきまして反論する予定にしておりますが、まだきのう開会したばかりで、その議題整理で相当お互いにいろいろ立場がございまして、まだその会議の議題が決定していないということもございまして、ソ連側態度も、きょうかあすあたりにならないとわからないのでございますが、一応そういう姿勢で議題整理に臨んでおる次第でございます。  次に、オホーツク海のサケ・マスの禁漁区の問題でございます。これは確かに日ソ漁業委員会が開始されたときは、ほとんど全面的に開かれておったわけでありますが、年々の交渉過程で、オホーツク海は事実上全面的に禁漁になりまして、そのときには、資源が回復したらオホーツク海はまた解禁するということで、日ソ双方そういう理解のもとに進めておりますが、やはり年々の漁獲量の推移を見ますと、一たん禁漁区になった地域を解除させるだけの猛烈なデータが、日ソ双方ともそういう意味でのデータが不足しているということで、禁漁区の解放については、まだ議論といたしまして日本側から積極的に強い姿勢ではいたさず、この禁漁区域をもって十分であって、それ以上拡大するということは、むしろ予防行為の拡大であるということで、その禁漁区域のこれ以上の拡大につきましては強い姿勢で反対している、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  52. 芳賀貢

    芳賀分科員 あと二点外務大臣に質問があるのですが、時間の関係もありますから、こちらから質問の要旨を申し上げます。  第二点は、日ソ講和条約の実現については、政府としても外務大臣が先頭に立って努力しておると思うわけですが、その場合、当然北方領土返還の問題を切り離した講和条約の締結はあり得ないと思うのです。一つは一九五六年に締結した日ソ共同宣言の第九項には、講和条約を締結する際には、歯舞色丹の両島は返還する用意があるということが、これが宣言に明文化されておるわけです。もう一つの問題は、一九五一年のいわゆるサンフランシスコ平和条約の第二条(C)項で、日本政府千島列島それから南樺太の領土権の放棄をうたっておるわけです。時の吉田総理大臣政府を代表して、領土権の放棄を条約の中で署名しておるわけです。この二つの問題を踏まえて、一方においては共同宣言の中で、講和条約の実現の際には歯舞色丹の両島は返還する、それからサンフランシスコ平和条約の第二条(C)項においてはこれらの領土権を放棄しておるという、この条約上の厳然たる事実を踏まえて、政府としては日ソ講和条約の締結促進とあわせて、どのように北方領土返還に臨むか、この根本的な姿勢というものをこの際明らかにしてもらいたいわけです。  もう一つは、国連の第三次海洋法会議が明年正式に開会されることがすでにきまっておるわけですが、この場合、領海の幅員をどうするか、それから漁業専管水域をあわせてどう設定するかという問題については、第一次、第二次の海洋法会議においても結論が出ないまま今日に推移しておるわけです。特に一九六〇年の第二次海洋法会議においては、アメリカ、カナダの両国提案になるものは、領海の幅員を六海里、それに漁業専管水域六海里を加えて十二海里をするという提案がなされたわけでありますが、これは採決の結果一票の差で敗れておるわけです。その場合、日本は棄権して傍観しておるというような歴史的な経過があるわけですが、最近のこの領海問題や排他的経済水域の問題等については、たとえば二百海里の専管水域あるいはまた領海二百海里説も出ておりますし、また大部分の国は領海については十二海里にすべしというような説も相当大勢となっておることは御承知のとおりであります。いままでこれらの問題については日本政府としては常に傍観する、そういうようなまことに自主性のない態度で進んできておるわけですが、今度の第三次海洋法会議については、どういう領海並びに漁業専管水域の設定の方針で臨むかということについては、いつまでもほおかぶりで過ごすわけにはいかぬと思うのですよ。この基本的な姿勢、先ほど言いました日ソ講和条約の早期締結とあわせて、懸案の北方領土返還にどのような基本的な方針で対処するのかという、この二つの問題について、これは外務大臣から直接明確にしてもらいたい。
  53. 大平正芳

    大平国務大臣 平和条約締結交渉にあたりまして、いま御指摘日ソ共同宣言、それからサンフランシスコ平和条約、二つ念頭に置いてやらなければならぬことは当然でございまして、サンフランシスコ条約で放棄いたしました領土権の範囲につきましては、固有の領土は入っていないという見解を堅持してやってまいるつもりでございます。  それから海洋法関係でございますが、お説のように、国際社会の大勢が十二海里に向かいつつあるという情勢は十分認識しております。しかし、何ぶんにも本年末から来年にかけていわゆる海洋法会議が開催されることでもございまして、そこで何らかの結論が得られる状況でありますので、その結論を待って対処したいと思っております。  経済水域の問題でございますが、最近経済水域、それから漁業等に関しまして領海の外に大幅な権利が沿岸国へ認めらるべきであるという主張が、これまた一般的な趨勢となりつつあることも事実でございまして、十二海里説成立に相当な条件が伴うことになるであろうというように私どもも見通しているわけでございまして、こういう大勢を踏まえて、あいまいなことでなくて、仰せのように日本政府として適切な対処策を打ち出していかなければならぬと考えております。
  54. 芳賀貢

    芳賀分科員 外務大臣、あなたから外交問題の解説を聞いておるのではないですよ。日ソ講和条約の早期実現についてはどういう態度で臨むのか。その場合当然領土返還問題というものは、これは切り離して考えることはできないじゃないかという点について、ただいまのあなたの説明は、北方領土については、固有領土についてはサンフランシスコ条約の第二条(C)項で放棄しておらぬというような発言をいまされたが、それでは南千島と北千島含めての千島全列島の、どの部分がサンフランシスコの領土権放棄の外に残されておるかという点が、これが不明になっておるわけです。一体南千島は放棄していないという意味であるか、その点を明らかにしてもらいたい。  海洋法会議の場合においても、世界諸国がどういうことを考えておるかということを聞いているのではないですよ。いままでたびたびの国連海洋法会議等においても、日本は何ら自己主張をしておらないわけです。今度はそういうわけにいかないと思うのですよ。だから日本政府としては、領海については基本的には何海里説を固めて臨むとか、その外域の漁業専管水域等については何海里説をもって臨むかというような方針ですね。そしてこれが第三次の海洋法会議において参加国の完全な合意が得られないというような場合には、たとえば日本政府としては片務的に日本の領海あるいは専管水域というものを宣明するというような積極的な方針で臨むのか、こういう点は何も秘密外交ではないのですからして、国民の知らんとすることについては明確にする責任があるのじゃないですか。その点を聞いているのですよ。
  55. 大平正芳

    大平国務大臣 芳賀さんに申し上げるまでもないのでございますが、政府としての態度は、北方領土の問題につきましては、歯舞色丹は当然でございますけれども国後択捉を含めまして固有の領土につきましては、サンフランシスコ平和条約日本が放棄したものとは考えていない。平和条約締結につきましては領土条項一つの大きな柱でございますので、このたてまえを踏まえて交渉に当たっております。今後も当たってまいるつもりでございますと申し上げたわけでございます。  十二海里説でございますけれども、いま申し上げましたように、大勢といたしましては十二海里を支持する空気が一般的になってきております。また、しかも一番多くの国がこれを支持しておるわけでございまして、これが統一的な規則として次の海洋法会議で確立するということになりますならば、当然日本といたしましても、従来の三海里説にとらわれることなく、かかる合意の成立を支持する立場を貫いていきたいと考えております。  それから経済水域の問題でございますが、経済水域を相当沿岸国に権利として認めるという空気が非常に強いわけでございますので、十二海里説が確立するにいたしましても、先ほど申し上げましたように、相当の条件がついてくるのではなかろうかと思うわけでございまして、そういったことにつきましては、十分わが国の国益を踏まえて誤りのない措置を講じなければならないと考えております。
  56. 芳賀貢

    芳賀分科員 以上で終わります。
  57. 黒金泰美

    黒金主査 次に、金子満広君。
  58. 金子満広

    金子(満)分科員 ベトナム問題だけに限定して、いま政府考えていること、やろうとしている問題、それらについてただしたいと思います。  御承知のように、ベトナムに関するパリ協定が成立をした。これは大きな情勢の変化であります。そういう中で、きょうは特に南ベトナムの問題について大臣考えていることをただしたいと思います。  予算委員会で、共産党の不破書記長が質問をしたのに対して、外務大臣は次のように答えております。まずパリ協定については、「私ども政府として、和平取りきめができ上がったことを歓迎し、またこれが着実に実行に移されまして、あの和平取りきめが描いておるブループリントに従いまして事態が解決し、定着を見ていくことを希望している」こう述べたあと、この協定というものは、「新しい事態が発生したことは念頭に置いて、これから対処していかなければならぬ」その中でさらに大臣は、「この協定の中にうたわれておる解放勢力の存在は、隠すべくもない」こうおっしゃっているわけです。  そこで、最初にお聞きしたいのは、南ベトナムに二つの政権が存在する、そのことをお認めになりますか。
  59. 大平正芳

    大平国務大臣 サイゴン政府のほか、臨時革命政府というものが存在しておることは承知しております。
  60. 金子満広

    金子(満)分科員 そうしますと、パリ協定では、南ベトナムに、民族自決権に基づいて民族和解一致全国評議会をつくる、こういうことがうたってあるわけですが、当然、日本政府もこのパリ協定を尊重するという見地に立っておられるという発言でございますから、この二つの政権はともに、南ベトナムにおける新しい全国評議会をつくるという両方の当事者であるということをお認めになりますか。
  61. 大平正芳

    大平国務大臣 そう認めざるを得ないと思います。
  62. 金子満広

    金子(満)分科員 そうしますと、南ベトナムにおける民族和解一致全国評議会をつくる二つの当事者ということを承認されたわけですから、この両者は対等、平等の関係にあるということもお認めになると思いますが、その点はいかがですか。
  63. 大平正芳

    大平国務大臣 和平取りきめで描かれたとおりの立場をサイゴン政府も臨時革命政府もとられることかと思うわけでございまして、それ以上の分別は私にはないわけです。
  64. 金子満広

    金子(満)分科員 そうしますと、パリ協定に基づいていうならば、両者は対等であり平等である、こういうように理解してよろしいですか。
  65. 大平正芳

    大平国務大臣 パリ協定にそれぞれ署名されて、この両者はそれぞれの権利もあれば義務もあると考えております。
  66. 金子満広

    金子(満)分科員 それは平等であるということですね。
  67. 大平正芳

    大平国務大臣 あなたの言われる平等であるとかなんとかは、書いてないのでありまして、私が言うのは、和平取りきめに書いてあるとおりの権利義務を両方持っておられるというふうに承知しております。
  68. 金子満広

    金子(満)分科員 パリ協定というのは、いわば南ベトナムに二つの政権が存在するということを何ら差別なしにうたっておるわけでありまして、こういうことが国際的に明らかになったのは、今度のパリ協定だということは、もはや明らかだと思うのです。こういう中で大臣は、南ベトナムに二つの政権が存在する、その片方はサイゴン政権であり、他方は臨時革命政府である、こういうことがいわれているわけですが、そうしますと、南ベトナムにおいて新しい全国評議会ができる場合、片方が他方をのみ込んでやるということは、これは協定ではやってはいかぬと書いてあるわけでありますから、協定には対等、平等と書いてなくとも、これはパリ協定の精神から見て、両者はやはり対等で進めなければならぬということになるわけで、そういう意味では、書いてなくとも、私は二つの政権というのは同等であり、対等であるというように認めるのが当然であって、違う解釈をするのはこれは誤った見地だ。  そういう点でもう一度外務大臣伺いたいのは、権利もあり義務もある、それは当然協定に基づいて同等の権利であり義務である、こういうように解釈していいかどうか、もう一度伺いたいと思うのです。
  69. 大平正芳

    大平国務大臣 たいへんあなたしつこいですが、私が申し上げているのは、協定上書かれてあるような、権利もあり義務もあるということを申し上げておるわけでございまして、それでけっこうではありませんか。平等であるとかなんとかいうようなことを私が判定するのは、これは非常に僣越だと思います。
  70. 金子満広

    金子(満)分科員 これはもう客観的に平等であるということは明らかなんです。  そこで、全体を通して見てみれば三つの政権ということ、これはもうお認めになっておるわけでありますから、その点はただす必要はありませんけれども、そこで問題になってくるのは、南ベトナムにおける臨時革命政府に対して、今後日本政府はどのような態度をとっていくか、この点について伺いたいと思います。考えていることをお答え願いたいと思います。
  71. 大平正芳

    大平国務大臣 政府としては、サイゴン政府を承認して外交関係を持っておるわけでございまして、それ以上は、臨時革命政府というものと接触を持つつもりはないということは、かねがね国会で御答弁申し上げているとおりでございます。
  72. 金子満広

    金子(満)分科員 これは外務省のどなたでもけっこうでありますが、パリ協定が締結をされた以後も含めて、臨時革命政府を承認し外交関係を持っている国がどのくらいあるか、お答え願いたいと思うのです。
  73. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 最初に、パリ協定では政権ということばではないので、これはその当事者による、当事者という考え方でございます。  それから、パリ協定及び今度のパリ会議自体で、パリ協定の実施にあたって会議をしておりますが、これは何ら承認という問題は含んでいないのだということを明確にしているわけでございまして、政権の承認とかどうという問題には波及しない、これはあくまでパリ協定の実施ということに限定されております。わがほうとしては、現在三十カ国余りの国がいわゆる臨時革命政府なるものを承認しておるようでありますが、その後、特に変わった動きはないように理解いたしております。
  74. 金子満広

    金子(満)分科員 協定調印後、承認あるいは外交関係を結んだところがございますか。
  75. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 私はないと思います。
  76. 金子満広

    金子(満)分科員 それはあるのです。ウガンダがやっておるわけです。そういうようにベトナム問題というのは、新しい事態でありますから刻々に変化する。私は、特に協定成立後は、サイゴン政権と関係を持っていても、今後臨時革命政府関係を持つ国は多くなる、こういう傾向にあることはもう世界の趨勢だ、このように考えます。  そこで、先ほど大臣のお答えでも明らかでありますが、ニクソン大統領が、サイゴン政権は南べトナムにおける唯一の政権だと言ったことと、日本政府立場というのは、その点では違うわけです。これは違うのがあたりまえで、協定に忠実な立場をとるならば、二つの政権がある。しかも両方が民族の自決、その基本的権利に基づいて新しい全国評議会をつくっていく両当事者である、こういうことは明らかだと思うのです。  そこで、いま外務省答弁ですが、政府、政権とは言っていないということです。臨時革命政府のグエン・チ・ビン外務大臣というのは、世界じゅう知らない人はだれもないわけです。それから、きょうの各紙の報道、各社の国際通信を見ても、一様に書いておる特徴は、二月二十六日からパリで開かれておりた国際会議で九項目にわたる合意の文書ができた。     〔主査退席、木野主査代理着席〕 きょう調印ということになっておるわけですが、その中で十二の政府の連名でこれに調印をする。南ベトナムの臨時革命政府も対等でここに名前を連ねている。こういうことは初めて明記されたことであり、実際上国際的にも承認されていることだ、こういうことになってくるのだというように思いますが、その点は外務大臣、どのようにお考えになりますか。
  77. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 パリ会議のほうにおきましても十二者ということで、完全な正文がいままだ届いておりませんが、パリ協定の関連でやっておるわけでございますが、先ほど申しましたように、この会議をやっておることは、承認の問題とは直接関係がないということをむしろ明記しておる。そこで先生の、外務大臣がいるではないかとおっしゃいましたが、これは政権というものの定義でございますけれども、首府がどこにあるか、政府がどこにあるかということは、通常明確にならなければいかぬわけですが、私も存じませんので、むしろお伺いしたいのですが、政府は一体どこにあるのか、どういう構成になっておるのか、承認した国もございますが、この三十カ国の中で、私の承知しておる限りでは、どこかジャングルの中に大使館を置いたというのがキューバとビルマか何かあるそうでございますが、その所在も判明しない。一つの勢力としてあるということは当然認められており、また協定に関する限り、当事者であると客観的に認識すればいいのではないか、かように考える次第でございます。
  78. 金子満広

    金子(満)分科員 私は重大な発言だと思うのです。それは全く不謹慎だと思うのです。なぜならば、どこに首府があり、それから政権というものが何かジャングルとか、こういう問題は、これまでのベトナムにおける実情を見るならば、おのずから明らかであります。南ベトナムに南ベトナムの臨時革命政府が存在し、閣僚がどういうものであるかということは、天下に公表されている。そして国際会議外務大臣が堂々と出ているわけですから、しかも海外における国際的ないろいろの、たとえば大使級の交換をして在外事務所がどこにある、あるいは情報部がどこにある、こういうことも何も隠していない。そういう中で、両当事国といっても、今度のパリの国際会議では、フルネームで南ベトナム臨時革命政府外相グエン・チ・ビンとなっているわけです。ですから、単に勢力というようなものでなくて、明白に一つの政権として、政府としてあるわけです。こういう点を明確にしないで、いいかげんなことで何かそういう勢力があるそうだ。これは外務大臣の発言から見れば、あなたの発言は、後退したどころではなくて支離滅裂だと思うのです。不謹慎だと思うのです。明白に臨時革命政府があるということが全世界周知の事実であるにもかかわらず、日本外務省の役人がその問題について、勢力とかジャングルとかどこにあるかとか、こういう問題については、私は撤回をしてもらいたいと思うのです。国際文書にも明記してあるのですから、大臣答弁に対しても、あなた違いますよ。そういう点では、ベトナムと真に友好関係を打ち立てていくということについては、これはできないことだし、そういうことばは、繰り返しますが、私は取り消してもらいたいと思う。
  79. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 私は、客観的事実の認識として、そういう事態になっておるということを申し上げたわけであり、また政権ということばをお使いになるのは、これは当然使う人は使うわけでありますが、パリ協定については政権ということばは認識されていないし、協定の当事者として、これが参加しておる名目上あるいは当事者の方がそういう表現を使われた、これも事実でございますから、私は否定はいたしません。ただ、大臣も先ほど申し上げましたように、政権としてこれを認識するのかどうかということ、そこまでの客観的な事態は確立していないのではなかろうかという趣旨のことを申し上げたので、特に違っているとは思っておりません。
  80. 金子満広

    金子(満)分科員 あなた、自分で言っておかしいと思いませんか。大臣答弁と違うと思うのです。大臣は政権として認めておるということを明確におっしゃっております。しかも、協定の中にはそういうことがないと言うけれども、ちゃんと外務大臣が署名しているのですから。政権のない外務大臣なんて世界のどこにありますか。あなたはそういう解釈をする、客観的にこうだと言うけれども外務省というのは一つの仕事をしていくところであります。評論家として単なる見解を発表するところではない。日本外務省の担当官がどのような発言をするかというのは、日本国会、国民のみならず、国際的に重要な役割りを果たします。もし外国外務省の役人がこういう発言をしたということになれば重大問題だと思うのです。私はそういう意味で、大臣の言うことのほうが正確にものを認識していると思うのです。  そういう点で、客観的だとか、あるいはそういうふうに評論家的な立場をとってこうだというような解釈をすることは、この際不穏当だから取り消してもらいたいと思うのです。今後のベトナム問題に対処していく日本政府外務省としても、その姿勢ではできない。もう一度その点について、言いわけでなく、不正確なことが現実にあるのですから、大臣答弁とも違うのですから、その点は撤回してもらいたいと思うのです。
  81. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 私は、大臣が政権という意味でおっしゃったかどうかわかりませんが、当事者ということでこの問題は議論されてきておりますし、情勢が熟してくれば政権として認識することが将来あるかもしれませんが、現時点におきましては、私が申し上げたことに誤りはないと思っております。
  82. 金子満広

    金子(満)分科員 あなた、ばか言っちゃいけないのです。いまあなたのすぐ前で数分前に、私が質問をして、南ベトナムにはサイゴン政権ともう一つ臨時革命政府という二つのものがあるという事実を認めますか、認めます、これをちゃんと大臣は答えているのです。何とおっしゃったかわからないというようなことは全く不見識だし、事実を事実として見ない。こういう点では、あなた何とおっしゃっても、そのあなたの発言は不穏当であり、事実に相違する。大臣の発言とも明白に違った立場をとっておる。この点について、もう一度私はあなたにここでその取り消しを要求します。
  83. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 大臣は、政権があるという趣旨でおっしゃっておられないと私は理解しておりまして、パリ協定の当事者として、そういう名目で署名し参加しておる人があるという意味では認識されたと思いますが、繰り返し大臣がおっしゃいましたように、日本はサイゴン政権というものと国交を結んであるので、それ以外にそういう勢力があるということを認識しておられるということは、予算委員会その他でも申し上げておられたというふうに私は了解しております。
  84. 金子満広

    金子(満)分科員 私は、いまここで国交の話なんか全然しないのですよ。速記録を確かめてください。そんなあなたのようなばかみたいなことを言ってないです。大臣答弁をあなた、聞いておったのか聞いておらないのだか、私の質問はしつこいと言われるくらいやったのですから。その点でも明白に、南ベトナムに二つの政権があるということは大臣自身認めておるし、これは世界じゅう認めない人はいないのですよ。全部認めているのですよ。認めているから成り立っているのです。しかも、今度のパリの国際会議できょう調印されるという中には、ちゃんとフルネームでみんな入っているのですから。世界じゅうそうであるのに、あなただけの解釈が違うのです。そういうことをやったのでは通らないです。あなた、大臣にかわって答弁しようとしたってだめです。大臣はこう思ってやったのだとかなんとか、それは詭弁であって通らないです。またそんなことで動く大臣でもないことを私は信じたいわけです。世界がそうなっているのに、日本外務省がそんなインチキな、世間でも通らないし、私は外務省の中でだって通らないと思うのですよ、そういうことをやっておったのでは。あなた自身が直接の担当者かどうか私は知りません。知らないけれども、パリ協定が調印されてもう一カ月たっているのです。その一カ月以後のこの期間に、新しく臨時革命政府外交関係を持った国があるかと言ったら、ないと思います。現実にあるじゃないですか。こういうような調査もしないで、いいかげんなことで、憶測で、古い概念で新しい事態を見ていくようなことでは、とても今後の外交折衝や、ましてやベトナムに対してどのような外交を展開していくなんということは、私はできないと思うのです。  そういう点については、しつこいようだけれども、あなたの発言は不穏当ですよ。こういう点について不穏当であることを認めてもらいたいと思うのです。答弁してください。
  85. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 私が申し上げておりますように、一つのそういう力があって紛争が起きており、停戦、和平に持ち込むためにパリ協定というものができたわけでございまして、その当事者としてのそういう存在は十分認識しておる、これを政権という名で呼ぶか呼ばないかという客観的認識は、これは多少先生と違うところがあるかもしれない、こういう趣旨で申し上げておるわけでございまして、もし誤解を与えておる点があれば、それは私のことばが不十分であった、表現が不十分であったということだと思います。
  86. 金子満広

    金子(満)分科員 そうであれば次に移りますが、そうした中で南ベトナムに二つの政権が存在している。そしてそれはともに南ベトナムにおける新しい民族の和解、和合の全国評議会をつくるその当事者である。二つの政権がある、こういうことはもう明白だと思うのです。そういう中で大臣は、いまのところいろいろ接触は考えていないというおことばのようでありますが、これは外務省に聞きたいのです。南ベトナムの臨時革命政府外交関係は持っていなくとも、南ベトナム臨時革命政府のメンバー、またはその統治下にある人民が諸外国を旅行する場合に、どのくらいビザが出ており、どのくらい旅行しておるか、それに各国がどのような態度をとっているか、この点について調査している範囲内でお答え願いたいと思うのです。
  87. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 手元に資料がございませんが、それぞれの国の人がどういうふうに世界じゅうを旅行しておられるか、私ども、いまちょっとそこまで手が回りませんので、いずれ検討してみたいと思います。
  88. 金子満広

    金子(満)分科員 大臣にお伺いしたいのですが、いま接触を考えていない、その「いま」という時期はどのくらいの時期か、何らかのことがあればその「いま」というのが変わるのか、その問題はどのようにお考えですか。
  89. 大平正芳

    大平国務大臣 私ども立場は、たびたび国会でも申し上げたとおり、これからのベトナム対策というのは、パリ協定というものを踏まえてやってまいりますので、これが当事国ばかりでなく世界各国から裏書きされて、平和定着のためにとられた措置でございますので、そういうベースで考えてまいりますということが一つでございます。  それから第二の点は、従来サイゴン政府外交関係を持って、南ベトナムを代表する政府としてサイゴン政府関係を持ってきておりますので、臨時革命政府というものとの接触は考えていないというのがいまの立場でございます。今後、パリ協定に書かれてあるブループリントに従いまして、どのように次のステップが着実に踏まれてまいりますか、そうして究極におきまして南ベトナムはどうなるか、全ベトナムはどうなるか、それはこれからのことでございまして、いまの私ども立場といたしましては、先ほど私が申しました態度でまいりたいということでございます。
  90. 金子満広

