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1973-03-05 第71回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年三月五日(月曜日)     午前十時二分開議  出席分科員    主査 倉成  正君       大野 市郎君    小平 久雄君      三ツ林弥太郎君    森山 欽司君       上原 康助君    大原  亨君       岡田 春夫君    細谷 治嘉君       浦井  洋君    田中美智子君    兼務 井上 普方君 兼務 太田 一夫君    兼務 田口 一男君 兼務 山口 鶴男君    兼務 浅井 美幸君 兼務 林  孝矩君    兼務 玉置 一徳君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 齋藤 邦吉君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)     江崎 真澄君  出席政府委員         文部政務次官  河野 洋平君         厚生大臣官房長 曽根田郁夫君         厚生大臣官房審         議官      出原 孝夫君         厚生大臣官房会         計課長     木暮 保成君         厚生省公衆衛生         局長      加倉井駿一君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省医務局長 滝沢  正君         厚生省薬務局長 松下 廉蔵君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省児童家庭         局長      穴山 徳夫君         厚生省保険局長 北川 力夫君         厚生省年金局長 横田 陽吉君         厚生省援護局長 高木  玄君  分科員外出席者         大蔵省主計局主         計官      渡部 周治君         文部省大学学術         局医学教育課長 齋藤 諦淳君         日本国有鉄道旅         客局長     柳井乃武夫君     ————————————— 分科員の異動 三月五日  辞任         補欠選任   野田 卯一君     宮崎 茂一君   細谷 治嘉君     上原 康助君   浦井  洋君     田中美智子君 同日  辞任         補欠選任   宮崎 茂一君     野田 卯一君   上原 康助君     岡田 春夫君   田中美智子君     多田 光雄君 同日  辞任         補欠選任   岡田 春夫君     細谷 治嘉君   多田 光雄君     浦井  洋君 同日  第二分科員井上普方君、田口一男君、山口鶴男  君、玉置一徳君、第四分科員太田一夫君、浅井  美幸君及び林孝矩君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十八年度一般会計予算厚生省所管  昭和四十八年度特別会計予算厚生省所管      ————◇—————
  2. 倉成正

    倉成主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  昭和四十八年度一般会計予算及び昭和四十八年度特別会計予算中、厚生省所管を議題とし、前回に引き続き質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上普方君。
  3. 井上普方

    井上(普)分科員 いよいよことしの一月一日から老人医療無料化実施せられるわけで、そのおそいことには私どもは不満を持つんでありますが、老人医療無料化に伴いまして、先日も聞いたんでありますが、国民健康保険保険金値上げをするというようなことを承っておるんでありますが、その実態はどうなっておるのですか、お伺いしたいのであります。
  4. 出原孝夫

    出原政府委員 国民健康保険保険料老人医療実施した関係でございますが、老人医療につきましては国が統一的にやりましたのはことしの一月からでございますので、この辺のところはまだ実績の明瞭な時期ではございません。ただ、市町村なり県の指導で各市町村保険者としましていろいろ老人医療をやってきたという実績がございますので、そういった面での医療費が増高しておるということは現実に出ておるようでございますが、正確にその状況を分析できるような材料は残念ながら持ち合わせておりませんが、全般的に見まして国民健康保険保険税あるいは保険料は、医療費の改定でございますとか、自然増とか、それからいま御指摘の老人医療実施というようなものに伴いまして医療費増加が出てきておるということは事実でございます。昭和四十七年度の市町村保険税、これは実はまだ国が統一して老人医療をやる前のことでありますけれども、これを見ましても、前年度に比べまして、市町村保険税世帯主当たりで見まして、四十七年度の平均が二万五百三十五円になっております。前年度より二千三百九十円の増ということで、この中の若干がやはり老人医療増加影響によるものと考えられます。
  5. 井上普方

    井上(普)分科員 老人医療実施するにつきまして医療費がどれだけ増額するか、このことについて正確な材料を持っていないというのは、一体どういうことなんです。
  6. 出原孝夫

    出原政府委員 従来から、老人に限りませず七割給付をすべて十割にするというような場合に、経験的に増加率というものを全国平均で見ますと、私どもはある程度ふえるというような積算はいたしております。そのこと自体はやっておりますが、老人医療自体がそれでは具体的にどういう影響があったかということにつきましては、実はまだ実績を持ち合わせない、そういうことでございます。
  7. 井上普方

    井上(普)分科員 それでは老人医療をやられるといいましても、正確な材料予測を持ち合わせず老人医療をやって、はたしてどうなんですか。私どもは疑問に思わざるを得ない。といいますのは、御承知のように革新自治体においては、すでに七十五歳あるいはまた七十歳というワクは入れておりますし、また所得制限なるものも入れておりますけれども、一応過去におきましても実績がある。したがいまして、老人医療無料化に伴いまして、当然医療費というものはどれくらい上がるという、ほぼ近い予想は大体立たなければならない。それをいまになって、もう実施いたしまして、これでもうやがて国でやり出しまして二カ月過ぎておるのです。これは補正予算でも出しておるはずだし、また本年度の予算を策定するには当然予測されるべき事柄だろうと思う。でなければこれはできないじゃないですか、予算なんというのは。
  8. 出原孝夫

    出原政府委員 その点につきましては過去の実績給付率を上げましたときの給付の伸びといったようなものから経験的に割り出したものを参考にいたしまして、昭和四十八年度におきましては国の老人医療制度実施によりまして、全国的に影響が生ずる可能性があるということで、その見込みにつきましては、急激な市町村保険料負担を緩和するために、来年度の予算におきまして、老人医療対策臨時調整補助金ということで三十四億円を計上しておるような次第でございます。
  9. 井上普方

    井上(普)分科員 三十四億の臨時調整補助金をお組みになっておるとおっしゃいますが、それで足りるとお考えになっていらっしゃいますか。
  10. 出原孝夫

    出原政府委員 先ほど申し上げましたようなことで、私どもは一応推計をいたしておりまして、これで一応市町村の急激な保険料ショックを緩和する目的は達し得ると考えております。
  11. 井上普方

    井上(普)分科員 そこで、各町村において保険税を今度値上げしております。その中に、老人医療無料化になったので保険料を上げるのだという理由をつけて上げておる町村がたくさんあるようであります。これは私は考えまして、どうも納得がいかないのであります。といいますのは、医療給付率が高くなったとかなんとかいうのでございましたならば、あるいはまた保険単価が上がったとかいうのであれば、これは保険料にはね返るのは当然であります。しかしながら、国が老人医療無料化にしたという制度上の理由によりまして、制度の改変によって医療費かふえた、その内容市町村におっかぶせ、かつまた保険税の形で住民に転嫁するのはいかがかと思うのですが、大臣、いかがでありますか。
  12. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 先生のおっしゃる気持ちは私もよくわかりますが、やはり国民健康保険も一応やはり保険というシステムであってみますれば、受診率が相当ふえる、そういうことによって保険料保険税のほうにも少しはね返りがある、これは私はやはり避けがたいことではないかと思うのです、筋からいうて。しかし私は先生のおっしゃったように、国の無料化方針という政策をとったために起こることであるから地域住民にあまり負担の増徴にならぬようにせよというその気持ち、それもわかります。そこでそういうことを考えまして、従来老人医療について無料化をとってきました府県の実績、それから五割から七割にしましたときの給付率、そういったようなものも頭に描きながら、来年度は調整補助金というものを三十四億支出しようということにしたのでございます。したがって、私の気持ちとしては、そういう政策をとったために保険税だけに全部かぶらせるということはあまり適当でない、そういうふうには思いますが、保険という仕組みである以上は、やはり、自治体住民生活の向上ということでもございますから、ある程度の保険税増率もやむを得ないのではないか、しかしそれはできるだけ最小限度に食いとめなければならない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  13. 井上普方

    井上(普)分科員 そこで私は、大臣のお考え方に混乱があるのではないかと思います。といいますのは、社会保障を充実さすというのは政治の目的行政目的であります。ところが、片方保険というのは国民の健康を守るというためにやっておる事柄なんであります。したがって、政策目的でこのような老人医療無料化するという場合には、もし市町村全体として赤字が出た場合には、当然一般行政費の中からカバーすべきがほんとうじゃないでしょうか。保険から保険料保険税値上げすることによってカバーしようという考え方は私は間違いであると思います。どうでございますか。
  14. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 私は、先生のおっしゃることをよく理解できます。理解しております。しかし、保険ということであってみれば、やはり多少はお互いに出し合うということもやむを得ないのではないか、受診率増加分についてはある程度やむを得ないのではないか、こういうふうに考えております。
  15. 井上普方

    井上(普)分科員 受診率増加することが現在の社会上望ましいことだということで老人医療無料化をはかったのです。でありますから、これはあくまでも政策目標であるわけです。とするならば、保険財政赤字である場合には、町村赤字を出した場合には、一般行政費から補てんしていくのが当然であって、これを保険料に転嫁するというのは間違いだと私は思います。保険というものがあるから上げていいんだ、相互扶助考え方だという考え方では、ちょっとおかしいんじゃないかと思う。現在老人医療無料化によって受診率が高まったので非常に赤字が出て、町村ではそれに藉口して保険税値上げをしようとしております。これに対して厚生省はいかなる処置をおとりになるつもりか。  そしてまた、三十四億なんという金で十分だとは私は思いません。これはまさにこれの十倍くらい必要じゃないかと思うのです。これに対していかなる考え方を持っておられるのか。もしこれが三十四億で足らないという場合には、予備費でもお使いになるつもりがあるのかどうか、その点をお伺いしたいのです。
  16. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 くどいようでございますが、老人医療無料化に伴って受診率増加するということであってみれば、やはりこれは保険システムでありますから、最小限度にとめたいとは思います、これは私はとめるべきだとは思いますが、できるだけ多少なり御心配をいただきたい、こういうのが私の率直な気持ちでございます。  それからなお、三十四億で足りるかどうか、これはほんとうはやってみないとわからぬと思います、率直に、はっきり申しまして。一応過去のいろいろな実績なり、給付率を引き上げたときのそういうふうなはね返りの分がどういうふうになってくるのか、そういうこともありますから、一応私どものほうでは、四十八年度三十四億程度の調整金の増額で十分ではないか、こういうふうに考えましたが、これは実施してみませんとはっきり見通しもつきませんので、実施段階において非常な赤字が出るようになったということであれば、その事態を踏まえて、そのときの時点で処理したい、私はこういうふうに考えておるわけでございます。
  17. 井上普方

    井上(普)分科員 私は、保険だからそちらのほうでやってもらってもいいのじゃないかというあなたのお考え方は、ちょっとおかしいのじゃないかと思うのです。これは政策目的として老人医療無料化をやる、そうして受診率が高まるのです。望ましいことなんです。受診率を高めるためにやったのでしょう。でございますので、赤字が出てまいった場合には、それを政策として行なわしめた国がそればカバーしてやるのが当然じゃございませんでしょうか。それを保険税のほうにひっかぶせる。三十四億でございましたら、一町村当り幾らになりますか。これでは末端地方行政はたまったものではない。だから私は先ほど言っているのです。この三十四億の基礎は一体どうなんだ。これについても正確な材料は持っていない。それはこれからやるのですから持っていないかもしれません。しかしながら、すでに各地におきまして一年も二年も前から老人医療無料化をやっておるところがあるでしょう。それらの実情を踏まえるならば、三十四億なんという金は出てこないはずなんです。これの十倍くらいの金はあってしかるべきなんです。三十四億で十分だとお考えになりますか。審議官、あなたは先ほど正確な資料を持っていないのだと得々とおっしゃっておりましたけれども、この三十四億の基礎が不明瞭だ。不十分なんです。でありますのでこれに対する、給付率の上昇によって生ずる市町村保険財政赤字は一体どれくらいになると予測がついておるのですか。
  18. 出原孝夫

    出原政府委員 私どもが三十四億というのを計上いたしましたのは、国民健康保険老人医療無料化実施するに伴いまして、医療保険の中で受診率老人に関して上がってくるということは、単に国民健康保険の問題ではございませんで、各保険制度を通じて全般的に生ずることでございます。したがいまして、原則的には、私ども片方公費負担医療を行ない、片方医療保険のほうで受診率はね返りが出てくる分、これは保険の中で処理をいたしたい、保険としてそれぞれ必要な財源の措置をしてもらいたいというのが前提でございます。しかしながら、市町村におきましては、国民健康保険とたとえば政府管掌健康保険とを比べました場合には、国民健康保険では老人をたくさんかかえておるわけでございます。したがいまして、そういった一般勤労者保険に比較しまして多くの老人をかかえておる分を、できるだけショックを緩和するように、市町村に対しては補助をいたしたいというのが三十四億の計上の趣旨でございます。
  19. 井上普方

    井上(普)分科員 そうすると、受診率高まり——老人が受診するのを高めることを目標にして老人医療無料化ということをやったのですね。ところがそれのはね返りである保険赤字というものは保険者におっかぶせていくのだ、住民におっかぶせていくのだという考え方、こうとっていいですな。そうするならば、老人医療無料化ということも、国民の犠牲においてと申しますか、国民負担増加せしめることによって成り立つものであると私どもは解釈せざるを得ない。まことにもって、政府老人医療無料化の太鼓をたたいたけれども、実際は受診率高まりを、これを政策目的の一番眼目にしておるものを、これも市町村におっかぶせる。それならば政府自体は、何と申しますか、あまり財政的な負担をかけずに一市町村におっかぶせる政策老人医療無料化であると私は断定せざるを得ないのであります。まことに残念であります。この問題につきましては、さらに厚生大臣におきまして、三十四億なんというただいまの審議官のような御説明で——政策目標として出しておる以上は、政策として出しておる以上は、国が大いにめんどうを見るということをやっていただかなければならないことを強く訴えておきたいと思います。  続いて、老人受診率が高まったことについてであります。これは老人医療受診率が高まることは望ましいことですが、一面こういう問題があります。有吉さんの「恍惚の人」なんかを読んでみましても、日本社会におきましては、老人ホームにお年寄りを入れるというのはあまり世間ていからいって望ましくないというような風潮があります。そしてまた何と申しますか、年寄り老人ホームに行くことを望まれないという現状にあります。もちろんこの原因といいますものは、老人ホームの設備の貧弱さ並びに老人ホームがいままでの養老院的な暗い影を持っておるところに大きな原因はあります。しかし今度老人医療無料化になったので、お年寄りが少し病気すれば直ちに入院さしてくれと言って、病院に入院さしてくれという希望が非常に多いのであります。そのために一般病棟一般病床がお年寄りに占領せられておるというような現象も見受けられるのであります。お年寄りになりますと当然、調べますと肝臓なり高血圧なりあるいはじん臓なりいろいろと病名はつきます。そして核家族化が進行しておるような現在の社会で、病院に入院しておる、年寄りが入院しているんだと言いますと御近所にもかっこうがいいということで、老人ホームに入れるよりもそのほうがいいというので、非常にお年寄りの入院される希望が多いのであります。そしてまた、かなりよくなっても退院される方が少ないのであります。そのために一般病棟が、お年寄りがたくさん入るという現象で、緊急に入院しなければならない患者さんも実は入院をとめられるという結果を招いておる現象が、すでにあらわれておるわけであります。もちろんこれには老人医療病院というものもつくらなかった、つくらずに老人医療無料化をやった政府社会保障に対する無理解さにも原因はあると思います。しかしこの現状を見て、一体いかにすればいいか、大臣としてはお考え方を示していただきたい。
  20. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 老人医療無料化政策考えましたときに私どもが一番心配いたしましたのは、先生お述べになりました点でございました。すなわち、病院が御老人方々ばかりに占領されるようになりはしないかということが、これが一番心配しておったところでございまして、現実的にもやはりそういう傾向が多少出てきておるように考えております。  そこで、私どもがこの政策を出しましたときに考えましたのは、そういう御老人方々老人ホームにはあまり入りたがらぬという気持ち、これはわかります。私は家族生活の中で老人をいたわってめんどうを見るというのが基本だと思います。生活上できないとかなんとかいいましても、私は、老人というものはやはり社会的に長いこと御貢献いただいた方々でございますから、家族生活の中であたたかく生活をしていただく、私はこれが基本だと思いますが、しかしそうまではいかない。そこでやはり病院というものになる。そこで病院に対しては、特別養護老人ホームを併設するというやり方を進めることが必要ではないかということを考えておりまして、目下五カ年計画でそういう問題を——病院特別養護老人ホームを併設する、こういうのが一つのやはりこれを打開する方策ではなかろうかということで、五カ年計画でひとつこの問題は取り上げてみようということで進めておるような次第でございます。しかし、私は基本的には、老人方々家族の中でめんどうを見る、お互いめんどうを見るということが私は基本だと思いますが、現在の社会情勢からいってそうはなかなかいきませんので、私どもとしては、いま申し述べましたような病院特養との併設というふうなことに今後重点を置いて施策を進めていこう、こういうふうに考えておる次第でございます。
  21. 井上普方

    井上(普)分科員 「恍惚の人」を読みましても、一つ問題点として、お年寄りをどこで養生さすかというのが一つの大きなテーマだと私はあの小説を読みながら思ったのであります。あの有吉佐和子さんは簡単に、家庭の中で療養するのが最もいいんだ、こういう結論を出し、あの指導員もそのようなことを言われております。しかし、現在あの陰惨なる「恍惚の人」なる小説の中で考えられるのは、一体夫婦共かせぎの中で家族療養がはたしていいんだろうか、家庭療養がいいんだろうかという大きい問題を投げかけているんだろうと私は思う。それはもちろん共かせぎ家庭でない家庭においては、家庭で療養するのが望ましいことだと思います。しかし、公務員の中でもおそらく六割ないし七割は奥さんが内職しなければ生活できないというような現在の実態、この中において家庭療養が最も望ましいのだといっても、これは私はいまの社会実態から大きくはずれていると思うのです。そこでいまおっしゃられました特別養護老人ホームを五カ年計画でやられるとおっしゃいます。しかし、現在の特別養護老人ホーム実態というもの、私も見てまいりました。これは老人ホームとあまり変わりないのではないだろうか。少し毛がはえたぐらいではないだろうかというくらいの実態じゃございませんか。いままでつくられた特別養護老人ホームというのは。これを五カ年計画でやられるとおっしゃいますけれども、これも内容整備をやらなければならない。いままでの特養でありますと、これはあまり行かないと思う。五カ年計画でやられるというのですが、どういうような内容でいつから始められるのですか。
  22. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 私は老人については、先ほどお述べになりましたように、家族の中でめんどうを見るということを基本とし、それがどうしても社会的に経済的に無理だというときにはそういう施設というものを考えるべきだという、私は基本的にはそうだと思うのです。そこでいまの特別養護老人ホームなり養護老人ホームなりというのは、一応四十六年度から五カ年計画で必要な数だけ整備しよう、こういうことで進めておりまして、その計画の途中にあるわけでございますが、やはり根本はその中身を改善するということが私は基本だと思うのです。しかし、御承知のように、日本社会福祉施設整備というようなものが西欧諸国に比べて非常におくれております関係を、いま一生懸命やらなければならぬという段階にあるわけでございますから、内容まで十分いままで手をつけることができなかったと思いますが、今後は内容整備に、もう少し明るさを取り戻すような内容のものにするということ、それから養護老人ホームにしても特養にしても、老人医療無料化ということに関連して、病院に併設する、こういうような方向で今後の計画は進めていかなければなるまい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  23. 井上普方

    井上(普)分科員 特別養護老人ホーム現状というのはひどいのです。これはもう御存知だろうと思う。こういうようなところで、内容整備するにしましても、また病院に併設するといいましても、民間病院に併設した場合、おそらく変なものができてくるんじゃないかという危惧の念を私どもは持つわけです。これにも増して、特別養護老人ホームをつくるにしましても、現在の実態からしますと、看護婦さんがあそこへ入っていく人は非常に少ない。あらゆる面がともかく現在不足福祉関係施設並びに人員が不足である。ここにも大きな原因があると思います。それは根本は何だといいますと、私考えますに、やはりいままでの政府並びに社会福祉関係に対する無関心さにあったと言わざるを得ないと思うのであります。  一例をあげますならば、これは大臣、あなたは厚生省関係に非常に御熱心な方でございまして、今度厚生大臣という金的を射とめられたわけでございましょうけれども、いま看護婦が非常に不足しておる理由は何だと言いますならば、やはり現在、あの看護学校の教育の内容といいますと、少なくとも短期大学あるいは女子の大学よりも内容の充実した教育をやられておるのであります。しかし、やはりいまの社会へ出ますというと、看護婦という職業が、過去のイメージから、病院の女中さんぐらいにしか意識が社会にはない。したがって、看護婦という聖職にありながら、プライドを持つことができない。ために、結婚すればやめていくという結果を招いているように思われてなりません。したがいまして、少なくともこの看護学校なんというのを、これを大学というような名称を与えるようにして、ああいう福祉に関係する、働いておられる人々のプライドを持たせることが、最も必要なことではなかろうかと思うのであります。  時間が来ましたので、私はこれでやめますけれども、せっかくの御努力をお願いしたいと思う次第でございます。
  24. 倉成正

    倉成主査 次は、太田一夫君。
  25. 太田一夫

    太田分科員 私は最初に、厚生省に対しまして、厚生年金の中の障害年金の受給権資格の問題について、ちょっとお尋ねしたいのでございます。  これは、証書は愛三三六九三一号の被保険者である高木鼎君という、もう四十何歳の労働者の障害関係に関するものでありますが、昭和十九年、戦争の最中に職場につきまして、四カ月か五カ月たったときに、その業務上の事故によりまして足首切断をいたしておるのであります。それが、昭和二十五、六年ごろに、どうも何ももらえないというのはおかしいというので、障害年金の支給をしていただきたいという申し出をいたしましたところ、時効にかかっておるからだめだということで却下されたわけです。本人はその後ずっと同じ職場につとめております。義足でつとめながら、現在におきますというと、本人は毎月二千円くらいの厚生年金の保険料を払って、そうして当該事業主もまた二千二百円くらいのものを払っておるわけです。ところが、何ももらっておらない。そこで、私は非常にこれを不合理きわまるものだと思うのですが、この法そのものには時効というものがありまして、五年の時効制なんですね。しかし厚生年金保険というのは、第一条の目的にありますように「労働者の老齢、廃疾、死亡又は脱退について保険給付を行い、」その「生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的」とする、これはだれでもわかるりっぱな目的になっておるわけですが、そういうことに実態がならない。それは私は、なぜその人が受けられないのかというと、五年なら五年という時効にかかるまでといいますか、成立するまでなぜ申し出なかったかというのが当局側の言い分のようでありますが、これが権利の上に眠っておったなんというものじゃないのでありまして、知らなかったというては本人の責任になるかもしれませんが、実際戦争中から戦後にかけての混乱期、しかもその片足切断の事故にあったのが十五、六のころでありますから、それはもう本人にその責任を求めるということは私はたいへん残酷だと思うのです。  それで、その権利の復活の見込みはないのか。憲法の生存権という立場からいいましても、何か道がなければならぬと思うのだが、それはほんとうにないのかどうか、これをお尋ねしたいと思うのです。
  26. 横田陽吉

    ○横田政府委員 ただいまお尋ねの問題でございますが、先生御指摘のように、現在の年金の受給権は、従来から五年間で時効消滅をすることになっております。この時効消滅をなぜさせるのかという点につきましては、くどくど御説明申し上げる必要もないかと思いますけれども、長期間にさかのぼりまして当時の事情を調べて受給権の存否ないしはその内容を判断するということは、実際問題として非常に困難であるというようなことで、他の社会保険制度におきましても同じような消滅時効の制度をとっておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、被保険者本人はもちろんでございますけれども、その方を雇用なさっておられる会社の労務担当の方々がこういった点について請求権があった場合は漏れなく御請求いただくような、そういったPRをいたさなければならないわけでございます。おそらくいま御指摘の事例につきましては、戦時中のことでもあって、そういったことについてのPRも十分でなかったことだろうと思いますし、それからまた、会社側もそういった点についての認識が非常に薄かったというようなことの結果、このようなことが起こったのだろうと思います。  そこで、この方の問題につきましては、先生からいろいろいまお話かございましたことで判断いたしますと、法律的には障害年金の受給権を復活するということはきわめて困難な事例だろうと思いますけれども、こういった事例が将来は発生しないように、いろいろPRの面について十分配慮をいたしてまいりたいと思っております。
  27. 太田一夫

    太田分科員 ちょっと大臣に答弁していただきたいと思うのですが、本人は三十年ぐらい厚生年金保険法の被保険者になっておるわけです。本人の日常生活はどうかというと、片足を切りましたあとは義足をしておるのでありますが、冬になればしもやけの状態、夏になればただれるという状態、もう起居動作にどれほど不自由しているかわからない。そこで、奥さんを無理してもらったというと語弊がありますが、同情していただいて縁がありまして奥さんをもらった。そうすると、奥さんはどういう立場になりましたかというと、その御主人を扶養しなければならぬぐらいな立場になっちゃうわけですね。というのは、そういう足が不自由なものですから、職場において点数や見込みというものを高めるわけにはいきがたい事情がある。そうするとどうしても待遇、労働条件その他が不利になってまいります。それからもう一つは、休むということ。それで、しかたがないから奥さんは子供をかかえつつ自分自身もアルバイトをしながら、ほとんど泣きの涙のような生活を送っていらっしゃるわけです。  そこで、私は憲法の生存権そのものに端を発した議論をするつもりではありませんけれども、これでは踏んだりけったりではないか。障害年金はもらえない、そして毎月二千円ずつの掛け金は取られる、それで三十年かけてきた、時効を知らなかったからだめだ、あなたは請求しなかったからだめだということは、年金は一方的なものではないので、恩恵じゃないんだからおかしいと思う。しかも、本人が掛け金をかけない恩給という制度があるでしょう。その恩給の時効が七年でしょう。さっき、整理ができないとか調べるのがむずかしいとかおっしゃったが、特に最近はコンピューター時代で、何もむずかしいことはありません。愛三三六九三一というカードを調べればそこから実際のものは出てきます。何か制度として大きく間違っておるものがあるんじゃないでしょうか。
  28. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 私からお答えいたしますが、年金局長から先ほど申し上げましたように、こういう恩給なり年金なり共済組合の年金というのはこういう短期の消滅時効になっておるわけでございまして、本人が知らなかったといって本人ばかり悪いともいえないかもしれませんが、ほんとうに気の毒な御家庭のように承っております。  こういう制度、特に障害年金でしょうが、過去にさかのぼってもう少しあたたかい、もう一回調べ直すような制度がないものだろうか、こういうお尋ねでございますが、いまの法律からいうと、どうもそれは出てこない。でございますけれども、なるほどそう言われてみればこれも大事なことでもありますから、こういう際にどうすればいいか、将来の問題として私も十分研究したいとは思います。いまの制度ではちょっとどうしようもないという感じがいたしますが、障害なんという問題はそういうことはあり得ると思いますから、将来の問題として、どうすればいいのか、いま結論は出ませんが、私ももう少し研究させていただきたいと思います。
  29. 太田一夫

    太田分科員 これは年金局長でよろしいが、厚生年金といっても、被用者、雇用者並びに国の三方がかけているわけでしょう。資金的には三方から入っておる。それで、被保険者というのはどういう立場にあるのか。恩恵を受ける立場にあるかというと、そうじゃないんです。やはり行政の一方の当事者であるんじゃなかろうかと私は思うのですし、そういう意味では、この法律のたてまえから、一方的に五年間時効説というのは少し強圧的過ぎるような気がする。  それからもう一つは、障害年金を受ける権利が自動的に発生し、自動的にそれが実施されるというものであるならいいと私は思うのです、そういう制度がどこかにあれば。しかし、ないでしょう。しかも、自分がそういう障害の事実を発生させたときは未成年者であったわけです。これはどうなんでしょうね。うっかりしていてもらえなくなっちゃった、こういうのは幾らでもあるような気がするのですが、自動的に実施されるというようなぐあいに改めるべきではないか。
  30. 横田陽吉

    ○横田政府委員 障害年金が自動的という点、ちょっと御趣旨が不明な点もございますが、障害年金につきましては、御承知のように、どういうふうな障害があるかということにつきまして医師が専門的に認定をいたすわけでございます。認定いたしました結果、その障害が何等級の障害であるということによって障害年金の額がきまってくる、こういうわけでございますので、けがなさった場合に、そのけががなおって症状が固定した段階においてその等級の決定をし、障害年金額をきめる、このプロセスはおそらく障害年金についてははずすことはむずかしかろう、このように思います。  いまお尋ねのケースは戦時中のことでございますので、先ほども申し上げましたように、おそらく事業主もけがをなさった御本人も、こういった年金がどういった場合にどのような手続で受けられるかということについて、現在で考えますと非常に知識が低い、そういったことでこういった問題が起こったと思います。したがいまして、先ほど申し上げましたように、こういったことが起こらないように十分の年金知識といったものを持っていただくようにいたす以外にないのではないかと思っております。  それから使用者、被保険者、国がそれぞれその費用を拠出し合う、これはそのとおりでございます。その場合に、利益を受けるのはどなたであるかということでございますが、これはやはりその保険資格が発生しました際に利益の還元を受ける被保険者個人であろうと思います。したがいまして、先ほど先生お話しの、現在障害年金は受けておられませんが保険料は納めておるというのは、これは保険料をお納めいただきませんと、将来退職されたあとの老齢年金の給付も受けられないことになりますし、それからまた退職なさる以前に不幸にして死亡なさったような場合には遺族年金というものがございますので、それらの年金につながるという意味合いにおいては、現在お納めいただいておる保険料はただかけ捨てである、こういうことではないのではないかと考えております。  ただ、いずれにいたしましても御指摘のケースは、私どもといたしましても起こってはならない非常に残念なケースだと思いますので、こういったことのないように十分の検討をいたしてまいりたいと思います。
  31. 太田一夫

    太田分科員 私はそれでは救済の方法がないと思うのですが、時効にかかったために何ももらえない、障害年金をいただけなかったという人が、あとその他の機関との関係において不利をこうむっておるのですよ。たとえば地方自治体の障害者手当金を受けようとしても、あなたは厚生省の障害年金さえうけていないじゃないですか、否定されておるような立場の人に出すわけにいきませんというようなぐあいに、一切がなくなってしまう。だから、そういう冷たい行政の通り一ぺんの法理論でなしに、これは非常に無理があるというような——先ほど申したとおり、恩給でも七年の時効でしょう。掛け金をかけておるのに五年とは、それは共済年金制度がたくさんできたからめんどうくさいといえばそれだけのことでしょうが、それではいまの第一条の目的に合わぬじゃないか。民法の民事債権は十年じゃないですか。民事債権が十年ならばせめて十年くらいは、民法の本則に戻るのが私は正しいと思うし、せめて前向きの対策を講じながら、なおかつそういう気の毒な人に対して何らか道はないかを考えていただく必要があるのじゃなかろうかと思う。もう一度、これは大臣でも局長でもお答えください。
  32. 横田陽吉

    ○横田政府委員 この問題につきましては、先ほど大臣からお答えのように、将来の問題といたしまして検討いたしてまいりたいと思います。  ただ問題といたしましては、ほかの健康保険制度なり他の時効制度とのいろいろな関係がございますので、ただ厚生年金独自の問題として片づけるということは非常に困難だろうとは思いますが、あらゆる角度から総合的に検討をいたしてまいりたいと思います。
  33. 太田一夫

    太田分科員 具体的にひとつお尋ねしますが、しからば市町村あるいは県の条例の中において、そういう人たちに対して何らかの見舞い金とか支給金の制度ができております場合に、厚生年金法上の障害年金をもらっていないからという理由によって却下されておることがあるとするならば、あなたのほうはこの際、これは何とか一般と同じように扱ってもらうべきものだという意見を当該自治体におっしゃっていただくことには差しつかえありませんか。
  34. 横田陽吉

    ○横田政府委員 具体的な事例によろうかと思いますが、その方が現在の障害等級のどれに該当するかということが客観的にはっきりいたしておりまして、ただそれが受給権を消滅時効で消滅させてしまった、それだけの理由でもって給付を受けておられないという場合は、いまおっしゃったようなことになるだろうと思いますし、私どももそういった法措置、いろいろ問い合わせがございましたならば申し上げたいと思います。ただ、この方の障害等級がはたしてそういったことに客観的に当たるかどうかということがはっきりしての話でございますので、その点がはっきりいたしましたら、いま申し上げましたように御趣旨に沿うような措置をいたします。   〔主査退席、大原主査代理着席〕
  35. 太田一夫

    太田分科員 大臣、これはせめて一般の民事債権と同じような十年時効説というものを考えるときが来ているのではないか。共済年金制度がございますけれども、他に影響することが確かにあるのですから。あるけれども、これは、福祉社会建設の時代でございますね、せめて一般の民事債権と同じに十年時効説ぐらいは当然取り入れるベきだ、私の意見を申し上げて、この問題については時間の関係で終わらしていただきまして、次に遺族の扶助料とか弔慰金の問題につきましてお尋ねをさせていただきます。  援護関係でございますが、四十七年四月十三日の社会労働委員会におきまして、わが党の後藤俊男委員の質問に対しまして当時の援護局長の中村さんが——これは愛知県東加茂郡旭町伊熊の海軍海兵団の兵隊さん、後藤孝一さんの未亡人でありますトシ子さんに対する遺族としての援護に関する諸問題が非常に難航しておりましたので、後藤委員が質問をいたしました。中村局長は、これが何ももらえないということについて「これから厚生省といたしまして十分に調査いたしまして御相談に乗りたい」とお答えになっておるのであります。非常にあたたかい御返事であったように関係者一同受け取っておるのです。ところが、それからほぼ一年になるわけでありますが、実は御相談に乗ろうというお気持ちの実行がないやに承っておるのであります。これはどうなっておるのでしょうか。
  36. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 ただいまお尋ねの後藤孝一さんの件につきましては、こういう問題でございます。  この後藤孝一さんという方は海軍に属しておられた方でございますが、この遺族の方の申し立てによりますと、昭和二十年八月に広島駅に海兵団から派遣されたときに、ちょうど原子爆弾の落ちましたときにぶつかりまして、原爆に被爆して収容所で、治療を受けた。そして昭和二十年の十月十日に故郷に帰られたのでございますが、三十一年を過ぎたころからいろいろとからだのぐあいが悪くなり、昭和三十七年一月九日にクモ膜出血で発病してなくなられたということであります。そこで、このクモ膜出血という病気でなくなられた原因は原爆の被爆が原因であるということで、この方は総理府の恩給局に対しまして公務扶助料の請求、それから私ども厚生省に対しましては弔慰金の請求をそれぞれなさったのでございます。  ところが、この方につきまして総理府の恩給局のほうで、四十六年十月二十九日に、原爆被爆と死因となったクモ膜出血の罹病との間の因果関係は認めがたしという鑑定に基づきまして、恩給局は公務扶助料を棄却いたしております。そこで、主たる請求である公務扶助料の請求が公務死でないという理由で棄却されておりますので、私どものほうもその恩給局の棄却決定を踏まえまして、四十七年三月二十一日に弔慰金につきましては請求を棄却いたしておる次第でございます。
  37. 太田一夫

    太田分科員 この人、私は、クモ膜下出血というのが原爆と直接の因果関係があるかどうか、それは議論のある医学的な関係というのはわかると思うのです。ところが私の申し上げたいことは一つの事実、これをずっと客観をしてまいりますと、この人は戦争によって非常に被害をこうむって、大きな痛手をこうむって、それが原因で死亡しておるということは事実だ。にかかわらずあなたのほうは、援護局の関係ではその処理が、取り扱いがなかなかできなくて、しばらくお蔵入りになっていたはずです。この人は昭和二十年、敗戦直前に大竹の海兵団に二十か二十一で入隊しまして、そして広島駅において原爆の日に被爆しまして、そして気がついたときには病院に収容されていた。二十年の暮れに帰ってきたけれども、そのときにはからだじゅうの皮が一皮めくれてしまっておる。こういう状態でヘビや何かを食べて力をつけておったそうでありますが、保有米をとるために二十二年の二月結婚した。これが奥さんのトシ子さん。この辺のところからあなたのほうに問題があって、結婚して子供ができるようならば、その病気はなおったじゃないか。こういうようなことをしばしばおっしゃったようであります。これは問題だと思うのです。それからしばらくの間仕事はしておったことは事実でありますが、てんかんの発作が起きたことは事実です。これはいつのことか、牛を連れて昭和二十二、三年ごろ八幡というところに木出しに行ったときに、そこで気持ちが悪くなって倒れて人事不省になってしまった、こういうようなことがあるのです。これは村の人が発見しましたが、本人は恥ずかしいので黙っていた。てんかんの発作というのは、原爆の被爆によって倒れて頭をひどく打った。その後、やさしい青年が非常に気むずかしくなり短気になり、あちらこちら悪くなる。ところが病院ではそれは梅毒でないか、精神科じゃないかというようなことで、あちらこちらたらい回しにされておったような傾向がある。最後は、どうにもならないで、衰弱して苦しみ抜いて三十七年に死んだのですけれども、死んだときの医者というのは一回か二回かかった町の開業医であります。  この間の経緯を客観すれば戦争によって——この人は戦病死だということがわかると思うのです。だから、棄却されたということについては事実でありますけれども、まだなお若干再審査請求の異議申し立ての期間もあるように承りますが、こういうのはもうちょっと具体的に現実を踏まえて、気の毒な人に対してどうしたら対処できるか、そういうような角度からお考えになるべきじゃないですか。予算がないからそういうものはできるだけ理屈をつけて支給しないようにしようという立場というのは、おかしいじゃありませんか。
  38. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 この件はもっぱら、私どもこの件を見ますに、結局なくなられた原因であるクモ膜下出血と原爆被爆との因果関係の医学的な認定が、この問題のきめ手になると思うのであります。  そこで、私が先ほど申しましたように、この公務扶助料の請求につきまして恩給局は四十六年の十月二十九日に棄却いたしております。棄却した理由は、先ほど申し上げたとおりでございます。それに対して四十七年の四月二十四日に遺族から恩給局に対して異議申し立てが出されておりまして、その異議申し立ての第一審におきまして、恩給局はこれを同様、原処分と同じ理由で棄却の決定をいたしております。しかしながら恩給につきましては最後に、これは二審制度になっておりますので、総理大臣のほうに再度異議申し立てができることになっておりまして、近くこの異議申し立てが行なわれるやに聞いております。したがいまして、主たる請求である公務扶助料のほうがもし認められれば、私どもの弔慰金も当然同じように認めるということになろうかと思いまして、この恩給局におきまする第二審、総理大臣への異議申し立ての結果によって、厚生省としては弔慰金の問題を処置してまいりたい、かように考えます。
  39. 太田一夫

    太田分科員 局長さん、そういうのが手続上の慣例だと思いますけれども、たとえば愛知県の民生部援護課の関係者というのは、非常にその問題について熱心にいろいろなことを調べてみまして、かなり可能性は高い、こう判断をしておったのです。ところが、あなたのほうもその書類については——あなたのほうに出たいろいろな書類は、長いことお蔵入りだった。  私はもう少し、いまのお話で恩給局がどうだからということでなしに、援護局並びに厚生省としましても、できるだけこういう場合に、せめて弔慰金なり払うわけにいかないか。私は、そのクモ膜下出血ということが死亡の唯一無二の原因であると思わない。てんかんがある。あるいは非常にその他の肝臓を含める大きな障害がある。だからその町の開業医の診断書がどうあったってこうあったって、それだけをひねくり回してやるのじゃなくて、もう少し周囲の症状というものを勘案されるべきだと思うのです。村の人が一様に申しますのは、よほどうまく診断書でも書いてもらわないと、もらえるものももらえぬなと言っておるわけです。そういうようなことをさせては困ると思うのです。残念だと思います。  時間がありませんから、これで終わりますが、大臣、いかがでしょうか。いまの具体的な例、非常にこの取り扱いに困って、何回も何回もこの問題はあちらこちらと回されておったようでありますが、弔慰金の支給を節約しようとか扶助料を出さないようにしましょうということでなくて、どうしたら出せるかという立場に立ってものを見るという考え方もあるでしょう。前の局長は御相談に乗りたいとおっしゃったから、ひとつ厚生省として御相談に乗ってもらいたいと思う。現在の段階においてまだ若干の期間がある。時間がありますから、いかがですか。
  40. 高木玄

    ○高木(玄)政府委員 先ほど申しましたように、公務扶助料それから私どもの弔慰金、これはいずれも公務による傷病で死亡した方の遺族に出すという制度でございますので、公務扶助料のほうがアウトになっているのに、弔慰金だけ出すというわけにはまいらないわけであります。したがいまして、この件につきましては、さらにこの件を審査する機会がございますので、私どものほうといたしましては恩給局とよく連絡いたしまして、先生の御趣旨も十分体してよく恩給局のほうと連絡をとって相談いたします。
  41. 太田一夫

    太田分科員 大臣、よろしいですか。
  42. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 私どもはあたたかい血の通った援護行政を旨といたしておりますから、いま局長が申しましたように、もう一回審査の機会もありますから、恩給局のほうとも十分相談をいたしてまいりたいと思います。
  43. 大原亨

    ○大原主査代理 次は、田中美智子君。
  44. 田中美智子

    ○田中(美)分科員 それでは重症心身障害児に関する問題について質問したいと思います。  総理大臣が一月三十日の本会議の代表質問で答えられたわけですが、昭和五十年までに重症心身障害児を全部施設に収容する、できるというふうに言われました。しかし、それは施設現状を御存じの上での回答かどうか、たいへん疑わしいというふうな感じがしたわけです。  それで質問したいと思いますが、このところ新聞やテレビなどで報道されております多くの人々の関心の的になっている重症心身障害児の問題これについてお伺いします。  多摩市にあります重症心身障害児の施設の島田療育園を例にとりますけれども、総理の御回答とは反対の方向、つまり、いままで収容している人を自宅へ帰さなければならないというふうな状態にいまなっているということです。ですから、五カ年の間に全部入れられるということは、非常に現場の人も考えられない、こういうふうに言っておりますけれども、いま入っている人を自宅に帰さなければならないという状態になっている。島田療育園の定員というのは二百六十四名です。現在入所している者が百八十六名ですから、差し引き七十八のベッドがあいているわけですね。私も見てまいりましたけれども、新しいりっぱな病棟がそのまま約八十床もあいているわけです。こんなにあいているにもかかわらず、入所を希望している者は島田だけで見ましても、現在七百二十六名という者が入りたいといって待っているわけですね。  いまでさえ、こんな状態でありながら、昨年四月から十二月までの間に職員が百十六名中三十三名退職しています。また、ことしの三月までに十四名が退職するだろうというふうにいまいわれているわけです。そうしますと、一年間に百十六名の職員のうち四十七名がやめるということになるわけです。そうしますと、昨年の四月の状態を維持するだけでも、この四月には新たに四十七名の職員を採用しなければならない。この四十七名の新採用をしなければならないことが、もういま目の前にきているにもかかわらず、いまのところ、看護婦さんが四名しか採用見込みがないし、介護助手も非常に少ない。人手不足がますますひどくなっているわけです。いつも例年ならば、職員がやめても何とかそのやめた分だけ四月に補充できるということでやりくりしてきたようですけれども、ことしは県に依頼したり、あちこちに募集を依頼しても、極端にその反応が少ないということが新聞に大きく取り上げられることになったわけです。いま入所しております百八十六名の中から、この調子でいくと四月には二十名くらいを自宅に、親元に引き取ってもらわなければならないという現象が出てきているわけです。こういう深刻な状態になっているわけです。  いま私は島田療育園の例だけをとりましたけれども、これは島田だけでなく、秋津においても、また大津のびわこ学園においても、こういう現象が出ているわけですね。こういう危機的な状態というものを厚生大臣はもちろん御存じだろうと思いますけれども、どのような手を緊急に打とうとしていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。
  45. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 ただいま島田の実例をお引きになりまして御質問になりましたけれども、大体現状はいまお話しのとおりのような現状でございまして、実は私どももこの問題についての打開をいかにすべきかということについて非常に苦慮しているわけでございます。  御指摘のように、年間四十人ぐらいの退職者がいるというようなお話がございました。私どもも、これは島田のほうから聞いた話、まだはっきりはわかりませんけれども、四月になりますと看護婦あるいは准看あるいは看護助手というような人についての新規の採用についても、できるだけめどを立てたいということで、いま努力をしているというようなお話でございますし、私どももできるだけこういった事態を打開するために努力をしなければならないと思いまして、ただいままでに打ってまいりました手は、一つは私の名前で各県の知事に通達を出しました。これは先月でございますが、各県に御承知のように看護婦の養成所のようなものがございますけれども、そういったようなところの卒業生につきまして、まあ希望者があり、またできればこういった重症心身障害児の施設にも就職するように、何とかまああっせんと申しますか、すすめてもらいたいという意味の通知を出しました。特に島田あるいは秋津、そういった重症心身の施設は、いろいろな県から子供が送られてきておりますので、したがって、その県にありますそういった施設についてのみならず、やはりこういった中央の、東京あたりの施設に送り込んでいる県の知事につきましては、特にそういった子供を預かってもらっているのだから、そういったような面について特に配慮してもらいたいというようなことについての依頼も添えまして通知をしたわけでございます。  それから私どもも、じゃ具体的にどうしたらいいかというような問題があるわけでございまして、まあ一般病院でも御承知のように、なかなかいまは看護婦が集められないというような状態でございまして、こういった特に重症心身というところは、いろいろ手がかかりますし、まあそういったようなことで、なかなか来手がたくさんいないというような問題もございまして、そういった特殊事情を踏まえて、どういった打開策を講じたらいいだろうかというようなことを相談するために、やはり先月、都下のいわゆる秋津あるいは島田、そういった民間の施設の経営者あるいは責任者に集まっていただきまして、一体どういうような現状であり、またどういうように、これからしたらいいだろうかというような第一回の話し合いを持ったわけでございます。  そのときには、いまお話ございましたように、なかなか最近は来手がなくなった。それでその理由としては、たとえば地方に施設がだんだんふえている。したがって、自分のまわりのところにある施設にむしろ就職をしたいという希望者がふえたり、あるいはまた、いろいろ各地方が開発されるに従って職場もだんだんにふえでくるので、なかなか遠くまで行ってつとめようという人が少なくなったようだというようなお話もでございまして、したがって看護婦を集めるということも非常に、ますますむずかしくなる状態でございます。しかし私どもは、何としてでも現在いる子供を返すということをしなくて済むようにというようなことを第一の現在の目標といたしまして、したがって、そういったような意味で何とか要員を集めたいということで、また施設の人たちとの話し合いを持って、お互いに知恵を出し合おうというようなことをしているわけでございます。  それからまた、先般民生部長会議あるいは衛生部長会議、それからつい先日、各県、全国の主管課長会議がございまして、その席のおりにも、知事に出しました通達あるいはいろいろ私どもが経営者あたりから話を聞きましたことを前提としまして、とにかく要員確保についてぜひ協力してもらいたいというようなことを頼んでいるわけでございまして、私どもも、何とかしてこういったような事態を打開していきたいということで、現存いろいろと考えている状態でございます。
  46. 田中美智子

    ○田中(美)分科員 いまのお話伺いますと、ただ依頼しているとか、いまになって第一回の懇談会をやったとか、それから、来ない理由というものが非常に希薄で、ただ看護婦さんたちの地方に就職するところが多くなったから来なくなったんだというふうな簡単な分析しかしていないように思いますけれども、それで四月に間に合うというふうなおつもりでいらっしゃるわけでしょうか。四月には子供を返さなければならないというふうに園長は言っていらっしゃいますし、そしてこの調子では投げ出したいということも言っていらっしゃるわけですね。それに対して緊急にどうするというふうに考えていらっしゃるわけですか。
  47. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 まあ四月に何人集められるかというようなことになりますと、私どもちょっといまここで何人というお答えはできませんけれども、とにかく養成所の卒業期を迎えまして、私ども看護婦、准看護婦あるいは看護助手、そういったような直接介護に携わる人たちというものをできるだけ集めるように努力をしたい、こういうように考えておるわけでございます。
  48. 田中美智子

    ○田中(美)分科員 集めるように努力をしても、もうあと一カ月もないわけですね。そういう中で三月の末に退職していった場合にはどうなるかということは、緊急の問題なわけです。これは一体だれの責任だというふうにお考えになるわけですか。
  49. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 まあだれの責任というと、むずかしい問題でございますが、とにかく私ども、従来こういった重症心身の施設の運営についてはいろいろと改善をしてきたつもりでございますし、まだそれが十全でないかもしれませんけれども、できるだけこういったようなことが、非常に重要な問題であるだけに努力をしてきたつもりでございますけれども、まあなかなかその努力が一〇〇%なかったということもあるかもしれませんが、とにかくだれの責任ということではなくて、まあ私どもがやはり児童の福祉というものを所管しております立場上、こういったようなことが現在起きているということは非常に遺憾に思っております。
  50. 田中美智子

    ○田中(美)分科員 いままで改善してきたとか、努力は、一〇〇%でないけれども、まあしてきたというふうに言われるわけですけれども、いま一番問題になっていますのは、人手不足のために児童と職員の比率の問題が出てきているわけですね。これを基準にしてやっているんだと思うのですけれども、昨年、措置費の国庫負担金を増額するということで、児童二人に対して職員一人という二対一の比率を一・五対一の比率に改善するということになったわけですね。これは中央児童福祉審議会では、「一対一程度が必要と考えられることが、さしあたり少なくとも一・五対一以上の職員数の確保を早急に実現しなければならない。」という意見具申に基づいて通達が出されたのだというふうに思っています。五月一日付の厚生省児童家庭局企画課長の通達には「今回の改善措置によって標準として入所児童おおむね一・五人につき一人のそれらの職員が配置できるものと思料されるので、施設に対するこれらの指導を十分煩わしたいこと。」というふうにいっています。  ここまでの認識は同じだと思いますけれども、そうしますと、ことしの三月まで、いま収容児百八十六名に対して、現在まだやめていない人がおりますので、八十八名の職員というふうになりますと、比率は二・一対一という比率になっているわけです。島田は。通達どおりにはもちろんなっていません。それから秋津も二対一、それから、びわこが一・七五対一というふうな状態になっているわけです。そうすると、これを一・五対一にするために、どういうふうに努力をなさる改善をいままで具体的にやっておられたのか。それをしてきていないということが、いま三月になって二十人の子供たちを島田だけでも自宅に返さなければならないという状態になっているわけですけれども、どういう努力をしてきたんでしょうか。実際には一・五対一にはなっていないわけですけれども
  51. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 確かに現在島田につきましては、職員の比率は一・九対一ぐらいでございまして、公法人立のこういった重症心身施設の全体を見ますと、一・七対一ぐらいでございます。それで私どもが一・五対一と申しますのは、御承知のようにこういった重症心身障害の施設というのは医療機関でございまして、したがって普通の医療機関と同じように支払基金に請求をして医療費の支払いを受けるということで、本来ですと普通の病院、診療所と同じように、それで運営していくわけでございますけれども、こういった重症心身の施設というのは扱う対象の関係もございまして、いわゆる児童福祉施設として十全な配慮をしなければいけないということから、この重症心身障害の施設につきましては、重障指導費という加算制度をつくっております。  それでその加算によって病院としての看護婦、准看、そういったような職員のほかに、あるいは保母でありますとか指導員でありますとか、そういったような直接介護に当たる職員を置く費用とか、あるいはまたそういったような看護婦その他の職員について、給与がいわゆる医療費でまかなえるものについて、さらにプラスアルファができるようにという趣旨から重障指導費というものをいま加算しているわけでございます。この重障指導費を活用すれば大体一・五対一ぐらいになり得るような職員の配置になるというようなことで、この重障指導費を流しているわけでございますけれども、その使い方は、各施設で人を雇う費用に使うか、あるいは給与の改善に使うか、最も適切な運営をはかるというようなことで出しておりますので、それはいろいろあると思います。したがって私どもも、一・五対一になり得るということではございますけれども、一・五対一をこれで置けというようなことではなくて、そういったようなことを含んで運営費として適切に使ってもらいたいということで流しておるわけでございます。  したがって、島田あたりも保母とか、あるいは指導員とかを置いて現在運営しているわけでございますけれども、人がなかなか得られないというようなことから欠員がありまして、結果としては一・九対一ぐらいにいまなっているということで、私どもとしては、やはりこの重障指導費というものも年々増額をはかるというようなことから、四十七年度は一人月額三万五千五百二十七円でありましたものを、四十八年度には三万九千三百五十九円と、約四万円近い金額に引き上げをしまして、これを支給するというようなことで、この金額は年々増加しているわけでございますが、そういったようなことによって要員確保なり、あるいは運営が円滑にいくようにということで従来努力をしてきたわけでございます。
  52. 田中美智子

    ○田中(美)分科員 結局いまおっしゃることは、長々といわれましたけれども、努力をしたといっても、ただ通達を一つ出して、そして加算をちょっとくっつけたということにすぎないというふうに思うわけです。そちら側でおっしゃれば努力なんでしょうけれども、こういう簡単な努力を繰り返してきているというだけで、ちっとも根本的な対策は、大きな努力はなされていない。そういうことがこの数年来を振り返ってみますと、恒常的な慢性的な人手不足というのがずっと続いてきているわけです。ことし急にこういうことが起きたのではないのですね。非常に努力が足らなかったということは前からわかっていたことなのに、それは同じような努力しかしていない。通達を出して、指導員を多少ふやしたということだと思うのです。   〔大原主査代理退席、主査着席〕  島田の就職、退職を年度別にちょっと見てみますと、昭和四十五年には新しく五十三人が就職して、その年に四十四名やめているわけです。四十六年には四十一名が就職して三十九人がやめています。それから四十七年、去年は五十名四月に就職して四十六名やめていくというようなことで、まるでざるに水を入れるように抜けていっているわけですね。こういうことがずっとこのところ続いているのにもかかわらず、それは結果的にはわれ関せずのような感じできているというふうになっているわけです。ですから、そこに働く人たちというのは平均勤続年数が一・八年である。現在八十八名いる中で、一年未満の人たちが五十一名もいるわけですね。三年以上働いておる人というのは十一名しかいない。常に人がかわっているということ自体も、これは人手不足に大きくつながる要因になっているわけです。  ですから、こういう状態からして、世間がささやいているうわさですけれども、一年働いたらえらいもんだ、一年は続かない。二年働いたという人は、これは表彰ものだという。三年働いたら、もうこれはばかなんだというふうなことがいわれているということは、これが福祉優先の政治をやられているという中では、全くおかしい状態になっている。これに対する努力というものがちっともなされないで、通達だけを出して終えている、そういう努力しかしていない。いまこんなにひどい危機的状態になっているわけですから、この状態というものを、これからもいままでどおりに努力をしますでは、来年はもっとひどくなっていくし、結局田中総理が言うように、五年後には全部収容するなんということは、これは全くの無計画な、インチキだという結果にならざるを得ないと思うわけです。  いま民間のことでお話ししましたけれども、国立療養所にあります重症心身障害者の病棟でも、やはり同じ現象が起きているわけですね。ここはまだ民間からすればと民間の人たちは言いますけれども、同じような状態が出ているわけです。国立のほうでは、これを防ぐために、入所する子供たちの体重制限をしているということを父兄たちが言っているわけです。三十キロをこえたということで断わられた。そういうふうな内簡が出ているらしいということをいわれているわけです。これが事実としますと、結局国立には三十キロ以内の子供が入るけれども、民間には重たい子供が入ってくるわけですね。そうすると労働の中身が違ってくる。これが一律に扱われているということもあるわけです。こういう国立で体重制限をしているという事実はあるわけでしょうか。
  53. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 私は体重制限ということばを、その事実は知りません。また初めて聞いた問題でございます。ただ、やはり年齢がしてまいりますと、体重の発育による相違ということで、体重制限ということばの裏に、若干長く家庭で見ておられた方が、だんだん施設がふえて、家庭で見切れない、親もお年寄りになるというようなことで体重の大きい、要するに年齢のした子供が初めて入ってくる。こういうときに受け取る側が、これはたいへんだという気持ちを、非常に率直にいって職員としては持つと思いますけれども、これを具体的に通牒その他でやっているということは絶対ございません。  ただ、個々の施設の実情によってはたいへんだという感じがある。そこでわれわれとしては、こういう入浴させるにしても、体重の多い子供を、御婦人のあの看護婦さんが取り扱うということは、たいへんであるということで、かねていろいろの入浴設備というものを研究してまいりました。それで、先生施設をごらんになって御存じと思いますけれども、機械によって子供を入浴させる、そしてよくからだをふいてあげてということで、なるべくこういう労働を軽減しようという努力をしてまいっております。  それから、今回四十八年度から新たにエレベート・バスという、非常に労力を軽減できる機械もできてまいりました。これは新たに予算化しまして、これが非常にぐあいがいいということになれば、ということは、機械を用意いたしましても、案外これを活用してない面がございまして、その辺のところがやはり、機械というものは使いいいとか、御婦人の方が機械を操作するということに対する感覚と申しますか、そういうものも含めまして、エレベート・バスというようなものを購入することによって、そういう体重的な問題、あるいは高齢者の入所の問題については十分配慮して対処していきたい、こういうふうに考えております。
  54. 田中美智子

    ○田中(美)分科員 質問だけに答えていただきたいと思います。簡潔に。別なことはまた別なときにお伺いしますので。  体重制限をして断わられていると父兄側が言っているわけですね。五年間にみんな入れるという計画をしているならば、体重制限は絶対すべきことではないし、そういう事実があるかどうか調査をしていただきたいと思います。こういうことが民間に非常にしわ寄せになっているということです。  それから、国立のほうでこういう現象が起きているからということで、今度一病棟に六名の増員ということを言っています。これもやはり新しいものに対してだけ六名増員というので、いままでのものは放置している。放置して五カ年計画でふやすと言っていらっしゃるわけですけれども、どうしてこういうことをしているのか。職場の人たちは非常に誠意を疑っているわけです。なぜこれを新しいものだけでなく、いままでのものも六名の増員にしなかったのかということ、そのことに簡潔に答えていただきたい、時間がありませんので。
  55. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この点につきましては、理想的に言うならば、前からの施設についても増員いたしたいのでございます。しかし、国立の施設とそれから民間施設と、このような人手不足看護婦不足のときに、われわれとしては理想は追いたいのでございますけれども、やや理想には遠のきますが、新設のものについては、やはり新設するということで、たいへんな御苦労もございます。すでに実行しているところについては、若干そういう問題に対する取り扱い上の経験も出てきております。できるだけ早く基準に合うようにいたしたいと思いますけれども、全体の需給関係考えますと、国立としては今回のような措置を当面とったということでございます。
  56. 田中美智子

    ○田中(美)分科員 理想的にはできないからということですけれども、現在、子供を返さなければならないというところにきているわけですから、これを増員するということは当然なことだと思うのですね。こういうことがなされないために結局一・九対一、こういうふうなことが労働者の健康破壊に非常につながっているわけです。腰痛症が非常にいまふえております。国立療養所に腰痛症が非常にふえているということは、結局ここでは腰痛症になりますと、結核病棟のほうに回していくというふうな形で、新しく来た人たちを腰痛症にしておいては、それを結核のほうに回していくというふうなことでやりくりをしている。結核病棟では半分の看護婦さんが腰痛症だと聞いているわけです。民間のほうでは移すところがないわけですね。こういうことが結局、即やめていかなければならないというところにつながっているわけです。  この腰痛症は、びわこ学園で昨年の末に百十二名の病棟の職員の健康診断をしましたら、その中で八十七名が腰痛症に要注意だ、ほんとうに健康ではないということで、ほんとうの健康者はわずか八名しかいなかったというふうな結果が出ているわけです。それから島田でも、いま病棟職員五十七名中、長期療養している者が二名、それから治療中が七名、それからいま腰が痛かったり、肩が痛かったりということを常に訴えている人というのが三十九名で、四十八名が健康ではないということ。結局七七%が健康ではないというふうなことが統計として出てきているわけです。  この腰痛症というのは、いまになって急に出てきたのではなくて、いままでにも出てきていたわけですけれども、過去には、三年ぐらい勤務しますと腰痛症が出てきていたわけです。最近は一年未満でも、もう腰痛症が出てきているわけです。こういう状態というものは、一年したらもう健康的に働けないという状態になっているわけですね。これでは、幾ら理想的にはいかないけれども、それに近づく努力をすると言っていても、結局獲得した看護婦さんをみんな病気にしてしまっているというふうな状態になっているわけです。ですから、一対五でなくても、一・九でも何とかやっていけるのではないかという、そういう認識の立場に立っていえば、もう来年は全部この子供たちは返さなければならなくなるということが明らかに見えているわけです。  ですから、どうしてもここで緊急に何とかしなければならないところにきているのではないか。突然出てきたことではない。何年間の間にこういう現象が出てきているわけですから、五十年までに入れる、こういうふうに言うならば、もうどうしてもことしから少しずつ入っていく。四十八年度から少しずつ子供たちが出ていく状態になっているわけですから、緊急にいま国の責任で看護婦さんを連れてくるという責任ある回答をはっきりしていただきたいと思う。単なる努力をするということでは、これはどうしようもない。それができないならば、子供をどこで引き取るか。それなら厚生大臣が島田の二十名を引き取ってくれるのかというところまできているのだと思うのですけれども、それについてはっきりと、それについてだけ答えていただきたいと思います。
  57. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 国の責任で、国が直接看護婦を島田なら島田に連れてくるということについて、ここでもって確言せよというようなお話と思いますけれども、私どもは直接看護婦にここに行けというような命令を、あるいは依頼をするわけにもまいりませんが、とにかく先ほども申しておりますように、私どもとしても、この打開策というものに苦慮しているわけでございまして、施設の長、経営者、そういったような人たちと相談して最大限の努力をするということはお約束いたします。
  58. 田中美智子