    金子(満)分科員 大平さん、ちょっとおかしいと思わないですか。大臣の発言の中で三つありまます。いまの答弁は、サイゴン政府というもの、サイゴン政権というものが南ベトナムを代表する政府として外交関係を結んでいると、こうおっしゃいましたね。それからさっきは、南ベトナムには二つの政権があるということを認めました。これがもう一つですね。それから不破委員の質問に答えた中で、「現実にサイゴン政府が全ベトナムを支配していないばかりか、南ベトナムの地域におきましても一つの勢力が現存しておるという事態であることを頭に置きまして、そしてこれがそういう事態である状態を、」云々と、こう書いてあるわけです。そうしますと、この三つの同じ人の発言の中で、いまのは、サイゴン政権というものは南ベトナムを代表すると言い、さっきは二つの政権の存在を認め、そしてその前は、サイゴン政権は南ベトナム全体にその統治支配が及ばないということを認めているわけです。そうしますと、南ベトナム全部を代表している政権でないというのが、大臣、ほんとうだと私は思いますが、その点どうですか。
  91. 大平正芳

    大平国務大臣 論理学の演習みたいなもんでして、私もなかなか用語の正確な駆使がむずかしいのでございますが、要するにサイゴン政府というものが、協定にあらわれておりまする限りで見ましても、その支配に制約があるということは、これはもう隠れもない事実なんでございます。ただ、日本政府はサイゴン政府外交関係を、当初、全ベトナムを代表する政府として沿革的に認めてきたわけでございますが、その後事態は、金子さん御承知のような経過をたどってパリ協定の成立というところまで来ておるわけでございます。こういう実態をどのようにうまく表現するか、あなたがお気に召すように表現をする能力がちょっと不足しておるのでございますが、こういうくしゃくしゃした事態に対しまして、ともかく協定というものをベースにして今後万事やっていかないと、あやまちが起こるんじゃないかという点を気をつけていかなければならぬわけで、南ベトナム政府は確かに支配に制約がございますけれども日本政府は従来から関係を持ってきたし、今後も関係を続けていきたいと考えておりまして、解放政府、臨時革命政府でございますか、それとの関係を遠慮していこうというふうに、ごく常識的に考えておるわけでございまして、的確にちり一つ残さぬようにうまく表現することは、私の能力を越えるわけでございますが、そういう気持でおるということを御承知願いたいと思います。
  92. 金子満広

    金子(満)分科員 サイゴン政権が制約を受けておるということは、南ベトナム全体を代表していないということは、最初の御答弁では出ているわけですから、そのように理解していいですか。そうでなければ二つのの政権があるということと矛盾してくるわけですから。
  93. 大平正芳

    大平国務大臣 実質上、支配に制約があるということは承知しておりますけれども日本政府としては、南ベトナムにつきましては、サイゴン政府以外と関係を結ぶつもりはないということを言っておるわけです。
  94. 金子満広

    金子(満)分科員 いやいや、そっちを聞いているのじゃない。サイゴン政権と日本政府外交関係を持っておられる。その相手のサイゴン政権は南ベトナム全体を代表していないということは、大臣、お認めになるでしょう。これは、そうお認めにならなければ、全部つじつまが合わなくなってくるわけですから。制約を受けているということはそういう意味ですね。
  95. 大平正芳

    大平国務大臣 制約があるからああいう紛争が起こったわけでして、制約がないなんとは思っていないわけで、制約があるということでございますが、南ベトナムにおける政権といたしましては、サイゴン政府と引き続き外交関係を持っていきたいということを言っているのです。
  96. 金子満広

    金子(満)分科員 それはいいのです。そのことはもう何回も聞いておるのです。だから、その外交関係を持っているサイゴン政権は南ベトナム全体を代表していない、制約を受けている。他の臨時革命政府があるんだ。この存在も大臣はお認めになったわけですから、そういうことになるでしょう。
  97. 大平正芳

    大平国務大臣 少し整理して専門家から解明させます。
  98. 高島益郎

    ○高島政府委員 国際法上の問題でございますので、私、かわりましてお答えいたします。  ベトナム共和国、つまり南ベトナム、サイゴン政権でございますけれども、これに対しまして、私ども日本との関係におきましては、南ベトナムを法的に代表する政府である、こう考えております。いま先生の御指摘のとおり、その統治の実態が南ベトナム全体に及んでいるかいないかということは別個の問題といたしまして、法的には南ベトナム全体を代表する政府としてわが国は承認いたしております。つまり国際法上、一つの国に二つの政権があるということは認められませんので、わが国との関係においては、法的にはあくまでも南ベトナム、つまりベトナム共和国しかないというふうに考えております。
  99. 金子満広

    金子(満)分科員 これはまた重大なことになったですよ。ここではちょっと時間がありませんけれども、重大なことになった。これは、不破委員の質問のときにも大臣が答えて明白になっている。法的にいうならば、日本政府は南ベトナムのサイゴン政権が全ベトナムを支配しているという見地で外交関係を結んだのですけれども、その法的なものはいまだってそうなっているのですよ。だって、いつ変えましたか。しかし、それが変化している事実を見なければならぬというのが大臣答弁なんです。しかもその答弁の中で、重い荷物を背負っているんだからということばまで出たのです。そうしますと、いま局長がおっしゃったような形で、南ベトナムを代表するという意味で新しい協定を結び直したかというと、そんなことはない。古いものを継続しているだけなんです。ただ、北に明白にベトナム民主共和国ができたから、支配は十七度線の南になったという解釈でしょう。北まで全部まだ入っているのですか。そういう解釈ですか。
  100. 木野晴夫

    木野主査代理 金子君、時間が来ましたから、適当にまとめてください。
  101. 高島益郎

    ○高島政府委員 先ほど大臣からお答えがございましたとおり、わが国が最初にベトナムと関係を持ちましたのは、ベトナム共和国をベトナム全土を法的に代表する政府として関係を結んだわけでございます。特に今回のベトナム協定等にあらわれておりますとおり、北越も南越もそれぞれ、憲法上は全ベトナムを代表する立場をとっておりますけれども、その後両政府の実際の言行を見ますと、それぞれ、全土を代表するということをいっておりませんで、南半分あるいは北半分を代表するという立場を明らかにしておりますので、こういう事実を踏まえまして、わが国といたしましても、ベトナム共和国は南ベトナムを代表する政府であるというふうに立場を変えたわけであります。
  102. 金子満広

    金子(満)分科員 それでは、最後に、確認の意味で申し上げたいと思いますが、南ベトナムにはサイゴン政権と南ベトナムの臨時革命政府と二つの政権が存在する、サイゴン政権は南ベトナムにおいても制約を受けている、こういう事実だけは、大臣、確認してよろしいですね。これは、あなたのこれまでの発言をいろいろ総合すると、そのように理解されると思います。
  103. 大平正芳

    大平国務大臣 実体上、支配において制約がないとは言い切れないと私は思います。
  104. 木野晴夫

    木野主査代理 次に、近江巳記夫君。
  105. 近江巳記夫

    ○近江分科員 非常に限られた時間でございますので、何点か御質問したいと思うわけですが、海外に在住しております邦人の帰国の問題についてお伺いしたい。特に在韓の邦人の帰国について初めにお伺いしたいと思います。  この在韓の邦人の中でも、困窮邦人の帰国について非常に事務手続がおくれておるし、また、これらの者に対する政府の施策が十分でない。端的にいいまして、一般に私たち耳にするのは、政府態度が非常に冷たいじゃないか、こういう声が非常に強いわけであります。そこで、政府として、従来どのように措置をしてこられたのか、まずこれをお伺いしたいと思うのです。
  106. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 お答えいたします。  在韓の困窮した日本人につきましては、私のほうとしましては、韓国にある大使館を通じましていろいろ実態把握につとめております。あるいは韓国にはそういう邦人の相互扶助団体の芙蓉会というのがございますが、そういう機関を通じましたり、韓国政府を通じて実態の把握につとめまして、そういう困窮した邦人がおりまして、しかも帰国を希望するという場合には、韓国の大使館がみずからいろいろな手続を代行して、帰国の費用を負担してこちらへ帰ってもらうような手配をとっております。  ただ、いろいろな手続がおくれておるということでございますが、これは事実おくれておるわけではございませんで、韓国におります日本人が、戸籍、国籍上はっきりしない点がある。それの究明に時間がかかる。あるいは元日本人でありました者が韓国人になっておれば、韓国人としての出入国管理の問題がある。あるいはこれらの人々の日本へ帰ってからの落ちつき先をどうするかというようなことも調べなければならない。そういうことにいろいろ時間がかかりまして、それが全部済みましたあとで日本に帰ってくるわけでございます。したがいまして、そのために手続がおくれるのはやむを得ないかと存じます。  それからもう一つ、冷たいということでございますが、これは、私のほうは特にそういうことはしていないつもりでございますし、事実、帰ってまいります人たちは全部向こうで旅費、それから日本へ帰っての落ちつく先までの旅費まで、全部負担させております。それからなお、向こうでいろいろ困窮しておる方、日本に帰るのじゃなくて向こうにおられる方につきましては、とりあえずいろんな経費を出しまして、そのお世話になっている方にお礼をさせていただいておる。このようなことで、われわれとしてはできる限りのことをやっておるつもりでございます。
  107. 近江巳記夫

    ○近江分科員 できる限りのことをなさっておるのであれば、そういう声は出てこないと思うのですよ。この韓国の引き揚げの問題について、この前NHKが特別番組でやったのですけれども、そういう問題についてたくさんの人が見ているわけですね。そういうことで非常に外務省は冷たい。また厚生省も非常に受け入れが、地方自治体との連携もうまくいっていないんじゃないか。結局、帰ってきた人がキャッチボールのようにされて非常に困っている。数にしたってそんなにたくさんないわけでしょう。いままでどれだけ帰国して、あとどのくらい残っているのですか。
  108. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 昭和四十一年に国交再開いたしまして、四十四年三月から新しい引き揚げが始まったのでございますが、それまでの間に、実際上引き揚げてきた者が三百五十名でございます。それから四十四年四月以降、政府がそういう帰国の措置の援助をとりまして、四十七年、昨年十二月三十一日までに帰国した者は七百十二名でございます。  ただ、われわれの調査が完全とは申しませんが、現在韓国にそれじゃ何人ぐらいの人がおるかということは、概数でないとわかりませんが、昨年調査しましたところでは、推定でございますけれども、帰国を希望している者が現在なお四百名ばかりおる、このように聞いております。
  109. 近江巳記夫

    ○近江分科員 いま部長答弁なさったのですが、大臣、非常に、政府としてはそれだけの手を差し伸べておるとおっしゃっておるわけですけれども、国民はそうは見ていないのですよ。外務省や厚生省が非常に冷たいじゃないか。いま部長が御答弁になったのですけれども大臣としては、いままでとってこられたそういうことについてどのように思われますか。
  110. 大平正芳

    大平国務大臣 いま近江委員が御指摘の点は、帰国をめぐって、その定着先をめぐってのトラブルがありまして、政府のとりました措置が十分でないじゃないか、冷たいじゃないかということを言われておるのじゃないかと思いますが、私が伺っておるところでは、帰国した方の一部で、身元引き受け人のところに行きたいということであれば事柄はスムーズに運ぶわけでございますけれども、御本人が東京の定着を望む、それが都のほうで、東京に本籍を持つ者でなければならぬというようないろいろな事情がありまして、そういうトラブルが私はあったのではないかと思うのでございまして、したがって、厚生省等ともそれぞれこういう点につきましていろいろ意思の疎通をはかりながら、本人の希望も生かしながら、できるだけ希望の定着先を見つけてあげるという親切さを発揮していかなければならぬのじゃないかと私は考えております。  それから、全体の帰還計画につきましては、まだ四百名ばかり希望者が残っておるようでございますが、この点につきましては、引き続き現地側と連絡をいたしまして、できるだけの措置を講じなければいかぬと思います。
  111. 近江巳記夫

    ○近江分科員 外務省ばかり答えてもらったのですけれども、厚生省もきょうは来ていただいておるのですけれども、これは厚生省、最後の受け入れ段階になれば厚生省の問題ですね。その辺が外務省と厚生省の連携がとれていない。あるいはまた地方自治体ともうまく連携がとれていないんじゃないか。いままで非常に厚生省は冷たいじゃ・ないか、そういう目で見ておる人が多いのですけれども、いままでやってこられたことについて、ひとつ反省を込めて御答弁いただきたいと思います。
  112. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 この在韓邦人の帰国に伴う問題につきましては、昭和四十四年四月に厚生省で社会局長、児童家庭局長、援護局長、三局長の連名の通達を都道府県に出しまして、その援護を行なってきております。この通達の内容は、一つは帰国についての援助であり、いま一つは帰国後の社会適応を円滑にやらせるための各種の施策、こういう二つに分かれておるわけであります。  この韓国からの邦人の帰国でございますが、これは厳密に申しますと、引き揚げ者あるいは引き揚げ者に準ずべき取り扱いをなし得る者と、帰国者というべき範疇に属する者と二通りございます。これは終戦前から引き続き韓国に居住して戦後初めて日本に帰ってくる人、これは引き揚げ者ということになるわけでありますが、終戦後自分の意思で韓国に渡られた方々、これが最近の帰国者の中の半数近くがこういう方々でございまして、これは厳密な意味での引き揚げ者でないわけでございます。  しかし、いずにいたしましても、これらの方々の帰国にあたりましては、帰国に要する費用は負担いたしておりますし、帰国先につきましても、その援護について、厚生省としては関係の都道府県なり市町村と十分連絡をとって、円滑にいくように努力しているつもりでございます。  そこで、まず先ほど、トラブルがあったのじゃないか、あるいは冷たいじゃないかというお話がございましたが、この帰国前の受け入れにあたりまして、帰国後の身元引き受け人の問題が一つございます。身元引き受け人の所在が非常にはっきりしているという者は問題ないわけでございますが、そうでない者につきましては、在韓の公館におきまして、事前に各世帯ごとに状況を調査していただきまして、その状況調査票をいただいて、厚生省のほうから関係の都道府県あるいは場合によって市町村に照会いたしまして、そういった身元引き受け人のはっきりしていない方につきましても、本籍地あるいは出身地の都道府県、市町村におきまする受け入れの施設なりあるいは受け入れ後の職業のあっせん、あるいはいろいろな生活関係の生活保護の問題、その他社会適応に必要な施策、こういったものを事前に十分に関係の都道府県、市町村と詰めまして、その詰めた結果を外務省を通じて在韓の公館に連絡いたしまして、御本人の承諾を得た上でお帰り願うということになっているわけであります。  先ほど外務省のほうからお話がございましたように、四十四年にこの措置が講ぜられましてから二百六十六世帯お帰りになっておりますが、これまであらかじめ御本人の承諾を得て帰国前にきめました身元引き受け先に落ちつかれた方々が大部分でございまして、わずかに昨年の六月お帰りになった四世帯の方だけが、そのあらかじめ承知しておった自分の落ちつき先に行くことを拒みまして、東京にぜひ行きたいんだということで四世帯の方だけはがんばられておる。そのほかの方は、すべてあらかじめ御本人の承諾を得てきめた身元引き受け先に落ちついておられる、こういう状況でございます。
  113. 近江巳記夫

    ○近江分科員 そのトラブルがあったことが、非常に具体的な問題として国民の皆さんの目に映ったと思うのですけれども、その四世帯、七名の方の東京の定着をめぐってトラブルがあったと聞いておりますけれども、もう少しその間のいきさつを、具体的に簡潔にひとつ時間の関係がありますからお答えいただきたいと思います。
  114. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 この方々の四世帯のうち、一世帯は引き揚げ者として扱える世帯で、残り三世帯は終戦後韓国へ行かれて、昨月六月に帰ってこられた方々であります。帰国するにあたりまして、この方々が東京に居住することを希望されたのは事実でございますけれども、都に本籍がない者あるいは単身者につきましては、東京都が施設に受け入れることがむずかしいという実情がございます。それぞれ身元引き受け先を東京都以外のところにきめられないかということで、いろいろ関係の御出身の都道府県等と連絡をとりました結果、この四世帯のうち三世帯の六名の方々は、それぞれ肉親の方々が引き取られるということがきまりました。それから全然身元引き受け人のない方一人が、本籍地である、この場合北海道でございましたが、北海道の養護老人ホームに落ちつくというふうに手配をいたしたわけでございます。このようにきまりましたことを、在外公館を通じましてあらかじめ御本人たちに知らせ、御本人たちもこれを了承して帰国されたのであります。にもかかわらず、下関に肉親の方々なり落ちつき先の県の職員の方々が出迎えに参りましたところ、この四人の方々がどうしても東京に行くんだということで、下関ですわり込みをいたしまして、それぞれあらかじめ御承諾を得たはずの落ちつき先へ行くことを拒否されたわけであります。その後東京都に落ちつくことを強く希望し続けられましたので、東京都ではやむを得ず、同伴の妻子がある一世帯四名を都の施設であります常盤寮に入居させて、他の単身者三名につきましては、提供宿舎施設をあっせんしたのでありますが、それを強く拒みまして、現在この三名の方は、中野のアパートに落ちついているというふうに承っております。
  115. 近江巳記夫

    ○近江分科員 ここにいろいろな問題が出てくると、私、思うのですよ。身元引き受け人の問題は、それがない場合本籍地ということになるのですけれども、皆さん方も、たとえば自分の本籍地にほんとうに親戚なり何なりがみんないるかというと、最近は要するに非常に都会に集中するというような形も出てきておりますし、本籍に行ったこともないというような、そんな人がほとんどなんですよ。ですから、引き受け人のない場合本籍地に帰らなければいけない。それを承諾しなければ帰れない。帰りたい一心でそのときは、はい、けっこうです、それは当然考えられるわけですよ。ですからその辺のところを、それはあくまで原則かもしらぬけれども、いま外務大臣は本人の希望地に行けるようにしてあげたいという、一歩進んだお答えをなさったわけです。私は非常にそのことが大事じゃないかと思うのですよ。  たとえば、身元引き受け人といっても、長い間やはり離れておって、その辺のところがうまくいかない、そういうことも当然あり得るわけです。しかし、一応は承諾しなければ帰国さしてもらえないとなれば、本人はもう納得しなくても、けっこうですと言わざるを得ぬわけですよ。そこに問題があるのですよ。数だって、あともっと出てくるのじゃないかと思いますが、一応概算で四百人ぐらいということをおっしゃっているわけでしょう。だから、身元引き受け人のところへ喜んで行く人もあれば、あるいは希望地を出して行きたいという人もあるかもわからぬのですね。その辺のところ、数も知れているわけなんですから、身元引き受け人、本籍地だ、あとはそれを帰ってきてから断わったということで、東京都は東京都で受け入れできないということでは、この人たちは一体どのようになるのですか。そういうところのちょっとしたところの幅がない。そこの冷たさを国民はみんな思っているわけです。長い間苦労して帰ってくる人に対して、費用も出して迎えてあげるわけなんですから、もう一歩進んで、本人が希望するならそこをあっせんしてあげるということが大事じゃないですか。それをいま外務大臣が、今後は希望地をかなえるようにするということをおっしゃった。一歩前進だ。この点は評価できると思うのです。  今後におけるそういう帰国者に対する施策というものについて、もっとあたたかい人道的な立場に立ってやってもらいたい。それをただもう原則論だけで、約束を守らないから相手が悪いのだ、そういうしゃくし定木の責め方というものはよくないですよ。それが冷たいというのですよ。みなやはり長い間の空白期間があるのですから、そこにはいろいろな事情があるのだ。だから、いま外務大臣がおっしゃったように希望地に行ける、そしてその迎え入れについては厚生省、地方公共団体が責任をもってあたたかく迎える、これは一歩前進した線である。評価できると私は思うのです。そういうことも含めて、今後の帰国者に対する施策をいかに推進なさっていくか、具体的に外務省と厚生省にお伺いしたいと思うのです。
  116. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 その辺のことが、結局私どもはできるだけ御本人の意向を確かめて居住先をきめるように、従前からも努力してきたつもりでございますが、ただいまのような御指摘がございましたので、今後の韓国帰国者の援護施策といたしましては、本人の希望する居住地のあっせんに極力努力いたします。居住後における生活の援護につきましては、関係の都道府県、市町村等に十分連絡をとりまして、早く日本に適応できるように援助していきたい、かように考えます。
  117. 近江巳記夫

    ○近江分科員 外務省はいま大臣がおっしゃったですから、それが答弁と思います。  それであとは運用の問題ですけれども、いまそのようにおっしゃったわけですけれども、実際上本人は希望する、ところがちょっとまだ受け入れのぐあいが悪いから、どうしても身元引き受け人あるいは本籍のところに帰ってもらわなければならないのじゃないか、そういう心配もあると思うのですが、いま局長大臣もおっしゃったわけですから、あくまでも本人が希望するところへひとつあたたかく迎え入れをやってあげていただきたい。これは大きく一歩前進した施策である、このように思います。ですからそれはほんとうに実行していただきたいと思うのです。  それから、中国とも国交回復ができましたが、中国にも当然そういう邦人がおられると思うのです。あるいはソ連等にもおられると思いますし、そういう引き揚げの状況がどうなっているか。また引き揚げ希望者の引き揚げの促進について、今後政府としてどういうような措置をなさるか、これをひとつ外務省と厚生省、両方からお伺いしたいと思います。
  118. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 最初に中国からの引き揚げの状況について御説明申し上げます。  中国からの引き揚げは、昭和三十三年にいわゆる集団引き揚げというものが終わったのでございますが、その後も引き続きまして便船により個別に引き揚げが行なわれておりまして、最近の実績を申し上げますと、昭和四十五年に九十六人、この九十六人のほかに中国籍の同伴の家族が七名ございます。それから昭和四十六年に三十一名、このほかに中国籍の同伴家族十四人。昭和四十七年に三十七人、ほかに中国籍の同伴家族二十五人というふうに、最近の引き揚げが行なわれているわけであります。  現在中国には、私どもの把握しているところでは、引き揚げ希望者が三百人程度おられるように考えております。この引き揚げ促進のために、従来からも、帰国のために必要な中国内の旅費を国費で負担する等の措置を講じておりますが、今般国交も正常化し、大使も交換されたことでございますので、そういった外交ルートを通じまして中国政府の御協力を得て、今後ともさらに引き揚げの促進をはかっていくように努力をしたい、かように考えております。  それから第二のソ連からの引き揚げの状況でございますが、ソ連からの引き揚げにつきましては、昭和三十九年十月に未帰還問題協議会の会長をしておられます藤山愛一郎先生がソビエトを訪問されました際に、フルシチョフ前首相と話し合った結果、ソ連としては本人の帰国を認めるという確約が得られました。昭和四十年八月以降帰国が順次行なわれてきておりますが、最近はその人数がきわめて少ない。少数の者が散発的に帰ってきているという状況であります。現在私どもが把握しております帰国希望者は約八十名でございますが、これらの者の引き揚げにつきましては、さらにソ連側協力を得て、その促進をはかってまいりたい、かように考えます。
  119. 近江巳記夫

    ○近江分科員 外務省はどうですか。
  120. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 中国に関しましては、幸い現在外交チャンネルもできましたので、私のほうも精力的に、双方の外交チャンネルを通じ、中国側の御協力を得て実態を把握し、できるだけ早く帰りたいという希望者の引き揚げを促進するために努力中でございまして、今後もその実現を早めたい、かように念願しておる次第でございます。
  121. 近江巳記夫