    ○田中(美)分科員 最大限の努力というのは今度の三万九千円にするということですか。加算金を、指導員をふやすということだけでは最大限の努力にならないと思うのですけれども、具体的に最大限の努力というのはどういう努力なんでしょうか。
  59. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 やはり看護婦を採用いたしますのは、第一義的には施設の長が責任をもってやる問題でございますので、私どもがいま最大限の努力と申しましたのは、そういったことについて最大限の援助を惜しまないということでございます。
  60. 田中美智子

    ○田中(美)分科員 援助を惜しまないという非常に抽象的なことですけれども施設長側では、指導費はいま総医療費の五五%ですね、これを一二〇%ぐらいにしてもらわないことには、結局人を雇えないということを言っているわけですね。これをわずかに三千円か四千円の増額でできるというふうにお考えになるところは非常におかしいと思う。これは経済的なことだけではありませんけれども、経済的なことを言いますと、これを五五%をせめて一〇〇%にいま緊急にふやすというふうなことでもしなければ、単なる努力をすると言っても施設側では援助になっていないわけですね。この点はどういうふうにお考えになるのですか。
  61. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 先ほどお話しいたしましたように、四十八年度におきましては約三万九千円の指導費にアップしたわけでございまして、これが多いか少ないかというような御意見は施設の側にあるかもしれませんけれども、私どもとしては四十八年度におきましては約四万円、年間約五十万に近い金を収容児一人について措置をするというようなことで改善がはかられるのではないかというふうに考えております。
  62. 田中美智子

    ○田中(美)分科員 県では、これではとてもやっていけないということで、東京都ではいままでにも補助金を一万円、今度は一万八千円、滋賀県でも一万二千円とか、一万円とか、いろいろ県によって違いますけれども、出しておりますね。これを大幅に、東京都では一万円増額をするということをしているわけです。県によっては全然出せないところもあるわけですね。そういうものに対してやはり国が、県がやれることをなぜ国がやれないのか。結局お金の額が多いか少ないかという論議ではなくて、それでは看護婦は全然雇ってこられないじゃないかということを言っているわけです。そういうことの具体的な努力というものがない限りは、これはできないというふうに思うのですけれども、そういう指導費以外のものでも、運営費を出すとか、それから民間のかかえている赤字を国が肩がわりするとか、何かそういうふうなやり方はあると思うのですけれども、具体的にそういう対策というのは、いまお考えになっているのでしょうか。
  63. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 四十八年度の予算におきましては、重障指導費あるいはそのほかに日用品費の支給というようなものが、これは従来からもあるわけでございますが、やっているわけでございまして、そのほかに四十八年度に加算を緊急にやるということは現在では考えておりません。しかし将来の問題としては、こういったような問題をどうするかということは、これは検討に価する問題だと思いますけれども、四十八年度ではいま申しましたような処置をとったわけでございます。
  64. 田中美智子

    ○田中(美)分科員 ということは、結局いままでのお話によりますと、五年間にすべての障害児を施設に入れるということは全く無策で、何も考えないで、ただいっているという結論だというふうに私には考えられますし、おそらく職員の方たちも、また父兄たちもそのようにしか考えられないというふうに思うわけです。ここまでの危機状態になっても、厚生省側としては何の対策もないというふうに考えてよろしいですね、厚生大臣
  65. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 重度心身障害児者の収容問題は、厚生省においても緊急な非常に大事な問題だと考えております。なるほど島田療育園のほうは看護婦不足ということで非常にむずかしい段階にあることは、先般の予算委員会においても承知いたしたとおりでございますが、必ずしも全部が全部こうだというわけではないんでありまして、それは田中先生、よそのいろんな例を調べておられると思いますが、全部が全部必ずしもそうではないんで、非常に喜ばれて収容の子供を世話しておるというところもあるわけでございまして、島田療育園のように、もうみんなやめて帰るといったふうなところばかりではありません。はっきり申し上げておきます。  したがって、そんなものは、国の計画はインチキだ、そんなものではありません。なるほど収容施設は五カ年計画においては、多少少し進捗率はおくれておりますが、四十八年度においては特に重度身障児に力を入れてやろうということを申し上げておるわけでありまして、そういう点はインチキなどとおっしゃらないようにお願い申し上げておきたいと思います。  それから島田の問題については、これはもう第一には、知事がどういうふうに考えておられるのか、その知事さんの意見もまだ児童局長からは詳細聞いておりません。知事も投げておけないでしょう。私どもも投げておけないということで、さしあたり私どものほうとしては、子供を送り込む全国の府県に何とかならぬか、もう少し御協力をいただけぬかということをお願いしておるわけでございます。その結果何人来る、それはいまのところ私何も申し上げる材料は持っておりませんが、私どもは東京都にあるその施設といえども国として何とかしなくちゃならない、こういうことで真剣に努力しておることだけは、ひとつ御理解をいただきたいと思います。  なお、そのほかのいろいろな経費等については、所長さんがこうしてくれああしてくれという、ぎりぎりこれがなくちゃだめだというふうなことも、私も聞いておりません。これは島田療育園の園長さんからも、これだけしてくれれば看護婦が入りますというようなきめ手になる意見もまだ聞いておりません。けれども、私どもとしてはこういう施設というものは、ほんとうに御苦労なことでございますから、できるだけの金は支出しなくちゃならないというふうに考えておる次第でございます。島田療育園のほうからこうなくちゃならぬ、これ一つ解決してくれということでもあれば、私どもも具体的に相談には乗りたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  66. 田中美智子

    ○田中(美)分科員 島田療育園の場合には、十項目をあげて厚生省に要望を出しておるというふうに私は伺っております。これは十項目を出しておるので、そちらは、厚生省のほうとしては御存じだと思います。厚生大臣の言われたことは、厚生大臣の耳には入っていないということがいま明らかになったというように思いますけれども、では、この十項目について何らかの手を打って——いま厚生大臣言われましたように、島田からこういうふうにと言われれば、それについて何かをしようと言っていらっしゃるわけです。出しているわけですから、それに対してやっていただけるというふうに思いますけれども……。
  67. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 十項目の問題は、はっきり申しまして私のほうへ直接十項目の要求は出ておりません。これは東京都に出されたわけでございまして、東京都のほうからこういったような要望があったということは聞いております。
  68. 田中美智子

    ○田中(美)分科員 要望があったということは、これはそれについて検討してみるということが誠意ある態度だと思いますけれども、時間がありませんので、一応、インチキとは言わないでほしいと言われましたけれども、三千五百億の計画でもって五カ年計画をやるといっておきながら、これはまだ三年間たっても、ほんのわずかしかなされていないということを見ましても、やはり数的に見ましても、この五カ年計画というものは、非常にあやしいものであるということだけは事実だというふうに思います。  こんな人手不足になったということは、先ほど言われましたように、看護婦の養成所の近くにいろいろな働く場所がふえたから来なくなったというふうに言われますけれども、人手不足根本というのはどこにあるというふうにお考えになるでしょうか、厚生大臣は。
  69. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 看護婦の問題は非常にこれむずかしい問題で、これはたびたび社労の委員会でも、先生のお尋ねでございましたかどうでございましたか、お答えを申し上げたように、養成計画の問題、それから働く人々の給与の問題、それから手当の問題、保育の問題いろいろの問題を総合的に勘案していかなければ、なかなか私は容易じゃないと考えております。今日まで、ややともすれば施設をふやせばいいという考えでおりましたけれども、なかなかいまはもうそういう段階ではない。  そこで私どもとしては、給与の改善の問題、あるいは特にことしは御承知のように国立病院、療養所等については看護婦さんの夜勤手当の問題、三百五十円、これはもうそれではお気の毒だ、二・八制を何とか確立しなければならぬだろう、こういうふうなことで、急遽わが党の内閣においては三倍の一千円を出しましょうというふうなところまできておるわけであります。もちろんそれだけではないことは先ほど来申し上げたとおり、そういうふうな総合的な問題をとらまえて、この問題を真剣に考えてみよう、いままでの過去の反省の上に立って改革をしてみようというので、本年度から始まる五カ年計画の中でひとつ具体的な計画をつくるように、いま努力をいたしておる最中でございます。
  70. 田中美智子

    ○田中(美)分科員 施設職員の待遇改善のことをいま言われましたけれども、そういった基本的な問題の解決というものを、いままで行政がサボっていたということがここにきた一つ原因でもあると思うわけです。この待遇改善については、いま努力をしている——看護婦さんの夜勤の問題だけを言われましたけれども、どのように努力しているでしょうか。
  71. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 看護婦の問題につきましては、私医務局長からお答えいたしますが、当面やはり、大臣からも申し上げましたように、女性の職業として夜勤をどうしてもしなければならない、したがって夜勤手当だけを上げれば、事は即これでいいというわけではございませんで、基本的に、やはり看護婦という職業に対する社会の評価というものを具体的にあらわすためには、やはり基本的な給与の改善というものがどうしても必要である。具体的には人事院の給与局長に会いまして、これの改善を申し入れ、なお両者で十分検討の上、本年八月の給与勧告には具体的に、ぜひとも看護婦の給与改善について、かなり画期的なものをお出しいただくようにお願いしておる次第でございます。
  72. 田中美智子

    ○田中(美)分科員 いま看護婦さんのことだけ言われましたけれども施設職員というのは看護婦だけではないわけです。介護助手などもたくさんおりますし、保母もいます。この職員の方たちというのは非常に待遇は低くなっているわけです。これについての改善というのはどういうふうになっていますか。
  73. 加藤威二

    ○加藤(威)政府委員 社会福祉施設職員、ことに民間の社会福祉施設職員の給与というものが従来低かったということは御指摘のとおりでございます。それで、厚生省といたしましては、四十六年、七年、この二カ年で少なくとも国家公務員の給与にまで引き上げるという努力をいたしまして、大体平均的に見ますと、厚生省で配っております措置費、平均で配っておりますが、それは大体国家公務員に準じたところまでいっている。ただ地方公共団体でつくっております施設、県立の施設とか、ことに東京都の都立の施設などというのは、東京都の職員給与が高いですから、それと比べますと、東京都の民間の施設職員の給与はまだ低い、これは否定できませんけれども、全般的にいいますと大体国家公務員の給与並みになっておる、こういうことでございます。  たとえば特別養護老人ホームの寮母の給与は、四十六年度当初で五万二千五百円でございます。それが四十八年には七万三千七百円、大体四〇%ふえておるということでございまして、確かに従来低かったけれども、いまや大体国家公務員並みの水準に措置費の面からいいますと、なっているということが言えます。
  74. 田中美智子

    ○田中(美)分科員 保母や介護助手を雇う場合に、その基準で雇われていないと思うのです。これは指導費を充てているわけです。ですから、指導費を充てるといいますと、非常に年齢が高くなりますと上がりますから、それを上げられないというような形で、実際には非常に低い線にとどめられているわけです。決していまおっしゃっているような現状にはなっていません。一部の人だけということではなっているかもしれませんけれども指導費で払われている人件費というものは、そのようになってはいないと思うわけです。もうちょっとお調べになっていただきたいと思います。  それから、労働時間というのが非常に長くなっているということで、腰痛症になったというようなことがあるわけです。それから、福利厚生施設というものはほとんどないというようなことで、一般の企業のほうにはこういうものがあるわけですから、募集するときに、どうしてもそちらに取られてしまうということがあるわけです。こういうものも一緒に考え合わせてやらなければならないわけです。この中には保育所をつくるとか、宿舎をつくるとか、いろいろなものがあると思うのですけれども、そういうものに対する配慮というものが基本的な配慮だと思います。こういうものがずっと怠慢であったということが、この施設に人が集まらないという大きな原因になっているのではないかと思いますけれども、その点はどのようにお考えになりますか。
  75. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 生活環境整備ということにつきましては、確かに非常に重要な問題だと思いますので、その点は私どもこれから十分に検討していかなければいけない問題だと思います。
  76. 田中美智子

    ○田中(美)分科員 いまから検討するのではおそいのであって、もうここまできているということは、緊急にこれに対する何らかの手を打たない限りは、この四月には子供を引き取らなければならない現象があちこちに出てくる、それから、来年はもっとこれがひどい状態になって出てくるということだと思います。  もう一つ、大きな問題ですけれども、ここで働いている人たちがなぜ定着しないかということの中で、生きがいがないということをそこの労働者は言っているわけです。こういうことを厚生省は一度でも考えてみたことがあるのだろうかというふうに私は思います。ここで働いている人たちというのは、何に生きがいを持つかということは、働いていれば自然にそこにいる子供たちに対して愛情を持ってしまうわけです。愛情を持って、こうもしてやりたい、ああもしてやりたいというふうに思いましても、ほとんどそれをすることができない。  たとえば美しい音楽を流してやりたいと思っても、その設備がない。その設備を、ステレオを寄付してもらっても、それをかけてやる時間がないというようなことや、テレビを寄付してもらっても、電気代がかさむから、これにスイッチが入れられない。電気代まで寄付してもらわなければならないというふうな状態にあるわけです。子供たちをわずか三十八分でも日光浴をさせてやりたいというふうに、愛情を持てば持つほど、仕事に生きがいを持てば持つほどそういう気持ちというものは労働者の心にわいてくるわけです。これをしてやろうと思っても、三十分の日光浴さえ子供たちにすることができないという現状です。  食事を与えるにしても、ゆっくりと一人ずつ楽しんで食事をさせるということは、私も見てまいりましたけれども、そういう余裕はないわけです。全く食事ではない、むしろえさを口の中にはうり込んでいるというふうな状態で突っ込んで、そうしてその排せつの処理をする、これだけで一日職員が追い回されているという状態なわけです。その中でも、子供たちと職員たちの人間関係の中で、お互いに愛情がわいてくるわけですけれども、そのはけ口がないわけです、何のために自分たちは働いているのだろうかというふうな状態になっているということで。一度厚生大臣は見てきていただきたいというふうに思うわけです。  そういう状態だから、一年間は必死になって働いて、からだを粉にして働いて、結局一年未満で腰痛症になり、そして仕事の希望を失ってやめていくというのが現状で、決して地域に職場が広がったから、こういうところに来ないというふうな考え方ではないというふうに思うわけです。そのためには、やはりここの子供たちの発達保障というものが全く無視されて、まるで荷物のように、ただ生きていればいいとして施設の中にほうり込まれている、そういう政策がなされているというところに子供の発達保障は皆無にひとしい、そういう中で保母さんが、看護婦さんたちが、人間としての働く者の生きがいというものがなくなってきているというのが現状だと思います。これをこのままで放置していれば、おそらく働く人たちというのは、どんなに看護婦の養成所をつくっても、結局ここには入ってこないということになる。これは根本的に姿勢を改めなければ、永遠にこの人手不足というものは解決されない。単に加算金をちょっとふやし、努力をしますというふうなことではできないのだと思います。  いま障害者の自立というのは、いままで自分で寝返りができなかった子供が、一年かかって寝返りをすることができるということ、これは自立の第一歩ですし、また、笑うことのできなかった子供が笑えるようになった、これが発達の保障だと思います。   〔主査退席、三ツ林主査代理着席〕 こういうことができるような考え方というものがこの施設の中になければ、ここの問題というのは永遠に解決しない。むしろ後退していって、五年以後には一人もいなくなっていく。厚生大臣がおっしゃられたように喜んでいるというふうなことはないと思うのです。私は、ただ家族の立場に立ったときに、引き取ってもらえば、親や家族が世話がなくなるという意味では喜んでいるという面はあるかもしれませんけれども、障害者自身の立場に立ったときに、障害者の基本的人権というものが全く無視されたままにきているということです。  時間がなくて、ほんとうに残念ですけれども、昨年の四月に厚生大臣が、就学免除というものを撤回するというふうに言われているわけですけれども、それを撤回することで教育権というものを認めているわけですから、そういう教育権というものは一体どういうふうになっているのか、そういうことから考えていかなければ、ここの問題はさっき言ったように働く者はここでは永遠に生きがいを求められないということになると思うのです。その免除をあとどのようにしていらっしゃるのか、そこの経過を伺いたいと思います。
  77. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 就学免除の撤回という問題につきましては、現在文部省との間で話し合いが持たれておりまして、総理府に中央心身障害者対策協議会というのがございまして、そこでプロジェクトチームをつくってこの問題についての検討をいたしまして、それの中間報告が、ちょっと正確な時日は忘れましたけれども、昨年の暮れに中間報告が出たわけでございます。  このときに、結局問題は教育の概念という問題が一つと、それから現在私どもの児童福祉施設でやっております、いわゆる生活の介護と申しますか、保護と申しますか、それを教育とどう結びつけるかという問題があるわけでございまして、そこで私どもとしてはいわゆる教育の概念も広がって、私ども施設でやっておりますようなことも、いわゆる広い意味の教育であるというようなことになるのではないかというようなことから、現在私どものやっておりますようないわゆる生活の介護なり保護なり、そういったようなものも即教育ということで認められないだろうか。そうすれば、いわゆる就学猶予なり免除という問題が解決してまいりますので、そういうことで文部省との間で総理府のこの審議会を通しましていろいろ相談をして、それはまだ率直に申しまして結論には達しておりません。しかし、そういう問題について昨年ずっと話し合いをして、中間報告では、そういう方向でもって一ペん検討してみたらどうだろうというような中間報告はいただいたわけで、これについてはさらに文部省との間に詰めて前進させていきたいというように考えております。
  78. 田中美智子

    ○田中(美)分科員 子供たちも毎日毎日生きているわけですから、去年の四月に撤回をするということを厚生大臣言っていらっしゃるし、またいま言われた中央心身障害者対策協議会から去年の十二月十二日に出ているわけです。ここにも出ておりますように、「最近における施設入所児童の障害の多様化、重度化に鑑みれば、施設から学校に通学するばかりでなく、学校が施設の中で教育を行なうこと、さらには、施設における指導訓練の実態に応じ、その一部を学校教育とみなす配慮も必要であると考えられる。」というふうに書いてあるわけです。そういうことはもう一年も前から、具体的に国会の中でもそれをするということを言われていながら、いまなおまだこれから考えるというふうなこと、現実にいまの子供たちは御飯を食べるときに、食べさせてもらうときに、にこやかにお話をしながら御飯を食べたりする、これも教育の、これでいけば「一部を学校教育とみなす配慮も必要であると考えられる。」といわれている中に入ると思うわけですけれども、そういう時間もない。日光浴もない。保母さんと話し合う時間もない。そういうふうな状態に置かれているわけです。これは少なくともあなたがおっしゃるように理想な形にいかなくとも、すぐにでも、少しでも前進した状態にするということが子供の基本的人権を守ることとつながるし、また教育権にもつながるし、そして働く人たちの生きがいにもつながってくる。これはひいては、結果的にはそれが人手不足を補うことにもなっていくんだというふうに思うわけですけれども、そんなに長い時間をかけなければ、こういうことはできないというふうにおっしゃるわけでしょうか。もう時間がこれで終わりましたので、この点をいつ、どのようにするかということを早急にしていただきたい。その御意見をお聞きして終わりにしたいと思います。
  79. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 この教育の問題は非常にむずかしい問題でありますけれども、私どもも非常に大事な問題であるし、児童福祉という問題についての基本に触れる問題だと思っておりますので、私どもほんとうに真剣に考えているつもりでございます。ただ、これは文部省との間のいろいろな問題もありますし、それを解決していかなければ結論に到達いたしませんので、私どもとしてもこの問題は基本に触れるだけに、できるだけ早く文部省と話し合いをいたしまして、解決の方向に向かっていきたいというように考えております。
  80. 田中美智子

    ○田中(美)分科員 前もできるだけ早くということを何べんも言っているわけですけれども、大体いつごろまでにこういうことを実際に着手する予定でいらっしゃいますか。
  81. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 とにかくいまここでいつまでというようなことを、はっきりと申し上げられないのは残念でありますけれども、とにかく私どもとしても重要問題でありますので、早急に解決の方向に行くように努力をするつもりでございます。
  82. 田中美智子

    ○田中(美)分科員 最後に一言。至急国の責任で看護婦さんを連れてくるということと、そして子供たちの一歩でも前進した教育という面、基本的人権を認めた態度をとるということを早急にやっていただきたい。これは国民みんなが見ているというふうに思います。福祉元年というならば、そういうところから第一歩を踏み出すということで初めて福祉元年になるのであって、いま逆に、逆行しているというような現状というものの中から、最大の努力を至急やっていただきたいというふうに思います。  これで質問を終わります。
  83. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林主査代理 以上で田中美智子君の質疑は終了いたしました。  林孝矩君。
  84. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 厚生大臣にお伺いする前に、一つの実例を私、申し上げますので、よく聞いていただきたいと思います。予防接種による副作用の問題であります。  これは奈良県の大和高田市池田に住む中村真弥君という子供であります。昭和四十五年の一月十二日に生まれ、その年の十月十五日に予防接種をしたわけです。約十カ月、この子供は医者からも非常に健康優良児であるということで、おかあさんもおとうさんも非常に喜んでおられた。ところが、十月十五日に予防接種をしたその翌々日午後五時ごろより食欲がなくなり、微熱が始まって、そして以来今日に至るまで子供の状態というものは不具同然の姿になっておるわけであります。この問題は、過去におきまして日本の予防接種がかかえる医療行政の問題として、大きな社会問題となったわけでありますけれども、もう一つの持つ意味は、こういう子供が家庭にいること、このことによって、親もきょうだいも全く健康なんでありますけれども、何か血族的な問題があるんではないかということで、きょうだいの結婚にまで影響しておる、こういう事実でございます。  またもう一つのもっと顕著な例は、たとえば天然痘の患者というのはもう十七年間もあらわれていない。しかし、その予防接種による副作用によって毎年十人ほど死んでいるという、こういう実態があります。そこで昨年四月以来、予防接種をいわゆる強制種痘という形をやめて任意制にしたらどうかというような議論が起こっているわけでありますけれども、その議論が起こってもう一年、はっきりした態度が示されていない。被害をこうむっている子供たちは、子供たちといっても、憲法で保障するところのだれ人もおかしてはならない基本的人権を有する人間でございます。子供のからだというものは、もう取り返しがつかない。私もその両親にも会い、また子供も見ました。子供のからだはもとに戻らないけれども厚生省はこうした子供たちに対して、あまりにも救済措置というものがなさ過ぎる。そしてまたそこから端を発して起こっている結婚問題とか、そうした影響というものに対して、家族の方あるいは親族の方は非常に悩んでいるというのが現実であります。大臣のこうした問題に対する決意のほどを最初にお伺いしたいと思います。
  85. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 林委員のお述べになりましたその具体的な例につきましては、ほんとうにこの子供さんはお気の毒であり、家族方々ほんとうにお気の毒だ、私、同情にたえない次第でございます。それにつきましても、そうした方々についての後遺症の問題その他につきまして、できるだけのことをしなければならない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  86. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 いま申し上げました中で、私一つの問題を提起したのは、種痘廃止という傾向でございます。これはWHOも、先進国ではもはや種痘の強制接種を廃止しても安全であるという見解を発表した例がございます。種痘の必要というもの、予防接種法に定められているいろいろな病気があるわけでありますけれども、たとえば急激に蔓延して、どうしても種痘が必要であるという場合もあるでしょうし、いま例をあげました天然痘のように、十七年間患者が出ていない。しかし、それを種痘している。その種痘によって毎年十人死んでいっておる、こうした問題。したがって、種痘を任意制にするか、あるいは現在の強制接種という形を続けていくかということは、こういう具体的な例から考えると非常に重大ではないかと思いますし、医療行政の面から考えても、また先ほど申し上げました子供たちの基本的人権を守るという面から考えても、またあとから申し上げますけれども、いわゆる接種によって被害をこうむっている子供たちの今後の救済、こうした面から考えても、まあ大臣にもお孫さんがおられると思いますし、私にも子供がいるわけでありますけれども、そうした接種ははたして安心してできるのかどうかという不安に対する回答、これは全国の親が持っている気持ちだと思います。その証拠に、種痘を受けている人口も減ってきていますから、そういう不安を解消する、安心して子供を育てていくことができるという環境をつくり出す上においでも非常に重大なことでありますので、大臣の明確なる御答弁をお願いしたいと思うのです。
  87. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 御指摘の種痘につきまして、諸外国の例にならいまして任意接種にするか、あるいは従来のように強制接種にするか、非常にむずかしい問題でございます。と申しますのは、御承知のように痘瘡の発生状況が、一九七二年の例をとってみますと全世界におきまして約六万五千名の患者が発生しておりますが、そのうちアジア地区におきまして四万六千名の患者が発生いたしております。したがいまして、私ども任意接種にするかどうかということにつきましては、伝染病予防調査会の御意見等も承りながらその検討を重ねておりますけれども、ただいま申し上げましたような状況から、早急に任意接種に切りかえるべきであるという御意見も出ないようでございます。したがいまして、現在私どもといたしましては法制上強制接種という形をとっておりますけれども、いま御指摘のように、実態的には任意接種の形になりつつあろうかと思います。  しかしながら、一方におきまして、私どもといたしましては接種による事故の予防ということにつきましては万全の措置をとりたいという面から、痘苗につきましてもできるだけ副作用のない痘苗をつくるべくいろいろ研究も重ねております。したがって、結論的には先ほど申し上げました伝染病予防調査会の結論を待って、その時期等につきましては判断をいたしたい、かように考えております。
  88. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 伝染病予防調査会の結論を待ってというのは、これはそのとおりでありますけれども、この問題が提起されてもう一年になるわけです。その間にやはり被害者が生まれているということでありまして、そこに私はそうした問題に対するいわゆる取り組みの姿勢といいますか、こういうものが非常に問題になってくると思うのです。たとえば昭和四十五年度百六十五件、四十六年度八百四十八件、四十七年度、これは四十八年一月まで含んでおりますけれども、四百二十八件、計千四百四十一件、これだけの申請がなされておるわけです。そしてその申請がなされて認定も否定もされない、いわゆる保留という形で置かれているのが、四十五年度分の中では五件、四十六年度の中では百五十九件、四十七年度の中では二百七件、三百七十一件が保留という形で、一年も二年も三年も何ら救済がなされないで置かれているわけです。これは重大問題だと私は思う。もちろん、任意制という形をとるか、あるいは強制接種という形でいくかということ、それをきめること自体も非常に重大なことであり、専門家の調査、それを待つ以外にないわけでありますけれども、あまりにも時間がかかり過ぎておる。そしてその過程においてこうした被害者が生まれ、申請し、保留のままで置かれておる。こういう子供さん方、百四百四十一名の申請者、三百七十一名の保留者、全部親がおられるわけですし、家族の方もおられる。それが何ら救済もなされない。そしてそういうことを知っている多くの——先ほども申し上げましたように、私たちも含めて予防接種というものに対する危惧、不安というものを、どうしてもぬぐい去ることができない。したがって、これだけ時間がかかってしまうと、一体厚生省の行政は何をやっているんだということになるわけです。どうなんでしょうか。
  89. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 御指摘のように予防接種事故につきまして申請がございました件数につきましては、四十八年の一月末現在で千四百四十一件に達しております。そのうち審査をいたしましたのが千二百六十三件、措置いたしましたのが八百一件で、保留となっておりますのが三百七十一件、御指摘のとおりでございます。  なぜ保留になったかと申しますと、これは予防接種とその後の後遺症との関係、いわゆる因果関係がなかなか決定しがたい面がございます。したがいまして、措置すべきものは措置いたしておりますけれども、できるだけ救済をしたいということで、その医学的な面につきまして外国等からも文献を取り寄せいろいろ検討を重ねておるわけでございまして、そういう医学的な困果関係の判定がなかなかつかないために保留をされているものもございますし、あるいは申請に基づきますいろいろな書類上の不備もございまして、その照会に時間がかかるというものもございます。しかしながら、私どもといたしましては御指摘のようにできるだけ早く救済措置がとれるような努力はいたしておることだけは申し添えたいと思っております。
  90. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 たとえば、いまおくれている原因一つにあげられました因果関係、この因果関係がはたしてはっきりするまで待っていたらいつまでかかるのかということです。申請のときに時間がかかっておる。これは何ぼ申請のときだといったって、二年も三年もかかることはないと思うのです。戸籍法に基づくところの戸籍なんというのは市役所に備えつけられているひな形があって、そこへ書き入れるわけですから、書類の不備で二年、三年おくれることはないと私は思います。  さらにもう一つ、私、問題提起しますけれども、この予防接種法という法律を見ますと、これには強制接種という体制をしいていますから、義務履行違反という形に対しては罰則規定まで設けておるわけです。全部種痘すべきである、しなかったらこういう罰則がありますよ、そういう法律なんだ。そしてそこで起こった事故に対しては、事故補償は全然規定されてない。これは法律の不備じゃないでしょうか。
  91. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 法理論的に、私十分法律関係の勉強をいたしておりませんので、わかりませんけれども、成立当時の趣旨からいたしまして、この罰則規定を設け、それに対する補償につきまして規定をしなかったことについては、法律上の不備ではないというふうに理解いたしております。
  92. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 どうして不備じゃないんですか。
  93. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 予防接種法が制定されました当時におきましては、現在のように、事故に対する補償という考え方が十分徹底していなかったために、そういう補償に対する条項が設けられなかったんだろうというふうに推測いたします。
  94. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 それでは言い方を変えまして、当時の事情はそうだったかもしれません。しかし、現在においては全然事情は変わっておるわけです。たとえば、この法律ができたのは二十三年施行ですね。それからこうした事故があらわれるようになったのが非常に時間的な経過があってあらわれた。その間においてはそうした事故の救済というもの、事故の補償というものが必要でないとか、あるいは事実があらわれてないんだから不備は感じられなかったという事情があったとしましても、では現在どうでしょう。現在、先ほど申し上げましたようにこれだけの事故が起こっておる。毎年これだけの件数の申請があるわけです。しかし、それに対して救済は全然規定されておりません。そしてこれは強制種痘という形をとっているわけですよ。現在の時点で考えて法律に不備はない、そのように判断されるか、それとも不備はあると判断されるかどちらかでしょう。
  95. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 したがいまして、現在の段階におきましては、そういう事故に対する補償という問題も十分検討しなければならぬという時期に到達いたしましたために、先ほども申し上げましたように、予防接種全体の問題といたしまして、これはどのような法体系にするか、あるいは制度にするかということにつきましては、伝染病予防調査会の方々の御検討を待って、それを含めて検討しなければならぬ、かように考えております。
  96. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 そうしますと、現在の時点でこの法律は不備がある。そこでその伝染病予防調査会のほうにおきまして、厚生省が、たとえば法改正の問題が一つありますね。それから強制種痘から任意制に切りかえるという問題、こういう方向の問題として明らかにして調査会が検討されておるのかどうか。そしてもしその調査会から法改正の必要があるという答えが出てきた、あるいは全面的に強制種痘から任意制という形に切りかえる場合だとか、あるいは急激に蔓延している病気についてはこれは強制種痘という形をとり、もうすでに病気というものが考えられない病気には任意制という形をとるとか、あるいは強制を廃止するとか、そういう答えが出てくる。  私は、これは厚生大臣にお伺いしたいのですけれども、その調査会の答申というものを受けて、そういうことに対する問題意識、私が先ほどから申し上げました、そうした重大な問題を含んでいるという意識に立って受けられるというおつもりなのかどうかという点。  それからもう一つは、それは一体いつの時点でそうした調査会の結論が出てき、厚生大臣がこれに対して決断を下されるか、この時期の問題。時期の問題がなぜ大事かということは、もう何回も言いますけれども、二年も三年もそうしたままで保留という形で何の救済の手も差し伸べられないで、そうして子供が、親が、兄弟が、いろいろ社会からそうした基本的な人権が根本からゆるがされるというような環境に置かれておる。そうして、さらにこうした患者が、これから先なくなるというのじゃなしに、毎年起こっているわけですから、早急な救済措置が必要だということです。この二点について大臣の答弁を求めたいと思います。
  97. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 強制種痘につきましては、私ども実は子供のときにはほんとうに何も疑いを持たなかったのです。私ら、古いせいでしょうか、私ら時代には、種痘というものは強制的にやらなければ危険である、こう考えておったです。  ところが、最近天然痘の発生の状況も東南アジアにおいてもだんだん減ってきているでしょう。たぶん減ってきていると思います。それからこういうふうに文化が進んでいるということになってみれば、しかもまた一方においてそういう事故が起こるということであってみれば、強制的にやるのが必要かどうかということも私は問題になるのは当然だと思います。これはやはり社会の進歩に伴ってそういう事象は変わっていくべきものでございましょう。それで、そういうふうに強制的にやるべきか、任意的にやるべきか、これはやはり一つの研究項目、しかし、これは私ども医学の知識のないしろうとが決断しては相済まぬ話でありますから、それは専門家の判断を待って、強制をやめて任意にしたがいいということであれば、私は当然それに従うべきだと思います。したがって、今後審議会において、この問題は社会の進歩に伴い、文化の進展に伴い、どういう結論を出すか、結論を待ってその方向で私は善処いたしたいと思います。  それからなお、それはそれといたしまして、現実事故がたくさん起こっている。お示しのとおりでございます。こういうことについて、ほんとうに、どうもそう言っちゃあれですが、審査がおくれている、こういうことはやはりもうちょっと早くやっていただいたほうが私はいいと思いますね。これはほんとうを言いますと、やはり家族方々はどういうわけでこうなったのだろうと心配していると思います。それが後遺症であるならば、何かやはり救済制度を欲する。これは国民の人情で当然だと思います。役所側においても先ほど来お答えいたしましたように、諸外国のいろいろな実例等も調べまして研究はいたしておりますが、もうちょっと早く審査を終了できないだろうかということを、私も審査会のほうにお願いをいたすようにいたしたいと思います。それはもっと早くしていただきたいということで、家族気持ちを思えば早く決着をつけたがいいと思うのです。そういう意味において、なるベく早くあたたかい結論が出るように審査を急がすようにお願いを私もいたしたい、かように考えております。  それから、なお最後に救済の法制化の問題のお尋ねでございますが、それはもちろんこういうふうな強制接種にするか任意接種にするか、いろいろな問題がそこにあると思いますが、それとの関連においてこういう問題が私は出てくると思いますから、そういう問題もあわせ審議会のほうで審議をしていただきまして、それの方針に基づいて結論を出すようにいたしたいと思います。  それで、やはり国民の心配していることでございますから、その審議会で結論を出すにも二年も三年もかかるというのじゃ待っておれませんから、なるべく早い期間に結論を出していただくようにお願いをし、その結論が出ましたら、私としてはそれに従ってその方向で善処いたす考えでございます。
  98. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 大臣は、急がせる、このように言われたものですから、いつの時点ということをここで議論しても、相手のあることですからその議論はひとまずおきます。  法の不備という点について、先ほど法の不備があるという見解が、局長さんのほうから話があったわけでありますけれども大臣はどう思われますか。私が先ほど、これは強制種痘であって、従わなかったら罰則がある、しかし、もし事故が起こったときには全然救済の規定はなされてない、これは他の類似する法律と比較しますと落ちているところなんです。この法律をつくる当時においては、そういうことは考えられなかった。しかし、いまは実際こうした事故が起こっているという事実があるわけで、法の不備ではないかと私は思うわけですけれども大臣はどう思われますか。
  99. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 私、先ほども申し上げましたように、私ども子供のときは、強制接種は何人も疑わなかった。接種しなくてはほんとう国民保健上困る、こういうふうに実は考えておった時代でございますから、しかもまた、その当時事故が起こるなどとはだれも想像してなかった時代の法制ですから、その当時としては私はやむを得なかったと思うのです。しかし、こういうふうに世の中が進歩して変わってまいり、国民の保健状態も向上してまいりまして、こういう事態が起こってくるということをとらまえれば、どうも少しいまの法制では欠陥があるのじゃなかろうかというふうなことも考えられますので、行政措置としてもろもろの手段を講じておるわけでございます。したがって、今後法律を改正するということであれば、現在の国民保健と接種という問題との関連とか、諸外国との関連とか、そういうものを十分頭に描いて法体系をりっぱなものにつくり上げるようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  100. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 時間が来ましたので、もう一点大臣にお伺いしますけれども、これはものの考え方の問題です。  こうした予防接種による事故、ところがこれには審査がある。審査が非常にきびしい。したがって、これがほんとうに予防接種による災いであるかどうかという因果関係の問題だとかがあって、非常に審査がきびしい。こういう状況に現実の問題として置かれているわけです。私はそうした現実の問題に対して、いま奈良県の例をあげましたけれどもほんとうにそういう接種をした二日後にそうした症状が始まって、それからもう三年間という間そういう形に置かれて、そしてそれが保留という形にされたままになっておる。これはそれまでは、かかりつけの医者もちゃんと私知っていますけれどもほんとうに何の心配もない、いわゆる健康優良児になりますよといわれてきた子供なんです。それがある日突然、そうした種痘の二日後からそういう形になって、三年間そういう状態、こういう事実関係が存在するということならば、一つは、たとえば公害病に見られるような立証責任の転換であるとか、あるいは疑わしい状況にあるからこれは救済していこうという、そういう姿勢に転換されるとか、何でもかんでもそういうものをなるべく少なく削り落として、何かの資格をとるための語学審査のような感覚でやられると非常にこれは三年、五年たっても結論が出ないかもわからぬ、十年たっても結論も出ないかもわからぬということが心配されるわけです。したがって、私が大臣にお願いしたいことは、こういう事実関係がはっきりしておるものに対して、もっともっと政治というものはあたたかい心でもって救っていく、救済していく、そういう大臣の政治を国民も期待しているし、こうした直接被害をこうむっている人たちも期待しているんじゃないか、これは最後に大臣の決意をお伺いして質問を終わりたいと思うのです。
  101. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 具体的な問題につきましては、その判定はやはり医学的な専門家にまかすべきものではありましょう。しかしながら、厚生省というのはやはり善意な申し出に対しましては、愛をもってこれを処遇するというのが方針でございますから、私は、できるだけあたたかい気持ちでこの問題が解決されるように努力をいたしたいと思います。
  102. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 大臣の行政に期待して、質問を終わりたいと思います。
  103. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林主査代理 上原康助君。
  104. 上原康助

    上原分科員 まず最初に、復帰後の沖繩の医療行政を中心として社会保障全般ですが、やや範囲が広くなるのですが、最も問題になっている点は一体何なのかということ、さらにわれわれがかねがね指摘をしてまいりましたように、沖繩の現状というのは、本土との格差が一番大きいのは何といっても医療行政なり社会保障全般についてなんだ。復帰段階においてはその格差を早急になくして、少なくとも本土水準に近い方向に持っていかなければならないということを強調してまいりました。そういう方針で政府としてもいろいろ御努力をいただいている点はわかるわけですが、現実問題としてなかなかそのような方向に進んでいない。あるいは政府がおきめになった振興開発計画なり、県庁が進めている振興開発計画等々とあわせていろいろ問題があると思うのです。そこらについて、まず問題点なり、今後政府がどのような方針で進めていこうとしておられるのか、承りたいと思います。
  105. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 私のほうから、医療供給体制について、主として先生のお尋ねの点についての見解を申し上げたいと思いますが、沖繩の医療水準というものは確かに相当低いのでございます。この原因につきましては、医師の不足基本的な問題もございますが、一方また住民のほうの疾病構造も若干特徴がございまして、結核あるいはハンセン氏病等の問題もございます。それから精神疾患についてもいろいろの御見解があります。そういうような疾病構造の面、それからそれを供給する側の医師その他の従事者の不足医療機関そのものの不足、本土の類似県に比較いたしましても二分の一ないしは三分の一というような施設あるいは従事者の数字をわれわれ見ることができるわけでございます。したがいまして、基本的な方針としては、この施設不足の面について国が直接できる点につきましては、たとえば結核、精神等の療養所を統合いたしまして、約一千ベッドを予定いたしておりますが、国立の施設をつくる計画を立てております。そのほか、民間の診療所等の設置につきましても、できる限りの金融その他の面を通じまして特別優遇措置を講じながらこれが普及をはかりたい。そのほか基本的にはやはり沖繩の大学における医学部設置問題、いま保健学部がございますけれども、医学部設置問題というものも一つ基本的な医療供給につながる問題だ、総体的にはそのような観点で考えております。
  106. 上原康助

    上原分科員 いま御説明ありましたように、やはり医療供給体制、設備がきわめて不十分であるということ、あるいは医療従事者、医師、歯科医師、看護婦その他医療従事者の人員がきわめて不足をしておる、こういうことは御説明のとおりかと思うのです。数字をあげて申し上げますと、人口十万人単位にして、沖繩の場合は五十一・一しか医師がいない。まあ私どもの手元の資料でそうなっております。本土の場合ですと百十三。歯科医師の場合ですと沖繩が十四・四、本土が三十六・四。いずれも四五ないし四〇%の率でしかないわけですね。本土水準の半分にも足りない。したがって、これらの医療従事者、特に専門医師というものを確保していかなければ、制度を本土並みにしてみたところで、県民や実際の受益者というものは、その受益を受けることができない実情にあるわけですね。ですから、そういった基本的なものを解決してもらいたいということで、私たちは復帰対策要綱なりいろいろな面で御要望も申し上げたのですが、まあ本土においても離島、僻地、辺地の場合は、無医村だとかいろいろな面でむずかしい問題もあるということは理解をいたします。しかしながら、先ほどの御説明にもありましたように、鳥取、島根、香川、あるいはその他の類似県と比較しても、やはり先ほど言いました数字と大体似たりよったりの現状なんですね。それをどう今後、これは県だけの力ではどうにもならない問題なんです、やはり国の立場で、政府の立場で解決していかなければいかないことだと思うのですが、その点についてはどういう考えを持っておられますか。
  107. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 当面、医科大学の設置等につきましての課題はございますが、これは早急には間に合わない、時間を要する問題でございます。したがいまして、私ども予算措置の上では、たとえば沖繩の無医地区に対する本土医師の派遣費を助成する、もちろんそのあっせん、お世話も積極的にしたい。それから、やや専門的な医師の派遣につきましては、国立、公的な病院等を通じまして各県の協力、あるいは国立みずから、私のところの直轄の国立病院等をわずらわしまして、これが派遣について年々予算の増額をいたしまして、当面の不足をできるだけ補いたい。これとても万全な措置だと言うことはむずかしいのでございますけれども、そういう基本的な考え方でいきたい。幸い、医師の方々につきましては、沖繩の医療問題には非常に関心を持っていただいておりますので、派遣するたてまえをとりますと、行ってくださる方は積極的に行ってくれますので、その点については、今後とも派遣の必要の事情に応じましたポイント、ポイントをつかんだ派遣を努力いたしたい、こういうふうに考えております。
  108. 上原康助

    上原分科員 おことばを返すわけではございませんが、ただ残念なことには、御承知のように、従来本土から派遣されておった医師に対する給与の問題ですが、かつて琉球政府時代はやはりかなり条件がよかったわけですね。だから、その点も従前のようにやってもらいたいということを、県なりあるいは私たちも強く主張してまいりましたが、復帰後、ことばは妥当でないかもしれませんが、改悪をされたという事態もあるわけですね。そういった面については、私はもっと政府予算措置なり、沖繩に行って医療に従事していきたいという医師の積極的な姿勢にこたえる予算の裏づけなり、宿舎の問題とか、いろいろな環境整備も含めてやらないと、なかなかいま局長おっしゃるような方向でいかないと思うのです。こまかい点まで触れられませんが、そういったこともぜひ予算的な裏づけのある政策の実行というものを求めておきたいと思うのです。  そこで、大臣にお伺いをしたいのですが、これはあとで少しお話したかったんですが、いま答弁の中に出ましたので……。  沖繩の医療体系の整備ということは、先ほど言いましたような当面の問題、あるいは短期的にどうしてもやっていかなければいかない問題と、長期的な立場で解決していかなければいかない点があると思うのです。これはもう、ものごとすべてそうでしょうが、特に医師の養成というのは私なんかしろうとが言わないまでも、十年ないし十四、五年もかかるんだ、ほんとうのお医者さんとして医療に従事するには。その意味では、長期的に見てどうしても私たちは琉球大学に医学部を設置をすべきだということを、今年の予算折衝においても強く文部省なり関係当局に御要望を申し上げたんですが、残念ながら昨年からの五百万の調査費というのだけが計上されて、まだ芽を見ておりません。これはもちろん県側の受け入れ態勢の問題なりいろいろな環境等の問題もあると思うのですが、沖繩の医療行政水準を本土に近づけていくにはどうしても医学部の設置というのは重要な課題だと思うのです。その面で、この点は文部省の所管かもしれませんが、しかし、実際に医療供給体制を担当している大臣として、ぜひ、今後も強い要求がこれは出ると思いますので、その点について実現をさせていく方向でやっていかれるお考えがあるのか。それなくしては、私は将来の沖繩の医療問題は解決しないと思うのです。特段の御配慮を賜わりたいのですが、大臣の所見を賜わっておきたいと思うのです。
  109. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 一度、私も復帰前に沖繩の医療行政の姿を見に行ったことがございますが、まさしく沖繩の医療の水準というものは内地に比べまして非常に劣っている、これを何とかしなくちゃならぬ、これは県としての仕事の一番の重点でもありましょうし、私どももさように考えておるわけでございまして、お述べになりましたように、長期的に沖繩の医療水準を高めるためには、やはり医療従事者の養成というものを現地においてつくる、これが私は長期的にはやらなければならぬ大きな仕事であると考えておりますから、今後とも沖繩にそういう養成機関のできまするように最大の努力をいたしたいと思います。
  110. 上原康助

    上原分科員 ぜひひとつ、県民の強い要望でもありますし、また琉球大学なり各医療従事者関係者からも御要望が出ていると思いますので、政府部内においても十分御検討いただいて、いま大臣、前向きの御発言ありましたように、早急にその実現方をお願いをしたいし、次年度においては、私が申し上げているのは四十八年度じゃなくて、四十九年度の予算措置を講ずる段階においては、部内で十分その芽を出せるように特段の御配慮を重ねて要望しておきたいと思うのです。  そこで、ちょっと具体的な問題に入るのですが、沖繩の国民健康保険実施が今年一月一日からされたんですが、その実施状況なり、どうなっているのか、ひとつ御説明をいただきたいと思います。
  111. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 沖繩の国民健康保険実施につきましては、ただいまお話に出ましたように、医療関係の供給体制が非常に不十分である状態にもかかわりませず、関係方々のたいへんなお骨折りによりまして、本年の一月一日現在で、全市町村五十四のうち、那覇市をはじめといたしまして四十七市町村において事業が開始されている現状でございます。制度の上では、復帰に伴います経過措置といたしまして、明年四月一日までに全部の市町村が国保事業を開始するようになっておりますけれども現状はいまのような状態でございまして、被保険者数で申し上げますと、全被保険者数の九七・五%に当たる四十四万八千人がすでに国民健康保険の被保険者として、事業の中に入っておるわけでございます。残りましたところは七町村でございます。主として、先生承知のように離島でございますが、この点につきましても、現在のところ大体本年の四月一日を目途に、残りましたところについて事業が開始できますように、所要の準備を進めておられるように聞いておりまするし、また、そのような状況を促進してまいりたいと思っております。大体の概況でございますが、以上のとおりでございます。
  112. 上原康助

    上原分科員 私の手元の資料でも、大体いま御説明のあったとおりになっているのですが、先ほど申し上げましたように、残された、いわゆる実施されていない町村ですね、南大東、北大東、伊平屋、伊是名、与那国、粟国村、それから宜野座、これは本島ですが、そういうところは医師がほとんどいないという実情なんですね。ですから、保険をかけても、結局かけ損じゃないのかという不安も——これは、本島の僻地町村はそういう懸念を持ちながらもやはり何とか国民健康保険というものに入りたいということで、大かたは実施されたのですが、残っている、実施されていない離島村に対しては、何らかの形での、先ほど申し上げましたような政府の積極的な御援助がないと、なかなかいまお答えになったような方向でいかないんじゃないかと私は思うのです。その点で、予算的にちょっと検討してみたのですが、あまり裏づけされていない感じがしますし、医師派遣の関係についてどうなっているのか。いまお述べになりましたような、今年四月一日なりあるいは早急に実施される見込みは立っているのかどうか、重ねてお尋ねしておきたいと思うのです。
  113. 北川力夫

    ○北川(力)政府委員 ただいまお話ございましたように、残されました七町村の状況は、伊是名は医師が一名おりまして介補はおりません。北大東だけが医師も介補もいないわけでございます。そういう状況でございますので、私どものほうは、先ほど申し上げましたように、大体ことしの四月一日現在を目途にやっておりますが、現在のところ、すべてが四月一日に実施できるかどうか、県からのいろいろな御連絡によりましても、多少疑問のところがございます。  医師の供給体制等につきましては、先ほど医務局長からもお話がございましたけれども、そういった医務行政のサイドで十分な御配慮をお願い申し上げておりまするし、また国民健康保険実施につきましては、事務の処理というものがなかなかにむずかしい問題でございまして、こういったことも実施をおくらせるなかなか侮れない原因一つでございますから、そういう面の整備につきましても、ひとつ十分配慮をいたしまして、できるだけ早い機会に実施ができますように、促進してまいりたい、かように考えております。
  114. 上原康助

    上原分科員 こまごました点まで触れられませんが、関係町村の受け入れ体制の問題なり事情もいろいろあるかと思うのです。自治省とも関係するかもしれませんが、こうした町村国民健康保険に加入するとなると、それだけの陣容も整えなければいけない。ただでさえ赤字団体になっているような町村に、なおいろいろな負担がかかるという面が出てくるわけですからね。そこいらについても、ぜひひとつ御配慮をいただきたいと思うのです。  そこで、先ほど、最初に申し上げたこととちょっと関連するのですが、沖繩県庁が作成しました沖繩振興開発計画というのがあるわけですね。そして、その中に事項別計画というのが、医療行政なり社会福祉政策全般について非常にこまかく出ております。もちろん政府も、この県から出された振興開発計画を中心に閣議でも御決定いただいたのですが、現在政府が、厚生省なら厚生省の分野で進めているのは、それに沿ってやっていっているのですか、この事項別計画との関連性はどうなっているのですか。
  115. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この点につきましては、非常に総括的な言い方をいたしますと、その計画に沿って実施いたす、僻地対策保健婦の設置その他の問題につきましてもこの方針に従って実施するようにいたしております。
  116. 上原康助

    上原分科員 私も、そう勉強したわけではございませんが、この計画はかなりこまかい点で、十カ年計画で部分的に分けられているわけですね。なかなかそううまくいくかという懸念もいたしますけれども、やはり現地の実情に即応した計画だと一応判断いたしますので、政府が進めていかれる計画なり方針についてもこの関連性を十分持たせて、現地の意見も徴しながらやっていかれるようにお願いをしておきたいと思うのです。  あと、例の風疹児対策なんですが、今年度の予算においては計上されておりますが、次年度の予算においてはゼロになっておるのですね。沖繩の保健衛生等対策費全般について、今年度より予算額はかなり少なくなっておるわけなんです。私たち一般的な受けとめ方としては、それはむしろふやす必要があるというふうに感ずるのですが、なぜ減になったのか。特に風疹児対策がゼロになっているということは、もう十分対策が立てられたという御判断でそうなったのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  117. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 沖繩の風疹児につきましては、御承知のように第三次検診をやりまして、その結果、四十七年度約五百万の特別対策を組んだわけでございます。四十八年度はゼロになっておるわけではございませんで、私どもの持っております一般の育成医療、これが四十八年度十二億七千万ございます。それから補装具の交付の費用がございます。そういったような育成医療一般、補装具一般の費用の中で必要なものは全部カバーする。特別対策のほうの費用としてはマイナスになっておりますけれども一般的な育成医療なり補装具、そういったようなもので必要なものは全部カバーする、この中に入っている、こういうことでございます。
  118. 上原康助

    上原分科員 そういたしますと、私が先ほど申し上げた沖繩関係のものは、開発庁の一括計上分には含まれていなくても、厚生省予算の中に入っている。現地から要望があれば、あるいは関係者から要望があれば、十分予算的な裏づけ措置はなされるというふうに理解してよろしいですか。
  119. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 そのとおりでございます。
  120. 上原康助

    上原分科員 次に、時間がありませんので大まかな説明でいいですが、御承知のように、沖繩は軍事基地の密度が非常に高いという面もありまして、麻薬なりいわゆる覚せい剤等、基地からの横流しが非常に大きいと聞いております。そういう実態についてどうおっかみになっておられるのか。これはできれば資料としてぜひ提出をしていただきたいのですが、あわせて、たとえば基地内で米軍人、軍属が麻薬を持っておったとか、捜査権の問題等を含めて説明をいただきたいと思うのです。
  121. 松下廉蔵

    ○松下政府委員 本土の国内の麻薬違反は、おかげさまでこのところ非常に減少しておるわけでございますが、沖繩県が復帰いたしまして、先生御指摘のように、残念ながら沖繩における麻薬犯罪、諸般の事情もございまして、かなり他県に比べますと多い実情でございます。沖繩県の違反の大部分はヘロインでございまして、これが麻薬違反の二百五十名中の百五十名くらいがヘロインというような状況になっております。  いまお尋ねの米軍人、軍属に対する麻薬違反の捜査権につきましては、基地内の麻薬犯罪につきましては、これは麻薬に限らないわけでございますが、日米協定に基づきまして原則的には米軍機関が捜査を行ないまして、犯人を検挙した場合には日本側捜査機関に引き渡すというたてまえになっております。ただし、特に必要がある場合には、日本側の捜査機関も司令官の同意を得まして基地内の捜査が行なえるということになっておりまして、先生御案内のように、アメリカにおきましても麻薬の問題は非常に大きな政治問題になっておる関係もございまして、基地の司令官、基地の担当者の方向といたしましては、麻薬の犯罪につきましては、私どものほうの担当いたしております捜査機関、麻薬取締官事務所がございますが、あるいは警察当局に対する協力、そういった協力関係は非常に緊密でございまして、進んで情報を提供し、捜査にも協力してくれておるというような状況であるという報告を受けております。
  122. 上原康助

    上原分科員 きょうは時間がありませんから、この点についてはいずれ手元の資料なりも明らかにしながら、もう少し議論をしたいのですが、要するに基地内からのそういったヘロイン、麻薬、その他のいろいろな事件というのが、住民地域にどんどんいま侵食をしている状態なんです。これはもう単なる麻薬事件とか、そういうことでなくして、青少年の問題、社会環境を含めて県民に与えている影響というのはきわめて大きいのですよ。ですから、私たちは諸悪の根源は基地なんだということをたびたび言っているわけですが、捜査権とかいろいろな面で問題がまだ私はあると思うのです。ぜひそういった面についても、厚生省としては現地なり米軍側の捜査機関とも十分調整をして、いささかもそういった面で米軍がかって気ままなことがないように、特段な配慮を要望しておきたいと思うのです。  そこで、時間がまいりましたので、最後に大臣に、いろいろお伺いしたかったのですが決意のほどを伺いたい点は、最初から申し上げましたように、やはり医療水準なりいろいろな面で本土との格差というのが大きい、そういう面からしても私は政府の積極的な対策というのを打ち出すと同時に、県民の、これは本土の国民含めて全般的に言えると思うのですが、沖繩の立地条件等を十分考慮に入れた場合は、国民の積極的な健康増進と福利厚生をはかるという意味で、やはり健康管理センターなり厚生年金スポーツセンター、国民年金保養センターなど、沖繩にそういった政府立の何といいますか国民保養所というものを設立してしかるべきだと思うんですね。そういうことが沖繩の着実な開発にもつながるし、医療水準を引き上げていく、あるいは県民の生活環境を整備していくという上でも大事なことじゃないかと思うのです。しかし、これまでまだ、縦割りのいろいろな会館なりそういうのができておりますが、国としてのそういった施設というのは、皆無にひとしいんですね。そういう意味で、私は厚生省としては今後そのような国民の立場で、あるいは県民生活ほんとうに憩いをもたらす健康管理ができるという施設、設備をつくるべきだと思うんです。その面についてぜひ御検討いただいて、予算措置もしていただいて、今後できるだけ県内の事情にこたえていくというお考えがあるかどうか、お尋ねをしておきたいと思うのです。
  123. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 沖繩におきます医療水準の向上のためには、県とよく相談しながら全力を尽くして努力いたしてまいりたいと考えておりますし、同時に、いまお述べになりましたような、県を通してというのじゃなくて、まあ国立の何か健康管理センターとか、あるいは保養基地的なものとか、福利施設的なものとか、そういうものをつくったらどうかという御意見をまじえてのお尋ねでございますが、まさしく私もそのとおりだと思いますから、その必要性を十分痛感いたしまして、まあ来年になるか再来年になるかは別といたしまして、積極的に県民の要望に沿うて努力をいたします。
  124. 上原康助

    上原分科員 時間になりましたので、ぜひそういった御計画をお立てになって、少なくとも社会保障なり医療行政については、復帰をしたからよかったんだという県民の実感というものが生まれるように、厚生省の、関係当局の積極的な御配慮を要望いたしまして、私の質問を終えたいと思うんです。
  125. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林主査代理 以上で上原康助君の質疑は終了いたしました。  午後二時に再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後一時七分休憩      ————◇—————    午後二時三分開議
  126. 倉成正

    倉成主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生省所管に関する質疑を続行いたします。田口一男君。
  127. 田口一男