    ○近江分科員 もう一度重ねてお聞きしておきますが、いままで韓国をはじめ引き揚げ邦人については、身元引き受け人あるいは本籍地でなければ帰れなかったわけです。だから、いやおうなしに一応ははいと言わざるを得なかった。ところが本心はそうでなかったので、今回、そういうトラブル事件があって、それを通じて国民の皆さん方が、外務省や厚生省は冷たいという印象を強く持ったわけです。それで、先ほど外務大臣、それから厚生省の局長さんのほうから、今後は本人の希望地にもそれを受け入れをいたしますという明確な答弁があったわけです。  今後考えられることは、たとえば集中した場合を考えた場合、身元引き受け人、本籍地にいろいろな事情があってどうしても行きたくないと、たとえば東京へ多くの人が来た場合、東京都はそんな受け入れば困る、今後の問題として、そういうことが十分予想されるわけです。そういう場合に、確実に政府は責任をもって、東京都との話し合い等において、財政の負担とかいろいろなところは、政府と各都道府県において綿密な連携をもって対策をとって、万遺漏のない受け入れ体制をとられるわけですね。これをもう一度厚生省の局長さんと外務大臣にお聞きしておきたいと思います。
  122. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 これは個々的に、帰国を希望される方々がどこに落ちつき先を希望するかということについては、もちろん御本人の希望を十分に尊重いたします。しかし、ただやみくもに東京に来たいということで、東京を非常に大ぜいの者が希望された場合には、都としての受け入れの準備もございます。やはりその点は厚生省としても十分都と詰めてみなければ、はたして東京に来ていただいても、落ちつき先もないということではどうにもならぬわけです。そういった点でできるだけ都とも調整をとってみますが、私どもは、やはり一番落ちつきやすいのは出身地ではなかろうか、あるいは肉親のもとではなかろうかというふうに通常は考える。あるいは終戦後韓国に行かれた方々ならば、行かれる前にお住みになっておったところ、そういうよく知った土地、あるいは肉親のおられる土地、そういったところに落ちつくべきではなかろうか。先ほどのトラブルを起こした四人の方のケースを見てみますと、三人の方はそれぞれ弟さんなり妹さんが、自分が引き受けますということで下関まで出迎えに行っている。それを拒否して東京へ来たいということですわり込まれた。私どもとしては、せっかく肉親の方が下関まで出迎えに行って、私どもが引き受けますからと言っておられるのに拒否されたということで、そういう点は非常に遺憾なんであります。しかし、御本人がどうしてもとおっしゃるものですから、現在東京に来ておられるわけでありますけれども、そういった点につきましては、できるだけ御本人の意向を尊重しつつも、無理のないように措置してまいりたいと思います。
  123. 近江巳記夫

    ○近江分科員 大臣のお答えになる前に、もう一度申し上げたいと思いますが、要するに人間関係というものは、たとえ親戚であっても、長い何十年の空白もあるわけですよ。だから、その辺のところについてはケース・バイ・ケースだと私は思うのですよ。親戚だから本人は喜んでいくとは限らぬわけです。だからいままでは、本人の希望するところでは、その点の迎え入れる体制が非常にできていなかった。今後は原則として出身地なり身元引き受け人のところに、本人の希望を聞いてできるだけ行ってもらうけれども、しかし、本人が希望する場合においては、そちらのほうにも十分それだけの施策を持って受け入れるということですね。そうですね。——じゃ、今後はそういうように長い間の空白期間を経て帰ってくる人に対して、そういうさびしい、冷たい思いをさせないように、万全の体制をひとつとってあげていただきたいと思うのです。  最後に、外務大臣にこのことを重ねてお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  124. 大平正芳

    大平国務大臣 厚生当局のたいへんな御尽力で、大部分の方が希望する落ちつき先に落ちついていただいたということで、一部にトラブルがありましたことはたいへん遺憾でございますが、いま仰せの点も考えまして、そういう方々の受け入れにつきまして、十分親切の行き届いた措置政府として考えてまいりますとともに、今後帰国を希望される方々の実態把握につとめまして、できるだけそごのないようにいたしたいと思います。
  125. 近江巳記夫

    ○近江分科員 じゃ終わります。
  126. 木野晴夫

    木野主査代理 この際、午後三時三十分まで休憩いたします。     午後零時四十五分休憩      ————◇—————     午後三時三十分開議
  127. 黒金泰美

    黒金主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。安宅常彦君。
  128. 安宅常彦

    ○安宅分科員 外務大臣にお伺いいたしますが、最近ベトナムの情勢の変化によって、新聞によれば、あなたはベトナム民主共和国との国交というのは最終的に考えなければならぬという意味の発言をされた、こういうふうに承っております。予算委員会でもそれに類した発言をしておられるのですが、そういうふうに理解してけっこうですか。
  129. 大平正芳

    大平国務大臣 すでに申し上げておりますとおり、北越政府との間に非公式に接触を持ちまして、わがほうの係官を派遣して、相互に関心のある問題について意見を交換いたしたいという趣旨のことは申し入れてあるわけでございます。それで、御返事を待っておるわけでございますが、ただいまの時点までにはまだ参っていないのであります。私どもといたしましては、その回答に従いまして、できるだけ早くその運びになることを期待しております。
  130. 安宅常彦

    ○安宅分科員 一方、朝鮮民主主義人民共和国に対しては、あなたのほうでは、ベトナム民主共和国に対する問題と同じように、アジアの平和の問題として把握しておられるのかどうか疑わしい点があるのですが、朝鮮民主主義人民共和国に対しては、公的な接触を始めないというのは、これはどういう理由ですか。韓国がうるさいからですか。
  131. 大平正芳

    大平国務大臣 一口に申しますと、政治的な接触を始めるにつきまして、まだその時期でないという判断を持っておるわけでございます。  ベトナムのほうにおきましては、和平協定という、当事国ばかりではなく関係国も関係いたしました国際的な取りきめというものができまして、われわれが外交指針としてよるべき典拠を得たわけでございますので、これからそれに従ってやってまいって間違いはないと判断して取りかかっておるわけでございますが、朝鮮半島におきましては、いままだそういうところまで事態がいっていないわけでございまして、残念ながらまだ政治的な接触を始めるという域には達していないように判断しております。
  132. 安宅常彦

    ○安宅分科員 私は、判断を聞いているのではないのですよ。判断の理由を聞いておるわけです。たとえば諸外国が一緒になって、具体的にはアメリカならアメリカが一緒になって和平協定に参加をしておる。つまり、アメリカがのこのこ出てくるとうちのほうも正式に接触をやってもいいなという判断に立ち、アメリカが入っていないなと見たら、南北共同声明によって両方ともほんとうに自主的にひとつ平和統一をやろうという大きな事態になっているのを、アメリカが入っていないから、これはまだあぶないからだめだという意味にとれるような御答弁なんですけれども、そういうことではない日本の自主的な外交というものがあるべきだ。大平さん、私はほんとうにそう考えているんですよ。  アジアの終局的な平和というのは、いま残っているのは何かといったら、これはベトナムもまだまだ問題が残るだろうし、日中の国交の回復といっても、率直に言うとこれは入り口なんです。安保条約等の関係で、具体的な問題でいろいろ問題が出てくるような気がしてなりません。ですから、まだ問題は残るかもしれませんが、何といっても一つの大きな前進を遂げているわけです。残っているのはどこかというと朝鮮半島だけですよ。  そういうことを考えてみた場合に、南の政権と北の政権が、あなた方から言わしめれば、その両政権が統一しょうということになって、それこそ協定を結んでいるわけでしょう。ベトナムで和平協定を結んだからといってそのとおりいくかどうか。捕虜の交換だなんていってデッドロックに乗り上げてみたり、あるいは問題が出てきたらもう一回国際会議を開こうじゃないかという問題が残っていたりするわけで、ベトナムは終わったんだというような考え方で、それが、よし正式に接触してみようという理由になるものだというあなた方の考えと朝鮮における事態とは、さして変わりはないと私は思っているのです。  要すれば、ほかの国がのこのこ入ってきたものならこれは権威があるものだとあなた方は考え、朝鮮の場合は、ほかの国が入っていないからだめだという一種の朝鮮べつ視みたいな考えが、日本外交の中にあるんじゃないかという疑いさえ私は持つ。自主的にそういう取りきめをし、具体的に調節委員会を開き、そして赤十字会談を開きというふうにやっているほうが、かえって事態というものは進んでいるんじゃないか、私はそう思いますが、どうですか。
  133. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカはじめよその国々がどうだからというわけでは決してないわけでございます。それから朝鮮半島の問題を、われわれは軽く見ておるなんということはとんでもない話だと思うのでございます。朝鮮半島の問題というのは日本にとりまして最大の問題と心得えておるわけでございます。  ただ、理由を述べろと言われるならば、去年の七月四日に始まりました南北の自主的な対話は、自主的に平和的に統一を目ざして、第三国による制肘を排してやっていこうということでございまして、そのことはたいへんわれわれも歓迎するスタートであると存じて、歓迎いたしておるわけでございます。それで、そういう局面が朝鮮半島に開かれたという場合に、日本といたしましては第一に、この自主的な対話が平穏のうちに実を結ぶように、成果をあげてまいることを期待いたしておるわけでございまして、これは南北両者の御努力に今後期待したいと思うのであります。その対話が開かれるようになったということは、南北の現在の現状をベースにして行なわれておるわけでございまして、この対話が進んでまいるためには、せっかく自主的な話でございますので、なるべくこれに影響がないように、日本をはじめ他の国々は配慮していかなければならないのではないかと考えておるのでありまして、一方の当事国に対しまして、われわれの韓国に対する政策も北鮮に対する政策も、大きな異変を来たすようなことは、この対話の進捗ということに対して決していい影響を及ぼさないんじゃないかというように私は思うのであります。  しかし、近隣のことでもございまするし、いろんな交流は当然せきとめられない勢いでございますので、これをできるだけ秩序正しくやってまいる上におきまして、できるだけの配慮を加えていかなければならぬことは当然でございますが、政治的な接触という点につきましては、なおまだ踏み切れるというところまで、現実に達していないと私は判断しております。
  134. 安宅常彦

    ○安宅分科員 そういう答弁だろうと思っていました。あなたのことですからね。しかし、ベトナム民主共和国と国交を結ぶんだということを前提にして係官を派遣しているんだがまだ返事がない、こういうお話でしたが、これは南ベトナムのいわゆるベトナム共和国ですか、とはすでに国交関係にある。その上でベトナム民主共和国とも国交関係を結ぶ、こういうことになりますね。ベトナムとはそうですね。
  135. 大平正芳

    大平国務大臣 北越と結ぶ、国交樹立ということになった場合、これは、だからといって南越との間の関係を切るということは考えていないわけです。
  136. 安宅常彦

    ○安宅分科員 つまり、だったら両方に刺激を与えるような状況云々、その情勢を変えることはかえって差しさわりがあるんじゃないか、あなたはそう言いますけれども、私どもは朝鮮半島においては南の政権にばく大な、私もこの間予算委員会で質問したように、ばく大な援助を与えている、北のほうに対してはそっぽを向いている、こういうことこそおかしいのであって、ベトナムで両方ととも承認しようというそういう立場をはっきりいま明らかにしたわけですからね。統一してからやろうなんということじゃないということをあなたははっきりいま言いましたからね。そういうことだったら、両方に互恵平等のそういう立場外交的に接することが、統一を助け、そして平和的なアジアの体制というものができる。これは日本外交の基本でなければならない、私はそう思うのです。ベトナムと朝鮮とたいへん違うというのは、意味がそのほかにないのですね。かまわないのじゃないですか、同じことじゃないのですか、どうですか。逆にいえば、片っぽうだけと仲よくしていることがかえっておかしくなっているのではないですか。
  137. 大平正芳

    大平国務大臣 北鮮のほうとのおつき合いでございますが、私ども先ほど御答弁申し上げましたように、接触の漸進的な拡大をはかっておるわけでございまして、経済の領域におきましては、先方から御要請がありますれば、それに対してそれを吟味いたしまして、日本でやるべきことはやるという姿勢でおるわけでございます。私が申し上げておるのは、政治的な接触のことを時期尚早ではないかと申し上げておるわけでございまして、経済の領域までの接触につきましては、漸次拡大しつつあるわけでございまして、先方の御要請がございますれば、そのプロジェクトについて吟味をしていくということは、一向差しつかえないことと思っております。
  138. 安宅常彦

    ○安宅分科員 もう政治の話を聞いたら、経済にすりかえたりしてだめですよ、それは。まあ時間がありませんからきょうはあまり問い詰めませんけれども、同じだと思うのですがね。私は、南ベトナムのほうも承認して、そして北ベトナム、つまりベトナム民主共和国とも国交樹立するために接触を開始する。朝鮮半島だってそうすればお互いに平和になっていく。それはアメリカが入っているか入っていないかの違い、韓国がうるさく言うか南ベトナムがうるさく言わないかの違いです。それをあなたは政治判断、理由は別にないと言っている。ここに日本外交の政治姿勢があると思う。これは大平さんがせっかく外務大臣になったんだから、そういうことははっきりしてもらいたい、こういうことを強く要求してやみません。  それで、最近アメリカの上院の外交委員会のスタッフが、昨年十一月に調査したアジアにおける問題、特に韓国及びフィリピンに対する報告書を出しました。私どもこの文書はもらっているのですが、訳文がまだできていないので、たいしたこともできないというので、日本の分だけを何とかと思ったのですが、まだ完成していない。ですから、あなたのほうはすでにできていると思いますが、これは新聞記事によって、私はそのために新聞記事によってちょっとあなた方の見解を聞いておきたいと思うのですが、非常にまずい文章なんかは、国務省や国防省やあるいはCIAあたりで削った文書なんだそうでありますけれども、にもかかわりませず、これは非常に韓国というものに対する認識というものを峻烈な立場で報告していますね。これは独裁政権だとはっきり言っていますね。南北共同声明なんてあれはやる気がないようだ、そこまで書いています。そして日本関係するところでは、もうアメリカ軍、これはアメリカ軍といいますけれども、国連の名前を僣称したアメリカ軍です。ここに問題があるのですけれども、これを引き揚げるということをアメリカが言い出さざるを得ない状態ということを明らかに報告しています。そうした場合には、日本が結局、日中、日ソ関係もいろいろあるので、日本政府としては明らかに米軍の韓国駐留を望んでいるということまでいろいろ報告の中に書いてあるわけですが、たとえば北朝鮮が軍事援助に対する代金をちゃんと払っているにもかかわらず、経済繁栄を誇っているほうの韓国が無償の軍事援助を要求するのはなぜか。あるいは中国が北朝鮮に軍隊軍事顧問を置いていないのに、これは停戦協定できまったことでしょうが、にもかかわりませず、アメリカ軍が韓国のほうに軍事顧問あるいは軍隊を置くのはなぜかという、そういうアメリカ自体の自問自答の意味での疑問を提出しています。こういうことは、最終的には、アメリカの政策は、韓国やフィリピンが米国の民主主義が採用されるだろう、そういう前提に立った過去の理想主義から新しい現実主義に移行する過渡期にあるようだという結び方をしているわけです。これは南やフィリピンにある政権は欺瞞的な民主主義である、そういうことをアメリカ考えなければならないとまで報告しています。  これは、権力の非常に強い上院の外交委員会のスタッフが正式に報告しているわけでしょう。こういう動きというものは、外務省はどういうふうにとらえているのですか。
  139. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 よその国の政治情勢あるいは政体の姿がどうであるかということを、日本政府として申し上げるのはちょっと微妙であるかと思いますが、最近の韓国における一連の政治体制、憲法改正というものに対して、アメリカの上院がそういう調査をし、そういう報告があったということは私たちは了承しておりますが、それ以上、これもアメリカの方がきめられたことでありまして、われわれがいまの段階で批判するのはいかがなものか、かように考えるわけでございます。
  140. 安宅常彦

    ○安宅分科員 それでは日本は、日本外務省は、韓国政府は民主主義的な政府である、こう思っていますか。
  141. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 先ほど申し上げましたように、よその国のいまの政治が何であるかということを、こういう公の場で批判するのはいかがと思う次第でございます。
  142. 安宅常彦

    ○安宅分科員 それじゃ、朝鮮民主主義人民共和国とは体制が違うからぐずぐずしているのですが、体制の違わない資本主義の国だったら、何でも国交なんかじゃかすか結ぶじゃないですか。もっとはっきり言うならば、ベトナム民主共和国だって、いままで体制が違うからというので、いわゆる共産圏だからというのであなた方は渋っておったじゃないですか。和平協定がつくられて、今度いいじゃないか。ただそれだけの話でしょう。だから、その国のことについてとやかく言うのはおかしいと言いながら、社会主義の国に対してははっきりと、社会主義の国だからというので、いままで、だれに命令されたかは別として、あなた方国交を結ぶのをこうやっていたでしょう。そしてとやかく外国のことを言うのはおかしいと言いながら、韓国のことを聞くと、同じ体制だったら——あんなものと同じ体制だったら日本は困るのです。アメリカの上院の外交委員会の報告書にある、その報告書さえも、これは独裁政権だ、野党はめちゃくちゃになり、新聞記者は投獄されると、具体的に書いてあるのですよ。それに対してアメリカはこう思っているのだが、アメリカは別として、日本はどう思っているかと聞いたら、日本はほかの国の体制は何とも言えない。そんなばかなことはありますか。資本主義国の体制は何とも言えない。とんでもない国と国交を結んでみたり、たいへんいい国と国交を結ばなかったり、そんなことはできないでしょう。そうじゃないのですか。どうなんです。
  143. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 私が申し上げましたのは、体制全体としてどうということじゃございませんで、現在の体制下における形がどうなっておるかということに対する批判は差し控えたい、かように申し上げたわけでございます。
  144. 安宅常彦

    ○安宅分科員 それでは、戒厳令がしかれたり非常大権が朴大統領に置かれたり、国会の選挙は、もうすでに三分の一は戒厳令のもとで大統領が指名でやって、そしてあとは選挙でやってみたり、あるいは言論の統制は全部やられて、屋外集会をはじめストライキ権も全部奪われて、そうして今度は非常事態宣言に基づく国家保衛に関する特別措置法が出て、いろんなそういう問題が出て、言論の自由もない、そういう国であるということだけは認めますか、どうですか。批判は差し控えて、そういう国であるということは認めますか。
  145. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 現在起こっておる客観的事実は、できるだけわれわれは客観的に押えておるつもりであります。
  146. 安宅常彦

    ○安宅分科員 私が言ったとおりのことが行なわれている国であるということは認めますか。
  147. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 断定的に出た点につきましては、若干幅があるかとは思いますけれども、大筋としては、先生のおっしゃったような事件が起こっておったという事実は認識しております。
  148. 安宅常彦

    ○安宅分科員 起こっておったじゃなくて、いま起こっておるんじゃないですか。国家保衛に関する特別措置法というのはいまでも生きていますね。それははっきり認めますね。
  149. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 そういう法体制につきましては、現在そういう体制をとっておるということは認めます。
  150. 安宅常彦

    ○安宅分科員 それでも民主主義的な国であるかどうかという評価は、あなたのほうでは言えないのですか。
  151. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 評価は差し控えたいと思います。
  152. 安宅常彦

    ○安宅分科員 外務省というのはだから時勢からおくれるのです。きょう朝鮮民主主義人民共和国からの技術者の入国を、あなたがおる前におった局長が許可するはずです。いまごろ許可されているでありましょう。でありますから正式に私、言いますが、これはカラーテレビのプラントに関するものです。こういうふうになってきている。これはけっこうなことだと私は思うのですよ。だけれども政治の問題というとだめだというのは、非常にこれは重要なことだと思うのですよ。私は国連総会における態度について質問したら、あの議事録にはアルバニア決議案と一生懸命書いてあるのですけれども、アルジェリア決議案と私は言ったつもりなんですね。アルジェリア決議案のようなものが出たらどうするかと言ったら、不謹慎だ、そんなことは言えないと外務大臣は言いましたが、そんな事態じゃないということだけ念を押しておきます。  きょうは時間がありませんから通産省に聞きますけれども、いまカラーテレビの話を私、出したついでですけれども、あなたのほうの予算の積算の中に、明らかに朝鮮との関係で見本市を開く予定の予算、それから貿易事務所に近いというのですか、それらしい事務所を開く予算というものが入っていると思いますが、その金額もぜひここで明らかにしていただきたいと思います。
  153. 増田実

    ○増田(実)政府委員 お答え申し上げます。  まず、いま御質問のありました見本市の関係でございますが、これはジェトロ予算の中に四十八年度に見本市事業を二十七カ所開くということになっております。それで、その中で、いまお尋ねのように、北朝鮮で開くことについてすでに予定されているかどうかというお尋ねだろうと思いますが、これにつきましては、実施計画というものをこの二十七カ所につきましてこれから組むわけでございまして、私ども状況が北朝鮮で見本市を開くという状況になっているかどうか、現在まだそこまで詰まっておりませんので、むしろ今後の四十八年度の予算の執行の間に詰める、こういうことで考えています。  それからもう一つ、事務所の問題でございますが、これは共産圏関係の調査費というものを相当の金額組んでおりますが、その中に北朝鮮に事務所を開くかどうか、これも先ほど申し上げました見本市と同様でございまして、今後の情勢を待って、そしてもしそういう時期に至れば、その予算の一部を使いまして北朝鮮に事務所を開けるということにはなっておりますが、現在のところ、見本市につきましても、それから事務所につきましても、まだ何ら決定がなされておらないというのが現状でございます。
  154. 安宅常彦

    ○安宅分科員 あなた、そういう答弁してはいけません。通産大臣は民間の貿易あるいは民間の交流、こういうことをするための環境の整備のためには懸命に努力をいたします、そういう答弁表現しているのです。いま情勢を見てというのではなくて、大臣はそれを推進すると言っておるのです。大臣は推進すると言っているのに、あなた方「事務官僚は、せっかく予算を組んでおいても、今度は情勢を見てなんていうのはおかしいじゃありませんか。そういう考え方は間違いです。そんなことはいけませんよ。私はそういうことについて明らかに、あのとき通産大臣とも話していますが、そういう立場でやってください。情勢を見てから、使うか使わぬかわからぬ予算なんて組むことはない。そんなばかな話はない。大臣は推進しますと正式に答えていますから、そういうことをきちっとしてくださいよ。そういうわけのわからない予算だったら通せないじゃないですか。おかしいじゃありませんか。積算基礎が見られない……。  そこで最後に、時間がありませんから聞いておきますが、貿易事務所ということになりますと、これは民間貿易を想定しているんでしょう。政治的にはだめだ、だめだと外務大臣が言っておるのですから。そういう場合には、北朝鮮に貿易事務所を開くということになると、貿易というのは互恵平等ですから、当然朝鮮民主主義人民共和国の機関、民間貿易をやる機関の代表もこちらに相互に開くということになると思いますが、その場合にはそれを想定しておるのでしょうね。
  155. 増田実

    ○増田(実)政府委員 ただいま申し上げましたように、北朝鮮との間には民間ベースでいろいろの接触もありますし、いろいろ今後の持っていき方につきまして……。
  156. 安宅常彦

    ○安宅分科員 いや、時間がないから。だから向こうに開く、開くというのだったら、こっちにも開くというのが当然だろうと、そういうことを聞いておるのです。
  157. 増田実

    ○増田(実)政府委員 相互になるかどうかについては、まだそこまで詰まっておりません。ただ、今後もし開くとすれば、相互主義というのが大体共産圏諸国の原則でございます。
  158. 安宅常彦

    ○安宅分科員 これは共産主義の諸国だけではなくて、貿易事務所を開いたり、総領事館を開いたりするときは両方じゃないか。何言っているんだ。そういう考え方がおかしい。資本主義の国だろうが、どこの国だろうが同じじゃないですか。そういうことを頭に描いてやったのでもないのですか、それでは。じゃ何ですか。
  159. 増田実

    ○増田(実)政府委員 私どもそういう相互に事務所が開くような機に至れば、それが開けるという体制だけは整えておるつもりでございます。
  160. 安宅常彦

    ○安宅分科員 もう大体いいのですが、最後に外務大臣、いまみんなそういう努力をしているのですよ。あなたもいつか私と個人的に会ったときに、ぼちぼちということばを使いましたね、やろうじゃないかと。もうそろそろアメリカの政策が非常に変わるだろう、朴政権に最大の試練だ、軍事援助の継続は困難になるだろうと、いまや心配しておるという新聞記事が出ていますね。そういうときに、国連軍の名前を冠した在韓米軍というものがどういうようになるか。これは台湾との関係、中国とのこの間の話し合いの関係、やはり外交は動くと思うのです。そういうときに、慎重というものは、いつまでも石橋をたたいて渡らないという人もいるが、中には石橋をたたかない人もいるのです。それは大平さんじゃないかと私は心配している。石橋くらいたたいたっていいじゃないですか。打診をする、そのくらいの姿勢をあなたはとるべきだ。つまり先ほど、通産大臣が民間貿易あるいは交流の環境整備のためには努力しますという表現なのに、事務官僚のほうでは、そういう情勢ができればということを答弁しておる。たいへんな違い。あなたもそうです。北朝鮮と南朝鮮ということばを使っていますが、そういう南北の情勢というものがどうなるのだろうか、期待をしている、成功を期待している、その情勢に乗って何とかしょうというのではなくて、やはり統一がほんとうに歓迎される、統一声明を歓迎していると言うならば、歓迎しただけのことをやはりしなければならない、私はそう思います。ぼちぼちじゃなくて、アヒルが泳いでいるのじゃなくて、今度は違うのですから。外務大臣もかわってきたのです。情勢も変わってきたのです。そういう立場で能動的な外交をひとつやろうということは、あなたやはりやらなければならない時期が来ていると私は思いますが、どうですか。そろそろ腰を上げるという意味の発言はここでは絶対できませんかね。どうですか。
  161. 大平正芳