    田口分科員 厚生一般ではなくて、きょうは保健所の問題にしぼってお尋ねしたいと思います。  前置きは、言うまでもなく、国民の健康を守り育てる、これは今日の急務であることはいまさら言う必要はないと思います。住民サイドからいえば、最近の世の中の情勢からいって、特に環境衛生、こういった問題についてもっと積極的に保健所が動いてもらいたい、こういう要求の強いことは、大臣局長もみな痛いほど知ってみえると思うのです。ところが、それにこたえるべき保健所の実態を見た場合、一体どうなっておるのか、拱手傍観とは言いませんけれども、こういういろいろむずかしい情勢に対して、結局、今日の保健所の状態というのは徒手空挙というありさまではないのか。こういった状況に対して、私はまず第一に基本的にお尋ねをしたいのは、国並びに行政当局はどういう手を打ってきたのか、またこれから打とうするのか、これがまず第一の質問であります。  さらに、そういう問題に関連をして申し上げますと、これは厚生省のほうでは引っ込めたと言っておるのですけれども、ちょうど昭和四十三年だったと思うのですが、俗にいう基幹保健所構想というものですね。「保健所指導網の近代化について」こういった基幹保健所構想を引っ込めたとは言っておるのですけれども、さらにそういう考え方を、引き続いて昨年の七月に例の厚生大臣の諮問機関である保健所問題懇談会が一応答申を出しております。これを一読した限りでは、結論からいって、そういう問題になった保健所の状態にした原因は一体だれなのだ、これははっきり言って、私は情勢に対応できないような保健所にしてしまったのは政府なり行政機関の責任ではないかと実は言いたいわけです。  その問題について、もっと系統的に機会を改めて申し上げたいと思うのですが、きょうはそういう点を指摘をしながら、特に四十八年度予算案の中身を見た場合に、いま言った保健所問題懇談会の答申にからんだ予算案の説明資料なんかにどうも気になる字句がちょいちょい出てくるわけですね。たとえば「昭和四十八年度厚生省予算案について」という資料をいただいたのですが、これなんかを見た場合に、たとえば農村健診センターであるとか、それから国民の健康を増進するための施策として健康増進センターなどとか、こういうセンターということばが実はちょくちょく出てくるわけです。ところが、さっき申し上げた保健所問題懇談会の中のいろいろな言われ方の中にも、たとえば地区レベルでは健康センターを設けるべきだ、地域レベルでは地域保健センターを設けるべきだ、そして広域レベルでは地域保健管理センターといったものを置くべきだといっておるわけですね。  ですから、私はここで聞きたいのは、そういう保健所問題懇談会の答申というものをもとにして、まず四十八年度の厚生省予算というものがそういった何々センターということをここに出してきておるというのは、底においてつながっておるのかどうか。もっと言えば、保健所問題懇談会というものを四十八年度から、全面的にとは言いませんけれども、つまみ食い的に厚生省は取り入れようとする意図があるのかどうか、こういう点をまず第一にお聞きしたいと思います。
  128. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 保健所の問題につきまして御指摘の点につきましては、従来保健所は対人サービスということを主体に仕事をやってまいりました。これは、歴史的な問題といたしまして、まず結核対策が保健所で取り上げられてまいりました。その後母子保健所対策とか精神衛生対策等、対人サービスを主体にいたしまして保健所の仕事が従来実施されてまいりました。しかしながら、次第にそういう疾病に対しまして一応効果をあげた現段階におきましては、御指摘のような環境衛生関係の問題が大きくクローズアップされてまいったわけでございまして、これに対しましていかに対処すべきかという問題は、御指摘の保健所問題懇談会の基調報告にも見られておるところでございます。四十三年度、基幹保健所構想を一応厚生省といたしましては発表してございます。しかしながら、その構想を踏まえまして保健所問題懇談会でいろいろ御審議されました結果、地区保健センター、地域保健センター、広域保健センター、大体この三つの大きな柱がこの基調報告の中にも出ております。したがいまして、私どもといたしましては、地区保健センターというものが、建物あるいは人員というような整備の面ばかりではなくて、地域におきます一つの機能として果たされれば十分その目的を達成されるということでございます。したがって、従来たとえば都市におきます都市型の保健所におきましては、大体それに似た機能を果たしておるわけでございますし、たとえ従来そういう建物がなくても、地域の医師会等が中心になられまして地域の保健問題に対処されておりました場合には、その地区保健センターの機能が私ども考えておるところと十分マッチする点じゃないか、かように考えております。  そこで、保健所問題懇談会で指摘されております地域保健センター、これが四十三年度に提唱されました基幹保健所の仕組みと大体似ておるのじゃないかというふうに考えております。しかし、四十三年度の事態と違いまして、現時点におきましては、いろいろ情報の伝達の問題が非常に発達してまいりました。そういうものを中心といたしまして今後地域保健センターというものが、地区あるいはその他の地区をまとめました地域の情報の収集、それに基づきますいろいろの対策を立てなければならぬというようなことも考えられるわけでございまして、そういうことを踏まえまして、私どもといたしましては、明年度予算に具体的にそれを体系づけるべく、地域保健医療計画策定費というものを計上いたしまして、実際の現場にどういう問題があるかということの検討をいたしたい、かように考えております。  それから、御指摘の農村健診センターあるいは健康増進センターというのは、保健所の機能とはまたちょっと違った機能でございまして、主として対人サービスを中心といたしました業務をやるということでございまして、これは当然そういう農村健診センターあるいは健康増進センターにおいて行なわれました業務を通じまして得られた情報をさらに将来の保健所におきまして情報分析あるいは総合をいたしまして、対策を立てるというような形になろうかと存じます。  なお、農村健診センターにつきましては、特に医療機関の不足がちな農村等につきまして、基幹病院を中心といたしました農民の健康増進あるいは健康診断というものにその活躍を期待しておるところでございます。そういう医療機関側の実際の活動と今後の健康保持あるいは健康増進という問題との結ぎつきを考えましたものが一応保健所問題懇談会の基調報告に盛られている、かように考えております。
  129. 田口一男

    田口分科員 私、質問したのは、ずばり言って——いま保健所は全国で九百三十七、八ありますね。例の保健所問題懇談会の趣旨が四十八年度から生かされるのであれば、端的に言って、いまある九百三十幾つかの保健所は空中分解をしてしまう、そういう主体を四十八年度からつくろうという意図があるのじゃないですかということを局長に聞いているわけです。いまのお答えでは、その点がぼやけているのですが、ずばり言って、そうじゃないですか。
  130. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 全部の保健所につきまして空中分解ということは全然考えていません。したがいまして、すでにある府県におきましては御指摘の環境問題の処理に対処いたすべく環境関係の機器の整備等も開始されておりますし、その地域の実情に応じまして保健所の機能を分化させていくということが主体になろうかと思います。そのときに将来地域保健センターになる保健所、あるいは地区保健所センターになる保健所、こういうふうに色分けはされると思いますけれども、従来の形の保健所を全部廃止するというようなことは毛頭考えておりません。
  131. 田口一男

    田口分科員 私の言い方が、九百幾つかの保健所が空中分解と言えば全部廃止というふうにとられぬでもないのですけれども、そうじゃなくて、いま局長がおっしゃったように、九百のうちで、あるグループの保健所は広域保健センターにしてしまう、それからある保健所は地域レベルの保健センターにしてしまう、ある保健所は地区レベルの保健センターにしてしまう、懇談会では保健所という名前は全然使っておりませんけれども。そういうことがどうもいまのお話の底にあるというふうに思うのですけれども、四十八年度の厚生省予算案、いろいろと数字を見た場合に、それがはっきり出てくる。  しかし、実態は、たとえばいま住民が一番保健所に持ち込んでくる仕事の性質といいますか、まあ母子検診だとかいろいろありますけれども、食品の検査、それからうちの井戸水はどうだろうかといって持ってくる、そういった水質の検査なんかが比較的多いわけですね。私、自分の一番近いところで三重県の保健所関係を調べてみたんですけれども、四十二年から四十六年までのこの五カ年の検査の件数を見た場合に、保健所検査としていろいろやられておるのが年平均二十二万一千もあるわけです。それから食品衛生検査としてやったのが、これは少し数が少ないのですが、二千六百十件、こういう検査の動向をずっと見てみますと、従来多くあった、たとえば赤痢菌の検査であるとか結核菌の検査であるとか、そういったものは年々減ってきておるのです。その逆に、成人病の関係とか、そういう臨床検査が大体七割方増加をしておるし、水質検査なんというのも二五%程度増加をしてきておる。  こういう検査の関係が質的に変わってきておるのに対応する、ずばり言って、保健所の検査技師、こういうものが、実は三重県で例をとりますと十一あるのですが、一つ一つ違うわけです。ある保健所には二人の検査技師がおるけれども、あるところは一人だ。しかもその一人の検査技師が普及係長といった全く関係のないポストについておったり、検査技師の資格を持っておるけれども、実際は仕事をしていないで事務をやっている。そういうところであれば、これは比較的いなかのほうにあるのですが、保健所へ持っていったってしようがないじゃないか、持っていったって一カ月も二カ月もかかるじゃないかといって、結局、保健所の機能そのものを保健所側がそこなっておるという実態があるわけですね。  そういう実態をつくっておいて、いま局長がおっしゃったように、広域、地域、地区というふうな三段階にひとつ分けてしまおうじゃないか、これを称して空中分解ということになりはしないかと私は言うわけですよ。  ですから、一つの具体的な例をとった場合、たとえば新年度の新規事業で特別設備整備費四千五百万円という数字が出ておるのですけれども、これを三十保健所に分割をする、こういった場合、私は二つの面からきょうはっきりしてもらいたいと思うのです。  一つは、これも三重の例を私、言いますけれども、分光光度計または光電比色計、またはということで、どちらかを持っておる保健所が十一のうち六つしかないのですよ。五つは全然持っていない。そういう状態を今後——四十八年度予算案の厚生省考えとしては、いまの前提条件であれば、ないところはないところでほっておくんだ、あるところは、多少要求の強いところは、それにやるんだと考えるのか。  さらに今度は、二つ目の問題は、それとうらはらの関係で、たとえばいま言った特別設備整備費のうちでガスクロマトグラフ、それから赤外分光光度計、こういう化学検査器械の名前が出ておるんですけれども、私どもは現場におっていろいろと話を聞きますと、このガスクロマトグラフと赤外分光光度計というものがペアになった場合、残留農薬の問題とか油分とかの問題ははっきりと検査ができる。しかし、地域からいろいろな要求があるんですから、一方はガスクロマトグラフを渡してしまう、一方は赤外分光光度計を渡してしまう。全く機能しない。それによって私の保健所にはこれがありますよ、こちらには赤外分光光度計がありますよ——結局、機能せぬわけです。そういうことを、この三十保健所という数をあげておることは、助長することになりやしないか。また、くどいようですが、さきの第一点に返った場合は、結局、ランクづけをして、ないところはないで永久的にほったらかしておく、いいところはどんどん充実をさしていく、こういうことを厚生省が人為的につくってしまうのではないか。こうなった場合には、地域の公衆衛生の第一線である保健所の機能というものを、厚生省みずからがくずしてしまうことになるのではないか。  ですから、私は、四十八年度には、保健所問題懇談会のそういう答申があるけれども、いま私が二、三例をあげたような問題があるから、ここにいろいろな事業計画が予定としてあがっておるのですけれども、保健所問題懇談会とは全然発想を異にしておるんだから、いろいろの地域の要望によって保健所を整備しなければならぬ。AもBもCも区別するのではなくて、整備をしなければならぬという前提に立って私はしてもらいたい、こう思うのですが、その辺のところをひとつ聞かしていただきたいと思います。
  132. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 御指摘の、保健所において行なわれます検査、これはたとえば、健康診断に基づく検査のほかに、御指摘のようないろいろの化学的検査がございます。したがいまして、いわゆる成人病の検診等につきましては、検査結果につきましての判定につきまして、これは医師の技術というものが必要でございまして、保健所長がすべてその検査結果に基づいて判定を下すということもできないわけでございまして、その検査項目によりましては、専門家を動員しなければならぬというような場合もございますので、すべての保健所にそれを要求することは困難かと思います。  また、いろいろの化学検査にいたしましても、非常に簡単な検査から、ガスクロあるいは赤外分光光度計等を使用いたしまして検査をいたす高度の検査もございます。したがいまして、すべての保健所にこのような備品を備えるというのは、理想的かも存じませんけれども、やはり地域、地域によりましてそれに対する要望というものは異なってくると思います。たとえば、都会におきます場合には、環境関係の非常な要望が強いということ、あるいは農村におきましては、成人病対策につきましていろいろの検査が必要であるという要望が強い。その地域の実情に応じまして、一応機械あるいは人員の再教育を主体といたしました配置等も考えていかなければならない、かように考えております。明年度予算に計上してございますのは、まずこの光学機械等を整備いたしまして、環境関係のいろいろの化学物質の判定に資するような対策を立てなければいけないということで、三十保健所を一応の予定にいたしたわけでございますが、このほかに、保健所を通じまして県の衛生研究所あるいはさらに国の段階の研究所との結びつきも当然考えなければならないわけでありまして、そういうことを、総体的な体系の中におきまして、保健所がいかにあるべきかということを検討しつつ整備をしてまいりたい、かように考えております。
  133. 田口一男

    田口分科員 重ねて念を押しますけれども、いま私が二、三の実例を申し上げたように、たとえば検査の問題、確かに理想としては全保健所に全部検査機械があるのが望ましい。しかし、それは一朝一夕にはむずかしいという話はわかります。  私はそこで問題にしたいのは、そういう実例はわかるけれども、むしろいまの厚生省考えとしては、そういう実例を逆手にとって、さっきから言われておるように、広域、地域、地区というふうにランクづけをする一つの既成事実というものを、こういった施設整備ということに名をかりてやっていくのではないか、そこのところの真意というものをはっきりさせてほしいわけです。
  134. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 私どもといたしましては、あくまで地域の実情に応じまして保健所の機能をきめてまいりたいと思いますので、御指摘のようなことは毛頭考えておりません。
  135. 田口一男

    田口分科員 そうすると、問題懇談会に出てきておる広域保健センター、地域保健センター、地区保健センターといったものについては、まだまだ答申の域を脱していない、だから厚生省としてはそれをさらにいろいろ議論しなければならない、こういうことなんですね。それをもう一ぺんだめを押します。
  136. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 御意見のとおりでございます。
  137. 田口一男

    田口分科員 それでわかりましたけれども、そうであれば、いま私は検査技師のことを一つの例にとりましたが、仄聞するところによるとということになるのですけれども、各保健所に栄養士というものが配属されておりますね。この栄養士からの強い——強いというよりも危機感を持った言い方なんですが、戦後の国民の食糧事情、衛生状態と今日とはがらりと変わってきたんだから、もう栄養士なんというものは保健所に要らないのではないか、現にその証拠に、厚生省は今度機構改革をやって栄養課というものをなくしてしまうんだという話を聞いておる、こういうことをひんぴんとして私どもに言ってくるのですけれども、その辺の真意というものを、この際保健所問題にからめて、お聞きしたいと思います。
  138. 加倉井駿一

    ○加倉井政府委員 栄養の問題につきまして私ども考えておりますのは、全国民を対象といたしました、食糧不足のときの栄養指導というよりは、むしろ今後の問題といたしまして病態栄養と申しますか、たとえば糖尿病の患者の栄養指導とか高血圧患者の栄養指導とか、こういうものが従来非常に欠けておりました。今後、私どもといたしましては、地区を中心といたしまして、もっとより密接にそういう方々指導をしなければならないというふうに考えておりまして、保健所から栄養士が不必要であるというようなことは毛頭考えておりません。むしろ、先ほど申し上げましたようないわゆる病態栄養学の指導を強化しなければならぬというふうに考えておりますので、その点は十分御了解いただきたいと思います。
  139. 田口一男

    田口分科員 そうすると、現場で心配しておる栄養課廃止云々というようなことは、実際は厚生省の内部でも考えられていない、むしろ、病態何とかと言われましたけれども、そういうことでより強化するという意味ですか。
  140. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 栄養課の御質問でございますが、最近においてはより積極的に健康増進をはかるべきではないかといったようなことで、食糧不足のときの栄養問題とは違うから栄養課というものをやめて、より積極的な、前向きな健康増進課といったようなものをつくったらどうかという意見が公衆衛生局の一部にあったことは事実でございますが、私としては関知しておりませんし、栄養の重要性にかんがみまして、栄養課という名称を廃止するつもりは毛頭持っていないことをこの機会に明らかにしておきます。
  141. 田口一男

    田口分科員 それを聞いて確認をいたします。  そこで最後に、先ほどから保健所の問題で時間の関係であまり深く入っておりませんけれども、ひとつ大臣にこの際質問じゃなくて強く要望しておきたいのですが、どうも保健所問題懇談会は、立ち消えになったという基幹保健所センター構想から見ても、発想は、今日の目まぐるしい社会情勢に保健所というものが対応できなくなったから改革しようというよりも、むしろ空中分解させてしまおうというさかさまの考えが強く出ておるのではないか。ですから、むしろ逆に、そういう目まぐるしく動く社会情勢に対応できる保健所づくりですね。センターという名称、あの中には保健所という字句すら出てこないわけです。センター、センターということばかり書いてある。ですから、むしろ情勢に対応できる保健所づくり、国民の健康を守り育てるための保健所づくりはどうあるべきか、こういう点について真剣に大臣のほうでも検討していただきまして、私は、社会労働委員会であらためてまたこの問題について質問をしたいと思いますので、それまでその機会を保留するということで、要望しながら私の質問を終わりたいと思います。
  142. 倉成正

    倉成主査 次に、岡田春夫君。
  143. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 きょうはアイヌ民族の問題で若干御意見を伺いたいのですが、わずか三十分ですから、ひとつ簡明明快な御答弁をいただいて、長い点は、できるだけ簡単明瞭に御答弁をいただきたいと思います。  まず第一点は、昨年度の予算厚生省と北海道庁が両方調査費を出しまして、北海道ウタリ実態調査というのを行なったんですが、それによると、大体百十五地域における調査を行ないまして、全体の調査ではなかったんですが、アイヌ民族の動向が大体出てきたようでございます。人口も、推定人口ではありますが、一万八千余ということであり、また経済状態の問題については、日本一般の経済水準より非常に悪い状態になっておる。保護世帯など低所得階層が大体三〇・九%、三割はほんとうに最低のところで生活をしなければならない。しかも、そういう経済的な事情によって、子供たちが就職することも非常に困難だという状態になっております。これなども数字が出ておりますが、就学が非常に困難であり、また就職についても差別が行なわれている関係で、なかなか安定した職場につくことができない。こういう状態が今日のアイヌの民族の現状でございます。  こういう状態について、まず第一点として伺いたいのは、政府は、アイヌ民族についてほんとうに積極的な政策をおとりになっているつもりなのかどうか。それからまた、今日厚生省がアイヌ民族の問題をやっておりますけれども、これは一般の低所得階層に対する社会福祉政策の一部として行なっているのか、あるいはまたアイヌ民族それ自体に特別な政策を行なっているのか、どういう観点でこれを行なっているのかという概論的な話でございますので、厚生大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  144. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 北海道におきますウタリの実態調査につきましては、いま先生お述べになりましたように、所得の上からいいましても、非課税の者が三〇・九%、それから職業上の状況も思うようになく、学校の進学等もそのほかの地域のものとだいぶ劣っておる、生活保護の関係も保護率が非常に高い、お述べになりましたとおりでございます。そこで、このウタリ、アイヌの方々に対する私ども基本的な態度は、アイヌは日本国民の中の別な民族である、こういったふうな考え方は一切考えておりません。あくまでも法のもとにおいて平等な日本国民である、こういう基本的な考えに立っておりますが、このアイヌの方々が、いま申し上げましたように、所得の面においても、また職業の面においても、進学の面においても、生活保護の面においても、その生活環境が非常に劣っている。これを何とか日本国民並みに高めていかなければならない、福祉を向上さしてあげなければならない、こういう観点で今日まで努力をいたしておるつもりでございます。予算的な面にはあるいはまだ十分でない点はあると思いますが、その生活を向上せしめるという考え方に立って努力をいたしておるような次第でございます。
  145. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 先ほど御答弁の中で、日本人の中で別な扱いをしているわけではない、そういう意味では差別ではない、こういう意味でお話しになったんだと思うのですが、これについてはあとでもう少し具体的に伺いたいと思います。  これは日本人ではあるけれども、現実の問題として人種が違うアイヌ系日本人、こう言うべきものであると思うので、こういう点はあとで伺いますが、もう少し進めてまいりますと、いま一般の低所得階層と同じような政策でやっておるということなんですが、そのことはかえって逆に差別というような問題を実は進めていくことになるということは、低所得階層に対して十分な社会保障政策が行なわれているような予算の状態であるならば、これは十分に措置ができるわけですけれども、今日は予算が非常に少ない中で一般のほうの扱いにしていくということになりますと、アイヌ民族に対する社会保障的な政策でもきわめて不十分な結果になっている。これは現実として見のがせない事実だと思いますが、予算も十分とは思えないかもしれないがという答弁でございましたけれども、今日の状態はきわめて苦しい状態である。一般の人の扱いとしても、最も苦しい状態におとしいれられているという状態ならば、その人たちに特別のそういう社会保障政策が行なわれるべきではないかというのが私のむしろ考え方なんですが、その点もう一度伺っておきたいと思います。
  146. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 法律的な観点から申しますれば、アイヌの方々も平等な日本国民である。これは法的には私はそう貫いていくべきものであると信じております。しかし、現実的には、そういう生活環境にある民族と言っていいのかどうか別といたしまして、そういう方々がおられる、これも事実でございます。  そこで、一般的な社会保障というワクの中で考えるにいたしましても、現実的なそういう方々がおる、これはやっぱり着目していかなければならないというふうに私ども考えて、そうした方々の福祉の増進ということに努力をしていかなければならぬであろう、かように考えておる次第でございます。
  147. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 これはあとでもう少し進めてまいりますが、いま法律的には全く同じだ、こういうことですが、社会福祉の面において法律的には全く平等である、しかし、それ以外に法律的にも必ずしも同じということが言えない点があるわけです。これは北海道旧土人保護法という法律があるわけです。しかも、この問題について、昨年の三月十六日の社会労働委員会で島本君からいろいろ質問をいたしまして、ここにおられる加藤社会局長も、これで答弁をしておられる。速記録を私持っておるのですが、この法律を存置すべきであるか存置すべきでないかということについていろいろ議論をそのときされておる。そのときに、当時の厚生大臣は、同じように斎藤さんですが、斎藤昇さんで、加藤社会局長らの答弁によると、特に加藤局長は、このように言っております。「しかしこの法律をつくった趣旨は、要するにウタリの人たちを守ろうという趣旨だったと思いますので、そういう意味ではある程度メリットが残っているんじゃないかという感じがいたします。」メリットがあるんだという前提に立ってこの法律の存置を主張する立場に厚生省がなっているわけです。  そこで、伺いたいのは、それではこの法律を存置したほうがメリットがあるということならば、この法律は実際に動いているものなのかどうなのか。それから、私の知っている限りでは、第二条は北海道知事の許可事項ですけれども、この点は今日拘束力があるという意味で動いているんだが、それ以外の点の条章はなぜ動かさないのか、こういう点を伺いたいと思います。
  148. 加藤威二

    ○加藤(威)政府委員 北海道旧土人保護法につきましては、確かに先生御指摘のような質疑応答があったわけでございますが、この条文につきましては、かつては教育の問題とかいろいろ特権的なこと、ある程度保護するという立場からの条文がございましたけれども、それが削除されまして、メリットといいますか、そういう点では、現在は、先生いま御指摘になりましたように、ウタリの持っている土地というものを北海道知事の承認がないと処分できない。これはこうかつなる内地人にせっかくの土地をだまし取られないようにという趣旨でできている条文でございますが、そういう意味ではメリットがあるということだと思います。その他の条文、たとえば福祉施設とかそういう点については残った条文がございますけれども、これは現実にやっております補助は、この条文というよりもむしろ不良環境地区の整備補助の一環としてやっているということでございますので、そういう意味では、必ずしもこの条文によっているということではないわけでございます。  ただ、問題は、私どもはこの条文につきましては、やはり北海道庁なりあるいはウタリの方々の意見に従ってその処置をいたしたい。したがって、ウタリの方々が、もうこういう法律は廃止してくれ、それについて道庁も異論がないということであれば、われわれとしてもこの法律を廃止するにもちろんやぶさかでないわけでございますが、先生承知のように、これについてはウタリの中でも二つの意見があるというぐあいに私ども承っております。そういう点について、この存廃について統一した見解が関係者の間でできれば、私どもはその意見に沿って処置をしたいというように考えております。
  149. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 時間もありませんので進めますが、この法律の第一条でアイヌ民族に対して給与地が与えられることになっておる。今日までにこれがどれくらいあるのか。それからその土地台帳というのが整備されているかどうか。それからもう一つは、第八条で旧土人共有財産というのが今日もあるわけです。これがどのくらいになっているのか。その場合の簿帳類も整備されているのか。しかも、共有財産からの収益というのがあることになっているが、その収益はどういうようになっているのか、これらの具体的な点をお伺いしたいと思います。
  150. 加藤威二

    ○加藤(威)政府委員 第一条による土地の無償交付でございますが、これは昭和十年まで実際に行なわれていたようでございまして、その当時七千六百町歩という記録が残ってございますが、その後漸次整理されまして、現在では、最近の私のほうで把握しておりますのは、三千六百七十五町歩というのが北海道……(岡田(春)分科員「それは何年現在ですか」と呼ぶ)これは最近でございますから、私どものほうで北海道庁に問い合わせてとった数字でございます。
  151. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 じゃ、去年度ですね。
  152. 加藤威二

    ○加藤(威)政府委員 たぶんそうでございます。それから、共有財産につきましては現金が三十六万円、これは定期預金というかっこうでございます。その他、宅地、田畑が若干あるようでございますが、これははっきりした数字はわからないということでございます。一応私どものほうで把握しておりますのはそんな数字でございます。
  153. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 簿帳類はどうなっていますか。
  154. 加藤威二

    ○加藤(威)政府委員 その点については、いま申し上げた数字が北海道庁でこちらに連絡してまいった数字でございますので、ある程度整備されていると思いますが、どの程度整備されているのかどうかについては、まだ私どもは確かめておりません。
  155. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 これは政府も含めて北海道庁もけしからぬことだと思うのですが、簿帳が整備されていないのですよ。簿帳が整備されておらないということを私がはっきり申し上げるのは、ここにもありますが、行政管理庁の事務次官の昭和三十九年の六月三十日の通達においてもそういうことがはっきりしておる。「道の土地台帳の整備が悪く、殆どその実態を把握していない」こう言っている。ほんとうにアイヌ民族のことを考えていると言いながら、簿帳類が整備されておらないという状態では、一生懸命やっているとお話しになりますけれども、これでは話にならないと思うのですが、こういう点はもう少し簿帳類を含めて、きょうはひとつあなたのほうにお願いしておきますけれども、お調べをいただいてあとで資料としてお出しをいただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。
  156. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 お話しのとおりの資料はできるだけ早く調査いたしまして、提出いたします。
  157. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 それから、行政管理庁のこの通達に基づいて北海道旧土人保護法というものを行政管理庁としては廃止しろ、こういう態度だったのですね。これに対して、どうしても残してくれというのが厚生省と北海道庁の態度だ。そこで、その結果として今度は七条を改めますということになって七条を直したわけです。七条を直してこういうことになっているわけです。これは大臣、ぜひ聞いておいていただきたいのですが、「北海道旧土人ノ保護ノ為必要アルトキハ之ニ関スル施設ヲ為シ又ハ施設ヲ為ス者に対シ補助ヲ為スコトヲ得」それからその次の八条が重要なんですが、八条で「前条ニ要スル費用ハ北海道旧土人共有財産ノ収益」——だから、これで帳簿が非常に必要になるわけです。収益をもってこれに充てる。しかもそのあとが重要なんですが、もしこれが不足のときには国庫よりこれを支出するという規定になっている。足りないときには出さなければならないという義務関係ですね。こういうことまで法文上明らかになっているわけです。こういうことになっているならば、先ほどのお話をるる伺っておりますと、大臣局長も必ずしもこの法律を動かしているわけではない、こういうお話ですが、それほどアイヌ民族が困った状態にあるならば、この法律に基づいて国庫の支出をしなければならないということになっているのですから、なぜ予算をお取りにならないのか。しかもこれだけメリットがあるといって残しているのですから、メリットがあるといって残しているなら、これはこの法律を使って予算を取るということは当然考えるべき問題であるし、アイヌ民族としても、保護のために国庫から支出させるということははっきりしているわけですから、当然の要求であると言わなければならない。なぜこれを法律七条、八条をお使いになって要求されないのか。こういう点について今日政府のとっている態度というのは、何かアイヌ民族にやっているような形をとりながら、実際にはこういう法律があるにもかかわらず、具体的に法的基礎の上に立っての予算の具体化というのが行なわれておらないのはきわめて遺憾ですが、大臣、どのようにこれをお考えになりますか。
  158. 加藤威二

    ○加藤(威)政府委員 確かに八条にそういう規定がございますが、北海道旧土人の共有財産の収益をもって充てる、足らないときは国庫から出す、こういうことでございますが、共有財産につきましては、先ほど申し上げましたように、不動産についてははっきりわかりませんけれども、動産については三十六万円の定期預金ということでございますので、こういったものの果実というようなものはとるに足らない。それから共有財産としての宅地、田畑というものもおそらくたいしたものはないのであろうというぐあいに考えるわけでございます。したがって、要するに、この条文は、とにかくそういう共有財産から取れるものは取れ、そのかわり国もそれについて不足のものは国が出せ。それから七条に「旧土人ノ保護ノ為必要アルトキハ之ニ関スル施設ヲ為シ又ハ施設ヲ為ス者ニ対シ補助ヲ為スコトヲ得」とありますが、これはどの程度の施設を使うかということ、これは「必要アルトキハ」という非常にばく然たる書き方でございますので、これによって、七条、八条によって国が一体どれだけのものを出したらいいかということは必ずしもはっきりしてない、そういう規定だろうと思います。そういうことで、私どもといたしましては、一応これと離れまして、そのかわり共有財産からの果実を云々するということももちろんやらない。そのかわり、国も二分の一の補助でございますが、必要な施設、これは医療環境等の整備も一環でございますけれども、主たる地区に重点を置いて施設整備をやっている、それについて国が二分の一の補助をしている、こういう状態でございます。
  159. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 時間がないのであれなんですが、たとえば不動産の問題なんかで、私の調べたところでは、三十六万円以外に、宅地が七千九百坪、それから田畑が十町歩以上あるということなどもあるのです。まあ、あなたのほうでもうちょっと調べてもらわないと——しかもこれが、私、調べた限りでは、帳簿がはっきりしないのです。こんな無責任なことではやっぱり困るのですね。これは歴史的ないろいろな経過が共有財産問題についてあります。しかし、きょうは時間がないから私は言いませんけれども、しかも、先ほどあなたおっしゃいましたけれども、もし不足する場合、金額が幾らであろうと、収益というもので不足した場合には国庫から支出する。明文上明確になっているのですから、金額の問題はともあれ、この規定をお使いになって出すのがあたりまえじゃないか。それほど困っているのなら、これをお使いになるのがあたりまえじゃないかと私は思うのです。  そこで、私は、北海道旧土人保護法という法律は賛成ではないのです。これは旧土人などという名称でもわかるように、劣等民族として扱うという、差別、べっ視の思想が——この法律は明治三十二年につくられているのですから、七十五年前の日本の帝国主義的な支配政策のあらわれです。そういう劣等民族を差別、べっ視するという考え方に立って保護をしてやる。保護をしてやるというのは、同化、支配するということなんだ。こういう点では、こういう法律というものはやはりなくしてしまったほうがいいと思うのです。しかし、私は、その保護でさえ、いまのお話を伺っていると、保護のための予算は組まれておらないということが局長の答弁で明らかになったわけです。そうすると、明治時代よりもまだ、今日のアイヌ民族に対する政策というのはその当時よりもまだおくれた政策というか、もっと、保護さえもやらないというような政策を行なっているというように見ざるを得ないわけですね。そういうことを言うと、あなたのほうでは、いや、新しい憲法では人種その他に差別を設けないということだから、これは決して差別政策でありません、こういうようにお答えになると思うのですが、実態においてはそうなっているわけですね。  そこで、私はもう一つ局長の話は、アイヌ民族の中でも、土人保護法が賛成か反対かで意見が分かれている。これは分かれている。しかし、分かれている根本というのは、もっと根深いところにあるのです。結局は、この法律がなくなった場合に、もっとひどい、いわゆるアイヌ民族を消滅してしまうような、問題にしないようなそういう投げやりの政策が行なわれるんじゃないか。まあ、ないよりはましなんじゃないかということなんですね。一方においては、私、先ほど言ったように、一つの原則上の立場に立って、こんなものはなくしちまえ、差別を明らかにするのはなくしちまえという意見がある。問題は、もっといい法律がここでできれば、アイヌ民族に対立が出てくるはずはないのです。問題はその点なんですよね。  だから、問題は、私は大臣に伺いたいのは、アイヌ民族の政策というものをひとつ抜本的にここで再検討する中でこの問題を考えていく、そういうことがいま必要な段階だと思うのですが、この点は、厚生大臣はこの関係もたいへん専門的にも社会保障政策をやっておられると思うので、ひとつこういう点を抜本的に変えるようなことをお考えになるかどうか、この点をお伺いいたします。
  160. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 このアイヌの問題は、実は私も、この北海道旧土人保護法というものがあったわけでございますが、ほとんど死文化したような事情にある、これはお述べになりましたとおりだと思います。  そこで、死文化したような法律でありますが、せめてこういう、この程度の法律がなければ、政府もあまり福祉を熱心にやらないといったような心配が一部にあることも私はそうだと思いますし、しかしまた、考えようによっては、新しい憲法下のもとに国民はすべて平等だということならば、こんな法律があること自体もおかしいじゃないか、これも議論として私は成り立つ問題だと思います。要は、特殊な文化をもっておる芸術的な民族であることは否定できないわけでございまして、そうした方々生活をどうやって向上させたらいいかという観点から問題を私は見るべきだと思います。そこで、生活問題それから住宅問題教育問題、まあ、さまざま私はあると思います。したがって、この辺でやはりこれに対する基本的な政策を何かしらはっきりさせる必要があるんじゃないか。私は先生のお話を承りながら昔を思い出して、そんなふうな感じを実は率直にいまいたしております。  そこで、この問題は、厚生省だけの問題でなくて、民族として特殊な文化を持っておる方々でございますから、文部省にもいろいろ考え方はありましょう、行管のほうにもいろいろ意見はありましょう。したがって、きょうお約束申し上げておけるのは、総理府を中心として関係各省一緒になってこのウタリの問題をどう基本的に考えたらいいかということを積極的にひとつ研究いたします。そのことだけはきょうの段階でお約束を申し上げておきたいと思います。
  161. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 厚生大臣も積極的な御意見で、私もそういう御答弁をいただくならばぜひ期待をかけたいと思っていますが、もう一度申し上げますけれども、アイヌ民族というのは、これは日本人であることは間違いない。まあ、私はアイヌ系日本人ということばを使うのですが、というのは、和人とは異なっているわけですよ。これは人種的にも歴史的にも違う。それからまた、文化の面でもたいへんすぐれたものと素質があるわけです。こういう点ではやはり私、いま抜本的にひとつやってみようと、こういうお話ならば、いままで政府がとっておった政策は、口の上ではどうか知れないが、いわゆる同化政策、実際においてアイヌ民族が消滅してしまうような政策であった。それが法律においては対等だという名のもとに、実際には消滅をさせて、アイヌ民族というアイヌ系日本人を消滅してしまうという政策だった。そういう消滅政策をとっても、アイヌ民族の問題というのはそう消滅になりません。やはりこれは少数民族としての民族問題として考えるべきではないか。私はそこで民族問題としての位置づけを確立して、そして民族的な資質を発展させるようにすることが必要だと思うのです。  そういう点で、いまこれは開発庁の長官にも来てもらうようお願いしているのですが、主査、来ないので質問ができなくて困るのですけれども……
  162. 倉成正

    倉成主査 もうちょっとやっていてください。
  163. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 これは厚生大臣からも国務大臣としてひとつ意見を伺っておきたいと思うのですが、各省と話し合ってと、こういうお話ですが、私はこの際、アイヌ民族の代表の人にも参加してもらう必要があると思う。何か和人のほうだけでかってにきめてしまうという態度そのこと自体が問題なので、ぜひこれはアイヌ民族の代表もその中に参加した審議会のようなものを考える。これは御承知のように、同和対策の審議会というのがありますね。これは総理府の審議室が所管でやっていますが、各界各層の有識者が入ってやはりここで抜本的にひとつやってもらう。そういう意味で、アイヌ民族の代表者も入ってもらうということについてお約束いただけるかどうか、こういう点もひとつ御意見を伺っておきたいと思います。
  164. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 この問題はアイヌ民族に対する基本的な政策の検討の問題でございますから、当然そうした方々の代表の方々にも入っていただく、そういう機会をつくるならば入っていただく、これは私は当然だと思います。
  165. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 ちょうど北海道開発庁長官が見えられたが、いまちょっとあなたに対する質問をもう進めちゃって、いま国務大臣としての齋藤さんに伺ったわけですが、もう一度簡単に申しますと、ここでアイヌ民族に対する抜本的な政策を行なう必要がある。ということは、若干前置きになりますけれども、アイヌ民族というのは、北海道の先住、先覚民族なんですね。これが長年にわたって、いわゆる和人といいますか、これのほうで収奪をして、先ほど局長も、和人から取られることを押えるために北海道の知事は土地の許可の問題なんかもやっている、こういうように社会局長もまた認めたように、和人のほうがどんどん収奪をした。一言で言うならば、侵略をし、征服をした。侵略をされ征服をされたのがアイヌ民族である。ですから、やはり抜本的な政策を立てる場合には、この収奪に対する償いといいますか、反省といいますか、その上に立った政策でなければ私はいかぬと思う。そういう観点に立って、この際アイヌ民族に対する抜本的な政策をぜひ確立してもらう。  実はもう一つあるのは、明治三十二年につくられた北海道旧土人保護法という法律がいまだに生きている。旧土人保護法などというような差別の明確になった法律が生きているわけですね。実際には動いていないというんだが、法律にはメリットがあるんだと社会局長は去年も答弁している。これに対してやめるべきかどうかという問題も起こっている。  そういう点を全体として含めたアイヌ民族に対する抜本的な政策を確立する、少数民族としての政策をこの際やはり日本政府としては確立する必要がある。その問題として私が提案したのは、審議会をつくられたらどうだろうか、総理府の審議室にでも審議会をつくったらどうか。同和対策審議会というのがありますね。これと同じようにアイヌ民族に対しての審議会をつくったらどうか。しかもこの審議会にはアイヌ民族もやはり代表として入ってもらって、率直な意見を出してもらう。こういうことをやるようなことについて、北海道の開発庁長官ですから、北海道の問題はひとつ積極的にやってもらいたい。このことはいま厚生大臣からも御答弁をいただきまして、同感だから、これはやろうというお考えですし、これはひとつ北海道開発庁長官として、自治大臣として進めていただきたい。  もう一つは、北海道の問題でございますので長官に伺っておきたいのは、アイヌ民族の文化というのは非常にすぐれたものがありますが、たとえばユーカラの伝承などといって、文字がないものですから伝承しているわけですね。これはアイヌ民族自身がいま残そうというので文字化している。これなんかでも、自分の経費で、自分の負担で苦しいながらやっているわけですよ。しかもウエペケレというのがあるそうです。このウエペケレというのは、北海道の日高にあるアイヌ民族の研究家が自費でやっている。本にして五十巻になるそうです。こういうものは、やはり厚生省にしても北海道開発庁にしても、自分のほうの所管外であっても、これは文部省になるかもしれませんが、こういうものには金を出して、重要な文化資産ということですから、ひとつ積極的に援助をするようなことも、北海道開発庁長官としても積極的な姿勢が私は望ましいのですが、この点を伺っておきたい。
  166. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 第一点のウタリの問題でありますが、この生活環境、所得状況、社会生活の実際等々から見まして、確かに本州の人々との格差というものは非常に大きいものがあります。よくわかります。いま御提案の審議会をつくるかどうかということにつきましては、厚生大臣からも御答弁があったそうですが、十分関係省庁協議をいたしまして、そういう形で進めることが望ましい。  私、実は質問要旨をちょうだいいたしまして、たとえば同和対策があるように、北海道開発庁で当然ウタリ対策といいますか、そういう問題があるのじゃないかという話を先ほどもしていたわけです。そうすると、事務当局の言いますのには、同和対策のときに、あなたですか、あるいは他の方を含めて、ひとつウタリ対策をやろうという話が当時あったときに、むしろウタリの人々が積極的でなかった、それは一体どういうことだろうか、たとえばプライドの問題、これはいろいろあろうかと思いますが、その辺はどうかと言ったところが、なおその当時の状況をつまびらかに調査いたしますというところで、私はちょっと総理に会う所用がありましてこちらのほうに回ったわけでありますが、そういう過去の経緯等も十分調べまして、まさにそういう総合対策を今後樹立してウタリのためにはかっていく、これは大事なことだと思いますので、むしろ北海道開発庁長官としては各関係省庁に激励、懇請するというような立場をとってでも推し進めてまいりたいと思います。  なお第二点のウエペケレ、これは五十巻から成るもので、金田一京助先生のお弟子の知里真志保さんですか、自費をもって一生懸命研究して今日完成されたということを聞いております。これは学術的価値の高いものであれば、当然文部省がその研究の成果を刊行物として補助する、そういう制度もあるように聞いておりますので、これは、文部政務次官もあそこにおられますが、ぜひひとつ協議をいたしまして、これはわが少数民族の高い文化というものを将来に伝える意味からも望ましいことだと思います。特に金田一先生がなくなられたあと火が消えるというようなことがあってはなりませんので、こういうものについては、特に北海道開発庁としても文部省を中心にひとつできるだけ補助が実現するように推進をしてまいりたい。
  167. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 もう時間がないので聞けないのですが……
  168. 倉成正

    倉成主査 岡田君、簡単に願います。
  169. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 若干あなた勘違いがあるのですよ。完成したんじゃない、いまやっているのです。それは金田一博士の問題となりますと、アイヌ民族からは問題があるのです。金田一博士をアイヌ民族が信頼したかどうかというのはまた別問題です。知里博士の問題になるとまた別ですが、いまやっておるのは新しい問題です。萱野という人がやっている。第一巻をいまようやく始めたというところです。ですから、これは前のと全然違うのですから、ちょうど政務次官もおられますから、ひとつお調べいただいて、ぜひ補助をいただきたい。  最後に私が伺っておきたいのは、ウタリ対策の中で、民族ということになると、ウタリに自主性をできるだけ与えなければだめです。ところが、北海道ウタリ協会というのはどうですか。一年に六十万円補助金を出して、そして道庁の補助機関みたいに道庁の中にあるのです。これでは自主性はないです。こういう点もやはり抜本的に考えて、ウタリに自主性を与えるということについてもお考えをいただきたい。そういう点も根本問題としてお考えをいただきたい。  それからもう一つ、これで終わりますが、昨年の予算のときに、アイヌ民族から、福祉基金をぜひつくってくれ——金額だって少ないのですよ。三億円なんです。それでもいいから福祉基金をつくってくれということで、厚生省もその当時やる気になって大蔵省に話をしたら、うまくいかなかった。しかし、これは昨年の社会労働委員会のここにおられる社会局長の答弁によると、ことしは調査費だけつけたが、「できれば四十八年度からそれを予算上も実施に移したい、大蔵省もウタリに対してある程度の予算を組むということは反対ではございませんので、計画さえしっかりしたものを持っていけば、これは実現可能だと思います。」ここまではっきり言っているのです。ところが、ウタリの福祉基金はことしの予算要求に出てないのです。調査費だけつけて、あとはそのままにしてしまった。私はこういうことをやってはいけないのだと思う。ウタリの人に対してここまで約束しているのならば、四十八年度でどうしてもできなければ、これはもう一度調査費をつけるなり何なりして、この次の年度にやりますとかなんとかということをはっきりしてもらわないと、まさに背信行為だといわなければならない。これは実際に今後おやりになるのかどうなのか、この点を含めて明快な御答弁を伺って、私は質問を終えたいと思うのです。
  170. 加藤威二

    ○加藤(威)政府委員 ウタリ福祉基金につきましては、確かに先生御指摘のような事実があったわけでございます。これは実は四十八年度でもできれば具体化したいと考えたのでございますが、問題は、やはりその実態調査を踏まえた上でその福祉基金をつくるかどうかということを要求しようとしたわけでございますが、その実態調査が予算編成までに間に合わなかったという事実があるわけでございます。そういうことで四十八年度予算につきましてはウタリ基金というものは具体化できなかったわけでございます。現に北海道庁からの四十八年度予算の、ウタリについてこういうことをやってもらいたいという中にも、ウタリ基金の問題は出てないわけでございます。そういうことで道庁もやむを得ないと認めたわけでございます。今後につきましては、この実態調査を踏まえましてウタリ福祉基金という形でやったらいいのかどうか、あるいは補助政策でやったらいいのかどうか、そういう点を含めまして十分考えたいと思います。とにかく対策を打ち出すということにいたしたいと思います。
  171. 岡田春夫

    岡田(春)分科員 これで終わります。
  172. 倉成正

  173. 浅井美幸

    浅井分科員 私は、国立大学の附属病院が、生活保護法によるところの医療扶助を受けておる人たちの診療を拒否している問題について若干お伺いしたいと思います。  まず最初に文部省にお伺いしたいのですが、国立大学の附属病院は、医療技術が高度であり、またその設備が整備されている、そういうことで、その地方の医療機関の指導的役割りを果たすとともに、当該地域住民の健康保持に大きく貢献していると考えております。そういう附属病院は全国に一体何カ所あるのか、また、そのうち、生活保護法四十九条の規定による指定を受けて医療扶助のための医療を担当している国立大学附属病院は何カ所か、伺います。
  174. 齋藤諦淳

    齋藤説明員 国立大学には、本院と分院と研究所の附属病院、それと歯学部の附属病院、この四種類があるわけでございます。それで全国で四十八病院ございます。そのうち、生活保護法に基づく指定医療機関になっておるのが十四カ所でございます。
  175. 浅井美幸

    浅井分科員 全国で四十八病院のうちに十四カ所、三分の一に満たない数字でございます。たとえば大阪では、大阪大学の医学部附属病院、大阪大学歯学部附属病院、大阪大学微生物研究所附属病院というように、三つの附属病院がございます。いずれもこの指定を受けていないために医療扶助のための医療を担当しておりません。このような例は、大阪に限らず、東京大学もしかり、京都大学もしかり、こういうことを見るときに、これらの附属病院を指定しなかった理由は何か、これを伺いたいのであります。
  176. 河野洋平

    ○河野政府委員 浅井先生ただいま御指摘のとおり、国立大学の医学部は、その教育、研究を主たる目的にして、でき得る限り高い医学を求めておるわけでございまして、現在でも医者の数が不足をしておる、その医者の数の不足を一日も早く補てんするために全力をあげて医師養成に当たっておるのでございまして、御指摘のとおり、指定機関として行動をしておる病院数は十四でございますが、その十四の病院を含めて、教育研究に最重点を置くというのが、国立大学の医学部として最も大事な目的であるという観点から、いままでも、でき得る限り指定機関になったほうがいいのではないかという御意見もございまして、それを伺ってそのつど検討をいたしておりますが、現時点では十四病院の指定にとどまっておるということでございます。
  177. 浅井美幸

    浅井分科員 でき得る限り診療をということでありますけれども、私は、この問題は、国立大学ということで国の資金によって設立されたその機関が、法のもとに平等であるべき立場でありながら、いまお述べになったその拒否しておる理由というのは、私は理由にならないと思うのです。いま四十八病院あるうちに十四病院はすでにもうこれを実施いたしております。したがって、学生の教育あるいは研究のためということはこれは十分理解できるとしても、実施をしておる部門がありながら実施していないというこの差、これは一体那辺にあるのか、この点をお答えいただきたいと思います。
  178. 河野洋平

    ○河野政府委員 生活保護をお受けになっておられる方の診療を拒否しておるわけではございません。指定機関に早くなれ、これは厚生省からも過日そういう御要請をいただいておりまして、文部省といたしましても国立大学医学部病院の事務当局等に指示をいたしておりますが、現在の時点では幾つかの理由はあるわけでございます。一つは、いま申し上げました教育研究を最重点とするために、教育研究に支障が起きる懸念がある場合、なかなか消極的で進まないということでございます。これから先に申し上げますことは、先生の御指摘の観点から言えば、理由にならぬ理由かもわかりませんが、私どもが国立大学の附属病院と話し合いをいたしますと、病院のほうにもこういう主張があるということを一、二点申し上げたいと思いますが、その中身は、どうしても生活保護の方の診療には、大学病院といたしますと、普通の診療以上に事務量がきわめてふえるということを一つ理由にあげております。これはもう事務量がふえることでそういう問題を拒否をする、消極的になるということは、十分厳重に私どもから注意をいたしておりますが、いかんせん、定められた定員、定数の中で、事務員に主体を置きますよりは、教育、研究のほうに重点を置いた人員の配置ということに現時点なっております関係上、たいへん消極的なお答えになって申しわけございませんが、現時点では十四病院にすぎないということでございます。
  179. 浅井美幸

    浅井分科員 政務次官もずいぶん御苦労なさって御答弁なさっていますけれども、要するに理由にならない拒否の理由であります。それと、私はきょうは憲法上の問題からこの問題を考えてみたいと思うのです。  国立大学の附属病院一般住民の人たちに門戸は開放されております。当然、その当該地域に住んでおる住民の中には生活保護を受けていらっしゃる方がいます。最近の統計を見ますと、現在一番新しいので四十七年の十月ですか、被保護世帯が七十万四千八百四十一世帯、被保護の実人員が百三十八万一千八百九十五人、この当時で七十七万人の方が医療扶助を受けていらっしゃる。そうすると、そういう方たちも、このような健康保全に重要な役割りあるいは高度な診療体制設備を持っておるという国立病院に対して医療を求めるのは、私は当然であろうと思うのです。ところが、いまあなたは拒否をしていないと言うのですけれども、取り扱っていないことは事実であって、取り扱っていないということは、その生活保護法でもっての医療扶助の患者は診察してもらえないわけです。拒否はしてないけれども、診察してもらえないということは、これは拒否と同じことであります。したがって、その国立大学の附属病院がそういう方たちを拒否をしているということからいろいろの問題が起こってきます。これは私は人権問題だと思うのです。憲法第十四条は、法のもとの平等ということをうたっております。国立の医療機関が、貧困による差別を行なう、この事実は、私は憲法の精神に抵触すると思います。この点どうでしょう。
  180. 河野洋平

    ○河野政府委員 先生の御指摘の角度から考えまして不都合な点があるようにも思えますけれども、私は決して国立大学の特殊性を固執するものではございませんけれども、国立大学に与えられた使命というものは、国立大学において、より多く、より優秀な医者の養成を行なうというところが主たる目的だ、その目的、まず主目的に向かって私どもは全力をあげる必要があるということをいままで考えておったわけでございますが、確かに昨今、私申し上げましたように、医師不足あるいは病院のいろいろな、何時間待って何分間しか治療できないというような実態考えますれば、一日も早い医師不足の解消を唱えると同時に、やはり恵まれない方々への診療についても国立大学が十分な配慮を行なうべきであるというふうに考えておりまして、そういう方向で早急に検討をしたいと考えております。    〔主査退席、三ツ林主査代理着席〕
  181. 浅井美幸

    浅井分科員 失業やあるいは生活難等によってその生存さえも脅かされているそういう人たちに対して、恩恵的なといいますか、慈恵的なといいますか、そういう救済を行なおうとするものではなくて、国家や社会か生存そのものを権利として尊重することによってすべての人に人間に値する生存を保障するという生存権の思想、これはわが国の憲法にも取り入れられているわけでありますが、憲法二十五条で、その第一項で国民の生存権の保障を規定し、その二項では、そのための国家の社会的使命を規定しております。「すべて國民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と、こういうふうに規定しています。ですから、この憲法第二十五条第一項は、教育を受ける権利を規定する二十六条、労働に関する権利を規定する二十七条、二十八条、財産権の保障を規定する二十九条第一項、以上の生存権保障の規定に対する総則的な規定であります。それとともに、具体的にこれらの規定でカバーされないところの国民、すなわち、労働能力または財産を持たない国民が、その最低限度の生活維持のために生活保護の請求権を有することを定めたものであります。だから「國は、すべての生活部面について、社會福祉、社會保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と規定するこの二項、これは一項の生存権の規定から当然に生ずる国の責務です。ここでいうところの社会保障は、国民の生存権を公的扶助または社会保険により確保することであり、その立法には生活保護法、国民健康保険法、厚生年金法等があるわけです。この点についての解釈をまず政務次官からお願いします。
  182. 河野洋平

    ○河野政府委員 繰り返し申し上げるようになりますが、国立大学の医学部が主たる目的として私どもが担当しております部分では、たとえば僻地でありますとか離島でありますとか、そうしたところに一日も早く十分な医師が送られるように、医師の数、医師の質の向上、そういった部分をできるだけ早く充実させようということを考えておったわけでございまして、その意味では、私どもも、憲法が示すところの、でき得る限り多くの方々に、でき得る限り早く十分な生存権の保障ができるように、正直申し上げて、現実に離島、僻地という方々——いま浅井先生が御指摘の数十万世帯がありますけれども、それは東京、大阪だけではなくて、僻地にも離島にもあるはずなんです。そういうところにもできるだけ早く医師が充足されるようにということを私どもが願っておりますだけに、国立大学の医学部にも、十分な教育研究をすみやかに済ませてできるだけ早く優秀な医師がそういった方面に活躍してもらえるようにということを考えたことも、またその憲法の目的に沿うのではないかというふうに思うわけでございますが、先ほどもお答え申し上げましたように、国立大学の医学部附属病院は、その存在の背景には、国民の皆さま方の税金によってまかなわれておる病院でもございますし、ただ単にそれが教育研究のみを追っていればいいというわけにはいかないわけでございますから、先生御指摘のように、そういう場面におかれて国立大学の附属病院考えなければならない問題として、先生の御指摘はそのとおりお受けをしたいと思っております。
  183. 浅井美幸

    浅井分科員 厚生大臣はいまの件についてどういうふうに思われますか。
  184. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 私はここで文部省と理論闘争をするつもりはありませんが、国立大学の附属病院が医学に関する教育研究に非常に重点を置いておられること、私はそのとおりだと思います。そこで、医学の教育研究が非常に重要であるから、生活保護法の適用を受けている人について、差別してないというかもしれませんが、差別的な取り扱いが現実行なわれているということは、私は、法のもとにおける平等という新しい憲法の上からいって、どうも適切ではないような感じがいたします。いな、むしろ、そういう方々については、近代医学にいそしんでおる国立大学こそが積極的に御協力をいただけることが、新しい憲法の精神にふさわしいのではないか、こういう考えを私は持っています。しかし、ここで文部省と理論闘争するつもりはありませんが、こういうことは一日も早くおやめいただくことが、国民の税金によってできておる大学病院としては最も望ましいことであるとすら私は考えておるわけでございます。
  185. 浅井美幸

    浅井分科員 厚生大臣のほうは私の趣旨と全く同じであります。文部省のほうがどうしてもおわかりいただけないように私は思うのです。  憲法の八十九条で、公の財産の利用制限について規定をしております。学術研究が主だということも私はわからないこともありません。しかしながら、地方自治法にも、二百四十四条第二項では「普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。」と、このように規定をしております。国民の国の財産の利用についてもこの趣旨は尊重されるベきであるというのが、これはもう通例であります。厚生大臣が、生活保護法第四十九条に基づき、国立大学附属病院医療機関として指定するのにあたって、いままでの実情は、一番最近が、琉球大学がようやく四十七年の五月の十五日にこの医療機関になったわけです。一番最初になっておるのは二十五年です。信州大学が二十八年です。二十五年、二十八年、それから四十二年、四十六年、こういう状態であるので、私は、この際、文部省はすみやかにこの生活保護法に基づく医療機関の指定を全国立大学に受けるという体制に踏み切ってもらいたい。この点はどうでしょう。
  186. 河野洋平

    ○河野政府委員 文部省といたしまして、先ほど来お答えをいたしておりますように、いろいろいままで考え方があったわけでございますが、大学病院といえども地域住民医療を十分行なうため、生活保護法による指定を受けるよう指示をすることは積極的にやるべきだということを考えておりまして、これは厚生省からもそういうふうにお申し入れもございまして、文部省が気がつくのが少しおそいじゃないかといって浅井先生からはおしかりをいただくかもわかりませんが、きょう現在、私が先生にお答えをできますことは、先月附属病院関係者を集めまして、特に生活保護法による指定を受ける病院として地域住民にできる限りの診療を積極的にするように、その趣旨の徹底をさせるために関係者を集めまして十分指導をいたしております。その時点でも、事務手続が非常に繁雑であって、受け入れるについては、もう少し定員の問題手続の問題等についても配慮してほしいという事務当局からの希望どもございましたので、これは今後ひとつ厚生省にもお願いをして手続の問題なり何なりお知恵とお力をかしていただいて、一にも二にも地域の住民方々にひとつ御利用いただけるように積極的に考えたい、こう考えておるわけでございます。  未指定の附属病院ができるだけ早くこの指定を受けますように、今後とも指導は積極的に行なってまいりたい、こう考えております。先ほど来御指摘の東大あるいは京都大学、大阪大学等、いずれも大都会のまん中にある附属病院が未指定になっておりますのは、私どもとしてもいち早く指導しなければならぬ、こう考えておりますけれども、まあ逆の見方からいたしますれば、医療施設が比較的足りない地域においてより早くそれを行なうということもあるいは大事なのかもわからぬ。その辺十分先生方の御意見を伺いながら検討してまいりたい、こう考えます。
  187. 浅井美幸

    浅井分科員 医療施設が足りないとか足りなくないとかいう問題も、これは確かに医療の全国的な問題、医療過疎の問題もございましたけれども、私はきょうここで取り上げておるのは、国の機関がいわゆる国民に対して平等の権利を保障しなければならないし、あるいは憲法第二十五条の精神を保障するためには万難を排してこの体制をすぐとるべきだということを主張しておるわけです。したがって、先ほど何か全国の事務長を集めたというお話でありますけれども、もし一片の局長の通達が——いわゆる厚生省社会局長、文部省の大学学術局長、こういうもので通達によって出しただけだ、あるいは相談しておるという段階ではなくて、いまやまさにこの矛盾を、このような現実をすみやかに解決するために、文部省通達として文部大臣がきょう直ちにこれを発令すべきであると思うのです。今日ただいま、医療保護に対するところのこの医療扶助を受けておる人たちに対する指定機関として貴附属病院はこれを取り扱うべきだという通達を私はきょう出すべきだと思う。あやまちを改むるにはばかることなかれ。先ほどあなたも、気がつくことがおそかったとおっしゃいましたけれども、もっとすみやかに——まだ相談をしていくというのではなくて、事務量が多いといったって、事務員一人おればできる問題であります。国立病院でやっておる、あるいは普通の一般の診療所でもやっておる事実があるのです。また、国立病院の中でも指定を受けて現にやっておるじゃないですか。ではこれは学術あるいは研究が優先してない大学ですか。そういうことになってくるわけです。私は、そういうことではなくて、このことについて不平等な問題であり、国の機関であるベき附属病院であるならば、直ちに文部省の通達として出すべきだと思うのです。厚生大臣、いかがですか。まず厚生大臣から……。
  188. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 私はまことに同感でございまして、大学病院における教育研究の重要性からいって、こういう差別をしてもよろしいという結論には私は絶対ならぬ、こう考えておりますので、全く同感でございます。
  189. 河野洋平

    ○河野政府委員 先生御指摘のとおり私ども考えますけれども、一片の通達を出すことによって解決をしないという先生の御指摘どおり、いま文部省がそのことをきめて通達を出すだけでは問題はやはり解決しないので、定員の問題でございますとか、先ほどもちょっと申し上げましたが、手続の問題等についても厚生省のお知恵をおかりする、そして大学の附属病院にもそうした点の定員の配置等について、文部省といたしましては来年度の予算編成にあたってはこれが定員の要求等を積極的にしていくということを申し上げたいと思います。
  190. 浅井美幸

    浅井分科員 政務次官が御同席になって御答弁ですけれども厚生大臣、一ぺん、文部大臣あるいはまた河野政務次官等まじえて——来年なんという余裕は私はないと思うのです。これは早急に何らかの手を打つべきだと私は思うのです。四十八年度がこれから始まろうとしておるのに、この問題は、来年四十九年度なんて、私は待つべき問題ではないと思うのです。厚生大臣として、一ぺんあるいは文部大臣等ともトップ会談を開いて、これを早急に善処なさるお考えはありますか。
  191. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 厚生省からはすでに社会局長から書面でお願いをいたしておりますが、なかなか解決しないようでございますから、できるだけすみやかな機会に文部大臣にも話をしまして、よく相談をいたしまして、一日も早く決着のつくようにいたしたいと考えております。
  192. 浅井美幸

    浅井分科員 文部省にお願いしたいのですけれども、あなたのおっしゃることも現実ではありますが、私はあえて深くこの問題について触れたくはありませんけれども、これは明らかに文部省のセクト主義と申しますか、何といいますか、いわゆる事務取り扱いが繁雑だということでいままで拒否されてきた姿勢を一日も早く改めてもらいたいと思うのです。そうでなければ、これは憲法の精神に絶対抵触すると私は思います。ましてや、ことしは福祉元年ということが田中内閣のキャッチフレーズです。福祉ということが口で言われながら、実際の診療機関がこういうような状態では、国民に対して、信頼のあるその医療機関が閉鎖されておるということでは、福祉元年はまさに絵そらごとに終わってしまうということは、指摘するまでもないと私は思います。この点、最後にもう一点だけ文部省の強い決意を望んで、私は質問を終わりたいと思います。
  193. 河野洋平

    ○河野政府委員 先生御指摘の点につきましては、私どもといたしましても十分検討をさせていただいて、できるだけ早急に結論を出したい。先ほど来、定員の問題等についても、手続の問題についても申し上げました。しかし、解決する大学があれば一つでも二つでも早急に解決をさせ、将来できるだけ多くの病院が、先生の御趣旨に沿うように、指定を受けていくという方向に指導をしてまいりたい、こう考えております。
  194. 浅井美幸