    大平国務大臣 いま安宅さんおっしゃったこと、よく理解できるわけでございます。私ども外交をあずかる者といたしまして、情勢の判断、時期の判定、そういうような点は常にわれわれの考えておかなければならぬ問題でございますので、それに対しまして最善を尽くしていきたいと思います。と同時に、決断をいたしましたら早く実行に移さなければならぬわけでございます。そういうことでちゅうちょするつもりはないわけでございます。ただ、国会でございますから、申し上げることについて慎重にならざるを得ないのは、安宅さんもよく御承知願えると思うのでございますが、ここでから元気ばかり出しても、どうもかえって国会に悪いわけでございますから、私どもといたしましては御趣旨はよく理解いたしておるつもりでございます。
  162. 黒金泰美

    黒金主査 次に、小林進君。
  163. 小林進

    小林(進)分科員 外務大臣にお伺いいたしますが、まず最初に、先般キッシンジャー補佐官が北京に行かれましたけれども、これについて事前に通告があったかどうか、一言でお答え願いたいと思います。
  164. 大平正芳

    大平国務大臣 通告はございました。
  165. 小林進

    小林(進)分科員 それではキッシンジャ補佐官来日のおりに、今回の米中会談について大要の内容を聞いていらっしゃいましたかどうか。
  166. 大平正芳

    大平国務大臣 何の内容ですか。
  167. 小林進

    小林(進)分科員 北京における米中、いわゆるキッシンジャー・周恩来会談の内容をキッシンジャーが日本へ来たときにお聞きになったかどうか、報告を受けられたかどうかということであります。
  168. 大平正芳

    大平国務大臣 与えられた時間の中で受けました。
  169. 小林進

    小林(進)分科員 今回の米中会談の結果から見て、米中間の国交の正常化は案外早いのではないかと私はしろうとなりに推測をしたのでありますが、政府としてはいつごろというふうに判断をされたかどうか。
  170. 大平正芳

    大平国務大臣 これは私の印象でございますけれども、非常に早い時期に実現を見るというような印象は受けませんでした。
  171. 小林進

    小林(進)分科員 今回の米中共同のコミュニケを資料としてちょうだいいたしたいと思いますが、いかがでございましょう。
  172. 大平正芳

    大平国務大臣 それはもう公表されておるとおりでございますが、何か外務省のほうから……。
  173. 小林進

    小林(進)分科員 ええ。外務省のほうから正式なものをちょうだいしたいわけです、私のほうへ。
  174. 大平正芳

    大平国務大臣 いま手元にございませんが、後刻差し上げます。
  175. 小林進

    小林(進)分科員 それでは小川駐中国大使が赴任されるのはいつごろになりましょうか。
  176. 大平正芳

    大平国務大臣 三月下旬までにはという予定でございます。
  177. 小林進

    小林(進)分科員 中国大使は、これは初代でございますから、一般的に幅の広い任務を帯びて赴任をするのが当然だと思いますし、ともかく三十年も国交がとだえていたのでございますから、大使の任務の中には、急を要するもの、さほど急を要しないもの、長期的に仕上げる任務と、三種類があるというふうに私は考えられるのでありますが、急を要する事項にはどういうものがあるといま外務大臣はお考えになっておりますか、お伺いいたしたいと思います。
  178. 大平正芳

    大平国務大臣 まず御赴任にあたりまして、国内各層の御意見を十分聴取して、それをよく消化して行っていただきたいと思います。  それから先方に参りまして急を要するということは、もうすでにスタートが切られておりますけれども、実務協定の締結をできるだけ急いでもらいたいと思っております。  それから平和友好条約の締結につきましては、小川大使赴任後先方とよく相談して、取り上げる時期、内容等について打ち合わせ願いたいものと思っています。
  179. 小林進

    小林(進)分科員 大体いまの御答弁が、小川大使が御赴任になることによって外務大臣が指示をされた一応内容の一部かというふうに想像されるのでありますが、それはあとへおいて、次にひとつお伺いしますけれども、北京に建築中の大使館はいつごろ完成をする予定なのか。また館の規模はどの程度か、敷地の面積、建物の面積等をお聞きいたします。  私は非公式でありますけれども外務大臣には三万坪くらいの敷地を獲得して、内外ともにひとつ隣国中国に日本の大使館として恥じないものをつくってもらいたいということを言いましたけれども、三万坪は若干大きいといたしましても、私の要望くらいは大臣おいれいただきまして、旧来のわが日本の大使館、在外公館の規模にはないくらいりっぱなものを想定されているというふうに私は想像するのでありますけれども、いまの質問にひとつお答えいただきたいと思います。
  180. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 北京にできますわがほうの大使館は、先方がいまつくってくれておるものでありまして、将来土地が確保されましたならば、わがほうで恒久的なものをつくるというときが来るかと思いますが、とりあえず中国側の好意で先方がつくったところに入るわけであります。
  181. 小林進

    小林(進)分科員 いまはそうだけれども、将来のことを……。
  182. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 将来はおっしゃるように多々ますます弁ずで、壮大なものができればいいなと私ども考えております。
  183. 小林進

    小林(進)分科員 まだ獲得していないのですか、土地は。
  184. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 まだ確保しておりません。
  185. 小林進

    小林(進)分科員 それはおそいな。北京あたり、もう手回しよくそういう敷地なんかちゃんと獲得されたものと私は想像した。総理大臣外務大臣も行かれたときには、そういう話もぴしっと私はでき上がっておったものと思いますが、どうも手回しがおそいようでありますな。残念しごくでありますけれども、早急にひとつ早く敷地を持って、恒久の公館の施設にも着手していただきたいと思います。これを要望いたしまして、次に初代の在日本中国大使はいつごろ御赴任になるのか、日本の小川さんと同時期になるのかどうか。
  186. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 正確にまだ先方から通知が参っておりませんので、確定的な日にちを申し上げられませんが、想像では今月末くらいまでに赴任されるものと期待しております。
  187. 小林進

    小林(進)分科員 そうすると、日本の小川大使の赴任よりは中国の大使のほうが若干一カ月くらい早くおいでになるんじゃないか——あ、いま三月ですか、大体相互同時着任になるということですね。それで在日中国大使館の設置状況は一体どうなっているのか、またもとの国府の大使館あとの私有権関係はどうなっているか、これも簡単にお答えいただきたい。
  188. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 現在中国大使館の方はホテル住まいで、非常に不便を忍んでおられるわけでございますので、私たちといたしましては先方の要望をいろいろ聞きまして、鋭意適当な事務所を、公邸、宿舎をつくれるように努力中でございます。
  189. 小林進

    小林(進)分科員 これは中国側の大使ですから、私が余分なことを言う必要もないと思いますけれども、やはり英国大使館が例のお堀の前に設けられたときには日本政府は強権まで発動して立ちのきを命じてああいう一等地を提供されたという、これはまあ時代が違いますが、やはり外国に赴任される初代の中国の大使館が設けられるのでございますから、ひとつ外務省政府もあげて協力体制をもって、これはやはり相互関係になりますから、わがほうでやはり三万坪ぐらいの官邸の大きな大使館をつくる構想があれば、それに見合うような中国の大使館の敷地ぐらいは政府も力を入れてあっせんするという、そういうことを積極的にやってください。吉田さん、あなたほかのほうに仕事がないようだから、それだけでも専門にひとつやってください。  次に一つ伺いしますけれども、昨秋大臣田中総理と北京を訪問して帰国された直後でありますけれども、中国との間の平和友好条約は直ちに締結したい、そういう趣旨の談話があったと私は記憶をいたしておるのでございまするけれども、この日中間基本条約ともいうべき平和友好条約はいつ一体具体的に、先ほどもちょっとお話がありましたけれども、できれば私どもはこれを早く具体的に進めていただきたい。少なくともこれは内容ぐらいは国民に示して、具体的に入っていただいて、同時にそれに付随して日本と中国あるいはアジア不可侵条約、これをつくってもらいたいというのが私ども野党の偽らざる気持ちでございます。いつ具体的におやりになるのか、明快にひとつお答えをいただきたいと思うのであります。
  190. 大平正芳

    大平国務大臣 九月の訪中の際の双方の合意といたしまして、過去の清算は共同声明で終わったという認識では合意いたしております。それから平和友好条約を締結するということも合意いたしております。そしてそれはこれから先、日中両国の関係を安定したベースに置くという趣旨のものであるということも合意いたしておるわけでございますが、それをいつごろ交渉を始めるか、その内容についてどういうものを盛り込むかということについてはまだ話し合いをいたしておりません。したがって、これは新大使の任務になろうかと思います。
  191. 小林進

    小林(進)分科員 私はいまのお話で、いつ始めるか、内容についてもまだ詰めていないということで、非常にこれは残念だと思います。特に新聞紙上等を見ますと、平和友好条約のほうはずっとあと回しにして、さしあたりさっきおっしゃった実務的といいますか、航空協定等に主力を注ぐというような話を聞いて、これは日ソ平和条約と同じに政府はまた十年も二十年も三十年もずっとこれを持っていく考えじゃないかというふうな非常に危惧の念を、疑いの念をわれわれは強めているわけでございまして、そういうことのないようにひとつ初心に返って、北京から帰られたときのあの姿勢に返って、早急に進めていただきたいと思います。時間もありませんから、これは強く要望いたしておきます。  次に、日中航空協定の締結についてお伺いいたしたいのでありますけれども、いつごろ一体予定しておられるのか。先日の新聞報道によれば、これはここにありますが、廖承志中日友好協会の会長は、日中双方の大使が赴任するのに第三国を経由して行くなどということもないではないか、早期に締結して自国便で赴任をしていくぐらいのことがあってしかるべきだ、それのネックとなっているのは台湾との関係であるということを指摘しておられるわけです。  そこで私はお伺いしたいのでありまするが、台湾との間には一体航空協定というものがあるのかどうか。これはこのままでいいのでありますが、時間がないですから一言つけ加えてお伺いいたしますけれども外務省の見解によれば、日華平和条約の失効だ。あなた方が行っていわゆる取りきめをおやりになったことによって日華平和条約は失効した。その失効に伴って台湾との間に締結されている一切の条約は失効したものとの立場日本政府はとっているとおっしゃる。ということになれば、台湾との間の定期航空は一体何を基礎にしていまなお相互乗り入れを行なっているのか、その根拠をお聞かせいただきたいと思います。
  192. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 第一問の航空協定のわがほうの交渉団の派遣は数日中にできるだけ早く派遣する予定で、私たちも当然のことながら早急にこれが妥結することを意図しておるわけでございます。  第二の問題につきましては、私たちは日本の国益を守るという立場と、しかも現実に即した日中友好親善精神を拡大していくような方向で、最もいい、両方で合意のできるようなことをこれから交渉してきめていきたい、かように腹づもりしておるわけでございます。  第三点の日台航空の根拠は、政府間協定がなくなりましたが、日航と先方のCAL航空会社と業務者取りきめによりまして事実上運営されておる、その乗り入れ、日本への先方の飛行機の乗り入れを運輸大臣が許可されておる、こういう形をとっておるものでありまして、政府間の取りきめによる航空路ではございません。
  193. 小林進

    小林(進)分科員 どうもこれ、私は非常に残念にたえないと思うのでございまして、それは中国の言うとおり二つの飛行機が同じマークをつけて羽田の飛行場に並んでいるなんということは、これは中国人民としては考えられない。当然であると思います。だがしかし、航空機の乗り入れというものは二国間で首都と首都の間に乗り入れるというのが協定の中心でありますから、たとえば私は日台の特に民間同士の——民間というか、こちらのほうは日航ということでございますが、そのほうの航空協定を運輸大臣が許可したというならば、ちょっとそれは少し形を変えて、せめて台湾の飛行機の沖繩くらいの着陸を許可するような形に変えて、やはり羽田の飛行場は私は中国人民政府の航空に道を開くというふうな形というのも一つ方法ではないかと思っておりますが、いずれにいたしましてもこれは早急に、いわゆる両国の名誉を失わない程度でひとつお話を進めていただきたい、こう思うのでございます。両国というのは私は日本と中華人民共和国でございますから、台湾のほうはもう国ではございませんから、これはひとつお間違いのないように御了承いただきたいと思います。これは時間もありませんから、いずれまた政府のお手並みを拝見することにいたします。  次に、私は在外公館の国有化の促進の問題について実はお伺いいたしたい。これも私はこの前の予算委員会でも言った。海外に旅行をいたしてまいりますと、日本の在外公館がほとんど借り家住まい、それでインフレの中で高い家賃を払って、しかも決してそれがわが日本の名誉をささえる形にはなっていないのです。もはや経済大国になったのでありますから、ドルの手持ちも世界で二番目になったのでありますから、ドルが余っておるのでありますから、この際、ひとつ一挙にそういう暫定的な形は私はやめるべきじゃないかと思うのでありますが、時間もありませんから、私のほうで申し上げますけれども、現在在外にある公館の総数は百四十であります。そのうち土地と建物に分けて、国有のものは、土地を日本が所有しておるものが三十三、建物を所有しておるものが二十七、あとはほとんど借地であり借家であります。こういうようなことは私は早く改むべきだと思うのであります。特に主要国駐在の大使館で仮のやかたとなっているものはイギリスがそうですな、英国の公館も借り家です。西独しかり、ソ連しかり、ソ連は去年私、九月、十月と行きましたが、ちょっと何か場所を変えて改築中でございましたけれども、こういうことは私は国の経済の面から見てもほめるべきことじゃないと思うのでありますけれども、こういうことに対して外務大臣、実力外務大臣、次期総裁としてどうお考えになっておりますか、お聞かせ願いたいと思います。
  194. 大平正芳

    大平国務大臣 たいへん御鞭撻をいただきましてありがとうございます。全体の国有化率は御指摘がありましたようにほぼ四分の一程度しかできていないわけでありますが、財政当局もこの問題につきましては積極的な理解協力をいただいておるわけでございまして、小林さんの指向される方向に逐次措置をしておりまするし、今後一そう措置してまいるつもりです。
  195. 小林進

    小林(進)分科員 まあ私は期待しながら四十八年度の外務省予算も緻密に見ているのでありますけれども、私どもが首肯し得るようなこういう方面に出されている予算が非常にちゃちです。これではどうも百年たっても、ほとんどわれわれの希望するような日本の土地、日本の公館となるようなことは困難ではないかと思うのでありますが、ひとつ一そうの御努力をこの際約束をしていただきたいと思うのであります。  次に私は、これも海外旅行で特に開発途上国、中南米とかアフリカ等に参りますと特に出てくる問題でございますが、その在外におる日本人の子女の教育、特に義務教育に関する問題でございますが、これはもうみんな困り抜いているのでございますが、ここで私は文部省にひとつお伺いしたいのでございますけれども、国は義務教育を非常に重視する、これは国家の崇高なる責任であり、義務でありますが、一体その義務教育は、国の責任ですが、義務教育は、属人主義なのか、属地主義なのか。
  196. 安達健二

    ○安達政府委員 日本人すべてに対しまして義務教育を与えるということは、最も広い意味におけるところの国家の大切なことでございまして、ただ純粋な法律論と申しますと、義務教育につきましては、現在では親がその子供を義務教育を受けさせる義務があるということと、市町村に対しまして、その子弟を収容するに足る学校を設置する義務を負わせているというところからいいますると、属地主義ということになっているのではないかと思います。
  197. 小林進

    小林(進)分科員 それは属地主義という解釈であるならば、私はあなたともう議論する余地がない。私もちょっと勉強が足りないものでありますから。私は、いままでは崇高な教育は属人主義、日本人であれば、やはりどこまでも国が責任を持ってその子供の教育を守るというところまでやっていなくちゃ、私は国家の責任は完全に遂行できないと思う。で、その形からいえば、とかく海外におきましては、義務教育も受けられない日本人の子弟がたくさんいるのであります。これはたいへんなことだというふうに解釈をしてきたわけであります。特に開発途上国に行きますと、その国の持っている義務教育の制度の学校というのは、ほとんどないといってもいいですね。それは未開発国もそのとおりです。同時に、そういう未開発の国は、先進国のイギリスとかフランスとかドイツあたりの、やっぱり外国人学校がありますけれども、そこには入れてくれない。彼らは、自分たちの子弟の海外における教育で一ぱいでありますから。そこへ日本政府は無情にして、教師も派遣してくれない、学校の設備もつくらないということになれば、それはもう義務教育は行なうことはできない、そういう状態の中に放任されているわけであります。これは私はたいへんなことだと思うのでございますが、文部省、大蔵省外務省、ひとつ考えてください。一言ずつでいいです。答弁してください。
  198. 安達健二

    ○安達政府委員 現在文部省としてやっておりますことは、一つは、在外の日本人学校を設置すること自体は、これは外務省のほうでやっていただいて、文部省のほうといたしましては、そこに教員を派遣しなければいけないのでございまして、そのために全国都道府県教育委員会から募集をいたしまして、その教員、四十七年度は百七十名を派遣いたしておりますが、四十八年度には二百二十五名の教員を派遣する、こういうことでございまして、学校数も、現在は三十校でございますが、四十八年度は三十三校を予想しておるわけでございます。これが一番大きい仕事でございます。  それから、それらの学校の教材を整備するという仕事がございまして、図書教材、視聴覚教材等の充実をはかっておるということでございます。  それからもう一つ、通信教育事業、つまり三十校なり三十三校のような日本人学校がないところの子供たちに対しましては通信教育をやるということで、この通信教育につきましては、約三千名を対象といたしまして、小学校の、現在は国語、算数をやっておりますが、来年度は理科、社会の四教科につきましてこの通信教育を実施するというようにいたしておるわけでございます。  それから、在外公館を通じまして、小学校、中学校の児童生徒用の教科書をただで送出するというような仕事をいたしておるわけでございます。  それからさらに、帰りました場合に、内地の教育に適応させるために、東京学芸大学と神戸大学に付属学校を設け、付属の特別な学級を設けましてやるほか、公立学校につきましても、十三校につきまして、海外勤務者子女教育研究指定校というような形で、適応のための教育をするというようになっておるわけでございます。そしてまた、実際のこの仕事につきましては、海外子女教育振興財団というものをつくっていただきまして、財界が中心になりまして、文部省、外務省協力いたしまして、先ほど申しました教材の整備の問題とか通信教育の仕事などは、この財団に対して補助または委託をいたしましてやっていただいておるというようなことでございまして、この教育は、いまおっしゃいますようにたいへん大事なことでございますので、属地主義ではございますが、属人主義に近くなるように極力努力をいたしておるということでございます。
  199. 小林進

    小林(進)分科員 いままでやっているだけのお話をお尋ねいたしましたけれども、何しろ百四十の公館がある中にまだ学校らしい形のものができているのがたった三十校。今度それをふやして三十三校にしようというのです。私の資料によれば、それに基づく生徒数が二千九百六十七人、現地の教員が、私は百五十六人、あなたは四十七年度で百七十名とおっしゃったのでありますが、一体これだけの数字で、在外のいわゆる役人や民間の人たちの子弟も加えて、一体どれだけの要望を満たしているとお考えになっておりますか。まあ時間がありませんからそれまで追及しませんけれども、いずれにしましても、通信教育でまた三千人もやらなくちゃならぬということでございますから、推してはかるべしです。非常にこれは不完全きわまるものでございまして、それも財界の協力を得てその義務教育を充実するなんいうこじき根性をやめて、国の費用でやってくださいよ、きちっと。わが日本は世界に冠たる義務教育の完備した国だ。どんな山の中やどんな谷底へ行っても、義務教育を受けない子供はいない。資源もないわが日本においては教育だけは世界一だといいながら、あにはからんや、海外へ行ってみると、何にも満足な教育を受けられないような子供たちが放置せられている。繰り返して言いますけれども、百四十の公館がある中にたった三十じゃありませんか。いいも悪いも学校らしい形のあるものは、数からいったところで、四分の一にも足りないという状況でありまするから、こういうものは精力的にひとつやってください。いまは金は余っているのです。ドルは余っているのですから、そういうときに、いまの公館もドルで始末をすればいいし、海外の子供の教育もドルで始末すればいい。そういうところでぼんぼん使ってくださいよ。それをひとつ勇気をもって——役人のように、去年は一つしかふえないのでありますが、ことしは三十に三つふえました、その伸び率は一〇%でございますなんて、パーセンテージばかり勘定して、何も思い切ってそういう飛躍的な構想をちっとも動かさないというのはいかにも残念しごくでございまして、年寄りは待つ間もなくして死んでいく。だから年金を。子供の教育もまた待つことができない。いま現実に必要なことでありますから、やってください。  それからいま一つ、これは時間が三分くらいしかありませんけれども、いま一つは、これに関連して海外援助の問題です。GNP一%を海外援助されるというのでございまするけれども、それにしても、ことしの四十七年度のGNP九十六兆円というのでありまするから、一%といったって一兆円、ドルにして三十億ドル以上の海外投資をやるという勘定になる。ばく大な金になります。私はこれを通産省の従来のペースでやって、そしてエコノミックアニマルだの、がめついだの言われるよりは、持てるわが日本としてはこの際構想を別にして、いわゆる無形の財産を海外に投資をしたらいいじゃないか。いわゆる学校です。あるいは医療施設です。病院を建てる、あるいは子弟の教育の学校をつくる。私はアメリカという国は資本主義で非常にがめつくて、いやな国でありますけれども、やはり海外や開発途上国を歩いてみると、たいへんそういうりっぱな総合的な大学や病院などを条件なしに、無条件に寄付をしている。しかしこれはやはり一つの善政として長くその国に残っている。わが日本の海外投資としては、そういうことを私は構想していいのではないか。  いま一つは、今度はそういう開発途上国の子弟を教育するために、この日本の国内にりっぱなそういう受け入れ体制の施設をつくる。その施設に伴う教育者や技術者や医師や、そういう者を派遣をするとともに、国内においてもそういう子弟の教育に任ずる人的設備、物的設備とともに人的設備もりっぱに整える。いま何か海外技術協力事業団だの、国際学友会などというのがじみなことをやっていますけれども、いまのところ海外から日本に来て、ちゃちなくだらない建物の中で日本で教育を受けている。これはそろばん勘定ではありませんから、それを目的にするわけではないけれども、みんな反日的になって帰ってしまう。こんなばからしいことのないように、永久にわが日本と友好親善を結び得るような、そういうりっぱな教育施設を国内にも設ける、そういう考え方を私はぜひやってもらいたいのでありますけれども外務大臣、いかがでございましょう。御答弁をお願いいたしたいと思うのです。
  200. 大平正芳

    大平国務大臣 経済協力わが国の都合に左右されるようなことでなくて、純粋なアンタイイングな援助でなければならぬ、しかもそれは経済的なものばかりでなく、教育的な、文化的な医療その他の措置でなければならぬという意味の御提言でございまして、私も全く同感でございます。そのためにはやはり援助政策の内容を、政府援助をふやしてかからなければならぬわけでございまして、またそれがOECD、UNCTAD等の要請の線でもございます。そういう方向で鋭意努力してまいるつもりです。
  201. 小林進

    小林(進)分科員 時間でございますので、これで終わります。
  202. 黒金泰美

    黒金主査 次に、中路雅弘君。
  203. 中路雅弘

    中路分科員 私はきょうは、アメリカの第七艦隊の根拠地になっています、そしてミッドウェー航空母艦の母港として問題になっている横須賀のアメリカ海軍基地の問題についてお伺いしたいと思います。  まず最初に、一九七〇年、四十五年の十二月に日米安保協議委員会で、この横須賀基地の中心である艦船修理部SRFを、六号ドックを除いて半年後に返還をするということで合意された共同声明が出されているのでありますが、その後このSRFの返還について一年間の延期の発表や、あるいはさらにアメリカのほうから再調整の申し入れがあって変転をしているわけですが、現在横須賀のSRFの一号から五号まで、これの、最初にお聞きしたいのは、提供の形態、いままでどういう状態なのかということをお聞きしたいと思います。
  204. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 四十五年の十二月に日米安保協議委員会におきまして、日米間で基本的な方向が示されました横須賀の艦船修理部の使用返還の問題につきましては、いま御指摘のとおりにその後いろいろな経緯がございますけれども、現在におきましては一号から五号ドックにつきまして、地位協定二条1項(a)の規定に基づきまして、米軍に対する提供施設というかっこうで使用をいたしております。その提供施設の中で一部、二条4項(a)に基づきまして共同使用を認めているという部分があるわけであります。
  205. 中路雅弘