    浅井分科員 最後に、厚生大臣、このように指定を受けてない附属病院というのは違法であると私は思いますが、厚生大臣はどうですか。
  195. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 違法であるかないか、そういう法律的な問題は別として、国立大学の附属病院、その四十八のうち、すでに十四も指定を受けてやっておるのに、残りの病院が、教育研究が大事だからやりません、こういう姿勢は好ましくない、かように私は考えております。しかし、ここで文部省と理論闘争をするわけでもございませんから、文部大臣とよく相談をいたします。
  196. 浅井美幸

    浅井分科員 では、以上です。
  197. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林主査代理 山口鶴男君。
  198. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 私、毎年、予算委員会分科会におきましてハンセン氏病の問題をお尋ねすることを例としております。実は、大臣も御存じだとは思いますが、また、予算編成の過程で大臣わざわざハンセン氏病患者の代表の方々とお会いもいただきまして、非常に感謝をいたしているわけでありますが、全国に、沖繩を含めまして十三のハンセン氏病の国立療養所がございまして、約一万人の患者の皆さんがここで療養しておられるわけでありますが、こういったハンセン氏病患者の方々のお手伝いを少しでもやりたい、こういう気持ちから、超党派で国会の中にハンセン氏病議員懇談会というのがありまして、私がいま事務局長をいたしております。そういう立場から、実は毎年毎年分科会でハンセン氏病対策のことをお尋ねし、若干ではありますが毎年前進を見ていただいておりますことは、心から感謝をいたしたいと思います。  ただ、私も本年度の予算説明書を拝見しました。患者給与金をはじめとしてハンセン氏病予算は前進をした、こう書いてあるわけでありますが、確かにそういう面も否定はいたしません。しかし、国立らい療養所の関係予算昭和四十八年度八十七億九百十八万六千円、前年度当初予算額に比べまして十一億九千二百三万円の増でございまして、前年度に対する伸び率が一五・九%、こうなっております。本年度の一般会計予算の伸び率は、御案内のように二四・六%です。確かに患者さんの数が減少の傾向にあるということは私もよく承知をいたしております。しかし、先ほども浅井さんから福祉元年というお話がありましたが、少なくとも、こういった国立らい療養所の予算につきましても、一般会計の伸び率よりはやはり高い伸び率を示していただきたい。少なくとも一般会計の平均伸び率くらいの伸び率は私はぜひとも達成をしていただきたい。そこまで至らなかったことは非常に残念だというふうに思います。この点について、事務当局でもけっこうですから、お答えがあれば伺っておきましょう。
  199. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生御指摘のとおりの数字でございまして、一一五%でございますから、一二四に比較しますと確かに低いわけでございます。今年度四十八年度の、われわれとしてらい療養所の予算に力を入れましたのは、整備費でございます。整備費につきましては約七億、補正三億三千万と合わせまして十億、例年ベースに比べますと二倍半ということでございます。この点は、補正を持ち出すまでもなく、今後われわれとしては、患者の処遇の問題ももちろんございますが、整備の問題が私は一番重点であろうと思いますので、今後この点について努力いたしたいと考えております。
  200. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 整備についてお話がありましたが、確かに昨年度当初四億九千五百九十九万六千円に対しまして、本年度七億五百九十万三千円でありまして、二億ばかり伸びておる。四二%ばかり伸びておる。昨年補正をいたしましたので、補正を足せば約十億に達しているじゃないか、こういうお話だと思うのです。しかし、補正は補正、当初予算は当初予算ですから、お気持ちはわかるけれども、そこまでやられるのは少しいただけないような気もいたします。  そこで、まず私ひとつ確認しておきたいのは、この患者給与金の問題です。障害一級ということにしていただきまして、患者給与金を昨年十月から一万一千円にしていただきました。今回障害一級ということで二万三千円でしたか、引き上げていただいたわけでありますが、この点につきましては、将来ともこの障害一級に当たるお金を患者給与金として確保する、このように了解してよろしゅうございますか。
  201. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この点につきましては、別に法律上定めてあるという問題ではございませんけれども、当然このスライド的な形で二万三千円という第二点が置かれたわけでございます。したがって、われわれとしてはその方向で実現するように当然努力しなければならぬと思っております。
  202. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 そこで、この国立療養所の施設内容の問題についてお尋ねしたいのですが、先ほど来、公明党の浅井議員が国立大学附属病院の差別的な取り扱いの問題について議論をされておりました。もっともな御意見と拝聴しておったわけでありますが、問題は、このハンセン氏病患者の皆さん方の年齢がだんだん高くなっておるわけですね。新しい患者が発生しないという、このことはたいへんけっこうなことでございますが、そういう事情もございまして年齢構成が高くなっておる。そうしますと、ハンセン氏病以外の成人病にかかられる方が非常に多いわけです。また現に死亡する方々も、そういったハンセン氏病以外の成人病によって死亡させるというケースがほとんど大部分です。ところが、現在の国立療養所の中には、そういった成人病に対する施設というものがほとんどありません。その場合、それでは国立病院がある、国立病院に収容したらどうかということでいろいろくふうもしておられるようで、その点、私も伺っております。ところが、やはりわが国の中にはまだまだハンセン氏病に対していわれのない差別感がある。したがって、国立病院に入院して成人病の手当てを受けようといたしましても、病院の側あるいは国立病院に入院しておられる患者の皆さん方のいわば差別感というものがございまして、他の国立病院での治療というものがなかなかうまくいっていないと私は聞いておるのであります。  根本的には、こういったハンセン氏病に対する差別感をなくすることだと私は思います。しかし、そういう状況でありまするならば、国立療養所の施設整備費に力を入れたことはけっこうでありますが、同時に成人病対策の設備というものを国立療養所の中に充実をしていただく、またその関係のお医者さん方を十分に充足をしていただくということが必要じゃないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  203. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 その点については、先生希望のように、らい療養所の中ですべての医療が完結するということは——できますならば、むしろ十三カ所のらい療養所を統合いたしまして、そして非常に中心的な療養所をつくるというようなことをするならば、あるいは可能かと存じます。先生はらい療養所のことを十分御承知なものですから、非常に率直に申し上げるのでございますけれども現状のままではどうしても院外で治療をしなければならぬというものには、具体的な例としてはガンがございます。四十八年度の予算一つの特徴でございますが、いままでそのような問題に対して、予算上、らい療養所は丸がかえでやっておりました。これを医療機関にお願いしたときに、その医療機関にお払いする予算の問題が実はあったわけでございますが、これが初めて予算化されました。これについて具体的には、それぞれのらい療養所ごとに、近隣の国立大学等、われわれの手持ちのものとしては、関連の問題で御協力いただく病院等はメモとしてはあるわけです。おっしゃるとおりまだそういう考え方がございまして、差別と申しますか、そういう受け入れに対しての考え方に積極性がないというような御批判もないことはございません。しかし、現実には、やはり大部分は国立、場所によっては一部鉄道病院等に御協力いただいて、そしてガン患者等がありまするならば、そのような対策を講ずる。あと、胃かいよう等の一般的な手術で可能なものは、らい療養所にも手術室等がございまして可能なところは、外部から応援をいただいて、園内の病棟に入院していただいて治療をする。可能なものはそのようにいたしたい。理想には遠いわけでございますけれども、しかし、一応成人病対策的な面の欠けるところのないように努力はいたしております。  それから、らい予防協会的な意味の藤楓協会では、競輪の益金等をもって、らい療養所を巡回します胃ガンの早期検診車を今回設けるように取り運んでいただいております。これらも当然、一般住民の胃ガン検診と同様、らい療養所の患者さんのガンの早期発見のために今後相当の役割りを果たしてくれる、こういうふうに考えております。
  204. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 まあ十三ありますものが統合したといいましても、とにかく患者さんも、戦争中あるいは戦争直後から、あるいは長い方は三十年、四十年にわたって、短い方でも十年、二十年にわたってそこに住んでおられる。いわばふるさとみたいなものでありまして、そういうものを軽々に統合するということについては、これは患者さんの気持ちに沿わないと私は思います。ですから、結局は幾つかの中心的な施設、東のほうでしたら多磨なら多磨に成人病のあらゆる治療が可能な施設を充実してもらう、西日本にもまた同じような施設をつくる、また沖繩は離れておりますから、沖繩県にも一つ施設整備する、そういったくふうが必要じゃないのか。まあ十三のところに成人病に対する完全な治療施設を全部設けろといっても、これは至難だと思います。そういう点でこの問題は解決をしていただきたいと思います。  同時に、いま国立療養所の仕事というのは、相当多く患者さんの手を通じて実は運営されている状況にございます。たとえば、炊事をするのは職員ですけれども、食事を各病棟に運搬するのは患者さんの仕事です。あるいは屎尿処理等についても患者さんの作業によってこれをやっているという状況です。ところが、こういうような病院というのは私は他にないと思うんです。患者の手を通じて所内の運営をやっているという病院は、私はハンセン氏病の国立療養所だけだろうと思うのです。  戦争中、強制隔離されてきました方が、逃亡しないようにというので、持っているお金は全部所で取り上げる、そして所内だけに通用する通貨というのを私は過般拝見をいたしました。そういう意味では、戦争中はハンセン氏病患者の皆さん方に非常な差別が加えられておったと私は思うのです。いまこれだけ経済が高度成長して、福祉元年ということをいわれておる現在において、他の国立病院と違って、ハンセン氏病の国立療養所だけは、患者さんの手をかりなければ運営がつかぬということをいつまでもやっておるというのは、これはおかしいんじゃないかと私は思います。そういう中で患者の皆さんが、何かハンセン氏病の療養所だけにいわれのない差別が行なわれているということを思うのも当然だろうと私は思うのです。したがって、所内の運営についていつまでも患者さんの手をわずらわせるということは不可能だろうと思います。現に、こういった作業を返上するという動きも大きく出ているわけであります。  そういうことも含めて、大臣、結局、施設についても成人病対策の施設を、全部とは言わぬが、おもなところは充実をしていく、それから、いまなお他の病院と差別が残っているという先ほど申し上げた例等をできる限り解消して、他の患者さんと同じ扱いをしていくということについては、はっきりした見通しを持った対策というものを立てていただきたいと私は思うのです。ひとつ御決意のほどを承っておきたいと思います。
  205. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 らいの患者の方々は隔離収容ということになっておる、そういうたてまえから、いまお述べになりましたような問題をいろいろ考えるべきだと私は思います。  私は、今日までのらいの治療というのが非常に成功したのは、日本医学の勝利だと思います。もちろん、これには山口先生はじめ皆さん方の非常に大きな御協力をいただいたことに私は深く敬意を表するのですが、そこで、大勢の方を隔離収容しているんだということをまず頭に描きながら、いまお述べになりましたような問題を考えるべきだと私は思うのです。たとえば成人病等につきましても、よその病院から巡回診療に行く、これもけっこうでしょう。けっこうでしょうが、多いところは千人も収容しているようなところもあるわけですから、やはり何かしらそういうことを考えるということが大事だと私は思います。これからは若い人が入らないで年とった人ばかりの生活になるわけですから、そういうことも考えるベきでありましょうし、それから運営についても、だんだん体力も衰えてくるというふうな人も多くなってまいりましょうから、そういう運営について全部まかせきりで、君たちは隔離収容しているのだから、全部好きなようにやりなさい、まかせます、こういうことがはたしていいのかどうか、その辺の問題も私はあると思います。そこで、こういう問題につきましては、将来どうするのかという見通しを頭に描きながら、前向きにひとつ十分研究し措置するように努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  206. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 ハンセン氏病の療養所だけが他の国立病院とあまりにも隔たった運営がなされているという事態はもう通用しない、一日も早くそういった差別感を解消するような強力な措置を私は強く要請をいたしておきたいと思います。  時間もありませんので、あと簡単に一、二お尋ねしたいと思うのですが、本日の毎日新聞の社説を拝見しましたが、「危機にある大都市のゴミ処理」ということで、プラスチックの廃棄物が大都市のごみ処理の非常な大きな障害になっていることが書かれてございます。また同じく本日の讀賣新聞の社説にも、プラスチックの廃棄物というものがそのまま放置されているということは、資源の観点からいっても大きな浪費ではないかということが指摘をされております。私はそのとおりだろうと思いまして、実はプラスチック廃棄物についてはこれまた毎年国会で議論をいたしてまいりました。かつて内田厚生大臣の時代に、このプラスチック廃棄物の現状考えまして、牛乳のポリ容器あるいは乳酸菌飲料のポリ容器については、私は任期中許可しません、こういうことを実は言明をされておるのですが、内田厚生大臣の任期がまさに終わらんとするときに、牛乳関係七社、乳酸菌飲料関係十三社、計二十社の承認を与えました。その後今日まで一体幾ら承認をしてきたかという資料の提出を求めたのでありますが、昭和四十六年五月二十九日以降——先ほど申し上げたのは含まれておりません。それ以降でありますが、牛乳、加工乳については二十五社、三十一工場、乳酸菌飲料関係につきましては二十八社、二十八工場、これだけの許可がなされておるようであります。一体それらは回収状況はどうなのか。回収を厳重に義務づけるということを繰り返し厚生省当局は言われたのでありますが、厚生省からいただきました資料でも、牛乳、加工乳については、まあ学校その他集団的な施設のせいもあるだろうと思うのですが、回収率は九六・一%、ところが、乳酸菌飲料関係については回収率が六八%にとどまっておる、こういう状況であります。これはまだいいほうなんでありまして、私は東京都に対して資料の提供を求めましたが、東京都の資料によりますと、たとえば乳酸菌飲料関係について、江東区、江戸川区のごときは回収率わずか一九%、葛飾区二三%、足立区、荒川区が二二%、東京都全体としては三一%、こういうふうな低い回収率でしかない、こういう報告も寄せられております。これらのプラスチック廃棄物が焼却炉で焼かれる過程で酸化窒素あるいは塩化水素、あるいは可塑剤にカドミウムを使うものですから、カドミウムが外部へ出るというようなことも新聞等で大きく報道されております。私は、このようなことではいかぬじゃないか、回収率の悪いものについでは断固許可を取り消すくらいのことをやるべきじゃないか、実は昨年もこの質問をいたしたのであります。これに対して前斎藤厚生大臣——名字は同じですが、おなくなりになりました前の厚生大臣が、回収率の悪いところは強力な指導をやりまして、それが効果がないということであれば取り消すこともあるべしということで強く指導してまいるつもりでございますと、こう答えておるわけです。私は、こういう現状ならば取り消すところが相当あってもいいはずだと思いますが、取り消したところはございますか。
  207. 浦田純一

    ○浦田政府委員 先生に毎度御指摘を受けるわけでございますが、牛乳等のプラスチック製の容器の承認は、いま先生御指摘のとおりでございます。私ども厳重に指導いたしまして、年々多少は改善されてきているのでございまして、ことにいま牛乳容器、加工乳容器につきましては九六%と、あと一〇〇%までわずかなところまであがってきたわけでございますが、乳酸菌飲料の件につきましては、これは容器等の性格もございましてなかなか思うように回収率があがっていないという状況でございます。  御指摘の東京都の件につきましては、許可した業者が実は東京都についてはないわけでございまして、その点あとでまた十分に先生のほうからいろいろと御指摘をいただきたいと思いますが、それではいままで回収率が悪いということを理由にして承認を取り消した業者があったかということでございますが、これにつきましては、ございません。
  208. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 昭和四十五年プラスチックの生産量、わが国は五百万トンですね。毎年二割ふえています。ですから、昭和五十年には約一千万トンのプラスチックの生産がなされると思います。そして昭和四十五年の例でいけば、五百万トンのうち廃棄物として排出されるものが二百三十万トン、約半分ですね。そうしますと、昭和五十年には五百万トンものプラスチック廃棄物がわが国にあふれるということになるわけです。実際に自治体でこの始末をしているわけでありますが、ごみの中に一〇%以上プラスチックが入ればたいへんなことだ、こういわれておるわけであります。私はいまのような局長のお答えでは非常に残念です。やはり回収を前提にして許可もしている。これから、以前に許可したものについても、回収を完全にやれということを行政指導をやっておられる。しかも乳酸菌飲料の会社には、プロ野球までやっておるような大会社もあるわけなんでして、プロ野球というのは非常に金がかかることは大臣も御存じのとおりです。そういうことで、片方ではプロ野球もやっておる、回収は野放しだ、こういうことでは、私は、国民の感情からいうて、これは許せぬと思うのです。もっとはっきりした決意で対処していただきたいと思うのですが、大臣いかがですか。
  209. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 いまの質疑応答を通じて私も承知したのですが、牛乳、加工乳のほうはまあ比較的回収率はいいようですが、乳酸菌飲料については回収率がほとんどだめだ、こういうことではやはり私どもがそれを承認した理由がないわけでございます。したがって、これは局長とよく相談しますが、近く関係業者を呼んで、こういうことなら取り消しますよということをはっきり通告することも必要ではないかなという感じをいたしております。したがって、この問題については、業界の意向も確かめながら、そういう態度で今後臨んでまいります。
  210. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 きょうの讀賣新聞の社説じゃありませんけれども、わが国の資源はほとんどすべて外国に依存しておる。特に石油のごときは一〇〇%近く外国に依存をしておるわけですね。しかも石油の需給状況はどうかといえば、石油の資源確保ということが非常に困難になるということがいまから予想されておるわけです。そういう際に、資源の面からいっても、私はこういったものが野放しにされ、焼却炉の中で燃やされて、外に光化学スモッグの原因になっている酸化窒素あるいは塩化水素、あるいは人体に害を与えるカドミウム等、その排出源になっておるというような状況は、これはきびしく私は規制しなければいかぬだろうと思うのです。そういう観点から——私は時間もありませんから、これ以上申し上げませんけれども、ただいまの大臣の御答弁でわかりました。ひとつ業界を呼んで、回収が不徹底の場合は取り消すこともあるということで強く指導をしていただきたいことを強く要請をいたしておきます。  最後に、同じカドミウムの問題なんですが、これも毎年お尋ねをしてきましたが、カドミウムに汚染された地域は、土壌汚染防止法によってこれを正常化するということになっておるわけでありますが、問題は、米しか安全基準がいまできておりませんね。畑地を土染法で対象にするためには、畑作物である麦——それはオカボがあるといえばオカボがあるわけでありますけれども、やはり麦あるいは野菜、こういうものについて安全基準を設けるべきではないかということを私はかねがね指摘をしてまいりました。昨年、浦田さんは、三月中にはこの資料も集まるので、出そろった時点におきまして、できるだけ早い機会に安全基準を設定してまいりたいと存じますとお答えになっておるわけです。しかるに、今日までまだ、麦の安全基準が設定されたということを寡聞にして聞かないわけであります。少しおそ過ぎるんじゃありませんか。この点ひとつお答えをいただきたいと思います。
  211. 浦田純一

    ○浦田政府委員 先生に非常にむずかしい宿題をいただきまして、まだお約束を果たしてないということで、たいへんにその点私としても恐縮に存じます。  確かに、麦の安全基準というものをつくる方向で検討するということでございました。昨年まずそのことで、食品衛生調査会の中の——微量重金属調査研究会のほうにおはかりしたわけでございます。結論から申しますと、二つ、三つの理由で、いまだ基準ができていないということでございます。理由を申し上げますと、やはり依然として資料が不十分である。また、委員会の内外でございますか、麦について、あるいはそのほかの野菜その他について、基準値をつくる必要があるかという根本論。これは、たとえば米の基準値をつくる場合に、十分ほかのものも見込んであるというような御意見でございます。あるいは、土壌そのものの基準値を設けるのが筋ではないかといったような議論もございまして、いままで結論が出ていないわけでございます。しかしながら、やはり私が昨年お答えいたしましたように、麦についても、これは主食である米に準じてつくる必要があるのじゃないかということで、近くまた部会を招集いたしまして、この問題について結論を早く出していただくようにお願いいたしたいと考えております。
  212. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 土壌について基準を設けるということで割り切るならば、私はそれでいい。そのことは前から申し上げてまいりました。しかし、問題は、からだに摂取される量をどうするかということであるから、また土染法のきめ方もそうですが、結局、そこに生じました作物の中の基準でどうかということで法律の体系もできているというようなことから、米について安全基準を設け、あとをどうするかということになっていると思うのですが、私は、土壌についてきちっと割り切るなら、それでいいと思います。そうでない限りは、やはり麦あるいは野菜その他の食品についても安全基準を設ける、少なくとも最低麦については安全基準を設けるということは必要であると思います。どうもプラスチックの問題につきましても、この問題につきましても、厚生省の昨年のお答えがさっぱり実行されておらぬことは遺憾であります。先ほど来、文部省との間では厚生省は進歩的なように見えたのでありますが、こういう問題になると、とたんに一年間の宿題が解決していないということは、どうもたいへん残念です。齋藤さんのようなほんとうのベテランの方が大臣になったのですから、この機会にこういう問題もすみやかに解決されるように強く要請をいたしまして、時間ですから、質問を終わっておきます。
  213. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林主査代理 玉置一徳君。
  214. 玉置一徳

    玉置分科員 私は、まず保育所問題、それから老人の生きがい対策、その他若干の項目にわたりまして質問をいたしたいと思います。  まず最初に、保育所の問題でございますが、保育所の問題は、人口の密集地帯におきまして特に最近入所難で非常に苦労なすっておいでになる。ことに、共働きが常態になってまいりました昨今、その需要は非常に多いと思うのです。  そこで、先般、縫製加工の一番進んでおります福井県に参りまして、この実態を調べさせていただきましたところが、参りました保育所は、いずれも非常にしつけのいい、われわれももう一度入り直さなければいかぬのじゃないかとお互いに話をしておったくらいに感心をして帰ってきたのでありますが、こうした認可保育所が将来ますます必要になるにつけまして、その需要を満足さすような対策として、どのような整備計画をお持ちになっておるのかをまずお尋ねしたいと思います。
  215. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 お答えいたします。  保育所につきましては、いま御指摘のように、最近非常にその要望が高まっておるわけでございまして、従来からも逐年年次計画でもって整備をしてまいったわけでございます。現在、四十七年九月の数字で申し上げますと、保育所が全国で約一万五千ございまして、百三十六万人くらいの子供を保育しておるわけでございます。しかし、昨今の婦人労働者の増加傾向その他を考えまして、さらに私どもも年次計画を持って整備をしなければいけないというように考えております。現在私どもの推計では、昭和五十年度には大体百六十二万五千人ぐらいの要保育児童を収容する保育所が必要ではないかと考えておりまして、昭和四十六年度からの五カ年計画の上に乗せて現在整備を進めているところでございまして、現在四十七年度は二年目に当たるわけでございますけれども、いまはこの整備計画が大体順調に進んでいるというところでございます。
  216. 玉置一徳

    玉置分科員 そこで、先般見てまいりましたことでも痛感したのですが、数も必要でございますけれども、交通とか場所等の関係では、必ずしも九十名程度あるいは小規模の三十名以上というところに該当しないような場所もあり得るのじゃないだろうか、こういう感じもします。あるいは企業の事業場がへんぴな場所にある、あるいは郡部に参りまして、一部落が非常に離れておって交通機関がないというような場合に、三十名を若干割るような場合もあり得るのじゃないだろうか。そういう場合にどういうように措置をされるか。さらに、いろいろ勉強させていただきましたあなたのほうの係の方のお話のように、九十名程度以上のほうが保育所の経営はやりやすいんじゃないかということも、実地を見てわかってまいりました。そういう意味では、三十名程度という小規模は、いろいろな措置に事欠くおそれがあるんじゃないだろうか。将来そういう小規模に若干の助成の増加ということをお考えになる必要があるような感じがいたしますが、この二点について御所見を伺いたいと思います。
  217. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 従来、私どもは、大体六十人以上を標準と申しますか、保育所というものは六十人以上あるのが適当であるというように考えてきたわけでございますけれども、たとえば過疎地域のようなところでは六十人にどうしてもならないというようなところもあるわけでございます。そういうことから、四十六年度から小規模保育所という制度を新しく考えまして、六十人を割るような保育所につきましても小規模保育所として認めていく、正式な保育所として認めていくというような措置を講じてきたわけでございます。それで、いまのような過疎あるいは過密というような問題が進行してまいりますと、いま先生がおっしゃいましたように、現在の三十人というようなところもなかなか確保しがたいというような問題も生じてくることも考えられまして、四十八年度からは、特にやむを得ない事情があるような場合には、特例的にその定員の規模を引き下げるというような特別の配慮も講じてまいりたいというように考えているわけでございます。  それから、おっしゃいますように、小さくなりますと割り高と申しますか、そういったような問題もあるわけでございまして、従来は、たとえば定員三十人の保育所につきまして特別保育単価を設定するというような配慮をしてきたわけでございますけれども、こういった問題につきましては今後ともさらに検討してまいりたいというふうに考えております。
  218. 玉置一徳

    玉置分科員 この間見てまいりましたところが、若干——公で言うのがいいのかどうか知りませんけれども、機業地でございますので、いまだに二交代制になっております。したがって、それにつれて子供さんが連れられていく。これはあまり感心した話じゃないのですが、これが実態とすれば、それだけに保育の必要も痛切に、よりよけいに要るわけでありまして、市のほうで取り上げませんで私立になっていることも、これは万やむを得ないことだと思います。二交代制勤務でございますので、保母さんの勤務にかなり無理があるという感じがいたします。したがって、予備保母というようなものを将来検討することが必要ではないかということを痛切に感じてきたのですが、いかがでございましょうか。
  219. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 保母の配置基準につきましては、御承知のように最低基準というものがございまして、年齢区分によりましてそれぞれ何対何というような配置基準がきまっておりまして、それによって各保育所が保母を置くというようなことになっているわけでございます。しかし、最近保育需要の多様化とか、あるいは労働条件の過重とか、いろいろな問題がございますので、昭和四十六年度から非常勤保母という制度をつくりまして、そこで弾力的に、あるいは実態に即した運営ができるようにということでこういった制度を始めたわけでございます。四十八年度からは非常勤保母の制度を保育所全施設に適用したいということで、現在準備をいたしているわけでございます。予備保母の問題も考えられると思いますけれども、私どもは、この非常勤保母の制度というものを活用して、いろいろな態様に対する対処を、できるだけ各施設ごとにその実態に即して考えていただきたいというように考えているわけでございます。  ただ、いま先生のおっしゃいました予備保母の問題というようなことも、これは前からいろいろと議論がある問題でございまして、現在、最低基準の問題も含めまして、中央児童福祉審議会の特別部会でこういった問題の御審議を願っているわけでございますので、そういったような問題も含めて審議会で検討してもらいたいというように考えております。
  220. 玉置一徳

    玉置分科員 そこで、保母さんですが、ことに乳幼児をお預かりいただいておる保育所におきましては、なるほど勤務が過労だなということも、実態を見さしていただきましてよくわかってまいりましたが、この方々は病気もできない。四歳児、五歳児になりますとまた若干違った形のやり方もできるんでしょう。それから研修をしながら——県のほうでそういうことを熱心におやりいただいております。そのときに、その教室は小中学校のように自習しておけというわけにいかぬものですから、そういう意味では、いまお話しのようなものが——この間福井県の勝山市に行かしていただいたのですが、市くらいのところで一つのプールの予備の保母さんを置けないかどうか。ことに乳児を扱われる場合のために、数保育所に一人くらい保健婦さんを将来設置することを考慮せなければいかぬのじゃないだろうか、こういうような感じを深くしてきたのですが、この二点についての御見解を承りたいと思います。
  221. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 第一点のほうの、保母が病気になりましたり、または研修に出かけるというようなときに、まあそれだけ穴があくわけでございますので、なかなか休めない、あるいは出かけられないというような苦情もあるようでございます。それで、先ほどちょっと申しましたように、四十八年度から全保育所につきまして非常勤保母を設置する制度をやりたいと考えましたのは、そういったような非常勤保母の制度を、いまおっしゃいましたような病気の場合あるいは研修へ行くというような場合のときに活用いたしまして、うまく研修に行けるように、あるいは病気のときに休めるようにというようなことも考えて、この制度を四十八年度からやりたいというように考えているわけでございます。  それで、プール的なことは考えられないかというようなお話でございますけれども、いまのところは私どももそのプール制というようなところまではちょっと考えておりませんけれども、これにつきましても検討してみたいと思っております。
  222. 玉置一徳

    玉置分科員 それから、こういうようにして一生懸命やっていただいておりますのですが、これを延長して、どうしてもかぎっ子対策のことも厚生省としてはひとつ補完的にいろいろな対策を講じていただかなければいかぬのじゃないかという問題を、この間行きまして考えました。小学校、中学校の近くにあることが必要なことなんで、これはむずかしい問題だと思いますが、あるいは自分の部落へ帰ってからの居住地域にあることがいいのか、小学校なり中学校なりの隣くらいにあるのが必要なのか、問題点がございまして、そう満点にいく方法はないと思いますけれども、かぎっ子対策もこの延長として厚生省としてはひとつ十分の御配慮をいただきたいと思うのですが、この際、御所見がございましたらひとつお聞かせいただきたいと思います。
  223. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 おそらくいわゆる学童保育といわれている問題ではないかと思いますけれども、確かに、学童保育の要望も非常にあることは事実でございます。私どものほうとしては、保育所につきましては、いまは乳児から幼児ぐらいまでの希望についてもなかなか対処し切れないというような問題で、このかぎっ子対策というものは非常にむずかしい問題があるわけでございますけれども、場所によりましては、御承知のように児童館というものがございまして、この児童館を利用いたしましてこういったいわゆる学童保育といいますか、むしろそこではかぎっ子対策というようなこともやってもらっているようなわけでございます。こういったようなことは、やはり子供の福祉というようなことからも非常に大切な問題でございますので、この問題につきましても私ども一つの課題として十分に検討いたしたいというように考えております。
  224. 玉置一徳

    玉置分科員 こういうように見てまいりますと、保育所の充足につきましてはいろいろ御手配をいただいておりまして、実態を見さしていただいて、このままの速度をひとつぜひとも強めていただいて、内容の充実と、それから需要に対する数の確保というものにさらに積極的にお願いを申し上げたいと思うのです。  そこで、非常に苦労していただいております保母さんですが、先ほども冒頭に申し上げましたとおり、感心させられるほどのしつけで、家に置いておくことを思えばありがたいことだとほんとうに思わしていただいたのですが、この保母さんの給与が、同じ程度の学校を卒業されましても、義務教育学校の同等の経験年数の方に比べて低いというのが実態じゃないだろうか。それが要員の確保にも——資格を持っておいでになる方はありましても、その他の会社等々につとめる例が多いのじゃないだろうか、こういう感じがいたします。そういう問題については、いまどのくらいの給与差があって、将来どのようにされるおつもりか。きちっとした数字でなくてもけっこうですから、お考えをこの際お述べいただきたいと思うのです。
  225. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 給与の問題につきましては、これは従来からも給与の改善ということでいろいろ私どもも苦労してまいりまして、四十七年度におきましては大体国家公務員の水準が維持できるくらいにまで改善をしてきたわけでございます。それで、四十八年度におきましても大体公務員のベースアップの程度はこれを引き上げていくという措置を講じているわけでございます。さらに民間の施設につきましては、公私の格差是正ということで、一・一%というような基準の改善を上積みするというような措置を講じているわけでございます。給与の問題は非常にむずかしい、しかし大切な問題でございますので、今後ともこれについてはさらに改善をするように努力をいたしたいと思っております。
  226. 玉置一徳

    玉置分科員 企業内に間々あります、認可保育所じゃなしに、労働省の所管のほうかとも思いますけれども、無認可保育所というのですか、これは必要に基づいて自然発生している問題だと思いますが、なるべくああいうものが認可保育所の設置基準に合いまして、母親が安心して就労中預けることができるというようなところへひとつ奨励の手を伸ばしていただきたいと思うのですが、どういう対策をお考えになっておるか。
  227. 穴山徳夫

    ○穴山政府委員 企業内の保育施設につきましては、これは確かに現在四百くらい全国にあるのじゃないかと思いますけれども、これはむしろ企業のいわゆる労働力確保対策と申しますか、雇用対策と申しますか、そういったものから発生してきているのではないかと思うわけでございます。しかし、発生はともあれ、やはり中の子供は一定の福祉水準というものを保たれて守られなければいけない問題でございますので、私どもとしては、この実態の把握とか、あるいはその内容の水準の低下しないようにという指導とか、そういったようなものを都道府県においてやるように指導をしているわけでございます。しかし一番いいのは、いま先生がおっしゃいましたように、そういったような状態からさらに発展的解消して認可保育所になるということが、量質ともに完備するわけでございまして、一番望ましい形だと思います。したがって、そういうふうになれるものについては、私どもも積極的に助成なり何なりというような手段を講じて、できるだけ認可保育所に引き上げていくというような方向で努力を当然しなければいけないというように考えております。
  228. 玉置一徳

    玉置分科員 保育所の問題につきましては、ただいままで御質問申し上げましたとおりさらに今日までの施策を一そう充実されまして、なるべく早い機会に勤労婦人の要求が満足されるように、積極的にひとつ予算の獲得等々御努力いただきたいのですが、保育所の拡充強化等につきまして、この際、大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  229. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 保育所は、最近における社会事情の変化等によりまして各方面とも非常に喜ばれておりまして、社会福祉施設五カ年計画というものをつくって、現在四十八年が三年目になるわけでございますが、その進捗率から言いますと、重度心身障害児のほうでは非常にむずかしゅうございますから進捗率はおくれておりますが、保育所はものすごく進捗率がいいという状況でございます。私どもは、こういうふうに喜ばれておることでございますから、中身もやはり喜ばれるように、しかも中身は、特に父兄よりも入所しておる子供というものを中心に、なるほど、保育所に入ると子供の成長の上に、しつけの上からいってもいいんだなということでみなに喜んでいただけるような保育所になるように、今後は内容充実にひとつ全力を尽くしてまいりたい、かように考えております。個所数も、一応五カ年計画でやっておるのですが、今度は経済企画庁の新しい計画もできて、それによってやるわけですから、これは年度の途中で改定をしまして、もっと国民に喜んでいただけるような個所をふやして、保育所の整備計画を大規模に進めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  230. 玉置一徳

    玉置分科員 次に、老人対策について若干の質問をいたしたいと思います。  年金の問題が一番でしょうが、時間的な関係がございますので、その他の若干の問題点、特に生きがい対策というような形で質問を試みていきたいと思います。  一番初めに、国鉄の局長お見えになっていただいておりますか。——では一緒にやらしていただきます。  私は浪人中考えておったのですが、老人対策として、今日まで社会的に非常に御活動いただき、それから家庭におきましてそれぞれおさまりをいただきました老人諸君に旅行をしていただくという施策は一体どうだろうかというので、国鉄に参りまして、旅客局の加賀山君だったと思いますが、総務課長と案を練ったことがあるのです。七十歳以上の老人が約四百三十万人、国鉄が従来とも団体割引をしておりますのは二割、こういう点を考えますと、年間の国鉄の一番運送困難なときをねらうことは無理だと思いますけれども、比較的閑散期をねらえば、二割ないし三割を国鉄が負担することはできるのじゃないか、団体は三割は当然であるというようなことで、計算を起こしました。そして一年間大体一週間程度、これを残りを国費で持つというようなことになれば、一体どのくらいの予算が要るんだろうか、国鉄は一体それを一回幾らぐらいの運賃として積算したらいいかということを向こうで聞いたことがあるのですが、そういう積算はできますか。
  231. 柳井乃武夫

    ○柳井説明員 ただいまの団体割引につきましては、季節によりまして一割ないし一割五分でございます。  それから次に、積算についてのお尋ねでございますが、ただいまの先生のお尋ねによりまして、どのように積算したらよろしいかということについてお答え申し上げます。  たとえば、現在百一キロ以上の旅行をなさっていらっしゃいますお客さまの平均距離が三百二十キロメートルでございます。その運賃が千三百十円でございます。それから百キロ以下の近距離を鉄道にお乗りになります方の平均乗車キロが十七キロメートルでございます。この金額が八十円でございます。したがいまして、百一キロ以上をかりに年に一度お乗りになりまして、それから百キロ以下を一度お乗りになりましたと計算いたしますと、千三百十円に八十円足しました千三百九十円、往復でございますので二千七百八十円ということで、三千円に満たない額ではございますが、約三千円程度と申し上げておきましょうか、二千七百八十円という一応の計算ができるわけでございます。それから、これはいま四百三十万人と先生から伺いましたが、実は手元に四百九十五万人という数字があったものでございますので、一応それを使いまして計算いたしましたところ、年間でただいまのように御老人が一回中距離を旅行される、一回近距離を旅行された場合に、総額で負担額が百三十七億円という金額になるわけでございます。
  232. 玉置一徳

    玉置分科員 私の言うておりますのは、一年間に一週間程度の無賃国鉄乗車証を渡すわけです。だから、もうちょっと距離が延びるのではないかというので、加賀山君とやっておりましたときは、大ざっぱな話なんですが、一万円とあれするかという計算が出たのですけれども、私は、一万円ではまだ少ない、局長は二万円ぐらい言うかなと思って聞いてみたわけであります。  それはそれにいたしまして、国鉄が、秀節の閑散期によりましょうけれども、そういう形をとりますと、そのことは、四百三十万人と見ましても、四百九十五万人と見ましても、実際お行きなさるのは半分か六割ぐらいじゃないだろうかということになれば、運ぶことは可能かどうか。どう思われますか。
  233. 柳井乃武夫

    ○柳井説明員 ただいまのお金の問題は一応別にいたしまして、運ぶほうという御質問でございます。私どものことばで輸送能力と申しますが、お運び申し上げる力のほうで申し上げますと、先生御指摘のように、いつお出かけになりますか、その時期によりますが、やはり年末年始とか盆暮れとかいうときは一番こみます。それ以外のときは、別段輸送力的には問題ございません。
  234. 玉置一徳

    玉置分科員 そうすれば、それは国鉄としては迷惑なのか、好ましいのか、どっちなんですか、国鉄の経営にとって。
  235. 柳井乃武夫

    ○柳井説明員 経営にとりまして迷惑かどうかという御質問でございますが、御高承のように、ただいま国鉄におきましては、いろいろな施設にお入りになっていらっしゃいます老人の方御本人、それから付き添いの方に対しまして、運賃の五割引きを実施しているわけでございます。今後さらにこのワクを国鉄の負担で——ただいまのように少ないというお話もございましたけれども、やはり百億以上のお金でございます。それから国鉄の負担でということでございますと、これはなかなか国鉄の財政上困難な問題かと存ぜられる次第でございます。
  236. 玉置一徳

    玉置分科員 私の言うておるのは、国鉄はそういうときに自己負担として三割なら三割持てる、七割は国庫で持ってくれる、こういうことなんですが、何割くらいだったら持てますか。つまり、割引と同じ考え方です。
  237. 柳井乃武夫

    ○柳井説明員 政府のほうで補助をする、たとえば、ただいま戦傷病者に対しましては、後払い証を発行いたしまして政府から全額その分をいただいておるわけでございます。そのように政府からいただきますということでございますれば、これはどれくらい国庫のほうでお出しいただけるかということの見合せによりまして、また政府関係の省と御協議申し上げなければならぬわけであります。
  238. 玉置一徳

    玉置分科員 そこで厚生省のほうへお伺いしたいのですが、私は、国鉄の団体割引料金、そういう点を考えまして、ある閑散期を利用することによりまして二割、また団体によりましては三割くらいは自己負担してもらっても、国鉄はかえって利益があがるんじゃないだろうかという感じを持ってひとつ想定をしたわけですが、たとえば私なりの流儀で運賃を一万円としましょう。一万円として、四百三十万人、これは厚生省のほうへ聞いたときには四百三十万人と聞いたように思うのですが、それを七割なら七割、ほんとうは、実施するときには府県もしくは市町村の若干のあれを期待してもいいわけですが、一応、そういうことまで言うと語弊がありますから、この間国庫が出すべきものとして七割くらいを想定して、四百三十億円の七割、したがって三百億、三百億のうち、実際にお行きになるのは、毎年であれば六割ぐらいの程度じゃないだろうか。病気、用事その他がありますから。そうすると約二百億程度じゃないだろうか。そういうようなものでも、予算獲得をして、こういうものを実施に移すということも将来検討されると、非常に喜ばれることは事実です。それからさらにいろいろな宿泊の簡易施設国民宿舎等々の施設の充実もこれから要るわけですけれども、さしあたりそのくらいの程度の運賃と判断をして、もしも万一それは初めから無理だとすれば、二年に一回という形になればさらにその半分になるわけであります。約百億ないし百五十億くらいの程度になるんじゃないかという感じがするのですが、将来検討し得るだけのあれが持ち得るかどうか、ひとつこの際御意見を承りたい。
  239. 加藤威二

    ○加藤(威)政府委員 老人対策といたしまして非常に明るい御提案だと思いますけれども、先の将来の検討ということであれば、これは十分検討に値すると思いますけれども、率直に言って、私どもいま老人対策に取り組んでおりますものといたしましては、やはり寝たきり老人とか、そういった老人の対策、それから、いまあまりにも所得が少ないということで所得保障をどうするか、それから就労あっせんの問題とか、そういう差し迫った問題に取り組んでおるわけでございます。それで、私どもももしこの百八十億という金がすぐもらえるのであれば、確かに先生のおっしゃるように明るい話題でございますけれども、年金の引き上げとか、そっちのほうにいまの段階では使っていただいたほうが、老人全体としては喜ぶのではないかという感じが私はするわけでございます。しかし、国鉄も現在は赤字でなかなかたいへんでございましょうが、将来非常に経理がよくなって、ある程度割引をするというような時代がまいりました場合には、相当先の将来でありましょうけれども、それは十分検討に値する問題だと思います。ちなみに、身体障害者につきましても、国鉄のほうで非常に御配慮を願って五割の割引をやっておりますが、残りの五割については負担していないというような現状もございますので、もし将来負担することになれば、そういう問題をひっくるめて検討する必要があるかと思います。しかし、将来の明るい問題としては、そういう意味では十分検討に値する御提案だと思います。
  240. 玉置一徳

    玉置分科員 これは自民党が次の参議院対策等で心配したりするよりも、このことを厚生大臣がやるという腹をきめて来年度から取りかかりますということになれば、非常に明るいあれだ。いろいろな方々に承りましたけれども、非常にこういうことは具体的に喜ばれる。だれだって旅行もしたいし、してもおるわけですが、おじいちゃん、ちょうどあなたが行く番がまいりましたよという形で、非常に出やすいんじゃないかという感じもいたしますし、このことがなければ旅行ができないということもないと思いますけれども、非常に誘い水になりまして、また、どこどこに行きたいという計画を持ちながら、やっと行けるというところに楽しみができるんじゃないか、こう思いまして、御提案申し上げておるわけですが、大臣、どのようにお考えになりますか。
  241. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 私も先生の御提言、非常に興味をもって承ったわけで、御老人方々、やはり旅をなさると、それは確かに気分はさわやかになって、ほんとうにいいアイデアだと思います。しかし、何しろ国鉄さんもたいへんな赤字でございますから、今回提案しております運賃法でも成立した暁には、私は来年度あたりは必ずやるということを御約束申し上げてもいいと思うのです。それほど研究に値する問題だと私は思います。御老人方々、旅行ということになればほんとうに楽しみにされると思いますから、どうかその意味においても、今回の法案は私の所管でありませんが、よろしく成立に御協力をお願い申し上げたいと思います。
  242. 玉置一徳

    玉置分科員 おそれ入りました。  みんなを喜ばす、生きがいを感じさすあれでございますので、せっかく御検討いただければ国鉄のほうもありがたいという話が実際にいわれております。お願いを申し上げたいと思います。  そこで、今度話を変えまして、老人の休養施設でありますが、きょうは生きがい対策のほうばかり申し上げて恐縮ですが、その他の方々が一番重要な問題にお入りになると思って、逆にこういうことを拾い上げた次第です。老人ホームもまだまだ数は足りませんので、ここまで一ぺんに飛躍することは恐縮でございますが、老人といいましても、身体のそこまで衰えていない方々も七、八割はあるわけでございますので、先ほどと同じような意味で休養施設、相当大きい休養施設で二、三泊しましてそしてゆっくり帰ってくるというような施設ほんとうは喜ばれるんじゃないか、こういう感じがしておったのです。  かつて私、全国の農業青年諸君が参りまして要望がありましたときに、汽車賃の学生並みの割引をわれわれもしてもらいたいという話がありましたときに、国鉄のやっておるものは、学生が遊びに行くから割引するのじゃないのだ、あれは一番ひまでよく旅行しておるから、営業対策上やっておるのだ、こういう話をして、そのかわり、各県に小さい規模の農事試験場がございますが、もう近代のあれには間に合わぬ。幸い日本は、九州には阿蘇があり、各地に温泉と国有林野が必ずひっついているような個所が地域ごとに分散しておる。だから非常にものがやりやすい。広大な施設をやることによって、そこまでの旅費その他を府県並びに市町村、国がそういうものを補助することによって、非常に安く大きな研究施設をやることができるのじゃないかということを言うたことがあるわけです。同じ意味のことを老人の生きがい対策の休養施設として、いま申しましたような阿蘇等々の各地に分散いたしております温泉、火山が必ずついておりますが、温泉地であり、しかも必ず国有林の国有地があるところ、そういうところに思い切った施設をつくってあげることによりまして、数日間をほんとうに気持よく休養してくることができるのじゃないかという感じを持つのですが、これに対する御所見をひとつ厚生大臣からお伺いしたいと思います。
  243. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 まことに同感の御意見でございまして、実は私もこれは何とか計画的にやらねばなるまいと思うのです。いまのやり方は御承知のように還元融資でございますから、地方から申請があったらそれをつけてやる。こういうことじゃだめなんで、やはり各町村ごとに、いまお述べになりましたような休養ホームなりあるいは老人ホームというので、老人方々がときどき集まってむだ話といいますか、いろいろ話し合いをする場所とか、あるいは必要によっては二、三日泊まってくる、こういうところが私はあっていいのじゃないか。ところが、それについては残念ながらまだ厚生省でも計画的なものはないのでございますね。御承知のように、地方からこういうものをつくりたい、それじゃ還元融資で金を貸してあげましょうかというふうに、受け身の受け入れ施設整備しかない。それではいけないのでありますから、これだけ老人問題がやかましくなった今日は、老人のお集まりになるような老人ホームといいますか、そういう場所、さらに休養ホーム、そういうものを兼ねたようなものを計画的につくるべきだと、私も積極的に考えております。したがって、来年度以降いろいろな社会福祉施設整備計画を立てますが、この問題は一つの大きな問題として計画的にやるという意味で取り上げてみたい、かように考えております。
  244. 玉置一徳

    玉置分科員 それから、さらにひょっと思いついて考えておりましたことを、ちょっと質問の要領を厚生省の方に聞きましたら、すでに実施されておりまして、ありがたいと思ったのですが、したがって、それがどのように実施されているか、簡単に当局からお伺いしたいのですが、私は、老人ホームという、隔離された場所でいかにそれが充実したものであろうとも、そこで一生住むということは、ほんとう日本人の風習としてはさみしい、だから、何か一間だけ接続して家庭につけてやることが一番望ましいのじゃないかと思って、あなたのほうの方が来られましたので聞きましたら、去年から実施しております、こういうことで、ありがたいと思ったのですが、どのようにそれは利用されておるか。これは何か簡便にごく低利の形でないとやりにくいと思うのですが、役場というか役所をいま利用されておるように聞きますが、そのことが実施上円滑を欠くか欠かぬかというようなことの問題点がありましたら、お伺いしたいのです。実施の状況はどのくらいになっておるのか。
  245. 加藤威二

    ○加藤(威)政府委員 老人の居室を整備するための資金の貸し付け、これは四十七年度から実施いたしております。この資金は、年金の積み立て金のやはり還元融資ということで、四十七年は三億円でございますが、四十八年度は八億円にするということで、これは一戸当たり一応限度額五十万ということで、貸し付け利率は六分三厘くらいだったと思いますけれども、十年以内の償還期限ということで、四十七年度から実施いたしております。これは要望のあったところから実施しておるわけでございますが、すでに十八府県でこれを実施しているという状況でございます。で、これは年金局のほうで金を出しているわけでございますが、年金局のほうも、要望があればどんどんこのワクをふやしてもいいという気持ちを持っておりますので、四十八年度は三億円から五億円増しまして八億円ということでございますが、今後要望に見合いましてさらにこの金額をふやしてまいりたいというぐあいに思っております。
  246. 玉置一徳

    玉置分科員 けっこうですが、やはり六畳くらいはどうしても要るんじゃないか。それは何も畳の部屋だけの六畳でなくても、畳四畳半でも、何かの形のベランダのようなものをくふうしてあげていいんじゃないだろうか。こういうことを考えますと、材木高騰のおりからだけではなくて、近時やはり、何ぼきれいにしなくても、坪十七、八万円、二十万円くらいが目安ではあったわけです。いまもっと高くなっていると思いますけれども。したがって、五十万というのは、ちょいとこれはほんとに納屋をつくる程度になってしまうんじゃないだろうかという感じがしますが、これを六畳としましても、二十万円をかけますと百二十万だけは要ると思いますので、なるべくこれは、別に法令のあれでもありませんから、増額をしていただく方法がないかどうか。と同時に、安直に借りられるような形、手続ですね、これが一番大事じゃないか。その次は、十年はありがたいですが、六分五厘も安いことは安いのでしょうが、老人対策としては何か予算措置をされて、さらにその金利が安くなる方法を少なくとも四十九年度くらいからはお考えいただく、御検討を要望したいのですが、どのようにお考えになりますか。
  247. 加藤威二

    ○加藤(威)政府委員 この金は、先ほど申しましたように、年金の積み立て金を使っておりますので、所管が年金局でございます。いま先生御指摘のような点は、私どもも確かに要望したいと思いますので、たとえば五十万円をもっと引き上げてもらいたい、これは年金局と相談して、年金局が最終的に大蔵省等と相談してきめる問題だろうと思いますが、社会局といたしましては、先生御指摘のような線で、なるべく居室の整備資金が老人に喜ばれるような金額であり、またその貸し付けの手続その他につきましても、老人が安んじて借りられる、そういう方向になりますように、いま年金局ともよく相談して、四十八年度の実施にあたりましてはそういう方向でやってまいりたいと思います。
  248. 玉置一徳

    玉置分科員 その次に、同じような生きがい対策のこれでは、人間、年寄りまして、年金がいかに豊かになろうが、どういう施設に入れられようが、やはり自分の体力の許す範囲内で仕事をするという楽しみが、一番ほんとうは楽しいんじゃないだろうか。あなたはお年寄りだから、何にもしないでゆっくりしていなさいと言われることが一番つらいんじゃないだろうかと思います。こういう意味で、適宜な老人就労のあっせんの実態問題点がございましたら、お聞かせいただきたいと思います。
  249. 加藤威二

    ○加藤(威)政府委員 確かに、私ども老人実態調査でも、働けるうちは何とか働きたいという要望が圧倒的に多いわけでございます。それがやはり老人の生きがいの一つでもございますので、私どもできるだけそういった老人の生きがい対策を高めるという意味から、まあ老人のからだにふさわしい程度の職業というものをできるだけあっせんする、そういう機会を多くしようということで、高齢者の無料職業紹介所というのを、これは四十七年度四十六カ所でございますが、四十八年度は大幅にふやしまして九十四カ所にするということで、これは非常に老人に喜ばれております。また府県からもこういうものを補助金をぜひ回してもらいたいという要望が非常に強いわけでございます。そういうことで、私どもはやはり今後ともこの高齢者の無料職業紹介所、これを数をふやすということで、できるだけ、働く能力のある、それからその希望のある老人が働ける場所を確保できるように、そういう対策を講じてまいりたいと思います。
  250. 玉置一徳

    玉置分科員 さきに、開設といったら大げさになりますが、実施をしていただきました老人クラブですが、ずいぶんと数がふえまして、全国津々浦々に行き渡ったんじゃないかと思います。ただ、男女の性別によります関心の違い、能力の違い、それから体力の違い、趣味嗜好等の違い、なかなかこれはむずかしいものだと思います。これをほんとうにうまく運営するのには非常に苦心を要するところだと思うのですが、ことに老人クラブの総会という、レクリエーションを兼ねたものは年に一回ありましても、あるいは二回ございましても、その他は、学校のいわゆるクラブ活動式な運営をしないと、趣味嗜好の同じような方々、能力の同じような方々、ついマンネリ化してしまうおそれがあるんじゃないだろうかという感じを持っておるんですが、こういう点の問題点と対策がございましたら、ひとつお聞なせいただきたいと思います。
  251. 加藤威二

    ○加藤(威)政府委員 確かに、老人クラブの一部にはマンネリ化しているというようなことも私ども聞いておりますけれども、しかし、老人クラブというのは、御承知のとおり、言うまでもなく、一応人生のいろいろな経験を経られた老人たちの集まりでございますので、私どもがあまり表立った指導をするということも、かえって逆効果になるおそれもあります。ただ私どもは、そういう見地からいたしまして、むしろ自主的に——老人クラブというものが非常にマンネリ化していれば、何かもっと新しい方向、あるいは地域とのつながりというものに対して、何か地域なり社会にプラスするような動き方をするとか、そういうふうな自発的な形で出てくるのが一番望ましい、そういうことで、指導者講習会というのを予算考えておりまして、これは中央と地方都道府県別に指導者に集まっていただきまして、いろいろ老人クラブの運営その他について自主的に研究していただく、そういうような予算も組んでおります。そういうことで、私どもといたしましては、やはり老人クラブというものは、そのクラブの中の老人方々の間から自主的に、老人クラブのそういった意味の、単なる遊び半分のあれではなく、もう少し社会的な役割りも果たしていくという意味の健全なクラブに発展するようなそれが中から出てくる、そういう機運を私どもは少しでもお手伝いする、そういうことで、まあ上からの指導ということじゃなくて、そういう考え老人クラブの助成につとめてまいりたいというぐあいに考えております。
  252. 玉置一徳

    玉置分科員 私なんか見ておりまして、よく菊の栽培とかその他、そういったぐあいのものに共通の楽しみを持っておられますような方たちで、いままでそういうものをやったことのなかった人まで一緒におやりになっているような現象を見ることがあるわけです。各都道府県の一等賞には厚生大臣の賞状を渡すとか、何かいろいろこまかい配慮をひとつしていただくことが、そういう芽を引っぱり出していくもとじゃないだろうかという感じもいたします。  以上、きょうは老人の生きがい対策につきまして御質疑を申し上げたわけでありますが、全般につきましてひとつ大臣の御所見があればこの際承って、この項を終わりたいと思います。
  253. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 老人対策の基本は、やはり元気なうちは多少なりとも働きたい、やはり社会から完全に隔離されない、これが一番大事なことだと思います。それと同時に、また老人には老人の共通の話題があるわけですから、そうした意味において、老人ホームなり、先ほどお話のありました老人休養ホームなり、そういうふうな施設をできるだけつくるようにするとか、そういう方面に今後とも努力をいたしてまいりたいと思います。先ほどのお話の老人の旅行、これなんか私は非常におもしろい案だと考えております。  いずれにせよ、御老人方々は、長いこと社会のために貢献された方々でございますから、老後はほんとうに安らかな気持ちで、元気でお過ごしいただけるような施策をやることに全力を尽くしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  254. 玉置一徳

    玉置分科員 時間が若干残っておりますので、あと五分ぐらい、私の身の回りのことで恐縮ですが、目につくことを二、三お伺い申し上げて、質問を終わりたいと思います。  十年ほど前は、各地で見てみますと、一番きれいになりましたのは検察庁でした。最近は、どこへ行ってもどえらい建物が建っているのは電電公社です。それに比べまして、国立療養所もようやく近代化を進めつつありますけれども、私の近くの国立京都青谷療養所など、旧陸軍の病舎のままになっておるところもございます。地震、火事等が起こりました場合の事態を想像すれば、非常に寒心の至りといわざるを得ないわけでありますが、こういうものの残りの整備計画をどのように速度を早めて近代化をはかろうとしておいでになるのか、これにつきましてお伺いしたいと思います。
  255. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生のお尋ねの療養所のことでございますが、国立病院には病院と療養所がございます。病院のほうにつきましては、早くから特会に移行しまして整備をかなり促進いたしました。療養所につきましては、法律改正によりまして特別会計に移行して以来、第一次の特別整備計画を立てまして、それで八十四カ所手をつけました。一カ所一カ所全部まだ完成したわけではございませんけれども、引き続き第二次特別整備をやることに方針を定めましたので、一応このような老朽の病棟は、若干日時はかかると思いますが、解消する目途が立ったわけでございます。
  256. 玉置一徳

    玉置分科員 ほぼ何年ぐらいで終わりますか。
  257. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 八十四カ所につきまして、今回の第二次の特別整備についてもやはり五年ぐらいはどうしてもかけませんと、従来の国立病院の経験からいきましても、なかなかできません。ただ、国立療養所には、重症心身障害児とか、非常に特殊な対策を講じておりますので、これは初めから鉄筋で整備をいたしております。昔からの結核療養所を老人の病棟に切りかえるとかいう対策については、老人対策等もございますので、できるだけ促進いたしたい、こういうふうに考えます。
  258. 玉置一徳

    玉置分科員 もう一つ、同じような事態で恐縮でございますが、京都に国立舞鶴病院がございます。そこに精神科が設置されております。四十分ほどかかるところに綾部というところがございます。それからまた西の方へ二十五分ぐらいのところに福知山市がございます。先般、患者の代表にお目にかかりまして、舞鶴まで行くことは時間的に非常に困難である。福知山に二千名、綾部に二千名近い患者がおいでになる。これはその話のままですので、実態は私は把握しかねております。そこで、福知山の、せっかく新設なりました国立病院に精神科のあれを設置してもらえぬか、もしも予算措置等でそれに若干の時間がかかるとすれば、せめて月、水、金等の午前中、外来診療をしてもらうような措置を講じてもらうことができぬだろうか、それでみんなずいぶん安心ができるんだ、こういうお願いがあったわけでありまして、そういう措置をしてあげることによって患者に安心を得さしめるというようなことができないかどうか、御要請申し上げたいと思います。
  259. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生の御指摘を待つまでもなく、本来、病院機能の中では、精神科というものを設置しませんと、もう近代的なものではないわけでございまして、その点はわれわれも極力各地の国立病院に、病棟は持たなくても、できるだけ外来の患者だけは見る——精神科の外来が非常に多くなってまいりました。もはや精神の治療は、入院主義ではなく、外来で早期に治療する、それで成果をあげるという方向でございます。したがいまして、先生のただいまの福知山の精神科設置の問題につきましては、御指摘のように、舞鶴からの応援というのがとりあえず可能性がございますので、新年度早々それを実現し、将来はできたら専任の医師を置くようにいたしたい、こういうことで実施をお約束できると思います。
  260. 玉置一徳

    玉置分科員 最後に御質問申し上げたいのは、海外でなくなりました戦死者の諸君の英霊に対して、毎年若干名ずつ遺族にお墓参りをさせてあげる方途を講じたらどうか、こういうことであります。ことし、教員の海外研修、これは意味が違いますけれども、一挙に大量に実現の運びになりました。予算を見ております。こういう意味では、自分の肉親が戦没した場所等々に——私もここ四年間、遺族の方々とともにニューギニアその他ずっとお参りしてまいっておるのでありますが、おじいちゃん、おばあちゃんになりますと、そこへ行ってひざまずいたら、もう立ち上がることもできないほど、われわれもお連れしてああよかったという生きがいをほんとうに感じるほどであります。できれば予算の許す範囲内でお連れして、遺児等は半額とかいうような形でお参りさせていただければ、非常に善政になるような感じがしてならないのですが、これについて将来御検討いただけるかどうか、大臣の所見をお伺いして終わりたいと思います。
  261. 齋藤諦淳

    齋藤国務大臣 私が申し上げるまでもなく、今日の日本はこうした戦争における犠牲者のしかばねの上に築かれている、私はかように考えております。したがって、なくなった父、夫の戦跡をたずねて、そうしたなくなった方々の霊をしのぶということは、私はほんとうにありがたいことだと思います。したがいまして、今後遺族会等とも相談いたしまして、こうした問題を将来の問題として十分研究させていただきたいと思います。
  262. 玉置一徳

    玉置分科員 終わります。
  263. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林主査代理 以上で玉置一徳君の質疑は終了いたしました。  次回は、明六日午前十時より分科会を開会し、厚生省所管質疑を続行いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十九分散会