    中路分科員 去年の十一月に発表になった中では、中間的な処置として米軍管理下での一号から三号までは海上自衛隊、四号から五号までを民間の一時使用、二4(a)ですか、それを目ざすということが発表になって、いま二4(a)による日本側の一時使用の細部合意がまだ折衝中じゃないかと思うのですけれども、そういう点で、いまお話しになったように現在は地位協定の二条1項の提供ですね。そうしますと、返還が発表になってからすでに今日まで結局形態については全く変わっていない、まだアメリカ提供になっているということです。しかし中間的処置ということになっていますから、いずれこの返還について目安があると思うのですが、大体どのくらいの目安でこの返還の問題を考えておられるか、お聞きしたいと思います。
  206. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 一号から五号ドックの五つのドックのうち、一号から三号までの三つのドックにつきまして海上自衛隊、四号、五号の二つにつきまして民間という方向で、日米間あるいは日本政府内部におきましていろいろな検討が進められております。しかしながら、どの地域を使用地域にするのか、いかなる条件にするのかというふうな細目につきまして、まだ調整がつきませんために、とりあえずは二条4項(a)という共同使用の方向で事を進めたいと考えておりますけれども、その態様につきまして依然として調整中でございます。  そこで将来の方向といたしましては、それを日本側に返還ということで、その返還のめどがつきますまで、ただいま申しました共同使用の形でとりあえず使用を考えていきたい、こういうことでございます。
  207. 中路雅弘

    中路分科員 まだ返還のめどがはっきりしていない、事実上返すと発表しながら一年延期とか再調整ということで、実際はいま無期限延期の返還状態にあると思うのです。  そこでお伺いしたいのです。現在全くそういう点では前と変わらないアメリカ基地提供になっているわけですが、これは大蔵省あるいは防衛庁にお聞きしたいのですが、すでに四十七年度にこの返還を前提にして横須賀のいまの一号−三号ドックの使用について予算を組まれているわけですが、これの金額、使用目的、そういう点についてまずお伺いしたいと思います。
  208. 小田村四郎

    ○小田村政府委員 御指摘のとおり四十七年度の予算編成におきましては、四十七年六月末までに返還が実現される見込みであるという前提に基づきまして、地位協定の二条4項(b)の使用になるであろうという予想を立てまして、SRF使用に関します予算を見積もったわけでございます。金額といたしましては約二億七千万円でございまして、内容といたしましては艦船修理に使用いたします関係上、その運営に必要な光熱水料であるとかあるいは施設の整備や、あるいは機材の購入費であるとか、その機材の維持費であるとかというようなものを内容として考えておったわけでございます。
  209. 中路雅弘

    中路分科員 いま四十七年度で二億七千万の予算が組まれている。しかし、これは返還になってないわけですから、現在は執行されてないわけですね。それが一つと、執行されてないとすれば、いまどういう状態なのか。それから引き続いて四十八年度も予算が組まれているわけですが、この金額と、これはどういう使用目的で組まれているのかということをあわせて聞きたいと思います。
  210. 小田村四郎

    ○小田村政府委員 四十七年度の予算につきましては、御指摘のとおりまだ返還が実現されておりませんので、執行されておりません。四十七年度末までの間に返還あるいは二4(a)の使用ということが行なわれますならば、二4(a)の規定の範囲内におきます執行ということが考えられるわけでございますけれども、現在まだその段階に立ち至っておりませんので、執行されていないわけでございます。  四十八年度につきましては、ただいま外務省から御説明申し上げましたように、地位協定二条4項8に基づきます共同使用の細目について折衝中でございますので、それが実現された場合に備えまして、金額といたしまして約八千万円程度の予算を見込んでおるわけでございます。内容的にはこれも四十七年度からの引き続きでございますので、光熱水料等の維持費あるいは機材の維持費等が中心になっておるわけでございます。
  211. 中路雅弘

    中路分科員 大蔵省にお聞きしたいのですが、先ほどから答弁されているように、横須賀の基地は七〇年の十二月に返還ということが発表になってから、しかし、今日まで全く形態が変わっていない、返還になっていないという状態の中で、四十七年度も、いまお話しのように四十八年度もすでに予算を組んでいる。こういうことは全く国の予算の先取り、防衛庁の、と言っても間違いないと思うのですが、この点について大蔵省のほうのお考えを承りたい。
  212. 宮下創平

    ○宮下説明員 お答え申し上げます。  四十七年度予算は、先ほど来御説明にありましたように、四十七年の一月に予算編成したわけでございますが、その前に、四十七年六月末までには返還になるというお話でございまして、それを前提としてただいま防衛庁の経理局長が御答弁申し上げたような予算を計上したものでございます。  それから四十八年度予算につきましては、やはり先ほど外務省から御説明ありましたように、中間的措置として二4(a)による共同使用ということを、そういう方法で話し合いが行なわれておりますので、現時点におきましては、そういう二4(a)ということになるものとして予算を計上したわけでございます。一般的に予算を計上する場合に、そういうことがある程度見込まれれば計上し、しかもこの種の経費につきましては、財政法上の規定によりまして、大蔵大臣の実施計画の承認という手続を経て実行されることに相なっておりますので、特に御指摘のような問題はございません。
  213. 中路雅弘

    中路分科員 ではお聞きしますけれども、横須賀の場合は御存じのように旧軍用の財産の譲渡または、国会論議でもあとで、所管がえ、こういった問題についても、横須賀を初めとした四市は特別法が御存じのようにありまして、旧軍港市の国有財産処理の審議会にかける必要があると思うのですが、まず旧軍港市転換法の問題についてお聞きしたい。
  214. 小田村四郎

    ○小田村政府委員 これはただいまの共同使用につきましての細目取りきめができました場合には、軍転の審議会に付議する予定にいたしております。
  215. 中路雅弘

    中路分科員 四十七年度の予算は先ほどおっしゃったように二4(b)を前提にして組まれたわけですね。間違いありませんね。
  216. 小田村四郎

    ○小田村政府委員 そのとおりでございます。
  217. 中路雅弘

    中路分科員 その場合自衛隊が使用するわけですから、一号−三号まで当然、これはいま答弁されたように、横須賀の場合にこの審議会にかけなければならない。それで使用目的がそれに合致しているかどうかということを検討しなければ、これを自衛隊に渡すかどうかという問題はきめられないわけですね。しかし予算はその前に四十七年度二億七千万円から組まれている。こういう問題について、これは明らかに違反ではないですか。どうですか。
  218. 小田村四郎

    ○小田村政府委員 共同使用が実現しないにかかわらず予算を執行するということになれば問題であるわけでございます。しかし、共同使用の実現がない限りは予算を執行しないということでございますので、違反にはならないと考えております。
  219. 中路雅弘

    中路分科員 御存じのように、この国有財産を大量に自衛隊に使わせる、こういったものは旧軍港市転換法の目的にも合致しないですね。これは明かだと思いますし、こういった問題について国有財産処理審議会で十分審議をしなければならない、いまおっしゃったように。審議をして、この転換法の趣旨からいっても自衛隊に渡すということは違反するということになれば、二4(b)を想定して先に二億七千万円も予算を組んでいるということは、共同使用という、自衛隊に渡すわけでしょう、二4(b)は。それをアメリカ側がまた一時使用という形でしょう、二4(a)でないわけだから、自衛隊がそれを持つわけですから。この四十七年度の予算については、この審議会にかけないでこういうものを組んでいるということ自身、私ははっきりと法律にも違反するというふうに思いますし、しかもそれが使われないということが四十七年度の予算についてはもうはっきりしているわけですね、二4(b)で使われないということがはっきりしているわけですから。それがまだそのまま置いてあって、二4(a)でも一部使えるのだと、さっき答弁にもありましたね。私は、二4(b)で組まれたものであって途中で二4(a)の場合にそれを使ってもいいんだ、この点についても間違っていると思うのですが、その点はどうです。
  220. 小田村四郎

    ○小田村政府委員 初めの御質問でございますけれども予算はやはりその年度の経費使用の見積もりでございますので、予算に計上すること自体につきましては何ら違法の点はないと考えます。これは事態の状況に応じまして実行するかしないかということが出てきまってくるわけでございます。  それから二4(b)の使用を予定して計上いたしました予算を二4(a)による共同使用の場合に使用するということでございますけれども予算予算の目的に反しない限りは使用できるわけでございまして、この予算の目的はいずれも自衛隊の艦船修理の目的に使用されるものでございますので、その目的に違反しない限りさしつかえないと考えておる次第でございます。
  221. 中路雅弘

    中路分科員 私はこの問題は、きょう時間がありませんから、この問題だけお尋ねするわけにいかないのですけれども、さっきお話しのように、横須賀の基地返還についてはまだめどもつかない。まだずっと事実上アメリカ提供されたままになっているという状態のまま、四十七年度も四十八年度も自衛隊予算を組む。しかもその予算は横須賀の場合は明らかに軍転法にかけなければならない。その審議会にかけて、使用目的をはっきりしなければならない。そういうことがあるにかかわらず、二億七千万、八千万の予算を組んでいくということは、明らかにこれは予算の先取りだし、また軍転法にかけていないということでは、二重に私は違反しているというふうに思うのですが、意見だけ述べておいて、この問題はあらためてまたお尋ねしていきたいと思うのです。  もう一つ、去年の十一月の発表のときに、あわせてミッドウェーの母港化の承認の発表があったわけですけれども、先ほどから変転をして、一時使用、それから再調整というふうに変転していく、二転三転していくのは一言でいってどこに一番原因があるのですか。
  222. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 先ほどお答え申し上げました四十五年十二月の日米安保協議委員会におきまして、艦船修理部の返還の問題につきましては、米側は基本的に返還という方向を打ち出しておりますけれども、その際に、米側は艦船修理部の返還後も米海軍艦船の修理のための施設の利用の可能となることの希望を表明しているということがあるわけでございまして、したがいまして、これが返還されましたあとに、米海軍の艦船の修理のためにいかなる形が考えられるかということにつきまして、いろいろな話し合いが行なわれてきているわけでございますけれども、ただいま御指摘のとおりに、一号−三号の使用の問題、あるいは四号、五号の民間による使用、いろいろな形につきまして細目の調整が必ずしも進まないために今日に及んでいるという状況でございます。
  223. 中路雅弘

    中路分科員 結局アメリカのほうは返すという発表をしておきながら、ずっといままでの答弁やら変化を見ても、返さないことははっきりしている。ただ、その場合に、使用の形態で少し変化を与えて、日本の側に負担をしてもらう。施設の維持、そういう点についても、日本のほうに施設の維持費やそういう人間の提供も含めて負担をさして、財政的には日本の側に押しつけて、しかしSRFについてはいつでもアメリカ側が優先的に使える。基地については、今後も一そう第七艦隊の根拠地にしていくということは変わらない。返還のめどもはっきりしない。ただ何か返還するような過程で、少しずつ変化が起こるように見えているけれども、いまの答弁でも、それはあくまでアメリカの費用を軽減するというだけであって、アメリカが優先してここを使っていくということには全く変わりないのじゃないですか。返還を発表しましても返還のめども全くつかない。しかし、中間的処置であるわけですから、一つのめどぐらいあるのじゃないですか。返還のめども立たないですか。
  224. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 日本側といたしましては、艦船修理部の返還を受けまして、これを必要な国内的な要請に充て、かつ米側が米海軍艦船の修理について希望を表明いたしておりますので、この希望もかなえてやる方法としまして、かねていろいろな打ち合わせをやってきているわけです。したがいまして、その調整が終わり、使用の形態が定まってまいりますならば、方向としては全面的な返還ということを考えているわけであります。
  225. 中路雅弘

    中路分科員 外務大臣に聞きたいのですが、このSRFはいまの答弁でもあるように、あくまでアメリカのほうがこれを優先的に使用するということだけはどんな形態でも残しておきたい。その上で今度はミッドウェーの母港化の発表があるわけですけれども、ベトナム協定が調印される、こういう事態の中でもう一度考えてみて母港化——ミッドウエーだけではなくて、すでに去年には航空母艦もおる。駆逐艦六隻が母港として横須賀を使用しておる。しかもその範囲も西太平洋からインド洋までの範囲を受け持つ艦隊が入る。この前の大河原さんの二日の予算委員会答弁でも、これは直接日本を守ることに関係のないということもお話しになっていますけれども、こういう艦隊の母港を承認するという問題について、この時点でこの母港化の問題について中止をする、やめる。それからSRFについては早期に返還をしてもらうようにさらに強力に交渉する。外務大臣のほうとしてこういう意思はないですか。
  226. 大平正芳

    大平国務大臣 私としては母港化という問題につきましての評価が、中路さんの場合と少し違うのでございまして、たびたび政府が申し上げておるような家族対策の一環というような姿においてとらえておるわけでありまして、ことさらこれを断わるという気持ちはございません。また、いま問題の施設返還につきましては、全面返還ということを目ざして鋭意努力していくつもりでございます。
  227. 中路雅弘

    中路分科員 政府はいつもこれは家族対策だと非常にこまかいふうにごまかそうとしておられるわけでありますけれども、時間がありませんから、もう一点外務大臣にお聞きしたいのですが、このミッドウェーが核装備ができる航空母艦だ、最初にそういう改造をされた航空母艦だということはよく知られています。これが母港になれば、たとえばいままで六カ月のあれが三年間になって、その三年間母港にし根拠地にする航空母艦が、その母港に入るときだけたとえば核をどこかに置いてくるというようなことは、むしろそれを信ずるほうがどうかしているわけですね。核の持ち込みについてはそういうことはないということを確信をしているという抽象的な答弁だけですけれども、これが核持ち込みになる危険があるということで多くの人たちが心配しているわけですが、核の持ち込みじゃないのだという、これを排除する具体的な処置ですね、その点についてもう一度外務大臣にお聞きしたい。
  228. 大平正芳

    大平国務大臣 これはまた答弁を繰り返すことになりますので、たいへん恐縮でございますけれども安保条約の運営につきましては、私としては日米間の信頼関係というものが基本になければならぬと思うのでありまして、一方を疑ってかかるということは決して実効をあげてまいる道ではないわけでございます。アメリカも世界の大国として権威を維持していく国でございまして、かたく日本と約束をいたしましたことをたがえるということは、アメリカにとりましても重大なことであろうと思うのであります。私はそのアメリカの条約並びに関連取りきめを守っていただくということに対してかたい信頼を置いておるわけでございます。このために特別の措置を講じてそれを確かめるということは、かえって安保条約の運営上望ましくないと考えております。
  229. 中路雅弘

    中路分科員 いまおっしゃったアメリカ追従とアメリカだけの信頼ということでやってきたいままでの外交がどんな破綻をしているかということは、ベトナムの問題でも明らかになっていくわけですけれども、こういう問題についてはまたあとから同僚の議員が質問すると思いますので、私は最後にもう一つお聞きしたいのですが、母港化の時期ですね、母港化といいますか、大体いつごろミッドウェーが来るのか。それからこれは家族の問題で新たな施設、区域の提供ではないということをおっしゃっているわけですけれども、一千世帯、数千名のアメリカの家族が入ってくるわけですから、この問題について日本の国内法、たとえば伝染病の関係の諸法や検疫法は適用が除外されていますし、あるいは麻薬、銃砲、こういったものの取締法の問題、こういった治安対策上の問題、そういった問題について考えられるのは、あの横須賀の町と周辺に七千名からのアメリカの軍人や家族が入ってくるわけですね。いままででも麻薬がアメリカの特別郵便で持ち込まれてきた例や、あるいは銃砲が持ち込まれて暴力団に渡るとか、あるいは車でひき逃げしても十分に日本の国内で適用できるんだけれども、実際の例を見ればそういったひき逃げについても十分の補償もされてない、こういった問題について多くの市民からも不安も出ているわけですが、時間もないのでこういった問題について考えをひとつ最後にお聞きしたいと思います。
  230. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ミッドウエーが近く寄港するのではないかとかいろいろうわさがございましたけれども、この問題につきまして調べてみますと、近く寄港という計画はまだないようでございます。  それから家族の居住の問題につきましては、おそらくこの夏ごろからという程度の話を承知いたしております。また、約一千世帯の家族が横須賀並びにその周辺に居住することになるわけでございますけれども、その家族の居住に伴いまして地元とのいろいろないざこざが起きては困るということにつきましては、十分米側にその趣旨を申し入れてございまして、現実に家族が横須賀周辺に居住するような段階におきましては米海軍当局としては十分地元といろいろな相談をし、変な問題が起きないような配慮は十分したいということを申しております。
  231. 中路雅弘

    中路分科員 最後にもう一言要望で述べておきたいのですけれども、このSRFの返還については、先ほど御説明のようにすでに発表になったから返還するというのですね。七二年の暮れですから、もう数年たっているわけですね。全面的にこれを早期に返還させるということ、それからこのあとやはり横須賀の場合にはこの軍転法というのがあるわけですから、この法律に基づいた目的に、これは九十何%の市民の法律に基づいた署名によって制定された法律です。これに基づいてこの目的が軍用のために使われるということでなくて、市民のために解放される、新しい都市の計画のために使用されるということ、それからこの航空母艦の母港化の問題については、もう一度あらためて多くの国民が不安を持っているわけですし、この中止について強く要請をして私の発言を終わりたいと思います。
  232. 黒金泰美

    黒金主査 次に、楢崎弥之助君。
  233. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 わが党が要求いたしました岩国、三沢両基地に対する調査の件、大体アメリカ大使館のほうはオーケーを与えておるのではないですか。
  234. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 社会党から岩国、三沢の現地の視察をしたいという御希望の申し出に対しまして、直ちに米側にその旨を伝えてございまして、今日現在まだ受け入れについての返事をもらっておりませんけれども、私どもといたしましてはなるべくすみやかに返事をもらいたいということを随時督促しているわけでございます。
  235. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 もう一ぺんアメリカ大使館のほうに意向を確かめられたらどうですか。大体オーケーが出ているはずですけれども
  236. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 きょうは金曜日でございますし、米側に対しまして週末前にあらためてまた催促してみたいと思っております。
  237. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 日米両軍の訓練空域の問題についてお伺いしたいと思います。  三十四年度の「航空交通管制に関する合意第三附属書」、以下三十四年のATCアグリーメントといいますが、それはまだ生きておるのでしょうか、どうでしょうか。
  238. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 現在まだ有効でございます。
  239. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 訓練空域の問題が起こったのはいつからですか。
  240. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 四十六年の八月でございます。
  241. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 つまり全日空機と自衛隊機の衝突事故からですね。その前は自由に訓練をやっておった。その基礎もATCアグリーメントだった。四十六年八月から訓練空域の設定の問題が新しく出てきた。この基礎もATCアグリーメントである。間違いありませんか。
  242. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 四十六年の八月以降全日空と自衛隊の衝突事故以後、航空安全という見地から検討されておりまする訓練空域は、高高度訓練空域それから低高度訓練空域ということで自衛隊米軍の共用を認めまして、航空の安全をはかっているわけでございますけれども、この規制につきましては、航空安全という見地から、四十六年八月の航空交通安全緊急対策要綱に基づきまして、わがほう航空局が直接担当いたしまして米側と調整を進めてきた問題でございます。
  243. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 その緊急対策の基礎になっているのを私は言っているわけです。ATCアグリーメントの「第三章方針」のところの二のd項、これによって、「防空業務に従事する航空機及びあらかじめ計画された戦術的演習に参加する航空機。」これは航空交通管制承認の最優先権が与えられておる。これによって訓練空域が設定されなくとも、自由に再優先的に取り扱われている。この訓練空域設定のほうは、jですか。「在日合衆国軍の要求にもとづき、民間、軍を問わず、すべての航空機関に優先する空域制限(高度制限)を航空交通管制本部をして提供せしめること。」これが基礎になっておりますねと言っているのです。
  244. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ただいま申し上げました四十六年八月の航空交通安全緊急対策要綱に基づきまして、米軍機を含めた航空機の訓練空域と航空路等とを分離するという趣旨のために設定されることになったものでございます。この根拠といたしまして、私どもといたしましては地位協定第六条に航空交通管理体系に関する日米間の協議、調整、整合という規定がございます。この措置に該当するものというふうに心得ております。
  245. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 もう私は議論しません。その地位協定の第六条に基づいてこういう合意書がつくられておるということでしょう。それで間違いないでしょう、昭和二十七年から始まっておりますから。それは間違いないでしょう。
  246. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ATCそのものは、ただいま申しました地位協定第六条に基づくものではございますけれども、訓練空域そのものがATCに由来するものかどうかということにつきましては、ちょっと手元に資料がございませんので、はっきりしたことを御答弁するのは差し控えさせていただきます。
  247. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは後ほどはっきりした御答弁をください。いずれにしても、三十四年ATCアグリーメントは生きておるという御答弁であります。そこで、このことは何を意味するかというと、安保優先、軍事優先、まさにこのことが生きておるということです。この合意書にあるとおりですね。それと、田中総理がニクソン大統領と合意されました安保条約の効果的な運用、これが一緒になった際に、米軍から訓練空域の要請があって、民間優先か軍事優先かという、現在問われておる問題が出てくるわけですね。つまり、山口県沖と島根県沖の訓練空域設定の問題であります。この種の訓練空域の設定要求はこれだけですか。まだほかにもあるのじゃないですか。この二カ所だけですか。
  248. 金井洋

    ○金井政府委員 米軍の訓練空域の問題は、御承知のように、日米合同委員会の下部機構である民間航空分科委員会というところで審議するように昨年の九月にきめまして、運輸省と米軍とが事務レベルで折衝いたしましたけれども、その時点で希望された個所は十カ所、そしてもう一カ所は従来の空域を修正するということで、それを加えますと合計十一カ所ばかり米軍は希望しております。     〔主査退席、木野主査代理着席〕
  249. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 その一カ所の修正分も含めて十一カ所と言いますけれども、十一カ所の中に、いま表面化した島根、山口両県沖合いの訓練空域二カ所は入っておりますね。
  250. 金井洋

    ○金井政府委員 はい、入っております。
  251. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いまの御答弁によりますと、昨年九月にそういう十一カ所の訓練空域の要求が米軍から出されておる。いま表面に出てきたのは日本海のその二カ所。十一カ所は発表できますか。これは政治判断ですから、大臣にお聞きをします。
  252. 大平正芳

    大平国務大臣 第一の合同委員会の議事につきましては、日米両国の申し合わせで発表しないことにしておりまして、ときおり要請に応じましてその要領を国会等に御報告しておりますことは、御案内のとおりでございます。  いまお尋ねの件につきましては、交渉の途中でございまして、御発表は差し控えさせていただきたいと思います。
  253. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 これは民間航空路の関係とも重要なかかわり合いがありますから、ぜひ発表してもらいたいと思いますが、そんなにぐあいが悪いのですか。もうすでに日本海の訓練空域は表に出ているじゃありませんか。どうなんでしょうか、大臣
  254. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ただいま大臣から御答弁がございましたように、この問題はまだ交渉中でございまして、交渉の結果最後的にどういうふうに落ちつきますかまだわかりません状況でございますので、内容を申し上げることを控えさせていただきたいと思います。
  255. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 豊後水道に同じく岩国の海兵隊の訓練空域の要求があっておるでしょう。どうでしょう。
  256. 金井洋

    ○金井政府委員 米軍の要求の中に豊後水道付近もございます。
  257. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 一々そう出していきますか。時間がかかりますが、まだ御発表する気になれませんか。  豊後水道のほうは、要求は米軍の海兵隊だけですか。ネービーのほうも入っていやしませんか。
  258. 金井洋

    ○金井政府委員 私の記憶ではマリーンとネービーだったと思います。ただ、先ほどアメリカ局長のほうから、まだ交渉の途中であるということでございますけれども、十カ所については、事務レベルである運輸省が実現しやすいもの、すなわち民間の使用頻度の少ないものから順に検討しておる。その中の二つが島根県の沖合いであり、その次が豊後水道の近くであるということで、そのほかについては、民間の頻度が非常に多いので、まだ先へいくだろうというふうに考えております。
  259. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 しかし、とりあえず米軍の要求が一番強く出されたものから表面化していっているのじゃないでしょうか。  百里の沖はどうですか。
  260. 金井洋

    ○金井政府委員 先ほど申し上げました十カ所の要求というのは、実は四十六年の七月に全日空機と自衛隊機との空中衝突がありまして、それまでは、先ほど先生も御指摘のように、訓練空域というような特定の空域を設けることなく、一応民間機に支障のない範囲内でどこでも訓練できたわけであります。ところが衝突以後、そういう異種交通、訓練と民間の定期航空とは種類が違いますので、そういう異種交通は分けようということで訓練空域という問題が出まして、その時点で米軍は大体十カ所ばかり要求してきております。それをまた翌年の四十七年にも要求してきたわけで、たしか百里の付近もあったように記憶しております。
  261. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 だんだん言っていきますかね。百里沖は二カ所じゃございませんか。
  262. 金井洋

    ○金井政府委員 二カ所か三カ所か忘れました。
  263. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 じゃ、違っておったら違っておると言ってください。私のほうから調べたものを言います。  島根県沖一カ所、山口県沖一カ所、これはどちらもマリーン。これはもう表面に出ております。豊後水道一カ所、これはネービーとマリーン共同使用。百里の沖二カ所、これはネービーとエアフォース、埼玉県の熊谷北方に二カ所、これはエアフォース。伊豆半島二カ所、ネービーとマリーンの共同使用。三浦半島の沖合いに艦砲射撃場がありますが、このさらに南方に一カ所、これはネービー。以上で十カ所になりますが、間違ったところがあったら言ってください。
  264. 金井洋

    ○金井政府委員 まことにおそれ入りますが、現在米軍交渉中でございますので、正しいか正しくないかという答弁は控えさせていただきたいと希望します。
  265. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 これは先ほども申し上げたとおり、秘密にするような性質のものじゃないじゃないですか。日本国会の強い要請によって明らかにせざるを得ないという申し入れを米軍にしてくださいよ。そして資料として提出してください。どうでしょうか、外務大臣
  266. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 先ほどの御答弁を繰り返して恐縮でございますが、交渉中の問題でございますので、これを公表することあるいは資料として提出すること、それにつきましてはやはり相手側と相談させていただきたいと存じます。
  267. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 お聞きのとおり、私は資料として要求をいたします。できれば地図の上に場所を明確にした資料をお願いします。どうでしょうか。
  268. 木野晴夫

    木野主査代理 分科会として善処いたします。
  269. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私どものほうの党も副主査を出しておりますから、ぜひお願いをいたします。よろしゅうございますか。
  270. 木野晴夫

    木野主査代理 善処しましょう。
  271. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 沖繩の航空交通管制に対する合意はいつされましたか。
  272. 金井洋

    ○金井政府委員 昭和四十七年五月十五日です。
  273. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 その管制業務はいま日本の手に移っておりますか。
  274. 金井洋

    ○金井政府委員 米軍との沖繩における航空交通管制の協定の中にもありますように、まだ米軍が管制を実施しております。
  275. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 大体いつをめどにして日本側に引き取られることになっていますか。
  276. 金井洋

    ○金井政府委員 先ほどの答弁をちょっと補足いたしますけれども、管制の中には航空路管制、進入管制、飛行場管制等がございます。那覇空港の飛行場管制は昨年の五月十五日から運輸省が実施しております。航空路管制と進入管制は米軍が実施しておる。その米軍が実施しておる航空路関係につきましては、返還後二年後から日本政府が実施するというふうにきめられております。
  277. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 二年後というのは四十九年五月十五日以前ということですね。
  278. 金井洋

    ○金井政府委員 さようでございます。
  279. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 進入管制業務はどうなっておりますか。やはりこれも四十九年五月十五日ですか。
  280. 金井洋

    ○金井政府委員 進入管制業務につきましては、わがほうの施設なり体制が整い次第引き継ぐということでございます。
  281. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 めどは。
  282. 金井洋

    ○金井政府委員 めどはまだきまっておりません。
  283. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 沖永良部ですね、これのNDBとVORの運用、維持はいつ返ってくるのですか。
  284. 金井洋

    ○金井政府委員 わがほうが運用しております。それは返還後六カ月以内に引き継ぐということで当方が現在運用しております。
  285. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 ことしの一月一日からということでございますね。
  286. 金井洋

    ○金井政府委員 さようでございます。
  287. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 宮古のほうはどうなっていますか。
  288. 金井洋

    ○金井政府委員 宮古については本年の二月と記憶しております。
  289. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 じゃもう引き継がれたわけですね。
  290. 金井洋

    ○金井政府委員 さようでございます。
  291. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 これはいつまで日本が借りられるのですか。
  292. 金井洋

    ○金井政府委員 これは当方が米軍から買い取ったものでございます。
  293. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 この施設は買い取られたんですか。借りられておるんじゃないですか。
  294. 金井洋

    ○金井政府委員 宮古のNDBにつきましては、米軍からの引き継ぎ資産の中に入っおります。
  295. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 沖繩の航空交通管制に関する合意書は公表できますか。
  296. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 要旨は公表済みでございます。
  297. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いや、要旨は要旨であって、そのものじゃないですね。第三附属書の場合も要旨をお配りになりましたけれども、あれじゃさっぱりわからないのです。検討するについて、本物とだいぶん違いますから、印象も、中身も。どうですか。
  298. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 合同委員会の合意書そのものは公表を差し控えるということをやっておりますので、要旨で御了承いただきたいと思います。     〔木野主査代理退席、主査着席〕
  299. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 何でもどうしてそんなに公表されないんでしょうかね。私どももやはり空の安全ということは非常に責任があると思うのですよ、政策上も。だから、この種の航空交通管制の問題、これはやはり審議の素材にするために、私はぜひ国会に全文を提出していただきたい、このように思います。この点も先ほどの問題と一緒にひとつアメリカのほうに御相談なさっていただけませんか。
  300. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 いまの合意書の問題につきましては、全文公表は、これはむずかしいと存じますけれども、技術的な内容につきましては、公表されております要旨で十分検討の対象となり得るものというふうに考えております。
  301. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それではもう一度、島根県、山口県沖の訓練空域の問題について一つ聞いておきますが、運輸省の事務当局としては、米軍の案に対してどういう案を提示されておりますか。
  302. 金井洋

    ○金井政府委員 米軍が要求しております島根県の沖合いには、大阪から韓国のプーサンに行く航空路がございますので、ここを日本航空と大韓航空が飛んでおります。したがって、それらの民間機に支障のない範囲内で訓練空域を設定することが可能かどうか検討しておりまして、そういう趣旨でわれわれは検討しておるということを米軍のほうに伝えておりますけれども、まだ返答はいただいておりません。これは口頭でやっておるわけであります。
  303. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 民間航空はいまどのくらいのところを飛んでおるのですか。
  304. 金井洋

    ○金井政府委員 大体二万三千フィート付近を飛んでおります。
  305. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうすると、たとえば二万四千フィート以上ぐらいだといいわけですか。
  306. 金井洋

    ○金井政府委員 民間機が飛んでおる高度から千フィートの緩衝空域をとれば大体安全というふうに世界各国で定義づけられておりますので、御指摘のように二万四千フィート以上であれば安全であるということが言えます。
  307. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それが本問題に対しての運輸当局のお考えですね。
  308. 金井洋

    ○金井政府委員 現在、先ほども申し上げましたように、民間機の支障のない範囲内という一つの案として、こういうことがあるということで考えておる中の案の一つでございます。
  309. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 時間がありませんから、今度は岩国基地に関する進入管制の問題についてまとめて聞きます。  山口県の大島郡の嘉納山にその進入のためのレーダーサイト提供の要求があっておるということが新聞に報ぜられております。これは新規提供になるのかどうか、これが一つ。その施設のための面積、所有者関係施設に要する費用、日米のどちらが負担するか、それをお伺いします。
  310. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 ただいまの第一の御質問については、岩国の離着陸の安全を支援するためのレーダー施設は、これは新規提供でございます。ただこの扱いといたしまして、岩国の飛行場施設の追加として扱うのか独立の施設として扱うのかということは、今後の扱いの問題になろうかと思います。  それから面積といたしましては、最初嘉納山の山頂を要求してきたわけでございますが、環境庁のほうと調整いたしましたところ、その場所が瀬戸内海の国立公園のいわゆる園地地区といいますか特別地域に入っておりまして調整の結果、嘉納山の北にあります文珠山という地域は特別地域からはずれますので、そこがいいんじゃなかろうかということで、ただいまいろいろ日米間あるいは関係者と検討中でございますが、当初出てまいりました嘉納山山頂の面積では五千五百平米ということでございます。  それから三番目に、建設の経費負担の問題でございますが、施設そのものの建設はアメリカ側予算で行なわれます。用地の取得、これは買収になりますかあるいは賃貸借になりますか、この点は地位協定第二十四条第2項の提供施設という検討に移っておりますが、文珠山関係では町有地ということになっております。
  311. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いまのこのことで日本側の負担になります。  それから所有関係につきましては、ただいまのところ文珠山のほうの問題は、一月二十三日安保協議委員会決定事項の中の岩国の項の、あの文章は兵舎その他の施設の新築でしたか、約十五億、このその他の施設にこれは含まれるのでしょうか。
  312. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 十四回日米安保協議委員会で取り上げられました岩国の施設の問題とただいまの問題、全く無関係でございます。
  313. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 では最後にお伺いしておきますが、先ほどの島根県沖と山口県沖の訓練空域、これはかつて航空自衛隊が築城のF86Fの訓練用に計画をして、運輸省が一貫して反対したために、今度は米軍のほうに要求してもらって、そしてそれができたら共同使用しようという意図があると思います。いまの嘉納山のレーダー施設、あそこに岩国の自衛隊のPS1がおりますね。海上自衛隊が最初計画したやに聞いております。それが米軍の使用要求に変わっていった。つまり自衛隊は、そういう要求をするとなかなか抵抗が大きいから、米軍のかさの下に隠れて米軍に要求させて、みずからが共同使用しようとする、そういう意図があると思うのです。どちらもまだ共同使用の問題は出ておりませんか。
  314. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 私はそのようなことを承知しておりません。
  315. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 これは防衛庁関係でやります。  最後に大平大臣にお伺いするのですが、この三十四年度の航空交通管制に関する合意第三附属書の問題は、四十六年のあの衝突事故の国会で当時の佐藤総理は、これは軍事優先の明白な根拠を与えるものであるから、米側との間で再検討するということを私どもに約束されました。この第三附属書をそのままずっと堅持していかれるつもりでしょうか。どうでしょう。
  316. 大平正芳

    大平国務大臣 いま御指摘の点につきましては改定交渉中でございます。
  317. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いま改定に向かって交渉中というわけですか。改定の主要なポイントはどういうところに置かれておるでしょうか。
  318. 大平正芳

    大平国務大臣 恐縮ですが、これは交渉が進行中でございますので、しばらく差し控えさせていただきたいと思います。
  319. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 これでやめます。しかし、何でも交渉中で、全然明らかにならないわけですね。しかし先ほどはずしておられるときに約束しました資料の点は、米軍からの要求があっておる十カ所プラス一カ所の修正個所、計十一カ所の訓練空域を地図の上に明確に示して、ひとつぜひ資料として提出していただきたい。これを再度お願いして終わります。
  320. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ただいまの資料提出の御要求は承っておきますけれども、米側ととにかく相談させていただきたいと思います。
  321. 木野晴夫

    木野主査代理 次は、金子満広君。
  322. 金子満広

    金子(満)分科員 午前中に引き続きまして、ベトナムの問題について政府の見解をただしたいと思います。  午前中の質問の中で、南ベトナムにサイゴン政権と南ベトナム臨時革命政府、二つの政権が存在するという事実は認められました、また、サイゴン政権の統治が南ベトナム全土に及んでいない、そういう事実もお認めになりました。そうして、サイゴン政権と臨時革命政府の双方がパリ協定で定められている南ベトナムにおける民族和解一致全国評議会をつくる二つの当事者であるということも、パリ協定の内容でありますが、そのことも認められました。これは当然のことでありますが、そういう上に立って、外交関係の問題について質問をしたいと思います。  サイゴン政権が南ベトナムにおける唯一の合法的政権でないことは、これはもう明らかだし、二月二十六日から。ハリで行なわれている国際会議でもそうした見解はとりませんから、それらの点から見ても当然だと思うのです。そこで、南ベトナムに二つの政権があるという中で、外交関係を持っているのは南ベトナムのサイゴン政権だけである。これは片手落ちであり誤りであり一方的であり、片方に対する加担者だといわれても、もしそうだとすれば、今後変えないとすれば、いわれてもしかたがないことだと思いますが、その点で大平外務大臣の見解を伺いたいと思います。
  323. 高島益郎

    ○高島政府委員 私ども、法的に申しまして、南ベトナムには一つ政府しかあり得ない。先生の御指摘のとおり、実際に南ベトナム政府とそれからベトナム協定に署名いたしました当事者であるところの臨時革命国政府というものがあることは私たち承知いたしておりますけれども日本政府としての関係上、法的には一つ政府しかあり得ない。これは国際法上の原則からいたしまして、一つの国に一つ政府しかあり得ない。一つの国に二つの政府というのは法的には認めないという立場から来るわけでございます。
  324. 金子満広

    金子(満)分科員 その類似した御意見は午前中も伺ったわけですが、南における二つの政権と外交関係を結んで悪いという国際法がどこにありますか。
  325. 高島益郎

    ○高島政府委員 これはまさに従来の伝統的な国際法の原則から来るものでございまして、また実行上も、いまだかつて南ベトナムにございます両方の政府外交関係を結んだ国は一つもございません。
  326. 金子満広

    金子(満)分科員 南ベトナムで南ベトナム全体を統治する政府というのは現実に存在しないというのは、大臣のたび重なる答弁でも明らかであります。また、パリ協定においてもこれは明らかです。今回のパリの国際会議においても明らかであります。したがって、サイゴンの政府を唯一の合法政権としてもし日本外務省が認めるということであれば、これは重大な問題であり、片方では。ハリ協定を歓迎する、新しい事態に対処していくと言いながら、他方では、パリ協定成立以前の状態をそのまま継続する、ことばだけ新しいことを言って、やっていることは全部古い。古いだけではなくて誤っておる、こういうことになると私は思うのです。したがって、もう一度伺いますが、いま新しい事態ということを大臣も二月二日の予算委員会で表明されておるし、それに対処をしていきたいということを言っておるわけですから、ベトナムに対する外交関係は一体今後どのようにしていくのか、その点を基本的な問題として承っておきたいと思います。
  327. 大平正芳

    大平国務大臣 南ベトナムのサイゴン政府との外交関係は続けていきたいと思っております。北との問題につきましては、まず先方との接触を持ってみたいと考えております。先方の意向をよく承った上で判断したいと考えております。
  328. 金子満広

    金子(満)分科員 そうしますと、パリ協定にいう三つの政権、それからまた国際的にも承認されている三つの政権、このうち、日本政府は臨時革命政府はボイコットするということになるわけですが、そういうことですか。
  329. 大平正芳

    大平国務大臣 外交関係を持つつもりはございません。
  330. 金子満広

    金子(満)分科員 ベトナム民主共和国と外交関係、国交樹立、そういうことを望むなら、当然。ハリ協定の精神に基づいてやるべきであるし、そうするならば当然、臨時革命政府に対してもこれは存在を承認するだけでなくて、この臨時革命政府とも外交関係を何らかの形で持つべきだ、これがパリ協定の精神だと私は思います。ベトナム民主共和国政府との外交関係の樹立が、南ベトナム臨時革命政府をボイコットしてできるかどうかということについては、これは重大な問題だと思うのです。私は、そういう意味でも、南ベトナムにおける臨時革命政府の存在を客観的に承認するということだけではなく、外交関係を持つべきだ、こういうことを要求したいと思います。  そこで伺いたいのですが、一体それではサイゴン政権が代表するものはどういうものを代表していますか。サイゴン政権が代表しているものはどういうもの、何を代表しているか、この点をパリ協定の精神に基づいて明確に伺いたいと思うのです。
  331. 高島益郎

    ○高島政府委員 日本との関係におきましては、いわゆる南ベトナムを代表する政府でございます。
  332. 金子満広

    金子(満)分科員 大臣は、サイゴン政権の統治は、支配は、南ベトナム全土に及んでいないということを認めておるわけです。そうしますと、いまあなたがおっしゃる南ベトナムというのはどこをさして言っているのですか。
  333. 高島益郎

    ○高島政府委員 南ベトナムの範囲がどこからどこまでであるかということにつきまして明確な線はあるわけではございませんけれども、実際の統治と別個にいたしまして、日本政府との関係におきましては、法的にはいわゆる南ベトナム、これを代表する政府は南ベトナム政府だというふうに考えております。
  334. 金子満広

    金子(満)分科員 そういうことを言うと、さかのぼれば、これは午前中も申し上げたのですけれども、サイゴン政権とは北を含めた全部のベトナムを代表する政府として、あなた方はこことの外交関係を樹立したわけです。しかし、それから年月が流れて、今日この虚構はくずれたわけです。したがって、いまやこのサイゴン政権の支配が北に及んでいるなどということはだれだって言えるはずがないのです。しかも、パリ協定が締結されるに及んで、南ベトナムに二つの政権が厳として存在していることも事実です。午前中の私の質問で、南ベトナムにはそういう勢力があるというような不謹慎なことばが出ましたけれども、これは誤解を招いたということでありますから、現実に二つの政権がある。パリ協定の本文には書いてなくとも、四者の調印にはちゃんと政府の名称が書かれておるわけだし、そしてまた、きょう調印されるといわれるパリでの公式の文書にも、これは四者だけではなくて十二者でありますから、国際的にも初めて臨時革命政府外相グエン・チ・ビンと書かれるわけですから、こういうような状態の中で政府がある以上、単なる勢力ではないのですから、その統治する地域があることは明白です。だから、この問題をめぐって、両者が南ベトナムに新しい全国評議会をつくるためにやるんだ、双方の当事者で。これは大臣も認めているところなんです。それなのに、だんだん虚構がくずれてきて、そしていまや、サイゴン政権が全南ベトナムに統治が及んでいないにもかかわらずまだ南ベトナムを代表する。ですから、その南ベトナムのどこを代表しているのですか。法的にではなくて——法的にはもうずっと前からくずれてきているのです。いま南ベトナムを代表するというのですから、どこを代表するのか、もう一度条約局長に聞きたいと思うのです。
  335. 高島益郎

    ○高島政府委員 私は、南ベトナムを代表すると申しましたのは、要するに南ベトナム全体でございます。
  336. 金子満広

    金子(満)分科員 全体ということは、そうすると臨時革命政府という存在はどういうことになりますか。支配が及んでいないという大臣のお答えが繰り返し前からあるわけですから、その点との関連はどうなります。
  337. 高島益郎

    ○高島政府委員 南越の政府が法的に代表する地域と、実際に南越の政府が実効的に統治の権力を及ぼしている地域、これは必ずしも一致いたしておりません。そのことを私たちよく認識いたしております。これは、国家ないし政府の承認の場合に、必ずしも全地域を完全に支配しているということは必須の条件ではないというのが私たちの考えでございまして、今回のような場合、南越の政府が全南越を完全に統治していないにもかかわらず、法的にはその南越全部を代表するというのが私たちの考え方でございまして、各国が実際に南越にございます両方の権力との関係をどういうふうに持つかということは全く自由でございまして、先ほど申しましたかと思いますけれども、南越にございます二つの実体と同時に交渉を持つということは、これは国際法上不可能なことではないかと思います。先生は先ほど、そういう法律はないじゃないかとおっしゃいましたけれども、これはやはり国際法上の従来の立場からしますと、各国はそのいずれかを選ぶというのが現在の慣行でございまして、現在の世界の情勢を見ておりますと、北越の政府と臨時革命政府の両方を承認している、それからまた北越の政府と南越と両方承認しているというのはございますけれども、北越、南越、臨時革命政府と、三つを承認するというのは現在のところございませんし、将来もないことではないかと思います。
  338. 金子満広

    金子(満)分科員 これは外務省の南東アジア第一課の資料の中で、いまの条約局長の言うことは間違っておる。これはチリとインドシナは三つ認めている。こういう経過はあるし、とにもかくにも国際的に三つの政権があるということが公式に認められたのは今度のパリ協定なんです。まだ始まったばかりなんです。しかも、その三つの政権をともに加えて、十二の政府の代表がいまパリで会議を開いて公式の文書が出るということ。そうすると、あなたの見解でいうと、このパリの国際会議の公式文書というものも国際法に違反したということに論理上はなると思います。その点いかがです。
  339. 高島益郎

    ○高島政府委員 パリの和平協定は、これは一種の休戦協定及び将来の政治的解決に関する一つの方針を定めたものでございまして、これの当事者はどういうものであるかということと、各国がこの当事者とどういう関係を取り結ぶかということとは、おのずから別個の問題であろうと思います。
  340. 金子満広

    金子(満)分科員 それは全く別個の問題であります。これは日本政府がきめられることであるし、各国政府がだれにも干渉されずにきめられるべきことだ、これはもう当然のことだと思う。私は、そういう、独自に、自主的に、日本がきめられることであるという前提に立って政府の見解をただしているわけです。  繰り返すようですけれども、非常におかしな話になるのですね。私は、局長自身も、自分でしゃべりながらおかしいと思っていると思うのですよ。法的にはこうだが実際にはそうではない、その法的と言われている根拠も、サイゴン政権と国交を樹立したときは、全ベトナムを代表する政権といってやってきた。それで実際にはそうではなくなったので、あとから実際に合わせているわけでしょう。あとから実際に合わせるのだったら、いま南ベトナムの実際に何で合わせられないのですか。もはや現実に合わせた形でパリ協定が調印をされ、しかもそのパリ協定をさらに十二の政府の代表が承認をし、これが実行されることを望む方向が出ている。大平外務大臣も、このパリでの合意が、表現は不正確でありますけれども、円滑に実行されるように希望するという意思は表明しているわけです。そうしますと、局長の解釈が、事実のほうがはるか先のほうに行ってしまって、そうして解釈だけ、特に日本の条約を担当しているあなたの解釈だけがはるかかなたにおくれてうしろ向きになっていると私は思う。現実に国際的にはもう三つの政権であり、南ベトナム全体をサイゴン政権が支配しているのだ、こんなふうに思っている人もないし、考えている人もないのです。事実があってその上に具体的な方向が出るわけですから、そういう意味からいえば、ベトナム民主共和国とほんとうに外交関係の樹立、国交の樹立を望むのであるならば、南ベトナムの臨時革命政府ともやはり外交関係を何らかの形で持たなければならぬ、こういうことは当然のことだと思うのです。そういうことを要求しながら、いま条約局長の話でいきますと、十七度線の北のほうはベトナム民主共和国がある、この事実はお認めになるでしょう。
  341. 高島益郎

    ○高島政府委員 そのとおりでございます。
  342. 金子満広

    金子(満)分科員 南ベトナムに二つの政権が現実に存在することも、これは大臣が認めているのですから、これもお認めになるでしょう。
  343. 高島益郎

    ○高島政府委員 事実問題としてそのとおりでございます。
  344. 金子満広

    金子(満)分科員 そうして事実問題で私は申し上げているのですが、その事実問題でいえば、サイゴン政権の支配、統治権は全南ベトナムに及んでいないということもお認めになるでしょう。事実関係ですから。どうです。
  345. 高島益郎

    ○高島政府委員 私が先ほどから申し上げているのは、事実問題じゃございませんで、日本政府の法的見解を述べているわけであります。事実問題としては先生のおっしゃるとおりだと思います。
  346. 金子満広

    金子(満)分科員 そうしますと、くどいようですが、南ベトナムにおいて臨時革命政府が統治している地域もあるということを、あなたは事実関係としてはお認めになるわけですね。
  347. 高島益郎

    ○高島政府委員 事実の問題としてのお尋ねでございましたら、そのとおり考えております。
  348. 金子満広

    金子(満)分科員 そうしますと、政府の側のいろいろの人の答弁が、そのときの雰囲気によって違うし、日によってだんだん変化する、これはわかる。変化するのが悪いと私は言っているのじゃない。情勢が変わるのですから変化しなければおかしいので、それが悪いほうに変わるのだったら重大問題だ。しかしパリ協定が調印されてもう一カ月過ぎた。そうしてこれを世界の政治家で知らない人は一人もいないわけです。そうして新たにまたパリの国際会議が開かれている。ここでも再確認をした。ところが日本政府だけは新しい事態に対しても古いことだけを考えている。ただ北のベトナムには民主共和国があるということだから接触をしよう、この接触は何もパリ協定が調印されたからあらためて接触ということではないわけです。これは予算委員会の当初にも外務大臣からお話がありましたように、前からもあったわけですから、そういうことになると、南はサイゴン政権、今度北はベトナム民主共和国、そうして復興という形で商売だけはしよう、そういうように勘ぐられてもいたし方ないことだ。そうでなくて、いま南においては二つの政権が、全国評議会をつくるために二つの当事者として努力を続けている段階です。全国評議会ができるならば、これとベトナム民主共和国との間の話し合いを通じてベトナムは一つになるわけです。それはパリ協定の中で明記されていることです。このことを否定していないからこそ私はパリ協定を尊重するし、歓迎するということを日本政府も言っているのだと思うのです。もしそうだとすれば、過去のいきさつや何かにとらわれることなくして、ここで私はベトナム民主共和国との国交を樹立するのは当然のことだと思う。同時に臨時革命政府に対しても外交関係を持つ。そのことは何ら矛盾しないことだ。もし、じゃ、臨時革命政府から何らかの意思表示があるなら大臣何と答えますか、あなたとは接触しませんと答えますか。
  349. 大平正芳

    大平国務大臣 ベトナムの実態は、金子さんがるる申されたことをわれわれもよく理解しているわけでございます。  それから外交関係につきましては、政府委員も御説明申し上げましたとおり、それぞれの政権を国々が承認をいたして外交関係を持っておることも事実でございます。サイゴン政府を七十カ国余り承認している。臨時革命政府というのは三十カ国ばかりがやっておるということでございまして、われわれも非常に非常識なことをやっているわけじゃないんで、多くの国と国が、条約局長説明されたように一つの国が一つ政府を選択してやっているというようなことで、他の政府を敵視するとか軽視するとかなんとかという大それた考えではないんで、そういうたてまえを維持しておるわけでございまするので、先方からお話がかりにございましてもこのたてまえをくずしてまいるというわけにはいけないと思うのでありまして、先方にこちらのとっておる態度をるる説明して御理解を求めなければならぬと思います。
  350. 金子満広

    金子(満)分科員 まあ私は仮定の問題で聞いたわけですけれども、南ベトナム臨時革命政府外交関係を持つことができないという理由をひとつあげてもらいたいと思います。
  351. 高島益郎

    ○高島政府委員 私ども、ベトナムは一つの民族として将来一つの国家として統一されるべきものだというふうに望んでおりますしそのように考えておりますが、現在不幸にして南ベトナムと北ベトナムと両方の国家が併存しておるというふうに考えております。したがいまして、この南ベトナムに二つの政府があって、この二つの政府関係を取り結ぶということは、従来の国際法の考え方からいたしましてできない相談でございますので、私どもそういう立場から、先ほど来いろいろお話ございましたいわゆる臨時革命政府との間に外交上の関係を持つということは法的にできないというふうに考えております。
  352. 金子満広

    金子(満)分科員 なぜ法的に北とはできるのですか。あなた方の解釈によれば北も南が支配しているという見地である、同じじゃないですか。
  353. 高島益郎

    ○高島政府委員 午前中お話ししたつもりでございますけれども、一九五二年に平和条約にベトナム国が批准いたしまして、それに基づきまして日本と全ベトナムを代表するベトナム政府ということでベトナム共和国との間に国交を開きました。これがずっと続いてきたわけでございまするけれども、最近に至りまして南ベトナム、北ベトナムともにそれぞれの別個の国家として、もちろんこれは将来永久にというわけではございませんが、当面別個の国家として存在するということをそれぞれの立場から申しておりまして、また各国もそういう立場でこの二つの国と国交を結んでおるというのが実態でございますので、私ども現在の姿といたしましてはベトナムに二つの国があるというふうに考えております。
  354. 金子満広

    金子(満)分科員 最近というのはいつのことですか。
  355. 高島益郎

    ○高島政府委員 これを何年何月何日からというふうにはっきり明確に申すことはできません。これはそれぞれ南越の政府、北越の政府がおりに触れていろいろ態度を明らかにしております。そのことからわれわれは判断しておるわけでございます。
  356. 金子満広

    金子(満)分科員 そうしますと事実が先行したわけですね。国際法とかあるいは法的立場ということよりも事実が先行して、それをあとから追いかけて認めていったということになるわけですね。
  357. 高島益郎

    ○高島政府委員 戦後のいわゆる分裂国家、ベトナムなんかはその典型的な例でございますけれども、こういう国家におきましては、従来の国際法の原則だけからは必ずしも明快に割り切れない面がございまして、われわれ非常に悩んできたわけでございます。現にベトナムにおきましては非常に不自然な形でございましたけれども、要するにベトナム共和国が全ベトナムを代表するということで私どもは国交を開いたわけでございますけれども、これは現実には最近の発展によりまして当面二つの国があるということを相互にそれぞれの立場から認めるようになりましたので、各国はそういう立場から南ベトナム、北ベトナムそれぞれと国交を結ぶというかっこうになってきているというのが現実でございます。
  358. 金子満広

    金子(満)分科員 一九五四年のジュネーブ協定のときも今度のパリ協定と同じように十七度線は国境ではない、暫定的な軍事的な境界線ですということは明記してあるわけですね。ですから私は、そのときから日本政府のとってきた態度というのは誤っておったと思うのです。その誤りが事実の進行の中で抗し切れなくなって二つというものを認める状態になってきた。そこでさらに今度のパリ協定によって三つの政権というものが出てきている以上私はほんとうに、繰り返しになりますけれども、ベトナム民主共和国と国交の樹立を望んでいる、これはわれわれも支持します。しかし同時に、望むのであればパリ協定に基づいてこれをやる必要があるし、ジュネーブ協定の精神は。ハリ協定の第一条に生かされておるわけです。しかもこの第一条は「アメリカ及び他のすべての諸国は」ということで入っておるわけです。それは、ベトナムの民族自決権を尊重しなければならぬ、尊重するということが入っているわけですから、「アメリカ及び他のすべての諸国」というのは世界じゅうのことをいっているわけですから、そういう立場からくると、ほんとうにパリ協定を尊重し、そしてベトナムの最終的な統一を真剣に望んでいるのであれば、いま局長が言われるように確かに第二次世界大戦後いろいろの国の中で不正常な状態があったことは事実ですよ、その不正常な中でパリ協定は一つの新しい方向というものを現実に打ち出した、それがいまの動かない事実なんですから、この事実から出発しないで古い概念から出発をして、古い形をいつまでもいつまでも後生大事につないで法的には法的にはと言っているその法的がどんどんくずれてきているのですから、そうしますと最後にあなたの手に握って残るものは何になりますか、これは国際的に孤立するだけであります。私はそういう点では、かつての国連総会で、あの中華人民共和国の国連での正統な地位を回復するときの日本政府、特に外務省がとったあの態度が全世界に大きな恥をさらしたということも考え合わせるならば、いまパリ協定というのは成立してまだ一カ月少しなんです、三つの政権というものが公式に国際的に明らかになったのもこのときからなんです、私は今後臨時革命政府に対してもベトナム民主共和国に対しても国交あるいは外交関係を樹立していくという動きというものは多くなっていくことは事実だと思うんですね。ですから私どもは具体的な状況、現実、事実に即してやっていかなければならぬ、これが日本外交立場だと思うのです。私はそういう意味で、もう時間がないそうですから繰り返し要求をいたしますが、ほんとうにベトナム民主共和国と国交の樹立を望むなら、臨時革命政府に対しても外交関係を打ち立てなければならぬ、これがパリ協定の精神であり、ジュネーブ協定を生かす道であり、そして民族自決というものを生かす道なんだということだと思うのです。  そういう意味で、私はこの質問を終わりますけれども、再度外務大臣伺いたいと思うのです。確かに日本政府は、事実が示すとおり、アメリカのベトナムに対する侵略戦争には日本にある基地をいろいろの形で提供してきた、これはまぎれもない事実です。いろいろ解釈をしようとも、このことは全世界で事実として知っています。こういう中で、われわれがほんとうに友好親善関係を真に対等、平等の立場で、内部問題に干渉しないで打ち立てていくということになるならば、先ほど要求したような線が生きなければならぬ、こういうことだけは明白だと思いますが、そのことに対する大臣答弁を聞いて終わりたいと思います。
  359. 大平正芳

    大平国務大臣 パリ協定を尊重し、それを念頭に置いて、それを軸としてベトナム政策を考えていくと、たびたび私も申し上げておるわけでございまして、そういう態度と、それからいま金子さんが提起された政府の承認問題とは、私は矛盾しないと考えておるのです。むしろ私どものような態度をとるほうがパリ協定の精神に忠実なんじゃないかというようにさえ思うわけででございまして、この問題につきましては、金子さんにおかれましても、今後なお御討究いただきたいと思います。
  360. 黒金泰美

    黒金主査 次に、山原健二郎君。
  361. 山原健二郎

    ○山原分科員 私は公海上の米軍演習の演習区域の問題について質問をいたします。  これはもうすでに昨年十月十一日の内閣委員会におきまして、わが党の東中委員の質問の中から、一つ安保条約第六条、さらには地位協定第二条、さらには調達庁告示第四号、さらに防衛施設庁の告示第十二号、これがすべて公海上の場合には通用されないところのものであるということが明らかになっております。そして増原国務大臣も、「仰せの趣旨で急ぎ検討して、適切な措置をとります。」こういう答弁をいたしておりまして、問題の所在はもう明らかになっているわけですが、この問題についてその後どういう措置をとられたか、最初に伺っておきたいのです。
  362. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 ただいま御指摘の点、われわれのほうで現在作業を続けておりますが、本来、海上演習場の場合におきまして領海のほかに公海上の演習場というものがあったわけでございますが、これは当初から扱いといたしましては、当然地位協定の二条1項の提供施設とは区別した扱いではあったわけであります。昨年、御指摘のありましたように、告示の表現等に疑義を生ずるような扱いがございましたので、そういった点をこの際明確にして、領海上の部分と公海上の部分の地位協定の扱いにつきまして、釈然と明らかにするような作業を外務省と協議し、あるいは米側と接触をいたしながら作業を続けて、できるだけ早く結論を出したいと思っております。
  363. 山原健二郎

    ○山原分科員 公海上と領海上を区別するわけですね。告示の中から、公海上の問題は、これは問題にならないわけですからね、だからそれをなくするわけですか。区別するというわけですか。区別した告示にするというわけですか。
  364. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 具体的に告示の表現等につきましてどうするか、これからの作業の問題になると思いますが、公海上と領海の、おのずから地位協定の扱いとして違った性格であるということを明確にするような表現にいたしたいと思います。
  365. 山原健二郎

    ○山原分科員 現在沖繩では御承知のようにホテル・ホテルとかインディア・インディアとかマイク・マイクという区域があるわけですね。それから本土の場合には——いま集中してお聞きしたいのは、チャーリーとそれからリマの問題です。そのほかにもフォックストロットあるいはゴルフなどがあるわけですが、これに集中したいんですけれども、まず第一番に、昭和二十七年の安保以来実に二十年間、この区別を明らかにしないで、公海上の指定区域をあたかも安保条約に基づいて行なわれておるかのような印象を与えて、全く国民に対してこれを明らかにしなかった責任というのは、私は重大だと思うのです。私どもはリマの問題については、チャーリーもそうであります、けれども、これはもう全く重要な漁場なんですよ。その漁場を、二十七年の安保条約あるいは地位協定以来、そこへ出漁することができなく、そのために受けた漁民の被害なんというものはたいへんなものです。何十億という被害なんですね。ところが漁民の皆さんも知らない間に安保条約第六条によって、また地位協定第二条によってこれが政府の方針として打ち出されておる。もう侵すべからざるところだというふうな感じを持たされてきたわけですね。ところが調べてみると、まさにこれは公海上における問題であって、法的拘束力もなければ、また法的にも根拠を持たないものであったということが昨年に至って、二十年目にして明らかになったというこのことですね。私はこれは政府の責任あるいは政府の反省というものを一言ここではっきり申し述べていただかないと腹の虫がおさまりませんね。実際に出漁している漁民、しかもリマだけでも大分、鹿児島、宮崎、高知、愛媛、もう数県がこれに関係をいたしておるわけでして、そういう状態に置いてきた政府の責任は一体だれがとるのか、お伺いしたいんです。
  366. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 安保条約に基づきまして日本に駐留いたします米軍が、日本領土領海等におきまして、安保条約の目的に従って行動することに伴うところのたとえば施設、区域、その中での訓練区域を設定するということは地位協定上のたてまえになっておるわけであります。それと同時に、日本に駐留いたします米軍が、日本の周辺の海域におきまして訓練等の行動をいたす場合に、随時公海上の水域というものを随意的な選択でもって、そのときそのとき演習を行なうということになりますと、何といたしましても公海上とはいいながら、日本の周辺で日本の国民の航行あるいは漁業の操業等に利害との調整を要する必要があるわけであります。また周辺でそういう行動をとります場合に、安保条約の精神なり趣旨に照らしてもそういう点について日本側も当然アメリカ側とも協議をする必要があろうかと思うわけであります。その際に、随時随意的にいろいろな水域を選択して訓練等を行なわせるよりも、一定の水域というものをあらかじめ日米間で話し合って、その水域において演習を実施させ、その際に適当な漁業の制限の告示とか、あるいは航行船舶に対する水路告示とか、そういった手続をとることによって利害の調整をはかりながら航行船舶の安全あるいは漁業の操業の一応の安定化をはかっていくというたてまえが必要であろうか、そういう考えのもとに今日まで、このような演習場の水域というものを日米間で話し合ってきたわけでございますが、御指摘のような点でこれが地位協定上の全く提供水域というふうに誤解される向きがあった点は告示の表現上の問題でございまして、扱いといたしましてはいまのような精神で今日までやってきた次第でございます。
  367. 山原健二郎

    ○山原分科員 告示を区分する、区別するという方針はわかりましたが、では現在、あの十月以来この問題が指摘をされまして、実は指摘はもっと前からなされているわけでありますけれども指摘をされてから米側との間にこの問題について何回話し合いを持たれているのですか。あるいはこの問題についてめどをどの程度に置いているのですか。
  368. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 米側とは一応基本的に話し合いをいたしまして、公海と領海とのおのずから扱いの違いという点については、もちろん当初からそれはアメリカ側承知しているわけでございます。したがって、基本的にはそういった点で何ら考え方の相違はないわけで、あとはいわゆる技術的な表現の問題、たとえばいろいろ事務的に複雑、というよりも作業に若干日が伴いますのは、特に沖繩におきますところの水域に関しまして陸に接続した水域で、領海部分と公海部分というようなものが一つに入った水域というものがございまして、そういったものをどういうふうに扱い上分けるかというような点をいま検討しておるわけでありますが、できるだけ早く結論を出したいと思っております。
  369. 山原健二郎

    ○山原分科員 区分をする、区別をするということは、また区別をしたまま表現を変えて、それを指定区域として使っていくということを意味しているのですか。
  370. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 公海上の水域におきましても、米軍がそこを使用することの必要性を当方に対して申し述べて、われわれのほうも公海上ではあるが日本の周辺水域において安保条約の趣旨なりに照らして、そういった点でこちらも一応了解する必要があると思うものについては、やはり引き続きその使用を認め、必要な、それに伴うとごろの一般航行なり漁業者に対する安全の措置についての手続を講じていく必要があろうかと思っております。
  371. 山原健二郎

    ○山原分科員 これは全く違うのですよ。われわれが要求しておるのは、公海上そんな区域をつくって、しかもリマのごときは日本最大の面積をとっているわけでしょう、そんなものを残されたら困るのですよ。二十年たってもまだ区別をして、表現を変えて残すなんということをだれも要求していません。だから米軍が演習をやるというんだったら、ずっと遠い太平洋のかなたでやればいいわけですね。かりにもしこちらでやるというんだったら、そのつどその演習に対して政府が、いま漁期であるから困るとか、交渉が持たれるべきなんですよ。それを指定区域をつくって、航行の安全とか漁業の操業を守るとかいうようなことは、これはもってのほかで、現実の問題はどうかといいますと、リマの近くに行くと魚がおるのですよ。さざなみのごとく魚の群れが見れるのですね。しかし出漁できないものですから、リマの前に行って泣きながら漁民は帰ってきておるのです。そういう状態なんですね。だから、そういうところで米軍が演習をやるというんだったら、そのつど政府としていまはやめてもらいたいとか、あるいは時間、日時を縮小するとか、そういうことならまだ話はわかりますけれども、依然として告示のことばを変えて、長期にこの指定区域、線引きを残すということについては、われわれはどうしても賛成できないのです。またそれは不法な行為だ。まさにこの前の議事録を読むまでもありませんけれども、法制局にしたってどこにしたって、これは全く適用されないものをやっているんだということを言っておるわけでしょう。それをなおかつまだ継続するという考え方外務省や防衛庁は持っておるのですか。
  372. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 ただいま御指摘の点、まさに関係漁業者の方々のなまの声につながるものと思います。われわれもかねてからそういった関係者の皆さんの声を尊重しながら、また在日米軍の実態の変化等、つぶさにながめながら、絶えず陸上もしかりでございますが、海上の演習場につきましても、そういう演習海域の解除と申しますか、使用しないような折衝を従来とも続けてきたわけでございまして、かつて二十幾つありました水域等も、現在洋上の水域といたしましては本土五カ所、沖繩三カ所という範囲に狭まってまいりました。最近におきましては、たとえばリマに関しましては米軍折衝いたしまして、昭和三十六年でございましたか、一部水域を除外させました。また、四十二年でございましたか、そのときには従来月曜日から土曜日まで演習をやっておりますのを、土曜日を減らさせまして月曜日から金曜日までというふうに、演習の日数を短縮させるような折衝も行ないました。なお引き続き日本近海の海域につきまして折衝を続けまして、昨年の一月には、御存じと思いますが、土佐湾だとかデルタ水域だとかあるいはマイク・ノベンバーといった水域の六カ所の返還も実現いたしました。御指摘のリマにつきましても米側と折衝を続けておりますが、今日のところまだその結論は得ないという状態でございます。
  373. 山原健二郎

    ○山原分科員 十年前に、三十八年ですか、確かにリマの凸部の一部を解除するとか、あるいは土曜日を入れないとかいうことが行なわれたことは、これは事実でございますけれども、依然として広大な地域はまだ線引きの中に入っているわけですね。そういうことはこれは今度告示をどのように変えるか知りませんけれども、変えたところで線引きが依然として続くということは、これはまた不法なことをさらに継続していくということになるわけですから、そういうことは私たちは全く要求していないということなんですね。また関係県民はそんなことを求めてはおりません。だからこの拘束力のない不法な線引きに対して、出漁するということを漁民は言っておるわけです。もう出漁します、拘束力はありません、法的根拠はないのですよ。米軍にもなければ日本政府にもない。漁民はここで魚をとる権利がある。いいですか。とっていいですか。とりに行きますよ。
  374. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 告示の扱いの問題と実態の問題と、私ども区別して考えたいと思いますが、実態的には漁民の方たちのお気持ちもよくわかりますので、そういった点については、先ほど御答弁いたしましたような精神で、今後とも問題の解決に努力したいと思っております。
  375. 山原健二郎

    ○山原分科員 最後に、これは外務大臣にお聞きしたいのですけれども、もう少し外務大臣聞いていただきたいのでありますが、問題の解決に防衛庁が努力するということについて、私はどの程度の熱意を持っているかいささか疑念もあるのです。なぜならば、この海域を自衛隊が使おうとしているわけでしょう。だから米軍の不法な、何ら法的根拠のないリマ海域というものに対して、これを自衛隊が使うということで、さらに漁民の方はどうしてそういうことをするのか、これはまさに演習内容の拡大ではないかということですね、そういう心配を持っておるわけで、去る二月二十六日に健保会館で、あなた方、また水産庁も立ち会い人となって全国漁連と、そして関係五県の代表が集まって会議を持っておられるわけですね。そのときにあなた方は漁船が出漁しておれば演習しないということを言っているのです。飛行機を飛ばしてリマ上空で調査をしまして、漁船がこの中に入っておれば演習はしない、こう言っておられます。これは確認できますか。
  376. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 リマ水域と申しますのは、あくまで日米間の話し合いで一応その水域を訓練水域として了解し合っている水域でございます。たまたまその水域において海上自衛隊が訓練するということは、これはまた全く別個の問題になってくるわけでございます。これは、自衛隊法の百五条で、自衛隊が海上を訓練のために使用する場合の手続等を規定した条項がございまして、自衛隊はこれに基づいて行なうわけでございます。したがって、その場合には、自衛隊といたしましては、所要の告示等の手続をとってやるわけでございますが、これが、海上自衛隊が、リマは米軍の水域であるからそれをはずして別のところでやるということになりますと、周辺水域においてさらに多くの漁業者に御迷惑をおかけすることになるということで、リマにおいて米軍が使用していないときに演習をするという形になっておるわけであります。その際に、リマの水域というのは、米軍としては月曜日から金曜日まで常時制限するという水域になっておりますが、その期間の中でもし海上自衛隊が演習いたします場合、安全を確かめるために、事前に哨戒機等を飛ばしまして、漁船等が入っておられるときには、自衛隊立場といたしましては演習をしないということをこの間の会議で申し上げたのではないか、私、当日出席はしておりませんでしたが、そういうように理解いたします。
  377. 山原健二郎

    ○山原分科員 漁船がおれば演習はしないということは約束されておるわけで、その点はわかりました。  ところが、あなたの言われることを聞くと、米軍は常時使用でしょう、月曜日から金曜日まで使用するわけでしょう。あなたの論法でいくならば、この期間は入れないわけですね。入れる期間を利用して自衛隊が演習するといえば土曜日と日曜日ということになるわけですね。こんなばかな話はないですよ。どういう意味なのか。要するに、あなた方の言われておる漁船が入っておれば演習はしないということは、漁船はリマに出漁していいというわけですね。これを逮捕したりあるいは罰則を使ったりすることはないわけですね。法的拘束力はないわけですね。
  378. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 月曜日から金曜日まで米軍が演習するということは、するたてまえであるということであって、実際にしているということとは別になるわけでございます。それで、海上自衛隊もそこで演習をする場合に、米軍と調整いたしまして、米軍が月曜日から金曜日までの間といえどもやっていないときには海上自衛隊が演習をするというような話し合いをしながら使用しているということであって、先ほど御指摘のような、月曜日から金曜日までがアメリカで、土曜、日曜が海上自衛隊と、そういった意味合いではないわけでございます。
  379. 山原健二郎

    ○山原分科員 月曜から金曜まで常時使用するということは、その間入れぬ、こういうわけですから、結局漁船が入れる時間というのはさまってくるわけですよ。たとえば、月曜日と火曜日は米軍が使って、水曜日と木曜日は自衛隊が使うとしても、月曜日から金曜日までの間は米軍の常時使用区域ということになると、あなたの言うことは私にはちょっと理解しがたいのです。現実には自衛隊が使う場合もあるでしょうけれども、しかし少なくとも月曜日から金曜日までの間は米軍が常時使用するということで、そのためにリマ水域の線引きが行なわれておるんだから、結局出漁できないということになるわけですよ。しかし、あなた方が、漁船がおれば演習はしないと言うことは、裏返せば、漁船の進出というものをあなた方根本的には認めておるというように理解してよろしいですか。  それから、漁船が出漁いたしまして、チャーリーにも行きますよ。伊豆の下田に百二十五隻の土佐カツオ船団がおり、カツオはあそこに一ぱいおるわけですからね。出漁しますよ。法的拘束力も何もないですね。漁業操業制限法にしたって、罰則も何もありませんから、出漁してもかまわないわけです。しかもこの線引きというのは、全く不法な、根拠のないものということですから。その点、よろしいですか。出漁しますが、よろしいですか。
  380. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 事実上、入るということと入れるということとの違いがあろうかと思いますが、漁業操業制限法に基づきまして、一応、リマ水域につきましては、常時制限の水域であるから入ってもらわないようにしてもらいたいということで、法上の制限はございます。ただ、条件といたしまして、演習がない場合には入っても差しつかえないという条件がついております。そういう条件にかなう場合に漁船が入られることは差しつかえないわけでございます。それ以外は一応危険性があるということで、漁業操業制限法に基づきます制限の告示を行なっておりますので、入ってもらうわけにはいかないということになるわけでございます。
  381. 山原健二郎

    ○山原分科員 漁業操業制限法は国内法ですよ。しかも、このリマ水域というのは、安保条約にもないもの、当然地位協定の適用範囲外のものです。だから国内法ですね。そういう制限法というものが上級の法律をオーバーするような越権的な規定を設けることはできないわけです。リマについての漁業制限法なんというものは、全く根拠のないものの上に、虚構の上に立ったところの法律であるわけです。しかも、漁業操業制限法には罰則もありません。だから、出漁してもよろしいということになるわけです。演習していないときには出漁してもいいわけなんです。それに対して、かってに演習をするなどということについては、日米合意によるところの不法な占拠であるということで、私どもは法律的な戦いを起こすこともできるわけです。それをいままで知らないものですから、二十年間しんぼうして何十億という被害を受けてきた。この漁民の姿というものを絶対にあなた方に認識をしてもらわなければ困るのです。だから、そういう点で米側と強力な折衝をしまして、このまさに不法なリマ、チャーリーの線引きというものは撤去さすということで外務大臣折衝をしていただきたい。その決意がございますか。
  382. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 海上演習場の問題につきまして、領海内の演習場につきましては、地位協定二条に基づく施設、区域ということになりますけれども、ただいま御議論になっておられまする公海上の海上演習場につきましては、もちろん、先ほど来御指摘のとおり、地位協定がそのままかぶる性質のものでないことはそのとおりでございます。しかしながら、従来政府は、日米安保条約、地位協定の精神に基づきまして、米軍が公海上で海上演習を行なう、その水域を使用することを容認するという立場をとってきておりまして、その関連におきまして、昨年問題になりました当該告示は、規定上若干疑義があるということで、ただいま政府部内におきましてこの告示の改定について具体的に検討を急いでいる状況でございますけれども、漁業制限等に関する法律は、その海上演習場の米軍の使用を容認することに関連いたしまして、法律の規定におきまして当該水域における漁業の操業を制限するという趣旨でございます。したがって、違法云々という御指摘は当たらないと存じます。
  383. 山原健二郎

    ○山原分科員 最後のところが少し聞こえにくかったんです。最後のところをちょっと言ってください。
  384. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 漁業制限法は根拠のない違法のものである、こういう御指摘であるというふうに私は伺っておりましたけれども、その点は、国会で御承認をいただいた法律としてこれが制定されておるということを申したわけでございます。
  385. 山原健二郎

    ○山原分科員 漁業操業制限法そのものを私は違法だと言っておるわけじゃないのですよ。それは法律としてあるわけですからね。しかし、それがリマに適用されるということ自体——米軍が演習したいんだったら、何日から何日までここでやるのだということがあれば、それに対して日本政府があるいはときには合意に達するかもしれませんね。しかしそれは場合によっては移動したってかまわぬでしょう。何もリマという広大な面積を線引きをしてほぼ永久的にこれを米軍提供するような事態、しかもそれは私は法的な根拠はないと思う。そしてまたこの前のときに明らかになっていますから、そういうものを永続さすことはいけないのだ、こう言っているのです。だからこれは撤去してこの線引きはやめて、米軍が演習したいんだったら豊後水道のどこでやる、あるいは房総沖のどこでやるというときには、日本政府に対してここでやりたいがどうだ、それに対する日本政府の対応のしかたがあるのですから、このことで解決すればいいわけです。戦後二十八年もたって、しかもその間二十年もほぼ半永久的にこの漁民の漁場をそういう不法な形で奪うということは許せないことなんです。だから、これに対して外務大臣として米側と強力な折衝をして、この線引きをやめるということをやっていただきたいという要請を私はしているわけで、当然外務大臣答弁があってしかるべきだと思います。
  386. 大平正芳

    大平国務大臣 実は私、この問題につきましては従来の経過をよく存じませんし、知識もないわけでございまして、たいへん恐縮でございますけれども、お話を聞いておりますと、公海上——公海は自由でございまして、そこで乱雑に訓練が行なわれて、漁業の操業ないしいは航行の安全ということに支障を来たすということがあってはいけないから、訓練地域というようなものを設けて、それ以外では訓練をしないというようにしたほうが漁業並びに航行の立場から見ても、そのほうがベターであるという考え方でこういう措置がとられたのではないかと想像するのでございます。けれども、いま施設庁におきましても鋭意折衝いたしまして、逐次この区域を縮減していっているようでございます。いまお話で、区域の制限一切撤廃する方向でおまえは交渉するつもりがあるかどうかということでございますが、冒頭に申し上げましたように、私、実は十分勉強しなければならぬ問題でございますので、なおよく検討させていただいて、何としても漁業者の利益と航行の安全、訓練の実施というような点に最大限の調和点をどうしたら見出せるかというような点は、確かに御指摘のように大きな問題であろうと思いますので、検討させていただきたいと思います。
  387. 山原健二郎

    ○山原分科員 最後に、自衛隊の演習の際は、漁船が出漁しておる場合等これは十分調査をされまして、その区域内におるときは演習しないということは確認できますね。
  388. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 これは海上自衛隊のほうにもよく連絡しておきますが、そこに入っている漁船がどういう形で入っているか、その制限されている時期に制限されている水域に入っているということについての扱いの問題は別といたしまして、現実にそういうことで入っている漁船に対しては十分安全の措置を講じていくことは当然でございます。その趣旨は十分海上自衛隊のほうにも徹底するようにいたします。
  389. 山原健二郎

    ○山原分科員 時間がたちましたから、これで終わります。
  390. 黒金泰美

    黒金主査 次に、上原康助君。
  391. 上原康助

    上原分科員 まず最初に大臣にお伺いしたいのですが、これまでもたびたび委員会お尋ねをしてきたことですが、確かめておきたい面もありますので、御見解をあらためて賜わりたいと思います。  基地の整理縮小計画についてですが、これは本土を含めてですが、政府が今後基地返還、整理・縮小を進めていく場合に、地方公共団体あるいは地域住民が返還をしてもらいたいという強い要求なり要望は出されていると思うのです。せんだっての北谷村の場合、あるいは立川にしましてもそうだし、各市町村なり公共団体はこういうものについて返してもらいたいということを、政府なり各関係省庁にいろいろ具体的に要望を出されていると思うのです。  そこでお伺いしたいことは、今後政府基地の整理・縮小を進めていく場合には、市町村なり地主から出されている要求というものを一〇〇%生かされるという期待はできないわけですが、少なくともその要望なり要請、要求というものについては無視しない立場で進めていくということでなければいけないと思うのです。その点、特にこれから対米折衝を進める外務省としてどういう態度をとっておられるのか、ぜひ明確な御答弁を賜わっておきたいと思うのです。
  392. 大平正芳

    大平国務大臣 基地の整理・縮小を考える場合におきまして、地元の地方公共団体、住民の要望というものを十分念頭に置いてやらなければならぬことは当然と考えております。
  393. 上原康助

    上原分科員 これまでえてして返還される軍事基地なり施設というものが、地域住民が求めていないところ、使いものにならないところを返された面もあるわけですね。そういうことのないように、市町村なり地域住民の返還してほしいという、返還すべきであるという要求に基づいて、今後の整理縮小計画を進めていくという立場にあるというふうに承っておきたいと思うのです。  そこで具体的な例、ひとつお聞かせをいただきたいのですが、せんだっての安保協議委員会で、沖繩基地の整理・縮小についても述べられているわけですが、こまかいところまでは触れる時間がありませんが、一点確かめておきたいのは、いわゆる俗に上ノ屋と言われている牧港・那覇ハウジングエリア、そこには住宅が実際には千二百戸近くあるわけですね。しかしたった二百戸しか移転しないということが合意をされたということになっているわけです。那覇市からはその地域全部返してもらいたいということを再三これまで要望、要請が来ていると思うのです。なぜわずかに二百戸だけということになってしまったのか、そのいきさつ。またかりに二百戸嘉手納空軍基地に、あるいは牧港兵たん地域に移転するという場合に、移転した地域、いわゆる二百戸分に相当する地域は那覇市に返すのか、地元地主に返すのか、それもさだかでないのですね、この二十三日の合意によりますと。そこらについてどうなっているのか、具体的にお聞かせをいただきたいと思います。
  394. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 御指摘のように、一月二十三日の安保協議委員会の発表といたしましては、牧港住宅地区の中の、具体的にはいま御指摘のどおり千二百戸の中の二百戸分の嘉手納その他への移転ということが発表されてございますけれども、この二百戸分が嘉手納その他へ移転されましたあと地の利用につきましては、日本側にいずれにせよ返還になりますので、今後どういうふうな利用計画を立てるかということについては、日本側が検討すべき問題であるということでございます。  なお残りの千戸分につきましては、これをもって終わりということではございませんで、今後日米間で引き続き協議検討の対象としていくということを考えております。
  395. 上原康助

    上原分科員 私が冒頭お尋ねした点とも関連するわけですが、千二百戸も住宅があって、さらに教会がある、PXがあり、いろんなその他の関連施設があるわけですね、上ノ屋の住宅地域というのは。那覇市はその地域全部を返還をしてもらいたいということが、先ほど申し上げたようにこれまで要請が出ておりますし、また合意議事録を見ても主要な議題にするというようにうたわれているわけですよ。部分的に返還されては都市計画なり具体的に進められない、かえって問題だという意見さえ出ているわけですね。それでは困るのです。しかもこの一月二十三日の合意した計画を見ますと、いま当然日本に返されるのだからということですが、国有地は全然ないわけでしょう、これは。そうじゃないですか、二百戸分というのは。
  396. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 御指摘の牧港住宅地区の財産区分は、民有財産が百七十万平米、それから公有財産が七万平米、ほかに非細分土地がありまして、国有財産はございません。
  397. 上原康助

    上原分科員 そうしますと、国に返還されるということにはならないわけでしょう。返還されれば当然地主に返されるということになると思うのです。なぜ二百に限ったのか、そこいらもう少し説明をしてください。返還後の土地というのはどういう利用目的なのか。
  398. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 牧港住宅地区の返還あるいは移転ということにつきましては、沖繩返還交渉当時からのずっと長い懸案でございまして、今回そういう背景のもとに二百戸分だけの移転ということについて合意が見られたわけでございますが、これは米側の内部事情と申しますか、部隊の運用上あるいはそれに伴いまする住宅施設の運用というふうな関係であるというふうに承知しております。  そこで、残りの千戸分につきましては、日本側といたしましては今後引き続き返還もしくは移転という方向で米側と協議を進めてまいりますけれども、米側におきましてまだ具体案を話し合う用意ができておらないということで、とりあえず二百戸分の移転並びにそのあと地の返還ということがきまったわけでございます。
  399. 上原康助

    上原分科員 その二百戸の地域はどのあたりなんですか。いまの国道五十八号線に沿った部分なのかあるいはまん中あたりなのか、那覇市の住民地域に近いほうなのか。
  400. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 具体的な土地割りにつきましては、今後日米間で折衝する問題でございます。
  401. 上原康助

    上原分科員 一事が万事こういう調子ではいかないと思うのですね。この問題だけに限るわけにはいきませんが、少なくともあの地域は、沖繩に行かれた方はすぐ理解できると思うのですが、やはり早急に全部返還してもらわなければいかないのですよ、大臣、それは。土地計画の面からしましても、あるいはきのうも国際海洋博覧会での関係基地の縮小問題もいろいろ申し上げたのですが、ああいう都心部にぱかっとアメリカの住宅地域があるということ自体が、どう考えてもおかしいですよ。ですから、たびたび申し上げるように、一月二十三日のこの協議事項に限らずに、少なくともあの部分については全部同時に移転をさせるという方向でなければ、那覇市自体も返されても使い方に困るということが出てくると思うのですよ。そこいらひとつ実情理解をしていただいて、なお政府としては強力な対米折衝をしていただきたいと思うのです。また、やるべきだと思う。  それともう一点確認をしておきたいのですが、昨日外務委員会と沖特の連合審査の場合にも触れたのですが、現在の那覇軍港を当然私は早急に民間の港にすべきだと思うのです。返還すべきだと思う。那覇の空港におりてあの一帯を車で那覇市に入る人がほんとうにどういう感じを持つのか。そういう意味で、軍港の返還について強力な対米折衝をすべきじゃないのかということに対して、大臣もそれに沿うて対米折衝するという前向きの答弁があったわけですが、そういう受け取り方でいいですね。少なくとも那覇軍港については早急に返還をすべきであるということは、これはもう県民世論なんです。また、市のこれまでの強い要求も出されていると思うのです。あらためて決意のほどを伺っておきたいと思うのです。
  402. 大平正芳

    大平国務大臣 軍港につきましては、私その専門家でございませんけれども、この返還ということについてはたいへん問題があるようでございますけれども、よく検討いたしまして努力を重ねたいと思います。国会におきまして先生方から言われますと、われわれの気持ちといたしましても気前のいいことを申し上げたいのでございますけれども、あとで実績があがらないといけませんので、確実になったことだけを御報告するということでいくほうがいいんじゃないかと思って、あまり大きなことを言うと食言じゃないかなんて言われますから、その点は私も先生方の御要望に沿って最大限のことを申し上げたいのだけれども、あまり申し上げないほうがいいんじゃないかと思いまして、誠心誠意やってまいって、逐次実績をあげていきたいと思います。
  403. 上原康助

    上原分科員 御心境わからぬわけでもありませんが、何も気前のいいことを答弁していただいて、こっちもただ責任のないやりとりをやろうとは思いません。しかし、実態というのはそうでしょう。ですから、きのう前向きにやるということをおっしゃったわけですから、いろいろむずかしい面もあろうかと思いますが、ぜひひとつ強力な対米折衝をする過程で、少なくとも、海洋博がどうなるかわかりませんが、昭和五十年という目安を立てて、空港の完全返還並びに軍港、その周辺の基地の撤去、整備というものをやってもらうように、一段の努力を要求しておきたいと思います。  次にお伺いしたい点は、これは基本的な、現在どうなっているかという点だけでいいのですが、例の水道料金問題ですね。これまでお伺いしたのですが、合同委員会のもとに小委員会をつくって折衝しておられるということでしたが、なぜこんなに長い間もたついているのか、現在までどういう点が合意されてどこに問題があるのか、それを明らかにしていただきたいと思うのです。
  404. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 水道料金の問題につきましては、当初地元、県並びに市町村と米側との間にいろいろ折衝が持たれましたけれども、必ずしも話が進みませんので、その後合同委員会水道特別小委員会にこの話を移しまして、具体的に米側と折衝を重ねてまいりました。その結果ほぼ日米間で話がまとまりまして、地元の御満足のいただけるようなかっこうで大体結論が出る見込みでございます。
  405. 上原康助

    上原分科員 いつごろまでに結論が出るのですか。
  406. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 そう遠くない時期に実現できるということを期待いたしております。
  407. 上原康助

    上原分科員 地元の満足のいくような結論に持っていけそうだということですが、当然軍人軍属も沖繩県民並みに水道料金を払う、そういう受け取り方でいいですね。それと今日まで米側が払うべき滞納金というのは一体幾らぐらいあるのか、あわせて説明していただきたいと思います。
  408. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 水道法に基づく規定並びに水道事業者としての沖繩県並びに市町村、この立場を、この規定並びにそれぞれの関係市町村、地方団体の満足のいくような方向で話が片づけられそうだ、こういう状況に今日おりますけれども、その滞納金の点につきましては、私、ちょっと手元に資料を持ち合わせませんので、後ほど調べさせていただきたいと思います。
  409. 上原康助

    上原分科員 どなたから答弁できますか。——それでは後ほど資料を提出してください。アメリカ局長も非常にまどろっこしい御答弁をなさるので、どうもこっちもついいらいらするのですが、私が聞きたいのは、沖繩人が払うべき水道料金があるわけでしょう。たとえば一リットル三十円なら三十円。アメリカ人も三十円を払うのですね、格差はないような方向でやるかということなんです。差があるのですか、ないのですか。その点について明確に答弁してください。
  410. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 軍が事業者としての県から買います場合と、事業者としての市町村から買います場合との料金の差がございますけれども、県並びに市町村それぞれ事業者として正規の料金を米側が払うようになることを期待しております。
  411. 上原康助

    上原分科員 これまでも水の問題は沖繩の大きな政治問題になってきておりますので、復帰した時点まで米軍人軍属と県民が差別をされることのないように、この点ももう少し強く御折衝いただきたいと思います。  次に、軍労働者の交渉権の問題について一点お伺いしておきたいのですが、御承知のように、間接雇用移行後いろんな問題が出ているわけですね。直接交渉できないということで苦情処理的なものさえも十分、十分というよりもほとんど解決されていない、処理されていないという状況なんです。そこで、やはりここらに政府の姿勢の問題があると思うのですが、基本労務契約でも十六条のa項などには、御承知のように協議することはできるわけですね。米側は労働組合から要求を受理し、これらの労働組合と会合し、その要求事項を協議すると、明確になっているわけです。しかし、一切がっさいもう組合との話し合いは持たないのだ、組合の要求も受理しないのだというかたくなな態度を米側はずっととり続けてきているわけです。こういうことに対してはやはり政府としてアメリカ側にもつとものをいうべきじゃないかと思うのですね。この件、どうなんですか。これは外務省ですよ。
  412. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 沖繩の本土復帰前におきましては、全軍労の組合員が直接米軍と労務問題についても話し合いの場がありましたものが、復帰後間接雇用移行に伴いまして、従来のような形が取り得なくなったということに伴いまして、必ずしも使用者側と被用者側との間の意思疎通がうまくいかない面があるということは、私ども承知いたしております。しかしながらこの問題につきましては、直接雇用当時と間接雇用との間にはおのずから法的な違いはございますけれども、事実上意思の疎通が何とかうまくはかれるような方法はないものだろうかということにつきましては、米側とも随時いろいろ話し合っておるところでございます。
  413. 上原康助

    上原分科員 これまで何回か全軍労の代表なりあるいは私個人も局長にもお目にかかって御要望も申し上げたのですが、問題解決は遅々として進まないのですよ。むしろ悪化している状態なんです。ですから、やはり沖繩の場合は短期間において間接雇用になじみかねる問題もあるわけですね。そういう過渡期といいますか過程においては、やはり従前のシステムというか制度というものも若干考慮に入れた労使関係というものは、私は当然あってしかるべきだと思うのですよ。メープルズ少将がわざわざ知事室まで乗り込んで全軍労が権利を乱用している云々なんというのは、これこそもうほんとうに越権行為だと思うのですね。そういう態度アメリカ側が出てくること自体が、ますます労使間の問題のみならず県民感情なりいろいろな面でこじらしている実態なんですよ。ですからそういった問題についてもぜひひとつ、外務省はもっと米軍に対してもアメリカ政府に対してもものをいってしかるべきだと思うのです。この点について、大臣どうお考えですか。
  414. 大平正芳

    大平国務大臣 事態をよく究明いたしまして、意思の疎通が行き届きますように努力したいと思います。
  415. 上原康助

    上原分科員 きょうはこまかいところまで触れられませんが、いま間接雇用に移行されてからまともに賃金さえも支払いできない状態なんでしょう。ぜひ早急に、交渉機関の設置の問題を含めて御検討いただきたいと思います。  そこで、あと一点だけ簡単に触れておきますが、御承知のように円が二月十四日からでしたか変動相場制に移行になって、軍の労働者の賃金換算には私は問題が出てくると思うのですよ。どういう換算をするのですか。実勢レートで賃金支払いをするのか。この件についてアメリカ側から何らかの申し入れがあったのかどうか。あるいはアメリカ側とどういう話し合いをしているのか。変動相場制がかなりの期間続くという場合は受け取る側は円で受け取っても労働者自体には何も問題ないじゃないかというかもしれませんが、労務費はアメリカが払うわけですから、レートを幾らにするかによってアメリカの出し前も異なってくるわけですよ。当然そこいらについては話し合いが持たれていると思うのですが、どうなっているのか、お聞かせいただきたいと思うのです。
  416. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 間接雇用になりましてから軍で働いている労務者の給与費は円払いで県のほうから支払われておるというふうに承知いたしておりますけれども、この換算レートの問題について米側から具体的な提案があったかどうかにつきましては、私まだ話を聞いておりません。
  417. 上原康助

    上原分科員 何やらこそこそお話し合いしているのですが、これは当然問題が出てくると思うのですよ。いまの相場は二百七十円ないしその前後でしょう。そうしますと下限の三百一円でアメリカ側は換算しなさいということになりますと、アメリカ側の出し前は少なくなってくる。よもやそういうことはないと思いますが、この問題について早急に話し合って疑惑のないように取り計らっていただきたいと思うのです。また、軍雇用員自体、これは本土の全駐労を含めて非常に大きな疑問を持っております。  それとの関連における不必要な人員削減やいろいろな問題が起こってきますので、ぜひ外務省として、施設庁とも、あるいは大蔵省関係するかもしれませんが、三者で話し合って早急な対策を立てていただきたいと思うのです。
  418. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 至急検討いたします。
  419. 上原康助

    上原分科員 あと一点ですが、最後にお伺いしたいのは、VOA放送中継局の職員の身分の問題なんです。きのうも少し触れましたが、このVOAの職員がどういう状態に置かれているのか外務省として御存じなのか。また、もし資料なりお持ちであればお聞かせいただきたいと思うのです。
  420. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 沖繩にありますVOAの中継局で働いております職員の中の米人職員につきましては、これは一般政府機関の職員ということで米政府の職員でございます。ただ、いま御指摘の点は、あるいはそこで働いております日本人職員の問題かと存じますけれども日本人職員の労務関係につきまして、若干の問題があるということを私ども承知いたしております。
  421. 上原康助

    上原分科員 どういう問題があるのですか。
  422. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 VOAで働いております日本人職員に対しまして、日本の労働法規がいかに適用になるのかならないのかということにつきまして、日本側の考えと米側の考えとの若干の食い違いがあるようでございます。その点をもう少し実態に照らして考えていく必要があるように考えております。
  423. 上原康助

    上原分科員 東京アメリカ大使館から出ている沖繩中継局職員に関する手引き、日本の現地職員の手引きというのが出ているのです。その改訂版が七二年の八月に大使館から出ていると思うのです。その資料をぜひ提出をしていただきたいと思います。よろしいですか。
  424. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 これはアメリカ大使館の手引き書でございますので、米側に問い合わせてみたいと思います。
  425. 上原康助

    上原分科員 それは現地従業員に対する手引きですから秘密でも何でもない、当然外務省は持っていなければいけないと思うのです。ぜひ英文、和文提出してください。よろしいですね。
  426. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 現物を私、見ておりませんので調べまして、ぜひ対処いたしたいと思います。
  427. 上原康助

    上原分科員 時間がありませんので。このvOAで働いている日本人職員の身分なり待遇というものがきわめて悪いのですね、率直に申し上げて。スト権は否認をされる、あるいは個人の意思をいかなる団体にも委任してはならないというきびしい制約をつけながら、失業保険も加入していないのです、これは。退職手当はあるようですが、いろいろな面で待遇が、労働条件が旧第一種あるいは第二種の雇用員より悪い。そういった問題を含めて私は検討すべきことだと思うのです。さらに五年以内にVOA施設そのものが国内からどこかに移転していくわけですから、なくなれば閉鎖されるわけですから、その段階においてもいろいろな問題が出てくると思うのです。もちろんアメリカ国務省の機関であって駐留軍関係離職者等臨時措置法を適用されていないのですね。そのことを含めて私はやはり検討すべきだと思うのです。政府としてもそこらについては、きょうはこまかいところまで触れられませんが、ぜひ、さっき申し上げた手引きなどを見ていただいて、ここで働いている労働者がどういう状態なのかということについても御検討いただきたいと思うのです。この点は防衛施設庁とも関係するかもしれませんが、きょうは、今後検討していただきたいということで私の質問を一応保留をしておきたいのですが、そこらについて検討するお考えがあるかどうかですね。
  428. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 VOAに働いておりまする日本人職員の待遇つまり労働条件につきましていろいろ問題があるように承知いたしておりますので、具体的に、制度的にまた実際の待遇上、そういう問題について検討をいたします。
  429. 上原康助

    上原分科員 時間が来ましたので。外務大臣にも最後にお尋ねしたいのですが、VOA問題はこれまでも一返還協定審議過程でも非常に問題になってきたのです。施設そのものについては私たちあの時点では日本人従業員のことまでは触れませんでしたが、やはりアメリカ軍事施設として機能を果たしてきたと私たち見ているわけですね。そこで働いている労働者の実態が、いま局長もいろいろ問題があるということについてはお聞きしているということですから、ぜひ調査をさして、離職者等臨時措置法の適用なり、あるいはそれに準ずるような対策等も考えていただくということを、あわせてぜひ大臣のほうからも御答弁を求めたいと思うのです。
  430. 大平正芳

    大平国務大臣 制度自体よく究明いたしまして、親切な検討を加えてみたいと思います。
  431. 黒金泰美

    黒金主査 次回は明三日午前十時から開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時十七分散会